「母国で野球を志す少年たちに希望を与えたい」−−。都市対抗野球大会第9日の4日、さいたま市・日本通運の
サマラウイーラゲ・イシャーラ投手(24)は、登板の機会がないまま東京ドームを去った。母国スリランカに野球を
広めようと、シーズンオフに帰国して少年野球教室を開いているイシャーラ投手。大会で力投する姿を収めた
ビデオが届くのを母国の少年たちは心待ちにしていたが、来年までお預けとなった。
スリランカ生まれで、中学1年の時に父親の仕事の関係で来日。茨城県潮来市の公立中学校に入学したが、
日本語が全く分からず、授業中も「ただ座っているだけ」。そんな時に野球と出合う。母国ではクリケットが盛んで、
野球は「未知のスポーツ」だったが、たちまち夢中に。慣れない生活の不安や孤独を忘れさせてくれた。
高校で才能が開花した。作新学院大(宇都宮市)に進んでエースとして活躍し、関甲新学生野球リーグで最多勝を獲得。
148キロの速球でドラフト候補にも名を連ね、09年春に「鳴り物入り」で日本通運に入社した。しかし、入寮直後に
肩を痛め、キャッチボールすらできない状態が1年間続いた。
そんな時、母国での少年野球教室の開催を打診された。同国では、02年から日本の青年海外協力隊員が
野球を指導し、現在、野球人口は約5000人。昨年12月のイシャーラ投手の教室には、中学生ら約40人が
参加した。その後も少年たちと電話で連絡を取り合い、練習方法や食事のアドバイスを続けている。
今年3月からようやく公式戦で投げられるようになったイシャーラ投手。一時は引退も考えたが、子供たちの
ひたむきな姿に逆に励まされた。「自分の活躍を楽しみにしている子供たちに、来年こそは都市対抗で力投する
ビデオを送りたい」。夢はいつかプロ入りし、母国に初めての野球場を作ることだ。
http://mainichi.jp/enta/sports/baseball/news/20100905k0000m040071000c.html