2008年秋から連載してきたこのコラムは、今回が最終回となった。ご愛読に感謝する
とともに、特に若いサッカー選手たちに向けて、最後に「好きこそものの上手なれ」とい
うメッセージを伝えたい。
これまでも繰り返してきたが、サッカーというものは時代とともに戦術は変わるけど、
一人一人がプレーの質を高めることが大事なのは何も変わらない。体を強くする。ボデ
ィーバランスを高める。メンタル的にハードになる。ボールを止める、ける、ドリブルの
基本練習をしっかりする。そうした個人戦術が先にあるのは、サッカーの普遍的な原則だ。
だから、選手は自分の能力を高めなければいけないのだが、その前に自分の特長が何な
のかを知る必要がある。それを踏まえて、自分にとっての最大の武器を磨かなければいけ
ない。万能なサッカー選手なんかいない。だからといって、すべての要素が平均的なのは
武器がないのも同然だ。
ある新聞記事にこんな内容のことが書いてあった。「天才はいない。それは努力の結果
であり、脳の働きから見れば、『天才』というものは、努力が尋常ではなく、余人が追随
を許さない鍛錬をする人だ」。つまり、天才と呼ばれる人は努力の仕方を知っている人で
あり、それがわからない人は能力の発揮の仕方を知らないから、天才になりえないという
ことだ。
僕も「天才肌」と言われたが、点の入れるための練習という点では、他の人がやらない
ようなことをやってきたことは以前から述べてきた通りだ。シュートも、ヘディングを強
くする方法も、自分にとって必要なことは特別にやってきたから、結果が出たわけだ。人
は何というか知らないが、僕が天才だとすれば、その本質は肉体にあったのではなく、そ
ういう鍛錬ができたこと自体にあったのだと思う。
>>2以降に続く
カテゴリ忘れてました、スイマセン
>>1続き
そして、その根底にはっきりあるのは、「ゴールの中にボールをけるのが好きだ」とい
うことだった。好きこそ物の上手なれ、だ。嫌いなことを、人間はしないものだ。それは
短所ととらえてもいい。逆に言えば、好きなことはその人にとっての長所だ。僕が正確で
強烈なシュートを打つために練習をし、そういうシュートを打てるような状況を作るべく
自己主張し、そのことについて「わがままだ」とか言われても何とも思わない姿勢に徹す
ることができたのは、ゴールにボールを突き刺すことが好きで好きでしょうがなかったか
らだ。
自分は何が他の選手より勝っているのか。サッカーで勝負するなら、それを知って自分
のスタイルを作ってほしい。小学生の頃は純粋にサッカーを楽しめばいい。でも、中学2
年、3年になったら、自分の特長が何かは、わかってくる年頃だ。自分の特長を生かせる
ことなら、それを伸ばすのは楽しいことだろう? ぜひ、そのことに没頭していってほし
い。好きなことなら、やり続けることができるだろう? そうやって、将来の自分にとっ
て大事なものを作り上げてほしい。
特に、FWは自分のスタイルや武器があってこそだ。強烈なシュートが打てる。ドリブ
ル突破が得意だ。ヘディングが強い。絶妙のタイミングでゴール前に飛び込むのがうまい。
どんな特長でもいい。自分の得意なスタイルを知り、それを磨いて欲しい。
日本代表は、そういうFWをいつだって待っているよ。
http://www.asahi.com/sports/column/TKY201003250284.html