Jリーグの新しい移籍ルールが8月1日から「実施段階」に突入する。
国際基準への移行を求めるFIFAの要請と、選手協会側の強い働きかけによって、契約満了となる選手は
移籍金ゼロで自由に他クラブへ移籍できることになった。さらに、契約満了の6カ月前からどのクラブとも
移籍交渉できることが選手の権利として認められた。
Jリーグでは1月31日を契約の区切りとするのが通例で「6カ月前」なら8月1日が交渉の解禁日にあたる。
だが、今年に限って8月1日から2カ月間は他クラブとの交渉を認めないという紳士協定が結ばれている。
'95年のボスマン判決以降、移籍の自由化が世界的な広がりを見せるなか、選手からしてみれば
「やっと世界に追いついた」という思いだろう。しかし、選手全員が新ルールの恩恵を受けられるわけではなさそうだ。
J1のある強化担当はこう予測する。「一部の選手の年俸は高騰するだろうけど、選手間に格差も出てくる」
不況の波にさらされる多くのクラブはごく限られた選手に資金を注ぎ込む一方、引き締めも図っていくことになる。
1軍半以下の選手の年俸を抑制したり、支配下選手数を減らしていく可能性を指摘する関係者は多い。
獲得合戦になれば、資金力を武器に選手をかき集められるクラブもあれば、草刈り場となるクラブも出てくるはず。
つまりクラブ間でも格差が広がっていくと思われる。
新ルール導入で不利益をこうむるクラブに対して、救済策がないわけではない。Jリーグの作業部会では現在、
若手が移籍する場合、契約満了でも支払いが発生する「トレーニング補償」の詳細を詰めている。
対象の年齢は23歳以下または21歳以下、金額はFIFAの規定に沿って4万ドルまたは6万ユーロの案で検討されている。
これに在籍年数を掛け算し、支払い金額を設定するというわけだ。だがこれも、若手を引き抜かれるクラブからすれば
焼け石に水程度の救済にしかならない。
(続く)
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