作家直木三十五(さんじゅうご)(1891〜1934)の故郷、大阪市中央区の空堀(からほり)地区にある記
念館が財政難から存続の危機に瀕(ひん)している。15日は第141回直木賞の発表日。空堀地区を舞台
にした作品が候補に挙がっており、記念館は「受賞して、ピンチを脱する突破口になれば」と期待している。
直木三十五記念館は05年2月、地元の街づくりグループに所属する会社員や建築家、会社社長ら計4人
が改装した長屋に開館した。かつての人気作家も近年は著書がほぼ絶版。地元でさえ忘れられた存在にな
っていたため、「作品も、生き様もおもろい作家がいたことを知って」という思いをこめ、直筆の資料や著書約
400点をそろえた。
行政の力を借りずに市民が運営する全国でも珍しい文学館だ。ただ、年間来館者数は約1千人。
入場料200円では運営費が賄えない。運営をサポートする会員も集まらず、常に借金に追われた直木同様
に厳しい運営が続いている。賃料など累積で100万円を超す借金を4人で負っている。
記念館事務局長の小辻昌平さん(45)は「直木はかつて、『大阪市民は文学に冷淡』と批判したことがある。
その直木の記念館がはやらないのも仕方ない」と苦笑する。
小辻さんが期待を寄せるのは、今回の直木賞にノミネートされた大阪出身の万城目学(まきめ・まなぶ)さん
の「プリンセス・トヨトミ」。大阪の秘密を握る空堀商店街に、会計検査院の調査官が接触したことから、大阪の
都市機能が完全停止する――という娯楽小説だ。「直木三十五の文学碑の脇を抜け……」という描写も出てくる。
小辻さんは「直木の地元を題材にした作品が受賞すれば、地域への注目も高まるはず。周辺の文学的な
名所とつなげて散策ルートをつくることなどを考えたい」と話す。(秋山千佳)
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◆画像:長屋にある直木三十五記念館と運営する小辻昌平さん。畳敷きの一角があり、
直木の著書や過去の直木賞作品を読むことができる=大阪市中央区、秋山写す
http://www2.asahi.com/kansai/entertainment/image/OSK200907150053.jpg ■ソース:asahi.com(朝日新聞社) 2009年7月15日
http://www.asahi.com/kansai/entertainment/news/OSK200907150051.html