実社会の闇をあぶり出すかのような手塚治虫“禁断の作品”「MW(ムウ)」(岩本仁志監督)
が映画化され、7月4日、各地で公開される。原作は70年代後半に連載されたが、権力の
陰謀に対する手塚氏の冷徹なまなざしと悲憤は現代を射抜く。ダブル主演の一方で、神父を
演じた山田孝之に作品へ込めた思いを聞いた。
「MW」と何か? この映画は観客に謎をかけているので、正体は秘めておこう。
物語の発端は「16年前」にさかのぼる。沖之真船島という南の島で、住民が突然消えた。
が、少年2人が生き延びた。それが、今、切れ者の外資銀行員の結城(玉木宏)と神父に
なった賀来(山田)だ。結城は上司や有力政治家らに不可解な「報復」を加える。賀来だけは
結城の真意を知るが、止められない。新聞記者(石田ゆり子)、刑事(石橋凌)を含めた
三つどもえの真相追跡劇だ。
「手塚さんの作品は古びない。時代が変わっても、何も変わらないものを描いている。
善と悪、法律や道徳、差別、社会の決まりごと、標準とか平均、普通とは何か。どれも、今、
改めて考えさせられることばかり」
事件は風化したかに見えた。が、16年前の悲劇を隠すため、日本と某大国が交わした
密約が暴露される。謎の「MW」はどこに? 物語はまるで、その存在の有無が物議を醸し
続ける沖縄返還に伴う日米間の「密約」を透かすようだ。ちなみに、「MW」の意味は諸説
あるが、その一つに「MAD WEAPON」(狂気的な兵器)に由来するという説もあるそうだ…。
「この映画以後、政治を勉強するとか、新聞をよく読むようになった訳ではない。が、政治や
法律、警察、メディアの発表したことがすべて正しく、事実であるわけではなく、作られたり、
操作されたりしていることがあると疑いを持つようになった」と語る。だからこそ、自分なりの
物の見方、考え方の大切さを改めて感じたという。
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>>2に続く)
画像:山田孝之
http://www.asahi.com/showbiz/movie/images/TKY200906250257.jpg 動画:
http://www.youtube.com/watch?v=BmBx0dOWzws 朝日新聞 2009年6月26日
http://www.asahi.com/showbiz/movie/TKY200906250248.html 映画『MW』公式サイト
http://mw.gyao.jp/