【文芸/書評】イスラエルの無かった世界…『ユダヤ警官同盟』[著]マイケル・シェイボン

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1 ◆Robo.gBH9M @ロボ-7c7cφ ★
■境界線を巡る文字
ミステリーなのか。SFなのか。純文学なのか。娯楽小説なのか。一つ言える。これは境界線の
物語である。文芸ジャンルの境界線を自由に行き来する本書は同時に、文化、言語、人種、
宗教というアイデンティティの境界線に閉じ込められ翻弄される者たちの悲劇でもある。

舞台となるのは、第二次大戦後、世界中に離散していたユダヤ人を受け入れるべくアラスカ州に
暫定的に設置されたシトカ特別区である。本書の世界にあっては、イスラエルは建国に失敗し
存在しない。しかも特別区のアメリカ本土への復帰の日は近づきつつあり、ユダヤ民族は
またもや流浪を強いられようとしている。

そのような不安と緊張に満ちたシトカで殺人事件が起きる。それも主人公マイヤー・ランツマン
警部が暮らす安ホテルで。ラスカーと名乗るチェス愛好家のヘロイン中毒者はなぜ
殺されたのか?
彼は何者なのか?
先住民のインディアンの血を引く巨漢の従弟であり同僚のべルコと、別れた妻で警視のビーナの
力を借りて、捜査を進めるマイヤー。読者諸賢のご想像どおり、様々な妨害、困難、危険が
待ち構え、背後には国家規模の陰謀が渦巻いている。

物語がやや拡散していると思えるほど書き込まれた細部も本書の魅力であるが、父と息子の
葛藤というきわめてユダヤ的な主題を扱うのも忘れない。絶滅収容所の生存者である父の
自殺の原因は自分が書いた手紙(カフカの父への手紙へのオマージュ?)だと信じていた
マイヤー。ユダヤの大義のために先住民の母を死なせたと父を恨むべルコ。ラスカーが
身を隠すことになったのも、シトカ特別区の宗教及び裏社会の権力者である父から
離れるためだったと言える。

ラスカーは、「その世代の正義の人」を求め運命を託すユダヤ民族の「救世主」信仰の
犠牲者であった。それが聖地エルサレムへの帰還という民族の執念と共に驚くべき結果を
本書にもたらすことになるだろう。

黒原敏行訳。◇Michael Chabon=1963年、アメリカ生まれ。『カヴァリエ&クレイの驚くべき冒険』でピュリツァー賞。
新潮文庫 上590円 下629円

評・小野正嗣(作家)
(2009年5月25日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20090525bk01.htm
2名無しさん@恐縮です:2009/05/26(火) 00:52:13 ID:nay41lQs0
伸びない
3名無しさん@恐縮です:2009/05/26(火) 00:58:49 ID:u1T9W/DK0
高い城の男を越える何かがあるのか?
たぶんあの手の話なんだろうと思ってしまうと、食指が動かない
4名無しさん@恐縮です:2009/05/26(火) 01:01:47 ID:sgWwXMfZ0
朝鮮が存在しない世界も書いて欲しいな
何百年も前に中国に完全併合されて
5名無しさん@恐縮です:2009/05/26(火) 01:08:29 ID:3mcQ5OVXO
イスラエルって言えば、女性兵士。
6名無しさん@恐縮です:2009/05/26(火) 03:35:54 ID:DQyNyLBNO
改変歴史世界を舞台にした「ただの」ミステリーなんか随分前からポツポツあるだろ
文春文庫だったか?ファーザーランドとか

この手の小説は設定を作っただけであとは読者が勝手に現実と照らし合わせてくれる、
とか目論んでる書き手の姿勢が安易に思える
読者や作者の位置を特権的に登場人物より高い安全地帯に置いて、なおかつそれを
気取らせないことで現実にある似た問題を考えた「気にさせる」だけのフェアさを欠いた
やり方だからだ

高い城の男やグランドミステリーは「気付き」を内部に導入するという、読者と同じ
視点にまで登場人物を持ち上げる創作としてハードルを上げた書き方にチャレンジして
結果を残しているからこそ評価されてんだろ

それがこの本に出来てるのか?出来てないのか?
そこまで読み取れるように書け、でなきゃこんな書評、映画CMによくある一般人の声
以上の意味なんざ持たねーよ
7名無しさん@恐縮です:2009/05/26(火) 06:37:29 ID:uThZuCus0
ブビンビ ボンボ ボンバボン!
8名無しさん@恐縮です:2009/05/28(木) 14:45:21 ID:33ebalkF0
140,491 101,943 117,727 126,412 87,124
60,055 64,124 54,941 43,669 50,625
9名無しさん@恐縮です:2009/05/30(土) 01:47:28 ID:E2oOR4Ds0
10名無しさん@恐縮です
ミステリーとしては弱いけど面白かった。