【サッカー】J2水戸、強化費8000万円チームの奮闘 貧乏クラブの好調を支えるもの

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1鳥φ ★
■強化費8000万円で5位 好調を維持する水戸

「ウチのチームなら2チーム作れるよ」
某サッカー専門誌で取り上げられた、選手年俸の特集の中で、1億6000万円の日本人Jリーガーを見つけた
水戸ホーリーホックのクラブ幹部が、笑いながらこうつぶやいた。水戸の今季の強化費は、およそ8000万円強。
今季でJリーグ参入10年目を迎えるものの、いまだにリーグ最低水準のままだ。A契約選手はわずか6人。
さらに財政的な問題でJクラブで唯一、シーズン前にキャンプを行わなかったという厳しい経営状態を強いられている。

そんな貧乏クラブが、今季は快進撃を続けている。第15節終了時点で、7勝3分4敗の5位。
昇格争いに加わる勢いを見せているのだ。ただ上位につけているだけではなく、その戦いぶりも特筆すべきものがある。
現在、リーグ3位タイの23得点を挙げていることからも分かるように、J2でも屈指の攻撃サッカーを繰り広げているのだ。
リーグ最低水準の強化費のチームが、娯楽性の高い攻撃サッカーで結果を出している。この事実にこそ、
大きな価値があると言えるだろう。

■就任2年目で開花した木山監督の「攻撃サッカー」

シーズン開幕前の水戸の評価は、決して高いものではなかった。昨季のチームの中心であったDF平松大志(FC東京)、
MF赤星貴文(浦和レッズ)、MFパク・チュホ(鹿島アントラーズ)らが移籍したことにより、チームの評価はむしろ低いもの
であった。そんな前評判を覆すように水戸は奮闘を見せている。

この好調を導いているのが、木山隆之監督だ。水戸を率いて2年目、37歳のJリーグ最年少監督が水戸に植え付けた
ものは「攻撃サッカー」。自身「点を取ることやゴールシーンをたくさん作れるサッカーが、いいサッカーだと思っている」
と語るように、ゴールに向かっていく意識を、選手たちに強く持たせることに時間を割いた。

(続く)
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/jleague/2009/text/200905110007-spnavi.html
http://ca.c.yimg.jp/sports/1242091503/sports.yimg.jp/text/images/spnavi/20090511/200905110007-spnavi_2009051100010_view.jpg
2鳥φ ★:2009/05/12(火) 17:40:23 ID:???0
>1の続き
それまでの水戸は守備的なイメージが強かったが、木山監督が就任すると一変、
攻撃的なチームへと生まれ変わることとなった。

しかし、その改革が最初からうまくいったとは言い難い。「ドラスティックに変えようとしすぎた」と指揮官が
振り返るように、急激な変化に選手たちは戸惑いを隠せず、昨シーズンは第1クール終了時点で最下位に沈み、
リーグワーストの28失点を喫するなど苦しいスタートとなった。それでも監督は「これでいいのかな?」
「本当に自分のやっていることは正しいのかな?」と常に自問自答しながらも、攻撃的なサッカーを貫くことで
チームは前進していった。第14節にパク・チュホが加入したこともあり、攻撃サッカーの精度は増していく。
第1クール14試合でわずか2勝だったチームが、第2クール以降の28試合では11勝を挙げ、
確かな手ごたえをつかんだままシーズンを終えることとなった。

今季の序盤戦での好調の陰には、去年からの攻撃サッカーの蓄積を抜きに語ることはできない。
「昨シーズン、継続できたことが一番大きいと思います。失敗したことも、良かったことも、全部がためになっているし、
チームの力になっている」と、木山監督も自信に満ちた表情で語っている。
(略)

■「水戸から羽ばたきたい」という思い

さらに、そうした選手たちの後押しとなっているのが「水戸で活躍すれば羽ばたける」という意識だ。
田中マルクス闘莉王(浦和)をはじめ、冨田大介(大宮アルディージャ)や小椋祥平(横浜F・マリノス)など
元々無名だった選手が水戸でのプレーを評価され、羽ばたいていった例が多い。そうした選手たちの後に続こうと、
選手たちは目を輝かせている。開幕前、ある選手はこう言っていた。「やっぱり選手として、もっと上に行きたい。
そのためにも水戸で結果を出さないといけない」。クラブは、財政的に選手を引き止めることができないだけに、
逆に選手たちの可能性は広がっているのだ。
3鳥φ ★:2009/05/12(火) 17:41:08 ID:???0
>2の続き
実際、毎試合のようにスタジアムには、J1クラブのスカウト陣が訪れ、選手たちのプレーに目を光らせている。
そんな目の前に広がる可能性をつかむためにも、水戸で結果を出そうと選手たちは躍起になっている。
一方で、クラブを取り巻くそうした状況は、出場機会を求める他クラブの若い選手たちが、水戸を選択する
理由にもなっている。今季は高崎寛之(浦和レッズ)、森村昂太(FC東京)、キム・テヨン(愛媛FC)といった、
所属チームでは出番に恵まれないながらも若く才能のある選手たちが「水戸から羽ばたきたい」という思いを胸に、
期限付き移籍でやってきた。彼らもまた、現在のチームの骨格を担っており、その胸に秘めた希望が
チームを支えているのである。

■エースの荒田が戦線離脱 それでも水戸の挑戦は続く

金はなくとも心は錦。理想を追い求める木山監督と、希望を胸にやってきた選手たちが融合したからこそ、
奏でられている攻撃サッカーのハーモニー。2つの思いが、今季の水戸の好調を支えている。

だが、すべてが順風満帆(まんぱん)というわけではない。第12節の鳥栖戦では、エースの荒田が骨折し、
3カ月の戦線離脱を余儀なくされるというアクシデントに見舞われてしまった。続く第13節のヴァンフォーレ甲府戦は、
カウンターサッカーに切り替え、何とか勝ち点1を獲得したものの、第14節の湘南ベルマーレ戦では通常の
攻撃サッカーで挑み、1−5の大敗。荒田不在の大きさを痛感することとなってしまった。

指揮官は、荒田不在の影響について「否めない」と認めた上で「今いるメンバーで攻撃的なサッカーをする
工夫をしていかないといけない」と肩を落としながら語った。「補強をしたくても資金がない」(木山監督)
チーム事情の中、今後も苦しい戦いが予想される。水戸の快進撃は、このまま“春の珍事”で終わってしまうのだろうか。

ただ、そうした状況でも、新たな選手の台頭を予感させる空気が、水戸には漂っている。荒田の影に隠れていた、
元日本代表FW吉原宏太が健在。吉原以外にも、若く才能のある選手がベンチに控えている。
強化費8000万円強の水戸の挑戦。本当の驚きを与えるのは、むしろこれからなのかもしれない。(文=佐藤拓也)