■ご公務への真摯な取り組み
天皇、皇后両陛下は10日、ご成婚50年を迎えられた。本書は、両陛下はじめ皇族方の
ご公務や宮中祭祀、国内外の旅先での人々との触れ合いを、約2年9か月にわたって
宮内庁担当記者がリポートしたもの。取材現場で掘り起こされたエピソードがふんだんに
盛り込まれ、素顔の皇室のご活動を伝えてくれる。
例えば平成19年10月、両陛下は福岡県西方沖地震で大きな被害を受けた玄界島の
被災者をお見舞いされた。帰りの渡船では、両陛下は揺れも気にせず、左右のデッキを
5度も行き来し、島民が見えなくなるまでずっと手を振られていた。そのとき天皇陛下が
携行されていたのが、かなり使い込まれた黒のビジネスかばん。ご自身で整理された
訪問先の資料や小型の望遠鏡、デジタルカメラなどが入っている。
陛下はそのマイかばんからカメラを取り出し、デッキで自ら皇后さまを撮影されたという。
「訪問を終えた両陛下の表情は晴れやかだった。一日も早いお見舞いを望まれていたから、
二年半越しの胸のつかえが取れてほっとされたのだろう。珍しいお二人の記念撮影に、
そんな心情がのぞいているように思えた」と記者はつづる。
「国民とともに」という姿勢を貫かれている両陛下のご公務への真摯な取り組みとご負担の
重さを、本書を通読してあらためて思う。ご成婚50年の節目の年にあたって、二人三脚で
歩んでこられたお二人をお祝いするとともに、過重なご公務を軽減し、将来を見すえた
安定的な皇位継承のことを考える機会にもしたい。
(中央公論新社・1680円)中央公論新社書籍第1部 宇和川準一
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