昨年秋、真打ち昇進と同時に名跡を継いだ落語の四代目三遊亭歌奴が、独演会
「歌奴定例会」を3月4日、お江戸日本橋亭(東京・日本橋)でスタートさせる。
「師匠が大きくした名跡を継いだんですから、寄席で10日間のトリをとらなければ。
そのために“商品”となるネタを増やしたい」
定例会は毎月1回、原則としてゲストは呼ばず落語を2席。うち1席はネタおろし
(初演)で、3月は古典落語「御神酒徳利(おみきどっくり)」を口演する。
毎月、トリにふさわしい大きなネタを新しく高座にかけるのは楽なことではない。
それでも行動を起こしたのは、真打ち昇進の前、自分の高座の感想を書いた
アンケートを読んだのがきっかけという。
「歌彦さん(当時の名前)の落語の登場人物はいい人ばかりで好きです−。お客さん
はほめ言葉として書いてくださったんでしょう。でもハッとしたんです。その当時やって
いたのは、『井戸の茶碗(ちゃわん)』などハッピーエンドの噺(はなし)ばかり。知らず
知らず自分のやりやすいネタばかりやっていたんですね」
定例会では、これまでの殻を破り、アクの強い人物が登場する噺を中心にする
予定だ。挑戦したいネタに、「明烏(あけがらす)」「大工調べ」「二番煎(せん)じ」など
を挙げた。中学のとき、全集のテープを聴き、プロを目指そうと決心した、あこがれの
古今亭志ん朝の得意演目でもある。
「これまではとてもできない、という気持ちが強かった。でも大きな名前を継いだ以上、
噺から逃げていては恥ずかしい」
寄席で高座に上がるとき、横にメクリ(名札)が出る。「メクリを見て客席に一瞬
“なぜこの人が歌奴?”という空気が流れるんです」
この名前で売れに売れた師匠、円歌の存在の大きさを思い知らされる瞬間だが、
もう怯(ひる)むことはない。新作落語で天下を取った師匠とは対照的に、181センチ
の長身にふさわしい骨太の古典落語で世に打って出ることが、何よりの恩返しになる。
ソース:産経新聞 2009.2.26 08:18
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/090226/tnr0902260822003-n1.htm 落語家 三遊亭歌奴 公式ウェブサイト『あら、歌奴だわ!』
http://www.utayakko.com/