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>>1の続き)
そもそもWBCは、世界一など決めるものではなく、アメリカのプロ野球機構
のプロモーション(宣伝)であり、将来への投資として始めたイベントなのである。
理由はハッキリしている。グローバル化の進みつつある世界で、野球は余りにも
ローカル・スポーツだからである。極言すれば、北米、中米と北東アジアでしか
通用しないスポーツだ。もうひとつのアメフトに至っては、北米だけと言っても
過言ではない。今や政治や経済の面でも、唯一のスーパーパワーの地位が
危うくなっているアメリカの、世界戦略の変化なのだ。
解り易い例をあげる。アメリカのメガ・スポーツ企業であるナイキの'80年代の
顔は、マイケル・ジョーダンであった。バスケットボールは世界中で行われている
スポーツで、エア・ジョーダンというシューズは世界的ベストセラーとなった。
ジョーダンが年齢とともに衰え出した時、ナイキが選んだ顔は、野球のバリー・ボンズ
でもなければ、NFLのジェリー・ライスでもなかった。彼らは巨大マーケットである
EUでは、ほとんど無名だったから。次は御存知のように、タイガー・ウッズであった。
ゴルフはアングロ・サクソンのスポーツだったが、バレステロスやソレンスタム、
ヴィジェイ・シンなどの出現で、今や世界中で行われるようになっている。
ゴルフは早くから手を打って来た。カナダ・カップ(現ワールド・カップ)の創設が
1953年だというから、WBCは半世紀以上遅れている。第5回の'57年に中村寅吉、
小野光一の日本チームは並みいる強豪を破って優勝、トラさんは個人のタイトル
も取った。これが日本における第一次ゴルフ・ブームの発火点になったのだから、
今やかなり軽視されがちのこのイベントも意義を果して来ていると思う。かつては
アメリカ対イギリスの対抗戦だった「ライダー・カップ」を対ヨーロッパと枠を拡げ、
更に対世界という「プレジデンツ・カップ」を新設するなど、欧米のゴルフ機構は、
宣伝と投資を計っている。
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>>3に続く)