「自分のことしか考えない選手」。「格好を気にして、泥臭いプレーをしない」。ゼネラルマネジャー
監督の交代後もなおア・リーグ最低勝率に低迷するマリナーズで、米報道の批判の矛先が
イチローに向けられ始めている。
チーム改革のためのトレード候補の一人、とまで主張する過激な記事もある。が、言葉の裏には
切実な願いも感じられる。「イチローよ、先頭に立ってくれ。声を出し、チームの危機を救ってくれよ」
名実ともにイチローはマリナーズの「顔」だ。攻守走の優れた技術に加え、勝利への意識の高さ。
チームリーダーとしての資質を兼ね備え、それを本人も自覚している。だが、試合中、気持ちを
表すことはない。笑いもしなければ、怒りもしない。試合後、誰とも口をきかずに球場を去ることも
少なくない。
イチローの心中は「オレは最高のプレーをする。だからみんなもついてこい」だろう。しかし
名指しこそ避けながら、ある主力投手は米メディアにこう不満を訴えた。
「自分さえ安打を打てばいいと思っている主力選手がいるんだよ」
一昨年のワールド・ベースボール・クラシックでの姿が忘れられない。元々は集団の中で
自分をさらけ出すタイプではないのに、言葉でチームを盛り上げ、闘志むき出しの
プレーで日本代表を世界一に導いた。
「マリナーズのイチロー」は、そのイメージから遠い。地元紙の記者は、こう表現する。
「孤独なスーパースター」。34歳はそんな声をどう受け止めるのか。
日米通算3千本安打まであと17本。
http://www.asahi.com/sports/bb/TKY200807090118.html