ボン郊外の日本食レストラン内に日の丸が掲げられている。そこには日本代表選手の
サインが書き込まれている。15日夜、オーストラリア戦敗戦のショックを払しょくし、
クロアチア戦に向けて気勢を上げるため、中田が提案し、選手だけの決起集会を行った。
その時、日の丸を見つけて「サインを書こう」という話になり、中田が先頭に立って
書き入れたものだ。ところが、サインの数は16人分しかない。当日、中村は発熱で
欠席したものの出席者は22人。つまり、その席にいた中の6人は書かなかった
ことになる。この事実がチーム内の溝を象徴していた。
今大会を集大成と位置づけた中田はチームワークも重視し、チームの輪にも
積極的に入ろうとしていた。練習前には仲の良いグループでウオームアップを行う。
中田はこれまで1人離れて体をほぐしていたが、W杯前には一時、小野らを
中心とする黄金世代と一緒にリフティングに興じたこともある。
「ヒデさんが1人でいるからチームを盛り上げるためにも誘った方がいいかな」
という後輩の誘いに応じ、中田が歩み寄ったのだ。
しかし、それも長続きはしなかった。控室でも読書をするように1人を好み、
練習前もストイックに集中を高める中田。楽しい雰囲気でボールと戯れる黄金世代。
他にもチーム内にはいくつか仲の良いグループもあった。ただ、中田の妥協を
許さぬ姿勢は1人、明らかに突出していた。
指揮官は大会を振り返って「日本の文化なのかもしれないが、選手同士が
言い合うことが必要。けんかをしろと言っているわけではないが、仲良しクラブ
ではいけない。厳しくやっていかないといけない」と語った。
21歳から欧州でプレーし続ける中田は自分にも他人にも決して妥協しない。
練習ではポジションを奪うため、試合では勝つために全力を尽くす。中田は自らも
全力疾走し「走らなければサッカーにならない」とチームメートにも全力でプレー
することを求めた。クロアチア戦ではジーコ監督に動きの悪い福西の交代を進言した。
勝つためには当然の行動だった。ただ、それを受け入れる土壌が日本にはまだなかった。
ソース・詳細は
http://www.sponichi.co.jp/soccer/special/2006_japan_wc/rensai_saisei/KFullNormal20060625143.html