【サッカー】ヒディンク様がみてる

「フーテ　モールヘン」
「フーテ　モールヘン」
さわやかな朝の挨拶が、澄みきった青空にこだまする。
ヒディンク様のお庭に集う電器屋工員たちが、今日も天使のような無垢な
笑顔で、背の高い門をくぐり抜けていく。
汚れを知らない心身を包むのは、赤と白の縞の制服。シャツの裾は
出さないように、ソックスは下げすぎないように、ゆっくり歩くのがここでのたしなみ。
もちろん、札束で顔を叩かれてチェルシーに移籍するなどといった、はしたない生徒など存在していようはずもない。

私立Philips Sport Vereniging Eindhoven。
千九百十三年創立のこの学校は、もとは電気製品工場の工員のためにつくられたという、
伝統あるカトリック系お嬢さま学校である。
アイントホーフェン。ノールトブラーバントの面影を未だに残している緑の多いこの地区で、工員に見守られ、
ジュニアユースからトップまでの一環教育がうけられる乙女の園。
時代が移り変わり、元号がが明治から三回も改まった平成の今日でさえ、
十八年通い続ければ温室育ちの純粋培養お嬢さまが箱入りで出荷される、
という仕組みが未だに残っている貴重な学園である。