【MLB】シアトル・マリナーズが長谷川滋利投手とポーキー・リース内野手を解雇
あれは2年前、俺がはじめて海外を旅行したときの話だ。
当時イチローファンだった俺は、バイトで溜めた金でシアトルにマリナーズの観戦にいった。
チームは試合に負けてしまったが、イチローは3安打2打点の大活躍。
俺は生で見るイチローの美技にすっかり興奮してしまい、夢のようなひと時はあっという間にすぎた。
試合が終わり、大満足して帰ろうと席を立った俺は、一瞬にして頭の中が真っ白になった。
足元に置いていたカバンがなくなっていた。確かにここにあったはずなのに。
パスポート、財布、帰りの航空チケット、ホテルの住所をメモした手帳、売店で買ったイチロー下敷き・・・
全てが入ったカバンだった。みるみるうちに顔から血の気が引いていく。
周りを見渡すが、マリナーズファンはチームの敗戦で殺気立っている。これはダメだ。
球場のスタッフならなんとかしてくれると思い、話かけようとしたが、俺は英語がからっきしできない。
「イチロー、イチロー、プリーズ、プリーズ」と俺は繰り返したが、スタッフは明らかに困惑している。
そうだ、上着の内ポケットに「携帯版:困ったときの英会話」が入っていた、と俺は思い出し、
取り出そうとポケットに手を入れたその瞬間、怒号が響いた
「Freeze(フリーズ)!!!」
近くに居た警備員が俺に銃を向けている。なぜだ。意味がわからない。
文字通り凍り付いた俺はパニックになってしまい、全身から汗が噴出し目からは涙が流れていた。
偶然そこへ通りかかったのが長谷川だった。
警備員を制止すると、俺のところへ来て事情を聞き、それを流暢な英語でスタッフに説明してくれた。
誤解が解けた俺を自宅に招いてくれた長谷川は、その晩の宿を手配してくれ、帰りのチケットまでとってくれた。
さらに長谷川は、その場でボールに日付とサインを書き込むと、「今日の記念に」とお土産に持たせてくれた。
そんな出来事があって以来、俺はすっかり長谷川の大ファンになってしまい、
ことあるごとにこの話を人に聞かせ、長谷川の素晴らしさを世に広めようと努めている。
あのサインボールは、ヤフオクで5000円で売れたが、そんな金額はどうだっていい。
あのボールには5000円以上の、いや、お金には代えられない価値があることを、俺は知っているから・・・。