脱サラ指揮者の山田敦さん、NYオペラでデビュー間近
脱サラして米国で音楽修業した日本人指揮者が、ニューヨークの歌劇場で
11月にデビューする。ニューヨーク・シティ・オペラの指揮者、山田敦さん(38)。
音楽大学出身でなく、無給の研修生から始めた「たたき上げ」だ。山田さんは
「ようやくスタートに立てた」と本番を待っている。
山田さんは、早稲田大のグリークラブで指揮を経験し、神奈川県の
藤沢市民オペラを育てた福永陽一郎氏に学んだ。卒業の際、「音楽で生きたい」と相談したが
福永さんは「苦労するだけ」と猛反対。外資系コンピューター会社の営業マンになった。
92年、転職して福永さんの振っていた藤沢男声合唱団で指揮を始めた。
この後、企業の協賛で開くチャリティー演奏会を企画。給料もつぎ込んで10回以上舞台に立った。
97年、「椿姫」の公演でニューヨーク・シティ・オペラの歌手を呼んだのが縁で、
同オペラの音楽監督ジョージ・マナハン氏に無給の研修生を願い出た。
休職して1年の研修のあと、同オペラの米国地方公演で指揮者の一人に加えてもらった。
1年後には会社を辞め、やがてマナハン氏の助手、さらに副指揮者になった。
でも、本番はおろかリハーサルでも振れない「控え」だった。
本拠地デビューを告げられたのは今春。かつてマナハン氏は「ニューヨークで振るのは、
みんながナイフを持つ場に素手で出かけるのと同じ。
失敗とみなされたら音楽家生命は終わる」と言ったという。
その師が「21日は頼んだぞ」と、さらりと言ってくれた。
本番は11月21日。19世紀にエンゲルベルト・フンパーディンクが作曲した
「ヘンゼルとグレーテル」を振る。
http://www.asahi.com/culture/update/1014/002.html