親愛なるベータテスターの諸君、オリジンの開発チームの諸君、
そして初の仮想世界ブリタニアの市民の諸君へ。
卿らが熟知している世界は、明日終末を迎える。
我々は、明日計画されているイベントの終了後、
パブリック・ベータテストを終了するつもりである。
卿らはまさに驚くべき人物であった。
今からでも将来の姿が目に浮かぶというものだ。
それ故にウルティマ・オンラインに対する考察は遠大であり続ける。
制作にかかった時間は2年以上……今までになく広大で、大規模で、
完成度の高い仮想世界を作り上げるために必要とされた時間である。
もう1年以上前の事になるが、卿らの多くが参加したプレアルファ・テスト時代から、
我々は大変ながらもここまでやってきた。時には早期の技術やUNIXコードが、
仮想世界にアクセスするために必要な2つ1組のサーバー上できちんと動作するのかどうか、
テストを行ったりもした。今やここ数ヶ月に及ぶ激務のおかげで、
我々は将来に確かな光条を見出したのである。
我々は3つの世界を用意する。3つの「shards of reality/現実の破片」は
アメリカ中に分散されたサーバー上で動作する。
どれもが先々のオンライン・ゲームにとっての聖書となるであろう。
どの「破片」も何千ものプレイヤーとその何倍もの生き物たちを許容し、
そしてそこには何万もの冒険が待ち構えている。
「でも、それって面白いの?」と卿らは尋ねるかもしれぬな。
うむ、勿論だとも! ここ数日、予は何時間もかけてブリタニアを旅した。
時には公然と卿らの仲間に加わったり、時には控えめに同行して観察を行った。
予が経験した事はじつに驚嘆すべきものであった。
勇敢な冒険者達が、危険極まりないダンジョンに危険を求めて
深く深く潜っていったのも証言できるし、いろいろな産業が冒険者のニーズに合わせて
発生しているのも見かけた。例えば鍛冶屋が、混雑した広場で商品をオークションにかけていたり、
鉱石を炉まで運ぶために鉱夫と護衛を雇ったり、
不可避の争い(白熱した競争が勃発するのはよくあることだ)を穏便に解決するために
吟遊詩人を雇ったりしていた。 勇猛な水夫達はあらたな島を求めて大海原へ乗り出したが、
他の船の積み荷を奪うために武器と魔法で武装した私略船に出会っただけに終わったのも目撃した。
神秘的で不可解な魔法の秘術をマスターした人物にも出会った
強力な魔術師が変身して街を歩くと人々は恐れをなした。
芸術家の集団がオーディションを開催しているのも見た。
泥だらけになりながらレスリングをしている側で群衆が賭けを行っているのも見た。
学者がムーンゲートを渡り歩き、その移動先のパターンを解明しようとしているのも見かけた。
未発見の魔法に関する調査も読んだ。それは他のプレイヤーに情報の提供も求めていた。
新聞も生まれていた。そして世界中から様々な本が集められた図書館も設立されていた。
予が思うに、人々はこの地での生活を構築したようだった。
家が建てられ、商売が生まれた。
ペットを飼い、その死に涙を捧げた。
友との出会い。新しい何かの始まり。
街の設立――真新しい街。この街は独自の自警団によって運営されている。
また、製作されたものの廃棄された家具でスラム街が生まれた。
卿の好む言葉で言い換えるといい、人々はここに「故郷」を作り出したのである。
彼らは新しい土地での愉快な生活を求め、そんな匂いのするニュー・フロンティアに定住し、
その街に不足しているものを提供したのだ。新しい事の探求、いまだ知られざる障害、
そして征服へのスリルが彼らを突き動かしたのである。
このゲーム――失礼、この「世界」は既に我々の想像をも絶するものである。
まだ始まったばかりであるにも関わらずだ。
誰もが製作者であり、同様にプレイヤーでもある。
そして我々は今新しい道を共に歩きはじめたばかりだ。
一体、共に何を作り出すのであろうか? 筋書き通りのウルティマか?
他のマルチプレイヤー・ゲームと同様、ただゴールを目指すだけのゲームか?
ただ中世風に味付けされた巨大なチャットゾーンか?
否、ウルティマ・オンラインはこれらを越えながら、これらを同時に併せ持つものである。
それこそがウルティマ、まだほとんど明らかにされていない勇壮な筋書きをもつゲームなのだ。
それはひとつの世界である。そしてそれは、我々が手に入れた第2の故郷なのだ。
生き、呼吸し、そして移りゆく世界。この世界は常に様々な経験をつませるであろう。
現実世界を模した仮想生態系・仮想経済は、卿らがその場におらずとも、プレイヤーの行動で変化する。
プレイヤーによって発見された「法の穴」は、開発を進めるに従って改善してきた。
そう、政府が経済や環境に法が適応しなくなる前に、断続的な審議を行うのと同じ事である。
卿らが経験することになるブリタニアの世界には様々なことがあり…
そして今にもそれ以上のことを経験しようとしているのである。
我々が行ってきた様々な更新の大部分は、パプリック・ベータテストに投入しなかった。
卿らはブリタニアの大地にに雨や雷が降り注ぐのを見たことがあるまい。
また、冬の日に優しく降り積もる雪もそうであろう。
違う世界にいる友人が、クリスタルと共鳴する事によってクリスタルを点滅させ、
卿らに連絡を取ってきた事もあるまい。
他にもまだ誰も見ていないものがある。妖術師の集団が未開の荒野に恐怖の塔を構えている事。
高い山をも飛び越える驚異のマジック・カーペット。
出会う人全てに称えられる「ドラゴンスレイヤー」の称号がを与えられ、卿の行動が広く知られて、
世界中の宿屋の掲示板に書き込まれること。ブリタニアで初の結婚式が行われるのも、
もはや遠い日の事ではないだろう。我々はこの、初めての出会いがブリタニアだったという夫婦から、
この世界のどこか(イリノイか、アラスカか、或いはドイツか…)で第一子が誕生したというニュースを受け取った。
これら、そしてその他たくさんのことがブリタニアに追加され、卿らに刺激と課題を与えるであろう。
我々はウルティマ・オンラインを「作りおわって」いない。「作りおわる」は終焉を匂わせる。
一体どうすればこの世界に幕を引く事など出来るだろうか。
其は時にしたがい成長す。
其は呼吸し、変わりゆく。
其は進化する。
其は地域社会なり。
さあきたまえ。開発チーム、ゲームマスター、ロードブラックソーン、そして予に合流したまえ。
この世界がどこへ向かうのか共に探しだそうではないか。RPGの将来はここにある。
我々の全てがもうひとつの故郷を見出せることを祈って……
ウルティマ・オンライン、ブリタニアの世界で我々と共に生きるのだ!
Letter from Lord British 9/22/1997