■RAGNAROK Online Ep1.5 Lv789 りゅう君
【神奈】「………」
ぽかっ。
【神奈】「なにゆえおぬしから先に殴ってくるかっ」
【柳也】「すまん。殺気を感じたんで手が動いてしまった」
【神奈】「こっ…」
その時、いきなり裏葉が叫んだ。
【裏葉】「…柳也さまっ!」
【柳也】「なんだよ、いきなり」
【裏葉】「南の社というのは、神社とはかぎらないのでは?」
【柳也】「ああ?」
【裏葉】「貴人を衆目から隠すには、襤褸(ぼろ)をかつがせましょう?」
【裏葉】「あるいは、袈裟(けさ)などを…」
あべし!
【柳也】「袈裟?」
神社ではなく寺院に隠すという意味か?
俺がわからずにいると、裏葉はするりと立ち上がった。
地面に放ったままの絵地図を広げなおし、俺の目前にかかげる。
【裏葉】「この辺りが神奈さまの社、こちらが都でございます」
【裏葉】「斑鳩(いかるが)を越えて、さらに南に下りますと…」
うわらば!
裏葉の指が、地図の一点を示した。
【裏葉】「ここに金剛がございます」
正しくはそれは、広大な山群そのものを表していた。
俺は二の句がつげなかった。
裏葉が辿り着いた答えが、それほど突拍子もないものだったからだ。
『意に従わない翼人は金剛に封じる』
「それは、とてもとても悲しい」
「冬の日の、幻想物語なんですよ」
と見えた俺は、既にカプラさんの虜なのかもしれない。
金剛とは何のことか?
悪鬼を封ずるほどの力を持つ『社』とはどこなのか?
【裏葉】「…ここが真言の霊山」
【裏葉】「高野山、金剛峰寺でございます」
その晩は、なかなか寝つけなかった。
何の気配もしないのに、心がざわついておさまらない。
やがて、妙な夢を見た。
神奈がひどく真剣な顔つきで、俺を覗きこんでいる。
背後に月がある。
濡れたような唇のあたりが、妙になまめかしい…
【神奈】「…柳也どの」
俺の名をささやいている。
【神奈】「柳也どの…柳也どのっ」
眼を開けると、本当に神奈の顔があった。
ほのかな月光の下でも、頬が上気しているのがわかった。
【柳也】「…なんだよ」
木の幹に寄りかかったまま、俺はそう訊いた。
【神奈】「柳也どのに、見てほしいものがあるのだ」
【神奈】「まだ、ちと恥ずかしいが…」
【神奈】「見てくれるか?」
ほっそりとした神奈の指が、着物の襟元に触れる。
そして、神奈は言った。
【神奈】「ではゆくぞっ」
【柳也】「………」
【柳也】「それは何だ?」
神奈がふところから取り出したものを指し、俺は訊いた。
【神奈】「お手玉だぞ」
【柳也】「…念のために訊くけどな。おまえはこれから何をするつもりだ?」
【神奈】「だからお手玉だと申しておるであろうが」
【神奈】「さっきな、三つきちんと舞ったのだぞ」
斑鳩か〜。
【柳也】「………」
【神奈】「その目は疑っておるな」
【神奈】「まことだぞ、まことに三つきれいに回せたのだっ…」
【柳也】「………」
【柳也】「……」
【柳也】「………」
【柳也】「おやすみ…」
【神奈】「寝るでないっ!」
【柳也】「寝かせろっ! こっちはさっき寝ついたばかりなんだ」
【神奈】「ええいっ、寝るでない寝るでない寝るでないっ!」
【神奈】「主が秘芸を見せてやると申しておるのだ。ひれ伏して拝見するのが臣下の務めというものであろっっ!」
【柳也】「無茶苦茶言うなああっっ!」
深夜の森に絶叫がこだまする。
まさに悪夢のようだった。
このままでは埒(らち)があかないと思ったのだろう。神奈が最終手段に出た。
【神奈】「では、余はおぬしに命ずるぞっ…」
【柳也】「わああっ。待て待てっ!」
俺はあわてて神奈の口をふさいだ。
例の不殺の誓いだけでも大変なことになっているのだ。
この上、妙な誓いを増やされてはたまらない。
【神奈】「ふむむ〜。ふむうむ〜むむむうむぐむう…」
じたばたじたばた。
あばれる神奈を押さえつけていると、何だか空しくなってきた。
眠気など、もうとっくに失せてしまっている。
【柳也】「…はいはい、わかったよ」
【柳也】「見てやるから、早めに済ませてくれ」
ぱっと手を離しながら、俺は言った。
神奈が俺をぎろりとにらみつける。
が、文句よりも先にお手玉を披露したいらしい。
【神奈】「よいか? よ〜く見ておるのだぞ」
言いながら、俺の前にぺしゃりと座りこむ。
神奈がお手玉を持って構えた。
ぴんと背筋を伸ばした姿勢は、なかなか堂に入っている。
【神奈】「それっ」
ひょい…ひょい…ひょ…。
【神奈】「…あう」
失敗した。
二つ目を投げるのが早すぎて、右手がついていかないのだ。
【神奈】「さっきはできたのだ」
【神奈】「もう一度するから、よく見ておれ」
【柳也】「ああ、何度でもやってくれ」
お手玉を拾い集め、もう一度かまえなおす。
【神奈】「…それっ」
お手玉は山なりに宙を舞い、右手へと渡る…
【神奈】「むっ…」
だが、左手が動かなかった。
【柳也】「今度は溜めすぎだな」
【神奈】「嘘ではないっ。さっきは本当にできたのだぞ!」
【柳也】「だれも嘘だなんて言ってないだろ」
【柳也】「落ち着けって。気を静めてやらないと、名人でもできないぞ」
【神奈】「うむ。わかった」
【神奈】「…すう…はあ」
大きく息を吸い、そして吐く。
【神奈】「ゆくぞ」
【柳也】「ああ」
【神奈】「…今度こそ」
つぶやいて、お手玉を宙に放った。
ひとつ、ふたつ、みっつ……。
お手玉は不器用ながらも、たしかに輪を描いていた。
【神奈】「ほら、できたであろっ!」
だが、喋ったとたんに輪が崩れた。
お手玉が神奈の指先をかすめ、地面にぽとりと落ちた。
【神奈】「…あ」
視線が宙を泳ぐ。
夢中でお手玉を拾い、もう一度投げようとする。
そこで、俺の視線に気づいた。
【神奈】「さっきはもっと回せたのだっ」
噛みつくように言う。
【柳也】「それだけできれば大したもんさ」
【神奈】「慰めなどいらぬ」
【柳也】「慰めで言ってるわけじゃない」
【柳也】「そこまでできるようになったのは、おまえが頑張ったからだろ」
言いながら、自然と笑みがこぼれてしまう。
神奈の様子がおかしかったからじゃない。
最初の時のことを思い出したからだ。
石つぶてかなにかのように、勢いよく宙を飛んだお手玉。
あれから毎日、神奈は手習いを繰り返していた。
ここまで上手になるとは考えてもいなかった。
【柳也】「あきらめが悪いってのは、すごいことだな」
【神奈】「誉められておるのか、けなされておるのか、わからぬ」
困ったようにつぶやく。
【柳也】「誉めてるんだって」
【柳也】「何にせよ、よくやったな。神奈」
頭にぽんと手を置いてやった。
やわらかな髪の感触が、たしかに伝わってくる。
【神奈】「………」
【神奈】「もっと、上手になりたいぞ」
【柳也】「毎日続ければ、きっと達人になれるさ」
【神奈】「大げさよの」
【柳也】「本当だって」
戸惑った神奈が、やがてぎこちなく微笑んだ。
【神奈】「…余のお手玉、また見てくれるか?」
【柳也】「ああ、俺でよければいつでも見てやるよ」
【柳也】「ただし、夜中はもう駄目だぞ。裏葉が心配するからな」
俺の言葉に、こくりと頷く。
【神奈】「わかった」
そろそろ1000?
【柳也】「じゃあな。おやすみ」
神奈の後ろ姿が、闇の奧に戻っていった。
ひとりになると、虫の音がいやに淋しく感じられた。
【柳也】「………」
まあいい、寝よう。
木の幹に背中を預け、太刀を抱えたまま目をつぶる。
ヽ(`Д´)ノウワァァン
1000
やわらかな眠気が波のように満ちてきた。
これならすぐに熟睡できそうだった。
【裏葉】「おはようございます、柳也さま」
【柳也】「…ぐをあっ!」
今度は裏葉の顔が真正面にあった。
【裏葉】「お二人で、楽しそうでございましたね〜」
地獄の底から響いてくるような、重苦しい声音で言う。
【裏葉】「裏葉はひとりで寂しゅうございました」
【柳也】「見てたんなら、来ればよかったのに」
【裏葉】「お呼びくださるのをずっと待っておりましたのに…」
【裏葉】「神奈さまのお手さばきを間近で拝見したかったのに〜」
よよよ、と泣き崩れる。
単にうらやましかっただけのようだった。
月光が、降りそそいでいた。
名もない森の隅々まで、淡い光が満ちていた。
俺は思いだしていた。
蒸し暑い社殿の夜。
神奈がつぶやいた言葉。
989 :
魚醤屋:03/01/31 01:37 ID:RywtRsCF
『逢いたい…』
すべてはあの夜からはじまった。
あれからちょうど、一月が過ぎようとしていた。
霊峰高野山。
金剛峰寺のふところに、俺たちはいた。
【神奈】「寺などどこにもないではないか」
『逢いたい…』
すべてはあの夜からはじまった。
あれからちょうど、一月が過ぎようとしていた。
霊峰高野山。
金剛峰寺のふところに、俺たちはいた。
【神奈】「寺などどこにもないではないか」
【神奈】「どこまで行っても見たような森ばかりだ」
【神奈】「景色がかわらず退屈だぞ」
【柳也】「…だまって歩け」
金剛峰寺とは、高野山にある幾百もの寺院をまとめて指す名だ。
高野山そのものも、同じように金剛峰寺と呼びならわす。
【柳也】「もう高野の領内に入っているはずだ」
とりあえず998をください
(´・ω・`)
警護の者がいても不思議はない。
【神奈】「さっきから同じところを回っている気がするぞ」
【柳也】「気のせいだ、だまって歩け」
【神奈】「…むぅ」
さっきから同じ会話を何度もしている。
俺も何かおかしいと思いはじめていた。
【柳也】「1000!」
山中で道に迷うのは、周りの景色に頼りすぎるためだ。
ここまで俺は、月を頼りに歩いてきた。
方角を間違えるはずはないのだ。
だが、何かが微妙におかしい。
夏の夜にはめずらしく、月は冴え渡っている。
満月にはほんの少し満たない月。
バウムクーヘン分割
しんがりを歩いていた裏葉が、不意に立ちどまった。
【柳也】「どうした、裏葉」
【裏葉】「柳也さま、これを」
見ると、太い杉の幹に麻縄が巻かれていた。
そこから等間隔に、白い紙が垂らされている。
【柳也】「注連縄(しめなわ)か」
と千尋!
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