■RAGNAROK ONLINE β Lv385 降り注ぐ陽光を…■

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731名も無き冒険者
そのゲームの始まりは、神に祝福されていた。
水の揺らめきや、風のざわめきすら表現された、光溢れるMAP様々な表情を見せる、可愛らしいキャラクター
コンシューマーとみまごう程の、派手で多彩なエフェクトその美しさ、煌びやかさに、僕たち全員が魅せられた。

先の見えない深いダンジョン迫り来る強敵を、皆で力を合わせて倒す快感
未開の地を自分たちの力で開拓していく喜びそこには、MMORPGの楽しさの全てが詰まっていた。
見たこともないレアアイテム誰も知らない未知のスキル一歩一歩、確実に強くなっていく充実感
僕たちはただ、ひたすらに求めた。もっと強く、もっと深くに、もっと、もっと・・・

だが、輝けるときは長くは続かなかった。
理不尽としか思えない経路障害 脆弱極まるサーバー募る苛々に拍車をかける、房プレイヤーの爆発的増加
強さを求めるが故の独占欲と、1番を求めるが故の職業論争
己の利益のみを追求するルーターに、全てを無に帰すべく現れたチーター
以前の助け合いの心は既に遠い過去となり、自分以外の全てを罵り、妬み、恨み、迫害する。

助け合うことが楽しかった。でも今は、誰の助けもいらない。
みんなで頑張るのが好きだった。でも今は、自分以外の他人は単なる邪魔者でしかない。
善意なんて信じない。奴らはみんな、悪意をもって俺を利用しているだけ。
だから俺も、誰も信じない。他人を利用し、数字を稼ぐ。それが俺の、このゲームでの生き方・・・

いつの頃から、変わってしまったのだろう?
いつの頃から、なくしてしまったのだろう?
いつの頃から僕たちは、ただ数字をあげることだけに、その全てを捧げて
しまったんだろう? その先にあるものは? その後に残るものは?
誰も言わない。何も答えない。ただひたすらに、数字だけを上げ続ける。

時は戻りはしないだろう。だから僕は懐かしむ。楽しかったあの頃を。夢中だったあの頃を。
いつか今に疲れたら、そのときはまた、皆で騒ごう。
あの日あの時あの場所で、出会うべくして出会った僕たちなのだから。
祭りはまだ終わっていない。僕たちはまだ、このゲームの中にいるのだから・・・