★アイオワカブスの田口壮167 遠い上を目指す★

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626名無しさん@実況は実況板で
2009年5月5日

ボビー(スケールズ・内野手)がコールアップされてシカゴに行きました。
マイナーで1000試合出場している選手です。
初めてのメジャー、そして、初めての先発。
テレビで試合を見つめる3Aの僕らも、緊張で身体を固くしてしまいました。

実は少し前に、ボビーはコールアップされていたのです。
しかし、上の都合が変わり、一試合も出ることなく、というより登録さえされずに翌日、マイナーに戻ってきたのでした。
その時の彼の寂しそうな顔。24時間前は天にも昇るような夢見心地の表情だったのに。

マイナーリーグの選手は、すべて「上」のニーズを満たすために存在します。
立場を考えるとか、気持ちを尊重してもらうとか、そんな扱いを望むことはできません。
来いと言われたら行くし、いらんと言われたら、立ち去るだけ。
どれだけ彼が興奮して、親、親戚友人らすべてに電話をかけまくり、そして、どれだけ落胆して帰ってきたか、僕にはその気持ちがとてもよく分かるのです。

しかし、今夜の「メジャーリーガー、ボビー・スケールズ」は、
呼び戻されることなく、テレビ画面の中に存在しました。
彼が放ったメジャー初ヒットに、遠くアイオワからも、歓声が響き渡りました。
ヒットを打った後、ふと空を見上げたボビーの表情がテレビの画面いっぱいなると、
「泣いてないか?泣いてる、泣いてるぜ!」
「ボビー、よかったなあ・・・ほんとによかったなあ・・・」
「泣いてるのか?泣きそうじゃないか?ハハハ!アイツ泣きそう!まったくもう・・・」

「いつかは俺もあそこに」
誰もがボビーに自分を重ねていました。
空を見上げて泣きそうにしている彼の姿をはやし立てたのは、
気がつけばもらい泣きしてしまいそうな自分をごまかすためだったに違いありません。

アイオワ州デモインにて 田口壮