2006年10月20日
タイガースのジム・リーランド監督は、トニー(カージナルス監督・トニー・ラルーサ)の30年来の友人。
去年まで5年間カージナルスのスカウトとして、キャンプ中には、スプリット・スカッド(チームを2つに分けて別の場所で試合を行う)の監督も勤めただけに、僕にとっては、第二の監督のようなものです。
人間的にも魅力あふれるジム。そのチームと戦えるなんて、本当に光栄なことです。
僕らは今朝5時半ごろデトロイトに到着し、昼まで爆睡。午後からコメリカ・パークで練習を行いました。
2年前、寒くて薄暗くて重々しかったボストンでのワールドシリーズに比べると、同じくらい寒いのに、すかっと明るいムードがチーム全体にみなぎっていて、なんだか楽しいのです。
そんな中で、トニーが、いつにも増して真剣な顔で僕に近づいてきました。
「ソウ・・・昨夜俺の携帯に、ニッポンの首相から電話がかかってきた」
「えっ?何でですか」
「タグチを先発で使わないと、カミカゼを俺に突っ込ませるぞ、だって」
それだけ言うと、トニーはふうっとため息をつき、スタスタその場から去っていきました。
明日から始まるのは、厳しく張り詰めた戦い。だからたぶん今日だけが、祭りの前夜のような気分に浸れる最後の時間なのです。
僕はトニーのジョークに大笑いしながら、冷静沈着な監督だって、選手と同じくらいわくわくと高揚した気持ちでいるんやなあ、と、何だかとても嬉しくなってしまったのでした。
ミシガン州デトロイトにて 田口壮