当然の事ながら、野球が普及してない国には野球場もほとんど存在しない
草野球ならともかく、国際ルールで野球をするなら野球場を作らねばならない
既存の陸上競技場は野球に転用できず、扇形の野球専用球技場が必要になるのだ
しかしながら特殊な形状ゆえに野球以外での運用に困り、建設費の回収すら難しい
東京ドーム1個分ほどの土地を用意し、大金を投入して巨大な野球場を作ったあげく、
元が取れない赤字経営をする事は、野球人気のない国の常識では考えられないのだ
貧しい国では道具にお金をかけられず、貧しくない国では野球をする場所が確保できない
道具も場所もなければ競技人口が増えず、各国スポーツ界での野球の地位も驚くほど低い
日本国内スポーツ界における野球の発言力や影響力の大きさがそのまま逆転し、
世界には他のスポーツに比べて野球の方が肩身の狭い状況に置かれる国は少なくない
野球除外の流れに強く反発する国が少なかったのも各国野球界の立場の弱さを表している
オリンピックを誘致し、新たに野球場を作る事はホスト国にとっては大きな負担となる
また、競技の数が増えて運営面での問題が増加したオリンピックはスリム化を目指していた
そして野球は世界での人気とホスト国の負担のバランスの悪さが目立っていたのだ
無駄に球場を作らなくて済むという事はコンパクトな運営を目指す上で大きなメリットとなる
野球と同時にソフトボールがセットで除外になったのも球場の問題と言えるだろう
ちなみに野球除外が投票で可決された時、落胆するアメリカ人スタッフを慰めようと
国際オリンピック委員のワイル・ドピッチ委員(クロアチア)は次の言葉を贈った
「陸上競技場で育ったオリンピックには
アメリカの大地で育ったベースボールが収まりきらなかったのだよ」
この事から無駄にデカくて損してる大きさをアメリカンサイズと呼ぶようになった
民明書房刊
『オリンピックの歴史』より