大学野球、伝統の両雄――東京六大学、東都大学(なぜなに)
2005/05/25
日本経済新聞 夕刊, 19ページ
東京六大学、早慶戦ブランドで集客
東都大学、入れ替え戦、競争激しく
東京都心にある神宮球場はプロ野球、ヤクルトの本拠地だが、春と秋の昼間は土日に
東京六大学野球、平日は東都大学野球のリーグ戦を開催している。日本の大学野球を代
表する両リーグを比較してみた。
歴史をひもとくと、東京六大学は一九二五年(大正14年)秋から慶大、早大、明
大、法大、立大、東大の固定メンバー6校でリーグ戦を戦っている。一方、一九三一年
(昭和6年)春に専大、東農大、日大、中大、国学院大の5校でリーグ戦を始めた東都
は徐々に加盟校を増やし、現在は4部制で21校が加盟(4部のみ3校)している。
両リーグの最大の違いは、入れ替え戦の有無。6校で固定した東京六大学は入れ替え
がないが、東都はシーズン終了後、1―2部、2―3部、3―4部間で上位リーグ最下
位校と下位リーグ優勝校が3回戦制(2戦先勝方式)の入れ替え戦を行い、勝者が次季
上位リーグに所属する。
東京六大学は投手が打席に立つが、東都はDH(指名打者)制を採用している。東都
の白鳥正志事務局長は「(DH制によって)選手がより多く試合に出場できて社会人野
球などに進む可能性が増えた。国際大会でも採用されているので」と理由を説明する。
全国の大学野球リーグでは東京六大学と関西学生リーグを除いてDH制を採り、大学野
球の全日本選手権もDH制で行われる。
プロ野球では巨人中心に人気のセ・リーグと、オールスターゲームで勝ち越していた
パ・リーグの特徴から、かつて「人気のセ、実力のパ」という言葉があった。
それになぞらえ「人気の六大学、実力の東都」という声も聞かれる。早慶のブランド
校を抱え、週末開催で観客を動員できる東京六大学と、負けず劣らず多数の人材をプロ
球界に送り込んでいる東都とはセ、パの関係に似ていなくもない。
この言葉を裏付けたのが昨夏、北海道勢として甲子園で初優勝した駒大苫小牧高の
佐々木孝介主将(現駒大)の発言だ。駒大進学にあたって「六大学にあこがれたが、入
れ替え戦のある厳しい東都でやりたい」。
昨年、プロ野球は1リーグ制移行が取りざたされ、今まさに交流戦たけなわ。東京六
大学と東都間でも終戦直後、東都側から「東都勢を加え2部制を」ともちかけたことが
ある。この“1リーグ制”は実現せず、両リーグ選抜による「交流戦」だけ一九七六、
九六年の2度行われ、1勝1敗の記録が残っている。
今季の東都(1部)春季は、亜大が出場停止のため青学大、東洋大、日大、駒大、中
大の5校で争われ、青学大が優勝。2部優勝の立正大が秋季は九八年秋以来となる1部
復帰を果たす。
東京六大学は、53季ぶりに勝ち点4同士で対戦する二十八日からの早慶戦で、勝ち
点を取った方が優勝となる。神宮球場にプロを上回る問い合わせがあるなど前人気は
上々である。
(スポーツライター 神戸達夫)