ロボット物SS総合スレ 72号機

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1創る名無しに見る名無し
ロボット物のアニメ・漫画・小説・ゲームの二次創作から、
オリジナルのロボット物一次創作まで 何 で も どうぞ。

・当機はSSに限らず、イラストや立体物も受け付けています。
・投下の後、しばらく雑談は控えてください。
・ガンダムやマクロス等の有名作は、該当する専用SSスレが立った場合はそちらへ。もしなければ全部ここでやればいいんじゃあないでしょうか。
・支援のご利用は計画的に。詳しくは投下の際の豆知識を参照してください。 →http://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/884.html
・次スレは>>950が立てて下さい。次スレが立つまでは減速を。
・また、容量が470KBを超えた場合は要相談。
・立てられない場合は報告及び相談を。スレ立ての際は必ず宣言を行ってください。でないと、黒歴史が来るぞぉぉぉぉ!!
・とある方が言っておられました。「話題が気に入らないなら、四の五の言わずネタを振れ」雑談のネタが気に入らない時は、新しくネタを振りましょう。
・スルー検定10級実施中です。荒らしは華麗スルーしてください。それが紳士の条件です。
・着実に、一歩ずつ

まとめwiki
http://www13.atwiki.jp/sousakurobo/

ロボット作品投下用アップローダー
http://ux.getuploader.com/sousakurobo/

ロボット作品投下用アップローダー2番艦
http://ux.getuploader.com/sousakurobo2nd/

お絵かき掲示板
http://www2.atpaint.jp/sousakurobo/

ロボット物SS総合スレin避難所29号機
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1354969085/

前スレ
ロボット物SS総合スレ 71号機
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1346767371/l50

関連スレ
だから俺達に新作ガンダムを作らせろよ7(ガンダムSS総合スレ)
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1322491231/
勇者シリーズSS総合スレ Part4
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1282636520/
2創る名無しに見る名無し:2013/01/29(火) 22:17:17.31 ID:9k52Mipb
スレ発祥連載作品紹介!(※紹介文には多少の誇張表現も含まれています)

【荒野に生きる(仮) ◆8XPVCvJbvQ】
再生暦164年、コンクリートの荒野が広がる未来――。
獣の耳と尻尾を持つ「ヒューマニマル」の少女達はひたすらに戦う。対鋼獣用人型兵器・ヴァドルを駆って――!!
怪獣VS獣耳っ娘!? 話題騒然のデスマッチ!!

【CR ―Code Revegeon― 古時計屋 ◆klsLRI0upQ】
これは、悪夢に立ち向かうちっぽけなひとりの人間と、「怨嗟の魔王」と呼ばれた機神の物語。
アンノウンの襲撃で家族を失った潤也は、漆黒の鋼機・リベジオンの玉座に身を沈める。反逆と復讐を遂げるために……!
人類震撼! 暗黒のレコードオブウォー!

【瞬転のスプリガン ◆46YdzwwxxU】
スーパーカーから伸びる鋼の腕――神速の挙動と極微の制動を可能とする、エーテル圧式打撃マニピュレータがその正体!
異世界の侵略者・魔族により廃墟と化した街角で、幼いことねは機械仕掛けの拳法家を目撃した。
変形ロボットならではの技が炸裂する、極超音速機動武闘伝!

【パラベラム! ◆1m8GVnU0JM】
Si Vis Pacem, Para Bellum――汝、平和を欲さば、戦への備えをせよ。
遥か昔に文明がリセットされた世界。黒い機械人形(オートマタ)・リヒターと、彼のマスターとなった少女・遥(19)の神子としての生活が始まった!
軽妙な会話と、動きを魅せるアクションに定評あり? なんだかおかしなキャラ達が紡ぐ、ドタバタ日常コメディ!
「……ねぇリヒター、こんな感じでいいかな?」
<イエス・マイマスター>

【最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ ◆46YdzwwxxU】
ドゥビドゥビッドゥ! ドゥビドゥビッドゥ! ドゥビドゥビドゥビドゥビッドゥドゥビドゥビ!
今日も今日とてロボヶ丘市で激突するのは、変な正義と変な悪!
ハイテンション! 歌うスーパーロボットバトルアクション!

【少女機甲録(仮) ◆kNPkZ2h.ro】
80年ほど前に地球上に出現し、地球上全ての生物を滅ぼさんとする謎の生命体群「ワーム」
異形の敵に立ち向かうは、全長4mのパワードスーツ兵器「機士」
陸上自衛軍第28連隊 第4中隊の少女達は、血と硝煙の匂い漂う世界を生きる!

【鋼鐵の特攻兵―Gun Strike Girles― ◆6LGb3BALUde1】
近未来。人類はBUGと呼ばれる巨大生物との戦争を続けていた。
主人公・御前静を始めとした世界各国から集まった個性的な少女達は、鋼鐵の棺に身を沈めてBUGとの熾烈な戦いに身を投じていく。
戦争という極限状態の中で、少女達は傷付きながらも成長し、互いに支え合い日々を懸命に生き抜く。
やがて少女達の間に芽生えるのは、友情かそれとも――
ハードボイルドミリタリーの皮を被った百合ん百合んな物語。
欝展開はないよ!

【武神鋼臨タケミカヅチ ◆YHSi90Gnr2】
其れは鋼の人型。其れは『神』の力を降ろす為の人造の依代。
剣神はその手に太刀を担い、在らざる戦場(いくさば)を駆け抜ける。
その刃は未来を切り開けるか―

【鋼殻牙龍ドラグリヲ ◆Uu8AeR.Xso】
荒廃した世界を跋扈する、『害獣』と呼ばれる異形の災厄。
人には太刀打ち出来ぬその存在を屠る、暴君竜の如き異形の鋼。その名は「ドラグリヲ」
アルビノの少年「真継雪兎」とゴスロリ姿のナノマシン少女「カルマ」の紡ぐ物語に刮目せよ!
3創る名無しに見る名無し:2013/01/29(火) 22:18:12.43 ID:9k52Mipb
【守護機兵Xガードナー シクス ◆wuZfOwaq7U】
CC(コスモセンチュリー)115年。独立を宣言する火星と地球の、人類初の惑星間戦争が行われていた。
少年シュート・ダリューグは独立機動防衛部隊"Xガードナー"に参加するも自分の存在価値に惑う。
戦いを止められるのは薙払う剣か、それとも守護する盾か… あなたの護りたいモノはなんですか?

【秘神幻装ソルディアン ◆tEulldVhj8h6】
因果の日は来たり――世界は異形の怪物アバドンに覆われた。
混迷を極める世界に機械仕掛けの神々は覚醒し、かくして今まさに黙示録が再現される。
測り知れざる過去より続く闘いの行方は、如何に。

【廻るセカイ-Die andere Zukunft- ◆qwqSiWgzPU】
「もう少しで世界が滅びる」世界中にそんな噂が飛び交った。
そして噂の通り、国が、都市が、次々と地図から名前を消していく。人類は滅びを待つだけだった
舞台は架空の都市“揺籃” 特別な一人の少女と、普通の少年の出会いから、それは紡がれていく
「抗う術があるのに、やらないなんて選択肢、オレにはない」
……それは、似通っているようで……違う“セカイ”

【ビューティフル・ワールド the gun with the knight and the rabbit TロG ◆n41r8f8dTs】
未来へと向かっていた隆昭達は、黄金のアストライル・ギアによって次元の狭間へと飲み込まれ、別世界に辿り着く。
隆昭一行、やおよろず、レギアス、そして、神威。様々な人々の思惑がシャッフルされた物語の執着点は、果たして――――
パラべラム×ヴィルティック・シャッフルという二作品による、全く違った世界観が交じ合った物語の行く末を見届けよ。

この物語に、勝者はいない。

【『正義の執行者』 ◆8XPVCvJbvQ】
世間を震撼させたリベンジャーレディの事件から数ヵ月後。
ネットである言葉が頻繁に使用されるようになっていた。
「正義の名の下に」 その言葉と共に、人型兵器による犯罪者を処罰していく所属不明の赤い機体。
奇しくも所有する機体のフォルムが似ていたが為に、姉小路は事件に巻き込まれてしまう。

【eXar-Xen――セカイの果てより来るモノ―― ◆5b.OeHcAI2】
ガラクタに覆われた世界の片隅で、少年と少女は一冊の書によって結ばれた。
その出会いは白く、黒く塗り潰された過去を、未来を、それ以外を呼び覚ます。
迫り来るこの世ならざる怪異、有り得ざる可能性、そしてセカイの果てより来るモノ……

――総てを越え、彼らは何を見るのだろう?
4創る名無しに見る名無し:2013/01/29(火) 22:19:21.05 ID:9k52Mipb
【Robochemist! ◆a5iBSiEsUFpN】
物語は、新たな世代へ――
第一作の主人公、ユトとメリッサの娘が織り成す、もう一つの『Diver's shell』!!
DS伝統のポニテを受け継ぐ少女、アルメリアと、愉快な仲間達による色鮮やかな青春グラフィティ!
とくと見よ! 激突する鋼の騎士の勇姿を!
三つ編みもあるよ!

【地球防衛戦線ダイガスト 秋水 ◆3C9TspRFnQ】
異星文明、銀河列強諸国による限定戦争と言う名の侵略戦争の篝火が地球を焦がす。
帝政ツルギスタン軍を前に敗退を繰り返す自衛隊。日本が絶望に暮れたその時――
大江戸先進科学研究所のスーパーロボット、ダイガストが此処に立ち上がる!

――この国を好きではいけないのですか?

【Villetick Jumble 硬質 ◆pOWm4b0gBI】
新たなヴィルティックワールドに鈴木隆昭が帰って来た!
今度は、あの草川大輔も大騒動の渦中と、ヴィルティックに乗っかって大暴れ!
あの人や、この人に、その人! 様々な平行世界から次から次に現れるゲスト達!
まぜこぜカオスな新世界の未来を「カード」で切り開け!

【鮮血のTank soldier◆A0fDXEX2Bs 】
荒くれ共達が血とオイルとプライドを垂れ流す世界で――――――――その物語は幕を開ける。
ニヒルでクールな赤毛の少年、ひろしと無邪気な三つ編みロリっ子ロンメル。
彼と彼女と愛機タンクマキナ。二人と一機が先行き粗筋雲行き不明の荒地を駆け抜ける!
小気味の良いギャグと予想の付かない脱線の先に、一体どんな未来が待ちかえるのか……。
何処に着地するか分からない、ハチャメチャロボット活劇から目を離すな!

【ヒトの塔◆luBen/Wqmc】
一体ここは何処なのか――――――――ここではないどこかに招かれてしまった不憫な青年、ビル。
口の悪いウサギ様と掴み所の無い青年、ロビンを始めとした不思議で独特な登場人物達と霧の森。
不思議な人とロボットが織り成す世界の中で、ビルは一体何を見つけ、何を掴むのか。
謎と不思議に満ちた、まるで童話の様なロボットストーリーをご堪能あれ。

【Spartoi◆mqimtco4oQ】
 高校全体が静まりかえった試験期間中の放課後、尾崎晴道は謎の少女・来栖貴子にゲーム対戦を挑まれる。
『神速機動ラゲリオン』。この精緻な戦術性が売りのロボット格闘ゲームでネットにその名を轟かせる晴道は、しかし周囲には秘密にしていたはずのそのHNを言い当てられて動揺する。
 美しくもどこか異質な雰囲気を備えた貴子に誘われるまま、携帯ゲーム機GPGでの対戦に臨む晴道。
 少女の正体、そして目的は何なのか?
 ゲーマー少年尾崎晴道の、新たな『ゲーム』が幕を開ける。

【ロボスレ学園】
ロボット物SS総合スレ、10スレ目突破記念作品!
このスレのキャラクター達が織り成すどこまでもフリーダムな青春(?)グラフィティ! 参加者募集中!

【スーパーロボスレ大戦】
自然発生したクロスオーバー企画。
あの世界とあの世界で刺激的にヤろうぜ!
5創る名無しに見る名無し:2013/01/29(火) 22:19:58.17 ID:9k52Mipb
http://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/265.html

・読者側は、積極的にエールや感想を送ってあげよう! 亀レスでも大感激! 作者はいつまでだって待ってるもんだぞ!
・作者側は、取り敢えずは作品で語れ! 自分のペースでも完結まで誠実に奮励努力せよ!
・半年以上生存報告がないと、作品がテンプレから削られてしまうぞ! 要注意だ!
・テンプレに載る作品は1人1つまで! 上記の他にも作品は沢山あるので、こちらもチェックだ!  http://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/12.html
・我らスレ住人は、熱意に溢れた新作をいつも待ち望んでいる!次スレの紹介文には、キミのロボットも追加させてみないか!

※紹介文未定作品一覧※
・【機甲闘神Gドラスター ◆uW6wAi1FeE】 ・【英雄騎兵ミッドナイト】 ・【ブリキの騎士 ◆WTKW7E8Ucg】
・【機動修羅バイラム】 ・【都道府県対抗機動兵器決選】 ・【てのひらをたいように ◆1m8GVnU0JM】 ・【パラベラム!〜開拓者達〜 ◆RS4AXEvHJM】
・【壊れた世界の直し方 ◆H48yyfsLb6】【Diver's shell another 『primal Diver's』◆wHsYL8cZCc】
・【TONTO◆LlCp3gHAjlvd】・【グラインドハウス ◆tH6WzPVkAc】 ・【装甲騎兵ボトムズ 幻聴編】【銀の月が見る夢 ◆CC6hDu/XuQ】

紹介文はまだまだ募集中! 作者さんが、自身で考えちゃってもいいのよ!


「自作に関する絵を描いてもいい」という了承を頂いている作者さん一同はこちら↓

・TロG ◆n41r8f8dTs氏 (tueun、ROST GORL、ヴィルテック・シャッフル 他)
・シクス ◆wuZfOwaq7U氏 (守護機兵Xガードナー 他)
・PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM氏 (パラベラム! 他)
・古時計屋 ◆klsLRI0upQ氏 (CR ―Code Revegeon―、ザ・シスターズ、シャドウミラージュ、電瞬月下)
・◆YHSi90Gnr2氏 (武神鋼臨タケミカヅチ、パラベラム! ―運び屋アルフの何ということもない一日―)
・秘神 ◆tEulldVhj8h6氏 (秘神幻装ソルディアン)
・◆Uu8AeR.Xso氏 (鋼殻牙龍ドラグリヲ)
・DS世界観の人 ◆a5iBSiEsUFpN氏 (Diver's shellシリーズ、Robochemist! 他)
・GEARSの中身 ◆B21/XLSjhE氏 (GEARS、GEARS外伝 Berserker)
・◆46YdzwwxxU氏 (瞬転のスプリガン、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ 他)
・|・) ◆5b.OeHcAI2氏 (eXar-Xen――セカイの果てより来るモノ――)
・◆uW6wAi1FeE氏 (機甲闘神Gドラスター)
・◆wHsYL8cZCc氏 (カインドマシーン 他)
・バイラム氏 (機動修羅バイラム)
>>882 ◆MVh6W.SAZtbu氏 (あるツッコミ体質の男の受難、でくのぼうと聖人 他)
・硬質 ◆BfO3GzMb/w(ヒューマン・バトロイド)

ここに名前の無い作者さんの作品を絵にしたい場合は、直接ご本人にお伺いを立ててみたらいかがかと。



―以上がテンプレとなります―
6CR2 結その2 3/8:2013/01/29(火) 22:21:40.65 ID:zA2043AS
今までUHに殺された様々な無念な魂をその身をもって、その死の瞬間を体験している。
だからこそ、UHが行なっている事の意味を理解している。
だからこそ、そのあとに続ける言葉は無かった。
黒峰咲を救うまでの時間、お前らは死ね等ということも出来ない。
黙りこむ潤也を見てアテルラナはくすりと笑う。

「すまない。利己的に動く君からしてみればどうでもいい話だったね。けれど兄弟。そんな中途半端な覚悟で彼女の目の前にたって、彼女と戦って勝てると思っているのかい?
 君は理解していないんだろうけども、今や至宝を持つメタトロニウスと君のリベジオンじゃ機体性能差は歴然だ。
 ミジンコがティラノザウルスに挑むようなものさ、まだミジンコ程の可能性があるだけマシなんだけどね。
 けれど君のその覚悟ではそのミジンコ程の可能性だって生まれやしない。いいかい、0だよ0。無は何も産まない。
 覚悟も決意もない君があのメタトロニウスに挑んで勝てる可能性なんて皆無だ。」

 アテルラナは皮肉めいた物言いを撫でるような声で続ける。

「兄弟、黒峰咲を止めるという事は黒峰咲を殺すという事と同義だ。それ以外の方法で彼女を止められると思わない方がいい。だって彼女は信じているんだろう?
 世界にいる人全てを蘇生する事が出来るって・・・死のない世界を作る事が出来るって、それはもう狂気の沙汰だけど、それを信じきってしまっているんだろう?
 そんな人間の思考を変えるというのがそもそもとして無理があるんだよ。黒峰咲と戦い殺す決意をするか?
 もしくは全てを忘れて逃げ出すか?君にはそのふたつの選択肢しかない。そして選択するのは今さ・・・これでも待ってやってたんだぜ?兄弟。
 君がこの事実を少しでも受け止められるようになるまでさ。」

潤也は心が張り裂けるような感覚と共に酷い吐き気を催す。
何故、こんな事になっているのだろう?
いきなり家族が全て死んだという事実を突きつけられ、それを行った者への復讐の一念を糧にこれまでの戦いを戦い抜いてきた。
しかし、今、この目の前にいる男から告げられた事実は潤也のこれまでの全てを否定するようなものだ。
両親を殺したのは暴走したメタトロニウスと黒峰咲であり、あれだけの災害を起こした原因を作ったのは自身の両親だという。
そして、黒峰咲は今や妄想に取り憑かれて、世界を恐怖と混乱に陥れるものと化してしまっている。
そして・・・それを止める事が出来るのは潤也とあのリベジオンだけだとこの男は言うのだ。
つまりは黒峰潤也にこの世界を守る為にUHと戦い黒峰咲を殺す道を取るか、全てを忘れて全てを見捨てて去る道を取るかという選択を迫っている。

「さあ、選び給え・・・兄弟。どちらを選んでも僕は君を祝福しよう。君を讃えよう、全力で支援しよう。
 君が戦うのならば、僕は持てる限りの財力と情報を君に捧げよう。君がその戦いを終えるまで君の支援者であり続けよう。
 君がもし全てを忘れて逃げ出すというのならば、その逃げ道を用意しよう。核シェルターだって用意するよ。
 そこに君は後悔に苛まれながらずっと閉じこもるんだ。ふふ、どっちもイイなぁ・・・兄弟、好きな方を選び給えよ。」
「俺は・・・。」

既にどちらを選ぶかは決まっている。
アテルラナは選択出来ると言っているが潤也からしてみれば選択の余地はない。
けれど、果たして、それが出来るのだろうか?
予感がある。
無理だ、不可能だ。
黒峰潤也は誰かのために黒峰咲を殺す事は出来ない。
けれど――――――だからといって、虐殺を行うことを見過ごす事は出来るのだろうか?
思い出す。
ほんの少し前に怨念に取り込まれた自分を救い出してくれた少女の優しい怨念を・・・。
このまま全てを捨てて逃げれば、また彼女のような人間を作ってしまう。
それを見過ごす事が出来るだろうか?
ああ、不可能だ。
黒峰潤也という人間はそこまで人間が出来てはいない。

「戦う。」

潤也は静かに、それでいて苦しそうにその言葉を吐き出す。
アテルラナはその言葉に少し驚いたような顔をした後、

「出来るのかい?」

と問い返した。
7CR2 結その2 4/8:2013/01/29(火) 22:22:55.26 ID:zA2043AS
「出来ないさ、俺が誰かの為に戦うなんて事は・・・そんな言葉で上辺を取り繕うだけじゃ、俺はリベジオンの・・・DSGCシステムの怨念に精神を食われてしまう。
 そして、そんな理由じゃきっと俺はあいつを・・・黒峰咲を殺すことなんて出来ない。」

DSGCシステムの怨念の激流の中で自己を保つには並ならぬ覚悟と決意が必要だ。
しかし、それを持つにはそれをするにたる理由が必要だ。 
でなければ、すぐにあの怨念の激流は潤也一人の精神など簡単に飲み干してしまうだろう。
誰かの為に戦うなどという信念では、怨念たちの願いすら拾いあげその傀儡になってしまうだろう。
だからこそ、他の理由が必要だ。盲信するにたる信念が必要だ。

「だから――――」

ならば、それを可能にする理由とは何だ?

「俺は、俺の為に戦う・・・そう誰かを助けようとかそういう事じゃない・・・黒峰咲は俺の両親を殺した。
 両親の仇だ。それが憎い。その上で両親の死を笑うあの女が憎い。あの女が許せないから、俺はあの女を殺す。
 それを悪びれもなく正当化して殺し続けるあの女が憎い!だから俺は戦う!!!」
「君は・・・本気でそれを言っているのかい?」

アテルラナは少しの考えるようにした後、心底驚いたようにして問いかける。
潤也は一呼吸を置いたあと、

「当然だ。」

と辺りも凍るような冷たい声でそう言った。
少しの静寂が辺りを支配した後、くつくつとアテルラナが笑い出す。
それはこれまでの人を嘲るような笑い声ではなく心底おかしくて笑いを堪えきれなくなってだしたような笑い声だった。

「君、もしかして馬鹿なのか?アホなのか?アヒャヒャヒャヒャ、こ、こんなめちゃくちゃな理由、矛盾だらけにも程がある理由初めて聞いたよ。
 あひゃひゃひゃ――――ぶわ!!!!」

潤也がアテルラナを殴り飛ばす。
アテルラナはその身を叩きつけられる。
しかし、アテルラナは笑いを止めない。
潤也は倒れながら笑い続けるアテルラナの胸ぐらをつかみ持ち上げる。

「黙れ、アテルラナ。俺はお前も殺したくて仕方ない。仕方ないんだ?わかるな?」
「あぁ、そうさ、君からしてみれば僕は原因みたいなところもあるからかい?あひゃひゃ!!」
「違うな。お前のせいだ!そうだ俺はお前も許せない、お前も殺してやりたい。そんな衝動をさっきからずっと抑えている。何故だかわかるか?」

アテルラナは少し考えるようにした後、嬉しそうに

「はーい、きっと僕にはまだ兄弟にとって利用価値があるからでーす!!」

潤也はアテルラナのみぞおちに向けて拳を叩き込んだ。
アテルラナは声にならない声をあげて嘔吐する。
その後、潤也は咳き込むアテルラナの胸ぐらを再び掴む。

「アテルラナ、次ふざけた事抜かしたら次は五体満足でいられないと思えよ。」
「はは、ごめん、ごめん。じゃあさ、こんなのはどうだい?」

そういってアテルラナは胸元のポケットから1枚のデータチップを取り出す。

「なんだこれは?」
「ふふ、これにある場所の座標が書いてある。リベジオンで読み取れるから機体に戻ったら見てみるといい。」
「座標?そこに何がある?」
「至宝さ。」
8CR2 結その2 5/8:2013/01/29(火) 22:23:44.81 ID:zA2043AS
「至宝・・・だと?」

咲が潤也の前で見せた超常的な力を持つ道具『至宝』。

「なんで、そんなものの場所のありかをお前が知っている?」
「偶然だよ、偶然見つけたんだ。それで僕は琴峰機関にこれを提供した。ほら君の親父もレポートで言ってただろう?至宝を提供したって・・・。」
「それは咲が今持っているものでは?」
「違うよぉ、君の可愛い妹が持ってるのは、この一帯にあった至宝さ。正確には設計図だけどね。僕も驚きだったんだよ。
 ここに設計図があるだなんて。黒峰咲とメタトロニウスがこの惨状を作り上げた結果、至宝が浮かび上がって彼女はそれを手に入れたんだ。」
「じゃあ、これは?」
「さてね、僕もあるものを受け取っただけだから詳しくは知らないさ。だけど言えるのはこれは確かに至宝であるというだけ・・・。
 もしこれから君がUHと黒峰咲と戦うのならば必要な力だろう?」

そういって差し出すアテルラナのチップを潤也は乱暴に取り上げた。

「まあ、まずそこにいって、至宝を手に入れてくる事だね。それで兄弟、君はスタートラインに立つことが出来る。
 まあ、そこで君がどんな顔をするのか楽しみだけ――――――」

そう言いかけた後、アテルラナの悲鳴じみた声があがる。
その後、アテルラナは涙を流しながら通常曲がらない方向に折れ曲がった自身の右小指を見る。

「アテルラナ、ふざけるなと言っただろう?俺はお前を痛めつける事になんの容赦もないんだ・・・。」

泣き叫ぶアテルラナを心底侮蔑するように潤也は言う。

「く、くは、だ、だ・・・からって普通人の小指を折るか・・・くはは、酷い、酷いなぁ・・・兄弟。」
「それでそこは何で、至宝とはどういうものなんだ?」
「そ、れは教えられないさ、何をしたって口を割らない。ぼ、僕の楽しみだからね、ただ強いていうならば、そこはここと同じ琴峰機関の研究施設だよ。
 そこの最下層に君の求めるものがある。」

そういうアテルラナの中指に今度は潤也は手をかける。

「だから言わないって・・・行けばわかるんだから、これ以上聞くだけ野暮だよ・・・あひゃひゃひゃ。」

汗を垂れ流し涙を浮かべ笑いながらそう言うアテルラナを見て、潤也は中指にかけた手を話す。
哀れんだからではない、これ以上この男を傷つけるという良心の呵責に苛まされた訳でもない。
ただ、単純にこれ以上は無駄だと思えたからだ。

「最後に1つ聞きたい。アテルラナ・・・なんでお前は俺に協力する?」
「そりゃ、贖罪に決まってるじゃないか・・・こう見えてもぼ、僕は君たちには悪いことをしたと――――」

潤也はアテルラナの顔面を殴りつけた。
アテルラナは壁に頭をぶつけ気を失う。

「法螺吹きが・・・。」

そう言って、潤也はのびているアテルラナをほおって研究所を後にした。
研究所の外には今まで潤也と共に戦ってきたリベジオンが片膝を立てて座っている。
その紅い瞳は、この世の全てを憎んでいるとでも言わんばかりの禍々しい双眸だった。
潤也はそれを見て思う。
俺もああならなければならないと・・・。
9CR2 結その2 6/8:2013/01/29(火) 22:24:21.26 ID:zA2043AS
そう憎まなければならない。
父と母を奪った妹を・・・。
その上で、さらに父と母の命を愚弄しようとする妹を・・・。
お前に必要なのは憎しみだ。
千も万も億も超える怨念の激流に飲み込まれても消えない憎悪の炎だ。
憎まなければならない。
潤也の脳裏をかすめるのは黒峰咲が生まれた時の記憶。
産声をあげる妹を抱きかかえて母は潤也にこう言った。
「これからは潤也がお兄ちゃんなんだから、この子を守ってあげてね。」と・・・。
潤也はそれを振り切るようにして咲への憎悪を思う。
記憶にある黒峰咲を全て憎悪で塗りつぶす。
笑っている咲を、泣いている咲を、自分を頼ってきた咲を、自分を助けてくれた咲を・・・。
そうだ、憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!!!
憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!!!
憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!!!
憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!憎め!!!
あれは両親を殺した仇だ。
あれは両親を殺した事を必要な事だと笑う悪魔だ。
もはやあれは肉親などではない憎悪を持って殺害すべき対象なのだ。
憎め!!憎め!!憎め!!憎め!!憎め!!!!!!

憎まなければ――――――

その日、一人の魔王が嗚咽の中に生まれた。
その魔王はその日から憎悪の思いを抱えて歩み出す。
たとえその思いの何もかもが矛盾だらけだったとしても・・・。

走馬灯は終わる。
そして、物語は過去から現代へと戻る。
始まりはこのように・・・。






―現代―  琴峰藍の自害から8時間後、イーグル本部司令室


「そんな、馬鹿な・・・。」

第七機関直属組織イーグル、その司令室で目を疑いたくなる現状に驚きの声をあげたのは司令である秋常貞夫だった。
モニターに映るのは今、この本部へとゆっくりと接近しつつあるアンノウン。
全長1000km程の巨躯を誇る巨大な機械仕掛けの亀。
そんなものが今、このイーグルへと進路を取り時速300kmで迫ってきている。
予測では40分後にはこのビルを踏み潰すと予測されている。
貞夫は夢でも見ているのかと思い、ポケットからタバコを取り出す。
3日も続けてきた禁煙生活、そろそろ限界だと思っていたのだ・・・夢ならば、吸ってもいいだろう。
そんな淡い思いで取り出したタバコの箱を彼の副官が奪っていく。

「司令、残念ながら現実のようです。本当に残念ながら・・・ですので禁煙は継続中ですよ。」
「こ〜と〜み〜ねく〜ん・・・頼むから私を現実に引き戻さないでくれ。」
「仮にも司令は、このイーグルの司令なんですから・・・もっとしゃきっとしてください。だからあなたは色々な所から侮られるんでしょう?」

副官である琴峰雫にそう言われ、押し黙る貞夫。
10CR2 結その2 7/8:2013/01/29(火) 22:25:45.61 ID:zA2043AS
それに呆れたようにため息を吐きながら、雫は貞夫がそう思うのも仕方ないとも思う。
まずなんであれ動いてるんだ?と突っ込みたくなるような巨躯。
そもそも何処に今まで隠れていたんだ?と突っ込みたくなるような巨躯。
そしてなんでこっちに向かってきてるんだ?と突っ込みたくなる絶望。
イーグルは鋼獣の襲撃を受けつつあり、創設以降最大の危機にあった。

「各機関の要人もいる、今すぐに退避してもらう必要があるなぁ・・・。」

とほほと貞夫は現状を目の当たりにして考える。

「雫くん本部にどれぐらい戦力が残っている?」
「はい、通常のアインツヴァインが2機ですね。この間のブラックファントムとの戦いで失った戦力が痛すぎました。」
「そうか・・・迎撃要因として・・・いや、あのでかさじゃ無理だわなぁ・・・。」
「そうですね、水鉄砲程度の戦果しか期待できないかと・・・。あとは時峰副司令のアインツヴァイン雪花があります。
 ですが、あれは理論実証機なので、まだ調整不足でとても戦闘に出せるような状態ではありません。
 それにあれはシャーリー・時峰への贈り物でしょうし、副司令も乗りたがらないでしょう・・・。」

貞夫はシャーリー・時峰の現状を慮ってため息を吐く。

「はぁ・・・となると戦力として期待できそうなのは・・・。」
「『彼』という事になるのでしょうか?」
「『彼』の容態は?」
「安定の方向に向かっているようです、時期に目を覚ますのではないかと・・・。」
「どうするかね・・・彼が目を覚ましたとたら、口説き文句を考えておかなければならない訳か・・・気が滅入るよ。」
「心中察します。しかし―――――」

雫は再びモニターを見る。
その姿は圧巻だった。
まるで山がそのまま歩いてこちらに向かってきているかのような巨躯。
それが通った後に出来る潰された木々にめり込んだ大地。
この本部のビルなどすぐにそれには押しつぶされてしまうだろう。

「『彼』とあのブラックファントムと言えどもあれに勝てるかどうか・・・。」
11CR2 結その2 8/8:2013/01/29(火) 22:26:51.85 ID:zA2043AS
―イーグル本部医療施設―

黒峰潤也はまどろみの中から目を覚ました。
 
「ここは・・・。」

潤也はまだピントが合わずぼやける視界を振り切るようにして頭を振った後、辺りを見渡す。
そこは見慣れない景色だった。
白い天井にカーテンのかけられた部屋。
首から下に布のような物を被せられ自分は寝ている体制になっている。
横に見える床に段差があった事から、自分がベットに寝ているのだという事を理解した。
潤也は、起き上がろうと床に手をつく。
その時、じゃらりと金属の音がした。
潤也はその音がした腕の方を見る。
そこには手錠がかけられていた。
誰かが潤也をこのベットに縛り付けておくためにつけていたものだろうか?
誰が・・・何の為に?
記憶を遡る。
思い出すのは犬型の鋼獣との戦い。
限界を超えるDSGCシステムの駆動をさせた後の事は覚えていない。
覚えていないという事はおそらくはあのまま自分は怨念に飲まれてしまったと考えるのが妥当だろうか・・・。
その後、システムの緊急停止装置が起動して気絶し、誰かに捕まってここにいるといった所か?
そう思案にふけっていた時、潤也の左から

「はぁ、やっと悪夢からお目覚めかい?」

と女性の声が聞こえた。
潤也はその声のした方を向く。
そこには老婆が一人、本を片手に折りたたみ椅子に座っていた。
老婆は皺だらけの顔で優しげに微笑んで言う。

「それとも現実(こちら)の方がお前さんにとって悪夢だったかな?」


―続く―
12古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/01/29(火) 22:32:57.33 ID:zA2043AS
以上で今回の投下は終了となります。
連日の投下支援、そして新スレまでありがとうございました。
本当は1月一度ペースで投下したいのだけれど、中々うまくいかないなぁ(´・ω・`)
次回は後半戦となります、いよいよ物語は現代に戻り、やっと・・・やっとロボ戦かけます・・・長い・・・長かった・・・
13古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/01/29(火) 22:40:32.29 ID:zA2043AS
スレをまたいで読みづらいかと思うので、先んじてwikiの方にも乗っけておきましたー
http://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/1276.html

あと書き忘れていたので>>1乙ですー
14創る名無しに見る名無し:2013/02/08(金) 00:17:54.44 ID:/qnXu9yy
>>13
改めまして、投下乙!
パパッと読んだだけなので軽めですが……

咲と戦うことを選んだのか? 潤也
一方でアテルラナ……お前と言う奴は…いや、潤也の両親か,元凶は。
そして、出てくる巨大な敵!

次回も楽しみにしています
15創る名無しに見る名無し:2013/02/09(土) 03:10:23.27 ID:ntzCKKM2
「宇宙の戦士」のパワードスーツみたいなのもこのスレで投下しておk?
16古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/02/09(土) 04:16:57.80 ID:5XHW4XAG
>>14
感想ありです!
潤也は咲と戦う事を選択しました
巨大な敵という発想は実はメタトロニウス戦まで取っておくつもりだったのですが
思いつきでかなりはったり効いた描写を思いついてしまったので書きたいと思ってプロットごと変えちゃいました(苦笑)
楽しみにしていただければ幸いです

次こそあまり時間かけないで提供できれば・・・
17創る名無しに見る名無し:2013/02/09(土) 07:01:04.56 ID:wX3mUko4
>>15
大丈夫じゃない?
18創る名無しに見る名無し:2013/02/09(土) 09:46:44.26 ID:DqRjTWia
パワードスーツも、人造人間もロボットみたいなもんだ。
能書きは良いから、とっとと投下しろ。
この手の奴って聞くだけ聞いて投下しないから、本当に苛々する。
19創る名無しに見る名無し:2013/02/09(土) 11:13:50.32 ID:GniP0F25
新規さんは貴重だからそう刺々しく言っちゃいやん
住人も少ないし遠慮なくバッチこーい!
20創る名無しに見る名無し:2013/02/09(土) 12:11:33.51 ID:Etd6d477
ここ最近苛ついてる住人が多いな、牛乳飲め
21創る名無しに見る名無し:2013/02/09(土) 14:20:25.54 ID:CIOD2pvE
お腹を下したぞどうしてくれる
22創る名無しに見る名無し:2013/02/09(土) 18:13:52.74 ID:F3+CaeqX
トイレいけ
23創る名無しに見る名無し:2013/02/09(土) 20:45:30.55 ID:GgCHvaOv
つ正露丸

ほらよ!
24創る名無しに見る名無し:2013/02/10(日) 03:46:22.65 ID:ATqw/QWg
つアナ○ルバイブ
25創る名無しに見る名無し:2013/02/10(日) 14:48:13.64 ID:pP1UihcZ
おい、そこの〇には何が入るんだw
26創る名無しに見る名無し:2013/02/10(日) 15:30:16.20 ID:oD2t/HJY
ナニ♂が入るんでしょうね(すっとぼけ)
27創る名無しに見る名無し:2013/02/10(日) 23:56:55.57 ID:DrioY1Ah
前スレからのバイラムさんや好評連載中のグラゼロさん、また久方の古時計屋さん、投下本当に乙です
中々昔の様にガッツリとSSを読んで感想を書けなくなってしまいましたが、暇を見つけてどうにか各々感想書けたら……良いなぁ(儚き希望
久々ですロボスレ。投下は去年以来、多分半年ほど前でしたが、前から温めていたネタがどうにか完成できたので投下します
異常に量が増えてしまった為、今日と明日の二部に分けて投下しようと思います。では


・クロスオーバー(他作品同士を組ませた形式のSSです)物です
・あくまで一発ネタな為、本編投下の予定はありません。あくまでフェイク予告編みたいな感じです
・前作、STRANGEDREAMはロボスレwikiにて全話収録しております。興味の向いた方はwikiへどうぞ

では改めて次レスからです
28TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/10(日) 23:57:44.59 ID:DrioY1Ah
足元に広がっている水溜りを派手に弾きながら、白色のスーツに身を包み闇を駆け抜ける、一人の男。
腐臭が辺り一面に立ち込め、形容し切れぬほどの負の雰囲気に塗れながら、男はどこまでも伸びて行く地下水路を疾走する。
男のスーツはピッタリと体に密着しており、直線的に入り混じっている青いラインと、鳥類の王である、鷹を彷彿とさせる頭部のヘルメットは、どことなくヒロイックに思える。
そんな白く美麗なスーツを撥ねた泥で茶色く汚しながら、男は全力で走る。

疾走する男の数メートル前後で、複数、男と同じく水溜りを弾きながら追ってくる音が反響している。
次第に男を追っている、足音の正体が暗闇の中から露わになる。一見すると人間の様に見えるが、それは違う。
人間の姿を模しているが、その姿は正確に表現するとするなら――――――――骸骨といった所だ。
複雑に折り重なれ接合されている鉄パイプ群は、人間の骨格を忠実に再現しており遠目から見ると、そのまま人骨が走っている様に見える。

そんな人骨の内部には、人間で例えるならば心臓に当たるであろう、妖しく緑色に発光している、水筒の様な形状の小型のタンクが仕込まれている。
そのタンクから各手足の鉄パイプへと接続されているチューブは恐らく血管。骸骨達は暗闇の中で、ぼんやりと緑色の光を纏いながら男を追跡する。

限りなく人間の人体を真似てはいるが、あくまで内部構造を人間に似せているだけで、骸骨達は人間とは全く違う存在と言っていいだろう。
証拠として、骸骨の頭部には円形上の物体が接続されており、ぐるりと覗くバイザーからは、赤色のモノアイが目まぐるしく動いている。
モノアイはやがて標的であろう男を見つけると、ピタリと動きを止めて決して離れない。

いつまでも続くと思われた男と骸骨の追いかけっこだが、ふと骸骨の中の一機が一気に群れの中から飛び出す。
飛び出すと同時に、手首を外側へと曲げる。曲げた瞬間、掌から細身ながらも鋭く研ぎ澄まされた剥き出しの刃が伸縮する。
伸縮させた刃の上で両手を握り拳にすると、骸骨は一旦立ち止まってその場にしゃがむ。間髪入れず、両足を勢い良く伸ばして地面から飛び跳ねた。
飛び跳ねながら骸骨は器用に空中で、ぐるりと身体を反転させた。反転させて、男の目前へと着地しようと落下してくる。

男の行く末を防がんと刃を構えながら骸骨が着地しようとした寸前。

ほぼ一瞬の事だった。

男は骸骨が背後で跳躍したのを察すると、どこからか取り出した真っ白なトランプサイズのカードをヘルメットへと近づける。
近づけて、何か言葉を暗唱した瞬間、カードは瞬く間に粒子化すると、全く別の形へと変化した。それは異様に角ばっており勇ましいデザインの、奇妙な拳銃だ。

スーツとは対照的に、闇に溶け込む様に黒く染まっているその拳銃を、男は即座に骸骨へと向ける。
向けると同時に流れるような動作で引き金を引くと、砲口より放たれた蒼色の銃弾が、真っ直ぐにモノアイへと伸びていく。
銃弾はモノアイごと、骸骨の頭部に大きな風穴を作り出すと、骸骨は成す術もなくその場に叩き落ち、只の骸と化す。

男は骸骨の目前で片足を勢い良く踏み込んで跳躍する。くるりと宙を一回転する間際、動力源である小型タンクに一発、二発と追撃を叩き込む。
銃弾が命中し、激しい破裂音と共にチューブから不気味な液体が噴出し、鉄パイプやチューブを浸していく。その液体は次第に発火し出し、地下水路を炎で照らし出す。
着地すると、男は拳銃の銃身を勢い良く振り下ろす。すると銃身はまっすぐに変形し、拳銃のグリップはまるで刀の柄の様になる。

拳銃が変形した直後、骸骨が爆発し、一瞬水路を覆っている暗闇を眩く散らす。
爆発は持続して闇を散らし続け、ようやく男と骸骨の姿を明瞭に映しだす。

男が一人なのに対し、照らし出されている骸骨の数は前後合わせて十機、いや、二十機、もしかしたらそれ以上いるかもしれない。
しかし、男には何ら怯んだり、恐怖を感じる様子は見えない。どころか、戦う意思を示すが如く、砲口から銃弾と同じく蒼色の光で生成された剣を放出させている。
先程の爆発が宣戦布告とばかりに、男は剣を放出させた拳銃を逆手に持ち替えると、一気に前方へと踏み込んでいく。

急速に骸骨達の懐へと踏み込むが素早く、男は拳銃を振り回し、軽快な動きで骸骨達の手を、足を、頭部を切り裂いていく。
次々と斬りつけながらも、動力源である小型タンクだけを傷つけぬ様、手足だけを切断し、戦闘能力だけを奪って行く。
29TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/10(日) 23:58:30.89 ID:DrioY1Ah
いつ終わるかも分からない、圧倒的な物量で迫ってくる骸骨達の屍を、男は黙々と積み上げて行く。
元は純白で美麗であったスーツを茶色の泥と、血の様な鮮烈な緑色で汚しながら、寧ろ更に戦闘意欲を増す様に男の攻勢は収まらない。
戦いのさなかでも、男は脱出する事を忘れていない。背後から聞こえてくるのは、出口である事を示す水流の音。

一体、どれだけの時間が経ったのか。何時間、いや、何十時間かもしれない。

骸骨達を容赦無く斬り裂いてきた、蒼い剣は淡い粒子を力無く放出しており、これ以上出力が上がる様子が無い。
男も同じ様にスタミナが切れたのか、ぶらりと両腕がだらしなくぶら下がっており、やがてボトリと持っている拳銃を落とした。
如何に戦いが激しかったかを身体で証明している様だ。一歩一歩と歩く度、只のガラクタと化した骸骨達の頭部を踏み潰す音がする。

ようやく出口へと辿りつき、男は頭を上げる。と、その時だ。
男の姿を淡い光が照らし出す。どうやら何者かが、男に向かって存在を知らせる様にライトを照らしている様だ。
ライトを照らしている存在を確認して、男は顔を向ける。どうやら、知っている人物の様だ。

男は今まで強固に頭部を守り続けたヘルメットに両手を触れて、ヘルメットを取る。そして助けに来たであろう、その人物へと声をかけた。



「リヒトさ―――――――」



次に聞こえたのは、銃声。




男はそのまま、水流の中へと落下し、姿を消した。



                         2


「貴方は、誰?」

ぼんやりとして、曖昧な輪郭の影が、少女の前に立つ。
影の姿は今にも掻き消されそうな程にもやがかかっているが、不思議な事に少女にはその影がなんなのかが分かる。
それは、人の姿をしている。それでいて、自分と同じ位の背丈で尚且つ、自分と同じ髪型をしている。

少女の問いに、影は無言のまま、その場に佇んでいる。
と、影の顔らしき部分に少しづつ、ぽっかりとした穴が空き始める。数秒経つとその穴は非常に簡素な特徴ではあるが、目と鼻、それに口に見えてくる。
開いた口の穴は、左右に広がっていくとやがてニタリと笑って少女に、答える。

「私は」「貴方」「貴方になりたい」貴方」

そう言いながら、影は突如として膨張し始める。驚き、少女は逃げようとするが身体が金縛りにあった様に動けない。

「いや……やめて……」

得体の知れない恐怖感に苛まれて、少女の身体はその場に立ち竦み、一歩も踏み出す事すら出来ない。
やがて膨張していく影は、少女へと纏わりつく。身体を、自由を、自分の存在そのものが、影に侵されていく。
息が、出来ない。窒息しそうになりながらも、少女は必死に手を伸ばして抗おうと試みる。

「無駄だよ」「もう戻れない」「私は私に」「なる」

頭の中に影の声がハウリングして何度も何度も聞こえてくる。
30TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/10(日) 23:59:46.17 ID:DrioY1Ah
最早声すらも奪われ、少女は――――――――。

「止めて!」

思いっきり上半身が起き上がる。腰に一瞬軽い痛みを感じて、遥は掌でその部分を擦る。
掌が汗で滲んでいる。寝巻きの中の下着に触れてみると、背中にべっとりと冷や汗を掻いている。

――――――――奇妙な、夢を見た。

脈拍を測ると、全速力で走ったかのように異常に鼓動が速い。額を拭うと、背中や掌に負けない位、汗を掻いている。
額だけでなく、身体その物が汗ばんでいる様だ。荒いでいる息を深呼吸する事で落ち着かせながら少女――――――――神守遥は、先程見た悪夢の内容を思い返す。
夢にしては、あまりにもリアルな夢だった。本当に影に殺されるかと思った。

自分とそっくりな姿をしている影に、全てを奪われる、そんな夢だった。

どうしてこんな馬鹿げた夢を見たのか、遥自身分からない。しかし夢なんて大概支離滅裂だし、理屈を求める方がおかしい。
にしても夢と片付けるには不気味なほど現実感のある夢であった。このまま呼吸も出来ずに死んでしまうのではないかと遥は恐怖した。
その証拠に腕を捲ると、ビッシリと鳥肌が沸き出ている。そこらのホラー映画よりもずっと怖かった。

何でこんな夢を見たんだろう……ストレスを感じる様な事も、勉強もそれほど厄介な局面になっている訳でもないのに。
深く深呼吸すると、次第に気持ちが落ち着いてきた。多分自分では分からないがストレスが溜まり過ぎているんだろうと、遥はそう思う事にする。

考えをスッパリと切り替え、もうこれ以上悪夢の事は思い出さない様にする。
にしても喉が偉く乾いている。あんなのを見たせいだと思うが、今すぐにでも水分を取らないと干乾びそうだ。
遥は安眠している妹と両親を起こさない様に、出来る限り音を出さずにドアを開けると忍び足で素早く、階段を下りる。
廊下を経て、台所へと着いたが素早く電気を付け、食器棚からコップを出して、蛇口の前に置く。

蛇口を捻ると、あまり冷たくも無い水道水がコップに注がれていく。只の喉を潤すだけだからこれで良い。
コップ一杯に入った水を飲み干す為に、遥はコップを持ち口元に運ぼうとした。
その時だった。

ゾクリと、冷たいモノが遥の背筋を凍らせた。収まっていた鳥肌が再び沸き立ち、身体が強張る。
気のせい、疲れからの錯覚だと思ったが、すぐにそれは違うと遥は否定する。居るのだ。
何かが、家族以外の全く別の何かが家に潜んでいる。多分、近くに潜んでいる事に遥は頭では無く本能で感じ取る。

ど……どうしよう。すぐに警察に知らせた方が、いや、その前にお父さんお母さんを起こさなきゃ……。

極度の緊張状態から、遥はふらつきそうになる足元を掌で叩いて叱咤する。落ちつけ、落ち着け私と、続けて軽く両頬をビンタして正気を保つ。
考えられる侵入者の正体は三つ。まず泥棒か、それか強盗。しかし遥の記憶では、この家にそういった不届きな輩が入ってきた事は一度も無い。
しっかりと警備システムは働いているだろうし、何よりそういう輩が入ってきたなら物音がする筈。
だが、今の今までそういう騒音は聞こえてきてない。否、逆に考えればわざわざ音を鳴らす泥棒なんていないとは思うが、何かしら気付ける筈だ。

だが、遥は思う。今感じている気配は、そういった類の物では無い。何と言えば良いのか、奇妙なのだ。
物音どころか存在感すらも希薄なのに、しっかりとここにいるという。遥自身上手く例えられないが、本当にそんな雰囲気を覚える。
幽霊だとかそういう物かといえば、遥は自分自身霊感がある方だとは思えず、もし幽霊だとしても多分それほど怖がる性格でもない。

じゃあ、この気持ちの悪い気配は何? 遥自身説明出来ないし、誰かに教えてほしい位だ。

と、とにかくここから逃げ出さなきゃ。妹も心配だしと、遥は決意を決めて後ろを振り向いた。

いた。目の前に、立っていた。

遥の目の前には、鏡を立て掛けたかと錯覚する様な、自分と全く同じ背丈で同じ髪型の、同じ顔の少女が、いた。


                                ――――――――

時刻は丑三つ時の午前一時頃。住宅街はしんとして静まり返っており、人も街も寝静まる、そんな時間帯。
31創る名無しに見る名無し:2013/02/11(月) 00:00:03.76 ID:27PN27dU
紫煙
32TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 00:01:13.50 ID:VOZLwlFO
時間帯が時間帯な為、歩いている人間はほとんどいない。たまに酔いつぶれているサラリーマンや、素行の悪そうな若者を見掛ける程度だ。
そんな夜を走る、一台の外国車。優雅で高級感溢れるフォルムが目を引く。かなりの速度で走っているのだが、最新鋭の技術によりエンジン音が殆ど聞こえてこない。

その外国車の後部座席で、慣れていないのか落ち着かない様子でそわそわと、一人の青年が過ぎ去っていく周りの景色を眺めている。
青年は、前の運転席と助手席に座っている、二人の女性に視線を向ける。向けて、言葉を切り出していいのか、一寸迷う表情を浮かべる。
浮かべつつも、黙っている訳にもいかないので、恐る恐る切りだす。

「……変な事聞いてすみません」

年齢よりも大人びて見える、落ち着いた風貌が特徴的な青年――――――――安田俊明は、それぞれ対照的なスタイルの二人の女性へと、質問を投げかける。

「やっぱり信じられないんですけど、お二人は本当に……別の世界から来たんですか?」

俊明が投げかけた疑問を、助手席に座っている、胸が豊かな方の女性がふふっと、含みのありそうな微笑を浮かべる。
対して、運転席でハンドルを握っている、胸がするりとしていてスレンダーと呼ぶに相応しい身体つきの女性はきょとんとした表情を浮かべる。
俊明から投げ掛けられた疑問に対しての返答を、二人の女性はほぼ同時に俊明へと投げ返す。

「私が嘘を付く様な顔に見えるか?」
「私は嘘を付く趣味は無いわよ〜」

ほぼ予想通りとはいえ、ストレートに返ってきた答えに、俊明はどうリアクションを取れば良いのか、困る。
ポリポリと軽く困惑気味に頭を掻いて、一先ず状況を頭の中で整理する。整理して、無理矢理にでも状況を飲み込んだ上でもう一度、尋ねる。

「分かりました、すみません。で……これからどこに向かうんでしたっけ」

ハッキリ言って混乱状態だ。何が何やら理解が追いつかない。

「その前に煙草吸っていいかな? ちょっと一服したいんだ」

俊明の質問をするりとかわして、スレンダーな女性は煙草を吸っていいかの許可を求める。
別に自分に構わず吸えば良いと俊明は思うが、ちゃんと了承を取る辺り、マナーを弁えている様に思える。
あ、はいと俊明が気の無い返事をすると、スレンダー女性はありがとうと答えて運転席の窓を開け、片手でフィルムが張られている比較的新しい煙草の箱を取り出した。

「安田君」

一服し始めるスレンダーな女性の隣で、助手席の豊胸な女性が身体を振り向かせて、真面目な表情で、俊明を呼び掛ける。

「貴方が凄く混乱してるのは理解できるし、私達もこんな強引な手段を選んじゃったのは謝るわ。でも」

一旦、言葉を留める。留めて、豊胸な女性はじっと俊明の目を見据えて、言う。

「でも、今はこの方法しか取れないの。貴方と、貴方の大切な人達を守る為には」

神妙な面持になる俊明。そして、俊明と会話を交わしているこの二人の女性は何者なのか。


事の発端はおよそ三十分ほど前に遡る。


ベッドから俊明は勢い良く起き上がった。呼吸が荒い。呼吸も荒いし、全身から冷や汗という冷や汗が噴き出ている。
普段ならば、一度目を閉じて眠ると何か騒音だとか異変でも無い限り、俊明はぐっすりと朝まで眠れる。
眠れるのだが、今日は不思議な事に寝心地が異様に悪く感じ、何度も起きてしまう。金縛りにあっている訳でもないのに。
というのも、深い眠りに落ちる度に俊明は不気味な程現実感に満ちた、奇妙な夢を見てしまうからだ。

その夢の内容というと、とある事情により、数奇で苛烈な運命を共に送る事になってしまった少女――――――――名をシュタムファータァという。
そんなシュタムファータァと一緒に、どこかの建物の屋上で、熾烈な死闘を繰り広げている夢だ。相手は明確には思い出せない。
思い出せないが、とにかく尋常じゃなく強く、残忍な相手である事は分かる。それとの戦いで、俊明もシュタムファータァも凄まじい傷を負い、消耗している。

何か傷を負う度に俊明は起き上がる。夢な筈なのに、それから受ける痛みや苦しみ、切迫感にあまりにも現実味がありすぎて、眠る事が出来ない。
夢である筈なのに、まるで実際に経験したかのような、リアル過ぎる夢。否、悪夢だ。
33TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 00:02:47.98 ID:DrioY1Ah
しかし、俊明は自らが辿ってきた激戦の記憶を辿ってみる。辿ってみるが、幾度か危機的状況に見舞われてきたものの、建物の屋上で戦うという記憶は浮かんでこない。
もしかしたら本当は戦っているのに何らかの理由でド忘れているのかもしれないと思い、今一度辿ってみる。
俊明は一度たりとも、シュタムファータァと共に乗り越えてきた戦いの記憶を忘れた覚えは無い。どんな場所でどんな相手と戦ったかを全て鮮烈に頭に刻んでいる。
しかし、しかした。どれだけ脳味噌の記憶の引き出しという引き出しを引きだしてみても、そんな記憶は全く出てこない。

本当に只の夢なのか? しかし……と、俊明の思考が堂々巡りのループ回転をしている、その時だ。

玄関のインターホンが、なった。一瞬ビクッとしつつも、俊明は怪訝な顔付きになる。

こんな真夜中に誰が尋ねてくるんだ? と、当然に疑問に感じ、俊明は警戒する。もしかしたら近くを歩いている酔っ払いが、自分の家を間違えているのだろうか。
それか泥棒か強盗……いや、そんな連中が、わざわざこれから犯罪を犯す前に、ご丁寧に玄関のインターホンを鳴らす訳が無いか。ならば酔っ払いだろうか。
そんな風に思慮を巡らせていると、再びインターホン。両親はぐっすりと寝ている為か、音に気付いている様子は無い。

多分、俊明も普段ならば深い眠りの底に落ちている為気付かないだろうが、今日は偶然にも眠りから醒めている。
何にせよ、こんな時間帯に人の家のインターホンを押す人間は迷惑極まりない。間違えている酔っ払いであるならば、間違えているでしっかりと教えてやらないと。
俊明は寝巻の上にジャケットを羽織り、何かあった時の為に携帯電話をポケットに忍ばせると、音も出さずに階段を下りて行く。
どこのどいつかは分からないが、全く非常識な奴だなと内心眠れない事のイラつきもありつつ、俊明は玄関口へとそそくさと小走りで向かう。

ドアの前に立ち、恐る恐る、魚眼レンズを開いて外の様子を確かめる。予想では、帰る家を間違えた阿呆なおっさんの姿が――――――じゃない?

魚眼レンズの先に見える光景に、俊明は戸惑いと驚きから、ポカンと口を開ける。
そこに立っていたのは、オッサンでもなければ泥棒でも強盗でもない。そこにいたのは、二人の女性の姿だ。

一人は、ジャケットの上からでも分かる豊満な胸と、落ち着いた色調の服装に身を包んだ、薄く青色が混じった、ふんわりとしたの長い黒髪が特徴的な整った顔立ちの女性。
そしてもう一人は、スポーティなジーンズとジャンパーに身を包んだ、隣とは対照的に膨らみの少ない胸、すらりとしてスレンダー。
それでいて、活発な印象を受けるショートカットの黒髪に、中性的な美しさを感じる、切れ長の赤い瞳孔の目が印象的な女性だ。

タイプは対照的なものの、確実に美女というカテゴリに入るであろう、そんな二人が何の目的か俊明の家の玄関前に立っている。
二人はインターホンを押しても出てこない俊明に業を煮やしているのか、顔を向けあい何か熱心に話している。だがドア越しでは会話の内容までは聞こえない。

俊明はレンズからしばらく二人を眺めていたが、出てくる感想は一つだ。
……誰? 俊明は仕舞い掛けていた記憶の引き出しを再び豪快に引き出しまくるが、こんな二人と親交関係を持った覚えはない。
それどころか初対面だ。どちらの美女も、一度見たら多分忘れなさそうな顔付きなだけに、尚更誰なのか分からない。さっぱりだ。

一瞬、新手の強盗か漫画に出てくる様な美人の怪盗かと思ったが、どちらにも属している様には見えない。
なら、あるいは厄介な宗教団体の勧誘かとも思ったが、強盗はともかくこんな真夜中に宗教の勧誘なんて聞いた事が無い。
ならば道を間違えたから教えてほしいのかもしれない……それは一番無い。どうしてわざわざピンポイントに俊明の自宅を訪ねてくるか分からないし、何よりは交番ならすぐ近くにある。

じゃあ、この二人は一体?

強盗にも勧誘にも、ましてや酔っぱらいにも道迷いにも見えない。しかし、目的が不明だ。

ゴクリと、俊明は唾を飲み込んだ。飲み込んで、ポケットの中の携帯電話に手を伸ばす。
ここは意を決して行動する他ない。我ながら無謀な考えだとは思うが、もしもこの二人が少しでも危害を加えようとしてきたら即座に通報できる自信はある。
両親を守るためにも、何より眠りを妨げようとしている要因を排する為にも、俊明は行動する。

まずは上部に付いているチェーンを外し、次に下部のロックを外す。そしてドアノブを横から縦に回す。
34創る名無しに見る名無し:2013/02/11(月) 00:03:44.08 ID:ohkvg5ym
35TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 00:04:32.50 ID:VOZLwlFO
そしてゆっくりと、ポケットの中の携帯電話に指を付けながら俊明はドアを半開きにした。すぐに家の中へと入れる様に。
落ちつけ、落ち着いて冷静でクールな態度で、尋ねるんだ。そう自分に言い聞かせながら、俊明は二人の美女へと、話しかける。

「あの……家に何か御用ですか?」

ドアを半開きにして、徐々に身体を外に出し始める俊明に、長髪の美女はやっと出てきた、と言いたげな笑みを浮かべ、短髪の美女は空になっている煙草の箱をくしゃりと潰す。
潰した煙草の箱を、ジーンズのポケットにしまうと、短髪の美女はもう片方のポケットから、何かを取り出した。
取り出したそれは、トランプのカードの様に薄い……液晶板? の様な物だ。それの表面を人差し指でつーっとなぞる。

なぞった瞬間、それから瞬時に立体的な映像が浮かび上がる。俗にいうホログラム、という物か。
目を丸くする俊明は、そのホログラムが映しだしたある人物の顔を見、軽く驚く。

その人物とは、俊明である。俊明の顔が、ホログラムとなって宙に表示されている。

「こんな非常識な時間帯に尋ねてきて本当に申し訳ない。謝って早々済まないんだが、確認しておきたい事がある」

ホログラムと、驚嘆している俊明を並べながら短髪の女性は、言った。

「君が、安田俊明君で間違いないかい?」


                                ――――――――

天へと届きそうなほどに巨大な、立ち並んでいる高層ビルの間を物ともせず、それ所か怪獣の如く破壊しながら、巨大な鉄の塊が跋扈する。

本来ならば、様々な人種が入り混じり、昼夜問わず活気に溢れている筈のこの場所は、今や阿鼻叫喚の地獄絵図と化している。
上海。天空を煌びやかに彩る星にも負けぬ、地上の高層ビル群が織りなす人工的な光の星々は、鉄の塊によって見るも無残な星屑へと帰られていく。
突如として現れたそれは、行方を遮る建物を物ともせず薙ぎ倒し、半壊させ、その周囲を逃げ惑う人々などお構い無しに歩き続ける。

そんな鉄の塊は、圧倒的な重量その物が武器となり、道路を歪な形に歪ませていく。闊歩した後には、破壊しか残らない。

凄まじい重量感に満ちた、どっしりと地面に根付く下半身に、右腕に掴むは、強力無比な遠距離攻撃を行う為の大型ライフル。左腕には、邪魔する物を寸断する、凶暴に反り立っている大剣。
何重もの重厚な装甲に守られた、工業的ながらも芸術性を感じさせる上半身に、刺々しく突き出ている頭部のアンテナと、赤く輝く二つのカメラアイ。
大剣を無慈悲に振り回して、前方にそびえるビルというビルを切り落としながら、鉄の塊は突き進んでいく。

鉄の―――――――否、突如香港に現れた、巨大なそのロボットは、一体何を目的としているのか、人々の平和を粉々にしていく。

『待てィ!』

その時だ。何者かの声が、破壊活動をし続けるロボットへと制止を駆ける。声がした方へと、ロボットは鈍い動きで振り向く。

夜の闇の中から、恐るべき悪鬼を退治せんと現わし、もう一体のクロガネの――――――――ロボット。
戦場を駆け抜けし、勇敢なる鎧武者を彷彿とさせる、武骨ながらも心震える様な男らしい立ち姿と、頭部でギラリと光る鋭い二つ目。
月の光が照らし出す、美しき黒い光沢。怒りに震える両手拳を力強く握り、正義の巨人、蹂躙されし香港の大地に立つ。

その巨人、名はネクソンクロガネ。世界に蔓延る悪を、自慢の鉄腕と、確固たる正義で打ち砕く、機械仕掛けの正義の巨人だ。

『これ以上好きにはさせんぞ! シロガネ四天王!』

そんなネクソンクロガネの操縦席で、操者であるヒーロー、田所カッコマンは啖呵を決めながら、モニター一面に映しだされている倒すべき敵を見、妙な感覚に囚われていた。

ネクソンクロガネと今、対峙している鉄の塊の正体。忘れもしない、忘れる筈が無い、熱き苦汁を飲まされた宿敵にして強敵―――――――合体ロボット、ネクソン、シロガネだ。
だが、大まかな形状や所有している武装は間違いなくネクソンシロガネに変わりないのだが、ネクソンシロガネとは全く異なる点がある。

それは、色だ。単純に、ネクソンシロガネとは色が違うのだ。
ネクソンシロガネの機体色は自らが絶対の正義と証明する様な、禍々しい神聖さに満ちた白色であった。
それに加えて、ゾッとする様な胸に迫ってくる威圧感、圧迫感があった。だが、今目の前に立っている、これはなんだ。
36TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 00:06:05.63 ID:VOZLwlFO
姿形、そして武器は間違いなく、シロガネだ。だが、機体色は大雑把な程に黒く、尚且つ何の迫力も感じる事が出来ない。
一体こいつは……こいつは一体、何なんだ? これではまるで、精巧に作られた張りぼての偽物と対峙している様だと、カッコマンは思う。

<カッコマン! 何してんだ! あの野郎、すっかりやる気だぞ!>

思わず思慮に耽っていたカッコマンは、ヘルメットから聞こえてきた通信にハッと我に変える。
気付けば距離を近づけてきたシロガネ、の偽物が、天高く大剣を力一杯に振り上げて、クロガネに振り下ろさんとしている。

「ちぃ!」

カッコマンは生じていた迷いをすぐさまに振り切り、クロガネの胴体、腰部をゆっくりと捻らせる。
そうして捻りを戻しながら、右足を一歩前に踏み込んで、力一杯に握った鉄拳を振り下ろされてくる大剣へと殴り込む。
瞬間、鉄拳と大剣が真正面から衝突しあう。超重量級同士の衝突に疑似的な地震が香港を揺らし、空気を震わせる。

<悪い、カッコマン! 奴の正体を探るからもう少し粘ってくれ!>

カッコマンにそう通信を入れ、クロガネの極太な右腕を高速で駆け昇っていく、一人の男。

男の全身は隙間なく眩い、若干透明に近い白色のプロテクターが装着されており、直線と曲線が巧みに入り混じった、ヒロイズム溢れる格好の良いデザインが施されている。
頭に被っているヘルメットには近未来的なバイザーと、仄かなユーモラスさを潜ませる、二本の直線的なアンテナがそそり立っている。その姿は、正にヒーロー然としている。
バイザーの中の男の目には、シロガネの恐らくコクピットらしき部位が映っている。クロガネが力比べしている間に、パイロットを――――――――。

が、次の瞬間、男の足元スレスレに、鋭利なナイフが深く突き刺さった。瞬時に、男は後方へと跳躍して距離を取る。

ナイフに括りつけられた、ピアノ線の様なワイヤーを数秒で巻き取りながら、何者かが男の前に立ちふさがる。
その何者かは、男と同じく白色の戦闘スーツに身をやつしている。違う部分と言えば、腰部の蒼く輝く宝石、らしき部分からグロテスクに全身に這っている、血管の様な青いライン。
ヒーローの二本アンテナとは対照的に、一本角の白いアンテナと、見る者が本能的に危険さを感じ取る、黄色い両目がヘルメットから覗く。

言葉を交わす事無く、何者かは無言で両足を地面に叩き付けるようにして走り出す。男へと、真正面から。

男は脳で考えるよりも咄嗟に体が動いたのだろう、何者かに向けて全力疾走する。

両者の距離がほぼお互いの攻撃が届く範囲に達した瞬間。

ヒーローは渾身の力を込めて右腕をストレートに貫き、何者かは空中で回転しながら左足を鞭の様に伸ばした。
激突する、拳と脚。ネクソンとシロガネが拳と剣をぶつけ合うのと同じ様に、敵対する者同士が己の力をぶつけ合う。

散る火花。その中で、男は何者かに、問う。叫び、問う。

「お前が……お前がどうして、こんな所にいる?」


「機械人形……殺し!」


だが、男は薄々感じている。今、戦っているのは機械人形殺しでは無い。



恐らく、機械人形殺しを騙る――――――――偽物だと、いう事に。
                                    
                                ――――――――

掌に液晶板を置き、俊明の顔を表示させたまま、短髪の美人は俊明にそう聞いてきた。
真剣な表情で名前を効かれ、俊明は唖然とする。ただでさえ見知らぬ他人が家を訪ねてきた事に驚いているのに。
その他人が得体の知れぬ道具を使い、自分の名前を呼ぶだなんて。悪い夢でも見てるんじゃないかと、俊明は頬をつねってみる。

「夢じゃないわよ〜。何ならお姉さんが引っ張ってあげようか」
「クラウディア。今は真面目に聞いてるんだから茶化すな」
37TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 00:08:11.48 ID:VOZLwlFO
短髪の美人に諫められ、隣の長髪の美人―――――――クラウディア、という名前の女性は謝る代わりに短くペロッと舌を出した。
やれやれといった調子で軽く溜息を吐き、改めて短髪の美人は俊明に目を向ける。俊明は思わず視線を見返す。
一体この人達は何なんだ。本当に何なんだと、俊明は思う。藪から棒に現れて、名前を聞いてくるなんて無茶苦茶だ。

普通なら、不審者として即座に警察を呼ぶべきだと思う。思うのだが、不思議な事に。
俊明の指は、ポケットの中の携帯電話から少しづつ離れて行く。無論、この二人に警戒心を解いている訳ではない。
しかし、自分でもよく分からないのだが、俊明は直感でこの二人は悪人ではないとぼんやりと認識している。
こんな真夜中で来訪してくる時点で普通の、一般的な人種にも見えないが、少なくとも悪人特有の負のオーラは感じない。

しばらく、短髪の女性と俊明は見つめ合い、隣でクラウディアはにこにことしている。
睨めっこをしていても埒が明かない。俊明は根負けした様に、半開きのドアから身体を外へと出す。
ドアを閉めて、怪訝な顔つきで短髪の女性へと、言う。

「……俺が安田俊明ですが、何か?」

俊明の言葉に、短髪の女性はホッとした様に一息吐くと、液晶板からホラグラムを消してジーンズのポケットにしまう。
しまって、さっきまでのシリアスな雰囲気から一転、明るい口調で自己紹介し始めた。

「良かった。本当にこんな時間に呼びだして済まないな。私の名前はジュリア。ジュリア=ブルーストリート。
 で、横にいるのはクラウディア。クラウディア=リィナ=イレールア。私のパートナーだ」
「宜しくね〜。私の事はクラウディアさんでも、クラ姉さんでも素敵なお姉さんでもどんな呼び方でも良いわよ」

そう言ってクラウディアは朗らかに笑う、ちらりと笑う時に見える八重歯が可愛らしい。
外見は外国の女優……具体的には浮かんでこないが、そんな雰囲気を感じる綺麗な女性なのだが表情や話し方に漂う無垢さのギャップに俊明は惚ける。
いや、惚けている場合じゃない。俊明は改めて、自らを尋ねてきたジュリアとクラウディアを見据える。

見据えて、敢えて直球に尋ねる事にする。

「ジュリアさんにクラウディアさんですね。分かりました。それで」

一旦間を作り、俊明は、言い放つ。

「それで俺に何の御用ですか?」

俊明の質問に、ジュリアは軽く頷くと、間髪入れずに答える。
「変に誤魔化したり遠回りな言い方は好きじゃないから、ハッキリと言わせて貰うよ」

無意識に、俊明の喉はごくりと唾を飲む。

「君と……君とシュタムファータァの力を借りたい。セカイの、身近に言えば揺籃島の危機なんだ」

しんと、空気が急に冷たくなる。真夜中という事もあるが、妙な間が三人の中に漂う。
気まずいというと言葉が悪いが、どうも胸の中がモヤモヤする様な、何とも言えない雰囲気がぷかぷかと宙を漂う。

「……だから私にこういう役目は向かないってあれほど言っただろ? クラウディア」

気恥ずかしそうに顔を俯かせて、ジュリアはどことなく悪戯っぽい微笑を浮かべているクラウディアに顔を向ける。
クラウディアはしょうがないわね〜とジュリアが困っているのを楽しむ様な軽妙な口調でそういうと、バトンタッチする様に、俊明の前に立つ。
間近で見ると、尚更胸が大きく見える。つい不埒な方向に目が向きそうになるのを堪えて、俊明は頭をしっかりと前方、クラウディアへと向ける。

「いきなりこんな大仰な事を言われてもちんぷんかんぷんよね。私達の気が変じゃないかって思っててもあながち間違いでもないわ」
そう言いつつ、クラウディアは俊明の顔をしっかりと見据える。見据え、真面目な声で俊明に届く様に凛とした声で、語る。

「そう思ってくれてても構わない。だけどこれだけは覚えておいて。私達は、貴方と、貴方の大切な人達を守りたくて、ここにいる。
 ただ、それだけ。私達が貴方の元を訪ねたのは、貴方の意思を聞きたかったから。その為に来たの」

クラウディアの言葉に、俊明の顔付きが一寸、変化する。何か思う部分があったのか、それとも。

「戦いを強制させる権利も権限も私達には無いわ。もし、協力を断るのならそれはそれで構わない。
 私達の仕事はこのセカイを脅かす存在が、貴方を含めて何の罪も無い人達に危害を及ばさない様に守る事だから。それで……」
38創る名無しに見る名無し:2013/02/11(月) 00:09:20.95 ID:27PN27dU
紫煙
39TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 00:09:36.71 ID:VOZLwlFO
俊明は静かに、クラウディアの話している内容に耳を傾けている。考え事をしているのか、深く俯いており言葉を発さない。
その様子を見、ジュリアは軽く首を横に振ると無言でクラウディアの肩を叩く。が、クラウディアはジュリアが肩に乗せた手にそっと触れる。
触れて、少しだけ顔だけを振り向かせて目を配る。どうやら、俊明の返答を待っている様だ。

数十秒経っても、俊明は何も言わず俯いたままだ。ジュリアは軽く溜息を付くと、踵を返そうとした。

「……一つだけ、聞かせて下さい」

俊明の声が、二人の耳に確かに響く。

ジュリアは振り返り、クラウディアは何も言わずに、俊明の二言を待つ。

「俺は多分、俺自身の大切な人を守る事くらいしか出来ません。それに……それに、シュタムファータァがいないと、満足に戦う事も出来ない」

真っ直ぐな視線で、真っ直ぐな声で、俊明は言い切る。

「そんな俺でも、力になれますか?」

俊明の返答に、ジュリアとクラウディアは顔を見合う。
見合い、次の瞬間、クラウディアは弾けるような笑顔で俊明に応える。

「勿論! 宜しくね、安田君」

ふぅ、と一息吐いて、ジュリアも内心安堵している様な笑みでいう。

「良かった。内心断られたらどうしようかとハラハラしてたよ。まぁその時はその時だけど」
「ジュリちゃんそんな事言っちゃだーめ。折角やる気になってくれたんだから」
「ジュリちゃん言うな。……でも、今更こういう事聞くのもアレだけど、本当に良いんだな? 安田君」

ジュリアからそう聞かれたが、俊明の心は変わらない。力強く頷き、苦笑交じりに俊明は言葉を返す。

「えぇ。多分一分一秒も無駄に出来ない大事な気がするし、それに」


「こういう、非現実的な事にはもうずいぶん慣れちゃってますしね……」



後篇に続く
40創る名無しに見る名無し:2013/02/11(月) 00:10:16.11 ID:9R/dWDqc
  
41TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 00:17:59.40 ID:VOZLwlFO
前篇の投下、終了です。支援をしてくれた方、こんな夜中なのに本当に有難うございます
後篇はもっとボルテージ高く、尚且つ一気に男坂エンドへと突き進む為身構える準備をお願いします

まぁそれは冗談として……
ラストに今回取り上げた作品の一覧を書きますが先んず
パラべラムの◆1m8GVnU0JMさん、廻るセカイの◆qwqSiWgzPUさん、Diver's shellUの◆a5iBSiEsUFpNさん
そして最強無敵ロボ・ネクソンクロガネの◆46YdzwwxxUさん、無断借用を心より謝罪しつつ、深い敬意を表して

後篇は月曜日、今日中に適当な時間に。スレ汚し失礼しました
42創る名無しに見る名無し:2013/02/11(月) 00:34:57.13 ID:27PN27dU
おつんつん
43創る名無しに見る名無し:2013/02/11(月) 00:37:53.91 ID:grRu4zZF
お疲れさん。やっぱり、クロスは良いねぇ。
今となっちゃ懐かしい作品ばかりになってしまったが…
やっぱり、興奮するものは興奮するから仕方がねぇw
後篇も期待してんよ
44創る名無しに見る名無し:2013/02/11(月) 19:52:53.90 ID:VOZLwlFO
>>42-43
ありがとうございます。久々の投下でも温かく迎えてくれるロボスレには感謝感激です
では前置きもそこそこに後篇を投下したいと思います。>>40からの続きとなります
時間跨ぎなので恐らくモンキーには勝てる気がしますが、不安なので宜しければ支援お願いします。では
45TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 19:53:47.39 ID:VOZLwlFO
『遥ちゃん、聞こえてる?』

「聞こえてます」

『良かった。早速だけど緊急事態よ。対象が動き出したわ』

「やっぱり神……特異点に接触してきましたか」

『そう、貴方の予想通り。これからマップデータを転送しておくわ。キツいとは思うけど迅速な対応、お願い出来る?』

「……スネイルさん」

『ん?』

「……対象との決着、付けても構いませんか?」

『私は構わないけど、周りに被害を及ぼさない、犠牲を出さないって約束できる? 貴方の無茶の後始末はこっちが付ける事、忘れないでね』

「必ず特異点を保護し、対象を倒します。任務に戻ります」



「無事でいて……神守さん」


「……ハーディアス、あんたは、私が終わらせる」



                                ――――――――


それから、俊明はジュリアとクラウディアが乗ってきたという、如何にも高級感に満ちている、流線型のフォルムが洒落ている外国車へと乗り込む。
座高が低い以外は驚くほど座り心地が良いシートと、上手く表現できないがあぁ、コレが高級車の匂いなんだなと思える匂いを俊明は堪能する。
俊明の頭の中には数えきれないほどの疑問質問が沸き出てしまって止まらない。全てを口に出すと、とてもじゃないが朝になってしまいそうだ。

そんな俊明を困らせぬ様にか、こちらから何か聞く前にジュリアとクラウディアは事細やかに、それでいて流れる様にありとあらゆる事を説明してくれる
自分達は別の世界、全く違う世界からやってきた事、本業は海底調査(をやる様な学者とかには見えないが。というか学者かも分からないが)で、半ば傭兵的な感じで今の仕事を行っている事。
様々な世界から異なるタイプの悪党が存在しており、その悪党に対処する為の組織が設立されている事。あくまで、自分達はその組織の末端である事。
その話のどれもが、俊明には俄かに信じがたい。信じがたいし、ある種信じる事を拒んでいる様な自分がいる。

ただでさえ、普段から非日常で非現実的な事に向き合っているのに、頭がどうにかなってしまいそうだ。

「一気に話しちゃってごめんね。ついて……これてないかな?」

口を若干開いて、脳味噌の処理が追い付いていないのか、頭から煙を出している俊明をクラウディアは心配そうに見つめる。
ハッとして口を閉じ、俊明は一旦考えを整理する。いや、正直簡潔に整理できるような量でも、質でもないのだが。
しばらく黙して、俊明の口からぼそりと、言葉が吐露する。

「……変な事聞いてすみません
46TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 19:55:40.53 ID:VOZLwlFO
「……変な事聞いてすみません」

そう言う俊明に、クラウディアは軽い口調で答える。

「何でも聞いてくれていいわよ」

「やっぱり信じられないんですけど、お二人は本当に……別の世界から来たんですか?」

俊明が投げかけた疑問を、クラウディアはふふっと楽しそうに笑い、運転席でハンドルを握っているジュリアは、きょとんとした表情を浮かべる。
俊明から投げ掛けられた疑問に対しての返答を、二人はほぼ同時に。俊明へと投げ返す。

「私が嘘を付く様な顔に見えるか?」
「私は嘘を付く趣味は無いわよ〜」

いや、顔見れないっすよお二方。と俊明は言い掛けて留める。
ほぼ予想通りとはいえ、ストレートに返ってきた答えに、俊明はどうリアクションを取れば良いのか戸惑う。
ポリポリと軽く困惑気味に頭を掻き、一先ず状況を頭の中で整理する。整理して、無理矢理にでも状況を飲み込んだ上でもう一度、尋ねる。

「分かりました、すみません。で……これからどこに向かうんでしたっけ」

ハッキリ言って混乱状態だ。何が何やら理解が追いつかない。多分本当の事を言ってしまえば、十分の二か三程度しか理解できていない。いや、二も理解できてるか怪しい。

「その前に煙草吸っていいかな? ちょっと一服したいんだ」

俊明の質問をするりとかわして、ジュリアは煙草を吸っていいかの許可を求める。
別に自分に構わず吸えば良いと俊明は思うが、キチンと了承を取る辺り、ジュリアは喫煙者としてのマナーを弁えている様だ。
あ、はいと俊明が気の無い返事をすると、ジュリアはありがとうと答えて運転席の窓を開け、フィルムが張られている比較的新しい煙草の箱を揺らして一本、口に咥える。

「安田君」

ライターで火を点け、一服し始めるジュリアを横目に、クラウディアは身体を振り向かせて後ろを向くと、真面目な表情で、俊明に話しかける。

「貴方が凄く凄く混乱してるのは理解できるし、私達もこんな強引な手段を選んじゃったのは謝るわ。でも」

一旦、言葉を留める。留めて、豊胸な女性はじっと俊明の目を見据えて、言う。

「でも、今はこの方法しか取れないの。貴方と、貴方の大切な人達を守る為には」

俊明はクラウディアの目を見る。嘘も誤魔化しも無い、綺麗な目だ。
事態はまるで飲み込めていないが、少なくとも俊明にとってジュリアとクラウディアは信頼まではいかずとも信用は出来る人物となった。
最も、だからと言って頭から爪の先まで信用しているかといえばまた別の話で。あ、そうだと俊明は思い出したように質問する。

「その……俺の両親や友人の安全とかは」
「それなら心配ない。組織は数日前から、君の周辺に異変や異常が及ばぬ様に手を回している。それに……」

ジュリアの声が若干、力んでいる様に聞こえる。

「それに、今日がほぼ執念場になるからな。協力してくれるからには期待してるよ、安田君」
「執念場? 執念場って……」

ジュリアが言った言葉の意味が良く分からず、俊明は詳しく質問しようとした。
だが、恐らく執念場という言葉の意味はきっと大きな戦いになるとかそういう意味だろうと思い直し、止める。

「おかしいわね……ハクタカ君、どうしたんだろう」

耳元にジュリアがさっき、俊明に見せた液晶板を、携帯電話の様に当てているクラウディアが困った様子でそう呟く。
ハクタカ……どこかで聞いた気がすると俊明は思ったが、もう頭がパンクしかけているのに何か思い出そうとする気力も沸かない。
クラウディアは根気良く指先で液晶板のパネルを押し、再び耳元に当てるが、ハクタカなる相手が応答する様は無い。
47TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 19:57:17.87 ID:VOZLwlFO
「出ないのか?」
「うん。彼の事だから道草なんて食べてる訳ないし。どうしたのかしら」
「面倒だな……ヘンヨに連絡は?」
「もう付いてる。シュタムファータァちゃんに何も無ければいいけど」

ピクリと、俊明の耳が動く。無論シュタムファータァの事を忘れていた訳ではないのだが、実際クラウディアの口からその名を聞くとは。
どこまで自分達の事が掌握されているかは分からないが、あながちこの二人が属している組織の情報力は伊達では無さそうだ。
にしても……シュタムファータァは戦いに賛同してくれるのだろうか。恐らく……。

「そろそろ着くから準備してくれ、安田君」

「着く……って、ジュリアさん」

俊明がキョトンとした様子でそう聞くと、ジュリアはにやりと口角を上げて、言った。


「組織の本拠地にして―――――――秘密基地だよ」


                                ――――――――

どうにも寝付けない。何度も寝返りを打って目を瞑るが、どうも寝よう寝ようと思っても目が醒めてしまう。

のっそりと毛布から起き上がって、少女は乾いている喉を潤す為に、台所で牛乳でも暖めて飲もうと考える。
まだ肌寒い季節だからか、ソファーから立ち上がると急に寒気を感じて、適当に床に放り投げてある上着を着直す。
不思議と目が醒めている、というか冴えている為、電気を付けなくても冷蔵庫まで歩ける。

適当にテレビを付けると、面白くも無い深夜番組が流れだして無音状態である少女の部屋をほんの少しだけ賑やかにする。
普段は特に気にする事も無いのだが、今日はやけに一人だと部屋が広く寒々しく思える。電気を付けても多分変わらない。
冷蔵庫を開けて牛乳を取り出す。持ってみると結構軽くなっており、恐らくコップ一杯分程度で空になってしまうだろう。

思った通り、牛乳はコップの半分にも満たずに空になった。後でキチンと中身を洗って畳んでおこう。
それよりも新しく牛乳を買わないとなぁ……とレンジの中でクルクルと回っているコップを眺めながら、少女はぼんやりと物思いに耽る。

健やかな空の色の様な、綺麗な水色の髪を撫でながら少女――――――――シュタムファータァはソファーに座ってテレビを見ながらホットミルクを嗜む。
こうして見ると髪の毛の色以外はどこにでもいる、いや、そこら辺を歩いていてもあまり出会えない気がする整った容姿以外は普通の少女に見える。
しかし今の彼女の姿はあくまで人間社会に適応する為のいわば仮の姿だ。本来の彼女の姿は――――――――セカイを守る為に、あるいは壊す為に生み出された存在。

リーゼンゲシュレヒト。この世界に存在する既存の兵器とは次元も姿形も、何もかもが違う、単純に言えば戦闘を主としたロボット。
シュタムフータァを含めリーゼンゲシュレヒトは人知れず、世界の命運を掛けて死闘を繰り広げているのだが、それはまた別の話。
何故、俊明とシュタムファータァが出会い、そしてセカイを巡る熾烈な争いに巻き込まれたのかも、また別の話。

すっかり目が醒めてしまい、シュタムファータァは些か困ってしまう。
いつもならば一度目を瞑ってしまうとそのまま朝までぐっすり眠れるのに。何だか今日はどうにも眠りが浅い。
さっきから妙に、胸のあたりがドキドキとして収まらない。胸騒ぎという奴かもしれないが、何故胸騒ぎがするのかシュタムファータァには心当たりが無い。
最近は特に強敵や難敵が襲ってくる気配も無いし、イレギュラーな事態にも見舞われていないのに。

コップの中のホットミルクを最後まで飲んで、もう一度目を、ギュッと目を閉じて寝てみよう。
そう思い、シュタムファータァは横になろうとした。

その時だった。

誰かが、インターホンを鳴らした。こんな夜中に来客だなんて。
若干不審に思いながらも、シュタムファータァはコップをテーブルに置いて部屋の電気を付ける。
と、もしかしたらあまり顔を合わせた事はないが隣の人が部屋を間違えているのかもしれないと、ぼんやり思う。
しかしこんな真夜中に、というかここには割と長く住んではいるが、そういう勘違いでインターホンを鳴らされた事は一度も無い。
48TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 19:58:21.49 ID:VOZLwlFO
何だか、妙だ。どうもシュタムファータァの中でモヤモヤとした気持ちの悪い感覚が疼く。
胸騒ぎとこれに何か関係が在るのかは分からないが、もしかしたら虫の知らせ、なる物が働いているのかもしれない。
けれどもし部屋を間違えている人ならば、見て見ぬというか知らんぷりをするのは気分が悪い。

眠れないからか、やけに頭の中も冴えている。というより、寧ろ難しい事を考えれば眠りに付けるかもしれない。

一先ず様子を見てみない事には。シュタムファータァはドアへと近づこうとする。

「シュタムファータァ、俺だ。俊明だ。開けてくれ」

ドア越しから聞こえてきたのは、いつも聞いている馴染み深い声。
誰でもない、俊明、安田俊明の声だ。何だ、ヤスッちさんかと今まで疑っていた自分が阿呆らしくなる。
しかしそれならそうと早く声を掛けてくれれば良かったのにと、安堵した気分でシュタムファータァはドアへと近づく。

でも、こんな時間に何の用で……と思った矢先。

「ドアに近づくな!」

俊明とは違う、別の男の声が、それも怒声が響く。
その声にビクッと、シュタムファータァは身体を強張らせる。強張らせながら、一瞬で状況を判断する。
即座にドアから数歩後ずさると、男の怒声から間もなく。

音も無く静かに、鈍い光を宿した細長く鋭利な刃が、ドアを貫通して、シュタムファータァの目と鼻の先にまで迫ってきた。

次に聞こえてきたのは鈍く腹に響く様な銃撃音と、何か……人が倒れる音と、電化製品が落下した様な音? が聞こえてきた。
と、とにかく……何か武器を持たねば。少し引けている腰を無理矢理にでも立ち上げて、台所に向かう。
適当に包丁を取り出して、背中に潜めつつ、シュタムファータァは再びドアへと歩いていく。

インターホンではなく、ドアを二回叩く音。恐る恐る、近づいていくシュタムファータァ。

「開けてくれ、お穣ちゃん。怪しい者じゃない」

怪しい者どころか、恐らく命を助けてくれた恩人ではあるのだが、正直ドアを開ける勇気が出ない。
だが冷静に考えて刃を向けてきた輩が再び襲ってこない可能性は無いと言えない。寧ろ、経験上高確率である。
ならば一人でじっとしているより、信用出来るかどうかはともかく、協力した方が賢明だ。

「……ちょっと待ってて下さい」

そう答えて、シュタムファータァはドアに近づき、ドアノブのカギを回す。
そしてドアを開けて、命の恩人、らしき人物の姿を両目でしっかりと、見定める。

そこには、長身で一目見て異国人と分かる、彫りの深い端正な顔付きの男性がゴツゴツとしたやけにサイズの大きい拳銃を持って立っていた。
何よりシュタムファータァを驚かせたのは、男の髪の毛が紅い事だ。その髪の毛を見、シュタムファータァは小さく首を傾げて、呟く。

「……イェーガー……?」

シュタムファータァの呟きに、赤毛の男は返す様に首を傾げつつ、言う。

「……誰だそいつは? まぁそれはともかくお穣ちゃん、怪我はないか?」
「えぇ、まぁ」
「そうか。それなら良かった」

呆然としているシュタムファータァに、赤毛の男はロングコートの懐から、カードの様な何かを取り出した。
その何かはどうやら非常に薄い液晶板の様だ。液晶板に映っているのは―――――――シュタムファータァの、顔。

「私……? 何で私の顔が……?」

液晶板を仕舞い、赤毛の男はようやく、シュタムファータァに自己紹介をする。
49TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 19:59:10.97 ID:VOZLwlFO
「俺の名はヘンヨ。ヘンヨ・シュレ―。ちょっとばかしあんたを迎えに来たんだ」


「セカイを救って貰う為にな」



                                ――――――――

目の前に、自分と全く同じ姿をした人間が立っている。私はいつ、鏡を立てたんだろうと神守遥はトボケてみる。
しかしこんな大きな鏡を立てた覚えはないし、なにより目の前の鑑の中の私は瞬きをしているではないか。
あれ、最近の鏡って映した人間に瞬きをさせる機能とか付いてるんだっけ? 凄いなー技術の進歩って凄いなー。

あまりにもぶっ飛んだ事態に遭遇すると、一周して人間は極めて冷静になってしまうらしい。遥は今日、覚えた。
いや、ぶっちゃけ何が何だか何だか何が起きているか分からず、脳味噌がショートしているだけかもしれないが。
何にせよ、遥の前には遥と同じ髪の色をして、同じ背丈の長さ、そして同じ顔をした少女が立っている事だけは真実だ。

遥の意識はすっかり覚醒してしまった。試しに頬をつねる。全力でつねる。痛い。現実だ。もうやだ。

多分これは夢だ。私はいつの間にか眠ってしまっていて、あまりにも眠りが深いから夢が夢だと認識出来ないんだ。
それなら思いきって話しかけてみようと、遥は思う。もしこれが夢の中ならば、きっと現実に帰る事が出来る筈だ。
掌で両頬を強く叩いて、遥は冷静さを取り戻す。取り戻して、もう一人の自分をじっくりと観察してみる。

最初はあまりの驚きで頭の中が真っ白になっていたが、冷静に観察してみると目の前の自分は要所要所大分違う事に遥は気付く。
まず、肌の色が違う。何と呼べばいいのか……鏡を見てるみたいにそっくりだから鏡遥とでも呼ぼうか。
「鏡遥」の肌の色は割と白みがかっている遥に比べて浅黒く、言うなれば褐色に近い。それでいて髪の毛に隠れているがその……。
その、胸が大きい。胸……あっ、と遥は鏡遥が今どんな姿をしているか、気付く。

はいてない。どころか、鏡遥は何も着ていない。生まれたままの姿だ。
そうか、だから胸の部分が髪の毛に隠れてるんだ……って、何言っているんだ私は。
全裸の女の子をこんな所に立たせたら風邪を引いてしまうではないか。そう思い、遥は鏡遥へと、謝る。

「ご、ごめんなさい! 私ついボーっとしちゃって……今服持ってきますね!」

そう言って遥は振り向こうとした、瞬間。

右腕を逆らえない程の強い力で抑えられ、思わず体が前のめりになる。
一体何が起きたか分からず、遥は軽く混乱する。いや、もうどこら辺から混乱してるかすらわからないのだが。
抑えられた末、遥の身体は力づくで振り向かされる。振り返った先には鏡遥が―――――――遥を、抱き寄せる。

「えっ、ちょっ、へぇ!?」

鏡遥は遥をぎゅっと抱きしめて、体を密着させる。遥の身体に、何とも言い難い感触が走る。
混乱と緊張と恐怖と大きな胸が当たっていることへの気恥ずかしさが入り混じり、遥の視界はグルグルと回転している。
気絶するのは時間の問題である。そのまま視界が真っ白に―――――――。
50TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 20:00:51.13 ID:VOZLwlFO
「……優しいんだな。この世界の私は」

耳元で、「鏡遥」の声が聞こえた。その声は遥と同じ声ながらも――――――――どこか、悲しげに聞こえる。


「えっ……」

反応する間もなく、「鏡遥」は手刀を遥の首元へと正確に当てる。途端、かくんと遥の身体は糸が切れた様にぐったりとなる。
恐らく失神ないしは気絶している遥を、「鏡遥」は細い肉体に反して軽々と肩に担ぐ。
担いで、開いている遥の両目を優しく掌で閉じると、虚空に向かって呼びかける。

「リヒティ。特異点は回収しました。出て来てください」

鏡遥の呼び掛けに、何処からともなく一つの影が、音も出さずに忍び寄ってきた。
その影の正体が蛍光灯の光に照らされてうっすらと、露わになってくる。身長は鏡遥よりもずっと大きい。
髪の色は毒々しいまでの青。目付きは鋭く、程度の差はあれどどんな人間にもある筈の瞳孔の光が、無い。
死んだ目をしている、という言い回しは良くあるが、正に男の目は死んでおり、雰囲気も合わせて生気をまるで感じられない。

「ハクタカとかいう害虫がいましたね。ちゃんと殺しましたか?」

鏡遥の質問に、リヒティと呼ばれたその男は、軽く頷き答える。

「頭部と心臓部に二発。もし外れていても、あれだけ激しい水流の中では恐らく」
「自分の目で死体を確かめていないのですか?」

鏡遥はリヒティを睨みつける。一寸、空気が凄まじく重くなる、錯覚を覚える。
何も言わず、リヒティは鏡遥の顔を見つめ続ける。数秒すると、鏡遥は軽く溜息を吐いた。

「まぁ良いでしょう。貴方の事は信頼していますよ、リヒティ。ただし彼が生きていたらその時は」

リヒティは力強く、答える。

「承知しております」
「なら良いです。後は彼らの本拠地を見つけ出し、根こそぎ叩き潰すだけですね……案外簡単そうです」

リヒティは全身をくまなく覆っている灰色のトレンチコートから、直線的なデザインが如何にも兵器である事を誇示している、物々しい……恐らくライフルであろう武器を取り出した。
取り出し、下部のスイッチを回すと目標を捉える為の補助であろう、レーザーポイントがまっすぐ射出される。そうしてリヒティは鏡遥に尋ねる。

「特異点以外は如何なさいますか?」
「どうとでも。貴方が殺したければ私は止めません。私は計画を進められればそれで良いので」
「承知しました」


「お姉ちゃん……? どう……したの?」

ふと、幼い声がして鏡遥とリヒティはそちらの方向を同時に振り向く。
そこには状況が分からず、呆然とした表情で遥の妹――――――――寝巻姿の彼方が立っている。
彼方の視線は鏡遥が担いでいる姉、遥の方を向いており、リヒティの武器にまでは気付いていない様だ。

「あの……何なんですか……?」

リヒティは彼方の額へとレーザーポイントを合わせる。合わせ、引き金を―――――――。

瞬間。
51TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 20:01:31.19 ID:VOZLwlFO
リビング近くの窓ガラスを派手にぶち破りながら、何者かが遥の自宅へと飛び込んできた。
当然けたたましくなる警報装置にも、周囲に散らばっているガラスの破片にも気にも留めず、真夜中の侵入者は疾走する。
疾走しながら、リヒティが構えている武器のレーザーポイントと、彼方の間へと手に持っている黒色の杖を向けて、叫ぶ。

「リヒター!」

侵入者の叫びに答える様に、杖は急速に伸縮するとリヒティのライフルから放たれた弾丸を、彼方の額寸前で叩き落とす。
叩き落とされた弾丸は螺旋の如く回転しながら床へとめり込んでいく。侵入者は伸縮させた杖を元のサイズへと即座に戻す。この間、およそ0.05秒。
ソファーを飛び越え、侵入者は受け身をしながら、彼方の前へと滑り込む様に移動する。そしてリヒターと呼ぶ杖を、ビシッと鏡遥とリヒティへと突き付ける。

「やけに登場が遅かったじゃないか。それともタイミングを見計らっていたのか?」

先程までは落ち着き払っていた鏡遥の口調が急に刺々しく、尚且つドスの効いた声へと変わる。


「一条……遥」


被っているローブのフードが下がる。侵入者の髪型は偶然にも普段の神守遥と同じ―――――――三つ編みである。
名を呼ばれた侵入者―――――――否、一条遥は、鏡遥を見据え、叫ぶ。



「クイーン・ハーディアス……!」



「神守さんを……返せ!」



                                ――――――――

何で……どうして……。

落ちていく。掌を広げて、答えを問おうとしても、届かない。

何も出来ず、何も言えず、抗う事すら出来ず、落ちて行く。

どうして……どうして俺を裏切ったんです……。

リヒト……さん! リヒト……エンフィールド!


「うわぁ!」


両目を見開き、鈴木隆昭はベッドから叫んで起き上がる。
頭が割れる様に痛い。一体、自分に何が起こったのかが理解できない。確か……そう、確か。
確か、任務の途中だった。スネイルから授かった任務を達成する為に、巨大な地下水路へと潜入していたのだ。
するとまるで自分を待ちかねていたかのように、闇に潜んでいた大量の戦闘用アンドロイド達が襲いかかってきた。

ここまでは良い。隆昭は自らの能力をフルに使い、襲い掛かってきたそれらを残す事無く駆逐した。
それから水路の出口に差し掛かった時、通信が入ったのだ。仲間である、リヒト・エンフィールドからの。
通信を受けて、出口に着いた時リヒトらしき影を見掛けた瞬間―――――――隆昭は、撃たれた。

その際瞬時に、頭部と心臓の部分にそれぞれ両手を伸ばして防御態勢を発動していたので、弾丸は掌に間一髪突き刺さっただけで済んだ。
だが、そのまま疲労と傷の深さから成す術く水流へと落下した。それでこのざまだ。
次第に頭の中が冴えてくると、己が置かれている状況が把握出来る様になってくる。
52創る名無しに見る名無し:2013/02/11(月) 20:19:21.13 ID:8HJJWrgw
  
53創る名無しに見る名無し:2013/02/11(月) 20:19:22.25 ID:4T9JVogl
ks
54創る名無しに見る名無し:2013/02/11(月) 20:41:18.14 ID:27PN27dU
紫煙
55TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 21:02:43.80 ID:VOZLwlFO
まず、傷を受けた両手には何重にも包帯が巻かれている。掌まで巻かれている為、しばらく動かす事は出来なそうだ。
鼻につく、あまり気分の良いものじゃない麻酔や薬独特の匂い。周囲は汚れ一つ無い白い壁で覆われており、多分この部屋には自分が寝かされているベッド以外物が無い。
そうか……病院か、と隆昭は思う。多分、水流に飲まれて流された末に誰かに助けられたのだろう。
頭を触ってみると、額の部分にも厚く包帯が巻かれている。動く度に、歯を食い縛りたくなる様な頭痛がする。

しかしこんな所で眠っている訳にはいかない。早く……本部に戻り事態を知らせ……ないと……。

異様に体がだるく、今にも意識が落ちそうな、中。

「お、おい……看護師さん! 看護師さん、来て下さい!」

誰かの、若々しい青年の声が仄かに聞こえてきた。次に聞こえてくるのは、慌ただしく看護師が部屋に入ってくる音。
意識が朦朧としている隆昭の近くに看護師が寄り添い、水を飲ませてくれる。程良く冷やしてある水は非常に旨く、隆昭は生きている実感を覚える。

「す……すまない」
「動いちゃ駄目ですよ。まだ傷、治って無いんですから」

まだ経験が浅そうな、女学生の様に見える看護師は心から心配そうに隆昭の容態を気遣う。

「たくっ……心配させないでくれよ」

看護師の後ろで、ホッと安堵したように溜息を吐く学生服の青年。
不思議そうに青年を見つめている隆昭に、看護師は微笑みながら説明する。

「彼が用水路で倒れてた貴方を見つけて、救急車を呼んでくれたんです」
「そうか……君が俺を助けてくれたのか……」

隆昭の言葉に、青年は軽く顔を背けてぶっきらぼうに言う。

「別に助けたつもりはない。只、倒れてる人間をそのまま見過ごせるほど薄情じゃないだけだ」

そう言い、青年は踵を返す。返して、後ろを振り向かずに言う。

「じゃあ俺帰ります。後はお願いします、看護師さん」

「待ってくれ」

隆昭はどうにか身体を起き上がらせると、青年へと呼び掛ける。

「君の名前を聞いておきたい。いつか、この礼を返せるかもしれない」
「良いさそんなの。別に見返りが欲しくて助けたんじゃないし」

そう言って部屋を出ようとする青年に、隆昭はせめてものと、自分の名前を教える。

「俺の名前は鈴木。鈴木隆昭。この礼は……いつかじゃなく、必ず返す。覚えておく」


隆昭の自己紹介に、青年は振り返らない。振り返らないがぼそりと、言い放つ。
56TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 21:03:51.32 ID:VOZLwlFO
「……マコト。俺の名前は、マコト・アマギだ」


                                ――――――――

                           揺籃島を舞台に暗躍する謎の勢力、フェイカー。                           

「彼らは私達の姿を限りなく模倣して活動しているわ。ともすれば、私達自身に化ける事も出来る」

「どうしてそんな事を……?」

「単純に考えれば、私達の組織を内側から崩す為……でも、それなら神守さんを拉致した理由が分からないわ」

「あの時と同じく、神守遥が何らかのキーになってるんじゃないか?」

「その答え、私が教えてあげよう」

「貴方、いつの間に……」


                                 ―――――――
                            
                             予期せぬ裏切りと、望まぬ暴力の火花。


「お前、誰に銃を向けているのか分かってるのか?」

「分かっているつもりです。分かっていなければこんな物騒な物を向けませんよ」

「隆昭! お前、本気でリヒトに」

「落ちつけ、ヘンヨ。隆昭、なら俺は銃をヘンヨに向ける」

「なっ……!?」

「もしお前が本当に俺を偽物だと思うなら引き金を引け。もしお前が言う通り俺が偽者なら、俺はヘンヨに向かって銃を撃つ」

「……そういう事らしいぞ、隆昭。どうする? 俺は乗るぞ」
57TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 21:04:51.66 ID:VOZLwlFO
「……俺は、俺は……」


                                  ――――――
                                                       
                            セカイの明日を巡り、三人の遥が交錯する。


「気分はどうですか? 神守遥さん」 
                            
「貴方は……どうしてこんなひどい事をするの……?」

「ハーディアスは……私自身です。だから、私が彼女を倒さなきゃならない」


                                    ―――

玉座を中心に、ハーディアスはパノラマのように広がる、己の中心をぐるりと囲んでいる巨大なモニターを見、恍惚とした表情を浮かべる。
そこに映しだされるは、正に火の海と化した都市の姿。至る所から人々を焼き尽くす業火が沸き立ち、異常にドス黒い煙が道路を覆う。
人の声は聞こえてこないが、想像するに地獄、としか言いようの無い状況である事は容易に理解出来る。

「もう……もう止めて! ハーディアス!」
58創る名無しに見る名無し:2013/02/11(月) 21:05:39.94 ID:ohkvg5ym
59TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 21:07:58.14 ID:VOZLwlFO
玉座へと続く、長い長い階段で遥は打ちひしがれ、悲痛な声を上げる。

「こんな事したって……貴方は誰にもなれない! 私にも、一条さんにも!」

そう叫ぶ遥を、ハーディアスは冷たい目で見降ろす。見下ろしながらすくっと立ち上がり、階段を降りてくる。
そして遥の前でピタリと立ち止まると、ゆっくりとしゃがみ、遥の顔を指で持ち上げる。

「良い表情だ。お前のそういう表情が見たかった」

「ハァァァディアアアアアアス!」

凄まじい勢いで、一条遥は階段を駆け上る。そして、うな垂れている遥を弄んでいるハーディアスへと、リヒターを構える。

階段の段差を蹴り飛ばして、天高く一条は飛び上がり―――――――両手持ちしたリヒターを、ハーディアスへと振り上げる。

攻撃を仕掛けてきた一条に対して、ハーディアスは表情を変える事無く、何故か片手を天高く掲げる。
掲げて人差し指と親指を付け合うと、空間に響かせる様に派手に指を鳴らした。

瞬間、玉座から一条目掛けて何かが跳びかかってきた。異様に巨大な図体からは想像出来ない、身軽な跳躍。
咄嗟に遥はリヒターを構えて防御の構えを取るが、跳びかかってきたそれは一条へと強く握った拳を真っ直ぐに、ぶつける。
一瞬意識がトぶかと思うほどの衝撃。直撃はどうにか避けたが、思わず体勢を崩し、一条は階段を転げ落ちる。激痛により意識が軽く混濁し始めるが―――――――決して、負けた訳じゃない。

「くっ!」

どれだけ転げ落ちただろうか、無理矢理にでも意識を保つ為に歯を食いしばる。
食い縛りながら、一条は階段にしがみ付き、体勢を取り直す。その時、遥の両目に映ったのは―――――――。
60TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 21:09:17.83 ID:VOZLwlFO
「白い……リヒター……?」


遥とハーディアスを護る様に立ちふさがる―――――――リヒターに似た白く巨大な、何か。

ハーディアスは一条を見下す様に、尚且つ憎悪をこめた目線を向けながら、言い放つ。



                              廻るセカイ×パラべラム



「さぁ、リヴァー。お前の力を一条遥とリヒタ―・ペネトレイタ―に見せてやれ。そして……殺せ」


                                 HARU×haru



「細胞の一片も、残すなよ」



                                STRANGE DREAM 2
                            
                              The one Knight carnival



「ぬぅぅぅぅぅぅおおお!」

お世辞にも快適とも言えないコクピットの中で、青年は汗だくになりながらも必死に操縦桿を握り迫りくる敵という敵をなぎ倒していく。
青年が操縦しているのは誰もが憧れる、というか男ならば一度は乗ってみたい、言わずもがなスーパーロボットだ。
パネルラインが幾層にも成形されている重厚な胴体部は鎧を連想させ、また頭部で勇ましくそそり立つ二本角は、まるで兜を被ったサムライの様だ。
61TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/11(月) 21:09:56.03 ID:VOZLwlFO
「鷹介! あと敵はどれくらいいる!?」

名前を呼ばれて、鷹介という名前の青年は若干怒気をはらんだ口調で言い返す。

「数え切れる程度なら苦戦して無いだろ!」

その時、空から今、戦っている敵とは全く違う何かが、雲の隙間を縫って徐々に降下してくる。

「何だ、あの黒いの……あれもフェイカ―とやらか?」

鷹介は操縦桿を操り手を止め、空から舞い降りてくるそれに目を向ける。


「何……何だ、アレ……」


                                  パラべラム!
                                ヴィルティック・シャッフル
                               最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ  
                                 Diver's shellU


漆黒の魔神の中で、男は閉じている目を開く。

                              廻るセカイ-Die andere Zukunft-


目を開き、ぼそりと、呟いた。


                                 カインドオブマシーン
                                  グラインドハウス
                                 地球防衛戦線ダイガスト
                                CR ―Code Revegeon―


「……また来る場所を間違えた様だな、藍」






                                2014年、始動予定。嘘です。


今回参戦した作品の作者さん、並びに全てのロボスレ作品に尊敬と敬意を表して。
62代理@TロG ◇n41r8f8dTs:2013/02/11(月) 21:20:38.19 ID:8HJJWrgw
投下終了しました。
支援して下さり、本当に有難うございます。猿った事により投下が一時的に滞った事を心からお詫びいたします。
今回の企画で無断借用してしまいました各作品、並びに各作者さんには改めて謝罪いたします。すみません。
謝罪しつつ、いつでも連載作品の続きや再開、並びに新たな作者さんによる作品の投下で、ロボスレが盛り上がるのを一住人として楽しみにしています。
また、今回のクロスで面白そうな作品があるなと思ってくれた方、>>1のウィキには参戦作品を含め素晴らしい作品が沢山収録されております。
是非それらの作品に触れ、また気軽に作品の投下を待っているので、貴方が住人として参加するのを楽しみにしてます。雑談とかでもおKですよ

最後に今回の参戦作品のウィキ収録ページのリンクを張っておきます。
こちらから跳べますので是非是非

PBM:ttp://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/47.html
廻るセカイ:ttp://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/349.html
DSU:ttp://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/322.html
ネクソンクロガネ:ttp://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/85.html
カインドオブマシーン:ttp://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/669.html
グラインドハウス:ttp://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/1058.html
ダイガスト:ttp://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/590.html
CR:ttp://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/99.html
ヴィルシャ:ttp://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/191.html



それではスレ汚し、大変失礼いたしました。
また半年後くらいに

と書くつもりが連続投稿で引っかかるとは……orz
63創る名無しに見る名無し:2013/02/11(月) 23:36:03.84 ID:sV1GOaQW
>>62
改めまして投下乙!

……うん、まあ、しかたないよね
まだマイナーなんだからさ、うん
64創る名無しに見る名無し:2013/02/12(火) 20:10:03.34 ID:MNrM3dx1
感動した。こんなに嬉しいことはない。
ありがとう、ありがとう。
65創る名無しに見る名無し:2013/02/13(水) 18:53:35.03 ID:Xe0L3J5m
投下乙です。
弊作の見慣れた名前があって盛大に吹きました。
やはりタロさんの作品カバー率は凄いですね。
66創る名無しに見る名無し:2013/02/18(月) 12:16:37.57 ID:ZPzGTkQf
ロボットとかメカ系の萌SS書きたいからラノベ読んでみたいが
ISって文章的にどうなの?
UCガンダムやフルメタよりとりあえずISが今書きたい主題に近いからさ


中二書きたいからラノベ探してたときは禁書は文章変だからやめとけ言われた
67創る名無しに見る名無し:2013/02/18(月) 12:34:34.43 ID:bRjiSJFi
ハーレムはハーレム、メカアクションはメカアクション、必ずしも一作品に絞る必要はないのでは?
むしろいろいろ読んで、自分に合うのを探したほうがいい。
変なのに当たっても、まあ損にはならない……はず。
古本屋に行ってパラめくってみては。

ISは読んだことないけど、話に限ってはあまり評判はよくなかったような気がする。
文章力は知らん。
68創る名無しに見る名無し:2013/02/18(月) 12:44:05.25 ID:bRjiSJFi
あ、ラノベ板にこんなスレもあるな。

・戦闘描写が上手いライトノベル
・【総合】パワードスーツ、メカ少女作品

このへんでオススメないか聞いてみるのも手かもよ。
69創る名無しに見る名無し:2013/02/18(月) 12:57:36.77 ID:+pIPod0B
ISは商業作品としては稀に見る反面教師
キャラクターやストーリーに世界観、メカニック設定まで隙なくツッコミどころだらけ
文章にしてもSSでもないのに「げえっ、関羽」とかやっちゃうレベル
70創る名無しに見る名無し:2013/02/18(月) 16:28:40.31 ID:UqrENNv/
このスレで手本になりそうな作品ってあるかね
71創る名無しに見る名無し:2013/02/18(月) 16:33:53.06 ID:KvgQjt8m
スレ内なら素晴らしい中二にあふれているぞ。
72創る名無しに見る名無し:2013/02/18(月) 16:51:52.30 ID:UqrENNv/
いや文章とかそういう意味で聞いたんだw
あとサゲわすれすまん
73創る名無しに見る名無し:2013/02/18(月) 16:56:22.80 ID:mex8hz84
 
  __|__  __|__   __|__    _/_ | |
     /ヽ       /     __|__    /
    /  ヽ    `ヽ/        /ヽ     /  ̄ ̄
  /    \  _/ \_   _/  \_   / ヽ__

              /::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ`ヽ
             /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::',
             |:::::/ 7¨¨ `ー''l | ̄`ヽ:::!:::::|
             |::::/          ',:::|:::::|
             |::::i /、,,___   ,,___,,..、.l::::|::::|
             |::::i!.rriiiiii.`i i i!riiiiiii, i:::|:::::|
             i('|i   ̄  | |   ̄ .i!')!::::|
              | i!    r! !ヽ   l/ |:::::',
              l .i!    ` ´     i /::::::::、      /!
              l:::i!   `==≠´  ノ/;;;:::::::::ヽ、   ./ /_//
              i::::j ヽ、 `¨¨´ / |;;;:::::::::::::::::`-'"::::::::::::::/
             |./ノ   >、__ イ  .l;;;::::::::::::::::::::::::::::_,.-''"´
           ,.ィ'''¨             `゙''ー‐--、__r'"
        _,.-''"       ',     ;          ヽ、
,.__,.-‐一''"´         '.,    , '            `ヽ

    ┌:┐┌┐ ┌:┐┬‐   _/__
     |二l l二|  l二l |二コ   /    ヽ  |    \ 
     | ┌‐┐.|   ‐;┬.ヒ二|  / __|      |     | 
     | └‐┘」  ノ`ト、ノ ヽ   (_ )\   \/  
74創る名無しに見る名無し:2013/02/18(月) 17:41:56.06 ID:KvgQjt8m
中二な文章ってのも難しいな
75創る名無しに見る名無し:2013/02/18(月) 18:18:27.73 ID:F+IvUj+S
>>70
文章力すげーって言われるのはDS世界観のシリーズ
同じく描写の情報密度すげーって言われるのはワイルドアイズ
76創る名無しに見る名無し:2013/02/18(月) 19:54:23.41 ID:w8vmbKjR
最近、何がどうなら中二なのか分からなくなってきた
77創る名無しに見る名無し:2013/02/18(月) 20:01:54.08 ID:OMXkZ16j
厨二というとドラグリヲかな
重苦しい世界観と表現、いかにもな要素で単体だと「うへえ」となる所を、
勢いとキャラクタの強さで中和しつつ、より厨二成分を高めているといった印象
78創る名無しに見る名無し:2013/02/19(火) 01:48:50.31 ID:U1SdUN+o
ドラグリ男は読もう読もうと思いながらなかなか決心がつかなくて読めない
79創る名無しに見る名無し:2013/02/19(火) 19:52:02.05 ID:ul+FDdJH
お前等、最近何か楽しい事とかあった?
80創る名無しに見る名無し:2013/02/19(火) 20:25:39.58 ID:U1SdUN+o
あった
ガンダムXディバイダーが白くて美しかった
81TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/20(水) 00:24:10.20 ID:yvek7hf/
おこんばんわです。久々にロボスレが賑わっていて何より
一先ずクロスを読んでくださった皆様に多大なる感謝を
短めですが返答でも
>>63
す、すみませぬ……じ、次回、次回こそ……
今後の投下を楽しみにしています(頭を下げつつ
>>64
そう言って頂けると本当に書いた甲斐があります
こちらこそありがとう、ありがとう
>>65
そう言って頂けると書き手冥利に尽きます
いえいえ、師匠の方がずっとカバー率高いですよ
ね、師匠(ニヤリ
82TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/20(水) 00:26:28.27 ID:yvek7hf/
では師匠と話題が出た所で

遅ればせながらPBM4周年という事で
プロローグをサウンドノベルらしき動画にしてみました
少しでも原作の恰好良さ、面白さが再現出来てたら幸いです
ttp://www.youtube.com/watch?v=_w49Huk7-K4&feature=youtu.be

では、師匠の今後、ロボスレの今後を楽しみにしつつ半年後くらいに
83創る名無しに見る名無し:2013/02/20(水) 12:19:45.15 ID:GNs+UdnX
>>82
ニコニコにもうpするべき
84TロG ◆n41r8f8dTs :2013/02/20(水) 20:27:46.63 ID:yvek7hf/
>>83
ご要望に答えました
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm20141013
こちらもよろしくです
85創る名無しに見る名無し:2013/02/20(水) 21:55:31.40 ID:LGvDVy9G
>>84
かっけぇw
86創る名無しに見る名無し:2013/03/01(金) 18:52:42.38 ID:bG7KNdvN
皆、規制の波に飲まれたか……
87創る名無しに見る名無し:2013/03/01(金) 20:15:37.48 ID:d8I2XoKq
いや、別に
88 忍法帖【Lv=6,xxxP】(1+0:8) :2013/03/01(金) 20:48:14.31 ID:WR7nKs03
亀の歩みで投下準備中です〜
89創る名無しに見る名無し:2013/03/01(金) 21:19:27.25 ID:bG7KNdvN
いたのか。安心したぞ
皆もっと雑談とか書いて良いんじゃないかな
90創る名無しに見る名無し:2013/03/01(金) 22:21:18.51 ID:d8I2XoKq
語ることも語り合いたいことも無いしなあ
91 忍法帖【Lv=6,xxxP】(1+0:8) :2013/03/01(金) 22:37:06.39 ID:gnuUXjAE
自分から振れるネタもないですし、
感想を書くにはまだ準備不足……
92創る名無しに見る名無し:2013/03/07(木) 04:53:16.94 ID:MKK3Jwgk
バトルロボット魂でビランビーが猛威を振るっているとの噂
93創る名無しに見る名無し:2013/03/07(木) 19:29:23.00 ID:cnkvfmbX
公式PVがネガティブキャンペーンにしか見えなかったアレね…
もう出たの?
94創る名無しに見る名無し:2013/03/08(金) 02:54:52.15 ID:VMTNKlIx
まあ、ダンバインが空飛ばない時点で俺的には選外だけどな

本気出せばかなりの時間ブーストで滞空できるらしいが、ダンバインの飛行ってそういうことじゃないだろ
95創る名無しに見る名無し:2013/03/10(日) 21:59:35.97 ID:B5KKbcnB
てす
96TロG ◆n41r8f8dTs :2013/03/11(月) 00:35:33.59 ID:DW89v1hE
>>85
あざっす!ちょっとだけ自信沸いたよ!

てな訳で数週間ぶりです図鑑スレ。
今回、また懲りずに動画を作ったのでこうしてスレに参上いたしました。
それぞれ趣向が違う動画ですが、暇つぶしの間際、楽しんで頂けると幸いです。

まず、自作のロスガの新作をサウンドノベルもどきで作ってみました
ttp://www.youtube.com/watch?v=DR5Y6bvv95A&feature=youtu.be

最後に続きはSSとは書いてありますが、やる気になればまた動画にしたりしなかったり

次は現在も誠意的に活動されている古時計屋さんの作品、CRをプロモ風に宣伝してみました。シャレオツと少しでも思って頂けたら嬉しいです
ttp://www.youtube.com/watch?v=DR5Y6bvv95A&feature=youtu.be


最後にごめんなさい、上の二つは前作のアオモリーションみたいなネタ要素が無いんだ(´・ω・`)
だからせめてのお詫びでパラべラムを某アニメの次回予告風にしてみたよ。これで許して欲しい
ttp://www.youtube.com/watch?v=DR5Y6bvv95A&feature=youtu.be

何か続けてURLを張り続けるという業者みたいな事をしてすみません。
では半年後辺りに
97創る名無しに見る名無し:2013/03/11(月) 00:40:52.50 ID:DW89v1hE
ってURL思いっきりミスってるし……こちらがリベジオンのCM
ttp://www.youtube.com/watch?v=7XHmJIk0TnA


こちらがパラべラム次回予告です
ttp://www.youtube.com/watch?v=TD2uB_7Xgu4


ホントごめんなさい。半年位身を潜めます
98創る名無しに見る名無し:2013/03/11(月) 00:42:57.38 ID:slKbsAKF
なんかすげーもんキターw
99創る名無しに見る名無し:2013/03/11(月) 00:44:34.29 ID:s5O0vgjH
まじで最後の誰www
100創る名無しに見る名無し:2013/03/11(月) 21:26:16.67 ID:TM1NdKvS
たろ氏も動画に手を出したのか……
自分は……あまり進歩してないな

というわけでバイラム中編2、投下します
101創る名無しに見る名無し:2013/03/11(月) 21:26:45.75 ID:TM1NdKvS
「隊列を崩すな!」
「射撃隊! バイラムの目を眩ませろ!」
 戦場のありとあらゆるところで指示が、部隊長や指揮官の叫びが飛かっている。
 それと並行するかのようにバイラムのキバが剥き、突き立てている。
 わずか一秒という刹那でPMの機体が、戦艦のエンジン、ブリッジ、艦首が吹き飛んでいく。 
 一瞬たりとも気が抜けないという状況だった。手を一つ間違えればあっという間に全滅するだろう。
 後方から巡洋艦が支援砲撃を行王と準備を進めていた。素早いバイラムに照準を合わせるとエネルギーを充
填を開始した。そして砲口から眩い光のラインが真っ直ぐに飛んでいくとバイラムの脇をすり抜けていった。
 素早い動きでその合間を潜り抜け、剣を構えると一気に近づこうとするが一機のポーンが赤い弾頭を一発、
発射した。煙を上げながらバイラムの目の前までくると破裂し辺りに閃光が広がった。そしてその影から朱雀
とネルソンが槍を構えて突っ込んできた。
「うおおおお!」
「でやぁぁぁ!」
 雄叫びとともにバイラムの胴体を貫く。ひしゃげた音と共に弾け飛んだ装甲の一部がはじけ飛び、軽い火花が
機体から飛び出してくる。瞳から光が消え、力なくその場にうなだれた。
「や、やった!」
 誰かがそう叫んだ、次の瞬間――宇宙の藻屑に成り代わっていた。EX1が発動したのだ。赤いラインが身
体を駆け巡り、さらに凶暴さが加速していく。胴体を貫いている槍は刺さったままであったが意にも返さずに敵へを
向かっていく。痛みと怒りを表すような軋んだ音が動くたびに聞こえてくる。だが真空の宇宙では誰にも聞こえない。
「ま、まだ動くのか!?」
 残された者たちは素早く散開をし、間合いを取り直した。が逃げ遅れたのかその間に一機のポーンを抜き手
で打ち貫いた。胸から飛び出た腕は中のパイロットの命を奪ったこと象徴しており、そしてそれすらごみ扱い
同然に投げ捨てる。
「化け物めぇ……」
 隊長は歯軋りをしながら再び槍を構えた。が、バイラムは超スピードで隊長のポーンに近づくとそのまま手
足を握り潰し、一気に引きちぎった。うめき声を上げながら抵抗をするがそのまま頭部に頭突きを叩き込み、
踵落としでポーンを撃墜した。だがそのバイラムも後方から来たネルソンの一突きによって銀河の光となった

 そんな中、銀色のPMと紫の鬼もまた刃を重ねていた。
 マシンガンを片手にボルスはバイラム・カスタムへ向かっていく。射程距離内に入ると火花を散らしながら
弾をばら撒くが、バイラム・カスタムはすかさず方向転換をし攻撃を避けた。そして弾の雨がやむのを確認す
ると一気に間合いを詰め、パラディンの懐へと飛び込む。手に持っている太刀を縦に振り下ろすが持っている
剣に遮られた。剣同士が震えつつ、徐々にパラディンの喉元へと刃が迫る。だがすかさずいなして離脱をし、
態勢を立て直すと再びマシンガンをバイラム・カスタムへと向けた。
 銃器は使わないのか?と挑発するかのようにマグチェンジを行う。
 銃器は苦手なのよ、といわんばかりに小刀を投げつけるが彼もまた大きく右へ移動しながら暗礁を盾にしていく。
 一定の距離感を保ちながらバイラム・カスタムは後方へと大きく飛びのく。だが今度はミサイルと言わんばかりに
パラディンは攻撃の手を休めなかった。しかし飛んでくるミサイルを緩やかな曲線を描きながら避けていく。
が速度は他のバイラムとは違い、宇宙に吹く突風のように素早かった。その証拠にミサイルは燃料が切れ、追
いつく前に爆発をしていた。十分距離を取り直――。
「あら?」
 コックピットに衝撃が走る。振動自体は大きいものではないが動きをつい止めてしまう。辺りを見渡すと脇に
小さな岩の存在に気が付いた。取るに足らない小さな岩だったが隙ができた事には代わりが無かった。
「うおおおお!」
 アルが雄叫びと共に突っ込んでくるがセルは素早く操縦桿を倒し紙一重でかわす。数十センチというわずか
な差であったがセルの技量ではこれでも小手先に過ぎない。
 目の前を銀の機体が通り過ぎたあと、別の銀色が見えた。 大型のランチャーを背負ったレイのナイツがこ
ちらに砲口を向けている。
「当たれ!」
 トリガーをひくと大型の弾頭が煙を上げながらバイラム・カスタムへと向かってく。
 だが彼女は焦ることなく操縦桿を倒し、ペダルを踏み込んだ。
 岩を滑るかのように下へと移動させると素早く反転させてバイラム・カスタムの背面のバーニアが輝き、大
きく飛び去った。弾頭はかつてセルがいたところで爆発をするとトリモチのような粘着質の液体が飛び出してきた。
「危ないわねぇ……」
102創る名無しに見る名無し:2013/03/11(月) 21:27:48.05 ID:TM1NdKvS
 当たっていたらきっと自分はやられていただろう。がそんな気持ちになる前にパラディンが上から槍を投げ
つけてきた。とっさに身を翻して避けると槍に付いていた鎖に引き戻され、またまた手元へと戻っていった。 
 便宜上は三対一。というものの完全にボルスを主軸とした戦いになっており、その隙間からアルやレイがサ
ポートをするという形になっていた。
 理由は簡単、彼女に対抗できるのは現在のところボルスだけなのだ。他の二人では技量の差が明らかであり
うかつに手を出せばやられかねないという状況であった。
「なら、こちらも気を取り直していくわね」
 わずかな間隙を見計らってバイラム・カスタムは太刀を構えると再び動き出した。
「散開!」
 ボルスの声と共に再び一斉に散らばる。二人とも素早く物陰に隠れる間、パラディンがバイラムへを突っ込
んでいく。剣と太刀が再度ぶつかり、激しい火花が何度も起る。バイラム・カスタムの方が出力が上なのか鍔
迫り合いの際、パラティンが押されていく。先ほどと同じようにいなそうとするが今度は小太刀がパラディン
の喉元へ狙いをつけた。しかし、素早く下に潜り込み、力をいなすとすかさず腹部へと蹴りを叩き込んだ。そ
の衝撃でバイラム・カスタムは大きく後ろへと仰け反る。
「くぅぅ!」
 激しい振動と共にセルの口から軽いうめき声が飛び出してきた。が、すぐさまバランスを取り直し、戦闘体
勢を整える。システムは正常、バランサーも行かれていない。装甲に軽いダメージを負っただけだった。
 一方のボルスは肩で息をしていた。荒い息遣いを何度も直そうとするが目の前の敵にはとてもではないが気
を抜けない。操縦桿を握る手からは汗が止め所無く流れている。パイロットスーツは汗ばんでおり、脱水症の
初期状態である唇の渇きが現れていた。
 そして、その背後にアルとレイがバックアップに入れるようにバイラム・カスタムへ銃口を向けていた。
 参ったわね……ここから一撃で倒す方法は……。そんな事を考えていると通信機が鳴った。
「聞かせろ……なぜ、ケントを殺した!」
 相手は目の前の騎士からだった。その声はかすれ気味で聞き取りづらかったが彼が言いたいことはセルには
理解できた。
 何故、ケントを殺したか?  そんなの決まっている――。
「任務だからよ、貴方だってそうでしょ? ボルス大尉」
 自分が思っている以上に冷たい声で飛び出してきた。そしてペダルを踏み込むと一気に近づいていく。
 バイラム・カスタムは再び刀を振り上げて、攻撃を仕掛けようとするが横から再び邪魔が入る。
 今度はアルのナイツがチャフ・グレネードを撒いた。センサーが乱れ、捉えることが出来ない。
 ボルスは呼吸が整うと彼もまた再び彼女へと挑む。操縦桿を握りなおし、気合を入れなおした。
「ならば、私は友の敵を! 討たせてもらおう!」
 たった一つしかない友情を糧に。銀の騎士は再び修羅へを剣を向けた。

「第五PM中隊、バイラムの撃破を確認!」
「第十六機動小隊、帰還! そのまま修理に入ります!」
「残存兵力、バイラムは残り十機です!」
 作戦が開始されて十二時間、戦況は変わった。
 ブリッジの中は緊迫感に満ちていたがオペレーターから入る報告が比較的明るい物になってきた。
 バイラムの数が少なくなっていた。数が少ないという事はやられれば替えが聞かない。
 それだけではない、かつての無敵さは無くなったのが何よりも大きかった。
 通常のPMでもバイラムを倒せるようになったという事実は士気を大きく上げる理由になった。
 一機一機自体はバイラムと出会った頃とはそう変わらない。だが、人は積み重ねてきたのだ。
 戦術を、戦略を、そして悔しさを。そしてその成果が今の戦況だと自負している。
 もはや、バイラムは修羅ではなくなった。単なる強いだけのパンツァーモービルに成り代わった。
「攻撃目標、距離、十万を切りました!」
 オペレーターの報告に司令は腹部に力を込めた。
 敵の本拠地が見えてきた。銀色の光を放つ雪の結晶はまるで何も知らないかのようにゆらゆらと揺れている。
 後は高速艇を先行させれば喉元に刃を突きつけたも同然だった。
 だが、それを邪魔する者がいた。突如、レーダーにアンノウンの反応を知らせるアラートが鳴り響く。
「新たな反応が……識別……”オーガ”!?」
 オペレーターの報告に艦長は思わず首をかしげる。聞いたことの無い識別に驚きの顔を隠せなかった。
「そんな識別は聞いたことがないぞ!?」
「ベルガン主任が月面と遭遇したのと同じPMです」
103創る名無しに見る名無し:2013/03/11(月) 21:28:46.04 ID:TM1NdKvS
「ベルガン主任が月面と遭遇したのと同じPMです」
 月面、ケントが目撃したあのPM。バイラムと同じでありながら姿かたちが違う、一つ目の修羅。
 赤いの身体に左耳のあたりに棒状のセンサーが付いてる。今度は完全武装といわんばかりに装備を充実している。
 巨大なロケットランチャーから始まり、大型のミサイルランチャーにクロー、小型のマシンガン。
 一目だけ見れば明らかにこちらへ敵意ある視線を向けている。
「フリューゲルスにいる彼女に連絡を取れ!」
「了解、カミーラさん。応答をお願いします」
 オペレーターがフリューゲルスにいるカミーラに直接呼びかける。
 司令直通で呼びつけるこの回線は強い権限を持っており、拒否する事は不可能であった。
 モニターにカミーラが現れる。バイラムUの調整中であったのか、キーを叩く手を休めた。
「カミーラ女子。君はこのオーガについて知っているかね?」
 司令が"オーガ"のデータをカミーラに見せる。
「知ってるも何も……オーガは私たちが普段使っている簡易戦闘用機体です」
「か、簡易だと?」
「こちらからもデータを送ります」
 カミーラはキーを再び叩き始める。そして数秒の間の後、艦のメインモニターに”オーガ”の表示された。
「デライト?」
「各部は改良されていますが機体自体はバイラムと同等です」
 バイラムと同等という言葉に顔をが青ざめていく。すぐさまオペレーターに問いただした。
「オーガの反応は?」
「つ、次々に増えています!」
 まるで雨後のタケノコのようにレーダーの点滅は増えていった。
 一つが二つに、二つが四つに、四つが八つに。そして、最終的には――。
「百……二百……五百を超えました!」
「なんだと!?」
 バイラムと同じ性能持つ者が五百、こちらへと向かってきた。一つしかないその瞳に獲物を据えて……。

「な、なんだ、こいつらは!?」
 突然の来訪者にみな、浮き足を立っていた。敵はバイラムだけじゃなかったことに驚きを隠せない。
 しかも、数があまりにも多すぎるという状況が混乱に拍車をかけていた。
 今、目の前には黒だけではく赤も交じり、混沌とした光景があたりに広がっている。
「く、くそ!」
 一機のポーンが槍を構えて突っ込んでいく。しかしデライトの剣がそれよりも早くポーンの腹部を貫いた。
 そして、そのまま引き抜くとミサイルとマシンガンを叩き込む。火花が散るポーンの爆発を背に次の相手を
探し始めた。緑のカメラアイには感情らしいものは無く、ただひたすら戦いをするためだけの機械がそこに居た。
「こ、こいつらも――」
 全てを言う前に腕を引きちぎり、すぐさまコックピットに蹴りを叩き込まれた。
 機体を大きく吹き飛ばし、まるでサッカーのパス回しながら蹴り続け、そして巡航艦に向かってシュートを放った。
 蹴られたPMが艦の壁に引きずった跡が残ると同時に爆発が巻き起こる。
 そのまま間髪を入れずに艦のエンジン、左舷、右舷、砲門、そしてブリッジを持っていた銃器で破壊した。
「うあああ!」
 一機のネルソンが我武者羅に向かってくる。だが、それより早くネルソンを囲むと持っていた近接用の棒で
一斉に叩き潰した。顔はひしゃげ、背中のバーニアは形を変え、胸部や腹部の装甲はあっという間にへこみ
手足は完全にちぎれ飛んだ。
「くそ……このやろう!」
 苦虫を噛み潰したかのような表情で突っ込むが横から飛び出してきたデライトのクローがコックピットを貫
通し、そのまま握りつぶされた。

 先ほどまで優勢だった戦況はデライトの出現によって一気にひっくり返ってしまった。
 バイラムと同じ性能でありながらそれとは違う人海戦術。藪をつついて出てきたのはクモのような鬼子であった。
 無論、槍で対応出来るがデライトの数多すぎて瞬く間に各個撃破されしまう。
 徐々に兵力が減っていく中、司令部に通信が入った。相手はコウシュンであった。
「司令、作戦の変更、及び前倒しを申請する。我々を含む一部隊を先行させ敵本拠地に強襲。その後、敵指令
の確保。及び、機動兵器のコントロールの停止、もしくは破壊する。最悪、出撃ハッチくらいはつぶす事は出来るはずだ」
「なっ! 馬鹿な、博打ではないか!」
 減りつつ兵力に対して今、ここで一部を強襲させるなど無謀に近い。
 が、かと言ってこのままでは消耗を待つだけなのは誰の目にも明白だった。
 エグザトリアの使用を考えたがそれを使いこなせるパイロットはいない。
「だが、あのデライトという機体の数を省みれば致し方ないだろう」
104創る名無しに見る名無し:2013/03/11(月) 21:30:29.41 ID:TM1NdKvS
 数が少ないバイラムとは違い、デライトの異様な数に比べれば当然だった。
 こうしている間にも戦力は減っていく。司令は決断は――。
「……わかった、作戦の変更を各部隊に通達!」
「了解、司令部より各指揮官へ――」
 オペレーターがキーを叩いて各部隊に作戦の変更を通達する中、司令はもはやさじを投げたといわんばかり
に勢い良くキャプテンシートに身体を預けると大きなため息を付いた。
「……もはや退路は無い、ということか…」

 伏義の格納庫。リーシェンは黄龍のコックピットにて少し違和感を感じた。
 操縦桿が重いのだ。小回りが聞かない、というわけではない。何か大きな荷物を背負ったような、そんな重さだった。
 無論、動作に不満があるわけではないが疲労の際には恐らく隙になる事になりかねない。
「水原、少し重い気がするんだが……」
 足元で整備をしている奈央に話しかける。奈央はチェック中の手を休め、リーシェンの問いかけに答えた。
「ああ、燃料タンクを少し大きくしました。それと弾数も増やしたので重量が増しましたので気をつけてください」
「そうか……」
 普段ならば何の説明も無い事に怒るリーシェンであったが今回ばかりは言葉を止めていた。
 作戦前に深呼吸をし、じっくりと精神を高める。そして作戦内容を再び反芻し始めた。

 先ほどコウシュンから作戦の変更を知らされた。自分たちは特攻をし敵陣を崩す、と言い放ったのだ。
 無論、リーシェンを含む部隊の人間には少し戸惑いのようなものが見受けられた。
 特攻に文句があるわけではない。自分は軍人なのだから命令は絶対だ。
 勝てないんじゃないか? いいや、我々は勝利には拘るが敗北への恥や恐れは無い。では――。
 重い空気の中、誰かが挙手をした。最近兵になったばかりのチャンだった。
「た、隊長は本気なのですか?」
「無論、本気。というよりもほかに手段が無いと言った方が正しい。お前たちに聞きたい。五百機のバイラム
を相手に勝てる方法は何かあるか? あるなら立案をして欲しい」
 声を荒げず、まるでいつものブリーフィングのように平然と言葉をつむぐコウシュンに皆、呆然とした。
 リーシェンを始め、そこまで辞退が逼迫しているとは思っておらずこの事態にどこと無く楽観的な部分があった。
 だが、それは考え違いであったことを思い知らされる。五百機のバイラムを相手にするという何かの冗談と
しか思えない言葉が戦闘中に飛び出したのだ。恐怖も実感できないままだった。
「……信じられないと言う顔をするのも理解できる。だが、今現在の状況ではこの言葉しか出ん。こうしてる
間にも味方一人が死んでいる。どうせ死ぬのなら私は一矢でも報いたい。あの殺戮兵器にな。冷酷かもしれん
が一言だけ言わせてくれ。お前たちの命、味方の為に人類の為に使ってくれ」
 コウシュンが敬礼をする。その顔はどことなく自分が真っ先に命を捨てると言う覚悟が現れていた。
 皆、顔を見合わせると口々に言葉が出てきた。
「隊長、かっこつけないでください」
「我々は……行きます! そして必ず勝利を!」
「そうだ、あいつらは故郷を焼いたんだ! それだけじゃねぇ、パーチャイも死んじまった! あいつのせいで!」
「やろう! これで戦いを終わらせるんだ!」
「隊長! 我ら陸戦大隊! 任務に着きます!」
 皆そろって敬礼を返した。その動きは乱れ一つもなく、ただ一身がその見に現れていた。
「すまない、お前たち……」
 コウシュンは深く頭を下げた。その顔が上がるまでみな、敬礼をしたままであった。

「リーシェン少尉、どうしたんですか?」
 そんなことを思い出していたら奈央が話しかけてきた。神経を集中させすぎて外部のことに気が回らなかったらしい。
 思い出してみればバイラムの正体を掴んだのは奈央だった。そこからバイラムの全貌が明らかになったのだ。
 だが、事実は残酷であり彼女は精神を追い詰められた。宇宙飛行士を実験材料にされ、彼女は恩人を
追い詰める結果になったのだ。そして、黒幕は今、目の前にいる。気丈に振舞っているのは自身に押し潰され
ないようにしている。単なる躁状態かもしれないが。「いや、こんなことを言うのもなんだが……な」
 うまい言葉が出てこない。何か安心させるような言葉を考えてみるが何も思い浮かばない。
 教養は隊長のおかげでそれなりに付いているつもりだったがこういうときに限って出てくるものは少ない。
「……水原、けりを付けて来る。お前の代わりにな」
 やっとの事で出てきた言葉は月並みなものであった事に落胆を隠せなかった。
105創る名無しに見る名無し:2013/03/11(月) 21:31:23.30 ID:TM1NdKvS
 もう少しいい言葉をと何度も思ったが絞り出てきた以上こう言うしかない。
 そんな言い訳をしているリーシェンに奈央は若干悲しみを抑えるかのようにそっと微笑む。
「……ありがとうございます、でも早く行かないと隊長に置いていかれますよ」
 奈央の言葉に少し呆気に取られた。周りを見てみるとみなそっぽを向いていた。どうやら誰も教えてくれな
かったらしい。 が、すぐに気を取り直すと操縦桿を握り直し、カタパルトへと足を進める。
「ふっ、チャウ・リーシェン。黄龍、発進する!」
 ランプがブルーになると同時にペダルを踏み込み、伏義から飛び出していく。
 先ほど注意した重い操縦桿は今のリーシェンにはいい手ごたえを与えてくれた。
 そして先行しているコウシュンの玄武に追いつく。玄武のブースターの調子はいいようで一気に加速をする
と瞬く間に前線へと躍り出ていた。リーシェンだけではない、大隊の面々をはじめ、新兵のチャンですらコウシュ
ンに追いつこうと懸命に後についている。
「調子はどうだ?」
「問題ありません」
「これまで以上に高まっています!」
 声の調子から完全に気合が入っていることが分かる。今は部隊全体の士気は恐らく最高潮だ。
 リーシェンもまた己の高ぶりを感じ取れた。身体が軽く感じるのはそのせいだろう。
「よし、わが隊はこのまま敵本拠地へと一気に突貫する。我々の意地にかけても突破口を開くのだ!」
「了解!」
 銀のPMを先頭に、無数のPMが雪の結晶に向かって突き進んでいった。
 それを遮るかのようにデライトがその路を塞ぐ。数は三機、バイラムと同性能だけ合ってあっという間にコ
ウシュンの玄武を取り囲んだ。が、慌てることなく真っ直ぐに突撃を仕掛けた。デライトがトリガーを引く前
に体当たりを仕掛けるとそのまま流れるかのように左手に持っていた六角棒をデライトの胸部に叩き込んだ。
 胸部の装甲がヘコむと同時にそのまま回り込み、他二機の斜線軸の先へと持っていく。だがデライトたちは
動ずる事も無く発砲する。が、それすら読んでいたのか先ほどの一機を盾にそのまま一気に突っ込んだ。銃撃
を受けたデライトは背面を穴だらけにしながら火花を散らしている。そして、二機の間へと大きく突き飛ばす
と爆発が巻き起こった。弾け飛ぶ破片に回避する事が出来ずに他の二機も爆発を引き起こす。
 リーシェンの黄龍もまた四機のデライトを苦なく切り捨てていく。当然だった、リーシェンが持っている剣
はあの森宮一明の、バイラムの剣なのだから。黄龍用に改装したとは言え、瞬く間に使いこなせたのは
リーシェンの努力と奈央の調整の賜物であった。
「このまま一気にいくぞ! 遅れるなよ!」
「了解!」
 
「……なんであたしらは待機なのよ?」
 フリューゲルスの中でファルがふくれっ面のままそっぽを向いている。他の部隊が率先して本拠地に強襲を
かける中、自分たちは待機と言う現状。それがなんとも腹立たしかった。装備もかなり新調し、これからと言
う時にである。
「作戦聞いてなかったの?」
 マールはそんなファルに呆れ顔をさせつつ、入ってくる報告を確認している。
 新しい情報が一つ入るたびに素早くキーを叩き、新しいシミュレーションを組み立てる。
 戦場でスムーズに指示を送るために父親から徹底的に染み込まされたマールの癖であった。
 最も、三つ以上のケースを想定するのはひとえにマールの才能だが。
「聞いてたわよ、突入部隊の援護でしょ? 最後になってこんなことになるなんて聞いてないわよ」
 首謀者をとっちめられない事がファルには不満であった。ファーストコンタクトをした自分たちにしてみれば
バイラムを作った人間の顔を見てみたいと何度も思った。
 だが自分は軍人である以上、命令は絶対だ。殴りたい奴に殴れないけど我慢するしかない。
 苛立ちを隠せないからマールに当たる。が、マールはあっさり流されてしまい、どうしようもなくなる。
 出撃命令が出ない以上やきもきするしかない。苛立ちのあまりコックピットで地団太を踏んでいる。
「もう……」
 ファルが考えているのが手に取るように分かるのか、マールはキーを叩く手を休め、自分が立てたシュミレ
ーション映像を送った。彼女は唸るような声を上げながらシミュレーション映像を眺め始めた。
「すみません、私たちのために……」
 横からカミーラが頭を下げた。バイラムUを乗せてくれる艦はマールたち以外にいなかった。
 理由は簡単、彼女が裏切るかもしれないという不安からである。異星人という特殊な相手に誰もが責任を取
106創る名無しに見る名無し:2013/03/11(月) 21:31:35.01 ID:s5O0vgjH
紫煙
107創る名無しに見る名無し:2013/03/11(月) 21:32:48.01 ID:TM1NdKvS
りたくないというエゴが見え隠れしていた。そこで彼女と縁があるビスマルク隊が選ばれたのだ。マール自体
は嫌な顔をしなかったがファルは勝つつもりが無いと不満を口にしていた。
「いいんです、ファルちゃんは元々こういうことでぶー垂れることが多いんですから」
「うぐ!」
 痛い所をつかれ、おもわず黙るファル。思い通りにいかないと拗ねるのは彼女の癖であった。
 そんな彼女を尻目に青き修羅、バイラムUの発進準備が整っていた。
 バイラムという技術と銃剣ならぬ銃槍一体型の武器は整備班を戸惑わせた。
 やることが何も無い、ということにみな戸惑いを隠せない。心無いものの中には裏切るのではと声を上げる
ものもいた。悪名高い傭兵と裏切り者の女。この二人がここにいるということ自体が不安要素の一つでもあった。
 二人乗りのコックピットの中でアジャムは軽く伸びをした後、操縦桿を握りなおす。
「さてと、露払いをさせてもらおうか!」
 露払い、援護するために路を切り開けという命令である。当然といえば当然であった。現在の状況ではバイ
ラムUを超える機体はエグザトリアのみである。だがそのエグザトリアは発進できないためバイラムUを先行
させて活路を切り開こうというのだ。少なくとも本拠地は特別な素材を使っていないだろうと予測している。
「アジャム、発進を」
「へいよ」
 そう言ってペダルを踏み込んだ。背面のバーニアが熱と共に光ると一気に艦から飛び出していく。
 フリューゲルスから飛び出すと同時に身近なデライトを貫いた。手持ちの槍で止まることなく素早く次の機
体を探し出し一撃を加える。まるで鯉のぼりや串団子のように二機のデライトを吊り上げるとそのまま三機目
のデライトに照準を合わせる。距離が一つずつ縮まるたびにエネルギーが槍へと伝わっていく。
 そして、デライトがバイラムUを捉えた頃にはその姿はどこにも見えなかった。まばゆいビームの光に飲み込まれ
塵芥と成り果てたのだった。光が収まると同時に先ほどまで槍に付いていたデライトは熱によって大きくその
身体をゆがめていた。バイラムUが力任せに槍を振り回すと付いていたデライトの身体が千切れ飛び、遠くへ
と吹き飛ばされる。
「さて、と! 目指すは敵司令部ってね!」
 アジャムは軽く首を廻しながら再びペダルを踏み込んだ。カミーラの話で司令部を潰せば無人機であるデラ
イトは動きを止めることが出来るらしい。だが、そのためには首謀者が持つ解除コードを奪わなくてはならない。
 そのため、一番戦闘力があるバイラムUを敵中心部に向かわせつつ、敵本拠地最深部へと突撃するのだ。
 青の修羅がその鋭い目を一瞬、輝かせると一目散に雪の結晶へと向かっていったのだった。

 銀色の結晶では黒髪の女性がただ静かに戦局を見守っていた。唇はつりあがっていたが眉間に皺を寄せてい
る事から複雑な内情が見え隠れしている。
「ふむ……地球人の兵力、見誤っていたか」
 黒髪の女性は眉を一つ動かすことなく画面にそっと触れるとちいさなホロディスプレイが現れた。
「アルフェア、メアリーは何をしている?」
 画面の向こう側では激しい物音共に赤いPMが動いている。PM用の体育館を思わせる訓練所では新型のバ
イラムが次々に現れるデライトを切り捨てていた。簡易型とあって外で戦っている数の数十倍のデライトが格納庫
で出番を待っていた。
「メアリーですか? 丁度、改装したばかりの”バイラム”で遊んでますよ」
「……ならば、出撃させろ」
 女性の言葉にアルフェアは目を見開く。まるで遠足を中止にされた子供のような顔で口をあんぐりとあけていた。
「ええ? もうチェックメイトですか?」
「早すぎるか?」
「私のデライトが戦ってるのにメアリーでオーバーキルさせるなんて鬼畜過ぎます!」
 アルフェアの言葉に彼女は頭を抱えた。現状ではデライトで優勢を維持しているのにさらに新型バイラムを
投入し、さらに畳み掛けようと言うのだ。だが、彼女たちにとってそれは拒否したいことであった。
 理由は簡単、戦いが終わってしまうからである。わが子であるデライトの活躍をもう少し見ていたいとアル
フェアは言っているのだ。
「……どこでそんな言葉を覚えてきたんだ?」
「無論、メアリーが持って帰ってきたものから!」
 鼻息を荒くして力説するアルフェアを冷たい視線で一瞥すると司令官として命令を下した。
「出撃させろ」
「了解」
 若干、ぶっきらぼうな口調で一方的に通信をきると無数の瓦礫の山の上にいるPMに向かって叫んだ。
「出撃だって! とりあえず敵艦を落としてきて頂戴!」
108創る名無しに見る名無し:2013/03/11(月) 21:33:20.59 ID:TM1NdKvS
 倒したばかりのデライトを遠くへ投げ捨て、アルフェアのほうを向く。
「うん、わかった!」
 地響きを立て歩いていく。ハッチが開くと同時に背面のバーニアが輝いていく。
 きょろきょろと辺りを見渡すとペダルを思い切り踏み込んだ。黒の海の中をまるで散策するかのように静かに
敵の一段へと向かっていく。
「ユウイチ……近くにいるよね?」
 メアリーは小さくつぶやいた。いるはずの無い恋人が自分を待っていると心の中で思っていた。

 そして、メアリーが出撃するのと同じ時刻。宇宙空母の格納庫にて大きな異変があった。
 一人のオペレーターが上ずった声で艦長に報告する。
「か、艦長! 第七ハッチが開いています!」
「なんだと!」
 第七ハッチにあるもの、それは白いPM――。
「え、エグザトリアが発進準備は入ってます!」
 よたよたと若干おぼつかない足取りでエレベーターまで進んでいった。
 そしてエレベーターが迫りあがるとそのまま真っ直ぐにカタパルトへと向かっていく。
「なんだと!? 誰が乗っているんだ?」
「回線に強制的に介入します!」
 オペレーターがキーを叩いて中の様子を見る。数秒の待ち時間の後、中の様子が表示される。
 現れたのは少年だった。予備のパイロットスーツを着ており、その顔はどこと無く悲痛そうだった。
「な、なんだ君は!?」
「すみません、お借りします!」
 そう言うとカタパルトに足を乗せ、ペダルを踏み込む。バーニアが輝くと同時にエグザトリアは振り返るこ
となく漆黒の宇宙へと飛び出して行った。
「まて!」
 呼び止めるがエグザトリアの機動性は圧倒的であり、あっという間に消えてなくなった。
「……行ってしまった……」
「どうします?」
 呆然とする艦長にオペレーターが問いかけると自身の帽子を床に叩きつけ、叫んだ。
「くっ、司令官に通信。謎の少年がエグザトリアを奪って言ったと伝えろ!」
「りょ、了解」
 それぞれの終りが少しずつ近づいていた……。

後半2に続く。
109創る名無しに見る名無し:2013/03/11(月) 21:41:56.48 ID:FP322r5a
携帯からですが以上です
第七とつく場所には最終兵器が眠っているものだ
110TロG ◆n41r8f8dTs :2013/03/12(火) 00:19:01.91 ID:A0c9TpiG
おぉ、久方ぶりのバイラム投下乙です!
いづれじっくりと読ませていただきます。ううむ、中々時間が取れない……

あ、ニコニコ動画にも投下してきました。創作発表板のタグで検索すればすぐ出てきます。では
111創る名無しに見る名無し:2013/03/13(水) 01:58:41.89 ID:1N1hNBO4
昨日ぶりです
師匠作のパラベラムのキャラを借用した動画を作ったのでひっそりと
ttp://www.youtube.com/watch?v=IwXZg4-wh1s&list=HL1363107098&feature=mh_lolz


後最初と最後音ズレしてます。生温かくご容赦ください
では
112創る名無しに見る名無し:2013/03/20(水) 02:19:38.92 ID:qIQY6qfW
衛星軌道上、全天を奇怪な造形物たちが取り囲んでいた。
「クソッ! 味方は全滅かよ!」
乗り慣れた愛機は左手足を失い火を吹いている。
左肩の加粒子砲は無事だったがあと32秒でエネルギーが負傷部から流れ尽きるし、背部のミサイルランチャーもせいぜい一度の突撃を防いでくれる分しかなかった。
「こんなことなら事務のキャサリンを押し倒しとくべきだったかな……」
こんな時でも冗談が出る自分の神経の太さには感心したが、一刻の猶予もない。
レバーから手を離し、コンソール下のケースの蓋を開ける。
中身は強力な麻酔薬だ、心臓ごと麻痺させて二度と目覚めることはない。
「これが美女のキスなら……ええクソッ!」
我ながら不満ばかりが口をついて出る。
案外人間というのは死ぬ間際には未練ばかりが浮かぶものらしい。
小さな注射針を首元に突きたてればそれで終わり、そんなタイミングだった。
「生きてる奴いるか〜?」
無線機を呑気な声が占領した。
生存者、恐怖でおかしくなったのか諦めの境地なのかやけにのんびりした響きが自決の覚悟を霧散させる。
「誰だ!? 官姓名は? 所属はどこだ!?」
「ノリオ・ヒラガ軍曹ですよ、月面基地所属です」
わけがわからなかった、モニターを見ても敵しか視界には映らない。
レーダーは敵を示す赤い反応がトンボの複眼のように敷き詰められていた。
だがそこに黒いものが裂け目のように混じる。
「まさか……これお前か?」
それは何も反応がないことを示す部分、そしてそれを作っているのは味方を示す白いマーカーであった。
「ちょっと待ってください、あと2分ちょい……か…
なっと」
その時始めてそれを見た。
何のカスタマイズもされてない汎用宇宙軍機が、スラスターすら吹かすことなく、敵の残骸を蹴って複雑に舞いながら飛ぶのを。
たかが一振りの電磁融切刀が無敵の聖剣のごとく敵を割って行くのを。
螺旋が螺旋を描きながら螺旋を形作るような不可解な動き。
いったいどれだけ高性能な演算装置を積めばそんな複雑な軌道を走りながら敵を落とせるのかわからない。
ただ、いつしか周囲には敵の残骸と星々の光だけが満ちていた。
113創る名無しに見る名無し:2013/03/20(水) 02:20:06.34 ID:qIQY6qfW
「お前何者なんだ? 戦闘能力だけで佐官になった連中だってもっと常識的だぞ」
近隣の基地から迎えが来るまでのわずかな間に、俺は質問していた。
どんな歴戦の勇士か、はたまた秘密裏に作られた戦闘マシーンか知りたかったからだ。
「え? ああ、先々月に軍に入ったとこだよ。上がバタバタ死ぬから出世はえーのなんの」
「そういうことじゃなくてだな、その前はどこでなんの訓練受けてたんだ?」
「なんのって言われてもコンビニで夜勤してて時給低いから軍に入ったんだよ」
「はあ?」
「深夜なのに大量に客は来るし納品は多いしヤクザかチンピラか頭おかしいのしか来ないし」
「いやいやいやいや」
「挨拶が一秒遅れただけで本部に直接クレーム入れるから新人がすぐ逃げ出して……」
「それがなんの関係があるのかな?」
「俺にもわからん、まあ何十もの人間の行動を予測したり両手の指の数だけ仕事並行して進めてたから今の方が楽ではあるかな」
俺はこんなのに助けられたのか。
何か落胆と自嘲が全身を支配していた。
それと同時に日本の小売業のきびしさが思いやられて、なんだか切なくなっていた。
終わり
114創る名無しに見る名無し:2013/03/21(木) 21:22:38.16 ID:5FF0ML5I
>>109
改めまして投下乙!
いよいよ本番開始って感じですね!
デライトが一斉にやってくる……なんかぞっとします

次回も楽しみにしていますね!

>>113
投下乙!
タイトルは良く分かりませんが面白そうな予感がします
宇宙軍と化け物(仮)の戦いを楽しみにしていますね!
115 忍法帖【Lv=26,xxxPT】(1+0:8) :2013/03/23(土) 23:51:09.08 ID:erwY2qCY
保守
116創る名無しに見る名無し:2013/03/25(月) 12:52:13.92 ID:wQRXT1mK
ロダの絵にはDL数1300行ってるようなのがある一方でスレは過疎な不思議
117創る名無しに見る名無し:2013/03/25(月) 13:21:12.49 ID:6LzWfU0I
定期的に投下や雑談してた面子がいなくなっちゃったし
創発全体人いないし
寧ろよく50スレまで行ったよ
118創る名無しに見る名無し:2013/03/25(月) 13:29:13.76 ID:6LzWfU0I
移転じゃなくバトロワでもなく純粋な創発系スレが大体10スレも行ってないのを見るとホントにそう思う
119創る名無しに見る名無し:2013/03/25(月) 15:10:45.89 ID:EknTpHDt
本当に謎だな…
1300の絵の人レベルでなくとも150〜250くらいは安定して出てるし謎だ
120創る名無しに見る名無し:2013/03/25(月) 18:00:35.73 ID:KcPP0q6B
まあROMは相当数居るんだろうなあ
121創る名無しに見る名無し:2013/03/25(月) 19:47:24.94 ID:D3VY43WR
本家ゾイドの新商品が出るらしい。
ロボスレ的にも当たらずとも遠からずなネタかと。
でもまた哺乳類の高速ゾイドなんよねぇ…
122創る名無しに見る名無し:2013/03/25(月) 23:06:33.13 ID:11LHsKAp
1 気づけば玩具、模型全般を買わなくなっていた
2 むしろ二次元ロリにしか興味がなかった
3 そのためまともな雑談のネタ振り、返しは不可能だ

すべてに当てはまれば
おまえは俺だブラザー
123創る名無しに見る名無し:2013/03/25(月) 23:46:54.78 ID:a8hSGWMY
1 むしろ最近HGUCとかを買いはじめた。ガンプラとか十数年ぶりだぜ
2 ロリはあんまり……
3 そも、まともな雑談とはなんぞや

おまえは俺ではないようだな
124創る名無しに見る名無し:2013/03/25(月) 23:48:34.52 ID:kctu4Cg3
どうやら、自分はロボットが動いているのが好きなだけで、ストーリー、キャラクター、設定はどうでも良いっぽい。
125創る名無しに見る名無し:2013/03/26(火) 00:05:00.42 ID:e6MGG43S
>>124
特定場面を切り取った短編向きってことかね?
独自設定と情景描写だけで勝負する系?
126創る名無しに見る名無し:2013/03/26(火) 00:43:27.24 ID:TL3usyKg
>>125
ニコ動のロボットアニメ戦闘シーンまとめとか、スパロボ、Gジェネの戦闘デモとか
知らないロボアニメでも普通に満足出来てるし、特定場面を切り取った系で大丈夫っぽい。
127創る名無しに見る名無し:2013/03/26(火) 19:22:26.13 ID:RXOgOaa0
なぁに、まだ先行者とかGセイバーとか、難易度が高いのは一杯あるぞ!
128創る名無しに見る名無し:2013/03/28(木) 01:19:10.94 ID:VOjx4+F6
ああ、やっと>>127の意味が分かった
129創る名無しに見る名無し:2013/04/02(火) 12:09:10.72 ID:Px02Tp5u
書かなきゃ、書かなきゃ死んじゃうんだ……!(キーボードをカチャカチャしながら)
130創る名無しに見る名無し:2013/04/05(金) 16:27:30.06 ID:BODCBYwm
>>125
一度はドロップアウトした清人だからこそおっさんの面白さを見落とさず拾い上げる事ができたし、それを伝える事もできた。
同じ伝えるプロでも、金持ちに生まれてリア充一直線を突っ走ってきたアナウンサーにこの面白さは伝えられないし、
受け手が勉強ばっかりやって来たオタクではやはり理解する事ができない。
必要なのは人生経験という共通の背景。
131創る名無しに見る名無し:2013/04/05(金) 18:03:59.24 ID:HEWVrNED
……スレ間違えてないか
良いこと言ってるけど
132創る名無しに見る名無し:2013/04/05(金) 19:44:18.22 ID:XBqJi78h
当スレに誤爆なし!と凄めるほどのノリは、今は無いしな。

ところで、本スレへの投下がサルされやすい、
なる噂を聞いたのだけれども、仕様変わったのかしら?
133創る名無しに見る名無し:2013/04/05(金) 19:55:14.56 ID:pPrCb0Hw
人が居ないので猿より先に連投が出やすくはなってる。
134創る名無しに見る名無し:2013/04/06(土) 22:44:51.05 ID:yzg4KZrh
投下してみたいのですが、戦闘用パワードスーツは「ロボット物」に入るでしょうか?
3メートル強の、人体をそのまま大型化したようなやつなのですが
135創る名無しに見る名無し:2013/04/06(土) 22:46:56.31 ID:XSK11/n3
こまけぇこたぁいいんだよ! ロボすら出ない投下もままあるw
136創る名無しに見る名無し:2013/04/06(土) 23:30:29.42 ID:yzg4KZrh
ロボット物SSでロボが出ないのがこまけぇことなのかwwともあれお答え有難うございますー
137創る名無しに見る名無し:2013/04/07(日) 00:28:09.60 ID:7cPeeGwH
ロボットが登場する作中コンピュータゲームを登場人物がプレイしてるだけの作品とかもあるしな
138創る名無しに見る名無し:2013/04/07(日) 15:54:13.73 ID:5qwTVtSB
>>136
お前、新人だな。肩の力抜けよ。ロボスレは全てを受け入れる……たぶん。
139創る名無しに見る名無し:2013/04/07(日) 16:13:34.25 ID:YW3PfL/3
作品を投稿する人少ないし自分の色に染めるなら今がチャンス。
グダグダ抜かす奴が出て来ても口答えの前に投下しろと言っておけば良いんだよ。
140創る名無しに見る名無し:2013/04/09(火) 00:49:47.98 ID:EhsOtX9F
グダグダ言う奴がいない反面、感想もない時期でもあるがあ
141創る名無しに見る名無し:2013/04/09(火) 05:56:17.02 ID:1vbYZnlb
ロボットと怪獣が都庁を一本ずつ掴んでチャンバラしてる最中
「まだるっこしいわー!!」
と叫ぶラクダのシャツのおっさんが飛び後ろ回し蹴りで怪獣を轟沈
ロボットの開発スタッフは「打倒おっさん」を目標に意欲を燃やしたという
142創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 07:28:42.72 ID:9rxLl7NR
おらおら勢いおせーぞ
143創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 19:28:04.00 ID:qaOPhqjq
週末に投下します、と自分を追い詰める形ばかりの連載陣。
144秋水 ◆3C9TspRFnQ :2013/04/13(土) 09:36:55.50 ID:MHc3gxph
まことにご無沙汰しております、秋水です。
仕事が忙しい中、利き手を故障して長文から遠ざかっておりましたが、
腕も快方にむかい、自作品の投下に参りました。

でも一番の遅滞の原因はPSO2だよなぁと思いつつ、
以下、注意書き等。

・消費レス:7+1
・当作は実際の事象からの引用やソース等の比較、およびメタネタ・パロディを含みます。
 また、それらによって他者を誹謗中傷する意図はございません。
・今回はロボットが出ないお話です。
・スレ内の作者様の作品から、無断で固有名詞を借用している部分があります。
 洒落で済む内容と思っておりますので、ご容赦ください。

あらすじのようなもの
一、スレの連載作品一覧に紹介文あり
一、宇宙の彼方から銀河列強が大挙して攻めてきて、地球中で代表同士の戦争ゴッコを強要されてる
一、日本は北海道と小笠原を獲られる。でも、ようやく対抗策が見出せそう
一、なんか侵略者達にも頭の痛い問題があるっぽい

今回の主な登場人物
風見鷹介:ダイガストの主操縦者だが、その苦労は誰にも喋れない秘密の身の上で不幸
ユリウス・パトリキオス:侵略者の一派を率いる、剛柔併せ持つ艦長。中間管理職的に不幸(六話参照)

以上、気にならないようでしたらどうぞ。
それでは地球防衛戦線ダイガスト、はじまります。
145地球防衛戦線ダイガスト 十四話(全編) 1/7:2013/04/13(土) 09:39:26.11 ID:MHc3gxph
第十四話 東京の休日
 
 五月上旬、小笠原父島。亜熱帯気候の太陽は既に夏めいており、湿度も80パーセント近い。
ここを拠点にするセラン諸惑星連合の将兵は空調の効いた設備で暮らす宇宙生活者のため、
湿度と焦熱にあてられて体調を崩す者が続出していた。
 それでも海洋調査に船体の修理と、野外活動の機会は多い。ユリウス・パトリキオス艦長も急遽
しつらえた半袖の三種軍装を着用してはいるが、それでは頬のやつれまでは隠せない。
 1ヶ月前にダイガストの巨砲で穿たれたディアマンテの修理が問題だった。装甲と電路の修理だけでも
頭の痛い問題であるのに、艦載機格納庫まで吹き飛ばされたものだから、工具を筆頭に様々な整備用の
設備まで失われていた。
 既存品の注文になるが、なにしろ地球は銀河帝国文明圏にとっては辺境である。機材の到着は遅れに
遅れ、日本国との三度目の限定攻勢を間近に控えるにもかかわらず、万全の修理状態とは言い難い。
 しかもこれらの再建に関して一々ちょっかいをかけてくるのが、統制官と呼ばれる資源庁から出向して
いる文民達で、これに納得させるための資料作りがパトリキオスの神経を更に苛むのだった。
 『民主主義を掲げた星間貿易国家であるセラン諸惑星連合にとって、スペースレーン(航宙交通路)の
確保は安定した貿易を続ける上でも重要な要素である。この崇高な使命を監督する統制官は文民統制の
象徴であり、野蛮な王政や開発独裁を掲げた他の列強とは一線を画すうんぬんかんぬん。』
 …どこの頭でっかちが言ったのだか知らないが、お陰で現場に実務者以外の意見が罷り通って大迷惑だ。
 あわや報告書の文面にそう書き出しそうになり、パトリキオスは慌てて携帯端末の内容を訂正する。
木陰で浜風を浴びながら、書類の入っていないファイル程度に見える携帯端末をいじっている姿は、
侵略者が優雅な午後を愉しんでいる様に見えるだろうが、内実はISO関連書類や役所への届出に
四苦八苦する中間管理職みたいなものだ。
 そんな事を考えている折に副官が近づいてきたものだから、パトリキオスは露骨に顔をしかめるのだった。
「なんだい、また統制官殿が新しい報告書を御所望なのかい?」
「いえ…」
 副官の眉間の皺は深く、それなりの厄介事であるとは察することが出来た。しかしながら彼が
差し出した情報ボードの画像は、パトリキオスの予測の斜め上を1パーセクで飛び去る類のものだった。
 それは北海道でルドガーハウゼン大剣卿(十三話参照)を唸らせた、あの旭日の光を帯びた宇宙船と同じものだ。
 パトリキオスは盛大に溜息を一つ吐くと、それから何かに憑かれた様に猛烈に報告書の整理を再開する。
いつもなら皮肉の一つでも言ってサボろうとする艦長の豹変に、副官は思わずたじろいでいた。
「あー、艦長?」
「やって来るのは銀河帝国の近衛艦隊だ。誰が乗ってるにしたって、しばらくは我々『下々』は
 ご機嫌伺いで戦闘行為も自重しなければならないだろう。だったら、今のうちに艦の修理を徹底的に
 行う。改装も含めてだ。工期の問題で後回しになっていたプランを持ってきてくれ。もう一度練り直す」
「諒解しました!」
 副官はやる気の艦長に軽い感動を覚えつつ、背筋の通った敬礼を見せる。
「他に必要な物はありますでしょうか?」
「ふむ…」
 パトリキオスは一寸考えて、それからひどく汗をかいている事を思い出し、
「飲み物も頼むよ。缶コーヒー、甘いやつ」
 彼もまた日本に馴染み過ぎたガイジンの一人であった。
146地球防衛戦線ダイガスト 十四話(全編) 2/7:2013/04/13(土) 09:41:25.20 ID:MHc3gxph
 地球全土で列強の五月前半攻勢が突如延期となり、原因の判らない地球人たちを困惑させた。
 進駐した兵士達が元気なのは確認されているので、H・G・ウェルズのSF作品の様に微生物に
負ける宇宙人という大どんでん返しは期待できなかった。
 例えば北海道に潜入中である防衛省の情報本部や警視庁公安部の方々、また、小笠原沖の海底で息を
潜める潜水艦乗組員たちの地道な観測によって、ツルギスタンやセランの航宙船から頻繁に内火艇が
空へと駆け上がって行く事例が報告されていたが、宇宙空間にまで追跡の目は向けられないため、
最終的な行き先までは掴めなかった。
 緊張の持続というのは難しいもので、異星人との茶番戦争を目前に控えていた国々の将官達は、
隷下の兵達の士気に頭を抱えた。うっかり休みを与えて羽を伸ばして来いと言おうものなら、ここを
先途と脱走をする輩が出そうな国もあり、そういったお国柄の基地では戦闘前よりも基地の警備が
物々しくなるという有様だ。
 風見鷹介は脱走――彼の知っている言葉では脱冊――という言葉とは無縁ではあるが、降って沸いた
休みには戸惑う類の社会不適合者であった。とりあえず休みの過ごし方に思い付く事が無かったのだが、
パイロット過程を落第してからこっち、大江戸研に殆ど拉致同然に詰めていたので、ふと東京の実家に
帰ろうかと思い立つ。
 そうなると幼馴染――設定を忘れがちであるが――である透(みなも)もじゃあ一緒に、とか
言い出そうとするのだが、遠近法を無視して伸びてきた大江戸博士の手が彼女の頭をぐわしと掴むや、
「君はそろそろ卒論の骨子を提出してくれないかね。調度時間も出来た事だし」
「いーやー!?」
 ここのところ実体の無い女子大生だった透は、大江戸博士のデスクの隣に蜜柑箱を机にして、
書いてゆく先から添削される超濃縮卒論の荒行に連行された。
 一度だけ合掌した鷹介は、そんなわけで久方ぶりの里帰りを果たすのだが、実家というのが
これがまた居場所が無い。航空学生になって家を飛び出したっきり、その道からも転げ落ちて、
今では細々と小型機を飛ばしていると親兄弟に伝えている秘密の身分であるからして、針のむしろで
ジュリアナダンスを踊るようなものだ。
 父に収入を気にされ、母に健康を気にされ、弟はなんか反抗期で、妹も二次性徴期の始まりで
むつかしいお年頃とくれば、難易度は最上級である。
 気の休まらぬままに父の晩酌に付き合った後(いつもは発泡酒なのにプレミアムモルツだった)、
ようやく自室で一息吐くと、家を出た時のままで保存されていた部屋が目に入ってまた痛々しい。
本棚の航空雑誌とか、やけに気合を入れて作ったF-15Jのプラモデルとか、当時の意気揚々とした
自分を思い出すと、思わず窓から投げ捨てたくなる。
 しかしコンビニ等に逃避するのも鬼門だ。同級生にランダムエンカウントしたら目もあてられない。
そうなったら同級生たちに身分を偽るのが嫌というより、もう隔世観みたいなものだった。華の学生や、
社会人のルーキーをやっているであろう同級生の輝かしさと比べたら、硝煙ならぬ航空燃料の臭いが
身に染み付いた自分はどうだ。昔と変わらない自室の学習机に備え付けの椅子よりも、あの硬い
コクピットシートの方が馴染んでいる自分はどうだ。
 ならば『飛行適正ナシ』と判断されるのをひたすら恐れた、あの訓練の日々こそが真実なのだろうか。
 いや、それも無い。めくるめく濃密な日々を耐え抜いた仲間たちも、じきに速成でF-2のコクピットに
おさまって飛び発つのだ。その時、自分は異星の技術で固められた分厚い装甲に守られて、あの仲間達の
足下を這いずり回っているに違いない。
 鷹介は自罰的な焦燥感に身を焼かれて煩悶する。誰に責められている訳でも無いだろうに、自分が
ひどい卑怯者に思えた。それは若さゆえの潔癖であったが、鷹介がその事に自ら気付ける道理は無く、
また同年代の同性のような打ち解けられる者がいない職場であるため、必要の無い罪悪感は彼の
目に見えぬ芯の部分をぐずぐずと蝕んでゆくのだった。
147地球防衛戦線ダイガスト 十四話(全編) 3/7:2013/04/13(土) 09:45:19.03 ID:MHc3gxph
 野郎がベッドにうつ伏せになってのたうつと云う誰得映像を披露した後、鷹介は整理し切れない
『私』の部分に目を背け、駄目人間の見本のように『公』の方に逃避する。
 将来家庭を持ったら減点パパになるタイプである。
 ともかく何かから逃れるように、研究所の技術者連中に『東京土産なにが良いですか』とメールを
うつと、『レシートがあれば実費精算するよん』と軽い口調で、やけに重い目録が送られてくる。
その殆どは家電製品やゲームにDVDで、娯楽が限られる研究所生活が偲ばれた。
 もうAmaz○nで注文しろよとも思うが、よく考えれば研究所の入口で警備員が配達業者を止めて
積荷をチェックする光景は日常茶飯事だった。それで軍艦の酒保開けの合図じゃあるまいが、注文の品を
受け取るために列を作る異星の技術者というのもお馴染みの光景だ。
 並べば目的は達せられると理解しているのだから、まったく日本によく慣らされた異星人たちである。
 本当に彼等は故郷奪還の折には凱旋が出来るのだろうか。
「そんなわけで秋葉原にやってきたのだ、と」
 ウホ、いいオタクの街、と誰が言ったかは知らないが、日が変わって平日の秋葉原に降り立った鷹介は
家電やDVDや玩具の宅配の手配に没頭する。
「えぇと…アオモリズ・ブートキャンプに、ダーウィンが来たの海洋惑星特集、
 モンスターアーツのドラグリヲ、スーパーロボット超合金リベジオン、figmaティマ、
 エクセレントモデルCORE一条遥…もう電化製品ですら無いな」
 近年ではすっかり趣味に生きる高等遊民の街となり、メインストリートに二次元美少女のイラストや
メイド喫茶のチラシ配りであるアルバイト・メイドが溢れ返れば、それを物見遊山するカタギの人々まで
やってきて、駅前を小奇麗に再開発するというプロジェクトまで立ち上がる始末。電気コードと
ハロゲンランプのうらぶれたイメージは、既に表通りからは駆逐されつつあった。
 今しもメインストリートに面したアニメショップの店先では、現行放映中の美少女がロボットで戦う
アニメのPVが垂れ流されていた。
『シンブレイカーにマーラが顕現します!』
『なに召喚しとるんじゃ、あんたらはー!?』
 一見して好況のようではあるが、しかしながら銀河列強諸国の来寇を受けて加工国にも野火の如く
広がる戦火は、エレクトロニクス部品の供給にも影響を与え始め、パソコンショップ等の店頭には
品切れや値段高騰のポップが踊っていた。降伏間近と言われている台湾の影響が最も顕著であり、
各国のパソコンや液晶ディスプレイの部品供給が滞っているのだ。
 太平洋のフタのひとつである台湾の地政学的重要性は言うを待たないが、エレクトロニクス産業に
おいても掛け替えの無い一部門を担っている。この辺り、中華人民共和国等の加工国と違い、
研究・開発能力をもった企業を持つ国の混乱というのは、非常に重たい意味を持っていた。
 単純な加工国でも、その生産能力に大いに頼っていた企業は大打撃を被っていた。
中華人民共和国産の100円ショップ商品や、半島産のハードディスクがそれだ。
 本邦でもツルギスタンの本州上陸からこちら、東北地方の工場が疎開を始めた事により、車の
エレクトロニクス部品の供給に混乱が生じ、各車会社は生産調整を強いられている。
 別の視点としては、違法星間商人の介入と思われるアデン湾の海賊騒ぎが北アフリカから
シナイ半島へと延焼し、いくつかの国で独裁政権の打倒を掲げた内戦を惹起させていた。これにより
海賊対策を嘲笑うかのごとく原油価格は高騰し、日本でも燃料代が不安定になってきている。
 目に見えぬところで、人々は戦争の影響を肌で感じる様になっていた。
 そういう国際情勢が原因でもなかろうが、人がまばらなのはむしろ平日だからという理由の方が
大きいだろう。表通りから一本も路地を入れば休日の盛況が嘘のように閑散となる。それゆえに、
その椿事は目立っていた。
 ありていに言えば一人の白人女性が、三人の黒服に囲まれていた。
148地球防衛戦線ダイガスト 十四話(全編) 4/7:2013/04/13(土) 09:47:08.17 ID:MHc3gxph
 なんだ、これ?曲がり角の向こうで出会い頭に広がっていた光景に、鷹介が最初に抱いたのはそんな疑問だった。
 黒服は揃いも揃ってミラーシェードで表情が読めないが、どいつも屈強な体躯をしていた。頭髪に
金髪の者が混じっていて、どうにも日本でお目にかかる光景では無さそうだった。
 さらに凄いのはもう一方の白人女性で、淡い水色のワンピースに薄手で短いカーディガン。それも
ワンピースは最近のデザインでなく、ふわっと広がる長くてレトロなやつだ。それに編んだ銀髪を
後頭部でクルクルと巻いてシニヨンにした、ハッと目を引く美人の貌が乗っているとなれば、どこの
絵に書いたお嬢様ですかという話である。
 いや、ここは秋葉原なので、どこの二次元から彷徨い出たのですか、か。
 それが何やら鷹介に理解できない言語で言い争っているとくれば、怪しさもひとしおだった。
 と、不期遭遇の衝撃に面食らっている鷹介の姿を認めるや、女性は動き辛そうな格好と裏腹に存外な
速さでもって彼に駆け寄って、その背に隠れるように回り込み、
「悪いヤツに追われておるのじゃ。助けてたも」
 何とも古体な口ぶりで窮状を伝えると、鷹介越しに黒服たちに『あかんべー』をしてみせた。
 いかにも可愛らしい訣別の意思表示をされた黒服達は、いささか狼狽した風で鷹介に歩み寄り、
「君、我々は怪しい者ではない。その方をこちらに返してくれないか」
 自分で怪しくないと言っていれば世話は無いが、それよりも今の一瞬のやり取りが流暢な日本語で
ある事の方が、鷹介を警戒させる。どう見ても日本人でないのに日本語を口にし、そのくせお嬢様と
黒服なんて世間じゃ有り得ない光景を現出させる。
 そういうのには覚えがあった。鷹介は苛立ちをおぼえつつ、
「どこの御家騒動か知らないが、そういうのは地球に持ち込まないでくれよ…」
 皮肉のつもりだったが、それが拙かった。
 反射的に黒服達から張り詰めたものが発せられる。後ろの二人がポケットから警棒のようなロッドを
取り出し、音も無く伸張させた。御丁寧に金属の打撃部には青白い電流まで確認できる。
「そこまで知っているのなら、タダで返すわけには行かない!」
「常識でモノを言え、この侵略者ども。見た目がコーカソイドの集団が皆して流暢に日本語を喋るか?
 電磁警棒なんて日本じゃアニメの産物だぞ?」
 鷹介の突っ込みに黒服は若干たじろぐ。宇宙ヤクザの時とは違う反応に、意外にまともな連中なのかも、
と共感のようなものを覚えたが、しかし彼もダイガストのパイロットという――今のところは――秘密の
身分であるため、こんな所で明らかな列強の関係者にお世話になるわけにも行かない。例え原因が自分の
軽口であっても。
 鷹介は僅かに腰を落とし、どの様な事態にも動けるように身構える。口じゃどう言おうが、彼の体は
荒事に慣れ切っていた。
 そして彼の身体の重心移動を、渦中の人であるお嬢様は興味深げに観察している。鷹介の背中越しに
聞こえる声には、どこか状況を愉しんでいるような弾んだ節すらあった。
「あの悪いヤツらは腕が立つぞ。そなた、歯が立つのかえ?」
「判らない。だから君は、隙を見て逃げればいい」
「それでは流石にそなたに『目』が無い。そなた、剣は使えるか?」
「剣?…まぁ、真剣じゃない程度なら」
 鷹介は高校と航空学生とで続けていた剣道の事を思い出す。二段には手が及ばなかったが、初段は
取っていた。
「つかわす。存分に振るうが良い」
 そう言って左の脇から差し出されたのは、鈍い輝きを放つ金属製の剣の柄だ。鍔や護拳は無く、
柄頭には精緻な彫刻がされている。
149地球防衛戦線ダイガスト 十四話(全編) 5/7:2013/04/13(土) 09:49:35.84 ID:MHc3gxph
 受け取り、深く考えずに以前の習いで腰間から抜くようにして正眼に執ると、柄が伸張して
拳二つ半に形を変え、更に鍔元からは眩い白銀の奔流が噴き出した。ほんの一瞬、それは液体のように
振舞ったかと思うと、見る間に形を変えて二尺五寸(約75センチ)ほどのゆったりとした反りを持つ刃に固まる。
 要は刀だ。おそらく鷹介のイメージを汲み取って、そのような形になったのだろう。何しろ長さに
反して重量配分は絶妙で、刃が自分の腕の延長にあるようだ。借り物でこんな事は有り得ないだろうし、
ダイガストの制御に組み込まれた思考を汲んで機体を制御する技術が、銀河列強のゲーム機から
取り外した代物である事を思えば、そう考えたほうが不思議は無い。
 鷹介は手の内の握りを確かめる間こそあれ、こちらが出した刀に何らかの躊躇いを見せる黒服へと、
先手必勝で打って出る。スニーカーと素足では勝手が違うから、ともかく短期決戦だった。上段へと
刀を振りかぶって正面の黒服に殺到し、敵が身構えた瞬間にはその脇をあっさりと駆け抜けて、
後ろの二人へと向かう。
 矢面の一人を無視した不意打ちに、黒服が躊躇いから狼狽へと変わったのを見逃さず、上段からの
小手打ちというフェイントを交えて警棒を狙うと、刃は恐るべき切れ味で警棒を断ち切って青白い
スパークを弾けさせた。
 続け様にいま一人へと左足で踏み出し、体ごと向きを変えて刃を跳ね上げるや、こちらも過たず
警棒が寸断される。
 そこから出足を軸に体の上下動無く半回転し、振り返りざまに刃を突き出すと、最初に素通りした
黒服の喉元へと剣先が突きつけられた。
 う、と黒服が呻くのが聞こえた。
 鷹介は騙し手が上手い具合に嵌った事に内心でひどく緊張していた。『思いっきり本身じゃねーか!?』
とか、切れ味に驚嘆したのもあるが、所詮は相手が白刃に驚いた所に付け入った奇策だ。それが判って
いるから、優位を突きつけている内に顎をしゃくって黒服たちにお帰りを促す。
 黒服達は後ろ歩きで距離を取ると、未だ未練たらたらの様子だったもので、鷹介が再び刀を
振り上げて脅かして、初めて算を乱して逃亡に入った。
 ふぅと一息つき、緊張の糸が切れると、銀の柄へと刃が引き戻る。矢張り使用者の意図を汲む類の
メカニズムなのだろう、その出来に感心していると、
「見事!誉めて遣わす」
 ご満悦のお嬢様がお褒めの言葉をかける。そういう態度に慣れているのか、たいそう大様であったが、
鷹介は悪い気はしなかった。というか一寸言葉を失った。
 彼女が柳のような腰に手を当て、僅かに背を反らせば、たわわな二つの盛り上がりが自己主張を
していた。アップにした髪型から覗くうなじとか、スカートから出た足とか、眩いくらいに白い。
 年の頃は自分より少し下だろうか。貌からは幼さが抜け切らないが、切れ長の目の中には強い意志を
感じる瞳が据わり、長いまつ毛がそれを飾っていた。よく整った顔貌からはお嬢様じみた出で立ちも含め、
『やんごとなき』という言葉が思い起こされる。
 要は鷹介が我知らず見惚れていた訳だが、彼女はその不躾な視線を気に止めるでもなく、
「礼を言うぞ、悪い奴ばらは去った。妾はセシリアンダ。親しい者はセシルと呼ぶ。
 訳あって家名は明かせぬが、そなたもセシルと呼ぶことを許そう。そなた、名は?」
 流れるように仰々しい台詞を吐いた。
家名などと言うからには銀河列強の上流階級なのだろう。しかし明らかに上からの物言いのわりに、
彼女の立ち居振る舞いは実に自然で反感が沸かない。人を従わせるのに慣れている、というよりは人に
愛される事に慣れている、というべきだろうか。そう素直に思ってしまうのは癪であり、鷹介は美人とは
得なもんだ、と捻ねた事を考えながらセシルの問いに答えるのだった。
「風見鷹介」
150地球防衛戦線ダイガスト 十四話(全編) 6/7:2013/04/13(土) 09:51:13.19 ID:MHc3gxph
「ヨースケ!そなたはこの国の戦士の家柄であろか?見事な剣ばたらきじゃ。その剣は褒美に取らすぞ」
 貴人が手持ちの剣を褒美にくれるのはよくある話で、それ用に手放しても惜しくない量産品の脇差を
持ち歩いた天下人の話なんてのもある。だから鷹介は、ああ普及品なんだな、と納得して白銀の柄を
ジーンズのポケットに落とし込んだ。
「有り難き幸せ、とか跪いて言うべきなのかな」
「気にするでない、妾の臣民であるわけで無し。
 それともそなた、銀河共産主義などと標榜する、貴き者の義務を否定する輩かや?」
 そういうのは何処にでもいるんだなぁ、とか鷹介は妙な事に感心しつつ、セシルの口調がはきはきと
していたもので、それに乗って――大江戸博士の受け売りだが――悪ふざけをしてみた。
「暴君であれば貴き者という前提は成り立たず、圧政が無ければ革命家は迷惑な扇動屋に過ぎないな」
「…その心は?」
「正義は個人にしか宿らない」
「君主は常に孤独であれ、か。帝王学じゃな…出先で教えられるとは思わなんだが」
 そう呟いたセシルの表情はひどく真面目で、状況を面白がっているような雰囲気は消え去っていた。それは
妙齢の乙女が自発的に得る様なものでなく、何か余人には理解し得ない重責の存在を感じさせるのだった。
 こりゃ透とは大違いだ。鷹介があのお気楽極楽な――と極力思っている――幼馴染を思い浮かべたのは、
このやんごとなきお嬢様の醸し出すものに呑みこまれ、その信奉者になって仕舞わない様にする自己防衛だ。
もちろん鷹介本人は意識していないが、だからセシルが再び、あのいかにも人に愛される笑顔を見せた時には、
何とは無しの高揚感を憶える始末だった。
「のぅ、ヨースケ」
 更に追い討ちとばかりに、セシルはいかにも抗い難い上目遣いで彼に要求する。
「礼ついでにな、妾をウエノにまで案内(あない)してくれぬか?」
 もちろん鷹介は百戦錬磨のジゴロであるまいし、まして鉄の意志力を持つ訳でもない。いい様に
巻き込まれるままに、自らの女性免疫の無さに呆れながら、彼女を上野までエスコートする事が決まっていた。
 そして彼は最後まで気付かなかった。二人の遣り取りを、ビルの陰に潜むようにして監視する、別の黒服がいた事に。
151秋水 ◆3C9TspRFnQ :2013/04/13(土) 09:55:12.54 ID:MHc3gxph
数え間違いの上に、全編って何だよ…orz

前半分の投下は以上です。
残りは猿を敬遠し、明日にでも投下します。

一部、勝手に名前を使用した作者様方には
暑く御礼申し上げます。
152創る名無しに見る名無し:2013/04/13(土) 23:42:33.12 ID:wMMrnNXe
>>151
投下乙!
秋葉は本当に変わっちゃったな・・・
153創る名無しに見る名無し:2013/04/20(土) 20:46:10.61 ID:BxSXtEhW
本当にロボスレには人がいないんだな…
154創る名無しに見る名無し:2013/04/20(土) 22:41:52.19 ID:W8Bew/Xd
スペック高いうえに特別なにかやっちゃってるわけでもないのに、鷹介にどことなく残念属性がちらつく不思議
155創る名無しに見る名無し:2013/04/29(月) 21:41:59.79 ID:2Ix9YDLb
ほしゅ
156創る名無しに見る名無し:2013/04/29(月) 21:59:34.56 ID:tteBwSdL
バイラム後半2投下します
157創る名無しに見る名無し:2013/04/29(月) 22:00:07.38 ID:tteBwSdL
 デライトの強襲から一時間経過した。
 兵の士気は完全に落ちており、指揮系統は完全に混乱していた。だが、誰もが生き残るのに懸命であった。
 もっとも、それをあざ笑うかのように一つ目の鬼と黒の修羅、そして――。
「うあああああああああああああああああああああ!!」
 パイロットの断末魔と共に縦に切り裂かれた。その際、衝撃でオイルが返り血のように顔に浴びるが拭う事
もせずに次の獲物へと向かう。赤き修羅。ネオ・バイラム。メアリーは我関せずといった無表情でネルソンを、
ポーンを、青龍を斬り裂いていく。手に持った刃は止めどころを知らず、まるで絵筆が走るかのように次々に
手足や胴を真っ二つにしていく。端から見れば恐怖を通り越し、痛快といっても過言ではなかった。だがそれ
を賛美するものは誰もいなかった。
「ユウイチ……」
 メアリーは小さくつぶやくが誰も答えない。思わず操縦幹を握る手が弱くなる。それと同じようにバイラム
自体の動きも止まった。それを隙だと思いハンドサインを送り、周囲を囲む。そして、腕を振ると一斉に向か
っていく。だが、それはすらメアリーにとっては児戯でしかなかった。すかさず、操縦桿を倒しペダルを踏み込む。
 先頭を走っていたPMの攻撃は空を切った。攻撃目標であるバイラムの姿が突如、消え去ったのだ。
「き、消え――」
 全てを言う前に斬り捨てられた。左肩から斜めに一直線。手応えが無かったのか配線から始まり、装甲やシ
リンダーなども滑らかな切り口を見せている。動力炉にダメージを受けたわけではないので爆発をすることな
く、そのまま宇宙に流れる漂流物になった。
 メアリーは止まることなく、集まっているPMを本能が、気分が赴くままに切り捨てていく。
 いたるところから断末魔が聞こえてくるが彼女には五月蝿い雑音でしかない。
 つまらない。もっとゾクゾクする戦いをやりたい。あの時のユウイチみたいに。
 そんな考えが思い浮かんでくる。必死に逃げようとした祐一は自分が思った以上にその力を行使してくれたのだ。
 だが、今戦っている者たちにはその力が無い。数で攻めて来るという考えはメアリーにも理解できたが数で
押せば勝てるという考えがどことなく染み付いているように見えた。
 かつて、メアリーも祐一と一緒に高校へと通った事があった。森宮祐一がまだ高校一年生の頃である。
 元々メアリーは学校では人気が高かった。金髪と整った顔つき、成績は優秀であったがどこか抜けていて人
懐っこい性格が男女共に受けていた。一応、祐一の監視という任務があったがそれを抜いたとしてもあまり関
係なかった。彼女は元々こういう性格であったのだから。
 しかし、当然のように目の敵にする生徒も居た。簡単な嫌がらせから始まり、悪質な行為まで一通り受けた
がメアリーには効果がなかった。そして、犯人が分かれば誰よりも陰湿な嫌がらせをしたこともある。
 暴行、密告、吊るし上げ、失脚。例を挙げればきりがない。やられたらやり返すのが彼女のやり方であった。
 噂が噂を呼んだが彼女は決して尻尾は見せなかった。それとは別の問題行動を起こす事で噂を忘れさせたのだ。
 明るく、そしてお茶目な自分を演出するのは苦痛ではなかったが全て計算ずくであった。
 しかしそんな彼女が一番気を使ったのは意外にも祐一への配慮であった。
 噂の的にならないように、被害の渦に巻き込まれないように気を使う。行動を先読みをし、素早い行動で敵
を排除する。メアリーにとって今までの中で一番過酷な任務とも言えた。
 何故こんな事をするのかと自分に問いかけてみた事がある。答えはメアリーが予想していた以上にあっさり
出ていた。簡単な話である、メアリーは祐一が好きになっていた。
 ターゲットという理由もあるがそれだけで人を好きになる事はなく、いつ好きになったのか? 何故好きに
なったのか? どこが好きなのか? それすら分からなかった。
 だがメアリーは一緒にいたいとそのうち思うようになっていた。彼のことをもっと知りたいと思った。
 しかし、彼は開けてしまった。父への真実、自分の出生という名のパンドラの箱を。飛び出してきたのは尤も
残酷な真実と言う名の刃。それは彼自身を深く傷つけた。
 そして、自分も同じように開けてしまった。自分の居場所、本拠地を。
 迂闊? いや、これは舞台に上がるための大切な装置でしかない。クライマックスへ向かうための下準備だ。
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
 悲痛そうな叫びが響く中、ネオ・バイラムが剣を振り下ろすと最後のPMが二つに分かれ、爆発共に消え去った。
158創る名無しに見る名無し:2013/04/29(月) 22:01:27.63 ID:tteBwSdL
 つまらない……ユウイチ、早く来て。そんな事を思いながら再び虚空の空へを向かっていく。
 手慰みと言わんばかりに地球のPMを弄びながら……。

 そして、エグザトリアもまた刃を振るっていた。
「これで!」
 がむしゃらとも言えるほどの乱雑な斬撃。振り回すという言葉が最も正しかったが辺りにいるデライトは瞬
く間に斬られていった。切っ先が触れれば一つが二つに、二つが四つにと次々に分けられていく。
 もっとも、動きに関して言えば完全に機体に振り回されているといっても過言ではなかった。
 その証拠に攻撃を終えた後、減速する事が出来ず、大きな曲線を描きながら宇宙を滑空していた。
 だが、AIの船長がとっさに機転を利かせ、デライトが一列に並んでいる位置にたどり着く。
 そしてそのまま腰のライフルを近くにいるデライトにあわせるとそのままトリガーを引いた。
 放たれた光の矢は三機のデライトを一撃で貫く。場所が良かっただけではなく、エグザトリア自体もまた
凶悪な兵器を持つものであることを知らしめていた。
 だが、一息つく間もなく新たなデライトが向かってくる。祐一はペダルを踏み込み、再び間合いを取り直す。
 緊張のあまり息をするのも忘れてしまう。敵はまるでゲームのように大したことはなかったが止まる事ない出現
と死の恐怖が襲い掛かってきた。死神の姿は見えなかったが冷たい刃が喉元に突きつけられるかのようであった。
「くっ!」
 背後からバイラムがビームを撃ってくる。まだ全てが駆逐されたわけではない。赤が増えたが黒がなくなっ
たわけではない。素早くライフルを使って串刺しにし、そのまま近くにいるデライトを斬り捨てていく。
 メアリーはどこにいるのだろうか?
 そんな疑問が浮かぶ中、通信が入ってきた。雑音が酷く、声も小さかったがエグザトリアはその声を何とか
抽出してくれた。
「こちら、第八PM小隊! 救援を求む! 負傷者が多く、このままでは!」
 救援要請だった。恐らく退路がないのだろう。このままでは彼らは死ぬ。祐一は見捨てるわけには行かない
と思い、通信の方へ向かった。暗礁空間には大小さまざまな隕石が所狭しと並んでおり、宇宙の神秘さをかも
し出していた。ゆっくりと落ち着いて辺りを見渡すと、隕石の一つに一機のネルソンが横たわっており、それ
を守るポーンと青龍、クレマンソーが円陣を組んでいた。
「くそ、こいつら!」
 マシンガンのトリガーを引き絞るがバイラムとデライトの軍団には効果がなかった。マシンガンの弾をはね返し
つつ、一気に近づくが共有結合の槍がそれを阻んだ。背後からビームを撃とうとする者がいたらポーンがすぐ
さま率先して突っ込み、発射を阻止する形であった。
 だが、疲労はピークに達し、集中力も切れ掛かってきた。額の汗が目に入り、瞳を軽く閉じた瞬間――。
「しまった!」
 黒の鬼が一目散に背後にいるネルソンへと向かっていった。すぐさま追いかけようとするが性能差ははっき
りとバイラムのほうに分があり、必死の追跡も瞬く間に離されて行く。
 横たわるネルソンには無数の軍人たちが居た。機体を失ったものたち、怪我をした者たち、艦を失った者たち。
 みな、バイラムが近づくたびに青ざめた顔や覚悟を決めた顔をしていく。
 だが、それは単なる徒労と化した。銀光が一直線に降って来るとバイラムは真っ二つに切り裂かれた。
 まるで、花火のような爆発の後、エグザトリアはくるりと彼らの方へを向き直った。
「す、すげぇ……」
 誰かが呟いた。バイラムと同じ存在でありながらもその光景にだれもが見惚れてしまった。
 そして、デライトたちのほうへと視線を向けると一気に近づき、その刃を振るった。火花が散る事はなくす
んなりと横にずれるとそのまま上半身は近くの暗礁へと乗り上げる。
 だが、すぐさま別のデライトが来るかに見えたがそう動く様子はない。彼らはエグザトリアを、ネルソンを
取り囲むかのように左右に、上下に、前後に展開をしている。
 ライフルは使うか? いや、行動一つ間違えれば後ろにいる全員が死ぬ。それにこのまま守っててもジリ貧
になるのは明白だ。なら、どうする? と祐一は自分自身に問いかける。それなら――。
「こちら、エグザトリア。ここは自分が突破口を開きます。怪我人を収集後、一気に離脱を!」
「りょ、了解!」
 ポーンの主は少し戸惑ったような声を上げるがすぐさまネルソンに近づき、怪我人や取り付ける者たちをそっ
と抱き上げる。そして掌に載せるとそのままエグザトリアを戦闘に離脱体制を整えていく。
159創る名無しに見る名無し:2013/04/29(月) 22:02:14.92 ID:tteBwSdL
 宇宙という場所では慣性の法則に気をつけなければ迷子になるが衝撃やブレーキングといった物を考えなく
て済んだ。現在の状況から脱出できればほとんどの問題はクリアされるのだ。
「カウントをお願いします」
 祐一の言葉にクレマンソーの隊員が大きく深呼吸をする。そして――。
「これより一分後にブースターの点火を行う。エグザトリアはルートの確保を頼む」
「了解」
 祐一は操縦桿を握り直すと群がるデライトへと視線を向けた。機械的な冷たい視線の先にはただ仕事をする
だけの無機質な殺意があった。
 やるしかないと自分に言い聞かせ、思い切りペダルを踏み込んだ。背面のバーニアを輝かせ、デライトの群
れへ突っ込んでいく。それを合図だと思ったのか、デライトたちもまた動き出した。その動きは一糸乱れるこ
となく、ただ先頭を走っているエグザトリアへと照準を向けた。
 だが、その動きは祐一――エグザトリアにはあまりにも格好の的であった。
「拡散モード、範囲指定六九〇〇!」
 祐一の声と共にエグザトリアは腰のライフルをデライトへと向ける。ライフルは火山の噴出し口を思わせる
ような充填をし始める。近接武器である長い棒をエグザトリアに向けて突っ込んでくるがエグザトリアは微動
だにせず向かってくるデライトを見つめていた。メーターが徐々に上がっていく。規定値を知らせるアラーム
が鳴り響くと同時にサイトを向ける。マーカーが、変わった。
「発射!」
 トリガーを引くと光の飛沫が勢い良く飛び出してきた。近接戦闘を仕掛けようとしたデライトは身体中に穴
を開け、その後ろで援護射撃をしようと銃器を構えていたものたちも巻き込んでいく。
 拡散モード、簡単に言えば散弾銃モードであるが祐一がこのモードを知ったのはエグザトリアからの提案で
あった。戦闘中、絶え間なくエグザトリアは戦いのノウハウを祐一に教えてくれた。戦術の立て方から効率の
いい武器の使用法まで考えてくれるのは人の脳が持つ構成力をフル活用したからである。
 だが、その穴もすぐさま別のデライトによって塞がれようとしている。数自体は恐らく祐一たちが思ってい
る以上に減ってはいなかった。
「そのままバスターモードに移行!」
 祐一の声と共にライフルが形状を変える。バレルが開き、巨大な花を思わせる形に変形した。
 残りタイムは二十秒。十八秒のチャージの後、2カウントと共に脱出を決行しなくてはならない。
 バスターモード、一撃必殺の高出力荷電粒子砲ならば攻撃の後に通路が出来るだろう。
 デライトのほうは気にせずエグザトリアへと向かってくる。先ほどのような手痛い反撃を食らいたくないの
か、今度はゆっくりと、そして確実に歩みを進めていく。
 クレマンソーのパイロットから通信が入った。だが、祐一には全く聞こえていない。彼の耳に入ってきてる
のは自分の心音だけであった。
「カウントを開始します! 5……」
 PMに捕まっているパイロットたちは息を呑む。中には瞳を閉じて神に祈る者も居た。震えが止まらないら
しく自身を鼓舞しようと何度も「問題ない」と呟く者も居た。
「4……」
 デライトは向かってくる。レンズがきらりと光る。エグザトリアとその後ろの獲物をめがけて一直線に。
「3……」
 エグザトリアの照準が先頭のデライトを捉える。距離が徐々に縮まっていく。射程に入ったことを知らせ
るアラームと赤くなったディスプレイが引けと祐一に命じる。
「2……」
 祐一は一足先にトリガーを引いた。眩い閃光がデライトたちを包み込む。
「1……」
 爆発が起こった。まるで線を引かれたかのようにデライトが、バイラムが、光の洪水に飲み込まれていく。
 大きな穴が開いたかのように黒い空間が生まれ、その場には人の形をした者は何一つ無かった。
「0!」
 言葉と共にエンジンに灯がともる。真空の壁を突き破り、ポーン、クレマンソー、青龍の順番で一気に飛び
出していた。一部のパイロットが軽く呻くがそんなことは気にしていられなかった。
 ただひたすら、逃げることを、生き延びる事を祈って飛びたって行く。
 そして祐一はそれを見送った後、残ったデライトたちをあっさりと切り捨てて行くと再び雪の結晶を目指し
て進み始めた。

「オラオラ! 邪魔すんじゃねぇ!」
 バイラムUは群がるデライトに対し、右に左にと薙ぎ払う。薙ぎ払うというよりもその姿は槍を鈍器のよう
に構え、力の限り薙ぎ倒すようにも見えた。だが、その一撃でデライトたちは次々に吹き飛んでいく。
 銃剣一体型であるがこの槍の特性を考えた場合、近接戦闘に持ち込んだ方が戦いやすい。
160創る名無しに見る名無し:2013/04/29(月) 22:03:08.24 ID:tteBwSdL
 銃部分自体はかなりの精度を誇っているが充填率が悪く、スナイパーライフルのような一撃必殺に特化した
特徴があるため、よほどな事が無い限りアジャムは銃を使うのを控えた。
 それ以上にこの青の鬼は機動性が高く、間合いが一気に詰められるため近接戦闘に持ち込むのは苦労しなかった。
「司令部っていうのはどこにあるんだ?」
 デライトの頭部を叩き潰しながら後ろにいるカミーラに聞く。彼女はちらりと雪の結晶を一瞥すると――。
「司令部は基本的に上部に位置することが多いのです」
「上部って行っても宇宙だから上下も無いんじゃねぇか?」
「いえ、これを見てください」
 素早くキーを叩き、ディスプレイに小さく、雪の結晶の全体図が現れる。カミーラの言う上部とは――。
「アステロイドベルトの暗礁をつなぎ合わせる以上、上下、すなわち北や南といった軸が現れるはずです」
「てことは、上部っていうのは北なんだな?」
「そういうことです」
 雪の結晶の上部、揺れの中で尤も静かな場所である。上下がない宇宙では動かない部分を故意的に作ること
でその安定を保つのだ。回転をさせることでも安定を得ることが出来るが返って方向感覚が狂わされる場合があった。
「ですがくれぐれも直接攻撃をかけないようにしてください」
 カミーラの言葉にアジャムは少し考える。向かってくるデライトを串刺しにし、横へ放り投げるとそのまま
別のデライトにぶつかった。そしてすかさず一気に近づくと二機とも心臓部を貫いた。爆発を背景に思いつい
た言葉を並べてみた。
「……あの手の物にありがちな暴走って奴か?」
「それもありますが破壊をしてしまうとあちらのパイロットが全員目覚めてしまいます」
「目覚めるとどうなるんだよ?」
「有人機が一番厄介ではありませんか?」
「……納得だわ」
 無人機と有人機、比べたら圧倒的に有人機の方が有利であった。コンピューターの瞬間的かつ合理的判断も
いいものであるが一度コントロールが奪われてしまうと奪還するまでの間、味方に多大な被害が起こってしまう。
 何より、コンピュータは思っているほど融通が利かない部分もあり、センサーがなくなればマニュアルモー
ドに移行をし、照準で捉えるのだが的確すぎて返ってよけやすいと言うデータも出ている。何よりもフェイン
トも駆け引きもないのが機械の限界なのかもしれない。
 そんなやりとりをしながら雪の結晶の隔壁を滑るように上昇していくと追いかけてくるデライトの数が徐々
に少なくなっていく。ダメージを与えてはいけないのか、攻撃も乱雑かつ少なかった。
 そしてカミーラが指摘した上部に近づくと彼女が叫んだ。
「そこです! そこに緊急用の通路があります。そこから中に入りましょう」
 指を刺すところには僅かながら人が通れるかのようなハッチが見えた。
「あいよ」
 アジャムはゆっくりとバイラムUをハッチへと近づける。横にあるのは数字のような文字のような独特の形
をした記号がいくつも見えている。どうやらナンバーロックらしい。数は単純に十二。入力する数は八つ。ち
らりとカミーラの方へを視線を送ると大きく頷いた。
「ナンバー式みてぇだけど……」
「では、私が入力します」
 コックピットを開くと彼女はゆっくりと扉へと近づくと横についている素早くナンバーを叩く。アジャムは
ナンバーの変更を考えたがそれは無く、あっさりとロックは解除された。固い金庫が開くようにゆっくりと扉
が開いていく。カミーラは辺りを見渡すと手を上げてアジャムを呼び出した。
「参りましょう」
「そうだな」
 アジャムはコックピットから小型のアサルトライフルを取り出すと肩紐をかけ、奥へと進んでいった。

 一方、リーシェンたち陸戦大隊の面々もまた雪の結晶が近づいてきた。
 外では戦闘をしていると言うのにここら一辺は森の奥のように静かであった。
 ここまで来るのにかなりの面々が命を落とした。残っているのは半分以下、ここまで残った事はほとんど奇
跡であった。人類のために捨石になった者たちをリーシェンは忘れないだろう。だが、目の前にある巨大な建
築物に驚きが隠せなかった。
「すごい……これが人工物なのか?」
 チャンは思わず息を呑んだ。圧倒的勝つ巨大な”それ”は人類がいまだに到達できない事を指し示すかのよ
うに威圧的な雰囲気をもたらしていた。豆粒のようなPMに対して数千倍を誇る大きさであった。
「よし、各員、抜け道を探すぞ」
「了解」
 リーシェンは辺りを見渡す。バイラムとデライトの姿が無いのが気になる。
 対空砲火すらない、バリアや何かが張ってあるのかと思えばそうでもない。
161創る名無しに見る名無し:2013/04/29(月) 22:04:00.43 ID:tteBwSdL
 キーを叩いて隔壁を調べる。飛び出たセンサーが雪の結晶の壁を調べ始める。
 数秒の待ち時間の後、映し出された結果はバイラムと同じ、共有結合を使われていると言うことだった。
 小さく息を吸って、大きく吐き出す。そしておもむろに壁に向かって手を添えると腹に力を入れて拳を叩き込んだ。
「むっ!?」
 リーシェンの一撃は重い手ごたえと共に弾き返された。
 黄龍の力はバイラムと戦っても差支えが無い性能がある。だが、それがはじき返されたのだ。
 これでは一筋縄ではいかない。となると別の場所を探すしかない。リーシェンは再び辺りを見渡す。
 銀色の鋼鉄に包まれた一角に他とは違った壁が見え隠れしている。ゆっくりと近づくと突如、デライトが飛
び出してきた。リーシェンは流れるかのようにそのまま拳をデライト顔面に叩き込むとそのまま畳み掛けるか
のように腹部を蹴り上げ、胸部に掌打を打ち込む。殴られた部分は完全にへこみ、ひしゃげるとそのまま宇宙
の漂流物となり、外へ流れていく.。
「ふぅ、驚いたな」
 再び落ち着いて辺りを見渡すと通路が見えた。通路の大きさはPMが縦で三機入りそうであり、軽く進んだ
辺りには隔壁があった。分厚そうなその壁を見渡してみるが開錠装置らしい物がどこにも見えない。
 どうやら破壊するしかない。再び呼吸を整え――。
「でぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 まるでドラの音を思わせるような衝撃が手の甲から伝わってくる。だがその一撃を隔壁は自身の屈強さを表
すかのように全く動じなかった。力任せに開くつもりは無いと言いたげであった。
「くっ!」
 ここさえ突破すれば敵の心臓部へいけるはずだ。こんなところでぐずぐずしてはいられない。
 奈央との約束と減りつつある味方。一秒一秒進むたびに焦りが心を蝕んでいく中――。
「少尉、報告が遅れているぞ」
 コウシュンから通信が入った。その声からは感情を押し殺した中に怒りが含まれていた。
 本来ならば報告をする時間であったがリーシェンはそれを完全に忘れ去っており、目の前の壁に意識を向け
すぎていた。
「も、申し訳ありません」
「何かあったのか?」
「隔壁を見つけました。現在のところ開く様子が無いので……」
「よし、ならばその場で待機しろ。くれぐれも無茶はするな」
 釘を刺しておこうといわんばかりに声が重く響く。独断専行をするつもりはなかったが迫る時間が自分に余
裕を失わせていると思い、深く呼吸をする。吐き出す息がヘルメットを曇らせる。
「……ここか?」
 コウシュンをはじめ陸戦大隊の面々も奥へと進んできた。この辺りには敵がいないのか、全機健在だった。
「へへ、ここの奥に行けば……異星人とご対面ってわけか……」
 誰かが呟くのが聞こえてきた。軽口であるはずなのに緊張感がほぐれず、空気は重くなるばかりであった。
「ここは私に任せてもらおう」
 コウシュンの玄武が隔壁の前に立つ。隔壁は挑戦者を威圧するかのように堂々と立っている。
「隊長!」
 そして玄武を隔壁にすかさず取り付いた。軽く、扉自体を叩いていく。
 恐らく、手ごたえを感じているのだろう。そして、一通り叩くのをやめると軽く息を吸うと思い切り棒で壁を叩いた。
 尤も、リーシェンが先ほどやったようにただ叩いたわけではなく隔壁の四隅を慎重に、かつ大胆に叩いてく。
 空気の無い宇宙だと言うのにリーシェンには壁が叩かれる轟音が耳に入ってきた。
 最初はしなるだけの隔壁であったが少しずつ力を入れるたびに隔壁がへこみ、そして徐々に亀裂が入っていく。
 最後と言わんばかりに思い切り壁を殴りつけると隔壁が大きく奥へと飛んで行った。
「すごい……」
 この光景にリーシェンはただ見惚れるだけであった。が、そんな彼にコウシュンが発破をかける。
「ボサッとするな! このまま格納庫へと突っ切るぞ!」
「了解!」

「AUA部隊から通信! ワレ、ナイブニセンニュウセリ!」
 伏義から各司令部に報告入った。オペレーターは真偽を確かめると共に素早くキーを叩いていく。
 デライトの数は以前と変わらなかったが、エグザトリアとバイラムUの活躍により体勢を立て直すことが出来た。
 損傷が酷くないPMは既に戦列に復帰しており、数自体は多くは無かった。
「よし、このまま防御の陣形を取りつつ現状維持だ! いいな!」
「了解っ!」
 司令の激が飛び交うと前線にいるパイロットたちにもこの報告が入ってきた。
 ある者は驚愕をし、ある者は感動にむせび泣き、ある者は呆れた顔をしながら。
 だが、全ての物には幸運な報告として入り込んだのだ。士気は一気に上がっていく。
162創る名無しに見る名無し:2013/04/29(月) 22:06:23.67 ID:tteBwSdL
「え? 突入に成功?」
「うん、AUAの部隊は突撃に成功したんだって!」
 通信機から聞こえてくる言葉を一字一句確認するかのように何度も反芻すると意を決したかのように踵を返した。
「ならあたしもそっちに行くから! 後はよろしく!」
「あっ、ファルちゃん!」
 ファルはマールの静止を聞かず、思い切りペダルを踏み込むとビスマルクは猛スピードで飛んでいってしまった。
 彼女の行き先、それはあの雪の結晶だった。デライトの攻撃をかいくぐりつつ確実に奥へ奥へと進んでいく。
 一方、報告を受けたマールはファルの行動に戸惑いを隠せなかった。が、すぐさま艦長としての責務を取り
戻すと新しい指令を飛ばした。
「みんなは防衛について、ここで戦力を拡散しちゃうとこっちが耐え切れないもの」
「了解!」
 黄色の部隊は素早く布陣し、帰って来たPMの後ろについているバイラムやデライトを丁寧に破壊し始める。
 ファルちゃん、必ず帰ってきてね。マールはそんな思いを胸の奥に秘めると再び、指示を叫び始めた。

 銀の剣と黒の大剣が宇宙に舞う。バイラム・カスタムとパラディンの刃はお互いの装甲表面に軽い切り傷を
負わせるだけであり、刃がぶつかるたびに火花が飛び散り、空を何度も切り裂いた。
「もう一度聞く! なぜ私の友を殺した!」
「任務だからよ。貴方も同じでしょ?」
 パラディンとバイラム・カスタムの刃がお互いの眼前に突きつけられた。
 端から見れば男と女の言い争いにしか見えなかった。だが、やってることは命を懸けたやり取りである。
「違う!」
「どこがよ?」
 バイラム・カスタムの太腿に蹴りを叩き込むとそのまま一気に懐に飛び込む。そして小脇に手を入れ、後ろ
に投げつける。飛んでいった先にある暗礁へ叩きつけられると思いきやあっという間にバランスを整え、着地
と同時に再びパラディンへと向かってくる。
「私は人を殺して平気な顔は出来はしない!」
「でもそれを仕事としたのよね?」
 くないが投げられるが素早く上昇し、避ける。そしてそのまま間合いを詰めると一気に喉元へと刃を突きつ
ける。だがバイラム・カスタムは大きく後ろに仰け反るとそのままパラディンの腹部を蹴りつけてきた。
 奥歯で衝撃に耐えつつ操縦桿を素早く傾け、バランスを立て直した。
「否定はしない、だが奪われた命に、ケントに対し哀悼もしない貴様――」
 この言葉にセルの顔が歪んだ。バイラム・カスタムにオレンジのラインが入るとパラディンに向かって突っ込
んでいった。突然の事にボルスは姿を一瞬見失った。
「何!?」
 姿を確認する頃には彼女は懐に入り込んでおり、手に持っていた刃が大きく振るわれた。
 ボルスはとっさに操縦桿を引いて、離れようとするが時遅く、パラディンの左腕が吹き飛んだ。
「哀悼をしない? 私が? ふざけないで!」
 大きく腹を蹴りつけられるとそのまま体当たりされ、近くの隕石へと叩きつけられる。
 そして、そのまま馬乗りの状態で殴られた。殴られるたびに激しい振動が伝わってくる。
「ぐぉ!」
 圧倒的ともいえるパワーの前にコックピットに火花が飛び散る。ペダルを踏み込んでいるのに一行に跳ね除
けられない。バイラムを改造した事は決して伊達ではない事を身をもって理解する。
 殴る手が止まった。
「こっちに来て初めて友達になったのがケントだったのよ……」
 通信機から涙で滲んだ声が聞こえてくる。握っていた操縦桿の手が震えていた。
「ならば何故……」
 が、ボルスは目を見開いた。気づいたのだ、彼女の価値観は我々地球人に似ていることに。
 そう思うとどことなくだが自身の目で彼女を見透かしてみると何だか小さい女の子に見えてきた。
「……これで、終りにしましょう」
 バイラム・カスタムは刀を取り出すと刃をパラディンの喉元へ突きつけた。そして、そのまま振り下ろされ
そうになった瞬間、横からアルとレイの二人がそれを阻止するために突っ込んできた。素早く飛びのくと二人
に向かってくないを投げつけたが素早く遠ざかった。
 その間にボルスは思い切りペダルを踏み込み、体勢を整えると剣をバイラム・カスタムへと突きつけた。
 ケント、私は……。苦虫を噛み潰したかのような顔をしながら軽くお腹に力を入れなおすと――。
「アル、レイ! この女を戦闘不能にする! 我々の誇りにかけて全力で全うしろ!」
「了解!」
 二人とも大声を上げて気合を入れ直す。ボルスもまた肩を軽く回して体の状態を確かめた。
 音はなるが激しい痛みは感じない、腕も背中も大丈夫だ。ならば!
 ペダルを踏み込むとパラディンが先頭となり駆け抜けていく。
163創る名無しに見る名無し:2013/04/29(月) 22:07:44.32 ID:tteBwSdL
 セルは冷たい笑みを浮かべると自身もまた同じように突っ込んできた。
 振り上げた剣と剣がぶつかり合うとと激しい火花が飛び散る。
 切っ先がお互いの装甲を掠めるがパワーは相変わらずバイラム・カスタムのほうが上だった。
 だが、これは既に織り込み済みだった。左腕が無いパラディンでは負けるのは目に見えている。
 だからこそ――。
「アル、レイ!」
 素早くバイシクルシュートの要領でバイラム・カスタムの頭部を蹴りつける。蹴られた衝撃でセルは顔をし
かめ、映っている映像が大きく乱れた。離れた事を確認するとすかさずミサイルを発射する。
 爆発と共に離脱をする。が、当然のように彼女は手を伸ばしてきた。その隙から――。
「これで!」
「どうだ!」
 二人は閃光弾を発射する。だが、目をつぶした程度ではバイラム・カスタムは怯まなかった。
 センサーの音を頼りに二機の居場所を発見した。そちらへとくないを投げつけようとするが横から来たパラ
ディンの体当たりによって阻止される。
 セルは舌打ちをしてパラディンを牽制しようとするが今度はナイツ二機がマシンガンで牽制をしてきた。
 これまでの戦いからダメージが与える事は出来なくても動きを止める術を学習してきた三人だ。
 機体特性を理解していれば必ず致命傷を与える事が出来ると信じてきた。
 その証拠に徐々に追い詰められているではないか。 だが、ここで彼女は別の手段を講じた。
 操縦桿から手を離すとシートの奥にあるスイッチに手を伸ばすと、そのまま――。
「え――」
「な――」
 突然、二機のナイツが爆発した。ボルスは一瞬の事に躊躇してしまう。
 一体何が起こったんだ? しかし、そんな事を考える事はやめ、すぐさま攻撃に移った。
 間合いを計りながらマシンガンをバイラム・カスタムに向かって撃つが弾が通り抜けたのだ。
 どういうことだ!? 
 そんな疑問が浮かぶが目の間にいる敵は動く様子はなく、ただ、ボルスを、パラディンを見つめているだけ
であった。そしてその姿が幻影のように消え去るとボルスは理解した。これが残像である事に。
 すぐに周囲にミサイルをばら撒く。爆発の中、動く影が見えた。だが、問題は……。
「どういうことだ?」
 レーダーに数個の点滅が存在していた。影もいくつも見える。
 バイラム・カスタムがいくつも存在している……という事実であった。
 それを理解した瞬間、パラディンの胸がはじけ飛んだ。装甲が無くなった為、エンジンがむき出しとなる。
 そして、ゆっくりと目の前まで来ると音速の拳が飛んできた。パラディンの顔が砕け散るが反撃に転じよう
と刃を振るう。だが目の前の敵は幻に過ぎず、刃は空を切った。それと同時にバイラム・カスタムの刃が大き
く振るわれた。背中についていたバーニアが吹き飛び、手に持っていたマシンガンが真っ二つに切り裂かれた。
 そして、再び前に回ると今度は腹部を思い切り殴りつけてきた。
 衝撃でコックピットの一部にヒビが入る。破片が飛び散ると同時に自分の腕を傷つけた。それだけではない、
瞼を切ってしまったらしく、血が止まらない。瞳に入ることは無かったが今の状況では治療薬にも手が出せない。
「さようなら、ボルス大尉」
 バイラムの手に力が入るとコックピットが歪み始めた。軋んだ音と共にコックピットが潰れていく。
 必死に操縦桿を動かしたり、背後にあるミサイルを使ってみるが動く様子が無い。脱出機構も壊れたらしく
レバーを引いても反応が無かった。
 これまでか、と思いきやバイラム・カスタムは動かなかった。何度も力を入れてみるがこれ以上潰れない。
「パワーが下がってる? どうして……」
 操縦桿に力を入れているのにパラディンのコックピットは全く潰れないのだ。
 メーターを見るとEX1の反動が現れたらしい。エネルギーゲージが底をついていた。
 セルは軽くため息を付くと目の前の死にぞこないの聖騎士へ視線を送る。
 お互いに沈黙を保ったままであったがセルは思わず目を見開いた。
 動いているのだ、パラディンが。まるで最後の力を振り絞るかのように手足を痙攣させて動いていた。
「ありえないわ……」
 その光景にセルは青ざめた顔をしながら操縦桿を動かそうとする。
 だがバイラム・カスタムの動きは重く、離れるにも従来のスピードが出せずに居た。
 エネルギー切れがここに来て、効果を表したのだった。
うおおおおおおおおおおおおおお!」
 ボルスは自分の力を全て叩きつけるかのようにペダルを思い切り踏み込むとパラディンはそれに応えるかの
ように背中のバーニアを輝かせた。
164創る名無しに見る名無し:2013/04/29(月) 22:08:15.26 ID:wvaUKNuq
紫煙
165創る名無しに見る名無し:2013/04/29(月) 22:14:36.84 ID:XNxldE+o
 
166創る名無しに見る名無し:2013/04/29(月) 22:17:41.73 ID:tteBwSdL
 セルは回避をしようとするが思った以上にバイラム・カスタムは動かなかった。
 徐々にパラディンは迫っていくが機体が壊されすぎたのか、ゆっくりとだが減速していく。  
 このままではスピードが死んでしまう! ならば!
 ボルスは動かなくなったパラディンの左腕を肩ごと切り裂いた。若干バランスを失いフラ付いたが気合で持
ち直させる。血で視界が悪くなっていた。腕や足がしびれている。だが、この一撃にかける!
「これでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
 パラディンの刃はバイラム・カスタムの胸元を貫いた。そのまま近くの暗礁へ叩きつける。
 二機ごと突っ込んだ衝撃で暗礁が砕け、バイラムの装甲がバラバラに砕け散っていく。
「うおおおおお!」
 その衝撃で何かが砕ける音がしたがボルスは気にせずバイラム・カスタムを叩き続けた。
 そして、二機の動きが止まった。バイラム・カスタムの体から激しい火花が飛び散る。
 手足が軽く痙攣をし、そしてそのまま眠りについた。操縦桿を動かすが機能は完全に停止しているらしく、
モーター音も、エンジンの振動も聞こえてこなかった。
 セルはため息を付くとその場にうなだれた。
「……もうだめね、殺しなさいな」
 諦めにも似た口調、いや、実際諦めているのだろう。彼女は。ボルスは――。
「断る」
 そう言って剣を差し込み、てこの原理を利用して。バイラム・カスタムのコックピットを毟り取ろうとする。
 パラディンは既に形を成しておらず、動くたびに軋んだ音を響かせた。だが、まるでボルスの意思が宿った
かのように、最後の力を振り絞って何度も剣を押していく。そして、バイラム・カスタムのコックピットが外
れ、セルが外に飛び出してくると外部についている拘束機を射出し、手足を動かなくさせた。
「お前には法廷に立って貰わねばならん。それがケントへの報いであり、お前への罰だ」
「……負けたわ」
「だが、私はこれを勝利とは言わん」
 そうだろ? ケントよ……。
 全てを言う前にボルスは力なくその場に崩れ落ちた。痛みも何も感じないままゆっくりとまぶたを閉じると
そのまま宇宙の風に流れ行くまま小さな暗礁に横たわった。

 後半3へと続く
167創る名無しに見る名無し:2013/04/29(月) 22:18:34.46 ID:tteBwSdL
以上です

ボルス編終了
……自分で言うのもなんですけど……長いな……
168創る名無しに見る名無し:2013/04/30(火) 12:38:33.61 ID:ZfhrI0VL
ロボットの描写じゃなく
舞台になる近未来な施設(スペースコロニーとか軌道エレベーターみたいな)の設定?描写を表現してるラノベってある?
ていうかそういう日常から離れたSF世界のラノベ自体少ないのかな?
ファンタジーならみるけど
169創る名無しに見る名無し:2013/04/30(火) 19:43:29.70 ID:Vx460WsD
パッと思いつく限り出てくるのがガンダムだな
でも、合ってるかどうかは分からないけど
170創る名無しに見る名無し:2013/04/30(火) 22:23:23.95 ID:Q7DR0fhb
それこそSF小説を探してみたらいかがか
171創る名無しに見る名無し:2013/05/01(水) 23:42:29.71 ID:y2FpWAF/
土星で地球二個分の台風発生だってさ。
ここまで桁外れだと、パンチ一発で地球二個分の効果範囲を持つ核爆発発生くらいやっても良いんじゃないかって思った。
確実に持て余すからやらないけどw
172創る名無しに見る名無し:2013/05/01(水) 23:55:50.68 ID:XWURyiq8
アラレちゃんの二倍のパンチ力か……
173創る名無しに見る名無し:2013/05/02(木) 01:53:34.04 ID:pCrRcWO4
>>168
その昔EGコンバットって小説があってさ
174創る名無しに見る名無し:2013/05/04(土) 09:47:22.17 ID:WO2b2Ck9
>>167
投下乙!
175創る名無しに見る名無し:2013/05/06(月) 20:44:42.61 ID:/EeWwi1H
>>168
アクセル・ワールドに軌道エレベーターの話があったような気がする
176創る名無しに見る名無し:2013/05/11(土) 15:50:43.23 ID:Sxl6lZfN
避難所が凄いことに・・・
177古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/05/28(火) 03:00:58.77 ID:rDGgfsti
こんばんわ古時計屋です、CR最新話が思いの外長くなってしまった為、猿回避を含めて避難所に投稿しました

ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1354969085/397-414

よければ、よろしくお願いします
178病気の人 ◆e2usW7RJMY :2013/05/31(金) 01:58:37.58 ID:FXx9yLpY
ドーモ、ロボスレ民=サン。病気の人です。お久しぶり。
久しすぎて覚えてない、あるいはそもそも知らないという人は
「たまに来て鉛筆描きの変なメカを落としていく奴」という認識でおk。

また唐突に新しい変メカ描いたので、規制の隙間をぬって晒しに来たんじゃ。
ttp://dl1.getuploader.com/g/sousakurobo/1736/sister1.jpg
設定らしきもの↓

MSOX-0E8 “デュランダル”
兵器種別:シングラル(人型全領域戦闘機)
総計質量:44050.72t 頭頂高:20.29m
戦闘機動速度:0.12C(秒速36000km相当) ←この値は「急激な加減速を安全に行える速度」の意
最大飛程:約70光年(=ワープ可能距離)
標準武装:
・超大型斥力干渉シェル“ディファランシ”×2
(推進、防御フィールド展開のほか、マイクロブラックホールランチャーや
 フォースグラブ、ディストーションスライサーなど様々な重力攻撃として応用可能)

Q.どういう機体だってばよ?
A.もともと戦闘用の機体じゃなかったのに、何億人に一人クラスの異能を二つも持ってる奴が
 パイロットになったせいで、完全ワンオフのとんでもない化物になったメカ。
Q.武器は?
A.固定武装はなし。重力制御能力のみに特化しまくった機体。マイクロブラックホールを飛ばしたり
 歪曲空間を刀剣状に成形してリパルサーブレード(一般的な白兵武器)の代わりにしたりする。
Q.アクションゲームで言うとどんな性能?
A.序盤のクライマックスで出てくるボス機。ガード不能の射撃と、めがっさ堅牢な防御フィールドで
 プレイヤーを苦しめる。射程は短いので、ヤバくなったら射程外へ離脱して体勢を立て直すのが吉。
Q.プラントの議長とかYF-29との関係は……?
A.特にないです。ファフナーの武器とかクーカイ・ファウンデーションの宇宙戦艦とも関係ありません。
Q.で、本編は?
A.そろそろ設定が固まってきたよ! いずれ文章も投下したいと思っとります。
 ロボじゃないSF話は避難所のなんでも投下スレで晒していますので、ぜひよろしく(露骨な宣伝)

>>177
投下乙です!
179創る名無しに見る名無し:2013/05/31(金) 18:24:52.68 ID:P6VYrRkQ
>>178
ここまでくると、高度に発達した化学は魔法と区別が云々なる
有名な言い回しを思い浮かべずにはおれないw
180創る名無しに見る名無し:2013/06/01(土) 12:36:05.96 ID:DeMQhFit
もはや避難所が本スレと化している感が・・・仕方ないか、SS投下するにはここ不便だし・・・
>>178
設定のぶっ飛びっぷりがSFだなぁとか思ってしまったw
マイクロブラックホール飛ばすのはチートだw
181創る名無しに見る名無し:2013/06/01(土) 15:52:24.07 ID:tSB+8mdr
>>180
携帯が全般的にスマホへ移行した上、そのスマホは一括規制で全滅だからな
特に親元を離れて一人暮らししてる大学生や若い社会人世代なんかは、固定回線持たずに携帯だけでネットしてる人も多いだろうから……
俺もそういう層の一人で明日までは書き込み出来る環境にいるが、そういう層が全滅したら、本スレはもうダメかもしれんね
182創る名無しに見る名無し:2013/06/02(日) 00:23:03.02 ID:mcbuwdLJ
規制、連投制限、さる、ぶっちゃけ本スレいらね
183創る名無しに見る名無し:2013/06/03(月) 22:32:03.08 ID:SZEMPUAQ
書く側としては文章の長さの制限も結構手痛い・・・
184創る名無しに見る名無し:2013/06/04(火) 19:21:25.69 ID:jieYoZNJ
テレホマンのフライングアタック時代からしたら隔世の感だねぇ…
185創る名無しに見る名無し:2013/06/04(火) 19:37:58.70 ID:COWpoeU5
>>181
ドコモMVNOの安SIMを使おう(提案)
186創る名無しに見る名無し:2013/06/08(土) 16:57:43.16 ID:v5WfoQ7n
もう、いっそのことこっちを投下報告と感想&雑談メインのアンテナスレにしてはどうかと
それにしても連投規制つらい…
187創る名無しに見る名無し:2013/06/08(土) 17:10:32.29 ID:Jhbfnxge
そもそも避難所にすら感想来てないぜw
そういう俺自身、最近はめっきり感想書けてないが……
188創る名無しに見る名無し:2013/06/08(土) 17:33:44.87 ID:rL5fRseC
無理して本スレを使うこともないと思うけどね。
いっそ捨てるくらいの勢いで。
189創る名無しに見る名無し:2013/06/10(月) 12:54:57.24 ID:sTpDme8h
テスト
190創る名無しに見る名無し:2013/06/10(月) 12:56:55.61 ID:sTpDme8h
こちらロボ成分です
http://g.jgup.jp/cZSvdRY4Z5
191創る名無しに見る名無し:2013/06/10(月) 13:30:17.56 ID:fHGU4CaK
強そう
192創る名無しに見る名無し:2013/06/10(月) 13:44:11.91 ID:Z/HD5WD3
懐かしい名前が多いな〜
いい意味でメカくさい味が出てるなあ
193創る名無しに見る名無し:2013/06/10(月) 18:25:34.81 ID:sTpDme8h
みんな身長が小さめ設定なので少しでも強そうに見えてくれると描いたほうはほっとします

懐かしい顔ぶれ、になってしまいますかやはり
今回ミリタリー路線っぽいところを三機並べたのは、自分が描くうえで外観の特徴などが被る心配があるからです

今のところ強化外骨格の重歩兵、ローラーダッシュのブリキの騎士と比較したときに
機甲録の機士にこれといった外観的な特徴を見いだせていません
もしご意見ありましたらぜひ私にぶつけてみて下さい
早速の閲覧ありがとうございました
194創る名無しに見る名無し:2013/06/10(月) 18:40:51.40 ID:h1Zr/CNJ
姫路守備隊のそこはかとない某ヴァーチャロイド臭に滾る物を感じるね。
こりゃ好みだ。
195創る名無しに見る名無し:2013/06/10(月) 22:04:52.81 ID:sTpDme8h
ありがとうございます
てか似た雰囲気のロボとか好きなマシーン名などはググって画像確認したいのでズバッと書いて頂けると助かります

余談ですが、ここ最近はタケコプターで空を飛ぶ黒くて格好いいドラえもんみたいな主役機が活躍する作品をBSで視聴しておりますw
196 ◆gD1i1Jw3kk :2013/06/11(火) 01:03:56.29 ID:QhIKAYzI
おー、まさか絵を描いてもらえるとは嬉しい限りです。
当方、去年に母親が死ぬという人生最大最悪の不幸があってから創作意欲が壊滅していて……
今でも無理ですが、時間は掛かると思いますが中隊シリーズとか完結させたいと思っています。

去年の母の死で思い知ったのは、人間って簡単に死ぬ、という事です。
昨日まで元気にしていたのに、朝になったらベッドの上で死んでいた。まるで冗談のようで、正直今でも母の死を受け入れられてない状態です。
なので、お母さんがいる人は精一杯親孝行してあげてください。自分はやりたくてもやれなかったので。
197創る名無しに見る名無し:2013/06/11(火) 08:03:23.66 ID:piFijDoT
たっぷり甘やかされたおかげで自分は世間知らずの息子になったが、
それはそれで幸せなことだったと思います
後々になって自分が受けてた恩とか愛情の深さに気付いて呆然とするのもそう悪いもんでもない
創作意欲は病気、うっかり再発するまで健康にお過ごし下さい
198創る名無しに見る名無し:2013/06/12(水) 12:36:27.23 ID:gAbQjkxD
タウエルン貼っときますね
http://m.jgup.jp/vhaTAZZEuV
199創る名無しに見る名無し:2013/06/12(水) 16:23:41.96 ID:lIcNYR/O
何これsugeeeeee!!
200創る名無しに見る名無し:2013/06/12(水) 20:46:39.02 ID:gAbQjkxD
変形は自分の限界がすぐにくるので、気持ちを切り替えながら何回かにわけてトライしたいです
今は見てくれたひとの想像力だけが頼りです
コメント頂きありがとうございます
201 ◆kNPkZ2h.ro :2013/06/14(金) 10:39:22.54 ID:3MMMWl8i
みなさまどうもご無沙汰しております
スレからめっきり離れておりました

>>190>>193>>195
すげえ!かっけえ!
頭部が存在せずセンサーやカメラの集合体になってるとか
通信用アンテナっぽい部品とか
燃料バッテリーもしくはウェポンラックにも見える背中部分とか
まさにミリタリー
しかも手前と奥のとで微妙にデザイン違ってファミリー機っぽい
ありがとうございます感激です

あれですよ機士はイメージ的にガサラキのTAですよ
身もフタも無い事を言ってしまえばサイズとか武装とか操縦方式とか、まんま同じですもん
ただ、デザインに注文をつけるなら胴体部前面(操縦者が乗ってるから一番防御大事な部分)は防御力向上と被弾時の破損および修復のことを考えて
戦車の正面装甲みたいな「まさに装甲板」という感じのノッペリしててあんまりデコボコや分割ラインが入ってないほうが
よりミリタリーかもしれません
ただ避弾経始を考えて胸部が膨らんだ傾斜装甲にはなっていてもいいかも
逆に胴体部分以外は、どうせたいした装甲つけられないしぶっ壊れるの前提ですから、趣味に走った手足のデザインでいいかと思います
とはいえ関節部の防護を考えると肘や膝にもカバーする装甲パーツをつけてるとかの案も考えられます
(自分は絵をかけないのにこういう考証だけは拘る人種でごめんなさい…)


>>198
ト…トランスフォーマーがおる!?


>>196
お悔やみ申し上げます…
自分も今年3月に祖父が永眠いたしました
202創る名無しに見る名無し:2013/06/14(金) 12:41:03.60 ID:Xt3v1kzR
ああ良かった、規制が続くようで作者氏のレスを頂けるか心配してました
機士がガサラキのTAであることは実は以前(何年も前ですが)伺っておりました
機士に関してはいずれ二週目の機会を儲けて修正しますね
あと絵を描けようが描けまいが、拘りをぶつけて頂けることを大変嬉しく思います
貴重なご意見ありがとうございました
203創る名無しに見る名無し:2013/06/16(日) 13:27:36.75 ID:qkfo35rR
てs
204創る名無しに見る名無し:2013/06/16(日) 13:28:06.43 ID:qkfo35rR
規制解除されたああああああ!!!!
205創る名無しに見る名無し:2013/06/16(日) 15:13:36.24 ID:vmos4JxM
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206創る名無しに見る名無し:2013/06/17(月) 12:50:35.49 ID:+jQpwymE
再検討はじめました
機士の関節につく装甲などは、まだ全然足りないかも知れません
あとサイズ比較のためのブリキの騎士も一緒に貼ってます
http://j.jgup.jp/VnIpscKKxT
207創る名無しに見る名無し:2013/06/18(火) 12:00:52.14 ID:N42Q5LcP
かっけえ……
208創る名無しに見る名無し:2013/06/18(火) 12:47:25.67 ID:CmD4OwgW
>>207
ありがとうありがとう
すげー嬉しいですw
209創る名無しに見る名無し:2013/06/18(火) 18:37:12.82 ID:xSWzxpU8
>>206
素直にカッコよい。

このテの『着込む』というには大きなサイズのロボットって、
操縦席と可動の事まで考えると、胸回りと胴回りの意匠がきつくなるよね。
210創る名無しに見る名無し:2013/06/18(火) 20:30:06.71 ID:CmD4OwgW
>>209
ありがとうありがとう
今回のブリキの騎士は内部容積の大半が中の人ですから腰とか股関節の可動とかあやしさ満載ですね
動くたびにセクスィーに露出するわけにもいかないですしw
外装の立て膝とかできるの?ってところも多いです

もしかしたらブリキ〜は
バギーの走破性を高めて武器腕をつけたら結果的に人の形になっただけで、人型ロボとして見栄えよい動きはしません、くらいまで割りきるのもアリかも知れません
211 ◆kNPkZ2h.ro :2013/06/18(火) 22:02:34.35 ID:VI0YBrBE
>>206
いいですねかなり無骨でかつ繊細にメカメカしくて
胸の横にライトっぽいの付いてたりと実在兵器らしいアクセサリーを感じます
ウィンカーとかもどっかに付いてるんだろうか…
7師-本管とか日の丸とか陸自っぽいマーキングデカール貼りたくなりますね!

そして内部図解&降着姿勢細けえ!
機士ほんと狭苦しいわ…でも少女機甲禄でこれに乗ってるのじょしこーせー(外伝のティアーナに至っては小学生に間違われる小柄)
だからもう少しマシなのだろう
そして「ようなもの」がまた凄いカッコイイ というか機士の5倍くらい強そう
212882 ◆iUS45DEX5. :2013/06/18(火) 22:48:28.96 ID:MJdbeA+f
>>211
◆kNPk2Zh.ro
お久しぶりです。
突然で申し訳ありませんが、オレは今後ロボスレには投下も書き込みも(このレスのようなお詫びのもの以外は)しないことにしたので、
ワームのデザインはしないことになります。
せっかく依頼いただいたのに申し訳ありません。

さらにオレ自身はデザインを考える過程で数々のことに気付くことができ、貴重な情報の蓄積ができた
(兵器等の開発で採用されなくてもその開発経験は無駄にならないってこういうことなんだな……)
のに完成させられず何かオレの方が一方的に利益を得たようで心苦しいのですが……

それでは。
213882 ◆iUS45DEX5. :2013/06/18(火) 22:55:14.09 ID:MJdbeA+f
あ、>>212で「氏」打ち忘れて呼び捨てにしちゃってすみません。
214創る名無しに見る名無し:2013/06/18(火) 23:08:41.50 ID:d1wt8hpy
避難所でも思ったけど何でロボスレから退くんだい888さん
責めてるとかじゃなく純粋に理由が知りたいの
215創る名無しに見る名無し:2013/06/18(火) 23:10:06.49 ID:d1wt8hpy
真剣な事聞いてるのに名前間違えてるしORZ
すまない882さん
216創る名無しに見る名無し:2013/06/19(水) 00:13:05.03 ID:z0UCqJZ8
スレから離れるのはしょうがないとして
久し振りの顔出るたびに離脱宣言されるのもちょっと困るんで
一回で済ましてくんない?
217882 ◆iUS45DEX5. :2013/06/19(水) 01:50:36.00 ID:0hTDCUYS
>>214
待たせても悪いんでこれだけ書くけど、オレそういう説明含めて書き込みしないよ。

>>216
まあ確かにそうなんだろうけど、どっちみちあと蜥蜴氏相手の一回だけなんでそれは多めに見ておくれない。
218創る名無しに見る名無し:2013/06/19(水) 07:01:49.24 ID:z0UCqJZ8
先に済ましときゃ後は他のスレ住民が説明すんだろ
一々個別にやられちゃ嫌がらせにしか見えん
219創る名無しに見る名無し:2013/06/19(水) 12:28:47.46 ID:DDAfpqHk
>>211
いやいやコクピットは狭いって御自分で何処かに書かれてたじゃないですかやだーw
それ読んでわざわざ狭い仕様にしたら裏目に出ました、失礼致しましたw

未満〜は機士の初期案です
機甲禄世界にしては体型が軽いかな?と思い、防弾ベスト+救命具のイメージで太さを増したのが最初の機士になりました

この度は色々どうもありがとうございました(もしかしたらまたお世話になるかも)
その時はまた宜しくお願い致します
機甲禄(ワイルドアイズも)期待しております!
220創る名無しに見る名無し:2013/06/20(木) 13:32:25.42 ID:elzsGDzf
タロさんの動画見て作りたくなったんやな
http://dl6.getuploader.com/g/sousakurobo/1738/%E3%82%86%E3%81%A3%E3%81%8F%E3%82%8A.png
221創る名無しに見る名無し:2013/06/20(木) 21:19:59.97 ID:GnSkw2Wf
ゆるい(*´д`*)だがそれがいい
222創る名無しに見る名無し:2013/06/20(木) 21:35:23.78 ID:N64DDqCj
いつのまにこんなの描いてたんだw
223創る名無しに見る名無し:2013/06/21(金) 20:34:38.77 ID:nfgYLGbh
ゆっくりw
224グラタンの人 ◆zy7jjESs2Y :2013/06/23(日) 16:09:06.23 ID:6vdI301m
ロボスレよ、私はかえってきたああああああ!!!
というわけで規制解除されたグラタンです。シンブレイカーを投下しにきました。
微グロ注意。

【前回のあらすじ】
シンブレイカー無しのまま襲来した第4の『×』は、カオスマンの活躍によって撃退された。
そんな中志野真実はシンブレイカーの存在意義に疑問をいだく。
225グラタンの人 ◆zy7jjESs2Y :2013/06/23(日) 16:12:19.52 ID:6vdI301m
 翌日――次の『×』到来まであと7日(予想)。

 天照研究所はあと始末のためにいろいろと大変、とのことだったので私は今日は普通の大学生らしくすごすことにした。
 1週間ぶりに友達たちと会い、談笑していると、もとの生活に戻ってきたのだなぁという実感がしみじみとして、
私は大あくびが出た。
「みんな心配してたんだよ」
 昼休みになってグループに合流した岡本結衣が私の顔を覗き込んで言った。
 私はつとめて明るく笑いながら、感謝の言葉を添えて謝罪をする。
「体はもう平気なの?」
 問いかけに私は頷いた。
「よかったね、治って。結局なんだったの? 病気? ケガ? 」
 返答に窮し、適当にごまかす。
「へぇー、そうだったんだ。治ってよかったね。」
 岡本はにっこり笑った。
「ところでさ、みんな3限空いてる? ご飯食べいこうよ!」
 いいね、と私は返し、周りの仲間も賛成する。
 すると岡本はカバンからスマートフォンを取り出した。そのイヤホンジャックには例の小さな魔学機械がついている。
第3の『×』に対してバリアを展開させたものだ。私は眉をひそめた。
 岡本はスマートフォンを口元によせて話しかける。
「『お昼ごはんを検索して。ここにいる皆が満足できるやつ』」
 私はぎょっとした。
 彼女のスマートフォンはものの数秒で検索を完了して結果を画面に表示させ、岡本はそれを皆に見せていたのだ。
そして画面をのぞき込んだ彼女たちは全員がきゃあきゃあと楽しげに検索結果に頷いていた。
 そんな、ありえない。私は思った。
 音声だけで検索等を行うシステムはすでにiPhoneなどにもあるが、なんだあれは。
あんな曖昧で漠然とした、しかも周囲の状況まで織り込んだ検索条件で正確な結果が出せるわけがない。
でも彼女たちの様子はまさに求めていたものをずばり提供されたときの反応だ。私は岡本に、私にも見せて、
と言った。
 彼女が差し出した画面にはまさに私の空腹具合にマッチしそうなパスタ専門店が表示されていた。
しかもどうやらこの検索結果は、今から出発し、食事を終えて、次の授業に間に合うための所要時間までも
自動的に考慮したもののようだった。
 私は少し寒けがした。
「ねぇ……これ、アプリ?」
 私が訊くと、岡本は頷く。
「このあいだね、変な怪物が大学に出たときにバリアみたいなのを出したこの小さな機械のことが気になって、
もらったとこへ訊きに行ったの」
 岡本はイヤホンジャックに刺さったままの銀色の機械を指した。それはたしか病院で配られていたんだっけ、
と彼女が語っていたことを私は思い出す。
「でも、天照研究所が開発元だからそこに問い合わせてくださいって言われて……で電話したんだ。そしたら」
「そしたら?」
「そこで研究してる新しい技術について教えてくれてさ、
それを使った新しいアプリのモニターになってってお願いされたんだ。それがこの『状況検索アプリ』」
「そんな……」
 私は愕然としていた。だって、そんなの……おかしい。
 だってこれって――
「『魔学』って言うんだって」
 私は絶句した。
 天照研究所は魔学を隠し通そうとしているんじゃなかったのか。
 怪物を生み出す危険な技術を、無知な素人に使わせるなんて、危険すぎる。
バリアならまだわかるけど、こんなの、必要ないじゃないか!
「……その、結衣、その人、どんな人だった……?」
「え、どの人?」
「問い合わせにこたえてくれた人」
226グラタンの人 ◆zy7jjESs2Y :2013/06/23(日) 16:14:47.06 ID:6vdI301m
 すると彼女は少し困った表情をした。
「それが電話だったからさ。どんな人かは分からないんだよ」
「それでも、男か女かくらいは……」
「んー、どっちかと言えば、女の人……いや男の人にも聞こえたような……」
 私は歯噛みした。
 こんな質問には意味が無いんだ。もし電話に出た人が天照研究所の方針に逆らっているのなら、
容易に特定されてしまうようなヘタを打つはずがない。
 私はそれから、直接その人に電話が繋がったのかと訊いたが、岡本からは受付から担当者に回された、
と言われた。その受付は機械音声だったとも。
 それに魔学を使えば、他人のスマートフォンに自動でアプリをダウンロードさせることも不可能ではないはずだ。
 ……高天原さんあたりに、直接会って訊くしかないのだろうか。
 私はもやもやした気持ちを抱えたまま、彼女たちとその料理店に行かざるを得なかった。


 その日全ての授業が終わって、私は友達のカラオケへの誘いも断り、まっすぐに天照研究所へ向かった。
 が、研究所前までやってきた私はなんだかいつもと様子が違うことに気づく。
正門前に報道機関の車や記者が張り込んでいるのはいつもどおりなのだが、それに加えてある種異質な緊張感が
研究所全体から漂っていたのだ。おそらく事後処理のために忙殺されているためだろう。
 研究所前の道路を挟んだ反対側からなんとなく様子を伺ってみる。時刻はすでに6時過ぎだが、
まだ明るいために正門の隙間から見える向こうまでもなんとか見渡せた。
 少しの間私は研究所内に入ろうか入らまいか迷っていた。するとそのとき玄関から身長の低い人間がひとり出てきて、
正門に向かって歩いてくる。正門周りの記者たちが待ってましたと言わんばかりにカメラやボイスレコーダーの準備を
始めるが、その人物が正門をくぐると、目の前に相手がいるにもかかわらず彼らはその人物を見失ったようで、
急に辺りをキョロキョロしはじめた。
 出てきた人物は因幡命で、手に持った魔学スマートフォンをいじっていた。
おそらく記者たちが彼女を見失ったのも魔学によるものだろう。つくづく便利な技術だ。私は声をかけようとしたが、
それよりも早く彼女のほうが私に気づいた。
 因幡は左右確認もせずに道路をだらだらと横断し、私の前に立つ。
「何してんの? 研究所に用?」
 そう言った彼女の顔には隠しきれない疲労の色が見てとれた。
「寝不足ですか?」
 私が訊くと、彼女は頷き、それから大あくびをひとつする。
「昨日徹夜。後処理とか……カオスマンの治療とかで」
「そういえば、カオスマンはあのあとどうなったんですか?」
「君も酷い人だね。これから病院に彼の様子を見に行くけど、来る?」
 そういうことになった。


 天照病院の地下は相変わらず薄暗く、ヒヤリとした空気が満ちていた。
おそらくここの職員もあまり地階には足を踏み入れないのだろう。なんとなくそんな気がした。
227創る名無しに見る名無し:2013/06/23(日) 16:17:29.19 ID:6vdI301m
 硬質な足音を響かせながら廊下をしばらく歩くと、曲がり角の向こうでチン、とエレベーターの到着する音がして、
そのすぐ後にストレッチャーを押した看護師が現れた。彼女の押す台の上には黒く長い大きな袋があって、
その中身が気になった私は、彼女とすれ違ったあとに前を歩く因幡に訊いてみた。
「え? いま誰かとすれ違った?」
 きょとんとした顔でそう返した因幡に、私は背中に冷たいものが走る感覚を覚えたが、
直後に彼女はいかにもおかしそうに笑った。
「うそうそ、冗談だよ」
 私はほっと胸をなでおろす。
「冗談に思えませんよ。病院の地下で、しかもオカルト関係は……」
「ここの除霊は徹底してるから安心して」
「はぁ……それで、今すれ違った人が運んでたアレは何です?」
「ご遺体だね。あの先の安置室で一時保存するんだと思うよ」
 訊かなきゃよかった。


 地下の最奥にある広々とした部屋の電灯が点けられると、目の前の光景に私はひどく驚いた。
 『特別集中治療室』の表札がかかったドアの先、部屋の中ほどにはエメラルドグリーンの液体が満たされた巨大な
円筒形の水槽があって、その中に裸の男性がまるで理科室の蛙の標本のようにぷかぷかと浮かんでいたのだ。
水槽から延びるケーブルは周囲に並べられたパソコンや医療機器、魔学の機械に繋がっていて、
それぞれ唸りをあげたり、何かの波形を液晶画面に絶え間なくモニターしていたり、
虹色の蒸気を噴き出したりしている。
 男性の咽頭や肉付きのいい身体の動脈が走る部分には幾本ものチューブが繋がれていた。
皮膚はところどころ重度の火傷に見られるようなむごい状態になっているようだったが、
それらのほとんどは盛り上がった新しい肉に覆われて傷が塞がれていた。
 この男の人はカオスマンだ。
 彼の裸体を眺めながら、きっと私が治療されていたときもこんな感じだったのだろう、と想像する。
 しかし私が最も驚いたのはそれではなく(もちろんそれ自体にも驚いたが)、その水槽の横に並んだ、
もうひとつの円筒形の水槽に目をやったときだった。
 その水槽にも同じようにエメラルドグリーンの液体が満たされていて、中に人間が――人間らしきものが――浮かんでいた。
 その人物には四肢が無く、切断面近くの皮膚は剥がれて鮮やかなピンク色の肉が丸見えになっていた。
その光景だけでもかなりショッキングだが、四肢の断面を盛り上がった肉が覆い、
その真ん中から赤ん坊のような小さい手と足が新たに形成されているのが見てとれて、私は浮き上がった血管や、
構成途中の筋肉のグロテスクさに言葉を失った。まるでトカゲの尻尾のように新たに腕や足が生えようとしているのだ。
 胴体の状態もとても正視に耐えうるものではなく、ひどい部分の状態はとても筆舌に尽くせるものではない。
だが私は見た。その人物の胸は一定の間隔で膨らんだりしぼんだりし、その隙間の奥から僅かに覗くある臓器は
短い間隔をあけた緊張による収縮をたしかに繰り返していたのだ。
 呼吸をしていた。生きていた。
 私は思わず後ずさった。その人物の顔が視界に入った。小さく悲鳴が出た。間違いない、
半分ほどが盛り上がった肉に埋もれているが、あれは、あの白い肌と整った顔立ちは――
「――天照、さん……!? 」
 理解した瞬間、動悸がさらに激しくなった。冷や汗がだらだらと全身から吹き出た。
入院しているとは聞いていたけれど、まさかここまで酷いなんて。
 愕然としながら水槽を眺めている私に気づき、因幡が声をかけてくる。
「これでもかなり回復したんだ。大丈夫、安定してるよ」
 そう言われても、この姿を見て安心しろというほうが難しいだろう。私は目をそらしかけ、思いとどまった。
「……完治、するんですか、これは」
「うん」
 因幡は部屋のすみから何かの道具を準備しつつ答える。
「魔学医療にかかれば、四肢の欠損や皮膚の再生なんてたやすいよ」
「よくわからないですけれど、これはiPS細胞とか使ってるんですか? 」
「いいや、完全な自己治癒力による治療。詳しく説明しようか? 」
 私は「じゃあ、軽く」とお願いした。
「まず前提として、魔学では『生物』は『肉体』『魂』『精神』の3つの要素のうち2つを備えたもの、
と定義しているんだ」
 彼女は私に向きなおって、そう説明を始めた。
 たしか似たようなことを八意さんも言っていた気がする。
228グラタンの人 ◆zy7jjESs2Y :2013/06/23(日) 16:22:14.25 ID:6vdI301m
「『肉体』は物理的な身体。これは解るでしょ?
 『魂』はいわゆる霊魂で、生物に活力を与える『エネルギー源』と理解して。
 最後に『精神』は、これは少し説明が難しいんだけど、『理性』や『自身が自身に対して抱くイメージ』
のような理解が一番近いと思う。『自分はこういった形の肉体を持つ、こういった振る舞いをするものというイメージ』
 ここまではいい? 」
 私は頷いた。
「魔学医療の基本はこの3要素をいじくることなんだ。たとえばそこの天照所長、彼女には今魂が無い」
 私は驚いた。
「それって、死んでる、ってことですか? 」
 因幡は首を振った。
「魔学の定義では生物は『ふたつ以上』の要素を備えたものだから、魔学的には死んでないよ。
医学的には脳死に近い状態かな。
 それはそうと、今彼女に施している治療は『精神のかたちに肉体を合わせる』というものなのさ。
だから手足も生えるし、皮膚も再生する。精神のかたち――つまり『完全な肉体』のイメージ――に合わせて肉体は
治癒する法則があるから。
 魂を切り離したのは、魂と精神は複雑に絡み合っていて、魂が衰弱すると精神もつられて衰弱し、
それに合わせて肉体も弱るからなんだ。ほら『病は気から』って言葉があるでしょ? 」
 私は曖昧に頷いた。
「その、切り離した魂は、戻せるんですか? 」
「うん。魂は今、専用の容器に入れて保管してあるよ。おいそれと人に見せることはできないけど……」
 因幡は小さな机のようなものを引っ張り出し、床に置く。
「その、さっき因幡さんは、『2つ以上の要素を持つものが生物』だって言いましたけど、それはつまり、
『肉体』や『魂』の無い生き物もいるってことですか? 」
 私の質問に彼女は頷いた。
「『肉体』の欠けた『魂・精神』のみの生物が『精神体』……幽霊や神魔、『×』がそう。
 『魂』の欠けた『肉体・精神』のみの生き物は、エネルギーが無いから、
生きてはいても自ら何かをすることは無い状態に陥るんだ。放心状態がずっと続いている……といえばわかりやすいかな。
命令に従うことはできるけど、自発性や創造力が欠如してしまう。
 『精神』の欠けた生物は、もう野生動物や赤ん坊。自身の振る舞いが設定できないから、
本能丸出しな行動をしてしまう。狂っている、という状態が一番近いね」
 彼女の淡々とした説明を全て理解することはできなかったが、私は少しだけ魔学のことをわかった気になった。
 私はまた天照の身体を見上げる。
 ふと私の胸中にひとつの疑問が湧き上がった。
 これだけの技術があれば、どれだけ多くの人々が救うことができることだろうか。
しかし天照研究所は魔学を秘密の技術のままにしようとしている。
 それは本当に正しいことなのだろうか。
 魔学が危険な技術であるのは理解しているつもりだが、その危険は、
魔学解禁による多大なメリットを切り捨ててまで防ぐべきものなのだろうか。
 誰かを救うとかいったスケールの大きい話でなくとも、たとえば昼休みに見た岡本のアプリのように、
魔学の普及は私たちの生活を今までとは比べ物にならないほどに便利にしてくれるに違いない。
「因幡さんは――」
 そのことについて意見を聞いてみようと彼女を振り向くと、そこには意外な光景があった。
 部屋の中央に据えられた例の水槽の前の床に文机のような背の低い長方形のテーブルが置かれていて、
因幡はその前に正座していた。机の上にはどういうわけか平たい碗に盛られた白米と、
同じような小さな皿に注がれた水、頭がついたままの魚の干物に、さらに高級そうな飾りつけがされた酒瓶ともある。
そばにはなんだか分からないが葉がついたままの植物の枝があって、因幡はその枝をうやうやしく両手で持ち上げていた。
「……何してるんですか?」
229創る名無しに見る名無し:2013/06/23(日) 16:24:59.06 ID:1qMUohAi
しえん
230グラタンの人 ◆zy7jjESs2Y :2013/06/23(日) 16:33:44.59 ID:6vdI301m
 私が訊ねると、彼女は無視した。その横顔は真剣そのもので、集中しているらしい。
 彼女は枝を机に置くと、少しだけ下がり、深く丁寧な礼をした。その所作は美しく、私はその礼に込められた何者かへの
尊敬の念に思わず息を呑んだ。
 彼女はスマートフォンを取り出し、画面をいじり何かのアプリを起動して、それを机の真ん中に置く。
 それからもう一度礼をして、2回拍手をし、なにやら呪文のような日本語のような言葉を独特の抑揚をつけながら大きく
唱えた。その妙ちきりんな言葉をどこかで聞いたことがある気がして、私はいつかの正月に家族で初詣に行った際の神社
の神主を思い出し、それから因幡命がとなえているのが祝詞だと理解した。
 祝詞をとなえ終えると彼女はまた一礼し、スマートフォンの電源を切る。それから静かに立ち上がり、
こちらを向いてふぅ、と息を吐いた。
「終わりましたか? 」
 私がそう訊くと、因幡は少し疲れたように笑った。
「うん、終わり。どーもこれは何度やっても疲れちゃうね」
「今のは何です? 」
「魔学を運用するに欠かせない過程だよ」
 そう言って彼女は肩をすくめる。
「私たちを手助けしてくださる精神体……神様に、日ごろの感謝を申し上げるの」
「なんだか意外です。魔学ってそういうこともするんですか」
「魔学は精神体の力をお借りする技術だから。
 ちゃんと普段から心から感謝してればこんなふうに供物を用意したりする必要も無いんだけどねー。
 ほら、私ってあんまり信心深くないから」
「感謝ですか」
「そう、感謝。それを怠るといつか手痛いしっぺ返し――バチが当たるんだ」
 そんなまさか、と言いたくなったが魔学のことだ、きっと本当なんだろう。
 そのとき、私はひらめいた。
「あ、じゃあもしかして……」
「なに? 」
「あの名前が分からないんですけど、こう、黒いスライムみたいやヤツとか、
『×』も、その『バチ』なんですか? 」
「それに近いものではあるよ」
「……じゃあ逆に言えば、『感謝』さえ忘れなければ、魔学は安全に使えるってことですか?」
「そうだよ。でも、そんなことできると思う?」
 因幡はそう言って、少し切なげに目を細めた。
「君は携帯電話に感謝してる? パソコンには? 電灯には? 
信号が無ければ表は危険すぎるし、車だって安全装置がしっかりしてるから乗れるんだ。
でもそんなことにいちいち感謝してる人なんてほとんどいない。
 魔学を開発・研究する立場である私たちですら、定期的にこういった儀式の場を設けないと忘れてしまう
 ……人は傲慢なんだよ。身の回りにあるものは『あって当然』だと思っている」
 私は沈黙した。
 彼女の言うとおり、私は身の回りのあらゆるテクノロジーに対して、あまりにも敬意を払わず、感謝もしていない。
 その意味の恐ろしさが因幡の言葉の端々から伝わって、私は身震いした。
「君もたまにはそのスマフォのメンテナンスをしてあげたら? 感謝は本来、そうして示されるものだよ」
 片づけを終えた因幡はぱちぱちと手をはたいた。
 私はなんだかひどく申し訳ないような気分になって視線を落とす。
「ところで――」
 因幡が明るい口調で言った。
 私のために話題を変えようとしているのだと察知して、顔を上げる。
231創る名無しに見る名無し:2013/06/23(日) 16:36:35.14 ID:6vdI301m
「――君は、彼の顔に見覚えは無い? 」
 『彼』?
 彼とは誰のことだろう。
 この部屋にいる男といったら……。
 私は因幡から視線を外し、最初の水槽を見た。その中には全裸のカオスマンが浮かんでいる。
 そういえば私は彼の素顔を見たことがないんだった。カオスマンはいつも仮面をしていたから。
 私は水槽に近づき、足元の踏み台に乗って水槽をすこし上から見下す。カオスマンの顔がそこからよく見えた。
 カオスマンの顔にはほとんど傷は無かった。顔つきは健康なスポーツマンによく見られるような、
精悍さを感じさせるもので、男らしい太めの眉がいっそうそれを際立たせていた。
目は閉じられているのでよくわからないが、おそらくつり目気味だろう。鼻筋はまっすぐで、肌も綺麗だし、
実はかなりの美丈夫なんじゃないか。
 それにどことなく懐かしい感じがする顔でもある。どこかで会ったことがあるのかもしれない……?


 いや違う。
 どこかで会ったかも、じゃない。
 私は出会っている。
 彼と出会っている。
 私は彼を知っている。
 頭痛がする。
 額のあたりだ。ずきずきと痛む。
 なんだこの感覚は。
 思い出せない。
 違う、思い出せないんじゃない。
 これは空白だ。
 記憶がそこだけすっぽりと抜けてしまっているんだ。
 まるで誰かが私の頭に消しゴムをかけたようだ。
 頭痛が激しくなる。
 何かが私の中からこみ上げてくる。
 それは頭の空白の叫びだ。
 抑圧された言葉が私の口から飛び出す――


「――こうへい」
 発声してから、私は今自分が何を口走ったのかを知った。
 そばで別の作業をしていた因幡が手を止め、私を見る。
「ねぇ、今なんて言った? 」
 彼女の言葉は聞こえていなかった。
 それよりも私の心は目の前の青年にとらわれていた。
 そう、この青年の名前は『こうへい』だ。
 いつか『×』に襲われたときのビジョンに見た、織星山の展望台で、ふたりで写真を撮った青年だ。
 しかしそれ以上は思い出せない。
 私はなんだかとても恐ろしくなって台から飛び降り、因幡の制止も振り切って部屋を飛び出した。
 頭の中がかき乱されて、まともな思考もできないまま、私はがむしゃらに走った。


 気がつくと私は天照病院の屋上に居た。
 洗濯物のシーツが視界にいっぱいに並べられて、それらが青い空をバックして、そよ風になびいている。
 私はそれらを払いのけて進み、やがて屋上を囲むフェンスにぶつかった。
 金網に指をかけてその向こう側を眺めると、女木戸市中心街のビルの並びと、
道路を行き交う車と人々が見下ろせる。
 彼らを見て私は血の気が引いた。
 道を歩く人々は皆携帯電話やスマートフォンに目を落としている。彼らの目には液晶画面だけがあって、
自分が今どこを歩いているのかを本当に気にかけている人はいないのだ。
その様がまるで人間がテクノロジーという主人に首輪を付けられた犬が散歩させられているように見えて、
私は恐怖した。
 耐えられず目を逸らして空を見上げる。
 爽やかな青空は金網の向こうにあり、手を伸ばしても届かなかった。
 
232創る名無しに見る名無し:2013/06/23(日) 16:38:24.42 ID:6vdI301m
>>229さん
支援レスありがとうございました!


くぅ〜w疲れました これにて投下終了です!
なんだか作者にもよくわからない回
233創る名無しに見る名無し:2013/06/24(月) 12:40:22.35 ID:OTYo6XzG
投下乙です、そして解除おめでとう
言われてみれば確かにまわりは液晶画面に没頭してるやつらばかりだわ
まさに文明の家畜だな(←何かを棚にあげながら)

とは言え、私のリアル視野の中にグラタン氏が居ても
お互い正体には気付かない不思議な私たちですねw
妙な読後感にGJ
234創る名無しに見る名無し:2013/06/24(月) 15:13:31.66 ID:L69eRVhr
投下乙です。

魔学スマホ。
なんだろう、この仕込みが終わりつつあるような、
外堀埋められてくような、妙な閉塞感は。
グラタンさんは怪奇物も上手いですな。
235グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2013/06/24(月) 22:05:24.84 ID:REj6IkPn
>>233
いつも感想レス、ありがとうございます!
リアルの私は名状しがたい外見をしておりますw

良い子のみんなは歩いているときにケータイをいじるのはやめようね!お兄さんとの約束だ!

>>234
感想レスありがとうございます。
お察しの通り、やっとクライマックスへ向けての準備がもう少しで整いそうなところです
怪奇もの、というか今回は書いてるうちになんか変な文体になってしまった感はありますw

 
おふた方、ありがとうございました!
236古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:iTDGa4pG
  CR capter2  The Nightmare THE MAIN STORY  結  ―道化は笑い、矛盾を嘲る―  後編

―1―


「さーて、さてさてさてさて、戦いが始まったなぁー、どうなるんだろうねぇ、セレーネはどう思う?僕はとても結果がたのしみなんだけども・・・。」

 イーグル本部から少し離れた所にある高台。
 そこで銀髪の男が興味深そうに巨大な鋼獣に向かう黒い小さな鋼機に見つめながら隣にいるスーツ姿の華奢な女性に問いかける。
 華奢な女性セレーネ・リア・ファルシルは顎に手をあてて考えながら

「まあ、見るまま、見れば勝ち目ないだろう・・・君の想い人。」

 そう率直な感想を告げる。
 そもそもサイズが違う。
 それはさながら山と熊の戦いだ。
 山を崩せるような熊は存在しない。
 そう鋼機には勝ち目のない勝負なのである。

「それを覆すものがあるとするならば、彼の至宝か・・・実の所あれの全貌は裏でも図りかねているからな。あれの詳細を知っているのは君だけだろう?道化師。」

 道化師と呼ばれた銀の髪の男は笑う。

「まあね。あれはあれで正直、チートっぽいんだけど結構制約も多くてね。」
「なんだ・・・それは?」
「まあ、楽しんでみようよ、片手にジュースでも持ってさ、こんな近くで戦いが見れる事なんて早々無いぜ?」
「正直、近すぎて楽しむどころじゃない気がするんだが・・・。」
「最悪は03を使えばいいさ、でも使う時は来ないとは思うな。」
「つまり?」

 そう答えを促すセレーネ。
 それに銀髪の男は笑っていう。

「まあ、見てなって今は楽しい楽しい鑑賞のお時間だ。」


―2―



 黒峰潤也が、まず考えなければならないのはこの場所からの移動だった。
 既に敵はこちらの位置を把握しているようで、リベジオンのいる方へと向けて歩を進めている。
 ここでこのまま戦闘行動を起こせば、自身の背後にあるイーグル本部に被害が及ぶ事になる。
 潤也としてもそういった被害は望む所ではなく、今すぐにでもここからの移動が必要だった。
 そう思い、潤也はすぐに行動を開始した。
 紅の光が背部のスラスターから漏れでて翼を形成するように展開。
 それと同時に飛翔する。
 全速力を持ってリベジオンは急上昇し、高高度に到達し、その後鋼獣の後ろに回り込んだ。
 そうして、己の敵を見据えた。
 空から見ても、その鋼獣は圧巻の巨大さだった。
 山を思わせる程の鋼の塊が四足歩行で歩いている。
 それだけで非現実的な出来事である。
 敵鋼獣がリベジオンに体をゆっくりと向けはじめる。
 その一挙一動には尋常ではないほどの威圧感があった。

「あんなのが何処に隠れていたんだろ・・・。」

 藍が目を丸くしながらそう言った。
237古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:iTDGa4pG
「確かにな・・・それで藍、アテルラナからの提供データに該当している鋼獣はいたか・・・。」

 そう尋ねる潤也。
 潤也はアテルラナからかつて、裏が持つとされる鋼獣の情報を提供されている。
 どこまでが本物か怪しい代物であったが、その情報は今のところ間違っている事はなく鋼獣との戦闘に非常に有益なものであった。
 藍は少し困ったように潤也に告げる。

「あのね、潤也・・・それが、データベースにあれが乗ってないの・・・。」
「なんだと・・・。」

 潤也が驚く。
 今まで戦ってきた鋼獣は全てデータベースに乗っていた。
 それはあの『裏』すら知り得ない鋼獣という事になる。
 つまりそれは『裏』すら知らないUHの隠し球、もしくは―――

「ダグザの大釜で作られた新種か・・・。」

 黒峰咲の駆るメタトロニウスの至宝『ダグザの大釜』の能力は『無から有を生み出す』である。
 それは何もない所に自分の思い描いた物を作り上げる事が出来る力であり、それによって最近作られたものならば、あんな巨大なものが今まで発見されていなかった事も頷ける。
 黒峰咲はダイナミックで仰々しいものを好む彼女らしいとは言えた。

「どうする潤也?あの大きさだろうとブリューナクの因果終焉(カルマエンド)なら、たぶんあいつをやっつける事が出来るけど・・・。」

 『因果終焉』。
 それはリベジオンが携える至宝『ブリューナク』の奥義であり矛先で突かれたもの因果を歪め、因果の始点と終点にある過程を全て無かった事にして強制的に終わりへと導く。
 つまり、ブリューナクによって突かれたものは死を迎える。これによってリベジオンは鋼獣との戦いに幾度も勝利を得てきた。
 だが、この技を使う事にはいくつかのリスクが存在する。
 一つは、この技がDSGCシステムの完全駆動(フルドライブ)を必要とするという点である。
 つまりはこの因果終焉を使う度に搭乗者である黒峰潤也は、怨念達の死の追体験を幾度も体験しなければならず、それはよくて精神崩壊、最悪は黒峰潤也の精神が怨念達に乗っ取られるという可能性がある事に他ならない。
 たった一人で幾千幾万もの怨念に立ち向かうのだ。
 いくらフィルターによって怨念の影響が緩和されているとは言っても危険である事には変わりない。
 そんなものを何度も使用しながら未だ黒峰潤也が黒峰潤也である事を保っている事、それが既に奇跡であるといえた。
 潤也自身、この技の使用は一度が限界だと考えており、文字通り1回限りの必殺技といえる。
 二つ目はこの因果終焉を行う際、リベジオンからブリューナクにエネルギーを供給し続ける必要があるという点だ。
 ブリューナクへのエネルギー供給はブリューナクを持つリベジオンの掌から行われている。
 つまり、リベジオンの手からブリューナクが離れれば因果終焉は使う事が出来ない。
 よって、因果終焉はリベジオンがその手にもったブリューナクで相手を突かなければいけないという制約がある。
 またエネルギー供給量も莫大で、因果終焉を行う際にリベジオンは他の兵装の運用が行うことが出来ない。
 こういった性質があるため、潤也は鋼獣と戦う度に先に攻撃に出るよりも相手の動きを見極めてから必ず当たるタイミングで因果終焉を行なっていた。
 しかし、今回相手にするのはこの山ほどの大きさを誇る鋼獣である。
 言ってしまえば、威圧感ある巨躯は因果終焉という絶対死を持つリベジオンからすれば大きな的であるとも言える。
 しかも見るからに鈍重だ。
 これはリベジオンにとってみれば非常に有利な戦いなのではないか?
 だが、しかし――とも潤也は考える。
 既にこれまでの戦いの中で幾度も潤也はブリューナクの力を持ってして戦いに勝利している。
 その戦いに気を抜いていいような戦いなどなかった。
 いつも敗北と隣合わせの戦いで、1つ選択を間違えれば、それは即ち潤也の敗北に繋がっていたとしてもおかしくない。
 だから、ここまで良い条件が揃っているとそんなに簡単にいくのだろうか?という疑念が潤也の脳裏をかすめる。
 これまでの戦いの中で潤也は幾度もブリューナクを用いてその絶対死の能力で戦いに勝利を収めている。
 つまりこれまでの戦いは何度も敵に見られている可能性があるという事だ。
 そこから推論して、このブリューナクの能力がバレている可能性がある。
238古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:iTDGa4pG
 だからこそ、もしかしたらこの巨躯こそが何か自分たちにとって何か重大なことを見落とさせているのではないかと潤也は疑った。

(だがな・・・。)

 しかし、たとえそうであっても、ここは相手の出方を伺うのは正しい選択ではないだろうと潤也は考える。
 その巨大な体にどれほどの武装が隠されているか想像が及ばない。
 なにせあの巨躯だ。
どんな武装が積まれていてもおかしくない。
一度後手に回れば、こちら側が破壊されるまで攻撃に回れない可能性もある。
 だからこそ、今回はこちらから仕掛けなければならない。
 潤也は一度小さく息を吐く。

「藍、突撃して一撃で仕留める。」
「うん、わかった。」

 鋼獣が吠える。
 リベジオンをその眼に捉え歓喜するようにして首を振る。

「行くぞ。」

 その声と共にリベジオンが紅の光を走らせながら鋼獣に突撃する。
 それに反応するようにして鋼獣はその強大な背中を開いた。
 そしてそこから吐き出すようにして膨大な数の筒状のものを空高くに打ち上げる。

「敵背部から何かが発射されたのを確認。数―――――」

 藍は自分が口に出そうとしている数を信じられず少し詰まった後、続けて報告する。

「――――8万。」

 放たれたそれは一定高度まで上昇した後、すぐさま反転しリベジオンに向けて迎い始める。
それはさながらスコールのように降り注ぐ。

「敵が投擲したものから炸薬の反応を確認、おそらくは砲弾のようなものじゃないかな・・・。サイズからして小規模の爆発を目的としたものに見えるけども、数が尋常じゃない。」

 潤也はリベジオンが鋼獣までにたどり着くまえにリベジオンに着弾する事を察し、回避は不可能と判断して藍に指示を出す。

「藍、呪魂結界を周囲にまき散らせ。それを傘代わりにして低空飛行で突撃する。」
「でも潤也、呪魂結界は線での防護であって面での防護じゃないから全部を回避しきれないよ!」
「奴に辿り付くまでに機体が持てばいい!!!奴にブリューナクをぶち込めば、こっちの勝ちだ!」

 確かにもう後退してもあの攻撃を回避する事は出来ない。
 単純な量による膨大な面攻撃。
 もはや退路は無いのである。
 リベジオンは体の各部を展開させ、そこから紅の光を放出する。
 呪魂結界。
 それはエネルギーを周囲に撒き散らし、迫り来る攻撃を溶解するリベジオンの防護武装である。
 それを纏ってリベジオンはより全速を持って鋼獣へと突撃する。
 結界のエネルギーが砲弾に触れる。
 爆発。

「ぐっ・・・。」

 爆風でリベジオンが大きく揺れる。
 リベジオンの呪魂結界はエネルギーによる防護であるがゆえに実態の無いものへの耐性を得ることは出来ない。
239古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:iTDGa4pG
 つまり、たとえ迫り来る敵の砲弾を全て迎撃したところでリベジオンは無傷というわけには行かないのである。

「し・・・かし、これは・・・辛い・・・な。」

 機体が揺れる。
 その振動は病み上がりの潤也には刻なものだと言えた。

「敵までの距離、あと1000。」

 爆風と煙でリベジオンのカメラから送られる映像が染まる。
 もはや視界ではどのような状況にあるか判断する事も適わない。

「きゃ!」

 驚く藍の声。
 先ほどよりも近くでの爆発音と共にリベジオンが大きく姿勢を崩す。

「藍、被害状況を報告しろ!」
「左脚部に敵砲弾命中、左腕から先を喪失(ロスト)。また、左の下腹部の装甲に深刻なダメージ。」
「っ・・・。」

運がいいと潤也は思う。
 これがもしブリューナクを持っている右腕だったならば敗北は決まっていた所だ。

「残り距離は!」
「あと470です。」

 敵の懐まで近づければと潤也は考える。
 敵はこちらに向けて大量のミサイルによる攻撃を仕掛けてきているが、おそらくは100m近くまで近づけばこのミサイルの雨から抜けられるのでは無いかと推測していた。
 何故ならば、その距離ならば敵は今、潤也達に行なってきている攻撃の被害を己も受けるからだ。
 だからこそ、あの鋼獣の懐は安全圏といえた。

「あと280。」

 爆風に舵を取られながらもリベジオンそのものが槍になったようにして鋼獣に向けて突き進む。
 次第に爆発が起こした煙は薄くなり、リベジオンの双眸は風景を映す。
 そして潤也はあまりの光景に声失った。

「敵の位置を確認、1000m・・・上方・・・。」

 山のような巨躯を持つあの鋼獣がリベジオン真上を飛んでいるのである。
 鋼獣にはとてもではないが空をとぶような機構があるようには見えない。
 となると、あの鋼獣は跳ねたのだ。
 リベジオンがこちらに近づいてくる事を察知して、その膨大な巨躯と重量を活かしたボディプレスでリベジオンを葬る為に・・・。
 誰が想像できるだろうか?
 あの鈍重かつ巨大な体を持つ鋼獣が跳ねるなどと・・・。

「くそが!」

 そう嘯く潤也。
 そしてリベジオンを押しつぶすようにして、その巨躯が墜落した。
240古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:iTDGa4pG
―3―


 巨大な鋼獣がボディプレスを行い大地にクレーター然の窪みを作ったのを遠くから眺めるセレーナは口をあっけらかんと開けて、

「て、ちょ、あんたの想い人負けちゃったじゃない!どうすんの?」

そう抗議するような声を出した。
 それを聞いて笑いながら銀髪の男は答える。

「まあ、まあ、見てなってここからがきっと面白いんだから・・・。」
「ここからって、どう考えても無理でしょ、あそこからの生還なんて絶対無理。」

 そう訴えるセレーナに銀髪の男は笑って言う。

「五月蝿いなぁ、処女は・・・まあ、見てればわかるよ。」
「見てれば・・・って・・・。」

 そう言われて疑いながらも再び視線を戦いに戻す。

「彼女はそれら全てと向き合う道を選んだ、ならばさ、君は一体どんな道を選ぶんだい兄弟!」

 アテルラナは好奇心に体を震わせながらそう言った。


―4―


 辺りに響き渡るような地響きと共に、大地から立ち上がる山のような鋼獣。
 その体の下にあった大地の木々は全て押しつぶされ、クレーターのような窪みを作っている。
 それはその巨躯の下にありとあらゆる生命体が存在出来ない事を意味する結果だ。
 あの巨躯に潰されて無事に済む機体も生命体も絶対に存在しない。
 だから、鋼獣は後は、破壊した機体から不滅である至宝の設計図を回収するだけでいい。





 いい筈――なのに―――――
 







―――――――何故、鋼獣の胴の下に紅い光が収束を始めているのか?








 その光はあの黒い魔王が収束する光では無かったか?
 ありえないと鋼獣を操る者は思った。
 ――――――そうこれはありえない。
241古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:iTDGa4pG
 この巨躯はUHの主にして全ての創造を成す天使から受け賜った最重最大の鋼獣なのだ。
 その重量は地上の単位にしておよそ9000tに匹敵する。
 そんなものに潰されて動ける機体などUHにも存在しない。
 その首を伸ばし、自らの胴体の下に眼を向ける鋼獣。
 その瞳に映るのは、右足を破壊されつつも身の丈程ある黒い槍を持つ黒い機械仕掛けの魔王だった。
 その存在に鋼獣の操縦者は心底恐怖する。
 自らの機体の1分にも及ばない大きさの存在、それに恐怖する。
 本来ならば、その巨躯に潰されて無事に済む者などこの世には存在しない。
 『絶対』に存在はしないのだ。

 ――――だが、その黒き魔王が持つ黒い槍はなんであったか?

 ブリューナク、そうそれはありとあらゆる『絶対』を歪め、覆す至宝である。

「因果固定を解除。大丈夫?潤也。」

 リベジオン内部で心配そうに尋ねる藍。

「問題ない。間に合わないかと冷々したがな・・・。」

 固定された因果からの帰還、それに伴う気怠い感覚を覚えながら潤也は答えた。
 因果固定(カルマロック)。
 ブリューナクを用いた最大の防御式。
 それは始まりから終わりまで流れる因果の流れを、そこで強制的に停止させて、そこから動かなくするというものである。
 限定的な時間停止に似るそれは、リベジオンをありとあらゆる外的干渉から保護する。
 リベジオンの究極の盾。
 しかし、これは万能ではない。
 リベジオンの因果の流れをそこで止めている事はリベジオンはそこから1ミクロンともその身を動かすことが出来ないことを意味する。
 搭乗者である黒峰潤也の思考すらも停止するそれは、ありとあらゆる行動を放棄する事によって初めてなし得る防御であった。
 それによってリベジオンは本来、鋼獣から受ける筈のダメージを受けなかったのである。

「行くぞ、藍、これが正真正銘唯一のチャンスだ。一撃で仕留める。」

 その言葉に藍は迷う。
 先ほどDSGCシステムで収拾したエネルギーは既に因果の固定の為に全て使ってしまった。
 つまり、これから攻撃に転じるにはさらなるDSGCシステムの駆動が必要になる。
 それはつまり、潤也が再び怨念達と相対しなければならないという事を意味する。
 最初は耐えられたがもう一度潤也はシステムに耐える事が出来るのか?
 そんな迷いを藍は頭を振って振り切る。
 
「―――うん、わかってる。」

 そうだ、黒峰潤也は琴峰藍がそんな事で迷うことを望んでいない。
 この身も心も潤也の為に全てを使うと決めたのだから、それが彼の思いであるのならば、それを否定してはならない。
 わたしは道具。
 黒峰潤也の道具。
 道具に意志など要らない。
 ただ、黒峰潤也が望むためのものであればいい。
 藍はその思いと共に努めて冷静に言葉を続ける。
 それが彼を苦しめるのだと知りながら・・・。

「リベジオンエグゼキューションモードへ移行、全怨念収拾機構を展開、DSGCシステムフルドライブ。」

 それと共にリベジオンは周囲の怨念の意志をエネルギーへと変換して収拾を始めた。
 因果固定を解除する為に集められていた以上のエネルギーがリベジオンへと向かう。
 そして黒峰潤也はその怨念達の無念と対面した。
242古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:iTDGa4pG
―5―


 小宇宙。
 黒峰潤也の精神世界。
 搭乗者の許容限界を超えるDSGCシステムの駆動を行った時、潤也は必ずここにくる。
 潤也の目の前に広がるのは幾万もの怨念達。
 潤也が現実世界に戻るにはこの怨念たちを踏み越えて行かなければならない。
 彼らは理不尽を前に無念の死を遂げた者達である。
 そんな彼らは思いは消えず、ずっとこの世に残り続ける。
 その無念を伝えたくて、その怒りを伝えたくて、その願いを伝えたくて。
 だが、潤也はそれに応える事は出来ない。
 だから、それを唇を噛んで踏みしめて歩いて行く。
 怨念たちは潤也の足を掴み、感覚に直接的に思いを伝える。
 自分たちがいかにして死んだのかを・・・そして、どう無念を晴らして欲しいのかを実体験を持って伝えようとする。
 絶え間ない精神への陵辱。
 それに耐えて、この道を進まなければならない。
 彼らの願いを叶えてやりたいと思う事もある。
 辛かっただろう。
 無念だっただろう。
 悔しかっただろう。
 その怒りにかつて潤也は同調して戦っていた事もあった。
 しかし、今の潤也はそれをする事が出来ない。
 何故ならば、これは黒峰潤也個人の戦いなのだから・・・そうでなくてはならないのだから・・・。
 黒峰咲のように全ての怨念の無念を拾い上げて、その願いを叶えるような道を取ることは出来ない。
 だから、潤也はその怨念達の無念を噛み締めて、踏み潰す。
 怨嗟の魔王。
 アテルラナはリベジオンをそう呼ぶ。
 魔王とは即ち、民の願いを聞かず私利私欲を尽くす暴君である。
 黒峰潤也がこれから個人の為だけに力を使い続けるならば、確かにそうならなければならない。
 死者たちの願いは叶えず、力だけを奪い取る。
 そんな暴虐無人な王にならなければならない。
 だからこそ、怨念達の願いを捨てて、潤也は歩いていく。
 濁流のように襲いかかる情報は黒峰潤也の精神を間違いなく壊していく。
 彼らをこの心に受け入れればここまで酷い事にはならないのであろう。
 だが、それでも、その願いの全てを無いものだと否定して歩いてく。

 だって、せめて、これから行おうとしている事が黒峰潤也の意志で行われた事でなければ―――――――

 そう思い、潤也は歩みを進める。
 既に何度も怨念たちに黒峰潤也は侵食されてる・・・。
 様々な追体験の果てに自分がなんなのかわからなくなっていき、なんで歩んでいるのかわからなくなる。

「潤也!潤也!」

 けれど―――そう涙を堪えて必死に呼びかける声が聞こえる
 ここは小宇宙、黒峰潤也と怨念達以外の何者も存在しない筈の世界。
 そこに響く、聞こえるはずのない声。
 それを聞く度に自分が何者なのかを認識しその度に、散らばった自分をかき集めて、歩みを進める。
 そして光の先へとたどり着く。
 そこには一人の少年が立っている。
 黒峰潤也と瓜二つの顔を持つそれは潤也を憎悪するようにして睨んで見ている。
 それを潤也は無視して、光の先へ―――――――
 そして黒峰潤也は帰還した。
243古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:iTDGa4pG
―6―

「潤也!潤也!」

 そう潤也に呼びかける藍。
 DSGCシステムを稼働している間、自分にはこれぐらいの事しか出来ない。
 せめて潤也が受けている痛みの半分でも自分が受ける事が出来ればいいのに・・・と藍は思う。
 だから必死に声をかける。

「うる―――さいぞ、藍。耳が馬鹿になる。」

 そう息を切れ切れにしながらの苦言がスピーカー越しに帰ってきて藍は安堵しながら涙を拭う。

「ご、ごめんね。潤也。」

 そういう藍。
潤也は、それに軽く呆れたようにして

「何を泣いている?あれぐらいで俺がどうなるかと思ったのか?」
「そんなことないよ、だって潤也は潤也だもん。」

 その信仰に近い思いを藍は口にする。

「藍、行くぞ。一撃でやつを葬る。」
「了解、ブリューナクへのチャージを開始します。」

 そう藍が宣言すると共にブリューナクの切っ先が開きそこに紅の光が収束する。

「全機関正常に駆動中。それと同時に対象の因果情報の読み取りを開始。」

 鋼獣がリベジオンの生存を確認した事により再び攻撃を開始する。
 しかし、自分の真下にいるリベジオンには既にミサイル攻撃を使用することは出来ない。
 故に、鋼獣がとったのは先ほどと同じ跳躍からの押しつぶし。
 その巨躯故にリベジオンにそのボディプレスを回避する術は無い。

「ブリューナク稼働可能領域まで50%・・・70%・・・90%・・100%、ブリューナク起動を確認。」

 ブリューナクの先端部が咆哮をあげるようにして展開する。
 それは暴虐無人の式の解放。
 これを扱う時、リベジオンは全ての能力を注ぎ込む為、他の機能は全て使えなくなる。
 ゆえにこの一撃を当てなければそれは必敗であり、即ちこれはどちらの攻撃が早いかの勝負。

「『絶対』の改訂―――α因子とΩ因子以外の全ての因子の消去法弾を精製、潤也、行けるよ!」

 読み取ったのは鋼獣の持つ因果。
 それがどのような始まりと終わりを持つかを読み取る。
 そして、その因果が始まりから終わりまでに辿る過程をなかった事にする毒を生成し、それを弾丸にして――――

「因果装填!!!」

 ―――装填する!!
 ブリューナクは内蔵されたシリンダーを駆動させ、暴れ狂う嵐のように紅の光を放つ。
 ブリューナクの中へと内包される絶対死の因果。
 リベジオンの眼前には、その視界を埋め尽くす巨体。
 それをリベジオンはその全てを憎悪するような紅の双眸で見上げて

「――お前はそこで朽ちて行け。」

 リベジオンはブリューナクを鋼獣に向けて突き出しトリガーを引く。
244創る名無しに見る名無し:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:IAZtTZ2+
 
しえん
245古時計屋 ◇klsLRI0upQ 代理:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:IAZtTZ2+
前:古時計屋 ◆waop4qElQs[sage] 投稿日:2013/07/05(金) 23:23:13 ID:yYhLwOF.0 [1/5]
 その矛先が鋼獣からすれば毛穴程の大きさの傷を付ける。
 それはダメージとしてすら見られないような一撃。
 本来ならば、そのままリベジオンは今度こそ、その巨躯に押しつぶされてしまう。
 しかし、リベジオンが持つ至宝はその『絶対』を覆す。
 因果の毒はその小さな傷から紅の光となって侵食し、全身と駆け巡る。
 そして、鋼獣が持つべき始まりから終わりへの過程を奪う。
 全ての始まりが帰結する終わり、そこへ対象を強制的に辿り着けさせる。
 その一撃の前にはありとあらゆる防御は意味を成さず、ありとあらゆる反撃も意味を成さない。
『因果終焉(カルマエンド)』。
 これこそがリベジオンの持つ最強にして必殺の切り札。
 それによって山のような巨躯を誇る鋼獣がその鋼の一つ一つを素子レベルまでに分解されて崩されていく。
 それは非現実的な光景だった。たかだか10数メートルにしか過ぎない鋼の塊が、山程の巨体を一撃で消滅させる。
 理論も理屈もない、神が定めた摂理すらも冒涜した結果だけがそこにある。
 それはありえないという言葉が何よりも似つかしい光景だった。
 その光景を眺める者達。
 道化は、その結果に歓喜し絶叫するようにして笑い声をあげる。
 鉄の処女は、その道化を呆れたように見つめる。
 贖罪者たる老兵は、その結果に苦悩する。自分はどのようにこれから行動すべきかを考え悩む。
 凡人たちはその結果に恐怖し、自らの過ちの可能性を脳裏を掠める。
 各々が思いを持って勝利を手にした黒き魔王を見つめていた。




 ―7―


 満身創痍でリベジオンから降りる潤也。
 大地に足をつけると共に酷い立ちくらみが潤也を襲い、潤也は大地に膝を付く。
246古時計屋 ◇klsLRI0upQ 代理:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:IAZtTZ2+
「潤也!」

 それを見て慌てて潤也にかけよる藍。

「いい。」

 潤也は藍を払いのけて立ち上がる。
 
「そんな、やせ我慢しなくたっていいだろうに・・・そこのお嬢ちゃんの好意に甘えときなよ、坊や。」

 その光景を眺めていた九条は苦笑してそう言う。

「問題ない、俺は一人で立てる。」
「一人でねぇ・・・。」

 九条は眉をひそめた後、潤也の前に立ち背中を軽く叩いた。
 潤也はすぐに足を震わせて膝を地につける。

「ほら、立ってるのが精一杯じゃないかい・・・おとなしく手を借りな。そんな強がり誰も得しないよ。それにお嬢ちゃんはあんたの仇じゃなくてパートナーだろう?」

 そう言われ俯き、顔をしかめる潤也。
 藍はそれを見て少し迷ったようにして、もう一度潤也の元による。
 そしておどおどする藍を見て潤也はため息を吐いた後、言う。
「藍、手を貸せ。」

 そう言われて藍は自分の耳を疑った後、それが幻聴ではないと認識する。
そして目を輝かせて

「うん!」

 潤也の腕に肩を回した。
 藍の肩に潤也の体重がどしりとかかる。
 その重さが潤也の重さなんだと藍は少し嬉しくなった。
247古時計屋 ◇klsLRI0upQ 代理:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:IAZtTZ2+
「藍・・・あのな・・・。」

 潤也がそう声をかける。
 藍はなんだろうと思い潤也に顔を向ける。
 こうしてみると顔と顔の距離が近い・・・その事実に気づき藍は頬を紅潮させた。

「な、なあに・・・潤也・・・?」

 そう聞き返し、いつにもなくおどおどとする藍。
 それに潤也は呆れたようにして・・・。

「痛い、お前は俺の肩の骨を折る気か?」

 一瞬、何の事を言っているのかわからず藍の思考は停止する。
 その後、自分の肩の握る手に力が入りすぎている事に気づいて・・・。

「うわへ、わわわ、ごめらしゃ、きゃー!」

 慌てて手を放す藍。
 しかし、これが考えなしだった。
 藍に支えられていた潤也は手を離されると同時にバランス崩して倒れこむ。
 それを潤也は膝と手を大地について、なんとか倒れるのを回避する。

「ごめんなさい、ごめんなさい!潤也!潤也―!」

 目に涙を浮かべながら慌てて謝罪する藍。

「わかったか?婆さん、こいつこういうアホだからさ・・・。」

 と呆れたように言う。九条もそれには苦笑した。

「はぁ・・・お嬢ちゃんはちょっと回り見る力が必要かねぇ・・・。」

 藍は合わせる顔がないと俯いた。
 それを潤也は苦笑したあと、九条の手を借りて潤也は立つ。
 そして顔をあげて前を向いた後、その視線の先に映った少女の人影を見て固まる。
248古時計屋 ◇klsLRI0upQ 代理:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:IAZtTZ2+
根拠の無い確信はあった。
 今、戦ったあの巨大な鋼獣は潤也の持つ至宝が何なのか図る為に用意された敵なのではないかと?
 普通なら消滅させる事が出来ない質量の敵。
 それをもってリベジオンの至宝の本質を見極める為に、新たに作られた鋼獣なのではないかと?
 そんなものを作れるような人間を黒峰潤也は一人しか知らない。
 『無から有は生まれない』という『絶対』を覆す至宝の所有者。
 黒峰潤也の仇であり、世界にて虐殺を繰り返すUHの統率者にして実の妹。
 そして、それはおそらく今の戦いの顛末を見るためにここにいる可能性が高い。
 そしてその可能性が今、確定した。

「ああ、やっぱりお前がいるか・・・咲。」

 そう目の前にいる黒峰咲に向けて潤也は言う。

「うん、お兄ちゃん、会いに来たよ。」


To be continued エピローグ
249古時計屋 ◇klsLRI0upQ 代理:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:IAZtTZ2+
以上で投下終了です

今回はやっとの事で辿りつけた戦闘回でした。
思えば長かったです・・・楽しんでいただければ幸いです。

次回エピローグを持って1年半ぐらいかかった二章が完結となります。
色々一章の時のような(知ってる人どれぐらい残ってるんだろうか・・・)おまけも用意する予定ですので楽しみにしていただければ・・・
250古時計屋 ◇klsLRI0upQ 代理:2013/07/05(金) NY:AN:NY.AN ID:IAZtTZ2+
以上代理終了
251創る名無しに見る名無し:2013/07/11(木) NY:AN:NY.AN ID:WbRhjyBP
乙です! 大詰めをむかえてはらはら燃える展開だ!
252創る名無しに見る名無し:2013/07/11(木) NY:AN:NY.AN ID:8G1+uQN9
番外篇で○○学園〜とかセルフパロディやるといいかも
253創る名無しに見る名無し:2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:U/GauKqN
設定書いてて思ったんだが、飛行能力あるけど基本的に陸戦主体の機動兵器にレーダーって必要だろうか?
ロボットゲーだと普通にレーダー付いてる事多いけど、実際には地形や障害物に電波が反射したりして使い物にならない気がするんだよな。
自分から電波出してると発見される危険性も高まるだろうから使える機会も空や海の戦闘に比べると制限されるだろうし。
戦車とかよりも全高が高い分、頭部にカメラ付ければ視界は確保出来るから寧ろ必要なのは光学センサーかね。
254創る名無しに見る名無し:2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:xII/HKXx
それだったらレーダーよりマップデータのありなしの方が重要な気がする
というかリアルに考えたら情報支援(衛星とか偵察機)なしでロボが活躍するのは難しいと思う
255 忍法帖【Lv=3,xxxP】(1+0:8) :2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:XioI3Dss
>>253
AH-64Dはミリ波レーダー積んでる
攻撃ヘリの場合はそれなりに有用だろうな
256創る名無しに見る名無し:2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:U/GauKqN
現代戦で情報支援無しで動くのは限らず実在する兵器でも同じだと思う。

戦車とかと並んで戦っても違和感の無い大きさの機動兵器だとレーダー搭載出来るスペースが無いんだよなあ。
>>255の言ってるAH-64Dのレーダーも結構なサイズだし。ACVの追従型リコン(ローターによる浮揚能力を有するレーダー)みたいなのでもあれば良いんだろうか。
257創る名無しに見る名無し:2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:U/GauKqN
×現代戦で情報支援無しで動くのは
○現代戦で情報支援無しで動くのがマズイのは
258創る名無しに見る名無し:2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:xII/HKXx
10式戦車みたいに複数の機体とデータリンクできれば
情報収集能力が低くてもカバーできそうですよね?
259創る名無しに見る名無し:2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:U/GauKqN
カバー出来ると思う。
あー、APS用とかの例外を除いてレーダー積んでない装甲戦闘車輌でもデータリンクをやっている訳だから、
それを考えれば機動兵器でレーダーを積まなくてもあまり問題は無いのかね。
260創る名無しに見る名無し:2013/07/21(日) NY:AN:NY.AN ID:PjYQ3CUc
一応あるだけの低スペのレーダーでも不測の事態があった時に
生存率を多少なりと上げてくれそう
261創る名無しに見る名無し:2013/07/22(月) NY:AN:NY.AN ID:4G8lgJn8
飛行能力あるけど基本的に陸戦主体の機動兵器、っていう時点で、
現代の戦争で考えるには強烈な矛盾が発生しているので、
何故そんな超兵器が生まれたのかという外堀を埋めれば、
満足のゆく形になるのでは?
262創る名無しに見る名無し:2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:dclmXf3Z
言い方が悪かったのか判ってて皮肉ってるのかは知らんが、例として挙げればAC(特にV系)みたいな奴の事だから>>陸戦主体〜
263創る名無しに見る名無し:2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:akBUqV8X
>>261はガンダムにおけるミノ粉的な物の事をいっているのかな?
あそこまでいってるともうエーテルとかマナとか魔力だよねw
264創る名無しに見る名無し:2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:xz5FGOkI
>>262
>>261だが、機体の性能や装備というアプローチ以外に、
世界観からのアプローチは如何だろうか、と言いたかった。
気を悪くしたのなら謝罪する。

もう形あるものとして存在しているのなら、運用上欲しい装備もあるだろう。
数が揃えられないのなら自前の目を持っている必要もあるやも知れないし、
数があって、後背の組織が整っているのなら各種データリンクで事足りのかも知れない。

いっそ>>263さんのようにミノ粉があるかも知れんし、
太陽の活動異常やオーロラの異常発生でレーダーが駄目かも知れん。

そういう思考実験から、すんなりと落としどころが見つかる場合もあるのでは?
265創る名無しに見る名無し:2013/08/18(日) NY:AN:NY.AN ID:DrZ0zzDr
ほしゅ
266シンブレイカー ◆tH6WzPVkAc :2013/09/01(日) 14:06:51.09 ID:Lz3wQzTk
こんにちばんわ
シンブレイカー投下しに来たよ。

【前回のあらすじ】
突如志野の前に現れた外国人の男、マイケルは志野の命を狙う。
彼は「正義のため」というが天照研究所はそれに反発する。
緊張状態の中、予想される第5の『×』の襲来に備える志野。
267シンブレイカー ◆tH6WzPVkAc :2013/09/01(日) 14:24:26.14 ID:Lz3wQzTk
ちょっといろいろうまくいかないので避難所に投下することにするよ。ごめんなさいだよ。
268創る名無しに見る名無し:2013/09/15(日) 01:32:46.77 ID:I7YKChPF
保守
269PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM :2013/09/16(月) 03:39:36.26 ID:uBrEtMvH
 てすてす
270PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM :2013/09/16(月) 03:40:07.80 ID:uBrEtMvH
 ほああああああああああああああ規制解除されてりゅうううううううううううううううううううううううううううううううううううう(アへ顔
271創る名無しに見る名無し:2013/09/16(月) 03:40:17.43 ID:q/SUxeO8
あ、なんか来た
272PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM :2013/09/16(月) 03:41:56.74 ID:uBrEtMvH
( ´・ω・`) ……ふぅ。
273PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM :2013/09/16(月) 03:43:37.21 ID:uBrEtMvH
(´・ω・`) やあ、なんかクッソ長かった規制が解除されてたから帰ってきたよ。おみやげはないよ。
274PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM :2013/09/16(月) 03:44:26.86 ID:uBrEtMvH
 っていっても人ほとんど残ってないんだろうなー(チラッチラッ
275創る名無しに見る名無し:2013/09/16(月) 03:58:38.11 ID:yPdlKzId
みつあみ?
276創る名無しに見る名無し:2013/09/16(月) 04:00:50.96 ID:q/SUxeO8
三つ編みだ
277PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM :2013/09/16(月) 04:39:33.32 ID:uBrEtMvH
>>275-276
 イィヤッホォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォゥ!!
278創る名無しに見る名無し:2013/09/16(月) 22:29:51.48 ID:h1QIN0YR
師匠、お帰りなさい
279創る名無しに見る名無し:2013/09/16(月) 22:31:53.45 ID:UjrSLXUI
生きていたのか……
280PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM :2013/09/16(月) 23:21:35.20 ID:uBrEtMvH
 私が死ぬわけないじゃないですかーやだー!
281|・) ◆5b.OeHcAI2 :2013/09/17(火) 02:07:13.07 ID:9dwhFuJK
シショーがいけてるのならば・・もしや
282|・) ◆5b.OeHcAI2 :2013/09/17(火) 02:07:51.56 ID:9dwhFuJK
(´・ω・`)おほー!
283PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM :2013/09/17(火) 17:25:06.90 ID:3rzhfXQF
(´・ω・`)おほー!
284創る名無しに見る名無し:2013/09/18(水) 22:13:59.17 ID:+z0YpV+O
テスト
285創る名無しに見る名無し:2013/09/18(水) 22:14:39.12 ID:+z0YpV+O
おや、書き込める
286創る名無しに見る名無し:2013/09/19(木) 10:45:10.71 ID:3tG544ar
ちんこーーーーーーーーーーーーーッ!!
287創る名無しに見る名無し:2013/09/19(木) 10:45:41.32 ID:3tG544ar
なんだ、解除されているではないか
288PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM :2013/09/19(木) 19:05:26.30 ID:1fpse0PS
 ロボスレ復活の予感!!!!!!!111
289創る名無しに見る名無し:2013/09/19(木) 19:19:18.53 ID:0sBeih1b
ガタッ
290創る名無しに見る名無し:2013/09/19(木) 21:18:17.93 ID:79HhxXCa
みんな避難所は嫌だったのね……
291創る名無しに見る名無し:2013/09/20(金) 00:18:18.24 ID:Cs1bFu1q
投下するだけなら避難所の方が使い勝手は良いんだけどね…本スレの方が何と無く良いんだよ。
292創る名無しに見る名無し:2013/09/20(金) 00:59:05.57 ID:8JrUkNGp
うん、やるならやっぱり本スレがいいよねという
293創る名無しに見る名無し:2013/09/20(金) 04:18:34.60 ID:91lNWnZq
でも投下できねーんだよ(´;ω;`)
投下するには辛いんだよ・・・orz
294創る名無しに見る名無し:2013/09/20(金) 06:50:32.96 ID:R4ewNM8j
 かなり投下しにくいことになってるみたいですねえ本スレ。どうしてこうなったのやら……。
295創る名無しに見る名無し:2013/09/20(金) 10:30:41.20 ID:Cs1bFu1q
どっちにしろ投下する物は何も無いんだけどね!
296創る名無しに見る名無し:2013/09/20(金) 23:30:20.47 ID:Q/zkdpe/
こっちは読み直しをしてる
近いうちに投下できるかも
297創る名無しに見る名無し:2013/09/20(金) 23:34:31.60 ID:p+lJ5YLC
I WAIT YOU(米海軍のあのポスター風
298PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM :2013/09/21(土) 00:45:51.46 ID:AKmA9gwX
 あ、ラジオスレでラジオやってます(今更)
299創る名無しに見る名無し:2013/09/23(月) 21:43:00.28 ID:tLO/M7Xm
 |д゚)チラッ
300創る名無しに見る名無し:2013/09/23(月) 22:11:15.51 ID:6NuUqd4N
チラチラ見てんなよ!
301創る名無しに見る名無し:2013/09/23(月) 22:19:35.65 ID:tLO/M7Xm
 じゃあ凝視すればいいのかい!?
302創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 15:13:06.67 ID:4iO7sk0f
見とけよ見とけよ〜
303創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 21:35:26.90 ID:6TG8GtkT
じゃあ、師匠が何かする前に
機動修羅バイラムのラストを投下しておくとしよう
連投規制があるので投下できない分は避難所をご覧ください
304創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 21:36:21.16 ID:6TG8GtkT
「大丈夫か?」
 アジャムがカミーラに手を差し伸べる。床にへたり込んでいた彼女はその手を受け取るとゆっくりと立ち上がった。
 先ほど大きな爆発が起こったのだ。そのせいで雪の結晶が今も縦に、横に、と大きく揺れている。
 カミーラが近くのモニターに近寄り、ボタンを押す。すると外の様子が映し出された。
 壁にいたる所に穴が開いている。近くにはPMのものと思われる破片が漂っていた。近くの外で戦闘が起こ
ったことを彼女はすぐさま理解した。
「にしても誰もいねぇんだな」
 アジャムは辺りを見渡してみる。一人もいない通路は鉄の冷たさのみを残すだけであった。腕に付いている
機械を見ると酸素があるらしく、緑色のランプが付いていた。襟元についているボタンを押すと軽い空気が飛び出る。
 ヘルメットを右に左にと揺さぶってみると蒸れた空気が勢いよく飛び出した。そして上に押し上げるとフー
ドのようにそのまま後ろにくっついた。頬に当たる風を受けながら大きなため息を付く。
「あー、息苦しかった」
 カミーラもそれに倣ってヘルメットを外す。額の汗が頬を伝うと彼女は長い髪をかきあげた。宇宙服は構造
上かなり蒸れる為、二人ともよっぽどのことが無い限り長くは着たくなかった。
「空調システムが生きている事から人はいるようですね」
「そうか? もしかしたらもぬけの殻かもしれないぜ」
 ここに来るまで人らしい人に出会っていない。警備用の装置があるかと思えばそうでもない。
 空調が生きているのはもしかしたらただの切り忘れかも知れないとアジャムは思った。もしくは非常によく
ある可能性、基地ごと自爆を考えた。だが、その考えをカミーラは真っ向から否定してきた。
「いえ、あの人はそのような事はしません」
「あの人……お前の親玉か?」
 カミーラは小さくうなずいた。壁に手を当てて物思いにふけったかのような暗い顔をした。
 そんな時、再び軽い揺れが起こった。壁に手を付いて身体を支えると小さく息をついて再び歩みを進める。
「行きましょう、戦闘はまだ続いてるようですから」
 強い口調で言うものの、アジャムにはそれが単なる強がりに見えていた。
 罠があるかどうか分からない通路を、二人はゆっくりと奥へと向かっていく。センサーが時折光るが通り抜け
ても罠らしい罠は動作せず、せいぜい侵入者を知らせるアラートだけが鳴り響くだけであった。肩からかけて
いるアサルトライフルがライトの光を浴びて軽く光るのだが、いまだにこれを使った様子はなく、今の所単
なる重い荷物でしかなかった。
 そして、一枚の扉の前まで来るとカミーラは左側についているナンバーロックのボタンを押し始める。その
姿はかなり慣れているのか手際がよく、あっという間に高い電子音が鳴り響いた。
「これでいいはずです」
 カミーラが小さくうなずくと二人は扉の前に立つと扉は軽い音を立てて横に移動していく。薄暗い部屋の中
には一人の女性がいた。彼女は背もたれに寄りかかり、頬杖を付きながらこちらを見つめている
 カミーラと同じ長い髪。冷たい瞳。宇宙だと言うのに宇宙服を着ておらず、青のマントを羽織っているだけ
であり、優雅、とは言えないものの堂々とした態度で椅子に座っている。
「ようこそ、コードナンバー六六六」
「やはり残っていましたか、コードナンバー五七八」 
 お互いに視線を送る。アジャムのほうはすかさず彼女の方へ自身が持つアサルトライフルを向けた。
 安全装置は既に外しており、弾丸も既に装填してある。後はトリガーを引くだけでいい。だが、目の前にい
るコードナンバー五七八は青い顔一つせず、二人をじっと見つめていた。
「こう言っちゃなんだが……大人しく投降しろ……つっても無駄か?」
「投降? おい、投降とはどういう意味だ?」
 言葉を知らないのか、隣に居るカミーラに”投降”の意味を聞いてきた。
「大人しく捕まりなさい、という意味です」
 カミーラの冷たい言葉に彼女は腕を組むと鼻で笑い出した。
「捕まったら終りになってしまうではないか。私はこの戦いはもう少し続けさせたいのだがな」
 コードナンバー五七八の言葉がどことなく棘があった。がカミーラは気にせず言葉を続ける。
「残念ですが地球の人々は私たちを歓迎していません。おまけに彼らの種族は七割以上は死亡しました」
「七割……そこまで貧弱なのか?」
 バイラムが行った都市攻撃、それに伴う食料と医療品不足、そして今回の作戦。
 元々恵まれていた環境を全て失えば人の命は加速度的に減っていく。バイラムの効果は思った以上に発揮し、
305創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 21:37:11.42 ID:6TG8GtkT
今もなお起こる後遺症に地球の人々は悩まされていた。だが、彼女の顔はそんなこと知らんと言わんばかり
に眉一つ動かさなかった。
「悪かったな、貧弱でよ。で、どうなの? 投降するの?」
 と軽い口調で言っているがアジャムは銃を下ろそうとはしなかった。むしろ部屋の中に注意を張り巡らせて
おり、棚から壁までおかしな所が無いかとせわしなく瞳をを動かしていた。特に床や天井と言った部分には細心の注意を
払っており、彼女の動き一つでカミーラを連れて外に出る算段を立てていた。上下に現れた物ほど対処に困る
のはアジャムの経験から。横なら物陰に隠れやすいが上下となると足や頭が狙われやすい。ましてや目の前に
いるのは敵の親玉だ。策を弄す可能性は否定できなかった。
「ふむ……」
 コードナンバー五七八が軽くあごに手を当てて考え始めるとカミーラが口を開いた。
「……警備員やガードツールが存在しませんが……一体何が起こったのです?」
「むっ、なんだ、知らなかったのか? 我々の同胞は既に火星に送ってしまったぞ。残ってるのは私を含め、
三人ぐらいだ」
「さ、三人!? じゃあ、ここにいるのはミソッカスってことか?」
 アジャムの言葉にコードナンバー五七八は初めて眉をしかめた。
「ひどい言われ様だな。仮にもここは我々が乗ってきた宇宙船だというのに……」
「では、あなたが指示を送れば……」
「ああ、目覚めた奴らが戦争を始めるだろうな」
 胸を張って応える彼女にアジャムの額には汗が浮かんでいた。
 もしも全面戦争になれば勝ち目がないことはアジャムは知っている。しかも敵は戦闘民族と言っても過言で
はなかった。戦いが無ければ生きられない。言い方を変えれば戦いこそ彼女たちの命なのだ。
 それだけではない、ただでさえ地球側は満身創痍であった。
 先ほどの会話を聞いた限り、降伏は意味を成さない。地球が滅びるだけなのだ。
「さて、私からも聞きたい」
 彼女は仕切りなおしと言わんばかりに静かにカミーラの方へ視線を向けた。
「コードナンバー六六六、お前はあの星で何を見つけた?」
「平和、と言う言葉です」
「ほう、平和か……我々の知らない言葉だな。どういう意味だ?」
 ちらりとアジャムの方に視線を向けてしまう。だがアジャムは軽い笑みを浮かべて肩を叩いた。
 カミーラは若干のためらいとともに自分の考えをそのまま伝えてみた。
「平和と言うのは……お互いを思いやり、血で血を洗うことをやめられることです」
 カミーラの言葉にコードナンバー五七八は不敵な笑みを浮かべる。
「残念だがお前が思っているほど彼らは賢くないぞ。バイラムが地球に降り立ったときのことを思い出せ。みな
手柄を独り占めしようと一斉に向かっていったはずだ。それだけじゃない、バイラムが倒された後の数日間、
見せしめ的な行為を行い精神の安定を図ったはずだ。私たちがいなくとも奴らは奴らで戦争を始めるんじゃないか?」
「分かっています、でもそれでも私はこの星が好きになりました。血だけではなく花も知りうる彼らと共に歩
んで行こうと思っています」
 カミーラの済んだ言葉にコードナンバー五七八は穏やかな口調で言葉をつむいだ。
「それがお前の生き方か? コードナンバー六六六」
「……はい」
 若干ためらいを受けたがカミーラはまっすぐに言い放った。お互いの瞳には諦めと自身の意思が残っていた。
「ならば……こうなる事も予測済みなのだな!」
 彼女が懐から拳銃を取り出すとカミーラもとっさに銃を取り出す。そして同時に乾いた音が響いた。
「ぐぅ……がぁ」
 手に持っているものを投げ捨てるとすぐさまコードナンバー五七八に駆け寄る。腹部から止めどなく血が流
れていく。彼女が放った弾丸はカミーラの頬を軽く掠った程度であった。頬に赤い線が走るとそこから封を切っ
たかのように血が流れ出していたが気にも留めずに彼女をそっと抱き上げた。
「……負け…か?」
「ええ……停止コードは?」
「…相変わらずだな……変えてないさ」
「変えて……ない?」
 この言葉にカミーラは狼狽を隠せなかった。普通なら変えるはずと思っていたが彼女は変えなかったのだ。
「ああ、最近物忘れが激しくてな……」
 口ではそうはいっているが彼女の本心とはとても思えなかった。二人の視線が交わる様子を見ていたアジャ
ムは心なしだが彼女たちの関係性を理解した。そう二人は――。
 カミーラはすぐさま立ち上がるとすぐさま机の上にあるコンソールに手を伸ばすとすばやくキーをたたき始めた。
 その様子には何の迷いは無く、無心と言う言葉が彼女の姿を現していた。
306創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 21:38:13.71 ID:6TG8GtkT
 そして、キーを叩くのをやめると小さくつぶやいた。
「停止コード入力完了、……各艦の機能停止を確認……」
 再びコードナンバー五七八のほうを向くと彼女は完全に事切れていた。
 カミーラは呆れ顔とも泣き顔とも区別がつかない複雑な顔で彼女をじっと見つめている。
 一方の彼女は満足そうな笑みを浮かべており、その顔からは想像が付かない安らぎを感じ取れた。
「終わったのか?」
「ええ、形式上は……」
「形式上?」
「ええ、動力部を破壊すればこの基地は二度と使われないでしょう。私たちも、そしてあなた方も」
 動力部が残っていれば地球側もカミーラたち、異星人側もそれを再利用するだろう。
 下手をすればデライトによる地球侵攻が開始される場合もあった。
 それを防ぐには動力部を完全に破壊するしかないのだ。
「んじゃ、とっとと行こうぜ。終わったら……な?」
 アジャムはちらりとコードナンバー五七八をみる。
「……ありがとうございます」
 アジャムは彼女の遺体をそっと抱き上げるとそのまま部屋を後にした。
 カミーラも続いて部屋を出ると中は暗い静寂に包まれた。

「これで!」
 エグザトリアの刃が大きく振るわれるとデライトは真っ二つに切り裂かれた。
 軽い火花が飛び散るとそのまま大きな爆発を引き起こし、破片が宇宙を漂う。祐一はそれを尻目に辺りを見
渡す。デライトはほぼ居なくなった。バイラムも徐々に掃討されている。だが、何かがいることが彼の心に不
安を芽生えさせた。正体は理解している。メアリーが近くにいる、それだけだ。
 別にアニメや漫画のようなテレパスではない。だが人が持つ第六感がそれを教えてくれる。
 祐一は今までで一番冷たい声でエグザトリアに向かって小さく呟いた。
「……サーチ、現状で一番被害が大きい所」
 エグザトリアのディスプレイは軽い沈黙を保ったまま、黙っている。そして暫くすると広い画面にある一点を示した。
「ここか……」
 ペダルを踏み込み、エグザトリアを加速させていく。背面のバーニアが輝くと一直線にその場所に向かう。
 誰に言われたわけでもないがメアリーはそこに居る、と祐一は確信した。だが距離が縮んでいくたびに手に
汗が滲み始めた。ペダルを踏み込む足が震えだし、喉がやたらと渇いていく。
 これから起こることは祐一にも理解できている。メアリーを殺すといういたってシンプルな行動だ。
 だが、祐一にとって見ればあまりにも大事過ぎた。
 狂っているわけでもないのが辛かった。ニュースのような弾みで人を殺すと言うわけでもない。
 明らかな殺意を持って殺す。計画的な殺人である。
「くっ……」
 心が痛かった。まだやってもいないのに心が苦しみを訴えてくる。
 デライトのような無慈悲な機械でもない。バイラムのように自我を別のものに置き換えられたわけでもない。
 本当の意味で人を殺すのだ。彼女をこの手で。
 だが、祐一はそれすらも背負わなくてはならないと思っていた。自分が真実を知り、メアリーと袂を分けた瞬間から。

 デライトという数の暴力は終りを告げ、戦いも終局を迎えようとしている。爆発はなりを潜め、破壊される
光景はあまり見られなくなっていた。だが、まだ一機、動く物がいた。それは濁流のような圧倒的なパワーと
スピードで次々にPMを切り裂いていき、手から放たれた閃光によって宇宙の藻屑と増やしていく。
 まだ戦いを続けている物の正体は……ネオ・バイラムであった。
「こ、このやろう!」
 一機のネルソンが槍を構えるとネオ・バイラム目掛け向かって来た。だが、それをいなすかのように横にか
わすとそのまま腹部を蹴りつけた。ネルソンの腹部が大きく”く”の字に曲がり、跳ね上がるとパイロットは
軽いうめき声を発した。
 そして畳み掛けるかのように、掌打、正拳、回し蹴りを叩きこむ。打撃を加えるたびにネルソンは人の形を
失っていく。そして、止めとばかりに掌から小さなビームを一発だけ放った。顔が融解し、PMは花火に成り代わる。
 それを見送ると上の方から粘着性の液体が飛びかかった。引き剥がそうとするが液体は徐々に粘度を増して
行き、身動きが取れなくなっていく。そして液体は固まり、ネオ・バイラムはその場に固まってしまった。そ
の様子を見ていたポーンが腕を大きく振るうと一斉に突撃を仕掛けてきた。
「でやぁぁぁぁぁぁ!」
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
 だが……。
「ば、ばかな!」
 槍の先端が潰れていた。明らかに狙ったはずの装甲は凹む事も傷が付いた様子もなく、なんとも無かったか
307創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 21:39:23.71 ID:6TG8GtkT
のように平然としていた。だが、向こうも悪あがき同然に何度も叩きつける。しかし効果は一向に現れず、た
だ機体に負荷をかけるばかりだった。それを見届けた後、力を込めて先ほどの液体を引き剥がすと
「ばいばい!」
 ネオ・バイラムの刃がポーンを真っ二つの切り裂いた。そしてそのまま周りにいるPMも切り捨てていく。
 無常に、無慈悲に、無感動に。そして刃が止まりその場から大きく飛びのくとポーンたちがいっせいに赤い
火花へと成り代わった。
「バ…バイラムだ…」
 誰が呟いた。堅牢な装甲、圧倒的な攻撃力、常識を脱した機動性。それらが今、目の前に存在していた。
 あのバイラムが帰ってきたのだ。自分たちを殺しに。そう誰もが思った瞬間――、
「い、一時撤退だ!」
 隊長がそう叫ぶが次の瞬間にはスクラップになり変わっていた。ネオ・バイラムのとび膝蹴りが背中に当た
ったのだ。バーニアを始め、背面が大きくゆがみスピードは若干落ちた。すぐさま背面のパーツを切り離そう
とするがバイラムの前では遅く、今度は顔面を大きく殴られた。そして手刀が動力部を貫いた。
 基本的に間接部というのは弱いという印象を持つものが多いがネオ・バイラムは間接部をデライトや普通の
バイラムよりかなり強固に作ってあった。その為、肘打ちから締め技など多種多様のサブミッションが行える。
もっとも、それらを扱えるのはメアリーの技量によるものだが。
「ブーストの調子は良さそう!」
 だが、そうしている間にも他のPMは後退していく。軽く首を鳴らしながら去っていった方向を見つめる。
 残存兵力をまとめて体勢を立て直すつもりなのかな? だったらこのまま奇襲をすればいいんだけど……。
「ううん、こういうのと戦うの、嫌いなんだよね……」
 メアリーは遠くにある艦隊へと視線を向けた。艦隊戦に苦手意識があり、率先してやろうという気分にはな
れなかった。苦手な理由はなかなか倒れない強固さと後片付けの不便さであった。撃沈した艦が漂流物と化し、
攻撃の際、邪魔になることがあった。だが、そうも言ってられないと思い直すとそのままペダルを踏んで艦隊
へと近づこうとする。
「バイラムを近づけさせるな!」
 号令とともに艦砲射撃が開始された。光の雨が向かってくるがすんでの所でそれを避けていく。機銃もネ
オ・バイラムに照準を合わせるといっせいに火を噴いた。メアリーはすかさず一番固い物である剣で銃弾を受
けた。跳ね返る弾の中をそのまま一気に突っ込む。だがそのとき、艦の主砲がバイラムに当たった。
「やったか!?」
 だが動いていた。艦砲射撃の直撃を受けたのにネオ・バイラムは倒れることは無かった。煙が噴出している
がネオ・バイラム自体はそんなにダメージを受けていなかった。その証拠に中のメアリーは怪我を負った様子
も無く、バイラムの駆動部は関節から指まで全て動いていた。
「化け物め……砲撃を続けろ! 奴を逃がすな!」
 艦長はその様子を見て苦虫を噛み潰したような顔をする。火を噴く機銃や主砲は何度もネオ・バイラムへと
飛んでいくがそれよりも早く艦の懐に飛び込んだ。そしてネオ・バイラムはブリッジの前まで来るとその刃を
縦に振るった。百メートルを超えるほど大きな亀裂が入るとそこから炎と煙があたりに拡散し、そして爆発を
引き起こした。
「あーあ、やっぱつまんない」
 がっかりをするメアリーであった。だがその背後から一筋の光がバイラムの顔の横を通り抜けていく。
 光の方向へ視線を向けるとそこにいたのはエグザトリアであった。ライフルを構えて、ご挨拶といった顔を
しているようだった。メアリーは中にいるであろう人物に通信をつなげる。現れたのは――。
「来たんだね、ユウイチ」
「ああ……」
「でも予定の時間よりちょっとオーバーだったかな?」
「……メアリー」
 ちょっと拗ねたようなしぐさをする彼女に祐一は言葉を失った。
 自分が何をしているのかわかっていないの? と言ってみたかった。メアリー、もうやめよう。と言いたかった。
 でも、彼女の声は祐一の記憶の中で一番楽しそうだった。映画や遊園地に行ったときよりも、二人で海岸を
歩いた時よりも今、この瞬間が一番だと言わんばかりに。
「それじゃ、早速デート開始!」
 言葉を発すると同時にネオ・バイラムの刃がエグザトリアの喉下に突きつけらそうになる。が、それをすぐ
さま自分の剣で防いだ。お互いの震えが刃を通して伝わってくる。だが、パワーはエグザトリアの方が上なの
かバイラムの刃は徐々に離れていった。そしてネオ・バイラムの腹部に蹴りを叩き込み距離を取った。すぐに
308創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 21:39:57.40 ID:QM6m+vGE
紫煙
309創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 21:40:32.21 ID:6TG8GtkT
攻撃を仕掛けてくるかと思っていたがメアリーは距離を保ったままであった。エグザトリアを嘗め回すかのよ
うな視線が感じ取れる。こちらを観察しているのだろうか、向かってくる様子は見られなかった。
「各員、エグザトリアの援護を!」
 背後から現れたポーンたちがネオ・バイラムを囲む。そして槍を一斉に向けて一気に突っ込んできた。
 だが、それはあまりにも迂闊であった。
「え?」
 一瞬の出来事だった。捕らえていたはずのネオ・バイラムが消えたのだ。そしてとまることも出来ず、彼ら
の槍はネオ・バイラムを貫かず、近くにいた仲間のポーンを貫いていた。そしてそのまま爆発が巻き起こると
祐一の頬に汗が流れた。
 最初から狙っていたんだ、この同士討ちを。
「デートの邪魔をする奴は馬に蹴られて死んじゃえ!」
 不満そうな軽口を叩くと再び祐一のエグザトリアへと向かってきた。祐一もとっさに防御をする
 だが、先ほどとは違い、エグザトリアの踵落としが奇麗に決まった。胃の中を全て吐き出しそうな衝撃がコ
ックピットを襲う。操縦桿をすかさず右に左にと倒しバランスを整えるとメアリーは嬉しそうに笑った。
「ついて来て!」
 突如、エグザトリアに背を向けると雪の結晶へと向かっていく。祐一が今まで対峙したPMとは違い、想像
以上のスピードで飛んでいった。だが祐一はそれを好機と捉える。ロックサイトを雪の結晶に向かっているネ
オ・バイラムに合わせるとそのままライフルのトリガーを引いた。光の矢がまっすぐ飛んでいくがメアリーは
それを軽くステップを踏むかのようにかわしていった。まるでこちらのことはお見通しといわんばかりに。
 祐一は軽く舌打ちをするとメアリーの後を追いかけていった。その間でもライフルのトリガーから指が離れ
ることはなく、何度も火を噴くがネオ・バイラムには一度もあたらなかった。時折、こちらをけん制するかの
ように手のひらから光弾が発射されるがエグザトリアがそれを察して自動的に避けてくれている。
 メアリーは追いかけてくるエグザトリアを尻目に暗礁空間へと入り込んだ。祐一もまた、メアリーを追いか
けて、暗礁空間へと入っていく。隕石が障害物として立ちはだかるがこの二機には関係なかった。もっとも進
み方は対照的と言っていいほどに違っていた。メアリーが機体の頑丈性に頼って岩を突き抜けるのに対し、
祐一はルートを組んでぶつからないように進んでいく。
 ネオ・バイラムは岩とのすれ違いざまに小さな機械を設置する。
 エグザトリアが機械の近くを通り過ぎようとすると爆発を起こった。赤外線の宇宙機雷だった。
「ふふーん、どうかな?」
 だが、エグザトリアは思ったほどダメージを受けていなかった。煙をかき分け、さらに飛んでいく。
「危なかった……」
 エグザトリアの機動性に助けられたのだ。それだけじゃない。わざわざコンピュータが分析をし、率先して
回避を選んだのだ。といっても多少煙を受けてしまい、手足に軽いこげ跡がついてしまったのだが。
「あは、やっぱりすごい!」
 そして再び追いかけっこが再開した。メアリーが雪の結晶のハッチへと入ると。祐一もそれに続いて奥へと入っていく。
 通路は横や奥だけではなく、縦や斜めといった通路が入り組んでいた。それだけではない、リーシェンたち
が通ったように広くは無く、PM一機が何とか動けるといったスペースしかなかった。
 狭い通路ではお互いに機動性を生かすことが出来ない……と思いきやお互いに通常のPMとは思えない速度
で戦闘をしていた。狭い通路を衝突ぎりぎりのスピードで急旋回し、壁を足場にさらに加速をしていく。祐一
はライフルを手にメアリーを照準内に納めようとするがネオ・バイラムのスピードは思っていた以上に速く、
捕らえきれない。攻撃の際にはこちらも飛んでくる破片などで攻撃をやり過ごし、猛スピードで離脱を繰り返す。
逆に遮蔽物にぶつかりそうになった場合は剣を突き立てて、無理やりブレーキにしたり、それを足場にしてネ
オ・バイラムへと突っ込んでいった。
 短い通路の先を抜けると開けた場所に出た。
「うっ……」
 そこはかなり広く多くのカプセルがおいてあった。その数は千や万を軽く超えており、まるで無限回廊のよ
うにいくつも連なっていた。カプセルは全て空だったがその一つ一つが祐一を観察するかのような視線を送ってくる。
「なんだ、ここ…」
「私が生まれた場所だよ」
 その口調は先ほどとは違い、感傷が若干混じったような雰囲気であった。
「……これが……」
 いったいどれだけあるんだろう? と、思うのとどうやってメアリーが生まれたかは理解した。
310創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 21:41:01.96 ID:QM6m+vGE
紫煙
311創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 21:41:25.55 ID:6TG8GtkT
 試験管ベビー。メアリーだけではない、恐らくメアリー以外の人間もまたここから生まれたことが想像できた。
 ただし、祐一はメアリー以外の異星人の存在を知らなかったが。
「ねえ、ユウイチ。ここからもっと遠くにいってみたいって思ったことある?」
「うん」
 突然の質問にユウイチは思わず本心を応えてしまった。
 別に何かを捨ててどこかへ行ってみたいというわけではない。だが、ここより彼方にある星々。見たことの
無いものに触れてみたいと祐一は心から思っていた。父と同じ、とまで行かなくとも自分が知らないものが
この世界にはありすぎることを知っている。
「宇宙はね、祐一が思っている以上に広くて……冷たいんだよ」
 メアリーの声に背筋が凍りついた。脅してるわけでもないことは理解できた。それが経験をしてきた人間と
しての意見らしく聞こえたからだ。でも――。
「でも、それでいいんだ。そういう場所だから行ってみたんだと思う」
 自分の父のように。
 その言葉を聞いたメアリーはほんの少しだけ、はにかんだ様な顔をする。
 そんな中エグザトリアに通信が入ってきた。相手が誰だかわからない上にノイズがひどかった。が何かを言
っているようだった。
「動力室……破壊……停止」
 わずかなキーワードを繋げる。動力室、破壊、停止。
 祐一はエグザトリアの内部データを調べてみるが動力炉への通路は分かってもそれが何なのかは分からなかった。
 こうなったら動力室に行くしかない。そう思うとペダルを踏み込み、一目散に向かっていく。
「もう、女の子を置いていくなんて!」
 メアリーもまたエグザトリアの後を追いかけていった。先ほどとは違い、今度は祐一が逃げていく。
 後ろからネオ・バイラムがエグザトリアに照準を合わせようとする。だが、すぐさま遮蔽物を射線に引き入
れ、それを阻止する。 
 構わずビームを放とうとするがその間に一気に加速をし、ネオ・バイラムから距離を取った。
 だがメアリーは決して遅れることなく自分の後ろについてくる。まるで影か何かのようにひっそりと。
 そして先ほどよりさらに開けた場所に出た。
「ここが、動力部……」
 巨大な太陽が目の前にあるようだった。その大きさは全高一万メートルを超えており、二十メートルサイズ
のPMが小人のように感じられた。宇宙を旅する船の心臓は今も熱い鼓動をあたりに伝えている。もっとも、
リーシェンたちによる爆破、アトとの戦闘により熱が漏れ出し、あたりは融解を始めていた。
 もしかして、まだ動いてるんじゃないか? そうなら敵もまた”作られる”んじゃ……。 
「どーん!」
 呆気に取られた隙をつかれ、そのまま背後から体当たりをされた。いつものじゃれあいの様にそのまま後
ろに放り投げられた。機体が激しく回転する中、操縦桿を動かし体勢を立て直す。ネオ・バイラムがビームを
何度も撃ってくるがそのままバーニアを一旦切り、そのまま落下するかのように下へと飛んでいく。床の近く
まで来ると這うかのような低空飛行をすると、メアリーに向かってライフルを向ける。だが、照準が捉える前
にネオ・バイラムの姿が消えた。
 いったいどこに……そう思った矢先、目の前に現れた。コックピット全体にネオ・バイラムの顔が広がる。
「うっ……」
 叫ぶ前に刃が振り下ろされた。が、腹部を思い切り蹴り飛ばすとそこから一気に距離をとろうとする。
 ネオ・バイラムが軽くスピンをするが――。
「すごいよ、でも……そういうところが甘いよね!」
 逆に回りこまれ、一気に懐に飛び込むとそのまま踵落しを叩き込む。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
 操縦桿につかまり、無理やり機体を起こす。軋んだ音がコックピットへ伝わって来た。
 背面のブースターから軽く火花を放っていたが祐一は気にする様子なく目の前のメアリーをにらみつけた。
 だが、視線を向けた先には――。
「ほら!じっとしてると当たっちゃうよ!」
 続けざまに手のひらからいくつもの光弾が飛んでくる。小さな雨のように次々にエグザトリアへ向かってきた。
 舌打ちをしながら素早く操縦桿を倒す。エグザトリアは右に移動しながら高速ローリングをしてかわした。
 その拍子に先ほどいた場所に穴が開けられる。
「おお! すっごい! 本当に初心者なの!?」
「はぁ…はぁ……うああああああ」
 ペダルを踏み込み、再びネオ・バイラムへと向かっていく。剣を構えると大きく腕を振り上げ、そのまま――。
「一つ覚えは良くないよ! ユウイチ!」
 だが、今度はエグザトリアの姿が直前で消えた。突然のことに息を呑むメアリー。
312創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 21:42:32.36 ID:QM6m+vGE
紫煙
313創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 21:42:50.98 ID:2VYJqaPn
 
314創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 21:43:10.53 ID:6TG8GtkT
 左を向くとエグザトリアがこちらに向かってきていた。無理やり方向転換をして真横につけたのだ。
「ここだぁぁぁぁぁぁぁ!」
 自身の剣を大きく真横に振るうがそのまま刃が胸の前を通り過ぎた。わずか数センチ。もう少し早く剣を振っ
ていれば実に胴体は飛んでいただろう。その証拠にネオ・バイラムの胴体には真一文字の傷が大きくついていた。
 そしてすばやくお互いに銃を向け合い、間合いを取り直す二機。
 コックピットのメアリーの顔は真っ赤に染まっている。興奮と感動が止まらないらしく瞳が輝いていた。
「すごい……本気なんだね!」
 身体をもじもじさせて地団太を踏む。口元からはだらしないよだれが垂れかけた。
 まるで美味しいものを食べたかのようにいつまでも微笑を浮かべている。
 コックピットにいる祐一に通信を送ると彼の口からは荒い息遣いのみ聞こえてきた。
「はぁ…はぁ……」
 アラートが聞こえてくる。息が苦しい。それだけじゃない、このままじゃ負ける! 
 だが、そう考えているのに芯の部分は冷静だった。恐怖は感じているがそれ以上に推理が頭の中に思い浮かぶ。
 メアリーの予測、、ネオ・バイラムの性能と対策。それらが全て形となって自分の前におかれている。
 だが、ここで大きく息を吸って吐き出した。考えろ、どうすればメアリーに勝てる?
 その疑問に答えを出そうとする前にネオ・バイラムが突っ込んできた。
「くっ!」
 今はチャンスを待つしかない! そう思い操縦桿を倒して大きく距離を取る。
「むっ、様子見? うんうん、勝つためには相手を知る事だよね」
 そう言いながら振るう刃は我武者羅さは身を潜め繊細さが顕著に現れてきた。こちらの攻撃を予測するかの
ように、一手一手がPMの急所である、センサーやエンジンを狙ってきた。
 あの時と一緒だ! メアリーが僕と別れたあの日みたいだ!
 確実にこちらの急所を狙ってくるような戦い方だった。いや、ようなではない。実際に狙っているのだろう。
 懸命に避けるものの一瞬、ネオ・バイラムの刃がコックピットに触れた。一歩踏み込んでいれば祐一の命は
無いだろう。熾烈な攻撃に思わず息が止まる。目の前を刃が通り過ぎる。コックピットの中では風が感じない
が明らかに切られている。一つ動くたびに心臓の鼓動が聞こえてきた。
「弱点を早く見つけないと終わっちゃうよ!」
 そうは言われても今の自分にはこの攻撃を捌くだけしか出来なかった。技術は完全にメアリーのほうが上で
あり、祐一はただかわすことに精一杯だった。
「うわ!」
 蹴りが目の前を通り過ぎた。こちらは限界だと言うのに……。
 多少だが体力には自信があったが戦いが始まって早くも十二時間以上が経過していた。十八歳の少年の身体
は完全に悲鳴を上げており、意識が朦朧とし始めていた。
 疲労のせいか目の前に居る赤がいくつも見えた。そしてその赤から刃がいくつも飛んでくる。
 だが、エグザトリアはそれを小手先でかわした。身を小さく、小刻みに動かすとその刃をセンチの単位で避けていく。
 体力を消費しないようにと考えているうちに操縦桿を動かすのが細かくなっていった。エグザトリアのサポ
ートも手伝って超人的な動きを表現している。
「おお! ユウイチって天才だね!」
 まだ終わらない戦いにメアリーは狂喜乱舞した。そして加速度的に技術が上がっていく祐一に対してさらに
気分が気分が高揚していく。それと同時に刃のスピードも上がっていく。風の音が多くなり、エグザトリアの
顔が残像を作り出すぐらい早く動いた。
「しまった!」
 操縦桿を倒すのを忘れ、ネオ・バイラムの刃がエグザトリアの顔を切り裂いた。目の部分が壊れ、カメラが
映像を送らなくなる。すぐさまサブカメラに切り替える。だがネオ・バイラムのほうは待つことなく、そのま
ま止めとばかりに再び刃を縦に振るっていくる。
「あははははははははははははは!」
 だが、それを先を読んでいたのか、エグザトリアは両の手でそれを正面から受け止めた。
「真剣白刃取り!?」
 お返しとばかりに手の甲にけりを叩き込み、そしてそのまま壁を飛ぶかのように剣をひねって胸部を思い切
り蹴り飛ばすとネオ・バイラムから剣が離れていた。エグザトリアは剣を後ろに投げ捨てるとそのまま拳を
ネオ・バイラムに叩き込んだ。一発入るたびにネオ・バイラムの顔がゆがむがこちらもお返しとばかりに拳が
飛んでくる。コックピットにきしんだ音が聞こえてくる。メーターが振り切れ、ディスプレイの映像がゆがむ。
装甲がゆがみ、背面のバーニアが光を失っていく。だが、お互いに拳を止めることはしなかった。止まったら
315創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 21:44:03.48 ID:6TG8GtkT
やられる、ということをお互い理解していたからだ。
 そして、変化が起こったのは祐一のほうだった。ネオ・バイラムの手首を掴むとそのまま後ろに体重をかけ
た。
「あっ!」
 ネオバイラムはバランスを崩したのを確認するとそのまま背面で体当たりをし、床に叩き付けた。その衝撃
でネオ・バイラムの顔やにもひびが入り、床には大きなクレーターが作れられた。当然、エグザトリアのコッ
クピットにも伝わり、祐一の身体は操縦桿に叩きつけられた。
 やったか? 叩きつけられた痛みを堪えつつ、倒した相手を見る。動きが無いことを確認すると手を離した。
 だが、コレはあまりにも早計だった。メアリーもまたコレで終わらなかったのだ。
「あはははははあは!! 捕まえた!」
 突如ネオ・バイラムは起き上がると素早く、エグザトリアを羽交い絞めにしたのだ。祐一はペダルを踏み込
みパワーを挙げようとするが振りほどけない。殴り合いや床に叩き付けたことによってダメージを受けすぎた
結果であった。
 ネオ・バイラムはそのままエグザトリアを締めて壊そうとする。力を入れるたび何かが壊れた音が聞こえてきた。
「くっ……」
 このままじゃやられる……。脱出しようにも身動きが取れない。操縦桿を動かしてみるがパワーが足りない。
 EX1を使えとエグザトリアが言って来るが使ったとしてもとてもじゃないが勝てるとは思えない。
 どうする? どうすればいい?
「ユウイチィ……すきぃ……だいすきぃ! あはははは!」
 声の感じからしてメアリーは狂っていると祐一は思っていた。だが一瞬だが祐一にはメアリーの顔が見えた。
 彼女は、メアリーは涙を流していた。本当に嬉しいと心の底から思っていたのだ。
 異星人については良く分からないけどメアリーについては何となくだが分かっていた。
 コレが彼女の愛情表現……。ならば自分はどうすべきなのだろう?
 答えは簡単、こちらも同じようにすればいい、同じように相手を愛せればいい。
 でも、このままにしておくわけにはいかない。生かしておけば彼女はまた戦いに行くのだろう。だから――。
 祐一はエグザトリアのエネルギーを全てバーニアに回すとペダルを思い切り踏み込んだ。
 エグザトリアはネオ・バイラムに掴まれたまま飛んでいく。
「え! 何をするつもりなの?」
 突然のことにメアリーも目を白黒させている。新しい手段だと思っているようだ。
 祐一にとって同じ手段とは――。


 
「ごめん」



 祐一は小さく呟くとネオ・バイラムごと動力炉へ突っ込んだ。
 衝撃でガラスが割れると中の閃光が二人を包み込んだ。

「なにあれ!?」
 突如として起こった爆発を見たマールが思わず叫んだ。艦のメインモニターに爆発の様子が映し出されている。
 オペレーターはすばやくキーを叩くと結果を艦長に伝えた。
「敵基地動力部の破壊を確認!」
 そして、それに伴う変化もまた入ってきた。青の鬼、バイラムUから通信が送られてきた。
「聞こえますか? 地球の皆さん、私たちの声が聞こえますか?」
「カミーラさん!」
 カミーラの存在を確認するとマールはバイラムUへ通信を送る。
 マールの顔を確認するとカミーラは小さなため息をつくと口早に報告を始めた。
「動力部の停止を確認しました。それに伴い停止コードをバイラムとデライトに送信。各PMの停止を完了しました」
 レーダーの点滅が徐々に減っていく。そしてついには何も無くなった。残ったのは味方の反応だけだった。
「じゃ、じゃあ」
「ハイ、戦いは終わりました」
「……司令部に通信! 本戦闘を終了したことを報告!! 我々の勝利です!」
 この言葉にフリューゲルスのクルーはいっせいに喚起の声をあげた。
 漂う無数の破片もまた星の光を受け、彼らを祝福するかのように輝いていた。

 巻き起こる煙が徐々に晴れていく。いたる所に瓦礫の山が積まれている。
 動力炉が破壊された衝撃により壁は完全に熱で黒く染まり、飛んでいった無数の破片が穴を開けていた。
 全てが沈黙に包まれる中、ひとつだけ動くものがあった。それは左手と右足がもがれ、駆動部と呼ばれた場
316創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 21:44:23.50 ID:QM6m+vGE
紫煙
317創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 21:44:34.27 ID:6TG8GtkT
所は完全にひしゃげており、武器も全て使用不可能となった。唯一動くものといえばせいぜいカメラのレンズのみ。
 そんなメアリーのネオ・バイラムが祐一のエグザトリアを押し退けるとそのまま宙を漂い、壁に軽く当たった。
「プハー! 流石だね、ユウイチ! もうちょっとでやられる所だった! 」
 エグザトリアの方に視線を向けるがエグザトリアは反応する事もなく浮いたままであった。
 メアリーはネオ・バイラムをエグザトリアのそばに近づける。
 再びエグザトリアを見てみるが瞳からは光が消え、外れた装甲からは配線が剥き出し、火花が飛び散っていた。
 純白だった装甲は動力部に叩きつけた衝撃で真っ黒に変わり果てており、手も足もその形を成していなかった。
 ネオ・バイラムのコックピットから降りるとエグザトリアのそばへ向かっていく。
 そしてコックピット近くにある手動開閉のハンドルに手を伸ばすとゆっくりと回し始めた。
 重い手応えと共にハッチが開いていくとそこには祐一が横たわっていた。
「ユウイチ?」
 呼びかけてみるが彼は目を見開いたまま力なくうなだれていた。口からは血が流れていることから、恐らく
内臓が破裂したのだろう。呼吸もしていない。スーツには無数の破片が飛び散っており、身体を貫いていた。
 祐一をヘルメットを外すと見開いたままの苦悶なのか、懺悔なのか分からない複雑な表情をしていた。
 メアリーは祐一の目を閉じさせるとそのままそっと頬をなでた。
「これで……一緒だね」
 そのまま祐一の隣に座るとメアリーは静かに瞳を閉じた。その顔は誰にも見せたことが無いほど穏やかであった。

 エピローグに続く。
318創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 21:47:21.88 ID:xhMbvJyx
以上です
ご支援ありがとうございました
319創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 21:48:13.39 ID:QM6m+vGE
おつ
320創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 22:07:06.11 ID:6TG8GtkT
改めまして、ご支援ありがとうございました
エピローグはかなりあっさりすると思いますが
最後までお付き合いをよろしくお願いいたします
321創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 22:14:57.77 ID:c31p3Vwu
>>320
 投下乙! それでは、ゆっくり読ませていただきますね!

 ……なんて打つのも久々だなあ。
322創る名無しに見る名無し:2013/09/24(火) 23:24:13.55 ID:Puv5b/Mb
>>320
乙です
バイラムもラストとなれば大抵のひとは
『そうか、ついに決着がつくのか…どれどれ、どんな勝ち方をするのかしら?』
などと油断して読むんだと思います
割と酷い目に会いますね(注:誉め言葉)
323創る名無しに見る名無し:2013/09/26(木) 00:01:32.32 ID:puBgfFJB
>>320
乙です
バイラムも次で完結とは……
長かったような短かったような……
324CR2章 エピローグ 1/5 :2013/09/29(日) 03:53:12.87 ID:9aGjMQ77
 ―――――悪夢とは決して当人が望んでいないものだ。



 エピローグ


 戦いの後、辺りの木々が倒れ巨大なクレーターが出来たそこに4人の人物がいる。
 一人は復讐を志す青年、黒峰潤也。
 一人は人の救済を目的とする殺戮者、黒峰咲。
 一人は潤也の従者であり、至宝の所有者、琴峰藍。
 一人は世界最強と他言される老婆、時峰九条。
 これがこの場に揃っている。
 笑って潤也に声をかける咲を藍と交互に眺めて九条は首を傾げて言った。

「あら、お嬢ちゃん達双子だったのかい?」

 そう空気を読まない疑問は黙殺され、潤也と藍は咲を睨む。
 それをどこ吹く風と流して、咲は笑って

「おばあちゃんもそう思う?咲も流石に似てるかなーって思ってはいるのだけど、お兄ちゃんその子だぁれ?」

 そう疑問を問いかける。
 その顔が潤也の知る彼女と変わらず、潤也は手を握りしめた。
 咲は初めて見る自らと同じ顔を持つ少女に複雑な思いを重ねながら見つめ続ける。

「ドッペルゲンガーって見たら死んじゃうんだっけ?うわわ、怖いなぁー。ねぇ、喋ってよ。あなただぁれ?」

 そうして藍に歩みよろうとする咲を遮るようにして潤也は身を前に出して、

「黙れ、咲。何をしにきた。」

 そう冷たく言い放つ潤也に咲は首を傾げて

「ひっどいなぁー妹が兄に会いに来る理由なんて会いたくなったから以上に必要なの?普通いらないと思うんだけどな・・・。
 でもなんか、お兄ちゃんがお人形趣味があったなんて・・・そんなに咲が好きならいつでも抱きしめていいのに・・・。ほら、そんな私に似た人形なんかじゃなくてさ・・・。」
「わ、わたしは人形なんかじゃない!」

 そう反論する藍。
 それを咲は不思議な面持ちで見つめて、

「えーでもおかしいなぁ・・・あなた命としては色々間違ってる気がするのよね。色んな所が人間と似てるけど、細部が違う。ほら、咲さ人間を調べているからそういうのすぐにわかっちゃうんだよね。だってあなた人間じゃないでしょう?」

 咲は黙りこむ。
 
325創る名無しに見る名無し:2013/09/29(日) 03:54:35.57 ID:ViC4jjWB
 
326CR2章 エピローグ 2/5:2013/09/29(日) 03:54:39.09 ID:9aGjMQ77
 そう琴峰藍は琴峰機関によって作られた人造人間だ。
 世界最強の再現、それを目的として作られた母体から生まれていない生命。
 そういった生命である事は咲は知識的にか、直感的にかはわからないが一瞬にして看破したのである。

「まったくお兄ちゃんもこんな私似の人形さん連れてくぐらいならいつでも咲を呼べばいいのに・・・そうすれば咲はお兄ちゃんの元に行ったんだよ・・・。」
「どこにいるかもわからない奴を呼べる筈も無いだろう?」

 その潤也の声は感情を極力押し殺したような声だった。

「まあ、それもそうか・・・。だから今回は咲から会いに来たんだしね。しかしお兄ちゃんどういうつもりなのかなぁ・・・咲の同胞達を破壊して回るなんて酷いじゃないか。」
 
 そう言ってむくれたような顔をする咲。
 それに対して潤也は言う。

「当然だ、俺はお前とUHの連中を全て殺すと決めた。」

 それと同時に歩幅を見る。
 黒峰咲の元までおよそ10歩といった所だろうか・・・。
 今かけていけば咲を抑えこんで殺す事もできるかもしれない・・・そう思う。
 何より、今は藍がいる。
 藍と咲は同じ容姿で人間ではあるものの、その身体能力は人の域をはるかに超えている。
 その協力を得られれば殺せるのではないだろうか?

「へ、なんでなんで?」

 そういって咲は潤也に近づき、下から覗き込むようにして見る。

「だって、咲、お兄ちゃんに言ったよね。今たくさん人は殺しているけども咲の目的が遂げられれば、死んだ人間も含めて全て生き返るんだよ?」
「そんな保証がどこにある。そもそもだからといって人を殺していい理由なんてどこにも無い!それにお前はな、父さんと母さんを殺したんだろ?許せる訳がない!」

 そう言って咲を掴もうとする潤也、咲はそれをするりと避ける。
 その後、子供をあやすようにして言う。

「んー、お兄ちゃんもっと大局的に物事を見ようよ。今は確かに咲達は、至宝探しの為に人をたくさん殺して回ってるけどさ、結局それは生き返るんだよ。しかも皆が怯えている死を克服して・・・。
 だからさ、今はちょっと酷い事ではあるけど、それは次のもっと大きな幸せの為に耐えて欲しいんだ。お母さんとお父さんだって至宝を集めれば生き返るんだよ。」
「その時、お前はDSGCシステムを使うんだろう?」
「もちろん、そうしないと記憶情報を読み取れないからね。」
「ならば、お前の精神がそれに耐えられる保証がどこにある。咲、俺を見ろ、極力心身に起こる影響を少なくしているというのにコノザマだ。もう何度あのシステムに耐えられるかもわからない。
 お前はそれを世界中の全ての思念に対して行おうとしている。そんな事人間ができる範疇を超えている。前も言ったな咲、それは無理だ!」
「そういうなら、咲も前に言ったことを言うかなぁ・・・咲はできるんだよ。」
「根拠は?」
「黒峰咲が黒峰咲であるがゆえに・・・。」
「話にならないな。」

 そういって潤也はリベジオンの藍を一瞥した後、

「だから、今、お前を殺す。」

 それを見て、少し咲は見開いて、悲しそうに微笑んだ後、

「お兄ちゃん、それは無理だよ。」

 藍が咲の元へと走る。
327創る名無しに見る名無し:2013/09/29(日) 03:55:06.15 ID:ViC4jjWB
 
328創る名無しに見る名無し:2013/09/29(日) 03:56:23.61 ID:ViC4jjWB
 
329CR2章 エピローグ 3/5:2013/09/29(日) 03:56:50.19 ID:9aGjMQ77
 それを遮るように現れる一つの影が咲の前に立ち吼える。
 それと同時に咲は空中にその身を空たかくへと飛翔させた。

「なっ・・・。」

 あまりの非現実的な光景を前に驚きの声をあげる潤也。
 人が自らの力で空を飛ぶ、それは人という翼を持たぬ種には絶対に出来得ぬ筈の事。
 それが今、黒峰潤也の前で起こっている。
 驚き立ち尽くす藍の後ろで咲が持つ無を有にする至宝『ダグザの大釜』の力である事を潤也はすぐに理解する。

「ご慧眼、これぞダグザの大釜、見えない足場を『創り』あげてそれを飛翔させた。」

 咲と共に飛翔したアイリッシュウルフハウンドが関心したように言う。
 潤也はそれを見上げた後、

「藍、リベジオンを使うぞ・・・。」

 そういって咲に背を向けてリベジオンに向かう。

「だ、だめだよ潤也、もう二度もDSGCシステムを完全駆動させてるんだよ・・・こんな短期間で3度も完全駆動させたら今度こそ潤也の精神が持たないよ・・・。」
「関係ない。あいつを殺す事が俺の目的だ。あいつは俺の両親を殺した。それだけで俺があいつを殺す理由は十分だ。」

 止めようとする藍を潤也は押しのける。
 そんな潤也の前に立ちふさがるは一人の老婆、時峰九条だった。

「婆さん、あんたには関係無い話だと思うんだが・・・。」
「まあね、だが、あたしは自殺しようとしているような奴を止めないでいられる程、お人好しじゃないのさ。」
「自殺なんかじゃない。俺はあいつを殺さなければならない。」
「何故だい?」
「あいつが父と母を殺したからだ。」
「だから復讐かい?」
「そうだ。わかったらどいてくれ。」
「いーや、そこまで聞くとさらに行かせるわけにいかないね。」
「ならば、勝手に―――」

 そういって九条も押しのけようとした時、言いようのない吐き気を感じて膝を付く。
 立とうとするが、体が言うことを効かない。

「ほら、体は正直じゃないか・・・あんたはもうとても戦えるような状態じゃないんだよ・・・一体どれだけの時間寝たきりだったと思ってるんだい・・・。」
「黙れ、それでも俺はあいつを殺さなければ――――」

 そういう潤也の頬を九条が叩く。

「目が覚めたかい、坊や。」
「何を―――」

 そう反論しようとする潤也の頬をもう一度九条は叩く。

「なんで頭に血がのぼっているのかは大体話の流れからは察したけどね、ちょっとは冷静になりな。あんた今の状態で戦って勝てる気でいるのかい?
いいかい、あんたの詳しい事情なんて知らないけどね、あんたの目的を果たす為にはあんたの行動は正しくない筈だ、それはわかるだろう?坊や。」
「ぐっ・・・。」

 潤也は口を閉ざし土を握りしめた。

「それに来たみたいだしね。」

 九条が顔を上に向けて空を眺める。
330創る名無しに見る名無し:2013/09/29(日) 03:59:02.47 ID:ViC4jjWB
 
331CR二章 エピローグ 4/5:2013/09/29(日) 03:59:20.17 ID:9aGjMQ77
 その視線を追うようにして潤也も空を眺めた。
 視界に移るのは白い物体。
 遠くから白い何かがこちらに向けて接近する。
 それを肉眼で明確に判別できるようになり潤也は手を握り締める。
 それは機械仕掛けの天使だった。
 その出で立ちは通常の鋼機のサイズを逸脱する程巨大で重厚な威圧感を放ちながらも、ありとあらゆる穢れを帯びていないかのような清潔さを併せ持つ。
 これこそが黒峰咲の怨念機メタトロニウスである。

「お婆さん、年寄りは大事にってウチのママからね教えられてるんだけどね・・・あんまりお兄ちゃんに手を出すと怒るよ?」
「これはこれは怖いねぇ・・・。」

 そういって苦笑する九条。
 咲はその後、潤也に向けて言う。

「お兄ちゃん1つ言っておくけどね、例えお兄ちゃんが万全の状態で、お兄ちゃんの怨念機が完全な状態でも咲のメタトロニウスには適わないよ。」
「そんな事はやってみなければわからない!」
「わかるよ。お兄ちゃん至宝、手に入れてくれたんだよね。本当は最初咲の為に手に入れてくれたのかなと思って嬉しくなったんだけど・・・それを使って同胞たちを破壊して殺して回ってるって聞いてよくわからなくなったんだ。
 どうもこれまでのお兄ちゃんの行動を筋道立てて考察していくとお兄ちゃんはUHと敵対しているらしい・・・。なら仕方ないと思って、お兄ちゃんの至宝を図る意味を含めてお兄ちゃんの元へと咲お手製の鋼獣を襲わせたんだ。」

 やはりかと潤也は思う。
 アテルラナから提供されたデータに存在しない鋼獣。
 それはつまり黒峰咲がダグザの大釜で作り上げた鋼獣なのではないか?と潤也は推測していた。
 そしてこの予感が今的中する。
 そしてそれはつまりダグザの大釜さえあればいくらでも先ほど戦ったような鋼獣を鋳造する事が可能であるという事を意味している。

「お兄ちゃんの至宝に刺された鋼獣はすぐに消滅してしまうでしょ?だからさ、大質量でも結果は同じなのか試して見たかったんだ。結果、見て理解した。
 お兄ちゃんの至宝は因果を操ってるんじゃないかって・・・その存在の内包する因果を歪めているんじゃないかって・・・。」

 潤也は黙りこむ。
 下手な事を言えば、それを事実だという確信を咲に与えてしまう事に他ならないからだ。

「それならね、お兄ちゃんの持ってる至宝は咲の敵じゃないんだよ。いい?お兄ちゃん、根本的に勝ち目が無いんだ。」
「そんな事は――――」
「やってみなくてもわかるよ。」

 反論しようとする潤也を遮るようにして断言する咲。

「だからお兄ちゃん無駄な事はやめて咲と一緒に新世界を作ろう。お兄ちゃんが一緒に来てくれるのならば、咲嬉しいな。」
「断る!」

 眩む目で咲のいる方向を見つめて叫ぶ潤也。
 それに咲は少しため息を吐いて、

「わかった、わかったよ。お兄ちゃん。お兄ちゃんにはまだきっと考える時間が必要なんだね・・・じゃあさ、二週間時間をあげるよ。」

 そういうのと共にメタトロニウスが右手でVの字を作る。
 2を表しているつもりなのだろうか?

「二週間?」
「そう、二週間。それだけ考えてもお兄ちゃんが咲を殺したいと思っているのならば、相手をしてあげる。どうせ死んでも生き返らせる事ができるんだしね・・・
 本当はお兄ちゃんを殺すなんて事はしたくないけども大局的にしなければならないというのならば仕方ない。お兄ちゃんの持ってる至宝は咲はなんとしても手に入れないといけないしね。」

 そういつもと変わらない口調で言う咲。
332CR二章 エピローグ 5/5:2013/09/29(日) 03:59:54.60 ID:9aGjMQ77
 潤也は自分のことを殺すと平然と言い放つ咲に少なからずショックを受けた。

「場所はーどうしようか・・・うーんハナバラなんてどう?パパとママが死んだ場所。あそことかがいいと思うんだ。あそこに最後の答えを聞きに行くよ。」
「ハナバラ・・・だな?」
「うん、約束は守るよ。咲は約束を破った事ない事が誇りだからね・・・。」
「行く、必ず行く、そしてお前を殺してやる。」

 そういう潤也に対して咲は笑って

「ふふ、楽しみにしてるよ、お兄ちゃん。それに咲にそっくりのお人形さん、あなたが至宝の所有者なのかな?」
「―――教えない。」

 敵意の眼差しを持って咲を見つめる藍。

「あらら嫌われたのかなぁー。どうもコミュニケーションをうまくやる事って下手糞で・・・」

 そうやっておどける咲、その後、まあいいやと小声で呟いて

「じゃあ、ばいばーいお兄ちゃん、二週間後にまた会おーう。」

 そういって咲はメタトロニウスに乗り込み、メタトロニウスは飛翔する。
 その時に起こった逆風に吹かれながら、潤也は咲の言葉を噛み締める。
 二週間後。
 そこで全ての決着を付ける。
 ―――――この手で黒峰咲を殺す。
 

 黒峰潤也の悪夢はまだ続く。


 To be continued capter3
333古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/09/29(日) 04:06:47.02 ID:9aGjMQ77
これで長らく、おそらくは3年ぐらいかかったリベジ二章が完結となります。
色々おまけを用意する予定ですが、それは後々に公開しようかと思います。

やっと終わりました肩の荷がおりたといいたいところですが、あんまりおりてなかったりするのが実感です。
これにて過去の物語は終わりです。此処から先は過去を振り返らずに(たぶん)未来へ向かっていく物語になる所存ですのでお付き合いいただければ幸いです。
少しお時間を頂いた後、これまでと比較して短編気味の3章を投下、そして大決戦につながる4章へと突入する予定です。
できるだけ早く帰ってきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。
334創る名無しに見る名無し:2013/09/30(月) 13:58:08.78 ID:FaP5SzaM
>>333
乙です
へんてこな妹をもつと兄貴は大変ですな
それで笑って済むレベルじゃないわけだが
この異様なスケールの兄妹ケンカはまだまだ続くようで、読み終えた気がしなくもないです、実に果てしない物語ですね
最近は乙人口も減ってますし、やや不安はありますが投下頻度の低い長期にわたる連載は、読者層の入れ替わりとか、再読するきっかけになりそうな何かしらを考えて手をうつべきかなと思います
これまでの簡単な粗筋や、設定画の小出しなど、無理せず出来る範囲で準備して頂けると少し違ってくるかもわかりませんね
続きとおまけ、楽しみにしてます
335古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/09/30(月) 14:18:24.55 ID:Usp2vkZk
>>334
感想ありがとうございます
今回突発投下だったのもあって、粗筋のっけ忘れました・・・orz

毎度こういうものを用意していたんですが・・・申し訳ない
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1354969085/397

元々ここまでスケール大きい話にする気はなくて、ちょちょいと終わる話でやろうとしてたのですが
ちょっとづつ思いつきで話しを継ぎ足していったらかなりの量を書く羽目になりました・・・正直若い時にやらかしたことが今ここに帰ってきてる感じです(苦笑
読者の入れ替わりは自分自身大きく危惧していて、それでいて今更ここまで肥大化した話を0から読んでねというのも辛いよなぁ・・・と思うところではあります
色々解決策を打ち出していこうとは思って模索しているので楽しみにしていただければと思います

おまけはそこまでおまたせしないようにしますので、お楽しみいただければ幸いです
336創る名無しに見る名無し:2013/10/03(木) 12:30:32.07 ID:emQ9OsTT
B'z New Album「SAVAGE」リリース決定!! 
    01.Scoop!!
    02.疾走
    03.DEARLY
    04.ストイック★LOVE
    05.SAVAGE
    06.NIHILISM
    07.この身、燃えつきるまで・・・
    08.昼庭
    09.SLUDGE
    10.GO FOR ITBABY
    11.哀切な色
    12.SAMIDARE
    13.二人あえる日まで
337創る名無しに見る名無し:2013/10/05(土) 14:42:31.39 ID:OROYtzG8
一体どういう誤爆なんだ・・・
338創る名無しに見る名無し:2013/10/07(月) 15:57:10.89 ID:HlYXT8gQ
 ラジオで言ったけどこっちでは言ってなかったわ!

>>333
 投下乙です! それでは、ゆっくり読ませていただきますね!

>>337
 いろんなとこで見ますよーこれー。
339創る名無しに見る名無し:2013/10/10(木) 11:44:18.68 ID:ApAyjJOa
×誤爆
○信者()によるマルポ宣伝

だな
340創る名無しに見る名無し:2013/10/10(木) 20:24:29.95 ID:2zSZEXoP
信者とかいて、儲けって字にしようって最初に決めたひとの洞察力
341妄想「ロボコップ4」:2013/10/11(金) NY:AN:NY.AN ID:jo1FIiDE
あらすじ:
201X年、デトロイトを牛耳るハイテク産業オムニ社は中国系企業のチャイナ・テクノロジーに吸収合併され、さらに慢性的な財政難の米国政府は
デトロイド市を「中華人民共和国デトロイド特別行政区(中国領デトロイド市)」として中国に租借する契約を結ぶ決断を強いられることになり、
名実ともにデトロイト市は中国の領土なった。 デトロイトを中国人が移住するのにふさわしい近未来都市へと改革しようと躍起になる
中国共産党政権は、中国から送り込んだ人民解放軍兵士により住宅地を次々と破壊し、逆らうものを次々と中国秘密労働改造所(強制収容所)送りとした。
この行いに堪えかねたデトロイド市民は反政府組織を結成し、中国共産党の圧政に立ち向かっていく。
人民軍に相棒を殺されたロボコップは、自分の製造元の忠誠プログラムと市民の安全との間で板ばさみになりながら、反政府組織に味方することになる。

ネタ元:
Why Are The Chinese Gobbling Up Real Estate And Businesses In Detroit?
http://endoftheamericandream.com/archives/why-are-the-chinese-gobbling-up-real-estate-and-businesses-in-detroit
http://www.presstv.ir/detail/2013/07/31/316478/china-detroit-real-estate/
Chinese investors betting on Detroit comeback, buy up real estate
http://www.foxnews.com/us/2013/07/29/chinese-investors-betting-on-detroit-comeback-buy-up-real-estate/
Chinese Web Users Marvel at Detroit, Where a Home Is ‘as Cheap as a Pair of Shoes’ -
http://www.tealeafnation.com/2013/03/chinese-web-users-marvel-at-detroit-where-a-home-as-cheap-as-a-pair-of-shoes/
中国人ツアーがデトロイト訪問、「底値拾い」目指す、丸ごと購入すべきとの提言も―中国メディア
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=75282
342創る名無しに見る名無し:2013/10/21(月) 21:07:52.77 ID:vf3EMeCV
誰もいない!

というわけで軽いネタでも雑談し妖怪
343創る名無しに見る名無し:2013/10/21(月) 21:08:42.49 ID:dbzJH1gI
ほうほう
344創る名無しに見る名無し:2013/10/21(月) 22:11:56.21 ID:vf3EMeCV
……いかん、雑談は良いけど話すネタが無かった!
どう思う、君?
345創る名無しに見る名無し:2013/10/21(月) 22:28:27.67 ID:wd+/oXLY
平成メカゴジラの美しさについて
346創る名無しに見る名無し:2013/10/21(月) 22:57:00.31 ID:vf3EMeCV
スーパーになるほう?
347創る名無しに見る名無し:2013/10/21(月) 23:04:04.04 ID:wd+/oXLY
んだ
348創る名無しに見る名無し:2013/10/21(月) 23:28:28.83 ID:vf3EMeCV
ガルーダと合体するのはちょっとやりすぎだな、今見ると
関係ないけどロボ怪獣っていう意味ならビルガモが好きです
あの間の抜けた感じがとても素敵
349創る名無しに見る名無し:2013/10/21(月) 23:35:52.91 ID:qPJkwlJm
バカ、あの背負い物がいいんじゃないか!
もっともゴジラシリーズをみたのは高校生になってから
小学生の頃は悪者が作った偽物だと思ってた
見に行けなかったし
350創る名無しに見る名無し:2013/10/22(火) 03:02:19.56 ID:Tn1qyqHz
初代はその通りだから当たらずとも遠からずか
351創る名無しに見る名無し:2013/10/22(火) 19:23:39.83 ID:9lC5oRXC
三式機龍だっけ?初代ゴジラの骨格を使った、って設定は強そうと感心したね。
352創る名無しに見る名無し:2013/10/22(火) 20:52:41.79 ID:9GZYvdGm
頭部が明らかにサイズダウンしてるのがどうも気になってしまうんだよなw
353創る名無しに見る名無し:2013/10/23(水) 03:39:59.90 ID:aWjOhQ+W
 初代と平成メカゴジラの火力バカっぷりが好きです!!!
354創る名無しに見る名無し:2013/10/23(水) 17:45:26.06 ID:Psip2Rfq
モゲラさんのこともたまに思い出してあげてください
355創る名無しに見る名無し:2013/10/23(水) 20:31:51.77 ID:t9fVP3+D
ロボスレキャラで一番可愛いキャラ決めようぜ(唐突
356創る名無しに見る名無し:2013/10/23(水) 20:53:04.95 ID:NAjZTosu
人稲ちゃん(見も蓋も無い)
357創る名無しに見る名無し:2013/10/23(水) 21:04:24.44 ID:gz6Ih86w
たしかにかわいい
358創る名無しに見る名無し:2013/10/23(水) 22:18:53.79 ID:Psip2Rfq
今なら見放題だしな
359創る名無しに見る名無し:2013/10/24(木) 07:11:44.68 ID:1qYQ0puc
どこが見放題なんですかねぇ(ゲス顔)
360創る名無しに見る名無し:2013/10/24(木) 21:21:15.49 ID:F3yRDSJu
もちろん、人稲ちゃんのあんなトコやこんなトコさ……
361創る名無しに見る名無し:2013/10/31(木) 23:04:11.48 ID:ponkMO4Z
はろいんという事で白雪姫な遥さん
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4627862.jpg
362創る名無しに見る名無し:2013/10/31(木) 23:09:40.59 ID:/d1Fuymn
>>361
 投下乙でsひゃああああああああああああああああああああかわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!
 すばらしいぺったんこっぷり! グレート!!! グレートですよこいつぁ!!!!!!

 ああもう睡眠薬入りのりんご食べさせてお持ち帰りしtジョインジョインハルカァ
363創る名無しに見る名無し:2013/10/31(木) 23:17:26.98 ID:pxEbMtHr
プリティですね。
ところで何処のオリキャラさんでうわなにをするやめろ
364創る名無しに見る名無し:2013/11/01(金) 00:15:19.66 ID:l2u7ukaY
はろいん終わってまったけどチェシャ猫仕様なメルフィーさん
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4628126.jpg
365創る名無しに見る名無し:2013/11/01(金) 00:27:54.57 ID:dxN43r26
\エロス!/\エロス!/\乙!/
366創る名無しに見る名無し:2013/11/01(金) 00:28:09.69 ID:9SVrgeNV
ふう…
367創る名無しに見る名無し:2013/11/01(金) 01:12:59.47 ID:ujYlfMVi
 誘っているのか……! でも私は巨乳にはなびかんぞ! 絶対になびかないんだからな!(手をワキワキしながら
368創る名無しに見る名無し:2013/11/01(金) 02:13:43.45 ID:l2u7ukaY
はろいん終わってまったけどスポーンな藍さん
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4628474.jpg
369創る名無しに見る名無し:2013/11/01(金) 02:21:12.71 ID:ujYlfMVi
 ほとばしるエロス……っ!  ほどよい大きさの乳……っ!  ウチのチビとは大違いだ……っっっ!
370 忍法帖【Lv=22,xxxPT】(1+0:8) :2013/11/01(金) 15:35:01.24 ID:2ixJr78x
すげーな
みんなかわいい
371創る名無しに見る名無し:2013/11/01(金) 18:15:30.75 ID:bgcAJIW9
ああ、皆かわいいな
そして、懐かしいな、この雰囲気・・・
372創る名無しに見る名無し:2013/11/01(金) 21:35:40.17 ID:l2u7ukaY
もはやはろいん関係ない気がするけど島風なシュタムファータァさん
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4630311.jpg
373創る名無しに見る名無し:2013/11/01(金) 22:10:04.83 ID:9SVrgeNV
しまふう、と読んでしまってドキッとした…乙です
374創る名無しに見る名無し:2013/11/01(金) 22:28:22.65 ID:4hdx+J4b
島風なシュタムファータァさんがアリならRJちゃんコスの遥さんとかもアリだよね(ニッコリ)
375創る名無しに見る名無し:2013/11/01(金) 22:43:31.76 ID:ujYlfMVi
>>372
 似合ってる! カワイイ! しかしなぜに島風!?

>>374
 やめろァ!

 あ、北上コスとか時雨コスとか子日コスとか夕雲コスとか能代コスとかでもいいのよ?
 特に能代は胸と身長以外はあんまり手を加えなくてもジョインジョインハルカァ

 艦これは三つ編みの艦娘多くてすごくテンションあがりますね! もうたまんないね!
376創る名無しに見る名無し:2013/11/01(金) 23:06:53.93 ID:4hdx+J4b
ロボスレでも艦これプレイしてる人は多いんだろうか?
ちなみに当方、ヨコチンで司令部レベル98です。
377創る名無しに見る名無し:2013/11/01(金) 23:45:54.28 ID:ujYlfMVi
 ショートランドの司令部レベル37。サボりまくりだったわたしです。
 主力は時雨改ニレベル60とハイパー北上さまレベル50だよ……一週間でレベリングしたよ……。
378創る名無しに見る名無し:2013/11/14(木) 20:53:39.75 ID:moSEUOer
誰もいないならひっそりと
バイラムのエピローグを投下します
379創る名無しに見る名無し:2013/11/14(木) 20:54:34.49 ID:moSEUOer
 一連の事件を簡易でありながらも纏めてみた。
 今から五年前、宇宙人とのファーストコンタクトがあった。
 そしてその二年後、正確に言えば現在から三年前だ。新造宇宙調査船"ADAM”は外宇宙を目指して地球
と飛び出していく。だが、それは政府による巧妙な罠であった。ADAMは外宇宙用調査船ではなく、宇宙人
への人身売買だったのだ。
 そして彼らはバイラムに改造された。一番最初に作られたのが森宮一明だったらしい。
 バイラムの製造自体はそんなに時間がかからなかった。とアルフェア女史とセルが証言をしている。
 一定数のバイラムが作られ、様子見として一機のバイラムが選ばれた。
 バイラムは予定通りの働きを見せた。いや、それ以上だったかもしれない。
 しかし……一部の愚か者たちが招いたことが歯車を狂わせてしまった。
 約束の反故。それによる都市部への攻撃。
 軍事基地だけでなく都市部をも崩壊させ、政治不安を加速させ、治安悪化を招いただけなのだった。
 しかし、こちらにも味方をしてくれる人物がいた。
 コードナンバー六六六、カミーラ・ペカレフ、その人であった。
 さらに幸運なことに最新鋭機、エグザトリアが我々の手の内に入ってくれた。
 彼女たちの本部を強襲、そして見事勝利を収めた我々であったがすでに戦う余禄はなかった。
 カミーラがトップとなり終戦条約を締結。火星への移住を認める代わりを認めるかわりに不可侵条約を結ん
だのだった。そのとき、彼女たちの態度は不満が見て取れた。理由はいたって簡単、戦いを独り占めしていた
彼女たちへのブーイングであった。だが、火星を戦場とすることでその不満も徐々になりを潜め――

「そして、今日に至る……か」
 ハワードは報告書を書き終えるとそのまま背もたれに身体を預け、大きくため息をついた。
 季節はかつての戦いから3ヶ月すぎ、季節はもう夏を迎えていた。
 パリの執務室から見える外はかなり暑そうだ。休みが取れたら海や山に行ってバカンスを楽しもう。
 そんなことを考えているとドアを軽く叩く音が聞こえてきた。
「どうぞ」
 その一言を発すると扉が勢いよく開くとそのままハワードに抱きついた。
「あなた〜!」
 抱きついた人物は……マールであった。あの戦いの後、二人は結婚したのだ。
 といっても完全にマールが押し切る形で求婚、そして承諾する形となった。
 ハワード自身は独身を貫くつもりであったがラザフォード将軍を初め、身を固めたほうが政治家として長生
きすると回りから言われてしまい、無碍に断れば培ったコネも吹き飛びかねない状況を作り出され、やむなく首
を縦に振らざる得なかった。
「もう、よさないか!」
 何とか振り払うとマールはちょっとがっかりしたかのような顔をした。
「ああん、夫婦が長く続く秘訣はスキンシップだと聞きましたのに〜」
「……それよりもだ、どうしてここにいるんだ? 君には私の事務仕事を頼んだはずでは?」
「お休みを貰ったんです、ファルちゃんに会うために!」
 ファルは現在フランスの西部にある基地で新型PMナポレオンのテストを行っていた。
 例え休戦条約が結ばれたとはいえ彼女たちが国境を越えてこない訳ではない。
 そのとき、こちらが対応できるPMを開発しなければ今度こそ人類破滅してしまうだろう。
 前回はこちら側がきっかけを作ったとはいえ、またいつ襲い掛かってくるか分からない。
 その不安を払拭するために他の国家郡もまたPMの開発に乗り出していた。
「そうか……」
 ハワードはマールに背を向けると窓の外に視線を向ける。
 部屋の中はが息を入れ替えるエアコンの音のみ。何かが砕ける音も爆発音も聞こえない。
 これこそが平和なのである。そうハワードは信じているが――。
「後悔していらっしゃるのですか?」
 マールがおもむろに開いた言葉が自分の胸に突き刺さった。
 今回の件を利用し、自分の地位を上げたのは他ならぬ事実であるし。それに伴い多くのコネや弱味を握ったの
も事実あった。
 そして、ハワードは観念したいかのように口を開いた。
「私は悪党だよ、現にこの椅子に座るまでに多くのものを犠牲にしてきた。多くの政治家、企業、そして名も
知らぬ者たち。この椅子のすわり心地はどんな椅子よりも悪いものだがね」
「……彼も?」
 彼、というのは――。
「ああ、森宮祐一は私の駒だったよ。良い意味でも、悪い意味でもね」
 マールが祐一の名前を知っているのはハワードがまとめた報告書を彼女が読んだからだ。
 取るに足らない民間人の少年が事件の、戦争の幕引きを行ったのだ。と、ハワードは報告している。
380創る名無しに見る名無し:2013/11/14(木) 20:55:06.99 ID:moSEUOer
 嘘を暴き、真実を白日の元にさらした。もっともその性で彼は命を落とし、そして多くの者も地に伏したのだ。
「さて、最後の幕引きと行こうか」
「どちらへ?」
「私の仕事は平和を作り出すことだよ。少なくともね」
 ハワードは席を立つと再び腕時計を眺めた。これからまた外務官と会わなくてはいけない。
 彼の仕事はこれから忙しくなるのだった。

 福岡市にあるとある病院。屋上に近い個室では一人の女性が折り紙を追っていた。
 千羽鶴、赤や青を初めとした色とりどりの鶴は彼女のそばに置いてあった。
 ドアが数回叩かれる。「どうぞ」と声をかけると一組の男女が入ってきた。
「お久しぶりです、理香さん」
 水原奈央とリーシェンの二人だった。軍服姿のリーシェンに対し奈央のほうは黒のフォーマルスーツであった。
「ええ、本当に……それよりもおめでとう、奈央ちゃん」
「ありがとうございます」
 奈央はお土産である杏仁豆腐を棚の上に置くと若干はにかみつつも笑顔でそれに答える。
 前回の戦争が終わりを告げると奈央はまるで袖をも通さぬといった感じであっという間に軍を辞めてしまった。
 元々、宇宙飛行士になる夢のために軍に入ったという理由もあるがNASAから彼女に直接オファーが来たの
が理由だった。すぐにソウ司令の手回しであることが知っていたがチャンスを無駄にするなとコウシュンから
の後押しや一明や祐一の思いに応えるためにそれを承諾した。一明のことを考える暇も無く訓練漬けの日々を
送り、そしてついに新型の宇宙船の乗組員として選ばれたのだ。
 だが、そんな彼女の顔はどうにも暗かった。恐らくあの戦争のことが今でも引きずっているのだろう。
 それを察したかのように理香は少し強い口調で言った。
「でも、ここからが本番よ。必ず生きて帰りなさい、あなたも知ってる通りとても辛い環境なのだから」
「はい!」
 若干厳し目な言葉に奈央は背中をはたかれたかのように背筋を伸ばした。
 その姿がどこと無く自分の息子を思い出させていた。
「……祐一はどうだったのかしらね?」
 理香は祐一が最後に来ていた日のことを思い出していた。

 今から数ヶ月ほど前、日本がホワイトデーと呼ばれていた日。森宮祐一が自分の病室に訪れた。
「母さん、来たよ」
「あら、ユウ、来てたのね」
「うん……」
 気のない返事の息子に理香は少し心配になった。チラリと顔を見てみるとどことなく疲れ果てたかのような
雰囲気を出しており、何かを決めあぐねているように見えた。椅子に座るといつものようにりんごの皮を剥き
始めた。慣れた手つきで芯と皮を取るとお皿の上におく。
「……浮かない顔をしてるわね」
「ごめん、ちょっと進路の事で悩んでて……」
 嘘であることはなんとなく理解していた。嘘をつくときの癖である早口がこのとき出ていた。
 しかし最も何の嘘かは見当がつかない。だが迷いだけは伝わってくる。
「……そう、進学するにしても就職するにしても一言だけ言わせてもらえるかしら?」
「なに?」
「自分の事は自分で決めなさい」
 母親の言葉に驚いたのか、目を白黒させている。
「ユウ、これはお父さんの言葉でもあるの。何を選んでも後悔はするし必ずしも良い結果になるとは限らないの。
でもね、その選択自体が勇気の証じゃないのかしら?」
「そう……なのかな?」
「選ぶという事は自分の意思を持つということ、進むという事は勇気を持ち続けること、愛するという事は認
めること。一明さんはずっとそうやって生きてきたわ」
 良くも悪くも不器用な人であることは知っていた。
 自分が長く生きられないことは承知で結婚をしてくれたし、自分の夢も追いかける熱い人であることも。
 だが、父と比べられた自分の息子は軽く肩を落とした。
「強いんだね、父さんは」
「……そうよ、強いから不幸になったのかもしれないわね」
 そう、ADAMの爆破事故。いまでも夢に出てくる夫はいつもと変わらないかのような笑みを浮かべていた。
 いなくなってもう三年が経とうとしている。金銭という面で不安はないが一人ということに心に影を落とした。
「母さん……」
「ユウ、あなたも自分の足で歩きたいと願うのなら自分の事は自分で決めなさい。大丈夫、それであなたに恨
み事を言ったりなんかしないわ。お父さんも生きていたらきっとあなたを応援するわ」
 暫くの間、重い沈黙が続いた。だが息子は椅子から立ち上がると口を開いた。
381創る名無しに見る名無し:2013/11/14(木) 20:55:49.81 ID:moSEUOer
「……ありがとう、母さん。じゃあまた来るから」
「ええ、また」
 そういって息子を送り出した。その背中は自分が見たこと無いほどたくましいと感じていた。

 窓の外を見る。近くの木でツクツクボウシが鳴いているらしい。上部であるこの部屋からでも聞こえてきた。
 また夏が来る。三人で過ごした日々がつい昨日のように感じる。
 あの星の海で二人はどのような物を見てきたのだろう?
「十八歳……」
「え?」
「あの子の生きた歳。長かったような短かったような」
「理香さん……」
「分かってるの、あの子は良い生き方をしたって。でもね、一人はやっぱりつらいの……」
 そう言って彼女は小さく身体を振るわせた。奈央はそっと彼女の肩を抱いた。

 ルイジアナにある病院の前に二人の軍人がいた。姿勢を正し、入り口を一点見つめている。
 そして一人の病人がフラつきながら出てくるのを見るととゆっくりとその病人へと近づいていった。
「隊長、退院おめでとうございます!」
 病院の玄関でアルとレイが敬礼をして出迎えてくれた。
 二人とも手に大きな花束を持っており、ボルスに手渡すとそのまま車へと誘導する。
 よく見ると二人の階級章には新しい星がついており、昇進したことを教えてくれた。
「フッ、元が前に着くがな」
 杖を突きながらなれない義足を使ってゆっくり歩いていく。
 どうにもバランスが取り辛いらしく、若干、左に身体を傾けてしまう。
 あの時、ボルスは左足を失ったうえに、全治数ヶ月の大怪我を負った。
 一方のアルとレイは身体に異常は無く、数日したら無事退院することが出来た。
 ケントが作った脱出システムが二人の命を救ったのだったが、パラディンとナイツは完全に破壊されており
ケントがいないため、新しく製造することも無かった。
 そのため、シルバーナイツは解散、二人とも新しい基地で働いていた。
 アルは新型機のテストパイロット、レイは軍の教官に転任したのだ。
「……それで、彼女は?」
 ボルスは二人に彼女、セルの事を聞いてきた。アルは若干戸惑った様子で口を開いた。
「……とりあえず、殺人罪で起訴されて、無期懲役の判決を受けました」
「一応、命令と言う形なので死刑は免れましたが……恐らくほとんど出てくることは無いでしょうね」
 横から口を挟んでくるレイに若干驚いたような顔をするがどこか納得がいった。
「そうか……」
 外を見ると少年たちが楽しそうに走り回っている。その中に暗い顔をしている者は誰一人いなかった。
 整理がついたら墓参りに行こうとボルスは思った。あの男が好きなバーボンを手に持って……。

 理香に挨拶を得た二人は東南アジアにある宇宙船発着所に降り立った。
 近くでは慌しい様子で作業員が走り回っており、発着場にある青い宇宙船が止まっていた。
 これが奈央の乗る新型の宇宙船である。大きさはかつてのADAMより大きく、整備員が最終チェックを行っていた。
「じゃあ、着替えてきますね」
 そう言っておくにあるロッカールームへと歩みを進めていく。
 歩きながらこれまでのことを思い出し始める。
 ヨウシン、ナタリア、コウシュン、そして一明に祐一。一人一人が瞳を閉じてもすぐに思い出せる。
 ロッカールームに着くと自分の名前が書いてあるロッカーの前に立ちIDカードを差し込んだ。
 中にある紺色のスーツに身を包むとなんとも言えない高揚感があふれてきた。
 遠くに来たものだ。自分が目指したものはかなり遠い回り道をしていたが長い年月を得てようやく目の前に
広がろうとしている。
 スーツを着終わると再びゲートへと向かっていく。そこには他の船員たちの家族が見送りに着ていた。
 尤も、奈央の家族は誰一人来ることなかったが寂しい様子を全く見せない。家庭が崩壊しているわけではな
いものの、家を出るときに一言”行ってらっしゃい”といわれただけだった。それだけで奈央は十分だった。
 そして他にも一人だけ彼女を見送る人間がいた。
 リーシェンだった。いつもの小難しい顔をしながら奈央の前に立つ。
「水原」
「なんですか?」
「……手紙をくれ」
 意外な言葉に目を白黒しつつ、言った相手をじっと見る。
「電子メールは数ヶ月、……いえ、もしかしたら数年かかるかもしれませんよ」
「かまわん、それでいい」
382創る名無しに見る名無し:2013/11/14(木) 20:56:25.29 ID:moSEUOer
 やはり照れているのかリーシェンの顔はどんどん赤くなり、ついにはそっぽを向いてしまった。
「いいですよ、ただし……」
 奈央は苦笑をしながらヒトコト付け加える。
「最後まで付き合ってくださいね」
「フン、待つのには慣れている」
 軽く鼻を鳴らしながらそう言った後、いつもの仏頂面になった。
 そして別れを知らせるかのようにアナウンスが響いた。
「EVA乗組員に告ぐ、発進準備をいそげ!」
「……それでは失礼します」
 奈央は頭を下げるとそのまま小走りで乗り込み口へを向かう。
 リーシェンはその背中に向かって言葉を投げた。
「さよならは言わんぞ」
「はい、では! また!」
 大きく手を振る奈央にリーシェンもまた振り替えす。
「ああ、またな!」

 操縦席に乗り込むとそのままレバーを下ろす。大きく息を吸って吐き出してみる。心臓の音はゆっくりとい
つもの鼓動を刻んでいく。辺りを見渡してみると奈央以外もみんな緊張した面持ちであった。
 みんな怖いんだ。でも――。
「発射十秒前!」
 キャプテンがボタンに手を伸ばす。奈央はちらりと外の方を視線を送る。
 人種を問うことなく大勢の人々が手を振っていた。
 みんな、行ってきます!
「5・4・3・2・1、テイクオフ!」
 大きな噴射口から炎が吹き出すと宇宙船はゆっくりと前へと進んでいく。
 そして、そのまま発射台のレールに沿って上昇していく。
 ADAMの新型『EVA』は青い空を超えて漆黒の宇宙へと飛び立っていった。
 後ろに青い希望を残して。


            機動修羅バイラム

                 完
383創る名無しに見る名無し:2013/11/14(木) 21:01:23.18 ID:moSEUOer
以上です

14号から始まったバイラム
ガンダム00をパク……もとい、オマージュしようと軽い気持ちで書き始めたんですが……
気がつけばネタ元とは似ても似つかぬおかしな方向へと飛んで行き、そしてなんとか完結にいたりました
応援してくださった皆様がたに深い感謝を申し上げさせていただきます

ありがとうございました
384創る名無しに見る名無し:2013/11/15(金) 00:07:47.26 ID:ObC/KAU6
乙。
385創る名無しに見る名無し:2013/11/15(金) 14:36:32.44 ID:Es9kyEck
乙です、完結おめでとうございます。
感想は後ほど
386創る名無しに見る名無し:2013/11/15(金) 22:35:46.30 ID:KR4Dyzid
完結おめでとうございます。
バイラムさんとこは、人の細かい仕草にグッとさせられますね。
まことにお疲れ様でした。
387創る名無しに見る名無し:2013/11/27(水) 21:28:46.51 ID:I/MlKgz9
フロントミッションモドキのプロット練ってるんだけどグロ表現と鬼畜描写はNG?
例えば骨とか肉とか臓器が飛び散って歩兵に降り注いだり
投降した敵や取り残された民間人を殺して遊ぶ兵士とか
嫌悪感催す人が多いならやめとく
388創る名無しに見る名無し:2013/11/28(木) 01:56:00.18 ID:V2zHbPcP
構わんじゃね?
389創る名無しに見る名無し:2013/11/28(木) 02:44:54.49 ID:jhhvh1Tr
投下の際にグロ注意みたいな注意の文言入れとけば良いんじゃね?
390創る名無しに見る名無し:2013/11/28(木) 19:22:21.17 ID:5xXnZF/f
グロ注意の警告文に賛成。
フロミでグロって、ヤングガンガンの漫画版かしら?
391創る名無しに見る名無し:2013/11/28(木) 22:34:15.36 ID:1XN31KXQ
別にグロは全然いいよ
392創る名無しに見る名無し:2013/11/28(木) 23:15:21.02 ID:GY/Nmxyp
>>390
初代ゲームとDLDSを参考にして頂ければ
二次創作だとシリーズ間の統合性を取るのが難しく展開も制限されるのでフロミモドキの一次創作です(パラレルには抵抗が…)
泣き言ですが一から戦争モノを書こうとすると政治・経済・国際社会が絡むため早くも挫けそう
というわけで黒歴史化する可能性が濃厚になってきましたが何とか形に出来た暁にはお目汚しさせて頂きます
393創る名無しに見る名無し:2013/11/29(金) 18:56:35.37 ID:Ll0r+HiW
大丈夫、経済なんて露とも知らんのに、政治経済ネタで投下してる馬鹿が此処に居るから。
394創る名無しに見る名無し:2013/11/29(金) 21:23:13.74 ID:wjCHKyFZ
お話の世界の神様は君自身だから、君が「無い」と言えばなく、「ある」といえばどんな展開もあるのだ。
395創る名無しに見る名無し:2013/11/30(土) 01:26:18.00 ID:1HA/WYjl
それっぽければ大丈夫。政治経済に精通しているご大層な人間はそういない。
396創る名無しに見る名無し:2013/11/30(土) 01:53:47.71 ID:q0t8wruh
そもそもプロでも真剣に経済考えてる作者なんてどんだけ一握りだってレベルだし
397創る名無しに見る名無し:2013/11/30(土) 11:20:23.45 ID:1GD1oLni
風が吹くと桶屋が儲かるんだぜ、なんとなくでえいいわ
398創る名無しに見る名無し:2013/11/30(土) 22:20:24.24 ID:HC6MOwYl
オーケエ、少し拘りすぎてたようだ…
頭痛が痛くなってきたから色々とはっちゃけることにするは
399創る名無しに見る名無し:2013/12/10(火) 20:11:48.55 ID:2070Bnhz
400創る名無しに見る名無し:2013/12/11(水) 22:31:39.47 ID:/vzcIS1c
ロマンと制作費がほとばしるな
401創る名無しに見る名無し:2013/12/12(木) 21:11:02.70 ID:NzdkmXl4
町工場と言えば江戸っ子1号も最近完成して、活躍してるな。
あれは人型とはベクトル違うが。
402創る名無しに見る名無し:2013/12/16(月) 23:57:09.86 ID:lXoaYog+
人稲
403創る名無しに見る名無し:2013/12/19(木) 09:05:21.12 ID:H6V9HxnB
稲穂
404創る名無しに見る名無し:2013/12/20(金) 00:49:19.03 ID:yxVfQbZF
ZAC2101年10月下旬セスリムニル市街地にて

赤い粉塵が瓦礫の街を赤く染めている。
セスリムニル。
先程までキャノピー越しのコクピットの中でさえ絶えず響いていた砲火は鳴りを潜めている。
共和国軍パイロット、カイル・ヘンドリクスは次なる敵機との邂逅に備え一歩ずつ愛機の歩を進める。
低く唸りをあげながら猛る彼の愛機、ケーニッヒウルフは既に幾度となく経験した帝国ゾイドの瓦礫の影からの強襲に備え、
静寂の中でも臨戦態勢を崩さない。
この街に共和国の主力部隊が入って数時間。
そびえたつビル街やその影には帝国の歩兵や小型ゾイドが潜み、行軍する友軍に絶え間ない打撃を与えてくる。
膨大な兵力を持ってなお、ゲリラ戦に近い強襲を繰り返すガイロスはまさに粉骨砕身の気迫だ。
「敵も後が無い」
出撃前、セスリムニル旧市街地攻防のブリーフィングの始めに、彼の部隊の指揮官がつけ加えていた一文を脳裏でなぞる。
確かに、通りの反対側に進むにすら神経をすり減らすこの市街戦は彼が経験したゾイド主体による野戦とは一線を画していて、
長く停滞する隠れ鬼ごっこのような緊迫感と、突如として起きる激しい戦闘の波。
そんな精神と肉体の文字通り消耗戦に、彼ら共和国軍兵士の疲労もピークに達していた。
僚機のシャドーフォックスも先程の界隈で突如背後から現れたゲーターのガトリングを浴び、後退。
フォックスが務めていた斥候部隊との連携はカイルとケーニッヒが引き継いでいる。
「性にあわない」
カイルはいつもの癖の悪態を歯噛みしながら呟いた。
エントランス湾上陸からニクスの原野で野戦を転戦してきた彼にとって用心深くチェスの駒を進める市街戦の空気はむずがゆくて仕様が無い。
しかも、彼に与えられたのは敵機との交戦が主ではなく、護衛。
重砲歩兵部隊の進撃支援だった。

妄想スレで曝した駄文
我ながらくっっせえ
405創る名無しに見る名無し:2013/12/20(金) 05:33:08.14 ID:mvn/BXXk
無味無臭の物語とか誰が喜ぶんだよ
特にFT・SF・ミリタリは臭くてなんぼだろ
だから燃料くださいお願いします
406創る名無しに見る名無し:2013/12/21(土) 00:48:07.09 ID:YWsRRCJd
支援
407創る名無しに見る名無し:2013/12/22(日) 20:22:33.60 ID:HiMGWovW
ゲーター、大金星じゃねぇかw
当時はアイゼンドラグーンは裏切る気満点で兵力温存してて、
帝国の首都近郊に最新兵器は無かったんだっけか?
408創る名無しに見る名無し:2013/12/26(木) 00:01:28.34 ID:/j3bMrUF
前装式の大型迫撃砲に大型砲弾を装填する砲兵用ロボットとかいうネタ
409創る名無しに見る名無し:2013/12/26(木) 15:40:49.39 ID:wf16muQs
構わん続けろ
410創る名無しに見る名無し:2013/12/26(木) 21:25:17.69 ID:yEuMXIMt
その砲どうやって運ぶんだよw
411創る名無しに見る名無し:2013/12/27(金) 00:35:14.28 ID:s/MRaNa0
自走迫撃砲に随伴する感じで。具体的にはチュリパンみたいな奴に。
ぶっちゃけ歩兵用迫撃砲のロボット版。
412創る名無しに見る名無し:2013/12/27(金) 04:05:17.19 ID:wnRTILuT
いいゾ〜それ
413創る名無しに見る名無し:2013/12/27(金) 12:55:05.50 ID:zbx0kw54
迫撃砲だけでなくほぼ全ての火砲が前装式という近世風の世界で、強力な火砲を迅速に移動・装填・照準・発射と機動的に運用できるプラットフォームとしての人型兵器という案は考えた
414創る名無しに見る名無し:2013/12/28(土) 11:09:42.58 ID:Xa8LoWTR
近世風といえば明治維新が起こらなかったロボアニメが出るみたいだし仮想歴史系が台頭してきてる気がする
415罵蔑痴坊(偽):2014/01/02(木) 01:48:23.82 ID:2XSanMgx
蘭学で言うスーパーロボットか。
416創る名無しに見る名無し:2014/01/02(木) 15:07:48.39 ID:d4A0nJAv
某所で長編SSやろうとしたら創作池と言われて来たんだけど、いきなり投下してよいのだろうか?
本格小説とか読んだことない人間なんで正直文がうざいかもしれないけど
417創る名無しに見る名無し:2014/01/02(木) 15:56:12.34 ID:CU0BDIlL
構わんよー。でも長くなるようなら何話かに分割して投下しないと
連投規制に引っかかるかと
418創る名無しに見る名無し:2014/01/02(木) 23:24:03.53 ID:dyTCAJBH
>>416
はよ
419REVELLION Dark Knight  ◆J6UIw8TZLg :2014/01/03(金) 02:35:42.81 ID:+HdaDklQ
>>416さんではありませんが投下します。
420REVELLION Dark Knight  ◆J6UIw8TZLg :2014/01/03(金) 02:37:34.35 ID:+HdaDklQ
Dark Knight 1話

 血、血、血…。
 物心ついた時から既に自分の世界は血が支配していた。人殺し、略奪、裏切り、日常茶飯事の出来事だ。
 だけど。血の赤しか知らぬ自分に差し伸べられた手を今でも覚えている。
 死体の山に佇む自分に彼は…ノワールさんはニッコリと笑いあどけない声で言った。
「一緒に来い。クソガキ」

「ヴァース!なに呆けてるんだよ!」
 子供の声。それと同時にヴァースの顔にボールが飛んでくる。
「グ…」
 顔面直撃。時間差を置いて地面に落ちたボールを見つめ、ピクピクと頬を引きつらせた。
 長身、鋭い眼光、男とは思えぬ艶やかで長い銀髪。瞳は赤と青のオッドアイ。たとえるなら貴族…だろうか。
「くく」
 いまだにボールを睨んでいるヴァースの背後で意地悪く笑う声。男とも女ともとれる声質の主の方を向き直ると、不機嫌そうな顔がさらに不機嫌そうなものになる。
「笑うな」
 その顔が面白かったのか、さらに笑う少女…だろうか?
 顔の右半分を包帯で覆い、黒いローブのようなモノを纏っている。ボサボサのセミロングの黒髪。風体は差し詰め魔女といったところだろうか。
「相も変わらず子守が得意そうだね。君は」
 その言葉に周りにいた子供たちが一斉に「ヴァースは無愛想でつまらない」と声を上げた。
「ガキが、殺すぞ」
 今度はワー、キャー言いながら散っていく子供たち。皆一様に青と何かしらの色のオッドアイの瞳をしている。
 混血児。この世界には「ヒューマ」と「ブーステッド」と呼ばれる二つの人種によって構成されている。
 区分ける方法は単純だ。ヒューマには青い瞳の者は存在せず、ブーステッドは逆に青の瞳しか存在しない。なぜそのように区別されだしたのか今も不明だ。
 オッドアイであるヴァースと子供たちはその二つの人種の間に生まれた混血児である。
 そしてここは混血児だけのための私設孤児院だ。
「ガキは五月蠅くて嫌いだ」
「くく…」 
 その孤児院に不釣り合いな二人。それは右肩に羽織った軍機のあしらわれたマントが理由だ。
 まだ十代であろう二人がそのような恰好をしているのは理由がある。
 戦乱期。この世界は千年以上も血を血で洗う国家間の戦争と略奪が続いている。
 それは千年前の大戦が原因だ。過去にブーステッドが宗主たるヒューマに反旗を翻し起こした古代戦争。
 ブーステッドは神に見立てた巨大兵器「イザナギ」を作り出し、ヒューマへ迫害の報復として反旗を翻した。
 国一つ分、途方もない大きさとそれに伴った破壊力でヒューマは成す術なく、国を次々に滅ぼされていった。
 そんななか救世主が現れる「エクスカリバー」「カリバーン」人の姿を模した機械人形、現在それはOAF(オリジナルアーマードフレーム)と呼ばれ少数だが発掘や代々その国の守護神として、現役の兵器として運用されている。
 その二機は追い打ちをかけるべく製造されていた二機目の-神「イザナミ」を無力化し、返す刀で「イザナギ」へと戦いを挑んだ。
 結果…エクスカリバーとカリバーンは敗北した。同型の機械人形が大量投入されたのだ。
 それでも諦めず戦い、そして…遂にイザナギを崩壊に至らしめる。無論中心にいたのはエクスカリバーとカリバーンだ。だが引導を渡したのはその二機ではない、ダーインスレイヴとロンギヌス…その二機の活躍により古代に起こった戦争は一時だが終結となる。
 そして中でも最大の活躍をしたダーインスレイヴは後にこう呼ばれる神に反逆せしもの「リベリオン」と…。
 今現在おとぎ話として語られる物語だ。

 その大戦が残した傷跡は大きい。大地から緑と水は消え代わり、戦場跡と思しき場所はクレーターが、大気は汚染し人はドーム状のシェルターでしか生きられなくなった。
 結果国々が乱立し、そして…残った物資、土地、人を争い戦争が始まった。
 
 話をもどそう。混血児の子供は忌み嫌われている。答えは簡単、混血児は大気の汚染に抗体を持っていたのだ、それと身体能力も極めて高い。
 それが差別を呼んだ。迫害されて行き場をなくしたのだ。
 戦乱期ゆえに各国は孤児院を国営で作っているが混血児はその枠組み外となっている。
 ここは小型シェルターを利用して建てられた、行き場を失くした混血児の孤児院だ。
「よ〜。おっさんのご帰還だよ〜」
 そんな孤児院を経営する物好き『ノワール』が帰還を高らかに宣言した。
421REVELLION Dark Knight  ◆J6UIw8TZLg :2014/01/03(金) 02:44:01.26 ID:+HdaDklQ
 無精ひげのヒョロヒョロ親父。それ以外の喩がないほどの風体だ。ただだらしなさそうな瞳の奥には鋭い何かを感じさせないわけでもない…と思われる。
「隊長。ガキのお守りが軍人の任務とはどうしても思えないのだが」
 青筋ピクピク。ヴァースが大げさにため息をついた。
「おう。ご苦労」
 ヒョロヒョロの千鳥足、酔っ払いか。呆れるヴァース。鼻を摘まむ少女?
「任務はこれからだよ。ヴァース」
「そそ、マミーちゃんの言う通り」
「ルルです…」
 無表情で包帯少女が答えるとノワールはそうだっけと頭に?を幾重にも浮かべた。
「ノワールさん。マミーはこの間酔ったあんたを送ってくれた居酒屋のママだ」
 ルルの軽蔑の目にノワールはタジタジだと自分で言って地べたに胡坐をかいた。

「ヒルダがまた宣戦布告しやがった」
 さきほどとは変わり真剣な表情だ。それを見て二人も地べたに座った
「今年に入って十五回目ですね」
 ヒルダ。大国トウキョウを治める女帝。我がために世界があり世界のすべてが自分のものを地で行く悪逆非道の極悪人だ。
 今まで宣戦布告された国は服従か滅亡かの二択だ。
「そこで俺らの出番。依頼だ、大事なお得意様だから守れとよ」
 オオサカ。そうデカデカと書かれた紙を差し出す。
 指令所だ。
「お上は無理ばかり言う…が、しょうがね。はみだし者の俺らにはこういう仕事しか回ってこないんだよ」
 そうは言ってもノワールの瞳は赤、つまりヒューマだ。何に理由があるのかは知らないが彼は混血児の孤児を引き取り育てている。ヴァースとルルもその中の一人だ。
 ヴァースはヒルダの治めるトウキョウの貧困層区画で、人殺しと盗みで生きていたところを拾われた。
 ルルはノワールの遠征先の国で、混血児の象徴であるオッドアイの片方を母親に抉られさらに殺されそうになり、とっさに返り討ちにしてしまい途方に暮れていたところを拾われた。
 もう十年以上前の話だ。
 ある意味いわくつきである子供を引き取っていることがはみだし者かもしれないが・・・。
 そんなはみだし者を受け入れてくれる物好きな国それが『オオサカ』だ。
 商業都市として有名な国で経済面では世界で一二を争うほどの国だ。
 住民となる条件は一つ『自由』だ。その一言に集約された国だからこそはみだし者でも受け入れられたのだが。
 十数人もの子供を養うに軍人になるしかなかったのだ。
 これも自由な国の由縁だろうか。命張るのが一番金になる。

「…」
 ヴァースが改めてまじまじとノワールを凝視する。
 見た目軍服着た詐欺師なのだが、元は高名な医者だったようだ。再生技術、オートメタ、なんでもござれの世界一の…。
「いや〜ん」
 頬を染め両手を添え体くねくね。
「熱視線を感じる、ルルちゃん、どうしよ〜」
 今は見る影もない気持ち悪いオヤジにジョブチェンジしていた。
「殺していいかな?」
 懐をまさぐり銃を探り睨んで笑うヴァース。
「良い殺し文句だ…」
 パン!何かがノワールの頬ぎりぎりを通り過ぎた。
「では概要説明を」
 日常茶飯事だ、気にすることなくルルが指令書を摘まんでヴァースにも見えるようにした。
「相手方AF六十機、陸戦艦五艦。すでにお得さまのサカイの国は包囲済みだとよ」
 パンパンと肩の黒い粉を払うとノワールは汗たらたらで説明しだした。
「ほれ、地図と敵さんの大まかな包囲状況だ」
「兵糧攻めといったところでしょうか」
 お得意様。オオサカがサカイに送る商品のほとんどが食料品。つまり自国での自給自足がなかなか難しい国というわけだ。攻め方自体は鉄板だ。ただそれ故に崩すのもたやすい。
「まず左翼の包囲を崩しましょう。ちょうどいい具合に背後に砂漠型クレーターがありますからね。機体を砂に沈めて隠し、囮で引きつけた敵を奇襲で殲滅。その後素早く相手の味方コードを残骸から回収。堂々とサカイの国に入るとしましょう。もちろん補給物資も込みです」
 くしゃくしゃで渡された地図をグイグイと引き伸ばしながらルルが説明する。
「あとは現場で僕が判断します」
「勝算は?」
「九割。ヒルダ本人が出ていないからね、有能な人間が来ていたら策を変えるけど…」
「油断はしないでね?おじさんお前らも仲間も死なさないのがお仕事だからさ」
422REVELLION Dark Knight  ◆J6UIw8TZLg :2014/01/03(金) 02:50:52.56 ID:+HdaDklQ
「ええ、問題なしです」
「なら、行きますか」
 ノワールがパチンと指を弾くとすぐ後ろの地面が突如盛り上がった。
「おお〜!」
 すぐに子供たちが集まり歓声を上げた。山となった砂が地面に流れ黒の機体が姿を現した。
 さきほどのおとぎ話で登場した『リベリオン』である。
「かぁ〜。やっぱりロボットの登場はこいつに限るな」
 黒き衣を纏いし死神。刺々しい外装とは裏腹に全体のイメージとしては細いフォルムをしている。背中に×型に背負った二本の鎌。まさしく死神の名に相応しい出で立ちだ。
 そのリベリオンを守るかのように配置されている二機。赤と深青のカラーが施されたオオサカ製の量産型AFイフリート。
 リベリオンの型は正確にはOAF(オリジナルアーマードフレーム)といい略してオリジンというのが一般的だ、これは古代の大戦時に製造されたもので一番の特徴は機体ごとに特殊な能力を持っていることだ。
 火を出す。水を操る。人の思考を読む。機体自体が特殊な攻撃方法を持つものや、搭乗者自身に特殊能力を与えるものまで様々だ。まるで魔法のようだが事実なのだ。
 残る二機はAF(アーマードフレーム)と言いOAFのデータを元に複製した機体だ。
 OAFの特殊能力付与はコア含めブラックBOX化しており解析不可能なので、SPECの上ではOAFを凌いでいる。
「リベリオン。行こうか」
 ノワールが言うとリベリオンが跪き手を差し伸べた。ノワールが手に乗ると胸部まで運びハッチが開いた。
「残りの奴ら捕まえて、乗り込むとしますか」
 総勢六人。圧倒的不利な戦いが始まろうとしていた。
423REVELLION Dark Knight  ◆J6UIw8TZLg :2014/01/03(金) 02:52:52.14 ID:+HdaDklQ
三年以上も放置してしまいすいません。
これは以前自分が書いていたリベリオンの前日談です。
本編の方ですが設定等まるまる変えたりしたるのでまとめにあるのを加筆、修正します。
主な部分としては都市名をドイツの物から日本名に変えました。自分で書いててなんかシュールになったなと笑ってしまいましたが覚えやすさを優先しました。その他もろもろも変えます。
今回のダークナイト編が本編の核心部分に近づくあたりから本編は再開しようかなと思っています、
ゼノスでるのいつになるのかな?
次いつになるかわかりませんが自分のペースでゆっくりと完結はさせるつもりなのでお付き合いただければと思います。
424創る名無しに見る名無し:2014/01/03(金) 10:20:24.36 ID:WMmbcGE4
よしなに
425創る名無しに見る名無し:2014/01/03(金) 14:56:31.50 ID:baUUMfR0
>>417>>418
おk。投下してみます。
426創る名無しに見る名無し:2014/01/03(金) 15:04:47.28 ID:baUUMfR0
「────こいつぁ酷ェ……」

到着一番、男達は、口々にそう呟いた。
もうもうと立ち込める黒煙、焼け付いた大地、その一面に散らばった大小無数の黒焦げになった何か──
宇宙服を想わせる防護服とガスマスクのお陰でどうにか反吐が出そうな空気からは守られているものの、
それでも胸糞悪くなるには眼前に広がる地獄絵図ともいうべき光景だけで充分であった。

「──機体反応がロストした場所と一致する。これは間違いねェな。確認作業急げよ」
「事故……いや……恐らく『ウェポン』の仕業だろうな。参ったぜ、ここは連邦の制空圏内だってのに」

連邦の制空圏内──その言葉は、今の彼らにはあまりに虚しい響きであった。
それが誠にしろそうでないにしろ……易々と敵の強襲を許してしまった残念な事実に変わりはないのだから。

──ったく、気が滅入るぜ……。

口にこそ出さなかったものの、その場に居る誰も彼もがそう言いたげに溜息をついた。
人類の敵たる『魔獣』──通称『ウェポン』との戦争が始まってより十八年。未だ決着がつく気配は無い。
むしろ日を追うごとに戦況が悪化しつつあるこの現状。
そんな絶望感の後押しもあって、彼らの気持ちは底なし沼に入り込んだように沈んでいた。

だが──

「──た、隊長! 来てください! 生存者です! 生きています!」
「──なにっ!?」

少し離れた場所からふと齎された予想外の一報。
それは暗く淀みつつあった男達の心に一時の清涼感を与え、肉体を軽快に突き動かした。

「どこだっ!」
「ここです! 見て下さい! ほとんど無傷です!」

──馬鹿な──。誰もがそう思った。しかし、実際にその場に駆け寄ってみて、彼らは一様に目を丸くした。
そこには連邦の制服をきっちり着こなした、焦げ痕一つ無い少年が一人、眠るように横たわっていたのだ。
微かに聞こえる呼吸音は、確かにその少年が死んではいないことの証明であった。

「おいおい……マジかよ!?」
「他に生存者は?」
「いえ、今のところはこの少年一人です!」
「機体は木っ端微塵だったんだぜ!? 奇跡だよ、おい!」
「とにかく直ぐに病院に運ぶぞ! 医療班、医療班を呼べーっ!」
「ったく、悪運の強ェ野郎だぜ! 折角生き延びたんだ、病院に着くまでに死んだりするんじゃねーぞ!」



魔獣殲機ファルコニア────第1話「その名はライト・バーツ」
427創る名無しに見る名無し:2014/01/03(金) 15:12:35.49 ID:baUUMfR0
「────改めて紹介させて貰う。私は『リン・ユウキ』中尉。貴様が配属される予定である部隊の副隊長を務めている」
「はっ──! これから宜しくお願いします! リン・ユウキ中尉!」

小狭な部屋の中で、ビシッと音が出そうな位背筋を正し、硬い動作で敬礼を決めるのは一人の青髪の少年。
所謂ワカメ頭というその髪型にこそ若干印象深いものがあるものの、体つきは中肉中背、
顔立ちも可も無く不可も無くといった感じで、全体の印象値は間違いなく平凡の男のそれであるだろうか。

緊張しているのか、それとも根が糞真面目なのか、とにかく礼を失せぬようにと終始強張った顔の彼に、
栗毛色をした少々癖のあるセミショートと長身の恵まれたスタイルが特徴的な軍服女性、リン・ユウキは、
すかさずフッと生暖かさを感じる笑みをこぼした。

「構わん、楽にしろ」
「は……しかし」
「我が態にも最低限の上下関係というものがあるが、軍律にはいささか緩くてな。
 そんな空気に慣らされた分、そう畏まられるとこっちの肩が凝るんだ。
 それに……予定と言ったように、実は貴様の配属先が正式決定されたわけでもないからな」
「え……?」
「まぁ、その点については追々説明する。とりあえず今は私について来い、『ライト・バーツ』伍長」

「はっ!」──と、少年、ライトが威勢よく返事をする頃には、既にリンは彼の横を通り抜けて部屋を後にしていた。
──やべ! そんな顔をしながらライトも小走りで後に続く。
女でも、軍人らしいツカツカとした歩みには一切の無駄が無い。
というより、気を抜いたらいつの間にか視界から消えているのではないか──?
そんな不安さえ覚えてしまうような、しっかりとし過ぎているといった足取り。

──軍人といったって、俺も軍人。条件が五分ってなら……こりゃ性格もあるみたいだな。

ライトがリンの後姿を見ながらそう思っていると、彼女はいつの間にかその足取りを緩めて、
背中越しからライトに語りかけていた。

「……それにしても、だ」
「?」
「貴様、本当に記憶が無いのか? 原因は例の事故のショックだという話だが……」
「それは……はい……。病院で目覚めたら過去のことをほとんど憶えておらず……」
「確かに自分の名前、年齢、経歴……加えてこの世界の事情についても忘却してしまったと聞いている。
 なのに、自らが軍人という認識だけは残っていた。……記憶喪失というのは、何とも奇妙なものだな」

──まったくだよ。

ライトは、しみじみそう思った。
遡ること一週間前に発生した軍用機墜落事件──
仲間の乗組員が悉く死亡する中、唯一、それも無傷で生還するという離れ業をやってのけた彼であったが、
病院のベッドで目覚めた時、彼は自分が軍人であったという記憶と色々と雑多な知識だけを残して、
その他一切の記憶を失っていた。まるでそれが代償というように……。

「自分自身、もどかしい気分ですよ。自分のIDを調べて初めて名前を知るなんて……なんか、嘘のようで」
「記憶喪失になったことがない私には何とも言えないが……まぁ、色々と不便であろうということはわかる。
 だが、生きてさえいればいつか記憶を取り戻す日も来るだろう。それを信じ、ひたすら前向きに歩むことだな」
「……はい」

そんなこんなしている内に、ふと前を行くリンの足が止まる。
つられて急ブレーキをかけたライトは、そこでゆっくりと振り返ったリンと目を合わせた。

「……ただ、軍とは軍にとって必要な人材に飯を食わし、戦いの道具として使う組織だ。
 貴様にどんな事情があろうとも甘やかすことはできない。それはわかるな?」
「は……、それはもう……」
「今の貴様が果たして軍人として使い物になるかどうか……軍としてはまずそれを見極めなければならない。
 そこでこれから貴様をテストする。──あそこでな」

と、顎をしゃくるリン。その先には、広大な演習場が広がっていた。
428創る名無しに見る名無し:2014/01/03(金) 15:18:39.17 ID:baUUMfR0
「────よしっ、そこまでっ!」

場内に響くリンの号令。
これまで何十kgもの重装備を抱えながら誰もいないトラックをひたすら走り続けていたライトは、
それを耳にしたところでようやく立ち止まった。

「どうだ伍長、流石に病み上がりでは疲れたか?」
ストップウォッチを片手に歩み寄るリンに、口では「えぇ、まぁ」と返すライトであったが、
その顔にはほとんど疲れの色は浮かんでいなかった。
「フン、顔にはそう書いていないがな」

「いやぁ……そんなことは……」──口ではそう言うが、それが本心でないことはわかっていた。
まるで、自分自身に言い聞かせるような物言いをしたことに、ライト自身戸惑っていた。
リンのテストは軍人としての資格を問うもの。過酷な実戦でないとはいえ、内容に手加減などあるはずもない。
恐らく、本来なら今頃は息も絶え絶えでないとおかしいはずなのだが、実際はどうか?
正直なところ、彼は内心、彼女のテストを『ぬるい』とすら感じていた。だからこそ首を傾げずにはいられなかった。

「まぁいい。とにかくこれで一次テストは終わりだ。これより結果を発表する」
「……」

目の前に来たリンに背筋を伸ばし、その声に耳を傾けるライト。
リンは採取できた彼のデータが書かれた紙を手に、文字通り結果だけを短く告げた。

「合格だ。とりあえず貴様は軍人として申し分ないことが証明された」
「……は、ありがとうございます」
「一部の記憶を失っているとはいえ、貴様が軍で身につけた技能や体力は損なわれていなかったようだ。
 訓練、あるいは実戦経験の賜物というべきか……骨の髄まで染み付いているというやつだな、軍人の鑑だ」

それを聞いて、ライトは喜ぶよりも安堵した。
少なくともこれで軍から追い出されずに済む。
戦場で死んだり退役しない限りは、とりあえず自分の居場所が確保された事にほっとした。
軍を去っても果たして戻る場所があるのかどうか、それすら今の自分には定かではないのだから。

「ちなみにこれまで貴様に課してきたテストは、連邦の士官候補生が受ける卒業試験と内容は同じもので、
 特別に厳しいとか優しいものではないのでその点において貴様が憂慮する必要はないぞ。
 むしろ胸を張ってもいいだろう。特に射撃と体力には自信を持っていたようだな? こちらが驚く程のデータが出たぞ?」
「でも……何かピンと来ませんね。以前の自分がそれに自信を持っていたのかどうか、わからないので」
「それならこれから自信にすればいい。数字で出たものは、あてにならない印象論とは違うのだからな。
 それに……貴様は元々、我が隊の総責任者が補充要因として直々に選んだ人材だぞ?
 戦場で一定の戦果を挙げている優秀な兵士だったからこそそうなったのだ。あまり自分を疑うな」
「……そうですね。今後はそう努めます」
「フッ、務める、か。一応、前向きな返事のようだが、何とも歯切れの悪いことだ。
 ま、それはそうと、そろそろ移動しよう。伍長、ついてこい」

そう言ってくるりと反転し、再び背を見せるリン。
見慣れつつあるそんな彼女の後姿を拝みながら、再び後をついて歩を進めるライト。

──歯切れが悪い……んなこと言われてもなぁ。

グラウンドから基地へ、基地から再び外へ──
景色は移り変われど、彼はその道中にあって、常に心ではそのことばかりを反芻していた。

ライトはどこか陰鬱なものを感じていた。
自分に軍人として必要な技術と体力が備わっている、それが確認できただけでも随分な収穫だった。
とはいえ、それで全ての不安が一掃されたといえば、そうではない。
驚くデータが出たと言うのは嘘じゃないだろうし、確かに士官学校の試験に使われるメニューがぬるいと実感もした。
それは自信になる。けれども、自分には積み重ねてきたものが……支えとなる『芯』のようなものがない……
それは致命的な『弱さ』なのではないだろうか……そう思えてならなかった。
429創る名無しに見る名無し:2014/01/03(金) 15:25:24.34 ID:baUUMfR0
──これから経験を積めば解決できる問題……のような気もするけど……
──それまでに、俺が無事であるという保障はない……。
──…………はぁ、これって慎重っていうのか弱気っていうのか…………いや、後者だよな、多分。

ぐしゃぐしゃ、と悩ましげに頭を掻くライトを尻目に、リンはつくづく思った。

──まったく……記憶喪失というのは、本当に厄介なものだな。大丈夫か、こいつ?

無論、そう訊いてみても、答える神などいやしない。
仮に本人に直接確認したところで模範解答の「大丈夫です」が返ってくるに決まっている。それでは無意味だ。
──ならば、今は考えるのはよそう──結局、彼女がそう結論付けたのは、必然というべきであったろう。
考えるだけ時間の無駄というのも勿論だが、何より、目的地が既に目と鼻の先に迫っていたのだから。

「伍長、そろそろ頭を切り替えろよ? 次なる試練が貴様をお待ちかねだぞ?」

コツッ。一際高く軍用ブーツを鳴らして立ち止まるリン。
ライトもこれまでの思考を打ち消してつられるように立ち止まったが、
本当の意味でこれまで考えていたことが一気に吹っ飛んだのは、正に次の瞬間のことだった。

ライトは、思わず目を見張った。
何やら意地悪そうな笑みを口元に貼り付けた彼女を見てではない。
その彼女の先に広がる光景──
あくまでセットなのだろうが、広大な敷地の上に大小様々な建造物が一つの都市を思わせるように立ち並び、
その中を何かのSF作品に出てくるような巨大な人型の鋼の機体が疾駆し、空を飛び、刃を交えて火花を散らし、
光る銃口から轟音を響かせている──それに釘付けになったのだ。

「実際は初めてではないはずだが、今の貴様にとっては初見も同然。驚くのも無理はないか」
「えっ、いやっ……驚くって……えっ?」

声を裏返して何度も瞬きし、必死に身振り手振りで説明を求めるにライトに対し、リンはふふふ、と笑った。

「あそこは『LGC』専用演習場。
 『LGC』とは『ロスト・ギア・コピー』──『ロスト・コピー』の通称でも知られる人型二足歩行兵器のことだ。
 体高はおよそ7.2m〜8m。重量は4.1t〜4.4t。動力源は44式電力パック。筒状の物体で、片手に収まる程小さいが、
 エネルギー量は一つで一つの都市の24時間分の電力を賄える程だ。要するに超強力な電池といったところか。
 そして機体を構成する鋼は『ロスト・メタル』と呼ばれる東の──」

あまりの急展開に頭がショートしかけるのを感じたライトは、思わず手で制止に入った。

「ちょちょ、ちょっと待ってください!」
「なんだ? 貴様にもわかり易いように説明しているつもりだが?」

怪訝そうな表情を隠さないリン。いやむしろ、眉間にシワを寄せているせいか不快そうにも見える。
それでも、こればかりは色々と口出しせずにはいられない。むしろ、そうすべきであろう。
彼女なりにわかり易く一から説明しているつもりでも、そう淡々と子気味良く紡がれてはとてもついていけないのだ。

「すいません……まず、初歩的な質問からいいですか?」
何度も深呼吸し、調子を整えたその声で慎重に伺うライト。
そして、腕組して「なんだ?」といわんばかりに溜息一つのリンに、眉を顰めながら恐々と訊ねた。

「あの……驚くかもしれませんけど…………ここって、えーと……一応、星の上にあるんですよ、ね?」
「……何を想像しているかは知らんが、我らは惑星の上に立っている。ん……? それも忘れていたのか?
 そうなると、この惑星が『第二地球』……『アースネオ』と呼ばれていることも知らないのか」

ライトは──どうやら記憶にある小説のような人工惑星とかコロニーの中ではないようだ──
と、ほっと一息(もっとも、何でほっとするのかは自分でも良くわかっていないようだが)。

──ん? 第二? アースネオ?

ところが、新たに湧き出たひょんな疑問に、再び眉を顰めて言った。
430創る名無しに見る名無し:2014/01/03(金) 15:35:58.01 ID:baUUMfR0
「第二ということは……第一があるってことですよね? ちなみにそこは……えっと、どこに?」

リンはしばし顎に手をやり、視線を宙にさ迷わせていたが──……
やがて何かに一人納得するように小さく頷きを見せると、ライトの目を見据えて答えた。

「そうだな、そこに存在するという意味でなら“ある”で間違いない。
 ……ただ、我々人類が、いまや事実上“ない”ものとして扱っているのも確かだが」
「え……? それはどういう……?」
「遥か昔……そう……今から600年ほど前に世界規模の『核戦争』があってな。それも二度もだ。
 それによって人類発祥の地である『第一地球』は汚染され、人が全く住めぬ死の星と化した。
 そこで我らの祖先達はおよそ30光年離れたここ、『アースネオ』に移住してきたのさ」
「ろ、600年前っ? か、核戦争……? 移住…………? な、なんか、スケールの大きい話ですね……」

──おとぎ話みたいで、これまた現実離れしてるっつーか……。

ここでリンが嘘をつく理由も必要もない。ということは、紛れも無い事実として歴史に記憶された出来事なのだろう。
それでも、途方も無さ過ぎてリアリティを感じない、何か体が宙に浮く、ふわふわした感覚に、ライトは目眩を覚えた。

「おいおい……顔が青くなっているぞ? 困るな、貴様にはまだ知ってもらわないとならないことが──」
「────あれェ? 中尉ィ?」

──……あ?

ぐるぐる回りかける意識の中、アダルトなハスキーボイスに混じってふと聞こえてくる明瞭なソプラノ。
咄嗟に目をこすって我を取り戻したライトが、そのしっかりした意識と視覚で捉えたのは、
いつの間にやらリンの背後からひょっこり現れていた、小柄な赤毛ツインテール少女であった。

「こんなとこで何してんの? ……まさか、遊んでたァ?」
「そうじゃない『リリー』、これも任務の内さ」
「へェ〜、あたしには男と仲良くお喋りしてたようにしか見えないんだけどォ〜?」
「ま……誤解されても仕方はないが……」

珍しく困った表情で頭を掻くリンを、疑いの半目で見やりながら、鳥のように口を尖らせる少女。

──なんだぁ?

それを見て、ライトは本気で奇妙な珍鳥に出逢ったような気持ちにとりつかれていた。
見た目的に年齢は自分と同じくらいか、あるいはそれ以下だろうかというのはわかるが、問題はそこではない。
上着を胸元までたくし上げ、そこで余った裾を結って止めたへそ出しの上半身に、
ダメージ加工が施されたような、至る所に擦り切れのあるショートパンツとロングブーツの下半身というスタイル。
そして、落ち着きのあるリンとは如何にも対照的なハイテンションと軽い口調。
偏見かもしれないが、これは明らかに軍隊が駐屯する基地には場違いなキャラではないのか。

──基地に出入りしてる民間の業者かなんかか……?

それでも、即座に一番無理のない答えを出し、それに勝手に納得しようとするライトであったが──
少女の全身を今一度観察し始めたところで、無意識に「んん?」とその喉を低く呻らせた。

──えっ? この服って……どこかで? おぉっ?

単なる露出ファッション。気にしなければ気にしなかった。
しかし、よく見てみるとその服、色々カスタムされてはいるもののデザイン自体は自らが纏っている軍服と同じなのだ。
カラーリングも同じ赤と黒を基調とし、おまけに襟には階級バッジまでもがご丁寧にくっつけられている。

「ん? あぁ、そういえば伍長は知らなかったな。一応、今の内に紹介しておこうか」
「えっ……?」
「彼女は『リリー・アントワネット』軍曹。我が隊のLGCパイロットだ」
「はあっ? こ、こんな子供があっ!?」

──────────────────────────────。
431創る名無しに見る名無し:2014/01/03(金) 15:49:06.36 ID:baUUMfR0
「────というわけでな。彼は少々、この世の事情というものには疎いんだ。色々目を瞑ってやってくれ」

かくかくしかじか。
そんな感じで手短にライトの身の上を説明し、リリーに理解を求めつつ宥めるリンを見ながら、
ライトは腫れ上がった己の右頬を氷で冷やしていた。

「ふーん……記憶喪失ねぇ……。でも、子供に子供だなんて言われたら誰だって怒るでしょぉ?」
「脳に障害を負ったんだ。デリカシーの無さもそれに起因しているとしたら責められんだろう?
 第一、この程度の挑発、軽く流せんのであればそれこそ子供じゃあないのか?」
「う……」

僅か五分前まで野獣のように暴れていた者とは思えないほどの変わりっぷり。
仮にリンがサーカスの猛獣使いならば、ライトは猛獣を挑発して追い掛け回されたピエロといったところになるのだろう。

──中尉、流石に精強な軍隊ですね……。怪物を飼いならしてるとは、勝利も近いと確信します!

などと皮肉を言ってやりたい気持ちはありながらも、事の原因を作ったという責任の自覚と、
これ以上余計なことを言えば今度は自分の命が危ないという危機感が、流石にその口を固く噤ませた。

「古来より『口は災いのもと』と言う。いい機会だ、特に中尉は憶えておけ」

──まぁ、忘れたくても忘れられないだろうな──……そんなことを無駄に確信しながら、ライトは深く溜息をついた。

「で? 中尉はこれから何をしようとしてたのよ? なにか話の途中だったんでしょ?」
と、ふと言うリリーに、珍しくリンの顔がハッとなり、舌を鳴らす。
恐らく几帳面な性格で通っている彼女のことだ、ガラにもなく不覚をとったという思いがあるのだろう。
まぁ、このようなゴタゴタがあれば無理も無いことであるが……。

「そうだ、これから伍長のパイロットとしての腕を見せてもらおうと思ってな。だからここに来たんだった」
「──ブッ!」

突然の告白に、驚きのあまり口から涎を盛大に吹き出すライト。

「──きったなぁ〜〜!! 何すんのよォ、このワカメ頭ァ!!」

目の前にいたリリーが再び激怒しかけるも、今の彼にはそんなもの眼中にはなかった。

「ぱ、パイロットって……俺がですかっ!?」
「何を驚く? ……って、あぁ、そうか。そう言えば説明するの忘れていたな。
 我が隊は『特殊機動部隊』でな。つまり、全員が『LGCのパイロット』というわけだ」
「じゃ、じゃあ俺も──」
「だからそう言っている。だが心配することはないぞ。貴様も前線でパイロットとして戦果を挙げ続けてきたからこそ、
 我が隊への入隊が推薦されたんだ。記憶になくとも、先の試験を見れば体が操縦法を憶えている可能性は高い。
 いざ操縦席に座れば記憶がふっと蘇るかもしれんぞ?」
「し、しかしですね……」
「昔から言うだろう? 『男は度胸! 何でも試してみるものさ』ってな」
「……初耳ですよ」
「じゃあ貴様が憶えていないだけだ。さ、とにもかくにもやってみろ、どっちみち拒否はできんのだからな」

──あんなもんにいきなり乗れってのかよ!?
と、ライトはその顔を見る見る内に硬直させるが──

「ねぇ中尉ィ? それさァ、いっそのこと対戦形式にしてみない?」
リリーのそんな一言から始まった提案が、今度はその顔をやがて驚きに満ちたものへと変えた。
「対戦? 誰とさせようと言うんだ?」
「決まってるじゃん? ──あ・た・し・よ♪」

「はっ? ──はぁぁぁあっ!?」

────つづく
432創る名無しに見る名無し:2014/01/03(金) 15:53:59.43 ID:baUUMfR0
とりあず第一話はここまで。こんな感じで問題ないなら、二話目の制作にとりかかりますです。
433創る名無しに見る名無し:2014/01/03(金) 17:11:15.28 ID:Pp2q2MZE
おつー
434創る名無しに見る名無し:2014/01/03(金) 18:36:01.78 ID:WMmbcGE4

記憶喪失のまま部隊配属には無理やり感あったけどそのうち説明されるんかな
435創る名無しに見る名無し:2014/01/03(金) 22:40:23.70 ID:baUUMfR0
>>434
一応次でそこんところ軽く触れるつもりですが、まぁ、多少の無理矢理感は目を瞑ってくだしあ
436創る名無しに見る名無し:2014/01/04(土) 09:29:57.09 ID:B/QE7NGa
>>435
おk楽しみにしてる
437 ◆PXAQLa3/ys :2014/01/08(水) 02:20:36.77 ID:ZNGba7/L
魔獣殲機ファルコニアの者です。今後は一応トリップつけます。
438 ◆PXAQLa3/ys :2014/01/08(水) 02:24:53.90 ID:ZNGba7/L
薄暗い締め切られた部屋、その一角を照らす淡いブルーライト。

「──第一次テストは難なく突破しております。その数値を見る限りでは優秀な兵士と言って良く、
 記憶障害もその点については問題ないと判断して良いでしょう」
「問題は……LGCパイロットとしての腕、か」
「…………」

その光の中に、三人の男女がいた。
まるで灯りに群がる虫が如く、それぞれが青き光を放つモニターにひかれ、そこに映し出された映像をじっと見つめている。

「それは見ての通りです。少なくともこの結果だけを見れば、残念ながら資料に書かれていたような戦歴を裏付ける
 操縦技術は数多の記憶と共に失われてしまったのではないかと推察されますが」

そう言ったのは三人の中でモニターから一番遠い位置に立っていたリン・ユウキだった。

「まるで大人と子供だな。勝負になりゃしねぇ」

次に、リンの前に立つ長身のひょろっとした体躯の白衣の男が、咥えたタバコの根元を噛み締めながら呟く。
その時モニターには、茶色いカラーリングが特徴の連邦の主力量産機・『ハウドーグ』が、
もう一方のハウドーグにペイント弾を面白いようにぶつけ、更に真っ向から特攻して殴りつける様を映し出していた。

「私も一次テストの結果を見てもしかしたらと期待したんですが……」
「やっぱ無理があったんじゃないッスかねぇ? これじゃどこの前線に出しても死ぬだけでしょう?
 もう少し記憶が戻るまで病院で療養させて様子見たらどうです?」

すると、これまでモニター席の一番前で押し黙り、足を組んで成り行きを見守っていた角刈りの男が、
「ふぅー……」と野太い声と共に立ち上がり、壁の電灯スイッチを入れた。
途端にパパッと明るくなる室内。
リンや白衣の男の表情に何ら変化はないが、電灯の下、露になったその男の姿は正直、異様の一言に尽きた。
筋骨隆々な体には似合わない女物の軍服を纏い、顔中に厚化粧を施し、指にはマニキュアまでしているのだ。
ただ、そんなふざけているようにしか見えない容姿も、当人にしてみれば至って大真面目。
軍務に対しても誠実を貫いており、その上有能との呼び声高い35歳の中佐、それも一基地の司令官の身。
それを知っているからこそ二人の目も真剣そのものである。

「最近、人事局がうるさくてねぇ。今回の補充も無理を言ってやっと送ってもらったようなものなのよ。
 なんでかは今更言わずともわかると思うけどサ」

確かに、それは白衣の男も、リンも知っていることではあった。
特殊部隊──その名の通り特殊で、かつ過酷な任務ばかりを要求される部隊が特に必要としている者。
それは優秀な人材。頭数を揃えても、未熟な者達ばかりでは任務に耐えることができない。それでは意味が無い。
故に二人が所属する部隊は代々、各戦線から選りすぐられたエース格パイロットが顔を揃えてきたのだが……
最近ではそれに対する反発が強いのも事実である。
それはそうだ、世界規模の戦争が始まって18年目を数える今日にあって、人材不足はどこも共通の悩みの種だ。
優秀な人材というのはどこも喉から手が出るほど欲している。
折角育てた、あるいは手に入れた人材を、どうして渡さなきゃならんのだ──そんな声があっても不思議は無い。

「貴重な補充だから記憶が戻るまでなんて悠長なことは言ってられないってわけで?
 でも、むざむざ死なせちまったらそれこそ人事局が頭から角を生やすんじゃ?」
「そうね、もしそうなったらここぞとばかりに批難されるでしょうね。
 でも、そもそも例の伍長の記憶が戻らないまま彼の正式入隊をねじ込ませたのは上の連中なのよ?」
「そらまた強引な話で……。なんでです?」
「あんた達の一部に独断専行が目立つだとか、そういう批判があることは知ってるわよね?
 それでも結果は出してたし、私も『あれは巧妙な連携の内』って押し通して黙らせて来たんだけど、
 不覚にもそれを逆手に取られたってわけよ」
「……つまり、そんな卓越したチームプレーができるなら彼を死なさずに使いこなすのもわけはないだろ、と」
「あんたの部隊が特別扱いされてるとか前々から反感持ってる連中は多かったからね。
 最近じゃ嫌がらせもどんどん露骨になってきてる」 

──人間の敵は人間とは、さて誰の言葉だったか……。
リンは司令の言葉を聞いて、ふとそんなことが頭を過ぎっていた。
439 ◆PXAQLa3/ys :2014/01/08(水) 02:30:14.17 ID:ZNGba7/L
「例えば例の事故の翌日に補充要員の追加を受けて寄越した“あの娘”。
 士官学校を出たばかりの新米。それも、パイロット適性はギリギリのDランクだった娘よ? まったく」
「ま……あれはあれで使い道があったりするんですよ、なぁ中尉?」
「え、えぇ、まぁ……」
「そう? それなら良いんだけど……とにかく伍長に関してはそう決まったことだから、後はそっちの仕事よ。
 難しいのはわかるけれど、結果を出さないと上だってもう満足に動いてはくれない。それは憶えておいて」


────。


司令室から出たリン達二人は、部隊詰め所に通じる通路を複雑な面持ちで歩いていた。

「ただでさえ厄介な奴らが多いってのに……まーた悩みの種が増えそうだな、こりゃ」

そう言って抱えるように頭を掻く男の目は、心なしか疲れているようにも見えた。
自由奔放、ストレスとは無縁の飄々とした振る舞いが売りの彼にしては珍しい──

「あら、隊長にも悩みがあったなんて初耳ですわ? 悩むのはてっきり私の役目かと思っていましたけど」

ただし、リンの眼差しにはそんな思いよりもむしろ、
これまで溜めに溜めた彼に対する個人的不満の方がメインとなって込められ、冷たく乾き切っていた。
普段が誠実な人柄だけに、こういう時の凄みには果てしない威力がある。

「お……おいおい、これでも隊長だっつーの。適当に見えてちゃんと見るところは見てるし、悩むところは悩んでんだよ」

男は軽い口調でそれすらもいなし、平静をアピールするが……体というものは正直だ。
直接見えないだけで、軍服と白衣で二重のカーテンで覆われた背中は冷や汗でダラダラだったのだから。
まぁ、動揺を顔には出さないという点では、隊長としての資格を満たしていると言えるのかもしれないが。

「本当ですかぁ〜?」
「本当なんだよなこれが〜」
「……って、どさくさに紛れて肩に手を回さないで下さい。投げ飛ばしますよ」
「こりゃ失礼、わっはっは」
「ふざけてる場合じゃないですよ。このこと、隊員にどう伝えるかちゃんと考えてます?」

と、リンが呆れ顔で手を払いのけると、男は馬鹿みたいに開いていた大口をすっと閉じて、再び頭を掻いた。

「ん〜〜……奴が記憶喪失だってことは話さなければならねぇだろうが、
 仮に話さねぇにしても、どっち道、奴にはしばらくお守りが必要になるだろ?」
「……やはり、私か隊長かのどっちかになりますか」
「それが一番無難なんだが……、いっそのこと、“あの二人”のどっちかに任せてーかなとも思ってんのよ」
「…………はぁっ?」
「うちの隊員共はどうも仲間意識ってのが希薄だろぅ? お守りをさせときゃ少しは変わるかなってな。
 リリーは……この際まぁいいとして、あの二人は特に厄介な性格してやがるからよ」
「まぁ……確かに上手い具合にこの機会を利用できれば隊にとっては却ってプラスになりますね」
「そういうことだ。司令官の話じゃねーが、このままだと俺達に対する風当たりはどんどん強くなる。
 今までと同じようにやってたら、いずれ行き詰っちまう。それを無視することはできねーだろう?」

通路の分かれ道。そこへ差し掛かったところで二人は足を止め、

「そういうわけだ。俺は戻ってるから、お前さんは伍長をつれて戻って来い。顔合わせだ」
「はっ、すぐに」

敬礼。そして、それぞれ別の分かれ道へと進んでいった──。


魔獣殲機ファルコニア────第2話「独立機動戦隊XX(ダブルエックス)」
440 ◆PXAQLa3/ys :2014/01/08(水) 02:41:57.38 ID:ZNGba7/L
ライトは、先を進むリンの後をついて、配属先となる部隊詰め所までの道のりを急いでいた。
彼にとってそれは全く予想だにしていない事であった。

つい一時間ほど前に行われたLGC適性テストという名の実戦形式の模擬演習。
その結果は、正に散々たるものであった。
ペイント弾による被弾48箇所、内コクピット直撃が31、斬機刀と呼ばれる近接武器による直撃が13、
蹴りや拳による殴打回数はもはや測定もされないほどで、コンピュータが示した死亡回数は軽く二桁に達した。
降機後、無表情のリンからかけられた言葉が「命がいくつあっても足りんな」の一言のみ。

初めから無理とはわかっていたが、見事なまでにボコボコにされた現実に流石にへこんでいた。
部隊にはあくまで配属予定だと聞いていたので、これでそれは無くなったものと思っていた。
ところが、誰もいない待合室で一人肩を落としているところリンから告げられたのが、
「貴様は今日から我が隊の一員だ」──である。驚かない方が無理というものだ。

──特殊部隊というくらいだ。こんな俺を必要とする特殊任務ってのは、一体なんなんだ?

だから変に勘繰ったりもする。
敵に体当たりしてもろとも自爆する捨て駒要員か、それとも何かの罪をなすりつける時の為の尻尾(保険)か……
浮かんでは消え、めぐりめぐって結局答えは「わからない」。
いや、そこに行き着くことは初めからわかってはいたのだ。でも、何かを考えていないと落ち着かない。
緊張のせいなのか不安のせいなのか……なんにしても、そんな心境にライトはあった。

──……ん?

そうこうしている内に見えてきた大きな黒い影。それは、ライトの顔に怪訝な色を浮かべさせた。

──あれは……戦艦?

詰め所というからてっきり基地内の広間を想像していたのだが、
気がつけば大小様々な軍艦の停泊する係留所に来ていたのである。

「見えるか伍長?」
リンがその内の一つ、白い直方体を横倒しにしたような形の船をふと指差したのはそんな時だった。

「えぇ……あの大きい船、ですよね?」
「別に大きくはない。全長96m、全高42mほどの小型艦だよ」
「……あれが、なにか?」
「連邦軍ドワーフ級強襲揚陸艦『マルヒ』──我が部隊の専用艦だ。
 既に型は古くなっているが、LGCの収容・発艦機能を持ち、工廠ドック施設も備えている優れものだ。
 まぁ、その分、武装は心許ない仕様になっているがな」
「なるほど、中尉達の自家用車ってとこですか」
「今後は貴様の足にもなり雨風を凌ぐ家代わりだ。大切に扱えよ? 悲惨な思いをしたくなかったらな」

言うだけ言ってさっさと艦の中に入っていくリン。
ライトはそれを目で追いつつ、目と鼻の先にまで迫った白い船を今一度見上げた。

──強襲揚陸艦『マルヒ』……俺の家、か……。


────。


艦内は、ライトが思っていたよりも小奇麗で、そして静かだった。
壁や通路の至る所にある雑な補修の跡が目に付くが、古い艦、それも戦闘艦の宿命を考えれば、
そんなものは重箱の隅をつつくようなものだ。
むしろ理解できないのは兵士達の喧騒すらろくに聞こえてこないこの静けさの方であろう。
ライトはその疑問を口にしようと喉から声を出しかけたが、直ぐに前を行くリンがコツッ、と
靴音を立てて止まったのを見て、慌ててその声をごくりと飲み込んだ。

「伍長、貴様の案内役としてまず私から言っておこう。──ようこそ、『独立機動戦隊XX(ダブルエックス)』へ」
441 ◆PXAQLa3/ys :2014/01/08(水) 02:48:07.18 ID:ZNGba7/L
カシャン。
ボタン一押しで左右の壁に素早く収納される薄い扉。
瞬間、敬礼して「つれて参りました」の一言を発し、一人ツカツカと部屋に入り込んでいくリン。
そして聞こえてくる「伍長、中へ」という初めて耳にする男の声。

「あっ……は、はい!」

裏返った声で敬礼し、前に何歩か進んでまた敬礼。
新米兵士にあるようなそんなぎこちない動作を笑う声など一つもない、
まるで下手な漫才に対する観客の反応のような、無言の圧力に似た空気が漂っていることを認識して、
ライトは初めて自分が無意識の内に緊張していることを悟った。

「あー敬礼はもういいから、さっさと前へ来て自己紹介」

淡々と紡ぎながら、おいでおいでと手招きするタバコを銜えた白衣の男。
その左右にずらっと縦一列を作って並び、それぞれ隣の列の隊員と顔を見合わせる形で佇む七人の男女。
丁度その間に細長い、人間二人が並んで歩けるくらいのスペースが作られているのを見て、
ライトは内心恐々としながらもその“通路”を通り、一番奥の白衣の男の前にまで足を運んだ。

「きょ、今日よりお世話になります、ライト・バーツ伍長です! 年齢は……えっと、そう……18です!
 そ……その、自分はわけあって……」
そして、己の身の上話をしかけたところで、
「──あぁ、それはもういい。俺の口から皆には伝えてある」
と、白衣の男が手をひらひら。

先程からぎこちないことばかりしている自分に、ライトは急速に恥ずかしさを感じたが、その実内心ではほっとしていた。
今のテンパった状態で何とも面倒臭い記憶喪失のくだりを簡潔に説明できるかどうか不安だったからである。

「ふふ……さっきから空回りだな。ま、若い内は誰でもそんなものだけど」

だが、ほっとするのも束の間。不意の声に、思わずギクリとするライト。
声の方、自分の右に首を向けると、その列の一番前に立っていた緑色のロングヘアの、
長く伸びた前髪で右目を隠す、いわゆる片目隠しのヘアスタイルをした女性がうっすらと笑みを浮かべていた。

「私は『キーラ・グリーン』中尉。年齢は25。この『マルヒ』の副長を務めてる。今後よろしく」

彼女が唯一人に見せる左目を敬礼の代わりというように瞑ると、
今度はその隣にいたキーラよりも若干増しの身長と胸のボリュームを持つリンが、キーラの逆隣を手で示した。

「私の紹介はいらんだろうから飛ばしていいぞ。って、次はリリーか」
「フン」

これ見よがしな得意げな澄まし顔を作り、見下すような笑みを鼻からこぼすリリーに、ライトの顔が引きつる。
彼女はどこを見ているのか視線を合わそうともしない。見る価値がないとでも言いたげだ。

──野郎……いや、アマか……。くそっ、なめやがって……。

「あぁ、ちなみにリリーは20で、酒も飲める年齢だぞ? もう子ども扱いしないようにな。
 ついでに言わせて貰えば私もキーラと同じ25歳。彼女とは士官学校の同期でな、腐れ縁というやつだ」
「は、はぁ……」
「……どうでもいい情報で耳汚しだったか。まぁいい、次だ」

と、リンの腕がリリーを通り越して指し示したのは、元々丸いのであろう目つきを更に丸くさせて
如何にもガチガチといった感じの顔をした黒髪おかっぱ頭の少女であった。

「か、『カノン・サクラバ』ですっ! ふっ、ふつつか者ですがお願いしますっ! ちなみに少尉ですっ! 18歳ですっ!」
「……よ、宜しくお願いします、少尉」

──いやいや、なんであんたが緊張してんだよ!
そう突っ込みたい衝動に駆られたライトは、さっきとは別の意味で顔を引きつらせた。
442 ◆PXAQLa3/ys :2014/01/08(水) 02:56:11.54 ID:ZNGba7/L
「実はカノン少尉もつい先日入隊したばかりの新顔だ。同じ新顔同士、仲良くしろよ?」
「……はい! 了解しました!」

18歳の少尉、そして初々しい態度。
もしかしたら士官学校卒業したての新米だろうか──
いくら世俗の記憶が薄いライトであっても、それくらいの見当はつくものだ。

まぁなんであれ、キーラにしろカノンにしろ、第一印象は悪いものではない。
そういう意味で心配になるのは次の列、ライトの左側に陣取る男性人の方であるだろう。

「伍長、貴様の左側の一番前にいる男が『カゲロウ・ウスバ』少尉。歳は23。私と隊長の次に古株のパイロットだ」
「よ、宜しくお願いしま……す……」

言葉の途中、ライトは何とも言い様のない気まずさに若干声を詰まらせた。
ウスバと呼ばれた黒髪の中肉中背の男性少尉──長く伸ばした後髪を首筋の辺りで結わい、
散切りの前髪を目にかかるくらいの位置まで垂らしたヘアスタイルの──彼は、
一切口を結んだまま開こうとせず、その上、一度もチラ見すらしようとしないのだ。
アウト・オブ・眼中を体現するようなその不遜な態度はリリー以上である。

「……彼は少々変わり者でな。見ての通り、あまり心を開こうとしない。気にしないことだ」
「は……はぁ……」

体格は同じくらいでも、顔だけ見ればライトなどに比べればよっぽど端整で、中性的だ。
だが、それもいまや変人の印象を強化する要素にしかなっていないように感じられるのは、
愛嬌というものが如何に相手に与える印象に大きなウェイトを占めているかという証左だろう。

「フン。俺に言わせりゃ、記憶喪失のまま入隊できたってのもよっぽど変わってんぜ?」

そういう意味では彼も、その最たる例の一つと言えるのかもしれない。

「リリーに虫けらのように潰されたらしいじゃねぇか、えぇ?
 俺ァてっきりその対決の勝ち負けで入隊か否かが決まるんかと思ってんだけどよぉ……
 惨めに負けて胸張って入隊じゃあ、一体どんなマジックを使ったか気になるぜ?」
「──曹長、口を慎め」
「ケッ」

特に反省する様子も無く、乾いた笑みを口に貼り付けたまま虚空に視線をさ迷わせる男。
リンは呆れたといわんばかりのわざとらしい仕草で溜息を吐いた。

「伍長、彼は『レクス・バイゼル』曹長。腕は立つがこの通り口も悪けりゃガラも悪い。おまけに喧嘩っ早い。
 年齢も26ともういい大人なのだがなぁ…………伍長、貴様には期待しているぞ」
「は?」
「……なんでもない、こっちの話だ」

逃げるように視線を外すリンに、ライトは何か嫌な予感を感じたが、
直ぐにリリーと同じ小馬鹿にしたような笑みを作り続けるレクスが目に付き、それに対し小さく息を吐いた。
たくましい、堂々とした体躯に、剣山のように立てた短い金髪。
顔はそれらの材料から予想される印象を裏切らない引き締まった頬に、しっかりと己をアピールする長く力強い形の眉。
そして切れ長の目──……ウスバが中性的なら彼は見事なまでに男前。
しかし残念かな、肝心の性格がそれに釣り合っていない。やたらと体格がいいせいで、タチの悪いチンピラにすら見える。

「ねぇねぇ、ライト伍長だっけ?」
「え……? あ、はい!」

ただ、列の一番後ろにいた男。
残念な男性人が並ぶその中にあって、彼だけは唯一、見た目の期待を裏切らない性格の持ち主だったと言えるだろう。
443 ◆PXAQLa3/ys :2014/01/08(水) 03:05:26.03 ID:ZNGba7/L
「僕は『ワット・ブヒノ』技術中尉。この艦のメカニックチーフをやってる。
 いやぁ、君がパイロット要員だと聞いてちょっとガッカリしたよ。なんか、君からは僕と同じニオイがするんだよね」
「は、はぁっ?」
「暇があったらドックに顔出しなよ。僕の部下は美人揃いだからねぇ〜、一目見ただけで思わず涎が──
 おっといけないいけない、想像しただけで出ちゃうよ、ぶひひひ」

脂ぎった眼鏡の奥でいやらしく笑う目。
特に暑くもないのに汗を噴き出している額。
呼吸のたびに膨れた腹が更に風船のように丸みを帯びるメタボな体型。
隣のレクスが「つまらねぇことほざいてんじゃねぇよ、ブタ野郎が」などとさらりと暴言を吐いたが、
実際ライトの目には彼の姿がそれと重なって見えていた。

もっとも、それだけで彼という存在を否定するつもりはライトには無かった。
当たり前だが、見た目と中身は違う。
言動には少々ついていけない面があるのは確かだが、それが中身の全てでもないだろう。
そういう意味では第一印象が最悪のウスバやレクスもそうと言えるのだが……

──偏見かもしれないけど……この人の方がまだ歩み寄れる余地があるような気がする……。

何となくそう思えてしまうことが、たまらなく憂鬱であった。
少しは話せそうな同性といえば同僚のパイロット達ではなく管轄の違うメカニックチーフでは、
果たしてどうなのよと自問したくもなるしこれからが不安にもなる。

──いきなり和気藹々と接してくれってわけじゃないけどさぁ……。

チラッと見る右側は、互いにアイコンタクトを取ったり顔で感情表現し合ったりして仲睦まじい。
それに引き換え左側は、それぞれが自分の世界に入り込んで、近寄り難い雰囲気を醸し出している。
ライトがこの時ばかりは男に生まれたことを後悔したのは言うまでもない。

「最後になったが、俺がこの艦の館長であり、お前さんの部隊長となる『ロクスケ・クニマツ』大尉だ。
 ま……死なねー程度にガンバッてくれや。隊員としての初実戦でいきなり死なれちゃ、俺の責任問題になりかねんからな」
「……はい」

煙草を銜え、煙をもくもくと吹かしながら淡々と言う白衣の男、クニマツを見るライトの目は死んだ魚のようになっていた。

「あっと……とりあえずこんなもんか。後はここに来てない奴らに挨拶に回っとけ。
 あぁ、そのついでに艦の案内も……カノン、それはお前がやってやれ。
 それとウスバにレクス、後で話があるからブリッジに来い、いいなぁ?」

それに気付いていないのか、気付いていてスルーしているのか、クニマツの口調は終始マイペース。
そのまま必要な連絡事項を全て伝えると最後に「じゃ、解散」とだけ残して、彼はさっさと部屋を後にした。
隊員達もそれにあわせるようにゾロゾロと個別に部屋を去っていく。
ほとんどの隊員はライトなどもはや目もくれない。去り際に肩を叩いてくれたのはリンだったが、優しさといえばそれくらいだ。
軍とは、前線の部隊とはどこもこんな感じなのか? それともここだけに限ってこんな感じなのか?
ライトは、考えずにはいられなかった。

──そりゃテストの結果が伝わってんなら俺がパイロットとして歓迎されてないのはわかるけどよ……。
──なんか冷たくない? いやいや、ヘコむよこれ!? なんかすんげー不安なんですけど……。

しかし、そうやって一人がっくり肩を落とした時だった。

「……あのぉ」
幼さの残る独特なアニメ声が、ふと耳をくすぐったのだ。
「へ……?」
急いでそこを振り返ると、少々困り顔のカノンが指と指を突っつき合わせていた。
そして「えーと、これから艦を案内しますので、ついてきて貰えますか?」とにっこり。

「も……勿論です少尉!!」──若干の涙声で叫んだライトには、彼女の顔が救いの天使そのものに見えた。

────つづく
444創る名無しに見る名無し:2014/01/08(水) 22:11:32.84 ID:+bf+PCcA
ぶひひひ
445 ◆PXAQLa3/ys :2014/01/12(日) 22:32:37.72 ID:3aI8MaIL
これから三話目を投下しますです。
446 ◆PXAQLa3/ys :2014/01/12(日) 22:33:26.19 ID:3aI8MaIL
魔獣殲機ファルコニア────第3話「ロスト・コピー」


カツ、カツ、カツ──。
艦橋乗組員達への挨拶を終えたライトは、艦内下層へと続く通路を歩いていた。
床に響く軍靴の音がやたらと大きく聞こえるのは、壁の反響のせいだけではないのだろう。
恐らく、この通路を支配する奇妙な程の静寂が、ちょっとした音を大袈裟に聞き取らせているのだ。

「それじゃ、次は機体の格納庫を案内しますね?」

だからそんなことを考えていても、隣を歩くカノンの声が否が応でも意識に割って入ってくる。

──そうだ、いい機会だ。
その時、彼女の声にふと思い立ったライトは、ちょっと待ったという意思を示すように掌を向けた。

「その前に少尉、一ついいですか?」
「? はい? なんでしょう?」
「この艦ってどれくらいの乗組員がいるんですか? なんだか凄い静かで、初めから気になってたんですよ」
「そうですねぇ。ブリッジに常駐する方々やメカニック担当に医療担当……大体30人前後ってところじゃないでしょうか?」
「えっ……? それってかなり少ない……ですよね?」

ライトの記憶に残る、かつてどこかで見た本には、戦艦というものは大きいものとなると数千人単位の乗組員がいたとあった。
それがたった30人では艦として機能できるのかどうか……怪訝に感じるのも無理はないだろう。

「はい、昔に比べればそうなんですけど、今は自動化がかなり進んでいて昔ほど人手を必要としなくなってるんです。
 艦内の清掃や食事の調理などの雑務は機械がやってくれますし、
 動力部のメンテナンスや制御も全部コンピュータが面倒を見てくれますから。
 そうして艦隊から削減された人員を、未だ完全自動化が不可能な機械の操作に──
 つまりLGCのパイロット要員に回すことで、大幅な戦力の合理化が図られたんです。
 今から20年くらい前にですけど」
「……へぇ」

それに対するカノンの解答は、単なる模範のそれではなかった。
彼女はライトが記憶喪失であるという点を踏まえて、軍人なら誰もが百も承知していることまで敢えて丁寧に説明したのだ。

──い、いい人だなぁ、この人……。あのロクデナシ共(男共)とはえらい違いだよ……。
ライトは、わざとらしいまでのその心遣いに心の中で何度も頭を下げた。

「他に何か聞きたいことがありますか?」
「えっ? あぁ、でも……なんか甘えるみたいで……それに迷惑じゃないですか?」
「いいんです、リン中尉にも色々教えてやって欲しいと言われてますし、困った時はお互い様じゃないですか。
 なによりライトさんは仲間なんですから、少しでも力になってあげたいんです」

と、優しく微笑むカノンに、ライトの顔がだらしなく崩れる。
見る人によっては心情を誤解されそうな危ない顔だが、ライトにとっては何とも言えない喜びを表す精一杯の顔なのだ。
カノンはそれを察していたのか、はたまた人の邪念というものを信じない穏やかで平和な心でも持っているのか、
いずれにしてもお人好しの性格をあらわすようにその顔はただただ朗らかなままだった。

「えっと……それじゃお言葉に甘えて聞きますが……
 LGCと呼ばれるあのロボット……アレを使って人類は一体何と戦ってるんですか?
 『ウェポン』って呼ばれてるとしか聞いてないんで……宇宙人か何か、ですか?」

ところが、それはライトが『ウェポン』名を出した瞬間だった。
これまで一向に崩す気配がなかったその表情に、初めて曇りが生じたのである。

「……あれは過去の人類が生み出した『遺物』で、厳密には『生物兵器』なんです。
 この星に元々住みついていた在来の生物に、第一地球から持ち込んだ生物とを掛け合わせたり、
 遺伝子操作や薬物投与実験を繰り返し行うことによって生み出された恐るべき『魔獣』……
 それが私達人類が『ウェポン』と呼ぶものなんです」
447 ◆PXAQLa3/ys :2014/01/12(日) 22:40:39.64 ID:3aI8MaIL
「でも、なんだって人間はそんな厄介なものを創ったんです?」
「戦争があったんですよ。今から200年ほど前に、この第二地球で……」

虚空を仰ぎ、思い出すように事のあらましを語り始めるカノン。
その声にはかつてない重苦しさが漂っていた。

「人類が核戦争によって汚染された旧地球を離れ、この第二地球に移住してから約380年後の新地球暦387年……
 その年、当時世界を二分していた勢力である東の大陸国家『ムー連邦』と、
 西の大陸国家『アトランティス連邦』が世界の覇権を巡って全面戦争に突入したんです。
 その戦いは激しく、かつ長期化したものとなり、人類史上初の統一国家『世界統一連邦』が成立する
 新地球暦490年まで延々と続きました。『ウェポン』はその『100年戦争』の間にムーとアトランティス双方が
 戦局打開の為に競って世界中にばら撒いたもの……いわば私達の先祖が残した負の遺産なんです」

──なるほど……かつて自分達が作り出した兵器が、今や自分達の敵になってるってことか……。
──いや……。

ライトは頭を掻いた。
人類が撒いた種に変わりはないとしても、今を生きる人間達はその当事者ではない。
とすれば、むしろ今の人間達は過去の清算を強要された被害者の立場ではないのか……
自分達、などという表現はいささか乱暴ではなかったか──そう思い直したのだ。

「連邦成立後に、人類が初めてウェポンの存在を認めたのが今から25年前の新地球暦515年。
 100年戦争の影響で生物が住めなくなり、戦後に人の立ち入りの一切が禁止されたムー大陸で、
 大きな生命反応が確認されたことがきっかけでした。
 連邦政府はその調査と汚染の浄化レベル測定の為すぐさま調査隊を派遣しましたが、戻ってきたのはたったの一人。
 その生還者の証言から汚染大陸に適応した未確認生物がかつての生物兵器の生き残りと判明、
 しかも繁殖している可能性が高いことから人類の生存を脅かす危険種と断定され、政府はムーへの派兵を決定します。
 そうして始まったのが『三年戦争』と呼ばれるウェポンとの戦争です」

──あれ? 25年前……?
言葉の途中で「ちょっと待って下さい」と手を出して、ライトは尋ねた。

「25年前に始まった三年戦争……ってことは、もしかして……」
皆まで言わずとも言いたいことは察せたのか、カノンの返答は早かった。

「はい。実は“今の”ウェポンとの戦争は二回目なんです。
 前回の三年戦争の際、軍はおよそ400万人を超える人員を動員しましたが、目的は達成できずに撤兵しました。
 兵士の帰還率はわずか13%。当時の軍の武装や兵器では、まったく歯が立たなかったんです」
「たったの13%……」
「でも、三年で撤兵を決断したのも、それだけが理由じゃないんです。
 研究を進めていく内に、大陸のウェポン達が海を渡っては来れない、ということがわかったからなんです」
「えっ? それじゃあ……」
「ですから政府には『藪の中の蛇はつつかず』と、大陸ごと封印してしまおうかという意見もあったそうです。
 けれど……18年前にムー大陸近海の小島でウェポンが確認されてからその幻想も無くなりました。
 海に適応した海洋性のウェポンも居るということが確認され、結局、その年に再び戦争が再開されたんです」
「それが今の……18年続く戦争ですか……」

知りたかったこの世界の事情を知り、溜息に似た言葉をライトが紡ぐ。
深刻な歴史があるのだろうと予想はしていたものの、実際に知ってみるとやはり気分が沈んだのだ。
100年戦争の遺産、それが原因で起きた三年戦争に、今の戦争──
今日の因縁が50年前に終わったはずの100年戦争に根ざしているならば、
これに終止符を打つのは容易ではないのは子供にだってわかることなのだから。

「……ただ、人類も今はウェポンに対し、有効な手段をちゃんと持ってはいるんですよ」
「えっ!?」

しかし、ライトの見開いた目に映るカノンの顔は、僅かばかりだが希望に輝いていた。
風が吹けばふっと消えてしまうような儚い輝きだが、それでも今のライトには眩しく見えた。

──────────────────────────────。
448 ◆PXAQLa3/ys :2014/01/12(日) 23:00:52.23 ID:3aI8MaIL
「────その手段ってのが、これ……ですか!?」
格納庫。ライトはそこに案内されるなり、“それ”を仰ぎ見た。

「はい。もうご存知だと思いますけど、対魔獣機兵・軍用人型二足歩行ロボットLGC──通称『LC(ロスト・コピー)』」

ライトの目を釘付けにしたのは、出入り口に一番近いハンガーに固定されている、およそ8m超はあろう金色の機体だった。
リリーとの模擬演習で搭乗したハウドーグと呼ばれる茶色い機体とは、あらゆる意味で見た目が異なっていた。
それは単にカラーリングの派手さだけではない。機体の高さが頭一つ分は抜けており、横にもまたでかいのだ。
ハウドーグを標準的な成人男性の体格とすれば、それは超ヘビー級ボクサーやレスラーといったところだろうか。

「人間とウェポンの大きな違いが、まずその大きさであり俊敏性であり防御能力であり力なんです。
 訓練された生身の兵士が考えられる限りの武装をしたところで勝負にならない、それが三年戦争で得た教訓です。
 そこで技術者が目をつけたのが100年戦争中にウェポンと並行して開発の進められていた幻の鉄機兵・『ギア』。
 技術者達の間では『LG(ロスト・ギア)』と呼んでいるそうですけど」
「ロスト……ギア……」
「ギアは、100年戦争中に最も致死率が高く、攻撃力の弱かった歩兵をその両面において飛躍的に強化しようという
 構想のもとムー連邦で生み出されたものです。……もっとも、ウェポンの方が安価で生産性もしやすい上に、
 自軍を守り敵軍を殲滅するという意味ではよっぽど合理的な兵器だったので、試作段階で開発中止になったそうですが。
 でも、今の連邦としてはウェポン退治の為にウェポンをつくり出すというわけにもいかないので……」
「なるほど、だからこんな機械をわざわざ……」
「100年戦争でギアに関しての多くの資料と技術が失われてしまったので、
 今の技術者達にも当時の性能を完全に再現することはできないそうなんですが……
 それでも一部の資料を基に研究を進めた結果、この戦争が始まる頃には連邦初のLCが前線に投入されています。
 その機体が第一世代の主力量産機で、ハウドーグがその後継機。つまり第二世代の標準主力量産機なんです」

「ほうほう」──と頷きながら、ライトは周囲のハンガーを見渡す。
機体は一、二、三……金色の機体を含めて、全部で計七機。
ハウドーグが二機、金色が一機、黒いのが一機、赤いのが一機、白いのが一機、紫が一機……
それぞれ形が微妙に異なっていて、とにかくカラフルである。並んで動かれると目がしぱしぱしそうだ。

「なんかどれも個性的な色と形をしてますけど……量産機ってどれもこれもこんなにカラフルで種類があるんですか?」
「実はここにある機体のほとんどが試作機や先行量産機で、他のとは仕様が異なった数少ないものなんです」
「へぇ……」
「元々うちの部隊は科学技術省の息がかかってるので、そういうのを優先的に回して貰えるんだそうですよ。
 だから昔は『モルモット部隊』と言われてたこともあるんだとか」

──まぁ、半分妬みも入ってるんだろうけどな。
そんなことを思いながら、目の前の金色の機体に歩み寄ったライトは、改めて感じるその圧倒感に身震いした。

「……にしても見れば見るほどコワモテっていうか。……ちなみにこれ、何て名前なんです?」
「STP-03──第二世代重装型LC試作機・『T・ゲール』です。武装の火力もそうですが、何より凄いのが装甲なんです。
 第二世代のLCには近年再発見された鉄よりも硬く、軽い特殊な金属が装甲に使われているんですが、
 この機体の装甲はそのどれよりも分厚くつくられていて、とても頑丈なんです。ウェポンだって手こずるくらいに」
「重騎兵みたいなもんですか」
「そうですね。でも重くなってる分、細かい動きが少々難しいのが欠点みたいですけど。
 ちなみにT・ゲールとは真逆の路線を行ってるのがあの二機ですね」

と、カノンが指差したのは、T・ゲールとは反対方向のハンガーに固定されていた、赤い機体と黒い機体だった。
色こそ違うし、よく見ると微妙に形状が異なってもいるが、全身の形そのものは良く似ている。
双方とも両肩の後ろに、太く長い瓶のような形をしたノズル付きのユニットを装着し、
背中にも三つのノズルが付いた四角いランドセルのようなユニットを背負っている。
そしてどちらも体格は絞られており、例えるなら黒い方がライト級、赤い方はもっと細いフライ級と言ったところか。
449 ◆PXAQLa3/ys :2014/01/12(日) 23:12:24.63 ID:3aI8MaIL
その両機をT・ゲールと見比べてみると、なるほどカノンの言っていることが良くわかる。
一方は如何にも俊敏に動き回れそうなつくりをしているのに対し、もう一方は超ヘビー級の屈強な体格。
しかも肩にはユニットがなく、背面のユニットにも大型とはいえノズルは二つしかついていない。
正に両極端、動と静というのを思わせる。

「黒い方がSTP-02──第二世代高機動型LC試作機・『クローア』といって、
 赤い方がクローアのデータを基に先行量産された高機動タイプの初期型機・『イーグリア』といいます。
 クローアはスラスターの出力が極めて高いので、装甲もほとんど現行量産の標準機と大差ないんですが、
 操縦にはかなりのテクニックが必要で大変みたいです。何せ全身小型バーニアだらけですから。
 一方のイーグリアはスラスター出力とバーニア数を減らしている為、装甲はクローアよりも軽量に設計されています。
 なので、防御力ではクローアよりも劣りますが、その分、操縦が楽になってますし武装の火力をアップさせることで
 欠点をカバーした仕様になってます。ちなみに現行の高機動量産期はオレンジの塗装がされてるんですよ」

ライトは頷きつつ、格納庫の一番奥のハンガーに立っていた二機を指差す。
ここまで詳しく説明されたらもう聞かないわけにはいかない。そう、残る白い機体と紫の機体についてである。

「紫の機体がSTP-01──第二世代標準型LC試作機・『マッドーグ』です。
 白い機体が『ウルフィ』といって次世代標準型……つまりハウドーグの後継機を予定した先行量産タイプです」
「へぇ……ハウドーグの試作機と後継機ですか……」

マッドーグにウルフィ、そしてハウドーグ。
同じ系統に分類されているだけあってこの三種の機体はやはり良く似ている。
太すぎず、細すぎないミドル級の装甲に、まるで種の伝統というように両肩に装着された左右対称の二重肩パッド。
上が横に伸び、下が上腕を覆うシールドのように平たい四角を描いている。
唯一、マッドーグの頭部メインカメラだけがツイン・アイではなく(ちなみにT・ゲールなど他三機もツイン・アイだ)、
真ん中に十字の入った一つ目、いわゆるモノアイと呼ばれるタイプとなっているが、
武装や細かい外観の差異点を除けば異なるところはそれくらいであり、後は性能の話になるのだろう。

「とりあえず機体の説明はこれくらいですねー。
 もっと詳しく知りたい場合は、士官学校の教本なんかを取り寄せてみるといいですよ」
「あ……そうですか。それじゃ、後で早速手配してもらうことにしますよ。
 ……それと……ちょっと今更になって言い難いんですが……」

少々気まずそうに頬を掻くライトに、カノンがきょとんとした様子で目を丸くする。
それを見て初めは「あ、やっぱりいいです」と発言を有耶無耶にしたライトであったが、
直ぐに「遠慮しないで下さい」と無邪気な顔で迫られたので、もはや言う他はないと観念した。

「もっと初めの方に言っておけばよかったと思うんですが……あの、敬語は止めませんか?
 少尉のカノンさんに敬語を使われるとその……なんか背中がむず痒いっていうか……」

──ほんと、何か今更なこと言ってるって感じだよな……これまで散々普通に会話しといてさ……。
言いながら、ライトはしみじみとタイミングを逸したことを後悔した。

「階級は上でも、私はまだ右も左もわからない新米で、ライトさんは兵士として先任ですから」
「しかしですね……」
「そういう意味じゃむしろライトさんの方が敬語を止めるべきですよ。同じ18歳でもありますし」

──そういう意味ってどういう意味だよ……。んなこと言ったら階級が無意味になるだろ……。
心の中で思わずそう突っ込むが、そんなことに気を取られる内に会話は一方的なカノンのペースで進み

「ですから今から私の階級は気にせず、普通に接して下さいね?」
「え……あ? いやですから少尉……」
「ほぉーら、言った傍からですよ? 皆の前ではともかく、二人で会話する時くらいカノンって呼び捨てにして下さい」
「……あの〜」
「でないと背中がむずむずするんです。それともライトさんは、女の子に意地悪するのがお好きなんですか?」
「……わかりました。いや……わかったよ……カノン」

結局、ライトが折れる形で決着していた。
「それじゃあ、これからはそういうことで! 宜しくお願いします!」
笑顔で握手してくるカノンから、女が持つ強さというものを感じずにはいられないライトであった。
450 ◆PXAQLa3/ys :2014/01/12(日) 23:19:36.84 ID:3aI8MaIL
────。

カノンとの交渉(?)を終えた後、ライトは機体を観察するという名目で格納庫の中を巡り歩いていた。

「──でさぁ、それで」
「──おおぉ? ちょっと待って、あれって」

──……ん?

そんな時、機体にのみ注がれていた彼の視線を一瞬にして持ち去ったのは、
ふと施設内に響き渡ったはキャピキャピした黄色い声の数々だった。

「あれれー? なんか見たことない顔ー」
「もしかして、あれが例の新人パイロット君かな〜?」
「どれどれ〜、ちょっと顔を拝見〜」

振り向くと、そこには作業着風の軍服を纏った計十人ほどの薄笑いを浮かべた女性の一団が列をなしていた。
……っていうか迫って来ている。
それは一瞬ライトに海岸に迫り来る大津波を髣髴とさせ、戦慄すら感じさせた。

──な、なんだぁ!?
そんな疑問を見透かしたように「あっ!」と歓声を挙げたのはカノンだった。

「メカニックの皆さーん! 休暇から戻られたんですかぁー!」
「たった三日だったけどねー。この通りエネルギーは満タンにしてきたよー!」

何年も会っていない友人と再会した時のような輝いた目をして駆け寄る彼女に、
女性達は抱きついたり頭を撫でたりしてキャッキャウフフとはしゃぎあう。

──あれがメカニック担当の連中か……って!

だがその内、一人の視線がライトに突き刺さったのを皮切りに、その場に居る全員の視線がライトを射抜いた。
先程と同じの薄笑いを浮かべる女性達に、ライトは再びギクリとなる。

「ねぇ、名前はー?」
「はっ、はい! ライト・バーツ伍長です!」
「ふーん……ほー……」

品定めでもしているかのよう目でジロジロと全身を見ながら一団の内の五人がライトに歩み寄ると、
あっという間にその周囲を取り囲んで、やがて互いに顔を見合わせて言った。

「60!」「55!」「62!」「50!」「52!」

「……は?」と呆然のライト。
五人はそんな顔を見て苦笑すると、直ぐに包囲網をすっかり解いて足早に元の一団の列へと加わっていった。
──なんなんだ一体?
ライトは初めそう思うしかなかったが、背中越しの彼女らの会話を聞いて、なるほどなと理解した。

「ちょっとは期待したんだけどねぇ」
「まぁ、並ってとこね」

つまり、顔が好みかどうか、イケメン値かどれくらいかを測定されたわけだ。
測る方は勝手気ままで楽しいのだろうが、測られる側としてたまったものではない。というか失礼である。
かといって激怒すれば、それこそイタイ子になりかねない。
正論が常に支持されるとは限らないのだ。特にこういった組織の中では。

──点数をつけるのは結構だけど、口に出して言うことないだろ……。まぁ……
口には出さずとも内心では不満たらたら。反撃といえばそれで精一杯だ。
ただ、それでも最後に「まぁ……美人だからいいけど」などと思うところは、あぁ……悲しい男の性である。
451 ◆PXAQLa3/ys :2014/01/12(日) 23:28:05.25 ID:3aI8MaIL
「──こんなところで何してやがる! どけコラァ!!」
ふと女性達の声を掻き消す、ドスの効いた大きな声が挙がったのはその時であった。

「邪魔だ邪魔だ邪魔だァ! 道をあけやがれェ!」
「キャッ!」「──なっ、なによ突然!」

視界を塞いでいた女性の一団の列が崩れ、人が倒れたかと思えば直後に後ろからぬっと大きな影が現れる。
その影の正体は、あのレクス・バイゼル曹長であった。

「ケッ、こんなところで油売ってやがったか! ったく、探させやがって」
「えっ……? もしかして俺を探してたんですか!?」
「それ以外に聞こえたんなら貴様の耳か理解力に問題があるってことだ、違うか?」

いきなり現れるや否やそうこき下ろし、腐ったものでも見るかのような目でライトを見下ろすレクス。

──なんなんだよ、こいつ……。
流石のライトも内心ムッとする。
実際、これでは彼でなくともその高圧的な態度にすくむか、嫌悪するかのどちらかであろう。

「なによレクス! いきなり入ってきてその態度はさぁ!」
「この金髪ゴリラ! 一体自分を何様だと勘違いしてんだ、ボケェ!」

事実、女性達も思いは同じだったようで、口々に罵声の言葉を浴びせている。
だが、当のレクスはどこ吹く風。怯むどころか軽く鼻で笑って見せた。

「ピーチクパーチクさえずりやがって。口だけで何もできねェ雑魚に用は無ェんだ。とっとと失せな」

確かに力勝負になれば、例え一人でもレクスならば女性の十人、二十人は軽く捻じ伏せることができるだろう。
彼女達もそう思うからこそ、最終的には苦虫を噛み潰したような顔でその場を去っていく他はないのだが、
中にはレクスの背中に向けてアカンベーをする勇気ある者もいる。もっともレクスはそれに気がついていないのか、
それとも気がついていて無視しているのか、いずれにしても終始、小馬鹿にした表情を崩さなかった。

「……で、何の用です?」

わざわざ探したというくらいだから何か用あってのことだろうが、それは腹いせに殴らせろだとか、
気に入らないから殴らせろだとか、そういう碌でもないことだろうか?
ライトにそんな嫌な予感が過ぎったのも無理は無い。これまでの彼の振る舞いを見れば、むしろ自然である。
だが、実際のレクスの返事は彼の予想の遥か斜め上を行くものであった。

「今日から貴様はこの俺の下で働くことになった。隊長の命令でな」
「……はい?」
「要するに貴様の腕が虫けら同然のクソだったもんだから、俺が貴様の面倒を見てやることになったんだよ!」
「えっ──えぇぇぇぇええええええええええええええっ!?」

それはつまり、レクスがライトの『師匠』になるということ。こんな不幸な運命を誰が予想できるというのか。
レクスの後ろでは、流石のカノンも哀れんだ目を向けていた。
──が、次の瞬間、彼女もその瞳にライトと同じ驚愕の色を浮かべることになる。

「あぁ……そういやカノン、お前さんにもウスバの下で修行しろとのお達しがあったぜ?」
「えっ!?」
「フン、お前もつくづく不幸な奴だな。よりにもよってあのウスバの下とはよォ」
「……が、がんばります……」
「健気なこった。……まぁいい、用ってのはそれだけだが……いいか、これから一時間後にシミュレーター訓練を行う。
 おい虫けら、遅れるんじゃねぇぞ? 一秒たりとも遅れたらわかってんなァ!?」

言うだけ言って去っていくレクス。まだ訓練も始まっていないのに、既にライトの意識は飛びそうであった。

──隊長……戦う前にこのチームを崩壊させる気なんですか……?

────つづく
452創る名無しに見る名無し:2014/01/13(月) 10:13:56.80 ID:KOTaQy5D
453創る名無しに見る名無し:2014/01/14(火) 18:32:54.95 ID:oJmoOUyM
大体周一ペースだけど読んでるぜ乙
454創る名無しに見る名無し:2014/01/14(火) 19:10:51.99 ID:WH6tvR6c
面白い
455REVELLION Dark Knight  ◆J6UIw8TZLg :2014/01/15(水) 02:21:49.90 ID:6k5IvA3L
投下します。
456REVELLION Dark Knight  ◆J6UIw8TZLg :2014/01/15(水) 02:24:24.06 ID:6k5IvA3L
2話

 サカイ国周辺。トウキョウ軍野営地にて。

「ふう〜。寒い」
 手をすりすりとこすり合わせ、体を震わせる。量産型AFゴブリンの中はさながら雪国のごとく冷え切っている。
「マイナス5℃?死ねるわ〜」
《みんな同じさ。それに包囲を開始して半月。疲労もピークだからな》
 モニターに映るのはすぐそこに配置されたゴブリンのパイロットの顔だ。
 母国のトウキョウがサカイに宣戦布告し、戦争開始から一か月、サカイの国を包囲し半月。
 毎日のようにゴブリンの中で見張るだけの生活をそれだけ続けているというわけだ。
 休憩で外に出れればいいのだがあいにくと簡易シェルターなどないので外に出た途端汚染された空気に侵されてしまう。
 睡眠用のコテージで他の兵士共々と雑魚寝し、またゴブリンに乗り込んで見張りの生活。包囲しているトウキョウ軍もある程度の疲弊はあるが。
《まぁ、あっちよりはマシだろ》
 『あっち』とはサカイの国のことだろう。半月、そろそろ備蓄がなくなり食糧難の問題が大きくなっているであろう頃間だ。
「ところで、お前…」
 このまま世間話にと思われたが言葉が止まる。
「え…?」
 いない。先ほどまでいたはずのゴブリンが―――まるで神隠しにでもあったかのように消えている。
 レーダーを確認しようとした刹那。激しい衝撃。揺れるコックピット内で掴めるものを掴んで必死で耐える。
「くぅ」
 次々に消えていく光。メインカメラがやられたようだ。それと同時の浮遊感。
 ガゴン。鉄のぶつかり合う音と地べたに落ちる音。その後シュルシュルとワイヤーの巻かれる音がした。
「お、応援を」 
 機体が引きずられている。どこかに運ぼうとしているのか?

「ふぃ〜」
 まるで温泉に入っているかのようなオヤジ臭い声が漏れてしまった。
457REVELLION Dark Knight  ◆J6UIw8TZLg :2014/01/15(水) 02:28:18.69 ID:6k5IvA3L
 リベリオンのコクピット内。ようやく仕事を終えてノワールが一息ついたところだ。
 見張りのゴブリン二機に気づかれることなく、ダルマ状態にしたのだ。
 彼の搭乗機リベリオンは通称オリジンと呼ばれる特殊な能力を持った人型兵器である。
 その能力とは二つある、擬態と武器変化。擬態とは透明になったり、機体そのものの外見を別の機体に変えること、武器変化とは鎌、刀、槍、銃と武器そのものを変える物だ。一々武器を持ち替える必要がないので戦闘では重宝される。
 擬態能力も実用性は高いのだが完全無防備になってしまう。
 つまり物質そのものを変化しているので透明時は装甲が紙以下のものとなってしまうのだ。少しでも敵のゴブリンが触れたら今頃スクラップだ。
「おじさん、忍者だな。こりゃー」
 透明化し背後に周り刀でメインカメラのある頭部を切断、その後すぐに敵機を抱えてもろとも透明化。
 後は、部下に任せる。渡してダルマにしワイヤーで縛る。それを引きずらせて近くにある大型クレーターまで持っていく。
 今頃応援を呼んでいることだろう。熱源を頼りに味方部隊が来ることだろう。
「おお…」
 言ってるそばから油断もせずにおびき出されている。

《ヴァース。どうぞ!》
 合図だ。セーブモードと呼ばれる熱源を絶ちレーダー探知されないようにしているモードにしていたが、それを解除する。
 頭上のゴブリンの足首を掴む。蟻地獄の要領だ。砂漠の乾いた土は潜りやすい。あとは引きずり込み、その足に重りの特殊液を噴射する。それはわずかな酸素でも反応し塊重りとなるものだ。コンクリートの簡易版だと思えばいい。
 すぐにヴァースの駆る赤色のAFイフリートが浮上する。
「…」
 ヒートサーベルの豪快な横なぎ。ゴブリンの頭部が空中に飛んだ。
 ヒュン!
 負けじとゴブリンもタックルを掛けてくるが脚が固定されてしまっていては威力半減だ。狙いは仰け反ったイフリートへのトマホーク攻撃。
「…」
 待ってましたとばかりにゴブリンの腕を脇に固める。余った腕でナイフを突き立てる。
 途端に刃先がゴブリンの腕に沈み、バチバチと電気が走り力なく垂れていく。
 ゴン。先ほどの仕返しにタックルし、イフリートを後退させる。
「…」
 最後にサーベルで両足を切断。仕事完了だ。
458REVELLION Dark Knight  ◆J6UIw8TZLg :2014/01/15(水) 02:33:49.77 ID:6k5IvA3L
「任務完了」
《孝行息子でおじさん助かるわ。あ、解ってると思うけど人はなるべく殺さないで捕虜にしてね》
 仮にも戦場だぞ。いつものようにおどけた口調は崩さない。敵兵を殺さないように言うのもいつもの事だ。
 元医者だからだろうか、なるべく人を殺さないようしている。
「…」
 コックピットから出てワイヤー伝いに地面に降りる。ダルマ状態のゴブリンに近づく。
 コンコンとコックピット付近を叩く。
「開けろ。言うことを聞けば殺しはしない」
 途端に開くコックピットハッチ。中から出て着たのは自分と同年代の男だった。
「と、投降する。殺さないで…」
「死にたくなければ、仲間に異常なしと報告しろ。それとしばらく付近の様子を見てから戻ると…な」
 片手間に中のパネルを操作し味方コードを入手した。
 後は折を見てサカイに堂々と入れば…。
《ごめん。サカイに連絡入れるのを忘れてた。十分待って。このままじゃおじさんら味方から撃たれちゃうよ》
 無線から間抜けな声がする。ああ、わが部隊の隊長の情けないことよ。
 と、孝行息子は思わずにはいられなかった。

「苦労して来たわりには歓迎されてないのね〜」
 ちゃらんぽらん隊長の意見に賛成だ。ヴァースは近くの壁に背中を預け瞳を閉じた。
 サカイの町に来て早々謝辞もなしに物資だけ受け取るとそそくさと帰ってしまった。
 一か月分の食糧。カロリーメイト系の物や栄養剤などがほとんどだがそれなりの金額の物だ。
 町もどんよりと重苦しく、街中は隙間や窓を防火板など埋め、明かりの漏れていない家とシャッターを閉めた店。
 外にいる人間はまさに徘徊というなりのボロボロな服装の人間ばかりだ。
「はいはい!」
 パンパンと手を叩いて明るくアピール。腰くらいまでの長い髪。大きな瞳に整った鼻立ち。アニメ声。いかにも男好きする容姿の持ち主だ。
 歳の位はヴァースやルルと同じくらいだろう。この少女はカシス。ノワールの部隊の新人で主にスナイパーの役を与えられている。
「それよりも現状確認が優先でしょ。まずはこの国の戦力確認!わかります?」
459REVELLION Dark Knight  ◆J6UIw8TZLg :2014/01/15(水) 02:37:26.15 ID:6k5IvA3L
 食料のそれなりの額のために、少数精鋭だけしか送れなかったのだ。あとはサカイの国の戦力と自分たちでどうにかするしかない。
「そうですね。では、僕は一番高いあの塔にでも…」
 適当に見回して、手ごろな塔を見つけて、言うが否やルルはその場を去っていく。
 その目にカシスを入れることもなく、まるで同じ空間にいるのが嫌かのように。
 ボサボサ髪の魔女と、清楚な令嬢。並んでいると見た目にはそう映るので苦手なのだろう。
「女の子だね〜。ルルちゃんも気にすることないのに、頑張れば別嬪だと思うけどな〜」
「拙者に言われましても」
 ガンガンとノワールに背中を叩かれる壮年の男性。筋肉のがっしりとついた体に無数の傷のついたいかつい容姿、威厳のある口髭、武者の言葉が似あう、いかついおっさん。とにかくおっさんだ。
 彼は副官のカブト。口数の多いノワールとは対照的な無口な人だ。
「しかし、異様ですな。この光景は…」
 大きな声で騒いでいて、明らかに異国の者と解る軍服姿の人間を前に過ぎ行く人の無関心さにである。
「…麻薬だな。幻惑系の…」
 カブトの問いにノワールが沈んだ声で答える。元医者が故に見てすぐに分かったようだ。
「それじゃあ。今後について…サカイの国のお偉いさんに相談と行きますか」
「承知。では拙者はルル殿の手伝いに向かいます」



 サカイの国中央政府館。質素な作りの建物だ。長い廊下をノワールたちは歩いていた。
 出迎えはなし、見張りもなし、戦争中の国の政治の中心施設とは到底思えない。
「まず、この国に武器類は見当たりませんでした」
 先ほど別行動をとっていたルルも合流している。塔の上からの戦況確認とサカイの国軍施設の視察をカブトと二人で終えての報告だ。
「それと敵のトウキョウ軍の包囲もおかしいです。完璧ではありません、いえ…穴だらけで包囲の域に達していません」
「なるほど…」
 この町に来てからの違和感。ノワールは納得がいったようだ。
「ではでは、真実の扉を開くとしますか」
 案内はない、ようやく議会所と書かれた札のある部屋に到着。少し緊張した面持ちでノワールが扉を開いた。
460REVELLION Dark Knight  ◆J6UIw8TZLg :2014/01/15(水) 02:39:04.26 ID:6k5IvA3L
「おやおや。遠路はるばる…出迎えもせずに申し訳ありませんな」
 ようやく『普通の人』との対面というわけだ。中には十人程度の人がいて、皆議員バッチをしている。
 ノワール達に声を掛けたのは集団の中央にいた初老の男性だ。白髪を後ろに束ねた老紳士といったところだろうか、物腰柔らかにお辞儀する。
「いえいえ、こちらもこの程度の応援しかできず、情けない話であります」
 さすがのノワールも普通に口調で会話する。ただ穏やかなのはここまでだった。
「何の要求もしていないのに、わざわざ救援とは痛み入ります。オオサカの国に足を向けられませんな」
「それはどうも…国主のゼン・シュナイゼル殿はご不在か?」
「…」
 やや間を置き初老の男性が答えた。
「逃げましたよ。国家の一大事だというのに…まったくもって情けない」
「そうですか。ご息女も同様で?」
 問いにゆっくりと頷く。
 この国の国主ゼン、そしてその娘ハクアは政治面では顔として活躍していた。
 物腰柔らかなゼンと美貌のハクア。盟主として名を馳せたゼンが逃亡?
「そうですか。失礼…お名前をお聞きしても…」
「…代理を務めます。ザレ・シャナイゼルと申します。お見知りおきを」
 国主ゼンの弟。言わずもがな…だな。

 ガタン。不意にドアが開いた。入ってきた人物を目にし、その場の全員が戦慄する。
 ヴァースとカシス。そしてもう一人…両手両足のない少女がヴァースに抱えられている。視線はその少女に集中していた。
「手足をもがれどうやって逃げるというのですか?先ほどハクア殿は父君と逃げたとお聞きしましたが」
「…父は殺されました。この国の住人に…その男の差し金で」
 青白い顔の少女が掠れた声で告発した。
「もう一度、お聞きします…あなたは何者でしょう?」
 ザレは…無の表情にかすかに笑みを浮かべた。
「なに…しがない売国奴ですよ…」
 ザレの背後の人間が一斉に銃を構える。
「己が保身の為に国と人をすべて売り渡す…ね」
 紳士の仮面に亀裂が入った。
「では、部外者の方には…ご退場願おう。よろしいかな」
 亀裂から覗いたものは…狂気だった。
461REVELLION Dark Knight  ◆J6UIw8TZLg :2014/01/15(水) 02:41:56.16 ID:6k5IvA3L
終了です。
読んでくださった方、お疲れ様です。

次回はヴァースサイドの補完となります。
それと微グロ注意書くの忘れてしまいました。すいません。
462創る名無しに見る名無し:2014/01/30(木) 04:25:24.39 ID:V0vwmm6s
半月
463秋水 ◆3C9TspRFnQ :2014/02/02(日) 17:15:00.45 ID:PLAMKLR4
まことにご無沙汰しております、秋水です。
ダイガストの新しいやつを…と思ったのですが、振り返るに昨年、私は一度しか投下して
おらんので、ご新規さんには誰こいつ状態ですね。

ですので、ちょいと生存報告を兼ねて短編を投下します。
以下、注意書き。

・消費レス:7+1
・戦争を題材にしていますが、派手なロボットの戦闘は御座いません
・作中の題材に何かを連想する可能性もありますが、それをもって批判等を行うつもりはありません

以上、許容できるようでしたらどうぞ。
464昔日の勇士 1/7:2014/02/02(日) 17:17:32.06 ID:PLAMKLR4
 西暦20XX年、地球は狙われて『いた』!
 遥か星辰の彼方より現れたブラックホール第4星人の侵略の魔の手がせまる!
 宇宙怪獣、殺人怪光線、侵略UFO、宇宙戦闘艦!
 見る間に地球は焦土と化し、人類は滅びるかと思われた!
 しかし、絶望の荒野を踏みしめ、拳に希望を握りしめた戦士たちが立ち上がった!
 世界各国が手を取りあい、ついに叶った地球防衛軍のロボット軍団!
 20年にわたる激しい戦いの末、侵略者はついに木星にまで後退する!
 戦いは続いている!地球防衛軍は今も君の力を必要としている!
 集え若者よ!自由と平和の旗の元に!

 復興目覚ましい繁華街の大型テレビから、志願兵徴募の告知が流れていた。
 真夏の日差しの下、それは暑苦しい光景だった。まして街中にスーツ姿で佇む中年男性にとっては、
若者向けのCMなぞ夏場の太陽よりも眩しく、疎ましい。
 画面には宇宙兵器工廠のある火星をバックに航宙戦闘艦と、細身の新鋭空間機兵が長砲身の粒子砲を
構える勇ましい姿が映っている。小学生になる息子が言うにはハイパーとかスパイラルとか仰々しい
カタカナのついた光学兵器らしいが、彼にしてみればついぞ現役時代には完成しなかった夢の粒子砲だ。
 中年男性、霧島慶一は、引退したスーパーロボットの搭乗員だった。
 彼がパイロットだったころのロボット兵器とは、列国が技術を寄せ集めて何とか形にした、侵略者の
宇宙怪獣と戦うための格闘用だった。
 今みたいに慣性制御装甲や金属粒子フィールドなんて防御機構は無く、重ね合わせた装甲版で膨れ
上がった胴体はまるでドラム缶の様だった。武装も熱・単分子剣だの粒子力場刃だのといった
ハイテク装備はいつまでも開発中で、寄り合わせた巨大な人工筋肉でもって力一杯ぶん殴るのが関の山。
 地球の表面が殆ど戦場だったあの頃は、そんなモノでも立派な戦力だった。
 侵略者に蹂躙された地表には彼らの星のドス黒い色をした植物が繁茂し、生態系は微生物に及ぶまで
急速に圧迫されていった。宇宙怪獣どもはその植物を食べ、新たな都市を破壊する。廃墟にヤツ等が
垂れ流す糞便から、また新たな植物が芽を出す。
 このあまりに当然であり、しかし脅威とするには何とも馬鹿馬鹿しい生物サイクルを断ち切るため、
先鋒となったのが慶一たちのスーパーロボットだった。
 戦いは困難を極めた。怪獣は強大であり、強靭であり、個体差が激しかった。熱線を吐くものと
姿形は同じでも、全身に濃硫酸の毒疱を持っているとか、とにかく統一した対策が立てられない。
 しかも頼みの綱のロボットたちは一品物ばかりで、定まった品質の修理や補給を維持するのも難しい。
ロクな防御手段も無い中で多くの仲間たちが散って逝った。畢竟(ひっきょう)、残るのは熟練搭乗者
と熟練整備士と言う、替えの利かないものばかりになる。
 そんな状態が5年も続き、怪獣の生息範囲は増えはしないが減りもせず、前線勤務者の精神だけが
磨り減っていった。人類を守る剣は薄く、鋭く砥ぎあげられ、何時折れても不思議でない酷使に耐えていた。
そして忘れもしない、あの日がやってくる。今日のように日差しの強い夏の日。慶一らはその役目を
終えた事を、屈辱と共に知らされた。
 侵略者の新型改造宇宙怪獣の戦線投入。その暴威の前にスーパーロボットたちは成す術なく敗北する。
 しかし絶望は直後に払われた。設立なった地球連邦政府と防衛軍が満を持して出陣し、空陸に展開
する圧倒的性能と数量の新型ロボット・空間機兵が宇宙怪獣を圧倒したのだ。
465昔日の勇士 2/7:2014/02/02(日) 17:19:54.28 ID:PLAMKLR4
 人類は膠着状態の中で息切れし、滅びを待っていた訳では無かった。まことに安っぽい言い回し
であるが、未曽有の困難を前に団結し、反撃の準備をしていたのだ。
 前線には機密保持の名のもとに情報が秘匿されていたのだが。
 ともあれ、空間機兵は侵略者のUFO等から得た技術を全面的に取り込み、小柄ながら防御面では
既往のロボット群に後れを取らず、飛行能力や長射程高威力の粒子砲を筆頭としたハイテク武装の
数々は、これまで不可能とされていた宇宙怪獣の飛行キャリアーを撃破する快挙を達成する。
 統一された運用思想と画一化された生産体制は、機体数と稼働率を天井知らずに跳ね上げ、地球人類
は此処に反撃の狼煙を上げたのだった。
 重ねて言うが、前線には秘匿されてきたのだが。
 その後、地球防衛軍は各地で逆侵攻を開始。10年をかけて地球から侵略者を追い出し、月の前線基地
を破壊し、火星の前線司令部を落として、侵略者の軍勢を木星の向こうにまで追いやった。戦線から
遠く離れた地球では、既に復興が始まって5年が経っている。
 正に地球連邦政府の栄光の歴史であり、慶一たちはその影であった。
 その後のスーパーロボットはと言えば、反攻作戦の当初こそ出番はあったが、飛行能力を持たない
ことによる進軍速度の遅れや、大型なうえに異なる技術体系による整備の手間の増加を疎まれ、次第に
後詰めや二線級という扱いに下げられていった。
 戦場が宇宙に移ってからは空間機動能力を持たないスーパーロボット型にもはや活躍の場などなく、
復興の為の瓦礫撤去や、宇宙植物の除去へと役割はシフトしてゆく。
 人類を救えなかったガラクタの巨人は、今や草むしりに使われている。当時、慶一が最も精神的に
追い詰められたマスコミの台詞である。
 勿論、スーパーロボットの存在が全くの無駄であった訳では無い。むしろ地球連邦政府樹立までの
時間を稼ぎ、空間機兵完成までの繋ぎを務めた歴史的意義は計り知れない。
 しかしながら搭乗者たちが生命を賭し、青春を燃やし尽くして戦った日々が、栄光として語り継が
れる事は無かった。
 機種転換訓練を通るには搭乗者たちは旧来の乗機に最適化し過ぎていたし、柔軟な頭脳や耐G能力に
優れた肉体のピークも近付いていた。結果、慶一たちは歴史に取り残された存在となった。
 今の彼は防衛軍の補給に携わる民間業者の、しがない中間管理職である。軍に残って形ばかりの
佐官に登る道もあったろうが、もう色々なモノが折れてしまった慶一にその気概は無かった。政府に
食いっ逸れる事の無い業種を斡旋してもらい、余生を妻子のために使おうと決めていた。
 慶一はもう一度、億劫そうに空を見上げた。遙か成層圏を越えた先に、今も地球防衛の誉れを胸に
戦う若者たちがいる。その輝きは眩い夏の日差しとなり、慶一の陰影をアスファルトに焼き付けるようだった。

「ただいま」
 慶一の帰宅は18時が常だ。仕事の内容は日々変わらない基地への消耗品の納品管理であり、残業
などはまず発生しない。当然のように手当はそれなりであり、復興市街地の一等地に2階建てを
持つのも前職の退職金みたいな物だった。
 防衛軍の日本支部が未だ自衛隊と呼ばれていた頃に貰っていた俸給は、連邦政府樹立時の通貨統一に
よって切り捨て同然の両替えをされ、手元に残ったのは命の対価には程遠いはした金だった。それで
慶一は満足だった。もう夜中に緊急出撃のサイレンに叩き起こされる事は無く、異性植物を引きちぎる
拍子にビルを倒壊させて後ろ指刺される事も無い。こんなに嬉しい事は無い。
 洋風の居間の前を通ると、小学3年生の息子が合成皮のソファの上で携帯ゲームをやっている。
夢中で遊んでいるので『ただいま』と声をかけても、『んー』と気のない返事が返って来るばかりだ。
ディスプレイに移るのは空間機兵のスタイリッシュなシルエットで、父としては微妙な気分だった。
466昔日の勇士 3/7:2014/02/02(日) 17:24:39.70 ID:PLAMKLR4
 極太の粒子砲を腰だめに保持して放つと、画面の宇宙怪獣の生命力ゲージが見る間に減ってゆく。
この10年は実際の戦闘もそういうものらしい。
 息子はスーパーロボットが四苦八苦して宇宙怪獣を殴り倒していた時代を知らないし、父が
パイロットであった事も知らない。慶一も話さないし、あの苦しい時代は今の輝かしい復興の時代には
相応しくないと思っていた。
 廊下を自室に向かって歩いていると、2階から階段を駆ける音が聞こえてくる。どすどす、と
いかにも強めの意志を感じさせて現れたのは、中学生の娘だった。妻に似て美人になってくれているが、
今は柳眉を寄せて自分を睨んでいる。
「お父さん!下着をわたしのと一緒に洗わないでって言ってるでしょ!」
 そういうお年頃であった。
 ただ洗濯機の中を確認しなかったのは自分の過失であり、蔑ろにされる父と言う悲しむべき現実を
含め、慶一は何とも情けない顔になる。
「ああ、ごめんよ」
 問題ごとを厭う、覇気の無い声だった。
 娘は父の現役時代を知っていたが、記憶に残る父は既に後方勤務者であり、いつもそんな顔を
していた。だから娘にとって慶一とは、理想に成り得ない男性像の見本だった。
「気を付けてよ、ホント」
 何を言っても無駄。諦念を込めた溜息を吐き、娘は自室に帰って行った。
 夫婦の寝室に入ると慶一はスーツを脱ぎ、部屋着のスウェットに着替える。かつては戦うために針金
を寄り合わせたように鍛え上げた肉体だったが、ここ十年はメンテナンス・フリーに近い。四十代とも
なれば往事の名残は贅肉で覆われ、髀肉の嘆を地でゆく。
 が、そんな一連の冴えない中年の日常も、生きていればこそだった。
 俺は何も間違った事をしちゃいない。生き残った幸運を、余生を使って噛み締めるんだ。
 いかにも堅気でない決意を胸にキッチンにゆく。
「おかえりなさい」
 妻、榛名のこぼれる様な笑顔が彼を迎えた。未だ三十半ばの女盛りである。エプロンできゅっと
締まった凝脂の乗った腰つきなどは、イロイロなモノに下方修正の始まっている慶一には毒だった。
 榛名は冷蔵庫から500mlの発泡酒を取出し、心地よい音をさせて開けるとグラスに注ぐ。
「お疲れさま」
「ありがとう」
 いつもの遣り取りをして、慶一は糖質に目一杯制限のされた薄くて炭酸ばかりが強いアルコールを
胃の腑に流し込んだ。こんなのでも慣れれば美味いと感じるし、たまの本物のビールが有難く思える
ようになる。
 地球上の復興が進み、統制が緩み始めている昨今では、代用ビールみたいな代物も数が減ってきた。
それでも妻がその手の類を買ってくるのは、やれカロリーだ糖質だと慶一の身を思っての事だ。
 甲斐甲斐しく世話をしてくれる、一回りも歳が下の美人の嫁さん。そんな嘘のような彼女に出会えた
のは、パイロットであった時代の数少ない拾い物であった。
 避難民の列に突っ込む怪獣を、機体を楯にして受け止め、殴りつける。その列の中に、まだ少女
だった榛名がいた。避難所まで逃げ延びて後、命こそ助かりはしたが、家も家族も失った少女が心中の
絶望の淵を覗き込んでいるとき、偶々それを見つけた若かりし日の慶一が、レーションのチョコレート
を与えて励ましの声をかけた。
 そんな些細な事でも、世界中で黙示録の戦いが始まったかのような混乱の中にあっては、彼女が一言
礼を言う事を心の支えにしたとて、誰が笑えるというのか。時が経ち、避難所が疎開先に変わって、
あのお兄さんがロボットのパイロットとして怪獣と戦っていると知ったとき、締め付けられるような
胸の痛みを覚えたとて、誰が止められるのか。
467昔日の勇士 4/7:2014/02/02(日) 17:27:11.60 ID:PLAMKLR4
 ちなみに慶一がチョコをあげたのは、米軍供与のMREの味が舌にあわず――決して世界一不味い
レーションとか言ってない――かと言って捨てるに忍びなかっただけなのだが、それは墓の下まで
持ってこうと決めている。
 やがて空間機兵を伴う最大規模の反攻作戦が企図された時、使いどころが難しくなったスーパー
ロボットもここを先途と激戦区に投入されるのが決まる。
 空間機兵の運用とて、あの頃は試行錯誤の最中で、決して万全とは言えなかった。参謀本部も藁にも
すがる思いだったのだろう。同時にスーパーロボット型のパイロット達は燃えた。空間機兵との隔絶
した性能差を見せつけられ、日増しに無聊をかこつ事の多くなってくる中での、示し合わせたような
晴れ舞台だ。
 ここが最後の戦ばたらき。パイロット達の目に不穏なギラつきが宿った。
 困難な作戦を前に、降って湧いた様に見合い話が持ち上がった。若者が自棄を起こさぬように帰る
場所を用意してやろうという周囲の意図もあったが、どちらかと言えば早急に跡継ぎを用意させねば
という後ろ向きな義務感が主だった。
 パイロットの遺族となれば少なくない恩給も期待できる。残された妻子のたつきも心配はあるまい。
酷薄な物言いではあるが、地球生命の存亡をかけた戦いが常態化した当事では、間違った考えとは
言い切れなかった。実際、戦火で夫を失った寡婦からの申し出も多かったと聞く。
 そんな折に現れたのが、満腔の信頼を湛えた瞳を向ける、一回りも歳が離れた妙齢の見目麗しい乙女
であったものだから、慶一は何かの間違いではないかと疑った。が、話してみれば、あながち縁が無い
と言う訳でもない。ともに係累の無い者同士、ひとまずの交際が始まった。
 実を言えば、当時の慶一は折を見て榛名を養子縁組し、自分の遺族年金の受取り主にしようと考えて
いた。それが未来の知れぬ男に出来るせめてもの厚意だと考えていたし、自身の安いプライドも満足
させる事ができる最適解であると。
 しかし慶一は積年の煮詰まった想いを抱え込んだ若い娘の行動力を舐めていた。そこに防衛軍の発足
からの強引な作戦と言う、安心から不安への上げて落とすの連携が加われば、乙女が肉食獣に変わる
のも、むべなるかな。
 あれよあれよと【既成事実】が積み上げられ、慶一は係累一名となって、大作戦に送り出された。
 …その10数年後に家庭で管を巻けているのだから、作戦の結果は語る必要もないだろう。
ただ一つ誤算があるとすれば、
「はい、おつまみ」
 榛名は酒のあてにと、山芋の短冊切りの小鉢をテーブルに置くや、慶一の指にそっと自分の指を絡めた。
 ああそうですね、スタミナつきますね。慶一はあの頃と変わらぬ肉食系の妻の仕草に、今も圧倒
されていたりした。
 長々と書いてきたが、要は霧島慶一が大切にしようとしている余生とは、若かりし日に夢見たような
形とは少し違っていたわけだ。いや、それだって生きていればこそなのだが、それを差し引いても、
変わらぬ日常に一抹の物足りなさを覚える事がある。
 あのスーパーロボットに搭乗していた日々のように、誰からも必要とされた日々が、懐かしく
感じられる。そう思うのは生き残った者の傲慢なのだろうか。

 その日は曇天だった。空はコンクリートでも塗り付けたように一面の鈍色で、蒸すような暑さだけが
地表に篭るようだった。ひと雨でも降れば過ごし易くなるだろうに、天候は人の要望など聞く気が
ないようだ。
 だから慶一はその人物に声を掛けられたとき、不快さを隠そうともしなかった。全部天気が悪いのだ。
「まったく、かつての上官に何て顔をするんだ、キミは」
468昔日の勇士 5/7:2014/02/02(日) 17:28:24.59 ID:PLAMKLR4
 初老の男性は口ぶりの割には気分を害した素振りもない。皺やシミの浮いた顔にむしろ笑みを
浮かべる、小柄な男性だった。肩やら胸やらに飾りの多いYシャツである防衛軍の3種夏服の、
その飾りを見ると、慶一の馴染みの無い飾りの数だ。
「昇進されたんですか?」
「遅まきながら、少将だよ。対宇宙人戦闘のオブザーバーとして、いつまでも席ばかり残される。
 好い加減、退役する歳なのだがね」
「何を仰られます、近藤少将閣下。あなたは間違いなく、あの時代を戦った者の誉れです」
「その台詞をもう一度、私の目を見て言ってくれないか?」
 近藤と呼ばれた将官は今度こそ嫌そうな顔をした。それから公道を指差し、
「まぁいい。ちょっと付き合ってもらえんか?」
 公道には公用車の黒いセダン(運転手の下士官付き)が停まっていた。
「大丈夫、会社のほうには私のほうで連絡をしておくよ」
 ああ畜生、矢張り謀ってやがったな。慶一は自分が待ち伏せされていた事に気付き、苦々しく顔を歪めた。
 近藤と呼ばれた少将は中佐であった当時から、味方でいる分には心強いが、敵手にするには性質の
悪い男であった。例えば、補給が滞りがちなのは当時の基本ではあったが、致命的な部品が倉庫から
払底する事は無かった。また、ひどく消極的な交戦を繰り返して時間を稼いだ事があったかと思えば、
後で聞いてみたら無茶な死守命令だったと知った。
 何が起ころうとも近藤は現実的なレベルで対応し、それでいて一定の成果は確保していた。慶一が
今も存命でいられるのは、あの苦難の日々を近藤が率いていたからに相違ない。
 が、数々の無茶ぶり・無理難題・ゴリ押しを実行させられてきたのは慶一たち現場の人間であり、
できれば余生は関わり無きように過ごしたいと願って止まない相手であったのも確かなこと。
 そんなものだったから、セダンが2時間も走って山間部の地下シェルターに入った時には、既に
悪い予感で胸がはち切れそうだった。首都機能の避難先として10年は使われた堅牢な地下構造物で
あったが、宇宙怪獣が少なくとも地球から駆逐された後は早々に廃棄され、目覚ましい復興を続ける
地表にあっては振り返りたくもない過去の遺影となり、訪れる者もいない筈だった。
 しかして、そんな地下施設には灯りが点り、結構な数の人々が作業をしているように見える。
「どうかね?」
 近藤は唐突に言った。
 例えば作業者たちは白衣や作業服で、防衛軍の作業用つなぎを着ている者もいるとか、コンテナから
覗く機械部品は大型で、大掛かりな物を建造しているようだとか、思う処はあったが、それを口に
したら最後な気がして慶一は明るい声ですっ呆ける。
「老朽施設の解体工事ですね」
「いい笑顔だな。しかし、これを見ても、同じ顔ができるかな?」
 セダンは地下施設の奥に進む。トンネル状の通廊を抜け、高さのある広間に出た。
 慶一は息を呑んだ。セダンが止まるのも待ちきれず、ドアを開けてコンクリートの床に転がり出て
いた。薄暗い広間の中央がライトアップされている。慶一の視線は、そこにずっと注がれていた。
 例えば、色あせた記憶の中の初恋の相手が、ふとした時にあの頃と変わらない姿でいたとしたら。
 中年男の口が呆けたように開き、見開いた目は驚嘆に時折震える。胸中はとろ火で焦がされるようで、
声にならない擦れた吐息が洩れた。
 大地を踏みしめる太い足があった。どんな打擲にも耐える太い胴体があった。何物をも打ち砕かずに
はおれない太い腕があった。なにもかにもが太かった。
 しかし、必要十分な能力を持つ空間機兵の技術体系にあっては、無意味な筈の厚みだった。
469昔日の勇士 6/7:2014/02/02(日) 17:30:02.89 ID:PLAMKLR4
 だが、確かに、そこにあった。その巨体と、出力と、自前の装甲だけで戦い続けた、傷だらけの
守護神が、確かにそこに佇立していた。
「金剛…」
 かつての愛機の名を、慶一は懐かしさと労りと、幾分の憐みを混めて呼んだ。
「我々は大金剛と呼んでいる」
 近藤が隣りに立ち、彼と同じように遥か頭上を見上げる。空間機兵のバイザーに覆われ洗練された
頭部と違い、装飾兜を被った武人のような頭部があった。
「大金剛?」
 慶一は問いただす。
 近藤は釣れたとばかりに良い笑顔を見せた。
「もともとは空間機兵計画に参画できなかった中小企業の救済プロジェクトだった…
 連邦政府は早急な空間機兵の建造のため、大企業主導で防衛軍の軍備を進めたのだが、ついぞ
 スーパーロボット型による防衛作戦に従事していた熟練技術者たちに声が掛る事は無かった。
 皆、金剛のような替えの利かない機体にばかり精通していたからだ」
 君と同じようにな。近藤は言った。
 慶一が改めて周囲を見渡すと、作業服の男たちの中に見知った顔をいくつも見つけられた。
どいつもこいつも――そして自分自身も――老け込んでいたが、にわかにあの騒がしかった日々が
戻ってきたように錯覚した。
「近藤さん、じゃあ、こいつは…」
「最近の技術でもって再建された、新たなスーパーロボットだ。空間機兵計画に携われなかった
 既存技術に熟練しすぎた技術者たちに新技術を教え、新人の技術者たちへとそのノウハウを
 伝えるためのプロジェクトの成果だよ。まぁ計画自体が習作の為であって、
 これも替えの利かん話には違いないのだが、しかし、もはやブリキの巨人ではないのだ」
 慶一は呆けたように大金剛と呼ばれた巨人を見上げた。
 全てが否定されたと思っていた、あの抵抗の時代の産物が、こんな形で今に受け継がれていた。
ともすれば感極まりそうになる慶一だったが、そうしなかったのは近藤の顔が引き締まるのを見たからだ。
「…3日前、火星衛星軌道上の外縁防衛艦隊本部よりの連絡が途絶えた」
 近藤の不意の発言に慶一は息を呑んだ。
「天文台の観測結果から、激しい戦闘が続いている事が確認されている。
 ブラックホール第4星人の再侵攻だよ」
「…通信の途絶というのは?戦闘が続いているなら、火星基地は健在ではないのですか?」
「そこが今回の肝だろう…超空間通信は敵機からの技術移転から10年を経ているが、
 さして進歩が無い。今さら妨害が始まったって、むしろ連中の対抗策が遅いくらいだ。
 それに、他にも、そういう技術はある」
 近藤は含みを持たせるように言った。
「超空間通信を妨害され、粒子砲の光は確認されておるにも関わらず、戦闘が終息する気配が無い。
 拾った技術の全てを血肉に出来た訳で無く、それでも何とかなってしまった。
 そのツケが回って来たのかも知れん。なぁ、この15年、我々人類は勝ち過ぎたのかも知れんよ」
 自嘲的な笑みを浮かべていた近藤だったが、次の決定的な言葉を吐く時には真顔に戻っている。
「だが、誰かがやらねばならん。この星の明日のための、スクランブルだ」
 慶一は鉛を飲み込んだような顔になっていた。
「それで、俺は…」
 声が擦れたのは空調の所為ばかりではない。軽い眩暈と、足の覚束なさもあった。
 それは彼の世界の揺らぎであり、動揺だった。
470昔日の勇士 7/7:2014/02/02(日) 17:32:16.11 ID:PLAMKLR4
 荒廃した地表の復興に喜び、子供の成長を見守り、妻との時間に安堵する。それら全てが砂上の
楼閣になろうとしていた。
 慶一は、ふと、誰かの視線を感じた。
 周囲に目を向けるが、懐かしい整備士連中の顔が有りこそすれ、こちらに目を向けている者は
いなかった。気のせいか。そう思いかけ、ハッとなって頭上を見上げる。
 金剛、いやさ、大金剛と目があった。
 特殊樹脂のアイカバー越しに、機械的な作動状態に無いカメラ機構が見えた。そこに意思がある訳が
ない。あるとしたら、金剛の似姿を通して覗く、過去の自分だろう。
『子供じみた夢は見ないのかい?』
 幻の過去の自分の問いかけに、口の端が淡く歪む。
 遥か見上げる鋼の体躯に、日々を無難に過ごす中年男の姿が重なった。
 足の萎えも嘘のように引いていた。踵を合わせ、一本筋の通った見事な気を付けの姿勢を取ると、
なんとも張りのある腹からの声が出た。
「閣下、自分にスーパーロボットがあるのなら、如何様にでも働いてご覧にいれます」
 それは冴えない中年中間管理職の立ち振る舞いでなく、燦然たる宇宙怪獣の撃破数を持つトップ
エースの姿であった。
 近藤は心の内で苦笑する。慶一のパイロット復帰への説得が一番の難事と踏んでいたが、機体を
見せればこれだ。何とも救いようの無い好ましさじゃないか。
「きっと、ひどい事になるぞ?あの頃と変わらんぞ?」
「補給は切れ切れ、出撃ローテーションは過密、索敵はあてにならず…
 でも指揮官と、整備士の腕は最高でした」
「パイロット達の腕もな」
 中年と初老の男が揃ってイイ笑顔を見せる。
「それに、少将がわざわざ自分を迎えに来るってことは、スーパーロボット型の操縦士が
 いないのでしょう?空間機兵パイロットはマイクロマシンを介して機体や僚機と
 リンクしているそうですが、もしかして…」
「おそらく、その機能にも妨害が始まっている。火星近傍の観測結果じゃ、 
 ひどい乱戦が起こっているようだ。統制された飽和攻撃など微塵もない。
 ああ、この辺、軍機だから他言無用で頼むよ」
 近藤はえらく軽く言ったものだった。
 前線ではこれまで敵を圧倒していた集団戦闘の前提が崩れている。今、必要なのは、寸断された戦線
を建て直し、必勝のロジスティクスを再構築する時間を稼ぐ事だ。過去においてそうであったように。
 近藤の言う通り、また、ひどい事になるのだろう。慶一は大金剛の傷一つない巨体を見上げ、
心中で語り掛ける。
『今ある最善を詰め込み、兵器としての将来性など期待せず、後に続く者たちに顧みられる事もない。
 今にお前も傷だらけになる。だが、そうしてお前が押し戻した時間の先に、
 きっと人類は追いついてくれる。その時は笑って追い越されよう。
 俺たちは、生まれた時から時代遅れになる事が決まっているんだ』
 その予測は確信めいていた。長年の鬱積であったにも関わらず、それは不思議と胸の中にストンと
落ち込んでいった。
 霧島慶一と大金剛にしか出来ぬ事がある。果ては路傍の石と砕けても、金剛石は星となって宇宙を
照らすだろう。
『いや、砕けぬ』
 父であり、夫であり、男である彼には、まだまだ務めが残っていた。
 そしてこれから待っているだろう数々の困難を前に、いつしか慶一の顔には太い笑みが浮かんでいた。

 完
471創る名無しに見る名無し:2014/02/02(日) 17:55:01.52 ID:0TqSaR5P
お久しぶりの投下、GJでしたん
秋水さん節が変わらぬ形で短編のコンパクトさにまとまっていて、読んでいながらつい嬉しくなってしまいましたわ
前書きをよく読んでいなかったので、ダイガストのエピローグかと誤解してしまったことは秘密です
472創る名無しに見る名無し:2014/02/02(日) 20:30:25.79 ID:rg5JsRsl
おつ
473創る名無しに見る名無し:2014/02/13(木) 23:40:38.40 ID:djehMrcv
催促
474創る名無しに見る名無し:2014/02/18(火) 19:40:25.64 ID:J2VO8mQR
ソ連…攻守走バランスが良い。安くて大量に揃える。居住性は軽視
西欧各国…防御の強化は限界が来ると高火力、高機動
英国…高火力、重防御
米国…多少大きくなっても汎用性重視、居住性重視

第二世代戦車は陣営ごとにキャラ付けが著しいからロボものの参考になるな!
475創る名無しに見る名無し:2014/02/19(水) 02:24:47.68 ID:xK4G/bkx
エゲレスをピンで取り上げておいてドイツは取り上げないとは……
476創る名無しに見る名無し:2014/02/19(水) 10:41:16.23 ID:1vYdO14x
あれ?オチ担当の日本は?
477創る名無しに見る名無し:2014/02/19(水) 18:41:12.09 ID:FBg/PuJ6
日本…クソ高価
478創る名無しに見る名無し:2014/02/22(土) 23:51:25.68 ID:X1xciPH0
独と仏は共同で戦車作ってた
そこに伊も加わった
結局バラバラになったけど方向性はだいたい一緒
479創る名無しに見る名無し:2014/02/25(火) 01:59:19.68 ID:0PUi1e2S
そういやアトムとかキカイダーみたいな本来のロボット物ってここにあったっけ
480創る名無しに見る名無し:2014/02/25(火) 21:01:30.77 ID:P6azALs3
>>479
分からん。が、取り敢えず、やってみれば良い。
481創る名無しに見る名無し:2014/02/26(水) 00:19:50.92 ID:lL3uU19v
ロボットものでいつも考えるのはライフルの弾倉なんだ 機体のどこに積んどくんだろうっていつも考える
いや、そもそも弾倉なんてものは必要なくてライフル本体に全弾装備されてるだけのほうが・・・・・・
航空機とか20ミリガトリングで2千発ぐらいだからどわざわざ弾倉に小分けするのもなぁ
482創る名無しに見る名無し:2014/02/26(水) 00:34:14.25 ID:2kaNhWsV
弾倉は必要だ。撃ち尽くした弾倉をパージして、シールドから予備弾倉を取り出し、再装填するまでの挙動が格好良い的な意味で。
483創る名無しに見る名無し:2014/02/26(水) 00:40:21.26 ID:lL3uU19v
>>482
そういうふうにかっこいいシーンを書きたいんだけどね いろいろ考えるとつらい
他にも、薬きょうが飛び散るかっこいいシーンを書こうとしても周囲にいる歩兵のことも考えると焼尽薬きょうかケーレス弾になってしまう
484創る名無しに見る名無し:2014/02/26(水) 01:06:31.69 ID:2kaNhWsV
飛び散った薬莢にブチ当たって死んだ歩兵の仲間との確執、巻き添えになった民間人への罪悪感とかトラウマ、
もしくは巻き添えになった民間人の遺族による復讐劇とか話を膨らませるネタにもなりそうだけどね。
格好良さと凄惨さの美味しいとこ取りみたいなw

自分は架空の兵器も実在の兵器も格好良いから好きってなだけで、判断基準もやっぱり格好良いか悪いかなんだ。
消尽薬莢とか、ケースレス弾とか言葉自体は知っているけど、どういうものなのかは何がなんだかさっぱり分からん。

細かい所まで気にしないと気持ちが悪い!って人もいるだろうし、考え方は人それぞれなんだろうけど、
格好良さを演出出来るリアルな部分だけ取り込んで、格好良さを阻害するリアルな部分はガン無視ぶっこくのはどうだろう?
485創る名無しに見る名無し:2014/02/26(水) 01:16:31.03 ID:lL3uU19v
>>484
その考え方いいね 焼尽薬きょう や ケーレス弾はロボット用の使うと予算高いから出来ないってことにしよう
486創る名無しに見る名無し:2014/02/26(水) 01:27:22.42 ID:2kaNhWsV
面白い作品が投下されるのを期待しとるぜー
487創る名無しに見る名無し:2014/02/26(水) 09:50:50.09 ID:5/4d/uJz
排莢はロマン
488創る名無しに見る名無し:2014/02/26(水) 09:58:59.50 ID:TjLkW0xz
いっそ技術水準爆下げして、先込砲にしちまえ
一発撃ったら突っ込んで白兵戦だ
489創る名無しに見る名無し:2014/02/26(水) 10:28:01.30 ID:5/4d/uJz
銃後の世界に移りゆく時代の中で武芸者がからくり人形<鬼武者>に乗り込み、武道の生き残りを賭けてヒャッハーする話を考えたけど自分で書くのは面倒だから誰か書いてくれさい
490創る名無しに見る名無し:2014/02/26(水) 22:15:03.67 ID:5u1Y8J4z
人型兵器の主武器がカンプピストルな世界……頭が痛くなるな!

>>489
野武士団との戦いで次々と力尽きてゆく七騎の鬼武者。
そして最後に笑うのは農民、まで読んだ。
491創る名無しに見る名無し:2014/02/26(水) 22:19:06.21 ID:UWtjEJsX
それより妖怪と戦わせようぜ
492創る名無しに見る名無し:2014/02/27(木) 00:33:52.78 ID:zSHcLKN0
ラスボスは水木しげるですね。分かります。
493創る名無しに見る名無し:2014/02/27(木) 08:09:29.71 ID:x8OG3jFu
明治維新の最中に妖怪として蘇った織田信長を七騎の鬼武者が激闘の末に打ち倒すも明治政府との戦いには敗れて鬼武者ごと歴史から抹消されるところまで読んだ
494創る名無しに見る名無し:2014/02/27(木) 10:59:59.21 ID:j8hhqkP4
今日は久々に早く帰れそうだし、ちょっと書いてみるかな
495創る名無しに見る名無し:2014/03/02(日) 11:54:45.10 ID:p5sOTC5+
鯖移転確認
496創る名無しに見る名無し:2014/03/03(月) 19:21:44.20 ID:CkZBh3yc
>>489
>>490
>>491
>>493

4人の意見を元にちょっと書いてみたので投下
497創る名無しに見る名無し:2014/03/03(月) 19:22:35.49 ID:CkZBh3yc
天正10年6月2日、本能寺――日ノ本に天下布武を掲げ、武力による天下統一を目前にした織田信長は明智光秀の謀反により夢半ばにして、この世を去る。
日ノ本統一直前という時代の節目に織田信長が暗殺された理由、それは彼の尽きること無き野望にあった。
尾張の小大名でしか無かった彼が戦国の英雄となったのは人間を遙かに凌駕する圧倒的な才と苛烈な気質、人を惹きつけて止まないカリスマ性。
そして、伴天連との強固な結び付きにあった。
桶狭間で今川を破り、戦国乱世で鮮烈な登場を飾ることが出来たのも、伴天連からもたらされた海外の近代兵器に依るところがあったのである。
信長が海外の近代兵器に魅せられたのと同様、海外の文化や先進技術に魅せられたもう一人の戦国英雄がいた。
英雄の名は徳川家康。彼は織田信長が天下統一目前でありながらも、伴天連よりもたらされた海外の兵器を独自に発展量産化に乗り出している事を知り、信長が日ノ本の次は海外にその手を延そうとしている事を確信する。
このままでは家康を魅せた海外の文化が信長の野心の炎によって灰塵と化してしまう。
そして、日ノ本は戦乱を発信する修羅の国と成り果てる。
事実、織田信長にはそれを出来るだけの力と影響力、苛烈さが宿っている。この時代の人間ならば誰もが認めるところだ。
絶望の未来を予見した家康は自らの家臣、南光坊天海に織田信長暗殺を命じる。
天海は自らを明智光秀と名乗り、織田家家臣として信長に近付き、遂には主の命を達成するに至ったのであった。
戦国の魔王、織田信長に成り代わり、家康は迅速に日ノ本を統一し、文明開化の夜明けに乗り出す。

天正10年6月3日、関ヶ原――本能寺の真相を知った織田信長の忠臣、羽柴秀吉は関白豊臣秀吉を名乗り、織田信長に魅せられた武将等を併合しつつ、徳川家康の首を目指す。
それに対し、家康は生前より織田家に反目する武将等を吸収し、豊臣軍を迎撃。織田信長の死から十一時間後、両軍は関ヶ原で激突する。
豊臣軍は四国征伐から怒り任せに不眠不休で関ヶ原に参陣したことや、信長の死により心身共に疲弊していた。
対象的に家康率いる徳川軍は織田信長を制したことにより意気軒昂。
本多忠勝を中心とする徳川四天王、真田幸村率いる真田十勇士からなる英雄の大軍団を前に豊臣軍は敗北する。
遂に徳川幕府による日ノ本の文明開化が始まろうとするその最中、その先駆けたる英雄、徳川家康が関ヶ原からの帰路にて病没する。
徳川幕府は結束の欠けたまま文明開化に先立ち、廃刀令を強行的に施行し、日ノ本の軍縮を推進。日ノ本の象徴たるサムライの存在、魂、概念が海外の文化によって無かったことにされようとしている。

天正11年3月14日、命示位神(めいじいしん)――廃刀令の施行は結束が解けつつある徳川幕府の分裂を決定付ける事となり、武断派と文治派に分裂。
日ノ本各地に隠れた豊臣軍残党の対応も儘ならないまま武断派は神殲組(しんせんぐみ)、文治派は位神士氏(いしんしし)を名乗り、対立の果てに命示位神が勃発する。
激闘の末、位神士氏、天堂晋助が神繊組、土方歳三を討ち、戦国の時代と徳川幕府は日ノ本の歴史から姿を消し、命示政府が樹立する。
しかし、終わってみれば日ノ本から優れた指導者が失われ、命示政府の樹立は結果的に日ノ本からサムライの魂を失わせるだけでは無く、文明開化は日ノ本が海外列強に飲み込まれることを意味していた。
498創る名無しに見る名無し:2014/03/03(月) 19:24:19.95 ID:CkZBh3yc
命示6年6月1日、黒船来航――織田信長の死から6年。日ノ本の表舞台からサムライが姿を消して久しい頃、日ノ本は巨大戦艦『黒船』に完全包囲される。
織田、豊臣、徳川、上杉、武田、島津、毛利、長宗我部、伊達、数多くの英雄を欠き、サムライの魂を手放した日ノ本恐るに足らずと、海外列強が攻め立てたのである。

命示6年6月6日、織田信長再臨――、海外列強の植民地に成り下がろうとしていた日ノ本の窮地を救ったのは神風では無く、冥界から黄泉帰った第六天魔王、織田信長であった。
黄泉帰った信長は冥界から引き連れてきた魑魅魍魎と百鬼夜行。人、妖、魔が入り乱れた新生織田軍を結成。
魔王信長率いる新生織田軍は、瞬く間に日ノ本を包囲する黒船の大艦隊を殲滅すると日ノ本に再度の天下布武を敷くことを宣言する。

命示6年10月、鬼武者七人衆見参――織田信長が日ノ本に黄泉帰って4ヶ月。連日連夜、日ノ本各地で新生織田軍と命示政府軍の間で激しい戦いが繰り広げられている。
意外にも海外列強を一方的に蹂躙した織田軍を相手に命示政府軍は織田信長を打倒できないまでも、ある一定の戦果を得るに至っていた。
それはサムライの攻撃以外は一切通用しないという新生織田軍の性質にあった。
古今東西、妖魔には人間に打倒される為の法則や弱点が備わっている。
法則を無視し、弱点を突くことが出来なければ海外列強がどれほどの先進的な近代兵器で身を固めていようと彼等を打ち破るどころか、かすり傷一つ付けることさえも不可能だ。
しかし、法則に従い、弱点を突くことが出来るサムライならば、黒船でさえも一方的に蹂躙する力を持つ新生織田軍でさえも打ち破ることが出来る。
とは言え、それだけでは新生織田軍を打倒する決定打にはなり得ない。命示位神で散ったサムライは余りにも多く、命示の世はサムライが魂を摩耗させる程に平和過ぎた。
何よりサムライであることは彼等を打倒する絶対条件では無く、彼等と同じ土俵に立つ為の条件でしかない。
他を凌駕する圧倒的な才を持つ織田信長の力は第六天魔王となった今でも健在……いや、彼の身体能力の絶頂期であった桶狭間を遥かに凌駕する。
第六天魔王、織田信長を打倒するには、ただのサムライでは無く、他を超越する絶対的な力を持つサムライしかいない。
命示の世に織田信長以上の才覚を持つサムライはいない。
だが、ある時、命示政府はとあるサムライの戦いから新生織田軍に対抗する鍵を手にした。サムライの『攻撃』のみが有効という条件。
この攻撃という条件が思いの外、広範囲に定められていることに気付いたのである。
例えば破壊槌の様な質量による突進等の直接攻撃を繰り出す攻城兵器。
この攻城兵器の搭乗者がサムライならば、サムライの攻撃の範疇として判断されるらしく、多くのサムライが車輪付きの破壊槌で新生織田軍を轢殺したという実績を持っている。
命示政府はこの現象に着目。文明開化によって得た近代兵器と古来より脈々と日ノ本に受け継がれしサムライの魂を融合させた、刀に続く、第二のサムライの魂を生み出した。
その名を絡繰人形鬼武者という。
海外列強からもたらされた革新的な技術を絡繰の中に盛り込み、戦国の英雄達にも匹敵するサムライの力を宿す、対新生織田軍戦闘用装甲である。
命示政府は鬼武者七体の実用化に漕ぎ着け、サムライの血と魂を色濃く受け継ぐ七人の若者に託し、第六天魔王織田信長の打倒を命じた。

命示7年4月――天下布武という日ノ本の未来を縛り付ける鎖を解き放つため、命示の世を生きる7人のサムライが戦国乱世の魔物、第六天魔王織田信長に挑む為に安土城を目指す。
499創る名無しに見る名無し:2014/03/03(月) 19:34:32.61 ID:CkZBh3yc
本編は無いよ(>ω・)てへぺろ
500創る名無しに見る名無し:2014/03/03(月) 21:14:42.00 ID:Ih2TRdXI
>>499
投下乙。
本能寺から明治政府樹立までの展開が早過ぎる上に日本の歴史が吹っ飛び過ぎて笑ったwどんだけ動乱続きなんだよw
こういう真面目に馬鹿やってます的なノリ大好きだわw

で、本編もやるんだよな?
501創る名無しに見る名無し:2014/03/03(月) 23:14:18.77 ID:CkZBh3yc
>>500
時代劇の作家が「歴史を題材にしたエンタメやりたいなら時代考証や史実に負けないくらいの想像力を働かせろや」
的なことを言っていたので戦国無双、戦国BASARAばりの勢いでふざけたらこうなったw
502創る名無しに見る名無し:2014/03/04(火) 13:58:00.85 ID:0EFqbrt1
みじけぇwww
短い時間で発展しすぎだよww(褒めてます
503創る名無しに見る名無し:2014/03/04(火) 20:25:10.70 ID:QFXx3ak7
早っ!徳川方の武田遺臣の糾合、早っ!!
でも大いに笑かせて貰いました。レッツ・パーリィですね。
504創る名無しに見る名無し:2014/03/05(水) 08:36:56.29 ID:P1/cgoOH
この信長のCVは間違いなく若本
505創る名無しに見る名無し:2014/03/05(水) 09:58:20.85 ID:P1/cgoOH
あ、もしかしてコレの時代って西暦でいうところの1600年にも達してないのかwww
506創る名無しに見る名無し:2014/03/06(木) 01:52:32.16 ID:Sgr7pJeR
1582年6月21日 本能寺の変
1582年6月22日 関ヶ原の戦い
1582年6月23日 徳川家康病没
1583年4月02日 明治維新
1583年 明治政府樹立
1588年6月20日 黒船来航
1588年6月26日 織田信長復活
1588年10月 鬼武者ロールアウト
1589年4月 本編スタート

こうして見てみると300年近く歴史を圧縮しているw

更にタイムラインを追っていくと
1589年12月 織田信長討伐
1589年12月 天海再登場。徳川家康復活に暗躍。
1590年3月 徳川家康の復活阻止&天海撃破。
1590年3月 平賀源内考案アームストロングガトリングカノンにより鬼武者七人衆全滅。
1590年3月 明治政府が主戦派と非戦派に分裂
1590年4月 大正政府樹立と同時に国号を大日本帝国に改める。
1590年5月 大日本帝国、第一次世界大戦に参戦。

1600年前後で平成になるかも知れんねw
507創る名無しに見る名無し:2014/03/06(木) 11:54:17.38 ID:/S5i9YNF
ガンダム一年戦争の年表みたいだな
508創る名無しに見る名無し:2014/03/07(金) 00:26:16.52 ID:LqtP6wna
509創る名無しに見る名無し:2014/03/07(金) 01:16:49.99 ID:5VunOEja
やだかっこいい
510創る名無しに見る名無し:2014/03/07(金) 21:23:52.36 ID:6by4f28W
いいじゃないですかー。

マイナーだけどPLUMのプラアクト戦シリーズも
武者ロボとしてイイと思う。
511創る名無しに見る名無し:2014/03/08(土) 01:32:58.14 ID:kQWxiDds
みんなで創作してるって感じでイイな
512創る名無しに見る名無し:2014/03/08(土) 01:55:45.72 ID:H395carL
てか人いたのか
513創る名無しに見る名無し:2014/03/08(土) 02:23:43.84 ID:kQWxiDds
人が居ないわけじゃないんだ。唯、一人が黙ると、また一人黙り、それが連鎖していくってだけで。
514絡繰武闘伝鬼武者(仮):2014/03/08(土) 12:53:37.57 ID:4zIpGdyX
※微グロ注意
・序章
刃が肉を断つ音が鳴り響き、雄叫びと銃声が木霊する。
ここは戦場。もしもこの場を俯瞰する者が居るとするならば此処は地上に現出した地獄だと評するに違いない。
何故ならば……。
「ひぃぃっ!」
乱戦の中で一人の兵が倒れ、この世ならざる異形に組み伏せられる。目の前に広がるは己の頭を一呑みに出来るであろう巨大な口腔。腐臭を伴う涎が彼の顔に垂れ落ち、断末魔の叫びを残す事も出来ず首から上を食いちぎられる。
それを間近で見てしまった別の兵は恐慌に陥り、逃げ出そうとして背を刀で貫かれ、そのまま塵のように投げ捨てられた。
第六天魔王信長率いる妖魔の軍団は弾雨を恐れず雪崩の如く進軍し続け、侍から刀を捨てさせた命示政府を嘲笑うかのように陣地に殺到しこれを蹂躙した。
515創る名無しに見る名無し:2014/03/08(土) 12:55:39.42 ID:4zIpGdyX
即興で書いたが続きで詰まった
後は任せた(テヘペロ
516創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 13:12:04.08 ID:vQxlqEyP
ロボスレの影響で戦国無双2HD買ってしまったw
517創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 15:31:51.12 ID:Un5ZNkGw
@wiki問題、このスレの保管庫も影響あるんじゃないか?
大丈夫なのかね。
518創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 19:21:50.30 ID:gtq6w7oz
何かあったの?
519創る名無しに見る名無し:2014/03/09(日) 20:59:28.40 ID:E8ez8Kdv
攻撃喰らってパスなどが漏れて@wikiにスクリプトを仕込まれたりしてる模様

kwskはこれを読むべし
ttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140309-00000003-rbb-sci
520創る名無しに見る名無し:2014/03/10(月) 18:23:01.84 ID:NOeKogWl
様子見に踏むのも危うそうな事言われてるね。
公式の対策待ちかな。
521創る名無しに見る名無し:2014/03/12(水) 21:08:17.09 ID:RjXER8Pm
>>514を元に序章だけは何とか終わらせてみたので投下してみる
522創る名無しに見る名無し:2014/03/12(水) 21:12:13.04 ID:RjXER8Pm
※微グロ注意
・序章
西暦1588年7月10日−−福岡防衛戦。
肉を断ち骨を砕く音が絶え間なく続き、雄叫びと銃声が木霊する。
ここは戦場。もしもこの場を俯瞰する者が居るとするならば此処は地上に現出した地獄だと評するに違いない。
何故ならば……。
「ひぃぃっ!」
乱戦の中で一人の兵が倒れ、この世ならざる異形に組み伏せられる。目の前に広がるは己の頭を一呑みに出来るであろう巨大な口腔。腐臭を伴う涎が彼の顔に垂れ落ち、叫びと共に首から上を食い千切られる。
それを間近で見てしまった別の兵は恐慌に陥り、大層な音を鳴らすだけで化物に傷一つ付けられぬ銃を投げ捨て逃げ出そうとするも、背を骨の槍で貫かれ、凄まじい膂力によって塵のように投げ捨てられた。
人ならざる者の軍団は遠く離れた陣地から降り注がれる弾雨を身に浴びるも、穿たれた銃傷は血を流す事もなく瞬く間に塞がり進軍を再開。常識の通じぬ存在に脅え混乱する兵を蹂躙していった。
523創る名無しに見る名無し:2014/03/12(水) 21:13:24.97 ID:RjXER8Pm
「化け物め!」
戦死した隊長に替わって撤退する部隊を指揮していた男が怒りに任せて腰の軍刀を抜き放ち、猿のように手足を使って追い縋ってきた小鬼の一体に斬りかかる。
刀を振り抜くと確かな手応えがあり、男は初めて化け物が苦悶の声をあげるのを耳にした。
男の胸中には驚きと困惑。しかしそれはすぐに歓喜へと変わっていった。
「倒せる……」
化け物共も無敵ではないのだと、人間にはまだ打つ手が残されているのだと。
524創る名無しに見る名無し:2014/03/12(水) 21:15:30.81 ID:RjXER8Pm
「雄ォォッ!」
知らず胸の奥から吐き出された叫びと共に、男は膨れ上がる殺気を解き放った。
自らに向けられる凶の気配を幾度となく潜り抜け、生と死の狭間を刃と一体になって舞い踊る。
誰のものとも知れぬ血飛沫が雨を降らせ、地を踏む音と風の唸り声を頼りに身を躱す。
流れに任せて刃を振るう。人型をしていても人間とは急所の概念が異なるのか、首を飛ばさずとも胴に深い斬撃を加えるだけで耳障りな断末魔の声を上げ倒れ伏す。
……どれだけの時間が過ぎたのか。
やがて白熱していた頭が冷静さを取り戻すと、辺りには腐臭を宿した煙を吐き出す小鬼の死骸と、血の池に沈み骨と臓物を覗かせる肉片が散乱していた。
早鐘を打つ心臓。乱れる呼吸。
「誰か、居らぬか……!」
返事はない。
「だれ、か」
返事はない。
「嗚呼……」
返事はない。
525創る名無しに見る名無し:2014/03/12(水) 21:19:30.95 ID:RjXER8Pm
「−−!」
男は膝を付き、薄汚れた身を逸らすと天に向かって言葉を為さぬ悲を嘆いた。
額から流れる赤が涙と混じる。
体中に刻まれた傷痕が心身の痛みと怒りを主張する。
疲労さえ上回る力がどこからか湧いてくる。
男は刃こぼれした刀を支えに立ち上がり、まだ見えぬ本陣に向かって歩き始めた。
「俺は今日この時を忘れん。必ず根絶やしにしてくれるぞ、化け物共め……」
呟き、進む。己が身を持って手に入れた化け物への対抗手段を皆に知らせるために。
526創る名無しに見る名無し:2014/03/12(水) 21:23:53.30 ID:RjXER8Pm
投下終わり
こっからこの男が持ち帰った情報を元に時間稼ぎしつつ、鬼武者の開発と信長討伐による起死回生を狙った鬼武者七人衆の特攻作戦が始まる予定
527創る名無しに見る名無し:2014/03/14(金) 02:04:24.42 ID:3NQ1ox7M
時間を置いて自分のレス読み返したら顔真っ赤になった
これがリアル黒歴史か……
528創る名無しに見る名無し:2014/03/14(金) 09:07:28.55 ID:t2qwscHU
気にするな黒歴史なんざ重ねてなんぼだ
529創る名無しに見る名無し:2014/03/14(金) 20:20:01.53 ID:+Uk9Rqir
俺もそんな時期があったなぁ
530創る名無しに見る名無し:2014/03/19(水) 12:43:59.30 ID:kKfFl8pF
お久しぶりです!でもやることは一緒w
機士の内部想像です→http://m.jgup.jp/6pKErdGABk
実際は、より複雑なフレームに内装と動力補助装置などの機器を詰め込んで、外装がつくものと考えて下さい(最終的に着膨れします)

少女機甲禄が萌えアニメならスク水ロリ娘がロボからはみ出したまま出撃する形にしますが作者に怒られますw
図はクールな原作をレ○プする直前です(私の寸止め感を察してお楽しみください)

二枚目は、操縦席をシェルに密閉、気密性を高めた別の型式案です
531創る名無しに見る名無し:2014/03/19(水) 22:19:11.61 ID:PlUcjpza
こりゃお久しぶりで。

2枚目の方が人の乗ってるとこが判りやすいですね。
1枚目のメカメカしいのも素敵です。
532創る名無しに見る名無し:2014/03/19(水) 23:45:18.22 ID:kKfFl8pF
描いてると、実際に立体をグルグル回して確かめたいことばかりで疲れます
でも有難いレスを頂いたので癒されますわ〜
533創る名無しに見る名無し:2014/03/20(木) 02:29:18.20 ID:trDwWmfZ
人はなぜこうも人型メカに惹かれるのか
534創る名無しに見る名無し:2014/03/20(木) 12:19:05.04 ID:pSKQ9XRt
仮に人型ロボ兵器が実際にあるとしたら、その現物を好きかどうかは判らないなあ
フィクションだからこそ詰まってる何か大事なものがあって、そこを汲んで描けたらいいなと思ってます
535創る名無しに見る名無し:2014/03/20(木) 23:10:06.41 ID:agv+Bp+3
皆さんロボコップはもう見ましたかね
536創る名無しに見る名無し:2014/03/20(木) 23:25:59.10 ID:1N22aLXn
興行収入がヤバイと噂のか
537創る名無しに見る名無し:2014/03/21(金) 20:40:01.08 ID:DU7yq3RV
今回のロボコップは胸にデトロイト市警のマークがあるんだね。
538創る名無しに見る名無し:2014/03/21(金) 21:34:10.74 ID:Pumes4La
予告見る限りは面白そうだから迷うわー
539創る名無しに見る名無し:2014/03/21(金) 23:43:19.27 ID:FoLOUENy
悪くはなかったぜ
540創る名無しに見る名無し:2014/03/23(日) 17:52:25.25 ID:Ws/Ln+3N
逆間接はロマン
541創る名無しに見る名無し:2014/03/23(日) 21:39:07.88 ID:cQL17kbO
お前も逆関節にしてやろうか
542創る名無しに見る名無し:2014/03/23(日) 21:54:06.86 ID:JVPI0Tr5
閣下・・・!
543創る名無しに見る名無し:2014/03/24(月) 18:48:35.84 ID:u3RcFaxi
wikiの件、鎮静化宣言が出てるね。
544創る名無しに見る名無し:2014/03/31(月) 12:42:05.79 ID:YNKgY7lm
ロボ成分です
今回はライバードの改変→http://n.jgup.jp/PsLvSql8rX
545創る名無しに見る名無し:2014/03/31(月) 19:22:55.29 ID:FUL+UExh
投下乙です。
2シーターで変形考えると、余裕無くなるよね。
装甲スカスカだろうし。
546創る名無しに見る名無し:2014/04/01(火) 02:08:02.97 ID:E/t9Jg+o
ですね、スカスカ感はかなりある
動力、知らんがな(放棄
こいつを動かすエンジンはおまえの心の中にあるとか、そういう類いの乗りものかも知れん
547創る名無しに見る名無し:2014/04/01(火) 18:49:25.92 ID:57xEUqm/
シランガナ・エンジン
548創る名無しに見る名無し:2014/04/02(水) 12:59:11.55 ID:kYfy+BFa
腕の収納、運転席に被さるフロントの移動ギミック等追って検討報告できれば…と考えてます
動力、強度、エンジン名wなどの設定についてはお察し下さい
549創る名無しに見る名無し:2014/04/03(木) 00:11:35.45 ID:TpPZyVqH
2chが寝取られたと聞いて
550クソ提督と化したPBM! ◆1m8GVnU0JM :2014/04/05(土) 03:21:37.70 ID:I+58xDHU
 てすと。
551クソ提督と化したPBM! ◆1m8GVnU0JM :2014/04/05(土) 03:23:37.41 ID:I+58xDHU
 ファッ!?
552PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM :2014/04/05(土) 03:24:35.24 ID:I+58xDHU
 うわあなんか書き込めちゃったよ! ただいま!
553創る名無しに見る名無し:2014/04/05(土) 13:46:10.95 ID:L2jU8VjG
PBMへ、ご飯は冷蔵庫に貼ってます。チンして食べてください    母
554創る名無しに見る名無し:2014/04/05(土) 22:06:59.80 ID:I+58xDHU
 長いこと帰ってきてなせいでもう冷めてるってレベルじゃねーぞ!?
555創る名無しに見る名無し:2014/04/05(土) 23:08:20.39 ID:L2jU8VjG
勢い1.3だからな、温めるのは至難の業だぜ
556創る名無しに見る名無し:2014/04/05(土) 23:40:22.35 ID:3HUZ4GWO
だれがうまいこと言えとw
557創る名無しに見る名無し:2014/04/06(日) 01:11:01.48 ID:xYuv7j2I
 いやぁロボスレのクオリティは健在だったようで何よりですね!
558創る名無しに見る名無し:2014/04/06(日) 01:22:09.97 ID:oUgyHokN
何度でも蘇るさ!
559創る名無しに見る名無し:2014/04/06(日) 02:08:03.94 ID:hMxA0k16
ロボ成分です
久しぶりにパラベラム支援想像図どうぞ→http://n.jgup.jp/nvTrROsT7G

ライバード改変Aもあるよ→http://n.jgup.jp/nSCKfAnd3A
560創る名無しに見る名無し:2014/04/06(日) 08:20:59.99 ID:QGr95Dvm
投下乙です。
車変形はやがて武器をどこに入れるのかという壁にぶつかるのだぁ。
561創る名無しに見る名無し:2014/04/06(日) 09:57:28.95 ID:oUgyHokN
タマちゃん久しぶり過ぎww
562創る名無しに見る名無し:2014/04/06(日) 11:08:00.09 ID:hMxA0k16
剣は……おまえの心から引き出すんだ! ←またそのパターンかw
だが切れ味は確かだろう
使ったら心の隙間に片付ける(適当

狐懐かしいです
パラベラム関係、やはり本家師匠の新しい動きが欲しいとこですね
タマ切れですよタマだけに(はいそこ溜め息つかない
563創る名無しに見る名無し:2014/04/06(日) 17:02:50.95 ID:oUgyHokN
リロード!リロード!(ゲーセン風に
564創る名無しに見る名無し:2014/04/06(日) 20:44:23.82 ID:xYuv7j2I
>>559
 投下乙でsんほぉかっこいいのほおおおおおおお!! らめぇビクンビクンしちゃううううううううううううううう!!
 ミサイル満載っていいですよ(*´・ω・)(・ω・`*)ネー

>>562
 すまんなぁ……しばらく忙しくて創作に手を出す余裕はなさそうなんじゃ……。
565創る名無しに見る名無し:2014/04/06(日) 21:58:41.06 ID:RmQnhAo9
566創る名無しに見る名無し:2014/04/06(日) 22:28:35.60 ID:xYuv7j2I
 40ノットで保存しました。
567創る名無しに見る名無し:2014/04/06(日) 22:29:08.45 ID:xYuv7j2I
 イィヤッホォォォォォォ!!
568創る名無しに見る名無し:2014/04/06(日) 22:35:04.42 ID:QGr95Dvm
主兵装:錨w
569創る名無しに見る名無し:2014/04/06(日) 22:49:51.42 ID:oUgyHokN
つまり甲板のように真っ平なジョインジョインハルカァ!
570創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 00:09:37.81 ID:fltg4cJn
 能代からおっぱいと身長を取り上げたら遥さんになるってそれ一番言われてるから(言われてない)。

>>568
 輸送用のドラム缶でぶん殴ってもいいのよ!

>>569
 誰がフル・フラットだって!?
571創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 00:13:08.46 ID:Y3aKHtUn
久々に俺も描いてみようかしら、ロボスレ復興支援に
572創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 00:15:54.64 ID:fltg4cJn
 いいぞぉー、どんどん書いちゃっていいんだぞぉー。

 でも容量が470超えてるから、そこには注意ね!
573創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 00:17:35.41 ID:Y3aKHtUn
安心しろ、絵だからURL分だけで済むぜ・・・!
574創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 00:49:49.50 ID:fltg4cJn
 てすてす。
575創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 00:51:11.97 ID:fltg4cJn
 おっ、携帯からでも書き込めるじゃないかぁ!(歓喜)

>>577
 絵だと……!

 これは全裸待機するしかない(^q^)
576創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 00:54:07.31 ID:fltg4cJn
 書き込めると思ったらWi-Fi繋いでるだけだったっていうオチな!

 しばらくメカ描いてないから、リハビリしないとにゃあ。
577創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 00:55:00.29 ID:Y3aKHtUn
就職して仕事忙しくて離脱してたからねー

俺も全裸で書くしかないな!
578創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 00:56:52.58 ID:V23kEfZW
UFC 102 - : アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ vs. ランディ・クートゥア
https://www.youtube.com/watch?v=tpvWLa7SJ-c

UFC 105 - : マイケル・ビスピン vs デニス・カーン
https://www.youtube.com/watch?v=KHwj_1Jn8L4

UFC 146 - : ロイ・ネルソン vs. デイブ・ハーマン
https://www.youtube.com/watch?v=qJA16o7tCt4

UFC Fight Night 31 - : ティム・ケネディ vs ハファエル・ナタル
https://www.youtube.com/watch?v=e-x0ijoxsv8
579創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 00:57:22.15 ID:fltg4cJn
 特  定  し  ま  し  た  。
580創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 00:58:13.95 ID:fltg4cJn
 なんだこの誤爆&#8265;&#65038;(驚愕)
581会社の犬とかした遅筆:2014/04/07(月) 01:00:08.55 ID:Y3aKHtUn
まぁ、俺だよ
582創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 01:00:51.45 ID:fltg4cJn
 久しいな強敵(とも)よ。
583創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 01:02:09.26 ID:lY+tTdg1
犬を溶かす…?
584創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 01:03:09.07 ID:fltg4cJn
 犬……!?
585創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 01:04:06.02 ID:Y3aKHtUn
帰ってきたぜ・・・!

良い子の皆は犬を溶かしちゃダメだぜ!愛でるのよ!
586創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 01:06:31.73 ID:fltg4cJn
 名前欄に気づかずIDだけ見てたアホはこちらになります。

 社会の犬どころか国家の犬になったロボスレ住人もいるのよ、私じゃないけど!
587創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 01:09:55.47 ID:Y3aKHtUn
まじかよ、このスレから錬金術士が・・・!?皆いろいろあったんやなぁ(遠い目

あたしゃ、ようやく仕事に慣れて余裕も出てきたぜ
588創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 01:14:02.89 ID:fltg4cJn
 三つ編みの女の子錬成してもらおう(心理の扉を蹴破りながら)
589創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 01:17:52.71 ID:Cikod7Cn
師匠とちーちゃんが帰ってきたという事は
私もそろそろ一肌脱がねばな……
590創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 01:19:27.58 ID:Y3aKHtUn
黒髪美人錬成しようぜ、禁忌?知るかよ!

>>589
誰だ貴様!(服を脱ぎながら
591創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 01:20:36.62 ID:fltg4cJn
 もうみんな脱ごう?  すべてを曝け出してロボスレは次のステージに進むのよ。
592創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 01:20:51.86 ID:Cikod7Cn
昔SSを主に書いていたとだけ
593創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 01:21:50.78 ID:Cikod7Cn
意図的にageてみる
名乗るのは何か投下してからにしたいの
594創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 01:24:24.03 ID:Y3aKHtUn
>>592
候補が多すぎる…!

実はちょっとまえに落書きは投下した、酔った勢いで
595創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 01:30:46.22 ID:fltg4cJn
 わしの最後の投下は正月の年賀状じゃよ!

>>592
 いいよこいよ!
596創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 01:33:34.53 ID:Y3aKHtUn
リハビリがてらに適当に描いてくよ

明日も会社だ!ご飯が不味い!
597創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 02:40:53.29 ID:5GMq1fUH
来たとき既に社会人だった俺に隙はなかったぜ
598創る名無しに見る名無し:2014/04/07(月) 18:07:45.12 ID:ZTQlz0gr
労働・オブ・ザ・リング〜社畜の帰還〜

>>597
やりよるわ…
599PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM :2014/04/08(火) 00:20:57.18 ID:6HZk38+i
 しかし久々にお絵かきしてみたらてんでだめだったので、四ヶ月だか三ヶ月だか前の絵をポイーしてお茶を濁す卑怯なやつが私だ。

http://download4.getuploader.com/g/sousakurobo/1744/%E4%B9%85%E3%80%85%E4%B8%80%E6%9D%A1%E3%81%95%E3%82%93.jpg
600創る名無しに見る名無し:2014/04/08(火) 00:37:43.35 ID:yUrytTGk
むちむちのおふともも
601創る名無しに見る名無し:2014/04/08(火) 04:55:20.24 ID:zLs76WsK
気づいたら爆睡してただと…!?

>>599
さすがに何ヶ月単位で書いてないと錆びつくわなww
師匠の絵が久々すぎてワロタww
602創る名無しに見る名無し:2014/04/08(火) 05:05:27.76 ID:zLs76WsK
俺も離脱する直前の貼っとくかー…と思ったらそれが18禁絵で貼れないという数ヶ月越しのトラップが発動した…
603創る名無しに見る名無し:2014/04/08(火) 09:53:38.94 ID:8znFn1lM
なら島に貼ればいいんじゃないかな(笑顔
604創る名無しに見る名無し:2014/04/08(火) 12:58:12.56 ID:2o5ZCD34
今調べたら島が無くなっててそのことにビックリしている
605創る名無しに見る名無し:2014/04/08(火) 13:08:12.77 ID:8znFn1lM
いやあるよ!w あるよ!
606創る名無しに見る名無し:2014/04/08(火) 13:30:54.88 ID:6HZk38+i
 えっなに島沈んだの!? って思って調べたら普通にあってほっとしたでござるのマキ。
607創る名無しに見る名無し:2014/04/08(火) 17:51:51.99 ID:zLs76WsK
嘘だと言ってよバーニィ!

嘘だったでござる
なるほど島があったなそういえば
608創る名無しに見る名無し:2014/04/08(火) 18:18:34.55 ID:zLs76WsK
おk、不沈艦に爆撃してきたわ!
609創る名無しに見る名無し:2014/04/08(火) 18:55:42.40 ID:1XCZcZOq
見てきたよー。
眼福だったよー。
やはり恥じらいは良いものだよー。
610創る名無しに見る名無し:2014/04/08(火) 19:54:27.85 ID:zLs76WsK
>>609
そう、はじらいこそがエロス、エロスの8割は恥じらい…!!(力説
611創る名無しに見る名無し:2014/04/09(水) 00:26:00.83 ID:Go7Wa25I
 見てきた。とてもけしからんかった。
612創る名無しに見る名無し:2014/04/09(水) 12:53:07.93 ID:v/BdtyVf
こんな爆弾乙パイ桃色チクビ娘から
「ねえ、今日は仕事いかないで、昨夜の続き…しよ?」
って言われたいわ!(言われたこと? ねーよw さ仕事仕事w
613創る名無しに見る名無し:2014/04/09(水) 18:39:36.54 ID:XBCyFEz9
>>611
けしからん絵楽しいです(^p^)

>>612
むしろ仕事を辞める勢い
まぁ、辞めたら人生詰むんだけどね!
614創る名無しに見る名無し:2014/04/09(水) 20:19:51.46 ID:sKEwhx4/
筆が進まねぇ…気づいたらラインバレルを読破してる始末…
615創る名無しに見る名無し:2014/04/09(水) 23:30:18.48 ID:bJIEkxla
なぁに、きっとロボ描写に役に立つ日が来るさ
616創る名無しに見る名無し:2014/04/10(木) 01:15:41.23 ID:NRJEmBqS
一方俺は人機読んでエロパロに出張した
617創る名無しに見る名無し:2014/04/10(木) 23:01:32.27 ID:L5pQN7U0
 そして風邪をひいてダウンする私。

 スパロボ……スパロボやりたいのに……!
618創る名無しに見る名無し:2014/04/10(木) 23:25:17.67 ID:pMaUQQK5
ヒャッハー!風邪には生姜湯だぁー!

かく言う私は花粉症でね、ズビズビ言いながら描いとるよ
619創る名無しに見る名無し:2014/04/11(金) 12:55:09.49 ID:e5zUYOL9
 花粉症はつらかろう……。
620創る名無しに見る名無し:2014/04/11(金) 18:01:19.39 ID:TXQlVbzI
仕事中は仕方ないから薬のんですけど超眠くなるよ……。
621創る名無しに見る名無し:2014/04/16(水) 23:49:01.69 ID:LG7Cnol4
 そういやスレ立てってレベルとやらがないと無理なんでしたっけ。久々すぎて2ちゃんのこと全然覚えてないです(^q^)
622ちんたらやってる筆
奇遇だな、私もだ