ここは様々な作品のキャラを使ってバトルロワイアルの企画をリレー小説で行おうというスレです。
みんなでワイワイSSをつないで楽しみましょう。一見さんも、SSを書いたことのない人も大歓迎。
初投下で空気が読めないかもしれない? SS自体あまり書いたことがなくて不安?
気にせずにどうぞ! 投下しなくちゃ始まりません。
キン肉マンのラーメンマン先生曰く「最後に勝負を決めるのは技(SSの質)ではない! 精神力だ! 心だ!」
リレー小説バトルロワイアル企画とは……
原作バトルロワイアル同様にルールなし、特定会場で最後の一人が生き残るまで続くという企画です。
キャラをみんなでリレーし、交わらせ、最後の一人になるまでリレーを行う、みんなで物語を作るスレです。
ここしか書けない、このキャラしか書けないという人も分かる範囲で書けるし、
次どうなるかを期待して次の人にバトンを渡すこともできます。
全ての作品を知りつくてしなければ参加できない企画ではないので、興味が沸いたらぜひ参加を!
詳細ルールに関してはこちらを
ttp://www44.atwiki.jp/tarowa/pages/13.html 〜予約、トリップについて〜
予約する際はトリップをつけてしたらばの予約スレに書き込んでおいてください。
トリップのつけかたは、名前欄に #の後に半角8文字以下、全角4文字以下の好きな言葉を打ち込んで書きこんで。
したらばに予約するのは、「他の人が書いてるから避けよう」という心理を利用し、予約だけして放置することで
企画を妨げる「予約荒らし」という行為を防ぐためです。予約期間は5日(120時間)ですが、
間に合わないからもうちょっと伸ばして!という報告があればさらに2日予約期間を追加(48時間)できます。
したらば(予約などいろいろな時にご利用を)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11918/ wiki(まとめサイトです)
http://www44.atwiki.jp/tarowa
★キャラクター能力制限★
・シャナ@灼眼のシャナ、C.C.@コードギアスは再生能力を落とす&急所(頭)をぶち抜かれたら即死。
・ルルーシュ・ランペルージ@コードギアスのギアス能力は、「死ね」「殺せ」など、 直接相手や自分の生死に関わる命令は無効。(「死ぬ気で頑張れ」などはあり)
・らき☆すたキャラのオタ知識、ラノベ知識は制限。
・仮面ライダー龍騎キャラのミラーワールドへの侵入禁止。
・ローゼンメイデンキャラのnのフィールドへの侵入は禁止。
・泉新一@寄生獣はミギー付き。
・シャナ@灼眼のシャナの封絶は禁止。
・雛見沢症候群@ひぐらしのなく頃には、まあ、空気読む方向で。
★支給品としてのアイテム制限
・KMF@コードギアスなどのロボ系は禁止。
・仮面ライダー龍騎キャラには、自分のカードデッキを支給品枠2つ分としてカウントして支給。それ以外のキャラに支給される場合は支給品1つの扱い。
・デスノート@DEATH NOTEは禁止。
・サタンサーベル@仮面ライダーBLACKはシャドームーンから没収&世紀王の呼び寄せ禁止。
・カードデッキの変身は10分で解除。
・カードデッキは変身すれば1時間、ファイナルベントを使えば更に1時間使用不可となる。
3/6【コードギアス 反逆のルルーシュ@アニメ】
● ルルーシュ・ランペルージ/○枢木スザク/○C.C./ ● ロロ・ランペルージ/ ● 篠崎咲世子/○ジェレミア・ゴットバルト
1/6【ひぐらしのなく頃に@ゲーム】
● 前原圭一/○竜宮レナ/ ● 園崎魅音/ ● 北条沙都子/ ● 園崎詩音/ ● 北条悟史
1/5【スクライド@アニメ】
● カズマ/ ● 劉鳳/ ● 由詑かなみ/○ストレイト・クーガー/ ● 橘あすか
1/5【らき☆すた@漫画】
● 泉こなた/○柊つかさ/ ● 柊かがみ/ ● 高良みゆき/ ● 岩崎みなみ
2/5【るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-@漫画】
● 緋村剣心/ ● 斎藤一/○志々雄真実/ ● 瀬田宗次郎/○雪代縁
2/4【仮面ライダー龍騎@実写】
○城戸真司/○北岡秀一/ ● 浅倉威/ ● 東條悟
0/4【ルパン三世@アニメ】
● ルパン三世/ ● 次元大介/ ● 石川五ェ門/ ● 銭形警部
1/4【ローゼンメイデン@アニメ】
● 真紅/ ● 水銀燈/○翠星石/ ● 蒼星石
1/3【ガン×ソード@アニメ】
○ヴァン/ ● レイ・ラングレン/ ● ミハエル・ギャレット
0/3【寄生獣@漫画】
● 泉新一/ ● 田村玲子/ ● 後藤
0/3【ゼロの使い魔@小説】
● ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール/ ● 平賀才人/ ● タバサ(シャルロット・エレーヌ・オルレアン)
0/3【バトルロワイアル@小説】
● 稲田瑞穂/ ● 千草貴子/ ● 三村信史
0/2【相棒@実写】
● 杉下右京/ ● 亀山薫
1/2【仮面ライダーBLACK@実写】
● 南光太郎/○シャドームーン
1/2【真・女神転生if...@ゲーム】
● 男主人公/○狭間偉出夫
0/2【DEATH NOTE@漫画】
● 夜神月/ ● L
1/2【TRICK@実写】
● 山田奈緒子/○上田次郎
0/2【バトルロワイアル@漫画】
● 織田敏憲/ ● 桐山和雄
0/1【ヴィオラートのアトリエ@ゲーム】
● アイゼル・ワイマール
0/1【灼眼のシャナ@小説】
● シャナ
15/65
4 :
創る名無しに見る名無し:2012/11/10(土) 23:05:56.22 ID:NJGWgqzy
スレ立て乙です
>>1 乙です。
ここまで来てまとめを何度も読み返してるが、どのキャラも濃くていいね。
特にスクライド勢の男性陣はどれも熱い生き様だと思った。
かなみも上田先生のオプション兼マジキチ測定器としてキャラが立ってたし。
>>1 スレ立て乙です
序盤から暴れてた浅倉や後藤が落ちるとなんかもう多ロワも終盤だなぁって感じるわ
浅倉は殺害数が少なかったのに関わらず
後藤と遜色ない強さを感じたなあ
スレ立て乙です
10 :
創る名無しに見る名無し:2012/11/12(月) 14:56:08.08 ID:POcQ1eVt
>>1 スレ立て乙です
ヴァン、真司、上田教授、クーガー兄貴、ジェレミア卿、北岡先生、狭間と残った男の対主催のおっさん臭さがすごい
狭間が優男なだけじゃないか
11 :
創る名無しに見る名無し:2012/11/12(月) 20:24:05.14 ID:ypf4K4fM
>>1 スレ立て乙です
クーガーにパラサイト同化ってヤベェな、元々アルター無しでも常夏が知覚できないのに
新一なみのスペック強化が付いたら影月にも勝てそうだ
>>11 次の予約にクーガーは入っていない…
あとはわかるな
それにしても影月の発光現象って北岡達と縁達にも感知されてるんじゃ?
主人公で残ってるのは真司とヴァンと上田の3人かー
主人公不在の作品もあったとはいえだいぶ減ってるなー
ヒーローキャラ:ヴァン、真司、上田
ヒロインキャラ:つかさ、レナ、C.C.
ライバルキャラ:縁、スザク
大ボスキャラ:シャドームーン、志々雄、ハザマ
脇をしめるキャラ:クーガー、翠星石、ジェレミア、北岡
並べてみると残ったキャラのバランスは順当すぎるバランスだなぁ
女の子が少なめ成人男性多めってぐらいか
翠星石がヒロインではなく脇に入ってるのはツッコミを入れるべきなのか…?www
正直、C.C.、シャドームーン、上田以外は
ここまで生き残るとは思わなかった
真司って他のロワだと、だいたい中盤くらいで死ぬからなぁ…
ていうか、龍騎勢はマーダー二名だけ死んで対主催二名だけ生き残ってるんだね
へ、平成ライダーだとまだ生き残ってるから(震え
もし秋山が参加していたらマーダーになったかねー?
それにしてもルパン勢、相棒の全滅はショックだなー
ルパン達ならTVSPの如く華麗にロワを解決してくれる、
そう考えていた時期が私にもありました
次元もルパンも頑張ったし
五ェ門先生はアニ1の鬱憤を晴らすほど活躍したから満足
とっつぁんは・・・いつか放送越せるといいね
>>16 翠星石はローゼン勢の全能力使えるから、強すぎてヒロイン張るにはちょっと……
ルパンは間接的にクーガーの命を救ったからな
それにしても上田先生のみならず、『疑惑の男』北岡先生や
『V.V.公認ボッチ皇』狭間や第二次被対主催包囲網トリオの
レナ・ヴァン・C.C.の5人がここまで生き残っているのは胸熱だな。
スザク・北岡・狭間以外全員どっかで後藤か影月に接触してるんだよなぁ
みんないつ死んでもおかしくなかった
正直C.C.は原作で不死キャラってのもあってもっと早く落ちると思ってたわw
ルルーシュが早期退場しなかったらそうなってたんじゃないかな。
あとハザマも蒼嶋が縁に負傷させられなかったら中ボスになってたと思う。
そう言えばもう終盤になってるのに、C.C.はまだ自分が不死じゃなくなったって気付いてないんだよなw
それ気付いたらどう行動するんだろ
集計お疲れ様です。
多ジャンル 157話(+ 14) 15/65 (- 10) 23.1(- 15.4)
前スレ、一か月ちょっとで消化したんだな
一月で10人も逝ったのか
どうりで怒涛の展開と感じるわけだ
このロワに影響されて龍騎をまた視聴したんだが
ローゼンのnフィールドとミラーワールドを絡めたのは上手いと思った
ていうか、神崎兄妹とは別にミラーワールドって元からあるのな、あの作品
>>28 翠星石の影月や後藤のパワー制限はギアスによるものだったけど
C.C.の不死もギアスで制限?うーん・・・C.C.だけ首輪による制限なんかね
あと未成年男子もそれなりに参加してたのに次々と脱落していったな
本当に怒涛の投下ラッシュだったよなぁ
マーダー四天王のうち三人がこの二ヶ月で落ちたとか信じられん
そして仮予約が本予約になったあああああああああああああ!!!!
>>34 首輪で制限されてたんなら首輪外れたんだからC.C.もう死ななくね?
まぁそれはなさそうだからギアス+会場全体に何かしらの方法でっていう扱いになるのかしら
しかしここでクーガー痛恨の一人予約はずれ
どっちも激戦の予感だしまた人を救うには兄貴スロウリィな予感がする・・・・・・w
後藤を倒してくれただけマシでしょ。
影月戦、鷹野戦後に後藤や桐山が残っていたらと思うとゾッとする。
それよりも作戦立案や考察ができるLの脱落が痛い。
上田さんが作戦立案、考察してくれるから大丈夫(震え声)
無理言うなwwwww
上田さんはぶっつり学者で日本技科大の教授で頭がいい上に多人数戦闘にも慣れているし女性関係には奥手だけど高身長の甘いマスクっていうモテる要素満載だからいざという時なんとかしてくれる
HAHAHA、なんだ、こうやって特徴を書くとなんか最低系のラノベ主人公みたいじゃないか!
なんとなくこれまで出たマーダーを挙げてみた。
シャドームーン、縁、スザク(洗脳)、志々雄(三村殺したので)
後藤、水銀燈(一応優勝狙い)、シャナ(実質マーダー)浅倉、桐山
田村玲子(一時期殆どマーダー)みなみ(ほぼ一瞬)、詩音、こなた、ロロ
宗次郎、レイ兄さん、東條、圭一、ミハエル
才人、織田様、城戸(初期のみライダー限定)、つかさ(初期のみギアス下)
参加者の3分の1を越えるマーダー率だった。
企画的に実にいい感じ。
>>33 ミラーワールドとは別にミラクルワールドもあるからな
ローゼンメイデンが再アニメ化決定だと!?
あぁ 驚きだよ!
原作を軸にするのかな
城戸真司、翠星石、ヴァン、C.C.、上田次郎、シャドームーン
投下します。
不規則に煌めく原色のネオン。
汚物の掃き溜めとなった路地。
無計画に放棄された薄汚いビル。
醜い人間の街が、月の光に青ざめている。
シャドームーンは市街地を歩いていた。
生物の気配はない。
滅びた街に、足音だけが響く。
カシャン、カシャンと。無抵抗の空気が奴隷のように音を運ぶ。
兎顔の道化を始末してから、生き物が死に絶えたかのようだ。
キングストーンを強制的に召還したことによる疲労はほぼなくなっている。
位置を探ることはできないが、世紀王の力は盤石だ。
これがある限り、石はいずれ自らシャドームーンの手に収まることを望む。
それは、そう遠くのことではない。
シャドームーンに刃向かう人間共を抹殺する。獲物は向こうからやってくる。
シャドームーンが敵と認めた者たちが、愚かにも死に急いでいる。
戦いは近い。
王者は静かにその時を待つだけでいい。
強者の意思は、更なる強者によって踏みにじられる。
それが、いかなる奇跡にも覆すことのできない、この世の真理なのだから。
シャドームーンは凍りついた世界を歩き続ける。
カシャン。カシャン。カシャン。カシャン。カシャン。カシャン。
◆ ◇ ◆ ◇
C
鞭のような苦しみに全身を引き裂かれそうだった。
腹の底が火を飲んだように熱くなっている。
焼かれた体の内側が、逃げ場を求めて爆発しそうだ。
両腕が抑えきれない衝動の引き受け先を求め震えている。
喚き散らす子供のように、何もかもぶちまけてしまいたい。
頭をかきむしり、嫌な記憶を元から削ぎ落としてしまいたい。
責めるように見下ろすもう一人の自分に、仕方なかったんだと許しを乞う。
全て、耐えるしかない。
また人が死んでしまった。
城戸真司は龍騎のデッキを両手で握りしめていた。
パスケース状のデッキにすがるように背中を曲げ、額を押し付ける。
ライダーに変身する力を持ちながら、仲間を助けられなかった。
Lを死なせてしまった。
あのとき真司を押しとどめたのがLの本意だったとしても。
その結果自分の身が危険にさらされることを、あの真司より何十倍も良い頭で理解していたとしても。
この状況がLの用意した最善のものだったとしても。
死にたかったはずがないではないか。
あのとき真司が迷わずライダーになっていれば。
どこにいるかもはっきりしないシャドームーンより目の前の後藤を優先していれば。
頭が良く、少し得体が知れない所はあったが、強い意志と正義を持っていた仲間を、失わずに済んだかも知れない。
真司の正義はまた破れてしまった。
車内では、真司の膝程しかないエプロンドレスの人形、翠星石が泣いている。
色の違う瞳から止めどなく涙を流し、動くことのない姉妹の体を抱き抱えている。
失ったものへの嘆きは消えそうもない。
黒い羽根と銀髪を持つ人形、水銀燈。翠星石の姉妹の数少ない生き残りさえ、真司は守ることができなかった。
欠けた蛇口から吹き出る空気のように乱れた悲鳴を、重苦しいエンジン音が隙間なく埋めていた。
真司は唇を噛みしめる。
助手席の男は、扉にもたれた形のまま動かない。
上田は無言のまま、遅い速度で車を操っていた。
誰も死なせない。誰も殺させない。誰も泣かせたりなんかしない。
炎の中で誓った正義は乾いた紙のように容易く燃え落ちた。
何度も何度も。事態は真司を嘲るかのように残酷な方へ転がっていく。
真司は無力だ。そして遅い。
だが。
それでもなお最速であろうとする男を、真司はもう知っている。
「……な、泣くのはここまでです……!」
支援
支援
支援
支援
目の端に残る涙を拭いながら翠星石が立ち上がった。
伏せていた顔を上げる。ルームミラー越しの上田が気遣うように様子を見ていた。
「あんまり泣いてると水銀燈や真紅たちにも笑われるです。
す、翠星石まで頼りねぇ奴だと思われるのはま、まっぴらごめんです……!」
「翠星石……」
泣きはらした目。震える声。強く握られた拳。
明らかに無理をしている。
「お、お前もいつまでぼさっとしてやがるですか! 翠星石たちにはやることがあるです!
めそめそ泣いてる暇なんかこれっぽっちもないんですよ!」
「いってぇ!? お、お前何も殴ることはないだろ!」
背中を叩いた翠星石の手はその大きさからは想像できないくらい痛かった。
「あんまりみっともない顔してるからお灸を据えてやったです! ちょっとはシャキっとしろです!」
フンと鼻を鳴らしそっぽをむく。
少しだけ間を置いて、つけ加えるように続けた。
「……そこの人間だって、翠星石たちを悲しませるために死んだんじゃねぇんです……」
「翠星石、お前……」
翠星石は無理をしている。
だがそれだけではない。真司には分かった。
無理をして、砕けそうな心を必死に押し殺し、力尽くで前に進もうとしている。
背中に残る痛みは翠星石の焼け付くような悲しみそのものだ。
ひりひりとした刺激がデッキを握る手に力を与える。
膝を抱えて泣き言を言うのは簡単だ。
仲間を失うことは悲しいに決まってる。
しかし、今求められているのは足を止めることではない。
そんなことのために、仲間は死んだわけではない。
そんなことのために、真司はライダーになったのではない。
真司が掴んだ『正義』は、そんなこととは真逆のものだ。
真司は、何度取りこぼそうと己の道を曲げない男の姿を思い出す。
嘆くのを止めて、翠星石は意思を押し通した。
エゴにも似た強い意思が人の身を変える力になったのだ。
支援
支援
支援
「……そうだな。翠星石の言う通りだ!
まだシャドームーンがいるんだ。いつまでも弱気になっていられる場合じゃないんだよな!」
「そうです! 翠星石がその気になったらあんな銀色オバケイチコロです!
目玉なんかきゅうりみたいにひっぺ返してやるです!」
「お、俺なんか、あいつの悪趣味な剣ぶんどってお箸にしてやるからな!」
「中々いいセンスです〜。お前も少しは翠星石のような教養が身に付いてきたとみえるです〜」
「あったりまえだろ! 怖いと思うから余計怖くなるんだ!
今度会ったら前みたいにはいかないんだからな!」
「翠星石たちが負けるわけないんです!
ぎたぎたにしてやるから覚悟しとけですよ!
だから……」
「だから?」
止まっていた時間を吹き飛ばすような決意を打ち切り、翠星石は瞳を伏せた。
「だから、水銀燈は安心して眠っていればいいですよ……」
お前のプライドは翠星石が取り返してやるです。
過ぎた日々を想う小さな声で、そっと続けた。
胸の前で、祈るように細い手を重ねる。
遠いどこかに語りかけるような、慈しみに満ちた姿だった。
「真紅たちと仲良くするんですよ……」
支援
支援
支援
目を閉じる翠星石を前に、真司は心に火が灯るのを感じた。
(何度失敗したって俺は俺なんだ。やれるとこまでやるしかない)
どうしたところで真司は全力でぶつかることしかできない。
右京の正義に適うかも分からない。でもやるしかない。
次に会ったとき、またクーガーに泣きつくようなことは死んでもゴメンだ。
少なくとも、今の真司には力がある。
誰かを守るために手にした戦う力だ。
悩んだところで真司の『正義』は、がむらしゃらに体を動かすことでしか手に入らない。
そのことを、真司はようやく思い出すことができた。
「ドゥオ!? なに、それは本当か……!?」
運転席から野太い声がした。
見ると、いつの間にか上田側の窓が下ろされている。
叩きつけるような風圧が威勢を良くし、真司たちをせき立てる。
どうやら、外の二人が何かを伝えようとしているらしい。
顔を出した上田が早口で話すが、荒々しい走行音にかき消されて真司の耳には届かない。
聞こえるのは上田の怪人めいた驚きの声だけで、これで良い想像をしろというのは無理な相談だった。
「ど、どうしたんだよ上田さん。血相変えちゃって。な、何かあったんですか!」
「い、いいか二人とも。冷静に、冷静に聞くんだぞ。
こういうとき、最も危険なのは焦って冷静な判断力を失うことだ……!」
「もったいぶらずに早く言いやがれです」
翠星石もしびれを切らしていたらしい。ばっさりと切り捨てた。
少し前から何となく分かっていたことだが、上田はその恵まれた風貌や体格に反して、どうやら、かなりの怖がりらしい。
それだけに、焦らすような形で出し惜しみされると真司にまで恐怖が伝わってしまう。
先を求めると、上田は今にも気を失いそうな声でこう言った。
「シャドームーンが、この近くまできている……!」
一度はやわらいだ空気が、鏡を軋ませたような狂った音を立てた。
◆ ◇ ◆ ◇
支援
C
支援
「確かなのか、ヴァン?」
「ああ……? こいつがそう言うんだから、そうなんだろうよ」
「機械と話ができるとはな。知らなかったぞ」
「そんなんじゃねぇ。ただ、他に説明がつかないだろうが」
ひとまず、身を隠せる場所で対策を練ることになったらしい。
ビービーとうるさいバイクのハンドルを握りながら、ヴァンの目は眠たげなままだ。
あの銀色の野郎が近くにいる。
バイクがそう言ったわけではないが、いきなり耳障りな音で鳴き出したのだから、そういうことなのだろう。
確認のため聞くと、鳴き声は少し聞きやすいものに変わった。
このバイクは元々奴の物だったというし、だったら分かることもあるのだろう。
「あちらは大分盛り上がっていたようだが、弔い合戦、ということになるのかな……?」
同乗する女がヴァンの背中にささやいた。服が黒い。
名前はさっき覚えた。忘れたわけではない。今すぐには出てこないだけだ。
あちらの騒ぎはヴァンも見ていた。結構なことだ。
やる気のある奴が多ければ、ヴァンの仕事もやりやすくなる。
「関係ねぇよ。あんたはあの銀色の奴とやろうってんだろ。俺は単なるその護衛だ」
「そうかな……? にしては、えらくやる気になっているじゃないか、ヴァン?」
「けっ……」
あのとき、ヴァンの見たイメージは一つではなかった。
親友との強制的な別れ。
怪しげな儀式。改造される体。
家族と思しき人間からの拒絶。
無くしたはずの心が、僅かに揺れる瞬間。
非道の限りを尽くす化け物が、確かに人間だったことを知るのはヴァンだけだ。
だから、どうということはない。
多少記憶を覗き見たくらいで、何かを分かった気になるつもりはない。
お互い様だろう。
邪魔をするなら倒すだけだ。バイクも返さなくてはならない。
何があろうと、ヴァンのすることは変わらない。変わらないのだが。
「ま、ちょっとばかし気にいらねぇのは確かだな……」
傾きざま、テンガロンハットに結ばれたリングが、苛立つようにチリンと鳴った。
◆ ◇ ◆ ◇
そっか、縁だけじゃなくて影月とも……
支援
上田次郎は天才物理学者である。
神に愛されたとしか表現しようがない頭脳と、一流の武道家にも引けを取らない屈強な肉体を合わせ持つ。
当然外見も優れている。
美醜などささいなことだと考えているが、上田のそれがダビデ像のように完璧な均整を誇ることは、客観的事実として認めざるを得ないところだ。
さらに、それら類い希な才能に溺れることをよしとせず、日々己を磨くことにも余念がない。ストイックな精神はさながら修行者である。
そう。上田には数え上げれば十指に余る輝かしい才能がある。
若くして日本科学技術大学の教授として招かれたことなど、上田の才能を凡人にも分かりやすく証明する好例と言えるだろう。
にも関わらず、上田は決して驕らない。
上田の才能は、例えば物理学一つとっても、凡人ならその人格、人生を歪めてしまいかねない強大なものだ。
行き過ぎた力は時に危険とさえ言える。
事実、上田はなまじ才能があったせいで道を誤ったインチキ霊能力者を何人も見てきた。
自らの能力を愚かにも人を騙すことに使った哀れなペテン師たちは、
真実の徒である上田の追求をかわしきれるはずもなく、次々と醜い正体を晒していった。
もし彼らに、上田の半分、いや十分の一でも人を愛する心があったら。
そう思わずにはいられない。
上田にできるのは起きてしまった事件を完膚無きまでに解決することだけだ。
後には、いつも苦い気持ちが残る。
上田は悪を憎むが、同時に人の弱さを知っている。
いかに上田次郎といえど、すべての人間を救うことはできない。
神の如き才能とは、つまり神ではないということなのだ。
そのようなとき、上田は己の無力さを嘆くことを止められない。
そして、その度ごとに、上田は天才として生まれた者の決意を新たにするのだ。
せめて自分だけは、この才能を正しいことに使おう。
それが栄光と共に生まれてしまった者の務めなのだから。
この謙虚さ。
これこそが、上田を上田次郎たらしめている最も素晴らしい才能なのだ。
少なくとも、自分ではそう思っている。
さて。
そのように、人々の尊敬の視線を集めて止まない、
必要のない場面でさえ記さずにはいられない溢れるカリスマ性を持つ、天才上田次郎であるが。
状況は、その上田をもってしても、楽とは言い難いものだった。
「本当なのかよ! シャドームーンが近くにいるって!」
支援
支援
そこまでにしとけよ上田w
真司が叫ぶ。
緊急の作戦会議は名もない小さな診療所で行われていた。
こういう場所には病院程ではないにせよ、一時的な遺体の安置所が設けられている。
Lの体は今そちらに移されている。口を開くことを止めた仲間が少しでも休めるように、上田が運んだのだ。
志を同じくした仲間との別れは上田の心にも爪痕のような痛みを残している。
Lという少年は、別れるには辛すぎる人物だった。
上田から見ても優秀だと断言できる頭脳と、何より強い正義感を持っていた。
加えて、上田には警察署で共に死線を潜った者としての奇妙な連帯感もある。
どことも知れない場所に放置することに上田はもちろんそれ以外の者も納得したわけではない。
水銀燈の体は鞄に安置しまだ車の中だ。だが彼の場合はそうもいかない。
何より、亡骸を連れ回すことを許さない過酷な現実があった。
シャドームーンという、上田の波乱に満ちた生涯でも最強の敵が。
「まぁ……間違いないだろうな。私たちの使っているバイクは元々奴の物だ。何らかの通信機能が備わっていても不思議じゃない」
「だったら迎え撃てばいいじゃないか! 迷ってる時間なんてないんだ!」
「ここにいる全員でか?」
真司の反論がブレーキを踏んだかのように止まる。
このC.C.とかいう女性のミステリアスな美しさに呑まれたわけでもあるまい。
上田には彼が答えを探すように目を泳がせている理由が分からなかった。
確かに敵は強大だが、ここにいる者は皆戦う理由を持っているように見える。
わざわざ士気を下げる理由はない。
現に上田も、先程から、どうしようもないくらい武者震いが止まらないのだ。
「ヴァンや変身できるお前はともかく、そこの人形はどうだ? 戦えるのか?」
「翠星石をバカにすんなです! 止められたって行くです!」
噛み付くようないい答えだ。彼女も満足したらしい。
上田もその意気には感じるものがある。
人形を名乗る彼女に関する物理学上の多くの問題は、今は詮索せずともよいだろう。
問題は消えた。そのはずが、C.C.は続いて妙なことを言った。
「では……『こいつ』はどうだ?」
その瞬間、理解しがたいことに、全員の目が上田を向いた。
支援
支援
支援
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「あー……」
「まぁ……」
「ちょっと考えてしまうですね」
「な、何だ……何故皆して私を見る……?」
その視線と、意図が明瞭でない非文明的な言語の意味を察することができない。
天才故の孤独といったところか。
凡人のレベルに合わせるのも技量の内とはいえ、上田クラスになるとやはり限界がある。
いや、考えてみると、これは演説においても指折りの実力を持つ上田に、何かを期待しているのではないか。
出陣を前に、全員の心を強くまとめあげるような言葉を求めているということか。
間違いないだろう。ならば、断る理由はない。
次々と失われていく仲間。
人を人とも思わぬ殺戮者。
それらを未だ打開できずにいる上田自身。
物理学者として、それ以前に一人の人間として、現状に強い憤りを感じていることは、紛れもない事実なのだから。
「私は……」
「上田さんは無理しなくてもいいと思うな」
「な、何!? やはり君もそう思うか……!」
全人類の財産たる上田の頭脳を気遣った発言に、感動の余り頷いてしまった。
「シャドームーンの強さは皆分かってる。俺だって怖い。ライダーの力があるから、何とか逃げずにいられるんだ」
「お前がどうしようもないビビりだってことは皆分かってるです。ここは翠星石たちにどーんと任せておくです」
「まぁ……的になりやすいしな。こう、大きいと」
表現にはクセがあり内容にもかなりの誤解が含まれている。
だが、上田を、引いては日本物理学会の未来を案じる彼らの言葉は疑いようのないものだ。
ここは、彼らを信じ、潔く道を譲るのが、上に立つ者の務めではないだろうか。
「……まったく、お優しいことだな」
支援
支援
支援
支援
支援
C.Cが言った。
上田が持ち前の柔軟な思考で出した結論を阻むかのようなタイミングだ。
言葉が、喉元で妙な音を出して引っ込んでしまったではないか。
彼女の声が呆れたような色を帯びていたのは気のせいに違いない。
ここは上田をはじめとする一同の勇気と団結力を称える場面である。
さすがの上田も鼻白む。
ところが、彼女はそれさえ無視するように集められていた荷物に近寄り、中の一つを手に取った。
拳銃を一丁取り出し、流れるような手さばきで幾つかの操作を行う。具合を試すように手の平で弄び、肩の高さで構えた。
かなりかっこいい。
「私は行くぞ。やられっぱなしでいるのは性に合わん。この男を見て決心がついたよ。こんな……」
針のような視線。
「臆病な」
棘のある言葉。
「役立たずの」
刺さる笑みは上田を内側から容赦なく傷つけ。
「無駄に大きくて使いどころのない」
触れてはならない部分を的確に刺激した。
「経験不足の男と一緒にされてはかなわんのでな」
「な、何を、私に一体何の経験が不足していると言うんだ!
言っておくが決してチャンスがなかったわけじゃないぞ!
ただ、私程の人間になると相手を選ぶときにも熟慮に熟慮を重ねてだな……!」
「何を勘違いしている? はぁん? お前まさかその年で童……」
「ハァーッハッハッハ! さぁ、皆そろそろいいだろう!
心の準備は大切だが何事にも頃合いというものがある!」
上田の本能がかつてないレベルで発した警報を受け、両足がタキオンよりも早く跳ね上がった。
脊髄に全てを委ねまくし立てる。その速度は、上田の理解さえも越えたものだった。
「なぁに、シャドームーンも生物である以上必ず急所があるはずだ。私は一度奴を見ている。
この天才、上田次郎の目を二度も誤魔化せる者など、いるはずがない。
ハァーッハッハッハ! さぁ、皆さんご一緒に……」
どーんとこーい。
誰も乗ってくれなかった。
沈黙。色のない目。
初恋に落ちた少女のように、不思議と胸が痛い。
支援
支援
支援
しえん
支援
どーんとこーい
「……まぁ、私一人が安全な場所に居るわけにも行かないだろう」
浮いた腰を落とし、両手を組む。
少なくとも、安全な場所に居たいと思う気持ちと同じくらいには、本心である。
戦略的撤退。手としてはそれもあり得るだろう。
だが、仮に、あのLという少年が生きていたならば。
そのような手を有効と認めるだろうか。
上田の一切を否定するような、この無力感は何なのか。
上田は知らない。
何より。
「友人を無くしているのは、私も一緒なんだ」
◆ ◇ ◆ ◇
支援
どーんとこーい
上田ぁ……
支援
上田先生がカッコ悪いカッコイイ状態……!
本来なら語る必要もない、ほんの些細な、幕間の出来事である。
安全な場所に居ればば良かったと上田は死ぬほど後悔した。
同行は晴れて許可された。今は出発前の最後の安息のときだ。
診療所のトイレで用を足す。ついでに深い意味はないのだが、窓から外に出るのは可能か確認した。
無理だった。上田の体格ではとても通らない。
おまけにすぐ外は石塀になっており、木が邪魔する庭には入る隙はなかった。
急な休息を求めた体が意識を落としそうだ。
深い意味はないのだが。
仕方なく、小汚いトイレを後にする。
途中、安置所の前を通りがかった。
狭い診療所だ。全ての部屋は一本の廊下で繋がっている。
安置所の戸は開いていた。
最初にLの亡骸を運んだとき、うっかりそのままにしていたらしい。
確かに閉めた記憶はなかったので、別段不思議がることもない。
極めて物理法則に適った現象だ。
中で眠るLの血の気を無くした体が、二度と動くことがないことまで含めて、悲しい程に理に適っている。
感傷はよそう。上田にはやるべきことがある。
その前に、一応この窓の様子も確認させてもらおう。
上田は安置所の中を大股で横切ると窓に手をかけた。
結果は変わらない。この診療所は敷地のほとんどを使って建てられているらしく、庭と呼べる程の空間はない。
育つに任されている細い木々が、またしても上田を笑っていた。
「む……」
違いがあるとすれば、その枝の間に石のようなものが挟まっていたことだろうか。
手を伸ばすと目で見るよりも遠い。無理をしてやっと届く距離にあった。
上田の手に収まる程度のそれは、
人の手によるものとも思えない滑らかな球体で、太陽を思わせる薄い輝きの、真っ赤な石だった。
悪く言えば、小綺麗なただの石。
良く言えば、価値の知れない宝石。
どちらとも判断できないが、手の平に吸い尽くような石の感触には、言葉にできない手放し辛さを感じた。
物音一つない安置所を少し見つめ、上田は言う。
「……君からの選別、と言ったところか?
着飾るのは趣味じゃないが、まぁもらっておくよ。
価値はなくとも、研究室の飾りくらいにはなるだろう」
上田は石を無造作にポケットに押し込むと、足早に安置所に別れを告げた。
死者に話しかけるのはこれで二度目。我ながら非科学的なことをしたものだ。
思ったのは、その程度のことだった。
これは、上田がキングストーンという名の運命の石を、たまたま拾ったというだけの話。
◆ ◇ ◆ ◇
支援
支援
決戦のときは間もなく訪れた。
ヴァンたちの先導を待つまでもない。
寂れた団地から逃げるように続く坂の向こうから、奴は現れた。
絶望を告げる鎖のような足音。
闇夜に輝く、冷たい緑色の瞳。
銀色の金属めいたボディが、月明かりを吸って淡く輝いている。
「退廃と虚飾に塗れた愚かな街だ。貴様等人間の死に場所に相応しい」
真司は無言のまま龍騎のデッキを構る。
隣にはヴァンが、少し後ろには翠星石が並び立つ。
上田とC.Cは後衛だ。側には車がある。。
誰も、一言も発さない。
作戦のための時間は僅かだった。
どの道、真司には全身でぶつかることしかできない。
「覚悟を決めたようだな。
そちらのお前はどうだ。万全の状態でなければ、この私は倒せんぞ」
支配者のような自信を振りかざす。
シャドームーンの問いに、ヴァンは不機嫌な声で答えた。
「必要になったら使う。てめぇが気にする必要はねぇ」
「私との約束、忘れたわけではあるまい」
「そこにある。欲しけりゃ勝手に持ってけ。もっとも、あのバイクは随分とてめぇを嫌ってたようだがな」
ヴァンの乗っていたバイクは車と同じ位置に停められていた。
シャドームーンにも見えただろう。尊大に頷くと、見定めるように真司たちを見下ろす。
息を呑んだ次の瞬間、シャドームーンの腕から閃光が走った。
目の前の道路が火薬を握り混んだような火花を散らし、爆煙が真司たちを覆い隠す。
動く者はいない。
シャドームーンの言う通りだ。覚悟は決まっている。
その証拠に、濃い霧のような煙の中から浮かび上がった真司は、もう人の姿ではなかった。
「なるほど……その姿の名を聞いておこう。
何のために、負けると分かっている戦いに挑む?」
灼熱の炎のように深く燃える瞳。
固く握りしめられた真っ赤な拳。
右手の龍が吼えそうな程に猛るのを感じる。
これが、真司の、誰かを守るための力だ。
「正義。仮面ライダー龍騎……!」
シャドームーンの目が、敵を見る者のそれに変わった。
明確な意志の下に深紅の剣が振るわれ、夜の闇が悲痛に切り裂かれる。
鏡は割れた。後戻りは許されない。
「良かろう、全力でかかってくるがいい。
そして、我が世紀王の力の前に平伏すのだ」
月を背負う怪物が、揺るぎない矜持をもって宣言した。
支援
支援
【一日目/真夜中/F−8 市街地】
【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]庭師の如雨露@ローゼンメイデン、真紅と蒼星石と水銀燈のローザミスティカ@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式(朝食分を消費)、真紅のステッキ@ローゼンメイデン、情報が記されたメモ、確認済支給品(0〜1)
[状態]身体中に強い鈍痛、疲労(中)、首輪解除済み
[思考・行動]
0:シャドームーンを倒す。
1:真司達と同行し、殺し合いを止める。
2:真紅が最後に護り抜いた人間に会い、彼女の遺志を聞く。
[備考]
※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。
※ローザミスティカを複数取り込んだことで、それぞれの姉妹の能力を会得しました。
【城戸真司@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎
[所持品]支給品一式×4(朝食分と水を一本消費)、確認済み支給品(0〜2) 、劉鳳の不明支給品(0〜2)、発信機の受信機@DEATH NOTE
首輪(剣心)、カードキー、神崎優衣の絵@仮面ライダー龍騎、サバイブ(烈火)@仮面ライダー龍騎
[状態]身体中に激しい鈍痛、疲労(大)、変身中(龍騎)
[思考・行動]
0:シャドームーンを倒す。
1:人を守る。
2:右京の言葉に強い共感。
3:翠星石達と同行し、殺し合いを止める。
※絶影を会得しました、使用条件などは後の書き手の方にお任せします。
【ヴァン@ガン×ソード】
[装備]:薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-
[所持品]:支給品一式、調味料一式@ガン×ソード、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎
[状態]:疲労(小)、右肩に銃創、右上腕部に刀傷、各部に裂傷、全身打撲、応急処置
[思考・行動]
0:シャドームーンと戦う。
1:カギ爪の男に復讐を果たすためさっさと脱出する。
2:C.C.の護衛をする。
[備考]
※まだ竜宮レナの名前を覚えていません。
※C.C.の名前を覚えました。
【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ R2】
[装備]:ファサリナの三節棍@ガン×ソード、S&W M10(6/6)、黒の騎士団の制服@コードギアス 反逆のルルーシュ
[所持品]:支給品一式×4、エアドロップ×2@ヴィオラートのアトリエ、ゼロの仮面@コードギアス、ピザ@コードギアス 反逆のルルーシュ R2、
カギ爪@ガン×ソード、レイ・ラングレンの銃の予備弾倉(60/60)@ガン×ソード、白梅香@-明治剣客浪漫譚-、確認済み支給品(0〜1)
S&W M10の弾薬(17/24)@バトル・ロワイアル
[状態]:健康、首輪解除済み
[思考・行動]
0:シャドームーンを倒す。
1:レナと合流したい。
2:後藤、シャドームーン、縁、スザク、浅倉は警戒する。
3:ジェレミアの事が気になる。
[備考]
※不死でなくなっていることに気付いていませんが、回復が遅い事に違和感を覚えています。
【上田次郎@TRICK(実写)】
[装備]君島の車@スクライド、ベレッタM92F(10/15)@バトルロワイアル(小説)
[支給品]キングストーン(太陽の石)@仮面ライダーBLACK(実写)
支給品一式×4(水を一本紛失)、富竹のポラロイド@ひぐらしのなく頃に、デスノート(偽物)@DEATH NOTE、予備マガジン3本(45発)、
上田次郎人形@TRICK、雛見沢症候群治療薬C120@ひぐらしのなく頃に、情報が記されたメモ、浅倉のデイパックから散乱した確認済み支給品(1〜3)、
銭型の不明支給品(0〜1)
[状態]額部に軽い裂傷(処置済み)、全身打撲
[思考・行動]
0:シャドームーンをた、倒す……。
1:真司達に協力する。
※キングストーンの力に気付いていません。
※バトルホッパーは君島の車の隣に停められています。
※ローゼンメイデンの鞄(水銀燈の遺体)@ローゼンメイデンが車内に置かれています。
※水銀燈のデイパック(支給品一式×6(食料以外)、しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒、双眼鏡@現実、首輪×2(咲世子、劉鳳)、
着替え各種(現地調達)、シェリスのHOLY隊員制服@スクライド、農作業用の鎌@バトルロワイアル、前原圭一のメモ@ひぐらしのなく頃に、
カツラ@TRICK、カードキー、知り合い順名簿、剣心の不明支給品(0〜1)、ロロの不明支給品(0〜1)、
三村信史特性爆弾セット(滑車、タコ糸、ガムテープ、ゴミ袋、ボイスコンバーター、ロープ三百メートル)@バトルロワイアル)、
Lのデイパック(支給品一式×4(水と食事を一つずつ消費)、ニンテンドーDS型詳細名簿、アズュール@灼眼のシャナ、角砂糖@デスノート、
情報が記されたメモ、首輪(魅音)、シアン化カリウム@バトルロワイアル、
イングラムM10(0/32)@バトルロワイアル、おはぎ×3@ひぐらしのなく頃に、女神の剣@ヴィオラートのアトリエ、DS系アイテムの拡張パーツ(GBA)、
才人の不明支給品(0〜1)、ゼロの剣@コードギアス)がデイパックにまとめられ車内に置かれています。
【シャドームーン@仮面ライダーBLACK(実写)】
[装備]:サタンサーベル@仮面ライダーBLACK
[支給品]:支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み)
[状態]:疲労(極大)
[思考・行動]
0:人間共を倒す。
1:キングストーン(太陽の石)を回収する。
2:バトルホッパーを返してもらう。
3:殺し合いに優勝する。
4:元の世界に帰り、創世王を殺す。
【備考】
※本編50話途中からの参戦です。
※殺し合いの主催者の裏に、創世王が居ると考えています。
※会場の端には空間の歪みがあると考えています。
※空間に干渉する能力が増大しました。
支援
投下終了です。
支援ありがとうございました。
投下乙です。
シャドームーンとの接触があらかじめわかっている状態の緊迫感がすごい伝わってきた。
奇襲だったりエンカウント後すぐに戦闘に至った時とはまた別のプレッシャーが上手い。
上田にちょくちょく笑わされたけど、これが終わった後はもうこんな風に笑える機会ないのかもしれないなぁ……
投下乙です!
仮面ライダー龍騎……!
仮面ライダーじゃなくライダーで呼ばれることの多い龍騎が意図的に仮面ライダーで名乗るのが燃える!
翠星石とのやり取りもいい
次で決戦だなぁ……すごい楽しみだ!
一番卑怯なのは上田先生ですけどねwwwwwwww
1レス丸々地の文使って自画自賛してんじゃねーよwwwwwwwwwwww
でも、そんな中で見せるシリアスがズルい……と思ったら逃げる手段探してたりするしもうさぁ……www
キングストーンまで回収するしこの人なんなんだよwwwwwwwwwww
上田先生が仮面ライダーDT(どんと来い超常現象の略、他意はない)になる日も近いな……
投下乙です。
五人と一台の感情とシャドームーンの矜持が決戦前にもかかわらず
ぶつかっている熱くいい繋ぎ話でした。ナイトのデッキがまだ使われてないのも良い。
最後の真司の名乗りや影月の過去を気にするヴァンや、上田にこっそり回収される王石や
世紀王の乗り物になるのを徹底的に嫌がるバトルホッパーなどもツボでした。
あとシャドームーンの疲労がそのままだったのも安心しました。ほんとに全快したものかとw
そういえばハザマ・北岡らの仮予約分が本投下されれば次の放送かな?
投下乙!
まさに嵐の前の静けさと呼べる感じだった
ヴァンは縁の他にもシャドームーンの過去も覗いてたんだよなぁ
他にもバトルホッパー手に入れてたりと、残ってるマーダーとの関わりがすごい密接だなと思った
翠星石やC.C.も覚悟を決めてるし、
>>131でも言われてるけど真司があえて仮面ライダーを名乗っているのが熱すぎる
ここにいた面々は一度はシャドームーンと戦ってるし、特に真司翠星石は新一の弔い合戦でもあるんだよなぁ
龍騎サバイブ+ナイトサバイブ+他の姉妹のローザミスティカを吸収した翠星石+C.C+(一応)上田.vsシャドームーン
多分次の戦闘は今までで一番苛烈な戦闘になるんじゃないかと思う
続きがすっげー気になる
そして上田はギャグみたいな感じでキングストーン拾ってるんじゃねぇえええ!!
なんてことしてくれるんだこいつマジで
ここでどう動くかによって、上田が真の役立たずか否かが決まる気がする
指摘なのですが二点
シャドームーンの状態表では披露(極大)と表記されていますが、
>>52では疲労はほぼなくなっている。となっていて矛盾しています
二つ目なのですが、Lは25歳なので少年と呼ぶにはいささか年を食い過ぎてるように思います
投下乙です。
上田がキングストーンを拾ったのは、シャドームーンのもとに行く運命という事なのかあるいは決別か。
翠星石がキングストーンを取り込めるのかは、まだ憶測の域だしなあ。
キングストーンがカギを握ってるんだよなぁ
投下乙です!
最終決戦の空気だった、これで終わりだと思うと寂しい…
全員覚悟完了しててかっこい………上田ぁっ!!!
ギャグからシリアスまで全部乗せ、しかもキングストーンwwwwww
言いたいこといっぱいあったのに上田のせいで全部吹っ飛んだわ!!
もし上田先生がキングストーンを取り込んだらどうなるの?、っと
無駄に大きくて使いどころのないところだけ強化されます
アカン上田さんが童帝(キング的な意味で)になってまう
もうキャラの半分くらいの予約が普通になってきたな、パートごとの群像劇からひとつの流れに収束してる感じ
仮予約のほうも、色々と爆発する気配がするしすっごい楽しみw
毎日更新ボタン押すのが楽しみでしょうがない
投下乙!
決戦前、それぞれの思いが交錯する中平常運転のUED先生は人間の鑑。
キングストーンをしっかり拾って備えていくのはやはり天才教授だからだね!
今見てて気付いたけど、デストワイルダーって飼い主のマジキチ喰い殺して放置?
今会場うろうろしてるんだろうか
>>144 王蛇のユナイトベントで融合合体した後、新しい飼い主の後追う形で爆発四散したよ
皆さん多くの感想ありがとうございます。
>>135 指摘ありがとうございます。
シャドームーンについては疲労(小)に、Lの呼び名については青年と、それぞれwikiの方で改めようと思います。
タイムベントってロワでは制限で数分程度だろうけど、もし制限が無かったら死者が生き返るまで戻せる可能性もある…?
対主催のオーディンって、シャドームーンに立ち向かう上田くらいありえないけどw
ハザマがオーディンになったらズルワーンの力を併用で……
>>143 あのさぁ……
次の投下で放送行きってことでいいのかねぇ
そういや龍騎とナイトがサバイブのカード持ってるけどゾルダはなれるんだろうか
原作だと龍騎サバイブとナイトサバイブ、雑誌展開でリュウガサバイブと王蛇サバイブ、
あと龍騎のクリーチャーデザイン担当した篠原保氏が発表して雑誌にのったライアサバイブはあるけどゾルダサバイブは公式絵ないんだっけ
>
>>150 コラ画像があったよね、確か怒涛のサバイブだったかな
公式で公開されてないだけで設定的にはありえるんじゃないかな
あのコラはやたらとクオリティー高いもんだから騙されたなぁ
ドラゴンナイトの方だとライダー一人一人に専用のサバイブカードがある設定だった
設定上は、どのライダーもサバイブになれるんだろうね。
原作でも、サバイブ(疾風)は最初ライアに渡されたものだし。
サバイブ(無限)は、フェニックスと契約しないと使えないのかな?
サバイブって、ライダーバトルに乗らない奴にばっかり渡されるよね
神崎も浅倉あたりにサバイブ渡して全員倒させて、最後にオーディンを勝たせればいいのに
ここ数週の相棒が甲斐くんのハートをフルボッコにしに来てるもんだから見ていて辛い
今日の話とか鬱っぽいけどそこまで大したこと無いなと思ってたら、最後の方で涙が出てきた
あれ大阪で共犯者の事情聴取してるんだからわざわざ犯人に指摘しに行く必要ないんだよね。
明らかにカイトを凹ませるためだけに仕組んだ右京さんマジでドS。
愛のムチで壊れる寸前だぜ。
一番悲惨なのは子供だよなぁ……
母親は死亡、父親は母親を殺した殺人犯でしかも実の親じゃない、本当の父親は前科持ちの元ストーカー
しかも両親が崩壊した理由の一端は、子供のDNAが育ての父親と一致しなかったことだし……
最終的に育ての父親の家に預けられたけど、作中の描写を鑑みるに赤の他人の子供だって気付いたら絶対邪険に扱いそう
昔、犯人になって金田一少年から逃れるゲームあったけど、
犯人になって右京さんから逃れるゲームがあったら下手なホラーより怖いだろうな
自分が犯人だったら、破れかぶれで右京さんヌッころすレベル
そういう行動とったヤツ、例の金田一のゲームに多かったなあw
いやだってねぇ、現実の自分は名犯罪者(?)でもなんでもない一般人だしねえw
現実に何らかの理由で殺人を犯すとしたら
「捕まっても、死刑になっても良いです」って時だと思うんだよね
「何としてでも警察を欺いてやる」とは思わないし、そんな自信も知能もないよ
「でもやっぱり捕まりたくない><;」ってなったら、短絡的に自分を追い詰める相手を排除しちゃいそうな、ねえ…w
そんな自分は多分健全なんだろうなあと思ったり思わなかったり
>>158 そのゲーム昔からプレイしてみたいって思ってるんだけど、セガサターン無いからどうしようもないんだよなぁ……
何らかの方法で配信はよ
あれクリアしたことあるけど、面白かったわ。
>>162 ファミコンハウス行け
俺のサターンは525円で買えた
金田一のそのゲームは殺人犯が主人公であるゆえにクリアしてもむなしくなるって聞いたぞw
その犯人どっちも酷いうっかり屋だと聞いた記憶がある
その金田一のゲームの右京さんverは、犯罪を犯した後にどう逃げ回るかってゲームになりそう
右京と恋愛するゲーム
このロワの参加者落とせる恋愛ゲーあったら買うわ
主人公の性別選べてギャルゲー乙女ゲー兼ねてるやつ
後藤とか上田とかどうするんだw
織田ルートは屈指のネタルートになる、俺の占いは当たる
後藤・玲子・影月・志々雄あたりは選択肢誤ったら即死バッドエンドだな
そして脚本は井上敏樹である
>>173 BADENDで達磨になるわけか……
東條は一見攻略が簡単そうに見えて、親密度高くなってくると背後から奇襲を仕掛けてくる
後藤落とすためにはエサ持ってこないといけないのかもw
玲子あたりは赤ちゃんとキャッキャしてるだけでいけるかもしれん
大学教授で専門学の物理学以外にも精通していて(通信)空手の達人でイケメン高身重高収入高学歴の上田先生を落とすとかハードル高すぎる……
そんな時こそ惚れ薬の出番ですよ
でもシャドームーンは惚れ薬で落とせねえぞ
人間の心を手に入れても彼女も可愛い妹もいるリア充だし
浅倉にいたってはどうしようもない
つまり光太郎√の時のライバルキャラがシャドームーンで北岡√のライバルキャラが浅倉なんだな
なんのライバルかは置いといて
このロワの参加者って恋人持ちや想い人持ちが
結構多いから色々困難だと思うぞ
悟史を攻略しようとしてNice boat.
ミハエルを攻略しようとすると逆に勧誘を受けます
>>181 詩音くらい倒せなきゃ生還なんかできないだろwww
既婚者、恋人持ち、童帝とか以外はそれなりに難易度低いんじゃないか
五ェ門とか
サイトェ……
サイトは思い人持ちでさらに発狂してたから攻略不可能じゃないの
こなたよりは正気に戻す目はあった感じだけど
参加者一覧見てると、まともに攻略できそうなのは、
こなた除くらきすた勢とほか数名くらいしかいないようなw
>>184 五ェ門は間違いなく一番難易度低いなwwwww
その上戦闘力も高いのでロワ攻略にも役立ちます
本命じゃなかったことがバレても、割となんとかなります
ルパンとか攻略不可能な予感
対主催男性陣とか、仲良くなるのはそこまで難しくなくても恋愛ってなると難しくなるな
クーガーとかルパンとか、優しくはしても手の内を見せないというか
自分(主人公)が未成年の少女だったら、カリオストロのクラリスみたいに優し〜く受け流されそうだ
大人で良い女だったら、高価なプレゼントもらったりしてちょっと良い夢見せてもらいつつ
まあやる事やりつつ最後はひらりと逃げられそう
>>134 龍騎勢の制限時間、サバイブして延長考えてもそう作中時間は長くならないんじゃね?
つまり……放送前でもいいんじゃよ?(チラッチラッ)
鷹野さんを攻略すればハッピーエンドだな
対主催としてひとりでも多くの人間を助けるもよし、マーダーとして引っ掻き回すもよし・・・
本編で出会わなかった参加者を会わせて「声が似ている」と同一声優ネタもできる
惚れ薬を入手すれば捗るな!
前にも話題になってたけど性欲も感情もない桐山や寄生生物には効かなさそうだ
そして親密度が低くパートナーの精神不安定度・危険度が高い時に
脱出方法の情報を入手してしまった時には殺されてGAMEOVER
つべの東映チャンネルから龍騎が配信された
>>196 普通のギャルゲっぽくするのかと思ったら主人公もロワの中に入るのかwww
恋愛ゲーじゃなくて歴史改変ものになるぞww
相棒の感想からどうしてこうなったんだ
200 :
創る名無しに見る名無し:2012/11/27(火) 00:53:40.08 ID:gUtywIMe
>168のせいだ
運命の分岐点てやつだな。
皆して食いつき良すぎワロタw
予約きたな
浅倉とのフラグも消化したし、北岡先生がそろそろ脱落しそう…
本当、このロワの北岡先生は綺麗だった
過去形ェ…
「綺麗だ」だけ抜き出すと口説き文句みたいだな
北岡口説いてどうするんだ、またギャルゲー乙女ゲーのノリか
北岡先生の活躍を思い返してみると
ディパックを置き忘れる、しかも悪用される、五エ門に守られっぱなし、
今度は詩音にデッキを取られ追いかける、本人は生きてて五エ門と蒼嶋が死ぬ、
浅倉と対決するも土壇場で逆につかさに助けられる(んで代わりにトドメを刺してくれた)
・・・大活躍だね
つかさやレナに劣らずヒロインしてる気がする
そりゃあ悪人なんかやってられんわなぁ
上田先生よりあれなんしゃ…w
一応つかさを立ち直らせただろw
浅倉をあそこまで追い詰めたのは北岡の実績じゃね?
上田先生は優しさを披露してくれただろ、いい加減にしろ!
北岡もよくここまで生き残ってくれたもんだ
特につかさとは持ち前の社交的な態度で接して保護してやって以来の付き合いだ
何か
>>207からの流れ見てると、第四放送までの生存者全員振り返ったら面白そうだなーと思った
投下の邪魔にならないタイミングが難しいんだけど
初登場から一緒のCCヴァン
立ち直らせてから一緒のつかさ北岡、つかさを許したジェレミア
誤殺から和解、仲間になった真司翠星石
ボッチから覚醒の魔「人」皇狭間とヒロインレナ
急造不安定マーダーコンビ縁スザク
カリスマーダーシャドームーン
タイマン後藤撃破のクーガー
悉く付き合いの長い同行者が脱落する上田
「脱出者」志々雄
こんな感じ?
上田先生を除く真の役立たずは誰になるのだろう?
まぁ、上田先生は役に立ってばっかりだからな! 除くのもしょうがないな、うん!
シャナ(確信犯)
逆に対主催で役立ってるキャラって誰なんだろう
クーガーとかそうだろうけどさ
五衛門とか瑞穂とか
>>219 正直、クーガーがここまで残ってるってのが胸熱すぎる
第一放送、第二放送と戦闘ばっかりで一番ロワでの戦闘回数多いんじゃね?
生き急ぎ続けて、走り続けた結果、対主催の筆頭でありキーパーソンって感じする
志々雄様だろ>対主催で役立ってるキャラ
>>219 脱出に役立つと言えばジェレミア、CC、狭間かと
戦闘では真司のサバイブ(ストレンジベント)や素のスペックが高いヴァン、パラサイトクーガー、ローザミスティカ4つの翠星石に期待してる
上田…?
次郎人形と王石で戯れとけばいいよ
ここの対主催はそもそも人を集めようという段階で敵の奇襲を受けたりとかして
中々脱出の手がかりを得られなかったなー
う、上田先生は一応車の運転できるじゃないか
そういえばL死亡ということはまた一人上田先生の同行者・童貞が一人消えたわけか・・・
さすが死神
狭間偉出夫、北岡秀一、ジェレミア・ゴットバルト、柊つかさ、竜宮レナ、鷹野三四、雪代縁、枢木スザク、薔薇水晶を投下します。
支援
sien
支援
「貴様だけは、貴様だけは絶対に許さん。人間の心を弄ぶ、貴様だけは!
この軽子坂高校2年E組の狭間偉出夫が、魔"人"皇として裁いてやる!!」
白の制服に身を包んだ少年が宣言する。
かつて少年は異能の力を掌握し、自らを蔑んだ者達を混沌の渦中に叩き込んだ。
最終的に元の世界に戻れたものの、犠牲者の数は決して少なくない。
ある者は悪魔に喰われ、ある者は悪魔に取り憑かれた。
しかもそれは”この”少年が連れて来られた世界の話だ。
蒼嶋駿朔が連れて来られた世界では、蒼島以外の人間は全員魔界に取り残されている。
自らを魔”神”皇と称するその少年は、確実に悪と呼べる存在だった。
「貴方がそっちに回るなんて予想外だわ」
金の鎧に身を包みながら、鷹野三四は言った。
V.V.曰く、このバトルロワイアルの参加者にはある程度の役割が振られている。
主催への反逆を目標とする対主催と、優勝するため他の参加者を殺し回るマーダー。
もう少し細かく分類することもできるが、多くの参加者がこのどちらかに属する。
例えば、何よりも人命を尊重する警察官・杉下右京。
例えば、自らの快楽のために他人を殺す連続殺人鬼・浅倉威。
前者は対主催として、後者はマーダーとしての活躍が期待されていた。
ならば、狭間偉出夫はどちらに属すると期待されていただろうか。
当然、マーダーとしての活躍だ。
それもシャドームーンや後藤のような強力なマーダーとしてだ。
対主催になる可能性も考えられていたが、彼に他者と友好関係を築く力はない。
事実、水銀燈に枢木スザクの二人とはすぐ仲違いしている。
さらに蒼嶋駿朔と和解することは有り得ないため、対主催に火種を撒く以上の役目はないと考えられていた。
それがどうだ。
今の狭間偉出夫は、対主催に力を貸している。
竜宮レナのL5を治療し、彼女を殺そうとする鷹野と対峙している。
「黙れ、貴様の物差しで人を測るな」
「随分な言い草だけれど、貴方は元の世界で何をしてきたか忘れたのかしら?」
「忘れるわけがない。軽子坂高校の者達を魔界に引きずり込み、結果多くの者が死んだ」
「覚えてるじゃない。なら正義漢気取るのはやめなさい、所詮は同じ穴の狢よ」
「そうだ、これは私の罪だ、一切の言い訳はしない」
「なら――――」
「だが、私の罪と貴様は何の関係もない」
鷹野が二の句を継ごうとするが、狭間がそれを許さないと言うように言葉を叩き付けてくる。
「私の罪と、貴様が竜宮達の心を弄んだのは何の関係もない
これ以上のやり取りは無意味だ、私が貴様を許すことは絶対にない!」
屹然とした態度に、思わず慄いてしまう鷹野。
この様子では、どんな説得も無意味だろう。
戦うために錫杖型の召喚機を出現させ、そしてふと気付いた。
何故自分は、彼を説得しようとしたのか。
(……恐れている?)
狭間偉出夫の力は、シャドームーンや後藤といった者達にも匹敵する程。
こうして対峙しているだけでも、凍り付くようなプレッシャーがひしひしと伝わってくる。
出来ることならば、戦うのは避けたい相手だ。
支援
支援
支援
(恐れる必要なんてない)
凍り付いた思考を解すように、ニ、三度首を振る。
確かに狭間は強力だが、今の鷹野は仮面ライダーオーディンに変身している。
北欧の最高神の名を冠するそれは、世紀王にも匹敵しうる力があった。
他にもいくつかの道具は用意してあるし、万が一のための切り札も用意してある。
負けるはずなど、ない。
「マハジオンガ!」
狭間が呪文を唱えると同時に、彼の右手から幾条もの電撃の鞭が放射される。
夜闇を切り裂きながら電撃は走り抜け、意思を持つかのように鷹野の陣地を侵略していく。
瞬く間に四方八方を電撃に塞がれ、鷹野は逃げ道を奪われた。
「無駄よ」
一斉に迫ってきた電撃を、姿を消して回避する鷹野。
そこには金色の羽だけが残り、行き場を失った電撃は霧散してしまった。
これこそがオーディンが所持する最強の能力――――瞬間移動。
ストレイト・クーガーや瀬田宗次郎の速さとはまるで別次元の移動法。
彼らの移動の軌跡は線だが、オーディンの瞬間移動は点。
彼らは四方八方を塞がれれば身動きが取れなくなるが、オーディンにそのような事態は無い。
姿を消した鷹野は狭間の背後へと降り立ち、ゴルドバイザーを振り上げる。
ニメートルを越える長さを誇る錫杖は、立派な打撃武器に成り得た。
「狭間さん!」
レナが叫ぶ。
狭間の背後に居たため、鷹野の行動が全て見えていたのだ。
彼の頭部を砕かんと迫るゴルドバイザー。
だが、直前でピクリと停止する。
斬鉄剣を抜いた狭間が、ゴルドバイザーを受け止めていたのだ。
「不意を突いたつもりか? 貴様の瞬間移動は既に北岡達から聞いている」
余った左腕を鷹野へと向ける狭間。
間髪入れずに氷系魔法の一つである「ブフーラ」を唱えた。
「あらぁ、それはご苦労なことね」
だが、ブフーラが命中するよりも鷹野が消える方が早かった。
残された金色の羽が爆発し、ブフーラを相殺してしまう。
(そうだ、負けるわけがない!)
今のやり取りで確信する。
狭間偉出夫の力を持ってしても、オーディンには敵わない。
そもそも彼の能力には、大幅な制限が課せられているのだ。
今度は彼の左側に姿を現し、先程と同様にゴルドバイザーを振り上げる鷹野。
(え?)
そして、見てしまった。
ありとあらゆる憤怒の篭った、狭間偉出夫の双眸を。
「ジオ!」
狭間の右手から一筋の電撃が放射される。
瞬間移動で回避を試みようとするが、既に電撃は鷹野の身体を貫いていた。
腹部に鋭い熱と痛みが篭り、鷹野はたたらを踏む。
事前に調べた通り、雷系最弱の魔法である「ジオ」は大した威力ではない。
しかし、瞬間移動を呆気無く破られたことは動揺に値した。
瞬間移動で狭間の攻撃範囲から後退し、体勢を整えるために一枚のカードをデッキから抜き取る。
――――SWORD VENT――――
ゴルドフェニックスの翼を模した二対の剣・ゴルドセイバー。
それは基本武器としては破格の力を持ち、一本でも他のライダーのファイナルベントを破るほどだ。
両手にそれらを握り締めると、鷹野は瞬間移動して狭間へと肉薄する。
右側面を陣取り、水平に斬り込む鷹野。
しかしそれは狭間の肉体まで届かず、斬鉄剣に受け流されてしまう。
すぐにもう一方の剣を振り下ろすが、僅かな動きで簡単に躱されてしまった。
身体を反転させて鷹野と向き合った狭間が、肌白い左手を向けてくる。
即座に瞬時に瞬間移動して、狭間の背後へと移る。
攻撃と防御を同時に熟す理想的な動き。
そのまま両腕を交差させ、狭間の細身を挟み込むように斬撃を繰り出す。
だが、それも届かない。
身体を捻りながら斬鉄剣を振り抜いた狭間は、ゴルドセイバーの交差する箇所に斬撃を叩き付けたのだ。
回転による遠心力を利用した一撃の威力は凄まじく、数秒の拮抗の末に鷹野の剣を弾く。
勢い余った鷹野は体勢を崩し、その隙に狭間の剣閃が走った。
「うっ……」
くぐもった悲鳴が漏らす鷹野。
オーディンのスーツで威力を削いでいたにも関わらず、腹部の痛みは確かな存在感を放っている。
「貴様、剣を扱ったことがないだろう?」
月光を斬鉄剣に反射させながら、狭間は鋭い視線を突き付けてくる。
「私も他人に師事できるほど剣に精通している訳ではない、だが貴様の技量はあまりにもお粗末過ぎる
太刀筋は滅茶苦茶、踏み込みは出鱈目、これでは素人同然だ
しかもその素人が二刀流だと? 随分と笑わせてくれる」
狭間の指摘を受け、鷹野は顔を歪める。
銃火器の扱いは多少の経験があるが、刀剣類に関しては全くない。
北岡やジェレミアの時は辛うじて対応できていたが、狭間との戦闘でボロが出てしまったのだ。
(待て、どうしてボロが出た……?)
剣の技量を語るのならば、間違いなくジェレミアの方が上だ。
それにあの時は北岡も居たため、状況的には確実に不利だったはずである。
「どうして見抜かれたという様子だな、特別に教えてやろう」
図星を突かれ、鷹野は思わず目を見張ってしまう。
「先の戦いで貴様がジェレミア達に勝てたのは、その瞬間移動があったからだ
貴様の持つ強さなど、デッキが与える仮初の物に過ぎない」
またしても図星だった。
オーディンのデッキは最強ではあるが、それでも変身者による技量差が生じる。
鷹野には戦闘経験自体が少なく、はっきり言ってしまえばデッキに使われている状態だった。
支援
支援
支援
「だが、それはこの私には通じない
何故なら、私は既にその貴様の動きを把握しているからだ」
尊大な物言いでとんでもない事を宣う狭間。
「出任せは止しなさい」
「出任せかどうか、試してみるか?」
口端を釣り上げて挑発する狭間。
瞬間移動を披露したのはたったの数回しかないのだ。
いくら狭間が天才でも、それだけであの動きを把握できるわけがない。
(出任せに決まってる!)
仮面の下から狭間を睨み付け、同時に瞬間移動を行う。
出現地点は狭間の正面から十メートル前方。
だが、すぐに別の場所へと移動する。
今度は左斜め前から五メートル前だが、すぐにまた別の場所へと移動。
次々に瞬間移動を行い、相手を撹乱する作戦。
「さぁ、どこから来るか分かるかしらぁ?」
嘲笑いながら、狭間の四方八方を次々に移動する鷹野。
彼は一歩も動くことができず、レナを背後に従えたまま沈黙していた。
「貴様の瞬間移動は、それほど遠くに行くことはできない」
不意に口を開く狭間。
怪訝に思う鷹野を尻目に、彼は言葉を紡いでいく。
「空中に移動することができないため、頭上を取ることができない」
「瞬間移動は自動ではない、故に貴様の意思が介在する」
「移動してから次の行動に移るまで、一秒程度の時間を要する」
「つまり攻撃に移るまで、僅かなタイムラグが生じるということだ」
分かり切ったように解説する狭間の姿は、かつて祖父の研究を踏み躙った政府の高官達を連想させる。
悍ましいほどの不快感と怒りが鷹野を支配していた。
もう、十分に撹乱しただろう。
最後に狭間の目前にまで肉薄すると、そのまま対極の位置である背後に移動。
前方を見ると、狭間の姿は前を向いたまま。
やはり、動きを把握したなど出任せだったのだ。
隙だらけの脳天を真っ二つに割ろうと、鷹野は月の昇る夜空へと剣を掲げる。
「そして――――」
気付いてしまった。
「貴様は無作為に動いていたつもりだが、行動にパターンが出来ていた
いくら撹乱を狙っても、これでは無意味だ」
前を向いているにも関わらず、いつ現れるか分からなかったにも関わらず。
狭間の左手は、背後にいる鷹野に向けられている。
前を見据えたまま、背後にいる彼女を正確に捉えている。
聖なる支援 シエン・フォース
支援
支援
「ザンダイン」
特大の衝撃波を撃ち込まれ、盛大に地面を転げる鷹野。
今までの攻撃と違い、ザンダインは衝撃系の中でも上級魔法に値する。
その威力は、今までの比ではなかった。
腹部を斬られたことで内蔵が傷つき、仮面の下で吐血する。
味わったことのない痛みに身体が警鐘を鳴らすが、それでも立ち上がらないわけには行かなかった。
ここで沈んでいては、すぐにまた追撃が――――
「それに、貴様からは嫌というほど感じる
DARK系の悪魔どもが放つような、ドス黒い殺気をな」
額に、手が翳される。
「ブフダイン」
狭間の左手に冷気が収集されていく。
高速で形を為していくそれは、瞬く間に鷹野の全身を覆い尽くす程の大きさを形成した。
その様相を喩えるなら、さながら巨大な氷の結晶。
「キャアアアアァァァァッ!!」
ブフダインが直撃し、宙へと投げ飛ばされる鷹野。
身体を凍り付かせながら、遊園地の地面を何度も跳ね跳ぶ。
その度に全身を強く打ち付け、やがてメリーゴーランドの残骸に墜落した。
「がっ……あっ……」
オーディンの鎧に守られているにも関わらず、打ち付けた衝撃は肺にまで到達した。
満足に酸素を吸い込むことができず、鷹野の口からは嗚咽が漏れる。
打ち付けた衝撃で凍結が砕けたのは不幸中の幸いだっただろう。
しかし、全身が凍り付くような寒さは残っている。
手はがくがくと震え、まともに力を入れることさえできない。
ゴルドセイバーは今の衝撃で取り零し、瓦礫の山の中に滑り込んで行ってしまった。
「ディア」
先程とは一転し、何処か優しげな声で魔法を唱える狭間。
手を向けられていたのは、背後にいるレナだ。
「痛いのが……治ってく?」
「それで少しはマシになっただろう」
「ありがとうございます」
「ッ……き、気にするな、このくらいどうということはない」
レナの身体が暖かな光に包まれ、喉と頬に刻まれた傷が治癒されていく。
その光景を見て、鷹野の怒りはさらに激しさを増した。
今の一瞬で追撃することも可能だったのに、あえてレナの治療を優先したのだ。
鷹野は非常に優秀な人間であり、それに見合う分の誇りを抱いている。
父の研究を知らしめるという使命感もあり、プライドの高さも常人を遥かに上回っていた。
その彼女が自身を歯牙にも掛けられていないと知れば、激昂するのも当然だろう。
しかし全身が冷え切っているせいか、頭の方は冷静さを保っている
認めるのは癪だが、狭間がオーディンの動きを読んでいるのは事実だ。
これではいくら撹乱したところで意味は無い。
今までのような、デッキの力に頼った戦い方は通用しないのだ。
支援
支援
支援
(使うしか無いわね、切り札を……)
万が一の事態に備え、用意しておいた切り札。
こんなに早く切る羽目になるのは思わなかったが、狭間はそれを使うに相応しい相手だろう。
――――ADVENT――――
震える手でゴルドバイザーの蓋を開け、バックルから一枚のカードを抜き、窪みへ装填。
閃光が闇を切り裂き、夜空に太陽が昇る。
そう錯覚させる程に煌々とした輝きを纏う鳳凰・ゴルドフェニックスが、鷹野の召喚によって光来した。
「一人では勝てぬと知って増援を呼んだか、懸命な判断だな」
「フフ……この子を……呼んだのは……戦うためだけじゃ……無いわよッ!」
ゴルドフェニックスは宙を旋回すると鷹野の傍に降り立つ。
それを確認すると、鷹野は燃え盛るその翼に自らの手を突き入れた。
「あんなところに手を入れたら燃えちゃう!」
鷹野の奇行を目撃し、驚きの声を上げるレナ。
「それが目的だろう、ああすることで奴は体温を取り戻したのだ」
対する狭間は、何処までも冷静にその行動を分析していた。
「ええ、とっても熱いわ……でも平気よ……この程度今までに何度も体験してるもの!」
脳裏に蘇っているのは、これまでの人生でも一二を争うほど辛い記憶。
施設から脱走を試みて失敗した時の記憶。
糞便の溜まる便所へと落とされ、舌で掃除をしろと命令された。
悪臭で嘔吐を繰り返し、いくら払っても糞便が肌に纏わりつく。
舌で汚物を舐め取り、その不快感にまた嘔吐する。
それでも必死に舐め取るが、目の前の糞便は少ししか減っていない。
不快感と屈辱に塗れた地獄だった。
二十年近くが経過してもこの記憶は彼女の心に巣食い、毎日風呂で肌が擦り切れるほど身体を磨かせている。
「行きなさい!」
自らを鼓舞するように高らかと命令を下す。
呼応するようにゴルドフェニックスも雄叫びを上げ、黄金の翼を広げながら進撃を開始した。
同時に鷹野も一枚のカードを発動。
鳳凰の背と尾を模した巨大な盾・ゴルドシールドを装備する。
「来るぞ、私の後ろから離れるな!」
「はい!」
ゴルドフェニックスの突進を見据えながら狭間が叫ぶ。
レナが後退できないのは、オーディンの瞬間移動が理由である。
いくら狭間と言えども、遠く離れた場所にいる人間を守って戦うのは不可能だ。
瞬間移動は見破られているが、決して無意味になどなっていない。
支援
支援
「マハブフーラ!」
鷹野が正面に移動した瞬間、狭間の左腕から氷の弾丸が連射される。
しかし、ゴルドシールドがそれを阻む。
ゴルドセイバーを最強の矛とするなら、ゴルドシールドは最強の盾。
他のライダーのファイナルベントすら受け止める強度を誇る。
ゴルドフェニックスも身に纏う炎で氷を焼き尽くしため、マハブフーラは足止め程度にしか作用しなかった。
顔を歪める狭間に向けて、巨大な盾を突き出す。
防具であるため大した威力にはないが、そもそもの目的は別にある。
巨大な盾で視界を奪い、切り札の発動を悟られないため。
仮面の下で酷薄な笑みを作り、鷹野は指を鳴らす。
これが、切り札を発動する合図だ。
「狭間さん、上!」
上空を指差しながら声を荒げるレナ。
その指の先にあるのは、放物線を描きながら落下してくる球体。
「……手榴弾だと? どうやって投げ込んだ……ッ!」
落下してくる手榴弾を見て、狭間は疑問符を浮かべている。
それもそうだろう。
彼は鷹野の動きを注視していたが、彼女は一度も物を投げる素振りを見せていないのだ。
納得の行かないまま、迎撃のためにブフを唱える狭間。
発射された手榴弾は空中で命中し、信管ごと手榴弾を凍らせてしまう。
こうなってしまえばこの手榴弾が爆発することはない。
――――しかし、これすらも囮であった。
夜闇に紛れるよう、小さな足音が侵攻を開始する。
蛇のように地を這いながら、一つの影が戦場へと往く。
上空に視線が向いていた彼らがその存在に気付いたのは、影が刀を抜いた瞬間。
鈍い輝きを放つ太刀が月光を返し、狭間へと振り下ろされた。
「ぐあぁっ……!」
気付いたのが遅かったため、狭間は迎撃の魔法を唱えることは出来なかった。
咄嗟に斬鉄剣を構え、迫り来る斬撃を受け止める。
だが、影の方が何枚も上手。
下から突き上げるような二撃目で斬鉄剣は弾かれ、返す刀で繰り出された三撃目が彼の白い制服を切り裂いた。
「狭間さん!」
「竜宮……伏せろ!」
警告と同時にレナを押し倒す狭間。
刹那の差で、彼らの頭上を大量の鉛玉が通過する。
やがてそれが終わると、上空にいたゴルドフェニックスが炎の竜巻を彼らへと飛ばした。
「アギラジャ!」
アギラジャは術者に火炎属性への耐性を持たせる魔法。
赤い光を纏った狭間は、迫り来る紅蓮色の竜巻に背を向けながらレナを抱き締める。
竜巻は狭間に衝突すると、霧散するように消えて行った。
支援
支援
支援
支援
支援
「そんな……なんで……」
鷹野の背後を見て驚愕するレナ。
そこに居たのは、絶対に居るはずのない人間達。
「詩ぃちゃんと……五ェ門さんが……」
友を思うが故に狂ってしまった友人と、彼女を守りながら散って行った侍。
先程攻撃を仕掛けてきたのは、死亡したはずの二人だった。
「なんで死んじゃった人がって顔してるわね、いいわ、特別に教えて――――」
「さざなみの笛」
鷹野の言葉を遮るように、狭間がぽつりと呟く。
「死人を魂のない人形にし、ゾンビのように操ることのできる道具」
レナから手を離した狭間は、背を向けたままゆっくりと立ち上がる。
「なぁ、楽しかったか?」
言葉を紡ぎながら、狭間はくるりと身体を反転させる。
「今までずっと嬲られてきた相手にようやく掠り傷一つ負わせたのは、そんなに楽しかったか?」
そうして対面した狭間の顔は。
施設にいた大人達よりも、祖父を馬鹿にした政府の高官達よりも、今まで見てきたどの顔よりも。
――――怖かった。
「い、行きなさい! あなた達!」
背後に控えていた五ェ門と詩音に命令を下す。
狭間の言う通り、彼らを操っているのはさざなみの笛の力だ。
この道具は死者を復活させてしまうが故、支給品としては配布されなかった一品。
しかしオーディンのデッキ等に比べて希少性が薄いため、鷹野の権限でも持ち出すことができた。
事前に教会へと赴いていた彼女は、これを使用して二人を操り人形にしていたのだ。
この状態になった者には一切の攻撃が効かず、最強の兵士として操ることができる。
戦闘を有利に運ぶために用意した最後の切り札。
彼らが負けることなど、決して有り得ない。
「メディア」
溜息を吐きながら、狭間は魔法を唱える。
すると迫っていた二人の身体が光に包まれ、糸が切れたように崩れ落ちた。
「な、なんで……!?」
「さざなみの笛で蘇った者達は回復魔法を使うことで死者へと戻る、知らなかったのか?」
さざなみの笛は封印された支給品であったため、簡単な説明文しか記載されていなかった。
故に鷹野は知ることができなかったのだ。
「でも、また復活させれば……!」
「メギド」
鷹野がデイパックから笛を取り出すよりも早く、狭間の左手から一メートル程の大きさの火球が二発発射される。
それらが二人の遺体に触れると、あっという間に燃やし尽くしてしまった。
支援
支援
「答えろ」
「あ……あぁ……」
「貴様は何処まで人間という存在を貶めれば気が済むというのだ」
「……い、いや……こないで……」
「なぁ、答えてみろ」
「あ、あ、あ、あああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」
革靴を音を響かせながら、一歩ずつ近づいてくる狭間。
最後の切り札をちり紙のように引き裂かれ、恐怖心から大声を上げる。
思考はオーバーヒート直前の機械のように熱くなり、まるで冷静な判断を下すことはできない。
直ぐ様最後の手段を思い付いた彼女は、それを実行に移すため姿を消した。
「竜宮、前へ進め」
消える直前、こんな声が聞こえた気がした。
「アッハハハハハハハハハハハハハッ!」
瞬間移動した鷹野は、前方に向けて手を伸ばす。
彼女が移動したのはレナの背後。
彼女を捕まえて、再び人質にするためだ。
「ハハハハ……は?」
伸ばした手が空を切る。
前を見ると、レナの姿は手よりも数歩分先――――狭間のすぐ傍にあった。
「貴様のような下衆の考えることなどお見通しだ」
鷹野の腹部に、狭間の手が添えられる。
「マハブフダイン」
凍り付くような冷たい声に乗って、氷結系最強の魔法が唱えられた。
☆ ☆ ☆
その一撃は猛吹雪と呼んでも過言ではなかった。
咄嗟にゴルドシールドを構えなければ、今の一撃で凍死していただろう。
自然災害そのものである。
ゴルドシールドは凍結して砕け散り、鷹野もその余波を受けていた。
炎の化身たるゴルドフェニックスの翼さえ凍り付かせる吹雪。
すぐ元通りになったものの、相当の体力を消耗させられたようだ。
強い、強すぎる。
強力な相手であることは覚悟していたが、まるで歯が立たない。
回復道具は用意してあるが、それを使ったところで狭間を倒すことはできない。
そしてオーディンの変身が解除されれば、その時点で詰みである。
身を芯から凍らせる寒さと恐怖に煽られ、がちがちと歯を鳴らす鷹野。
支援
支援
支援
支援
「さぁ、喋ってもらうぞ」
かつ、かつ、と音を立てながら、悠然とした態度で狭間は歩を進める。
もはや、打つ手はない。
でも、諦められない。
二つの思いが頭を交錯し、ぐるぐると渦を巻き始める。
その時だった。
「イデオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!」
建物の影から、一人の復讐鬼が姿を現した。
「がっ……その声……枢木!?」
「殺してやる! 殺してやる! 殺してやる!」
仮面ライダーに変身しているが、聞こえる声は間違いなく枢木スザクのものだ。
「は、離せ!」
「よくも水銀燈を殺したな! お前も同じ目に合わせてやる!」
狭間の首根っこを掴みながら、呪詛の言葉を述べ始めるスザク。
その様子を見た鷹野は、スザクと狭間の間にあった出来事を思い出していた。
「ほう……あれがあいつの復讐相手カ」
スザクに遅れて、建物の影からもう一つの影が姿を現す。
サングラスに白髪、間違いなく雪代縁だ。
鷹野がアジトを離れて以降、彼らは同盟を結んでいたのである。
(ツイてる……運命は私に向いてきている)
施設から脱走した際、公衆電話のお釣りの中に取り残されていた十円玉。
あれが無ければ、祖父に助けを求めることはできなかった。
あそこまで走って足掻いたからこそ、幸せを掴み取ることができたのだ。
今の状況はそれと同じ。
ここまで粘ったからこそ、彼らがこの場に到着することができたのだ。
急いでデイパックの口を開け、中身を見ないまま感触だけで中身を取り出す。
そうして出てきたのは知恵の香。
傷を完全回復し、さらに知恵を上昇させることのできる道具。
一つで出来ることが多すぎるため、さざなみの笛と同様に封印されていたのである。
凍える手でガラス瓶の蓋を開け、中に封入された香の匂いを嗅ぐ。
不思議な匂いが鼻孔を擽り、身体をな心地いい感覚に包み込む。
身体に刻まれた傷や寒さは瞬く間に回復し、頭が冴えていく感覚を鷹野は得ていた。
「雪代縁ね」
狭間とスザクの争いを傍目に捉えながら、鷹野は縁の傍へと瞬間移動する。
「……貴様いつの間に。いや、そもそも何故俺の名前を知っている」
「話は後よ、私に協力しなさい」
「何?」
「私は主催側の人間よ、これだけ言えば貴方なら分かるでしょう?」
鷹野がそう告げると、怪訝な目をしていた縁の目の色が変わる。
釣れている証拠だ。
縁が逡巡している間に、背負っていたデイパックから香を一つ取り出す。
そして残ったデイパックを強引に押し付けた。
支援
「これを渡しておくわ、その代わりあの男を倒すのに協力しなさい
この瓶の蓋を開けて匂いを嗅げば、あっという間に傷は回復するわ」
別途に取り出した瓶を手渡し、縁の前から姿を消す鷹野。
そのまま瞬間移動をして、再び戦場へと舞い戻った。
☆ ☆ ☆
「あっ……ぐっ……」
スザクに首を締められ、狭間の顔が青く染まっていく。
元々の超人的な握力に加え、ベルデの力と狭間に対する燃え盛るような復讐心。
これらが相乗効果を生み出し、スザクは普段の何倍もの力を発揮している。
「……ッ、ジオ!」
だが、狭間も負けていない。
圧迫されていく喉から声を絞り出し、左手から発射した電撃をスザクへと叩き付ける。
十分に魔力を込められなかったため、大した威力にはならない。
しかし雷系魔法の持つ固有効果で、スザクを一時的なショック状態に陥らせることには成功した。
「ゲホッ、ゲホッ……」
何度も咳き込みながら、狭間は酸素を取り込む。
その間に、スザクはショック状態から立ち直っていた。
「イデオオオォォォッ!」
爪が食い込むほどに強く握り拳を作りながら殴り掛かるスザク。
それに対し狭間は、僅かに身体を逸らすことで回避。
拳は空中を掠り、スザクの身体は前のめりに倒れそうになる。
否、違った。
本来なら倒れているところを右脚で強引に踏み止まり、それを軸足に裏拳を繰り出した。
超人的な身体能力を持つからこそ出来る芸当。
「貴様はまだあの人形に操られていることに気付かないのか!?」
振るわれる豪腕を屈んで回避する狭間。
「うるさい! 水銀燈が僕を操ってるわけがない!」
屈んでいる狭間を頭蓋を見据えながら、渾身のローキックをお見舞いするスザク。
「あの人形は貴様の思うような存在ではない!」
「黙れ! お前は死んだ彼女の魂すらも汚す気か!」
「貴様は……貴様は!」
「殺してやる! 絶対にお前を殺してやる!」
「この分からず屋め!」
狭間の白い手が、仮面越しにスザクの額に翳される。
支援
支援
支援
支援
支援
「あの時は不憫に思って放っておいたがもう我慢ならん、貴様に掛けられた呪いを解いてやる」
「何を――――」
「カルムディ!」
カルムディは魅了状態を解除する魔法。
狭間が呪文を唱えると、スザクの動きが機械のように停止する。
「あ……あぁ……」
声が漏れた。
激しい頭痛に襲われているのか、両腕で頭を押さえ始めるスザク。
「あ……ああああ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……」
それでも収まらなかったのか、漏れる声はだんだんと大きくなっていく。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!」
やがてそれは獣の慟哭へと変わった。
「どうなっているというのだ……!?」
過去に幾度もカルムディを使ったことはあるが、このような反応を見せる者はいなかった。
想定外の事態に、狭間も思考を追い付かせることができない。
――――確かに彼が推察した通り、スザクは魅了状態にあった。
だが彼の陥っている状態は、悪魔達の魔法による一時的なものとは違う。
彼が呑まされた惚れ薬は、水の精霊の一部を用いて作られた禁断の秘薬。
解除するには同等の力を持つ秘薬が必要であり、原産国であるトリステインでは違法とされていた。
全知全能の力を得た狭間でも、制限された力ではこの領域に足を踏み入れることができなかったのである。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!! 死んでしまえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛えッ!!!!」
しかし、全く効果を及ぼさなかったわけではない。
確かにカルムディは発動し、スザクはその効力を受けている。
魔法の効果で強制的に精神を戻そうとしたところで、より強い惚れ薬が頭を埋め尽くす。
力と力が脳内で奔流し合い、恐慌状態に陥ってしまったのだ。
「くっ……ブフーラ!」
拳を突き出しながら突進してくるスザク。
横に飛んで躱そうとしたが、背後には今にも泣き出しそうなレナがいた。
仕方なく迎撃の魔法を唱えて彼を迎え撃つ。
一直線に突っ込んできていた彼はこれを避けれず、身体を凍らせながら後方に吹き飛ばされていった。
「ッ!?」
背後に気配を感じ、瞳孔を見開きながら振り返る狭間。
そこに居たのは傷一つないオーディン――――鷹野三四の姿。
同時に空で待機していたゴルドフェニックスが、その大翼を広げながら滑空を始める。
支援
「マハジオンガ!」
何条もの電撃が鞭のように放射され、宙にいるゴルドフェニックスと鷹野に襲い掛かる。
だが、鷹野はすぐに瞬間移動することで回避。
ゴルドフェニックスも電撃の隙間を縫うように飛び、難なく凌いでしまった。
そして――――
「あんたに私怨は無いが――――」
あらゆる負の感情を煮詰めたような殺気が、狭間の背後に降り立つ。
「俺の目的のためだ、ここで犠牲になってもらう」
香の効能で傷を完全に回復した雪代縁だった。
「 掌 破 刀 勢 !」
掌から押し出された豪刀が、狭間の頭上へと振り下ろされる。
斬鉄剣で受け止めるがすぐに均衡は崩れた。
先ほど回復した際、彼が使ったのは力の香。
更に彼はデイパックの中から、本来の得物である倭刀を持ち出していた。
倭刀術と名を冠するだけあり、彼の剣術は倭刀を使うことで初めて完成する。
つまり、今の彼は自分の力を余すことなく発揮しているのだ。
「がああっ!」
斬鉄剣は彼の手から零れ落ち、さらに倭刀が右腕を切り裂く。
血飛沫が宙を舞い、狭間の制服を汚した。
「縁! イデオは僕が殺すと言ったはずだ」
「その割には苦戦していたようだが」
「うるさい! これは僕がやらなくちゃ――――」
「あの女は主催側の人間ダ、ここで協力しておけば後々有利になる
なに、トドメはちゃんと譲ってやるから安心しろ、これを使って傷を癒やせ」
早口で捲し立てるスザクを制止し、瓶を投げ渡す縁。
スザクは暫くの間彼を睨んでいたが、やがて瓶の蓋を開け始めた。
枢木スザク――――仮面ライダーベルデに変身し、自身も超人的な身体能力を持つ。
雪代縁――――本来の得物を手に入れ、自身の力を完全に取り戻した。
鷹野三四――――あらゆるライダーを凌駕する仮面ライダーオーディンに変身する。
そして、彼女に付き従う最強のミラーモンスター・ゴルドフェニックス。
いくら狭間と言えども、レナを守りながら彼ら全員を同時に相手するのは困難どころの話ではない。
状況が一転して圧倒的不利になったことで、狭間は臍を噛む。
「形勢逆転ね、安心なさい
すぐにレナちゃんも同じ所に送ってあげるから!」
鷹野の言葉で、三人が同時に狭間へ迫る。
痛む身体に鞭打ちながら、狭間が魔法を唱えようとした――――その時だった。
支援
支援
私怨
「がっ!?」
背後から銃撃音が轟き、大量のエネルギー弾が彼の頭上を通過する。
呻き声を上げながら、数歩ずつ後退していくスザク。
思わず目を見張るが、それだけでは終わらない。
「とおおおぉぉぉぉっ!」
狭間と彼らを分断ように戦場へと乱入する大きな影。
両手に持つ日本刀を交差させ、縁が振り下ろした刀を受け止めて弾き返した。
狭間が呆然とする中、くるりと身体を翻す影。
白い外套が風ではためき、月光によって橙色の仮面が曝される。
「スマン、遅くなった」
大きな影――――ジェレミア・ゴットバルトが狭間に笑みを向けた。
「悪いな」
続いて、狭間の背後からゾルダに変身した北岡が歩いてくる。
前方にジェレミア、後方に北岡。
鷹野達から狭間を守るように、二人の戦士が肩を並べた。
「ふん、随分と遅かったじゃないか」
斬鉄剣を拾い上げながら、遅れてきた二人の文句を垂れる狭間。
だが、その顔はどうしようもないほど緩んでいる。
「悪い悪い、これでも飛ばしてきたのよ?」
「車を運転していたのは私だろう」
ずっと遊園地の外周を探索していた北岡達だったが、夜空を照らすゴルドフェニックスを見て引き返してきたのだ。
「柊はどうした?」
「危ないから隠れてもらってるよ、流石のオーディンでもこの暗がりじゃ見つけられないだろうしね」
「竜宮は……どうやら元に戻ったようだな」
「さっきはごめんなさい! なんか私とても怖くなっちゃって……ホントにホントにごめんなさい!」
「私達は気にしてなどいない。それに……あの女が語ったのも全て事実だ
隠すべきではなかった、後でゆっくりと話をしよう」
「そうだな、俺も色々と言わなきゃいけないことがあるし。でも今は先にやることがあるだろ?」
「ああ」
言葉を切ると、北岡とジェレミアは目前に立ちはだかる三人に武器を突き付けた。
「鷹野だっけ? さっきは随分と甚振ってくれたじゃない
それにそこのライダー、五ェ門の時に散々邪魔してくれちゃってさ、百倍にして返してやるよ」
「貴様と会うのはこれで二度目だな、今度こそ叩き切ってくれる」
ベルデに変身するスザクを見据えながら口火を切る北岡。
立ち尽くす縁に贄殿遮那を向けるジェレミア。
そして立ち淀む鷹野に向けて、狭間の眼光が突き刺さる。
支援
支援
「北岡、ジェレミア、そいつらの相手は任せたぞ
その代わり、鷹野とあの鳥の相手はこの私がさせてもらう」
「……大丈夫なのか? 彼奴らの力は並大抵のものではないぞ」
ジェレミアが言葉を投げると、狭間はフッと笑う。
「私を誰だと思っている?
悪魔達の巣食う塔を昇り詰め、全知全能の力を得た魔人皇だぞ?
貴様らこそ、そんな傷だらけで大丈夫なのか?」
「この程度の傷など大したことはない、それに……私も相当腹立っているのでな、ここで退く気は毛頭ない!」
「俺もだよ。ここまでムカついてるのは浅倉以来だ」
二人の言葉を聞く度に、狭間は自身が言いようのない高揚感に包まれていくことに気付いた。
今までの人生で一度も感じたことのない気持ち。
身体の芯が温かくなって、奥底から力の湧いてくる。
「そうか……ならば私に協力しろ
この程度の危機、まとめて切り抜けさせてやる!」
大きく息を吸い込み、高らかに宣言した。
☆ ☆ ☆
「チィッ……邪魔をするナ!」
「貴様こそとっとと退け!」
刀と刀がぶつかり合い、金属音が周辺一帯に響き渡る。
ジェレミアは贄殿遮那と無限刃を巧みに振るい、縁は倭刀を自由自在に使い熟す。
互いに一流の剣の腕を持つ彼らの戦いは、他者の介入する余地など皆無。
さらに一度手合わせをして相手の動きを知っているため、戦いはより高度な読み合いへと発展していた。
「退け! 僕は狭間を殺さなきゃいけないんだ!」
「お断りだな。それにお前が邪魔しなかったら五ェ門は生きてたかもしれない、分かるか?」
対するスザクと北岡の戦いは、互いに飛び道具を撃ち合う遠距離戦。
スザクはヨーヨー型の武器・バイオワインダーを振るい、北岡はギガアーマーで攻撃を弾きながらマグナバイザーを撃つ。
怒涛の猛攻を仕掛けるスザクだが、今の北岡には通じない
マグナギガがジェノサイダーを吸収したことで、ゾルダのスペックは大幅に向上しているのだ。
「くっ……なんで、どうして!?」
鷹野とゴルドフェニックスは連携して攻め込むが、狭間の巧みな体捌きの前には及ばない。
レナを――――足手まといを連れているはずなのに、一向に差が埋まらない。
ゴルドフェニックスが滑空を始めると同時に、背後に瞬間移動してゴルドバイザーを振るう。
だが、そこに下から突き上げるような斬撃が加えられた。
手から離れ、勢いよく宙を舞うゴルドバイザー。
そこにゴルドフェニックスが突っ込み、連携攻撃は失敗に終わる。
ぎりぎりと歯軋りを続ける鷹野。
既に息は上がり、呼吸は荒れ切っている。
オーディンのデッキが常にサバイブの恩恵を受けているためだ。
サバイブはライダーの能力を著しく上昇させる反面、変身者の体力を大きく削る。
鷹野の体力は特別優れているわけでもなく、ここに来て限界が訪れたのだ。
支援
支援
支援
支援
支援
「この! この!」
変身してから既に八分が経過しているため、もうすぐ生身の身体に戻ってしまう。
再び不利な状況に立たされ、鷹野は冷静さを失っていた。
彼女は非常に優秀な人間だが、使命に固執するあまり撤退するということを知らない。
終末作戦の際、次々と山狗部隊が敗北したにも関わらず小此木の進言を無視して軍を送り続けたのが証拠だ。
「無様だな」
狭間の繰り出す斬撃に一瞬反応が遅れる。
咄嗟に瞬間移動するが、剣先は彼女の腹部を切り裂いていた。
(ハァ……ハァ……まずい……ッ!)
他のカードは残っているが、時間の方は残っていない。
小細工を弄するよりは、最強の切り札に賭けた方が懸命である。
掠れてくる視界で狭間の動きに気を配り、何とかファイナルベントを発動する隙を伺う。
そうして防戦に徹することで、ふとある事実に気付いた。
北岡達と合流してからの狭間は、斬鉄剣を振るうばかりで一度も魔法を使用していない。
怪訝な事実に首を傾げるが、やがてある結論に辿り着いた。
もしかしたら狭間の魔力は既に枯渇しているのではないか。
いくら魔法が優れていても、魔力が無ければ扱うことはできない。
むしろ優れているからこそ、大幅に魔力を消耗するのだ。
それに狭間の魔法には大きな制限が設けられているため、普段よりも魔力の消耗は早いはずである。
魔法が使えないのなら、いくらでも対策手段はあるのではないか。
――――いや、そんなことは有り得ない。
この考えは、あまりにも自分本位で都合の良い考えだ。
いくら制限を設けられていても、この程度で狭間の魔力が尽きるはずがない。
なら、何故狭間は魔法を使用しないのだろう。
思考を展開し始めるが、突如響いた大きな悲鳴がそれを中断させた。
「ぐあああぁぁぁぁッ!!」
目にも留まらぬ速さで刀が振り抜かれ、鮮血が夜空を赤く染める。
悲鳴の聞こえた方向を見ると、ジェレミアが縁を圧倒している場面だった。
「がああああぁぁッ!」
北岡が肩に装着したギガキャノンを発射し、砲丸投げのように宙へ放り出されるスザク。
そのまま地面に激突し、地面へと沈む。
目を疑うが、倒れた彼らが立ち上がる様子はない。
増援に駆け付けた彼らは、こうして呆気無く敗北してしまった。
支援
支援
支援
支援
(おかしい! こんなに早く彼らが敗れるなんて……)
スザクと縁の二人は、参加者の中でも上位に君臨する実力者のはずだ。
北岡やジェレミアも実力者ではあるが、今までの戦闘の負傷や疲労は残っている。
一方で二人は傷を回復した上、普段の全力以上を発揮する装備を使っていた。
これだけの好条件が揃っていて、敗北することなど有り得ない。
目の前の矛盾に頭を抱えるが、目前の敵はその答えを出す時間を与えてくれない。
首元を狙うように突き出される斬鉄剣。
瞬間移動して回避を試みる鷹野だが、不意に身体を異様なほどの気怠さが襲う。
まるで数日間徹夜を続けているような気怠さ。
両手足に力は入らず、意識すらも朦朧とし始める。
瞬間移動が間に合わず、辛うじて首を逸らすことで突きを躱す。
しかし刃が喉を掠り、スーツの内側に赤い線が刻まれた。
「ゼェ……ゼェ……」
いくらサバイブが使用者の体力を奪うと言っても、ここまで酷いものなのだろうか。
強烈な違和感が鷹野の脳裏を過る。
異様なほどの身体能力の低下、スザクや縁の不自然な敗北、魔法を使わない狭間。
「……まさか!?」
「どうやら、気付いたようだな」
そう言う狭間の声色は、やっと気付いたのかと言外に見下したものだ。
「私が魔法を使わなかったのではない、貴様が魔法を使われていることに気付かなかったのだ」
左手を掲げる狭間。
「ランダマイザ、これだけ言えば分かるはずだ」
狭間の口から飛び出た単語を聞き、鷹野は戦慄した。
ランダマイザ――――彼の世界では狭間以外に習得した者のいない魔法。
敵全体の攻撃力・防御力・命中率を一度に下げることができる。
一度でも脅威になる魔法だが、最大の脅威は重ねがけを行えるところだ。
「言っただろう? この程度の危機まとめて切り抜けさせてやると」
ランダマイザを使用していたなら全ての違和感に説明がつく。
この異様な疲労感も、スザクと縁の敗北も、ランダマイザによる能力低下が原因だったのだ。
「そろそろ貴様の化けの皮も剥がれるようだな」
指先を見ると、そこから粒子が上がっている。
もうすぐ変身が解除される兆候だ。
「うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
殺される。
変身が解除されたら、確実に殺される。
目の前にいる悪魔は、何としてでも殺さなければならない。
バックルから一枚のカードを取り出し、ゴルドバイザーを出現させる。
狭間が妨害の魔法を唱えるが、もはやそれすらも見えていなかった。
支援
支援
支援
支援
「キイイイイィィィィィィイッ!!」
ゴルドフェニックスが嘶く。
両翼から炎を纏った真空の刃が放たれ、狭間の発動した狭間と相殺された。
主人の危機を感じ、独断で発動したのだろう。
カードはバイザーに装填され、機械音が発動を宣言する。
――――FINAL VENT――――
黄金の炎を身に纏いながら、鷹野の背後へと飛行するゴルドフェニックス。
鷹野の身体が重力に逆らいながら、真上へと上昇し始める。
そうして両者の身体が合わさった時。
鳳凰が両翼を広げ、閃光が周囲一体を埋め尽くした。
「これで……終わりよ!」
地面に立つ狭間を見下ろしながら鷹野は叫ぶ。
鳳凰と一体化したその姿は、人間という枠組みを超越したかの如く神々しい。
オーディンのファイナルベント――――エターナルカオス。
永遠の混沌へと相手を導くその技は、他のライダー達のものとは文字通り桁が違う。
地上にいる狭間と、上空にいる鷹野。
その立ち位置の違いは、そのまま位の差だ。
地上を支配する皇も、天空に君臨する神には敵わない。
「死になさい!」
神に歯向かった反逆者を裁くため、鳳凰が下降を開始する。
その様子は太陽の落下。
圧倒的な光と熱量を持ったそれが、地上へと降り注ぐ。
「マハラギダイン!」
それに対抗するため、狭間も魔法を詠唱した。
そうして呼び出されたのは、地上を埋め尽くす程の炎の奔流。
マハブフダインとは対を為す火炎系最強の魔法。
太陽の落下を食い止めるため、うねりを上げながら大量の炎が空へと昇っていく。
「なんという熱さだ……」
「ああ、こっちまで熱くなってくる」
目を細めながら空中を見上げるジェレミアと北岡。
太陽と炎は空中でぶつかり合い、その圧倒的な熱量を周辺へと撒き散らした。
三人の額に玉のような汗が浮かび、遊具の残骸やコンクリートの地面に炎が走る。
酸素は燃やし尽くされ、息苦しさすら感じるほどだ。
このまま拮抗を続ければ、周囲への被害は甚大なものになるだろう。
「ッ……!?」
空が動く。
少しずつ、少しずつ、一歩ずつ踏み出すように太陽が炎を呑み込んでいく。
ランダマイザで能力が減少していても、エターナルカオスの威力が圧倒的であることに変わりはない。
鷹野の執念が、最後の最後で狭間に勝ったのだ。
支援
支援
支援
支援
(勝った!)
勝利を確信する鷹野。
そんな彼女の視界に、小さな異物が映り込む。
目を凝らすと、異物の正体が氷の塊であることに気付いた。
否、違う。
その氷の中には、黒い球状の物体がある。
異物の正体は、氷の塊ではなく黒い球状の物体を凍らせた物だった。
「あ」
その物体に、鷹野は見覚えがあった。
元の世界でも何度か目にし、彼の部下である山狗部隊が多用していた道具。
この場所においても二度使用されている
一度目は夜神月が使用し、展望台を崩壊に追い込んだ。
二度目は鷹野自身が持ち出し、操り人形と化した園崎詩音に投げさせた。
そして本来の役目を果たすことなく、狭間のブフによって凍り付いた。
「忘れ物だ、受け取れ」
投げ付けられた道具の名前。
それは――――手榴弾。
☆ ☆ ☆
「ゲホッ、ゲホッ……」
地べたに倒れ伏しながら咳き込む鷹野。
オーディンの変身は解除され、剥き出しの生身が打ち捨てられるように焼け焦げた地面の上を転がっていた。
全身の至るところに手酷い火傷が刻み込まれ、一部は炭化すらしている。
手榴弾の爆発を至近距離で受けた上、マハラギダインの炎に呑み込まれたのだ。
オーディンに変身していなければ、確実に死んでいただろう。
だが、そのオーディンの力も失った。
ゴルドフェニックスも炎に呑み込まれて消滅し、カードデッキも衝撃に耐え切れず砕け散った。
デイパックも手元に無く、もはや打つ手はない。
「起きろ」
襟首を捕まれ、鷹野の身体が乱暴に持ち上げられる。
火傷を負った身体が地面に擦られ、激痛が脳を揺り動かす。
顔を上げると、そこにいたのは狭間。
さらに後ろを見渡すと、残りの三人も立っていた。
「貴様はV.V.の回し者だったな、ならば色々と知っているのだろう?」
主催の回し者ではないが、鷹野が色々と知っているのは事実だ。
幹部の一人として運営に携わっていた彼女は、殺し合いの深い部分にまで精通している。
彼らが知りたがっているであろう情報も当然知っていた。
「V.V.が何を目論んでいるのか、どうすればここから脱出できるか、貴様なら知っているはずだ、答えてもらうぞ」
早口で捲し立てる狭間から顔を逸らす鷹野。
確かに知ってはいるが、それを話す理由などない。
自分の計画を無残にも破壊してくれた彼らには、部活メンバーと同等以上の憎しみを抱いている。
もし可能であるなら、全員この手で脳味噌を切り刻んでやりたいくらいだ。
支援
支援
何故支援を尽くさないのか!!
支援
「黙秘が通じると思うか? 貴様が口を割るまであらゆる手を尽くさせてもらう」
鷹野の眼前へと突き付けられる狭間の手。
彼が呪文を唱えるだけで、そこからはあらゆる災害が産み出される。
それでも抵抗しようと口を閉じようとしたが、奥歯がガチガチと鳴っていることに気付いた。
いや、それだけではない。
腕や脚といったあらゆる部分がガタガタと震えている。
抵抗しようとしても、絶対的な恐怖を植え付けられた身体は言うことを聞かなかったのだ。
逸らしていた顔を元へと戻し、狭間の目を見ないように何度も首肯した。
「まずは『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページのユーザ名とパスワードを教えろ」
質問に答えようと口を開くが、ガチガチと顎が震えてまともに声を発することができない。
「……ta……kano…………ひ、12……3……」
それでも必死になって絞り出し、ようやく最初の質問に答えることができた。
「よし、なら次は――――」
「狭間さん!」
狭間の声が、レナの大きな声によって掻き消される。
「少し休んでからの方がいいんじゃないかな。このままだと鷹野さん……死んじゃうよ」
レナの言葉を聞き、目を丸くする狭間。
信じられないものを見たと言うような様子だ。
「何を言っている。この女が何をしたのか忘れたのか?」
「忘れてなんかない。けど、いくらなんでも可哀想だよ……
確かに鷹野さんにはすっごい怒ってるけど、それでも死んでほしいなんて思わない」
「だが――――」
「これじゃあどうやっても逃げられないし、それに狭間さんだって少し休んだ方がいいよ」
そう言うレナの視線は、狭間の右腕に注がれている。
彼もこの戦闘で負傷した上、魔法を乱発したことで疲労している。
さらに北岡やジェレミアも息が上がっていることを指摘し、元いた民家に戻ることを彼女は提案した。
「チッ……仕方がないな、竜宮に感謝しろ」
舌打ちをすると、狭間が不機嫌そうに鷹野を解放した。
「立てますか?」
「な……ん…………で……」
倒れている鷹野に向けて、レナは手を差し伸べる。
その優しさが、彼女には理解することができない。
毒薬を投与して信頼を引き裂き、それが失敗したら直接殺そうとした。
そもそも自分は、レナをバトルロワイアルに巻き込んだ張本人である。
「だって、鷹野さんなんか辛そうだったから……」
そう言って覗きこんでくるレナの目は、本気で彼女を心配しているものだった。
327 :
創る名無しに見る名無し:2012/12/01(土) 22:11:20.52 ID:iiolhq2z
支援
支援
支援
しぇん
支援
支援
「あ……り……」
火傷を追って震える手を何とか持ち上げ、差し伸べられた掌に乗せようとする。
「それには及びません」
空を切り、何かが飛来する。
背後から衝撃が走り、腹部へと突き抜ける。
弱々しく伸ばされた手は、掌に重なることなく地面へと落ちた。
☆ ☆ ☆
衝撃音に気付いて振り向いた狭間が目撃したのは、鷹野の腹部に紫色の水晶が突き刺さる光景だった。
鋭利な刃のような水晶の先端は、彼女の血液で真っ赤に染まっている。
「何者だ貴様は!?」
怒号を上げる狭間の視線が注がれているのは、鷹野の背後よりさらに遠く。
そこには一人の少女が佇んでいる。
異様なほど整った顔、紫を基調としたゴシックドレス、絹のように美しく長い銀髪。
そして何よりも特徴的なのは、左目を隠すように装着された薔薇の眼帯。
「私は、薔薇水晶……主催側の一人……」
無表情のまま自己紹介を始める少女は、自らを薔薇水晶と名乗る。
同時に、主催側の者であるとも。
「奴を逃がすな! マハジオンガ!」
狭間の左手から薔薇水晶を取り囲むように幾筋もの電撃が放射される。
しかし彼女は小さな身体を活かした動きによって、どれも擦り抜けていってしまう。
続いてジェレミアが跳躍するが、それを見越したように彼女は後方へ下がっていく。
「間抜けめ、そこは行き止まりだ!」
彼女が下がった場所の背後には、お化け屋敷が聳え立っている。
これでは袋小路に追い込まれた鼠だ。
ニヤリと笑いながら、狭間は魔法を唱えようとする。
だが、次に目の前で起きた出来事に虚を突かれてしまった。
「窓が揺れている……?」
固体であるはずの窓ガラスが、水面のようにゆらゆらと揺れ動いている。
しばらく観察していると、やがて水面に渦が巻き始めた。
「戦いに水を差した邪魔者は処分しました
これ以上無粋な真似は致しません……どうぞ存分に殺し合ってください……」
「ふざけるな!」
狭間が手を伸ばすが、薔薇水晶が窓ガラスの渦の中に吸い込まれる方が早い。
無色透明だったはずの窓が、いつの間にか絵の具をぶち撒けたような混色へと変わっている。
支援
支援
支援
「一つ、忠告です」
存在が希薄になっていく薔薇水晶が、思い出したように口を開く。
「まだ戦いは終わっていません、それをお忘れなきよう……」
こうして、薔薇水晶の姿は鏡の中に消えていった。
「何だったんだアイツは……」
薔薇水晶の消えて行った窓を見つめながら、ジェレミアはごちる。
奇妙な色に染まっていたガラスは、元の無色透明な物へと戻っていた。
「鷹野さん! 鷹野さん!」
目を閉じる鷹野に何度も呼び掛けるレナ。
刺し貫いた水晶は消滅したが、背中から腹部にかけて大きな穴が開いている。
出血量も夥しく、これではもう死亡しているだろう。
「最後の言葉は一体どういう意味だ……」
それを尻目に狭間は薔薇水晶が残した言葉の真意を考えていた。
まだバトルロワイアルは終わっていない。
普通に考えればそうだが、これでは忠告にならない。
ならば、一体――――
「奴がいない!?」
周囲を見渡し、狭間は声を荒げた。
倒れていたはずのスザクの姿が無くなっている。
遠くに縁の姿はあるが、スザクだけいない。
ここでようやく、薔薇水晶の残した言葉の真意に気付いた。
それは”この”戦いがまだ終わっていないという意味。
「……ザン!」
背後に殺気を感じた狭間は、振り向きざまに衝撃波を放つ。
その空間は透明だが、確かな存在感を放っていたのだ。
「ギイイイイイィィィィィィッ!」
衝撃波が命中し、擬態していた姿がゆっくりと曝け出される。
だが、そこに居たのはスザクでは無かった。
黄緑色の肉体に赤いラインで描かれた模様。
二足歩行を可能とするカメレオンのような怪物――――バイオグリーザ。
仮面ライダーベルデと契約する、ミラーモンスター。
「気を――――」
狭間が警戒を促すよりも早く。
パァン、と乾いた音が鳴り響いた。
支援
支援
支援
支援
「え……?」
ブシャッと音を立て、レナの胸部から噴き出る鮮血。
その様子を北岡とジェレミアは唖然としながら見つめている。
飛び散った血が彼らの服や鎧を濡らしていた。
撃たれたことに気付いていないのか、呆けた様子で血塗れの掌を見つめるレナ。
だが、やがて、糸が切れたように、その場へと崩れ落ちた。
「竜宮ッ!!」
崩れ落ちたレナへと駆け寄る狭間。
彼女の左胸には穴が空いていて、そこから真っ赤な血液が溢れ出している。
穴はとても小さいのに、溢れる血液は瞬く間に彼女のセーラー服を赤一色に染めていく。
「やった……ハハ……ハハハ、ハハハハハハハハハハハハ!!!!」
背後で誰かが笑い出した。
振り返った先に居たのは、仮面ライダーベルデに変身したスザクの姿。
その手に握り締めている拳銃からは煙が立ち上っている。
「水銀燈の仇だ! 君が彼女を殺したから! だから! アーッハハハハハハハハハハ!!」
戦闘で敗北して気絶したスザクだが、打ちどころが良かったためすぐに覚醒した。
そうして目を見開いた時、彼に注目しているものは誰もいない。
そのため自由に動き回れると判断したのだ。
まずはバイオグリーザを召喚して周囲の景色に擬態させる。
さらに新たなカード――――自身の姿を透明化するクリアーベントを使用した。
これで姿を隠した上、バイオグリーザを囮に使う二重の策。
こうして狭間達に近付き、レナを撃ち抜いたのだ。
「君も……君も大事な人を失う苦しみを味わえ!」
狭間ではなくレナを狙ったのには二つの理由がある。
一つ目は狭間が銃弾では死なない可能性があったから。
そして二つ目は、彼に自分と同様の苦しみを与えるため。
この世の誰よりも愛する水銀燈を、狭間偉出夫は笑いながら殺した。
それによってスザクが味わった絶望や苦痛は、何よりも受け入れ難いものだった。
ただ殺すだけでは飽き足らない。
自分と同じ絶望を味わわせてこそ、初めて復讐は完成する。
「その声……まさか枢木か!?」
「ハハハ、アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
仮面に隠れていたため、ジェレミアは今までベルデの正体がスザクであることに気付いていなかった。
大声で盛大に笑い続けるスザク。
かつての騎士の面影はなく、そこに立っているのは外道へと落ちた悪鬼。
最初は唖然としていたジェレミアの顔が、だんだんと怒りの色で染まっていく。
「貴様ァッ!」
激情を顕にし、刀を振り抜くジェレミア。
笑い続けるスザクへ斬り掛かろうとするが――――
「――――マハラギダイン」
スザクの身体から巨大な火柱が立ち上がり、その足は立ち止まってしまった。
支援
支援
支援
「がああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
悲鳴へと変わる笑い声。
紅蓮色の巨大な火炎が、スザクの周辺一帯を隈なく覆い尽くす。
苦痛から発せられる悲鳴は、まさに断末魔の絶叫だった。
「ギイイイイイイイイイイイイィィィィィィィィィッ!!!!」
続いて、もう一つの悲鳴が轟く。
彼らの背後にいたバイオグリーザが炎に包まれたのだ。
炎熱によって空は揺らめき、景色は歪んでいく。
牢獄から脱出しようとスザクは必死に藻掻くが、炎の奔流が彼を逃すことはない。
内側で彼を焼き尽くすそれを喩えるなら火炎の牢獄。
その中で藻掻き続ける姿は、まるで火の海を泳いでいるようだった。
「ギ……ギィィ――――……」
二つの絶叫が空気を震撼させるが、やがて一つは聞こえなくなる。
バイオグリーザが完全に燃え尽きたのだ。
それが合図だったかのように、スザクの身に纏う鎧がくすんだ黒鉄色に変わていく。
契約モンスターを失ったことで、ベルデはブランク体に戻ったのだ。
ブランク体になったライダーの力は大幅に減少する。
それはつまり、身体を焼かれる苦痛がより鮮明に伝わるようになったということ。
「ぐあ……がああ……ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
獣のような絶叫が木霊し、橙に煌めく空に黒煙が立ち込めていく。
パチパチと音を立てながら、黒鉄色の鎧も炎上が始まっていた。
炎に呑まれた鎧からは炭化して崩れていき、スーツにはポロポロと穴が開き始める。
やがて鎧に包まれている箇所よりも生身の箇所が多くなり、炎は彼の内側にまで侵攻していく。
苦痛に屈したのか、やがてスザクの身体は動かなくなった。
両腕は力無くぶら下がり、首はだらんと下に落ちる。
「が……ぁ……」
炎に溶け落ちるように、スザクの変身が解除される。
Vバックルが炎熱で変形し、装着されたカードデッキが零れ落ちたのだ。
落下した瞬間、炎に呑み込まれるカードデッキ。
美しい長方形だったそれは溶け出し、見る見るうちに歪な楕円へと姿を変える。
やがてその楕円すらも炎が覆い尽くし、燃え尽きて完全に消滅した。
「…………」
喉を焼かれたのか、スザクの口からはもはや悲鳴すらも上がらない。
それでも炎の勢いは収まらず、容赦なく彼の身体を燃やし尽くす。
彼の象徴だった白の騎士服は、炎の浸食で瞬く間に黒に変わっていく。
力を失った彼にに、それを防ぐ手段はない。
やがて炎は服を突き破り、彼の肉体に到達した。
至るところに醜い火傷を負った彼を、火炎は嬲るように責め付ける。
髪も、爪も、皮膚も、肉も、骨も、内蔵も、神経も。
もはや焼かれていない箇所は存在しない。
「……ぁ……」
彼の全身がどす黒い赤に染まった頃、ようやく炎の勢いは弱くなった。
身体の至るところから黒煙を上げるスザク。
座ることさえままならないのか、脚は錆び付いた鉄骨のように地面に突き刺さっている。
両腕と頭は下を向き、焦げ付いた地面を焦点の定まらない目が泳いでいた。
支援
私怨
支援
支援
支援
「……殺してやる」
底冷えするように冷たく、だが焼け付くような憤怒を乗せた声が響く。
「殺してやるぞ、枢木!」
斬鉄剣を抜いた狭間が、スザクに斬り掛かろうとしていた。
焦げ付いた地面の中心に立ち尽くすスザクの下へと、狭間は一歩ずつ距離を詰めていく。
それを見ることすらせず、棒立ちのまま下を向いているスザク。
もはや抵抗する力も残されていないのだろう。
スザクの傍にまで辿り着いた狭間は、斬鉄剣を鞘から抜く。
「狭……間……さん……」
刹那、小さな声が狭間の耳朶を震わす。
注意していなければ聞き取れなかっただろう、今にも消えてしまいそうな声。
声の方向を振り向くと、遠くで仰向けに倒れるレナの姿があった。
悲しそうな目で彼を見る、レナの姿が。
狭間の手が、止まる。
「がっ……!」
そんな彼の頭部に、背後から衝撃が襲い掛かった。
地面に激突し、転げていく狭間。
目まぐるしく変化する彼の視界に、拳を突き出したスザクの姿が映る。
スザクは身体を翻すと、遊園地の出口へと走り去っていった。
「あいつ……あれで動けるのか!?」
「待て、枢木!」
大火傷を負いながらも走り去っていくスザクを見て、ジェレミアと北岡が声を上げる。
「う……あぁ!」
だが、レナの上げた苦悶の声がそれを掻き消した。
「……」
口元に付着した血を制服の裾で拭きながら、狭間はゆっくりと立ち上がる。
そのまま覚束ない足取りで歩き始め、レナの傍へと来た。
そこで初めて、目の前の惨状と向き合う。
左胸からの出血は未だ止まらず、セーラー服は全体が血で染まっている。
呼吸は刻一刻と荒くなり、顔からはどんどんと生気が抜けていく。
身体の下には血溜まりが出き、彼の履く黒い革靴を汚していた。
「ディアラハン」
青白くなったレナの顔に手を翳し、自らの知る最高の回復魔法を唱える狭間。
柔らかい光が、彼女の身体に膜を張る。
だが、無意味だった。
左胸の負傷は塞がっても、肉体から離れようとする魂を留めることができない。
彼女が死に逝くのを、止めることができない。
支援
支援
「何故だ……何故なんだ……」
自問するように、狭間の口から声が漏れる。
燃え盛るような復讐心が消えた後、去来したのは空虚感。
魔界では簡単に覆せたものが、ここでは覆すことができない。
竜宮レナが死んでしまう。
自分に信じる心を教えてくれた人が死んでしまう。
狭間にとって、それはとてつもなく恐ろしい事だった。
「……死なないでくれ」
次第に声は嗚咽混じりになり、ついには涙声へと変わる。
ぽたり、ぽたりと。
狭間の目から、涙が零れ落ちていく。
「死ぬな!」
大粒の涙を流しながら、震える声で狭間は叫んだ。
「駄目だよ……」
狭間の頬に、暖かいものが触れる。
涙で歪む視界で目を見開くと、その正体がレナの手であることが分かった。
「男の子が泣いちゃ……駄目だよ……」
レナの手が狭間の目元を擦り、溜まった涙を拭い取る。
歪んでいた視界が、元へと戻った。
だが、そこに映るのは血塗れのレナの姿。
また涙が零れ落ちる。
氾濫した川のように涙が止まらない。
自分で拭っても、次から次へと溢れだしてしまう。
「もう……しょうがないなぁ……」
そんな彼を見兼ねたのか、レナがまた狭間の涙を拭う。
そうして視界の先に飛び込んできたのは、困ったように笑う彼女の姿だった。
「狭間」
今まで沈黙を貫いていたジェレミアが口を開く。
「私達はこれから枢木ともう一人の男を探してくる」
ジェレミアの言葉を受け、狭間は数分前に縁が倒れていた箇所に視線を向ける。
そこに縁の姿はなく、代わりに力の香の空き瓶が転がっていた。
「君は……竜宮の傍に居てやれ」
そう言い残すと、狭間の返事を聞く前にジェレミアと北岡は去っていった。
「……」
去っていく二人を目で追う狭間だが、やがて視線はレナへと戻っていく。
血に塗れ、今にも死んでしまいそうなレナへと。
視線を逸らしたからといって、レナの容態が良くなるわけがない。
そんなことは、分かっている。
支援
支援
支援
支援……
「私……死んじゃうんだね……」
他人事のように呟くレナ。
彼女の口から死という単語を聞いたことで、死という概念が狭間の中でよりはっきりと形を為していく。
死とは魂の終着点。
肉体から離れた魂はある場所へ向かう。
黄金の海を渡り、無限に広がる花畑を越え、その先にある川へと。
そこで輪廻の輪を潜り、新たな命へと転生する。
つまり魂とは無限なのだ。
しかし、いくら無限と言っても、いくら転生すると言っても。
竜宮レナという存在が消えてしまう事実は変わらない。
「死ぬな……死んでは駄目だ、死ぬんじゃない…………死んじゃ嫌だ……」
制服が血に染まるのも厭わず、血溜まりの中に座り込む狭間。
震える手を回し、レナの身体を抱き締める。
そうして直に触れた肌は、恐ろしいほど冷たい。
頬に触れた時に感じた暖かさが、今は欠片も感じられない。
「僕を、僕を置いてかないでよ……君に置いてかれたら僕は、僕は……」
レナの身体に縋りつくその様は、まるで駄々をこねる子供だった。
「あはは……」
縋りつく狭間の背に、レナの手が乗せられる。
その感触を感じた狭間は、涙と血で塗れた顔を上げた。
「狭間さん、本当は自分のこと僕って言うんだね」
ニィっと笑いながら、悪戯っぽい口調で指摘するレナ。
「いやっ、ち、違う……これは……私は!」
「もう……別に恥ずかしがらなくたっていいよ、誰にも言ったりなんかしないよ」
からかわれたことで羞恥を覚え、狭間の頬に朱が差していく。
畳み掛けるように、今の自分が何をしているのかを思い出した。
子供のように涙を流しながら、年下の女の子に抱き着いている。
急いで彼女の身体から離れるが、先程まで抱き着いていたことに変わりはない。
あまりの醜態に、猛烈な自己嫌悪に襲われる。
「狭間さんって結構甘えん坊さんなんだ」
「ち、違う! そんなことはない……私は……全知全能の……!」
「あははっ、可愛い」
「か、可愛いだと!?」
「うん、とっても可愛いよ」
熱の篭った顔にさらに熱くなっていく。
必死で取り繕うとするものの、言葉が浮かんでこない。
「私だけが……私だけがその事を知ってるんだね、ちょっと嬉しいな……」
そう呟いたレナの顔はとても嬉しそうで、でもちょっとだけ寂しそうだった。
死宴
支援
支援
「さっきまですごく痛かったのにね……今は全然痛くないんだ、狭間さんのおかげかな?
痛くないのに……とっても眠いんだ……ごめんね、せっかく魔法を掛けてくれたのに」
「ッ……君が謝ることはないだろう、むしろ謝るのは私の方だ、私が君を完全に回復させることが出来れば……」
「ううん、そんなことない」
悔恨の言葉を連ねる狭間を見て、レナは首を横に振る。
「……狭間さん、一つだけ……お願いしてもいいかな……」
「なんだ、言ってみろ」
とても眠そうな目で狭間を見上げるレナ。
紡いだ言葉はあまりにも希薄で、彼女の命がもう長くないことを実感させる。
「うん……皆を元の世界に返してあげて欲しいんだ……狭間さんならきっと出来るよ」
「当たり前だろう、私を誰だと思っている?」
「ジェレミアさんに……北岡さんに……柊さんに……ヴァンさんに……C.C.さんに……」
「ああ、分かっている、だから――――」
「狭間さんも……」
辛そうに話すレナを見兼ねて黙らせようとするが、自身の名前が出たことで思わず口を結んでしまう。
「狭間さんも……元の世界に帰ってね」
死が、すぐ傍で鎌首をもたげている。
そう実感させてしまうくらい、彼女の声は儚い。
「ああ、分かった」
しかし、その声は。
「その願い、この魔人皇――――狭間偉出夫が引き受けた
必ず他の者達と共にここを脱出し、元の世界に帰ってみせる、約束しよう」
全知全能たる魔神皇――――狭間偉出夫の耳に、確かに伝わっていた。
「……」
狭間の返答を聞くと、レナは笑顔を浮かべる。
女神と見間違うような、慈愛と母性に満ちた笑顔を。
そうして、そのまま動かなくなる。
女神のような笑顔を浮かべたまま、竜宮レナはこの世を去っていった。
「……ああ、分かっているさ、分かっているとも……」
レナの肉体を見下ろしながら狭間は独白する。
上を見上げると、そこにあるのは雲一つ無い星空。
彼女の魂は天を昇っているのだろうか。
柄にもなく、狭間はそんなことを考える。
だがしばらくすると、決心したようにレナの肉体へと視線を戻した。
「君の生き様を絶対に侮辱させたりなどしない、少し熱いかもしれないが……我慢してくれ」
狭間の掌に生まれた小さな炎。
それはゆっくりとレナの肉体に向かっていき、到達すると大きな炎になって抱き締めるように包み込んだ。
支援
支援
支援
支援
「……」
肉体はどんとんと形を失い、炎の中で朽ちていく。
主催側がさざなみの笛を所持しているため、彼女の肉体が操られる可能性がある。
そんなことは絶対に許すわけにはいかない。
だからこそ、遺体を燃やしたのだ。
「竜宮……」
遺体を燃やしたことで、また改めて彼女の死を実感してしまう。
また涙が流れそうになるが、必死に踏み止まる。
必死に拳を握り締め、我慢する。
そんな時だった。
「誰だ!?」
背後で、擦れるような物音が鳴ったのは。
☆ ☆ ☆
「ハハハ……アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
大火傷を負った身体を鞭打ちながら走り続けるスザク。
滅茶苦茶に逃げていため、現在地が何処かすらも分からない。
周囲を見渡すと民家が並んでいたため、辛うじて遊園地は脱出したことが分かった。
「やったよ! 僕、やったんだ!」
激痛と熱が身体を苛んでも、流れる空気が皮膚を切り裂いても、そんな事は関係ない。
狂ったように笑いながら、彼はただ走り続けている。
いずれ狭間達も殺すが、今の装備では無理だろう。
ベルデのデッキは破壊され、他の支給品も全て燃え尽きてしまった。
回復道具を持った縁と合流し、再び戦力を整える必要がある。
「水銀燈、僕は一人殺せたんだ!」
口走ったのは愛する人への思慕の情。
眠っている彼女が起き上がるまで、一歩近づいた。
自分の身体が燃え尽きようとも、最後に彼女が起き上がってくれればそれでいい。
今の彼の原動力は、彼女を愛する心だ。
「待っててね……もうすぐだから……もうすぐで!」
縁と合流して装備を整えたら、今度こそ狭間を殺す。
愛する人を失って絶望した狭間を、今度こそこの手で殺してやる。
そうすれば、水銀燈の復活はもう目と鼻の先だ。
「もうすぐで君を――――」
色を失った瞳を見開きながら、スザクは叫ぼうとする。
だが、その前に視界がぐにゃりと歪んだ。
脳を直接掻き回されたように頭は混濁とし、手脚から力が抜けていく。
踏ん張ろうとするも叶わず、彼の身体は傍にある壁へと倒れ込んだ。
支援
支援
支援
「あれ、おかしいな……」
壁にもたれかかろうとするが、それすらも叶わない。
炭と血の色で外壁を汚しながら、身体はずるずると地面に下がっていく。
スザクは驚いているが、理由は単純だ。
酷使した身体が限界を迎えただけである。
あれ程の大火傷を負い、今まで動けた方がおかしいのだ。
右手を伸ばして外壁にしがみ付くが、すぐにその手も離れてしまう。
座り込むようにずり落ちたスザクの身体は、もう指一つ動かなくなっていた。
「何でだろう……どうして動けないのかな……」
瞼が重くなってくる。
大火傷を負った身体で走り回ったことで、体力も限界を越えてしまったのだ。
意識には靄が掛かり、視界は暗黒に染まっていく。
訪れた死の運命を、スザクは朧気に悟った。
「ごめん、水銀燈……」
ぼんやりとする意識の中、最後に残ったのは愛する人への懺悔の心。
「君を生き返らせることができなかった……仇も取れなかった……ごめん……」
赤黒く染まった瞼の下から、涙が零れ落ちる。
狭間偉出夫と相対したにも関わらず、スザクはとどめを刺すことができなかった。
彼の大切な人は奪えたが、それだけだ。
逆に返り討ちにされ、おめおめと逃げ帰ってきた。
生き返らせることもできず、仇を取ることもできず、彼の命は潰えようとしている。
「水銀燈……水銀燈……水銀燈……水銀燈――――」
何も成し遂げられなかった人生に未練を抱きながら、水銀燈の名前を連呼し始めるスザク。
そうすることで、彼女の存在を身近に感じることができる気がしたのだ。
「……水銀燈……水銀燈……水銀燈――――」
悠然と広がる黒翼に、鈴を鳴らしたような声、絹のように美しい銀髪。
幼さを残しながらも色気のある肢体と、それを一層惹き立てる黒のゴシックドレス。
鋭くも憂いを帯びた瞳と、均整に整った美麗な顔。
そこに浮かぶ千差万別の表情や仕草、口癖、思考、動作。
彼女に欠点など無く、ありとあらゆる所が愛おしい。
支援
支援
「水銀燈……水銀燈――――」
彼女の一挙手一投足を思い浮かべながら、スザクは名前を呼び続ける。
「水銀燈――――…………」
だが、それは。
「……………………」
何の前触れもなく。
「…………水銀燈?」
唐突に終わりを告げた。
「あれ、今まで、僕は……」
意識の中の霧が晴れていき、視界が鮮明になっていく。
死へ向かおうとしていた肉体に光が灯る。
その感覚を例えるのなら、朝日が昇っていく様を眺めているような気分だった。
鋭く歪んでいた瞳は、幼子のそれのように丸みを帯びていく。
内側に溜まっていた濁りは消え、目の前の光景を鏡のように映し出していた。
回り道になるが、ここで一つの事実を話しておかなければならない。
先の戦いの際、彼は身体を完全治癒する”香”を使用した。
鷹野三四が無断で持ち出し、雪代縁を経由して彼の手渡された道具。
これには傷を完全回復する他に、使用者の能力を上昇させる効果もある。
鷹野のは知恵を、縁は速さと力を強化されている。
ならば、スザクは何を強化されたのだろうか。
それは――――運だ。
能力上昇の説明まで受けていなかった縁が適当に取り出したのは運の香だった。
先の戦いを思い出して欲しい。
結果的に成功したものの、レナへの奇襲は綱渡りも同然であった。
カードの装填音に気付かれず、狭間達に気配を悟られず、バイオグリーザの接近を限界まで許す。
これらが全て成功したのは、偏に運が良かったからだ。
ギガキャノンの砲撃による気絶からすぐに回復したのも、打ちどころが良かったからである。
あれだけの大火傷を負ってすぐに動けたのも、ジェレミアや北岡の追跡を振り切れたのも。
全ては運が良かったからだ。
さて、本題に入ろう。
彼が水銀燈に飲まされた惚れ薬は、本来なら水の精霊の秘薬でしか解除できない劇薬。
故に狭間の魔法でも効果を弱める程度が限界であった。
少々効果が収まったところで、魅了状態が解除されるわけではない。
しかし、この効果も永遠ではない。
持続時間には個人差があり、一定時間が経過すれば魅了状態は解除される。
ここまで説明すればもう分かるだろう。
惚れ薬の魔力に囚われている本人は幸せでも、所詮は毒物。
毒物とは身体の外に排出されるべきものだ。
その効力が弱まった直後、運気が上昇したことで――――
――――惚れ薬の効果は途切れたのだ。
支援
支援
支援
「なんで、僕は、水銀燈なんかの言うことを……」
火傷を負った手足を見回しながら疑問符を浮かべるスザク。
何故、水銀燈のことを愛してるなどと言ったのか。
彼女は自分を罠に嵌め、何らかの毒を盛った。
すぐに身体の調子は良くなったが、それでも毒を盛ったのは事実だ。
彼女は愛する人などではなく、倒すべき敵だ。
いや、そもそも根本からおかしい。
自分が心の底から愛する女性は、この世にたった一人しかいない。
「違う、水銀燈じゃない、僕が、本当に愛していたのは――――」
「――――誰だ?」
姿が、思い出せない。
声が、思い出せない。
顔が、思い出せない。
名が、思い出せない。
表情も、仕草も、口癖も、思考も、動作も。
何もかもが、思い出せない。
忘れるはずがないのに、ぽっかりと穴が開いたように思い出せない。
唯一残っているのは記憶。
だが、その中に彼女の姿はない。
記憶としては残っているのに、その中に居るはずの彼女の姿は無い。
古ぼけたビデオテープのように、彼女の姿だけが抜け落ちている。
それでもスザクは諦めなかった。
記憶を手繰りよせ、瓦礫の中から探し出すように全身を傷だらけにしながら思い出そうとする。
「あ……あ……」
それでも、何一つ思い出すことができない。
代わりに思い出したのは――――
――――高良さん。ごめん……彼女の為に死んでくれ
――――そうだね、弾が勿体無い。鎌を使っても血で切れ味が悪くなるかもしれないからね
――――好きな人を生き返らせようと思って……何が悪いッ!!!
同行していた高良みゆきを銃で撃ち殺した。
目の前を走っていた少年を気絶させ、支給品を全て奪い取った。
既に死体となっていたルルーシュの頭を撃ち抜いた。
無防備だった一般人の集団を襲撃した。
他の戦闘に乱入し、相手を殺す寸前まで傷めつけた。
かつての同志だったジェレミアの首を、殺すつもりで絞め上げた。
「あ……あぁ……ああああ……あああああぁぁぁ」
思い出したのは、水銀燈の名の下に行なってきた罪の記憶。
惚れ薬の効果は途切れても、その間の記憶は残り続ける。
丸くなっていた瞳孔が徐々に見開いていく。
四肢が痙攣し、焼け付いた喉から震えるような声が漏れだす。
支援
支援
――――やった……ハハ……ハハハ、ハハハハハハハハハハハハ!!!!
――――水銀燈の仇だ! 君が彼女を殺したから! だから! アーッハハハハハハハハハハ!!
――――君も……君も大事な人を失う苦しみを味わえ!
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!」
狭間偉出夫の大切な人を、この手で撃ち殺した。
彼女を撃ち殺した銃で、狭間の大切な人を撃ち殺した。
かつてルルーシュが――――ゼロがそうしたように。
「僕は……俺はぁ……何てことを……ッ!」
途方も無いほどの後悔が押し寄せる。
贖おうとしても、到底贖い切ることのできない後悔。
それが大津波となり、動かない身体を呑み込んでいく。
どれだけの苦痛が身体を蝕んでも、藻掻くことすら許されない。
「ごめん……ごめん……ごめん……ごめん……」
涙が頬を濡らしていく。
だが、それすら許さないと言うように火傷の跡が染みて疼きだす。
それでも涙は止まらず、スザクを苛んでいく。
「高良さんごめん……ジェレミア卿ごめん……ルルーシュごめん……」
激痛が全身を攻め立てる中、掠れた声で謝罪を続けるスザク。
名を知る者へは直接、名を知らぬ者へは心の中で言う。
彼の中にはもう何も無い。
愛する人を失い、故郷を失い、誇りを失い、友を失い、思い出すらも失った。
「イデオ……ごめん…………」
指一つ動かない身体でも、スザクの意識はしばらく保たれていた。
しかし、もはや生きる気力はない。
『生きろ』のギアスを失った彼に、もはや贖罪の道を選ぶほどの力はない。
暗闇が帳を降ろす、薄暗い路地の中。
そこに座り込んだスザクは、誰も聞く者がいない謝罪をひたすらに述べ続けた。
「ごめん――――…………」
【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ 死亡】
支援
支援
支援
☆ ☆ ☆
柊つかさが事の顛末を知ったのは、数時間前まで根城にしていた民家の中でだった。
ミラーハウスの影に身を隠し、北岡達が戻ってくるのを待っていたつかさ。
戦場からは数百メートル離れていたため、音も疎らにしか聞こえない。
その状態で三十分が経過し、不安を抱き始めた頃に彼らは車に乗って戻ってきた。
運転席にジェレミア、助手席に北岡、後部座席に狭間。
レナの姿が無いことには、すぐに気付いてしまった。
車内の雰囲気が重く、何が起きたのかを尋ねることはできない。
根城にしていた民家に戻り、北岡と二人きりになったところでようやく話を聞くことが出来た。
「レナちゃんが……」
数時間前に一緒に料理した彼女の死に同情を隠すことができない。
涙が零れそうになるのを、必死で我慢し続けた。
一番辛いのは狭間なのだ。
民家に到着した直後、狭間は一人になりたいと二階に行ってしまった。
そしてもう一人、ジェレミアも奥の部屋に篭っている。
遊園地の出口の先にある民家で、枢木スザクが力尽きているのを発見したらしい。
彼女がスザクと会ったのは、総合病院を出た後の一件だけだ。
自分達を襲撃してきた彼を、彼女は危険人物だと認識している。
しかしジェレミアからすれば同郷者の一人であり、敵とも味方ともつかぬ複雑な関係にあった。
本来の彼は凶行に走るような人物ではない。
ジェレミアはずっとその理由を知りたがっていたが、最後までそれを知ることができなかった。
故にジェレミアは深い後悔を抱いているのだ。
「……」
沈黙が場を支配する。
部屋に篭る直前の二人の顔が出発前と比べて随分と憔悴していたことを、彼女は思い出していた。
顔を見上げると、北岡も沈痛な面持ちをしている。
レナやスザクの他にもう一人、今回の騒動で犠牲者が出ていた。
全ての発端である女性、鷹野三四。
殺し合いに巻き込んだ主催側の一人であり、彼女自身も直接命を狙われている。
完全に敵側の人間ではあるが、それでも死んで欲しかったとは思わない。
それに死人が出たこともそうだが、あの場で戦った一人を取り逃がしてしまっている。
つかさは直接会ったことはないものの、アイゼルや奈緒子を襲った男と特徴が一致していた。
北岡さん……」
誰にも聞こえないような小さな声で呟くつかさ。
木製の椅子に腰掛ける北岡が、今はとても小さく見える。
その場にいなかった彼女ですら胸が張り裂けそうなのだから、彼らの心中は想像するだけでも痛ましい。
「私が……何とかしなくちゃ……」
だからこそ、そう思う。
戦闘では役立たないのだから、それ以外のところで尽力するしかない。
そうして辺りを見回して、目に入ったのが数時間前に作ったビーフシチューだった。
材料が多めに用意されていたため、まだ四人分くらいは残っている。
「つかさちゃん?」
椅子から立ち上がり、一目散に台所へと駆け寄るつかさ。
背後で北岡が呼び掛けてくるが、それも耳へは入ってこない。
コンロのノズルを捻り、鍋に入ったシチューを温め始める。
支援
支援
支援
魔術師還らず
「車の中でジェレミアさんがお腹が空きそうって言ってたので、準備した方がいいかなって思ったんです」
振り返ってつかさがそう言うと、納得したように北岡が頷く。
北岡も空腹を覚えているのか、自らの腹を摩っていた。
食事は数時間前に済ませたばかりだが、満腹にならないように抑え目にしてある。
少々早い気はするが、今のうちに食べてしまっても問題はないだろう。
「北岡さんはジェレミアさんに持って行ってあげてください、私は狭間さんに持っていくので」
戸棚から取り出した皿を並べ、ビーフシチューを盛っていく。
「それじゃあ、お願いしますね」
そう言い残したつかさは、お盆に皿を乗せて台所から立ち去る。
向かったのは狭間がいる二階に繋がる階段。
四人一緒に食事を摂ることも考えたが、一人になる時間も大切である。
零さないように気を付けながら階段を上がり、廊下を歩いて寝室の扉の前に立つ。
コンコンとノックをすると、乾いた声で返事が返ってきた。
「入りますね」
扉を開けると、ベッドに腰掛けた狭間が夜空を眺めていた。
背を向けているため、表情を伺うことはできない。
「あの……車の中で言ったビーフシチューを持ってきたんです、良かったら食べてください」
ベッドの上にお盆を置く。
そうして扉の前まで退散した彼女は、は緊張しながら緊張しながら狭間の挙動を見守り始めた。
見るからに気品漂う狭間の口に合うか不安だったのだ。
しばらく皿を注視し続けた後、狭間は膝の上にお盆を乗せた。
傍に置かれたスプーンを手に取り、皿に盛られたビーフシチューを掬い取る。
そして、口へと運んだ。
「……」
訪れる沈黙。
扉の前に立ちながら、狭間が食事をする様子を観察するつかさ。
口内で味わっているのか、狭間は中々呑み込まない。
調理師を目指しているため、ビーフシチューの味には自信がある。
事実、北岡やジェレミアは褒めてくれた。
しかし中々呑み込まない狭間に、抱いていた自信は不安へと変わっていく。
妙な居心地の悪さから、全身が痺れるような感覚を覚え始める。
それでも待ち続けて二分が経過。
無言だった空間に、ごくんと飲み込む音が響く。
「ど、どうでしたか?」
緊張が頂点に達したためか声が裏返ってしまう。
羞恥心から逃げるようと、思わず顔を逸らすつかさ。
「中々に美味だったぞ」
そんな彼女に返ってきたのは賞賛の言葉だった。
羞恥に染まっていた顔が、歓喜を表す明るいものへと変わっていく。
支援
支援
「ホ、ホントですか!? ありがとうございます!」
「……これは貴様と一緒に竜宮も作ったのか?」
「はい、そうです……そうだ、レナちゃん、狭間さんも来るからってとっても頑張ってたんですよ!」
畳み掛けるようにそう告げるが、狭間からの返事は返ってこない。
余計なことを言ってしまったかと、後悔の念が彼女の脳内を渦巻いていく。
「……通りで」
すると彼は、自嘲するようにフッと笑いながら――――
「通りで、しょっぱくなるわけだ」
そんな事を言った。
「え……やっぱりお口に合わなかったですか?」
恐る恐ると言った様子で尋ねるつかさ。
レナは調理の手伝いをしただけで、あくまで主導は彼女である。
故に味付けに問題があれば、それは彼女の責任なのだ。
「いや、そんな事はない」
「で、でもしょっぱいって……」
「ああ、しょっぱいな」
そう言いながら、二口目を口に運ぶ狭間。
その姿を眺めていて、彼女は気付いてしまった。
スプーンを持つ手が震えていることに、先程から彼が何度も鼻を啜っていることに。
「本当に、しょっぱいな」
食べ始めてから、ずっと彼が背を向けていることに。
☆ ☆ ☆
「柊、頼みがある」
半分ほど食べ終えた狭間が、唐突に言葉を投げかけてくる。
「他の二人を居間に集めておいて欲しい、そこで大事な話をしたい」
くるりと身体を反転させ、つかさと向き合う狭間。
凛とした張りのある声色を響かせ、最初に会った時のような自信に溢れた顔で告げた。
支援
支援
支援
支援
☆ ☆ ☆
食事を始めてから十数分。
全員が食事を終え、汚れた皿を洗い終えた頃に狭間は二階から降りてきた。
「ジェレミア、パソコンを貸せ」
居間に入ってきて早々、開口一番に狭間はそう言い放つ。
命令口調にジェレミアがピクリと眉を動かすが、嫌々といった様子でノートパソコンを差し出した。
「柊、頼むぞ」
「え? あ、はい」
汚れた皿をつかさに押し付け、ノートパソコンを受け取る狭間。
呆然としながらも彼女はそれを受け取り、そそくさと台所に走っていく。
北岡の呆れたような顔をしているが、彼がそれに気付く素振りはない。
机の上にパソコンを置くと、椅子に座ってそれを起動させた。
「そういえば鷹野からユーザ名とパスワードだけは聞き出せてたな」
思い出したように言いながら、北岡とジェレミアは狭間の背後に移動する。
つかさの洗い物が終わった頃には、『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページが画面に表示されていた。
メニューには多くの項目があるものの、大半の情報には閲覧制限が設けられている。
パスワードを知る者しか閲覧を許さない堅牢な錠前。
しかし、今の彼らにはそれを解き放つ鍵がある。
狭間はログイン画面を表示すると、目にも留まらぬ速さでユーザ名をパスワードを入力した。
「開いた!」
喜びの余り声を上げるつかさ。
扉は開かれ、中にある重要な情報へと辿り着いたのだ。
鷹野が死亡した今、これが唯一の突破口なのである。
「ふむ……」
凄まじい速度でページをスクロールする狭間。
その余りの速さに、北岡とジェレミアですら追うことができない。
つかさに至っては、背後であたふたとしていた。
参加者詳細プロフィールを読み終えると、今度は一つ下にある参加者の動向へ。
それも読み終えると、また一つ下へ。
次から次へとページを読み進めていく。
「あのさぁ、もう少しゆっくり読めないの?」
「いつでも読めるのだ、後で見ればいいだろう」
北岡の懇願をピシャリと打ち切り、ひたすらに文字を追い続ける狭間。
その返答を聞いた北岡は、ジェレミアと目を合わせて肩を竦めた。
「もう読み終わったぞ」
「早っ!」
パスワードを入力してから、およそ三分後の出来事だった。
支援
支援
「目的は見れないみたいだな」
「ああ、そこだけはあの女の権限でも閲覧できなかったようだ」
狭間からパソコンを受け渡されたジェレミアは、真っ先に最上部に設置されていた目的のページを開く。
しかし、そこだけは閲覧制限が設けられたままである。
余程知られたくなかったのだろう。
敵を知るのは重要だが、見ることができないのなら仕方がない。
ページを戻し、一つ下にある『参加者の詳細プロフィール』を開いた。
「これに間違いはないようだな……」
ゆっくりとページをスクロールしていくジェレミア。
そこに記されているのは夥しい程の情報量。
参加者詳細プロフィールには、全ての参加者の詳細な情報が。
参加者の動向には、全参加者のこれまでの動向が。
死者表示、世界観区分にも、題目通りの情報が記されていた。
自身の情報と照会してみるが矛盾はないため、
この中の情報は信頼できると判断していいだろう。
「この二つは何なんだ……?」
nのフィールドの危険性と、「彼」のギアス一覧。
ギアスという単語に馴染みがあるためか、ジェレミアが先に開いたのは後者だった。
そのページに記されているのは、「彼」が使用したとされるギアスの詳細。
全参加者に課せられたギアスの詳細が記されていた。
「彼」というのは、つかさの記憶の中にある銀髪の少年のことだろう。
大半の参加者は連れ去る際にものだけだが、一部の参加者には能力の制限が設けられている。
例えば後藤に掛けられた、他の参加者に手加減しろというものがそうだ。
他は狭間やシャドームーンなどが該当している。
「大半の参加者はギアスで連れてこられたようだな、だが私やC.C.はどうやって連れて来た……?」
疑問が解けた先にあったのは新たな疑問。
ギアスの通じないジェレミアやC.C.はどうやって連れて来たのか。
さらに突き詰めれば、制限の方法に関しても全貌が判明した訳ではない。
謎は深まる一方だった。
「これ、本当なのか……?」
後者を見終わり、nのフィールドについて記されたページを開く。
そこに踊る文字を見て、北岡は額に皺を寄せた。
そのページで説明されているのは、nのフィールドに関する詳細な情報。
その名称に覚えはないが、鏡面から入るという点はミラーワールドと一致している。
ローゼンメイデンと呼ばれる者達のみが出入りすることができるらしい。
「あの薔薇水晶とかいう輩がそうだろう」
薔薇水晶があの場から立ち去る際、窓ガラスの中に消えて行った。
真紅や翠星石といった他のローゼンメイデンとも名前の響きが似ているため間違いないだろう。
読み進めていく内に、主催側の者達がnのフィールドを経由して会場の出入りしていることが分かった。
「そういうことか!」
マウスを握り締めながら、ジェレミアが叫ぶ。
その背後で北岡も納得するように染み染みと頷いている。
支援
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「さっきのリストの中にあった真紅や翠星石って連中に掛けられてたギアスを覚えてる?」
「えぇっと、確か四人ともnのフィールドに入るなってギアスが……ああああああ!!」
北岡が言わんとしていることが理解できたのだろう。
つかさも大声を上げ、驚愕を顕にした。
「その人たちのギアスが無くなっちゃえば、V.V.さんに会いに行けるんだ!」
nのフィールドに入ることができるローゼンメイデン。
しかし彼女達には『nのフィールドに入るな』というギアスが課せられている。
「ギアスなら私のギアスキャンセラーで解除することができる」
橙色の仮面に覆われた左眼球を指差すジェレミア。
ギアスを解除できる彼と、nのフィールドに乗り込むことができるローゼンメイデン。
彼らが一堂に会すれば、主催側に乗り込める可能性が出てきたのだ。
「まだ翠星石は生き残っているな」
「翠星石ちゃんは真紅ちゃんの仲間だってレナちゃんが言ってました!」
「ああ、これなら行けるぞ!」
殺し合いに巻き込まれてからおよそ一日。
五十三人もの犠牲者を出し、今も何処かで命が潰えようとしている。
それでもこの場において、初めて明確な希望が生まれたのだ。
「だが、早く向かわないとまずいかもしれん」
参加者の動向のページを見ながらジェレミアは言う。
現在翠星石は地図にない診療所で休憩中のようだが、これからシャドームーンと戦おうとしている。
五人もの人間を虐殺し、今もなお血を欲している最強のマーダー。
この場に彼と邂逅したものはいないが、動向を読むだけでも恐ろしい敵であることは伝わってくる。
全力で衝突した場合、死亡してしまう可能性は十二分にあった。
「狭間、悪いんだけどさ、あの機械で翠星石の居場所を調べてもらえない?」
「Fー8だ」
「おいおい、あれ見ないでどうやって……ってひょっとしてもう調べてあったりしたの?」
「必要になると思ってな」
頭脳明晰な狭間は、情報を得た時点で翠星石に会う必要性に気付いていたのだ
「よし、じゃあ今すぐ車で――――」
「待て」
急いで部屋を出て行こうとする三人を静止したのは狭間。
窓辺に立ちながら、神妙な表情を浮かべている。
「なにのんびりしてるのさ、もし翠星石がやられちゃったら唯一の脱出法が無くなっちゃうじゃない」
「そうだ、それにシャドームーンと戦うなら頭数は多い方がいいだろう」
矢継ぎ早に繰り出す北岡とジェレミア。
支援
支援
「急いだ方がいいというのは同意だ、だが貴様らに話しておかなければならないことが一つある」
「それはそんなに大事なのか?」
「ああ、そうだ。先程貴様達は”唯一の脱出法”と言ったな?」
「言ったよ、それがどうしたっていうのさ?」
勿体振った言い方をする狭間に、ジェレミアと北岡は痺れを切らした様子である。
一刻を争う事態なのだから当然だろう。
「脱出法かどうかは分からないが、残された希望は一つではない」
だが、次に狭間の口から出た言葉で三人の動きは止まった。
「二つ目の希望が残されている、鷹野三四から託された希望がな――――」
☆ ☆ ☆
時間はレナが死亡した直後まで遡る。
「……貴様、生きていたのか」
背後で鳴った物音に反応して振り向く狭間。
そこに立っていたのは、先程まで戦っていた相手である鷹野三四。
直ぐ様警戒線を敷くが、彼女に戦意が無いことに気付くのはそう遠くなかった。
いや、戦意が無いのではない。
今の彼女は戦う事はおろか、立つことさえ困難なのだ。
口からは大量の血を流し、手足はぶるぶると震えている。
そして腹部には、背後が見える程の貫通傷。
「えぇ……」
もう長くないと、一目で分かる状態だ。
「何の用だ」
この期に及んで、まだ何かを企んでいるのか。
ギリッと歯を食い縛り、今にも倒れそうな彼女に対して狭間は露骨な嫌悪感を示す。
「お願いが……あるの…………」
だが、彼女が放ったのは懇願の言葉。
「お願い……だと?」
想定外の言葉に、狭間は声を荒げる。
あれだけのことをしておいて、自分が頼みを聞き入れると思ったのだろうか。
面の皮の厚さに辟易するが、鷹野は血を吐きながら言葉を紡ぎ続ける。
支援
想定外の言葉に、狭間は声を荒げる。
あれだけのことをしておいて、自分が頼みを聞き入れると思ったのだろうか。
面の皮の厚さに辟易するが、鷹野は血を吐きながら言葉を紡ぎ続ける。
「ゴホッ、ゲホッ、雪代縁を……追い掛けて……」
雪代縁。
スザクと一緒にこの場を訪れ、騒ぎに乗じて姿を消した白髪の男だ。
「何故だ」
「あ、あの男が持っていった……デイパックの……中に……ゴホゴホッ……ゴフッ!!」
無理して喋り続けたせいか、鷹野は思い切り咳き込んでしまう。
続いて鳴ったのは、液体が泡立つような音。
咄嗟に両手で抑えるが、その隙間から大量の血液が流れ出ていた。
「おい!」
狭間がそれに気付いた瞬間、鷹野の身体は崩れ落ちる。
「あの男を……追い掛けて……デイパックの中に……ゲホッゲホッ!!」
「くっ……ディアラハン!」
横たわる鷹野に近付き、レナに施したのと同様の回復魔法を唱える。
死を防ぐことはできないが、傷を癒すことで話ができる状態に戻ると判断したのだ。
「ハァ……ハァ……雪代縁から……デイパックを……取り返しなさい……」
腹部の穴は消え、口からの吐血が止まる。
喋り方は辿々しいが、内容を理解することは出来た。
「あの中に……私がV.V.から盗み出した物があるわ……それを使って……ここから脱出しなさい……」
ラプラスに誘われるがままに会場に赴いた鷹野だが、目的を果たした後のことを考えてなかった訳ではない。
会場に置き去りにされることも見越していたため、一人の参加者として生き残る手段も考えていた。
情報を集め、予備の支給品をデイパックに詰め込む。
しかし、何かが足りない。
そう考えた彼女は、奥の手を用意した。
バトルロワイアルの運営に携わっていた彼女は、その根幹を為すシステムを概ね把握している。
脱出方法や首輪の構成、会場の秘密や制限の手段などを。
これらの情報は絶大なアドバンテージであり、これらを利用しない手はないと判断したのだ。
「何だと……ッ!? それは一体何なのだ」
「それは……それは――――…………」
詳細を告げようとして、彼女の言葉は途切れる。
狭間が呼び掛けるも反応はない。
彼女の魂もまた、黄金の海へと旅立っていた。
「何故だ、何故貴様は……」
盗み出した物の詳細は分からなかったが、殺し合いを覆すほどの物であることは間違いないだろう。
しかし、理解ができない。
自分を散々甚振った相手に、何故それを託したのか。
そもそも信用すると思っているのか。
合理的に考えれば考えるほど、狭間の思考は混迷に陥っていった。
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☆ ☆ ☆
「あの女がそんなことをねぇ……」
「にわかに信じ難いが……何か心境の変化があったのかもな」
鷹野を撃破した直後、狭間達は重症の鷹野を尋問しようとした。
しかし、レナだけは彼女に手を差し伸べている。
直後に彼女は致命傷を負い、レナもまたスザクによって命を奪われてしまった。
だがもしその後も彼女が意識を保っていたなら、レナの最期を目撃していたのだろう。
「まぁ、俺達が知ったことじゃないんだけどね」
「そうだな、それで本題に入るが……その話を信用するのか?」
額に皺を寄せながら尋ねてきたのはジェレミア。
他の二人も訝しげな表情を浮かべている。
自分達を殺し合いに巻き込んだ上、直接襲撃してきた鷹野を信用できないのは無理もない。
「……私はこれを信じてもよいと思っている」
だからこそ、あえてそう言う。
「正気か?」
神妙な表情を浮かべて尋ねてきたのはジェレミアだ。
「無論だ、確かにあの女のしでかした事を考えれば信じる通りはない、疑うのも当然だ」
「だったら何故」
「だが、激痛に耐え、命を賭し、この事を伝えてきたあの女を私は信じてみたいと思っている」
腹部を貫かれる痛みは、普通の人間が耐えられるものではない
即死する可能性も十分にあり、よしんば生き残っても一言話すだけで激痛が全身を襲う。
その苦痛の中にいたにも関わらず、鷹野はこの情報を必死に託したのだ。
「竜宮や蒼島の教えてくれた信じる心を、ここで無碍にしたくないと思っているのだ」
雛見沢症候群によって、他人を一切信じられなくなったレナ。
だが彼女はそれを克服し、他人を信じる心を取り戻した。
そしてその姿に、狭間も信じる心を教えられた。
「疑うのは容易い、だからこそ私は信じてみたい」
それが鷹野の最期を見て、狭間が抱いた結論だった。
「……なら、今からその縁って奴を追うのか?」
「いや、翠星石との合流が最優先だ
彼女を含めた残りの信頼できる者達は全員固まっている、ストレイト・クーガーのみが一時的に離れているようだがな
一度彼らと合流してからでも雪代縁を追うのは遅くない」
このまま彼らがシャドームーンと激突する場合、犠牲者が生まれる可能性は極めて高い。
それだけは何としても阻止しなければならないだろう。
「それなら問題ないんじゃない」
「ああ、どのみちあの男は倒さなければならないしな」
狭間の言葉に納得した二人が首肯する。
あくまで翠星石との合流が優先であり、最終的に縁も倒すべき敵であるという点が信用の鍵になったようだ。
支援
支援
「じゃあ余計に早く行かなきゃ駄目ですね、急ぎましょう!」
会話に入るタイミングをようやく掴んだせいか、つかさの声色は妙に明るい。
「そうだな、また運転よろしく」
「よろしくではない、そろそろ貴様が運転したらどうだ」
「ま、待て!」
出発しようとした三人を止めたのは、またしても狭間だった。
ただし前回と違い、今回の声は上ずっている。
「……今度はどうしたのよ?」
「私は貴様達を信用に値する者達だと思っている、だが……だが……」
「えっと、大丈夫ですか……?」
今までの尊大な口調とは一転し、今の狭間は妙に歯切れが悪い。
心配そうにつかさが覗き込んできている。
「……貴様達は私を信用出来るのか?」
無言のまま一分が経過した後、ようやく狭間は次の言葉を口にした。
「どういう意味だ」
「見たのだろう、私の詳細なプロフィールを」
参加者の詳細プロフィールには、全参加者の詳細な情報が詰め込まれていた。
当然その中には、狭間のプロフィールもある。
魔神皇として暗躍していた時の情報も、無論記載されていた。
「私はかつて魔神皇を名乗り、同じ学校の者達を魔界に封じ込めていた
それでも貴様達は、私を信用できるのか?」
普通に話そうと努めても、どうしようもない程に声は上ずってしまう。
今までは成り行きで会話を交わしていたが、本来の狭間は他者との付き合いが苦手である。
そこに自らの悪事が露見したとなれば、行き詰ってしまうのも当然のことだった。
「はぁ……今更何言ってるのさ」
心底呆れたと言うように溜息を吐いたのは北岡。
「信用するとかしないとか、そういうのはとっくに終わってたと思ってたんだけどさ」
「そうですよ、狭間さんがいなかったら今頃私達どうなってたか」
「確かに貴様のしたことは許されることではない、だがそれは元の世界に帰った後に償えばいいだろう」
北岡の発言を皮切りに、他の二人も言葉を投げ掛けてくる。
信用するのが当たり前だと言うような物言い。
狭間がとんでもなく間抜けなことを言い出したかのような空気が漂っていた。
「それに……元の世界で人に言えないことやってたのは俺も同じだよ、悪徳弁護士なんて言われてたしね」
「私もいつもおっちょこちょいで、こなちゃんやお姉ちゃんによく迷惑掛けてたな」
「……私など純血派の名を借りて、日本人を殺していたこともある」
逆に自らの罪を吐露し始める三人。
そのやり取りを見ながら、狭間は口をぽかんと開けていた。
「……信じると言ってこのザマか、私もまだまだだな」
自嘲するように笑う狭間。
その際に呟いた言葉は、周囲の空気に紛れて誰の耳にも届かなかった。
支援
支援
「そうか……なら、改めて自己紹介させてもらおう」
どうしてこのタイミングで自己紹介するのよと、北岡が突っ込みを入れる。
その理由を答えるのなら、やはり彼が他者との交流に馴れていないからだろう。
だが、そんなことは気にせず、狭間は尊大な口調で言い放った。
「私は軽子坂高校2年E組の狭間偉出夫、そしてあらゆる魔法を習得した全知全能たる魔人皇
この私が来たからには安心するがいい
私は殺し合いというふざけた”もし”を破壊し、貴様らと一緒に元の世界に戻るつもりだからな」
何処までも芝居がかった口調に、目の前にいる三人は苦笑している。
「そのためには貴様らの力が必要だ、だから力を貸してもらう、拒否は許さんぞ」
「フン、当たり前だ」
「私に何が出来るか分からないけど……頑張ります!」」
「そっちこそ後でやっぱやめたとかやめてよね」
三者三様の反応だが、共通しているのは皆が彼を受け入れているということ。
満足そうに笑みを浮かべながら、狭間は一歩前へと踏み出す。
そして、こう言った。
「今後ともよろしく」
【一日目 真夜中/G-9 民家】
【北岡秀一@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]:レイの靴@ガン×ソード、ゾルダのデッキ@仮面ライダー龍騎(一時間変身不可)
[所持品]:支給品一式×3(水×2とランタンを消費)、CONTRACTのカード@仮面ライダー龍騎、CONFINE VENTのカード@仮面ライダー龍騎
FNブローニング・ハイパワー@現実(12/13) 、RPG-7(0/1)@ひぐらしのなく頃に、榴弾×1、ミニクーパー@ルパン三世
デルフリンガーの残骸@ゼロの使い魔、確認済み支給品(0〜1)(刀剣類がある場合は一つだけ)
[状態]疲労(小)、軽傷
[思考・行動]
0:殺し合いから脱出する。
1:翠星石のいるF-8に向かう。
2:つかさに対する罪悪感。
※龍騎勢が、それぞれのカードデッキを持っていると確信。
※一部の支給品に制限が掛けられていることに気付きました。
※病院にて情報交換をしました。
※レナ、狭間と情報交換をしました。
【柊つかさ@らき☆すた】
[装備]なし
[支給品]支給品一式×2(水のみ3つ)、確認済み支給品(0〜1) 、レシピ『錬金術メモ』、陵桜学園の制服、かがみの下着、食材@現実(一部使用)、
パルトネール@相棒(開封済み)、こなたのスク水@らき☆すた
[状態]健康
[思考・行動]
0:殺し合いから脱出する。
1:翠星石のいるF-8に向かう。
2:錬金術でみんなに協力したい。
[備考]
※錬金術の基本を習得しました。他にも発想と素材次第で何か作れるかもしれません。
※アイゼルがレシピに何か書き足しました。内容は後続の書き手氏にお任せします。
※会場に連れ去られた際の記憶が戻りました。
【ジェレミア・ゴットバルト@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[装備]無限刃@るろうに剣心、贄殿遮那@灼眼のシャナ
[所持品]支給品一式×2(鉛筆一本と食糧の1/3を消費)、咲世子の煙球×1@コードギアス 反逆のルルーシュ、USB型データカード@現実、ノートパソコン@現実、
ヴァンの蛮刀@ガン×ソード、琥珀湯×1、フラム×1、リフュールポット×2、不明支給品(0〜1)、
薬材料(買い物袋一つ分程度)、エンドオブワールドの不発弾(小型ミサイル数個分)、メタルゲラスの装甲板、メタルゲラスの角と爪
[状態]右半身に小ダメージ、疲労(小)、精神磨耗、両腕の剣が折れたため使用不能
[思考・行動]
0:殺し合いから脱出する。
1:翠星石のいるF-8に向かう。
2:V.V.を殺す。
3:他の参加者に協力する。クーガーとの約束は守る。
4:全て終えてからルルーシュの後を追う。
[備考]
※病院にて情報交換をしました。
※制限により、ギアスキャンセラーを使用すると疲労が増大します。他にも制限があるかも知れません。
【狭間偉出夫@真・女神転生if...】
[装備]:斬鉄剣@ルパン三世
[所持品]:支給品一式×2、ニンテンドーDS型探知機 インスタントカメラ(数枚消費)@現実、真紅の下半身@ローゼンメイデン、空飛ぶホウキ@ヴィオラートのアトリエ、
Kフロストマント@真・女神転生if…、ブラフマーストラ@真・女神転生if…、庭師の鋏@ローゼンメイデン、鉈@ひぐらしのなく頃に
[状態]:人間形態、疲労(中)、魔力消費(大)
[思考・行動]
0:殺し合いから他の者達と一緒に脱出する。
1:翠星石のいるF-8に向かう。
[備考]
※参加時期はレイコ編ラストバトル中。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページのユーザ名はtakano、パスワードは123です。
またこれらを入手したことにより、以下の情報を手に入れました。
・全参加者の詳細プロフィール
・全参加者のこれまでの動向。
・現時点での死者の一覧。
・各参加者の世界観区分。
・nのフィールドの詳細及び危険性。
・「彼」が使用したギアスの一覧。
※目的の欄を閲覧することはできませんでした。
【一日目 真夜中/G-10】
【雪代縁@るろうに剣心】
[装備]: 倭刀@るろうに剣心
[所持品]:レイ・ラングレンの銃@ガン×ソード、逆刃刀・真打@るろうに剣心、玉×5@TRICK、紐とゴム@現実(現地調達)、夜神月が書いたメモ
ルパンの不明支給品(0〜1)、支給品一式 、菊一文字則宗@るろうに剣心
鷹野のデイパック(さざなみの笛@真・女神転生if...、魔力の香@真・女神転生if...、体力の香@真・女神転生if...、???@???、その他不明支給品)
[状態]:疲労(大) 、力+1、速+1
[思考・行動]
1:参加者を皆殺しにし、可能なら姉と抜刀斎を生き返らせる。
2:ヴァンへの怒りや敵意といった負の感情。
[備考]
※殺し合いを認識しました。
※第一回放送における『緋村剣心』以外の死者の名前、及び禁止エリアの放送を聞き逃しました。
※ギアス、コード等に関する情報を得ました。
※戦闘後に何処へ向かったかは後の書き手さんにお任せします。
※???@???は殺し合いを打破できる可能性のある物です。
※スザクの支給品は全て燃え尽きました。
支援
【○の香@真・女神転生if...】
鷹野三四が主催本部から調達。
体力を完全回復し、○を+1。
○の部分には力、知恵、魔力、体力、速さ、運が入る。
【さざなみの笛@真・女神転生if...】
鷹野三四が主催本部から調達。
死亡した者をUNDEAD状態にして操ることができる。
UNDEAD状態の者に一切の攻撃は効かないが、回復魔法か破魔魔法を使うことで死体に戻る。
【手榴弾@現実】
鷹野三四が主催本部から調達。
夜神月に支給された物と同じ。
【倭刀@るろうに剣心】
鷹野三四が主催本部から調達。
由詑かなみに支給された物と同じ。
実は作中に二本登場している、探してみよう。
【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に 死亡】
【鷹野三四@ひぐらしのなく頃に 死亡】
支援
支援
以上で投下終了します。
長期間の支援ありがとうございました。
誤字脱字、ミス等がありましたらどんどんご指摘ください。
特に今回はちょっとミスが多そうなので……
今回のタイトルの「魔人 が 生まれた 日」はギアス無印一話のサブタイトルから取りました。
投下乙!
こんなに素敵な今後ともよろしくはないだろうな
◆ew5bR2RQj.氏、投下乙でした。
感想等々は後で改めて述べさせて戴きます。
突然ですがSS本編にて鷹野のIDとパスが公開されましたので、こちらでも開示させて戴きます。
ID:hina
パス:takano1234
多ジャンルバトルロワイアル@Wikiにてこちらの二つを御入力戴くと、件のページが閲覧可能になります。
メニューの「作中HP」からお入り下さい。
なお、注意事項がございます。
・ログインするとパスワード変更が出来るようになりますが、皆様でお使い戴けるよう、変更はしないで下さい。
・Wiki編集にも大いに御活用下さい。ただし悪用はおやめ下さい。
・Wikiのバックアップは随時取っておりますが、この鷹野のアカウントによって問題が起きた場合はすぐに対処させて戴きます。
可能な限り詳細なものにする予定でしたが、編集が間に合わなかった箇所も多数あります。
また事前の示し合わせがありませんでしたが、◆ew5bR2RQj.氏のSS内のIDとパスの修正をお願いしたく思います。
申し訳ございませんが、どうかよろしくお願い致します。
>>480 wikiのアカウント共用って確か規約違反だったような……
詳しい方いらっしゃいませんか?
取り敢えず確かに危ない橋をわざわざ渡るのも、という事で一端権限を削除しました。
ページは非ログイン状態でも閲覧出来るように致しますので今暫くお待ち下さい。
閲覧権限を変更し、非ログイン状態でも目的以外のページを読めるようにしました。
お騒がせして申し訳ございませんでした。
たしかもなにも明確な規約違反ですよ
>>484 申し訳ございませんでした、以降注意致します。
投下乙!
レナああああああああああああああああ!!!!
スザクは魅了されてるんだから仕方ないとわかってても、スザクお前えええええええええ!!!!!!
それまでほぼ狭間無双だったのにこの切なさ…レナが天使だ…!!
犠牲は大きすぎたけど、スザクと鷹野が落ちて、サイトが見られるようになって、脱出に王手をかけてるな
ここまできたらみんな生き残ってほしい…!
あとごめん縁、どこ行ったのか探してたら状態表にいたww
閲覧できるようになったページ見に行ったら、詳細プロフィールが画像付きだった
凝りすぎぃ!
指摘ですが、
>>295 「この程度の傷など大したことはない、それに……私も相当腹立っているのでな、ここで退く気は毛頭ない!」
「腹が立っている」?
>>414 北岡さん……」
かぎかっこ抜け
>>434 狭間はログイン画面を表示すると、目にも留まらぬ速さでユーザ名をパスワードを入力した。
「ユーザ名とパスワード」?
>>462 「竜宮や蒼島の教えてくれた信じる心を、ここで無碍にしたくないと思っているのだ」
蒼島→蒼嶋
>>486 感想ありがとうございます。
wiki収容時にまとめて修正しておきます。
あとこの他に二点ミスが存在したので、自分から申し出ておきます。
>>292 で、車を運転していたのがジェレミアになっているが北岡。
>>421 で、腹が減りそう発言していたのがジェレミアではなく狭間。
これらのミスもまとめて修正しておきます。
投下乙です。
強い強いって前評判はあったけど今まで一切描写されてこなかったハザマの強さがすごい
「魔人 が 生まれた 日」のタイトルの不気味さもあっていつ裏返るかってハラハラしてたけど予想の外の着地点。
ここまで来たら揺れずに先に進んでくれるはず……
レナ、お疲れ様。
スザク、結果はアレだったけどお前のせいじゃない。
参加者詳細プロフィール見てきた、なんで上田先生の写真だけあんなぶれてるんだよwwww
投下乙です
レナが女神だった…最後に希望が残ってよかった
画像見たら上田wwwwしかも奈緒子の画像にまで出張してるwwwww
投下乙です!
レナ……最後の最後まで素晴らしくヒロインしてたよ
そしてスザクは最後まで無残……今までの所業から避けられないことだったのか
鷹野もがんばったけど狭間では相手が悪すぎたw 魔人皇が本気出せばここまで強いのか
一つ疑問なのですが『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧した際
一日目の十五時以降に開示された首輪の解除方法は見なかったのでしょうか?
投下乙です。
スザクは、最期に懺悔できただけ幸運だったな。
投下乙!
もう、全てが……もう……
レナのポジションが完全に原作玲子のソレに近くて……
狭間が人になっていく、少しずつ前に進んでるんだよなあ。
スザクはしゃーない……しゃーないんや……
鷹野もなんかグッと来たんだろうなあ。
そして……決戦へ……!!
たくさんの感想ありがとうございます。
>>491 首輪の解除方法等については150話の幕間2にて触れられていたので、今回は触れませんでした。
あと一日時間を置いてみて、戦闘後の縁に全く触れないのは物足りないと感じたので加筆しました。
スザク死亡後の題名が「ひぐらしのなく頃に」になったところでこれを挿入させてください。
不足があって申し訳ありません、以後気をつけます。
「ここまで来れば大丈夫だろう……」
周囲に誰の気配も無いことを確認して、縁は足を止める。
遊園地の派手なアトラクションは景色から消え、古めかしい民家の集合地が代わりに点在していた。
「ホントに、助かったヨ」
自身の身体を見渡しながら不敵な笑みを浮かべる縁。
腹部に刻まれた裂傷は消え、身体には溢れんばかりの力が湧いている。
これも先程使用した香のおかげだ。
掌を何度も握り締めながら、内側に秘める力を実感する。
「枢木も、あの女も、あれでは死んでいるだろう」
腹を貫かれた鷹野と、炎で焼き尽くされたスザク。
あれはどちらも致命傷であった。
協力者を失ったことは痛いが、最終的に彼らは糧となって死んでくれた。
その証拠が、完全回復した肉体と右腕に掛かっている二つ目のデイパック。
スザクがあそこで行動を起こさなければ、自分は彼らに捕縛されていたかもしれない。
連中の目が自分から外れたからこそ、傷を回復して逃げることができた。
そして、鷹野が押し付けてきたデイパック。
中を覗くと、役立ちそうな道具がいくつも入っていた。
香も二つ残っていたため、装備は盤石になったと言ってもいい。
「フフ……本当によくやってくれたよ」
笑いが止まらない。
彼らの犠牲が、何処までも自分に有利な展開を生み出してくれた。
配布された時計を見ると、もうすぐ零時を回ろうとしている。
今までのペースから推察すると、残り人数は十人前後になっているだろう。
姉の蘇生が、抜刀斎への復讐が、もう目の前にある。
「復讐、か……」
零れ出た笑みが不意に止まる。
彼の脳裏に蘇っていたのは、炎の中でもがき苦しむかつての協力者の姿だった。
憎い相手の最も愛する人を奪い取ったスザク。
彼が行った復讐は、縁が抜刀斎に仕掛けようとした人誅と酷似している。
もし、抜刀斎への人誅が成功していたとしたら。
あの炎の中に居たのは、自分だったのだろうか。
「フンッ……」
復讐を完遂した時、スザクの心中がどのようなものだったのか。
あの高笑いを聞いていれば、容易に想像することができた。
全身を満たすような歓喜と高揚感。
抜刀斎への人誅を想像するだけで縁はそれを覚えるのだから、彼が体験したのはそれ以上のものだったと推察する。
だが、それを傍らで見ていた時。
縁が感じ取ったものは、まるで真逆だった。
下品に笑い続けるスザクを見て、言いようのない不快感が迸った。
血の海に倒れるレナを見て、喉の奥から吐瀉物が零れそうになった。
これが復讐の末路だというのか。
「チッ……」
スザクの顔を思い浮かべて、縁は舌打ちをする。
最初に彼の精気のない顔を見た時、妙な親近感を覚えた。
復讐を企てているのを知り、自らの勘が間違っていなかったことに気付いた。
そして、彼は死んだ。
復讐者の末路を示すように、彼は炎の中に消えて行った。
元から信頼など存在しない関係だったが、縁が彼に抱いた最後の感情は払拭しがたい嫌悪感だった。
すごいとしか言いようがない
投下乙!
加筆乙です。
>>494 狭間たちの状態表では
>※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページのユーザ名はtakano、パスワードは123です。
>またこれらを入手したことにより、以下の情報を手に入れました。
>・全参加者の詳細プロフィール
>・全参加者のこれまでの動向。
>・現時点での死者の一覧。
>・各参加者の世界観区分。
>・nのフィールドの詳細及び危険性。
>・「彼」が使用したギアスの一覧。
>※目的の欄を閲覧することはできませんでした。
となっていて首輪の解除方法に当たる情報欄が含まれていないので、狭間たちが実際にはその情報を閲覧したのかどうかが不明な状態になっているので
その点をお聞きしたかったのですが。
>>498 そこの欄はユーザ名とパスワードを手に入れたことで入手した情報を挙げてます。
なので、これらの情報が無くても元から所持していた『首輪の解除方法』と『脱出方法』の二つは記載しませんでした。
しかしよくよく考えると狭間はホームページ見るのは初めてでしたね。
ですので、ホームページを閲覧している四名の状態表に※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧しました。を追記させてください。
お手数おかけして申し訳ありません、ご指摘ありがとうございました。
投下乙です!
時間を操作できる相手に使い慣れてない刀一本持っただけの生身で勝つ狭間SUGEEEE!
肉弾戦や武器がメインのこのロワでゲームの様々な呪文を駆使する戦いも楽しい
こんだけ強いと下手に序盤から活躍させるわけにもいかないよな
準ヒロインのレナがぁぁぁぁぁぁぁ
レナが死ぬ時に一人称が僕になったりと、素の孤独な少年がかいま見えてるのが切ない
狭間にとってはそんなに戻りたいと思うような世界でもないと思ってたけど
レナの最期の言葉だし皆で戻る決意を固めてるんだろうなー
スザクは水銀燈が生きていたことも、その後死んだことも知らないままか・・・
運の香で運が上がってたのもものすごく運が悪かった
仮予約きてた!そうそうたる面子だ
予約楽しみだけど北岡変身できないんだよな…w
今回の投下を読んだ感じだと戦闘後にある程度時間経ってるみたいだし、変身できないってことはないんじゃないの?
狭間がレナを説得する話が22時ちょうどぐらいだとして、カードデッキの戦闘が10分で終わるから
それなりに余裕あると思う
北岡がこの最終決戦の空気で「変身できないから待機してるわ」って言ったらそれこそ上田と同列になっちゃうだろ!!ww
ばっか、お前、上田先生にはキングストーンの導きでウエダーマンネクスト・BLACKになる伏線がだなぁ……
>>503 それよりも影月の体力の回復力がやばい件
空間干渉だけでなく色々制限外れてるだろwww
数時間も休めばさすがに影月さんじゃなくても疲労回復するんじゃないですかね……
そういや時間制限で思ったが龍騎勢以外は変身時間制限ないのかな、全身アルター組やてつを、ハザマとか
カズマは変身桐山の一戦だけ、クーガーは短期決戦しかできない、てつをもクーガーと一戦だけ、ハザマは未変身だからわからんが
変身時間制限自体は無いけど、変身中は滅茶苦茶疲れるから長時間変身してるのは無理とかそんなんじゃないかな
実際カズマvs桐山でカズマの変身が解けたのも、それに近い感じだったし
最終決戦で待機してる北岡先生を想像してワロタww
クーガーだとファイナルブリットは生命に危機も及ぶんだったっけ?
もしレナが生きてたら狭間の首輪を解除することもできてたんだよな…
オーディンとベルデのデッキが破壊されたからライダーデッキは残り4つか
劇場版龍騎設定だと、オーディンが滅びると
全てのサバイヴカードも使えなくなるみたいだがこのロワのは大丈夫か。
そんな設定あったのか、ってことは劇場版の時点だとやっぱりオーディン脱落してなかったのか……
蓮「オーディンってのは大量生産らしいな」
って言ってるし、大丈夫なんじゃないですかね……
まあオーディンの中の人は別に誰でも良いらしいしね。
操り手が壊れていない以上、いくらでも作り直せるんじゃないか?
そもそもオーディンなんて作中ではまるで意思封じられてるみたいな扱いだからな
龍騎でもディケイドでも、変身した後は神崎の思う通りにしか動かないイメージ
>>511-512 いや劇場版のオーディンは脱落しているよ。
それはディレクターズカット版で明示されている。
テレビ版と違ってデッキごと破壊されたっぽい。
ラストの真司と蓮のサバイヴ体の変身はサバイヴカード抜きでやっている。
それが可能になったのは神崎曰く「優衣に与えるのにふさわしい強い命」を
持った状態に二人はなっていたかららしい。
龍騎のアドベントカードって、誰が発動してもデッキの持ち主が効果を得るけど、サバイブは使用者に効果が表れるんだよな。
しかし序盤は狭間はボッチ皇w、縁は嘔吐w、上田教授は役立たずw
なんて言われていたのにみんな終盤では大活躍じゃないか!!
胸熱だな
あの三枚のサバイブカードって、最終回の蓮の指輪のデザインや
装着変身のゴルトバイザーのギミックを見るに、新しい命の生成が本来の効果みたいなんだよな。
>>500 魔法ありとは言えガーディアン抜きの剣も肉弾戦もありで幽閉の塔上り詰めた男だぞw
間違いなく蒼嶋以下だがチャーリーやアキラくらいは剣やら殴り合いできるだろw
けどハザマって喧嘩に弱いしひ弱な感じするよな、性格が悪いのか見かけが悪いのか
狭間ってケンカしたことないんじゃね
ケンカするほどの相手がいたと思えないんだが
狭間編で狭間が体育見学してたみたいな描写あったし、少なくとも幽閉の塔を昇る前は貧弱だったんじゃないですかね
上のレスの「レナが生きてたら狭間の首輪解除出来た」ってどういうこと??
>>521 狭間・北岡・ジェレミア・つかさ・レナの五人が揃ってれば、パソコンの情報あるし技術あるやつもいるから首輪外せたってことじゃね
今の仮予約分の次の投下がもしかしたら最終回になるのかもなぁ……
>>523 うわああああああ考えないようにしてたのに。゚(゚´Д`゚)゚。
最終回か。参加者が出揃うだけでも半年かかってたのによくここまで来られたよなぁ……
北岡は良くここまで生き残ったな
知能は高い方だけど、超天才が複数いる中ではあまり意味がない程度だし
世渡りとか駆け引きとか上手そうだけど、それもトップクラスってわけでもないし
策を弄して、あっさり足元すくわれて序盤に死んでもおかしくないキャラだったわけだが…
運もたいして良くなさそうだしw
上田先生はまあほら、ねえ
そういうキャラだからねえ
北岡はつかさと五ェ門の力が大きかった気がする
あといつ死んでもおかしくなかったのがクーガー、ジェレミア、縁あたりか
真正面から戦うキャラは、いくら強くても死にやすいわなあ
ルパンなんかは長生きできるはずだけど、作中での扱いが難しいタイプだね
設定上はL達と同レベルかそれ以上の知能で、身体能力も高く
各種兵器や乗り物も扱え、話術・人心掌握にも長けていてもちろん経験の豊富さはピカイチ
ロワとしてそういう訳にはいかないけど、本来ならこっそり主催者の元に潜入しておいて
何らかの手段で首輪の解除とか閉鎖空間からの脱出方法とか見つけ出す
もとい盗み出しているのが似合うような
縁とか本当によくここまで生き残ったよなぁ
ラストマーダーになる可能性すら微レ存だし
一般人はみんな脱落してしまったんだなぁ…
そうだなー、上田先生を始めとして生き残りは歴戦の勇士だもんなー
いやまて上田先生の前にナチュラルにつかさを忘れてやるなよw
それにライダーデッキなくしたら北岡大先生もパンピーだぞw
>>532 真司だって条件同じなのに何で北岡だけ挙げるんだwww
>>533 大丈夫!忘れてただけだから!
いや真司ってなんかメンタルが超人っぽいというかヒーロー属性なのもあって忘れてたwww
>>532 つかさは錬金術を覚えたし…(震え声)
真司と北岡先生はライダーバトルに慣れているし、上田先生は身体の大きさが超人的だから!!
阿部ちゃん…じゃなかった上田先生189センチ
北岡188センチなんだよなあ
北岡の中の人、いつの間にか芸名が変わっていて今知ってびっくりしたわ
以前は190センチ超えてるって言ってたような気がするようなしないような
上田先生は身体の(一部の)大きさはホントに凄いだろ!
今の真司って絶影使えるから一般人じゃないんじゃ……
絶影取り込んだのって、ドラグレッダーじゃないの?
龍騎に変身してる時じゃないと使えないのか
カードデッキ所持者って最初はマーダーばかりだったけど、何時の間にか対主催のところに戻ってきたな
龍騎ナイトゾルダが揃ってるのには運命的なものすら感じる
マーダーから対主催への異動ができなかったデッキは破壊されました
>>541 リュウガも残っていて劇場版のラスト4になっているのも面白い
映画の北岡もラストまで生き残っているみたいだし by出演者談
シザース:あすか→蒼星石
王蛇:論外
タイガ:どうしてこうなった…
インペラー:上田→亀山
ファム:咲世子→玲子→シャナ
ベルデ:スザク
オルタ:桐山
オーディン:鷹野
一般人でも戦闘能力が得られるカードデッキは支給品の鏡
ガイ、ライアのデッキがあったら誰に支給されたかねー?
ファムは見事に女性専用だな。別にそういう仕様でもあるまいに。
ライアは鞭繋がりで劉鳳、ガイはガードベント繋がりでジェレミアとか
一応、王蛇やタイガが対主催として活躍しまくれるんだよなぁー
無事にデッキを入手できればなw
支給のされ方によっては志々雄や亀山がファムに変身していたかもしれないんだな
ファムのデッキが玲子さんの手に渡った時、
首から下が仮面ライダーで頭が触手のバケモノなファムを想像しちまって
そんな怪人みたいな仮面ライダーはイヤだなぁとか考えていたのを思い出した
ここのライダーは何だかんだでどれもキャラのイメージを崩すことなく絶妙にマッチしてたと思う
志々雄リュウガとかレイゾルダとか亀山インペラーとかすげー好きだ
>>544に載ってないのを追記すると
龍騎:真司
ナイト:ミハエル→ヴァン
ゾルダ:レイ→詩音→北岡
リュウガ:志々雄
になるのか
理想としてはナイトは右京さん、ベルデはルパンに支給されて欲しかったな
どちらも対主催のブレインとしては優秀だし、一般人としてはそれなりの戦力を持つだけに残念…
変身してるルパン想像できないwww
右京さんはしたり顔で変身しそうだが
右京さんは香川教授みたいにデッキを投げて、
手を後ろで組んだ状態で「変身…」でつぶやいて、
オルタナティブ・ゼロに変身しそうなイメージ
同様にジェレミアが変身する姿が浮かばない
ジェレミアは騎士だからガイも良いけどナイトも合ってるね
キャンセラーは封じられるけど火力は補える
ジェレミアは原作で改造人間だし。
変身しなくても元から銃効かないから、ジェレミアが変身するより他の仲間にデッキ渡した方が効率がいい
火力増強自体は必要なんだけどね
メイン武器が刀剣類だとどうしても攻撃力の問題出てくるよなぁ
改造人間らしく目からビームとかがあったら、後藤戦も全然違ってたんだけど
ルパンベルデは面白そうだなぁ
コピーベントとかまさにルパンの得意技だし
こういうのを見るとゲームを作るたくなるな
ベルデはスペック低めだけど
何気にFVの殺傷率100%で正しく暗殺者なライダーだから
ロロもかなり似合いそう
逆にゾルダのFVは劇中で何度も発動してるのに殺せたライダーが一人もいないという…
ロロはギアスの制限に気付かないまま退場だったなぁ
負担も大きいしライダーデッキあったら強力なマーダーになったかもね
>>561 一応、芝浦とかはゾルダの功績だろ
ベノクラッシュは、瀕死の相手にトドメ刺すパターンばっかりだけど、芝浦はあのまま放っておいても死ぬ気がする
EOW直撃した後にも普通に動いてたからさすがに生きてたんじゃねーかな
一応ドラゴンナイトの方のゾルダがベルデを倒してる
あールパンにベルデはしっくりくるな
このロワでのゾルダのEOWは命中率が高くて毎回死人が出てたね
実にすばらしい。
まだ北岡先生は一発もEOW撃ってないけどな
北岡先生、本当にヘタレてんなwww
よく考えるとEOW一発撃ってなかったのか今までw
撃ったら撃ったらで威力が落ちそうな気がするw
原典のEOWは最初は小さな村くらいは壊滅させられる程の威力だったのに
後半では建物の壁を抉る程度にまで落ちていたからなあ。
ここに来て北岡先生がファイナルベントを発動させてみたら
「折れたぁ!?」ならぬ「外したぁ!?」になってしまいそうな予感
餌が足りてないんかな?
まあ、結局銃使いだし(ry
ライダーバトル進行がTV43話より一月以上先の劇場版EOWは
最初期と変わらぬ高威力だったのになw
いつの間にか北岡先生が不幸な人からヘタレな人に格下げされてる…
EOWの威力が下がったのはアレだよ
敵ポジションから味方ポジションっぽくなったからだよ
じゃあ北岡がヘタレになったのは、つかさと五ェ門の影響で悪徳弁護士からお人好し寄りになったからか…
シャナよりはマシ
>>575 お年寄りに見えた
北岡先生は戦闘じゃちょっと頼りないかもしれないけど、つかさを立ち直らせたのはすごい大きいと思うんだよな
I'll be backはそういう意味でもすごい好きな話だ
>>574 うん、敵キャラが味方キャラになると強さがなりを潜めるのはアニメでもゲームでも特撮でもパロロワでもよくあることだよね
仲間になったとたんシャドービームで人を殺せなくなるシャドームーンなんて…
>>576 シャナは龍騎、クーガー、翠星石相手に押してたからヘタレではないだろ
ただ行動が裏目裏目に出ただけだ
狭間は敵だともっと強いんじゃね
ボッチにならずに乱戦地帯とかにいたらマーダー化してた気がするし、つまりボッチが対主催を救ったと
サンキューボッチ、フォーエバーボッチ
>>579 人を殺せず死んだ綿b…シャドームーンなら知ってる
おっと、大首領の悪口はそこまでにしてもらおうか。
>>583 ボッチでも救われなかった人もいるんですよ!
同じボッチである織田様(と圭一)は何故差がついたのか…?
>>586 顔面偏差値…は圭一だって低くはないか
やっぱ狭間のスペックが異常すぎたってことかと
今年のロワ語りは18日らしい
ひぐらし再アニメ化とはたまげたなぁ
うみねことは偉い違いだ
ローゼンメイデン「あの……」
うみねこ散アニメ化を諦めてない人だっているんですよ!
あ、はい、諦めてPS3版やっておきます…
散は今やってるけど竜騎士の文章は面白いときと、くどいなって感じるときがあるから困る
面白いんだけどね
皆の言うEP8がどんなものか楽しみ
円盤が売れてたら二期あったかもなぁ
ひぐらしとローゼンはおめでとう!
ロワ語りあさってかあ、それまでに仮予約の投下あるかな?
正直、もう一話一話が激動だから話題が一気に塗り替えられそうな希ガスw
次は影月戦だからなぁ
どう転ぶか全く分からないし、すっごい楽しみだ
次が影月ということは、縁さんがラスボスですね。
CCO「………」
影月戦でクーガーが予約されていないのが残念…
いや兄貴の生存率が上がるのはうれしいけどさ
クーガーとしてはまた速さが足りなかったことになるんだよなー
今日ロワ語りだっけ?
ロワ語り楽しかった!
向こうでも言われてたけど、去年まだ第二回放送終えてなかったってのが信じられないな
究極の少女上田とか、どうするんだよこれ…
病まない病まない、需要はあるさ
>>596 CCOさんはV.V.戦で颯爽と駆けつけてくれるよ!
ここの北岡さんはまるで主人公のようだ
最終決戦では活躍できるといいな
最終決戦に出られるといいな
ゾルダサバイブにさえなれば……設定上は可能だが実質、ロワでは禁止扱いか
書き手「おい、なってみろよ。サバイブに」
で、扱いに困る流れですか
そろそろ年越しも目前か
この一年でこんなにも進むとは思わなんだ
来年もこの一年のようなよきとしでありますように・・・・・・
しかしそろそろ一ヶ月になるっけ、仮予約
音沙汰ないしちょっと書き手さんが心配になってきたけど、何かあったとかないよね・・・・・・?
来年には完結しそうだなー。
現在、仮予約をしている者です。
多数のキャラを長期の予約で拘束している状態となって申し訳ありません。
執筆の進行状況を報告させて頂ければ、既に全体の半分以上が書き上がっている状況です。
完成の目処が付き次第、本予約と言う形で連絡したいと思っています。
>>611 執筆お疲れ様です、楽しみに待っています。
613 :
2012年多ジャンルバトルロワイアル、簡易総集編:2012/12/31(月) 23:11:37.61 ID:VG9wfJSJ
本編とは関係ないですが、今年最後に少し利用させていただきますね
ゆっくり目で投下しますので、支援できる方が居れば是非お願いします
◆ ◆ ◆
【暴走する正義】【二心同体】
◆ ◆ ◆
.
『君もあの場でシャドームーンの恐ろしさを見ただろう、それでも全ての参加者を生きたまま保護するというのか?』
異形の生物、ミギーの問い。
「ええ、そのつもりです」
異形の心、杉下右京の答え。
『そうか、ならば私から一つ言っておこう』
一呼吸置いて、ミギーは口を開く。
『君の正義はいつか暴走する、そして周りの人間たちを滅ぼすだろう』
それはかつての右京の上司が送った言葉。
「胸に留めておきます」
――――そう告げる右京の顔に、変化はなかった。
.
.
◆ ◆ ◆
【誓い】【願い
◆ ◆ ◆
.
.
――――私たちの世界って言いましたよね……そんなものもう私にはありません、私の世界はもう終わってるんですよぉッ!
光が、世界を包む。
願いによって、世界が終わろうとする。
――――これで……契約は果たしたぞ……
それでも誓いがある。
辛い世界で、生きようとする誓いがある。
――――そんなの見せつけられたら……俺……
世界は、終わっていない。
――――いつまでもダラダラしてないで、やりたいことがあったらすぐやる!
.
支援
.
◆ ◆ ◆
【英雄の強さ】【少女の痛み】
◆ ◆ ◆
.
.
――――光太郎さんが優しいのは、強いからじゃなかったの?
「みなみちゃん……!!!」
――――もう強くないのに優しいのは何で?
「ごめん、気付けなくて……俺は、自分の事ばかりだった……!」
――――何で、怒らないの?
「それでも聞いて、みなみちゃん……俺の事は、忘れていいから……!」
――――「忘れていい」なんて、どうして言えるの?
「カズマ君や翠星石ちゃんだけじゃない、上田さんだって、Lさんだって、皆戦ってる…!
俺は君にも、戦って欲しい……!」
――――何で私は、気付かなかったの……?
「それは、君が皆の為に人を殺しても……それで皆が生き返ったとしても……きっと君は、幸せになれないから!!」
――――光太郎さんは、強いから優しいんじゃない。
「俺は君に、幸せになって欲しいんだ……!」
――――光太郎さんは優しいから、強かったのに。
.
.
◆ ◆ ◆
【寄生獣】【寄り添い生きる獣たち】
◆ ◆ ◆
.
C
支援
C
支援
C
C
支援
629 :
創る名無しに見る名無し:2012/12/31(月) 23:28:54.21 ID:ac3PceTI
しえ
.
「……だがな、後藤。やはり、私もお前も……何もかも全てがか弱いよ」
死とともに襲い掛かる圧倒的な孤独に、田村玲子は一つのことがわかった。
「吹けば飛ぶような、呆気ない存在だ……」
この世に、一つのものなどなにもないことを。
「後藤……排他的なお前ですら、弱者という他者を必要としている……強さを渇望し変化している」
田村玲子の側には常に生命があったことを。
「……我々と、人間……どこが違う」
この世の全てが生きていることを、細胞のひとつひとつが鼓動していたことを。
「これが、死か……なぜ、気づかなかったのだろうな……」
――――お前さん達の頭が良いのは、人間とこうして話をする為……って思いてぇじゃねぇか。
「やはり、我々は……寄り添い、生きる獣……」
.
支援
SIEN
C
.
◆ ◆ ◆
【願う奇跡】【現実の否定】
◆ ◆ ◆
.
C
しえんさん
.
「アンタがどうすればいいかなんて、俺が知るわけないだろ」
奇跡を求める縁の言葉をヴァンは否定した。
「けど、一つだけ言わせろ」
ヴァンの言葉は、彼の現実は、彼女の意味は続いていく。
「死んだ奴はな、絶対に生き返らないんだ」
最後にそう言い残し、ヴァンは目の前の扉を開けた。
.
支援
支援
C
イチローサン
.
◆ ◆ ◆
【銀の邂逅】【月の相克】
◆ ◆ ◆
.
支援
支援
.
銀の名を持つ人形が、銀燭の鎧を着込んだ王を指して言葉を放つ。
「――――貴方の言った通り、シャドームーンを展望台まで誘き寄せられそうだけど、これからどうするって言うの?」
月の名を持つ男が、月を呑み込む王を打倒せんとして応える。
「別に隠してる訳じゃないけど、多分シャドームーンもそれには気付かない。気付かれたら、今度こそアウトだけどね――――」
銀の名を持つ人形と月の名を持つ男がは信じていた、王を跪かせると。
自らは自由であると、全ての可能性が広がっていると。
――――…………愚かな。フッ、どうやら私は人間を少し過大に評価していたのかも知れん。
.
影月の異常っぷりがこれでもか、って見せつけられたなぁ
しえん
652 :
創る名無しに見る名無し:2012/12/31(月) 23:32:01.23 ID:NuS0GtLU
支援
支援
.
◆ ◆ ◆
【拳】 【夢】
◆ ◆ ◆
.
支援
C
.
「何が来ようと、正面からぶち抜く……俺の自慢の拳で!!!」
装甲が脚を包み、羽根が尾のように長くたなびき、赤い髪が無造作に伸びる。
眼と口を除く顔までも装甲に覆われた、シェルブリットの最終形態。
――FINAL VENT――
召還機から女性の機械音声が漏れると、コオロギ型のモンスターが変形する。
二輪の乗り物に姿を変え、桐山が乗り込むとスピンを始めた。
――――楽しいのかよ。
その勢いは、さながら隕石の如く。
――――そうやって、上手くズルく生きてよ……!!
両者の衝突の瞬間、辺りの景色は一変した。
.
支援
C
,
◆ ◆ ◆
【世界の終わり】【最後の審判】
◆ ◆ ◆
,
しえーん
支援
支援
C
.
世界の終わりが訪れる。
――――FINAL VENT――――
最後の審判が執行される。
――――UNITE VENT――――
全ての決着を迎えようとしている。
――――FINAL VENT――――
終幕の引き金は、か弱き少女の手に。
.
支援
支援
.
◆ ◆ ◆
【騎士の誓い】【人形の涙】
◆ ◆ ◆
.
C
支援
支援
.
「翠星石は、お前がいなかったらもう死んでるです」
人形の言葉。
「お、お前が翠星石の事を忘れているみたいだったから、思い出させてやっただけですぅ……」
かつて涙を携えていたその瞳は、ただ騎士を見つめていた。
「お前がいつまでも落ち込んでいたら……危なっかしくて、翠星石がへこんでられないです。
迷惑ですぅ」
その言葉で騎士は思い出す、自分の想いを、希望を、罪を――――全てを。
「守るよ。
劉鳳さんの代わりとかじゃなくて……俺が守りたいから守るんだ」
その為なら、殴り掛かる悲しみさえ全身で打ちのめす。
.
支援
C
.
◆ ◆ ◆
【非情の火焔】【勝利の美酒】
◆ ◆ ◆
.
支援
支援
紫炎
三村ぁ
支援
.
「三村、てめぇは実に使える犬だった。
いや、犬ってのは失礼か……てめぇは確かに俺の参謀だった。
約束通り――『美酒』をくれてやる」
三村の身体を赤黒の炎と赤黒の血が交じり合う。
(俺は……このどうしようもなく狂った男の役に立ったんだ。
そうだ、これが……"The third man"の……!!)
炎に焼かれた三村は、確かに志々雄へと近づいていた。
勝利の形へと、近づいている。祝の酒が溢れてくる。
「勝利の、美酒……!!」
――――自らの血の味を味わいながら、飲み干した。
.
支援!
.
◆ ◆ ◆
【王の力】【人の心】
◆ ◆ ◆
.
支援
支援
.
――――貴様だけは、貴様だけは絶対に許さん。人間の心を弄ぶ、貴様だけは!
「狭間さん」
真紅の言葉。
「なんだ」
C.C.の行動。
「ありがとう」
千草貴子の決意。
「蒼嶋が見込んだ女がその程度では、奴の顔が立たんからな」
そして、蒼嶋駿朔の犠牲。
「竜宮レナ、貴様の"信じる心"はしかと見届けた」
その一場面一場面に、信頼の形があった。
それを簡単に投げ捨てていたのは自分だ。
相手を信じたい、相手を信じれない、相手が信用できないではない。
"他人を信用したいと思う自分"を信じるべきだった。
そう思い続けていた自分の心を信じていなかったのだ。
それを、忘れていたのだ。
「人間を……人を、私も"信じて"みることにしよう」
人を信じた先に、未来があるから。
――――この軽子坂高校2年E組の狭間偉出夫が、魔"人"皇として裁いてやる!!
自分は、生きなくちゃいけないんだ。
.
支援
支援
C
支援
支援
.
◆ ◆ ◆
【最強】【最速】
◆ ◆ ◆
.
C
支援は、文化だあああああああああああああ!
支援
支援
支援
支援
.
――――き……さ、ま……たむ、ら、れい、こ……!!
最強と最速がぶつかり合う。
お互いが、お互いの意志によりその最強を、最速の進化にかけられた枷を外していく。
「グォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
ぶつかり合うは意地の太さ、競いあうは力の強弱、決まるは命の有無。
その勝者は――――
「があぁあああああああああああああああ!!!!!」
――――勿論、最速でな。
.
C
.
◆ ◆ ◆
【奪われた忠誠】【最後の誇り】
◆ ◆ ◆
.
支援
支援
C
支援
.
「その声……まさか枢木か!?」
その脚が止まることはない。
騎士も、侍も、脚を止めることはなかった。
それは、そういう生き物だから。
「ごめん――――…………」
――――ただ、その最期の瞬間だけは。
.
.
◆ ◆ ◆
【王の石】【人の意思】
◆ ◆ ◆
.
支援
上田ぁ!
.
「何のために、負けると分かっている戦いに挑む?」
――――カシャン……カシャン……
無抵抗の空気が奴隷のように音を運ぶ。
――――カシャン……カシャン……
王者は静かにその時を待つだけでいい。
――――カシャン……カシャン……
強者の意思は、更なる強者によって踏みにじられる。
――――カシャン……カシャン……
それが、いかなる奇跡にも覆すことのできない、この世の真理なのだから。
――――――――カシャン。
「正義、仮面ライダー龍騎」
.
支援
C
.
◆ ◆ ◆
【魔王を破らぬ限り】 【人に未来はない】
◆ ◆ ◆
.
支援
し・え・ん
支援
もっと愛を込めて!
支援
.
『僕は今まで魔法など存在しないと言ってきたが、実は嘘だ』
全ての人間が戦い、死んでいった。
『どんな困難もたちどころに吹き飛ばしてしまう秘密の呪文を僕は知っている』
その物語も最後には終わる。
『鏡の前に立ち、自分自身に向かってこう唱えるんだ』
多ジャンルバトルロワイアル――――2013年、終幕へ。
『Why don't you do your best! ―――― なぜベストを尽くさないのか!』
.
ベスト支援
支援!!
上田ぁ!
支援
――――さて、皆々様。
.
紫煙
739 :
>>737修正:2012/12/31(月) 23:49:13.45 ID:VG9wfJSJ
.
――――さて、皆々様。
.
?
上田ぁ!
.
【読みますか?】【読みませんか?】
.
読む支援
以上です、支援ありがとうございました。
来年もよいお年を!
何故支援を尽くさないのか!
>【読みます】
【読みません】
乙ー
懐かしいなぁ、一年でこんなに進んだのか。
最終回までにもう何週かしてこんと。
あけましておめでとうございます、投下乙でした!
読みますううううううううう!!!
読みます!
いつの間にか死亡者名鑑が更新されてた…
いつもお疲れ様です
死亡者名鑑も潤ってきたなぁ、もう13人しか残ってないから当然と言えば当然だが
っていうかあの引きで大規模予約だともっと死者出てくるよなぁ……
11人+主催2人の中にマーダーは1人しか予約されてないとは言え、そのマーダーがシャドームーンだもんなぁ
絶対に更新されることのないな行の存在感
簡易総集編の投下乙です!!
勿論【読みます】一択です
特に【王の石】【人の意思】で「いし」をかけてるのがいいです・・・!
そして最後www
>>754 何故かな行の参戦者がいないんだよなー・・・
じゃあな行の参戦キャラを考えてみるか
ナナリーは盲目で歩けないし扱いにくい
七原中川はそんなに人気ないし原作での生還の印象が強くて殺しにくい
じゃあノミ怪人とネズミ怪人だな
な行で出れたかもしれないとなるとやっぱり七原かなぁ
あとバトロワなら灯台で癇癪起こした野田さんとかは起爆剤一般人として優秀だと思うんだ!
ギアスからニーナを出して、フレイヤ使って会場を破滅させようぜ!
なぜベスを擬人化させて登場させよう
擬人化の発想とか何それこわい…
なお容姿は上田
ミラーモンスターを女体化させて
契約者のライダーをマスターと呼ばせるネタを想像してすいませんでした
なぜベス擬人化とかいう発想は何処から出てきたんだwwww
そういや結局不幸四天王って誰になったんだろう
766 :
創る名無しに見る名無し:2013/01/11(金) 22:56:28.48 ID:3myaT6UI
腰巾着中園さん
>>765 スザク一強
前まで挙がってたクーガーやジェレミアが持ち直した感じがあるから…
スザク、上田(回りが不幸になってく)、ジェレミア(持ち直したけど覚悟を決めてる)、L(生きてる間の思考、作戦がほぼ裏目)はどうよ
次点で脱出してない対主催中最多キルしてるつかさ
ジェレミアはなんかだいぶ活躍してるから不幸って言われると違う気がする
個人的にはつかさよりもサイトを推したい
スザクは間違いなく不幸だが残りの3人が難しいな
安定のスザク
サイトは自分から転がり落ちていったイメージあるんだよな、ルイズの死体を見つけちゃったのは不幸だけどその先は自己責任というか
あとLはともかくクーガージェレミア蒼嶋たちはなんか違う気がする
不幸というより苦労性?
惨めという点では東條やシャナも負けてないと思うw
東條やシャナこそ本当の自業自得な気がする
サイトが駄目ならルイズとかどうかな
わけも分からないまま滅茶苦茶頑張ったのに結局一話で死亡
すぐにその死体を想い人が発見したせいで想い人は狂い、その後は全く別の女を自分と認識され続ける
第一回放送前の話だから印象は薄いかもしれないけど、これもなかなか酷いと思う
不幸四天王のうち三人はスザク、L、ルイズで決まりかな?
みなみやレナも最後らへんに多少の救いがなければエントリーされていたかも
他にも称号「グギャってもやむなし」な詩音とか
未来の自分と常識に縛られて選択ミスや悪手しかできなかった月とか
目の前で守りたかったものを奪われて仇討ちも自分自身では届かなかったカズマとか
信頼してた人に裏切られるフライングボードの犠牲者さんとかいるけど
やっぱりスザクがヤバすぎた
今の生存メンバで対主催は上田と狭間以外大体早いうちから仲間続けてたから不幸には入れがたいんだよね
スザクは最初から最後まで何一つ救いが無かったな……
あんまりにあんまりだっただけにメタだけど読み手的にヘイト稼がんかったのがせめてもの救いか?
ついに本予約来たか!!
予約キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
集計お疲れ様です。
多ジャンル 159話(+ 2) 13/65 (- 2) 20.0(- 3.1)
本予約ktkr!
楽しみにしております
投下します。長くなったので支援を頂ければ幸いです。
【因果応報】いんが―おうほう
人は良い行いをすれば良い報いがあり、悪い行いをすれば悪い報いがあるということ。
元々は仏教語。行為の善悪に応じて、その報いがあること。
「因」は因縁の意で、原因のこと。「果」は果報の意で、原因によって生じた結果や報いのこと。
◇
覚悟が五人を戦いに誘う。
何の覚悟か?
命を賭して戦う覚悟か?
屍を踏み越えて前に進む覚悟か?
自らを正義と断じて悪を討つ覚悟か?
覚悟が五人を戦いに向かわせ、戦いはいずれ結末を迎える。
誰一人予想もしていなかった結末へ向けて――――
◇
猥雑なネオン。
薄汚れた路地。
打ち捨てられた廃ビル。
生活する人が無く機能が死んだ市街地は、世紀王の言葉を借りれば“退廃と虚飾に塗れた愚かな街”。
その街の空気を例えるならば、凍り付いていると言う形容が相応しかった。
寒さではない。
ただ対峙する五人の男女、
無双龍ドラグレッダーと契約を交わす仮面ライダー・城戸真司にとっても、
ダン・オブ・サーズデイを操縦するため改造を受けたオリジナル・ヴァンにとっても、
不老不死のコード所有者・C.C.にとっても、
ローザミスティカに拠って命と魂を持つ薔薇乙女・翠星石にとっても、
日本科学技術大学教授・上田次郎にとっても、
その場の空気は刺すような緊張感に満たされていた。
五人が対峙する相手は只一人。
只一人にして世界と対し、蹂躙せんとする魔王。
ゴルゴムの世紀王・シャドームーン。
支援
命を賭して戦う覚悟を決めても尚、気圧されそうなほどの威圧感を湛えている。
上田などあからさまに腰が引けている。
それでも逃げ出さないのだから、上田なりに意を決していたのだろう。
「っしゃー!!!」
気勢を上げてシャドームーンへ最初に掛かって行ったのは、真司が変身した仮面ライダー龍騎。
何の作為も無く、真っ向から掛かって行く。
しかし全く考えなしと言うわけではない。
龍騎が臆することなく立ち向かっていくことで、仲間の士気を上げるためだ。
人の域を超えた仮面ライダーの身体能力を十全に活かし、シャドームーンへ向けて構えを取ったまま間合いを詰める。
その淀み無さは龍騎の潜り抜けた歴戦を容易に想起させた。
「チェェェェス!!!」
続けてヴァンも掛かって行く。
やはり何の作為も無く、真っ向から。
元々ヴァンは小賢しく知恵を働かせる人間ではない。
ゆえに戦うと決めれば、如何なる相手であれ臆することなく立ち向かって行く。
人のそれとは思えぬオリジナルの身体能力を十全に活かし、シャドームーンへ向けて構えを取ったまま間合いを詰める。
その淀み無さはヴァンの潜り抜けた血風を容易に想起させた。
「す、翠星石を置いて行くんじゃねぇです!!!」
二人に遅れること翠星石も掛かって行く。
直前まで脚を震わしていたとは思えぬ勢いで、シャドームーンへ向けて飛び掛って行く。
これもやはり何の作為も無く、真っ向から。
「ベストを尽くせーっ!!! はっはっはっはっは……」
三人の背中にエールを送るのは当然、我らが上田次郎。
数々の難事件を解決に導いてきた上田が、シャドームーンにも臆することなく声援を送る。
無論、三人の邪魔にならないようシャドームーンと充分に距離を取った場所から一歩も近寄ることは無くだ。
この適切な状況判断力と、仲間の意気を邪魔立てしない謙虚さこそが上田の真骨頂と言えるだろう。
「…………」
その上田に冷たい視線を送るのはC.C.だ。
上田をまるで路傍の塵のごとくに見下している。
「し、仕方が無いだろう! 確かに私は通信講座で空手をマスターしているし、ブルース・リーについての論文を書いたこともある。
しかしあの状況では数多くの修羅場を潜り抜けてきた私でも、援護もしようが無い!」
龍騎のそれ単独でもAP(アタックポイント)に換算して200APに達する拳が、砲弾のごとく風を巻きシャドームーンに襲い掛かる。
同時にヴァンの操る伝説的な刀工・新井赤空が製作した殺人奇剣・薄刃乃太刀が、
それ自身で生を持つがごとくに蛇行しながら、シャドームーンに襲い掛かる。
白銀の手が赤い拳を受け止め、紅い刀身が薄刃乃太刀の蛇行を遮る。
シャドームーンは片手で龍騎の攻撃を、サタンサーベルでヴァンの攻撃を防いでいた。
しかし龍騎も前回の交戦時のように、容易く力負けする事は無い。
シャドームーンの力を上手く受け止めていた。
更にそこから瞬時に蹴りを放ち、反対方向から薄刃乃太刀の切っ先が再度襲い掛かる。
龍騎とヴァンはまるで事前に打ち合わせでもしていたかのように、巧みな連携でシャドームーンを挟み撃ちにする。
シャドームーンの恐るべきは、その連携を基本スペックの高さを並外れた戦闘センスで駆使して捌き切っている所だ。
人の反射神経を超えた速度で行われる龍騎たちとシャドームーンによる攻防。
かつてはアマゾンの巨大鯰・デビルファンクやボルネオの人食い鰐・ブラックポルサスと戦った経験がある上田でも、
あれに乱入するのは無謀と言う他ない。龍騎やヴァンの脚を引っ張るのが落ちだろう。
さりとてあれだけ敵味方が接近して高速戦闘を行われては、援護射撃することもできない。
「全く、あれだけ意気込んで来ておいて何もできないのか」
「……では君が援護したらどうだ!?」
「少しは考えて物を言え。あんな所に援護できる訳ないだろう」
それなりに腕に覚えのあるC.C.だが、事情は上田と同様である。
C.C.の能力で戦闘速度に介入するのは至難。
先刻のシャドームーンとの戦いの際にはブリッツスタッフの火球でサタンサーベルを弾いたりしてヴァンを援護できたが、
あれは直接戦闘している場面から外れた場所ゆえに可能だったのだ。
同じような機会は易々と期待できないだろう。
「自分ができないことを人に求めるんじゃない!! どういう教育を受けているんだ!」
こうして五者五様の戦端が開かれた。
暴虐の限りを尽くした魔王を倒すために。
誰一人予想もしていなかった結末へ向けて――――
◇
シャドームーンの頭部で大きく輝く翠色の双眸・マイティアイが五者の姿を映す。
接近戦を仕掛けてくる龍騎。
人知を超えた威力の拳は、的確にシャドームーンの頭部を狙って来る。
中距離から曲線軌道を描く刃で援護をするヴァン。
龍騎の拳と全く同じタイミングで、シャドームーンの頭部を反対方向から狙う。
更にその後ろから飛来する翠星石。
遠方では道化た会話をしている上田とC.C.。
その全てをマイティアイが捕捉。
マイティアイが得た映像情報は改造された脳に送られ、瞬時に処理されて対処法が算出される。
そして導き出された対処法は、改造を受けた五体が即座に実行された。
792 :
創る名無しに見る名無し:2013/01/18(金) 21:33:54.42 ID:4KM0Bjek
支援
左手で龍騎の拳を掴み、右手のサタンサーベルでヴァンの刃を止める。
そこから淀むことなく流れるように変化していく龍騎とヴァンの連携。
秒間を、一撃一撃が人の身ならば必殺と言える威力の拳で、蹴りで攻め立てる龍騎。
しなる刃を己の手足のごとく振るい援護するヴァン。
しかしゴルゴムの科学技術の粋を集めて造り上げられたシャドームーンの性能は、それらに一部の隙も見せず対応する。
片手間にヴァンの刃を受けながら、執拗に打ち込んで来る龍騎の拳を軽々と払い落とす。
そして返す刀に左肘から伸びるエルボートリガーで龍騎を斬りつけた。
エルボートリガーは龍騎の装甲を切り裂き、更に超振動を叩き込む。
岩石を粉微塵にする超振動により、龍騎は胸の装甲から火花を散らしながら吹き飛んだ。
たたらを踏む龍騎に追撃をするべく歩を進めるシャドームーン。
ヴァンが刃をうならせて牽制するが、やはり片手間で捌くシャドームーンの足止めにもならない。
巧みにシャドームーンの死角を突こうとするヴァンの攻撃だが、マイティアイの広視界に尽く捕捉していた。
その広視界が赤い薔薇の花弁で埋め尽くされる。
「しっかりするです真司!!」
体勢の崩れた龍騎を後ろから支えたのは翠星石。
翠星石が真紅のローザミスティカによって得た能力、薔薇の花弁を飛ばしていた。
体勢を立て直す龍騎の横を通り抜け、翠星石はシャドームーンへ向かって行く。
「まったく! やーっぱり真っ赤っか人間は、翠星石が居なきゃなんにも出来やしねーんですから!」
「……って、待てよ翠星石!!」
翠星石は間合いを詰めながら、右手から無数の薔薇の花弁、
そして水銀燈のローザミスティカで得た力により左手から無数の黒羽を撃ち出す。
どちらも射界が拡散する発射武器。
至近距離ならば回避は至難。それが翠星石の判断。
「威力、だけではなく技の性能全体が向上している……」
誤算はシャドームーンにそもそも回避する必要がなかったと言うこと。
シャドームーンを覆う装甲・シルバーガードは花弁も羽も全て防ぎ切る。
自身の物を含めて実にローザミスティカ四個分の出力でも、シルバーガードを抜くことは出来なかった。
しかし翠星石には次の手が見えている。
シャドームーンにはシルバーガードで守られていない箇所が存在することを以前の戦闘から学んでいた。
翠星石はそこに狙いを付ける。
発射。するよりもシャドームーンの動きは早かった。
翠星石に打ち出されるシャドームーンの右拳。
その右拳に薄刃乃太刀が巻き付き、翠星石が咄嗟に形成した不可視の障壁が阻む。
が、止まらない。
薄刃乃太刀をヴァンごと引っ張り、障壁を破壊しても尚、
シャドームーンの拳の勢いは殺し切れず、翠星石に打ち込まれた。
吹き飛ぶ翠星石を今度は龍騎が受け止める。
「翠星石が接近戦をするのは無茶だって!!」
「うぅ〜……こ、こんなの屁でもねぇですぅ……」
翠星石は幾つもの強力な武器を使いこなすことができるが、
龍騎と比較すれば、明らかに近接しての戦闘は不得手である。
しかし翠星石は苦悶しながらも再度シャドームーンに向かって行こうとする。
慌てて留めようとする龍騎の背後から、C.C.の檄が飛ぶ。
「戦力を分散したり出し惜しみしている場合か!」
「すいません……」
「……だな」
素直に謝るヴァンと納得した龍騎は、各々切り札(カード)を切る決意をする。
その隙を、当然マイティアイは見逃しはしない。
シャドームーンの伸ばした指先へ、シャドーチャージャーからの光が収束。
収束した光は指先からシャドービームとして龍騎たちに放たれる。
龍騎は翠星石を突き飛ばしてシャドービームの射界から外す。
その反動で自分も地面を転がって、シャドービームを回避。
更に体勢を立て直した時には、その手にバックル部分のデッキから抜き取ったアドベントカードがあった。
回避とカードの抜き取りを同時に行う。
ライダーバトルの歴戦を潜り抜けてきた龍騎だからこその芸当。
龍騎は炎を周囲に纏いながら、左腕にある龍召機甲ドラグバイザーツバイに装填(ベントイン)する。
進化を司るカードを。
『SURVIVE』
電子音声が鳴り、炎が晴れる。
そこにはより強大な装甲を纏った龍騎――仮面ライダー龍騎サバイブが顕現していた。
「変身!」
今度はヴァンの声が響く。
その場の者が龍騎の変身に気を取られている内に、ヴァンは薄刃乃太刀にカードデッキを映していた。
腰の部分にVバックルが現出。そこにカードデッキを装填する。
テンガロンハットのリングを鳴らし薄刃乃太刀でVの字を描くヴァンに幾つもの虚像が重なる。
虚像はヴァンの肉体を覆う装甲として顕現した。
仮面ライダーナイトとして。
幾多のミラーモンスターの命を吸った仮面ライダー二体、龍騎とナイトが並び立つ。
それを前にして、シャドームーンはあくまで傲岸に笑う。
「フッ、ようやく戦いらしくなりそうだ」
龍騎とナイト、そして翠星石が再び同時攻撃に出る。
龍騎の攻撃。ドラグバイザーツバイによるビーム射撃。速射性に優れたそれを連続でシャドームーンに叩き込む。
ナイトの攻撃。翼召剣ダークバイザーによる斬撃。変身して更に高まったヴァンの身体能力によるそれは、人の視認できる速度を軽く凌駕していた。
翠星石の攻撃。庭師の如雨露によって急成長させた植物での打撃。高密度の繊維で形成された植物が砲弾のごとき速さでシャドームーンに迫る。
異能の戦士たちによる三点同時攻撃。
シャドームーンの対応もまた同時の物となる。
右手のサタンサーベルでダークバイザーを止め、
左手から電撃状のシャドービームで植物を焼き払い、
ドラグバイザーツバイのビームはシルバーガードに任せ、防ぎ切る。
『AD VENT』
ビームを放ちながら、龍騎はドラグバイザーツバイにアドベントカードをベントインしていた。
シャドームーンの背後の民家に有る窓ガラスから金属装甲の怪物が姿を現す。
赤く伸びた胴体。鋭く伸びた爪と牙。獰猛さと威厳を兼ね備えた巨体は、正に伝説の神獣である龍の姿。
無双龍・ドラグレッダーがサバイブ(進化)したミラーモンスター、烈火龍・ドラグランザー。
支援
支援
時間差のついた四点目への攻撃を行うドラグランザー。
ドラグランザーはセルシウス度に換算して7000°Cに達する超高熱火炎弾を口内から発射。
三点同時攻撃を防いでいたシャドームーンは、背後から直撃を受ける。
シャドームーンを中心に起こる埒外な高密度の爆発、そして炎上。
爆炎に煽られて大地に叩き付けられるシャドームーン。
ナイトは爆炎に包まれるシャドームーンから慌てて飛び退いた。
「おいっ!! 俺も焼け死ぬとこだろ!」
「わりいわりい。でも時間は稼げてるだろ?」
「と、とんでもねー熱さですぅ……」
龍騎と翠星石もシャドームーンを包む炎熱を眺める。
地上に太陽が顕現したかのごとき炎熱の中でも、シャドームーンは起き上がろうとしている。
やはり並ならぬ耐熱性能を持っているようだ。
しかしせっかくのチャンスも、この炎熱から距離を取らなければならない状況では追撃もままならない。
爆炎を吐き出した烈火龍自身を除けば。
ドラグランザーは大顎を開けて、炎の中のシャドームーンに食らいついた。
人一人を喰らい尽くせるほどのドラグランザーの大顎がシャドームーンを噛み――砕けない。
両手でドラグランザーの顎を押し開けたシャドームーン。
更にシャドームーンは電撃状のシャドービームを両手から発射する。
ドラグランザーの口内で響く雷鳴。
口の中で放たれたシャドービームに耐えられず、ドラグランザーはシャドームーンを放してのた打ち回る。
『SURVIVE』
難なく着地するシャドームーンの耳に、電子音声が届いた。
シャドームーンは自分がドラグランザーに手間取っている内に、敵に態勢を整える時間を与えていたと悟る。
もう一枚存在した、進化を司る切り札(カード)を切る時間を。
ナイトを突風が包む。
突風が晴れた時には、ナイトはより強大な蒼い装甲に身を包み、
仮面ライダーナイトサバイブへと進化していた。
「よっしゃー!! こうなったら、もう負ける気はしないぜ!」
並び立つ二体のサバイブ。
龍騎はかつて何度も共闘した、秋山蓮の変身するナイトのことを思い出す。
龍騎とナイトのコンビの強さは誰よりも良く知っていた。
「次はこのカードで行くぜ!」
「あん? 俺も同じカードを使えばいいんだな?」
アドベントカードを見せてくる龍騎に、ナイトも素直に従う。
何しろナイトが慣れない変身時もサバイブのカードを使った際も、龍騎がシャドームーンを相手に隙を作ってくれたのだ。
ライダーバトルにおいて龍騎に一日の長があることは明白だった。
翠星石がその二人の様子を複雑な面持ちで後ろから眺めていた。
『『SWORD VENT』』
龍騎とナイトの電子音声が完全に重なる。
龍騎がドラグブレードを、ナイトがダークブレードを抜くのも同時。
厚さ60cmの鉄板を一刀の下に切断するドラグブレードと、それをAPに換算して1000上回る威力のダークブレード。
二人のサバイブの剣がシャドームーンに斬りかかる。
デッキにより変身する仮面ライダーの中でもトップクラスの性能を誇る二人の剣撃は、瞬きほどの隙も許さない速さ。
それが上段、中段、下段、袈裟切り、逆袈裟、横薙ぎと剣筋が不断に変化していく。
受けるシャドームーンの剣はサタンサーベル一本。
いかにシャドームーンと言えど後手に回り、追い詰められ、やがてサタンサーベルでは受けきれなくなる。
上段からのドラグブレードの一撃をサタンサーベルが既の所で受け止める。
がら空きとなったシャドームーンの胴体部分。
刹那に生まれた隙を見逃さず、ナイトのダークブレードが狙い打つ。
金属と金属がぶつかり合い火花を散らす甲高い音が鳴り響く。
ダークブレードを受けたのは左のエルボートリガー。
エルボートリガーの超振動を受けて、ダークブレードが弾き飛ばされた。
しかしナイトは尋常ならざる反応速度で剣筋をそこから更に変化させる。
狙い打ったのはエルボートリガーと左肘の接合部分。
シルバーガードに守られておらず、おそらく超振動もしていないだろうと推測された部分である。
ナイトの推測は当たる。
ダークブレードの威力がナイトの類稀な剣の技量で打ち込まれ、エルボートリガーは根元から折れ飛んだ。
ナイトは更にシャドームーンの胴体を狙って、ダークブレードを振るう。
荒くれ者の理想郷(パラダイス)エンドレス・イリュージョンの血風で鍛え抜かれた、ヴァンの技量のみが可能にする不断の連続攻撃。
それすらシャドームーンはサタンサーベルで受け止めた。
しかしナイトの攻撃をサタンサーベルで受けたと言うことは、龍騎に対して無防備になったと言うこと。
龍騎は反対方向からシャドームーンの胴体を目掛けてドラグブレードを振るった。
シャドームーンと言えど、絶対に反応し切れない間合い。
龍騎とナイトがそう確信した。
その瞬間。正にドラグブレードがシャドームーンを切り裂く寸前。
シャドームーンの腰に在るシャドーチャージャーがキングストーンの光を放った。
シャドーチャージャーから直接前方へ電撃状のシャドービームを発射。
幾つもに枝分かれして空気を切り裂き射界を広げて行くシャドービームは、龍騎とナイトにも直撃。
膨大なエネルギーに拠る、破壊の奔流。
それはまともに受けた龍騎とナイトを、玩具のごとくに10メートル以上も後方へ吹き飛ばした。
「真司!! ヴァン!」
後ろで見ているしかなかった翠星石が悲鳴のような声が飛ばす。
それに答えるように龍騎とナイトも立ち上がるが、身体が見るからに身体が重そうだ。
強い。
判っていたはずのことを、龍騎もナイトもここに来て改めて実感していた。
シャドームーンの付け入る隙の見当たらない強さを。
カシャ カシャ カシャ カシャ
足音を鳴らしシャドームーンが悠然と、しかし確実に近付いてくる。
強者も、弱者も、男も、女も逆らう全てを討ち果たすために。
避けることは許されない。
この強大な怪物を倒さないことには、進むべき未来は無いのだ。
◇
この世の物とは思えぬ灼熱の炎が舞い、大気を焼く雷が鳴る。
仮面ライダーとシャドームーンの戦いは、遠巻きに眺める上田にもその脅威が伝わってくるほど激しい物だった。
近付くこともできない。どころではなく、距離を隔てても危機感を覚えるほどだ。
実際、上田は何度か気絶しかけた。
「……あの様子では、銃で援護しようもないな」
仮面ライダーとシャドームーンの高速接近戦闘を眺めて、上田は手元でベレッタを弄びながら一人ごちていた。
人間が相手ならば必殺の武器となる拳銃も、シャドームーン相手では威嚇にもならない。
上田はいよいよ何をしに来たのか判らない状態だった。
「建物の崩落に巻き込まれても無事だった奴だ。銃が効かないことなど判りきっていただろう」
C.C.が呆れたように口を挟む。
戦いが始まる前は大きな口をきいていたが、C.C.もやはり上田と事情は同じ。
四階建ての建物の崩落を無傷でやり過ごしてような相手に、C.C.では威嚇の手段も持っていない。
それどころか覚悟を決めたC.C.ですら、シャドームーンには気圧されそうになっているほどだった。
――――覚悟を決めた?
C.C.は漠とした違和感を覚える。
自分の心中に。
『私は行くぞ。やられっぱなしでいるのは性に合わん。この男を見て決心がついたよ。こんな……』
C.C.は上田を見て決心がついたと言ったことを思い出す。
決心がついた?
何の? シャドームーンと戦う決心だ。
しかし、何故大袈裟に決心など必要だった?
C.C.は死なないはずなのに。
例え死んだとしても、それはC.C.にとって――――
「……Lはそう考えてはいなかったみたいだがな…………」
上田の言葉でC.C.は現実に引き戻される。
今は些細な懸念に惑っている場合ではない。
当面の問題から、意識を離すべきではないだろう。
「……Lがどうした?」
Lの名前が出た途端、C.C.の態度が変わる。
同行していた期間は短いが、Lの頭脳の優秀さはC.C.も認めるところだった。
そのLの言葉とあってはC.C.とて無視はできない。
例え、それが上田の口を借りた物であっても。
「いや、Lとシャドームーンが建物の崩落に巻き込まれた時の話をしたことがあってな……あれは私が古代ローマの浴場設計技師だった頃……」
「おい!」
「……あれはLと水銀燈とで車に乗って移動していた時の話だ……」
そして上田にとって、Lはより思い入れのある人物だった。
優秀な知性と強靭な意志で殺し合いに立ち向かっていたLの存在は、上田にとってどれほど心強い存在だったか。
いつもの浮ついた様子は鳴りを潜め、上田はLとの会話を語り始めた。
◇
「……しかしあの、シャドームーンは展望台の崩落に巻き込まれて傷一つ無かったと言うんだろ…………」
そう切り出したのは上田がLと水銀燈を乗せて車を走らせていた時だった。
上田は注意深く車を運転しながら、心なしか沈んだ声で語り掛ける。
水銀燈は鞄の中で眠っているため、上田が語り掛ける相手は必然的にLしかいない。
「そんな相手をどうやって倒すんだ? 我々の持っている武器では、どう頑張っても通用しないだろう?」
「そのように判断するには根拠が不充分でしょうね」
Lは助手席で思案気にしていたが、上田の疑問に即座に反応する。
「私はシャドームーンを直接知らないので、詳細名簿と光太郎君や上田さんや水銀燈さんの話でしか判断のしようがありません。
それだけでもシャドームーンが尋常ではない能力を持っていることは判ります」
シャドームーンと接触したことが無くても、Lならば間接的に得た情報だけでその危険性は理解しているはずだ。
しかし上田には、どこかLのシャドームーンに対する認識が軽いような印象を受けた。
「それだからこそ展望台の崩落に巻き込まれて無傷だった理由は、シャドームーンの耐久力以外で説明が付くんです」
「え? ……あ、ああ! なるほどあれのことか。あれに気付くとは、Lさんも流石は探偵を名乗るだけのことはある。
私ほどではないが、中々優秀な頭脳を持っているじゃないか」
乾いた笑いを浮かべる上田は、当然のごとくLの言っていることの意味が判っていない。
いっそ清々しいくらいさっぱり判っていない。
Lもそれを悟っているようで、説明を続ける。
「建物の崩落と言うのはその質量全てが敷地内を均等に落下する、と言うことではありません。
建造物が無作為に破壊されている状態なので、瓦礫にも大小や形状の不均等が生じていたでしょう。
それらが不規則に崩れて落ちているわけですから、空間が発生する蓋然性も無視できません。
勿論、微細な破片まで落ちない。と言うことは考えられませんが」
上田がLと話していて驚かされるのは、常に淀み無く論理的な話しぶりができることとその博識である。
Lに聞けばどんな疑問にも明確な回答を得られるのではないか。
そんな幼稚な観念さえ浮かんでくるほどだ。
「事実、建物の崩落事故で生存者が出るケースもそれほど珍しくありません。普通の人間の、です」
「……待て。では君はシャドームーンが運良く瓦礫の落ちてこない空間に居合わせたから、偶然無傷で済んだと言いたいのか?」
「いいえ、運良くそんな空間に居合わせたのでは無いでしょう。しかしシャドームーンは建物内で拘束されていたわけではありません。ある程度は動くことができます」
「…………だが、自分で移動して瓦礫の落ちてこない空間に逃げ込んだと言うのは無理があるんじゃないか?
そもそもそんな空間が都合よく発生するとは限らないんだ……」
上田は展望台がどんな建物であったかは知らない。
しかし水銀燈の話からも、鉄筋を基礎にコンクリートで構造を形成していった建造物であると見当は付く。
それが自重を支えきれなくなって内側に崩壊したのだから、鉄筋やコンクリート片の大きさにも差が出てくる。
しかも建物は鉄筋やコンクリート以外の、様々な形状の物体も存在しているはずだ。
それらが不規則に崩れ落ちていけば、瓦礫の重なり方によっては人間が入れる空間が形成されても不思議は無い。
しかしどんな瓦礫の重なり方を下としても、比較的細かい破片が全く落下しない空間と言うのは考え辛い。
そもそもシャドームーンが居た場所に、偶然そのような空間が形成され公算は極めて小さい。
まして崩壊する建物内で、どこに空間が形成されるかを見極めてそこに移動するなど、
あまりにも荒唐無稽な想定に思えた。
「確かに無理がある想定です。私にそんな真似は不可能です。上田さんでも無理だと思います。
しかしシャドームーンにとってはどうでしょう?」
そこで上田は、自分が普通の人間の感覚で事態を想定していたことに気が付く。
シャドームーンは人間のそれを遥かに凌駕する能力を幾つも併せ持つ持つであろう、字義通りの超人なのだ。
「光太郎君や上田さんや水銀燈さんの話から推測するに、シャドームーンはその五感も人間のそれとは隔絶した性能を持っています。
建物が崩れ始めてから落下する瓦礫に反応することも可能だと考えられます。
そしてシャドームーンなら、落下してくる瓦礫もある程度は破壊することが可能です」
Lは知らないが、正にLの想定を可能にする視覚器官をシャドームーンは有していた。
マイティアイならば崩壊する建物内でも、落下してくるあらゆる瓦礫を把握するほどの認識が可能だ。
そして上手く巨大な瓦礫が折り重なって発生した空間に入り、更に落下してくる細かい破片をシャドービームなどで破壊すれば、
シルバーガードの耐久力を有するシャドームーンならば、無傷での生存も理論上は可能である。
「……まあこれは水銀燈さんの話から構築した仮説の一つに過ぎませんけどね。単純に偶然無傷でやり過ごせた可能性も存在します。
何れにせよシャドームーンが我々の取れる如何なる手段も通用しないほど埒外の耐久力を持っていると考える根拠にはなりません」
上田は、Lに何故シャドームーンに対する認識が軽いような印象を受けたのかが理解できた。
上田や水銀燈は直接シャドームーンの脅威に晒されたため、その恐怖に圧倒されて冷静に戦力を分析する余裕など持てなかった。
しかしLにとってはシャドームーンも冷静な考察の対象に過ぎず、殺し合いを打破するための障害でしかない。
だから上田や水銀燈とLの間には温度差があったのだ。
「それに……仮に私の仮説通りシャドームーンが五感と運動能力を駆使して、建物の崩落を切り抜けたとしたら、
その方がより厄介だと思えますね」
何よりLは決してシャドームーンを過小評価などしていない。
あるいは自分や水銀燈よりその脅威を正確に把握している。
上田にはそう思えた。
「もしそうだとすれば、シャドームーンには極めて高度な五感と身体能力、それに何より判断力と行動力を持っていることになる。
それらはどんな能力より脅威的、と言えるでしょう」
◇
先ほどとは一転して、今度はシャドービームのダメージが抜けない龍騎とナイトが防戦に追い込まれた。
シャドームーンは左手に持ち替えたサタンサーベルで龍騎のドラグブレードと何合も打ち合う。
銀の世紀王が振るう紅い刀身と赤いライダーが振るう銀の刀身によって幾重にも散る火花。
更に右手のエルボートリガーでナイトへ斬りかかった。
ナイトはダークブレードで迎撃を試みる。再び接合部分へと。
ダークブレードが逆にエルボートリガーを斬る。直前、エルボートリガーが停止。
ダークブレードを空振るナイト。
そのナイトを跳ね上げるような衝撃と痛みが襲う。
シャドームーンが脚を蹴上げて、踵から伸びるレッグトリガーで切り上げていたのだ。
「ヴァン!! ……うぉっ!」
ドラグブレードでサタンサーベルと鍔迫り合いをしながら、ナイトに焦慮の声を掛ける龍騎。
その龍騎の腹にシャドームーンの右拳が刺さる。
不意を打たれ、たたらを踏む龍騎。
「薔薇の尾!」
追撃しようとするシャドームーンの足が、翠星石の叫びと共に止まる。
翠星石から伸びる薔薇の花弁が一繋がりとなって、シャドームーンに巻きついた。
龍騎とナイトがシャドームーンから離れたため、ようやく援護が可能となった。
支援
しかしシャドームーンの指先から発射されたシャドービームに容易く切断される薔薇の尾。
それでも龍騎とナイトが体勢を立て直す時間は稼ぐことはできた。
龍騎もナイトも翠星石も、ここに来て明確に認識していた。
サバイブ二人にも有利を取れる、シャドームーンの強さの由来。
それは単純な性能の高さだけでは説明が付かない。
自身の高性能を活かし切る、判断力や応用力。
即ち類稀な戦闘のセンスに由来する物だと。
かつてシャドームーンが剣聖ビルゲニアと戦った際。
シャドームーンは改造が完了したばかりで、全く戦闘経験が無かった。
しかしシャドームーンは剣の戦いでビルゲニアを殺し、世紀王としての強さを見せ付けた。
またシャドームーンが仮面ライダーブラックと戦った際。
仮面ライダーブラックは同じ世紀王でありながら、訓練と実戦の中で能力を向上させており、
幾多のゴルゴムの怪人を倒した実績を持つ、正に歴戦の強者。
基礎的なスペックはシャドームーンが上回っていたが、それでも仮面ライダーブラックとの差を埋めきれる物ではなかったはずだ。
実際、戦いは仮面ライダーブラックの有利に進んでいた。
しかし創世王がシャドームーンを秋月信彦の姿に戻した瞬間、仮面ライダーブラックに隙が生まれた。
その一瞬の隙を突いてシャドームーンが勝利したのだ。圧倒的な戦闘経験の差を覆してである。
これらの例から推測できるようにシャドームーンには秋月信彦が先天的に持っていた物か、脳改造によって後天的に与えられた物か定かでは無いが、
戦闘に関することならば類稀な才覚を有している。
おそらく下手な小細工や小手先の技術ではシャドームーンを倒しきることはできない。
シャドームーンを倒すには、全霊を尽くす他無いだろう。
今度は如雨露で成長させた植物を伸ばす翠星石。
植物はまたもシャドービームで焼き尽くされる。
植物細胞が燃焼して黒煙を撒き散らす。
その向こうから、既に聞き慣れた電子音声が鳴り響いた。
『STRANGE VENT』
『TRICK VENT』
煙の向こうからナイトが姿を現す。
その後ろからナイトが飛び出して来る。
更に背後の煙から出て来たのはナイト。
ナイトが次々と煙から姿を現す。その人数は三人や四人では無い。
しかしシャドームーンは一度そのトリックを経験していた。
文字通りトリックを司るアドベントカードの効果。
自身の分身を複数体作り出す能力・シャドーイリュージョン。
『COPY VENT』
散開したナイトに囲まれた形となるシャドームーン。
シャドームーンはその場を動かない。動く必要が無い。
何故なら周囲を囲まれたその位置こそシャドームーンにとっては、全体を一度に攻撃できる好位置だからだ。
両手とそしてシャドーチャージャーからシャドービームを電撃状、それも可能な限り多方向へ拡散するように放つ。
当然、威力も拡散される。しかし今はそれで構わない。
拡散するシャドービームが次々と虚像を透過して行く。
その中で一人のナイトが被弾。
威力が拡散しているため、ナイトにさしたるダメージは無い。
しかし被弾したのは間違いない。即ちそれが実体。
今度は本命、直線状に威力を収束させたシャドービームをナイトに放った。
ナイトは横っ飛びに回避。予測をしていたであろう反応の早さ。
即座にサタンサーベルで切りかかる。
そのシャドームーンの背中に衝撃が走った。
完全に不意を衝かれ、体勢の崩れるシャドームーン。
シャドームーンが振り向けば、そこには虚像であるはずのナイトが斬りかかって来ていた。
それはナイトの姿をした龍騎であった。
龍騎が使用したアドベントカードはストレンジベント。
それはランダムで全てのライダーが持つアドベントカードのいずれか一つに変化する効果がある。
そして変化したカードはベルデが所有していたコピーベント。
その効果は他のライダーを姿はおろか能力までも模倣することができる。
速度に優れたナイトの長所を活かし、更にダークブレードでシャドームーンの背後から何合も切り込んで行く龍騎。
シルバーガードを抜くことはできないが、それによって4000APの威力が衝撃としてシャドームーンに叩き込まれる。
シャドームーンは振り向きざまにレッグトリガーを蹴上げる。
ダークブレードとぶつかり鍔迫り合いになるレッグトリガー。
再び背後からダークブレードの衝撃を受けるシャドームーン。
本物のナイトも高速の斬撃でシャドームーンを襲う。
高速斬撃で攻め立てる二人のナイト。
しかもシャドーチャージャーからのビームを警戒してか、二人ともが執拗に側面へ回り込んで行く。
シャドームーンはサタンサーベルとエルボートリガーで応戦するが、
腕を身体の外側に伸ばしながらとなるため、防戦一方になる。
側面に回りこんだナイトが、更に背後へと斬りかかるが、
斬撃はシャドームーンの頭上を通り抜けた。
屈み込んでいたシャドームーンは、その反動で一気に跳躍。
高度40メートルまで達することが可能な瞬発力は、一瞬で二人のナイトを遥か上空から見下ろす高さまで到達した。
シャドーチャージャーの内部から光りが漏れている。
「ビームが来るぞ!!」
上田の叫び声が上がる。
F−5のエリアにあった公園でシャドームーンの襲撃を受けた上田は、それを目撃していた。
ゼール種のミラーモンスターの群れを一挙に殲滅したシャドームーンの戦術。
今のシャドームーンの態勢は、あの時と全く同じだった。
シャドームーンのシャドーチャージャーと両手から同時にシャドービームが放たれた。
電撃状に拡散するそれは、二人のナイトの上空全てを覆い尽くすエネルギーの濁流にして暴流。
二人のナイトみならず周囲の空間一帯をその破壊的なエネルギーが包み込むべく、上空から襲い掛かる。
しかしシャドービームの光は、影によって塗り潰される。
巨大な植物の影。
翠星石が育てた植物が、二人のナイトの上に覆い被さるように伸びていた。
植物にシャドービームが被弾。
膨大なエネルギーが爆発に変換される。
高密度の繊維でできた植物が微塵となって散開。
それでもなお余剰となったエネルギーが、爆風として二人のナイトに頭上から叩き付けられる。
粉塵や散乱する植物の破片に目を、爆発の残響に耳を奪われた二人のナイトは、
着地したシャドームーンがシャドービームで狙っていることに気付いていない。
コピーベントの効果が切れた龍騎に収束されたシャドービームが発射された。
伸びた植物が龍騎の身体を弾き飛ばす。
シャドービームは龍騎を掠め、植物すら貫通して消え去って行った。
翠星石はシャドームーンと龍騎の間に立つ。
「だから翠星石は退がってろって!」
「イヤです!!」
確かに翠星石はその能力からして接近戦より、距離を置いての戦闘の方が得意としている。
しかし翠星石の能力は植物にしろ、薔薇の花弁にしろ、黒羽にしろ、
そのほとんどが手元から放出して、敵に向かって行くタイプの攻撃なのだ。
従って敵と距離を取るほど、隙が大きくなり対処もされ易くなる。
何より翠星石は先刻から龍騎とナイトの戦いを遠巻きから眺めているだけの状態が続いていたのだ。
翠星石にとってこれほど焦燥に駆られる状態は無かった。
翠星石は薔薇の花弁と黒羽を今度は重ねるように飛ばす。
植物はシャドービームで燃やされて通用しなかったが、花弁も羽も分散した物の群体。
個々を燃やされてもほとんど影響は無いし、一挙に燃やされると言う心配も無い。
問題は正に一撃一撃が軽いこと。
至近距離から収束して撃った薔薇の花弁と黒羽は、正確にシャドームーンの頭部へ命中。
しかし、やはりシャドームーンに傷を付けることができない。
それでも打ち付けられ続ける花弁と羽。
シャドームーンを傷付けることは叶わず、只纏わり付いていく。
その羽から突如として蒼い炎が上がった。
水銀燈の持っていた発火能力で、翠星石が上げた物である。
羽だけでなく花弁にも引火した炎は、シャドームーンの頭部全体を覆っていく。
「いーひっひっひ! いい様ですね、銀色オバケ」
頭部を炎に巻かれた状態では、見ることも聞くこともできない。
そう確信した翠星石は、 高笑いを上げながら更に接近していく。
シャドームーンの足下へと。
そしてシャドームーンの足下へ如雨露を伸ばした。
これでシャドームーンの直下から植物を育てれば、その動きまでも封じることができる。
甲高い音を上げて宙を舞う如雨露。
如雨露はシャドームーンによって蹴り飛ばされた。
「なっ!!? お前見えてないんじゃ……ぐっ!!」
見えないはずのシャドームーンが、翠星石の頭を鷲掴みにする。
シャドームーンのマイティアイは広視界と透視能力を持っている。
炎に巻かれても翠星石を見失うことは無かった。
シャドームーンの握力によって軋むような音と呻き声のような悲鳴を上げる翠星石。
「は、放せ!! 放しやがれですっ!! お前だけは、お前だけは捨て置けねーんですぅ……」
翠星石の怒り、と言うより悲痛さの篭った叫び。
龍騎の眼にも、C.C.の眼にも、上田の眼にも、
シャドームーンへ向ける翠星石の感情は尋常の物では無いことは明白だった。
姉妹を殺された怒り、と言うだけに尽きないそれは誰の眼にも異常に映っていた。
「翠星石!!!」
しかし龍騎にとっては翠星石が直接危機に見舞われている事実の方が重要なことだ。
起き上がり様にシャドームーンへ切り掛かる龍騎。
その龍騎の視界の中で翠星石が、シャドームーンを覆い隠すほど急激に巨大化。
シャドームーンが翠星石を投げつけて来たのだ。
それに気付いた龍騎は、慌てて眼前で翠星石を受け止める。
翠星石は苦しそうに呻いているが、無事らしいことを確認する。
その龍騎の腹に鋭く、それでいて重い衝撃が襲う。
翠星石を退かして自分の腹を見ると、シャドームーンの蹴りが入っていた。
今度は龍騎がくぐもった声を漏らして膝を折る。
蹲った龍騎の後頭部を見下ろすシャドームーンは、サタンサーベルを振り上げる。
振り下ろされたサタンサーベルが大きく鉄火を鳴らした。
横薙ぎに打ち込まれて来たナイトのダークブレードを受け止めたためだ。
4000APの斬撃は、シャドームーンが片手で持ったサタンサーベルに阻まれる。
太刀合わせになるダークブレードとサタンサーベル。
刃こぼれを起こすことも無く火花を散らす二本の剣は、そのまま鍔迫り合いに移行。
最初は拮抗していた物の、シャドームーンがサタンサーベルを両手で持ち直したことで、
ナイトが押されて行った。
不意にナイトが体捌きの要領で、ダークブレードを外す。
サタンサーベルで押して来ていたシャドームーンを往なすためだ。
目論見通り、当たり所を失ったサタンサーベルが流れて行く。
そして再び横薙ぎに変化したダークブレードでシャドームーンに切り掛かる。
ダークブレードはシャドームーンから急速に離脱。
握っていたナイトが後ろへ吹っ飛んだのだ。
シャドームーンの蹴りによって。
かつて仮面ライダーブラックがライダーキックを最大の決め技としたように、
世紀王は格闘戦において、蹴り技こそ最も威力を発揮する。
ましてシャドームーンはレッグトリガーを装備している。
溜めもエネルギーチャージも無い単純な回し蹴りですら、その威力は破格。
「合わせろヴァン!!」
既に装甲の粒子化が始まった龍騎の声が響く。
アドベントカードをかざす龍騎を見て、ナイトが頷く。
同時に龍騎と、既に手馴れた様子となったナイトが、アドベントカードをベントイン。
『『SHOOT VENT』』
龍騎のドラグバイザーツバイから放たれたレーザーが、シャドームーンの背後から照準を合わせる。
ナイトのダークバイザーツバイの弓が展開してボウガンを形成。周囲から光エネルギーを吸収。
ドラグランザーがレーザーの射線に沿ってシャドームーンへ向かって飛び、うねりを上げながら超高熱火炎弾を連続発射。
ダークバイザーツバイで極限まで収束された光エネルギーは、矢を形成して連続発射される。
4000APを誇る連続超高熱火炎弾『メテオバレット』の標的はシャドームーンの背中。
3000APを誇る連続光弾『ダークアロー』の標的はシャドームーンの正面。
同時に着弾。
埒外の高密度エネルギー体が衝突事故を起こし、
大地を震わすほどの轟音を響かせ、凄まじい爆風と炎熱を撒き散らす。
しかしその場に居る誰も、爆心地に居たシャドームーンを倒せたとは思っていない。
龍騎とナイトが空を見上げる。
視線の先には天高く跳躍していたシャドームーンが居た。
その跳躍力を活かし、爆発を回避していた。
そしてそこまでは予想通り。
空高くを舞うシャドームーンは敵の次の手を探るため、龍騎とナイトの動きをマイティアイで解析する。
龍騎。には動きが見られない。
しかし龍騎の身体から放物線状に何かが落ちていた。
よく見ると龍騎の身体から、では無い。
龍騎がその手に未だ抱いていた翠星石。
その手に持った如雨露から水が放物線を描いて地面に落ちていた。
そこから植物が急速に成長をし出す。
「フッ、同じ手を何度も」
翠星石の育てた植物は、既に何度も破っている攻撃手段。
例え空中であろうと幾らでも対処できる――
『NASTY VENT』
――そう考えていたシャドームーンの耳に、既に聞きなれた電子音声が届いた。
ナイトを見ればカードを装填の終えているらしい。
そしてビルの窓ガラスから、青い翼を広げた怪鳥が姿を現す。
仮面ライダーナイトサバイブの契約モンスター・ダークレイダー。
(これは、公園であの青いライダーが使った……!!?)
突如、シャドームーンの耳に異常な金切り音を上げ、視界が歪む。
突発的な異常事態。
原因は知っている。
ダークレイダーが放つ超音波が、シャドームーンに影響を与えているのだ。
かつて公園の戦いでナイトが使っていたナスティベント、超音波攻撃『ソニックブレイカー』。
公園の戦いでは耐えることができた。
しかしナイトがサバイブとなった今、ソニックブレイカーの威力は倍化。
改造を受けたシャドームーンの感覚器官と言えど、耐え切ることはできなかった。
景色が酩酊し、意識が集中できない。
酩酊する景色が、緑色に塗り潰される。
そして更に衝撃が走り、緑色は茶色に塗り潰された。
「……ざ、ざまーみやがれですぅ…………」
龍騎の腕の中で、ようやく一心地ついた翠星石は呟く。
シャドームーンは空中を飛行ではなく跳躍をしている。
従って空中で超音波攻撃を受ければ、翠星石が育てた植物に対して対処のしようも無い。
蹴り飛ばされていた如雨露は、傍らに駆けつけていた上田とC.C.が拾っていた。
そして成長させた植物を曲げて、捕捉したままシャドームーンを地面に叩き付ける。
後を龍騎に任せるために。
「……後は頼んだですから、しっかり決めやがれですよ真っ赤っか人間…………」
「ああ、良くやったな翠星石。後はここで見ていてくれ。俺が、いや……」
龍騎は翠星石を上田とC.C.に預ける。
そしてアドベントカードをベントインした。
「……俺たちがシャドームーンを倒す所を」
切り札中の切り札となるアドベントカードを。
『FINAL VENT』
龍騎に隣り合うように降りて来たドラグランザーが、その姿を龍の物から二輪の単車の物に変形させる。
バイクモードとなったドラグランザーへ龍騎が跨り、勢い良くアクセルを回す。
急発進するドラグランザー。
目標は、シャドームーン。繰り出す攻撃は、
仮面ライダー龍騎サバイブ・ファイナルベント<ドラゴンファイヤーストーム>
シャドームーンは超音波と植物、二重の戒めによって身動きが取れない。
勢い良く走るドラグランザーの頭=前輪が持ち上がりウィリー走行に移行。
ドラグランザーの頭から超高熱火炎弾の連続発射。
超高熱火炎弾の連発でダメージを与え、ドラグランザーの車体で撥ねて止めを刺す。
それが9000APの攻撃力を誇る仮面ライダー龍騎サバイブ最大最強の攻撃――ドラゴンファイヤーストーム。
7000°Cの火炎弾が植物もシャドームーンも容赦なく焼いていく。
舞い上がる炎熱は植物を瞬時に焼き尽くし、尚も発散する熱はダークレイダーをも寄せ付けない。
炎熱は超音波と植物と言う二重の戒め、両方からシャドームーンを解き放った。
しかしもう遅い。と龍騎は確信している。
既に超高熱火炎弾の連発を受けたシャドームーンでは、大きく回避することは不可能。
多少身をかわそうとしても、龍騎の技術ならばドラグランザーで追尾して当てることができる。
そして防御に回っても、9000APを誇るドラゴンファイヤーストームの威力は防ぎ切れない。
しかし戒めから解き放たれたシャドームーンの行動は回避の物ではない。
起き上がり様その場で飛び上がり、空中で旋回。
そして両足を揃え、ドラグランザーへ向けて蹴りを放った。
このタイミングで回避でも防御でもなく迎撃を選択して実行できる。
やはりシャドームーンの戦闘センス、何より揺ぎ無き闘志は尋常ではない。
しかも両足からは、キングストーンのエネルギーが余りの高密度ゆえ、強烈な光となって放たれている。
足にエネルギーを収束させて放つ技は、龍騎は覚えのある物だった
あの技はまるで――――
「ライダーキック!!?」
「シャドーキック!!!」
それはライダーキックではなくそれと対を為すシャドームーンの必殺技。
シャドームーン最大最強の攻撃――シャドーキック。
ドラゴンファイヤーストームとシャドーキックが正面衝突。
必殺技vs必殺技。
最大最強vs最大最強。
仮面ライダー龍騎と数多のモンスターを捕食して力を得たドラグランザーの全エネルギーを一転集中させた突貫攻撃を、
シャドームーンのキングストーンと二つのレッグトリガーの超振動を合わせたエネルギーを込めたキックで迎え撃つ。
派生した衝撃が大気を、大地を震わせる。
更に衝撃は近場のビルの窓ガラスを一斉に割り、
遠巻きに避難していた上田やC.C.や翠星石にまで届いた。
龍騎とシャドームーンはやがて爆発するような光に包まれた。
やがて衝撃と轟音が止み、静寂が訪れる。
遅れたタイミングで聞こえた、民家の倒壊する音が間抜けに響く。
衝突の結果は――――
「――――ぐはっ!」
翠星石たちの前で、空中から龍騎が墜落してくる。
そして龍騎の姿が鏡のごとくに割れ、真司が現れる。
変身のタイムリミットを過ぎたのだ。
真司は呻くように血を吐く。
明らかにダメージが大きい。
むしろ、必殺技同士で相殺し合ったために危うく命を拾った。そんな風情だった。
「真司!! しっかりするですぅ!!!」
翠星石が真司の下に飛び寄る。
真司は立ち上がることもできないようだが、どうやらの命には別状が無いらしい。
その瞬間、倒壊した民家から崩れるような音がする。
音のする方を見ると、銀色の影が立ち上がった。
「ぶ、無事だったんですか……あの銀色オバケ」
必殺技の打ち合いを制したのはシャドームーン。
ダメージはあるようだが、自力で立ち上がる様子から、
真司よりダメージが少ないことは明らかであった。
しかしまだ勝負は終わっていない。
「ま、まだこれからだ……」
切り札中の切り札は、もう一枚存在するのだから。
『FINAL VENT』
シャドームーンに照射される青い光線。
途端、シャドームーンの動きが一切停止する。
光線の発射元には、青いバイクに跨ったナイトが居た。
いかにシャドームーンでも、ドラゴンファイヤーストームを迎撃すれば、相応の消耗は免れない。
そうなれば動きも鈍るはずだと予想できた。
そしてその隙を突いてナイトが使用したのが、ファイナルベントのアドベントカード。
ナイトが跨っているのは、バイクモードに変形したダークレイダー。
先ほどシャドームーンの動きを止めたのは、ダークレイダーの機首から発射した拘束ビーム。
それによって敵を拘束して、ダークレイダーで突貫する。
その威力と、何より回避不能性ゆえの正に必殺技。
仮面ライダーナイトサバイブ・ファイナルベント<疾風断>
指一本動かすことができないシャドームーンへ向かって、ダークレイダーを走らせるナイト。
ナイトから伸びたマントがダークレイダーを覆い、全体を一発の弾丸へと変形させる。
8000APの攻撃力を誇る、仮面ライダーナイトサバイブ最大最強の弾丸へと。
その弾丸は、今度こそ回避も防御も迎撃も不可能。
龍騎とナイトの誤算は、シャドームーンにも切り札が存在したこと。
世界の条理を超え、不可能をも可能にする切り札。
世界を支配する王の輝石・キングストーン。
シャドーチャージャーから光が放たれる。
自身を脅かす如何なる特殊能力も無効化するキングストーンの光が。
「シャドーフラッシュ!!」
あらゆる動きを封じられたはずのシャドームーンの声が聞こえる。
同時にシャドームーンが跳躍。ダークレイダーの上を飛び越える。
そして着地と同時にダークレイダーへ向けてシャドービームを発射。
着弾と共に、爆発に包まれるダークレイダー。
爆煙が晴れると、そこには倒れ伏すナイトが居た。
それでも重そうな身体を起こすナイトだが、その装甲は粒子となって空中に溶け始める。
「……フッ、褒めておいてやる。それに値する強さだったぞ。人間にしてはな。
せいぜい誇るが良い。次期創世王に全力を出させて敗北したことを…………あの世でな」
シャドームーンの言葉に反論する者は居なかった。
ファイナルベントは二つとも破られ、
龍騎の変身は解け、
ナイトの変身時間は後僅か、
勝敗が決まったことは誰の眼にも明らかだった。
「ばんなそかな!」
「……どうやら、勝負がついたらしいな」
ナイトのファイナルベントが破られたのを見て上田は驚愕を、C.C.は諦念を込めた声を漏らした。
上田は震えながら、おたおたと取り乱す。
「…………い、今からでも逃げた方が良いだろうか?」
「逃げてどうする? お前は首輪を嵌めているんだ。ここで逃げても結果は同じだ」
やはり落ち着いた調子で答えるC.C.。
C.C.個人にとっては、ある意味何の問題も無い状況だとは言える。
シャドームーンやV.V.に意趣返しができなかったことは残念だが、それも些細なことだ。
彼女の本来の目的を考えれば。
「そ、そうか!! 君は首輪を外しているんだったな……………………ずるいぞ一人だけ!」
「翠星石と志々雄の三人で、だ。それに私は逃げるつもりは無い」
「WHY!? 何故だ?」
「お前のような臆病な役立たずと一緒にされたくないからな」
C.C.は既に首輪を外しているので、禁止エリアに逃げることも可能だ。
しかしC.C.はこの場でシャドームーンに戦いを挑むことを選択する。
無論、勝算は無い。おそらく傷一つ付けることは叶わないだろう。
しかしC.C.が殺される心配も無い。
C.C.は不死のコード所有者なのだから。
「C.C.……………………君も震えてるぞ」
C.C.は上田の視線の先、自分の手元を見る。
三節棍を握っていたそれは、確かに震えていた。
寒さではない。この状況で武者震いを起こすほど物好きでもない。
恐怖による物としか考えられなかった。
しかし何に恐怖しているのかが判らない。
不死者であるC.C.には、シャドームーンですら恐れる所以は無いはずだ。
「ふん、偉そうなことを言っておいて自分も怖がってるんじゃないか」
「怖がる? 死なない者が何を恐れられると言うんだ……」
まるで自分に言い聞かせるようなC.C.の言葉。
実際に上田へ返答をしているわけではない。
判るはずもないのだ。そうでない者に、不老不死のまま生き続ける重さなど。
憎む人も、優しくしてくれた人も、全て時の流れの中に消えていき、
そもそも自分が人間だったのかすら判らなくなり、
果てることの無い時の流れの中で、遂に自分の死を望むようになった者の想いなど。
「何だそれは? 君は不老不死にでもなったと言うのか?」
「なりたくもなかったがな……」
「馬鹿馬鹿しい! 言うに事欠いて不老不死だと? そんな物は物理的考えても、生物学的に考えても……」
上田はこの期に及んでも不老不死が受け入れられないのか、長々とそれが何故不可能であるかの講釈を垂れている。
C.C.はそれを聞き流しながら、自分の思索に耽っていた。
しかし上田の次の台詞を聞き流すことはできなかった。
「……第一、詳細名簿が有ると言うことは君が不死身だということをV.V.も知っているはずじゃないか。
そんな人間を、何故殺し合いに参加させる?」
全ての思索が吹き飛ぶほどの衝撃がC.C.を襲う。
不死者が殺し合いに参加させられている。
それは疑問を持って当然の状況だった。
それでもC.C.は今この時、上田に指摘されるまで疑問にすら思わなかった。
しかし振り返って考えて見れば、V.V.はC.C.の不死を良く知っている者である。
本当に殺し合いをさせる気で参加させているのなら、C.C.に対して何らかの対策をしていると考えて当然。
そして回復力が落ちているなど、実際に自分の不死に対して何らかの対策が為されている兆候も見られた。
それなのに“死ぬことができる”という可能性に、今の今まで気付きもしなかった。
自らの不死は余りに当然のことで、
自らの死を諦めることが余りに当然のことであったゆえに。
あるいはその可能性に、本当は気付いていたのかもしれない。
ならばシャドームーンとの戦いに臨むのにも、大袈裟な決意が必要だった説明が付く。
そしてこの身体の震えにも。
無意識や本能とでも呼ぶべき、とにかく顕在意識に上がらない領域では死の可能性に気付いたとすれば。
もし仮に死ぬことができるとすれば、それは自分の悲願を達成することができるということ。
V.V.との経緯も、ルルーシュとの経緯も、全て自分が死ぬための物だった。
それほど焦がれた死に、ようやく到達することができる。
例え身体が恐怖に震えようが、死を得られる喜びが勝る。
そのはずなのだ。
C.C.は震える身体でゆっくりとシャドームーンへ向けて歩き始めた。
◇
ファイナルベントが破られ、満身創痍となったナイト。
元々、石田散薬で治療したとはいえ、負傷の多い身だった。
変身状態は未だに維持しているとはいえ、限界は近い。
そして傍らで共に戦っていた龍騎も居ない。
ただ一人でシャドームーンと対峙するナイトは、それでも真っ向から立ち向かって行く。
龍騎と共に戦っていた時はアドベントカードや連携を駆使したが、今はただ真っ向から、
一点の曇りもなく、勝利のために。
勇者なのか、それとも愚者なのかすら定かでは無い。
ただそれがナイト――ヴァンと言う男の本来の在り方だった。
ダークバイザーツバイでシャドームーンに切り掛かるナイト。
明らかに動きが重くなっている。
ダークバイザーツバイをサタンサーベルで弾き飛ばすシャドームーン。
ナイトは身体ごと弾き飛ばされる。
「最早勝算を失ったことも判らないとは。どこまでも愚劣な人間だな」
「はぁはぁ……そんな台詞は勝ってから言え!! バカ王が!!」
「……その上、世紀王の名を愚弄したのだ。後悔させねばな」
「じゃあ、ただのバカで良いな!! バーカ! バーカ!」
やはりただの愚者かもしれない。
そう思わせるほど幼稚な挑発をするナイト。
今度はシャドームーンがサタンサーベルで切り掛かる。
ダークバイザーツバイで受けるナイト。
鍔迫り合い、にすら成らず、一合で弾き飛ばされるダークバイザーツバイ。
無防備となったナイトへ降りるサタンサーベル。
それを止めたのは、シャドームーンの腕に絡みついた薔薇の花弁。
薔薇の花弁は一繋ぎの鞭のごとく、翠星石の腕から伸びていた。
翠星石も未だ勝負を捨ててはいなかった。
「フッ、まだ居たのか」
シャドームーンは捕まれた腕を力づくで振るう。
薔薇の花弁を伸ばしていた翠星石の方が軽々と引き寄せられた。
「ひ、引っ張るんじゃね……ぐっ!」
「! 翠星石いぃぃぃぃぃぃっ!!!!」
眼を剥いて、息を呑む翠星石。
真司の絶叫が木霊する。
しかしその叫びに反応する者は居ない。
誰もが皆、翠星石の姿を見ていた
さながら百舌のはや贄のごとく、サタンサーベルに胴体を貫かれた翠星石の姿を。
必ず守ると誓った少女だった。
劉鳳に、何より自分に。
しかし真司の誓いは無残にも踏み躙られた。
胴体を串刺しにされた女。
それはエレナとは似ても似つかぬ人形。
しかしヴァンにとって、胴体を貫かれた翠星石の姿は、
あの日、カギ爪の男に奪われた花嫁と重なった。
満身創痍だったはずの真司は、叫びながらシャドームーンへ向かって行く。
そこへ先刻と同じく、シャドームーンがサタンサーベルを軽く振って翠星石の身体を投げつける。
変身もしていない真司にそれを受け止める力は残っていない。
懐に飛び込んできた翠星石の勢いに負けて、地面を転がった。
「チェストオォォォォ!!」
ナイトが気勢を上げて掛かって行く。
先ほどまでの動きの重さは無い。
それでもダークバイザーツバイはシャドームーンのサタンサーベルに止められた。
シャドームーンはどこまでも揺ぎ無き王者として君臨し続ける。
「気に入らねぇな!! 女を殺して王様気取りか!!」
「何者であろうと、ゴルゴムに歯向かう者は生を許されん」
シャドームーンと鍔迫り合いのまま舌戦をするナイト。
次の瞬間、ナイトは眩い光に包まれる。
光と共に全身を襲う衝撃。
(この光は……あいつのビームか!?)
生身のまま大型車に撥ねられたような衝撃の中、ナイトは自分を襲った光がシャドービームであると知る。
シャドームーンは片手でナイトと鍔迫り合いをしていたため、もう片方の手でビームを放つことができたのだ。
「ヴァン!!!」
光に呑み込まれるナイトを見て、C.C.はらしからぬ悲痛な叫びを上げる。
ナイトは光から後ろ飛びの体勢で飛び出して来た。
空中でナイトの姿が、鏡が割れるように散開する。
そしてヴァンが姿を現した。
ヴァンの着地点に先回りしたC.C.は、その身体を受け止める。
ヴァンの状態は医学に疎いC.C.から見ても正に満身創痍。
手足をただ動かすのですら、痛みでままならない様子だった。
「うっ……お前、こんな所で何をやっているんだ!?」
「変身も解けたお前では、戦闘も任せては置けんな」
「護衛される奴が護衛と前に出てどうするんだ! さっさと逃げろ!!」
ヴァンはこの期に及んでもピザで結んだ契約を命懸けで守るつもりらしい。
一度こうだと決めたことは、どうあってもやり抜こうとする。
どこまでも愚直なのがヴァンと言う男なのだ。
不意に強烈な閃光が走る。
シャドームーンの指先から放たれたシャドービーム。
その閃光はC.C.の顔面、を横切っていく。
後方で着弾。爆発。
爆発の傍らでは、上田が空中を舞っていた。
どうやら上田は一人で逃げ出そうとしていたらしい。
あの男もどこまでも上田らしくある人間だった。
そしてシャドームーンもまた、どこまでも絶対の王者として君臨し続ける。
C.C.たちに絶対の死を齎す者として。
C.C.は想う。
私はシャドームーンとの戦いによって、長い人生において何よりも望み焦がれた死を手に入れるとしよう。
そして私を護衛すると言ったヴァンもまた、私と運命を共にする。
それはとてもとても甘美な夢。
本当に夢のように素晴らしい人生の最後だろう。
しかし今日出会ったばかりのヴァンは、私が死を望んでいることすら知らない。
そんな人間をピザを理由に死出の道連れにするのは、さすがに冗談が過ぎる。
まして死を望む者の夢の道連れに――――。
「ヴァン」
「なんだ?」
「お前がピザの分は働いたことを認めてやる。護衛は……もういい」
C.C.はヴァンに契約の破棄を言い渡しす。
今更遅すぎたかも知れないが、この愚直な男をピザの契約で自殺志願者と心中した道化にするよりマシだろう。
そしてヴァンを置いて歩き出す。
シャドームーンへ向かって。
「馬鹿野朗!!! 死にたいのか!!」
「かもな」
満身創痍で最早動くこともままならないヴァンは、地面に横たわりながらC.C.の背中に向けて声を張り上げる。
それに背中を向けたまま、どこか投げやりな調子で返答するC.C.。
「フッ、あの時虚仮脅しで時間稼ぎをした女か」
「安心しろ……もう虚仮脅しは使わん」
無防備に近付いて来るC.C.を見て、シャドームーンは奇妙な違和感を覚える。
その言動ではなく姿に。
その姿に何かが足りないような、奇妙な欠落感だった。
しかしすぐに気を取り直す。
今から殺す人間の姿に気を取られても仕方ない。
サタンサーベルを振り被るシャドームーン。
ついにC.C.に望んでいた死が訪れる。
不思議と喜びは無かった。
恐怖はあったが、それも些細なことだ。
ただ最も強く明確に在ったのは孤独感だった。
(死とは寂しい物だな……)
しかし最早どうしようもない。
この途方も無い孤独感を抱えて、全ての繋がりを亡くす。
それが死と言う物なのだろう。
振り下ろされるサタンサーベルを見て、C.C.はそう覚悟する。
サタンサーベルが止まるまでは。
「……まだ性懲りも無い真似をするとはな」
サタンサーベルを弾いたのは黒羽。
シャドームーンが向いた先では、翠星石が震えながらも立ち上がっていた。
翠星石は人間ではなく人形。その生命は内蔵に依存しない。
胴体が欠けていた水銀燈が生きていたように、胴体を剣が貫通したとは言え致命傷になるとは限らないのだ。
そしてローゼンメイデンにとって生命とは、ローザミスティカに由来している。
ローザミスティカ四個を有する翠星石は、それだけの生命力を持っている。
「もう止めろ! 逃げるんだ翠星石……」
傍らでは未だ地に伏せている真司が、翠星石に逃げるよう促している。
もう龍騎もナイトも無い以上、翠星石が一人で立ち向かった所で戦力差は明らか。
そもそもまだ生きて活動しているとは言え、立ち上がることも覚束無い様子から翠星石の受けたダメージが大きいことも明白である。
勝算が無いことは翠星石も承知しているはずだ。
「いや……ですぅ…………もう、もうこれ以上翠星石だけ逃げるなんて…………」
しかし翠星石は退かない。
あくまでシャドームーンに立ち向かって行く。
苦悶も露な表情には、しかしそれ以上に鬼気迫るほどの決意が現れていた。
「翠星石、逃げろ…………」
「……………………みんな、みんな死んじゃったじゃねぇですか…………真紅も……蒼星石も…………翠星石の知らない所で…………」
「止せ翠星石!! 私を助ける必要は無い!」
危機が迫っているC.C.自身も翠星石を制止する。
それでも翠星石は止まらない。
「…………これで、真司まで居なくなったら……翠星石は…………もう、一人だけ逃げるなんて嫌ですぅ……」
シャドームーンとの戦いが始まって以来、真司には翠星石の様子がずっと疑問となっていた。
明らかにシャドームーンを恐れていた翠星石が何故、何度も無謀な攻撃を仕掛けていたのか?
翠星石が戦いを好まないのは、真司でも充分に察することができた。
しかしシャドームーンとの戦いで見せた異様な戦意。
その常軌を逸した翠星石の様子が、真司には疑問だったのだ。
それでもここに来て、真司はようやく翠星石を誤解していたことに。
翠星石は敬愛する父ローゼンがアリスを望んでいることを知りながらアリスゲームを、姉妹で戦うことを否定していた。
それは闇雲に戦いを“恐怖”していたのではなく、純粋に戦いを“嫌悪”していた。
姉妹同士が傷付け合い、命を奪い合う。
幾ら父の望みでも、それだけは許容できない。
翠星石はそれほど親しい者が傷付くことを嫌っていた。
しかし殺し合いは、掛け替えの無い姉妹を翠星石から奪っていった。
大丈夫なはずが無かった。
たった一日の内の出来事なのだ。
劉鳳が目の前で死んだのも。
真紅の死を知ったのも。
蒼星石の無残な遺体を見るのも。
水銀燈が目の前で殺されたのも。
真司の前では気丈に振舞っている、と言うことではない。
真司が傍らに居たから、それでもここまで精神の安定を保てていたのだ。
だからこそ、また親しい者が死ぬことを何より恐れるし、
姉妹を傷つけて尚も血を求めるシャドームーンが許せない。
翠星石は一度シャドームーンに敗北している。
シャドームーンへの恐怖は強い。
しかしシャドームーンから逃げ出して、自分の預かり知らない所で誰かが犠牲になる方がより恐ろしかった。
ましてや殺し合いの中で、傍らに居て自分を支えてくれた真司を失うことは。
自分が戦いの中で犠牲になった方がマシだと思えるほどに。
真司はずっと傍らに居ながら、翠星石がそこまで追い詰められていることに気付かなかった。
それに気付いていれば、翠星石への対応も違っていたかも知れなかった。
そして無謀な真似をさせずに済んだかも知れない。
「…………くっそ……立てよ! 今立たないでどうすんだよ!!」
自分を叱咤する真司。
これ以上、後悔があってはならない。
真司は渾身の力を込めて立ち上がり、膝から崩れ落ちた。
どれだけ自分を奮い立たせても、肉体には限界がある。
サバイブでの戦闘。それによるダメージは真司をこれ以上なく蝕んでいた。
遠ざかる翠星石の背中。
その向こうから、シャドームーンが近付いていた。
「…………おめーなんぞに……誰も、殺させな…………」
「では心残りの無いよう、お前から殺してやる」
「止めろ! 私が……っ!!!」
食って掛かるC.C.を、シャドームーンが見向きもせず殴り飛ばす。
木っ端のごとく容易く吹き飛ぶC.C.。
誰もシャドームーンの暴虐を止められない。
ただ、翠星石に確実な死が迫るのを見ているしかない。
真司も倒れ伏したまま、誓いの破れる時が来るのを待つ。
そこに聞き覚えのある声が届いた。
『――――また、目を背けるのか!?』
翠星石が後ろに倒れる。
シャドームーンと翠星石の間に白い人形が現出。二人の間に立ちはだかっていた。
翠星石はそれを知っている。
絶影と呼ばれる自立可動型アルターであることを。
「絶……影……?」
「フッ、あの時の人形か」
前触れもなく出現した絶影にも、シャドームーンは動揺することは無い。
それの発生源を知っているからだ。
「あいつが、作り出した能力なのだろう?」
マイティアイで真司を見据えるシャドームーン。
シャドームーンは以前にも絶影と戦闘したことがある。
その時の状況から、絶影の発生が真司に由来する物だと知っていた。
(ごめん、もうこれ以上は無理だよ……)
真司は胸中で声に対して謝罪のをする。
誓いを果たせなかったことを。
誓いをした相手に。
『――――謝罪など意味が無い! 翠星石を守ると決めたのなら、最後まで立ち上がって戦え!!』
(……もう、本当に立ち上がる力も残っていないんだ)
『力ならまだ残っている。俺から受け継いだ力が』
(…………劉鳳?)
『俺とお前の、二つで一つにして――――唯一無二の力を』
シャドームーンは真司へ向けてシャドービームを放つ。
絶影の防御も間に合わない速度。
その威力なら一撃で真司も、その手に在るカードデッキも破壊できる。
『GURAD VENT』
聞こえるはずの無い電子音声。
次の瞬間、シャドービームが着弾。
爆発が真司を包む。
煙の向こうから現れたのが、銀色の盾を構える真司の姿だった。
(俺……立つことができる……?)
自分の足下から、不思議な力が沸き起こってくるのを感じ取る真司。
見れば自分の足が装甲で覆われている。
龍騎と良く似た、しかし差異のある装甲。
「これは…………劉鳳、お前の……?」
『そうだ。俺とお前の力だ』
「俺は…………まだ戦う力が残っていたんだな」
『そうだ。この力で』
「ああ、この力で」
「『変身」』
手に在るカードデッキから、光る粒子が真司へ伸びて行く。
その粒子こそ、原子構造から物質に干渉・変換を起こすアルター能力発動のサインである。
カードデッキの中に在るアドベントカードに契約によって、内包されているドラグレッダー。
更にその中に眠っている劉鳳の魂。そこに込められたアルター能力が発動したのだ。
アルター能力には自律行動型や装着型など様々なタイプが存在する。
劉鳳のアルター・絶影もまた進化することによって、その形態を変化させていった。
アドベントカードとアルター能力の融合。
それは制限をも超え、更なる進化を遂げた変身をもたらした。
アルターは真司の全身を覆い、装甲を形作っていく。
赤と白が入り混じった鋭角的なデザインの装甲。
それはかつてない力を真司にもたらす。
無双龍の化身が、今再び顕現したのだ。
仮面ライダー龍騎 正義武装。
「連続して変身ができたとはな。もっとも、満身創痍の人間が仮面ライダーに変身したところで……!!」
意表を衝かれ、シャドームーンの言葉が途切れる。
龍騎はそれほどの速さで、シャドームーンとの距離を詰めて翠星石との間に割って入る。
そしてその勢いで顔面を殴り付けられたシャドームーン。
シャドームーンは頭部から崩れるように、後ろへ踏鞴を踏んだ。
(なんだ今の速さと力は!?)
「…………し、真司と……劉鳳…………ですか?」
翠星石は龍騎へ向けて、二人の名前を呼び掛ける。
殺し合いが始まって以来、自分を見守り続けてくれていた二人を。
龍騎は翠星石の方へ振り向いて答える。
二人の声で。
「約束しただろう翠星石」
『後は安心してそこで見ていろ』
「『――――俺たちがシャドームーンを倒す所を!!」』
未だシャドームーンは健在であるにも関わらず、二人の声を聞いて奇妙なほど安堵を覚える翠星石。
緊張の糸が切れた翠星石は、意識を手放した。
龍騎はシャドームーンへ向き直る。
その時にはシャドームーンの左拳が迫っていた。
龍騎もまた、左拳を打ち出す。
空中で正面衝突する左拳と左拳。
甲高い金属音が鳴り響く中、後ろへ弾かれたのは、
シャドームーンの拳だった。
シャドームーンはすかさず反動を使って、右の拳を打ち出す。
今度はエルボートリガーの超振動も加算した威力。
しかしこれも龍騎の右拳と正面衝突。
エルボートリガーの威力ごと後ろへ弾かれる、シャドームーンの右拳。
「馬鹿な!! 人間の変身した仮面ライダーが――――」
シャドームーンの体勢が整わない内に、龍騎の左拳が腹部にめり込んだ。
シャドームーンの金属装甲が悲鳴を上げる。
「――――世紀王を上回ったと言うのか!!?」
龍騎はその場で跳躍し、体重の乗せた蹴りをシャドームーンの顔面へ叩き込む。
シャドームーンの身体ごとが宙を舞う。
龍騎の、先ほどまでの消耗とダメージが嘘のような身体の軽さ。
以前の龍騎――特にサバイブは――変身者の体力を消耗して、その能力を発揮していた。
しかし正義武装となった今は、変身者である真司に消耗がほとんど無い。
それどころか装着している龍騎が、ダメージを受けた真司を支えているような感覚が在った。
今までの仮面ライダーには無い進化を、龍騎は迎えていた。
「……しないな」
『ああ、しない』
「『負ける気がしない!」』
「図に乗るな!」
空中で体勢を立て直していたシャドームーンは両足で難無く着地する。
男なら支援を尽くして強くなれ
そしてシャドーチャージャーのエネルギーをチャージ。
更に指先にエネルギーを送り込む。
それがシャドービームの発射態勢であることは、既に把握している。
龍騎の下腹部に在るカードデッキから光の粒子が左腕のドラグバイザーへ向かって行く。
光の粒子はドラグバイザー内でカードを形作る。
新しい龍騎はその手を使わずとも、ベントインが可能となっていた。
『AD VENT』
突如、絶影の身体に皹が入り、そこから光が漏れる。
皹は絶影の全身を覆い、やがて表面部分が内側から崩れ飛んだ。
光と共に中から現出したのは龍。にして絶影。
赤い龍が絶影のごとき装甲を身に付けている。
絶影と融合した新たなるドラグレッダーの姿である。
『剛なる右拳・伏龍!!』
ドラグレッダーから伸びる触手。先には拳が付いている。
その触手から発生する閃光。そして大気を切り裂く衝撃波(インパルス)。
遅れて放たれるシャドービーム。
シャドービームは、シャドームーンの指先同様、照準が龍騎から外れていた。
龍騎を逸れたシャドービームは、あらぬ方向へ消えて行く。
ドラグレッダーが打ち出した拳に、シャドームーンの手が弾かれていた。
『剛なる左拳・臥龍!!』
ドラグレッダーの拳は一対。もう一つ存在する。
続けてもう一つの拳が銃弾のごとき速度で打ち出される。シャドームーンの頭部へ向けて。
シャドームーンは横っ飛びにそれを回避。
音速を超える拳も、マイティアイならば捕捉は可能。
体勢を立て直した時には、シャドービームのチャージを完了させていた。
再び放たれるシャドービーム。
照準はドラグレッダー。
今度の衝撃波(インパルス)は、ドラグレッダーから発せられた。
大気が渦を巻き、シャドービームがその向こうに消えて行く。
そして耳を劈く咆哮。
咆哮の元は上空。
シャドームーンの直上にドラグレッダーが居た。
ドラグレッダーそれ自体もまた、絶影のごとき高速運動が可能となっていた。
『油断をするな! 容赦もするな! 徹底的にやれ!!』
「よっしゃー!!!」
ドラグレッダーは空中でその巨体をくねらせながら、口中から膨大な量の火炎を放つ。
なぜベストを尽くさないのか!
セルシウス度にして7000°Cの熱量はドラグランザーのそれと変わらない。
しかしドラグランザーのそれはあくまで単発の火炎弾。
今のドラグレッダーは7000°Cの超高熱を維持した火炎放射。
シャドームーンの直上から放たれたそれは、一瞬にしてその姿を炎で覆い隠した。
絶え間なく放出される凄まじい量の炎。
先刻のシャドービームにも劣らぬ濁流にして暴流。
それは大量の火の粉を周囲に撒き散らす。
「おぉっ、すっげー威力だ」
『加減はしろ!! 翠星石も居るんだぞ!』
ドラグレッダーの放つ火炎放射の威力は、龍騎にとってすら予想以上だった。
周囲にもたらす被害もまた想像以上。
地面のアスファルトが溶け、近くの街路樹が炎上する。
龍騎は慌てて仲間の様子を伺う。
ヴァンとC.C.の倒れている地点は遠いので、火炎放射の被害を受けることは無い。
翠星石が倒れている地点は炎上する街路樹より更に近い。
今まさに火の粉が飛んで行く地点である。
龍騎もドラグレッダーも間に合わない地点。
7000°Cの火の粉が翠星石を焼く。
寸前に人影が走り去る。
「上田!!! ……さん」
翠星石を抱えて走り抜けていったのは上田。
元々、上田は通信講座で空手を修めるほどの体力を有している。
ダメージを受けた身体でも、翠星石を抱えて走ることは可能なのだ。
翠星石の無事を確認し終えた上田は、得意気な顔を龍騎に向けた。
「実は私はねぇ、以前ウサイン・ボルトに陸上を教えていたことがあるんだよ。スリット美香子と言うインチキ超能力者と対決した時も……熱っ!!!」
「危ないから上田さんは翠星石を連れて、どこかに隠れていて下さい!!」
「し、仕方ないな。私一人ならYOUと協力してシャドームーンと戦っても良いんだが、翠星石を危険に晒す訳にはいかないからな」
「早く!!」
飛び散る火の粉から逃れるため、上田は再び走り出した。
龍騎とシャドームーンの戦っていた場所から、ちょうど陰になる所に建っていた小さな雑居ビル。
上田はその一階に身を隠していた。
元来臆病なこの男のこと、安全性の確保に余念が無い。
「ここなら、とりあえず大丈夫だろう…………翠星石が」
上田は翠星石を降ろし、床に横たえる。
無事を確認した。と言っても、あくまでそれは命に別状が無いことを確認しただけに過ぎない。
上田は医者では無いし、ましてや相手は人形。
異常があっても、上田には察知しようが無い。
「…………うぅ」
翠星石は意識が有るのか無いのかも定かにならない様子で呻いている。
そしてその手を伸ばし始めた。
最初はただうなされているだけと、気にも止めなかった上田だが、
やがて何かを求めての行動だと感付く。
翠星石は必死に上田の方へ手を伸ばす。
「……どうした? 何か欲しいのか? 握手か? サインか? それとも私と一緒に写真が撮りたいのか!?」
自分に何かを求められていると矢継ぎ早に質問する上田。
しかし翠星石の手は、上田自身ではなくその上着のポケットに伸びていた。
淡い光が漏れるポケットに。
「これは、石が自分で発光している……君はこれが欲しいのか?」
淡い光はポケットの中に入れていた石から放たれていた。
取り出したそれに翠星石が触れると、若干表情が和らいぐ。
「これはLさんからの餞別だが……女の子である君が持った方が似合うかもしれないな」
僅かに名残惜しそうにした上田だったが、やがて観念して石を翠星石に手渡す。
それを抱きしめるようにうずくまった翠星石は、静かな寝息を上げ始めた。
翠星石の様子を見て安心した上田は、龍騎とシャドームーンの様子を伺いに向かった。
(…………あったけーですぅ)
残された翠星石は、混濁する意識の中で愛おしそうに石を抱き続ける。
石から伝わるぬ温もりは、陽光のような安堵感を翠星石に与えている。
そしてその温もりが、少しづつだが翠星石の体内に取り込まれて行く。
まるでローザミスティカのごとく。
(…………力が……力が溢れてくるです…………)
石を取り込み、自身の内側に経験したことも無いような力が漲る翠星石。
翠星石の中に在った四個のローザミスティカも、その力に呼応する。
まるで共鳴するように呼応する五つの輝石。
世界を異として出会うはずの無かった二種の賢者の石がここに邂逅する。
◇
『SWORD VENT』
電子音声と共に龍騎の右手に光の粒子が流れ込む。
原子構造から形成されるは白刃の長剣。
対するシャドームーンも紅刃を構える。
シャドームーンの白銀の装甲には無数の傷が付いており、中から生々しい焼け跡まで見える。
戦いは終始、能力で勝る龍騎の優勢で進んでいた。
それでも、龍騎には次第に焦りが募っていた。
どれほどのダメージを与えても、未だシャドームーンの動きに衰えが見えない。
そのため決定打を打てないのだ。
凄まじいまでの耐久力と持久力。
対する今の龍騎は、自分にも変身時間に制限が有るのかどうかすら定かでは無い。
そして変身が解ければ、今度こそ最後だ。
負ける気がしないはずの戦いに、再び暗雲が立ち込めていた。
亜音速で一足飛びに間合いを詰める龍騎。
そして超音速の白刃を振り下ろす。
しかしシャドームーンの紅刃に受け止められた。
いかに超音速でも龍騎の戦闘は既に何度もマイティアイで解析している。
その太刀筋は予測可能。
しかし次の変化には、予測が追いついても身体は追いつかない。
跳ね上げる白刃は一閃の元、シルバーガードを通り抜ける。
その威力を受けて仰け反るシャドームーン。
一拍を置いて、シルバーガードが火花を上げて切り裂かれた。
『まだだ!! もっと深く切り裂け!!!』
龍騎は更に白刃を振り下ろす。
そして停止する。
白人を振る龍騎の身体ごと、その運動が停止した。
シャドームーンの手から伸びるシャドービーム。
無数に枝分かれするそれが、龍騎の全身を捕捉。
その動きを止めていた。
シャドームーンの構える紅刃に対し、防御も回避も術が無い。
『STRIKE VENT』
しかし今の龍騎は両手を使わなくとも、アドベントカードを使用可能。
ベントインと共、龍騎の右腕にドラグクローが装着される。
同時に右腕を捕捉していたシャドービームからも解き放たれた。
龍騎は自由になった右腕を前方に繰り出す。
そして龍騎の背後に現出したドラグレッダーも、その動きに沿って飛翔。
口中から火炎放射を放つ。
仮面ライダー龍騎 正義武装・ストライクベント<真・昇竜突破>
再び火炎にその全身が呑み込まれるシャドームーン。
その火炎から光を纏った両足が飛び出した。
両足を揃えて放つその技こそ、シャドームーン最大最強の攻撃・シャドーキック。
キングストーンのエネルギーに二つのレッグトリガーに拠る超振動を加えた威力は、
火炎の濁流を突き破り、ドラグレッダーを襲う。
シャドーキックはドラグレッダーの肩にあたる装甲を破壊。
一瞬にして装甲を破壊されたドラグレッダーは、
ちょうどオフセット衝突を起こした乗用車のごとく、錐揉み回転を起こして横転。
意識を失うドラグレッダー。しかし命はある。
シャドーキックを受けて命があったのは、その打点がずれていたため。
シャドーキックの照準は別に在る。
火炎放射もドラグレッダーも突き抜け、シャドーキックは龍騎本体に襲い掛かった。
今度こそ真っ向からぶつかり合う、ドラグクローとシャドーキック。
耳を劈くような破裂音が轟く。
シャドーキックの直撃を受けたドラグクローは粉々に砕け散る。
そしてシャドーキックの威力は龍騎自身にも到達。
踏ん張ることもできず背中からアスファルトを滑る龍騎。
衝撃と痛みが全身を駆け巡る。
意識を保つのにも、苦痛が伴う。
それでも全身から湧き出る力が、再び龍騎を立ち上がらせた。
まるで劉鳳に支えられているかのように。
しかし龍騎には、僅かにも安堵に浸る時間は与えられない。
シャドームーンが指先を向けている。
『避けろ!!』
シャドービームが掠めながら、横に転がる龍騎。
シャドービームの被弾は回避できた。
はずの龍騎が、呻くような声を上げて右手を押さえる。
「フッ、なるほど。変身はしても、所詮は人間と言うことか」
今度はシャドームーンが一足飛びに龍騎との間合いを詰めて来る。
それを見据えながら反応が遅れる龍騎。
サタンサーベルが翻り、幾筋も紅い閃きが走る。
それらを紙一重で避けていく龍騎。
今の龍騎は動体視力に反応速度まで強化されている。
しかし龍騎は回避に専念。と言うより回避することがやっとと言った状態だ。
まるで衰えを見せないシャドームーンの攻勢に押される龍騎。
背中がぶつかる。
ぶつかったのは民家の壁。
龍騎は気づかぬ内に地理的に追い詰められていた。
シャドームーンが斜めからサタンサーベルを切り下ろす。
龍騎が遅れて左腕に在る手甲、ドラグバイザーを打ち出した。
しかしサタンサーベルは曲線軌道を描き、ドラグバイザーは直線軌道を取る。
後れを取ることなく、ドラグバイザーがサタンサーベルの鍔を受け止めた。
即座に左脚で回し蹴りを放つシャドームーン。
「ぐわああああぁぁっ!!!」
龍騎の苦悶の叫びが木霊する。
蹴りを右腕に受けた龍騎は、アスファルトを滑っていった。
それでも荒い息を吐き、右腕を押さえながら立ち上がる。
命の限りに戦うだけの覚悟は有る。
しかし覚悟で、痛みその物を打ち消すことができる訳ではない。
そして折れた骨も。
「やはり右腕を骨折しているな」
どこまでも冷徹に響くシャドームーンの声。
吐息にも苦悶の色が混じる龍騎。
龍騎の進化はシャドームーンをも上回る物だった。
しかし真司自身はどこまでも生身の人間なのだ。
自らに残った最後の力を振り絞る龍騎。
傲然と見下ろすのは、その心身までも世紀王と化したシャドームーン。
それでも立ち向かうことができるのは、今の龍騎に二人の力と意思が込められているからだ。
『まだ戦えるな、真司』
「……ああ。まだ戦えるぜ、劉鳳」
『悪は処断しなくてはならない』
「みんなを、守らないとな」
『「そう思うだろう!? お前も!!!』」
命を搾り出すような雄叫びを上げる龍騎。
命の温度すら感じさせぬ佇まいで屹立するシャドームーン。
同時に地を蹴る龍騎とシャドームーン。
交差する龍騎の拳足とシャドームーンのサタンサーベル。
龍騎の蹴りが、シャドームーンのシルバーガードを抉る。
怯むことなく攻め立てるシャドームーン。
シャドームーンのサタンサーベルが、龍騎の胸の装甲を切り裂く。
臆することなく攻め立てる龍騎。
痛みも恐れも超え、傷付き消耗しながらも、幾度となく続く攻防。
変化は何の前触れもなく訪れた。
シャドームーンがシャドーチャージャーから直接シャドービームを放つ。
もっともその攻撃は龍騎の予想範囲内。
シャドーチャージャーから光が漏れた時点で、龍騎は運動能力の優位を駆使して、
シャドームーンの正面から回避して側面に回りこんでいた。
しかしシャドービームの標的は、龍騎ではない。
シャドービームは地面に龍騎が立っていた地面に着弾。
キングストーンから生成したエネルギーが地面に炸裂して、爆発を起こす。
空気が全方位へ急激に膨張して衝撃波と化す。
アスファルトが一瞬にして原形も留めず破壊。破片が炸裂弾と化して周囲に撒き散らされた。
龍騎の全身に衝撃波とアスファルトが叩きつけられる。
衝撃波によってシャドームーンの身体が浮き上がる。
(……違う! シャドームーンは自分で飛んでいるんだ!!)
空中で旋回して龍騎の頭上まで飛び上がるシャドームーン。
その挙動からシャドームーンは衝撃波を受ける前に跳躍していると悟った。
しかしそれを悟った時には、既に龍騎の体勢は衝撃波とアスファルトによって崩れていた。
反応が間に合わない。
レッグトリガーの超振動が込められたシャドームーンの蹴りが、龍騎の頭部に直撃する。
揺れる龍騎の頭部。
酩酊する視界。
龍騎は自分の状態も判らない蒙昧状態に陥った。
膝から崩れ両手を地面につくこともできず倒れこむ龍騎を見下ろすシャドームーン。
先ほどの蹴りはキングストーンのエネルギーをチャージすることが間に合わなかったが、
それでも龍騎に充分なダメージを与えることができた。
そしてキングストーンのエネルギーのチャージが完了する。
今の龍騎ならば確実に殺すことができるエネルギーが。
『立て、真司!!!』
劉鳳の叱咤が飛ぶが、龍騎は立ち上がることができない。
見下ろすシャドームーンはサタンサーベルを振り上げる。
ラプラスを殺した時のようにエネルギーをサタンサーベルに送り込まれたのだ。
世紀王に歯向かった愚者を処断するために。
サタンサーベルの紅い刀身にキングストーンの光が宿る。
閃光が走った。
振り返るシャドームーン。
そこにはドラグレッダーが居た。
ドラグレッダーの肩の装甲から伸びる触手。
それを閃光のごとく飛ばし、サタンサーベルを握るシャドームーンの腕に巻き付いていた。
ドラグレッダーは絶影と融合を果たした。
それは劉鳳のアルターとなったことと同義である。
アルターなのだから、それは劉鳳の意思に拠っても動くことが可能。
ドラグレッダーはもう一本の触手も伸ばす。
シャドームーンの両腕、両脚、胴体と全身のあらゆる部位を巻き込んで拘束していった。
『今だ真司!! 立て!!!』
「…………う、うぅ……」
『お前にはまだ残っているはずだ!! 切り札が!!!』
「……う、うおおおおおおおおおおおお!!!」
劉鳳の叱咤が龍騎の意識に届く。
そして龍騎はアドベントカードをベントインした。
最強にして、おそらく最後の切り札を。
『FINAL VENT』
龍騎の背中から双翼のごとき炎が上がる。
炎に押された龍騎は天高く舞い上がった。
そして龍騎に向かい周囲の道路、建物を問わずあらゆる雑物が光の粒子に還元されて集まっていく。
光の粒子は超高密度の紅焔と化し、龍騎の周囲に旋回。
紅焔は、龍騎の足先に収束される流れを形作っていく。
そして双翼のごとき炎を背後に噴射。
伸ばした足先から目標へ向けて突貫して行く。
それこそ仮面ライダー龍騎が、そしてかの仮面ライダーブラックが、
最も多くの敵を打倒した必殺技・ライダーキック。
『ドラゴン!!!』
「ライダー!!!」
『「キイイイイイイイイイイイイイイィィィィィィィッッック!!!!!!』」
仮面ライダー龍騎 正義武装・ファイナルベント<真・ドラゴンライダーキック>
ライダーキックの目標はシャドームーン。
シャドームーンは全身を余す所無く触手によって拘束されている。
ライダーキックから逃れる術は無い。
「世紀王を……舐めるな!」
シャドームーンに残った右肘のエルボートリガー。
そこから超振動を発生させる。
超振動は右腕を覆っていた触手を瞬時に破砕。
自由を取り戻す右腕。
そこにチャージしていたキングストーンのエネルギーを送り込む。
キングストーンのエネルギーによって翠色の輝きを放つ右拳を打ち出した。
キングストーンのエネルギーとエルボートリガーの超振動の威力を加えた拳撃・シャドーパンチ。
目標は仮面ライダー龍騎。
仮面ライダー龍騎 正義武装の最大出力とキングストーンのエネルギーが衝突。
した瞬間、光が世界を覆う。
衝突に拠って発生した光が天を、地を、掛け値なく景色の全てを埋め尽くしたのだ。
遅れて発生する轟音。
どころではなく、大気全体が止め処なく震える。
世界の終末か、開闢の光景。
遠巻きに戦いを眺めていたヴァンも、C.C.も、上田も揃って、
そんな突飛も無い連想をする。
余りにも異常な状況だった。
それでも自分たちに直接の被害が来ないことには、すぐに気付く。
問題はこの状況の発生源に居たシャドームーンと龍騎である。
大気は震撼することを止まない。
それは事態が収束していないことを物語っていた。
ヴァンとC.C.と上田は開けない光の中で、ただ事態の収束を待つ。
「『「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」』」
異常の発生点。
ライダーキックとシャドーパンチの衝突点に、
大気の震えを越える、三つの雄叫びが木霊する。
龍騎と劉鳳、そしてシャドームーンまでもが咆哮を上げる。
三つの気迫に押されながら、ライダーキックとシャドーパンチは拮抗していた。
s.CRY.d
支援
支援
自身の膨大なエネルギーが、そのまま反動となって二人に返って行く。
反動が衝撃となって、龍騎の全身を絶え間なく襲う。
「うおおおおおおっ!!!!」
耐え難い苦痛が叫びとなって龍騎の口から漏れる。
それでも揺らぎそうな身体を周囲の炎と装甲が支える。
劉鳳の力が支えていた。
その龍騎の装甲も、軋みを上げ続ける。
「!!!?」
音として存在した軋みは、やがて実体としての傷となって現れた。
そして小さな傷は亀裂として広がり始めた。
如何に仮面ライダーの装甲でも、実体としての金属物質であることに変わりは無い。
一度傷を負えば、この衝撃にはそう長くは耐えられない。
『ダメージは俺が全て引き受ける。だからお前は防御の心配をするな!』
「…………劉鳳、お前だってこのままじゃ……」
『敵を倒すことだけを考えろ!! 後少しで、奴を貫ける!!!』
定まらない視界の中、眼を凝らしてシャドームーンの様子を見る。
白銀の装甲に覆われた世紀王の姿を。
その装甲にも、亀裂が入っていた。
世界を変貌させるような異常の只中にあっても、
シャドームーンはあくまでも世紀王として、絶対の闘志を以って臨む。
シルバーガードが軋みを上げて亀裂が入ろうと揺るがない。
世紀王は人工的に改造された筋肉と骨格、そして王者の輝石・キングストーンが有る。
対する仮面ライダーは外部装甲を破壊すれば、中身はただの人間。
ゴルゴムの技術の粋を集めて改造され、数万年以上を生きることができる世紀王とは歴然とした差異が存在する。
シャドーパンチは傷を負いながらも、確実にライダーキックを押し始めた。
龍騎の亀裂は徐々に、しかし確実に広がって行く。
足先だけだった物が脚部を上っていき、そして下腹部に到達する。
仮面ライダーの根幹たるカードデッキへと。
「デッキが!!!」
『気を取られるな!!』
ミラーモンスターとの契約から成る仮面ライダーは、カードデッキが破壊されれば変身が不可能となる。
そしてそれはドラグレッダーも、そして劉鳳の終わりも意味する。
しかし劉鳳の声に微塵の惑いも存在しない。
『翠星石を守るのなら! 誰も死なせたくないのなら!! それがお前の正義なら!!!
最後の最後まで貫き通せ!!!! 背負った命を無駄な物にしたくないのなら、お前の信念を貫き通せ!!!!』
遂に亀裂がカードデッキを侵す。
表面を覆う金属の一部が欠けて落ちる。
そしてアドベントカードの一枚が、震撼する大気に呑まれ飛び去って行った。
真司は悟る。
ここに来ては、もう龍騎のカードデッキは助からない。
それは劉鳳も判っているのだろう。
それでも劉鳳は真司を激励する。
自らの最後を知りながら。
ならばその意思から、逃げるわけには行かない。
「……劉鳳、貫くのは俺の信念じゃない…………俺とお前の信念だ!!!」
『ならば行くぞ!! 真司!!!』
「ああ、行くぜ劉鳳!!!」
『「貫けええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!』」
龍騎の装甲が音を立てて砕けていく。
しかし、それをマイティアイで見据えるシャドームーンを驚愕が襲う。
崩れる装甲と反比例するように、龍騎が纏う紅焔が勢いを増して行った。
龍騎が纏う紅焔はアルター能力によって形成された物。
そのアルターはドラグレッダーと融合を果たした劉鳳の魂が持つ能力。
そしてカードデッキで変身する仮面ライダーとは、契約者に契約したモンスターの力が付加されることによって成立する。
云わば契約者とミラーモンスターが、半ば融合を果たしている。それが仮面ライダーの能力の所以。
今、劉鳳と真司の魂が完全に重なったことにより、
その魂の力も二人分の物となった。
二つの魂が生み出す紅蓮の炎を纏った龍騎のライダーキック。
その威力はキングストーンのエネルギーを乗り越える。
シャドームーンの拳が拉げるように破砕。
右腕を覆うシルバーガードが砕け散っていく。
更に露出した人工筋肉が弾け飛び、人工骨格が粉砕する。
そしてライダーキックはシャドームーンの胴体に到達。
シャドームーンの胴体装甲が遂に粉砕して、そして内部の人工筋肉が紅蓮の炎に焼かれる。
龍騎のライダーキックはシャドーパンチにも、シャドームーンの耐久力にも遂に打ち勝った。
常に冷徹な威厳に満ちていたシャドームーンの、断末魔のごとき叫びが上がる。
それは世紀王の敗北を意味していた。
紅蓮の炎に巻かれながら、魔王は姿は消えて行った。
(勝ったな……)
『よくやったな真司。お前と最後に戦えたことを誇りに思う』
最早しゃべる力も残っていない真司。
龍騎の装甲は粉々に砕け散った。
そしてカードデッキも。
劉鳳も、空中に投げ出された真司も、もう助からないだろう。
全てを出し切って、そして劉鳳と共に戦いシャドームーンに打ち勝った。
真司は満足げな笑みを浮かべる。
『さらばだ真司。だが翠星石には、まだお前が必要だ』
「…………劉鳳?」
『これをお前の最後の戦いにするわけにはいかない』
劉鳳の声が消え入るように小さくなっていく。
そして光の粒子が真司を包み込んだ。
「…………どうなったんだ?」
誰に言うでもなく、ヴァンが呟く。
光が晴れ、大気の震えが収まったが、
辺り一面に粉塵が舞い散り、視界を塞いでいる。
特に龍騎とシャドームーンが居た地点が酷かった。
異常な熱気は伝わってくるが、状況は全く把握できない。
「誰か倒れているな」
C.C.の視線の先には確かに、粉塵の向こうに倒れ付している人影が在った。
やがて粉塵が晴れて、横にはねるような茶髪が現れる。
城戸真司が姿を現したのだ。
ヴァンとC.C.は共にダメージの抜けない身体を引きずって、真司の所へ向かう。
真司の名を呼びながら、ヴァンはその身体を揺さぶる。
やがて真司はおもむろに眼を開けた。
「…………俺……生きて…………」
意識を取り戻した真司は、未だ曖昧な記憶を手繰る。
劉鳳の最後の言葉。
そしてアルター能力が自分を救ったことを。
「そうか…………最後の最後まで、劉鳳に助けられたんだ…………」
真司は手に在ったカードデッキを見る。
傷だらけのカードデッキは、その瞬間崩れ落ちる。
もう龍騎に変身することはできない。
真司は心中でドラグレッダーと劉鳳に別れを告げる。
長きに渡り共に戦って来た契約者と、
同じ信念を共有した戦友に。
「シャドームーンはどうした?」
「……倒した」
C.C.の問いに端的に答える。
ヴァンはあからさまに安堵の表情を浮かべるが、C.C.の心境は複雑だった。
C.C.の問題は、まだ何一つ解決していないのだから。
それでもシャドームーンを倒せた達成感はある。
「……やられっぱなしで終わらなかった訳か」
「……ああ、俺たちが勝ったんだ…………」
「その通りだ。どんな強大な敵も、我々の勇気と団結の前には一たまりも無い。もっとも、あの程度の相手なら私一人で充分だったかな」
真司もヴァンもC.C.も上田も強大な敵を倒した感慨に浸る。
特に己の尽力でシャドームーンを打ち破ったと言う思いの強い上田は、感慨も一入だ。
しかし感慨に浸る上田の頭が三節棍で殴られる。
上田は自分を殴ったC.C.に食って掛かる。
「何をする!!?」
「一人で逃げ出そうとしただけの奴が、突然現れて偉そうに仕切るな。それに翠星石はどうした?」
「突然ではない! さっきから出るタイミングを見計らっていたんだ! 翠星石は向こうのビルに休ませている。
それに一人で逃げ出そうとした“だけ”とはなんだ!! 如雨露を拾ったのも、翠星石を運んだのも私なんだぞ!!」
「如雨露を拾ったのは私だ」
「そんな小さな功績を、一々自慢するんじゃない!!」
「それはこっちの台詞だ。でかいだけの童て……」
「さあ!!! 私の功績を称えるのはこの位にして、早く翠星石を迎えに行こう! あんまり一人にしておく訳にもいかないからな!!」
C.C.と口論をしていた上田は、突然出発を促し始める。
まるで何か重大な危機に迫られたような、焦りようだった。
高笑いからも上田の焦りが伝わって来る。
その上田の高笑いが、突然止まる。
そして直立した体勢のまま、横倒しになる上田。
上田を襲った突然の異変に、真司もヴァンもC.C.ですら当惑する。
状況を振り返ると、どうやら上田はC.C.の背後を見て気絶したようだった。
カシャ
――――足音が聞こえる
「……見事だったぞ。本当に見事だった…………」
カシャ
――――恐怖をもたらす足音が
「この世紀王が押し負けるとは……受けに回っていたら、死んでいたな」
カシャ
――――魔王の足音が
「…………しかし最後に生き残るのは、世界を制するのはゴルゴムの王なのだ」
カシャ
真司、ヴァン、C.C.の三人が振り返った先にそれは居た。
右腕から肩に掛けるまで欠損し、
全身のいたる所で装甲が剥がれ落ちて筋肉が露出し、
その身を焼く炎がまだいたる所から上がり、
それでも尚、サタンサーベルと揺ぎ無き王者の威風を携えて、
シャドームーンが粉塵より姿を現した。
龍騎のライダーキックはシャドーパンチにも、シャドームーンの耐久力にも確かに打ち勝った。
しかしシャドーパンチが龍騎のライダーキックをある程度相殺していたのも事実。
そしてシャドームーンはその身体の全てを改造された世紀王。
同じ世紀王との戦いや数万年以上の生を想定され、ゴルゴムの技術の粋を集めて改造されたシャドームーンは、
人間とは生存条件が、生命力が根本的に違うのだ。
龍騎のライダーキックは、シャドーパンチもシャドームーンの耐久力も貫いて尚、シャドームーンの命には届かなかった。
「…………そん……な」
劉鳳とドラグレッダーを犠牲にしながら、シャドームーンを仕留めきることはできなかった。
憤りに駆られながら、立ち上がろうとする真司。
しかし、今度こそ本当に動く力は残っていない。
真司は忸怩たる思いで、シャドームーンに向かって構えるヴァンとC.C.を見守った。
薄刃乃太刀の重さに震える手で構えを取るヴァン。
ダメージは深刻。ナイトへの変身は不可能。
シャドームーンも深手を負っているが、不利は否めないだろう。
「…………ミラーモンスター……」
真司が消え入りそうな声で助言をする。
ヴァンはそれに習い、カードデッキから引き抜いたアドベントカードを薄刃に映す。
蝙蝠型のミラーモンスター・ダークウイングが現出。
闇の双翼を広げ、ダークウイングが上方から滑空するようにシャドームーンへ襲い掛かる。
更に薄刃を地を這うように奔らせて、シャドームーンへ襲い掛かる。
シャドームーンが光に呑み込まれる。
光はダークウイングと薄刃も呑み込んだ。
キングストーンの光が。
ダークウイングの85キログラムの質量が、呆気なく吹き飛ばされる。
薄刃もまた先端が融解しながら吹き飛んだ。
シャドービームの脅威は未だ衰えていない。
その脅威はヴァンにまで届く。
ヴァンが衝撃波に眼を奪われた一瞬の内に、シャドームーンは姿を消していた。
しかし即座にシャドームーンの接近を察知。
シャドームーンの胴を目掛け薄刃を、まるで硬刃のごとく横薙ぎに振るう。
シャドームーンの片手で操るサタンサーベルに容易く受け止められた。
その太刀合わせだけでヴァンは、シャドームーンのダメージが深いこと、
そして、それでも絶対的な力量差が存在することを悟る。
シャドームーンに体重ごと弾かれるヴァン。
無防備になったヴァンの腹に、シャドームーンの蹴りが入る。
鳩尾に入ったシャドームーンの足先から、ヴァンの全身に衝撃が広がる。
肋骨が粉砕して、内臓から出血しながら、
ヴァンは地面を転がっていった。
口中から濁った血を吐き出すヴァン。
手足が重過ぎて、動かすことも叶わない。
自分の身体を含め、ヴァンは全ての武器を失った。
見上げるヴァンと見下ろすシャドームーン。
その間に翠の髪をたなびかせて、C.C.が割り込んだ。
「私の用をさっさと済ませろ」
C.C.には当然、戦う意思など無い。
勝算が無いことなど判り切っているし、元より生き残るつもりなど無いのだから。
だから、ここに来たら早くシャドームーンに殺されたかった。
ヴァンたちが殺される様など見せ付けられたくは無かった。
しかしシャドームーンはC.C.に手を掛けようとはしない。
C.C.の姿に感じていた違和感。
その正体に気付いたからだ。
「……首輪はどうした?」
「……何?」
「何故、貴様には首輪が嵌っていない!?」
C.C.の艶かしい首には嵌っているべき金属の輪が存在しなかった。
シャドームーンをはじめ、この地に存在する全ての者が殺し合いを強制させられている理由。
それは爆弾が仕込まれた首輪に他ならない。
支援
支援
従って例外無く全ての参加者が首輪をしているはずなのだ。
シャドームーンとて例外では無い。
そうでなければ、世紀王が直々に人間を殺して回るような真似をするはずが無いのだ。
しかし目前のC.C.は世紀王をすら差し置いて、その例外と成り得ている。
シャドームーンはC.C.の襟首を掴んで、乱暴に引き寄せた。
「貴様、首輪をどうやって外した!?」
C.C.は、自分を問い詰めるシャドームーンを見て薄く笑った。
自分の生殺与奪の権を握っているはずのシャドームーンが慌てた様子が、純粋に可笑しかった。
「……なんだ……世紀王だのご大層に名乗っていた癖に、そんなことも知らないのか?」
「やはり“外した”のだな!? 外す方法があるのだな!」
シャドームーンの推測通り、C.C.は嵌っていた首輪を解除したのだ。
世紀王ですら解除できない首輪を、である。
その回復力から、C.C.は普通の人間ではないのだろう。
しかしC.C.が如何なる存在であろうと関係無い。
ゴルゴムの王が他の存在に後れを取るなど、あってはならない。
「首輪を外す方法を言え。運が良ければ生き残れるかも知れんぞ」
シャドームーンの脅しを聞き、C.C.は笑みを浮かべる。
死にたい者を殺すと脅すシャドームーンが、ますます道化染みて見えたのだ。
「……フフッ、殺すと脅せば言うことを聞くとでも誰でも思ったのか。短絡的だな」
「…………面白い。ならば望み通りに殺してやる。よく見ておくといい。仲間がどんな殺され方をするのかな」
「!! お前……!」
一転、C.C.に動揺が生まれる。
シャドームーンは瞬時にして、C.C.の両足を軽く蹴る。
C.C.の両足から、折れた骨が飛び出した。
痛みに呻くC.C.の両腕をサタンサーベルの刀身が通り抜ける。
腱はおろか骨まで切断された。
抵抗する間も無く両手足を使えなくされたC.C.。
シャドームーンは痛みに呻くC.C.を、頭を掴んで引き摺る。
そしてヴァンの下へ連れて来られた。
シャドームーンに髪の毛を引っ張り上げられたC.C.は見上げるヴァンの視線と合う。
そのヴァンの眼に、サタンサーベルの切っ先が向けられた。
「楽には殺さん。まずは右目からだ」
シャドームーンは器用にもサタンサーベルの剣先でヴァンの眼球を突く。
このまま首輪の解除方法を教えなければヴァンが何をされるか、火を見るより明らかだ。
取り返しの付かない傷を負わせるつもりなのだ。
得難い苦痛を以って。
「どちらでも構わん、首輪の解除方法を言え」
シャドームーンの声は、何処までも冷たくC.C.とヴァンに圧し掛かる。
カシャン……カシャン……
首輪の解除方法をシャドームーンに教えることに、実はリスク等ほとんど存在しない。
シャドームーンはとっくに殺し合いに乗っているのだから。
しかしC.C.はこれ以上、シャドームーンに何かを奪われたくは無かった。
明確な理由など無い。
死を望む人間が、この期に及んでヴァンを犠牲にして下らない意地を張ろうとしている。
自分はつくづく魔女なのだと、C.C.は自嘲する。
「……首輪の外し方なら聞いたぞ」
しかし意外にもヴァン自身がシャドームーンに答える。
「覚えてないけどな…………ぐわあああああっ!!!」
サタンサーベルの先端が、ヴァンの眼球に突き刺さる。
水晶体が突き破られて、中から白い粘液が零れた。
反射的に瞼を閉じるが、眼球の中まで入り込んだ剣に阻まれて閉じることができない。
真紅の剣先はそこから捩れるように眼球の中を掻き回していく。
視覚器官である眼球は神経が張り巡らされている。
眼窩の中で眼球と神経が、逃げ場なく押し潰されていった。
耐え難い苦痛がヴァンの口から漏れる。
眼球が焼かれるような激烈な痛み。
血の混じった白い粘液が、ヴァンの眼窩から泡だって零れた。
眼窩の中をあれだけ傷付けられては、もうヴァンの右眼は医学的な処置でも治らないだろう。
それは特に医学的知識の無い、C.C.が見ても明らかだった。
殺し合いが始まって以来、自分を守っていたヴァンが、
耐え難い苦痛と共に取り返しの付かない傷を負わせられている。
しかしC.C.はそこから目を反らさない。
まるでそれが自分の罪過に対する罰であるかのように。
傍らに居るC.C.もそれほどの苦痛を感じていた。
「次は左目だ。よく考えるのだな。果たして仲間の光を永遠に奪ってまで、伏せておく価値が有る情報かを」
ヴァンの右目から抜いたサタンサーベルを、今度は左目に押し当てるシャドームーン。
両目を失えば、ヴァンは完全に失明する。
押し黙っていたC.C.は、徐に口を開いた。
「…………結局、全員を殺すつもりなのだろう? お前は」
無意味な意地を通す。
しかしその声に覇気は無い。
V.V.は得体の知れない怪物に変貌して、
ルルーシュは死に、
ヴァンはこれほどの惨劇に追いやられ、
そしてC.C.も望んでいた死を間も無く迎えるだろう。
これがC.C.の望みが叶った結果なのだ。
これがC.C.の選択と行動の結果なのだ。
あるいは魔女に相応しい結末と言えるかもしれない。
そう思うと何もかもを投げ出したかった。
「……フッ、女に感謝するんだな。そいつが首輪の解除方法を言わなかったお陰で、貴様は世紀王を相手に下らない意地を張り通せる。
それを精々誇るが良い。……永遠に明けない闇の中でな」
ヴァンを見下ろして、嘲るように語るシャドームーン。
支援
左目に掛かっていたサタンサーベルを強く押す。
サタンサーベルは刀身を横から衝撃波で押されたため、ヴァンの頭から逸れて行く。
衝撃の余波を受けて、憔悴していたヴァンは遂に意識を失って倒れた。
シャドームーンとC.C.は揃って衝撃波が飛んできた方向を見る。
そこには上下とも白い学生服に身を包んだ男が居た。
かつて人の身でありながら魔界を支配した魔神皇にして、
今、殺戮劇の主催者に人として反逆する魔人皇、
狭間偉出夫がそこに居たのだ。
【仮面ライダー龍騎&ドラグレッダー 破壊】
その独特のフォルムが見る者に愛嬌を感じさせるミニクーパー。
決して広いとは言えない車内に、四人の男女が詰め込まれていた。
運転席でハンドルを握っているのはジェレミア・ゴットバルト。
助手席で探知機を眺めているのは狭間偉出夫。
後部座席に並んで窓の外を眺めているのは北岡秀一と柊つかさ。
字義通り生きる世界から立場も性格も違う四人。
しかし今や目的を一つとして、同じ車で走っていた。
目的はローゼンメイデンの一体である翠星石。
翠星石は現在シャドームーンの脅威に晒されていると同時に、殺し合いを脱出する鍵となるかも知れない存在なのだ。
狭間たちの推測が正しければ、ローゼンメイデンが持つnのフィールドへの侵入能力こそ殺し合いを脱出する鍵となる。
従って一刻も早く救出に向かわなければならなかった。
「……そろそろ翠星石たちが近い。北岡、変身はできそうか?」
狭間に問われた北岡はゾルダのカードデッキを取り出して車の窓ガラスに映す。
しかし腰にVバックルは現出しない。
「…………無理だねぇ。この様子じゃ、変身にはまだ掛かりそうだ」
「間に合いそうにないか?」
「正確に時間を測ってるわけじゃないけど……多分、そうみたい」
肩を竦めて答える北岡自身は軽い調子だが、それを聞いた三人の様子は神妙だ。
北岡の変身する仮面ライダーゾルダの戦力は、おそらく狭間に次いで強大な物だ。
しかし北岡は先刻の戦闘でゾルダに変身している。
そのため、制限によりそれから一時間以内は変身ができないのだ。
タイミング的に見ても、目的地到着にゾルダの変身制限解除は間に合わない。
しかし前述の通り一刻も早く翠星石を救出しなければならない以上、変身制限解除を待つわけにも行かない。
即ちこのまま行けば、ゾルダ抜きでシャドームーンに立ち向かう形になる。
「……貴様自身の状態はどうなんだ?」
次に問うたのはジェレミア。
狭間は逆に問い返す。
「私がそんなに疲弊しているように見えるか?」
「貴様の魔法とやらも、無尽蔵に使える訳であるまい」
ジェレミアの言葉に狭間は目を細める。
ジェレミアは一流の戦士だ。
だから先刻見た戦いから、狭間が絶大な威力の魔法を多量に使えることは間違いないが、
それでも狭間の戦い振りから、無制限に使える物では無いことを見抜いていた。
「まだ余裕はある。……多少な」
精確に自分の状態を見抜かれて、狭間の返答も珍しく歯切れが悪い物となる。
狭間の持つ絶大な魔力は疑いようもない。
魔神アモンを使役し、神霊ズルワーンの魔力を収奪した魔界の支配者である狭間の魔力に並ぶ者は、
人魔併せて見渡しても数えるほどしかいないだろう。
それでも殺し合いの中ではその魔力にさえ制限が掛かっていたため、
普段の魔力量の半分にも満たない絶対量をしか持っていなかった。
そして仮面ライダーオーディンたちとの戦いの中で、
マハジオンガ、ブフーラ、ジオ、ザンダイン、ブフダイン、ディア、マハブフーラ、ブフ、アギラジャ、メディア、メギド、マハブフダイン、ジオ、カルムディ、ブフーラ、マハジオンガ、マハラギダイン、マハジオンガ、ザン、マハラギダイン、
これだけの魔法を使用していた。
更にランダマイザ、それも重ね掛けでジェレミアとゾルダを援護。
その上ディアラハンまでレナと鷹野に使っている。
制限下でこれだけの魔法を使用したのだ。狭間と言えどかなりの消耗は免れなった。
「オーディン倒しておいて、まだ余裕があるってだけでも大したもんだよ。
でも狭間は本調子じゃない。ゾルダも無い。これで本当にシャドームーン相手しに行くの?」
北岡の懸念はある意味当然の物と言えるだろう。
シャドームーンの戦力の高さは詳細名簿や動向を確認しただけでも、充分に推測出来る。
今のままシャドームーンとの戦闘に巻き込まれれば、下手をすれば自分たちまで全滅しかねない。
多少の時間を置けば、狭間の魔力もゾルダの変身も回復するのだ。
「翠星石が殺されてから後悔するよりマシだ」
「確かにな」
「……ま、おたくらならそう言うと思ったよ」
躊躇無く答える狭間とジェレミアに、北岡は溜め息交じりの揶揄を返す。
翠星石は正に今、シャドームーンとの戦いの只中。
次の瞬間に翠星石が殺されてもおかしくはない状況なのだ。
魔力や変身の回復を待つ猶予さえ無い。
それに狭間もジェレミアも、消耗を気に掛けて怖気づく性格ではないことを
北岡もいい加減、把握していた。
「この辺りで車を止めろ。車を隠して、ここからは歩いて様子を見ながら接近する。あくまで慎重にな」
探知機を見ていた狭間が指示を出した。
狭間の高圧的な口調に、北岡もジェレミアももうすっかり慣れていた。
別段、狭間が二人を下に見ていると言うことでは無く、単に狭間がそう言う口調の人間と言うこと。
それが判る程度には二人とも、狭間を理解し始めていた。
ちなみにつかさは、最初から特に気にもしていなかった。
戦いの場が近いことを認識し、車内の緊張感が高まる。
「……確認しておく。ここからは本当に危険だ。どれほど注意を払っても、命の保証は無い。
……それでも行くんだな?」
ジェレミアも北岡も、つかさまでもが一切の躊躇も逡巡も無く頷く。
覚悟を決めている、と言うのもあるのだろうが、
それ以上に自分は信頼されているのだと、狭間は感じ取った。
こんな土壇場でも尚、それに心地良さを感じ入る狭間だが、
今はそれどころでは無いと、すぐに気持ちを切り替える。
そして狭間もまた、覚悟を決める。
この場の四人は勿論、レナと約束した者達も含めて、
全員が殺し合いから生還できるよう、全霊を尽くす覚悟を。
手近な民家の駐車場に、周囲から目立たないようクーパーを駐車した後、四人は下車。
全員が降りたのを確認してから、狭間が三人に向かって魔法を唱えた。
「メディラマ」
同時に四人の怪我が治って行き、体力が回復していく。
メディラマは仲間全員を同時に回復させることができる魔法。
当然、相応の魔力を消費する。
「おいおい……良いのか?」
「使う暇もなく全滅するよりマシだろ?」
北岡に言われるまでもなく、狭間としてもメディラマを使ったのは慎重な選択だった。
シャドームーンとの交戦となれば、回復魔法を使う暇すらなく仲間が殺されるかもしれない。
ここからは、ますますギリギリの選択が要求される場面になる。
四人ともがそれを感じ取り、更に緊張感を高めてる。
「では行くぞ。私が先頭で、ジェレミアが殿だ」
四人は狭間の指示通りの体制で歩き出した。
覚悟が四人を戦いに誘う。
誰一人予想もしていなかった結末へ向けて――――
◇
衝撃魔法を使ってヴァンを助け出した狭間は、
北岡、つかさ、ジェレミアと並び立って周囲の状況を観察する。
元は市街地だったはずのその場は、正に惨状と化していた。
居並ぶ建築物は軒並み原形を留めぬほど破壊され、道路のアスファルトは溶けて変形していた。
どんな災禍が起こればこんな状態になるのか、推測も成り立たない状況。
そして欠損した右腕をはじめ、満身創痍のシャドームーンは、
同じく満身創痍のヴァンとC.C.へ、明らかに拷問を加えようとしていた。
最早、凄絶と言う言葉でも言い尽くせぬ異常な状況。
つかさなど、状況を見ただけで青ざめている。
視認できる参加者は五名。
ヴァン。
C.C.。
城戸真司。
上田次郎。
シャドームーン。
上田以外は生きているのもやっと、と言った状態に見える。
立っているのは、見た所最も負傷の酷いシャドームーンと言う、
実に奇妙な状況だった。
翠星石の姿は確認できないが、付近で生存していることは、
探知機を使って確認できる。
死者を出す前に、間に合うことができた。
狭間たち四人はそれを素直に安堵する。
.
しかしC.C.と真司は、不意の遭遇に当惑している様子だった。
空気を察知した北岡は、旧知の人物に声を掛けることにした。
同じ仮面ライダーとして時に対立して、時に共闘した、
奇妙な縁の有る男、城戸真司に。
「よっ。なんだかお前と会うのもさ、随分と久しぶりな感じだよね」
「北岡……さん」
「お互い無事……って訳でも無さそうだけど、まあ命があって何よりじゃないの」
北岡にとって真司は、最も付き合いの古いライダーである。
ある意味浅倉より縁のある相手だ。
もっともライダー同士ということで何度も敵対しているため、決して良好な仲だとは言えなかったが、
殺し合いを経た今の北岡には、旧知の真司に出会えたことが妙に嬉しかった。
「オレンジ、そう言えばお前も居たか」
今度はC.C.がジェレミアに呼び掛ける。
あえてジェレミアにとって屈辱に満ちた呼び名、オレンジと。
「C.C.、貴公も無事で何よりだ」
「……なるほど、私の知っているジェレミアでは無いようだな」
しかしジェレミアの応対は極めて落ち着いた物だった。
その様子を見てC.C.は、ジェレミアが自分の敵であった者とは違っていると確認する。
そしてC.C.と真司も、狭間たち四人が敵では無いことを明確に悟った。
元々、殺し合いに乗っていると疑わしかったのは狭間一人。
その狭間も、殺し合いに乗っていると考えられる根拠は水銀燈の殺されかけたと言う証言のみ。
証言自体、状況が曖昧な上に、当の水銀燈の信用度自体が低かった物だ。
四人が味方として救援に来たのは、C.C.たちにとって僥倖と言える。
しかし四人しか居ない、と言う状態がC.C.にある懸念を起こす。
「……竜宮レナはどうした?」
狭間と北岡とジェレミアとつかさが居るのなら、状況から推測して高い確率でレナと繋がりがあったはずだ。
C.C.はそれを踏まえてレナのことを直裁に問う。
「……竜宮レナは、亡くなった」
答えたのはジェレミア。
軍人らしく厳格で沈着な、しかし明瞭な答えだった。
しかし狭間とつかさは沈痛な面持ちをしている。
それを見れば、大よその成り行きは察することができた。
まだ年若いレナは死んだ。
そして長く生き過ぎた自分が、未だ死を望んでも手に入れることができない。
どうしようもなく重苦しく理不尽な思いがC.C.を襲う。
「……次期創世王に歯向かう愚者がまだこれだけ居たか」
しかしシャドームーンがただ一言発しただけで、場の空気が一変する。
旧知と再会した喜びも、非業の死に対する哀しみも全て無に帰す王の威圧。
支援
乗り遅れた!!
狭間たちがシャドームーンを見るのは始めてだ。
シャドームーンは右腕を失い、全身に傷と火傷を負っている。
深手を負っているのは明らか。
それにも関わらず絶対者としての威風に満ち満ちている。
その様を見るだけで狭間には判る。
シャドームーンは強い。
ただ戦力が高いと言う意味ではない。
どれほどの窮地に立たされても、シャドームーンはその揺ぎ無き威風で戦うだろう。
まして手負いの悪魔の危険性を、狭間はよく知っている。
「貴様がゴルゴムの世紀王・シャドームーンか。私は魔人皇・狭間偉出夫だ。お会いできて光栄、と言うべきだろうな」
それでも臆することなく狭間は並び立つ三人を両手で制し、シャドームーンへ向かって歩み出た。
「シャドームーンの相手は私に任せろ」
「おいおい、レナを説得したようにはいかないんじゃない?」
「だから違う手段で行く」
北岡は肩を竦め、
つかさは息を呑んで、
ジェレミアは薄く笑みを浮かべ、
各々やり方で、一人シャドームーンへ向かう狭間を見守る。
狭間偉出夫とシャドームーン。
二人の魔王が相対する。
「私をゴルゴムの世紀王と知っているか。もっとも、貴様らが畏れるべき真の支配者であることまでは知らないようだが」
「知っているさ。首輪で従属させられた走狗の分際で、その矜持ゆえに他の全てを敵に回した哀れで孤独な王。それが貴様だ」
翠星石を救出するために、この場へ車で移動するまでの間、
狭間の鋭敏な頭脳は様々なことに思考を巡らした。
その間にもっとも思案した事項と言えば、シャドームーンへの対処方法だろう。
シャドームーンに対して、どう対応すれば良いか?
『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページに記載されていた、プロフィールや動向から、
シャドームーンを分析して推測をする。
シャドームーンはどんな戦力を有しているか?
そもそもシャドームーンは何者で、何を目的に行動しているのか?
その内に気付いたのは、世紀王・シャドームーンと魔人皇・狭間偉出夫の類似性である。
魔神皇に似ていながら、魔神皇と決定的に違う存在。
それが狭間のシャドームーンに対する感想だ。
「人間ごときが図に乗るな!!」
シャドームーンの纏う空気が急激に膨張して叩き付けられた。
北岡もつかさもジェレミアも揃って、そんな錯覚を覚えるほどの威圧感。
常に冷徹な余裕を見せていたシャドームーンが、それほど激しい怒り見せる。
支援
しかし直接怒りを叩き付けられた狭間はまるで動じていない。
「教えてやる!! 貴様らがゴルゴムの王に捧げられた贄に等しい存在だと言うことを!」
シャドームーンが殺し合いのルールに従っているのは、主催者の裏に創世王が存在するからであり、
創世王が用意した首輪によって戒められているからだ。
そこがゴルゴムの手中でなければ、シャドームーンを束縛する物など何も無い。
「王の依命に縋れば、己だけは贄で無いつもりか……ますます似ているな。かつて魔神皇を名乗った、愚かな男に」
シャドームーンを挑発するような狭間の言葉。
しかし狭間の声は、むしろ自嘲の色を帯びていた。
「只人の、学生に過ぎない男だった。多少の才知があるのを鼻に掛けて、ゆえに学校で孤立した。
しかし男は自分の孤独を周囲の責任だと逆恨みした。そして自分の通う学校を魔界に堕とした……」
狭間の語り口から、語られる人物が狭間自身であることはすぐに周知された。
シャドームーンですら。
しかし狭間の話には誤りが有る。
狭間の孤立は決して彼自身のみの責任ではない。
もっとも、狭間の学校での事情を知る者はこの場に存在しない。
誰の訂正も入らないまま、狭間の話は続く。
「自身に関係の有る者も無い者も、学校に居る全ての者を巻き込んで、だ。
そこで多くの命が弄ばれた。…………私が、弄んだ」
様子見をしていたシャドームーンが不意を狙って地を蹴る。
狭間との距離が瞬時に零となった。
人の身では反応すら許されない速さで、間合いを詰め、
そしてサタンサーベルが振り下ろされる。
「……それで魔神皇の孤独が癒されたと思うか? 逆だ。
無為に人々を苦しめた後ろめたさをごまかすために、ますます自分の王としての威勢に縋る。
そして孤独な玉座で、来るはずも無い救いを待ち続ける。そうと認められぬままに、な。
学校を魔界に堕としたことで、自らもまた地獄に堕とした。本当に愚かな男だ……」
しかし狭間は、そのシャドームーンの動きに反応できた。
それどころかサタンサーベルを、自らの日本刀で受け止める。
ゴルゴムに伝わる伝説の魔剣・サタンサーベルは、本来日本刀で受け止められるはずが無い。
しかし狭間の持つ刀もまた伝説に謳われるほどの業物中の業物。
この世に切れぬ物無しとまで謳われた名刀・斬鉄剣。
「今の貴様と似たような物だ。王の矜持に拘って、他の全てを敵に回す。その先には、破滅しかないことを知らず。
貴様の愚かさは、魔神皇の愚かさだ。かつての魔神皇として、今の魔人皇として、その愚かさを許すわけにはいかん」
「あくまでゴルゴムの世紀王を人間の王と同列に扱いたいらしいな。ならば、それこそ誤りだと思い知ることだ!」
「そうして思い知らせてどうする? 首輪で脅された殺し合いに、主催の言いなりに殺戮して優勝できれば、自分の王威を証明できるとでも思っているのか?
それが愚かだと言うのだ。ザンダイン!」
狭間が両手で構える斬鉄剣とシャドームーンが片手で構えるサタンサーベルが鍔迫り合いとなる。
それでも、膂力ではシャドームーンの方が上回った。
押される狭間。
しかし狭間の詠唱と同時に、二人の間に在った大気が突如、
一塊の鎚と化してシャドームーンに打ち出される。
衝撃波はシャドームーンを押し飛ばす。
狭間が使ったのが、空気その物を自らの武器とする衝撃魔法。
先刻、サタンサーベルを弾いてヴァンを助けたのも同種の魔法である。
「自らの愚かさに気付いていないことは、魔神皇と変わらない。
……しかし確かに貴様の言う通り、魔神皇とは違うなシャドームーン」
押し飛ばされたシャドームーンは難なく着地する。
狭間が次に使用した魔法は、ランダマイザ。
対象の能力を全般的に下げる魔法である。
仮面ライダーオーディンの能力すら奪った魔力に拠る呪いが、シャドームーンに襲い掛かる。
次の瞬間、シャドームーンを包んだのは眩い光。
自身のシャドーチャージャーから発せられた光である。
キングストーンの光・シャドーフラッシュは、敵からの特殊能力に拠る干渉を跳ね除ける力を持つ。
狭間が掛けたランダマイザですら、その効果を失った。
「……私は結局、魔神皇であることを貫けなかった。魔神皇としての矜持は虚仮でしかなかった。
貴様はただ一人で殺し合いを戦った。全てを敵に回してな」
シャドームーンは指先を狭間へ向ける。
指先から光が奔った。
キングストーンのエネルギーを破壊の光線へと変換した、シャドービーム。
狭間の前で雷鳴が鳴り、稲妻が奔る。
稲妻はシャドービームと衝突。
シャドービームは狭間へ命中する前に、爆発へ転じた。
狭間の使う雷撃魔法に迎撃されたのだ。
「右腕を失くしても、これほど追い詰められても尚、貴様は未だ世紀王の矜持を僅かも損なっていない。
おそらく殺されることになろうと、その矜持を失うことは無いだろう。
ゴルゴムの王など、私は認めるつもりは無い。しかし貴様の矜持は本物だと認めてやる。」
爆発煙が狭間の眼前を覆う。
不意に真紅が煙から飛び出した。
サタンサーベルが煙の中から突き抜けて来た。
「それを称えて――――貴様の首輪を外してやろう」
サタンサーベルは狭間の眼前で止まった。
「貴様……」
「首輪を外したかったのだろう? だから外してやると言ったんだ」
シャドームーンも、
C.C.も、
真司も、
北岡も、
ジェレミアも、
意表を衝かれて動きを止めた。
つかさは先刻から話に付いていけない様子で当惑している。
ヴァンと上田は気絶したままだ。
しかし狭間にとっては、当初から条件さえ許せば、
最も優先順位の高い戦略であり、手段だった。
「貴様が先ほどまで戦っていた者たちの中で、翠星石とC.C.だけが首輪を外していた。
なぜ彼女たちが首輪を外せたと思う? 主催者側から首輪の解除方法が開示されていたからだ。
なぜ彼女たちだけが首輪を外していると思う? 複数名の中から、限られた数だけしか首輪を解除できない方法だからだ
そしてなぜ私にそれが判ると思う? 我々も知ったからだ。首輪の解除方法を。彼女たちと同じく、主催者側の開示した情報によって」
『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧してからここに至るまで、時間にしておよそ三十分弱。
狭間の頭脳には、幾重もの思考を重ねるには充分な時間だった。
nのフィールドへの侵入能力を持つ翠星石がシャドームーンと交戦している状況。
その中で最も多くの者の生還に繋がる作戦を。
「……何が目的だ?」
「貴様と契約を結びたい。内容は、大方の見当が付くんじゃないか?」
彼我の戦力。
行動目的。
所有する武器や道具。
周囲の地形。
あらゆる要素を考慮して、
あらゆる可能性を検討し、
幾重にも幾重にも思考を重ねる。
それはこの場に来ても変わらない。
シャドームーンは現在、如何なる状態か?
ダメージは? 消耗は? 精神状態は?
実際の周囲の地形はどのようになっているか?
あらゆる要素を観察して、
幾重にも幾重にも思考を重ねる。
何が最善手となり得るか?
ここで最も重要な要素は一体何か?
それは戦力でも武器でもない。
それらは重要な要素に違いないが、現状を打破するための最善手には成り得ない。
では何が現状を打破するための鍵と成り得るか?
狭間の頭脳は幾重にも幾重にも思考を重ねる。
「……フッ、まさか『協力して主催者を倒す』などと言うつもりじゃ無いだろうな」
そして導き出した答え。
しかしその最善手を取るためには、何よりも覚悟が要る。
殺し合いが始まって以来、最も重い覚悟。
シャドームーンと心中して、再び地獄に堕ちる覚悟が。
「その通りだ。よく判ってるじゃないか」
賽は投げられた。
もう引き返すことはできない。
支援
「おい、ちょっと待て……」
「黙って見ていろ。我々の力では、もうどうしようもない状況なんだ……」
身体を起こすこともできない、真司が声だけで口を挟もうとする。
近くで倒れていたC.C.がそれを制する。
狭間の思惑はC.C.にも、まだ掴み切れないが、
シャドームーンの脅威から逃れられるかどうかは、今や狭間に掛かっていると見て間違いない。
下手な言動で邪魔になってはならない。
「…………話の雲行きは、かなり怪しいがな」
真司にとっても、
C.C.にとっても、
ヴァンにとっても、
翠星石にとっても、
上田にとっても、
シャドームーンは不倶戴天の魔王。
説得は不可能。
生かしておけば、自分たちが決して生き残ることができない存在だった。
しかし狭間にとってはどうか?
狭間はよく知っている。
悪魔とは説得ではなくTALK(交渉)する物だと。
アモンをはじめ様々な悪魔を従えて無限の塔を制し、魔界の主となった狭間にとっては、
魔王ですら交渉の対象となりうる。
もっとも狭間は悪魔との交渉を苦手としていた。
それでもシャドームーンを前にしては、なぜか不思議なほど苦手意識は鳴りを潜めていた。
「……フッ、話にならんな」
「なぜだ? こちらの意図は伝わっているはずだ。それが双方の利に適っていることも理解しているのだろう?」
「貴様は判っていないようだな、世紀王が人間と同列に殺し合いへ参加させられた意味が」
しかし狭間とてシャドームーンの全貌を知ったつもりではない。
まして相手は、恐らく全人類を敵とする極め付けの魔王。
あくまで冷静沈着な魔人皇の顔を崩さぬまま、
吐息一つ漏らさぬシャドームーンの、呼吸の際まで見逃さぬ覚悟で、
狭間は悪魔交渉に臨む。
「貴様らの全てを殺し尽くす。それができてこそ、私の矜持は満たされる」
「そうしたいなら、そうすれば良い。ではそれに私が協力することも、契約の条件に加えよう」
「……え?」
「……おい、本当に任せて大丈夫なんだろうな?」
今まで黙って見守っていたつかさとジェレミアも、流石に口を挟んだ。
鉄火を鳴らし戦っていた時より、遥かに不穏な空気が場を包む。
シャドームーンですら、僅かに当惑している様子だ。
「シャドームーンは狭間に任せたのだ。ならば、余計な口出しは止せ」
「何? おたくは随分余裕じゃないの」
「私もシャドームーンは狭間に任せた。それは命を預けたのも同じ」
「大した潔さだねぇ。俺はそこまで悟ってないんだけど……ま、ここは黙って引き下がりましょうか、つかさちゃん」
「う、うん……」
その中でもジェレミアはあくまで沈着なままだ。
元より主のために命を尽くす武人であるジェレミアは、必要とあらば何時でも命を投げ出す覚悟ができている。
そこまでの覚悟は決まっていない北岡とつかさだが、結局は黙って引き下がることにした。
そうできる程度には、やはり狭間を信頼していたのだ。
「……戯言でこの私を愚弄しているのならば、貴様も貴様の仲間も只では済まんぞ」
静かな声で告げるシャドームーン。
しかし先ほどより威圧感は増している。
「私は大真面目だ。何しろ命が掛かっているのだからな」
「では協力とやらの意味を説明しろ」
「主催者を倒した後も私は逃げない。そして他の参加者も逃がさないと言う意味だ。
契約の内容を順を追って説明しよう。まず我々が貴様の首輪を外す。そして協力して主催者を倒す。
その後に貴様と我々で決着を付ける。貴様と他の生き残った全員を集めて、だ」
「……それを貴様がやると言うのか? 例え脱出できる状況であっても、それに背を向けて」
「言ったはずだ、貴様を許さんと。如何なる理由があっても貴様のしたことは許されないし、貴様を生かしておけばまた違う所で犠牲者が出る。
無論それとは別に、生き残った全員を必ず貴様の敵として立たせると約束しよう。力付くでもな」
シャドームーンが自分以外の参加者全員を殺害することに拘るのは、その誇りゆえ。
一度乗ると決めた殺し合いにおいて、一人でも取りこぼしをすれば世紀王としての誇りが許さない。
ならば殺し合いのルールに拘る必要は無い。
殺し合いの外であろうと、生き残った者と戦えば良いのだから。
主催者との戦いで死ぬかも知れないが、それは生き残るのに力が及ばなかった程度の者と割り切ることはできるはずだ。
殺し合いを続けたところで、自分以外の全員を殺すことは叶わないのだから。
「貴様にとって、これ以上無い条件のはずだ。これで貴様は主催者の走狗でなく、主催を乗り越えた王となれる。
その上、我々を皆殺しにすれば、貴様は殺し合いの参加者の中でも最強者として君臨できるのだからな」
そしてシャドームーンにとって、何より好条件なのが“殺し合いを強いられてそれに従った”と言う形でなくなることだ。
このまま殺し合いに優勝して更に主催者を倒したとしても、止む無く殺し合いをさせられた事実に変わりは無い。
しかし首輪を外して主催者を倒せば、殺し合いと言う世紀王への命令を打破したことになる。
シャドームーンは徐に次の台詞を吐く。
「……力付くでも私の敵として立たせると言ったな。それはあいつらでもか?」
シャドームーンが指す先に居るのは北岡とつかさとジェレミア。
不意にシャドームーンに指されたつかさは、びくりと身体を震わせる。
北岡とジェレミアも身体を強張らせた。
狭間はそんな彼らを見据える。
「例外は無い」
そして事も無げに言い放った。
僅かにも動揺を見せない。
見せてはならない。
それが今最も肝心な交渉術だった。
他者に命懸けの戦いを強要する。
しかも殺し合いの参加者の中でも屈指の強者、シャドームーンとの戦いを。
狭間の提案は他の参加者にとって理不尽極まりない物であるはずだ。
しかし他の者からも、もう狭間の暴言に対し異論は無かった。
北岡、つかさ、ジェレミアの三人はおろか真司とC.C.もただ黙って見守っている。
全員が理解していたからだ。
尋常の手段ではシャドームーンの脅威から逃れることができない。
先送りにできるだけ僥倖。
もしその脅威を主催に向けることが可能なら、それは正に起死回生の一手であることを。
それほどシャドームーンの脅威は恐るべき物だった。
それに一人で立ち向かう狭間。
場の空気は、完全に狭間とシャドームーンに支配されていた。
「……では、どうやって首輪を解除する?」
片方の支配者、シャドームーンが問う。
王の自負を持つ者は、あくまで傲岸に要求する。
情報であれ何であれ、この世の望む全てが己の物。
意に沿わぬ者は命を奪うまで。
それが世紀王の自負。
その王の傲慢を全て受け止めて、狭間は交渉に臨んでいるのだ。
「主催者が開示したと言う情報源は、パソコンのネットワーク上に在った」
シャドームーンを相手にも、自らのペースを崩さずに話を続ける狭間。
しかし実際のところは、シャドームーンに判り易く興味を持続させるよう言葉の使い方まで気を配っていた。
細心の注意を払っても、次の瞬間には仲間の命が危険に晒される可能性がある。
それが世紀王との交渉。
狭間はジェレミアにノートパソコンを要求する。
ジェレミアは狭間の意図に察しが付いたが、黙ってノートパソコンを渡す。
狭間はシャドームーンと距離を置きながら、開いたノートパソコンのディスプレイを向けて電源を入れる。
そのノートパソコンは内部電源とデータカードに拠って、外部との接続無しに起動とインターネットの利用が可能だった。
「まず、このホームページが主催者によって開示された物である証拠を見せよう。
このホームページには幾つものページがあるが、その中に『参加者の動向』が記された欄がある。
シャドームーン、貴様の動向もな」
狭間は手馴れた様子でノートパソコンのキーを叩き、『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページのメニューを開いて行く。
開かれたのは確かに『参加者の動向』のページ。
下にスクロールしていくと、シャドームーンの欄に行き当たる。
「……どうだ、貴様ならばそこからでも内容が読めるんじゃないか?」
確かにシャドームーンのマイティアイは、距離を隔ててもノートパソコンのディスプレイに書かれた内容を読むことができた。
そこにはシャドームーンのこれまでの動向が書かれている。
「内容に間違いは無いな? それならばこの内容が書けるのは貴様自身か、我々の動向を監視しているであろう主催者側であることも判るはずだ」
実際には、これだけ多様な異能や道具が存在している殺し合いの中なら、他の参加者を監視する能力が存在する可能性がある。
それにシャドームーンの動向が主催者によって監視されているのなら、記録もされている形になるはずなのだから、
その記録さえ確認できれば誰でもこの内容を書くことはできる。
しかしどちらも蓋然性は極めて低い。
仮に他の参加者を完璧に監視する能力が存在したとしても、それは殺し合いの武器としては強力過ぎる。
主催者によって制限されるか禁止される形になるだろう。
監視記録の方は更に条件が難しい。
それは主催者側に干渉して情報を摂取する形になるからだ。
シャドームーンは馬鹿ではない。
それはこれまでの動向、その中での幾多の戦闘での実績、そしてこうして実際に話をしてみれば、
狭間には充分に察することができた。
だからこれが主催者側の用意したホームページであると考えてほぼ間違いないと察することもできるはずだ。
それだけの頭があるからこそ、交渉相手としては手強いのだが。
逆に言えば、ともかく交渉が成立するだけの相手でもあるのだ。
「…………そしてこれが、首輪の解除方法が開示されたページだ」
シャドームーンが首輪の解除方法を知ろうとしている。
それを暗い面持ちで眺めるC.C.。
C.C.がヴァンを犠牲にしてまで守ろうとした情報がシャドームーンに渡ろうとしている。
運命は何もかもC.C.にとって皮肉な方向に回っていた。
狭間がシャドームーンに見せたのは『情報』と書かれていた欄。
そこには確かに首輪の解除方法が記載されていた。
首輪を停止させる手段から、解体する手順まで詳細に。
特にシャドームーンの目を引いたのは、首輪の爆破機能停止条件の一つ。
『爆破機能の停止していない首輪が、装着者の半径二メートル以内に四個以上存在する時。』
「四人集まれば首輪の爆破機能が停止する……それならば、貴様らの手を借りるまでも無い」
首輪に手を掛けながら吐いたシャドームーンの言葉に、場の空気は一気に凍り付く。
確かにシャドームーンの腕力なら、首輪を力付くで引き千切ることも可能。
そしてこの場には首輪を嵌めた参加者が八人も居る。
理論上は首輪解除が可能なのだ。
しかし狭間は平然と言い放った。
「試してみるか?」
「…………フッ、人間の分際でつくづく良い度胸だ」
シャドームーンは首輪からあっさりと手を放す。
ホームページの記載上では、首輪の爆破機能の停止は、あくまで首輪の爆破条件の一工程に過ぎない。
停止条件を満たしても、首輪が破損した場合は爆破する危険が残っている。
そもそもこの情報を開示したと言うのは、殺し合いの主催者側。
首輪を力付くで破壊する方法が幾らでも存在することを知っている立場だ。
四人が集まっただけで、力付くで首輪を破壊できる状態にするとは考え難い。
現在のシャドームーンは理論上首輪解除が可能。だがリスクが大き過ぎた。
「…………そこに書かれた俺の動向が主催が開示した物として、首輪の解除方法までお前らが捏造した物でないと言う証拠にはならんぞ」
シャドームーンの言う通り参加者の動向情報と、首輪の解除方法はまた別の問題。
参加者の動向欄が主催者に拠って開示された情報であっても、
『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを改竄、
あるいは『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページその物を捏造した可能性は残る。
「では翠星石とC.C.はどうやって首輪を解除したんだ?」
それを指摘されても狭間が動じる必要は無い。
翠星石とC.C.の首輪解除と言う、確度の高い根拠が存在するからだ。
無論、それで疑いが完全に晴れるわけではない。
しかしそれで構わないと狭間は考える。
今、肝心なのは、シャドームーンを自分の話に上手く乗せ続けて行くこと。
シャドームーンが疑いを口にするのも、狙いはおそらく狭間に揺さぶりを掛けて反応を見るため。
しかし揺さぶりを掛けてくること自体、話にある程度は乗っている証拠。
「翠星石とC.C.に聞けば、このホームページに記載された方法で解除したと裏付けが取れる」
狭間はシャドームーンを話に乗せるために、考え付く限りあらゆる努力を尽くしてきた。
挑発をしてそのプライドを煽り、意表を衝いてペースを握り、
シャドームーンの反応を細大漏らさず観察して、それに対応していった。
かつて悪魔交渉を苦手としていた狭間。
狭間がかつて悪魔交渉を苦手としたのは、その高慢さに拠る。
そしてその高慢は、劣等感の裏返しだった。
劣等感ゆえ他者を拒絶し、対等の関係を許さなかった。
しかし今の狭間は魔神皇ならぬ魔人皇。
他者と対等に向き合える。
ゆえに本当の意味での交渉を可能とした。
ゴルゴムの世紀王を相手としてすら。
そして、狭間には例え下手な悪魔交渉であっても、それをこなして来た経験がある。
如何なることでも経験の有無の差は大きい。まして交渉ごとでは尚更だ。
何より今は仲間の命を背負って交渉に当たっている。
自分一人の命より重いものを背負っての交渉。
ゆえに全霊を尽くして、如何なる手段でも行使して交渉に当たる。
逆に言えば、狭間は今までこれほど真剣に悪魔交渉をしたことは無かった。
狭間は今始めて、悪魔交渉の醍醐味を味わっていた。
「では契約内容の詳細について……話す前に、こちらからも一つだけ条件を付けさせて貰う」
「条件など出せる立場だと思っているのか?」
「契約その物を成り立させるのに必要な条件だからな。それは、主催者を倒すまで主催陣営の者以外は誰も殺さないことだ」
狭間の方から提出される条件。
それは確かに契約の成立に必要不可欠なのは明白だ。
シャドームーンが殺人を続ければ、協力して主催者の打倒どころではなくなる。
そしてシャドームーンを相手に契約を結ぶに辺り、それをはっきりと契約内容に織り込むことは、
絶対に必要な条件だと狭間は判断した。
「殺し合いも終わっていない内から、よく言えたものだな」
「無論、正当防衛の場合は例外だ。それを踏まえて契約内容の詳細を説明する」
そこから狭間は、まるで予め契約の書面を用意してプレゼンテーションの練習を繰り返していたかのように、
契約内容の詳細を、簡潔かつ明瞭に、そして淀み無く説明していく。
狭間は契約内容を順を追って説明すると、それを箇条書きの要領で平明に提示した
内容は以下の通り。
・シャドームーンは主催者を倒すまで他の参加者を殺害しない。(但し正当防衛の場合は例外とする)
・狭間はシャドームーンの首輪を解除する。
・シャドームーンは首輪を解除できれば他の参加者と協力して主催者と戦う。
・主催者を倒した後はシャドームーンと他に生き残った全ての参加者で決着を付ける。
「……聞いての通り契約をすれば、順番から言ってまず貴様の首輪を外してやる」
「なるほどな……」
契約の内容は明らかにシャドームーンに有利な物だ。
狭間が契約のメリットを得るのは、シャドームーンの首輪を外した後。
即ち、シャドームーンがメリットを得た後になるのだから。
我ながら気前の良いことだ。と、狭間自身も思う。
しかしそれは必要なことだ。
シャドームーンは自らの命より誇りを取る。
自分以外の者の後塵を拝するような事態は絶対にしないはずだ。
そして詭弁で誑かすような真似が通用する相手でも無いだろう。
シャドームーンを相手に交渉を成立させるには、自分から可能な限り誠意を示す必要があった。
「貴様との契約……やはり話にならんな」
冷たく言い放つシャドームーン。
閃光のごとき真紅が奔る。
いつ間合いに入ってこれたのかも定かでないシャドームーンのサタンサーベルを、狭間が紙一重で回避できたのは、
相手の奇襲、急襲も想定していたため。
即座にジェレミアが無限刃を構え、北岡がカードデッキを取り出す。
こちらも危急の事態を想定していた反応の早さ。
それでも狭間は二人を手で制する。
「貴様にとってこれ以上なく良い条件だと思ったのだがな。何が不服か当ててやろうか?」
「世紀王を茶番に付き合わせた罪は重い。その累は、貴様の仲間にも及ぶと思え」
もう狭間の言葉に反応しないシャドームーン。
その佇まいは、座して下郎を圧する王のそれから、
力で敵を征圧する覇者の物へと変貌していた。
「貴様の懸念……それは、我々に命を預けることだ」
しかしシャドームーンはそこから仕掛けて来ない。
サタンサーベルを構えたまま動きを見せなかった。
そこに如何なる思惑があるのか、白銀の仮面からは何も読み取れない。
「貴様の立場に立てば、それも無理の無い話だな。
首輪を解除するためには、誰か他の者に首輪を預けなければならない。
しかし貴様は周りが全て敵なのだ。まあ自業自得だがな。
他の誰かに命を預けるような真似はできない」
シャドームーンの沈黙。
狭間にとってそれは何より雄弁に、自説の肯定を物語っていた。
ただ、シャドームーンの孤立は自業自得とは言い切れない物だ。
狭間はシャドームーンのプロフィールを見て知っている。
シャドームーンは世紀王。人類の天敵。
しかしそれは本人の意思とは無関係。
後天的に脳まで改造されて、人類と相容れぬ存在に変えられただけだと狭間は知っていた。
例えシャドームーンのどんな事情を知っていても、最終的に生かしておけないことには変わらないが。
「要するに貴様の安全が保障されれば良いんだろう?」
狭間は自らに言い聞かせる。
支援
これは必要な手段であると。
これが最善手であると。
何の保証も無い賭けだが、成さなければならないと。
狭間にも魔人皇としての自負、シャドームーンを倒す自信は有った。
自身の絶大な魔力によって、文字通り力づくにシャドームーンを叩き潰すことは可能だろうと。
しかしそれは狭間が万全の状態であればの話だ。
現在の狭間はかなり魔力の消耗が激しい。
何より狭間がそれほどの強者であるからこそ、シャドームーンの並ならぬ力量もまたある程度は読み取れる。
その上ランダマイザが通用しなかったように魔法耐性まで存在する。
狭間とシャドームーンの天地を穿つがごとき力のぶつかり合い。
仮に勝利できるとしても、それに他の者を巻き込まない自信は無かった。
もしここで狭間とシャドームーンが戦えば、ヴァンとC.C.と真司は勿論、
狭間がここに連れ立ってきた仲間も守り切れる保証は無い。
シャドームーンを仲魔に引き入れるのは、戦力を確保する以上に、他の仲間の安全を確保する必要性に迫られての判断なのだ。
例えそれが一時的な物であっても。
可能な限り多くの者を生かして帰す。
それこそ狭間がレナと交わした約束。
『うん……皆を元の世界に返してあげて欲しいんだ……狭間さんならきっと出来るよ』
『その願い、この魔人皇――――狭間偉出夫が引き受けた
必ず他の者達と共にここを脱出し、元の世界に帰ってみせる、約束しよう』
(シャドームーンと雪代縁は除外するか、確認しておくべきだったかな……)
何れにしろもう賽は投げられた。
狭間に今更賭けを降りるつもりは無い。
それがどれほど分の悪い賭けでもだ。
「この魔人皇――――狭間偉出夫が貴様の保障になろう」
「……何だそれは?」
「貴様が首輪を外すまで私が守ってやる。あらゆる脅威から、この命を掛けてだ。何者であろうと貴様の命を脅かすことを許さない。
そして貴様の首輪は私が責任を持って外してやる」
C.C.と真司は地に倒れ付しながら、狭間とシャドームーンの交渉をどこか現実感の無い心持で聞いていた。
守ると言っているのだ。
数多の命を奪った悪逆の魔王、シャドームーンを。
シャドームーンを護衛すると言うのは、二人にとって余りに突拍子も無い提案だった。
シャドームーンのこれまでの動向を、ホームページの上でしか知らない北岡とつかさとジェレミアにはそれほどの違和感は無い。
それでもシャドームーンを護衛することのリスクは、充分に承知していた。
場の緊張感が増していく。
誰よりも緊張感に駆られているのは、護衛を言い出した狭間自身。
しかし緊張感などおくびにも出さず、狭間は力強く言葉を続ける。
「そしてもし貴様が誰かに殺されたならば、私が必ず命で以って償わせる。
主催陣営の者であろうと、他の参加者であろうと、如何なる者であっても魔人皇の全霊を以って殺す。
これは貴様が首輪を外すまで、ではない。主催者を倒すまでの話だ」
狭間の賭け。
あるいは賭けと言うのにも、余りに無謀な提案。
それは全ての参加者の敵であり、人類の敵であるシャドームーンの命を背負うと言う物。
もし参加者の誰かが、シャドームーンに危害を加えようとするならば、
その者は狭間にとっても敵となる。
あるいはシャドームーン以外の全ての者を敵となる可能性もある。
その危険性を充分に理解しながら、狭間に躊躇は無い。
悪魔と契約をするには、共に地獄に落ちる覚悟も時に必要となる。
シャドームーンと心中して共に地獄に堕ちる覚悟とは、即ちそう言う覚悟だ
その狭間の覚悟を――――
「ククク、この世紀王に契約を持ち掛けるのだからどれほど器量かと思えば。ただの愚か者か」
――――シャドームーンは一笑に付した。
「貴様が保障だと? 貴様の口約束など何の意味がある? 守ると言われて、私が素直に信用するとでも思っていたのか?」
シャドームーンの言葉は狭間への反論ではなく、嘲笑うための物。
狭間の提案は、シャドームーンにとってそれほど無意味な物だった。
そもそも狭間の口約束を当てにできるようなら、始めから首輪を誰かに預けることが問題にならない。
他の全てを敵にしているとは、即ちそう言うことなのだ。
何者も信用に値しない以上、契約など成立するはずも無い。
「ま、結局はそうなるよねぇ……」
北岡は溜め息混じりにカードデッキを取り出した。
北岡とジェレミアと真司は諦観を、C.C.はどこか安堵を含んだ空気で、
狭間とシャドームーンの決裂を眺めていた。
今まで狭間の言動を黙って見守っていたが、シャドームーンと信頼関係が築けない以上は、
決裂は免れないことは充分に予想できた。
それはジェレミアもC.C.も同じ。
およそ契約などを結ぶためには、如何なる形であれ少なくとも相手が契約を履行すると思えるほど、
双方の間に最低限の信頼関係が存在しなければならない。
シャドームーンを相手にそんな関係が成立することこそ不可能事。
「ああ、信用できるな。私が貴様との契約を信用するようにだ。そうでなければ、ここまで話を聞く貴様ではあるまい」
誰もが決裂したと考える交渉を、尚も狭間は続けようとする。
狭間にとってはここからが正念場なのだ。
分の悪い賭けであることは最初から百も承知。
命をチップにそれへ乗っている以上、生半可な覚悟ではないのだ。
「何故なら、これは魔人皇と世紀王の名の下に結ばれる契約だからだ。世紀王の名の下に結ばれる契約なら、貴様も決して反故にはしまい?」
北岡も、ジェレミアも、つかさも、真司も、C.C.も、
狭間が何を言っているのか理解できない。
これまでも何度も意表を衝かれたが、今度は意味そのものが理解できないのだ。
狭間の言葉通りの意味だとすれば、これほど馬鹿馬鹿しい主張は無い。
シャドームーンが魔人皇であろうと何であろうと、自分以外の物の名に価値など認めないはずだ
狭間もそんなことは判っているはずなのだ。
しかし狭間は場に漂う如何なる気配も寄せ付けず、シャドームーンとの交渉を続けている。
そして当のシャドームーンは――――
「…………フフフ。それほどまで……世紀王を愚弄するつもりか!!!!」
――――かつてないほどの怒りを現した。
空気が恐れ戦き震撼する。
遠巻きに眺めていた北岡たちも総毛立つ。
あれほど冷徹さを貫いていたシャドームーンの中に在った、想像を絶する熱気。
「世紀王の名を、他の何かと対等に並べることが許されるとでも思ったのか!!!?
ゴルゴムの王こそ、宇宙に存在する唯一絶対の真の王!!! 人間が勝手に名乗った王と同じだと……」
「同じだ!!!! 貴様も私も主催の手中に繋がれた王に過ぎん!!!」
かつてない威を放つシャドームーン。
しかし狭間もまた引けを取らぬ気迫で以って対抗する。
北岡とつかさはおろか、ジェレミアまで呆然と瞠目する。
誰もが、これほど大きく声を上げる狭間は始めて見た。
どこまで狙いなのかは不明だが、狭間もまた常軌を逸した態度で交渉に臨んでいた。
「ゴルゴムの王など私は認めない!! しかし貴様の怒りが本物であることは判る!!! それは貴様の矜持が本物だからだ!!
貴様の矜持を私は全面的に信用する!! その証として、貴様に首輪の解除方法を提示したのだ!!!」
魔神皇として君臨してきた間の習慣で、狭間は高慢な態度が身に付いていた。
常に相手を見下し、自らの余裕を演出する。
それは身に付いた習慣なので、魔人皇となった今も容易に態度は改まらないはずだった。
しかし今はそれすら振り払って、声を上げていた。
「私が何故それほど、貴様の王の矜持を理解できると思う!!? 私も人の上に君臨することを止め、魔神皇であることを捨てても尚、
唯一人で魔界の支配者にまで登り詰めた、王としての矜持を捨てきることはできなかった。だからこその『魔人皇』だ!!」
狭間にはここまでの話でシャドームーンの気を引いている自信はあった。
そしてそれを過信はしていない。
かつてない熱意を込めて、あくまで怜悧に論理を積み上げて行く。
「貴様が殺し合いに乗るのは、命が惜しいからでは無いはずだ!!! 一度敵対した者から、どんな形でも背を向けることは貴様自身の誇りが許さないからだ!!」
シャドームーンは沈黙したまま、狭間の言葉を聞いている。
その仮面からは、如何なる内面も読み取れない。
狭間にとってすらそうだ。
どれほど最大細心の注意を払っても尚、シャドームーンは読み切れない。
一瞬先の命の保障すらない賭けは未だ続いていた。
「貴様の怒りは、今この場で我々を殺したところで報われない! 殺し合いの中で首輪を嵌めたまま誰を殺した所で、そんな物は王の所業では無いからだ!
貴様の怒りが報われるためには、殺し合いを貴様の手で破壊してから我々を殺してみろ!!」
「――――ふざけやがるのも、いい加減にしろです!!!!」
全く予想外の言葉に、狭間は二の句も告げず強張る。
北岡も、ジェレミアも、つかさも、真司も、C.C.も同様だった。
皆意表を衝かれ、固まっている。
シャドームーンですら虚を衝かれ、不動の仮面を傾ける。
視線の先には緑色の衣装を着た人形・翠星石が息を荒げていた。
少女は幸せな夢を見た。
本当に幸せで、優しくて、暖かい夢。
それは普段と何も変わらないはずの日常。
少女はチビ人間の家で自慢のスコーンを焼いていた。
いつものようにチビ苺をからかいながらスコーンを振舞う。
チビ人間も文句を言いながらスコーンを食べている。
興味無さそうに紅茶を傾けていた真紅も、時折手を出している。
のりがそれを微笑ましそうに眺めていた。
そこにチャイムの音が鳴る。
おじじの家から、蒼星石が遊びに来たのだ。
玄関で鉢合わせた金糸雀まで連れて。
真紅はそこで昨日会った水銀燈の話をする。
水銀燈と真紅は長く対立していた敵同士。
しかし真紅は、どこか愛おしそうに水銀燈の話をしていた。
おそらく水銀燈が無事に生活をしていたのが喜ばしいのだろう。
同感だと思う。
たった七人の姉妹なのだ。
憎み合い、傷付け合うようなことは哀し過ぎる。
そうなれば、こんなに楽しく皆で食事をすることもできないのだから。
そこで少女――――翠星石は眼を覚ました。
眼を覚ました先に在ったのは、硬く冷たいコンクリートの床。
翠星石はそれを冷たい眼で眺め続ける。
それは本当に幸せで優しくて暖かく、だからこそ残酷な夢だった。
眼を覚ました現実では、姉妹が居なくなっていた。
真紅。蒼星石。水銀燈。
本当に掛け替えの無い姉妹だった。
双子の姉妹として生きて来た蒼星石や、同じ家で暮らした真紅は勿論、
敵対した水銀燈だってそうだ。
ローゼンメイデンは、長い周期の眠りを繰り返しながら、
人間より長い時間を生きる。
その間、様々な人間との出会いと別れを繰り返した。
悠久の時間を、それでも擦り切れずに生きて来れたのは、
同じ運命を生きる姉妹が居たからだ。
同じ悠久の時間を支えあって生きた姉妹が居なければ、今の翠星石は居ない。
しかしその掛け替えの無い姉妹を三人も、永遠に失った。
現実は、今翠星石が身を預けるコンクリートの床のように冷たい。
夢の中で見たような暖かく幸せな時間は、二度と返って来ない。
それを否でも自覚させる。本当に残酷な夢だった。
「…………皆は……真司はどこですか?」
ようやく意識がはっきりとしだした翠星石は、周囲を見渡す。
現実にも、翠星石には仲間が居たはずだ。
今や姉妹たちと同様に掛け替えの無い仲間が。
しかし見渡しても、誰も居ない。
どこまでも冷たく余所余所しい、見慣れぬビルの中の景色が在るだけだ。
「な、なんですかここは? ……皆、どこ行っちまったですか…………」
翠星石にしてみれば、眼を覚ませば世界がすっかり様変わりしたような物。
シャドームーンと戦っていたはずなのに、その痕跡は見当たらない。
殺し合いの中でも体験しなかった、異質な不安が翠星石を襲う。
「…………皆……真司!!」
矢も盾も堪らずビルから飛び出した。
状況が掴めない。それ以上に自分以外の誰も居ないことが、翠星石を不安にさせる。
特に真司の不在は。
今の翠星石にとって一人で居ることは、余りにも冷たかった。
まるで迷子を恐れる子供のように、翠星石は一人無人の街を飛び行く。
誰一人予想もしていなかった結末へ向けて――――
◇
「黙って聞いてりゃ、横からしゃしゃり出てきたヤローが勝手なことばかりぬかしてんじゃねーです!!!
そんな趣味の悪い銀色オバケと、手なんか組めるわけねーじゃねえですか!!」
今まさに休戦協定の契約を交わそうとしていた狭間とシャドームーンを怒鳴り付ける翠星石。
翠星石は今にも噛み付きそうな剣幕で、怒りを露にしていた。
翠星石は初め、狭間とシャドームーンの会話の意味が判らなかった。
それ以前に狭間たちが居る場所が、先刻まで自分がシャドームーンと戦っていた場所だとも判らなかった。
ライダーキックとシャドーパンチの衝突などの被害によって、周囲の地形が大きく変わっていたためである。
その場所でシャドームーンと見知らぬ男が口論している所を見掛けても、すぐには状況が掴めなかった。
翠星石は元々人見知りをする性格の上、シャドームーンへの恐怖感も存在する。
その上、会話する二人の間には、異様な緊張感が漂っていた。
そもそも翠星石が捜していたのはシャドームーンではなく、あくまで自分の仲間である。
シャドームーンに対して姿を晒す必要は無い。
翠星石は二人の会話に聞き耳を立てながら、物陰に隠れて周囲の状況を探る。
会話の内容に不穏さを感じながら見渡していると、程なく真司を発見することができた。
倒れ伏して動くこともままならない様子だが、命に別状は無いようだ。
真司の生存に対する喜び。
そしてそれ以上の怒り。
怒りの原因は真司ではない。
狭間とシャドームーンの会話の趣旨が、ようやく把握できた。
狭間はシャドームーンと協力して、V.V.と戦おうと言っているのだ。
共に共同戦線を組んでV.V.と戦う。
それは即ち、シャドームーンが自分の味方になると言うこと。
理解できた瞬間に、声を上げていた。
翠星石の抑え難い憤りは、収まりそうにない。
それほど翠星石には許しがたい話だった。
間が悪すぎる。
翠星石の出現に、狭間が持った感想がそれだった。
シャドームーンとの交渉には、翠星石の存在も含めてあらゆる要素を考慮に入れて想定をしていたつもりだった。
しかしここまでシャドームーンとの交渉が進んだ段階での翠星石の横槍は、完全に想定外。
(次スレ大丈夫ですか?)
翠星石の様子を見る限りは、簡単には納得しそうには無い。
狭間は頭脳を高速回転させて、事態への対処方法を練る。
しかしほとんどシャドームーンだけを相手にして居れば良かった先刻までと違い、上手く頭が回らない。
「……手を組むと言っても、一時的な物だ」
「一時だって無理です!! 後ろから撃たれるのがオチに決まってるです!!!」
「一旦契約を結べば、シャドームーンはそれを守る」
「どこにそんな保障があるんですか!!? そんな殊勝な奴が殺し合いに乗るわけがありません!!」
「シャドームーンは正面から、我々全員を殺す自信があった。そんな者が姦計を巡らす必要など無い」
「手を組む必要なんざ、もっとねーです!!」
「我々の安全のためだ」
「それで危険を増やすお馬鹿が居ますか!!!」
まるで取り付く島が無いと言った風情の翠星石。
シャドームーンより、よほど手強い交渉相手だ。
狭間は悪魔交渉が不得手であった頃を再び思い出す。
しかしこのまま手を拱いていては、せっかく進めていた交渉も水泡に帰す。
「…………翠星石、シャドームーンとこのまま戦えば、勝敗はともかく被害は大きい。
シャドームーンと同盟を結べば、その被害を主催者の方に押し付けられる。……どっちが合理的な手段だ?」
狭間を援護するために口を出してきたのは、意外にもC.C.だった。
C.C.は先刻まで翠星石と同行していた仲間だ。
狭間より話が通用するはずである。
そのC.C.が合理性を説く以上、翠星石の納得も得易いはずである。
「お、お前らはそいつが何をしたか知らねーから、そんなことが言えるんです……!!!
そいつが何をしやがったか!! 新一にも、ミギーにも……水銀燈にも…………」
しかし実際は、納得どころか更に怒りに火を注ぐ結果となった。
小さなその身を震わせて、翠星石は抑えがたい怒りを露にする。
翠星石はかつてシャドームーンと戦った際、共に戦った仲間の泉新一とミギーを殺されている。
そして姉妹である水銀燈も、シャドームーンに身体を破壊されて、何よりその誇りを踏み躙られた。
ローゼンメイデンがローザミスティカの継承をする際は、以前の持ち主の記憶も受け継ぐ場合がある。
翠星石は水銀燈のローザミスティカを受け継いだ際に、その中でも特に強烈な印象の記憶。
シャドームーンに植え付けられた畏怖、踏み躙られたプライドの記憶があった。
水銀燈は姉妹の中でもとりわけ強くアリスになることを望んでいた。
誰よりも美しく気高い完璧な少女、アリス。それこそが水銀燈の理想だった。
しかしシャドームーンに不具とされ、その上シャドームーンの使い走りにさせられている。
それがローゼンメイデンの、とりわけ気位の高い水銀燈にとってどれほど辛いことか。
そしてこの世にたった六人の姉妹がそんな目に合わされることが、翠星石にとってどれほど辛いことか。
新一とミギーを殺し、水銀燈も踏み躙ったシャドームーン。
例え一時のことでも受け入れることはできなかった。
「……その水銀燈が、殺し合いに乗っていたことを知っているな…………」
狭間もホームページ上のプロフィールや動向から、その辺りの事情は知っている。
知っているからこそ、腑に落ちない部分も有った。
「水銀燈が枢木スザクに惚れ薬を投与して、その所為でスザクが殺し合いに乗ったことは知っているか?
そのスザクが何名もの参加者を殺したことを、即ち水銀燈が何名もの参加者を殺したことはどうだ?」
「…………何が言いたいんですか?」
押し殺したような声で狭間を促す翠星石。
翠星石の意に沿わない話であることは、狭間にも察することができる。
立ててくる
それでも狭間にとって言わずにはいられない。
何故ならレナを殺したのはスザクである。即ち遠因となったのは水銀燈なのだから。
「その水銀燈と、お前たちは手を組んでいたはずだ。それで何故シャドームーンだけを拒絶する?」
「黙るですッ!!!」
狭間に叩きつけるような翠星石の怒り。
同時に翠星石の手から黒羽が発射される。
黒羽は狭間の足下に被弾。蒼炎を上げて爆発。
(なんだこの威力は!?)
黒羽の威力は狭間をして驚かせる物だった。
その威力から察するに、シャドームーンに匹敵し得るほどの力を翠星石が持っているからだ。
翠星石の動向欄で確認した限りでは、真司や新一と共闘してシャドームーンから敗走している。
しかし今の翠星石ならば、単独でシャドームーンを倒し得る。無論、容易ではないが。
翠星石は赤い光をオーラのごとく纏っている。
狭間の想像を超える力と、そして怒りだった。
「……あの銀色オバケより先に殺されたいですか?」
翠星石の放つ気配は怒りに留まらない、正に殺気。
今までにない翠星石の様子に、真司ですら息を呑む。
水銀燈が殺し合いに乗っていたことなど、狭間に言われなくとも百も承知している。
それほどアリスを望んでいた水銀燈でも、ローザミスティカとなって翠星石と一つになることは、
報われない戦いの中で、僅かでも救いとなったはずだ。
しかしそれで翠星石がシャドームーンと肩を並べて戦ってしまっては、
水銀燈の戦いも決意も、本当に報われない物になってしまう。
水銀燈の決意とシャドームーンの決意が、同じ重さを持ってはならない。
世界がそんなに醜い物であってはならないのだ。
「…………もう止めろ翠星石」
翠星石を制止する声は真司の物だった。
翠星石にも予想外だったらしく、呆然とした表情を向けている。
「もうこれ以上、誰かの死を望むようなことを言うな……今のお前を見ても、新一もお前の姉妹も喜ばないよ……」
真司は折れていない方の腕で、大儀そうに身体を起こしながら語る。
真司の目的は誰も死なせないことであって、シャドームーンを倒すことでも新一たちの仇を取ることでもない。
今の翠星石と真司の意思は完全に相違する物となった。
「真司まで何を言い出すですか!!」
翠星石には真司が制止するのが信じられない心地だ。
真司も翠星石同様、新一やミギーを殺された恨みを抱えているはずだ。
しかし、これではまるでシャドームーンとの共闘を望んでいるようではないか。
どうしようもない憤りに駆られる翠星石。
「……ククク、浅ましいな」
真司の代わりに返答するように口を挟んだのは、それまで沈黙を守っていたシャドームーン。
どこか呆れたような含みを持たせた薄い笑いを上げる。
「それほどまでに多勢で私一人を踏み躙って、正義を誇りたかったか。
それほどまでに私の命を贄にして、自分たちの力と団結と理想に酔いたかったか。
フッ、人とはつくづく浅ましい物だな」
シャドームーンは笑う。
目前の全てが、薄っぺらな正義をお題目にした茶番劇だと言いたげに。
「人形よ、そんなに私を殺したければ、他を当てにせず貴様一人で掛かって来たらどうだ?」
「……上等じゃないですか…………」
翠星石の殺気がシャドームーンに向かう。
かつての翠星石を知る者からすれば想像も付かないような、殺気に歪んだ形相を浮かべて。
「……てめーさえ死ねば、全部片が付く話です」
殺気と共に、翠星石の中から異様な力が漲ってくる。
暖かい夢から、眼を覚ました時以来そうだった。
まるでローザミスティカが増えたような、異様な力が翠星石の中に漲っている。
胴体を貫かれた傷も、いつの間にか回復していた。
「この力が在ればてめーなんざ、けちょんけちょんのぼろ雑巾みてーにしてやれるですよ。けっけっけ……」
急激に得た、身の丈に合わない異常な力は、時に人を歪ませる。
それはローゼンメイデンとて例外ではなかった。
身の内から湧き出る、シャドームーンをも殺せそうな力。
翠星石はそれに溺れていた。
翠星石の身体から、再び赤い光がオーラとなって表れる。
それは翠星石と世界を異にする賢者の石の光だった。
「止めろ翠星石!! 今お前たちが戦っては、例えシャドームーンを倒せても周囲の者を巻き込みかねない!!」
狭間の制止も翠星石は聞かない。
シャドームーンを憎々しげに見据える翠星石には、まるで本当に狭間の声が聞こえていないかのようだった。
TALK(話し)にならない。
即ち――翠星石はやる気だ。
翠星石の殺気を受けて立つシャドームーンも、サタンサーベルを構えた。
「シャドームーン、貴様も下らない挑発は止せ!! 翠星石はこの場から脱出する能力を持つ、唯一の参加者だ!!
それがどんな能力か、ホームページのプロフィールを見れば確認できる! 翠星石を殺せば、殺し合いの打破は不可能になるのだぞ!!」
「そんな話はあの人形としろ。世紀王に歯向かう愚かさも含めてな」
狭間に平然と返答するシャドームーンも、引き下がるつもりは無いようだ。
如何なる状況でも、シャドームーンの王の自覚は揺るがない。
歯向かう者には、誰が相手でも退くことは有り得ない。
(どうする!!? ……くそっ、まさかこんな展開になるとは……)
睨み合う翠星石とシャドームーンの両方を見据えて、狭間は歯噛みする。
シャドームーンを味方につけるはずが、翠星石まで危険に晒す形となってしまった。
シャドームーンを相手には上手く進められた交渉が、翠星石を相手にした途端、精彩を欠いてしまった結果がこの状況である。
まるで他人との係わり合いを苦手とした、かつての自分に戻ったかのように。
必死に頭を巡らしても、打開策が浮かばない。
「これ、もうさあ……翠星石に付いてシャドームーンを倒すしかないんじゃない?」
横から北岡が打開策を提示する。
北岡は手に持つカードデッキを地面に割れ落ちたガラスに向ける。
その腰にVバックルが顕現。
今頃になって変身可能になるとは。
狭間は忸怩たる気持ちを抱くが、しかし今はそれどころでは無いと気持ちを切り替える。
何れにしろ、今更シャドームーンに持ち掛けた交渉をこちらから反故にすることはできない。
「私はもうシャドームーンに同盟を持ち掛けた。魔人皇の名の下にだ。
魔神皇の矜持が虚仮だったとしても、魔人皇の誇りまで偽物とするつもりは無い」
一度自分から契約を持ち掛けた相手に、まだ契約は結ばれていないからと言って、襲撃などすればそれは騙まし討ちも同然。
かつての人の上に君臨するための魔神皇ならばそれでも構わなかったかもしれないが、
人と向き合うが故の魔人皇が、卑劣極まりない騙まし討ちなど、絶対にしてはならない。
例え相手が誰であってもだ。
一度それをしてしまえば、魔人皇の名まで虚仮になってしまう。
「生真面目だねぇ……でもそれはおたくの事情であって、俺は最初から同盟だの契約だの知ったことじゃないんだよね」
「私も同様だ」
北岡に続いて、ジェレミアも無限刃を構える。
二人とも翠星石と共にシャドームーンを倒すつもりのようだ。
ジェレミアが狭間の交渉に命を預けると言ったのは本心だろうが、
狭間ですら判断に迷うこの状況では、実力で翠星石を守ろうとしても、無理もない判断だ。
こうなれば、翠星石も北岡もジェレミアも止める策は狭間には存在しない。
しかし、シャドームーンを敵として戦うこともできない。
狭間は完全に板挟みで動けない状況だった。
(……翠星石、お前何をどうしちまったんだよ)
シャドームーンに殺気を向ける翠星石。
真司にとってそれは、まるで悪夢のように現実感が無かった。
殺意に身を任せる翠星石の様子は、余りにも普段のそれとは違う物だ。
真司はそこに、かつて戦った秋山蓮に抱いたような歪みを見出す。
『一つでも命を奪ったら、お前はもう、後戻りできなくなる!』
『俺はそれを望んでる……』
かつて蓮は人を殺すことで、自分を後戻りできないところまで追い詰めようとしていた。
事情は全く違うが今の翠星石から、それほどの尋常ではない気配を嗅ぎ取ったのだ。
もし、翠星石がこのまま殺意に任せて誰かを殺してしまえば、後戻りできない事態になる。
真司はそんな予感に襲われたのだ。
(…………俺が……止めないと!)
翠星石の殺意を止められるのは自分だけだ。
しかし今の翠星石を言葉で止めることは自分にはできない。
そんな想いに駆られた真司は、僅かに回復した体力を振り絞り、再び立ち上がる。
そして翠星石を目指し駆け出した。
誰一人予想もしていなかった結末へ向けて――――
「死にやがれですっ!!!」
左手をかざす翠星石。
その左手から黒羽の連弾を発射。
先刻のそれを超える速度で、一直線にシャドームーンへ向けう。
シャドームーンも翠星石同様に左手をかざす。
その左手からシャドービームを発射。
シャドービームは直線上の黒羽を全て焼き払った。
更に射線の先に居た翠星石へ襲い掛かる。
翠星石は反射的に横へ飛び出す。
音速を超える凄まじい加速度。瞬時にしてシャドービームの射線から回避できた。
(と、とんでもねー速さですぅ!!)
翠星石は自分の持つ速さ、力に驚嘆していた。
自分の意思で飛行していると言うのに、上手く制御し切れないほどの加速度。
何故、突然自分にこんな力が沸いて来るようになったのかは判らない。
しかし今はそんなことはどうでも良かった。
自らの途轍もない能力がもたらす、経験したことも無い快感に翠星石は酔っていた。
この力が在ればシャドームーンでも難なく殺せる。
絶対に自信と共に、翠星石は薔薇の花弁をシャドームーンへ向けて飛ばした。
その射線上に影が飛び出す。
翠星石は自分でも制御しきれないほどの速度で飛行中に薔薇の花弁を発射した。
従ってシャドームーンまで到達する射線を、確実に捉えてなどいなかった。
駆け出した真司にとっても、先刻までの翠星石を遥かに上回る速度は予想できなかった。
従って自分が走る進路の安全など、確保しているはずは無かった。
二つの不測が交差する。
薔薇の花弁の射線上に飛び出した影は真司。
あるいは真司の頭部を薔薇の花弁が通り抜けたと言うべきか。
その威力も先刻より遥かに上回る花弁は、
進路上に在る真司の頬を剥ぎ取り、顎を砕き、首元まで抉り取った。
通り抜けていった花弁を、シャドームーンが横っ飛びに何なく回避する。
まるで何が起こったのか判らないという表情で立つ尽くす真司。
翠星石も何が起こったのか判らないという表情で呆然としている。
遅れたタイミングで、真司の首元から大量の血が勢い良く噴出。
真司は糸の切れた人形のごとく、崩れ落ちるように倒れた。
つかさの悲鳴が響き、北岡が短く城戸と叫ぶ。
それでようやく、起きた惨劇の意味を全員が理解した。
惨劇を起こした当人、翠星石を除いて。
首元から大量の血を噴き出し、声にならない悲鳴を上げて真司はのた打ち回る。
両手足がバタバタと何もない空間を掻く真司の様は、
人間と言うより、まるで子供の悪戯で死に瀕した昆虫のように滑稽な印象を与えた。
焦点の定まらない眼がより滑稽な印象を増している。
真司の生命は自動機械のごとく両手足を忙しなく動かしているが、その先には死しかないことは誰の眼にも見て取れた。
「ディアラハン!」
狭間は即座に回復魔法を詠唱する。
ディアラハン、単独の対象なら全ての負傷を完全回復させる魔法。
魔法は瞬時にその効果を発揮して、真司の傷を完全に塞ぎ出血を止めた。
「……!!」
真司の有様を見て、つかさは思わず息を呑んで眼を背ける。
ディアラハンの効果で傷口は塞がれたが抉り取られた喉下も、頬も、顎も欠損したままである。
出血が止まることで、真司の致命的な欠損がより露になったのだ。
もう手足を動かす力も無くなったのだろうか、
地に横たわった真司の身体は、胴体だけが脈打つように動いていた。
翠星石と狭間に生命を弄ばれたグロテスクな残骸。それが見る者が今の真司に抱く正直な印象だった。
「くそっ!」
狭間が苦々しげに吐き捨てる。
いかに高位の回復魔法とは言え、やはり制限下では致命の傷を治し切ることはできない。
真司はもう助からない。誰もがそう理解できた。
致命の傷を与えた当人、翠星石を除いて。
「え? …………な……ななな、なんでですか……? …………なんで真司がそこに居るんですか? 一体、何してやがるんですか……」
翠星石は震える声で真司に問い掛ける。
自分でも何を聞いているのかよく判ってはいない。
力無く横たわる真司は、それでも首を持ち上げて翠星石を見つめる。
そして最後の力を振り絞るように、翠星石へ手を伸ばそうとする。
瞬間、翠星石はそれに途轍もない恐ろしさを覚えた。
真司は、常に翠星石の傍らに居た。
殺し合いの恐怖。次々と人間が、そして姉妹が死んでいく過酷な状況。
それでも傍らに真司が居てくれたお陰で、翠星石はここまで来れたのだ。
支援
常に優しく翠星石を支えていた真司。
しかし今の真司は翠星石にとって、まるで怨みを抱えて現世に現れた亡者のごとく恐ろしげにうつる。
真司が口を動かし、声にならない声で語りかけようとしている様も、
まるで自分への呪詛を吐いているように翠星石には思える。
何故そんなに怨まれなければならないのか?
そんな覚えは無いはずなのに。
やがて真司の手は力無く地に落ちる。
身体中の一切の動きを止める真司。
少女を守ると誓った。
信じる正義のために戦った。
そして守ると誓った少女に殺された。
それが仮面ライダー龍騎・城戸真司の最期である。
真司はかつて劉鳳を殺している。
そして今度は劉鳳の仲間だった少女に殺された。
あるいは因果応報と言える最期であった。
しかし翠星石は真司の死に現実感が沸かない。
何故、真司が死ななくてはならないのか?
あれだけ優しくて強かった真司が。
――――本当は知っている癖に
自分の中で声がする。
しかしそんなはずが無い。
自分は真司が何故殺されたかなど、知る由も無い。
殺された?
何故殺されたと知っている?
――――誰が殺したか知っている癖に
本当は真司が誰に殺されたかを自分は知っている。
だから何故知っている?
――――翠星石が真司を殺した
嘘だ
嘘だ嘘だ
そんなの嘘だ
そんなことあり得ない
真紅も、蒼星石も、水銀燈もみんな翠星石を置いて死んでいってしまったのに、
この上真司まで死んでしまうなんて。
その真司の死が――――翠星石が起こしたものだなんて。
「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」
火の付いたような叫びを上げる翠星石。
うわ
翠星石自身は自分が叫んでいることも判らないほど狂乱していた。
あらゆる現実が内面で交錯していき、意識の焦点が定まらない。
やがて意識が全てホワイトアウトする。
「フッ、なんだこの様は?」
異様な叫びを上げていた翠星石、突然糸が切れたように倒れる。
その尋常では無い様を見て、シャドームーンだけが失笑を漏らす。
そしてサタンサーベルを構えた。
カシャ カシャ カシャ カシャ
「よくも世紀王を、ここまで下らない茶番に付き合わしてくれた物だ……相応の礼をせねばならんな」
「止めろ!! もう翠星石には何もできない! さっきも言ったはずだ! 脱出ができるのは翠星石だけなんだぞ!!」
「仕掛けてきたのはその人形の方だ。違うとは言わさん」
翠星石へ向かって歩き出すシャドームーン。
狭間の制止にも止まる様子は無い。
たとえ狭間でも、止めるには実力で当たるしかないだろう。
可能な限りシャドームーンを攻撃しないように。
そんな温いやり方で、シャドームーンを止めることが可能だろうか?
しかし最早、躊躇しているような間もなかった。
翠星石がサタンサーベルの間合いに入った。
狭間は身を挺して翠星石を守るべく、走り出す。
その進路を、艶のある光沢を放つ水晶によって遮られた。
鏡のごとく狭間の姿をきれいに映し出す、滑らかな水晶。
そんな水晶が、まるで植物のごとくに地面から生えてきたのだ。
シャドームーンの方を見ると、同じくように眼前の水晶に阻まれている。
水晶は翠星石を取り囲むように、何本も地面から伸びている。
その一本の先端に少女が居た。
薄い紫のドレスを着込んだ少女は、その体躯の小ささから、
翠星石と同じ人形だと判る。
そして狭間はその人形に見覚えがあった。
狭間は怒りを込めて、その名を呼ぶ。
「……薔薇水晶!!」
「私は主催側……あなたたちに危害は加えません……」
そう言い放ち、薔薇水晶は水晶の取り囲まれた空間に降り立つ。
足下には翠星石が倒れていた。
薔薇水晶の目的は翠星石。
翠星石は殺しあいの脱出者となるための条件を満たした。
『首輪を解除した上で、合計十二時間以上同行した参加者を殺害する。』と言う条件を。
従って案内役である薔薇水晶が、翠星石を迎えに来たのだ。
周囲の水晶は、あくまで自分と翠星石を保護するための物。
その水晶が、一斉に粉砕する。
「「二度も私の邪魔はさせん!!」」
狭間とシャドームーンが、同時に水晶を破壊したのだ。
「私は……翠星石を迎えに来ただけ…………」
「世紀王の邪魔立てをした者の命は無い。貴様らはまだそのことを理解していなかったらしいな」
「そいつは主催者側の存在だ!! 殺す前に聞き出すことがある!」
狭間は薔薇水晶が翠星石を連れて行くのを放置するつもりは無い。
シャドームーンも薔薇水晶を放置するつもりは無い。
二人は薔薇水晶に挑みかかる。
シャドームーンがビームを放つ。
飛行して回避する薔薇水晶。
そこへ狭間が凍結魔法を放つ。
大気を凍えさせ吹雪を作り出す凍結魔法は、
範囲が拡散して回避が難しい上、敵自身を凍結させて動きを封じる効果がある。
しかし地面から水晶を伸ばして吹雪を防ぐ薔薇水晶。
薔薇水晶の飛行を阻むことはできなかった。
その進路上に刃が奔る。
「逃しはせん!」
咄嗟に手中で形成した水晶の剣で防ぐが、飛行は停止。
刃は無限刃。更に贄殿遮那。振るうはジェレミア。
ジェレミアは薔薇水晶の進路を阻むように剣で攻め立てる。
薔薇水晶は応戦するが、ジェレミアを突破できない。
背後から狭間とシャドームーンが迫る。
『薔薇水晶、翠星石は構わないから、今すぐ帰還するんだ』
それはV.V.の声だった。
周囲一帯から聞こえる幼い声は、ちょうど放送の時と同じ要領で響き渡る。
それと同時に薔薇水晶の足下に低く水晶が生える。
「逃がすなジェレミア!!」
無限刃を薔薇水晶へ向けて突き立てるジェレミア。
しかし無限刃は虚しく空を切った。
薔薇水晶は無限刃の下、絵の具を不規則に混ぜ込んだがごとき混色を表す水晶面の中へと消えて行く。
「……nのフィールドか!!」
人形である薔薇水晶は、その気配からも翠星石と同種のローゼンメイデンだと狭間には推測している。
更にそこから翠星石と同様の能力を使って、nのフィールドへ侵入したと容易に推測できた。
薔薇水晶の姿が完全に消え去り、混色から滑らかな水晶面に戻る。
「シャドーフラッシュ!」
シャドームーンから放たれるキングストーンの光。
それに照らされた滑らかな水晶面が、再び混色に戻る。
「!!? シャドームーン、貴様もnのフィールドへ侵入できるのか!?」
「nのフィールドなど知らんな。だが、キングストーンを持つ者に侵せぬ領域など存在しない」
狭間の問いを適当にあしらいながら、シャドームーンはnのフィールドの中をマイティアイで透視する。
先刻に拡張したシャドームーンの空間干渉能力。
nのフィールドとて、一種の異空間であることには変わりは無い。
マイティアイで解析した薔薇水晶のnのフィールドへの侵入能力を、その空間干渉能力で模倣した。
しかし開いたnのフィールドへの入り口の中は、マイティアイでも見通すことは不可能だった。
「シャドームーン。首輪が貴様に嵌っている以上、そこに侵入するのは自殺行為だ」
「……創世王よ!! 二度も世紀王を邪魔立てするか!」
狭間に言われるまでも無く、首輪を嵌めたままnのフィールドへ入るのが危険であることくらい、シャドームーンも弁えている。
即ち薔薇水晶の追跡は不可能。
しかしシャドームーンの怒りは収まらない。
怒りが向かう先は、殺し合いの主催者。
主催者は二度もシャドームーンを侮辱してまで、殺し合いの駒にしようとしている。
「……シャドームーン。殺しあいを主催する者は、あくまで貴様の誇りを省みないつもりらしい。
仮に貴様が殺し合いに優勝したとして、そんな連中が貴様の立場を保障してくれると思うか?」
狭間の方へ振り返るシャドームーン。
狭間はいつの間にか翠星石をその手に抱いていた。
「翠星石は私が預かる。主催者を倒すまで、私が決して貴様に手出しはさせない。貴様が契約を受け入れればの話だがな……」
「フッ、できるのか貴様の力で?」
「ならば殺し合いを続けるか? 満身創痍で消耗も激しい貴様が、他の全てを敵に回して。
それで首輪を嵌めたまま殺し合いに優勝できれば、貴様は満足か?」
狭間の言う通り、シャドームーンの消耗はかなり激しい。
仮面ライダーとの戦いで、シャドームーンは死の寸前まで追い詰められていたほどなのだ。
それでも全ての敵を殺し得る自信。否、如何なる敵も必ず殲滅する自負はある。
しかし無謀な戦いを自覚できないほど、愚かでもない。
そもそも消耗が激しくなければ、始めから狭間の話を聞くシャドームーンではない。
余裕のあった時は夜神月の説得に耳を貸さなかったように。
しかしあの時とは消耗もダメージもまるで違う。
何より、あの時には無かった主催者への強い怒りがあった。
シャドームーンを何処までも駒として扱おうとする主催者への。
「……条件がある。V.V.の裏に居る創世王には誰にも手を出させるな。私が殺す」
「……了承した。V.V.の裏に黒幕が居れば、貴様に任せる。但しこちらからも条件を追加する。
それは貴様の首輪を解除しても、独断専行することは許さない。会場脱出や主催者の拠点へ侵攻する際は、必ず我々と足並みを揃えるんだ。
主催者との戦いは、あくまで我々との歩調を合わせた共闘で行うんだ。良いな?」
狭間の条件はシャドームーンの予想の範囲内だった。
狭間の目的は、要するにシャドームーンを自分たちの脱出に利用するつもりなのだから、
シャドームーンだけが会場を脱出して、自分たちは取り残される形になるのは避けたいはずである。
狭間の思惑を全て了解しながら、シャドームーンは自らの決断を言葉にした。
「いいだろう、その命は創世王を殺すまで預けておいてやる。貴様らに失望しない内は、な」
シャドームーンから発せられた、契約の了承する言葉。
苦心の末にようやくたどり着けた成果だった。
大きな犠牲を払っての成果だった。
結果の全てを喜ぶわけにはいかないが、契約を受け入れたシャドームーンに、
狭間の方から言わなければならない言葉があった。
「改めて紹介しよう。私は貴様の盟約者、魔人皇・狭間偉出夫だ。今後ともよろしく」
【城戸真司@仮面ライダー龍騎(実写) 死亡】
続きは次スレに投下したいと思います。
C
うめ
うめ
うめ
1001 :
1001:
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(_´∀`)_ 創る阿呆に見る阿呆!
/,/-_-_-_-_-_\ 同じ阿呆なら
( ( /,, /― ((神輿))―\ 創らにゃソンソン!! //
(。'。、。@,。,。,。,。,。,。,。,。,。,。,。@ ) )
∩ヽヽ∩ヽXXXXXXXX/ .∩
i||i ∩i||i:||::::¥_][_¥::::||. i||i
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/■/■\[/■ /■\/■\] /■\■\ 今度は新しいスレッドで
(´∀(匚二二( ´∀( ´∀( ´∀`).□´∀` )Д´)□ レッツ 創作発表!!
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