ここは様々な作品のキャラを使ってバトルロワイアルの企画をリレー小説で行おうというスレです。
みんなでワイワイSSをつないで楽しみましょう。一見さんも、SSを書いたことのない人も大歓迎。
初投下で空気が読めないかもしれない? SS自体あまり書いたことがなくて不安?
気にせずにどうぞ! 投下しなくちゃ始まりません。
キン肉マンのラーメンマン先生曰く「最後に勝負を決めるのは技(SSの質)ではない! 精神力だ! 心だ!」
リレー小説バトルロワイアル企画とは……
原作バトルロワイアル同様にルールなし、特定会場で最後の一人が生き残るまで続くという企画です。
キャラをみんなでリレーし、交わらせ、最後の一人になるまでリレーを行う、みんなで物語を作るスレです。
ここしか書けない、このキャラしか書けないという人も分かる範囲で書けるし、
次どうなるかを期待して次の人にバトンを渡すこともできます。
全ての作品を知りつくてしなければ参加できない企画ではないので、興味が沸いたらぜひ参加を!
詳細ルールに関してはこちらを
ttp://www44.atwiki.jp/tarowa/pages/13.html 〜予約、トリップについて〜
予約する際はトリップをつけてしたらばの予約スレに書き込んでおいてください。
トリップのつけかたは、名前欄に #の後に半角8文字以下、全角4文字以下の好きな言葉を打ち込んで書きこんで。
したらばに予約するのは、「他の人が書いてるから避けよう」という心理を利用し、予約だけして放置することで
企画を妨げる「予約荒らし」という行為を防ぐためです。予約期間は5日(120時間)ですが、
間に合わないからもうちょっと伸ばして!という報告があればさらに2日予約期間を追加(48時間)できます。
したらば(予約などいろいろな時にご利用を)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11918/ wiki(まとめサイトです)
http://www44.atwiki.jp/tarowa
★キャラクター能力制限★
・シャナ@灼眼のシャナ、C.C.@コードギアスは再生能力を落とす&急所(頭)をぶち抜かれたら即死。
・ルルーシュ・ランペルージ@コードギアスのギアス能力は、「死ね」「殺せ」など、 直接相手や自分の生死に関わる命令は無効。(「死ぬ気で頑張れ」などはあり)
・らき☆すたキャラのオタ知識、ラノベ知識は制限。
・仮面ライダー龍騎キャラのミラーワールドへの侵入禁止。
・ローゼンメイデンキャラのnのフィールドへの侵入は禁止。
・泉新一@寄生獣はミギー付き。
・COMP@真女神転生は禁止。
・シャナ@灼眼のシャナの封絶は禁止。
・雛見沢症候群@ひぐらしのなく頃には、まあ、空気読む方向で。
★支給品としてのアイテム制限★
・KMF@コードギアスなどのロボ系は禁止。
・仮面ライダー龍騎キャラには、自分のカードデッキを支給品枠2つ分としてカウントして支給。それ以外のキャラに支給される場合は支給品1つの扱い。
・デスノート@DEATH NOTEは禁止。
・サタンサーベル@仮面ライダーBLACKはシャドームーンから没収&世紀王の呼び寄せ禁止。
・カードデッキの変身は10分で解除。
・カードデッキは変身すれば1時間、ファイナルベントを使えば更に1時間使用不可となる。
3/6【コードギアス 反逆のルルーシュ@アニメ】
● ルルーシュ・ランペルージ/○枢木スザク/○C.C./ ● ロロ・ランペルージ/ ● 篠崎咲世子/○ジェレミア・ゴットバルト
1/6【ひぐらしのなく頃に@ゲーム】
● 前原圭一/○竜宮レナ/ ● 園崎魅音/ ● 北条沙都子/ ● 園崎詩音/ ● 北条悟史
1/5【スクライド@アニメ】
●カズマ/ ● 劉鳳/ ● 由詑かなみ/○ストレイト・クーガー/ ● 橘あすか
1/5【らき☆すた@漫画】
● 泉こなた/○柊つかさ/ ● 柊かがみ/ ● 高良みゆき/●岩崎みなみ
2/5【るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-@漫画】
● 緋村剣心/ ● 斎藤一/○志々雄真実/ ● 瀬田宗次郎/○雪代縁
2/4【仮面ライダー龍騎@実写】
○城戸真司/○北岡秀一/●浅倉威/ ● 東條悟
0/4【ルパン三世@アニメ】
● ルパン三世/ ● 次元大介/ ● 石川五ェ門/ ● 銭形警部
2/4【ローゼンメイデン@アニメ】
● 真紅/○水銀燈/○翠星石/ ● 蒼星石
1/3【ガン×ソード@アニメ】
○ヴァン/ ● レイ・ラングレン/ ● ミハエル・ギャレット
1/3【寄生獣@漫画】
● 泉新一/●田村玲子/○後藤
0/3【ゼロの使い魔@小説】
● ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール/ ● 平賀才人/ ● タバサ(シャルロット・エレーヌ・オルレアン)
1/3【バトルロワイアル@小説】
● 稲田瑞穂/ ● 千草貴子/○三村信史
0/2【相棒@実写】
● 杉下右京/ ● 亀山薫
1/2【仮面ライダーBLACK@実写】
● 南光太郎/○シャドームーン
1/2【真・女神転生if...@ゲーム】
● 男主人公/○狭間偉出夫
1/2【DEATH NOTE@漫画】
●夜神月/○L
1/2【TRICK@実写】
● 山田奈緒子/○上田次郎
1/2【バトルロワイアル@漫画】
● 織田敏憲/●桐山和雄
0/1【ヴィオラートのアトリエ@ゲーム】
● アイゼル・ワイマール
0/1【灼眼のシャナ@小説】
●シャナ
19/65
スレ立て乙です
桐山のところは申し訳ない、気付いてませんでした
でも横の数字が1/2のままになってる……
しまった失念してた
訂正:×1/2 ○0/2
0/2【バトルロワイアル@漫画】
● 織田敏憲/●桐山和雄
でした
スレ立て乙です
スレたて乙です。
スレ立て乙
狭間はもう立ち直っただろ! いい加減にしろ!
あれが最後の挫折であるとは思えない……
いずれ第二第三の挫折が狭間を襲うだろう……
知らなかったのか?挫折からは逃げられない。
お前らどんだけ狭間を凹ませたいんだ…!
ガ、ガーディアンらしきものも憑依してるから(震え声)
スザクならマーダーと相討ちを狙えるかも
まだ一波乱あるかな
仮予約が大型だし気になる
明日から人気投票だっけ
>>16 だね
123話 追うもの、追われるもの から144話 第三回放送 まで
>>15 仮予約スレ見たら超大型予約で吹いたwww
仮予約って二週間だっけ? すげー楽しみw
>>18 期間は細かくは決まってなかったはず
あれ生存者の半数以上だよな…
>>19 13/19のキャラが仮予約、これに主催陣営も入ってきて多ジャンルだともちろん最多のキャラ数
楽しみだなー、なんてレベルじゃねーぞ!www
第三回人気投票
123話[追うもの、追われるもの]〜145話[第二回放送]が対象になります。
6日は好きな話、好きな戦闘
7日は好きなキャラ、好きな死亡キャラです。
今回は投票したい話の候補が多くて悩む…
話数自体はがっつり減ってるというのに
死者スレまで気合入ってるなー
夜までに候補絞らないと…
好きな話だらけだから三つに絞らないといけないってのが辛いなぁ
これも嬉しい悲鳴ってやつなんだろうかw
今日の24時までだから時間過ぎちゃわないよう気をつけてー
死者スレ、死んでから出番皆無だったキャラにスポットが当たってていいね!
ついさっきまで気づかなかった
あと20分ー
寝過ごしてしまった…
死者スレ更新、用語集追記、乙です
多ジャンルロワは書き手、読み手から愛されてるなぁ
がんがれー。ちょうがんがれー
改めて読み返してて気づいたんだけど、鷹野に伝えられていた雛見沢ってこなたが思ってた「リセットボタン」を押されてた状態だったんだなw
投票スレの
>>77の人
ジェレミアはゴッ「ト」バルトなんだよ…w
あと四行目の続きが大変気になる
休め休め言われてる二人の戦績を調べてみた
・ストレイト・クーガー
○vsミハエル・ギャレット(ナイト)
○vs平賀才人
△vs斎藤一
●vs後藤
○vsジェレミア・ゴットバルト
●vs南光太郎
△vs後藤
●vsシャナ(ファム)
・ジェレミア・ゴットバルト
△vs雪代縁
△vs石川五ェ門
●vsストレイト・クーガー
●vs浅倉威(王蛇)
●vs後藤
○vsロロ・ランペルージ
△vs枢木スザク
勝敗に関しては割りと主観が入ってると思うので、これ違うんじゃねーの?と思ったところがあったらごめんなさい
まとめてて思ったけど、ジェレミアは一戦一戦のダメージがクーガーよりも重い気がする(特に浅倉、後藤)
クーガーは負傷というよりも疲労しているイメージ
ジェレミアの怪我と疲労はアイテム使ったり休んだりで回復するけど、クーガーはどうにもならない
ただし精神面だとクーガーが何があっても「それでも最速で」って開き直れるのに対して、ジェレミアは一つずつ確実に追い詰められてる
なおどっちがしんどいかって言ったらどっちもしんどい
74 名前:好きな話 結果発表[sage] 投稿日:2012/10/07(日) 00:14:37 ID:OyoOIBf20
1位
[134話 それぞれの行く先] 10点
2位
[140話 寄り添い生きる獣たち]5点
3位T
[131話 DEAD END(前編)(中編)(後編)] 4点
[138話 It was end of world(前編)(後編)]4点
5位
[127話 死せる者達の物語――Everything is crying , Don't be afraid of shade ,I continue to fight] 3点
6位
[143話 夢見るように目覚めて]2点
7位T
[139話 0/1(いちぶんのぜろ)]1点
[130話 運命の分かれ道]1点
75 名前:好きなバトル 結果発表[sage] 投稿日:2012/10/07(日) 00:16:58 ID:OyoOIBf20
1位
[144話 夜神月、水銀燈VSシャドームーン]12点
2位
[127話 ジェレミアVSロロ・ランペルージ]4点
3位T
[131話 翠星石、杉下右京VS浅倉威VS桐山和雄]3点
[140話 シャナ&玲子さんVS後藤]3点
[138話 石川五ェ門・デルフリンガーVS園崎詩音]3点
6位T
[127話 ジェレミア・ゴットバルトvs後藤]1点
[143話 ヴァンVS縁]1点
[138話 五右門&蒼嶋VS詩音VSスザク]1点
76 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2012/10/07(日) 00:19:01 ID:OyoOIBf20
好きな話、好きなバトルともに2位にダブルスコアをつけてのぶっちぎりの1位
大作の多い作品群の中でこれはスゴイ!
今日は好きなキャラ、好きな死亡キャラの投票です
123話[追うもの、追われるもの]〜144話[第二回放送]が対象になります
88 名前:好きなキャラ 結果発表[sage] 投稿日:2012/10/08(月) 00:22:46 ID:iYISs3AM0
1位
[シャドームーン]7点
2位T
[狭間偉出夫]6点
[L]6点
[ヴァン]6点
5位T
[岩崎みなみ]5点
[上田次郎]5点
[竜宮レナ]5点
[ジェレミア・ゴットバルト]5点
9位T
[北岡秀一]3点
[桐山和雄]3点
11位T
[カズマ]1点
[柊つかさ]1点
[雪代縁]1点
89 名前:好きな死亡キャラ 結果発表[sage] 投稿日:2012/10/08(月) 00:23:33 ID:iYISs3AM0
1位
[南光太郎]11点
2位
[石川五エ門]9点
3位
[杉下右京]6点
4位
[蒼嶋駿朔]5点
5位T
[泉こなた]4点
[ルパン三世]4点
[夜神月]4点
[アイゼル・ワイマール]4点
[田村玲子]4点
10位
[ロロ?ランペルージ]2点
11位T
[蒼星石]1点
90 名前:名無しさん[sage] 投稿日:2012/10/08(月) 00:26:57 ID:iYISs3AM0
好きなキャラ投票はシャドームーンが微差でトップ!
しかもなんと2位は3人が同列に並ぶ混戦、第三回放送を迎えて魅力が前面に出てるキャラが多いということか
死亡キャラ投票では、南光太郎がぶっちぎりのトップ
自身の死亡SSである[134話 それぞれの行く先]が好きな話投票で1位を獲得したことからもその人気の高さ伺える
これから終盤を迎えつつある多ロワがどうなるか楽しみです
人気投票結果を転載させていただきました
改めて集計をした方、お疲れ様です
何気に今回のキャラ投票で初めてひぐらしが票とってるんだよな
しかし死亡者に詩音は入らなかったという
ひぐらしェ…orz
前のスレに貼られてた作品別累計投票結果
1位 【るろうに剣心】 23点
2位T【スクライド】 20点
2位T【仮面ライダー龍騎】 20点
4位 【相棒】 19点
5位 【寄生獣】 16点
6位 【仮面ライダーBLACK】 14点
7位 【コードギアス 反逆のルルーシュ】 13点
8位T【らき☆すた】 12点
8位T【ガン×ソード】 12点
10位 【TRICK】 11点
11位 【ルパン三世】 7点
12位 【バトルロワイアル(小説)】 6点
13位T【ローゼンメイデン】 5点
13位T【バトルロワイアル(漫画)】 5点
15位 【ゼロの使い魔】 4点
16位 【真・女神転生if...】 3点
17位 【ヴィオラートのアトリエ】 2点
18位T【ひぐらしのなく頃に】 0点
18位T【DEATH NOTE】 0点
18位T【灼眼のシャナ】 0点
こっちが二十位までの総合キャラクター結果
1位 東條悟 15点
2位 シャドームーン 14点
3位 泉新一 10点
4位T 柊つかさ 9点
亀山薫 9点
斎藤一 9点
7位 杉下右京 8点
8位T 劉鳳 7点
ルルーシュ・ランペルージ 7点
瀬田宗次郎 7点
11位T カズマ 6点
上田次郎 6点
レイ・ラングレン 6点
14位T ストレイト・クーガー 5点
志々雄真実 5点
次元大介 5点
ミハエル・ギャレット 5点
山田奈緒子 5点
真紅 5点
19位T 後藤 4点
北岡秀一 4点
1位 【仮面ライダーBLACK】 32点
2位 【相棒】 25点
3位 【るろうに剣心】 24点
4位 【仮面ライダー龍騎】 23点
5位 【らき☆すた】 22点
6位 【スクライド】 21点
7位T【コードギアス 反逆のルルーシュ】 20点
7位T【寄生獣】 20点
7位T【ルパン三世】 20点
10位 【ガン×ソード】 18点
11位 【TRICK】 16点
12位 【真・女神転生if...】 14点
13位 【DEATH NOTE】 10点
14位 【バトルロワイアル(漫画)】 8点
15位T【バトルロワイアル(小説)】 6点
15位 【ヴィオラートのアトリエ】 6点
17位T【ローゼンメイデン】 5点
17位T【ひぐらしのなく頃に】 5点
19位 【ゼロの使い魔】 4点
20位T【灼眼のシャナ】 0点
更新してみた
BLACKがずっと影月のワンマンとか言われてたけど、てつをに人気出たせいでとんでもねぇことになってんぞ
シャナェ…
1位 シャドームーン 21点
2位 東條悟 15点
3位 杉下右京 14点
4位T南光太郎 11点
4位T石川五ェ門 11点
4位T上田次郎 11点
7位T泉新一 10点
7位T柊つかさ 10点
9位T亀山薫 9点
9位T斎藤一 9点
9位T狭間偉出夫 9点
12位Tジェレミア・ゴットバルト 8点
12位T北岡秀一 8点
14位T劉鳳 7点
14位Tルルーシュ・ランペルージ 7点
14位T瀬田宗次郎 7点
14位Tカズマ 7点
14位Tヴァン 7点
19位T岩崎みなみ 6点
19位Tレイ・ラングレン 6点
19位TL 6点
19位T田村玲子 6点
19位Tアイゼル・ワイマール 6点
22位Tストレイト・クーガー 5点
22位T志々雄真実 5点
22位T次元大介 5点
22位Tミハエル・ギャレット 5点
22位T山田奈緒子 5点
22位T真紅 5点
22位T竜宮レナ 5点
集計乙です
東條が予想外の高得点でワロタ
5点以下ミス確認により訂正
24位Tストレイト・クーガー 5点
24位T志々雄真実 5点
24位T次元大介 5点
24位Tミハエル・ギャレット 5点
24位T山田奈緒子 5点
24位T真紅 5点
24位T竜宮レナ 5点
24位T蒼嶋駿朔 5点
24位T桐山和雄 5点
33位T後藤 4点
33位T泉こなた 4点
33位Tルパン三世 4点
33位T夜神月 4点
37位T織田敏憲 3点
37位T平賀才人 3点
37位T枢木スザク 3点
37位T雪代縁 3点
37位T稲田瑞穂 3点
42位Tロロ・ランペルージ 2点
42位T千草貴子 2点
42位T橘あすか 2点
45位T三村信史 1点
45位T小早川ゆたか 1点
45位T柊かがみ 1点
45位T緋村剣心 1点
45位T城戸真司 1点
45位T蒼星石 1点
45位Tタバサ 1点
浅倉に一票も入ってないのは意外だと思った
そして東條の得点高すぎィ!
44見ると上位十人が(特撮含めた)実写勢なんだなw
書き間違えた、上位十人のうち半分近くが
48 :
創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 07:18:49.28 ID:ruOawh48
シャ、シャナは次の投票での死亡キャラ投票で票が入るだろうから……
しっかし、候補が限られてるはずの死亡者投票で誰一人入らないひぐらし勢は逆にすごい
ちなみに各死亡者投票で票が入らなかったキャラはこんな感じ
第一回(17人中6人)
ルイズ、銭型、みゆき、魅音、沙都子、悟史
第二回(12人中2人)
圭一、咲世子
第三回(13人中2人)
詩音、かなみ
入らない方が確率的に相当低いというのにこの結果とは…
ちなみに右京さんの総得点は16だな
前回8点ってなってるのが第1回の2点を数え忘れてて本当は10点だから
あ、あとローゼンの総票は6だな
とりあえずいくつかミスあったんで改めて作品、キャラの得点を載せてみる
1位 【仮面ライダーBLACK】 32点
2位 【相棒】 25点
3位 【るろうに剣心】 24点
4位 【仮面ライダー龍騎】 23点
5位 【らき☆すた】 22点
6位 【スクライド】 21点
7位T【コードギアス 反逆のルルーシュ】 20点
7位T【寄生獣】 20点
7位T【ルパン三世】 20点
10位 【ガン×ソード】 18点
11位 【TRICK】 16点
12位 【真・女神転生if...】 14点
13位 【DEATH NOTE】 10点
14位 【バトルロワイアル(漫画)】 8点
15位T【バトルロワイアル(小説)】 6点
15位T 【ヴィオラートのアトリエ】 6点
15位T【ローゼンメイデン】 6点
18位【ひぐらしのなく頃に】 5点
19位 【ゼロの使い魔】 4点
20位 【灼眼のシャナ】 0点
1位 シャドームーン 21点
2位 杉下右京 16点
3位 東條悟 15点
4位T南光太郎 11点
4位T石川五ェ門 11点
4位T上田次郎 11点
7位T泉新一 10点
7位T柊つかさ 10点
9位T亀山薫 9点
9位T斎藤一 9点
9位T狭間偉出夫 9点
12位 ジェレミア・ゴットバルト 8点
13位T北岡秀一 7点
13位T劉鳳 7点
13位Tルルーシュ・ランペルージ 7点
13位T瀬田宗次郎 7点
13位Tカズマ 7点
13位Tヴァン 7点
19位T岩崎みなみ 6点
19位Tレイ・ラングレン 6点
19位TL 6点
19位T田村玲子 6点
19位Tアイゼル・ワイマール 6点
24位Tストレイト・クーガー 5点
24位T志々雄真実 5点
24位T次元大介 5点
24位Tミハエル・ギャレット 5点
24位T山田奈緒子 5点
24位T真紅 5点
24位T竜宮レナ 5点
24位T蒼嶋駿朔 5点
24位T桐山和雄 5点
33位T後藤 4点
33位T泉こなた 4点
33位Tルパン三世 4点
33位T夜神月 4点
37位T織田敏憲 3点
37位T平賀才人 3点
37位T枢木スザク 3点
37位T雪代縁 3点
37位T稲田瑞穂 3点
42位Tロロ・ランペルージ 2点
42位T千草貴子 2点
42位T橘あすか 2点
45位T三村信史 1点
45位T小早川ゆたか 1点
45位T柊かがみ 1点
45位T緋村剣心 1点
45位T城戸真司 1点
45位T蒼星石 1点
45位Tタバサ 1点
集計乙ー
上田先生は生存キャラの中だと影月に次ぐ2位か
これが大学教授の威光……
これは上田先生vs影月の夢の共演がくるでー……
集計乙ですー
やっぱりミスあったか……申し訳ない
上田が後藤と影月と一緒になぜベストを尽くさないのか!と叫んでいる画像をください!
上田「なぜベストを尽くさないのか!はいっ!」
2人「なぜベストを尽くさないのか」
「もっと大きな声で!!なぜベストを尽くさないのか!」
「なぜベストを尽くさないのかっ!!!」
やはり優勝は上田か…
投票結果や用語集見て思ったけど、東條ってホントに人気なんだな……
影月右京さんの次が東條とかにわかに信じられん
死に方にインパクトあったからなー
人気っつっても「こいつ好き」より「ざまぁwwwww」って感じだと思うが
白化が見えてたところのマーダー転向とかマジキチ理論とかみぎゃーとの絡みが明らかに宗教&ちょっとホモくさかったりと、
とにかく第一回放送後半〜第二回放送中盤までの間のインパクトは強かったからなぁw
>>65 うちで一番情けない死に方した奴を挙げることになったら多分こいつ挙げるな
そう言えば山火事ってどうなったかな?
最近の投下では描写が無かった気がするけど
大半の参加者が市街地にいるから山関係ないし、描写する必要がないんじゃね?
龍騎の小説版キター!!
ちなみに著者は井上敏樹
おおっ
1月31日か
めっちゃ楽しみだわ
誰が達磨になるのかねぇ……
予約来てるぞ!
敏樹が小説で書く東條がどんくらいヤンデレか…期待
そもそも東條が登場するかわからないけど
書き込んだ後にダジャレ思いついた
東條自体が登場するかわからないけど
↓
東條じ『タイガ』『とうじょう』するかわからないけど
こう書き込むべきだった…orz
わー 面白ーい
?
三村さんマハブフストーン投げるのやめてください
仮予約のほうはどうなってるんだろう?
しかしあれを合わせると予約2つかw これは豪勢だw
北岡秀一、ジェレミア・ゴットバルト、柊つかさ、竜宮レナ、主催陣営、城戸真司、翠星石、ストレイト・クーガー、志々雄真実、三村信史、ヴァン、C.C.、狭間偉出夫を投下します。
携帯からの投下なので時間が掛かるかとは思いますが、どうかよろしくお願い致します。
支援
支援
支援
戦闘に次ぐ戦闘、決着に次ぐ決着。
手に汗を握る戦いの後に訪れるのは“静”の時間。
弾丸飛び交うわけでなく、血飛沫舞い散るわけでない小休止。
舞台の上に立つ彼らが得た、束の間の休息の時。
これは戦いの幕が下りた後の、幕間の物語。
再び幕が上がるまでの、取るに足らない物語。
▽
幕間劇1
放送が始まると、C.C.はヴァンにバイクを停めるよう指示した。
しかし二人ともバイクから降りる事はなく、C.C.はヴァンの背中を下敷き代わりにして必要な事柄をメモしていく。
そして放送の終了と共に溜息を吐いた。
生存者、残り二十四名。
想像以上に殺し合いが進んでいる。
死者の内訳も、C.C.の気分を重くした。
あの坊やが死んでから半日経ったのか――という感傷は振り払い、目先の事を考える。
直接関わった蒼嶋駿朔、杉下右京、ルパン三世。
元からの知り合いであるロロ・ランペルージ。
右京と合流予定だったという南光太郎、カズマの探し人の由詑かなみ。
岩崎みなみの同級生の泉こなた。
ルパンの仲間である五ェ門と月、田村玲子。
蒼星石はレナが初めて出会った参加者である真紅の姉妹にあたり、詩音もレナの友人だ。
C.C.はアイゼル・ワイマール以外の全ての名前を聞き及んでおり、いずれも協力者足り得る相手だと認識していた。
特に蒼嶋の死がC.C.を焦燥させる。
レナの名前は呼ばれなかったが、何らかの戦いに巻き込まれた事は想像に難くない。
考えるうちに、進行方向――東で轟音が響く。
更に建物の上空に見えた白い影は、ミラーモンスターであるダークウイングとどこか似て見えた。
戦闘が起きている。
放送の一件もあり、レナがそこにいる可能性を考えて背筋が寒くなった。
それでも感情を殺し、表情を隠して平静な声を作る。「ヴァン、行くぞ――……?
おいヴァン、もう出発していいぞ」
しかしバイクが走り出す気配がない。
「おい――」
「動かない」
「は?」
短く告げられた事実に耳を疑う。
ヴァンの背後から覗き込めば、バトルホッパーのライトが不自然に明滅していた。
エンジンの立てる奇妙な音は、啜り泣きに似ている。その音は「ライダー」と呼び掛けているようにも聴こえた。
「……何だ、お前も誰かに死なれたのか?」
バイクに意思があるわけがないと思いながら、半ば自嘲するように言う。
ライトが一際目立って明滅する中、ヴァンは拳を握ってエンジンに軽くぶつけた。
「だとしても、俺達は急いでるんだ。
分かってるだろ」
ヴァンがどこまで本気で言っているのか分からなかった。
だがそのうちに明滅は収まり、エンジンが正常に掛かる。
突然の不具合の原因も知れないまま、ヴァンは意に介さずにバイクを走らせた。
支援
支援
緋色の空に立ち上る紅蓮の炎。
ヴァンとC.C.が到着した時には全てが終わっていた。その場にいたのは五人、武器を持つ者はいても構えている者はいない。
レナの姿はなかったが、代わりに見覚えのある顔を見付ける。
地べたに座り込んだ茶髪の男と、それに寄り添うように佇む小柄な少女だ。
「お前達は……あの時車で寝ていたな。
確か城戸真司と、翠星石。
右京から私達の事は聞いているだろう?」
茶髪の男――真司は力なく頷いた。
到着したタイミングは、良かったとは言えないようだ。
真司の目の前にある消し炭は、大きさからして元は人だったのだろう。
事情を聞こうとバイクから降りて真司に近付くが、その間に学ランの少年が割り込んだ。
「あんた、最初の会場でV.V.に突っ掛かってたよな」
既に何度目かになる指摘にC.C.は足を止める。
鬱陶しげに長い髪を掻き上げて、自分よりも背の高い少年に見下すような視線を向けた。
「確かに私はV.V.を知っている、持っている情報をお前達に渡してもいい。
だが、どうやら取り込み中らしいな?」
包帯の男とこの少年は随分余裕のある表情をしている。
対する残りの三人の表情は厳しく、両者の間にある溝は明らかだった。
面倒なゴタゴタに関わる気はない、情報が欲しければさっさと場を纏めろ。
暗にそう示しながら見ていると、真司が立ち上がった。
「なぁ……重要な話があるっていうのは、本当なのか?」
「ああ、とっておきの情報だ」
少年にそれを確かめると、真司は耐えるようにグッと歯を食い縛る。
真司一人なら我を通せても、翠星石がいる以上どこかで妥協せねばならないのだろう。
「分かった」と真司が震える声で言うと、包帯の男は笑みを深めた。
「決まったな、まずは移動しよう。
こっちとしては、地図に載ってる施設に行きたいんだが」
場の主導権を握っているのはこの少年らしい。
ここから近いのは図書館か、総合病院か――そう候補を挙げたところでC.C.が口を挟む。
「西からシャドームーンが向かっている。
戦闘を避けたければ相応の場所を選んだ方がいいだろうな」
シャドームーンの名前に真司と翠星石が反応する。
他の三人には心当たりがないようだったが、『強力な危険人物』という点は伝わったようだった。
見たところ五人とも万全の状態には程遠く、一番余裕があるのが一番重傷に見える包帯の男だという奇妙な状態だ。
反対する者はおらず、総合病院に向かうという事で話が決着した。
サングラスの男が消し炭となった死体の傍らにあったデイパックを拾い上げ、真司に投げ渡す。
弔いさえ出来ない事に未練があるのか、一同が歩き出してからも真司は何度もその場所を振り返っていた。
▽
ヴァンとC.C.という二人の新たな参加者の訪れは幸運だった。
総合病院へ向かう道中、互いの名前だけの簡単な自己紹介を頭に入れながら三村は思う。
ずっと探していたV.V.の関係者で、赤いライダー――城戸真司と知り合いのようだった。
貴重な情報源であり、殺し合いに乗っていないと証明する手間も省けた。
それにあのまま五人だけで話していては真司と志々雄が決裂していたかも知れない。
人が増えた事で空気が変わり、話し合いに持ち込みやすくなった。
そう、話し合い。
「この場にいる五人を気絶させ、その間に首輪を解除する」のではない。
三村は元々穏便に済ますつもりでいるがそれ以上に、志々雄にその気がないからだ。
志々雄がここにいる五人に負けるとは思えない。
支援
支援
支援
真司、クーガー、翠星石の三人は満身創痍でヴァンも負傷しており、C.C.は聞いた限りでは不死以外の能力はない。
しかし志々雄は初めからここで戦闘をする気はないようだった。
思えば、今回だけではない。
ロロ。
後藤二回。
シャナ。
これまでの戦闘で、志々雄は戦いを「仕掛ける」が「深追いをしていない」のだ。
カードデッキには時間制限があるが、志々雄はデッキ無しでも充分強い。
それなのに敵を執拗に追い掛け回すような真似はしない。
今回もシャナは殺害に至ったが、それ以外の面々に対してはどうも「戦って気絶させる」という選択を想定していなかったようだ。
好戦的な志々雄にしては、随分穏当な手段を選んできているように思う。
そこで三村は一つ、考えた。
『志々雄は連続戦闘が出来ないのではないか』
主に対して失礼な仮説。
しかしもしも強大な力を持つ志々雄にそんな弱点があるのだとすれば、それを補ってこその犬だ。
この状況で如何に話を志々雄に有利に進めるか、それだけを目的に三村は思考する。
今の三村にとっての光の照らし出す方に、開かれた未来を目指すように。
既に日が落ちた宵闇の中、半壊した病院は独特の不気味さを纏ってそこにあった。
そこかしこに鎮座する瓦礫に広がる血痕、崩れた壁からは鉄骨が突き出している。
首輪を解除するなら人が多い方がいい――とは思っていたものの、既にジェレミアとつかさはここを離れたようだった。
まずは体力の残っているヴァンとC.C.、三村が簡単に見て回り、端末を探し出してネットに接続出来る事を確認。
そして霊安室の扉を開き、四人の遺体を発見した。
そこで三村が感じたのは恐怖でも悲しみでもなく、呆れだった。
(……あの後、アイゼルの死体を運んだのか)
数時間前に病院を訪れた、その際に得られた情報を反芻する。
後藤、志々雄、三村、クーガーという面々が去った後、残っていたのはジェレミアとつかさのみ。
怪我人と女子高生だけでわざわざ死体を移動させて弔った、その行為を三村は『無駄』と判じたのだ。
(志々雄が配下に入れたがらなかったのも分かるな……)
そう思える程度に、志々雄の『教育』は三村の中に浸透していた。
霊安室の扉を閉ざす。
生きた参加者が居ないのなら、それ以上そこに用はなかった。
施設の中に人がいない事を確かめた後、一同は二階のエレベーターホールに集まった。
クーガーによれば、朝方にここで大人数の情報交換を行ったらしい。
電気はまだ通っていたものの肝心の蛍光灯の大半が割れており、明かりはランタンに頼らざるを得なかった。
ただし真司やクーガーの体力は限界に近く、三村が本題に入るのを後回しにして暫しは雑談に留める事にする。
各人が破壊を免れた椅子に腰掛け、思い思いに休息を取る。
そんな中で、翠星石が席を立った。
「先に確かめておきたい事があるです」
そう言って翠星石は座っていた真司の手を引き、ホールの片隅に置かれた鏡の前に立つ。
人一人が裕に全身を映せる程の大きさの鏡。
横一直線に亀裂が走っていたが、それでも翠星石の姿を映すには充分だった。
それから翠星石が鏡に向かって一歩踏み出し――その足を下ろす前に、元の位置に戻した。
翠星石はきょとんとした顔をし、再び踏み出しては戻す。
「何してるんだ?」
三村の気持ちを代弁するように真司が問う。
翠星石はその声に振り返らないまま答えた。
「……翠星石を、後ろから押せです」
「は?」
支援
「いいから押すです」
翠星石以外の全員が怪訝な顔を浮かべる。
それでも真司は言われるままにその背を押した。
「い、いぃぃ嫌ですっ、触るなですぅうう!!!」
「いってぇ!?」
突然、翠星石が藻掻くように抵抗を始めた。
振り返って真司の頬をはたき、息を弾ませる。
呆然とする真司を見て、翠星石もハッとして口元を押さえる。
「ち、ちが、これは……」
慌てて言い繕う翠星石――その襟を、志々雄が背後から掴み上げた。
「!!? は、離っ……」
翠星石が驚愕して暴れるが、志々雄への恐怖が勝って本気で殴る事も出来ないようだ。
真司やクーガーが目を剥いて止めようとしたが、志々雄はそれを意に介さない。
志々雄が翠星石を鏡の中に放り込もうとすると、翠星石は眼の色を変えた。
志々雄の腕に、翠星石が如雨露を叩き付ける。
叩き付けようと、した。
だが志々雄はそれより前に手を離し、翠星石は床に落下する。
「きゃっ……」
真司がその体を受け止め、体を打つのは免れた。
だが真司は志々雄に向かって強く睨む。
「おい、お前――」
「この嬢ちゃんには鏡の中に入る力がある。
にも関わらず入れない、入ろうとすると自分の意思に反して拒んじまう。
確かめたかったのはこんなところか?」
別に翠星石を傷付けるつもりで手を出したわけではない――それを示すように志々雄が確認を取る。
それは的を射ていたようで、呆気に取られていた翠星石も素直に頷いた。
「この会場に連れて来られてからずっと、nのフィールドに入れないのです。
鏡の前に立つと入りたくなくなって……」
nのフィールド。
その単語に三村は息を飲んだ。
あのサイトに列挙されていた項目の一つ、『nのフィールドの危険性』。
殺し合い脱却の手掛かりがあるかも知れない単語だ。
しかし翠星石の言わんとしている事は何となく分かるものの、原因が分からない。
三村も考え込むが、C.C.があっさりと答えを出した。
「ギアスだな」
一同の視線が翠星石からC.C.へ移る。
確かにギアスがつかさから聞いた通りのものであれば、人の精神に干渉出来るはずだ。
志々雄も顎に手を当てて頷く。
「成る程な。
もしそうなら、ジェレミアのぎあすきゃんせらあとやらを使えばそこに入れるようになるってわけだ」
しかしC.C.の返事は、完全に予想外のものだった。
「キャンセラー……?
何だそれは」
時間が止まったような沈黙。
三村だけでなく、志々雄もクーガーも面食らったようだった。
「ギアスを解除する?
そんな都合のいい能力があるはずがないだろう。
しかも、選りに選ってジェレミアだと?」
「待て待て、あんたはジェレミア卿の仲間だろ?」
苛立ちを露わにするC.C.に対し、クーガーが会話に割って入って言う。
だがそれは火に油を注ぐ結果となった。
支援
支援
支援
「誰が仲間だ!!
確かに知ってはいるが、あいつのせいで私がどれだけ迷惑を被ったと……!」
話が全く噛み合わない。
ヒントが見付かったという興奮から一転、三村は頭を抱えた。
C.C.の話を纏めれば。
ジェレミアと最後に接触したのは一年前、顔の半分に奇妙な機械を装着していた、仮面ではない。
支離滅裂な言動でルルーシュごと追い掛け回された末に、面倒だったので海中に押し込んでやった。
その後ジェレミアは嚮団に回収された可能性がある。
『ゼロ』を恨んではいたが極端な保守派である純血派を率いていたので、その正体がルルーシュと知れば従うかも知れない。
なおC.C.自身は嚮団の殲滅について全く知らない、あり得ない。
ギアスをキャンセルする能力も聞いた事がない。
三村がつかさ経由で知ったジェレミアの情報と一致する部分もあれば食い違う部分もある。
一番納得出来ずにいるのは、直接ジェレミアと話した事があるクーガーだった。
「そういうたちの悪い冗談は通じないタイプだと思うんですけどねぇ」
「ならば、冗談を言っているのは私か?」
「いやいやそうは言いませんがね」
クーガーとC.C.が緊迫した空気を纏う中、志々雄が顎で三村の方を指す。
「三村、仮説を挙げてみろ」
「あいよ」
埒があかないと思ったのだろう。
無茶を言ってくれる、と悪態をつきたくなるものの、こうなる事は想像していたので諦める。
三村は少し間を空けて考えを纏めてから、口を開く。
「仮説一つ目。
C.C.か、ジェレミアか、もしくは二人とも記憶を操作されてる可能性だ。
C.C.はV.V.の関係者なんだ、喋られたら困る情報があったのかも知れない。
記憶の混乱を起こして誤解を生んで、そこから殺し合いを加速させる……なんてのもあるかもな」
「まさか、出来るわけが」と言い掛けてC.C.は口を噤む。
頭から否定出来ない程度の信憑性はあるようだった。
ただしこれ一つでは志々雄が納得しないだろうと、他の仮説も捻り出す。
「この会場にいる参加者は色んな世界から集められてる……これは共通認識でいいよな?」
前提を確かめると、五人それぞれに心当たりがあるようで頷かれた。
「シンプルに考えれば、C.C.が知るジェレミアと参加者のジェレミアは別人。
これが仮説その二だ」
エリア11にブリタニア、大東亜共和国、エンドレスイリュージョン――違いすぎるせいで、感覚が麻痺している。
もっと近似した世界、同じ顔と名前の別人が生きる別世界があるかも知れない。
パラレルワールドという言葉を使った方が説明が楽なのだが、志々雄にこれを教えるのは逆に面倒なので避けた。
「で、仮説その三だが……参加者間で違うのは世界だけじゃない。
志々雄は何と明治時代に生きてたらしいぜ、西暦で言ったら一八七八年。
世界どころか時代までバラバラってこった」
明治時代、という言葉で一同の表情が驚愕の色に変わる。
ヴァンだけは舟を漕いでいる――初めから話を聞いていないようなので無視する。
「時代っつうと分かりにくいけど、時間だ。
時間がバラバラ……もしかしたらC.C.は将来、ジェレミアと仲間として再会するのかも知れない。
で、C.C.は再会する前の時代――時間から。
ジェレミアは後の時間から来た」
一通り説明し、息継ぎをする。
荒唐無稽は今に始まった話ではないのだから、笑い飛ばされる事はないはずだ。
実際、「筋は通っている」という事でC.C.やクーガーも落ち着いたようだった。
仮説二か三なら本人達が嘘を吐いているのでも記憶を弄られているのでもなく、受け入れやすいだろう。
「さて……改めて、少し休んだらどうだ?
このままじゃ本題どころか普通の情報交換も出来ないだろ」
C
支援
支援
ここで大切なのは正解となる仮説を考える事ではなく、揉めている連中を納得させて大人しくさせる事。
その意味で三村の思惑通りの結果になっていた。
▽
暫しの休憩で一同の息が整った頃。
志々雄と三村、クーガー、C.C.が中心となって、休憩を兼ねながら情報交換を行っていた。
真司は聞かれた限りの事を答えながら、頭では別の事を考えている。
――誰も死なせない、誰も殺させない……誰も、泣かせたりなんかしない!
――お前がこのままだったら、きっとここから人がまた消えてしまう!
――もうここから消えてしまう人なんて出さない!
――それが俺の『正義』だ!
気付けば情報交換は終わり、三村の言う『本題』までまた少し時間を置く事になったようだった。
悩んで迷っていられるのも、ここが最後だろう。
「クーガー、少し……いいか」
真司はクーガーに対してそう切り出す。
振り向いたクーガーの顔色は悪く億劫そうではあったが、浮かべる表情は真剣だった。
「俺……分からないんだ。
どうすればいいのか……どうすれば良かったのか……」
「俺に相談するもんかねぇ……俺だって散々取り零してる真っ最中だってのに」
自嘲するクーガーだったが、話を聞く姿勢は見せてくれた。
神崎優衣の為に全てのライダー――北岡や浅倉、東條、それ以外も全員を倒すと決めた。
殺すと決めた。
しかし結果は無関係の劉鳳の死。
それからずっと戦ってきたが、何も変えられなかった。
新一とミギーが死んだ。
蒼星石とこなたと右京とかなみが死んだ。
放送では光太郎の名が呼ばれたという。
シャドームーンは倒せず、桐山や浅倉は止められず――そして、シャナが殺された。
ライダーを殺すという決意が半端だったように、何もかも半端なまま失った。
人を守る為にライダーになった、はずなのに。
これまでの事は、情報交換の中で全て話した。
だから真司はただ真っ直ぐに思いを吐露する。
「俺は、何も出来てない……劉鳳さんの意思を継いだのに!!
これじゃ、何にもしないのと同じだ……!」
握った拳が震える。
しかしそれを聞いたクーガーは余裕の表情を見せた。「あのなぁ……劉鳳が完璧な男だったと思うか?
早とちりするわ一人で突っ走るわ人の話を聞かないわ、お前と良く似た大馬鹿野郎だぞ」
肩を微かに揺らし、苦笑する。
「で、お前さんは俺に何を言って欲しいんだ?
俺が『もっと頑張れ』つったら頑張って、『もういい休め』っつったら休むのか?」
「っそ、それは……」
言い澱む真司に対し、クーガーは畳み掛けた。
「俺はそれでも最速で走り抜くと決めている、俺の魂を信じている」
黒い、胡散臭いとも言えるサングラスを外す。
弱り切っているはずなのに、真司に向ける目は鋭く力強い。
「お前はどうなんだ、城戸。
お前はどうしたいんだ。
走りたいのか、走りたくないのか、何も出来ないまま死にたいのか」
支援
「俺はっ……」
――善悪の問答をするつもりはないけど、この世に生きる存在にとってはそれこそが『正義』なのよ。
――所詮、コイツは弱かったのさ。俺が殺さなくても誰かが殺したさ。
――結局、人は死んでるだろ?
気持ちを吐き出す。
シャナの言葉に、志々雄の言葉に、三村の言葉に、押さえ付けられていた言葉を絞り出す。
「それでも、守りたいんだよッ!!」
怒声に近いその声に、会話に参加していなかった面々まで振り返った。
それに構わず、真司は息をついてクーガーを見据える。
クーガーはそれを見て満足気に笑みを深めた。
「何だ、最初から決まってるんじゃねぇか。
俺もお前も、バカは考えずにただ行動するだけ……ってな」
言って、座り直して真司に背を向けた。
(そうだ……俺は……)
叫んだ言葉を反芻する。
気付くと、隣には翠星石が座っていた。
「真司」
一瞬間があった。
翠星石に名前を呼ばれるのは初めてかも知れない。
「翠星石は、お前がいなかったらもう死んでるです」
翠星石の言葉を聞きながら、真司は呆然としてしまった。
真剣だった翠星石の表情はやがて赤く頬が染まり、真司から目を逸らす。
「お、お前が翠星石の事を忘れているみたいだったから、思い出させてやっただけですぅ……」
頬を膨らませ、それからふっと表情を消した。
「お前がいつまでも落ち込んでいたら……危なっかしくて、翠星石がへこんでられないです。
迷惑ですぅ」
真司がハッとして息を飲み込む。
真紅を、そしていつも一緒にいた双子の姉妹である蒼星石を失った。
それに劉鳳、新一、こなた、右京、かなみ、シャナ、光太郎――真司にとっての喪失は、ずっと同行していた翠星石にとっての喪失でもある。
L達と別れた後に泣いていたが、それも僅かな時間だった。
落ち着く暇もなく戦いに巻き込まれ、ここにいる。
泣いたぐらいで、休んだぐらいで、立ち直れるはずがない。
そこまで気付いてやれなかった事を恥じ、「ごめん」と謝った。
「だ、だだ、だから、とっととシャキッとしろって事ですぅ!!」
高さの合わない椅子に無理矢理座り、足をぱたぱたと揺らす少女。
翠星石なりの不器用な気遣いと子供らしい仕草に、真司は思わず笑みを零した。
「な、何を笑ってやがるですか!!」
「いや、悪い……わざとじゃないんだ」
やかましくがなる翠星石の頭に手を置く。
「守るよ。
劉鳳さんの代わりとかじゃなくて……俺が守りたいから守るんだ」
「あ」とか「う」とか、顔を真っ赤にしたまま呻くような声を出していた翠星石は、そのうちに真司の手を振り払った。
「い、今更すぎるですぅ!!」
支援
支援
ふい、とそっぽを向いた翠星石を見ながら、真司は決意を新たにする。
翠星石だけではない、生き残った参加者を守る。
シャドームーンや志々雄の好きにはさせない。
その為なら、殴り掛かる悲しみさえ全身で打ちのめす。
「そろそろ、頃合いか」
怪人の声が一同の鼓膜を揺さぶる。
その響きは、真司の決意を嘲笑うように。
▽
「ヴァン」
呼ばれる声に、目を開ける。
大きな欠伸をしながら周囲を見渡せば、小難しい話し合いは一応終わったようだ。
「今度こそちゃんと聞いていたんだろうな?」
「……すみません」
前にもこのようなやりとりがあったような気もするが、忘れた。
隣に座る緑髪の女は目を鋭く細めたが、溜息と共に肩を竦めて笑みを見せた。
「期待はしていなかったよ」
機嫌が良いのか悪いのか、はっきりしないがヴァンにはどうでも良い事だった。
ともかく話があるから話し掛けてきたのだろう、これ以上機嫌を損ねない程度に聞いておく事にする。
「私は、V.V.の関係者だ」
「それは聞いた」
「……この殺し合いは、私のせいで行われているのかも知れない」
「それは初耳だ」
改めてC.C.は説明を始めた。
V.V.と親しい者達の間で進めていた計画に賛同していた。
あるきっかけでその計画との縁を断ち切る事になったが、今も未練がないとは言えない。
世界の意識を統一する計画――そこまで聞いたところで、ヴァンは眉を顰めた。
カギ爪の事を思い出し、胸が悪くなる。
「V.V.は子供の頃の理想を、未だに追い求めているのかも知れない。
それを増長させたのは私で……この殺し合いがあの計画に関わっているのなら、私は」
「あんたはもう協力してないんだろ」
「協力はしていない、しかし」
「してないんなら、いいだろ」
聞くのも話すのも面倒になってきた。
再度欠伸をし、言いたい事だけを言って話を終わらせる事にする。
「あのな……俺は筋を曲げるのが嫌いなんだ。
この殺し合いが終わるまで、俺はあんたの護衛。
それで問題あるのか?」
人はいつか死ぬ。
必ず消える。
だから心に嘘はつかずに生きていく。
緑髪の女の返事は数秒の間を置いて、溜息と共に吐き出された。
「……ないな」
その短い言葉の響きに、苛立ちは見受けられなかった。
「ヴァン、私は初めて会った時よりもお前を見直している」
「そりゃどーも」
支援
C
支援
「私の名前は覚えたか?」
「……すみません」
これも、怒られはしなかった。
代わりに手を差し出される。
「私はC.C.だ」
「そうか、俺はヴァン。
今は無職のヴァンで通ってる」
手を差し出されるままに取り、握手する。
そうしてようやくヴァンは『C.C.』という名を認識した。
手を離したところで丁度、真司の怒鳴るような声。
C.C.の意識がそちらに奪われた事でヴァンとC.C.の会話は終わった。
▽
椅子を移動させ、七人が円を作るようにして座った。
立っているのは一人――三村だけだ。
これから三村の言う『本題』に入るという段で、クーガーはその姿を油断なく観察する。
無論、志々雄に動きがないかという点も常に注意している。
「志々雄と俺は、首輪の解除方法を見付けた」
最初の一言でヴァン以外の全員の目付きが変わった。
真司に至っては立ち上がりそうになった程だ。
それでもクーガーやC.C.が冷めた視線を、ヴァンが寝ぼけ眼を向ける中、三村は話を続ける。
「ただしそれには条件が要る……五人以上の参加者が一ヶ所にいなきゃならない。
だから俺達は、あんた達を集めたんだ」
曰く、五人集まれば首輪の爆破機能が停止する。
停止している間にカバーを外し、決められた順序で配線を切れば首輪は外れる。
シンプルと言えばシンプルな解除方法。
三村がそこまで説明したところで、クーガーが手を挙げた。
「話の腰を折って悪いが。
その方法はどこで見付けたんだ?」
「教えられないな。
情報を持ってるってアドバンテージの大きさは分かるだろ。
誰も彼もが知ってちゃ情報の価値がなくなる」
三村の言い分はもっともだ。
これが不服であっても、協力しないとも言えない。
互いに益のある話だ。
嘘の可能性はあるが、少なくとも殺すつもりなら志々雄は既に殺しているだろう。
「五人に一人が首輪を外せる。
つまりこの中で、三人。
これ以上こっちの情報は渡せない、それでも協力して貰う……それだけじゃフェアじゃない。
だから条件を出す」
場を支配しているのは三村――否、三村と全て算段を決めてあるであろう、志々雄真実。
不本意ではあるが、飲むしかない。
「志々雄の首輪を外す協力をして貰う……つってもそこに居て貰うだけだが。
代わりにあんた達の中の二人の首輪を、俺が外す。
悪い話じゃないと思うぜ」
集めるのが死んだ参加者でいいのなら、志々雄はこんな面倒な方法は取らない。
しかし、志々雄は「この場の全員を武力で制圧して気絶させ、その間に首輪を外す」という手段を持っている。
まだ話し合いという手法を使っているうちにこの条件を飲まなければ、志々雄は動く。
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創る名無しに見る名無し:2012/10/14(日) 23:45:16.91 ID:3FxgudK2
支援
支援
クーガーがC.C.に目配せすると、C.C.も頷いた。
飲むしかない事は分かっているようだ。
「君は、それでいいのか」
三村にそう尋ねたのは真司だ。
志々雄に反発している真司には、三村が当然のように志々雄を優先している事に抵抗があったのだろう。
対する三村は「仕方ないだろ」と事もなげに返す。
「俺が解除して貰うには、他に配線をいじれる人間が必要だ。
情報を広げられない以上、諦めるしかない」
クーガーはその言葉の裏に「志々雄が最優先に決まっているだろ」という本音を垣間見た。
完全に心酔している三村に、何を言っても無駄だろう。
話題を戻すように、クーガーが言う。
「……翠星石とC.C.、だろうな」
C.C.は不死だと言うが、女子供を差し置いて首輪を外すわけにはいかない。
それこそ志々雄の計算通りになっているのかも知れないが、これ以外の選択肢はなかった。
三村と志々雄に反発する真司も翠星石の為ならと折れ、ヴァンは最初から興味がないらしい。
「なら、これで――」
「その前に、もう一つこっちから条件がある」
話を進めようとした三村に、クーガーが言葉を被せる。
「解除の順番は志々雄が最後だ」
本当に外す事が出来るのか、罠ではないかを試すという意味では志々雄が最初でも良い。
しかし志々雄の首輪が外れた後、残る二人の解除の約束を反故にされる可能性がある。
逆はあり得ない――志々雄に対抗出来る人間は、この場にいない。
同時に罠である可能性もないと見ていいだろう。
絡め手を使わなくても、志々雄ならばここで全員殺せるのだから。
そんなクーガーの提案に応えたのは、三村ではなく志々雄だった。
「ククッ……いいぜ、構わねぇ。
俺が最後だ、そっちの順序にまでは口出ししないでおいてやるよ」
未だ志々雄の掌の上――志々雄は上機嫌だった。
そして話が纏まると、「ならば私からだ」とC.C.が席を立つ。
「本当に解除出来るのか、見せて貰おう」
不死故の自信。
翠星石への配慮でもあるのだろう。
三村はそれを了承し、首輪の解除が始まった。
三村の指示に従って三人が首輪のカバーを外す。
呆気なく外れたカバーは金属音を立てて床を転がった。
「成る程、中身は流体サクラダイトか。
確かにこれなら首が飛ぶ」
「そう言えばあんたの世界ではポピュラーな品なんだったな」
雑談に近い会話をしつつ、三村がC.C.の首輪の配線を切っていく。
解除中は三村の手元を見ない約束になっており、クーガーにはC.C.の背が障害物となって視界を妨げていた。
時間にして二分程度。
再び金属音が響き、首輪だったものが床に落ちる。
「……本当に、外れた……」
真司が思わず声を漏らす。
クーガーも余りの呆気なさに驚いていた。
三村が配線を切る順番を暗記している――というのを差し引いても、そもそもの構造が単純過ぎるのではないか。
クーガーの同僚のアルター、スーパーピンチのような大型のロボットが闊歩するC.C.やV.V.の世界の技術にしてはお粗末だ。
クーガーがその理由について考えているうちに、翠星石の首輪も外された。
支援
支援
C
「さて、最後だ。
手を滑らすなよ、三村」
「分かってるって」
軽口と共に志々雄の首輪解除が始まり、外れる。
その時の志々雄の表情を見て、クーガーは一つの後悔をした。
配線が切られている途中に最速でこの場を離れ、志々雄を殺すべきだったのではないか。
卑怯極まりない、文化的でない美しくないその考えが、一瞬巡った。
普段のクーガーならば決して考えない手段を考えた、その原因。
首輪という枷のなくなった志々雄の顔に浮かぶのは、狂気にして狂喜。
この男の枷を無くす事は、凶悪な鬼を人里に放すようなものなのではないか。
考えても、遅い。
首輪の解除は終わったのだ。
時計の時刻は二十一時を回っていた。
「ちょっと俺と志々雄は席を外す。
構わないだろ?」
「どこに行く?」
「休憩室だ、すぐそこだよ。
話があるんだ」
三村が指したのは、同じフロアにある一室。
廊下を真っ直ぐ数メートル程進んだところにある部屋だ。
ここから別行動を始める――というのなら、そう言えばいい。
何を企んでいるのかという不気味さはあったが、了承する事にした。
「十分だ、それ以上掛かるようなら呼びに行く」
「ああ、いいぜ。
十分経っても出て来なかったら、呼びに来るなり扉を蹴破るなり好きにしてくれ」
一応の保険として制限時間を設けたが、三村の表情は涼しげだった。
そして志々雄と三村は部屋に入り、鍵を掛ける音が廊下に響く。
時計の針が動く。
十分――志々雄と三村が部屋から出てくる事は、なかった。
▽
支援
支援
支援
144 :
幕間2:2012/10/14(日) 23:54:21.41 ID:wxvzw15X
幕間劇2
「何だこれ、気持ち悪い……っ」
北岡が手にしていたものを投げ捨てた。
それらは壁にぶつかって床に落ち、ころころと転がっていく。
人間の背骨と眼球。
浅倉のデイパックから出てきたものだ。
「あいつ、思った以上に悪趣味だよ……」
元は生きた人間のものだったと思えばぞんざいに扱うべきではないが、気持ちが悪いものは気持ちが悪い。
戦闘の後、北岡とつかさは付近の民家に足を踏み入れた。
リフュールポットの効果で傷の大半が治癒し、問題となるのは疲労。
北岡は休養を兼ねて、浅倉から入手したデイパックを整理する事にしたのだ。
ついでに屋内を物色し、ベノスネイカーに溶かされた服は着替えた。
日本人にしては高身長の北岡が着るものは常に特注品、故に丁度良いサイズのものは手に入らなかったので諦めた。
「これは……発信機?
どこで誰の恨みを買ったんだか……」
新たにデイパックから出てきたそれを窓の外に向かって捨てる。
浅倉を追う人物なら殺し合いに乗っていない可能性が高いが、追跡されるというのは良い気分にはならない。
そうして北岡が一人ごちながら支給品を整理する中、つかさは無言だった。
目を伏せたまま唇を固く引き結んでいる。
エンドオブワールドの引き金を引いた直後のあの会話以降、話はしていない。
「謝らないでください」と言われた。
謝罪の言葉ばかりが渦巻く中で、他に掛けられる言葉を探し――見付からない。
そのうちに北岡の独り言もなくなり、ごそごそとデイパックを弄ぶ音だけが残る。
それ以上の沈黙に耐えられなくなった北岡が何か言おうとする、それに先んじてつかさが顔を上げた。
「北岡さん」
「何?」
わざと軽い調子で返すが、つかさの瞳はエンドオブワールド発動の直後と変わらず揺れ続けていた。
「私……自分で決めたんです。
浅倉さんを撃つって……北岡さんを死なせたくないって。
だから、北岡さんは悪くないです」
「……そうは言うけどさ」
気に病む必要はないという気遣いに、北岡は再度「ごめん」と言い掛けて口を噤む。
後悔を重ねる程に、続く言葉が出なくなる。
引き金を、引かせたくなかった。
手を汚すなら自分だと思っていた。
北岡が何も言えずにいると、つかさはふっと口元に笑みを浮かべた。
「ごめんなさい、私……態度が良くなかった、ですよね」
「え?」
支援
支援
C
151 :
創る名無しに見る名無し:2012/10/14(日) 23:57:24.22 ID:ekH+yPtR
支援
唐突な謝罪に、北岡は腑抜けた声を出してしまう。
端を持ち上げられた彼女の唇は震えている。
無理に作った笑顔は引き攣って、今にも崩れそうに見えた。
「まだ自分でも整理出来てなくて、暗い顔しちゃってて……。
もう大丈夫――」
「よしてくれ!!」
思わず、自分でも驚いてしまうような声量でつかさの言葉を遮る。
つかさが強がる姿に、耐えられなかった。
「俺なんかに気を遣わなくていいんだ。
確かにつかさちゃんは初めて会った時より大人になったと思うよ……。
だけど一日で大人になる必要なんて、ない」
つかさは確かに自らの意志で引き金を引いた。
だが、それは『引かざるを得ない状況だったから』。
それを選ばざるを得なかったから、選ばされた。
にも関わらず北岡のフォローをし、笑顔を絶やすまいとする姿は痛ましい。
暫し呆然としていたつかさはやがて無表情になり、俯いて顔を隠してしまった。
数分以上、互いに沈黙する。
そして北岡は、決意を口にした。
「……もう二度と、あんな事はさせないから」
短い一言。
だがそれは紛れもない本心だった。
他人の事をどうでもいいと思ってきた自分が言うには恥ずかしい、それでも偽りのない意志。
つかさが笑って日常に帰れるように――これ以上、辛い思いをさせないように。
引き金を引かせないし、これ以上誰も仲間を欠けさせない。
その為に強くなれと、胸が叫ぶ。
北岡の言葉に応え、つかさはゆっくりと頷いた。
▽
話を終えた北岡は「一時間で起こして」と一言告げて眠ってしまった。
隣で座ったまま寝る北岡の呼吸は安定していて、つかさは胸を撫で下ろす。
同時に、小さく溜息を吐き出した。
――あなたが必死に考えた言葉なら、きっとジェレミア卿にも伝わるわ。
それは、善意の言葉。
その善意の言葉を、素直に――愚直に受け取った。
だからロロと衝突を起こした。
そしてアイゼルが死んだ。
自分が死ぬはずだったのに、アイゼルが身代わりになった。
ジェレミアはアイゼルをこそ守りたかったはずなのに、自分がそれを邪魔した。
つかさはずっと自分に出来る事を探していた。
アイゼルの死後はその焦燥をますます募らせていた。
アイゼルの代わりにリフュールポットを錬成して、それから。
それから――北岡と浅倉の戦いに同行して。
そこで得られた結果は手放しでは喜べないけれど、少なくとも後悔はない。
後悔するぐらいなら銃を手にしてはいけないと、それは理解していたから。
それでも、エンドオブワールドの引き金は重かった。
ジェレミアが振るう剣も、きっと重い。
五ェ門が振るっていたデルフリンガーも、きっと重かった。
戦う力があるから、大人だからと無条件に守る側に立たなければならない彼らは、どんな思いで武器を手にしているのだろう。
支援
支援
支援
これまでの出来事を、掛けられた言葉を思い起こす。
ずっと支えられ続けて、守られ続けている自分に出来る事は――
このままではいけないと、自分の頬をパシパシと両の掌で叩いた。
余裕を持たなければ、コケてばかりだ。
ソファーの前にある背の低いテーブルにレシピを広げて書き込みを始める。
一時間で北岡を起こして元の民家に戻るとなれば、大した事は出来ない。
今はただ、放送前から準備しているものを確実に成功させる。
その為だけに、つかさは必死だった。
▽
北岡とつかさが出ていった後、その民家は静かだった。
外に漏れないよう照明は必要最低限。
雨戸まで閉めては悪目立ちするので、代わりにカーテンを閉める。
窓はいざという時にすぐ飛び出せるように鍵を開ける。
台所で作業する時は匂いを外に出さないよう換気扇を回さない。
レナはそういった注意を放送前から入念に行っていた。
気休め程度にしかならないとしても、この場では何が生死を分けるか分からない。
薄暗く保たれた屋内。
レナはタオルを濡らして固く搾り、それからソファに腰掛けて休むジェレミアの隣に座った。
「失礼します」と声を掛けて彼の手を取る。
破れた衣服の隙間に覗く、血に汚れた肌にタオルを当てた。
「怒ってますか?」
「……北岡の言葉は正論だ。
これ以上八つ当たりする気は、」
「いえ、自分にです」
レナが言うと、ジェレミアは沈黙した。
血で黒ずんだタオルを畳み直し、汚れていない面でまた別の箇所を拭う。
「私はさっきのお話から分かる範囲でしか、事情を知りませんけど」と前置きしてから続けた。
「浅倉さんを倒しに行けなかった自分にとか。
……北岡さん達に勝って欲しいと思ってしまった自分に、とか」
ジェレミアはやはり答えなかった。
決して的外れな推測ではなかったのだろう。
レナに『忠義』というものは分からないが、恐らく浅倉という男をジェレミア自身の手で倒す事に意味があった。
だから本当は、「北岡達の敗北を願わなければならない」。
敗北して死ぬ事とまではいかずとも、逃げ帰ってきてくれれば――改めて三人で浅倉と戦う事が出来るはずだ。
けれどジェレミアは北岡に支給品を預け、つかさを送り出した。
それは『忠義』に外れている。
ジェレミア個人と北岡達との間の絆を優先している。
レナはジェレミアの表情から、未だ戻らない北岡達への心配や焦燥の他にそうした葛藤を読み取っていた。
レナは戦えない。
後藤やシャドームーン、それ以外の敵も、レナが鉈を振り回した程度で勝てる相手ではない。
だから自分の役目は、仲間の心の機微を読んで言葉を尽くす事にあると認識している。
しかし、ジェレミアは首を横に振って立ち上がった。
「気遣いに感謝しよう。
だがこれ以上は不要だ」
それは、レナには「もう大丈夫」という意味には聞こえなかった。
引き留めようと立ち上がりかけるが、ジェレミアの続けた言葉で動きを止める。
「悩み迷う時間は、もう過ぎた」
この先は、レナには立ち入る事が出来ない。
ジェレミアが辿った道筋を正確に知る者にしか踏み込めない。
支援
C
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そう思わせるに足る、諦念や疲れを滲ませる声だった。
ジェレミアは大人で、レナは子供。
お互いに不可侵の領域があり、蒼嶋の時のようにはいかない。
だが、レナは拒絶にも近いジェレミアの反応に、不安は抱いていなかった。
彼の言葉には諦念や疲れだけでなく、確かに強い意志が宿っていたから。
レナは信じて座り直す。
ジェレミアも、北岡も、つかさも。
辛い経験をして、当たり前の日々は闇に閉ざされてしまった。
それでもレナは、ここにいる仲間がその苦しさを乗り越えられると信じている。
リビングを出て行くジェレミアを見送るが、その背が止まった。
「君はいいのか」
「何がですか?」
「泣いていられる時間は、ここが最後かも知れん」
ぐにゃり、と景色が歪んだ。
何度も瞬きをして、唇を噛んで、息を止めて、拳を握って掌に爪を立てる。
目から溢れ零れ落ちそうになった涙を押し込んで、レナは応える。
「私も……悩んで迷う時間は、もう過ぎましたから」ジェレミアの気遣いを断る。
先程とは逆の立場――この先は不可侵の領域。
それをジェレミアも了解していたようで、それ以上は追求せずに部屋を出て行った。
深呼吸。
レナの乱れた息が整うまでに数分掛かった。
この殺し合いに巻き込まれた部活メンバーは、自分を残して全員死んでしまった。
真紅と蒼嶋が自分を庇って目の前で命を落とした。
千草が、五ェ門が、戦って散った。
死者は四十一人。
今も北岡とつかさが戦っている。
泣いていいと言われたとしても、泣けない。
これ以上泣いていてはいけない。
目を閉じて。
胸に手を当てて肺の中の空気を大きく吐き出し、再び目を開ける。
気持ちが落ち着いたのを確認してからソファーを離れ、レナは放送前から続けていた作業を再開した。
▽
リビングを離れ、洗面所の鏡に自らを映す。
北岡は至極正しい。
これは、戦場に向かう人間の顔ではない。
これでは、死人だ。
血で汚れた手袋を外して蛇口を捻り、冷えた水を掌で受け止める。
掬い上げた水を顔に浴びせると、赤黒く色付いた水滴が顎先から滴り落ちて排水口へ吸い込まれていった。
北岡の前で見せた激情は静まり、冷え切っている。
レナが指摘したように自身への怒りはあるが、それも冷めていた。
悔いがある、無念だ、未練がある、それにも関わらず落ち着いている原因は理解出来ている。
水が流れていく音を耳にしながら緩く目を閉じる。
(私は……疲れたのだろう)
主を失った。
主の亡骸を葬る事も出来なかった。
主の最愛の妹に会うのも不可能。
主の仇さえ討てない。
そして弱く遅かった為にこの場で得た仲間も失った。
全てに、疲れてしまった。
支援
支援
アイゼルの死に泣けなかった事もそうだ、怒る事にも悲しむ事にも疲れた。
自分の人生の過去にも未来にも、最早何の感慨も持てない。
それに――騎士としての己に固執する事にすら、諦めてしまったのだろう。
だから浅倉への復讐を、諦めた。
――頼む……私はルルーシュ様の事を、何も知らないのだ……!!
柊つかさと初めて出会った時に叫んだ言葉がある。
それが全てだった。
「これから忠義を果たすはず」で、「これから騎士になるはず」だった。
騎士と言えど、それはルルーシュではなくマリアンヌの血に仕える騎士に過ぎなかった。
マリアンヌの為に祖国に反逆したルルーシュに仕えたのであって、ルルーシュ個人を『知らなかった』。
これから仮面のゼロでもない、マリアンヌの子でもないルルーシュ自身について知っていくはずだった。
それが出来なかったのは、過ごした時間が余りに短かったからだ。
主に仕えた日数を指折り数える事すら憚られる程に。
第一回放送を聞いた瞬間に、ジェレミアの内側は空っぽになった。
それは荷が下りて軽くなったという意味は一切持たず、むしろ「空っぽ」という荷物によって他の全てを取り落としたようで。
重過ぎる虚無を抱えたまま、騎士としての形骸だけが残された。
名実共に騎士となる機会を永遠に失って、それでもなお騎士である事に固執した。
そうしなければ外身さえ保てなくなり、自分が何者であるか分からなくなるから。
だからルルーシュの『代わり』を求めて誰かを守ろうとし、失う事に怯えていたのだ。
忠義という言葉で騎士としての体裁を――自分自身を守ろうとしていた。
そしてその事に疲れたから、浅倉との決着を北岡に預けた。
主の仇を打ちたいという思いも浅倉への憎悪もあるが、北岡の決意を尊重しようと思ってしまった。
(……)
目を開く。
多くに疲れて、諦めて、捨ててしまった。
だからこそ、残ったものへの思いは強い。
形骸すら崩れかけてなお消し得ない主への忠誠と、守りたいという思いだけは。
何度失敗して無様を晒そうと、それだけは揺らがなかった。
例えどんな後ろ暗い感情から生まれた欲望だとしても、その思いに嘘偽りはないのだから。
迷いながら、悩みながら、悔やみながら、それでも決めた。
――力有る者よ、我を恐れよ!!
――力無き者よ、我を求めよ!!
過った力を憎み、優しい世界を求めていたルルーシュならば、この選択を是とするだろうか。
確かめる術はないが、それでも――戦い続ける。
流し続けていた水を止め、タオルで顔を拭う。
手袋を嵌め直し、傍らに置いていたデイパックを手にしてその場を後にする。
放送前に四人で整理したそれは、心なしか以前よりも重い。
最後にもう一度だけ鏡に映った自分を見る。
先程まで空っぽだった瞳には、確かに光が差し込んでいた。
▽
北岡とつかさが行きと同様に箒に跨って、元の民家に戻る。
道に迷う事なく無事に帰り、ジェレミアとレナと合流。
そして間を置く事なく、北岡は隣室でジェレミアと二人きりになった。
浅倉との戦いの顛末については自分の口から説明する。
つかさには反対されたが、この点はつかさには自分の役目に専念すべきだと説得した。
大見栄を切って出て行って、結局浅倉を殺したのはつかさちゃんでした――そんな情けない話を、報告する。
ジェレミアが眉を吊り上げて怒鳴るところまで想像していたのだが、予想に反してジェレミアは静かだった。
「そうか」と言ったきり黙っている。
「言いたい事はないわけ?」
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C
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「ある。しかし、その場に居合わせる事すら出来なかった私に言う資格はない。
罵倒されたかったか?」
「……癪だけど、その方が気楽ではあったかもな」
デイパックに手を入れながら、雑談程度に話を振る。
「ギアスキャンセラーってのが気になるんだけど、俺で試してみない?」
「……やめておいた方がいいだろう。
ギアスに掛かったままの方が安全だ」
曰く、ルルーシュのギアスと同種だと考えるならば重ねがけは出来ないはず。
逆にいずれ対面する事になった時、キャンセルされていては「死ね」の一言で死ぬ可能性がある。
成る程ね――そう納得しつつ、北岡は目当ての二品を取り出した。
一品目は刀。
北岡に刀を見る目はないが、それでも特別なものだと分かる。
ジェレミアは既に二本の刀剣を所持しているが、自分が持つよりはと受け渡す。
そして二品目は、銃。
「これも浅倉が持ってたんだけど……つかさちゃんに確認した」
――これです。
――私が、ルルーシュ君を撃ったのは……。
この銃もつかさは自分でジェレミアに渡したいと言っていた。
だが既につかさはジェレミアと対話し、互いに納得出来るところに落ち着いている。
北岡はこれ以上つかさに辛い思いをさせたくなかったし、銃に近付けたくなかった。
甘いとは思っても、譲らなかった。
ジェレミアは銃を手に取った。
元はルルーシュの支給品、それを丁重に扱い、残弾や重さを確かめている。
そして銃身を持ち、北岡にグリップを向けた。
「貴様が持っていろ。
変身していない時の為の武器が必要だろう」
思わぬ答えに「は?」と聞き返すが、ジェレミアは銃を差し出したままだ。
「私の感傷で仲間の武器を腐らせるつもりはない」
別に俺が困るわけじゃないからいいけど、と言いつつ北岡が銃を受け取る。
ジェレミアの執着の薄さは意外だった。
北岡がジェレミアと向き合うのは第二回放送前以来になるが、随分角が取れたように思う。
角が取れた――そこから北岡は一つ、確認しておく事にする。
「なぁあんたさ、」
北岡には『忠義』とやらの事は分からない、しかし漠然とあるイメージからは嫌な予感があった。
「生き残る気、ある?」
素っ気なく尋ねた北岡に、ジェレミアの肩が一瞬揺れた。
そして北岡と目を合わせたまま、「ない」と言い切った。
「ああ、そう」
嫌な予感が的中し、やれやれと溜息を吐き出す。
そしてジェレミアの胸に掴み掛かった。
「次元も五ェ門も蒼嶋も平気で他人の為に死んで、今度はあんたか……!
ふざけるなよ!!」
「っ北岡、声を落とせ!
隣りに聞こえるだろう……!」
ぐ、と声を詰まらせる。
ジェレミアがルルーシュの後を追って死ぬなら、その事で一番悲しむのはつかさだ。
レナにも知られるわけにはいかない。
声を低くし、それでも掴んだ襟は離さなかった。
支援
支援
「健康で頑丈な体がある癖に、御主人様が死んだら一緒に死ぬなんて、ただの馬鹿じゃないか……!
死んでもいいと思ってる奴になんて、背中を預けられるわけないだろ!」
永遠の命を求めてライダーになった。
他の人間を蹴落とす事に躊躇いはなかった。
――俺は自分が一番可愛いんだよ!
――他人のための犠牲は美しくない!
――俺は自分のためだけに戦っているからな。
――そういう人間が一番強いんだよ。
今となっては北岡自身も人の事を言えなくなっているが、それでも一番可愛いのは自分だ。
つかさや五ェ門に感化されてはいても、その点は変わらない。
例え永遠の命が得られなかったとしても、残った人生を謳歌したいと思っている。
人生の楽しみ方は、他に幾らでもある。
「元の世界に帰ってからやる事ないわけ?」
「……ない」
「だったら俺が使ってやる。
窓拭きと洗車とゴミ出し、それから食事を作って車運転して荷物持ちでボディーガードに……」
「北岡、何を言って――」
「うるさい!!
俺はあんたが死のうが行きようが知った事じゃない、だけど気に入らないんだよ……!」
どいつもこいつも、口だけなら「綺麗事だ」と鼻で笑ってやる。
ライダーバトルを始めた頃なら実際に他人の為に死ぬ人間を見ても「下らない」と見下していた。
だがライダーバトルが進み、病に蝕まれ、その上でつかさや五ェ門と交流した今の北岡には。
笑えなかったし、見下せなかった。
――お前も所詮……ただの退屈で凡庸な人間の一人って訳だ……。
――人として生まれたからには全ての欲望を満たしたい。
――忍耐だの我慢だの、そんなのをありがたがる人間が多いけどさ、そういう奴に鍵って欲望を満たす力もないんだよ。
――俺がライダーとして戦うのは自分の為だけなんでね。
――その一線を踏み外すと、お前みたいに弱くなるんだよ。
――だから強いんだよ。
「これじゃ今まで自分の為に戦ってた俺の方が、……馬鹿みたいだろ……ッ!!」
柄にもなく取り乱して、息を切らす。
やがてジェレミアは北岡の手を振り払った。
「貴様の生き方を否定する気はない。
だが、私は誰の下にもつかん」
睨み合うが、ジェレミアも引こうとはしない。
「頼む……私を彼の人の騎士のまま死なせてくれ」
沈痛な面持ちで口にしたその一言で、北岡は悟る。
何を言っても無駄だと。
「貴公らをこの場から生還させる、それを果たすまで私は死にはしない。
だが私一人ではどうにもならん……協力してくれ」
腕に覚えがあれば、多分一発殴っていた。
結局何も譲歩していないに等しく、それでも背中を預けろと宣っている。
しかし深い溜息を吐きながら、折れてやる事にした。
「こっちだって、協力してもらわなきゃ困るわけ。
支援
支援
土rっm
精々俺の足引っ張らないようにしてよ」
角が取れて丸くなったのはどっちなんだか――そう思い、自嘲する。
「けどつかさちゃんを悲しませるのだけは、許さないからな」
「肝に銘じておこう」
頷くジェレミアを尻目に、もう一度溜息を吐く。
やはり一度ぐらい、殴っておいても良かったかも知れない。
▽
隣室で話を終えた北岡とジェレミアがリビングに戻り、テーブルの椅子を引いて隣り合わせに座る。
その二人の後ろから、レナはつかさと共に覗き込む。
四人が注視しているのはテーブルの上に鎮座したノートパソコンの画面だ。
ノートパソコンというものについてレナは知らなかったが、簡単に言えば色々な計算や調べ物が出来る便利な機械との事。
つかさやジェレミアの世界では皆が持っていて当たり前、北岡も知っているという。
レナにとっては未来のアイテムだが、インターネットというものの大雑把な説明も受けて大凡の理解を得た。
そんなものがどこから出て来たのかと言えば、北岡の支給品だ。
第三放送前、四人で各々のデイパックを整理している時に見付かった。
今の今まで何故使わなかった、言わなかった――そう責めるジェレミアに対し、北岡は悪びれもせずに答えた。
「殺し合いの最中に何の役に立つんだよ、パソコンなんて。
あ、使うならついでに俺の評判も調べておいてくれる?
スーパー弁護士北岡秀一の人気ぶりについてもよろしく」
パソコンについて知っている、と言っても北岡にとってはそれ程身近なものではなかったらしい。
ジェレミア、それにつかさまでも暫し絶句し――放送が近いという事で、パソコンの処遇は一時保留となった。
そして浅倉の一件が片付いて四人が再び集まった今、改めて触れる事になったのだ。
デスクトップが表示されると、ジェレミアがパソコンの側面に消しゴム大の機械を挿入する。
こちらはアイゼルの支給品で、データカードと言うそうだ。
特殊な場所でないと使えないインターネットをどこでも利用可能にする。
更にジェレミアがマウスを動すと、画面が瞬く間に切り替わっていった。
そして『多ジャンルバトルロワイアル』というページでジェレミアの手が止まった。
そこに書かれている文章の異常さに、全員が言葉を失う。
北岡とジェレミアが口々に疑問を呈す。
レナも混乱していた。
そして『情報』――首輪の解除方法が表示された。
「なぁ、どう思う?」
「罠……だろう」
「これが本当だったとして、工具があればあんたでも外せるか?」
「素人でも無理ではないだろうな。
こんな単純な構造とは思いたくないが……」
北岡とジェレミアの会話を聞きながらレナも考える。
こうして用意されているからには、何か理由があるはずだ。
「V.V.は、私達に協力し合って欲しいんでしょうか」
五人集まらなければ外せない――しかも外せるのはその中の一人だけ。
「君達にこれが出来るかい?」と、試されているように思えた。
「さぁ……どうだか。
単に嫌がらせがしたいだけかもよ?」
前のページに戻るよう北岡がジェレミアに指示する。
「自分でやれ」と返されると共にマウスを渡され、北岡は渋々操作を代わった。
前のページに戻り、下へスクロール。
『一日目の二十一時以降、会場からの脱出方法の一例を開示する』。
北岡の手が強張り、四人が緊張で唾を飲み込む。
時計は既に二十一時を回っており、その下には「→詳細は『こちら』」の字が踊っていた。
支援
C
支援
大きな息を吐き出してから、北岡は『こちら』をクリックした。
そして――
「ふざけるな……っ!!」
ジェレミアが声を荒げる。
ホームページの存在や首輪の情報以上の衝撃に、レナも北岡も言葉が出なかった。
代わりにこれまで一言も発さなかったつかさが、か細い声を震わせる。
「ジェレミアさん、こ……これなら……首輪さえ外せばジェレミアさんは脱出、出来ますよね。
北岡さんだって、もう少しすれば、」
「よせ……」
低い声で、ジェレミアがつかさの言葉を遮る。
それでもつかさは肩を震わせながら続けた。
「私、それでもいいん――」
「よせと言っているッ!!」
つかさの方へ振り返らないまま、これまで以上の剣幕でジェレミアが叫ぶ。
それは悲痛で、怒りよりも悲しみが勝っているように思えた。
「私とてっ……これで終われるというのなら、この身を……!!」
「よせよジェレミア。
それじゃつかさちゃんが言ってる事と変わらないだろ」
レナが何も言えなくなっている今、一番冷静なのは北岡だった。
わざとらしく大仰に肩を竦め、パソコンを閉じてしまう。
「とにかく、これについて触れるのはやめよう。
V.V.の思うツボでしょ。
……それにさ、そろそろ出来る頃なんじゃない?」
レナはすぐに察し、つかさの手を引いて台所に向かう。
鍋の蓋を開け、中のものを小皿に少しだけよそって口に運んだ。
それを舌の上で転がすと、今度は小皿をつかさに渡す。
未だ動揺しているつかさはそれを拒もうとしたが、レナは半ば強引に持たせた。
つかさがおそるおそる口に含ませて――目を見開く。
驚き、悪夢から覚めたかのようだった。
「完成しました……!!」
つかさの明るい声に、室内の張り詰めていた空気が一気に弛緩した。
ジェレミアが黙ってパソコンをデイパックに片付ける。
四人で手分けして皿に盛り付けをし、空いたテーブルに運んで並べていく。
ワインの香りの混じった温かな湯気。
つかさとレナが協力して作ったそれは、薄暗い室内の中でも強く存在感を主張していた。
四人がそれぞれ席に着く。
支度が整った事を確認すると、錬金術士の卵は陰を振り払うように明るい笑顔と声で言った。
「今日のメニューは、ビーフシチューです」
▽
放送前――「体力の回復」が、大きな課題だった。
傷はリフュールポットで治せるが、疲労は簡単には取れないのだ。
つかさはレシピを見てみるが、ポットのような携帯に適したものは余り書かれていなかった。
アイゼルのレシピに載っているのはスープやケーキといった『料理』が中心。
殺し合いには余り適さない。
支援
支援
悩むつかさの転機となったのは四人で行った支給品確認だった。
途中ジェレミアのデイパックからこなたの水着が出て来るというハプニングがあったものの、つかさがこなたの遺品として回収する形で事なきを得。
その後、レナのデイパックから大量の食材が出てきたのだ。
蒼嶋が回収した千草のデイパック――の中のデイパック。
誰のデイパックだろう、と訝しむレナに答えたのはジェレミアだった。
「それは、奈緒子の所持品だったものだ」
ジェレミアと奈緒子が二人でショッピングモールを訪れた際、奈緒子は喜々として食材を詰め込んだ。
日々の食費に困っており、殺し合いから持ち帰ろうとしていたらしい。
それが白髪の男と接触した際にデイパックごと置き去りにされた。
更に蒼嶋と白髪の男が戦闘になり、千草がデイパックを手に入れるに至った――という顛末のようだ。
材料はある。
その事はつかさの大きな後押しになった。
だがそれだけでは、殺し合いの最中の料理に踏み切れなかったかも知れない。
各自が支給品を取り出して行く中、ジェレミアが手を止めた。
手の中にあるものは、つかさにはゴミに見えた――恐らく北岡やレナにもそう見えただろう。
それはクシャクシャに丸められていたが、ベーグルの店のロゴが印字された紙袋だった。
そのロゴの上には鉛筆で文字が書かれている。
『食べちゃった! ごめん!』
アイゼルの口調ではないので、これも奈緒子の手によるものだろう。
ジェレミアが食べる予定だったベーグルを、奈緒子が勝手に食べてしまったようだ。
殺し合いの中とは思えない、少し微笑ましい光景が想像出来た。
そしてジェレミアがぽつりと漏らす。
「……仕方のない人だな……」
それは呆れの声で。
しかし悲しむ声で。
けれどつかさには、微かに喜びが混じっていたように思えた。
些細であっても、亡くなった人との繋がりが見えたからかも知れない。
食事を作ろう、と決心したのはこの時だった。
皆で卓を囲んで、温かい食事をしたかった。
食べたかったベーグルが食べられなくて可哀想、ではなく。
ジェレミアだけでなく、レナも、北岡も、つかさ自身も、たくさんの別れを経験したから。
それで悲しみは消せないし失ったものの代わりにもならないけれど、喜びは増やせると思ったから。
「あの、……お腹、空きませんか?」
反対する者はいなかった。
安全面に関しても、作りかけの鍋にデイパックを被せればすぐに持ち運べる事が分かった。
そうしてレナの助けを借りて食事を作る事になったのだ。
色とりどりの食材を見ながら、つかさはブランクシチューの事を考える。
食材二種と井戸水を調合すれば出来る、錬金術では初歩的なアイテムだ。
しかしブランクシチューでは回復量は微々たるもの。
そこでつかさなりに錬金術レシピにないアレンジを加える事にした。
二種以上の食材に加えて、つかさの初期支給品のワイン。
ラベルを見た北岡とジェレミアが同時に喉を鳴らしたのを見ると、相当な上物らしい。
更に台所を捜索して見つけた既製品のデミグラスソースと各種調味料。
これらを組み合わせれば、ビーフシチューが作れる。
香りの良いワインと牛肉の組み合わせなら、普通のブランクシチューよりも体力の回復に繋がるはずだ。
レナも料理が得意との事で、気に掛かるのはつかさの錬金術の技量だけだった。
知識も経験も少ないというのに、レシピにないアレンジを加えて成功するのだろうか。
その不安を、レナが払拭する。
「大丈夫。
アイゼルさんなら、きっとそう言ってくれると思います」
支援
C
支援
強く頷いて、仕度を始める。
野菜を切り、肉を柔らかくする為にパインジュースに漬け込んでおく。
肉をフライパンで焼いてワインを入れ、同時並行で人参と玉ねぎを炒める。
デミグラスソースや牛乳等の調味料を入れた鍋に、肉と炒めた野菜を入れて煮込んでいく。
放送を挟み、つかさが北岡に同行してる間もレナが鍋を掻き混ぜて味の調整を行った。
そしてつかさが戻ってから錬金術で手を加え――
『あの脱出方法』を実行してもいいのではないかと、思ってしまった。
北岡か、ジェレミアか、それで殺し合いから出られるならそれでいいのではないかと。
しかしレナに促されて口にしたそれで、目が覚めた。
あの脱出方法を許容するのは――自分を守ってくれた人達に失礼だ。
ジェレミアが怒って当然。
反省し、その分明るく振る舞うよう努める。
「いただきます」
手を合わせ、声を揃える。
それからスプーンで掬い上げ、とろみのあるソースを口に運ぶ。
この会場に来てから食べたのは支給品のパンぐらいで、温かいものを食べていない。
味見はしていたとは言え、湯気が顔に当たるとそれだけで唾液腺が刺激されて痛くなった。
意を決して口に含むと、肉と野菜の旨味が口内に広がった。
その一口が空腹をますます意識させ、焦るように具を頬張る。
消化にいいようにと小さめに切って良く煮込んだ野菜は、ソースの味を染み込ませながらそれ自体の味もしっかり残っている。
肉は噛みごたえを残しつつも柔らかく、咀嚼して飲み込んでももう一口と手が伸びてしまう。
付け合せに用意した、冷たいバジルとトマトのサラダも合間に口にする。
鮮やかな彩りが更に食欲をそそり、トマトの甘さがビーフシチューの味を引き立てていた。
四人は暫く無言で食事をしていた。
喋る余裕もない、という調子でスプーンを動かしている。
味を知っているつかさですら、一言の感想を添える事も出来なかった。
「あ、あはははは……!!」
その沈黙を破ったのはレナだった。
他の三人もそこで漸く手を止めて、レナに視線を向ける。
「な、何でかな……美味しいのに、笑っちゃう……あははは……!」
レナの気持ちが、つかさには分かる気がした。
つかさの口元も緩んでいて――作り笑いだったはずなのに、本当の笑顔になっていた。
そしてレナもつかさも目に涙を浮かべていた。
だからきっと同じ気持ちなのだろうと思った。
「そうだね、不思議……何で美味しいのに、嬉しくて、楽しくて、……泣いちゃうんだろうね……っ」
話すうちに嗚咽が混ざる。
それからレナとつかさは手を取り合って泣いた。
これを食べられなかった、もう食べる事が出来ない人達の事を思い出していたのかも知れない。
大変だった事、痛かった事、つらかった事を思い出していたのかも知れない。
胸を突く感情の正体が分からないまま、勝手に溢れてしまう涙をそのままにする。
声を殺しながら、レナとつかさは抱き締め合って泣き続けた。
▽
支援
支援
支援
“静”の時間から、“動”の時間へ。
舞台上にいる多くの者達の意思とは無関係に、再び幕は上がる。
▽
「お二人さん、十分経ったぜ」
クーガーが部屋の扉をノックするが、返事はない。
交代して真司が強く叩くも結果は同じだった。
「おかしいな、どうして――」
「どけ」
「え?」
真司が振り返ると、ヴァンが奇妙な形の刀を構えていた。
真司が慌てて飛びのくと、薄くしなやかな刀身が扉に突き刺さる。
ヴァンの腕の動きに合わせて刀身が踊り、扉を切り裂いた。
刀を扉から抜き、ヴァンが扉を軽く蹴る。
簡単に扉が崩れ、室内が露わになった。
室内を見た全員が、息を呑む。
一瞬だけ、時が止まったかのようだった。
「何かあったですか?」
クーガー、真司、ヴァンが部屋の前で立ち尽くす。
翠星石は彼らの足の隙間から、ヒョイと中を覗き込んだ。
「駄目だ翠星石、見るなッ!!」
真司の叫ぶ声は遅く、翠星石の悲鳴が木霊する。
部屋にあったのは破壊されたパソコンと。
床に打ち捨てられた、三村信史の死体だった。
▽
この先どうするか――北岡達四人は、この民家を出る事になった。
狭間の合流がいつになるか分からない以上、この場に留まっても状況は動かない。
死者の数を考えれば悪化するばかりで、それならクーガーやカズマといった仲間を捜しに行くべきだろう。
身支度を整え、北岡とジェレミアが先導する形で外に出る。
しかし民家を出てすぐの道路で、北岡は目を剥いた。
街灯に照らし出されて金色に輝くライダースーツには見覚えがあった。
「オーディン……!?」
待ちぶせされていた。
しかし、いつから?
つかさ達を逃がそうにも、オーディンが相手ではすぐに追い付かれてしまうだろう。
北岡がデッキに手を伸ばすより早く、オーディンは金の羽をその場に残して姿を消す。
その動きにいち早く反応したのはジェレミアだった。
オーディンの特殊な動きについては既に話してある、それ故に推測出来たのだろう。
「おおおおお!!」
ジェレミアが刀を抜き、振り向き様に振るう。
オーディンは北岡達の目の前から、北岡達の後ろにいるつかさの背後へ瞬時に移動していた。
ジェレミアの刀が当たる前に再びオーディンは消え、今度はジェレミアの後ろを取る。
向けられた蹴りをジェレミアが左腕で受け止めるが、勢いを殺し切れず塀に背を打ち付ける。
そこへオーディンが追撃しようとするも、オーディンは消えた。
支援
C
支援
おでん
支援
オーディンは北岡達から再度距離を取っていた。
ジェレミアの稼いだ時間で北岡が変身し、マグナバイザーを向けていたからだ。
「邪魔をしなければ、貴方達は生かしておいてあげてもいいわ」
女の声が仮面の下から響く。
北岡はそれに返答しようとするが、レナの声に遮られた。
「鷹野、さん……!?」
「あら、声だけで分かってくれるなんて嬉しいわぁ。
嬉しい再会のところ悪いけど……死んで貰えるかしら」
――AD VENT――
夜の闇を切り裂くようにゴルトフェニックスが現れ、燃える翼をはためかせる。
四人に向かって突っ込んでくる、それをジェレミアが刀で受けた。
鋼鉄を切り裂く翼は刀さえも切り裂くが、ジェレミアが手にするのは大太刀・贄殿舎那。
踏み締めたコンクリートが砕けるも、ジェレミアは右手で刀の握りを、左手で刀身を支えてゴルトフェニックスの勢いを受け止める。
――SHOOT VENT――
北岡の両肩に巨大な二連ビームキャノン砲が現れる。
それをゴルトフェニックスに向けようとするが、その間にオーディン――鷹野は北岡の背後に立った。
「くっ、」
反応が遅れ、拳を二撃、三撃と受けてよろめく。
ギガキャノンを撃とうとした時には鷹野は消えており、つかさとレナが視界に映った。
小回りの利くオーディンと鈍重なゾルダでは相性が悪い、そう判断して北岡が叫ぶ。
「ジェレミア、代われ!!」
北岡がギガキャノンをゴルトフェニックスに向ける。
発射すると同時にジェレミアが飛び退り、北岡と位置を入れ替わった。
ゴルトフェニックスはギガキャノンを回避するように、家屋の隙間を縫いながら飛び回る。
――SWORD VENT――
つかさの後ろに現れて剣を振り下ろそうとした鷹野に、ジェレミアが飛び蹴りを入れる。
鷹野が消えてその蹴りは不発に終わるが、着地してすぐにレナとつかさの頭上を通り過ぎる形で刀を振った。
再びつかさの背後に現れた鷹野に、贄殿遮那が命中する。
「このっ……退きなさい!!」
鷹野の声に呼応してゴルトフェニックスが嘶き、上空から滑空を始めた。
避け切れなかった北岡のギガキャノン、その片方の上半分が斬り裂かれ、更にその先にいたジェレミアも弾かれて地面を転がる。
「チェックメイトよ」
鷹野はレナの首に腕を回していた。
北岡とジェレミアが動こうとすれば、鷹野はその首を折る素振りを見せて牽制する。
すぐに殺さないなら、殺害以外に目的があるはずだ。
北岡は鷹野と対話を試みる。
「要求は何だ……?」
「黙って見てなさい」
北岡の問いを一蹴し、鷹野はバックルに差していたものを取り出す。
――注射器。
それをレナの首に、突き立てた。
「レナッ!!!」
暫くは何も起こらなかった。
だが次第にレナの呼吸が乱れていく。
時間ばかりが刻々と流れていく――毒が回るのを待つかのように、鷹野は動かない。
そして、鷹野がレナの耳元で囁いた。
支援
何故支援を尽くさないのか
支援
「柊つかさはルルーシュ・ランペルージを殺したわ」
「え……?」
つかさが、ジェレミアが、北岡が、息を飲んだ。
誰も何も言えず動けない中、悪魔の囁きが続く。
「ジェレミア・ゴットバルトはロロ・ランペルージを殺した。
北岡秀一はつかさと結託して浅倉威を殺した――浅倉が悪人だったからって、酷い話よねぇ?」
そして、決定的な一言を口にする。
「あら、大変!
あなたの周りにいるのは、人殺しばっかりよ……!!」
レナの表情が驚愕に染まった。
そして鷹野がレナをジェレミアに向かって突き飛ばす。
ジェレミアがよろめいた細い体を受け止めて支え、その隙に鷹野は家屋の屋根の上へと移動する。
「待て、貴様……!!」
呼び止める声に構わず、そのまま消える鷹野。
北岡とつかさがレナに駆け寄り、呼び掛ける。
「レナ、しっかりしろ!!」
北岡は弁護士であって医者ではない。
口から摂取したのではない以上吐かせる事も出来ない。
鷹野の情報が誤解だと言おうにも、間違った情報ではないだけに説明に迷う。
突き飛ばされた痛みが収まったのか、レナが目を開ける。
そして周囲にいる三人を順に見――悲鳴を上げた。
「ぃ、ぁあ、いやぁああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
予想外の反応だった。
物事を冷静に判断出来るレナなら、まず先程の情報を問い糾すはずで。
その時に一から説明するしかないと、そう思っていた。
だがレナは既に聞く耳を持たず、北岡らの手を振り払って逃げ出した。
「放して、いや、ぁぁぁぁああああぁあぁぁあああああ!!!!!」
余りに切迫した声に、ジェレミアも北岡も力で押さえ付ける事が出来なかった。
伸ばした手からレナの腕はすり抜け、何も掴めない。
レナが走り去る。
数秒遅れてジェレミアが立ち上がった。
「っ、追うぞ!!!」
北岡も頷く。
後藤もシャドームーンも健在の状況で単独行動、しかもあの注射のせいか冷静さを失っている。
今のレナは危険過ぎる。
「北岡達は危険人物」という情報を広められたくないという打算がなくとも、追わないわけにはいかなかった。
ジェレミアがつかさを小脇に抱えて走り出し、北岡もそれに並走する。
しかし追い付くよりも早く、レナが箒に跨って空へ浮き上がった。
「くそ、あの箒……!」
返さなければ良かった、と後悔しても遅い。
ジェレミアが屋根まで跳ぼうとし、それを北岡が止める。
「何をする、このままでは――」
北岡のスーツが空気に溶け始めていた。
変身してから既に十分が経過していたのだ。
ジェレミアが二人を抱えてレナを追跡するわけにもいかず、北岡のペースに合わせて追う。
「レナを捕まえる、これが最優先。
それからあの鷹野って奴を捕まえる……!!」
毒を使った本人なら解毒剤を持っている可能性が高い。
そして『名簿にない名前』――レナの知り合いは全員死んだ、いるはずのない存在。
参加者ではなく、主催のV.V.の関係者の可能性がある。
支援
支援
支援
支援
C
しぇん
現にこの場にいる人間の動向を知っていたのだ、普通の参加者であるはずがない。
神崎が奥の手としていたオーディンを持っていた事がますます信憑性を上げる。
「あいつ、この殺し合いの事を知ってるはずだ……洗い浚い吐かせる」
「無茶を言っている自覚はあるか?」
「あるけど、やらないのか?」
「貴様がやる気だというのに、私がやらないはずがなかろう」
レナが向かった方角へ走り出す。
だが箒は速く、地形に左右されないという点でも徒歩より有利だ。
車で追おうにも視野が限定され、人探しには向かない。
八方塞がり――北岡がそう思った時、視界の端に見覚えのある『白』が映った。
▽
「やっぱり鷹野は面白い……想像以上だよ」
椅子に腰掛け、複数のモニターを眺めてV.V.は笑みを深める。
一つは鷹野を映し。
一つは竜宮レナを映し。
一つはレナを追う者達を映す。
水面に放られた鷹野という一石は、V.V.が考えていた以上の波紋を生み出していた。
「この先が楽しみだ――君もそう思わないかい?」
V.V.が画面から目を離し、振り返って言う。
言葉と視線を向けた先は、この室内にいるもう一人の人物。
「ねぇ――志々雄、真実」
名を呼ばれた志々雄は、返事代わりにニィと口角を上げた。
▽
「痒い……痒い、痒い……」
片手で箒を操作し、片手で喉をガリガリと掻き毟る。
頭の中は思考が纏まらずに混乱を深めている。
つかさがルルーシュを殺した。
その情報がもたらされた時のあの場の空気を覚えている。
あれは的外れな情報への困惑ではなく、痛いところを突かれた事への動揺だ。
北岡とつかさが浅倉を殺した事は分かっていたし、ジェレミアがロロを殺した事も薄々察していた。
ならば、鷹野の情報に偽りはない。
ジェレミアはルルーシュに忠誠を誓っていると言っていた。
それが真実なら、つかさとの協力関係は成立し得ないはずだ。
それでも成立しているなら、どこかに嘘がある。
――支離滅裂な言葉遣いで追い掛け回されて、海底に無理心中する羽目になった。
C.C.の言葉を思い出す。
C.C.はジェレミアについて、嚮団の関係者である可能性も示唆していた――そしてそれを本人も認めていた。
つまり、ジェレミアは「ルルーシュに忠誠など誓っていない」。
ルルーシュの弟を殺害している点からも明らかだ。
嚮団の関係者であり、V.V.の息の掛かった人間。
それを隠す為に、騎士という身分を嘯いていた。
支援
支援
支援
私怨
支援
ならばジェレミアと奇妙な距離を取っていたつかさは、ジェレミアに騙されていたのだろうか。
否、つかさは「悪」。
ルルーシュ一人なら事故かも知れない、しかし浅倉まで「率先して殺しに行っている」のだから、つかさは殺し合いに乗っている。
そして鷹野の言葉への反応を見れば、それがジェレミア、北岡、つかさの間で共通認識だった事は間違いない。
全ての情報を総合すると――「あの三人は殺し合いに乗っている、V.V.の協力者達」。
レナだけが何も知らなかった。
レナだけが、騙されていた。
優しかった。
何故か?
恐らく『あの脱出方法』の為に利用するつもりだったのだろう。
ジェレミアがV.V.の関係者なら、きっとあのホームページの事も、脱出方法の事も知っていたはずだ。
初めから利用する為にレナに近付いた。
あの三人は他の参加者を利用し、自分達だけ脱出しようとしているのだ。
何とかしてヴァンとC.C.に合流し、この事を伝え――
――ヴァンとC.C.が信用出来るという確証も、ない。
助けてくれたというだけで、それも打算があったのかも知れない。
あのまま一緒にいれば殺されていたのかも知れない。
「誰も、信じられないっ……誰も、みんな……!!」
C.C.もヴァンも、信じられない。
「なんであの時に、二人とも私を助けてくれたんですか?」と、自らの問いを思い出す。
――俺はその……これ以上カギ爪の野郎に好き勝手されるのが嫌だったから。
――どうしてだろうな、私にもよく分からないんだ。
「みんな、みんな、信じられ――」
嬉しかった事も、楽しかった事も、全部嘘。
――君はいいのか。
――泣いていられる時間は、ここが最後かも知れん。
――そうだね、不思議……何で美味しいのに、嬉しくて、楽しくて、……泣いちゃうんだろうね……。
――レナ、しっかりしろ!!
「信じ、……たいよ、ぉ……う、うぅうぅぅぅううう……!!」
せめて『あんな脱出方法』さえ知らずにいられたら。
疑う理由を、減らす事が出来たのだろうか――
▽
「上手くいったな」
「ああ、上出来だ」
御満悦の様子の主人を前に、三村も笑みを深める。
クーガー達に「あと二人解除出来る」と言えば、C.C.と翠星石を選ぶ事は分かっていた。
全て想像の範囲内だ。
志々雄の本来の目標は首輪による参加者の支配。
参加者達に首輪を外されては元も子もない。
だがC.C.達のような女子供なら、首輪がなくとも武力で容易に制圧可能だ。
だから志々雄以外の二人が首輪を外すという条件は、志々雄と三村にとって何らマイナスにならなかった。
支援
C
時刻が二十一時を回っている事を確認してからパソコンを端末に接続し、起動させる。
手際良く操作して『多ジャンルバトルロワイアル』のトップページへ。
『情報』。
「一日目の二十一時以降、会場からの脱出方法の一例を開示する。」「→詳細は『こちら』」。
三村は僅かにそのページを開くのを躊躇った。
罠?
しかし、首輪の解除方法に偽りはなかった。
ならば脱出方法も真実?
何の為にこんなものを用意している?
疑問が溢れるが、三村は意を決して『こちら』をクリックした。
首輪を解除した上で、合計十二時間以上同行した参加者を殺害する。(それ以降は案内人の指示に従って下さい)
は? と三村の口から息が漏れた。
首輪を解除――した。
十二時間?
そして三村は、気付く。
(俺と志々雄が会ったのは――)
背中から押された。
よろめくと、右胸から切っ先が生えていた。
焼けるように熱い――否、焼かれている。
「あ゛……」
切っ先が抜けると体を支えられなくなり、床に仰向けに倒れ込んだ。
肺の中に血が満たされ、吐き出す吐息に血が混じる。
「げほっ、は……っ!」
自らの血に溺れる。
指先で床を掻き毟る中、見慣れた怪人が視界を遮った。
「三村、てめぇは実に使える犬だった。
いや、犬ってのは失礼か……てめぇは確かに俺の参謀だった。
約束通り――『美酒』をくれてやる」
三村は藻掻くのをやめ、志々雄の言葉を噛み締める。
(おじさん、俺……とんでもないヘマをやらかしたみたいだ。
死ぬのは二回目……だってのに、俺は『満たされている』。
志々雄の完全勝利、俺はその礎になったんだ)
「方治より役に立ったかもな。
誇りに思っていいぜ」
(俺は……このどうしようもなく狂った男の役に立ったんだ。
そうだ、これが……"The third man”の……!!)
ぐ、と吐き出し掛けた血を舌の上で転がす。
自らの血の味を味わいながら、飲み干した。
「勝利の、美酒……!!」
【三村信史@バトルロワイアル 死亡】
▽
支援
しえ
支援
支援
志々雄は三村の死を見届ける。
その肢体が痙攣すら起こさなくなったのを確認すると、窓が斑に染まった。
夜の闇とも違う、暗く澱んだ景色。
その中から現れた人物が、志々雄に向かって恭しく礼をする。
「てめぇが『案内人』って奴か……随分面妖なツラぁしてやがるな」
志々雄の軽口には応えず、兎顔の案内人は拍手をした。
「ブラボォ。まずはおめでとうございます。
貴方がこの『多ジャンルバトルロワイアル』最初の脱出者。
貴方は『この会場から脱出』し、私と共に『控え室』に移動して戴きます」
「会場から脱出はさせるが、元の世界には返さない。
飽くまで掌の上……順当なオチだな」
これみよがしに用意された『脱出方法』の情報。
志々雄はこれで本当に脱出出来るとは思っていなかったし、脱出したいとも思わなかった。
それでも三村を殺して実行したのは「案内人の指示に従って下さい」という一文の為。
この殺し合いを計画した人間と接触出来ると判断したからだ。
「人間」ではなかったが、概ね計算通りだった。
「ならとっとと案内とやらをして貰おうか――ああ、その前に」
志々雄は三村の血で汚れたヒノカグツチを振るい、パソコンを叩き斬る。
金属製のそれは二つに裂け、火花を散らしながら画面を黒に染めた。
「あの連中はもう暫く、ここで遊んでいて貰おうか。
……ま、どうせこの方法を使えねぇ甘ちゃん揃いだがな」
高笑いと共に、二人の怪人が澱んだ窓の中に消える。
後には破壊されたパソコンと、物言わぬ死体だけが残された。
「志々雄真実……君は僕達に一つの『答え』を提示してくれた。
ここに招待したのはその特典だと思ってくれていい」
V.V.は楽しげに言う。
『答え』を先延ばしにした彼らには、もう少しあの会場であがいて貰おう――そう言って笑う。
その姿を志々雄は静かに見下ろしていた。
「その『答え』とやらがてめぇの目的か?」
「あのホームページで二つの情報を閲覧出来るようにした事に関しては、そうだよ。
バトルロワイアルに関してなら、それが全てとは言わない。
大事な事ではあるけどね」
志々雄はV.V.と向き合って言葉を交わす。
そして腕を組み、言う。
「成る程、くだらねぇ。
わざわざ三村をぶっ殺して会いに来てやったってのに、拍子抜けもいいとこだ」
それを聞いてもV.V.が激昂するような事はなかった。
「君ならそう言うと思ったよ」と、苦笑を漏らすばかりだ。
「元の世界に帰すのは最後に生き残った一人だけ――これは覆らないよ、僕は嘘が嫌いだから。
ただし、君はこれからそれ以外については自由にしていい。
ここで僕らと一緒に会場の様子を見届けて、最後に生き残った者と殺し合ってもいい。
ラプラスに言って会場に帰ってくれても構わない、好きな場所に出られるから。
あと監視の手伝いをしてくれている人員に言えば、パソコンの扱い方とかも教えてくれるだろう。
日本科学技術大学教授上田次郎のなぜベストを尽くさないのか
さらに上田教授の新著『IQ200』も好評発売中!
C
この特典は気に入らないかい?」
「ああ、気に入らねぇ」
V.V.の説明を最後まで聞いてから、志々雄はV.V.の胸にヒノカグツチを突き刺した。
V.V.の薄い背を貫通し、力を失った腕がダラリと下がる。
次いで刀を振るった勢いを利用して、脱力した肢体を数メートル先の床に叩き付けた。
「それで俺を上手く扱えてるつもりか?
俺が素直にてめぇの言う事に従うとでも?
俺の目的がてめぇを足掛かりにした国盗りだってのは知ってるだろ」
床に転がった死体。
じわりじわりと血が広がっていく。
「……と、言いたいところだが。
今は乗ってやるよ」
動かなくなった死体は痙攣を始め、やがて起き上がった。
「ほう、不死って奴は満更冗談でもねぇらしいな」
「君も欲しいかい?」
「まさか、そいつが隣になきゃあ地獄を満喫出来ねぇだろ。
生きて、悶えて、最期に笑う……そういうもんだ」
軽い雑談を挟みながらクツクツと笑う。
V.V.も余裕を崩さない。
「俺がこう来る事も織り込み済みだろ?
ただてめぇを磨り潰して奪うもん奪っても、てめぇの予測の内。
違うか?」
V.V.は薄く笑うばかりで答えなかった。
それ以上V.V.に追撃する事はなく、志々雄は踵を返す。
向かう先は特に決めていない。
「今は好きにさせておいてやるよ。
俺が飽きるまでは、な」
言い残し、志々雄は去る。
脱出者が気ままに『控え室』の中を闊歩するその間にも、モニターの中の現実は移り変わっていく。
▽
――お別れの夜が来たの。
――日の当る世界を教えてくれてありがとう。
――あなたの温かさは日溜りの温かさだったわ。
鷹野は北岡達に見付からないよう一件の家屋に入り、窓から飛び去るレナの背を見詰めていた。
レナの首に打ったのは雛見沢症候群の治療薬、C120。
前原圭一に支給されたのと同じ薬品だ。
L5発症者への唯一の対処薬だが、普通の感染者や健康な人間に使えば10分以内に瞳孔拡大、発熱、全身の発疹、妄想などを起こす。
自らへの皮肉を込めて富竹に打つはずだったH173を用いる事も考えたが、こちらは症状が出るまでに数時間掛かるのでやめた。
(私は何をしたい……いえ、何を見たいのかしらね……)
そもそもレナを殺すつもりでいた。
まず北岡、ジェレミア、つかさの三人をレナの目の前で殺して絶望させ、その上でレナを殺害して全て終わらせるはずだった。
しかし敢えて彼らの晩餐が終わるのを待っていた。
想像以上の抵抗を受けたにも関わらず、ファイナルベントを使わなかった。
今もわざわざ雛見沢症候群を発症させた上で泳がせている。
随分レナを殺すのに消極的だ――自分を省みても、そう判断せざるを得ない。
支援
支援
支援
V.V.やラプラスに踊らされている自覚があるから、わざと回りくどい真似をしようとしているのかも知れない。
それとも彼らに、何かを期待しているのか。
「下らないわ……」
吐き捨てるように言う。
何を考えていようと、既に水面に石を投げ込んでしまった。
後は坂を転がるように、落ちて行くだけ。
「さぁ、あなた達の『選択』を見せて頂戴」
戯けてV.V.を真似て見るも、滑稽な自分に痛々しさを感じるばかりだった。
彼らが雛見沢症候群の悲劇に踊らされて死ぬのを見れば満足なのか。
彼らが奇跡を起こして雛見沢症候群を打ち破れば満足なのか。
自分がどんな選択を、どんな結果を求めているのかさえ分からないまま、鷹野は見守る。
後戻りは、決して出来ない。
▽
身に纏う制服の色は『白』。
それは薄汚れようと、夜の市街地の中で確かな存在感を放っていた。
狭間は探知機を片手に北岡秀一のもとへ向かっていた。
レナとつかさはともかくジェレミアについては聞かされていなかったが、仲間なのだろう。
しかしその途中、レナを示す光点が素早い移動を始めた。
(別行動……?)
それを追うように北岡らの点も動き出す。
状況は分からないが、北岡達の方が遅い。
レナは恐らく乗り物で移動している、合流を目指すなら北岡の方だろう――そう判断し、北岡の進路を推測する。
そして、鉢合わせた。
「お前、狭間……!!」
北岡に名を呼ばれ、ドクンと心臓が跳ね上がる。
――んなことしなくったって、話聞いてくれる人間はいるぜ?
――あとはテメー次第だ、そこで普通に話しかけることさえできりゃ、話を聞いてくれる人間なんて幾らでもいる。
――元の世界にだって、この殺し合いの世界にだってな。
呼吸が乱れないよう、緊張を悟られないよう気を配りながら声を出した。
「私は――」
魔神皇、と言い掛けて止める。
予め考えていた台詞を思い出し、改めて告げた。
尊大な態度はそのままに。
狭間個人として他者に触れ合うと決めはしても、これまでの習慣をそうやすやすとは変えられない。
「どうやら事態が動いているようだな。
貴様等がどうしてもと懇願するというのなら、この軽子坂高校2年E組の狭――」
「「「助けろ!!!」」て下さい!」
二人の男の切迫した声に、少女の丁寧な願いは半ば掻き消される。
こうも正面から言葉を叩き付けられるとは思っておらず、狭間の思考は僅かな時間ながら停止した。
命令口調に対し「無礼な」と憤る暇さえ与えられず、二人の男は捲し立てる。
「探知機を持っているのだろう、竜宮レナは今どこにいるのだ!!」
「確か魔法使えるんだよな、こうパパッと人を移動させるのとかないわけ!?
あと治療、毒打たれたのは治せないか!?」
sie
支援
両肩を二人それぞれに掴まれて揺さぶられる。
数秒掛けてようやく正気を取り戻した狭間は「離せ」と乱暴に二人の手を振り払った。
「この際だ、私への非礼と説明が後回しになる事を許してやる」
手元の探知機を操作し、表示された光点を指し示す。
「今、竜宮レナはここにいる。
人を移動させるような魔法はない、解毒魔法は必ず効く保証はない。
この女を追い掛けるなら足を用意しろ」
ジェレミアが出した支給品、ミニクーパーの中で狭間は一通りの説明を受けた。
運転するのは北岡、案内役となる狭間は助手席、残る二人は後部座席。
北岡による説明が終わると、狭間は小さく舌打ちをする。
(早速失望させられるとはな……)
レナは大口を叩いておきながら仲間の足を引っ張っている。
とは言え、まだ狭間と人間との対話は始まったばかりだ。
まず――先程この三人は、確かに狭間に関心を寄せた。
しかしそれは「狭間に力があるから」ではないか。
打算ですり寄って来ているだけではないか。
それを確かめる為に、狭間は再び対話を試みる。
「聞きたい事が、ある」
一瞬で注意が狭間に集まる。
この場にいる全員が狭間の次の発言を待っている、狭間がこれまでの人生で経験した事のない事態。
尋ねようとしていた事柄が優秀な頭脳から抜け落ちて、奇妙な空気が生まれた。
「…………あ、後にする」
「そうか、じゃあ後で」と返す声には呆れも苛立ちもなく、確かに「後で話をしよう」という意味が込められていた。
一挙一動を注目されているようで居心地が悪い。
何だこれは、と心中で呟く。
だが――分かっていた。
これは確かに狭間が求めていたものだ。
この居心地の悪さが、妙な気恥ずかしさが、狭間の欲しかったものだ。
会話がある、会話の中に自分がいる、向けられる視線に嘲笑も侮蔑もない。
殺し合いの最中であっても、ここには『日常』の片鱗があった。
「あの、狭間さん」
後部座席から声が掛かった。
バックミラー越しにつかさの視線を確かめる狭間に対し、つかさは鏡ではなく直接狭間の方を見ている。
「……この私に、何か用があるのか」
「さっき、ビーフシチューを作ったんです。
錬金術で調合したから食べれば傷が治るし、疲れも取れます。
それで――」
錬金術、という言葉に好奇心と探求心を擽られるが、続く言葉に消し飛んだ。
「狭間さんが来るって聞いていたから、狭間さんの分を取っておいたんです。
後で、食べて貰えますか?」
絶句した。
北岡が一方的に誘ってきただけで、狭間は一言も「行く」とは言っていない。
それなのに合流する前提で考えていたのか。
図々しい、厚かましい、そんなに私の力を利用したいか。
そう無理矢理貶める単語を脳内に並べるが、自分の感情は誤魔化せなかった。
「待たれる」のは、初めてなのだ。
支援
sie
支援
sie
sie
いつも狭間は待つ側だった。
待ち続けていた。
幾ら待っても誰も来なかった。
自分から行って、拒絶されて、それからは拒まれる事への恐怖でますます動けなくなった。
回想するうちに――気付けば狭間はつかさの問い掛けに応えていた。
「……感謝しろ。
この案件を片付けた暁には、この私が賞味してやる」
レナだけではない、どいつもこいつも脆弱な人間ばかりだ。
しかし、それだけで済ますのは早計だろう。
「狭間自身ではなくその力に関心を寄せたのではないか」。
この問いは一先ず先送りにしてやってもいい。
最初の接触としては及第点だったと、狭間はこの三人を評価した。
面倒は多いが、受けて立とうじゃないか――そう思える程度に、一定の満足を得ていた。
▽
「傷口が焼かれてる。
殺したのは志々雄でまず間違いない、か」
「窓の鍵は全て掛かっているぞ。
割れた窓はないし、出入り口は内側から施錠された扉一つ、通気口は人が通れるサイズではないな。
三村を殺した後、志々雄はどこに消えた?」
「とにかく、こうなるとここを離れた方がいいでしょう。
志々雄の動きが分からない上に、このメンツじゃ後藤にもシャドームーンにも対抗出来ません」
三村が殺された状況を分析し、先の事を相談するクーガーとC.C.。
二人の様子を、翠星石は至極他人事のように見ていた。
別世界で起きた事のように現実味がなかった。
翠星石にとっての現実は――
「くそぉッ!!」
三村の死体の傍らに跪き、床に拳を叩き付ける真司。
表情は歪み、泣き出しそうな声だった。
「何で、何で……!!」
真司の悔しさは良く分かった。
ずっと見てきたから。
ずっと同じ経験をしてきたから。
「何で、……そんな顔が出来るんだよ……!!」
志々雄を信じ、志々雄に殺された三村は、誇らしげだった。
己の命と役目を全うしたとでも言いたげな、満たされた表情。
同じ『シンジ』の名を持つ二人の浮かべる表情は対照的だった。
真司の気持ちが分かるからこそ、翠星石は何の言葉も掛けられなかった。
どんな言葉でもその腕を掴む茨の蔓を取り除けないと、理解していた。
▽
「レナッ! レナぁああっ!!!」
モニターの前で、少女は涙を落とす。
これまでに繰り返し繰り返し見てきた悲劇が、もう一度繰り返されようとしている。
「お願いっ……お願い、信じて……ッ!!」
もう何度、希望が絶望に変わっただろう。
sie
支援
C
それでも今度こそ強くなると約束したから。
「私はっ、あなたを信じてる……!!
だから、あなたも……信じて……ぉ、願い、だからっ……」
嗚咽が混じり、途切れ途切れになりながら叫ぶ。
信じれば奇跡は起きると、他でもないレナが教えてくれた。
だから、何度でも叫ぶ。
この声が届くと信じて叫ぶ。
「みんなを、信じてッ……!!」
▽
新しい舞台の幕は開けたばかり。
それぞれの選択の先にあるのは喜劇なのか悲劇なのか――
【一日目夜中/???】
【志々雄真実@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-(漫画)】
[装備]:サバイバルナイフ@現実、ヒノカグツチ@真・女神転生if...
[所持品]:支給品一式×2、リュウガのデッキ@仮面ライダー龍騎、不明支給品0〜1、林檎×8@DEATH NOTE、鉄の棒@寄生獣
マハブフストーン@真・女神転生if…、本を数冊(種類はお任せ)
[状態]:各部に軽度の裂傷、疲労(小)、首輪解除済み
[思考・行動]
1:ぶいつぅの掌の上にいる。(飽きるまで)
2:気が向いたらガリア王国のジョゼフを持て成す。
[備考]
※首輪に盗聴器が仕掛けられている可能性を知りました。
※クーガー、C.C.、真司らと情報交換をしました。ギアスとコードについて情報を得ました。
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
[装備]無し
[支給品]無し
[状態]健康
[思考・行動]
1:???
※銀髪の少年により『鷹野三四に従え』というギアスをかけられています。
【一日目夜中/G−8 総合病院】
【ストレイト・クーガー@スクライド】
[装備]:葛西のサングラス@ひぐらしのなく頃に、
[所持品]:基本支給品一式、不明支給品(確認済み)0〜1、城戸真司のズーマーデラックス@仮面ライダー龍騎
[状態]:身体中に鈍い痛み、両脚に激痛、疲労(大)
[思考・行動]
1:かがみと詩音の知り合い(みなみ、レナ)を探す。
2:後藤を最速で倒す。約束は守る。
※総合病院にて情報交換をしました。
※ギアスとコードについて情報を得ました。
※真司、C.C.らと情報交換をしました。
【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]庭師の如雨露@ローゼンメイデン、真紅と蒼星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式(朝食分を消費)、真紅のステッキ@ローゼンメイデン、情報が記されたメモ、確認済支給品(0〜1)
[状態]身体中に強い鈍痛、疲労(中)、首輪解除済み
[思考・行動]
1:真司と同行し、殺し合いを止める。
2:真紅が最後に護り抜いた人間に会い、彼女の遺志を聞く。
支援
支援
sie
支援
支援
3:水銀燈を含む危険人物を警戒。
4:桐山はカズマに任せる。
[備考]
※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。
※真紅のローザミスティカを取り込んだことで、薔薇の花弁を繰り出す能力を会得しました。
【城戸真司@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎
[所持品]支給品一式×4(朝食分と水を一本消費)、確認済み支給品(0〜3) 、劉鳳の不明支給品(1〜3)、発信機の受信機@DEATH NOTE
[状態]身体中に激しい鈍痛、疲労(大)、劉鳳を殺してしまったことに対する深い罪悪感、志々雄への嫌悪、首輪(剣心)、カードキー
[思考・行動]
1:人を守る。
2:右京の言葉に強い共感。
3:翠星石と同行し、殺し合いを止める。
※絶影を会得しました、使用条件などは後の書き手の方にお任せします。
※クーガー、C.C.らと情報交換をしました。
【ヴァン@ガン×ソード】
[装備]:薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-、バトルホッパー@仮面ライダーBLACK
[所持品]:支給品一式、調味料一式@ガン×ソード、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎
[状態]:疲労(小)、右肩に銃創、右上腕部に刀傷、各部に裂傷、全身打撲
[思考・行動]
0:とりあえず前に進む。
1:カギ爪の男に復讐を果たすためさっさと脱出する。
2:C.C.の護衛をする。
3:次にシャドームーンに会ったらバトルホッパーを返す。
[備考]
※まだ竜宮レナの名前を覚えていません。
※C.C.の名前を覚えました。
【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ R2】
[装備]:ファサリナの三節棍@ガン×ソード
[所持品]:支給品一式×4、エアドロップ×2@ヴィオラートのアトリエ、ピザ@コードギアス 反逆のルルーシュ R2
カギ爪@ガン×ソード、レイ・ラングレンの中の予備弾倉(60/60)@ガン×ソード、確認済み支給品(0〜2)
[状態]:健康、首輪解除済み
[思考・行動]
0:東に行き、レナ達と合流したい。
1:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない。
2:後藤、シャドームーン、縁と紫のスーツの人物(王蛇)は警戒する。ゾルダ(北岡)については保留。
3:ジェレミアの事が気になる。
[備考]
※不死でなくなっていることに気付いていませんが、回復が遅い事に違和感を覚えています。
※右京と情報交換をしました。
※ルパンと情報交換をしました。
※クーガー、真司らと情報交換をしました。
【一日目 夜中/G−9 市街地】
【北岡秀一@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]:レイの靴@ガン×ソード、ゾルダのデッキ@仮面ライダー龍騎
[所持品]:支給品一式×3(水×2とランタンを消費)、CONTRACTのカード@仮面ライダー龍騎、CONFINE VENTのカード@仮面ライダー龍騎
FNブローニング・ハイパワー@現実(12/13) 、RPG-7(0/1)@ひぐらしのなく頃に、榴弾×1、ミニクーパー@ルパン三世
デルフリンガーの残骸@ゼロの使い魔、確認済み支給品(0〜2)(刀剣類がある場合は一つだけ)
[状態]疲労(小)、軽傷
[思考・行動]
0:運転中。
1:レナを連れ戻す。鷹野を倒して解毒剤を手に入れる。
2:つかさに対する罪悪感。
sie
sie
支援
sie
支援
sie
※龍騎勢が、それぞれのカードデッキを持っていると確信。
※一部の支給品に制限が掛けられていることに気付きました。
※病院にて情報交換をしました。
※レナ、狭間と情報交換をしました。
【柊つかさ@らき☆すた】
[装備]なし
[支給品]支給品一式×2(水のみ3つ)、確認済み支給品(0〜1) 、レシピ『錬金術メモ』、陵桜学園の制服、かがみの下着、食材@現実、
パルトネール@相棒(開封済み)、こなたのスク水@らき☆すた
[状態]疲労(小)、精神的疲労(小)
[思考・行動]
0:錬金術でみんなに協力したい。
1:レナを連れ戻す。鷹野を倒して解毒剤を手に入れる。
2:みなみに会いたい。
[備考]
※錬金術の基本を習得しました。他にも発想と素材次第で何か作れるかもしれません。
※アイゼルがレシピに何か書き足しました。内容は後続の書き手氏にお任せします。
※会場に連れ去られた際の記憶が戻りました。
【ジェレミア・ゴットバルト@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[装備]無限刃@るろうに剣心、贄殿遮那@灼眼のシャナ
[所持品]支給品一式×2(鉛筆一本と食糧の1/3を消費)、咲世子の煙球×1@コードギアス 反逆のルルーシュ、USBデータカード@現実、ノートパソコン@現実、
ヴァンの蛮刀@ガン×ソード、琥珀湯×1、フラム×1、リフュールポット×2、不明支給品(0〜1)、
薬材料(買い物袋一つ分程度)、エンドオブワールドの不発弾(小型ミサイル数個分)、メタルゲラスの装甲板、メタルゲラスの角と爪
[状態]右半身に小ダメージ、疲労(小)、精神磨耗、両腕の剣が折れたため使用不能
[思考・行動]
1:レナを連れ戻す。鷹野を倒して解毒剤を手に入れる。
2:V.V.を殺す。
3:他の参加者に協力する。クーガーとの約束は守る。
4:全て終えてからルルーシュの後を追う。
5:スザクを止めたい。水銀燈を特に警戒。
[備考]
※病院にて情報交換をしました。
※制限により、ギアスキャンセラーを使用すると疲労が増大します。他にも制限があるかも知れません。
【狭間偉出夫@真・女神転生if…】
[装備]:斬鉄剣@ルパン三世
[所持品]:支給品一式、ニンテンドーDS型探知機
[状態]:人間形態
[思考・行動]
0:人間と触れ合ってみる。滅ぼすかどうかはそれから考える。
1:北岡らと同行する。
2:レナを連れ戻す。
[備考]
※参加時期はレイコ編ラストバトル中。
【鷹野三四@ひぐらしのなく頃に】
[装備]無し
[支給品]オーディンのデッキ@仮面ライダー龍騎、空の注射器、不明支給品
[状態]健康
[思考・行動]
1:レナ達の選択を見届ける。
※鷹野のデッキに他のデッキと同様の制限が掛かっているかどうかは不明です。
【一日目 夜中/G−9 市街地上空】
【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】
支援
sie
sie
sie
支援
[装備]:鉈@ひぐらしのなく頃に
[所持品]:支給品一式、インスタントカメラ(数枚消費)@現実、真紅の下半身@ローゼンメイデン、空飛ぶホウキ@ヴィオラートのアトリエ、
Kフロストマント@真・女神転生if、ブラフマーストラ@真・女神転生if、庭師の鋏@ローゼンメイデン
[状態]:疲労(小)、悲しみ、全身の発疹、発熱、瞳孔の拡大、妄想(雛見沢症候群L4以上)
[思考・行動]
0:誰も信じられない……!?
[備考]
※ギアス、コードについて一定の理解を得ました。
※北岡達と情報交換をしました。
※どの方角に向かうかは後続の書き手氏にお任せします。
【食材@現実】
山田奈緒子がモールで調達
人参、玉葱、牛肉等、基本的な食材がひと通り揃っている。
【パルトネール(86年)@相棒】
柊つかさに支給
ボルドーの最高級ワイン、日本語訳は「相棒」。
目玉が飛び出すお値段、間違っても料理にぶち込んでいい品ではない。
【ブランクシチュー@ヴィオラートのアトリエ】
柊つかさが調合
基本的な調合アイテムで(食材)x2と(調味料)x1と井戸水x1が必要、高品質なものでHP回復・中、LP回復・中の従属効果。
今回はつかさのアレンジでビーフシチューになり、HP回復・大、LP回復・大。
【USB型データカード@現実】
アイゼル・ワイマールに支給
ノートパソコンやPDAに挿入する事で、携帯電話やPHSの通信ネットワークを利用したインターネット接続を可能にする通信機器。
【ノートパソコン@現実】
北岡秀一に支給
タバサに支給されたものと同様、何も入っていない。
支援
支援
投下終了です。
時間がかかり申し訳ございませんでした。長時間の御支援、ありがとうございます。
誤字脱字、問題点等がございましたら御指摘戴ければ幸いです。
三村の支給品の扱いを明記し忘れましたので、収録の際に修正致します。
ise
投下乙です!
おおう……翠星石C.C.が首輪解除されて志々雄は鷹野さん飛び入りでレナが……
首輪解除だけじゃなくて脱出方法もあんなだけど公開されたか
ロワの展開が動きまくったなぁ、終盤の始まりって感がありありと出てる
真司と翠星石やクーガーとのやり取り、ヴァンとC.C.の友情とも恋愛とも全く違う関係、北岡ジェレミアつかさレナの食事シーン
いろんな人間の決意から、三村の死やレナの雛見沢症候群がジェットコースター並みの落差だよ
信じたいのにってレナが悲しすぎるし、狭間の二度目のぼっち脱却の機会
これからどうなってしまうんだ
改めて、大作投下乙でした!
投下乙です。
がんばれボッチ皇!
投下乙です
数人とはいえ遂に首輪が解除されたかと思ったら、まさかの三村死亡。しかも志々雄の手で満足げに
生き様は方治だったけど死に様は由美に通じるものがあったな。だからこそ原作の剣心のように真司には認められないのだろうけど
指摘する箇所は北岡がゾルダに変身しているので状態表に(一時間変身不可)の追記と、
ノートパソコンは北岡の支給品とありますが北岡の支給品はすでに確定しているので五ェ門か浅倉の支給品に変更してください
>>334 御指摘ありがとうございます。
収録の際に五ェ門の支給品として修正致します。
投下乙です
読んだ後リアルに
( ゚д゚)
( ゚д゚ )
こんな感じだった
ビックリと胸熱と切なさと心強さとでまだ混乱している
楽しませてもらいました 面白かった!
水銀燈、後藤を投下します
【1】
真紅、貴方はとても美しい。
真紅、貴方はとても優しい。
真紅、貴方はお父様に愛されている。
真紅、私は貴方を許さない。
.
【2】
『それじゃあ、次の放送でまた会おう。
優勝者が決まるまでにあと何回放送があるのか、分からないけどね』
後藤は放送に耳を傾けながら食事をしていた。
地面に胡座をかき、手に持った切断した四肢をかじりつく。
食しているモノはかつて田村玲子であり、篠崎咲世子であった人間の肉体だ。
パラサイト生物は人間の頭部を乗っ取る生物である。
その頭部がなくなれば、すなわち只の人間と同じだということ。
田村玲子を捕食している、というよりは篠崎咲世子を捕食していると言ったほうが正しいだろう。
「……少々、足りんな」
後藤は切断した田村玲子/篠崎咲世子の右腕を食しながらつぶやく。
女性特有の丸みを帯びた柔らかさと、鍛えることで引き締まった歯ごたえのある肉だった。
戦闘が行えない状態というわけではないが、最適な状態とも言い難い。
出来ることならばもう一人ほど人間を食していておきたい。
田村玲子のデイパックをひっくり返し、中身を確認する。
「食料か、腹の足しにはなるだろうな」
後藤は全員に等しく支給された基本支給品のパンを腹に詰め込んでいく。
そして、田村玲子が所持していた特殊な支給品はひとつの人形だった。
こんな食べることのできないものは必要ない、と言わんばかりに後藤は放り投げる。
「……ふぅ」
味気ない食事はすぐに終わり、後藤はゆったりとした動作で立ち上がる。
焦る必要はなかった。
「さて……」
放送で聞いた限りでは、先の放送での泉新一の死のような特別慌てるような事柄はなかった。
志々雄は未だ生きており、後藤は五体を取り戻した。
それだけが重要なことだ。
志々雄、その名を思い出すだけでふつふつと身体の熱が上がることを感じる。
それは切り落とされた右腕である三木が味わった熱と痛み、一種の幻痛だった。
「怒りか、慣れんものだな」
なるべく声のトーンを抑え、低い声でつぶやく。
どれだけ取り繕おうと、後藤は確かに怒りを抱いている。
取り繕うということ自体がすでに今までの後藤と違うのだが、後藤はそのことに気づかない。
ただ、怒りから生まれる志々雄への敵意がどんどんと強まっていくだけだった。
ちょうど食事と放送を終えたばかりで、動き出すにはキリも良い。
戦いは終わっていない、後藤は一歩踏み出す。
その瞬間、ふらっと黒い影が視界をよぎった。
先手を取ろうと考えた瞬間、黒い影も後藤の存在に近づいた。
距離はある、ここから動き出したところで主導権を握られるわけではない。
後藤はゆったりとした歩調を崩さず、黒い影へと近づいた。
「……お前は」
後藤が考えるよりも影との距離は近かった。
目測を誤ったのは太陽が沈み始め、周囲が薄闇に支配されていたということもある。
だが、なによりも遭遇したが異質だった。
大人びた少女のような、という奇妙な印象を抱く影だった。
少なくとも十代の女性ほどの背丈を感じさせる顔立ちだが、目の前の人形は後藤の脚ほどの大きさもない。
普通ならばあり得ない。
そう、目の前の影は人によく似た作り物、人形だった。
「なに、貴方? どこかで会ったかしら?」
その人形はローゼンメイデン第一ドール、水銀燈だ。
異形の後藤を見て発した声は、普段のおどけた声色を感じさせないものだった。
だが、その一方で水銀燈は後藤から離れるように距離を取り直してもいた。
後藤を恐れた、というわけではない。
後藤の人から遠く離れた異形に、先ほどの銀色の魔王の姿を連想してしまったからだった。
もちろん、そんなことは後藤には知る由もないことだったが。
水銀燈は後藤を一瞥し、攻撃を行なってことを悟ると口が開いた。
「シャドームーン、この名前を知っているかしら?」
「……知らんな」
「そう。だったら、強いから……」
水銀燈はそこまで言うと、突然、口を閉ざした。
後藤は水銀燈の言葉を待ったが、水銀燈は身体を震わせるだけで言葉を続けようとはしない。
食欲を感じない上に、明確な敵意を示さない水銀燈へは戦闘意欲も覚えない。
そのため後藤は襲いかかることはせず、なんとなしに抱いた疑問を尋ねた。
「……赤い人形と、同じ形式の人形か?」
その言葉に、ぴくりと水銀燈が反応する。
その水銀燈が示した様子を、後藤はじろりと爬虫類じみた目で観察する。
それは相手の力量を測るというよりも、なにかを確認しているような目だった。
「やはりな」
「なに、やはりって?」
「俺はお前たち人形に用はないことがわかっただけだ」
そう吐き捨て、後藤は水銀燈に背を向ける。
後藤の戦闘本能とは、人間に対する殺意から生み出されるものだ。
食欲とは食すことでエネルギー源となる生命体に覚えるものだ。
だが、水銀燈は人形だ。
人形を食しても、エネルギーを蓄えることはできない。
ちょうどバトルロワイアル初期に出会った真紅と同じローゼンメイデンシリーズ。
ならば、今の後藤が水銀燈をかまう理由がなかった。
「人形じゃない……」
「?」
水銀燈の言葉に脚を止め、後藤は水銀燈へ振り返る。
般若面を思わせる苛烈な形相をした水銀燈が、後藤を睨みつけていた。
心地良い敵意を感じる、歪つな表情だった。
「ほう」
本来ならば、水銀燈はパラサイト生物の興味を引かない人形に過ぎない。
だが、敵意とは個と個の関係が戦闘へと発展する最大の悪感情である。
戦闘という行動に囚われている後藤には、これ以上にない心地良い感情だ。
目の前の人形と戦ってもいい。
後藤はパラサイト生物の本能とは別の部分でそう思い始めていた。
「私は水銀燈、ただの人形じゃないわ……! ただの、人形じゃ!」
闇夜に溶けこむように漆黒の羽が大きく広がり、無数の羽が銃弾のように後藤を襲う。
音もなく飛び出すその攻撃は、暗殺性という意味では銃にも勝る攻撃だ。
「くだらんな」
闇の中では目視することも難しいその攻撃を、後藤は左腕を盾のように薄く広げて防御する。
夜闇に溶け込んだ羽を目視することは難しかったが、一撃一撃の威力は銃弾に大きく劣る。
人間としての機能を保っている胴体を守っていれば、恐れるような攻撃ではない。
仮にその盾をすり抜けても、胴体には『鎧』というべきが防いでくれる。
羽による攻撃では後藤を倒すことはできない。
「それだけではないだろう?」
決定打にならない漆黒の羽による攻撃を防いだ後藤は、水銀燈へ挑発するように尋ねる。
目の前の人形は知能や精神性は人間に近いが人間ではない。
となると、パラサイト生物のように人間とは違う特殊な攻撃方法を持っている可能性もある。
後藤はその未知の攻撃を期待していたがための挑発だった。
「……ッ、まだまだ!」
水銀燈は一度なにかに気づいたように目を止め、一拍置いて再び黒い羽を広げる。
今度は後藤だけへ向けるのではなく、ばら撒くように広範囲に羽を飛ばした。
だが、これでは一撃一撃がかえって弱まる。
賢い戦法とは思えないな、と思いながらも後藤は盾でその攻撃を防ぐ。
「む」
そのとにかく量が多い攻撃が止んだと思うと、水銀燈は前方から姿を消していた。
――――目隠しか。
後藤はすぐに感づくと、腰をわずかに落とす。
どんな攻撃にも反応できるように身構える。
すると、ドン、という重いものを地面に落ちる音が小さく響いた。
小さな音だったが、静かな森の中ではよく響く。
音の方向へと注視すると、見慣れたデイパックがひとつ転がっている。
「チッ、囮か!」
水銀燈はまず黒羽根で目隠しを行い、次にデイパックを投げ捨てて注意を引いた。
ならば、次は攻撃を行なってくるはずだ。
すでに水銀燈は後藤の背後へと移っていた。
水銀燈は唯一の武器である農作業用の鎌を振りかぶっている。
狙いは首筋。
人の形をしている以上は人と急所も同じだろうという考えから勢い良く鎌を振り下ろした。
金属と金属がぶつかる音に似た、乾いた音が響く。
「なっ……!?」
硬質化させた右腕と水銀燈が手に持った農作業用の鎌がぶつかった音だ。
そして、膂力で勝る後藤の腕力で農作業用の鎌が水銀燈の手からこぼれる。
水銀燈は背後を取っていたにもかかわらず簡単に攻撃を防がれたことに驚愕の言葉を発する。
「後ろに目でもあるの!?」
「あるぞ」
水銀燈は叫ぶように疑問の言葉を投げかけると、後藤はこともなさげに首筋に複数の目を創りだした。
背後を取るという攻撃は基本中の基本だ。
先ほどの攻撃が目隠しであると気づいた瞬間に、後藤は目を生み出すという行動で視界を広げて背後を確認したのだ。
「ふん!」
ピンチはチャンスと隣合わせである。
水銀燈が攻撃をして、次の行動に移る前に後藤は攻撃行動へと移る。
後藤の右腕が有機的な曲線を持ったものから、無機的な直線の刃へと変わった。
ちょうど先ほど戦闘を行ったシャナが持っていたゲイボルグを思わせる形状だった。
水銀燈は後藤の攻撃を察し、素早く宙を舞って避けようと行動を開始する。
「なっ……!?」
しかし、その右腕は長く伸びた。
木々に囲まれた森林の中では、水銀燈も木にぶつからないように動くためにスピードを出しづらい。
そして、水銀燈が漏らした声は痛みによる悲鳴というよりも、予想外の行動への驚きの色が濃かった。
「なんだ?」
一方で後藤もまた困惑の念を覚えていた。
真紅を切り裂いた時に肉ではないが形あるものを切り裂く感覚ではない。
スカを食らう、とでも言うのだろうか。
硬い物質に当たった感触というものを感じられなかったのだ。
「……ッ!」
その疑問によって後藤に一瞬の隙が生じ、その間に水銀燈は空へと舞って姿を消していく。
追うか、と一瞬だけ考えるが、機動力では空を飛べる水銀燈に分がある。
それに、後藤にはやはり水銀燈にこだわる理由はない。
するすると槍状に変化させていた右腕を、通常の腕へと戻す。
「ふむ、腹部に穴が空いていたのか」
なるほど、と後藤はうなづく。
基本的に、どの生命体も胴体には重要な器官を備えている。
だからこそ、銃を撃ち慣れた人間は頭部ではなく胴体を狙う。
単純に的が大きく、手足と違いそれだけで致命傷となるとメリットが多いからだ。
水銀燈はその胴体を空洞していたのだ。
「先入観を逆手に取った、人造物である人形ならではのメリットだな……悪くない」
後藤は腹部が欠けていることこそが水銀燈の精神的な恥部であることを知らずにつぶやく。
かつかつと足音を立てながら、水銀燈が残していったデイパックへと歩み寄る。
水銀燈が置いていったデイパックを手に取って中身を無遠慮に地面へばらまいた。
「食料が多いな」
後藤は取り出したデイパックの中身を眺めてつぶやいた。
基本支給品の一つである食料と水、そして特殊支給品であるメロンパンやチョコレート。
後藤にとっては戦利品としてこれ以上ないものだった。
「ひとまずはこれだけか」
橘あすかに支給された特別な支給品もあったが、後藤に必要のないものだ。
今の後藤に必要な物は食料だけだ。
まずはメロンパンを包んだプラスチック袋から取り出し、咀嚼もせずに丸呑みする。
シャナが見れば激怒しかねない無粋な食べ方だが、後藤は味わうという行為自体に無頓着なのだ。
次に板チョコレートに手を伸ばそうとするが、パッケージから取り出し銀紙を剥がすという行為がひどく面倒だった。
とは言え、銀紙をそのまま飲み込むのは身体に悪影響を与える。
仕方なしに、後藤は両手を人間のそれへと変化させて素早くチョコレートを取り出していく。
「ムッ……」
後藤が開封したチョコレートを食べてしまおうと思ったその瞬間だった。
後方からがさりと音がし、後藤は地面に転がったままだった農作業用の鎌を投げつける。
鎌の投擲は攻撃を目的としてはいない、威嚇行動による足止めが目的だ。
気配一つ感じさせなかった存在に、後藤の警戒心が高まる。
ガタン、と鎌が近くの木に当たった。
後藤は素早く振り返り、気配もなく自身の背後に近づいた存在を目視する。
「……なんだ?」
一体の人形が、そこに立っていた。
「人形……?」
その人形は水銀燈と同じローゼンメイデンの生き残りである翠星石ではない。
彼女は今、後藤が取り逃がしたシャナに追い詰められているのだから。
では、どんな人形かというと、もちろん死んでしまった真紅が化けてしまったわけではない。
もちろん、蒼星石であるわけがない。
大前提として、目の前の人形は少女人形ではない。
この人形を見て『少女を模した人形』だとは思う人間が居るとは思えない。
ボサボサの黒髪と立派な口ひげ、地味な色合いの服装と同じく派手でないメガネ。
体格はそこそこいいのだろう、胴体に比べて手足は長めだ。
後藤の目の前の人形は四十前ほどの年齢の男性を思わせる人形だった。
神業級の職人(マエストロ)であるローゼン伯爵とは欠片も繋がりを持っていないこの人形。
『なぜベストを尽くさないのか?』
この愛くるしいと言うよりも見苦しい造形の人形の名を『上田次郎人形』と言った。
この上田次郎人形は大量生産を行われていない。
製作者であり人形のモデルとなった上田次郎教授の一存である。
その理由は上田次郎教授の言葉によると。
――愛ゆえに寝食を共にしてしまうばかりか、中には“人生のパートナー”に次郎人形を選んでしまう者すら現れかねない。
俗にいう【次郎人形依存症<<Jiro doll dependence syndrome>>】の症状を考えた末の決断なのだ。
決して、どうせ売れないだろうという弱い考え、元手を考えた際に手に入るであろう収益。
ましてや、某古本屋全国チェーン店に並んでいる著書を見て怖気づいたからではない。
閑話休題。
さて、上田次郎の座右の銘であるその言葉が上田次郎人形から特徴的なイントネーションで発せられる。
上田次郎人形の持つ機能の一つだ。(ちなみに上田次郎人形の主な機能はリラックス効果である)
後藤は不意を突かれ、ピタリと動きを止める。
目の前の上田次郎人形からは真紅や水銀燈と違って意思を感じない。
厳密には人形にも意思はある。
だが、一般的な人間は人形の意志というものを知ることはできない。
後藤もまた、通常の人間と同じようにその人形の意思というものを感じ取れないのだ。
だからこそ、後藤はこの人形にどう対応すべきか、と逡巡した。
『なぜベストを尽くさないのか?』
後藤の逡巡を読み取ったのか読み取っていないのか。
上田次郎人形は農作業用の鎌を木から引き抜きながら、上田次郎の座右の銘が口(?)にする。
目の前の人形の能力を計りきれない。
わかっていることは一つだけ、やはり人形には食欲がわかないということだ。
『なぜベストを尽くさないのか?』
「興味がないな」
上田次郎人形の言葉にそう返すと、上田次郎人形はくるりと振り向き背中をみせた。
後藤と田村玲子の二つのデイパックを担いだ上田次郎人形は宙を舞って森の奥へと消えて行く。
その姿を見た後藤は追おうとし――――やめた。
あのデイパックには食料もなければ執着する特別なモノもない、追うだけ無駄というものだ。
後ろ姿を眺めながら、後藤は南を向く。
大きな移動をしていなければ志々雄は市街地に残っているはずだ。
また、食料となる人間も少なからず居るだろう。
食料にもならず、強者にも思えない上田次郎人形を追うことよりも市街地へ向かったほうがいい。
「ひとまず、今は食事だ……」
十一枚の板チョコレートを一口で丸呑みし、支給された味気ない食料と水に手を伸ばした。
支援
【3】
『なぜベストを尽くさないのか?』
「うるさいっ!」
水銀燈は後藤から離れながら、そばに近寄った人形に小さな声で叱咤した。
森の奥へと消えたと思っていた上田次郎人形。
実は後藤に気付かれないように大回りして水銀燈へと近づいていたのだ。
上田次郎人形はせっせと二つのデイパックの中身を一つのデイパックに詰めなおしている。
「……まあ、悪くはないわね」
後藤との戦闘の途中に、水銀燈は一つの人形を見つけていた。
それこそが、この『上田次郎人形』である。
二度目の黒い羽による攻撃は目隠しの意味もあったが、同時に上田次郎人形を操る意味もあったのだ。
結果、後藤を倒すことはできなかったが支給品を奪うことはでき た。
特別な疲労もダメージも負わなかったことから、悪くない戦いだったと言えるだろう。
もっとも、自身のデイパックは回収できなかったため、後藤のものと交換する形になってしまったが。
「行くわよ」
上田次郎人形がデイパックの詰替え作業を終えたのを見計らって、水銀燈は声をかけた。
そして、上田次郎人形の抱えたデイパックを奪い取る。
上田次郎人形はなにも言わず、ふわふわと空を舞いながら水銀燈の後をついていく。
「あの時、私はシャドームーンの名前を……」
ぎりっと強く歯を噛み締める。
シャドームーンが与えた命令は一つだけだ。
『他の参加者を見付け出して、シャドームーンの危険性を喧伝すること』
それを水銀燈は実行しようとした 。
それも途中までなんの疑問を抱かずに、当然のように口にしていた。
生きている限り続く屈辱、完全なる恐怖からくる心の敗北。
そんな言葉のはずなのに、水銀燈は口にしてしまったのだ。
「なんで、私はッ!」
『ローゼンメイデンなのに』
その言葉を口にすることすら出来なかった。
何故ならば、水銀燈はまだシャドームーンの危険性を喧伝しようとしているからだ。
それはシャドームーンを倒すために懸命しているからではない。
シャドームーンへの恐怖が未だに水銀燈を縛っているからだ。
そうしなければなにをされるかわからない、そんな敗者の考えに囚われているからだ。
こう強がろうとしている今ですら、水銀燈はシャドームーンへにおびえている。
「私 は……私は、もう……」
『ローゼンメインではない』
その言葉もまた、水銀燈は口にすることは出来なかった。
ローゼンメイデンが誇り高い、ローゼン伯爵の愛しい娘だとすれば水銀燈はもはやローゼンメイデンはない。
そうわかっているのに、それでも口にすることは出来なかった。
それは水銀燈の唯一の誇り、アイデンティティーだから。
sie
sie
sie
己を支え続けた誇りは、一度揺らいでしまえばどんな刃よりも己を傷つける。
気高い誇りほど、地に堕ちた時に醜さが際立つ。
父への愛は、父への尊敬は、そのまま自身への卑下に繋がる。
がらくた、木偶、ジャンク、欠陥品。
様々な言葉が頭をめぐるが、今の水銀燈にはそれらの言葉を否定する気力 も沸かない。
今にも消えてしまいたい気持ちに支配されていた。
「いやぁ……これじゃ、これじゃ私は……」
『まるでジャンクじゃない』と続くはずの言葉が出てこない。
父以外の存在に媚び、父から授かった身体に傷をつけられた。
そんな心身ともにボロボロの水銀燈でも、その言葉を口にすることにブレーキがかかった。
苦しい敗北や己の弱さを見つめることも強さへ繋がる道だろう。
だが、誇りが泥に塗れてでも醜く戦い続ける戦士となることを水銀燈には受け入れられない。
ローゼンメイデンは、完璧な美しき少女でなければいけないのだから。
『なぜベストを尽くさないのか?』
「ッ!」
そんな水銀燈の胸中を知ってから知らずか、上田次郎人形から言葉が発せ られる。
水銀燈は、きっ、っと上田次郎人形を強く睨んだ。
怒りのままに上田次郎人形を切り裂いてしまおうかと思ったが、やめた。
八つ当たりでしかないことはわかっていたし、こんなのでも重要な手札のひとつだ。
いつかの日、真紅とそのミーディアムである桜田ジュンを人形に襲わせた。
上田次郎人形も人形である以上、そんな使い方もできる。
なによりも、自らよりも下の存在が居ると思うと不安定な精神も安定した。
「不快ね、その気持ちを抑えなさい」
所有者である上田次郎への想いを感じ取った水銀燈は冷たく言い放つ。
上田次郎人形はなにも言わず、ただ水銀燈の後をついていく。
水銀燈は振り返り、上田次郎人形がついてきていることを確認すると短く呟いた。
「真紅」
鏡の奥には無数に広がる世界がある。
それは無数に広がる世界に繋がる扉。
選択の繰り返しと、あらゆる可能性の世界。
だが、ローゼンメイデンはそんな無数に存在するはずの世界に七つだけしか居ない。
『真紅に似たなにか』という存在は居るかもしれない。
だけど、『世界』という樹の大きな幹から外れた、死滅していく細い枯れ枝の『世界』にすら真紅は存在しない。
「真紅、私は貴方を許さない」
傷ついた分だけ優しくなれるなんて言葉は嘘だ。
少なくとも、水銀燈は傷つけられたら傷つけられた分だけ相手に仕返しをしてやろうと考える。
もしも、自らを傷つけた真紅/シャドームーン/狭間偉出夫に仕返しをすることが出来ないとしよう。
その時に は、弱い自分よりもさらに弱い誰かを傷つけたくなる。
――――私から逃げた貴方を、絶対に許さない。
自分が劣った存在だと受け入れて生きられるわけがない。
誇りが傷ついたままで、ちっぽけなアイデンティティを保てるわけがない。
『人』には弱者という『人形』が必要なのだ。
sie
sie
【一日目夜/D−6 森林部】
【後藤@寄生獣】
[装備]無し
[支給品]支給品一式×3(食料は完食)、不明支給品1〜2(橘のもの、確認済、食料ではない)
[状態]疲労(中)、ダメージ(小)
[思考・行動]
1:会場内を徘徊し、志々雄真実を殺す。
2:強い奴とは戦いたい。
[備考]
※後藤は腕を振るう速度が若干、足を硬質化させて走った際の速度が大幅に制限されています。
※左腕は田村玲子です。
※基本支給品の食料と水、メロンパン×4、板チョコレート×11は完食しました。
【一日目夜/E−6 山中】
【水銀燈@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式×6(食料以外)、しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒、双眼鏡@現実、
首輪×2(咲世子、劉鳳)、着替え各種(現地調達)、シェリスのHOLY隊員制服@スクライド、
黒の騎士団の制服@コードギアス 反逆のルルーシュ、農作業用の鎌@バトルロワイアル、上田次郎人形@TRICK
前原圭一のメモ@ひぐらしのなく頃に、カツラ@TRICK、カードキー、知り合い順名簿
三村信史特性爆弾セット(滑車、タコ糸、ガムテープ、ゴミ袋、ボイスコンバーター、ロープ三百メートル)@バトルロワイアル
剣心の不明支給品(0〜1)、ロロの不明支給品(0〜1)
[状態]疲労極大、右目にヒビ割れ、右眼周辺に傷、、左脚欠損、強い恐怖
[思考・行動]
1:市街地へ向かう。
2:シャドームーンの命令を聞く(?)
[備考]
※ゾルダの正体を北岡という人物だと思っています。
※nのフィールドに入ろうとすると「入ろうとする意思そのものが消されてしまう」ようです。
【上田次郎人形@TRICK(実写)】
参加者の一人である上田次郎を模してつくられた人形。
上田次郎の特徴的なイントネーションで『なぜベストを尽くさないのか?』という音声を出す機能がついている。
欲しいと思う視聴者は大勢居たが、残念ながら発売されてはいない。
緋村剣心に支給されていた。
投下終了です
誤字、脱字、展開におかしな面がありましたら指摘お願いします
支援、ありがとうございました
投下乙です
まさかの上田次郎人形www
これは本人との直接対決を見てみたいなw
誤字脱字は
>>340の だが、なによりも遭遇したが異質だった。
>>341の 仮にその盾をすり抜けても、胴体には『鎧』というべきが防いでくれる。
>342の 真紅を切り裂いた時に肉ではないが形あるものを切り裂く感覚ではない。
>>348の 『ローゼンメインではない』
がありました
まさか
>>57-60あたりの雑談がこんな形で実現するとは……
次は影月くるでぇー()
水銀燈はいい感じに追い詰められてて、田村玲子奪い安定感を取り戻した後藤と精神的にも対照的だったなぁ
マーダー同士の潰し合いにまでは発展しなかったけどうまい具合に違いが出てた。
投下乙です
後藤は影月の存在を知らずじまいで終わったか
水銀燈は不安定ではあるけど心折れずで、マーダーとしてもいい感じだった
それにしても、まさかあの人形が下僕として出てくるとはw
こんなんでも弱った参加者には充分な障害になると思うと^^;
投下乙です。
まさかのなぜベスwおまけにマーダー相手にw
人形が人形に癒されるという異常事態。
後藤はやる気満々だけど、妖怪包帯男は現在外出中です。
お二人とも投下乙です。
乱戦の火種、雛見沢が発祥してしまったレナをどうするのか……
主催の介入、脱出した志々雄、いろいろと進んできた!
そして後藤vs水銀燈。
なぜベストを尽くさないのか!
上田次郎ここに極まれり!
揺らぐ水銀燈も重なっていい話でした。
改めて投下乙です。
>>357 指摘ありがとうございます
>>340 だが、なによりも遭遇した目の前の人影自体が異質だったからだ。
>>341 仮にその盾をすり抜けても、胴体には『鎧』というべき硬質化した皮膚が防いでくれる。
>>342 真紅を切り裂いた時に覚えた、肉ではないが形あるものを切り裂いた感覚がない。
>>348 『ローゼンメイデンではない』
あと
>>344で上田が上田次郎人形の制作者のように書きましたが、間違いでした
wiki収録の際に修正させていただきます
書き手氏二人方乙です。
ここにきて不明支給品の活躍か。
WX氏のはなんという大作・・・!
「幕間」は仲間と呼べる程に付き合いも長くなった参加者の思いを再確認していてよかった
奈緒子の文字が書かれた袋のくだりにはしんみりした
自分のためという北岡と主に忠誠を尽くすジェレミアの対比も良かった
生存者が残り少ないしマーダー2人が一気に死んだからいよいよ大詰めかと思ってたけど、
そこからの、あまりにも酷薄すぎる脱出条件がレナの雛見沢症候群発症に作用するという
一筋縄でいかない事態が発生したのは盛り上がった
Eb氏の水銀燈vs後藤、二大マーダー同士の一触即発は回避されたかー
水銀燈が後藤の支給品を奪取したのが今後どう転ぶか!
カードキーや前原圭一のメモとか、今まで活躍の機会がなかったアイテムがどう生かされるのか楽しみ。
それにしても
>>60があっただけに上田次郎人形にクソワロタwww
けどなんだかんだで水銀燈に対する叱咤激励(?)にはなってるんだよな・・・
タイトルも秀逸です。
板チョコ×11、メロンパン×4とか、血糖値が上がりそうです
「幕間2」において、FNブローニング・ハイパワーについて勘違いしていた為修正しました。
失礼致しました。
wikiを見たら150話を突破していたんですね
突破おめでとうございます
おめでとうございます
予約ktkr
しかし不安定な組み合わせだなw
このまま何処かの支給品みたいに朽ち果てるかと思ったw
もう一つ仮予約がktkr
早速上田VS上田人形になりそうだw
まじだ!
それもあるけど銀様は月と行動してたからLと何かあるかもな
枢木スザク、雪代縁を投下します
【1】
紅色に染まっていた茜空が徐々に暗色の夜空へと塗り替えられていく。
闇に飲まれていくバトルロワイアル会場で、ある一人の男が淡い夜光に照らされていた。
瑞々しい肌と隆起した筋肉、淀んではいるが前を見つめている瞳。
今まさに人生の絶頂を迎えようとする肉体をしているが、その頭髪は肉体に似つかわしくない総白髪だった。
そんな異様な青年、雪代縁は意味もなくつぶやいた。
「狭い空ダ」
市街地は二十一世紀初頭をイメージされたつくりになっている。
幕末の日本と十九世紀後半の上海を生きてきた縁にとって、この市街地は文字通り未来の都市だ。
無節操に立てられた建築物は生い茂った森のように果てしなく広がる空を狭めている。
息の詰まりそうなほどに窮屈な世界だった。
「チッ……」
未知への困惑と心身の疲労がそのまま不快感となり、縁は小さく舌打ちする。
とは言え、溜まった疲労を取るための睡眠を取るつもりはなかった。
縁は満足な眠りなど出来はしない。
眠ったところで、そこに広がるものは悪夢だけだ。
「あの夢は……」
縁はそこまで口にして言葉を切る。
だが、先ほどの眠りに広がった世界は悪夢ではなかった。
正確に言えば、『縁』の悪夢ではなかった。
悪夢の本当の持ち主は、ヴァンという異国の名前を持つ男だ。
ヴァンが血塗れの教会で血に染まった新婦を救えなかった夢だった。
ちょうど、幼い頃に姉を救えなかった縁のような姿だった。
そこまで考えた瞬間、ズキリ、と左腕に痛みが走る。
痛みに顔をしかめるということは久しい感覚だった。
身体を止めようとする痛みや安穏とした眠りなどはずっと忘れていた。
そんな復讐に邪魔なものは、怒りと憎しみが捨ててくれたのだ。
なのに、今の精神は身体が訴えてかける痛みも眠りも遮断してくれない。
縁は変わり欠けているのかもしれない。
姉が殺された瞬間に止まった感覚が動き出しているのかもしれない。
「……姉さん」
縁は妙な孤独感を覚え、甘えるような声色で夜空へと向かって姉の名前を呼ぶ。
そして、縁が前方へと脚を踏み入れた瞬間、ピッ、と耳元で音が鳴った。
ピッ、ピッ、とカウントするように音が鳴り続け、同時にくぐもった音声が周囲に響いた。
『禁止エリアに侵入しました。
三十秒以内に禁止エリアを離れない場合、首輪が爆発します。
繰り返します。
禁止エリアに侵入しました。
三十秒以内に禁止エリアを離れない場合――――』
背筋にゾッと嫌な汗が流れる。
すぐさま後方へと引き返すと、首輪から響く音が鳴り止んだ。
縁は慎重な様子で、恐る恐る首輪を触れる。
「これが禁止エリアか」
縁は己の迂闊さに苛立ちを覚えた。
同時に、ある考えが頭をよぎる。
姉さんが守ってくれるのなら、なぜ禁止エリアに入り込むようなことになったのか。
その瞬間、ある言葉が頭に響く。
『死んだ奴は――――』
「違うっ!」
叫ぶようにして、頭の中に響いたその声を打ち消す。
それを認めてしまってはいけない。
緋村剣心が死んだ今、人誅という名の復讐を取り上げられた今。
自慰のように無様な希望を持たなければ、縁は生きることさえ出来ない状態だった。
「クソッ!」
疲労困憊の身体に鞭を打ち、歩を進める。
勝手に死んだ緋村剣心も、縁と表面上は似ているが確実に異なるヴァンも、大好きな姉ですらも。
この世の全てが縁の苛立ちを募らせていた。
その苛立ちがピークに達した時、突然銃声が響いた。
「銃撃ッ!?」
縁は地面を転がるようにして物陰へと隠れる。
そして、素早く周囲を見渡すと近づいてきている一人の男を視認することが出来た。
仰々しい西洋服を着たまだ年若い、少年と呼ぶべき年齢であろう男だった。
男は縁へと迫りつつ、右手に拳銃を構え、左手に札を入れた小箱を持っていた。
ヴァンが持っていた小箱と――――ライダーデッキと同じものだと直感的に気づいた。
怪獣を呼び出したヴァンのモノと同一のだと厄介だ。
縁は警戒を強める。
下手人の男はそんな縁を睨みつけながら言葉を投げつけた。
「外したか……!」
恐らく、縁と同じく男までこの時間まで戦い続けていたのだろう。
距離の離れた縁への銃撃の際、身体と精神の両方に溜まった疲労が僅かに照準をずらしたのだ。
だが、それでも男は銃を構えたまま、ゆっくりと迫ってくる。
「恨みはない……だが、僕たちのために死んでくれ……!」
「……お前、殺し合いに乗っているのカ?」
縁は自身に投げかけられていた言葉を、そっくりそのまま男へと投げかけた。
思えば、縁が出会った人間に殺し合いを行おうとする人間は少なかった。
シャドームーンと、縁自身は名前も知らない東條悟だけだ。
そして、目の前の男にはその二人とは違った印象を受けた。
シャドームーンのような例外や、東條のような苛立ちを覚えるような論理を振り回す男ではなかった。
自身に近い存在だと、縁は直感的に理解した。
「……そうだ。だから、僕は君を殺さなくちゃいけない」
男の目と縁の目があった。
まるで死体がそのまま歩いているような、精気を感じさせない男だった。
身体につけられた傷自体はそれほどでもないが、その男の目が死体そのものなのだ。
生きることそれ自体が苦痛だと言わんばかりに、男の瞳からは光彩を失われている。
それもまた、縁とよく似ていた。
縁の胸中に妙な親近感が湧き上がりはじめる。
今にも死んでしまいたいのに死に切れない。
この世に未練などないが、なにかを成さなければならない。
自らの死が選択肢に入ってくれない苦しみの臭い、そんな臭いを縁は男から嗅ぎとった。
「おい」
同時に、邪悪な考えも芽生え始める。
力を蓄えることに必死だった上海での生活。
縁は倭刀術だけでなく、仮面の笑みと心にもない戯言で力を手に入れた。
「俺と組むカ?」
それは相手を利用するという、生き残るために何度もやってきたことだった。
「組む……だって? 馬鹿なことを言うな、僕は殺し合いに勝たなければいけないんだぞ」
男は銃を右手に持ち、左手には鮮やかな緑色のケースを掴んでいる。
不可解な表情のままであり、銃を下ろすようなことはしない。
だが、ここで重要なのは男は殺し合いでの勝利を求めていると言ったことだ。
ならば、縁の目的に利用できる。
「その小箱の力は知っている。だからそれを使った不意打ちは俺に効かない」
「……これが目的かい?」
「いいや、利害を考えたことからの提案だヨ」
仮初の関係でいい。
どうせお互いがお互いを利用するだけの、信頼という関係からは程遠いものになるのだから。
男は未だに疑い深い瞳のまま、口を開く。
「このままのこのこと姿を出した君を撃ち殺せば、僕は労せずして殺し合いの勝利へ近づけることができる。
もちろん、それは君にも言えることだ。
頭脳戦を気取るのならば、もっとそれらしい交渉を持ち出すべきだな」
「だがここで戦闘を行って相手を殺せば、お互いに残りの人間を一人で殺す必要になる。
それに、俺は本気で言っているんだぞ。
手を組まないか、ってね」
縁はすらすらと言葉を連ねる。
相手を騙す言葉がそのまま縁の迷いを騙してくれる。
迷いが消え、相手に集中できるのだ。
男は銃を構えたまま、さらに疑問を口にした。
C
「……僕は君を利用するだけして、見捨てるかもしれない」
「俺も利用するつもりなんだ。相手に利用されることを考えないわけはない。
そんなことを考えないほど、俺は間抜けじゃない」
それが共闘というものだ、と続ける。
打算だけの関係で繋がっている相手とは道具と同じだ。
感情が入る隙間がないため、切り捨てることができる。
そこまで考え、ふと、縁に新たな疑問が生まれた。
――――ならば、俺があの男を、ヴァンを気にかける理由はなんだ?
打算だけの関係が思い入れのないものだとすれば、その人間を気にかけるわけがない。
縁はヴァンに対して打算ではないなにかしらの感情を覚えているということになる。
「別にずっと共に行動しろと言っているわけじゃない。
ただ、ここでお互いが殺し合うことをやめればいいというだけダ」
その考えを振り切るように、男へと言葉を投げかける。
縁と同じように、憎しみに曇った目だった。
爛々と精気に溢れる瞳が闇に堕ちた時につくられる瞳だ。
かつてあったはずの純粋な色を欠片も感じさせないその色は、なぜか縁を苛立たせた。
「残りの人数が二十人強、力を持った強敵も残っていれば武器だって溜め込んでる奴もいるだろう。
一人で戦うには過酷だヨ」
その理不尽で不可解な苛立ちを抑えながら、縁はここぞとばかりに言葉を続けた。
「……なるほど」
目の前の男にも思い当たる節があるのだろう。
短く呟いた後、僅かな間だけ沈黙が空間を支配する。
縁は警戒を怠らず、男を注視し続ける。
「――――わかった、銃を納めよう。
そして、僕の名前は枢木スザクだ。君の名前も教えてもらおうか」
スザクは手に持ったカードデッキの表面をなぞった後に、構えていた銃を腰元まで下ろす。
納めると言った割には構えるのをやめただけで、まだ右手には拳銃が握られていた。
だが、その構えならば、普通に構えていた状態よりも一拍子だけ遅れることになる。
縁は半身だけを見せるようにして姿を現した。
「雪代縁だ……交渉成立だな」
縁が姿を現した瞬間、スザクがわずかに後退した。
傷だらけだが隆々とした肉体と、その肉体に不釣り合いな白髪をした縁が幽鬼のように思えたのだろう。
遠目からではわからなかった、縁の持つ不気味な雰囲気を嗅ぎとったのだろう。
縁はからかうような口ぶりでスザクへ言葉をかけた。
「どうした、俺の傷を見て怖気づいたのか?
自分もこうなるかもしれない、ってな」
「馬鹿な……僕は怯えてなんていない。僕は死ぬのなんて怖くない」
そこまで言って、一歩二歩とスザクは縁へと近づく。
そして、あの死体のような瞳を縁へと向ける。
「ただ怖いのは、何も出来ないまま死ぬことだけだ……
水銀燈を、生き返らせる前に死んでしまうことだ!」
水銀燈という聞き覚えのない名前だったが、縁は第一放送を満足に聞いていない。
その時に呼ばれた名前なのだろう、そう軽く考えた。
怒りに満ちたスザクの言葉に対し、縁はそっけない口ぶりで応えた。
「他人の願いに興味はない。
スザクも、俺の願いなんて聞きたいと思わないだろう?
……あのガキの言葉を信じるなら、どうせ願いは一つしか叶わないんだから」
縁がそう言い放つと、スザクは不満そうに顔をしかめる。
だが、その通りだと思ったのかそれ以上は何も言わなかった。
「もっと、実入りのある話をしようじゃないカ。
先程も言ったが、この殺し合いを勝ち抜くのは思ったよりも難しい。
少なくとも、お互いの知る強敵の死を確認するまでは手を組んだほうが上策ダ」
「……わかった、異論はない」
スザクは猜疑に表情を染めながらも、少なくとも表面上の同意を見せた。
度々カードデッキの表面を指でなぞるのは、その力を信頼しているからだろうか。
「ただ……」
スザクの死体のような瞳に初めて感情が宿ったように思えた。
その感情の正体を縁はよく知っている。
怨みという、他人だけでなく己をも傷つける感情だ。
「ただ、狭間偉出夫はこの手で殺させてもらう。それだけは譲れない。
復讐を邪魔することだけは、絶対に許さない!」
それを邪魔するならば交渉は決裂だ、そう言いたげな尖った瞳だった。
恐らく、スザクにはその復讐しか残っていないのだろう。
その者への憎しみしか、今のスザクをこの世に縛るものはないのだ。
愛するものに再び会いたいという空想に塗れた正の感情ではない。
よっぽど現実的でエネルギーへと変換されるな負の感情だ。
「人の復讐を邪魔をするほど野暮じゃぁない」
縁はスザクの純粋な怒りが羨ましかった。
今の縁は決定的なまでに怒りが足りない。
緋村抜刀斎の抹殺のためだけに生きてきた縁だが、その抜刀斎が居ない今では怒りが足りない。
それは縁自身が迷いに囚われているせいだ。
剣心がこの場から消えてしまったことと、姉の顔が曇ったままのことが縁を迷わせているのだ。
だが、スザクはその縁のそっけない態度に苛立ちを覚えたようだった。
縁がスザクの言葉を否定しているように、くだらない執着だと思われたと感じたのだろう。
「愛する人のためだ……なにが、悪い……!」
スザクは縁のそっけない態度が、自身の憎悪を軽く見ていると感じたのだろう。
狭間への怒りをそのままに、怒りの声を縁へと投げかける。
「いや、悪いとは思わないサ」
そう応えた割には、縁の表情は曇ったままだった。
スザクの言葉を聞いても、頭によぎる言葉はヴァンの言葉だ。
『死んだ奴はな、絶対に生き返らないんだ』
その言葉が頭で反芻された瞬間、縁は、ぎりっ、と強く歯を噛み締めた。
縁の表情がいきなり歪んだことにスザクはわずかに訝しむ。
――――なぜ、あの男は簡単に口にできるのだ?
――――なぜ、あの男は簡単に諦められるのだ?
ヴァンに言われずとも、縁もそんなことは知っていた。
どれだけ願っても、姉がこの世に蘇ることはない。
失った幸せを再び掴みとってくれることなどない。
だからこそ、抜刀斎への怒りを覚えるし、同じ悲しみを味わせてやりたいと思ったのだ。
だが、それでも姉が蘇るという可能性があるのなら、そんな夢想が実現するのなら。
V.V.の言う奇跡に縋りついてしまうのは当然なはずだ。
「なにか、癇に障ったかな」
「なんでもないッ!」
縁は視線を伏せて、スザクの問いかけに叫ぶようにして応える。
スザクはむっと顔をしかめたが、それ以上はなにも言わなかった。
思えばヴァンというなんでもなかったはずの男が、今はこれ以上ないほどに縁の心に巣食っている。
緋村剣心ほどではないが、確かに怒りを覚える対象となっていた。
果たしてその怒りはヴァンが愛する者を求めないことへの憎しみから生まれた怒りなのか。
それとも縁が到達できない答えをヴァンがたどり着いているかもしれないという憧れから生まれた怒りなのか。
縁自身にも、この怒りの正体がわからない。
「欺瞞に過ぎない、そうだ、あんな言葉は……!」
ヴァンの言葉は欺瞞に過ぎない。
それこそ、緋村剣心の生き方のように。
どれだけ言葉を尽くそうと、どれだけ行動を尽くそうと。
人斬り抜刀斎を憎むものは大勢いる、人斬り抜刀斎によって不幸になった人間は大勢いる。
新時代に自身が不要だと考えたのならば、さっさと死んでしまえばよかったのだ。
そして、ヴァンもまたあの女が愛しいのならば女を求めるべきだ。
それが、きっと正しいはずだ。
支援
縁は頭を軽く振り、その考えを振り払う。
答えは出そうにない上に、いら立ちが募るだけだと判断したからだ。
縁は息が妙に乱れているスザクを見て尋ねる。
「まさか、休むなんて言わないだろうな?」
「要らないさ……休んでも、辛いだけなんだ」
脚を止めたら、その分だけ頭が動き出す。
スザクはそう言いたげに、縁の前方を歩き始めた。
「そうか……そうだな。
なら、さっさと移動するか」
脚を止めて動き出した頭が考えることは姉だけだ。
姉――――そう言えば、姉は最期の瞬間にどのような顔を浮かべていたのだろう。
めったに感情を出さない姉ではあったが、それでも縁には微笑んでくれる姉だった。
その姉が最期の瞬間に浮かべたであろう顔を縁は知りたかった。
姉の最期を思い出して浮かんでくるのは、緋村剣心に斬りつけられた背中だけだ。
最期の瞬間、姉は泣いていたのだろうか。
般若のように憎悪で顔を歪めていたのだろうか。
それとも、自らが殺されたことにも気づかず訪れた復讐の機会に笑っていたのだろうか。
どれだけ考えても、血に染まった姉と血濡れた刀を握る抜刀斎の姿しか思い浮かばない。
仕方なしに、縁はそれ以前の記憶を辿る。
そうして、かろうじてたどり着いた記憶。
それは寂れた田舎村で、緋村抜刀斎と同居していた瞬間の記憶だった。
その時に再会した姉は笑ってくれたが、最後には悲しみの顔をしていた。
あれは縁との久方ぶりの再会から浮かぶ笑みだったのか。
それとも、縁の知らない、姉だけが知る感情から浮かぶ笑みだったのか。
あれは縁が幕末という激動の時代に家を蔑ろにしたことから浮かぶ悲しみだったのか。
それとも、縁の知らない、姉と抜刀斎だけが知る感情から浮かぶ悲しみだったのか。
人斬り抜刀斎の裏に居た侍たちが創りだした明治の世など破壊してやりたかった。
姉を不幸にしてまで創ろうとした新時代など、姉を殺してまで創られた新時代など、縁には必要ない。
それを創りだした侍など一人残らず死んでしまえばいい。
だが、縁の家も侍の家だった。
維新志士ではない、将軍に直接仕える御家人である。
姉は縁に家を継ぐことを、侍となることを望んでいた。
新時代を創りあげたのが侍ならば、旧時代を守ろうとしていたのも侍だ。
姉の言う侍とはなんだったのだろうか――――ふと、縁の頭にそんな考えがよぎった。
「……侍、か」
答えの出ない考えだと捨て去り、縁はゆっくりと歩み始める。
「姉さん……」
空に浮かぶように立っている姉は、今にも泣き出しそうに顔を伏せていた。
C
【2】
「侍、か」
縁のこぼした言葉に、スザクの心臓の鼓動が早くなる。
侍とは明治の世が過ぎ去り、幾度もの戦争を超えた時代でも比喩として使われる言葉だ。
日本のために奮闘する日本人を、得てして『侍』と呼んでいる。
そして、スザクの父である枢木ゲンブは最後の侍と呼ばれていた。
文字通り、最後の侍だった。
スザクの父が死ぬと同時に、守るはずの日本も消えてしまったのだから。
だから、父と同じく侍と呼ばれるかもしれなかったスザクは侍に成れなかった。
「……」
正しいことだと、幼いながらに信じていた。
あのまま戦ったら多くの人間が死んでしまう。
日本人だけでなく、ブリタニア人も死んでしまう。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとナナリー・ヴィ・ブリタニアとの出会いはスザクの視野を広げていた。
ブリタニア人も同じ人間であるということを、あの夏の日に知ったのだ。
だからこそ、その人間が死んでしまうことが耐えられなかった。
それを止めたかっただけだった。
――――父親を殺した瞬間でさえも心のどこかで、これで人が助かる、そう信じていた。
だが、人殺しという、親殺しという間違った手段で手に入れた未来は最悪の未来だった。
日本人は国と誇りと名前を奪われたのだ。
己を支えていた全てを、奪われてしまったのだ。
――――間違ったやり方で得た結果に意味はない。
それこそが自身の犯した罪によって知らされた事実だった。
人は正しいやり方にしかついていかない。
人がついて行かなければ、人が作った世界は変わってはくれない。
「このやり方自体は、きっと間違っているんだろうね……」
「……? なにか言ったカ?」
縁の片言の日本語に、スザクは「なんでもない」と返した。
縁はそれ以上はなにも聞かなかった。
意識的にスザクとの関係に線を引いているようだった。
きっとそれが縁の考える理想的な共闘関係なのだろう。
スザクを突き放す共犯者、雪代縁の存在は彼の頭脳に一時の冷静さを呼び込んだ。
そして、その頭で考えを走らせる。
自身はルルーシュの絶対遵守のギアスとよく似たギアスによって連れてこられた。
ギアスユーザーは複数存在する、ルルーシュのギアスと似たギアスが存在しても不思議ではない。
そのギアスもジェレミアのギアスキャンセラーによって解除された。
それは拉致される寸前の記憶が蘇るだけでなく、同時にスザクを縛った鎖が解いていた。
生きろ、という優しくも残酷な呪いもまた消えてしまったのだ。
そのことをスザクは気づき始めている。
今、スザクは自ら死を選ぶこともできる。
つまり、水銀燈の後を追うように死ぬという選択肢もスザクには用意されているのだ。
だが、スザクはそうしなかった。
理由の一つは狭間偉出夫へ抱いた強い怒りと憎悪だ。
水銀燈が居ない今、ルルーシュすらも居ない今、スザクが生きている理由は薄い。
それでも、偉出夫への怒りと憎しみを抱えたまま死ぬのはあまりにも惨めだ。
スザクが味わった屈辱を、水銀燈が味わった苦しみを偉出夫へと与えたい。
復讐を成したいと思ったのだ。
そしてもう一つの理由は、スザクは求めてしまったのだ。
もう一度水銀燈に会いたいと、純粋なまでに
憎悪と愛情を同時に抱く親友ルルーシュが居ない状態で、愛だけを捧げる事のできる水銀燈を欲したのだ。
ルルーシュの命を断ったのはスザクではない。
だが、スザクの親友という存在を殺したのはスザク自身だ。
ルルーシュの頭へと銃弾を打ち込んだスザク自身なのだ。
そのルルーシュを蘇らせることなど出来はしない。
どの顔を下げて、どのような関係でルルーシュと再び会えばいいというのだ。
それはルルーシュだけの心情の問題というよりも、スザク自身の心の問題だった。
水銀燈ならば、もう一度会えるはずだと考えたのだ。
謝罪し、仇を取ったことを告げれば、きっとやり直せる。
そこまで考えると、突然気が重くなった。
かつて、自身がルルーシュへと投げかけた言葉が浮かび上がったのだ。
『間違ったやり方で得た結果に意味はない』
信じていたはずの言葉が、これ以上なくスザクを責め立てていた。
スザク自身も今のやり方が正しいとは信じていない。
好きな人一人のために、他の多くの人間を殺すのだから。
『好きな人を生き返らせようと思うのは当然のことなんですから』
名前も知らない少女の発した言葉だけが、そんな今のスザクを支えていた。
人を殺すという自身の手段は間違っているかもしれないが、この願いだけは間違っていない。
愛する人を求める心だけは、絶対に間違っていない。
その想いだけは誰にも否定させない。
ただ、その心が強すぎた。
だからこそ、スザクは否定したはずの『間違ったやり方で得られるであろう結果』を求めてしまった。
支援
C
ふと、一人の男が頭によぎった。
ジェレミア・ゴットバルトというスザクと縁の深い男のことだった。
彼は純血派と呼ばれる軍をブリタニア人だけで構築するべきだと主張する一派のリーダーだった。
スザクのようなブリタニアの血を引かない、名誉ブリタニア人を軍から排斥することを目標していた。
ジェレミアが純血派の考えに至ったその切っ掛けは、ルルーシュが日本へと訪れる切っ掛けとなる事件だった。
外国人テロリストにより、自分が仕える主であるマリアンヌ・ヴィ・ブリタニアを殺されたからだ。
そんな彼が明らかに外国人、イレブンである――――日本人である少女を守っていた。
ジェレミアにも奇跡を求めるに足る十分な願いがあるのに、見知らぬ他人を守っていた。
それはスザクよりもよっぽど正しい行いだ。
そう考えれば考えるほど、スザクは自分が卑小な存在であるように思えた。
スザクはそんな考えから目を逸らすように、縁へと問いかける。
「縁……君は、自分が正しいと信じているかい」
「……姉さんが微笑んでくれる。それだけで、俺は信じられる」
そこまで言った縁は、顔をしかめてスザクを睨みつける。
不快感を覚えたというよりは、自身の失言を誤魔化すような表情だった。
姉という存在すら、スザクには知られたくなかったのだろう。
きっとそれは縁にとって大事なものだから、弱みとなるものだから。
スザクはそれにつけ込むような真似はしなかった。
「なら、微笑んでくれなければ――――」
「黙れッ!」
過程の話をしようとした時に、縁が突然に激高した。
縁は怒気の孕んだ言葉を発しながらスザクの首をつかむ。
そして血走った目のまま、激情をスザクへとぶつける。
「正しいも間違いも糞もない、俺には姉さんが全てだ!
姉さんが笑ってくれるのならば、他のことなんて知ったことじゃない!」
畳み掛けるように叫ぶと、縁はスザクの首元から手を離す。
荒い息のままスザクを睨みつけた後、くるりと背中を見せて歩き始めた。
きっと、縁自身も気づき始めているのだろう。
己の手段が間違っていると、そう迷い始めたのだろう。
血に染まった手で掴んだものが正しいわけがない。
それが幸せな結果を生むことはない。
スザクはそんなこととっくの昔に知っている。
最後の侍である父を殺して、父と同じ侍となる道を自分自身で閉ざした世紀の大事件。
その事件を切っ掛けにして、間違ったやり方の愚かさを知ったのだから。
――――それでも、僕は水銀燈に会いたい。僕が愛した人に、もう一度会いたい。
水銀燈の姿が思い浮かび、突然切り替わるようにして父の強張った顔が浮かんだ。
立て続けに、幼い頃のルルーシュの顔が浮かぶ。
スザクが愛していた人たちの顔だ。
そして、皆居なくなってしまったの人たちだ。
支援
『スザク! 私は貴方を……えーっと……えーっと…………私を好きになりなさい!』
そこまで考えて、スザクは自分が何かを忘れている気がした。
きっと、大事な人が居たはずだったのに、すっぽりと抜け落ちている気がした。
先ほどまで、その人のことを考えていたはずなのに、すっかりと忘れている気がした。
『その代わり私が貴方を大好きになります!』
忘れているのならば、それはきっと重要じゃないことだ。
重要なことならば忘れるはずがない。
それに、忘れたものならばいつかは思い出すはずだ。
――――スザクはそう思い込むようにして考えることをやめた。
『スザク、貴方の頑ななところも優しいところも、悲しそうな瞳も不器用なところも猫に噛まれちゃうところも全部!』
だが、スザクがその思い出を自分だけで思い出すことはきっとない。
『――――だから自分を嫌わないで!』
人が思い出を忘れることは、その思い出を拒絶しているということなのだから。
【一日目 夜/F−7 市街地(F-8、G-7との境界線近く)】
【雪代縁@るろうに剣心】
[装備]:菊一文字則宗@るろうに剣心
[所持品]:レイ・ラングレンの銃@ガン×ソード、逆刃刀・真打@るろうに剣心、玉×5@TRICK、紐とゴム@現実(現地調達)、夜神月が書いたメモ
ルパンの不明支給品(0〜1)、支給品一式
[状態]:左肩に銃創、左腕に刺し傷、両拳に軽症、全身打撲、各部に裂傷、疲労(大)
[思考・行動]
1:参加者を皆殺しにし、可能なら姉と抜刀斎を生き返らせる。
2:スザクを利用しつつ、殺し合いの勝利を目指す。
3:ヴァンへの怒りや敵意といった負の感情。
[備考]
※殺し合いを認識しました。
※第一回放送における『緋村剣心』以外の死者の名前、及び禁止エリアの放送を聞き逃しました。
※ギアス、コード等に関する情報を得ました。
【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ(アニメ)】
[装備]:ゼロの銃(弾丸を七発消費)@コードギアス 反逆のルルーシュ、ベルデのデッキ@仮面ライダー龍騎
[所持品]:支給品一式×2(食料は一つ多め)、ワルサーP−38(3/9)@ルパン三世、ワルサーP−38の弾薬(11/20)@ルパン三世、
日輪の鎧@真・女神転生if...、Kフロストヅーラ@真・女神転生if...、確認済み支給品0〜1(武器はない)
[状態]:ダメージ(中)、惚れ薬の効果継続中、記憶と精神の一部に混乱、疲労(大)、強い頭痛。
[思考・行動]
1:参加者を全員殺し、水銀燈を生き返らせる。
2:狭間偉出夫は絶対に許さない、見付け出して殺す。
3:ひとまず、雪代縁と手を組む。
[備考]
※ゾルダの正体を北岡だと思っていましたが、違う可能性に気付きました。
※水銀燈は死亡したと思っており、ユーフェミアの事を思い出せなくなっています。
※第二回放送を聞きませんでした。
※会場に連れ去られた際の記憶が戻りました。
投下終了です
誤字、脱字、展開におかしな点がありましたご指摘お願いします
大量の支援、ありがとうございました
投下乙です。
またこんなところで似たもの同士が繋がるか。
後藤、影月の影に隠れてあまり脅威が目立たなかったけど組むとなるとかなりのものになりそうだなぁ。
せめてもの拠り所に寄りかかることすらあやうい精神状態が不安定で切ないなー。
投下乙!
縁とスザクは似た境遇とはいえ、ここで組むとは思わなかった
精神状態がどうしようもない二人ではあるけど、他の参加者との接触で影響受けてるんだなぁ
ヴァンに対して苛立ってる縁、狭間に復讐するって気持ちに振り回されてるスザク、どっちも痛々しい
でも嫌いになれないんだよな、壊れながらも弱さが露呈してて
応援したくなるのとは違うんだけど、この二人は否定できない
あとタイトル上手い…!
指摘は
>>400について
13話から参戦したスザクは、ジェレミアとマリアンヌの関係を知らないと思います
ジェレミア本人が話すまでは副官のヴィレッタも知らなかったことですし、スザクはジェレミアと近しくはないので
また「ジェレミアにも奇跡を求めるに足る十分な願いがあるのに」の部分がルルーシュの蘇生を指すなら、こちらも修正が必要かも知れません
この時点のスザクはジェレミアがルルーシュに忠誠を誓ったことは知りませんし、一期のことを考えるとむしろルルーシュを恨んでいると思うはず
純血派のジェレミアが日本人かつ民間人の少女を守っていた、という点だけでスザクが動揺するには十分かと思うので、上記二点だけご一考下さい
投下乙!
正直この二人がここまで生き残ると思ってなかったなぁ
そしてまさか手を組むことになるとも思わなかった
信頼もへったくれもないコンビだけど、だからこそここに来て強敵になりそう
何気にマーダーコンビってマジキチコンビ以来になるのか、うちのマーダーは孤高な奴ばかりだったし
この二人は本当にダウナー系だな……
一緒に歩いてたら、周囲がすごいじめじめしてそう
ここに来て、また行く末が見えなくなってきた
ここにきて縁を取り巻く環境が面白くなってきてるね
どうなるか楽しみだわ
>>409 失礼しました、自分の把握ミスです
>>400の頭からスザクと縁の会話までの間を修正します
◆
ふと、一人の男が頭によぎった。
ジェレミア・ゴットバルトというスザクと縁の深い男のことだった。
彼は純血派と呼ばれる軍をブリタニア人だけで構築するべきだと主張する一派のリーダーだった。
スザクのようなブリタニア人の血を引かない、名誉ブリタニア人を軍から排斥することを目標していた。
ジェレミアが純血派の考えに傾倒した理由はスザクが知ることはない。
ただ、一つだけ言えることはジェレミアは根っからの軍人だったということだ。
実力に優れているからといって、ひとつのグループのリーダーにはなれない。
ジェレミアは王族への並外れた忠誠心を持っていた。
だからこそブリタニア人以外の人間、ナンバーズを仲間と認めることを無意識的に拒んでいる。
一度は別の国の人間だった名誉ブリタニア人、ブリタニア人に迫害され劣っているとされるナンバーズ。
潜在的に危険性のある彼らを、自身が忠誠を誓った王族をともに守る仲間として信用できないのもおかしくはない。
だから、ジェレミアは己の理想を実現させる純血派のリーダーとなったのだろう。
そんなジェレミアがひと目でナンバーズとわかるイレブン――――日本人である少女を守っていた。
見下していたはずの、信用できないはずのナンバーズの少女を傷だらけの身体で守っていた。
そのジェレミアの姿は、スザクよりもよっぽど正しい姿だった。
あれが『騎士』、あるいは消えてしまった日本の言葉で言うならば、『侍』としてあるべき姿なのだろう。
◆
ご指摘ありがとうございます
修正乙です
更なる仮予約来た
4月5月も動いたけど先月と今月もすごいな…
終盤とは思えないペースだよね
・影月無双で展望台崩壊、月死亡
・放送
・カズマ、桐山、みなみ死亡
・浅倉死亡
・シャナ死亡
・首輪解除、脱出条件開示からの三村死亡で志々雄が自由人
・鷹野介入で症候群があばばばば、狭間ボッチ脱却
・縁とスザクが手を組む
大きそうな出来事だけでこんな感じ?>先月と今月
有力マーダー桐山浅倉の一掃、鷹野乱入、志々雄脱出
この3つ的に三分割の話のタイトル通り、2ndSTAGEに移った感がある
終盤っていうのかもしれないけど
こう羅列してみるとすげー進んでるな……
主催者側では神崎士郎や創世王、死神、その他多作品の重要キャラがまだ存在するのかな
また仮予約ktkr
果たして狭間は活躍できるのか
本当に予約とまらねえwwwwなんだこれwwww
◆ew5bR2RQj.氏の代理投下を始めます。
水銀燈には姉妹の中で自身が一番強いという誇りがあった。
自他共に認める尊大な性格である彼女だが、この点に関しては自信過剰などではない。
他の姉妹に比べ、自身に与えられた能力が圧倒的に攻撃向きだからだ。
代表的なのが自由自在に空を飛び回れる黒翼であり、制空権を得ることができるだけで大きなアドバンテージになる。
それに加えて剣の精製など、彼女が所持する能力は多彩に及ぶ。
過去には結託した真紅たちに敗れたこともあったが、一対一では決して負けない。
むしろ他の姉妹を切り捨てる覚悟があるからこそ、アリスに一番相応しいのは自分であると考えていた。
だから殺し合いに放り込まれた際も、彼女の優勝を目指す方針は変わらない。
参加者はアリスゲームの十倍近くであり、未知の力を使う人間もいた。
だからスザクや月のような下僕を作り、常に自分が有利であるよう努めた。
桐山のような強敵はいたけれど、決して勝てない相手ではない。
だから優勝も遠くはないと、そう思っていた。
そしてそれが、あまりにも傲慢な考えだったと思い知らされた。
シャドームーンを相手にしては、どんなに小細工を駆使しても敵わない。
生き残った参加者を総動員しても、あの悪魔を倒すことなどできないだろう。
自分たちに出来るのは、シャドームーンが処刑を下すのを待つだけだ。
突風に煽られ、一本だけ残った右脚が揺れる。
左脚は木っ端微塵に粉砕され、もうこの世の何処にも存在しない。
破壊されたパーツが無い以上は、右眼の時のように修復することは不可能だろう。
そもそも回復能力を持っている狭間とは決別した。
もう二度と地上を歩くことはできない。
誇りを失い、矜持を失い、そこにいるのは壊れた人形(ジャンク)だった。
「……あれは……」
ぼやける視界に、一台の車が映る。
車には二人の男が乗っていて、一人は痩躯で一人は筋肉質。
既にこちらに気付いているようで、痩躯の男が警戒心を顕にしているのが伺えた。
後藤との戦闘を終えた後、彼女は市街地へと向かった。
数時間前の放送で、多くの参加者が市街地にいると分かったからだ。
僅かに顔を見せていた太陽も完全に姿を消し、二度目となる夜が帳を下ろしている。
生活感のない無機質な建築物が建ち並ぶ中、黒翼を広げながら進み続ける水銀燈。
道中で誰も会わないのは人数が減ったからなのか、それとも生き残った参加者が集団となっているからなのか。
結果として、彼らと遭遇するまで他の誰とも会うことはなかった。
「貴方達」
車の前に堂々と姿を現す水銀燈。
彼女の行動を読んでいたのか、車は徐行しながらやがて停止する。
「……貴女は水銀燈さんですね?」
助手席に座る痩躯の男に名前を呼ばれる。
面識のない男に名を呼ばれ、思わず首を傾げてしまう。
「どうして名前を知っているのかって顔ですね、翠星石さんから話は伺ってます」
小煩い妹の名前を出され、彼女は納得した。
同時に情報源が翠星石であることから、良い方向に伝わってはいないだろうことも察する。
「そう、なら私がどんな性格かも知っているでしょう」
「ええ、詳しく聞いています、貴女なら絶対に優勝を目指すだろうと」
「翠星石の癖に私のことよく理解してるじゃない……でももうどうでもいいわ」
溜め息を吐くように、水銀燈は言葉を漏らす。
「……どういうことですか?」
「言葉のままよ、私はもうどうでもいいの」
市街地へ向かっている間、ずっと考えていたことがある。
それは今後の身の振り方だ。
売り言葉に買い言葉という形で後藤とは戦ったが、今までのように優勝を目指してどうなるのか。
どれだけの策を弄しても、シャドームーンに勝つことはできない。
ならば、優勝を目指す全ての行為は無意味ということになる。
優勝が不可能となれば、もはや目の前に道はない。
残されているのは、シャドームーンから下された命令だけだ。
「騙し討ちを狙ってるのなら無駄ですよ、私は騙されません」
返ってきた素っ頓狂な言葉に、水銀燈は思わず嘲笑を浮かべる。
どうせ行き着く先は同じであり、故に男の姿はあまりにも滑稽に映った。
「あの娘にはよっぽど嫌われてたのね、でもホントにどうでもいいの……どうせあの子も、貴方達も、私もみんな死ぬんだから」
「……どういうことですか?」
「シャドームーンって知ってるかしら?」
その名前を出すと、今まで口を結んでいた筋肉質の男の身体が強張る。
痩躯の男の反応はないが、少なくとも筋肉質の男の方は会ったことがあるようだ。
「そっちの男は会ったことあるみたいね、なら私の言ってることが分かるでしょう?」
シャドームーンの強さは圧倒的であり、一度でも目にすれば巨大な恐怖として心の根に巣食う。
男がそれを思い出し、小刻みに震えている姿が見えた。
「私はもう行くわ。もう会うことはないでしょうけど、死ぬまで無駄に頑張ってなさい」
皮肉を口ずさみながら、車の側面を通って立ち去ろうとする水銀燈。
「貴女はどうするんですか?」
そんな彼女の耳に、痩躯の男から質問が投げかけられた。
「さあ、どうするんでしょうね」
まるで他人事のように答える水銀燈。
自分自身の未来であるが、どう動くにせよ行き着く先が死であることに変わりはない。
結果が決まっている以上、残された過程など本当にどうでもよかった。
「……貴女は、生きるのを諦めるつもりですか?」
カッと身体の内側が熱くなっていく。
自分が既に生きることを諦めているのは、薄々分かっていた。
しかしそれを認めてしまえば、自分はただの人形と何も変わらなくなる。
だから必死に気付いていないフリをして、自らを誤魔化し続けてきた。
それを目の前にいる男は、簡単に突き崩してきたのだ。
「貴方、何様のつもり?」
家屋の影に隠れていた人形が飛び出し、目の前に停車する車へと突撃していく。
何かあった場合に備えて、予め人形を待機させていたのだ。
その手には鎌を握らせているため、彼らの命を刈り取ることなど容易い。
自らの真横を人形が通って行く風を感じながら、彼女は冷めた視線を送る。
もし自分を怒らせなければ、もう少し長い間生きていられたのにと。
「え?」
だが、その予想はあまりにも意外な形で裏切られる。
人形は車内に侵入したところで、動くのを止めてしまったのだ。
「……なにやってるの? 早く攻撃なさい」
苛立ちを覚えながら命令するが、やはり人形は動かない。
歯軋りしながら再び命令しようとして、それよりも早く筋肉質の男の声が轟いた。
「上田次郎人形! 何故ここに!?」
「は?」と間抜けな声が漏れる。
痩躯の男も口を半開きにして、何が何だかわからないと言いたげに隣に座る男を見ている。
そうして筋肉質の男を観察している内に、彼女はあることに気付いた。
上田次郎人形と筋肉質の男。
この二人の顔は、あまりにも似過ぎている。
ボサボサの黒髪と立派な口ひげ、地味な色合いの服装と同じく派手でないメガネ。
観察すればするほど、上田次郎人形と筋肉質の男は似ている。
ここまで来れば、答えは分かるだろう。
上田次郎人形は筋肉質の男をモデルに作られている。
つまり筋肉質の男こそ、上田次郎なのだ。
ローゼンメイデンは人形を動かすことができるが、決してマリオネットのように操ることができるわけではない。
あくまで人形の魂を表面に呼び起こし、一時的に動けるようにしているだけである。
そもそも操るという表現はおかしく、人形はあくまで自分の意思で行動しているに過ぎない。
大抵の命令ならば聞き入れてくれるが、最終判断を下すのはその人形自身だ。
ここまで語れば、もう説明する必要はないだろう。
寝食を共にし、誰に会う時でも紹介を欠かさず、外出する時も常に一緒。
上田次郎人形は持ち主である上田次郎から山よりも高く海よりも深い愛を注がれている。
自分自身を模した人形ということもあり、もはや上田次郎人形は上田次郎本人と一心同体と言っても過言ではない。
そんな上田次郎人形が、どうすれば上田次郎本人を攻撃できるというのか。
『なぜベストを尽くさないのか』
「なぜベストを尽くさないのか!!」
上田次郎人形の声に合わせて、上田次郎本人が高らかに声を上げる。
狭い車内で叫んだせいか、痩躯の男が心底迷惑そうに耳を塞いでいた。
「何なのこの展開……」
自分の理解の斜め上を進んだ光景に、水銀燈は呆然としてしまう。
「あの、水銀燈さん」
「……何かしら」
結果として、彼女は完全に毒気を抜かれてしまった。
先程まで抱いていた怒りは、完全に霧散してしまっている。
その隙を見抜いてか、痩躯の男は水銀燈に再び話し掛けてきた。
「初めに申し上げておきますが、私はこのバトルロワイアルからの脱出を考えてます
殺すのも殺されるのも嫌ですし、それに私は人の命を弄んでいるV.V.を許せません
だからこの殺し合いを止めて、最終的にはV.V.を逮捕します」
Lの言葉はあまりにも荒唐無稽だった。
様々な経験を積んでいる彼女だが、それでもV.V.の持つ力の規模に想像が及ばない。
力の出処に心当たりが無いわけでもないが、それよりも前にもっと大きな障壁があった。
「貴方、本物のお馬鹿さん?」
だから、こんな言葉を放ってしまう。
「殺し合いから脱出? V.V.が許せない? 逮捕する?
蛮勇もここまで来ると笑えるだけね、一体貴方一人に何が出来るっていうの?
それに忘れてないかしら? V.V.よりも前に大きな壁があることを」
大きな壁――――言うまでもなくシャドームーンのことだ。
脱出するにしろ、優勝するにしろ、シャドームーンは必ず障害になる。
そしてその障害はあまりにも強大過ぎて、取り除くことは不可能。
つまりここに連れてこられた時点で、既に詰んでいたのだ。
「分かってます。しかし私は諦める気はありません、いつかは立ち向かわなければならないと思っていました」
表情を一切変えないまま宣言する痩躯の男。
あまりに恐れ多い言葉に、水銀燈は思わず激昂してしまう。
「いい加減にしなさい! アレはこの私が力を尽くしても傷一つ与えられなかったのよ!
それなのにただの人間の貴方に一体何が出来るのよ!」
痩躯の男からは何も力を感じない。
普通の人間に比べれば鍛えられているが、それでもスザクには大きく劣る。
確実に自分よりは『下』の存在なのだ。
「ええ、確かに私には貴女方のような特別な力はありません
ですが、誰にも負けない世界一の名探偵の”頭”があります」
水銀燈の怒鳴り声とは対照的に、痩躯の男の声は静かである。
だが決して声量が小さいわけではなく、凛とした透き通った声は確かに彼女の耳に届いていた。
「……そうやって自分の頭の良さを過信して、私の下僕――――夜神月は死んだわよ」
認めるのは癪であるが、夜神月の頭脳が自分よりも数段優れていたのは事実だ。
通用しなかったとはいえ、彼の展望台を崩壊させる作戦に舌を巻いた。
自分達が持ち得る攻撃手段では、間違いなくあれが最高の威力だっただろう。
「ッ……夜神君と一緒にいたんですか!?」
ここで初めて痩躯の男が平静を崩した。
否定する必要も無いため、「ええ、そうよ」と肯定の意を示す。
「水銀燈さん、その事について詳しくお伺いできますか?」
「はあ? 嫌に決まってるじゃない、面倒臭い」
当然のように拒否する。
理由は挙げたらキリが無いが、一番の理由はやはり面倒臭いからだ。
そもそも彼に説明する理由は無いのだ。
「ならば情報交換という形にしましょう、我々が持つ情報をお教えします
その代わり、夜神君についてお伺いしたい
貴女に損はさせません、ですのでお話を聞かせていただけないでしょうか?」
自分が拒否すると最初から分かっていたのか、矢継ぎ早に取引を持ち掛けてくる痩躯の男。
その態度が夜神月に似ていて、何処となく不愉快な気分にさせられた。
そもそも優勝を諦めている以上、全ての情報は交換材料にならない。
そんなことは痩躯の男も分かっているはずだ。
支援
(そういうこと、ね……)
奥歯をギリッと噛み締める。
確かに優勝を諦めているのは事実だが、それを口にした訳ではない。
言葉にして認めてしまえば、自分は本当にローゼンメイデンでは無くなってしまう。
だから外面だけでも取り繕わなければならないのだ。
優勝を諦めていないフリをする以上、この情報交換は応じなければならない。
痩躯の男の言う通り、こちらに不利は無いのだから。
「……分かったわ」
そこまで計算して情報交換を持ち掛けたのなら、見事としか言いようがない。
痩躯の男は相当の頭脳の持ち主であり、同時に相当の性悪だ。
「でも、後悔しないことね」
「……どういうことですか?」
ただ、情報交換をするだけでは面白くない。
せっかく人間の戯言に興じるのなら、少しくらい面白味があってもいいだろう。
「私の話を聞いたら、二度とあの悪魔に立ち向かおうなんて思わなくなるわよ」
絶対の自信を持つこの男の鼻っ柱を折ってやりたい。
シャドームーンに立ち向かうなどと大言壮語を宣った男に、死ぬほどの後悔を味わわせてやるのだ。
「そうですか、でもその前に一つだけいいですか?」
「いいわよ……というより私も多分同じ事を思ってると思うわ」
互いに目線を合わせながら、じろりと横を向く。
『なぜベストを尽くさないのか』
「なぜベストを尽くさないのか!!」
そこにいるのは、この話し合いの間ずっと叫んでいた上田次郎の姿。
二人は同時に肩を竦めると、深い溜息を吐きながら言った。
「いい加減静かにしてください」
「いい加減黙りなさい」
二人の声が一秒の差もなく同時に重なった瞬間だった。
☆ ☆ ☆
「大体こんなところよ……」
長話を終え、水銀燈は肩の力を抜く。
話し合いが長丁場になることが予想されたため、彼らは近場にあった民家へと移動していた。
既に太陽は落ちているが、外敵に発見される可能性を考慮して照明は点けない。
外から街灯の灯りが漏れているため、視界が完全に奪われるということもなかった。
「建物の崩壊に巻き込まれても無傷ですか……」
痩躯の男――――Lが神妙な顔をして呟く。
自己紹介された時はふざけているのかと思ったが、名簿にその名前があるのを思い出して押し黙った。
彼の本名に興味など無いし、得た情報がそれなりに有益なものであったのも事実だ。
桐山和雄が実は殺し合いに乗っていて、既に死亡していたことには驚きを隠せなかった。
他にもスザクや自分の情報がかなり出回っていたことや、後藤がシャドームーンに匹敵する危険人物であったこと。
今までずっと森林部にいたため、市街地の情報を得ることができたのは僥倖である。
――――最もそれを活かす機会はもう無いのだが。
「これで分かったでしょう、自分がどれほど愚かだったのか」
一方で彼女は夜神月と出会ってからの出来事、特にシャドームーンとの戦闘を詳しく話した。
自らの醜態を語るのは非常に屈辱的だったが、何故か抵抗感は無かった。
おそらくその理由は、シャドームーンの下した「自身の危険性を喧伝すること』という命令に沿っているから。
ここで拒否するということは、それはシャドームーンの命令に背くことを意味する。
シャドームーンの恐怖が骨身に染み込んでいるため、体と心がそれを許さないのだ。
「シャドームーン……」
震えた声でその名を呟いたのは上田だ。
彼も一度シャドームーンと邂逅しており、命からがら逃げ出してきたと言う。
先程までの無駄に自信に溢れた巨体が、今は小動物のように見えた。
「夜神君が……そうですか」
だが、Lの反応は別のものである。
水銀燈や上田と違い、あくまで注目しているのは夜神月。
まるでシャドームーンが気にならないと言っているようで、苛立ちを覚えざるを得なかった。
「そんなに夜神月が気になるのかしら? そんなに大した男にも見えなかったけどぉ……」
だからあえて否定の言葉を述べる。
そうして弱いものを嘲笑うことで、少しでも屈辱を晴らすのだ。
「夜神君はルパン三世、田村玲子の二人と一緒にいたくなさそうだったんですよね?」
Lの反応は相変わらず淡白なものだった。
面白味のない態度に舌打ちしつつ肯定すると、彼は再び考え込む素振りを見せる。
そして意を決したかのように、そっと口を開いた。
「水銀燈さん、少々長い話になるんですが聞いていただけますか」
水銀燈の顔を覗き込むように話し掛けてくるL。
役に立たない長話などに価値はなく、当然のように拒否しようとする。
そうして前を向いて、吸い込まれそうな程に深い瞳に気圧されてしまった。
表情に変化はないので分かりづらいが、Lの態度は先程と全く違う。
その瞳を例えるとしたら、親の仇の情報を得ようとする子供のようだった。
「……手短に話しなさい、私は無駄話はしたくないの」
「ありがとうございます、なるべく手短に話します」
そうしてLが語り出したのは、彼の知っている夜神月についてだ。
彼の世界での夜神月の正体は、名前を書くだけで人を殺せるデスノートを用いて犯罪者を裁く大量殺人犯・キラ。
Lはそれを阻止する探偵であり、水面下で戦いを繰り広げていた。
だが夜神月はその知略を用いて警察を欺き、言葉巧みにキラ対策本部に侵入。
ついにはLを殺害した――――
支援
「にわかには信じ難い話ね」
一笑に付す水銀燈。
確かに月の頭脳があれば、他人に取り入るくらいは容易いだろう。
だがデスノートの存在が眉唾だし、何より月にそんな度胸があったとは思えない。
展望台から離脱した直後、彼は殺人を許さないと言った。
それらの態度が全て演技で、本心では優勝を目指していた可能性もゼロではない。
だが、もしそうだとしたらルパン三世の死を悲しんでいたことも演技になる。
彼がトイレに行く時、自分は「早く戻ってこないと殺す」と告げた。
にも関わらず、最終的には自分が迎えに行く羽目になった。
殺し合いに乗ると公言している自分に対し、そこまでの演技をするのはいくらなんでもリスクが高過ぎるのではないだろうか。
それにルパンの死を悲しむその様は、多くの死を経験してきた者のものには見えなかった。
「そうですか……では最後に一つだけお伺いします」
「何かしら」
「貴女から見て、夜神月は悪人に見えましたか?」
ここに来て、Lの質問は非常に抽象的なものになった。
今までは肯定か否定で答えられるものばかりだったが、これは違う。
主観的な回答以外を述べることができず、決定的な答えを出せる訳ではない。
そもそもLのの述べたことが正しければ、彼の中で夜神月は完全に悪人であるはずだ。
しかし、そんなことは関係ない。
今まで以上に真剣味のあるLの両瞳は、言外にそう告げていた。
「……私からはそう見えなかったわ」
水銀燈から見た夜神月は、頭でっかちのただの男子高校生だ。
断じてLの言うような大量殺人犯・キラなどではない。
「そう、ですか……ありがとうございます」
謝礼と同時に、Lは深い溜息を吐く。
今の回答にどのような影響を与えたのか図りかねるが、彼には意味のあるものだったらしい。
彼女にはまるで関係のない話ではあるが。
「これで話は終わりかしら?」
「ええ、私からの質問は終わりです」
「そう、無駄な時間を過ごしたわ、じゃあ精々残りの余生を――――」
長話がようやく終わり、水銀燈は民家を出て行こうとする。
「何か勘違いされてませんか? 私が終わったのは質問だけですよ」
それを引き止めたのは、Lの言葉だった。
「今度は何かしら、私はもうあんた達と交わす言葉なんて無いんだけど」
明らかに苛立ちの篭った口調。
これ以上無駄話が続くのならば、ここで二人とも殺してしまおうか。
そんな赤黒い思考が、心の奥底から湧き出てくる。
支援
「いえ、ここからは水銀燈さんにとっても有益な話だと思います
私からの”提案”を聞いてもらえますか?」
先程の重苦しい口調とは打って変わって、当初の淡々とした口調に戻っている。
「……聞くだけ聞いてあげるわ、でももしそれがつまらない話だったら――――私が殺してあげる」
黒翼を広げ、威嚇するように飛び上がる。
空中からなら何処へ逃げても黒羽で狙い撃つことができるだろう。
今まで会話に参加してなかった上田が、露骨に怯えているのが見て取れる。
「ひっ、L君、い、今からでも謝った方がいいんじゃないのか」
「絶対に大丈夫です、どうしても怖かったら私の後ろに隠れていてください」
Lがそう言うと同時に、目にも見えぬ速さで彼の背後に隠れる上田。
しかしその巨体では完全に隠れることができず、上から丸見えであった。
「アハハハハ! バッカみたい、どうせ隠れても無駄なのに
さぁ、話しなさい、貴女の”提案”とやらを!」
上田を思いっきり嘲笑した後、Lを上空から見下ろす。
強気な態度を取っていても、きっと心の底では怯えているに違いない。
命が惜しいのなら、無様に這い蹲って許しを請いてみろ。
心の底でそう見下しながら、彼女は地上へと視線を移す。
そして、その目を疑った。
(なんで、そんな目が出来るの?)
まるで怯えていない。
命が危険に曝されているにも関わらず、Lは屹然とした目で彼女を見上げていた。
「では水銀燈さん、単刀直入に申し上げます」
「シャドームーンを倒すため、我々と協力していただけませんか?」
世界が、凍り付いた。
上空にいた水銀燈と隠れていた上田が、同時にLの方に視線を投げる。
呆けた様子で、その口をぽかんと開けていた。
「……悪いけど聞こえなかったみたい、もう一度言ってもらえないかしら?」
「わ、私も聞こえなかった、済まないがL君、もう一度――――」
「シャドームーンを倒すため、我々と協力してもらえませんか?」
幻聴ではなかった。
最初は聞き間違いかと思ったが違った。
目の前にいる男は、本気でこう言ったのだ。
――――シャドームーンを倒す、と。
「……ふざけてるのかしら?」
「ふざけてなんかいませんよ、私は本気で言ってます」
彼の顔は相変わらず無表情であり、そこから真意を伺うことはできない。
しかし今までのやり取りの中で、彼は一度も冗談を言わなかった。
「あ、あんた、私の話聞いてたの? あんな化け物倒せるわけないじゃない!」
柄にもなく取り乱してしまう水銀燈。
それほどにまで、Lの言葉は衝撃的だった。
「確かに今までの話を聞く限り、シャドームーンは我々の想像を絶する強さを持ってます
ですが、絶対に倒せないということは有り得ません」
絶対に倒せないということは有り得ない。
目の前であの悪魔を見た彼女には、到底それを信じることができない。
「キラ事件の説明で登場したデスノートを覚えてますか?」
Lがデイパックから一冊のノートを取り出す。
表紙が黒で塗り潰されており、見たこともない文字が踊っていた。
「まさか、それ……」
「ええ、これがデスノート――――その偽物です
上田さんが持っていたものなのですが、中身を見たら説明書が入ってました」
みなみの支給品を分配している時、Lが上田のデイパックの開いた口からこれを発見した。
最初は驚いて中身を見回したが、真ん中辺りのページにこれが偽物であることを示す小さな紙が挟み込まれていたのだ
本来の支給者である前原圭一がこれを読んだ時、彼は異常な精神状態にあった。
翻訳書を先に見つけたことも重なり、説明書の存在に気付かなかったのである。
「馬鹿にしてるのかしら……?」
本物のデスノートであれば、シャドームーンを殺すことができたかもしれない。
天国へ辿り着いたと思ったら、一瞬で地獄に叩き落される。
今の水銀燈の心境はまさにそれだった。
「確かにこのノートは偽物です、しかし私はこれのおかげで一つの仮説に辿り着きました」
「仮説……?」
「はい、例え話になりますが、もし水銀燈さんに本物のデスノートが支給されたらどうしますか?」
もしデスノートが支給されたらどうするか。
そんなこと考えるまでもない。
「参加者全員の名前をノートに書いて殺すわ、そうすれば楽に優勝できるもの」
名前と顔を知っていなければならない等の障害はあるが、それで相手を確実に殺せるなら安いものである。
ノートの存在を知っている者は二名しか居ないため、止められる可能性も皆無に近いだろう。
「貴女ならそう答えると思ってました。
なら今度は上田さんにお尋ねしますが、今の水銀燈さんの答えを聞いてどう思いましたか?」
話の中心が今まで蚊帳の外にいた上田へと移り変わる。
唐突に焦点を当てられた上田は困ったような素振りを見せるが、答えを口にするまでそう時間は掛からなかった。
「そうだな……いくら私が空手、柔道、相撲の申し子と云えど、そのノートに抵抗するのは難しい
何せ私はあまりにも有名過ぎて、全国的に名前と顔が普及してしまっているからな」
大分無駄な修飾が加えられているが、それでもデスノートに抵抗するのが難しいと言っている。
それほどまでに、デスノートは強力な支給品なのだ。
「そこなんです。デスノートは支給品としてあまりにも強力過ぎる。
それこそ支給された者がそのまま優勝候補になってしまうくらいに、これではいくらなんでも不公平だと思いませんか?」
「確かにそうね、でもそれが何の関係があるの?」
「私はシャドームーンにも同じ事が言えると思っています
確証を得ているわけではないですが、おそらくこの場にデスノートは配布されていません
そしてもしシャドームーンがこの会場の誰よりも強いのだとしたら、最初から優勝が決まっているようなものですよね?」
「そうね、でもそんなことまであのV.V.って奴が考えるかしら?」
「はい、そこが私の絶対の自信の源です」
そう言うと、Lは一呼吸置いて二の句を継いだ。
「おそらくですが、V.V.はこのバトルロワイアルを一種のゲームのようなものだと思っています
ゲームである以上、必ずクリアする方法が隠されているはず
そして同時に、V.V.はこのゲームを通じて何かを知ろうとしている
その知ろうとしている何かこそが、シャドームーンを倒す鍵になるのではないでしょうか」
Lの目が槍のように鋭くなる。
その表情を見て、水銀燈は思わず生唾を呑み込んだ。
「……正気なの?」
「紛れもなく正気です、先程の放送でV.V.は”誰にでも優勝するチャンスはある”と言いました
嘘が嫌いと断言している以上、我々にもまだチャンスは残されているはずです」
Lの言葉は理に適っている。
それこそ、一度諦めかけた心に再び光が差し込んでしまうくらいに。
「それは……そんなことは……あんたがまだあの悪魔を見ていないから言えるのよ!
次郎もアレに会ったなら分かるでしょう? あんなもの……あんなもの倒せるわけない!」
僅かに差した光を、銀色の闇が覆い尽くす。
絶対の恐怖の前には、この程度の希望など蝋燭の先に灯った小さな火と同じだ。
「……水銀燈くんの言う通りだ、私にはあれが倒せるとは思えない」
虚栄心に溢れた態度は鳴りを潜め、心の底から怯えた男の姿がそこにはある。
あの上田をここまで変えてしまうほどに、シャドームーンの与えた恐怖は彼らの根幹に根付いているのだ。
「確かに私はシャドームーンに会ったことはありません
でも、だからこそ、まだその恐怖を知らない私が立ち向かわなければならないんです」
「そんなことを……そんなことを言えるのは――――ッ!」
「なら、貴女は生きるのを諦めるんですか?」
最初に出会った時と同じ質問。
だが、今度は反論することも攻撃することもできない。
全身の震えが収まらず、何も行動を起こすことができないのだ。
「私は一度死んでいる身ですが、それでもまた死ぬのはとても怖い
まだやり残したこともありますし、こんなところで死にたくないです
だから水銀燈さん、私達が生き残るのに協力してください。お願いします」
深々と頭を下げるL。
意味が分からない、訳が分からない、何を言っているのか分からない。
彼女の数百年の人生の中でも、この瞬間ほど理解の及ばない状況は存在しない。
今の彼の姿は、水銀燈の常識を超越したものだった。
「……一度逃げ出した私が役に立つと思うの?」
「思ってるから誘ってるんです、一度戦った方のお話は何よりも役に立ちます」
「い、今まで私が何してきたか知ってるの? 貴方達に話してないこともいっぱいあるのよ!」
「分かってます、しかし罪を問い質すのも責めるのも後で出来ます」
「ッ……もし、もしアレを倒したとして、その後に私が貴方を殺すとか考えないの?」
「その可能性を承知で誘ってるんです
あくまでシャドームーンを倒すまでの協力関係、それでは駄目ですか?」
何を言っても無駄だった。
予め全ての答えを用意してあるかのように、詰問してもすぐに答えが返ってくる。
思い付きで放った言葉など、まるで意味を為さない。
目の前には二つの道があった。
両方ともその先に待ち構えているのは地獄。
一つは誇りを捨て、恐怖から逃げ、僅かに残された命を怯えながら過ごす道。
もう一つは恐怖に立ち向かい、誇りを取り戻し、僅かに残された命を燃やし尽くす道。
どちらを選ぶのが正解か、そんなことは分かっている。
しかし、恐怖がそれを許さない。
網膜に焼き付いた銀色の鎧が、翡翠の双眸が、深紅の刀身が、迸る光線が、上下する突起による足音が、彼女に間違った選択肢を強制する。
目の前に広がっている二つの道は運命の分かれ道だ。
最初に道を選んだ時、彼女は失敗した。
そして、今も選択の時が訪れている。
おそらくこれが最後だろう。
どの道を選んだにしても、後は進んでいくしかない。
「わ、私は……私は――――」
――――嫌よ、もう戦いたくなんてない。
そう言おうとして、寸前で言葉が詰まった。
ここで逃げれば、自分は本当に壊れた人形(ジャンク)になってしまう。
シャドームーンに誇りを踏み砕かれてから数時間は地獄のようだった。
ここに来て、ようやく気付くことができた。
確かにシャドームーンは怖いが、自分が本当に恐れているのはそれではない。
自分が本当に恐れているのは、ローゼンメイデンの誇りが汚されることだったのだ。
誇りを取り戻したいのなら、選ぶ道は――――決まっている。
恐怖から脱却する時は、今なのだ。
「……私の、負けよ」
限界まで溜め込んだ空気を吐き出すかのような溜息を吐く水銀燈。
そして上空から降り立ち、Lの目前まで移動する。
「シャドームーンを倒すまで、協力するのはそこまでよ」
そして、一歩踏み出した。
「……本当に世界一の名探偵なの貴方? 私には世界一のお馬鹿さんにしか見えないわ」
「そんなことを言われたのは貴女が初めてです」
「そう、全くいい度胸してるわよ、私を一つの戦力として扱うなんて、貴方も、夜神月も」
自嘲気味に笑みを浮かべる水銀燈。
そうでもしていないと、とてもではないが平静を保てそうになかった。
支援
支援
「L君、本気なのか? 今からでも考え直した方が……」
「上田さん。言い忘れてましたが、死ぬのってとても痛いですよ」
「え?」
「死ぬ時は痛みなんて感じないって言われてますが、あんなのは嘘っぱちです
とっても痛いですし、死んだ後もしばらくはそのままなんです、私も痛くて涙が出ちゃいました」
「……本当なのか?」
「ええ、本当です」
Lがニヤリを笑いながらそう言うと、上田は閉口してしまった。
本気で死ぬ際の激痛を案じているようで、Lが嘘を言っている可能性にはまるで気付いていないようである。
何とも単純な男だ、と水銀燈は思わず笑ってしまった。
「ッ……」
不意に視界が歪む。
黒翼に乱れが生じて地面を踏んでしまうが、片脚では身体を支えられずに倒れそうになる。
だが、その寸前にLが彼女の身体を支えたため事無きことを得た。
「大丈夫ですか?」
「……勝手に触らないで、不快よ」
罵声を飛ばしながら、彼女は再び黒翼を広げて浮遊する。
「ちょっと疲れただけよ……」
バトルロワイアルが始まって以来、彼女は一度も大きな休憩を取っていなかった。
ローゼンメイデンの活動時間が短いことも相俟って、限界が訪れたのである。
「上田さん、あの鞄を出していただけますか?」
Lに指示を下された上田が、デイパックから大きなトランクケースを取り出す。
革張りの表面に金色の薔薇が彫刻された豪華絢爛な一品であった。
「私達の鞄じゃない」
「そのようですね、貴女方はこれを使って休むと説明書に記されていたので」
これはローゼンメイデンの鞄であり、基本的に彼女達はここで眠る必要がある。
数日程度ならば他の場所でも問題ないが、あまりにも期間が嵩むと精神を維持できなくなってしまうのだ。
「これを使ってください、貴女が休んでいる間は上田さんが責任をもって管理します」
「そうだ、どんな偉人でも休息を取ることは必……私が持つのか?」
「お願いします、私はお箸も重たい物を持ったことがないので」
目の前で繰り広げられるやり取りに、思わず水銀燈は肩を落としてしまう。
こんなことで本当にシャドームーンを倒せるのだろうか。
先程僅かに差し込んでいた光が、今はあまりにも頼りなく見えた。
「なら少し眠らせてもらうわ。次郎、しっかりと運びなさい」
嘲りながら命令し、鞄の口を開ける水銀燈。
せっかく協力してやるのだから、このくらいの我儘は許してもらわなければ困る。
支援
「上田次郎人形が必要なら私に言うがいい、特別に貸してやろう」
「……結構よ」
覗き込むように提案してきた上田を一蹴し、水銀燈は鞄の中に寝転がる。
そうして鞄の口を閉じ、やがて寝息を立て始めた。
☆ ☆ ☆
桐山を倒してからしばらくした後、Lと上田はゆっくりと行動を開始した。
カズマとみなみ、そして桐山。
三人の遺体を、少し歩いた先にある民家へと運び込んだ。
もはや馴れた作業だったのに酷く疲労感を覚えたのは、きっと気のせいではないだろう。
そうして今度はみなみの遺品を分配し、中にあった車で先へと進んだ。
特に当てがあった訳でもないが、目的は真司や翠星石と合流するためである。
水銀燈に会ったのは、その途中であった。
(夜神君……)
そこで夜神月の最期を知る事ができた。
ずっと気になっていたことがある。
支給品を整理している際、ニンテンドーDS型詳細名簿の拡張パーツを発見した。
早速それを当ててみると、最初の時よりも情報量が増えていた。
そして、その中に一つ気になる情報があった。
各参加者がこの場所に連れて来られる直前の時間が、新たに記載されていたのである。
見覚えのない年号等もあったが、一番気になったのは夜神月の時系列だ。
そこにあった日付は2003年11月28日。
新宿通り魔の犯人である音原田拓郎が死亡した日、つまり月がデスノートを拾ったと思われる日だ。
これが正しければ、月が自分を知らなかった理由も頷けるだろう。
あの時点では、まだキラ事件は表立ってなかったのである。
だが、そんなことは問題ではない。
これに気付いた時、Lは恐ろしい仮説に気付いてしまった。
この仮説が正しいかは分からないし、おそらく永遠に答えは分からない。
もしもの話だ。
――――もし夜神月がここに連れて来られたのが、デスノートを拾う前だとしたら。
(私はとんでもないことをしてしまったことになる……)
デスノートを拾う前から来ていたとしたら、彼はキラでも何でもない。
日本一優秀で人一倍負けず嫌いのただの男子高校生だ。
ここに至るまで、自分は散々夜神月が危険人物であるという情報を散布している。
もしも彼がその情報に錯乱され、結果的に首を締める形になったのだとしたら。
夜神月を殺したのは、エル・ローライトということになる。
(私は……)
この答えは永遠に分からない。
彼に会った人物は水銀燈以外死亡し、彼女もその答えを知らない。
いくらエルが天才でも、何もないところから解答を導き出すことはできない。
だから悩み続けるしかない。
由詑かなみを外出させてしまった時のように、南光太郎が死んでしまった時のように。
支援
「L君、決まったことにケチを付けるが……水銀燈君を本当に仲間に引き入れてもいいのか?」
ハンドルを握り締めながら尋ねてくる上田。
水銀燈の話が事実なら、シャドームーンと後藤が同時に市街地へ進軍していることになる。
一刻も早く真司達に合流する必要があると判断し、彼らは既に車で出発していた。
「翠星石君とは仲が悪かったようだし、それに今まで何をしていたのかを知らないのだろう?」
「ええ、だから彼女が起きたらしっかりと聞くことにします
それと翠星石さん達の説得は私に任せてください
きっと物凄く反発されるでしょうけど……でもこれが私に出来る唯一の仕事ですから……」
どれだけ傷ついたとしても、エルが止まることは許されない。
止まればその分だけ、また犠牲者が出るのだから。
【一日目 夜中/Fー8】
【L@デスノート(漫画)】
[装備]ゼロの剣@コードギアス
[支給品]支給品一式×4(水と食事を一つずつ消費)、ニンテンドーDS型詳細名簿、アズュール@灼眼のシャナ、ゼロの仮面@コードギアス、
角砂糖@デスノート、情報が記されたメモ、S&W M10(5/6)、S&W M10の弾薬(18/24)@バトル・ロワイアル、
首輪(魅音)、シアン化カリウム@バトルロワイアル、イングラムM10(0/32)@バトルロワイアル、おはぎ×3@ひぐらしのなく頃に
包帯@現実×5、高荷恵の傷薬@るろうに剣心、女神の剣@ヴィオラートのアトリエ、DS系アイテムの拡張パーツ(GBA)、才人の不明支給品(0〜1)
[状態]肋骨折、疲労(小)
[思考・行動]
0:真司達と合流する。
1:協力者を集めてこの殺し合いを止め、V.V.を逮捕する。
2:シャドームーンを倒す
3:水銀燈が起きたら、改めて彼女の話を聞く
4:大量の死者を出してしまったことに対する深い罪悪感。
[備考]
※詳細名簿に追加された情報は連れて来られた時系列以外未定です、次の方にお任せします。
※水銀燈が話したのは夜神月に会ってからの話だけです。
【上田次郎@TRICK(実写)】
[装備]君島の車@スクライド
[支給品]支給品一式×4(水を一本紛失)、富竹のポラロイド@ひぐらしのなく頃に、デスノート(偽物)@DEATH NOTE
ベレッタM92F(10/15)@バトルロワイアル(小説)、予備マガジン3本(45発)、雛見沢症候群治療薬C120@ひぐらしのなく頃に、
情報が記されたメモ、浅倉のデイパックから散乱した確認済み支給品(1〜3)、銭型の不明支給品(0〜1)
[状態]額部に軽い裂傷(処置済み)、全身打撲
[思考・行動]
1:Lに協力する。
2:シャドームーンを倒す……?
※東條が一度死んだことを信用していませんが、Lが同じ事を言うのでちょっと揺らいでます。
【水銀燈@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]ローゼンメイデンの鞄@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式×6(食料以外)、しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒、双眼鏡@現実、
首輪×2(咲世子、劉鳳)、着替え各種(現地調達)、シェリスのHOLY隊員制服@スクライド、
黒の騎士団の制服@コードギアス 反逆のルルーシュ、農作業用の鎌@バトルロワイアル、上田次郎人形@TRICK
前原圭一のメモ@ひぐらしのなく頃に、カツラ@TRICK、カードキー、知り合い順名簿
三村信史特性爆弾セット(滑車、タコ糸、ガムテープ、ゴミ袋、ボイスコンバーター、ロープ三百メートル)@バトルロワイアル
剣心の不明支給品(0〜1)、ロロの不明支給品(0〜1)
[状態]睡眠中、疲労極大、右目にヒビ割れ、右眼周辺に傷、、左脚欠損、強い恐怖
[思考・行動]
0:眠る。
1:シャドームーンを倒すまではLに協力する。
[備考]
※ゾルダの正体を北岡という人物だと思っています。
※nのフィールドに入ろうとすると「入ろうとする意思そのものが消されてしまう」ようです。
※Lが話したのは彼が知っている危険人物についての情報だけです。
【ローゼンメイデンの鞄@ローゼンメイデン】
稲田瑞穂に支給。
高級そうな作りの大きな鞄であり、ローゼンメイデン達はここで眠る必要がある。
なおローゼンメイデン達は、これを飛行時の道具として使用することもできる。
ただしこれ自体に飛行能力がある訳ではない。
【DS系アイテムの拡張パーツ(GBA)@その他】
平賀才人に支給。
DS系アイテムの情報量を増やしたり、性能を上げたりすることができる。
なおこれはGBAカセット型であり、今は亡きダブルスロットを使用する。
支援
代理終了です。
感想は後ほどに。
投下乙!
一時的な協力か……水銀燈に植えつけられた恐怖の中にもまだ希望が残っていたんだなあ、と。
Lの冷静な思考の裏に見える、後悔が少し重い……。
あ、上田さんはカバン持って廊下に立っててください。
投下乙です
まさかあそこまで落ちた銀様が持ち直すとは…
月の誤解が解けたのは月にとってはよかったけど、知らないままでいられた方がLは幸せだったろうなぁ
>>456 何でや、先生と上田次郎人形の感動の再会がなかったら銀様との空気が険悪になってたやろ!
誤字の指摘は
>>437 「アハハハハ! バッカみたい、どうせ隠れても無駄なのに
さぁ、話しなさい、貴女の”提案”とやらを!」
貴女→貴方
投下乙です!
水銀燈がシャドームーン死亡までとは言え対主催たちと協力かー、予想外だったぜ
しかしLは悲しいぐらい空回りしてるなぁ、メンタルボロボロだろこれ……
上田さんは次郎人形とあえてよかったね(棒)
あと、Lの月への呼び方は月くんだったような
>>桐山和雄が実は殺し合いに乗っていて、既に死亡していたことには驚きを隠せなかった。
あなたのせいですよ銀様
なんじゃこりゃあああああああああああ!!!!
後藤以外仮予約されてるw
えーと、仮とはいえ今予約3つか?w
すげえなこれwwww
この季節の全裸待機はツライです><
しかしここまで来てネタ的にも格的にも
美味しいメンバーがよく残ったもんだ
ネタ的に面白いキャラなんかが生き残ってるのか
ユー、誰か分かるか?
対主催:ヴァン、CC、L、上田、城戸、翠星石、クーガー、北岡、ジェレミア、つかさ、狭間、(水銀燈)(レナ)
マーダー:影月、後藤、縁、スザク、CCO
不幸:スザク、ジェレミア、レナ、
ヒロイン:つかさ、レナ、上田
この状況で織田様や東條、圭一が生存してるのは想像できないよなぁ…
CCOさんはC.C.と翠星石の首輪外しに貢献して、今も内側から主催打倒を(多分)目指している対主催筆頭だから(方治的な信仰)
>>468 こなたや右京さんが生き残っていても浮いてただろうなあw
>>468 上田とかが生き残っていても浮いてただろうなあ
…え?生きてるの?そして現在進行形で浮いてるの?
浮いてません。
何故か。
筋肉って重いから水に浮かないんだよね
こなたでも右京でも残ってたら残ってたでそれはそれで浮かずに馴染んでたと思うけど
それでもこのメンツはわくわくするわ
>>64とIDが完全に被っててビックリした
しかもこの書き込みしたのも俺だ
他人と被った事はあるけど、そんな事もあるんだねー
まとめwiki見てたら、上田先生とかなみってマジキチとの遭遇率高いなw
かなみっていうか上田先生補正な気もするw
参加者の個別ページ、みんな大体閲覧数1000前後なのに上田だけ1800超えてるってどういうことだよ
有名人だから仕方ないだろう
483 :
創る名無しに見る名無し:2012/10/30(火) 23:48:43.73 ID:YZBxYXgw
普通のロワの一般人だったら
戦う力が無いとか足手まといになってるとかで苦悩するけど
上田先生ってそういうのが一切無いよね
志々雄真実、シャドームーン、V.V.、ラプラスの魔の予約分を投下します。
ゴルゴムの世紀王とは世界を統べる創世王となるべき存在である。
この世に存在する他の有象無象のごとく、世界の道理に支配されるのではなく、
世界を自らの力で思うが侭にする存在。それがゴルゴムの王。
『生存者が随分少なくなってしまったね。 寂しいけど、生き残っているみんなにはこれからも頑張って欲しい。』
しかしゴルゴムの歴とした王であるはずのシャドームーンは、その場に足を止めて周囲に響き渡る幼い声に耳を傾けている。
殺し合いを主催している側の存在であるV.V.が行っている定時放送に。
ゴルゴムの王とて殺し合いの中では一人の参加者。
殺し合いを支配する道理から大きく外れることは出来ない。
放送は参加者にとって貴重な情報源なのだ。無視することは出来なかった。
特にシャドームーンにとって、今回の放送は。
『それじゃあ、次の放送でまた会おう。 優勝者が決まるまでにあと何回放送があるのか、分からないけどね。』
V.V.の声が止み、森の中に静寂が訪れる。
耳を貸すべき放送は終わった。
それでもシャドームーンの足は動き出さない。
殺し合いの中、何を為すでもなく立ち尽くしている。
只、先ほどの放送の内容、その中の死亡者の名を思い返していた。
『由詑かなみ』。
絶望させてから殺すと決めていた少女がそう呼ばれていたのを、改造されたシャドームーンの聴覚は捉えていた。
しかしその名が死亡者として呼ばれたことは、然程気にはならない。
所詮かなみは腕の折れた子供に過ぎない。
殺し合いの中では、いつ命を落としてもおかしくないことは判っていた。
かなみの件はもう済んだことだ。省みるに値しない。
問題は別の名前である。
その男が死者として呼ばれた事実の前では、誰の死も問題とはならない。
『南光太郎』。
確かにその名が死者として呼ばれた。
かつて秋月信彦だった頃は兄弟同然に育った親友であった男。
喜ばしいことも哀しいことも共に経験し、共に分かち合った唯一無二の親友同士だった。
しかしそれはもはや振り返る価値も無い過去の話だ。
そしてシャドームーンとなった今では同じく世紀王へと改造された宿敵。
決して並び立つことは出来ない、文字通りに宿命の敵である。
そのブラックサンが死亡者として名前を呼ばれたのだ。
いつまでもじっとしていても仕方ない。
他の参加者が残っている以上、殺し合いは続いているのだ。
それを終わらせるためにシャドームーン自身が動かねばならない。
そう考えてシャドームーンは再び歩き始める。
しかし一人歩き続けるシャドームーンの胸中には奇妙な感慨が残る。
放送の信憑性は高い。
そこで嘘をつくことにほとんど意味は無いからだ。
しかしあのブラックサンがシャドームーンの知らない所で、あっさりと誰かに殺されるなど、
俄かには信じがたい話だった。
ブラックサンは世紀王に改造された身でありながら、脳改造を免れ、
ゴルゴムの敵となり、その陰謀から多くの人間を救っている。
そのためにブラックサンは人間からこう呼ばれた。
仮面ライダーブラックと。
sie
sie
幾多のゴルゴムの怪人と戦い、倒してきた仮面ライダーブラックは正に歴戦。
その上、仮面ライダーブラックは一度シャドームーンに殺されたが、
クジラ怪人から与えられた命のエキスによって復活し、その際に力が大幅に強化されている。
その仮面ライダーブラックが、シャドームーン以外の者に殺された。
だからこれほどシャドームーンにとってブラックサンの死は信じ難いのだろうか?
放送が終わってから、かなりの間が経つと言うのに引っ掛かる物が消えない。
どれほど思案しても、ブラックサンの死を確かめる方法など無いと言うのに。
――――否、確かめる方法は有る。
シャドームーンは腰に在るシャドーチャージャーに力を込める。
正確にはその奥に埋め込まれた世紀王の力の源、キングストーンに。
シャドームーンの持つキングストーンは翠色に輝く月の石。
ブラックサンの持つ太陽の石と対となる。
そう、キングストーンは本来、二つで一つとなって創世王を創り上げる存在。
ならばキングストーン同士ならば、何らかの反応が得られるはずだ。
シャドーチャージャーから夥しい光が漏れる。
外からでも莫大なエネルギーが発生していることが判る。
(……………………在る。この会場内だ)
シャドームーンのキングストーンから鳴るような反応が有る。
そして遠くに、同じくキングストーンによる共鳴のような物が感じ取れた。
反応は正確な場所は判らないがこの会場内のどこかだ。
キングストーンはこの世に二つしかない。
ならばこの反応は一つ。
ブラックサンのキングストーン・太陽の石。
かつてシャドームーンは遥かに空間を隔てたビルゲニアから、サタンサーベルを奪い取った経験がある。
世紀王は空間を超えて能力を行使することが出来、そしてサタンサーベルは世紀王のための剣だから可能だった。
ならば、キングストーンの反応を得られたのだから、もう一つのキングストーンを世紀王の力でもって召喚できる可能性はある。
何しろキングストーンとはそれ一つでも奇跡のごとき能力を発揮することが出来る上、
二個一対で創世王を構成する存在なのだから。
シャドームーンは左手を天にかざし、かつてビルゲニアからサタンサーベルを奪い取った時と同じ要領で、
自身のキングストーンから発したエネルギーを送り込み、そこから放出した。
しかし放出したエネルギーは空間を越えずに、その場で霧散する。
目論見が外れたか?
いや、そうではない。
今のは“空間を越えることが不可能だった”と言うより、“空間を越えようとして制限に阻まれた”のだ。
どういった形で制限しているかの詳細は判らないが、キングストーンの能力すら抑制されていた。
ゴルゴムの王とて殺し合いの中では一人の参加者。
やはり殺し合いを支配する道理から大きく外れることは――――
(――――力で抑え付けられるとでも思ったのか! キングストーンを。次期創世王を)
ゴルゴムの世紀王とは世界を統べる創世王となるべき存在である。
この世に存在する他の有象無象のごとく、世界の道理に支配されるのではなく、
世界を自らの力で思うが侭にする存在。それがゴルゴムの王。
殺し合いを主催する者がどれほど強大で、どれほど超越的な能力で以って縛ろうとも乗り越えられる筈だ。
キングストーンを以ってすれば。
キングストーンの特徴の一つに、自身の能力を進化させるという物がある。
例えばゴルゴムの創世王は代を重ねる毎に、より強大な存在になっていっていた。
シャドームーンの代が創世王となれば全宇宙が意のままになるとさえ言われている。
またキングストーンを一つしか持たない世紀王を例にとっても、
ブラックサンはキングストーンの効果によってRX、ロボライダー、バイオライダーへと変化を遂げていっている。
最もこれはブラックサンが生き続けた、今から迎えるのとは違う未来の話なのだが。
シャドームーンのキングストーンもまた進化する力を秘めた石。
その力は今、世紀王の求めに応じて増大する。
自身に掛けられた制約をすら乗り越えるほどに。
かつてない強烈な光が、シャドーチャージャーから天に向かって放たれる。
雷のごときそれは、遂に頭上の空間そのものを引き裂いた。
シャドームーンは制限を打ち破ったのではない。
制限は未だ、シャドームーンに課せられたままである。
しかしキングストーンの進化した能力は、そのままの制限を力尽くで乗り越えたのだ。
そして空間を越えたキングストーンの光はもう一つのキングストーン、
ブラックサンの下へと到達した。
◇
エリアにしてH−9に位置する警察署。
その警察署内にある霊安室。
死者の亡骸を保管するためのその部屋には、
本来の役割に沿って、幾つもの遺体が安置されていた。
その内の一体。白いブルゾンとジーンズに身を包んだ青年、南光太郎。
彼の遺体に空間を越えて、天からキングストーンの光が降り注ぐ。
そして光太郎の身体もまた光を放った。
光太郎が持つキングストーン・太陽の石の輝き。
キングストーンの輝きに包まれた光太郎の身体は、変化を遂げて行く。
人のシルエットを維持しながら、昆虫のごとき外装に包まれたバッタ男の姿。
更にその上から強化皮膚・リプラスフォームが包み込み、仮面ライダーブラックへと姿を変えて行く。
キングストーン同士の共鳴に拠る反応で、生命の無い光太郎に変身を促したのだ。
しかし変身を終えたはずの仮面ライダーブラックに更なる変化が起こっていく。
仮面ライダーブラックの腹部に存在するエナジーリアクターに皹が入り、そこから更なる光が漏れた。
皹が無数に枝分かれして走って行き、やがてエナジーリアクターは音を立てて内側から割れる。
その中から光を放ちながら紅い輝石が浮かび上がって来る。
エナジーリアクターの奥深くに埋め込まれたキングストーン・太陽の石が姿を現したのだ。
◇
シャドームーンは空間の隔たりを越えて、ブラックサンのキングストーンを取り出すことに成功する。
空間を越えてキングストーンに干渉したのだ。それは決して容易なことではなかった。
支援
sie
しかしキングストーンを力づくで取り出したにも関わらず、ブラックサン自身に拠るものと思われる抵抗は感じ取れなかった。
そもそもブラックサンが生きているのなら、キングストーンを体外に取り出すことなど不可能だろう。
(……………………やはり死んだのか、ブラックサン……)
ブラックサンの死を確認出来た。
未だに引っ掛かる物はあるが、ともかくこれで世紀王の戦いに決着は着いたのだ。
ブラックサンは死に、シャドームーンは生きている。
それは生き残ったシャドームーンが次期創世王と決定したと言うことである。
(…………終わらせるか…………そして新たなる創世王の誕生だ)
ブラックサンを自分の手で倒せなかったのは不本意ではあるが、最早どうしようもない。
そしてキングストーンも取り出し終えた。
ならばこれ以上、事を先送りすることにもう意味が無い。
キングストーンを自分の下に呼び寄せて創世王となるのだ。
全宇宙を支配する絶対の王、創世王。
そうなれば、最早全てが終わったも同然だ。
首輪も、会場を包む空間の歪みも、主催者も、何もかも問題とはならない。
キングストーンが来ると共に、世界の全てがシャドームーンの手に落ちるのだ。
そのキングストーンを運ぶ空間の穴が――――閉じた。
「世界には無数の穴が在り、扉はそれを防いでいます」
シャドームーンは広視界と透視能力を併せ持つマイティアイを持っている。
しかし何時の間に“それ”が現れたのか、全く気付かなかった。
“それ”はタキシードを着た長身の男。
だがその頭部は白い毛と長い耳が伸びる兎の物。
“それ”がシャドームーンの前方に立っていた。
「私の邪魔をしたのは貴様だな」
「眼に見えない扉にご注意を。彼らは狡賢く隠れているのですから」
それだけで生を奪えそうなほどの威圧感を湛えて、シャドームーンは兎頭に詰問する。
しかし兎頭はまるでそれを意に介さず、要領を得ない言葉遊びのような答えを返す。
まるでシャドームーンをからかい遊んでいるかのように。
それでもシャドームーンは、その返答によって兎頭が自身の邪魔をしたのだと確信出来た。
更に首輪を付けていない様子と状況から、兎頭が主催者側の存在であると推測する。
支援
その推測は正鵠を得ていた。
彼こそV.V.の協力者にして、因果律に拠る決定論の究極概念を名に持つ道化師。
ラプラスの魔。
彼もまた空間そのものに干渉する能力を持ち、それによってシャドームーンを阻んだのだ。
「フッ。殺し合いを仕掛けておいて運営する者が参加者の行動を侵害するとは、不器量な真似をしてくれた物だな」
「ご注進か、道化師の悪戯か。光が光を求めると、光を失うと申します」
シャドームーンの挑発を、ラプラスはやはり意に介した様子も無く、
と言うよりこの世のことの何にも動揺しないと言った風情で、謎掛けのような言葉を返す。
その佇まいと言い、纏う空気と言い、
ラプラスはまるでこの世界に在り得ぬ物のような、捉え所の無い気配を放っていた。
「貴様が何故邪魔をしたか、理由を問うつもりは無い……。世紀王に立ちはだかった、只その報いを受けるが良い」
ラプラスの様子を意に介さないのはシャドームーンも同様。
何者であろうと世紀王に歯向かえば死あるのみ。
シャドームーンは殺し合いを主催する者の黒幕に、現在の創世王が居ると考えている。
ならばラプラスは創世王の配下。ゴルゴムの側の存在でもある。
しかしそれでもシャドームーンが容赦をする理由にはならない。
シャドームーンは最終的に、創世王を殺すことさえも視野に入れているのだから。
空を裂く音も置き去りにしそうな速さで、シャドームーンはサタンサーベルでラプラスに斬りかかる。
ラプラスが反応する間も無く、サタンサーベルは振り切られた。
「貴様……!」
確かにラプラスに切り付けたはずのサタンサーベルから、何の手応えも無い。
ラプラスはサタンサーベルがその身体を通り抜けたと言うのに平然としている。
「もし私がお気に召さないのなら、こうお考え下さい。貴方は居眠りをされ幻を見ているのだと」
それこそ真に幻であるかのごとく、シャドームーンの攻撃をすら往なすラプラス。
シャドームーンの威をすら歯牙にもかけぬラプラスの余裕。
それは自らが殺し合いを支配し、参加する者の運命を自由に出来る、
正しくその名が示す通り、世界を支配する法則(ルール)と一体化した者の余裕だった。
殺し合いを支配する者の前には世紀王の刃すら届かない。
シャドームーンにとって状況は好ましい物ではなかった。
空間を越えてキングストーンを回収しようとした際、かなりのエネルギーを消耗したからだ。
キングストーンは永久機関ではあっても、一度に無限のエネルギーを発揮できる訳ではない。
まして、未だに制限下の状況では。
そしてシャドームーンには自分が強者である自負はあったが、他の参加者とて決して甘く見てはならないとも理解していた。
何しろ同じ世紀王であるブラックサンですら命を落としている状況なのだ。
「…………いいだろう。貴様らがそれほど疎んじるのならば、この場で太陽の石を回収するのを止めてやる」
支援
支援
「始まりは遠く、終わりもまた遠い。疾風の脚を、挫かぬよう」
世紀王としてこれほど屈辱的な事態は無いが、この場は引き下がらずを得なかった。
ラプラスは慇懃な態度でシャドームーンに対して一礼する。
このラプラスがいる限り、幾らキングストーンを回収しようとしても徒労に終わるだろう。
「……だが貴様を生かして帰すほど、私は甘くは無いぞ」
しかし世紀王に歯向かったラプラスを許すかどうかはまた別の話だ。
「シャドーフラッシュ!」
シャドームーンが叫ぶと同時に、シャドーチャージャーから翠色の激しい輝きが放たれる。
キングストーンの光・シャドーフラッシュ。
それは仮面ライダーブラックが放つキングストーンフラッシュと同質の能力。
超能力であろうと魔法であろうと、敵にあらゆる能力の効果を殺すことが可能なのだ。
シャドーフラッシュの光を浴びたラプラスは、空中に溶けていくようにその姿を消して行った。
間髪を入れず、シャドームーンは左手から電撃状のシャドービームを発射。
シャドービームはシャドームーンの斜め後ろ、木陰に居たラプラスを捕縛した。
「フッ。本当に幻術で欺いていた口で、何が幻と思えだ」
ラプラスを斬ることが不可能だったからくりが、これである。
シャドームーンの眼前に現れたラプラスは虚像。
実体は別の場所に存在していた。
「マイティアイを欺いたのは褒めてやる。だが貴様らの失策はキングストーンを甘く見たことだ。それも二度に渡ってな」
ラプラスは杖を振るい空間に穴を開ける。
しかしシャドーフラッシュの光を浴びせられて、空間の穴が閉ざされた。
先刻、シャドームーンの空間干渉能力が進化し向上している。
それがシャドームーンとラプラスの勝敗を分けたのだ。
「キングストーンを縛ることは何者にも出来ないのだ。殺し合いを主催して、まるで世界の支配者のごとくに気取っていようが、
所詮は事態の変化に対応できず右往左往する程度の存在だ。貴様らはな」
殺し合いの主催者――世界の支配者を、
世紀王――世界の支配者が捉える。
世界を支配する者は決して並び立つことは出来ない。
いずれが真の王であるか、力と死で以って決着を付けるしかないのだ。
「世界を真に支配する者、それはキングストーンを持つ者なのだ」
一歩一歩と動くことの出来ぬラプラスに近付いていくシャドームーン。
シャドーチャージャーから右手を伝って、キングストーンのエネルギーがサタンサーベルに注ぎ込まれる。
例え時空や次元を異にしようと、いかなる存在をも倒す力。
サタンサーベルを必殺の剣と化すために。
「道化師の退場もまた舞台上での夢芝居」
動けない状態で必殺の剣を向けられて尚、ラプラスは落ち着いた態度を崩さない。
あるいはラプラスにとっては本当に、この世のことも夢幻のごとく、
心を動かす対象とはなり得ないのかも知れない。
「それでは……御機嫌よう」
しかしその真意を――あるいはV.V.にすら――遂に明かさぬまま、ラプラスは今生の別れを告げた。
サタンサーベルの一閃。
それは今度こそラプラスを切り裂く。
先ほどの幻と同様、空気に溶け行くように消えて行く。
しかし今度こそ虚仮では無いと確信出来た。
今のはキングストーンの力を込めた、サタンサーベルの一刀。
ラプラスは完全に消滅したのだ。
【ラプラスの魔@ローゼンメイデン 消滅】
ラプラスを倒したシャドームーンは力無くその場に座り込んだ。
制限を乗り越えて空間を越え、
ブラックサンからキングストーンを取り出し、
そしてラプラスを倒す。
如何にキングストーンを持っていようと、それだけのことを短時間で行えば極度の消耗を招くことは避けられなかった。
前述したとおりこの殺し合いは甘くは無い。
これだけ消耗した状態で強行軍を行うのは、シャドームーンと言えど危険なことだ。
回復するまで休息を余儀なくされるだろう。
(回復したとしても、ブラックサンのキングストーンを召喚することは出来ないか……)
回復すれば再び空間を越えてキングストーンを召喚するのは不可能では無いだろう。
しかしまた主催者に邪魔をされれば、いたちごっこになるだけだ。
恐らくブラックサンのキングストーンは、シャドームーンの召喚が中断されたために、
この会場のどこかに落ちたのだろうと推測される。
それならば焦る必要は無い。
元々参加者を殺して回る予定だったのだ。ついでに探せば良い。
先に他の参加者に拾われても問題は無い。
世紀王として改造された者でも無い限り、キングストーンをどうこう出来るはずもないのだから。
支援
sie
例え殺し合いを終えるまでにキングストーンを見付けることが出来ずとも、
殺し合いを終えて制限が解除されれば、何時でも召喚出来る。
仮に時空を超え、次元を超え、何処に行こうともキングストーンは次期創世王の手に必ず渡るはずだ。
二つのキングストーンは創世王を造り出すための、それ自身もまた宿命を負った石なのだから。
即ちシャドームーンが二つのキングストーンを得ることは、もう決定したも同然なのだ。
ブラックサンが死んだ時に。
ラプラスの横槍はシャドームーンに怒りをもたらしたが、
それによって、何時の間にかブラックサンを失くした引っ掛かりを忘れていた。
殺し合いを勝ち進み、創世王となると言う目的が明確になり、強く意識することになったからだ。
その時を迎えるため、シャドームーンはじっと力を蓄える。
世界は未だ彼の物となっていない。
【一日目 夜中/E−6 山中】
【シャドームーン@仮面ライダーBLACK(実写)】
[装備]:サタンサーベル@仮面ライダーBLACK
[支給品]:支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み)
[状態]:疲労(極大)
[思考・行動]
0:休憩した後、東の市街地へ向かう。
1:キングストーン(太陽の石)を回収する。
2:殺し合いに優勝する。
3:元の世界に帰り、創世王を殺す。
4:殺し損ねた連中は次に会ったら殺す。
【備考】
※本編50話途中からの参戦です。
※殺し合いの主催者の裏に、創世王が居ると考えています。
※会場の端には空間の歪みがあると考えています。
※空間に干渉する能力が増大しました。
※キングストーン(太陽の石)の行方は後続の書き手の方に任せます。シャドームーンは会場内のどこかに落ちていると考えています。
兎頭の道化師が消えて行く。
それが道化師得意の悪戯ではなく、真の消滅であることは判っていた。
しかしそれをモニター越しに見ていたV.V.は、ラプラスの死にも動揺した様子はなく、
静かに椅子の座り、その最期の様子を眺めている。
テーブル上の紅茶を口に運ぶ際にも、V.V.は殺し合いの会場内を映すモニターから眼を離さない。
やがて全てが終わると、V.V.はどこか感慨深げに呟いた。
「……一足早く嘘の無い世界に行ったんだね。君らしいよラプラス」
「ほう。お仲間が死んだってのに、随分薄情じゃねぇか」
V.V.は背後からの声に、徐に椅子毎振り返る。
そこには、いつの間にか部屋に戻っていた志々雄真実が、壁沿いに置かれたソファに座っていた。
志々雄は殺し合いを主催する側の人間ではなく、参加者の一人だった。
当然、信頼関係どころか協力関係も無い。
むしろ敵対している方が自然と言える。
しかし、云わば敵地に居ると言える志々雄には、まるで緊張した様子も無く、
両腕を背もたれの上に伸ばし、足を組んで座っていた。
「あんたのお仲間を殺した、あの銀色に罰を与えなくて良いのか?」
「罰? 彼は何のルール違反もしていないんだよ? むしろ彼の選択に干渉した、僕たちがアンフェアだったと言えるだろうね」
ルールに抵触しない限りは、参加者の行動には極力干渉しない。
それを原則として行動していたV.V.たちが何故、シャドームーンの行動を阻害したかと言えば、
それ“空間を越えて他の参加者の物を回収する”と言う行為を黙認すれば、
この殺し合いの開始時点における、出発地点も武器もランダムに分散させると言う、
殺し合いを成立させるための公平性が侵害されると判断したからだ。
だからこそ危険を承知でラプラスに会場まで赴いて貰った。
如何にラプラスと言えど、シャドームーンの能力を阻害するためには現地に直接赴かなければならなかった。
ラプラスの消滅も、V.V.にとっては想定していたリスクでもある。
何れにしろラプラスの殺害も、尊重すべき参加者の決断なのだ。
「だが案内役が死んじまったら、あんたも困るんじゃないのか?」
「それは心配しなくて良いよ。後任が居るからね」
「……その後任ってのは、さっきからそこに居る奴か?」
志々雄は相変わらず弛緩した様子で、背後に掛かってあった円形の大きな鏡を後ろでに指す。
途端、その鏡の面上が波紋のように揺らいだ。
「気付いていたんだ。流石は僕が見込んだ、最初の脱出者だけのことはある。ちょうど良い、君に紹介するよ」
鏡面上に、絵の具の全ての色を混ぜたような闇が蠢く。
支援
支援
支援
支援
その中から少女が姿を現した。
透くような白い肌。
紫のドレス。
左目に薔薇を模った眼帯をしたその少女は、人に作られた存在。
人形だった。
「私は、ローゼンメイデン第七ドール…………薔薇水晶……」
「ほう、まだこんな面白そうな手駒を持っていたとはな」
薔薇水晶は儚さを含んだ声で訥々と自己紹介をする。
弱弱しい印象すら与えそうな薔薇水晶の様子。
しかし一流の剣客たる志々雄は、薔薇水晶が並ならぬ戦力を隠していることを見抜く。
志々雄は戯れに、薔薇水晶へ向けて剣気を叩きつけるが、
薔薇水晶はそれに気付いていないかのごとく、何の反応も示さない。
ラプラスとは違った掴み所の無さが薔薇水晶にはあった。
「手駒じゃなく仲間だよ。薔薇水晶、今聞いたとおり君にラプラスに代わって案内役を頼みたいんだ」
「そう……」
ラプラスが死んだと言うのに、V.V.の陣営は揺らぐ様子は無い。
V.V.にはまだ裏がありそうだ。
殺し合いは未だV.V.の手中にあり、脱出者と言っても志々雄とてその手中。
志々雄がそれを覆したいなら、V.V.の手の内を更に暴く必要がありそうだ。
野心の炎を胸に、志々雄は再び部屋を後にする。
世界は未だ彼の物となっていない。
彼の背中に薔薇水晶の静かな声が届いた。
「さあ、続けましょう……バトルロワイアル」
【一日目夜中/???】
【志々雄真実@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-(漫画)】
[装備]:サバイバルナイフ@現実、ヒノカグツチ@真・女神転生if...
[所持品]:支給品一式×3、リュウガのデッキ@仮面ライダー龍騎、確認済み支給品0〜3(武器ではない)、林檎×8@DEATH NOTE、鉄の棒@寄生獣
マハブフストーン×4@真・女神転生if…、本を数冊(種類はお任せ)、工具@現実(現地調達)、首輪の残骸(銭形のもの)、首輪解除に関するメモ
[状態]:各部に軽度の裂傷、疲労(小)、首輪解除済み
[思考・行動]
1:ぶいつぅの掌の上にいる。(飽きるまで)
2:気が向いたらガリア王国のジョゼフを持て成す。
[備考]
※クーガー、C.C.、真司らと情報交換をしました。ギアスとコードについて情報を得ました。
支援
sie
支援
支援
投下完了しました。
問題点などがあれば指摘をお願いします。
どんとこい支援
投下乙です
Y(やっぱり)K(キングストーンは)S(すごい)
シャドームーンが太陽の石のキングストーンを手に入れたら創世王に……
しかもラプラスの魔も切り捨て御免とは
ただ消滅したと言っても本当に消滅してるのかね、あの兎はそこら辺すら疑わしいから困る
そしてばらしーだ!ばらしーの出番だ!
投下乙です
ただでさえどうしようもない強さのシャドームーンがさらに強化…だと…
ラプラスは最終回で平気な顔して出てきても驚かない
志々雄の動向は決まらないし薔薇水晶が何するか分からないし、まだまだ読めないな…!
投下乙!
き、キングストーンすげええええええ!!
そしてシャドームーンはどこまでいくんや……?
主催陣もまだまだ手札があるようで、底が見えない……!
投下乙!
ラプラスの魔がここで落ちるのは予想外だったなぁ
主催の中でも一番底が見えなかったし、一番倒しづらい空いてだと思ってた
それを斬り殺すとはさすがシャドームーンさんやでぇ……
そして新たな主催メンバーに薔薇水晶投入!
女性陣がもう数人しかいなかったから、これは嬉しいサプライズだ
でも全然目的が見えねぇ!
66人目の参加者、上原さん
>>キングストーンをどうこうできるはずがない
フラグですかこれ?
よく分からないけど、他の仮面ライダーでは扱えないのかな?
植田滋郎先生になんて間違いしてんだよおい
ジーロ・ウェーダー先生のお名前を間違えるなんて非常識ですよ。
よかったな、VV
五右衛門生きてたらお前距離無視して斬られてたぞ…
投下します。
支援
支援
支援
ここまで来れば、追って来ないだろう。
そう判断し、箒の高度を下げ、地面に腰を掛けて一息つく。
そして頭に浮かぶ可能性を種に、思考を回していく。
疑いの輪廻が止まらない。
信じようにも、信じられない。
考えられる事が多すぎて。
何か真実なのか、何が嘘なのか、わからない。
ただ、ただ、頭に浮かんでくることを拒否するだけ。
何も信じないし、何も受け入れない。
どうせ皆、信用なんて出来ないんだから。
「うう、うううう」
腹を空かせた犬のような声が漏れる。
信頼というエサを吊るされながら、それに食いつけずに居る。
そのエサには、毒が塗られていそうだから。
それを食べれば、死んでしまうかもしれないから。
「う、ううああああ!!」
信じられる材料なんて一つも無いし、信じられない材料も少し足りない。
やめることは出来ない思考の輪廻を繰り返し、飲み込まれていく。
割れそうなほどに痛い頭を使って、思考と可能性の吟味と否定を繰返す。
何度も何度も考えては捨て、考えては捨て。
繰返すたびに痛みが増して行き、体が熱くなる。
このまま体温が上がりきって、沸騰して死んでしまうのではないか。
そんなことが頭をよぎったときである。
見覚えのあるクーパーが、ブレーキ音を鳴らした。
誰が乗っているのかは、車のライトによる逆光で見えない。
片手に箒を握りしめ、いざとなれば即座に逃げ出せる準備を整えながら、やってきたクーパーへと意識を集中させる。
しばらく、硬直した状態が続く。
場に流れる重い空気が、すべての物に重くのしかかる。
永遠に思える長い時が続いた後、夜の中でひときわ輝いていた車のライトが消える。
その後、少し時間をおいて解錠音が夜空に響いた。
クーパーの助手席側のドアがゆっくりと開く。
そこから現れたのは、北岡でもジェレミアでもつかさでもない。
「はざ……ま、さん?」
気高き白を纏う、一人の高校生だった。
支援
支援
北岡の少し荒っぽい運転の中、狭間は情報を頭に詰め込む。
この三人が、自分を頼るに至った経緯をもう一度洗い直す。
鷹野という女が強力な装備を手にしていること。
その女の手によって、竜宮レナは首に妙な薬品を打ち込まれたということ。
そして、耳打ちによる「真実」を告げられたこと。
その後、竜宮レナは対話にすら応じず、その場を飛び出していったこと。
瞬時に人を信じられなくさせる麻薬。
そんなものの存在は聞いたことはないが、異世界とつながるこの空間ならあり得ない話ではない。
人為的に生み出されたとはいえ、今の竜宮レナは「まともに対話できる状態」ではない。
考えられる可能性と自分の手札を瞬時に整理し、最善手を高速で弾き出して行く。
トライ、アンド、エラー。
自分の中でこの後の結末を仮想的に組み立てていく。
何百、何千、何万通りの可能性を、並行的に試行していく。
狭間の中での答えにたどり着いたあたりで、クーパーのライトが一人の影を映し出した。
「待て」
その姿を見るや否や、飛び出して駆け寄ろうとする北岡たちを一言で引き止める。
「竜宮レナの説得は、私一人で行う」
「はぁ!?」
シートベルトを外し、ドアに手をかけて今にも飛び出そうとしていた北岡が叫ぶ。
その声に反応するように、つかさとジェレミアの二人も車内に残る。
北岡の声にも動じる様子はなく、狭間は助手席で腕を組んだまま続けて口を開く。
「竜宮レナは錯乱状態にあるのだろう?
複数人数で押しかけて、一気に語りかけようとしても逆に恐怖を植えつけるだけだ。
そもそも、錯乱状態の人間にとって"多くの人間に囲まれる事"がどれだけ恐ろしいのか理解しているのか?
今、お前たちが取ろうとしている行動は悪手にしかならん」
人を信じることができない人間に、人間をぶつけるの悪手中の悪手。
ましてやそれが錯乱中の人間なら、混乱が加速してしまう。
人間を信じられないという状況に最も経験のある狭間だからこそ、その答えが手に取るようにわかる。
徒党を組んで仮初めの言葉で辻褄を合わせているだけ。
真心も何もない、傷つける為だけに作られた偽りの真実。
大人数が作り出した、正しいと言われることを、彼も拒否し続けてきたのだから。
雰囲気をガラリと変えて語りだした狭間の話に、北岡達は席に座りなおして話を聞かざるを得ない。
「なら誰が残るのかという話だが、考えなくてもわかるだろう。
既に貴様ら三人は竜宮に拒絶されている、現時点で奴と十分な対話が望める可能性は低い。
そして打ち込まれた毒とやらが解除できる可能性があるのは私しか居ない。
少しでも可能性の高い方法を選ぶのならば、これが最善の手であると思うが」
腕を組んだまま、視線のみを動かして北岡に問いかけるように見つめる。
現状を冷静に分析し、最善手と思われる行動を示していく。
事実と正論で固められた提案に反論することも出来ず、三人が三人とも黙り込んでしまう。
ふん、と小さく嘲るような溜息を零した後に、狭間は言葉を続けていく。
「貴様達はその間に鷹野とやらが居ないか探せ。
そこまで回りくどい方法を取って竜宮を逃がした以上、何かしらの目的があるのは間違いない。
ならばその結果を見届けに、竜宮の様子を見に来ているに違いない。
この殺し合いについての情報や、万が一私の解毒魔法が聞かなかった時のこともある。
出来るだけ早急に捕らえろ。
分かってはいると思うがもちろん生かして、な」
何故、鷹野三四はこの三人を圧倒できる力を持っていながらも、竜宮レナに毒薬を盛るだけで見逃したのか?
参加者のせん滅が目的ならば、そんな回りくどいことをせず、竜宮レナを人質に取った時点でもっと優位に事を進めればいいだけの話だ。
そもそも一人で北岡とジェレミアをあしらうことが出来るほどの力があるというのならば、その力で早々に北岡達を始末すればよかっただけの話である。
心底この殺し合いを楽しんで眺めていそうなV.V.が、わざわざ参加者へこんな形で水差しにくるとも考えにくい。
つまり、鷹野三四が主催の人間だとしても、この行動は独断によるモノと考えられる。
何かしらの目的があり、北岡達に接近し、竜宮を捕らえて毒を盛り、そして逃がした。
その先に何かしらある"結果"を見るためにその行動をとったのだとすれば、竜宮レナの行動を観察しに来ているはずだ。
ここまで手の込んだ方法を取っておきながら、あとはぬくぬくと安全な場所で結末を見届けている可能性は低い。
きっとリアルタイムでの状況の変化を楽しむ為に、竜宮レナの言動が察知できるくらいの近距離には向かってくるだろう。
今、鷹野三四はこのどこかに居る。
狭間の中には確信に近い考えがあった。
車があり、人手が三人分あり、探索する範囲が限られているのだから、鷹野が見つかるのは時間の問題だろう。
先ほど完膚無きまでに敗北した相手を捕らえられるかどうかは別問題だが、発見することぐらいなら出来る。
場所さえ分かれば、後々合流して捕らえるなり手段はある。
竜宮レナに盛られた毒薬についてもだが、この殺し合いについて重要な鍵を持っている存在を、みすみす見逃すわけには行かない。
「ライトを落とせ、私が前に立ったのを確認したら車を後退させて鷹野を探しに行け。
ぐるりとこの遊園地を一週ぐらいすれば、いるかいないかの判断くらいは出来るだろう」
高圧的な態度で指示し続ける狭間に不快感を示しながらも、理論の正確さの前には引き下がるしかない。
小さな舌打ちと共に北岡がライトを落としたのを確認した狭間は、ゆっくりとシートベルトを外し、ドアの鍵を開けた。
「もし……」
車から出る前に、狭間が何かを言いかける。
少し言葉を止めた後に、なんでもないと言い残して一気にドアを開けようとする。
「なんだよ」
北岡が止める。
その先の言葉を聞き出そうと、狭間を止める。
狭間は深く息をついた後、一気に喋り出す。
「……どうという事はない。
竜宮の受け答え次第では、次に貴様達に会うとき、私は敵かもしれんという事だ。
私はあの女の本心がどうなのか、真実を問うだけ。
それを確かめに行くだけで、貴様等に手を貸すのはそのついでだ」
そこまで一口で言い切り、ゆっくりとドアを開ける。
北岡の罵声を背に浴びながら、意にも介さぬ様子で外へ出ていく。
開けたドアをくぐるとき、狭間は小さく言葉を漏らした。
「……腹が減りそうだな」
北岡の後ろに座っていたジェレミアは、北岡の声にかき消されて聞こえることはなかった。
だが、狭間の後ろに座っていた柊つかさにはしっかりと聞こえていた。
いや、つかさにのみ聞こえるようにしたのか。
その言葉が聞こえたとき、つかさは狭間の姿に重なるように黄色い人影が見えた気がした。
狭間が車の前に立ったのを確認し、もう一度回しながら北岡は車を後退させていく。
そして、狭間に言われたとおりに狭間から背を向けて走り出した。
狭間の言うことは正論だ、しっかりとスジが通っている。
故に、否定も反論も出来ない。
真っ当な手段がごもっともな理由と共に、示されていたから。
「ったくどいつもこいつも、カッコつけたがりばっかりかよ!」
やつあたりのように言い放ったその言葉に、微量の悔しさを含ませて。
つかさは口を開かない、何を言えばいいのか分からないから。
ジェレミアも口を開かない、北岡の言葉は自分にも差し向けられているのだから。
竜宮レナが元に戻ることを祈りつつ、三人は鷹野を探すことしかできない。
北岡だけではない、何も出来ないのはこの車に乗っている三人ともなのだから。
C
「あ……」
レナが声を漏らす。
現れた狭間の姿に重なるように、黄色く輝く蒼嶋の姿が一瞬見えたような気がして。
顔を大きく横に揺さぶり、幻覚を追い払う。
首が痒い、空いた片腕で喉を掻く。
蒼嶋駿朔。
狭間偉出夫がこの場で殺そうとしていた人物。
そう、狭間偉出夫はハナから"人を殺すつもり"だった。
もしかするとその道中で人を殺めているかもしれない。
蒼嶋の殺害が未遂に終わったとはいえ、考えるまでも無く"人殺し"だ。
だから、狭間偉出夫は信頼できない。
では、何故狭間偉出夫は北岡たちと共に現れたのか?
首輪の解除条件、及びこの場からの脱出方法。
それぞれを満たすためには"生贄"が必要だ。
何らかの利害関係を一致させ、狭間偉出夫の得となる行為の変わりに、自分を力づくでも連れ戻せそうな人間を選んだのだろう。
「来ないで」
懐からブラフマーストラを取り出し、動こうとする狭間へと向ける。
示すのは、拒絶の意志。
狭間は無言で目の前に立っている。
狭間偉出夫という人間がどれほどの戦闘力を持つのか、目の前で見たことはない。
蒼嶋駿朔の話が本当だったなら、武器一つで圧倒できる相手とは思えない。
蒼嶋駿朔の話が本当だったなら――――?
待て。
"蒼嶋駿朔もまた、嘘つきの人殺しだったのではないか?"
まだ首が痒い、空いた片腕で喉を掻く。
狭間偉出夫という彼にとっての不都合な人間を排除するため、他の様々なモノを利用していたのではないか?
千草貴子と行動していたのも、おそらく何かしらの利害の一致だろう。
生き残ることを目的としていた二人に、自分は出会った。
自分が協力を申請し、二人がついてきた理由。
簡単なことだ、何かしらの大きな脅威を取り除けるかもしれなかったからだ。
いずれ大きな壁となるであろう人間を筆頭に減らすことが出来、なおかつ戦力も補充出来るかもしれないというならついていかない理由がないだろう。
……結果としては、散々なものだったが。
命辛々助かったという状況下に置かれながらも、蒼嶋は現状を冷静に分析して的確な判断を下していた。
千草貴子の死体からブラフマーストラを剥がし、自分と同行することを決めた。
生き残るため。
まだ首が痒い、空いた片腕で喉を掻く。
そう、嘘だった。
向けられた優しさも、垣間見えた悲しみも、この殺し合いに対する怒りも、出会った頃の楽しそうな顔も。
すべて、生き残るための計算だった。
それが出来るほど蒼嶋駿朔は頭が切れていて、なおかつ冷酷になれる人間だった。
騙されていた。
表面上の優しさに、上っ面の表現に。
誰もが皆、自分が生き残ることしか考えてなかった。
自分だけ、自分だけ、自分だけが違った。
都会の喧噪の中で一人だけ踊り続ける道化師のように、踊らされていただけ。
信じられない、何もかもが信じられない。
こんな時に都合よく現れる狭間偉出夫という存在も、信用できない。
「来ないで!」
一歩前へ踏み出した狭間へ声を荒げて叫び、力強く引き金を引く。
白い線のような数本の光が、狭間へ向かっていく。
飛び出した光は手がぶれているのか何なのか、狙いが全く定まらず一本たりとも狭間に当たらない。
無言で目の前に立ち尽くしているだけの狭間にすら当たらない。
引き金を引く、当たらない。
引き金を引く、当たらない。
引き金を引く、当たらない。
短時間に何度と無く繰り返しても、ものの一発すらあたりはしない。
狭間はただ、こちらを見つめて立ち尽くしているだけだというのに。
まだ首が痒い、空いた片腕で首を掻く。
嘘、嘘、嘘。
綺麗な顔をした罠達が頭の中をグルグルと回り続ける。
どいつもこいつも自分のことしか考えていない。
自分がよければそれでいい、自分の得になるのならばそれでいい。
奴らの笑顔という仮面の裏にある、ゲスい笑顔が自分を見て嘲っている。
もう、何もかも信じることなど、出来ない。
「来ないでよぉっ!!」
もう一歩、前に踏み出そうとした狭間に、涙を浮かべながら叫ぶ。
引き金を何度も引きながら、懇願するように叫ぶ。
死にたくない、死にたくないからお願いしている。
まだ生き続けていたいから、まだ――――
あれ? なんで生きたいんだっけ?
ふと頭にその言葉がよぎったとき、小さな呟きが耳に入る。
「スクカジャ」
ハッとしながら声のする方を見ると、少し遠く離れた位置にいたはずの狭間が、目の前まで迫っている。
どんな顔をしているのかは見えない。
いや、見ることが出来ない。
視界がグルりと暗転し、何も映してくれなかったから。
伝わるのは拳の感触。
力任せに振り抜かれた拳が頬に突き刺さり、勢いを殺すことなく突き抜ける。
顔に重点的に加えられた力が作用し、首から上が高速で吹き飛び、体がつられて動き、地面を転げ回る。
二、三回ほどバウンドした後、全身に擦り傷を作りながら停止する。
痛い。
肩が、膝が、殴られた頬が。
突き刺さるように痛い。
しかし、痛みに屈している場合ではない。
こうしている間にも、狭間は自分を殺そうと迫ってくるのだから。
ゆっくりと腕をつき、顔を上げ、起きあがりながら目を開けて景色を取り込む。
ようやく視界に色が付き始めたときには既に遅かった。
猛スピードで近寄ってくる狭間に肩を押さえ込まれ、地面へと押し倒されてしまう。
そのまま、首のちょうど隣の位置に刀が突き刺さる。
そして、刀の冷たい感覚が首筋に伝わってくる。
ああ、このまま首を切り落とされて死んでしまうのか。
あっけない、あまりにもあっけない閉幕。
結局、竜宮レナという一人の人間は、回りの人間から嘲笑われながら踊り続ける道化師でしかなかった。
道化師のまま、生涯を閉じる。
……ひょっとしたら、その方が幸せなのかもしれない。
今更願ってもどうしようもないが、叶うことなら疑いを知りたくなかった。
踊らされるなら踊らされるままでいい、疑いを知らない道化師のままで眠らせてくれればよかったのに。
「本当に、それでいいの?」
声が聞こえる。
聞き間違えるはずもない、自分自身の声。
自分自身が、自分自身へ問いかける声。
わからない、わからないけど、どうでもいい。
黙って死ぬしか、無いのだから。
竜宮レナは考えることをやめ、静かにただ静かに、来るべき死を待った。
支援
どれくらいの時間が経っただろうか。
待てども待てども自分の命が消えていく感触は訪れない。
いや、既に感じることが出来ないのだろうか?
人が死んで感覚を失うのは、そんなに早いんだなと思いながら、彼女は目を瞑り続ける。
ぴとり。
頬に一つの感覚が伝わる。
何かが触れているという感覚は、失われていない。
冷たいようで温かい水が一粒、頬を伝い濡らしていく。
ぴとり、ぴとり、ぴとり。
不思議な水がどんどんと頬に落ちてくる。
止まることなくレナの頬へと落ちてくる。
不思議に思いながらも、竜宮レナは瞼をあけた。
ぼんやりと形を手に入れていく視界。
汚れのない白が、組み立てられていく。
やがて、上の方に少しだけ肌色が現れる。
目、鼻、口、顔と呼ばれるそれぞれの部位が姿を現す。
「え……?」
信じられない光景に思わず声が出る。
竜宮レナの肩を片手で押さえつけ、斬鉄剣の刃をギリギリのところで食い止めながら。
狭間偉出夫は、泣いていたのだから。
支援
「私を、これ以上失望させるな」
泣いていることに自覚がないのか、涙を拭うことをせずに震えた声で狭間は語り続ける。
こうして向き合っている間にも、狭間の涙はぽとぽととレナの頬へと落ちていく。
「……信じられないよ」
そんな狭間に対し、レナは声を出す。
「狭間さん、蒼嶋さんを殺そうとしてたんでしょ?」
涙は、気を引くための罠だ。そんなものに引っかかりはしない。
「蒼嶋さんだってそうだよ、狭間さんを殺そうとしてた」
どうせ、殺されるのならば。
「みんなみんな、誰かを殺したがってるし、誰かを殺してる」
言いたいことを全部言って死んでやる。
「そうしなきゃ、人殺しにならなきゃ、ここじゃ生き残れない」
すべてを、ぶちまけてやる。
「みんなのことをずっと信じてた、レナが馬鹿だったんだよ!!」
見なければよかった、知らなければよかった真実を知った道化師のように。
「あは、あははは、あははははは!! おかしいよね!! 笑っちゃうよね!!」
狂いながら、笑う。
「みんな最初から都合よく生き残ることしか考えてなかったのに!! みんな自分のことしか考えてなかったのに!!」
信用できない。世界のすべてが、この世のすべてが敵に見える。
「私だけが、私だけがずっと踊らされてた!! みんなの上辺の言葉に踊らされてたんだ!! 滑稽だよね!! おかしいよね!! あはははははは!!」
拒絶を繰り返し、笑い転げる。
自分を都合よく操るために、回りが生み出したまやかしに騙されていただけ。
そんな姿が、おかしくておかしくて、愚かで、たまらない。
刀が首筋に当てられていなければ、きっと転げ回って笑い続けただろう。
頭を揺さぶる笑い声がゆっくりとゆっくりと小さくなり、やがて竜宮レナは静かになった。
「……笑ってよ」
狭間がずっと黙って、自分を見続けていたからだ。
「狭間さんもそうでしょ? こんな、こんな哀れなレナを見て、笑いにきたんでしょ!? 笑ってよ!!」
笑えと促す。
この姿を見て、大声を出して笑えと促す。
笑われない道化師なんて価値がないから。
「笑ってよ!!」
叫びと同時に頬を叩かれる。
振り抜かれたのは握り拳ではなく、平手。
それが、三度目の催促への答え。
何をやっているのだろう。
何を言っているのだろう。
何を考えているのだろう。
竜宮レナは、人間など信じれないと言った。
その通りだと自分も思っている、思っていたはずだ。
だから、自分も人間を信じない。
人類とは、生きていてはいけない存在。
一刻も早く駆逐されるべき存在。
だからここで竜宮レナの首をはね、即座に動き出せばいいはずなのに。
脳が指令するのは、全く持って違う行動だった。
「ふざけるな……」
肩を振るわせながら、怒りをはっきりと込めた声で返答する。
目の涙は乾き、鋭さを増しながらレナを見つめる。
その狭間の顔を、レナは呆けた顔で見ていた。
「……確かに私は、人類とは愚かで汚らしい生き物だと思っていた。
自分が優位に立てるように他者を蹴落とし、自分より優位な存在には屈服し、生き残る為にどんな手段でも使い、悦に入るために動く、この世でもっとも醜い生物だと」
人類、それはこの世でもっとも醜い生き物。
魔神皇となる前の狭間を苦しめ続けた生き物。
魔神皇という存在を生み出させた生き物。
生きる価値など微塵も存在しない、滅ぼされるべき種である。
そう、ずっと思い続けていた。
「……そんなときだ、貴様が現れたのは」
声のトーンを若干落とし、語りかけるようにレナへと言葉を投げつけていく。
「初めてだった。
他者を蹴落とすことなく、どんな境遇でも決して屈さず、信用と信頼を持って生き抜こうとする人間は」
竜宮レナ。
宿敵、蒼嶋駿朔の遺体を目の前にした狭間偉出夫に対し、謝罪と感謝の言葉を述べ、協力を申請してきた人間。
先入観で全てを語らず、無いことをはやし立てたりもせず。
短いながらも狭間偉出夫という一人の存在をまっすぐと見つめて向き合った、生涯の中で初めて現れた唯一の存在。
「人殺しだから信じられない、と言ったな」
たった今、その存在から放たれた言葉を投げかける。
人を信じるというコトを、初めて見せた存在の言葉を投げかける。
「そんな程度で、揺るぐ考えだったのか?」
胸がざわつく、口が動いて言葉が続く。
今までの言葉を振り返っても、自分が何を言っているのかわからない。
そう思う反面、言わなければ気が済まない自分がいる。
支援
「相手が人殺しだろうがなんだろうが構わない。
大事なのは素性ではなく、相手の気持ちだと思っていたのだろう?
自分の心に正直に、そして相手をまっすぐに信じていたのではないのか?」
言葉があふれだしてくる。
たった一人の醜い人類に、いつでも殺すことができるたった一人の少女に。
こみ上げてくる言葉を、空気振るわせて伝え続ける。
「だから、あの時私に声をかけたのだろう?」
思い出すのは、数刻前のやりとり。
あの時の竜宮レナの様子を思い浮かべながら、思った通りの言葉を出していく。
「貴様は確固たる意志で、私に同行を願い出た。
己の生存でも何でもなく、私を信用して声をかけた。
自分が信じる力と、自分が信じる道を切り開くために」
反論の余地すら許さないように、次々に口を動かす。
呆けたまま動かないレナを、まっすぐ見つめながら。
「貴様の心は……他者を信じるという心は!
そんなくだらないことで崩れ去る程度のものだったのか!?」
狭間が知らなかった、信じるという心。
その力を持った人間と、初めて出会った。
そして、その心と触れた。
「私は、初めて人間を、竜宮レナという一人の人間を信じてみようと思った」
最初は拒絶した。
それは嘘、それは偽りだと。
都合の良いことを並べているだけだと。
だが、違った。
本当に心から信頼を置いて、竜宮レナは狭間偉出夫に話しかけていた。
その全ての信頼を託して、狭間の元から去った。
「その貴様が! そんなくだらない理由で! 人を信じることをやめたなど、黙っていられるわけがないだろう!!」
だから、たった一回だけなら信じてみようと思った。
夢の中の蒼嶋に諭されたからではない、人類という存在を信用することにした。
初めて、信じると言うことを見せてくれた存在から。
人の信じ方を、知りたいと思った。
「どうだ、答えてみろ」
その存在は今、くだらない事で信じることをやめている。
狭間がかつて受けた行為に比べれば、塵芥にも等しい理由で。
信じるという心を簡単に失って見せた。
だから、問いかける。
「貴様の"信頼"とは、そんなに脆いものなのか!!」
信じる心とは、そんな簡単に失われる物なのかと。
信じる心とは、人間には付与し得ない物なのかと。
信じる心とは、この世に存在し得ない物なのかと。
「北岡や柊やジェレミアの信頼を! 貴様が信じた者の力を!」
あの時見せた他人を信じる心は、偽物だったのかと。
凛と輝き静かに燃え上がる瞳は、偽物だったのかと。
まっすぐと根を張る信頼の樹は、偽物だったのかと。
「蒼嶋駿朔の心を! 命を! 貴様という存在に託された全てを!!」
竜宮レナという一人の少女が信じ続けた物はなんだったのかと。
殺人者であるというだけで脆く崩れ去ってしまう物だったのかと。
そもそもそこに自分が信じるべき物が確かにあったのかどうかと。
「そして、何より!
人間を信じ続けてきた貴様自身の心を!!
人間を信じてみようと思った私の心を!!
この場で裏切り、投げ捨てるというのか!!」
自分が見た、信じる心もまやかしだったのかと。
自分が見た、あのレナの姿は偽りだったのかと。
自分が見た、人間を信じてみようと思った姿は嘘だったのかと。
「貴様があの時私に示して見せた"人を信じる心"は、偽りだったというのか!!」
狭間は問いかける、畳み掛けるように問いかける。
自分が見たもの、信じる心の存在、人類の本当の姿。
それら全てを、確かめるために。
「結局貴様も、他者を利用して生き残ろうとする醜い人類だったのか!?」
そして、竜宮レナの本当の心を問いかける。
「答えろ!!」
揺れる。
狭間の叫び声に呼応するように。
頭全体が、頭蓋骨の中身がぐらぐらと揺れる。
この場所に来てからの、今に至るまでの光景が全て蘇る。
はじめから、順番に、順番に。脳を駆け巡っていく。
目の前にいるはずの狭間の姿など、当然見えない。
――――レナ……立派なレディになりなさい
「あ……」
声が漏れる。
この場所に来て、初めて出会った人形。
最後まで誇り高く、薔薇乙女として散っていった人形。
彼女が、最後に託した言葉が響く。
「ああ、あああ……」
次に蘇るのは、C.C.とヴァンの姿。
どこか不器用で、ガサツな二人組み。
「なんであの時に、二人とも私を助けてくれたんですか?」
その時の問いの答えだけで、自分は彼らを疑っていた。
嘘だと決め付けていた、それこそ虚像だと決め付けていた。
思い出していくのは、その次の光景。
「C.C.さんは、私達がC.C.さんの話を信じるって信じて話して下さったんですよね。
だからレナもC.C.さんを信じます」
彼らが自分を信じてくれていたから、自分も彼らを信じていた。
行動した時間は短くても、互いに信じあっていた。
"信じること"を決めたのは、自分自身だった。
そして、何より互いに信じていたから。
――――レナ、ホウキを持っているんだろう?
それで逃げろ。
――――私達はいい、早く行け!
自ら危険を背負い、自分を逃がす。
そんなことは、信用していなければ出来ない。
自分が生き残ることに躊躇いのない人殺しなら、命を賭すような真似は出来ない。
――――強い相手にだって一歩も引かない、弱い奴を見捨てない!!
あんたは何!?
英雄なんかじゃない、ただの弱虫の卑怯者!
シュン達の助けなんて要らない、あたしがあんたの相手になってあげる。
あんたみたいなやつには絶対負けないわ!!
「ごめんな、さい」
頭に響くの蒼嶋と行動を共にしていた、千草貴子の声。
その声に対し、無意識のうちに謝罪の声が漏れる。
年が近い千草は、信じていた。
蒼嶋駿朔という一人の人間の力を、心を。
最後の最期まで、信じ抜いていた。
その蒼嶋を、自分は否定した。
「ごめん、な、さい」
そして、次に頭には蒼嶋と過ごした時間が蘇る。
力を貸して欲しいと願った。
力を貸して欲しいと願われた。
互いを互いに信じ合い、その全てを託してきた。
そして、詩音とカメレオンの戦闘。
蒼嶋駿朔は前線に立ち続けた。
何故か?
蒼嶋駿朔は、竜宮レナを信じていたからだ。
この殺し合いを転覆させる、そう決めた仲間同士だったから。
自分の命を賭してまで、最後の瞬間にレナを救った。
――――ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――ッ!!
「ご、めんなさ、い」
石川五ェ門もそうだ、最後の瞬間に北岡を信じ、託した。
自分が死に行くというのに、満足げな表情すら浮かべながら。
あの二人の間にどれだけ細かいやり取りがあったのか、レナは知らない。
でも、あの場面だけでも分かることがある。
五ェ門は確かに、北岡秀一という一人の人間を信用していたのだと。
そして、全てを託して散っていったのだと。
自分が生き残ることしか考えていない人間なんて、あの場には誰一人いなかった。
「ごめんなざい!」
そして、最後に蘇る光景。
叫ぶ、叫ぶ、声がかすれるまで叫ぶ。
さっきまで行動を共にしていた、北岡秀一、柊つかさ、ジェレミア・ゴットバルト。
三人とも"信じる"と決めたばっかりだったのに。
"信じたい"と願ったはずなのに。
たった一言で、全てを拒絶し、投げ出し、裏切ったのは他の誰でもない自分だ。
「ごめ"、んな"、ざい!」
最後に思い出す。
狭間を信用し、狭間に同行を持ちかけた自分の姿を。
初対面の狭間に対し、彼を信じきって物怖じもせずに提案をした。
そして、彼はそれに応えたのだろう。
今、ここに現れた。
そんな彼を、自分は突き飛ばし、拒絶した。
「ごめんなざい!!」
最後の叫びが、天空へと昇っていく。
もう、首は痒くなかった。
支援
次々にフラッシュバックしていった場面達。
その一場面一場面に、信頼の形があった。
それを簡単に投げ捨てていたのは自分だ。
相手を信じたい、相手を信じれない、相手が信用できないではない。
"他人を信用したいと思う自分"を信じるべきだった。
そう思い続けていた自分の心を信じていなかったのだ。
それを、忘れていたのだ。
ああ、そうだ。
人を信じた先に、未来があるから。
自分は、生きなくちゃいけないんだ。
ゆっくりと、視界が元に戻る。
喉元の斬鉄剣は仕舞われ、上に被さるように乗っていたはずの狭間は既に立ち上がっている。
ふと頬に手をやると、先ほどまで痛んでいたはずの場所が殆ど痛くなくなっている。
ああ、そうかと心の中で結論をつける。
これが、蒼嶋の言っていた"魔法"なのだと。
「狭間さん」
「なんだ」
どうしても言いたい事があって、起き上がると同時に狭間を呼び止める。
ぶっきらぼうに応える狭間に対し、ゆっくりと起き上がったレナは服の埃を払い、頭を深々と下げる。
「ありがとう」
謝罪と、感謝。
両方を含んだお辞儀に対し、軽く鼻を鳴らして狭間は応える。
「蒼嶋が見込んだ女がその程度では、奴の顔が立たんからな」
そして頭を下げたままのレナに対し、言葉を続けていく。
「竜宮レナ、貴様の"信じる心"はしかと見届けた。
人間を……人を、私も"信じて"みることにしよう」
その言葉を聞いたとき、蒼嶋の姿が再び狭間に重なって見えたのは、きっと気のせいではないだろう。
人を信じるかどうか、竜宮レナという人間に触れ合って考える。
そして、竜宮レナは見事"人を信じる"ことを思い出した。
どれだけ絶望に立たされても、人を信じることはできる。
嘗ての自分が出来なかったことを、この少女は簡単に成し遂げて見せた。
それは心の奥底から"人間を信じていた"からだ。
こうして、狭間偉出夫と竜宮レナの一つの物語は幕を閉じる。
舞台の二人がそれぞれ選択し、答えを掴み、それぞれの道を見つけた。
人が信頼する心を取り戻す、感動のサクセスストーリー。
それを見ていた、たった一人の観客がいた。
支援
支援
「竜宮」
突然、狭間が短く声をかける。
「少し下がっていろ」
自分の後ろに下がるように指示し、レナはゆっくりと狭間の後ろへと移動する。
「メギド」
それを確認した後、狭間が小さく呟いた瞬間に青白い炎が真っ直ぐに伸びる。
迷いのない炎は、瓦礫にぶつかり小さな爆発を起こした。
巻き起こる煙の中、うっすらと一人分の人影が浮かび上がる。
「……貴様が鷹野三四か」
現れた仮面の存在に対し、狭間はある人物の名を言い放つ。
北岡から聞いた情報を照らし合わせても、それが鷹野三四である可能性は高い。
何より今この場にいて、このやり取りをずっと見ていたのだ。
「ふん、だんまりか。どうだ、そこでずっと見ていた感想は?」
仮面の存在、鷹野三四は答えない。
狭間に対してどのような感情を抱いているのか、どのような気持ちでそこに立っているのか。
仮面の下の表情と心を読み取ることは、二人には叶わない。
「まあいい……話は全部、北岡から聞いた。
竜宮レナに薬剤か何かを注射したそうだな? 恐らく精神を錯乱させる類の薬だろう、様子を見れば一発で分かる。
だが残念だったな。人為的な錯乱程度、この私の力なら容易く治療できる」
鷹野三四が竜宮レナに打ち込んだ薬剤、C120。
それによって竜宮レナは人為的に錯乱状態に陥った。
雛見沢症候群。
治療する手段が限られているはずの症候群。
だが、狭間にとってそれは障壁ではない。
悪魔の魔力による錯乱や恐怖に比べれば、人為的に引き起こされるものなどたかが知れている。
首を掻き続ける竜宮レナと、何も信用しないと言い切った精神状態から瞬時に錯乱を割り出し。
幽閉の塔を上り詰めたときに会得した魔法パトラを使って治療していた。
その上で、狭間は竜宮レナに問いかけをしていたのだ。
本当に人を信じる心というものが存在するのか、確かめるために。
そして、未だに口を開こうとしない鷹野に、狭間は怒りの声をぶつける。
「影でこそこそと動き、人の心を弄び、疑いを生じさせ、高みで嘲笑う。
貴様のような存在がいるから、貴様のような人間がいるから、人類は腐っているのだ!!」
鷹野三四という存在の所為で、竜宮レナは疑わなくてもいい存在を疑った。
人の心を試しているかのような行為、人の心を嘲っているかのような行為。
自身の経験にある、人間の醜い行為と重なって見える。
自分の中で決め付けていた、人間という存在に綺麗にハマるソレに怒りを示す。
許してはいけない、許すわけには行かない。
こんな存在がいるから、こんな人間がいるから。
信じる心も何もなくなってしまう、人間は汚い生物になってしまうのだから。
狭間は、より強い声で言葉を紡いで行く。
「貴様だけは、貴様だけは絶対に許さん。人間の心を弄ぶ、貴様だけは!
この軽子坂高校2年E組の狭間偉出夫が、魔"人"皇として裁いてやる!!」
【一日目 真夜中/G-10 半壊した遊園地】
【北岡秀一@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]:レイの靴@ガン×ソード、ゾルダのデッキ@仮面ライダー龍騎(一時間変身不可)
[所持品]:支給品一式×3(水×2とランタンを消費)、CONTRACTのカード@仮面ライダー龍騎、CONFINE VENTのカード@仮面ライダー龍騎
FNブローニング・ハイパワー@現実(12/13) 、RPG-7(0/1)@ひぐらしのなく頃に、榴弾×1、ミニクーパー@ルパン三世
デルフリンガーの残骸@ゼロの使い魔、確認済み支給品(0〜1)(刀剣類がある場合は一つだけ)
[状態]疲労(小)、軽傷
[思考・行動]
0:遊園地内で鷹野三四の探索。
1:レナを連れ戻す。鷹野を倒して解毒剤を手に入れる。
2:つかさに対する罪悪感。
※龍騎勢が、それぞれのカードデッキを持っていると確信。
※一部の支給品に制限が掛けられていることに気付きました。
※病院にて情報交換をしました。
※レナ、狭間と情報交換をしました。
【柊つかさ@らき☆すた】
[装備]なし
[支給品]支給品一式×2(水のみ3つ)、確認済み支給品(0〜1) 、レシピ『錬金術メモ』、陵桜学園の制服、かがみの下着、食材@現実(一部使用)、
パルトネール@相棒(開封済み)、こなたのスク水@らき☆すた
[状態]疲労(小)、精神的疲労(小)
[思考・行動]
0:錬金術でみんなに協力したい。
1:遊園地内で鷹野三四の探索。
2:レナを連れ戻す。鷹野を倒して解毒剤を手に入れる。
3:みなみに会いたい。
[備考]
※錬金術の基本を習得しました。他にも発想と素材次第で何か作れるかもしれません。
※アイゼルがレシピに何か書き足しました。内容は後続の書き手氏にお任せします。
※会場に連れ去られた際の記憶が戻りました。
【ジェレミア・ゴットバルト@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[装備]無限刃@るろうに剣心、贄殿遮那@灼眼のシャナ
[所持品]支給品一式×2(鉛筆一本と食糧の1/3を消費)、咲世子の煙球×1@コードギアス 反逆のルルーシュ、USB型データカード@現実、ノートパソコン@現実、
ヴァンの蛮刀@ガン×ソード、琥珀湯×1、フラム×1、リフュールポット×2、不明支給品(0〜1)、
薬材料(買い物袋一つ分程度)、エンドオブワールドの不発弾(小型ミサイル数個分)、メタルゲラスの装甲板、メタルゲラスの角と爪
[状態]右半身に小ダメージ、疲労(小)、精神磨耗、両腕の剣が折れたため使用不能
[思考・行動]
0:0:遊園地内で鷹野三四の探索。
1:レナを連れ戻す。鷹野を倒して解毒剤を手に入れる。
2:V.V.を殺す。
3:他の参加者に協力する。クーガーとの約束は守る。
4:全て終えてからルルーシュの後を追う。
5:スザクを止めたい。水銀燈を特に警戒。
[備考]
※病院にて情報交換をしました。
※制限により、ギアスキャンセラーを使用すると疲労が増大します。他にも制限があるかも知れません。
【狭間偉出夫@真・女神転生if…】
[装備]:斬鉄剣@ルパン三世
[所持品]:支給品一式、ニンテンドーDS型探知機
[状態]:人間形態
[思考・行動]
0:人間を信じてみる。
1:鷹野は絶対に許さない。
[備考]
※参加時期はレイコ編ラストバトル中。
【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】
[装備]:鉈@ひぐらしのなく頃に
[所持品]:支給品一式、インスタントカメラ(数枚消費)@現実、真紅の下半身@ローゼンメイデン、空飛ぶホウキ@ヴィオラートのアトリエ、
Kフロストマント@真・女神転生if…、ブラフマーストラ@真・女神転生if…、庭師の鋏@ローゼンメイデン
[状態]:疲労(小)、殴られた(痛くないけど)
[思考・行動]
0:"他人を信じる自分の心"を信じる。
[備考]
※ギアス、コードについて一定の理解を得ました。
※北岡達と情報交換をしました。
※どの方角に向かうかは後続の書き手氏にお任せします。
【鷹野三四@ひぐらしのなく頃に】
[装備]無し
[支給品]オーディンのデッキ@仮面ライダー龍騎、空の注射器、不明支給品
[状態]健康
[思考・行動]
1:?????
※鷹野のデッキに他のデッキと同様の制限が掛かっているかどうかは不明です。
以上で投下終了です。
何かありましたら、どうぞ。
支援
支援
早速ミスが……
レナの状態表の
※どの方角に向かうかは後続の書き手氏にお任せします。
は消去とさせていただきます、申し訳ない。
投下お疲れ様でした!
やばい、狭間がまじかっこいい!
自己の体験からの北岡たちへの説得や、鷹野への怒りもすげえけど、やっぱりレナへの叫びが熱い
人を信じたいって思ってるのはレナだけじゃなくてこいつこそなんだろなという絞りだすような叫びだった
レナはレナで、自分を信じれて、そしてごめんなさい、か
こう、怖いんじゃなくて胸に来るレナのごめんなさいがあったんだな
鷹野は今回無言で何考えてるか分かんないけど次回どうなるやら
しかしいいなあ、魔人皇、すげえいい
投下乙です!
おおおおおおおおおおお!
イデオの叫びもレナの涙も良すぎんよ!
特に真紅の言葉からC.C.千草が回想されるところがもうやばすぎる!
魔人皇最高だ!
投下乙です
バウンドする程のグーパンを女の子の顔面に叩き込むとはw
それも自分を信じてくれたレナに対して真っ向から向き合って感情をぶつけてきたからだろうな
ビーフシチューのことにもこっそりつぶやいているのも温かい気持ちになる
投下乙!
すげぇ、なんかもうすげぇよ!
前回は説得される側だった狭間が、今回は説得する側に回ってるのは感慨深い
レナと狭間の組み合わせは面白そうだなと思っていたけど、ここまでいいものだとは思わなかった
真紅や千草みたいな今まで出会った人たちを頭に思い描いて、最後に蒼嶋が重なって見えたのは狭間が英雄に近づいたってことなのかな
今まで散々ぼっちwwwとか言われてた狭間の熱血っぷりは凄い
対主催反撃の狼煙が上がった感じだ
魔”人”皇頑張れ!
投下乙乙乙!
すごいすごいすごい!
いや、レナを説得する狭間にすんげえ感動した!
今はそれしか言えないよ!
>>575 魔人皇…上手い言い回しですね
これからの狭間に期待がかかるね!
って、魔人皇って、SS中での言葉だったのかw
狭間…がんばれ!
乙です。
人への未練ゆえに神に至れず魔界の”皇”、”魔神皇”を自称することになったハザマが、
人への信ゆえに魔”人”皇になる。
すこしずつ人としての自分を取り戻していくようで感慨深かったです。
弱さを欠点としてしか捉えられなかったハザマが、弱さをもって誰かを助けられたってのは嬉しい。
新作乙です。
メガテンifとひぐらしの両ファンとして、実にいいものを読ませていただきました。
ところで今気づいたんだけど、まとめwikiの死亡者リストの
シャドームーンのキルスコアにラプラスの魔が入っていないんだが、仕様?
投下乙です。
相手に信じられて、相手を信じて。
信頼が循環してるのがいいですね。
魔人皇に生まれ変わった狭間の活躍に期待。
投下乙乙!
レナもハザマもいい味出してるなあ、ようやくハザマも動き出した感じがする
しかし、鷹野さんvsハザマってよく考えれば時間対決なのか
時間を操るタイムベントのオーディンvs時間と永劫を意味し時を治るものズルワーンの力の後継者だから
かつてズルワーンは、我と戦い どうするつもりだ? 時の流れに逆らって進もうというのか?
そなたは それが 可能なこととでも 思っているのか?……ならば試してみるが良い!とか言っておきながら
時に逆らえるヒトなどあろうはずが……ヒトには時を越える力が宿り得るなど……とか吐いてハザマにぶちのめされたがw
最初の方に脱落してしまった真紅の、立派なレディーになりなさいっていうセリフを思い出した時にハッとなった。今まで忘れていた最高の名台詞だった。今のレナは立派なレディーだよ。
そして狭間かっこいい、輝いてる。
久々に感情移入して目頭熱くなった。書き手さんありがとう。
鷹野もあのやりとり見て熱い心に目覚めないかなぁ…
仮予約来てるけど、もしこのままODN鷹野がハザマと本格的に戦うとしたら、
本人のキャラ的にものすごく皮肉な展開になるなあ。
あとスザク、ハザマや銀様だけでなくつかさとも因縁あるのなw
多ジャンルロワっていうくらいだから
龍騎から香川英行、TRICKから矢部謙三、相棒から大河内春樹、浅倉禄郎が参加していたらどうなってたかねー
浅倉には気をつけろ!→どっちのだよ→どっちもだよ!
この流れが見えた
月と禄郎の記憶喪失コンビ
香川は13ライダーでもないくせに結構インパクト強いよな
天才的すぎる記憶能力と応用力、効率性を求める思想、戦闘能力もライダーより高い
一部ライダーより遥かにロワ向け
仮予約していた城戸真司、翠星石、ストレイト・クーガー、ヴァン、C.C.、水銀燈、L、上田次郎
投下します
【再会】
カズマの盟友である君島邦彦の愛車を運転しながら、上田は周囲を見渡した。
辺りもすっかり暗くなってしまった。
ちょうどこの殺し合いが始まった夜闇と同じ暗さだった。
とは言え、あの時と違うことは多々ある。
例えば、傍に居るのは可愛らしい由詑かなみではなく辛気臭い成人男性のLであることとか。
この大きな身体と小さな心も傷ついてしまったこととか。
「次郎号と勝手が違うと、どうも落ち着かないな」
上田の言葉はLに話しかけた言葉ではなく、沈黙に耐え切れないあまりの独り言だった。
Lは上田の独り言にも耳を傾けず、じっとニンテンドーDS型詳細名簿を見つめている。
上田だってLが自分のことを無視しているわけではないことはわかっている。
Lは頭脳をフル回転させてなにかを考え込んでいるのだ。
本来ならば知的労働は大学教授たる私の役目なのではないか、と考えたが上田は車を運転している。
相変わらず覇気のない顔で黙り込んだままだが、今のLには得も知れぬ迫力があった。
「……」
「なにかわかったのか」
「いえ、あまり」
Lの素っ気ない言葉に上田は肩を落とす。
シャドームーンを倒すと大見得を切ってから、Lはずっとこの調子だ。
ただ黙りこくって何かを考えている。
上田が気になって尋ねてみても要領の得ない曖昧な答えが返ってくるだけ。
「ふぅ、全く……」
『なぜベストを尽くさないのか』
上田はため息を漏らすと同時に手元の上田次郎人形を弄る。
ただ、この場を打開できない閉塞感だけが上田を支配していた。
今の場所は総合病院、城戸真司と翠星石の姿はいまだ見つからない。
上田は苛立つように指先で車のハンドルを叩いていしまう。
その瞬間だった。
「むっ、な、なんだ!?」
夜の闇に支配されていた突然周囲が光りにあふれる。
上田は車を止めて、窓から後方を確認する。
月光を超える光量が、北にある山から柱のように輝いていた。
「あ、あの光は……!」
「……」
上田には緑光に心当たりがある。
二人のライダー相手にも猛威を奮っていたシャドームーンのシャドービームと全く同じ光だ。
Lもまた目を見開いている。
思えば、Lはシャドームーンの力を知らない。
この天を照らすほどの光で、初めてシャドームーンの力の一端を垣間見たのだ。
だが、Lの目は驚きにこそ満ちているが、諦めの色はなかった。
「な、なんだよ、あれ……!?」
同時に総合病院から五人ほどの集団が隠れるように出てくる姿を見つけた。
Lと上田と同じく北に現れた強烈な光の柱に目をやっている。
「……んぉ!? っと、ん、あれは!」
根が臆病である上田はその集団に一瞬だけ怯えを覚えるが、すぐに安堵で胸を下ろした。
その集団の中に顔見知りの姿を見つけたからだ。
「城戸くんに翠星石くんじゃないか!」
不幸なことであるが、上田次郎の顔見知りはすっかり少なくなってしまった。
出会った人間の多くが既にこの世には居ない。
生存者は隣にいるLと、鞄の中で眠る水銀燈、また、目の前の集団に現れた城戸真司と翠星石。
そして、恐怖の存在に他ならないシャドームーンだけだ。
車を一時停止させると、上田は車外に出る。
車に乗っていた人間が上田であることを確認すると、警戒に表情を染めていた城戸の顔が和らいだ。
「上田さん、Lさん!」
「どうも、城戸さん。思ったよりも早く再会できて良かった」
Lは真司の背後に居る翠星石、そしてクーガーを始めとする初対面の三人へと声をかける。
そして、一も二もなく真司と翠星石へと視線を向ける。
その視線から逃れるように、翠星石は真司の背後に隠れた。
「城戸さん……光太郎さんが死にました。それは、知っていますね?」
「……ええ、知っています」
真司が重苦しい言葉で応える。
志々雄真実と三村信史との情報交換で放送の内容は把握している。
その中に南光太郎の名前があった。
真司は光太郎がライダーによく似た戦士であることを知っている。
それほどの人物が死んでしまったのかが不可解だった。
「どうして、死んだんですか?」
だからこそ、簡単に残酷な問いを投げかけてしまう。
Lが顔を伏せると、長い前髪がすっかりLの表情を隠してしまう。
「光太郎さんを殺したのはみなみさんです」
「………………は?」
真司の口から漏れた言葉は間抜けな音だった。
翠星石もまた虚を突かれたように表情を崩している。
Lは畳み掛けるように、あるいは誤魔化すように早口で説明する。
「彼女の心にかかった負担を甘く見ていました。
二人も知人が目の前で殺されて、普通の女の子が平常で居られるわけがなかった」
「……殺し合いの、報酬ですか?」
「そうです、彼女は一度その奇跡に目が眩んだ。そして、この剣で光太郎さんを刺しました」
Lは女神の剣を掲げながら、重々しい言葉で告げる。
後悔の念に塗れた、聞き手も辛くなるような声色だった。
支援
「ですが、光太郎さんの死に際の説得でそのまま殺し合いを肯定する立場にはなりませんでした」
「光太郎さんは、みなみちゃんを守れたってことですか?」
光太郎は死んでしまったのに、そのように思ってしまった。
Lは真司の言葉に頷き返すと、さらに言葉を続けた。
「そして、翠星石さん。桐山和雄は死にました。
確かにカズマさんが……我々が殺しました」
「……そうですか」
父と同じくらい愛する双子の妹である蒼星石を殺害した少年、桐山和雄。
その死を知っても、複雑な想いしか翠星石の胸には生まれない。
桐山が死んだところで蒼星石は戻ってこない、喪失感も埋まりはしない。
死という取り返しの付かない事実の前には爽快感もなにもない。
たとえ憎い相手の死でも、胸のやりどころをなくしてしまった喪失感が上回る。
ただあるのは、物事に一つの区切りがついたという気持ちだけだった。
それだけは収穫だった、留まっていた場所から次の場所へと向かうことができる。
それはLも同じだったのだろう。
「Lさん、そう言えばみなみちゃんは……車の中ですか?」
真司の当然の疑問に、相変わらず暗い顔のまま言葉を続ける。
「……また、桐山との交戦によってカズマさんとみなみさんも死にました」
「なっ!?」
真司と翠星石よりもクーガーがより強く反応を示す。
前に立っていた真司を押し出すように身を乗り出し、Lへと詰め寄る。
「カズマが!?
っ、それに岩崎みなみって言うと、かがみさんの……!?」
クーガーがカズマの知り合いだということは、誰もがわかるほどの動揺の仕方だった。
らしくない。
出会ったばかりの真司ですらそう思うような動揺の仕方だった。
「かがみさん……はい、柊かがみさんはみなみさんの知り合いと聞いていますので、間違いないでしょう。
そして、私はカズマさんの命も、みなみさんの命も救うことは出来ませんでした」
「そ、その……私もだ。結局、なにも出来なかった」
Lは隠そうともせずに、だが、重い口調で応える。
そのLの言葉に上田も続く。
両者ともに、後悔の念が見て取れた。
「アイツは、カズマはアンタ達と一緒だったのか?」
「……はい、私達がその死を看取りました。間違いなく、カズマさんは死にました」
顔をうつむかせ長い前髪でその瞳を隠しながら、Lはゆっくりと話した。
後悔の念しかない。
人の死を覆せない以上、Lは失敗したのだ。
そして、その犠牲はL自身ではなくカズマやみなみへと訪れた。
いや、もっと言えば右京や光太郎もLの選択次第では生き残っていた。
その後悔はクーガーにも痛いほど伝わってきた。
「そうか……アイツは、アンタ達と……」
クーガーはなにかを考えるように張り詰めていた表情を徐々にほぐしていく。
そして、肩の力を抜き、自然体のままに言った。
C
「そいつは、最悪じゃなかったみたいだ」
「ク、クーガー!?」
だが、そんなLに向かってクーガーは穏やかな声をかけた。
その言葉に対してL以上に動揺したのは真司だ。
まるで人の死を歓迎するようなクーガーの物言いに、怒りよりも先に戸惑いを覚えたのだ。
「アイツの最後は一人じゃなかった。
かなみちゃんが死んでも、アイツは一人じゃなかったんだろ?」
動揺する真司を無視するように、クーガーは言葉を続ける。
志々雄と三村によって真司が光太郎の死を知っているように、クーガーもかなみの死を知っている。
だからこそ、カズマのことが心配だった。
ライバルとも言える劉鳳が死に、近しい人物だった橘あすかも死んだ。
そして、最愛の少女である由詑かなみまで死んだ。
そんなカズマが、一人ではなく誰かに看取られて死んでいったというではないか。
クーガーはそこに一つの答えを見つけていた。
そして、カズマの死を悔やんでいるLに対して、なにかを伝えようとしているのだ。
「一人で生きて、一人で戦って、一人で死ぬ……悲しいだろ、そんなの」
クーガーの脳裏によぎるのは一人で粋がる一匹の餓鬼。
ただ目的もなく生き続けかねない無頼漢の姿だ。
「アイツの周りに人が居た。そして、周りの人間のアンタ達にもアイツが居た。
かなみちゃんも居ないのに、カズマの周りにはそんな奴らが居てくれた」
それはLに言っているのか、それとももうこの世には居ない出来の悪い弟分へと言っているのか。
普段のクーガーが使う早口とは違う、ゆったりとした言葉だった。
「だけど、アイツは一人じゃなかった……だから、安心しただけだ」
そして、クーガーはやはりあの特徴的な清々しい笑みを見せる。
Lと上田に対して、そして、死んでしまったという岩崎みなみへと向けて。
「それと、ありがとよ」
ただ、クーガーは礼を言っていた。
それはなんの気休めでもない。
カズマの知人として、兄弟分として、カズマと共に居てくれてありがとうと。
心の底から礼の言葉を出していた。
「……ありがとうございます」
それに対して、Lもまた礼の言葉を返していた。
救われたわけではない。
Lの動き次第ではカズマの死を避けることが出来たのかもしれないのだから。
それでも、クーガーの言葉はLの心を楽にする言葉ではあった。
「ただ……」
なにかを思うようにクーガーは呟いた。
夜空を眺めるように顔を上げ、しかし、瞳は閉じたままだ。
支援
sien
「俺の速さが、また間に合わなかったってことだな」
その無念の想いを感じ取り、Lは静かに目をつぶる。
クーガーは、Lは人の命の危機に間に合わなかった。
だが、それを引きずっていても仕方ない。
たとえ誰に恨まれようとも、今生き残っている者たちの命を守らなければいけない。
「城戸さん達はどこへ向かっているのですか?」
「いや、今まで病院に居たんですけど。その、ちょっと危険だから離れようと……
って、そうだ! Lさん、首輪のことなんですけど!」
「むっ、首輪が外れているじゃないか!」
真司の言葉に上田は興奮したように答えるが、Lは対照的に落ち着いた様子だった。
精神的に追い詰められていた上田は今まで気づいていなかったようだが、Lは気づいていたのだ。
どこまでも冷静であるが、上田の反応を見てLは自身の情が薄いように感じて自己嫌悪の念を僅かに覚えた。
「はい、そちらの女性と翠星石さんの首輪が外れていることですね。
聞こうと思っていましたが、その点も含めて一度腰を落ち着けたい。
情報の整理……というよりも、考えておきたいことがありますので。
貴方たちが首輪を外した場所へ、案内してくれませんか?」
そして、LはC.C.へと視線を向ける。
黒目がちの瞳が永遠の若さを保っているC.C.の美貌を射抜いた。
「そちらの女性はC.C.さんですね」
「そういうお前がLか」
「はい、私がLです」
C.C.は杉下右京からLのことを聞いている。
Lは猫背の背中をさらに丸めて、軽くお辞儀をする。
「首輪のことだけでなく、様々なことを聞きたいのですがよろしいでしょうか」
「……仕方ないだろうな」
これからのことを考えて、C.C.は少しだけため息を漏らした。
C.C.の関わっていた計画は、『ラグナレクの接続』は話していて気持ちのいいことではない。
「病院に入るか。目立つが、現場で話した方がおLも都合がいいだろう」
「助かります。
上田さん。車を目立たない場所に……おっと、その前に」
C.C.の提案に対してLは猫背のまま頭を下げて礼を告げた。
そして、翠星石へと向き直った。
「翠星石さん」
話しかけてくるLに対し、翠星石はさらに隠れるようにして真司の背中へと動く。
Lから見れば、もうその長い髪とフリルのドレスしか見えないほどだ。
翠星石はLが苦手だ。
小さな翠星石ですら見上げるような、こちらを窺ってくる瞳がどうにも好きになれない。
やましいことはないのに、その腹を探られているような不快感があった。
だが、Lはそんな翠星石に向かって普段通りの淡々とした口調で話しかける。
支援
「ここに来る途中、貴方の姉妹と出会いました。
そして、今ここで眠っています」
「姉妹……って、水銀燈!?」
そのLの言葉に翠星石が驚きの声を上げる。
まさか、その名が飛び出すとは思っていなかったのだろう。
そして、Lの指さした先の上田の手元にローゼンメイデンには馴染み深い鞄を見つけたからだ。
「はい、水銀燈さんです。上田さん、起こしてください」
「ああ」
Lの言葉に上田は手元の鞄を開く。
その中には一つの人形が眠っていた。
銀色の髪と漆黒のゴシックドレスを着た愛らしい人形だ。
「ん……んん……」
「す、水銀燈! お前って奴はなに呑気に眠ってやがるですか!」
「なによ、うるさいわね……って、す、翠星石!?」
翠星石の問い詰めるような口調に対し、水銀燈は強く動揺して顔を隠すようにそっぽを向いた。
強気で憎たらしいまでに余裕ぶる水銀燈らしくない態度だった。
翠星石は顔を不可解な色に染め、水銀燈へと問いかける。
「……水銀燈、いったいどうしたですか?」
「うるさい、黙りなさい! いいから、こっちをジロジロ見ないでちょうだい!」
「はぁ!? いったい何様のつもり……って、その脚……」
「うるさいうるさい! 黙りなさい!」
翠星石が気づいたのは、ドレスの裾から伸びている脚が欠けていることだった。
左脚が欠損しているのだ。
もちろん、人形であるローゼンメイデンがその傷は致命傷に陥るようなものではない。
だが、その傷には死以上の意味があった。
父から授かった身体に傷がつくということは、ローゼンメイデンにとって死以上の苦しみがあったのだ。
「……水銀燈」
「なによ、その目は……翠星石なんかが、私を見下してるの!?」
同じローゼンメイデンである翠星石にだけは知られたくなかった。
その姿に翠星石は戸惑ってしまう。
水銀燈には尋ねたいことがあった。
蒼星石を襲ったことや、今まで何をしていたのか、なぜ殺し合いに乗ってしまったのか。
だが、その言葉が全て出てこない。
そこにある姿は、身体の一部を失ってしまった姿。
ローゼンメイデンならば何よりも恐れる姿だったからだ。
「……少し、間が悪かったんじゃないか?」
「このまま会わないままということは不可能ですので、遅いか早いかの違いです。
水銀燈さんにも聞いておきたいことがありますし」
明らかに険悪な人形たちの姿を見て上田は気まずそうにつぶやくが、Lは相変わらず冷静なままだ。
水銀燈と翠星石の間を沈黙が支配する。
ただ、翠星石は戸惑いの色を見せて水銀燈は羞恥に顔を染めているだけだ。
支援
C
「……」
「……」
「水銀燈さんはシャドームーンを打倒するまでの間、協力することを約束しました」
Lは翠星石にではなく、残りの四人に向かって告げた。
シャドームーンを知らないクーガー以外の全員が息を呑む。
「シャドームーン、か」
C.C.が憂鬱な想いを隠すことなくつぶやく。
その強大さはすでに共通の意識となっている。
ヴァンですら顔を引き締めるほどだ。
「先ほど、山峰から浮かび上がった緑色の光は間違いなくシャドームーンの仕業でしょう」
「あ、ああ……あれは、間違いなくあの時の光線と同じ光だ」
上田が震えた声で肯定する。
あの光は間違いなくシャドームーンの攻撃、シャドービームと同じ光だった。
ベルトに埋め込まれた動力源から生み出される天をも裂く光の力。
それを上田は自分自身の目で確かに見ているのだ。
「……私はシャドームーンも、またパラサイト生物である後藤も知りません。
ライダーデッキにしても聞きかじった程度の知識に過ぎません。
ただ、それらは強力なモノであるとしか……あまりにも心もとない情報です。
それでも、様々な情報を一度整理しておきたいんです」
Lの目的は情報の整理だった。
膨大な情報を一度整理しておき、これからの方針を明確にしておく。
強敵の打倒や殺し合いの脱出といった諸問題がある。
情報を集めることで、これらを解決する思わぬ鍵が見つかるかもしれない。
そんな期待もあった。
「首輪も外せるなら私たちも外したいですが……
城戸さんたちが未だに首輪をつけているということは、そうはいかないようですね」
「はぁ? なにそれ。翠星石、貴方だけ首輪がないなんてズルいじゃない」
「うっせーですぅ」
首輪をしていない翠星石にようやく気づいたのか、水銀燈は棘のある視線と言葉を向ける。
翠星石はその棘のある態度が普段の水銀燈に近いことにどこか安堵し、憎まれ口で応えた。
だが、二人の間には未だに友好とも敵対とも言えない奇妙な空気が漂っていた。
「上田さん、車を物陰に駐車してきてください。
ただ、隠すと言ってもあまり遠くには……」
「なぁに、わかっているさ」
そう言いながら上田は君島邦彦の運転していく。
車は少しだけ走った後、すぐに停車した。
上田は病院から二つほど民家を隔てた物陰に車を駐車する。
夜の闇が手伝い、見つかりにくい場所だった。
「問題ないだろう?」
「はい、結構です」
そして、上田は駆け足で戻ってくる。
少しの間とはいえ、一人でいるのは心細かったのだろう。
Lは自信無さげに尋ねてくる上田に応え、病院を見上げる。
半壊した病院はこれからの先行きを示しているようで、どこか不快な気持ちが胸中に広がった。
支援
【検分】
「それで、首輪を外した場所はどこでしょうか?」
足を踏み入れるなり尋ねたLの疑問に、C.C.が「こっちだ」と応えた。
C.C.の背中を追いながら、Lは病院の内装を眺める。
内へ内へと向かうと損傷は薄いが外部の損傷は半壊状態といっていいほどに傷ついている。
万が一にも崩壊してしまう危険を考えると二階には行かずに、一階にとどまっていた方がいい。
そう考えたのはLだけでなく真司たちも同じだったようで、C.C.が案内した部屋は一階にあった。
入り口からは遠いが、窓があることから逃げ出すことは容易な間取りだ。
「ここで外したというわけですか」
その部屋はLたち八人が入ってもまだ十分なスペースがあった。
その中で真司と翠星石がLたちと別れてから今までの話に耳を傾けた。
未だ危険な思想を持っていたシャナと戦闘したこと。
そのシャナとの戦闘の最中に志々雄真実なる怪しげな男と出会い、志々雄がシャナを殺したこと。
その後、この場にて志々雄と共に居た三村信史なる少年によって首輪解除の提案をされたこと。
C.C.、翠星石、志々雄の三名の首輪が解除された後、志々雄によって三村が殺されたということ。
その志々雄はこの場から影も形も残さず消えてしまったこと。
そして、三村の死体がいまだ隣の部屋に眠っていること。
「なるほど、志々雄真実と三村信史くん……ふむ、本当に外された首輪がありますね」
「なんてことだ……こうも綺麗に外れているとは」
「ただ、もう首輪解除の情報の類は残ってないぞ。
あるのは首輪の残骸と三村の死体だけだ」
外された首輪をじっくりと眺めているLと上田に、C.C.は焦れたように言葉を投げつける。
それでも少しの間だけLは外された首輪を眺めていたが、C.C.たちへと向き直る。
「五人が至近距離に寄れば首輪は停止される、でしたか」
「そうだ、その間に三村信史が首輪を解除した。
だが、我々には解除方法が未だ不明のままだ」
「一度首輪の機能を停止した上で決められた手順を踏みながら解除すると外せる、ですか。
停止させる必要があるということは……
恐らく、首輪のカバーを外そうとすること自体が爆破のキーになっているんでしょうね」
もう一度、Lは考えに集中するように黙りこむ。
上田はと言うと、うんうんと唸りながら首輪の構造を確認していた。
解除された首輪を見る限り、配線を切ることでその機能を停止させる単純な構造である。
だが、解除された首輪だけを見ても配線を切る順番はわからない。
仮に自殺するつもりで運任せに切るにするにしても、とにかく配線が多すぎる。
解除方法を知らなければ、間違いなく解除できないものだった。
「三村くんの死体とデイパックはどこにありますか?」
「死体は……そっちの部屋にあります。でも、デイパックはなくなっていました。
多分、志々雄が持っていたんだと思います」
その疑問に応えた者は真司だった。
Lは、そうですか、と答えながら頷く。
そして、猫背のまま歩き出して部屋の扉を開ける。
扉を開けた先には、胸元を貫かれて倒れている一人の少年が居た。
支援
C
「……なるほど、背後から一撃ですか」
うつ伏せに倒れていることと傷口から、Lは背後から刃物で貫かれて死亡したと判断した。
また、抵抗した痕跡がないことから即死であることも間違い無いだろう。
目の前から襲ってきたのならば、逃げようとして物音が響くはずだ。
ならば、真司たち五人も何が起こったのか気づくはずだ。
「とにかく、構造がわからなければどうしようもない。
仮にわかっても、機械工学の類に理解のある人間が解除するのが一番だろうな」
「それならば私に任せるといい」
C.C.の言葉を聞いて、上田は解除された首輪を手放して得意げに顔中に笑みを浮かべた。
「私はね、ヒューズ取替え検定を日通教(日本通信教育)で四日で取ったんだよ。
必ず力になれるさ」
「……まあ、今は首輪の解除方法を知ることが第一です」
首輪解除の方法が存在することはわかったが、その方法自体は判明していない。
それにも関わらず、Lの口ぶりは先ほどまでと比べるとしっかりとしたものになっていた。
八方塞がりの現状に思えるが、実際に外せることが判明したことは非常に大きいからだ。
「ここに来てから首輪の解除方法を知ったのならば、我々にも手の打ちようがあります。
この会場のどこかに首輪の構造を記した情報が残されているかも知れませんからね」
「しかし、それならばV.V.が首輪の解除手段を知らせたということじゃないか?
なぜわざわざそんなことを……」
C.C.はそこまで言うと、ハッとしたように目を見開いた。
そして、なにか割れ物に触れるような慎重さで湧き上がった疑問を口にする。
「……V.V.はなにかを試している?」
「可能性は高いですね。
もしくは、首輪を外した瞬間に新たな壁が現れる可能性もあります。
持ち上げてから落とす、といいますか、首輪解除が必ずしもプラスにならない可能性です。
いずれにせよ、一筋縄で行かないであろうことは覚悟しておいたほうがいいでしょう」
首輪解除が必ずしもプラスにならない可能性、そのLの言葉に翠星石がビクリと震える。
C.C.は表面上こそ変化が現れなかったが、多少の動揺を覚えていた。
「あくまで可能性です」
そんなフォローにもならない言葉を投げかける一方で、Lは淡々と思考を深めていく。
Lたち参加者がこうも殺し合いを打破しようとする行動を自由に取れている。
このことから、殺し合い以外のなにかを求めている可能性は十二分にあり得た。
「さて、問題は志々雄と三村くんがどうやって首輪解除の情報を手に入れたか、ということです。
とは言え、その情報入手の方法自体は大きな証拠が残っていますが」
「え、本当ですか!?」
「なんだ、お前は気づいてなかったのか?」
真司が驚きの言葉を上げるが、それに対してC.C.が呆れたような驚きの声を上げる。
Lはそんな真司へ視線を移すと、やはり抑揚のない声で応える。
「城戸さん。この部屋、おかしいと思いませんか?
暴れた後もなく部屋は綺麗なまま、これは三村さんが一瞬で殺されたことを意味しています。
なのに、机にあったと思われる一つのノートパソコンだけが壊されています。
三村くんの殺害の途中、偶然壊れた可能性は限りなく薄い。
つまり、志々雄が三村くんを殺してから破壊したという可能性が高い」
「…………あ、このノートパソコンに首輪のデータがあったってことか!?」
「はい、このノートパソコンに首輪の構造データが入っていた可能性は非常に高い。
別室に備え付けられたパソコンではなく、ノートパソコンを持ち込んだことも可能性を高めています。
また、見られると困る……解除の方法自体は容易いものである可能性もまたあります」
先ほど、病院をちらりと見た限りではナースセンターや受付にはパソコンが備え付けられていた。
それに触れず、持ち込んだパソコンを使っていた。
ということはその中に特別なデータがあるということだ。
「外れている首輪は三つ。C.C.さん、翠星石さん、そして志々雄。
志々雄はこの三人の中ならば自分が最も有利だと考えたのでしょう。
ならば、これ以上に首輪がないというアドバンテージを持った人物が生まれるべきではない。
首輪がないということは禁止エリアの中も移動できるということです。
最も大きなアドバンテージは首輪解除方法を知っているのが志々雄だけになったということ。
どれだけ我々と敵対していようが、首輪解除方法で交渉することで簡単に生きのびることができる」
それは違うのではないか、と真司とクーガーは思った。
Lの推測は当然の理屈ではあるのだが、それはあくまで自分たちにも理解できる理屈であった。
志々雄のように狂気を持つ男ならば、もっと別のことを考えていたのではないだろうか。
だが、なんの確証もないために真司とクーガーは口を閉じることにした。
「あるいは、この殺し合いからの脱出方法のデータすらもあったかもしれません。
……いえ、それは希望的観測が過ぎますね」
自身の言葉があまりにも都合よく感じたのか、Lは自分自身でその考えを否定した。
実のところ、Lの発言は正しいのだが、そこまで都合よく考えることは出来なかったのだ。
C.C.はそんなLに新たな疑問を投げかける。
「まあ、動機はそんなところかもしれないな。
じゃあ、次の問題は脱出方法だ。会場からの脱出じゃなく、この部屋からの脱出方法だぞ。
窓の鍵はかかっている、通気口は人の通れる大きさではない、扉からは我々がいる以上あり得ない。
志々雄はいったいどうやってこの場から消えたというのだ」
「可能性としては、ミラーワールドを経由したのではないでしょうか。
夜闇の中に電気をつければ、窓ガラスは鏡になります」
「いや、nのフィールドを通るのは無理ですぅ。首輪を外しても、やっぱり入ろうって気には……」
「nのフィールド……と言うと?」
「nのフィールドってのは、ようは鏡の中の世界ですぅ。
人の夢の世界みたいな、いろんな世界に繋がっている空間ですよ」
「そんな馬鹿な……」
これは上田の言葉であるが、翠星石にぎろりと睨まれて口を閉じた。
上田の超常現象への否定の気持ちはすっかり弱まっていた。
なにせ真実がある、上田の知らない法則が存在している可能性が高いのだ。
ただ、科学者としての本能が検証を強く求めていた。
新たな物理学の道が拓けるかもしれないのだから、当然と言えるだろう。
一方でLは僅かに考えこんでから、C.C.へと尋ねた。
「C.C.さん、翠星石さんがnのフィールドに入れないのもギアスなのでしょうか」
又聞きではあるが、右京からギアスについての大まかな説明は受けている。
人の意思を操る超能力、Lはギアスをそう解釈していた。
支援
支援
「そうだな、ギアスは往々にして人の意識というものに介入する。
特定の行動を禁止されるような類のギアスが存在し、それを禁止されているかもしれない。
……まあ、人形に効くかどうかまでは知らないがな」
翠星石のnのフィールドへの入ろうという気持ちの抑制は首輪による抑制ではない。
それを確認するとLは小さく頷いて、今度は真司へと向き直った。
「城戸さん、ミラーワールドには入れますか?」
「いや、試したことは……だって、ミラーワールドに行っても脱出には繋がりませんから。
あそこって、ようは鏡写しなだけでこっちの世界と変わりないですし。
……やってみましょうか?」
「いえ、デッキには変身制限があります。
いざというときに変身できなくなった場合のほうが恐ろしいですから。
それに、翠星石さんが入れない以上は恐らく入れないでしょうし」
試してみましょうか、と言いながらデッキを取り出した真司にLは待ったをかける。
ただの検証にデッキを使うつもりはなかった。
「だからぁ、nのフィールドには入れないって言ってるですぅ!
いい加減にしないと殴るですよ!」
「あくまで確認です、nのフィールドとミラーワールドが別物である可能性もありますから。
話を聞く限りでは、ミラーワールドは一元的な世界です。
対して、nのフィールドは様々な世界を内包した多元的な世界というように感じましたし」
いけ好かないLに無視されたと思った翠星石は声を荒げるが、その様子もどこか可愛らしい。
Lはそんな翠星石に対して、いつものようにぎょろりとした目を向けながら淡々と言葉を返す。
「入れない……となると、別の移動方法……なにかの支給品か?
……ひとまず置いておきますか。
まだまだ聞いておきたいことがありますので」
Lは志々雄の行き先を気にしつつも、三村の死体から離れる。
そして、元の部屋に戻ると、やはりいつもの座り方で椅子に腰掛ける。
「まず、状況の整理とこれからのことを話していきたいと思います」
「Lさん、首輪のことはいいのか?」
「難しい問題ですから、ひとまずは後回しです。
明確に答えの出る、情報の整理から終わらせていきます」
Lは上田の言葉を切り捨てると、デイパックから紙と鉛筆を取り出した。
情報のまとめに移るつもりなのだ。
「会場からの脱出、首輪の解除なども重要ですが……まずは、参加者の内訳を整理してみましょう。
殺し合いに否定的な人物は、まず私たち八人です。
あとは、C.C.さんたちは竜宮レナさんと共に行動していた時期があったそうですね」
「……そうだな。レナは今もそのままで居てくれるといいんだが」
C.C.はそこで言葉を切る。
どこかでレナが生きていても、C.C.の知るレナと同じとは限らない。
生きのびることと、精神を平静に保つことは同じではない。
現実を受け止めらないあまり、精神を壊さなければ生きられない人間もいる。
そして、それを責められない程度にはC.C.もその気持ちを理解していた。
「城戸さんや翠星石さんの話は聞いています。
ですので、クーガーさん、水銀燈さんは心当たりがありませんか?」
「俺はつばささんに南岡さん、あとジェロニモさんもですかね」
「つばささん……柊つかささんのことですね」
「北岡さんだよ。南じゃなくて、北」
「……まさかジェレミアのことか?」
「ハハハ、そうでしたそうでした」
快活な笑みを浮かべながら応えるクーガー。
C.C.は呆れたように肩を落とすが、そのジェレミアのことを考えると顔を曇らせた。
「しかし、ジェレミアか……」
「C.C.さんの仰りたいこともわかります。
ですが、恐らくC.C.さんの知っているジェレミアさんとは、少々性格面に違いがあるのでしょう。
人は時が経てば変わってしまうものですから」
Lはそう言いながら、デイパックの中からニンテンドーDS型詳細名簿を取り出した。
そして、起動させるとジェレミアの欄を指さしてC.C.へと向ける。
C.C.は視線を画面に向けると、徐々に目を見開いて驚きをあらわにした。
「……時間が違うとは、どういうことだ?
ならば、ルルーシュたちは私が誘拐されてから何日も経ってから誘拐されたというのか?
あまりにも日数に差がありすぎるだろう」
「いえ、そういう方法ではないと思われます。
月くん……参加者の一人である夜神月という人物は私の知っている人物です。
ですが、私よりも一年近く前から参加させられています。
つまり、月くんと私の参加時期には一年という差があります。
ですが、この一年の間、私は確かに月くんと共に行動をしていた時期があるんです」
カズマの死を知らせた時のようにLの表情が歪んだ。
夜神月はキラ事件が行われる直前から連れてこられていた。
Lの記憶力は確かだ、第一の事件の、ほんの直前だった。
月とは、別の出会い方があったのかもしれない。
「時間を超えるということ自体が我々の理解の外ですから……
なにかこの理屈に心当たりのある方はいらっしゃいませんか?」
「……」
「……ないのでは、しょうがありませんね」
誰も応えないことから、この話題を打ち切る。
そして、筆記用具と紙を取り出した。
「まずは生存者の行動方針を整理します。
放送の時点では二十四人が生き残っていました。
そして、放送後の死者は三村信史くん、シャナさん、みなみさんとカズマさん、桐山和雄です」
紙に名前を走らせる。
『死者』という括りに名前が書かれていくことに、思わず真司は顔をしかめた。
だが、Lはただ紙に名前を連ねていく。
C
「現在この病院に集まっている八人。
さらに、北岡秀一、柊つかさ、ジェレミア・ゴットバルト、竜宮レナの四人を加えて十二人。
この殺し合いに否定的な十二人に、死者の五人を加えて十七人。
そして、危険人物ですが、我々が知っている限りでは四人。
シャドームーン、後藤、私と上田さんを襲った茶髪の少年、浅倉威。
……他に危険な人物を知ってはいませんか?」
「白髪の男だな。歳の頃は……恐らく二十代後半と言ったところか。
ただ、髪の色のせいで歳がわかりにくいところがあったが……まあ、そう外れてはいないだろう。
放送の直前に出会ったので、放送までは生き残っている可能性も高いな」
C.C.は今まで何度か遭遇した白髪の男、雪代縁について説明した。
ルパン三世の殺害から白髪の男は間違いなく殺し合いに乗っている。
「あぁ、その中にイデオも入れておいてくれるかしら」
「イデオ……狭間偉出夫ですか」
「そっ、イデオ。わけあって殺されかけたのよ」
そこに今まで黙り込んでいた水銀燈が口を挟む。
狭間偉出夫もまた水銀燈が敵意を抱いている人物である。
ただ、Lの言う茶髪の少年がスザクであることを察しつつもその名は言わなかった。
「なるほど……白髪の男と狭間偉出夫を加えて六人ですか。
ただ、茶髪の少年は死んでしまったかもしれません。
なので、三回目の放送までの生存が確定している危険人物は五人で二十二人。
また、忽然と消えてしまった三村さん殺しの加害者とおもわれる志々雄真実が二十三人目。
そして、我々の把握の外に居る枢木スザク。
これで第三放送までに生き残っていた合計の二十四人です」
「枢木スザクのことなら私は知っている……一方的ではあるがな」
枢木スザクの名前にC.C.が反応する。
「性格から考えれば、殺し合いに乗るように思えん。
もちろん、実際のところはわからんがな」
長く生きているだけに、C.C.はそれだけ多くの人間を見てきた。
その中には一日二日で変わってしまった人間も居たからだ。
だから、C.C.が庇うように口にするが、断定は避けた。
「では、名前が判明していない白髪の参加者は恐らく雪代縁ですね。
狭間偉出夫の可能性もありますが、彼は白髪ではないのでしょう?」
「カラスみたいな黒い髪だったわ。ま、服装は白かったけどね」
水銀燈の言葉を聞き終えると、Lは第三回放送に残った人物の名前と行動方針をリストアップする。
警戒すべき殺し合いに乗っているであろう人物は五人。
一見すると減ったように思える。
だが、ここにシャドームーンなどの強敵やライダーデッキの存在を考慮すると多すぎると言っても良かった。
ただ、この場に居る八人は知らないが、その中の浅倉威はすでに殺されている。
そして、その代わりに鷹野三四という主催につながった人物が殺し合いの会場に現れたことも知らない。
「現在で生き残っている人物は多くても十九人。
その中で仲間にできる可能性が高いのは、ここにいる八人を除く四人。
つまり、集団を組めるとしても十二人で止まる可能性が高い。
こうなると、枢木スザクの動向と行動方針が気になりますね……」
Lの頭脳が素早く回転しだす。
ひょっとすると北岡、ジェレミア、つかさ、レナの全員が全滅している可能性だってある。
そこを頭に入れつつも、最初に口にした問題はスザクのことだった。
支援
「C.C.さんは、枢木スザクは殺し合いに乗っていないだろう、と推測しました。
ですが、彼が殺し合いに乗っている可能性は高いと思っています。
と言うよりも、私と上田さんを襲った茶髪の少年である可能性が高いです」
Lはそう言った。
C.C.は口を挟もうとしたが、しかし、Lの言葉の続きを聞くことにした。
「第三回放送で判明した死人の内、我々と無関係だったのは三人です。
アイゼル・ワイマール、蒼嶋駿朔、田村玲子。
ロロ・ランペルージはC.C.さんの知り合いであっていますね?」
「そうだ」
「身体的な特徴をお願いします」
「ロロは見た目だけならば少し頼りない少年の顔と身体をしている。
と言っても見た目だけの話で、実際は暗殺に手慣れたギアスの使い手だがな」
暗殺という言葉が発せられた瞬間、上田が背中を丸め込むようにした。
その安穏でない言葉に寒気が走ったのだ。
「私たちを襲った少年は精悍な身体つきの少年でしたので、ロロさんは除外されます。
当然ですが、私たちが把握していないが女性であるアイゼル・ワイマール。
そして、女性の身体をしていた田村玲子は除外されます。
では、蒼嶋駿朔か、あるいは枢木スザクか。
決め手となるとすれば、少年は仰々しい服を着ていたことです」
「……ブリタニアの騎士服か?」
ふぅ、とC.C.はため息をつく。
ルルーシュの友人であった枢木スザクの人となりをおおよそは知っている。
そのスザクが殺し合いを肯定したという考えは、あまりいい気持ちになるものではなかった。
「スザクなら知っているわよ」
「なっ……それならなんで黙ってたですか!」
水銀燈が、そこで口を開いた。
怒りながら問い詰める翠星石とは対照的に、Lは慌てずに淡々とした口調で水銀燈に尋ねる。
「水銀燈さん、枢木スザクは殺し合いに乗っているかわかりますか?」
「さぁ?」
「さぁ……って水銀燈!」
「しょうがないじゃない、別れたのも随分前だもの」
「桐山和雄の言葉では、初期の水銀燈さんは攻撃を仕掛けてくる、殺し合いに乗っていたとのこと。
蒼星石さんも似たような言葉を翠星石さんに言っています。
その水銀燈さんと一緒に行動していたということは殺し合いに乗っていたということですね」
「……水銀燈」
Lの言葉と翠星石の咎めるような目に水銀燈はプイとそっぽを向く。
実のところ水銀燈はスザクをまだ利用しようという気持ちが少しだけ残っていた。
殺し合いを諦めていない自分を演出している。
もしくは、戦う姿勢を自分自身に向けて装っているというべきか。
とにかく、自分の持っている手札を隠そうとしている。
だからこそ、スザクを惚れ薬で虜にしたことは黙っていたのだ。
C
「これでおおよそのスタンスがわかりました。
我々が探すべきは北岡秀一、柊つかさ、ジェレミア・ゴットバルトと竜宮レナ。
警戒すべきはシャドームーンと後藤、雪代縁と枢木スザクと浅倉威。そして、狭間偉出夫」
そこまで言うとLは視線を真司へと向ける。
Lには似つかわしくない、真司が思わず背筋を正してしまうような鋭い視線だった。
「城戸さんたちもそう判断して、移動しようとしていたところを私と上田さんが見つけた。
大体こういうことですかね」
「はい、そんなところです」
「これで戦うって言うのぉ? ちょっと貧弱すぎるんじゃないの?」
Lの言葉に真司が応えたのに対して、水銀燈が笑いながら口を挟む。
嘲りの色を多く含んだ笑いだった。
「……ライダーデッキがあります」
「ライダーデッキィ?」
Lの反論に対して、水銀燈は疑問の表情で顔を染める。
「これ使うと十分だけライダーになれるんだよ」
「ヴァンのも含めて二つだな」
その言葉をつないだのは真司とC.C.だ。
真司が龍騎のデッキをテーブルへと投げ捨てるように置いた。
「ライダー……ああ、蒼星石が使ってたアレのことかしら?」
水銀燈は合点がいったという表情をつくる。
だが、すぐにその顔を嘲笑に変えた。
「なぁに、たったの二つだけ?
しかも、そこの三人は見るからに傷だらけで戦えそうもないじゃない。
お笑い種ね、本気でシャドームーンをどうにか出来ると思ってるの?」
あくまで相手を貶めるための言葉だが、その言葉に言い返すことは難しかった。
気丈に振舞っているもののクーガーは既に満身創痍。
真司はシャドームーンやシャナとの戦闘でかなりのダメージを負っている。
そして、ヴァンもまたミハエルやシャドームーンとの連戦で負傷している。
さらにLもまた肋の骨が折れているし、上田も大きくはないが身体は痛みを訴えている。
何よりもシャドームーンから逃げるように移動してきた真司とヴァンは精神的疲労も大きい。
現状の戦力は戦力と呼ぶにはあまりにも頼りないものだった。
「そうですね。
ということで、話をもとに戻して現状の整理です。支給品を確認しましょう。
ひょっとすると、組み合わせ次第では掘り出し物があるかもしれません」
「……不愉快ね」
その言葉に対してもLは冷静なままだった。
水銀燈は軽く舌打ちするも、デイパックを放り捨てるように机の上に置いた。
それに続くようにして、真司たちもデイパックの中を取り出し始める。
すると出るわ出るわ、支給品の山。
多くともそれぞれ三つしか与えられなかったはずの支給品が、実に八人全員で三十を超える数になっていた。
支援
「多いな……いや、片っ端から拾ってきたから当然ではあるんだが」
「デイパックの中に別のデイパックを入れれば、それほど嵩張りませんからね。
クーガーさん、これもアルターなんでしょうか?」
クーガーがアルター能力者だという情報は手に入れている。
だから、Lはこのデイパックがアルター能力に関係したものかを尋ねた。
が、クーガーは困ったような顔を作った。
「さあねぇ。
アルター能力はと一目でわかるようなものかって言われると、必ずしもそうじゃないからな。
常識外れているってことを考えると、【向こうの世界】の理屈を使うアルターと似ているがな」
「そうですか……」
支給品を広げていく内に様々なものが見つかる。
それを分類ごとに分けていく。
「サバイブのカードじゃないか!?」
そして、分別していっている時に真司が一枚のカードを掴んで大声を上げる。
ヴァンがシャドームーンに与えた、烈風のサバイブカードだった。
盟友である秋山蓮が変身するナイトが使っていた、強力なカードだ。
「知っているんですか、城戸さん」
「あ、はい……ライダーデッキのカードの種類です。
ええっと、なんていうか、とにかく、強くなれるんですよ!」
真司は説明しようと考えこむが、うまい言葉が思いつかずに子供のような口ぶりになった。
Lは笑みも漏らさずに、そうですか、とだけ呟いてデッキの側に寄せた。
「アイツから貰ったんだよ」
「……アイツ、とは?」
「ほら、その、ほら……」
「シャドームーン、だ」
反応を示すが、Lは静かにカードを手に取り見上げるような姿勢で観察する。
やはり、ただのカードにしか見えなかった。
だが、Lは感情とは別の部分でこれが超常現象であることをしっかりと認めている。
利用できるものは、どんなものでも利用するつもりでいた。
「敵に塩を送る……ひょっとすると、敵とすら思っていないのかもしれませんが。
シャドームーンの余裕か、それとも強敵と戦うことに快楽を覚えているのか」
「どちらにしろ戦力だ、使わないってわけにはいかないでしょう」
クーガーの言葉に対して、Lも同意するように無言で頷いた。
そして、二つ並んだデッキを食い入るように見つめる。
Lはこのライダーデッキこそが対シャドームーン戦における生命線だと考えていた。
「そのカードなら俺も持ってるぜ」
そう言って、クーガーはテーブルに広げた支給品から一枚のカードを取り出す。
疾風のサバイブカードと同じくライダーを強化する、烈火のサバイブカードだ。
C
「あ、俺のサバイブ!」
真司はそのカードを食い入るように見つめながら叫んだ。
鳥の片翼の周囲に炎が待っている、よく見慣れた特徴的なカードだ。
シャドームーンはドラゴンライダーデッキですら撃退できなかった。
ここにサバイブカードが加われば、まだ勝負はわからないかもしれない。
「……これ、対になっているんですね」
Lは二つのサバイブカードを見比べながら呟いた。
烈火と疾風はエフェクトのように描かれた炎と風の違いと翼の向き以外は同じカードだ。
ちなみに、この二つの翼の間にもう一つ、鳥の胴体が描かれたカードが存在する。
烈火、疾風、そしてオーディンが使用する無限。
この三つがサバイブカードの全てだ。
「サバイブカードは強力かもしれません。
ですが、ライダーの数は増やせない……ライダーは二人止まりですね」
「俺の龍騎と、ナイト……か」
Lの言葉を繋ぐように真司はポツリとつぶやく。
脳裏に浮かぶのは秋山蓮。
幸いなのか、この場には参加していない人物だ。
同時にストレイト・クーガーもそのコウモリの紋章が描かれたデッキに心当たりがあった。
この場に来てすぐに戦闘することとなった、ミハエル・ギャレットが使っていたデッキだ。
「ライダーデッキはシャドームーン打倒の最大の鍵だと思われます。
言うなれば、超常現象には超常現象、です」
「非現実的だがな」
付け加えるように口にしたのは上田である。
ライダーデッキの荒唐無稽とも言えるシステムに対し、未だ感情で認められない部分があるようだ。
だが、それ以上は何も言わない限り、観測された結果を否定する材料が上田の中に出来ていないのだろう。
実際に目にして観測された以上、しっかりとした否定の材料を見つけない限り否定できない。
上田も科学者としての妙なプライドというものがあった。
「それに世紀王である光太郎さんやシャドームーンと造形が似ているというのも引っかかるんです
仮面ライダーという呼称も同様です。
光太郎さんも仮面ライダーBLACKと名乗っていました」
あからさまな共通点が無性にLの興味を引いていた。
なにせ、どちらがかどちらかを模倣したかのように酷似しているのだから。
「光太郎さんはゴルゴムによって生み出されたシャドームーンの対となる世紀王ブラックサンです。
ですが、人の心を消される前に逃げ出した。
そして、孤独でも人類の自由と平和のためにゴルゴムと戦う戦士となることを決意しました。
そしてブラックサンの名前を捨て、仮面ライダーBLACK、と名乗ったそうです。
その仮面ライダーなら、シャドームーンとも戦えるかもしれない」
「彼も、仮面ライダー……」
ライダーという呼称で統一されていた真司に対し、光太郎は仮面ライダーを名乗った。
人類の自由と平和を守る、そのために己の痛みを仮面で覆った戦士だ。
己の欲望で戦うことを求められるライダーとは真逆の姿である。
支援
「……デッキは城戸さんとヴァンさんに使ってもらおうと思っています」
真司が仮面ライダーという言葉に何かを感じているようだが、Lは話を進めた。
時間はできる限り短縮した方がいい。
もちろん、短縮することだけに重点を置いてもしょうがないが。
「城戸さんはこれまでのライダーバトルで培った経験があります。
カードを使う特殊な戦闘である以上、城戸さん以上の候補は居ないでしょう」
これは妥当と言えた。
ライダーデッキの戦い方はカードの扱い方が大きく左右する。
ならば、元々の所有者が使うほうが良い。
「ナイトのデッキはヴァンさんに使っていただきたいのですが……」
その身体つきとシャドームーンと対面していて生き延びているとわかる発言。
この二つから、Lはヴァンが戦闘に手慣れた人物であることを察していた。
クーガーでも良かったが、彼にはアルター能力がある。
ならば、ヴァンにライダーとなってもらい単純な戦闘力の増強を図ろうと考えたのだ。
「……」
「ヴァン!」
「ん、ああ……どうした?」
だが、ヴァンはLの言葉に中々応えず、C.C.の怒声にも近い声でようやく反応した。
少々うとうとと眠っていたようだった。
C.C.は怒りの表情を浮かべるが、すぐにハッと顔をしかめる。
「……ヴァン。お前、ひょっとして傷が?」
「あん?」
「っ……少し休んでいろ」
ヴァンの傷口を見て、C.C.はそう促した。
戦闘に次ぐ戦闘と、生身で受けたダメージの巨大さ。
切り傷から菌が入って身体を弱らせている可能性もあるからだ。
「いらねえよ」
だが、意外なことにヴァンは短く否定した。
眠った後に見る『他人の夢』を嫌ったのだ。
他人の不幸を見続ける感覚は、あまり気分のいいものではない。
「……城戸さん、この発信機」
ヴァンの言葉を聞いた後、Lは発信機の受信機を手に取る。
そして、所有者である真司に尋ねた。
「城戸さん、浅倉の居場所がわかりますか?」
「あ、そうだった……すいません、ちょっとゴタゴタしてて確認してなくて」
「構いません、今見ますので」
Lが小さな受信機を操作していく。
それを真司が覗きこむように見て、不思議そうに首をひねった。
C
支援
「……あれ?」
「どうしました?」
「いや、さっき首輪外す前に見た時と変わってなくて……」
志々雄と三村によって首輪を外していた時、発信機に目を通していた。
その位置情報と変化がなかったのだ。
「……ひょっとして、死んだのでしょうか?」
「え!?」
「あ、いえ、可能性の話です。
休んでいるだけかもしれませんし、発信機に気づいて捨てたのかもしれません」
――――駄目だ、私自身が甘い考えに流されがちになっている。
安易な可能性が浮かんだことに、Lは心中で自身を叱責する。
全てを疑わなければいけない。
力がない以上、Lが力になれるとしたら疑うことで真実を見つけることだけだ。
「お?」
上田は会話に入れないのか、机に広がった支給品を漁っていた。
カツラ……と呟いてみたり、手錠をカチャカチャと揺らしたり、カギ爪をおっかなびっくり触れてみたり。
そんな風に支給品を漁っていると、ふと、一枚の紙に目がいった。
「なんだ、これは少しおかしいぞ」
上田が手にとった紙は名簿だった。
その中には参加者の六十五名の名前が羅列されているが、上田の持つそれとは決定的に違っていた。
順番がおかしいのである。
「私の名簿は五十音順に並んでいたが、この名簿はそうじゃない」
Lはその言葉に反応して、上田から奪い取るように手に取る。
ロロ・ランペルージにのみ支給された、名簿に乗った
そして、やはり表情のないまま呟いた。
「……驚きました。これ、世界ごとの参加者をまとめた名簿ですね」
「なにっ!?」
Lの言葉に上田が驚愕の声を出す。
ニンテンドーDS型詳細名簿を確認しながら、Lは何度も頷く。
「我々の名簿の並びはアルファベットではなく日本語の五十音です。
これは日本人が多いからでしょうが、この順番に関してはそれぞれの世界ごとです。
順番が、まとまっているんです」
ブリタニア皇暦で示されていたC.C.たちを頭として、それぞれの世界ごとに集められている。
それは詳細型名簿に書かれた拉致された年月日から察することが出来る。
なによりも、今まで集めた情報と知人同士が合致する部分が多いのだ。
「ひぃ、ふぅ……」
その名簿に線を入れながらLは数える。
ジェレミア・ゴットバルトの下に、北条悟史の下に、橘あすかの下に……
その線で別れた人々の集まりは、ちょうど二十になった。
「……なんだ、これは」
「近い時代に集められている人と、今までの情報を照らしあわせて分けてみました」
Lは情報が拡張されたニンテンドーDS型詳細名簿をC.C.へと渡した。
C.C.を動揺しながらも、その名簿に目を通す。
「明確に暦が異なっている人物が何名か存在します。
具体的に言えば……ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、平賀才人、タバサ。
さらにこの名簿から少し飛んでアイゼル・ワイマール。
また、我々に限っていっても明治時代から連れてこられたらしい志々雄真実たちの集まりがあります。
明治のような過去だけではなく、遠い未来からはヴァンさんたちが来ています」
「…………なに?」
C.C.はLの言葉に思わず間の抜けた表情で尋ねる。
Lは自分に言い聞かせるように、C.C.の疑問に答えた。
「ヴァンさんは……信じがたいですが遠い未来ですね。
八割ほどの人物は二十一世紀前後から集められています。
ですが、ヴァンさんとレイ・ラングレン、ミハエル・ギャレットに限って離れすぎている」
この詳細名簿では明治、昭和、平成、あるいは共和国暦と言った国ごとの暦を呼び出すことが出来る。
例えば、緋村剣心の場合は明治十一年という情報と西暦千八百七十八年と二つ見ることが出来るのだ。
その中で、ヴァンは西暦でもソートする事ができた。
惑星エンドレス・イリュージョンは地球の囚人惑星だからだ。
「……そうなのか?」
「知らねえよ、そんなの。どうでもいいだろ」
ヴァンはぶっきらぼうに応える。
事実、この男にはどうでも良いことだった。
そこでLが新たに奇妙な箇所を見つけていた
「……おかしいですね」
「なにがだ?」
「上田さんのお話では、稲田瑞穂さんには四人のクラスメイトが居る、そうでしたね?」
「ああ、そうだぞ」
奇妙な中学生のことを思い出しながら、上田ははっきりと頷く。
彼女もまた上田の目の前で死んでしまった人物だ。
「私、正直なことを言うとここに居る六十五人全員が違う世界から来たのではないかと考えていました」
「なに?」
「拉致されて居ないはずの月くんと私が出会っていたことが説明つきます。
それに、SFではパラレルワールドはお馴染みじゃないですか。
まあ、違っているようですが」
Lはどこか拗ねたような口ぶりで言う。
次から次へと出される解答へのヒントと、一向に明らかにならない謎に苛ついているようだった。
支援
「稲田瑞穂さん、千草貴子さん、三村信史さん。そして、桐山和雄、織田敏憲くん。
この五人は稲田さんの言葉が正しければクラスメイトであるはずです。
なのに、前の三人と後ろの二人は知り合い別というには離れすぎています。
他の知り合いとは違いすぎる。
ならば、彼ら五人だけが特別に別世界である、そう考えるのが自然です」
Lは気づいていないが、実は蒼嶋駿朔と狭間偉出夫もまた別の世界となっている。
大東亜共和国の五人と、蒼嶋駿朔と狭間偉出夫に限っては別の世界なのだ。
ちなみに雛見沢出身の六人は特殊ではあるが、古手梨花という人物の体感した時間の流れから集められている。
その言葉に対して、真司は理解ができないのか明らかに目を泳がせいてた。
ヴァンにいたっては始めから聞いてすら居ない。
C.C.は鋭い視線のままLに問いただす。
「六十五のパラレルワールドか集められたのではない、そう判断したんだな」
「そういう可能性はありますが……今となっては薄いとは考えています」
そして、もう一枚近くにあった紙を手に取る。
何度目になるかわからない驚きを覚え、ゆっくりと肩を落とす。
「なんだ、そのメモは」
「……これは」
そのメモを見ながら、Lは呟いた。
竜宮レナと園崎魅音の危険性を書かれた、前原圭一が書いたメモだった。
その紙をC.C.に渡し、C.C.もまたその紙に目を通す。
「レナが危険だと……?」
C.C.は思わず呟くが、それを否定できる材料はなかった。
人は変わってしまうことは知っている。
C.C.にとってはただの女子中学生にしか映らなかったが、それがレナの全てではないのだから。
「L、お前はこれを信じるというのか?」
「いえ、信憑性自体はあまり……なにせ、前原圭一くんを詳しく知らないのですから。
ただ、証拠の薬物というものがこれに関係しているのかもしれません」
Lは注射器を説明書きと共に取り出す。
雛見沢症候群治療薬C120である。
「雛見沢症候群治療薬C120と言います。
雛見沢という土地に広がる風土病のこと……あるいは、悪意によってばら撒かれたウイルス。
名称からして、それの治療薬なんでしょう」
ニンテンドーDS型詳細名簿には出身地も書かれている。
そこには前原圭一と竜宮レナがともに雛見沢という土地で共通していた。
C
「竜宮レナさんと園崎魅音さんが犯人の一味かは置いておいて……
前原圭一くんはこのウイルスのことを言っているのかもしれません。
いずれにしても、もっと情報が……」
Lはそこで言葉を切る。
新たに気になる支給品が目に入ったからだ。
「カードキーが二つ?」
「これ、なんなんですか?」
「…………」
やっと別の話題になったから話に入れる、そう言わんばかりに真司が尋ねる。
研究所にあるゲフィオンディスターバーの起動のための、重要な部品である。
だが、真司の疑問に答えることが出来る人物は居なかった。
Lは柔らかく撫でながら、直感的に重要なものであることは察していた。
破壊されたノートパソコンや自身の詳細名簿から、情報端末にこそ意味があると感じていたのだ。
一方で、上田が瓶詰めの香水を手にとって身を震わせていた。
「こ、この香水……この匂いは」
「どうしました、上田さん」
らしくない、とも言えるほど顔を引き締めている。
怯えか悲しみかは上田以外には分からないが、その目には涙すら浮かべていた。
「……沙都子ちゃんの支給品だ。
大人ぶるように香水をつけていたから、よく覚えている」
白梅香、雪代巴の使っていた香水だ。
そして、それは北条沙都子の支給品されていた。
流した汗を誤魔化すようにつけていた姿をよく覚えている。
「……」
沙都子からミハエルに渡り、さらに東條へ周り、それをC.C.が回収した。
巡りめぐって上田の目の前に戻ってきた。
支給品の数は限られているのに、ここには八人に配られた人数分以上の支給品が存在する。
他の人間のものだった支給品があるということだ。
それは開始から多くの人間が死んだことが意味をしていた。
Lもまた、それを改めて実感していた。
支援
【推測】
「……それでは、少々時間をいただいてよろしいでしょうか?」
支給品をしばらく眺めていると、Lが突然切り出した。
「では、先に言っておきますが、これは脱出の役に直接立つことではありません。
あくまで今後の心構えをきちんと取っておくための推測です」
「前置きはいい、さっさと言え」
C.C.が急かすように言葉を出す。
様々なことが重なり、すでにV.V.の真意をC.C.は読めなくなっていた。
弟とともに生きることだけに必死だった少年はもう居ない。
既に自身を裏切るものなど消えてしまい、ただ欲望を叶えようとするだけの不老不死の怪物が一人だ。
「はい、これから考えるべきはV.V.の目的です」
そのC.C.の心中を覗きこんだように、Lは口にした。
「これがわかったからと言っても脱出に直接大いに役立つものではありません。
しかし、殺し合いを打破しようと思えば、相手を理解することは必要です」
Lはそこまで述べ、やはり冷静な目をC.C.へと向ける。
その目は全てを見透かそうとしているようで、見つめられているC.C.としては気分が悪くなった。
もっとも、後ろめたいことがあるからこその気分悪さなのだが。
「右京さんからは『コード』と『ギアス』について聞きました。
ですが、他にもなにかあるのではないでしょうか。
それこそ、V.V.という人物の核心に迫るようななにかが」
「……」
「おい」
顔をしかめながら黙り込んだC.C.へ、ヴァンは苛立つような声で促す。
C.C.がそのことを喋りたがらないのは、あの兄弟への義理立てに近い。
自身が力を与えて、あるいは歪めてしまったかもしれない、兄弟への想い。
だが、そんな想いも一時的なものだ。
ルルーシュ・ランペルージという少年を死なせたという、嫌悪感もある。
C.C.は深く息を吐き、口を開いた。
「V.V.の目的は『ラグナレクの接続』――――人類の意思を一つに繋げることだ」
「……と、言いますと?」
「集合無意識という言葉は知っているか?」
Lは小さく頷く。
集合的無意識とは、人間の無意識の深層に存在する個人の領域を超えた精神構造のことだ。
ドイツの心理学者カール・グスタフ・ユングが提唱した概念である。
「我々は集合無意識、あるいは人類全体の記憶の集合体を『Cの世界』と呼んだ。
……まあ、名称自体はあまり重要ではないが、話をしやすいように『Cの世界』とするぞ。
『ラグナレクの接続』とはその『Cの世界』に、全ての人間の意思を繋げるんだ」
「実に非科学的な話だな」
そこに横槍を入れたのは、白梅香の瓶を握りしめた上田だった。
日本科学技術大学教授である上田にとって、その話はあまりにも馬鹿げているものだ。
この場で様々なあり得ないことを見てきたが、それでも職業柄最初に否定の念を覚える。
メガネの位置を直しながら、C.C.に迫るように尋ねた。
C
「集合無意識の概念はあまりにも抽象的すぎるし、人の意思というものは電気信号が生んだ奇跡だ。
人の意思が集合し、あまつさえ独立してどこかの空間に存在するなどあり得ない。
科学的根拠に欠けて、いや、科学的根拠を求めることすらも馬鹿らしい空想だ」
「だが、実際に存在する」
C.C.は鬱陶しそうに顔をしかめ、上田の言葉をバッサリと切り捨てた。
Lも黙って聴き込んでいるものの、やはり上田と同じく懐疑的だった。
だが、常識という尺度自体がおかしくなっている。
仮面ライダー、パラサイト生物、ギアス、不死のコード、ローゼンメイデン。
その全てが『科学的根拠』に欠けている。
「上田さん、今は静かに聞いておきましょう。
C.C.さん、話の腰を折ってすみません。続けてください」
Lは上田を制し、C.C.に続きを促した。
上田は不満そうな表情を見せる。
だが、『なぜベストをつくさないのか』と次郎人形に言わせると口を閉じた。
「……Cの世界は全ての人間の意思が集まった場所だ。
そこに、全人類の意思を繋いで、意思の疎通の意味を変える。
そうすれば、嘘は意味を失くし、人の行き違いによる悲劇はなくなる。
意識を共通するということは、当然相手の考えていることがわかるからな。
間違いなく世界のあり方が変わる計画だ」
「…………………………そうですか」
Lは長く考えこみ、短く応える。
そして、やはりもう一度考えこみ、次はC.C.から視線を翠星石と水銀燈へと向ける。
バツの悪そうに並んで居座っていた二人は、Lの視線に気づいたのか眉をひそめる。
「翠星石さん、水銀燈さん。
貴方たちもCの世界、集合無意識に聞き覚えはありますか?」
「そりゃあるわよ。というより、nのフィールドってそういう一面も持ってるもの」
「夢の世界へと向かうために通るnのフィールド自体が、そのCの世界って奴とも言えるですぅ。
夢の世界ってのは、結局のところ人の心が具現化したものですから」
翠星石と水銀燈の両者が『nのフィールドはCの世界と同じものではないか』と答えた。
人の意思の集まる場所という共通点から出された答えだろう。
その答えに満足したかのように、Lは小さく頷いた。
「なるほど……」
「その、Lさん、前置きが長いんじゃないか?
結局、V.V.の狙いってのはなんなんだ?」
真司がしびれを切らして問いかける。
Lはやはり表情を崩さずに、だが、真司の問いには答えずに逆に問いかけた。
「とりあえず、パッと思いつく解答は三つほどありますね」
「解答?」
「まず、考えられる目的は三つです。
ひとつはこの殺し合いの結果そのものがラグナレクの接続に繋がるということです」
ルパン三世と同じ考えか、C.C.はそう考えながらLに問いかけた。
その口調はそこから先の答えを求めるようなものだった。
支援
「殺し合いの果てに生まれる何かがラグナレクの接続に必要、そういうことか?」
「なんか、そこもライダーバトルと似てるんだな……」
「と言いますと?」
ふと真司が漏らした言葉に、Lは鋭く突っ込む。
真司は小さく頷くと、少し不器用に説明をはじめる。
「神崎……ライダーバトルを始めたやつなんですけど、そいつも目的があったんです。
優衣ちゃんっていう妹を救う、っていう目的が」
「最後の一人だけ願いが叶う……この殺し合いとの共通点ですね。
人が死ぬことで願いを叶えるための特別なエネルギーのようなものが生まれる。
V.V.はそれを必要としているのでしょうか……?」
Lはそこまで言うと、急に黙りこむ。
考えをまとめているのだろう。
それは、ここまでのL主導の会話でなんとなくこの場の全員がわかっていた。
「この場合だと、殺し合いを勝ち残ったものの願いが叶えられるということは嘘になりますね。
なぜならそのエネルギーを使用するのならば、他の誰かに渡すことはできませんから。
C.C.さん、V.V.が嘘を言っている可能性はどれくらいありますか?」
「……全くないわけじゃない。
私が知っているV.V.ならば、嘘は避けるだろうが……ただ、嘘であるという可能性も否定できない」
C.C.は歯切れの悪い言葉で答え、言い訳をするようにこう続けた。
「もう自信がないんだ。
私の知っているV.V.と、今この殺し合いを主導しているV.V.が一緒であることに。
だから、私にはもうV.V.が変わっていないという確証が持てないんだよ」
「そうですか」
C.C.のどこか泣きだしてしまいそうな声に、Lはただ黙々と応える。
そちらのほうがC.C.としても楽だった。
あまり突っ込まれると、自分のしてきたことに本当に泣きだしてしまいそうだったから。
「そして、もう一つの答えとしては、V.V.は何かを知りたがっているのではないでしょうか」
Lは次の可能性に話題を切り替える。
先ほども話題にあげていた、V.V.はなにかを観察しているという可能性だ。
「実のところ、すでにV.V.は目的を達成できている。
つまり、異世界に住む人々全てと『Cの世界』へとつなぐ『ラグナレクの接続』を可能としている。
ですが、異世界を知ると同時にV.V.は『ラグナレクの接続』を躊躇うなにかを見た。
その躊躇いを捨てる、あるいは疑問を失くすために我々を殺しあわせているという可能性です」
「……アレが計画を躊躇うとは思えないが」
C.C.はゆっくりと否定の念を口にした。
少年期からあの二人の悲願を、誰にも騙されない世界の創造を諦めるとは思えなかった。
「新しい世界を知るということは生まれ変わることに等しいです。
知識を深めるということは新しい喜びを知ることですが、同時に新しい苦しみも知ることです」
「だから、V.V.は我々で何かを試していると、そう言いたいのか?」
「……で、残りの一つはなんなのよ?」
達観した、素っ気ない言葉に水銀燈が痺れを切らしたように尋ねる。
もったいぶるような口ぶりのLに明確な憤りを覚えているようだ。
C
支援
「そもそも、V.V.はただの飾りに過ぎないということです」
「……あん?」
ヴァンがゆっくりと顔をあげる。
間の抜けた顔が、一瞬だけ引き締まった。
「裏に黒幕がいる、そういうことです」
「黒幕……?」
「黒幕とは芝居などで用いる黒い暗幕のことを指す言葉だ。
場面転換の際に用いる、つまり、舞台を影で操る人物という意味もある。
これが転じて、表舞台に現れずになにかを操作する人物を黒幕と呼ぶようになったんだ」
「いや、意味は知ってますよ……成り立ちとかは知りませんでしたけど」
真司の疑問に対して上田が長々と喋り出すが、簡単に真司に遮られた。
上田は次郎人形を弄り、『なぜベストを尽くさないのか』と言わせると椅子に座り直した。
上田の語りが終わると、Lは畳み掛けるように早口でまくし立てる。
「黒幕の正体は簡単に考えて四パターンです。
創世王、ローゼン、神崎士郎の三人が可能性のある人物ですね。
なにせ、この三名全員が超常現象を起こせる力を持っていますので」
「もうひとつのパターンは?」
「我々の情報だけでは想像できない、未知の何者かです」
それがありならなんでも言えるな、と思いつつもクーガーは口にしなかった。
Lもあくまで可能性の話だけをしている。
V.V.が相手だと思って行動しているとしっぺ返しを食らうかもしれない。
だから、様々な可能性を考慮しておこう。
言ってしまえば、そういう考えを根付かせるための話し合いなのだ。
「それに、この三名には誰かと誰かを戦わせる目的があるという共通点があります。
それは世紀王の血闘であり、アリス・ゲームであり、ライダーバトルです。
どれも、自身以外の他の誰かを消さなければ勝者になれません。
そして、脱落は死を意味しています」
「Lさん、殺し合いという意味ならば稲田くんの言っていたプログラムもある」
「個人的には可能性自体は薄いと考えています」
Lがその言葉をバッサリと切ると、上田は少し泣きそうに顔を歪めた。
元々メンタルの弱い男だから仕方ないだろう。
C
「プログラムの首謀者は一国家です。
また、稲田さんのデータでは西暦1997年と書かれており、我々の世界観から大きく離れていない。
大東亜共和国が黒幕である可能性は前の三人が黒幕である可能性と比べるとあまりにも小さいものです。
……これが超常の力を手に入れた大東亜共和国の侵略への準備という妄想も出来ないわけではありませんが」
「ふふ、やはりそうか。いやね、私も、ちゃんとわかっていたんだよ。
ただLさんがわかっていない、もしくは気づいていないかもしれないからね。
だから意地の悪いことだが、ちょっと試してみたんだよ」
上田は取り繕うように笑顔を作って、Lに対して同意の言葉を告げる。
手元の次郎人形でLを指さし、『なぜベストを尽くさないのか』と言わせることも忘れない。
Lはそれを無視して、話を続ける。
「さて、創世王の場合です。
私は光太郎さんから話を聞いた時、創世王はあり得ないと考えました。
世紀王以外の人間が勝ち抜いてしまった場合、本末転倒になるんですからです。
ですが、城戸さんの願いが叶うという話を聞いて新たな可能性に気づきました。
十三人のライダーが殺し合い、残った一人が願いを叶える力を得る。
つまり、一人だけ生き残ることで巨大な力が生まれるということです」
世界を征服する力は既にあるが、その生命を延ばす術を創世王は持ち得ていない。
だが、ライダーバトルの末に生まれる力がその願いを叶える可能性は高い。
「創世王は欲しているのかもしれません。
ブラックサンやシャドームーンといった後継者ではなく、自身の命を救う強大な力を」
Lが真司から神崎士郎の目的を聞いて真っ先に浮かんだ考えはこれだった。
創世王自身が力を取り戻すのならば、二人の世紀王が死んでしまってもなんの問題もない。
「残りの二名についてはあくまで可能性があるだけです。
六十五人の異世界の人々を殺し合わせる理由は思いつきませんので」
ここでLは半分だけ嘘を言っていた。
ローゼンが黒幕である可能性も思いついていたが、水銀燈と翠星石への配慮のために口を閉ざしたのだ。
ローゼンが創世王と同じで強大な力を求めているのだとしたら。
奇跡を扱うことで、アリスへの道のりのヒントを得ようとしているのかもしれない。
それは、なんの確証もない。
はっきりとした確証など一つもない話で翠星石と水銀燈の両名を揺さぶる必要はない。
「神崎士郎ならば、なぜライダーバトルではなく大規模な殺し合いに切り替えたのかが不明。
ローゼンは……そもそも翠星石さんたちも理解できてないことから、その真意は計りかねます」
「お、お父様のことは、その……」
「お父様はアリスを求めているだけよ」
父がなにを考えているか、それはローゼンメイデンも把握しているわけではない。
その事実に翠星石は口ごもり、逆に水銀燈は明瞭な言葉で返した。
支援
「アリス……完璧な少女、でしたか」
「ええ。
そして、私たちはそのために生きているし、アリスになったものだけがお父様に愛される。
……翠星石、元々私たちは争うために生まれてきたのよ。
私も、貴女も、蒼星石も、雛苺も、金糸雀も………真紅もね」
「そんな! そんな、そんなの……悲しすぎるじゃないですか……」
翠星石の言葉にこの場の温度が下がったような気がした。
水銀燈が顔を無表情に変えて、翠星石へと向き直る。
壊れた身体を、隠そうともしていなかった。
「翠星石」
激高している時よりも、刃を突き立てた時よりも、はっきりとした迫力のある冷えた言葉だった。
おちょくるような色はない。
翠星石を軽蔑するような色を持った言葉だ。
「そう考えること自体が、お父様への裏切りなんじゃないの?」
壊れた右目が妙な威圧感を放ち、睨みつけられた翠星石は思わず身体を小さくした。
翠星石はなにも言い返せない。
姉妹との関係が友好であればいいとは思ってるが、父を心から愛している。
その父の言葉を否定するようなことは、あまり考えたくなかったのだ。
「Lさん、そのローゼンという人物が黒幕である可能性はあり得んだろう」
その険悪というよりも気まずい空気を読み取ったのだろう。
上田はどこかおどけたような口ぶりで言い放つ。
「確かに私は完璧という言葉に最も近い人間ではあるが、見ての通りダンディなナイスガイだ。
どう頑張っても少女にはなれん。
仮に私のような凛々しい男性が勝利してしまっては元も子もないだろう」
「貴方はちょっと黙ってなさい」
場を和ませようと戯けたような口調で発言した上田に対し、水銀燈は怒りを隠そうともせずに言い放った。
上田はビクリと身体を震わせて、その大きな体を縮こませる。
そして、上田次郎人形を手に持ち、『なぜベストを尽くさないのか』と言わせた。
上田の言葉は上田の意図通り見当はずれなものだ。
だが、Lもローゼンが黒幕という可能性はあまり考慮していなかった。
「……まあ、ローゼンは謎が多すぎますね。
城戸さん、神崎士郎が黒幕である可能性はありますか?」
「いや、その……あんまりない、かなぁ?
アイツの目的はとにかく優衣ちゃんを助けることだし。
だから、ライダーバトルを中止してまでわざわざこんなことやるなんて……」
はっきりと断定こそしなかったものの、真司の言葉は否定のものだった。
そこで沈黙が訪れる。
Lは親指の爪を噛んでいる、思考を働かせているのだろう。
C
「……結局、なにもわからずか」
「相手の目的がわかればプラスになるって理屈はわかるんですがねぇ」
C.C.がため息をつきながら脱力し、クーガーが苦笑いを浮かべながら言葉をつなぐ。
実際、確定したことはなにもなかった。
そのままクーガーは窓から外を眺めると、すっかり暗くなってしまっている。
この場に来てから丸一日が経とうというのだから当然とも言えた。
「さて……俺はそろそろ行かせてもらうぜ。
これ以上、走らずに止まってたら俺は死んじまうからな」
どこかふざけるように言うクーガーに視線が集まる。
Lは相変わらず表情の目立たない顔でクーガーを見つめた。
「……そう、ですか」
「悪いな、L」
謝罪の言葉を口にした割に、クーガーは顔に笑みを浮べている。
この男はそういう男だった。
無駄に相手を威圧するような真似は行わない、文化人を気取る伊達男なのだ。
「戦力の拡散は好ましくありません」
「戦えない奴を戦場に引っ張りだすほうが良くないってもんだ」
はっきりと口にしたクーガーの言葉に、Lは露骨に顔をしかめた。
その言葉の裏は、Lたちは邪魔だ、と言っているようなものなのだから。
「……足手まとい、ですか」
「平たく言っちまえば、そうなっちまうな」
クーガーの言葉も露骨なものだった。
だが、それが何よりの優しさである。
死が近くなる以上、突き放すのもまた思いやりだ。
「柊さんたちに出会ったら、私たちの場所まで連れてきてください」
「……そうだな、その時はそうするさ」
Lはそういうのが精一杯だった。
クーガーは再び窓から外を眺める。
ここにいる明確な敵はシャドームーン、雪代縁、枢木スザク、狭間偉出夫、浅倉威、そして後藤。
あまりにも多く、誰もが強敵であることが明白だったが、それでもクーガーは自らで終わらせる気だった。
誰よりも誇れる、己の速さで。
「その前に」
そのクーガーの決意に水を指すような形でLが口を挟む。
「全員の治療しておきましょう。正直な話、痛くて痛くてもう気絶しちゃいそうなんです」
肋骨を抑えながら、Lはそう提案した。
支援
【準備】
「よっ……と!」
女性陣にはお引取りを願い、男五人が広い部屋の中で傷ついた身体の手当てをしていた。
Lの持っていた包帯と総合病院から探しだしたテーピングでそれぞれの肉体を固定していく。
応急処置も呼べないものだったが、それでも何もしないよりはマシだった。
外では水銀燈が翠星石が見張りをしている。
ローゼンメイデンの治療は人間のそれと異なっているし、代謝もまた同じではない。
C.C.はというと、無為に時間を過ごすぐらいならば、と身体を清めている。
その時に、C.C.は上田から白梅香を渡された。
男である上田が持つよりも、C.C.が持っていたという理屈だった。
上田はこんな状況でもどこか現実の常識に即した動きをしたがる男だった。
さて、男しか居ないこの部屋は汗の臭いが充満し、非常にむさ苦しい。
しかも、むさ苦しいだけでなくヴァンなどは全身に傷を追っているため、僅かに異臭を放っている。
さらに刺青と思わしき文様とそのどす黒い血が滲んでおり、思わず目を背けてしまうような惨状だ。
現に上田などは必死で視界にヴァンの身体を入れないようにしている。
Lの所持していた明治の傷薬を塗りたくり、ヴァンは思わず顔をしかめる。
「しっかし、すげえ身体だな」
真司は感嘆の言葉を漏らす。
惑星エンドレス・イリュージョンとロストグラウンド。
混沌の荒野で生きてきたヴァンとクーガーの肉体は隆々としたものだ。
それこそトップアスリートとなんら遜色のない肉体である。
この二人に比べると、現代日本で呑気に暮らしていた真司の肉体は若干頼りない。
同じく現代日本で過ごしていたLは意外なことに、無駄なく引き締まった肉体をしていた。
もちろん、ヴァンとクーガーに筋肉の総量自体は劣っているがそれでも中々のものだ。
最も意外だったのは上田だ。
そのまま格闘技界に参戦できるのではないかという恵まれた肉体をしていた。
それこそヴァンやクーガーと比類するほどだ。
戦闘となるとアルター使いのクーガーや改造人間であるヴァンに劣る。
だが、それでも期待させてしまう何かがあった。
もっとも、この男が刃の前に立つ時は自らの精神がよっぽど極限まで追い込まれた時だけだが。
「にっげぇ……」
五人の怪我の多くは打撲や打ち身の類だ。
そこで、五人全員が劉鳳の支給品である石田散薬をお湯と共に飲んでいた。
石田散薬とは新撰組副長の土方歳三の実家に伝わる妙薬である。
その石田散薬の適量は上田が知っていた。
物理学者でもあるが亀山歌など文学にも通じている上田は新撰組の逸話も聞き及んでいるのだ。
同時に上田は、ここは逸話通り熱燗で飲もうと提案しようとも考えたが、さすがにやめた。
アルコールが入ることはあまり良くないだろう、と自制したのだ。
「ふぅ、終わったか」
一番最初に応急処置を終えたのは、他の三人と比べて切り傷の少ないLと上田である。
幸いにも、二人の手当は身体の各部を固定し石田散薬を飲むだけで終わる程度のものだった。
「少し、足りませんかね……取りに行ってきます」
Lは肋をさすりながら立ち上がり、部屋を出ていく。
上田は、さてどうするか、と次郎人形に話しかける。
端から見ると滑稽だが、この男の陽気な性格を表している姿だった。
C
「なあ、山田奈緒子ってのはアンタの知り合いだろ?」
「むっ、それがどうかしたのか?」
クーガーは包帯を巻きながら、上田へと話しかける。
クーガーは先ほどの知り合い順名簿に目を通しているため、山田が上田の知り合いであることを察していた。
勉学は優秀だが、色々なところが鈍い上田はクーガーの言葉に疑問で応える。
クーガーは少しだけ迷ったが、言ったほうが上田のためだろうと判断した。
「……つかささんたちがな、その人の死体を弔ったらしい」
「……山田、を?」
その言葉に上田は呆然としたようにつぶやく。
いつも考えの隅っこに、ひっそりとその名前があった。
貧乳、ペチャパイ、未熟なマジック、奇妙な笑い声、ジャージ教師、ガ○ラの怪獣にミイラされる。
その山田が様々なワードと共に上田の頭を回り始める。
「案内を――――」
「いや」
上田は強い言葉でクーガーの言葉を断ち切る。
その目はクーガーからは見えなかった。
だが、その言葉の調子で上田がどんな目をしているかはクーガーにもわかった。
「一人で、行かせて欲しい」
上田らしくない言葉だった。
出会ったばかりのクーガーでも上田が臆病者であることは察していた。
だからこそ、それ以上は何も言わなかった。
病院の内部だし、霊安室もここからそう離れた場所ではない。
「俺もお終いだ」
「俺も、っと……」
その上田の後ろ姿を見送りながら真司とクーガーが立ち上がる。
そして、試すように身体を動かしていく。
少し動きにくい部分がないわけではないが、それでも随分と楽になった。
一方で、とにかくヴァンの治療が長引いていた。
Lの持っていた高荷恵が製造した傷薬を身体に塗りこんでいくのだが、とにかく切り傷が多い。
傷口に塗りこむわけだから、当然裸体にならなければいけない。
全身の傷口を治療するだけでも時間がかかるのに、その上で包帯とテーピングで固定する必要があった。
傷が多いヴァンの治療に時間が掛かるのは当然と言えた。
「ええっと、ヴァン……さん? それで大丈夫なのか?」
「さあな……まあ、一日ぐらいなら充分持つだろ」
帰ってから治せばいい。
真司に言葉に対して、ヴァンは簡単に言った。
この状況でヴァンだけが一点の曇りもなく脱出を信じているのだ。
シャドームーンの脅威を知りつつ立ち向かおうとするヴァン。
この男は果たして勇者なのか、それとも愚者なのか。
ただ、それがヴァンという男であることは確かだった。
「難しいことはわからないが、俺はとにかくやることがあるんだよ。
邪魔をするなら倒して、邪魔しないのならほっときゃいい」
この男の生き方は単純明快なものだった。
だからこそ、その生き方を奪われた時の怒りは常人よりも遥かに大きい。
支援
「なあ、クーガー。その、アルターだっけ?
あの脚のブーツを作ってた奴」
「ん、それがどうした?」
真司はヴァンを横目で見ながら、クーガーへと話しかける。
ずっと引っかかっていたことがあったからだ。
「いや、アルターとライダーデッキのシステムってよく似てるなぁって思ってさ」
「全部が全部、俺みたいな装着型じゃないぞ?」
「いや、その、別の世界から呼び出すんだろう?」
「そういうわけでもないが……」
真司はクーガーが話していた、【向こう側の世界】というワードを思い出す。
アルター能力は【向こう側の世界】から理屈をこっちの世界で使うことだ。
ミラーワールドに住むミラーモンスターを利用するライダーデッキとよく似ている、真司はそう思ったのだ。
「まあ、そうだなぁ……アルター能力ってのはな、自分のエゴを押し通す力なんだよ。
こっちじゃできないことを、向こうの理屈を使って押し通しちまうんだ」
「エゴ……」
「そうだ、カズマの自由も劉鳳の正義も俺の速さも、言ってみれば全部がエゴなのさ」
正義も己の速さもエゴだと。
そして、それで別に構わないとクーガーは笑いながらそう言った。
「ライダーデッキをつくった、神崎士郎って言ったか?
そいつも、自分のエゴをライダーデッキの形にしたのかもな」
「エゴ、か……そうなのかもしれないな」
そう言いながら真司は机の上に広がった支給品を手に取る。
願いを叶えるために戦い合う、これがエゴでないわけがない。
「これ見て思ったんだよ」
真司が取り出したものは、ボロボロの箱に入った何枚もの紙だった。
そして、その箱の蓋を開き中から紙を取り出す。
稚拙な絵が描かれた紙だった。
「ドラグレッダー、ダークウィング、マグナギガ……ほとんどがミラーモンスターの絵だよ。
これは優衣ちゃんの描いた絵だって、一緒についてた紙に書いてある」
クレヨン描きの稚拙な絵は、確かにミラーモンスターが描かれていた。
これは園崎魅音に支給された、神崎優衣が幼少の頃に兄である神崎士郎とともに描いた絵だ。
クーガーは黙ってその絵に目を通す。
C
「ミラーワールドって、ひょっとすると優衣ちゃんの心のなかなのかもしれない。
それならnのフィールドっていうのと同じで鏡の中にあるのも説明がつくし」
「何が言いたいんだよ」
やはりクーガーは穏やかに笑いながら続きを促す。
真司は少し押し黙った後、覚悟を決めたように口を開いた。
「これ、神崎と優衣ちゃん以外に人間の絵が居ないんだ。
だから、優衣ちゃんの心には、人が居ないんじゃないかって……」
事実、神崎士郎と神崎優衣と思える二人組の絵しか人間は描かれていなかった。
その絵にも、ミラーモンスターが描かれている。
真司はどこか悲しい気持ちになった。
その絵が、まるで外敵から、人間から身を守るように見えたからだ。
「俺は優衣ちゃんの友達だから、優衣ちゃんも助けてあげたい。
それこそ、自由と平和を守る、仮面ライダーに」
そこまで言って、顔を俯いた。
ふと、光太郎と自分を比較してしまったのだ。
劉鳳を殺してしまった自分と、死んでもみなみの心を守った光太郎を。
「俺は、仮面ライダーになれるかな……ライダーじゃない、仮面ライダーに。
誰かのために戦えるように」
「さぁな……ま、変わろうと思わなきゃ変われないさ。
特に、強い奴に変わろうと思ったらな」
その想いが読み取ったように、クーガーは柔らかい言葉をかける。
「ただ、お前は南光太郎でも劉鳳でもない。お前はあくまで城戸真司だ」
お前はお前だと、そう言い切る。
「だから、お前は城戸真司のまま仮面ライダーを名乗ればいい」
柔らかい笑みだった。
年齢こそ真司のほうが上だが、この場に置いてはクーガーが兄貴分と呼べるような立場関係になっていた。
「餞別だ……まあ、お前が使うしかねえんだけどな」
クーガーは机から烈火のサバイブカードを引きぬいた。
仮面ライダー龍騎をサバイブ体へと変える、生存の意味を持つ究極のカード。
そのカードがクーガーから真司に手渡された。
支援
「炎は文化の礎ってね。
人を傷つけるものだが、人を助けてきたものでもある」
炎は知恵に例えられるほど、人に無数の希望と絶望を与えてきたものだった。
そして、ギリシャ神話のプロメテウスを代表するように、多くの神話には火を与える存在が居る。
文化英雄と呼ばれる類の存在である。
ただ、その手の存在は得てして反社会的な存在とされることがある。
聖書における赤き蛇のように、存在そのものが悪と称されることも多いのだ。
この殺し合いの場に置ける、ちょうど、志々雄真実のように。
三村信史が志々雄真実に力という美酒を与えられたように。
シャナが志々雄真実に命というたった一つの権利を奪われたように。
希望と絶望を同時に与えてきたのだ。
サバイブのカードを強く握り、真司はクーガーへ尋ねる。
「クーガーも、変わろうと思ったことがあるのか?
誰かになりたいって、思ったことがあるのか?」
「いいや……どんなに不恰好でも俺は俺にしかなれねえからな。
このラディカル・グッドスピードが変わることなんてあり得ない。
まあ、それでいいんだけどな」
クーガーは未だに痛みを訴えてくる自身の脚を見つめる。
「これが、俺なんだ」
その脚を、誇りを、ゆっくりと撫でた。
「クーガー……」
真司にクーガーを止めることはできない。
眼の前の伊達男は元々後藤を追っていた。
何よりも、最速で走り続けるクーガーをこれ以上走らせないことは誰にもできない。
「死なないでくれよ」
真司は、すがるように呟いた。
◆ ◆ ◆
C
痛みを負ったペリドットを連想させる翠の髪を指で溶かしながら、湿り気の帯びた服を脱ぎ捨てる。
その裸体はスマートだが付くべきところには肉はついている。
獣欲と呼ばれる類の伏せるべき欲望を想起させるものだった。
翠星石と水銀燈の魅力は調度品のような美しさだが、C.C.の魅力はそのようなものではない。
C.C.の魅力というものは、人間としての即物的な欲求を蜂起させる魅力だった。
『人から愛されるギアス』を扱っていたC.C.は、自然とそのような身体に変化していた。
愛と欲の視線がC.C.に羞恥と見栄を生み、その姿が醜くなることを防いだのだ。
「……ルルーシュ」
ゼロの仮面を指で柔らかくなぞり、目を閉じる。
裸体だが、そこにはいやらしさよりも母性があった。
我が子を抱きしめるような、安らかな空気が広がる。
「お前は、嘘のない世界を否定するか?」
嘘がなければいいと思っているのはV.V.たちだけではない。
C.C.だって嘘がなければいいと思っている。
騙されるということは、あまりにも心を傷つけるものだから。
『ざぁんねんでしたぁ! 貴女騙されちゃったの!』
それは辛すぎるものだ。
辛い思い出を消すように、白梅香の香りを身体に吹きかけた。
「考えてもしょうがない」
ゼロの仮面を手放し、変わりに黒の騎士団の女性用制服を身にまとう。
シェリス・アジャーニのHOLY制服ではなく、黒を基調としたその制服を選んだのは単なる感慨からだ。
押し付けられた秩序を打開するべき混沌の制服。
この場にはふさわしいものだと思ったから、C.C.を選んだだけだ。
元々着ていた衣装を脱ぎ捨ててほっぽり出し、その部屋から扉を開ける。
「……ん、Lじゃないか」
扉を開いて周囲を見渡すと、廊下の奥から現れたLの背中が見えた。
相変わらず猫背のままゆったりとした足取りで歩いている。
その手には病院から調達したであろう道具を持っていた。
「おや、C.C.さん。服を着替えたんですか」
C.C.の言葉にLは振り返る。
そういうLの服はすっかり汚れていた。
元々が白い服であるだけに、その汚れは顕著だ。
C.C.はゆっくりとした歩調でLへと近づいていく。
「なんだ、それは?」
「ヴァンさんに渡すテーピングと、空のカプセルを少し拝借してきましただけです。
カプセルには支給されていた青酸カリを入れておこうと思いまして。
幾つか被せると、時間差の効果も出ますから」
「……物騒だな」
「使えるようにしておきたいだけです。何が起こるのか、何が役立つかわかりませんから」
毒を扱っている割に毒気のない顔でLは応える。
冷徹とは強張った顔をしていることではなく、感情のない表情を浮かべることなのことなのかもしれない。
C.C.はゼロの仮面を撫でながら尋ねた。
支援
「先ほどの話、長々としていた割りにはなにもわからないことだったな」
「そうですね、あまり収穫はありませんでした。
なにかわかってしまえば良かったのですが」
「……やらないほうが、良かったかもしれないな。
城戸辺りは考えこむ性質だろう、悪戯に警戒心を高めただけだ」
V.V.の腹を突くのは、正直いい気分ではなかった。
Lたちにとっては単なる悪人だが、C.C.にとっては旧知の仲だ。
仲違いしたとはいえ、己の死のために彼と接触した事実に変わりはない。
そんなC.C.の言葉にLはゆっくりと首を振った。
Lとしてはあの会話が無駄だとは思っていなかった。
「C.C.さん。大事なのは信じる信じないは関係なく、とにかく疑ってかかることです」
「……なに?」
C.C.は疑問の言葉を投げかける。
嘘のない世界とは、全く別の考え方だった。
「疑いたくなくても、徹底的に疑う。
真実とはそう言った痛みの上でしか見つかりません。
疑いを失くした正義が傲慢であるように、疑いを失くした信頼ははっきり言って意味がありません。
どんなに信じていても、疑わなくてはいけないのです。
それも一種の信頼なのですから」
Lの頭によぎっているのは夜神総一郎の姿だった。
息子を信じた上でLに疑わせた。
総一朗は疑うことが真実に近づく道であることを知っていたのだ。
「絶対に間違っている、あるいは、絶対に間違っていない。
真実を求めるためには、どんなに確信していてもその確信を疑う必要があります。
そもそもとして、誰かが別の誰かを傷つけないために嘘を言っているのかもしれませんから。
それは優しさですが、優しさもまた人を窮地に追い込みかねない。
だから、私のように真相を追求する人間は常に疑わなくてはいけない」
「……」
C.C.は言葉を返さないが、Lはそのまま言葉を投げかけていく。
C.C.の胸の内に抱えている疑問を解きほぐすように、言葉を投げかけるのだ。
「この先、強くなければいけません。強くなってもらう必要があるんです。
V.V.の裏に誰が居ても、どんな強大な壁があっても、戦い続けるために。
このどうしようもない現実を生き抜くために、強くなければ全員が死んでしまう」
「……L。そんな言葉はお前が強いから言えることだ」
その言葉を、思わず否定してしまった。
いや、否定と言うよりは、拗ねるような色が濃いだろう。
「誰も彼もが、お前のように強いわけじゃない。
弱くなければ、生きていけない人間も居る」
己のために世界を変えることは自らのために他人を傷つけるような弱い行為かもしれない。
だから、シャルルやV.V.やマリアンヌを弱い人間だと蔑むことは簡単だった。
だが、C.C.にはそれが出来ない。
自分が強いなどとは、口が裂けても言えなかった。
C
◆ ◆ ◆
「……」
「……」
二体の人形の間は沈黙が支配していた。
翠星石は盗み見るように水銀燈へと視線を移す。
病院と言えど人形師の居ない現状で左脚はどうにも出来ず、いまだ欠損部分を無様に晒している。
沈黙に耐え切れず、翠星石が水銀燈へと語りかける。
「蒼星石襲ったらしいじゃねえですか。
こんな時になにを……」
「私たちのアリスゲームが終わったわけじゃないわ。
自分の他にローゼンメイデンが残っている限り、終わらないんですもの。
だったら、襲うほうがよっぽど自然じゃない」
そういう割に水銀燈は暗い表情のままだった。
水銀燈の言葉が正しければ、今も翠星石に襲いかかるべきなのだ。
倒さなければいけない姉妹を前にしても、水銀燈の心の奥には恐怖という鎖が巻き付いているのだ。
「アンタのローザミスティカ渡しなさいよ」
「嫌ですぅ」
そんな挑発の言葉ですら、張りがない。
自然と翠星石の、嫌だ、という否定の言葉も勢いのないものになってしまう。
「……水銀燈と話す機会なんて、思えばそんなになかったですね」
「そんなもの必要ないでしょう?」
「必要ないわけないですぅ」
「必要ないわよ……」
「むぅ……」
不自然にも思えるほど、話題を切り替える。
だが、その言葉にも水銀燈は素っ気ない言葉しか返してこない。
口を尖らして翠星石も答えるが、そこで会話が途切れる。
「……」
「……」
お互い気の強く喧嘩腰になりがちな水銀燈と翠星石だ。
いつもならば売り言葉に買い言葉となり、このような沈黙はめったに存在しなかった。
だが、この場を支配するのは沈黙だけ。
いたたまれない沈黙と、決して歩み寄れない稚拙な口喧嘩。
果たしてその二つならばどちらが良いのだろうか。
「……そろそろ言うけど、貴女も感じたはずよ」
水銀燈は意を決したように、触れてはいけない話題にゆっくりと触れる。
翠星石もピクリと身体を震わせた。
水銀燈の語調で、何を言おうとしたか察したのだ。
支援
「あれは、あの『光』は、私たちも知らないものだったわ。
でも、私たちのよく知っているものと似すぎている」
――――それは、天を照らす緑色の光。
――――それは、地を統べる人外の証。
――――それは、人を滅ぼす王者の石。
――――その名を、キングストーンと言った。
「ローザミスティカのそれを遥かに上回る、けれどよく似た輝き……」
世紀王の戦いとアリス・ゲームは酷似している。
己を己とする石(ローザミスティカ、あるいはキングストーン)を奪い合い、
複数(ローゼンメインデン、あるいは世紀王)の中から一人だけ特別な存在(アリス、あるいは創世王)を作り上げる。
「……あの光について、お父様はなにか知っているかもしれない。
あるいは、お父様もアレを探してるのかも。あの、異常な光を」
リプラスフォームをまとわない正真正銘のバッタ怪人である仮面ライダーBlackの世界。
そこでキングストーンは賢者の石と呼ばれた。
錬金術師ローゼンがつくりあげたローザミスティカもまた、賢者の石だ。
キングストーンがゴルゴムの賢者の石ならば、ローザミスティカは人類の賢者の石なのだ。
そして、賢者の石とは、卑金属を金に変え、その生命を永遠のものへと変える。
すなわち、錬金術にとって達成すべき『究極の叡智』を指す言葉だ。
キングストーンがゴルゴムにとっての究極であることは言うまでもない。
ローゼンメイデンである彼女たちは、その事実を本能的に理解していた。
キングストーンが強力な力の塊であると、人形である自分たちを完璧な少女に進化させる力があると。
愛と本能が彼女たちに訴えていた。
「あれが、あればわた、し、も――――」
シャドームーンに勝てる、そう考えた瞬間だった。
体全体が震え出す。
眼球は揺れ、嘔吐を呼び戻すような嫌悪感が水銀燈の意思を塗りつぶす。
目に浮かぶのは銀色。
自身の銀髪などよりも冷たい、銀色の鎧が浮かぶ。
緑の複眼に見つめられている。
あの光が、キングストーンという強大な力の塊がシャドームーンのものだとわかってしまった。
今、時空を超えて、睨みつけられている。
「ァ、ア、アァァァアァ!!?」
「な、なんですぅ!?」
突然震えだした水銀燈に対して翠星石は話しかけるが、水銀燈は身体を小さくさせるばかりだ。
当然だ。
王の眼前でなければ、いくらでも元の自分の皮を被ることは許される。
だが、それだけだ。
どれほど装ってみても、水銀燈の魂には恐怖という影がある。
それはどれほど拭っても消えてくれない呪いだ。
水銀燈は既に心が敗北している。
どれだけ元の自分を演じていても、本質的にはすでに水銀燈は水銀燈ではない。
誇り高きローゼンメイデンは、死んでしまっている。
シャドームーンに勝とうと夢想する心すら、許してはくれなかった。
「ハァ、ハァ……ア、アァアア……」
「……大丈夫ですよ」
C
未だに震える水銀燈に対して、その細い腕を回して抱きしめる。
「まったく頼りねえ姉ですぅ」
「な、なによ!」
敵対心を水星期にぶつけるように叫び立てる。
だが、翠星石はぎゅっと水銀燈の身体を抱きしめる。
「翠星石……貴女、私のこと嫌いじゃないの……なんで、貶さないのよ。
ローゼンメイデンにふさわしくない、みじめな姿を……!」
「嫌いなんかじゃないですし、馬鹿になんかしねえです」
震える身体から翠星石のぬくもりが伝わってくる。
それに甘えたくなる自分が、水銀燈には何よりも耐え難かった。
それでも抜け出す気迫すらない。
「たった七人の姉妹、どうして嫌いになれるですか」
「…………ッ!」
哀れみに似た言葉は優しすぎる。
七体のローゼンメイデンの中で水銀燈が一番知っている。
みじめな人形であれば、誰もが優しくしてくれる。
それでも、その優しさがひどく暖かった。
震えは、治まっていた。
「ねえ、翠星石……」
「なんです?」
震えの治まった水銀燈が、翠星石へと尋ねる。
だが、ただその名前を呼びたくなっただけで明確な話題があったわけではない。
水銀燈は手探りで言葉を探す。
「……貴女、真紅のローザミスティカ持ってるわね」
口に出たのはローゼンメイデン第六ドール真紅のことだった。
水銀燈が最初に出会った、水銀燈が初めて憎しみを抱いた因縁深いローゼンメイデン。
「それ、渡しなさいよ」
「それはダメです」
水銀燈の言葉に対して翠星石は、嫌、ではなく、駄目だ、と答えた。
「ローザミスティカは私たちの魂。
その真紅の魂が私を選んでくれたんです、簡単に渡すわけにはいかねえです」
その言葉で思い出すのは始まりの記憶。
水銀燈がローゼンメイデンとなった瞬間の時間だ。
「真紅の魂が水銀燈に行きたいと思ったのなら、喜んで水銀燈にやるですよ」
「……翠星石、貴女ったら本当にお馬鹿さんね」
記憶の隅に閉じ込められた、優しさと恥辱に溢れた甘々しくも苦々しい記憶。
それが蘇る。
だからこそ水銀燈は怒りを半分、悲しみ半分で小さく呟いた。
「真紅が私と一緒に居たい、だなんて……そんなこと、思うはずがないじゃない」
◆ ◆ ◆
「山田……」
霊安室の中に眠る山田奈緒子のその姿に、上田は呆然としながら声を投げかけた。
いくつか怪我をしていることが見て取れた。
半壊した病院に巻き込まれたのだろう。
覚えていても辛いことだから考えないようしていた。
だが、忘れようとしても、心のどこかにその姿があった。
上田はしばしの間、奈緒子の遺体をじっと見ていると、突然声を弾ませた。
霊安室には不釣り合いな、陽気な声だった。
「どうした、今度は復活マジックか?
心停止と皮膚の温度低下とは中々手が込んでるじゃないか、V.V.も騙されているようだ。
だが、やはりYOUは甘いな。私にはそれがマジックだとわかっている。
なにせ私は超優秀な日本科技大教授上田次郎、それに君とは長い付き合いだからな」
奈緒子は何も言わない。
霊安室の中には上田の呑気を装った声だけが響き渡る。
再び沈黙が場を支配すると、上田はふぅと息をつきながら肩を落とした。
そして、メガネを外し隠すようにして顔面を大きな手のひらで覆った。
「……君は本当に死んでしまったのだな」
超常の奇跡にすがる想いを抱いた人間はこんな想いだったのかもしれない。
奇跡とは存在しないからこそ求め続けるものだ。
本来は心のどこかで諦めていたものが手に入るということは、あまりにも甘い誘惑だ。
だが、上田次郎はその甘い誘惑を跳ねのける。
それは上田次郎と山田奈緒子が共通する思いがあるからだ。
「この世に超常現象は存在しない……それが私と君の考えだった」
すっかり冷たくなった手をにぎる。
夜闇の暗さも手伝い、底冷えのするような感覚が上田を襲う。
それでも、その手を握りしめた。
支援
支援
C
「安心しろ、この会場で起きていることは全て私が解決してやる。
ここには多くの魔法のような出来事がある。
だがな、Lの推理や城戸くんたちの話を聞く限りだとそれは理論を持った技術なのだよ。
彼らの世界……馬鹿らしいが、それ以外に思いつく言葉がないんだ。
とにかく、その世界ではその現象は確かに観測されてしっかりと研究されているらしい。
アルター能力も、ギアスとやらも、ライダーデッキとやらもな。
それはつまり、超常現象などではないことを意味しているんだよ。
どのような不可解な事象も観測されてその理論が研究されればな、そいつは科学になる。
理屈を解明して、この人類の宝である優秀な私が超常現象を科学に変えてみせる」
ただ、上田がその現象を知らないだけなのだ。
理屈はどこかにある。
超常現象とは観測できても解明できないことを意味する。
解明できた瞬間に、それは魔法から科学へと名前を変えるのだ。
「人が蘇るというのならば……その理屈を私が解明してみせる。
言ってしまえば、魔法科学か?
とにかくな、人間はそうやって発展してきたんだ。
奇跡のような出来事も、科学という学問によって解明してきたんだよ。
私はV.V.の言う超常現象には乗っかからない、奇跡ならば私の手で掴みとってみせる」
奈緒子はなにも言わない。
当然だ、上田の理論にも死人がしゃべりだすということはあり得ない。
喋り出した時点でそれは生命活動を行なっているということであり、つまりそれは死人ではなくなるのだから。
そして、奈緒子は確かに死人なのだ。
「……だから、君はゆっくりと休むといい。
ここには私と君の知らないことが多くあるが、それでも理屈を無視した超常現象はない。
イカサマ超常現象があったなら、私が一人でそのイカサマを暴いてやる。
そして、この私が君の代わりにその詐欺師に言ってやるさ。
『お前のやっていることは、なにもかもお見通しだ!』ってな」
そう言って、再び奈緒子の手を握る。
人の手とは思えない冷えた手を数分も握り続けると、上田は顔を上げた。
目元が潤んでいる。
上田は涙が零れないように天井を見上げながら、霊安室の扉に手をかける。
だが、そのドアノブをひねることはしない。
振り返り、視線を奈緒子へと戻す。
――――私は、君のことが……
それでも、己自身も判断できない曖昧な胸中を口にすることはなかった。
支援
【一日目真夜中/G−8 総合病院】
【ストレイト・クーガー@スクライド】
[装備]:葛西のサングラス@ひぐらしのなく頃に、
[所持品]:基本支給品一式、城戸真司のズーマーデラックス@仮面ライダー龍騎
[状態]:身体中に鈍い痛み、両脚に激痛、疲労(大)、応急処置
[思考・行動]
1:後藤を最速で倒す。約束は守る。
2:北岡、ジェレミア、つかさ、レナを探す。
※総合病院にて情報交換をしました。
※ギアスとコードについて情報を得ました。
※真司、C.C.らと情報交換をしました。
【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]庭師の如雨露@ローゼンメイデン、真紅と蒼星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式(朝食分を消費)、真紅のステッキ@ローゼンメイデン、情報が記されたメモ、確認済支給品(0〜1)
[状態]身体中に強い鈍痛、疲労(中)、首輪解除済み
[思考・行動]
1:真司と同行し、殺し合いを止める。
2:真紅が最後に護り抜いた人間に会い、彼女の遺志を聞く。
[備考]
※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。
※真紅のローザミスティカを取り込んだことで、薔薇の花弁を繰り出す能力を会得しました。
【城戸真司@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎
[所持品]支給品一式×4(朝食分と水を一本消費)、確認済み支給品(0〜2) 、劉鳳の不明支給品(0〜2)、発信機の受信機@DEATH NOTE
首輪(剣心)、カードキー、神崎優衣の絵@仮面ライダー龍騎、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎
[状態]身体中に激しい鈍痛、疲労(大)、劉鳳を殺してしまったことに対する深い罪悪感、志々雄への嫌悪、応急処置
[思考・行動]
1:人を守る。
2:右京の言葉に強い共感。
3:翠星石と同行し、殺し合いを止める。
※絶影を会得しました、使用条件などは後の書き手の方にお任せします。
※クーガー、C.C.らと情報交換をしました。
【ヴァン@ガン×ソード】
[装備]:薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-、バトルホッパー@仮面ライダーBLACK
[所持品]:支給品一式、調味料一式@ガン×ソード、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎
[状態]:疲労(小)、右肩に銃創、右上腕部に刀傷、各部に裂傷、全身打撲、応急処置
[思考・行動]
0:とりあえず前に進む。
1:カギ爪の男に復讐を果たすためさっさと脱出する。
2:C.C.の護衛をする。
3:次にシャドームーンに会ったらバトルホッパーを返す。
[備考]
※まだ竜宮レナの名前を覚えていません。
※C.C.の名前を覚えました。
C
【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ R2】
[装備]:ファサリナの三節棍@ガン×ソード、黒の騎士団の制服@コードギアス 反逆のルルーシュ
[所持品]:支給品一式×4、エアドロップ×2@ヴィオラートのアトリエ、ゼロの仮面@コードギアス
ピザ@コードギアス 反逆のルルーシュ R2、カギ爪@ガン×ソード
レイ・ラングレンの中の予備弾倉(60/60)@ガン×ソード、白梅香@-明治剣客浪漫譚-
確認済み支給品(0〜1)、
[状態]:健康、首輪解除済み
[思考・行動]
0:レナと合流したい。
1:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない。
2:後藤、シャドームーン、縁、スザク、浅倉は警戒する。
3:ジェレミアの事が気になる。
[備考]
※不死でなくなっていることに気付いていませんが、回復が遅い事に違和感を覚えています。
※右京、ルパンと情報交換をしました。
※クーガー、真司らと情報交換をしました。
【L@デスノート(漫画)】
[装備]ゼロの剣@コードギアス、
[支給品]支給品一式×4(水と食事を一つずつ消費)、ニンテンドーDS型詳細名簿、アズュール@灼眼のシャナ
角砂糖@デスノート、情報が記されたメモ、S&W M10(5/6)、S&W M10の弾薬(18/24)@バトル・ロワイアル、
首輪(魅音)、シアン化カリウム@バトルロワイアル、イングラムM10(0/32)@バトルロワイアル、おはぎ×3@ひぐらしのなく頃に
女神の剣@ヴィオラートのアトリエ、DS系アイテムの拡張パーツ(GBA)、才人の不明支給品(0〜1)
[状態]肋骨折、疲労(小)
[思考・行動]
1:協力者を集めてこの殺し合いを止め、V.V.を逮捕する。
2:シャドームーンを倒す
3:大量の死者を出してしまったことに対する深い罪悪感。
[備考]
※詳細名簿に追加された情報は連れて来られた時系列以外未定です、次の方にお任せします。
※水銀燈が話したのは夜神月に会ってからの話だけです。
【上田次郎@TRICK(実写)】
[装備]君島の車@スクライド、ベレッタM92F(10/15)@バトルロワイアル(小説)
[支給品]支給品一式×4(水を一本紛失)、富竹のポラロイド@ひぐらしのなく頃に
デスノート(偽物)@DEATH NOTE、予備マガジン3本(45発)、上田次郎人形@TRICK
雛見沢症候群治療薬C120@ひぐらしのなく頃に、情報が記されたメモ、
浅倉のデイパックから散乱した確認済み支給品(1〜3)、銭型の不明支給品(0〜1)
[状態]額部に軽い裂傷(処置済み)、全身打撲
[思考・行動]
0:山田……
1:Lに協力する。
2:シャドームーンを倒す……?
※東條が一度死んだことを信用していませんが、Lが同じ事を言うのでちょっと揺らいでます。
【水銀燈@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]ローゼンメイデンの鞄@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式×6(食料以外)、しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒、双眼鏡@現実、
首輪×2(咲世子、劉鳳)、着替え各種(現地調達)、シェリスのHOLY隊員制服@スクライド、
農作業用の鎌@バトルロワイアル、前原圭一のメモ@ひぐらしのなく頃に、
カツラ@TRICK、カードキー、知り合い順名簿、剣心の不明支給品(0〜1)、ロロの不明支給品(0〜1)
三村信史特性爆弾セット(滑車、タコ糸、ガムテープ、ゴミ袋、ボイスコンバーター、ロープ三百メートル)@バトルロワイアル
[状態]睡眠中、疲労極大、右目にヒビ割れ、右眼周辺に傷、左脚欠損、強い恐怖
[思考・行動]
1:シャドームーンを倒すまではLに協力する。
2:キングストーンに興味。
3:出来る事ならば、優勝を目指す。
[備考]
※ゾルダの正体を北岡という人物だと思っています。
※nのフィールドに入ろうとすると「入ろうとする意思そのものが消されてしまう」ようです。
※Lが話したのは彼が知っている危険人物についての情報だけです。
※高荷恵の傷薬、石田散薬、包帯はすべて消費しました。
※残った不明支給品は八人全員が確認しました。
※シアン化カリウム@バトルロワイアルは複数個のカプセルに入れ替えました。
※知り合い順名簿の順番は【真・女神転生if…】が【ヴィオラートのアトリエ】の前に来ています。
【石田散薬@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚】
劉鳳に支給。
新撰組副長である土方歳三の実家が製造、販売していた傷薬。
多摩の浪人であった時代に土方歳三が剣術修行のついでに売り歩いた代物。
打ち身、骨折によく効き、熱燗の日本酒で飲むことが推奨されていた。
るろうに剣心本編では斎藤一が薬売りに化けて神谷道場に訪れた際に登場した。
【白梅香@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚】
北条沙都子に支給。
雪代縁の姉である雪代巴が愛用していた香水。
【神崎優衣の描いた絵@仮面ライダー龍騎】
園崎魅音に支給。
幼少の頃に神崎優衣が描いた絵が箱詰めされてある。
怪獣の姿は全てがミラーモンスターである。
【サバイブ(烈火)@仮面ライダー龍騎】
ストレイト・クーガーに支給。
これを使用することで、仮面ライダー龍騎が仮面ライダー龍騎サバイブへと進化する。
なお設定上はリュウガもこのカードを使用することでサバイブ体になれる。
支援
C
投下終了です
誤字、脱字、矛盾等のご指摘お願いします
長時間支援していただき、ありがとうございました
おかげで規制に引っかかることなく投下することができました
支援
大作投下乙です!!
気になるところは城戸真司のサバイブが疾風になっています
投下乙です
>「真紅が私と一緒に居たい、だなんて……そんなこと、思うはずがないじゃない」
この台詞が一番印象深かった
>>709 あ……ミスですねorz
指摘ありがとうございます
投下乙!
感想はまた後で言うとして、ミスを発見したのでそれの指摘を。
>>691で真紅が第六ドールになっていますが、第六ドールは雛苺で真紅は第五ドールです。
投下乙!
上田かっけえ!!全部上田に持っていかれた!!
やっぱ上田先生はキメるときはキメるな
奈緒子の死体に語りかけてる時だけは、まるで真面目な大学教授キャラみたいだわ
龍騎とナイトはサバイブ入手したか
一応北岡先生も生き残ってるから、もしかしたら龍騎、ナイト、ゾルダで揃い踏みできる…かも?
>>713 まだオデンとベルデのデッキもある(震え声)
キャラ的にはベルデはルパンに使ってほしかったなー
投下乙です!
こちらも感想は再読してからにして、指摘としては
>>611 三村は仰向けに倒れていたと思います。
>>712 >>715 指摘ありがとうございます
>>691 >口に出たのはローゼンメイデン第五ドール真紅のことだった。
>>611 >死体についた焼けた傷口から、Lは背後から刃物で貫かれて死亡したと判断した。
に修正です、度々すいません
乙
なるほど、キングストーンをこう使いますか、しかもBlackも絡めて。
一人と二体の資格者の内、だれが太陽のキングストーンを入手するのか……。
改めて投下乙!
支給品から情報まで丁寧に整理されて、本当にもう終盤なんだなぁ…!
縁と因縁があるC.C.の手に白梅香が渡ったのも胸熱。
みんなかっこいいけど、最後の最後で全部持ってった上田ぁ!!
情報交換の間は余計なことしかしてなかったくせにふざけんなかっこいいwww
後藤も影月も健在な中、対主催が一致団結した希望の見える話だった。
細かい指摘として
>>599 「病院に入るか。目立つが、現場で話した方がおLも都合がいいだろう」
おL→お前
>>616 現実を受け止めらないあまり、精神を壊さなければ生きられない人間もいる。
止めらない→止められない
>>631 鳥の片翼の周囲に炎が待っている、よく見慣れた特徴的なカードだ。
待っている→舞っている
>>638 ロロ・ランペルージにのみ支給された、名簿に乗った
途中で途切れてる?
>>663 「全員の治療しておきましょう。正直な話、痛くて痛くてもう気絶しちゃいそうなんです」
全員の治療を、または全員を治療?
>>681 冷徹とは強張った顔をしていることではなく、感情のない表情を浮かべることなのことなのかもしれない。
「ことなの」が重複
翠と銀、どちらもらしいやり取りでした。
投下乙!
いざ感想書こうと思ったら書きたいこといっぱいありすぎて逆に書けなかった
なんというかまさにタイトル通りの話だったと思う
互いに再会して、支給品を検分して、主催について推測して、最後にシャドームーンと戦う準備をする
サバイブ烈火&疾風が揃ったってことは、多少なりともシャドームーン相手にも勝ち目が見えてきたのかねぇ
龍騎サバイブ、ナイトサバイブ、翠星石、水銀燈の四人が戦力だけど、これで負けるってのはちょっと考えたくないな……
C.C.、L、上田も支給品を駆使してなんとか頑張って欲しい
そして今回は今まで触れられなかった面にもどんどん触れたなー
同郷の仲間を全て失ったクーガーに、山田を失った上田
特に今までが今までだった分、上田は余計シリアスに見えたな
話し合いの最中ではやたらと『なぜベストを尽くさないのか!』やってて笑ったけどさww
翠星石と水銀燈のやり取りも本当に良かった
原作でも最初は啀み合ってたけど、最近は何だかんだで共闘してるんだよなー(雪華綺晶がヤバすぎるせいもあるけど)
今回のやり取りは原作を読んでるみたいだった
ちょっと笑っちゃったのが男たちの治療のシーン
クーガー、ヴァン、上田、L、真司が一箇所に半裸で揃ってるシーンとかあんまり想像したくねぇwwwww
多ロワ史上最もむさ苦しいシーンだったと思う、これもV.V.や薔薇水晶は見てたのかねwww
でもそんな中でもクーガーと真司のやり取りは胸に来るものがあった
つかさもそうだけど、真司も劉鳳を殺しちゃったことをずっと悩んでるんだよな
それでカズマやクーガーに接して、自分なりの贖罪の方法を見つけに行ってる
クーガーの
「ただ、お前は南光太郎でも劉鳳でもない。お前はあくまで城戸真司だ」
「だから、お前は城戸真司のまま仮面ライダーを名乗ればいい」
この二つの台詞は49話で大久保編集長が送った言葉のように聞こえた
やっぱりクーガーは最高の兄貴だ!
>>718 ご指摘ありがとうございます、修正させていただきました
>>638は
>ロロ・ランペルージに支給されていた、知り合い順で名前が書かれた特殊な名簿。
です
度々申し訳ありません
投下乙です。
キングストーンとローザミスティカが同質かもしれない。
これは、光太郎のキングストーンで人形2人がパワーアップするかもしれず、反対にシャドームーンがローザミスティカを取り込めるかもしれないという、まさに「知恵は希望と絶望の両側面を持っている」ってことですね。
予約またきたあああああ
っていうかついにくるか、正直なんかメインストリームから外れてぼっちというか
孤立するとか思ってた後藤さんが!w
正直、主催がらみのごたごた一切絡んでないよね、後藤さん……w
>>723 シャドームーンも追加で頂上大激戦をやろう(便乗)
キングストーンの新たなフラグかぁ…楽しみだな
んでも、イデオが危険人物認定されてて、かつレナも怪しく思われてるときに、当人二人がセットになってるんだよなぁ…
今ふと思ったが黒幕がカギ爪の男って線もあるな
さらに予約来てたぁぁ
最近は例えるなら文化祭の準備前の様なワクワクが続いていい感じだなぁ
城戸真司、翠星石、ストレイト・クーガー、ヴァン、C.C.、水銀燈、L、上田次郎、後藤を投下します。
その瞬間は、何の前触れもなく訪れた。
総合病院に集まった八人。
全ての準備を終え、ストレイト・クーガーはズーマーに跨って残る七人に別れを告げる。
七人はクーガーを送り出しながら、自分達もまた動き出そうとする――正門近くでの、そんなやり取りの中。
風を切る音に最初に気付いたのはクーガーだった。
バイクから飛び降り、一番近くにいた上田次郎とLを抱えて飛び退る。
次いでヴァンが宵闇の中で沸いた悪寒に対し動物的な勘で反応し、隣にいたC.C.の手を乱暴に引く。
微かに遅れて水銀燈が羽を広げて宙に舞い上がる。
城戸真司は気付きながら、体の痛みですぐには動けなかった。
それを察した翠星石が真司を突き飛ばす。
この間、僅か数秒。
その数秒の間に、最強の生物が翠星石の頭上に現れる。
「ッ、手が掛かるわね……!!!」
水銀燈が黒い羽根を飛ばして翠星石を押し退ける。
誰もいなくなったその場所に、後藤の巨体が着地した。
衝撃で地面が罅割れるも、当の本人――後藤の表情は涼しげだった。
「ここにいたか」
淡々とした機械的な音声。
直接出会った事があるのがクーガーと水銀燈のみであっても、誰もがすぐに理解した。
これが後藤という生物であると。
クーガーがラディカル・グッドスピード脚部限定を形成し、ヴァンが刀を抜き、真司がデッキを掲げる。
その臨戦態勢に入る為の動作の間に、後藤は躍動していた。
しなやかで、人間のそれを遙かに上回る強靱な筋肉。
その運動エネルギーを最も効率良く利用出来る姿勢と動きを、後藤はこれまでの戦闘から学んでいる。
無駄のない、美しいとすら言える跳躍だった。
後藤の視線の先にはクーガー達から最も離れ、かつ姿勢の崩れていた人物――水銀燈がいる。
標的にされていると気付いた水銀燈は、回避は間に合わないと判断。
大量の黒い羽根を盾のように目の前に展開する。
しかし後藤はそれを、蹴り抜いた。
紙と何ら変わらず、僅かな足止めにすらならず、盾が破られる。
そして盾を破ったのとは別の足が、伸びた。
人間では有り得ない長さの間合い、更に後藤は足裏に鋭い棘を形成して水銀燈の胸を穿った。
後藤は水銀燈の腹部が空洞である事は知っている、故に同じ轍は踏まない。
棘が刺さっても蹴りの勢いは止まらず、水銀燈は病院の外壁へ縫い留められた。
「ぁ……ッ」
掠れた声を漏らすと共に目を見開き、幾度か体を震わせる。
翠星石の方へ向けた視線は弱々しく、口を開きかけるも言葉にならない。
そして水銀燈は動かなくなった。
一瞬、突然の出来事に誰もが放心し動けなかった。
油断していたわけではない。
ただ何ら躊躇も前置きもない殺戮に、誰もが置き去りにされたのだ。
「ああぁぁあああああああああああぁあぁぁああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
翠星石の叫びが闇夜に劈く。
地面から生えた蔦が後藤に向かって伸びるが、後藤は事もなげにそれを回避した。
支えを失った水銀燈の体が落下し、地面に叩き付けられる寸前に真司が受け止める。
翠星石が駆け寄ると水銀燈の胸が輝き始めた。
「水銀燈っ、水銀燈っ!!!」
涙を落としながら呼び掛ける翠星石の胸に、水銀燈の胸から生まれた虹色の目映い輝きが吸い込まれていく。
「あ、ぁ、ぁ、あ、」
物言わぬ人形となった水銀燈を前に、翠星石は動けない。
その無防備な背に牙を剥く後藤にクーガーが蹴りを放ち、ヴァンが斬り掛かるがそれぞれ一本ずつの刃で受け止められた。
そして翠星石に迫る残りの二本の刃を止めるべく、真司が割れたガラスにデッキを翳そうとする。
「いけません!!」
鋭い制止の声に動きを止めた真司に代わり、翠星石と後藤の間に割って入ったのはLだった。
女神の剣で後藤の刃を弾き、続ける。
「貴方がここで変身したら、誰がシャドームーンを倒すんですか……!!」
クーガーが後藤の刃を捌き、胴体に蹴りを入れる。
後藤は反対方向に跳んで蹴りの威力を消すが、これで後藤は一同から距離を取る事になった。
そしてクーガーが後藤の前に立ち塞がる。
「行ってくれ。こいつの相手は俺なんだ」
「だけど……!!」
一人残ろうとするクーガーに、真司が食い下がる。
だがクーガーは首を横に振った。
「お前が俺の立場なら、退かないだろ?」
真司は息を飲み込み、何も言えなくなる。
「俺が遅かったせいで、守れないもんばっかりだ。すまん。
だから……こいつと決着をつけるのが俺のけじめで、約束なんだ」
「行ってくれ」と、クーガーはもう一度言う。
自身への怒りで震えて動けなくなった真司に代わり、他の者達が動いた。
上田がデイパックから取り出したトランクに水銀燈を寝かせる。
ヴァンは呆然としていた翠星石を抱えて走り出し、C.C.が水銀燈のデイパックを回収ながら真司の手を引く。
「行くぞ、もたもたするな!」
「……っ」
引かれる力に抵抗出来ないまま、真司は歯を食い縛る。
何も出来ない、その代わりに真司はクーガーの背に向かって叫んだ。
「それ!! 大事に使えよな!!!」
オレンジ色のバイク。
真司が愛用していた品だ。
遠ざかる真司のその声に、クーガーは振り返らずに手を挙げて応える。
隠してあった車の運転席に上田が、助手席にLが乗り込む。
後部座席に真司が乗り、ヴァンはその隣りに翠星石を押し込んだ。
そしてC.C.がエンジンを掛けたバトルホッパーにヴァンが乗り込み、上田がそれを確認してから車を発進させる。
やがてエンジン音が離れ、病院の周囲が静寂に包まれた。
クーガーは「悪いな」と呟きながらズーマーに手を置く。
「車もバイクも実に文化的だが――俺が使うのは一回限りだ」
ズーマーが消える。
目を隠していたサングラスも同様に消失する。
代わりにクーガーの全身、爪先から頭部までの全てが装甲に覆われた。
空気抵抗を極限まで抑える流線型。
速さを求めたクーガーのアルターの、本来あるべき姿。
クーガーの命さえ削る最速の力、フォトンブリッツ。
アルター化させるものは、地面だろうとバイクだろうと構わない。
だがアルターは己の欲望、意志、エゴそのもの。
想いの強さが力に直結する。
悪・即・斬を掲げた斎藤一に縁あるサングラスでなければ。
ジェレミア・ゴットバルトから受け取った、城戸真司の愛車でなければ引き出せない力がある。
「待たせたな」
一部始終を見守っていた後藤に呼び掛ける。
二人の戦い、一度目は斎藤一と平賀才人の死で終わった。
二度目は志々雄真実の訪れで中断された。
三度目は今。
四度目はないと、互いに確信している。
託された想いを。
守れなかった、死なせてしまった人々への己の想いを胸に、クーガーは吼える。
「見せてやる……文化の真髄をッ!!!」
▽
ローザミスティカ。
ローゼンメイデン達にとっての命とも呼べる奇跡の石。
水銀燈のローザミスティカは翠星石と同化した。
同時に翠星石の中に、水銀燈の感情が流れ込む。
シャドームーンに植え付けられた畏怖、踏み躙られたプライド、そして――
――たった七人の姉妹、どうして嫌いになれるですか。
翠星石の言葉は確かに水銀燈に届いていた。
そっぽを向いて、可愛げのない視線を送って鼻を鳴らして、それでも。
どこかに確かに、姉妹への愛があった。
真司の隣りで、翠星石ははらはらと涙を零す。
胸に宿る四つのローザミスティカの温かさが悲しみをより深いものにする。
運転する上田も動かなくなった上田次郎人形を膝に置き、水銀燈の喪失を噛み締めていた。
シャドームーンを倒す為にと協力を要請したLも、他の三人も、口を閉ざし無言のまま己の無力を嘆く。
だが翠星石の涙には、他にも理由がある。
「いいんですか」と尋ねる上田にLは「いいんです」と簡単に返した。
重苦しい空気。
既に全員が気付いている。
バトルホッパーで並走するヴァンとC.C.はわざと明後日の方向を見て、上田はハンドルを握る手を震わせ、真司は唇を噛み、翠星石は目を伏せる。
「翠星石さん、私は貴女に謝らなければいけません」
そんな空気に気付いていないとでも言うように、普段通りの口調でLが話し始める。
「私の考え方は、貴女には心ないものに映ったと思います。
それに貴女の姉妹を助けられなかった。
ですが、これが私の正義なんです。
……私の事を、許してくれますか?」
「ぃ、今、そんな話をっ……」
翠星石がスカートの裾をキュッと掴んで言い返す。
しかしLは意に介さない。
「大事な話なんです。
貴女のような可愛らしい女の子に露骨に嫌われて、私はこれでもかなり傷付いたんです。
許してくれるのかくれないのか、どっちですか」
真面目なのか不真面目なのか分からないLの喋りに、翠星石はやはり苦手だと感じた。
それでも顔を上げ、助手席に座るLに向かって言葉を投げ付けた。
sie
sie
「っ……こ、これで許さなかったら……翠星石が悪いやつみたいじゃねえですか……!
許、してやるから……ありがたく、思えですぅ……!!」
「……ああ、それは良かった」
満足げに、うっすらと口元に笑みを浮かばせてLは目を閉じる。
車内に満ちるのは血の匂い。
後藤の刃の一本がLの腹を割いていた事を、全員が気付いていた。
停車させて応急処置をしても手遅れだと分かっていた。
「このっ……バカ……ッ!!!」
この会場に残っていた最後の姉妹と、気に入らないながらも協力し合っていた仲間を一度に失った。
翠星石の涙が落ちていく。
とめどなく頬を濡らしていった。
だが翠星石とて、ただ泣き続けるだけで終わるはずがない。
父より授かった体を傷つけられ、プライドをズタズタにされ、一矢報いる事すら出来なかった水銀燈。
この殺し合いで失われた命に対し誰よりも責任を感じながら、最後まで見届けられなかったL。
二人とは終ぞ分かり合えなかった翠星石だが、彼らの無念に何も思わずにいられるような脆弱さは持ち合わせていない。
それは真司も、ヴァンも、C.C.も、上田でさえも同じだ。
死んだ者達に報いたいという想い。
性格も住む世界も一致しない五人の思いは、確かに一つになっていた。
【水銀燈@ローゼンメイデン 死亡】
【L@DEATH NOTE 死亡】
【一日目真夜中/G−8 総合病院付近】
【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]庭師の如雨露@ローゼンメイデン、真紅と蒼星石と水銀燈のローザミスティカ@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式(朝食分を消費)、真紅のステッキ@ローゼンメイデン、情報が記されたメモ、確認済支給品(0〜1)
[状態]身体中に強い鈍痛、疲労(中)、首輪解除済み
[思考・行動]
1:真司達と同行し、殺し合いを止める。
2:真紅が最後に護り抜いた人間に会い、彼女の遺志を聞く。
[備考]
※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。
※真紅のローザミスティカを取り込んだことで、薔薇の花弁を繰り出す能力を会得しました。
【城戸真司@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎
[所持品]支給品一式×4(朝食分と水を一本消費)、確認済み支給品(0〜2) 、劉鳳の不明支給品(0〜2)、発信機の受信機@DEATH NOTE
首輪(剣心)、カードキー、神崎優衣の絵@仮面ライダー龍騎、サバイブ(烈火)@仮面ライダー龍騎
[状態]身体中に激しい鈍痛、疲労(大)、劉鳳を殺してしまったことに対する深い罪悪感、志々雄への嫌悪、応急処置
[思考・行動]
1:人を守る。
2:右京の言葉に強い共感。
3:翠星石達と同行し、殺し合いを止める。
※絶影を会得しました、使用条件などは後の書き手の方にお任せします。
※クーガー、C.C.らと情報交換をしました。
【ヴァン@ガン×ソード】
[装備]:薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-、バトルホッパー@仮面ライダーBLACK
[所持品]:支給品一式、調味料一式@ガン×ソード、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎
[状態]:疲労(小)、右肩に銃創、右上腕部に刀傷、各部に裂傷、全身打撲、応急処置
[思考・行動]
0:とりあえず前に進む。
1:カギ爪の男に復讐を果たすためさっさと脱出する。
2:C.C.の護衛をする。
3:次にシャドームーンに会ったらバトルホッパーを返す。
[備考]
※まだ竜宮レナの名前を覚えていません。
※C.C.の名前を覚えました。
【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ R2】
[装備]:ファサリナの三節棍@ガン×ソード、黒の騎士団の制服@コードギアス 反逆のルルーシュ
[所持品]:支給品一式×4、エアドロップ×2@ヴィオラートのアトリエ、ゼロの仮面@コードギアス、ピザ@コードギアス 反逆のルルーシュ R2、
カギ爪@ガン×ソードレイ・ラングレンの中の予備弾倉(60/60)@ガン×ソード、白梅香@-明治剣客浪漫譚-、確認済み支給品(0〜1)
[状態]:健康、首輪解除済み
[思考・行動]
0:レナと合流したい。
1:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない。
2:後藤、シャドームーン、縁、スザク、浅倉は警戒する。
3:ジェレミアの事が気になる。
[備考]
※不死でなくなっていることに気付いていませんが、回復が遅い事に違和感を覚えています。
※右京、ルパンと情報交換をしました。
※クーガー、真司らと情報交換をしました。
【上田次郎@TRICK(実写)】
[装備]君島の車@スクライド、ベレッタM92F(10/15)@バトルロワイアル(小説)
[支給品]支給品一式×4(水を一本紛失)、富竹のポラロイド@ひぐらしのなく頃に、デスノート(偽物)@DEATH NOTE、予備マガジン3本(45発)、
上田次郎人形@TRICK、雛見沢症候群治療薬C120@ひぐらしのなく頃に、情報が記されたメモ、浅倉のデイパックから散乱した確認済み支給品(1〜3)、
銭型の不明支給品(0〜1)、ローゼンメイデンの鞄@ローゼンメイデン、水銀燈の遺体
[状態]額部に軽い裂傷(処置済み)、全身打撲
[思考・行動]
0:山田……
1:真司達に協力する。
2:シャドームーンを倒す……?
※東條が一度死んだことを信用していませんが、Lが同じ事を言うのでちょっと揺らいでます。
※水銀燈のデイパック(支給品一式×6(食料以外)、しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒、双眼鏡@現実、首輪×2(咲世子、劉鳳)、
着替え各種(現地調達)、シェリスのHOLY隊員制服@スクライド、農作業用の鎌@バトルロワイアル、前原圭一のメモ@ひぐらしのなく頃に、
カツラ@TRICK、カードキー、知り合い順名簿、剣心の不明支給品(0〜1)、ロロの不明支給品(0〜1)、
三村信史特性爆弾セット(滑車、タコ糸、ガムテープ、ゴミ袋、ボイスコンバーター、ロープ三百メートル)@バトルロワイアル)をC.C.が、
Lのデイパック(支給品一式×4(水と食事を一つずつ消費)、ニンテンドーDS型詳細名簿、アズュール@灼眼のシャナ、角砂糖@デスノート、
情報が記されたメモ、S&W M10(5/6)、S&W M10の弾薬(18/24)@バトル・ロワイアル、首輪(魅音)、シアン化カリウム@バトルロワイアル、
イングラムM10(0/32)@バトルロワイアル、おはぎ×3@ひぐらしのなく頃に、女神の剣@ヴィオラートのアトリエ、DS系アイテムの拡張パーツ(GBA)、
才人の不明支給品(0〜1)、ゼロの剣@コードギアス)を上田が回収しました。
▽
「お前は、面白い人間だ」
「そいつはどうも」
後藤のシンプルな感想に、クーガーは素っ気なく返す。
クーガーがこれまでの戦闘で見せていない力、工夫が見られる――後藤は高揚していた。
いつでも動けるように膝を軽く曲げ、相手の動きを待つ。
sie
支援
クーガーは地面に片膝を着き、上体を沈めた。
どんなに鍛えようと訓練を積もうと、生身の人類には決して到達し得ない最速のクラウチングスタートを切る。
地面を抉る程の力強い踏み込み、視線は真っ直ぐに後藤へと向けられていた。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
最速の走り出しから即座にトップスピードへ。
そしてその速さのまま、後藤に飛び蹴りを入れる。
「確かに、速い」
賛辞に近い言葉を述べながら後藤はギリギリまでクーガーを引き付け、その上で最小限の動きで蹴りを避けた。
避けられても止まる事なく後藤と擦れ違うクーガー。
その背に後藤は四本の刃を同時に叩き付ける。
響くのは肉の裂ける音ではなく金属音。
アルターによって形成された装甲を突破出来ず、刃は弾かれて行き場を失った。
「硬い」
微かな驚嘆の混ざった声には反応せず、クーガーは着地した足の膝を折り曲げる。
勢いは未だ止まらずにガリガリと地面を削っているが、構わずに一気に足を伸ばした。
溜まった力を解放し、跳ぶ。
高く高く舞い上がり、そこから直下の後藤に向かって高速で落下した。
「はぁあッ!!!」
後藤はそれも寸でのところで回避し、クーガーの蹴りは地面を砕くに終わった。
土煙にクーガーの姿が隠れる。
そして砂塵の壁を破ってクーガーの爪先が見えた。
半ば奇襲となったその一撃は、しかし後藤への決定打にはならない。
後藤はクーガーの姿が見えなくなってすぐに刃を盾に変形させて待ち構えていた。
クーガーの蹴りを受け止め、同時に受け流す。
蹴りは滑るように軌道を変え、逸らされた先の地面へ突き刺さった。
クーガーは自身の足の刺さった地面を砕き、後藤の蹴りを避けながら跳躍して距離を取る。
更に爪先でトントンと地面を叩いて挑発した。
「おいおい、逃げるばっかりか?
そんなもんじゃあ俺は倒せないぜ」
後藤は気付いていた。
クーガーはこの間の攻防だけで息が上がっている。
フォトンブリッツの性質を知らずとも、それが諸刃の剣である事を観察し考察していた。
このまま長期戦に持ち込めば後藤はクーガーに悠々と勝利出来る、故にクーガーは挑発して短期戦を狙っているのだ。
「確かに、そうだ」
そこまで分かった上で、後藤は挑発に乗る。
それは後藤が最強の生物である為だ。
『無敵』ではなく『最強』。
ただ殺すだけでは足りない、ただ食うだけでは足りない。
戦って相手を下し、勝利する。
戦う敵がいない孤独な『無敵』ではなく、全ての敵に勝る『最強』。
――後藤……排他的なお前ですら、弱者という他者を必要としている……強さを渇望し変化している。
田村玲子の、死の間際の言葉を思い起こす。
後藤の存在は、敵なくしては有り得ないのだ。
敵の全力を叩き伏せた上で喰らい、最強を証明する。
後藤は刃の形を変化させる。
支援
装甲を突破出来なかったのはこれが初めてではない。
場所は同じく総合病院、数時間前に戦ったジェレミア・ゴットバルトの半身を斬る事は叶わなかった。
だが「斬れなかった」で終わるのでは微温い。
両腕をそれぞれ枝分かれさせて四本腕にしていたが、片方の腕を束ねて強度を上げる。
更に装甲を貫く為に、鋭く変形させていく。
攻撃力を一点に集中させる、西洋の騎士が用いたランスを模した形状へ。
両者が踏み出すのは同時、クーガーが蹴りを、後藤がランス状の腕を振るうのも同時だった。
速さを武器にした者同士の全力の一撃で、辺りに風が巻き起こる。
拮抗した状況から先に引いたのは後藤だった。
強度が足りず砕かれそうになったランスを絶妙のタイミングで引き、クーガーは微かにバランスを崩す。
だがクーガーはそこから敢えて地面に向かって上体を倒し、両手で体を支えた。
そして振り上げた両足で連続して後藤の顎を狙うも、後藤も上体を反らして躱す。
クーガーが腕の力で跳ね、後藤から離れた地点に着地する。
再び仕切り直しとなった。
「まだ、足りないな」
単純に形状を変えただけではクーガーに届かない。
後藤にこそ『工夫』が足りない。
よって後藤は更なる変化を加える。
腕を変形させたランスに、螺旋状の切り込みを入れた。
そして再度踏み込む。
クーガーが繰り出すのは先程と同様の蹴り。
対する後藤は一拍堪えた。
一拍――一呼吸分、遅らせる。
向かってきた蹴りに後藤が下方から膝蹴りを加え、結果クーガーの足は高く振り上げられた。
空いた胴に向かってランスを突き出す。
クーガーは両腕を交差させて構え、それを受け止めた。
それだけでは刺さらないと後藤も理解している。
だから、工夫する。
その状態のまま後藤は、肘から先を回転させた。
「ッ!!」
クーガーの装甲の下から息を呑む音が聞こえる。
後藤は変形を急速に、数秒以上に渡って行う事で人間の使う道具、ドリルを真似たのだ。
突く力に回転の力が加わり、ギャリギャリという耳障りな音と火花が散った。
クーガーが振り上げた足で踵落としを狙うが、そちらは後藤の残る二本の腕で受け止める。
そして音が変わる。
バキン、という音がクーガーの腕の装甲を砕いた。
クーガーが体を支えていたもう一本の足を振るい、ドリルを蹴り上げる。
蹴った勢いで離脱しようとするが、出来ない。
二本の腕に受け止められた脚がそのまま絡め取られていたのだ。
地に足が着かない、腕も着かない不安定な体勢。
後藤は腕を振るい、渾身の力に遠心力を加えてクーガーの背を病院外壁へ叩き付けた。
「ガッ……」
外壁に、そしてフォトンブリッツの装甲の背中側に走る亀裂。
クーガーの苦悶の声と体の動きからダメージを確認した後藤は追い打ちを掛ける。
走る速度を上げ、滑らかな体重移動で姿勢を整えた後藤の姿は砲弾に似ていた。
壁に寄り掛かり息をつくクーガーに体当たりを浴びせれば、元より半壊していた壁の亀裂が広がり、砕ける。
壁を突き破り、クーガーは病院内部へ叩き込まれた。
床を転がったクーガーは起き上がらない。
ドリルに突かれた箇所は生身の腕にまで達して出血している。
動けずにいるクーガーを追って、後藤は余裕をもって病院の中へと移動した。
「これは疲れる。
だが、悪くない」
しぇん
支援
sie
sie
螺旋状の腕に視線をやりながら後藤は言う。
常に回転させていなければ威力を発揮しない燃費の悪い攻撃ではあるものの、確かな成果があった。
人間如きの真似をするのに嫌悪感がないでもないが、『工夫』の一点においては人間が優れている事も認めている。
故に、人間の工具を模倣したこの攻撃方法も悪くないと感じていた。
その間にクーガーが緩慢な動作で立ち上がる。
周囲の床や壁をアルター化させて装甲の亀裂を補強した。
ふらつきながら、それでも後藤に向かい合う。
「まだまだ……足りないな」
「しぶとい人間だ」
後藤が跳ぶ。
天井にぶつかり、天井を蹴る。
壁に衝突し、壁を蹴る。
床に着地し、床を蹴る。
病院の狭い廊下の中で、後藤が縦横無尽に跳ねる。
後藤の速さは空間の限られた屋内でこそ発揮されるのだ。
クーガーと交錯する一瞬だけドリルを回転させ、クーガーの肩を掠めた。
それだけでは装甲は剥がれない、しかし掠り傷も重なれば話は変わる。
腕、肩、脚、背、クーガーに防御され回避されながら、少しずつ削り落として行く。
補ったばかりの装甲は瞬く間に無残な傷に覆われ、やがて剥がれて生身の体が露出した。
しかしそこで後藤は攻める手を緩めた。
喰らい付き引き千切る事も出来る相手を前に、退く。
そして後藤の胸があった箇所を蹴りが掠めて行った。
クーガーは攻撃を受けながら反撃の機会を窺い、後藤が深く踏み込んでくる瞬間を待っていた――後藤はそれを読んでいた。
この程度の浅知恵では後藤には勝てない。
だが、後藤にとっての計算外が一つ。
掠めただけのその蹴りで、後藤は体勢が崩れた。
先程までよりも蹴りの威力が上がっているのだ。
後藤の攻撃を受けて弱っているはずが、逆の事が起きていた。
その崩れた姿勢へクーガーが追撃を加えてくる。
「はああああああああああああ!!!!!!!」
大振りな蹴りの連続。
しかし受け流そうとして触れた腕が弾かれた事で、威力の上昇が偶然ではないと知る。
クーガーの蹴りが遂に後藤の腹を捉えた。
後藤はその一撃に、後方に向かって跳ぶ事で内臓への衝撃を小さくする。
それでも、強い。
後藤は手足を広げ、天井や床に鈎に変形させた手足を突き立てる事で止まった。
パラサイトに痛覚がなくとも、今の一撃が危険なものである事は理解出来る。
後藤が様々な経験や工夫を吸収し重ねる事で強くなるのとは別に、クーガーもまた強化されていた。
「俺はな……負けられないんだよ。
約束を抜きにしてもな」
傷付いた装甲を、クーガーは補わない。
後藤の推測通りノーリスクで出来る事ではないからだ。
ボロボロの姿を隠しもせずに、数分前と同じようにトントンと爪先で床を叩く。
「あの出来の悪いカズマの大馬鹿野郎、勝手にさっさとあっさり死にやがった。
劉鳳や社長なんてとっくの昔だ。
かなみちゃんまで無理したらしい、カズマの馬鹿から妙な影響受けたんじゃないか?
かがみさんから任されたってのに、こなたさんは説得出来なかったしみゆきさんもみなみさんも会う前に死んじまった。
ここに来てから会った他の連中だって、今となっちゃあ生きてる奴らの方が少ないぐらいだ」
早口で捲し立てる。
sie
名前を間違えない、間違えても反応してくれる相手がいないこの場では間違える意味が無い。
独り言のように、後藤が聞き取れなくても構わないと言わんばかりに喋り続ける。
「俺はいつ死んだって後悔しない、そういう生き方をしてるんだ。
なのに死ぬのは俺の周りの連中だ、優秀な連中だ、性格の良い連中だ、もっと長生きしなきゃならない若い連中だ、未来がある連中だ。
お前が殺した真紅さんも! 水銀燈さんも! 斎藤さんも! サイトってガキも!
何かやらかしたってんならやり直しゃいいそれが文化ってもんだ、だが死んだらそれすら出来ない!!
俺にはそれが、許せない!!!」
クーガーは後藤に返事は求めない。
反省も促さない。
元より期待していない。
早口に、早口に、加速していく。
トントン、と叩いた床が砕けた。
装甲に隠れたクーガーの表情は誰にも見えない。
「俺がどんなに速くなっても死んだ連中は取り戻せない。
けどな今生きてる連中は助けられるんだ、だから俺は速くなるまだだもっとだもっと速くなる。
今の速さでお前が倒せないならもっと速くなってお前を倒して今生きている連中を元の世界に帰してやるのが俺の義務であり責務であり任務であり兄貴分としての役目であり、俺のッ、生き様なんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!」
言い終わるよりも早くクーガーは走り出す。
フォトンブリッツがクーガーの意思に呼応してより鋭いデザインへ変化した。
アルターは己のエゴを押し通す力、想いの力一つで今ある枠を叩き壊す。
意思なくして文化なし、文化なくしてクーガーはない。
クーガーのアルターはクーガーの我を通す為に、意思の力で『進化』する。
一歩一歩が床を踏み砕き、走って生まれた風が壁を崩す。
突き出された蹴りを見て、後藤は――恐怖した。
志々雄によって一度植え付けられた感情、恐怖。
それを思い出した。
三木のように、田村玲子のように、今まで食ってきた生物達のように、死ぬ。
そう想像させる一撃が眼前に迫っていた。
「ガアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
しかし、それで思考停止する後藤ではない。
むしろ逆――恐怖と同時に湧き上がったのは三木を切り取られた際の熱と痛み、怒り。
感情に乏しい寄生生物でありながら、後藤はその昂ぶりを爆発させる。
――後藤に命じる。
呼び起こされるのは封じられていたはずの記憶。
会場に連れて来られる際に掛けられた、銀髪の少年によるギアス。
――私に大人しくついて来い。
――そして会場に着いたら『他の参加者に手加減し』、私の事は忘れろ。
後藤の力に掛けられた制限。
腕を振るう速度、足を硬質化させて走った際の速度が大幅に縛られていた。
だがギアスは強靭な意思によって解かれる。
ユーフェミア・リ・ブリタニアが一時的であれルルーシュの命令を拒絶したように。
ナナリー・ヴィ・ブリタニアがシャルルのギアスを破って開眼したように。
クーガーが意思の力でアルターを進化させたように、後藤もまた意思の力でギアスを握り潰し、本来の能力を解放する。
後藤は最強の生物。
田村玲子にか弱いと称されながらも多くの命を屠ってきた存在。
ただの人間では太刀打ちしようのないパラサイト達の中でも異端と呼べる、怪物の中の怪物。
クーガーの必殺の一撃を紙一重で躱し、擦れ違い様に露出した肩に刃を突き立てる。
「ぐぁあっ……!!」
sie
sie
sie
支援
支援
如何にアルターが強化されようとその内側は生身の人間だ。
血が噴き出し、スピードも目に見えて落ちる。
その隙を逃さずに後藤は束ねた一本の腕で拳をつくって顔面を殴り抜いた。
ドリルを形成して装甲を突破するよりも、面での衝撃を与えた方が早いという判断だ。
壁に打ち付けられたクーガーの腹に蹴りを入れる。
当然それだけでは装甲に傷は付かないが、壁と後藤の脚に挟まれたクーガーがくぐもった声を上げた。
そして蹴りと拳を浴びせ続ければそれまでの亀裂が広がっていく。
制限から解放された、常人の目には映る事すら許されない攻撃は緩まない。
だが更に振り抜いた拳を、クーガーは掌で受け止めた。
押す事も引く事も出来ない、動かない。
「言ったろ……俺は負けられないってなぁああ!!!!!」
クーガーが身を仰け反らせ、勢いをつけた額を後藤の額に向かって打ち下ろす。
痛覚のない後藤に対しては無駄な行動、しかし確かに、僅かに後藤は怯んだ。
その僅かでクーガーには充分だった。
残る一方の手で手刀を作る。
散弾銃すらも受け止める後藤の『鎧』を打ち砕く為に、強く鋭く速く速く速く速く速く速く速く速く速く。
もっと速く、更に速く。
「俺は俺が選んだ俺の道をッ、貫く!!!!!」
後藤の腹に突き立てるだけでは止まらない。
クーガーは壁に押し付けられた状態から反対側の壁まで突っ込み、逆に後藤を叩き付けた。
後藤の背が壁に達した瞬間、後方へと逃し切れなくなった力が腹へ集中する。
この殺し合いが始まってから、クーガーは背負い続けて来た。
背負うものを増やし続けて来た。
今ここで勝てなければ背負う全てのものに対する裏切りになる。
もっと速く、もっと速く、その一念がアルターの出力を爆発させる。
「グォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
「があぁあああああああああああああああ!!!!!」
獣の叫びに似た両者の咆哮。
後藤が口を大きく開け、クーガーの肩に噛み付く。
装甲の上から歯を立て、肉を抉り、骨を砕く。
血を撒き散らしながらクーガーも止まらない。
「お、ぉ、おおおお、おおおおおおおお……!!!!」
もっと速く、もっと速く。
譲れない信念を握り締め、魂に火をつける。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ あ あ あ あ あ あ あ あ あ ! ! ! ! ! 」
クーガーの手刀が後藤の鎧を穿ち、腹を突き破る。
同時に後藤がクーガーの肩を食い破った。
二人が崩れ落ちる。
クーガーのアルターは砕け散って消え、後藤は血を吐いた。
互いに床を血で染めながら藻掻き、立ち上がって相手に止めを刺そうとする。
先に立ち上がったのは後藤だった。
心臓を刺され瀕死となった泉新一をミギーが救った時のように、手足のパラサイト達の肉片を腹に集め、強引に補ったのだ。
五体のパラサイト全てを完璧に御する後藤だからこそ出来る荒業で、傷を塞ぎ新たな鎧を纏う。
過剰な出血にざわめく他の四体のパラサイト達を力でねじ伏せる。
そして、腕を刃に変えた。
「人間如きが、ここまで手こずらせるとは――」
「……なぁ、俺は蹴りの方が強いんだ。
sie
支援
sie
支援
何で殴ったと思う?」
瀕死の状態で搾り出される声。
脈絡のないクーガーの言葉に、後藤は首を傾げた。
死に際の戯言だろうと、構わずに刃を振り上げる。
そこでクーガーの手から床にパラパラと零れた何かが目に留まる。
カプセル。
薬品。
他の四体のざわめきは、出血によるものではないと気付く。
後藤は目を見開いた。
「ま、俺の速さなら勝てるって分かっちゃたが……Lの顔も立ててやんなきゃな」
▽
「クーガーさん、聞いて下さい。
後藤についてです」
総合病院を出る直前に、Lはそう切り出した。
速さを信条とするクーガーとしては長話を聞く気はなかったが、Lの真剣な表情がクーガーをその場に留めた。
「寄生生物――人間等の他の生物に寄生して生きる生物。
裏返せば、寄生しなければ生きられない生物です。
そして話に聞いた田村玲子さん、そして後藤の特徴を照らし合わせると、共通して胴体は変形していない。
恐らく消化器系や呼吸器系は人間の体に依存していると、私は推測します」
「速さが足りない。結論は?」
「つまりですね」
最終的に何が言いたいのか、先を急かすとLは言われた通り端的に答えた。
「如何に強くとも、後藤も我々人間と変わらないという事です」
▽
後藤の腹を突き破った際、その体内にバラ撒いたカプセル。
Lはカプセルを重ねる事で時間差を作ろうとしていたが、クーガーは手っ取り早くその場でカプセルを握り潰していた。
カプセルの中身は青酸カリ。
胃酸と化学反応を起こし、呼吸器を麻痺させる。
拳に握れるだけ握った、致死量を遥かに上回る量の毒は数分と待たずに対象を死に至らしめた。
「グ、ガ、……」
後藤――五頭が寄生する肉体は死んだ。
しかし後藤は既に人体から自身を切り離していた。
クーガーの体を乗っ取る為、ではない。
最強の生物である為に。
己の中にある本能に、そして生まれた怒りに対し忠実に、クーガーを殺す為に。
刃を生やし、クーガーの首を狙う。
漸く起き上がったクーガーの反応は遅れていた。
「グォアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
だが後藤にとって予期せぬ方向から衝撃を受け、刃が逸れる。
クーガーは何が起きたのか確認するよりも先に後藤に向かって蹴りを入れた。
弾かれて転がった後藤は再度攻撃を試みるが、クーガーの踵が落ちてくる。
踏み潰され、蠢くうちに乾いていく。
「き……さ、ま……」
支援
しえ
支援
支援
sie
後藤の小さな口が憎々しげに言葉を吐き出す。
「たむ、ら、れい、こ……!!」
「言ったろう後藤。
私もお前もか弱い、呆気無い存在だと」
後藤は沈黙する。
何かを叫ぼうとしながら、遂に干乾びて朽ちていった。
【後藤@寄生獣 死亡】
▽
クーガーは伏していた。
血を流し過ぎた。
アルターを使い過ぎた。
ひたむきな自分が決めた、澱みなく真っ直ぐな道を、最速で駆け抜けた。
己のやるべき事をやり抜いて、もう一片の力も残っていない。
だがクーガーに呼び掛ける声があった。
耳元よりももっと近い、心に直接語り掛けるような距離だった。
「ストレイト・クーガー……だったか」
「誰だ、あんたは」
目を開けると病院ではなく、暗く広い空間にいた。
目の前には一目で人ではないと分かる、奇妙な形状の『もの』が立っている。
生物と呼んで良いのかさえ判別が付かなかった。
しかし目玉があり、口があり、クーガーに対し意思の疎通を図っている。
「頼みがある」
「おーおー、俺の荷物をこれ以上増やそうってか。
いいぜ、言ってみろよ」
どうせ終わった人生だ。
諦めている。
フォトンブリッツを使えばどうなるか、分かっていた事なのだ。
死に体の自分に出来る事があるというのなら、それぐらいやってやってもいいだろう。
一先ずは話半分に耳を傾ける。
『それ』は田村玲子と名乗った。
確かに後藤がその名を口にしていた事を思い出す。
そしてそれはC.C.の口から、ルパン三世と僅かな時間ながら同行していた人物として聞かされていた。
或いはLの口から、杉下右京と敵対した人物として。
クーガーには玲子を判断する為の材料が不足していた。
だが相手の真剣さは確かに伝わってきている。
パラサイトの事。
己の内にあった疑問と、ルパンによって示された回答、自らが至ったもの。
玲子は語る。
自身の死を体感する事で、この世の全てが生きていることを、細胞のひとつひとつが鼓動していたことを知ったのだと。
寄り添い生きる獣たち。
そして取り込まれた後藤の内側で放送を聞き、ルパンの死を知り、玲子は思ったのだ。
「人が死ぬのは……悲しい事だ」
支援
支援
しえ
何を今更分かりきった事を、と言っても相手はパラサイトだ。
むしろ後藤と同族でありながらその感情に至った事を、奇跡と呼ぶべきだろう。
田村玲子は多くの人を食って来たという。
だが、人が死ねばそれで終わりだ。
続きがなく、会話もなく、ただ孤独がある。
それが悲しいと気付いたこのパラサイトは、最早パラサイトよりも人に近いだろう。
もっとも人間とパラサイトを『寄り添い生きる獣』と称した玲子の前では、両者の距離を測る事自体がナンセンスと言えるかも知れない。
「生きてくれないか。
そして出来る事なら私もお前の、人間の隣人として歩ませて欲しい。
私は最強の生物の一部としてではなく、人間に寄り添って生きたいと思う」
最強の生物、後藤を討ち倒した強い人間。
己の意思を貫く強さを持った人間。
「未だに消えない疑問がある。
命の必然性……命はどこから現れ、どこへ消えて行くのか。
お前ならその答えを見せてくれると、信じたい」
己の道を貫くと、最強の生物を前に一歩も退かずに叫んだ人間を信じる。
その信じるという言葉すらも、この玲子というパラサイトの中に生まれたばかりのものなのだろう。
パラサイトとは自我を持って歩き始めたばかりの、赤子に等しい存在なのだから。
「そんなもんはあんたの好きにすりゃあいい……つっても、俺は生憎もう――」
「体の事は私が何とかしよう」
「あぁ?」
「そろそろ、時間だ」
玲子が背を向けて遠ざかって行く。
呼び止めても止まらず、追い掛けようとしても足が動かない。
そしてクーガーは目を覚ました。
目を開けると朽ちかけた病院に倒れていた。
起き上がって見回し、後藤に食い千切られた肩が元に戻っている事に気付く。
肩だけではない、腕も腹も、目立った外傷はどこにもなかった。
アルターを酷使してガタガタになっていた足でさえ、痛みが弱くなっている。
大量の出血で貧血こそ起こしているものの、クーガーは確かに生きていた。
「おいおい……」
死に損なっちまった、と小さく呟く。
死ぬ気で戦ってこれでは、肩透かしもいいところだ。
「はっ……はははは……」
拍子抜けし、笑いが漏れる。
かがみや詩音、こなたは呆れて溜息を吐くだろうか。
ヴァンやC.C.は大して驚かないだろう。
ジェレミアや斎藤なら皮肉を言ってきそうだ。
真司や上田達であれば、恥ずかしげもなく喜んでくれるかも知れない。
「ははははははは、ハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!」
笑いながら寝転び、仰向けに倒れたまま笑い続ける。
息が苦しくなるまで、どうせ近くに参加者はいないだろうと大声を上げる。
自分でも何がこんなにおかしいのか理解出来なかった。
「ああ……」
sie
支援
笑い疲れ、クーガーは自身の掌を見詰める。
外の街灯の明かりが微かに差し込むだけの闇の中、その手の中には確かに血が通っていた。
その手を胸に当てれば、二人分の命を背負った鼓動が力強く伝わってくる。
何人も死なせておいて、不謹慎だと思いながら。
それでも、自分以外の誰かに語り掛けるように言葉にする。
「生きてるって、いいもんだな」
心からそう感じた。
今更、分かり切った事を分かっていなかったのは自分の方なのかも知れない。
「だったらもう少しばかり、走ってやりますか……」
まだ走れる。
ならば走る。
最速の男は走り続ける。
「勿論、最速でな」
【一日目真夜中/G−8 総合病院】
【ストレイト・クーガー@スクライド】
[装備]:なし
[所持品]:基本支給品一式
[状態]:身体中に鈍い痛み、疲労(極大)
[思考・行動]
1:生きる。
2:北岡、ジェレミア、つかさ、レナを探す。
※総合病院にて情報交換をしました。
※ギアスとコードについて情報を得ました。
※真司、C.C.らと情報交換をしました。
※田村玲子が同化して傷を塞ぎました。アルターについては応急的な処置なので寿命が延びる事はありません。
それ以外の影響があるか否かは後続の書き手氏にお任せします。
支援
投下終了です。
誤字脱字、問題点等ございましたら御指摘戴ければ幸いです。
支援
支援
投下乙、投下乙、投下乙!!
おいいいいいいいい!? 銀ちゃああああああああああン!! Lウウウウウウウウウウウ!!
Lが命を張って……うーん、しかしLは許してもらえて幸せだったのだろうか。
そしてクーガーvs後藤! 熱い! 熱い!!
まさかの青酸カリ! ここでこう使ってくるとは!
田村寄生もなんというかもう言葉が無くってクーガーは背負っていくんだろうなあって
とにかく投下乙です!! 本当にお疲れ様でした!
投下乙です!
クーガー生き残ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
水銀燈とLが死んでしまった・・・
けど、Lは自分は直接戦闘に加わらなかったり光太郎の力を温存しようとしたりした結果
空回りして苦い思いをしてきたからこそ、
待ち構えるシャドームーン戦での希望を託して真司を戦わせず自分の命を犠牲に翠星石を助けたんだな
しかも青酸カリも含め、先のことまで考えてさ
「自分が勝つ」でなく「皆が勝つ」ことを考えていたんだろうと思うと泣ける
そして後藤は桐山とキルスコアを並べて陥落か
投下乙!
まさか青酸カリがここで生きるか、素直にすげえ感心した
……しかし銀ちゃんとLがここで落ちるとは
スザクの起爆剤として以外は特筆するオンリーワンがない、Lも今までほとんど戦闘なくて上田以外と人間関係広がらなかったからなあ
Lはなんというか、色々と本当に最後まで後手後手でうまく立ち回れなかったのが響いたなあ
投下乙!!!
アニキ勝ったああああああああああああああ!!!
アニキはもちろん後藤も熱すぎる!!!
どっちも全力を出しきって最後に毒で終わるとか、うっわ、言葉にできねえ
後藤はLと水銀燈を落としていく辺り、暴れ切ったなぁ!
しかしLと銀ちゃんは……黙祷
そして田村玲子とかもうね、もうね……
投下乙!
寄り添い生きるケモノ達
寄生獣だけじゃなくて、Lも水銀燈でさえも誰かを気にかけて生きてたんだよな…
そしてL、まさかの仕込み。毒が決めてで、しかも敢えて蹴らずにってのが嬉しい
しかし後藤も後藤で強敵という他人を求めてて、最後のクーガーVS後藤はどっちも本当に獣みたいだった
でも、後藤の工夫という文化もクーガーの速さという文化に、いや、それまでに培った心で信じることにした玲子には届かなかったか
乙!!
水銀燈とLがここでか…
だがクーガーやったな!残るはシャドームーンか
残った皆には頑張ってほしいわぁ
本当に投下乙です!
投下乙!
水銀…L…そしてついに後藤が死んだあああああ!
そしてクーガーが生き残っただとおおおおおお!?
いや、「兄貴もここで終わりか…せめて後藤を倒してくれ」なんて考えてたが、まさか玲子の尽力で再び立ち上がるとは…
二大マーダーと言われた片翼がついに散って、これからどうなるのやら…
しかしお互いにこんな終盤まで生き残ったのに、結局後藤とシャドームーンは一度も遭遇しなかったのか!
予想を遥かに上回る結果だった…
ここまで来たら、クーガーには生還して欲しいなぁ…
投下乙です。
青酸カリの熱血な使い方なんて初めて見ました。
後藤もギアスを破るほどの感情で。こいつも人間に近付いたんですねえ。
そして、決め手は毒とはいえ、後藤本体へのトドメにはきっちり脚な兄貴。田村の命も背負って、まだまだ最速は止まらない!
こうして見ると、死んだマーダーの中にも明暗分かれてるのがいるなあ。
自負を多少なりとも取り戻して散った銀様と
自負を取り戻すことなく迷走したまま無残に灰になったシャナとか。
兄貴ぃぃぃ
最後らへんは殴り合いとか人食いの化物との戦いとは思えない熱い男同士の戦いだった
ここではどちらかというと一般人が死んだり無念のうちに敗れたりと後味の悪い決着が多いから
カズマvs宗次郎と並んで、すがすがしい戦いだったと思う
兄貴ぃぃぃ
最後らへんは殴り合いとか人食いの化物との戦いとは思えない熱い男同士の戦いだった
ここではどちらかというと一般人が死んだり無念のうちに敗れたりと苦い決着が多いから
カズマvs宗次郎と並んで、すがすがしい戦いだったと思う
しかしLは突然の死亡だったが、最後にいい仕事してくれたなあ…
後藤の弱点見破ってクーガーに勝機を与えるとは
Lは大仕事果たして満足していった感があるけど、水銀燈は最期言葉すら交わせなかったからなぁ…切ない
せっかく心の温かみに触れて、本当の意味で対主催になると思った矢先なのにね、フラグも一本折れちゃったし
ところで、水銀燈が対主催に少なからず感化して動揺している描写って他ロワで見かけたことあるんだけど、完全に対主催として輝いたロワってあるのかね?(他の作品のキャラでも悪人が正義の道を行く、ってのは興味あるんだけど)
ローゼン勢はロワの常連だけど、水銀燈のスタンスって変わらないよなぁ…
投下乙!
>>793 ニコロワ1stとロワロワかなー
そして感想。
・・・L・・・ここで落ちるか
後手後手、裏目裏目と良いとこなしだったけど
自分の命を捨ててまでシャドームーンへの対抗策ってカードを切らなかったのは凄い
最期が右京さんと被る・・・せつない
そして銀ちゃん。二度目はなかったか・・・
最期に誇りは取り戻せたかしら
そしてクーガーVS後藤。
熱い・・・そしてここで田村さんとは!
クーガーさん、これからも最速宜しく!
しっかし、振り返っても後藤「手加減」ってレベルじゃなかったぞオイ
796 :
生存者:2012/11/10(土) 17:51:15.25 ID:gaNOXC1Z
3/6【コードギアス 反逆のルルーシュ@アニメ】
○枢木スザク/○C.C./ ○ジェレミア・ゴットバルト
1/6【ひぐらしのなく頃に@ゲーム】
○竜宮レナ
1/5【スクライド@アニメ】
○ストレイト・クーガー
1/5【らき☆すた@漫画】
○柊つかさ
2/5【るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-@漫画】
○志々雄真実 / ○雪代縁
2/4【仮面ライダー龍騎@実写】
○城戸真司/○北岡秀一
1/4【ローゼンメイデン@アニメ】
○翠星石
1/3【ガン×ソード@アニメ】
○ヴァン
1/2【仮面ライダーBLACK@実写】
○シャドームーン
1/2【真・女神転生if...@ゲーム】
○狭間偉出夫
1/2【TRICK@実写】
○上田次郎
上田先生がオチみたいな場所に…
さらに予約北アああ
そして482kか、もうこれは次スレがいるかな?と思ったが立てられなかったorz
立てられるかやってみるわ
_、、-、 ,ィ,.
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j ,ノ ,,,,,,,,,,j !,,,,,彳
} /`ミ~(<・>Hく・))
'} ヾ._  ̄ ,_| ̄| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽ / | ,-'''ニニ''!| ∠ なぜベストを尽くさないんだ!
_, -‐} ヽ;i! `二´/ |_____________
⌒ \. `ー--r'ヽ
ヽ /
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ミミミ> ミ / | | | ∠ なぜベストを尽くさないんだ!
ミミ ~~ ====/ | |_____________
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ミ \ ヽ------- /
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`li ,,,,,,__ ,,;r';=。=ヾ'" `i;i' ∂ノ!∠ なぜベストを尽くさないんだ!
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ヽ 'ゝ,r''',... ,,..` :: / l,,,_
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邪魔です、上田さん
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─ァ──--::、ヽ、:.:.:.:.:.:.:\::::::::、`:::..、 ヽ、::::::::::::::/
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\:::::::::::::::|{ミー'::::::|:::/レ' |_,、トミt,\::::::::::::::::::::::`'::::<
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\ハトヽ::::::ト| `` ' 'ヾヾメ\::::::::::::::::::::::::ヽ
`ヾ、ヽ| ´リ /fソ、::::::::::::::::::::::::ヽ
.:.:.:.. \ l イノヘ::::::::::::::::::::::::ヽ
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ヽ、:.:.:.:.:.:.;:.:/ゝヽ \ |:::::` ー‐.':.:.:.:.:.:. ヽ ´
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, ヘ、: : : : : . ´ _ ヽ//l l'.::::::::::::ヽ、
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、 __ノノ i _トv'"´::::::::::::ヽ. .
. ヽ └‐ ´ 「 l {:::::::::::::::::::::::::} '.
>、 /⌒ヽ 」'"´ ̄ ̄ヽ;/ '.
/ }ヽ、 , -‐ _ .. イ、 _.. ┴─¬ v:ハ '.
. / ハ、 `ゝ{ / Y´:::::::::::::::::::::::::」 '. '.
/ / '⌒>{/l / ; -‐rfL ̄/ } }
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ト. {. { /;ニ=-
_, ,ハl、´ Yレ/ _≧ 、 } /
/イ /、_ゞ ヽi! レ"∠_/ヽ ノ!/{
{ ;レ、\>ー=ミ 彡"ー</ドY ,イ=-
-=ゞ爻<´7',ィ /从ヽミ=、⌒≧斗从\
/ィ ,ゞく _,/ ,ィ/{ iド{ヽト、 }\ノイ,ハ 「ヾ゙ 、
{′ノハヾ「_ィ,=,ztミ、!ヘVィf_キァ7i丁゙ー}人 ヽ
、!〈/,イト≧彡ヘ人{ヾ三/ |! ヽY゙ー-≧t._
/ / !、\´∠个 \/ |l ゙、 \ _≧、_
/′ / l、ヽ/ /}\ \‐ハ \ \,イ ̄ ̄ヾ}
/ / / ヾ <ヾ三二ア>ィWヽ ヽ/ ノ
/´.′イ{ ! ゙、_ヽ二二二イ |-^ー゙v /
! r'Vヽヘ__ ∨>.__ /7入_ノ\}. {
!,′_/>ヘ {ヽ.__/_'-‐‐>、}:i:i}/、
_,、 rf´ ト′ゞ.ヽ`‘, /´ / /:i:i:i:i:i:i/‐-、
/" \ _,A゙ | \―ヽ- 辷{-/ ‐/ /:i:i:i:i:i:i/:i:i:i:i:i丶
‐ァ-、 \ーヘ |ヽ \一ゞ_ _フー,/‐ /:i:i:i:i:i /:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\
,{/ _\ Υ ヘ. |! \く−У'ー/:i:i:i:i:i:i/:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\
´ ̄ `ヽ { ∧ ‘,\ \_// ./:i:i:i:i:i:i/:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\
__ ‘, Υ゙ }、 ‘, \ \__/:i:i:i:i:i:i/:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i\
'´ _`.‘, |!、 t、\ 、 \____ ≧、:i:i/:i:i:i:i:i:i: -――――――-、
/  ̄`ヽ!ヽ ヽ 丶 \ヽ ,/\___ 二二二 ̄_____、 \
/′ __>――、 ゙、 ヽ// /:i:i:i:i:i:i/:i:i:i:i:i/:i:i:i:i:i:i:i:i:/〃¨Y:i:.、 \
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