ロボット物SS総合スレ 71号機

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1創る名無しに見る名無し
ロボット物のアニメ・漫画・小説・ゲームの二次創作から、
オリジナルのロボット物一次創作まで 何 で も どうぞ。

・当機はSSに限らず、イラストや立体物も受け付けています。
・投下の後、しばらく雑談は控えてください。
・ガンダムやマクロス等の有名作は、該当する専用SSスレが立った場合はそちらへ。もしなければ全部ここでやればいいんじゃあないでしょうか。
・支援のご利用は計画的に。詳しくは投下の際の豆知識を参照してください。 →http://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/884.html
・次スレは>>950が立てて下さい。次スレが立つまでは減速を。
・また、容量が470KBを超えた場合は要相談。
・立てられない場合は報告及び相談を。スレ立ての際は必ず宣言を行ってください。でないと、黒歴史が来るぞぉぉぉぉ!!
・とある方が言っておられました。「話題が気に入らないなら、四の五の言わずネタを振れ」雑談のネタが気に入らない時は、新しくネタを振りましょう。
・スルー検定10級実施中です。荒らしは華麗スルーしてください。それが紳士の条件です。
・着実に、一歩ずつ

まとめwiki
http://www13.atwiki.jp/sousakurobo/

ロボット作品投下用アップローダー
http://ux.getuploader.com/sousakurobo/

ロボット作品投下用アップローダー2番艦
http://ux.getuploader.com/sousakurobo2nd/

お絵かき掲示板
http://www2.atpaint.jp/sousakurobo/

ロボット物SS総合スレin避難所28号機
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1321198338/

前スレ
ロボット物SS総合スレ 70号機
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1341418413/

関連スレ
だから俺達に新作ガンダムを作らせろよ7(ガンダムSS総合スレ)
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1322491231/
勇者シリーズSS総合スレ Part4
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1282636520/
2創る名無しに見る名無し:2012/09/04(火) 23:04:18.88 ID:qVPTNJLA
スレ発祥連載作品紹介!(※紹介文には多少の誇張表現も含まれています)

【荒野に生きる(仮) ◆8XPVCvJbvQ】
再生暦164年、コンクリートの荒野が広がる未来――。
獣の耳と尻尾を持つ「ヒューマニマル」の少女達はひたすらに戦う。対鋼獣用人型兵器・ヴァドルを駆って――!!
怪獣VS獣耳っ娘!? 話題騒然のデスマッチ!!

【CR ―Code Revegeon― 古時計屋 ◆klsLRI0upQ】
これは、悪夢に立ち向かうちっぽけなひとりの人間と、「怨嗟の魔王」と呼ばれた機神の物語。
アンノウンの襲撃で家族を失った潤也は、漆黒の鋼機・リベジオンの玉座に身を沈める。反逆と復讐を遂げるために……!
人類震撼! 暗黒のレコードオブウォー!

【瞬転のスプリガン ◆46YdzwwxxU】
スーパーカーから伸びる鋼の腕――神速の挙動と極微の制動を可能とする、エーテル圧式打撃マニピュレータがその正体!
異世界の侵略者・魔族により廃墟と化した街角で、幼いことねは機械仕掛けの拳法家を目撃した。
変形ロボットならではの技が炸裂する、極超音速機動武闘伝!

【パラベラム! ◆1m8GVnU0JM】
Si Vis Pacem, Para Bellum――汝、平和を欲さば、戦への備えをせよ。
遥か昔に文明がリセットされた世界。黒い機械人形(オートマタ)・リヒターと、彼のマスターとなった少女・遥(19)の神子としての生活が始まった!
軽妙な会話と、動きを魅せるアクションに定評あり? なんだかおかしなキャラ達が紡ぐ、ドタバタ日常コメディ!
「……ねぇリヒター、こんな感じでいいかな?」
<イエス・マイマスター>

【最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ ◆46YdzwwxxU】
ドゥビドゥビッドゥ! ドゥビドゥビッドゥ! ドゥビドゥビドゥビドゥビッドゥドゥビドゥビ!
今日も今日とてロボヶ丘市で激突するのは、変な正義と変な悪!
ハイテンション! 歌うスーパーロボットバトルアクション!

【少女機甲録(仮) ◆kNPkZ2h.ro】
80年ほど前に地球上に出現し、地球上全ての生物を滅ぼさんとする謎の生命体群「ワーム」
異形の敵に立ち向かうは、全長4mのパワードスーツ兵器「機士」
陸上自衛軍第28連隊 第4中隊の少女達は、血と硝煙の匂い漂う世界を生きる!

【鋼鐵の特攻兵―Gun Strike Girles― ◆6LGb3BALUde1】
近未来。人類はBUGと呼ばれる巨大生物との戦争を続けていた。
主人公・御前静を始めとした世界各国から集まった個性的な少女達は、鋼鐵の棺に身を沈めてBUGとの熾烈な戦いに身を投じていく。
戦争という極限状態の中で、少女達は傷付きながらも成長し、互いに支え合い日々を懸命に生き抜く。
やがて少女達の間に芽生えるのは、友情かそれとも――
ハードボイルドミリタリーの皮を被った百合ん百合んな物語。
欝展開はないよ!

【武神鋼臨タケミカヅチ ◆YHSi90Gnr2】
其れは鋼の人型。其れは『神』の力を降ろす為の人造の依代。
剣神はその手に太刀を担い、在らざる戦場(いくさば)を駆け抜ける。
その刃は未来を切り開けるか―

【鋼殻牙龍ドラグリヲ ◆Uu8AeR.Xso】
荒廃した世界を跋扈する、『害獣』と呼ばれる異形の災厄。
人には太刀打ち出来ぬその存在を屠る、暴君竜の如き異形の鋼。その名は「ドラグリヲ」
アルビノの少年「真継雪兎」とゴスロリ姿のナノマシン少女「カルマ」の紡ぐ物語に刮目せよ!

3創る名無しに見る名無し:2012/09/04(火) 23:04:49.68 ID:qVPTNJLA
【守護機兵Xガードナー シクス ◆wuZfOwaq7U】
CC(コスモセンチュリー)115年。独立を宣言する火星と地球の、人類初の惑星間戦争が行われていた。
少年シュート・ダリューグは独立機動防衛部隊"Xガードナー"に参加するも自分の存在価値に惑う。
戦いを止められるのは薙払う剣か、それとも守護する盾か… あなたの護りたいモノはなんですか?

【秘神幻装ソルディアン ◆tEulldVhj8h6】
因果の日は来たり――世界は異形の怪物アバドンに覆われた。
混迷を極める世界に機械仕掛けの神々は覚醒し、かくして今まさに黙示録が再現される。
測り知れざる過去より続く闘いの行方は、如何に。

【廻るセカイ-Die andere Zukunft- ◆qwqSiWgzPU】
「もう少しで世界が滅びる」世界中にそんな噂が飛び交った。
そして噂の通り、国が、都市が、次々と地図から名前を消していく。人類は滅びを待つだけだった
舞台は架空の都市“揺籃” 特別な一人の少女と、普通の少年の出会いから、それは紡がれていく
「抗う術があるのに、やらないなんて選択肢、オレにはない」
……それは、似通っているようで……違う“セカイ”

【ビューティフル・ワールド the gun with the knight and the rabbit TロG ◆n41r8f8dTs】
未来へと向かっていた隆昭達は、黄金のアストライル・ギアによって次元の狭間へと飲み込まれ、別世界に辿り着く。
隆昭一行、やおよろず、レギアス、そして、神威。様々な人々の思惑がシャッフルされた物語の執着点は、果たして――――
パラべラム×ヴィルティック・シャッフルという二作品による、全く違った世界観が交じ合った物語の行く末を見届けよ。

この物語に、勝者はいない。

【『正義の執行者』 ◆8XPVCvJbvQ】
世間を震撼させたリベンジャーレディの事件から数ヵ月後。
ネットである言葉が頻繁に使用されるようになっていた。
「正義の名の下に」 その言葉と共に、人型兵器による犯罪者を処罰していく所属不明の赤い機体。
奇しくも所有する機体のフォルムが似ていたが為に、姉小路は事件に巻き込まれてしまう。

【eXar-Xen――セカイの果てより来るモノ―― ◆5b.OeHcAI2】
ガラクタに覆われた世界の片隅で、少年と少女は一冊の書によって結ばれた。
その出会いは白く、黒く塗り潰された過去を、未来を、それ以外を呼び覚ます。
迫り来るこの世ならざる怪異、有り得ざる可能性、そしてセカイの果てより来るモノ……

――総てを越え、彼らは何を見るのだろう?
4創る名無しに見る名無し:2012/09/04(火) 23:05:57.35 ID:qVPTNJLA
【Robochemist! ◆a5iBSiEsUFpN】
物語は、新たな世代へ――
第一作の主人公、ユトとメリッサの娘が織り成す、もう一つの『Diver's shell』!!
DS伝統のポニテを受け継ぐ少女、アルメリアと、愉快な仲間達による色鮮やかな青春グラフィティ!
とくと見よ! 激突する鋼の騎士の勇姿を!
三つ編みもあるよ!

【地球防衛戦線ダイガスト 秋水 ◆3C9TspRFnQ】
異星文明、銀河列強諸国による限定戦争と言う名の侵略戦争の篝火が地球を焦がす。
帝政ツルギスタン軍を前に敗退を繰り返す自衛隊。日本が絶望に暮れたその時――
大江戸先進科学研究所のスーパーロボット、ダイガストが此処に立ち上がる!

――この国を好きではいけないのですか?

【Villetick Jumble 硬質 ◆pOWm4b0gBI】
新たなヴィルティックワールドに鈴木隆昭が帰って来た!
今度は、あの草川大輔も大騒動の渦中と、ヴィルティックに乗っかって大暴れ!
あの人や、この人に、その人! 様々な平行世界から次から次に現れるゲスト達!
まぜこぜカオスな新世界の未来を「カード」で切り開け!

【鮮血のTank soldier◆A0fDXEX2Bs 】
荒くれ共達が血とオイルとプライドを垂れ流す世界で――――――――その物語は幕を開ける。
ニヒルでクールな赤毛の少年、ひろしと無邪気な三つ編みロリっ子ロンメル。
彼と彼女と愛機タンクマキナ。二人と一機が先行き粗筋雲行き不明の荒地を駆け抜ける!
小気味の良いギャグと予想の付かない脱線の先に、一体どんな未来が待ちかえるのか……。
何処に着地するか分からない、ハチャメチャロボット活劇から目を離すな!

【ヒトの塔◆luBen/Wqmc】
一体ここは何処なのか――――――――ここではないどこかに招かれてしまった不憫な青年、ビル。
口の悪いウサギ様と掴み所の無い青年、ロビンを始めとした不思議で独特な登場人物達と霧の森。
不思議な人とロボットが織り成す世界の中で、ビルは一体何を見つけ、何を掴むのか。
謎と不思議に満ちた、まるで童話の様なロボットストーリーをご堪能あれ。

【Spartoi◆mqimtco4oQ】
 高校全体が静まりかえった試験期間中の放課後、尾崎晴道は謎の少女・来栖貴子にゲーム対戦を挑まれる。
『神速機動ラゲリオン』。この精緻な戦術性が売りのロボット格闘ゲームでネットにその名を轟かせる晴道は、しかし周囲には秘密にしていたはずのそのHNを言い当てられて動揺する。
 美しくもどこか異質な雰囲気を備えた貴子に誘われるまま、携帯ゲーム機GPGでの対戦に臨む晴道。
 少女の正体、そして目的は何なのか?
 ゲーマー少年尾崎晴道の、新たな『ゲーム』が幕を開ける。

【ロボスレ学園】
ロボット物SS総合スレ、10スレ目突破記念作品!
このスレのキャラクター達が織り成すどこまでもフリーダムな青春(?)グラフィティ! 参加者募集中!

【スーパーロボスレ大戦】
自然発生したクロスオーバー企画。
あの世界とあの世界で刺激的にヤろうぜ!
5創る名無しに見る名無し:2012/09/04(火) 23:07:00.65 ID:qVPTNJLA
http://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/265.html

・読者側は、積極的にエールや感想を送ってあげよう! 亀レスでも大感激! 作者はいつまでだって待ってるもんだぞ!
・作者側は、取り敢えずは作品で語れ! 自分のペースでも完結まで誠実に奮励努力せよ!
・半年以上生存報告がないと、作品がテンプレから削られてしまうぞ! 要注意だ!
・テンプレに載る作品は1人1つまで! 上記の他にも作品は沢山あるので、こちらもチェックだ!  http://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/12.html
・我らスレ住人は、熱意に溢れた新作をいつも待ち望んでいる!次スレの紹介文には、キミのロボットも追加させてみないか!

※紹介文未定作品一覧※
・【機甲闘神Gドラスター ◆uW6wAi1FeE】 ・【英雄騎兵ミッドナイト】 ・【ブリキの騎士 ◆WTKW7E8Ucg】
・【機動修羅バイラム】 ・【都道府県対抗機動兵器決選】 ・【てのひらをたいように ◆1m8GVnU0JM】 ・【パラベラム!〜開拓者達〜 ◆RS4AXEvHJM】
・【壊れた世界の直し方 ◆H48yyfsLb6】【Diver's shell another 『primal Diver's』◆wHsYL8cZCc】
・【TONTO◆LlCp3gHAjlvd】・【グラインドハウス ◆tH6WzPVkAc】 ・【装甲騎兵ボトムズ 幻聴編】【銀の月が見る夢 ◆CC6hDu/XuQ】

紹介文はまだまだ募集中! 作者さんが、自身で考えちゃってもいいのよ!


「自作に関する絵を描いてもいい」という了承を頂いている作者さん一同はこちら↓

・TロG ◆n41r8f8dTs氏 (tueun、ROST GORL、ヴィルテック・シャッフル 他)
・シクス ◆wuZfOwaq7U氏 (守護機兵Xガードナー 他)
・PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM氏 (パラベラム! 他)
・古時計屋 ◆klsLRI0upQ氏 (CR ―Code Revegeon―、ザ・シスターズ、シャドウミラージュ、電瞬月下)
・◆YHSi90Gnr2氏 (武神鋼臨タケミカヅチ、パラベラム! ―運び屋アルフの何ということもない一日―)
・秘神 ◆tEulldVhj8h6氏 (秘神幻装ソルディアン)
・◆Uu8AeR.Xso氏 (鋼殻牙龍ドラグリヲ)
・DS世界観の人 ◆a5iBSiEsUFpN氏 (Diver's shellシリーズ、Robochemist! 他)
・GEARSの中身 ◆B21/XLSjhE氏 (GEARS、GEARS外伝 Berserker)
・◆46YdzwwxxU氏 (瞬転のスプリガン、最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ 他)
・|・) ◆5b.OeHcAI2氏 (eXar-Xen――セカイの果てより来るモノ――)
・◆uW6wAi1FeE氏 (機甲闘神Gドラスター)
・◆wHsYL8cZCc氏 (カインドマシーン 他)
・バイラム氏 (機動修羅バイラム)
>>882 ◆MVh6W.SAZtbu氏 (あるツッコミ体質の男の受難、でくのぼうと聖人 他)
・硬質 ◆BfO3GzMb/w(ヒューマン・バトロイド)

ここに名前の無い作者さんの作品を絵にしたい場合は、直接ご本人にお伺いを立ててみたらいかがかと。



―以上がテンプレとなります―
6創る名無しに見る名無し:2012/09/05(水) 11:22:08.52 ID:HCcrAP0N
俺たちは>>1乙する事を強いられているんだ!!
7創る名無しに見る名無し:2012/09/05(水) 19:24:57.50 ID:OEkKPBzg
特に強いられているわけではないが、>>1乙させていただく
テンプレから自作が消えていなくてほっと一息
と同時に、なんとか続きを書こうと思った
8創る名無しに見る名無し:2012/09/05(水) 21:59:07.22 ID:X2lutugm
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                            `゙''ー‐--、____,.-‐一''"´ ̄
9創る名無しに見る名無し:2012/09/06(木) 09:29:49.11 ID:rA68DGRM
そろそろメカ絵でも描くかな
10創る名無しに見る名無し:2012/09/06(木) 10:47:20.52 ID:uYOc9kIJ
ガンダムXは白くて美しくて>>1
11グラ家の人 ◆tH6WzPVkAc :2012/09/06(木) 21:01:02.49 ID:I1F+PKv8
>>1さん乙ですよ!


こんな夜中だけど投下しにキマシタヨ……
あと2、3回はかかると思ったけど意外とすっきりまとまって俺びっくり。
グラインドハウス最終回、はっじまっるよー
12グラインドハウス ◆tH6WzPVkAc :2012/09/06(木) 21:02:13.01 ID:I1F+PKv8
 それは少年が初めて経験した『真の勝利』だった。
「ついにタナトスvsオルフェウス、決着ゥウウウッ! アンビリバブルなことに、女神は挑戦者にほほ笑んだ!」
 会場が震えるほどの歓声を、さらに上回るほどの大声で叫ぶ実況。そしてさらにそれをかき消すマコトの雄叫び。
 マコトは全身に高圧電流を流されたような激しい感覚に酔っていた。努力と苦難の果てに掴んだ勝利は
それほどの美酒だった。
 しかしいつまでもそうしてはいられない。酔いが醒めたきっかけはスピーカーからの声だった。
「おめでとう、おめでとう」
 いつもどこか人を小馬鹿にしたような、鼻につく、嗄れた声。コラージュだ。
「おめでとうオルフェウス。君はこれでタルタロスナンバーワンだ。」
 その声にマコトの高揚した精神は一気に反転し、代わりにとてつもなく不快な感情が襲ってくる。
冷水を頭に被せられたような気分だった。
「さて、敗北の気分はどうだい、タナトス?」
 コラージュの声が筺体の向こう側へ向く。マコトもモニター越しに彼女を見た。
「意外と悪くないな。途中あれだけ不愉快だった怒りもいつの間にか無くなっている。」
「それは良かった。」
 するとモニターの画面が切り替わり、今度はコラージュの顔が大映しになる。その表情は笑っているように見えた。
「さてオルフェウス、君にはご褒美だ。権利をあげよう。『願いを叶える権利』を。」
 途端に静まりかえる会場。マコトは乾いたノドを唾で湿らせた。
 願いは決まっている――そのために戦ってきたんだから。
 しかしマコトには引っかかることがあった。
(コラージュのあの余裕、どういうことだ……?)
 画面のコラージュはいつもの通りで、とても今から自らの寄る辺を失う者には見えない。
 まさか何かすでに対策を打ってあるのか。
 不安が舌に絡みついてくる。疲労した神経が今さら腕をしびれさせる。
 だがここまできて今さら他の選択肢も無い。マコトは力を振り絞って視線を上げた――そのときだった。
 言葉を失った。
 画面には笑顔のコラージュが映っている。彼はなぜか口に1枚の写真の端をくわえていた。
 一瞬、マコトにはそれが意味するところが解らなかったが、すぐに理解した。
その写真はある少女の姿を撮影したものだった。見覚えがある……!
「それ……!」
 するとコラージュは大げさな素振りで、まるで今気づいたかのような声をあげる。
「うわぁーなんだこの女の子はーオルフェウスくんこの娘知ってるー?」
 マコトは奥歯を噛みしめ、敵意を剥き出しにしてコラージュを睨みつけた。
 あの写真に写っているのは……ユウスケの妹だ。
「クソヤロウがッ!」
 吠える。コラージュは嘲笑で返した。
13グラインドハウス ◆tH6WzPVkAc :2012/09/06(木) 21:03:01.91 ID:I1F+PKv8
「さて、どうするんだい?」
 マコトはためらう。まさかここでコラージュが人質をとってくるとは。判断に困ったので目線を観客席にやって
アヤカさんを探すが、見つからない。自分で決めるしかないのか。
 ――いや、なにを弱気になっているんだ。ここまできて退くなんてない、そうさっきも思ったろう。
 しかし……
「だんまりかい? さぁ、はやく言いなって。」
 コラージュは優しくそう語りかけてくる。マコトはイラつく感情を抑えてコラージュを睨み返し、
ついに願いを口にした――しようとした。
 観客たちとマコトの目に飛び込んだのは理解しがたい映像だった。
「え」
 コラージュはそう小さく言って、吐血した。背後からの手で押さえつけられた口元から、
鮮やかな血が溢れ出る。彼の左胸にはいつのまにかナイフが突き立てられていて、
そこから上等なスーツにじわじわと赤い染みを広げていた。
 マコトたちは絶句する。
 コラージュは最後の力で後ろを振り向こうとするが、その前に側頭部を背後の人間に思いきり肘でうたれ、
画面外に倒れて消えた。
 背後の人物の姿はカメラの前に晒されたが、未だ顔は見えない。パーカーのフードを目深にかぶった下に、
更に犬のマスクをかぶっていたからだ。彼は無言でカメラを一瞥し、手を差し伸べる。マコトは直感的に、
今だ、と理解した。
 筐体の向こう、佇むタナトスを指さして、マコトは宣言する!
「俺がタルタロスに望むのは、この犯罪組織の、永久の解散だ。
 未来永劫にわたって、二度と姿を見せるんじゃない!」
 それが崩壊の始まりだった。
 画面の向こうの犬マスクは、コラージュから奪い取ったスイッチを押す。
それはタルタロスの終わりを告げるスイッチだった。
 スイッチが押されると共に、タルタロスへ繋がる全てのネットワークが切断され、
コンピュータ内の記録媒体が焼ききれる。
 ゲームの電源は落ち、照明はオレンジ色の非常灯に切り替わった。
 同時に観客席の入り口から上がる威嚇する声。
「警察だ! ここにいる全員、違法賭博の現行犯で逮捕する!」
 騒然とする会場。入り口を塞ぐように整列しているのは、私服警官たちと、
警察手帳を掲げたアヤカ・コンドウだった。
「発砲許可は下りている! 怪我が嫌なら這いつくばれ!」
 号令と共に銃を構える警官たち。会場はパニックになった。
 アヤカはさらにインカムで機動隊突入の支持を出す。すでにタルタロスの全ての出口の前に待機していた部隊は
ついに突入した。
 今までのとは異なる種類の怒号と悲鳴と絶叫の渦の中、マコトはどうしたらいいかわからなかったが、
混乱した観客たちが金網をやぶらんばかりの勢いでぶつかってくるのに危険を感じ、入場口に向かって走り出した。
14グラインドハウス ◆tH6WzPVkAc :2012/09/06(木) 21:03:58.23 ID:I1F+PKv8
 タナトス――ミコト・イナバはコラージュが駄目になったことには少し驚いたが、
万一の想定通りにアクションを起こすことにした。
 物憂げに首をかしげ、打ち鳴らされる金網と降り注ぐ侮蔑の言葉も無視し、
少女の死体のそばの小型拳銃を拾い上げて、いつもと変わらない様子で入場口へ歩いていく。
扉を開けると、長い廊下の先の曲がり角から大勢の人間の足音が近づいてきているのがわかった。
警察か暴徒か判らないが、どっちでも同じか。
 ミコトは落ち着いた動作で廊下の角の小さな床板を持ち上げ、スライドさせた。
その下には細長い通路が開いている。これは万一を考えて作っておいた秘密の逃げ道のひとつで、
コラージュと自分しか知らない道だ。ミコトはそこに滑り込み、素早く入り口を塞いだ。
そばに備え付けの懐中電灯を拾って点ける。
 暗く狭い通路を歩く間もミコトはこれっぽっちも焦ってはいなかった。望むものは手に入れたのだし、
もともとこの組織に愛着も無い。このまま逃げおおせて、どこか外国で静かに暮らそう。
彼女は歩きながらそんなことを考えていた。
 隠し通路はやがて少し広い通路に繋がる。ここもやはり隠し通路で、地下都市建設当時の名残であり、
タルタロス施設の最深部のさらに下を通っている道だ。この道は様々な地下鉄や地下施設を繋ぎ繋ぎで伸びていて、
最果てはとある廃ビルの物置きに出るようになっている。
 全長数十キロの道のりを歩くのはなかなかに辛いが、まぁ仕方がない。
 足を踏み出したそのとき――
 ミコトは何者かの気配を感じて立ち止まった。
 通路の暗がりから何かがこちらを見ている。
 警察か? いや、それならもう何らかの警告がされているはず。
 それに……どうやら、相手はひとりのようだ。
「用があるなら手短にすませてくれない?」
 そう言って懐中電灯を前方に放り、同時に拳銃を構えて臨戦態勢に入る。
 床を転がる懐中電灯はやがて相手のつま先にぶつかって、その姿を照らし出した。
「手短に、はちょっと無理かな」
 暗闇から現れたのは、先程コラージュを刺した、犬マスクの怪人だった。彼の手にはナイフが握られている。
 ミコトはそれ以上は相手の言葉を待たずに発砲した。撃たれた衝撃で怪人の身体はぐるりと回る。
 仰向けに倒れる怪人。ミコトは銃を下ろし、死体のそばに転がる懐中電灯を拾い上げようとする。
 その瞬間だった。
 いきなり怪人が動き出して伸ばした手を掴まれる!
 ミコトは反射的に銃を構えようとするが、その前に床に引き倒された。
 体制を立て直す間もなく、怪人に馬のりにされるミコト。怪人はナイフを彼女の首に当てた。
「殺す判断に躊躇いがない……さすがタナトス」
 怪人はナイフを当てたまま、マスクを脱ぎ捨てた。 
「久しぶりだね」
「お前は……キムラ!」
 マスクの下から現れた顔はコウタ・キムラだった。彼はポケットから眼鏡をとりだし、身につける。
そのときにパーカーの下に着込んだ防弾チョッキがミコトには見えた。
「ここでは『ケルベロス』、だろ?」
 キムラは言う。
 ミコトはもがいたが、膝で的確に関節を押さえつけられていて、とてもはねのけられそうにない。
「貴様、なぜ……?」
 ミコトの問いにキムラは冷酷な微笑とともに答えた。
「知ってるだろ? ケルベロスは、タルタロスから逃れようとするものを決して逃さない……」
「だったら離せ。タルタロスはもう無い。」
「冗談に決まってるじゃん、馬鹿か。」
15グラインドハウス ◆tH6WzPVkAc :2012/09/06(木) 21:05:04.42 ID:I1F+PKv8
 そう言ってキムラはポケットから今度は小さな瓶をとりだし、指で蓋を開けると、その口をミコトの口元に近づける。
「暴れたら首がスパッといくよ。」
 しかしミコトは口を固く閉じ、瓶の中身を受け入れようとはしない。
それを見たキムラは仕方がないとばかりに中身を自分の口に含むと、瓶を投げ捨てて、
自由になった手でミコトの顎を無理やり開き、口移しで中の薬品を彼女に飲ませた。
 すると、ミコトの意識は速やかに混濁していく。手足から力が抜けたことを感じてから、
キムラはミコトの上からどいた。
 それから、通路のさらに奥から現れた、活躍の場が無くなって不満そうな様子の仲間たちに
ミコトの身体を背負うように指示する。
 最後にキムラは通信機を取りだした。



「――こちら『K』。目標は確保しました。」
「そう、ご苦労様。では後ほど。」
 アヤカは通信機にそう返事しつつも歩みは止めない。
 タルタロス内部の混乱は早くも鎮まりつつあった。それは機動隊や警官隊の的確な対応と、
タルタロスが解散したことによる精神的な打撃の効果が大きかったからなのだが、アヤカは不満だった。
(もう少し混乱は続くと思ったけれど……意外と根性無しばかりね)
 彼女は通信機をしまって、目的の部屋に辿り着く。その部屋はすで警官たちに制圧されていた。
「コラージュは? 見つかった?」
「いいえ、我々が突入したときにはもぬけの殻でした。」
「そう……」
 アヤカは辺りを見渡した。キムラがこの部屋でコラージュを刺したのは見ていたし、
それから警官たちがこの部屋にくるまで数分しか無かったはずだ。出入り口は封鎖しているし……となると、
やはりあそこか。
(この部屋にも隠し通路があるのね……)
 キムラとマコトの情報を合わせて彼女が独自に作った、正確なタルタロス施設の地図は、
部屋と部屋の間の不自然な空間を炙りだしていた。その空間がこの手の施設にはお決まりの隠し通路だということを
見抜いたアヤカは、あえて警官たちにはその情報を与えず、キムラを配置してタナトスを捕まえる場所としたのだった。
(隠し通路を教えたら私の目的が達成できないし……しかしコラージュを逃がすのは……)
 少し彼女は悩む。だが直後入ってきた通信にアヤカは意識を向けた。
「こちらA班、アマギ少年を保護。指示を頼む。」
「少年は本部へ移送。制圧の完了度合いを報告せよ。」
「地上施設は全て制圧。地下施設は現時点で7割程度完了しています。」
「何か問題はあるか。」
「手錠の数が足りません、近くの交番からも引っ張ってきてください。」
「了解。通信終わる。」
「了解。」
 小さく舌打ちするアヤカ。警官たちが優秀すぎて鎮圧までの時間が予想よりも短い。
これではコラージュをキムラに探してもらうことも無理そうだ。
 コラージュのほうは諦めるしかないか。組織の頭を押さえられなかったのは痛いが、
これだけ大量の検挙者をあげられたんだ、問題は無いだろう。
 部屋を出たアヤカは、ひとりになったときを見計らってキムラ用の通信機を踏みつぶす……。
16グラインドハウス ◆tH6WzPVkAc :2012/09/06(木) 21:06:30.97 ID:I1F+PKv8
 マコト・アマギは警官に一度手錠をかけられ、他の大勢と同じように床に押しつけられそうになったが、
すぐに別の警官が気づいて開放された。
 施設内の嵐は早くもおさまりつつある。マコトはふと、ミコトのことが気になった。
 彼女も観客や職員たちと同様に手錠をかけられ、床に這わされているのだろうか。……想像がつかない。
 だがこれで彼女もついに檻の中だ。刑務所できちんと罪を償って欲しい。
 長くかかるだろうが、これでいいはずだ……。
 マコトは警官に促され、タルタロスから連れ出される。
 前線基地として使われているエリュシオン4階の、例の人形が居る広い空き部屋を抜け、
警官たちが走り回るゲームセンターを抜け、土砂降りの駐車場へ出る。
 停車していた多くパトカーのうちの一台へ小走りで連れられ、乗せられた。そんな中、
ドアが閉まる瞬間に後ろを振り向いたマコトが見たタルタロスはまるで何かの抜け殻のようだった。
 パトカーはすぐに動き出す。


 ――駐車場から道路に出る瞬間、ガラス越しに目についたあの街灯の下には、誰も居なかった。
 



 翌日。
 留置場で一夜を過ごして、事情聴取を終えたマコトは、とりあえず家に帰れることになった。
 迎えに来た両親は家につくまではほぼ無言だったが、リビングに入った途端、床に泣きくずれた。
 父も母も、戸惑うマコトの頬を殴りつけ、大きな声でマコトを叱りつけてくる。
 それはマコトにとっては予想できなかったことで、しばし呆然としていたが、状況が理解できてくると、
彼の目からも涙がこぼれた。
 マコトはやっと気づいたのだった。
 



 透明な箱の中、ハヤタ・ツカサキは退屈していた。
 この何も無い日々は彼には苦痛でしかなかった。
 ただ毎日起き、食事をして、筋トレでもして時間を潰し、規定の時間に寝る。
 今のこの生活は、すでに生きる目的を達成した彼にとっては余生だ。
彼はそんなものをだらだらと送るつもりは無かった。
 もしもできるなら今すぐにでも自殺したい。死刑の執行が待ち遠しくて仕方がない。
目的の無い人生なんて拷問だ。
 ……こういうときに、ミコトが言っていた、生きることそれ自体の理由が分かっていたら、
違うのかもしれないが……。
 そんなことを思っていると、突然監視カメラのスピーカーから面会を知らせる声がする。
 唯一の楽しみと言えば、彼女をからかうくらいかな。
 顔を上げ、ガラスに近づいて彼女――アヤカ・コンドウを迎える。
「よう、久しぶり。」
 声をかけられて、彼女は微笑んだ。随分機嫌がいいようだ。ということは、もしかして……
「まさか、タルタロスをやったのか?」
「ええ、苦労したわよ。」
「マジかよ! 信じられねぇ!」
 ツカサキは興奮して飛び跳ねる。アヤカはそんな彼を見て眉をしかめた。
「この国の警察も捨てたもんじゃないな。どうやったんだ?」
「毒を征すには毒。」
「蛇の道は蛇ってか。違う犯罪組織のやつでも抱え込んだか?
17グラインドハウス ◆tH6WzPVkAc :2012/09/06(木) 21:07:30.15 ID:I1F+PKv8
 ああ、そうだ、この前あんたが話していたーー『キムラ』か? アイツを使ったのか?」
「相変わらず良くまわる頭ね。ネジが外れているのが残念だわ。」
「なるほど、タルタロスを倒す武器を手に入れるためにタルタロス自身すら利用したのか。
 よくそんな外道な手段思いつくなぁ。俺にはとてもできねーぜ。」
「どの口で言うのかしらね。」
 2人は笑う。しかしその眼だけはしっかりと相手を見据えている。
「……で、アイツはどうなった?」
「イナバのこと?」
 挑発するような表情をするアヤカ。
「……まさか、アイツがすんなり警察に捕まるわけないだろ?」
「ええ、そうね。彼女は未だに行方不明。」
「そうか……」
 肩をすくめるアヤカを見て、ツカサキは少し安堵する。その心理的に無防備な瞬間に、アヤカは牙をむいた。
「そうそう、あなたにプレゼントがあるの。」
「……プレゼント?」
「そう、あなたの大切な人から。」
 アヤカがポケットからなにか小さなものを取り出し、ガラス箱の食事を受け渡す用の隙間に置く。
 それは手のひらにすっぽり収まるほど小さな、透明な立方体で、中に球体が閉じ込められているのが見える。
 受け取って、その球体の正体を知ったとき、ツカサキは驚愕した。
 アヤカはまた微笑む。
「『あなたを待っている』だって。」
「うわあああああああッ!?」
 絶叫するツカサキ。
 その手の中にある立方体に閉じ込められていたのは、元々自分のもので、ミコトにあげたはずのもの――!
「おまえぇ!」
 ガラス面を全力で殴りつけるツカサキ。だがガラスはビクともせず、なおも箱の内側と外側を隔て続ける。
「殺してやる! お前を殺してやる! なぜお前は生きている! 人殺し! クズ! ああ――!
 ミコトを返せ! アイツを――!」
 叫びながらツカサキは殴り続けるが、拳の先の皮膚が破れ、飛び散った血で周囲が赤く染まっても、強化ガラスには傷ひとつつかない。
 アヤカ・コンドウはそんな彼をいかにも愉快そうに見上げ、そして最後にこう言った。
「これが私の復讐よ。死刑執行の日まで、私への殺意に身を焦がしなさい……!」 
 ツカサキは、また、絶叫した……。




  事件が終わって、1ヶ月が経ったころ……
 日曜日、マコト・アマギは駅前の喫茶店でコーヒーをすすっていた。
 窓の外では多くの人々が行き交っている。自分と同じ高校生、似合わないスーツ姿の若者、
派手な化粧のおばさん、下着が見えそうな服装の女性、恋人、夫婦、独りの老人……赤ん坊を抱えた女性。
18グラインドハウス ◆tH6WzPVkAc :2012/09/06(木) 21:08:35.20 ID:I1F+PKv8
 平和な光景だった。
 こうしてガラス越しに眺めていると、この世には辛いことや苦しいことなんて本当は何もないんじゃないか、
とそういう考えすら浮かぶ。
 だがたしかにこの平和な世界の裏側には、蛇と蛇が血溜まりでお互いに喰らいあうような、
そんな世界が広がっているのだ。
 頭の中に醜い欲望を隠して、切り貼りの笑顔で自分を守っている……今のマコトには周りの人間が全てそういう風に
見えていた。
 それならいっそ、最初から悪意の塊であるような人のほうが信頼できるかもしれない……そう、今しがた
店にやってきた彼女のように。
「ごめんなさい、少し遅れたわね。」
 テーブル向かいの席に座ったのはアヤカだった。彼女はシャツとロングスカートの私服姿で、
いつもまとめている長髪を今日は自由にしている。
「お久しぶりです」
 マコトは頭を下げる。
 今日、会いたいと先に言ってきたのはアヤカのほうだった。
「ごめんなさい。会議が長引いて。えっと、アメリカンひとつ。」
 店員に飲み物を注文して、アヤカはマコトに向きなおる。
「改めて、久しぶり。元気だった?」
「精神的には死にそうです」
 マコトは苦笑する。普通の日常に戻ってからもタルタロスのあの緊張感がなかなか抜けず、
神経の無駄な疲労が多い日々を彼は送っていた。
「そう……もし続くようなら医者に行ったほうがいいかもね。いい医者を知ってるわ」
「ありがとうございます。コンドウさんは最近は?」
「タルタロスの甘い汁を吸っていた上層部のお偉いさんがいなくなったからね……庁内は大混乱よ。」
「やっぱりそんな感じですか」
「それもそろそろ落ち着いてきているけどね。」
「タナトスとコラージュは見つかりましたか?」
 マコトの質問にアヤカは首を振る。
「どっちも見つかってないわ。」
「そうですか……」
 マコトは少しだけがっかりする。アヤカはそのことに気づいたが、あえて気づかないふりをした。
「復讐を達成した気分はどうだった?」
 アヤカはマコトに訊く。マコトは目を伏せた。
「虚しいだけ……ですね。たくさん苦労したのに、達成感が無い。」
「そう……残念ね。」
「『残念』……なのかな。」
「残念よ。復讐なんて所詮ただの自己満足だわ。そのために努力して、
達成したのに満足できないんじゃ、はっきりいって無駄よ。時間の無駄。」
 マコトは胸の奧が痛くなった。俺のこの数週間は、本当に無駄だったのか?
「……アヤカさんの『復讐』は、どうなりましたか。」
「それはもう……」
 彼女は満面の笑みで答える。
19創る名無しに見る名無し:2012/09/06(木) 21:16:33.79 ID:1zWpF5sF
支援
20創る名無しに見る名無し:2012/09/06(木) 21:24:56.12 ID:bH+rxji1
支援
21創る名無しに見る名無し:2012/09/06(木) 22:04:09.48 ID:QoxyS/2a
支援
22避難所からの代理です:2012/09/06(木) 22:27:59.57 ID:nu+Nc6M4
「最高だったわ。私から何もかもを奪った相手に、それ以上のものをプレゼントできた」
「どういう意味ですか?」
「君は知らなくていいこと」
 ちょうどその時、アヤカの注文したコーヒーが運ばれてきて会話が途切れた。
マコトはまた視線を街にやり、長いため息をつく。
「1ヶ月経っても、まだわからないことだらけだ……あの犬のマスクの正体もわからないし。」
「……今ごろ南国でバカンスでもしてるんじゃないかしら」
「はい?」
「いえ、なんでもないわ。ところで、勉強はどう?」
「勉強……ですか」
「浮かない顔してるわね。」
「コンドウさん。」
 マコトはアヤカをまっすぐに見た。
「俺でも、警官ってなれますかね?」
「あら、意外。」
 アヤカはコーヒーを口にする。
「警官を目指すの?」
「はい」
「またどうして?」
「タルタロスを経験して、気づいたんです。」
 マコトは言った。
「この世は、戦いなんだって。」
「へぇ……」
「生きることは戦いで、力の無いやつは負けるしかないんだって。」
「なるほど?」
 アヤカの赤い唇の端が僅かにつり上がる。
「この世を生きるには力が必要で、だけどその力を、俺は人を泣かすためには使いたくないんです」
「だから警察?」
「……変、でしょうか。」
「そんなことないわ、素晴らしい。」
 うつむくマコトを励ますようにアヤカは明るい声で言う。
「『人生は戦いである』。まったくその通り。私たちの生きるこの社会は他人を蹴落とし、
引きずり落とし、自分の居場所を守るための広大な戦場よ。」
 黙り込むマコト。
「そうね、今思うとタルタロスはその縮図だったわね。敗者は引きずり落とされ、
勝者はサポーターとともに栄光を手にする……興味深いわ。」
「でも、タルタロスと社会じゃ違う部分がある」
「それは?」
「『力の使い道』……タルタロスじゃ、相手を殺すためにしか、力をふるえなかった。」
「そうね。それも正しい。他人のために力を使えないのがタルタロスと現実の決定的な違いね。」
 アヤカはコーヒーをすする。コーヒー豆の落ち着く香りが鼻をくすぐった。
「……このコーヒー1杯のために、地球の裏側で何人の貧しい労働者がムチをうたれているか。」
「……コンドウさん、俺にはこの街が、死者の国よりも残酷な世界に見えます。」
「現代では、人は都市で生活するだけで自覚のない大量殺人者でありうるのよ。
……世界中の皆が、君みたいに、少しでもその力を、力の無い人に積極的に分け与えようとする日が来たら、
世界は平和になるのかもね。」
「そのときが、本当のタルタロスとの決着なのかもしれないですね……」
 マコトはコーヒーを飲み干す。強い苦味があとに残った。
23避難所からの代理です:2012/09/06(木) 22:28:29.84 ID:nu+Nc6M4
……時間は戻って、タルタロス壊滅の日……。
 床の血痕は徐々に小さくなってきている……。それは刺された傷が回復している証拠だが、
コラージュはそれを素直に喜べなかった。
 傷が回復しているということは、自分を生かしている高級ナノマシンを消費しているということだからだ。
タルタロスが無くなった今、その資金を確保するのも難しい。
 コラージュは暗い隠し通路からハシゴを上って、冷気に満ちた部屋へと侵入した。
 そこはタナトスの自宅地下、スーパーコンピュータ『ヘカトンケイル』が設置されている部屋で、
コラージュはタナトスに万一があった場合、ここへ来るように言われていたのだった。
 しかしコラージュにはこれからどうすればいいのかわからない。
とりあえず、刺された胸を押さえながら、モニターの前に座ってみた。
 ……しばらくすると、画面に文字が表示される――
『User:Hekatoncheir-1 よりの信号途絶』
『マニュアルにより AI:Hekatoncheir-2 AI:Hekatoncheir-3 をネットワーク上へ解放します』
『この操作によりこれらの人工知能は以後完全な自由意思により行動します 承認するならば』
 コラージュは全ての文章が表示されるまえにエンターキーを押し込んでいた。
その口元には歪んだ笑みが浮かんでいる。
「そうか……タナトス」
 凍えるような寒さのなか、彼の身体は喜びで震えていた。
「タルタロスは無くなったけど、何も終わったわけじゃないんだね……!」
 彼のその言葉に反応するように、また画面に文字が現れる……。
『そうだよ コラージュ』
 彼ははっとする。
『この世にヒトが生きるかぎり 死神の仕事は無くならない。』



 

 俺たちはいつでもタルタロスで死神と戦っている。
 打ち勝つ方法はただひとつだ――
 
 


グラインドハウス おわり
24代理終わり:2012/09/06(木) 22:29:04.34 ID:nu+Nc6M4
本スレ>>19-21さん
支援ありがとうございました。ちょっとこっちのミスで続き投下できなくなってすいません。

これにてグラインドハウス終了でございます。
1年以上の応援、ご愛読ありがとうございました


おまけ
イメージをふくらませるために描いた設定イラスト的なもの。
晒すタイミングがもう無いのでいっきに供養ですぜ
AACV http://dl6.getuploader.com/g/sousakurobo/1704/AACV.jpg
シンヤとパイロットスーツ http://dl6.getuploader.com/g/sousakurobo/1705/SK.jpg
25創る名無しに見る名無し:2012/09/07(金) 01:26:29.14 ID:SbXomNcc
投下、そして完結乙です。

確かにまとまり良い〆でしたね。
必要最低限の文章で、かつ混乱や緊張感を感じさせつつ
タルタロス壊滅を書き上げるセンス、いつもながらお見事でした。

ツカサキは…何かやってくれそうですよねぇ。
マコトも当事者でありながら、最後まで蚊帳の外というポジションなのが、
リアルと言うか、ハードと言うか。
取り敢えず、マコト君の未来に幸あれ!
26創る名無しに見る名無し:2012/09/15(土) 22:43:54.70 ID:v2totfKw
新スレだというのに誰もいない…
27創る名無しに見る名無し:2012/09/16(日) 03:25:18.30 ID:S6Ti5ZKN
三つ編み有効成分ミツアミン不足によるスレ停滞現象。
ロボスレではよくある事です。
28創る名無しに見る名無し:2012/09/16(日) 12:10:59.15 ID:jKLg1Z85
まだ前スレが埋まってないじゃないすかー
29古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2012/09/19(水) 21:15:47.78 ID:w2z6FSxI
明日の10時ぐらいにリベジ投下します。

久しぶりの投下になりますがよろしくお願いします。

これまでのあらすじやキャラクター
http://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/890.html
30古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2012/09/20(木) 22:39:24.34 ID:5SoaEwjr
投下開始しますー
31創る名無しに見る名無し:2012/09/20(木) 22:56:28.47 ID:5SoaEwjr
前回までのあらすじ

黒峰潤也の過去。
全ての始まりへと帰還する。
家族を殺した鋼獣への復讐、それを胸に戦い続けていた頃の物語。
第七機関第四区画での轟虎との死闘。
その戦いで心身を大きく傷つけた潤也の前に一機の巨大な鋼機が現れる。
その鋼機から姿をあらわす一人の少女と犬。
それは、潤也の実の妹、黒峰咲と人語を解す犬ダグザであった。
咲が生きていた事を喜び、お互いに再会を喜ぶ潤也と咲。
しかし、咲の口から衝撃の事実が発せられる。
潤也の両親を殺したのは黒峰咲であり、今、世界中で虐殺を行なっている鋼獣を作ったのも咲だというのだ。
咲はさらに言う。
これは死の無い世界を作り上げる為の戦いなのだと・・・それを行う為には至宝と呼ばれる力が必要なのだと・・・。
そして、咲はその至宝の力を見せつけるようにして、潤也の母親である黒峰恵の人形を至宝の力で作ってみせるのだった。



http://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/887.html
32CR capter2    転 ―神を目指す少女― 後編:2012/09/20(木) 22:59:26.84 ID:5SoaEwjr

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 シミュレーション5。
 ■■■ての作業。
 作り上げた■■一つ一つを丁寧に組み上げる作業を始める。
 最初は、4基本形の完成を目指す。
 ―――――――■■■■、作成に成功。
 ――――――――統■■織、作成に成功。
 ―――――――――――■■■、作成に成功。
 ―――――――■経■織、作成に成功。
 4基本形の製作が完了する。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


咲は先ほどから驚き続けている潤也を見て満足したように腰に手をあてて笑みを浮かべた。

「ふっふー、驚いたでしょ、咲の『ダグザの大窯』はね、無を有にする、つまりはありとあらゆるものを作り出すことが出来るの、お母さんの器をもう一度作り上げる事だって出来るのだよ。
 咲の記憶を元に残留したお母さんの怨念も利用して、作り上げたんだ。いい出来でしょ?驚いたでしょ?」

自慢気に咲は潤也に問いかける。

「あれは本当に母さんなのか?」
「ちょっと違うかな、遺伝子的にはお母さんを完全に再現したけれど、中身は赤ん坊に近い。
今は眠っているけれど、あのお母さんにはお母さんがお母さんであるという人格を形成した経験というものが存在していない。
だから、私たちからしてみれば、限りなくお母さんに近い別物って言ったところ。」
「お前、死を超えるってのはまさか・・・。」
「流石、お兄ちゃん、勘が良い〜、そう咲は死んだ人を生き返らせるシステムを作っている最中なの。
だから言ったでしょ、咲がやろうとしている事からすれば死なんてどうでもいいものなんだって。」
「世迷言も大概にしろよ!咲!!人間が人間を作り上げるなんて、そんな事許されると思っているのか?」
「ん〜、それの何がダメなの?皆、死が怖いんだよね、だから、咲は人が生き返れるようにしようとしているだけ。
宗教とかだとよく死を美化してる事あるけれど、あれってつまりは死が怖いから死の恐怖を拭い去ろうという工夫だよね。
だからそんなもの必要ないような世界を作り上げられたらみんな幸せじゃない?それに咲はそれを絶対成功させる自信がある。」
「じゃあ、あれは何だ!!咲、お前はさっき言ったよな、あそこにいるあの母さんの紛い物は母さんである事である経験を積み重ねていないからまったくの別物だって、確かにお前の言う至宝の力は凄い・・・
 俺も信じられないものだとは思う、だが、それでは人を生き返らせる事なんてできる筈がない、出来るのは似通った人形を作って自分を慰める事だけだ!!」

そういう潤也に咲は宙に立ちながら頷く。

「そう、あのままじゃ、確かに人形。咲も結構時間をかけて何かできないかと思っていたけれど、大釜で出来るのは器を作る事だけだった。」
「なら、なんでそんな馬鹿な考えを持つ!」
「―――でも、もし、他の至宝を全部集めることが出来たらどうだと思う?」
「なにを・・・。」
「さっきも言ったけれどね、至宝は世界に四つあるの、『ブリューナク』、『クラウ・ソラス』、『ファールの聖石』、『ダグザの大釜』、これらはこの世にある絶対の一つを乗り越えることが出来る。
 そして、これらを全て手に入れたものは全能の力を手に入れることが出来るんだって・・・。」
「そんな馬鹿な話が―――」
「あ・る・の。ほら、現にダグザの大釜一つでもこれだけ凄いことが出来るでしょ?こんなものがあと世界に四つもあるとしたら、それは本当だって真実味を持つと感じない?」

『ダグザの大釜』。
咲曰く、無から有を生み出す力を持つ至宝であり、その力を用いて、無いはずの空中に足場を作り上げ、母を模した人形を作成している。
確かに信じられぬ超常の力だ。
咲が言うようにこんなものが世界に四つも存在しているのならば、確かにそのような事が可能なのかもしれない。
33創る名無しに見る名無し:2012/09/20(木) 23:02:43.81 ID:5SoaEwjr

「だが、それは本当にこの世界に四つも存在しているのか?大体、そんなものどうやって見つける。無駄な徒労に終わる可能性も多々あるじゃないか・・・。
 まさか、世界中をしらみつぶしに探そうっていうんじゃないだろうな?どこにあるのかわからないものをアテもなく探そうなんて馬鹿な妄想抱いてるのか?」
「そうだね、本当にこの世界に至宝が四つも存在しているのか?そんな疑問をこの至宝を持ったことがない人が抱くのは当たり前なのかもしれない。
 けどね、それは確かにあるんだよ、咲はそれをもっているからわかる。至宝にはね、他の至宝を感じ取る能力を持っているんだよ。
 だって、この大気中にも至宝の一部は存在しているんだしね。」
「・・・。」
「まー、その変の難しい話は長くなるから置いておいて、要約すれば、咲には他にもそれがあるって感じ取れるって事だね。」
「だが、たとえそれがあったとしてもだ、それをこの世界からどうやって探し出す、どんな形をしているかすらわからないのだろう?」
「そうだね、でも当たりを付けることは出来るんだ。」

 咲はそういって、メタトロニウスの方に向かって宙を歩き、メタトロニウスの巨大な手のひらに飛び乗った。
 その後、手のひらからまた宙を階段を歩くようにしてその肩にいるダグザの元まで上っていく。
 
「至宝はね、この世の生命が絶滅の危機に瀕した時に生命体を救い出すために私たちに与えられたものなの。
 この星の命が危機に晒された時、その命の危機に呼応して、その至宝のもとになる設計図の在処が浮き出るようになっている。」
「命の危機?」
「まー簡単に言えば動物の死ね、ただ、これは老衰とかそういう自然的なのは含まれない、なんらかの外的要因から危機に晒されている事に限定されている。」
「そんなのどうやって―――」
「お兄ちゃんならわかると思うな、お兄ちゃんのその黒い機体も怨念機なんでしょ?ならば、『アレ』を体験している筈。」

『アレ』、それが指すものはおそらくは一つ。
だが、それはつまり、あの機体にもやはりDSGCシステムが搭載されていたという事に他ならない。
潤也はその時、もはや目の背けようのない証拠を目の前に見せられたのだ。
咲はあのDSGCシステムによって見せられるあの地獄の経験を体験している。

「人が死んだ時に発する怨念か・・・。」
「その通り、至宝の設計図はね、周囲にある怨念の濃度の上下によって、世界に浮き出るようになっている。
 つまりは人がたくさん死ねば、その近くにある至宝の設計図がそれに呼応して浮き出るって寸法だね。」

潤也は体が震えるのを感じた、それが何を意味しているか、そして咲が何をしているのか、それに対する仮説出来てしまったからだ。
そしてそれは、信じる事の出来るようなものではなかった。
しかし、それを裏付けるようにしておかしい点は確かにいくつかあった・・・。
あの鋼獣たちが真実人間を滅ぼそうとするのならば、彼らが行なっている行為はあまりにも非効率的だ。
時には人口の密集した地域に、時には人が少ない地域に現れては鋼獣達は虐殺を繰り返している。
しかし、世界の重要機関などはまるで狙って来ない。
戦争を仕掛けて勝とうというのならば、その司令塔を叩くのが上策といえたが、彼らは人を殺す事にしかまるで興味がないように動いてくるのである。


「ま、まさか、鋼獣があちこちで虐殺行為を行っているのは・・・。」

 肩に上りついた咲はダグザの体を抱きかかえる。

「そう、至宝を探し出すため、その為に私達は地上で戦闘を行っている。」

34CR capter2    転 ―神を目指す少女― 後編:2012/09/20(木) 23:05:11.84 ID:5SoaEwjr

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


シミュレーション24
■系の制作。
成功。
■■系の制作。
成功。
 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「咲・・・お前、一体自分が何を言っているのか、わかっているのか?」

そう信じられない目で見る潤也を咲は真剣な眼差しで見つめ返し、

「勿論だよ。咲は咲の理想を手に入れるため、たくさんの人を殺してみせる。ただ、それだけの話じゃない?」
「お前、人が死ぬっていう事がどういう事なのかわかっているのか?
 もうそれは二度と戻ってこない・・・そういう事なんだってお前は本当にわかっているのか?
 大体見も知らない人をどうやって蘇生するっていうんだ?」
「ふふ、お兄ちゃん、だから大丈夫なんだってばぁ、最後には咲が生き返らせるんだから・・・怨念機にはね人の魂の残滓をかき集める力があるの・・・。
 それを応用すれば全ての至宝を手に入れた後、このメタトロニウスと共に全ての人を蘇生してみせることだって可能なんだよ。」

咲は強い意志を持って語っている。
それには信念、信仰そういったモノが篭っているように潤也は感じた。
人を殺し、至宝を発現させ、それを収集し、最後に死んだ人の怨念をかき集めて蘇生する。
至宝とよばれる人知を超えた道具はそれを可能にするのだという・・・。
しかし、例え、咲の言葉を全てそのまま信じて、咲の行おうとしている事が本当に理屈の上で可能な事であったとしても、潤也にはそれが実現可能であるとは思えなかった。
止めなければならない。
これ以上、彼女が過ちを犯す前に――――

「咲、お前、それはシステムの怨念収集によって世界中の人間の怨念と死の追体験するという事なんだぞ、俺もこの機体を使ってきたからわかる・・・何度も地獄に落とされるような体験だ。
 それほどにあいつらは生を求めて、怒り狂っている。自分が自分であることを保てなくなる。そんなものを世界全てで行ったならば、お前の精神が持つ訳ながない。」

何よりも問題なのが、それだった。
鋼獣達は世界中で虐殺を行なっている。
つまり、もし至宝で人間を蘇生できることが可能だとしても、鋼獣が虐殺した世界中全ての人間の死を追体験する必要がある。
システムが動作している時に自分にのしかかる死んだ人間の記憶。
妬み。
絶望。
羨望。
憎悪。
後悔。
希望。
そんなものを何度も、何度も浴びせかけられて、つい先の戦いで潤也は自分を失いかけた。
いや、先の戦いだけじゃない、これまでの戦いの多くはアテルラナが設置したというシステムの緊急停止装置によって失った自我を強引に取り戻すことでなんとか黒峰潤也が黒峰潤也であることを保ってきたのだ。
それを世界規模でもし行うとするならば、間違いなく一瞬で黒峰咲個人の心は壊れる。
それは彼女達が殺した数だけではなく、おそらくはこれまでこの地球上で死んできた人全ての怨念をその身に受けるという事なのだ。
世界中の怨念全てからすれば、咲の心など砂粒一つにすら満たない。
当然、どんなに強固な精神を持とうと人がその身に受けられるようなものではなかった。
例え、至宝にそのような事が可能な力があったとしても、咲が人を生き返らせようと怨念を飲み込んだ時点で彼女は自我を喪失しそのような操作をすることが不可能になる。
そう、これは不可能な話なのだ。
咲がどれだけ自信を持っていようと、どれだけの強固な精神力があろうと不可能なのだ。
だから、もし、UH達にそのようなことを行わせているのが本当に咲だとするのならば止めなくてはならない。

35CR capter2    転 ―神を目指す少女― 後編:2012/09/20(木) 23:08:06.58 ID:5SoaEwjr

「咲、無理だ。例え、お前の話が本当だったとしても・・・それは人の領分じゃ出来ない事だ。馬鹿な事はいますぐにやめろ。」

そう訴える潤也に咲は呆れたようにして、自分の白髪を指先でいじりながら言う。

「だから、大丈夫だって〜。」

そうやって笑う咲を呼び止めるように潤也は口を開こうとする。
しかし、それを遮るようにして咲は言う。

「はい、この話はここでおしまい。それよりお兄ちゃんも怨念機に乗ってるなんて、ビックリだよー、そうだお兄ちゃんもさ、咲に協力してくれない?
 たくさん殺してるんだけど至宝見つからなくてさ。怨念機がもう一機仲間になってくれるのならば、大きな戦力だと思うんだよねー。」

そういって、咲は手のひらを潤也に向けた。
それに追随するように咲の背にいる白い巨大な怪物は潤也とリベジオンに向けてそのリベジオンの身の丈よりも長い大鎌の尾を向ける。
そうして咲は目を瞑り呟く。

「『ダグザの大釜』にアクセス。コードリジェネレイト。」

その言葉と共に大釜の刃が展開し、尾から光が放たれてる。
その光はリベジオンを包み込んだ。

「咲、何をしてる!!」

光りに視界を奪われ、叫ぶ潤也。

「いや、何って・・・ほら、お兄ちゃんの怨念機壊れてるから直してあげようと思って・・・。」

そう言われ眩んでいた目から光の残像を取り払うように頭を振った後、潤也は周囲を見渡す。
そして潤也はそこにあるはずの無いものを見つけた、リベジオンの腕だ。
先ほど轟虎と戦いにおいて失われた筈の腕。
それが、そこに存在する。
潤也は慌てて操縦席に戻りリベジオンの現状を確認する。
四肢を失い、警報を告げ続けていたディスプレイからその警報が消えていた。
そしてその全機能が轟虎と戦う前から追っていた損傷も修復されている。
つまり、リベジオンは戦いに赴く前の状態に完全に修復されたのだ。
あの一瞬の閃光の間に・・・。
目の前で起こる・・・まるで空想を現実に行うかのような出来事に潤也は足を震えさせた。

「くすっ、さっきからモニターしてたのと、このメタトロニウスにもその機体の情報があったから簡単に再現できたんだけれどね。
 これは咲からのお兄ちゃんへの再会のお祝いだって思ってもらえばいいよ。」

咲はそう言って、明るく笑う。
その笑顔は、潤也の父と母を殺し、現在地上で行われている大量虐殺の主導者の顔とはとても思えなかった。
潤也がよく知るお人好しで、優しくて、それでいて時折乱暴で不器用な妹。
それが目の前にいる。
しかし、彼女は虐殺を続けている。
人の蘇生と不死化などという訳の分からない事を至宝という訳のわからない道具を使って成す為に・・・。
まるで酷い夢を見ているようだ。
そう目眩を感じている潤也の横で、咲は思いついたと手を叩いた。
36CR capter2    転 ―神を目指す少女― 後編:2012/09/20(木) 23:16:42.04 ID:5SoaEwjr
「そうだ、お兄ちゃん。せっかくお兄ちゃんも怨念機持ってるんだし、咲の手伝いしてくれない?」
「手伝い?」
「そうそう、至宝探しのお手伝い。お兄ちゃんも一緒になってたくさん人を殺して至宝を見つけ出すの・・・。」

いつもと変わらない調子で咲はそう言う。

「――そんな事出来るわけがないだろう!!」
「いやだ、そんな怒らなくても大丈夫だよ、咲がどうせ全部生き返らせるんだし」
「そういう問題じゃない!お前は一体、自分がどういう事を言っているかまるで理解しているのかまるでわかっていない!!」
「なんで?どうせ生き返るなら、死んだって一緒だよ。」
「―――――っ。」

潤也は閉口し、己の言葉の無意味さを理解した。
会話がなりたっていない。
咲は信じているのだ。己の行う事が正しいと・・・そして、それを成すための力が自分にはあるのだと・・・。
そんなものをもはや確信に近い形で持ってしまっている。
そして咲は潤也が知るそれと変わらない口で父と母を殺し、世界中の人々を虐殺するように指示を出し、あまつさえ自分をそれに誘おうとしている。
潤也は目の前にいる少女が自分の知る妹の皮を被った自分の知らない全く別の化物なのではないかと思えてしかたなかった。

「はぁー、お兄ちゃんが手伝ってくれれば、早くお父さんとお母さんも生き返らせる事が出来るのに・・・。」

咲は残念そうにため息混じりにそう言う。

「本当に・・・お前が父さんと母さんを殺したのか?」
「うん、そうだよ、こんな風に―――。」

そう言って、咲はメタトロニウスにその鋼の掌の上にいた母の形をしたものを握りつぶした。
飛び散る血と肉片、その血の一部が潤也の頬に付着する。

「あっ・・・。」

その光景に潤也は思わず言葉を失う。
潤也の瞳に映るのはメタトロニウスの腕の隙間から血まみれになってはみ出している人の腕。
あれは母ではない。
そもそも生物であるかどうかも怪しい。
そうわかっていても、母と同じ形がしたものを無残な残骸に成り果てたのを見るのに平常心を保てるわけが無かった。
見ているだけで気が狂いそうな感覚に陥る。
あれがもし本当に母で、それをしたのが咲であるというのならば・・・。
それはもう本当に――――――

「ん、どうしたの・・・お兄ちゃん、呆気に取られちゃって?これ偽物だよ?」

ショックを受けている潤也見て少し驚いたようにして咲は言う。
偽物とはいえ母と同じ姿をしたものを殺した事に特別な感傷すら持っていないと感じさせるその物言いに潤也は言いようもない感傷を持つ。
狂っている。
黒峰咲は狂っている。
その事に悲しみと怒りとで爆発しそうになった自分を抑えながら潤也は言う。

「咲、お前、父さんと母さんを生き返らせる為にも・・・って、今、言ったよな。」
「うん。」

当たり前の事だと咲は頷く。
それに対して潤也は叫んだ。

「だったら――――殺す必要なんて無かったんだ!はじめから生き返らせようなんて考えてるのならば、そもそも殺す意味なんて無い。だいたい・・・なんでお前は父さんと母さんを殺した!!」

ここに根本的な矛盾がある。
生き返らせようとするのならば、そもそもとして殺す必要がない。
そもそも咲は両親を慕っていたのだ・・・潤也の視点から見ても仲の良い親子だったと思う。
だからこそ、潤也には何故、咲がそのような凶行に移っているのか理解出来なかった。
37CR capter2    転 ―神を目指す少女― 後編:2012/09/20(木) 23:18:42.43 ID:5SoaEwjr
「だから・・・理由があるって言ったでしょ・・・。」
「それは、何だ?」
「世界を死から救うため。世界を死という暗黒から抜けださせる為。」
「それじゃ、理由になっていない!大体、父さんと母さんが死んだ所で得られる力なんてたかがしれてる・・・それをなんで殺す必要があった!」
「これが理由なんだけどなぁー。ふふ、そうだね、ちょっとお兄ちゃんの知らない話をしようか・・・。」
「知らない話?」

そう問う潤也。
咲はメタトロニウスの装甲を愛でるようにして撫でる。

「このメタトロニウスはね、お父さんとお母さんが作ったんだよ。」

誇りのようにして咲はいう。

「なんだと・・・。」

それは潤也も知らない事実だった。
潤也の父と母は著名な機械工学の研究者である。
5年前から機関を巻き込む大プロジェクトの責任者である父と母
しかし、その研究の内容は極秘扱いとされており、実の息子である潤也も知らなかった。

「あの旅行はね、本当はこの子の起動実験の為の旅行だったんだ。お兄ちゃんは知らないと思うけどね。」

咲は愛しそうにメタトロニウスの装甲を撫でる。

「咲には適性があったらしくて、この子の適格者として選ばれたの・・・そしてあの日、初めてのこの機体を動かした時、咲は知ったんだ。」
「知った?」
「お兄ちゃんも知ってると思うけど怨念にはね、願いが込められてるんだよ。生きたい、生きていたい、誰かに死んでほしくない。誰かに生きていて欲しい。そんな願い。」

潤也もそれを知っている。
リベジオンに搭載されているDSGCシステムは不幸な末路を迎えた怨念をエネルギーに変換するシステムだ。
そのシステムは、その強大な力と引換にその死者の死の体験を搭乗者に追体験させる。
その際に死者がいつも願うのは自分をそんな末路に追いやったものへの怒りと、生きたいという願い。
先の轟虎との戦いでもそれを実感したばかりであった。

「だから咲はね、思ったんだ。誰ももう死で悲しまなくて良い世界を作る。こんな無念な思いを誰もしなくていいような世界を作りたいって・・・。」
「それの何処に生みの親を殺す理由がある!」
「ふふ、結論を焦っちゃだめだよ。至宝にはね、ありとあらゆる不条理を消し去るだけの力がある。それによって人は、いや、この世界に生ける全ての者は新しいステージに立てる。
 その可能性も咲は知った。けれど、それには強靭な精神力と目的意識が必要なの・・・DSGCシステムに流されない、消し去られない強い心・・・それがね。」

咲が何を言わんとしているのか潤也は漠然と理解し愕然とする。

「お、お前は・・・まさかそんな理由の為に父さんと母さんを殺したっていうのか?」

潤也は声を震わせて言う。
メタトロニウスの手のひらにある母親の模倣を見た後、笑って、

「うん、そうだよ。咲はお父さんもお母さんも今でも大好きだし、お兄ちゃんも大好き。だから、この世界の誰よりも生き返らせたい。
 そう思う心が私を強くする。那由他の怨嗟の果てで私は私であり続ける強さを持てる。」
「そんな・・・そんな理由で・・・。」

潤也は絶望感に苛まれる。
潤也にとっては最悪の記憶であり、この戦いの起点である第六区画消失事件。
あの日、咲はメタトロニウスのDSGCシステムの怨嗟のフィードバックによって、その怨嗟と同化した事を悟る。
狂ってしまったのだ、幾千幾万の怨嗟に侵食されて、その在り方を変えてしまった。
少なくとも潤也にはそうとしか思えなかった。

38創る名無しに見る名無し:2012/09/20(木) 23:38:50.10 ID:bjL1RaLX
 
39CR capter2    転 ―神を目指す少女― 後編:2012/09/20(木) 23:49:20.76 ID:La/yAjfl

潤也は絶望感に苛まれる。
潤也にとっては最悪の記憶であり、この戦いの起点である第六区画消失事件。
あの日、咲はメタトロニウスのDSGCシステムの怨嗟のフィードバックによって、その怨嗟と同化した事を悟る。
狂ってしまったのだ、幾千幾万の怨嗟に侵食されて、その在り方を変えてしまった。
少なくとも潤也にはそうとしか思えなかった。

「だから、お兄ちゃん、一緒に来てくれない?お兄ちゃんにも手伝って欲しいんだ。」

そういって咲は手を差し伸べるようにして潤也に向ける。
咲は言う。
至宝によって人を生き返らせ、不死の世界を作ると・・・。
それによって父と母も蘇生させるのだと・・・。
それによって潤也は理解した。
既にその為に彼女の愛する父と母を殺した咲にはそれ以外の道が残されていないのだという事を・・・。
例え、その目的にたどり着くまでの手段がどれほどの凶行なのだとしても、それにたどり着くまで進み続けるしかない、そんな所まで来てしまっているのだと・・・。
けれど・・・わかっていても潤也はそれを言うことを止める事が出来ない。

「何故だ・・・なんで・・・父さんと母さんを殺した・・・。別に世界なんてどうでもいいじゃないか・・・一人の人間が世界を救うだとかそういう大それた事なんて考える必要なんてない。そんなことお前が背負う必要なんてない。」

こんな言葉はもう遅いのだとわかっている。
 
「だから――――」

咲は先と同じ言葉を繰り返そうとする。
それを遮るように潤也が叫ぶ。

「そんな答えが聞きたいんじゃない!!!!」

咲は呆れたように両手を上げて首を振る。
そして少しため息混じりに、

「はぁ、仕方ないお兄ちゃんはまだその域に達していないんだね。それじゃあ、理解できなくても仕方ないか・・・まぁ、いいよ、咲はいつでも待ってるから理解出来たら一緒に来てね。行くよ、ダグザ。」

咲は潤也に背を向けて、ダグザと共にメタロニウスの背部にある搭乗口へと移ろうとする

「待て、咲!話はまだ終わってない!!」

そう呼び止める声も聞かず咲はメタトロニウスの中に入り込んだ。
メタトロニウスの瞳が光り、それと共に巨大な六枚の翼が展開する。

「じゃあ、お兄ちゃんバイバイ〜、また何処かで〜。」

そうスピーカー越しに言って、リベジオンの4倍以上ある巨体は飛翔する。
その際に起こる暴風をリベジオンのコックピットに入る事で堪えながら、遠く離れていく咲を潤也はただ見送った。
そうして少したった後、潤也は咲の言葉を思い返し・・・コックピットの壁を叩く。
家族を失ったと思っていたあの日に立てた復讐の誓い。
UHと呼ばれる地下世界の住人達への憎悪。
それが全て間違いだと知った。
家族を殺し、あの惨劇を起こしたのは黒峰咲である。
世界各地で行われている虐殺行為は咲の指示でUHが行なっているものである。
咲の目的は至宝と呼ばれる謎の道具を用いての世界中の人間の蘇生と不死化。
それを手に入れる為に彼女はこれまでの凶行を行なってきており、そしてこれからも続けていく。

「――――はは、悪い冗談だ。」
40CR capter2    転 ―神を目指す少女― 後編:2012/09/20(木) 23:50:59.82 ID:La/yAjfl
潤也は力のない声でそう言った。
性質が悪いにも程がある。
俺は今まで一体何のために戦ってきたのだろう?
こんな機体に乗って死を何度も体験させられるような目にあって・・・。
潤也にはこれまで行なってきた事が全て無価値になったように思えた。
 
「じゃあ、俺はどうすればいい・・・。」

そう思った。
咲のやる事は間違っている。
そう漠然とは思うものの、それを否定出来るだけの理由を潤也は持っていなかった。
何故ならば、潤也自身もDSGCシステムによって死者の念に何度もその心を晒して来たのだから・・・。
だが、しかし、だからこそ・・・思う。
やはりたった一人の人間が世界全ての怨念をその身に受ける事など出来はしないと実感を持って思う。
どれほど精神を鍛えようと、どれほど強い自我があろうとそれは無理なのだ。
けれど、咲は自分がそれを超える事が出来ると信じてただ、ひたすらに人を殺し続けている。
ならば、黒峰潤也・・・お前はどうするべきか?
 
「―――――そんなの決まっている。」

そう決まっている。
――――――止めるしか、無い。
これ以上、咲が凶行を犯す前に止めるしか・・・。
けれど、それがお前に出来るのだろうか?
あれは、ただ、色んな人を救いたいだけなのだ。
死に触れすぎて、死を憎む余り、死の踏破を願っただけなのだ。
それを願い、ただ、ひたすらに走り続けている。
その為に、父と母すら手にかけてしまった。
だからこそ、もう咲はどのような説得も聞かないだろう。
咲が殺戮を止めるという事、それは父と母の死、そして己が殺してきた人々が本当に死ぬという事なのだから・・・。
既に、咲はもう後戻りの出来ない道にいる。
ゆえに黒峰咲を止めるという事は黒峰咲を殺すという事に他ならない。
再び自問する。
お前にそれが出来るのか?と・・・。

「――――出来る訳がない・・・。」

自虐的に言う。
黒峰潤也は黒峰咲を一人の家族として愛している。
潤也の誕生日プレゼントとして花の冠を作ってくれた咲。
祭りの射的で目当ての景品を当てられなくて涙を目に浮かべていた咲。
生まれ母親に抱えられながら産声をあげていた咲。
そのどれもが鮮明に脳裏に焼き付いている。
そんな人間を殺せる訳が無かった。
失意に暮れる。
今、知った事を忘れて全て投げ出してしまいたくなる。
けれど、そうしている間にも咲の指示の下世界中で鋼獣達が人を殺していく。
叶いもしない願いを叶える為に・・・。
咲を止めなければならないという思いと自分にはそれが出来ないという確信で潤也はがんじがらめだった。
もしかすると、咲が言っている事は全部何かの間違いかもしれない。
そうだ、咲が自分が両親を殺したとなんらかの原因で勘違いしているという可能性もある。
そうであるならば、咲を止める事を出来るかもしれない。
まだ、戻れるのだと言えるかもしれない・・・。
そう信じる事だけが、黒峰潤也に残された最後の心の拠り所であった。
リベジオンのコックピットで電子音が鳴る。
リベジオンに通信が入った事を知らせるコール音だ。
潤也はリベジオンの操縦席に座り、その通信回線を開く。
スピーカーの向こうから聞き慣れた声が聞こえてくる。
41CR capter2    転 ―神を目指す少女― 後編:2012/09/20(木) 23:52:17.17 ID:La/yAjfl

「ハロー、親愛なる兄弟、そろそろ君は僕が恋しくなってるんじゃないかと思ってね?僕はそう凄く思ってるんだけど、どう?これからちょっと会わないかい?」

その耳障りな声は深く潤也を不快にさせる。
潤也は無言で通信を切ろうとスイッチに手を伸ばす。
そこで、男は慌てたように

「おっとと、通信を切らないでくれよ、兄弟、せっかく面白い事を教えてあげようとしてるのにさ・・・。」

そう意味深にアテルラナは言った。
潤也はそれに聞き返す。

「面白いことだと?」
「そう、面白いことさ、題して『黒峰咲の真実とその仕掛け人』っていうのはどうだい?興味をそそるだろう?僕は凄いそそるね。」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シュミレーション108

全ての器官が完成。
それを繋ぎ合わせ、人を構成する。
構成中。
――構成中。
―――――構成中。
構成完了。
作り上げた人が目を覚ます。

【結果】
失敗。

【問題点】
素体となった人間の体の再構築には成功―――人格までの模倣は不可であった。
人格を形成するにたる魂の生成とそれを形作る記憶の作成が必須と思われる。
これはダグザの大釜の力のみでは成せぬ所業であり、他の至宝の力も必要と想定。

よって未だ、人の蘇生は成功せず。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―結に続く―
42古時計屋 ◇klsLRI0upQ:(代理):2012/09/20(木) 23:53:19.30 ID:La/yAjfl
というわけで終了です、連投規制くらってしまいました・・・orz
新規さん完全お断りな感じのネタバレ回です、終始ネタバレなんですが、設定を羅列するだけにもなりそうで、それを回避しようと四苦八苦した形跡が見えます。
この二章は明かせる情報は全部明かしてしまおうというある種のネタバレ回です、風呂敷を広げているように見えて、実はたたもうと書いてる側は躍起になってます(苦笑)



超ひさしぶりのリベジ投稿ですが、楽しんでもらえると・・・いいなぁ・・・。
次はたぶんそんなに遠くはない。(もはや説得力の無い発言)
43創る名無しに見る名無し:2012/09/20(木) 23:54:13.16 ID:La/yAjfl
代理投下終了!それではゆっくり読ませていただきますね!
44創る名無しに見る名無し:2012/09/21(金) 00:58:35.36 ID:EdE9Xzeh
投下乙です!ゆっくり読ませてもらおうかー!
45創る名無しに見る名無し:2012/09/22(土) 22:32:57.45 ID:6UzLjrHR
>>42
投下乙です

まさか……家族自体がリべジオンに関わっていたとは……
咲ちゃんといい、うちの子といい、ロボスレは殺し愛が好きな女の子が増えてきたな!
そして潤也は……どのような決断を下すのか……
次回を楽しみにしていますね
46創る名無しに見る名無し:2012/09/23(日) 20:51:24.76 ID:0xmmycEd
遅ればせながら>>1乙でございます
グラインドハウスの完結&CR再開という二代ビッグニュースに戦々恐々しつつ。
BWを再開する前に感想の程を。本当に前スレから亀ばっかですみません。

>>24
まずは完結、心からおめでとうございます。
コラージュがこうもあっさりと退場したのに本気で驚きました。しかしこうも巨悪があっさりと倒れる無常感が実にグラ家だなと。
悪夢を終わらせるのが、主人公では無く巨大な存在、ひいては公的な存在である事に絶妙なリアリズムを感じたり。
ここら辺の決してキャラクターを英雄化というか、ヒロイックにさせない氏の作風が本当に好きです。リアルで。
まさか奴の正体がキムラだったとは……。そんなキムラも手玉に全てを掌握するアヤカさん凄すぎィ!

さて、悪夢から覚めて真実を知り、平穏な日々に戻って(多分)来れたマコト君。
その裏で生き残りやがったコラージュ。まだまだ、マコト君に平和な日々が訪れる気がしないのであります。ガクブル。
にしてもこのほろ苦い、良い意味で何か終わった様で何も終わっていない終わり方。氏にしか出せない持ち味と言ってもいいのでは無いのでしょうか。
グラゼロからグラ家としてある種続き物な感じになりましたが、三作目のグラ○○にもグラ家の設定や世界観は継続されるのか?
そしてマコト君の戦いはこれで本当に終わったのか? 色んなワクワクとする後味を残しながらも改めて完結、おめでとうございます&お疲れさまでした。

このパイロットスーツマジでカッコいいです。シンヤ君は本当にイケメンだな!!
AACVの良い意味でのこのずんぐりむっくりとした感じも大好きです。これで本編は軽快に動いてるんだからホントカッコいいよなー。

>>42
CR再開乙です!心よりお待ちしておりましたよ!
にしても1年振りとは何か実感沸きませんねw年を取ると時間の進みが遅く感じてしまって困る。

さてさて、再開して間もなく一気に色んな謎が咲ちゃん経由で明かされていますが、僕の足りない頭だと理解が追いつかなくて困る。
取り合えず今までの話からは考えられない位潤也兄やんが動揺してる事から限りなくヤバい事が起きてる事だけは重々理解。
というかあらすじに書いてはいますが、実際に妹が全ての元凶だと分かった瞬間の世界の歪みっぷりがヤバいですね。
咲ちゃん、いや、咲さん、いや、咲様と呼ばざるおえないこの滅茶苦茶っぷりには震える他ない。
というか鋼獣を生み出すだけでなく物体その物を生み出すとか最早神に等しいというか、邪神というか。何を言っているのか僕は。

只でさえ可愛い妹が敵に回るのもきついのに、事の発端に両親が携わってるとか潤也兄やんボロボロ過ぎるやないか……!
というかこれ、両親すらも、というか家族が皆敵に回る展開になるんですかね。まるでどこかのブレードさんやないか……!
藍ちゃんー!藍ちゃん何とかしてあげてー!

そんな潤也に手を差し伸べる予想だにしない相手。さて、最早何もかも絶望に染まった潤也をこの先待ち受ける物とは。
早く次回を読みたくて仕方ないでござる。というかコレ読んだ後、前スレのアレを読むとダメージ半端無いよww


長々とすみませんでした。CRの続き&グラ家さんの次回作を楽しみにしています。
では次のレスから5月振りのBWを投下します。以前師匠に監修を頼みましたが
今回は遥とリシェルの話に絞っている為、監修を頼むのはリヒトの話を絡ませる時になるかなぁと。では


47TロG ◆n41r8f8dTs :2012/09/23(日) 20:53:28.90 ID:0xmmycEd
暗く淀んだ空から容赦なく降り続いている、冷たく打ち付ける雨に身体を濡らしながらも少女は躊躇する事無く歩き続ける。


今にも折れてしまいそうな、華奢で生白い両足が、一歩、一歩と踏み出す度に跳ね返る泥水に塗れて汚れる。にも関わらず、少女は歩みを止めない。
彼女と再会した時には―――――――――久しぶりに一条遥と再会した時には綺麗に着飾られていた洋服も、既に泥塗れだ。
全身を自らの手で汚しているかのように、少女――――――――リシェル・クレサンジュは路地裏を一心不乱に歩き続ける。

路地裏はまだ昼間だというのに、どんよりとした薄暗さに満ちており先が見えない。リシェルは自分が闇の中に飲まれていく様な錯覚を覚える。
さっきまで一条遥と共に謳歌していた、明るく賑わう表通りと相反する様に僅かな光すらも届かない暗き路地裏。
レイチェルの暗部と言えるかもしれないその場所は負の空気に溢れており、ジメジメとした湿気と、言い知れない息苦しさを感じさせる。

路面には大量の水溜りが広がっており、奥に進めば進むほど、異様な圧迫感が迫ってくる。
リシェルは近くの壁に手を付きながら、確実に一歩ずつ踏み出していく。しかしこの路地裏、全く人のいる気配を感じない。
左右には老朽化している建物が軒を連ねてリシェルを冷徹に見下ろしている。崩れかかっているガレキや擦り切れたポスター、伸び放題のツタが痛々しい。
かつては様々な目的を持った人間達で賑わっていたのだろうが、今や人っ子一人、何処かへと消えてしまった様だ。

寒さからか、それとも疲れからか。呼吸が若干荒くなりながらも、リシェルは歩く。

ふと、無意識に頭の中で反芻する、記憶。まるで灯火の様な、温かく楽しい記憶が、甦ってくる。

全ては数日前だった。リシェルにとってその出会いは、ある種運命の出会いであった。
自分と同じくらい小さな背丈ながらも、自分とは全く違う人生を辿っている少女に出会った。実年齢に比べ外見のせいで、大分幼く見えるその少女の名は、一条遥。
リシェルを見据えている、一条遥の大きな両目は、希望に満ちていた。その目は、太陽の下で健やかに育ち続ける、向日葵の様な明るさに溢れていた。

前方を軽く睨みつけて、リシェルは壁から手を離す。そろそろ終わりが見えてきたかもしれない。
我ながら粗末に程がある、変装代わりの頭部に被った麦わら帽子を目元が隠れる位深く被り直す。
この先に何があるかは分からない。表通りに出るかもしれないし、行き止まりかもしれない。リシェルとしては……まぁ、まだ結論は出すべきじゃない。

足音を隠しながらも、背後から複数の人影が迫っている事にリシェルは元々感づいている。勘付きながらも敢えて、自らを袋小路へと追い込んでいる。
逃げるのであればこんな真似をする必要は無く、人混みに紛れて行方をくらませば良い。何故、リシェルがこうして自らを不利な状況へと追い込んでいるのか。
答えは単純で、リシェルに逃げる考えは無い為である。いつ頃からか、彼女の思考は逃走から戦闘へとシフトしている。

どっちにしろ警察に追われている身、例え強引な手を使ってでも、ここで出来る限りの障害は排除しておくべきだと、リシェルは考える。

左右を見下ろしている建物が途切れ、とうとう路地裏の奥へと、リシェルは辿りつく。
48TロG ◆n41r8f8dTs :2012/09/23(日) 20:54:38.48 ID:0xmmycEd
路地裏の行く先は、行き止まりである。移住区として使われていたのだろうか? 正面、右左と巨大なアパートらしき建物がリシェルを阻んでいる。
当然、この建物も人の気配はまるでなく、大量に割られた窓ガラス、錆に侵され放題で茶色く染まっている壁面、剥き出しの鉄骨と人が住む以前にそもそも開発段階で放棄された様に思える。
何となく幽霊でも住み着いている様に思えるが、今の所存在を感じられるのはネズミだとかの小さな動物達程度だ。次第に雨が強まってきて、雨音が反響しては空に消える。

麦わら帽子を投げ捨てて、リシェルは足を止めて振り返る。振り返り、右手に力強く握っているパートナー、神威――――――――が変形している杖を口元へと寄せる。

と、闇の中からうっすらと、何者かが姿を現し始める。その何者かは一人、二人、三人と増え出しては、リシェルを取り囲む様に増えていく。
何者かの姿は、リシェルの命を背後から狙ってきたあの男と同じ姿――――――――顔をすっぽりと隠す様に頭部、否、全身を漆黒のローブで包んでおり得体が知れない。
あの男と同じ、と寧ろ……あの男と同類の存在だと、リシェルの中で漠然と浮かんでいた疑問が確信へと変わる。

あの男の凶行は、決して偶然ではない。最初から計画されていたのだ。

この集団に、あの男はきっとそそのかされたのだろう。私を殺す方法があると。

一つの疑問が解けた所で、また別の疑問がリシェルの中で沸き立つ。ならばこの集団は、何の目的で私を狙っているんだろうか? という疑問が。
至極簡単に考えれば、ライオネルの指示の下、リシェルが神威を使い、奪ってきたオートマタの神子達が復讐の為に徒党を組んできたのかもしれない。
寧ろそう考える方が自然である。いつ復讐されるかも分かんねえからいつも気を引き締めておけ、とライオネルに常々言われてはいたが……。

完全に不意を突かれた。一条遥と一緒に過ごしていた時のリシェルは、完全に気が抜けていた。油断しきっていた。

一条遥と過ごしている時間は今までに無い位幸福感があった。成す事やる事、全てが楽しかった。
あの時だけは、リシェルは一人の少女として生きる事が出来た。忌まわしい過去も、罪深き今も忘れる事が出来た。

そんな瞬間をこの集団は奪い去った。そう考えると、リシェルの中で例えようの無い感情が一寸顔を出す。

雨は豪雨へと変わり始め、鉄骨を打ち立てる雨の音がさながら機関銃の銃撃音の様だ。
リシェルの髪の毛は大量の水を帯びており、撥ねに撥ねた泥水は肌も洋服も、リシェルの全身を無残な姿へと塗りつぶす。
目の奥が猛烈に痒く、リシェルは目を擦りたい衝動に駆られるが、こんな状態で目を擦ると自ら目を潰す様な行為なので止めておく。

それにしても不思議だと、リシェルは思う。これは雨だ。顔を雨水が走っているだけだと、自分自身に言い聞かせているのに。

両目から雨水が流れて、留まる様子が無い。何度も腕で目元を拭っても、両目から雨水が止まらない。
視界がぼんやりと曇っていく。これから場合によって活発に動く必要もあるのに、これでは……いけない。
いけないというのに。こんな、事では。

「その涙は我々への同情か? それとも挑発のつもりか?」

ずいっと、ローブ集団の長らしき人物が、リシェルの真正面へと踏み出してくる。
踏み出しながら頭部を隠しているローブを両手でがっしりと掴むと、ゆっくりと上げ始めた。

ローブを顔から上げて、その人物はリシェルへと自らの顔を露出させる。
男性。それも、一言で表すのならば強面の男性で、顔に走っている幾つもの傷痕と逞しく整った眉、鋭い目付きには、幾つもの死闘を繰り広げてきたような凄身を感じられる。
正に戦士、それも熟練の戦士と呼ぶのに適したような顔付きである。本来ならば。しかしその目に、戦士らしい魂は感じられない。
49TロG ◆n41r8f8dTs :2012/09/23(日) 20:55:33.76 ID:0xmmycEd
光の宿っていない虚ろな目で、何かを見ている様で何も見ていない、空っぽな瞳。だが、その両目は確かに、リシェルの事を映しこんでいる。

「他人の幸福を根こそぎ奪っておいて、自分は涙を流す余裕があるとは羨ましいぞ。我々の涙はとうに枯れ果ててしまった」

そう言いながら、男性は何故かローブを跳ね上げて、鍛えに鍛え上げられた筋肉質な右腕をリシェルに見せ付ける。
その右腕、否、右手首には何の装飾もなされていない、質素なリストバンドが巻かれている。
リストバンドは質素ではあるが、何か宝石でも嵌めていたのか、真ん中の部分に球形のくぼみが作られている。

「覚えているか」

神威を構えつつ睨んでいるリシェルに、男性は声を震わせながら、言った。


「貴様にオートマタを強奪された、カルマスという哀れな男の事を」

                              ――――――――

時間を数十分前に戻そう。


「ごめんなさい! ごめんなさい!」
50TロG ◆n41r8f8dTs :2012/09/23(日) 20:56:15.47 ID:0xmmycEd
人混みの中を謝りつつも必死に掻き分けながら、一条遥はリヒターと共に、行方を眩ましたリシェルを探し続けている。

人にぶつからない様回避しつつ、遥はレイチェルの街を駆け抜ける。
とにかくリシェルらしき人物がいないかを逐一目を凝らして探し続けるが、こんな地道すぎる草の根運動的な探し方ですんなり見つかるとは思えない。
思えないものの、あんな別れ方をしてそのままさよならするなんてまっぴらごめんだと、遥は心の底から思う。

別れ自体が嫌なんじゃない。人には色々事情があるし、一期一会って事だがあるし。
だが、しっかりとした事情も分からず有耶無耶のまま別れる事だけは嫌だと、遥は思う。

リシェルの外見自体は非常に特徴的だ。特に琥珀色の瞳なんてまず、忘れる筈が無いし見間違える事も無い。
だがしかし、それっぽい髪の色をした人も、ましてや琥珀色の目を持つ人にすらも見掛けない。一体、リシェルはどこに行ったのだろうか。
神頼み的な感覚で、遥はリヒターを口元へと寄せて、尋ねる。

「リヒター、神威の気配……感じる?」

僅か少しでも、少しの可能性でも良い。リシェルが携帯しているであろうオートマタ――――――――神威の気配をリヒターに探って貰う。
遥は未だに、リシェルが神威の神子であると、連続オートマタ強奪事件の犯人であるという事が信じられない。
いや、まだそうだとハッキリした訳じゃない。全てはまず、リシェルを見つけて掴まえる事だ。それで全ての真実がはっきりする。

同じオートマタ同士なら少しでも波長というか、そういうのを感じられるのではないかという、浅はかな期待を遥はリヒターに寄せる。
しかしそんな雲を掴む様な期待でさえ、今の遥には重要である。ほんの少し、本当にほんの少しでも構わない。

リシェルの気配を、存在を察知する事ができれば、それで。

<……マスター、申し訳ございません。逆に気配が遠のいています>
「離れちゃってるんだ……ありがとう、リヒター。大丈夫だよ」

リヒターに優しく微笑み返しながら、遥は前を見据えてとにかく走る。

数分前の出来事が仄かに、遥の頭の中で巻き戻される。
あの出来事も、遥の必死な探索に拍車を掛けている。


                              ――――――――

遥がリシェル探索をし始める一分ほど前に時間が戻す。


遥は俄かに信じられない。信じられないが、確かにその人物は、遥の前にいる。

リシェルと全く同じ髪の色にして、どことなくリシェルと似ている顔立ち。目の色が違うのは不思議だが、それは重要な事じゃない。
リシェルに比べて大分目鼻立ちとスタイルが大人びているが、それでもしっかりとリシェルと姉妹だと分かる雰囲気。
その女性、マシェリー・ステイサムは遥に深く頭を下げる。そしてゆっくりと頭を上げると、凛としていながらも若干申し訳無さそうな声で、言った。
51TロG ◆n41r8f8dTs :2012/09/23(日) 20:56:56.85 ID:0xmmycEd
「私の名はレイン。レイン・クレサンジュ。仕事でマシェリー・ステイサムという名を使っているから、普段はそちらの名で呼んでほしい。
 ……いきなりこんな事を頼むのも失礼千万とは思うが」

そうして、両目に指を当てて、何かを取り出す。恐らくコンタクトレンズか―――――――と。

マシェリー、否、レインはリシェルと同じ琥珀色の両目で、遥を見据える。見据えながら、切実さをひしひしと感じる声で、言った。

「私とスネイルと一緒に、私の姉を……探してほしい」
 
遥は瞬時に思い出す。さっきまでリシェルが、遥と食事を楽しみながら切々と語っていた、自らの過去を。

リシェルは語った。自分には、事情があって離れ離れになってしまった妹がいると。その妹の名前はレイン。レイン・クレサンジュと。
もう出会う事が無いかもしれない、けれどいつかもう一度レインに会ってみたい。それで抱きしめたいと、リシェルは言った。
そんなレインが、妹は今、遥に言った。私の姉を、探してほしいと。

こんな酷な偶然があるのだろうか。離れ離れになった姉妹が、こんな場所で出会ったのに、再びすれ違うだなんて。
だとしたら、何故リシェルはようやく出会う事が出来た妹から逃げ出したのか。今まで会いたくて仕方が無い相手だった筈なのに。

いや―――――――レインだけでなく、どうして……私からも、逃げ出したのか。

遥には何もかもが分からなくなってきた。リシェルが何を思い、何を考え、姿を消したのか。何一つ、分からない。

聞きだしたい。例えエゴだろうと、リシェルに取って触れてはならない領域かもしれなくても、遥はどうしても、リシェルから聞きだしたくて仕方が無い。
寧ろ、聞かねばならないと、思う。どうして、リシェルが全てから背を向けたのか、そして逃げ出したのかを。
この事がハッキリしない限り、遥は安心して眠れない気すらしてくるから困る。

「遥ちゃん、色んな事が一気に起きすぎて頭の中大混乱だろうけど、協力してあげてくれないかな。本当に必死なんだ、この子」

ある種、一番先に突っ込みたいが突っ込んじゃいけない気がする、レインの横に立つスネイルが遥にウインクしつつそう言う。
態度自体はやおよろずにいる時の様に飄々としているが、遥には分かる。スネイルの声にふざけた様子は無く、心から頼んでいる様に聞こえる。
付き合っている期間自体は長くない所か二日三日程度だが、遥はこういう局面でスネイルがふざけた事をする様な人間では無いと信じている。

それに真剣な、切実な面持ちで遥の答えを待っているレイン。

遥は迷う事無く、即座に答えを出す。迷っている暇なんて、時間なんて一秒も、ない。

「分かりました。協力します。早くリシェルさんを見つけて、きちんと話を聞かないといけないですね」

遥の返答に、レインは心からホッとしたのか、良かった……と小声で呟き胸を撫で下ろす。
そんなマシェリーを、スネイルはニヤニヤとしながらいつもの茶化す様な声で弄る。

「良かったわねマシェリー。遥ちゃんが良い子で」

スネイルの言葉をそれとなくスルーし、レインは咳払いをすると通常時の冷静な顔付きへと切り替わる。
そして再び、今度は軽く遥に頭を下げる。顔を上げ、遥からじっと目を逸らさず、良く通る声で感謝する。

「協力してくれて、本当に有難う。心から礼を言うよ」

レインの感謝に対して、遥は軽く頭を横に振る。振って、答える。

「まだ感謝される様な事はしてないです。感謝なら、リシェルさんを見つけられた時にでも」

そうして、遥はレインとスネイルに、自分自身に言い聞かせるように力強く引き締まった声で、言う。

「一刻でも早く、リシェルさんを探し出しましょう。それで……真意を、聞きだしましょう」


52創る名無しに見る名無し:2012/09/23(日) 20:57:19.78 ID:/xewwgyN
 
53TロG ◆n41r8f8dTs :2012/09/23(日) 20:58:44.12 ID:0xmmycEd
レインとスネイルは深く頷き返す。自らの正体を隠すコンタクトレンズを、レインは入れ直す。

物言わぬその瞳には、確かな決意が籠っている。必ず、姉を探してみせるという。


                              ――――――――

回想終わり。

遥は気合いを入れる様に両頬を両手で軽く叩く。さっきにも増して足を早めて、少しでも怪しい人物がいないか目を凝らす。
今頃、自分とはまた違う手段でスネイルとレインはリシェルの探索に走っている。

二手に分かれた理由は、三人と一機で纏まって探すよりも互いに違った方向で探した方が恐らく見つけやすいというスネイルの提案だ。
もしも目出度くリシェルを見つける事が出来たらすぐさま連絡してほしいとも、スネイルは言っていた。
しかし遥の手には通信機も無ければそれに準ずる機械もない。ならばどうスネイルに連絡を入れるのかというと。


                              ――――――――

「あ、そうそう。遥ちゃん。ちょっとストップ」

話が纏まった為、今すぐにでも走りだそうとした遥をスネイルは引き留める。
急に呼びとめられて若干驚きながらも、遥は回れ右をしてスネイルの方へと向く。

遥を引き留めたスネイルは、何故か両耳を掌で軽く二回叩く。
すると両耳を覆い隠す様に突如として、大きなヘッドホンが手品の如く現れた。
言うまでもなく、このヘッドホンはスネイルがいた世界における通信機で、やおよろずがスネイルらを助けた際、夕食の席で遥はこのギミックを見ている筈なのだが。

「うわわっ!」

物凄く分かりやすいリアクションで驚嘆している遥に、スネイルは楽しそうに笑う。
一方、横に立っているレインは初めて見る筈だがそれほど驚かず、表情を変えないまま軽く瞳孔を広げている。
遥よりもレインの方がリアクションが薄いという妙な現象に苦笑しつつ、スネイルは説明する。

「その驚きっぷりナイスよ、遥ちゃん。これが通信機だってのは前説明した……多分説明したとは思うけど、これの凄い所はね。
 直接言葉を交わさずとも、脳波を受信して頭の中で喋れるって部分なの。何か私に対して頭の中だけで呟いてみて。遥ちゃん」

のうは……? 訳の分からない未来の技術に呆気に取られながらも、遥は半信半疑で頭の中だけで言葉を呟いてみる。
スネイルは遥からメッセージを受け取る為に目を瞑って集中する。受信したのか、ゆっくりと目を開けて、言った。

「……私は永遠の十七歳よ」
「流石にそれは無いだろ」

真顔で突っ込むレインを完全にスルーして、スネイルは遥に言う。

「何となく分かったかしら」
「はい! ホントに通じてビックリしました」
「ねー。科学の進歩って凄いわよね。後、私は永遠の十七歳だから」
「二回りくらい鯖読んでるだろ、いい加減にしろ」

真顔で突っ込み続けるレインに吹き出しそうになりながらも、遥は思う。科学の進歩って凄い。
そうして遥は、傍らでじっと指示を待っているリヒターに目を向ける。もしかしたら、この先リヒターには迷惑を掛けるかもしれない。
痛い思いをさせてしまうかもしれない。だから先に……と。

<マスター>

遥が何か言おうとした手前、リヒターの方から話しかけてきた。

「リヒター……」
<私は>
54TロG ◆n41r8f8dTs :2012/09/23(日) 21:00:28.02 ID:0xmmycEd
<私は、何があろうとマスターの命に従います。マスターの身を守る事が、私の使命です>

「……リヒター」

遥は目を閉じる。閉じて、リヒターを抱き締める。

心の中で大きく引っかかって取れない、わだかまり。疑念、不安。
どうしても、リシェルが神威の神子である事を、強奪事件の犯人だと信じたくはない自分がいる。
信じたい。人を疑うなんて事はしたくない。遥の知ってるリシェルは、読者好きで素直な、少し不思議な少女だ。とても悪事に手を染める人間には思えない。

だが、遥はハッキリと聞いていた。リシェルが持っているオートマタの名を、神威と言ったのを。
そしてリシェルを付け狙い命を狙ってきた男の存在。どう足掻いても、現実は非常にして残酷だ。

認めたくない事実が遥の前に憚る。だが、ここで目を背けて逃げだせばそこで全て終わりだ。
遥は思う。ここでもし背を向けて逃げ出したら、きっと一生後悔し続けると思う。
絶対にリシェルを見つけ出さなきゃいけない。見つけ出して、聞きださなければならない。

真実を掴まねばならない。事実という真っ暗闇の中にある、真実の光を。


「行こう、リヒター」


遥は走りだす。この先に何があろうと、その光を掴むまで決して、足は止めない。



「行っちゃったわねー」

すぐに小さくなってしまった遥の背中を眺めながら、スネイルはレイン、いや、マシェリーに目を向ける。

「さて、私達はどこから探しましょうか」

「その前にスネイル、少し良いか? ホテルに戻りたいんだが」

マシェリーの言葉にスネイルはまっ、と頬を染める。

「こんな時にホテルだなんて貴方……」
「何を想像してるかは知らんが張り倒すぞ。……緊急時に頼りになる道具を取りに行きたいんだ」


                              ――――――――

一体どれくらい走りまわったのだろうか。未だに手掛かりすらも掴めないまま、虚しく時間だけが過ぎていく。
流石に数十分以上も走り続けていると足がくたびれてくる。情けないと思いつつ、遥は早足で探索を続ける。
55TロG ◆n41r8f8dTs :2012/09/23(日) 21:01:11.45 ID:0xmmycEd
『どう、遥ちゃん? そっちは手掛かり掴めた?』

通信機越しにスネイルが話しかけてくる。遥は悔しげに返答する。

『いえ……まだ何も掴めてないです。ごめんなさい』

遥の返答に、スネイルは慰める様な優しい口調で答える。

『そっか……寧ろ謝るのはこっちよ、遥ちゃん。私達の方もまだ何も掴めてないの、ごめんなさい』
『いえいえ。もっと頑張って探してみます』
『うん。早く見つけてあげないとね。レインの為にも』

通信を切り、遥は一呼吸付くと再び走りだす。
とにかくリシェルらしき人物がいないか、見逃さない様に群衆に目を向ける。

しかしどれだけ注意深く観察しても、リシェルらしき人物は見掛けない。自分と同じぐらいの背丈の少女は何度も見るのだが。
どの少女も、瞳の色が琥珀色ではないし髪の色も違う。髪の毛はともかく、琥珀色の瞳は誤魔化そうとして誤魔化せる物ではない。

もしかしたら、今のリシェルは全く違う格好へと変装して潜んでいるのかもしれない。寧ろ、その可能性が高い。
それならそれで難度がグンと上がってしまう。あの特徴的な髪の毛を隠されたら、あの目を隠されてしまったらどうしようもない。

しかし、遥の辞書に諦めるという文字は無い。例えどんな小さな手掛かりでも構わない。
リシェルに辿りつく事が出来るので、あれば。

と、走りだした手前、軽くではあるが前方を歩いてきた人と肩が当たってしまった。
少し急ぎ過ぎてしまった様だ。遥はすぐに振り返って、肩をぶつけてしまったその人へと謝る。

「ごめんなさい!」
「あ、いえいえ。こちらこそ」

温和な表情を浮かべているその人物、というか少女の髪の毛は、空を連想させる様に蒼く、綺麗な紅色の大きな瞳が印象に残る。それに遥より比べて幾分背が高い。
リシェルほどではないにしろ特徴的な少女だ。遥は何となくどこかでこの少女に出会った様な気がするが、他人の空似であろう。
いけない、ここでぼんやりとしている訳にはいかない。気付けば空から一適、ニ滴と冷たい物が落ちてきて、やがてぽつぽつと降り注いでくる。

雨だ。ただでさえ状況が進んでいないのに雨まで降らすとは。遥は神に対して文句を言ってやりたい気分になる。

「それじゃあ……」
「あ、ちょっと良いですか?」

先を行こうとした瞬間、少女から呼び止められる。
人に尋ねられるのをそそくさと無視するのは遥の性格に反する。しかし余裕は無い。なるたけその問いを素早く応えようと思いながら、遥は答える。

「はい?」
「その……私の麦わら帽子を拾った人、見掛けませんでしたか? その人、何を勘違いしたのか被ったままどっか行っちゃって……」

麦わら帽子……? と遥が首を傾げていると、少女はその麦わら帽子の特徴を詳しく話し出す。
しかし遥の記憶の中に、少女が語る麦わら帽子を被っている人物は浮かんでこない。
本当に申し訳ないと思いつつ、遥はその場を後にしようとする。
56TロG ◆n41r8f8dTs :2012/09/23(日) 21:02:29.15 ID:0xmmycEd
「見てないですね……ごめんなさい」
「そうですか……結構外見に特徴的な人だったんで、もしかしたら見掛けたかなぁと思ったんですけど」
「どんな人なんですか?」

一刻も早く行かねばならないと思いつつ、ついつい遥は質問してしまう。

少女は、答える。

「こう、髪が白色で目の色が……なんていうんだろう」


「琥珀色、っていうのかな? そういう珍しい色の目の人だったんですけど」

―――――――遥は少女の言葉に、ポカンと口を開ける。

まさか、こんな偶然があるのだろうか。遥は神を称えたい気分になる。
しかし決して状況が好転した訳ではない。リシェルはまだレイチェルにいるとはいえ、麦わら帽子を被って変装している事が分かっただけだ。
だがそれだけが分かっただけでも良い。後はリシェルが何処に行ったのかさえ、分かれば。

「……その人、どこに行ったか分かりますか?」

興奮を抑えつつ、遥がそう聞くと少女は前を指差して答える。さっと遥は身体を翻して、少女の指先へと視線を向ける。

「何か急いでたみたいでそのまままっすぐ……追いかけようとしたんですけど、人が一杯いる中でもう追えなくなっちゃって……」
「そうですか……」

遥は少女に向き直る。向きなおって、言う。

「私、もしかしたらその人の事知ってるかもしれないです」
「本当ですか?」

軽く驚いてる少女に、遥は深く頷く。頷いて、言う。

「もし見掛けたら、というかその人を見つけたら取り返しますよ。麦わら帽子」
「あ、麦わら帽子の事ならもう良いんです。かなり使い込んでてボロボロだったし。ただ、気になる事があって……」
「気になる事?」

「その人……何か凄い思い詰めた顔してたから、どうしたのかなって……」



                              ――――――――

少女と別れた後、遥は教えて貰った通りまっすぐ正面へとリシェル探索を続ける。
少女が言った、思い詰めた顔という単語が頭を離れない。リシェル……不吉な事に巻き込まれていなければいいのだが……。

最初は小雨だった雨は次第に強さを増していき、やがてバケツを引っ繰り返したかのような暴力的な雨へと変わる。
しかし雨程度で意欲が削がれる様な遥ではない。水溜りを撥ねながら、遥は探す。探し続ける。

と、その時だ。

<マスター>

今まで黙って遥を見守っているリヒターが、口を開く。
急いでいる足を止めて、遥はリヒターに顔を向ける。
57TロG ◆n41r8f8dTs :2012/09/23(日) 21:03:07.08 ID:0xmmycEd
「どうしたの、リヒター?」
<……やっと、感じ取れたかもしれません。神威の存在を>
「……ホント?」

リヒターは遥を導く様に自ら動きだすと、どこかを指を指す代わりに、先端をその場所へと向ける。
遥はそのまま導かれる様に、リヒターが向いた場所へと身体を向ける。向けて――――――――遥は息を、漏らす。

リヒターが差した方向は、人の気配がまるでしない、薄暗い路地裏だ。
レイチェルの街はそこそこ熟知している遥でさえ、普段は通り過ぎてまず目に映らない路地裏。
こんな路地裏にリシェルが? と一寸思うが、リヒターは言う。

<この先から、神威の気配を感じます。それも、非常に強く>
「今神威がどんな状態なのか分かる? その……オートマタに変形してたりする?」
<マスター、申し訳無いのですがそこまでは分かりかねます。しかし神威は確実に、この奥にいます。きっと、彼女も>

容赦無く遥を打ち付ける豪雨の弾丸。服も髪もずぶ濡れになっているが、遥にその事を気にする様子は無い。
雨が降っている事すらも忘れるほど、遥の中でリシェルの事が一杯になっている。
確証は無い。確実にリシェルと神威がこの先にいるという裏付けは無い。だが、遥は進む。突き進む事にする。

何故なら、リヒターが見つけたというのだから。長く窮地を共にしたパートナーの言葉以上に、信じられる物は無い。

雨のせいもあり、路地裏は非常に空気が悪く、遥は激しく咳き込む。
咳き込みながらも、着実に進んでいく。それにしても何だろうか、この四方八方から迫ってくる、圧力の様な物は。
まるで、遥がこれ以上進む事を阻んでいるかのようだ。しかし遥は止まらない。リシェルと出会う為に、足を止める訳にはいかない。

にしても息苦しい。こんな場所で倒れでもしたら、二度と表に戻れない気がする。
息苦しいのに、両足は自然に一歩二歩と前へ前へと突き進んでいく。この先に、リシェルがいる。
そう思うと、遥の両足は無意識にでも進んでいく。今ならば、どんな障害が待ち受けていようと乗り越え、飛び越えられそうだ。

豪雨は変わらず、遥を打ちのめし続ける。こりゃ帰ったら確実に風邪引きさんだ。

ふっと、そんな軽い事が頭を過ぎった、時。


「……行き止まり?」

気付けば、路地の終わりまで辿りついていた様だ。辿りついた様だが、昼間だというのにやけに視界が暗く、前が良く見えない。

取り合えず、遥を待ち構えていたかの様に廃墟となっている建物が並んでいる事だけは分かる。その下に、誰か……。

一先ずスネイルに連絡を入れよう。そう思い、遥はスネイルへと思念を送る。
58TロG ◆n41r8f8dTs :2012/09/23(日) 21:05:33.60 ID:0xmmycEd
『スネイルさん、スネイルさん』
『遥ちゃん、どうしたの?』
『……リシェルさんに会えたかもしれません』
『ホント!? ちょっと待って、今場所を調べるから』

スネイルへと連絡を入れた時、ぐにゃりと、遥は何かを踏んだ。
雨でぬかんだ地面とは違う感触。固くは無いが柔らかく、それでいてぎっしりと詰まっている……。
瞬間、空に轟音を鳴り響かせながら鋭い雷が走る。雷は一瞬だけ路地を照らし、遥が踏みつけている何かを照らしだした。

……手? ……手?

落雷が照らし出したそれに、遥の思考回路は停止しそうになる。どうにか口元を押さえて、出てきそうになった物を抑える。
何で、何で人の手が地面に転がって……ここで、ここで一体何が? 乱れに乱れている思考回路を無理矢理落ち着かせて、遥は真正面へと顔を、上げる。

顔を上げた遥を迎えたのは――――――――。





                          パラべラム
                            ×
                       ヴィルティック・シャッフル
 






再び鳴り響く轟音、後、雷鳴。

雷鳴が一寸だけ照らし出したそれは―――――――ゆらりとして佇み、傍らに刀を持つ、人の形をした、ロボットの姿。

正確には、オートマタの姿だ。


そんなオートマタの近くで、片手にナイフを持つ少女は、遥に気付く。


「どうして……」

『遥ちゃん、リシェルさんに会えたの? 遥ちゃん』

59TロG ◆n41r8f8dTs :2012/09/23(日) 21:06:32.76 ID:0xmmycEd
スネイルの呼びかけが頭に入ってこない。

今の遥は呆然とも、唖然ともいえる表情を浮かべている。何にせよ、抱いている感情は一つ。



「どうしてこんな所にいるの……一条さん!」


今のリシェルは呆然とも、唖然ともいえる表情を浮かべている。何にせよ、抱いている感情は一つ。




                                
                             beautiful world

                         the gun with the knight and the rabbit
                           




あまりにも、酷な再会を果たしてしまう二人の少女の間で、神威がツインアイを発光させる。その様はまるで。





                                第22話


                                 「鬼」






の様だった。



『遥ちゃん、返事をして、遥ちゃん!』


次回23話 「衝突」
60TロG ◆n41r8f8dTs :2012/09/23(日) 21:13:35.72 ID:0xmmycEd
今更取って付けた様なあらすじ

隆昭・リヒトがやおよろずで各々の時間を過ごしている中
リシェルがオートマタの連続強奪犯かもしれないという不安に駆られている遥は
タイミングが悪い事にレイチェルでリシェルに再会してしまう。同じ頃、同伴しているスネイルはリシェルの妹であるレイン(マシェリー)と出会う。

リシェルと過ごしている内に、遥はやはりリシェルは犯人ではないのではないかと思い始める
が、その隙を狙い付けたようにリシェルを狙う男。危うい所をリシェルはレインに救われるが、何を思ったかリシェルは逃げ出す。
スネイルとレインに出会った遥は、二人と共にリシェルを追い出すが……

というのが前回の話でした。投下終わりました
色んな意味で辛い話ですが、少しでも楽しんで頂けたら
次の再開は……半年以内にどうにか(自信なし
61TロG ◆n41r8f8dTs :2012/09/24(月) 01:08:03.74 ID:lmLFHaio
今までのお話をウィキに収録してきました
どんな話だったっけと詳しく思い出したい人はぜひ。というか今まで怠慢ですみません
ttp://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/1262.html
62TロG ◆n41r8f8dTs :2012/09/24(月) 02:52:15.65 ID:FPpJ63X7
携帯からすみません
遅れましたが支援レスありがとうございます
63創る名無しに見る名無し:2012/09/24(月) 19:20:50.61 ID:Qe6iUIy/
投下乙です。
あがらない雨は無い…よね?
64PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM :2012/09/24(月) 20:36:17.96 ID:f271bpYP
 必ず……やりとげねばならないのだ! >>1への乙など、とうに捨てている!!
65創る名無しに見る名無し:2012/09/24(月) 20:37:47.59 ID:f271bpYP
 というわけで、皆さん投下乙です!
 それでは、ゆっくり読ませていただきますね!
66創る名無しに見る名無し:2012/09/25(火) 18:10:19.44 ID:9CG5bpJW
 しかし移行に時間がかかりすぎましたのぉ。
67創る名無しに見る名無し:2012/09/25(火) 18:22:45.36 ID:BwS4fBEu
人がいない時期ですしねェ。僕が早く感想書いて何か投下出来れば良かったんですが

んで新スレ早々スレ止めてるwwwうは、死にたいwwww
68創る名無しに見る名無し:2012/09/25(火) 18:51:05.74 ID:BwS4fBEu
>>63
感想有難うございます
物語上の雨は後2,3話くらいで挙がりますが展開に降る雨は……
楽しみにして頂けると
69古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2012/09/25(火) 18:57:13.36 ID:hONUwQEI
>>43-44
乙ありです

>>45
感想ありです
潤也の決断に関しては楽しみにして貰って大丈夫かと
らしい理由になると思います


>>46
感想ありです
元々、情報量を3章分詰め込んでしまった内容になってしまってるせいか
ちょっと設定供給が過多気味になってしまったという気はします、書いてる時書いてる側がぐわわわな状態でした
実際のところ、自分でもちょっと説明多いなぁーと書いてて思ってて、まだちょっと続くので悪いなーという感じで・・・
咲はー、まあ、ある意味必死な子です、ほんと必死なんです、書いてる側が痛々しいと思うぐらい・・・
藍ちゃんはなんとかしようとしても逆撫でしちゃうのがあの子の可哀想な所ですw

前スレのアレは確信犯ですw
70創る名無しに見る名無し:2012/09/25(火) 19:10:47.40 ID:BwS4fBEu
>>69
いやいやwこれからどんな風に潤也君と咲ちゃんが敵対していくのか楽しみですよw
咲ちゃんの必死さがどんな感じに物語を転がしていくのか、本当に目が離せないです
にしても毎回長い割に中身がそんな無い感想すみません
71創る名無しに見る名無し:2012/09/26(水) 18:42:54.20 ID:A5VS4sXR
 しかし、モヤっとする展開が三回連続で投下されるとは……!
72創る名無しに見る名無し:2012/09/27(木) 20:58:12.71 ID:cVZl/HYa
しっかし静かだな。ホント人いないね
73創る名無しに見る名無し:2012/09/27(木) 21:07:58.04 ID:2l3ArGeT
 Gジェネも出ましたしネ。
74創る名無しに見る名無し:2012/09/27(木) 21:18:33.36 ID:cVZl/HYa
別板の常駐スレもGジェネ効果でゆっくりだわぁ
何か盛り上がる事無いかなぁ。ロボスレ
75グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/09/27(木) 22:48:40.01 ID:8SB5fqN9
よーしじゃあ(盛り上がるかはわからんけれども)パパ新しいやつの第一話投下しちゃうぞー
ちょっと長めなので、支援してくださると嬉しいです。
76グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/09/27(木) 22:51:22.78 ID:8SB5fqN9
「どうかね、何千という善行によって一つのごみみたいな罪が消されると思うかね?」
(ドストエフスキー『罪と罰』)


 最初に感じたのは曖昧模糊とした、世界そのものの存在だった。
 私は世界の全体に満遍なく拡散されていて、特定の姿も意思も持ち合わせていなかった。
 それは眠りに落ちるときのまどろみが永遠に続いているような感覚で、抗いようのない安らぎが私を支配していた。
 ……その無限に広がる『私』の海の凪にひとつ、不意に波紋が発生する。
 その波紋を中心にして私の海は渦を巻きはじめる。渦は緩やかな調子から徐々に勢いを増し、
やがて凄まじい大渦となり、ついには私の海全体をそれと化し、自身すらその中に巻き込みながら、
急速に圧縮されていった。
 やがて、私の海は一滴のしずくとなり、落ちる。落ちたしずくは周囲の虚空に押し固められ、『私』を形作った。
 2本の足、2本の腕、1つの頭、正しく配置された両目、平凡な鼻、健康的な唇、くせ毛気味で外がわにはねた短めの黒髪、
あまり豊かでない胸、スポーツでそこそこ鍛えられた筋肉、そして、鼓動する心臓、目覚める脳髄。
閃光と共に一気に明るくなる世界――私は覚醒した。


 私は覚醒した。
 まず目に飛び込んできたのは真っ白な天井だった。据えられた蛍光灯の光が瞳を刺し、
私は見開いた目をすぐにまた細めた。
 次に私は強い息苦しさを感じて口を大きく開けて周囲の空気を吸おうとした。
くっついていた喉の壁がはがれるような感触がして、潰れていた肺に一気に空気がなだれ込んだ。
 咳き込みそうになった私が次に感覚したのは全身の猛烈な乾きだった。まぶたとすれて眼球が傷み、
唇の皮が広がって縦に裂けた。のどは砂漠のようで、水が欲しくなって持ち上げた手の指もカサカサに水分が失われていた。
 そうして意識を腕に向けると、私はそこに何かが刺さっていることに気づいた。
頭を少しだけ持ち上げると、自分が真っ白なベッドに寝かされていることと、
腕に刺さっているのが点滴の針であることに気づいた。自分が裸であることにも。
 疑問に思いながら胸に手をやると、ベッドのわきの心電図からのびる電極に触れた。周りを見渡す。個室だった。
 軽い毛布を身体に引き寄せて身体を隠す。点滴に心電図にこの内装……ここは病院なのだろうか。
ふと思いついて枕元を探すと、果たしてナースコールらしいスイッチが見つかった。ボタンを押す。
 少しして、ベッドの目の前の壁にあるドアが開いて、女性の看護士が2人入ってきた。
彼女たちは私の身体から電極をはがしたり、水差しを持ってきてくれたりしたが、私からの質問はほとんどを曖昧に受け流した。
 看護士は最後に私の衣服らしいものを私の膝上に置いて部屋を出ていった。丁寧にたたまれたそれを広げると、
なんだか見覚えがある気がする。
 ベッドから下りてまずは下着を身につける。下にはタイツとショートパンツを履き、ロングブーツに足を突っ込んだ。
飾りのサスペンダーをわきに垂らす。
 上半身は自分のお気に入りの、ゆるめのロングカットソーを袖の無いシャツの上から着た。
77グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/09/27(木) 22:53:48.95 ID:8SB5fqN9
 身支度が済むと、他にあったはずの私物が気になったが、見当たらないので誰かに訊くことにして、
水差しの最後の1杯分をコップで飲み干してから部屋を出た。
 部屋の前の廊下は左右に伸びていて、並んだ扉と案内看板がやはりここが病院であることを示している。
 私はどこへ行けばいいのかわからなかったが、すぐに看護士が声をかけてきて、廊下の先に案内された。
そこは小さな診療室で、私は簡単な検査を受けた。どうやら目立った異常は無いらしい。
どうして私が病院にいるのかを質問すると、医師は記憶障害が出ているようだと言って、精密検査を受けるようすすめてきた。
 医師はまた、私が突然倒れたのでここに運ばれてきたのだということも教えてくれた。
原因はまだよくわからないが、まぁ恐らく貧血だろうとも。
 診察が終わって部屋を出ると、今度は看護士ではなく、見たことのないスーツ姿の男性が私を出迎えた。
彼は同い年くらいに見え、背がすらりと高く、モデルのような体型だった。顔は整っていて、清潔感のある美形だった。
 彼は私の名前を呼んだ。
「志野 真実(しの まなみ)さんですね」
 私は戸惑いつつもうなずく。
「こちらへ」
 歩きだした青年について行くと、彼は私を応接室の表示のある部屋に導いた。
 下座のソファには女性が座っていた。その女性は鏡のような黒の長髪と、長い睫毛、潤んだ黒い大きな瞳に、
柔らかい笑みを常に薄紅色の口紅がひかれた唇に浮かべた、白い肌と優しい雰囲気の女性だった。
彼女は胸元に高級そうなブローチが付いた綺麗なスーツを着ている。
 私はその姿を見て一瞬、息を止めて見とれてしまった。それほど美しい人だった。
 彼女は私にソファを勧める。それで私は我にかえった。
「はじめまして、志野さん。私はこういった者です。」
 席についた私に目の前の女性は名刺を差し出した。慣れない感じに戸惑いつつも、机の上から名刺をつまみ上げる。
「『財団法人 天照研究所 所長 天照 恵(あまてらす めぐみ)』……さん?」
 天照は深くお辞儀をする。その所作は丁寧だった。
「この街でとある研究をしております。本日は志野さんにお話がありましてお呼びいたしました。
突然のことで大変ご迷惑でしょうが、事情があってのことですので、どうかご容赦を。」
「……はぁ。」
「体調は、いかがですか?」
 天照が私を気遣うように見た。
 体調は別に普段通り、悪くない。
「もしかして、私をこの病院に運んできて下さったのは……」
「私どもでございます。」
「それは、どうもありがとうございました。」
 私は頭を下げる。天照さんはどこか憂いをこめた表情のままだった。
「どんなお礼をしたらいいか……」
「いえ、お礼は結構ですよ。」
「でもそれじゃあ」
「代わりにひとつ、質問させていただきたいのですが……」
78グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/09/27(木) 22:56:13.62 ID:8SB5fqN9
「質問……ですか?」
「はい」
「なんでしょう」
「……もし、あなたの人生に」
 天照さんの口から発せられたのはまったく予想外の質問だった。
「もし、あなたの人生に、これから無数の、死ぬよりも辛い苦難しか待ち受けていないとして、
それでもあなたは人生を戦いますか?」
「え……?」
 私は言葉を失っていた。てっきりそんなこととは全然別の質問をされると思っていたからだ。
私は思わず視線をそらした。
「どうですか」
 天照は真剣な目でこちらを見つめてくる。ふざけている様子ではないところが、私に軽々しい返答を許さなかった。
私は質問を頭の中で繰り返す。
(もし、この先の人生に苦難しか待っていなかったとして……私は戦えるだろうか?)
 考えるまでも無い。
「人生なんだから……生きますよ、当然。」
 まだ出会って数分も経っていない相手に言うセリフじゃない。それがなんだかとてもおかしかったのと、
気まずい雰囲気ををごまかすために私は無理やり笑顔を作った。
 天照はそんな私を見て、なぜかとても悲しそうに目を伏せる。よく見ると、その目の端が潤んでいた。
彼女は泣いているのだ。
 そのことに私は気づいたが、どうすればいいのか判らず、扉のそばに立ったままの案内役の青年に目で助けを求めたり
した。しかしちょうどその時に彼には電話がかかってきたようで、携帯電話をポケットから取り出して部屋を出ていってしまった。
「あの……えと……」
 顔を伏せる天照にどう声をかけたものかわからずいると、突然部屋のドアが勢いよく開かれ、
さっきの青年が血相を変えて入ってくる。
 驚く私を尻目に彼は天照に近づいて耳打ちをする。すると彼女もハッとした様子で顔を上げて、私を向いた。
「志野さん」
「は、はい?」
「戦いの時です。」
「え?」
「時間がありません、急いで!」
 すると彼女は勢いよく立ち上がり、自分についてくるよう指示した。
 私は理解が追いつかないまま青年に促されて部屋を出る。早足で廊下を歩く天照について行くのは大変だった。
 彼女は職員用のエレベーターを使い、地下一階の駐車場まで一気に降りる。私は手続きやら入院費用の支払いが
気にかかったので、それだけ片付けたいと言ったが、青年は答えた。
「心配ありません」
「どうしてですか」
「天照さまはここの理事長です」
 私が驚いて目を丸くしていると、前を往く彼女は自嘲気味に「名前だけですよ」と言った。
 いったいこの女性はどういった人なのだろう、湧き上がる疑問を口にしようとしたとき、彼女が立ち止まった。 
「さぁ、これに乗ってください」
79創る名無しに見る名無し:2012/09/27(木) 22:59:08.25 ID:cVZl/HYa

80グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/09/27(木) 23:00:15.99 ID:8SB5fqN9
 彼女が示したのは駐車場に停められた、1台の大型バイクだった。
「え、これって……」
 私はそのバイクを眺める。昔のアメリカ映画でマッチョな男がルート66を全速でとばすときに乗るような車種だ。
ゴツゴツしたフォルムに太い排気パイプ、大型エンジン、黒い外装……機械にうとい私でも名前は知っているほど有名な車種。
「『ハーレーダビッドソン』……ですよね?」
「はい、ちなみに大排気量型です。」
 さらりと受け流そうとする天照を私は振り向く。
「私、免許持って無いんですけど。」
「大丈夫ですよ」
「バイクなんて触ったこともないんですけど」
「大丈夫ですよ」
「そもそもなんで私をこれに乗せようとしてるんですか」
「大丈夫じゃないからです。」
 最後の言葉だけ声の真剣さがまるで違っていた。天照の大きな瞳は形容しがたいプレッシャーを放っていて、
その圧力に負けた私は、納得できないままバイクのシートに跨った。
「これでいいですか」
「ハンドルを握ってください」
 従う。
「いいですか、これから何があっても、絶対に驚いてハンドルを手放したりしないように」
 そう言うと天照はキーを取り出してバイクに挿した。そしてそれを捻った直後――不思議なことが起こった。
 まずエンジンが唸りを上げ、ヘッドライトがいきなり点いた。体を強く揺さぶるエンジンの拍動に震える間もなく、
今度は『車体』が大きく沈む――え?
 すると次の瞬間、ハーレーが吠えた。
《ガオオオオオオオッ!》
「きゃああああ!」
 思わず体を縮めようとするが、手は恐怖のあまりハンドルから離れない。ふわりと身体が浮いた。
 前輪が持ち上がり、車体が生き物のように身震いし、一気に最高回転数までぶち上げられた後輪が
アスファルトとの摩擦で白煙を上げた。
 そして数秒後、そのハーレーは凄まじい勢いで地下駐車場から道路へと飛び出していったのだった。


 焦げ臭さと排気ガスの臭いを残してハーレーが駐車場から飛び出していったのを見届けて、
天照と青年はお互いに顔を見合わせ、頷いた。
「私たちも急ぎましょう」
 天照が言うと青年はスーツの袖をまくって腕全体を包む奇妙な機械を露出させた。その機械は真鍮のような鈍い輝きを
持つ素材で作られていて、色とりどりのツマミやメモリ、そして小さなディスクドライブが備わっていた。
「今回の『ばつ』は?」
 天照が訊く。青年は機械をいじりながら答えた。
81グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/09/27(木) 23:02:01.03 ID:8SB5fqN9
「断頭台型です。予想通りとても巨大で、彼だけでは対応しきれません。」
「断頭台……『最も人道的な処刑用具』。」
「人道的でもそうでなくとも、人を殺す道具なのには変わりません……調整完了です。」
 彼は言いながら機械のスイッチを押す。すると真鍮製の機械の中でディスクが回転しはじめ、
凄まじい静電気を発生させて周囲の空気をスパークさせる。
「魔法の儀式をコンピュータ上でエミュレート……再現率99.9%。座標設定は既定値を使用。
生贄はダミーデータで代用。環境は満月の夜を再現。予想成功率82.6%……微妙なラインですね。
あとは所長の承認をお願いします。」
「失敗しませんように。承認します。」
「魔法の使用が承認されました。では所長、失礼します。」
 青年は天照を空いているほうの腕でぎゅっと体に引き寄せる。天照の方も青年を強く抱きしめた。
「発動まで3……2……1……ワープ!」
 その合図と同時に空気が焼ける連続した音と恐ろしいほどの静電気の嵐が巻き起こり、その中で2人の人間の体が光と化すと、
収縮して、消えた。



 私が掴まるバイクは地下駐車場から飛び出した後、目の前の道路の車線のど真ん中を爆走し始めた。
そのあまりの出来事にまるでついていけていない私は他の自動車にぶつかるかもしれない恐怖と、
振り落とされそうな危険に体を強ばらせるしかできなかった。
 だからこの街が今、異常な状況にあることにもすぐには気づけなかった。
 道行く自動車や通行人は皆足を止めて私の後方の空を見上げている。建物の中にいる人々も全員が窓から頭だけを
つき出して、あんぐりと口を開けている。
 バイクの強烈な振動とスピードに徐々に慣れてきた私は、誰も私を咎めないことと、
周囲が異様に静かであることにやっと気がつき、道路脇の人々のその姿を見て、
彼らが目を奪われているものが果たして何なのか確かめようと、タイミングを見てふり返った。
 そこにあったのは――(なんじゃありゃ)
 理解できないものがそこにあった。
 バイクの後方の空、ビルの谷間に平然と浮かんでいたのはギロチン……断頭台だった。
歴史の教科書の挿絵で見たことのある、中世ヨーロッパで盛んに使われたあの処刑用具がぽっかりと空中に浮いている。
しかしそれは私の知っているそれよりずっと巨大で、まるで巨人のためのものとしか思えないようなサイズだった。
 全高は数十メートルもあろうかという巨大な黒い断頭台が街のど真ん中に音も無く浮いている……街の人々が
固まったまま動けなくなるのは当然だった。意味不明すぎる。
 バイクは信号も無視し、街のメインストリートを北に向かって走っていた。時々対向車などの障害物が行く手を塞ぐが、
そんなときはバイクは肉食獣のように勝手に空高く跳躍して飛び越える。私は最初はそれにも驚いたが、
2回3回と繰り返すうちにだんだんとジェットコースターのように思えてきて、すこし楽しくなってきていた。 
 そしてそのうちに疑問を抱いた。
(このバイク、どこへ向かっているんだろう?)
 答えはすぐに与えられた。
 バイクはひときわ大きく跳躍し、目の前に迫った白く大きいドーム状の建物がある土地の中に飛び込んだ。
どうやらここが目的地らしい。バイクは少し速度をゆるめ、玄関らしい場所の前まで進んだところでついに止まった。
82グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/09/27(木) 23:03:29.30 ID:8SB5fqN9
 恐る恐るハンドルから手を放す。どうやら完全に停止したらしいことを知ると、全身から力が抜けて、私はシートの上でうなだれた。
 だが休憩する間もなく、玄関から出てきた男が私に近づき、建物に入るよう促してくる。
私はその男の顔を見てぎょっとした。さっきの青年だった。
「え? え?」
「時間がありません。歩けますか?」
「は、はいなんとか」
「では急いで。」
 急かされて、私は少しムッとした。
「さっきから何なんですか、いきなりこんないろいろと……」
「あとでご説明いたします。今は私どもの指示に従ってください。」
「このバイク、勝手に動いたんですよ!」
「躾けられていますから変なことはしなかったはずですが」
「バカにしてるんですか」
「そんなことは」
「このバイクも、あの空に浮くギロチンも、意味がわからない!
 ここはどこなんですか? あの女の人――天照さんはいったい何者なんですか?」
 私の質問攻めにも青年は少しも動じる様子を見せない。彼は微笑して、なおも言った。
「それらのご説明は、落ちついたらいたします。」
「今、してください!」
「いいですか、志野さん。」
 青年は私の目を覗き込んでくる。
「あの断頭台は、人に害を与えます。」
「え……?」
 いきなり何の話かわからない。
「あれを放置していたら、多くの人が苦しみます。そして、それを救えるのは貴女だけなのです。」
「何を言って……?」
「私たちには貴女が必要なのです。貴女の当然の疑問も、必ず後ほど説明いたします。
ですから、どうか、どうか今は私たちの指示に従ってください。」
 彼の言葉は熱っぽく、嘘や欺瞞の色は少しも見えない。私はその真摯な眼差しに貫かれ、思わず頷いた。
 すると彼はニコリと笑って、私を施設内へと促した。



 少し足を踏み入れただけで、この施設がどうやらとんでもない広さを持っているらしいことが直感的に理解できた。
 玄関から左右に伸びる真っ白な廊下の先は遥か遠くにあって、しかも途中でいくつも枝分かれしている。
もし青年から離れてしまったらすぐに迷ってしまうだろう。
 青年は迷いのない歩調で廊下を進み、階段を上って、また長い廊下へ出た。
その弓なりに椀曲した廊下は片方の壁の全面がガラス張りになっていて、中庭のように施設の中心にある広い空間を
見下ろせるようになっていた。
 私は歩きながらそのガラスに近づき、下方を見下ろすと、思わず声が出た。
83創る名無しに見る名無し:2012/09/27(木) 23:04:20.91 ID:cVZl/HYa

84グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/09/27(木) 23:05:18.23 ID:8SB5fqN9
「何あれ?」
 巨大なドーム型の施設は中が広大な円形の砂場になっていて、私たちはその円周に沿った廊下を歩いていた。
砂場は白い綺麗な砂が丁寧にならされていて、表面に足あとがいくつかある以外は完全に平らで、美しく思えた。
 しかし私が目を奪われ、疑問を抱かせたのはその中心に寝そべっているものだった。
 それは巨人の骸骨だった。
 砂場の真ん中に大の字になっているのは巨大な金属製の人体模型に見えた。
頑丈そうな金属フレームに動脈のような色とりどりのケーブルが巻き付き、
内臓のように各部に収められた太いシリンダーやこれまた巨大なディスクドライブや、
円筒形をしたなんだかわからない装置に繋がっている。
 そしてそれら全てを包むように、直線的なデザインの鎧のようなものが一番外がわにある。
全体としての印象は『ガイコツ騎士』のような感じだ。
「あれは『サンドゴーレム』です。」
 いつの間にかそばに立っていた青年がそう示す。
「サンドゴーレム?」
「貴女がこれから操る身体です。」
「え?」
 青年は私から顔を背け、今度はセキュリティのかかったドアを開けた。
「こちらです。」
 ドアの先へ入るとそこはまた雰囲気が違った広い部屋だった。
大学の講義室のように階段状に並んだ机の上には用途がまったく予想がつかない真鍮製の器具がずらりと並んでいて、
時々そこにゴムホースでつながれたフラスコがあやしい色に発光し、虹色の煙を噴出させている。
月や太陽の彫刻がされた円形の装置が細かい歯車でぐるぐると回り、
昔科学博物館で見たことがあるようなガラス球の装置の中で電流が蛇のようにうねっていた。
と思うと一転、ひどく現実味のあるどっしりとしたパソコンとディスプレイがそこに繋がっていたりして、
それがこの装置をいっそう冗談めかしていた。
 そしてところ狭しと並べられたそれら装置の合間を、アオザイにも似た構造の白装束を着た人々がせわしなく
行き来している。彼らはどうやらこの装置を使った作業の真っ最中のようで、ときどきリーダーらしい人物が
大声で指示を飛ばしているのが見えた。
 ふと、私は天井を見上げる――そこには直径10メートルはゆうにあるであろう水晶玉がどういうわけか支えもなく
浮いていて、その内側に見覚えのあるものが見えていた――あの断頭台だ。
水晶玉は町中に浮かぶ断頭台を映し出している。
 そのファンタジー映画の中でしか見たことがないような光景に私は言葉を失っていたが、やがて声をかけられた。
「『天照研究所』へようこそ。」
 はっとして見ると、そこにはやはり天照恵が立っていた。彼女は病院で出会ったときのスーツ姿ではなく、
他の人たちと同じような白いアオザイにさらに上から白衣を羽織っている奇妙な格好をしていた。
「理由も言わずにお連れして本当に申しわけありません。ですが事態は急を要するのです――」
「――ここが、天照研究所、なんですか?」
 天照は微笑み「はい。」
「当研究所ではオカルトと科学の融合である、『魔学』を研究しております。」
「……はい?」
「いわゆる『魔法』と呼ばれる古代の技術を科学的に理解し、従来の心理学的医学的民俗学的な理解ではなく、
現実の物理現象を伴う『技術』として――」
85グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/09/27(木) 23:06:25.09 ID:8SB5fqN9
「――ちょ、ちょっと待って」
「理解が追いつきませんか?」
「全然。」
「当然でしょうね、魔学は秘密の技術ですから。」
 天照は落ちついたら様子でそういってのける。私は混乱していた。
「いやいや、いくらなんでもあり得ないでしょう? この21世紀に魔法って……特撮番組じゃあるまいし。」
「信じませんか?」
「当たり前です!」
「でも、志野さんはもうその一片を体感しましたよね?」
 またハッとした。そうだ、つい数分前まで、私は魔法としか思えないような体験をしたじゃないか――獣のように
唸り声をあげ、自ら走る大型バイクの背に乗って私はここまで来ていたのだ。
(そんな、まさか……いや、でも……)
 無言になった私の様子を察して、天照は両手を広げ、また優しく微笑む。
「にわかには信じられなくて当然です。魔学は教科書にも載っていないし、
あなたの生活に関わることもないのですから。」
「……なんで、秘密なんですか。」
 すると天照は残念そうに視線を落とす。
「この技術が世に出てしまったら困る人たちがこの世にはたくさんいるんですよ。」
 そう言った。
 私は彼女がまた視線を上げるのを待つ。
 待って、訊いた。
「どうして、私をここに?」
 それこそが一番訊きたいことだった。病院のベッドで目覚めた直後の人間をこんな目に合わせるなんて、
正気の沙汰じゃない。
 すると天照はまた深々と頭を下げる。
「やむを得ない事情があるのです。……志野さん、お願いします。」
 ――直後に発せられた言葉は、この常識外れの1日の中でも、一番常識から外れていた――


「巨大ロボットのパイロットになって、街の人々を守ってください。」


「すいません、意味が不明なんですけど」
 私の返答に天照は首をかしげる。
「どのあたりがですか?」
「全部です。」
「全部……ですか?」
 ……どうやらとぼけているわけではないらしい。私は少し声を大きくした。
「『巨大ロボットのパイロットになって街の人々を守ってほしい』だなんて、さすがに信じられませんよ」
 繰り返した天照の言葉は、自ら口にするとますますバカらしく思えた。
さすがに巨大ロボットは現実離れしすぎている……たとえ魔学とやらが本物だったとしても、
そんなものの存在は簡単には信じられなかった。
 おまけに『パイロットになれ』とも彼女は言った。なんだその展開は。
まさかこのあと白い包帯似合う女の子が担架で運ばれてくるわけでもあるまいし。
86グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/09/27(木) 23:09:35.25 ID:8SB5fqN9
 冷静になった頭にだんだんと怒りが湧いてきた。こっちはさっき病院のベッドで目覚めたばかりなんだ。
それを理事長だかなんだかしらないがいきなりこんなところまで引っ張ってきて……
おまけにバイクで死ぬほど怖い思いもした。いったい何のつもりなんだ!
「私は帰ります。お母さんも心配していますし……」
「ま、待って」
 踵を返して部屋の出口に向かおうとした私を青年が慌てた様子で引き止める。彼は私の進路を塞ぐように立った。
「どいてください。」
「志野さん、あなたは『戦う』と病院で言ってくださったじゃないですか!」
「こんな冗談につき合うとは言ってません」
「冗談だなんて!」
 青年は悲痛な声をあげ、そこに立ちすくんだ。私はそのわきをすり抜けようとする――
「お待ちください」
 今度は天照の声が背後から私を引き止めた。私は振り返らずに言う。
「病院まで運んでくださってありがとうございました。」
 それを別れの言葉にするつもりだったが天照はなおも「どうか、どうか」と私の背中に言葉を投げかける。
「突然ここにお連れした非礼は心からお詫び申し上げます。ですがやむを得ない事情があったのです。
どうか、どうかご理解を。」
「やむを得ない事情?」
 私はまだ振り向かない。
「はい。」
「どんな事情?」
「本当は志野さんがすっかり回復されてから、また改めてお伺いするつもりでした。
ですが『ばつ』の出現が予想以上に早かったのです。」
「『ばつ』?」
「あの断頭台です。」
 私はここに運ばれる途中バイクの背から見上げた、あの巨大な黒い断頭台を思い出した。
あの、静かで、不気味な影……。
 私は振り返って訊いた。
「あれはいったい?」
「正式には『超高密度精神体タイプX』通称『×(ばつ)』。」
「『×』? なんで『ばつ』?」
「『タイプX』だからです。」
「『タイプX』って?」
「分類上の区分です、それ自体に大した意味はありません。」
「……生き物なんですか?」
「幽霊みたいなものです。」
「幽霊……」
「幽霊の中でも最悪の、大悪霊です。」
 それを聞いて私は玄関での青年の言葉を思い出した。
「『人に害を与える』?」
「これをご覧ください。」
 頷いて彼女が示したのは上の水晶玉ではなく、すぐそばにある小さな薄型ディスプレイだった。
87グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/09/27(木) 23:11:25.84 ID:8SB5fqN9
 私はそれを覗く。そこに映る映像を目にすると同時に身体に悪寒が走った。
 画面は町中のどこかの道路脇から空中の断頭台を見上げていた。
どうやら人がリアルタイムで撮影しているものようで、その画像にはブレがある。
 断頭台はさっき見たように音も無く宙に浮いていた。それはやはり巨大で、
断頭台横にある6階建てのデパートの建物とほぼ同じ全高だ。
 ふと、私はその断頭台の下に散らばるあるものに気づく――
 最初は小さな虫のように見えた。が、すぐに断頭台との比較からそう錯覚しただけだということに気づいた。
 それは人間だった。多くの人間が体を丸め、頭を抱え、芋虫のように断頭台の真下に散らかっているのだ。
彼らはうめき声ひとつ上げず、死んでいるように見えたが、ときどき痙攣のように身体を弓なりに引きつらせてのばし、
そしてまた頭を抱えて丸まった。
(いったいあの人たちは何を?)
 その疑問の答えはすぐに与えられた。
「『×』の生物の精神への干渉作用により、心に想像を絶するほどのストレスを受けているのです。
このままでは心が壊れて廃人になってしまいます。」
「そんな……はやく助けないと!」
「私たちの仲間が救出にあたっていますが、焼け石に水です」
「警察は!?」
「魔学によって防御しなければ警察も太刀打ちできません。それに、被害を無くすには大元を絶たないと」
 そこまで言われて、私はやっと理解した。
「そうか……だから私に……」
「ご理解いただけましたか。」
 天照は神妙な顔つきだ。私には彼女たちを批判していたのがとんでもない過ちのように感じられ、
少し恥ずかしさを覚えた。
 だがしかし、最後にこれだけはどうしても訊いておきたかった。
「……なんで、私なんですか」
 天照は静かに答える。
「『戦い』を選択したからです。」
「納得できません。」
 ぴしゃりと私は言った。
 天照はそれを聞いて、まさに望み絶たれたという思いを表情に滲ませた。
「――だから終わったあとでまた、ちゃんと説明をお願いします。」
 私がそう言葉を続けると、天照はびっくりしたように顔を上げた。
「引き受けていただけるのですか?」
「ピンチの人を助けるなんて、当たり前のジョーシキでしょ!」
 天照と青年の憂鬱を吹き飛ばしてやるつもりで、私は笑顔で明るくそう言ってやったのだった。


 【断罪巨人 シンブレイカー】


88創る名無しに見る名無し:2012/09/27(木) 23:12:33.70 ID:cVZl/HYa

 
89グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/09/27(木) 23:14:09.66 ID:8SB5fqN9
投下終了です。ID:cVZl/HYaさん、支援ありがとうございました。
初回から説明回だよ! 前作前々作がリアル系だったから今回はスーパー系目指すよ!

90創る名無しに見る名無し:2012/09/27(木) 23:17:56.94 ID:cVZl/HYa
おう乙〜
皆気付かないかも知れんから敢えてあげとくね
91創る名無しに見る名無し:2012/09/27(木) 23:27:15.93 ID:rTlT4ri7
なにこれ楽しそう
92創る名無しに見る名無し:2012/09/28(金) 00:39:17.22 ID:XfevDoSo
投下乙です。筆が早いなぁ、羨ましい。
毎度毎度生を強いられ、毎度毎度カッコいい主人公。
うぅむ、今回も惚れる!

それでは次回を楽しみにしてますね。
93創る名無しに見る名無し:2012/09/28(金) 22:23:41.55 ID:rPsLFz7k
>>89
 投下乙です!
 それでは、ゆっくり読ませていただきますね!
94創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 22:35:43.69 ID:99bWaHSJ
規制長すぎワロタ……いつまで串使って書き込みゃいいんだ……とりあえずグラゼロ氏投下乙!それではゆっくり読ませてもらうぜメーン!
95創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 22:53:58.03 ID:pkA+WuRR
 age氏はまだ規制ですか。長いですね……。
96創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 23:05:37.44 ID:99bWaHSJ
今ソフトバンクが一斉規制であと一か月くらい書き込めないんだぜー

こういう自分もソフトバンクのホストだから串使ってるぜー
97創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 23:07:35.13 ID:99bWaHSJ
ID被ったなwww
98創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 23:10:13.93 ID:99bWaHSJ
ですねwww
99創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 23:10:47.55 ID:pkA+WuRR
 これは紛らわしいw

 そっかー、1ヶ月規制かー……。
100創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 23:11:47.49 ID:99bWaHSJ
これはどちらかがどちらかになりすましてスレ住人を混乱させるしかないな!
101創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 23:15:40.91 ID:99bWaHSJ
ほれほれー俺がどっちだか分かるか?答えはCMの後!
102創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 23:17:15.48 ID:pkA+WuRR
(メル欄見れば一目瞭然とか言いづらい雰囲気だぞこれは……!)
103創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 23:19:28.81 ID:XdYm0hJc
age氏がsage氏になったと聞いて
104創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 23:19:36.81 ID:99bWaHSJ
い、いや、そうでもないし(震え声
105創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 23:22:51.32 ID:pkA+WuRR
 age氏の放つ気が、変わった……!?

 ところで、圧倒的火力でヒャッハー! する機体って素敵ですよね!
106創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 23:25:39.60 ID:99bWaHSJ
ヘビーアームズとかサバーニャとかたまらんよな。ロボスレで高火力機体っていったらなんだろう
107創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 23:26:38.52 ID:ALKGp/qg
誰にも見つからず確実にひっそり敵を始末する機体こそエースにふさわしい
108創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 23:31:32.53 ID:XdYm0hJc
スネーク!応答しろ!スネーク!!!
109創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 23:31:47.38 ID:pkA+WuRR
>>106
 サバーニャの適度なゴツさはものすごく好みなんじゃよ……!
 火力といっても面か点かで色々変わってきますよね。点ならリベジオンかしら?
110創る名無しに見る名無し:2012/09/29(土) 23:36:35.14 ID:99bWaHSJ
リベジオンは「あいてはしぬ」を地で行ってるもんな。ヘタすると自分も廃人だが
面だとなんだろう。真っ先に思い浮かんだのはババァとデストラウだが、デストラウはちょっと違うよな……
111創る名無しに見る名無し:2012/09/30(日) 19:33:05.18 ID:tyy+MaGi
火力と言えば現場主義のゼク系がイカス。
ゼク・ツヴァイに至っては濡れる!

>>106
チート級と現実的なのでザックリ分かれているような…
112創る名無しに見る名無し:2012/09/30(日) 21:22:38.06 ID:8dVQcOqF
 いわゆるリアル系とスーパー系ですねw
113創る名無しに見る名無し:2012/09/30(日) 22:35:19.59 ID:Kpu43i1d
歯車さんのこの前の新作主人公機が、けっこうな重火力機だったような。作中最強ってわけじゃなかったけど。
114創る名無しに見る名無し:2012/09/30(日) 23:48:29.55 ID:jCfd173n
スパロボで言うところのスーパー系だと戦力純粋な機体性能で拮抗あるいは劣勢がデフォだから、数値上表現上がすごくても、あんまり重火力ってイメージにはならない
115創る名無しに見る名無し:2012/10/01(月) 00:06:22.66 ID:blXoexKg
対決する両者のコントラストということなら、Spartoiのラゲリオンディーヴァ対カスタリオはどうかね?
重火力対軽火力というより、高性能対低性能かもしれんが。
116創る名無しに見る名無し:2012/10/01(月) 11:04:27.03 ID:U5NGBjLn
>>113
 惚れ惚れするほどの弾幕でしたね、そういえばw
117創る名無しに見る名無し:2012/10/01(月) 21:53:38.24 ID:smGH5tre
その弾幕の中を突っ切って一撃を決める
っていうのが接近戦用機の肝だと思っている
118創る名無しに見る名無し:2012/10/02(火) 19:04:20.78 ID:aevy709a
つ【引き撃ち】
119創る名無しに見る名無し:2012/10/02(火) 19:48:24.25 ID:W8SeOAHn
私(叫):
 よさないか!
120創る名無しに見る名無し:2012/10/02(火) 21:48:01.17 ID:ElTtJrDV
刹羅さんならやらしい笑顔で引き打ちして壁に突っ込んでそうだw
121創る名無しに見る名無し:2012/10/03(水) 12:20:48.09 ID:dcuUCxF9
【こんな少女機甲録の二次を書いたら、作者に命を狙われる日々が始まるでござるの巻】

1.ワームが触手責め。
2.セントラル勤務の悪女が 「そもそも機士は防護服ではないの……あれは糞虫にレ○プさせるための拘束具なのよ」 と言い出す。
3.機士を操る少女が絶頂に達すると、空気を読んで機体のリミッターが外れ性能が三倍に(異性人の技術)4.潮をかけるとワームが溶ける。

以上。だが私達の逃亡生活はこれからだ。

【完】
122 ◆kNPkZ2h.ro :2012/10/03(水) 14:56:07.87 ID:DccQts75
>1.ワームが触手責め(を受ける方)。

タイプC「古いネタだが、タイプBは「三つ編みでセーラー服の少女」に擬人化されるらしいな」
タイプD「えっマジで」
タイプE「三つ編みとかシショウ(ニホンアシヒトデモドキの一個体、ワームの間でも有名)が放って置かないだろうな」
タイプH「しかもセーラー服とか、ニホンアシヒトデモドキの幼生が一時期しか着ない外装だろ?」
タイプI「じゃあタイプBはロリって事か」
タイプG「よ…幼女! ふおおおおおおお!!」
タイプE「落ち着け ロリだからって幼女とは限らん 第二次性徴期かもしれん」
タイプF「なんにせよ、萌えるな」
タイプD「ああ、俺タイプBの事を今までどおりに見れなくなるかもしれない」
タイプC「俺もだ」
タイプE「各員冷静に 今は繁殖期ではない 自重」
タイプH「そもそもタイプBって♀だっけか?」
タイプC「まあ♂にしては妙に色気があるな、針弾発射腔とか」
タイプG「お…男の娘! ふおおおおおおおおおおおおお!!」
タイプE「だから落ち着け」
タイプI「もうそいつ、つまみ出せよ」
タイプC「俺も男の娘でも一向に構わん」
タイプD「タイプC…お前…」
タイプE「まあ私も実は可愛ければなんでもいいが それよりも問題はタイプBの性別についてだ 彼は♂なのか♀なのか」
タイプF「そういう話だったか?」
タイプI「…確かめてみればいいような」
全員「…」
タイプC「おいタイプB、お前ちょっと性別確かめさせろ」
タイプB「えっ何? ナルガ狩で聞いてなかった」
タイプD「タイプH、I 前足押さえつけろ 俺が胴体と後ろ足押さえる」
タイプH「まかせろ」
タイプE「ふむこれは興味深い」
タイプB「え? え!? なにするのみんなやめてそこは大事な場所だから違アッー」



タイプA「(本編でニホンアシヒトデモドキを触手レイプ(共生植物の肥料にする意味で)する役目って俺なんだよなあ…滅入るわー)」
123創る名無しに見る名無し:2012/10/03(水) 15:00:17.57 ID:hyL2NjYm
何をしとるだwwwwwwwwww
124 ◆kNPkZ2h.ro :2012/10/03(水) 15:47:28.13 ID:DccQts75
>1.ワームが触手責め(をする方)。

ワーム「ふひひひ、お前は俺の繁殖の苗床になるのじゃー」
少女「きゃー!」

???「まてぇーい!!」

89式「機士レンジャイ!」
87式「機士レンジャイ!」
82式「機士レンジャイ!」
87式「機士レンジャイ!」
99式「機士レンジャイ!」
「5人そろって! 機士レンジャイ!」

89式「さあ、逃げるんだ! 早くにげるんだぁー!」
少女「ありがとう!」

ワーム「…違う」
機士レンジャイ「え」
ワーム「なんで87式が2体に本編出てないのが1体おるんじゃい」
87式「それは…僕は偵察型で、彼は74式をベースにした対空型の、同じ87式という名前でも中身も装備も違うという所をわかって欲しいというか」
ワーム「文字だけでわかるかい! 読者にわかりやすいのは…挿絵やで!?」
99式「機士レンジャイ!」
ワーム「うん君は… 砲側弾薬給弾タイプだったか 小ネタには出てたね」
89式「あと、外伝の方のM1A1という6人目おります」
ワーム「どうでもええねん! あと5人なんか6人なんかはっきりせえ! だいたいリーダー誰やねん!」
82式「僕です」
ワーム「お前ら同じ色に同じ迷彩柄で区別つかんわ! 個性が無い! あと全員機士レンジャイってなんやねん!」
82式「いやその…これでもミリタリー色に偏った作品ですし… あと、名乗りは機士レンジャイですけどお互い呼ぶときはマルヒトとかマルフタとか符丁で呼び合ってます」
ワーム「そんなんリアル要らんねん! カラーリング変えるとか角アンテナ付けるとか工夫してこい!」
89式「でも本編の方はもっと同型とか居て、それぞれの個性を作るの難しいです あと結局文字だけだとわかりにくいです」
ワーム「お前ら女の子が乗ってる設定なんやからパーソナルカラーとかパーソナルマークとか魔改造しとればええやんか!」


…中途半端にネタが途切れる上に、本編に続かない
125創る名無しに見る名無し:2012/10/03(水) 15:58:36.69 ID:hyL2NjYm
ただのボケとツッコミじゃねーかw
126創る名無しに見る名無し:2012/10/03(水) 17:53:28.41 ID:cKsz3H2M
 どういうことなの……!?
127創る名無しに見る名無し:2012/10/03(水) 19:20:42.72 ID:Z3bUWPcJ
本編に続いたら問題だw
128 ◆gD1i1Jw3kk :2012/10/03(水) 23:41:45.69 ID:c8aRW0n0
簡単な説明
少女機甲録の世界に転移した重歩兵中隊は中隊長を残して元の世界に帰って中隊長だけが取り残されちゃいましたまる

「さて」
全高3mのパワードスーツ……重装甲強化服を着用している中隊長は、目の前で死に掛けているオルトロス一型を見下ろす。
最前線で短時間で負傷兵を即「復活」させられる「グッバイ野戦病院」の異名を持つ(今適当に考えた)治療用バックパックを背中に背負っている。
オルトロスとの激戦で生きたゾンビ状態と化した自分を一日足らずで元通りにしてくれた素晴らしい装置だ。生きて元の世界に戻れたら名前を付けて崇め奉ろう。
「今の所、周囲に敵はいないし……「ヤる」としたら今しかないよなぁ……生きてるオルトロスを徹底的に調べるには」
背中の治療用バックパックが展開し、数十本の長く細い自由変形万能治療機……ぶっちゃけ触手が飛び出す。
触手は死に掛けのオルトロス一型を覆い尽くすように蠢き、先端が傷口から内部に侵入。そして……この後はわっふるわっふるとか書き込めば続きが読めるよーな読めないよーな
129創る名無しに見る名無し:2012/10/04(木) 03:28:14.09 ID:kTk39/TW
むしろグロいわw
130創る名無しに見る名無し:2012/10/04(木) 16:25:26.67 ID:HKhqS2hl
モツパーティーと聞いて
131創る名無しに見る名無し:2012/10/04(木) 19:27:05.51 ID:mHhBMfuC
>この後はわっふるわっふるとか書き込めば続きが読める
 お断りします(AA略
132創る名無しに見る名無し:2012/10/05(金) 16:45:01.94 ID:myu04CBw
 ロボ物と触手プレイって相性いいですよね。
133創る名無しに見る名無し:2012/10/05(金) 22:11:52.54 ID:pZcxNe+r
触手に襲われるペネ子とか(チラッ
134創る名無しに見る名無し:2012/10/05(金) 22:55:18.81 ID:gS0BKL8R
触手が生えたオルトロックとか
135創る名無しに見る名無し:2012/10/05(金) 23:18:37.84 ID:9u1OrPZa
最近スパロボにトンとご無沙汰なオールド・スーパー・ロボットの敵にゃ、
よく触手が付いてたなぁ。あとヒートロッドも触手だよな、時代的には。
136創る名無しに見る名無し:2012/10/05(金) 23:27:09.79 ID:X2tHEuHH
個人的に
触手につかまる→電流が流れる
が好き
137創る名無しに見る名無し:2012/10/05(金) 23:27:44.89 ID:pZcxNe+r
昔のスパロボといえばリアル系至上主義がひどかったな。
スーファミの第4次の頃とかニュータイプと聖戦士しか役に立たない。
今のスパロボしか知らない人には信じられないだろうけどマジンガーの装甲が紙同然。
スーパー系は命中、回避が低くて敵のリアル系との差がひど過ぎるわ、二回行動が可能になるまで遅いわ。
アムロとかリアル系主力のパイロットは魂(当時はダメージ3倍)を使えるが、スーパー系で魂を使えるのは万丈さんぐらいでリアル系に攻撃力でも劣るわ。
本当に散々だった。
138創る名無しに見る名無し:2012/10/06(土) 00:18:34.82 ID:ppsxNLu7
手の甲から出るビームサーベル
指先から出るゲッタービーム
139創る名無しに見る名無し:2012/10/06(土) 11:54:15.76 ID:ScSF3W8m
まあ、第四時とか一番強い機体がまさかのGP-02とかでしたしね
ネオグランゾンを一撃で落とすアトミックバズーカェ

スーパー系で強かったのって真ゲッターぐらいだった(主に地中2回行動が強かった為)
140創る名無しに見る名無し:2012/10/06(土) 15:41:33.28 ID:MfAxMoxa
スーパー系は装甲が紙同然なのではなく
ザコには命中率が低くて全く当たらず、こっちは回避率が低くて被弾しまくるから
ダメージが蓄積してやられやすいのと
ボスは命中も攻撃力も高いからなおさら必中(精神コマンドではなく)することになるのでヤバいって感じじゃなかったか

コンバトラーやザンボットみたいに複数パイロットなのは精神コマンドでなんとかならないでもなかったけど


あと、酷いのは第4次で、3次やEXの時はリアル系が「攻撃力が低くて後半の敵にダメージを与えられず、
こちらこそ文字通りの紙装甲なんで、基本回避は高いものの一発でも食らったら即死」という状態だったのを
4次で改善したから今度はスーパー系不遇に偏った、だったはず
141創る名無しに見る名無し:2012/10/06(土) 16:28:31.77 ID:PWnQcUJu
装甲を全改造したマジンガーが後半の雑魚の攻撃一撃でHPを半分持ってかれた記憶があるんだが。第四次
142創る名無しに見る名無し:2012/10/06(土) 16:51:26.64 ID:MfAxMoxa
>>141
というか4次の後半の敵ってスーパー系でもリアル系でもない、オリジナル系が多数だから
なんというか、そういうののバランスが一番取れてない気がする
前半のマジンガーは普通に敵の攻撃に耐えるししぶといし、命中率低いものの当てればダメージは大きいし
苦手なのは回避高いリアル系(特にオーラバトラー)の敵に当てるときぐらい

あと、リアル系で唯一火力おかしいのがファンネル
ファンネルがあるから、敵の防御も上がってるはずの後半でリアル系が使える状態になってる
143創る名無しに見る名無し:2012/10/06(土) 17:36:59.88 ID:7LZmXTDJ
 ファンネルが便利なおかげで際立つエリート兵の鬱陶しさ……!
144創る名無しに見る名無し:2012/10/06(土) 18:01:36.36 ID:VfOhDRWI
これはロボスレ大戦の流れですか?
145創る名無しに見る名無し:2012/10/06(土) 18:47:29.42 ID:ilJVaZJ8
EXなんざスーパーとかリアルとか関係ないしなw
寡兵すぎて選択の余地ないし。

あとエリート兵は戦闘をスキップできなかったせいで鬱陶しかったのかと。
決して島田敏が悪い訳ではない…はず。
146創る名無しに見る名無し:2012/10/06(土) 20:25:04.38 ID:7nQk8A8k
_________________________
| / _ /    |
| \. レ‐┬'´,..| エリート兵
|   {フヽ.__八 '、.| 「さあ、楽しませてくれよ!」
|  ._}二、/´〃│
| /∧¨ //ソ│
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
147創る名無しに見る名無し:2012/10/06(土) 22:05:15.84 ID:SdMslhQf
そーいやファンネルって撃ってるのは明らかにビームなのにビーム兵器じゃない扱いですよね?
148創る名無しに見る名無し:2012/10/07(日) 00:27:24.85 ID:WRbNb+1C
第4次スパロボ(最終話)
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm1038608

懐かしや第4次。
縮退砲の威力とか完全に狂ってたな。
よくこんなのを当時はクリアしたモンだ。
149創る名無しに見る名無し:2012/10/07(日) 01:28:03.56 ID:d+cSJmtg
>>147
ガンダム本編でもファンネルは「レーザー」の場合がある
(逆シャア・ユニコーン)

まあ、それだとレーザーという名前なのにビーム兵器属性になってるほかの武器の例はどうなんだって話だが
150創る名無しに見る名無し:2012/10/07(日) 01:34:32.71 ID:lynhQ8Vi
レーザーも「レーザービーム」だしいいんじゃねw
151創る名無しに見る名無し:2012/10/07(日) 01:45:45.04 ID:WRbNb+1C
細かい理論やらは全然違うんだろうけど、レーザーもビームも「なんか光のエネルギーの凄い兵器(小学生並の感想)」だから
152創る名無しに見る名無し:2012/10/07(日) 10:22:21.49 ID:x4tFvaE0
>>148
ソロモンよ、私は帰ってきた!で瞬殺だったじゃないですかー

アトミックバズーカを封印してたとしても言うて、味方側の火力インフレも凄かったんで第四次はそこまで・・
Fはイデオン封印してたならよくやったみたいな感じだとも思う
153創る名無しに見る名無し:2012/10/07(日) 22:58:41.37 ID:QUD76/di
 じれったい(偽師匠)
154創る名無しに見る名無し:2012/10/07(日) 23:03:17.00 ID:Z4wndvVh
 まったくだな(偽師匠二号)
155創る名無しに見る名無し:2012/10/07(日) 23:10:40.79 ID:DavDdIYR
 なにこの人たち(困惑

 昔のスパロボはバランス崩壊が面白いことになってましたよねw
 いい思い出だけど、いまやったらちょっとキツいんだろーなー……。
156創る名無しに見る名無し:2012/10/07(日) 23:19:39.62 ID:/1CkQxP9
今のスパロボには頼りになる味方機がいない
157創る名無しに見る名無し:2012/10/07(日) 23:22:25.68 ID:DavDdIYR
 みんな強いですからねー。
158創る名無しに見る名無し:2012/10/07(日) 23:38:30.12 ID:QUD76/di
またリアル系スーパー系でプレイしたい
159創る名無しに見る名無し:2012/10/07(日) 23:42:26.13 ID:S9C4NIRe
α外伝で本格的な調整がされてから本当によくなったなー。
運動性で上がるのが回避だけに。
武装の一括改造。強い機体は改造費が高く上昇値が低く、弱い機体は改造費が安く上昇値が高く。
一軍パイロット(ユニット)と二軍との差を軽減。
二回行動廃止、魂の効果を3倍から2.5倍に変更等。
スーパー系の価値が復活し、特にマジンカイザーは正しく魔神皇帝と呼ぶべき凄まじい強さだった。
160創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 00:47:13.00 ID:tyzCXP+z
>>89
読むのが大分遅れてしまって申し訳無いです。早速の新作1話投下乙です。早い、早すぎるよ!
何とも哲学的な始まり方におぉ、となりつつ、実に生活感あふれる描写に不思議と安心感を覚えるというw
あ、明らかに怪しい人来た―! しかし第一印象でいきなりこのインパクトは只事では無いww
しかし断頭台からゴーレムの流れの異様なテンポの良さは何だろうか。何かエライ流れなのにすんなり読めちゃうっていう。
何か真実ちゃんの狼狽っぷりがいかにも女子らしいドタバタ感でずっと見てたくなりますね。常識的な反応なのに。
さて、強引にロボットのパイロットになってしまった真実チャン、果たして×に打ち勝てるのか、次回が楽しみです。


それと氏の作品(グラインドハウス)からマコト君をお借りします。無断借用すみません

161TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 00:48:54.30 ID:tyzCXP+z
という訳で投下致します
最後に表記はしますが一発ネタなのでそこら辺ご容赦お願いします
自分で支援はしますがお暇なら支援をー
162TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 00:49:36.05 ID:tyzCXP+z
大きな、それでいて色々な犠牲の末に自らの人生を掛けた戦いに終止符が打ってしばらく。

青年は女性との束の間の会話を終えて、喫茶店を後にした。

コーヒーの味は苦かった。しかし決して、苦虫を潰す様な苦痛な苦みでは無く、この先に進む為の苦みだった。
これからどんな人生を生きていくのか、自分自身分からない。けれど一つだけ、心に決めた事がある。

力を、他者の為に、人の為に使おう。今、自分の中にあるこの力は他者を傷つける為でも、泣かす為でもない。
人を、大切な人を守り、救う為に、この力を使おうと、青年は自らに信条付ける。
もしかしたら拒絶されるかもしれない。拒否され、牙を向かれるかもしれない。それでも、信じたい。信じてみたい


人間を。

決意を秘めて、青年は開いている両手を固く握りしめて、青年は空を見上げる。青い、空。

前を向いて青年は歩き出そうとした、その時。

ふと、一人の少女だか、少年の姿が青年の目に映る。
半裸……? に身の丈を隠す様な大きなコートを着たその子供は、迷子にでもなったのか両目を両手で隠して、涙ぐんでいる。
格好故にか誰もが気味悪がり、子供を避けている様に思える。もし昔の自分なら。あの人達と同じ様な行動を取っているかもしれない。

青年の足は自然に、子供へと歩き出す。歩き出して、子供の前に立つ。
立って、青年は子供の目線に合わせるようにそっとしゃがむと、優しく声を掛けた。

「君、どうしたの? 迷子になったのかい?」

青年がそう聞くが、子供は泣いてばかりで顔を上げようとしない。困ったな……と思いつつ。

「この近くにお巡りさんが居るから、一緒に行こうか」

そう言いながら、青年は子供の頭に手を触れた瞬間、青年を緑色の光が――――――――。



廻るセカイ×パラべラム



かつて―――――――――と言える程遠くは無く、しかし近くも無い、月日で言えば一年程前に、その事件は起こった。
揺籃市。自然と人工とが心地よく共存し、過ごしやすい気候と優れた都市機能から多くの住人が存在するこの街は、とある災いにより壮絶な戦場へと化した。
その災いの名はゼノクレス。既存の兵器を凌駕する、驚異的な強さと恐ろしさを有するゼノクレスは、人々の平穏を破り揺籃市を血と火の海へと沈ませた。

だが、誰も彼もがそんな海に溺れていた訳ではない。
ゼノクレスから平和を勝ち取らんと、勇気ある者達が毅然として立ち上がったのだ。
そんな中、一人の少女に関わったばかりに壮絶な戦いの渦に巻き込まれ、心が折れそうになりながらも自分の成すべき事に気付き、拳を振るいセカイを救った少女がいた。

少女の名前は神守遥。淑やかで温和な、しかし少しだけ気弱な少女だ。だが、遥は決して芯が折れる事無く、自らの運命と対峙し、勝利を掴んだ。

凄惨でかつ壮絶な戦いの果てに、数多の犠牲を出しながらも勝利を得た遥は、元の平凡だが穏やかな日々へと戻れたはず――――――――だった。
163TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 00:50:41.73 ID:tyzCXP+z
物語は、ある一人の男の戦いから幕を開ける。


                                  ――-×××―――

両腕にしっかりと、物々しい外見が目を引く大型の銃器を抱えながら、赤い髪の毛の男は、荒れ果てている廃墟の中を全力疾走する。
全身を黒く染めているロングコートが、割られており吹き抜けとなっている窓から吹く夜風に煽られる。派手に靡いているコートを赤毛男は気にする様子は無い。
赤毛男は急に両足を止めると、背を壁に付ける。壁に付けて片足を落としてしゃがむ。そうして片目で銃器のスコープを覗きこみながら、のそのそと窓へと近づく。

そして恐る恐る、窓へと身体を近づけて、スコープを覗いたまま、外へと赤毛男は目を向ける。
廃墟の外は正に真っ暗闇と形容する他ない。月はおろか星すらも見えず、静寂だけが存在している。何も見えず、何も聞こえない様に思える。

「……かくれんぼも飽きただろ。そろそろ出て来いよ。アベンジャー」

スコープ越しに虚空の夜空へと銃器の先端を突き付けながら、赤毛男はポツリと、誰に言う訳でも無く小さく呟いた。

と、その時だ。まるで赤毛男の呟きに答えるかのように突如として、何かが凄まじい轟音と共に荒々しい狂風を従えて降下してくる。
狂風の凄まじさに赤毛男は思わず吹き飛ばされそうになるが、両足に力を込めてその場に留まる。絶対にスコープから目を離さない。
降下してくる何かの姿は、夜の闇の中に溶け込んでおり、認識できない。しかし、音と風だけは存在を誇示するかのように強さを増してくる。

何かは全身を透明化しているのか、あるいはカメレオンの如く自らの色彩を変化させて闇に同化しているのか、または……。

「ここで決着を付けようぜ、アベンジャー」

赤毛男がスコープから何か、否、「アベンジャー」と呼ぶモノの正体を捉えた、次の瞬間。

アベンジャーは赤毛男に向かって、機関銃による掃射を―――――――。



                                  ――-×××―――
                  

「どれが良いかなぁ……これも良いなぁ。あぁ、決められない……」

両開きのクローゼットを全開に開放し、神守遥はお気に入りの歌を鼻歌で歌いながら、気にいった服をハンガーから外してベッドの上に畳む。
どの服を着て行こうかと悩みだして早一時間は経っているが、遥は時間を気にするどころか時間が経っている事すら忘れている様に見える。

明後日、遥は仲の良い級友と一緒に、ちょっとした小旅行へと出かける予定がある。旅館への一泊二日程度の小旅行だ。
遥にとって級友との旅行は、学校行事である体験学習と修学旅行を除けば初めての経験だ。故に小旅行とはいえ、どんな旅行になるか楽しみで仕方がない。
準備は明日でも充分間に合うし余裕もあるのだが、なんて言っても学校も親も干渉してこない本当に友人達とだけ過ごす旅行だ。先んず準備しておきたい程、遥は楽しみが止まらない。

「あ、そうだ。水着も揃えとかなきゃ」

旅行の予定には、旅館近くにある割と有名な海で遊ぶ予定もある。水着も揃えておかなければならない。
こうした海水浴も、遥にとって楽しみな理由の一つでもある。何たって、水着を着る機会なんて学校での水泳の授業以来だ。
中学生位の時は家族や友人からプールなり海なりに誘われたのだが、ここ数年はめっきりそういう機会が無くなってしまった。
一体皆はどんな水着を着てくるんだろう……と遥は思い出して、気付く。

今、自分が持ってるのは学校が指定したスクール水着だけだ。必死にクローゼット内を引っ繰り返してみるが、水着という水着はこれしか見つからない。
本当に授業以外で水着を着る機会が無かったんだなぁと、遥は使い込んで居て色々と世話になったスクール水着を見て、ぼんやりと思う。
流石にコレを小旅行に持っていくのは色んな意味でキツイ。そうだ、あした近くのお店で買って来ようと、頭の片隅でメモを残す。
準備もそこそこに夜も遅いし、そろそろ寝ようかな。遥はそう思いつつ、カーテンを閉めようと窓際に近づく。


164創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 00:51:22.01 ID:bjQOWiAK

165TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 00:52:11.43 ID:tyzCXP+z
するとぽつり、ぽつりと雨音が窓ガラスに当たっては小さく響く。やだ……雨? と遥が首を傾げた途端、小雨が窓ガラスに一粒二粒と当たっては落ちていく。
テレビの天気予報では、旅行の日は快晴だと言っていたが、不吉な予感が頭をもたげる。明日は確か曇りで雨では無かった筈だが……。
雨よ、降っても良い。降っても良いけど旅行の日には絶対に降らないでください。そうだ、テルテル坊主でも作ろうかな……。

さっきまで頭の中で沸いていた不安がすぐに消えていく。小旅行に出かけるのに心弾むあまり、遥は童心に帰っている。

その時だ。

「お姉ちゃん!」

大声を上げながら、妹である彼方が突然、遥の自室のドアを開いてきた。
遥は驚きのあまり身体をビクッと一瞬大きく震わせた。遥がビクビクしながら彼方へと顔を向ける、彼方は何を慌てているのか、息を荒げている。
そんな彼方の様子に、遥は怒りの感情よりも一体どうしたのかという疑問が沸きたつ。何だか妙に、胸騒ぎがする。悪い意味で。

「何か用がある時はまずノックしようよ……。それでどうしたの? 彼方」

彼方は荒いでいる呼吸を無理矢理抑えながら、落ち着かない様子で話す。

「あの……あのね、あのね、お姉ちゃん……」
「うん、大丈夫だよ。大丈夫だから落ち着いて話して、彼方」

「お姉ちゃん。どうしよう」
「どうしようって、何が?」


「家の前に……知らない人が倒れてるの」


                                  ――-×××―――

銃口から忙しなく焚かれるマズルフラッシュが、暗闇を激しく照らし出す。鼓膜が破れそうな程に鳴り響く銃撃音の雨あられ。

イルミナスとワルサシンジゲートの合同研究所の後方、侵入予定であった搬入口付近の、コンクリートの壁面を防壁としながら銃器を乱射する、深紅色の髪の毛の男。
搬入口から途切れる事無く現れる戦闘用アンドロイドが憎たらしい。皮肉な事に、予備の為にと持ちこんでいる銃器のストックが有難く思える。
壁面に背を付けて、止まないアンドロイドからの銃弾の雨に身を隠しながら、銃器に弾を装填して深紅の髪の毛の男――――――――ヘンヨ・シュレーは舌打ちした。

事は数日前、ある種仕事仲間である女性、マチコ・スネイルから持ち込まれた依頼を引き受けたのが発端だ。

スネイルはヘンヨに対して、二つの巨悪である組織、ワルサシンジゲートとイルミナスが共同で、ある新型生物兵器を作り出したと話した。
その新型生物兵器はまだ試作段階らしく、実用化のレベルに移されると色々と不味い事態になる為、試作段階の時点で研究所からそれを奪取して欲しいとヘンヨに依頼してきた。。

ヘンヨ自身は危険な依頼、危険な仕事を幾度となくこなしてきた為、特に仕事内容に不満を漏らす気は無い。
しかし、様々な世界を巡り悪事を働いているこの二つの組織が協力しているのならば話は別だ。それに、件の新型生物兵器の詳細はスネイルさえも良く分からないらしい。
そんな状況なのに研究所への潜入だけならともかく奪取だなんてあまりにも危険度が高すぎて、確実に成功する確証でも無きゃ乗り気にはなれないとヘンヨはスネイルに言った。
そんなヘンヨに、スネイルは報酬をすぐには手渡せないが、依頼を成功させた分の見返りはすると宣言し、尚且つ手厚いバックアップも付けると約束した。

コレに対してヘンヨは渋々ながらも、必ず見返りと金に糸目を付けずに銃器をよこすという条件で承諾した。
さて、実際例の日になり、ヘンヨはワルサシンジゲートとイルミナスが件の新型生物兵器を保管しているという合同研究所へと潜入……しようと搬入口に近づこうとした。
が、よほど侵入者の存在を警戒しているのか、あり得ないとは思うがヘンヨが研究所に向かうという情報が漏れだしたのか……。
搬入口へと潜入しようとした手前、幾多の戦闘用アンドロイドがヘンヨを待ち変えており、場面は最初の銃撃戦へと戻る。

「KK! 大型ライフルを貸せ!」
「あいよ!」

今先程連絡を受けて、ヘンヨにとって長い相棒の一人である女性型アンドロイドのKKが到着。
スネイルからの支援である大量の重火器をヘンヨに手渡しつつ、自らも銃撃戦に参加する。最早ヘンヨの中では潜入というよりも、物量に任せた強行突破に切り替わっている。

166創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 00:52:27.83 ID:AqZrOcdK
 
167TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 00:53:18.57 ID:tyzCXP+z
自らの背丈以上に巨大な重火器をセットしながら、それにしても、とヘンヨは思う。
ある程度待ち伏せも銃撃戦もは覚悟していたが、それにしたってあまりにも搬入口から出てくるのアンドロイドの数が、防衛用のアンドロイドの数が異常に多すぎる。
防衛用にしてもせめて十機か二十機程度だろうが、もう百機以上は潰している気がする。よほど研究所内の新型生物兵器とやらは、奴らにとって奪われたくない物なのだろうか。
と、ようやくアンドロイドの物量が収まって来た。と言ってもまだまだわらわらとゴキブリの様に出てきてはいるが。

こんな所でうだうだとしていても埒が明かない。頃合いを見てKKのバイクに相乗りしつつ、一気に研究所に飛び込もうとヘンヨは考えた、瞬間。

「くっ!」

突如として搬入口、いや、研究所自体を非常に眩く包み込む、緑色の光。
緑色と判別できたのはほぼ一瞬で、ヘンヨはあまりの眩しさに両目が潰されない様グッと目を瞑り、反射的に両腕で両目を隠す。
隠した両腕が焼けるかと思えるほどの眩しさ。一体いつまで隠せば……と、数十秒してようやく両腕から熱さが無くなっていく。ヘンヨはゆっくりと目を開け、事態を見極めようとする。


滅多な事ではまるで動じる事が無いヘンヨだが、流石に視界に映り込んだ光景にはリアクションが取れず、唖然とした。


消えているのだ。研究所ごと、ヘンヨの目の前から研究所が消失している。
そこにあるのは、ぽっかりとして空虚な土地と、星すらも見えない暗闇だけだ。あの緑色の光に包まれた瞬間、研究所が何処かへと煙の如く消え失せてしまった。
防衛用のアンドロイドまでも巻き込んで。もしも少しでも中に入ろうとしていたらあの光に包まれていたかもしれない。そう考えるとヘンヨは背中に冷たい物を感じる。

冷たい物を感じるといえば……件の生物兵器事、仕事が無くなってしまった。否、決して職務放棄する訳ではないが。

胸元から煙草を取り出して一服すると、ヘンヨは光から身を守る為に地面に寝そべり、起き上がって膝を叩いているKKに言う。

「KK、スネイルに連絡取ってくれ。後ついでに」


「リヒトにもだ。あいつなら何か知ってるかもしれねえ。どっかに放浪してなきゃ良いが」


                                  ――-×××―――


彼方に腕を引っ張られて強引に歩かされながら、遥は玄関口のドアを開けた。
こういう非常事態は変に騒ぐよりも、すぐに警察なり救急車なりを呼んで事態を見守った方が良いと、遥は姉として彼方に言おうとした。
しか何が起こっているか、一体どんな人間が倒れているかくらいは把握しておいた方が良いだろうと考えなおす。それらを呼んだ時に詳しく状況説明する為にも。

「この人……なんだけど」

ドアを開けてすぐ、彼方はその人物へと顔を向けた。遥は彼方の視線を追い、例の人物に目を向ける。

……確かに倒れている。ただ、分かりやすく仰向けだとかうつ伏せに倒れているのではなく、身体を丸めて弱々しくうずくまっている。
遥はビクビクと身体を固くしつつ、勇気を振り絞って行き倒れ人の近くへとしゃがみこんだ。しゃがみこみ、じっと観察してみる。

……女の、子? 遥がまず、その人物へと抱いた第一印象は、小学生か中学生程度の女の子だ。
頭からすっぽりと全身に掛けて、小さな体を薄汚れた緑色のコートに隠している。頭に被っているフードから見える顔付きはやはり幼い。
ちらりと見える目は閉じており、風邪でも引いているのか呼吸が若干荒い。眠っているのか、それとも……と、遥は目線をフードより下に……下には何も……つけて、ない?

「警察かな……それとも救急車かな……どっちだろう、お姉ちゃん」

深刻に考え込んでいる彼方の言葉が、遥の耳には届いていない。

遥はどうにも、奇妙な感覚に囚われる。

何故だか昔、いつかは明確には思い出せないが、こんな出来事に遭遇した気がする。それも同じ様な天気、雨が降っている日に。
遥自身は否定する。こんな奇異なシチュエーションに二度も遭遇する訳が無いと。雨が降る日に家の前に知らない誰かが家の前に倒れているなんて漫画やアニメじゃあるまいし……。

だが、と遥は思う。どこかで、こんな出来事に遭った気がしてならない。しかも、一、二年前に
そんな筈、ある訳ないのに。一先ず、一先ずだ。ここで取るべき行動は一つ。
168創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 00:53:38.01 ID:bjQOWiAK

169TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 00:54:31.27 ID:tyzCXP+z
遥はすくっと立ち上がると、彼方を安心させる様に一字一句しっかりとした口調で彼方に話す。

「彼方、私達だけじゃ判断できないから、お父さんとお母さんに相談してからにしよう。二人を起こしてきてくれる?」

ようやく遥からきちんとした指示が出た事に、彼方は安堵したのか初めてホッとした笑みを浮かべると、深く頷いた。

「うん、分かった。お姉ちゃん」
「出来るだけ事情を詳しく話してあげてね。それでここに連れてきて。分かった?」
「うん!」

彼方が元気良く返事し、自宅へと戻るのを確認すると、遥は行き倒れ人へと向き直った。

……起きている。行き倒れ人は起き上がり、遥の事を見上げている。
遥の身体は蛇に睨まれこれから丸呑みされんとする蛙の如く、硬直している。さっきまで姉として毅然と振舞っているのが嘘の様なビビりっぷりだ。

ど、ど、どうしよう。どうすればいいんだろう。遥の脳内はしっちゃかめっちゃかのパニック状態でにっちもさっちもいかない。

こ、ここここは冷静だ、冷静になるんだと、遥は両目を目まぐるしく動かして行き倒れ人を観察する。

コートの中からチラチラと見え隠れする行き倒れ人の身体は、胸の起伏がそれほど無く、女の子かと思ったが男の子なのかもしれない。どうにも判断が付き難い。
下半身さえ見えればすぐに判断が付くだろうが、その肝心の部分は隠されていて見えない。立ち上がってくれれ……何を言っているんだ私は。
顔付きはどうだろうか。しっかりと観察してみる。目は若干ツリ目だ。しかしキツいツリ目ではなく、どことなく猫の目を彷彿とさせる、可愛らしくつぶらな瞳だ。
鼻や口は低いが形良く整っていて、身体付きと同じ様に、男の子のようにも見えるが女の子の様にも見える中性的な顔付きである。

「あ、あの……えっと……」

遥がキョドりながらも残っている勇気を全て振り絞り声を掛けようとした手前、行き倒れ人が頭に被っているフードが、風に吹かれてふわりと後ろに下がった。

ぴょこんという擬音が聞こえそうな、二本のウサギの様な耳が、行き倒れ人の頭の上で元気良く跳ねた。
同時に尻の部分からぶわっと、フワフワとしている動物の尻尾らしき、ではなく尻尾その物が出てきた。

人間……じゃ。

この人、人間じゃ……ない?

遥は両目を大きく見開き、あははははと笑いながら、気絶した。



                                  ――-×××―――

「ん……んん……?」

少しづつゆっくりと、閉じている寝ぼけ眼を、遥は開いていく。

まず、視界に映ったのは蛍光灯、というより、部屋を照らしているライトの淡く白い光。何が起きたのか、理解が全く追いつかない。
取り合えず遥は自分に起こった事を思い出そうと試みる。確か旅行の準備をしていると、彼方が突然飛び込んできて、誰かが家の前で倒れてると言ってきた。
それで彼方に誘導される様に家を出ると確かに人が倒れていた。それで彼方に両親を起こしてくる様に言った後に、その人が……。

その人の頭と尻から、猫だか狐みたいな兎だかの耳と尻尾が生えていた。その際、あまりの衝撃に遥はどうにもならずバタンと気絶した。
そこまで情けないながらも思い出せた。が、それにしてもここはどこなのだろうかと、遥はキョロキョロと落ち着きなく、周りに目を向ける。

間違いなく自室では、自宅では無い事だけは分かる。何故なら自室はこんな淡い白色のシンプルな壁色ではないし、何より二つもベッドを置けるようなスペースは無い。
というかベットだけでなくデリケートそうな医療器具や、清潔そうなインテリアから察するに、ここは医務室か病院のどちらかであろう。
にしてもただ気絶しただけで病院に連れてこられるなんて……ちょっと大袈裟すぎないだろうか。

……駄目だ、やっぱりまだ頭の理解が追いつかない。そんな感じで遥が混乱状態に陥っていると。

「あら、おはよう」
ふと、横から誰かが遥に声を掛けてきた。遥はすぐさま、その誰かの方へと顔を向ける。
170TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 00:56:00.75 ID:tyzCXP+z
医者……なのだろうか? にしてはどうも胡散臭いというか医者に見えない、白衣の下に派手な衣装を着た、眼鏡を掛けている女性が椅子に腰かけている。
派手と言うか、赤を基調にした下着が見えそうで見えないスカートに黒いタンクトップとか絶対医者じゃないと遥は失礼ながらも思う。この人を信用するには時間が掛かる気がする。
だが、こんな訳の分からない状況が連続で起こっている最中だ。少しでも情報が欲しい。何でも構わないから。

遥は意を決し、眼鏡の女性へと話しかける事にする。

「あの、私……」

遥の行動に対して、女性は何故か人差し指を立てると、遥の口元へと軽く当てる。当てて、微笑を浮かべながら言う。

「大丈夫よ。貴方が不安がってる事は十分伝わっているから。でも凄い皮肉。ほぼ同じシチュエーションで、貴方の平穏が破られるなんて」

シチュ……エーション? それに平穏を破られるって、一体……。
ますますもって遥は自分の頭がおかしくなったかと、もしやその手の病院に連れ込まれたのかと、絶望的な心境に陥りそうになる。
のを察してか知らずか、女性は笑いながら青ざめている遥に、二言目を発する。

「あぁ、ごめんごめん。突然こんな事言われても訳分からないだけよね。まず、私の名前から教えるわ」

そうして人差し指を遥の口から離し、女性は椅子から立ち上がると、白衣のポケットに両手を入れる。

「私の名前はスネイル。マチコ・スネイル。本当はアホみたいに長い名前があるけど、この際どうでも良い事だから飛ばすわ」

流れるような動作で眼鏡の女性、スネイルは白衣のポケット内から、小さなリモコンを取り出してスイッチを押す。

「これから貴方が見る映像は、そこらの映画よりもずっと刺激が強い映像よ。だけど決して目を瞑らない様に。あ、それと先に言っておくけど、貴方の家族は無事に保護したから心配しないで」

スネイルがスイッチを押した途端、部屋の電気が一瞬で暗くなる。
すると天井からするすると何かが降りてくる。スプリンクラーの様なそれは、遥の頭上で小さく機械音を鳴らすと、壁側へと首を向ける。
と、それは遥の数メートル先の白い壁に、映写機の如くホログラムでスクリーンを展開させた。大きく映し出されたスクリーンに映る映像は―――――――。



                                  ――-×××―――

広大な道路の上で、まるで幼い子供が疳癪を起こしたかの様に無残に横転し、ひっくり返り、転がっている自動車、自動車、自動車。
炎上し、今にも爆発しそうな自動車を尻目に、滅茶苦茶に凹んでおり原型の無い電信柱や、隕石でも落下したかと思える程にクレーターとなっている道路。。
必死な形相を浮かべて泣き叫び、逃げ惑う人々を、堂々と二足で闊歩しながら、巨大な物体が迫る。

その物体は推測四,五メートル程の大きさを誇り、まるで人間の様に二足で歩く――――――――ロボットだ。
物体の外見は、西洋の時代に重宝されていた勇ましい甲冑を彷彿とさせており、尚且つ頭部には無機質な両目を不気味に光らせている。
黒光りの装甲をぬめりと反射させながら、それは、いとも簡単に車を叩き潰し、店を粉々にし、人を骸へと変えていく。

例えるならばそのロボットは―――――――無慈悲なる黒甲冑の騎士と言うべきか。
黒甲冑の騎士は一機やニ機では無く、数えきれない程の数で闊歩しては、目に映る物という物を蹂躙し、成す術も無く破壊して行く。

一体何が黒騎士達を、どんな目的でこんな非道な行為に駆り立てているのかは分からない。
そもそも一体どこからやって来たのかも分からない。しかし何らかの目的を持って、黒騎士達は目に映るセカイをあらん限り破壊し尽くす。

「きゃっ!」

抵抗する術も無く、ただただ逃げ惑う人々。そんな中、母親に引っ張られながら走るも、足元のコンクリートの破片に気付かず、幼女がその場に転んだ。
幼女の母親は、娘の名を叫びながら必死に立たせて走らせようとするが、娘の膝には深い擦り傷が出来ており、痛さのせいか立ち上がる事も出来ない。
傷に気付き母親は娘を背負おうとするが、黒騎士への恐怖と、傷の痛みからか娘の身体は震えあがり、動く事すらもままならない。

娘の背後より迫る、黒騎士の一機。既に黒騎士の射程範囲内に、娘と母は入っている

せめて命に代えても我が子だけでも守らんと、母親は娘を深く抱きしめて黒騎士へと背を向けた。

黒騎士は右手を大きく掲げて、母と娘ごとその背中を貫かんとした。
171創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 00:56:26.82 ID:bjQOWiAK


172創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 00:57:24.34 ID:ZOOzi/Qp
173創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 00:57:32.56 ID:bjQOWiAK


174創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 00:57:32.79 ID:svmACLEM

175TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 00:57:57.31 ID:tyzCXP+z
瞬間、一閃。


鋭く研ぎ澄まされた銀色の刃が一瞬で、黒騎士の胴体を美しく、完璧に両断する。太陽に反射し静謐な輝きを潜ませる刃に迷いは、無い。
神聖にして汚れの無い純白の装甲。頭部の逞しきたてがみを豪快に翻らせて、果敢なる剣士が只一機、地獄絵図を描く黒騎士達へと反旗を翻す。
両手に持ちし、生死を共にする愛刀、白鳳と銀凰を逆手へと瞬時に持ち替え、巨大なる剣士―――――――の躁者である青年は、呆然と自分達を見上げている母と娘に声を掛ける。

『早く逃げろ! とにかく遠くへ!』

剣士より聞こえてきた、予想だにしない若き青年の声に、母親は戸惑う。

「お……おかーさん」

先程まで立ち上がれなかった娘が、懸命に立ち上がろうとしている。立ち上がりながら、母へと言う。

「早く……行こう。私……頑張れるよ」

そうして、娘は母へと笑顔を見せる。母は娘のそんな頑張りに、そして青年の声に、自分が何をすべきかを瞬時に理解し、娘を抱き抱えると走っていく。

構わず追おうとする黒騎士達を、駆け抜けながら剣士は白鳳と銀鳳で斬り込み阻止する。しかし剣士の中で戦況を見定めている青年の顔に、冷静さは無い。
何が起きてるのか、青年自身にも理解がしきれない様子だ。しかし、只事ではない事態が起きている事だけは重々理解出来る。

徹底的に研ぎ澄まされ、鍛え抜かれた白鳳と銀凰の切れ味は凄まじく、留まる事無く黒騎士達は胴体を、頭部を、手足を、いとも簡単に断たれて朽ちていく。
それにしてもこいつらは一体どこからやって来たんだ? と青年はあらん限りの記憶を掘り起こして、掘り起こした記憶をフル回転して考える。
しかしどれだけ知識を総動員し、今までの戦闘経験を振り返ってみても、該当するデータが見つからない。今までに戦った事が無い、未知数の相手だ。

『ヤスッちさん、何か分かりましたか?』

剣士――――――――シュタムファータァから質問され、躁者である青年――――――――安田俊明は首を横に振り、答える。

「駄目だ、分からん。本当に何なんだ……」


異変は今朝、揺籃市に突如として、黒騎士達は現れた。
変わらぬ日常を生きている人々を瞬く間に地獄絵図へと叩き込んだ黒騎士達に、警察は立ち向かおうとした。しかし無駄だ。
黒騎士達の装甲に、拳銃程度では傷すらも付かない。警察すらも頼りにならない中、人々に出来る事は逃げ回る事だけだ。

こんな絶望的な状況下で、本来は人目に付く行動は避けるべきではあるが、人が傷つけられ蹂躙されているのを呆然と見ていられない。
俊明とシュタムファータァの思考は一致している。末に、俊明はシュタムファータァと共に、予期せぬ侵略者への攻勢を開始した。

一見強固そうに見えるが、実際に戦ってみると予想以上に軟い黒騎士に俊明は拍子抜けした。
だが、問題はそこではない。俊明がさっきからずっと考えている事は一つ。

黒騎士の目的は一体何なのかだ。もし明確にターゲットなり理由だけでも分かれば対処のしようがあるのだが。
それにしても、一体どこから沸いて出てくるのか。斬っても斬っても、終わりが見えない。
とにかく、だ。今すべき事は決まっている。

「とにかく今はこいつらを倒して皆を守るのが最優先だ。良いな、シュタムファータァ」
『分かりました!』

俊明の指示にシュタムファータァは俄然力が入る。白鳳と銀凰を握る掌を一旦緩め、込められるだけの力を一気に込める。
176創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 00:57:58.79 ID:Wg+XaoMC
 
177創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 00:58:54.52 ID:Wg+XaoMC
 
178TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 01:00:06.92 ID:tyzCXP+z
にしてもどうでも良い事だが黒騎士と呼ぶと何となく格好付けてる様なので、俊明は彼奴等の呼び方を変える事にする。
何処から来たか不明……不明は確かアンノウンだったか……なら鎧型アンノウンとでも名付けるか。

と、その時だ。

急に雨雲でも差し掛かってきたのか、周囲が薄暗くなる。さっきまで地獄絵図に反する様に澄み切った青空だったのだが、急に薄暗い影が忍び寄ってきた。
雨を降らす様な暗雲は無かった筈だが……と、俊明はシュタムファータァに頭部を見上げさせて空へと目線を向ける。

視界が空の様子が映った時、俊明は両目に映り込んだ光景に絶句した。

「なん……だ……コレ」

揺籃市の空一面を覆い尽くす様に、巨大な何かが、大群を成して悠々と飛行している。

数え切れないほどの大群で空を飛んでいる何かは、澱んでおり一切の光沢の無い、黒々とした装甲が目に付く。鎧型アンノウンとは別の意味で邪悪さを思わせる黒だ。
何かの背部からは、翅の様な形状の大型パネルが伸びており、そのパネルより放出されている青色の粒子……らしき物で空を飛び続けている。
翅といい機体のデザインといい、何かの姿はまるで、巨大なカブトムシを連想させる。

深く考えなくても新手である事は分かる。それにしても……と、俊明の脳裏に焦りが滲む。
鎧型アンノウンをシュタムファータァ一機で相手する時点でも数が多いのに、もしあれら……言うなれば飛行型アンノウンがこちらに降りてきたら……。
と不安に駆られた瞬間に、数機、否、数十機の飛行型がパネルを下方へと展開させて、一気にシュタムファータァの周囲へと降下してきた。

『新手っ!?』

新たに現れた刺客にシュタムファータァは戸惑う。飛行型アンノウンは着地するとぐるりと円を囲む様に移動して、シュタムファータァを取り囲む。
一人では、一人と一機ではあまりにも敵が多い、多すぎる。どうする。どうこの窮地を脱すれば良い。

俊明の額に冷や汗が一筋、零れ落ちる。




                                  ――-×××―――


息が詰まりそうな圧迫感に満ちた、ジメリとして気色の悪い地下。
規則正しく立ち並んでいる、巨大なコンクリートの柱。生物の存在を感じさせないこの場所は普段、放水路として使われている巨大な水路だ。
そんな水路で柱の間を交差しながら、水溜りを勢い良く弾きつつ、走る一つの影。
筋骨隆々として逞しい、スパルタンな印象を抱かせるヒロイックなスーツを着た影は、ピタリと走っている足を止める。

止めると、しんと両耳を澄ませる。澄ませて、全神経を耳へと集中させる。水路には影が走っている音以外何も聞こえない様に思えるが、それは違う。

影が、否、男が足を止めると、その瞬間を待ちかねていたかの様に音も無く、柱から現れる、黒いスーツを着た人間達。
しかし人間にしてやけに肌が灰色でかつ、目の色がおかしい。何故ならスーツ人間達の眼球は、白目から瞳孔に至るまで真っ青だからだ。

と、青目の一人が、男の背中に向かって手刀を構えながら着地しようと勢い良く跳んだ。

男は振り返ると同時に、右足を力一杯に踏み込む。踏み込みながら襲いかかって来た青目の腹部に向かって鉄拳を真っ直ぐに殴り込む。
次に、男の拳に走った感触は、冷たく凝縮され、火花を散らしている電子の感触。男がゆっくりと腕を抜く。腹部に空いた荒々しい穴からは見えるは、完全に焼け焦げている電子部分。
ぐらりと、青目は力無くその場に倒れて二度と起き上がらない。どうやら男を追っている者の正体は人間ではなく、人間を象った紛い物である様だ。
179TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 01:01:02.39 ID:tyzCXP+z
男の鉄拳が、次々と襲ってくる青目を打ちのめしていく。男は手加減をする事無く全力で、青目達を破壊していく。
薄暗い闇の中で、青目達の胴体から火花が散り、もがれた手や足からオイルが鮮血の如く吹き出す。見ようによってはグロテスクな光景だ。
ものの数分、どころか一分も経たずに、男は自らに襲いかかって来た青目集団を全て返り討ちにする。只一人、オイル塗れになりながら男は一人、佇む。

「小細工はもう良い……俺と戦え、エビル!」

水路に響き渡る、喉から振り絞る様な男の叫び。
すると男の叫び声を嘲笑う様に、不規則なリズムの拍手が小さく響く。
男は黙って、拍手が止むのを待つ。拍手が止むと、どこからか、別の男の声が聞こえてきた。

「流石だよ、田所カッコマン。君をライバルと見込んだのは間違いじゃなかった」

拍手の音よりもずっと良く通る、軽い口調の中に言い知れない禍々しさを感じさせる若い男の声が、男の耳を走る。
すぐに戦える様、瞬時にファイティングポーズを取りながら男――――――――田所カッコマンは、宿敵の相手、カッコマンエビルが闇より姿を現すのを待つ。
しかしどれだけカッコマンが戦闘態勢を取り、現れるのを待っても、エビルが姿を現す様子は無い。代わりに聞こえてくるのはエビルの声だけだ。

「でも残念だよ、カッコマン。残念だけど今は君と遊んでいる時間は無い」
「逃げるのか、エビル!」

カッコマンがエビルをそう問いただそうとした、その時。

破壊した青目集団の胴体から、鋭利なカギ爪からが機械音を立てて立ち上がった。
それだけに留まらず、カギ爪に付けられたワイヤーが高速で放たれると、カッコマンに向かっていく。

「何っ!?」

予想だにしない罠にカッコマンは反応できず、カギ爪はスーツへと突き刺さる。
次々と刺さっていくカギ爪は、カッコマンの身動きを封じていく。手足に大量のカギ爪が突き刺さり、尚更カッコマンはその場から動けない。
しかし痛みは無く、あくまでスーツを束縛しているだけな様だ。姑息な手には変わりないが。

「何て汚い手を……!」

悔しげにそう言うカッコマンに、エビルは笑い交じりに言い返す。

「我ながら卑怯だとは思うが、こうでもしなければ君は足止め出来ないからな。本当の決着は別の場所で付けよう。田所カッコマン」

次の瞬間、青目集団の頭部が真っ赤に点灯しながら激しく回転しだす。爆破まであと十秒と、人工的な声が自爆までのカウントをし始める。
カッコマンは必死にカギ爪を取り外そうとするがいかんせん数が多く、一つ一つ取り外していたらあっという間に爆発してしまう。
それでも諦める事無く、ワイヤーを切り裂き引き千切りと抵抗するカッコマン。だが、無情にも時間は進んでいく。

「最も、生きて帰れたら、の話だがな。さらばだ、田所カッコマン」

エビルの高笑いが、水路に反響する。

「くっ……エビル!」

爆発まで残り五秒となった。

『重力制御機動』

夜空を掛ける流星の如く、天井よりをカッコマンとはまた別のスタンスでヒロイックな、白色のスーツを着た細身の男がカッコマンの元へと無音で着地する。
着地したが素早く、手に持っている拳銃――――――――の様な武器のグリップを変形させると、砲口よりビームで形成された光の刃を作り出す。
そして躊躇する事無く、カッコマンに纏わりついているワイヤーを切断すると、グリップを元の形状に戻して拳銃へと変形させる。

変形させるが手早く、懐から一枚のカードを取り出し、拳銃上部の溝へとスライドさせる。

カードをスライドさせると、武器は無機質な女性の声で、スライドさせたカードの名前を暗唱した。

<トランスインポート エッグガード>
180創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:01:42.15 ID:bjQOWiAK


181TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 01:02:06.42 ID:tyzCXP+z
瞬間、カードが消滅する。男は武器のトリガーを、自らとカッコマンの頭上へと引いた。すると砲口から、白い弾丸が射出される。
白い弾丸は空中でバラバラに細かく分離すると、卵を連想させるような形状の、半透明な強固なバリアフィールドと化した。
フィールドはカッコマンと男を、迫りくる爆発の爆風から完璧に守り切る。フィールドに爆風によって傷が付く様子も無ければ、燃え盛る様子もない。

「お前は……」

男は頭部に被っているヘルメットを取り外して、カッコマンに自らの顔を見せる。
見せながら、言う。

「いつかの借りを返しに来た。遅れてすまなかった、田所カッコマン。いや……田所正男」

「お前が……ハクタカか」




                                  ――-×××―――


スネイルに見せられた、俄かに信じがたい光景に遥はただ、俯いて呆然とする他ない。
ただでさえ、訳の分からない黒いロボットが街を、人を襲っている光景自体が信じがたいのに、それでいて人を襲っているだなんて、滅茶苦茶過ぎる。
一体全体、自分に、自分だけでなく周囲に何が起こっているのか理解も納得も、何も飲み込めない。

寧ろ、頭が理解する事を拒否しているのかもしれない。こんな現実を現実だと認識してはいけない、と。

何もかもが信じられない現実の中で、遥は一つだけ気掛かりな事があった。それは一機だけ。
一機だけ、違うロボットが居た事だ。黒いロボットが人を襲っている中、人を助けている白いロボット。
あのロボットだけは何故だか信頼出来そうな気がする。敵か味方かすら分からないが。

……それでだ。ここからが本題。

私に、何が出来るんだろう? こんな警察すらも当てに出来ない中で、私に何が?

「少しは分かって貰えたかしら? 今、貴方の周囲で何が起こってるのかを」

スネイルが静かな口調でそう聞いてきたが、正直遥は上の空だ。一先ず、スネイルの口から遥の家族は無事であるとは聞いている。
だが正直、正直に言えばこの目で実際に見てみない事には信用できない。ので、遥はスネイルに聞く。遠慮する事無く、聞く。

「あの……助けて頂いたのに、いきなりこんな事を聞くのも失礼千万とは思いつつ、聞きたい事があります」
「何々?」

遥は一呼吸置く。おいてスネイルに、尋ねる。

「その、家族に会わせて貰えますか? 会って……安心したいんです」

遥の申し出に、スネイルは意外にも二つ返事で了解する。

「まぁ、こんなのを見せられていきなり分かりましたとはいかないよね。じゃあ、ご家族の元に転送するから準備してくれる?」

あ、会わせてくれるんだ……と遥は少しだけ安心する。や、全然安心できる段階では無いのだが。
するとスネイルはどこからか、正に派手と言わざるおえない、真っ赤塗な装に黄金の装飾が目を引く、女性の手には些か大きな拳銃を取り出した。

スネイルの行動に遥の顔がピクピクと引き攣る。な、何をするつもりなの、この人?
やばい、逃げなきゃ。そう思いながらも身体が金縛りにあったかの如く動けない。やっぱりこの人ヤバい人だったのかな……、

「痛さは無いけど凄く眩しいから目を瞑ってて。興味本位で開けたら焼けるわよ、目」

遥は最早、言われるがまま目を閉じるしかなかった。この家族に会えるという意味は恐らく天国で、という意味なのだろう。

お父さん、お母さん、彼方……。
182創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:02:22.07 ID:Wg+XaoMC
  
183創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:04:07.03 ID:Wg+XaoMC
  
184TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 01:04:37.12 ID:tyzCXP+z
死ぬ前に旅行、行きたかったなぁ……。


                                  ――-×××―――


少しづつ、少しづつ距離を詰めてくる、空より襲来してきた飛行型アンノウンに、シュタムファータァと俊明は精神的に追い詰められている。

飛行型アンノウンの後ろには、まだ倒し切れていない鎧型アンノウンもいる。その前方には得体も知れず、戦闘能力も未知数な飛行型アンノウン。
白鳳と銀凰に消耗は見えず、目立った傷も付いていない。しかしこれ以上敵機が増えるとなると、流石にシュタムファータァの体力が持つか分からない。
かといって逃げ出しては、この惨状を今以上に広げる事になる。どうする、どう行動すれば良い。俺は……。

「……ヤスッちさん」

ここで一気に状況を逆転できる手段があれば……と言いたいが、地形はまっ平らな道路だ。
もしもここが、足場を一気に崩す事が出来る崖だとか、山だとかなら、幾らか勝機が見出せるのだが。

「ヤスッちさん」

そうだ、一気に敵機を巻きこめる、大きな爆発でも起こせる物でもあれば、引きつけて一網打尽って戦法も行える。だが、そんな大それた物がすぐに用意できる筈が無い。
イェーガー戦の様な戦法は何日も前から入念に計画を練って行えた戦法だ。あんな事を咄嗟に出来る程、状況は恵まれていない。
さて、どうする、本当にどうする……。どうすればいい、俺。

「ヤスッちさん!」
「何だ! 今どうすればいいか考えてんだよ!」

何度もシュタムファータァに呼び掛けられて、俊明は若干怒気を含みながら返答する。
こんな緊急事態に何を気にしているのかと、俊明は聞こうとする。と、何故だかシュタムファータァは何処かを指差している。
どこを指差しているのかと、俊明は半信半疑にそちらへと目を向ける。

……何かがこちらへと全速力で走ってくる。またアンノウンかと俊明はゾッとしたが、どうも様子が違う。

その何かの形状が次第に明らかになってくるにつれて、俊明は我が目を信じられず、思わず目を擦った。
トラクター……だ。トラクターの形状をした物体、というより異様に大きなサイズのトラクターが、ボコボコになった道路を物ともせずこちらに疾走してくる。
敵意も無ければ殺意も感じない。それどころか、不思議な安心感がある。どう見てもただのトラクターなのに。

トラクターは驚くべき事に、進路を邪魔してくる鎧型アンノウンを物ともせず突進しては吹き飛ばし、藻屑に変えていく。
常識的に考えればトラクターが負けるというか潰れる筈なのに。敵では無く助っ人、にしても予想外すぎる助っ人の登場に、シュタムファータァも俊明も呆気に取られる他ない。
よくよく目を凝らしていると、異常なバランス感覚で、トラクターの上でしゃがんでいる男が、華麗に跳び下りながら叫んだ。

「タウエルン、トランス!」

タウエルン、タウエルン? と俊明はそのネーミングに一寸頭を傾げる。
タウエルン、と呼ばれたトラクターは、その場に急停止すると、重低音を響かせながら、驚くべき事に変形し始める。
呆然とも唖然ともいえる様子で、事の次第を見つめているシュタムファータァと俊明はともかく、周囲の飛行・鎧型アンノウンも警戒しているのか、その変形を眺めている。
皆が見つめる中、トラクターは数秒の変形を終えて、全く違う形態へと鮮やかに姿を変える。

変形を終えたその姿は――――――――ロボットである。気高く勇敢な闘牛を彷彿とさせる様な、頭部の角。
複雑に合わさった装甲面は、言葉は発せずとも頼りになる事を誇示する様に屈強な印象を抱かせる。
鎧型アンノウンとも飛行型アンノウンとも、ましてやシュタムファータァとも非なる、見た事もない存在。

その名を――――――――タウエルン。……タウエルンって何だと、俊明は再度、首を傾げる。


タウエルンは変形すると同時に、頭部のバイザーからツインアイを紅く発光させる。
発光させると、後ろで立ち止まっているシュタムファータァと俊明に向けて、外見に反し無垢で純粋さを思わせる少年の声で言った。

<ここは僕達が引きつけます! 二人は早く家族や友人の元へ!>

いきなり現れて何を言って……と言いかけたが、俊明は自制する。
185創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:05:21.63 ID:AqZrOcdK
  
186創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:07:14.11 ID:Wg+XaoMC
 
187創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:08:21.89 ID:Wg+XaoMC
 
188TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 01:08:28.10 ID:tyzCXP+z
ここまでのタウエルンの行動を見て、まず敵だと判断する要素は無い。完全に信頼している訳ではないが。
とにかく人々を守る事で頭が一杯だったが、冷静になってみると千尋や椎名の事が頭を過ぎる。アンノウンの魔の手が他に及んでいないとは限らない。
寧ろ、その危険性の方が高い。ここで取るべき選択肢は、一つ。

「……行くぞ、シュタムファータァ」
「ヤスちさん……はい!」

俊明の考えを察知し、シュタムファータァはタウエルンに背を向ける。向けて、言い残す。

『ごめんなさい! 後はお願いします! ……必ず、生き伸びて下さい』


そうして最高速で戦線を離脱していく一人と一機を見守りながら、タウエルンのパートナーである男、ショウイチ・マーチマンは片手に持っている手製のライフルを装填する。

「タウ、出力をあまり上げ過ぎるな。本丸が出てくるまで接近戦主体で戦ってくれ」
<分かったよ、ショウイチ。にしてもこれが僕達のデータを流用して作られたゼノクレスって機体か……>
「オリジナルじゃなくて量産型のな。何にせよ、火種の元になったのは俺達の罪だ。きっちりと消火しないとな」


ライフルをくるりと回すと、ショウイチは誰ともなしに呟く。


「……さて、放火犯はどこにいるんだか。現場に戻るかな?」



                                  ――-×××―――


「どうだった? 皆無事だったでしょ?」

スネイルからそう聞かれ、遥はこくんと、小さく頷く。
父も母も彼方も、怪我も無く無事に避難所へと避難していた。彼方は遥がどこか行ってしまったと、泣きじゃくっていた。
級友達の無事も確認した。遥自身本音を言えば家族と一緒にいたいが、それでは何となく。

何となく、いけない気がする。上手く言えないが、遥は何か大事な事をしなければならない気がして困る。
なので、両親と彼方には、学校での救護ボランティアに参加するという微妙に説得力に掛ける理由で離れる事にした。
心苦しいものの、その大事な事をする為に家族から離れて、スネイルの元へと戻って来たのだ。

「これで信用して貰えたかしら。……やっぱりまだ無理か」

険しい顔付きで俯いている遥に、スネイルは苦笑気味にそう言う。別に遥は何か不満げな訳では無く、少し考え事をしているのだが。
しばらく頭の中で考え事を整理し、結論を出す。ゆっくりと顔を上げて、遥はスネイルに質問する。

「……周りくどく聞いても仕方ないから直球で聞きます。教えて下さい、スネイルさん」

スネイルは何も言わずに、遥の質問を微笑を浮かべて、聞き入れる。

「私に何を伝えたいんですか? 私に……何を、させたいんですか?」


遥から目を逸らさず、スネイルはじっと遥を見据える。見据えて、真剣な口調で、話す。


「まず、私が貴方にこうして接触してきた理由を話すべきね」


189創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:09:07.75 ID:AqZrOcdK
   
190創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:09:40.46 ID:AqZrOcdK
    
191創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:10:18.41 ID:bjQOWiAK


192TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 01:10:20.81 ID:tyzCXP+z
「神守遥さん。私達には貴方の力が必要なの。次元を収束させる為の、特異点として」

「特異……点?」

何だかよく分からないが、自分の存在が今起こっている事態を収拾させる為に必要である事だけは分かる。

「その前に、平行世界の貴方自身である一条遥……要はもう一人の貴方と再会して、全てを思い出して貰う必要があるんだけど……」



「こんな時に行方知れずなんてどうしちゃったのかしら、一条さん……」



                                  ――-×××―――


三本目の煙草を咥えて火を点ける。煙草を口から離すと、煙が空中に漂ってはうっすらと消えていく。
そんな煙を眺めながら、ヘンヨは行方が知れない仕事仲間の事を柄にもなくぼんやりと思っている。

スネイルに件の出来事で仕事が遂行できない事を話すと、どうやら新型生物兵器が次元の壁を飛び越えてこの街に。
よりにもよって、揺籃市へと移転してしまったとスネイルは伝えてきた。その為、ヘンヨはどう考えても複雑になっている仕事に嫌気が差しつつ、揺籃市へと諸々あって参った。
当然の事ながら、姿を消した新型生物兵器を追ってワルサシンジゲートとイルミナスもやってきている為、そいつらよりも早く見つけなければならない。
難易度も面倒臭さも格段にアップしているが、目の前で新型生物兵器の暴走を、消失した研究所の事を思い返すと、ヘンヨは仕事を放棄する気にならない。

あんなのが彼奴等の手に渡れば、間違いなくトンデモない事になる。
目的の為ならどんな悪事にも手を出しかねない連中だ。別に正義感だとかで動く訳じゃない。
ただ、あんな連中に世界の動向を左右されるのが気にいらないだけだ。と、ヘンヨは心の片隅で思う。

さて、ヘンヨが頭を抱えている訳はこれだけじゃない。

こんな時に多少は頼りになるリヒトが行方不明なのだ。リヒト・エンフィールド。
妙な事に自分と同じ赤い色の髪の毛が印象的な男で、良く言えば非常にポジティブ、悪く言えばどんな時だろうと馬鹿に能天気な男だ。
だが決して無能な男ではなく、頭脳の面でも戦闘面でも秀でている男だとヘンヨは評価している。精神面も驚くほどタフだ。

そんなリヒトが行方を眩ましている。
リヒトは普段から元々色んな世界をふらふらと漂っているが、重要な局面では常に姿を現しキッチリと仕事を収めようと努める、案外真面目な男だ。
だというのに影も形も見えないのはどういう事かと。それだけなく、リヒトが弟子として育てている一条遥なる少女の行方も不明だ。
師弟揃って一体何処で油を売っているのか……ヘンヨは四本目の煙草に火を点ける。

いない者を頼っても仕方が無い。一先ず成すべき事をする他ない。
もう一度スネイルに連絡を取り、情報収集を行いつつ新型生物兵器の動向を探ろう。そう考えて、ヘンヨは携帯灰皿に煙草をすり潰し、歩き出す。

歩き出した途端、軽くではあるが前を歩いてきた人物とぶつかる。
「おっと、悪いな」

ヘンヨは軽く謝りつつ、ぶつかってしまった人物へと目を向ける。
どこかの工場で働いているのだろうか。よほど仕事熱心に働いているのか、所々黒ずんでいるツナギを着たその少年は、ヘンヨの事を興味深げに見上げている。
寝癖なのか元からなのか、軽く跳ねている黒髪に、見ようによっては少女に間違えるかもしれない、幼く無垢な顔付き。
何歳かは分からないが、実年齢に対して年下に見られそうだ。って何無駄な人間観察をしているんだ俺は。早く仕事に戻らねば。

そう思いつつも、自然にヘンヨの目は少年、の傍らに立っている少女へと移る。
透き通るように白く、安直な表現だが、人形かと思えるほどにきめ細やかな肌。それに、単純に例えるなら銀だが、見る角度によって印象が移り変る、光沢が眩い長髪。
何より、ヘンヨを覗きこんでいる深い深い蒼色の瞳に、ヘンヨは直感で気付く。この少女は「普通」ではないと。                                 
長年の経験から、ヘンヨにはあくまで直感ではあるが向き合った人間が本当に「人間」か「人間ではないか」の判断が付く。

……この少女は「人間じゃない」。だからって、別にどうしたって訳じゃない。
人間じゃないけど人間に見える存在には腐るほど会ってきた。今更そんなのに出会ったからって、驚く理由は何も無い。
何だか事が立て込んでいるせいか妙な事が気になってしまって困る。さっさとこの場を後にしよう。
193創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:10:35.49 ID:Wg+XaoMC
  
194TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 01:11:32.78 ID:tyzCXP+z

「失礼」

そう言い残し、ヘンヨはツナギの少年と不思議な少女を後にしようとした。

<チョットソコノ赤毛ノオッサン!>

「おっさん?」

妙な声に呼び掛けられて、ヘンヨは思わず振り向く。

「場、馬鹿野郎! 隠れてろって言ったろ!」
<ココハ何処カ知リタイッテイッタノハディーダロ! 聞カヌト一生帰レンゾ!>

ツナギ少年が何かを必死で抑え込もうとしている。その何かは出ていこうと抵抗している。
……面倒事はごめん何だがな。だがヘンヨは思う。今までの経験談から、見て見ぬふりして立ち去る方がもっと面倒になると。
つかつかと早足でつなぎ少年と不思議少女、それに喋る……喋る……。

「それ、何だ? 新しいおもちゃか?」

ヘンヨに話しかけられ、ツナギ少年はとても分かりやすい青ざめた表情を浮かべた。
そんな少年の肩に器用なバランスで乗っかる、奇妙な形の、しかしどことなくユーモラスな形の小さなロボットはヘンヨに、言った。

<ナァアンタ、ココッテ一体何処ナノカ教エテクレナイカ? 何モカモガ知ラナイ世界デ右モ左モワカンネエンダ>



                                  ――-×××―――


「つまり……私は別の世界にいる私……一条って人と再会しなきゃいけないんですね」

スネイルの話についていけている訳ではない。寧ろ、誰か隣で全て事細かく説明してくれないと困る。
しかし遥には今、何をするべきかくらいは分かっているつもりだ。襲来してきた得体の知れないロボット達。
次元を、時空を自在に操れるという生物兵器。そして、世界に何処かにいる、もう一人の自分。

あまりにも滅茶苦茶な展開に頭はパンク寸前だが、不思議なほど、遥の心は冷静で落ち着いている。

「こんな事に巻き込んじゃって、本当にごめんなさい。謝ってもどうしようもないけど……」

スネイルの謝罪に、遥は軽く頭を横に振り、答える。

「スネイルさんが謝る事なんて。皆を傷つけてるのはあの黒いロボット達ですし。それに……」
195創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:11:37.65 ID:Wg+XaoMC
  
196創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:11:59.34 ID:ZOOzi/Qp
197創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:12:30.11 ID:Wg+XaoMC
  
198創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:13:03.17 ID:svmACLEM

199TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 01:13:52.15 ID:tyzCXP+z
遥は少し俯いて、考えこむ。数十秒して考えが纏まったのか、顔を上げる。
上げて、しっかりとした声で、言い放つ。

「それに、これが私にしか出来ない事なら、やらない訳にはいかないですしね」



                                  
                                  ――-廻るセカイ―――



「俺達は何と戦ってるんだって、たまに思わないか? シュタムファータァ」

「私に戦う勇気をくれたのは誰でも無い貴方ですよ、ヤスッちさん」

「敵の敵は味方ってな。さぁ―――――――殺りあおうぜ」

                               

                                ――-カインドオブマシーン―――

「受けた仕事は最後までやり遂げるのが俺の流儀だ」

「初めてアンタがカッコよく見えたよ。惚れないけどね」

「その程度のプライドで悪人名乗ってるんじゃねえよ!」


                                  ――-タウエルン―――

「このセカイでも畑を耕したくなってきた。魅力的だよ、ここは」
200創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:14:07.49 ID:Wg+XaoMC
 
201TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 01:15:26.90 ID:tyzCXP+z
「人間で言う恋心ってのが僕にも分かる気がするよ、ショウイチ」


                                ――-ヴィルティック・シャッフル―――


「俺は死んでるのか生きてるのか、分からなくなるんだよ。たまに」

「それほどセカイを燃やしつくしたいのなら、まず私を焼き殺しなさい。ほら、早く」

「私の存在が枷になるのなら外して下さい、隆昭さん。……隆昭さん自身の手で」


                                ――-最強無敵ロボ・ネクソンクロガネ―――

「ここで決着を付けるぞ、カッコマンエビル。いや……シロガネ四天王!」

「どちらにしろ目的は成就される。既に針は心臓へと突き刺さっているんだよ。田所……カッコマン!」

「ビジネスですよ。金儲けです。その為になら、セカイを天秤に掛けても構いません。そうやって生きてきましたから」


                               ――-eXar-Xen――セカイの果てより来るモノ―――――

「早く元の世界に戻らないと、ベルに絞られちまう。面倒事終わらせてさっさと帰るぞ」

「どのセカイだろうと私のやるべき事は変わらない。……倒すべき敵も、変わらない」

「難シイ事は分カラネエケド男ナラ胸ヲ張ッタ方ガカッコイイゾ」


                                  ――-×××―――


朦朧とする意識の中で、遥は立ち上がろうとする。しかし意識と裏腹に、身体は正直だ。
足が動かない。動かそうとするが、痛みを通り越して感覚が麻痺してるせいか、筋肉が言う事を聞かない。
スネイルが名前を、遥の名前を張り裂けそうな声で叫んでいるのが遠く聞こえてくる。

「くっ……そう……!」


立ち上がろう、立ち上がらなきゃ。そう何度も脳に、身体に命令するが、その命令が届かない。
気色の悪い、艶やかな銀色の機体色を魅せつける様に、それは遥の元へと一歩ずつ歩いてくる。
こいつさえ、こいつが全ての……と思うと、遥は絶対にここで負けてはいけないと自らを叱咤させる。
だが、現実は非情だ。度胸は人一倍あっても、遥の肉体自身は普通の女子高生より少し秀でている程度だ。とても目の前のそれに敵う様な力は無い。

悔しい。どうしてこうも、自分は無力なのか。救うべきモノも、助けるべき人も助けられないで。

両目の視界に映り込む、それの足元。遥は――――――――。


瞬間、勢い良く、凄まじい威力で何かが遥を襲わんとしたそれを吹き飛ばした。
地面ごと削り飛ばしながら、それは数十メートルも抵抗も出来ずに吹き飛ばされて、うつ伏せに転倒した。
重低音を響かせて、遥を護る様にそれを吹っ飛ばした漆黒の機体は悠然と、仁王立ちする。

ぼんやりとする視界が、次第に元に戻っていく。その中で、誰かの姿が映り込む。


肩に掛かる三つ編みを揺らしながら、その誰か―――――――自分とそっくりな少女は、遥に、言った。
202創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:15:39.72 ID:Wg+XaoMC
 
203創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:16:07.85 ID:bjQOWiAK


204創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:16:11.00 ID:Wg+XaoMC
 
205TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 01:16:51.09 ID:tyzCXP+z
「久しぶり、神守さん。ごめんね、もっと早く助けに来たかったんだけど、遅くなっちゃって」





                                  ――-パラべラム―――


「今度は――――――――私達の番だよ」


                                     HARU×haru



                                        THE
                                      STRANGE  
                                       DREAM
                                   
                                      the Avenger






「つまり……君達はあれに触れて、この世界に来てしまったと?」

スネイルの質問に、ディーは素直にこくんと頷いて返答する。

「あぁ。最初はベル……というか友達が触ろうとしたんだけど、何か危なっかしいからって事で」
「君が取り合えず触れてみたら、この世界に飛ばされた、と」
「まぁそんな感じ。それで俺を止めようとしたアリスとミッチーもついでに付いてきちゃったって訳」

なるほど……と、スネイルは軽く納得した様な素振りを見せる。

「にしても恐ろしいわね、あれは……ただ手に触れただけでも、その触れた物体を転移させちゃうんだから」
「防ぐ方法は無いんですか?」

遥からそう聞かれると、若干スネイルは返答に困っているのか、苦笑いしつつ答える。

「あまりにも原始的だけど一番の方法は触れない事しか無いわね。
 にしても一刻も早く捕まえないと本気でまずいわね。もし触れる必要すら無く転移能力を発動できるようになったら……」

206創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:17:32.84 ID:Wg+XaoMC
 
207TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 01:17:57.52 ID:tyzCXP+z
「主任! 主任大変です!」

血相を変えて、スネイルの部下に当たる研究員が医務室のドアを開いた。
尋常ではない慌てっぷりにスネイルは呆れつつも、研究員に何が起きたかを尋ねる。

「一体どうしたの? 防衛システムは今の所破られてないし、各機体にも異常は見られないけど」
「そ、それが……所属不明の機体が……」
「……外の様子を知りたいんだけど、カメラはある?」

スネイルに言われるが素早く、研究員は外壁に備われている監視カメラの様子が見れるタブレットを手渡した。
スネイルだけでなく、遥とディー、アリスについでにミッチーもタブレットを覗きこむ。

荒れ狂う海原を豪快に掻き分けるように、その所属不明の機体はこちら側へと歩いてくる。
カメラ越し故に映りは鮮明ではないが、機体より発されている異様な黒きオーラは、思わず身が強張りそうになる。
実際、アリスは何かを感じ取ったのか、若干険しい顔付きになると、右手で小さく震えている左腕を抑えた。

「な……何か凄い……ですね。上手く言えないん……ですけど」

遥が途切れ途切れにそう言うと、スネイルは自嘲気味に呟く。


「敵か味方か分からないけど、どっちにしろ一筋縄じゃいかなそうね」


「……この子が味方だったら、凄く嬉しいんだけど」




 
―――――――黒き怨嗟を身に纏った鉄巨人の中で、青年は閉じている目を開く。開き、言い放つ。



「おい、ここはどこだ。藍」





「君もあの子に触って、この世界に飛ばされたのかい? マコト君」

「まぁ……そんな感じかな。……もしかして」


「うん……僕達も恥ずかしながら」
「ユキトが興味深々に触ろうとしたからこんな目に遭ったんだよ」
「元はと言えばマナが可愛いから持ちかえろうって言ったからじゃないか!」
「あの時のユキト……凄く……犯罪臭がしてた」
「だから違うって……」


「……まだ俺には、やるべき事が残っていた様だ」
208創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:18:52.10 ID:Wg+XaoMC
 
209TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 01:19:41.13 ID:tyzCXP+z
やあ (´・ω・`)

ようこそ、ブルーフォレストハウスへ。

このプロテインはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。


うん、「一発ネタ」なんだ。済まない。本編は無いんだ。

仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。


でも、このSSを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない

「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。

殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい

そう思って、このSSを作ったんだ。


じゃあ、筋トレをしようか。
210創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:19:42.75 ID:Wg+XaoMC
  
211創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:20:25.64 ID:Wg+XaoMC
 
212創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:20:57.44 ID:AqZrOcdK
投下乙!それではゆっくり読ませていただきますね!

そして、続編まだー?
213創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:21:56.32 ID:svmACLEM
投下乙、ゆっくり読ませていただきますねー


続編まだー?
214創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:22:08.54 ID:AZNEE5g4
桃花乙
215TロG ◆n41r8f8dTs :2012/10/08(月) 01:27:43.30 ID:tyzCXP+z
投下終わりました。ここまで支援が頂けるとは思わず、少々驚いております。有難うございます
ある種一発ネタだからこそ書けたというか、色んな意味で無茶しました、すみません
劇中での作品の作者さん、並びにサプライズと言うか急遽参加させたグラインドハウスとザイフリードの作者さんに
無断借用を深くお詫びすると共に、素晴らしい作品を読ませてくれる事に多大なる尊敬と感謝を送ります


皆、一発ネタでも良いからクロスしようぜ!(本音
216創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 01:35:28.38 ID:tyzCXP+z
続編は無い、続編は多分無いんだよ>>213ちゃん……
217創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 11:10:50.50 ID:+hARB/jK
すばらしい朝鮮人たちが集うスレッド

【考察厨】高岡フジ韓流ゴリ凸観察スレ17【お断り】
http://awabi.2ch.net/test/read.cgi/mog2/1349194806/
218創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 16:12:49.90 ID:Np2rrdg6
>>215
 投下乙です!
 それでは、ゆっくり読ませていただきますね!
219|・) ◆5b.OeHcAI2 :2012/10/09(火) 00:19:51.38 ID:aJVtAAy0
>>215
投下乙!
なんか色々あって久々に来てみたらウチの子がクロスオーバーしていた。な、何を言っているのk(ry
改めて続き書かねばと心に誓うイグザであった
220創る名無しに見る名無し:2012/10/09(火) 01:51:39.24 ID:21H6cYxP
>>215
投下乙でした、交わる筈の無い他作品同士の競演というのはやっぱりワクワクしていいですね
でも……
      .∧__,∧
      ( ^ω^ )
  きょうクロス来たんですか!
   うちの子出てるんですか!

    n. ∧__,∧n
    ゝ( ^ω^ )ノ
   やった──!


        .∧_,,_∧
        ( ゙'ω゙` )
  またもハブられてるじゃ無いですか!

      n.∧_,,_∧n
      ヽ( ;ω; )ソ
       〉    |
      √r─‐ァ.)
      ー''   一
     やだ───!

ちょっと悲しかったから存在感を3割増しにする為1週間以内に投下するんやなw
221創る名無しに見る名無し:2012/10/09(火) 02:28:18.40 ID:jDw337oH
>>220
 笑っていいのか同情していいのか複雑な気分じゃよ!!!!
222創る名無しに見る名無し:2012/10/09(火) 15:03:17.97 ID:9pTv9dAR
>>220
YOU、自分でクロスしちゃいなYO!
223創る名無しに見る名無し:2012/10/09(火) 18:15:10.03 ID:jDw337oH
 単発モノならそう難しくはないYO!
224創る名無しに見る名無し:2012/10/09(火) 22:03:24.96 ID:fQVzI6sA
じゃあまず師匠がやってみてYO!
225創る名無しに見る名無し:2012/10/09(火) 22:20:26.13 ID:jDw337oH
 いいえ、私は遠慮しておきます(震え声
226創る名無しに見る名無し:2012/10/09(火) 22:33:07.35 ID:7eUb/PXJ
ほら、人に言う前に自分から動いてこそ人が動くっていうじゃない……(チラチラ
227創る名無しに見る名無し:2012/10/09(火) 22:34:18.79 ID:jDw337oH
 言い出しっぺは私じゃないよ!?
228創る名無しに見る名無し:2012/10/09(火) 22:47:25.33 ID:5EA/4dEL
クロスはちびっとやりたいと思ってる
でも、どう扱っていいのかさっぱりわからなかったり
設定が矛盾したりするのが怖いのぉ
229創る名無しに見る名無し:2012/10/09(火) 23:26:45.31 ID:jDw337oH
 どう扱っていいのかさっぱりだったら、いっそ扱わないという選択肢もあるでよ。
 設定矛盾やらキャラの言動の違和感やらは、ある程度は仕方ないとして、大きいのはちゃんと原作読んで回避するしかないですな。
 設定に関しては、いっそ作者さんに直接聞いてしまうのもアリかしら。
230創る名無しに見る名無し:2012/10/09(火) 23:54:09.24 ID:fQVzI6sA
うちの中隊シリーズの野郎共は何やってもいいよー。
煮るなり焼くなり三角木馬に乗せてアヘ顔ダブルピースさせるなりお好きにどうぞ。
231創る名無しに見る名無し:2012/10/10(水) 01:46:04.20 ID:HHkg7k1m
キャラを描くので失敗しそうなら
敵と戦わせるのでもいい
232創る名無しに見る名無し:2012/10/10(水) 16:50:07.56 ID:if0BGPAL
基本的に設定なんてない物と考えてもらって結構ですよ、タンクソルジャーは。

ネタさえ入ってればそれでおkです。
233創る名無しに見る名無し:2012/10/10(水) 21:56:05.08 ID:Xwlb1skG
 いっそ大暴走してみるという手も(ry
234創る名無しに見る名無し:2012/10/11(木) 04:27:40.94 ID:j6zzTBeY
実は偽物だらけだったという禁断のry
235創る名無しに見る名無し:2012/10/11(木) 09:49:58.94 ID:w2tFTkxx
 それはそれで面白いかもしれないですねw
236創る名無しに見る名無し:2012/10/11(木) 18:23:28.62 ID:sgvbzeah
もしも○○の作品のキャラで○○の作品を再現したらというキャスト入れ替え…とかどうだろう
237創る名無しに見る名無し:2012/10/11(木) 18:26:55.12 ID:s90auv7R
わっふる計画か。
238創る名無しに見る名無し:2012/10/11(木) 19:22:49.38 ID:F0yuI+QH
うpろだにロボスレ大戦(妄想)設定投下。自由に改変可。むしろ推奨
239創る名無しに見る名無し:2012/10/11(木) 19:50:37.63 ID:58X4uuqR
青森さんの証と師匠の証の利用価値についてwww
240創る名無しに見る名無し:2012/10/11(木) 20:46:47.15 ID:F0yuI+QH
ロマンだよっ!(迫真)
241創る名無しに見る名無し:2012/10/11(木) 21:00:05.92 ID:xTlcwduQ
ロボスレ大戦では一話に持って来たいのはパラベだけど
プロローグっていう点だとどうもしっくりこない

どれが一番プロローグにぴったりなんだろ?
242創る名無しに見る名無し:2012/10/11(木) 21:02:11.97 ID:58X4uuqR
グラゼロっぽいゲームやってる所とか
243創る名無しに見る名無し:2012/10/11(木) 21:07:56.90 ID:F0yuI+QH
見直してみたらデータが間違っていたので修正
89式機士(暮内麗美機)[特殊能力]無し→[特殊能力]剣○銃○盾×[強化パーツスロット]4
244創る名無しに見る名無し:2012/10/11(木) 21:10:45.02 ID:prSgqXKD
ロボスレ投下作品漁れば、時空振動弾の一つや二つあるのでは?
245創る名無しに見る名無し:2012/10/11(木) 22:33:52.45 ID:P0kjUKE4
アニメで見たいロボスレ作品って何かある?
246創る名無しに見る名無し:2012/10/11(木) 22:45:49.81 ID:27ohTQBf
>>245
GEARS、グラゼロ、ネクソン、ヴィルシャ、ロスガ、リベジオン、その他全部
247創る名無しに見る名無し:2012/10/11(木) 22:52:25.95 ID:0rbfVQJW
一作品だけじゃなくてスパロボ見たく一気にロボスレ作品のロボ・キャラをアニメで見たい
各作品の主人公機と主人公がアニメで一堂に揃ったら失神して失禁する自信がある
248創る名無しに見る名無し:2012/10/11(木) 23:11:56.13 ID:sgvbzeah
TVで見たいというかそれっぽい作品と
OVAで見たいというかそれっぽい作品の二つがあると思う

前者はパラベラムとかネクソンとかリベジオン
後者はDSシリーズとかセイレネス
249創る名無しに見る名無し:2012/10/12(金) 15:50:49.54 ID:vOpgoNXp
グラゼロはゲーム化以外考えられない
250創る名無しに見る名無し:2012/10/12(金) 21:01:48.14 ID:vW43IXgC
グラゼロだったらメカもセルアニメで見たいよな。
251創る名無しに見る名無し:2012/10/12(金) 22:47:25.23 ID:oVbeZPoy
 個人的AACVはCGで見たいですかねー。
252創る名無しに見る名無し:2012/10/13(土) 10:45:18.66 ID:2H3jb4Y8
もっとも、それ以前に絵になっているロボは少ないからな……
どこかにロボを描いてくれる絵師様はいないものか……
253創る名無しに見る名無し:2012/10/13(土) 12:21:37.20 ID:79pTMofd
自給自足
254創る名無しに見る名無し:2012/10/13(土) 12:45:11.35 ID:QilDk6Dl
レゴでオリジナルロボット作ってるサイトやブログを巡回してると
絵心がない代わりに自分もレゴで自分の作品のロボを作ってみたくなるよなあ…

資金が無いけど
255創る名無しに見る名無し:2012/10/13(土) 13:12:58.74 ID:pWmO8PA6
全体の比率に比べたら圧倒的に少ないけど、種類で言えばそう少ないってほどでも……ない、気がする……?
ヴィルシャ、リベジ、ドラグリ、PBM、廻セカ、グラシリーズ、タケミカヅチ、DSとか
挙げてみると多く感じる。うろ覚えとパッと思い付いたのでこんくらいだから、実際もうちょっとあると思う
256創る名無しに見る名無し:2012/10/13(土) 15:07:53.04 ID:teVCa6Fr
大人になってわかるレゴの高さ
257創る名無しに見る名無し:2012/10/13(土) 15:51:22.10 ID:79pTMofd
続き物だとダイガスト、GEARSシリーズ、マーナガルム、タウエルン、スプリガン、ネクソンクロガネ、ブリキの騎士、見届け人、Gドラスター、Xガードナー、ジグパルスもかな

255もあわせて自給自足がほとんどだね
258創る名無しに見る名無し:2012/10/13(土) 17:26:24.19 ID:b64doAx3
前スレの240だけど設定さらしてくれたら何機か描くよ
259創る名無しに見る名無し:2012/10/13(土) 17:35:55.21 ID:8BKt1raZ
 なん……だと……!?
260創る名無しに見る名無し:2012/10/13(土) 17:43:03.60 ID:DERXyPfr
マジなら外見の特徴とか晒すよ!よ!
261創る名無しに見る名無し:2012/10/13(土) 17:50:21.73 ID:pWmO8PA6
晒しちゃいなよYOU!!
262創る名無しに見る名無し:2012/10/13(土) 19:43:59.53 ID:b64doAx3
さあこい
263 ◆kNPkZ2h.ro :2012/10/13(土) 20:08:36.31 ID:QilDk6Dl
>>258
ワイルドアイズより
敵役「ジャックハンマー」 (クルマ種名:マンハンター ベース車両 BMP-3)

デザイン上の特徴
これ→ttp://www.1999.co.jp/itbig12/10122319a.jpg を人型ロボットにトランスフォームさせる
主砲と機関砲は右手に配置

実車のデータ(ウィキペディアより)
全長 7.14 m
全幅 3.23 m
全高 2.30 m
重量 18.7 t
装甲 7〜40 mm
主武装 100mm低圧砲2A70
30mm機関砲2A42
9M117「バスティオン」(AT-10「スタッバー」)砲発射式対戦車ミサイル
副武装 7.62mm機関銃PKT

デザイン上の注意
実在の車両がモデルとなっているので実車の意匠を盛り込む事が肝要であると思われる
無理だったら劇中の描写にある「増加装甲を重ね貼り」した状態ということで、シルエットを盛ることで誤魔化しても良い
無茶ぶりでごめん
264創る名無しに見る名無し:2012/10/13(土) 20:16:40.05 ID:DERXyPfr
>>262
それじゃあ僕からも便乗して……
今までタウエルンとかこの前のクロスで散々虐められてたけどデザインが無いのが可哀相なので

黒騎士
上記の呼び方はあくまで外見のみで付けられた名称なため、正式な名称は不明
タウエルンと同じく自動人形だが、人工的に作られた物か、掘り起こされた物かは不明
武器は特になく、素ででの破壊行動が主となる

外見は劇中でも言われてますが、西洋の良くある鎧のイメージで
頭部まで含めて歩く中身無しの鎧、みたいな感じにして頂ければ
明確なイメージだとこんな感じで→ttp://blog-imgs-43.fc2.com.proxy2.yaraon.net/y/a/r/yaraon/20111229234741444.jpg
これがもう少しロボット然として、尚且つ量産機っぽく、というか弱そうに見えれば

かなりの無茶ぶりすみません、こりゃちょっとって感じならスルーでおKです
265避難所より代行:2012/10/13(土) 23:36:55.46 ID:cRVtqoA9
>>258
アドヴァンスドネクス

白を基本としたカラーリング
背部には翼の様なブースターを二基
ツインアイで、武装はシンプルにライフルと実体剣

細めのシルエットで、ウイングガンダムゼロカスタムみたいな感じにして頂けたらと思います。
他の方のを書くので大変!って時には真っ先に自分のを外してもらっておkです。
266創る名無しに見る名無し:2012/10/14(日) 16:14:06.27 ID:ixmuBRLE
>>258
受け付け締め切りの期日を決めたら如何か?
267創る名無しに見る名無し:2012/10/14(日) 18:31:54.39 ID:Xx8K4hdM
じゃあこの3機で
268創る名無しに見る名無し:2012/10/14(日) 19:04:39.91 ID:KqX6vWG7
 黒騎士がついに描かれるのかー。
269創る名無しに見る名無し:2012/10/14(日) 22:37:11.24 ID:PsoWie6P
関係ないけどIF展開をやるならどれがいいんだろ?
もしも〜だったらっていうの
270創る名無しに見る名無し:2012/10/14(日) 22:45:48.29 ID:RWxq5KeC
もしも遥さんが三つ編みじゃなかったら?
271創る名無しに見る名無し:2012/10/14(日) 22:49:49.24 ID:/jFi4ye8
だれか分からない!
272創る名無しに見る名無し:2012/10/14(日) 23:05:26.89 ID:ucraLrNb
もしも私が筆まめであったならば作品がエターナる事もなかったであろう
273創る名無しに見る名無し:2012/10/14(日) 23:56:00.46 ID:KqX6vWG7
>>270-271
 割と真面目に誰かわからないから困る!
274創る名無しに見る名無し:2012/10/15(月) 00:04:49.22 ID:J8ER+Gkn
もうすぐ投下できるかもと予告しておこう
275創る名無しに見る名無し:2012/10/15(月) 00:10:16.79 ID:at675qdR
 なんやて!?
276創る名無しに見る名無し:2012/10/15(月) 01:07:33.11 ID:jQ+MB2OH
つまりどういうことだってばよ!?
277蜥蜴 ◆Uu8AeR.Xso :2012/10/15(月) 01:49:05.29 ID:J8ER+Gkn
爆撃開始、Kabooooooomと行きますよ。
278蜥蜴 ◆Uu8AeR.Xso :2012/10/15(月) 01:51:19.99 ID:J8ER+Gkn
“赤錆”の死と共に、陽光と熱波を退けていた冷気の結界が次第に薄れ、地表に立ち込めた霧が晴れると
寒々しい気配を醸し出していた大地が本来の夏らしい気候に包まれて溶解し、束の間の泥濘が赤土の大地を満たした。
冷却され清浄な余韻に満たされた大気が明け方の様な静寂な雰囲気を醸し出す。

しかしその静寂を荒々しく引き裂き、一陣の狂える暴風が穏やかな余韻を忽ちの内に消し去り駆け抜けていった。
絶え間なく瞳から零れ落ちる涙を拭う事無く、心の奥底から絶えず湧き上がる人類に対する憎悪を剥き出しに
振り翳した爪で複雑に張り巡らされた防衛網を容易く塵に還しながら旧都に向かって走り続ける“雪兎だったケダモノ”
彼がぬかるんだ大地に足を踏み込む都度に巨大なクレーターが形成され、一声咆哮を上げる都度に天に漂う雲に穴が開く。
最早その所業に人の面影は無く、新たな人類種の天敵として完全な覚醒を目前としていた。

「待ちな!」
だが突然“雪兎だったもの”の聴覚に認識された鋭い声がケダモノと化した雪兎の意識に一瞬理性の光を取り戻させた。
刹那、大地を深く抉る斬撃が雪兎の進行方向を阻みその歩みを止めさせる。
{ッ!?}
絶えず心から湧き上がる激情の遣り所を失い、ケダモノは憎しみを込めてその声の主の姿を見上げる

その視線の先には老婆が居た
同じ顔の無数の生首によって築き上げられた頭蓋の山の頂上で太陽を背中に雪兎を見下ろし
紫紺に染まった機械鎧を身に付け、仄かに緑色に輝く刀身から赤い雫を零す高振動ブレードを握り
長く伸びた白髪をそよ風に揺らす御社最強の人間、通称“首領”
彼女は正気を失い狂った様に唸り続ける雪兎へと視線をやると
鈍く輝く切っ先をその角が生えた頭へと突き付け、なるだけ感情を表だにせぬ様に呟いた。
「まったく本当に馬鹿な奴だよお前は……
 今更人を滅ぼした所で、あの娘の餞になるとでも本気で思っているのか?」
{……ッ}
呆れた様に首を振って嫌味を言う様に語る首領から目を逸らし
刀身に映る己の像を睨みながら雪兎は頑なに沈黙を守り続ける。

その理性的な行動を目にし、心の奥底まで獣血に犯されていない事を悟って内心安堵しつつも
決して感情を表だにせずまま首領は言葉を続けた。
「……受け入れろ、たとえそれが幾ら理不尽な事であろうとも
 人はそれを黙して呑まねばならん時もあるのだ」
{ッ!!!}
抑揚の無い口調によって紡がれる諌めの言の葉
しかしその言葉は、赤錆の元となった少女に対する悼みの心より獣化していた雪兎にとって
地雷を全力で踏み抜くも同然の言葉だった。
{あれを受け入れろだと? あの犬畜生共の自慰行為をありのまま受け入れろって言うのか!?
 ふざけるな……!! 馬鹿にするなぁあああああああ!!!}
一瞬静まった雪兎の心を再び灼熱の怒りが満たし
旧都へと向かれていた殺意が首領へと完全に矛先を替えると
胸の奥底から放たれた擬似ブレスが首領の身体を瞬く間に包みこんだ。
279蜥蜴 ◆Uu8AeR.Xso :2012/10/15(月) 01:52:54.95 ID:J8ER+Gkn
深海の圧よりも重く凝縮された大気の圧が大地に円柱状の地割れを刻み
雪兎の前方にある物質全てを塵芥レベルまで分解し消滅させる。
だが雪兎は剥き出しにした殺意を収める事無く、舞い散った砂塵の中を睨み唸り続けていた。
「良く分かってるじゃないか、そうだその程度じゃアタシは殺せない」
濛々と立ち昇る砂塵の向こうから何事も無かったかの様に響く女の声。
しかしそれは先程までのしわがれた老人のものでは無く、若く溌剌とした聞いた事の無い女の声だった。
そして、吹き返してきた暴風が砂塵を巻き込みながら通過しその身体を陽光の元へと徐々に晒け出していく。

そこには先程までの老婆の姿は無く、代わりに黒い髪を靡かせ剥き出しになった豊満な胸を恥ず事無く晒し揺らす一人の女が居た。
だが姿形は変わろうとも、その肢体から醸し出される得体の知れない殺気と紫紺の瞳に宿る哀れみの光が、彼女が間違い無く首領である事を現す。
たわわに実った二房の果実を除けば無駄無く引き締まった肢体を魚麟の様な紋様の刺青が薄く彩り、宵闇の様に蒼黒く染まった髪を荒れ狂う風に乗せて棚引かせる烈女。
彼女はブレスの直撃を受けて砕け散りガラクタと化した機械鎧の残骸を打ち捨てると、頬を伝う自らの鮮血を拭いながら憎憎しげに口を開く。
「お前の気持ちも分からんでも無いさ……、だが今さら仇討ちなんぞしても無駄だ
 もう終わった、お前が殺して終わったんだ」
{殺したんじゃない! 僕は彼女を解放してやっただけだぁあああああ!!!}
冷徹に言い放つ女の言葉に翻弄され、さらなる激情に身体を蝕まれる雪兎。
その瞬間、雪兎の身体を侵蝕する獣の血がさらなる進化を肉体に促し
巨大な爪状のクレバスが大地に深い傷を刻んだ。
「事実を言ってやっただけでこのザマかい……全く心底甘い奴だよお前は
 だが……、だからこそあの娘はお前を主として認めたのかもしれんがな」
次々と地面を抉り、迫り来る見えない握撃を必要最小限の動作で容易く避けつつ
首領は悲しげに呟くと共に最早問答は無意味であると悟ると、表情を一変させ吼えた。
{自分だけが悲しく苦しいなんて……思い上がってるんじゃないよっ!!!」
思い切り吐き出した裂帛の気合と共に繰り出された斬撃の雨がケダモノの繰り出す握撃と正面衝突し
弾けた球形の衝撃波が巨大なスプーンで刳り貫かれた様なクレーターを生み、傷だらけの大地をさらに抉る。
そしてその衝撃は放った当事者達へ猛然と殺到していった。
{グッ……!}
予想だにしない衝撃の奔流の中へと投げ出され、全身の鱗をズタズタに引き裂かれた挙句大地に思い切り叩き付けられるケダモノ。
軋む身体を再び起こそうと何時の間にか乾いていた大地に足を踏み締めた瞬間、頭の上から首領の声が降ってくる。
「何をどう足掻いても無駄よ、お前にアタシは越えられない」
{ッ……!!}
首領に取ってはただの何と言うことはない制止の言葉だったが、怒りに満ちたケダモノに取っては十二分に挑発に当たるものであり
湧き上がる怒りが肉体を凌駕しその双眸を再び首領に向けて立ち上がると、己が全霊の力を四肢に込めケダモノは咆哮を上げた。

「全く……男って奴は本当に度し難いモンだよ」
その様を見て苦々しく呟くも久々に味わう死合いの緊張感に首領は思わず笑みを零すと
握っていた高振動ブレードを肩に担ぎ、地を思い切り踏み締めた。
刹那、太陽の下に晒された彼女の柔肌を“紫紺”に染まった魚麟の鎧が彼女の身体に刻まれた刺青に合わせて盛り上がり硬質化する。
{いいさかかって来な、お前の全てをアタシにぶつけて来い
 お前の気が済むまで……何時までも付き合ってやる」
{死ねぇええええええええ!!!}

首領がそう優しげに語り切るのを待つ事無く、ケダモノが殺意を剥き出しに躍り掛かると共に
相対する剣鬼も高振動ブレードの出力を限界まで高め、狂気を込めた笑みを浮かべながら宙を跳ねた。


鋼殻牙竜ドラグリヲ 第二十九話 “邪教”の導きの元に

280蜥蜴 ◆Uu8AeR.Xso :2012/10/15(月) 01:55:21.18 ID:J8ER+Gkn
……
…………
………………
それから何時間を経たのか、一筋の光さえも差し込まない果て無き闇の中で
全身隈なく刀傷を負わされながらも雪兎はただ泣き、怒り、呪い続けていた。
息を小さく吸う都度に喀血し、身体を最低限支えられる程度の力を入れるだけで全身の神経を引き千切られる様な激痛がその心身を苛む。
しかしそれでも雪兎はその怒りを静める事は出来なかった。
自分が今味わっている痛みと苦しみなど、ケダモノに変わってしまった少女が味わった悲しみと絶望に比べれば
一笑に付す程度のものであると思っていたからである。
{許さない……許してたまるか……
 精一杯頑張って生きて来た人間が殺されて
 自分のエゴを満たす為だけに生きている屑共がのうのうと生きているなんて
 そんな理不尽な事があって良い筈が無い! 良い筈が無いんだ……!!」
筋を断たれた足を懸命に引き摺り、血と涙で固まった土を血に塗れた両手で握り締めながら
僅かに残された動く筋肉だけを無理やり使って地を這い続ける雪兎。
だが、魑魅魍魎の如き獣が蔓延るこの世において抵抗する術を持たない生き物など生ゴミ同然の存在であり
ツガイや都市警備部隊の目を掻い潜って生きてきた小型害獣にとっては格好の獲物にしか過ぎなかった。

深い闇の向こうからヒシヒシと伝わってくる害獣の吐息、熱量、そして殺気が
地に伏していた雪兎へ喰われる事に対する生理的恐怖感を植え付けながら、徐々にその包囲網を狭めながら近づいて来る。
{畜生……」
全身を縛る激痛を必死に噛み締めて耐え、迎え撃とうと上体を起こそうと試みるがそれも叶わず
大量の“ネズミ”と“ダニ”そして名も知れないような大量の小型害獣共の蠢く様を視界に刻み込むと
雪兎は全身を弛緩させ、自決用の神経毒を携行していなかった事を後悔しながら瞳を閉じた。
力の抜けた手足が感覚を失い、張り詰めていた糸が切れた様に意識が闇の中へと急速に蕩けていく。

しかし、何も存在し得ない筈の暗黒の視界の遥か彼方からまろび出てきた低く冷たい男の声が
完全に意識がブラックアウトする事を許さなかった。
{これで終わりか? お前の足掻きは……お前の意地とやらはその程度だったのか?}
無限に広がる黒い地平を切り裂き、顕現した巨大な爬虫類の顎が身動ぎ一つしない雪兎の眼前まで肉薄する
{………」
だがそれでも雪兎は動かなかった。
悪あがきさえ出来ない絶望的な状況下で、自身の妄想の産物相手に口論する等余りにマヌケだと思っていたと共に
今は口を開くどころか瞬きをする事さえ億劫であった故である。

{フンッ……お前の勝手な諦めなんぞに巻き込まれて死ぬなど御免だ
 要らぬのならばその脆弱な肉体、駄賃代わりにされても文句はあるまい!}
返事一つ返さず沈黙を守り続ける雪兎に失望する大顎の獣。
彼は最早言う事も無いと荒く鼻息を吐き出し、唸り声を上げると
雪兎の精神存在を抹殺して肉体を奪わんと汚らしく唾を撒き散らしながら襲い掛かった。
工業用カッターよりも鋭く強靭な牙が雪兎の頭蓋を骨片残さず磨り潰そうと殺到する。
281蜥蜴 ◆Uu8AeR.Xso :2012/10/15(月) 01:57:31.19 ID:J8ER+Gkn

…………だが、その牙が雪兎の肉を引き裂く事は無かった。
{くたばっても馬鹿は治らないというのは本当らしいな……
くっさいくっさいゾンビ野郎め、いい加減とっとと往生しろ!!}
{……!?}
突如闇に響く羽音と罵声
それを耳にした瞬間、大顎の獣は雪兎の皮膚に浅く食い込んだ牙を引き抜くと顔面を蒼白にして天を仰ぐ
刹那、大顎の獣の巨体と脳味噌が弾け飛び自慢の牙を並べた首が音も無く宙を舞った。
{グワァアアアアアアアアアア!!? おのれ"濡羽"!、トチ狂ったか貴様ァ!!!}
首だけとなった大顎の獣は穴という穴から鮮血を垂れ流し情けない悲鳴を上げながら
再び闇の中へと転げ帰っていく。

{悪いな“朧銀”壊すしか能の無いお前さんを、今さら表に出す訳にはいかねぇんでな}
その無様な様を楽しむように眺め、闇の向こうから聞こえる罵声へ悪びれなく淡々と言い返す闖入者。
彼は大顎の獣が完全に闇の果てへと消えたことを注意深く確認すると、漸く雪兎の方へと向き直る。
だがそれは雪兎に僅かな疑問符と恐怖心を抱かせた。
突如雪兎の目の前に現れた者、それは人間などでは無く一匹の巨大な害獣だった。
一見カラスの様な印象を覚えるが、ただのカラスにしては異常に大型化した体躯と
三つ目三つ足の異常な見てくれが雪兎の本能に警鐘を鳴らす。

{信用出来ねぇってかい?まぁ仕方ねぇか
 自分の妄想の中にいきなり意味不明なのが飛び込んでくれば
 誰だってそうなる俺だって多分そうなる、見た目がグロい化け物とくれば尚更だ}
意識せずに顔を引き攣らせる雪兎を額の目で見つめながら“濡羽”と呼ばれたカラスは
胸から突き出た太く長い足で、立派な三つの飾り羽が付いた頭を掻きながらのたまうと
目尻を意地悪げに吊り上げながら暗黒の空へと再び舞い上がった。
{だったら証明してやるさ、俺があのアホ共とは根本的に違うって事をな!}
闇の向こうからクリアに響く馴れ馴れしく騒々しい声に内心困惑する雪兎
だが何かの炸裂音が断続的に次々と鳴り響き、害獣共の断末魔が周囲を満たした瞬間
発作的に閉じていた目を開き、瞠目した。
{何だよ……これは……」
自身の倒れこんでいた地面を濡らす緑の血漿と撒き散らかされた脳漿が雪兎の傷付いた身体を穢し
脳味噌だけが吹き飛んでいる事を除けば傷一つ付いていない害獣共の死体が早贄宜しく鉄骨に突き刺さっている。
そしてその雨ざらしにされた鉄骨で造られた塔の天辺に、妄想の産物に過ぎなかった筈のカラスが鎮座していた。
{どう……して……?」
傷付いた身体に鞭を打ち、無理やり壁に寄りかかって上体を起こすと
雪兎は掠れた弱弱しい声で必死に問いかける。

それにカラスは黙って翼を振って応えると、雪兎の眼前へと音も無く舞い降り
額に燦然と輝く大きな瞳で雪兎の顔を見つめつつ言った。
{大人の事情って奴だよ坊ちゃん、少なくとも今はお前さんの敵じゃあ無いさ}
光も届かぬ空間の中で一際妖しく瞬く、極彩の光を帯びた黒曜の瞳。
その大きな玉石を黙って見つめるうちに、雪兎は何故かそれから一切目を離せない様になっている事に気が付いた。
そして抗えないまどろみが雪兎の意識をゆっくりと支配していく
{あんた……何を……」
{眠れ、こういう辛い記憶は眠って忘れるに限る……いや、こうしてやるしか出来ないのさ
 どんな悲劇も喜劇も、何れは時の彼方へと消え去るように
 お前さんの憤りが脳味噌の片隅に仕舞い込まれるまで、黙って眠り続けろ}
朦朧とする意識の中、必死に言葉を紡ごうとする雪兎を遮るようにカラスが語ると
雪兎の視界、意識、そして感情が渦を巻くように乱れ始めた。
それに伴い雪兎の心を支配していた憐憫、怒り、そして憎悪が波打ち際に描かれた落書きの如く洗われ掻き消えていく。
282蜥蜴 ◆Uu8AeR.Xso :2012/10/15(月) 01:59:31.39 ID:J8ER+Gkn
{これは……」
{ここはお前さんの自覚出来る眠りの世界、所謂レム睡眠中の精神世界だ。
 お前さんは自覚していないだろうが、何十倍にも引き伸ばされた時の中をお前さんは今生きている}
{!?」
絶えず渦巻く意識の奔流の中で困惑する雪兎へと投げ掛けられるカラスの言葉
それを耳にした雪兎は、必死に眼を動かしてその声の主の姿を追う。
しかしいくら周りを見渡しても声の姿は伺えず、時間切れとばかりにカラスは再び言葉を紡いだ。
{俺の仕事はここまで、後は何をしようとどう考えようとお前さんの心次第だ
 ……今から三つ数えた後お前さんの意識は三日後の朝に飛び、心地良い目覚めの時を迎える}
{は? ちょ……ちょっと待ってくれ!まだ聞きたい事が山ほどあるんだ!!」
荒れ狂う渦の中から響くいきなりの宣告に驚愕し、それを制止しようと雪兎は必死に声の聞こえる方へと手を伸ばす。

だがカラスはそれを一瞥すらする事無くただ一言
{またな、坊や}
……と別れの言葉を継げると、1枚の羽根を雪兎の眼前に残し虚空の彼方へと飛び去っていった。
その瞬間、眼前に渦巻いていた記憶の奔流が徐々に形を取り戻し、心と意識が現実へと回帰を開始する。
{うぅ……」
全てが混濁する混沌の精神世界から徐々に秩序だった現実世界へと無理やり引き戻された事により
急激に高い負荷を掛けられた脳味噌が焼け付く様な痛みを発し雪兎を苛み抜く。
{ん……?」
だが神経と肉体とのリンクが復旧するに従い、伸ばしたままにしていた右手に妙に生々しいぬめり気を感じ始め
何ぞやと、雪兎は痛みで重く感じる首に渋々力を入れて前を見た。
ぼやける視界の中で蠢く毛玉の様な何か、それが何なのかを探るべくぬめり気を感じている腕をさらに奥へと捻り入れる。
そして押し込んだ手が薄くぬらぬらと動く何かを探り当て、思い切りそれを掴みひっぱりだそうとした瞬間
押し込んでいた手首の根元を戦車に轢かれた様な激痛が襲った。
{だぁあああああああ!?」
溜まらず腕を引っ込め、何かにプレスされた手を労わりながら雪兎は眼前の毛玉に必死にピントを合わせると
ぼやけていた視界が漸く像を結び、毛玉の本当の姿をゆっくりと映し出す。

そこには犬の姿をした兵器が居た。
隆々とした体躯を誇り、体表の半分を機械に覆われたゴールデンレトリバーが金属製の牙と爪を剥き出しに
ボケたように間抜け面を晒し続ける雪兎を睨み付け唸りを上げ続けている。
{……げっ」
その段になって、雪兎は自分が何に腕を突っ込んでいたのかを悟り
逃げるようにゆっくりと後退りをしながら誤魔化しの苦笑いを浮かべる。
しかしそんな物が犬っころなんぞに通じる筈も無く、犬は突如攻撃を受けたことに対する怒りに身を震わせると
合金製の義足を全力でぶん回し、雪兎の顔面を凹ませにかかった。
{ぶっ、うぎゃあああばばばばばばば!!!」
プロボクサーの右ストレート並みのパワーで容赦無く叩き込まれる猫パンチ成らぬ犬パンチの雨霰が
強かに雪兎の顔面へとめり込んで間抜けな悲鳴を上げさせ
フィニッシュとばかりに放たれた犬アッパーが馬鹿の顎を捕らえると、そのボロボロの身体をベッドへと再び深く沈めた。
{もうやめて……、謝るから……謝るからもう勘弁してくれぇ……」
顔面に大量の青あざを作り、もごもごと口を動かしながら犬に許しを請う雪兎。

その情けない様を眺めながら、犬はフンッと一度荒く鼻息を鳴らすと
大きな身体を揺らしながらしずしずと戸を押し、音も無く狭苦しい部屋から出て行った。
錆びた蝶番の鳴らす軋む音が、再び静寂の訪れた室内に木霊する。
{サイバネドッグ……、なんであんな生物兵器がこんなボロ屋にいるんだよ
 というかここはどこなんだよ、奴等と戦う度に変なワープばっかしやがって……」
打たれた頬を枕元に置かれていた水差しの金属部分で冷やしながら苦々しく顔を歪め
枕に後頭部を沈めると雪兎は汚れた天井を眺めながらボヤく。
283蜥蜴 ◆Uu8AeR.Xso :2012/10/15(月) 02:03:27.40 ID:J8ER+Gkn
『ここは旧都、あの夜の戦闘後に要人保護の為と急遽造営された避難キャンプの一つです』
{!」
その瞬間自分以外誰もいない筈の室内に小さな女の子の声が響き、雪兎を瞠目させた。
{誰だ、何処に居る?」
『あぁすいません、見つかると色々と面倒なので貴方の体内に匿って貰っていました』
周囲を見渡しながら訝しげに問い掛ける雪兎に返答しつつ、その声の主は鱗塗れの腕の細胞を掻き分けて現われ
わずかに埃の溜まった床にゲル状の躯を落とし、肉体の形成を開始する。
{……!」
だが徐々に躯が完成していく内、何時ものカルマとは全く違う姿へと変貌している事に雪兎は気が付いた。
パッチリとした人懐こい眼差しは切れ長で何処か暗い印象を与える三百眼に
二つに結ばれた長く美麗な金髪は目の近くまで伸びたパッツンとした黒髪に
お気に入りだった筈のゴスロリ衣装は一転して落ち着いた和装へとそれぞれ大きな変化を遂げており
何時もの姿のカルマが出てくると思っていた雪兎は面食らったように間抜けヅラを晒した。
{カルマ……お前なのか?」
思わず雪兎は問い掛ける。

すると彼女は可笑しそうに口元を緩ませると、無愛想な顔を不器用に動かして無理やり笑顔を作り皮肉を言うように返した。
『分かりませんか? 私は何度も貴方に出会っていますし
 貴方も私に幾度と無く罵声を浴びせているではありませんか』
{………」
その言葉に暫し思案した後、雪兎は思い当たる存在が一つだけある事に気が付く。
{そうか……お前はドラグリヲの戦闘システムだな?」
『ご明察の通りです』
上手く当てられたのが嬉しかったのか彼女ははにかみながら小さく頷くと
仔細を尋ねようとする雪兎の言葉を遮って語り始めた。
『恐らくドラグリヲと貴方の神経連結が強制解除された際に本来ならば回収される筈のグロウチウムと戦略思考プログラム
 つまり私が誤って貴方の体内に残留し続け、そのまま自由意志を持ってしまったのが原因かと思われます』
{だったら本体に信号を送って回収して貰えばいいじゃないか、何故そうしない?」
カルマの欠片とも言える彼女ならば何時でもコンタクトを取ることが可能である筈だと雪兎は短絡的に考え
目の前で身動ぎどころか瞬き一つしない少女と視線を合わせる。
その瞬間、彼女は浮かべていたはにかんだ笑みを消して凄まじく機嫌の悪そうな表情をすると投げやりに返した。
『私も本来ならば即急にそうするべきであると考えていました。
 しかし現在本体は調整槽内に監禁された上、外部との接触を上層部より固く禁じられており
 あの日ドラグリヲに保護されていた貴方の大事な方も戦闘の顛末を目撃しているとの疑いを掛けられ軟禁状態になっています』
{………え?」
一瞬、彼女が何を言ったのか雪兎は理解出来なかった。
否、理解したく無かった。
{そんな馬鹿な! 一体どうして!?」
『どうして? ではありませんよ。何間抜けな事を抜かしているんですか
 全て貴方の身から出た錆でしょう? 貴方が一番良く覚えている筈でしょう?』
{くっ……それでもあの人は一切関係無い筈だ!
 あの日の戦闘データを検証すれば、あの時ずっと昏睡してたって分かる筈なのに!」
脳裏にぼんやりと残る暴走時の記憶を思い返し、僅かに怯みながらも
雪兎は納得出来ないとばかりに牙を噛み締める。
284蜥蜴 ◆Uu8AeR.Xso :2012/10/15(月) 02:05:46.40 ID:J8ER+Gkn
そんな雪兎の苦渋の表情を眺めつつ、鱗塗れの拳を指でなぞりながら彼女は言葉を続けた。
『えぇ、勿論あちら側の方々もそれは十分承知してるでしょう
 兵器を管理している側が間抜けでは戦争は出来ませんし……』
{じゃあ何故!?」
言葉を遮って思わず苛立ちを交えながら雪兎は問う。
すると彼女は嘲る様に冷たい笑みを浮かべながら雪兎と視線を合わせ、臆する事無く言ってのけた。
『まだ分かりませんか? あの方々は貴方が怖いのですよ
 そこらの害獣以上の戦闘能力を維持したまま人間的な理性を保ち続け
 人や害獣をも超越した存在へと成り代わろうとしている貴方の事が』
{僕はそんな大層な事考えちゃいない……!」
『貴方がどう考えていようと関係ありません
 他の方から見れば貴方は檻から逃げ出した猛獣同然なのです
 だからこそ上層部は貴方を縛る頑丈な首輪を持っておきたいのですよ
 自分達の膨れきったはらわたを守る為の保険として……ね』
{クッ……」
怒りと後悔が入り混じった様な複雑な表情をしながら、雪兎は何も言い返せずに黙り込む
やり方こそ気に喰わないが、自分が同じ立場に立たされたならば同じ事をやってだろうと思っていた故である。
そして暫くの沈黙の後、雪兎は何時の間にか膝の上に乗って自分のツラをジロジロと眺めていた少女に問うた
{……それでお前はどうするつもりだ? お偉方の方針に基づいて僕を監視するつもりか?」
『まさか、首領なら兎も角あの豚肉共の為に態々いい様に使われてやる程私は安い女じゃありません
 それに少なくとも本体は貴方が命の危機に晒される様な自体に陥る事は決して望まないでしょうから』
腰近くまで伸びた黒髪を優雅に靡かせ、うっすらと文字が奔る瞳に雪兎の顔を映しながら
少女は一切興味が無いとばかりに首を振って応える。
その答えを聞いて雪兎は一先ずホッと息を付くと、のそのそとベッドから起き出し
脇に吊るされていた作業着へと勝手に袖を通した。
{そうか……だったら早く帰って首領と爺さんに頭を下げないとな
 全部僕の過失なんだ、酷い目に遭うのは僕だけで十分なんだ」
強張った全身の筋肉を伸ばし、体の調子を確認しながらも
哀華の顔を思い起こし、申し訳なさげに項垂れながら肩を落とす雪兎。

その様子を見ながら少女はその傍らに立ち、励ますように雪兎の足をそっと叩いた
『大丈夫ですよ、貴方の存在は国防において非常に重要な要にもなっているのです
 そう簡単に貴方を処分出来る筈が無いし、貴方を激怒させるような事をする度胸なんてある筈が無い』
{励ましてくれるのは嬉しいが少々買い被り過ぎだ、僕一人が出来る事なんてたかが知れてるっての」
『事実を言ったまでです、大体貴方こそ自分やそれに付属する力の大きさを理解出来ていないじゃないですか?
 いいですか、ツガイ相手にサシで殺り合える兵器及び生物なんて貴方位しか居ないんですよ
 それに貴方の存在によって齎される国政や経済への好影響だって云々かんぬん』
{あーもう良いって分かったから、皆まで言わんでも分かったら!」
黙っていたら何時まで経っても終わらないと思ったのか、尚も口を開こうとする少女を押し止め
雪兎はついさっきから気になっていた疑問を少女にぶつけた。
{そんな事どうだっていいんだよ、そんな事よりも僕が聞きたい事は二つあるんだ」
『二つ……?』
{そう二つだ。まずは一つ目、君の名は何だ?」
285代理蜥蜴 ◇Uu8AeR.Xso:2012/10/15(月) 02:46:06.99 ID:uP/9iCRD
『私の名……ですか?』
そう呟いた瞬間、今まで無愛想な表情を浮かべていた少女は一転して顔を紅潮させると何も言わずにそのまま俯いてしまった。
{いやいや名乗りたくなければそのままでも良いんだって!
 ただ君とかお前とかで通し続けるのもちょっと悪いなーって思っただけだから!!」
余計な事を言ったと思い、身振り手振りを交えて宥めようと必死に言い訳を繰り返す馬鹿。
その様を見せ付けられた少女は一瞬唖然とするも、直ぐにはにかんだ様な笑みを浮かべて雪兎の腕に縋りついた。
『違うんです、ただちょっと嬉しかっただけなんです。本体の一部としてでは無く私自身を見てくれた事が』
先程まで能面が張り付いた様な表情をしていたのが嘘のように、優しい微笑を浮かべて雪兎の顔を見上げる少女
彼女は縋り付いていた腕から降りて雪兎の正面へと立つと、両手を膝の前において行儀良くお辞儀をしながら言った。
『私の名はシノノメ、漢字で東雲と書いてシノノメと申します』
カルマとは全く違う凛とした雰囲気を漂わせつつも、根底にある物はそのオリジナルと然程変わらないのか
彼女は下げていた頭を上げると雪兎の傍へ静々と近付いて行き、ぎゅっと服の裾を握る。
そんな素直になれないちびっ子の頭を、雪兎はカルマにしてやる様に撫でてやると
少女の名を呼びながら二つ目の疑問をぶつける。

{よしシノノメ、僕をここに運び込んだのは誰だか分かるかい?
 もしまだこのキャンプに残っているのなら礼を言ってから出て行きたいんだけど……」
『ええ存じています、貴方を見付けてここに運んだのはこのキャンプで臨時のカウンセラーを請け負ってらっしゃる神父様です
 私が自我を発現した際、傷付いた貴方を信徒の方々に運ばせているのをちょうど見ていましたから間違い無いでしょう』
{……神父様だと? まさかバチカンの宣教船団の坊さん達が遠路遥々こんな東の端まで来てくれたのか?」
思いもよらない人物の登場に思わず怪訝な顔をしながら、雪兎はシノノメへと問い返す。
今まで雪兎が見せていた反応とは違う、明らかに不機嫌な態度。
その反応の変化にシノノメは内心戸惑いながらも、臆す事無く正直に返した。
『いいえ違います、私が言っている神父様とはこの避難キャンプの造営の為に資金と土地を提供して下さった神竜教の司祭様の事です』
{神竜教……だと?」
一瞬の沈黙の後、ドスの聞いた低い声で搾り出す様に雪兎は呟く
その瞬間、雪兎は烈火の如く表情を激変させるとシノノメの小さな躯を乱暴に抱きかかえ
僅かにくすんだ強化ガラスに覆われた窓へと向かった。
{とっと帰るぞ、こんな所に居ても時間の無駄だ!」
『え!?でも……』
{カルト教団のアホ共が何の狙いも無しに人を助ける訳が無いだろうが!
 そりゃ助けて貰った事は確かにありがたく思ってる、でもそれとこれとは話が別だ!!」
オロオロとするシノノメの言葉に雪兎は強引に割り込み、言い捨て
汚らわしいとばかりに身体を覆う包帯を取り去ると、殺気を全身に漲らせながら窓を破り
3階立ての建物程度の高さから身を躍らせた。
286代理蜥蜴 ◇Uu8AeR.Xso:2012/10/15(月) 02:46:56.32 ID:uP/9iCRD
{全く……あの筋肉馬鹿と冷血女が神の使いだって?
 ふざけんじゃねぇよ、面白く無いジョークも大概にしとけってんだよ!」
『あの、まだそんなに乱暴に身体を使っては……』
{やかましい、もう平気だっての!!」
御社の区画を隔てる障壁の頂上から頭から落下しても掠り傷一つで済んだ自身の肉体の頑丈さならば
この程度の高さ屁でもないとばかりに思い切り芝生の上へと拳を突き立てて着地し、心配そうな顔をするシノノメに見せ付ける様に胸を張る。
だがその根拠の無い自信は程なく全身を襲った筋肉の連鎖断裂によって物の見事に打ち砕かれた。
{ウギャアアアアアア!!!」
酷い目にあった芸人顔負けの間抜けな悲鳴と共にその身を緑の絨毯の中へ深々と身を沈める馬鹿
そんな馬鹿の顔をシノノメは呆れ果てた様な表情をして見下ろす。
『だから止めた方が良いと言ったのに……全身の筋と腱を断たれて三日しか経ってないんですよ
 そんな簡単に重傷が治る訳がないじゃないですか、ゲームじゃあるまいし』
{うるせー!黙ってさっさと家に連れてけコノヤロー!!」
地面に転がりながらも尚、口汚く悪態を付き続ける雪兎に辟易するようにシノノメは肩を竦ませる
だがその時、誰かが草を踏み締める音がシノノメの鋭敏化した聴覚センサーに認識されると
彼女は慌てて雪兎の体内へと避難して行った。

{…………チッ」
折角の話相手を失い、雪兎は苛立ち紛れに舌打ちをしながら目線を上げると
黙って近づいて来る人間にガンを付けようと首を擡げる。
だがその人影の姿を見た瞬間、雪兎は浴びせ掛けようとした嫌味を思わず胸の奥底へと飲み込んだ。

気合で上げた目線の先には、ちょうど雪兎と同年代の女性が先程遭遇したサイバネドッグを引き連れ立っていた
カルト教を信仰しているとはとても思えない、溌剌でボーイッシュな井出達をした曇り一つ無い笑みが眩しいごく普通の女性
何一つおかしな所が無いように思える利発そうな乙女
ただ一つ、異形の黒い片羽が背中から直に生えている事を覗いては
{な……貴方は一体?」
思わず瞠目し、動かないはずの身体を気合で動かそうとしながら問う雪兎。

そんな無茶な行動を、乙女は雪兎の眼前に手を翳して制止すると
雪兎の頭に生えた角を労わる様に撫でながら微笑み、言った。


{初めまして竜の子様、私と同じく忌まわしき血にその身を蝕まれし者よ」
287創る名無しに見る名無し:2012/10/15(月) 02:48:27.42 ID:uP/9iCRD
避難所にあったものを代理投下させて頂きましたー


最後に投下乙です!
288創る名無しに見る名無し:2012/10/15(月) 02:49:37.27 ID:+tLC/yNQ
両社ともおつー
289創る名無しに見る名無し:2012/10/15(月) 14:19:18.48 ID:0NOqEdqW
思春期すなぁ
290創る名無しに見る名無し:2012/10/15(月) 19:30:30.13 ID:lflCIiQj
 投下乙です!
 それでは、ゆっくり読ませていただきますね!
291創る名無しに見る名無し:2012/10/15(月) 20:16:56.49 ID:mUOk1Fu3
投下乙です。
しかし何だろ、このラストシーンの
そこはかとない淫靡さは。
292創る名無しに見る名無し:2012/10/16(火) 02:06:17.18 ID:vyNIIySN
「それでは、どうぞごゆっくり」
朝鮮人には理解できないフレーズの一つだ
293創る名無しに見る名無し:2012/10/16(火) 15:55:27.34 ID:6gLyeoTO
294創る名無しに見る名無し:2012/10/16(火) 17:43:50.90 ID:R5L+BZtk
 気にしなくていいんじゃないかしらー。
295創る名無しに見る名無し:2012/10/17(水) 22:21:17.51 ID:9PctaXmL
 割と最近はコンスタントに投下きていい感じですねー。
296創る名無しに見る名無し:2012/10/17(水) 23:25:30.33 ID:VcOs9C+N
 そうですねー。(偽師匠、再び)
297創る名無しに見る名無し:2012/10/18(木) 10:16:16.31 ID:9q+CIx21
 だれだきさまー!?
298創る名無しに見る名無し:2012/10/18(木) 15:43:05.90 ID:fRP2ioQ5
 私だ。(新たなる偽師匠
299創る名無しに見る名無し:2012/10/18(木) 17:11:59.23 ID:FAJbEG90
お前だったのか(偽師匠その三
300創る名無しに見る名無し:2012/10/18(木) 17:28:27.20 ID:20jhWjL2
時代が望む時、偽師匠は再び蘇る(偽師匠四号、シッショーマン)
301創る名無しに見る名無し:2012/10/18(木) 18:59:59.79 ID:9q+CIx21
私(真):
 わからん……もうなにもかもが……。
302創る名無しに見る名無し:2012/10/18(木) 20:15:09.33 ID:hbz+IJkD
そして増え続ける偽師匠
303創る名無しに見る名無し:2012/10/18(木) 21:24:59.00 ID:mAennE05
一家に一師匠
304創る名無しに見る名無し:2012/10/19(金) 00:14:15.20 ID:77HGbBQI
師匠一号 師匠二号 師匠V3 師匠マン 師匠X アマゾン師匠
師匠ストロンガー スカイ師匠 師匠スーパー1 師匠ZX 師匠ブラック
305創る名無しに見る名無し:2012/10/19(金) 16:43:53.28 ID:L2cpbGOP
 既に偽物やなくてバリエーションになってるやないかーい!
306創る名無しに見る名無し:2012/10/19(金) 17:42:05.99 ID:Mg9rpwdO
師匠・真はもうどっちなんだかわからないな
307創る名無しに見る名無し:2012/10/19(金) 18:08:46.12 ID:59+pYTLo
真師匠VS師匠カイザー
308創る名無しに見る名無し:2012/10/19(金) 18:24:51.55 ID:3ljGTcov
309創る名無しに見る名無し:2012/10/19(金) 23:14:20.49 ID:XfNlZQu1
で、本物はいずこに?
310創る名無しに見る名無し:2012/10/19(金) 23:42:22.53 ID:Cf1IboTC
師匠は君の心の中に生き続けている。
君と共に、師匠はいる。

君と共にライダーはいる
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm13008334

もしくは、三つ編みの為に未来永劫の戦いを続ける師匠

本郷猛(仮面ライダー1971-1973)
ttp://wiki.aniota.info/1329906799/
311PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM :2012/10/20(土) 01:04:11.70 ID:BzWDi9S5
 >>305が私だということは気づかれなかったようだな……。
312創る名無しに見る名無し:2012/10/20(土) 01:41:38.09 ID:bGSDJo2Q
何だって!?
よく分からないから入院してくる、リアルで
313創る名無しに見る名無し:2012/10/20(土) 03:56:48.38 ID:3bkGf5Oo
ちょっ!?お大事に。
314創る名無しに見る名無し:2012/10/20(土) 12:41:35.23 ID:BzWDi9S5
>>312
 なんですって!?
 大丈夫ですか? とにもかくにもお大事に。
315創る名無しに見る名無し:2012/10/21(日) 18:10:14.65 ID:pdwNTugs
 最近は寒くなってきたから、体調に注意しないといけませんね(トイレに引きこもりながら)
316創る名無しに見る名無し:2012/10/21(日) 18:27:21.90 ID:8NIYsFi6
ファンタジーロボットもの考えてる
魔法が発達した世界
幻獣とか亜人とかはいない
あくまでも現実の中世みたいな人間文明に魔法がある感じ
そこで考えてるのが魔法で動くロボットの扱い方

ガンダムやマブラヴやギアスみたいに兵器という個として存在する扱いか

レイアース(みたことないけど)とかFF13の召喚獣みたいに展開収容できる扱いにするか迷ってる
イメージ的にペルソナやスタンド的に展開したら搭乗してる感じ

ロボットものでなくロボット要素があるファンタジーもので書きたい
ただしあくまでも魔法で展開収容ができるだけで
元は機械だから破損したら展開して修理しないとずっと治らない
イメージ的にはポケモン
魔法のアクセサリーで展開収容する感じ
317創る名無しに見る名無し:2012/10/21(日) 20:51:47.45 ID:RnSjZZCW
某所でファンタジーロボ書いてるけど、魔法に依ると思う。

念力みたいにうんたらキネシスが主体の魔法だったら燃料として動かせる方が設定として自然だけど、
もっと魔法が強くなって生活と一体みたいになってるならアクセサリーの方が書きやすそう。
俺は両方を一つの世界観で同居させてるけどww地域差が出てるぜ的なwww書けてないけどなorz
318創る名無しに見る名無し:2012/10/21(日) 21:02:11.28 ID:BOvOndv5
>>316
です

イメージとしては魔法使える人間と使えない人間がいて
魔法使えない人間は雑魚扱いで展開もできない
魔法使える人間は希少なので優遇されたり血筋が代々受け告げられて富裕層の騎士も多い
前述した展開収納も容易にでき(自分の魔力をアクセサリーに付加できるから容易)

ロボットにはパイロットの魔力を変換する機能もついてて
魔術士のパイロットならビームとか光りの盾とか魔力付加攻撃とかいろいろできて無双状態。
イメージ的にロボット型ビーダマンに乗ったBB弾飛ばす小さいボンバーマンのおもちゃの設定。
魔術使えない人と魔術士によるロボットの使い勝手の違いは、
イメージ的にネット繋いでるPCと繋いでないPCの便利さできることできないことの格差みたいな

設定ばっか考えて結局書かないんだけどな!!!!
319創る名無しに見る名無し:2012/10/21(日) 21:26:59.76 ID:pzfEuXqe
いや書こうよw
320創る名無しに見る名無し:2012/10/22(月) 04:37:58.04 ID:DnTDOz+E
遠慮しないで書いてみろよ。
きっとイイ♂気持ちだぜ?
321創る名無しに見る名無し:2012/10/22(月) 04:58:01.86 ID:Hwkk04gb
お断りします(AA略
322創る名無しに見る名無し:2012/10/22(月) 10:09:38.88 ID:OjZxAqGj
 一歩踏み出してみれば、意外とスラスラ進む……かもしれない。
323創る名無しに見る名無し:2012/10/22(月) 12:54:34.22 ID:EWcd+COt
ブレイクブレイドを思い出した
324創る名無しに見る名無し:2012/10/22(月) 13:51:25.61 ID:H5hypvTn
>>316-318とは別人だが魔法ロボ書こうと思うんだが、
ちょいとロボスレの皆に質問したいことが

光属性とか闇属性ってどんな魔法にすれば良いんだろ?
火とか氷とかなら簡単だけど↑の二つはなんかイメージわかないんだ
325創る名無しに見る名無し:2012/10/22(月) 14:26:50.66 ID:dte0aQCs
光はレーザーとかでいいじゃない
326創る名無しに見る名無し:2012/10/22(月) 16:10:04.22 ID:EZ6rIy1V
闇とか何か吸収すれば良いじゃない
327創る名無しに見る名無し:2012/10/22(月) 16:57:16.80 ID:Hwkk04gb
暗黒物質使おうぜ
328創る名無しに見る名無し:2012/10/22(月) 17:42:34.06 ID:gkTtbZVK
>>324 
(光属性)
視覚を操る。敵に幻覚をみせる、分身とか。
相手がメカなら光通信回線に侵入して誤作動させる、などの能力。

(闇属性)
影を自在に操る。自分の影で相手を攻撃できる。
また相手の影を拘束することでその動きを封じる、などの能力。
329創る名無しに見る名無し:2012/10/22(月) 17:43:35.23 ID:OjZxAqGj
 重力とかあるじゃない。
330創る名無しに見る名無し:2012/10/22(月) 18:32:03.65 ID:Nt3Hv15U
光属性:質量のない残像
331創る名無しに見る名無し:2012/10/22(月) 19:53:29.86 ID:dte0aQCs
このドッゴーラ改は全身がビームそのものなのだ
332創る名無しに見る名無し:2012/10/22(月) 22:36:48.76 ID:9+x8Fjtb
光と闇は表裏一体という事で、主人公の光属性ロボとライバルの闇属性ロボが合体してラスボスを撃破
333創る名無しに見る名無し:2012/10/22(月) 23:11:23.11 ID:6ukKIcaP
どこぞの光の騎士ですか?
334創る名無しに見る名無し:2012/10/22(月) 23:12:01.38 ID:cjlUEqRf
光と闇は表裏一体という事で、主人公の光属性ロボとライバルの闇属性ロボが対消滅して世界が終わる
…あれ?
335創る名無しに見る名無し:2012/10/23(火) 00:10:27.33 ID:iVbbhgp4
>>332
 ファイナルフォーミュラーですねわかります!
336創る名無しに見る名無し:2012/10/23(火) 02:55:53.76 ID:Iwo98lhg
白・・・人が持つ癒しの精神の具現化
触れただけで癒す的な

黒・・・人が持つ破壊衝動、力の渇望など欲求を原動力とする強い精神


四大元素は空気中や自然にあるマナみたいな外的要因から魔力源をブースとさせる
白黒は人の精神力と魔力を合わせて精製する
337創る名無しに見る名無し:2012/10/23(火) 08:43:21.85 ID:iVbbhgp4
□光属性
 目眩まし。

■闇属性
 目眩まし。
338創る名無しに見る名無し:2012/10/23(火) 09:38:44.75 ID:LtnAkVs0
闇の最強ロボだが操縦者の主人公の心が光というティガっぽい設定
339324:2012/10/23(火) 23:58:40.13 ID:qUP5jUZS
ここから連レス失礼します

>>325-326>>336
光と闇はそれで行けそうです
四大元素とか白黒とかも使えそう

>>327
魔法関係ねー!?

>>328-329
幻とか影とか重力とかは別の属性で使うのでそっちで使わせてもらいます

>>330
それただの幻影ではw

>>331
Vガン漫画版は単行本未収録の格ゲー回が好きです

>>332-335
レジェンドBBでファイナルフォーミュラー出てくんないかなぁ全身メッキで

>>337
結果同じやんw

>>338
(ZENKIの方を思い出したのは俺の胸の内にしまっておこう……)

つー訳でご協力ありがとう御座いました
本編は……、いつか書けると良いなぁ(遠い目)
340創る名無しに見る名無し:2012/10/24(水) 07:32:58.08 ID:v2UdZa9/
>>339
 でもその前にスペドラ様をですね……既にSDXありますけども。
 作品はゆっくり待ってますね!
341創る名無しに見る名無し:2012/10/24(水) 21:14:22.32 ID:2RDEO496
最近魔法モノが流行ってるのかな?
342創る名無しに見る名無し:2012/10/24(水) 23:04:15.03 ID:wiH8Fd00
魔法モノとか好きだったんだよ!(迫真)
343創る名無しに見る名無し:2012/10/24(水) 23:14:07.41 ID:7VZYQ7r+
リューナイトとか魔装機神が好きだったな
二次では女の子が主人公にして……
344創る名無しに見る名無し:2012/10/24(水) 23:14:27.52 ID:DWqf0iVp
最近ホモネタが流行ってるのかな?
345創る名無しに見る名無し:2012/10/24(水) 23:27:18.66 ID:XZavrLCl
何の脈絡も無く湧いてくんな盆暗
346創る名無しに見る名無し:2012/10/25(木) 06:12:31.40 ID:qXYxKv5N
ホモォ
347創る名無しに見る名無し:2012/10/25(木) 09:27:52.98 ID:rhjV70Ef
 魔法×ロボはロマンとロマンの合わせ技ですからねー。
348創る名無しに見る名無し:2012/10/25(木) 10:25:42.54 ID:q7Xd6ARh
魔法といえば僕の心にグランゾート
レンタルで見返したら超面白かった
アクアビートのバンクのかっこよさときたら
349創る名無しに見る名無し:2012/10/25(木) 11:05:52.93 ID:VKCPixen
>>316
>>324
魔法や精霊の力で動くロボットというのは俺も昔考えた
でもって動力源に使っている精霊の属性で性能とか得意不得意が変わってくるの
熱でタービンを回す火精霊エンジンとか風力でタービンを回す風精霊エンジンという設定だったんだが
似たような発想(風精霊:空冷 水精霊:水冷 火精霊:ジェットだったかな)+WW2戦闘機モチーフというロボの漫画が既にあったと知って没った

んで、光属性だが
光精霊エンジンだったら太陽光発電でモーター動かすけど出力低いとかの設定になりそうだな…
350創る名無しに見る名無し:2012/10/25(木) 18:34:40.82 ID:M80ZKs3u
「ウ・ディ・タ」とは? 
・完全無料のゲーム作成ツールです。
・wikiや講座や情報やブログも充実してるので安心。
・作成したゲームは自由に配布したり、コンテストに投稿することも可能。
■「コモンイベント」を利用すれば、難しいゲームシステムも実現できます。
■非暗号化ゲームもあるのでそれで先人に知恵を借りよう。
351創る名無しに見る名無し:2012/10/25(木) 19:43:55.51 ID:sFnUUh9I
>>349
ペネトレイターかw
352創る名無しに見る名無し:2012/10/26(金) 16:35:10.05 ID:gR25weFn
 よし、光属性は光子力エンジンでいこう!
353創る名無しに見る名無し:2012/10/26(金) 16:45:33.58 ID:Tv1xgycH
ゲッター的な何かの力を借りればええんちゃう?
354創る名無しに見る名無し:2012/10/26(金) 21:45:01.98 ID:swKPiQrH
虚無っター
355創る名無しに見る名無し:2012/10/26(金) 23:50:15.09 ID:HmT9lFuY
三つ編みの力を借りたロボ!
ミツアミン!

でも!
乗れるのはポニーテール限定
356創る名無しに見る名無し:2012/10/27(土) 00:50:38.22 ID:Ew+z+OkB
どういうことなの……?
357創る名無しに見る名無し:2012/10/27(土) 15:17:08.89 ID:4R7TU8Hz
三条の光線を磁界とか重力場で回転運動させて寄り合わせ、
標的表面の装甲だのフィールドだのを削孔させる、とか言うと強そうなのだが、
名前が三つ編みビームじゃ締まらないよな。
358創る名無しに見る名無し:2012/10/27(土) 17:48:07.34 ID:c0IiAGJw
 ブレイド・スマッシャーとかそんな感じでいいんじゃないかな!
359創る名無しに見る名無し:2012/10/27(土) 19:00:15.96 ID:mydhvK7x
トライ・クロス・レーザー
360創る名無しに見る名無し:2012/10/27(土) 21:07:53.13 ID:kMBQKfAx
ドッズ◯◯って名前にしておけばおk
361創る名無しに見る名無し:2012/10/27(土) 21:09:35.31 ID:iWsAZ1J4
でも乗れるのはポニーテール……
教授、これは一体!?
362創る名無しに見る名無し:2012/10/27(土) 22:15:00.55 ID:mydhvK7x
バトル中にポニテがほどけた瞬間にどうなるのか気になる。
363創る名無しに見る名無し:2012/10/27(土) 23:12:05.20 ID:iWsAZ1J4
○ミスポーン以外無いじゃないですかー!
364創る名無しに見る名無し:2012/10/28(日) 16:28:21.93 ID:rrc/e1iz
ロボスレに投下しなければいけない気がするけどまだ完成してないヤバい。
365創る名無しに見る名無し:2012/10/28(日) 18:41:36.30 ID:X9n5S0ek
 ゆっくり書けばいいんじゃよ(脂汗)
366創る名無しに見る名無し:2012/10/28(日) 22:10:21.04 ID:156KUCg6
そうだよ!(脂汗)
367創る名無しに見る名無し:2012/10/28(日) 22:24:21.42 ID:YGVTSNDq
これから推敲だ……
368グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/10/29(月) 00:50:56.75 ID:chMwNvXG
深夜に出没。グラタンの人です。
ちょっと投下しますよ……
「断罪巨人 シンブレイカー 第2話」
369断罪巨人 シンブレイカー ◆tH6WzPVkAc :2012/10/29(月) 00:52:24.79 ID:chMwNvXG
 広大な砂場に横たわるガイコツの内側にはぎゅうぎゅうとわけのわからないメカが詰まっていて、
その肋骨の中に空いた正四面体の空間がコクピットらしかった。巨人のガイコツ自体はゆうに14メートルはあったが、
コクピットは非常に狭く、全身をその中に収めた私はほとんど身動きができなくなってしまった。
 正四面体の壁面は滑らかな表面の石材で、中には灯りは何も無い。そのせいでコクピットのフタを外部から閉じられた
ときは、真暗闇なのと身動きできないのが相まって軽い恐怖すら感じた。
 しかしその中にとじこめられてしばらくすると、どういうわけかいきなり空間がぱっと明るくなり、
身体も一気に自由になる。私はしっかりと足を広げて床面に立ち、前を見据えることができた。
 自身の周囲にはもう狭苦しい壁も存在しない。私は宙に浮いていた。


 コクピット内のその様子を機器を通して確認した青年はインカムに向かって報告する。
「コクピット部分は正常に起動しました。志野さんとの精神リンク問題なし。セフィロト回路はグリーン。」
「了解。Sジェネレーターの状態はどうですか?」
 天照の澄んだ声が返ってくる。
「Sジェネレーターは正常に活性化、起動可能域到達まであと2分かかります。」
「転輪経ドライブとのリンクがネガティブですよ。」
「一神教は多神教とは馴染みませんから。ですが回転数は順調に上がっているのでサブモードとして待機させます。」
「では思想ベースはユダヤ教のデータ09を使用してください。一神教なら扱いは楽ですから確実に起動するでしょう。」
「了解。サバト・エミュレーターとのリンクはポジティブ。D・T信号はネガティブ。
サバト環境はデフォルトを使用……動作確認。陰陽の比率はセーフティ。タオエンジンはグリーン。」
 そんな調子で専門用語を多く含んだ会話が為されるたびに他の研究員たちがキーボードを叩き、
真鍮製の器具のレバーを引いて虹色の蒸気を噴き出させる。弓形の銅板を組み合わせた天球儀が回転し、
月や太陽とその他惑星の位置を指し示す。
 そしてその動作に伴ってガイコツの胸からケーブルを介して光り輝くエネルギーが手足の先へと伝わり、
腹の底に響く力強い振動がにわかに起こる。
「砂場内にいる所員は退避してください。ドーム開放します。」
 白いドームの天井がスライドし、花びらのように折り重なって変形しながら広がり青空を覗かせる。
 私はコクピットの中の空間からその様を目にし、美しさに嘆息した。
「では所長、承認をお願いします。」
 青年を含む全ての研究員が手を止め、天照恵を見上げた。司令室の一番見晴らしのいい位置に座していた彼女は
静かに立ち上がる。
(志野さん、ごめんなさい……)
 彼女は小さくそうつぶやき、そして力強い声で発した。
「……魔学使用承認! サンドゴーレム『シンブレイカー』覚醒せよ!」


 不思議な光景だった。
 巨人のガイコツが横たわる円形の砂場全体がぼぅと柔らかな光を発し、流砂のように動きはじめる。
 砂の流れはそのうち大きなうずを巻き、ガイコツの胸を中心に収束し始めた。光り輝く砂は巨人の肉となって骨を包み、
鎧を纏い、四肢に力を与える。
 巨人は立ち上がる。その様子を所員たちは息をのんで見守っている。
370断罪巨人 シンブレイカー ◆tH6WzPVkAc :2012/10/29(月) 00:53:25.99 ID:chMwNvXG
「起動した……!」
 誰かがこぼした。その直後、巨人の銀の装甲表面に幾何学的な赤いラインが煌めき、頭部にふたつと、両肩、両肘、
両脛、両つま先にそれぞれすえられた計10個の魔力の排出口から大小様々な大きさの、実体の無い光の刃が作り出された。
 地方都市の北方、ドームが変形した巨大な蓮の華から生まれた巨人のその姿は、
まさしく中国の古典に登場する魂の無い戦士のようだった。



 ……その様子をとあるビルの屋上で眺めている人影がある。
 彼は奇妙ないでたちで、その服装はまるで何かの仮装のようだ。
 不気味な仮面に、風になびく白く長いマフラー、背中に背負った日本刀……まるで特撮番組の主役のようなその人物は
ビルの谷間に現れた光の巨人と、その視線の先に浮かぶ黒い断頭台を見比べてひとり頷くと、
さもなんでもない調子で建物の縁から足を踏み出し、地面に向かって落下していった……



 私はあまりのことに呆然としていた。
 目の前ーーというか、身の周りで起こったこととはいえ、やはり実際目にするとあまりにも現実離れしている。
 私は今地上数十メートルの空中にある見えない床の上に立っていて、その床の下と横には、
断面が球形に切り取られた巨人の下半身と両腕が見えるのだ。さらに上方には頭部が首の機械的な断面を
こちらに向けて浮いている。
 足場の見えない恐怖に足から力が抜け、私は見えない床にへたり込んだ。床はたしかにそこにあるようだったが、
体が言うことをきかない。
「志野さん、聞こえますか」
 聞き覚えのある声がして私ははっとした。天照の声だ。
「あ、天照さん!」
 私の叫びに彼女はほっとしたようで、声に安堵の色がみえた。
「よかった……どうやら正常に起動したようですね。」
「いったいこれは何なんですか!」
 私は枯れそうな声で空中に叫んだ。視線はずっと空に向けていた。とても地面なんか見れやしない。
ひとたび視線を落とそうものならそのまま地面に吸い込まれてしまいそうだし、いつそうなってもおかしくはないのだ。
「落ち着いてください。そこは空中に見えるでしょうが、実際はコクピットの壁面に映像が出ているだけです。」
 言われて、私は床についた手の平の感触が、冷たい石のものだということに気づいた。
そのままそろそろと前方に手をのばすと、めいっぱいに伸ばしたよりも少し先に、正四面体の三角形の壁があることを知った。
 どうやらこの空間は見た目ほどの広さは無いらしく、腕を伸ばして一、二歩進んだだけでも壁についてしまう程度の広さだ。
いきなり空間が広がったのもあの魔学とやらの作用だろう。私は少しだけ安心して立ち上がったが、
まだ足はわずかに震えていた。
 そうしてやっと視線を水平まで落とした私は、ぎくりとして硬直した。
 この研究所のドームは街の中心を南北に太く貫く国道が東西に分かれるその分岐点に面してあって、私が今立っている
この巨人の胸元の位置からは街の南端までが一気に見通せる。
 そのメインストリートの途中に、例の巨大な断頭台が当たり前のように浮かんでいたのだ。
371断罪巨人 シンブレイカー ◆tH6WzPVkAc :2012/10/29(月) 00:54:15.31 ID:chMwNvXG
「断頭台が見えますか?」
 私は頷いただけだったが、どうやら研究所のほうでもこの空間の内部は正確にモニターしているらしく、伝わった。
「あれが私たちの倒すべき敵、『×』です。」
「街の人は大丈夫なんですか」
「所員がひとり残らず安全な場所に運びましたが、あの断頭台は移動します。」
「さっさと倒さなきゃいけないってことだね」
「そうです」
 天照のその言葉に私は身の引き締まる思いがした。足の震えは消え、代わりに街の人々を守るのだという使命感が
心の底からむくむくと湧き上がり、私に硬い床を強く踏みしめさせた。
「操縦方法は?」
 声をはりあげる。断頭台がゆっくりとではあるが、確実にこちらに近づいてきていることに私は気づく。
「簡単です。『こう動け』と念じるだけで動きます。今すぐにでも自分の手足のように扱えるはずです。」
 その言葉を聞き、私はとりあえずこの巨人が歩く姿をイメージした。すると驚くほど簡単に、そして軽く、
巨人の足が持ち上がった。
「気をつけて!」
 天照の注意がとんだのはあまりにも軽く持ち上がった足にバランスを崩しかけ、
危うく転倒しそうになるのをこらえてからだった。
「転んだら大惨事です!」
「は、はい!」
 返事をする。
「いいですか、建物には注意してください、『×』はすりぬけますが、あなたは普通にぶつかります。痛みも感じます」
「それはどうして――」
「『×』に物理的身体は無いから――危ない!」
 その叫び声に、私は反射的に腕を上げて頭部を守る姿勢になった。
そうした腕の側面を何かがぶつかったような衝撃と痛みが走る!
「ぐぅっ!?」
 何が起こったのか理解する前に天照がまた叫んだ。「とにかく移動して!」
 それがどういった趣旨の指示かも判らないまま私はドームのふちを乗り越え、東への道路をがむしゃらに走った。
アスファルトに巨大な足あとが刻まれていく。気づかず踏みつけた自動車が、ひっかけた街灯が、
絡まった電線が火花をあげる。
「立ち止まって周りを見て! あなたは今巨人なんです! 慎重に!」
 どことなく悲鳴にも似たその絶叫に足を止めると、断頭台はかなり遠ざかっていた。私は目を疑った。
「あいつ、建物をすりぬけてる……!」
「それだけじゃないですよ」
 どこか打ちのめされたような色が天照の声には表れているが、私はそんなことを気にする余裕は無かった。
「形が変わってる!」
 天照が頷いたのが感じられた。
 断頭台の形をしていた『×』は、その本来ならば罪人の腕をはめる穴から異様に青白く長い腕を生やし、
だらりと垂れ下げていた。その2本の腕の間ある、罪人の首をはめる穴からはいつのまにか同じように青白く
恐ろしげな男性の頭が生えていて、濁った瞳の目玉をぎょろぎょろと動かし、だらしなく開けた口からよだれを
だらだらと垂らしている。
「キモッ!」
 声に出た。
 『×』は頭をあげてこちらを見た。その顔をまともに見て、私の背中におぞけが走った。
 と、次の瞬間、断頭台の上部にあるギロチンの刃が突然落ちて『×』の頭が地面に転がる。
 私は様子をうかがったが、『×』がその自分の頭部を拾い上げ、こちらに投げつけてきたのを見て、
さっきの衝撃と痛みの正体をさとった。
372断罪巨人 シンブレイカー ◆tH6WzPVkAc :2012/10/29(月) 00:55:24.54 ID:chMwNvXG
「キモいうえにグロい!」
 飛んできた頭に狙いを定めて思いきり殴りつけるイメージを浮かべると、巨人はそのとおりに動き、
遥か遠くへと『×』の頭部をぶっ飛ばす。
「ホームラン!」
 あの青年の嬉しそうな声がした。私はとっさのこととはいえ、なんとも冗談のような行動をしてしまったことに
しばし固まってしまう。
「よし、これなら……攻めましょう。 さっきの大通りまで戻ってください!」
 急いで指示に従う。すると『×』のほうも私を追って大通りに出てきた。
「武器はないんですか?」
 私は訊く。
「私たちは軍隊じゃありませんから、銃火器の類は無いですね。」
「じゃあ、やっぱり……」
「殴ってください。」
「えええーっ!?」
 このときの私はきっととんでもなく嫌そうな顔をしていたのだろう。天照は諌めるような調子になった。
「実際に殴るのは志野さんじゃないんですから、我慢してください」
「でもあれキモい!」
「その気持ち悪いものの頭部をさっきホームランしましたよね?」
「あれはとっさに……」
 私は横目で『×』を見た。『×』の頭部はいつのまにかまた再生していて、よだれを地面に落としている。
「うぁ〜、マジぃー……?」
 観念して、深いため息とともに『×』に向き直ったときだった。
「目標、さらに形態変化!」
「志野さん、気をつけて!」
 はっとして断頭台を見る。
 『×』は、今度は大きく形を変えていた。断頭台は全体が逆さまになり、
2本の柱がぐにゃりと曲がってらせん状に絡み合った。ギロチンは右腕によって取り外され、刃の部分だけを
指でつまむように持っている。もはや断頭台としての原型はなく、足の無い幽霊という形容のほうがそれに近い。
「……キモさはマシになったかな」
「きます!」
 私は身構えた。
 『×』は刃を持った腕をぶんと振り上げ、私に迫ってきた。
 さすがにギロチンをガードするのは無理だろうから、なんとか避けようとしてみるが、横っ飛びに飛んだのは
どうやら失敗だったらしく、左肩の表面にするどい痛みが感じられた。
「イタっ!」
「耐えてください、大分緩和されてるんですから!」
 肩を押さえながら敵を睨む。そのときふと右肘についている光刃が目に入り、
ついで巨人の全身に生えている同じものを思い出した。
「これは使えないの!?」
「それはエネルギーの排出口です」
373断罪巨人 シンブレイカー ◆tH6WzPVkAc :2012/10/29(月) 00:56:30.16 ID:chMwNvXG
「でも刃っぽい!」
「出力を上げればあるいは……」
「所長、しかしそれは!」
 青年の声が割り込む。
「解ってます。出力を上げずに右肘以外の排出口を全閉鎖して、Sエネルギーの排出を右肘に集中させてください、
排出口は限界まで外側に向けること。志野さん、右肘をつき出してください。」
 深く息を吸って、吐き、私は言うとおりにした。巨人の全身から9つの光の刃が消え、
代わりに右肘にだけ一本の大きな光の剣が生えた。
「自分を斬らないように気をつけて。」
 私は頷き、身構える。『×』は再びギロチンをかまえていた。
 ……数秒の間。
 空気が張りつめる。私は雰囲気に呑まれる前に踏み込んだ。彼我の距離をグンと詰め、腕の横から生えている刃が
当たるように、敵のギロチンを持つ腕の横の空間を目がけて殴りつける。 
 嫌な感触が一瞬あった。ギロチンを握る『×』の腕は空中を舞い、巨人の後方へと落下した。
 私は体をひねり、間髪入れずに二撃目を叩き込む。裏拳のように振るわれた右腕は刃を敵の頭部に食い込ませ、
そして引き裂いた。
 すると形容しがたいほどに不気味な悲鳴が街に響き渡る!
 私は身を強ばらせ、その不快な音に耐えると、その感情を右足に込めて『×』の二重螺旋状の胴体を蹴った。
やはり手応えは不快だった。
「キモすぎる!」
 前方の道路上へと吹き飛んだ『×』に私は吐き捨てた。
 天照の驚いた声がする。
「志野さん、あなた格闘技の経験が?」
「護身用に昔、ちょっとだけ。」
「ははぁ、それで」
「それよりも、アイツどうやったら死ぬんですか」
 視線の先ではすでに『×』が起き上がりかけていた。体幹は見事にへし折れて『く』の字に曲がっているが、
真っ二つに裂けた頭からは血らしきものすら流れていなかった。
「『×』を倒すには強力なエネルギーで一気に滅却する必要があります」
「どうやって?」
「志野さんにはそのための隙を確保してほしかったのですが……もういけそうですね。」
 私は頷く。『×』は立ち上がったものの、動きは緩慢で、もはや脅威は感じられない。
 巨人は身構える――
「一気に決めてやる。」
「ええ、そうしましょう――!?」
 天照の言葉が終わるか終わらないかの瞬間、私は背後からぞっとするような危険を感じて身を翻した。
間一髪! 巨大な何かが巨人の肩口をえぐり、装甲を吹き飛ばすとともに道路に砂を撒き散らす。
危うく首をはねられるところだった。
 しかし痛みは軽いものではなく、私は短い悲鳴をあげて倒れかけた。
「志野さん!」
「大……丈夫っ!」
 涙の浮かんだ目でなんとか前を睨むと、背後から飛んできたものが何なのかが分かった。
374断罪巨人 シンブレイカー ◆tH6WzPVkAc :2012/10/29(月) 01:02:14.86 ID:chMwNvXG
 それはさっき本体から切り落とした『×』の、手にギロチンの刃を握った右腕だった。その切断面には
恐らく最初にホームランしたものであろう頭部が首がいつのまにか合体していて、げらげらと耳障りな笑い声を
あげている。腹がたった。
「この……キモグロお化け!」
 そんな罵倒を気にもせずまたギロチンの刃が巨人の首を目指して飛んでくる。痛みのせいで反応が遅れた――!
 私は恐怖した。それは『×』の醜い姿に対する嫌悪とはまるっきり別のもので、
心臓を流れる熱い血が一気に冷やされたような感覚だった。
 ギロチンの刃が、防御のために持ち上げた巨人の腕をすり抜けて、首元に迫る。
首をはねられる痛みというのはどんなものだろう、きっと死ぬほど痛いんだろうな――冷え切った頭の奥でそんな考えが
浮かんだ。覚悟もできないまま刃が肉薄。
 だがギロチンは巨人に触れることなく弾き飛ばされた。びっくりして見ると、ひとりの人間が空中に飛び上がっていて、
ギロチンと巨人の頭の間を遮っている。こちらに背を向けたその人物は長い刃物をふるい、マフラーを風になびかせていた。
(忍……者?)
 そんな馬鹿げた考えが浮かんだが、しかしその人物はやはりその形容にふさわしい姿だった。
 忍者は一度巨人の額を蹴ってひらりと空中に、さらに高く躍り出ると、手にした日本刀(私にはそう見えた)を
ギロチンを握る腕に投げつけた。突き刺さる日本刀。忍者はその柄の尻から伸びるワイヤーのようなものをぐいと
引っ張って空中を移動し、『×』の腕に迫る。
 忍者の接近に対して、右腕から生える男性の頭部が大きく口を開けて気持ち悪い色の舌をのばして攻撃してくる。
忍者はワイヤーを素早く空中でしならせてムチのように用い、その舌をはじいた。
 とうとう右腕の上にたどりついた忍者は着地と同時に足の指で日本刀の柄を挟んで抜き、後ろ手にキャッチして、
大きく足を開いて身構えながら刀を握る腕につけた何かの機械をいじる。次の瞬間突然日本刀が真っ赤な光を放っ
たと思うと、またたく間に忍者は右腕とギロチンと頭部をいくつかの破片に分割した。そのときにはもう赤い光は
消えていた。
 『×』の破片はそれぞれが逃げるように本体のもとへと飛んでいく。空中に放り出された忍者はまた刀を投げて
近くの背の高い建物の外壁に突き刺し、右腕に上ったのと同じ要領で安全な場所に着地した。
 その鮮やかで凄まじい手際と、存在の異様さに私はしばし目を奪われていたが、天照の一喝を受けて、
あわててまた『×』を見やった。
 『×』は忍者にばらばらにされた部分と合体し、再び完全な姿となったが、まだ頭の再生が追い付いていないらしく、
動けないままで、チャンスであることは変わらないままだった。
「滅却します!」
 天照が叫ぶ。


 天照の宣言を受けて、研究室の人々は一斉に作業にとりかかった。その中で青年は次々と報告される現在の巨人の
状態から、この『×』を滅却するに相応しいプランを素早く組み立て、指示をかえす。
「滅却プランは『一神教用プランU ウリエル・ファイア』を提案します。」
「成功率は?」
「シミュレーションでは35.5%、ですが全てのプランで最も高い数値です。」
375断罪巨人 シンブレイカー ◆tH6WzPVkAc :2012/10/29(月) 01:03:35.86 ID:chMwNvXG
「承認します。併せて使用に必要なあらゆる魔法の使用も承認します。……志野さん」
 天照は志野に呼びかける。
 私はコクピットの中で応えた。
「熱いのは平気ですか?」
「え、はぁ、人並みには」
「なら大丈夫ですね」
 一方的に会話を切り上げ、天照は再び声をはりあげた。
「シンブレイカー、ブレイクモード!」



 天照の声と同時に、この巨人の体に今までにない変化が起こっているのを私は感覚した。
 巨人の内臓が――シリンダーやコンピュータ回路、光学ディスク、ジェネレーター――が激しい熱を放ち、回転し、
スパークした。巨人の装甲表面に引かれた赤いエネルギーのラインは強く発光する。その光はさっきみた忍者の刀と
同じものだった。
 私は全身が熱っぽくなるのを感じる。
「天照さん、これは!?」
 訊くと天照は素早く応える。
「安心してください、今のところあなたに危険はちょっとしかありません。」
「『ちょっと』あるんじゃん!」
「これから『かなり』になりますよ!」
 突然、巨人の頭上の空から何かが落下し、背後の地面に突き刺さった!
 驚いて振り向くと、それは巨人の身長をゆうに超える大きさの十字架だった。全体はこの巨人と同じような素材で
できていて、中央には巨大なディスクが目玉のようなデザインの中に組み込まれていた。見ていると、
それは高速で回転しはじめる。
「Sジェネレーター、シンブレイカーとのリンク正常、召喚の儀式をロード開始! 憑依媒介は十字架を使用します!」
 青年の声が少し遠くからきこえた。
「……対象の高度精神体とコンタクト成功! セフィロト回路とリンク! 憑依部位は右腕部に設定!
 ユダヤ教思考ルーチンを使って神様讃えさせといて! 異教のシステムは遮断!」
 続いて青年は指示する。
「十字架、変型!」
 同時に十字架のディスクが危険なほどに強く輝き、十字架の両腕と頭の部分の外装が上部へとスライドする。
その内部に収納されていた機械が勢いよく広がって展開すると、それで巨人を抱きすくめられるほどに巨大な
――そろそろスケール感が麻痺してきた――1対の翼となった。
 十字架の頭から露出した金属パイプから蒸気のような煙が噴出する。巨人は十字架に背を向けて、
全身に力をこめた。
「……よくわからないけど、これを使えばいいんだね!」
「はい、そうです――ウリエル憑依成功!」
376創る名無しに見る名無し:2012/10/29(月) 01:07:20.00 ID:0Hy+3mFP
 
377創る名無しに見る名無し:2012/10/29(月) 01:08:53.49 ID:0Hy+3mFP
 
378断罪巨人 シンブレイカー 代理投下:2012/10/29(月) 20:50:56.44 ID:d+SnHkL1
 答えたのは青年だった。
 そろそろ『×』の再生も完了してしまいそうだ。私は呼吸を鎮め、これからおこるであろう予想もつかない出来事に
備えた。
「ウリエル・ファイア、顕現します!」
 すると十字架の両翼の先から、ほぼ閃光に近いほどの強烈な炎があがり、あっという間に十字架全体を包む。
その炎はあたかも意思を持っているかのようにうねり、十字架の翼を一回、大きく羽ばたかせた。
『×』がまるで恐怖したかのようにビクリと身を震わせるのが見えた。
 十字架からあがる炎はますます輝く。その中央から光の腕のようなものがすぅと伸びて、巨人の右腕に触れた。
私は思わず悲鳴をあげる。
「あっづぅ!?」
「ちょっとの辛抱です!」
 天照はそう言ったが、そのちょっとの辛抱も厳しいほどの熱だ。私は右腕を押さえ、その痛みを無理やり闘争心に
置きかえる。力を込めて右腕を突き出し、拳の先に『×』を見据えた。
「ねぇ、まだ!?」
「オーケーです、行って――いや、待ってください!」
「なに!?」
 青年の声が割り込んでくる。
「エラー発生! 炎が許容値以上の熱になって、十字架が融解を始めてます! このままでは巨人の右腕も融解して無くなります!」
「なんですって! 志野さん、ここは一旦仕切り直して――」
「いやイケる!」
 叫んだときには走り出していた。右腕に乗り移った炎はいよいよ直視できないほどに白く輝き、
その熱は巨人の装甲をすでに変形させ、私の皮膚を焼きはじめていた。
「志野さん!」
 天照が止めるが、耳に入らない。
 道路のアスファルトを撒き散らし、振動で周囲のビルのガラスを割り、電線をスパークさせた。
目の前に迫る『×』。私はその醜い頭部に狙いを定め、体躯を捻る――
「おりゃあああああっ!」
 雄叫びをあげながら、全力の拳で『×』の頭を殴り抜ける。炎の拳は敵の頭を原型が判らないほどに
ぐしゃぐしゃに破壊し、さらに燃え移った炎が傷口を焼く。
 巨人は足を踏ん張り、アスファルトをはがしながらブレーキをかけ、振り向く。そして『×』がもがき苦しむのを見た。
「よしっ!」
「失敗です!」
 予想外の言葉が耳に飛び込んできた。私は苦痛に気が立って、つい乱暴に訊き返す。
「右腕の融解により、パンチの威力が半減しています! やはり仕切り直すべきでした!」
 言われて右腕の、肘から先の感覚が消えていることに気づいた。見ると、巨人の腕も肘から先がどろどろに溶けて
無くなってしまっている。溶けた腕の雫は街中に散らばっていた。
「『×』は? やったんでしょ!?」
 少しだけ恐ろしくなり、訊く。
379断罪巨人 シンブレイカー 代理投下:2012/10/29(月) 20:51:55.61 ID:d+SnHkL1
「いえ、残念ながら……あれじゃ火力が足りません。」
「そんな!」
 前方に目をやると、たしかに敵は苦しんでいたが、その炎は首以下に広がる様子は見えず、
むしろ少しずつ弱まっていくようにすら感じられる。
 私は歯噛みしたが、すぐにあることに気づいて、やめた。
「とにかく、憑依部位を左腕に変更して再ロードを――志野さん!?」
 天照が止める間もなく私は再び『×』に向かって走り出していた。両太ももに力をこめて、全力で地面を蹴る。
 私は気づいたのだ。私たちはこの街を北から南へ突き抜けるこの道路の上――一直線上で戦っていたのだ。
つまり今『×』は、炎の十字架と、この巨人に、一直線に並んで挟まれた位置関係にある。
 だったら!
「これでも、くらえぇええええッ!!」
 私は勢いに乗せて巨人の右脚を振り上げ、『×』の二重螺旋型の腹の中心に、突き刺すような蹴りを放った!
 『×』は体を折れそうなほどに大きくしならせ、巨人の前方に吹き飛んでいく。その先にあるのは――
「おおっ!」
 青年の驚く声がする。
 吹き飛んだ『×』は、いまだ燃え盛っている十字架の中心に見事激突し、その全身を炎に巻かれたのだった。
 『×』は絶叫をあげ、炎から逃れようと身体をよじらせる。私は身構えたが、必要なかった。
 『×』が身悶えした瞬間、十字架の、融解しかけているがぎりぎり形を保っている両翼が『×』を
優しく抱きすくめるように折れ曲がった。『×』はもう身動きすらとれず、断末魔をあげたが、
すぐにそれも聞こえなくなった。
 十字架は完全に融解し、中ほどからへし折れ、翼が落ちる。すると炎がいきなり、巨人の腕を包んでいるものと同時に消えた。
 ……街に静寂が訪れる。
 私は胸いっぱいに空気を吸い込み、そして汗にまみれた右腕を突き出し、親指を立てた。
「……『断頭台』、滅却おわりぃ!」
380創る名無しに見る名無し:2012/10/29(月) 20:59:41.15 ID:d+SnHkL1
グラタンさんの許可を頂きまして、避難所からの転載終了。

で、投下乙でございます。
えらくSAN値直葬な敵と、肉体派ヒロインでしたね。

あとシンブレイカー、凄いオカルトのごった煮状態で、それこそ日本人にしか乗れなさそうw
高度精神体とのコンタクト成功のくんだりから、神らしきものは存在する様子だし、
謎が謎を呼ぶところで、次回も楽しみにしてます。
381創る名無しに見る名無し:2012/10/29(月) 22:57:48.14 ID:KDXBSHvj
>>380
 投下&代理投下乙です!
 それでは、ゆっくり読ませていただきますね!
382創る名無しに見る名無し:2012/10/30(火) 18:09:58.95 ID:w2tFTkxx
 そういえば、避難所にあった絵の方は代理投下してませんのん?
383グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/10/30(火) 23:48:40.59 ID:h2bFMXCh
あくまでおまけなんでお気になさらずー
384創る名無しに見る名無し:2012/10/31(水) 21:18:30.18 ID:7ZLuUmAk
>>317
ブレイクブレイドの作者?
385PBM! の人 ◆1m8GVnU0JM :2012/10/31(水) 22:59:47.56 ID:/pXz0eKu
386創る名無しに見る名無し:2012/10/31(水) 23:40:01.93 ID:KoSVfeBZ
いたずらじゃすまねえー
387創る名無しに見る名無し:2012/11/01(木) 01:54:32.76 ID:ETKgK/wq
>>385
なんという強迫w
388創る名無しに見る名無し:2012/11/01(木) 17:50:30.20 ID:46FYcFi+
>>386-387
 相方は超人だから、きっと大丈夫ですよ! ……たぶんw
389創る名無しに見る名無し:2012/11/01(木) 19:14:12.13 ID:nNPURrFD
>>385
それ dead or alive の間違いだからw

…チェインソーも使ってみると意外にヤワだから、
ロボットが使うにゃ工夫が必要だよなぁ。
390創る名無しに見る名無し:2012/11/01(木) 21:00:15.51 ID:hIlDYLib
超振動カッターと同じ原理でいけると思う

・超振動カッターはもともと「とんでもない硬い物質」を刀身に使い、「とんでもない速度で摩擦させて切断する」兵器なので
その物質以下の硬さのあらゆる物質を切断が可能という、仕組み的にカッターというよりノコギリか掘削機なので
同じ物質を刃に転用し、同じ動力源を使えば同じく何でも切れる超チェインソーが実現します




…問題はそのとんでもねー摩擦抵抗と動力源の馬力に付き合うチェーン部分の強度だが
391創る名無しに見る名無し:2012/11/01(木) 21:53:32.19 ID:nNdkdGx3
遥さんのみつあみだという噂
392創る名無しに見る名無し:2012/11/01(木) 22:14:18.26 ID:OHrKQWQ9
成程、遥さんの三つ編みなら問題無い
393創る名無しに見る名無し:2012/11/02(金) 00:07:12.95 ID:6hH1v0np
 三つ編みは凶器じゃないよ!?
394創る名無しに見る名無し:2012/11/02(金) 01:13:51.50 ID:BxUKIpv8
え!?(困惑)
395創る名無しに見る名無し:2012/11/02(金) 01:50:08.87 ID:lBiIMvlv
そうか兵器か
396創る名無しに見る名無し:2012/11/02(金) 02:49:29.53 ID:BxUKIpv8
三つ編みは凶器。三つ編みは兵器。どんな綺麗事やお題目を口にしても それが真実。
397創る名無しに見る名無し:2012/11/02(金) 12:01:50.33 ID:6hH1v0np
 まあ、確かにその素晴らしさ・愛らしさは凶器に例えても間違いはないけども!
398創る名無しに見る名無し:2012/11/03(土) 12:40:24.19 ID:+8V0N/M2
三つ編みに惨殺される師匠
399創る名無しに見る名無し:2012/11/03(土) 13:20:55.59 ID:KfnxA3fO
頭部に三つ編み状のパーツがあるが、三つ編みの形状をしたチェーンソーになっているロボの流れか
ちなみに三つ編みを相手の首に巻いて、その上でチェーンソーを起動する

「師匠だけを殺す機械かよ!」
400創る名無しに見る名無し:2012/11/03(土) 13:39:57.84 ID:JCYeWYoD
 なんでよりによってF91見てる時にそのネタが出てきますかね!?
401創る名無しに見る名無し:2012/11/03(土) 20:55:36.89 ID:Xd4Yt5Qv
F91のDVD借りたことを忘れたまま旅行にいって延滞料金が半端ねー事に気付いた俺にとってもタイムリーなネタだwww
402創る名無しに見る名無し:2012/11/04(日) 12:07:25.84 ID:tc0VXvlN
 2〜3日でも割とバカになりませんよね、延長料金w
403創る名無しに見る名無し:2012/11/04(日) 22:38:13.08 ID:UkntsaFw
DVDって借りて後で見ようと思って放置してたらもう返却日だった、って事ありません?
404創る名無しに見る名無し:2012/11/04(日) 23:01:51.32 ID:vMIHLwqZ
連続書き込みリミットって8になったの?
もしそうならちょっと計算し直さないといけないな…
405創る名無しに見る名無し:2012/11/04(日) 23:09:04.62 ID:42dfnmVk
連投は8になったから深夜の投下は危険
406創る名無しに見る名無し:2012/11/04(日) 23:14:10.31 ID:vMIHLwqZ
じゃあ、昼間に投下するよ
407創る名無しに見る名無し:2012/11/05(月) 00:10:41.68 ID:Lyp3hI3R
深夜じゃなくて昼間からなんて、大胆なんだから……(ポッ
408創る名無しに見る名無し:2012/11/05(月) 11:00:35.18 ID:zdgb8bxL
じゃあ、投下します
機動修羅バイラム、最終回:前編
長いので時間がかかりますが……
409創る名無しに見る名無し:2012/11/05(月) 11:01:25.04 ID:zdgb8bxL
 どうしてこうなってしまったんだろう?
 僕は目の前の敵と、マリアと戦っている。風のような刃が身体を斬りつけてくるが、それを少しずつかわし
ていく。乱暴に振り回してるように見えるがその太刀筋は意外にも丁寧だ。当たり前か、僕と同じ師の元で学
んだんだしね。まだ小さい彼女が目の前にいるように感じ取れた。
 喧嘩っ早かったマリア。そのくせ人一倍泣き虫だったマリア。誰に対しても真っ向から立ち向かうマリア。
 いつのころからだろう、本当にいつのころから君が隣にいなかったんだろう?
「はぁぁぁぁぁぁ!」
 鋭い突きが僕の喉元を狙ってきたがとっさに身をかがめで避ける。毎回言われたっけ、突きに弱いって……。
 じゃあ、こちらもお返しだ。このまま一気に間合いを詰めて、足元を思い切り払う。鍛えたと何回も言う彼女
だったけど足自体は結構細いから払いやすい。
「くっ!」
 軽く舌打ちをするとすぐさま床に手を付いて、距離をとる。そこから見えたのは彼女の微笑だった。
 楽しいのかな? いや、楽しいんだ。子供の頃にこんな事をしたんだ。仕方ないから僕は手加減をして――。
「うっ……」
 彼女の剣が僕の胸を貫いた。鋭い痛みが頭に走る。でも、それ以上に……。
「あっ……」
 僕は彼女を抱きしめていた。理想なんか捨ててしまえ、なんて何回も頭の中で思った。
「ようやく……捕まえた」
 心から出た言葉に僕は涙を流した。そして彼女もまた……あの頃と同じ声で……泣き出した。

 森宮祐一の傷が完全に塞がったのはエグザトリアに搭乗して早くも三ヶ月が経った頃だった。
 通っていた学校は既に完全閉校しており、自分以外の生徒は別の学校に通っている事を看護士から聞いていた。
 あの件でかなりの人間が死んだらしい。学校は破壊され、病院やビル、クラブハウスも潰された。自分が住
んでいたマンションは完全に廃墟となっており、家具一式から始まり、冷蔵庫からテレビといった家電製品、
そして父が残したメモもバイラムの襲撃によって炎と共に無くなっていた。
 祐一は自分の身体に視線を送る。きつく巻かれた包帯は自分の身体を圧迫し、立つことは出来るが細かい動
作ができず、ほとんどベッドのリクライニング機能を使わなければ起き上がることが出来なかった。
 そろそろ退院かな? そう思うが医者からは内臓にまで傷が到達しているのでもう少し入院してくれと言われた。
 テレビをつけてみる。朝早いこの時間にやっているのはニュース番組だけだ。
「ですから、我々はアンギュロスに対して報復をするべきなのですよ!」
「しかしねぇ…各都市部の復興の方が最重要ではありませんか?」
「それよりも降伏するべきですよ、バイラムの相手になるのなんてあのエグザトリアしかないではないですか!」
 背広姿のコメンテーターたちは激しい議論を重ねている。だが祐一にはその殆どが保身にしか見えなかった。
 今、バイラムに来られたら一溜まりもないんじゃないか。
 醜悪なコメントを繰り返すばかりのコメンテーターたちに嫌気がさしたのでテレビを消し、そのままベット
へと寝転がる。何も無い白い天井には蛍光灯が同じような光を降らせてきた。
「メアリー……」
 祐一は小さく呟いた。
 アステロイドベルトに自分がいる。そう言い残し、メアリーは飛び立っていった。軍人でもなければ宇宙飛
行士でもない僕がいけるはずがないのに……。だが、彼女の声はとても楽しそうだった。まるでデートを待ち
焦がれているかのように感じた。来て欲しいというサインなのかな? イヤ、本当に来て欲しいのだろう。
「やめておこう、戦場に行くなんていくらなんでも無理だ」
 体を横にすると再び瞳をとじた。何度も自分は駄目だと言い聞かせながら。

 ところ変わって中国南西部。荒野にやや近いこの場所ではいたる所から煙が上がっている。その多くは青龍
や玄武といったAUAのPMだった。そして、その中に黒い機体が混じっている。そうバイラムも――。
「ふんっ!」
 コウシュンの掛け声とともにエグザトリアの刃が大きく振るわれるとバイラムを袈裟ごと二つに切り裂いた。
 火花を散らしながら大地に横たわると瞳から光が消え、そのまま横たわった。エグザトリアは剣を軽く振っ
て収納すると辺りを見渡すした。緑と茶色の平原に一陣の風が吹き抜けると純白の身体がきらりと光った。
「……隊長、全バイラムの撃破を確認しました」
 背後にいる黄龍、リーシェンがそう報告する。レーダーには反応を知らせる光点が見えないことからこの辺
りのバイラムは既に駆逐されてしまったようだ。先ほどの戦いで倒したのがAUAに存在する最後のバイラム
410創る名無しに見る名無し:2012/11/05(月) 11:02:13.62 ID:zdgb8bxL
だったのだろう。炎と黒煙が吹き荒れ、骸が横たわる戦場を再度、見渡すとコウシュンは軽くため息を付いた。
「そうか……帰還するぞ。破片の回収はほかの奴らに任せるとしよう」
「了解!」
 リーシェンがそういうとエグザトリアと黄龍が大空へと飛び立っていった。
 他の奴らとはバイラム調査委員会のことである。ADAM乗組員の脳が使われたこの機体はバイラムのブラ
ックボックスを回収し身元を特定、そして遺族へと引き渡すのを主な仕事としている。もっとも身元判明率は
かなり低く、現在で家族の元へ帰ってきた人間は回収した分の2割でしかなかった。その理由は森宮一明のよ
うな機体の癖が少ない事とDNA検査によって死亡するケースが存在するからだ。そして、身元が判明したと
しても多くの場合、そのまま無名墓地へと移送される事が多い。逆恨みを恐れてか、もしくは家族全員が今回
の騒動によって死亡したか、のどちらかである。
「それにしてもすごい機体ですね……このエグザトリアという機体は……」
「ああ……」
 リーシェンはエグザトリアの戦いを思い出した。
 バイラムの攻撃を食らっても傷がつかない装甲。そして瞬時といってもいいほど懐に飛び込んだ機動力と運
動性能。そして、腰に付いているライフルを一度も使わずに倒した攻撃力。センサー類もかなりいい物らしく、
黄龍が捕らえられ無い距離から既に敵機を捕捉していたのだ。更に何か奥の手らしいものが見え隠れするのも
恐怖の対象であった。戦闘の最中、時折、コウシュンのうめき声が聞こえてくることがあった。恐らく、この
機体にあまりついていけてないようだ。
 これもバイラムの一種なのか?
 そう思うと背筋が凍りついた。これがバイラムと同じように量産機ならば地球はあっさりと壊滅するだろう。
 リーシェンは前方を飛んでいるエグザトリアへ視線を送る。いや、睨み付けると言ったほうが正しかった。
 コウシュン隊長もこの気体の恐ろしさを感じ取っているのだろう。
 その証拠にコウシュンは多く語らない。ひたすらバイラムを斬り捨てるだけであった。無論、ライフルは使
えたが全く使うことなく、エグザトリアが持つ剣のみでバイラムを倒したのだった。
 未知の機体である以上、慎重になるのは理解できたが、やはり……。
 そんな考えをしているうちに基地が見えてきた。そのまますべるように滑走路に着陸すると格納庫へと向か
い、機体を停止させる。そしてハッチを開くと重い地響きと音をさせながら格納庫の中へと入る。そしてハン
ガーが到着すると息苦しいヘルメットをはずし、一息つく。
「お疲れ様です!」
「ご苦労、水原」
 コックピットから降りると奈央が出迎えた。コウシュンは奈央に頭を下げるとそのまま格納庫を去っていた。
 その後に次いでリーシェンも降りてくる。スーツの首周りを軽く緩めると去っていくコウシュンの背中を見つめた。
「難しい顔をしてますね」
「まあ、仕方ないだろう。慣れないものに乗ったのだからな」
 エグザトリアへの作業はほとんど突貫であった。奈央も作業を手伝ったがエグザトリアはオーバーテクノロ
ジーの塊といっても過言ではなく、出来たのはせいぜいコックピット回りの調整のみ。後はせいぜい電子マニュ
アルの呼び出し程度であった。が、それでも乗りこなし、無事に生還しただけでもコウシュンのすごさがリー
シェンには理解できた。
 リーシェンはゆっくりとした足取りで格納庫の奥へ歩いていくとそこにある物に視線を向けた。
「それにしてもよく集まったものだ」
「はい……」
 二人は格納庫の奥にある物、すなわちバイラムの残骸を見る。山のように積まれており、全てここ数日で集
めたものである。アジアで暴れていたバイラムは全てエグザトリアによって殲滅させられたのだった。が、残
骸を集めろと指示をしたのは他ならぬヨウシンであった。目的は奈央も彼の口から聞かされるまで分からなかった。
「これを軽く加工して各部隊に送られます。それで対バイラム兵器とするそうです」
「対バイラム兵器か……」
 リーシェンには苦肉の策に見えた。元々黄龍もバイラムと戦うために作られた機体である。しかし、それを
複数作るとなるとかなり骨の折れる作業となる。経済が混乱し、物資が不足する現在ではバイラムの残骸を加
工し、それらを武器としたほうが効率が良かった。
 ふと、隣にいる奈央に視線を送る。奈央の顔からは怒りや悲しみ、恐怖やジレンマといった物が何も一つ感
じなかった。
「水原、お前は――」
 大丈夫なのか? それでいいのか? なぜ軍に戻った?
411創る名無しに見る名無し:2012/11/05(月) 11:03:34.88 ID:zdgb8bxL
 そんな疑問を口にしようとする。が、全てを言う前に奈央は明るい口調で言った。
「リーシェン少尉、終わりにしましょう。この戦いを」
 だが、リーシェンには痛々しい言葉でしかなかった。おそらく無理をしている。いや、もう限界を超えてし
まったのだろう。その事実がリーシェンにとって一番辛かった。以前のように抜ける事があるだろうがそれは
バイラムとの、アンギュロスとの戦いを終わらせてからだろう。
「……ああ、そうだな」
 この言葉とともにバイラムの残骸へ視線を向けた。かつて人々を恐怖させた黒の塊は何も言わず、ただその
存在だけを誇示だけしていた。

「移送、ですか?」
「ええ、そうです」
 司令デスクの上で腕を組んでいるヨウシンの頭に包帯が巻かれている。
 簡単な事だった、ほんの数日前に自分の頭を銃弾が掠めたのだ。だが、その際近くにいた民間人に当たり、
大怪我を負うことになった。その民間人は今でも入院をしている。
 やったのは政府筋のものだろう。しかもなりふりかまわない所からかなり焦っている事が容易に分かった。
 確かに自分はこの戦いにおいて政府の裏を暴いてしまった。だが、民間人ごと殺害する行為にヨウシンは怒
りを覚えた。テロリストを忌み嫌うくせに自分たちはそれを省みようとしないことに腹が立つ。見つけ出して
制裁をしてやりたいところであったがそれ以上にバイラム対策に時間を追われた。当然のようにその間に暗殺
の手が迫っており、毒薬、狙撃、通り魔。など気が休まる暇もなかった。
 が、それもすぐ終りを告げた。理由は簡単、政府高官の一部が市民の手によって私刑にされたのだ。
 無論、それ自体は問題ではなかった。それは単なる犯罪の一つでしかないのだが……。
 しかし、政府高官たちは自分たちに飛び火する事を恐れ、市民たちを暴徒として鎮圧したのだった。
 自分たちが引き起こした事に対し、反省の意もなく……。
 ヨウシンはやむなく市民を守るため、軍を動かした。案の定、政府からは反乱軍扱いされたが世論はヨウシ
ンの擁護に動いた。そしてバイラムを作り出した政府高官はみな解雇という形となり、形式上の暫定政府が誕生した。
 その間ヨウシンは軍備力を着実に蓄えていた。PMの補充から始まり艦隊の建て直し、食料や弾薬を初めとする
軍蓄品の準備。そして、人員の募集。目の回るような日々では会ったがそれもそろそろ終わるとヨウシンは確
信していた。エグザトリアという存在が国連に知られた日に。 
「我々以外にもエグザトリアのデータを欲する人は多いでしょう」
 バイラム以上の高性能機、エグザトリア。現在は国連の管理下の元、各国への移送をしている。
 この提案を行ったのはヨウシンであり、国連はそれを承諾するという形になった。もっとも、国連もハワー
ドが精力的に動いているため、この提案は時間の問題であった。どちらにしてもエグザトリアはAUAだけで
は手に余りすぎた。そしてその移送任務を目の前にいるコウシュンに頼もうというのだ。
 現在もバイラムの猛威はいまだ続いている。自分たち、AUAはエグザトリアの使用によって沈静したのだ
が他の国、ユニオンやステイツといった所ではいまだにバイラム警報が敷かれている。
 市民の間で言いようのない不安が渦巻いていることもヨウシンもコウシュンも知っている。
 そしてその不安の根源にあるというのが今だにバイラムに歯が立たない、という事であった。
 もうすぐバイラムが来て一年になるというのにだ。対策をするにしても金がかかりすぎる。
 もっとも、現在の段階で百億を超えた人類が二十億という小数になった時点で金の価値はほとんどなくなっ
てしまった。今回の騒動で地図から消えた町はい二百は超えたのだ。高齢化社会など言われてた昨今だがあっ
という間にその数は次々と減り続けている。
「了解しました、早速移送をします。では」
 コウシュンは敬礼をするとすぐさま機敏な動きで部屋を出て行った。
 その様子を見ながらヨウシンは机の上にある受話器に手を伸ばす。
「私です。最終決戦用作戦プランをお送りします」
 数秒の無言の後、電話機は切られた。
 
 アトランティスのアンギュロスが撤退をして一日が経っていた。
 海上都市アトランティスは先ほどの戦闘行為に抗議をすると言っているがテロリストであるバイラムを匿っ
たという事実と今回の後始末のため、抗議は有耶無耶のまま終わるのは誰の目にも明白であった。
 そして、ボルスとファルたちはフリューゲルスのブリーフィングルームに集まっていた。
412創る名無しに見る名無し:2012/11/05(月) 11:04:40.81 ID:zdgb8bxL
 全員が目の前にいる女性、カミーラへ視線を注いでいる。カミーラはあわてた様子もなく、ひっそりとした
様子で座っていた。先ほど、彼女が知り得る情報を話し終えたところであった。
「以上が私が知っている情報です」
 カミーラがそう言うとボルスは大きくため息をついた。
「なるほど、良く分かりました……」
 あまりの事に気がどうにかなりそうだった。目の前に居る女性は異星人で今回の戦いを仕組んだのは三強の
政治家たちであり、バイラムは外宇宙を探査するために呼び出された宇宙飛行士だった。そして、異星人との
交渉が決裂したため幾つ物市民の命が失われた。
 たったそれだけなのだ。それだけのために……。
 ボルスはつい歯軋りをしてしまった。言いようのない怒りが奥底から湧き上がってくる。
 口先三寸で彼らに投票した民衆は愚かななのか? 世のため人のために働くと言うのは意味がないことなのか?
 もしも暴れてもいいというのならば机を拳で叩き壊し、椅子を壁に投げつけたり、モニターを全て壊したかった。
 でもそうはしなかったのは本当の敵を見つめ直さなくてはいけないからである。
 軽く一呼吸を置き――。
「それで……?」
「それでとは?」
「事の顛末は理解できました。しかし、あなた方のことを我々はよく知りません」
 ボルスが言いたいのはアンギュロス側はどんな対応を示しているのか、という事である。
 もしも戦いが続けばこちらは確実に負けるだろう。バイラムが量産機、しかも今も各都市へ進撃をしている。
 何とか和平に持ち込みたいというのが本音であったが今の彼の心は友の敵と軍人としての使命で揺れていた。
 少なくともあのセルという女を討ち取らねば気が済まん。
「そうですね、現在のところほとんどコールドスリープをしています」
「ほとんど? そちらは一体何人居るんですか??」
「人口はおおよそ七十億程度です」
 この言葉に全員言葉を失った。彼女が宇宙の放浪者で火星を欲しがっていることは理解できた。
 しかし、その数は地球の人口とほぼ同じと言い放ったのだ。
 もしも目覚めたとするなら地球へと襲い掛かってくるのではないか、いやカミーラのように地球へと共住す
るものもいるだろう。だが、割合を考えれば数億にも上るだろう。
 そんな空気の中、すかさずマールが言葉を続けた。
「では、貴方達の方で動いているのは?」
「私を含め、ほんの百名ぐらいでしょうか?」
「百人ねぇ……」
 ファルは頭をかきながら言葉を濁した。
 ファルと同じようにマール、ボルス、ビスマルク隊の面々もまたお互いに顔を見合わせていた。
 一堂の中に流れていた空気は”信じられない”だけであった。。
 地球が手引きしたのは理解できていた。だが、あまりにも人数が少なすぎるのだ。
 百人、決して多くもない数字なのだがどうにも全員納得がいかなかった。
 その証拠に顔をしかめている者、彼女に疑いの眼差しを向けている者、新手のジョークだと思っている者。
 多種多様な反応を示していた。カミーラ以外の人間はそれだけの人数で地球人類の数割の命を持っていかれた
ことが信じられないのであった。
「もちろん、動いているもの全てがこの計画に賛同したわけではありません」
「まあ、当然っちゃあ当然だと思うけど……んで? あんたはなにを担当してたの?」
「一応、条約の調停係を務めました。結んだのはおおよそ五年前ぐらいでしょうか?」
「五年前…か……」
 ボルスは感慨深そうに昔を思い出した。
 丁度、あの頃は軍に対して風当たりが強かった。戦争需要は非人道的、国を食い物にしている、など沢山の
批判を浴びていたことをボルスは覚えていた。当時、軍に入るという事を両親から反対されたのも今でも覚えていた。
「調停係って事は政府との交渉をしたってことですよね?」
「ええ、駆け引き……らしいことはほとんどしてませんね。火星の開発は困難を極めていたらしいですから」
 火星の状況は思ったより芳しくなかった。理由は簡単、これといった物が何一つなかったからだ。
 火星の石自体も現在では価値が薄く、土地自体も作物が育たない問い状況であった。
 そのため、スポンサーがなくなり、最低限の基地を残し消え去ろうとしていた。
「今回の件が終われば火星は私たちのものになるはずでした……が、こうなってしまった以上戦争は避けられません」
 カミーラの言葉がボルスたちにのしかかった。約束を破った彼らに対する報復は筋が通っているからだ。
413創る名無しに見る名無し:2012/11/05(月) 11:07:56.25 ID:zdgb8bxL
 が、だからといって民間人への攻撃は許されないだろう、と思うボルスであった。
「それで彼ら……でいいのかな? とにかく向こう側は和平をするつもりはあるのでしょうか? 再交渉って
いう形になりますけど、少なくともお互いに戦闘を続けるメリットはないと思うのですが……」
 マールの言葉にカミーラは少し戸惑ったような顔をするが首を軽く横に振るとすぐさま口を開いた。
「残念ですがおそらくはないと思われます」
 カミーラの言葉にマールは首をかしげた。ボルスも腑に落ちないらしく眉間に皺を寄せている。
 戦争を続ける理由は二つ。資源を求める「資源奪取」宗教のような「正当性の証明」が一般的なのだがカミ
ーラたちはそうではないらしい。
「どうして?」
「都市部を襲った時点で既に交渉の席は無くなったと判断します。無論、組織が変わったからと言って人間が
変わった程度では向こうは納得しないでしょう」
「えっと、つまり?」
「この戦いを終わらせるにはあちらのトップを殺害するしかありません」
 カミーラの言葉に全員が騒然とした。
 彼女が言った言葉は降伏は認められない。という意味なのだから。
 しかも政治ならば落とし所を決めるのだがそれすら出来ず、どちらかが滅びるまで戦争は続行するという意
味がある。そこに終わらせるゴールはなく、ただひたすら屍の山を作る事となるのだ。
 それだけではない、最悪なのはあのバイラムが相手なのだ。
 口では言わないがおそらくバイラムの数はADAM乗組員と同意とするならその数は数十機に及ぶ。
 そしてそのバイラムの壁を突破し、敵の総大将の首を取る。
 あまりの事にマールもボルスもファルもみんな口を閉ざしてしまった。
 空気を打破するためにボルスは苦し紛れに言葉を並べてみる。
「と、ところで彼女のバイラムといい、初代のバイラムといい、あの血管のようなラインはなんだ?」
 前々から気にはなっていた。あの状態のバイラムは異常ともいえる機動力を有していた。
 戦い方もより凶暴性や感性が増し、ボルスたちは一瞬でも気を抜いたら死んでいただろう。
「EX1、正確な名前はエクストリームアクセルワン。強襲用の短時間戦闘形態です、リミッターを解除する
事により一時的に戦闘力を上げるのです。発動にはタイムリミットがあるので使い方は限られていますが……」
「それは理解しているが……」
 耐えられるのか? とてもじゃないがタイムリミットがついているとは到底思えなかった。
 最初のバイラムとの決戦で見せたあの力はあまりにもでたらめ過ぎた。
 一方的といっても過言ではない。空母を何隻も落とし、PMが紙切れのように千切れ飛ぶ。
 目で追うことは絶対出来ないだろう。明らかにマッハを超えている。
 同じスピードであったとしてもそれ以上の”何か”を隠し持っているのは確実であった。
「やってもらわなければ困ります」
 不安そうな顔をしているボルスをばっさりと切り捨てた。
 無論、ほかならぬ彼女もまたそう思っているのだろう。
「……苦しい戦いだな」
「ええ……」
 ボルスとマールは事態の再認識をする。もはや国の垣根といった物はなくなり、あるのは事態を打破するた
めにどのような手段をとるか、だけであった。
 ただし、その手段はどれを選んで茨の道である事は全員、理解をしていた。
「すみませんが……そろそろ」
 カミーラは手を上げて話の終りを申し出た。隊員たちの顔には長話で疲れの色が見え始めている。
 ファルもマールも考えをまとめたいという顔でカミーラを見ていた。
「ああ、引き止めて悪かった」
「いえ、お気になさらず」
 カミーラが頭を下げるとボルスもまた同じように頭を下げた。

「はぁ……はぁ……」
 ブリーフィングルームを出たカミーラの額には脂汗が浮かんでいた。
 足取りは重く、ふら付いた様子で通路を進んでいく。
「おい、大丈夫か? 顔が真っ青だぜ」
 後ろから声をかけられた。振り向くとそこにいたのはアジャムであった。
 彼はフリューゲルスの中を歩き回っていたらしい。
「だ、大丈夫です……」
「……なんか気晴らしでもしようぜ」
「それなら……フェンシングを……」
「フェンシング?」
 突然の提案に少し戸惑った。青い顔をしているのは体調不良だと彼は決め付けていたがまさかスポーツをす
るとは思っていなかった。あごに手をやり少し唸ると彼女は懇願するかのようにアジャムを見つめる。
414創る名無しに見る名無し:2012/11/05(月) 11:08:51.75 ID:zdgb8bxL
「だめですか?」
「いや、別にかまわねぇが」
「ありがとうございます」
 部屋に行くと誰でも使用できるのかスーツからメットまで全て用意されていた。
 サイズも男性用のXXLから子供用のSSまで完備されていた。
 洗濯技術が進んだ昨今では自動洗浄機能がついている事も珍しくはない。
 ちらちらと部屋全体を見渡す。一般的な体育館としてはそう広くはない物の戦艦の部屋しては別格であった。
「あーあ、うらやましいねぇ。傭兵はこういうところをまったく使わせて貰えないんだよな」
 傭兵は待機室と割り当てられた部屋、そして自分が乗るPM。それ以外は立ち入り禁止の命を受けている。
 理由は簡単だった、自分の国の軍事機密を守るためである。が、カミーラのおかげとマールの申し出により
娯楽施設が開放されているのだ。
「それでは……」
 カミーラが器具一式を手にとるとカーテンを引こうとする。がそれに待ったをかける。
「何だよ一緒に着替えるんじゃないのか?」
 アジャムの言葉にカミーラは冷めた言い方で返してきた。
「慎みをなくしたら人間は終りですよ」
「ひっでぇの」
 そう言いながらしぶしぶとお互い着替え始める。
 正直に言えばアジャムはフェンシングをやったことがなかった。柔道、いやサブミッションとして投げ技や
締め技といった物を習得はしているがスポーツの経験はほとんどなかった。バスケットもサッカーも競技とし
ては認識しているがルールや面白さといったものを全く理解していなかった。
「……きもちわりぃ…」
 アジャムは思わず顔をしかめてしまう。タイツのようにぴったりとくっつくスーツがどうにも好きになれない。
 そしてカーテンが引かれるとそこには白いスーツを着たカミーラが居た。髪の毛は束ねており、すらりとした
シルエットが彼女の美しさを表していた。
「では始めましょう」
「あいよ」
 二人は白癬が書かれたい地に付くとそれぞれ構えを取る。だがアジャムの構えはおかしなものであった。
 サーベルを両手で持ち、神主のように左右に振り回す。足も蟹股で蛇を捕まえた男、といった感じであった。
「……ポーズが違います」
「そうか?」
「フェンシングのルール、知ってますか?」
「しらねぇ」
 すっとぼけた様子のアジャムにややあきれた顔をする。
「なら、最初から説明をしましょう、まずは――」
 一通り説明されると大きく頷く。が、頭ではほとんど理解はしていなかった。
 せいぜい、頭から上をやられたらダメ。反撃は相手の攻撃をいなしてから。合図をしてから始める。
 異星人である彼女のほうが地球の文化に詳しいのはどことなく滑稽に見えた。
 二人は再び所定の位置に付くとサーベルをお互いに向ける。
「では、参ります」
「いつでもどうぞ」
 その言葉と共にシグナルが点灯する。赤から青に変わると稲妻のように剣がぶつかった。
「うお!」
 アジャムは少し躊躇した。理由は簡単、彼女の攻撃が思ってる以上に速かったから。いや、速いなんてもの
じゃない、明らかに力強い男の攻撃だった。が、アジャムも負けてはいない、ぎりぎりのところで飛んでくる
攻撃を紙一重でかわしていく。フェンシングのルール上、左右に大きく動く事は出来ないが最小の動きで徐々
に追い詰めていく。
「もらったぜ!」
 一本をとったのはアジャムであった。彼の斬りが見事、彼女の方に決まったのだ。
「……まだこれからですよ」
 そう言って再び彼女は構えを取る。アジャムもそれに習い再び構えを取る。
 二本目が始まった。今度はこちらの番と言いたげに攻撃を仕掛けるがことごとく避けられていく。
 大雑把な動きである事を自覚するが攻撃を止めるわけにはいかなかった。
「フフフフフ……」
 突然彼女が笑い出した。声を堪えてはいるが腹のそこから湧き出るかのような笑い声に不気味さを感じた。
 そして、ルールを無視するかのように力任せにサーベルを振るってくる。目は血走っており、ずっと笑った
ままであった。 アジャムは知っている。この手の目をして奴はほとんど正気を失ってるという事を。
「お、おい……やめ――」
 静止の声も届かずカミーラはどんどん激しく剣を振るった。サーベル同士が激しく衝突する。
 激しい剣激が飛んでくる。いや、激しいと言っても異常だった。あからさまに殺意を含んだものである。
415創る名無しに見る名無し:2012/11/05(月) 11:10:38.21 ID:zdgb8bxL
「おっと……」
 バランスを崩し、思わずしりもちをついた瞬間、カミーラの突きがアジャムの顔面を捉えた。
 あまりの激しさにプラスティックが割れた音と共に防具にヒビが入る。が、アジャムはとっさに体を倒し、
ヘルメットと体を見事ずらし、事なきを得た。
「……あっぶねぇ……」
「すみません」
 荒い息を整えながら防具を脱ぐ。長い髪を掻き揚げると首筋や額には珠のような汗が浮かんでいた。
 顔は先ほどのような青い顔ではなく少し気が晴れたのか少し明るい顔になっていた。そしてサーベルからヘル
メットを抜くと軽く息をついた。
「とにかく、休憩しようぜ。コーヒーでいいか?」
「はい」

 缶コーヒー受け取ると近くにあるベンチに座った。彼女の気分は安定したらしくいつもの顔色に戻っている。
「…なあ、あんたらの事を聞かせてくれよ」
 常々思っていた事を口にする。異星人だという彼女についてアジャムは、いや、地球人は誰一人として知らない。
 せいぜい、火星を欲しがっている異星人という印象はあるがどこで生まれどのように育ったのかはまった分
からず、謎のベールに包まれた存在であった。
「……なにから話せばよろしいのでしょうか?」
 彼女は軽いため息をついて、少し苦い微笑を浮かべる。突然の提案に戸惑っているようであった。
 長い間、彼女と一緒に居るがお互いの過去に関して言えば基本的に触れずに居た。それはお互いに傷を持っ
ているというのを察したからである。
「そうだな……まずはあんたはどこで生まれたんだ?」
「私は育成カプセルで生まれました」
「育成カプセル?」
「この星にもあるのでしょう? 試験管ベビーが」
「まあ、そうだけどよ」
 試験管ベビー、元々は不妊治療の一環として行われる処置だ。現在では試験管で生まれる人間は数百に登り、
一般家庭でも安価に行われるようになった。もっとも、試験管ベビーは犯罪率が高い、人間らしい感情が足り
ないという風評は良く聞かれるが。
「そしてそのまま学習コンピューターによって育てられました。その際、私にはある力がありました。一種の
才能といっても過言ではありません」
「才能?」
「戦う才能。バイラムUは元々私専用の戦闘機です。一部のエリートによってのみ与えられる特別な機体なの
です。こちらでは特別記念車とほぼ同じですね。中身もかなり上等なものを使ってます」
「特別記念ねぇ? じゃあ、バイラムっていうのはそっちじゃ普通ってことなのか?」
「普通ですね、そしてそれに乗って戦う事もまた……」
 カミーラは少しトーンを落としてうつむいた。恐らく、長い間ずっと戦ってきたのだろう。
「子供の頃から戦いに明け暮れていました。昼も夜も関係なく、ただひたすら……。でも、不思議と恐怖はあ
りませんでした。後ろめたさや良心の呵責すら……あるのは鮮血と勝利の快楽だけ、一人殺せば私の身も心も
満たされるのです。ほとんど性欲のようなものでした」
「はぁん」
 カミーラは意を決したように言うがアジャムは我関せずと言った顔で聞いていた。
 下手に口を出すつもりは毛頭無かった。深入りすれば彼女を傷つけるのをアジャムは知っていた。
 聞きはするがよっぽどな事がない限り立ち入ったことを聞かない、それが彼のルールだった。
「ですが、私は障害児でした」
「障害児? どこがだよ?」
「戦うという行為に疑問を持っているからです」
「それがどこがおかしいんだよ?」
「私たちの世界では戦いは常に日常茶飯事でした。この星に来るまで”平和”と言う言葉は辞書にのっていないのです」
「ふぅん、俺らも似たようなもんだぜ?」
 アジャムは彼女と出会う前の状況を思い出す。あるものは利権のため、あるものは正義のため、あるものは目
障りであるため。例を挙げればきりがなかった。それに対し嫌悪も侮蔑もしなかった。それが傭兵の仕事である
と心のどこかで割り切っていた自分がいたのだから。
「貴方たちの戦争は“結果”の奪い合いであって、私たちの戦争とは大きく違います」
「どういうことだよ?」
「簡単に言えば逆なんです。正当性や資源を奪い合うために戦争をする、のではなく戦争に勝ったら商品とし
て資源を貰うと言うことです。こちらの世界のように人々を扇動する必要ないのです」
 彼女の倫理では戦いを始めるのに大義や正義は必要がなかった。必要なのは”敵”という存在のみ。
 勝ったから土地や資源を貰うのであって、自分たちが生きるために戦うというわけではなかったのだ。
「つまり、戦争が先ってことか?」
416創る名無しに見る名無し:2012/11/05(月) 13:14:39.17 ID:tSyuCR3L
W
417創る名無しに見る名無し:2012/11/05(月) 13:22:06.22 ID:tSyuCR3L
「はい……そして、そうやっていくつも文明を積み重ねてきました」
 ”敵”に勝つためにコンピュータを作り、”敵”に勝つために銃器を作り、”敵”に勝つために教育を施し
てきた。残酷とも思える反面、アジャムは彼女たちのほうがよっぽど善人のような気がしてきた。敵の存在に
より生き延びようとするシンプルな構造にある種の美しさを感じ取れる。
「核兵器は?」
「当然知識はあります。もっとも、それと同時に宇宙開発の技術が進みました」
「逃げ出す準備は出来てたってわけか?」
「はい、その結果なのでしょうか? ついに私たちは母星を失いました。我々の”勝利”として」
 アジャムは想像できなかった。普通なら終わるであろう戦いを彼女たちは止めなかったのだ。
 しかも、自分たちの勝利という言葉にめまいを覚える。このままだと地球が戦場になるのは明白すぎた。
「宇宙に逃げた私たちはあいもかわらず戦いを続けました。その結果、星という星はほとんど壊され、ついには」
「ついには?」
「この宇宙全体に戦いが広まったのです」
「スケールがでけぇな、おい」
「……永劫に続くかに見えた戦いはそのうち種の限界、というものにぶつかりました」
「どこがだよ?」
 とてもじゃないがそうは見えない。子供が減ったことを種の衰退といわれたこととがあった、実際は社会学
的観点から、数をむやみに増やさないだけだという事が発表された。
「男性が滅んだのです」
「はぁ? ……なるほどな、それで試験管ベビーってわけか」
 対となるものがいなくなれば当然その手の科学が発達する。
 生き残りをかけている以上、これは運命だったのだろう。
「はい、男がいなくても子供を作る事が出来るようになった瞬間から既に……」
「ところでさっきのは……」
「先ほど言いましたよね、戦うのは本能であると」
「ああ、俺たちにもあるぜ、闘争本能って奴が」
「それとは違ったものです、どちらかと言えば殺戮本能、ですね」
「殺戮本能?」
「私たちは命を奪う事になんとも言えない幸福感を得るのです、たとえゴキブリでもネズミでも殺せば幸せなのです」
 彼女は少し落胆したような顔でつぶやいた。恐らく彼女はこちらの価値観に染まりすぎたのだろう、殺人を
基本的に否定する地球人と比べれば自分たちの野蛮さに嫌悪を抱くのは当たり前だった。
「知っていますか?」
「なんだよ」
「……真面目に聞いてください」
「へいへい」
 耳を書きながらアジャムは大きなあくびをした。
「私たちにとって最高の愛情表現は好きな相手を殺す事なのです貴方たちならば殺人に対して罪の意識を持つ
のでしょうが私たちにとっては喜びなのです」
「死ぬほうはたまったもんじゃねぇな」
「いいえ、死ぬほうもまた喜びなのです、そして殺すほうも……」
 伏せ目がちに彼女はそっとつぶやいた。

 マールがブリッジに入るとオペレーターが早速と言わんばかりに報告をしてきた。
「大佐、本部からの帰還命令です。イングラントにある近くの基地へ帰還して欲しいそうです」
「わかったわ、それでバイラムのほうは?」
 そのまま艦長席に座ると各国の状況を問いただす。アトランティスにいた時間はそう長くはなかったが日付
が二回ほど変わっている。状況ががらりと変わっている場合も想定していた。最悪の想定である全滅を覚悟し
ている。もっとも、その最悪な展開は免れてほしいと思っているが……。
「全機存続、代わりはないそうです。無人機で時間稼ぎはしてるそうですが……」
「そう……」
 この報告にマールは目を伏せた。死者の数は以前増え続けている。バイラムを倒す手段が少なすぎるこの状
況下では確実に消耗は避けられないだろう。
「それと、ビスマルク隊のミスリーア少尉とともに出頭命令が出ています」
「出頭命令?」
「はい、帰還後、最優先でのことで……」
 恐らく自分をアトランティスに送り込んだ男だろう、とマールは理解していた。
 聞きたいことも山ほどある以上、ここにとどまっているわけには行かない。
「わかったわ、フリューゲルス、出航!」
「了解」
 沈んだ気分を吹き飛ばすかのように大声で号令をかける。
418創る名無しに見る名無し:2012/11/05(月) 13:31:44.35 ID:tSyuCR3L
 フリューゲルスは発進した。イングランドの都市に向かって。
中編に続く
419創る名無しに見る名無し:2012/11/05(月) 13:34:33.56 ID:tSyuCR3L
以上です。すみません、かなりぶつ切りになってしまいました
皆さまに深くお詫びいたします
420創る名無しに見る名無し:2012/11/05(月) 16:48:18.99 ID:RCU/4myv
>>419
 投下乙です!
 それでは、ゆっくり読ませていただきますね!
421創る名無しに見る名無し:2012/11/05(月) 22:49:58.72 ID:zdgb8bxL
久々に投下しましたがさるさんと連投規制にてこずりました
どうやら二時間後にさるさん解除がされるそうですが
連投規制も存在するみたいで8回からは投下が出来ませんでしたね
422創る名無しに見る名無し:2012/11/06(火) 19:28:08.95 ID:LQK2K4Qi
 いつのまにやらそんなに厳しくなってたんですね……。これは面倒なことになった。
423創る名無しに見る名無し:2012/11/06(火) 20:15:26.64 ID:1huOqH9S
投下乙です
感想は最終回分まとめたほうが良いかな?
424創る名無しに見る名無し:2012/11/06(火) 22:36:25.44 ID:ILdFEzb3
シンブレイカー&バイラムの人
投下乙!

感想はもう少しお待ちを……
425創る名無しに見る名無し:2012/11/07(水) 21:07:31.78 ID:pa9tcEbR
 とと、今さらですが、バイラムの人オカエリナサト!
426創る名無しに見る名無し:2012/11/08(木) 15:19:58.97 ID:WDCKXmtD
※ この投稿はフィクションです


新番組【正答機神セイカイザー】!!


「我ガ問<j答エヨ……」

突如として世界を覆い尽くした、謎の生命体エニグマ=B
すべてが未知なる存在に対し、人々は己が力を結集して明日なき戦いに挑む。

「答えてやろう……! 俺の名は、大星カイ!」

あらゆる謎に対し完璧な正答を叩き出す男!
ミスターパーフェクト・大星カイ(だいせい・かい)と、正答機神セイカイザー!!

「答えてやろう……! 乳輪大納言」

あらゆる謎に対し何もかもを間違える男!
常識への反逆者・大町ガイ(おおまち・がい)と、誤答魔神マチガイオー!!

相対する二人の男が出会う時、生じた波紋はさざ波となり、
やがて全世界を変える巨大なうねりへと変わっていく!

「貴様は間違っている! 何もかも!」
「正しいことばかりして満足かい、お坊ちゃんよぉ!」
「エニグマはなぜ人々を襲うんだ……?」
「謎は謎のままにして置いた方が良いと思わんかね?」
「それでもあたしは……答えを知りたい……!」
「正しくとも、」
「間違いでも、」
「それが人々の欲した答えの正体であるならば!!」

「蘇るぞ……いにしえの巨神……ダイモンダイオーが……!」

正答機神セイカイザー
Comming Soon……(嘘)


☆CAST☆
大星カイ(だいせい・かい)
大町ガイ(おおまち・がい)

名瀬なのか(なぜ・なのか)

大当理一郎(おおあた・りいちろう)
只式道理(ただしき・どうり)
阿山千景(あやま・ちかげ)
Ms.リード(みす・りーど)
427創る名無しに見る名無し:2012/11/08(木) 19:00:10.65 ID:psm2yLAm
Ms.リード、本当にいそうだなw
428創る名無しに見る名無し:2012/11/08(木) 19:41:35.97 ID:rq3nIcVu
紙使い?
429創る名無しに見る名無し:2012/11/08(木) 20:18:24.98 ID:GiP5zdWz
 キャラの名前にクスッとくると同時に感心してしまった……ッ!
430バイラムの人:2012/11/08(木) 21:50:00.57 ID:RdfXyWYE
>>423
ご自由にどうぞ
でも最終回を全て投下するまでかなりの時間を要すると思いますのでご注意を

>>425
師匠! お久しゅうございます!

>>426
それで、本編はいつ投下なさるんですかな?(ニヤニヤ
431創る名無しに見る名無し:2012/11/08(木) 23:23:13.92 ID:AlSPAa+S
大問題王から出された最終問題、答えなければ未来は滅びる、そう宣言された彼らに答えは導けるのか?

正答機神セイカイザー【最終回】
ファイナルアンサー承認!
くらえ大問題王、これが俺たちの答えだ!の巻

大星カイ 「突然だけど俺、チカのことが好きだ」
阿山千景 「え? あ、あたしはカイのことなんて、全然好きじゃないんだからね! (赤面)」
名瀬なのか 「あたしガイのお嫁さんになりたい!」
大町ガイ 「な、なに言ってんだ、俺なんかぜんぜんたいしたことねーよ (挙動不審)」

大問題王 「ふふふ、どうやら胸の高鳴りの正体には気付いたようだな
だがもしこの問題をなかったことにすれば、未来は閉ざされ過去に縛られるだろう、ミスリードのようにな!」

ミスリード 「いやぁ! あたしだって昔から道理のこと気になってたけど、でも彼は結婚してるの!
不倫になっちゃう、だからずっと言えなかったのよ」
只式道理 「あのさ、言っとくけど俺の嫁ってズゴックだよ?」
ミスリード 「ズコー(AA略」

大問題王 「みなさん幸せゲットおめでとう(拍手)」大当理一郎 「わたしはどうすればいいのだ…妻に先立たれてしまった、愛してるとちゃんと言えば良かった」

大問題王 「その言葉を聞きたかったのです、あなた」
理一郎 「あなた!? まさか、おまえは…」

理一郎の妻 「はい、わたしはあなたの答えを聞きたくて大問題王になったのです
エニグマとは愛の言葉を知らずに死んだひとの亡霊
これで解放されます
なのにどうしてでしょう
これでやっと天国にいけるのに、あなたのいない天国なんて淋しいです
だってわたしにとって天国と呼べる場所は…」

【終】

はしょりすぎにも程があるが以上だ。
432創る名無しに見る名無し:2012/11/08(木) 23:59:21.71 ID:WDCKXmtD
>>430

理一郎「謎は謎のままにして置いた方が良いと思わんかね?」
なのか「それでもあたしは……答えを知りたい……!」

???「どし難きは人の心か……! なぜ魂の安寧を放置してまで真実を求める……!?」

ガイ「俺たちが求めたもんが真実とはかぎらねぇ!」
カイ「だが人々の心の中に芽生えた答えを否定することは、誰にもできない!」

りんご「そうです。>>431がたどり着いた回答。それもまた、ひとつの答え」
理一郎「おまえそう言う名前だったっけ」

千景「あなたの中にある答えを、大切にして!」
道理「ついでに言うとバイラムの10話後半とかwikiで観れるようにして!」
433創る名無しに見る名無し:2012/11/09(金) 12:32:20.29 ID:EuKXeIsk
>>433
ごめんなさい
読めるようにしました
あと11話も追加しました
434創る名無しに見る名無し:2012/11/09(金) 17:41:53.38 ID:fxc49Fgj
>>431-432
 投下乙です!
 それでは、ゆっくり読ませていただきますね!

 いきなり最終回とは大胆なw
435創る名無しに見る名無し:2012/11/10(土) 02:24:20.64 ID:DLvQmWzD
>>433
読んだお。というわけで機動修羅バイラムの感想を。

タイトルからボトムズみたいな感じをイメージしていたら、ダブルオーな感じから始まった。バイラムという謎の正体に迫るサスペンスと、複数の視点から描かれる群像劇が面白い。
群像劇特有の、「客観的な善悪がなく、みんながただ懸命に生き抜く」というストーリーがきちんと生きていて良かった。
序盤から中盤にかけての、まったく正体がつかめず破壊と殺戮を繰り返すバイラムの不気味さは、最近とみに見かける群体知性体に通じるものがあった。
んだけど、バイラムは一機しか存在しないことと、既存の兵器という認識が可能な点が群体知性体ネタとことなってて、また別の類の恐ろしさを演出するのにも成功していたと思う。たぶん幽霊船が近い。
その不気味なバイラムに対して、中盤以降少しずつ明らかになっていく謎へのドキドキ感と、そのバイラムが実は量産型に過ぎないという絶望感のバランスも良かった。
まぁ、もっと国家間の対立やイデオロギーの衝突を見てみたかったとか、祐一くんの空気臭がすごいとか、気になる点もあったんだけど全体的には上述の点とかがすごい良かった。リーシェン軍曹ツンデレ可愛い。
現在最終回を投下中ということで、楽しみにしてるよ!
436創る名無しに見る名無し:2012/11/10(土) 20:36:57.79 ID:2oyOK4no
>>435
なんか、すごい量の感想だな
避難所にもあるし……
住人の一人として言わせてくれ
本当、読んでくれてありがとう!
437創る名無しに見る名無し:2012/11/10(土) 21:01:12.51 ID:d8gt6RIB
 >>435の方、感想ありがとうございます&おつかれさまですー。
 やっぱり感想もらえるとやる気出るね!
438創る名無しに見る名無し:2012/11/10(土) 22:16:49.21 ID:DLvQmWzD
まぁおいらもss書きの一人として感想をもらう嬉しさは知っているしね。
もちろんみんな気負わずに書ける感想を書いてくべきだと思うけど。
439創る名無しに見る名無し:2012/11/11(日) 00:37:30.73 ID:8/fyRLvs
スレのハッテン(意味深)の為には「感想! 書かずにはいられないッ!」というのが理想ですな。
440創る名無しに見る名無し:2012/11/11(日) 18:26:03.37 ID:BsdauPKO
カイ「みんな、一年間正答機神セイカイザーを応援してくれてありがとう!」
ガイ「来週からは、機神カイザーシリーズの最新作が始まるぜ! これは本当だ!」
なのか「本当に本当なのかな……?」
カイ「本当だ。舞台はセイカイザーと打って変わって荒廃した地球」
ガイ「第六文明周期と呼ばれる時代、砂漠を横断する一人の快男児がいた!」
なのか「本当……なのかな……?」
ガイ「嘘じゃねぇよ!」
カイ「本当だ。その名はカンジ」
ガイ「人々の心に潤いを与えるため、カンジは走る!」
なのか「ほんt……」
ガイ「疑いすぎだろ!」
カイ「日頃の行いだな……」

道理「あー……ところでもうテープないぞ」

ガイ「なのかがくだらねーことばっか聞くから!」
カイ「ガイを連れてきたのが間違いだった……」
ガイ「へっ、大正解ちゃんが間違い犯してやんの! ざまぁ!」
カイ「貴様っ!」
なのか「えー、来週から始まる機神カイザーシリーズ第三弾、きょ
「やんのかテメェ! マチガッテイオォーッ!」
「相手になるぞ! ダァイセェイカァイザァーッ!」
なのか「イザーを、よろしくおねがいしまーす」



というわけで近日、早ければ明日にでもss投稿しようと思うんすよ。
2chで投稿すんのは実は初めてなのでやらかすかもしんないけどよろしくネ。
441創る名無しに見る名無し:2012/11/11(日) 20:58:55.31 ID:QiKitvzd
>>440
 なんと!
 楽しみに待ってますね!
442創る名無しに見る名無し:2012/11/12(月) 21:38:38.64 ID:ksrcBraA
 投下来るカナー。
443創る名無しに見る名無し:2012/11/12(月) 22:48:22.25 ID:zm2NvN0J
楽しみダナー。
444創る名無しに見る名無し:2012/11/13(火) 19:26:39.77 ID:2NKrT1bC
27800円のノートPC持ち込んでを購入したぜ!書くぜ
445創る名無しに見る名無し:2012/11/13(火) 20:53:43.43 ID:PYuQ8ENr
 楽しみに待ってるぜ!

 ああ……そろそろ手がかじかんで作業がし辛くなってくる時期ですね……。
446創る名無しに見る名無し:2012/11/13(火) 22:42:11.52 ID:M+3gUQfq
持ち込んでを購入したぜ! が何がなんだか分からないがとにかくスゲェーや!
447創る名無しに見る名無し:2012/11/14(水) 08:42:07.12 ID:HBUqDJVM
 解読班ッ はやく暗号の解読をッ!
448創る名無しに見る名無し:2012/11/15(木) 21:27:20.67 ID:mwgFpDLa
ぅゎょぅι゛ょっょぃ
449創る名無しに見る名無し:2012/11/15(木) 21:27:59.85 ID:mwgFpDLa
誤爆った!!?
本当にすみません!
450創る名無しに見る名無し:2012/11/15(木) 21:49:52.44 ID:xy1Ukc3C
さぁ!新しいお題だ!!
451創る名無しに見る名無し:2012/11/15(木) 21:55:27.94 ID:EGwp6OTS
遥さんの三つ編みが解かれた時、ロボスレは壊滅するッ!
452創る名無しに見る名無し:2012/11/15(木) 23:32:22.65 ID:0w7gPvvH
444だかいまになっておかしいことに気づいた
あまりにもてんぱっていた
正しくは、念願のノートPCを購入したから書くぜ
ということで、書いてみたが、まったく書けないぜ!
453創る名無しに見る名無し:2012/11/16(金) 15:01:12.23 ID:3H1snvnn
自分も書いているつもりが書いていないという状態によくなる

な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
おれも何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
454創る名無しに見る名無し:2012/11/16(金) 22:46:45.32 ID:tA+5MBOQ
 これまでのあらすじ
 ロボスレ大戦が勃発した。そして、俺は一条遥さんと一緒に戦う事になりました。以上。

 え? もう少し詳しく書けって? ならほんのさわりだけな
 俺こと櫻井康一は道端のババアに本を売りつけられた。
 黒い表紙、金ぴかの文字、悪趣味にもほどがある。
 そして、俺は本に書いてあった通りに異世界のお姉さんを呼び出そうとした。
 はっきりといおう、俺は姉フェチだ! 姉が大好きだ! 具体的に言えば――。
 が、来たのはこんなちんちくりんな女の子だった! 唯一の上の部分は年齢! タダそれだけ!
「折るよ?」
 すみません、遥姉さん。
 んで、呼び出した人間は何らかのロボットに乗っていることが多かった。
 呼んだ奴を”オペレーター”と呼び、呼ばれた奴を”ウォーリア”と呼ぶ
 遥姉さんもその一人……そして……俺たち以外のオペレーターコンビもまたいるわけだ。
 そいつらも軽く紹介しよう。

 オルトロックと殺人鬼・久瀬元哉
 黒峰潤也と女刑事・真崎加奈
 悪山悪男と俺の先輩・浅倉賢治 
 重歩兵中隊と姉御・松井理香
 若本正成とプロフェッショナル・マードック=ブリードマン
 アルメリアと熱血暴走少女・レン・陶山
 ジョーと謎の親父・土井宗次朗

 ちなみ俺以外の全員には全くと言って良いほど常識というものが無い。
 最初の奴らは殺人鬼だ。常識なんて糞喰らえ。
 真崎はとんでもない女刑事。いくらなんでも捜査中に得た情報で政治家を脅すなんて酷すぎる。
 浅倉先輩は筋肉バカ。 いや、何を言えって言うんだよ。
 松井の姉御はまんまだな。中隊の奴らがカワイソ過ぎる……。
 マードックは何を考えてるのか分からない。遥姉さんは強いヒトと評価をしているが。
 レンに関して言えば触れたくない。美少女なんだけど裏表がある性格がきつい。
 そして最後の謎の親父。本当に謎だ。名前意外全て謎。何者なんだよ、この親父。

 そして、こいつらと戦っていかなきゃいけないんだ。
 オペレーターが死ぬとウォーリアの能力がもらえ、ウォーリアが死ぬとオペレーターは死ぬ。
 最後まで生き残れば世界をありのままにできるっていう話だ。 ありきたりといえばありきたりだがな。
 まあ、色々あるんだろうけど 俺たちの戦い始まったばかりだ! 
 完!

「康一、ごまどうふは?」
「わすれました!」
 メキョ!

 というのを妄想しました
455創る名無しに見る名無し:2012/11/16(金) 23:56:14.49 ID:tLnsckj3
そこまで出来てるんだねェ、よし

書 く ん だ (期待の眼差し
456創る名無しに見る名無し:2012/11/18(日) 23:41:39.24 ID:wLPxZdYx
誰もいないなぁ
457創る名無しに見る名無し:2012/11/18(日) 23:46:51.32 ID:Ru4qCpIv
皆避難所で元気にやってるよ。規制民多すぎィ
458創る名無しに見る名無し:2012/11/20(火) 23:38:14.79 ID:GN9uvz9Z
            はた迷惑ロボ・キセイダー!
                  第一話!
             「とりあえずアク禁な」

……一人はつらいのぉ…
459創る名無しに見る名無し:2012/11/21(水) 00:10:26.24 ID:CMN35Vpw
おれもいるぞー!
460創る名無しに見る名無し:2012/11/21(水) 04:55:23.96 ID:KMdzIHE9
ここにもいるぞー!
461創る名無しに見る名無し:2012/11/21(水) 06:34:06.39 ID:0l/F91u8
テリーマン……!
462創る名無しに見る名無し:2012/11/23(金) 21:25:26.25 ID:k3pIFA6Z
「これは?」
「対物ライフルだ、威力と装弾数はそのままに切り詰めてデリンジャーにしてある」
「ああそう」
「捨てるなよ」
「普通捨てるだろ」
463創る名無しに見る名無し:2012/11/23(金) 22:19:22.58 ID:BfnNfC5v
ロボットSSを書いている人はやっぱりロボットを描けるものなの?
書いてみたいが頭の中でロボットをどう動かしてるのか気になって
464創る名無しに見る名無し:2012/11/23(金) 22:29:30.18 ID:h9gi4IPG
最低限のイメージが固まっていないと書けないな、私は。
何となく動きのモデルが欲しいのだったら、
リボルテックやロボット魂みたいな完成品を購入するのもアリかも。
465創る名無しに見る名無し:2012/11/23(金) 22:34:48.25 ID:BxLBIbQH
文章書けるのと絵を描けるのはまた違う脳味噌の使い方が求められるからなー
このスレはどちらも出来る凄い人が沢山いるから何となく錯覚するけどww
466創る名無しに見る名無し:2012/11/23(金) 22:36:24.02 ID:irv4HIgp
アニメじゃないからどう動いてるかなんて気にしないな、俺は
だから、おかしなところからミサイルが飛んで行ったりするけど……

どっちかっていうと動かし方はゲームから学ぶ事が多かった
スパロボみたいなSLGじゃなくてアーマード・コアみたいなアクションだとさらにイメージがしやすい
467創る名無しに見る名無し:2012/11/23(金) 22:45:13.92 ID:JikLu1qt
普通のアクションと同じように自分の身体動かしたりしながら考える
当然、人とメカとで違いはあるから、自分の身体でできない部分や、逆に自分の身体でしかできない部分もでてくるから
そこで初めて、その違いについてを掘り下げて殺陣を組んだり見せ場にもってきたり

できてないけど
468創る名無しに見る名無し:2012/11/23(金) 22:56:32.01 ID:BxLBIbQH
アドバイスって程じゃないけど巨大ロボの書き方は個人的にこんな感じにしてる

まず最初に主人公パイロットの周辺、コクピット周りとかを描写する

○○は開いている両手をグッと強く握りしめて、前を見据える。
視界に映るのは目が回りそうな様々な形状の計器類。円形型の物や正方形型の物が所狭しと並んでいる。
用途も機体の高度を知る為の物やオーバーヒートを防ぐために、機体の熱量を図る等、多岐に及ぶ。
一降りチェックを済ませて、○○は前方の大型モニターへと改めて目を向ける。

次に主人公パイロットが乗っているor敵パイロットが乗っている機体を描写する

モニターに表示されているのは、○○軍の○○。今、○○が倒すべき目下の敵、である。
鬼を彷彿とさせる様な、禍々しく尖った頭部のアンテナに、眩く紅い光を放つツインアイから只ならぬ威圧感を感じる。
威圧感を感じるのは頭部だけではない。直線を主とした、如何にも兵器らしさを誇示する様な攻撃的なデザイン。
肩より大きく突き出しているスパイクに、最新鋭のアサルトライフルが、真っ直ぐ○○を狙っている。

最後に主人公パイロットの乗っている機体を描写して、戦闘に入る

対して、○○が搭乗している○○は曲線と直線が巧みに入り混じり、まるで西洋の鎧騎士を思わせる様なヒロイックな姿をしている。
頭部より勇ましく反り立っている一本角のアンテナの下部、黒色のバイザーから、淡く水色の光が放たれる。

「行くぞ、○○!」

○○は自らを鼓舞する様にそう叫びながら、○○のレバーを大きく踏み込んだ。
○○に応える様に、○○は両手に持つ大型ソードを勢い良く振り上げた……


こんな感じに書いてたりする
本当はもっとロボットの形状を詳しく書いた方がずっと臨場感が出るし面白いんだけど、俺にその腕はな(ry
マジレスだけど、最初は有名なロボット物の小説とかを模倣するとかしてみたらどうかな。フルメタルパニックとか良い見本になると思う。頑張って
469463:2012/11/23(金) 23:28:29.40 ID:BfnNfC5v
アドバイスしてくれてありがとう。みんなロボット好きなんだなあwww
470創る名無しに見る名無し:2012/11/23(金) 23:41:12.92 ID:9JV51ayC
てst
471創る名無しに見る名無し:2012/11/23(金) 23:41:41.07 ID:BxLBIbQH
でも私的にアンドロイドの女の子とかの方が好きです///
472創る名無しに見る名無し:2012/11/24(土) 00:00:23.50 ID:f7L9Ee1o
エイダをタチコマ風に衛星通信にすればあら不思議今っぽい感じのロボシステムの出来上がり。

冗談はさておいて俺はひたすらマネキンを動かす。甲冑部分なんかは少しズレるけど大分それで自由に動かせるなぁ。
473創る名無しに見る名無し:2012/11/24(土) 12:53:07.24 ID:U6N2nNfz
ロボ知識まったくないけど完結させたぜw
474創る名無しに見る名無し:2012/11/26(月) 00:22:35.91 ID:zfpWriYb
てつてつ
475創る名無しに見る名無し:2012/11/28(水) 14:44:53.32 ID:VizmUQrq
てす
476創る名無しに見る名無し:2012/11/28(水) 20:16:21.64 ID:VizmUQrq
誰もいないぞー!
477創る名無しに見る名無し:2012/11/28(水) 22:54:15.57 ID:ZQP+RpNs
ここにいるぞー!
478創る名無しに見る名無し:2012/11/28(水) 23:41:39.17 ID:DdfT52X9
おれもいるぞー!
479創る名無しに見る名無し:2012/11/29(木) 18:41:19.32 ID:pudap/lF
変な奴がいるぞ!!
480創る名無しに見る名無し:2012/11/29(木) 18:57:25.11 ID:F9ZYqoyP
そうです私が変なおじさんです
481創る名無しに見る名無し:2012/11/29(木) 19:26:18.33 ID:6/GaNyGp
お前だったのか
482創る名無しに見る名無し:2012/11/29(木) 19:32:35.17 ID:0bJ4oAE7
この変なおじさんが最後とは思えない……第二、第三の変なおじさんが……
483創る名無しに見る名無し:2012/11/29(木) 20:04:19.05 ID:Wsde1XEE
 
 六 神
 合 体
484創る名無しに見る名無し:2012/11/29(木) 22:58:52.84 ID:VZvwETbU
なんて動かないんだ!
485創る名無しに見る名無し:2012/11/30(金) 03:24:10.67 ID:8Y8DbeWv
う、動け!
動けぇ!
動いた!!
CM!?
486創る名無しに見る名無し:2012/11/30(金) 19:39:28.63 ID:YKRsWYZc
ならばこっちはグレートゴルドラン!
弓射って終わる動かないお仕事です。
487創る名無しに見る名無し:2012/11/30(金) 20:15:48.35 ID:j/tSF4Yl
じゃあ俺はひたすらソードビッカーでも投げてるわ
488グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/11/30(金) 22:09:32.18 ID:5RzUZi3z
テスト。
これが成功したら短編投下する。
489グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/11/30(金) 22:15:18.03 ID:5RzUZi3z
 冷たい風が遥か彼方へ吹き抜けて、黒い砂漠に土埃を巻き上げた。
 蒼穹は地平の果てに下りるにつれ白んでいて、大地との境界では白と黒とが対比されている。
 大地の黒と、地平の白と、大空の青。
 見渡す限りの世界はその3色で完結していて、まるで近代美術のようだ。
 また寒風が吹き抜ける……


 枯れ草色のマントを押さえつけ、風がおさまるのを待っていた青年は、土埃が切れるとまた歩き出した。
 彼の足跡はひとつだけが黒い地平の果てから続いていて、そのことから彼がサンド・バスすら乗れない貧乏人かならず者ーー少なくとも旅人であることは判る。
 青年は太陽の日差しをゴーグルに反射させ、時々砂に足をとられながら歩き続けている。その表情はフードの影になっていてうかがい知れない。彼の荷物は肩から提げた大きな鞄だけだ。
 彼が向かう先には一本の細い塔と、いくつかの小さな建物が見える。大きな風車を取り囲む、こぢんまりした村だ。



 村の入り口には小さな看板があったが、ずいぶん長い間手入れされていないようで、一部の文字がかき消えていた。青年は屈みこんでその看板を眺めるが、すぐに読むのを諦めて立ち上がる。
 彼はぶらぶらと村の中心に向かって歩いていたが、むこうに宿の看板を見つけると、ざっとその黒い土を固めた建物の全体を眺めてから、その入り口をくぐって鈴を鳴らした。
 薄暗い店内を見渡すとまずいくつかのテーブルと長いカウンター、次にその後ろにずらり並ぶ酒の瓶が目に入って、どうやら宿と酒場を兼ねているらしいことが判る。
 時刻はまだ昼すぎなので酒場に客はいない。青年は店員の姿を探したが、間もなく若い娘が奥からひょっこり顔を覗かせた。
「すいません、少々お待ちを!」
 どうやら洗いものでもしていたらしい。エプロンで手を拭きながら彼女はカウンターまで出てきた。青年も適当な席につき、鞄を床に下ろして、フードを脱ぎ、ゴーグルを首まで下げる。

「ひと部屋、ひと晩、お願いしたいんだ。それと何か軽い食事を」
490グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/11/30(金) 22:18:10.59 ID:5RzUZi3z
 そう言った青年の声は澄んでいて、まるで少年のようだった。だが顔つきは紛れもなく成人のもので、肌はわずかに日焼けもしている。
 瞳の色は明るいオレンジで、太陽のようにエネルギーに満ちていたが、左目は眼帯で塞がれていた。しかしなによりも娘の目をひいたのは青年の髪で、長くも短くもないそれは美しい空色だったのだ。

「お客さん……アンドロイド?」

 その特徴的な外見を見た娘が訝しげに訊く。
 青年は微笑んで答える。

「『アンドロイドお断り』の看板は無かったはずだけど」
「あー……お客さん」

 娘は首をかしげる。

「まだ陽は高いよ。それにあと30分もすれば村の入り口にバスが来る。あんたは旅人だろう?
 こんな何も無いとこでひと晩過ごすより、さっさと次の村へ行けば、こんな硬い平パンや、埃だらけのベッドじゃなく、もうちっとマシなものを食って眠れるはずさ」

 カウンターの下から引っ張り出した木のトレイに小さな黒い平パンと水のコップを置きながら、娘は無愛想に言う。
 旅人はパンを手でちぎり、口に運んだ。咀嚼にはかなり力がいるようで、いちいち飲み込むのに時間がかかる。

「何も無いなんてとんでもない。この集落には立派な風車がいくつもあるじゃないか。あの風車はこの辺りの村では一番立派なものだって、前の村で聞いたぜ。
 あれで作った電気をケーブルで引っ張ってなけりゃ風の吹かないこの先の村はひと月もしない内に干からびちまうらしいことも」

 その言葉に皿を拭く娘の手が止まる。

「あんた盗賊か?」
「そう見えるか?」
「ちぇっ だからアンドロイドは嫌なんだ」

 娘は両手を青年の目の前に突き、じろりと彼を見下ろした。

「表情がほとんど変わりゃしない。たまに笑ったかと思うと、そいつはいつだって貼り付いたような笑顔だ。きもちわりい。
 アタシは反アンドロイド団じゃないが、アンタみたいなやつらを好きになる奴がいるとは思えないね」
「恐れは無知からくるものさ。異物を異物としてとらえているかぎり、相互理解はありえない。いや、それは因果が逆かーー?
 まぁいいや、とにかく、差別はやめてもらいたいね。慣れっことはいえ、やはり心が傷む」
「作りものの心のくせに」
「君の心は違うのかい?」
「アタシゃ口は弱いんだ。泊めてやってもいいが、お代は倍だよ」
「そういうのも慣れっこだ」

 パンを平らげると青年は残りの水を飲み干して、手の甲で口を拭った。娘は彼の前からトレイを持って離れると濡れた布巾でそれ拭く。

「部屋は2階だ。銀貨を6枚置いてきな」
「ありがとう。ところで、この集落の人は皆キミみたいな人たちなのかい?」
「まぁね。もし出かけるのならフードは被って。余計な騒ぎは起こされたくない」
「そうするよ。この髪はやっぱり目立つから」
491グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/11/30(金) 22:24:09.98 ID:5RzUZi3z
 村の中心にそびえ立つ風車は白く細長く、砂丘からの風を受けてゆっくりと回っている。
 フードをかぶった青年はその根本に立って羽根の動きを見上げていた。青年は立ったまま動かない。
「……大きいな……」
 小さく彼が呟いた。風車は低い音を立てて回り続けている。
 そんな彼に声をかけるものがあった。
「そこの人、ここに何か用か?」
 青年がふりむくと、いつの間にか彼の横に中年の男が立っていた。浅黒く日焼けした肌に作業着らしきものを着て、白髪を短く刈り込んでいる。
 旅人はお辞儀をして、彼に言った。
「あなたは?」
「俺ゃあここらの長で、風車の管理人だ。アンタは?」
「旅人です。ぜひ、ここの風車が見たくて」
 すると管理人は宿の娘と同じような視線を青年に向ける。
「なんだぁ? 盗賊のスパイか何かか?」
「そう見えます?」
「アンタ『にせもん』だろう? そりゃそう見える」
 すると青年は困ったふうに笑う。
「そうですか。やっぱり、ここの人たちはアンドロイドは嫌いみたいですね」
「そうだなー……」
 男は風車を見上げた。青年も視線をそっちに戻す。
「こんなモンがあるからな。これはウチらの生命線だ。危険に晒すわけにゃあいかん」
 また男は青年に顔を向ける。
「だからアンタら『にせもん』は歓迎できねぇんだ。不吉だからな」
「……そうですね」
 青年の返事に男は意外そうな顔をした。否定するとでも思っていたのだろう。青年は自嘲するように笑う。
「でも、もう少しだけここに居させてください……この風車が夕陽を受けた姿が見たいんです」
「なんだ、風車が好きなのか?」
「そういうわけじゃないんですが、ここの風車が夕焼けに染まる姿がとても美しいと聞いたので」
「ふぅん?」
 男はまたじろりと青年の顔を見て、それから言った。
「にしたって、夕焼けまでまだ時間あんぞ? ずっとここで待つつもりか?」
「そのつもりですが」
 青年は真顔で答えた。
「カッ!(彼は痰を吐き捨てた) これだから『にせもん』はわけわからん、日暮れまでウチで茶ぁでも飲みなぁ。いくら人間じゃねぇといっても、立ちんぼはシンドイだろうからよ」



 青年が案内されたのは風車の根元にある小さな小屋で、どうやらここが管理人の詰所らしかった。
 ふたりは小さな丸テーブルを挟んで椅子に腰掛けていた。青年は男に出された出涸らしの茶を啜る。
 男の方はというと、壁にひとつだけある小さな窓のほうに体を向け、そこを眺めながら、なにやら物思いにふける様子があった。
「昔はこんなじゃなかったんだぜ」
 ふいに男が言った。
 青年は静かにただ聞くだけ。
「俺がガキのころはよ、アンタのお仲間もけっこうここに住んでて、仲良くやってたんだ」
 男の目は窓の外ではなく、もっと遠いどこかを見ていた。その横顔はどこか悲しげな印象があって、青年は興味深くそれを眺める。
「でもな、いつのまにかこんなんなっちまった。べつに何かあった、とかじゃねぇ。ホントにいつのまにかこうなったんだ」
 彼は窓の外から視線を外し、うつむき気味に呟いた。
「わかんねぇもんだな……」
「そんなものですよ」
 青年が言った。男は顔を上げる。
「『どうしようもないこと』というのは、あるものです。それが人の心や、自然のことなら、なおさら」
「……アンタは、今何歳だ?」
「212歳です。」
「俺の4倍以上は生きてんのか。でも、それでも『にせもん』の中では若造扱いなんだろ?」
「ええ、まぁ」
「なんで旅を?」
「それはーー」
 旅人は言葉をつぐ前に、大きく深呼吸をした。そのゆったりとした動作は男の目にはまるで、愛おしい相手を優しく抱きしめるときにするもののように見えた。
「ーー『絵画のような世界』を探しているんです」
 そう言った彼の切なげな笑顔に胸うたれ、男はそれ以上追及することはせず、ただ頭の中で様々な想像をするだけだった。
492グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/11/30(金) 22:30:34.98 ID:5RzUZi3z
 それからしばらくして、西の空が赤く燃えるころ、青年と男は風車の前に立っていた。
 青年は風車を見上げて、それが夕陽の赤い光線を背後から受けてまるで影絵のようになっているのを認めると、静かに微笑む。
「たしかにこれは美しいな……」
 そうもらして、青年は足元の鞄を開いた。そこから取り出したものを首にかける。
 それは画板だった。その上にはすでに画用紙が固定されている。
 青年は黒い地べたに座り込み、鞄から取り出した色鉛筆を一本、慣れた手つきでつまみ上げ、画用紙の上に走らせ始めた。
「なんだ、アンタ、絵を描くのか?」
 管理人の男が背後から彼の手元を覗き込んできた。青年は手を止めず、また返事もしない。
 男の言葉は青年の耳には届いていなかった。彼は凄まじい勢いで色鉛筆を走らせ続けている。その鬼気迫る様子を見てとって、男は思わず口をつぐんだ。
 ……やがて太陽は完全に地平の彼方に姿を消し、集落の建物に灯りがともり始めたくらいになって、やっと青年は色鉛筆を置き、画板のヒモを首から外した。
「終わったかい」
 男が声をかけると、今度は青年はちゃんと気づいて、少し疲れたふうに笑った。
 その振り向いた顔を見て、男は気づく。
「その目……」
 青年は眼帯を外していた。露わになった左目はしかし潰れているわけではなく、ちゃんと中身があった。
 だがその瞳は右目と同じオレンジ色でなく、光を受けて輝く金色だったのだ。
 男は驚く。
「アンタ、そっちの目は『ほんもん』か?」
 見開いたその男の瞳も黄金色だった。
 青年は軽く頷いただけでそれ以上の説明はせず、荷物を鞄に戻し始める。
 そのときーー
「父さーん!」
 宿の方角から声がしたので振り向く。ふたりのところへ駆けてくるのは、あの宿の娘だった。
「あれ、アンタ……」
 娘が青年の姿に気づく。彼女は金の目を細めて、不審げに眉をひそめた。
「どうも」
 青年は立ち上がって会釈をする。眼帯はすでに戻してあった。
「なんでお客さんが?」
「どうした」
 男が訊いた。
「いや、母さんが呼んでるんだけど」
「あん? かまいやしねぇ、もうチョイ待たせとけ」
 娘はその返事を聞いて、青年の方に向きなおる。
「なんだい、なんだってアンタがウチの父さんと居るんだ?」
「偶然さ」
「ホントに?」
「本当だ」
 管理人の男が肯定した。
「アンタよ、アンタがどういう理由で探しものをしてるか知らねぇがーー見つかるといいな」
 すると青年は小屋で見せたあの切なげな笑顔で「ええ」と静かに言った。
「……それでは私は先に宿に戻りますね。管理人さん、ありがとうございました」
「よせよ。俺はアンタを見張ってただけだ」
 ていねいに頭を下げる青年に男は照れくさそうにする。娘はなんだかわからない風にその2人を見ていた。
 青年は鞄を持ち上げ、暗い道を宿に向かって歩いていく。その背を眺めていた娘は父に訊いた。
「あいつ、何者なの?」
「さぁな、さっぱりわからねぇ」
「やっぱり危ないかな」
「……でも、信用していいと思うぜ」
「なんで?」
「アイツ、この風車を『美しい』って言ったんだよ」
 娘も風車を見上げた。
「……この風車、作ったのって」
「爺ちゃんーーお前のひぃ爺さんだな」
「知ってたのかも」
「だとしてもだ。誰かが魂込めて作ったものを大切にできるヤツに、悪いやつはいねぇ」
「ふぅん……」
「……もしかしたら、俺たちは自分で思っているよりも、『アンドロイド』のことを知らないのかもしれねぇな」
 娘は風車から視線を外して青年の去った方を見たが、すでに彼の姿は見えなくなっていた。
 集落に寒風は吹きすさび、風車は回り続ける。
493グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/11/30(金) 22:31:53.89 ID:5RzUZi3z
 宿に戻った青年はその絵の右隅に小さくサインを書き込み、ぎっしりと今まで描いた各地の風景の絵が詰まっている鞄の中に押し込めた。
 何のためにそれを描くのか、誰のために描くのか、何一つ語らないまま旅人は翌朝集落を去った。
 彼はとくに何かをしたわけではない。しかしその存在がひと組の親子に影響を与え、そのことがのちにこの村にアンドロイドの住民が再び増えるきっかけとなるのだが、それは別の話だ。



 青い空。
 白い地平。
 黒い砂漠。
 空色の髪。
 橙の右目と金の左目。
 絵描きの旅人は今日もどこかを歩いている。
 

ーーグラフィカル・ワールドーー



おわり
494グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/11/30(金) 22:34:14.43 ID:5RzUZi3z
投下おわり。
グラゼログラ家に次ぐ第三の刺客。
495創る名無しに見る名無し:2012/12/01(土) 19:12:31.95 ID:52gzbH1S
投下乙です。
素敵な小話ですね…と言いたいのだけれど、
グラタンさんの話だから、どこかに血塗られた過去や暗喩が有るに違いない!
とか勘ぐってしまう、きっと私はP物質の高濃度汚染者。

いや、ホント、心が洗われる話でしたよ!
496グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/12/01(土) 20:33:09.79 ID:+d3K6Ipg
感想ありがとうございます!
正直に言うと、今まで悪人ばっかり書いてたので、精神的に疲れてしまいましたw
497創る名無しに見る名無し:2012/12/06(木) 02:29:30.90 ID:XtNCKuco
>>494 遅ればせながら、投下乙です! 新たなグラシリーズが始まると聞いて狂喜乱舞。
隻眼&金眼&アンドロイドって時点でグラ脳(?)が刺激されまくりでした。ミk さんt に関係gゲフンゲフン
珍しくグラ氏にしては今回綺麗な終わり方でしたねw 普通に読んだら綺麗な話。話を知ってると脳が刺激される話でした。
果たして関係性はあるのかどうなのか。シンブレイカーも含め次回の投下も楽しみに待ってますね!
498グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/12/06(木) 21:10:50.28 ID:IT4rHr/V
感想ありがとうございます!
もう悪人は書き飽きたんじゃ……善人しか書きたくないんじゃ……
というわけでグラゼロ→グラ家→グラ世界と順調にスケールアップしました(笑
一応想定ではこれがグラなんとかのピリオドになる予定です。

ミコトさんが関係あるかどうかは……フフフ……
499創る名無しに見る名無し:2012/12/08(土) 10:26:12.73 ID:IZmT9PgB
あー大半が規制中のロボスレ民。大半が規制中のロボスレ民。聞こえますかー?
500創る名無しに見る名無し:2012/12/08(土) 10:59:19.31 ID:yRUU2ZY8
聞こえていますが何も書けてない状態で出るのも申し訳無いので雌伏しています
501創る名無しに見る名無し:2012/12/08(土) 14:49:02.48 ID:4tySlH3F
おれもれも
502創る名無しに見る名無し:2012/12/08(土) 15:29:49.34 ID:/jxcTLi8
そういえば最近おっぱいを見ないな
503創る名無しに見る名無し:2012/12/08(土) 15:44:35.15 ID:t27p/+9T
おっぱいが見たいなら……わかるね?(ゲス顔
504創る名無しに見る名無し:2012/12/08(土) 19:23:13.53 ID:IZmT9PgB
おっぱいよりもまな板よこせー
505創る名無しに見る名無し:2012/12/09(日) 01:15:52.51 ID:Giq9HEFC
おっぱいミサイル、ミサイルおっぱい。
順番を逆にするだけで意味がだいぶ変わるな
506創る名無しに見る名無し:2012/12/09(日) 14:41:18.57 ID:cidiJZhv
教師という言葉を聞いても何とも思わない。
しかし「女」を付けるとエロイ。女教師最高ーッ!
507創る名無しに見る名無し:2012/12/09(日) 16:29:13.11 ID:doKYaT2g
そういえばロボスレに教師とか指導者キャラって少ない気がする
508グラタンの人:2012/12/11(火) 01:05:46.90 ID:96d3qRaN
最近投下しかしてない
でもそんなの関係ねぇ!
509グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/12/11(火) 01:06:23.05 ID:96d3qRaN
 翌日、私は大学をサボって朝一番に天照研究所へと向かうことにした。
 昨夜は頼人に家まで送ってもらったが、またいつカオスマン――あの忍者――が襲ってくるかもしれないと
恐ろしくなって、ひと晩じゅう部屋の明かりを点けたまま眠れずに過ごしたのだった。そのせいで目の下には
クマができてしまっていたが、それを隠す化粧をする気にもなれず、またそんなことも今はどうでもよく思えていた。
 自転車は壊されてしまったので私は市内まで歩くしかなく、そしてそのことを思い出すたびにカオスマンへの怒りと
恐怖が腹の底でうごめくのが感じられたが、それもどうしようもない。道端の小石を思いきり蹴飛ばす程度のこと
しか私にはできなかった。
「お待ちしておりました。」
 出迎えたのは天照恵だった。彼女は研究所の制服を着ている。
「カオスマンは今はおとなしくしております。ご安心ください。」
「いろいろ、訊きたいことがあります。」
「承知しております」



 それから昼ごろまで、私はカオスマンと彼が渡してきた写真について、思いつくままに天照に質問をぶつけた。
きっとひどく論理的でない、思いつきにも近いような質問の仕方だっただろうが、それでも彼女は落ち着いて、丁寧に、
ひとつひとつに答えてくれた。
「カオスマンは我々の魔学のひとつの成果です……強化手術をうけ、人間には不可能なほどに高いな身体能力を
手に入れました。」
「どうしてそんな?」
「知的好奇心の産物ですね……彼はそういう人なんです。」
「本人には会えないんですか」
「……申し訳ありません」
「それ、大丈夫なんですか?」
「あなたに危険が迫れば私たちはすぐかけつけますよ、昨夜のように。」
「……なぜ、カオスマンは私がシンブレイカーに乗るのに反対なんです?」
「……いくら魔学を用いても、人の心は読みえませんから。」
「あの写真はどうなりました?」
 私はあの写真を頼人を介して研究所に渡していたのだった。なぜカオスマンがそれを持っていたのか、
あの写真が合成かどうかを調べてもらうために。
「その点に関しては、博士に任せてあります。」
「博士?」
「ええ……志野さんはまだお会いしたことはありませんでしたか……いい機会です、高天原に案内させましょう。」
 彼女は思い出したようにそう言って、つけ足した。
「そろそろ、魔学の恐ろしい面も知ったほうがいいかもしれませんね。」
510グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/12/11(火) 01:07:10.97 ID:96d3qRaN
 高天原頼人に連れられて私は研究所の敷地内にある別棟へとやってきた。玄関の扉には『研究棟』と書かれていたが、
入った横の受付には誰もおらず、カウンターの入館者名簿にはうっすらと埃が堆積している。
 頼人はどこから出したのかマスクを薦めてきたので、私はそれをつけた。見た目はそこそこ小奇麗なこの建物は
中はまるで廃墟のようだった。廊下の蛍光灯は切れたまま放置してあって薄暗く、花瓶に活けられた花はとうの昔に
ミイラになっていて、中途半端に開けっ放しのドアの向こうには不気味な暗がりがあった。
 そのお化け屋敷のような内部にその『博士』とやらが本当にここにいるのか私は大いに不安になったが、
頼人がずんずんと奥へ進んでいくので問いかける間もなかった。
 私たちは階段を下りて地下室の大きい扉の前に立った。扉にかかった表札には『多目的ホール』と書かれている
ようだったのを油性ペンで2重線を引いて打ち消し、上に『実験室』と殴りがきしてある。表札の下に責任者の名前が
あった。
「これ、なんて読むんです?」
 私はその名前を指さした。表札には『責任者:八意司 博士』とある。
「『やごころ つかさ』博士です。日本神話をご存知無い?」
「はぁ、まぁ」
「それじゃ読めなくて当然ですね……そうそう、それと博士に会う前にひとつ注意を。」
「はい?」
「博士はおそらくこのドアの向こうにいますが、決して……その……」
「なんですか?」
「怒らないでくださいね。」
 そう言って頼人は扉を押し開けた。すると突然――
「ファッ○ンジーザスクラアァアアアアァイストッ!!」
 絶叫が耳を撃ち抜いた。思わず身が縮こまる。誰かが扉の前で、革張りの椅子の上で悶えていた。
「どぉしてっどおおおおしてっ!!」
 その人物は白衣を翻し、椅子からバネじかけのおもちゃのように立ちあがり、私に詰め寄ってくる。
「どうして吾輩の名前なんか訊いたっ!!」
 目の前にずいとつきつけられた鼻先に私は固まる。博士は苦悩するように頭を振り、また椅子のところへ戻って
すがりつくように嘆く。
「もう少しでラプラスの悪魔に勝利するところだったのにっ! お前のせいでっ!!」
「『博士』っ落ち着いてください!」
 頼人がどなるように諌めた。
 博士は肩で息をしながらよろよろと立ちあがり、意地悪そうな視線をこちらに向けつつ指で眼鏡の位置をなおす。
「ふん……高天原、お前はいい。お前が部屋の前で警告をするのは計算に入っていた。研究所でその女との会話に
要する時間まではどんぴしゃりだったんだ。それなのにっ!」
 彼は私を指した。全部の指にじゃらじゃらとはめられたシルバーアクセサリーが光を反射する。
「その女が吾輩の名前を訊いたせいで、その扉を開けるのが予想より7カンマ26秒も遅れたっ!
 こうなったらもう失敗だっ! ちくしょう!」
「まさか、未来を予測していたんですか!?」
 直感した私は思わず口にした。八意はふんぞり返り、髪と服装を正しながらこちらをじろりと睨めつける。
「いかにも……吾輩は未来完全予測公式の実験中であったのだ……ところで、何か用か?」
511グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/12/11(火) 01:07:59.89 ID:96d3qRaN
 私はその傲慢さを隠そうともしない態度を少し不快に感じたが、それでもしっかり精一杯の笑顔をつくり
「志野真実といいます」と、まず自己紹介をした。
「そんなことは知っている……」
 彼は椅子に戻ると私の体を足元から頭まで舐め回すようにじっくりと観察し始めた。
 その気持ち悪さに私は少しだけ頼人の方に近づく。
「ときに貴様、人間を含む全生物が肉体・魂・精神の3つで構成されていることは知っているか?」
「……え?」
「ならば記憶せよ! 生物はこの3つでできていて、そのうちふたつ以上が欠けているとそれは生物じゃない。
 見たところ志野真実、貴様はこの3つをしっかりと備えておるようだが、どうやらそれぞれの結びつきが
やや弱いようだ。幽体離脱をしたことは?」
「……い、いえ、無い、です……」
「ふむ、ならば結びつきが弱いのは精神だな。やはりそれがシンブレイカーパイロットたる所以か。」
 すると八意はまた椅子から立ち上がって部屋の奥へとかけていき、この広い多目的ホールの中心にドンと
すえられている何か不思議な形状をした実験器具の上へと跳び乗った。その下にある照明器具が突然点灯し、
そんな彼をやや下方から照らす光線を放つ。
「改めて名乗ろう!」
 すると彼はなにやらビシリと変なポーズをキメて――
「我が名は『八意 司(やごころ つかさ)』! またの名をアレイスター・クロウリー!
 魔学理論の父にして母! 人類史上最高の魔学研究者であり、やがて来たるべき新たな時代のために
その礎を築かんとする者である!」
 最後に八意は高笑いをした。それはホールの壁に反射してるのか四方八方から聞こえるようだった。
 私は改めて明かりに照らされた八意を見あげた。彼は他の所員たちと同様に白衣を着ていたが、
その下にあの独特の制服は着ていなかった。代わりに大きくボタンが開け放たれたワイシャツを着ている。
そこから覗く胸元にはジャラジャラと、十字架や、星や、その他何かの象徴が沢山付いたネックレスをいくつも
かけていた。よく見るとピアスも耳や唇、鼻に目蓋にと、とにかく着けられるだけ着けてある。
腕は指先までアクセサリーに覆われ、それが光を反射して目障りだった。
 彼自身はというと、なんだか若者なのか老人なのかよく判らない顔をしている。ひん曲がったわし鼻に乗せた
丸眼鏡の奥には意地悪そうな目が光っていて、その瞳からはどこか常軌を逸したものを感じた。頭髪は無く、
素肌丸出しのそこにもピアスらしきものがいくつもついている。
 やせ型で手足が長く、身長もやや高い。なんだか冗談のような人だ――私は正直言って、いい印象を抱かなかった。
 彼はひらりと床に着地する。
「そして敢えて問おう! この八意のスーパー研究室に何の用であるか!?
 いやまて言うな!当ててみせる……君は新聞の勧誘に来た」
「違います」
「今のはジョークだ。
 ちなみに思考透視装置は似たものがあと半世紀もすれば完成するはずだ。覚えておくがいい!
 だがひとつ言わせてもらえばあの型のタイムマシンにデロリアンを使うのは動作の面から見て不安が残るな、
せめて日本車にすべきだ。」
 話が噛み合っていない気がする。私は不安になってちらりと頼人を見た。彼は平然としている。
 そもそも何故頼人が私をここに連れてきたのかは私も知らないのだ。
『魔学の恐ろしい面』を教えてくれるらしいが、この八意がそうなのだろうか。
「たしかに、こりゃ恐ろしい……」
 つい口に出してしまった。それを八意は耳ざとく聞きつける。
「なるほど? 志野真実、どうやら貴様は吾輩を知りにきたようだな」
「そうなんですか?」頼人に訊く。
512創る名無しに見る名無し:2012/12/11(火) 01:08:26.63 ID:pFTx68SI
 
513グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/12/11(火) 01:09:24.91 ID:96d3qRaN
 頼人は頷いた。
「博士、あなたの『シ』を見せてくださいませんか」
 私は頼人の言葉がよくわからなかったが、八意は大きく頷いた。
「かまわんが、いつになるかは分からんぞ――いや待て。」
 八意は何かに気づいたように顔を上げ、そして胸に手を当てた。
 頼人は言う。
「まさか、今?」
 すると八意はにやりとした。
「貴様らは運が良いな……さぁ、刮目して見るがよい! 吾輩の――」
 言い終わらない内に、ばん、と軽い音がした。
 私は音にびっくりして一瞬目をそらし、また八意を見た。
 八意はいなかった。
 代わりに奇妙なものがそこにあった。
 冷たく硬い床に真っ赤な水溜りができている。あんなもの、今まで無かった。
 よく見ると水溜りの中には何かがある。あれは赤い液体に濡れているが、白衣と、
金属製の大量のアクセサリーに、メガネ……?
 唐突に理解した。あれは、あれは――
 私は悲鳴をあげ、その場にへたり込む。そして同時に頼人が言った言葉も理解した。見上げて問う。
「『シ』って、『死』……!?」
 頼人は、いとも簡単に頷いた。
「そんな! なんで!」
 わけがわからない。今まで普通に話していたじゃないか。心臓発作とかならともかく、こんな風に死ぬなんて、おかしい!
 頭が混乱して、熱い涙が出た。頼人は慌てた様子で私のそばに蹲り背中をさすってくる。

「すいません、刺激が強すぎました……」
「アンタはなんでそんなに……落ち着いてるのっ!?」
 背中の手を払い、頼人を睨みつけた。彼はやはりうろたえずに静かに首を横に振る。
「安心して、博士は死んでませんよ」
「え……」
 改めて目の前の血溜りを見やる。それはたしかにそこに――無かった。
 目を疑った。
 あの血溜り、八意が砕けてできたあの血溜りが無くなっている。血だけでなく、その中にあったメガネも、白衣もだ。
 何度めかもわからない混乱が頭をかき乱す。また泣き出しそうになったそのとき、その声がした。
「高天原、表現は正確に!」
 その声の主はどこからかひらりと舞い降り、私の前に着地した。その男は不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「吾輩はたしかに死んだのだぞ。」
 八意司だった。彼は数秒前となんら変わらない様子でふんぞり返っている。私はぽかんとした。
「ふふふん、驚いているようだな。」
 八意は間抜けな顔をしている私をじろりと見下ろして、満足げに笑う。
「説明しよう! 今の吾輩は平行世界からやってきた!」
 また八意はポーズをとった。私
は頼人に支えられてなんとか立ち上がる。
514グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/12/11(火) 01:12:22.55 ID:96d3qRaN
あるとき吾輩は魔学を用いてタイムマシンを開発した……それを使用した瞬間、吾輩は無限の平行世界の存在を知った!
 なにをバカな、とでも言いたげな顔をしているな。だが真実である。
 吾輩の生み出したタイムマシンはタイムマシンでなく、正確には平行世界を移動する機械であり、
そのため無限数分の1秒の単位で変化した平行世界の『タイムマシンを使用した吾輩』が別の世界からやってくるように
なってしまったのだよ。無限分の1の単位で分かれた世界からやってくるから、やってくるタイミングにも
無限のパターンがある。1秒先でも1000年先でも矛盾しない。平行世界は可能性の世界であるからだ!
 そして質量保存の法則によりもともとこの世界にいた吾輩は死亡・消滅し、別の世界からやってきた吾輩のみが残る……。
 無限の平行世界からやってくるから、極小の変化でも積み重ねによりタイムマシンを開発・使用はもとより
吾輩の出生・死亡のタイミングも無限数に変化し、またその世界の歴史の修正力によって、世界の移動の瞬間吾輩の記憶も調整される。
その結果吾輩は擬似的な不老不死となった!」

 八意は言いながらその頭の皮膚を指先で揉む。
「この脳髄には無限平行世界の過去、未来、その他あらゆる知識が集積されているのだよ。
 例えばある世界では世界は滅びかけて人類は地下都市に生活の基盤を移しているし、ある世界では意思を持つ機械人形――ロボット――が人と共に生きている。
 ある世界では人類はとうに水で覆われた別の惑星に移住していたし、またある世界では地球を賭けて異星人と軍事衝突だ。」
「そんな……わからない、どうして……」
「当然だ! 無限の知識を持つ吾輩が、たかだか20年程度しか生きていない貴様に理解できるものか!」
 すると八意はまたひらりと椅子の中に身体を埋める。
「ちなみに吾輩は貴様がここに来た理由はすでにざっと1不可思議の不可思議乗分のパターンを経験している。
だから逆に貴様の目的が判断できない。教えろ。」
 段々と落ち着いてきた頭でなんとか八意の話を理解しようと試みるが、なんだか話がいきなり壮大になりすぎて
理解ができない。
 ぽかんとしていると、見かねた頼人が代わりに答えた。
「博士、あの写真は分析できましたか?」
「ああ、あの写真か」
 八意はフンと鼻を鳴らすと、ポケットから例の写真を取り出す。
「なんの変哲もない普通の写真だ。学術的な価値はゼロだな。」
「そうですか……」
 八意はそれを近づいてきた頼人に手渡す。
「ただそれが撮影されたのはどこか、というのは知っているぞ。行ってみたらどうだ?」
 頼人からうけ渡された写真を見ている私に八意は言った。
 私は顔をあげる。
「それはどこですか?」
「織星山だ。その中腹の展望台になっている崖からの風景であることは確定している。」
「織星山……」
 織星山はこの街の北にある山の名前だ。たしか小学生のころ、遠足で登ったことがあるきりのはずだが……
行ったことを忘れているだけだろうか?
「……わかりました、織星山ですね、行ってみます。」
 私は写真をお尻のポケットにねじこむ。八意に礼を言うと、彼は得意げにふんぞり返る。
「なに、他にもわからないことがあったらいつでもここに来るがいい。
他の平行世界の物語から宇宙の終わりと誕生まで、ありとあらゆる知識を授けてやろう。」
515創る名無しに見る名無し:2012/12/11(火) 01:13:11.77 ID:P1AgXs3L
 
516グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/12/11(火) 01:13:56.00 ID:96d3qRaN
「最初は驚きましたけど、案外やさしい人みたいですね」
 研究棟からの出がけに私がそう感想をこぼすと、並んで歩く頼人は曖昧に笑った。
「やさしい、といいますか……」
「なんですか?」
「……彼は孤独なんですよ」 
 頼人の言葉の意味はすぐにはわからなかった。
「孤独?」
「彼は全ての世界の全ての過去と全ての未来の記憶を持っています……それが、どういうことか解りますか?」
「……いいえ?」
「……宇宙の歴史が150億年に対して、人類の歴史はたかが数千年なんですよ」
 ガンと頭が殴られたような感じがした。と同時にとてつもなく恐ろしい想像が頭に浮かぶ。
「まさか……」
「……おまけに彼はそれを無限の回数も経験しているのです。おかしくなっていないのが奇跡ですよ……」
 寒けがした。足下ががらがらと崩れるような錯覚を覚え、頼人が、街の騒音が、唐突に遠ざかる。
 孤独。想像すら及ばないほどの。
 彼は未来と過去の全てを知っていると言った。しかしその未来と過去とに人がいる保証はないのだ。
いや地球自体、宇宙自体が無くなっている可能性だってある。
 何もない空間に放り出された記憶も、宇宙が滅びたあとの記憶も彼が持っているとしたら……
 その孤独はきっと、彼にしか理解できないものだ……
「……頼人さん」
 私の呼びかけに頼人は足を止めた。
「八意さんを助けてあげることはできないんですか」
 すると頼人は悲しげに目を伏せる。
「……残念ながら」
「方法は無いんですか?」
「……あれは、世界のルールを破った彼への、『罰』なんですよ……」
「罰……」
「だから、私たちにはどうしようもありません。」
 彼はそこで会話を切り上げたが、私の胸にはもやもやとした想いが留まり続けた。
(あれが『罰』ならば、いつか『罪』は許されるべきじゃないの……?)
 答えは出なかった。
517グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/12/11(火) 01:19:25.95 ID:96d3qRaN
 天照研究所を出て一度西への道路を行き、やがてぶつかる最初の交差点を右へ曲がってまっすぐに進むと、
まず道路わきに『ようこそ織星山へ』と最近作り直されたばかりの真新しい看板が見つかって、
その辺りからだんだんと観光客向けの土産物屋が増えてくる。
 夏休みなどの行楽シーズンになるとこの織星山にもそこそこの観光客たちが集まってきて賑やかになるのだが、
今の時期はそうでもないので代わりに地元の老人たちや、遠足にやってきた小学生たちの姿を見かけた。しかし
その数も決して多くなく、織星山への道に漂う寂しげな雰囲気を紛らわすまでには至らない。
 私は頼人の運転するハーレーの後ろに跨って一気に展望台のある山の中腹まで行くつもりだったが、
途中で食事をしようということになって、ふたりで土産物屋と軽食屋の並ぶ『織星神社』への参道へと入った。
 『織星神社』は織星山の麓にある神社で、こっちも織星山自体と同じく重要な観光資源だ。そこまでの参道は
石畳が敷き詰めてあって、なかなか風情がある。
 参道の方も開いている店は少なかったが、女木戸市名物の『虹色蕎麦』を売っている店を見つけたので、
そこで昼食をとることにした。
「志野さんは、神様を信じますか?」
 不意に頼人がそう訊いてきた。私は咀嚼していた蕎麦をのみ込み、こうばしいそば茶を1口すする。
「なんか、宗教勧誘みたいですね」
 笑ってそうかえすと、頼人も口元を緩める。
「あなたは魔学のおこす様々な事象を目にしました。それで、ちょっと気になりまして」
「そうですね……」
 私は少し考える。
「ミッション系大学に通っている身でこんなこと言うのはアレかもですけど、信じてませんよ、私」
「そうなんですか」
「でも、最近思い直しました。」
 私はカブの漬け物を口に運ぶ。コリコリとした甘みが舌を喜ばせる。
「魔学を見ましたから……やっぱり、神様っているのかな、と」
 すると頼人は意外にも首をふる。
「その考えは危険ですよ、志野さん。」
「え?」
「魔学において超常的な存在を認めるのは危険です。それは非合理的な思考を許し、
1足す1を10にも100にもできると誤信させます」
 頼人は真剣な表情だ。
「いいですか、どうか魔学に関わる者として、これだけは覚えていてください。」
 私はつばを飲み込んだ。緊張のためだ。

「この世はルールだ。
 それを破るのは、罪だということを。」

 頼人の眼差しに私は何も言えなかった。しかしそれでもなんとか反論を絞り出す。
「でも、この前、天使を呼んでましたよね……ウリエル」
「あれは別のステージにいる精神生命体――魂・精神・身体のうち、身体の無い生き物――
を捕まえて協力させただけです。不思議でもなんでもありません。
 天使や悪魔、霊や神なんてものは、物理的な身体が無いだけで、そこらのハエと同じようなものですよ。」
518グラタンの人 ◇tH6WzPVkAc(代理):2012/12/11(火) 01:45:44.39 ID:z5B2oV6L
 そうして頼人はさっきから店内を飛び回っているハエを指で示した。そのハエはふらふらと店の奥に吊り下がった
ハエ取り紙に引き寄せられて、捕まる。
「あれと神様が同じ、ですか」
「あるいは仕事上の取引相手、と言ったほうが聞こえがいいかもしれません。
1を差し出してやるから1ぶんの協力をあおぐ、といったような。
 そういったルールを破ると、逮捕されて、刑罰を受けることになるのです。当然でしょう?」
「なるほど……」
 ふと、そこで私は思い出す。
「そういえば『×』って、なんで出てくるんですか?」
「『×』は……」
 頼人は言葉に詰まったようだった。少し腕を組んで思案したあと、頭を下げてくる。
「……ちょっと、説明が難しいですね、あれに関しては……」
「そうなんですか?」
「それより、そろそろ食べ終えて行きましょう。蕎麦、のびちゃいますよ。」



 登山道の入り口がある山の中腹には広い駐車場と大きな土産屋と軽食屋があって、なんだここで食べれば
よかったじゃん、と頼人と私は笑った。
 駐車場は閑散としていて、やけに広く見える。そんな中にハーレーを1台残していくのは盗まれそうで不安になったが、
「いざとなったら自分で抵抗しますから」と言われて安心した。
 展望台になっている崖は駐車場とほぼ一体になっていて、その気になればあの写真のような、ハーレーに寄りかかった
構図で写真を撮るのは簡単そうだ。
 展望台の柵に近づく。眼下には女木戸市の町並みが広がっている。天気が良く、そのおかげで中心のビルが
立ち並ぶあたりも、その向こうの田園地帯も、さらにその向こうに横たわる三州川までも一望できた。
 太陽はぽかぽかと街全体と私たちを優しくあたためてくれている。このままピクニックでもしたくなったが、
頼人の迷惑を考えてやめた。
 のどかな風景だった。
 しかし私の心から不安が拭い去られることはなかった。
 どう思い返しても覚えが無いのだ、あの写真を撮った覚えが。
 以前にもここに来たことはある。だがそれは小学生のころに遠足のときで、あの写真が撮られたのは明らかにそのときではない。
 いったい私はいつここに来て、誰に写真を撮ってもらったんだろう。大型バイクの免許を持っていない私がどうして
ハーレーを背にしていたんだろう。
 頭の中の空白が気持ち悪くて、軽くこめかみを揉む。
 ……わからない。眼下の風景は何も答えてくれなかった。
「なにか、わかりましたか?」
519グラタンの人 ◇tH6WzPVkAc(代理):2012/12/11(火) 01:46:18.27 ID:z5B2oV6L
頼人が、柵に手をかけ風景を眺める私の横に立った。
 私は頭を振る。
「そうですか……」
 少しして頼人は何か思いついたらしく、また声をかけてくる。
「あのスマートフォンは持ってます?」
 私は頷いた。
 頼人は両の親指と人差し指でフレームを作り、笑顔で言う。
「写真を撮りましょう。そのスマートフォンは過去の写真も撮れるんですよ。」
「え……?」
 訊き返す。頼人はフレームを覗いて撮影ポジションを探しながら答える。
「カメラの撮影モードに『サイコメトライズ』があるはずですから、それを使うんですよ。」
「サイコ……なんですか?」
「とりあえずやってみてください……この位置がいいですね。」
 私は頼人が指定した位置にスマートフォンのカメラをかまえて立ち、撮影モードを『サイコメトライズ』
に変更した。
 すると日時指定の画面が出る。
「え、なにこれ」
「日時を指定してください。写真の左下の数字です。」
 頼人が写真を手渡してきた。言われてはじめて、私はそこに写真の日付があるいうことに気づく。
 その数字を入力して、改めてカメラをかまえた。
 画面越しの世界はセピア色で、そこに多くの半透明のぼやけた人影が写り込んでいる。
「なんですかこれ? 心霊写真?」
「その場所の残留思念を検知して視覚化しているんです。残念ながら細かい特定まではできませんが……
心霊写真といっても間違いではないかもしれませんね」
「よくわかんないですけど、これも魔学ですか?」
「我々の成果です。」そばの頼人が言う。
 私は適当にボタンを押した。シャッター音がして、切り取られた風景のぼやけていた人影がだんだんとはっきりしてくる。
 そこには多くの人影が写っていたが、そのほとんどは関係ない人々のようだった。スマートフォンを受け取った頼人が
操作して、それらの余計な人々を画像から消していく。
 そして残ったのは――
「なに……これ……」
 受け取って、画像を見た私は愕然とした。
 そこには私があの写真と同じポーズで写っていた。空気椅子のようなポーズになっているのは寄りかかっていた
ハーレーが写っていないからだろう。
 それともうひとつ、私のすぐそばに、私に寄り添うようなシルエットの、人型の空白があった。
「なにこれ……なんで」
 研究所の技術は相当高い。あれだけぼやけていた残留思念の影が今はくっきりと私の姿を描きだしていることからそれは素人目にもわかる。
しかしこれは?
 私のそばの人影は文字通りの空白で、背景すらない。そこだけすっぽりと抜け落ちたようだ。
 どうして、ここだけ……。
 ずきりと胸が痛む。目頭に熱いものがこみあげてくる。なに、なんで――
520グラタンの人 ◇tH6WzPVkAc(代理):2012/12/11(火) 01:47:14.25 ID:z5B2oV6L
(どうして、私は泣いているんだ……?)
 理解できないまま、涙は次々と溢れ出る。
 頼人は私の手からカメラをそっととり、写真を確認すると、私を見下ろして問いかけてくる。
「この人が、誰だかわかりますか?」
 私は顔を隠しながら頭を乱暴に振った。

 私は知らない。
 私は誰かとここに来たことがあるんだ。だけど、私は知らない。
 本当に何も知らないのか、それとも思い出せないだけなのか、それすら判らずに、ただ、熱い涙だけがこみあげて、
ぼろぼろとこぼれるんだ……!

 そのとき、唐突に吹き抜ける一迅の風が私の涙を吹き飛ばす。顔を上げると血の気がひいた。視線の先には、
仮面をつけた、異様な姿の、忍者。
 頼人が私をかばうように立ちふさがってくれた。私も涙を拭う。

「……彼女に近づくな。」
 頼人がいつもの落ち着いたものよりいくぶんか脅すような口調で言った。
 カオスマンは静かに佇んでこちらを眺めている。
 私は頼人の後ろから叫んだ。
「なんで、私を、狙うの!? この写真はなに!? 私は誰とここに来たの!?」
 カオスマンは沈黙をまもる。
「答えて!」
 恫喝にも効果は無い。
「志野さん、無駄です」
 諌めたのは頼人だった。
「カオスマン、何の用ですか?」
 彼は静かな調子を崩さない。それに応えてカオスマンは刀を抜いた。私たちは身構える。
 しかし相手は襲いかかってくる様子は見せず、腕を伸ばして刀の切っ先を崖の向こう側に見える女木戸市のほうに
向けるだけだった。だが横目でそちらを見ても何もない。
 緊張した沈黙を打ち破ったのは、頼人のひと言だった。
「まさか、もう次の『×』がくるのですか?」
 カオスマンはその言葉を受け、一度刀を振るって音を鳴らすと、少し首をかしげる。私はぎくりとした。
彼は明らかに私を見ている。
「言いたいことがあるなら……言ってよ……」
 自分の声が震えているのがわかる。カオスマンは無言のままだ。私は恐怖をごまかすために声を張り上げた。
「わかんない! わからないの! 私は、知らないんだよ……!」
 本当だ。
 なにがわからないのか、何を知らないのか、それすらも私にはわからないんだ。
「何か知ってるなら、なんで教えてくれないの!?」
 喉が痛むほどの叫びだった。頼人はちらりとこちらを見た。
521グラタンの人 ◇tH6WzPVkAc(代理):2012/12/11(火) 01:49:03.22 ID:z5B2oV6L
 その叫びを聞いてカオスマンは諦めたように軽く首を振り、刀を納める。そして現れたときと同じように、
一迅の風とともにその姿を消した。
 あとに残された頼人と私はそのあともしばらく周囲をうかがっていたが、どうやらもう何もないことを知ると、
頼人はすっくと立ち、地面にしゃがみこんだ私は熱い目もとと鼻をこすった。
 落ち着いてから私は問う。
「……どういうことですか。彼は何を言いにきたんですか。
 なんで『×』が来るってわかったんですか。
 そもそも『×』ってなんなんですか。
 なんで私が狙われるんですか。
 カオスマンって何なんですか、
あなたたちは一体何なんですか!?」
 次々と疑問が口を飛び出した。佇む頼人はどこか悲しげに女木戸市の空を見上げている。
 私は答えを待った。しかし頼人はの返答は――
「志野さんは戦いを選択した。そうでしょう?」
「ふざけっ!」
 怒りに任せて立ち上がる。ギッと睨むが、頼人はこちらを一瞥しただけだった。
「全ての答えはいずれわかりますよ」
「なんで今教えてくれないの!」
「私どもが信用できませんか。」
「そんなの……!」
 様々な想いが頭に渦巻く。理性と感情がぶつかり合う。
 天照研究所は敵なのか? 味方なのか?
 ……わからない。判断がつかない……。
 ただひとつ、言えるのは……
「……手がかりは『魔学』なんでしょ……だったら、信用するしかないじゃん……」
「……本当に申し訳ありません」
「卑怯だよ、こんなの……」
 また、泣き出しそうだった。




 そしてその翌日、彼の預言のとおり、2体めの『×』が女木戸市に襲来することになる。
522グラタンの人 ◇tH6WzPVkAc(代理):2012/12/11(火) 01:49:57.54 ID:z5B2oV6L
以上、代理終了でございます。
523創る名無しに見る名無し:2012/12/12(水) 14:25:27.81 ID:q9i2dYyT
投下乙です。

まさかのクロウリー御本人、しかも稀に見ぬチートキャラ!
ぶっ飛んだ台詞まわしも流石です。
あと、何気に真実の罪に対する認識は重要ワードですかね。

次なる×を楽しみにしてますね。
524グラタンの人:2012/12/12(水) 17:47:38.65 ID:mztdS3Rf
感想レスありがとうございます。
「やっぱロボもの書くからにはマッドサイエンティストのひとりでも出さなきゃダメだ!」と感じて登場、八意です。

罪とか罰とか、くわしいことは言えないけど、つまりそういうことなんです(意味不明

ありがとうございました!
525創る名無しに見る名無し:2012/12/12(水) 22:50:37.92 ID:seIvWD4T
グラタンの人、投下乙です

博士ー、その倫理で行くと最初にいたやごころ博士は一番最初に死んでいる
というわけですかー?

関係ありませんが自分もそろそろファンタジーな話を書きたいな、と思っています
526グラタンの人 ◆tH6WzPVkAc :2012/12/13(木) 06:58:24.95 ID:p8p6qgr2
感想ありがとうございます!

その通りです。八意博士は平行世界を移動する度に死んでいるので、一番最初の博士(そもそもそんな存在があるかも怪しいですが)はとっくの昔に素粒子レベルで消滅してます
ですが世界を移動すると、その世界での矛盾を解消するために記憶が統合される(2人分の記憶が合わさる)ので、今までの経験などは失われず、じゃあいいか、と本人はあまり気にしていないという設定



ファンタジーものの投下、楽しみにしていますね!
527創る名無しに見る名無し:2012/12/13(木) 22:38:51.40 ID:wcrRK2DD
うわ、前回投下してもう一月……

バイラム中編1投下しまーす!
528創る名無しに見る名無し:2012/12/13(木) 22:39:23.56 ID:wcrRK2DD
 火星と木星の間にアステロイドベルト、その隕石群に混じって雪の結晶のような銀色の人工物があった。
 人工物はいくつもの小惑星に跨っており、地球や月からでは見辛い位置に存在していた。
 時折、上下に左右に動くがこれは人口重力を発生させるためである。
 アステロイド基地。それがこの”場所”の名前である。
 そしてその格納庫にはバイラムを筆頭に無数のPMが格納されている。だが、動いているのはほんの一角だ
けであった。一角、それは赤いバイラムがある場所。すなわちネオ・バイラムのところであった。
「うーん、困りましたねぇ……」
「やっぱたんない?」
 モニターを見ながらアルフェアは少し腕を組んで唸った。
 足りない、とは資材という意味である。元々、彼女たちには資源が足りない事が多い。ほとんどは戦争の道
具として使ってしまうため、慢性的に不足しやすかった。地球とのつながりがあった頃は毎回補給物資が届け
られていたがあの事があってからほとんど届けられていなかった。
 そのため、火星からの資源が必須になってきた。発掘する量のほとんどは他のものが目覚めたときに使用す
る為である。だが、火星に向かえば物資を消費は激しくなり、到着する前に力尽きる可能性があった。
「はい、特に全体の構図とエンジンが一番の問題ですね」
 表示されたのはネオ・バイラムの全体図。なのだがほとんどが赤い文字、すなわち出力不足を表している。
 祐一の父親である一明のデータを本格的にフィードバックをしようとしたのだが……。
「ネオ・バイラムじゃ足んないんだね」
 ネオ・バイラム自体のエンジンはバイラムのエンジンをほんの少しいじった程度でしかないのだ。
 もしも新しく強力なエンジンを積めば機体自身が崩壊しかねない。それならいっそのことネオ・バイラム自体
を作り直すしかない。しかし資源が足りない現状ではそれは悪手過ぎる。一番痛いのはエグザトリアが暴走し、
脱走という形になったことだ。元々あれにかなりの資材をかけていたのだから。
「バイラムはあっちの名称ではないですか?」
 バイラムと命名したのはあちらの政治家たちである。意味は悪魔にささげる羊に別れの言葉を、という意味
があるBYE・LAMBなのだがそれでは語呂が悪いという事でBUY・RAMとなった。
 宇宙飛行士の思考、すなわち”random-access memory”を買うという意味も含まれ始めた。
「いいの、いいの! 向こうだって分かりやすいほうが良いでしょ」
「そうですけど……」
 アルフェアはバイラムという名前が嫌いだった。本来の名前は形式番号で呼ぶのが普通なのだがメアリーや
セルは”バイラム”という名前を使っている。目の前のPMは自分が作り出したのに呼ぶのはなぜか他者が付
けた名前である事がどうにも許せなかった。
「ああ、そうそう。ようやく地球のほうで大きな動きがあるみたいです」
「動き? ってことは……」
「はい、久々の大規模な戦闘になりそうですよ」
「やったぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 両手を挙げて喜ぶメアリー。そんな彼女をやれやれといった顔で苦笑をするアルフェア。
「もうそんなに喜ばないでください」
「だって、祐一とようやくデートできるんだもの」
 が、小躍りをする彼女にすかさず冷や水を浴びせた。
「……でも、あれは軍に接収されたんじゃないでしょうか? それに彼は軍に出頭を勧めたんですよね?」
「あっ……そうだった」
 アルフェアの言葉にメアリーは肩を落とし、この世の終りと思えるようなガッカリとした顔で部屋を出て行った。
 そんな彼女を見て、小さくつぶやいてみる。
「……でもそんなに好きなら必ず来てくれますよね? 彼氏さん」
 自らの三つ編みそっと撫でながら彼女は小さく唇を吊り上げた。
「そうだ、確かセラさんから……」
 すかさずキーボードを叩いてデータを呼び出す、そこには三機のPMが表示された。
 その三機とは”ビスマルク””ナイツ””黄龍”の三機であった。
「この機体のデータをフレーム部分に組み込んで……」
 ネオ・バイラムに組み込むと出力不足から最低出力に変わった。これならフレームを部分的に変えるだけで済む。
「後はエンジンを新しいのに変えるだけ……」
 エンジンはエグザトリアの代替エンジンでも十分。性能もそう大差がない。
 これならメアリーが納得するものが作れるだろう。
「いやぁ、勉強になりました。PMって奥が深いんですねぇ」
 彼女は一人で大きくうなずいた。ふと、辺りを見渡し誰もいないことを確認すると心の奥底で小さく泣いた。
529創る名無しに見る名無し:2012/12/13(木) 22:40:14.51 ID:wcrRK2DD
「以上が報告です」
「そうか」
 マールとファルはモニターの人物、ウィルスに向かってアトランティスの出来事を報告した。
 バイラム・カスタムとの戦闘、そして割って入ったバイラムU、そしてその裏側に隠された真実。彼女たち
二人以外は全員形だけだが休息をとらせた。ただでさえ混沌としているこの状況では休めといわれて休めるも
のではないけど。そしてカミーラたちは基地に着くと同時にあっという間にその姿を消した。なにやら目的が
あるらしく、帰ってくると言い残し……。
 ウィルスは軽くため息を付くと再び二人のほうへと視線を送る。
「それで、政府筋のほうはどうなの?」
「以前、変更はない」
 変更はない、というのは政府に対し誰が責任を取るかで国会が波乱を呼んでいた。ウィルスは軍部として動
いてはいるものの事態は思っている以上に好転していない。
「うわ、怠惰」
「やめないよ、ファルちゃん」
「……ごほん、それよりも君たちに頼みたい事がある」
「頼みたい事? こんなときにですか?」
「ああ、ラザフォードの奴も一応承諾をしてくれている。全く、判の付くのに何時間かかっているんだ?――」
 次々と愚痴が湧き出してくる。マールの父親であるラザフォードとウィルスは折り合いが悪く、顔をあわせ
るたびに喧嘩をしていた。好敵手なのか、それとも単に馬が合わないのか、わからないが。
「あの……」
 思わずマールが声をかけた。ファルにいたってはだるそうな顔をしながら軽く唸っていた。
「す、すまない。頼みというのは簡単だ。君たちは三日間待機をしてくれ」
「待機ったって……」
 ファルは少し毒づいた。現在のユニオンはバイラムに対し、何の対策が出来ていないのだ。
 自分は本土防衛を無視してバイラムの尻尾をつかもうと必死になったがそのシッポはきれいに巻きながら逃
げて行き、何の成果を挙げられないまま、本国へおめおめと帰ってきてしまった。
 正直に言っていいところが何もない。試作型とはいえナイツも来てくれたのに一向に手柄を立てられない自
分に腹が立って仕方がなかった。だったらせめて本国にいるバイラムに対し一矢ぐらい報いてやりたいのに目
の前にいる男はそれに対し待ったをかけたのだ。ふてくされるな、といわれるのは目に見えていたがファルに
は腹の立つ選択だった。
「すぐに出撃すべきです、ビスマルクでも十分時間稼ぎにも――」
「待機だ」
 すかさず進言をするが取り付く暇もなくこの一言を浴びせられた。そのせいでさらに苛立ちが増していく。
「しかし!」
「……了解しました、三日間ですね?」
 マールはファルを制すように口元に手をを当てた。念を押したかのような言葉をぶつけるとウィルスは頷く。
「ああ、三日間だ」
「了解しました、ではその間にビスマルクの修理と補給を申請します」
「分かった、二人ともご苦労だった」
「はっ!」
 二人は敬礼をすると目の前の大型モニターの電気が消えた。
「マール! 一体どういうつもりよ!」
 彼女のほうに視線を送ると先ほどから溜めていた鬱憤をぶつけた。
 この状況下で待機命令を出すのはある意味異常だ。普通なら命がけで他の隊に救援に池と命令されるのに自
分たちは待機。今頃、バイラムは確実に殺人スコアを伸ばしているだろう。それがどうにも許せなかった。
「落ち着いて、ウィルス長官は三日待て、といったのよ」
「そんなの分かってるわよ、同じ事を言わなくていい!」
「あの人は決して恩着せがましくて陰険で出世欲は強いけど――決して勝てない戦いはしないよ」
 この言葉にファルは少しと惑った。正直に言えばマールはとぼけたことをいつも言っているがこういうと
きにはまるで全てを知っているかのように直感が冴えていた。イヤ、実際見通している。
 が、どうにも今回は信用できなかった。事態が事態な場合もあるのだが。
「……そういうもんかしら?」
「そういうものよ、じゃあバイラムと戦ってデータを集めてきてね?」
 突然のマールの言葉にファルは唖然とした。先ほどの言葉をいきなり撤回したようなものだ。
 さっきまでウィルスと待機命令に従う素振りをしていたくせに掌を返し、バイラムと戦えと彼女は言ったのだ。
「はぁ? 今待機って……」
「うん、だから極秘行動!」
 笑みを崩さずその姿にファルはマールの背後からどす黒いオーラが湧き上がっているように見えた。
 もはや観念するしかない、と思い――。
「……分かったわよ、データ収集ね」
530創る名無しに見る名無し:2012/12/13(木) 22:41:06.37 ID:wcrRK2DD
「うん、絶対に必要になると思うの。今回は特に……ね」
 そのとき、マールの顔は少し陰りを見せたがファルは全く気がつかなかった。

 三日後、ファルは格納庫に呼び出された。
 待機命令を受けての三日間、彼女はバイラムとの戦闘に明け暮れた。と言っても戦っては逃げを何度も繰り
返し、一向にバイラムの数は減らせなかった。逃げるたびに頭の中で自分自身を臆病者と罵っていた。無論、
戦闘の際には何度の撃墜の危機に陥ったが幸か不幸か、そのたびに無人機の邪魔が入ってくれた。恐らく、マ
ールの手配である事はなんとなく理解できた。
 そして、昨日の夜中にこんな命令書を受けた。
 午前九時、格納庫へ。新型PM『エグザトリア』に搭乗せよ。
 エグザトリア? 聞いたことの無い名前に思わず首を傾げてしまう。軍部のデータベースにエグザトリアの
名前で検索をするが全くと言っていいほど引っかからない。軍需産業のデータベースにも検索を駆けてみるが
何一つ当たらなかった。
 一体このPMは何? その疑問を打ち砕いたのはニュースサイトであった。
 AUAに現れたバイラム型PM、バイラムを全滅させる。
 過激な文章と共に思わずクリックをする。画面いっぱいに広がるページを見つめながら今度は命令書に視線
を送る。同じ名前ではあるが……。どうにも実感がわかなかった。
 一体、エグザトリアってなんなのかしら? そんな事を考えながら格納庫へと向かう。
 呼び出し主はウィルスだが当の本人はそこにおらず、居たのは整備員だけであった。
「ミスリーア少尉、こちらを……」
 ファルの目の前に白いPMが置いてあった。いつものビスマルクと違い、辺りには普段の倍の整備員が機体
のチェックを行っていた。中には東洋人の顔がちらほら見られる。恐らく、エグザトリアを整備したことがあ
るスタッフなのだろう。
「これがエグザトリア……」
 AUAから送られてきたバイラム以上の高性能機。話では搭乗した民間人の少年が一機でバイラム三機を撃
墜した。また、搭乗したAUAのパイロットはこれ一機でAUAに居るバイラムを全て駆逐したらしい。
 再び視線をエグザトリアに向けるが、白の鬼は無言のまま突っ立っている。
 本当にバイラムそっくりなんだ。ううん、これは”バイラム”そのもの。先ほど手渡されたマニュアルをも
う一度読み直す。スペックでは明らかにビスマルクより上だ。
「少尉、搭乗をお願いします」
 声をかけられ、われに返るとすぐさまコックピットへと向かう。シートに座って一番最初に思ったのが小さ
いだった。AUA式な製かちょっと動かしにくいわね。と、操縦桿を握りながら自分の体格に合わせていく。
 落ち着いて辺りを見渡すとシートもさることながらコックピット全体が少し小さいのだ。天井にはシートに
座りながらも手が十分に届く。
 まるで箱みたいね。そう思いながらペダルを踏み込むと地響きを立てて歩いていく。がその地響きはビス
マルクとは違ってかなり軽かった。装備重量の違いかしら? と思うが重くない操縦桿に違和感が拭えない。
 伝わってくる振動も地響きと言うよりマッサージチェアのような軽いものだ。
 カタパルトまで来るとエグザトリアを所定の位置に付かせる。
 とにかくやるだけだと言い聞かせ、ペダルをゆっくりと踏む。背面のバーニアがそれに応じて輝きだす。
「ミスリーア少尉、発進します」
 声とともに思い切り踏み込むとすさまじい衝撃が襲い掛かってきた。体全体が後ろのシートに沈みかかる。
 骨が軋んだ音を響かせてくる。正直に言えば止めれば嘔吐しそうだった。ブレーキを踏まなきゃ、と思うが
ペダルが遠くに感じ取れた。その間にエグザトリアは速度と高度を上げていく。三秒に付き百メートルという
脅威の数値をたたき出しながら。
「ぐぅぅぅぅぅぅ……」
 うめき声を上げながら何とかアクセルペダルから足を離した。しかし、ブレーキペダルには届かない。
 まずい! そうは思うが先ほどの衝撃で体がいう事を利かなかった。バランスを崩しのまま落下、するかに
見えたがエグザトリアはすばやくバランスを整えると風に乗るかのようにそのまま空を滑っていった。
 軽くため息を付くと通信が入った。相手はウィルスだった。
「ミスリーア少尉、応答を」
「こちらミスリーア」
「どうだ、エグザトリアは?」
「今のところ問題はありません」
 そうは言うが正直言ってこれはどこから持って来たのかと問いただしたかった。
 いや、バイラムは政府と異星人の共同作だ。もしかしたらこれも同じように共同作なのかもしれない。
「そうか、一応リミッターをかけて置いただが問題ないようだ」
531創る名無しに見る名無し:2012/12/13(木) 22:41:37.15 ID:wcrRK2DD
「そうか、一応リミッターをかけて置いただが問題ないようだ」
「リミッター? って事はこれは全開じゃないってことなんですか?」
「そういうことになるな、私も細かい仕様書を受け取ったのは今日の朝なのだから」
 リミッターつきであそこまで出るなんて……。頭の中を一珠の不安が過ぎる。
「それで、搭乗したのはいいんですけどこれから何を?」
「その機体でバイラムを駆逐してくれ」
「了解」
 ファルはコックピットについているボタンを押して、レーダーを呼び出すと周囲に転々としたものが見えた。
 これがバイラムなのか、点は都市部に存在している。身近なところから行ってみるか。
 南に進路をとると再びアクセルペダルを思い切り踏んだ。今度は先ほどに比べかなり軽く。
 が、それでもエグザトリアの速度はかなりのものであった。先ほどまで陸地にいた自分がすでに海の上に来ている。
「すごい……」
 思わず口からそんな言葉がこぼれてしまう。こんなの初めて、音速旅客機みたい……。
 しかし、すぐさま我に帰ると再び目的地へと足を向ける。敵は目の前まで居るのだから。
 徐々に陸地に近づくと遠くから煙が見えてきた。
 見つけた! レーダーの先に見える黒い影、バイラムだ。レーダーでは三機、都市を破壊しようとしている。
 バイラムはこちらに気づいたのか、すかさず銃を構えると一斉に撃ってきた。
 いくつもの光の矢がエグザトリアに向かって飛んでいく。
「くっ!」
 すばやく操縦桿を倒し、ビームが当たる寸前に上昇すると腰のライフルを手に取り、そのまま一機に照準を
合わせようとする。しかし軸がブレ、上手く捕らえられない。調整が終わってないの? それともジャミング? 
 そんな疑問が思い浮かんだ瞬間、バイラムが一気に接近してきた。
 いつものように挑発的な態度を見せながら突っ込んでくるとすかさず、刃を振るってきたが身を屈め、そ
れをかわすとバイラムの腹部を思い切り蹴り付け、大きく吹き飛ばす。
「舐めないでよね!」
 叫びとともに再び腰についているライフルを構える。ぶれたままのロックサイトを向かってくるバイラムに
固定をし、睨みつけ――。
「堕ちなさい!」
 トリガーを引くと銃身が火花をあげながらビームを放つ。放たれたビームは真っ直ぐ飛んで行きバイラムの
頭を溶かし、そのまま貫いた。 頭部を失ったバイラムは力なくそのまま落下し、重い轟音と土煙を巻き起こ
しながらその場に横たわった。
「や、やった!」
 初めて悪魔を倒したことに喜ぶファルであったが背筋に言いようの無い不気味さが走った。
 思わず地面のほうへと視線を向けると他のバイラムがこちらを見つめていたのだ。
 が、その顔からは恨みも悲しみも感じない。ファルは視線から感じ取れたのは興味、ただそれだけだった。
 ふと、カミーラの言葉が頭の中に過ぎる。
 バイラムは宇宙飛行士の脳を使っているのです。そして……その認識を変えられ――。
 バイラムたちはいっせいにファルの方へと向かってきた。今度はフォーメーションを組むかのようにファル
の周りを飛び始めた。そして左右、前後、上下と刃を振るい、ビームを放ってきた。
 が、それを紙一重でかわしていく。二機の動きを予測しつつ備え付けられていた剣で攻撃をいなしながら隙を探す。
 動きが意外と単調ね。あと、武器の使い分けがなってない。
 エグザトリアは二機のうち一機の攻撃を剣で受け止めるとそのまま押し返し、仰け反ったところにい縦に振るった。
 バイラムは音もなく、二つに割れる。そして、割れた物はビルを倒しながらその場に横たわった。火花を飛
び散らせ、まるで死んだばかりの遺体のように軽く痙攣をするとそのまま瞳から光が消え去った。
 マールはその様子を確認することなく、もう一機のバイラムに視線を移す。そして振り返った勢いを利用し
てそのまま横に大きく振るう。大きく空を切る音と共に今度は横に真っ二つになった。下半身がそのまま風に
乗るかのように都市部郊外へと堕ちていく。そして上半身もバランスを失い、潰れたトマトのように叩きつけられた。
 ファルは軽く息を整えると堕ちたバイラムへ視線を送る。今までの記憶を掘り起こしてみてもこんなに簡単
に倒せるとは思ってない。むしろもっと手強いと思っている。だが……この機体がバイラムをあっさり引き裂いた。
 正直言ってとても嬉しい。手も足も出なかったものを倒したのだから。そんな考えだと笑みが浮かんできた。
「んふふふふふ……」
 しかし、その一方で不安が過ぎった。
 もしも、これが敵の兵器なら? それにこの機体が暴走したら? いや、最悪、操られる場合もある。
532創る名無しに見る名無し:2012/12/13(木) 22:42:07.69 ID:wcrRK2DD
 言いようの無い不安が急に襲いかかってきた。
 エグザトリアについて自分は何も知らないことに気がつくと不安はさらに盛り上がってきた。
 どう足掻いても貫けなかった装甲を紙切れのように引き裂く武器。あちらの攻撃を受け付けない防御力。
 稼動部分が多く、ビスマルクとは違った運動性能。小型のコックピットの中では使わなかったものが結構ある。
 最悪の場合、エグザトリアが暴走したとき誰が止めるのであろうか?
「……尉! ミスリーア少尉!」
 ぼうっとした頭を静めるかのように再びウィルスから通信が入った。
「こちら、ミスリーア。この地域のバイラムを撃破しました」
「そうか、それなら別の地域にいるのも頼む」
「了解」
 そういうと通信が切れた。ファルは青い空を見つめながら気を取り直そうとする。
 とにかく、今はバイラムを殲滅しないと!
 そんな想いを胸に彼女はエグザトリアを次の場所へと運んでいった。 

 ボルスがステイツに帰ってきたのはファルたちがイングランドへと帰還した日よりも二日ほど早かった。
 フリューゲルスを出てから一路、仲間がいるアトランタへと進路をとる。焼けた荒野がいつまでも続く中、
小さくうごめくものをいくつも見つける。それを見てボルスは現在の状況を再確認した。聞こえてくるラジオ
からはバイラムの情報が聞こえてくるものの、他の国とは違い、ステイツは思っている以上に被害が少なかっ
た。あのときの強襲以来、行動を起こす様子が無かったらしい。
 きっとアルとレイが頑張ってくれているのだろう。いや、バイラムが思っている以上に活発でないのが原因
かもしれない。
 認識を書き換えられたとはいえ、少なくとも故郷に対して何らかの感情を抱かないはずが無い。
 だが、別の様子に心を傷つけられてしまう。
 その証拠に少し高度を上げて見渡してみると遠くのほうでは町という町から煙が上がっていた。ラジオでは
一部、暴徒と化した市民が略奪を行っているらしい。治安部隊が出撃しているが焼け石に水のようだ。発砲す
る事態にまで発展してないのが救いだがそれも時間の問題だろう。バイラムが動かない事により襲ってくる不
安は恐怖と変化し、自暴自棄やモラルの低下を引き起こしていた。
 まさに終末の時だな、バイラムはトランペットでも持ってきたのか?
 そんなジョークが飛び出せる以上、自分は大丈夫だと言い聞かせる。正直に言えばカミーラの言葉が後を引
いていた。異星人との交渉や今回の侵略、どちらにとってもショックは大きかった。
 ケントは異星人の存在を知ったから消されたのだろうか?
 そんな疑問が浮かぶ度に振り払おうとする。今はバイラムの掃討が最優先だ。そう――。
「むっ……」
 雲の隙間から黒の機体がちらりと見えた。白の雲に紛れつつも小さな隙間からにちらちらと見え隠れするの
がどうにも威圧的だ。そして、一定の距離感を保ちつつ、ナイツの周りを回り始めた。恐らく、この機体は――。
「相変わらずといったところだな……」
 正直言って腹立たしかった。すぐさま飛び掛ってバイラムの一機でも叩き潰してやりたかったが今のナイツ
にはそれが出来ない。共有結合の槍を持っているのはアルとレイ二人だけだ。
 そんな自分の気持ちを知ってか知らずか分からないが黒の機体、バイラムは攻撃を仕掛けてくることも無く
ただひたすらナイツの後ろをうろうろと飛んでいる。
「ならば……!」
 ここから突き放して一刻も早く二人と合流するしかない。
 そう思うとペダルを思い切り踏み込んでナイツを加速をさせる。が距離は離れる事は無くぴったりとバイラ
ムはくっついてきた。お互いマッハは既に超えているがバイラムは距離を近づける事も無ければ離れる事も無かった。
 舌打ちをしながらさらにペダルを踏み込み、速度を上げてみる。
 計器が回ると共にすさまじい衝撃がボルスに襲いかかってきた。歯を食いしばり、腹に力を入れてそれに耐える。
 が、バイラムもまた同じように加速をして離す様子は無い。雲を突き破る追いかけっこが始まった。
 右に左にと何度も振り払おうとするがバイラムは止まる様子も無くナイツを追いかけ続けている。
「いい加減にしてもらおうか!」
 叫びと共に操縦桿のボタンを押して脇に付いているチャフグレネードを撒き散した。金属の破片が宙を舞い、
黒の機体に触れると一定の距離感を取るのを止めて、一気に近づいてきた。やぶ蛇だったか? そうは思うが
帰ってこっちのほうが気分が良かった。様子見をされているのは返ってプレッシャーであったが、攻撃をして
くるのなら気分も切り替えられる。
533創る名無しに見る名無し:2012/12/13(木) 22:42:40.44 ID:wcrRK2DD
「やはりな! おちょくられるのには慣れてはいないようだ!」
 雲を掻き分け飛び出してくると同時に大きく剣を振るうがナイツの姿はどこにもなかった。
 辺りを見渡すと上のほうからマシンガンが飛んできた。視線をそちらに向けるがそこには太陽があった。
 突然の事なのか、目が眩み戸惑うバイラム。カメラが焼け付いたのか視線をそらした。
 その瞬間、後ろから同じように雲を掻き分けて飛び出してくるナイツが居た。
「これならどうだ!」
 いきおいよく斬撃を叩き込もうとするがそれに気づき、すぐさま反転をする。そしてナイツの一撃を素早く
受け止めた。剣と剣とがぶつかると激しい火花が飛び散り、甲高い轟音が響き渡った。が、バイラムとの性質
上、剣にひびが入る。試作型ではこんなものか!? 恨めしい瞳で睨みつけるがバイラムの剣はナイツの首元
へと伸びる。やむえまいと一旦後ろに下がると再び剣を振るい始めた。
 金属と金属がぶつかると鐘のような響が大空に鳴り渡る。しかし、一方的に攻撃してるにもかかわらず、バ
イラムは仰け反る様子は無かった。むしろ一つ一つ品定めをするかのように攻撃を受け、流し、そしてかわしていく。
 優勢を保とうとしているが徐々に押されていることは隠せない事実である。
 従来のナイツならば出来ていたことが出来なかったものも原因のひとつだった。試作型ナイツは完全にボル
スの動きについて来れていない。反応の悪さは自身の技術でカバーをしているが劣勢である事は言い訳が出来ない。
 一通り攻撃を受けた後、まるで飽きたと言わんばかりに剣を構えて一気に近づくと腕を大きく振り上げてきた。
「これを待っていたのだ!」
 振り下ろされると同時に肘を思い切り蹴りつけた。その拍子にバイラムの肩が切り裂かれ、腕は自分の体か
ら離れた。その瞬間、すかさずその腕を掴むとナイツの力全てを使って頭部へと叩き付けた。
 ガシャン、という音と共にナイツの腕はその衝撃でへこみ、ほぼ七十度の角度に曲がったがバイラムの頭部
もまた自身の腕によって完全に砕かれた。そして頭を破壊されたバイラムは煙をを噴かせながらそのまま大地
へと落下していった。
「ふぅ……危なかった……」
 初めて戦ってから既に一年経っている。こちらとて学習はしている。が、ギリギリであった事に違いなかっ
た。一年経つというのにバイラムの脅威は変わっていなかった。機体の事を抜いたとしても命を奪われかねない。
「アルたちと合流せねば……」
 気を取り直すと一路、アトランタへと進路を取るとナイツは一目散に向かっていった。

 基地に到着して真っ先に目に入ったのは疲れ果てた顔のアルとレイであった。顔は青ざめ、目には隈が浮か
んでおり、ベッドに座って濡れたタオルを顔に当てていた。レイにいたっては簡易ベッドの上で横たわっており、
起き上がるのすら辛い状況らしい。格納庫の近くにあるこの休憩所では、隣からクレーンなどが動くけたたまし
い音が何度も聞こえてきた。とてもではないが休めと言われても休める状況とは思えなかった。
「大丈夫か?」
「へ、平気です。こんなの市民たちの不安に比べたら……」
 そうアルは言いながらすぐさま立ち上がって腕を上げようとする。
 だが自分の身体を支えきれず、そのまま床に膝を付いた。先ほどの声にも完全に覇気がなかった。
「しっかりしろ!」
 すぐさま駆け寄ると肩に腕を回し、立ち上がらせる。支えるアルの体は筋肉質であったのに対し、ほんの少
し軽かった。恐らく連日連夜、バイラムとの戦いに明け暮れていたらしい。それだけではない、食事らしい食
事をしていないのだろう。その証拠にアルは足に力が入らないらしく、立ち上がろうとしても常にフラフラと
安定しなかった。
「ありがとうございます……」
「何、礼はいらん。これは隊長の務めだからな」
 必死になってベッドの上に座らせるとそのまま勢いよく後ろへ倒れた。眠気が激しいらしく、何度も瞬きを
している。頑張っていてくれる事は十分に理解できた。
 それに引き換え、試作型ナイツを引っ張り出しておいて私はこの様か。友の敵も討てず……。
「隊長?」
 そんな悔しさそうな顔に気がついたのか、レイがつい声をかけてくる。知らず知らずのうちに悔しさが顔に出ていたらしい。気落ちしている場合ではない。ここからが大変なのだから。
「いや、大丈夫だ。それよりも状況を聞かせてくれ
 ボルスがそういうと二人とも起き上がろうとするがすぐにそれを手で制す。
「はっ、我々二人は現在のところバイラム二機の撃破に成功。しかし依然バイラムは広範囲に点在しており、
534創る名無しに見る名無し:2012/12/13(木) 22:43:10.95 ID:wcrRK2DD
その対処に追われています。一応軍部のほうでは対策を練っていますが依然打開策は発表されてません」
 ケントが作った共有結合の槍は製作に時間がかかるようだった。バイラムの破片を使用した武器を製作する
のにも、配備するのにも、時間がかかるのは明白であり、そもそも現在の敵はバイラムではなく暴徒と化した
市民である。彼らを静めなければ二次災害が起こるのは確実であった。そうなればナイツに頼るしかなかった。
ボルスほどの技量がないにしても二人は堅実に任務を行い、バイラムを一機ずつ倒していった。
「そうか……私のほうも軽く説明しておこう」
 ボルスはアトランティスであった事を説明した。バイラム・カスタムとの戦闘、ユニオンとの連携、現れた
バイラムU。そして異星人の存在……。ボルスは彼女が残した言葉も包み隠さず二人へ伝えた。
「そんな……」
「異星人なんて……信じられません」
 二人とも信じられないといった表情でボルスを見つめている。レイに居たってはとてもじゃないが自分が
デマに踊らされているのではないかと疑うかのような視線が含んでいる。
「私もそう思う。だが、信じるしかないのだ」
 二人が事態を飲み込もうとした丁度同じタイミングでニュース番組が始まった。
「ニュースです、つい先ほど国連からバイラムに付いての発表がありました」
 一体何事だ? 一斉にテレビ画面へと視線を移す。
 背広を着た男が演説台の上に立つと視線を真っ直ぐカメラに向けてきた。
「皆さん、落ち着いて聞いてください。バイラムの解析結果が先ほど分かりました。バイラムの正体はADA
Mの乗組員です。バイラムは彼らを改造して作られた生体起動兵器なのです」
 突然の発表にボルスは目を白黒させた。 このタイミングでか!? いくらなんでも今は拙過ぎる!
 例え事態を知るのは遅かれ早かれ理解は出来ていた。だが、今この状況での情報開示は火に油を注ぐ結果に
なりかねない。それだけではない、この行為によってADAM乗組員の家族にも被害が及ぶ可能性がある。
 おまけに解析という言葉からどこと無く卑怯な臭いも感じ取れた。恐らく政府筋の保身だろう。
 そんなボルスの心配も目の前の男には全く伝わらず、言葉を続けていく。
「それだけではありません、今回の騒動を引き起こしたのは三強の政治家なのです。彼らは火星にある莫大な
資源を見つけたのです。これに対し――」
 資源だと? 初耳だぞ、それは。
 発表は続いていく。先ほどの疑惑は確信へと変わっていく。暴動は確実に起きる、しかも最悪な方法で。
 ただでさえ、暴動が起きているのだ。最悪の場合、治安維持のために市民と軍が激突だろう。市民を守るた
めの軍が守る対象である市民へと銃を向ける。皮肉というレベルを超えて滑稽に見えてきた。
 そうなったらどうすると自分に自問自答してみるが自分の心内は既に決まっていた。
 三人ともテレビへと視線を放さない中、基地内放送が入った。
「ボルス大尉、ボルス大尉、至急、基地通信室へ」
 一体なんだろうか? ありとあらゆる事がいまさらに感じている現状で何を申し立てようというのだろう。
 二人とも不安そうな顔でボルスを見るが彼は自虐めいた笑みを浮かべる。
「心配するな、ちょっと怒られてくるだけだから安心してくれ」
そういうとそのまま待機室を出て行った。広い廊下には人影がほとんど無く、歩いているのはボルスだけであった。
 一体、何のようなんだ? だが、思い当たる事はいくつもある。不法侵入に軍備品の強奪、及び無断使用。
 おまけに国家機密を知ったとなれば銃殺刑だな。
 不吉な事を考えているのに足取りは思った以上に軽かった。自暴自棄になっているのか、それとも明るい兆
しでも見つけたのかも分からないが。
 通信室の中は誰もおらず、通信用の端末があるだけであった。どうしたものやら……。と通信の端末に電源
を入れる。
「こちら、ボルセウム・ライアー”元”大尉。司令部、応答を願います」
「こちら、司令部。久しぶりだな、大尉」
 目の前に現れたのはボルスの解雇を言い渡した将軍であった。時間がそんなに経ってはいないはずなのだが
白い部分がかなり増えていた。それだけではない。皺の部分も多く、既に十年以上も時が過ぎ去ったかのよう
な風貌であった。
「まず、単刀直入に言おう。君の除隊は不当なものとしてそれが取り消された」
「そうですか……」
 大統領府から来た通知はアンギュロス側の政治家が仕込んだものらしい。
 恐らく、教授からケントへ、ケントから私へと何らかの情報が流れていると思ったようだ。
535創る名無しに見る名無し:2012/12/13(木) 22:44:36.40 ID:os0N43we
C
536創る名無しに見る名無し:2012/12/13(木) 22:57:21.83 ID:QtwzxNY+
残りは避難所みたいですね
537残りです:2012/12/13(木) 23:17:42.11 ID:wcrRK2DD
 まあ、結局のところ自分自身から出た錆のせいで自分の首を絞める結果になったのだが。
「そして、君のやったことは全て不問にさせてもらう」
「全て、とは?」
「試作型ナイツの独断使用、PM銃器一式の強奪。おまけに戦前逃亡に不法侵入。あげれば切りがないぞ」
「失礼ですが私は戦前逃亡ではありません、そもそもあの時、私は解雇されたのですから」
 皮肉混じりに言うと司令もまた何食わぬ顔でこう返してきた。
「辞令が受理されて執行されるまで三十日必要だ。それに一民間人にPMを使わせるのは犯罪ではないのかね?」
 そういいながら指を組んでボルスを見つめる。口では決して負けんと思っているのだろうか?
 軽く咳払いをすると彼は話を続けた。
「話を戻そう、戦時特例処置として君の階級を少佐とする」
「少佐?」
「人手不足なのだよ、わがステイツも」
「……確かにバイラムのせいで人間は減っていますが……」
 苦々しい顔で言うがどうにもしまらない事情だ。少佐という地位は魅力的だがそれ以上にステイツの台所事
情が切羽詰っているのがどうにも情けなく感じる。
「では、それでいいな。それでは早速だが君に任務を言い渡す。君は本日ワシントンにいる大統領を保護してくれ」
「大統領を、ですか?」
「ああ、彼には多額の借りがあってね」
 借りという言葉にボルスは眉をしかめた。恐らく……裏金の事だろう……。いや、この司令の事だ。権力の
ゴリ押しを受けたのだろう。
「保護は結構ですが……バイラムとのつながりを示すのに有力な人物ではないのですか?」
 本来なら法廷へと出廷させるべきなのだ。それなのに目の前の司令は平然とした口調で言い放った。
「ボルス少佐、民間人よりも大統領の命の方が重いのだよ」
「しかし!」
「既に決まったことだ、ボルス少佐。辞令を受け取って戦線へ復帰したまえ。」
 傲慢な物言いにボルスの怒りはついに頂点に達した。
「ふざけるな! 散々振り回しておいてそれか!? 私は都合のいい駒ではない!」
 そのまま感情に任せ、通信機を床に叩き付けた。床の乾いた音と共に通信機が火花を散らして機能を停止させた。
 荒い息を整えると冷静に自身の行動を思い直す。こんなに感情を露にしたのは久しぶりだった。ケントとナ
イツの仕様と巡って夜中まで議論をするような高揚感ではなく、今だに保身しか考えない彼らへの鬱憤だった。
「情けないな、全く」
 小さくつぶやくと通信室に背を向けて歩いていった。

 そして、そこから一週間経った。
 この一週間の間、シルバーナイツはバイラム掃討に精を出していた。
 ボルスは囮に徹し、その間に二機でバイラムを倒すというシンプルなものだったがこちらを甘く見ているバ
イラムには非常に効果的であった。最初のと違い、現在のバイラムは共有結合の装甲に頼りきりであるため、
隙が大きく、。
 無論、そんな事もないバイラムもいた。初撃をかわされたり、逆に槍を持っていたナイツが襲われる事もあ
ったがその場合はボルスが身を挺してそれにカバーに入った。
 その為、囮の試作型ナイツが最も酷い損傷を受けるケースが多かった。もっとも、中のボルスはナイツの構
造が頑丈だったため、かすり傷程度で済んでいたが。
 そんな中、バイラム三機を撃破して帰還したときのことである。
「……エグザトリア?」
「ええ」
 ハンガーに取り付け、コックピットから降りると一人の整備員がボルスに話しかけてきた。
 この整備員にはいつも贔屓にさせてもらっているので、ボルスとしてもありがたかった。
 彼からは軍の情報から始まり、市民の動向、政府の内情、トイレットペーパーの安売りまで教えて貰うこと
もあった。元情報部らしく、その手の伝手はいくつもあるらしい。どういった因果で整備員になったかは教え
てもらっていないが。
「国連で管理しているPMだそうです。なんでも一機でバイラムを全て殲滅したとか……」
「そんな強力な機体はどこで開発したんだ? 少なくともステイツで作られたとは到底思えないのだが」
「……小耳に挟んだのですが……」
 整備員が急に声を潜めた。どうやら聞かれたくない話らしく周囲に視線を配っている。
「どうした?」
「エグザトリアはバイラムと同じ所で作られた機体らしいです。最初の搭乗者である何の訓練も積んでいない
少年があっという間に倒したぐらいですから」
「バイラムと同じか……」
 バイラムと同じ、という事は恐らく認識の書き換えも当然行われているのだろう。
 それだけではない、あのバイラムを一機で駆逐したと言われている事から性能もナイツとは大幅に違うのだろう
538創る名無しに見る名無し:2012/12/13(木) 23:29:22.46 ID:QtwzxNY+
「そしてそのエグザトリア、この間ようやくステイツに運び込まれたようです」
「なんだと?」
「おっ、少佐も気になりますよね。元々はマッケンバウアーがわざわざ手引きをしてくれたぐらいですからね、
まあ、毒をもって毒を制すというわけで……その陰で億単位の金が動いたとも言われいますよ」
「そこまでやるとは……」
 正直信じられない自分がいた。バイラムと同型機とはいえそこまで性能差があるとは思えなかった。
 無論、バイラムUとバイラム・カスタムの戦闘を目撃していたボルスにとっては信じられることではあったが。
「AUAもユニオンもエグザトリアのおかげでバイラムを駆逐できたらしいですからね。ナイツだけでは……
おっと、すみません」
「いや、別に気にしてはない。悔しいが事実である以上否定は出来ないからな」
「ありがとうございます、っとそろそろ休憩時間が終わるので私はこれにて失礼します」
「ああ、それでは」
 二人はお互いに敬礼するとそれぞれ自分の持ち場へと帰っていった。
 エグザトリア……いくらなんでも信じられんな。
 そう思いつつも心のどこかでその“力”欲しがっている自分がいた。
 進まないバイラムの掃討、強大すぎる敵。切り札であったが今はないパラディン。
 この言いようのない不安を振り払えるものをほしいと心のそこから願っている。
 いかん、こんな気持ちでは勝てる戦いも勝てないな。
 気分を一新しようと外へ出て空気を吸おうとすると基地内放送が入った。
「シルバーナイツは至急通信室へ」
 またか……今度はなんだ?
 ボルスは踵を返して基地の中へと入っていく。基地にいる人々はボルスのほうをちら理を見た後、そそくさ
と自分の仕事へと戻っていく。全く、有名になったものだ。
「あっ、隊長!」
 通信室の前でアルとレイが立ち往生していた。二人とも一体何の用事なのか分からないらしく、少ししかめ
た顔で話をしていたようだ。とにかく会うしかないと思い、三人が通信室へ入ると一番大きいモニターに電源は入った。
「久しぶりだね、少佐」
 出てきたのは司令だった。正直に言えば受話器を叩きつけたと言うのにまた顔を合わせるということにボルス
は驚きを隠せなかった。人手不足なのか、それとも他にやる人間がいなかったのか、と心の中でつぶやく。いや、
解雇されなかっただけマシだと思いたい。
「今度はなんでしょうか? またあの大統領のお守でしょうか?」
 皮肉をぶつけることに嫌気がさしていたがこの顔を見るとどうしてもいちいち嫌味をこぼしてしまう。
「その大統領はつい先日暗殺されたよ」
「暗殺!?」
「犯人は側近の秘書だよ、家族を殺された恨みを晴らした、といったところだね」
 司令の言葉からボルスはなんとなくだが理解が出来た。恐らくその秘書はバイラムの、ADAM乗組員の近
親者だったのだろう。三年という月日は決して人の心を癒すことなく、まるで剥ぎ取られるかのように再び蘇
ったのだ。もしくは、大統領に責任をかぶせ、自信の安寧を得るためにあえて罪を被せたか……。
「さて、本題に入ろう。君はエグザトリアというPMを知っているな?」
「はい、ステイツの軍人はみんな知っています」
「なら話が早い、それに君を搭乗させる。というのはどうかな?」
「何ですって!?」
 アルが驚きの声を上げる一方、ボルスはなんとなくだが理解をしていた。
 唯でさえ、進まないバイラムの掃討とエグザトリアという新型。それを欲するのは当然のことかもしれない。
 それだけではない、その間にこのエグザトリアのデータを欲しがるのだろう。
 量産するほどの力を持っていないが少なくともデータを取得すれば他の国より数歩リードすることが出来るのだ。
「少佐、君なら理解をしているはずだ。現状でベストなのはこの機体を使ってバイラムを駆逐する事だ」
 まるで悪魔のささやきのように司令は言葉をつむぐ、しかしボルスの心は既に決まっていた。
「お言葉ですが私はバイラムに乗るつもりはありません!」
 ボルスの言葉に対し、司令もまたすかさず反論をする。
「しかし、ナイツで勝てると? そこの二人に任せたつもりなのだろうがここ一週間の戦果はバイラム三機。
市民を守るなどと片腹痛い事だよ」
「ぐっ……」
 アルは思わず歯軋りをしてしまう。痛いところを突かれ、反論が出来ない。
 結果が全てである以上、この指令がいっていることは事実である。
 あえて乗れといわないの自分のプライドなのだろうか?
「……分かりました、私が搭乗します」
「隊長!」
「ただし、破壊し終えたらすぐさま国連へと返却を要望します」
539創る名無しに見る名無し:2012/12/13(木) 23:31:02.63 ID:QtwzxNY+
「その辺りは理解をしている」
「では、失礼します」
 ボルスは敬礼をすると部屋を出て行った。そして、アルがすかさず怒声をあげた。
「隊長、どういうつもりなのですか?」
「……お前が言いたいことは分かる。だが、現在のナイツで勝てると思うか?」
「それは……」
 あの時乗らないといったのは自分の意思だ。
 無論、冷静に考えてみればナイツでバイラムを倒すのはあまりにも困難である。
 装甲を貫けるとはいえ囮を使ったワンパターンな作戦、もしもきちんとした戦術を備えたバイラムならひと
たまりも無い。そして、何よりも国力の回復を第一にしなければ戦いはさらに長く続くだろう。
「それだけではない、あの紫のバイラムといつか、真っ向から打ち合わなくてはならんだろう。そうなったら
ナイツ、いやパラディンでも心もとない。我々には力が必要なのだ、この戦いを終わらせるために」
「隊長……」
「信念を曲げて頭を下げるのはこれっきりだ、私はナイツを愛しているからな」
 ボルスはそういうがバイラムに乗り込むのには心のどこかで抵抗があった。ナイツを大切にしているという
のは事実だがそれ以上にバイラムへの嫌悪があった。これも新たなナイツを作るため、アンギュロスたちに勝
つためと言い訳をしている。
 ケント、お前は許してくれるだろうか?

「これがエグザトリアか……」
 格納庫で最終チェックをされているエグザトリアを見てため息を付く。ボルスが乗るナイツとほぼ似たよう
なカラーリングに対し、姿かたちがバイラムである事を教えてくれた。装備品もせいぜい、腰のライフルと備
え付けの剣のみというシンプルなものである。
 エグザトリア自体がここに輸送されるまではそう時間がかからなかった。
 乗ると決めて三日、その間に三人ともバイラム撃破に精を出した。だが、倒した数はせいぜい三機発見した
うちの一機。残りの二機はボルスたちをまるで相手にするわけでもなく、あっという間に逃げ去ってしまった。
 あまり、甘えていられないな。現在、バイラムが残っているのはこのステイツのみだ。
 AUAやユニオンでは既に安全宣言が出ていた。多くの難民を抱えたこの国から出て行くものも多いがもう
そんな事はさせない。そう思った矢先、整備員から声をかけられた。
「少佐、チェックが終わりました!」
 コックピットに乗り込むとスターターを突っ込んだ。軽い振動がコックピットに伝わってくるとそのままゆ
っくりとエグザトリアは動き出した。意外にも手ごたえはかなり軽い感じであった。まるでナイツがトラック
であるのに対し、このエグザトリアはまるで軽快なスポーツカーを思わせる軽快さだった。ペダルの踏み込み
もかなり軽く、操縦桿の操作性も決して悪くはない。
「さて、と……」
 実力を見せてもらおうか、エグザトリア。首を回し、軽く伸びをするとコンピュータの方の起動が完了した。
 耳障りな電子音と共に目の前にあるディスプレイがメッセージが表示する。
『おはようございます。本日のミッションはこちらになります』
「インフォメーションか……」
 まあ、昨今のPMなら付いてて当然だが……。
『バイラムの丸焼き、民間人への補給物資の運搬、アホの大臣の尻叩き、以上の三品です』
 突然の事にあっけに取られてしまった。だがすぐさま気を取り直した。
「ちゃんと表示をしろ!」
 とコンソールを叩いてしまう。が、Cpuは止まることなくころころとメッセージを変えていく。
『ほんのジョークですよ、パイロット君』
 これがエグザトリアなのか? 全く報告が入ってなかったぞ!
 先ほど期待感は既にどこかへと消え去っており、今あるのは不安と苛立ちだけであった。
 全く、とんでもないものをよこしたものだ。
「少佐、カタパルトの準備が整いました。前進をしてください」
「了解」
 重い溜息とペダルを踏み込み、カタパルトの前まで来る。そんな時、新たなメッセージが表示された。
『やれやれ、そんなだからケツに火がつくのさ』
「!? き、キサマァ!!」
 苛立ちを抑えきれず、懐にある拳銃に手を伸ばそうとする。
「エグザトリア、発進準備完了。少佐、発進してください」
 だが、オペレーターの発進と言う言葉に反応して、自動的にカタパルトへと足を運ぶ。そしてあっという間
に臨界までエンジンを稼動させ、背面のバーニアを輝かさせた。そしてシグナルがグリーンになったと同時に
基地から飛び出していく。
 数秒の後には雲を突き抜け、下にあった基地の姿が見えなくなっていた。
「うおおお!? こ、こんなじゃじゃ馬とは聞いてなかったぞ!」
540創る名無しに見る名無し:2012/12/13(木) 23:34:32.78 ID:QtwzxNY+
 準備をしないまま飛び出したため、ボルスは大きくのけぞる事となった。すさまじいGがコックピットに降
りかかる。シートに完全に押しつぶされる形で操縦桿を握り締めた。が、操縦をしているというよりも完全に
振り回されているという状況だ。
 ここに来る前の戦闘データをボルスは見せてもらった。
 初戦闘時は大きな動きはなく、ただライフルを撃つだけだった。
 AUAのパイロットが乗った場合はきびきびとスムーズに動いた。
 ユニオンのパイロットの場合はまるで鳥のように優雅に曲線を描いている。
 だが、自分の場合は明らかに振り回されている。下手に操縦桿を倒せば衝撃で墜落するのは誰が見ても明ら
かであった。一体、何が違うというのだろうか? 状況か? それともパイロットの動作か? そんな疑問も
浮かぶが今はこの暴走PMを制御するほうを優先した。
「くっ、止まれ!」
 ブレーキのペダルを踏むとエグザトリアは空中で急停止をする。今度は大きく前へと吹き飛ばされそうにな
るがシートベルトのおかげでそれを免れた。突然のことに思わず気分が悪くなるが無理やり胃液を元に戻す。
「ふぅ……うぉ!?」
 一息入れようとした瞬間、今度はすさまじい勢いで落下をし始めた。ペダルを踏んでいないせいだろうか?
『私はチョウ、美しく飛び上がる』
「くそ!?」
 再びアクセルを踏み込むと空中に静止するように滞空し始めた。地面までの距離は百メートル、もしも失敗
していたらボルスは衝撃で骨折していただろう。
 一体全体なんなんだ? そう思い、ディスプレイのほうへと視線を送ると――。
『トニー、車の調子はどうだい? ああ、調子はいいよ。あまりに調子がよすぎてエンジンから煙が出てるしね』
「何が車の調子だ!」
 振り回され、死に掛けた怒りをぶつけようと大きく拳を振りかぶろうとする。だが――。
『怒るのは後だ、敵が来た』
「敵だと?」
 先ほどとは打って変わって普通のインフォメーションになる。辺りを見渡すとそこにいたのはバイラムだった。
 数は五機、珍しくVの字の編成飛行を行っている。ある者はライフルを手に、ある者は剣を構えてボルスの
方へ視線を向けている。恐らく、この前逃したバイラムだろう。その証拠にここ依然つけた肩の傷が一機のバイ
ラムについていた。
「なっ!?」
『どうやら知られているらしいな。頼んだぞ、ルーキー』
「私はルーキーではない!」
 バーニアを輝かせ、一気に近づく。発進のときに感じたGよりもさらに激しい衝撃波がボルスを襲う。慣ら
し運転は終わったと言いたげにどんどん加速をしていく。風景は線のように流れ、目に入るものはバイラムの
み。右に、左に、上に、下に、振り回される事なくバイラムの背後に回りこむと攻撃を与える間もなく剣を大
きく振るった。若干、擦れた音と共に背中を切り裂かれると同時にそのまま地面へと堕ちていく。
 地面に横たわったバイラムは二つに切り裂かれた。
「ちぃ!」
 ボルスはエグザトリアの性能に驚きつつもその真価を発揮でないことに苛立ちを感じていた。
 今のは二機ともいけたはずだ! もう少し反応を早くせねば!
 今度はよりしなやかに動かそうと模索してみる。再び剣を構え直し、間合いを取り直す。
 だが、バイラムもまた黙ってはいない。残りの四機がライフルを構えると一斉にエグザトリアを目掛け砲撃
を開始する。よっぽど壊したいらしいのか、照準が定まらないまま撃っているように見えた。
 軍事経験が無い素人の脳を使っているのだ。当たり前といえば当たり前だな。
 エグザトリアはその間隙を縫いながら一気に距離を縮める。そしてバイラムの腹部に飛び膝蹴りを叩き込む。
 装甲が思い切りへこみ、大きくよろける。その隙をボルスは見逃さなかった。
「これで!」
 そしてそのまま剣を胸につきたてる。若干苦しんだ様子を見せた後、バイラムは力なくその場にうなだれた。
 引き抜くと同時にバイラムは大空の花火になった。二機目も撃破。あとは……。
「隊長!」
 背後からアルとレイのナイツがやって来た。手にはいつもの通り槍を持っている。
「これより援護をします」
「たのむ!」
 三対三という状況下であったが形勢は完全にこちらが有利であった。
 散々、連携行動や集団行動を行われていたシルバーナイツに対し、バイラムの戦い方はどこと無く不器用だった。
 連携はずさんであり、戦いもどことなく臆病な感じがした。その証拠に戦い方に腰が入っていなかった。
 それだけではない、試作型のナイツとは違い、エグザトリアはボルスの注文に答えてくれた。
541創る名無しに見る名無し:2012/12/13(木) 23:36:16.34 ID:QtwzxNY+
 若干”遊び”があったがペダルを踏み込めば速度を上げ、操縦桿を倒せば右に左にときちんと避けてくれる。
 一気に近づくがすばやく上昇し視界をかく乱させると後ろからいる二機のナイツがバイラムの胸を、腰をそ
れぞれつら抜いた。その光景に対し、バイラムから戸惑いの表情を感じ取れた。
 こんなはずが無い、という顔がそこにあった。
 認識を変えたとしても恐怖という感情はあるようだな。と思うボルスであったがその考えは甘いことに気がつく。
 最後のバイラムが急に地上へと降り立った。エグザトリアたちもそれに続く。
 そして、地表スレスレまで近づくと今度は辺りを見渡す。すると何かを見つけたのはそこに一直線に向かった。
 ボルスは視線の席にあるものに驚いた。
「まずい!」
 バイラムが向かった先、そこは……原子力発電所であった。
 エグザトリアが追いかけようとするがバイラムはEX-1を起動させた。
 赤の血管と共にさらに加速させていく。メーターで計算すればマッハ4はあるだろう。音速の壁を突き破り
土煙を巻き起こしながら一直線に向かっていく。ときたま岩などの障害物に当たるが一向に気にする様子もなく
ひたすら目的地へと突き進んでいった。
「逃がすか!」
 ボルスもまた思い切りペダルを踏み込み、バイラムを追う。バイラムと同じ音速の壁を、そのさらに上を跳
び越していく。
「でぇぇぇぇやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 雄叫びとともに一の太刀を浴びせるとバイラムはあっさりと真っ二つになった。
 手応えも音もなくただ、ゆっくりと下にずれ……そして地面へと横たわった。
 エグザトリアはそのまま上昇していくと音速世界からゆっくりと帰還してきた。
「はぁはぁはぁはぁ……」
 息を整えながら機体を振り向かせ、先ほどのバイラムへと視線を送る。
 そこにはかつて自分たちを苦しめた悪魔の姿はどこにも無く、あるのは破壊されたPMだった。
「バカな! 私たちはいったいなんだったんだ?」
 思わず声を荒げてしまう。苦戦を重ねたバイラムがあっさりと倒れたという事実がどうにも信じられなかった。
 育て上げてきたナイツが侮辱されているような気分になった。友の研究成果も何の意味もない。
 仮にも幾多の戦いを勝ち抜いてきたナイツがまるで児戯のように感じてしまう。
「隊長……」
 苦い顔をしているボルスに対し、アルもレイも何にもいえなかった。

中編2へ続く
542創る名無しに見る名無し:2012/12/13(木) 23:37:44.98 ID:QtwzxNY+
避難所の分を載せました
それでは
543創る名無しに見る名無し:2012/12/14(金) 23:06:51.01 ID:OzJGZztc
投下乙!
544創る名無しに見る名無し:2012/12/14(金) 23:17:06.23 ID:BKcFF32G
投下乙です!相変わらずバイラム面白すぎるます。展開も胸熱すぎる……!
545創る名無しに見る名無し:2012/12/18(火) 20:25:11.85 ID:XW9fSXBL
投下乙!
そして誰もいないナー!
546創る名無しに見る名無し:2012/12/19(水) 02:20:34.60 ID:+No+RdbH
ロボ格闘やりたい
547創る名無しに見る名無し:2012/12/19(水) 02:33:15.88 ID:SFepmPQg
Gガンとな!?
548創る名無しに見る名無し:2012/12/24(月) 00:17:12.49 ID:WaNgQeHb
メリークリスマス!
549創る名無しに見る名無し:2012/12/24(月) 09:54:45.50 ID:zCf9kr6z
シングルベール、シングルベール、地獄の鐘が鳴る〜
550創る名無しに見る名無し:2012/12/24(月) 14:59:25.45 ID:r6FvGUjA
クリスマス? 何それ美味しいの?
551創る名無しに見る名無し:2012/12/27(木) 18:13:46.96 ID:pFJerACI
クリスマスはもう終わったよ。帰っておいで。
552創る名無しに見る名無し:2012/12/27(木) 20:04:33.11 ID:qvsBgixM
いったいどれだけの時間が経ったんだ……!
553創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 13:11:43.05 ID:oLLowhQj
オカエリナサト
554創る名無しに見る名無し:2013/01/02(水) 21:54:30.86 ID:7FevuTaf
新年開けたぞー!



って誰もいねえええええ!
555創る名無しに見る名無し:2013/01/03(木) 04:07:02.67 ID:FMNGD4Pm
ロボ男がヒュンヒュン飛び回るのが楽しくて楽しくて
556創る名無しに見る名無し:2013/01/11(金) 01:54:54.48 ID:dzQQQHhV
おっぱいがぷるんぷるん動き回るのが楽しくて楽しくて
557創る名無しに見る名無し:2013/01/15(火) 21:08:49.47 ID:Xcxvt3E6
貴方はロボットにブースターを付ける派ですか? 付けない派ですか?
558創る名無しに見る名無し:2013/01/15(火) 21:25:44.45 ID:jh0sTtjy
デザイン上、無いと寂しいよな。
ブースター的な意匠の無いファンタジーロボのデザインとか難しいわ。
559創る名無しに見る名無し:2013/01/15(火) 22:33:11.80 ID:Xcxvt3E6
設定的にはリアルっぽい世界観よりファンタジーの方が多少の無茶が利きそうだけどね
560創る名無しに見る名無し:2013/01/15(火) 23:50:09.31 ID:JIVsYMr8
ダンバインとかサイバスターとか
561創る名無しに見る名無し:2013/01/16(水) 09:22:51.24 ID:Ff95nTSO
規制解除test
562創る名無しに見る名無し:2013/01/16(水) 13:23:47.91 ID:/1bqpeP6
ブースターと言うかブースターの残光が好きだな。第二次OGのツインバードストライクはくどすぎたけど。
563創る名無しに見る名無し:2013/01/16(水) 22:56:49.14 ID:hxewiDtq
トールギスのブースターかっこいいお( ^ω^)
564創る名無しに見る名無し:2013/01/17(木) 10:18:51.76 ID:M6rGDNKZ
解除されてたら本気出す
565創る名無しに見る名無し:2013/01/17(木) 13:22:48.08 ID:jKSKlrIJ
背中のユニットがパカっと割れて大きなブースターノズルが露出するギミックがカッコイイ

>>564
本気出せよ
566創る名無しに見る名無し:2013/01/17(木) 15:14:03.30 ID:ZJ4ue17H
ブースターは大きければ大い程良い。もしくはノズルが多い。



>>564
本気はよ
567創る名無しに見る名無し:2013/01/17(木) 21:40:45.16 ID:ZhQ1X5kt
師走と正月が終えたのでそろそろエンジンがかかってくると思うのですよ
ブースター? デカブツとか戦車っぽい重装系がつけてると無理やり感があって素敵

と、バイラム中編2(前編)を投下します
568創る名無しに見る名無し:2013/01/17(木) 21:41:50.55 ID:ZhQ1X5kt
 結局、エグザトリアの手により地球にいたバイラムは全て駆逐された。たった一機のパンツァーモービルが
世界を救った瞬間である反面、政府の安易な手段への落胆した瞬間でもあった。
 バイラムが駆逐された十日間、一部の暴徒と化した市民によって政治家狩りと呼ばれる私刑が横行した。
 警察や治安部隊が出動し、血で血で洗う中、関りのあるなし関係なく一部の政治家が私刑を受け死亡した。
 またある者は裁判で無罪を主張するが弁論は一切受けられず、そのまま死刑という形になるものもいた。
 血生臭い粛清の中、何はともあれ、世界はほんの少しだけ平穏を取り戻した。
 そして、そこから一月という時間が流れた。日本の下関市。
「オーライ! オーライ!」
 無数の白いコンテナを積んだトラックがゆっくりとバックしていく。誘導員の手には誘導灯が握られており、
ひっきりなしに思い切り振っていた。そして、所定の位置に付くと手を前に突き出してストップとジェスチャー
をするとクレーンのフックがゆっくりと降りてきた。コンテナをクレーンに取り付けるとそのままゆっくりと
上昇していき、同じ色のコンテナが集まっているところに置かれた。
 この光景は基地の中ならいたる所で見られた。トラックの数は百を超えており、民間の運輸会社もいる。
 皆あわただしく動いており、休む暇も無いらしく、タオルを肩にぶら下げながら額の汗を拭いていた。
 白いコンテナの中身は弾薬であり、危険物である黄色のマーキングとの上に黒い文字が載っていた。
 いや、弾薬だけではない、医療品やPMのパーツといったものも見受けられる。
 山のように詰まれたコンテナはベルトコンベアによって流れるかのように軍艦へと送られていく。定数を超
えると軍艦は大空のかなたへと消え去った。宇宙にある軍事ステーションへと運ぶのだ。
「これで全部か?」
「はっ!」
 上官と思しき詰襟を着たヒゲの男性がトラックの運転手に聞くと運転手は敬礼をして答えた。
 ヒゲの男性の手には確認用の書類が握られている。細かい字で書かれた書類はペンのインクが滲んでおり、
よっぽど読まれたのか小さな皺がいくつも見えていた。
「よし、次のものを頼む」
「了解!」
 運転手は再び空の荷台のトラックに乗り込むと再び基地から出て行った。これからまた別の物資を輸送するのだ。
 そして、時同じくして民間のトラックもまた基地から出て行く。トレーラーに蜂のマークが書かれた民間運
輸会社は何もないコンテナを連結すると出口へと向かおうとする。
「おーい、新人! こっちも帰るってさ!」
「あっ、はい!」
 運転席の窓から運転手が声をかけると新人と呼ばれた運送業者の少年はそのままトラックへと走っていった。
 助手席に乗り込むとそのまま基地を後ろにトラックは走っていく。扉を開けてすばやい動作で乗り込むとト
ラックは重いエンジン音をさせながら基地の外へと出て行った。
「帰ったら配達だからな」
「わかりました」
 新人、森宮祐一は窓の外にある荒廃した町を気だるそうな顔で眺めていた。
 メアリーと最後に会って四ヶ月経った。あれ以来、メアリーの姿は見ていないことが祐一の心に影を落としていた。
 それだけではない。先日、奈央からバイラムが父親であることを伝えられた。
 が、ショックはほとんど無く、これからどうすべきかを考えるほうが彼にとって辛い事だった。
 母親についても……メアリーについても……そして、自分自身についても……。
 学校に戻ろうと思ったが疎開が始まっている現在では残っている生徒は既にいなかった。
 風の噂で友人が軍に入った事を聞いたこともあったがここ最近は音信不通であった。
 恐らく忙しいのだろうと決め付け、アルバイトに励む事にした。
 全てを失ったのはある意味丁度いい、これからまた積み上げればいいんだ。そう思い込むために……。
「着いたぞ、急いで荷物入れて置け!」
「はい!」
 威勢良く返事をすると助手席から飛び出し、駐車場近くにある小さい荷物が入った段ボールを持ち上げる。
 そしてそのまま自転車の備え付けのカゴにくくりつけるとすぐさま飛び乗った。
 免許証を持っていない祐一は自転車で近隣の街への宅配を行わなくてはならない。仕事の一部とはいえ立ち
止まる事の無いこの仕事を祐一は気に入っていた。
 風を切りながらペダルを漕ぐとこれまでのことを忘れられる。そんな気分だった。
 焼け残っているはいるが何とか形になっている住宅、被災を免れた商店街、一時的に避難所になっている学
校、肩を寄り添って生きている難民に荷物を届ける。
569創る名無しに見る名無し:2013/01/17(木) 21:44:11.32 ID:ZhQ1X5kt
 判子を貰うことはほとんど無かった。大半がサインで済まされてしまう。無理も無い、このご時世でそうい
った物を持っているほうが珍しいという状況だった。
 一通り荷物を届け終えると仕事用の通信機に伝言が入っていた。
「仕事を終えたら帰っていい。給料はいつもの口座に入金しておいたから安心してね。お疲れ様。」
 思わず噴出してしまう。普段は強面なし店長であったがメールの文章に対して、つい顔がほころぶと同時に
こんな状況下でも人を思いやれる人はそれが出来ることについ関心をしてしまう。
 そのとき、駅前の巨大ビジョンからニュースが流れた。足を止めてビジョンに視線を送る。
「ニュースです、暫定政権は国連が立案した対アンギュロス作戦を――」
 最終決戦作戦、イーストオブエデン。
 アンギュロスへの報復攻撃であり、戦いを終結させる第一歩であった。
 作戦内容は簡素である。
 アンギュロス中枢へ突撃し、首謀者である人間を逮捕。及び抹殺する事である。
 そのためには今まで以上にPMが必要であり、これまでとは違った戦いになるのは自明の理であった。
 宇宙では無数の艦隊が終結しており、アステロイドベルトに対して偵察を行っていた。
 無論、その偵察で帰還したものは誰一人としていなかったがそれはある意味アンギュロスの存在を知らしめ
ることになった。
 核ミサイルの使用を想定したが奪われる可能性と効果が疑わしいため却下された。
 作戦の準備は慎重に慎重を重ねている。数少ない物資を集め、そして現在にいたった。
 だが、この話を聞くたびに祐一の胸の奥は何か苦しい思いを抱えていた。
 メアリーは死ぬのか? 戦いは終わるのか? 結局、何も出来ないのか?
 自分には何も出来ない、と言い聞かせてはいるもののやっぱりメアリーに会いたいのは事実だった。
「とにかく、帰ろう……」
 祐一は自転車にまたがるとゆっくりとした速度で集配所へと帰っていった。

 ステイツにあるヒューストン基地。ステイツの戦力がほとんど宇宙へと上がった現在、基地にいるのは少数
の人間のみであった。その奥にある格納庫では一機のPMが完成間近といった雰囲気で黙々と作業が進められていた。
「パラディンの様子はどうだ?」
 組み上がった銀色の機体を見て、近くにいる整備主任に声をかける。
 声をかけられたほうは少し緊張しながら敬礼をするとくみ上げたナイツのほうに顔を向けた。
「これはボルス大尉! はい、何とか……といった所ですね」
 試作型ナイツをベースにパラディンの構造を無理やり組む込んだのだ。開発者がいない現状でこれを組み上
げたのはかなり骨が折れたことだろう。ケントのパソコンから何とかデータを取り出し、復元したのがこのパ
ラディンなのである。だが、ケントの技術はとてもじゃないが一般の整備兵や研究員では手が届かない。
 そこでバイラムのパーツを無理やり組み込み、現在の形となったのだ。突貫作業ではあったが調整は進んで
おり、後はボルスが慣らし運転をし、微調整を行うのみ。
「パーセンテージ的に見て前回の九十パーセント、と言ったところでしょうか?」
「残りの十パーセントは?」
「正直言ってベルガン主任の技術ですね。一応我々も手を尽くしますが大きく見積もって五パーセントぐらい
しか上げられないでしょう」
 パラディンを見て整備主任がそうつぶやいた。モニターには比較用として最初のパラディンのデータと現在の
パラディンのデータを見比べてみる。以前のとに比べ、出力や強度といった問題が多数提出されたのだ。エンジ
ンから始まり、各部分の補強は行っているが不安材料は山積みであった。
 無論、彼らが必死になってくみ上げてくれた事をボルスは知っている。
 五パーセント、未完成品として出撃するしかない。一種の死刑宣告であったがボルスはあせることも戸惑う
こともなかった。それだけこのナイツを信じている証であった。
「……そうか、ならそれでいい」
「わかりました、全力を尽くさせてもらいます」
 整備主任は敬礼をすると踵を返し、別のPMへと向かった。彼の仕事はナイツ以外にも沢山あるのだ。
 それにしても……エグザトリアとは……。
 ボルスは、エグザトリアから降りた後のことをゆっくり思い出した。
 様々なデータを検証し、分析した結果、分かった事がある。それはエグザトリアは人間とほぼ同じである、
ということだった。 ”彼”は無機質なバイラムから一歩進んだ機体であり、バイラムとの共通項はあるもの
の中身に関して言えば全く違ったものであった。。本来のCpuのようなものとは違い、より人間に近づける
570創る名無しに見る名無し:2013/01/17(木) 21:44:51.75 ID:ZhQ1X5kt
ため。人間と同じように生活リズムが作り出されたのである。そしてインフォメーションメッセージの冗談は
船長であるジョンソン・マクミトフの言葉だったのだ。
 つまり、エグザトリアの最大の特徴は【人格がある】ということであった。
 生前の彼は冗談を好むおおらかな人物である同時に冷静沈着で切れ者であった。
 祐一やボルスが乗っているときこそエグザトリアが最大の力が発揮できるときなのである。
「隊長、いよいよですね」
 振り向くとそこにはアルとレイの二人がいた。二人ともバイラムとの決着に戦々恐々しているようだった。
 その証拠にパイロットスーツの着方がどことなくぎこちなかった。少しゆがんでいるようにボルスは見えた。
「おい、お前たち。パイロットスーツはきちんと着ろ」
 お互い顔を見合わせて首を傾げたがすぐさま異変に気づき、襟元に手を伸ばすとスーツを皺を伸ばした。
「す、すみません!」
 あわてる彼らを見てボルスもまた、スーツを整える。ちょっとした息苦しさを感じ取れた事で自分もまた緊
張している事はなんとなく理解していた。
 ケント、お前への弔い合戦、必ず果たしてやる。
 静かに燃える闘志を腹のそこへ沈めると彼は再びパラディンへと視線を向けた。自分の友が残したものを信じて。

 地球衛星上にある宇宙ステーションから少し離れた伏義では。
「玄武……ですか?」
 リーシェンが格納庫内で見たのは玄武だった。大掛かりなブースター以外変わったところは見えなかった。
 宇宙戦闘用に改造したのか、脚部に小型のバーニアが付いている。バイラム用兵器は一応装備品として登録
されてはいるが武器が棒一つだけ。現在では朱雀も青龍も大幅な改修をされ、バイラムに迫るほどの性能を有
するようになっているのだが目の前の機体は改修機とは違い、あの時と同じ機体であった。
「ああ」
 コウシュンはそっけない言葉を口にしながらキーを叩いている。
 先ほどからずっとコックピットに篭りきりであった。武器のチェック、稼動の調整、データの作成。
 本来ならば最終調整は整備兵に任せるべきなのだが、コウシュンはずっと整備の人間と二人三脚でやっていた。
 難しい事は整備兵に任せてはいるがパイロットとしてわずかな誤差は見逃さずに注文を付けている。
 お互いに真剣な顔で言葉を交えており、細部にこだわる声も聞こえてきた。
「隊長ならばエグザトリアを扱えると思うのですが?」
「残念だがアレは一種の切り札だ。迂闊には使えん、それにこの機体には愛着がある」
 そう言ってキーを叩く手を止めるとコックピットから出てきた。その顔はどこと無く覚悟を決めたような感
じであった。手を見てみると彼の宇宙服は思っている以上に傷があった。恐らく、この機体と共に生きてきた
のだろう。その証拠にリーシェンは今でもコウシュンには勝った例が無かった。この一年、バイラムを倒そう
と鍛えてきたが、一度も……。だからこそ、死なせたくは無かった。
「し、しかし……」
「ダメージが通るのなら、戦える」
 あくまでも食って掛かるリーシェンに彼は不敵な笑みを浮かべた。その瞳に自身が積み重ねてきたものが見
えている。修練、そして経験の二つは絶対に裏切らない事はリーシェンにも理解できた。
 一年の間、彼と共にバイラムを終えたことを誇りに思おう。
「……わかりました!」
 恐らく、隊長は死ぬだろう。
 頭の中でそんな思いが過ぎるが目の前の男は一筋縄では決してくたばらない。そう信じている自分がいた。
「勝つぞ、少尉」
「はっ!」
 そんなコウシュンにリーシェンは敬礼をするしかなかった。

 そして、前線基地である宇宙ステーションシグマ。
 その中はひっそりとしており、慌しい様子が何一つ無かった。
 そんな中、ファルはビスマルクのコックピットの中で眠っていた。まるで胎児のように両の手で自身の身体
を丸め込みながら小さく寝息を立てている。
 感じる……。耳元から、掌から、血液が回り、心音が体全体にめぐっている事に。
 静かに目を開くとそこには宇宙が見えた。
 本物ではない、しかし、漆黒の海広がる小さな光の雨は誰が見ても宇宙である。
 光に手を伸ばそうとするが思わず引っ込めてしまう。これはもろいものであると自分は知っているからだ。
 そして小さな光は少しずつ集まると同時に小さく、そしてゆっくりと彼女の中に入って行った。
 終りになる。いや、終りにするといったほうが正しい。
 そして……目が覚めると同時に彼女はコックピットの中で発進準備をし始めた。
 偵察任務をやる為に。
571創る名無しに見る名無し:2013/01/17(木) 21:45:54.88 ID:ZhQ1X5kt
 そして運命の日、三月二十日。この日は日本では春分の日と呼ばれる日だった。もしもバイラムがいなければ
ボルスたちはオープンハウスでナイツのアクロバットを披露をしていただろう。ファルたちはビスマルクの新型
装備を研究しており、奈央は実家に帰って軍での生活を母親に話していたに違いなかった。
 だが、それはありえない事なのだ。この戦いが終わるまで全てお預けとなった。
 アンギュロスとの、いやバイラムとの戦い、それがついに最終局面を迎えた。
 基地を発見したのはファルたちビスマルク隊であった。
 彼らの宇宙ステーションはバイラムの姿がどこにも見えずその無防備な姿を晒していた。
 が、背を向けた瞬間、なにやら大きな影がいくつも見えてきた。気づかれたらしい。
 アステロイドベルト周辺には一つの紋様のように宇宙艦が並んでいる。そこにはステイツもAUAもユニオ
ンも関係なく、一つの塊として列を組んでいた。その動きはほとんど乱れが見られず、まるで波に漂うかのよ
うに一定のペースで動いている。
 人間同士が争うために作られた兵器が生まれて初めて人類を守るための兵器となった瞬間であった。
 宇宙空母のブリッジではひりつくかのような雰囲気の中作戦の時間が刻一刻と迫っている。
 口を開くのも忘れるくらいモニターと向き合い、誰かが動くたびに全員がそちらを見るという状況だった。
「作戦開始まで、あと十分」
 オペレーターの声が艦内に、外に、響いていく。時計の音が時を刻むたびに緊張が走っている。
 ブリッジクルーから始まり、艦内にいる全ての人間が固唾を飲んで見守っている。
 心臓の鼓動が手に、足に回るたびに時計の秒針が進んでいく。
 艦の中のパイロットたちはスーツの調節を終え、操縦桿を握り直す。
「いいか、世界の存亡は我々にかかっている。必ず勝て、そして生き残れ!」
「了解!」
 コックピットから、ブリッジから。いたる所から返事が返ってくる。
 この作戦がシミュレーションされた時、成功率が伝えられることは無かった。下士官にも末端の一般兵すら
この戦いの勝率はわからない。埃を被っていたPMも今回の戦いにに狩り出された。引退した軍人が現役復帰
をする。人類の総力戦である。時計の針が十二の文字盤を指したとき、軍が動き出した。
「時間です!」
「全機出撃! 目標、敵巨大要塞!」
 司令の言葉と共に叫びとともに無数のPMが艦から発進していく。ポーンから始まり青龍、朱雀、クレマン
ソーにネルソン。百を超えるPMが一斉に敵要塞へと向かっていく。しかし彼らの手に持っているは槍か盾の
どちらか一つのみであり、ライフルやマシンガンといった物は腰に取り付けてるだけであった。
 バイラムの装甲で作り上げたこの武器は思ったほど行き渡らなかった。その理由としては加工の難しさとバ
イラムの数が少なかったことが原因であった。
 そして、同じように黒のPMもまたこちらへを向かってくる。その数は二十機程度であった。
 だがバイラムの装備は見たことの無いような武装を持っていた。棘が付いた鎧、大きなバッグ、巨大なサー
フィンボード、そして長く鋭いさそりの尻尾。巨大な蟻を思わせる集団がこの宇宙を駆けていく。
 そして、お互いの姿を目視できる距離になるとバイラムの後方から眩い閃光が放たれた。閃光は虚空を切り
裂きながら真っ直ぐ飛んでいくと多くのPMを飲み込み、戦艦の壁を軽く溶かした。
 ブリッジにすさまじい振動が走る。シートベルトをしているオペレーターや艦長ですら歯を食いしばり、苦
悶の表情を浮かべる。
「な、なんだ!?」
 慌てふためく艦長がオペレーターに報告を求めるとこちらも少し戸惑いを含んだ上ずり声で――。
「ば、バイラムからの砲撃です!」
 そう、バイラムからの砲撃であった。かつて、一機で空母を落としたあのビームキャノンを手にこちらへと
向かってくる。それに続くかのようにバイラムたちはビームキャノンを放っていく。一応、ビームを無効化す
るアンチ・ビームフィールドは完成していたがそう長くは持たない。恐らく数発喰らえば確実に艦が堕ちるの
は明白だった。
「落ち着け! 予測は出来ていたはずだ!」
 そう、予測は出来ていた。だが、予想ははるかに超えていた。ビームキャノンは既にかつてのバイラムより
も射程、威力が共に高性能になっていた。もう一発と言わんばかりに光の柱が各艦の脇を通り過ぎていく。
「ふ、ふざけやがってぇ!」
 一機のポーンがバイラムの装甲で作られた槍を手に向かっていくがすかさず別のバイラムによって真っ二つ
572創る名無しに見る名無し:2013/01/17(木) 21:46:56.91 ID:ZhQ1X5kt
へ、左へとPMを脇をすり抜け、次々に切り裂いていく。だが、その進撃もすぐに終りを告げた。
「よし、やったぞ!」
 四機のPMがバイラムの手足をワイヤーで固定した。振りほどこうとバイラムは力を入れる。
「ぐっ!?」
 案の定、出力の違いか徐々にだが、バイラムのほうへ引きずられていく。思い切りペダルを踏み込み、踏ん
張ろうとするが一方的といって良いほどに引きずられていく。
 以前ならばこのまま振り回されて終りだっただろう。しかし今度は昔とは違った。
「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 隙ありと言わんばかりにポーンの槍がバイラムの胸を貫いた。人間のように軽く痙攣をした後、火花が飛び散る。
 そして槍を引き抜き、離脱すると爆発をした。
「や、やった!」
 しかし、喜びもつかの間、そのすぐ後ろから放たれたビームによってバイラムを倒したポーンもまた光と共に
消え去った。

 そして、前線より少し下がった艦にもバイラムが迫ってきた。巨大なサーフィンボードに身体を預けながら
ビームを適当にPMへと放つが狙いが甘いのか当たる事はほとんどなかった。だがそのスピードは圧倒的であ
り、あっさりとPMで更生された防衛網を突破されてしまった。
「バ、バイラム、接近!」
 バイラムは大型戦艦と一定の距離になるとそのままボードを切り離した。ボードに付いている噴射口から炎
が飛び出ると一直線に艦を目指した。大きさ、熱量から見て――。 
「た、対艦ミサイル! 来ます!」
「迎撃しろ!」
 機関砲が火を噴くが弾丸はミサイルに当たるものの爆発する様子はない。そのまま甲板を突き破った。
 大地震のような振動が艦を揺らす。が、爆発音はない。不発に終わったらしい。その証拠にバイラムが乗っ
ていたボードは船の側部に突き刺さったままであった。
「ぐぅぅぅ! 被害状況は!?」
 衝撃でシートベルトの固定器を解除しながら艦長がオペレーターに問いただす。
「左デッキ、破損! 被害は軽微であるものの復興までに時間を要する、と報告!」
 先ほどの攻撃で機能自体に損害はなかったもののPMの発進口が潰され、一部の機体が出撃できなくなっている。
「なら、右デッキの機体は全て出せ!」
「了解、デッキ内のPMは全て発進させます!」
 右のデッキから多くのネルソンやクレマンソーが出て行く。しかし、それはバイラムにしてみれば自身の餌
にしか見えなかった。刃を構えると出てきた機体を順に縦に、横に、斜めにと次々に切り裂いていく。発進し
たばかりのPMたちは数珠繋ぎに爆発していった。
「これが目的だったのか!?」
 艦長の考えをあざ笑うかのようにバイラムはブリッジに一気に近づく。
「総員脱出!」
 艦長が叫ぶと同時にそのブリッジにその剣を突き立てた。
「第38PM小隊、撤退! 第4小隊は以前交戦中!」
 戦闘が始まってすでに三時間が経過した。オペレーターだけではなく艦長や整備員にも疲労の色が見え始める。
 簡素に言えば戦況はこう着状態であった。質と量。その対比があまりにもはっきりと現れている。
 バイラムはそう数自体は多くないものの、一機一機の性能が連合軍よりも圧倒的に上であった。
 一報の連合軍側は数は五千以上存在しているものの、明らかに性能が劣っていた。
 バイラムが一機倒れるたびに連合軍の艦は一つ沈む。乗っているPM五機掛りでバイラムを倒すがその間に
四機のPMが切り裂かれ、砕かれ、光に飲まれる。
 そんなやり取りを何度もしている。まさに一進一退の攻防であった。
 しかし、それを壊すものが現れた。”それ”はバイラムの陰に隠れながら徐々にこの宙域へと向かってくる。
 黒ではない、赤でもない、その機体は紫色だった。紫のバイラムである。
 確認した瞬間、紫の鬼は一気に間合いを詰めた。
「なっ――」
 全てを叫ぶ前に真っ二つに斬り捨てられた。右手に持っているのは自身の腕より少し長く、日本刀のような
少し反りが入った剣であった。血糊でも付いたかのように剣を軽く振ると辺りを軽く一瞥する。
「どうですか、セルさん。バイラム・カスタムの調子は」
 通信ウィンドウのアルフェアがそう言うと彼女は笑みを浮かべながら――。
「問題ないわ、でもかなりいい物つかったでしょ?」
「わかります? 間接部の油にM-687っていう地球製オイルを私なりに改良したんですよ」
「そう、なら安全性は確認したわね?」
「もちろんですよ! でもネオ――」
 会話の途中で朱雀が突撃をしてきた。だが、触れる事すらさせず、彼女はあっという間にみじん切りにし
573創る名無しに見る名無し:2013/01/17(木) 21:47:57.51 ID:ZhQ1X5kt
てしまった。左手にはいつの間にか小刀を持っている。長さは人間で言えば脇差し程度であったがその切れ
味は先ほどのものと遜色はなかった。
「細かい説明は後で聞くわ。それじゃあね」
「ああ! セルさん!」
 通信機のスイッチを切ると無数のPMへ視線を向ける。が銀色のPMの姿が見えないことを確認すると少し肩を落とした。
 まだ出てこないってわけ……。なら彼らと遊んでいるわね。
 考えを張り巡らせているところ、あっというまに数機のPMに囲まれた。クレマンソー、青龍、朱雀、ポーン。
 彼らは槍や盾を手に目の前にいるセルへ殺意の籠った視線を向けている。が、彼女にはとても気分がよかった。
「選り取りみどり、ってところね」
「うてぇぇぇぇ!」
 指揮官と号令と共に一斉砲撃が開始される。無数のミサイルが紫の鬼をめがけ飛んでいく。
「甘いわね、この程度じゃこの機体は止められない!」
 だが、彼女は避けるわけではなくそのミサイルの海に突っ込んでいった。そしてこれ見よがしに次々にミサ
イルを切り捨てていく。切られたミサイルは爆発を起こしながら他のミサイルをも巻き込んでいった。
 そしてその爆風の中を一気に突っ切り、青龍の目前へと飛び込んだ。鬼の顔がコックピット全体に広がる。
「ひっ!」
 悲鳴とともにまるで撫でるかのように刀が振るうとそのまま二つになった。
「く、くそ!」
 再び一機が彼女に照準を向けるがトリガーは引かれることはなかった。彼女の剣がコックピットを貫いている。
「さて、こちらからもいかせて貰おうかしら」
「くそったれぇぇぇぇぇ!」
 雄叫びと共に槍が迫る。しかしそれを横に身体をずらし、くないを投げつけた。顔に、胸に、腹に突き刺さる。
 そしてそのまま横に一刀両断した。衝撃で手足がもがれ、漆黒の宇宙へ放り投げられた。 
「ひ、ひぃぃぃぃぃ!」
 最後の一機がおびえながら逃げていった。背面に備え付けられていたのは緊急用の離脱ブースターらしくあっ
という間にレーダーから消えていく。彼女は去り行く一機を見つめ思わず舌なめずりをしてしまう。
「あら、おにごっこ? 良いわよ……よーい、ドン!」
 紫の鬼は背面のバーニアを輝かせると真っ直ぐ、連合軍の本隊へ向かっていった。宇宙のに走る疾風のように。

 後方にある宇宙空母にアラーム音が鳴り響く。オペレーターがすばやくキーを叩くとその正体が明らかになった。
「レーダーに反応! これは……バイラム・カスタムです!」
「来たか!」
 艦長は手元にある通信用ボタンを押した。すかさずエマージェンシーコールがパラディンたちへと送られる。
 けたたましいコール音と共にボルスは通信を受け取る。パラディンとナイツは事前に噴かせておいたので十
分温まっていた。艦長が凄んだ声でボルスに語りかけてくる。
「ボルス大尉、わかっているな?」
「はい、最後の場を与えてくれたことを感謝いたします」
 シルバーナイツは事前に伝えていたのだ。自分たちは独自の行動をとることを。
 バイラム・カスタムの存在は軍の方に伝えていたがその信憑性が低く、見たものは少なかった。
 フロリダの海岸で見かけたのはボルスを筆頭にアルとレイ、そして酒場の親父だけであり、その他の人間は
全くみていなかったのだ。映像があるとはいえ、バイラム以上の機体があることは認めたくなかったのだろう。
「……シルバーナイツ、発進準備を!」
「了解!」
 パラディンとナイツがカタパルトへと向かう。皆何も言わないが重苦しい雰囲気を感じ取れていた。
 振動が身体に伝わるたびにこの戦いの行方を軽く想像する。
「諸君、ここまで来れたことを光栄に思う。わが友ケントも銀河のかなたで喜んでいるだろう」
 パラディンがカタパルトに足を乗せるとボルスは自身の胸に手を当てた。
 思えば長い月日を過ごしたようだった。バイラムを初めて見たのは昨年の四月ごろだ。年月は流れ既に一年
経とうとしている。あれから何度辛酸をなめさせられたのだろう? あれから何人の仲間が死んだのだろう?
 いや、ここで終わらせなくてはならない。自分は……軍人なのだから。
「私の最後の命令だ、勝って帰還しろ!」
「了解です」
 アルとレイがそう言うと壁に備え付けられていた自身の武器を手に取る。
 頼むぞ、パラディン。コレが最後の戦いだ! そんな思いと共にカタパルトのランプがグリーンになる。
「シルバーナイツ! 発進する!」
 銀の騎士たちが一直線に艦の外へと飛び出していった。

中編2(後半)に続く
574創る名無しに見る名無し:2013/01/17(木) 21:48:13.24 ID:+HMrH/0L
紫煙
575創る名無しに見る名無し:2013/01/17(木) 21:50:11.77 ID:ZhQ1X5kt
以上です

作品プリーズ!
今なら感想が付きますぜ、お客さん

※関係ありませんが連投規制に怯えて8レス制限にしました
 皆様方、申し訳ございません
576創る名無しに見る名無し:2013/01/17(木) 22:29:39.36 ID:M6rGDNKZ
乙。敢えてageるよー


本気はい、いつか……
577創る名無しに見る名無し:2013/01/18(金) 15:01:25.25 ID:qQC2SDFi
>>575
投下乙です。
を撃破出来るようになったとは言え、やっぱりバイラムが出て来ると怖いですね。
ロボスレで強いロボと言われたら意見が、かなりバラ付くと思うのですが、
怖いロボと言われたらダントツでバイラムだよなーと。勝手な私見ですけどねw
ただバイラム=恐怖という符丁になっていると感じるのも作者さんがこれまでに
積み上げてきたストーリーのお陰ですし、そこは本当に流石だなと思った次第。
いよいよ、シルバーナイツ達の最後の戦い。どんな結末になるか戦々恐々としながら
続きを待っています。



>>576
お前には失望した
578創る名無しに見る名無し:2013/01/20(日) 15:30:20.38 ID:y6NAn6Wa
>>575
投下乙。
>>577の言う通り、怖いロボットは問われたら、バイラムが断トツだな。
つまり、怖いパイロット代表のオルトロックがバイラムに乗ればロボスレ民を恐怖の底に叩き落とせるとw
それはさておきボルス達もしぶといよなー。投下の度に、そろそろ死ぬんじゃないかと未だに心配になるw
バイラムに敗北して全滅Endになっても納得出来るだけの説得力と力がバイラムに秘められているだけに
まだまだ恐々しながら氏の投下を待つことになりそうだw
579創る名無しに見る名無し:2013/01/22(火) 22:44:50.88 ID:iPJjWSz7
過疎
580創る名無しに見る名無し:2013/01/22(火) 22:58:55.06 ID:9mSVe6ff
|ω・`)
581創る名無しに見る名無し:2013/01/22(火) 23:19:34.47 ID:di1Aao2o
誰かがエロい絵を描いてくれればスレがハッテンする筈!(チラッ
582創る名無しに見る名無し:2013/01/22(火) 23:20:46.87 ID:9mSVe6ff
エロどころか絵が書けないからエロサイトからエロ画像を張る事しか出来ない。とても残念だ。
583創る名無しに見る名無し:2013/01/23(水) 02:19:20.27 ID:CFRhTYul
残念ながら年賀状ぐらいしか出すものがない
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3873025.jpg
584創る名無しに見る名無し:2013/01/23(水) 11:50:06.05 ID:NQlpFf0d
明けましておめでとう
585創る名無しに見る名無し:2013/01/24(木) 21:47:37.74 ID:oWkDklmu
ちょっとSSスレとは違う趣旨になるけど
妄想のロボットストーリーを設定やSSなどで断片的に現した設定資料集的なの作ったら面白そう
名シーンや要所全てを明らかにせず見る側の解釈に任せる感じ
世界観コンテンツを作るというか
型月の同人の資料集みたいなの見てたらムラムラ妄想がはかどった
586創る名無しに見る名無し:2013/01/24(木) 21:55:13.82 ID:xaiAASwL
>>586
まずは自分からやってみれば良い。面白ければ周りも乗ってくれる。
587創る名無しに見る名無し:2013/01/24(木) 22:14:43.09 ID:Yh+C/YiC
面白ければ周りも乗るだろう。過疎ってるから何もやらないよりマシ。
588創る名無しに見る名無し:2013/01/24(木) 22:37:45.37 ID:O1rjeHkB
>>585
おもしろそう、ちょっと資料整理してくる!
589創る名無しに見る名無し:2013/01/24(木) 23:30:47.90 ID:PpR/cOsv
>>577を見てて思ったんだけど
逆にこれで勝つる!と思ったロボはどれなんだろ?
590創る名無しに見る名無し:2013/01/24(木) 23:35:22.93 ID:xaiAASwL
>>589
これで勝つる!ってのは?
591創る名無しに見る名無し:2013/01/24(木) 23:42:58.76 ID:PpR/cOsv
ドラゴンボールのゴクウみたいなもの
来たら勝ち、みたいなの
まあ、ゴクウ自体はかなり苦戦をしてるけど味方ガフルボッコにされてもうだめだーっていう時に来る存在
592創る名無しに見る名無し:2013/01/24(木) 23:52:48.53 ID:xaiAASwL
それだったら、ネクソンクロガネが筆頭。やられたじゃねぇかって突っ込みは無しの方向でw
個人的にはロボスレを代表するスーパーロボットだと思っている。安心感や安定感が抜群。

次点で安綱。外伝に出て来た時のシチュエーションの熱さも然る事ながら、毎回ボコボコに
されていた一刀が無双していたのが印象に残って、存在自体が勝ちフラグに見えた。

後、ちょっと違うかも知れんけど、ソーラーキャノンを展開したタウエルンも捨て難い。
脳内でゲンドウと冬月が「勝ったな」と言うてはるw

他にも頼もしいロボットは沢山いるし、異論もあるだろうけど、作中での立ち位置や
特に印象に残ったシチュエーションと、>>591的な意味合いだと個人的はこの三機を推す。
593創る名無しに見る名無し:2013/01/25(金) 02:39:16.68 ID:o5DQ9exP
>>585
ロボじゃないがこの板のロストスペラ―というスレがそんな感じだな
594創る名無しに見る名無し:2013/01/25(金) 02:40:29.62 ID:5qi4QvQ+
安綱って言おうと思ってたら既に挙がってた。個人的には剣さんのGEARS隊もそんなイメージ。
595創る名無しに見る名無し:2013/01/26(土) 03:12:24.64 ID:1uLJei/q
>>585
先生、設定作るの楽し過ぎてテキスト制作に移れません
596創る名無しに見る名無し:2013/01/26(土) 03:30:02.61 ID:+x4hohbz
さぁ、その設定を公衆の面前に晒すのだ!
597古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/01/28(月) 00:48:40.39 ID:JK3ia6gx
明日と明後日、CR二章の結、前編を投稿させて頂く予定です
2万字近くになってしまい分割しての投稿になりますがよろしくおねがいします

大体22時ごろ投稿予定です
598古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/01/28(月) 22:05:27.16 ID:JK3ia6gx
というわけで投下するよん
599古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/01/28(月) 22:06:00.29 ID:JK3ia6gx
これまでのあらすじやキャラクター
http://www13.atwiki.jp/sousakurobo/pages/890.html

前回までのCR

黒峰潤也の過去。
全ての始まりへと帰還する。
家族を殺した鋼獣への復讐、それを胸に戦い続けていた頃の物語。
第七機関第四区画での轟虎との死闘。
その戦いで心身を大きく傷つけた潤也の前に一機の巨大な鋼機が現れる。
その鋼機から姿をあらわす一人の少女と犬。
それは、潤也の実の妹、黒峰咲と人語を解す犬ダグザであった。
咲が生きていた事を喜び、お互いに再会を喜ぶ潤也と咲。
しかし、咲の口から衝撃の事実が発せられる。
潤也の両親を殺したのは黒峰咲であり、今、世界中で虐殺を行なっている鋼獣を作ったのも咲だというのだ。
咲はさらに言う。
これは死の無い世界を作り上げる為の戦いなのだと・・・それを行う為には至宝と呼ばれる力が必要なのだと・・・。
そして、咲はその至宝の力を見せつけるようにして、潤也の母親である黒峰恵の人形を至宝の力で作ってみせるのだった。
そういって潤也の前から去る咲。
潤也は止めなければならないと思いながらも、止めるという事は咲を殺す事と同意なのだと理解する。
そして自分に妹を殺すことが出来ないと思い失意にくれる。
その時、潤也に通信が入った。

「おっとと、通信を切らないでくれよ、兄弟、せっかく面白い事を教えてあげようとしてるのにさ・・・。」
「面白いことだと?」
「そう、面白いことさ、題して『黒峰咲の真実とその仕掛け人』っていうのはどうだい?興味をそそるだろう?僕は凄いそそるね。」
600CR2 結 1/8:2013/01/28(月) 22:07:03.47 ID:JK3ia6gx
走馬灯は、終着点へとたどり着こうとしている。
そして―――



CR capter2  The Nightmare THE MAIN STORY  結 ―道化は笑い、矛盾を嘲る― 前編

 
第七機関統括領域第六区画。
全ての始まりの地。
ほんの数ヶ月前までは、ここは第七機関の統括区域でも最大の観光地であった。
自然が生い茂り、澄んだ空気と土と木々の香りはそこを訪れた人の心を癒す。
そう言われ、毎年、数百万もの人がこの土地を訪れた。
しかし、今はその自然は見る影もない。
生い茂っていた木々は消し炭となり、大地は焦土となって、空気は未だ人の死臭に淀んでいる。
既にこの区画が閉鎖されてから5ヶ月程の時間が立つが未だそこは地獄だった。
そこにほんの数分ほど前、一機の鋼機が着陸した。
その鋼機は悪魔のような双眸に、その禍々しさを象徴する紅い光を纏っている。
今や地獄と化したその地に相応しいような禍々しい漆黒の機体。
その機体から一人の男降りた。
男の風貌でまず目に付くのは白い髪だろうか・・・色素が抜けたそれとはまた違う透き通るような白だった。
男の名前は黒峰潤也。
漆黒の機体CR-02 リベジオンの操縦者である。
潤也は、異臭に鼻を抑えながらも目的地へと歩を進める。
目的地、それは第七機関の研究機関の一つである琴峰機関の研究施設の一つであった。
第四研究所と立て札のある研究施設の前に立ち、それを一瞥した後、潤也は塀をよじ登りその中に入る。
研究所は既に人の気配がなく、仕掛けられていた筈の防犯装置も機能していないようだ。
潤也は開いていた正面の扉から研究室の中に入った。
その中で最初に潤也の目に入ったのは死体だった。
それも一つではない、いくつもの焼死体が中に転がっている。
潤也はその光景に特に感慨を覚えない事に死に対して酷い慣れ方をしたものだと自嘲して目的地である地下2階へと歩を進めた。
突き当りにあった階段を降りて、地下二階の扉の前に付く。
扉の電子鍵は既に壊されていたようで、潤也が横に引くだけで扉は簡単に開いた。
 
「いやっほー、待っていたよ、兄弟。」

扉の向こうから陽気な声がする。
死体が転がっていた一階とは似つかわしくない程、緊張感を欠いた声だ。
扉の向こうで椅子に座って手を振っている銀髪の男を見た後、潤也は男の元へと歩を進め、顔面を殴りつけた。
男は椅子から転げ落ちて地面に衝突する。

「いたた、痛いじゃないか、兄弟。スキンシップは嬉しいけどさ、ちょっと過激だよ・・・。普通、出会い頭に殴る?」

そういって、男は頬を擦りながら、ヘラヘラと笑って立ち上がる。

「アテルラナ、前から趣味が悪いとは思っていたが、こんな胸糞悪いところに呼び出してどういうつもりだ?」

そう、疑うような口調で潤也はへらへらと笑う銀髪の男アテルラナに尋ねる。

「胸糞悪い?ほんとにそう思ってる?そう思いたいだけじゃなくて?」
「・・・。」

黒峰潤也がここに訪れたのはこのアテルラナと会う為である。
601CR2 結 2/8:2013/01/28(月) 22:08:48.96 ID:JK3ia6gx
黒峰咲との邂逅の後、潤也の元に入った通信でアテルラナは黒峰咲に関する真実についての情報を掴んだと連絡が入った。
そして、それを伝えると同時に渡したいものがあるので潤也に直接会いたいと言ってきたのである。
何故、アテルラナが?と思う所はあったが、様々な情報を提供してきたアテルラナである。
黒峰咲から告げられた事実というものに納得などしていなかった潤也からしてみれば、藁にもすがる気持ちでそれを了解した。
そして、指定された場所がこの閉鎖された第六区画にある研究所の地下であった。
アテルラナは場所の不快さを顔に出す潤也を楽しそうに眺めて笑みを浮かべて言う。

「いやいやいや、兄弟、そんな怖い顔するなって、仕方ないよ。君が使っているものはそういうものなんだからさ・・・。
しかし、君が黒峰咲と出会ったのを聞いて僕は驚き者の木傘寿の木だったよ・・・。どうだい兄弟、肉親との再会っていうのは中々に身に染みたんじゃないかな・・・。」

 潤也はアテルラナに引っかかるものを感じた。
 振り返れば、このアテルラナの言動は明らかにおかしい点が多い。
 潤也はアテルラナの胸ぐらを掴んで言う。

「さっきもそうだ・・・お前がなんで咲の事を知っている。一体どこで、いつその情報を手に入れた。お前は一体何を隠している!」

アテルラナ。
この奇妙な銀髪の協力者を潤也はリベジオンの修理や鋼獣など情報提供を一手に引き受けてくれていたのもあり、アテルラナ自身の素性に関してはそれ程詮索はしないように努めてきた。
しかし、このアテルラナは本来知り得ない情報いくつも知り得ている。
アテルラナの言動は偶然関わったのではなく、まるで最初から全てを知った上で潤也に協力していたとしか取ることの出来ない発言だ。
その答えをはぐらかされるのはもう終わりにしなければならない。
そして、彼の知り得る情報を全て聞き出さなければならない。
そう真剣に問う潤也をアテルラナは面白そうに見つめた後、言う。

「んふ、まあ、ねー、どこでというよりかは僕も当事者なんだよね。」
「当事者?」
「この研究所、琴峰機関第三研究所、通称『神秘研究部』というんだけどね、ここで行われていた実験に僕は出資していたんだよ。技術提携も行なっていたんだ。」
「研究?」
「兄弟、君の妹が乗っているあの巨大な鋼機、CR-01メタトロニウスはここで開発された機体なんだ。」
「なるほどな・・・。」

潤也は納得した。
アテルラナは支竹という人間が残したレポートを持っている。
そのレポートにはDSGCシステムに対しての記述もあり、それを用いてブラックボックスだらけのリべジオンの修理を行なっていたのだという。
何故、そんなものをアテルラナが持っているのかとは思っていたが、そもそもとして、彼がこのDSGCシステムの開発に一枚噛んでいたのだとするならば、色々納得がいく話ではある。

「つまり、偶然俺の戦闘を見て、怨念機だと確信したってくだりは嘘だったっていうわけか・・・。」 
「そうだよ〜ま、色々混乱させてしまうのもよくないし、何より君が『真実』を知るのはあの時は割りと避けたかったからねぇ。
きっとあの時の君では受け入れる事なんて出来なかっただろうから・・・。」

 そう軽く言うアテルラナを睨んで、

「さっきもそうだ・・・・・・アテルラナ、お前は一体何を知っている?」

 潤也はそう棘のある口調で尋ねた。
 アテルラナは顔に笑みを絶やさずに言う。

「ふふ、まあ、その話も後でするよ。」
「今言え!」
「せっかちは嫌われるぜ、兄弟。さて、まあ、どこから話そうかな・・・。
君もなんとなく察しているんじゃないかと思うけど、君が使っている怨嗟の魔王CR-02 リベジオンは僕が開発した機体なんだよ。
正確には研究して改修した機体・・・というべきかな?」
「だろうな・・・。」

これまでの話を聞けば、それはなんとなくだが予想がついていた話ではある。
602CR2 結 3/8:2013/01/28(月) 22:09:56.41 ID:JK3ia6gx
そもそも、たった1日で半壊した機体を修理するという所業がおかしい。
元々代用のパーツが無ければそんな事は不可能な筈だ。
しかし、それを成しているという事は、そもそもとしてリベジオンのスペアパーツを彼が持っていたという事に他ならない。
つまり、このアテルラナという男自身がリベジオンの実質的な開発し組み立てた人間なのだという可能性がある。
そして、そしてアテルラナがそれを認める事で、その予想は正しいものとなった。

「元々、琴峰機関でのメタトロニウスのDSGCシステムの調整が終わったら、その成果を頂いてこちらの調整をしようと思っていたんだけどね。
 メタトロニウスは起動実験の際に色々不慮の事故があってね・・・。
 その際、何に引き寄せられたのかリベジオンも無人で起動してどこかに行っちゃってね・・・まさか、何の因果か君が乗っているとは・・・色々な意味で驚きだった。
 僕は運命というものを感じずにはいられなかったよ・・・兄弟。」
「メタトロニウスは暴走?どういう意味だ?」

潤也の問いにアテルラナは撫でるような声で答える。

「ねぇ、兄弟、君は黒峰咲からどれぐらい話を聞いている?」
「何の話をだ・・・。」
「そうだな〜例えば、彼女がメタトロニウスの操縦者に選ばれた理由とか・・・。」
「―――知らない。」
「そうかー、ふむ、まあ、そもそも黒峰豪鉄がそんな話を君にするかどうか少し疑問ではあったし不思議ではないか・・・。じゃあ、兄弟、君が家族を失った事件の記憶はどれぐらいある?」
「事件の記憶・・・?」

そう問いかけるアテルラナ。
そんな事を知らないと喉から出かけて潤也はそれを言うのを止めた。
そういえば、咲も潤也が咲が両親を殺したという事実を知らない事を不思議がっていた。
彼女曰く、目の前で殺したと発言していたでは無かったか?
自身の記憶を検索する・・・全てが始まったあの日、あの絶望の前の記憶が明確に思い出せない。
記憶にあるのは千切れた父親の腕の記憶だけだ。

「あれは兄弟にとってもショックな事だったしね、その後にいきなり未調整のDSGCシステムで怨念に当てられたんだ、あの日の記憶がグチャグチャになるのは無理もない。催眠が解けたタイミングもそのぐらいだったんだろうし・・・。」
「催眠が解けた?」
「そうさ、君は実の両親から催眠をかけられていたんだよ。」
「ふざけるな、何の為にだ!」

潤也はアテルラナの怒りの形相で胸ぐらを掴む。
アテルラナはそれに対しても顔色一つ変えずに言う。

「1つは情報漏洩を防ぐ為、もう1つは君を守るためにさ、兄弟。」
「なん・・・だと・・。」
「そうだね、まず順を追って説明しようか・・・CRシリーズ、つまるところの君の怨嗟の魔王に代表される怨念機シリーズは琴峰機関でも極秘裏に開発されたものだ。
 この怨念機を制作したのは『とある人物の複製を人為的に作る』事を目的とした琴峰機関としては、計画外の行動だったとは言える。
 いや、一応は神秘の側面から彼女を造る事を目的とした研究・・・なんて言い訳じみたコンセプトはあったけど、その本当の理由は当時、資金繰りに困っていた琴峰機関に出資者からの条件だったわけだ。
 まあ、その出資者ってのは僕だったんだけど・・・。」
「ちょっと待て、お前は一体何を言っている・・・。」

そう言って話を遮ろうとする潤也の口にアテルラナは人指し指を当ててしーっとジェスチャーを取る。
603CR2 結 4/8:2013/01/28(月) 22:11:01.05 ID:JK3ia6gx
「黙って聞きなよ、兄弟。人が話してる時は茶々入れずに聞く事だって大事なんだぜ?」

押し黙る潤也。
それに満足したようにアテルラナは続ける。

「まあ、君にわかるようにいうと凄い技術力を持った研究機関があって、それは一つの目的を持って行動していたんだけれども、この研究所は資金難に悩まされていてね。
 僕はそれにある条件を付けて、資金提供を行ったんだ。資金と情報をくれてやるから、怨念機を作ってみてくれないか?と・・・
 彼らは十数年間、同じ研究しかしていなかったせいか、少々その研究に飽きていて燻っていたらしくてね。
 結構好意的に受け入れられたらしいよ。そして、僕は彼らに『遺産』を提供した。」

アテルラナの小馬鹿にした物言いに不快になりながらも潤也はそれを流す。

「『遺産』?」
「察しろよ、兄弟、支竹博士のレポートさ。僕は当時、支竹博士のレポートとDSGCシステムの雛形を手に入れていてね。
 これを実際に使える者にしてくれる技術力を持った人間を探していたんだよ。いかんせん、支竹博士が残したDSGCシステムは化石も同然だった。
 搭載されていた鋼機も数世代前のものだったわけだしね・・・正直システム以外は粗大ごみだったよ。
 琴峰機関っていうのは機械工学の観点からも『とある人物』・・・まあ、言ってしまえば、顔に皺だらけの辛気臭いクソババアなんだけど、
 そんなものを機械的に再現するって研究していた時期もあってね、世界中から鋼機の技術者を引きぬいてもいたんだ。」

 『とある人物』に言及する時、アテルラナの口調が少し厳しくなったように潤也は感じた。
 しかし、すぐにアテルラナは元の気持ちの悪い笑みに戻って言う。
 
「彼らは一応、世間的には知られざる機関だ。かの研究所の存在の実態を知っているのはほんの一握りの人間だった。
 だから、情報が漏れる心配もない。僕は彼らに資金提供を条件に、そのDSGCシステムの雛形を渡して、それを現代に復元させようとしたのさ・・・。
 その結果、出来るのがメタトロニウスとリベジオン。ただ、これの製作途中には色々問題があってね・・・。」
「問題?」
「稼働実験さ。システムを解析する内にDSGCシステムには酷い欠陥がある事がわかった。」

 潤也はそれを察して言う。

「怨念のフィードバックのことか?」
「そういうことだね。しかもこのシステムは遠隔操作で稼働させる事が出来ないんだ・・・いかんせん古過ぎてね。
 だから稼働をテストするという事は誰かが、このシステムを内部から起動させる必要があった。
 結果、当然ながら、その人間は怨念に晒されてしまう。大変危険な実験だ。だから、DSGCシステムを動作させる被験者を探すのには相当難儀した。
 まず琴峰の候補生たちは排除された。琴峰機関が普段行なっている人体実験は少なくとも彼らを救うという名目で行なっている実験だ。
 この実験では操縦者になるものは失うものはあっても得るものはない。ただ、ただ、危険なだけだ。とはいえ、一般人からそういった人間を仕入れるわけにもいかない。
 死に瀕した人を救うという名目は非人道の琴峰機関の最後の生命線でもあり、今回のそれはそれとは解脱しすぎていた。
 人間、外道に手を染めるにもそれなりに良心を騙せる理由が必要だったという訳さ。
 被験者候補すら見つからず頭を悩ませていた頃、当時の第三研究部の部長であった黒峰豪鉄と副部長であった黒峰恵は自らの身を切る決断をした。」
「それが――――」
「そう、君と君の妹だよ、黒峰潤也。可哀想にねぇ・・・君は肉親にモルモットにされたのさ。」
「馬鹿な、俺にそんな記憶は無い!」

狼狽する潤也。
アテルラナを掴む両手に力が入る。
記憶を何度さかのぼってもそんな記憶は欠片すら無かった。
いい両親だったと思う。
父は厳しい人だったが思いやり深い人であったし、母親は優しい人だった。
目の前にいるこの狂人が勝手な妄想を語っているようにしか思えなかった。
604CR2 結 5/8:2013/01/28(月) 22:11:40.58 ID:JK3ia6gx
「当然さ、なんせ、黒峰豪鉄はその辺りのフォローもしっかり考えられていてね。
 それが君らの催眠処置だ。一つは情報漏洩を避けるための記憶操作の為であるんだけど、もう一つは君たちへの精神的負担を最小限にする為さ。
 かのシステムの中にある時、君たちは自意識を閉じさせる。
 それによって、怨念から受ける負担を最小限にし、その記憶を催眠で処理する事で後遺症をなくそうとしたのさ。だから君にはその記憶が無い。」
「――――嘘だ!!」
「ほんとだよ!!!ぐふふふ、あははは、なんて三流、なんて五流!!!!!有能にも程があるったらありゃしない!!!君の両親はまったくもって天才だ!!!!
 自分の子供を危険に晒すなら、自分をモルモットにすればいいのにわざわざ子供にやらせるなんて、なんて最高、なんて素晴らしい両親なんだ。
 僕の両親に欲しいぐらいだよ!!!」

大笑いするアテルラナ。
何がそんなに面白いのか?何がそんなに可笑しいのか?
心底面白そうに笑うアテルラナに黒峰潤也は初めて戦慄を覚える。

「いーやいやいやいやいや、ごめんごめん。そんなに怖い顔しないでくれよ、兄弟。
 僕は君が大好きなんだ。だから、僕は君に真実を伝えている。それにこの件は僕にだって責任はある。
 研究が被験者探しで1年近く止まっていてね、それで僕は催促したからね。」
「催促?」
「資金の提供を打ち切るぞってね。彼らは大慌てだったよ。そして、責任は第三研究部の部長だった君の父親にいったといわけさ・・・。
 しかし、君さっきから信じられないみたいな顔をしてるね。」
「当然だ。そんな話、信じられるか!」
「だろうと思ってさ、だから君をここに招待した訳だよ。というか、さっきから首が締まってて息苦しいんだ。いい加減離してくれない?良い物見せてあげるからさ・・・。」

アテルラナがいう良い物がろくでもないものだと予感しながら、潤也はアテルラナから手を離す。
真実を知らなければならないという思いがアテルラナ本人に持つ不快感を上回ったといえた。
その咲をあそこまでの凶行に走った理由がそこにあるかもしれないのならば、それを知らなければならない。
潤也の中にあるのはただ、その思いだけだった。
アテルラナは乱れた服を正した後、最初に腰掛けていた椅子に座り、目の前にあった端末を操作した後、カードリーダーにポケットから取り出したカードを通す。
すると、施設が稼働する音と共に立体モニターに明かりがついた。
モニターには歪な鋼機の3Dモデルと様々な記号や数値が映しだされていた。
その3Dモデルを見て潤也は息を呑む。
禍々しいフォルムに悪魔のような双眸を持つ機体。

「――――リベジ・・・オン?」

潤也は思わず、その鋼機を見てそう呟く。
細部が違い、カラーリングも白だがモニターに映るのは確かにリベジオンに似ていた。
そんな潤也の驚きの最中、近くにあったスピーカーから声が流れる。
その声に潤也ははっと息を呑む。
今は亡き父、黒峰豪鉄の声だった。
605CR2 結 6/8:2013/01/28(月) 22:12:20.01 ID:JK3ia6gx
「××××年、○月○日。記録者:黒峰豪鉄。プラン109経過報告。『道化師』から提供されたシステムの解析が終了した。
 これは脅威のシステムだと言っていい。人はついにディールダインすら超える力を手に入れる時が来たのだと実感させる。
 人の残留思念をかき集め、それをエネルギーへと変換する、そんなお伽話のような事を可能とするこのシステムはまさに革命だ。
 こんなシステムが100年程前に誕生していたというのにはにわかに信じられない。
 確かに危険ではあるが、もし、この力を制御する事が出来るならば、人は新たにステージに進めるのではないか・・・・『至宝』の稼働すら可能になるのではないか?
 これの前には究極の個体を作り出す実験などなんと陳腐なことか・・・。すまない、つい感情的になってしまった。しかし、それほどにシステムは素晴らしい。」

 画面が切り替わる。

「××××年、○月○日。記録者:黒峰豪鉄。プラン109経過報告。問題が起こった。
 DSGC稼働実験の際、搭乗者を志願した研究員が稼働と共に発狂した。原因の解明を急いでいる。」

 画面が切り替わる。

「××××年、○月○日。記録者:黒峰豪鉄。プラン109経過報告。先日の事件の原因が判明した。
 DSGCシステムが収集した思念はエネルギーに変換される前に搭乗者にフィードバックされるようだ。
 DSGCシステムは不遇の死を迎えた物の思念を中心に収集しているらしく、それが先の事件の際、志願した研究員にフィードバックされたのだと思われる。
 DSGCシステムは遠隔操作を受け付けないため、内部からの操作は必須となっている。
 小型ロボット等を用いて動かすことを実験してみたが、どうも、DSGCシステムは機体内部にて搭乗者が人であるかどうかの識別が行われているようだ。
 現在、解決策を模索している。」

 画面が切り替わる。

「××××年、○月○日。記録者:黒峰豪鉄。プラン109経過報告。
 先の事件への解決案が出た。史竹博士のレポート調べた結果、一つ情報が壊れていた部分を発見した。これを琴峰機関の解析班に回し、復元した。
 それで1つ重大な事実が発覚した。怨念機と呼ばれる機体には適格者と呼ばれる人が必要だという事がわかったのだ。
 この適格者というのは一定の精神波長を持つものであり、怨念の影響を受けてもなお、自我を保てる精神構造を持った人間の事をいう。
 しかし、この適格者は耐性があるだけであり、長時間システムの中にいれば、発狂した研究者のようになってしまう危険性も孕んでいる。
 ファイルの中には適格者の特徴だというマイクロβと呼ばれる脳波の詳細もあった。
 第七機関に健康診断時に適格者の適正テストを統括地域で行なって貰うよう要請し、受諾された。」

 画面が切り替わる。

「××××年、○月○日。記録者:黒峰豪鉄。プラン109経過報告。テストが終了し結果を収集した。
 結果、適格者への適正値B+以上であるものが統括区域で7名、A+が1名いることがわかった。A+の人間の名を黒峰咲という。」

 潤也は再び息を呑む。

「そう、私の娘だ。史竹博士のレポートによればA+未満の人間はすぐに精神をシステムに奪われてしまう可能性があるとされている。
 その為、これから実験を進める上では、私の娘の強力が必要不可欠である。
 普通の人間をこのような実験の被験体にするのは父親として、そして琴峰機関の理念としても相応しくない。
 その為、私は実験の中止を申し入れたが却下された。道化師の資金援助が無ければ、それほどまでに琴峰機関の財政状況は苦しい状況にあったといえる。
 そこで私が代案として提案したのは、かねてからあった0から時峰九条の復元を作り上げる研究を利用するという事だ。
 つまりはクローン技術、私の娘のクローンを作り上げ、それを持って実験を行うという事だ。
 個体名はナンバーIとされている。クローンの完成までかかる時間は1年ほどになるそうだ。娘と同じ見形をしたものを実験体として扱うのは良心が痛む所である。」

 画面が切り替わる。
606創る名無しに見る名無し:2013/01/28(月) 22:12:58.59 ID:oFOJzLa3
紫煙
607創る名無しに見る名無し:2013/01/28(月) 22:33:49.89 ID:ApyTKSh9
 
608CR2 結 7/8 代理:2013/01/29(火) 00:53:31.76 ID:aI3PZsih
「××××年、○月○日。記録者:黒峰豪鉄。プラン109経過報告。
 『道化師』から新たな提供品があった。至宝の設計図である。
 図と言ってもそれは図面ではなく特殊な粒子であり、風に飛んでいってしまう程の小さなものがビーカーの中に詰められていた。
 これに膨大なエネルギーを送り込む事で至宝を構成する唯一無二の物質を収集し、至宝を精錬するのだという。
 至宝は窮地に陥った人を救うための力だという。
 使用するためには生物の体内にこれを取り込ませる必要があるらしく、ナンバーIにこの至宝の設計図を急遽組み込む事を決定した。
 以降、プラン109をProject Code Rebirth、CR計画と改める事になった。目的は至宝の再誕である。」

 画面が切り替わる。


「××××年、○月○日。記録者:黒峰豪鉄。CR計画経過報告。困った事になった。『道化師』から催促があったのである。
 あと2月以内に結果を出さなければ、資金援助を打ち切るというものだ。もはや第七機関全体で取り組んでいる研究であり、もう後戻り出来ないところまで来ている。
 しかし、素体であるナンバーIは未だ完成していない。まだ半年は時間がかかるのだという。
 私に残された手段はただ1つ、オリジナルを使うという事だ・・・しかし・・・そんな事が許されていいのだろうか・・・。」

 画面が切り替わる。

「××××年、○月○日。記録者:黒峰豪鉄。CR計画経過報告。オリジナルの使用が決定した。
 私は地獄に落ちるだろう。助手でありオリジナルの母親、つまり私の妻が最後まで強く反対したが安全への最善を尽くすと説得した。
 もしDSGCシステムが至宝を構成する事が可能な程の力を秘めているのだとすれば、
 エネルギー問題、環境問題、食料問題、また紛争の起因になる様々な出来事が全て解決する可能性がある。
 『道化師』から提供されたDSGCシステムは2基だ。
 これは当時の鋼機のジェネレーターに直結されており、システムにより供給したエネルギーが機体の全身を循環するように構成されている。
 この機体のコードをCR-01、CR-02とする。02に関しては『道化師』が直々に改修を行うらしく、地下格納庫の一室を借り入れて調整を行うようだ。
 その為、我々が実験に扱うのはCR-01のみとなる。次に安全面についてだ。
 人の怨念に触れるという実験の為、いくら適正があってもそれは被験体への大きな精神的負担があると想定される。
 その為、今回の実験においては、被験体に催眠をかける事を決定した。催眠と暗示で被験者の意識を一時的に沈下させ、思考と感情を奪う。
 これによって被験体は思念によっておこるフィードバックを大きく軽減する。またこれは機密保持に置いても有効である。
 実験が終わった後、被験体は自分がどのような怨念のビジョンを見たのか覚えてすらいないだろう。
 また、DSGCシステムにもリミッターを設けて一定以上の出力をマークした場合、自動的に緊急停止させるという仕組みだ。
 これに伴い黒峰咲の兄であり、私の息子である黒峰潤也にも同様の処置を行う事を決定した。
 理由としては、私と妻、娘までこの計画に関わる事になった今、息子にこの計画を隠し通す事は不可能であるという事からの予防措置である。
 扱いとしては黒峰咲のサブプランとして扱う事になった。黒峰潤也の適正はB+である。」

 画面が切り替わる。

「××××年、○月○日。記録者:黒峰豪鉄。CR計画経過報告。実験の段取りが決まった。第七機関の第六区ハナバラでの決行となった。
 オリジナルとサブへの催眠処置は順調に進んでいる。彼らは実験当日、私と妻と共に旅行に・・・」

 少し言葉を飲み込むようにした後、息を吐いて豪鉄は続ける。

「旅行に来るという刷り込みを行なっている。このままいけば、実験は予定通り行われるだろう。―――――――――――――やはり迷いはある。しかし――――――」

 画面が切り替わる。
 これまでとは打って変わって辺りが騒がしい。
 何か怒号のような音がなる。
 鼓膜をやぶらんばかりの悲鳴。

「まずい事になった。事態は最悪だと言っていい。」

 豪鉄の声にも焦りの色が見える。
 これまでになく感情的でかつ、息も切れ切れだ。
609CR2 結 8/8 代理:2013/01/29(火) 00:54:18.62 ID:aI3PZsih
これでこの記録は終わったようだった。
父から語られた記録、その真実に潤也はただ呆然と立ち尽くす。
 
「な、僕が言うより信頼度ありありだろう?」

アテルラナは潤也に相場違いな陽気な声で、そう問いかける。

「しっかし、ほんとひでぇー父親もいたもんだなぁー。羨ましいよ、うんうん。」

慰めるようにして言うアテルラナ。
潤也は静かにアテルラナに尋ねる。

「なあ、アテルラナ。」
「なんだい、兄弟?」
「これは真実なのか?」
「真実だよ。肉親の声から聞いても信じられない?」
「お前の作り話とかそういう事じゃないのか?」
「勿論、全ての元凶は君の父親と母親だー。そのせいで咲ちゃんはあんな事になっちゃって僕ホロリと来たよ。兄弟、君はなんて不幸なんだ・・・。」

笑うアテルラナ。
潤也は目をつむり、湧き上がる感情を塞き止めてその事実を飲み込む。
飲み込まなければならない。
激情に流されるのは後でいい。
そして、アテルラナに問う。

「父さんが言ってた『道化師』っていうのはお前の事か?」

この質問にアテルラナは顔をにんまりさせた。

「思いの外冷静に物事を聞いてるねー、兄弟、君に新しい魅力を感じてきたよ。ちなみになんでそう思う?」
「一つはさっきお前がぺちゃくちゃ喋ってた時に言ってた資金提供がどうだのと合致するというのが一つ。もう一つはお前の名前だ。何処の国だったか忘れたがアテルラナの意味は『低俗な道化劇』という意味だった筈だ。お前と同じ道化という名前だ。違うか?」
「ピンポンピンポンピンポン!大正解!博識だね、兄弟。そう彼の話に出てきた『道化師』は何を隠そう僕なのさ。」

アテルラナはそう言って胸を張った。
610CR 結 代理:2013/01/29(火) 00:55:10.44 ID:aI3PZsih
明日も続き投下しようと思いますので、よければよろしくお願いします
611創る名無しに見る名無し:2013/01/29(火) 01:00:34.41 ID:Jhse/Eqt
おつ
612CR2 結 8/8(修正):2013/01/29(火) 01:16:05.06 ID:zA2043AS
「CR-01に搭載されたDSGCシステムが暴走した。段取りは完璧だった筈だ。
 この件の可能性として考えられるのは、DSGCシステムのリミッターが誤作動を起こし作動しなかったというケースだ。
 しかし、誤作動を想定し三重にかけられたリミッターのどれもが作動しないという事態に陥るとはこれではまるで誰かが・・・いや、今はこれを論じる時では無い。
 既にシステムは制御不能な状態に陥っている。CR-01は暴走状態にあり、それに巻き込まれて多くの研究員が死んだ・・・私の妻も・・・だ・・・。
 この暴走が結果になるのか私にも想像がつかない。ただ少なくともこの一帯が無事に済むという事はないだろう。
 これから私は催眠状態にある息子を連れて、ここから脱出を図るが生きて出れる事はないのでは無いかと思う。
 もし、私の息子が生き伸びる事が出来たならば、誰か伝えて欲しい・・・すまなかった、やはり、これは我々が手を出して良い領域のモノでは――――」

 爆発音と共に音が切れる。
 これでこの記録は終わったようだった。
 父から語られた記録、その真実に潤也はただ呆然と立ち尽くす。
 
「な、僕が言うより信頼度ありありだろう?」

 アテルラナは潤也に相場違いな陽気な声で、そう問いかける。

「しっかし、ほんとひでぇー父親もいたもんだなぁー。羨ましいよ、うんうん。」

 慰めるようにして言うアテルラナ。
 潤也は静かにアテルラナに尋ねる。

「なあ、アテルラナ。」
「なんだい、兄弟?」
「これは真実なのか?」
「真実だよ。肉親の声から聞いても信じられない?」
「お前の作り話とかそういう事じゃないのか?」
「勿論、全ての元凶は君の父親と母親だー。そのせいで咲ちゃんはあんな事になっちゃって僕ホロリと来たよ。兄弟、君はなんて不幸なんだ・・・。」

 笑うアテルラナ。
 潤也は目をつむり、湧き上がる感情を塞き止めてその事実を飲み込む。
 飲み込まなければならない。
 激情に流されるのは後でいい。
そして、アテルラナに問う。

「父さんが言ってた『道化師』っていうのはお前の事か?」

 この質問にアテルラナは顔をにんまりさせた。

「思いの外冷静に物事を聞いてるねー、兄弟、君に新しい魅力を感じてきたよ。ちなみになんでそう思う?」
「一つはさっきお前がぺちゃくちゃ喋ってた時に言ってた資金提供がどうだのと合致するというのが一つ。もう一つはお前の名前だ。何処の国だったか忘れたがアテルラナの意味は『低俗な道化劇』という意味だった筈だ。お前と同じ道化という名前だ。違うか?」
「ピンポンピンポンピンポン!大正解!博識だね、兄弟。そう彼の話に出てきた『道化師』は何を隠そう僕なのさ。」

 アテルラナはそう言って胸を張った。
613古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/01/29(火) 01:16:37.34 ID:zA2043AS
申し訳ありません冒頭の文章が抜けていたようです(´;ω;`)
614CR2 結その2 1/8:2013/01/29(火) 22:00:27.93 ID:zA2043AS
「ならば、この惨事の発端はお前にあるって事じゃないのか!?」

声を荒げる潤也に対してアテルラナはため息混じりに答える。

「ある意味ではそうとも言えるし、ある意味では違うとも言える。解析の進行は予定より大幅に遅れていたからね。
 クライアントとしては催促するのは当たり前の事だろう?ちゃんと段階は踏んだんだよ?これまでに完成させてねーって2回ぐらいは言ったんだよ?」
「それが原因でこんな惨事になったんじゃないのか?」

憎悪を込めて潤也は言う。
こいつがDSGCシステムなんてものを提供しなければ、こいつが計画の催促なんてしなければ、父も母も・・・咲もあんな風にはならなかったのではないか?
思い出す、あの変わり果ててしまっていた咲を・・・。
まるで黒峰咲という皮を被った化物に成り果ててしまっていた姿を・・・。
潤也の中で憎悪の感情が渦を巻く。
それを否定するようにアテルラナは首を振った。

「いやいや、確かにそれは僕のせいでもあるけどさ、僕を責めるのはお門違いだぜ。
 決めたのは君の両親たちだぜ?自分の子供を使いたくないのならば子供を連れて立場も捨てて逃げ出せばよかったんだ・・・
 それが出来なかった君の両親こそ君が責めるべき存在だ。
 結局彼らは立場だとか、研究だとか、そういったものを君たちよりも優先したんだよ。まあ、責めるのはもう死んじゃってて無理なんだけどね?」
「アテルラナァ!!」

掴みかかる潤也。
アテルラナはそれをあしらうようにして回避する。

「うひゃひゃひゃ、ああ、そうだそうだ。兄弟もさ、咲ちゃんに協力したらどうだい?
 なんだっけ全ての人間を蘇生して不死の世界を作るとかなんちゃらかんちゃら、すっげー居心地悪そうで狭そうな世界だけど、そこなら君の両親は蘇るんだろう?
 そこで存分に責めてあげればいいじゃない?その後、仲直りして君たち皆で胸糞悪いハッピーエンドさ。」
「ふざけるな!あんな本当に出来るかどうかすらわからない事に協力なんて出来るか!!」
「ふむ、君の言い方だと出来たら別に問題ないみたいな風に聞こえるね・・・。」
「――――それは――――――」
「彼女とUHがやろうとしているのは無差別な殺戮だ。至宝を探し出すという名目のもと人を殺す事を純粋な目的としている分ある意味ではテロより質が悪い。
 交渉の余地が無いんだからね。君がごく一般的でまともな倫理観を持っているのならば、まず彼女のやっている事自体を否定すべきだ。
 人を殺すことはいけない事ですなんてのは子供だって知ってる事だぜ?後で生き返る今は死んでと言って彼女は殺戮を行わせているんだ。
 そもそもこの時点で彼女のやり方は間違っていると思わないかい?」
「―――。」
「つまり君は彼女の本当か嘘かわからない話に少しは心を惹かれたのさ・・・本当に君の両親が生き返るのならば、それはそれで良いのでは無いかと・・・。
 やり方が過剰に人を殺し、なおかつそれが高い確率で失敗すると君の目に映るから君はそれを否定しているだけでさ・・・。」

押し黙る潤也。
潤也は確かに思った。
黒峰咲を止めなければならないと・・・。
その過程で様々な人々が犠牲になるのだから・・・。
そして、彼女の言うとおり至宝を集めたとしても今度はたった一人で世界中の怨念を受け止めてそれを読み込んだ上で、それを再生するという過程を踏む。
こんなものに人間が耐えられる訳がないとそう思った。
こんな事は止めなければならないと思った。
だが、これは様々な不確定要因が絡んでいるからこそ、そう思ったのではないか?
もし100%咲が思い描いたように事が進むのだとしたら問題ないのではないか?
そんな思いが、ほんの砂粒ほども自分には無いと断言する事は潤也には出来なかった。
――止めなければならない―――けれど―――と思う潤也の心理をアテルラナには見透かすように言う。
615CR2 結その2 2/8:2013/01/29(火) 22:01:16.28 ID:zA2043AS
「先に断言しておくよ、黒峰咲とメタトロニウスを止める事が出来るのはCR-02リベジオンの適格者になった君だけだ。
 もし自分以外の誰かが、この自体を収拾出来るんじゃないか?なんてありえない望みを君が持っているとするならば今捨てた方がいい。」
「なんで・・・。」
「簡単な話さ、至宝に対抗できるのは至宝だけだ。至宝とは絶対を超える力を持つとされている。その力はありとあらゆる必然を書き換える。
 そしてその至宝を扱えるのは怨念機と呼ばれる君たちの2機だけだ。」
「じゃあ、俺以外の誰かがリベジオンを・・・。」
「無理だね、怨念機は適正があると認めた者にナノマシンを打ち込む。
 怨念機はそのナノマシンで搭乗者をモニターしていね、これが怨念機起動のセキュリティキーにもなっているわけなんだけど・・・
 怨念機はその搭乗者が死ぬまでその人間しか動かす事が出来ないようになってる。そして君は既に怨念に触れすぎたせいで自殺することも出来ない・・・そうだろう?」

潤也はほんの数時間前の戦いの後、精神に限界を来たし自殺しようとした時の事を思い出す。
崖に埋め込まれたリベジオンのコックピットから飛び降りようとしたとき、酷い吐き気と死への恐怖が潤也を襲い、死ぬ事が出来なかった。

「それは兄弟がDSGCシステムで死を見すぎたからさ。彼らはきっと君にこう言うんだろう?
 死にたくない、死にたくないって・・・そんなものを幾度も見返す内に君の潜在意識に人並み以上の自身の死への忌避と生への欲求が刷り込まれたのさ。
 だから君は自分から死ぬことは出来ない。わかるかい?」
「じゃあ、誰かが俺を殺せばいい!!」

悲鳴混じりの声をあげて潤也が叫ぶ。
無理だ、無理だ、無理だ。
俺にはそんなことは出来ない。
咲を殺す事なんて出来ないし、だからといって、全てを見捨てて傍観している事なんて耐えられる訳がない。
そんな責務俺には重すぎる。
俺が何をした?
俺はただの一人の人間だった筈だ。
それがどうしてこんな事になっている?
ならば、俺以外のそれが出来る奴にやらせるべきなのだ。
もしその過程で俺が死ななければならないというのなら受け入れよう。
それ以上の事なんて俺には出来ない。
出来るわけが無い。
けれど、その願いすらアテルラナは一笑する。

「誰が殺すんだい?僕は嫌だね、そんな面白くない事は・・・。そもそも並の人間がDSGCシステムの怨念に耐えられるなんて思っているわけじゃないだろう?
 君も君の妹程では無いが高い適正を持っている。曲がりなりにも狂わずに今までここまでこれたのは君が高い適正を持っていたからだ・・・。」
「だが、親父が言ってたように俺以外に適正の者がいるというのならば―――――」
「それにね、君以外の候補者は既に全員亡くなっているよ。」
「え・・・。」
「さてね、誰がそんな事をしたのやら・・・殺されたり、事故にあったり、鋼獣の災害に巻き込まれたりして、
 現状DSGCシステムに耐えられる精神適正が少しでもあるのは君だけだ。」
「嘘だ・・・。」
「だから、僕は君には本当の事しか言わないって・・・まったく君は運が無い。既に君には2つしか道が残されていないんだ。」
「・・・・ふ・・たつ?」
「そう、2つさ。全てを捨てて、どっか山奥にでも篭っているか・・・それとも君の妹を止める為に戦うか・・・
 勿論だけど、この止めるという言葉は殺すという意味だからね、履き違えるなよ兄弟・・・。」
「他の方法だって・・・咲を殺さずに止める方法だって・・・。」
「ないね、断言するよ。無い。」
「何を根拠にそんな事を言う!」

呆れたようにアテルラナは首を振る。
そうして子供をさとすようにアテルラナは言う。

「じゃあ、もしあったとしよう。それは一体どんな方法だい?」
「それを今から――――――」
「兄弟・・・それじゃ遅いんだよ。君がそうやって一人で悩んでいる間にだって彼女は人を殺し続けていく、殺戮は続いているんだ。
 君はそんな彼女を殺さずに止める方法を探す為に、これから死ぬ人達に死んでくれというのかい?」
「それは――――」

潤也は知っている。
616創る名無しに見る名無し:2013/01/29(火) 22:01:28.18 ID:9k52Mipb
 
617創る名無しに見る名無し:2013/01/29(火) 22:04:43.48 ID:9k52Mipb
  
618創る名無しに見る名無し:2013/01/29(火) 22:27:06.58 ID:aI3PZsih
 
619古時計屋 ◆klsLRI0upQ :2013/01/29(火) 22:42:26.34 ID:zA2043AS
容量一杯なので新スレに移行しましたー
支援ありがとですー
620創る名無しに見る名無し:2013/01/31(木) 13:46:29.70 ID:ZlB7cHnF
ロボスレには俺しかいない!
621創る名無しに見る名無し:2013/01/31(木) 14:58:33.91 ID:9azfPvZs
じゃあ書け
はよ書け
なんか書け
逃げ隠れすんなよオラァ
622創る名無しに見る名無し:2013/01/31(木) 19:52:09.42 ID:Wlp/wLmR
おれもいたぞ
623創る名無しに見る名無し
ならば、このスレは俺が埋めよう!

 ジョー外伝、掃除屋ビル

 薄暗い倉庫の中に一つの影が跋扈している。
 俺は物音を立てずに影からそっと近づく。一歩一歩確実に距離を詰めていく。
 が、奴は俺に気がついたのかすぐさま奥へと逃げようとする。
 逃がさない、逃がすつもりはない。奴の動きはいたって単純だ。
 物陰に隠れれば安全だと思うその考え、実に浅はかだ。
 俺は物陰に隠れた奴に向かって相棒のトリガーを引く。
 グッナイ……(ブシュー!)
 俺は依頼人に電話をする。自慢のバリトンボイスで仕事が終わったことを伝えた。
「山田さん、依頼されていたゴキブリの駆除、終わりました」
「ありがとう、代金は振り込んでおくからね」
 電話が切れると俺は相棒「ゴ○ジェッ○」を布で磨いた。
 どうやら相棒も喜んでいるようだ。
「ふっ」
 そんな笑いと共に電話がなった。また新しい敵が来ちまったらしい。
「はい、いつもニコニコ害虫駆除の専門家、ビルです」
「ダニの駆除をお願いしたいのですが」
「はい、ダニの駆除ですね――」

 今日も俺は相棒と共に世界を駆け回る。
 困った時は読んでくれ、何時でもお前の元へ駆けつける!

 終り

ジョー「あれ? 俺の出番は!?」