ここは様々な作品のキャラを使ってバトルロワイアルの企画をリレー小説で行おうというスレです。
みんなでワイワイSSをつないで楽しみましょう。一見さんも、SSを書いたことのない人も大歓迎。
初投下で空気が読めないかもしれない? SS自体あまり書いたことがなくて不安?
気にせずにどうぞ! 投下しなくちゃ始まりません。
キン肉マンのラーメンマン先生曰く「最後に勝負を決めるのは技(SSの質)ではない! 精神力だ! 心だ!」
リレー小説バトルロワイアル企画とは……
原作バトルロワイアル同様にルールなし、特定会場で最後の一人が生き残るまで続くという企画です。
キャラをみんなでリレーし、交わらせ、最後の一人になるまでリレーを行う、みんなで物語を作るスレです。
ここしか書けない、このキャラしか書けないという人も分かる範囲で書けるし、
次どうなるかを期待して次の人にバトンを渡すこともできます。
全ての作品を知りつくてしなければ参加できない企画ではないので、興味が沸いたらぜひ参加を!
詳細ルールに関してはこちらを
ttp://www44.atwiki.jp/tarowa/pages/13.html 〜予約、トリップについて〜
予約する際はトリップをつけてしたらばの予約スレに書き込んでおいてください。
トリップのつけかたは、名前欄に #の後に半角8文字以下、全角4文字以下の好きな言葉を打ち込んで書きこんで。
したらばに予約するのは、「他の人が書いてるから避けよう」という心理を利用し、予約だけして放置することで
企画を妨げる「予約荒らし」という行為を防ぐためです。予約期間は5日(120時間)ですが、
間に合わないからもうちょっと伸ばして!という報告があればさらに2日予約期間を追加(48時間)できます。
したらば(予約などいろいろな時にご利用を)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11918/ wiki(まとめサイトです)
http://www44.atwiki.jp/tarowa
★キャラクター能力制限★
・シャナ@灼眼のシャナ、C.C.@コードギアスは再生能力を落とす&急所(頭)をぶち抜かれたら即死。
・ルルーシュ・ランペルージ@コードギアスのギアス能力は、「死ね」「殺せ」など、 直接相手や自分の生死に関わる命令は無効。(「死ぬ気で頑張れ」などはあり)
・らき☆すたキャラのオタ知識、ラノベ知識は制限。
・仮面ライダー龍騎キャラのミラーワールドへの侵入禁止。
・ローゼンメイデンキャラのnのフィールドへの侵入は禁止。
・泉新一@寄生獣はミギー付き。
・COMP@真女神転生は禁止。
・シャナ@灼眼のシャナの封絶は禁止。
・雛見沢症候群@ひぐらしのなく頃には、まあ、空気読む方向で。
★支給品としてのアイテム制限★
・KMF@コードギアスなどのロボ系は禁止。
・仮面ライダー龍騎キャラには、自分のカードデッキを支給品枠2つ分としてカウントして支給。それ以外のキャラに支給される場合は支給品1つの扱い。
・デスノート@DEATH NOTEは禁止。
・サタンサーベル@仮面ライダーBLACKはシャドームーンから没収&世紀王の呼び寄せ禁止。
・カードデッキの変身は10分で解除。
・カードデッキは変身すれば1時間、ファイナルベントを使えば更に1時間使用不可となる。
3/6【コードギアス 反逆のルルーシュ@アニメ】
● ルルーシュ・ランペルージ/○枢木スザク/○C.C./ ● ロロ・ランペルージ/ ● 篠崎咲世子/○ジェレミア・ゴットバルト
2/6【ひぐらしのなく頃に@ゲーム】
● 前原圭一/○竜宮レナ/ ● 園崎魅音/ ● 北条沙都子/○園崎詩音/ ● 北条悟史
3/5【スクライド@アニメ】
○カズマ/ ● 劉鳳/○由詑かなみ/○ストレイト・クーガー/ ● 橘あすか
3/5【らき☆すた@漫画】
○泉こなた/○柊つかさ/ ● 柊かがみ/ ● 高良みゆき/○岩崎みなみ
2/5【るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-@漫画】
● 緋村剣心/ ● 斎藤一/○志々雄真実/ ● 瀬田宗次郎/○雪代縁
3/4【仮面ライダー龍騎@実写】
○城戸真司/○北岡秀一/○浅倉威/ ● 東條悟
2/4【ルパン三世@アニメ】
○ルパン三世/ ● 次元大介/○石川五ェ門/ ● 銭形警部
3/4【ローゼンメイデン@アニメ】
● 真紅/○水銀燈/○翠星石/○蒼星石
1/3【ガン×ソード@アニメ】
○ヴァン/ ● レイ・ラングレン/ ● ミハエル・ギャレット
2/3【寄生獣@漫画】
● 泉新一/○田村玲子/○後藤
0/3【ゼロの使い魔@小説】
● ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール/ ● 平賀才人/ ● タバサ(シャルロット・エレーヌ・オルレアン)
1/3【バトルロワイアル@小説】
● 稲田瑞穂/ ● 千草貴子/○三村信史
1/2【相棒@実写】
○杉下右京/ ● 亀山薫
2/2【仮面ライダーBLACK@実写】
○南光太郎/○シャドームーン
2/2【真・女神転生if...@ゲーム】
○男主人公/○狭間偉出夫
2/2【DEATH NOTE@漫画】
○夜神月/○L
1/2【TRICK@実写】
● 山田奈緒子/○上田次郎
1/2【バトルロワイアル@漫画】
● 織田敏憲/○桐山和雄
0/1【ヴィオラートのアトリエ@ゲーム】
● アイゼル・ワイマール
1/1【灼眼のシャナ@小説】
○シャナ
35/65
スレ立て乙です
乙←後藤の右腕
もう35人か
乙←上田の腕
もうすぐ半分だな
乙=序盤の朝倉
乙←ベノスネーカー
一昨日やってた相棒見たけど色々と凄まじかったな
多分右京さんが初めて意見を曲げた、犯罪者を見逃した
超後味悪い回だったな…
ゼロ魔勢って杖とか手に入らなくて
強敵にやれれてしまう印象ある
るるるのイメージしかない
とりあえず漫画ロワのルイズを読んでくるんだ
目隠し偏の詩音の爪剥がしのシーン
アニメで見たけど痛そうだったな
常人じゃ一枚でも相当キツイのかな?
>>16 ちょっと剥がれただけでも結構痛い
アニメや漫画の描写はトラウマレベル
原作知らんけどひぐらし勢の大半は高確率で同行者に迷惑かける天の邪鬼だと思ってる
普通に話の通じる相手かと思いきや急にキチガイ染みたりして
マーダー説得して対主催化させたり搦め手使ったり、ちゃんと役立つ時だってある
…ある…よな?
かなみってなかなか便利だね
敵が来るとすぐわかるし
来ると分かってもかなみ自身に戦う力がないのがなんとも……
アルターの制限も結構強いみたいだし
>>19 毎回ぐぎゃるかマーダー化してる人を除けば誰かは活躍してる
縁って優勝して巴を蘇生させる気らしいけど
巴にとっては、蘇生された途端にあの弟が
目の前にいたら恐怖だろうな
メガテンifのアンソロ買った
…「魔神皇」って「まじんのう」って読むの!?
ずっと「魔神」と「皇」で切って「まじんこう」って読むんだと思ってた!ショックだ!
俺は「ましんこう」って読んでたな
ゲームだとひらがなかカタカナだからすぐ分かるけど
南北朝あたりの時代に神皇(ジンノウ)なんとか記っていう天皇の正当性を記す書物があったような
魔界の現人神で魔+神皇だと思ってた
血染めのユフィ〜せめて哀しみとともにはいつ見ても胸に来るものがあるな……
ルルーシュはどうしてあんな喩え話をしたのか
行政特区成功したら話終わっちゃうし
つ脚本の都合
今日の金曜ロードショーでカリオストロやるで!
死亡者名鑑整理されてるな、やった人乙ー
>>31 毎度このスレで教えてもらえて助かってる、絶対見る
最初から最後までちゃんと見たことないんだよなー
おお、追跡表と支給品の経過も整理されている。乙です
誰か、ローゼンのアニメ見てもよくわからなかった俺に夢の世界とかnのフィールドとかラプラスの魔とかについて解説して欲しい
原作と混ざるとなおわからん
36 :
創る名無しに見る名無し:2012/03/31(土) 16:52:04.36 ID:eW5j23Li
保守
今年もやるのかと思ったらやっぱりやってるwwwwwwwwwww
くそ、くそwww
覚悟してたのにやっぱ吹いたwww
正直忘れてたから不意打ちだったwwwwwwwwwwww
まwwwたwwかwwwwww
ってかロゴまで改造されてるのはすげえなw
したらばにも何か来てるwww
主人公ほぼ不在って、なんて書きにくそうなメンツなんだww
エイプリルフールに気合入りすぎててワロタ
>>35 上田のせいで遅くなったd
一通り読んでもやっぱり分からないけど何が分からないのか分からないレベルで分からないので、もうちょい理解深めてからまた聞くかも
ちょ、上田www
wikiのあれなんだww
話に聞く限りじゃ去年もあれがあったのかw
ドコヲドウミテモ
ウエダセンセイハ
テンサイデソシテ
イダイナヒトデス
>>47 「ハッハッハ、分かってるじゃないか。もっと褒めてくれても私は一向に構わないぞ」
「フン、ユーを試したのさ」
上田wwwww
ウエダ
サ
イ
予約ktkr
ある意味一番の難所だな
キタ―――
玲子や月がどっちに傾くか、分岐点だな
予約とか胸が熱くなるな……
ルパンの新しいアニメあるけど、まさか乳首出てるとは思わなかった
>>55 分かってたのにまた見忘れてしまった…>新アニメ
毎週水曜日1時29分〜59分
これテストに出るからよーく覚えとけよ〜
>>58 見れたーありがとう!
これでアニメ見逃しまくりな人も安心!
それにしても想像以上のエロ&ハイセンスアニメだったww
なんというかルパンだったからこそできた演出だよな
否定してるわけじゃないんだけど、他の深夜アニメとかじゃ絶対に許されない
銭型が普段と違ってどこかダーティーだった気がする
とっつぁん別人みたいだったな
もっと潔癖なイメージあったけど、清濁合わせ飲む感じがあった
あのとっつぁんは「うわーこんなところににせさつがー(棒読み)」とか絶対に言わなさそう
そしてもうすぐ投下とかwktk
延長…しかし俺は待ち続ける、全裸で…!!
もう温かいから平気だな
>>16で話題として出てた爪はがしシーン、DS版で読んだ時は親指の爪の表面を人差し指か中指でひっかいてたな
自分の爪がはがされた時のこと想像して防衛反応が働いたっていうか…
指と爪の間に爪楊枝を突っ込まれる想像しただけで、痛たたた!!ってなるよね
なんで話題をぶり返すんだよおおおおおおおおおおおお!!
思い出しちゃうだろうがああああああああああああああああ!!
詩音さん乙
ぐぬぬ……破棄か
しかし新しい予約が来てるぅうううう!!
シャドームーンを投下します。
海上の橋を、銀色の影が一歩ずつ北上して渡り終える。
太陽は天頂を外れ、少しずつ西へ向かい始めていた。
暖かな日差しと穏やかな波、海からそよぐ微風に、心ある者なら気を緩ませていた事だろう。
例えこの場が殺し合いの為に用意されていようと、青空と海はそれだけ争いと無縁の景色を見せていた。
だがここにいるのは心無い者ただ一人。
波の音、風の音しか聞こえないはずの地に カシャ カシャ と機械じみた歩行音を響かせる存在。
シャドームーンは駆け抜けていったバトルホッパーを追う形で進んでいた。
当初は南西の島に隠れた参加者を探し出す予定であったが、既にそれに執着はない。
重ねた戦いの中で、この会場にいる参加者への認識を改めた。
逃げ隠れするような者はいない、と。
いたとしても、そういった者の相手をするのは後でいい――探すのは時間の無駄だ。
この会場にいる実力者達を、宿敵であるブラックサンも含めて全て倒す。
それを成してこそ次期創世王としての矜持が保たれるのだ。
故に橋を渡り終えてからは東へ進み、元居た市街地の方へ戻る事にする。
そうすれば残る多くの参加者とも接触する事になるだろう。
東へ向かう前にふと、シャドームーンは西側の海を眺めた。
放送前にヴァンや白髪の男らと戦い、その際に二人の参加者が忽然と姿を消した。
空飛ぶ箒に跨った、少年と少女。
あれは一体何だったのかと、思い返す。
消えたからと言って、死んだ訳ではない。
シャドームーンがヴァンとC.C.を最初に目にした時、少女は箒に跨ってその場を後にした。
そしてその少女が味方を連れて舞い戻り、C.C.を助け起こしていた――つまり仲間だ。
にも関わらず先程の会話の中でC.C.が焦燥や悲愴を感じさせなかったのを見ると、恐らく放送であの少女の名は呼ばれていない。
少女は生きている。
同時に、消えた少年の方も生きているだろう。
ならば何故消えたのか。
ヴァン達と合流していない以上、一時的に姿が見えなくなったのではなく『転移』したのだと考えるのが自然だ。
そして転移する為の支給品があったなら、もっと早く使えばいい。
支給品でないとすれば、あの『場』が特殊なのか。
あの時、消えた二人だけでなくヴァンとC.C.もまた海を目指していた。
(海に、何がある?)
シャドームーンは修復の進んだシャドーチャージャーからシャドービームを発射する。
威力は本来のそれと比べれば見る陰も無く弱々しいが、この場では問題にならない。
海、遙か先に見える水平線に向かってビームが進み、そしてその途中で途切れた。
(やはり……空間が歪んでいる)
考えが正しかった事を確かめたシャドームーンは、再び思考に没頭する。
空間が歪んでいるなら、転移先はどこか。
そう簡単に会場から出られるはずがないのだから、会場内の別の地点という事になる。
最も可能性が高いのは同じく海沿い、地図の反対側。
そうでなければ全く関係のない場所か。
シャドームーン自身が転移してみるか――シャドームーンの脚力なら、飛行手段がなくとも可能。
東側に繋がっているなら、市街地まで掛かる時間をかなり短縮出来るだろう。
シャドービームの出力を上げて空間の歪みを打ち破るか――キングストーンの力があれば、破れる可能性は充分。
こうした主催者の用意した小細工にこそ漬け入る隙があり、この殺し合いの打破に繋がるはずだ。
それが直接主催者の居所に繋がっていなくとも、主催者は壊れた歪みを修復する為に何らかの手を打たねばならないのだから。
しかしシャドームーンはビームを止め、それ以上は何もしなかった。
歪みへの思考を打ち切る。
西の青い空、青い海に背を向けて、各地で黒煙を上げる東を見遣った。
この殺し合いが始まった頃のシャドームーンなら、試していただろう。
参加者をより殺し易いであろう東側への、最短ルートとなり得る歪みの利用を。
或いは主催者へと繋がる歪みの破壊を。
もし破壊してそのまま主催者と巡り会う事が出来れば、後は簡単だ。
会場にいるブラックサンを呼び戻させ、決着をつける。
その上で主催者を殺し、元の世界に戻って王として君臨する。
それを、しない。
この殺し合いそのものに意義を見出した今、殺し合いを壊す気にはならなかった。
ヴァンとC.C.、先程会話して名を聞いた二人の事を思い出す。
他に戦った者達も、名前こそ問わなかったがその顔を克明に覚えている。
この場に来て四度の戦いを経験するまで、こうして人間達『個人』に関心を向ける事など想像すらしていなかった。
次期創世王という立場を考えれば、奇妙な状態にある。
しかしそこに不快感はない。
むしろ、シャドームーンはこの状況を楽しんでいる自分を認識した。
あの者達は次に会った時はどんな力を見せるのか、まだ見ぬ者達はどんな戦いを見せるのか。
ブラックサンとの決着こそが最大の目的である事に変わりは無くとも、「楽しみだ」。
改造によって心のなくなったはずの、人間を超越した存在である自分が――人間との戦いを心待ちにしている。
そんな自分の変化すら、興味深かった。
シャドームーンは傷を癒しながら黙々と東へ進む。
急ぐでもなく、休むでもなく、ペースを崩さない。
この調子では市街地に到達するまで随分時間が掛かるだろうが、それも構わなかった。
時間があればある程、人間達は結び付きを強くする。
時間があればある程、結び付きが人間達を強くする。
シャドームーンはそれを期待していた。
――私が辿り着くまでに、全てを整えるがいい。
――覚悟、結び付き、支給品……全てを手に入れて、私を待つがいい。
――私はその上で、貴様等を残らず踏み潰す。
【一日目午後/D−1 分岐点】
【シャドームーン@仮面ライダーBLACK(実写)】
[装備]:サタンサーベル@仮面ライダーBLACK
[支給品]:支給品一式、不明支給品0〜2(確認済み)
[状態]:疲労(中)、胸とシャドーチャージャーに傷(回復中)
[思考・行動]
0:東の市街地へ向かう。
1:殺し合いに優勝する。
2:元の世界に帰り、創世王を殺す。
3:かなみは絶望させてから殺す。
4:殺し損ねた連中は次に会ったら殺す。
【備考】
※本編50話途中からの参戦です。
※殺し合いの主催者の裏に、創世王が居ると考えています。
※シャドービームの威力が落ちています。
※会場の端には空間の歪みがあると考えています。
投下終了です。
誤字脱字、問題点等ございましたら御指摘戴ければ幸いです。
久しぶりの投下乙!
こいつぁ大ボスの風格だぜ
投下乙!
やべぇよ……やべぇよ……
シャドームーン程の実力者が戦いを楽しみだすとかどんな地獄が生まれるんだ
それにちょっとだけだけど、ロワ全体の考察があっていいね
投下乙です
シャドームーンは市街地に向かうか。
しばらくは誰とも会いそうにないけど、到着したらまた大暴れしそうだな
そして大型予約ktkr
この面子だと次の激戦地は警察署か
また予約ktkr
水銀燈、田村玲子、夜神月、ルパン三世を投下します。
ルパン三世は夜神月と共に、田村玲子の問い掛けを聞いた。
問いの後、長い沈黙が続く。
その間に濡れた体の上にバスタオルを這わせていた玲子が、大方の水滴を拭い終えた。
それを察してルパンが玲子本人から預かっていたデイパック内の新しい服を出すと、彼女はそれを受け取って身に纏う。
大浴場での用事が一通り済んだ事で、三人は連れ立って最上階の展望スペースまで移動した。
三人それぞれが椅子を持ち寄って着席し、問いについて改めて思考を始める。
奇しくもそれは正午、第二回放送と同時。
『こんにちは、みんな』
緊張した場に対する間の悪さにルパンは舌打ちする。
声変わり前の少年の声。
話す内容のおぞましさとミスマッチな、たどたどしささえある調子が不気味だった。
そしてそこで玲子が観察対象として警戒していた泉新一、更にルパンの仲間である次元大介の名が告げられる。
「……やっぱな」
ルパンは放送が終わるのを待ってからそう口にした。
望遠鏡で総合病院の様子を見ていた――そこで次元の死を目撃した。
それを見間違いだった、勘違いだったと済ませられるとはルパンも思っていなかった。
ただ、気分が悪い。
何も出来なかった自分が苛立たしい。
同じく仲間である石川五ェ門の生存を確認出来た事がかろうじて、せめてもの幸いと言えるだろうか。
ふと玲子が「やはり呼ばれたのは咲世子か」と小さく漏らした。
ルパンがそれについて詳細を聞き出そうとすると、当然のようにはぐらかされる。
「ただの独り言だ……それより、仲間が死んだらしいな。
どんな気分だ?」
その言葉に、ルパンは逆上しかけた。
仲間の死への好奇心――それは相手が人間なら、殴り掛かっていたかも知れない。
しかしルパンを思い留まらせたのは、彼女がパラサイトという人ならざるものだという事実に他ならない。
そして彼女はパラサイトと人間について根元的な疑問を抱いている。
ルパンの感情の揺れに関心を示すのは無理からぬ事なのだ。
「気分ね……最悪さ、そりゃあな。
いつ死んだっておかしくねぇ事してるったって、あいつもこんな所で死にたかぁなかっただろうよ」
懐から煙草を出そうとして、普段と違い持ち合わせていない事を思い出す。
諦めて両手を頭の後ろで組み、玲子との会話に専念する事にした。
何せ、解答を誤れば『食われる』のだ。
そんな死に方では、後で次元に笑われる。
「そういうお前さんはどうなんだい?
知り合いだったんだろ?」
問い返すと、玲子は能面のようだった表情を僅かに――微かに変えた。
困惑の色が見え、それが玲子を人外として見ていたルパンには意外だった。
「……分からんな。
だが群れを形成していた仲間が死んだ時とは違うようだ」
玲子の知り合いである泉新一によって、仲間が殺された。
その時は特に感慨はなかったという。
それと今との違いに、玲子は少し考え込んだ。
「恐らくより興味があったから、だろう。
パラサイトを宿したまま人間の脳を残す、極めて特異な存在……パラサイトであり、人間でもある。
この少年なら何らかの答えに辿り着くのではないかと、期待していなかったと言えば嘘になるからな」
玲子が出した結論は、やはり『悲しい』等といった感情とは別物だった。
関心が薄かったから悲しくない、というのではない。
関心は濃かったし感じ入るところはある。
しかし、そもそも悲しいという感情が存在しているのかすら不明瞭なのだ。
それがパラサイトであり、目の前にいる存在である。
玲子には人間的な『ブレ』があるが、人外である事に変わりはない。
その点を、ルパンは改めて心に留めた。
「改めて聞こう。私達は『何』?」
放送で中断された問いを再び示され、ルパンは視線をちらりと月の方へ移す。
月は沈黙を保っていた。
顔色が悪くどこか呆然としているようで、会話について来ているのか定かでない。
聡明な月らしくない姿にルパンは不安を覚える。
ルパンと月の主張が衝突してしまった、まさにその時に玲子が来訪した。
二人がお互いに言葉を尽くす時間は与えられず、ルパンには今の月が何を思っているのか分からない。
ただ、今は玲子の問いに答える事に集中する。
月と改めて向き合うのはそれからだ。
ルパンはそう決めて、玲子に視線を戻した。
「そうは言うけどよ。
俺達に客観的な答えを求めるってのは、ちょーっと無理があるんじゃねぇか?」
「と言うと?」
「俺達は下手したらお前さんに食われちまうんだぜ。
こっちにしてみりゃ、何とかして人食いなんかじゃねえって説得しなきゃならねえんだ」
ルパンと月にしてみれば、命が掛かっている。
それも自分達のだけでなく、玲子がこれから出会う人間全てのだ。
答えるべき内容は初めから決められてしまっている。
「……成る程、確かに脅迫しているも同然の状況だな」
玲子も得心がいったようで、数秒沈黙してからこう応えた。
「ならば約束しよう。
お前達の回答の内容に関わらず、私はお前達を食わない。
また回答が私の満足出来るものならば、私はもう人を食わない」
ルパンは椅子から転がり落ちそうになり、それまで反応の薄かった月も目を見開いた。
対する玲子は無表情のまま。
パラサイトは食人を本能に命じられているものの、必ずしも人を食わなければ生きていかれない訳ではないという。
それでも、本能に逆らうのが簡単な事とは思えなかった。
「……いいのかい、そんな約束しちまってよ」
「私は、『仲間』全体の未来の可能性の為に努力している」
この約束が守られるのなら――例え回答が「パラサイトの本質は食人にある」というものでもあっても。
それに満足出来れば、玲子はもう食人をしないのだ。
つまり玲子が『答え』を求めるのは、それに従って生きる為ではない。
純粋に『知る』為に、仲間の為に求めているのだ。
「お前さんが約束を破るってー可能性は?」
「信じるかどうかはお前達の判断に任せるしかないな」
「『食わない』ってだけで、殺しちまうとか?」
「言葉遊びの趣味はない。
殺す気もないから安心しろ……勿論、自衛の場合は除くがな」
ルパンはその姿勢に共感するものがあった。
幾つもの犯罪に手を染め、盗み出した財宝は数知れず。
だがいつも、財宝そのものを求めていた訳ではなかった。
「いい〜ぜ、その条件で。
『私達は何』……このルパン様なりの答えってやつをくれてやる」
ルパンが椅子に座り直し、足を組みながら言い放つ。
それでも月は不安げな視線を送ってきていた。
月の心配も分かる――玲子が約束を反故にすれば、この場で二人とも死ぬかも知れない。
この会場にいる参加者全体に危険が及ぶかも知れない。
玲子との対話自体が賭だ。
だがあらゆる死線を潜ってきたルパンには、この賭に勝てるという確固たる自信があった。
▽
――僕は…………何者なんだ?
様々な考えが混濁して纏まらず、月は二人のやり取りの静観に努めていた。
荒唐無稽な世界については、諦めと共に受け入れている。
異常な破壊力の拳を持ったカズマ。
F−1周辺で起きた戦闘の中、高速で駆け回り、人間では到底届かない高さまで跳躍した者達。
そして、パラサイト。
ここに来て「信じられない」と耳を塞いでいてはその先に死があると、月は感じていた。
緊迫した空気の中でルパンの顔色を窺う。
失敗の可能性を微塵も感じさせず、むしろ生き生きとしていた。
世界を股に掛けて活躍する大怪盗――というのは、嘘偽りでも誇張でもないのだろう。
それでも月の方が緊張してしまうのは、月がまだ玲子に答えられるような回答を持ち合わせていないからだ。
パラサイトは、そもそも生物と定義して良いのだろうか。
生物は自己増殖と細胞による構成、代謝の三つの条件によって定義される。
だがパラサイトは子孫を残さない。
ウイルスが生物か否かで議論されて『非生物的存在』といった呼び名を与えられているように、新たな区分が必要かも知れない。
そんな相手を説き伏せられるのか、ルパンを信じてはいても不安は拭えなかった。
月が固唾を飲んで見守る中、ルパンは回答する。
「俺達にとっての隣人、ってのはどうだい」
「本気ですか」と、口を挟みそうになった月は慌てて言葉を飲み込んだ。
余りに無防備な答えに見える。
だらしなく座り、椅子を体ごと傾けては椅子の脚二本、或いは一本だけで倒れないよう釣り合わせる――遊び半分で話をしている。
だがルパンと半日行動を共にした月は、彼を尊敬していた。
例え犯罪者であっても、月から見てもルパンは聡明で経験豊かな大人なのだ。
人間の良いところも悪いところも肌で知り、物事の酢いも甘いも飲み込んできた。
そんな彼の回答が納得出来るものでなかったとしても、阻みたくはなかった。
だから月は彼の話の続きに耳を傾ける。
「そりゃあ人を食うなんてとんでもねぇ。
社会はパラサイトってのを認知すりゃあ排除しようとするだろーぜ、山から出て来ちまうような肉食動物と一緒でよ。
だが人を食わないでも生きられるってんなら、お互い妥協してやってくってのもいいんじゃねーの?」
人の言葉を理解する熊や狼と同居出来るか――否。
むしろ人々は、普通の熊や狼以上に危険な存在として滅ぼそうとするだろう。
それはパラサイトが熊や狼よりも強いから、ではない。
同じ言葉を使いながら、それでもまるで生態の異なる生物が『不気味』だからだ。
だから例え「人を食わない」と全てのパラサイトが約束したとしても、人間はパラサイトを受け入れられないだろう。
月にはそう思えてならなかった。
しかもルパンは問題をすり替えている。
それに、玲子もまた気付いたようだった。
「妥協とはつまり、先程の約束を他のパラサイトにも強制するという事だな。
彼らを説得するのは非常に難しい……それに、これは私の問いへの回答ではないな。
お前の願望だ」
「その通りさ」
玲子の指摘に、ルパンはあっさり頷いた。
してやったりとでも言いたげな表情は、こうして彼女と話すのを純粋に楽しんでいるようにさえ見える。
玲子が突然気まぐれを起こせば食われるかも知れない、という警戒心が窺えない。
彼女への信頼の出処が、月には分からなかった。
「客観的にパラサイトってもんが何かってぇ問いに応えるなら、バランサーってとこか。
食物連鎖のてっぺんで調子に乗って、文明を発達させながら空気も海も汚すわ壊すわ。
そんな人間達を食っちまう――敬虔なクリスチャンなら天罰、なんて言葉を使うかも知れねぇなぁ」
月が答えたとすれば、恐らくこれに近いものになるだろう。
バランサー。
増え過ぎた人間を減らす。
人間を食わなくても生きられるにも関わらず「この種を食い殺せ」と本能に命令されている。
本能――神の意思か、それとも地球の悲鳴か。
クリスチャンでもロマンチストでもない月はそこまでは思わないが、結論は似たようなものだ。
腐った世界の腐った人間達を食い殺し、星全体の均衡を保つ。
パラサイトとはそういうものだ、と。
「だから隣人ってのはお前さんの言う通り、俺がそうあって欲しいってぇ期待みたいなもんさ」
「何故期待する?
食われる恐怖からか?」
「勿論、食われるのは御免だ。
だけどよ……俺ぁどうにもすっきりしねぇんだ」
ガタン、と乱暴な音を立てながら椅子の脚が床に着く。
ルパンの表情からは軽薄な笑みが消え、唇を引き結んだ真面目なものになる。
「お前さん達が人間の言葉を理解出来んのは、上手く擬態して人間を楽に食っちまう為か?
そんな理由じゃ……さぁみしいだろ」
「『さみしい』?」
月は、ルパンの言わんとしている事を理解した。
玲子を一人の『人間』として扱い、正面から真剣に向き合っている事も伝わってきた。
だがそれでも、月がルパンに賛同する事は出来なかった。
「お前さん達の頭が良いのは、人間とこうして話をする為……って思いてぇじゃねぇか」
ルパンの感情は間違っていない。
少なくとも、玲子相手なら。
しかし玲子の話からすると、彼女はパラサイトの中でもかなりの変わり種なのだ。
そんな彼女を基準に考えるべきではない。
会話出来る。
思考出来る。
確かにただの肉食動物とは違う。
だが、だからこそ危険なのだ。
社会に融け込み、普通の人間と同じように生活し、影で人を食らう。
まして玲子以外の多くのパラサイトが人間を家畜程度にしか見ていないのなら、共存は不可能だ。
知能が高くても、話し合いが通用するかは別問題。
玲子の言う通り、彼らを説得するのは「非常に難しい」。
そして月の神経では、彼らを隣人とするのは耐えられない。
「しかし、人を食らうという本能を捨てられないうちは人間の隣人ではない。
そうだな?」
「あぁそうさ。
人を食う奴でも隣人でいい、なんて言えんのは自分が食われる覚悟がある奴だけだ。
俺はとても善人たぁ言えねぇ生き方をしちゃあいるが、それでも食われてやる気はさらさらねぇ」
「人を食う事を止め、人間達と同化する形で隣人として共生していく……それがパラサイトの未来、あるべき姿」
「俺にとっては、の話だけどな」
「成る程、お前の考えは分かった」
もし、それでもそれでも彼らと共生したいのなら。
彼らに定期的に『餌』を与える――人間がパラサイトを「飼う」形で管理出来るなら、或いは。
そう。
――死刑囚や指名手配犯といった犯罪者をパラサイトに提供する形なら、共存が可能なのでは?
――罪を犯せばパラサイトに食われるという恐怖が抑止力となり、世界の平和にも――
月は、瞬時に己の我に返る。
これは。
この考え方は。
「犯罪者なら死んでも構わない」なんて非道な考え方は。
――まるで、キラそのものじゃないか……!!!
叫び出しそうになる。
自分の内側に、本当にLが言ったような犯罪者の側面が眠っているようで――頭を掻き毟りそうになる。
ルパンがそんな月の異変に気付いてか、声を掛けようと口を開いた。
だがその声は届かない。
外と接していた窓ガラスが砕け散ったのだ。
ルパンが刀をデイパックから出しながら目を向けると、そこには少女が浮いていた。
黒い羽を持ち、しかし羽ばたく事なくガラスがあった場所に浮遊している異様な少女。
彼女は整い過ぎた顔立ちに妖艶な笑みを張り付けていた。
しかしその完璧と言って良い顔には僅かに傷が付き、紫水色の瞳にはヒビが入っている。
その事から彼女が『人形』なのだと気付いた。
(人形が……動いている……!?)
この会場では有り得ない事が有り得るのだと、納得はしてはいる。
それでも衝撃は変わらない。
己が何者なのか、その答えも分からないまま、月はその少女と邂逅した。
▽
「ごめんなさぁい。
入り口を見たら不細工なイタズラがしてあったから、こっちから失礼したわぁ」
水銀燈は展望室の中へと入り、宙に浮いたまま三人を順に睨め付けた。
この場では穏当に協力者を得るつもりでいる。
相手が単体ならばともかく、三人相手に戦うのは水銀燈の力を以ってしても面倒だからだ。
まして一人でも討ち洩らせば、水銀燈は危険人物として情報を広められてしまう。
確実に殺せる状況でないなら手を出すべきではない。
故に水銀燈は、出合い頭に攻撃するような真似はしなかった。
そこで一歩前へ出てきたのは、真っ赤なスーツに猫背の男。
「こいつぁー驚きのべっぴんさんだぜぇ。
俺様はルパーン三世。
お名前を教えて貰えるかい、お嬢ちゃん」
その態度に虫酸が走った。
たかが人間に子供扱いされて良い気分になるはずがない。
それでも会話を打ち切る訳にはいかず、水銀燈は微笑を消して不快感を露わにしながら応じる。
「……そっちの二人のお名前が聞けたら、教えてあげても良くってよ」
そう言うと目付きの鋭い女は躊躇いなく「田村玲子だ」と言った。
少年の方は暫し逡巡し、俯きながら「夜神月」と答える。
二人がすんなりと従った事で少しだけ溜飲を下げ、水銀燈もまた名乗った。
「ローゼンメイデンシリーズの第一ドール、水銀燈よ」
「そうかい、ありがとよ。
で、お嬢ちゃんは殺し合ったりなんかしねぇよなぁ?」
「当然よ、くだらないわぁ」
水銀燈からは、この三人と行動を共にするという選択肢がなくなっている。
この者達が使えるようなら、と一つの可能性として考えてはいたのだが、ルパンの態度によってそれが消えたからだ。
だが三人がこの場所にいるという事は、窓際の望遠鏡で会場全体の動きを把握している可能性がある。
その為水銀燈の目的は、協力者を得る事から情報を得る事に移っていた。
しかしルパンと水銀燈がそれぞれに何か言おうとした、それよりも数瞬早く玲子が口を挟んだ。
「お前は人形なのか?」
「ええ、そうよ。だから何?」
水銀燈は眉根を寄せる。
玲子の声に侮蔑的な響きはなかったが、向けられる視線は無機物に対するものに他ならず――それがルパンの態度以上に、癇に障る。
「作られた目的は?」
「……それは」
言おうか言うまいか、僅かに悩む。
情報を得るのが目的であり、質問したいのはこちらの方。
わざわざローゼンメイデンとして答えてやる義理はない。
しかしここで答えない事は父への不義のようにも思え、水銀燈は正面から答えた。
「完璧な少女になる為よ」
「なってどうする?」
即座に更なる問いが重ねられ、反射的に攻撃しそうになる。
これがアリスゲームの中でなら、既に玲子には無数の黒い羽根が襲い掛かっていただろう。
それだけの怒りを抑え込み、拳を震わせながら答える。
「お父様に、愛して戴くのよ」
「その後は?」
「いい加減になさいッ!!!」
背の羽を膨張させ、感情を剥き出しにする。
それから?
胴体を……未完成な私の体を、今度こそ作って戴くの。
それから?
あの真紅が持っていたような、私だけのブローチを戴くの。
それから?
温かな手のひらで優しく頭を撫でて戴くの。
それから?
日溜まりの中で優しく抱き締めて戴くの。
それから?
「美しいね」と優しいテノールで囁いて戴くの。
それから?
お父様に、永久に愛して戴くの。
私だけを、私一人を、いつまでもいつまでも愛して戴くの。
願い続けた。
戦い続けた。
そうして何百年も夢見た願いに踏み込まれた事が、耐え難い屈辱だった。
「お父様に愛して戴くのよ、永遠に……その為に私は……!!」
激昂する水銀燈に対し、玲子は表情を僅かも崩さなかった。
そして、淡々と言う。
水銀燈の『願い』に、感想を述べる。
相変わらず、何も感じていないかのように。
「なるほど、まさしく人形だな」
黒い羽の群れが展望室全体に広がり、玲子に向かって一斉に踊り掛かった。
それを玲子は、頭部から伸びた触手の先の刃で払い落とす。
庇うように前に出たルパンも一つの鞘から二本の刀を抜き、玲子まで届いた羽根は一本もなかった。
頭が変形するという気味の悪い姿に水銀燈は微かに動揺したが、それで止まるような激情ではない。
「ちょおっと待った待った!!
お二人さん、ここは――」
ルパンが間を取り持とうとするが、聞くつもりはなかった。
羽根の群が龍に変わり、展望室の中を駆け抜ける。
しかし、標的は玲子ではない。
ルパンと玲子から少々距離を取っていた月だ。
それに気付いたルパンが射線に割り込もうとするが、別の角度から飛ばした羽根でそれを阻む。
「坊主、避けろ!!」
「えっ……」
バクン、と月が龍に飲み込まれる。
玲子の態度は変わらなかったが、ルパンの方は明確に動揺を見せた。
「おい、坊主ッ!!」
「安心なさぁい、怪我はさせていないわ」
龍は月を腹の中に抱えたまま、蠢いて水銀燈の横まで移動する。
そこでどう利用してやろうかと思案したのだが、月に対し違和感を覚えた。
羽根に埋もれた彼の顔は見えないが、何やら様子がおかしい。
囚われながら、何の抵抗もしないのだ。
叫ぶでも暴れるでもなく、大人し過ぎる。
「お嬢ちゃんだってこんな事で揉めんのは本意じゃないはずだろ?
玲子の言った事が勘に障ったってんなら、俺の方から謝る。
こっちの持ってる情報も全部渡す。
……だから坊主を放しな」
「いいわねぇ、その条件」
水銀燈の求めた物が全て手に入る。
計算違いはあったが、結果的には面倒を回避出来たと言えるかも知れない。
「……やっぱりやぁめた」
だが水銀燈は、交渉に応じなかった。
窓から身を投げ出し、羽を広げる。
それを追い掛けるように龍が展望台の外へ、生き物のように波打って流れていった。
「坊主――――ッ!!!」
ルパンの叫びを聞きながら水銀燈は展望台に背を向け、山中へ消える。
▽
水銀燈が展望台を離れてから、ルパンの行動は早かった。
窓際に走り寄り、水銀燈の着地点までの方角や距離を確認。
階段を駆け降りながら器用に入り口のトラップを回収し、展望台を出る。
「お前さんが付いてくる必要はないんだぜ?」
かなりの距離を走ってから、初めてルパンが玲子の方を振り返った。
山道の中で背後に向かって走る、器用な移動の仕方だ。
「話がまだ途中だ……しかし急いでいたとは言え、良く私に背を見せられたな」
「約束しただろ、俺達の事は食わねぇって。
そう言や、もう一個の約束はどうするんだい」
玲子から視線を外し、再び正面を向いて山道を駆けながらルパンが問う。
ルパンの回答に満足したのか否か。
玲子は彼の背を追いながら応えた。
「その前に、お前は妙に私を信用しているようだが何故だ?」
「そりゃあ、お前さんが人間臭いからさ」
即答だった。
走る速度は緩まず、ルパンの表情は窺えないままだ。
人間臭さで信用するのなら、人間は信用出来るという事か。
そう問うと、ルパンは「そんな訳ねぇだろ」と否定した。
「お前さん、自分で言うより随分表情があるぜ。
考え方も下手な人間よりよっぽど信じられるってもんだ。
しかも美人とくりゃあ、おじさんクラクラだぜぇ」
「私に性別はない」
「そうかい?
俺には、お前さんがれっきとした女に見えるんだがね」
「……」
ルパンがさらりと何事でもないように告げたその言葉は、玲子の心に刺さった。
どこにあるのかも分からない、概念的な存在である心に――確かに突き立てられた。
――オギャア
――オギャア
「お前は、変わった人間だ」
「そりゃどーも。それで――」
言いかけて、疾走していたルパンが停止する。
山中の、少し開けた場所に散らばる黒い羽根。
その中心には一枚の紙、そして拳銃が置かれていた。
「こいつは……」
ルパンが紙を取り上げ、玲子もそれを覗き込む。
考えた結果、僕は彼女と行動を共にする事にしました。
僕と貴方は別行動をした方がお互いに効率的に動けると思います。
脅された訳ではありません。これは僕の意志です。
その証拠に、これを残します。
今までお世話になりました。
夜神月
水銀燈が月に同行するよう脅迫しているなら、銃を手放させない。
戦う力を持たない月は、水銀燈の足手纏いになりかねない――それを水銀燈が許容するはずがなかった。
つまり「銃を残して行く」と、月は水銀燈に対し自分の意見を主張しているはずなのだ。
そう見せかけようとしたと考えるには、水銀燈の性格は短絡的過ぎた。
月がマインドコントロールを受けた可能性は残るが、十中八九はここに書かれている通り、自ら決めたのだろう。
何よりルパンには、月がこうし自らて離脱を決意する事に心当たりがあるようだった。
「失敗しちまったなぁ、ったく……」
頭を掻き、悔しそうに呟く。
「追わないのか?」
「今追っかけても、坊主は戻って来ねぇよ。
ああ見えて頑固で負けず嫌いだからよ、決めちまったもんはしょーがねぇ。
あのお嬢ちゃんが癇癪を起こさなきゃ暫くは安全だと思うが……」
ルパンは残された拳銃――コンバット・マグナムを握り締めていた。
やがて紙とマグナムをデイパックに仕舞うと、ルパンはコロリと態度を変えた。
「さーて、お次はどこに行くかねぇ……」
「……もう一つ、質問させて欲しい。
篠崎咲世子が見た夕焼けは、他の夕焼けと何が違う?」
――あの夕焼けの美しさを、わたしは生涯忘れない。
――たとえわたしが死んでも、きっとわたしは風になって、あの夕焼けを忘れない。
「そりゃあ夕焼けは夕焼け……違うのは郷愁って奴のせいさ、多かれ少なかれ誰にだってある」
それを引き起こすのは、目に映る景色かも知れない。
鼻孔が捉える香りかも知れない。
耳に入る音声かも知れない。
肌に触れる風かも知れない。
舌を打つ旨味かも知れない。
他郷にあって故郷を懐かしく思う気持ち。
過去のものや遠い昔などに惹かれる気持ち。
「故郷を持たず、生まれたばかりの私には縁遠い感覚……という事だな」
「裏返しゃ、そのうち分かるって事じゃねぇの」
お前さんは真面目過ぎるぜ、もっと気楽にやろうや……そう言ってあっけらかんと笑い、ルパンは歩き始める。
「ほんじゃま、達者でなぁ。
俺様久々に一人でお仕事すっからよ」
質問を終えた玲子にルパンを追う理由はなく、そのまま見送る事にした。
彼が展望台に戻るつもりは無いらしい。
生い茂った樹木の葉が陽光を遮る。
ルパンの赤いスーツが木漏れ日によって斑模様に照らされていた。
その背を見て、納得する。
(そうか、これが『さみしい』か)
パラサイトの知性が人間を食う為にあるのでは、『さみしい』。
成長を見守ろうとしていた相手が去って行くのは、『さみしい』。
勿体無い、とは違う。
玲子はルパンの抱く感情の一端を理解した。
先程の『女』という言葉についてもそうだった。
この男は玲子に奇妙な感覚を植え付ける。
それは決して『答え』への遠回りではないと思えた。
「で、約束は?」
「……そうだな、勿体振るのはやめよう。
私は一定の満足を得た」
まだ一つの解答例を得ただけだ。
真実は考え続けたところで分からないだろうし、それでも玲子は考え続けるだろう。
だが確かに、そこには充足感があった。
「私はこの先、人を食わない」
【一日目日中/D−5 山中】
【ルパン三世@ルパン三世】
[装備]小太刀二刀流@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-
[支給品]支給品一式、玉×5@TRICK、確認済み支給品(0〜1)、紐と細い糸とゴム@現実(現地調達)、
M19コンバット・マグナム(次元の愛銃)@ルパン三世
[状態]健康
[思考・行動]
1:仲間を募ってゲームを脱出し、主催者のお宝をいただく。
2:月の事が心配。
3:竜宮レナや園崎詩音の事が少しだけ気になる。
4:ロロ・ランペルージと接触したい。
※総合病院で起きた戦闘の一部始終を目撃しました。
緑のスーツの人物(ゾルダ)と紫のスーツの人物(王蛇)は危険人物と判断しました。
※寄生生物に関する知識を得ました。
【田村玲子@寄生獣】
[装備]篠崎咲世子の肉体、黒の騎士団の制服@コードギアス 反逆のルルーシュ
[支給品]支給品一式×3(玲子、剣心、咲世子)、しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒、不明支給品(0〜2)、双眼鏡@現実、
ファムのデッキ@仮面ライダー龍騎、首輪×2(咲世子、劉鳳)、着替え各種(現地調達)、シェリスのHOLY隊員制服@スクライド、
黒の騎士団の制服@コードギアス 反逆のルルーシュ
[状態]ダメージ(大)、疲労(小)、数カ所に切り傷
[思考・行動]
0:人間を、バトルロワイアルを観察する。
1:新たな疑問の答えを探す。
2:茶髪の男(真司)を実際に観察してみたい。
3:正当防衛を除き、人を食わない。
※咲世子の肉体を奪ったことで、彼女が握っていた知識と情報を得ました。
※シャナ、茶髪の男(真司)を危険人物だと思っています。
※廃洋館で調達した着替え各種の内容は、後続の書き手氏にお任せします。
▽
「痛ぅっ!!」
視界を塞いでいた黒い羽根が消えたと思えば、地面に落下した。
地上から一メートル程の高さで拘束を解かれたらしい。
月が見回すとそこは展望室ではなく、山の中ようだった。
目の前には水銀燈の姿がある。
宙に浮かずに地面を踏み締め、尻餅を着いた月を見下ろしていた。
「気分は如何?」
「……僕に、何の用だ?」
「あら、気を遣ってあげたのに」
口元を手で隠し、水銀燈はクツクツと肩を揺らす。
羽根に飲み込まれてから、月は抵抗しなかった。
人質のように利用される事に口惜しさはあったが、自力で抜け出そうとする気にはならなかった。
自分が何者なのか、分からない。
これからどうすればいいのか、分からない。
何より、ルパンや玲子とこれから――
「貴方があの二人と一緒にいたくなさそうだったから、連れてきてあげたのよ」
言い当てられ、月は項垂れた。
キラなのかも知れない自分を抱えながらルパンと向き合う事が、耐えられない。
元より自分のせいでルパンは展望台に縛り付けられていたのだから、消えてしまえればどんなにいいかと考えていた。
「でも貴方が使えない人間なら、ここで死んで貰うわ」
いつの間にか水銀燈の手には剣があり、月の首に突き付けられている。
水銀燈が本気だという事は、これまでの彼女の行動から見ても明らかだった。
「貴方は何か私の役に立つかしら?」
挑発的な言葉を投げ掛ける水銀燈に、月は覚悟を決める。
諦めにも似た思いがあった。
「…………あぁ。立つよ」
水銀燈は、続きを促すように目を細める。
「君はさっき、仲間……それと情報が欲しかったんだろ?
でも失敗した――だから僕を連れ去る気になった。
抵抗が薄い僕が相手なら、多少乱暴な手段を使っても仲間に引き込めると思った」
「そうね」
水銀燈はあっさりと肯定した。
先程のように逆上されては会話にならないという心配があったが、杞憂で済んだようだ。
「ここから言えるのは、君が余り交渉が上手くないという事だ」
「今回に関しては認めてあげるわ。それで?」
水銀燈は今、完全に優位に立っている。
その為か失敗を指摘されても落ち着いており、月としては好都合だった。
「僕は戦う事は出来ないが、人との会話や交渉は上手くやれる。
それに君が今回得られるはずだった情報だって渡せる。
いずれ首輪を外す方法だって見付ける」
「口では何とでも言えるわ」
「僕なら出来る」
月はルパンと比べれば、ただの高校生に過ぎない。
しかし日本一優秀な、という形容詞を付ける事が出来る。
この殺し合いの中でも有用な人間であるという自信があった。
「僕は君の役に立てる。
その証明に――君はこのままだと、ルパンさんに追われる事になるだろう。
危険人物だという情報を流されるかも知れない。
それを、僕が止める」
月は、覚悟をした。
ルパンと決別する――覚悟を。
現在の位置を水銀燈に尋ねると、展望台から数百メートル程の所だという。
上空から着地したままの場所――ルパンが水銀燈の着地点を確認していないはずがないのだから、ここは既に知られているという事だ。
そして、ルパンの行動力ならもうこちらに向かっているだろう。
彼の能力と展望台からの距離を考えれば、ゆっくりしている時間はない。
月は剣を突き付けられたままデイパックから筆記用具を出し、文章を書き付けた。
握った鉛筆が汗でじっとりと湿る。
平静を装っていても、首に刃物が触れている状態は呼吸一つにも緊張した。
書き終えると黒い羽根が散乱した場の中央に置き、その上に重石代わりにマグナムを乗せる。
「これで、ルパンさんは恐らく追って来ない。
悪い噂を流す事もまず無い」
「これだけで?」
「ああ。僕が一緒に行動しているのに君が危険人物だと噂が流れれば、協力している僕まで危険視されかねない。
それに自分で判断したと言っておけば、ルパンさんは僕の意志を尊重してくれると思う」
つまりは、ルパンの月に対する善意を利用しようとしている。
罪悪感が芽生えるが振り払い、「これをしまってくれないか」と剣を指差すと水銀燈はその剣を霧散させた。
月はそれで漸く立ち上がる事が出来た。
「君は、殺し合いに乗っている――んだな」
「そうよ、お父様に会う為にね」
人を殺す気でいる。
それを恥ずかしげもなく、むしろ誇らしげに言う水銀燈に気分が悪くなった。
しかし『キラ』という名が脳裏にチラつき、彼女に対してよりも自分に対して嫌悪感を抱く。
「僕は、殺し合いなんて馬鹿げていると思ってる……だから、僕は君が人を殺そうとすれば止める」
「何ですって?」
水銀燈が眉間に皺を寄せるが、月は構わず続ける。
「僕は君が生き残る為の協力はするし、脱出の為の努力もする。
でも参加者を減らす手伝いは出来ない」
「……分かったわよ。それでいいわ」
唇を尖らせるような不満気な声だったが、納得していない訳ではないらしい。
そして水銀燈はふと思い出したように、月に確認を取る。
「貴方は頭脳労働担当……そうよね」
「ああ、僕は戦えない」
「それなら、nのフィールドに行く方法を考えておきなさい」
「n……?」
聞き慣れない言葉を聞き直すと、彼女は億劫そうにしながら説明した。
思念で構成された現実世界の裏側であり、誰かの精神の世界。
つまりはそこを経由すればこの会場から出られるのではないか、という話だった。
「それで、今はそこに行かれない?」
「妙なのよ。鏡から入ろうとすると、『入る気が失せている』……」
彼女の言う奇妙な感覚は、本人にしか分からないものだ。
入れない、のではない。
入ろうとする意思そのものが、消されてしまう。
V.V.が彼女に催眠術でも掛けたのだろうか。
「……分かった。今は分からないけど、それについても情報を集めるよ」
つきが頷くと、水銀燈は「頼りにしているわ」と微笑んだ。
そのうちに話が過ぎてしまった事に気付き、月は水銀燈を促した。
「そろそろここを離れよう、もうルパンさんが来てもおかしくない」
水銀燈と共にその場を後にする。
最後に一度だけ、手紙を置いた場所を振り返った。
――さようなら。
携帯自己支援
支援
【一日目日中/D−5 山中】
【夜神月@DEATH NOTE】
[装備]なし
[支給品]支給品一式、確認済み支給品(0〜2)、月に関するメモ
[状態]健康
[思考・行動]
1:仲間を募りゲームを脱出する。
2:Lに注意する。
3:情報収集を行い、終盤になったら脱出目的のグループと接触する。
4:命を脅かすような行動方針はなるべく取りたくない。
5:僕は……。
※F−1で起きた戦闘の一部始終を目撃しました。どの程度の情報が得られたかは、後続の書き手氏にお任せします。
※ルパンから銃の扱いを教わりました。
【水銀燈@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]無し
[所持品]支給品一式×3(食料を一つ譲渡)、メロンパン×4@灼眼のシャナ、板チョコレート×11@DEATH NOTE
農作業用の鎌@バトルロワイアル、不明支給品0〜2(橘のもの、確認済)
[状態]右目にヒビ割れ、右眼周辺に傷、深い悲しみと憎悪
[思考・行動]
1:優勝する。
2:真紅のローザミスティカを得る。
3:夜神月を利用して下僕を集める。
4:3を達成したら、狭間偉出夫を殺しに行く。
[備考]
※ゾルダの正体を北岡という人物だと思っています。
※nのフィールドに入ろうとすると「入ろうとする意思そのものが消されてしまう」ようです。
【黒の騎士団の制服(女性用)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
玲子が廃洋館内で調達。
黒の騎士団の団員の制服。バイザーは付属していない。
投下終了です。
誤字脱字、問題点等ございましたら御指摘戴ければ幸いです。
題は付け忘れましたので、決まり次第御報告致します。
投下乙!
ついに展望台グループ決裂か
水銀燈はまた新しい男を引っ掛けたけど今度は上手く行くのかねぇ
戦闘と頭脳を分担するのは北岡&五エ門に似てるけど、やっぱりどこか歪に見えちゃうな
そして白衣、メイド服、HOLY隊員服、黒の騎士団の団服と次々に服を入れ替えてる玲子さんはコスプレイヤーなんですかね……
御感想ありがとうございます。
遅くなりましたが、題は「運命の分かれ道」でお願い致します。
ルパンの答えもなかなか良いなぁ。
新一がいる時に聞けてたらどう反応してたんだろう。
月は何かの答えを出してまたルパンと再開できる時が来ればいいんだけど。
水銀燈と玲子なんていう危険人物を上手いこと捌いたなぁ。
>>89「つきが頷くと」は「月が頷くと」の間違いです、恥ずかしい…
Wiki収録時に修正致します。
L、泉こなた、上田次郎、由詑かなみ、杉下右京、岩崎みなみ、城戸真司、翠星石、桐山和雄、蒼星石、浅倉威、カズマ、南光太郎を投下します。
最初に言い出したのは誰だったのか。
殺し合いの苛烈さに多くの者たちが憔悴していく中、一つの情報が参加者の間で広まっていった。
『誰かが警察署で人を集めている』
誰かというのは、世界的に有名な名探偵だったのかもしれないし、警視庁きっての切れ者と呼ばれた男だったのかもしれない
あるいは、全く別の人物だったのかもしれない。
どちらにせよこの情報は、絶望の淵に立たされていた者たちにとって一縷の希望となった。
これは、そんな希望を抱いて集まった者たちの話。
希望を抱き、死んでいった者たちの物語だ。
☆ ☆ ☆
最初に警察署に辿り着いたのは、L、泉こなた、上田次郎、由詑かなみで形成される四人組。
右京たちが居ないのを確認すると、彼らは施設内の散策を始めた。
散策の方法は先ほどと同じ。
剣を持つこなたが先頭に配置し、戦える”振り”をしているLが後方を固める。
その間に上田とかなみが入るという、四人全員が一緒に行動するものだ。
四人全員が別々の散策する方が効率的だが、こなたを単独行動させたり誰かと二人きりにさせることを避ける必要があった。
彼らはしばらく警察署を散策したが、大量のカップ焼きそばぐらいしか見つからない。
数時間前に訪れたロロと次元が、有用な品物の多くを持って行ってしまったためである。
だが上田とかなみはデイパックを奪われていたため、食料品もそこそこの収穫と言えただろう。
「何も見つかんないからつまんないな〜」
「さっきは宝探しみたいで楽しそうって言ってたじゃないですか」
「何も見つかんなきゃつまんないよ」
壁に背中を預けながら退屈そうに呟くこなた。
一見するとお気楽そうに見えるが、その手は女神の剣を握り締めたままである。
歩き続けて疲労が溜まった彼らは、散策中に見つけた大きな会議室で休憩を取っていた。
ここは正面にある駐車場の様子がよく見えるのと同時に、非常階段が傍にあるため襲撃を受けた際にすぐに逃げることができる。
非常階段への入り口は内部から施錠しておいたため、外部からの侵入者がここを使用する可能性は低い。
最も、カズマのシェルブリットのような大技には無意味だが。
「あれ、なにか聞こえる」
最初に気付いたのは、机に突っ伏していたかなみだった。
彼女の言葉で、他の三人も窓の外から聞こえてくるその音に気付く。
聞こえてきたのは、車の駆動音。
Lが窓の方まで駆け寄り、ブラインド越しに駐車場の様子を伺う。
「安心してください、あれは私の仲間です、今から迎えに行きましょう」
そして、すぐにそう告げた。
「ご無事で何よりです、右京さん」
車から降りてきたのは右京を含めて四人。
右京に背負われている茶髪の青年と、オッドアイの小柄な少女、そして――――
「みなみちゃん!?」
「泉先輩……?」
泉こなたと同じ制服を着た少女、岩崎みなみだった。
( ゚∀゚)o彡゜支援!支援!
支援
支援!
「先輩……先輩ッ!」
「おぉ〜、会いたかったよ〜」
出会った瞬間、二人は互いに駆け寄って抱き締め合う。
Lの中のこなたへの疑惑は既に膨らみきっていたが、今の彼女は本気で再会を喜んでいるように見えた。
「Lくんこそご無事で何よりです、おや、光太郎くんが居ないようですが……」
「彼とは途中で別れました、後から来ると思います」
「何かあったのですか?」
「ええ、銃を持った少年に襲われまして……そちらの方は?」
「彼は城戸真司くん、恐ろしい力を持った参加者と戦っていたところを私が保護しました
まだ意識が戻らないようなので、出来ればここで休ませてあげたいのですが」
真司は未だに眠り続けており、破けたジャンパーから見える赤黒い傷が痛々しい。
「分かりました、上田さん、彼を医務室まで運んでください」
「……私が運ぶのか?」
「ええ、この中では上田さんが一番力持ちなので」
「ふぅ、しょうがない、この私の力が必要とあってはな、彼は私が責任を持って背負おう」
上田は煽てられて上機嫌になり、右京から真司の身体を預かる。
たかが背負うくらいで大袈裟だとLは心中で呟くが、拒否されても面倒だと口を紬いだ。
その際に真司が背負っていたデイパックは、Lが代わりに受け取った。
「皆さん、つまる話は中でしましょう、既に大勢で話し合うのに適した部屋を確保してあります」
「待ってくれないか」
Lの言葉を合図に、集まった面子は次々と警察署に進もうとする。
だが、更なる来訪者の声が彼らの足を止めた。
「どぅわ!!」
突然の来訪者に驚きの声を上げる上田。
今の今まで気配を感じなかったため、突然その場に現れたように錯覚したのだ。
「貴方は誰ですか?」
集団の最後尾にいたため、Lが来訪者の応対をする。
「俺は桐山……桐山和雄だ、この中にL、杉下右京、岩崎みなみはいるか?」
「私がLです」
挙手をしながら、Lは値踏みするように桐山の身体に視線を這わせる。
学生服を着用していることから、彼が学生であることは間違いない。
だがその雰囲気は学生にしては妖艶過ぎていて、長身であることも相まってスーツでも着ていたら成人と勘違いしそうだ。
「どうかしたのか?」
「いえ、なんでもありません、何故私達の名前を?」
「カズマに聞いたんだ、警察署で人を集めている者たちがいると」
「カズくんに……カズくんに会ったんですか!?」
カズマの名前を聞き、上田の影に隠れていたかなみが反応を見せる。
支援
支援
「ああ」
「カズくんは……無事なんですか!?」
「分からない」
「そうですか……あの……カズくんとはいつお会いしたんですか?」
「さっきまで一緒にいた」
「それで――――」
「由詑さん、話は中でしましょう、ここだと危険人物に見つかる可能性があります」
「あ、すいません……」
「いえ、それでは桐山さんも一緒に来てください」
「ああ、だがその前に近くに隠れている仲間を連れていきたい、先に行っていてくれないか?」
「分かりました、では我々は二階の会議室にいます」
☆ ☆ ☆
「そ、蒼星石!?」
現れた人物を見て、翠星石は思わず声を荒らげる。
桐山と一緒に現れたのは、彼女の双子の妹である蒼星石だった。
「良かった……良かったですよ無事で……」
「翠星石こそ無事で良かったよ、怪我とかしてないかい?」
パイプ椅子に腰掛けていた翠星石は、一目散に蒼星石のもとに駆け寄る。
そして両手を広げ、その身体を勢いよく抱き締めた。
「苦しいよ……」
一瞬だけ顔を歪める蒼星石だが、その後は満更でもなさそうに頭を撫で始める。
彼女たちは姉妹たちの中でも特別な絆で結ばれているため、再会の喜びも人一倍大きいのだ。
「あの……」
「あ、スマねーです」
「いえ、あとでゆっくりと休む時間を設けますから」
Lの申し訳なさそうな視線を浴び、翠星石たちは恥ずかしそうに離れる。
いつの間にか着席していた桐山を傍目に捉えながら、彼女たちは用意された椅子に座った。
集まった会議室は二十畳ほどの大きさで、正面には壇上とホワイトボードが設置されている。
名探偵に警察官という実績を持つLと右京は司会を務める形でそこに上がり、それ以外の面子は大量に設置された長机とパイプ椅子に腰掛けてる。
なお、真司は治療を施した後に、仮眠室のベッドに寝かされていた。
「では皆さん、お疲れの方もいるとは思いますが時間がありません、情報交換を始めましょう」
翠星石と蒼星石が着席したのを見て、右京が情報交換の開始を宣言する。
緊張のあまり唾を飲む者もいる中、Lは神妙な表情を浮かべていた。
「どうかしましたか、Lさん?」
「いえ、情報交換の前に一つやっておきたいことがあったので」
右京が尋ねると、Lは前に座っているある人物へと視線を移す。
「由詑かなみさん」
「な、なんですか!?」
突然名前を呼ばれ慌てふためくかなみ。
だが、Lはそれを意に介する様子もなく話を続けていく。
支援!
支援
ディオガ・シエンスルドン!
「単刀直入に伺います、貴女はアルター使いですね?」
質問をした瞬間、かなみが肩を震わせたのが見て取れる。
これでは肯定しているようなものだ。
「はい……」
「まさか君が……いや、振り返れば兆候はあったか、君もカズマくんみたいに空を飛ぶのかい?」
「カズくんみたいに強くないです……」
隣に座っていた上田が話しかけるが、かなみは怯えるような態度を崩さない。
彼女のいたロストグラウンドでは、アルター能力者の人権など皆無に等しかった。
ろくに仕事も貰えず、人々には恐怖され、HOLYからは追い回される。
故にかなみは迫害されることを恐れ、アルター能力者であることを隠していたのだ。
「私は別に貴女を追いだそうとしているわけではありません、ただ一つ質問に答えていただきたいだけです」
そんな彼女の怯えを察したのか、Lがかなみの心中の考えを否定する。
「質問……?」
「はい、貴女はストレイト・クーガーという人物をご存知ですよね?」
怖ず怖ずといった様子で首肯するかなみ。
「なんでそんな質問するのかな?」
Lが二の句を告げようとしたところで、後方に座っていたこなたが口を挟む。
その声には今までの呑気さは欠片もなく、剣呑とした殺意のようなものさえ纏っていた。
「ストレイト・クーガーは誰かを襲って殺そうとするような人物ですか?」
「ちょっと無視しないでよ!」
無視されたことで怒りを露わにするこなた。
彼女の豹変ぶりにかなみは萎縮し、隣に座っていたみなみも驚愕の表情を浮かべている。
「答えてください」
「えっと……その……クーガーさんはそんな人じゃありません」
質問に答えた瞬間、こなたが舌打ちと同時にかなみを睨みつける。
濁った汚泥のような悪意を向けられ、常人よりも人の気持ちに敏感なかなみは身震いしてしまった。
「泉さん、先ほど貴女はストレイト・クーガーに襲われたと言いましたよね
しかし彼の知り合いである由詑さんはこう仰ってます、これはどういうことでしょうか?」
かなみに質問を終え、Lの視線はこなたへと移る。
その瞳は、こなたへの疑惑が確信に近いことを物語っていた。
支援!
支援
「どういうこともなにも……Lさんも見てたじゃん」
「ええ、見てました、しかし私には彼が貴女を殺そうとしているようには見えなかった」
「それはLさんからそう見えただけだよ、クーガーは本気で私を殺そうとしてた、私の仲間も見捨てたし」
「彼が貴女を本気で殺そうとしてたなら、とっくに貴女は死んでますよ
彼は変身した光太郎くんと互角の実力を持っているのに、ただの女子高生である貴女がどうやって逃げ切れたのでしょうか」
「えっと……それは……」
「それに貴女は殺されかけた直後であるにも関わらずまるで緊張感が無かった、無さ過ぎたと言ってもいい」
Lの見透かすような視線が突き刺さり、額にだらだらと脂汗が浮かび上がる。
この場にいる全員の視線が集中し、こなたは推理モノの犯人にでもなったような不快感を感じていた。
冷静に考えれば、そもそも殺されかけたなどと言う必要はなかったのだ。
下手な理由付けをしてしまったことが、不要な災いを呼び寄せている。
何とかしてこの場を切り抜けなければいけない。
切り抜けなければ、ゆたかの命は戻ってこないのだ。
「泉先輩をどうするつもりなんですか……?」
隣に座っていたみなみが俯いたままLに尋ねる。
その声色は普段の彼女と違い、明確な怒りが篭っているものだった。
「下手に情報を与えたくないので、留置所にでも入ってもらいます」
それに対し、Lはあくまで感情の篭ってない普段の声色で返す。
ドンッと大きな音が会議室に響いた。
「いい加減にしてください!」
勢いよく立ち上がるみなみ。
こなたに集中していた視線が一斉に集まり、彼女は思い出した様に顔を赤くする。
「す、すいません……でも、どうしても我慢できなくて……」
恥ずかしそうに顔を伏せながら、みなみは言葉を紡ぎ続ける。
「さっきからLさんは一方的に先輩を嘘つきと決めつけて……
かなみちゃんが嘘を吐いてるとは思いません……でも……先輩の話も少しは信じてください!
何かの間違いかもしれないじゃないですか!」
涙声になりながら、それでもハッキリとした言葉をみなみはLに叩きつける。
大人しい性格のみなみが突然大声を上げたことに、周囲の人間は驚きを隠すことができない。
その中でこなただけが心中でほくそ笑んでいた。
彼女は完全に自分のことを信じ切っている。
再会した時から期待してはいたが、L相手に啖呵を切る程とは予想していなかった。
ゆたかの親友でもあった彼女ならば、かがみと違って自分に協力してくれるかもしれない。
「先輩だった泉さんを信用したい岩崎さんの気持ちもよく分かります
しかし実は由詑さんの他にもう一人、ストレイト・クーガーのことを知っている人物がいたんですよ」
絶句するこなた。
Lが自分の方を見て、ニヤリと笑ったような気がした。
「カズマさんです、最初にお会いした時に彼から話を聞きました、岩崎さんも一緒に聞いてたはずです」
カズマという人物が、余程信頼できる人物だったのか。
Lとこなたの顔を交互に見て、あからさまに狼狽し始めるみなみ。
やられた、と思った。
おそらく彼女が庇うことを見越していて、あえてこの事を言わずにいたのだろう。
支援
支援
「そのカズマって人が嘘を言ってた可能性も……」
「カズくんは嘘なんか吐きません!」
こなたが言い終わる前に、かなみが大声でそれを遮る。
「カズマくんは嘘は吐くようには見えないかな……」
「嘘を吐く前にぶん殴ってそうだな、彼は」
それを皮切りに次々とカズマを擁護する意見が出てくる。
カズマという人物には余程人望があったのか、翻った情勢が一気に傾いてしまった。
みなみに助けを請うが、申し訳なさそうに視線を逸らされる。
自分の身体が冷たくなっていくのを、こなたはハッキリと感じていた。
「それでは泉さん、失礼ですが少なくとも我々が情報交換をしている間は留置させていただきます」
擁護する者が居なくなったことで動こうとするL。
こなたもこれ以上の抵抗は不可能と判断し、歯軋りをしながら従おうとする。
「待ってください」
だが、彼らの動きを止める者がいた。
今まで静観していた警視庁きっての切れ者、杉下右京だ。
「泉さんが嘘を吐いていたのは分かりました、しかしそれで留置するというのは少々行き過ぎてやいませんか?」
「……と、言うと?」
「もっと穏やかな方法……例えばそう、見張りをつけて別の部屋に隔離するというのはどうでしょうか?」
一瞬だけ助けてくれるのかと期待したが違った。
嘘を吐いただけのこなたを留置する訳にはいかないという、真面目な警察官らしい意見だったのだ。
「……確かに少し行き過ぎていたかもしれませんね、右京さんの案で行きましょう」
Lは僅かに逡巡した後、渋々といった様子ではあるが彼の案を採用した。
「なら私が先輩の見張りを――――」
「岩崎さんは駄目です、貴女では懐柔される可能性がありますから」
真っ先に立候補したみなみをLは一蹴する。
そしてパイプ椅子に腰掛けている面子をぐるっと見回し、蒼星石の前で視線を止めた。
「蒼星石さん、貴女はずっと桐山さんと一緒でしたか?」
「え、えっと……ほとんど一緒だったけど……それが何の関係が?」
質問の意図を理解できず、蒼星石は首を傾げている。
「単刀直入に申せば、蒼星石さんに泉さんの監視をお願いしたいと思ってます」
「何となくそう言われる気はしてたけど、なんで僕なのかな?」
蒼星石の質問に、Lは噛み砕くように説明を始める。
まず泉こなたと一切の関わりが無いこと、見張り役が懐柔されては困るためだ。
そして体力にも比較的余裕があり、ある程度は武術の心得があること。
蒼星石はこれらの条件をクリアしており、なおかつこなたと同じ女性であることから抜擢されたのである。
先程の質問は、彼女の所持する情報が桐山と同じものかを調べるためのものだ。
所持している情報が同じならば、必ずしも情報交換の場にいる必要もないのである。
支援
大将軍 シエン
「分かったけど……Lさんや右京さんじゃ駄目なの?」
「私はこれから行う情報交換の司会を務めますし、右京さんには裏口の見張りをお願いしたいと思ってます」
正面入口はこの部屋からよく見えるため問題ないが、裏口はどうしても死角になってしまう。
故に危険人物の侵入を防ぐため、最低でも一人は見張りが必要になる。
警察官であり信頼のおける右京はその役に最適だった。
「というわけで、泉さんの監視をお願いできないでしょうか」
「はぁ……あんまり気乗りしないけど……分かったよ」
こうして蒼星石が承諾したことで、こなたは別の部屋に隔離されることとなった。
☆ ☆ ☆
「ちぇー、みんな酷いよ」
こなたが隔離されたのは二階にある取調室。
二階というのは簡単に逃げることができず、なおかつ飛び降りても死亡する危険性は低い。
犯罪者が集まりやすい性質上、二階というのは一般に知られている以上に重要なウエイトを占めているのだ。
「しょうがないよ、こなたちゃんは嘘を吐いてたみたいだし」
「蒼星石ちゃんも私が嘘吐いたって言うの?」
「正直なことを言うと疑ってるかな、あのカズマくんが嘘を吐くとも思えないし」
「そのカズマって人、そんなに信用できるの?」
「うーん、信用できるというか、なんというか……」
信用できるとは少し違う。
カズマの性格からすれば、気に入らない相手がいたらその拳で殴り飛ばすだろう。
行動パターンが簡単に推察できてしまうのだ。
「まぁ、剣とか全部取られちゃったからどうしようもないんだけどねー」
隔離される際、水や食料等の共通支給品以外を全て没収されてしまった。
武器もないのでは、抵抗するのは不可能だろう。
「それにしても蒼星石ちゃんってホントに女の子なの? 私ずっと男の子だと思ってたよ」
「なっ……もう失礼だなー、これでも立派な女の子なんだよ」
ショートカットヘアに半ズボン等、彼女の容姿は非常に中性的な嗜好が凝らされている。
実際にかつての同行者である橘あすかは、彼女を男性と勘違いしたことで一悶着を起こしていた。
「でもリアルでボクっ娘って初めて見たよ、くは〜、萌えるね〜」
「別に萌えとか意識してるわけじゃないんだけどなぁ」
こなたと二人きりになってもうすぐ十分を過ぎようとしているが、Lが言っているように彼女にはまるで緊張感がない。
殺し合いの舞台であるにも関わらず、彼女の態度はあまりにも自然体過ぎるのだ。
Lからは情報交換が終了次第、自分たちを迎えに来ると言われている。
それまでは警戒を緩めず、監視を続けることにした。
☆ ☆ ☆
支援
支援
「それでカズマさんは瀬田宗次郎と戦闘を開始したんですね?」
「そうだ、私が戦おうとしたんだが、カズマくんにどうしてもと言われて譲ったのだよ」
Lの質問に対し、上田は脚色を加えながら返答する。
かなみからは溜息を吐かれ、その他の参加者からは疑いの眼を向けられるが、上田はまるで気付いていない。
朗らかな声を上げながら、上機嫌に笑い続けていた。
「それでカズマさんと瀬田宗次郎が戦っている最中に、桐山さん達が出くわしたと」
「そうなるな」
「そして瀬田宗次郎を倒した後、光太郎くんの加勢に向かったわけですね」
最終的に残ったL、上田、かなみ、桐山、翠星石、みなみの六人で行われた情報交換。
全員が支給されたメモ帳に情報を書き記している。
警察署には印刷機が設置されており、この場にいない面子とも情報交換することが容易い。
そうする価値があるほど、今回得られた情報は大きかった。
Dー7で起きた火災の原因となる乱戦の経緯と、シャドームーン討伐のための二度の闘争
人間を仮面ライダーへと変身させるカードデッキの存在。
他にも多くの情報を得ることができ、それだけでも価値は十二分にあったと言える。
「……」
だが、同時に歯噛みするような事態にも直面していた。
ここに集まっている戦力が、想像以上に貧弱であったことだ。
かなみやみなみは論外、Lや右京も瀬田宗次郎のような強者には太刀打ちできないだろう。
上田は空手の達人を名乗っているがいまいち頼りなく、蒼星石も専用の武器が無いのでは全力を発揮できない。
結果として戦力に数えられるのは、花弁を操れる翠星石とカードデッキを所持している桐山くらいだ。
ここに来て、光太郎と別れてしまったことが響く。
光太郎やカズマが来るまで、誰にも襲撃されないことを祈るしかないだろう。
「桐山さん、一つお尋ねしてもいいでしょうか……?」
「なんだ」
怯えたように桐山を見上げるかなみ。
彼女と桐山の身長差は頭二つ分以上あり、必然的に見上げて会話する形になる。
カズマや君島との交流である程度は免疫がついていたものの、やはり初対面の桐山との会話は緊張してしまうようだ。
「その……瀬田宗次郎さんをこ、殺したのは……カズくんなんですか?」
ビリッと電流が駆け抜けたかのような緊張感が訪れる。
もしカズマが殺していた場合、彼を殺人犯として扱わなくてはならない。
Lは殺人犯であろうと使えるものは使うが、他の人間はいい感情は抱かないだろう。
とくに右京が殺人を強く忌避していることが翠星石との話で判明している。
下手をすれば、たったこれだけでもコミュニティが崩壊してしまうかもしれない。
「違う、カズマはあいつにとどめを刺さなかった」
抑揚のない声での返答。
かなみはほっと胸を撫で下ろし、Lも心中で安堵した。
「ということは、貴方達が去った後に何者かに襲われたということですかね」
「そうなるな」
答えると同時に、桐山はすぅっと立ち上がる。
支援
支援
支援!
「スマない、トイレに行ってもいいだろうか?」
いきなりの申し出に訝しむLだが、理由を聞いて納得がいった。
彼と蒼星石は今まで一度も施設に寄っておらず、当然トイレに寄る機会もなかった。
十二時間以上もそれが続けば、催しても無理は無いだろう。
Lが許可を出すと、桐山は出口まで歩を進める。
「待ってください」
ドアノブに手をかけたところで、不意にLが制止を促す。
「デイパックは置いていった方がいいのではないですか?」
桐山の背に掛けられているデイパック。
どういう原理かは知らないが、これは中にどれだけ物を詰め込んでも一切重さを感じない。
さらに車のような巨大な物でも収納でき、挙句の果て無限に詰め込むことができる。
現代の科学力でこれを再現するには、あとどれくらいの歳月を要するのだろうか。
「そうだな」
桐山は背負っていたデイパックを無造作に放り投げる。
綺麗な弧を描きながら飛ぶそれは、彼が座っていた席にぽすんと落ちた。
「……」
ドアノブをゆっくりと回し、扉を小さく開けて外へと出る桐山。
扉が無言のまま閉まるまで、Lの視線が彼から離れることはなかった。
☆ ☆ ☆
こなたが隔離されてから一時間が経過。
会話する内容も尽きて沈黙が訪れた頃、不意にこなたが蒼星石に話しかけた。
「あの……蒼星石……」
両脚を閉じ、スカートの裾を僅かに引っ張る。
そして艶かしく身体をくねらせながら、ほんのりと顔を赤らめていた。
「な、なにかな……?」
蒼星石は嫌な予感を感じつつも、最低限の冷静さを保って対応する。
「……レ……」
「え?」
こなたが何か呟くが、あまりに小声なため聞き取ることができない。
そんなやり取りがしばらく続く。
「トイレだよトイレ! 何度も言わせないでよ恥ずかしい!」
顔を真っ赤に染め上げながら、こなたは大声で叫んだ。
支援
支援
支援
「えー……我慢できないの?」
「さっきからずっと我慢してたの! もう限界だよ!」
交互に足踏みをして、いかにも急いでいるような素振りを見せるこなた。
いや、実際に急いでいるのだろう。
尿意を催すことのない蒼星石でも、我慢する苦しみを想像できてしまうのだから。
「も、もう少し我慢できないかな?」
それでも蒼星石は、彼女に我慢することを強いた。
Lからは、絶対に彼女を出すなと言われているからだ。
「無理だよ〜! あ〜! 大声出したら余計に漏れそうに……」
股間を押さえながら慌てふためくこなた。
もし真紅がこの場にいたら、彼女をはしたないと嗜めていただろう。
狼狽する彼女を尻目に、蒼星石は思考を展開する。
彼女が本当に尿意を催しているのか、それを見極めなければならない。
蒼星石も暇な時間はテレビの前に座り、真紅や雛苺と一緒にくんくん探偵を眺めている身。
幾多もの事件を追体験し、多少は探偵としての素養が備わってきているはずだ。
逮捕された犯罪者がトイレに行きたいと告げ、何らかの方法で逃げ出すというのは常套手段である。
それを鑑みれば、彼女に許可を出すべきではないだろう。
だがそんな簡単に思いつく方法を、俗に言うオタクである彼女が使ってくるだろうか。
「あ〜、もう漏れちゃう! ここで漏らしちゃうかも!」
「え、それは……」
こなたの発言に蒼星石は凍りつく。
取調室のような密閉空間で漏らされたら、たちまち臭いが立ち込めるだろう。
窓ははめ殺しになっており、換気することもできない。
「蒼星石! 絶対に逃げないからトイレ行かせてよ! お願い!」
こなたは扉の前まで行き、ドアノブをガチャガチャと回し始める。
だが、内部から施錠されているため扉が開くことはない。
それが分かっていながらも、彼女は必死にドアノブを回し続ける。
限界が近いのだろう、今にも漏らしてしまいそうな雰囲気だ。
武器は全て没収されているし、格闘戦になったとしても普通の人間に負けるつもりはない。
何よりもし彼女が演技でなかった場合、悲惨な状況を産み出してしまう。
「はぁ……もうしょうがないなぁ……」
観念した蒼星石は、Lから預かった取調室の鍵を取り出す。
「やった!」
「でも――――」
扉の前まですたすたと歩いて行き、鍵を挿し込んで解錠する。
「僕も付いて行くからね」
「そんなのどうでもいいよ! 先に行くね!」
「あ、待ってよ!」
鍵穴から鍵が刺し抜かれると、こなたは一目散に駆け出す。
皆が集まる前から警察署に居たため、トイレの位置は完全に把握しているのだろう。
物凄い勢いで疾走するこなたに、蒼星石は付いて行くのがやっとだった。
支援
支援
支援
「ちょっと……速すぎるよ……」
蒼星石がトイレに到達した時、既にこなたの姿はない。
代わりに一番手前にある個室の鍵が、使用中を示す赤色に変わっていた。
「……」
しばらくすると個室の中から水の滴るが流れ出す。
トイレに行きたいという要望が事実だったことに、蒼星石は思わず安堵した。
もし嘘だったのなら、彼女は大失態を犯したことになるのだから。
「……」
無言のトイレの中を水温の音だけが鳴り続ける。
他人の排泄音を聞くというのは、あまり気分のいいものではない。
だが他にやることがない以上、どうしても流れる音に集中してしまう。
「……はぁ」
湿った溜め息を吐く。
蒼星石に汗を掻く機能はないが、人間だったら確実に発汗しているだろう。
居心地の悪さがすり減った彼女の神経を蝕んでいく。
一人の時間を得て、ふと頭に過ぎったのは二人の少年の顔。
初めての同行者である橘あすかと、自分を庇って死んだ北条悟史。
他にも大勢の人間の犠牲があるからこそ、今の自分たちはここにいるのだ。
そう思うと、悪寒が止まらない。
「……はぁ」
二度目の溜め息を吐く。
手の平に不快感を感じ、泥や砂で汚れていることに気付いた。
目の前に洗面台まで進み、汚れ一つない蛇口を捻る。
そこから噴出した水に、彼女は汚れた手を預けた。
泥や砂は綺麗に洗い落とされるが、こびり付いた血液はなかなか消えない。
握りしめた際に付着した悟史の血液だろう。
「ん?」
ガシャン、と音がした。
振り返ると、そこにはガラスの残骸が散乱している。
目を凝らして見てみると、それは全員に支給されたランタンであった。
「なんでこんなものが……」
すたすたと足音を立てる蒼星石。
水の滴る音は、まだ止んでいない。
そして――――
「――――ッ!?」
頭上から飛び掛ってくるこなたの姿を最後に、彼女の意識は暗闇の中に落ちていった。
☆ ☆ ☆
支援
支援
「どうかしましたか?」
トイレから戻ってきた桐山を見て、Lは覗き込むように質問する。
冷静沈着な彼には珍しく、息を荒げているのがはっきりと分かった。
「蒼星石が……死んでる」
桐山の告白は、その場にいた全員に衝撃を齎した。
「う、嘘です……嘘吐くなです!!」
桐山の告白を否定する翠星石。
顔は真っ青に青ざめていて、手は小刻みに震えている。
「ッ……泉さんは?」
「分からない、が、何処にも見当たらなかった」
ギリッと奥歯を噛み締めるL。
この場にいる人間の中では比較的冷静さを保っていられたが、それでも完全に動揺を隠すことはできなかった。
「まさか……先輩が……」
翠星石と同じように顔面を蒼白に染めたみなみが、独白のように呟く。
その後に続く言葉は、言わずとも誰にも予想できるだろう。
”泉こなたが、蒼星石を殺害して逃げた”
「非常に残念ですが、その可能性は極めて高いでしょう
情報交換は中止です、これから泉さんを追います」
表情は変えないまま、しかし普段よりも荒い語調で宣言するL。
みなみの顔には、より一層暗い影が落ちる。
「でも……どうやって追うんですか? 泉さんが何処に行ったのか分からないんじゃ……」
「そうだ! 彼女が何処に行ったのかを知る方法が――――」
「あります」
「我々には無いだろう……ってなに?」
かなみの指摘に上田は長々と便乗するが、Lはたった四文字で切り捨てる。
「彼女のデイパックを調べた時に発信機を仕込んでおきました、受信機はここにあります」
くすんだ色のジーパンのポケットから、リモコンほどの大きさの機械を取り出す。
これは元々は真司の支給品であり、預かった際にこっそり拝借していたのだ。
「上田さん、お願いします」
「Why? 何故私が!?」
手に持った受信機を、呆然としている上田に差し出す。
すると上田は露骨に狼狽し、口早に異を唱えだした。
Lがその内心を知る由もないが、上田はこの殺し合いに乗っている者に対して恐怖を抱いていた。
東條悟、ミハエル・ギャレット、稲田瑞穂、前原圭一、瀬田宗次郎。
今まで出会ってきた者たちは、頭のネジが何本も抜けているような者ばかりだった。
いくら天才的頭脳を有していても、彼らのような人種とは会話ができない。
ハッキリ言って、関わりたくなかったのだ。
乙です
支援
間違えた。支援
支援
「上田さんしかいないんです、この中で一番腕っ節が強いのは貴方なんですから」
「し、しかし……」
「お願いします」
上田がいくら目を逸らしても、Lは不健康そうな隈に彩られた目で追い続ける。
あまりにも居たたまれず、やがて上田は観念したように肩を落とした。
「ふぅ……仕方がないな、この私の頭脳と手腕が必要とあっては力を貸さないわけにはいかない」
放つ言葉は尊大なものの、普段のような張りのある声ではなかった。
「……私も行かせてください」
上田との交渉を終えた直後、影に隠れていたみなみが前へと出てくる。
「……先ほども言いましたが、泉さんが蒼星石さんを殺した可能性はかなり高いです、それでも行きますか?」
「足手まといにはなりません、それに……先輩が何でこんなことをしたのか知りたい」
みなみの目を覗き込む。
ただの女子高生であるみなみを外出させるのは避けたいが、上田だけではどうしても不安が残る。
「なら、俺も行こう」
静観していた桐山が立候補した。
「俺にはカードデッキがある、襲われたとしても返り討ちにできる」
デイパックの中から黒いカードケースを取り出し、学生ズボンのポケットの中に仕舞い込む。
確かにカードデッキの力があれば、並大抵の敵なら跳ね除けることができるだろう。
真司が気絶中である以上、現状の最強戦力は彼だ。
「分かりました、岩崎さん、桐山さん、お願いします」
表情を崩さないまま、Lは二人にこなた探索隊に加えた。
「私は……蒼星石を見に行きます……」
嗚咽を漏らしながら、翠星石は自らの意思を告げる。
自分自身の半身ともいえる蒼星石の死は、怒りよりも悲しみの方が大きかったようだ。
それに、もしかしたら桐山が見間違えただけかもしれない。
自分の目で確認するまで、彼女は蒼星石の死を認める気はなかった。
「分かりました、私も彼女の遺体を拝見します」
「えっと……私は……」
ほぼ全員の役割が決まったが、かなみだけがまだ決まっていない。
自分だけが蚊帳の外であったため、不安に苛まれたのだろう。
「由詑さんはここに残っていてください」
「でも……!」
彼女は子供であり、さらに左腕を骨折している。
探索隊に加えても足手まといになるのは目に見えているのだ。
「私も何かしたいです! 出来ることなら何でもしますから!」
包帯の巻かれた腕を不便そうに振るいながら、必死に懇願するかなみ。
その姿を見て、Lは数秒間だけ思考した後にこう告げた。
支援
支援
支援
「では、裏門にいる右京さんを呼んできてください」
「わ、分かりました!」
指示を受けると、彼女は一目散に駆けていく。
誰にでもできることであったが、とにかく何かをしたかったのだろう。
「殺人を犯した可能性のある泉さんを放置しておくわけにはいきません、迅速に確保してください」
こうして、彼らは会議室を後にした。
☆ ☆ ☆
「これは……」
女子トイレに集まったL、右京、翠星石の三人は、目の前に広がる惨状を見て思わず声を漏らした。
衣服を乱雑に脱がされ、事切れた蒼星石の姿。
強烈な打撃を受けたのだろうか、顔には痛々しい痣ができている。
そして何よりも目立つのは、喉元に深々と突き刺さった鉛筆。
鉛筆は蒼星石の細い喉を貫通しており、これが死因となったのは間違いないだろう。
「そんな……蒼星石……」
崩れ落ちる翠星石。
もしかしたら生きているかもしれないという淡い希望も、あまりに呆気無く打ち砕かれたのだ。
「翠星石さん、これが何かご存知ですか?」
Lの手の平には、翠星石にとって見覚えのある物が乗っている。
「蒼星石の……ローザミスティカ……」
ローゼンメイデンにとって命にも等しい代物。
これが身体の外に出たということは、アリスゲームの脱落――――死を意味する。
「これは私たちにとって命みたいな物です、できれば翠星石に渡してほしいです」
「……分かりました」
少し逡巡した後、Lは蒼星石のローザミスティカを差し出してくる。
それを受け取った翠星石は、口を結んだままそれを自らの胸に押し当てた。
「遺体を検分してもよろしいでしょうか、翠星石さん?」
そんな彼女を尻目に、Lは無表情のままだ。
こなたとの悶着で彼の性格をある程度は理解していたつもりだったが、自らが当事者となるとその不愉快さに辟易する。
「勝手にしやがれです」
今更なにを調べる必要があるのかと思うが、もしかしたら予想もできない真実が見つかるかもしれない。
それを達成できるような人物は、Lや右京のような頭のいい者たちだろう。
だがそれでもLの態度が気に食わず、言葉に出てしまった。
「……」
蒼星石のマスターである柴崎元治を呪縛から解き放ち、ようやく手に入れた本当の幸せ。
だが、もうそれは何処にもない。
真紅も、劉鳳も、新一も、そして蒼星石も死んだ。
彼女の死に直面し、去来したものは怒りでも悲しみでもなく虚無感だった。
支援
支援
(せめて、私の中で真紅と一緒に……)
翠星石の身体が眩い光に覆われ、時間と共に身体の内側へと吸い込まれていく。
彼女がこれを体験するのは二度目である。
アリスゲームに積極的だった水銀燈ではなく、否定的だった彼女がローザミスティカを二つも得たのは何の皮肉だろうか。
身体が暖かい感触に包まれるが、対照的に心は氷のごとく冷え切っていた。
(え……?)
翠星石の表情が見る見るうちに歪んでいく。
蒼星石のローザミスティカを取り込んだことで、彼女が有していた記憶がぼんやりと浮かび上がる。
そうして伝わってきたのは、予想だにしない光景であった。
「な、なんてことです……これは……」
「どうかしましたか、翠星石さん?」
「た、大変です! 蒼星石は……蒼星石はッ!」
「落ち着いてください、翠星石さん」
驚愕のあまりしどろもどろになる翠星石を宥めたのは右京。
彼に窘められた翠星石は、自らが見た光景をゆっくりと整理し始める。
――――こ、ここは…………イ……だよ、…………! ……は……ってき……メだよ!
――――……なことよりも…………が……んだ、今すぐ……きゃ!
記憶の断片をパズルのように組み合わせ、そしてこの場で起きた出来事の全貌を理解した。
「蒼星石は――――」
ゆっくりと噛み砕くように、最低限の情報だけを二人に告げる。
信用してもらえるか不安であったが、彼らは最後まで真面目な表情で耳を傾けていた。
「そんなことが……だが決して有り得ない話ではありません」
右京は驚きを露わにしつつも、何処か納得したような表情を見せている。
「な、何故ですか?」
「……蒼星石さんの遺体に妙な痕跡が残ってました」
右京の代わりに答えのは、顔を悔恨の色に染めたL。
「1%……たった1%の可能性でした……もう少し、警戒していれば……」
「今すぐにでも伝えに行くですよ! じゃないと……」
「ええ、行きましょう翠星石さん!」
この恐ろしい事実を一刻も早く伝えなければ取り返しのつかない事態になる。
翠星石と右京は互いに頷き合い、女子トイレから立ち去ろうとする。
「……右京さん、翠星石さん、お願いできますか」
「な、何言ってるですか! お前も行くですよ!」
だが、Lだけはこの場に残ると告げた。
支援
支援
「私が行って、何か役に立ちますか?」
「え……?」
「私には翠星石さんのような特殊な力もなければ、カードデッキのような強力な支給品もありません
なので、私が行ったところで足手纏いになるだけです
それに私までここを出たら、警察署にかなみさんと城戸さんだけを残すことになります、それはまずいでしょう」
Lの言っていることは非常に合理的だ、合理的過ぎると言ってもいいだろう。
だからこそ、感情的になっている今の翠星石には納得できなかった。
去来していた虚無感は当に消え去り、今は燃え盛るような怒りに支配されている。
「右京さん、貴方にもできれば行かないでもらいたいです
我々のようなただの人間が行ったところで、おそらく出来ることは何もありません」
「L!」
Lの何処までも冷徹な判断に、思わず激昂する翠星石。
右京はそれを黙ったまま見続け、彼女らの会話が完全に途切れた瞬間に口を開いた。
「心配していただけるのは嬉しいです
しかし僕は一人の警察官として、目の前にある悪意を見過ごす気はありません」
ハッキリと目を見開き、凛とした声色でLに語りかける。
時間にして数秒、張り詰めた空気が静寂と共に押し寄せる。
「分かりました、ですが、必ず生きて帰ってきてください」
「ええ、もちろんです、それでは行きましょう、翠星石さん!」
☆ ☆ ☆
こなたは追い掛けられていた。
背後にいるのは上田次郎、桐山和雄、岩崎みなみの三人。
背丈の低いこなたにとって、長身である彼らに追い掛けられるのは少なからず恐怖だった。
(せっかく蒼星石から逃げ出したのにぃ〜)
こなたが蒼星石から逃げ出した作戦は半ば運任せだった。
まず自分が排尿中であると見せかけるよう、配布されたペットボトルに穴を開けて少しずつ便器に零れ落ちるように設置。
蒼星石がそれに気を取られているうちに、トイレの壁の上を伝って隣の個室に移動。
そしてランタンを床に投げ、蒼星石の気を引き付ける。
その一瞬の隙を突き、扉の上から飛び蹴りを繰り出して気絶させたのだ。
トイレの壁の上の空間が広かったこと、自身の身体がそれを通り抜けられたこと、蒼星石の頭身が小さかったこと。
様々な要因が重なって、今回の作戦は成功したのだ。
そうしてやっと逃げ出したのに、何故かまた追われているのである。
「待ってください、先輩!」
「待てって言われて待つような人は何処にも居ないんだよ、みなみちゃん!」
蒼星石を出し抜いたことが露見して、探索隊を差し向けられることは分かっていた。
だが、見つかるのが早過ぎし、追い掛けてくる人数も多過ぎる。
まるで自分が何処に逃げるのか、最初から分かっていたような手際の良さだ。
支援
支援
「ひ〜!」
クーガーに追い掛けられている時も述べたが、こなたは同学年の中でもトップクラスの速さだ。
しかし、追い掛けてくる三人も速かった。
みなみが俊足なのは知っていたが、他の二人も十分に速い。
上田も桐山もその長身故に歩幅が広く、見る見るうちに差が縮んでいく。
それにクーガーに追い掛けられている時に比べ、どことなく身体の調子が悪い。
女神の剣のような重りが無いにも関わらず、何故かあの時よりもスピードが出ない。
「わぁ!」
全速力で走ったせいか足が縺れるこなた。
身体のバランスを取ろうとするが叶わず、勢いよく転倒してしまう。
急いで立ち上がろうとするが、その時には既に三人の姿はすぐ傍にあった。
「ハァ……ハァ……やっと追い付いたぞ」
年齢には勝てなかったのか、上田は肩で息をしている。
他の二人も上田よりはマシであるが、やはり息は上がっていた。
「先輩……何で……何で……」
みなみが目尻に涙を溜めながら、ひどく悲しそうな瞳をこちらに向けてくる。
「何で……殺したんですか?」
「え……?」
言っていることが理解できなかった。
「とぼけないでください! 何で……何であんな酷いことを……」
「もしかしてかがみんのこと……バレてる?」
「え……まさか……かがみ先輩も殺したんですか?」
みなみの表情が驚愕に歪んでいく。
(あちゃ〜、ミスったなぁ)
かがみのことを指摘されているのかと思ったが違ったようだ。
やぶ蛇とはまさにこのことだろう。
「稲田くんといい最近の学生は一体どうなっているんだ……全く……」
侮蔑と困惑の篭った視線を投げかけてくる上田。
かがみを殺したのは、あくまで全てを無かったことにするためだ。
最近のニュースでよく報道されているような、アニメやゲームの影響では決して無い。
それなのに一括りにされるのは、少なからずこなたの癇に障った。
「とりあえず戻ろう、泉くん」
上田に肩を掴まれる。
(やだよ、絶対)
もし警察署に戻ったら、Lが難癖をつけて拘束してくるに決まってる。
こんなところでゲームオーバーになんかなりたくない。
反撃をするならば、チャンスは今しかない。
支援
支援
支援
もし警察署に戻ったら、Lが難癖をつけて拘束してくるに決まってる。
こんなところでゲームオーバーになんかなりたくない。
反撃をするならば、チャンスは今しかない。
「やだよ、絶対に逃げ切ってやるもんね!」
肩に置かれた上田の手首を掴み、思いっきり投げ飛ばそうとする。
彼女が習った合気道は、腕力や体格の差を逆に利用するような武術だ。
故にいくら巨体であっても、素人なら容易く投げ飛ばすことができる。
「無駄だ」
だが、それは素人に限った話だ。
上田は空手の達人であり、戦闘の経験も積んでいる。
投げ飛ばそうとしたところを、逆に抑えこまれてしまった。
「痛い、やめてよ!」
「スマない、だが二人も殺している君は何をするか分からないからな、抑えさせてもらう」
鈍痛を訴えるが、上田は聞く耳を持たない。
胡散臭くて冴えない男だと思っていたが、意外なところに伏兵がいたとこなたは臍を噛んだ。
「だ、だって、これはゲームなんだよ!」
「はぁ?」
「リセットボタンを貰えば、全てが元通りになるんだよ!?」
「君は一体なにを言っているんだ……」
「みなみちゃん! ゆーちゃんがこのまま死んじゃったままでいいの!? ねぇ!?」
必死に訴えかけるこなた。
どうやっても抜け出すことができないなら、もう泣き落としに賭けるしかない。
ゆたかの親友であるみなみがいるのだ、きっと上手くいくはずだ。
「ッ……!」
「耳を貸すなみなみちゃん、人を殺して上手くいくことなど決してない、そうして破滅した者たちを私は何人も見てきた」
「だ、だいたいさっきからみなみちゃんも上田さんもなに言ってるのさ!?
リセットボタンを貰えば全てが無しになるのに! それに私が殺したのは――――」
「ッ!」
こなたが言葉を遮るように、桐山が不意に身体を翻す。
そして素早く腰の刀に手を当て、目にも留まらぬ程の速さで引き抜いた。
「ひっ!」
上田が悲鳴を上げたのと、銃声が轟いたのはほぼ同時だった。
だが銃弾が届くことはなく、桐山によって斬り落とされている。
銃声がした方向を見ると、そこには蛇皮の服を着た金髪の男が銃を構えていた。
「ははっ! 探したぜ」
桐山は二度遭遇していて、こなたは仮面越しに声を聞いていて、上田とみなみは情報交換の際に話を聞いていた男。
仮面ライダー王蛇に変身する危険人物・浅倉威がそこにいた。
「――――ッ!」
無言のまま地面を蹴り、浅倉に斬りかかろうとする桐山。
だが浅倉の背後に設置されたカーブミラーから、巨大な大蛇――――ベノスネーカーが現れてそれを牽制する。
支援
支援
支援
支援
「な、なんなんだね君は! こう見えても私はとっても偉い大学教授で、さらに――――」
「引っ込んでろ!」
「はい」
いつも通りの自己紹介を始めようとする上田だが、浅倉に罵声を浴びせられて竦んでしまう。
「みなみちゃん、下がっていよう」
「え、でも……」
「いいから、我々に出来るようなことなど何もない!」
桐山を盾にするように、上田はこそこそと後退していく。
何も出来ることがないのは事実だが、それでも即判断する辺りは流石は上田と言ったところだろうか。
気がつくと、既に十メートルほど後ろに下がっていた。
「先輩も……早く逃げて」
みなみは地面に伏したままのこなたに手を伸ばすが、彼女は呆けるように浅倉を眺めている。
それでも手を伸ばし続けるが、彼女は振り向きさえしない。
やがてベノスネーカーの眼光に射抜かれた彼女は、怯えるように上田がいる地点まで下がってしまった。
「デッキを出せ」
「……」
浅倉は懐からデッキを抜き、応えるように桐山もデッキを構える。
裂帛した空気が、周辺一帯を包み込む。
「待つです!」
その空気を切り裂くように現れたのは、警察署にいたはずの翠星石と右京だった。
「これで助かった!」
カードデッキ所持者の桐山に加え、警察官の右京と特殊能力を有する翠星石が加わった。
いくら浅倉といえど、これでは多勢に無勢だろう。
上田はそう考えていたのだが、駆けつけてきた二人の様子がどこかおかしいことに気付く。
彼らがが睨みつけているのは浅倉ではなく、何故か味方であるはずの桐山だった。
「お前だったんですね……」
桐山が背後を振り向く。
「お前が蒼星石を殺した本当の犯人だったんですね、桐山和雄ッ!」
翠星石が人差し指を突きつけながら叩きつけた言葉は、桐山が蒼星石を殺害した真犯人だと告発するものだった。
突風のように訪れた急展開に、他の者たちは驚愕を隠すことができない。
上田やみなみはあんぐりと口を開け、浅倉も訝しげに首を傾げている。
当の本人である桐山には、一切の表情の変化はない。
「何を言っているんだ、俺が蒼星石を殺すわけがない」
「嘘を吐くなです! 私はきちんと見たですよ!」
「殺していない」
「黙れです!」
冷静に反論する桐山と、感情的に言葉を返す翠星石。
しばし言葉の往復が続くが、一向に決着がつく様子はない。
まさに水掛け論といえるだろう。
支援
支援
「桐山くん、嘘をつくのはお止めなさい」
それを見兼ねてか、翠星石を制して右京が言葉を紡ぎ始める。
「既に僕達は証拠を見つけています、貴方が犯人である確固たる証拠を」
「証拠……?」
「ええ、僕とLさんが蒼星石さんの遺体を見た時、同時に一つの違和感を抱きました」
全ての人間の視線が集中する中、右京は自らの推理を語っていく。
「それは蒼星石さんの衣服が脱がされていたことです
詳しく調べてみると、彼女に衣服の左胸部に三つの弾痕があることにも気付きました
しかし彼女の身体に銃創はない、そもそも左胸を撃たれたら即死です
そしてこの二つの事実を照らし合わせた時、我々は同時に一つの仮説に辿り着いた」
溜め込むように息を呑み、鋭い視線を桐山へ向ける。
「蒼星石さんは防弾チョッキをつけていた」
桐山の空虚な視線と、右京の厳格な視線が交差する。
「ずっと一緒に居た貴方なら、それに気付いていてもおかしくない
そして服が脱がされていたということは、犯人は防弾チョッキを持ち去ったということです
桐山さん、デイパックの中身を公開し、上着を脱いでください
どちらかに防弾チョッキがあれば、それは動かぬ証拠になります」
整然とした口調で言い放つ右京。
情報交換の際に出歩いた者は桐山だけであり、警察署に集まった他の人間の線は消える。
こなたが犯人である可能性も存在するが、同じようにデイパックの中身と服の下を調べればいい。
右京に集中していた視線は、いつの間にか桐山へと移っている。
話題の渦中にいるにも関わらず、桐山は微動だにしない。
元から機械的な人間ではあったが、今の彼からは一種の不気味さすら感じられた。
☆ ☆ ☆
「いたたたた……」
こなたに蹴り飛ばされた蒼星石は数分間意識を失っていた。
辺りを見渡すが既にこなたの姿はなく、おまけにデイパックまで奪われている。
してやられた、と彼女は頭を抱えだした。
「え?」
そんな時、不意に来訪者が現れる。
彼女が長い間同行を続けてきた少年・桐山和雄だ。
「こ、ここは女子トイレだよ、和雄くん! 男の子は入ってきちゃダメだよ!」
まず最初に行ったのは、男子禁制の花園に入ってきた桐山を嗜めることだった。
だが、今はそんなことをしてる場合ではないとすぐに気付く。
「そんなことよりもこなたちゃんが逃げたんだ、今すぐ追わなきゃ!」
そう言った瞬間、桐山の姿が掻き消える。
いや、掻き消えたと言った方が正しいだろう。
何故なら彼女がそれに気付いた時、既に桐山の姿は目の前にあったからだ。
支援
「……ぁぁッ!」
顎の下辺りに異常なほどの熱を感じる。
何が起きたのか調べようとするが、思うように首が動かない。
目線だけを下に向けると、顎の下に一本の鉛筆が突き刺さっている。
鉛筆の根本を持っているのは、今までずっと一緒にいたはずの桐山だった。
(なん、で……)
桐山に刺されたのだと、潰えそうな意識の中で理解する。
声を出そうとするが、掠れた声しか出せない。
熱された鉛を呑み込んだような苦痛が、彼女の喉元を埋め尽くしていた。
「ぅ……ぁ……――――」
熱が激痛へと変わっていく中、蒼星石の意識は急激に重くなっていく。
意図を探ろうと桐山の目を覗き込むが、氷のように透明な目からは何も感じ取ることができない。
お返しとばかりに桐山は手に力を込め、鉛筆はより深くまで挿し込まれていく。
抵抗しようと桐山の腕を掴むが、まるで力が入らず押し返すことができない。
そしてついに鉛筆は喉を貫通し、彼女の意識はブチッと押し潰される。
ずっと一緒だったはずの桐山の心の中は、最期まで一片も理解することはなかった。
【蒼星石@ローゼンメイデン 死亡】
☆ ☆ ☆
「早くするですッ!」
痺れを切らしたのか、翠星石が行動の催促をする。
すると桐山は小さく溜め息を吐き、静かにその薄い唇を開く。
「その必要はない」
「俺が蒼星石を殺した」
今日の天気を告げるような何の変哲もない声で、桐山は自白した。
「な、何故君が……」
仲間だと思っていた人物の凶行に、上田とみなみは動揺を隠すことができない。
その傍で翠星石は拳をわなわなと震わせ、口端をぴくぴくと歪めている。
「なんで……なんで蒼星石を殺したですか! ずっと一緒に居たんじゃないんですか!?」
怒声を張り上げる翠星石。
最初に蒼星石の遺体を見た時は、怒りや悲しみよりも虚しさに支配されていた。
しかし桐山が犯人であることが判明した時、彼女は自らの腹の中であらゆる負の感情がぐつぐつと煮え滾っていることに気付いた。
桐山は仲間の蒼星石を惨殺し、あまつさえその犯行を別の人間に押し付けようとしたのだ。
「そういうルールだろ」
プチッと翠星石の中で糸が切れる。
それは怒りや悲しみといった負の感情が、殺意に変貌した瞬間であった。
支援
支援
「このまま死ぬです! 蒼星石が味わった苦しみを味わいながら死ぬです!」
拘束した桐山を上空へと持ち上げ、見せしめのように宙吊りにする。
桐山は両手で花弁を振り解こうとするが、蒼星石のローザミスティカでさらに力を増した花弁を解くことはできない。
このままでは、あと数分もしないうちに絞め殺されてしまうだろう。
「翠星石さん、やめてください」
彼女の烈火のような怒りに皆が気圧される中、右京が彼女の凶行を制止しようとする。
「嫌です! こいつはここで殺さないと駄目です!」
だが、殺意に支配されている翠星石が聞き入れるはずもなかった。
その顔を鬼のように歪め、右手の花弁に力を注ぎ続ける。
もがき続ける桐山の手が弱くなっていく。
「翠星石さんッ!!」
「黙るですッ!!」
顔を小刻みに震わせ、翠星石を止めようと叫ぶ右京。
涙を流しながら、右京の言葉を振り切る翠星石。
二人の絶叫が、昼空の下に響く。
言葉が通じないと判断したのか、ついに右京は行動に出た。
「な、何をするです! 離せです!」
勢いよく翠星石に飛び掛る右京。
全神経を桐山に集中させていた彼女は、避けることができずに抑え込まれてしまう。
体勢が崩れたことで拘束は緩み、桐山はカードデッキを取り出しながら脱出する。
「変身」
近場にあった民家の窓ガラスにデッキを翳し、桐山はオルタナティブ・ゼロへと変身した。
「この……ッ!」
右京に抑え込まれながらも翠星石は右腕を伸ばし、薔薇の尾を桐山の首に飛ばす。
だが、突如降り注いだ毒液によって、花弁は一瞬の内に溶解してしまった。
「茶番はその辺にしろ、そいつは俺の獲物だ」
傍に控えたベノスネーカーの咆哮と共に、今まで動かずにいた浅倉が行動を開始する。
「変身!」
背後のカーブミラーにデッキを掲げ、浅倉は腰に現れたバックルにそれを装填する。
鑑が割れるような音が響き、次の瞬間に浅倉の姿は仮面ライダー王蛇へと変わっていた。
「しまった……!」
右京は困惑したように声を上げる。
彼は情報交換の際に席を外していたため、浅倉がカードデッキの所持者であることを知らなかった。
さらに首を絞められていた桐山が、すぐに動いたのも予想外である。
「殺してやる、殺してやるです!」
一方で翠星石の殺意も未だ衰えず、このままでは乱戦になるのは必至。
人命が失われることを忌避している彼にとって、この展開は是が非でも避けたい状況であった。
支援
支援
支援
「いや〜、お兄さん凄いね〜」
そんな緊迫した空気の中、呑気な声が流れる。
☆ ☆ ☆
「なんだお前は……!」
突然出てきた小柄な少女に、浅倉は困惑を隠せないようだった。
「泉さん! 危険です! 下がってください!」
右京が小柄な少女――――泉こなたに向かって叫ぶ。
だが彼女はその警告を聞き入れず、救世主を見つけたように目を輝かせながら近づいていく。
「いやね、お兄さん、すっごいカッコいいよ」
ウインクを飛ばし、右手で作った銃を撃つような仕草をするこなた。
それもそうだろう。
今の彼女にとって、浅倉はまさに救世主のような存在だった。
もしあのまま浅倉が現れなかったら、彼女は間違いなく警察署に連れ戻されていた。
蒼星石を殺した冤罪は晴れたかもしれないが、かがみを殺した件に関してはもう言い訳はできない。
殺人が露見してしまった以上、今度こそ留置所に入れられてしまうだろう。
そうしたら、事実上のゲームオーバーである。
どうにかしてこの場を切り抜ける方法を探っていた時、浅倉は颯爽と現れたのだ。
もはや警察署にいた人間全員敵であり、彼だけがLの手の掛かった人間ではない。
この場を抜け出すならば、彼に付いて行く以外にないのだ。
「泉くん下がれ!」
「先輩逃げて!」
上田やみなみにとって、彼は圧倒的な力を持つ殺人鬼。
だが彼女にとっては、白馬に乗った王子様のようなものだ。
(白馬じゃなくて大蛇だけどね)
彼が傍に従えている大蛇は、どう見ても地球上には存在しない種類だ。
まるでゲームに出てくるモンスターのようである。
だからこそ、その比類なき強さを信頼することができた。
才人とは比べ物にならない、あの後藤にも匹敵するかもしれない。
仲間に加えない理由がなかった。
「とりあえずさっきは助けてくれてありがとね」
そう、彼は窮地を救ってくれた。
だから仲間にならないわけがない、交渉は難しいかもしれないがきっと仲間になってくれる。
これはゲームなのだから、攻略法は必ず存在するのだ。
「それでお願いがあるんだけどさ、私と契約して仲間になってよ! なーんて……どうかな?」
洒落を交えながら、彼女は交渉を開始した。
他人と会話する時は、まず相手の目を見ることから始まる。
コミュニケーション障害を克服する第一歩もまずはここからだと、インターネットにも書いてあった。
それを実践するため、彼女は仮面に覆われた男の顔を見上げる。
支援
「うるせぇ」
こなたの懇願を、浅倉は一言で一蹴する。
そして傍に控えていた大蛇に向かって、何かの指示を出す。
「え……?」
数秒後、大口を開けながら大蛇が襲い掛かってきた。
「先輩!」
遠くで見ていたみなみが叫ぶ。
油断しきっていた彼女に、大蛇を躱すことはできない。
次の瞬間には、既に彼女は呑み込まれていた。
「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
消化するためなのか、こなたの身体に黄色の溶解液が注がれる。
陵桜学園の制服は紙のように蒸発し、その肌すらもジュウジュウと音を立てながら溶けていく。
あまりの激痛に、のたうち回りながら悲鳴を上げるこなた。
だがベノスネーカーはすぐに消化することはせず、舌で転がして彼女を嬲り始める。
「ぁ……ぁぁ……」
やがて悲鳴も途絶え、頃合いがよくなったところで、ベノスネーカーは咀嚼を始める。
ベノスネーカーの鋭い刃は、溶解されたこなたの身体を簡単に噛み砕く。
ぐしゃぐしゃ、ぐしゃぐしゃと。
肉が削げ、神経が切れ、筋肉が裂け、骨が砕ける。
痛覚は未だ残っているが、声帯が潰れてしまったため悲鳴を出すことができない。
筋肉が裂けているため、のたうつことさえできなかった。
(あは、あははははははは……)
それでも、彼女は笑っていた。
(だって……ゲームだもん)
”今回”の死は免れないだろう。
だが、まだ一回目。
シューティングゲームで言えば、まだ残機をほとんど残している状態だ。
RPGや恋愛ゲームのようなセーブ制なのかもしれない。
目を背けるほど無残な死に方をしても、セーブデータをロードすればすぐにやり直すことができる。
セーブポイントは見つからなかったから、多分オートセーブなのだろう。
万が一セーブポイントを見落としてただけだったとしても、スタート画面からやり直すだけである。
(ちょっ……と……しんどいけど……ね……これ、死にゲーだったんだ……)
何度も繰り返し死ぬことで進んでいく難易度の高いゲーム。
ここで死んでしまうことを覚えたから、次はこうならないように気を付ければいい。
(痛い……痛いよぉ……でも……負けちゃダメだ……)
支援
支援
支援
支援
この痛みに耐えたら、次の瞬間には別の場所に戻っているはずだ。
だって――――
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
これはゲームなんだ
【泉こなた@らき☆すた 死亡】
☆ ☆ ☆
「いや……いやああぁぁ……」
敬愛する先輩の死を目撃し、みなみは思わず崩れ落ちる。
死体さえ残らない捕食という死に方は、昨日まで普通の生活を謳歌していた女子高生にはどうしようもない程に残酷過ぎた。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
「なんてことを……!」
狂ったように笑う浅倉に対し、右京は怒りを顕にする。
目の前で人命を奪い、あまつさえその死を嘲笑う。
浅倉の蛮行は一人の警察官――――否、一人の人間として許せなかった。
「僕は貴方を絶対に許しません!」
「ほう、ならどうする」
「貴方を、逮捕しますッ!」
声を震わせながら宣言した右京を鼻で笑う浅倉。
仮面ライダーにとって、ただの人間などその辺を飛んでいる蚊と同じ存在。
少し叩くだけで、簡単にその命を奪うことができる。
故に、右京に対する興味は欠片も無かった。
今の浅倉が渇望するのは、目の前にいるオルタナティブ・ゼロただ一人。
支援
支援
支援
「やれるもんならやってみろ!」
嬉々としながら、浅倉は叫んだ。
☆ ☆ ☆
警察署に待機することにしたLとかなみ。
彼らは情報交換をした会議室にいるが、会話は皆無と言ってよかった。
その特異な能力により人の感情を読むことのできる彼女は、機械のように冷静なLが苦手だったのである。
Lは非常に正義感の強い人間だが、正義を実行するためならあらゆる手段を問わない。
犯罪者を犠牲にすることで皆が助かる方法があったら、彼は容赦なく犯罪者を切り捨てるだろう。
倫理的な問題を語れるほど彼女は成熟していないが、それでも胸の内にモヤモヤとした物は残っていた。
(でも……)
Lよりも接するのが苦手な人間が、集まった十人の中に一人いた。
カズマよりもやや身長は高めの学生服を着た少年・桐山和雄。
何故か彼だけは、一切心を読むことができなかったのである。
ここに連れてこられてからアルターは弱まっていたが、それでも全く効果を発揮しないということはなかった。
一緒にいた蒼星石の心は読めたし、他の人たちの心も問題なく伝わってきた。
何故か桐山だけは、ハート・トゥ・ハーツが効かない。
いや、ハート・トゥ・ハーツを使っても何も読み取ることができなかった。
嫌な予感がする。
ハート・トゥ・ハーツが告げているのか、それとも女の勘か。
このまま何もしないでいたら、とんでもない事が起こりそうな気がするのだ。
「Lさん!」
「駄目です」
Lに訴えようとするが、言い切る前に一蹴されてしまう。
「私も行くと仰りたいのですよね、ならばハッキリと言わせてもらいます、怪我人の貴方では足手まといなんです」
包帯の巻かれた左腕を見て、かなみは思わず歯噛みする。
簡単な応急処置しかしていないため、未だに鈍痛が残っている左腕。
そもそも体調が万全だとしても、幼い彼女が戦闘で役に立つはずがない。
「ならLさんが!」
「私も駄目です
私はカポエイラを習得していますが、それも仮面ライダーのような相手には歯が立ちません
このバトルロワイアルは、一般人が戦って生き残れるようなものではないのです」
Lの言う事は正しい。
道中で出会ったシャドームーン等は、一般人が束になっても敵う相手ではないだろう。
だが、それでも、それを言い訳に逃げることはしたくなかった。
怪我人な上に何の力もない子供でも、必ずなにか出来ることがあるはずだ。
(できるできないの問題じゃなくて……やる)
カズマが胸に抱いていた心情。
彼があそこまで強かったのは、アルターのおかげではなく何事も諦めなかったからだ。
もしアルターのおかげなら、あらゆる力を持っていた無常矜侍に勝てなかったはずである。
最後まで立ち向かったからこそ、ロストグラウンドは陥落せずに済んだのだ。
君島も、シェリスも、橘も、あの劉鳳でさえ死んでしまった。
しかし彼らは、必ず何かをやり切って逝ったはずだ。
支援
天下人 シエン
支援
(……そうだ!)
考えに考え抜いた結果、たった一つだけ自分に残されていた仕事を見つける。
これは最善の策でもなんでもない、ただの他人任せかもしれない。
しかし、それでも自分に出来ることには変わりなかった。
「やっぱり、私行きます!」
Lに背を向け、かなみは会議室から走り去る。
彼の制止の声が聞こえるが、それでも彼女は止まらなかった。
胸の内に、大切な人の信念を抱き。
少女は、走る。
☆ ☆ ☆
「くっ……この!」
翠星石はベノスネーカーに薔薇の尾を放つが、毒液を吐かれて対処される。
続いて巨大な尾が振り回されるが、高く跳躍して回避。
その隙に右京が放った銃弾がベノスネーカーに命中するが、まるで効いていないといった様子だ。
突如として始まった戦闘は、早くも均衡状態に陥っていた。
浅倉と桐山が剣を交える中、翠星石と右京が協力してベノスネーカーを抑え込んでいる。
だが、協力といってもそれは非常にぎこちない。
先程の一件もあり、彼らはまともな連携を取れていないのだ。
「死ぬです! 桐山ッ!」
それだけではない。
先程から翠星石は、ベノスネーカーを掻い潜り桐山に攻撃を仕掛けている。
その分だけこちらの戦線は薄くなり、さらに単純な攻撃であるため容易く回避されてしまう。
そして右京の得意な剣術も猛獣相手では機能せず、人命が失われるのを嫌って射撃訓練もしていなかったため銃は真価を発揮しない。
圧倒的不利は否めなかった。
桐山の夢想政宗から繰り出す斬撃を、ベノサーベルで受け止める浅倉。
その隙に新たなカードを取り出そうとするが、桐山は蹴りを放つことでそれを妨害。
先程から桐山は接近戦を仕掛け、浅倉の新たなカードの装填を封じている。
王蛇が多彩なカードを所持していることを知っているため、それを阻害する戦法を取っているのだ。
「グオオオオオォォォォォォォォォォッ!!!!」
そんな膠着した状況を打ち破るかのように、戦場に新たなる参加者が姿を表す。
「あれは東條くんの!」
乱入者を見て叫ぶ上田。
戦場に現れたのは、白銀の皮膚を持つ二足歩行の虎・デストワイルダーだ。
東條を捕食したデストワイルダーは、無節操に会場を駆けずり回っていた。
そうしてしばらくする内に、その鼻に覚えのある臭いが届く。
かつて惨敗を喫し、屈辱を味わわされた男――――浅倉威の臭い。
それを確認したデストワイルダーは、本能に従って戦場へと向かっていた。
元主人の仇を取るなどではなく、ただ憂さ晴らしをするために。
sien
支援する太郎
支援
「おぉ!」
デストワイルダーが振り下ろした爪が、浅倉の背負ったデイパックを引き裂く。
するとデイパックは破裂し、中身が周囲へと散乱する。
この一撃で体勢を崩した浅倉を、今度は逆の爪が襲いかかった。
「あああああぁぁぁッ!」
回避することができず押し倒される浅倉。
そのまま普段の要領で、デストワイルダーは彼を引き摺りはじめる。
「退け!」
右脚でデストワイルダーを腹を蹴り、爪の下から脱出する浅倉。
以前にも彼は同じシチュエーションを体験し、同じ方法で脱出していた。
それを学習していないのは、やはりデストワイルダーが野獣であるためだろうか。
デストワイルダーは再び腕を振り上げるが、彼がデッキから一枚のカードを取り出すとピタリと動きを止める。
「一匹死んだからちょうどいい、お前も飼い慣らしてやる」
浅倉が取り出したのは新たなる契約のカード。
これは次元のデイパックから回収し、本来は斎藤一に支給されていた代物。
獰猛な野獣でも契約の力には抗うことができず、やがて粒子となりカードの中に吸い込まれていった。
「ッ!」
それを確認してか否か、桐山が浅倉に追撃を仕掛けようと走る。
だが主人の窮地に駆けつけたベノスネーカーに阻まれ、失敗に終わってしまう。
「桐山ぁッ!」
そしてベノスネーカーが居なくなったため、翠星石は桐山に攻撃対象を変更する。
大量の花弁を吹雪のように飛ばし、桐山を全方位から覆い尽くす。
しかし桐山は一切の動揺を見せず、翠星石の元まで一直線に駆け出した。
「倒れろ! 倒れろです!」
夢想政宗を小刻みに動かして花弁を叩き落とし、桐山の走る前方にのみ空間が生まれる。
瀬田宗次郎から奪った天剣の才は、ただでさえ人外な力を持つ彼に更なる力を与えていた。
翠星石はありったけの力を込めるが、散らされてはまるで意味を成さない。
気がついた時には、桐山は彼女の目の前で刀を振りかぶっていた。
「翠星石さん!」
振り下ろされる斬撃を受け止めたのは、女神の剣を握り締める右京だった。
こなたから没収した女神の剣は、万が一に備えて門番を務めていた右京に回されていたのだ。
「剣を下ろしなさい!」
右京は腹の底から声を張り上げるが、桐山の反応はない。
代わりに左腕で裏拳を繰り出し、右京の身体を数メートル後方へと払い飛ばした。
女神の剣による身体強化も、ライダーの力には敵わなかったのだ。
右京が立ち上がってくる姿を桐山は傍目に捉えるが、意にも介さぬといった様子で再び翠星石に剣を向ける。
支援
支援
支援支援
どんとこい支援
「シャアアァァァァッ!」
だが、その剣は今度も届かなかった。
一箇所にいた彼らをまとめて駆逐するため、ベノスネーカーが猛毒の溶解液を吐き出したのだ。
桐山は横に飛んでそれを回避、翠星石は花弁で盾を展開して防ぐ。
――――FINAL VENT――――
この会場で既に何度も鳴り響いた認証音が響く。
仮面ライダーの力を最大限の発揮する必殺技・ファイナルベント。
桐山の背後にある窓ガラスからデストワイルダーが飛び出し、強固な爪で桐山を背中から引き摺り倒す。
浅倉は両腕に巨大な手甲・デストクローを装着し、引き摺られてくる桐山を見据えながら腕を広げた。
これこそがデストワイルダーのファイナルベント――――クリスタルブレイク。
その威力は絶大であり、完全に決まった際の殺傷力は非常に高い。
途中で解除されやすい欠点があるが、浅倉は背後から仕掛けることでそれを防いでいた。
その証拠に桐山は一切抵抗できず、刻一刻と浅倉の元へと引き摺られていく。
「させません!」
それを妨害したのは、なんと右京であった。
女神の剣の柄を強く握りしめ、力任せにデストワイルダーの右腕に衝突させる。
強靭な皮膚に覆われた腕を切り落とすことはできないが、それでも引き摺る腕の力を僅かに緩めることには成功する。
その一瞬で桐山は転げながら脱出し、クリスタルブレイクは失敗に終わった。
「テメェッ!」
ギリッと奥歯を噛み締め、溢れんばかりの怒りを顕にする浅倉。
その様子は、新たな玩具を取り上げられた子供のようだ。
「貴方は……人の命を何とも思ってないのですかッ!?」
右京の顔はその怒りの大きさを示すように真っ赤に染まっている。
目の前にいるのは、人智を超えた力を身に付けた冷酷非道の連続殺人鬼。
浅倉が本気で右京を攻撃したら、おそらく数秒で片が付くだろう。
それでも右京は怯むことなく、果敢に立ち向かっていた。
「そういうもんなんだろ? バトルロワイアルってのは」
「黙りなさい! これ以上泉さんのような犠牲者を出すことは絶対に許しません!」
「ハハハハハハハ! なんだお前、あの女のこと気に入ってたのか?」
「ッ! 貴方は何処までも……」
真剣に語りかける右京に対し、浅倉は嘲るような態度を取る。
馬の耳に念仏とはまさにこのことだろう。
数多くの人物から人間ではないと称された男に、人間の常識や倫理観はまるで通用しない。
右京は目の前の男に言葉は通じないと悟るが、それでも諦めずに語り続ける。
「これ以上殺し合うのはやめなさい! 例え生き残ってもV.V.が我々を返す保証はありません!」
何故なら、言葉こそが暴力を憎んだ彼が持つ唯一の武器なのだから。
「……いい加減口を閉じろ」
浅倉はデストクローを装備した右腕を振り上げ、傍にある民家の外壁に叩きつける。
ドゴンという音ともに、木製の家の壁に大きな穴が空いた。
支援
支援
支援
「バトルロワイアルに警察はいらない、死ね」
両腕を大きく広げ、威嚇するように駆け始める浅倉。
女神の剣の柄をしっかりと握りしめ、右京はその猛攻に備える。
説明書に記されていることが事実なら、この剣の装備者の身体能力は上昇しているはずだ。
ライダーと渡り合えるかは不明だが、それでも背を背けるわけにはいかなかった。
「あぁ……?」
だが、途中まで走ったところで不意に浅倉の足は止まる。
突然の出来事に困惑し、怪訝そうに顔を顰める右京。
仮面に覆われた浅倉の視線が、自分の背後に向けられていることに気付いたのはその少し後だった。
「右京さん、後ろ!」
遠くに隠れていたみなみが叫ぶ。
咄嗟に振り向くと、そこにあったのは――――
「ごふっ」
日本刀を右京に突き刺している、仮面ライダーオルタナティブ・ゼロ――――桐山和雄の姿だった。
「がはっ……あぁ……」
身体から日本刀が引き抜かれると、右京の口から夥しい量の血液が溢れる。
続いて傷口から鮮血が吹き出し、糸の切れた人形のように崩れ落ちる身体。
誰もが呆然とする中、右京の身体は壊れた玩具のように痙攣し始めた。
「ハハハハハハハ! クハハハハハハハハハハハハハハ!」
数秒の静寂が続く中、最初にそれを打ち破ったのは浅倉の笑い声。
目の前で起こった出来事が心底面白いというように、狂ったように笑い続ける。
「こいつは傑作だな! ベノスネーカー、食っていいぞ」
浅倉は機嫌を良くしたのか、指示を出す声は微かに弾んでいる。
ベノスネーカーも新たな餌を確保し、意気揚々と地面を移動し始めた。
翠星石やみなみは数分前のこなたの最期を思い出すが、ミラーモンスターの猛進を止めることなどできるわけがない。
多くの者が諦観する中、ベノスネーカーはあっという間に右京の元まで辿り着く。
短い鳴き声を発し、鎌首をもたげる。
そして、いざ眼の前の餌に食い付こうとした瞬間。
「ウオオオオオォォォォォォッ!」
その長い胴体に、烈火のごとき深紅色の巨大な龍が噛み付いた。
「龍……ということは、あいつか」
またしても行動を妨害されたにも関わらず、浅倉が機嫌を悪化させることはない。
むしろ失くした玩具を数年振りに発見した時のような、感慨深そうな様子で新たな訪問者を見据えていた。
「城戸……」
「浅倉ッ!」
仮面ライダー龍騎――――城戸真司。
北岡秀一ほどではないが、浅倉が本気で殺したいと思っていた相手の一人。
そんな相手が、ライダーに変身した姿で目の前にいた。
支援
しえん
なぜ支援を尽くさないのか
支援のファーストブリット!
「ハァ……ハァ……」
「か、かなみちゃん、どうしてここに!?」
一方で上田とみなみは、真司と一緒に現れたかなみの存在に驚きを隠せずにいた。
彼女は戦力にならないため、警察署に残っているはずだったのである。
「やっぱり……私にも……なにかできないかと思って……」
肩で息をしながら、かなみは今までのことを回想する。
会議室を抜けた彼女は、あの後に真司が眠る仮眠室へと走った。
彼はシャドームーンとの戦闘でずっと眠り続けていたが、心に直接呼び掛ける自身の能力なら覚醒させることができるかもしれないと気付いた。
カードデッキを持つ彼ならば、きっと大きな戦力になるだろう。
制限をかけられたアルター能力の使用は著しく精神力を消耗させたが、それでも彼女は呼び掛けることを続けた。
そのまま数分間が経過すると、真司の瞼がゆっくりと開かれる。
混乱する彼に今までの経緯を説明し、最後に協力を申し込んだ。
怪我人に鞭打つようで忍びなかったが、今の彼女が出来ることはこれしかなかったのだ。
断られるかもしれないと不安を抱いていたが、真司は微笑みながら二つ返事で承諾。
彼女のアルターでこの場を探し当て、彼らはここまで来たのである。
「ッ! 右京さん!?」
血みどろに沈む右京を見下ろし、拳を強く握り締める真司。
そして、血の滴る刀を持ったまま立ち尽くすライダーの方を向く。
「アンタがやったんだな!?」
「ああ」
淡々と何でもないことのように応える彼を見て、真司の怒りは最高潮に達する。
「俺はアンタを絶対に許さない!!」
デッキから一枚のカードを取り出し、左腕のドラグバイザーに素早く装填する。
すると傍に設置されたカーブミラーから、ドラグレッダーの尾を模した剣・ドラグセイバーが降り注いだ。
「翠星石! 右京さんを連れて下がって!」
「は、はいですッ!」
翠星石はここは下がるのが最善と判断したのか、重症を負った右京の身体を刺激しないように花弁で持ち上げながら下がる。
「城……戸くん……」
そんな中、右京は血に塗れた唇をゆっくりと開いた。
「絶対に……殺しては……いけません……」
それは彼らが最初に出会った時も右京が語った言葉。
傍にいた翠星石は僅かに顔を顰めたのに、真司も右京も気づかない。
「……分かってます!」
ゆっくりと噛み締めるように間を置き、真司は右京の言葉を何度も反芻させる。
そしてドラグセイバーを構え、二人のライダーが闊歩する戦場へと足を踏み入れた。
☆ ☆ ☆
支援
支援
「…………あぁん?」
カズマが目覚めた時、最初に目に飛び込んできたのは青空と太陽だった。
続いて感じたのは、右腕に走る鋭痛。
思わず逆の腕で抑えるが、その手触りから右腕に布が巻かれていることに気付く。
少々無骨ではあったが、しっかりと患部は包み込まれていた。
「カズマくん、目が醒めたんだね」
頭上から声に驚き、飛び上がるカズマ。
そこには、彼よりも少しばかり年長と思われる精悍な顔をした青年がいた。
「……誰だアンタ」
「え? さっきからずっと一緒に……ってまだ自己紹介はしてなかったか
俺は南光太郎、かなみちゃんやLさんから君のことは聞いてるよ、カズマくん」
爽やかに笑いながら自己紹介をする光太郎。
その言葉を聞いている内に、意識を失う前の記憶が少しずつ蘇り始める。
(ソウジロウと戦った後、カメレオンみたいな奴と戦って……)
「かなみッ!」
彼は、自らの本来の目的を思い出した。
「おい、こんなとこでなにやってんだ!? 」
眉間に皺を寄せ、光太郎の胸ぐらを掴むカズマ。
彼の目的は一刻も早くかなみと合流することであり、こんなところで油を売っている時間はない。
呑気に休憩するなど以ての外である。
「は、離してくれ……ッ!」
光太郎は苦しげに顔を歪めながら、自らの胸倉を掴む腕を引き離そうとする。
カズマは相当力を込めたつもりだったが、不思議なほどあっさりと腕は解かれてしまった。
「いいかい、君は倒れたんだよ? 腕からあんな血を流して下手したら死んでいたかもしれない
いくら急いでいたとしても、そんな大怪我を放っておくことはできないよ」
光太郎の言い分は最もだ。
カズマの右腕から流れ出る血液の量は夥しく、このまま放置すれば失血死しかねない程だった。
それに光太郎も休憩なしで十二時間以上活動し続けており、疲労や空腹もピークに達してきていた。
急がなければいけないのは事実だが、無理をして倒れては元も子もない。
何処かで休憩を摂る必要があったのだ。
「クソッ!」
カズマの右腕が淡い光に包まれ、周辺にある地面の一部が粒子へと変換される。
その粒子はカズマの右腕へと集まり、やがて黄金色の手甲・シェルブリットへと変化した。
「な、なにをする気だカズマくん、君の腕はまだ――――」
「うっせぇ! 俺は一秒でも早くかなみのところに行かなきゃならないんだよ!」
右拳で地面を叩き上げ、地響きと共にカズマは宙へと舞い上がる。
しばらく飛距離を稼いで落下した後、再び地面を殴って空中を駆ける。
これを繰り返すことが、カズマが持つ最速の移動法だ。
支援
支援
撃滅のシエンブリット!
仮面ライダー支援
「待ってくれ!」
あっという間に離れていくカズマを見て、光太郎も全速力で走り出した。
☆ ☆ ☆
「右京さん……早く止血を!」
「その必要は……あり……ません……」
新一の残した最後の傷薬を使おうとするみなみを止めたのは、右京自身だった。
「自分の身体のことは……自分が一番よく分かります……僕は……もう……」
「そんなこと言わないでください!」
「そうだ! 諦めるな! ベストを尽くさないでどうする!」
上田やかなみが応援の言葉を投げてくるが、右京は血を吐き出しながら首を横に振る。
桐山に刻まれた傷は、右胸を深々と貫通していた。
喋るだけで全身を激痛が苛み、赤黒い靄のような物が意識を侵食し始めるのを感じる。
これが死なのかと、右京は朧気に感じていた。
「一つだけ……伺ってもよろしいでしょうか……?」
右腕を震わせながら上げ、握りしめた拳から人差し指だけを突き立てる。
「僕は……間違っていたのでしょうか……」
右京の問いに、三人は閉口してしまった。
例えどのような人間であろうと、全ての参加者を生きたまま保護する。
現代日本での命の価値はみな等しく、どのような状況であろうとそれは変わらないと思っていた。
だが、その考えは多くの者に否定された。
ここにいる参加者の多くは、別々の世界から収集されている。
同じ日本ですら、まるで別の世界なことも珍しくない。
世界が違えば、常識が違うのは当たり前である。
それでも命の価値と尊厳は不変であり、決して軽んじられていいものではないはずだ。
だから彼は自らの心情に従い、全ての参加者の命を守ろうとした。
――――だが、お前はこの殺し合いを掻き回す事は出来ても止める事は出来ない
――――君の正義はいつか暴走する、そして周りの人間たちを滅ぼすだろう
だが、結果はこれだった。
もし翠星石が桐山を殺すのを見過ごしたり、デストワイルダーに引き摺られる桐山を助けなければ。
おそらく自分が致命傷を負うことはなかっただろう。
全ての参加者の命を守ろうとして、結果的に自らが命を落とす。
これ以上の皮肉が、果たして存在するのだろうか。
「右京」
他の三人が答えあぐねている中、翠星石が溜め息を漏らすように右京の名を呟く。
「翠星石は……お前の考えは正しいと思いますよ」
右京と目線を合わせずに翠星石は答える。
彼女が自らの意見を肯定したのは、彼にとって意外でもあり喜ばしくもあった。
蒼星石の仇を取る千載一遇のチャンスを、右京はこの手で握り潰してしまったのだ。
彼女の立場からすれば、決して許すことはない相手だろう。
抹殺のラストシエン!
支援
「命が大切なのは当たり前のことです!」
「そうだ、そんなことは誰だって知っている、今更言うまでもない!」
「そうです……だから死なないでください!」
翠星石の言葉を皮切りに、他の三人も口々に肯定の意を示す。
そう言う彼らの顔を覗き込むが、視界が赤黒い靄に覆われて見えなかった。
「そう……ですか……」
多くの参加者に否定され、最後は自らの命すら奪った心情。
だが、最後の最後で四人の参加者が賛同してくれた。
自分の命がここで尽きても、この心情だけは彼らの心に生き残る。
それだけでも、右京は自分が間違っていなかったと実感することができた。
「ありがとう……ござい……ます……」
掠れる声で謝礼の言葉を述べる。
それを最後に右京は力尽き、二度と目覚めることはなかった。
【杉下右京@相棒 死亡】
「右京さん! 右京さん!」
「死ぬな! 君はこんなところで死んでいい人間ではない!」
事切れた右京の傍で叫び続ける上田、かなみ、みなみの三人。
その少し後方で、翠星石は右京の遺体を憐れむように眺めていた。
「でも……正しいことばかりがいいとは限らないのですよ……」
誰にも聞こえないように、小さな声で彼女は呟く。
そうして右京の遺体から、三人のライダーが殺し合う戦場へと視線を移す。
やはりと言うべきか、佳境に立たされているのは真司であった。
シャドームーンとの戦闘の傷や疲労が残っているのか、それとも右京が最後に残した言葉が枷になっているのか。
本気で殺そうとしている桐山と浅倉に対し、彼の動きはあまりにも鈍すぎる。
「ッ!」
ドラグレッダーとベノスネーカーの衝突で地響きがなり、翠星石は堪らず尻もちを着いてしまう。
ミラーモンスターの中でも屈指の巨躯を誇る二匹の戦いは、その余波の大きさも尋常ではなかった。
「いたた……ん?」
打った臀部を庇うように立ち上がる翠星石。
そうして立ち上がった直後、彼女の足元に見覚えのある道具が転がってきた。
「これは……」
何故これがここに存在するのか分からないが、あっても決して不思議ではない。
一つだけ確かなのは、これが今の戦況を覆す可能性を持つということだ。
ごくり、と生唾を呑み込む。
しえんいろ
Why don't you do your SIEN
――――絶対に……殺しては……いけません……
右京が死ぬ間際に真司に残した言葉。
自分が致命傷を負ったにも関わらず、未だにこんな事を言う彼に憤怒と憐憫が入り混じった感情を抱いた。
生命が大切など、そんなことは百も承知だ。
だが、それなら蒼星石の命を奪った桐山はどうなる。
右京は法が裁きを下すと言ったが、違う世界にいる相手にどうやって法の裁きを下すのか。
人間でない蒼星石を殺したとして罪に問えるか分からないし、別の参加者に殺されてしまう可能性も十二分にある。
人間が定めた法など穴だらけだ。
なら、翠星石が裁きを下してもいいのではないか。
――――ありがとう……ござい……ます……
足元に転がっている物を拾い上げる翠星石。
その胸の内に抱く真意は――――
☆ ☆ ☆
「……ッ!」
それは突然訪れた。
オルタナティブ・ゼロの鎧に包まれた桐山の身体から、細かな粒子が上り始める。
変身が解除される時間を示す合図が、他の二人よりも早く訪れたのだ。
オルタナティブ・ゼロのデッキは、神崎士郎の研究を元に香川英之が作り上げた物である。
龍騎や王蛇を正規品と称すなら、オルタナティブ・ゼロは模造品。
スペックなどは正規の物と遜色なかったが、変身していられる時間だけは僅かに短くなってしまった。
正規品が9分55秒なのに大して、オルタナティブ・ゼロは8分25秒。
長期戦にもつれ込んでしまったため、九十秒の差が戦況に現れてしまったのである。
――――FINAL VENT――――
功を焦ったのか、桐山はファイナルベントのカードを使用。
正規の物とは違う、女性の声での認証音が響く。
傍に設置されたカーブミラーから勢いよくサイコローグが現れ、その身体を次々とバイクに変形させながら桐山の元に駆けつける。
桐山は縮地を用いて包囲網を掻い潜り、迫ってくるサイコローグの座席に飛び乗る。
――――FREEZE VENT――――
そしていざ攻撃に移ろうとした瞬間、サイコローグは不意に動きを止めた。
「ほう、こいつはなかなか面白いな」
ベノバイザーの先端を地面に刺し、声を弾ませながら浅倉は言う。
先程彼が使用したのは、絶対零度の冷気でミラーモンスターを凍結させるフリーズベント。
デストワイルダーとの契約で新たに入手したカードだ。
支援
支援
支援
支援と支援でオーバーレイ!
「行け! ベノスネーカー!」
同時にドラグレッダーも凍結したため、ベノスネーカーの相手をする者がいなくなる。
指示通りにベノスネーカーが突進する姿を見ながら、浅倉はデッキから更なるカードを取り出した。
――――UNITE VENT――――
ベノスネーカー、エビルダイバー、デストワイルダー。
王蛇と契約した三体のモンスターが集合し、ベノスネーカーを基点に交じり合う。
デストワイルダーのはもがくように腕を振り上げ、その背にベノスネーカーの身体が重なり、さらにその上にエビルダイバーが乗る。
三体の咆哮が三重奏のように轟く中、それぞれのモンスターの融着点は曖昧になっていく。
デストワイルダーの首から上が消滅し、そこから飛び出すように現れるベノスネーカーの首。
同時に臀部に穴が空き、毒々しい模様が刻まれた紫色の尾が生える。
そして融着したエビルダイバーの鰭が四枚に分裂し、さながら鋼鉄の翼のように広がる。
最後にベノスネーカーの頭頂部にデストワイルダーの耳が生え、三体の融合は終わりを告げた。
首と尾がベノスネーカー、背中がエビルダイバー、胴体と頭がデストワイルダー。
それぞれの特徴を残しつつも、何処か歪に交じり合った醜悪な怪物。
虐殺者の異名を司る合成獣・獣帝ジェノサイダー。
デストワイルダーではなくメタルゲラスが本来の素材であるが、これもジェノサイダーの一体である。
――――FINAL VENT――――
間髪入れず、浅倉はファイナルベントを発動。
ジェノサイダーの腹部に巨大な穴が空き、全てを虚無へと還すブラックホールが発生する。
「うおぉ……吸い込まれるぞ!」
ブラックホールの吸引力は凄まじく、遠くに離れている上田たちも人事では済まされない。
傍にある外壁にしがみつくことで凌いだが、上田の声が無ければいつかは吸い込まれていただろう。
浅倉のデイパックから散乱した支給品が、次々とジェノサイダーの腹部に吸い込まれていく。
この中に放り込まれたら、例えライダーといえど二度と戻ってくることはできない。
仮面ライダー王蛇が有する正真正銘の最終奥義だ。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」
勢いよく助走をつけ、錐揉み回転の飛び蹴りを繰り出す浅倉。
その双眼が見据えているのは、ジェノサイダーと自身の対角線上にいる真司。
今までのダメージが重なり、真司は蹲ることしかできない。
「死ねェッ!」
飛び蹴りは命中し、真司は空中に放り投げられる。
必死に空中でもがき続ける真司だが、ブラックホールはすぐ傍に迫ってきていた。
浅倉の狂った笑いが場を支配する中、真司の最期を想像し傍観者たちは目を背ける。
そして、ついに真司の身体が吸い込まれようとする瞬間だった。
「なにッ!?」
地面から幾本もの巨大な植物が生え、ジェノサイダーの身体の覆い尽くしたのは。
「なんとか……間に合ったです……」
肩で息をしながら現れたのは翠星石。
その右手には、美しい色をした金色の如雨露が握られている。
支援
受け取れ俺の支援サービス!
支援
「はぁ……はぁ……助かったよ」
「全く……カッコよく駆けつけたなら、最後までしゃんとするです!」
辛うじて浅倉の蹴りから逃れた真司は、はにかみながら謝礼を述べる。
植物に受け止められていたため、彼はすぐに復帰できる程度の体力は残していた。
彼女が所持している如雨露は、元々は浅倉のデイパックに収納されていた一品。
デストワイルダーに引き裂かれたことで、中にある品が散らばったため彼女の手元に戻ってきた。
庭師である彼女のみが扱うことができ、植物を操る力を持つ庭師の如雨露だ。
「何度も何度も邪魔しやがって……イライラさせやがる、どうして俺に気持ちよく戦わせねぇんだ!」
鬱憤が溜まり過ぎたのか、浅倉は地団駄を踏み始める。
だが、その身体からは既に粒子が上がりつつあった。
既に桐山の変身は解除され、戦況は確実に翠星石や真司の方に傾いている。
「これは……!」
地面が震える音が響く。
真司や翠星石に聞き覚えはなかったが、上田やかなみはどうやら違うようだ。
顔をぱっと明るくさせ、音源である北に顔を向けている。
「カズく――――――――――――――――ん!!」
「かなみいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!」
互いの名前を叫び合う二人。
現れた男――――カズマは右腕のシェルブリットを乱暴に叩きつけ、終焉を迎えようとしている戦場に駆けつけた。
「光太郎さん!」
「光太郎くん!」
みなみと上田の声が重なる。
カズマと共に現れたのは、主催者に立ち向かう者の中でもトップクラスの力を持つ光太郎。
傍にいればこれほど頼り甲斐のある者はいないだろう。
「カズくん! カズくん!」
カズマに到着に涙を流し、彼のもとに駆け寄ろうとするかなみ。
上田やみなみは援軍の到着に歓喜し、状況を不利と判断した浅倉は逃げ出そうとする。
真司や翠星石は顔見知りではなかったが、かなみの反応から味方と判断した。
多くの犠牲を出してしまったが、これで二人の悪人を取り押さえることができるだろう。
翠星石はそんな事を考えるが、桐山の顔を見た瞬間に悪寒が走った。
これだけ圧倒的不利であるにも関わらず、彼の顔には一切の動揺が見られない。
最初に出会った時と動揺、氷のような無表情を貼り付けているのだ。
「そこにいる――――」
桐山の口が開かれる。
無表情だったはずの顔が、ほんの少しだけ笑ったような気がした。
「そこにいる赤と紫のライダーが敵だ」
ぽかんと口を開ける翠星石。
桐山の放った言葉が、彼女の理解を越えていたのだ。
赤と紫のライダーが、龍騎と王蛇のことを指しているのは分かる。
王蛇はともかく、龍騎はこちらの味方だ。
こんな見え透いた嘘を吐いて、一体何になるというのだろうか。
誰も信じるわけが――――
支援
支援!
――――カズマくんは嘘は吐くようには見えないかな……
――――違う、カズマはあいつにとどめを刺さなかった
悪寒が、全身に広がる。
蒼星石と桐山の話が正しければ、彼らは僅かな時間だがカズマと行動を共にしている。
そして桐山が本性を表したのはほんの十分前の話。
つまりだ。
、 、 、 、 、 、 、 、 、、、 、 、 、 、 、 、
カズマは桐山和雄を仲間だと思っている。
「そいつの言ってることは嘘ですうううッ!!!!」
悲鳴のように大声で翠星石は叫ぶ。
真司や浅倉に襲いかかろうとしていた二人は、一斉に足を止める。
「え……?」
だが、全てが遅かった。
腰を落として左手を刀の柄に添え、右脚と右手を前に出す桐山。
その体勢のまま一瞬で加速し、前に出ていたかなみの傍へと接近。
そして、鞘から日本刀を引き抜き。
首を、切り裂いた。
「なんだ、これ」
首から鮮血を吹き出しながら、かなみの身体はぐしゃっと崩れ落ちる。
桐山は最後までそれを見ることなく、瞬く間に逃げ去っていく。
浅倉もいつの間にか居なくなっていて、ジェノサイダーの姿もそこにはない。
「かなみいいいいいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!!!」
全ての敵が居なくなった戦場で、カズマの絶叫が空しく響いた。
【由詑かなみ@スクライド 死亡】
☆ ☆ ☆
「何があったのか……教えていただけますか」
戻ってきた六人を見て、Lは神妙な表情を浮かべた。
まず真っ先に目が向いたのは、カズマと光太郎に抱かれた二つの遺体。
カズマがかなみを、光太郎が右京を抱いている。
帰ってきたメンバーが、最初に出ていったメンバーと大分違っていることにもすぐ気付いた。
「何があったのか、じゃねぇだろ」
刃物のように目を尖らせるカズマ。
普段の彼だったら殴っていただろうが、かなみの遺体で塞がっているため手を出すことができない。
だが思わず目を逸らしたくなるほどに歪んだ表情が、彼の怒りの強さを物語っていた。
ネタ切れ支援
支援!?
支援
「どうしてかなみを行かせた!? 怪我してただろうが! なんで止めなかったんだよ!」
「…………」
「黙ってないで何か言えよッ!」
今にも食って掛かりそうな状態だが、それでもかなみの遺体が彼の腕から離れることはない。
遺体の目の下には一筋の血の痕があり、まるで彼女が血の涙を流しているように見えた。
「……ッ!」
パシン、と乾いた音が響く。
目の前で起きた出来事を見て、真司と上田は驚愕する。
ただ、光太郎だけがとても悔しそうに握り拳を震わせていた。
「なんで……なんで貴方はそんな顔ができるんですか……」
みなみの手の平が、Lの頬を打ち抜いていた。
「人が死んだんですよ……蒼星石さんも……右京さんも……かなみちゃんも……泉先輩も!
なのに、なんで貴方はそんな平気そうな顔ができるんですか?」
それは数時間前――――第一回目の放送直後の出来事を再生しているようだった。
嗚咽を漏らしながら、Lを言葉の限りに罵倒するみなみ。
それでも収まらず拳を出そうとするが、光太郎の代わりに真司がそれを抑える。
叫び声を上げながら抵抗する彼女の姿は、どうしようもない程に痛々しい。
あの時の右京のように、彼女を諭す者はいなかった。
「少しは人の気持ちを考えやがれです、お前には付いてけないですよ」
やがて叫び疲れたみなみが、項垂れるように抵抗するのを止めた頃。
心底呆れたといった様子で翠星石は呟き、Lの横を通って警察署の奥へと進んでいく。
「同感だね」
彼女を追うように、カズマも後に続く。
「何処に行くつもりだ?」
「こういうところには霊安室ってのがあるんだろ、そこにかなみを置いていく」
光太郎の質問に背を向けたまま答えるカズマ。
そのまま光太郎が二の句を告げる前に、彼は足早に奥へと立ち去ってしまう。
それを皮切りに、みなみ、上田、真司もLの横を通り過ぎていった。
「……Lさん!」
最後に残った光太郎は、下唇を噛み締めながらLを見る。
喉まで出掛かった言葉を必死に呑み込もうとしているような、そんな表情だった。
「憎まれ役は馴れてます、光太郎くんも皆さんの元に行ってあげてください」
「でも、それじゃあ!」
「少し……一人にさせてください」
懇願するようなLの言葉に、思わず光太郎は黙り込んでしまった。
「……すいません」
最後にそう言い残し、光太郎は身体を翻す。
そうしてLの横を通って、ゆっくりと去っていく。
大きかったはずのその背中は丸まっていて、まるで子供の背中のように小さく見えた。
支援(支援)
しぇん
壱の秘剣「支援」
「……」
その背中が遠くなっていく様を、Lは無言のまま見続ける。
時折はみ出るように見える右京の顔は、まるで眠っているように穏やかなものだ。
しかし、彼は眠っているのではない。
そこにあるのはただの抜け殻で、右京の魂はもう何処にも無い。
この地で最初に出会った相棒は、もう死んでしまったのだ。
(何故……)
背中が見えなくなり、Lは握り拳を壁に叩きつけた。
(何故……私は行かせてしまったんだ……)
一般人である右京やかなみを戦場に送り込んでしまった責任。
本気で止めようと思えば止められたのに、自分はその義務を放棄した。
頭脳労働を担当しておきながらこの醜態。
招かれてしまった最悪の結果に、彼は深い自責の念に囚われていた。
(私は……私は……)
ここに、誰も把握していない一つの事実があった。
かなみのアルター能力・ハート・トゥ・ハートは、他人の深層心理にアクセスする能力である。
非常に幅広い活用方法が存在し、その一つに使用者の感情や思考を他者に伝達する力があった。
あの時、彼女がLの制止を振り切って会議室の扉を開けた時。
無意識下でアルター能力が発動し、かなみはLの深層心理に訴えかけていたのだ。
”私にも何か出来ることをさせてください”と。
(何故……私は……)
だが、そんな事を知らないLは自身を苛み続ける。
未来永劫、永遠に。
【一日目 午後/H−9 警察署ロビー】
【L@デスノート(漫画)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、ニンテンドーDS型詳細名簿、アズュール@灼眼のシャナ、ゼロの仮面@コードギアス
おはぎ×3@ひぐらしのなく頃に、角砂糖@デスノート、確認済み支給品0〜2
[状態]健康
[思考・行動]
1:協力者を集めてこの殺し合いをとめ、V.V.を逮捕する。
2:大量の死者を出してしまったことに対する深い罪悪感。
※本編死亡後からの参戦です。
☆ ☆ ☆
霊安室のベッドには、三体の遺体が並べられていた。
蒼星石、杉下右京、由詑かなみ。
数十分前まで動いていた彼らが再び動き出すことは、もう二度とない。
日常の世界で最も尊かった物が、今はこうもあっさり失われていく。
みなみには、それが堪らなく恐ろしいことに感じられた。
弐の秘剣「シエン」
支援
「これはこうやるのだ」
「悪ぃな、オッサン」
「いや、なに……その……私がもう少ししっかりしていればかなみ君は……」
「……アンタのせいじゃねーよ」
上田に手順を教わりながら、かなみの遺体に線香を添えるカズマ。
Lに食って掛かった時とは違い、地を震わす程の怒りはすっかり鳴りを潜めている。
その姿は、親に叱られて拗ねている子供のようだ。
本当は彼も分かっているのだろう、
かなみが死んだのは上田のせいでも、Lのせいでも、ここにいる誰が悪いというわけではない。
直接手を下した桐山か、あるいは彼女を殺し合いに巻き込んだV.V.か。
真に憎むべきは彼らであって、先程のLに対する言動や行為はただの八つ当たり。
振り上げた拳の下ろし場所が分からず、あんな暴挙に出てしまったのだ。
そんなことはカズマも、翠星石も、そしてみなみ自身も分かっていた。
「……」
線香の特徴的な匂いがみなみの鼻をくすぐる。
ふと前を見ると、既に三人の遺体の傍の鉢に線香が設置され終えていた。
「黙祷を……しよう」
上田の言葉を合図に、霊安室にいた六人は手を合わせる。
そして、目を瞑った。
「……」
視界が黒に染まる。
そのせいか、線香の匂いがより深く感じられた。
死を連想させる嫌な匂いだと、見えないように眉を顰めるみなみ。
死亡した三人を弔う気持ちはあったが、彼らに対する嫉妬心が心の片隅に存在するのも否定できなかった。
彼らはきちんと弔われたのにも関わらず、こなたは遺体すら残らない。
黙祷をしているが、彼女の事を思っている者は果たして居るのだろうか。
語った言葉が事実なら、彼女はかがみを殺しているのだろう。
さらにデイパックの中からは、何者かの背骨と眼球も発見された。
彼女が殺人に手を染めていたのは、もはや否定することはできないだろう。
それでも泉こなたという人間は岩崎みなみにとって大切な人であることに変わりなかった。
――――ゆーちゃんがこのまま死んじゃったままでいいの!? ねぇ!?
ゆたかも死んで、かがみも死んで、みゆきも死んで、こなたも死んだ。
もしここから脱出できたとしても、元通りの日常が戻ってくるわけではない。
全てを取り戻すには、それこそこなたが言っていたようなリセットボタンが必要になるだろう。
――――んーそうだね、何か願いも叶えてあげるよ。
死者への鎮魂を祈りながら、彼女が選ぶ道は――――
☆ ☆ ☆
こうして、一つの言葉から始まった惨劇は幕を下ろす。
四人もの命を奪い、多くの者の心に癒えない傷を刻んだ。
探偵や改造人間は自らの無力を苛み、人形やアルター使いは復讐心に身を染める。
しかし、これは終わりではない。
今回は生き残った彼らも、次に命があるかは分からない。
最後の一人が残るまで、全ての物語は通過点に過ぎないのだ。
彼らの物語は、まだまだ続く。
Sien
終の秘剣「紫炎」
支援
【一日目 午後/H−9 警察署霊安室】
【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]庭師の如雨露@ローゼンメイデン、真紅と蒼星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式(朝食分を消費)、真紅のステッキ@ローゼンメイデン、情報が記されたメモ、確認済支給品(0〜1)
[状態]疲労(中)
[思考・行動]
1:殺し合いから脱出。
2:真紅が最後に護り抜いた人間に会い、彼女の遺志を聞く。
3:水銀燈を含む危険人物を警戒。
4:桐山に対する強い復讐心。
[備考]
※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。
※真紅のローザミスティカを取り込んだことで、薔薇の花弁を繰り出す能力を会得しました。
【城戸真司@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]無し
[所持品]支給品一式×3(朝食分を消費)、龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎(一時間変身不可)、確認済み支給品(0〜3) 、劉鳳の不明支給品(1〜3)
[状態]ダメージ(中)、疲労(大)
[思考・行動]
1:右京の言葉に強い共感。
2:やっぱり戦いを止めたい。
3:劉鳳を殺してしまったことに対する深い罪悪感。
4:翠星石のことは守り抜きたい。
5:シャナを倒し、彼女の罪をわからせる。
※絶影を会得しました、使用条件などは後の書き手の方にお任せします。
【岩崎みなみ@らき☆すた(漫画)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、君島の車@スクライド、情報が記されたメモ
[状態]健康、疲労(小)深い悲しみ
[思考・行動]
1:……
2:友人たちの仇を取りたい、その為の力が欲しい。
3:Lに対する強い嫉妬。
4:V.V.とこなたの言葉が気になる。
5:つかさに会いたい。
【上田次郎@TRICK(実写)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式×3(水を一本紛失)、富竹のポラロイド@ひぐらしのなく頃に、デスノート(偽物)@DEATH NOTE
ベレッタM92F(10/15)@バトルロワイアル(小説)予備マガジン3本(45発)、雛見沢症候群治療薬C120@ひぐらしのなく頃に、
情報が記されたメモ、不明支給品0〜1
[状態]額部に軽い裂傷(処置済み)、全身打撲 、疲労(中)
[思考・行動]
1:これからどうするか……
※龍騎のライダーバトルについてだいたい知りました。
カードデッキが殺し合いの道具であったことについても知りましたが、構造などに興味はあるかもしれません。
※東條が一度死んだことを信用していません。
支援
支援
そろそろ終わりだ支援
支援
【カズマ@スクライド(アニメ)】
[装備]暗視ゴーグル
[支給品]支給品一式、タバサの杖@ゼロの使い魔、おはぎ@ひぐらしのなく頃に、Lのメモ
[状態]疲労(大)、ダメージ(大)、右腕、背中に裂傷(処置済み)
[思考・行動]
1:桐山に対する強い復讐心。
[備考]
※Lのメモには右京、みなみの知り合いの名前と簡単な特徴が書いてあります。夜神月について記述された部分は破られました。
※蒼星石とはほとんど情報を交換していません。
【南光太郎@仮面ライダーBLACK(実写)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式、炎の杖@ヴィオラートのアトリエ、包帯×5@現実、高荷恵の傷薬@るろうに剣心
[状態]疲労(小)
[思考・行動]
1:この殺し合いを潰し、主催の野望を阻止する。
2:主催とゴルゴムがつながっていないか確かめる。
3:信彦(シャドームーン)とは出来れば闘いたくない……。
4:自らの無力さへの強い怒り。
※みなみを秋月杏子と重ねています。
※本編五十話、採石場に移動直前からの参戦となります。
※以下のアイテムが回収されました。
・浅倉のデイパックから散乱した確認済み支給品1〜3
・瑞穂のデイパック(支給品一式、シアン化カリウム@バトルロワイアル、不明支給品0〜1)
・かなみのデイパック(支給品一式、不明支給品0〜1)
・右京のデイパック(支給品一式×2(水と食事を一つずつ消費)、S&W M10(0/6)、S&W M10の弾薬(24/24)@バトル・ロワイアル、首輪(魅音)
ゼロの剣@コードギアス、女神の剣@ヴィオラートのアトリエ、拡声器@現実、イングラムM10(0/32)@バトルロワイアル、傷薬×1@真・女神転生if...
※警察署で六人(L、上田、かなみ、翠星石、みなみ、桐山)で情報交換を行い、以下の事柄に関する情報を入手しました。
また、情報を記したメモにはこれらの情報が全て記されています。
1:浅倉威、水銀燈、後藤、田村玲子、シャナ、シャドームーン、夜神月、竜宮レナ、騎士服の男(スザク)、メイド服の女(咲世子)が危険人物であること。
2:それぞれのロワ内での大まかな動向、及び元からの知り合いに関する情報
3:寄生生物、カードデッキ、アルター能力についての情報。
4:Dー7で起こった爆発の主犯が北岡秀一であること。
【一日目 午後/G−9】
【桐山和雄@バトルロワイアル】
[装備]防弾チョッキ@バトルロワイアル、コルトパイソン(5/6)@バトルロワイアル、夢想正宗@真・女神転生if...
[所持品]支給品一式×2、コルトパイソンの弾薬(22/24)、情報を記したメモ、オルタナティブゼロのデッキ@仮面ライダー龍騎(二時間変身不可)
[状態]疲労(中)、ダメージ(中)、右上腕に刺し傷
[思考・行動]
1:遭遇した参加者から情報を聞き出した後、利用出来るなら利用、出来ないなら殺害する。
2:水銀燈、浅倉、カズマ、光太郎、騎士服の男(スザク)、警察署で出会った面子は次に出会えば殺す。
[備考]
※蒼星石、あすかとはお互いの知り合いの情報しか交換していません。
能力(アルター、ローゼンメイデンの能力)に関しては話していません。
※ゾルダの正体を北岡という人物だと思っています。
※縮地、天剣を会得しました。(縮地が全力のものかどうかは次の書き手さんにお任せします)
ラスト支援
支援
支援
【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
[装備]FNブローニング・ハイパワー@現実(12/13)
[所持品]支給品一式×2(水とランタンを一つずつ消費)、王蛇のデッキ@仮面ライダー龍騎(二時間変身不可)
贄殿遮那@灼眼のシャナ、発信機@DEATH NOTE、ルイズの眼球、背骨(一個ずつ)、CONTRACTのカード@仮面ライダー龍騎×1、未確認支給品0〜2
[状態]疲労(中)、イライラ(大)、全身打撲
[思考・行動]
0:北岡を探す。
1:北岡秀一を殺す。
2:五ェ門、茶髪の男(カズマ)、学生服の男(桐山)、金髪の男(レイ)を後で殺す。
3:全員を殺す。
[備考]
※ライダーデッキに何らかの制限が掛けられているのに気付きました。
※デイパックに発信機が仕掛けられていることに気付いていません。
※ジェノサイダーに本来の素材からなる個体との差異はほとんどありません。
※桐山、浅倉の二人が何処に向かったのかは次の方にお任せします。
※支給品一式×4、水鉄砲@ひぐらしのなく頃に、レイピア@現実、前原圭一のメモのコピー@ひぐらしのなく頃に
知り合い順名簿のコピー、バージニア・メンソール@バトルロワイアル、北条悟史の金属バット@ひぐらしのなく頃にはジェノサイダーの腹部に吸い込まれて消滅しました。
【CONTRACTのカード×2@仮面ライダー龍騎】
斎藤一に支給。
ミラーモンスターと契約することができるカード。
契約とは銘打っているが、ミラーモンスターに拒否権はない。
【発信機@DEATH NOTE】
城戸真司に支給。
原作にて火口の車に仕掛けられたもの、小型の受信機も一緒に支給されている。
【包帯×5@現実】
由詑かなみに支給。
何処にでも置いてあるような包帯。
【高荷恵の傷薬@るろうに剣心】
稲田瑞穂に支給。
有名な医療一族である高荷家に伝わる傷薬。
桜柄の容器に入っており、剣心がよく効くと褒めた代物。
おそらくだが切り傷に効くと思われる。
支援
投下終わりました。
これだけの長い作品を一度もさるさんに合わずに投下しきれたのは皆さんのおかげです。
長時間における支援、本当にありがとうございました。
誤字脱字や何らかのミス(特に状態表)などありましたら、どんどん指摘しちゃってください。
一応最終確認はしたのですが、正直ちょっと不安なので……
王蛇のデッキの詳細は本編では省いたのですが、一応こっちで載せておきます。
中身(ソードベント、ストライクベント、スイングベント、フリーズベント、アドベント×3、ファイナルベント×3、ユナイトベント)
ライアのデッキに入っていたコピーベントが入っているかどうかは、後の書き手の方にお任せします。
あとジェノサイダーですが、原作に登場した者との差異は角の代わりに巨大な爪が装備されてることくらいです。
ただデストワイルダーがメタルゲラスよりもAPが1000高いので、こっちのジェノサイダーの方もその影響を受けて少しAPが上がっているかもしれません。
以上です、本当にありがとうございました。
>>325 投下乙です!これだけの人数を1話でさばいて決着まで持っていくとかすげぇ
こなたに蒼星石にかなみと、そろそろ風前かと思われてたキャラが一気にいなくなったなぁ…
そして右京さんに合掌。「間違っていたかもしれない」けど「意味はあった」という着地点にたどり着けて良かったね
これで相棒は全滅か。相棒勢はどっちも濃く太く生きたよ…
そして対主催は、ライダーや対主催がどうにか集合できたものの、
精神ダメージは大きいしチームワークはガタガタだし、
(てつをがクーガー襲った件もまだ知られてないし)更にひと悶着ありそうで怖いです
あと、Lが落ち込んでる描写が地味にきた。こういう生々しい孤立描写は堪える…
ここは本当に対主催に優しくないロワだな(褒め言葉)
遂に感想来た!ってことで後に続くとしよう!
読み終わったの10分ぐらい前なんだけどね!
というわけで投下乙!
うん…なんというかね…「絶望のシェルブリットォォォォォ!!」って感じだ
読み終わったばっかなこともあってちょっと今絶望感がやばい
とりあえず死亡者の追悼から
蒼星石…ずっと一緒にいた桐山から何の憐憫も無く殺されるなんて…カワイソ過ぎる
こなた…死亡時の弾幕に対抗して「こわいよこわいよこわいよこわいよこわいよこわいよこわいよこわいよ」
というわけで最後の弾幕は地味にホラーだった
今年に入って漫画とゲームの桜藤祭プレイしてゆーちゃんがほんとに大事なんだなあってことがわかっただけにつらいな…
とりあえず後で原作読んで癒されに行こう
右京…4人の中では一番救いのある最後だったかもね…
これが彼が貫いてきた正義の帰結ってわけか
お疲れ様
かなみ…最後の死亡者だからってこともあるけど一番ショックがでかかったかも
何度もすれ違い続けて、やっと出会えたのに…
それにしても、宗次朗の時といいかなみの時といい本当に桐山は感動ブレイカーだなぁ
後、上田はちょっと見直したかも
こなたを取り押さえたときはやるじゃんって思った
というか前回といい今回といい2回目の放送が終わってから死亡話の密度が濃いなw
ひと悶着と言えば…たった今思い出したけど、カズマって月と接触してたんだったな
今のLの信頼度を考えるとカズマからの月情報はやばいかもしれん…
大作投下乙!!!濃すぎてどこから感想言っていいか分からない!!
桐山…一話で三人って後藤より酷い…!!
初キルでサラマンダー脱出浅倉、お前本当にロワ充してるよな…
こなたは蒼星石にトドメ刺さなかったあたり、結局小物なんだよなー…ゲーム脳も脱せなかったけど、状況を掻き回したって意味ではいいマーダーだった
右京はC.C.やミギーの予言そのままだったな、今回ここまで泥沼になった一因だし…信念が間違ってないだけにしんどい
Lの苦しみ方が物凄い人間臭かった、人間なんだから当たり前だけど…今後にどう響くかなぁ
反面みなみの壊れ方がだんだん怖くなってきた、前半も後半も何か不安すぎる
かなみ…かぁなあああみいいいいいいまさかカズマの目の前で落ちると思わなかったあああああカズマと光太郎到着の安心感の後だけに、突き落とし方が酷い(褒め言葉)
カズマの怒りが静かすぎてこの先のことを考えたくない…
蒼星石は今回一番貧乏くじ引いた気がする、何も悪いことしてないよ…
翠星石も戦力的には頼もしいけど不本意なんだよなー…
光太郎はスザクぐらいしかマーダーと戦えてないから完全に力持て余してる、というより無力感も酷いだろうな
逆に真司は休ませてやってください
そして「引っ込んでろ!」「はい」がとても上田だった
今までの積み重ねが全部炸裂した感じで、とにかく全員濃かった!
病院も警察署も対主催イジメが酷い、不幸四天王はもうロワの最後に生き残った四人でいいんじゃないかな
改めて乙でした!!
気づいたところだけ誤字指摘。支給品の精査は時間がかかりそうなので後で。こちらが間違っていたらすみません。
>>179 >もし警察署に戻ったら、Lが難癖をつけて拘束してくるに決まってる。
>こんなところでゲームオーバーになんかなりたくない。
>反撃をするならば、チャンスは今しかない。
コピペミス、
>>178とかぶってます
>>190 >彼女が長い間同行を続けてきた少年・桐山和雄だ。
動向?
>そう言った瞬間、桐山の姿が掻き消える。
>いや、掻き消えたと言った方が正しいだろう。
どちらか間違っていると思います
>>203 >もはや警察署にいた人間全員敵であり、彼だけがLの手の掛かった人間ではない。
息の掛かった?
>>266 >多くの参加者に否定され、最後は自らの命すら奪った心情。
信条?
>>328 今思い出したが、真司が劉鳳を殺してるっていうのもあったな…
あ、
>>190前者は完全に勘違いです、失礼しました
状態表に関して、
・警察署の情報交換
3:寄生生物、カードデッキ、アルター能力についての情報。
ローゼンメイデンは含まないでいいんでしょうか。
ついでに桐山の状態表に※蒼星石、あすかとはお互いの知り合いの情報しか交換していません。
能力(アルター、ローゼンメイデンの能力)に関しては話していません。
とありますが、こちらもそのままですか?
・浅倉が前回の時点で持っていた不明支給品2〜4はジェノサイダーに吸い込まれた、で大丈夫でしょうか。
>>329 まじか、浅倉今回が初キル!?
信じられん…
そして桐山は3キルってことは一気にマーダーランキング首位かよ
最強キャラだった原作と違って化け物がいっぱいいるってのに…恐ろしい奴だな
宗次郎殺害まではほとんどマーダーらしいことしてなかったから一時期は安心すらしてたのに
投下乙です
右京さん、やっぱりバトロワで不殺を貫きながら生き抜くのは難しかったか。最期が安らかだったのは救いだと思いたい
こなたには哀れみしか感じられない。Lたちに捕まっていれば死ぬことはなかっただろうに
かなみも真司を起こしてきたのは偉いけど結果的に対主催の不和の原因になってしまったから救われないな
そして残った対主催勢では唯一の頭脳派のLが孤立し、浅倉はジェノサイダー復活のうえまだ契約のカードが一枚残って、桐山も本性を現すとろくなことがないな
疑問点としては
>>303に 何者かの背骨と眼球も発見された
とありますがこれはこなたからデイパックを取り上げてすぐに発見したのでしょうか?
戦闘後だと浅倉の状態表に背骨と眼球があるので確かめられませんし、すぐに見つけたとしてもこなたに聞かないのはおかしいと思います
それとWikiに収録する際に分割になると思いますので、分割点を教えてください。
たくさんのご感想ありがとうございます。
>>329 >もし警察署に戻ったら、Lが難癖をつけて拘束してくるに決まってる。
>こんなところでゲームオーバーになんかなりたくない。
>反撃をするならば、チャンスは今しかない。
>>203 >もはや警察署にいた人間全員敵であり、彼だけがLの手の掛かった人間ではない。
息の掛かった?
>>266 >多くの参加者に否定され、最後は自らの命すら奪った心情。
信条?
仰るとおり、全てミスです。
ご指摘ありがとうございます、収録時に修正しておきます。
>>190 >そう言った瞬間、桐山の姿が掻き消える。
>いや、掻き消えたと言った方が正しいだろう。
ここは桐山が一瞬で消えてすぐ傍まで迫ってきたのを表現したつもりだったのですが、どこか間違ってますでしょうか?
>>331 ローゼンメイデンに関する情報はすっかり忘れてました、桐山の状態表のその欄も削除のし忘れです。
浅倉のデイパックから散乱した不明支給品2〜4ですが、その中の一つはCONTRACTのカード×2に。
残りの1〜3は不明支給品を潰しちゃうと勿体無いと思ったので、
>>315の表記にもありますが対主催グループが撤退する際に回収されてます。
ですが少々不明支給品が集中し過ぎている気もするので、
>>315に
※浅倉のデイパックから散乱した物に関しては、ジェノサイダーの腹部に吸い込まれて消滅した可能性があります。を付け加えさせてください。
>>333 実はルイズの背骨と眼球は推敲してる際に気付いたんですよね……
>>303の彼女が殺人に手を染めていたのは、もはや否定することはできないだろう。を
彼女は誤魔化していたが、それでも殺人に手を染めていたのは否定することはできないだろう。に変更することで勘弁して下さい。
分割点ですが、
>>163の
> そうして伝わってきたのは、予想だにしない光景であった。
までを前編。
>>243の
> 日本刀を右京に突き刺している、仮面ライダーオルタナティブ・ゼロ――――桐山和雄の姿だった。
までを中編。
それ以降を後編ということにさせてください。
以上です、ご指摘ありがとうございました。
>>334 修正お疲れ様です。
>〜の姿が掻き消える。いや、掻き消えたと言った方が正しい〜
「掻き消える」に「いや、」と繋いで別の表現をされるのかな、と思ったところでもう一度「掻き消えた」となったので、違和感を覚えました。
浅倉の不明支給品に関してはこちらの見落としでした、すみません。
>>335 イメージ的には蒼星石が桐山の姿が消えたのに気付いた時には、既に過去の出来事になっていたという感じです。
しかし違和感を感じる方がいらっしゃるのでしたら、修正したほうがよさそうですね。
今はちょっと思いつかないので、後日改めて修正ということにさせてください。
あと
> 彼女は誤魔化していたが、それでも殺人に手を染めていたのは否定することはできないだろう。
だと、それでもが二行連続で続いて不恰好なので、
彼女は誤魔化していたが、殺人に手を染めていたのは否定できない事実だろう。にさせてください。
それと蒼星石とこなたの会話中にこの事に触れられそうだと気付いたので、後日付け加えておきます。
あ、過去形と現在形の話だったのですね。納得&失礼しました。
そういえば今回の情報交換で北岡先生が危険人物という情報も伝わったから、これで生存者の半数近くから敵か危険人物として認識されることになるな
いつのまにか二話も来てた…
どちらもとても後に響きそうな話だなー
遅れましたが大作投下乙です!
うわぁぁ…!!まさか…まさか…、右京さんが脱落とは…!
そりゃあ、確かに右京さんは一般人だったけど、始めにV.V.にタンカを切った右京さんだったらロワを止めることが出来るって(盲目的に)信じてただけに非情に残念…。
しかし、右京さんの遺志は正義の仮面ライダー達が引き継ぎ対主催として活躍してくれると信じたい。
上田?みなみん?知らんがな。
もし、もしもだか、ヴァンからナイトのカードデッキを譲り受けていたならばこんな惨劇は起きなかっただろうか。
こなたのLucky☆Starの加護もここまでかぁ…。つかさとクーガー遺された者たちの気も知らないで…。
確かに方法は間違っていたかもしれないけど、大切なものを取り戻す為に闘った結末が某魔法少女よろしく、こなったなんて…。かなしい(小並感)
蒼星石は翠星石と合流後に死亡か…、別のロワでも合流直後に死亡していたんだよな。姉妹揃っての活躍が見れなくて残念。
桐山ェ…、浅倉ェ…
それにしてもこの桐山ノリノリである。ここにきて原作並の殺戮を行うとは…。上の別ロワでは翠星石との関係が良好だっただけに今回の展開は胸が熱くなるな…!
そして、浅倉もついにサラマンダー脱出。再びジェノサイダーを得たことでロワ充の仲間入り!やったね!
Lも辛いなぁ…、貴重な対主催のブレインとして右京さんの分も頑張ってもらわなければ…
そして、Lの元にあるデスノート(偽)がどんな波紋を引き起こすのか…
浅倉初キルなのかw
そりゃイライラもするわな
行く先々で死人が出て乱戦勃発してるのに、一度も自分で殺してなかった浅倉パない
とはいえ、シザースやゾルダを撃破してるし、ガードベントも発動してるからトドメを刺してないだけだよね
乱戦で殺せなかった大部分の理由はゾルダな気がするな
しかし、記念すべき初キルがアレじゃイライラも収まってないだろうな
戦いに勝って殺したわけじゃないし
後、今回の話読んでカズマにはなんとか桐山を倒してほしいなって思った
宗次郎の一件もあるから余計にそう思うよ…
がんばれカズマ!
そういやかなみも一応信頼していた仲間に殺されたことになるのかな、フライングボードさん仕事しすぎ
死してなお働き続けるとは…フライングボート、お前ってやつは…
うがー、破棄かー
まだ予約期限内だし無理だっていわずに頑張って……とは流石に言えないか
報告が遅れましたが、SSの修正が終了しました。
あと◆39nfWWZfIw氏、今回は残念でしたがロワはあくまで楽しむものですしそんなに固く考えないでも大丈夫ですよ。
また書いてくださるのならば歓迎します。
しかし右京さん、このロワだと不殺不殺言っては参加者にも雑談でも議論されてた印象が強いけど
「杉下右京の正義」が一日目昼のことだから、死ぬまでの約15時間の中で実質3時間くらいの出来事なんだな
他の参加者と比べても、濃い3時間を味わったもんだ…
今回はロワ全体に関わる部分になる為、一度仮投下スレに投下をさせて戴きました。
このまま本投下をしても問題ないか、皆様の御意見を戴けると大変有難いです。
水ポケモン参入!!!
バトルタワーのトラウマが蘇った、お願いですから一撃必殺技は勘弁して下さい
投下された物に問題はないと思います、わくわくしました
すいません、酉外し忘れました。
グリーンバージョンで時が止まった私の精神に会心の一撃
問題ないようですので、本投下を始めます
「あはははは……!!」
部屋の壁一面に並べられた大量のモニター。
その全てが別々の映像を流し、見る者の目をちらつかせた。
そしてそのうちの一つを眺めながら、ヘッドホンを付けた少年はお腹を抱えて笑う。
少年――否、少年の姿のまま人の理を超えた者。
ヘッドホンのコードが繋がっているのは、モニターとは反対側の壁に面した大型の特殊なオーディオだった。
V.V.の背丈程あるそれには参加者全員分のナンバープレート、更にそれぞれの下にイヤホンジャックと赤いランプ。
ジャックにイヤホンを繋げばその参加者の首輪の音声が聞こえ、参加者が死亡すればランプが消えるのだ。
盗聴機が拾う音を聞きながら笑い続けるV.V.。
鷹野三四はその姿を気味悪く思いながら、居心地の悪さを誤魔化すように目の前のティーカップに口を付けた。
このモニタールームの中央に置かれた丸いテーブルには、色とりどりの菓子が並べられている。
スコーンやケーキがティースタンドに載せられた、英国式のアフタヌーン・ティー。
そしてティーカップは三つ――用意された椅子も三脚。
着席しているのも、三人。
鷹野は殺し合いの最中に催されたティーパーティーの中で、V.V.にも、残るもう一人の人物にも目を合わせられなかった。
自分だけ場違いなように思え、肩身が狭い。
かといって茶会の誘いを断る事も出来なかった。
鷹野はただカップに満ちた紅茶に映る、自分の疲れた顔に視線を注ぐ。
鷹野には焦りがあった。
紅茶など飲んでいる場合ではなく、腕に爪を立てそうになるのを堪える。
それでもV.V.の機嫌を損ねては元も子もないと、話し掛ける機会を伺っていた。
「ああ、おかしかった」
笑い過ぎて目元に滲んだ涙を指で拭き取り、ヘッドホンを外しながらV.V.が言う。
モニターから目を離しても、思い出し笑いをするようにクツクツと肩を揺らしていた。
「何が……そんなに面白かったので?」
話題を求め、鷹野は顔を上げて尋ねる。
一言掛けるだけでも緊張し、額に汗が浮いた。
「ああ……これだよ」
V.V.は楽しそうにそれまで見ていたモニターを指差し、楽しそうに説明を始める。
話題選びは取り敢えず間違っていなかったようだと、鷹野は密かに胸を撫で下ろした。
会場の各地に設置された極小のビデオカメラとマイク。
参加者各人が装着している首輪に内蔵された盗聴器。
主催者達はこれらによって映像と音声を入手し、幾つか用意したモニタールームで管理している。
膨大な量の情報を一から十まで知るのは不可能である為、V.V.らは記録の中でも重要と思われる箇所だけを観ていた。
全体の把握には別の人員を雇っているので、主催者の役目はその程度で充分なのだ。
先程V.V.が観ていたのは、総合病院のモニター。
聴いていたのはロロ・ランペルージの首輪からの音声。
ジェレミア・ゴットバルトがロロを殺害する場面は、鷹野も視界の端で確認していた。
「鷹野には説明してなかったかな……この二人は、元は僕の下にいたんだよ。
二人して裏切ってくれたんだけどね」
そしてこの二人の邂逅の先にあったのは、殺し合いだった。
そこまで聞けば鷹野も納得出来る。
溜飲が下がった――という事だろう。
「ジェレミアがロロを刺したのもびっくりしたけど、まさかつかさを助けるとは思わなかったな。
マリアンヌの息子の事もあるし……もし彼がここまで来られたら、理由を聞いてみるのも良いかもね」
言って、V.V.は笑い疲れた様子で満足げな溜息を吐き出す。
そこに浮かべられた笑みは、子供じみた中に歪みを帯びていた。
「そうすれば、僕達の目的にまた一つ近付ける……」
ぞわ、と鷹野の背に鳥肌が立つ。
首筋から氷を放り込まれたような寒気に襲われる。
外見にそぐわず鷹野の倍以上長く生き、人間を見詰めてきた不老不死の存在。
鷹野は無意識のうちに再び目を逸らしていた。
不意にモニター内の映像が大きく揺れ、そちらを注視する。
警察署付近を映すモニターだ。
浅倉威を中心に、桐山や翠星石が衝突したらしい。
V.V.も病院からそちらに関心を移しながらカップを傾ける。
ティーパーティーの『三人目』については何を見ているのか、何も見ていないのか判断がつかなかった。
V.V.が手元のリモコンを向けると、それまで無音だったモニターから音声が流れ始める。
呻く声、泣く声、怒る声、そして破壊音。
それらを聞きながら、V.V.はポツリと言った。
「この会場の中で今までに、どれだけの嘘が交わされたんだろうね?」
鷹野に向けた言葉なのか、『三人目』に向けた言葉なのか分からない。
ただ鷹野も『三人目』もその問いには答えず、警察署付近の戦闘音が室内を包んでいた。
「それで、そっちはどうなんだい?」
警察署での一連の出来事が終わりを告げ、数十秒程経ってからV.V.が問い掛ける。
参加者と同じ数だけあるランプは新たに四つ消えていた。
突然水を向けられた鷹野は一瞬身を強ばらせたが、わざわざV.V.の方から言い出してくれたのは好都合だ。
「はい、出来れば今すぐにでも……」
「そう」
V.V.はカップに残っていた紅茶を飲み干すと、席を立って一つのモニターの前に立つ。
じっくりと眺め、更に時計を見遣った。
「残りの参加者は半分……病院と警察署の動きで多くの『対主催』と『マーダー』も仕切り直し。
確かにそろそろ潮時なのかも知れないね」
「では……!」
「タイミングを決めるのは僕だよ。
ただ、もう準備はしておいた方がいいね」
そのままモニタールームを後にするV.V.を、鷹野が慌てて早足で追いかける。
長い廊下に出たところで、鷹野は真横に気配を感じた。
視線だけそちらに向ければ『三人目』が鷹野と同じペースで歩いている。
いつ席を立ったのか、いつから追い付いてきたのか、全く分からなかった。
鷹野が静かに息を飲むと、それまで沈黙を守っていた人物は口を開く。
「すべからく、成すべき事は急いだ方が良い……道化師の気紛れが、全てを台無しにしてしまわぬうちに」
落ち着き払った声色に、鷹野は再び息を飲み込んだ。
しかし聞き流せる言葉ではなく、意を決して問い掛ける。
「っ、それは……どういう意味ですか」
「もし私がお気に召さないのなら、こうお考え下さい。
あなたは居眠りをされ、幻を見ているのだと」
会話が成立せず、鷹野は奥歯を噛み締めた。
言われなくとも急いでいる。
目の前にいる『道化師』が何も手を出さなかったとしても。
このままでは彼が言う通り、全てが台無しになりかねないのだから。
「余り鷹野をイジメては可哀想だよ……ラプラス」
長い廊下を進む中、前を歩いていたV.V.が口を挟む。
その口調には、長年付き合った友人に向けるような親しさがあった。
「僕らの目的は順調に果たされているんだから。
君だって楽しんでいるだろう?」
V.V.が振り返ると、床に引きずる程に長かった髪が大きく揺れた。
そしてV.V.とラプラスの魔――兎の顔を持つタキシード姿の道化師は歩を止めて向かい合い、呼応するように言葉を紡ぐ。
「蒼嶋駿朔が絶望を打ち砕くのか」
「浅倉威が何を壊すのか」
「石川五ェ門が何を斬るのか」
「岩崎みなみが本当に死者蘇生を望むのか」
「ヴァンが他者にどれだけ関心を抱くのか」
「上田次郎が役立つのか」
「エル・ローライトがこの殺し合いの突破口を見付けるのか」
「カズマが『今度こそ』由詑かなみを守るのか」
「北岡秀一が利己心を捨てるのか」
「城戸真司が何の為に戦うのか」
「桐山和雄がその行動の果てに何かを感じるのか」
「枢木スザクが過ちに気付くのか」
「後藤が最強の生物なのか」
「C.C.が殺し合いの果てに死を経験するのか」
「ジェレミア・ゴットバルトが誰も守れないのか」
「志々雄真実が国盗りを実現するのか」
「シャドームーンが南光太郎以外の敵達に何を見るのか」
「シャナが惑いから抜け出すのか」
「水銀燈が真紅のいない地で何を得るのか」
「翠星石が姉妹達の想いを受け継ぐのか」
「ストレイト・クーガーが最後まで最速で駆け抜けるのか」
「園崎詩音が症候群に身を任せるのか」
「田村玲子がパラサイトの未来にどんな答えに辿り着くのか」
「狭間偉出夫が他者と関係を築くのか」
「柊つかさが何を生み出すのか」
「南光太郎がシャドームーンとの決着をつけるのか」
「三村信史が勝利の美酒を味わうのか」
「夜神月がキラとなるのか」
「雪代縁が姉を甦らせるのか」
「竜宮レナが幸せになれるのか」
「ルパン三世が何を盗むのか」
「「全ての結末は、彼らの『選択』によって訪れる」」
口ずさむように、合言葉であるかのように、二人は声を揃えた。
鷹野とは別の、二人だけの目的。
「人間が生きてる限り、『選択』は常に隣り合わせ」
「しかし極限状態で取られた『選択』にこそ、価値はある。
それを見る為のバトルロワイアル」
「だから僕らは見続ける。
その先に、僕らの理想がある」
V.V.が微笑み、再び前へ向き直った。
鷹野はたった今行われたやり取りが、本当にうたた寝の中の夢だったのではと疑いたくなる。
それ程に廊下は静かで、三人の靴音だけが反響して木霊していた。
▽
長い廊下の先、広い円形のホール――ここから幾つもの長い廊下が放射状に伸び、それぞれが別の部屋へ繋がっている。
V.V.と鷹野がそのうちの一つへ進んでいく中、ラプラスの魔は立ち止まる。
目映い照明で照らされたホール、その中央で彼は恭しく頭を垂れた。
誰もいない場所で、たった一人で、それでもまるで目の前に観客がいるかのように口上を述べる。
「物語は中盤。
始まりは遠く、終わりもまた遠い……」
興奮するでもなく、淡々とするでもなく、芝居がかった口調で続けた。
「彼らの『選択』が物語を拡大させ、収束させ、やがて結末を迎えます。
終わるのか終わらないのか、考えるは詮無き事。
それでも貴方は、この物語を最後まで――」
勿体振るように、あざ笑うように。
ここにいない『貴方』に向かって、過剰に間を取りながら結びの言葉で締め括る。
「読みますか? 読みませんか?」
投下終了です。
改めて投下乙です。
ラプラスの魔はそういう役割だけど、いきなり話しかけられると思わずゾッとしますね。
新しく主催陣営が増えましたが、自分も鷹野さんを追加したのでどんとこいです。
ラプラスは負けたら一からやり直しの場所で、つのドリルとかを連発してくるからすごい怖いんですよね……
乙です
主催に上田次郎が役立つのか なんて言わせるとか笑っちまったじゃねえかw
最新話の上田先生は役に立ってたじゃないですかやだー
投下乙です
ニア読みます
>>363 確かにこなたを取り押さえたときは初めて上田を見直したな
体術の心得があるってのはどっかで聞いたことあったけど本当だったんだな
そして投下乙。
ラプラスの魔ってのがなんなのかは…うーん、どっかで聞いたことある気がするけど思い出せないな
でも、各生存者の語りのとこはいずれも的確で読んでて楽しかったな
御感想ありがとうございます。
・修正
生存中の参加者についての口上は「まだ結果が全て出ていないもの」で統一していたのですが、カズマのみズレておりましたので下記のように修正致します。↓
「カズマが何を掴むのか」
・その他
口上は131話「DEAD END(後編)」直後の時点での生存者となります。
今後、これより前の時間帯のSSで死者が出た場合は、適宜該当参加者に関する記述を削除します。
なんだこの投下速度!?(驚愕)
予約ペースwwww
なんだこれwwww
RXの27話が配信されてたから見た
シャドームーン……
子供助けるのは賛否あるだろうが、いつ見てもかっこいいな影月
ルパン三世が実写映画化だってさ。
ルパン役は小栗旬、次元役は水嶋ヒロ、五右ェ門役は阿部寛、銭形警部は寺島進、峰不二子は沢尻エリカ
五右ェ門役に阿部寛
五右ェ門役に阿部寛
五右ェ門役に阿部寛
上田「私の出番か」
マジか…
上田先生ww
>>372 五ェ門「認めないでござる! 絶対に認めないでござる!!」
お前は今、泣いていい! 泣いて……いいんだ……
阿部ちゃん、どっちかというと日本人離れした容貌だと思うんだけど(ローマ人とか演ってるし)
あえて五右ェ門なのか…
同じ日本人でも銭形だったら分かるんだけどなぁ
つか阿部ちゃんと寺島氏はともかく(寺島進ぐぐったら銭形っぽかったw)
他のメンツは何なんだ
小栗旬は割りとルパンに似てる気がする
でも次元はもう少し年齢行ってる人のほうがいいんじゃないかなぁと思った
>>381 似てる似てないより演技と演出がニクいwww
あのハゲは何者よ?w
今回の投下は前回に引き続いてロワ全体に関わる部分になる為、一度仮投下スレに投下をさせて戴きました。
このまま本投下をしても問題ないか、皆様の御意見を戴けると大変有難いです。
うわー、また随分と一気に進むなー
仮投下乙です!
まさかの急展開…、主催者自ら首輪解除の方法を提示するとは…
そして現れるエイプリルネタのトップページを妄想した。
一読み手としては全く問題無いと思います。今後の展開が楽しみです!
投下乙です。
実は主催や首輪について何も考えてなかったので、案を出していただけるのは非常にありがたいです。
御意見ありがとうございます。
問題無さそうですので志々雄真実、三村信史の本投下をします。
合法、非合法を問わない知識の広さ。
凡俗な俺の父親と血が繋がってるとは思えない、鮮烈な輝きを持った男。
俺は叔父さんが大好きだった。
「叔父さんはほんとすげえなあ。かっこいいや」
幼い俺は、純粋に思った事を口にする。
けれど叔父さんは苦笑いをして答えた。
「そうじゃないよ、信史。俺はかっこよくなんかない。
この国でほんとうに美しくあろうと思ったら、生きていられないよ」
そうだよな、この国はこういう国なんだから。
だから俺は思ったんだ。
あんたが昔諦めた事を何とかやれないか、って。
俺は、美しくありたいと思った。
あんたがそれを俺に教えてくれたんだ。
叔父さんは……今の俺を見て、どう思う?
長いものに巻かれた俺は、汚いか?
でもさ、叔父さん。
あんたがどうしようもなくかっこよかったように。
……志々雄もどうしようもなく、俺を惹き付けるんだ。
確かに志々雄は悪人だ、イカレてる。
腐った体制への反逆――には違いないが、それで目指すのが弱肉強食じゃああの国よりタチが悪いぐらいかも知れない。
猛毒を以って毒を制す、って感じか。
それでも俺は、あのクソゲームを笑い飛ばす志々雄に俺の技術を捧げたい。
志々雄がやろうとしている事はどこかで、叔父さんが昔諦めた事に繋がってるんじゃないかって思うんだよ。
▽
総合病院を離れた志々雄真実と三村信史は図書館を訪れた。
陽は傾き始め、西側から現れた濃い闇が晴れ渡った空を徐々に侵食し始めている。
この殺し合いが開始した頃と同じ、夜が訪れようとしていた。
出入り口の扉を開けた瞬間、図書館特有の本の匂いと血の臭いの混じり合った空気に飲まれた三村は反射的に後ずさる。
しかし志々雄は何事もなかったように館内に足を踏み入れ、臭気の出所である死体を発見した。
背の高い本棚に囲まれ、カーテンを掛けられた大柄な男の屍。
それでも志々雄はそれに興味を示さなかった――風景の一部に過ぎないとでも言うように、素通りする。
一歩遅れて中へ入った三村を引き連れ、無人の貸し出し用カウンターの周囲を見て回る。
遺体を無視して二人が探しているのは、ノートパソコンを接続する為の端末だ。
「あった、これを……」
三村は第一回放送前、警察署でインターネットへの接続に成功した。
そして「ハッキングによってV.V.側の首輪管理の権限を乗っ取る」という目標を打ち出している。
技術と知識を駆使すれば首輪の爆破機能を無効化出来ると、三村は自分の力に自信を持っていた。
その後何件か民家を探してみたものの、パソコンも端末も見付からなかった。
無人である他は何の変哲もない、食料も雑貨も入手し放題の住宅地に見えたのだが、この二つだけは例外らしい。
意図的に排除されたとしか思えない不自然さだ。
恐らくだがパソコンも端末も数が限られている。
パソコンは支給品としてだけ、端末は地図に載った施設にのみ、といった具合か。
つまりそれだけ、この殺し合いの根幹に関わる重要なデバイスだという事――三村はそう結論付けた。
警察署では志々雄とタバサを待たせていたので、回線が繋がる事を確認しただけに終わった。
実際に検索を掛けたり、ホームページを開いたりはしていない。
しかし今は志々雄へインターネットの説明で理解を得たお陰で、時間を掛ける事も許されている。
早く接続して殺し合いの役に立つ情報を手に入れたいと、三村は浮き足立っていた。
にも関わらず先程まで居た病院で端末を探さなかったのは、得られた情報を三村と志々雄で独占する為だ。
万一病院にいる者達に見られては、他の参加者に拡散される前に殺害する必要が出てきてしまう。
そうした面倒を避ける為に、二人はこの図書館を情報収集場所に選んだ。
程なくしてパソコンが起動し、何のアイコンもない殺風景なデスクトップが表示された。
志々雄は薄ら笑いを浮かべ、三村の肩越しに画面を覗き込む。
三村がマウスを握って操作し、検索サイトのトップページを開こうとした。
ハッキングの前のちょっとした寄り道のつもりで、何気なく。
しかし、ホームとなるページに表示されたのは検索サイトではなかった。
『多ジャンルバトルロワイアル』
一番上にそう書かれていた。
バトルロワイアル、という言葉に三村は一瞬呼吸を止める。
表示されたトップページの基調は黒と赤、そして白。
黒地の背景に赤い文字と白い文字。
暗闇の中に血と骨が浮かんでいるようで、それだけで胸が悪くなった。
そして赤字で書かれていたのは、そのホームページの概要。
第374957236番目や第374957728番目の世界の大東亜帝国で行われる『プログラム』を模倣したこの計画に、名称を与える。
他の幾多のバトルロワイアルと区別する為に。
次元を問わず多くの世界から参加者を集めたこの計画を、今後『多ジャンルバトルロワイアル』と呼ぶ事とする。
嫌な予感をよぎらせながら、三村はサイトのメニューから『参加者一覧』というページを開いた。
そこに並ぶ名前は、支給された名簿と完全に一致している。
「何だ、これ……」
「いんたあねっととやらは何でも調べられる……違ったか?」
「……悪い。調べられる事とられない事がある。
これは……調べられるはずが、ない」
この会話が首輪によって盗聴されている事については、諦めた。
このページを見てしまったのを、V.V.が気付かないはずがないのだから。
しかしこれは、この殺し合いの公式ホームページとでも言うのだろうか。
そんなものが存在し、しかも参加者が検索しようとしただけで見付かるような場所にあるのは――おかしい。
第374957236番目? 第374957728番目?
「他の幾多のバトルロワイアル」とは、プログラムとは違うのか?
『多ジャンルバトルロワイアル』と、こんな殺し合いにわざわざ名前を?
疑問は尽きない。
前のプログラムに参加した時の三村は パソコンを使う為の電源に車のバッテリを利用した。
自分の携帯で電話会社の技術職員が使う回線テスト用の番号を利用し、電話回線に入った。
そこから自宅のパソコンにアクセスして暗号解析ソフト等を取り寄せ、その上でハッキングを掛けた。
最終的には分校の臨時設置サーバに入り込み、作業用バックアップファイルを入手。
その中の暗号を解析し、パスワードを戴いた。
それを使って分校のコンピュータ内のデータを丸ごと手に入れようとした――失敗したが。
とにかく何をするにも面倒な手順を踏んだのだ。
それが、こんな簡単に。
ネットに繋がるだけで不用心が過ぎるというのに、このページは一体何なのか。
三村は志々雄にこれらの‘異常’を説明し切れないまま『死者表示』というリンクを開く。
しかしこちらは「ログインユーザーのみ閲覧可能」との事だった。
夢中になって非ログインユーザーでも閲覧出来るページを探す。
閲覧出来ないページばかりだ。
『目的』は勿論見られなかった。
『参加者詳細プロフィール』も、『世界観区分』も。
『参加者の動向』『nのフィールドの危険性』『「彼」のギアス一覧』……。
そして『情報』を開いた時、画面に大きな赤い文字が広がった。
一日目の十五時以降、首輪の解除方法を開示する。
慌てて時計を見れば、十六時過ぎ。
十五時はとっくに回っている。
赤い文字の少し下に目をやれば、「詳細はこちら」とリンクが貼られていた。
「う、そだろ……」
違和感はある。
何故敢えて、参加者に首輪の外し方を教えるのか。
反逆を望んでいる――という訳ではないだろう。
罠かとも思うが、殺し合いをけしかけておいて罠で殺すというのもおかしな話だ。
「一先ずは乗ってやろうじゃねぇか、向こうの手によ」と、志々雄は言う。
確かに今はそれしかない。
三村は頷き、「こちら」の字をクリックした。
初めに表示されたのは、各部をナンバリングされた首輪の解析画像だった。
「……おいおい……マジかよ」
三村が驚いたのは首輪の構造が余りにシンプルだったからだ。
所々に見た事のない装置が組み込まれて複雑になっているが、爆弾本体の周辺はコードが数本しかない。
「ギアス。
俺だけでなく三村から見ても未来の技術。
異なる世界から人間を掻き集める手腕。
そんなもんを持ってる連中が、こんな単純な首輪を作る訳がねぇ……そう言いたい訳か」
三村は黙って首肯する。
違和感は拭えない――しかしこれなら容易に外せるのではないかと、希望を抱くには充分だった。
三村が画面をスクロールさせると、ナンバリングに従った各部の説明が羅列していた。
特に目を引くのは爆破物質が『流体サクラダイト』なる未知の物質である事。
首輪の後部にブラックボックスが組み込まれている事。
ブラックボックスの内部まではこの図では説明されていないが、盗聴器はこの中だろう。
「飛ばせ」
「あいよ」
細かい事は後でいい。
この下に、外し方が書いてあるはずだ。
逸る気持ちを抑える事なくマウスを動かしていき――そして期待通りに『首輪の解除方法』という項目を発見した。
1.首輪の爆破機能を停止させる。(方法は後述)
2.図の7〜12の六カ所に同時に触れ、外装カバーを外す。
3.下記の順番に従ってコードを切る。
:
:
:
その先も説明が続いていたが、志々雄は三番目の一行目まで読んだ時点でもう一度「飛ばせ」と命令した。
三村も二番目に対し「そんな簡単にカバーが外せるのか?」と疑問は抱いたものの、「あいよ」と従う。
今問題となるのは、そこではない。
二番目以降は一番目を達成した後の話なのだから、一番目が不可能なら意味を成さないのだ。
それを承知しているからこそ志々雄は先を促し、三村もそれに応えた。
解除方法の下には『首輪の爆破条件』という項があった。
念の為、そちらにも目を通す。
首輪の爆破機能が発動するのは主に以下の条件の時である。
1.主催者権限が発動した時。
2.装着者が禁止エリアに侵入し、三十秒間の警告に応じなかった時。
3.首輪が外装カバーの耐久度を超える衝撃・熱等を与えられた時。
4.コードが誤った順序で切られた時。
5.ブラックボックスのカバーが外された時。
どれも想像の範囲内だった。
三村は志々雄に言われる前に、自主的にマウスのホイールを回転させる。
そしてスクロールさせていくうちに『爆破機能を一時的に停止させる方法』という項が現れた。
思わず三村は喉を鳴らし、説明文を読む。
首輪の爆破機能が停止するのは、以下の条件の時である。
1.主催者権限が発動した時。
2.装着者が死亡した時。
3.研究所のゲフィオンディスターバー起動中、装着者がその半径十メートル以内にいる時。
(ゲフィオンディスターバー起動には指定箇所へカードキーを挿入の事)
4.爆破機能の停止していない首輪が、装着者の半径二メートル以内に四個以上存在する時。
※一部参加者は上記以外の方法を考案する可能性がある為、留意されたし。
「……え?」
思わず三村は腑抜けた声を出してしまう。
そのまま二の句が告げず、志々雄もまた黙ったままだ。
一番目、二番目は考えなくていい。
三番も見知らぬ単語と遠く離れた施設、未所有のアイテムが必要となっては諦めるしかない。
考えるべきは、四番目。
首輪解除される対象、解除する為の技術者、その他に三人の参加者がいれば達成出来る――簡単そうに見える条件。
しかしこれは「五人以上の参加者が協力し合う」事が前提の話なのだ。
「爆破機能の停止していない」と指定されている以上は死体の首輪での代替も出来ない。
協力し合ったとしても首輪を外せるのは一人だけ。
「自分の首輪は外せなくてもいい」と、残る四人がそう言えるだけの信頼関係がなければならない。
しかも解除される側も、首輪に触れられている間は無防備を晒す事になる。
それだけの『絆』をこの殺し合いの最中に築く必要があるのだ。
停止条件を誤魔化して「全員外す事が出来る」と嘘を吐き、自分だけ外して逃げるか――
三人を屈服させて身動き出来なくさせ、一人が技術者の役目を負うか――
何通りか手段を考えるものの、どれも面倒な事に変わりはない。
主催側がこうして解除方法を簡単に明かしたのは、そう易々と外せはしないと承知の上だからかも知れない。
それにしても、これでは解除して欲しいのか欲しくないのか分からなかった。
だが三村と志々雄が暫し沈黙したのは解除方法が面倒、主催の目的が分からない、といった理由だけではない。
三村と志々雄は持っていたのだ。
まさしく前述した『相手を屈服させる』という手段を持っていた――ほんの数時間前に、一時的に。
病院で出会ったストレイト・クーガーと柊つかさ。
それに一時的に病院から離れており、直接会う事のなかったジェレミア・ゴットバルト。
三人のうち二人は満身創痍、一人は非戦闘員。
全員を気絶させ、その間に三村が志々雄の首輪を外す事が出来た――しかしその機会を逸した。
「死に損ない、素人、他人の飼い犬を手駒に加える必要はない」と、他ならぬ志々雄がこの三人を放逐したのだ。
「……成る程。
一筋縄じゃあいかねぇ、って事だな」
納得して見せながら、志々雄の声には明らかな怒りが籠められていた。
志々雄の纏う空気に毒された三村ですら、その声色に肩を震わせる。
憤怒の対象はあの三人でも、三村でもない。
主催者も含まれるはずだが、「この俺をナメやがるとはいい度胸だ」とむしろ闘争心が沸き立っている事だろう。
怒りの矛先は、志々雄自身。
この事態を招いた慢心と油断に対し、怒気を放っている。
そう分かっていても、三村は凍った背筋から伝わる震えで指先が痙攣するのを止められなかった。
怒りは自分に向けられていない、背中側にいる志々雄の視線はそもそも見えない――そんな事は気休めにもならない。
「認めるぜ……この会場じゃ、死なねぇうちは参加者全員に値打ちがある。
例え雑魚でもな。
それを侮った、この志々雄真実の失敗だ」
その後も暫く二人は黙って画面を見ていた。
三村は志々雄の許しなくは動けずにいた。
やがて「書き写せ」という指示で我に返り、デイパックから筆記用具を出して必要事項を写していく。
「最初の放送で六十五人中十六人、次の放送で四十九人中十二人……残りの人数に対して丁度四人に一人が落ちた。
順調に行ってりゃ、今頃残りは三十人を切った頃だ。
ま……解除には充分だな」
志々雄は既に失敗から切り替えているようだった。
三村は頷き、メモを取る手の速度を上げる。
主がミスをしたというのなら、それを取り戻すのが『犬』の役目だ。
ハッキングによる首輪の無効化を考えていた。
だが、首輪の解除にはどういう訳かその必要はないらしい。
むしろ必要なのは、ログインユーザーのIDとパスワードか。
もしこのホームページの中の全ての情報が開示されるとすれば、V.V.の目的までもはっきりする。
首輪の管理権を乗っ取る作戦を気に入っていた志々雄には悪いが、目標を変えるべきなのかも知れない。
三村が書き取ったメモに志々雄も目を通す。
それから口元に笑みを浮かべて言った。
「試してみるか」
「でもよゴシュジンサマ、爆破機能の停止条件には――」
言いかけて、気付く。
すぐ傍に、既にその条件を満たした首輪がある。
カーテンを掛けられた、大柄な男の死体――
▽
志々雄はカーテンの取り除かれた遺体を観察し、その上で三村にサバイバルナイフを手渡した。
「良かったな三村、首が千切られてるお陰で簡単に解体出来るぜ」
三村はナイフを目にしながら躊躇していた。
生首から首輪だけ外す。
肉を削ぎ落とす。
そこにまだ抵抗があるらしい。
「何だ、生首と喋りながら解除する方が好みか?」
そう言うと、三村は「分かってるよ」と言ってナイフを受け取った。
外してからも向きが分かるよう鉛筆で首輪前部に印を付け、それから首と分離させる為に肉を落としていく。
初めは生首に触れる事さえ厭っていた少年が、おっかなびっくりといった様子で首にナイフを刺す。
手から伝わる肉を抉る感触に表情が苦しげに歪み、手が震えていた。
だが徐々にコツを掴み始めたようで、大胆にナイフを動かすようになっていく。
唇を噛み締めて耐えるような顔から、薄い笑いさえ見せ始めた。
その『成長』――教育の成果に、志々雄はクツクツと肩を揺らして笑う。
生首から分離させた首輪は一見して継ぎ目がない、無地の輪だ。
しかし三村が指定通りの六ヶ所に触れると、呆気なく覆いが外れて中の回線が露わになった。
首輪の上部四ヶ所、下部二ヶ所――丁度両手の親指から中指までの三本で首輪を摘むようにすると触れられる部分。
それが首輪の装着者から見て背中側に位置していた。
特に目印となるようなものがないので初めは難儀していたが、三村によれば「慣れればすぐに感覚が掴める」という。
首輪の中は薄紅色に光っていた。
『流体サクラダイト』――‘桜’の名を冠するに相応しい、根元に人の骸を埋めた花弁のような色彩を保っていた。
三村が一度外した覆いを填め直すと、元通り継ぎ目のない首輪に戻った。
何度か確かめても同じ結果が得られたので、志々雄も自分の首輪で試す事にした。
首の後ろに手を伸ばし、図と同じ位置に触れる。
パキン、と軽い音と共に覆いが外れ、填めればすぐに元に戻った。
志々雄は口角を上げ、三村に「続けろ」と指示を出す。
三村が図と首輪を見比べながらコードを切っていく。
さすがに素手では無理があるので、三村が民家で予め調達しておいた工具を用いている。
やがて最後のコードを切ると同時に、首輪が真っ二つに割れて床に落ちた。
「ククッ……次も上手くやれよ」
主催者の思惑通りとは言え、事は順調に運んでいる。
志々雄は犬の働きに満足した。
「俺の命を預けたぜ、三村」
▽
主人の命を預かる――その一言に、三村は恍惚を覚えた。
大役を任された、信頼を得た――あの志々雄から。
大変なのはこれから、そう分かっていても三村は充足感を覚えずにはいられなかった。
他の参加者に見られないよう、首輪の残骸をデイパックにしまう。
それから電源を入れたままにしていたパソコンからハッキングを試みたが、幾つものセキュリティーに阻まれて一筋縄ではいきそうになかった。
これでIDとパスが分かれば良かったのだが、別の方法を考えた方が良さそうだ。
そして、パソコンの電源を落とす。
しかしその前に三村はふと思い出し、『情報』のページに戻った。
赤い文字と、「詳しくはこちら」のリンク。
その二つの誘惑に負けてページを進ませてしまったが、まだスクロールの余地があったのだ。
下へ下へとマウスを動かし、そしてその手が止まった。
そこにあったのは、同じく赤い文字。
一日目の二十一時以降、会場からの脱出方法の一例を開示する。
支援
【一日目夕方/F−7 図書館】
【志々雄真実@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-(漫画)】
[装備]:サバイバルナイフ@現実、ヒノカグツチ@真・女神転生if...
[所持品]:支給品一式×2、リュウガのデッキ@仮面ライダー龍騎、不明支給品0〜1、林檎×8@DEATH NOTE、鉄の棒@寄生獣
マハブフストーン@真・女神転生if…、本を数冊(種類はお任せ)
[状態]:各部に軽度の裂傷
[思考・行動]
1:自分の束ねる軍団を作り、ぶいつぅを倒す。
2:戦力になる者を捜し、自分の支配下に置く。
3:気が向いたらガリア王国のジョゼフを持て成す。
4:雑魚であっても利用する。
[備考]
※首輪に盗聴器が仕掛けられている可能性を知りました。
※クーガーから情報を得ました。クーガーがどの程度まで伝えたのかは後続の書き手氏にお任せします。
※ギアスとコードについて情報を得ました。ただし情報源がつかさなので、漠然としています。
【三村信史@バトルロワイアル(小説)】
[装備]:金属バット(現地調達)
[所持品]:支給品一式、確認済み支給品0〜2(武器ではない)、ノートパソコン@現実、工具@現実(現地調達)、首輪の残骸(銭形のもの)、
首輪解除に関する、マハブフストーン×3メモ
[状態]:左耳裂傷
[思考・行動]
1:このまま志々雄についていく。
2:主催のパソコンをハッキングするか、IDとパスを探すか……。
3:緑色の髪の女に接触し、V.V.の情報を聞き出す。
4:今回のプログラムに関する情報を集め、志々雄の判断に従う。
5:二十一時に、HPを確認する?
[備考]
※首輪の解除方法を知りました。
※パソコンを端末に接続して検索ページを開くと、『多ジャンルバトルロワイアル』の公式HPに繋がります。
※首輪について
爆発物質は流体サクラダイト、その他はコード数本とブラックボックスが確認出来ます。
爆破条件・解除条件等はSS内で提示した通りです。
外装カバーは、篠崎咲世子がルルーシュ・ランペルージに変装する際に用いたフェイスカバーと同じ構造をしています。
※A−10研究所にはゲフィオンディスターバーが設置されており、カードキーによって使用出来るようになります。
【工具@現実】
三村信史が民家から現地調達。
何の変哲もない工具。ペンチやドライバー等が一通り揃っている。
投下終了です。
御支援ありがとうございます。
@Wikiで試してみるとログインに必要なのはIDではなくユーザ名のようですので、SS収録の際に修正致します。
投下乙!
なんというかかなりエグい解除方法だなぁ
警察署の連中が解除できる可能性あったけど、今ではもう何処も無理そうだな
そして脱出方法とかすげー気になる、こんな簡単にほいほい情報出しちゃっていいのか
V.V.が何したいのか分からん
首輪から得た材料は錬金に使えるのかな…(ボソッ
>>400 鉱石類・宝石類・火薬材料で使えるだろうな。
品質も非常に高そうだ。
だが、量が少ないな。
また予約来てるー!予約ペースすげぇ
しかし全員対主催なのに嫌な予感しかしない…
速さが足りすぎている
るろ剣の新京都編見たけど、普通に志々雄がセックスしてて笑った
ルパンといいるろ剣といい、近頃ちょっとダーティーな作品が多いね
近頃というほど新しい作品でもないけどね
>>404 ルパンとるろ剣自体は新しくないけど、不二子と京都編は新しいだろ
志々雄と縁って原作では面識なかったけど
位置的に対面しそうw
ルパンの強さってよくわからない
射撃は次元に劣るし
身体能力も五ェ門ほど優れてないだろうし
ルパンは単純な戦闘能力や局所的な能力では次元たちに劣るかもしれないけど、総合的な能力やここぞというときの機転が凄い
もしるろ剣で由美や鎌足や方治が参戦してら
志々雄の奉仕マーダーになってただろうな
射撃でもルパンって次元以上じゃなかったっけ?
ただルパンは拳銃しか使えないけど、次元は重火器全般OKって感じで
専門分野に特化してるのが次元と五ェ門、ルパンが万能派ってイメージ
ルパンの一番大きな力は人間的魅力じゃないかな
次元、五ェ門たち超優秀な仲間はもとより、
不二子、銭形っていう一筋縄じゃいかない強力なライバルを
つなぎとめる力があるのはルパン一人だからね
ここでも玲子さんを納得させてるしねー
対人スキルはルパンファミリーの中では間違い無く最強
狭間やシャナは改心する可能性も
あるけど
出会う人物によってはかな
詩音が参加者過半数以下まで生き残るのってもしかしてこのロワが初めてか?
参加ロワは多いけど長生きしないよね
そして毎回マーダー化
綺麗な詩音は無理なのか
キャラ的には
Wikiでプロフィールとかが更新されてるのに見れない…これは確かに三村の気分…ww
>>418 できなくもないだろうけど、マーダーやれる貴重な人材だしマーダーやらせた方が面白いんじゃないかねぇ
あと今回に限っては正直状況が悪すぎた
一回目で魅音、沙都子、悟史死亡とか詩音にとっちゃ陰謀みたいなもんだろ
三村は志々雄に惹かれてるけど
女の参加者で志々雄に靡きそうな人はいないだろうな
岩崎みなみ、上田次郎、L、カズマ、城戸真司、翠星石、南光太郎を投下します。
霊安室を出た六人――上田次郎、カズマ、南光太郎、岩崎みなみ、翠星石、城戸真司はロビーに戻った。
ロビーに一人佇んでいたLに会いに来た訳ではなく、多くの者が今後の身の振り方に迷っていたからだ。
回収した支給品の分担も決めなければならず、思い思いに着席して休憩を取る。
安全性なら二階の会議室の方が優れていたが、皆一様にそこまで移動する気力もないようだった。
一部の者はLに事の顛末を説明しているが、多くは疲れ果てたように俯いている。
そんな中で唯一この先の方針を決定していたカズマは席に着かず、正面玄関から出て行こうとしていた。
名を刻ませた宿敵を失った心の穴が広がる程度では済まず、心そのものが壊れるような痛みがあった。
胸を強く押さえると、暴れ回る自分の鼓動が伝わってくる。
あの少女の胸から消えた、心音と温もり。
失ったものが大きすぎて、近すぎて、混ざり合った感情を持て余す。
あの放送を聞いた後のように物に怒りをぶつける事すら出来ない。
叫ぶ言葉さえ、見付からない。
だからただ誘われるように外に向かう。
霊安室で回収したあの少女のリボンを拳に握り、かけがえのないものを奪った桐山和雄に会いに行く。
いつものように、『ぶん殴る』のではない――殺しに行く。
それで収まる感情はなくとも、あの少女がそれを望まなくとも。
由詑かなみを失ったカズマには何一つ、他に出来る事がなかった。
「カズマさん」
「あぁ……?」
呼び止められて振り返るとLがいた。
目の下の隈を一層濃くしたように見える彼はカズマに、親指と人差し指で摘むようにして一枚の紙を差し出す。
「君を止める事は、私には出来ません……でも行くのならこれを読んで下さい。
この場で集めた情報が全て書いてあります」
「要らねぇ……邪魔すんじゃねぇ」
時間が惜しい――のではない。
動いていたかった。
何も考えずに、闇雲に我武者羅に、ただただ走って何かを殴ってやりたかった。
立ち止まる事が苦痛で、Lの顔を見ていると先程「八つ当たりだった」と収めたはずの怒りが再び込み上げる。
「邪魔するってんなら」
「聞いて下さい」
怒気を込めた声に、それでもLは引き下がらなかった。
カズマに押し付けるように紙を突き出す。
「情報は必要です。
……君なら、分かるでしょう」
「…………」
――そこにいる赤と紫のライダーが敵だ。
握り締めた拳がぎしぎしと音を立てる。
カズマが桐山和雄の危険性に早く気付いていれば。
桐山が危険だと前以て知っていれば。
カズマはかなみから離れず、決して桐山を近付けなかった。
だから情報は、重要なのだ。
「……読むのは面倒だ。口で言え」
「ありがとうございます。
特に大切な事だけ言います」
カズマは妥協し、Lから必要事項だけを聞いた。
危険人物の名前と特徴。
その中で北岡秀一の話になると、Lは真司に話を振る。
「城戸さん、そこに書いてある通り北岡秀一は危険人物という情報が入っています。
貴方は彼の知り合いだそうですが、彼は本当にそんな人物ですか?」
真司もまた情報交換に加わっておらず、丁度メモに目を通しているところだった。
彼は腕を組み、首を傾けて難しい顔をして問われた事について考える。
「俺も戦ってる最中に、北岡さんにやられた事はあります。
でもそれは会ったばっかの頃の話で、今はそんな事するかな……?」
絶対にないとは言い切れないが、本当にやるかどうかは疑わしいという。
しかし上田らの、北岡に極端に怯えた少年がいたという話もある。
Lはその場で北岡秀一についての記載を『危険』から『要注意』に書き直し、カズマ以外の五人もそれに続いた。
「そう言や……あんたが言ってた月ってのに会ったぜ」
「っ……どこで、」
「展望台だ、あんた達と別れたすぐ後だった。
何か、赤いジャケットの……」
名乗られたはずだったが、忘れた。
Lが即座に名簿を出して見せたので、カズマはそこに並んだ名前を順に追っていく。
そしてルパン三世の名を指した。
「こいつと一緒にいた。
だけどよ、月はあんたが言った事に覚えがないらしかったぜ」
「それは演技です、騙されては――」
食って掛かろうとしたLに対し、カズマはその胸ぐらを掴み上げる。
「今となっちゃ、あんたとあいつのどっちが信じられるかなんざ余計に分からねぇんだよ。
これ以上俺のやり方に口出しすんじゃねぇ」
手を放すとLは床に崩れ落ちるように座り込んだ。
それに構わず背を向けたカズマだったが、引き留めようとする者はLだけではなかった。
「待ちやがれです」
翠星石が席を立ってカズマを見上げる。
怒りを堪えてか悲しみを堪えてか、唇が僅かに震えていた。
「止めんなよ」
「お前が止めたって聞かないおバカな事ぐらい、翠星石はちゃんと分かってるです」
「あんだと?」
「だから」
カズマが苛立ちを滲ませても、翠星石が真っ直ぐな視線を逸らす事はなかった。
一度固く目を閉じ、震える唇を噛み締め、そして決心したように言う。
「桐山に会ったら……会ったら、蒼星石の分も殴りやがれです」
カズマはこの警察署で何があったのか何も聞いていない。
だが翠星石の言葉から、蒼星石を殺害したのも桐山なのだという事は分かった。
「……お前はいいのかよ」
翠星石自身が殴りに行かなくて、それでいいのかとカズマは問う。
「ぶっ殺してやりたいです……っ」
対する翠星石は憎しみの言葉を口にして、目には涙を溜めていた。
しゃくり上げてしまって話しにくそうにしながら、それでも叫ぶように言う。
「でもっ……あのおっさんが、あんまり必死に頼むから……!
ぁ、われんでやるです……お前に、譲ってやるです……っ!!」
おっさんとは、恐らく上田ではなく杉下右京の事だ。
何を頼まれたのかカズマは知らない――だが思いは伝わった。
「……分かった。
かなみとソウセイセキ。それから俺。
三人分殴ればいいんだろ」
「五人です」
間髪入れずに訂正してきたのはLだった。
「右京さんを殺害したのも桐山だそうです。
そして……恐らく瀬田宗次郎を殺害したのも、桐山です」
カズマがクッと目を見開く。
ここで突然その名を聞く事になるとは思っていなかった。
「ソウジロウ……!?」
「君は瀬田を放置した、それが放送の直前の事だそうですね。
放送で名を呼ばれるまでの僅かな時間に、他の参加者に襲撃された可能性も捨て切れませんが……。
確認させて下さい。桐山は放送の前に単独行動をしませんでしたか?」
「……っ」
――どうやら、忘れ物をしたようだ。
「あ、の、野郎ぉぉおぉおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
宗次郎と親しかった訳ではない。
しかしカズマと蒼星石に偽り、負傷した宗次郎を殺害し、その後も何食わぬ顔で接していた。
そして蒼星石を殺し、右京を殺し、かなみを殺した。
何もかもが気に入らなかった。
かなみの死だけで正気を失いそうな程の怒りを抱いていたというのに、怒りが胸に収まり切らずに全身に広がる。
カズマは床を乱暴に踏み付けるように早足で歩き、出口の扉を蹴破った。
警察署を出る。
その背に「待って」と叫んだのは、この殺し合いに放り込まれて最初に出会った少女の声。
しかしカズマは応えず、振り返らなかった。
どこに向かったのかすら分からない桐山を追って、カズマは市街地を突き進む。
やがて戦場だった場所に辿り着いた。
そこには破壊の痕と血溜まりだけが残り、当然ながら桐山の姿も浅倉威の姿もない。
カズマは立ち止まらずに通り過ぎていく。
「かなみ……」
誰の耳にも届かない場所で、小さな声で、カズマは彼女の名を呟いた。
返事する者は、もういない。
か細い声は景色に溶けて消えた。
【一日目 夕方/G−9】
【カズマ@スクライド(アニメ)】
[装備]暗視ゴーグル
[支給品]支給品一式×2、タバサの杖@ゼロの使い魔、おはぎ@ひぐらしのなく頃に、Lのメモ、不明支給品0〜1、かなみのリボン@スクライド
[状態]疲労(大)、ダメージ(大)、右腕、背中に裂傷(処置済み)
[思考・行動]
1:桐山に対する強い復讐心。
▽
「私も……外に行くです」
ロビーに残るのは六人。
翠星石が口を開いたのは、カズマがいなくなってから数十分程経ってからの事だった。
覚悟を決めたその声に、他の五人の視線が集まる。
蒼星石の死に対し、翠星石が最初に抱いた感情は虚無だった。
桐山が犯人だと知って、怒りや悲しみが湧き上がった。
殺人を告発し、それが殺意に変わった。
では、今はどうなのか。
桐山がこの地を去り、霊安室で改めて蒼星石らと向き合って、何を思ったのか。
それは初めと同じ、虚無だった。
蒼星石の気持ちを踏み躙り、命を奪った桐山への憎悪は消えていない。
殺してやりたい、あの時右京に止められる事なく絞め殺せていたらどんなに良かっただろう。
だがそれ以上に「もうこりごりだ」と思った。
それは翠星石の性格故であり、カズマに言ったように右京の言葉が引っ掛かっているからでもある。
翠星石は姉妹の中でも特に、アリスゲームに否定的だった。
蒼星石が傍にいてくれれば良い、いつまでも姉妹達と仲良くしていられればそれだけで良い。
父であるローゼンの事は愛していても、彼の為に殺し合う事までは出来なかった。
だからこの殺し合いも嫌なのだ。
桐山を前にした時は逆上して殺そうとしたものの、こうして時間を置くと吹き荒れていた熱が冷める。
冷めれば虚無が戻ってくる。
殺すのも、戦うのも嫌だ。
くんくん探偵を観て、雛苺のイタズラに仕返しをして、真紅や蒼星石に窘められて、ジュンに怒鳴られて、ノリのはなまるハンバーグを心待ちにする。
そんなどうでも良い日常が、今は恋しい。
更に熱を冷ました一因には、右京の死に様がある。
ありがとうございました――と、死ぬ間際に彼は礼を言った。
(これから死のうって時に、何を言ってやがりますか……)
正しいからと言って長生き出来るとは限らない、ましてここは殺し合いの最中だ。
それなのに不殺を訴え満足げに逝った彼の事を思い返すと、余計に嫌になった。
だからきっと、桐山と決着をつけるのは翠星石ではない。
殺し合いも戦いも嫌う翠星石ではない。
人の話を聞かない、野蛮で粗暴で強引で馬鹿で愚直で一途な男――カズマのような男だ。
故に翠星石はカズマに道を譲った。
カズマと共に行く事も考えた。
カズマが去ってからもずっと、今からでも追い掛けた方がいいのではないかと迷い続けた。
それでも翠星石はこの答えに行き着いた。
「外に、桐山を探しに行く訳ではないのです。
殺し合いなんて馬鹿な事をやってる連中を、止めてやるです……」
もし結果的に桐山に出会えば戦うだろうし、仇を討とうとするだろう。
だがその為に行くのではなく、戦いを止める為に行く。
今は翠星石と共にいる蒼星石や真紅も、きっとこの道を望むはずだ。
だから翠星石は、これ以上ここに留まる気にはならなかった。
「しかし、危険だ」
「こんな所にいつまでも居たら、根性が腐って味噌になりますぅ。
それに、これ以上こいつと一緒になんかいられないです」
止めようとした上田に対し、唇を尖らせて答える。
指差した先にいるのはLだ。
Lは間違っていなかった――だが人の気持ちを知らないLにこれ以上付き合えないと、翠星石は改めて口にした。
「俺も行くよ」
決意を固めた翠星石に真司が続く。
彼の疲労の色は濃く、傷薬も使って可能な限りの治療はしたが万全には程遠かった。
「け、怪我人は大人しく引っ込んでやがれです!!」
「俺だってこれ以上見てられない!
それに約束したんだ、劉鳳さんに……俺が翠星石を守るって!!」
劉鳳の名を出され、翠星石はそれ以上言い返せなくなった。
わなわなと手を震わせながら真司を押し止めようとするが、彼を否定する言葉は出てこない。
「か……勝手にしやがれです」
そう言って翠星石は席を立ってその場を離れた。
真司もそれを追おうとするが、その前にLに頭を下げる。
「すみません、俺……翠星石を一人に出来なくて」
「私に気を遣わなくていいですよ。
行ってあげて下さい」
Lには既に一行の離散を止める気はないらしい。
翠星石は僅かに振り返り、こっそりと盗み見るようにしながら二人のやりとりが終わるのを待った。
「上田さん、受信機を」
「あ、ああ」
Lに言われて上田がデイパックからそれを取り出す――逃走した泉こなたの追跡に使ったものだ。
「城戸さん、これをお返しします。
浅倉のデイパックに発信機を仕掛けてありますから、これを辿れば彼に会えるでしょう」
浅倉は真司と同じライダーであり、因縁浅からぬ相手。
翠星石としても何の目的もなく歩き回るより動き易く、有用な支給品と言えた。
「本当は私が浅倉君と決着をつけたいのだが、私には仲間を守るという使命がある……。
本当に、心の底から残念だが、これは君に託そう」
「ど、どうも」
真司は上田から受信機を受け取って強く握り締めた。
そして全員に別れの言葉代わりのお辞儀をし、翠星石を追う。
「……遅いですぅ」
「悪い悪い」
互いに言って、並んで歩き始める。
扉がなくなって吹き曝しになった玄関を通り、警察署を出て行った。
それから暫く歩き、翠星石は一件の民家の前で止まった。
「翠星石は疲れたから、ここで休むです」
「え? まだ出たばっかりじゃ」
「いいから入るです!!」
真司の背中を押し、無理矢理押し込むようにして屋内に入る。
それから彼をソファに座らせ、翠星石もその隣に腰掛けた。
「お前はまだ休んでなきゃ駄目です。
何であそこで私を止めなかったですか……『もう少し休んでから行こう』って、そう言えば良かったです」
説教するように真司に聞かせるが、彼は「ごめん」と言いながら悪びれる様子はなかった。
「でも、あそこに居たくなかったんだろ」
「あ……当たり前です、あんな陰気な奴と一緒になん、て……」
あの場所にいるのが嫌で、早く離れたかった。
蒼星石からも離れてしまうけれど、それでも出たかった。
それは、Lが嫌いだから。
嫌いだから――これ以上泣く顔を、見られたくなかった。
「み、んな……みんなみんな、馬鹿ばっかです、ぅ……!!
何で、何で……!!」
陶器のように白く滑らかな肌を涙で汚す。
シャナやシャドームーン、桐山、浅倉のような殺し合いに進んで乗る連中は馬鹿だ。
そして劉鳳や新一、ミギー、蒼星石、右京、かなみのような人の好い連中も馬鹿だ。
殺し合いをする者達も、自身を犠牲にする者達も――皆、馬鹿だ。
「ぅっ……うぅぅ……わぁぁあああ……!!」
真司以外に人目がないと思うと余計に涙を止められず、翠星石は泣き続けた。
【一日目 夕方/G−9 警察署付近の民家】
【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]庭師の如雨露@ローゼンメイデン、真紅と蒼星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式(朝食分を消費)、真紅のステッキ@ローゼンメイデン、情報が記されたメモ、確認済支給品(0〜1)
[状態]疲労(中)
[思考・行動]
1:真司と同行し、殺し合いを止める。
2:真紅が最後に護り抜いた人間に会い、彼女の遺志を聞く。
3:水銀燈を含む危険人物を警戒。
4:桐山はカズマに任せる。
[備考]
※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。
※真紅のローザミスティカを取り込んだことで、薔薇の花弁を繰り出す能力を会得しました。
【城戸真司@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]無し
[所持品]支給品一式×3(朝食分を消費)、龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎、確認済み支給品(0〜3) 、劉鳳の不明支給品(1〜3)、発信機の受信機@DEATH NOTE
[状態]ダメージ(中)、疲労(大)、劉鳳を殺してしまったことに対する深い罪悪感
[思考・行動]
1:右京の言葉に強い共感。
2:翠星石と同行し、殺し合いを止める。
3:シャナを倒し、彼女の罪をわからせる。
※絶影を会得しました、使用条件などは後の書き手の方にお任せします。
▽
「……光太郎君。
君も、行っていいんですよ」
三人がこの警察署を離れていった。
しかし真っ先にここを飛び出して行きたかったのは、恐らく光太郎だ。
光太郎はカズマと並んで強く、全参加者の中でもその実力は屈指のものだろう。
だからこそここに至るまで殆ど戦って来なかった事が、光太郎の胸を蝕んでいるに違いない。
誰よりも強く優しい彼には、こうしている事は耐えられないはずだ。
それでもここにいるのは、残った面々に気を遣っているからに他ならなかった。
「私が君を、縛り付けたんです。
君が各地の戦場に行けるように計らっていれば、きっと君は多くの人を守れました。だから――」
「でも、Lさん。
俺が出て行ったら……ここはどうなるんですか」
残っているのはL、みなみ、上田、光太郎の四人。
支給品があるとは言え、光太郎が去ればライダーに対抗出来るような人間はいなくなる。
かと言って動き回るには四人という人数は多過ぎる上に、光太郎が他の三人を守りながら戦う事になってしまう。
だから決断しなければならないのだ。
より多くの人を救う為に三人を見捨てるのか。
三人を守る為により多くの人を見捨てるのか。
やがて、彼もカズマ達のように決心する。
「ここに……残ります」
▽
警察署の裏口で、光太郎は見張りをしていた。
扉の下には段差があり、そこに腰掛けて周囲に注意を払う。
上田とLは扉のなくなったロビーから二階の会議室に移動した。
そしてみなみはと言えば、所在無げに光太郎の傍に佇んでいる。
「Lさん達と一緒にいた方がいい」と言っても、彼女は光太郎の傍から離れなかった。
彼女とLの間の確執は光太郎も知るところで、恐らく同じ部屋には居づらいのだろう。
故にそれ以上は無理強いせず、光太郎は彼女の好きにさせる事にした。
光太郎が「座らないのかい」と自身の隣を指差しても、みなみは首を横に振る。
代わりに光太郎の後ろで膝立ちになり、光太郎を背中から抱き締めた。
「みなみちゃん……?」
彼女が光太郎の首に腕を回すと鼓動に体温、そして震えが伝わってきた。
光太郎はみなみを大人しい、人と接するのが不得手な少女と認識している。
その為彼女の行動に驚いたのだが、きっと今までの体験がそれだけ苦しかったという事なのだろう。
こうして光太郎に縋るようにしがみ付きたくなる程、辛かったのだろう。
「大丈夫だよみなみちゃん。
約束通り、俺が君を守る……その為にここに残ったんだから」
みなみはゆっくりと頷いた。
それから光太郎の耳元で、小さく細い声で囁く。
「光太郎さんの事……聞きたい」
沈黙が耐えられない――しかしみなみ自身は口数が少なく、何を話していいか分からないようだ。
光太郎とて話上手とは言えず、面白い話など出来ない。
だから光太郎は視線を前へと向けたまま、素直に語れるだけの事を語った。
秋月杏子や信彦、紀田克美と過ごした楽しい日々。
父の死とゴルゴムによる改造、それから訪れた戦いの連続。
シャドームーンと戦う事の辛さ。
自身の過去を一つずつ、みなみに伝わるように丁寧に説明していく。
彼女は時折相づちを交えながら、静かに話に耳を傾けていた。
「……ねぇ、みなみちゃん」
話す事がなくなり、光太郎は改めてみなみに呼び掛ける。
脳裏にはL達と別れる前の、支給品を分担した時の光景が思い起こされていた。
女神の剣を持ちたいと、みなみは言った。
守られるばかりはもう嫌、無力なままでいる事が怖い、と。
そして何より泉先輩の持ち物を引き継ぎたいと、元々無口なみなみが必死に訴えた。
しかしそれに反対したのはLで、彼は右京から内密に伝えられた事を告白した。
――皆さんがいる前では話せなかった事です。
――岩崎さん、貴女は城戸さんのデイパック……いえ、カードデッキを盗もうとしたそうですね。
――力を求める理由が間違っていなかったとしても、今の貴女は剣を持つべきではない。
「君は戦わなくていい。それは俺の役目だから。
ただ……今は辛いだろうけど、死んでしまった人達の事を受け入れて欲しい」
Lの警戒は、正しいのだろうか。
カズマや一時の翠星石のように、復讐を考えているのだろうか。
光太郎には分からない。
ただこうしている間もずっと光太郎から離れようとしない、何かに怯えているようにさえ見える彼女は。
親しかった人達、この地で出会った人達の死を、きっとまだ受け止められていないのだろうと思う。
「耐えなきゃ、いけないんだ。
辛くても……」
光太郎は失う悲しみを知っている。
後悔も何度も経験した。
だからみなみの気持ちも分かる。
だからこそ道を誤らないでいて欲しかった。
「皆で頑張れば、きっとこの戦いを乗り越えられるよ。
だから悲しくても、死んでいった人達の分も強く生きるんだ」
みなみの返事はなかった。
光太郎のすぐ後ろにいる彼女の表情は、見えない。
気まずく流れる長い沈黙の後、彼女はゆっくりと光太郎の首に絡めていた腕を解いて立ち上がった。
(伝わらない……のか)
光太郎なりの必死の思いを込めたが、届いた様子はなかった。
しかし諦めずにもう一度訴える。
「今は苦しいかも知れない。でも――」
「そう言えるのは」
二人が出会ってから初めて、みなみが光太郎の言葉を遮った。
そして光太郎の背筋――胸の奥に熱と痛みが走る。
「っつぅ……!?」
喉の奥から熱いものが込み上げ、咳込むと掌に血が飛び散った。
胸を中心に、白い服が瞬く間に朱に染まっていく。
振り返ればそこに、みなみが立っている。
「光太郎さんが、強いから……ッ!!
強いから、そんなっ事が……!!!」
彼女の手には、女神の剣が握られていた。
▽
「Lさん、待って下さい」
女神の剣は渡せないと、そう言い切ったLを制止したのは光太郎だった。
「その剣がこなたちゃんの遺品なら、みなみちゃんが持つべきだと思います」
みなみの憔悴し切った様子から、友人達を亡くした衝撃から立ち直れていないのは明らかだった。
そんな彼女から友人との接点まで取り上げる事は、光太郎には出来なかったのだろう。
「しかし光太郎さん、」
「確かにみなみちゃんは戦い方を知らないし、武器を持つのはかえって危険かも知れません。
でも、俺が使わせませんから。
俺がみなみちゃんを守っていれば、剣を使う必要なんてない」
光太郎は、みなみが自衛以外の理由で剣を振るう可能性に気付いていなかった。
その危険を察知していても、「彼女にそんな事が出来るはずがない」と無意識のうちに打ち消してしまっていた。
普段のLならば光太郎にその事を告げ、やはりみなみに剣を取らせはしなかっただろう。
しかしこの警察署でLは仲間を失い、信頼を失い、絶対の自信を失った。
失敗と挫折が、悲しみと後悔が、世界一の名探偵であるLを鈍らせた。
「人の気持ちが分からない」という度重なる指摘に心を揺さぶられ、光太郎の思いを無碍に出来なかった。
そしてその時みなみに譲渡された女神の剣は今、仮面ライダーブラック――南光太郎を貫いた。
▽
ゆたかの死を、見ている事しか出来なかった。
カズマさんと出会ったけど、足を引っ張るばっかりで何も出来なかった。
右京さんと移動している間だって、私は隠れてただけ。
皆が頭を、体を、それぞれが自分の武器を使って戦っている時に、私は何も持ってなかった。
そして私の目の前で、右京さんと泉先輩とかなみちゃんが死んだ。
――私にも……なにかできないかと思って……
まだ八歳……私の半分の歳のかなみちゃんが自分の戦いをしていたのに、私は何をしたの?
……何も、してない。
それでもギリギリのところで迷っていた、越えられないでいた線を越えてしまったきっかけはカズマさんだった。
待って、と――そう言って、その先はどうするつもりだったの?
Lさんや翠星石ちゃんのように目的があった訳じゃない。
ただ寂しくて、せっかくまた会えたのに何も話せないまま離れてしまうのが嫌で、引き留めようとした。
結果的に、カズマさんは私の方を見向きもしなかった。
それで……私は本当に、何も出来ないんだって思い知った。
桐山君を追い掛ける手伝いどころか、カズマさんを呼び止める事すら出来ない。
私は、何の為に生き残ってるんだろう……?
力が欲しい。
力が、欲しい。
その力で何をするの?
その力で何をすればいいの?
――リセットボタンを貰えば、全てが元通りになるんだよ!?
――みなみちゃん! ゆーちゃんがこのまま死んじゃったままでいいの!? ねぇ!?
良い訳、ない……!!
このまま生きて帰れたとしても、そこにはゆたかもみゆきさんもかがみ先輩も泉先輩もいない。
つかさ先輩は優しくしてくれるだろうけど、つかさ先輩だって苦しいはずだ。
私よりももっと泉先輩達の近くにいたつかさ先輩は、私より辛いかも知れない。
そんな先輩の顔、見たくない。
あの人達がいない、残った人達が悲しい顔をしている、そんな日常じゃ、意味がない……!!
皆で帰れないなら、そんな日常は要らないッ!!!
――んーそうだね、何か願いも叶えてあげるよ。
……本当に。
ゆたかやみゆきさんや泉先輩やかがみ先輩が帰ってくるなら。
私もつかさ先輩も笑っていられる日常が帰ってくるなら。
そうしたら……私が生き残った意味も、きっとある。
私は泉先輩の代わりに全部『リセット』する為に、今まで生き残ってきたんだ。
そう決意しても、私に力が無い事に変わりはない。
残りの参加者全員を殺すなんて、私には無理かも知れない。
……でも、泉先輩はやろうとしていた。
カードデッキもなくて、ただの女子高生……私と変わらない条件で、それでも先輩は戦ってた。
私も……戦わなきゃ。
だから私手に入った女神の剣をデイパックにしまって、光太郎さんの後ろに立った。
光太郎さんは強いから。
こうして私を信じ切っている時でないと、この先絶対に殺す事なんて出来ないから。
……でも私は、すぐには出来なかった。
光太郎さんの広い背中を見て、私の事を何も疑っていないその姿を見て、涙が出そうになった。
気付くと私はデイパックを置いて、光太郎さんを後ろから抱き締めてた。
自分のそんな大胆な行動に驚いて――でもやっぱり私には無理だったんだって、ほんの少しだけホッとした。
やっぱり人を殺すなんて――光太郎さんを殺すなんて、嫌だから……。
光太郎さんの話を聞きながら、震えが少しずつ収まっていった。
だけど……。
「今は辛いだろうけど、死んでしまった人達の事を受け入れて欲しい」
落ち着いていた私の心臓が、どくんと跳ね上がる。
光太郎さんの言葉が、私に思い出させた。
『光太郎さんを殺さないと死んでしまった人達は生き返らない』。
『光太郎さんを殺さないと死んでしまった人達の事を受け入れなければならない』。
『光太郎さんを殺さないと死んでしまった人達が戻らない日常がやってくる』。
「耐えなきゃ、いけないんだ。
辛くても……」
耐えられない、辛い、苦しい、悲しい、嫌だ嫌だ嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
「皆で頑張れば、きっとこの戦いを乗り越えられるよ。
だから悲しくても、死んでいった人達の分も強く生きるんだ」
頑張って、戦いを乗り越えて……でもそこにはゆたかも先輩達もいない!!
強くなんて生きられない!
私は光太郎さんとは違う、仮面ライダーなんかじゃない、弱い!!
「今は苦しいかも知れない。でも――」
「そう言えるのは」
光太郎さんが私と違って強いからでしょう……!?
私に優しくしてくれるのも、人が死ぬのを耐えられるのも……!
煮え切った感情のまま、私にもう迷いはなかった。
デイパックから抜いた女神の剣を、光太郎さんの背に突き立てた。
「光太郎さんが、強いから……ッ!!
強いから、そんなっ事が……!!!」
しえん
私は光太郎さんが、好きだった。
優しくしてくれて、親しみやすくて、本当のお兄さんみたいだった。
また会いたいと思っていたから、また会えて本当に嬉しかった。
そんな光太郎さんに、私が人を殺すところなんて……見られたくない。
見られたくないなら、‘見られる前に殺すしかない’。
だから、私を見ないで……光太郎さん。
大好きな光太郎さん。
これからたくさん人を殺す私を、見ないで……!!
見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで
見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで
見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで
見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで
見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで
見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで見ないで
だから……私は最初に、光太郎さんを殺す。
最初に殺す相手が光太郎さんで、良かった。
全部『リセット』したら、きっとまた会えるから。
だから今は……さよなら。
そうして光太郎さんの背中に刺した剣は、思っていたよりも簡単に光太郎さんの胸を貫いた。
余りに呆気なくて、私はそれ以上どうしていいか分からなくなる。
「みなみちゃん……!!!」
いきなり光太郎さんが、剣を握ったまま呆然としていた私を抱き締めた。
私がさっきまでしていたのとは違って、正面から。
血の匂いがする、力が弱い。
でも光太郎さんは私を離そうとはしなかった。
何で……。
「ごめん、気付けなくて……俺は、自分の事ばかりだった……!」
光太郎さんが血を吐いて、それでも私に呼び掛けるのをやめなかった。
光太郎さんの力がますます弱くなっていく、強くなくなっていく。
何で……光太郎さんは私に優しくするの?
光太郎さんが優しいのは、強いからじゃなかったの?
もう強くないのに優しいのは何で?
「それでも聞いて、みなみちゃん……俺の事は、忘れていいから……!」
こうして光太郎さんが話している間も、地面に血が広がっていく。
光太郎さんの傷と接している私の制服の胸も、赤く濡れていく。
右京さんやかなみちゃんの事を思い出して、光太郎さんも死んでしまうんだと今更のように実感した。
……「忘れていい」なんて、どうして言えるの?
何で、怒らないの?
「カズマ君や翠星石ちゃんだけじゃない、上田さんだって、Lさんだって、皆戦ってる…!
俺は君にも、戦って欲しい……!」
…………。
「それは、君が皆の為に人を殺しても……それで皆が生き返ったとしても……きっと君は、幸せになれないから!!」
何で私は、気付かなかったの……?
光太郎さんは、強いから優しいんじゃない。
「俺は君に、幸せになって欲しいんだ……!」
光太郎さんは優しいから、強かったのに。
「あ、ぁぁああぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁああああああああああああああああああああッ!!!!!」
私は剣を落とした。
気付いたって、もう遅い。
私が光太郎さんを――殺してしまう。
▽
南光太郎は何の為に生きてきたのか。
ゴルゴムから地球を救えず、シャドームーンと決着を付けられず。
この殺し合いに呼ばれていなければ全ての人類を救っていたであろう男は、何の為にここまで来たのか。
「光太郎さん、光太郎さんッ!!」
それは、目の前で泣いている少女を救う為。
たった一人の少女の心を救済する為だ。
地球を、人類を守る事に比べればそれは余りに些細で、ささやかで、些末事かも知れない。
それでも光太郎は命を懸ける。
たったそれだけの事の為に、光太郎は命を燃やし尽くした。
「守る」と、彼女に約束したのだから。
「幸せになって欲しい」と、願わずにはいられないのだから。
全ての人を幸せにする事が出来ないのなら。
せめて彼女だけでも、救いたい。
必死に光太郎の名を叫ぶ少女には、きっと気持ちは届いた。
「死なないで」と叫ぶ少女は、失う悲しみを知っている。
もう二度と、自ら人を傷付ける事はないだろう。
だから光太郎は安心して休む事が出来た。
みなみに触れていた腕の力が緩んで、足も体を支えられなくなって、光太郎は血の海に倒れ込む。
彼女の声を聞いて駆け付けた上田とLに、光太郎は最後の願いを託した。
「上田さん、Lさん……みなみちゃんを……」
その一生が短くても、守れたものが僅かでも。
南光太郎はその命を全うした。
「お願い、します……」
【南光太郎@仮面ライダーBLACK死亡】
▽
支援
どうして気付かなかったのだろうか。
Lがどれだけ苦悩していたか。
Lがどれだけ後悔していたか。
顔を見ただけで、声を聞いただけでそれが分かるような人間もいれば、内に封じ込めて見せない人間もいる。
例えこの会場の中に親しい者がいなくても、『正義』を口にするLが人の死に何も感じなかったはずがない。
皆、耐えている。
皆、辛い。
皆、それでも戦おうとしている。
そんな当たり前の事も、みなみには分からなかった。
光太郎が命を懸けるまで気付けなかった。
「私の話を聞いてくれますか、岩崎さん」
上田が光太郎を霊安室に運び、三人は二階の会議室に向かい合って着席する。
Lの声を聞いても、みなみは顔を上げられなかった。
酷い事を言って、酷い事をして、挙げ句にこの結果を招いた。
元々話すのが得意でないのに、こんな時に何を言えばいいのか分からない。
どんな顔をしていいのか分からない。
「ごめんなさい」と言おうとしても、嗚咽に潰れて言葉にならない。
みなみが大切な事に気付くのは、余りに遅かった。
「遅くありませんよ。
貴女は強いんですから」
「っ……」
見透かしたようなLの言葉に肩を震わせる。
否定しようとするが、それを待たずにLは言葉を重ねた。
「私の顔をはたく度胸があるんですからね、弱いはずがないでしょう。
その上で聞いて下さい」
光太郎も、Lも、上田も、何故誰も叱ろうとしないのか。
どうして光太郎を殺害した張本人と平気で向き合っているのか、みなみには分からなかった。
ただみなみは言われるままに頷き、Lの話を聞く。
「まず、私は岩崎さんにも上田さんにも謝らなければなりません。
腑抜けていました。
私のせいで大勢の犠牲が出たからと言って、失った信頼を取り戻す努力を怠るべきではなかった」
Lの行動は合理的だった。
Lが戦場に行ったところで役には立たなかっただろうし、桐山の本質が見抜けなかったのは皆の責任だ。
「私にも何かさせて下さい」と訴えるかなみの姿は一同が目撃しており、Lが彼女を止められなかったのも無理はない。
それでもLの考えと行動は、多くの者にとって心無いものに映った。
「私はまず、こうして皆さんと話をするべきでした。
謝罪し、対話しなければならなかった」
結果、七人も味方がいる状況は崩れた。
みなみが剣を持つ事を止められず、最大戦力である光太郎をも失う事になった。
全て止められるはずだった事だ。
「すみませんでした」
Lは椅子の上で体育座りの姿勢から両膝を開き、頭を深々と下げた。
みなみと上田がその姿に動揺しているうちにLは頭を上げ、改めて言う。
「だからこそ、これ以上犠牲者を出さない為に協力して下さい」
上田の方から「私に任せろ」「大船に乗ったつもりで」といった台詞が聞こえてくる。
みなみも出せない声に代わって何度も頷いた。
みなみを強いと、そう言ってくれるLに対して。
こんな自分でも出来る事があるなら何でもしたい――光太郎の代わりにはなれなくても、何かをしたいと。
それだけを考え続けていた。
「上田さんも岩崎さんも、ありがとうございます。
そして岩崎さん、私は光太郎君から貴女を任されました。
……私に、彼との約束を果たさせて下さい」
光太郎がいなくなった今、ここにいる三人の力は余りに弱い。
それでも「皆で頑張れば、きっとこの戦いを乗り越えられる」。
光太郎の言葉と思いが間違っていないと証明する為にも、 みなみはLから差し出された手を取った。
【一日目 夕方/H−9 警察署二階会議室】
【L@デスノート(漫画)】
[装備]ゼロの剣@コードギアス
[支給品]支給品一式×4(水と食事を一つずつ消費)、ニンテンドーDS型詳細名簿、アズュール@灼眼のシャナ、ゼロの仮面@コードギアス、
角砂糖@デスノート、確認済み支給品0〜2、情報が記されたメモ、S&W M10(6/6)、S&W M10の弾薬(18/24)@バトル・ロワイアル、
首輪(魅音)、シアン化カリウム@バトルロワイアル、イングラムM10(0/32)@バトルロワイアル、おはぎ×3@ひぐらしのなく頃に
[状態]健康
[思考・行動]
1:協力者を集めてこの殺し合いを止め、V.V.を逮捕する。
2:大量の死者を出してしまったことに対する深い罪悪感。
3:みなみを守る。
【岩崎みなみ@らき☆すた(漫画)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式×2、君島の車@スクライド、情報が記されたメモ、女神の剣@ヴィオラートのアトリエ、包帯×5@現実、高荷恵の傷薬@るろうに剣心
炎の杖@ヴィオラートのアトリエ、拡声器@現実、
[状態]健康、疲労(小)、強い後悔と決意
[思考・行動]
1:Lと上田に協力して殺し合いを止める。
2:つかさに会いたい。
【上田次郎@TRICK(実写)】
[装備]無し
[支給品]支給品一式×4(水を一本紛失)、富竹のポラロイド@ひぐらしのなく頃に、デスノート(偽物)@DEATH NOTE、不明支給品0〜1
ベレッタM92F(10/15)@バトルロワイアル(小説)、予備マガジン3本(45発)、雛見沢症候群治療薬C120@ひぐらしのなく頃に、
情報が記されたメモ、浅倉のデイパックから散乱した確認済み支給品1〜3、瑞穂の不明支給品0〜1
[状態]額部に軽い裂傷(処置済み)、全身打撲
[思考・行動]
1:Lとみなみに協力する。
※東條が一度死んだことを信用していません。
※真司・翠星石・上田・みなみ・Lが持つ「情報が記されたメモ」に書かれた北岡の情報は、『危険』から『要注意』に書き換えられました。
※「DEAD END(後編)」で集められた支給品と光太郎の支給品を、上田・みなみ・Lの三人で分担しました。
以上代理投下完了
投下乙です。うわあ……うわあ……
光太郎が死んだ時は「対主催終わった…」と思ったけど、死亡時のやり取りにはホロリと来たわ
自分が辛すぎて、皆も辛いことに気付けなかったっていうのが、抽象的だけど「ロワらしく」て良いなぁ…
状況的にはかなり厳しいけど、3人には光太郎の遺志を無駄にしないでほしい
投下乙……ってなんじゃこりゃああああああああああああああああああ!!!!
まさかのてつを脱落、こいつだけは絶対に死なないと思ってたのに……
誰がシャドームーンを倒すんだよおおおおおおおおおお!!!!
まだ強力マーダーはほとんど残ってるのに、誰がそいつらと戦うんだよおおおおおおおおおお!!!!
やべぇよ……やべぇよ……
登場話からフラグは立っていたけど、まさに最悪の形で炸裂しちゃったなぁ
なんというかどのやり取りにも寂しさがある、読んでてすごい悲しくなった
対主催グループの崩壊に、大切な人を失った反応、そして絶対に死なないと思ってた光太郎の死
ロワに巻き込まれた時点でそうだけど、もう決して元には戻らないと痛感させられる話だった
投下乙です!
うおおお………ある意味一段落ついた警察署と思ったらまさかの……orz
光太郎の脱落は悲しすぎるよ、それを殺ったのがみなみってのも悲しすぎるよ……
開始当初からの爆弾が最悪の形で爆発してしまった
投下乙!
うわああああ、光太郎ぉぉぉぉ!
くっ、なんて悲しい話なんだ。胸が切ない
GJ!
ああ、そうか
これが、南光太郎なんだなあ
申し訳ございません、離席しておりました。代理投下ありがとうございます。
そして感想も沢山戴けて本当に有難いです。
遅くなりましたが、誤字脱字、問題点等がございましたら御指摘戴ければ幸いです。
444 :
創る名無しに見る名無し:2012/05/02(水) 23:41:09.46 ID:2A1RS3lp
本当に優しいからなぁ・・・光太郎・・・
そういえば結局バトルホッパーと再会出来なかったんだよな、来てることすら知らないし。いつか会って頬擦りするぐらい喜ぶだろうなって思ってた。・・・バトルホッパーが放送聞いたら泣いてしまうだろうなぁ。「ライダー・・・」って ・・・
投下乙です
こ、光太郎、まさかこんな形で脱落するなんて……
それでもみなみを引き戻したあたり、最期の最期までヒーローだったよ
対主催者厳しすぎるw
対主催=CCO組
馴合いゴッコ=L組
対主催の足を引っ張りそうな駒が減っただけだ
光太郎脱落で対主催者の
最大戦力はCCOさんになったか
カズマはボロボロだし
投下乙!
光太郎……まさか、こんなところで、こんな形で死んでしまうとは!
これは対主催にとって大打撃だなあ
うう…でも、みなみちゃんが立ち直ってくれてよかったよぅ…!
最期までGJだったよ光太郎
危険対主催としてなら狭間偉出夫やシャナもいるし、マーダー同士の潰し合いだったあるはず…
後藤影月浅倉桐山水銀燈縁スザク詩音
「俺達のバトロワはこれからだ!!!」
変換を間違えておりました、題は「それぞれの行く先」でお願い致します。
また予約ktkr
対主催涙目というが…単純な戦力だけじゃロワは生き残れないよ
だって光太郎が南に殺されたりするんだぜ
Lも対人スキルが上がったしここからは上田も悪魔の実で大暴れしたりするかもしれないじゃないか!
他はともかくそれはないな
>上田が大暴れ
詩音だけ一般人マーダーだね
他のマーダーは実力者揃いなのに
>>455 こなたが消えたからね
しっかしこなた、死ぬときはあっさりだったけど、とんでもない爆弾を残したよなあ
縁さんも結局剣心以外にも
フルパワー出せるみたいでかなり強敵だし
これから大暴れしそうw
一応一般人よりなのは浅倉だろ
デッキ無しなら、少なくとも超人枠には入らない
>>458 周りにいるのがシャドームーンシャナ志々雄組と
どう考えても縁より強い上に、マーダーか危険対主催しかいないぞ
(ヴァンたちはすれ違った方向的になさそうだし)
おまけにこのロワは、マジキチの覚醒は死亡フラグ…
月vs月影vs絶影まだー?
>>460 宗次郎の悪口はやめろ!
ふと気になったんだけど、今の書き手の人たちの代表的なキャラクターって誰になるんだろう
◆KKid85tGwY氏がシャドームーン、◆EboujAWlRA氏が後藤って言うのは前から言われてたけど
個人的に◆.WX8NmkbZ6氏は志々雄な気がする
縁は志々雄さんの仲間になった方が
長生きできそうな気がする
Lさんも対人スキルが上がったことだし
狭間さんも頑張って欲しい
知的スペックは
桐山>月≧L>三村?
参戦時期的に考えてもLは月より劣るってことはないだろ。
桐山は戦術的頭脳(効率よく勝つ方法)なら優れてるけど
推理力ではLや月に劣るはず
蒼星石の件でも(防犯チョッキは持ち出すべき支給品だったとはいえ)
証拠を残して右京さんの目をごまかせなかったし
その話書いた人の責任であって桐山の責任じゃないだろw
あー、IQ240の大学教授忘れてた
上田ぁ!
狭間「……」←IQ256
>>468 でも、実際桐山の頭の良さは純粋な知能指数+戦術方面だと思うけどな
原作でも不良グループのリーダーとして色々と作戦考えてたわけだし
Lたちに上手くステルスやってたのも、知略の見事さというより考えの読めなさ(感情のなさ)によるところが大きいし
月とLを過大評価するわけじゃないが、感情が無い分、直感で「こいつは怪しい」と思ったり主催者の意図を読んだりするのは苦手そうだ
(カズマの時のように、簡単な性格を把握して扇動することはできたとしても)
シャナって戦闘時に赤毛になるんだっけ?
縁さんが見たら剣心思い出して逆上しそう
シャナの髪はただ赤くなるんじゃなく、燃える
しかも見た目幼女で、どうやって剣心を連想しろと
>>471 原作から呼ばれてない
漫画版の桐山さんは、悟りの境地すら即座にラーニングするチートキャラなんだぜ?
出典基準なら、最低でもLレベルの推理力と浅倉レベルのライダー熟練度はラーニングしてるさ
漫画版には経験値積ませちゃダメ絶対
>>474 漫画版桐山ってそんなすごかったのか
でも、右京さんはともかくLって桐山の前だとほとんど推理してないと思うんだけどな…w
(こなた問い詰めた時も、あくまでかなみの証言+カズマの証言という物的証拠を盾にしてたし)
>>474 ラーニング能力と推理力って関係あるか?
いや確かに頭が良くないとできないし観察力もあるとは思うけど、推理力とはまた別だと思うんだ
いくら漫画版桐山が学生じゃないどころか人間じゃないにしても、本職の推理系作品の主人公とかより頭脳が上って言われるとちょっとなー
漫画版桐山は人外レベルのスペックだけど、さすがにLの推理力まではラーニングできないんじゃないかなー
杉村のアレはあくまで武術として技に出てた訳だし、Lの推理力とはまた別物なんじゃないか?
推理力をラーニングって確かにピンとこない
バーロ勢みたいなご都合後出し推理はラーニング不可能だと思うが、デスノ勢の推理力なんて経験則による理論の組み立てだろ
長年の鍛錬を積み重ねた達人が瀕死状態でやっとこ開眼した精神状態までプロセス抜きででラーニングしちゃうんだぜ?
ハード的には申し分ないがソフト的にどうなんだ?ってのの解で、ソフト面もラーニング可能な描写じゃんって云々
覚醒後の発けいは技術だが、穏やかな表情になっていきなり気が膨れ上がって突風が巻き起こる技術なんか有ってたまるか
>>479 いや、デスノ勢のそれも明らかに理論の組み立てとは言い難いんだが
小型液晶テレビをポテチの袋の中に仕込んで、監視カメラの目をごまして…なんてのが、経験値や精神状態でどうにかなるとは思えない
月にいたっては経験も何もない(ノート拾うまで一般人の)高校生だぞ?
誰も得をしないような話題はそろそろ止めよう。
何よりも重要なのは、 IQ200を超えてしまっている上田先生を褒め称えることだ。
君たちにとって上田先生が偉大過ぎるが故に いるのが当たり前になってしまったらしい。
無理をせず、恥ずかしがらず、 自然体のままに上田先生を褒め称えてくれればいい。
初めは上田先生の大きさに驚いて思わず目をそらしてしまうかも知れないが、それも慣れだ。
私はいつでも、君たちのベストを待っている。
そんなに桐山大好きなら自分で桐山が推理ラーニングする話を書けばいいだろ…
>>481 最後の行で「私」になってますよ上田先生
うん、上田先生は偉大ですよ
場を和ませる的な意味で、いやほんと
銀様って周りにかなり影響及ぼしてるマーダーだよね
スザクはもちろん桐山も元は銀様と出会ったから・・・
昨日やってた相棒の映画見たけど、劇場版でメインキャラ殺すとかすげぇな……
最終回前に主人公死亡に匹敵するくらい驚いた
相棒の浅倉さんもなかなか
キチだったね
TRICKではカツラ被って刑事やってるのになぁ……
浅倉威を投下します。
浅倉威は警察署付近の乱戦から離れ、北へ北へと駆けていた。
常に暴力と戦いが隣合わせの浅倉ではあるが、この会場に来てからの疲労は隠し切れなくなっている。
焼け落ちた教会を視界の端に映した頃、浅倉は手近な民家の扉を蹴破るようにして転がり込んだ。
靴を履いたまま侵入し、どっかと床に座り込む。
デイパックに乱暴に手を突っ込み、支給品の食料を掴み出した。
手加減を知らない握力で潰れた不格好なパンに、浅倉は構わず食らい付く。
最後に食事をしたのはルルーシュ・ランペルージの死体を発見した直後。
既に十二時間以上が経過しており、加えて浅倉は殺し合いが始まって以来休憩をしていない。
浅倉にも休養が必要な時期が来ていた。
浅倉はこれまで睡眠は疎か立ち止まる事さえ惜しんで動き回り、各地の戦いに油を注いで火を点けた。
しかし、足りない。
まだ足りない、まだ足りない――浅倉の渇きはいつまでも満たされない。
こうして一食分以上の食事を一度に摂取しても、浅倉は飢えたままだ。
この渇きと飢えが一時でも紛れる瞬間があるとすれば、それは宿敵との決着の時に他ならないだろう。
北岡秀一。
『ゾルダ』ではなく、弁護士北岡秀一。
北岡との決着が、浅倉の最たる望みだ。
「黒を白にする」等と謳いながら自分を無罪に出来なかった無能な弁護士――それが浅倉にとっての第一印象だった。
だが今となっては、きっかけは最早どうでもいい。
北岡と戦って正面から潰す事が出来れば、それでいい。
叩き壊す。叩き潰す。
浅倉にとって他者との関係とはそれらによってのみ成り立っていた。
だが北岡とは何度衝突しても決着が付かず、その関係はまさに『仇敵』と呼ぶに相応しい。
浅倉が初めて得た、全力で遊んでも壊れない玩具。
一時的に他の獲物に目を向ける事はあれど、北岡の存在だけは別物なのだ。
総合病院で北岡達は東に逃げたようだったが、浅倉がそれを追って突き進んで行った先は海だった。
恐らく北岡達は途中で方向転換をしたのだろう。
怒り狂って探し回り、結果として以前戦いを中断した相手と戦ってある程度の憂さを晴らせたものの。
それでも――北岡以外の敵との戦いにも楽しみを見出してはいるが、前菜に過ぎない。
本命の前の繋ぎであり、準備運動。
否、暴力無しで生きられない浅倉にとってはただの呼吸に等しいのかも知れない。
それ程に、浅倉は北岡との決着に執着していた。
パンを貪るように口に押し込み、頬張り、食い千切る。
強引に咀嚼して飲み込めば、また次に手を伸ばす。
更にそれだけでは満足しなくなり、立ち上がって台所へ進んで冷蔵庫を開けた。
卵を見付け、三個四個と殻を割ってコップに中身を入れる。
そして水を飲むような調子で生卵を飲み干した。
ひたすら食物を喉に通していくその姿は使役するミラーモンスターと同じ、大蛇のようだった。
そうして腹を膨らませた後、浅倉は床に大の字になって寝転がる。
泥を啜って生きてきた。
およそ人間らしい扱いを受けた事がない。
両親を放火で殺害し、生き残っていた弟も笑ってベノスネーカーに食わせた。
息をするように暴力を行使し、北岡の弁護があっても懲役十年。
そんな男にとっては例え家屋の中にベッドがあったとしても、こうして固い床に転がる方が性に合っているのだ。
それを証明するように、浅倉は目を閉じて数分と掛からずに眠りに落ちる。
第三回放送前、バトルロワイアル開始から十七時間以上が経過。
ここで浅倉は初めて、ようやく小休止を取った。
【一日目 夕方/F−9 教会付近の民家】
【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
[装備]FNブローニング・ハイパワー@現実(12/13)
[所持品]支給品一式×2(水とランタンを一つずつ消費)、王蛇のデッキ@仮面ライダー龍騎(一時間変身不可)
贄殿遮那@灼眼のシャナ、発信機@DEATH NOTE、ルイズの眼球、背骨(一個ずつ)、CONTRACTのカード@仮面ライダー龍騎×1、未確認支給品0
〜2
[状態]疲労(大)、イライラ(大)、全身打撲
[思考・行動]
0:北岡を探す。
1:北岡秀一を殺す。
2:五ェ門、茶髪の男(カズマ)、学生服の男(桐山)、金髪の男(レイ)を後で殺す。
3:全員を殺す。
[備考]
※ライダーデッキに何らかの制限が掛けられているのに気付きました。
※デイパックに発信機が仕掛けられていることに気付いていません。
※ジェノサイダーに本来の素材からなる個体との差異はほとんどありません。
卵×4@現実
教会付近の民家で浅倉威が調達。
普通の卵だが、食べる前に調理はした方が良い。
投下終了です。
誤字脱字、問題点等がございましたら御指摘戴ければ幸いです。
投下乙ー
浅倉特製の生卵ジュースがまた出てくるとは思わなんだ
今回は北岡と決着つけれそう……か?
投下乙です
そういや本編で貝ごとパスタ食ってたり、トカゲ(?)の丸焼き食ったり
カップ焼きそば食ったりしてたよなw
浅倉を演じた人は貝を丸かじりした時に歯が欠けたらしい
そんなもん噛み砕いたら誰でも欠けるだろ
欠けると分かってて何故やったんだ
また予約が来ているだと……早過ぎィ!
いやな予感しかしないw面子だな
>>497 仮面ライダーに呼んでもらって張り切っちゃった系
トカゲの丸焼きはさすがに本物食ってないらしいけど、生卵といいムール貝といいここまでやるのはすげーわ
まあ浅倉のおかげで中の人は再び光を浴びた訳だしな…
1回目も2回目もマイナージャンルではあるがw
これまた予約キター!
前回のは破棄されたけど、今回こそ狭間と蒼嶋は出会うのか…?
せっかくルパン好みな美女と一緒に
予約されたけどそれどころじゃないなw
クラリスがアウト年齢ならちょい上のCCもアウトじゃないか?
CCって(あの世界では)見た目は17前後に見えたはずだよな?
クラリス18さい
しーつーさんじゅうななさい
ルパンは「未成年だからアウト」じゃなくて、20代後半くらいの
恋愛経験も積んで仕事のキャリアもあって人間として完成されてる女性が好きそうなイメージ
いや現実の20代後半女性がどうとかそういうアレじゃなくてね
つまるところ実力第一の世界の住人だし、若さだけで乗り切れるような少女にはあまり魅かれないんじゃないかと
ちっちゃい頃の姿見てるから保護者目線になっちゃって、女として見れないって線もある
このロワで言うなら
アイゼルさん・・・
ヴァン、C.C.、雪代縁、ルパン三世を投下します。
「北に行く」と、そう言い張るヴァンを説得するのに苦労した。
性格には、説得に苦労した挙げ句に失敗した。
C.C.としてはE-1の分岐点で東に向かいたかった――別行動になってしまった竜宮レナ達と早く合流したかった。
だがヴァンは一度決めると、それが下らない事であっても曲げるのを非常に嫌う質らしい。
C.C.が粘り強く言い続けたものの、ヴァンは北へ北へと走り続けた。
結局ヴァンは会場の最北端まで到着してようやく止まり、C.C.は散々ヴァンを罵倒した。
「こんな所に他の参加者がいるはずがないだろう!」
「北へ行くっつって、あんたも賛成しただろ」
「物には限度があるんだ!
あの分岐点まで戻るぞ!!」
ここから海岸線沿いに東に向かう選択肢もあるが、今更会場の端をうろうろしている参加者が多いとは思えない。
それなら分岐点に戻ってから東に向かった方が、人に会って情報を得る機会も増えるだろう。
幸いトノサマバッタを象ったような奇妙なデザインのバイク――バトルホッパーの速度はかなりのものだ。
一度戻るとしても、タイムロスはそう多くない。
十分以上話して何とかヴァンを説得し、二人は分岐点に戻った。
そこから改めて東に向かい、緑の髪を靡かせながらC.C.は周囲に注意を払う。
北に山林、南に海を望んで一直線に進むその速度は、並の自動車では追い付く事も叶わないだろう。
奇襲を受ける恐れは少ないが、とにかく目立つ。
正面を見るにはヴァンの背が邪魔だったものの、覗き見るような形で前方を注視した。
やがて市街地が見えて来た頃、何の遮蔽物もない順調な道程の前に小さな影が現れた。
男女の判別すらつかない距離の中、ただ鮮やかな赤が目に付く。
C.C.達に対し背を向け、市街地へ向かっている事は見て取れた。
その影が振り返ると、両手を上げて自身の存在を主張するように手を振り始める。
随分派手な格好をした者――それが男だと分かるのには十秒と掛からなかった。
「おーい、お二人さーん」
走行中のC.C.とヴァンに向けられた、拍子抜けするような間延びした声が聞こえる。
「おい、ヴァン」
「分かったよ、止まればいいんだろ」
レナ、シャドームーンの時から三度目にしてようやくヴァンはC.C.の期待に沿い、派手な服の男の数十メートル手前で停車した。
男が立っていたのは丁度市街地の入口にあたる地点。
バトルホッパーから降りながら、C.C.は改めて男を観察する。
相手が殺し合いに乗っていないとも限らない、そんな状況で手を振っていたこの男は極めて無防備に見えた。
「おーっと、まさかこんなとんでもねぇ美人が出てくるたー思わなかったぜぇ。
しかもあんた、俺様見覚えが――」
「相手が殺し合いに乗っていたら、どうするつもりだったんだ?」
露骨にC.C.の胸と顔を交互に見ながら、男は軽薄な口を叩く。
C.C.がそれを無視して率直に疑問を口にすると、男は緩んだ頬のままで答えた。
「あんたが腕を絡めてたから、二人乗りってのは遠目からでも分かった。
一人しか帰さねぇっつってる殺し合いに二人で乗るってのは可能性が低い。
あったとしても、お互いべったりくっついても平気な信頼関係なんざそうそう築けねぇさ」
好きでくっついていた訳ではない、という点は敢えて触れない事にした。
この男はバイクに気付いてすぐに手を振っていた――つまりそれだけ判断が速かったという事だ。
またこうして話している間も余裕を見せているあたり、相手が二人でも戦う、或いは逃げる算段がある。
見た目に反して馬鹿でも弱者でもないらしい。
「そういうお前は殺し合いに乗っていないだろうな」
「もっちろんさ。
疑うってんなら、この場で素っ裸になってもいいぜ」
「よし、なれ」
C.C.が容赦なく言うと、男は何の躊躇いもなくトランクス一丁になってみせた。
どうだ、と言わんばかりに胸を張られ、C.C.は思わず思った事を口にしてしまう。
「馬鹿が増えた……」
▽
C.C.らから聞かされた話に、ルパンは大いに興味をそそられた。
彼らは既に数回同じ話をしているらしくうんざりしていたが、ルパンとしては目を輝かせずにいられない。
聞いた事もない国や星の話に、疑うよりも先に胸を震わせた。
これまで夜神月の監視の為に長く展望台に籠もり、手に入った情報は多いとは言えない。
そんな中でルパンが半信半疑でいた『異なる世界』の存在を、彼らは既にほぼ確実なものとして見ているのだ。
月にとっては魔法も別の世界も気味悪いものかも知れない、だがルパンにとって『未知』はどんな食材にも勝る御馳走だった。
とは言え彼らの話を鵜呑みにしていた訳ではない。
彼らの話の中に矛盾は無いか、表情はどうか。
彼らが嘘を吐いていないとしてもそれが本当に異なる世界に結び付くのか。
様々な可能性を考えた上で話に熱心に耳を傾けていた。
しかし、そもそも異なる世界を強く否定する要素はあるのか。
カズマの見せた超人的な力は、ルパンの持つ常識では説明出来ない。
常識知らずのカズマはともかく月までも、有名人であるルパンを知らないのは奇妙な事だ。
また寄生生物が実在すれば裏社会ですっかり有名になっている事だろう。
いつの時代でも、先端の情報を握っているのは盗人。
社会現象になるような事を、その盗人であるルパンが知らないのは妙だ。
つまり様々な異常を目にした今となっては、『異なる世界』を否定するものは常識ぐらいなのだ。
ならば、常識を捨てる。
常識破りな事を生き甲斐にしているルパンにとって、それは難しくはなかった。
互いの世界の事、そしてこの場に来てからどんな体験をしたのかを互いに語った後、C.C.はギアスとコードについて明かした。
「そんな話を初対面の俺様にしちまっていいのかい」と冗談めかして言ったものの、既に前に会った男に話したのだという。
ルパンも全参加者の前でルルーシュ・ランペルージが見せた挙動について聞きたいと考えており、好都合だった。
『絶対尊守』。
『ギアス』。
『不老不死』。
『コード』。
魔法に等しいそれらの言葉に、ルパンは一層夢中になるのだった。
▽
「で、だ……あんたはあのV.V.と知り合いなんだよな?」
「ああ」
C.C.はギアスとコードについて情報を開示するにあたり、「V.V.もコードを所有する不老不死の存在」と説明している。
知り合いであると宣言しているようなものだ。
とは言え嚮団についてまでは口にしていなかった。
C.C.もまたV.V.らと共に『ラグナレクの接続』に関わり、一時は嚮団教主も務めている。
下手にこの事を知られれば、C.C.自身の首を絞めかねない。
故に「信用に足る」と判断したレナにさえ、教えていなかった。
「V.V.とはどういう関係で」
「知り合いだ」
ルパンの問いをはね付ける。
だが彼はこの程度で引き下がる男ではなかった。
「あんた、あのガキ――ガキじゃねぇか。
あいつが何を企んでるのか、検討が付いてるんじゃねーの?」
「知らん。V.V.が何を考えているか、私には全く分からない」
「…………」
ルパンにじっくりと表情を観察され、C.C.は舌打ちした。
C.C.とてこの殺し合いに嫌な予感を抱いており、このままでは不味いという漠然とした感覚がある。
かと言ってベラベラと喋るような話ではないのだ。
『ラグナレクの接続』。
C.C.とV.V.、二人のコードを用いて集合無意識に働き掛け、生死を問わず全ての人間の意識を統合する。
かつてV.V.とその弟シャルル・ジ・ブリタニア、ルーシュの母マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア、C.C.が関わった計画。
V.V.とシャルル、そして肉体を失ったマリアンヌが今なお焦がれているに違いない理想の世界。
それが殺し合いに直結するかはともかく、殺し合いを始める動機に繋がっている可能性は高い。
「確かに嘘も秘密もねぇ女ってのはつまらねぇがよ。
今それを言ってっと全員お陀仏かも知れねぇぜ……不死身のあんた以外は、な」
「……」
説明すべきか否か、言葉を詰まらせる。
そこへ数時間前の再現のようにヴァンが口を挟んだ。
「あんた、まだ言ってない事があんのか」
「今度は話を聞いていたのか?」
「聞いてないが、あんたが隠し事をしてるのは分かった。
あれだ、その……さっさと話して、終わらせろ。
俺は早く帰りたいんだ」
C.C.はヴァンの相変わらずの態度に閉口するが、結果としてその言葉に背中を押される事になった。
投げやりで適当なヴァンの姿に、長々と考える事が馬鹿馬鹿しく思えるようになった。
ルパンが本当に信用出来るのか、出会って数十分では何も分からない――だがここで足踏みしていても状況は変わらないだろう。
C.C.は腹を括り、知る限りの事を話す決意をした。
杉下右京の失敗は、C.C.とヴァンの前で早々と正義を説いてしまった事だ。
少なくともそれを後回しにし、いつものように情報収集を優先していれば別の結果が待っていたかも知れない。
「一つ、よろしいですか」。
「あと、もう一つだけ」。
そう言って粘り、今のルパンのように決定的な情報をC.C.から引き出していた事だろう。
右京の正義がC.C.とヴァンの心を頑なにし、右京を真実から遠ざけた。
それは既に過ぎ去った――過去の話である。
「私も全てを知っている訳ではない」と、前置きしてC.C.は語る。
『ラグナレクの接続』。
『神殺しの計画』の全容。
それをルパンは真剣な表情で、ヴァンはそっぽを向いて欠伸をしながら聞いていた。
語り終えたC.C.はルパンを睨み、見下しながら言う。
「私にここまで説明させたんだ。
この情報に見合うだけの考察を聞かせてくれるんだろうな?」
「わーったわーった、その前に確認すっけどよ。
人間全員の意識をくっつけちまう計画ってのは、」
ルパンは息継ぎと共に言葉を切り、C.C.の様子を伺うようにしながら問う。
「『異なる世界』全部に範囲を広げる事は可能かい?」
暫し、辺りを沈黙が支配した。
風が止み、波が静止し、揺れていた葉さえも息を潜めるような空白の時間が流れる。
C.C.はその問いに答えようとして口を開け、言葉を失って閉じ、それから歯を食い縛った。
「あり得ない、不可能に決まっている!!
『ラグナレクの接続』で一つの世界の意識を統合するのに、何十年計画したと思っている!?
それを全ての世界等と、出来る訳がないだろうッ!!」
ルパンの問いは。
それはまさに、C.C.が抱いていた最悪の想定だった。
C.C.も薄々気付きながら考えないようにしていた可能性だった。
「しっかし異なる世界とあんたらの計画が繋がってるって言われちゃ、そういう話になっても仕方ねぇだろ〜。
それにあんたは自分で『V.V.の近くに異なる世界からの協力者がいるだろう』っつったじゃねえか。
嚮団の技術から逸脱してるからってよ」
声を荒げて否定しようとしたC.C.に対し、ルパンは飽くまで冷静に返した。
それでも――あってはならない事だ。
「そもそも『異なる世界』の人間を呼ぶなんざ、あんたの知ってる嚮団の力じゃ無理なんだろ?
最悪、ってのは考えといた方がいいぜ」
「それとっ……この殺し合いと、何の関係が……!」
「そいつぁーこれから考えるけどよ。
手段と目的が直接的に繋がってるなら、まー……殺し合いをすると、不可能な計画が可能になるとか」
ルパンもまたこの回答には不満があるようで、腕を組みながら首を九十度以上傾けて考え込む。
殺し合いの中で実験しようとしている。
殺し合いの中で観察しようとしている。
殺し合いの中で応用しようとしている。
様々にルパンは仮定を提示したが、結論は「V.V.に直接聞かない事には分からない」というところで落ち着いた。
「まーこんなとこだな。
満足して貰えたかい?」
「しない! していないぞ私は!」
「そいつぁー残念」
ルパンは再び頬を緩ませて笑った。
話が終わったと判断したらしいヴァンは既にバイクに跨り、エンジンを掛けている。
C.C.はルパンを一睨みしてから、ヴァンに続いてバイクに乗った。
「西には行かない方がいい。
これからシャドームーンが来るからな」
「あぁ、俺様もまだまだ長生きしてぇからな。
一人で喧嘩を売りに行くのはやめにしとくぜ」
「ちなみにこのバイクに三人乗るのは無理だ」
「わーってるって、お二人さんの邪魔はしねぇよ」
含みのある言い方にC.C.が不平を漏らそうとするが、不意にヴァンが顔を上げて辺りを見回した。
眠たげな顔を引き締め、ルパンの方へと振り返る。
「おい、あんた――」
「どうかしたかい?」
対するルパンはポケットに手を入れたまま笑い、二人はそのまま無言で向かい合っている。
二人の意図を掴めないC.C.が問おうとしても、それより早くヴァンがその状況を切り上げた。
「分かってんなら、いい。俺達は行く」
何だったんだ、とC.C.が尋ねてもヴァンは答えない。
「じゃーな――あ、坊主と嬢ちゃんに会ったらよろしくなぁー」
市街地を東へと走り出したバイクに向かって手を振るルパン。
彼を背に進むC.C.は気丈に振る舞いながら、不安と焦燥をより濃くしていた。
そして、一度も振り返る事はなかった。
【一日目午後/F−6 市街地】
【ヴァン@ガン×ソード】
[装備]:薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-、バトルホッパー@仮面ライダーBLACK
[所持品]:支給品一式、調味料一式@ガン×ソード、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎
[状態]:疲労(小)、右肩に銃創、右上腕部に刀傷、各部に裂傷、全身打撲
[思考・行動]
0:とりあえず前に進む。
1:カギ爪の男に復讐を果たすためさっさと脱出する。
2:緑髪の女(C.C.)の護衛をする。
3:次にシャドームーンに会ったらバトルホッパー返す。
[備考]
※ヴァンはまだC.C.、竜宮レナの名前を覚えていません。
【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ R2】
[装備]:無し
[所持品]:支給品一式×4、エアドロップ×2@ヴィオラートのアトリエ、ピザ@コードギアス 反逆のルルーシュ R2、ファサリナの三節棍@ガン×ソード、
カギ爪@ガン×ソード、レイ・ラングレンの中の予備弾倉(60/60)@ガン×ソード、確認済み支給品(0〜2)
[状態]:疲労(小)
[思考・行動]
0:東に行き、レナ達と合流したい。
1:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない。
2:後藤、シャドームーン、縁、緑のスーツの人物(ゾルダ)と紫のスーツの人物(王蛇)は警戒する。
[備考]
※不死でなくなっていることに気付いていませんが、回復が遅い事に違和感を覚えています。
※右京と情報交換をしました。
※ルパンと情報交換をしました。
▽
ヴァン達の姿が見えなくなるまで手を振って、それからルパンは背後へと視線を遣る。
「そら、俺様一人になってやったぜ。
用事があるってんなら聞いてやっから出てきな」
気配はなかった――だが終始感じていた視線。
それは決して「気のせい」で片付けられるようなものではなく、ルパンの経験と本能が確かに危険を知らせていた。
そして呼び掛けから殆ど間を置かず、物陰から白髪の青年が姿を見せる。
幽鬼の如く佇むその青年と目が合った瞬間、ぞわ、とルパンの全身の毛が逆立った。
「私怨はないが――」
殺意も怨みも悲愴も、全てを込めた濁った瞳。
それはルパンが知る限りでも、この年頃の青年が持つようなものではない。
「あんたにはここで犠牲になってもらウ」
上海訛りで、青年は静かに言う。
青年が手にしている得物は日本刀で、ルパンもまたデイパックから刀を取り出した。
敢えて三人で立ち向かわずにヴァン達を逃したのは、負傷したヴァンと女性であるC.C.を巻き込まない為だ。
またルパンがヴァン達に無理矢理同行してこの場を逃れたとしても、他の参加者が襲われるだろう。
殺し合いに乗った人間は縛り上げ、大人しくさせておきたい――そう思ったからこそ、一人残った。
ルパンは一つの鞘の両端から一本ずつ小太刀を抜き、踏み込んでくる青年を迎え打つ。
▽
F−2から東を目指し、やがて市街地に着いた。
支援
明治時代を生きる雪代縁にとってその景色は余りに異様で、『異国』というよりはやはり『別世界』に近かった。
少し歩くと血の臭いが鼻に付き、そちらへ向かうと二つの死体を発見する。
大砲でも撃ち込まれたかのような周囲の惨状は、ここで激しい戦闘が行われた事を表していた。
生きた人間が付近にいない事を確かめつつ、縁は死体に近付く。
既に飛び散った血の乾いた少年の死体の傍らには、折れた自らの愛刀と空のデイパック。
倭刀は使い物にならないと諦め、代わりにデイパックを拾ってそれまで手で持ち運んでいた銃や刀をしまった。
外からは死角となる民家の庭先で暫し体を休め、やがて近付いてくるエンジンの駆動音を聞く。
乗り物――他の参加者が訪れたのだと判断し、気配を消しながら庭を抜け出した。
エンジンの音は途中で消えたが、その者達を発見する材料としては充分だった。
見覚えのある黒い服の男と緑髪の女、それに見知らぬ赤い服の男。
三人を相手にするのは分が悪く、縁は聞き耳を立てながら物陰に潜む。
呼吸を細くし、殺気を押し止め、視線を集中させた。
「C.C.」「ヴァン」「ルパン三世」という三者の名。
『異なる世界』『ギアス』『コード』『ラグナレクの接続』。
様々に流れてくる情報を、真偽の判定を後に回して覚え込む。
不老不死――そんなものが実在するのなら、死者蘇生も叶うのではないかと。
日頃なら「下らない」と断じるであろう夢物語に集中する。
やがてエンジンの音が再び響き、二人の背が遠ざかって行った。
たった一人残った男――ルパンを見て、縁は動く事を決める。
疲労はまだ残っているが、ここで確実に仕留めるべきと判断したのだ。
三人が最初に「殺し合いに乗っているか否か」を確認し合ったように、多くの参加者は乗るか乗らないかのどちらか。
そして乗った者は明らかに不利だ。
この三人のように脱出や殺し合いの停止を考える者達は協力し合えるが、乗った者はそれが出来ない。
『六人の同志』を集めた時のような根回しはこの場では難しく、協力者が現れたとしても常に裏切りを警戒する必要がある。
乗った者は単独行動が基本で、実力者であっても下手を打てば手を組んだ弱者達に数で押し切られてしまう。
その不利を覆す為には極力、参加者同志が協力関係を持たないようにする必要がある。
つまり、ルパンのような男は真っ先に殺す。
C.C.やヴァンのように他人との会話を億劫がる者達と違い、ルパンは参加者の中心になり得る社交性がある。
この殺し合いを中断させるような手を発見しかねない知恵がある。
叶えたい望みを持つ縁にとって、ルパンは邪魔なのだ。
故に、奇襲を仕掛けるべく刀を抜く――だがルパンは縁の潜む方へ向き、言い放った。
「そら、俺様一人になってやったぜ。
用事があるってんなら聞いてやっから出てきな」
三人が別行動を始める直前の会話から、既に気付かれている可能性は考えていた。
その為それ以上身を隠す事はせず、ルパンの前に姿を見せる。
「私怨はないが――あんたにはここで犠牲になってもらウ」
姉との再会の為に。
人誅の達成の為に。
縁はルパンの望み通り、一対一の斬り合いを始める。
▽
「覇亜亜亜亜亜亜亜亜ッ!!!」
まずは小手調べと、ルパンは青年が振るった刀に小太刀を軽く当てて応戦する。
が、それだけでルパンの余裕は消し飛んだ。
接触した瞬間に小太刀が弾かれ、刀を握っていた手に軽い痺れが走る。
弾かれた小太刀に体を僅かに引っ張られ、出来た隙に対し青年が容赦無く斬り込んできた。
「おいおい洒落にならねー……!!」
言いながら、ルパンは頭が地面に着く程に背を仰け反らせて横薙ぎに振るわれた刃を避ける。
そしてその体勢のまま両手を地面に着き、逆立ちする要領で足を振り上げた。
「あらよっと!」
蹴りは狙い通り青年の顎に命中し、ルパンはその反動を利用ながら体を縦に一回転させて青年から距離を取る。
支援
青年の体は傷に覆われ、ここに至るまでの戦闘の激しさが見て取れた。
対するルパンはほぼ万全の状態。
青年が多少の実力者でも、適当にあしらって拘束するのは難しくないだろう――初め、ルパンはそう考えていた。
しかし今となっては、その考えは既に失せている。
神経の集まる顎への直接攻撃で、青年の動きは止まった。
膝を着き、刀を支えにして体を支えている。
それでもルパンは一瞬の油断も出来ずにいた。
気が緩めばその刹那に喉笛を食い千切られる、そんな緊張を強いられている。
一度の攻防で痺れた手。
僅かに避け損なって斬られた胸。
対峙しているだけで汗の浮く額。
幾つもの死線を潜り抜けてきたルパンの全身が危険を訴えていた。
青年が向ける獣のような鋭い眼光は、あしらう程度で消えるはずがないのだ。
「兄ちゃんよぉ……まだ若ぇってのに、なーに生き急いでんだ。
人生に絶望するにはまだ早――っとぉお!?」
会話を試みたルパンに、青年は刀で応える。
おどけて見せてはいるが素早く飛び退いたお陰で当たりはしなかった。
そしてルパンは、会話が無駄だと悟る。
「希望はナイ……」
青年の暗く澱んだ眼が更に濁る。
それまで「ここにいない何か」に向けられていた憎悪は、今確かにルパンに向けられていた。
「既に、奪われているッ!!!」
踏み込む事で、心を開く者もいる。
だがこの青年の心は、全てが逆鱗に覆われているようなものだ。
触れるもの全てに牙を剥き、全てを拒絶する――そんな相手に何を言おうと、届きはしない。
「 蹴 撃 刀 勢 ! 」
下方から斜め上へと蹴り上げられた刀を、ルパンはとっさに小太刀二本を交差させて受け止める。
両手で一本の刀を扱う青年に対し、片手で刀を振るう二刀流で普通に受けては力負けしてしまうからだ。
だが、止まらない。
鍛えられているとは言え青年の手足は細い、にも関わらずその膂力はルパンを超えていた。
力負けし、脇腹に刀身が食い込む。
「いってぇえ!!?」
そのまま胴を両断しようとする青年の刀を、小太刀を傾けて滑らせるように逸らす。
「ちっ……」
青年は舌打ちして刀を払い、その間にルパンは地面を転がって元々立っていた場所から距離を取った。
「まるで猿だナ」
「……そいつぁーどうも」
じわじわとスーツの斬られた箇所に血が滲み、赤色を濃くしていく。
ルパンは大抵の武器は扱えるが、専門家ではない。
対する青年の実力は石川五ェ門と並ぶだろう。
体力面で有利なルパンの手にも余る相手だ。
ならばと、ルパンは青年に背を向けて走り出す。
「ほーれほれどーした追ってこねーのかよー!」
ルパンが挑発するまでもなく、青年は追って来ていた。
正面からの打ち合いでは青年が一枚上手でも、逃げる者と追う者の構図を作ってしまえば後は体力勝負。
ルパンは民家の塀の上からせり出していた木の枝に掴まり、そこから鉄棒の逆上がりをする要領で下半身を持ち上げる――
――が、そのまま尻から地面に落ちた。
「痛ぁ!?」
手には無惨にへし折られた枝があり、振り返れば奇妙な形状の銃を手にした青年がいる。
「そんなもんまで持ってんのかよ、きったねぇ!!」
起き上がって蛇行するように走ると、銃弾がスーツの脇を掠めていく。
刀に似た形のその銃はマシンガンのように連射が可能らしく、立ち止まれば忽ち蜂の巣にされるだろう。
しかしこうした逃走は大泥棒には日常茶飯事で、アドバンテージは明らかにルパンにあった。
交差点の角を曲がり、銃の射線から外れている間に塀へ上がる。
そこから民家の壁に飛び付いて屋根の上までよじ登った。
ここまで来れば、地の利もルパンに味方する。
銃撃には当たらない自信があり、青年が屋根の上まで登って来ようとすれば隙だらけだ。
青年の身体能力が幾ら優れていても、一飛びでここまで来るのも無理だろう。
それでもしつこく追い掛けて来るようなら、青年の体力が尽きるまで逃げ回るだけ。
屋根の上から青年を見下ろすと、青年が銃をデイパックにしまったところだった。
「おうおう、やぁっと諦める気に――」
「 疾 空 刀 勢 」
青年が跳ねる――そして、もう一度空中で跳ねた。
「何だってぇ!!?」
慌ててルパンが走り、隣の民家の屋根へ飛び移る。
それまでルパンがいた屋根の上へと着地した青年は、そのまま追走を始めた。
ルパンに地の利はなくなり、家々を足場に二人は駆け抜ける。
「冗談じゃねぇ、何が楽しくってこの歳で野郎と追っかけっこしなきゃならねぇのー!?」
走っているうちに青年が力尽きるのを期待していたのだが、そうした様子は見られなかった。
先程の人間離れした動きを考えれば最早疲れなど期待しない方が良い。
むしろ脇腹の止血を出来ずにいるルパンの方が不利な状況で、別の一手を考えねばならない
四、五メートル程の距離を保ちながら逃げるルパンだったが、真横を見てギョッとする。
いつからか、青年が並走していた。
「おまっ――」
「戰 嵐 刀 勢 !」
青年の顔や胸に浮かんで見えた奇妙な筋は、ルパンが瞬きする間に消えていた。
代わりに青年は沈み込むように姿勢を落とし、腕と足首の回転させて剣を振るう。
「哈亜亜亜亜!!」
それは遠目から見れば竜巻の如き勢いで、ルパンが小太刀二本で防いでも斬撃が次から次へと襲ってきた。
屋根や電柱。周囲の物を斬り裂きながら鎌鼬のような鋭い風が降り掛かる。
「おおっとぉ!?」
飽くまで受け止めるのではなく受け流すようにしながら、押されるままに後退していく。
手数では二刀流のルパンの方が優位に立っており、防ぐ事に専念すれば余裕をもって対処出来た。
だが、途中で防御を諦めたルパンは屋根から飛び降りて更に走る。
青年もそれに合わせてコンクリートに着地した。
そこへルパンが小太刀を投擲する。
狙いは肩だったが、それは容易く青年の振った刀で薙ぎ払われてしまった。
「武器を捨てたカ――……ッ!?」
小太刀が宙を舞う――ルパンの手に向かって。
そして縁の左肩を銃弾が穿った。
既に刺されて出血していた肩を、弾が貫通する。
逃げ惑う振りをしながら、ルパンは細い糸で小太刀の握りと自身の手首を結び付けていたのだ。
小太刀を手繰り寄せる手にもう一方の小太刀を持ち替え、空いた手にはマグナムを構える。
そして青年が小太刀を払った瞬間の反応し切れないタイミングを狙い撃った。
「あんまり無理するもんじゃねぇぜ、長丁場なんだからよ」
片方の手に器用に二本の小太刀を持ちながら、背にした道路脇のガードレールに寄り掛かる。
ガードレールの先は崖、その下には海が広がっていた。
支援
海の香と波の音。
大泥棒の逃走にもってこいのロケーションであり、逃げながら目指していた場所だ。
時間を掛ければこの青年を倒す事も可能だろうが、それでもルパンはここで仕切り直しを選ぶ。
これ以上の長期戦になればルパン自身も無事で済まない相手なのは明らかだった。
「そんじゃ、あーばよっとぉ!!」
青年と向き合ったまま、背にしたガードレールを乗り越えて身を踊らせる。
下は海面――ただし高さは数十メートルはあり、落下の衝撃は相当なものだろう。
ルパンはダメージを軽減すべく体勢を整える。
しかしそこで目にしたのは、予想外の事態。
青年もまたガードレールを乗り越え、ルパンに追い縋って来た。
しかも飛び降りるだけでなく、側面の崖を駆け降りるようにして速度を上げている。
殺し合いはルパンが言った通り長丁場。
たった一人で戦い、生き抜かなければならない場では安全と生存が最優先事項になる。
一度失敗すればそれで終わり――そんな状況で、この青年が一人の相手を深追いしてくるとは思っていなかった。
ただでさえ傷付き疲労した状態で海に飛び込むのは、自殺行為だ。
「参ったな、こいつぁ……しつこい男は嫌われるぜ!!」
「亜亜亜亜亜亜!!!」
ルパンが改めて二振りの刀を構え、青年の一撃を受け止める。
刀で刀を白刃取りする、苦し紛れの防御。
だが青年は崖を蹴った勢いと腕力に物を言わせて小太刀の刀身を弾いた。
左手に握っていた方の刀がルパンの手を離れ、無防備になった胴に蹴りが入る。
「ごっ……」
更に顔面を掴まれ、そのまま背中から海中へと押し込まれた。
波飛沫を上げながら、海水の奥へ奥へと突っ込んでいく。
落下による激痛と海水に包まれ、それでも青年の手はルパンを放さなかった。
(このっ……!!)
残った小太刀で青年の腕を貫く――が、何故かルパンの顔を握る力は殆ど緩まない。
そもそもルパンの顔を掴む手は左手で、その肩はたった今撃ち抜いたはずなのだ。
(まさかこいつ、痛覚――)
水で歪んだ視界の中、青年が刀を振り上げた。
青年の手が離れ、ルパンの体は波の流れに任せるうちに海面に到達した。
波間から海上へ顔を出せば、空が広がっている。
(あーあ、情けねぇ……結局何も、盗れず終いだぜ……)
ルパンの胸を中心に周囲が赤く染まるのに対し、見上げた空は冗談のように青い快晴だ。
下手を踏んでしまった事を自嘲し、海水と自身の血に溺れながら考える。
死んだ仲間と宿敵に、何の華も添えられなかった事を謝罪し。
残った仲間と少年に、自分に出来なかった事を託す。
「わり、後は……任せ――たぜ」
【ルパン三世@ルパン三世死亡】
▽
縁は脚力を頼りに水中を進み、海面に顔を出した。
「ハァッ……はぁっ、はぁっ、」
精神が肉体を凌駕している縁は痛みを感じない。
しかし肩と二の腕を貫かれた左腕は動かなくなっていた。
右手には菊一文字則宗とルパンから回収したデイパックがある。
息継ぎをしながら見回す――数十メートル程先に、崖の一部を切り崩して作られた階段があった。
そこを目指し、縁は泳ぐ。
支援
階段に到着して海から上がると、縁はデイパックと刀を投げ出して寝転がった。
傷に空腹、疲労、どれもこの十五年で味わい尽くしている。
苦痛はない。
この状況は十五年とは明らかに違うのだ。
ただただ堕ちていくだけだった頃とは異なり、奪われて消えたはずの希望が見えている。
姉は、いつでもすぐ傍にいた。
けれどそれは平行線のようで、決して交わる事はなかった。
そんな幻でしかあり得なかった姉との邂逅が現実のものとなるのなら、遠回りなどしていられない。
「姉さん……もうすぐだから……」
ただ姉との再会を夢見ながら、縁は眠る。
世界がどうであろうと、世界がどうなろうと、縁にが関心がない。
それ以外の生き方を知らない。
緋村剣心との決着がつかない限り、雪代縁は雪代巴の存在に自ら縛られ続ける。
雪代縁が自らの人生を歩む事は、無い。
【一日目 午後/F−6 海岸】
【雪代縁@るろうに剣心】
[装備]:菊一文字則宗@るろうに剣心
[所持品]:レイ・ラングレンの銃@ガン×ソード、逆刃刀・真打@るろうに剣心、玉×5@TRICK、紐とゴム@現実(現地調達)、夜神月が書いたメモ、
ルパンの不明支給品(0〜1)、支給品一式
[状態]:左肩に銃創、左腕に刺し傷、両拳に軽症、全身打撲、各部に裂傷、疲労(特大)
[思考・行動]
0:気絶中
1:参加者を皆殺しにし、可能なら姉と抜刀斎を生き返らせる。
[備考]
※殺し合いを認識しました。
※第一回放送における『緋村剣心』以外の死者の名前、及び禁止エリアの放送を聞き逃しました。
※二刀小太刀とM19コンバット・マグナム、細い糸はF−6海中に沈みました。
投下終了です、遅い時間に御支援を戴きましてありがとうございます。
誤字脱字、問題点等ございましたら御指摘戴ければ幸いです。
投下直後に気付きましたが、
>>526「縁にが関心がない」は「縁には」です。
失礼致しました。
支援
投下乙!
縁は男相手だとまるで容赦ないなぁ……
執念深いというかなんというか、今まで稼げなかったキルスコアをあっさり稼ぎやがった
ルパンも頑張ったけど、これはさすがに相性が悪かったと言わざるをえない
投下乙!
ルパンーーーーーーー!
今回も1対1のシチュで死んじまったか…
まあ、あっちもこっちも相手が悪かったもんなあ
しかし、月との決別、玲子の説得という急展開の直後にこうなっちまうとはなあ…
にしても、『DEAD END』のこなた、右京から数えて一気に4人も主人公が退場するとはなあ…
>>509 33年前の作品だから18歳は時代的にアウト
投下乙
縁さんがネタキャラだった頃がなんだか懐かしいな・・・
投下乙です
ルパンまで退場とは、これで対主催を纏められそうな人物はLしかいないな
誤字脱字は
>>515の
ルーシュの母マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア、C.C.が関わった計画。でルルーシュの名前が間違っています
534 :
創る名無しに見る名無し:2012/05/15(火) 03:37:09.64 ID:V5txqk3Y
横から失礼します
今回の話は運命の分かれ道からのつながりは?
田宮玲子は別行動ですか?
私の勘違いでいたらすみません、どうしても気になってしまい
投稿しました
535 :
創る名無しに見る名無し:2012/05/15(火) 03:46:15.92 ID:V5txqk3Y
失礼しました
別行動していたんですね、もう一度見直してきました
起き抜けと頭痛で変な勘違いしました
お騒がせしましてすみませんでした
縁はルパンのこと猿みたいだな
って言ってたけど顔のことかw
御感想ありがとうございます。
>>533 御指摘ありがとうございます、修正致しました。
今日が投下日かな、最近は服を着る暇がないぜ……
予約が来ただとぉ!?
wktkして待ってるぜ!
予約、この3人とは…
いろんな意味で因縁の深い面子だ
うおお、また来た!
現在予約3つ…だと……!?
強マーダーほとんど残ってるねw
順当に弱いマーダーから脱落しているというか……
詩音「ビクッ」
縁はかなり重症だけど
あんまり関係ないのかな
あと一般人が強マーダーを撃破する展開もないね
上田が影月を・・
光太郎が死に、ルパンも死に
他の対主催もほとんど重傷、瀕死
影月、桐山、浅倉らマーダーはまだまだ暴れそうだし
CCOさんマジ対主催の希望
影月が光太郎の死亡によって危険対主催者になる展開マダ-?
多ジャンルロワって因縁のある参加者が多いよね。
月とL、浅倉と北岡、男主人公と狭間。
彼らが再び対峙することはあるのだろうか…
ルパンの脱落って結構でかいのか
光太郎はわかるけど
>>547 詩音→レイは一般人の強マーダー撃破に含まれるんじゃないか?
CCOさんのお供が三村だけじゃなあ・・
玲子さんとかシャナあたりが仲間になれそう
CCOさんはどうせいつもの焼きミイラになるんだろ
CCOさんは縁を知らないけれど
縁はCCOさんを知ってるんだな
CCOも知ってるんじゃないか?煉獄買ったんだから
星霜編の縁さんはまだまともな人だね
煉獄には全財力の五分の三をつぎ込んだ
>>557 しかし炸裂弾一発で沈没した
…ひどい商売だ
そういえば津南さんの爆弾は
アニメでも人殺しの道具に使われてたな
560 :
創る名無しに見る名無し:2012/05/20(日) 18:48:54.11 ID:eTvKCYNy
煉獄がロワに出た事ってあんのかな
出してもバランスブレイカーにはならなさそうだが
もう許してやれよ
ルパン思ったより善戦したな
縁相手にこんな強かったとは思わなかった
ぐぬぬ……二つとも破棄か
田村玲子、後藤、シャナを投下します。
田村玲子は走っていた。
膝をへその辺りまで上げながら疾走する姿は、まるでオリンピックに出場する陸上選手のようである。
黒いミニスカートから下着が見え隠れしているが、彼女にそれを気にしている素振りはない。
それどころか、全力疾走しているにも関わらず彼女は無表情だった。
無表情を貼り付けたを顔面に美女がオリンピック選手並の速度で疾走する様は、見る者が見れば笑いを誘うのかもしれない。
だが、彼女にはふざけているつもりは一切なかった。
「そこまでだ」
空から降りてくる声。
同時に彼女の目の前を、木の上から着地した者が塞ぐ。
「随分と手こずらせてくれたな、だが、もう終わりだ」
あくまで冷静を装いながら、目の前にいる者は言葉を紡ぐ。
だが、実際は燃え滾るような憤怒を隠していることに玲子は気付いていた。
寄生生物は特殊な脳波を発しており、同じ寄生生物ならばそれを受信することができる。
特に殺意や怒りははっきりと伝わってくるため、彼女は必死に逃げていたのだ。
「……その右腕はどうしたのだ?」
目の前に降りてきたのは、後藤だった。
「志々雄という人間に斬られた」
後藤の姿は化け物そのものだった。
全身の筋肉が露出したような姿で、両脚はまるでダチョウのようだ。
左腕は肘から下が枝分かれしていて、それぞれが鎌のような形状を取っている。
この時点で、彼が他の参加者とコミュニケーションを取る気がないことが伺えた。
そして、右腕はない。
その理由を語る口調は淡々としたものだが、内側にはやはり屈辱感が渦巻いている。
最強だと自負していた彼が、よりにもよって人間に遅れを取ったのだ。
無理もないだろう。
「お前の片腕を斬り落とす程の人間か、興味深いな」
「ああ、だがお前に研究させる暇はない、あの人間は俺が殺す」
「元からそのつもりはないさ、そんな人間に私が勝てると思うか?」
「そうだな」
今は完全ではないが、後藤は五体の寄生生物からなる存在だ。
その強さが他とは一線を画することは、彼を産みだした彼女自身が一番よく理解している。
そんな彼を圧倒した人間に興味はあるが、戦闘にもつれ込めば確実に負けるだろう。
「それで……お前はどうしようというのだ?」
幼児に尋ねるような、そんな口調で問いただす玲子。
しばらくした後、後藤が自分の子供のような存在であることを思い出して自嘲した。
568 :
創る名無しに見る名無し:2012/05/21(月) 23:08:19.79 ID:EVMp9ttS
支援
「さっきも言っただろう、志々雄を殺す」
「万全の状態で負けたのだろう、今のお前が勝てるのか?」
「確かに今の俺では勝てないだろう、だからこうやってお前を追ってきたのだ」
耳元まで裂けた口が、嗜虐的に歪む。
「田村玲子、お前の頭を寄越せ」
やはりか、と玲子は脳内で思考する。
自分より格上の存在に宣戦布告されたにも関わらず、彼女さは冷静を崩していない。
展望台を去った後、彼女は舗装された道路を使って市街へと向かった。
特に理由があったわけではないが、強いて言うならば他の参加者が多そうだからだろう。
道中は誰にも会わなかったが、もうすぐ市街に辿り着くというところで一つの死体を発見した。
ルパンとの約束があるため捕食はしなかったものの、他の参加者の痕跡があったことに彼女の心は震えた。
多くの参加者が脱落しているとはいえ、未だ半分近くが生き残っている。
答えそのものは導き出せずとも、ルパンのように切欠を授けてくれる参加者はいるかもしれない。
いや、いてもらわなくては困る。
あんな退屈な人間の道楽に参加させられたのだ、これくらいの報酬は期待してもいいだろう。
そんなことを考えながら、彼女は歩行を再開しようとする。
いや、再開しようとして足を止めた。
寄生生物が発信する脳波を受信し、思わず足踏みをしてしまったのだ。
泉新一が死亡した以上、この脳波の主は後藤以外に有り得ない。
この脳波が殺意で色濃く塗り潰されていることに気付いた時、彼女は来た道を逆走しだした。
脳波の受信半径は三百メートル以内であり、つまり半径三百メートル以内に後藤がいるということ。
自分では抗いようのない存在が、明確な殺意を抱いて迫ってきている。
逃げない理由はない。
その後は森林部を利用して撒こうと奔走したが、やはり後藤は戦闘に特化した生物だ。
あっという間に追い付かれてしまった。
「そうか」
後藤の姿を見た時、彼女は一瞬でその目的を理解できた。
彼は元来から好戦的な性格であったが、その攻撃性は人間へと向けられていた。
それが同族である自分に向けられたとなれば、その理由は限られてくるだろう。
「分かった」
それが当然のことであるかのような軽い口調で、玲子は自らの命を捧げる旨を示す。
いや、実際に彼女にとってこれは当然の決断であった。
右腕を失ったとしても、まだ後藤は四体の寄生生物を統合している。
それに対し、自分は頭部にいる一体だけ。
規格外といってもよく、真正面から戦ったとして万に一つの勝ち目すらない。
故に抗うことは無駄。
逃げ切れなかった時点で、既に彼女にとっては詰みなのだ。
支援
「抵抗しないのか、まぁ構わん」
不満そうに玲子を一瞥した後、後藤は枝分かれして触手のようになった左腕を伸ばす。
その触手は死刑台のギロチンにも等しかったが、彼女は何の感慨も抱くことはない。
――――お前さん達が人間の言葉を理解出来んのは、上手く擬態して人間を楽に食っちまう為か?
――――そんな理由じゃ……さぁみしいだろ
ない、はずだった。
「一つだけ聞かせてほしい」
玲子の言葉に、伸びてくる触手がぴたりと止まる。
「なんだ?」
「私を取り込んだ後、お前はどうする?」
質問を投げかけた瞬間、後藤は嘲るように玲子を見る。
「決まっているだろう、志々雄真実を殺す」
「その後は?」
「……そうだな、そろそろ参加者も淘汰されてきた頃だ
今、生き残っている人間どもは、それなりの力を持った者たちだろう」
一呼吸置いた後、咆哮を上げるように猛々しく後藤は言った。
「そいつらを一人残らず殺す!
前に貴様は言っていたな、我々は何のために生まれてきたのだと
俺にとっては戦いこそが生きる意味だ! 目的だ! そのためにもお前の頭を取り込ませてもらう!」
叫ぶと同時に、加速した左腕が襲う。
無表情を貼り付けたまま、迫りくる触手を見据える玲子。
――――お前さん達の頭が良いのは、人間とこうして話をする為……って思いてぇじゃねぇか
彼女の顔から、一本の触手が伸びた。
「どういうつもりだ」
研ぎ澄ました牙のように尖った双眼で、後藤は自らの左腕の先端を見る。
そこは輪切りにでもされたかのように先端が欠け、ゴポゴポと血液が零れ落ちていた。
「悪いな、後藤」
「どういうつもりだと聞いている!」
「気が変わった、ただお前に喰われるのはやめだ」
斬り落とされた肉片が後藤の左腕に戻るのを見ながら、玲子は変形させた顔面をゆっくりと戻す。
「何故だ!」
「さぁ、私にもよく分からない」
怒り心頭の後藤を、たった一言で一蹴する玲子。
576 :
創る名無しに見る名無し:2012/05/21(月) 23:12:33.73 ID:/l3VweLt
支援
「だが、一つだけ言えることがある」
「なんだ……!」
「人間の社会には司法という制度があり、罪を犯した者は裁かれる
そして償いきれぬ大罪を犯した者には、法の裁きという名目で死刑が下される」
「何が言いたい!?」
「やり過ぎた個体は、同族からも弾き出されるということだ」
玲子の顔面が再び変形し、先端に眼球を貼り付けた二本の触手が蠢く。
「戦うために同族を襲う個体などあってはならない、お前はやり過ぎだ、ここで私が死刑を下す」
抑揚のない淡々とした口調。
その内側に確固たる意思があることに、彼女自身も薄っすらと気付いていた。
先程語った言葉に、嘘偽りは一切ない。
だが、それだけでは後藤に立ち向かう理由にはならなかった。
玲子が後藤に立ち向かった一番の理由。
それは後藤が全ての参加者を殺すと語った時、不意にルパンの顔が頭に思い浮かんだからだ。
何故彼の顔が浮かんだかは分からないが、後藤が言葉通りの行動を起こすならばルパンにもその凶刃を及ぶのだろう。
その光景を想像した時、全身の毛が逆立つような悪寒が走った。
万に一つの勝ち目が無かったとしても、立ち向かわなければならないような気がしたのだ。
「そうか……まぁいい、一度はお前と戦ってみたいと思っていた」
「随分と自然な笑い方だな、人間らしさが板についてきたじゃないか」
激情に駆られていたはずの後藤の顔は、いつの間にか愉悦に歪んでいる。
笑うという動作は、猛獣が獲物を見つけた時に牙を見せる様から来ているらしい。
今の後藤の顔を見て、思わず納得してしまう。
万に一つの勝ち目はないが、億に一つの勝ち目ならばあるかもしれない。
後藤の右腕は喪失し、玲子は咲世子の鍛え上げられた肉体を得ている。
実力的なアドバンテージならば、確実に狭まっているはずだ。
あとは創意工夫次第。
寄生生物でも指折りと評された頭脳に、合計三人分の支給品。
咲世子から奪ったファムのデッキや、侍風の男が残した二つの道具。
これらを有効活用すれば、億に一つの勝ち目を掴むことができるかもしれない。
否、掴まなければならないのだ。
「ルパン、これは正当防衛に入るだろう?」
「何を言っている?」
「いや、なんでもない」
「そうか、それでは行くぞ!」
裂けた口から牙を剥き出しにしながら、後藤は勢いよく地面を蹴り上げた。
☆ ☆ ☆
「ああ……もう!」
シャナの機嫌は最悪だった。
役に立たない参加者を駆逐しようと西に向かったのが、今から半日以上も前の話。
鬱蒼と生い茂る森林や山中を駆けずり回ったが、苦労に見合った対価を得ることができなかったのだ。
生きている参加者は一人もおらず、人と呼べるのは美術館前の惨殺死体だけ。
真司との接触で元から機嫌を損ねていたため、今の彼女は苛立ちが最高潮に達していた。
(そう、無駄足踏んだからイライラしている)
自らに言い聞かせるように、シャナは心中で言葉を述べる。
自分自身を納得させようと必死な、そんな物言いであることに彼女は気付いていなかった。
ちょうど山頂に到着した辺りの頃だろうか。
太陽が空の頂点に達すると同時に、禁止エリアと死者の名を告げる二回目の放送が始まった。
一回目の時と同様、禁止エリアを覚えるためだけの放送。
死者の名前や数など、路傍に転がる小石とも大差ない。
そう、思っていた。
『泉新一』
一番最初に告げられた死者の名前。
鈍器で思い切り殴られたような強い衝撃が、彼女の頭蓋を走り抜けた。
数秒の間、シャナは茫然自失する。
そして意識が戻った時、去来したのは燻るような怒りだった。
「……」
新一と一緒に過ごした時間は三時間にも満たない。
一時的に共闘していたものの、最終的に喧嘩別れのような形で袂を分かった。
だから、彼が死んだところで自分が感傷に浸るはずがない。
そもそもフレイムヘイズは死を超越した存在ではあり、感傷などとは無縁の存在である。
真司の戯言が目立っていたが、冷静に振り返れば新一の言葉も癪に障った。
むしろ、死んで清々すると言ってもいいくらいだ。
「なんで」
そのはずなのに、胸の中にあるもやもやが消えない。
路傍に転がる小石のはずなのに、何故か切り捨てることができない。
(なんで、なんでよ)
なんで――――
「……バカじゃないの」
そう、吐き捨てる。
新一に向けて言ったのか、自分自身に向けて言ったのか。
彼女には、よく分からなかった。
「死んじゃったら、終わりじゃない」
お人好しで無鉄砲な新一のことだ。
翠星石か真司の身代わりになったのか、あるいは自分より格上の相手に返り討ちにあったか。
どちらにしても、彼が”バカ”であることに変わりはない。
死は全ての生物が最終的に辿り着く到達点であり、存在の力が喰われることはまるで違う。
それでも居なくなるということに変わりはない。
死ねば人は記憶や記録になり、いずれはそれすらも無くなってしまう。
だから、自分の命だけは絶対に捨ててはいけない。
自分の命と対等のものなどこの世にはない、そんなもの在ってはならないのだ。
「あぁ、もう、ムカツク」
混迷に陥っていく思考を放棄し、シャナはずかずかと歩き出す。
右手には槍、左手には盾を添えてながら。
新一が死んでも、彼女の目的は変わらない。
多くの参加者と接触し、その人物が役立ちそうなら生かし、そうでないなら殺して首輪を回収する。
そして、城戸真司はいつか殺す。
間近にあった樹木の枝を槍で切り払い、彼女は鬱蒼と生い茂る森の中に進んでいった。
それから彼女は会場の北西エリアを散策し、同時に色々な施設を回った。
劇場、美術館、廃洋館、展望台。
だが見つけたのは惨殺死体と首輪、美術館にこれ見よがしに飾られていたカードキーだけ。
短い時間で多くの施設を回る必要があったため、各施設の細かいところまでは調べていない。
もしかしたら他にもあったのかもしれないが、それを探している余裕はなかった。
(なんで誰も居ないのよ……)
今のシャナは、森の中を通って市街部に向かっている。
市街部には施設が集中しており、参加者の多くはそこにいるのだろう。
力のない参加者が西側に潜んでいると予測したが、どうやらアテが外れたようだ。
弱い癖に生意気だと、シャナは心中で毒づく。
歩きやすい道路を使わなかったのも弱者を炙り出すためだが、やはり誰にも会うことはなかった。
「……音?」
静寂を保っていた森の奥から、木の枝が折れるような音がシャナの耳に届く。
フレイムヘイズでなければ聞き取れなかったであろうほど小さな物音なため、だいぶ遠くにいるのだろう。
市街部とは逆方向に行く形になるが、他者との接触の機会とあれば逃す術はなかった。
相手に気取られぬよう、気配を消しながら進むシャナ。
近づいていく内に、物音ははっきりと認識できるようになっていく。
先ほどまで音源は移動していたようだが、今は物音ともに一箇所に止まっている。
代わりに男と女が会話する声が届いていた。
この時間帯まで生き残っているとなれば、両者ともそれなりの力は備えているのだろう。
役に立つ参加者であることを期待しながら、シャナはゆっくりと歩を進める。
そして、ついに声の主が視認できる位置まで到達した。
(あれは田村玲子?)
出会った時と服装は違っているが、あの顔は間違いなく田村玲子だ。
頭部を変形させ人を喰う寄生生物。
首輪の解除に役立たない危険人物と判断し、一度は抹殺しようとした参加者だ。
槍の柄を深く握り締め、シャナは田村玲子の影に隠れている参加者を見る。
その人物が役立ちそうなら保護、役立たないなら田村玲子ごと抹殺。
そんな算段の下、彼女は視線を逸らす。
そして、絶句した。
(なんなの、あれ)
右腕が欠けていて、代わりに左腕の肘から下が二つに裂けている。
全身の筋肉が剥き出しになっており、それを隠すための衣服は殆ど無い。
申し訳程度にズボンを履いている程度だ。
他にも口が避けていたり、目が四つもあったりと、その異様を枚挙する手段には事欠かない。
恐怖を抱くことはなかったが、あまりのグロテクスさに気分を害してしまう。
紅世の徒でもあそこまで趣味が悪い者はなかなかいない。
支援
(あれも寄生生物なの?)
会話を聞いている内に、あの生物の名前が後藤であることが判明する。
田村玲子の口から、後藤が寄生生物であることも語られた。
だが、寄生生物にしても後藤は異質過ぎる。
泉新一に田村玲子と二人の寄生生物をシャナは見てきたが、彼らは変形できるパーツが一箇所だけだった。
しかし、後藤は何箇所も変形している。
もしかしたら全身が寄生生物と化しているのかもしれない。
これだけでも十分異様だが、後藤を最も異様であると思わせているのはその精神だ。
泉新一や田村玲子は会話する余地があったが、後藤にはそれが全くない。
彼の眼光は戦闘狂が放つものであり、彼自身も自らが戦うために生まれてきたと告げている。
僅かに言葉を交わしたら、すぐにでも襲い掛かってくるだろう。
役に立つかどうかの問題ではない。
後藤を蔓延らせておいたら、首輪の解除に役立つ参加者も皆殺しにされてしまう。
何としてでも、ここで抹殺するべきだ。
(でも、あれに勝てるの?)
贄殿遮那があれば、今すぐにでも殺しに行っただろう。
だが今の彼女の得物は、使い慣れない長槍と盾だ。
泉新一や田村玲子とは応戦できたが、あれに対抗できるかどうかは分からない。
首輪解除に役立つ人間を生かすために戦って、自らが死んでしまっては元も子もないのだ。
(どうするべきなの)
田村玲子は最初は黙って喰われるつもりだったが、最終的に決裂したようだ。
一触即発と呼ぶに相応しい状況であり、すぐにでもこの周辺は戦場になるだろう。
フレイムヘイズとして、彼女が取る行動は――――
☆ ☆ ☆
田村玲子、後藤、シャナ。
一人の寄生生物に、一体の寄生生物、そして一人と一体に深い関わりを持ったフレイムヘイズ。
彼ら、彼女らが一同に介した時、起こりうる出来事とは――――
【一日目夕方/D−6 森林部】
【田村玲子@寄生獣】
[装備]篠崎咲世子の肉体、黒の騎士団の制服@コードギアス 反逆のルルーシュ
[支給品]支給品一式×3(玲子、剣心、咲世子)、しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒、不明支給品(0〜2)、双眼鏡@現実、
ファムのデッキ@仮面ライダー龍騎、首輪×2(咲世子、劉鳳)、着替え各種(現地調達)、シェリスのHOLY隊員制服@スクライド、
黒の騎士団の制服@コードギアス 反逆のルルーシュ
[状態]ダメージ(大)、疲労(小)、数カ所に切り傷
[思考・行動]
0:後藤を殺す。
1:新たな疑問の答えを探す。
2:茶髪の男(真司)を実際に観察してみたい。
3:正当防衛を除き、人を食わない。
4:ルパン……?
※咲世子の肉体を奪ったことで、彼女が握っていた知識と情報を得ました。
※シャナ、茶髪の男(真司)を危険人物だと思っています。
※廃洋館で調達した着替え各種の内容は、後続の書き手氏にお任せします。
【後藤@寄生獣】
[装備]無し
[支給品]支給品一式×3(食料以外)、前原圭一のメモ@ひぐらしのなく頃に、不明支給品0〜1、カツラ@TRICK、カードキー、知り合い順名簿
三村信史特性爆弾セット(滑車、タコ糸、ガムテープ、ゴミ袋、ボイスコンバーター、ロープ三百メートル)@バトルロワイアル
[状態]疲労(中)、左腕(三木)欠損、ダメージ(小)
[思考・行動]
0:田村玲子を殺し、その身体を取り込む。
1:会場内を徘徊する。
2:志々雄真実を殺す。
3:強い奴とは戦いたい。
[備考]
※後藤は腕を振るう速度が若干、足を硬質化させて走った際の速度が大幅に制限されています。
【シャナ@灼眼のシャナ】
[装備]:ゲイボルグ@真・女神転生if...、ビルテクター@仮面ライダーBLACK
[支給品]:基本支給品(水を一本消費)、首輪(剣心)、カードキー
[状態]:健康、力と運が上昇、イライラするんだよ……
[思考・行動]
0:後藤を抹殺するか、それとも……
1:首輪を解除できる人間とコキュートスを探す。首輪解除が無理なら殺し合いに乗る。
2:首輪解除の邪魔になるような危険人物には容赦しない。
3:市街部に行く。
4:真司に対する苛立ち。彼が戦いを望まなくなった時に殺す。
5:玲子の首輪に関心、次に会ったら殺す。
6:主催者について知っている参加者がいれば情報を集める。
支援
以上です。
誤字脱字等がありましたらご指摘お願いします。
投下乙です
玲子さんはパラサイトらしからぬ行動に出たな。その対象であるルパンがすでに死んでいるのが切ないけど
仮に勝ったとしてもシャナが見逃すとは思えないし、どちらにしても厳しいことになりそうだ
投下乙です。
ルパンがここまで玲子に影響するとはなー
ルパンの死を知ったら悲しむって感情を覚えるんだろうか
しかしこれで玲子が後藤に取り込まれたら後藤無双再びだから、対主催の命運がかかった戦いになるかも知れない
指摘としては
>>567の
>無表情を貼り付けたを顔面に美女がオリンピック選手並の速度で疾走する様は、〜
が気になりました。
感想ありがとうございます。
>>589 ご指摘ありがとうございます。
無表情を顔面に貼り付けたを美女がオリンピック選手並の速度で疾走する様は、〜
という形に修正させてください。
今気付いたけどシャナの状態表wwwお前いつから浅倉になったんだwww
すぐ近くにルパン殺しの縁がいるんだけどな
ここ数話で動いたなー
今回のタイトルも序盤じゃ絶対使われないだろうし、本当に中盤戦だな
>>591 確かに気付かんかったww
気付いてウケタww
もう予約がきたぞぉー!!
北岡先生はゾルダのデッキ、五ェ門は斬鉄剣を取り戻すことができるのだろうか…
新しい予約が入ったけどまた話が大きく動きそうな面子だな
>>590 >無表情を顔面に貼り付けたを美女がオリンピック選手並の速度で疾走する様は、〜
どっから「を」が出てきたの?
>>597 申し訳ありません。
修正の際にまたミスをしていたようです、先ほど修正してきました、以後気をつけます。
北岡秀一、石川五ェ門、園崎詩音、蒼嶋駿朔、竜宮レナ、狭間偉出夫、枢木スザクを投下します。
「待て!」
高級スーツの内側に着たワイシャツをべっとりと汗で濡らしながら、北岡は必死に走っていた。
肩で息をしながら、前方へと腕を伸ばす。
だが、伸ばした腕は目の前にいる少女――――園崎詩音には届かなかった。
「待てって言われて待つ奴が何処にいますか、馬鹿ですか貴方は?
ほらほら、これを返して欲しかったらもっと早く走ってくださいよ〜!」
詩音はゾルダのデッキを見せびらかしながら、北岡にとっては五十メートル程先の曲がり角を曲る。
彼女も疲労しているが、北岡や彼の背後を走る五ェ門に比べればマシだった。
「ハァ……ハァ……かたじけない、拙者が足を引っ張っているばかりに……」
「なに言ってんのよ、そんなこと言ったら俺だってずっと足を引っ張ってるじゃない」
デルフリンガーを杖がわりにする五ェ門の姿は、出会った頃の力強さをまるで感じない。
彼が万全であったなら、疾うの昔にゾルダのデッキを奪い返していただろう。
連戦による体力の消耗、腹部や右肩の裂傷。
それに一時間以上の追跡劇が加われば、流石の五ェ門も疲弊せざるを得なかった。
「行くぞ、北岡殿!」
「あ、おい待て!」
北岡の制止を振り切り、走りだす五ェ門。
仕方がないと判断し、彼の後に続く北岡。
彼が走り出した頃には、既に五ェ門は曲がり角の手前まで来ている。
重そうにデルフリンガーを持っているが、彼はこれを手放すわけにはいかなかった。
「死ね!」
曲がった先から二十メートル程の位置で待機していた詩音が、二人に向けてアサルトライフルの引き金を引く。
等間隔で吐き出される弾丸は、疲弊した身体を引き摺る二人に襲いかかった。
「てええぇぇいッ!」
迫りくる弾丸を、五ェ門は全て斬り落とす。
曲芸のようだと称したが、一時間前に比べれば明らかに動きが鈍い。
先程から詩音は、隙を突いてはアサルトライフルを乱射してくる。
銃弾は全て五ェ門が斬り落とすため届かないが、これの迎撃のためにデルフリンガーを仕舞うことができないのだ。
「くけけけけけけ!!」
踵を返し、走り去っていく詩音。
何時まで経っても追いつけない一番の原因は、彼女が周囲の警戒を一切していないことだった。
「このままじゃイタチごっこだ、こっちも何か作戦を立てないと……」
「何か策があるのか?」
「……まだ思いつかない」
「なら走るまでだ、それに……詩音殿は既に正気を失っている、小手先の戦法は通じないだろう」
弁護士という職業上、北岡は数多くの人間を目にしてきた。
だが、その経験の中でも僅かにしか目にしたことのない狂人。
浅倉や東條に近いものが、今の彼女の瞳には宿っていた。
支援!
「もたもたしていると逃げられる、走るぞ!」
限界を迎えているにも関わらず、五ェ門はさらに速度を上げる。
それだけ彼の中でゾルダのデッキを取り返したいという気持ちが大きいのだろう。
ならば、当の本人が頑張らない訳にはいかない。
自分の柄ではないと自嘲しつつも、北岡も全力で走り出した。
そうして走り続けて数分、目の前に奇妙な建物が見える。
いや、建物だったものと言うべきだろう。
目の前にある建物は、見事なまでに焼け落ちていた。
「あれは……教会か?」
ひたすら走り続けたせいで方向感覚が曖昧になっていたが、十字架が見えることからそう断定する。
「誰かいるぞ!?」
そして、教会の前には二人の人物がいた。
朧気にしか見えないが、服装から詩音でないことは分かる。
男と女の二人組だ。
男の方は青いブレザーを、女の方は青と白のセーラー服を着用している。
「どうする?」
「どうするも何もここまで一本道だったんだから、あいつらに話を聞くしかないじゃない
交渉ごとは俺が請け負う契約だ、任せてよ」
走りながら北岡は語る。
戦闘は五ェ門が、交渉は北岡が行う。
最初にそういう契約をしているため、五ェ門は迷うことなく首肯した。
☆ ☆ ☆
「なぁ、やっぱり休憩した方が……」
「ううん、進もう」
焼け落ちた教会を傍目に捉えながら、蒼嶋はレナに休憩を進言する。
だが、彼女は笑顔でそれを突っぱねた。
数時間前と同じような、無理して作った嘘の笑顔で。
およそ二時間ほど前の話になる。
二回目になる放送で、またしても彼女の知り合いの名前が呼ばれた。
前原圭一。
彼女から名前を聞いていた、生き残っている友達の内の一人。
彼のことを話す時、彼女の頬がほんのりと赤く染まっていたことに蒼嶋は気付いていた。
圭一の名が呼ばれた瞬間、彼女は呆けたような顔で立ち尽くす。
たった今告げられた事実が、信じられないとでも言うかのように。
しばらくそうしている内に、鼻を啜る音が聞こえる。
それで、彼女が泣いていることに気付いた。
周囲の人間から子供っぽいと評される蒼嶋でも、女の子が泣き顔を見られたくないことくらいは分かる。
彼女が自分から動き出すまで、蒼嶋はずっと後ろで待っていた。
五分くらい経った頃、彼女は真っ赤な目で「ごめんね」と言った。
「でも――――」
「もういっぱい泣いたから、これ以上立ち止まってたら皆に怒られちゃうよ」
また、嘘の笑顔。
しかし数時間前に浮かべたものとは違い、見ているだけで心を引き裂かれるようである。
何か言葉を掛けなければいけないのに、掛ける言葉が浮かんでこない。
数時間前のレナのような、気の効いた言葉は何一つ浮かんでこなかった。
それでも何とか言葉を捻り出そうと、蒼嶋は脳みそを回転させる。
そうしたからだろうか。
遠くの方から、聞き覚えのある嫌な音が耳に届いた。
「……銃声!?」
普通の男子高校生であれば、テレビやゲームの中でしか耳にしない音。
だが、蒼嶋にとっては聞き慣れた音だ。
「隠れるぞ」
レナの手を引っ張り、崩れ落ちた教会の影に隠れる。
おそらくは誰かが交戦しているのだろう。
救援に向かうべきなのかもしれないが、戦う術のないレナを戦闘に巻き込む訳にはいかない。
千草の二の舞になることは避けたかった。
「こっちに来るみたいだね」
しばらくすると銃声は止み、代わりにコンクリートの地面を走り抜ける音が聞こえてくる。
周囲の警戒を一切せず、逃げることに全力を注いでいるような足音。
それほどまでに事態は緊迫しているのだろうか。
「もうすぐ姿が見えるぞ」
隠れた位置からは、ちょうど道路を見渡すことができる。
咄嗟の判断にしてはいい場所を選んだと、脳内で自賛する蒼嶋。
足音の主は、すぐそこまで来ていた。
「詩ぃちゃん!?」
隣にいたレナが、驚いたような声を上げる。
詩ぃちゃん――――今となっては彼女の友達の中で最後の生き残りとなった園崎詩音のことだ。
友達の姿を見て気が緩んだのか、レナは教会の影から出て行ってしまう。
詩音の持つアサルトライフルが気になったものの、こうなっては仕方がないと蒼嶋も外へと出た。
「レナ!?」
突然現れたレナを見て、詩音も少なからず驚いているようである。
「詩ぃちゃん、どうしたの!?」
「え、えぇ……まぁ……そちらのお兄さんは?」
詩音の視線がレナの背後にいる蒼嶋に向く。
「俺は蒼嶋駿朔、そっちは詩ぃちゃん……だっけ? 良かったらお兄さんが力を貸すぜ」
詩音のことは話に聞いていたが、いざ対面すると息を呑まざるを得なかった。
美しい長髪に、均整の取れた顔、タイトスカートからすらりと伸びた脚。
何よりも年齢不相応に実った胸に、思春期真っ只中の蒼嶋は視線が釘付けになってしまう。
千草やレナもそうだったが、ここにいる中学生はやたら美少女が多い。
V.V.はそれを基準に選んだのではないかと、思わず邪推してしまう程だ。
支援
「そうですか、じゃあ早速ですけど一つお願いしてもいいですか?
「おう、お兄さんに出来ることなら何でもしてやる」
美少女だからという訳ではないが、レナにとって詩音は最後の生き残りだ。
自分にできることならば、援護してあげたい気分だった。
「実は私、さっきから二人組の男に追われてるんです、もう怖くて怖くて……だから助けてください!」
両腕で胸を挟みながら、お願いしますというように手の平を合わせる詩音。
さらに下から覗き込むように蒼嶋の目を見つめる。
俗に言う、上目遣いというやつだ。
「助けるのはいいけどさ、一つだけ聞かせてくれね――――」
「じゃ、お願いしますね〜」
「って、おい待て!」
蒼嶋が言葉を言い切る前に、詩音は早足で退散してしまう。
思わず手を伸ばすが、既に詩音の姿はなかった。
「はぁ……なんなんだあの娘」
「蒼嶋さん」
「ん、なに?」
「詩ぃちゃんの胸、チラチラ見てたでしょ」
「み、見てねーよ! 何で見る必要があるんだよ!」
「そんなに必死になって否定しなくてもいいよ、詩ぃちゃん胸大きいからね
でも女の子は視線に敏感だから、そういうのすぐ分かっちゃうんだよ」
「……ごめんなさい」
居た堪れなくなり、蒼嶋は項垂れる。
意識して視線を逸らそうとしたのだが、どうしても目が行ってしまうのだ。
最近の中学生は色々な意味で恐ろしいと改めて実感する。
「それで……どうしよっか?」
「詩ぃちゃんが言ってた二人組の男の人のこと?」
「ああ、どうも腑に落ちないことがあるんだよなぁ……」
先程の銃声の間隔は非常に短かったため、連射をしていたことになる。
つまりあの銃声は、詩音のアサルトライフルから発砲された可能性が高いのだ。
自衛のために発射していた可能性もあり、それならば銃を使用したことを咎めることはできない。
しかし彼女の着ていた白衣には、無視できない量の血痕があった。
蒼嶋も千草を看取った時に付着した血痕が、青いブレザーに付着している。
だが、詩音に関しては何か違和感が拭えないのだ。
「蒼嶋さん、来るよ!」
詩音が来た方角から、二人分の足音が聞こえてくる。
タイミング的にも、詩音に言っていた二人組の男に間違いはないだろう。
「難しいこと考えててもしょうがねぇ、とりあえず出迎えてやりますか」
詩音への疑いを一旦胸に仕舞う。
とりあえず詩音を追い掛けている二人組の存在は事実であり、それに彼女が困っているのも事実だ。
どんな理由があるにせよ、女の子を追い掛けるなんて碌なことではない。
そう考えた蒼嶋は、姿を現した二人組に対峙した。
支援
「なんでアンタらは詩ぃちゃんを追ってるんだ?」
「そう返すってことは来たんだな、質問には答えるけどあいつが俺の大事な物を持っていったからだ」
結果的に相手の思い通りの返答をしてしまったことに気付き、蒼嶋は思わず歯噛みする。
北岡と名乗ったスーツの男は、おそらく頭の回転が相当速い。
蒼嶋も悪魔との交渉で舌戦は馴れているつもりだが、北岡の方が上手であることは否めなかった。
「……悪いけど、そう簡単に通すわけにはいかねぇな」
「おたくが詩音の知り合いだからか?」
北岡の視線が注がれているのは、蒼嶋ではなく隣にいるレナだった。
「なんでレナが詩ぃちゃんの知り合いだって知ってるのかな? かな?」
「詩音に聞いたんだよ」
「それはちょっと変だよね、詩ぃちゃんとお話ししたってこと? じゃあなんで追いかけっこなんてしてるのかな?」
「だからそれは……」
「失礼かもしれないけど、北岡さんのこと信用できない」
屹然とした口調でぴしゃりと言い切るレナ。
あまりの言い草に、思わず北岡は閉口してしまう。
「北岡殿は悪人ではない、信用してはもらえぬか?」
「ごめんなさい、でも初対面の人と友達ならどっちを信じるかは言わなくても分かってもらえますよね?」
レナの言い分は最もだろう。
北岡と五ェ門は顔を見合わせ、忌々しげに歪めている。
蒼嶋自身は詩音にそこまで入れ込んでいる訳ではないが、レナの友達であるために彼女を信用することにした。
「ってことだ、大体さ、いい年した男が寄ってたかって女子中学生追いかけるのは、ちょーっとかっこ悪いんじゃないの?」
ブラフマーストラを二人に向け、道を塞ぐように対峙する蒼嶋。
合わせるように、レナも鉈を構える。
北岡は武装していないが、五ェ門は大剣を背中に携えている。
彼らが強行突破を仕掛けてきた際、すぐ迎撃できるように準備したのだ。
「クソッ、こんなことしてる場合じゃないのに……」
恨めしそうに蒼嶋とレナを見渡す北岡。
指示を仰ぐように五ェ門の顔を伺うと、彼も悔しそうに首を横に振る。
五ェ門は相当の実力者に見えるが、蒼嶋も悪魔が蔓延る塔を登り詰めた戦士。
千草の形見でもあるブラフマーストラがあるため、そう簡単にここを通すつもりはない。
一触即発と呼ぶに相応しい状況。
それぞれの視線が交差する中、ドシンと重厚感のある足音が背後から聞こえた。
慌てて後ろを振り向くと、そこにいたのは二門の巨大なキャノン砲を装備した緑色の戦士。
その姿は、東條が変身した鎧姿に似ている気がした。
「逃げろ!」
対峙していた五ェ門と北岡が同時に叫び、必死の形相で脇にある民家へと駆けていく。
刹那、蒼嶋の脳内に警鐘が鳴り響いた。
上級悪魔に対峙した時のような、全身の穴という穴から汗が出るような感覚。
「レナ、伏せろ!」
蒼嶋がレナに飛び掛ったのと、キャノン砲から砲弾が発射されたのはほぼ同時だった。
支援
「うわああぁぁぁッ!」
砲弾は四人が対峙していた中心点に着弾し、ドーム状に爆煙と爆風が広がる。
直撃こそ避けたものの、蒼嶋とレナは爆風に吹き飛ばされてしまう。
空中を彷徨う中、蒼嶋はレナの身体を庇うように抱き締める。
そして、民家の壁に叩きつけられた。
「ぐあぁっ!」
「蒼嶋さん、大丈夫!?」
「っ……大丈夫に決まってんだろ、狭間の奴の攻撃の方が十倍は痛かったぜ」
蒼嶋は苦悶の声を上げるが、レナが無事なことを確認すると笑みが漏れる。
「それにレナみたいな可愛い娘を合法的に抱き締められたんだ、それで痛みなんか吹き飛んじまったよ」
「はう……早く離してもらえないかな」
赤面するレナに催促され、名残惜しそうに蒼嶋はレナを離す。
そして鈍痛が残る背中を抑えながら、彼はゆっくりと立ち上がった。
「あちゃー、仕留められませんでしたか」
何処かから、詩音の声が聞こえる。
その声は仮面を被っているようにくぐもっていて、最初に聞いた時とは僅かに印象が違う。
それでも彼女の声だとはっきり認識できた。
「詩ぃちゃんなの……?」
「そうですよ〜、驚きましたか?」
目の前にいる緑色の戦士は、挨拶でもするかのように言葉を返す。
筋肉質な体型の戦士が少女の声で話す姿は、蒼嶋の目にはどこか滑稽に映る。
「詩ぃちゃん……俺たちを騙したのかよ」
「別に騙してなんかいませんよ、北岡と五ェ門に追われてたのは事実ですし、とっても怖かったのも事実です」
嘲るような口調で詩音は言葉を紡いでいく。
「あと詩ぃちゃんって呼ぶの止めてもらえません?
レナが呼ぶのは別にいいですけど、会ったばかりの人にそう呼ばれるのは正直気持ち悪いです」
「ッ!」
蔑むようなその口調に、蒼嶋は自分の顔が歪んでいくのを感じる。
ぎゅっと心臓を搾り取られるような気分だった。
「いくら何でも酷すぎるよ……蒼嶋さんに謝って」
「嫌ですよ、実際気持ち悪いんですし」
「詩ぃちゃん! なんで……なんでこんなことを……」
「決まってるじゃないですか、そこにいる悟史くんを見捨てた北岡をぶち殺してやるためですよ」
まるで当然のことだというように彼女が放った言葉は、思わず耳を疑ってしまうようなものだった。
「北岡さんが悟史くんを……?」
「ええ、間抜けな北岡はこのゾルダのデッキを置いてっちゃったんですよ、そしたらそれをゲームに乗ってる奴が拾っちゃいましてね」
朗らかだった詩音の声が、重圧感を纏った低いものに変わっていく。
ヌッ!
「殺したんですよ! これを使って悟史くんを!
しかも北岡は悟史くんが助けを求めたのに無視しました! 信じられますか!?」
詩音の絶叫が響く。
糾弾するような彼女の物言いに、逆側の民家の影にいる北岡が項垂れているのが見えた。
「拾った奴はこの手で私がぶっ殺してやりましたけどね」
「え……?」
「銃で横っ腹を撃った後に、顔面に何度も何度も鉈をぶち込んでやりました、楽しかったですよ」
武勇伝でも語るような詩音の口調に、レナの表情が驚愕に染まっていく。
友達だと信じていた者が、嬉々としながら自らの殺人を告白したのだ。
蒼嶋でも堪える展開に、心優しいレナが普通でいられるわけがない。
「でもそれだけじゃ足りません、悟史くんを見捨てた北岡や他の連中もぶっ殺してやらないと
それに優勝すれば願いを叶えてくれるって言ってましたしね、悟史くんが生き返るなら喜んで全員殺してやりますよ」
二門砲の照準が北岡の隠れる民家に注がれる。
地面を抉るほどの威力を誇るそれが直撃すれば、民家などボロ板のように吹き飛んでしまうだろう。
北岡と五ェ門の顔が動揺しているのが、蒼嶋の位置からよく見える。
「詩ぃちゃんは……間違ってるよ」
凛とした声が響く。
前を見ると、変身した詩音の前にレナが対峙していた。
「はぁ?」
「どんな理由があるにせよ、人を殺すことだけは絶対に間違ってる
そんなことをしたって悟史くんは喜ばないし、それに人を殺して幸せになれる未来なんて絶対にない」
レナの言葉遣いは非常に落ち着いていて、まるで何十年も経験を積んだ大人のようである。
これが先ほどまで怯えていた少女なのかと、蒼嶋は疑問を抱く。
「はぁ……そんな安っぽい説教は聞きたくないんですよ、じっとしててください、すぐに楽になりますから
レナだって私にとっては大切な一人です、ちゃんとV.V.に生き返らせて――――」
「あのV.V.って人は本当に願いを叶えてくれるのかな?」
レナの言葉に、詩音の言葉が途切れる。
「V.V.は嘘が嫌いって言ってたけど、私には”自分が嘘を吐かれるのが嫌い”って風にしか聞こえなかったかな」
「レナ、何を……」
「多分あの人は”他人の嘘は嫌いだけど、自分の嘘はどうでもいい”って考えてると思うよ」
「じゃあ何ですか……レナは悟史くんが生き返らないって言うんですか」
「……絶対とは言えないけど、そんなに期待できない――――」
「黙れッ!」
「悟史くんは絶対に生き返ります! 生き返らなくちゃいけないんですよッ!
すぐに楽にしてあげるつもりでしたけどやめました、レナもじわじわと嬲り殺してあげます」
「レナ殿!」
募った怒りを吐き出すように発射される砲弾。
無防備なレナに襲いかかるが、民家の影から飛び出してきた五ェ門によって斬り落とされる。
「あぁ、五ェ門もいましたね、アンタも悟史くんを見捨てたんですよね
安心してください、北岡やレナと一緒にじわじわと嬲り殺してあげますから」
☆ ☆ ☆
「ククク……」
狭間偉出夫は歩いていた。
殺し合いが開始して十二時間以上経過しているにも関わらず、純白の制服には汚れ一つ無い。
黒い革靴が奏でる足音は、非常にしっかりとしている。
周囲の地理を把握する『マッパー』を使用しているため、彼の足取りには淀み一つないのだ。
いや、それだけではないだろう。
一番の理由は、彼の手の内にある携帯ゲーム機にあった。
「蒼嶋……ッ!」
携帯ゲーム機のモニターには、蒼嶋駿朔の所在地が記されている。
蒼嶋が居るのがFー9であり、狭間が居るのが隣のF−10。
目と鼻の先に、渇望した宿敵の姿があるのだ。
手の平に爪が食い込むほど強く、斬鉄剣の柄を握り締める。
あと少しで、胸に空いた穴が埋まる。
放送で水銀燈の名が呼ばれなかったのは疑問だが、今となっては些末事に過ぎない。
蒼嶋の胸にこの刀を突き刺した時を想像すると、心の奥底から高笑いが出て止まらなかった。
「この音は……奴も戦っているのか」
自らの進行方向から、爆音と地響きが轟く。
おそらく蒼嶋が何者かと交戦しているのだろう。
仇敵の牙が未だ折れていないことを知り、狭間はくつくつと笑い出す。
狭間が刀を突き立てたいのは、あくまで魔神皇を倒した蒼嶋だ。
弱くなった蒼嶋など、怠惰界で強制労働させていた生徒とも大差はない。
あそこに蒼嶋がいると断定するなら、そこに辿り着くまではあと十分弱であろうか。
走ればもう少し早く到着するだろうが、蒼嶋のためにそこまでしてやるのも癪に障った。
蒼嶋の下に辿り着いた時、自分が取るべき行動は二パターンある。
戦闘が終わっていなかったら、その戦闘を強引に終結させて蒼嶋と戦う。
戦闘が終わっていたら、やはりそのまま蒼嶋と戦う。
全力の蒼嶋と戦えないのは残念だが、休憩時間を与えてやるほど彼は慈悲深くも我慢強くもない。
「待っていろ、もうすぐ……もうすぐ貴様を殺しに行ってやる」
表情を歪に変えながら、狭間は道を歩き続ける。
☆ ☆ ☆
「ちゃんと避けないと死ぬぞぉッ!」
羽虫のように飛び回る四人を見て、詩音は心底愉快そうに笑う。
わざと直撃しない位置にエネルギー弾を着弾させ、四人が逃げ回るのを楽しんでいるのだ。
致命傷を与えることはできないが、彼らはじわじわと負傷していく。
特に北岡が傷ついていく姿を見ていると、身体の芯が熱くなっていた。
「ホラホラァ! 動きが鈍ってますよ!」
他の三人に比べ、北岡の動きは圧倒的に鈍い。
元の身体能力の差に疲労が加わり、エネルギー弾を避け切れない程に速度が低下しているのだ。
「がああぁぁッ!」
爆煙と爆風に呑み込まれ、その中心から吹き飛ぶ北岡。
鞠のように何度も地面を跳ねる姿を見て、詩音は下卑た笑い声を上げてしまう。
北岡の殺し方は既に決まっている。
悟史と同じように、爆死させてやるのだ。
ゾルダの力を以てすれば、この四人を制圧するのは容易い。
嬲った末にファイナルベントで爆殺するというのが、彼女が描いた筋書きだ。
「いつまでも調子くれてんじゃねぇぞ!」
爆煙の中から、切り裂くような声が轟く。
声の方角を見ると、煙の中に人影が見えた。
同時に、ヒュンと風を突き抜けるような音が鳴る。
「ッ!」
爆煙の中から飛来する三本の矢。
素早くそれを察知した詩音は、ギガキャノンを発射してそれを相殺する。
「てっきり意気消沈して何もできないと思ってたのに」
煙が晴れ、人影が人間へと変わる。
そこにいたのは、ボーガンを構えた蒼嶋だった。
「けっ、敵意には敏感なんだよ、それにアンタみたいのは魔界で見慣れてる」
「魔界……? ただのスケベじゃなかったんですね、貴方」
「ッ……気付いてないフリしてくれてもいいのによぉ、人が悪いなッ!」
捨て台詞と共に、再び矢が射出される。
今度の本数は五本だ。
蒼嶋が矢を装填した様子もないが、あのボーガンはそういう武器なのだろう。
常識では計り知れない代物だが、その程度でいちいち驚いてなどいられない。
先程と同様にギガキャノンを撃ち込み、飛来する矢を全て消滅させる。
「そんなチャチな矢じゃ私には届きませんよ!」
「それはどうかな!」
蒼嶋とは違う男の声。
上空を見上げると、そこにあるのは飛び降りてくる五ェ門の姿。
ギガキャノンで撃ち落とそうと目論むが、照準を定める前に目の前に着地されてしまう。
同時に斬撃が繰り出され、ギガキャノンの砲身が切り落とされた。
「なんで……合図もしてないのに!?」
「貴様とは年季が違う、蒼嶋殿が隙を作ろうとしていることはすぐに分かった!」
言葉を叩き付けると同時に、五ェ門は下から刃を切り上げる。
もう片方の砲身も、根野菜を斬り落とすように輪切りにされてしまった。。
これでもう、ギガキャノンは使えない。
新たな武器を装填しようと、詩音は腰に装着したマグナバイザーに手を伸ばす。
支援
「痛ッ!」
だが、伸ばされた手は五ェ門の手刀によって払われてしまった。
「この短時間で何度も見ていれば、嫌でもその特性が理解できる」
胸部に繰り出される斬撃を避けようとするが、ギガキャノンの自重で思うように動けない。
斬撃はまともに命中し、詩音の肺から酸素を絞り出した。
「その大砲の威力は強大だが、一度撃ってから次に撃つまで時間が掛かる」
たたらを踏みつつも、詩音は腰のバックルに手を伸ばす。
ミラーモンスターのカードであれば、召喚器を通さずとも使用できるためだ。
だが、五ェ門がそれを見逃すわけがない。
再び手刀が打ち込まれ、彼女は痛みに悲鳴を上げた。
「そしてその大砲はその重量故、装備している最中はまともに動くことができない、そうだろう?」
五ェ門に言う通りだった。
普通に歩く程度の動作なら問題ないが、走ったり避けたりとなると話は変わってくる。
接近戦に持ち込まれた途端、一気に不利になってしまうのだ。
次々と斬撃や手刀が打ち込まれ、詩音の身体に傷を負っていく。
スーツや装甲である程度は防御できているものの、達人の攻撃は正確な痛みを刻み付けてくる。
(こんなことになるのなら、さっさと全員殺しておけば……!)
今の不利を招いたのは、完全に詩音の失態だ。
最初から全力で砲撃していれば、この窮地はなかっただろう。
(……ッ……あれは?)
五ェ門の背後から五十メートル以上の距離を置いた位置に、”そこにいるはずのない者”の姿が見える。
激痛による幻かと疑ったが、強化された視界は確かにその姿を捉えていた。
何故、そいつがそこにいるのかは分からない。
だが五ェ門がそれに気付いていない以上、これは今の戦況を一変させる好機だ。
「あぁッ!」
腹部に斬撃を打ち込まれた彼女は、大袈裟な素振りと共に吹き飛ぶ。
あえてそうすることで、”そこにいるはずのない者”の射線から自らを外したのだ。
仮面の下で、ニヤリと笑う。
刹那、轟音が周辺一帯を埋め尽くした。
「ぐああぁぁッ!」
直撃を受け、大きな悲鳴を漏らす五ェ門。
焼け焦げた衣服で地面を何度も転がる様は、打ち捨てられた雑巾を連想させる。
うつ伏せで倒れ伏す五ェ門を見て、詩音は顔を恍惚に染めた。
「そんな馬鹿な……!」
一方で北岡はその顔を驚愕に染めている。
彼の視線は、突如として現れた"そこにいるはずのない者"に注がれていた。
「なんで……ゾルダが……」
そこにいたのは、ゾルダだった。
だが詩音が移動した訳ではなく、北岡の背後にもゾルダの姿はある。
正面と背後にゾルダが一人ずつ。
今、この場には仮面ライダーゾルダが二人いるのだ。
「どういうことなんだ……わけがわからない」
「くけけけけけけけけッ! ざまーみろ! バーカッ!」
慌てふためく北岡を見て、詩音は心の底から嘲り笑う。
二人目のゾルダの正体は自分にも分からないが、分からないことにいちいち答えを求めていたらキリがない。
「チィッ、あっちの相手は俺がする! あんたらは詩音の方を!」
蒼嶋はブラフマーストラを構えながら、新たに現れたゾルダの下へと駆ける。
その一方で詩音はギガキャノンを捨て、接近戦用の武器であるストライクベントのカードを装填した。
――――STRIKE VENT――――
マグナギガの頭部を模したギガホーンを装備し、試運転とでも言うように数度振り回す。
手に馴染んだのを確認すると、ボロ雑巾のように転がる五ェ門に近づいた。
一歩ずつ近づいていくが、五ェ門が起き上がる様子はない。
直ぐ側まで辿り着いても、五ェ門は指先一つ動かさなかった。
「それじゃあ、さよなら」
仮面の下で嗜虐的に笑いながら、ギガホーンを彼の背に振り下ろす。
「兄ちゃん!」
何処かから声がした。
同時にギガホーンの先端に、鋼を押し付けたような重みが走る。
「ハァ……ハァ……助太刀感謝する、デルフリンガー……」
「へっ、当たりめぇだ、今ここで兄ちゃんに死なれたら、俺まで嬢ちゃんに壊されちまう」
すんでのところで起き上がった五ェ門は、デルフリンガーでギガホーンを受け止めていた。
「そういえば貴方も居たんですね、デルフリンガー」
舌打ちを一回して、詩音はバイザー越しにデルフリンガーを見下ろす。
「今度は嬢ちゃんがそいつに変身してるとはなぁ、今からでもやめられねーのかよ」
「絶対に嫌です」
「そうかよ」
剣の鍔をカシャカシャと鳴らしながら、心底残念そうにデルフリンガーは言う。
どれだけ説得の言葉を投げかけられようと、もう戻る気などない。
既にもう人を殺してしまっているのだから。
「兄ちゃん、戦闘中は黙ってろって言われたけどよ、お前さんはもう限界だ、ここからは俺も口を出させてもらうぜ」
「……かたじけない」
五ェ門は既に満身創痍だ。
デルフリンガーの援護が無ければ、満足に戦うことすら難しいのだろう。
今の状態ならば、詩音でも圧倒することは容易いはずだ。
「じゃあ行きますよ、覚悟してください!」
☆ ☆ ☆
南光太郎との戦闘を終えた枢木スザクは東側へと向かっていた。
特に目的があって向かったわけではなく、強いて言うならデッキの制限を解除するための時間稼ぎだ。
既にデッキは使用可能になっていたが、わざわざ来た道を戻るのも気が引けた。
「水銀燈……水銀燈……」
虚ろな表情で俯きながら、ぶつぶつと水銀燈の名前を呟く。
足取りはふらふらとしており、誰がどう見ても危険な状態である。
既に彼の精神は限界を来たしつつあり、こうでもしないと精神の均衡を保っていられないのだ。
「ごめん……水銀燈……」
水銀燈を生き返らせるならば、積極的に参加者を殺し回るべきだろう。
総合病院や警察署は弱者や怪我人が集まるため、絶好の襲撃場所である。
今の彼には水銀燈が第一であり、弱者や怪我人を襲撃することへの忌避感など全くない。
正しさなど、ルルーシュの頭を撃ち抜いた時に捨ててきた。
「ごめん……ユ……あれ、僕は何を……」
だが、思いつかなかった。
無意識で拒否するかのように、総合病院や警察署を襲撃するという発想が頭から抜けていたのだ。
こんな体たらくでは、何時まで経っても水銀燈を生き返らせることができない。
肝心なところで無能な自分に、スザクは猛烈な自己嫌悪を抱いていた。
「この音は……?」
近場で誰かが戦っているのか、幾重にも重なった爆音が轟いている。
空を見上げると、煙が上がっているのが見えた。
全員を殺害するのが彼の目的であるため、ここで彼らを見逃す理由はない。
ベルデのデッキを握りしめながら、全速力で爆心地まで駆け抜けた。
彼の身体能力は凄まじく、戦闘音を聞いてから音源地である教会に辿り着くまで三分も掛かっていない。
人影を視認した瞬間、民家の影に姿を隠して彼は戦況を分析し始める。
あの場に居たのは五人。
一人は一回目の放送直前で相対した仮面ライダーゾルダ。
スーツの男とセーラ服の少女は素人であり、侍風の男と学生服の少年はそれなりの手練と見える。
事実、侍風の男はゾルダを圧倒していた。
「これは使えるな……」
皮肉げに笑いながら、足元に落ちていたガラス片にデッキを翳すスザク。
すると腰回りにベルトが出現し、バックルの窪みに素早くデッキを装填した。
「変身」
抑揚のない声で言う。
次の瞬間には、スザクの姿はカメレオンを連想させる姿をした仮面ライダーベルデへと変わっていた。
既に一度変身しているため、スザクが何の感慨も抱くことはない。
ゆらりとデッキから一枚のカードを取り出し、左脚のバイオバイザーに読み込ませた。
――――COPY VENT――――
認証音が響くと、ベルデの姿が絵の具をぶち撒けたように変わっていく。
黄緑色の軽快な戦士から、緑色の重厚な戦士へと。
仮面ライダーベルデの姿は、仮面ライダーゾルダへと変わっていた。
本来のコピーベントは武器を複製するだけだが、ベルデの所有する物は相手の姿形も模倣することができる。
”そこにいるはずのない者”の正体は、コピーベントでゾルダを模倣したベルデだった。
「行ってくるね、水銀燈……」
両肩に巨大な二門砲が装備されているのを確認すると、スザクは覚束ない足取りで戦場に足を踏み入れた。
☆ ☆ ☆
「オラッ、喰らいやがれぇッ!」
ジグザグに走ることで相手の照準を乱しながら、ブラフマーストラを連射する蒼嶋。
先程の五ェ門の言葉で、ギガキャノンを装備した者の動きが鈍くなることが分かっている。
接近戦に持ち込むことができれば、相手の戦力は半分以上削がれるだろう。
正体不明の敵は不気味だが、速攻で倒してしまえば問題ない。
「な……にぃ!?」
そう、思っていた。
ベルデは腰のマグナバイザーを抜き、襲来する矢を全て撃ち落とす。
そして――――
「なんで突っ込んでくんだよぉ!」
そのまま、全速力で突っ込んできた。
ギガキャノンを装備した状態では、その自重でまともに動けないのではないのか。
ブラフマーストラの矢を全弾撃ち落としたことも驚きだったが、そのまま突っ込んできたことは余りにも予想外である。
虚を突かれ、蒼嶋はその場を動くことができない。
そんな彼へと肉薄したベルデは、加速で発生した運動エネルギーをそのままに体当たりを繰り出す。
重戦車に突撃されたかのような衝撃を受け、蒼嶋は宙へと投げ出された。
「がはぁっ!」
ギガキャノンを装備して動けない理由は、あくまでその超重量によるものだ。
詩音や北岡のような一般人の動きは鈍くなるが、スザクには超人的な筋力や瞬発力がある。
この程度の重量は、彼にとっては重石にもならなかった。
宙に投げ出された蒼嶋を視界の捉えたスザクは、急停止して次の行動に移る。
目測で蒼嶋の着地点を予測し、ギガキャノンの照準をそこに指定。
蒼嶋が着地した瞬間、ギガキャノンを発射した。
「蒼嶋さん!」
エネルギー弾は破裂し、周辺一帯を抉る。
エンド・オブ・ワールドには劣るものの、ギガキャノンもKMFに搭載される兵器並の威力だ。
蒼嶋は戦闘不能になったと判断し、スザクは先ほど叫んだ少女へと照準を移す。
「クソッタレがあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
怒声と共に、光り輝く七本の矢が放たれる。
完全に虚を突かれたため、スザクの初動は僅かに遅れてしまう。
それでもマグナバイザーを抜いたが、最後の一発だけは撃ち漏らしてしまった。
「ぐっ……」
右腕に矢が刺さり、くぐもった声を漏らすスザク。
同時にコピーベントの効果が切れ、風景に溶け込むようにゾルダからベルデへと戻ってしまう。
「それがテメェの本当の姿かよ、カメレオンってかぁ!?」
爆煙の中から襲来し、一気に畳み掛ける蒼嶋。
綺羅びやかなマントを風にはためかせながら、交差させた庭師の鋏の刃をスザクの首へと伸ばした。
彼が背負っているマントはKフロストマント。
スザクの所持するKフロストヅーラと同様、キングフロストの装備品の一つだ。
これは炎に対する耐性を持っており、さらに装備者の防御力をそれなりに上昇させる効果がある。
吹き飛ばされた瞬間、咄嗟にこれを取り出すことで彼はギガキャノンを防御したのだ。
「ぐうっ……」
交差する刃を、スザクは右腕を挟んで受け止める。
万力で締め付けられるような鈍痛が伝わってくるが、右腕のアーマーが壊れる様子はない。
庭師の鋏は蒼星石専用の武器であり、彼女でなければ本来の力を発揮することはできないのである。
「なんなんだあいつ……」
レナと一緒に民家の影に隠れた北岡は、ベルデの姿を見て疑問符を浮かべていた。
彼とベルデが手を組んでいた時間軸もあるが、この時間軸のベルデは北岡と会う前に脱落している。
故に北岡は、ベルデのことを一切知らなかった。
「さっきよりも随分と動きが鈍ってますね、そんなんじゃ死んじゃいますよ!」
「自分でやったわけじゃねぇ癖によぉ、兄ちゃん、右だ!」
猛攻を仕掛ける詩音に対し、デルフリンガーの援護で五ェ門は辛うじて応戦している。
しかし防戦一方であり、戦況は芳しくない。
変身してから五分程度しか経っていないため、時間制限による解除も望めなかった。
「うわああぁぁぁぁッ!」
劈くような悲鳴が轟く。
慌ててそちらに視線を移すと、ベルデがヨーヨーのような武器を用いて蒼嶋を嬲っている。
蒼嶋はブラフマーストラで応戦しているが、変幻自在に動くヨーヨーに叩き落されてしまう。
ベルデに変身している者は、その力を完全に使いこなしていた。
「クソッ、このままじゃ……」
五ェ門も蒼嶋も倒されてしまう。
今の自分たちは、切り立った崖の上に立たされているようなものだ。
早急に手を打たなければ、四人とも突き落とされてしまう。
「北岡さん」
必死に挽回策を考えていると、隣にいたレナが声を掛けてくる。
「なによ」
「さっきは疑ったりしてごめんなさい」
北岡の目をしっかりと見ながら、申し訳なさそうに謝罪の言葉を述べるレナ。
「もうそのことはいいよ、今はあいつらを何とかする方法を考えなきゃ」
「そのことなんですけど……北岡さんは本当に悟史くんを見捨てたんですか?」
問い詰めるようなレナの視線が北岡に突き刺さる。
彼女の握っている鉈の刃が、重々しい鋼色の輝きを放っていた。
「……それって今は関係ないんじゃないの?」
「答えてください、もしかしたらこの状況をひっくり返すことができるかもしれないんです」
逡巡する北岡。
あくまでお願いという形を取っているが、彼女の目は有無を言わさぬといった様子だ。
レナと詩音が友人であるならば、レナと悟史も友人である可能性が高い。
つまりレナにとって北岡は、友人を見殺しにした仇敵にも等しいだろう。
下手をすれば、詩音のように殺意を向けられる可能性すらある。
「……」
だが、このまま行けばどのみち死は免れない。
有効な挽回策も思いつかず、悩めば悩むほど五ェ門や蒼嶋は消耗していく。
「……分かったよ、でも時間がないから簡潔に話す、いいね?」
「はい、お願いします」
頭を垂れながら、北岡は真実を語り始めた。
ゾルダのデッキを置き忘れた時のこと、悟史の呼びかけを無視せざるを得なかったこと。
自らの口から罪を告白する様は、まるで教会で懺悔するような気分である。
北岡が話している間、レナは一言も言葉を発さない。
話を噛み砕いて理解するように、何度も何度も頷いていた。
「これで全部だ」
全ての事情を話し終えた北岡は、湿った溜め息を漏らす。
倍近くの年齢差があるとはいえ、鉈を持った少女の前で罪を告白するのは精神を消耗する。
額が脂汗塗れであることに気づき、北岡はスーツの裾で拭った。
「……私が思ったことを言ってもいいですか?」
レナの質問に対し、北岡は首を縦に振って肯定の意を示す。
糾弾されるのを覚悟し、彼女と視線を合わさないように下を向いた。
「私は……北岡さんは悪くないと思う
わざとやったわけじゃないんだし、それに浅倉って人に襲われたから行かなかったんですよね?」
「え? あ、あぁ……」
レナの返答が予想外のものであったことに面食らう。
「でも、ちょっとは北岡さんにも責任はあるんじゃないかな」
突然の糾弾に、心臓が跳ね上がる。
だがしばらくして、その言葉の内に責める意思が無いことに気付いた。
同意を求めるような、そんなニュアンスである。
「じゃあ、どうすればいいのよ」
北岡は縋るようにレナに答えを求める。
総合病院で詩音に責められた時や、五ェ門が死んだと誤解した時。
決して口には出さなかったが、北岡はずっと罪悪感に苛まれていた。
いい年した男が中学生に縋る様は無様ではあるが、もう形振り構っていられる余裕はない。
「謝ればいいんだよ」
「え?」
「ごめんなさいって、言えばいいんだよ」
レナの口から出た言葉に、思わず北岡は呆けてしまう。
「詩ぃちゃんにさ、謝ろう、ごめんなさいって」
「なっ……謝るって……そんなことで詩音が許すわけがない!」
にっこりとはにかみながら、子供のような道理を告げるレナ。
北岡は驚愕を隠すことができず、その荒唐無稽さに反論の言葉を並べだす。
「大丈夫だよ、詩ぃちゃんはとっても優しい子だから
それにあのカメレオンみたいなライダーを倒すには、同じライダーの力が必要だと思うんです」
「まさか、この状況をひっくり返す策って……」
「うん、詩ぃちゃんを説得するんだよ」
北岡は絶句する。
総合病院であれだけ啖呵を切った様を見ると、とてもではないが彼女が優しい性格だとは思えない。
マグナバイザーの一撃ですら致命傷になりかねない今、詩音の前に出ること自体が危険なのだ。
「どんなに可能性が小さくても、私たちにできることをした方がいいと思います」
レナの言葉で、北岡の脳裏につかさやアイゼルの姿が思い浮かぶ。
浅倉に追い詰められた時、彼女たちの協力があったからこそ逃げ切ることができた。
今の自分には有効な作戦はなく、このまま何もしなかったら五ェ門や蒼嶋が死ぬ。
それこそ本当の”殺人者”なのではないのか。
「……分かった、詩音に謝る」
拳を強く握り締め、北岡は詩音の前に出る決意をした。
「ゼェ……ゼェ……」
「あら、もうおしまいですか? まあでもボロボロの状態でよくここまで持ちましたね」
デルフリンガーを杖代わりにして片膝を着く五ェ門。
全身の至る箇所に傷があり、呼吸は既に乱れ切っている。
激しい運動をしたせいで腹部の裂傷は開き、真っ赤な血が滴り落ちていた。
「詩ぃちゃん!」
詩音がギガホーンを突き出す寸前、それを制止するように北岡とレナが姿を現す。
「レナに……北岡、今更何の用ですか?」
「もうやめようよこんなこと……詩ぃちゃんも五ェ門さんもボロボロだよ」
「だから何度も言ってるじゃないですか、絶対に嫌だって」
心底呆れたといった様子で、詩音はレナの懇願を一蹴する。
その様子を見ると、とてもではないが説得など不可能に思えた。
「詩音、話を聞いてくれ」
「私はお前の顔も見たくないですし、声も聞きたくないんですけど」
「頼む」
マグナバイザーで威嚇する詩音に対し、あくまで言葉一つで応戦する北岡。
二つの視線が空中で交錯し、バチバチと火花を散らす。
「俺がゾルダのデッキを置いてったのは金髪の男のせいだし、悟史のところに行けなかったのも浅倉に襲われたせいだ」
「言い訳のつもりですか? 私はお前を許す気は――――」
「でも、悪かった」
「は?」
「この通りだ」
深々と頭を下げ、謝罪の意を示す北岡。
彼の性格を知っていた五ェ門や詩音は、その姿を見て呆然としている。
演技で頭を下げることはあるが、本気で頭を下げることは絶対にしない。
二人とも北岡をそのような人間だと理解していた。
故に、今の彼の行動はあまりにも予想外だった。
「……今更……今更何のつもりですか……」
「詩ぃちゃん?」
「そんな風に頭を下げたって、もう悟史くんは戻ってこないんですよ!」
マグナバイザーの銃口が光り、一筋のエネルギー弾が迸る。
それは目にも留まらぬ速さで空中を駆け、北岡の頬を切り裂いた。
「言葉だけの謝罪なんかいらないんですよ! 本当にそう思ってるなら悟史くんを返せよおおぉッ!」
「詩ぃちゃん……悟史くんはもう死んじゃったんだよ……」
「黙れ! 悟史くんは私が生き返らせる! だからこいつは殺さないといけないんだ!」
「死んじゃった人は生き返らない……生き返っちゃいけないんだよ……」
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいッ!」
狂ったように叫びながら、詩音はマグナバイザーを乱射する。
しかしロクに狙いを定めていなかったため、銃弾は滅茶苦茶な方向へと消えて行く。
呆然としながら、北岡もレナも五ェ門もデルフリンガーもそれを見ていた。
「あは……あははははははは、そうだ!」
何かを思い付いたのか、詩音は背負っていたデイパックに手を突っ込む。
取り出した先に握られていたのは、刃が血に塗れた鉈。
詩音はそれに目配せすると、北岡の足元へと放り投げた。
「アンタが本当に申し訳ないって思ってるなら、それで自分の首を掻き切って死んでください」
そして、底冷えするような声でそう告げた。
「なっ……」
「本当は爆殺してやりたかったんですけど仕方がありません、これで我慢します」
「詩ぃちゃん!」
「はぁ、だから言ったじゃないですか、私はそいつを許す気はないって
それに万が一許すようなことがあっても、悟史くんを生き返らせなきゃいけないからどのみち殺しますよ」
ここで北岡はようやく理解した。
詩音の目的は悟史の蘇生に入れ替わっていて、自分への復讐はその手段にすぎない。
殺害する順番や方法が変わっただけで、彼女の心はとっくの昔にV.V.の甘言に取り憑かれていたのだ。
「それにレナ、さっきから私に文句ばかり言ってますけど、なんでアンタは何もしないんですか?」
「え?」
「アンタ、圭ちゃんのこと好きだったんですよね?」
唐突に突き付けられた言葉に、レナの顔はほんのりと紅く染まる。
「わ、私は別に……」
「別にとぼけなくていいですよ、多分知らないのは圭ちゃんとお姉くらいでしょうし」
「そ、そうなの?」
「ええ、とっても分かりやすかったですよ、少なくとも沙都子や梨花ちゃまは絶対気付いてますね」
まるで放課後にファーストフード店で交わされるような会話。
今が一触即発の状況であることを、思わず忘れそうになってしまう。
しかし、足元に転がる血塗れの鉈が忘却を許さなかった。
「楽しかったですよねぇ、毎日毎日部活やったり、村中を駆け回ったり……なんだかとても昔のことのように思えます」
「そうだね、だから――――」
「でも、みんな死んじゃったんです」
思い出を語る暖かな声色から一転、凍りつくようなものへと変貌する。
「悟史くんも、沙都子も、お姉も、圭ちゃんも、みんな死にました、もう二度と部活をすることはできないんです」
「……っ!」
「なんでアンタは、何もしないでいられるんですか?
手を伸ばせば、楽しかった時を取り戻すことができるんですよ?」
一陣の風が、彼らの頬を撫でる。
V.V.の言葉が真実であれば、死者を生き返らせることも容易い。
周囲に建ち並ぶ民家のように壊れてしまった日常も、この手で取り戻すことができるのだ。
「そんなことしても、きっと圭一くんは喜ばない」
「……」
「人を殺した先に幸せになれる未来なんかない
生き残った私たちは、私たちの世界を生きていかなきゃいけない
悟史くんも、魅ぃちゃんも、沙都子ちゃんもきっとそう思ってるはずだよ」
詩音を諭すように、レナは言葉を紡いでいく。
それは綺麗事であり、すぐに突き崩すことができる詭弁なのかもしれない。
それでも殺人という十字架を背負っていくよりは、ずっと素晴らしいことのように思えた。
ウェーイ
「ああそうですか、分かりましたよ」
「詩ぃちゃん!
「本当はアンタ、圭ちゃんのことが好きでもなんでもないんです」
「え……」
「だってそうですよね? 好きな人を生き返らせようと思うのは当然のことなんですから」
明確な拒絶だった。
竜宮レナと園崎詩音の境遇は非常に似ている。
もしかしたら、彼女たちの立場が入れ替わっていた未来があったのかもしれない。
だが、今の彼女たちが交わることは決してない。
平行に並んだ二つの直線のように、どれだけ進もうと交差することはないのだ。
「私たちの世界って言いましたよね……そんなものもう私にはありません、私の世界はもう終わってるんですよぉッ!」
バックルに手を伸ばし、そこから一枚のカードを取り出す。
そこに彩られているのは、ゾルダを象徴するバッファローの刻印。
五ェ門が制止しようとするが、その動きはあまりにも遅い。
「全てが終わったらみんな生き返らせるつもりだったけど、レナなんかいらない!
私と悟史くんの未来を否定したアンタなんかいらない! 北岡や五ェ門と一緒に死ね!」
――――FINAL VENT――――
詩音の足元に転がっていたガラス片から、轟音と共にマグナギガが姿を現す。
間髪入れずに、詩音はマグナバイザーをその背中に装填。
マグナギガの両腕が上がり、膝、胸、額の砲門が開く。
「くけけけけけけけけけけけけけッ! みんな、みんな死んじゃえぇぇッ!」
キャノン砲、バルカン砲、ビーム砲、ロケットランチャーなど、あらゆる砲撃が視界を埋め尽くす。
その攻撃範囲は北岡、レナ、五ェ門のみならず、遠くで戦っている蒼嶋やスザクすらも含む。
北岡やレナが死を覚悟して目を瞑る中。
デルフリンガーを構えた五ェ門が、彼らの前に立ちはだかった。
☆ ☆ ☆
「でやあああああぁぁぁぁぁッ!」
雄叫びを上げながら、迫りくる砲撃を斬り落とす五ェ門。
銃弾やロケット弾は斬り落とし、熱線や撃ち漏らした分はデルフリンガーが吸収する。
病院でエンド・オブ・ワールドが放たれた際、彼は同じ手段で対処している。
だから、きっと今回も出来るはずだ。
全身を激痛が蝕み、刻一刻と身体から血が抜け落ちていくが、それでもこの攻撃を通すわけにはいかなかった。
ピシッ、と音が響く。
「すまねー、どうやら限界みてぇだ」
デルフリンガーの刀身に、小さな罅が入る。
今までの戦闘に加え、エンド・オブ・ワールドを二度も吸収したことで限界が訪れたのだ。
罅は一瞬のうちに全身に広まり、ぽろぽろと崩れ落ち始める。
「そうか」
「なんだよ、怒んねーのかよ」
「どこに怒る必要がある?」
「いや、最期の最期で役に立たなかったからよぉ……」
「お主はよくやってくれた、むしろ付き合わせてすまなかったと思っているくらいだ」
「っ、謝ってくれるなよ、これでも結構楽しかったと思ってんだぜ、兄ちゃん達と一緒にいるのさ」
「ふっ……最期まで兄ちゃんか」
「別にいいじゃねーか、っと、もう本当に限界みてーだ」
デルフリンガーは半分以上が欠け、もはや剣として機能することはない。
鍔の部分が、爆風に煽られ今にも吹き飛ぼうとしていた。
「でもよ、二回もあの爆発を吸収したんだ、魔力はたっぷり溜まってる」
今にも朽ちていきそうなデルフリンガーが、黄金のような輝きを放ち始める。
「だからよぉ……あの姉ちゃんにお返ししてやろうぜ、五ェ門!」
「ああ、行くぞ、デルフリンガー!」
両脚に力を込め、光り輝くデルフリンガーをしっかりと支える五ェ門。
両手でデルフリンガーを柄を握り締め、空を仰ぐかのように振り上げる。
迫りくる兵器と、マグナギガ、その後ろにいる詩音を見据えながら、惜しむように光刃を振り下ろす。
「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」」
光が、世界を包み込んだ。
☆ ☆ ☆
「ハァ……ハァ……」
マグナギガの姿を視認した瞬間、スザクは反射的に逃げ出していた。
既に変身は解除されていて、その手には黄緑色のカードケースが握られている。
周辺を見渡すが、ここが何処だか分からない。
滅茶苦茶に逃げ出したため、彼自身も何処に向かっていたか知らないのだ。
「クソッ!」
いや、そもそも逃げ出したこと自体が彼の意思ではない。
その身に刻まれた一つ目の呪い。
絶対遵守のギアスが発動し、『生きろ』という命令が彼に逃亡を強制していたのだ。
「俺は……また! クソ……クソォ……」
地べたに這いつくばり、何度も何度も拳を振り下ろす。
山小屋でもそうだった。
ギアスが彼の身体を縛り付け、最愛の人の命を奪い取った。
そして今回は、最愛の人の蘇生を一歩遠ざけた。
あのまま蒼嶋駿朔と戦っていたら、確実に彼を殺すことができただろう。
まだ、ファイナルベントのカードが残していたのだから。
「待っててね……水銀燈……」
皮膚が破けて真っ赤になった拳をぶら下げ、幽鬼のようにスザクは歩き出す。
その顔に生気はなく、精悍な騎士だった頃の面影は微塵もない。
そこにいるのは、人形に操り糸を取り付けられた哀れなマリオネットだった。
――――好きな人を生き返らせようと思うのは当然のことなんですから
逃げ出す直前、ゾルダに変身していた少女が放った言葉を思い出す。
彼女のことは何も知らないが、言葉には非常に深い共感を覚えた。
そう、当たり前だ。
愛する人を取り戻す手段があるのなら、他者を蹴落としてでも手を伸ばす。
自分は間違ってなどいない。
ひたすらにそう信じながら、ゆらりと歩き出すスザク。
「水銀燈……」
奇しくも彼を支配しているギアスは、彼から水銀燈を引き離すように発動している。
元親友からの、せめてもの哀れみなのか。
知る者は、何処にもいない。
【一日目 午後/Fー9 南】
【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ(アニメ)】
[装備]:ゼロの銃(弾丸を三発消費)@コードギアス 反逆のルルーシュ、ベルデのデッキ@仮面ライダー龍騎(一時間変身不能)
[所持品]:支給品一式×2(食料は一つ多め)、ワルサーP−38(3/9)@ルパン三世、ワルサーP−38の弾薬(11/20)@ルパン三世、
日輪の鎧@真・女神転生if...、Kフロストヅーラ@真・女神転生if...、確認済み支給品0〜1(武器はない)
[状態]:ダメージ(中)、『生きろ』ギアスの効果継続中、惚れ薬の効果継続中、記憶と精神の一部に混乱、疲労(中)
[思考・行動]
1:参加者を全員殺し、水銀燈を生き返らせる。
2:狭間偉出夫は絶対に許さない、見付け出して殺す。
[備考]
※ゾルダの正体を北岡だと思っていましたが、違う可能性に気付きました。
※水銀燈は死亡したと思っています。
※ユーフェミアの事を思い出せなくなっています。
※第二回放送を聞きませんでした。
☆ ☆ ☆
「う……あぁ……」
全身を焼き尽くすような熱と痛みを感じ、詩音の意識は覚醒する。
血液で染みる目を開くと、そこに広がっているのは空。
自分は地面に転がっているのかと、ぼんやりとした思考で理解した。
「おふ……ごええぇっ!」
急に胃を搾り取られるような苦痛が走り、喉の奥から何かがせり上がってくる。
たまらずにそれを吐き出すと、手の平が大量の血液で真っ赤に染まっていた。
「あれ、私……」
いつの間にか変身が解除され、ゾルダからただの人間に戻っていたことに気付く。
慌てて周囲を見渡すと、自分の足先にデッキが落ちている。
軋む身体を持ち上げ、焼け焦げた手を伸ばす詩音。
だがその手がデッキを掴む寸前、上から伸びてきた手がそれを掠め取ってしまった。
ソイ
「ひっ……」
五ェ門だった。
全身を覆い尽くすような火傷を負い、腹部の裂傷は黒一色に染まっている。
柄だけとなった剣を持つ姿は、今にも崩れ落ちてしまいそうに儚い。
しかし、その目だけは輝きを失っていなかった。
あらゆる悪を切り裂く刀のように、鋭く澄み切った色をしていた。
「返してもらうぞ、これは」
ただ一言だけ告げ、踵を返す五ェ門。
そのままふらふらとした足取りで、彼は立ち尽くしている北岡やレナの下へと戻っていく。
傍目に捉える彼らに、一切の傷は見当たらない。
負傷しているのは、五ェ門と詩音だけだった。
「か……かえ……」
去っていく五ェ門に手を伸ばすが、その手はこれでもかというほど震えている。
放とうとした言葉は、最後まで喉の奥から出て来なかった。
「五ェ門!」
覚束ない足取りで近づいてくる五ェ門を、北岡とレナは歩み寄って支える。
彼らが無事であることを確認すると、五ェ門はふっと穏やかな笑みを浮かべた。
「北岡殿、これを……」
ぷるぷると震える手で、五ェ門はゾルダのデッキを差し出す。
細腕ながらも筋肉を蓄えたその腕は、見るも無残な程に焼け焦げている。
それを見た北岡は悔しそうに俯きながら、無言でデッキを受け取った。
「五ェ門さん!」
デッキを手渡した瞬間、糸が切れたように五ェ門の身体は崩れ落ちる。
「これで……契約は果たしたぞ……」
爛れた目で空を仰ぎながら、独り言でも言うかのように語る五ェ門。
大切そうに握り締められた剣の残骸を見て、北岡はデルフリンガーの最期を理解する。
最初はうるさい奴だと思ったが、あの陽気さに救われたことがあった。
五ェ門にしてもそうだ。
悟史の呼びかけに応えると言った時、面倒くさい奴と契約してしまったと思った。
病院での情報交換の際、正直者過ぎて鬱陶しいとも感じた。
だが、事情も聞かずに浅倉との戦闘を請け負ってくれた時。
つかさの殺人を暴露して、言わずともこちらの事情を察してくれた時。
とても頼もしい人間だと思った。
融通が利かず、怒りっぽくて、すぐに暴力を振るう。
でも頼り甲斐があって、意外と陽気な性格をしていて、一緒にいると悪くない。
北岡にとって、五ェ門とはそんな人間だった。
「おい、五ェ門!」
そんな五ェ門が、今にも死に逝こうとしている。
今までに感じたこともない巨大な喪失感が、北岡の胸に去来していた。
支援
「そんな……悲しそうな顔をするな……北岡殿にはふてぶてしい顔のほうが似合ってる……」
くくっと喉を鳴らしながら笑う五ェ門。
からかうような物言いに、思わず北岡は捲し立てる。
「な、なによそれ、せっかく人が悲しんでやってるのに」
「なんだ、悲しんでくれていたのか……あの北岡殿が……意外だ」
「お前なぁ……ああ、そうだよ、悲しんでるよ、悪い?」
「いや、悪くない、これから死ぬというのに、とても穏やかな気分だ」
からかうような口調から一転、真面目な声色で言葉を紡ぐ。
先ほどの自分の発言を思い出し、北岡は小っ恥ずかしい気分になってしまった。
「……このような場所ではあったが……お主やつかさ殿といるのは楽しかった……」
「ああ、俺も……悪くなかったよ」
「最初は北岡殿こと……なんだこのペテン師とすら思っていたのだがな……不思議なものだ」
「あのなぁ、それ今言うことか?」
「最初に出会った時のことを忘れたか? 喋る剣とは随分と面食らったぞ……」
「あの時は俺も必死だったんだよ、でも悪かった」
「いや……今では良かったと思ってる、デルフリンガーも言っていたぞ……お主たちと一緒にいるのは楽しかったと……」
「俺も、俺も楽しかったよ、だからさぁ……死ぬなよ」
「それは……無理な……相談だ……」
五ェ門の目から鋭さが消え、ゆっくりと光が失われていく。
「つかさ殿のこと……頼んだぞ……」
「ああ、任せてよ」
「浅倉威は……必ず倒すのだぞ……」
「言われなくても分かってるって、あいつは必ず倒す」
「そうか……そうだったな」
五ェ門の身体から力が抜け、鼓動が徐々に弱まっていく。
死が、すぐそこで鎌首をもたげていた。
「なぁ、五ェ門」
「……どうした?」
「ありがとう」
「……どういたしまして」
【石川五ェ門@ルパン三世 死亡】
五ェ門の鼓動が止まったのを確認し、北岡は労るようにその身体を地面に降ろす。
ようやく戻ってきたゾルダのデッキを握り締め、悔しそうに歯を食いしばる。
「北岡さん……」
蹲るように座り込む北岡の背後から、しっとりと湿ったレナの声が聞こえる。
そんな時だった。
『一定以上の衝撃を確認しました、首輪の爆破機能が作動します』
そんな訳の分からないことを告げる電子音声が、彼らの耳に届いた。
「きゃあっ!」
背後から届くレナの悲鳴。
思わず振り返ると、そこには信じ難い光景が広がっていた。
支援
「あははははははははははっ! レナァ!」
けたけたと笑いながら、レナを逃すまいとしがみ付く詩音。
彼女の全身は血に塗れ、身体のところどころは焼け焦げている。
だが、その目はぎらぎらと輝いていて、裂けてしまうのではないかと思うほどに笑い続けていた。
「アンタだけは……アンタだけは幸せになんかさせない……私と一緒に死ねぇ!」
『27……26……25……』
首輪の電子音は、詩音の首輪から発せられていた。
☆ ☆ ☆
五ェ門が立ち去っていくのを見ながら、詩音は自分自身の命が長くないことを悟った。
悟史への恋心や、魅音への思慕、圭一や沙都子への友情。
様々な思いが交錯し、彼女の意識は沈みゆく。
沈みゆくはずだった。
(なんで……)
僅かに身体を起こした時、目に見えたのはレナの背中。
仲間が死んでいるにも関わらず、何もしようとしない女の背中。
何かをしようとした自分を、真っ向から否定した裏切り者の背中。
心の奥から、ドス黒い殺意が湧き出る。
竜宮レナは殺す、何としてでも絶対に殺す。
死に逝く意識の中、彼女が最期に抱いたのは元友人への殺意だった。
しかし、武器の入ったデイパックは先程の一撃で焼失してしまっている。
それでも何かないかと思考を巡らせた時、感覚の鈍くなってきた腕が首輪に触れた。
――――これはね、君たちを縛る枷さ。もし途中で逃げようとしたり、誰も殺さなかったり、行っちゃいけない場所に行ったりしたら、それ爆発しちゃうから
この首輪によって、参加者は支配されている。
ならば、首輪を強引に外そうとすればどうなるのだろうか。
「あは……はは……」
爆発するに決まっている。
それに気付いた瞬間、彼女は無我夢中でその首輪を掴み取った。
そのまま最期の力を振り絞り、首を掻き毟るように何度も何度も力を込める。
爪が剥がれ、皮膚が擦れるが、もはや痛みを感じることはない。
そして、電子音が響く。
『一定以上の衝撃を確認しました、首輪の爆破機能が作動します』
「離せッ!」
北岡がレナから私を引き剥がそうとするが、必死でしがみ付いて抵抗する。
このままの状態でいれば、北岡も道連れにすることができるだろう。
あんな陳腐な謝罪で、悟史くんを殺した罪を許すわけがない。
支援
『18……17……16……』
首輪の電子音が、刻一刻と時を刻んでいく。
あと少しで、仇を取ることができる。
みんなを見捨てた竜宮レナと、悟史くんを殺した北岡秀一。
お前らがのうのうと生きていることなんか、絶対に許さない。
ゆっくりと恐怖を味わいながら、身体をばらばらにして死に晒せ。
「うわっ!」
北岡の身体が跳ね跳ぶ。
その方向を見ると、無様に尻もちをついている北岡の姿があった。
力みすぎたせいで吹き飛んだのかと思ったが、それにしては吹き飛んだ距離が長過ぎる。
その理由を考え始めた瞬間、私の身体は暖かな感触に包まれていた。
「ごめんね、詩ぃちゃん……」
レナが、私の身体を抱き締めていた。
その姿を見て、レナが北岡を押し飛ばしたのだと気付く。
「私、詩ぃちゃんに酷いこと言っちゃったよね……許してくれるか分からないけど……ごめんね……」
嗚咽を漏らしながら、レナは謝罪の言葉を語る。
「詩ぃちゃんはもうすぐ死んじゃうんだよね……罪滅ぼしになるか分からないけど……私も一緒に逝くよ……」
レナの顔を見上げる。
目を真っ赤に腫らしながらも微笑む彼女の顔は、まるで聖母のように美しい。
心の奥底から湧き出た殺意が、抜け落ちていくのを感じる。
「私……私……ッ!」
両の目から、溢れるように涙が零れ落ちる。
『5……4……3……2……』
電子音声は、無常にも爆発までの時間を刻み続ける。
止めようと思っても、もうどうしようもない。
『1……』
目を、瞑る。
『0』
ドカンッ――――――――
☆ ☆ ☆
「ここは……」
詩音が目覚めた時、目にした風景は見覚えのあるものだった。
魅音や沙都子が通っている雛見沢分校。
彼女も部活に参加するため、足繁く通っていた所だ。
支援
「詩音ー、早く席に着いてよー、部活始めらんないじゃん」
「そうですわよ、さっさと席に着いてくださいまし」
「おい、詩音、ボーッとしてんなよな」
声のした方向を見ると、そこにはもう会えるはずのない三人の姿があった。
「お姉に沙都子に圭ちゃん……なんで……」
「なに呆けてんだよ? さっさと席着けよな」
ぶっきら棒でがさつな圭一の声。
普段なら女の子になんて態度だと言い返していただろう。
「どうしましたの詩音さん? さっきから変ですわよ?」
「え、うぅん、なんでもありません、今日は何をするんでしたっけ?」
夢を見ていたのか、と思う。
随分と悪趣味な夢だったが、夢だったのなら気にするまでのことでもないだろう。
そう自分を納得させて、彼女は席に座ろうとする。
「うーん、それがまだ決めてないんだよねー、それにまだ一人来てないし……」
そういえばレナや梨花の姿が見えない。
一人と言っていたから、どちらかは用事で不参加なのだろう。
「ごめんごめん、ちょっと先生に捕まっちゃって……」
「え?」
引き戸式の扉をガラガラと鳴らしながら、申し訳なさそうに入ってくる人物。
彼女にとって、あまりにも予想外な人物。
「もう、こんなにレディーを待たせるなんて、紳士としてあるまじき行為ですわ」
「俺はレディーじゃないけどな……」
「前にメイド服着て街中歩いてたし、圭ちゃんももうレディーみたいなもんじゃないかな」
「だーーっ! あの時のことは言うなぁ!」
金色の髪を揺らしながら、麗しげな表情を浮かべる。
線は圭一よりもちょっとだけ細く、街を歩いていれば誰もが振り返る美少年。
「悟史……くん?」
「どうしたの、詩音?」
ずっと、ずっと会いたかった、北条悟史だった。
「わっ……ど、どうしたの、詩音!?」
一目散に駆け寄って、悟史を力いっぱいに抱き締める。
他の三人が見ているけれど、そんなことは関係なかった。
「悟史くん、悟史くん……!」
「ホ、ホントにどうしたのさ、困るよ、みんなの前で……」
頬を真っ赤に染めながら、困ったように項垂れる悟史。
そんなことはお構いなしに、詩音は彼の胸に顔を埋めた。
そうして、一分が経過した頃だろうか。
詩音の頭に、暖かな手が乗せられる。
「むぅ……」
【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に 死亡】
ソイヤッ
☆ ☆ ☆
「なんだ、今の爆発は……」
進行方向で起こった大爆発。
規模としては、朝を迎える前に森林方面で起きたものと同じくらいだろうか。
凄まじい轟音と爆風に、狭間は気圧されてしまった。
「戦いは終わったか」
あの規模の爆発であれば、戦闘に終幕を引くことも容易いだろう。
これで邪魔者を掃除する手間が省けた。
あとは蒼嶋と戦い、その胸にこの刀を突き立てるだけだ。
「くくっ……」
期待を胸に仕舞い、一歩ずつ進む狭間。
視界の先には、既に崩れ落ちた教会を捉えている。
ぼんやりとだが、何人かの人影も見えた。
間違いなく、あそこに蒼嶋がいる。
「ついに……ついに私は……」
溢れる渇望は抑え、あくまで理知的に狭間は歩く。
ぼんやりとしていた人影は、やがてはっきりと背格好が分かるまでに見えてきた。
侍風の男と、首のない女の死体。
スーツを着た男に、セーラー服を着た少女。
そして、少女の足下で蹲る三つ目の――――
「なんだ、あれは」
目を、疑った。
制服の裾で目を擦り、再び目の前に広がる光景を見る。
変わっていなかった。
侍風の男と、首のない女の死体。
スーツを着た男に、セーラー服を着た少女。
そして、少女の足下で蹲る三つ目の――――死体。
見覚えのある青いブレザーを着た男の死体。
「蒼……嶋……?」
蒼嶋駿朔の死体だった。
☆ ☆ ☆
ボロボロになるまで甚振られた蒼嶋は、ベルデが去ってからもその場から動くことができなかった。
遠くで大爆発が起きて、しばらくした頃だろうか。
耳を劈くような電子音を聞いて、彼はゆっくりと顔を上げる。
狂ったように笑う詩音が、レナを逃すまいとしがみ付いていた。
爆発を告げる電子音は、彼女の首輪から告げられている。
支援
(あの女……)
レナを道連れに自爆するつもりなのだろう。
最期の最期までしつこい女だと、蒼嶋は心中で毒づく。
無論、そのままにしておくつもりはない。
走っても十分に間に合う距離であり、そのまま投げ飛ばせば被害は軽微で済む。
その考えの下に立ち上がった瞬間、ガクンと腰が落ちた。
(ったく、なんでだよ……)
ダメージを受けすぎたのだろう。
足に鉛を括りつけられたかのように身体は重い。
その後も何度か立ち上がろうとしたが、やはり身体は動かなかった。
(あーあ、でも、まぁ……俺も頑張ったんじゃねーの?)
寝そべって空を見ながら、蒼嶋は自嘲する。
シャドームーン程ではないといえ、ベルデも仮面ライダーの一人だ。
ガーディアンの加護を受けていても、やはり根本的な実力が違いすぎる。
それを一人で抑えたとなれば、十分に勲章物だろう。
(大体よぉ、俺なんか元々大した奴じゃないんだって)
たまたまCOMPを入手し、結果的に狭間と戦うことになっただけの人間。
最終的に戻ってきたのは自分だけであり、一緒に戦ったアキラすら見捨てて帰ってきた。
確かにレナは可愛いし、何度も助けられた。
だが、軽子坂高校にもそんな人間はいっぱいいた。
放課後によく遊び回った友人や、彼女にしたいくらい可愛い美少女、相談に乗ってくれた先生。
そんな人達を見捨てて、自分はたった一人で帰還している。
数年間も一緒にいた人たちを見捨てたのだから、数時間しか一緒にいないレナを見捨ててもおかしいことではない。
「ごめんね、詩ぃちゃん……」
レナが、詩音を抱き締めていた。
(なんで……)
詩音は何度もレナを殺そうとしていたし、今も殺そうとしている。
いくら友達だからとはいえ、そこまでした人間をどうして許そうと思うのか。
何としてでも引き剥がし、何処かに押し飛ばすのが普通なのだ。
(なんでだよ……)
なのに、レナは抱き締めている。
一緒に心中する覚悟で、詩音の身体を抱き締めている。
(そんなの見せつけられたら……俺……)
――――立て!
何処かから、声が聞こえた気がした。
――――いつまでもダラダラしてないで、やりたいことがあったらすぐやる!
まるで説教のようだった。
数時間しか聞いてなかったはずの声なのに、やけに懐かしい気がした。
支援
「ごめん……そして、ありがとう」
全身に力を込め、蒼嶋は立ち上がる。
何度試しても立ち上がれなかったのに、今度は一発で立ち上がれた。
”彼女”の時は手が届かなかったが、今は手を伸ばせば届く。
「やっぱり俺にはぐだぐだ考えてるのは似合わねえや」
レナは自分の世界を生きなければいけないと言った。
戦いながらではあったが、その言葉ははっきりと聞こえた。
だから、レナはここで死んではいけない。
レナは生きて、自分の世界を生きなければいけないのだ。
「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――ッ!!」
走る。
全身の力を振り絞り、力任せに蒼嶋は駆けた。
『5……4……3……2……』
レナの下にまで辿り着く。
だが、詩音を投げ飛ばしている時間はない。
レナの身体から詩音を引き剥がし、同時に彼女を突き飛ばす。
『1……』
Kフロストマントをレナの身体に投げ、そして力任せに詩音を押し倒した。
『0』
自分の身体が、飛び散るような感覚を感じる。
それでも自分は笑っているのだと、薄れていく意識の中で何となく彼は思っていた。
☆ ☆ ☆
「ディアラハン!」
北岡やレナを押し退け、蒼嶋の死体に近づく狭間。
右手を翳し、自身が覚えている最高の回復呪文を唱える。
すると身体の傷は小さくなっていき、やがて完全に傷は見えなくなる。
だが、それは死体のままだった。
「ディアラハン! ディアラハン!」
何度も何度も呪文を唱えるが、まるで手応えを感じない。
穴の開いたバケツに水を入れているような、そんな気分だった。
「ディアラハン! ディアラハン! ディアラハンッ!」
それでも彼はずっと呪文を唱え続けていた。
これが無駄な行為ではないと、自らに言い聞かせるかのように。
ずっと、ずっと。
【蒼嶋駿朔@真・女神転生if... 死亡】
支援
【一日目午後/F−9 教会】
【北岡秀一@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]レイの靴@ガン×ソード
[所持品]ゾルダのデッキ@仮面ライダー龍騎@二時間変身不可、レミントン・デリンジャー(0/2)@バトルロワイアル
[状態]疲労(大)、軽症
[思考・行動]
0:病院にいるつかさを信じる。
1:浅倉と決着をつける。
※龍騎勢が、それぞれのカードデッキを持っていると確信。
※一部の支給品に制限が掛けられていることに気付きました。
※病院にて情報交換をしました。
【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】
[装備]:鉈@ひぐらしのなく頃に
[所持品]:支給品一式、インスタントカメラ(数枚消費)@現実、空飛ぶホウキ@ヴィオラートのアトリエ
真紅の下半身@ローゼンメイデン、Kフロストマント@真・女神転生if…
[状態]:疲労(大)、悲しみ
[思考・行動]
0:蒼嶋の死に呆然。
1:C.C.、ヴァンと合流する。
2:翠星石と蒼星石も探す。
3:水銀燈、後藤、シャドームーン、縁を警戒。
[備考]
※この会場の西端と東端、北端と南端は繋がっています。
どこかの端からエリア外に出ると、逆の端の対応する位置へとワープします。
※ギアス、コードについて一定の理解を得ました。
【狭間偉出夫@真・女神転生if…】
[装備]:斬鉄剣@ルパン三世
[所持品]:支給品一式、ニンテンドーDS型探知機
[状態]:疲労(小)、精神疲労(小)、人間形態
[思考・行動]
1:???
[備考]
※参加時期はレイコ編ラストバトル中。
※水銀燈は死亡したと思っています。
※五ェ門の遺体に傍にデルフリンガーの残骸@ゼロの使い魔、五ェ門のデイパック(支給品一式(水を消費)、確認済み支給品(0〜2)(剣・刀では無い))が落ちています。
※蒼嶋の遺体の傍にブラフマーストラ@真・女神転生if…、庭師の鋏@ローゼンメイデンが落ちています。
※蒼嶋のデイパック(支給品一式×3、どんと来い超常現象全巻セット(なぜベストを尽くさないのか付)@TRICK、スイカ(残り4玉)@スクライド、
織田のバイオリン@バトルロワイアル、未確認支給品(0〜1)、秘密バッグ@ヴィオラートのアトリエ)は爆発に巻き込まれて破壊されました。
※詩音のデイパック(支給品一式×3(食料と水を一つずつ消費)、AK-47(カラシニコフ銃)@現実、AK-47のマガジン×9@現実、鉈@バトルロワイアル
クマのぬいぐるみ@ひぐらしのなく頃に 、確認済み支給品0〜2(銃器類は入っていません) 消毒薬@現実(現地調達)×1 )は爆発に巻き込まれて破壊されました。
【Kフロストマント@真・女神転生if…】
キングフロストが使っている絢爛華麗な赤いマント。
防御力75、回避18。
炎に対する耐性を持ち、さらに体力を3上げる効果がある。
男しか装備できない。
支援
以上です。
誤字脱字などがありましたら指摘していただけるとありがたいです。
今回のタイトルなのですが仮題ということにさせてください。
明日までにいいのが思い付いたら、そちらに変更します。
投下乙ぅぅ!
詩音がこれほど輝いてるロワは初めて見たよ、しかし綺麗な死に方だった
……マーダー一人、対主催二人死亡。あれ、何かおかしくないか?
投下乙です!
いや、何て言ったらいいか
どいつもこいつも素晴らしい死に方をする一方で、残された人間の感情を思うと、
いや、ほんとうに素晴らしい話だったと思います!
五ェ門が…
北岡五ェ門コンビが好きだったからきついぜ
投下乙
投下乙
北岡と五エ門の別れに感動していたら、一気に叩き落とされた
投下乙!
五ェ門…ルパンに続いてお前まで死ぬとは
これでルパン勢全滅か
そしてデルフリンガー退場でゼロ魔勢も完全消滅したか
詩音も、おそらく今までの参戦ロワの中で一番長く生き残ったけどここで終わりか
無茶しやがって…
最期には救われたのかな?
そして蒼嶋…まさかレナをかばって死ぬとは
回復呪文を唱え続ける狭間が痛々しすぎるよ…
って、投下の余韻に浸ってたらまた予約来てた!
たくさんの支援と感想ありがとうございました。
タイトルですが「It was end of world」に変更させてください。
指摘し忘れていましたが、
>>679 まだ、ファイナルベントのカードが残していたのだから。
は誤字だと思います。
>>756 たびたびすいません、誤字です……
まだ、ファイナルベントのカードを残していたのだから。
ですね。
あと
>>674の「詩ぃちゃん!」の部分に脱字がありました、wiki収容時に修正しておきます。
今回の話で結構な数の不明支給品が破壊されたな。勿体ない。
コキュートスがあったりしてww
脱落した3人よりも何故か狭間が可哀相に
見えるのが不思議だww
しかし今までわりと平穏だったハザマもようやく争いの渦中に入れたな
ここで情報収集その他うまく立ち回れれば元々のスペックは高いし話の中心へ駆け上ることもできるか?
>>759 ラストで回復呪文唱え続けるシーンは、
レナと北岡に「こいつ蒼嶋の親友なのか?」って勘違いされただろうレベルだなw
いや大好きなのは間違ってないんだけども
死亡者一覧見たけど、詩音の殺した面子がぱねぇ
全員一定以上の実力者じゃないか
レイ・ラングレン、石川五ェ門、男主人公(蒼嶋駿朔)
これは大物食いですわ
764 :
創る名無しに見る名無し:2012/05/29(火) 03:04:28.16 ID:McnHy2Y1
投下乙やね
ホント対主催者詰んでるなw
いやいや、CCOとか対主催でもここからが本番って感じのやつもいるだろ
今回のでそこそこマシになったんじゃないか?
北岡がゾルダのデッキ取り戻して、さらに狭間に対主催化の可能性が出たわけだし
CCO様の対主催としての欠点は、能力より対主催に見えない所にある
それにしてもへったなーー。半分ぐらい?
残り26人だからもう半分切ってる、全体のちょうど4割の生存者ね
っていうか、このスレだけで9人も死んでるわww
>>761 「死ぬな!ケアルガ!」「お願い!レイズ」「目を覚ませ!フェニックス の尾」
を思い出した
>>770 それを聞いて某ゲームのパロディモードの
ドゥクレイ(毒)を瀕死の仲間にかけつづけるキャラを思い出したw
地味に容量429kbいってるな
これは投下続くし早めに次スレ立てたほうがいいかも
まだ70kb前後あるし大丈夫な気がするけど、分割級が一本でも来たらまずいことになるな
対主催をまとめられそうな人物って
LかCCO様ぐらいだよね
おっと、最重要人物を忘れているぞ。
そうだ、上田先生のことだ。
「参加者の中で私より器が“大きな人間”がいるだろうか。数多の人々を引き付け魅了してやまない“大きな人間”が」
帰って下さい上田さん。
マーダーの中では縁ピンチだね
本当にヤバいのは後藤な気がする
なんというか一回目放送前のスゴ味がもう感じられない、今回の予約で挽回できるかもだが
今度の相手は同郷だしね
上田先生って何気に強靭な精神だよね
マーダー化するのも想像できないし
>>781 マーダー化は予想できないが
危険領域に入りたくないだけだから
強靭な精神とはまた違うw
縁さんは野郎とロリには容赦ないし
これからかね
でもこうやって逃げ回っているキャラは、最後の最後で何らかの核心を突くイメージがある
シャドームーン撃破ですね。わかります。
なんか上田先生の人気盛り返してきたねw
あと二時間・・・・・・wktk
この時期でも全裸だとさすがに寒いなぁ
北岡秀一、枢木スザク、ジェレミア・ゴットバルト、狭間偉出夫、柊つかさ、竜宮レナを投下します。
支援
「0/1(いちぶんのぜろ)」。
超えられない横線、解の無い公式。
0と1――死と生。無と有。
隣り合っているはずの両者の距離は、遠い。
▽
「もう、いいよ。……ありがとう」
ディアラハンを唱え続ける狭間偉出夫に声を掛けたのは、セーラー服に身を包んだ少女だった。
狭間より少し年下に見えるその少女は涙を落としながら、それでも笑顔を作る。
震える唇がひきつって、無理をしているのは明らかで、それでも笑おうとしていた。
「詩ぃちゃんも、五ェ門さんも……蒼嶋さんも……死んじゃったんだよ」
「……ッ!!」
その言葉に、狭間は少女の襟を掴み上げた。
わなわなと手が震え、反論しようとしても何も言えず、ただその姿勢のまま少女を睨み付ける。
どんな事でも、この頭脳で叶えてきたはずだった。
狭間を軽んじて蔑んだ者達は学校ごと魔界に叩き落とし、強力な悪魔達を屈服させて従えた。
今更――『人の死』程度を超えられないはずがなく、覆せないはずがない。
魔神皇に、不可能があってはならないのに。
有能である事を、万能である事を、それらを誇示する事でしか人に関わる事すら出来ないのに。
「蒼嶋さんと……友達だった?」
「!! ……ち、がう……ふざけるな、違う!
違う、わ、私は……私は、私が殺すはずだった……!!
殺す為に、私は……ッ!!」
取り乱した姿は見苦しい。
それでも喚く事しか出来なかった。
見当違いな事を言う無礼な少女にメギドをぶつけようとしても、魔力は形を成さない。
掴んでいた襟を手放し、少女に背を向ける。
蒼嶋駿朔を殺す――それだけを目的にしていた。
倒されたはずの自分がこうしてこの殺し合いに呼び出されたのはその為だと、それ以外何も見えていなかった。
その目的を奪われた狭間は、空っぽになった。
胸に空いた穴は塞がらない。
これから何をするのか、何をしたいのかさえ分からなかった。
虚無感と混乱が渦巻いている。
この少女と向き合っているとそれらが破裂してしまいそうで、逃げ出したくなった。
「でも、悲しんでくれた……よね。
レナは蒼嶋さんとちょっとしか一緒にいられなかったけど、必死になって貰えて凄く嬉しかった
だからレナは、お礼を言いたいの」
自分の事をレナと呼んだ少女は、狭間の背に向かってもう一度言う。
「ありがとうね……狭間さん」
名を呼ばれ、狭間は振り返る。
蒼嶋から容姿について聞いていたのか、制服のワッペンを見て同じ高校の者と判断したのか、レナは狭間の事をすぐに認識出来ていたらしい。
だが蒼嶋から話を聞いているなら、狭間と蒼嶋の関係も知っているはずだ。
知った上で『友達』などと宣った――虚仮にしているのかと、少女に対する苛立ちが膨らむ。
「蒼嶋さんが言う程、悪い人じゃないみたいで良かった」
「何だと……?」
「お願いしても……いいかな、かな」
狭間が言い返すよりも早く、レナが言葉を繋げる。
支援
勝手な解釈と物言いにより苛立ちを募らせるが、それはその後のレナの言葉と行動で驚愕に変わった。
「助けて下さい」
深々と頭を下げられた。
横でやり取りを身ていた男に対しても「ほら、北岡さんも」と言って頭を下げさせている。
「凄く強いって、聞きました。
レナ達だけじゃ戦えないから……お願いします」
狭間は今まで、誰かに感謝される事も頼られる事も経験した事がなかった。
正面から礼を言われ、丁寧に願い事をされた、その後にどうしていいのかを狭間は知らない。
困惑しながら視線を泳がせてしまう。
しかし、思い当たる――「ありがとう」は、ご機嫌取りなのだと。
助けて欲しくて、自分達が助かりたくて、魔神皇である自分に世辞を言っている。
そうに違いない、この二人も今まで出会った人間達と同類だ。
「我が身がそんなにも可愛いか、愚かな人間共」
「違います」
狭間の嘲りを迷わず断ち切って、頭を下げていたレナが顔を上げる。
背筋を伸ばし、狭間の目を見据えてくる。
魔法も使えない、ただの人間のはずなのに、狭間は身を固くした。
「この会場に、強い人がいっぱいいるんです。
このままじゃ、みんな死んじゃうから……だから」
凛としたその目は、青く燃えるようだった。
「一緒に戦って下さい。
みんなを、助けて下さい」
▽
柊つかさはジェレミア・ゴットバルトと共に総合病院を出た。
リフュールポットが完成し、アイゼル・ワイマールの遺体を霊安室に運び終え、改めて黙祷を捧げ。
病院ですべき事はなくなった。
恐らくこの先、何か用が無ければこの場所にはもう訪れないだろう。
訪れたとしても霊安室へは行かない――そんな時間があるなら錬金術に打ち込んだ方がいい。
だから妹とも師とも、これでお別れだ。
「さよなら」と、隣にいるジェレミアにさえ聞こえない声量で言う。
ジェレミアとの間に会話は殆ど無かった。
彼の主であるルルーシュ・ランページを殺害し、アイゼルの死の原因になった――つかさから話し掛ける事は出来ない。
けれどポットで回復して動くようになった彼の右腕と、つかさの歩調に合わせて進んでくれる背に僅かな安堵を抱く。
許して貰えなくても歩み寄れているはずだと、信じて前に進む。
しかし病院を出てすぐにつかさもジェレミアも足を止めてしまった
北岡秀一や石川五ェ門と待ち合わせた南の民家までは一本道。
故に迷う事はないだろうと思っていたのだが――つかさは空を見詰める。
病院から見て北東、教会方面で上がっている黒煙は、数時間前にここで見たものと良く似ていた。
北岡達が巻き込まれたのかも知れないと、そう思った途端に全身に震えが走る。
北岡達は南の民家でつかさを待っていたはずだが、別れてから三時間以上が経過していた。
つかさの帰りが遅くなれば病院まで迎えに来てくれると、約束していたにも関わらず来ていない。
それは、来られない事情があるからではないか。
つかさは自分の身を抱き締めるようにして震えを押さえながら、ジェレミアの様子を窺う。
北東を見据える彼に、意を決して声を掛ける。
支援
「あの、……」
「待ち合わせ場所から離れれば、入れ違いになる確率も上がる。
そのリスクは分かっているのか」
北岡達が巻き込まれた可能性も、つかさがそれを危惧している事も、ジェレミアは察していたようだった。
突き放すような口調に気圧され、それでもつかさは頷いた。
「分かって、ます。
でも……心配で」
俯いて地面を身詰める。
北岡や五ェ門が今無事でいるのか、考える程に胸が張り裂けそうになった。
立ち止まったままでいたつかさを余所に、ジェレミアが歩き出す。
向かっているのは北東だ。
「ジェレミアさん……?」
「様子を見に行くだけだ。
北岡達の姿が無ければ予定通り南に向かう」
つかさは思わず顔を上げるが、ジェレミアは既につかさの方を見ていなかった。
僅かに歩調を早めたジェレミアを、つかさは小走りで追い掛ける。
そうして無事でいて欲しい一心で進んでいたつかさだったが、唐突に止まったジェレミアの背にぶつかった。
謝ろうとするものの、当のジェレミアは特に気にしていない。
正確には正面に気を取られ、つかさが当たった事にも気付いていないようだった。
「枢木スザク……!」
そう言ったジェレミアの声には微かに喜色が滲んでいる。
彼と二人で進んでいた道の中央に佇むのは、栗色の髪の少年だった。
情報交換の中で「殺し合いに乗っている可能性はない」とされていた、ジェレミアの知り合いだ。
「どうやら無事で――」
しかしジェレミアが言い掛けてから口を噤む。
スザクは全く笑わず、警戒も解いていなかった。
「ジェレミア卿、自分は――」
苦々しく苦しげな表情を浮かべ、スザクが腰に挿していた銃を抜く。
真っ直ぐにジェレミアと向かい合った目は濁り切っていた。
「もう、後戻り出来ないんです」
▽
スザクに銃口を向けられ、ジェレミアはつかさの制服の襟を掴んで持ち上げた。
小さい悲鳴が上がったのも構わずにそのまま小脇に抱え、跳躍して弾を躱す。
ジェレミア自身は銃弾を跳ね返す事が出来るが、下手に跳弾すればつかさに当たりかねないので回避を選んだ。
とは言え、困惑は拭えない。
「君は、正しさを求めているものと思っていたのだがな」
「……僕は……間違っていません」
スザクの強い否定に、ジェレミアは違和感を覚える。
殺し合いを肯定しているようにさえ聴こえるその言葉は、ジェレミアが知る彼の人物像から大きく乖離していた。
ジェレミアとスザクの縁は、第三皇子クロヴィス・ラ・ブリタニア暗殺事件に端を発している。
当時純血派を率いていたジェレミアが犯人として捕らえたのがスザクだった。
それはジェレミアの人生の転機、枢木スザク奪還事件――オレンジ事件へ繋がる。
ジェレミアがスザクの人となりを知ったのは、その後の事だ。
『ゼロ』に救出されたスザクは、わざわざ軍事法廷に戻って来た。
結果的に特派がその後ろ盾の力でスザクを無罪にしたから良かったものの、それがなければどうなっていたか分からない。
しかもそれから数日後、スザクは純血派内の粛正で殺されようとしていたジェレミアを助けている。
自分を陥れた相手を救おうとしたスザクの行為と考えはまさしく『異常』――『異常』なまでに、正しかった。
「……我が君の命令でない限り、君とは戦いたくなかったのだがな」
支援
支援。
鳥はみなかったことに
支援しますよ〜
出会った時は純血派と名誉ブリタニア人として。
これから起こるはずだった第二次東京決戦では黒の騎士団員とナイトオブラウンズとして。
同じ陣営でも違う陣営でも、不思議と敵対する事になる少年。
しかしジェレミアは、スザクとこの場でまで敵対するとは考えていなかった。
ブリタニア軍、純血派、黒の騎士団、そうした組織のしがらみさえ無ければ戦う理由はないと、そう思っていたのだ。
「彼女の為に……僕は、戦うしかないんです」
「彼女?」
ジェレミアの訝しむ声には反応せず、スザクが引き金を引く。
抱えていたつかさを手近な民家の庭先に放り込み、ジェレミアは胸や腕に当たった弾丸を全て弾いた。
スザクはその様子に目を見開いて驚愕していたが、怯む事なく距離を詰める。
無駄弾の使用を嫌ったのか銃は腰に挿し直し、代わりに蹴りを繰り出した。
地面を跳ね、体を浮かせた状態で放つ回し蹴り。
それをジェレミアは右腕で受け止める。
しかし蹴りを防がれた体勢からスザクは空中で体を捻らせ、ジェレミアの顔を狙って逆の足で蹴りを入れる。
ジェレミアはその足首を左手で掴み、大きく振るってスザクを投げ飛ばした。
宙を舞ったスザクは回転しながら体の向きを変え、ジェレミアから数メートル離れた地点に綺麗に着地する。
改造されたジェレミアに引けを取らないスザクの身体能力を前に、汗が頬を伝う。
ジェレミアは荷物を減らす為、移動中は刀も剣もデイパックの中に入れたままにしていた。
リフュールポットに疲労回復の効果は無く、これ以上の体力の消耗を抑える為にはそうせざるを得なかったのだ。
しかしスザクは徒手空剣で楽に勝てる相手とは言えず、デイパックから刀を抜く機会を窺いながら彼の真意を確かめようとする。
可能なら説得、或いは戦闘不能を目指す――それらが無理なら、殺すしかない。
「『彼女』とは……ユーフェミア皇女殿下の事か?」
その問いは、ジェレミアにしてみればほんの確認に過ぎなかった。
だがスザクの変化は劇的だった。
「ゆ……ふぇ、み……あ?」
スザクの手がガタガタと震える。
顔色は血の気が引いたように真っ青になり、頭を抱えて指で掻き毟る。
「ち、がう……僕は……水銀燈……水銀燈の、……ちが……ゆ、……の為……に……?」
ジェレミアとて、スザクと親しかった訳でも彼個人の情報を集めていた訳でもない。
ただ嚮団で『ゼロ』がルルーシュであると聞かされてから、ルルーシュの真意を確かめる為に動いていた。
ジェレミアが社会と隔絶されている間に起きたブラックリベリオンについても、当然調べている。
ギアスの犠牲となったユーフェミア。
そして彼女の騎士こそがスザクであり――スザクが『彼女』と言えばユーフェミアの事だろうと、単純に考えたのだ。
その名が今のスザクにどれ程の混乱をもたらすのか、ジェレミアが知るはずがない。
「ああぁぁあああああぁぁあぁあぁぁぁああぁあぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
眼にただ凶気と殺意を漲らせ、スザクがジェレミアに向かって駆け出した。
スザクが洗脳されたのは偶然で、そうならない可能性は幾らでもあった。
洗脳されるのがスザクである必然性もなかった。
だがこうしてジェレミアとスザクが敵対した事は、恐らく偶然ではない。
――奇妙な関係だな、私と君は。
それは第二次東京決戦の後、ジェレミアがスザクに告げるはずだった言葉の通り――
支援
支援
――結局敵となる運命なのかも知れない。
▽
真っ直ぐに歩く事さえ覚束ない状態で、スザクは目的地も無く彷徨っていた。
ただ闇雲に他の参加者を探し、その中で偶然再会したのがジェレミアだった。
昔の自分を知る相手を前にして、スザクは僅かに冷静さを取り戻す。
ナリタ攻防戦で死亡したとされていた彼の生存に純粋な喜びさえあった。
だが同時に、彼の姿を見て思う――「殺すなら今だ」と。
カードデッキの制限はまだ解除されていないものの、ジェレミアは疲労を隠せていない上に非戦闘員を連れている。
『彼女』の為に、ここで殺すべきだ。
――好きな人を生き返らせようと思うのは当然のことなんですから。
しかし一時的に得た冷静さは、ジェレミアの一言で簡単に消し飛んだ。
「『彼女』とは……ユーフェミア皇女殿下の事か?」
――ユーフェミア皇女殿下
「ゆ……ふぇ、み……あ?」
大切な名前――だった、気がする。
思い出すべきだ、思い出したい、思い出してはいけない。
「ち、がう……僕は……水銀燈……水銀燈の、……ちが……ゆ、……の為……に……?」
違う違う違う違う違う違う違う。
水銀燈の為に、水銀燈を生き返らせる為に戦っている。
水銀燈の為なら、水銀燈を生き返らせる為ならどんなものでも犠牲に出来る。
(でも……水銀燈といつ。
どうやって出会った……?)
裁判で無罪になった後、ゲットーを歩いている時に空から降って来た『彼女』。
虐げられたイレブンの為に憤り、KMF同士の戦闘の最中にその身一つで仲裁に入った。
『お飾りの総督』と呼ばれてもなお、日本の為に心を痛めていた彼女は――
――■ー■ェミ■・リ・■リ■ニア
――ユーフェミア・リ・ブリタニア
――ユフィ
忘れるはずがない、忘れていいはずがない、大切な人。
水銀燈が、好きだ。
好きで、愛しくて、恋しくて、幾ら言葉を尽くしても足りない。
足りないのに――何故水銀燈が好きなのか分からない。
桃色の髪の『彼女』を好きになる理由は、幾つでも挙げられるのに。
それなのに『彼女』の桃色の髪が、黒い羽根に埋もれて見えなくなっていく。
漆黒のドレスに身を包んだ、薄紫の眼の彼女しか見えなくなっていく。
ユーフェミア――水銀燈。
ユー水フ銀ェミ燈ア。
水ユ銀フェ燈ミ。
ユ水銀フ燈。
水銀燈。
水銀燈水銀燈水銀燈水銀燈水銀燈水銀燈水銀燈水銀燈水銀燈水銀燈水銀燈――
うわぁ……狂ってる
「ああぁぁあああああぁぁあぁあぁぁぁああぁあぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
それは、比較してはならない事だった。
水銀燈を無条件で愛し、焦がれなければならないのに、矛盾が生まれてしまう。
だから脳がその矛盾を否定して掻き消すように、再び『彼女』の名と姿が打ち消される。
記憶は混濁し、水銀燈と『彼女』に関する思い出が融け合い、水銀燈への思慕だけが残った。
▽
『彼女』の為に人を殺す。
スザクの過ちを責める資格はジェレミアに無い。
主の為、守りたいものの為であれば人を殺す事に抵抗は無く、既に一人殺害している。
だからジェレミアもまた、スザクが相手であっても彼が障害となるなら殺せるのだ。
――だがそれはスザクの行動が「彼自身の意志によるもの」であったなら、の話である。
スザクの精神が正常な状態にない事は明らかだった。
もしも自らの意志に反して戦っているのなら、止めてやりたい。
スザクに対してそう思うだけの借りがあり、情もあり、引け目もある。
故にジェレミアは刀を抜く事を諦め、極力攻撃しないようにしながら呼び掛ける。
「枢木、一体何が――」
「うるさい!!」
スザクの蹴りがジェレミアの鼻先を掠めた。
何を言ってもまともな応答はなく、ただ加減を知らない拳と蹴りを躱し続ける。
(ギアスか……!?)
記憶の操作、特定の対象への人工的な感情――ギアスが掛かっているのなら、スザクの置かれている状況に説明がつく。
避け切れなかったスザクの拳が頬に当たり、ジェレミアがよろめく。
しかし追い打ちを狙って踏み込んで来たスザクに対して右足を振り上げ、スザク自身の勢いを逆手に取って胸に蹴りを入れた。
肺を圧迫して強制的に後退させ、距離が出来たところでジェレミアは仮面を開く。
緑色の義眼が青白く輝き、逆さのギアスの紋が浮かび上がった。
そしてその眼を中心に、辺りを青い光が包む。
「これで……――!?」
しかし突然ぐら、とジェレミアの視界が歪んだ。
強烈な吐き気と全身の倦怠感に襲われ、平衡感覚が失われる。
倒れそうになったところで目に入ったのは、変わらず殺意を帯びて乗り込んでくるスザクだった。
ジェレミアの鳩尾に蹴りが食い込み、コンクリートの地面に叩き付けられる。
仰向けになったジェレミアの上にスザクが馬乗りになり、ジェレミアの首に手を掛けた。
「か、は……っ」
呼吸しようと喘いでも息が出来ない。
スザクの手首を掴んで剥がそうとするがその力は緩まなかった。
苦痛の中で、ジェレミアはスザクの顔を見る。
「水……銀燈……水銀燈、水銀燈、」
譫言のように一つの名を呟きながら、スザクは泣いていた。
子供のようにポロポロと涙を零し、それがジェレミアの頬に落ちる。
首を絞められている最中のジェレミアよりもなお、苦しみが深く見えた。
気道を塞がれて視野が狭まり、指先が痺れ、感覚が消えていく。
それでもジェレミアは手を突き出し、スザクの首を掴んだ。
ここで自分が死ねばスザクを止められず、更に犠牲者が出る。
しかも次はつかさの番だ。
アイゼル、それにストレイト・クーガーから託されたものが「守れない」。
これ以上手にしたものを取り零すまいと、この時だけは手加減を止めて首を締め上げた。
スザクの口から呻きが漏れる。
「……ッ」
互いに首を絞め合い、肉を千切らんばかりに指を食い込ませる。
そして下敷きにされた不利な状況から、ジェレミアはスザクごと横倒しになった。
同時にスザクの頭を地面に叩き付け、彼の握力が弱まった瞬間に彼の手首を掴んで首から引き剥がす。
咳き込みながらもその手を掴んだまま体を起こし、今度はジェレミアがスザクの上に馬乗りになった。
両腕を押さえ付けられて藻掻くスザクに、それを押し留めようとするジェレミア。
しかしこのままでは先に力尽きるのは、消耗しているジェレミアの方だ。
「枢木……これが、君の本心だと言うのか……!!」
ギアスのせいでないのなら、本当に自らの意志なのか。
自分から狂気に走り、殺し合いに加わったのか。
自分を有罪にしようとする裁判に自ら赴き、敵を窮地から救った枢木スザクの選択なのか。
ジェレミアが息を切らしたまま責めるように叫んでも――スザクには届かない。
「好きな人を生き返らせようと思って……何が悪いッ!!!」
訪れていたはずの未来で、スザクは神聖ブリタニア帝国第九十九代皇帝のナイトオブゼロの席に。
ジェレミアはナイトオブワンの席に着いた。
そして、二人は他の協力者達と共にゼロ・レクイエムを成すはずだった。
悪逆皇帝に鉄槌を下す仮面の英雄『ゼロ』として――悪逆皇帝を守る騎士ナイトオブワンとして。
だが今は、スザクとジェレミアは共犯者ではなく敵対者に過ぎない。
0と1の名ををそれぞれに冠するはずだった二人の距離は、余りに遠かった。
泣きながら咆えるスザクを前に、ジェレミアは言葉を失った。
生き返らせたい人はいる、果たしたい忠義もある。
だが生き返らせられる可能性を捨てて他の参加者を守ろうとし、その人の仇と行動を共にしている自分の忠義はどこにあるのか。
散々迷い、葛藤し、諦めがついたはずだった。
だがスザクの叫びに、己の支えとしていた芯が僅かに揺らぐ。
アイゼルの死を看取っても涙一つ流せなかった自分よりも、泣き叫ぶスザクの方が余程人間的で――腕に籠めた力が抜けてしまった。
スザクが上半身のバネの力だけで起き上がり、押し退けられたジェレミアが倒れる。
立ち上がったスザクに対し、ジェレミアも片膝を着いて体を起こすがそれ以上は動けなかった。
スザクの手がジェレミアの襟に伸びる。
「やめてええええええええええええ!!!」
戦う事も出来ない、有用な支給品も持たない、無力な少女の声。
狂気と殺意が渦巻いた場が時を止めたように静寂を包まれるが、それも数秒の事だった。
今のスザクには、つかさの声も届かない。
しかし彼女の声は、信頼する仲間には届いたらしい。
スザクがジェレミアから視線を外して顔を上げる。
数人が地面を蹴って走る足音に、男女の話す声が混じっていた。
「つかさちゃんッ!!!」
駆け付けたのは北岡だった。
スザクはその姿を見、多勢に無勢と判断したらしい。
道路脇の塀を足場にして跳躍し、民家を乗り越えるようにして逃走する。
「待て、枢木……!!」
ジェレミアが呼ぶ声も届かないまま、スザクは視界から消えた。
▽
支援
部活メンバーも、真紅も、千草貴子も、蒼嶋も、皆死んでしまった。
思い出すと涙が出そうになるが、レナは制服の袖で目元を拭う。
これ以上犠牲になる人を出してはいけない。
レナの身代わりのような形で死んでいった真紅や蒼嶋に誇れるように生きようと、強く思う。
だが狭間へ向けた要請は断られた。
「何故この私が、貴様らに協力しなければならない?」
もっともな言い分に、それでもレナは何とか説得しようとする。
しかし後ろにいた北岡は我関せずといった調子で、狭間が地面に投げ出していた機械を拾い上げた。
「これ何?」
「……参加者の位置を知る為のデバイスだ。
私には最早無用な品だ、貴様らにくれてやる」
北岡は「それは都合がいい」と言って機械を操作する。
狭間を前にしても緊張感の薄い北岡にレナは戸惑うが、北岡が何も考えずにそうしている訳ではない事に気付いた。
気楽そうに話しながら、目は真剣そのものだ。
やがて北岡は一通りの操作を終えると機械の電源を落とし、狭間に差し出した。
「返すよ。必要な事は分かったから」
「……」
くれてやる、と言った傍から返されたのでは狭間の機嫌を害しかねない。
事実狭間が眉を顰めたのだが、北岡は構わずに言う。
「俺達は柊つかさって子と合流する。
俺達に協力する気になったら、このデバイスで追って来てくれ」
狭間が目を丸くして絶句する中、北岡は五ェ門と蒼嶋、それに園崎詩音の遺体を教会の敷地内に移動させた。
既に教会は原型を留めていなかったが、道端に置き去りにするよりはとレナもそれを手伝う。
その途中で北岡がデルフリンガーの残骸を、レナはマハブフーストラを回収する。
そうして北岡とレナが動き回っている間も、狭間は立ち尽くしていた。
「じゃあ、待ってるよ」
そう言って北岡は狭間に背を向け、レナもそれに続く。
「待、……」
狭間は何か言い掛けたが、その先が発される事はなかった。
「来ると思う? あいつ」
「分かりませんけど、あれで良かったと思います」
不安そうに尋ねる北岡に、レナは力強く頷く。
尊大な態度と話し方の狭間ではあったが、レナにはそれが背伸びしているだけのように見えた。
蒼嶋に死なれた衝撃を含めたとしても、そもそも人と話をするだけで精一杯に思えたのだ。
狭間の言動や振る舞いを短い時間ながら観察し、レナは彼について悪い感情を抱かなかった。
蒼嶋による狭間の評は決して良いものではなく、狭間自身も蒼嶋を殺すつもりだったと言っている。
実際に会っていれば間違いなく喧嘩になっただろうし、殺し合いになっていたかも知れない。
けれどその後は、友達になっていたかも知れない。
可能性の一つでしかないけれど、レナにはその光景が想像出来た。
蒼嶋が下らない事を言って、狭間が呆れて。
狭間が人を小馬鹿にしたような事を言って、蒼嶋が言い返して。
そんな関係も、あり得たのだと思う。
「狭間さんには考える時間が必要なんだと思います。
素直に来てくれるかはちょっと分かりませんけど、あのまま無理強いするよりずっといいです」
「……ま、こっちも誠意は見せたからね。
今は早くつかさちゃんに会おう」
つかさとH−8の民家で待ち合わせた――しかし狭間の機械で確認した彼女の位置はG−9だったという。
エンドオブワールドの派手な爆発もあり、心配してこちらに向かっているのかも知れない。
G−9なら今いるエリアの隣で、すぐに合流出来るはずだ。
だがそう遠くない距離から聞こえてきた悲鳴で、二人の間に緊張が走る。
「こっちだ!!」
「はい!!」
北岡がその方角に向かって走り出し、レナもそれを追い掛けた。
▽
北岡がつかさとの再会を喜ぶ暇もなく、すぐに移動する事になった。
自力で立ち上がれない程に疲弊したジェレミアに肩を貸し、付近の民家に身を隠す。
リビングに置かれた四人掛けのテーブルにそれぞれが着席して向かい合うと、北岡を中心としてすぐに情報交換を始めた。
北岡とつかさ、つかさとジェレミアで同行している時間が長いので、数十分もあれば終わる。
コードやギアスについても知らなかったのは北岡のみで、その説明もすぐに済んだ。
その中で五ェ門とデルフリンガーの最期についても触れたが、つかさは泣かなかった。
この場にいないという時点で既に察していたのだろう――北岡がアイゼルについて気付いていたように。
唇を噛んで下を向き、震えていたつかさはやがて顔を上げる。
無理に笑顔を作ったその顔は、蒼嶋を失くした直後のレナの表情に似ていた。
「その、少し……意外でした。C.C.さんから聞いた印象と違ってて」
それぞれが話を終えてから、レナはそう口にする。
視線の先にいるのは、それまで殆ど発言していなかったジェレミアだった。
新たに使ったポットで殆どの怪我が治ったものの疲労は深刻で、話はつかさに任せていたのだ。
暫く休んだお陰か先程よりも顔色は少し良くなっており、レナもそれを見越して声を掛けたのだろう。
「私が何か?」
「支離滅裂な言葉遣いで追い掛け回されて、海底に無理心中する羽目になったって」
数秒の気まずい沈黙の後、ジェレミアはレナから目を背けた。
「改造されたばかりの頃は脳内活動電位とニューロフィラメントが」などと専門用語を並べているが、事実ではあるらしい。
「しかし、それは一年前の事だ。
嚮団殲滅戦では同じ部隊に属し、何度も顔を合わせているというのに何故その話になる?」
気を取り直すように問うジェレミアに対し、レナは困ったように言う。
「C.C.さんはその殲滅戦の話もしていませんでした。
嚮団が健在なのを前提にして話していたと思います」
話の食い違いは深刻で、北岡も首を傾げずにはいられなかった。
ジェレミアもC.C.も嘘を吐いているとは思えない。
C.C.に直接会った訳ではないが、この二人の話の多くが共通しており矛盾もないからだ。
加えて、どちらにも互いの関係を偽るメリットがない。
これからV.V.や嚮団を相手にしようという時に、殲滅したかどうかという重要な情報を操作する意味もない。
「ま、そこはC.C.と直接会って話し合わないと結論は出ないでしょ」
これ以上続けても無駄と判断し、北岡が切り上げる。
狭間のデバイスをやはり受け取っておくべきだったかと若干の後悔はあるものの、今は言っても仕方がなかった。
「で、それはギアスキャンセラー……ってのが原因なのか?」
話題に区切れがついたところで、北岡はかねてからの疑問を口にする。
ジェレミアが身動きを取れなくなる程の、極度の疲労。
元々連戦で疲弊していたせいもあるだろうが、スザクを説得している最中に突然この状態になったのだという。
「恐らくは……しかし、本来はこうはならん。
C.C.の回復の遅れ、ロロのギアスの変調……V.V.にそんな力があるかは疑問だが、何か手を加えられた事は確かだろう」
「でもスザクが正気に戻らなかったんなら、そもそもキャンセラーが発動しなかった可能性だって――」
「あの、」
北岡が言い掛けたところへ、つかさが口を挟む。
支援
「キャンセラー……ちゃんと発動、してたと思います。
私……思い出しました」
ジェレミアがキャンセラーを発動させた時、すぐ傍にいたつかさも巻き込まれたという。
そして‘忘れさせられていた記憶を取り戻した’のだ。
▽
いつも通りの、電車での帰宅。
それなりに混んだ車内で座席に座り、姉の柊かがみと何気ない雑談を楽しんでいた。
だが気付くと、車両から人がいなくなっていた。
「あれ……?」
おかしいな、ぐらいの軽い気持ちで顔を上げ――そして、出会った。
無人の車内で姉妹の他に唯一残った、くすんだ銀色の髪に驚く程整った顔立ちを持った少年。
(うわあ、かっこいいなぁ……幻の美形、って感じ)
今になって思い返せば、ルルーシュとどこか似た雰囲気を纏っていたように思う。
けれどその時のつかさは何の警戒心も抱かずにぼんやりとしていた。
そして少年は言葉を発した――その眼に赤い鳥の紋を浮かべながら。
「柊かがみ、そして柊つかさに命じる。
私に大人しくついて来い。
そして会場に着いたら、私の事は忘れろ」
▽
その後、小早川ゆたかの首が爆破された場まで記憶は途切れているらしい。
「忘れさせられた」記憶はキャンセラーで戻っても、ギアスに掛かっている間「忘れてしまった」記憶は戻らないようだ。
この銀の髪の少年についてはジェレミアも知らないという。
北岡も興味があったのでキャンセラーを掛けて貰いたかったのだが、ジェレミアが疲労している今は避ける事にする。
「キャンセラーは発動してた、と。
スザクについては水銀燈ってのに聞いた方が早いかもね」
スザクが口走った名前であり、真紅も警戒していた水銀燈。
彼女がギアス以外の方法でスザクを洗脳した、と考えるのが自然だ。
「何にせよ、今は休もう」
情報が増え、混乱してきた部分もある。
今は休憩し、その後は――この会場にいる危険人物を、排除する。
浅倉威。
北岡の宿敵であり、ジェレミアにとっても縁の深い相手。
五ェ門とも、浅倉との決着をつけると約束した。
(随分長い付き合いになっちゃったけど……そろそろきっちり、決めようか)
浅倉が今教会の傍にいる事はデバイスで確認している。
浅倉も、北岡との最後の戦いを望んでいるはずだ。
再び手にしたデッキを見詰め、北岡はその時を待つ。
支援
【一日目 夕方/Gー9 民家】
【北岡秀一@仮面ライダー龍騎(実写)】
[装備]:レイの靴@ガン×ソード
[所持品]:ゾルダのデッキ@仮面ライダー龍騎@二時間変身不可、レミントン・デリンジャー(0/2)@バトルロワイアル、デルフリンガーの残骸@ゼロの使い魔、
支給品一式(水を消費)、確認済み支給品(0〜2)(剣・刀では無い)
[状態]疲労(大)、軽症
[思考・行動]
1:浅倉と決着をつける。
2:ギアスキャンセラーに興味。
※龍騎勢が、それぞれのカードデッキを持っていると確信。
※一部の支給品に制限が掛けられていることに気付きました。
※病院にて情報交換をしました。
※レナと情報交換をしました。
【竜宮レナ@ひぐらしのなく頃に(ゲーム)】
[装備]:鉈@ひぐらしのなく頃に
[所持品]:支給品一式、インスタントカメラ(数枚消費)@現実、空飛ぶホウキ@ヴィオラートのアトリエ、真紅の下半身@ローゼンメイデン、
Kフロストマント@真・女神転生if…、ブラフマーストラ@真・女神転生if…、庭師の鋏@ローゼンメイデン
[状態]:疲労(大)、悲しみ
[思考・行動]
1:C.C.、ヴァンと合流する。
2:翠星石と蒼星石も探す。
3:水銀燈、後藤、シャドームーン、白髪の男(縁)、浅倉、スザク、ロロを警戒。
[備考]
※ギアス、コードについて一定の理解を得ました。
※北岡達と情報交換をしました。
【柊つかさ@らき☆すた】
[装備]なし
[支給品]支給品一式×2(水のみ三つ)、確認済み支給品(0〜2) 、レシピ『錬金術メモ』、陵桜学園の制服、かがみの下着、リフュールポット×4
[状態]疲労(中)
[思考・行動]
1:リフュールポットを完成させる。
2:錬金術でみんなに協力したい。
3:もっと錬金術で色々できるようになりたい。
4:みなみに会いたい、こなたは……
[備考]
※錬金術の基本を習得しました。他にも発想と素材次第で何か作れるかもしれません。
※アイゼルがレシピに何か書き足しました。内容は後続の書き手氏にお任せします。
※会場に連れ去られた際の記憶が戻りました。
【ジェレミア・ゴットバルト@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[装備]無限刃@るろうに剣心
[所持品]支給品一式×2(鉛筆一本と食糧の1/3を消費)、咲世子の煙球×2@コードギアス 反逆のルルーシュ、こなたのスク水@らき☆すた、
ミニクーパー@ルパン三世、不明支給品(0〜2)、琥珀湯×1、フラム×1、薬材料(買い物袋一つ分程度)、メタルゲラスの角と爪、
エンドオブワールドの不発弾(小型ミサイル数個分)、メタルゲラスの装甲板、ヴァンの蛮刀@ガン×ソード
[状態]右半身に小ダメージ、疲労(特大)、精神磨耗、両腕の剣が折れたため使用不能
[思考・行動]
1:浅倉とV.V.を殺す。
2:他の参加者に協力する。クーガーとの約束は守る。
3:全て終えてからルルーシュの後を追う。
4:スザクを止めたい。水銀燈を特に警戒。
[備考]
※病院にて情報交換をしました。
※制限により、ギアスキャンセラーを使用すると疲労が増大します。他にも制限があるかも知れません。
※ジェレミアとC.C.以外の参加者は、銀髪の少年のギアスによって会場に集められたようです。他にも例外はあるかも知れません。
▽
誰も追って来ない事を確認してスザクは走る速度を緩めた。
度重なる記憶の混乱で脳に負荷が掛かり、心臓が脈打つ度に頭を殴られるような痛みが走る。
「水銀、燈……」
ジェレミアのキャンセラーで、スザクに掛けられた二つのギアスが解除された。
ルルーシュによる「生きろ」というギアスと、会場に連れて来られる際に掛けられたギアス。
しかし連れ去られた時の記憶が戻っても、行動が変わる訳ではない。
ただスザクも知らない間に、彼の親友の『願い』は消された――皮肉にもその親友の家臣であるジェレミアの手で。
スザクが己の意志に反して生き残る事はなくなり、水銀燈の為に命を捨てる事も可能になった。
望んだ通りの、結果を得た。
ルルーシュを撃った。
ルルーシュのギアスが消えた。
真に親友との繋がりが断ち切られ、スザクは独りになった。
偽りの愛情の対象が生存している事すら知らないまま、スザクは舞台の上で孤独に踊り続ける。
【一日目夕方/G−8 市街地】
【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ(アニメ)】
[装備]:ゼロの銃(弾丸を六発消費)@コードギアス 反逆のルルーシュ、ベルデのデッキ@仮面ライダー龍騎
[所持品]:支給品一式×2(食料は一つ多め)、ワルサーP−38(3/9)@ルパン三世、ワルサーP−38の弾薬(11/20)@ルパン三世、
日輪の鎧@真・女神転生if...、Kフロストヅーラ@真・女神転生if...、確認済み支給品0〜1(武器はない)
[状態]:ダメージ(中)、惚れ薬の効果継続中、記憶と精神の一部に混乱、疲労(大)、強い頭痛。
[思考・行動]
1:参加者を全員殺し、水銀燈を生き返らせる。
2:狭間偉出夫は絶対に許さない、見付け出して殺す。
[備考]
※ゾルダの正体を北岡だと思っていましたが、違う可能性に気付きました。
※水銀燈は死亡したと思っており、ユーフェミアの事を思い出せなくなっています。
※第二回放送を聞きませんでした。
※会場に連れ去られた際の記憶が戻りました。
▽
支援
北岡とレナが立ち去って数十分経っても、狭間は一歩も動けずにいた。
今はV.V.への憎悪すら虚しい。
北岡達の所に行くのか、行かないのか。
残された選択肢を前に、狭間は何も出来なかった。
「ふざけるな……下賤な人間風情が、私に何を……」
DS型探知機を握り締めた拳が震える。
探知機が用済みなら、このまま握り潰してしまえばいい。
――ありがとうね……狭間さん。
何を言われようと、所詮人間如きの言葉なのだから聞き流せばいい。
――じゃあ、待ってるよ。
「何故、私が……!!」
北岡達の提案を下らないと思う一方で、怯えていた。
矢野暁子に恋文を贈った時のように、保健医の香山に体を求めた時のように。
狭間が動いたところで否定され、拒絶され、嘲笑されるのではないかと――怖かった。
DSを壊す事が出来ない癖に、素直になる事も出来ない。
言葉が出ない、理解出来ない、動き出せない。
出来ない事、知らない事ばかりが目の前に並べたてられる。
これでは魔神皇になる前と、変わらない。
「何故、死んだ……」
お前さえ死ななければこうはならなかったのにと、狭間は蒼嶋の遺体の前に跪く。
爆発が起きたばかりの地面は煤だらけで、膝を着いただけで真っ白だった制服が灰に汚れた。
握っていたDSが手から落ちても、拾えない。
握り締めた手を地面に叩き付ける。
地面に這い蹲って、何度も、何度も、叩き付ける。
「うっ……うぅっ、うぅううう……ッ!!」
何に憤っているのか、何に戸惑っているのか、何に悲しんでいるのか、我が事でありながら何も分からない。
声を押し殺しながら、自分の流した涙で濡れた地面を何度も叩く。
ただ癇癪を起こした子供のように、それだけを繰り返した。
「わぁぁああああああぁあぁぁあああああああああああ!!!!!」
狭間の慟哭は続く。
狭間偉出夫が立ち上がるには、まだ時間が要る。
【一日目夕方/F−9教会跡地】
【狭間偉出夫@真・女神転生if…】
[装備]:斬鉄剣@ルパン三世
[所持品]:支給品一式、ニンテンドーDS型探知機
[状態]:疲労(小)、精神疲労(中)、人間形態
[思考・行動]
1:北岡達に協力する……?
[備考]
※参加時期はレイコ編ラストバトル中。
投下終了です。御支援ありがとうございます。
誤字脱字、問題点等ございましたら御指摘戴ければ幸いです。
今回もロワ全体に関わる部分が含まれておりますので、それについても何かあれば御意見を戴ければと思います。
投下乙です。
スザクもだけど、ハザマが切ねえなぁ。
レナの対応の頼もしさやらジェレミアの苦悩やら見ごたえあってスゴイ楽しかったです。
投下乙!
スザクはもう本当に許してやれよ……
とうとう「生きろ」のギアスも消えちゃったし、そろそろ本当に死ぬかもしれないな
どんな風に死ぬのか気になる反面、ちょっと見るのが怖い気もする
そして狭間に対主催化の兆候が出ただと……
こいつが対主催になれば、一気に盤面がひっくり返るかもしれないなぁ
レナは他人と真剣に向きあうタイプだから、狭間と組むことになったらすごい面白そう
銀髪の少年ってあれか、ロスカラの主人公なのか
すげー気になるじゃねぇかよぉおおお!!
あと細かい指摘になってしまいますが、
>>818のレナの状態表でロロは既に死亡が判明しているから削除しても良いのではないでしょうか
あと既にスレの残り要領が30kb切ってるから次の投下に困るかもですし、スレ立て&埋め立てしちゃっても大丈夫ですかね
御感想ありがとうございます。
>>826 >>818については容量がギリギリだったので書けなかった部分ですが、ジェレミアは無用な対立を避ける為、ロロ殺害をこの三人に伏せています。
よってこの表記としました。
SS内に描写がない事を状態表に表記するのは微妙な問題ではありますが、このままにしたいと考えております。
投下乙乙!
みんなもう切羽詰ってどうしようもなくなってきてるなあ
ハザマもスザクも限界近いしオレンジもつかさもねえ・・・・・・
北岡も決着フラグが見えてきたし
次の投下に困ると思うのでスレ立てしてきます
>>830 反応が遅れ申し訳ございません、スレ立て乙です。
投下、スレ立て乙です
後藤、シャナ、田村玲子を予約させていただいた書き手ですが、
恐らくこちらだと容量オーバーになると思うので、次スレで投下するということでよろしいでしょうか?
>>832 問題ないと思います。
こちらは様子を見つつ埋め立てます。
では、次スレで投下させていただきます
風呂入ろうと思ったら来てるうううううううううううううう!!
次スレで大丈夫ですー、こっちは投下が終わった辺りに埋めておきます
投下乙です!
おお、ここに来てロワの開始に関連する話が……!
つかさたちと北岡先生の再合流や、C.C.のことを知っているレナとジェレミアの合流など全体としての話が動きつつあるなぁ
単体としてもスザクにかかった魅了や、蒼嶋の死に直面したハザマの揺れ方も面白かった!
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ̄`-、 l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽヽ 丶 \
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;λ 'l, λ \
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 丶 N l λ ξ^ヽ
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;l,: l 'l丶 \ ヾλ
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;n;;;;;|: l, 'l,---、__\ ヽヽ
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/llllllll,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;;l::ll;;;;;. l, l,::::::::::::、 \ 'l, 'l,
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;;;;;;/lllllllllll,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;l;;;;;;;;;;|;;;;;;;;;;;;:|λ;::| λー-、::::::ヽ .λ._l_
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;λ/llllllllllllllllllllllll;,;;;;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;|ll;;;|;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;|ヽヽ;| λ::::::::::;;ヾヽ,,γ λ
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l,llllllllllllllllllllllllllllll;;;;;;l;;;|ll;;;;;;;;;;|lllll;;;;;;;;/;;;;;;;;;|;;;:|::::\|: 丶:::::::;;;;;;\/ |,
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;λllllllllllllllllllllllllll;;;;;|l;;|lll;;;;;;;;lllllll;;;;;;/;;;;;;;;|;;|;;:|\::::l|\ ヽ:::;;;;;;;;;;;| ,,;;;;;;;;ノ
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\lllllllllllllllllllllll;;;;llll;llll;;;;;;;;llllllll;;;;/;;;;;;; /l;;;;;:|. \::::::ヽ λ ̄ ̄:\;;;;;/
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\;;;;;;;;;;;;;\lllllllllllllllllll;;lllll;lllll;;;;;llllllll;;;/;;;;;;;; / l;;/ λ::γl λ;;;;;;;;;;;;,,,ヽ
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\;;;;;;;;;;;;;\lllllllllllllll;llllllllllll;;;ll'''''// |;;;;;;/ー \ λ;;;;\. λ;;;;;;;;;;;;;;;,,ヽ
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\\;;,;;;;;;;\lllllllllll'''''' |/ / /l;;;/ \ l,;;;;;;;;ヽ 丶;;;;;;;;;;;;;;;;; |
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\lllヽ,___ヽlll/ , ノl ./ |/ヽ \ |;;;;;;;;;;) ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;|
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;λllllllllllllllll/ `/ / / / \ ヽ |;;;;;;;;( );;;;;;;;;;;;;;;;|
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ̄;lllllllllllllllllll/ / ノ / \ \ l |;;;;;;;;;;ヽ ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;|
,イ三三三三三t
,イ三三三三三三ミt、
,ィチ三三三三三三三三ム
,イ三三三三三三三三三三ム
,'三三三三三三三三三三三三ミz、
|三三三三三三三三三三三三三ミム
|三三三三三アマ三三三三三三三三ミム
|三三三三ミア マ三三三三三三三三三}
,イ三三ミアヽミア‐-、ヾミt`ヾミぇマ三三三a
,イ三三三{i ){i| 、__`ー 、 /_ イ三圭ミニ=-
,'三三三ミムヽ',i|  ̄ {  ̄ }圭圭圭z、
{三三圭圭ミztヾi | ,イ圭圭圭ニ=-
|三圭圭圭圭ハ ,' ,イ圭圭圭a´
ヾiマ圭圭圭ミリ ヽ _ ,イ圭圭圭a
マiマ圭∧ ヽ  ̄ー ,'圭圭ミニ=‐′
ヾ >' '、 \__ノトニ=="
,,.. -ヘ ヽ ハ \
,. ‐ '´ '、 ヽ | ヽ ヾ、
,. -‐ '´ i ヽ‐-、 __,.ヽ ヽ\
─''''´ ̄ i ヘ \ \`ー─-- __
`ヽ、 i i \ \ ヽ
_____
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\ ___
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:}/三三≫'"⌒ヽ≧/ヽ=- __
/.:.:.:.:.:.:.:-=≦三≧x==キ≧≠.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:⌒.:.:.:.}W.:.:.:.:.\
-=≦三三三三三三三≫´:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.
≦三三三三三三≧z/.:.:/.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.l
ノ/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.!.:.:.:.:./.:/.:.:.:.:.:/.:イ.:.:.:.:.:.:.:ハ:.:、:.:、:i:|
く:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.|.: .:.イ.:/.:.:.:./}/ i.:.:.:./:.:/ }.:}.:.:.|.:.|:|
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:-=彳l.:.:.:.:.::r|/、|/.:.://⌒ メ.:.;イ/⌒Yノ.:.:.:l.:.ト|
\:.:.:.:.:__.:-=彡∧:.:.:.:.{ f⌒)l:/ ィ外i^// r作ミ/.:./.:.:八|
Y.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:八.:.:八廴.i:.( 代ツ ヒソ //}/
廴彡.:.:./.:.:./.:.:.:Y.:/\|:.:.l  ̄ , ̄l.ノ
).:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`<.:.:.|.:/、 ___ ノ}
//.:.:.:.:.:.:/.:.:.:f´ ̄ ̄ lリ \ 、__ア.イ:/
ノ.:.:.:.:.:.:.://.:.:.:.:Y>x / 、___/ ^l/
{.:.:.:/://.:.:.:.:.:.:_」:_: : : :  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄¨}:r{|
}彡イ./.:.:.:.r-≦ミ、:≧ミ、: : : : : : : : : : : :/f:〈
Y彡′.:.:.:/⌒丶、: : : : : :}≧=- : : -=≦イ :}: :〉
从.:.:.:.:.:.:.:/ : : : : : : 、: : : : : :ー--. : //: :Y:./{
ノ.:.:.:}.:.:.:.:./: : : : : : : : : 、: : i: : : : : : :  ̄: : : :Y:ハ
/.:.:/.:./.:ト、:. :. : : : : :. :.l: : i|: : : : : : : : : : : : : :Y∧
.:./.:.:/.:/: : \ : : : : : : |: :八: : : : : : : : : : : : : :.Y∧
.:.:.:./.:.:.:{/、: :、 : :、___|/: :/ : : : : : : : : : : : : : /八ハ
__彡.:.:.///\ \__二 ノ_ ノ. : : : : : : : : : : : : : : ).:〃: i〉
Y:/: ://: : :.≧=-==イ⌒厶.ノ: : : : : : : : : : : : : {/.:ノ.:∧
/^:l: : : : i: : : : -彡: :_,.ノ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ∨ /:/}
.:.:.:|i: : : :i: : : : : ..:イ⌒ー…- ー‐==‐--‐==- ┘Y//(
ヽ:八 _.ノ: : : : : :ィ∧: : : : : : : : :`丶: : : : : : : : : : : : : Y//}
_ト、\: : : ..:/八/〉: : : : : : : : .:_≧=-: : : :-‐==≦}≫ ´
:.:.:.:\ミ辷彡イ//∧ミ==--==彡. : :x-=≦_. : : :/
__:.、:.:.\////// Y/. :≫ "´ ̄ ̄ ̄ ̄ΤミY
}.:}.:.:.:.:.:.:>ァ´ ≫/ l ∧
ノ (.:.:.:.:.:.:八( / / 、 | / ハ
\ト、( r‐f / \ / ノ/∧
 ̄ とノハ/ 、 ノ / 八
/ミ/x、ミ辷__ _j /___彡ヘ
/::.::.::/:// .::.::.::.::.::.:./ ! .::.::.::.::.::.::.::.::.::.:|::.::.::.::.::.::.::.::.
\ ゝ‐<::./::./ .::.::.::.::\/ | .::.::.::.::.::.:: /::.::.:|::.::.::.::.::.::.::.:::
\ 〃 / _ ヽ:/::.::.::.::.::.:/\ |::.::.::.::.::.:: /::.::.:: |::.::.::.::.::.ヽ::.::
{{ / / __ ヽ ',.::/::./ `ー |::.::.::.::.:: / |::.::.:/|_::.::.::.::.:l::.::
. ── | ! /r ) } |イ斤テ左≡ォz /::.::.::.::/ 斗七 !::.::.::.::.::.::.|::.::
. ∧ ヽヽ _/ /::! レヘ :::::::::/ /::.::. / j / | .::.::.::.::.:: |::.::
. , -―ヘ `ー /.::.| rー'゚:::::::/ /::.:/ テ左≠=ヵ::.::.::.::.::. |::.::
____/ { /.::.::.| ゞ辷zン // う。::::::7 /イ .::. |::.::.::.|::.::
彡_/ ヽ イ ::.::. | /ヘ:::::::/ |.::.::.:|::.::.:∧::.
〃 V ヽ ヽ.::.: | ヾ辷:ン /:l::.::./!::.:/
l { ∨ }__.::.|\ <! ・ /::.l::|::./│/
ヽ ヽ {  ̄ ̄ ̄`ヽ _ イ::.: l::|:/ j/
、 \ \ } ) / ̄ ̄ ̄l7::.:|::.::.j::l′ /
〉′::::::::::::::::::::::::.,. -‐…'' ¨  ̄ i  ̄ ¨ …−.. _/
′:::::::::::::::::::::: / ::::/ | \\'
l :::::::::::::::::::: , ′ :::::/ , ∧ i::: , \
| ::::::::::::::::::/ ::::/ i/ / i :::: \ ,. ヽ
` …- 、/ :::::i-'―/-/..__ ヽ \ :::::::ヽ. l:::: ',
':: / レ ' ィ /___-`ヽ \ \::::::::丶 |::::: .
|::: i ー…丁イ´ヽ fィ弋バ ` ー\-::: |::::::::| |
|::: | i ::::: l _ゝフ' ォ=、ヾ:::::Y::::::ハノ
|:::::::::......i:... :::::ヽヽ iハ::ハ!ハ:::::l::::/
∨:::::ヽ:::ヽ:::::::::::::|\ _ ' ` ∧':::::レ'
. :::::::::\ ::::::::::::| / ∨ レ::/
N::::::::::::::ヽ::::::::| `ー′ ハ::l
V小::::V!::::::| 、 イ! V
V !:::::リ _ .. イ∧:::!|
/⌒!::/、 / ∨
/ '′ \ /
_ √_V `i >-、
f/⌒r--、ヽVヽ /::イ:「_}ヽ
ヽ、 //
ヾ、 //
ヾ:、 //
ヾ:、-‐ri=i-r‐v' /、
/`ィメ).|.|:::| |(≧'_:.ヽ、
. .:;ィ" ̄.::ヽ|.|o| |:;:´:: :: `ヽ、:..
// :: :: :: :::::}|.|:::| |:{ :: :: :: :: ::.:.、:.、
,'/.:: :: :: ::...::::i|.|:::| | !:: :: :: :: :: ::::',:::',
l i :: :: :: :: : ::,':|.|:::| |:::.、:: :: ::: :::i::::}
i |:: :: :: :: :::/:::|.|:::| |::::::ヽ:: :: :...::::/::::!
', ';: ::..::;彡'::::::|.|:::| |:::::::::::ゝ―=':::::::i!
', `¨´::::::;:ィ:¨ ̄ ̄ ̄¨≧‐-、:::::::::l!
マ::::::/:::/ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ 〉:::::,′
マ:::i、:::::|i二二二二二i| //:::/
,ィ彡二ヽ、 ハ:∧ヽ|i二二二二二i|_/ i=/
/ ヾ二二ミヽ、 ゝ‐、ヾ二二二二ィ'´ /i
,.イ´ .::;ィー――-、_ ).__ |ヽ、 _,ィ´:::| ,..:-‐―-...、
( ̄ ̄iヾー!、:::::::::::::::::::::::::::::::::::) |:::::: ̄ ̄ ̄ ̄::::::::::;:!:;ヽ,.r――,ィ彡'::::::::::::::::::::::...、
/`¨`r――- 、`<;ィー、rー‐'¨ ,.ィ=| :::::::::::::::::::::::::;:_ィ彡ノ,ィ"::::::::::;"::: ::::::::::::::::::::::::::::ヽ
/ヽヾ::ヽ>‐-、..... ` `rー、`<―-、,.ィ彡'.:,ィゞ、___,..;::::::://:::::// .:::::::| ::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
/ ゝ、\\\::/_ゞ::::>、 ¨´ `<::::://::// ̄ ̄ ̄´::::://:::::// ...:::::::::::::i::..........:::::::::::::::.. ..:::::: ::::..
/.:::::::::::::::ヽ=-彡'(::::::::::::::::::::::>、 ¨i ̄77::::::77ー―-==≦"__::::::::::::::::::{::::::;ィ≦彡a丐ミix、:::. ::::}
.::::::::::::::::::::::::::::/ `/ミx、::::::::::::::::::::>、/ //:::::://:::::::::::::::::::::::::::::::::::: ̄¨゙::.ーヾ≧x、::::::::::::::::>、ミx::::ノ
. ::::::::::::::::::::::::::::/-‐=ヾミ≧゙>、::::::::::::::::/ //:::::://::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}ミミミミ、‐-、:::::::::::ヾミ:´
_ ,, _,.―'~ ̄|
_,...- '" \ __ ,.. ,../ _// \
/ \ / \/\\__,../ ~| |
/\ _,.. -へ \| ,..,__,.-、| |/ / ___|
⊂二⌒\ゝ-' \ /|| (・・) |_|ヽ | ⊂ ⌒ ヽ
⊂二 ,⊃ ヽ / (| ._,|) ヽ| (|_,.._ ノ
//l l⌒ | > | | / / | < | ~
U U | ヽ|ヽ\_ノ/;;;| / |
Γ ̄\| |;;;;∨〇;;;;;;|/ ヽ
| | \;;;;;∧;;;;;;;;| \ , ヘ、
,. 、 _ | / ∧ /;;;;| L__;;\ ∨;;;;;;;ζ ,,
/::`´::\ ,../::| | ' ∨;;;;;ヾ  ̄入/;;;;;;;;;;;/_,..,∧ ,./(__
├──┤_::::| ` /|;;;;;;;;;;`ー-´;;;;;;;;γ;;;;;;/ / '\(:::::::::::::::::::::::ヽ
_,.∠--―´,...>:::::: \_,/ ξ__,.-/;;;;;;;;;/;;;;;;/ / /ゝ:::::::____:ノ|
∠_,..--σ-|β\:::\ 丿;;;;;;;;;;ヾ(;;_;;;/;;;;;;;;|/ _ //||―' σ丿::丿
(::ヽ| /フ \:::\ /;;;;;;;;;;;,./|_,./ /;;;_ノ/;;| // _l、_ゝ/:::/
/:::ノ二 ノΟ \:::\_/;;;;;;;;;;;;/ / /;;;/ι/;;;;;;;| // //- ' ∪'
/幺夊彳 | \ \_::::/;;;;;;;;;;/- (.,_(;;/;;;;;;/;;;;;;;ノ//\/∠/ ̄)|
|::::幺彳\ \=\_ |:::::|;;;;;;;;;;/ / 〆\ '|/;;;/ |/_// /| /|
|::::::::| \:\\_ フ::::|;;;;;;;;;|/ ∧;;;;\| \,.ノ\ ,../ / ) //
|::::::( \:\ \ノ:::::|;;;;;;;;;;|/;;;;;|;;;;( //二二匚| _/ / | //
ヽ:::::\ |::::|─--'::::::::|;;;;;;/;;;;;;/|;;;;;;| /く/ / / _/ _,..., / ζ //
|:::::::::::\_ \::|:::::::::::::,.-|;;;;;;;;;;;;;;人 ノ;;;ノ/ \/_/ // )┬ ' //
|::/~"""| |:::|:::::::::::| ,..|_,./::::::\~ / 丿/ ,,.-/,./^~ヽ| //
\| ) |:::|:::::::::::|( \__,.人/ |___/_,// ,.丿|//
\ __丿 |::::|:::::::::| > \,..ノ __,./ /| ̄/ ミ /⊂ |
~  ̄|:::::::::| | / / '-- '´ ///~
|:::::::::| | ,イ / //´
|::::::::\ ~ ̄ ̄ `´ //
\::::::::\ `~´
,.:'..: ..::::::::::;;::....: :::::..... ::::::::':.,
,.:' ..::: .:::::;;:..:: .: .... :.. ::::::::::::::':.,
,':: .: ..:: ..:::;;::: ...:: ... :::::.. :::::::::::::.':、
/::::.. : ..:::: ::;;:..: .. ::::... ::::...:::::::::::::',`
, '::..:::: .:: : ..::::::;;:.. :,..、 ::. ::::::... :::::::::::::::::::',
, ','::::::: .:: .::::::::: .:;;/::::i : :::: :::... ::::::::::::::!
.,:'::::::: .:: ..: : .:::::;'´ ノイ:::; ::::. ::::::::::::::::::::::::i
';:::::::. :: ..:::: ..::::::::ノ , '::;ィ .:::人::::::::::::::::::::::::i
';::::::::::::::;r'‐=、_" {;r' / .:;' _,,.'、:::::::::::::::r;:::!
'.;::::::::::;' 、‐、= '',' ‐:.. ' { :::{''、-‐テ、:::::::::;!!:;′
','、::::':.,. ゙ 、二,>:::. ,' ゙、:;ヾ二,ノ!::::::;.'/'
' 、;、_;ノ : .)) /:::; '´
', : , '゙ ゙'‐r'; ィ
' ,. 、 : , (( /!
'、 、_,,,...二......,. ., ゙ ,.!
! ' ,. `ー--‐ " / /.l
', 、 ' 、 ,/,/ l
', ` ‐`''' ―‐ '゙;: '" !
; |;;;;|;;;;;「 \
,、 '" ゙、 l;;;;|;;;;;| , ' ` .、
, ' ' 、 l;;;;;!;;;;l ,. -''"
`};;;;;!;;;;}
,';;;/;;;;′
_,.. -‐―‐-- .. __
/´ . `ヽ 、
/ 、、: ヘ :::::::..... \
./ ‐-_ヽ!:...__>;::;;;;;;;::::::::...._ \
/ / \!´ \::::::::! ̄ ヽ、 ヽ,
`‐rt-'....,,,___」 \::! .ソ_,ノ
!:.\::::.. ヽ >、:.、../_,、!、
, --v‐- 、 _ ヽ::.ヽ::::.. `、 / ニ,:',.':::::::(´
, - ';;/::ノ::::// l ̄`―`-:;;\::.. ヽ / /jヽ:::::::::::)-‐'チ、
//::::;ィ'":;∠;_/::::!::::::............. トr-;;_ `、 / ,.-=';`-- -‐ii' ミlユ
..:ヽ-'⌒/::;;-‐'´ └‐┴‐-----=;;:.ヽ;:::::..:;ノ::.::.ヽ;:::::::....... .. .oo!!_,,..-"-┘.....
`┘ ´ ̄  ̄  ̄  ̄ ´
l;;;三ミミ゛ ゛ '三ミ',
. lニ=-‐ミ ...: ミミ::l ___
!三二'; .. ....::: "';::l / \
l-=ニ彡 :: _.-‐=、 i/ヽ | | 十 |
!三彡' _,=-;;_-..、 :::',,..ニ-‐-、 ',~il .| レ (」ヽ |
'i,;'彡 '" __,,...二.,_:: i .ィ''t_テ` li"レ| |. l 、 |
,''-彡‐,_,'"、‐''t_ア> )‐=ヽ.__..,, ‐' .::iノ | レ . ヽ |
',ヽ~;" ` ..__,,.. ' :::.. ...:: l' _ノ (⌒) .|
ヽ`、!、 ;;::';:. |  ̄ヽ 「 /
\`、 .'゛ '‐- .:''^ '、 ! \ ・ ./
`-、 ' .:: __.、 i ,.'ヽ_  ̄ ̄
. ' 、 ;-‐‐ ~_ ' ' / .〉\
\ ''~ ,. ' / '、.,,
_,,...-''iト、ヽ、.., ___ _,,.. ' , ' i ゛' .、._
_,,. -r゛ |!. \ ;::/ / | ‐- ..,_
_,.. -‐―‐-- .. __
/´ . `ヽ 、
/ 、、: ヘ :::::::..... \
./ ‐-_ヽ!:...__>;::;;;;;;;::::::::...._ \
/ / \!´ \::::::::! ̄ ヽ、 ヽ,
`‐rt-'....,,,___」 \::! .ソ_,ノ
!:.\::::.. ヽ >、:.、../_,、!、
, --v‐- 、 _ ヽ::.ヽ::::.. `、 / ニ,:',.':::::::(´
, - ';;/::ノ::::// l ̄`―`-:;;\::.. ヽ / /jヽ:::::::::::)-‐'チ、
//::::;ィ'":;∠;_/::::!::::::............. トr-;;_ `、 / ,.-=';`-- -‐ii' ミlユ
..:ヽ-'⌒/::;;-‐'´ └‐┴‐-----=;;:.ヽ;:::::..:;ノ::.::.ヽ;:::::::....... .. .oo!!_,,..-"-┘.....
`┘ ´ ̄  ̄  ̄  ̄ ´
_,.. -‐―‐-- .. __
/´ . `ヽ 、
/ 、、: ヘ :::::::..... \
./ ‐-_ヽ!:...__>;::;;;;;;;::::::::...._ \
/ / \!´ \::::::::! ̄ ヽ、 ヽ,
`‐rt-'....,,,___」 \::! .ソ_,ノ
!:.\::::.. ヽ >、:.、../_,、!、
, --v‐- 、 _ ヽ::.ヽ::::.. `、 / ニ,:',.':::::::(´
, - ';;/::ノ::::// l ̄`―`-:;;\::.. ヽ / /jヽ:::::::::::)-‐'チ、
//::::;ィ'":;∠;_/::::!::::::............. トr-;;_ `、 / ,.-=';`-- -‐ii' ミlユ
..:ヽ-'⌒/::;;-‐'´ └‐┴‐-----=;;:.ヽ;:::::..:;ノ::.::.ヽ;:::::::....... .. .oo!!_,,..-"-┘.....
`┘ ´ ̄  ̄  ̄  ̄ ´
_,.. -‐―‐-- .. __
/´ . `ヽ 、
/ 、、: ヘ :::::::..... \
./ ‐-_ヽ!:...__>;::;;;;;;;::::::::...._ \
/ / \!´ \::::::::! ̄ ヽ、 ヽ,
`‐rt-'....,,,___」 \::! .ソ_,ノ
!:.\::::.. ヽ >、:.、../_,、!、
, --v‐- 、 _ ヽ::.ヽ::::.. `、 / ニ,:',.':::::::(´
, - ';;/::ノ::::// l ̄`―`-:;;\::.. ヽ / /jヽ:::::::::::)-‐'チ、
//::::;ィ'":;∠;_/::::!::::::............. トr-;;_ `、 / ,.-=';`-- -‐ii' ミlユ
..:ヽ-'⌒/::;;-‐'´ └‐┴‐-----=;;:.ヽ;:::::..:;ノ::.::.ヽ;:::::::....... .. .oo!!_,,..-"-┘.....
`┘ ´ ̄  ̄  ̄  ̄ ´
_,.. -‐―‐-- .. __
/´ . `ヽ 、
/ 、、: ヘ :::::::..... \
./ ‐-_ヽ!:...__>;::;;;;;;;::::::::...._ \
/ / \!´ \::::::::! ̄ ヽ、 ヽ,
`‐rt-'....,,,___」 \::! .ソ_,ノ
!:.\::::.. ヽ >、:.、../_,、!、
, --v‐- 、 _ ヽ::.ヽ::::.. `、 / ニ,:',.':::::::(´
, - ';;/::ノ::::// l ̄`―`-:;;\::.. ヽ / /jヽ:::::::::::)-‐'チ、
//::::;ィ'":;∠;_/::::!::::::............. トr-;;_ `、 / ,.-=';`-- -‐ii' ミlユ
..:ヽ-'⌒/::;;-‐'´ └‐┴‐-----=;;:.ヽ;:::::..:;ノ::.::.ヽ;:::::::....... .. .oo!!_,,..-"-┘.....
`┘ ´ ̄  ̄  ̄  ̄ ´
_,.. -‐―‐-- .. __
/´ . `ヽ 、
/ 、、: ヘ :::::::..... \
./ ‐-_ヽ!:...__>;::;;;;;;;::::::::...._ \
/ / \!´ \::::::::! ̄ ヽ、 ヽ,
`‐rt-'....,,,___」 \::! .ソ_,ノ
!:.\::::.. ヽ >、:.、../_,、!、
, --v‐- 、 _ ヽ::.ヽ::::.. `、 / ニ,:',.':::::::(´
, - ';;/::ノ::::// l ̄`―`-:;;\::.. ヽ / /jヽ:::::::::::)-‐'チ、
//::::;ィ'":;∠;_/::::!::::::............. トr-;;_ `、 / ,.-=';`-- -‐ii' ミlユ
..:ヽ-'⌒/::;;-‐'´ └‐┴‐-----=;;:.ヽ;:::::..:;ノ::.::.ヽ;:::::::....... .. .oo!!_,,..-"-┘.....
`┘ ´ ̄  ̄  ̄  ̄ ´
_,.. -‐―‐-- .. __
/´ . `ヽ 、
/ 、、: ヘ :::::::..... \
./ ‐-_ヽ!:...__>;::;;;;;;;::::::::...._ \
/ / \!´ \::::::::! ̄ ヽ、 ヽ,
`‐rt-'....,,,___」 \::! .ソ_,ノ
!:.\::::.. ヽ >、:.、../_,、!、
, --v‐- 、 _ ヽ::.ヽ::::.. `、 / ニ,:',.':::::::(´
, - ';;/::ノ::::// l ̄`―`-:;;\::.. ヽ / /jヽ:::::::::::)-‐'チ、
//::::;ィ'":;∠;_/::::!::::::............. トr-;;_ `、 / ,.-=';`-- -‐ii' ミlユ
..:ヽ-'⌒/::;;-‐'´ └‐┴‐-----=;;:.ヽ;:::::..:;ノ::.::.ヽ;:::::::....... .. .oo!!_,,..-"-┘.....
`┘ ´ ̄  ̄  ̄  ̄ ´
_,.. -‐―‐-- .. __
/´ . `ヽ 、
/ 、、: ヘ :::::::..... \
./ ‐-_ヽ!:...__>;::;;;;;;;::::::::...._ \
/ / \!´ \::::::::! ̄ ヽ、 ヽ,
`‐rt-'....,,,___」 \::! .ソ_,ノ
!:.\::::.. ヽ >、:.、../_,、!、
, --v‐- 、 _ ヽ::.ヽ::::.. `、 / ニ,:',.':::::::(´
, - ';;/::ノ::::// l ̄`―`-:;;\::.. ヽ / /jヽ:::::::::::)-‐'チ、
//::::;ィ'":;∠;_/::::!::::::............. トr-;;_ `、 / ,.-=';`-- -‐ii' ミlユ
..:ヽ-'⌒/::;;-‐'´ └‐┴‐-----=;;:.ヽ;:::::..:;ノ::.::.ヽ;:::::::....... .. .oo!!_,,..-"-┘.....
`┘ ´ ̄  ̄  ̄  ̄ ´
_,.. -‐―‐-- .. __
/´ . `ヽ 、
/ 、、: ヘ :::::::..... \
./ ‐-_ヽ!:...__>;::;;;;;;;::::::::...._ \
/ / \!´ \::::::::! ̄ ヽ、 ヽ,
`‐rt-'....,,,___」 \::! .ソ_,ノ
!:.\::::.. ヽ >、:.、../_,、!、
, --v‐- 、 _ ヽ::.ヽ::::.. `、 / ニ,:',.':::::::(´
, - ';;/::ノ::::// l ̄`―`-:;;\::.. ヽ / /jヽ:::::::::::)-‐'チ、
//::::;ィ'":;∠;_/::::!::::::............. トr-;;_ `、 / ,.-=';`-- -‐ii' ミlユ
..:ヽ-'⌒/::;;-‐'´ └‐┴‐-----=;;:.ヽ;:::::..:;ノ::.::.ヽ;:::::::....... .. .oo!!_,,..-"-┘.....
`┘ ´ ̄  ̄  ̄  ̄ ´
_,.. -‐―‐-- .. __
/´ . `ヽ 、
/ 、、: ヘ :::::::..... \
./ ‐-_ヽ!:...__>;::;;;;;;;::::::::...._ \
/ / \!´ \::::::::! ̄ ヽ、 ヽ,
`‐rt-'....,,,___」 \::! .ソ_,ノ
!:.\::::.. ヽ >、:.、../_,、!、
, --v‐- 、 _ ヽ::.ヽ::::.. `、 / ニ,:',.':::::::(´
, - ';;/::ノ::::// l ̄`―`-:;;\::.. ヽ / /jヽ:::::::::::)-‐'チ、
//::::;ィ'":;∠;_/::::!::::::............. トr-;;_ `、 / ,.-=';`-- -‐ii' ミlユ
..:ヽ-'⌒/::;;-‐'´ └‐┴‐-----=;;:.ヽ;:::::..:;ノ::.::.ヽ;:::::::....... .. .oo!!_,,..-"-┘.....
`┘ ´ ̄  ̄  ̄  ̄ ´