みんなの厨二妄想を発表したり、聞いたりするスレ

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42創る名無しに見る名無し
おかしい。何かがおかしい。液晶モニターの前で彼は絶句していた。
立ち上げたブラウザには創作小説の投稿サイトが表示され、先週投稿したばかりの彼の自信作が別のタブで開かれている。
ページの一番下には残酷かつ無慈悲な現実が記されていた。

「感想コメント:0件」

何度読んでも0件。横にしても斜めにしても円を描いているその数字は彼の妄想を打ち砕くには十分すぎた。
大量の感想、各種ニュースサイトでの絶賛、出版社による書籍化、そしてアニメ化……。
程度の差こそあれ、誰もが一度は妄想する「オレって文才あるんじゃない」などという考えが木っ端みじんに吹き飛ばされた瞬間だった。
あり得ない、あり得ないと呟きながら彼は思考する。1週間も経つのに感想がひとつもないだと!
題材は完璧だった筈だ。超人気なバトル物アダルトゲームを原作としたアニメの二次創作……いや、もはやオリジナルを超えた作品なのだ。
あの複雑重厚を極める神アニメの設定に俺ほど詳しい人間はクラスに一人、いや学年に一人としていないはずだ。

彼は原作はプレイしていないが、アニメは何度も繰り返し見たと誇り、2chの――正確にはPinkちゃんねるの――スレに常駐するほどの人間だった。
Amazonや楽天等オンラインショッピングが手軽になったとはいえ、さすがに18禁のゲームを中学生が手に入れるのははばかられた。
割ると言う最低最悪の手段があったが、P2Pは何かヤバイという良識はあった。というより、どうすれば割れるか分からないという
何とも後ろ向きな理由で割るのを諦めたために「18禁だし……」という理由を後付けした。ほとんどの時間自分が使っているとはいえ、
リビングに設置された家族共用のパソコンでどうやってプレイするか? という問題がクリア出来ないことも影響した。
アニメの方もネットの動画投稿サイトにアップロードされた物を見たのだが、そちらは余り良心を痛めなかったらしい。
もう一つ付け加えるならば、アダルトゲーム関連の板を始めとするbbspink掲示板は18歳未満は立ち入り禁止なのだが、それについては全く無視していた。

文章の書き方についても何ら問題はなかったはずだ。自分が投稿した小説をもう一度頭から読み直しつつ、彼は自問自答する。
月に3冊は本を買う彼は常日頃読書家を気取っていた。問題は3冊中2冊がライトノベルであったことだ。
彼の部屋の本棚には、可愛い女の子が表紙の文庫本と漫画本が所狭しと並んでいた。いや、それだけなら問題にはならなかっただろう。
彼はいわゆる「古典的名作」を国語の教科書でしか読んだことがなかったし、手記やルポルタージュの類はハナから興味がなかった。
夏休みの読書感想文を萌え系ライトノベルで仕上げてくるくらいには、彼はダメな方向へどっぷり浸かっていた。
要するに師とするべき本に出会えなかった。ロボットアニメばかり作らされている禿頭のアニメ監督はかつてこう言った。
「アニメが好きな奴が作ったアニメはつまらない」けだし名言である。
43創る名無しに見る名無し:2011/12/28(水) 22:03:15.71 ID:5NGBVapB
「文章の書き方はライトノベルで学んだ」などと恥ずかしげもなく言ってしまう彼だから、
ネットの「ライトノベルの書き方」みたいなサイトを読んだところでどうなる物でもなかった。
事実、彼の文章はト書きのレベルを超えていなかった。以下に彼の小説を少しばかり引用する。

----引用開始----

インプ「……」ジロジロ

サーベル「……」

インプ(なんだぁ、こねぇーなら俺から行くぞ!)ブンッブンッ!

サーベル「ッフ……。レベル3と言ったところか。所詮私の敵ではない」

     ラス・エル・メダウェル
――真実から弐番目の悪意を打ち破る意思――ズガガガガッ!
↑何もない空中から巨大な剣が表れた!

インプ「おもしれぇ。俺の”ベダフォム”と取っ組み合いだあああああ!!」ドバババッ!

----引用終了----

全てこんな有様だったから感想など付くはずもなかった。この手の小説(?)に良くある話だが、薄い中身の割に
無駄に設定が多かった。それがまたいけなかった。原作を知らずに読んだ人間にとっては設定だけでおなかいっぱいだったし、
原作を知っている人間からすれば原作の面白さをぶち壊しにする設定だった。
それを理解するだけの注意深さすら、彼は持ち合わせていなかった。とにもかくにも若かった。そしてそれ以上に厨二だった。
44創る名無しに見る名無し:2011/12/28(水) 22:04:00.02 ID:5NGBVapB
そして最後に、投稿する場所がいけなかった。それなりに名前の知れた小説投稿サイトだったが、記名式だった。
つまり投稿とハンドル名がセットで出てくるサイトだった。名前を出す以上、どこでどんなことを書いたか分かってしまう。
辛辣な批評はそのまま自分の小説に返ってくる。他人のダメなところを余り指摘できず――その方が荒れなくて良いというもっともな意見もあり、
なぁなぁで他者を無理矢理褒めるという不健康な体裁のサイトだった。2chなら名無しによる猛烈なバッシングに遭うだろうが、所詮恥はかき捨て。
精神的にはともかく物理的には痛くもかゆくもないし、それで目が覚めるなら安い物だったろう。
ひとまず投稿サイトを離れ、いつものようにネットを巡回する彼。2chブラウザを立ち上げながら「おや?」と手を止める。

「創作発表板……か」

スレッド一覧を取得し、興味のありそうなスレを開く。とたんに新たなインスピレーションがわき出してきた。
想像力という観点のみ、厨二病患者はプロの作家に匹敵する能力を持っている。良い意味でも悪い意味でもだが。

「修行がてらに俺も何か書いてみるかな」

彼はメモ帳を立ち上げ、また新しい話を書き始める。

こうしてまたひとつ悲劇――ひょっともすると喜劇――の種が蒔かれていくのだが、
「かつて」病を患っていた我々(モニターの前にいるそこのあなたもだ!)に一体どうして彼らを批判する権利があるだろうか。
誰もが厨二でなくてはいられなかった。居ても立ってもいられなかった。とにかく変な情熱だけはあった。それだけの話だ。
45創る名無しに見る名無し:2011/12/28(水) 22:04:52.50 ID:5NGBVapB
要するにこういうレスをしろってことですか分かりません><
46創る名無しに見る名無し:2011/12/28(水) 22:23:33.22 ID:fU2I+NKY
引用の部分は素直によく厨二を表現できたなと感心したw
47創る名無しに見る名無し:2011/12/29(木) 10:10:20.33 ID:6Fi2wV2m
続き書いてくれ
できれば他の厨二作家とのいさかいとかw
48創る名無しに見る名無し:2011/12/29(木) 14:23:34.26 ID:bEFlN9Sl
前回の屈辱的な敗北から数日、彼は再び創作の火を灯していた。その場所を小説投稿サイトから創作発表板……と思わせつつ
SS速報VIP
( ttp://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/ )へと移し、またぞろよく分からないSSを書いていた。
創作発表板に投稿しなかったのには一応理由がある。ひとつ、全体的に人が少なく感想がもらえるかどうか分からない。
書き込む以上見た人からの反応が欲しいのは至極当然であり、十分理解できる理由だ。
ふたつ、自分の書体とSS速報の一般的書体が一致しているため、読むにしても書くにしても違和感なく入っていけるだろうから。
これが問題だった。上のURLからSS速報を覗いてスレッドを2,3取得してみて貰いたい。

○○「――――」

という判で押したのかと見間違う程似通ったスレタイが並び、やはりト書き同然の「SS」が投稿されている。
SS製作者向け総合スレッドのテンプレに
「Q.台詞だけの台本形式なんですが平気?カッコの前にキャラ名があってもいい?
 A.その形式のほうが多いかも知れないから気にするな」
などという質疑応答がある時点で、この板の「スタンダードなSS」がどのような物を意味するかは火を見るより明らかだった。
49創る名無しに見る名無し:2011/12/29(木) 14:24:27.51 ID:bEFlN9Sl
念のために記しておくが、彼らの創作行為を馬鹿にするつもりは毛頭ない。ト書き形式は文章を書く者みなが一度は通る道である。
文学性などという、うさん臭い物を大上段に構えて投稿されたSSを批判するつもりもない。それはただの二病だ。
ここで重要なのは「彼のSSはSS速報において一般的な書体と内容であり、書き手としてのレベルも平均点」というその一点に尽きる。
技術的な差はこの板の人気SS作家も彼も対して変わらない。である以上どうすれば感想がいっぱいもらえる人気作となれるか?
ここで彼は重大かつ明確なミスを犯した。「技術を磨く」という選択肢を初手から捨てたのだ。

ト書き形式のSSが乱立する中で普通の小説と同じ書体でSSが書ければ、それだけで他人とは違った表現を手に入れたこととなる。
数多いるSS作家達から頭一つ前に出るための強力な武器になったはずだ。何故そうしなかったかと言えば、
ト書き形式はとにかく早く書き上げられるというメリットがあったし、第一腕を磨くのが面倒だったからだ。
厨二特有の優越感や万能感が彼に技術を向上させることを拒ませた。他人のSSから学ぶという方法もあったが、何せほとんどのSSは彼と同レベルである。
師と仰ぐには不適切すぎた。オペラでも演劇でも小説でも映画でも、古今東西の「名作」に触れれば創作上良い影響を受けたかも知れないが、
今月もまた月々の小遣いでライトノベルを買ったがためにその機会は最低一ヶ月失われた。
彼でも知っている、教科書に名前が出てくるような文豪達の作品が無料で読める青空文庫( ttp://www.aozora.gr.jp/ )の存在は知らなかったし、
知っていても「古臭いだけの作品だからつまらない」と端から決めていただろう。要するに態度の問題であった。

態度と言えば彼にはもう一つ欠点があり、どのSSを読んでも「おもしろい」「つまらない」「俺の方が面白いのを書ける」の3つしか感想が出てこなかった。
小学生並みの態度だが、事実数年前まで小学生だったのであるから批判するには当たらないであろう。
「どこがどう面白いか」「どこがどうつまらないか」を丹念に分析することを常に繰り返せば、対象が例え週刊少年漫画だろうとライトノベルだろうと
多くの教訓を得ることが出来ただろうが、悲しいかな今の彼にはそれが出来なかった。ともかく厨二だった。それが諸悪の根源だった。
50創る名無しに見る名無し:2011/12/29(木) 14:25:18.85 ID:bEFlN9Sl
最終的に彼は作品のアイデアで勝負することにした。正確にはそれ以外の持ち札がなかった。
異能力バトル物ライトノベルと魔法少女アニメのキャラがバトルロワイアルする作品に決めた。
バトルロワイアル! あの「ホラー小説大賞に送ったが選考委員から『不愉快』と訳の分からない理由で落とされた」とか
「何故か各種ランキング本でジャンルがミステリーに分類されている」とかいう凄いのか凄くないのかよく分からない
数々の伝説を持つ小説は、今や創作SS界隈では名前自体が一つのジャンルとなっていた。
アクション物・バトル物なら前に書いた作品でコツを掴んだというのがその理由だった。
多少は知恵を働かせたと言っても良いが、ジャンル自体に問題があることは全く気がついていなかった。

登場人物は片手では数え切れない。一人一人の行動を明確にプロットし、時系列に問題が出ないよう行動させる必要がある。
誰が何処でどういう目的の下に何をしているかをはっきりさせ、さらに見せ場も作らなければ盛り上がらない。日記とは訳が違う。
それが嫌だし出来ないというのなら「クロスオーバー」と銘打った方がマシという物だ。
ある程度書き進んでからそれに気づけたのは幸運だった。数KBにも満たない文章――それでも情熱の結晶ではある――を放棄して一から考え直す。
2chやニコニコ動画を巡回しつつしばし思考にふけった後、「両方の作品の登場人物が協力して黒幕を打ち倒す」という流れにしようと決めた。
ありがちな話ではあるが王道中の王道である。啓示と言っても言い。自力で王道にたどり着けたのはそれだけ成長したからだ。
最初の数回分を書きためた後、スレッドを建てる。
51創る名無しに見る名無し:2011/12/29(木) 14:26:23.48 ID:bEFlN9Sl



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トーマン「あのクソ野郎どこ行きやがった!」 ほめら「え?」

1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/12/29(木) 15:24:14.90 ID:/

 漢書目録と、もなか☆マジかのクロスオーバーです。
 よければ見てやってください。

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彼の戦いは始まったばかりだ。
52創る名無しに見る名無し:2011/12/29(木) 14:32:35.74 ID:RCqe/cmS
乙w
もなかってお前w
53創る名無しに見る名無し:2011/12/29(木) 14:33:53.81 ID:bEFlN9Sl
これ以上進むと古傷がぐぱっと開いて死んでしまいますよ!
54創る名無しに見る名無し:2012/01/09(月) 06:15:13.75 ID:addH3X2J
age
55創る名無しに見る名無し:2012/01/09(月) 22:55:21.60 ID:wRoPfGaY
一週間経ち、二週間経ち、彼の建てたスレッドは順調にレスを伸ばしていった。正確には二週間と6日でレス数83。
順調にいけばもうすぐ3桁の大台が見えてくる。SS速報VIPには1000以上のスレッドがあるが、
レス数が100に満たないスレが4割近くあった。それを考えれば上出来と言えるだろう。
なにせこの板、上位2割半程のスレッド以外は一日のレス数が5レスを下回るのだ。
かと思えば、その上位は1レス/時を超えるスピードで進行していたりする。
普通の板の上位1〜2割くらい、「ちょっと流れが速いかな?」と感じるスレが大体1レス/時くらいだ。
SSという手間のかかる物を書いている事を考えれば、相当な量の感想レスがある事になるのだろうか?

そうではない。安価(アンカー)形式というレトリックだ。
つまりRPGのそれのように、指定したレスに書き込まれた内容によって登場人物の行動を決めるとか、
作者から提示された選択肢から書き込みで多数決を決めるとか、そういう事だ。その場のノリに合わせて
ダイナミックに進むシナリオや読み手も話作りに参加できる事が受けたためか、それなりに人気があった。
いかにも匿名掲示板らしい話の作り方だとは言えるだろう。

しかし彼は、自分の作品に安価を入れる気はなかった。
ある程度先まで書き上げているので変えようがないというのが理由の半分、
自分の完璧なシナリオ――厨二病というフィルターを外せば取るに足らない物だが――
には非の打ち所が無いと信じ切っていたのがもう半分だ。
それに今更プロットを変更するのも嫌だった。プロットと言ってももちろんまともな物であるはずが無く、
今のところ彼のSSは「ぼくのかんがえたかっこいいせんとうシーン」がダラダラと続いているだけだった。
56創る名無しに見る名無し:2012/01/09(月) 22:56:15.36 ID:wRoPfGaY
ああ、それにつけても感想の欲しさよ……。
彼のスレッドに付いた感想はと言えば「投下乙」というお馴染みのレスと、
「『マジか』のさーかは俺の嫁」というこれまたお馴染みのレスだけだった。毒にも薬にもならなかった。
人気SS作家のように、感想に対してレスの投稿制限ギリギリまで目一杯つかったお返し全レスをしてみたかった。
彼は病的なまでに感想を欲していた。正確には褒められまくりたかった。優越感に浸りたかった。
いや、他人からの承認や尊重を得たいというのはマズローの欲求ピラミッドに示されているとおり誰でも持つ感情だ。
SS作家ならば誰しも投稿後しばらくは感想が付くかどうかドキドキするものだし、
たった1レスついただけでも喜んでスレッドを読み込む。
(そういうレスに限って「保守」とか「age」とか書かれていてSS作家をがっかりさせる物だ。良くある事だ)
ただ彼の場合、その原動力が厨二病だった。自分がやりたいからやる、楽しいからやる、
という原動力に比べれば馬力が出ない。
57創る名無しに見る名無し:2012/01/09(月) 22:57:15.31 ID:wRoPfGaY
感想は話を見た結果付いてくる物である。感想ほしさ故に作品を作るのは、主従が逆転している。
それでもプロの作家なら「いつも感想を送ってくれているファンのために」「印税のために仕方なく」という言い方もできただろう。
そういう物言いをするには、彼には技術が決定的に足りていなかった。腕前の割に過大な評価を期待しすぎていた。
この板に打ち切りの心配はない。バックナンバーの入手も、ページを上にスクロールさせるだけで済む。
週刊少年漫画のように投下のたびに見所を作る必要もない。もっと言えば完結を焦る必要もない。
それに気がつかずに変な義務感や焦りを持ってしまったのが彼の問題点だ。そしてそれは、やはり厨二故の問題点だった。
部活でエースだとか、学業の成績を他人に誇れるとか、彼には現実社会で自慢できる事は無い。
だからネットの世界に自慢の種を求めた。だが全ての人間が他人に誇れる物を持ち合わせているわけではないし、
そうだからこそ大抵の人間――特に厨二と呼ばれる人間――は大なり小なり正体不明の劣等感に悩まされる物だ。
その劣等感が一周回って歪んだ優越感となったとき、いわゆる中二病は発症するのだろうが……彼に言っても詮無き事である。
58創る名無しに見る名無し:2012/01/09(月) 22:58:09.98 ID:wRoPfGaY

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89 :夜読の譫言 ◆k4NS0/b0syu. [sage]:2012/01/09(月) 17:05:15.17 ID:DzIrhCNN0
MASAKA「食らいなさい!慣性誘導鉛心鉛筆(ペンシル・ミュニション)!!」ズガガガー!

マニ・ザ・ウォーンアウト「させない。チョウ・メイネ!!」ジャキッ!

オォオオオオオオオオオ!!

MASAKA「…やった?」

マニ「やってないしやらせない!!」ドガッ!

MASAKA「よけられたっ!?!?」ウソッ!

ギギギギギギギッ

マニ「! ビクともしない!」

MASAKA「当たっただけえええぇーーっ!!」

二人のバトルは周囲をガレキの山へとしていく

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誰でも書き込めるというメリットは、興味がなければ全く閲覧されず感想ももらえないリスクと表裏の関係だ。
書き込みが無くなったスレッドほど哀愁を誘う物もそうそう無い。いや、書き込みの途絶えたスレッドといえど
確かにサーバー上に存在するし書き込みも出来る。しかしそこに存在する事のみを指して「活きている」と言うのは、あまりに意味のない事だ。
要するに、SS作家にとって過疎より怖い物はないと言う訳だ。過疎が怖いから、とにかく書きまくる。投稿しまくる。
創作発表板やSS速報VIPは、一見すると気軽なコミュニティに見えるが、
彼にとっては野心と欲望が厨二というミキサーで練り合わされた鉄火場そのものだった。
59創る名無しに見る名無し:2012/01/16(月) 21:56:00.12 ID:s0fQqRf3
さりげなく続ききてたw
60創る名無しに見る名無し:2012/01/17(火) 19:03:55.19 ID:4EYiKC3e
動機が不純なら腕も未熟だから、彼のSSはあっという間に話に行き詰まってしまった。
話を展開させるネタとやる気は見る見るうちに枯死してしまい、もう1週間以上投稿が滞っていた。
学校が忙しいからSSを書いている暇がないと自分で自分に納得させていたが、言い分でしかないのは明らかだった。
学校から帰って来るなりパソコンのスイッチを入れ、総レス数103でぴたりと止まった自分のスレを、
それでも感想の一つでもないかと見る。そんな事を繰り返すたび、彼の心の内にある種の徒労感がふつふつと沸いてきた。
一体俺は何をしているのだろう? 専用ブラウザの機能を使ってSS速報VIPのスレッドを流れが速い順に並び替え、
もっとも進行速度の速いスレッドを読み込む。一体全体、俺とこいつらと何が違うというのか。俺のSSの方がずっと面白いはずなのに。

それは無根拠かつ感情的な言いがかりだった。厨二というはしかをこじらせた者にはよく見られる現象だ。
「♪ナイフみたいに尖っては触るもの皆傷つけた」じゃないが、見るSS全てを批判したくてたまらなかった。
日曜の朝から変なストレスをため込みながら、いつものように2chを巡回し終えると、彼は急に暇になってしまった。
いつもならメモ帳相手にSSを書いているところだが、ここしばらくご無沙汰していた。
チラッとデスクトップ右下の時計に目をやると、まだ13時を少し回ったところだ。
テレビに録画したままのアニメを見ようかと思ったが、何も昼間から急いで見ることはない。ゆっくり崩せばいい。
何の気無しにニュー速VIPを覗く。ふと、とあるスレッドのタイトルに目を引かれた。
61創る名無しに見る名無し:2012/01/17(火) 19:04:39.89 ID:4EYiKC3e

【ヤンヤン】VIPでヤンデレだらけのギャルゲー作ろうぜ!【デレデレ】(192)


「これだ……!」
まるで金脈を発見した老人のように彼は声を絞り出して言った。よりにもよって彼はゲーム制作に目をつけてしまったのだった。
2ch発のゲーム、ことさらギャルゲーはいくらも挙げることが出来るが、
それら完成作に数倍する未完成作が存在することはあまり知られてはいない。
ギャルゲーなぞ最悪ライターとイラストレーターさえいれば、いや、経験者曰く
「イラストレーターさえいれば後はスクリプターもライターもまとめ役も集まってくる」物なのだ。
VIPにスレを立てればそれらはクリアされる問題だ。では何故かように多くの未完成作があるのかと言えば、
スタッフが途中で消えたり連絡が付かなくなるのが原因の半分、見立てが甘くてスケジュールが目茶苦茶になってしまい
いつまで経っても完成しないというのが残り半分といった感じだ。
完成させるために真に必要なのは最後までやり通す責任感だ。今の彼にはもっとも欠けている物でもあった。
シナリオくらいなら書けるとか思ってるそこの君。考え直せ。楽そうに見えるが地獄だぞ。

まとめwikiにアクセス、今北さん用の紹介とスタッフ募集の詳細を見る。ヒロイン3人でバッド・トゥルーの2種計6ルートか。
これだ、これに参加すればいい。俺が参加したゲームはたちまちのうちに2ch中でヒットし、
重厚かつ繊細、優雅にして華麗なシナリオを書いたと各方面から絶賛されるに違いない。
有名メーカーからコンシューマ向けに豪華声優陣をつけてリメイク、そして俺にはプロのシナリオライターとしての道が……。
そう妄想した次の瞬間には、彼はスレッドに書き込んでいた。
62創る名無しに見る名無し:2012/01/17(火) 19:05:20.17 ID:4EYiKC3e
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199 :夜読の譫言 ◆k4NS0/b0sy :2012/01/22(日) 13:38:15.41 ID:lvPzI5350

シナリオライター希望です! マヤカルートのライターがまだ決まっていないようなので
  是非やらせてください!!!

200 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/22(日) 13:39:01.34 ID:N30Lgjc/0

  >>145をwikiにまとめておいた。あと保守

201 :1 ◆mur1muoa. :2012/01/22(日) 13:41:01.10 ID:h/ESSZQV0

  >>184
VC++で組んだ経験があるのでスクリプトについては自分がやりますw

  >>199
  ライターktkr。今までに何か文章を書いた経験とかありますか?

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ふーむ、経験の有無か。腕組みしながら彼は考える。そうだ、SS速報に建てた自分のスレを紹介すればいい。
一目見ればあっという間に俺の実力が分かってしまうという物だ。完結したわけではないが、
それでもその辺のSSなんかとは段違いに面白いはずだ。受けが悪かったのはたまたま人目に付かなかったからに
決まっている。神ライター降臨となればスレも加速するに違いない。
63創る名無しに見る名無し:2012/01/17(火) 19:05:59.78 ID:4EYiKC3e
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209 :夜読の譫言 ◆k4NS0/b0sy :2012/01/22(日) 13:43:47.02 ID:lvPzI5350

このスレでこんなSSを書いてました、良かったら見てください!!
  ttp://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/213430481310/

212 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/22(日) 13:45:52.35 ID:PT+jLUI20

  ちょwwww>>209はねーわwwww

215 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/22(日) 13:48:11.40 ID:enlwlRX30

  >>209
  これはひどい。すごくひどい

216 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/22(日) 13:48:30.32 ID:CZ/jloXP0

  >>209
  漢書ともなかのクロスオーバーwwwwwwテラ厨二www

219 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/22(日) 13:50:09.16 ID:AtkyB7Dm0

  お前ら!超人気SS作家>>209様に失礼だろうが(棒)

220 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/22(日) 13:50:19.28 ID:cBaQoKRy0

  >>209は冗談でやってるならかなり凄い。本気だとしても別の意味で凄いw

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立ち所に彼のレスは真っ赤になり、アンカーと草がスレッドを支配してゆく。
彼の思考は完全にオーバーヒートし、続々と投稿されるレスを訳が分からないまま眺めていた。
てっきり褒めちぎられている物だとばかり考えていたから、彼をあざ笑うレスも何かの間違いか、
でなければ嫉妬風の賞賛にしか見えなかった。しかし続々と生やされる草を見つめ続け、
どうやら何かいけないことをしたらしい、とようやく気がついた。しかし、もう遅すぎた。
64創る名無しに見る名無し:2012/01/17(火) 19:06:59.65 ID:4EYiKC3e
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258 :1 ◆mur1muoa. :2012/01/22(日) 13:57:17.17 ID:h/ESSZQV0

  なんかスレの流れが速くなってる件w

  >>209
え〜と、申し訳ありませんが、皆さんのおっしゃるとおり実力不足なのだと思います。
  今回はライターとしての参加を取りやめていただけませんか?
  >>118のリンク先からジンゾー ◆ttens41kwrさんのSSが読めるので参考になるかと。

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放心状態のまま、書き込みの通りにリンク先のSSを読む。まとめwikiに貼られているそれは
シナリオライター希望の人が今決まっている設定だけで軽く書いたものだという。
面白い。そもそも俺とは書き方が全然違う。いや、もしかしてもしかすると、
こちらのほうが「普通の書き方」なのか? 今まで俺の書いてきたSSは邪道な書き方なのか?
そういえば、どのライトノベルもキャラの台詞以外の文、地の文という奴があるではないか。
まさか、俺は、俺は……。今も止まらぬ彼に対する失笑のレス。
彼の書き込みへのアンカーが30を超えたところで彼は突然パソコンの電源を落とした。
目頭が熱くなるのを押さえることが出来ず、自分の部屋へ飛び込みベッドに頭から倒れ込む。


その日の夕食は、なぜか塩辛い味がした……。
65創る名無しに見る名無し:2012/01/17(火) 19:09:35.70 ID:4EYiKC3e
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519 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/22(日) 19:27:03.02 ID:tcendInZ0

  お〜い、誰か>>209の行方を知らんか?

521 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/22(日) 19:30:19.47 ID:e5S60Z2Y0

  >>519
  もう許してやれよww鬼かwww

522 :ローカルルール・名前欄変更議論中@自治スレ:2012/01/22(日) 19:31:13.50 ID:q1YTrGJF0

  こうなったらもう>>209神が主人公のハーレムゲーをだなw

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こうして彼の創作行為には一つのピリオドが打たれることになる。
しかし、この世に厨二の心がある限り、すなわち人間が生きている限り同じことが繰り返されるだろう。
いずれ彼もまた、厨二を批判する二な心を持つようになり、それからも脱却して
真っ当でつまらなくクソ真面目な「大人」になるというものだ。
誰が悪いわけでも何が悪いわけでもない。夜の校舎の窓ガラスを壊して回ったり盗んだバイクで走り出すのに比べれば、
何らかの社会的ケジメ(学年主任に絞られるとか、パトカーの中に招待されるとかだ)がついて回ることもない。
厨二的なストレスのはけ口としては、漫画だの小説だのを書くというのはずいぶんと穏やかな手段と言える
それでも、この1ヶ月で彼が負った傷、目に見えない傷は我々が想像する以上に深い物だったことを記しておく。

もう何度も何度も口が酸っぱくなるほど書いたが、彼自身の名誉のためにも、
やはりもう一度声を大にして言わなければならない。

彼は厨二だった。




(了)
66創る名無しに見る名無し:2012/01/17(火) 19:13:40.63 ID:4EYiKC3e
*この作品はフィクションです。実在の人物・団体・掲示板とは一切関係がありません