【シェア】みんなで世界を創るスレ8【クロス】

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65創る名無しに見る名無し
「・・・か、かあさんに、何てことを言うんだ!」
父親が、ついに怒鳴った。
最近、老いが目立ち始めた父。髪に白いものが混じり始め、頬には確実に皺が刻まれている。
気苦労とストレスをぐっと耐え忍ぶことで、父は若さと精気を確実に奪われている。
その気苦労の要因の一つが、間違いなくシェアワールド作家さまこと自分自身なのだ。

父はシェアワールド作家さまを睨んでいる。だがその瞳は、怒りの色ではなく、悲哀が浮かんでいた。
何とか、この息子をちゃんと社会に送り出してやりたい、というそういう思い。

マンガやアニメやライトノベルに興じ、エロゲの萌えキャラとの虚構の恋にはまる馬鹿息子。
ヒマさえあれば妄想でしかないシェアワールドに逃げ込み、そこでありえない夢を見続けるダメ息子。
そんなどうしようもないFランの息子でも、息子は息子なのだ。

恐らく父の中の何かも、もはや限界に近いのだろう。
それは、シェアワールド作家さんもうすうす察しがついている。

だが、・・・だが。

シェアワールド作家さんには、その現実と向かい合う勇気はなかった。
非現実世界(シェアワールド)に逃げ込み、美少女たちと一緒に冒険して魔物と戦ったり、
ファンタジックな妄想世界の中で二次元娼婦たちとご都合主義のドラマに興じたり、
とにかく現実逃避のありとあらゆるジャンクを詰め込んだ甘き夢の世界に逃げ込み、
そこで己を徹底的にスポイルし続けてきたのだ。


   妄 想 世 界 で の レ ベ ル が 上 が れ ば 上 が る ほ ど 、
 
      現 実 の 自 分 の レ ベ ル は ど ん ど ん 下 が っ て い く・・・ああっ!


もはや、目の前の小さな現実を受け入れるだけの強さは、シェアワールド作家さまに残っていなかった・・・。

・・・気付くとシェアワールド作家さまは、母親を足蹴にしていた。

年老いた母親の体は、とても小さく弱々しい。
かつて自分を抱きしめてくれた母親の、そのやわらかい肉は、既にしぼんできていた。
だが、シェアワールド作家さまは、母親に暴力を振るわずにはいられなかった。
もちろん何かを叫びながら、泣き喚きながら、振り上げた拳を母親に向かって振り下ろす。

母が自分に抵抗できないことを、ちゃんと悟った上で。
それをわかった上で母を打ち据えることが、途方も無い甘えであることを、シェアワールド作家さまは悟った。
だが、もう、どうすることもできなかった。妄想世界に逃げ込むことでスポイルされた自分に、強さは残ってなかった。
もはやシェアワールド作家さまは、泣き喚き甘えることでしか、己を支えられなくなっていた・・・。

・・・父が自分を押さえ込んでいる。

その父の、かつてより腕力を失ってしまった父の腕の中で、シェアワールド作家さまは喚き散らしていた。
「やめてくれ!もうやめてくれ!」
父は叫ぶ。すぐそばで叫んでいるにも関わらず、どこか遠くから響いてくるように聞こえた。
目の前で母は床に突っ伏していた。母の背中が震えているのが見えた。
その母の背中の小ささに、シェアワールド作家は慄然とした・・・。
66創る名無しに見る名無し:2011/11/26(土) 17:21:19.11 ID:h+LVbYsR
・・・ようやく、正気を取り戻した。
そして、今、自分がやってしまったことへの恐怖が、一気にシェアワールド作家さまの精神に襲い掛かる。
母は泣いていた。くぐもったようなか細い泣き声が、シェアワールド作家さまの耳に届いた。

「・・・わああーっ!」
一際大きな声で、シェアワールド作家さまは叫んだ。
それと同時に、自分を羽交い絞めにしようとしていた父を振りほどき、食卓から駆け出した・・・。


   ・・・ところでシェアワールド作家さま、貴方は一体どちらへ向かわれるのですか?

   目指すは・・・そう、決まってる。

   シ  ェ  ア  ワ  ー  ル  ド

   全てが都合よく作られた妄想世界の中に、再び逃げ込むのだ。
   辛き現実から目を逸らし、甘き夢だけが虚しく漂う、あの虚構の世界。

   シェアワールド作家さまと同じような人間たちだけが集う、現実逃避者たちのパラダイス。
   ネットという仮想空間のみでつながった逃避者たちの、切なく儚い集い。

   そこには、卑小な自分を決して傷つけない都合のよい虚構が待っている。
   そこには、卑小な自分を脅かさない都合のよい冒険が待っている。
   そこには、卑小な自分を決して裏切らない、二次元の美少女たちが・・・待っているのだ。


┏━━━━━━━━━━━━━━━━
┃・二次元キャラ達はお前に微笑んではくれない。
┃・二次元キャラ達はお前に語りかけたりはしない。               ほらね!
┃・二次元キャラ達には温もりが無い。                        こうやって誤魔化せばいいのよ!
┃・二次元キャラ達はいざというときにお前を助けてもくれない。
┃・でもそれってリアルの女も同じじゃね?                  -――- 、
┃  だったら二次元キャラでいいじゃね?               , ‐'´         \
┃                           人          /            、 ヽ
┃                          .<. 。>         |l l /〃 ヽ ヽ} |  l  ',
┃                      バシ!! 彡V \          ljハ トkハ  从斗j │ ハ
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━  彡 \         .l∧}ヾソ V ヾソ !  ! ヽ \
                                 \ __  __ リ.人  v‐┐ /" ト、  ヽ ヽ
                                   {心下ヽ /"  >ゝ-'<{   Vl   } }
                                   ゝ<}ノ \  (:::::Y Y:::::!   ヽヘ  { {
                                      7´ ̄ )   )::∨::__::ヽ   }::\ \丶、
     シェアワールドだって                   /  /  /ィ'´ヽ:::::::::ノ  /:::::::::ヽ ヽ `ヽ
        同じような誤魔化しなんだしw           ! ≦∠__ノ:::| /ハ::::/   ゝ、:::::::::`、 リ ノ
                                      |   .:.:::::::::::l  __ヾ\    ≧:::::::::'、ヽ {
                                     l_ .:.:::::::::/ >v'  l \::ヾ  ̄::::::::::::::::', }>

・・・二時間後、シェアワールド作家さまは、妄想ファンタジーの甘き夢を見ていた。

現実社会の時間は確実に流れてゆく。
だが、その確実に刻まれる時の流れは、シェアワールド作家さまの妄想には届かなかった・・・。

夜が更けてゆく。