さっそくですが2つ投下します
まずは前スレの清算から
(あらすじ)
幼馴染みの魔法使いネミと二人で旅をしていた俺アルナは、ある日、謎の魔物に襲われ女にされてしまった。
剣士としての実力に深手を負った俺は、魔物に壊滅させられたためにネミの両親と俺の剣の師匠だけが暮らすだけとなってしまった故郷の村に帰ってきた。
そこで俺たちは、ネミの結婚の話が本人抜きで進められていたことを知る。
突然の報告の翌日。
地平線の向こうから一人の男が馬に乗ってやってきた。
「遠いところをわざわざよく来てくれました。」
「いえいえ、こちらから伺うのが当然の礼儀ですから。」
おじさんとおばさんが嬉しそうに頭を下げ、男は爽やかな笑顔で応える。
面白くない。
気が付くと俺は――
「俺と勝負しろ。」
「アルナ君っ!」
「俺が勝ったら、ネミから手を引け。」
奴に剣を向けていた。
「いいですよ、明日の正午でどうです?」
奴は笑顔を崩さずに答える。
ちっ、余裕ぶりやがって。
「ああ、分かった。逃げるんじゃねえぞ。」
俺はその足で師匠の家に向かった。
「師匠っ!」
「なんじゃさわがしい。」
「明日までに、俺に稽古をつけてください!」
「ふむ、何をするのか知らんがまあよいじゃろう。」
こうして、一夜の猛特訓が始まった。
薄暗い道場で、俺と師匠は木刀を構え合う。
「お前の剣は力任せじゃ。」
「これまではそれで何とかなっておったかもしれん。」
「じゃが、力の無い今はそれでは勝てん。」
余裕があるのか、喋りながら俺の剣を受け流す師匠。
こっちは師匠の動きを追うので精いっぱいだというのに。
「ならどうするか。」
「流れじゃ。戦いの流れを読み、その流れに従う。」
「すると、攻撃はおのずと当たる。」
「くっ!」
みぞおちに重い一撃。
師匠の老いた体からは想像できない強力さだ。
なるほど、流れを読む、か。
「まだまだ!」
「んー……。」
あれからどうしたっけ?
たしか道場を出た時には夜が明けていて、焼けて半分無くなった自分の家で寝て。
「あっ!」
そうだ、ネミの婚約者の男と勝負するんだ。
まずい、太陽がちょうど南の空に昇ろうとするところじゃないか!
道場に行くと奴は既に木刀を握って待ち受けていた。
「それでは始めましょうか。」
見てろ、今に化けの皮を剥いでやる。
手に取った木刀に力を込める。
「始めっ!」
師匠の合図。
俺はためらうことなく一直線に木刀を振り下ろした。
が、奴はそれをひらりとかわし、俺の木刀を上からコンと軽く叩いた。
たったそれだけのことだが、振り下ろした勢いが手伝って、思わず手が滑ってしまう。
木刀は音を立てて床に落ちた。
「女性と戦う趣味はありません。できれば降参していただきたい。」
「うるせえっ!」
俺は……男だ!
木刀を握りなおす。
不意に師匠と目が合い、昨日の特訓を思い出した。
流れを読む、だっけ?
息を整えた俺は、一気に間合いを詰める。
つば競り合いの形になるが、すぐに一歩引いて右から攻める。
避けたか。ならそこですかさず突きだ。
よし、いいぞ、押してる。
木刀を振るたび、相手が後退していくのが分かる。
一撃、もう一撃。そして、ついに隙が見えた。
もらった!
ヒュン、と音がして……なんだ? 何が起きた?
俺が木刀を振り下ろすより早く、奴の得物が俺の首のすぐ横、拳一個分の距離を捉えていた。
「ま、参った……。」
そう俺が喉の奥から声を絞り出すと、奴は、
「ありがとうございました。」
と一言だけ残して道場を去って行った。
「ほっほ、やはり剣の腕は一朝一夕でどうにかなるものではないの。」
床に倒れ込んで、俺は師匠の話を聞いていた。
「あの者、お前を巧みに誘い込んでおったぞ。相当の手練れと見た。」
「……師匠。」
「ん、どうした?」
「俺、やっぱり旅を続けます。」
「……そうか。」
「元に戻る方法があるかもしれませんし、それに、この村にはもういられないから。」
それを聞くと、師匠は奥の部屋に行ってしまう。
追いかけるかどうか迷っていたが、すぐに戻ってきた。一冊の本を携えて。
「わしの剣術の全てを記した書じゃ。最後の弟子であるお前に託そう。」
「あ、ありがとうございますっ!」
慌てて立ち上がり、恭しく頂く。
「……気を付けて行くのじゃぞ。」
その夜、俺は自分の家で旅の準備をしていた。
愛剣、師匠の指南書、ちょっとした非常食、水、地図、コンパス。
出発は今晩中だ。ネミと家族には黙って行く。
悲しむだろうか。でも、もう俺には……。
「何暗い顔してんのよ。」
「へっ?」
突然の声に驚いて、顔を上げる。
「ネミ! どうして……?」
「道場のおじいさんに教えてもらったの。」
くそ、ちゃんと釘を刺しておくべきだったか。
どうするんだ。別れの言葉なんて考えてなかったぞ。
と思っていると、
「さあ、行こ!」
「行くって、どこへ?」
「ふふ、駆・け・落・ち!」
「な……!」
びっくりすると同時に、内心ほっとしている自分に気付いた。
どうやら俺にはこいつがいないと駄目なようだ。
そして、俺たちの新しい旅が始まった。
fin
1年以上空いてしまいましたが、これで完結です
ありがとうございました
続いて新作
退屈な現国の授業をなんとか目を閉じることなく乗り切った末の休み時間、俺は窓の外をなんとなく眺めていた。
天気は雨。梅雨の季節。
でも、それももうすぐ明けるそうだ。
そしたらすぐに、高校最初の期末試験が待ち構えている。
試験……か。
入学してからの三か月、新しい環境に慣れるのに必死で、勉強なんてこれっぽっちもやっていなかった。
そりゃあ皆条件は一緒だ、言い訳するな、と言われるかもしれない。
でも、俺の場合は……。
「赫映(かぐや)、ぼーっとしてていいのか?」
クラスメイトの声で、我に返る。
「へ? えーっと、何が?」
そいつは溜息交じりの声で告げた。
「次の時間、男子は保健、女子は体育だ。」
「あっ!」
俺は慌てて体操服の入った袋を取り出し、体育館へ急いだ。
入学して間も無い四月の半ば、俺はある病気に襲われた。
思春期の男がいきなり女に変わる奇病、性転換症。
五十年前に最初の症例が見つかったその病気は、それから勢いを増し、今では五百人に一人とまで言われている。
にもかかわらず、現代の科学をもってして分かっているのはたったの二点。
性転換の前に高熱が三日三晩続くことと、発症者は遺伝子レベルで完璧な女性の体に作り変えられることだけだ。
現在のところ、予防も治療も不可能だと言われている。
まあ、最初は絶望したりもしたが、最近の俺は「治らないものは仕方ない」と前向きに自分の運命を受け入れようとしていた。
しかし、そんな俺の努力をあざ笑う関門の一つがこれ、女子更衣室。
女子達の方はなぜか俺が入ってきても別に気にしないようなのだが、こっちはどうにも気まずさを捨てきれない。
だから、なるべく周りを見ないようにうつむき気味でロッカーを選び、
なるべく自分の体を見ないようにロッカーを凝視しながら着替えを済ますようにしていた。
今日はバレーの最終授業ということで、先週組まれたチームに分かれて総当たり戦をしている。
これもちゃんと評価に入るらしいけど、よくこんな人数をいっぺんに見れるなぁ。
そしてこれが終わるといよいよ来週から水泳の授業だそうだ。
小中の頃は楽しみにしていたけれど、今では憂鬱の種でしかない。
不本意ながら買うことになった面積の広い方の水着は、まだ一度も試着していない。
そうそう、水の中と言えば、毎日風呂に入ってて思うんだが、この二つの膨らみの浮力が……
「赫映さんっ!」
へ?
「にゃっ!」
…ったたたたた、来週の予定を嘆くのに必死で、ボールの動きがすっかり頭の外だった。
うぅ、「にゃっ!」って何だよ、「にゃっ!」って……。
結局雨は放課後まで止んでくれず、傘ひとつで家までの道を乗り切ることになった。
俺みたいな帰宅部は少数派なので、帰りはいつも一人だ。
本当は俺だって仮入部でいろいろ回ったりしていたのだが、性転換症のせいでそれどころじゃなくなってしまった。
二学期からでも大丈夫かな?
それはともかく、一人で黙々と歩くせいで帰宅は速い。
しばらくして、何とか濡れるのを最小限に抑えたまま、愛しい我が家にたどり着いた。
さっさと中で着替えたいところだが、ポストに入ってる大きな封筒が目に留まる。
取り出して宛名を見ると、「赫映楓(かえで)様」……うん、俺だ。
次に封筒の下の方に大きく書かれてる差出人、というか会社の名前を確認……して、俺は目を疑った。
一体何の用で俺なんかの所に郵便を送りつけてきたんだ?
明朝体で印刷されたその社名は、こうだった。
「春斗芸能プロダクション」
つづく
投下は以上です
投下&スレ立て乙!
更衣室でも気にしないって、女の子サバサバしてんなw
と思ったけどそれ以上に本人が気にしてるなら、そんなもんかもね
性転換して天下とったニューハーフ・アイドルのところに、切断されたチン●が復讐しに来るって話はどうだ?
小さな子供を抱えた若い未亡人のまえに、素敵な恋人が現れる。
しかし、結婚を望む女に対し男は「子連れとは結婚できない」と拒絶。
……そして子供が変死する。
よくある話だね。
「母」であるより「女」であることを優先した母親が子供を殺すわけだ。
このパターンを殺される子供の一人称で描く……と見せかけて、実は「切除されてしまうことに怯えるチン●の一人称小説」でしたというオチにする。
ボクを見下ろすパパの目が、いつものと違っていました。
パパがボクの頭を優しく撫でてくれました……とかいう風に。
なんでそんなにチンコ切断に執念を燃やすんだよwww
まあいいけど
ただ切っただけではTSと呼べないような
15 :
12、13:2011/09/18(日) 12:40:04.20 ID:2VrxAqfB
>>14 否定された存在とか、踏みつけられたものに興味があるもんでね(笑)。
深夜放送でニューハーフタレントが「秋田名物キリ●ンポ!」なんてやってるのを見ると、こいつの心の中で切られたチ●ポとはどう折り合いがついてるのかな?と思う。
こいつが今輝いてられるのは、●ンポが犠牲になったからだろ?
あいつのこと、忘れてなんかいないよな?……なんてことを考えると、いろんなネタが次々浮かんできたわけだ。
「切られたのは仕方ない。オマエが幸せになるためなら、オレは切られたってかまわないよ。でも、忘れたのは許せない!」→キリ●ンポの復讐
「お父さんが包丁持って、ボクのことをじっと見下ろしています。ボクなんだかとっても怖い……」→切られそうな息子の一人称小説。
付き合ってる女性の部屋を訪ねると……仏壇に小さな位牌が……。
相手の目を盗んで手に取って見ると戒名も書いてないこれって水子の位牌?彼女、実は子供を堕ろしてんの?
……彼女は語りだす。
「それは……わたしの息子の位牌なの」→いとしのわが子
個人的には、最後の展開であって欲しいな。
そこまで考えてるなら自分で1本書いちゃいなよ
ニューハーフまでいくならスレ的には問題無いと思うぜ
個人個人に受け入れられるかは知らんが
投下しますー
「赫映楓さん、白雪(しらゆき)友(とも)さん、大豆戸(まめど)亜姫(あき)さん、まずは合格おめでとうございます。
あなたたちはこれから、アイドルグループ『トライアングル・スターズ』として、デビューに向けて頑張っていただきたいと存じます。」
夏休み最初の日曜日、俺はとあるビルの一室にいた。
横には俺の他に二人の少女が立ち、スーツを着た大人がずらっと十名ほど、俺達を期待の眼差しで見つめている。
さて、どうしてこんな状況になったのだろうか。
話は三週間前、例の封筒を受け取った日にさかのぼる。
封筒の中には一枚の紙が入っていた。
曰く、「あなたは第1回性転換少女アイドルオーディションの書類審査を通過いたしましたのでご報告申し上げます」とのことだ。
その下には面接の日時と場所も地図付きで載っていた。
だがちょっと待ってほしい。
書類審査を通過したってことは書類が出されてたってことだろ?
俺には全く身に覚えが無いぞ。
もしかして知らないうちに俺に第二の人格が芽生えて(多分女の子っぽい人格)、そいつがアイドルに憧れるあまり応募してしまったのだろうか。
なんて妄想までしはじめたところに、階下から声が掛かった。
「楓ー、ご飯作るわよー!」
俺が女になってから、母さんが鬼の首を取ったように「女の子は料理くらいできないと」と騒ぐので、仕方なく夕飯の手伝いをするのが日課になっていた。
別に男と結婚する気などはさらさら無いのだが、一人暮らしするにしても必要だろうから文句は言わないでおいた。
まあ将来のことより何より、断ったら今日飯抜きになりかねないというのが大きな理由なんだけどね。
それにしても、いつもに増してやけに楽しそうにキッチンに立つ母さんの姿を見て、ある予感が走った。
まさか……。
「母さん、春斗芸能プロダクションって知ってるよね。」
「何!? もしかして結果届いたの!?」
ああ、ビンゴだ。
「う、うん……。」
「で? どうだったの?」
「書類選考は通過だって……。」
「本当!? 良かったじゃない! あーあ、もっと早く知ってれば今夜はごちそうだったのに!」
母さんの勢いに気圧されて何も言えない。
良かったって、別に俺が応募したくてしたわけじゃないからね、なんて言った日には包丁が飛んでくるかも。
こうなると残った頼みの綱は父さんだけだ。
「ただいま。」
おっ、帰ってきた帰ってきた。
「父さんっ!」
母さんと違って父さんは俺の話を黙って冷静に聞いてくれた。
話を聞き終わった父さんは、俺の肩に手を置いて……こんなことをのたまった。
「楓、世の中には努力してもチャンスに恵まれない人もいるんだ。
せっかくのチャンスなんだから、やるだけやってみなさい。」
いや、なんか話がズレてない?
なんて思ってると、母さんから思いもよらぬ補足情報が提供された。
「お父さんね、昔歌手目指してたんだって。」
……さいですか。
「この日ならちょうど仕事も休みだな。車で送って行ってやろう。」
こうして俺は、逃げ場を完全に失うことになった。
ま、まあ、向こうが求めてるのはアイドルなんだし?
普段の俺を出せば落選間違いなしだ。それで母さんも父さんも納得してくれるだろう。
と、なるはずだったのだが……何の間違いか、結果は冒頭の通りである。
「その中に契約の書類が入っています。よく読んでご記入の上、郵送でお送りください。
それでは今日の所はこれで終わりです。また後日連絡しますので、その時の指示に従ってください。
では、今日は長い間お疲れ様でした。これからよろしくお願いしますよ。」
プロデューサーの名乗った人が挨拶を終えると、大人たちはぞろぞろと部屋を後にし、広い空間の中には三人だけとなった。
数時間の緊張からやっと解放され、俺は大きな溜息を吐く。
「楓ちゃん、亜姫ちゃん、これからよろしく。」
静かになった部屋で、ミドルヘアの一番背の低い子が口を開いた。
「ええっと、白雪さんだっけ?」
「僕のことは、友、でいいよ。」
「う、うん、よろしく、友。」
友は満足したように俺に向かって微笑んだ。
作った感じのしない自然な笑顔だ。
「あ、亜姫さんもよろしく。」
「ええ、よろしく。」
こちらは背も高く髪も長く伸ばしている。可愛いというより美人タイプだ。
なんとなく呼び捨てにできないオーラを放っている。
ちなみにどうでもいい情報だが、俺の髪は手入れが面倒だという理由でショートカットにしている。
身長は二人の間くらいで、五月に測った時には160.5cmだった。
クラスの女子とさえあんまり話さない俺は、二人の美少女を前に緊張していた。
あれ? でも、ちょっと待てよ?
「二人も元男なんだよね?」
オーディションの趣旨を考えれば当然なんだけれど、二人とも、改めて確認したくなるくらいの美少女っぷりを発揮している。
考えれば考えるほど、どうしてこの二人の隣に俺が立っているのか不思議でならない。
「うん、一年くらい前にね。」
友が答える。一年、か……。
「もしかして楓ちゃんは最近?」
慣れてないせいで「ちゃん」付けがくすぐったい。
「んー、四月だから最近と言えば最近かな。」
「そっかー、大変だね。」
と他人事のように言う先輩女の子。
この垢抜け具合はどうやら女歴の差だけじゃなくて性格の差も影響してそうだ。
一方、亜姫さんはと言うと。
「二人に言っておくわ。私はいずれちゃんとした『女性アイドル』として認められたいの。その邪魔だけはしないでね。」
うわっ、これは男時代の話は聞けそうにないなぁ。
と、まあそんな感じで俺は二人と出会い、これから共にアイドルとしての生活が始まるらしい。
……うーん、まだ全然実感が湧かないな。
つづく
以上です
21 :
15:2011/09/21(水) 22:36:16.45 ID:R/WHS+RY
>>16 投下作を読んでみて、私なんぞお呼びじゃないと判った(笑)。
書くなら別スレにするよ。
投下ー
トラスタ結成から二週間、貴重な夏休みはボイストレーニングによってもりもり消化されていた。
別にいいんだけどね。家にいてもやること無いし。
で、その帰り道に三人でファミレスに寄って夏休みの宿題をするのが習慣になっていた。
ギリギリまで貯め込むタイプの俺にはありがたい。
この二週間で二人についていろいろなことが判明した。
例えば、友は同学年、亜姫さんは一つ上だったとか。
「だからそこは平方完成するんだって!」
「へーほーかんせー?」
「ほら、ここ、xの係数の半分を引いて……。」
「ちょっと待って、この-9はどこから出てきたの?」
「だーかーらー!」
友は数学が大の苦手だったとか。
「ちょっと貸して。……楓、一気に変形したら分からないでしょ。まずx^2+4x+4を無理やり作るのよ。」
亜姫さんが意外と面倒見の良いお姉さんタイプだったとか。
お姉さん……だよなぁ、やっぱり。
亜姫さんは本当に男らしい面を一切見せない。
ただ、自然体でも中性的な友と違い、わざと女らしくふるまっているような、そんな気はなんとなくするけど。
「あっ、なるほど! じゃあこっちは3が出るんだね!」
まったく、なんでそんな簡単な問題ができないんだ、とは言えない。
一度そう言ってみたら、初歩的な(らしい)英語の和訳で手が止まってることを友に指摘されたからだ。
「今日はそろそろ止めようぜ。」
「うん、お腹空いたよ。」
「何か頼みましょうか。」
そう言いながらも、亜姫さんは勉強道具と入れ替えに一束の紙を鞄から取り出した。
「あっ、それ!」
そう、その紙束こそが、たった今日もらった、我らトライアングル・スターズのデビュー曲の楽譜なのである。
『可愛いなんて言わないで』
http://loda.jp/mitemite/?id=2489 180°回った 見知らぬ世界にひとり
僕は 突然 放り出されて
アイツと同じ顔した
同じ声掛けてくれた
君に 心を許していた
だけど ある日
君が僕を見る目が いままでと違うことに 気付いてしまったんだ
可愛いなんて言わないで 今はまだ
迷える気持ち 振り切るときまで
優しい言葉掛けないで 今はまだ
自分を見失ってしまいそうだよ
ふたりの自分に折り合いをつける その日まで待っててね
「いい歌詞だね。」
と、当たり障りのない感想を述べる友。
確かに一段落目なんかは実感としてすごく分かる。
女になったばかりの頃は、変わったのは自分だけのはずなのに、なんだか世界の方が変わったように見えた。
が、二段落目は俺は全然共感できないんだよなぁ。
だってアイツは……いや、歌詞のことはどうでもいい。
うん、歌詞のことはどうでもいいんだ。
問題はこの曲、なんとサビでハモっちゃうのである。
いや、ほら、アイドルの歌っていうと普通は全員で同じパート歌うんじゃないの?
実際はどうだか知らないけど、俺にはそんなイメージしか無い。
つーか、そんなに歌に凝るんならオーディションも歌の審査くらい入れてくれればいいのに。
……なーんて二週間前の俺なら思ったりしただろうが、今も今で意外と結構楽しいから、もう辞めさせろとは言わない。
ただし曲に対しての愚痴は続けさせてもらう。
オーディションで何も言われなかったくせに、他の二人はさも当然のように音楽経験者だった。
だったらせめてメインパートをと思うのだが、楽譜上、亜姫さんが高音パート、友が中音のメインパート、俺が低音パートになっている。
これは音楽の先生による声質の評価の結果らしく、下手に動かすと響きが悪くなってしまうのだそうだ。
さらにさらに、メロはソロだそうで。プレッシャーだ。
しかも俺はサビ前、つまりBメロ担当だとか。もうどうにでもなーれ。
「来週からダンスのレッスンも始まるんだってね。」
ああ、そうか。そりゃあ歌うだけじゃ駄目だもんな。はぁ……。
「楓ちゃん、大丈夫?」
「んー。」
机に突っ伏したまま答える。たしかデビューは夏休み明けだとか聞いた。
この八月、宿題よりも重い課題が待ち受けているだろうことは、もはや必至だった。
つづく
投下終わりー
曲書くとか凄すぎw
友(元男)「男ー、結婚しようぜー」
こんな感じでいいかい?
もっと読んでみないことには分かりません!!!
友(元男)「男ー、結婚しようぜー」
男「……」
友「ほらほら、ジョシコーセーよ? JKよ?」
男「ごめんこうむる」
友「いやいや、ぴちぴちよ? 処女だよ?」
男「知るか」
わっふる
友「おっまえそんなだから童貞なんだよ」
男「……」
友「おやおや? 図星ですかにゃ?」
男「気持ち悪いんだが」
友「いやいや、ここは童貞力を発揮してみろって!」
男「……」
友「なあ、婚約だけでもいいからさ」
男「いやだよ、友達と結婚なんて」
友「いやお前、判を押すだけ! あとあそこおったてるだけでいいからさ!」
男「本格的に気持ち悪いんだが」
友「いやお前、女の子に言い寄られるとか、童貞にはありえないイベントよ?」
男「これがゲーム脳か」
友「そんなんじゃないって。リア充に仲間入りするチャンスよ?」
男「胡散臭すぎるわ」
友「ほらほら、結婚すれば、おっぱいも揉み放題だよ」
男「…ブラずれてるけど」
友「お、おう…(ゴソゴソ」
かわいいw
男「……それで」
友「お、あー、えーとだな。あ、それに、俺の性転換って国費なんだぜ!」
男「……だから?」
友「だからだな、お金の心配もしなくていいし」
男「……ほう?」
友「……安心して揉み放題なんだぜ?」
男「詐欺師はみんなそういう」
友「やたら言葉が重いな」
男「……とにかく、一年ぶりに帰ってきて、急にそんなこと言われても気持ち悪いだけだ」
友「……ちっ。色仕掛けは失敗か」
男(どのへんが色仕掛けだよ?)
ここから新キャラ投入だけどべむい…
書き下ろしだし、この辺にしとくか?
女「あれー、男くんが女の子と一緒だー」
男「女。見たままだけ言うのはやめろ」
友「お、女の子、だと…?! まさかお前、俺が女になっている間に、脱童貞を果たしていたのかッ」
男「友。妄想だけ口にするのはやめろ」
女「なにー? 男くんの元カノ〜?」
乙
終了宣言だけちゃんとしてくれればいつでもウェルカムですよ
終わってなかったw
男「なんでそうなるんだ」
友「ももももしかして男の今カノさんですかッ」
男「人の話聞けお前ら」
女「実は男くんの大事な人です」
友「ガッデム?」
男「……」
女「男くんもこんな体なのに、隅におけませんな〜」
男「女。ちょっと黙って」
友「おおおお男!俺はお前が純潔でなくとも! 俺は! お前が!」
男「お前は寝てろ」ゴス
友「ぎゃん!」
とりあえず、ここまでにしとくか。
続きはあした?
今度こそ乙
期待
だめだはるな愛しか連想できなかったw
>>47 イメージは黒髪ロングではしゃいでる痛い子系で頼む。
つづきするよ。
翌朝ーーー
友(昨日は突然だったし、途中から邪魔が入っちゃったからな)
友(男も動揺しまくってたから、あと一歩なのは間違いないし)
友(色仕掛けじゃなくて、家庭的でステキ!な感じで攻めればーー)
友「そういうわけで、まず男を起こしにきました」
ぴんぽーん
男母『はーい』
友「あ、朝早くすみません、男くんの友達なんですけど…」
男母『あら? 男は朝練行ったけど』
友「はえーよ!」
現在 6:03
学校ーー
男「はぁーっふうーっ」
顧問「よおーしー、ここまでぇー」
生徒『あいっしたぁー』
男(しんどい…)
顧問「男。大丈夫か?」
男「あい…まあ、体力つけるだけなんで…」
顧問「そうか、ま、無理はするな」
顧問「しかし、お前の記録の伸びを見てると、ちょっと勿体無い気もするな」
男「はあ…」
ドドドドド……
友「うおーい! 男ー!」
男「なんかきたし」
友「男ー! どこじゃー!」
男「……」
友「そこかっ!?」
男「ここだけどよ」
友「はっはっはあっ、ごほごほっ」
男「急に走りすぎだろ…はい、深呼吸」
友「すうーっはあーっ」
顧問「どうしたんだこいつ」
友「ごほん。男、お疲れ様! タオルとスポーツドリンクだよ」
男「自分で使えよ」
友「え、そんな、ひとつのタオルを一緒に使うとか」
男「自分の持ってるし」
友「か、間接キスとか、照れるだろ…」
男「水でいいから」
友「俺が健気すぎて照れてるのか?」
男「どうすんだよこいつ」
書いてて、自分で気持ち悪くなってきた
諦めちゃだめだ!
つづきだらだら。
友「まあまあ。これで結婚したくなってきただろ?」
男「ならねーよ」
友「もっと素直になれよ」
男「……」
友(おかしい……確かこいつのタイプは元気系幼馴染キャラだったはず……)
男「なあ、友」
友「な、なんだ?」
男「友。お前、なんかおかしいぞ? キャラが変わってるっていうか、もっと大人しかっただろ、お前」
友「あ、ああ…それは」
男「それに、なんでそんなに俺につっかかるんだ」
友「いやだから、それは」
女「おやー、朝からいちゃいちゃしてる人たちがいるぞー」
友(お、女きた! 女きたヨー!)
男「女。おはよう」
女「おはようー。友ちゃんもおはようー」
友「お、おはようございます…」
女「聞いたよー、友ちゃん。男くんの友達で、元男だったんだねー」
友「そ、そうだけど?」
女「やっぱりあれ? 好きな人と結婚したいってやつで?」
友「そ、そりゃあね」カー
この辺で区切るヨー。
つづきはもう少し更けてから書くヨー。
占領してもあれだから、さくさく終わらせたいよー。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
女「でもさ、男くんてさ……」
男「女。始業時間だから」
女「あー。そーだねー」
友(話の都合で大事なところをはしょらないでいただきたい)
男「友。そういえばお前、うちの学校に転校になるのか?」
友「お、おう……」
男「だったら、職員室に行かないと行けないんじゃないのか。クラス割りもあるだろ」
友「ふん……俺が来たからには安穏とした学校生活を送れると思うな」
男(……今度は何キャラだよ)
昼休み――
友「男ー。弁当つくってきたから一緒に食べようぜー」
男「……」
ざわざわ……オトコガオンナノコツレテルゼ……エーダレダレ……
テンコウセイ……ジャッカンブスクネ?……ざわりん……
友「冷凍じゃないよ? 揚げ物も手製よ?」
男「学食に行ってくる」
友「さくらでんぶでハートマークだよ?」
男「ホントに勘弁してください」
女「友ちゃんのお弁当おいしそー」
女友「マジで元男?」
友「うわっキャラが増えた」
女「だしまきたまごとか形が崩れてないねー」
友「お、おう……」
女友「あー、ウインナーに飾り入ってるし」
女「おかずもきつきつに詰め込まれてないしー」
女友「全体的に仕事が丁寧ね」
友「……」カー
男「ほらお前ら、論評されて照れちゃってるだろ。しっしっ」
女「二人きりになりたいんだー」
女友「きゃー」
男「早く散れ。マジで」
きゃー
友「……じ、邪魔が入ったが、胃袋からハートをつかむ作戦、開始だぜ!」
男「胃と心臓をぼろぼろにする気か」
友「ふふふ、戯言は食べてから言ってみろ」
男「はぁ……」モグモグ
友「ドキドキ…・・・」
男「ん」
友「ど、どう?」
男「お茶」
友「……す、水筒あるぜ!」
男「ん」ゴクゴク
女「どうですかー、奥さんの手料理はー」
男「ぶほっ」
女友「完全に夫の顔ですねこれは」
女「態度が亭主関白でしたねー」
男「げほっげほっ」
友「そ、そそそそうだろ、自他共に認める夫婦だろ!」
男「げぇっほ! ギカンにはびった……」
女友「うわぁ、塩気の調節とか完璧だわこれ」モグモグ
女「どこで習ったのー?」
友「お、おう。女になった後で、花嫁修業したいって言ったら教えてくれたぜ!」
女「……口調は修行に入らなかったのね」
女友「ていうかさ、友ちゃん、化粧とか全然してないよね?」
友「あ、ああ……教わらなかったし」
女「あー、まー校則もあるけど、髪の毛のお手入れくらいー」
友「ええと、でも、その……」
女友「……気になったんだけど、××××とか持ってる?」
友「は? なにそれ」
女「ええー?! 知らないの?」
女友「教えてもらわんかったの?」
友「えーとえーと」
女「これはやばいねー」
女友「常識がないってことだよ」
女「男ー、ちょっと友ちゃん借りてくから」
男「ち、ちょっと待て」
友「お、男……」
女友「いやいや、常識を教えるだけだから」
男「いや、俺は友に聞きたいことがだな」
女「はいはい、怖くないよー」ズルズル
女友「ステップアップだからね」ズルズル
友「お、男ー! せめて弁当のかんそうをぉぉー……」
男「うまかったけどー」
友は女たちに引きずられていった。
ある日の放課後――
友「ええ。あれから一週間経ってます」
友「もともとクラスが別だったせいで、男にアピールするチャンスも少ないし」
友「男はなぜかつれないし」
友「毎日お弁当で攻めてるのにちっとも陥落しません」
女「会っても二人きりになれないしねー」
友「主にあんたがたのせいでしょ!?」
女友「お、友ちゃんも言うようになったね」
友「う、うう」
女「ブラのつけ方もー、生理用品の使い方もー」
女友「化粧のやり方も教えてあげたのに」
友「うう、ううう」
女「ていうかさー、国じゃ教えてくれなかったのー?」
女友「そうだよ。料理は教えてくれたのに」
友「う、うん」
女友「少子化プログラムだっけ?」
女「それじゃ少なくなっちゃうよー」
友「……少子化、対策、特別支援プログラム」
女友「そうそれ。結婚しないとダメなんだよね?」
友「ま、まあ、結婚しても子どもつくらないと、意味ないし……」
女友「税金で結婚できるとかさ」
友「い、いろいろ制限はあるけどね」
女「無理に女の子にしなくてもいいのにねー」
友「……実験も兼ねてるからさ。新技術で、元男でもちゃんとできるのかっていう」
女友「だったら男くんにも言えばいいじゃん」
友「や、やだよ。男、怒ると恐いし」
女・女友(隠してるほうが怒るだろ……)
友「ともかく! その、俺、男だったときは友達が男しかいなかったから…」
友「頼れるのは男くらいしか思いつかなかったけど、ほら、あとちょっとで陥落寸前ぽいし」
女友「2レス前読み返してみろお前」
友「だから、こうしてお二人に協力をね」
女「……いいんだけどさー」
女友「まあ、そこまで言われちゃ仕方がない」
友「おお!」
女友「色仕掛けだの、家庭的だのを言っていたけど」
友「おお!」
女友「ホントに男をおとしたいなら」
友「おお!」
女友「デート」
友「おおおお!」ビス
女友「ちゃんと聞いてくれる?」
友「はい」
デート編までこぎつけたので、そろそろ寝ます。
書き溜めしなくてごめんなさい。ラストも決まってるんだけど。
乙
デートwktk
もし書き溜めするならさるさんがヤバイから
10レス以上投下する時は00分跨ぐといいよ
今日で終わればいいが…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
日曜日ーーー
男「悪い、待たせたな」
友「も〜う、男くん、女の子を待たせるなんて、い・け・な・い・ゾ!」
男「お前、本当に大丈夫か?」
友「かわいいだろ?」
男「怖気がする」
友(話が違うよう、女友ちゃん…)
男「まあ、俺もゆっくりお前と話したかったんだ」
友「つ、ついに婚約を!?」
男「だから違うって」
友「じゃあ聞かない」
男「……お前、本当に変わったな。それとも、そっちが本性だったのか?」
友「変わってないよ」
男「……」
友「……昔から、打算的だった」
男(全力で捨て身な気がするが…)
友「とにかく、今日はいっぱい遊ぶからな!」
男「ああ…動物公園だっけ」
友「ペンギン見に行くよ!」ワクワク
ジャングルゾーンーーー
友「うわー、サルがこっち見てる」
男「リスザルだって。一番小さいサルのグループだったかな」
友「ちっちぇえー、女ちゃんのおっぱい並にちっちぇえー」
男「お前……」
サバンナゾーンーーー
友「お、シマウマだ」
男「野生だと若雄グループと雄一頭と複数の雌グループに別れるらしいな」
友「あはは、そういえば女友ちゃんの顔って馬っぽくね?」
男「お前……」
水棲生物ゾーンーーー
友「ペンギンきた!」
男「なんかいろいろすっ飛ばしてきたな…」
友「ペンギンかわいいよなー」
男「そうかな」
友「そうだよ! 流線型って心惹かれるよね!」
男「まあ、男なら流線型とメカメカなボディは大好きに決まってるわな」
とりあえず、ここまで
つづき。
ふれあいコーナーーーー
友「ふおお……最近はヤマネとか触れるのか」
男「おー。胴長。すべすべ」
友「男、俺にもかしてくれ」
男「気をつけろよ」ホイ
友「おーかわいいー」ナデナデ
男「おい、頭ばかりなでるなって」
友「あいてっ」カプッ
男「あ、ばか」
飼育員「ダイジョブデスカー」
男「どれ、見せてみろ」
友「お、おお……だ、大丈夫だって」
友(こ、これは……)
友(血が出てるじゃねーかペロッていうフラグ……!)
男「大したことないな」
友「ですよねぇ!」
男「……そろそろ昼か」
友「はい、お弁当」
男「自然な流れになってて怖いんだが」
友「ふふふ、俺はもう、お前の生活の一部なのさ」
男「まあ、いいんだけど」
友「あっちの芝生は持ち込み自由だってよ! 先に行ってシート敷いてくからな!」
男「元気がいいな」
男「デートっていうか、普通に遊んでる感じだけど」
友(女友ちゃんいわく、デートでは甘えて素直になるのが一番とのこと)
友(あまり考えずに行動したけど!)
友(男とも、自然に仲良くなってる感じだし……)
友(……)
友(男……)
友(時間が足りないよ……)
友(どうするのが一番良かったんだ)
友(あ、諦めれば良かったのかよ)
友(いや、もうここまで来たら、やるしかない)
男「お、サンドイッチか」
友「……うむ。食べ終わったらケースはたためるしな」
男「いただきます」モグモグ
友「早いよ!」
男「おいしいぞ」モグモグ
友「うれしいけどさ!」
男「お前も食えよ。ほら」
友(こ、これは……)
友(伝説の「あーん」「おいしい?」「うん、えへへ」フラグッ……!)
男「どうした?」
友「お、おう……食ってやる、食ってやるぜ」
男「お前が作ったんだろ」ホイ
友「あ、ありがと」
男「水筒もらうぜ」
友「……あれ?」
男「ふうー、結構ボリュームあったな」
友「お、男…」
男「なんだよ」
友「あーんは?」
男「……」
(・∀・)ニヨニヨ
友「あーんをしないとイベント未達成だよ?」
男「……ごちそうさまでした」
友「早いよ?」
男「おいしかったから」
友「知ってるよ! そうじゃなくて、イベント消化早すぎだよ!」
男「イベントイベントうるさいな、ゲーム脳が」
友「ゲーム脳じゃねぇ! お前も女の子を前にして、こう……あるだろ! 何かが!」
男「お前相手にはない」
友「ひどい!」
男「俺は友達相手に欲情はしない」
友「お、おお?」
男「ゲームじゃないんだ」
友「う……」
男「友達が女になって、どう出迎えればいいか分からなかったんだ」
友「……」
男「それなのにお前は、人が変わったみたいに迫ってきて、こっちの話を聞かないし」
友「そ、それは」
男「そのくせ、なんか必死だし」
友「……」
男「大体、お前、俺のこと好きじゃないだろ」
友「……!」
>>86 ニヨれない展開ですみません。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
男「今日、遊んだけど」
友「……」
男「お前、俺の方を気にしないで全力で遊んでるし」
友「……」
男「手をつなごうとかも言わなかったし」
友「あ、え、と……」
男「それなのに変なところで必死だし」
友「そ、それは」
男「……今日は、服装もメイクも、髪型も気合入ってるのに、俺が触れなくてもまったく気にしないし」
友「あ……」
男「お前が俺を好きじゃないくらい、分かる」
友「そ、そんなこと、ない、ぞ」
男「少なくとも、異性の好きじゃないくらいは分かる」
友「そ、そんなこと……」
男「俺が分からないのは、それなのに、なんでそんなに必死なんだってことだよ」
友「そんなことないってば……」
男「……少子化プログラムが子ども作らなくちゃいけないことは知ってるよ」
友「……」
男「でも、たいして好きでもない知り合いに、どうしてこだわるんだ」
友「……」
男「気まずいだろ? それならまったく知らないやつが相手の方が……」
友「そんなことないって言ってるだろ!」
男「……」
友「お、俺は本当に男が好きなんだよ!」
男「……ウソつけ」
友「ウソじゃない! 相手を選べるって聞いて、真っ先に思い浮かんだのが男だったし!」
友「男と一緒になるんだって料理も家事もがんばって覚えたし!」
友「女ちゃんたちに、いろいろ教わったのだって……」
友「それに、こ、こここ、ゴニョゴニョだって、男ならできるって覚悟決められたし!」
男「……覚悟なんかしてる時点で、好きとは言わないだろ」
友「そ、それは、それでも、それは……」
男「本当に好きなら、好きな人を『実験』に巻き込みたいと思うか?」
友「う……」
男「なあ、なんでだよ」
友「う、う……」
男「なんでそんなに」
友「ちがっ俺、ほんと、男」
友「まきこ、ちがっ、好きで」
友「け、計算、きたなく、ほんき」
男「と、友?」
友「う、うああああぁぁん!」
男「お、おい。人前、人前だから」
友「うわあああん! うあああぁぁん!」
男「おい、友、落ち着け」
友「うわあああん! うわあああぁぁ……」
明日、早いので、ラストは次回にします。
サンドイッチ食い損ねて泣いてしまった友ちゃんの明日はどっちだ。
本日がラストです。適当にお付き合いください。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
男「……落ち着いたか?」
友「……うん」
男「まあ、なんだ。お前が俺のことを好きで仕方が無いということにしよう」
友「……うん」
男「だとしても、疑問だ。俺なんか、まだ結婚できる年齢でもないのに」
友「時間が、ないんだ」
男「時間?」
友「国のお金でやってることだから、早いところ結果を出さないと行けないんだ」
男「いや、結果って言われても、その、なんだ」
友「あ、政府公認で強姦されるとか、そういうわけじゃないよ?」
男「当たり前だろ」
友「じゃあ、どうすると思う?」
男「そりゃ、お見合いとか、『実験』に参加してるやつをあてがうとか……」
友「それもそれで割と嫌だけど。もっと確実に」
男「確実?」
友「冷凍保存しといた精子で体外受精するわけですよ」
男「はぁ?」
友「で、受精卵をこう……入れる」
男「……」
友「ちゃんと擬似子宮に着床すれば、完璧」
男「それって……でも、確実か?」
友「そもそも、自分の細胞から、卵子を作る器具が新技術だし、受精卵ができるってだけでも成果のひとつなわけ」
男「……」
友「まあ、もう、受精卵は何個かつくったんだけど」
男「……」
友「気持ち悪いんだぜ、ずらーっと並べた顔写真と、生涯の記録? 精子の提供者の」
友「選べって言われて、自分では選べなかったからどれでもいいですって」
友「何回やるんですかって聞いたら5、6回くらい?」
友「一回目は入れてもダメだったからって時に、普通に男を選んでもいいって言われて」
友「次の期限までに、決めて来いって」
友「……男しか思い浮かばなくて」
友「でも、こんなこと話したら、男、怒るだろうって思ったから……」
男「当たり前だろうが!」
友「う」ビクッ
男「なんでそんなこと、早く言わなかったんだ!」
友「だって、俺、男を怒らせたくなかった」
男「隠されたら誰だって怒る!」
友「だって、怒ったって仕方が無いじゃん。国からもらったお金で親父は借金返しちまったし」
男「あのな……」
友「それこそ、『実験だけど俺と子どもつくってくれ』、なんて言いたくなかった」
男「……」
友「全然ダメだったら、あきらめて黙ってようと思ってたんだ」
男「……」
友「でも、最初から男は取り合ってくれなかったし」
男「そりゃ、最初からお前らしくないと思ったから」
友「そ、そうかな」
男「お前は今みたいにけっこうウジウジしてるやつだった。思い出したよ」
友「う、うるさいな……」
男「……」
友「あのな、男……」
男「なんだよ」
友「最後に、もう一回だけチャンスくれよ」
友「男、結婚しよう?」
男「無理だ」
友「……」
男「……」
友「そ、そか。あはは」
男「俺は、ダメだ」
友「そ、それなら、仕方ないよな。俺なりに、がんばったんだけど……」
男「そうじゃない」
友「……あーっ、いいって。なぐさめとか。そういうのは」
男「そうじゃないんだ」
友「なんだよ、もう……遠慮とかいいんだから」グス
男「……俺じゃダメなんだよ」
男「俺もプログラムに参加するから」
友「え」
男「俺も女になるんだよ」
友「え、え?」
男「今やったって、精子の検査から行くと子ども作れないらしいし」
友「え、えー?!」
男「お前が戻ってくる直前に、結果出たんだ」
友「えぇぇえええええ?!」
男「だからお前とは無理だって散々言っただろ」
友「え、は、ええぇぇぇえええええええ?!」
男「もう参加してるから、金も振り込まれてるし」
友「早く言えよ!」
男「言おうと思ってたのに、お前が聞かなかったんだろがい」
友「言う機会、いくらでもあっただろうがー!」
男「お前が正々堂々切り出してくれればとっととしゃべったよ」
友「ちょ、ま、マジ?」
男「お前にこんだけ打ち明けられて、いまさら冗談を言えるか」
友「……一周回って、うそでしたってことは」
男「というか、分かっててやってんじゃねーかと思ってた」
友「そんなわけあるか。わかるわけあるか」
男「……」
友「えー、でも、えええ?」
男「……まあ、これで、どの道、俺はお前にとっちゃお役ごめんってわけだ」
友「あ……」
男「子ども作れないし、女になるやつと結婚しても仕方ないしな」
友「え、と……」
男「もっと早く言ってくれれば、相手を探す手伝いくらいできたんだけどな」
友「あの、その……」
男「時間がないってことは、もうそろそろなんだろ」
友「う……」
男「……」
友「……」
男「……」
友「……や、いやだ」
男「なにが」
友「ひとりぼっちで子ども産むのなんか、いやだ」グス
男「だから?」
友「お、男と一緒にいたい。ぷ、プログラムに参加するんなら、一緒に」グスグス
男「……俺との子どもはつくれないけど」
友「い、いい、いやだけど、一緒にいる方が、いい」
男「分かった」
ぎゅう
友「わっ、お、男……」
男「友……」
友「男、男ぉ……」ギュウ
男「できる限り、がんばろう」
友「うん、一緒に、一緒にいよう」グスッ
男「あんまり、泣くなよ。お前の方が先輩になるんだから」
友「うん、うん……」
男「料理だって、お前のほうがうまいじゃん」
友「うん、がんばったから」
男「うん……」
友「また、一緒にデートしようよ」
男「おう」
友「子ども連れて。四人くらいになってるかも」エヘヘ
男「そうだな」
友「きっと、楽しいよ……」
男「うん、うん……」
女「うん、うん……」
女友「イイハナシダナー」
友「おい、お前ら」
男「なんでいるし」
女「えー、後を追ってきたからですよー」
女友「友ちゃんがヘマしないか、見守ってたわけ」
女「大泣きしてたけどねー」
女友「いまなんか抱き合ってるしね」
友「二人とも、いまほんといいところだから。俺の人生の中で一番大事なところだから」
女友「必死すぎワロタ」
男「散れよ、割とマジで」
女「おおっと、男くん。そんなことを言ってもいいのかなー?」
友「ど、どういうことだよ」
女「ふふふ、友ちゃんも女友ちゃんも知らなかったことだけど……」
男「女。それは」
女「もう遅いよ。ジャーン、私もプログラム参加者なのでしたー!」
友「え?」
女友「私も昨日、初めて聞いたんだよ」
男「……」
友「男。その、どういうことになるんだ?」
女「男くんと同時期にプログラム参加が決定してね、お互いの情報を交換しあってたんだよー」
友「男……?」
男「それは事実だが」
女「それだけじゃないよ! 最悪、なんかあったら、協力し合おうって決めてたんだよー」
女友「ヒューヒュー、男くん、モテモテ〜」
友「男……?」
男「事実だけど……協力にもいろいろあるだろ」
友「明らかに婚約だろ?!」
男「飛躍しすぎだ」
友「だから『無理』だったんだな?! もう売約済みですからって!」
男「そうじゃないって」
女友「『友達相手に欲情はしない』キリッ」
友「ぐわあああ! そりゃお互い逆転しても欲情できるもんな!」
女「はっはっは」
友「ち、くしょー、もう戻ってきた時点で敗北が決定してたのかよ!」
男「友。あのな」
友「いやだあああああ、もう言い訳を聞きたくない!」
女「友ちゃん。聞かなくていいのかなー?」
友「な、何が」ビクッ
女「私がいれば、男くんとの接点が簡単にできるんだよー?」
友「な、なんで」ゴクリ
男「友、女の言うことに耳を傾けるな」
女「友ちゃんが私と関係があるって宣言して、男くんとも接点があるって申告する」
友「う、うん」
女「お互いに合意しているってことにすれば、三人一緒でも問題ないよねー?」
友「そ、そうだな」
男「大有りだ! 重婚になるだろうが!」
女友「結婚ってことにしなければいいじゃない」
女「男くん、『できる限り、がんばろう』って言ったのは、男くんだよね」
男「……」
女「わざわざ友ちゃんを泣かせてまで追い込んでー」
男「それは、友の素直な気持ちを」
女「だったら、建設的な提案を蹴るのはおかしいよねー?」
男「ぐぐ」
友(男と一緒に居られる……)キラキラ
女友「うれしそうだね」
男「……いいんだな、女」
女「何がー?」
男「好きでもないやつを抱いてもいいんだな」
女「……誰に対しても、好きでもないなんて言った覚えがないけど?」
男「……だったら、いい。俺も覚悟する」
女「……まあ、そういうわけだよ。友ちゃん」
友「お、おお?」
女友「ま、がんばりなよ」
友「え、ええ?」
女「男ー!」
男「……はいはい」
女「友ちゃん!」
友「お、おう」
女「結婚しようぜー!」
おしまい
乙GJ!
男もプログラム参加者だって言ったときはどうなるかと思ったがよかったよかった
よければまた書いていってください
皆様。
このたびは四夜連続投稿にお付き合いくださいまして、まことにありがとうございます。
当方、初SSということもあり、至らない点の方が多く、適当ぶり、またスレ占拠ぶりに、
ご迷惑を蒙られた方もいらっしゃるかと思いますが、ご容赦ください。
TSやSSには興味を持っていましたが、実のところ、その言葉の意味もよく知ってはおりません。
ただつじつまあわせに自分の好きな要素をぶち込んだだけの代物ですが、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
矛盾点は酒の肴にでもしてください。
どうにもSSを言葉の掛け合いと勘違いしているせいか、本来ニヨニヨさせるべき箇所を男がほとんどスルーしておりまして、
この男、なにやらえらそうな格好をつけていますが、ギューはしたもののチューのひとつもせず、
ただ弁当を食べていただけなのです。
なので、最後に蛇足的後日談を数レスつけて、撤退したいと思います。
今晩は本当にありがとうございました。また機会がありましたら、お会いしましょう。
蛇足。
元男「友ー、いるかー?」ヒョイ
友「おー、元男ー」
元男「何やってんだ、こんなところで」
友「んー? 勉強」
元男「お腹の子に障るぞ」
友「べ、勉強くらいで障らねーよ! 大体、元男も、薄着しすぎだろ!」
元男「俺は全然順調だから。お前と違って」
友「……なんかずるいよなー。悪阻もない、反応も良好、食べ物で気持ち悪くならない。運動もできるし」
元男「人それぞれだから」
元男「で、何の勉強してたんだよ」
友「ああ、お金は保証してもらえるから、ちょっと、い、医学のな」
元男「医学ぅ?」
友「おう。ほら、男性機能、女性機能じゃなくて、わざわざ体ごと作り変える必要がなんであるんだーって、元女が言ってたじゃん」
元男「そうだったかな」
友「お前、どうでもいいと思ってることは本当にどうでもいいんだな……」
元男「……ああ、男の体に戻りたいってことか?」
友「ち、違うわい、その、もし男性機能だけ復活させられるなら……」
元男「なんだよ」
友「男に、その、してもらいたいなーって」
元男「」ドンビキ
友「ちょ、なんで引くんだよ!」
元男「ああ? だって、お前。……本当に俺のこと好きだったんだな」
友「そう言ってるじゃん!」
元男「元女が泣いてるぜ。最近は、『私には女友ちゃんがいるもん』って言って入り浸ってるらしいし」
友「まあ、そりゃあ、その辺のやつらと比べれば、元女の方が安心だったけどさ」
元男「お前、ひどすぎだったもんな。最初にやったときも、『男ー、怖いから手ぇ握ってて』」
友「そ、そうだっけかな」
元男「『男ー、きぼぢわるい…』『男ー、これ食べられない』
『男ー、つわりひどいー』『男ー、夢見悪いから一緒に寝よ』 俺はお前の母親か?」
友「そ、そうだっけかな……」
元男「まあ、元女が選んだ道だから。それ以上は何も」
友「元男も大概冷酷だよな」
元男「そういう男、いや、女を選んだのはどいつだ?」
友「ふへへ、俺でした……ん」チュ
元男「ふぅ……無理せず、寝ろよ。産むのは大仕事なんだから」
友「じゃあ、一緒に寝よ?」
元男「あー、恥じらいのないやつだな」
友「そういうのを選んだのは?」
元男「……早く寝ろ」
おやすみなさい。
>>116 撤退って言ったけど。見てくれてどうもありがとう
改めておっつん
書きたいものを書けばいいんだぜ
スレのみなさん、初めまして。
作品や「少し不思議」なスレ趣旨に引かれてこんなものを書いてみました。
「みんなも知っていると思うが、柊が性転換することになった」
担任教師の開口一番。
教室中が拍手で埋め尽くされた。ある者は心から、ある者は苦笑いをしながら、そしてある者は表情を変えることなく
教室中の生徒たちは惜しみの無い祝福の音をクラスの男子高校生・柊翔太のために鳴らし続けた。
「よって、柊は1週間ほど『性転換休み』を取る。柊が休みを終えて戻って来ても、今までどおり接するんだぞ」
「はーい」
ホームルームが終わると一日が始まる。なんでもない秋風の涼しい日だった。
その日の休み時間はもちろん柊の話題で持ちきりだった。とくに噂話の好きな女子はきゃあきゃあと祭りたてる。
罪の意識など無い。自分たちが当事者で無いから、騒ぎ立ててもいいんだよ。そして問い詰められればしらばっくればいい。
彼女たちの群れから離れて、ひとりぽつんと席で文庫本を捲る女子が聞き耳を立てていた。
「だって、大伴さんって柊と付き合ってるんでしょ?かわいそー」
「そうだよね」
「やばいよ、ミコ。大伴さんに聞こえちゃうって」
素直に「聞こえてます」と答えるのも癪なので、大伴頼子は黙って文庫本のページを捲った。
本当はわざと聞こえるように言ってるくせに。
聞こえない。
聞こえない。
聞きたくない。
文字の羅列に集中する。彼女らの噂話から我が身を遠ざけるために。とにかく、小さい頃から大好きな文章の世界に逃げ込む。
柊翔太という男子は大人しい故に、クラスメイトからからかい甲斐のある子だという扱いだった。
だからといって、頼子は彼がそれを免罪符にすることを許したくはなかった。
「でも、ウチらもいずれみんな男の子になっちゃうんだよねー。今のうちに女の子しなきゃね」
「そうそう。わたしのねーちゃんが変わるとき、着るものに困ってたし!」
「一生に一度のことだしー。でも、なんで女子は男子より遅いわけ?」
「とも限らないらしーよ!って、ツイート見たことあるよ」
わざとらしい声。頼子は本に頼ることが出来ずに、黙ってそのまま教室を後にした。
噂話は本当だ。大伴頼子は柊翔太と付き合っている。
二人がであったのは高校の入学式のときだ。違う中学だったので、お互いのことはよく知らない。きっかけは
本当に何となく、何となく、理想的で劇的でもない馴れ初めだった。もしかして本の勧め合いだったかもしれない。
付き合い始めたのは、最近のこと。まだまだ二人とも清い関係、手を繋ぐことがやっとのこと。思いを打ち明けてから
お互いの顔をあわせて話すことが恥ずかしくなってきた。それも心地よく、くすくすっと笑い飛ばせるようになった頃。
まだまだ知らないことはお互いに多い。それを少しづつ分かってくるのが楽しくって。
なのに、柊翔太は女子になる。
性転換休みを取る前の柊翔太は、どことなくおかしかった。原因不明の胸焼けや、言動が感情的になったりと、
男子は薄っすらと柊翔太の変化に気が付き始めていた。女子は女子で柊翔太の性転換を興味本位で騒ぎ立てるだけだった。
その日の帰り、頼子は柊翔太の家に行くことにした。初めて行く恋人の家。行き方はメールで教えてくれた。
しばらく柊翔太と会うことがなくなるから、そして翔太の瞳を自分に焼付けに向かう。
近代的なマンションの入口で、母親とインターフォン越しで柊翔太が在宅していることを確認する。
建物の中に入ることを許され、柊家の階へのエレベータに乗る。立っているだけの時間がもどかしいが、それは仕方が無い。
雲がきれいだと上の空でしばらく歩いていると、目的の部屋の前に着く。柊家の玄関から顔出したのは翔太の母親だった。
「顔をあわせてあげると翔太も喜ぶから」と、頼子は敷居をまたぐことにした。
柊翔太は部屋の中で少年誌を読みながらごろ寝をしていた。男子の着るようなパジャマに身を包む、ぱっと見お年頃の女子。
性転換は頼子が思っていたよりも早く進んでいた。少年誌を読んでいたパジャマの少女は来客に気づく。
「頼子じゃねーの」
「来たよ。悪い?」
「からかいに来たんだろ。でしょ」
「そんなわけ無いよ」
頭をかきながらベッドの上でぴょんと跳ねる柊翔太からは、女の子独特の恥じらいが見えた。その割には言葉遣いは
まだまだ男子らしさが僅かながら残っていた。一日会わないだけで、男子が女子へと変わる不思議。
「クラスの子がからかうんだ。柊くんのこと」
「いつものこと。どうせ、あいつらだろ。慣れてます、慣れてます」
「んもっ」
「小さい頃から賞を取るぐらい作文が得意なんでしょ。だったらもっと語彙増やしなさいね。そして、おれ……わたしに教えてくれ」
「お断りします」
「へへへ」
口に手を当てて笑う仕草はまだ柊翔太にとってはぎこちない。
「親も動転しててね。制服とかいろいろ買い直さないといけないけど、保険が利くみたいって。でも、一人っ子でよかった」
「うちも……一人っ子だし」
「孝行娘めっ」
丸みを帯びた体つきは少年の部屋には全く似つかわしくない。
少女になろうとする少年は、必死に少年にしがみついているようにも見えるし、少年から逃げ出そうとも見える。
ただ、股を広げる仕草だけは、徹底して意識しているようで見せる隙はなかった。
「ずいぶんと女の子になってきたことね」
「おれ……わたし、やっと性転換期が来たからさ。同級生はみんな中学のときに変わってたのに焦ったあ。その反動かなあ。
個人差ってホントあるんだなあ。でもさ……最近、ここんところがずきずきと痛んだよ。うう、ぽんぽんが痛いな」
下腹部を触る柊翔太の姿を頼子は黙って見つめていた。
きっと、この部屋も変わる。バトルものばかりの少年漫画の本棚も、作りかけのプラモも、コードが絡んだままのPS2も。
きっと、この部屋も変わる。繊細な描写ばかりの少女漫画の本棚に、編みかけの毛糸のマフラーに、きちっと並んだぬいぐるみに。
翔太が翔太であり続けられるのもあとわずか。その間に言いたいことがあると頼子をベッドに座らせる。
「頼子が性転換を迎えるまで、わたしさ。お前のこと忘れないから、お前も忘れないでくれよ」
「……なに」
「へへへ。おれ『翔子』になろうかな。『頼子』の『子』を頂いてさ」
頼子は隣に座る恋人から甘く、柔らかい香りが漂うことに戸惑いを隠せなかった。胸がかき乱される思いはどうすればいいのか。
初めて二人で出かけたときだって、こんな感情は湧き出てこなかったはずだ。
頼子は柊家から出るまで、何も話すことが出来なかった。
頼子は自宅に戻ると真っ直ぐ自分の部屋に飛び込んだ。
周りは女の子の部屋。淡い色のじゅうたんに、カーテン。整理整頓された机。紛れもなく女の子のものだ。
息が荒くなる。どうしてだろう。柊翔太に会ったからか。
自分が心奪われた柊翔太という人間はもういなくなるからか。
自分が初めて思いを寄せた人間をもう好きになれなくなるかもしれないからか。
説明がつかない。
ただ、一つ言えること。
「どうしてあのとき、ホントのことを言えなかったんだろう」
涙をこぼさぬように、ふと天井を見上げる。壁にかかる作文コンクールの賞状。
小学校6年生のときに頂いたものだった。小さい頃から作文は得意。今までの人生の中での自慢だった。
受賞者の名前には美しい文字で『大伴頼尚』と書かれていた。
おしまい。
お気に召しましたでしょうか。
投下おしまいです。
わんこさんだー
いらっしゃいませ&投下乙
これは切ない…
この人も雑食だなぁw なんでも書くなw
130 :
わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/10/16(日) 22:19:16.13 ID:iNCqpB0o
また、書きました。よろしゅう。
高校生の妹がきゅっとおれの腕にまとわり付いて「かかとのある靴も慣れてきたね」と褒めてくれた。
けしからん胸がおれの真新しい洋服越しにあたるもの、いまや年下の同性として見るしか出来ない体なのは致し方ない。
ギクシャクしながら一緒にオブジェが鎮座する名駅前の横断歩道を渡る。妹のせいでなく、未だに履き慣れないブーツのせい。
母が駅ビルのデパートで買ってくれたブーツだから、大切には履かなければと物分りの良い母を恨む。足元を気にしすぎて
普段は目に入らないマンホールの絵柄が気になる。丸の中の「八」の字がやけに貫禄あることに気づく休日の午前だった。
「女の子になって良かったね?」
「ちぐさ、黙れ」
イヤミにも取れない上の妹の言葉は、男子の姿に戻ることの出来ないおれに突き刺さった。
ある日突然、おれは「女の子」になった。原因は分からない。大学病院で診てもらっても同じく。
わずか二十余年生きたおれの人生は終わってしまったと悟った。しかし、母や上の妹は喜んだ。
おれが「女の子」になったその日の晩ごはんがエビフライだった。おれは妹を睨みながら尻尾までエビフライを頂いたんだ。
「立派な人の家に嫁ぐんだよ」と母。
「おばさんが市役所勤めの人を知ってるから、紹介してあげようかね」と父。
「兄貴の結婚式は誰にも負けないものにしてあげるよ!」と上の妹。
冗談ではない。これから長いおれの人生、男子としての楽しみを全て奪われた悲しみを父や母や上の妹は理解しようとしない。
風の冷たい街を短いスカート姿で歩くことは、去年の今頃は考えもしなかった事だ。黒ストに包まれたおれの脚は意外にも
きれいだと褒められるのだが、あまり嬉しくは無い。かと言ってけなされても困る。大人びた高校生の妹はスマホをいじりながら
おれの遅い歩調に合わせてくれる器用者。長女から次女になってしまったことをにっと白い歯を見せて喜ぶ。ビルディングの入口の
ガラスに映るおれの姿は紛れもなく「名古屋嬢」。うちまきの髪の毛はだいぶ慣れたものの、手入れは上の妹に手伝ってもらってる。
着るもの、履くもの、身に着けるもの、全ては母が準備した。「長女そやから、きちんとしんといかんがね」と。
おれと上の妹は揃って地下街に向かうが、未だに階段が怖い。なのに、上の妹はおれに話しかけてくる。
落ち着きが無いのは女の子としては欠点だと思う。
「みずほ、涙目だったよ」
「どうして」
下の妹、みずほ。
恋に恋する小学6年生。趣味・アニメ。上の妹であるちぐさよりかは大人しく、休みの日になると大須へ繰り出すヤツだ。
きょうもきっと出かけている。マンガの色恋沙汰でまともに涙するようなヤツだ。そんなみずほがおれのために涙した。
「『わたしの結婚式が出来なくなっちゃう』って、さ」
娘が三人いれば、家が傾く。
おれの街ではよく聞く言葉。とにかく、結婚式は派手だ。人生のピークと言わんがごとく盛大にやる。
父もその日を待ち望み、こつこつとお金を貯めてきた。おれは上の妹・ちぐさの結婚式に臨むことを楽しみにしていたのだった。
しかし、今は立場が逆転。ちぐさの方が、おれの結婚式を待ちわびる。そして、みずほはおれの結婚式を恨む。
おれの結婚式、ちぐさの結婚式。そしてみずほの番。末っ子に生まれた下の妹は、おれが女の子になった日からおれを避けるようになった。
そんなことをしていても仕方が無いのはお互い分かりきっている。
「ちぐさの方が先だよ」
上の妹はもてる。人当たりもよく、兄のおれが言うもの何だが結構かわいい。だから、どこかの男子と絶えず付き合っているようだ。
下の妹曰く「リア充」だ。そして「爆発しろ」と。きっと誰よりも派手に爆発しなければ、周りの誰もが納得しないだろう。
「兄貴。またヘンなこと考えてたでしょ」
「いいや」
「モーニングサービス、但し小倉あん抜き!の刑に処するよ」
「どえりゃー怖いー。しかもおまえ、みずほの本、盗み読みしただろ」
おれを救うように、上の妹のスマホが鳴った。おれに断りを入れて電話に出ると、話しを続けるたびに笑顔が崩れてゆくのが分かった。
電話を切った上の妹はしばらく黙り込んでいた。
「振られたんだろ」
「……」
「残念だったな。まあ、人生では良くあること」
「兄貴の人生と比べるなあああ!」
これからもコイツはこんな調子を繰り返す。兄、今は姉になったおれの第六感だ。
下の妹が結婚式を迎える方がおれや上の妹より早くなるんだろうな。
派手に爆発した上の妹のために急遽おれが企画した『残念会』を開こうと、コーヒーの香る喫茶店へ二人で向かった。
今ならまだモーニングに間に合う。
おしまい。
連投、すんません。
投下、尾張。
投下乙
いいね名古屋
書き手さん増えて嬉しい
とか喜んでるだけじゃなくて頑張らないと
>>22からの続き投下ー
「はーい、衣装が届いたわよー。」
と、俺達を呼んだ声の主は、マネージャーの王子(おうじ)君子(きみこ)さん。
多忙なプロデューサーの指示を受けて動く実動部隊、って感じの役職だ。
実際に俺達と関わるのはほとんどがこの人で、プロデューサーは重要な時――例えばこの前のレコーディングの時など――に顔を出すだけだ。
王子さんは純女性(生まれながらの女の人のことね)だがキツ……ハキハキした性格で、逆らってはいけない雰囲気を醸し出している。
「あ、そうそう。楓、歌の方、大丈夫なんでしょうね?」
「はいっ! 順調ですっ!」
「そう? ならいいわ。じゃあ私は用事があるから、後で来るわね。」
……ふぅ。助かった。
実は、レコーディングまで済ませているにもかかわらず、俺はまだ『可愛いなんて言わないで』をマスターしていなかった。
一人の時は完璧に歌える。けど、三人で合わせるとどうしても高い音につられてしまう。
それでもレコーディングの時は順番に撮ることでごまかせた。
でも本番の時はそうはいかない。本番――誰もが知っているゴールデンタイムの生放送音楽番組『ムジーク』。
CDの発売前日に、俺達はその番組で歌うことになっている。
デビューいきなりの大仕事。それだけ注目されているのだろう。
なにせ、これまで音楽にあまり興味の無かった俺でも名前くらいは知っている、片岡(かたおか)貴雄(たかお)のプロデュースだからだ。
自分がその名を背負わされているかと思うと、今更ながらになんだか胃が重くなってきた。
まあ今から緊張していても仕方ない。目の前のことからやっていこう。
俺達三人は更衣室に入った。
自分の分の衣装を取って、他の二人に背を向ける。
そして服を脱ぐ。丸みを帯びた自分の体が目に入るけど、できるだけ無心で、無心で。
衣装は白のシャツ、同じく白の長グローブとブーツ、茶色い革のジャケット、ハット、というカウボーイ……いや、カウガールか……風のものだった。
なんてことはない普通の衣装。ただ……。
「なあ、これ、太もも出すぎじゃないか?」
下はデニム地のホットパンツだ。
最悪の事態・ミニスカを免れただけマシだったとは言える。
膝丈の制服のスカートでも頼りないと感じるんだから。
私服じゃあスカートなんて絶対に穿かないしな。
でも、これとロングスカートどっちかを取れと言われたら……ちょっと迷ってからスカートを取るだろう。
外気が素肌を撫でる感覚が恥ずかしさを呼び起こす。
「でも可愛いじゃない。似合ってるよ。」
なのに友はさらっと言ってのけた。
友の視線はひととおり俺の全身を眺めた後で、ある一点で止まった。
「ところでさ。」
そして、
「楓ちゃん、おっぱい何カップ?」
爆弾が飛んできた。
いきなり何を言い出すんだ。今までそんな話したことなかったじゃないか。
……多分、あれだ。
同じ服を着たことによって体形の差がはっきり気になった……なんてことなのかもしれない。
「し、C……だけど……。」
とりあえず、できるだけ簡潔に事実を答えておいた。
「亜姫ちゃんは?」
「私はDよ。」
向こうでは普通にやり取りが行われている。
恥ずかしいって気持ちは無いんだろうか。多分無いんだろう。
「はぁ……だよね。僕なんてAAだよ。」
「ほ、ほら、身長の違いとかあるし……。」
がっかりした顔をする友に慌ててフォローを入れてみる。
が、友はどうやらスタイルのことで悩んでいるのではないらしい。というのがこの後分かる。
「……楓ちゃん、自分の揉んだことある?」
「は!?」
なんかもう地雷原を歩いているような感じだった。
「無い……よ。」
本当だ。
「なんで? だって男の夢じゃない!」
俺の回答に、心底驚いたような顔をする友。
そういうことか……。
要するに、魅せるための胸が欲しいのじゃなくて揉むための胸が欲しかったらしい。
そりゃあ気持ちは分からなくもない。けど。
「だって、怖いんだよ。」
「怖い?」
当然だろう。人の胸と自分の胸じゃ全然話が違う。
「なんか、そういうことしたら、もう引き返せないような気がしてさ。」
唐突に更衣室のドアが大きな音を立てて開いた。
「できた? おっ、いいじゃないの。」
王子さんだ。内心ホッとした。これで友の変な話も打ち切りだ。
「じゃあ、土曜日にそれ着て撮影ね。インタビュー――って言っても、『読者の皆様に一言』だけだけど――あるから、考えておいてちょうだい。」
何の撮影かというと、俺達は『ムジーク』出演の前に、テレビ雑誌で一ページの特集をもらうことになっていた。
レコーディングの時には(緊張はしたものの)まだ持てなかった実感が、今ようやく湧いてきた。
いよいよ始まるんだ、という実感。
来週には二学期が始まる。始業式の次の日が本番だ。
不安と緊張……の中になぜかワクワクした気分が混じっている。
夏休み明けをこんな気持ちで待つのは初めてだった。
つづく
投下終わりー
ぁたし 倉刀 ☆⌒(○ゝω・)b
16さい☆
ジブンでゆっちゃうのもなんだけどっ///
かなりモテ2系ヾ(・∀・`*)
みたいな
こないだ
ババアと事故ったp(´A`)q
チャリんここいでたら
こっちが直進なのに
ババア曲がってきた
ひけばよかったカモ?(∀`●)
こけたし
サイテー
でもぁたし言ってあげたぉ♪♪
「まぁいいか!!!!」
って。
そしたら なんか 逆ギレされたしっっっ(-`д´- 。)
ありえなくなくなくなーい??
でもそこは我慢してあげた(TT;
優しいぁ(´∇`)♪たしまーぢ天使ぃ(ワラ
んでやっぱ マッ缶 乾杯?
偉い自分にごほうびだねっっィィかもっ☆
串子さん何やってるんすかwww
どうしようもなくなったときに受信したんだけど、続かなかったんだw
やべぇ倉刀うぜぇwww
さすがに下すぎるアゲw
145 :
創る名無しに見る名無し:2012/08/06(月) 17:22:45.81 ID:AtUbTk3J
上がってねぇしw
ほぼ1年経って時期がピッタリになってしまった投下
まだ慣れないセーラー服に久しぶりに袖を通した。
今日から新学期だ。
始業前の廊下では、海に行ったとか宿題がどうだとか聞こえてくる。
そんな中、やけに見られているように感じるのは、気にし過ぎかなぁ。
と思ったけど、気のせいじゃなかったようだ。
教室の扉を開けて、誰にともなく「おはよう」とつぶやくと、教室中の目がこっちを向いた。
「な、なに?」
「これ、お前だろ?」
クラスの中心的な男子が見せてきたのは、例の雑誌の俺達――トラスタのページだった。
あれって今日発売だったんだ……。
「珍しい名字だし間違いないよな。」
別の男子が聞いてくる。
「お前、こういうのに興味あったのか?」
「母さんが勝手に出したんだよ。」
「またまた〜!」
周りの女子がはやし立ててくる。
本当なんだけどなぁ。なんなら本人に証言を頼みたいくらい。
「でも、乗り気なんだろ?」
「そん……」
……なこと、あるかも。
「いいじゃない、無理してごまかさなくても。
私たちも周りで性転換症の経験無かったからさ、はっきり言って赫映さんのことどう扱っていいのか分からなかったのよね。」
「そうそう。どういうスタンスなのか教えてくれれば、対応もしやすいじゃない。」
「うん、分かるけど……でも、まだ俺自身どうしたいのか分からないんだ。」
もう戻れないって知ってるのに。諦めたはずなのに。
まだ女の子扱いされることに戸惑っている。
雑誌に載った俺の言葉が目に入る。
『同じ性転換症の人の希望になれたら嬉しい。』
どの口が言うんだか。こんな俺じゃ失望させるだけじゃないか?
「ペーターはどう思う?」
げっ、ここでそっちに振るか!
一人自分の机で柔道の本を読みふけっていたペーター――那智平太(なち へいた)が顔を上げた。
それから俺と一瞬目を合わせて、すぐ逸らした。
やっぱり、か。
ペーターは俺の幼馴染だ。
小学生の時、お姉さんにひどい怪我をさせられて以来、女性恐怖症になった。
そのせいだろうと思うけど、俺が女になってからというもの、ろくに話もしていない。
そういえばあいつが柔道を始めたのもあの事故からか。
なんとなくペーターの持つ本を見つめてるうちに、あいつが口を開いた。
「そんなに焦らなくてもさ、ゆっくり慣れていこうぜ。俺も頑張るから。」
その言葉に、俺は何だか安心した。
なんだ、やっぱり女性恐怖症のせいだったんだ。
もしかしたら、嫌われたのかな、とかちょーっとだけ思う時もあったしさ。
ふと、隣の女子が無言でハンカチを差し出した。
「え? あ……。」
知らないうちに涙が流れていたようだ。
「ありがとう。」
さっと拭って、返す。彼女は笑っていた。
皆優しい。良いクラスでよかったな。
「お前ら席に着けー!」
おっと、担任が入ってきた。
よし、二学期、学校もアイドルも頑張るぞっ!
つづく
以上
ナイス
胎児の頃、すべての男はみんな最初は女の子の身体だったらしい
Y染色体が作用してクリトリスがにょきにょき尖って
おちんちんになる
子宮部分で睾丸が作られ外側に垂れて
たまたまになる
それはたまたまである
153 :
創る名無しに見る名無し:
僕、もう性的には女なんだ
もう戻れないし