>>333-336の続きを投下しマス。
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──その少し前──
くっそっ ヤッパ隙がねェ!
オレっちはゆっくりと地面の下を移動しながら、クノイチのネーちゃんの動きを探っていた。向こうもプロだ。
この前と同じテが通用するたァ思えねェ。今度は不用意に動くだけで察知される可能性が高けェ。何よりもあの得物。
ありゃヤベェ。ありゃあ命を吸った分だけ切れ味を増す妖刀だと調べがついてらぁ。この前、街にいった時に調べた。
だとすりゃ、オレっちの石の身体でも下手すりゃズッパリとイっちまう。ヘタにこの前のテを使おうものなら
まず最初におにこをブッた斬った後、返す刀でオレっちも真っ二つだろーな。おっかねェ。
いつもの姿は小さくてもボンヤリ光る姿だから、目立ちすぎる。うかうか覗き見ることもできゃしねェ。ある程度は
気配を読めンから、地面からウッカリはみ出さなけりゃァ、見つかりゃしねェだろが。
……だが、問題はおにこの奴だ。あンだけモノ覚えがイイってのに、あのクノイチに関してだきゃ、いっくら
危険性を説いても理解しやがンねェ。
それどころか、どっかアコガレてるフシすらありやがる。もう合うこたぁねぇだろと高をくくっていたのがマズかった。
もっと口を酸っぱくしてでも言い聞かせておくンだったぜ。
オレっちがノコノコ顔を出しても退治されて終わりだろうし、どうしたもンかね。……そうつらつら考えながら
地面に潜ってゆっくりと移動する。頭上ではおにこがゴソゴソ這い出す音が聞こえてきた。
ああ、やっぱダメだわ。ゴミを踏みしめる音がもう一つ、おにこの方に向かっちまっている。
確実に見つかってらぁな。
こっから、マジやべェ。察知される危険もあるが、オレっちは必死で頭上の気配を探った。クノイチの気配が殺気に
変わらねェかと集中した。もっとも、相手は暗殺にも長けた忍だ。気配を絶って標的の息の根を止められるよーな
相手にどンくれェ役に立つか分かったもンじゃねぇが。
こっから奴ぁどう動く?おにこはどう動く?
嘘をつくにゃぁ、相手の事、てめぇの事、色々な事を考慮してこそ効果的な嘘が吐ける。考えろ、考えろ考えろ……
ひとまずは、まだおにこはブった斬られていねェってこたぁ、問答無用で斬るつもりでないっつーことだきゃぁ、
分かる。問題はおにこだ。この時間に動き出したってこたぁ、「めし」だろう……
そうなったら、相手はどう考える?どう動く?
……ダメだ。ロクな結果が思い浮かばねェ……なら、その際、
オレっちはどうすべきか……クソっ!ある程度までならなンとかできっけど、その後はぶっちゃけアドリブ任せに
しかなンねぇ!だが、いつまでも地面に潜っている訳にゃいかねェし、
あのクノイチの動きは電光石火だ。間近に居てもおにこへの攻撃を防げンのは一撃が限度だろう。その間に打てる
手なンざたかが知れてる。オレっちはおにこが向かう前に『ごはんの棚』へと先回りした。
おそらく、勝負に出るのはそっからが一番近けぇだろう。
それが幸いした──
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という訳で「チリチリおにこ」第5話を
>>340-344投下しました。
【専門用語解説】
食屍鬼:しょくしき
怨念同士が絡み合い、死体に宿った鬼。都市伝説と呼ばれるくらい、めったに存在しない。が、数例とはいえ、
存在は報告されている。志半ばで朽ち果てた無念の残留思念や、強い怨念を宿った死骸を好んで喰らい、
浄化の難しい『呪い』を吐き出す。『呪い』は一般人を標的にし、強い『憎悪』などを持った生者を襲い、
死なせる事でより強い『怨念』を吸収しようとする。
また、『憎悪』のない人物であっても無差別に殺傷され、殺された者も怨念が乗り移り、食屍鬼と化すといわれている。
一説には人工的に生み出された式鬼……『人蟲(じんこ)』の一種だといわれている。
数少ない報告では町や村が壊滅した所さえあるという。