「鬼子ぉぉぉおおおおおおっ〜〜〜!!!」
お昼か夕方かよくわからない半端な時間帯。ひのもと家に威勢のいい声が響き渡った。
夕飯の下拵えをしていた、ひのもと鬼子は意外な訪問者にハタ、と手を止めた。
いつもなら、もっと朝早くやってくるか、昼過ぎにはくるはずの声だったからである。
土間から縁側の方へ視線を送ると、障子に写り込んでいる人影が二つ。どちらも見覚えのあるシルエットだ。
「あれ〜〜?たなかとついな〜〜?めずらしいね〜〜?」
居間で遊んでいた小日本が、障子をあけ、縁側の向こうにいる来訪者に声をかけた。
そう、どちらも鬼子にはなじみ深い人影だった。一人は一目とわかるくらい特徴的で、もう一人はごく一般的な人影だった。田中匠と如月ついな。
確かに、この時間に二人一緒にやってくるのは珍しい。
しかも、ついなの特徴すぎる人影はさらに何かを背負っていた。
土間の方までガサガサと音が聞こえてくる。
「あれ〜〜ついな〜それって、ささの葉〜〜?」
小日本も同じような事を思ったのだろう。
「へっへ〜〜ん、どや、スゴいやろ!あんまりええ笹の葉やってん、このウチが直々に持ってきてやったんやっ!ありがたく思いなやっ!」
とっても得意げなついなの声が響く。
「いや〜〜今日はガッコーの用事が手間取ってさ〜なんとか用事を切り上げたら、バッタリついなっちと会っちゃってさ〜ひのもとさん、いる?」
田中匠の声も聞こえてくる。
「なんだ、なんだ。今日は騒がしいな。ただでさえ、やかましいってのに」
そう言ったのは今さっきまで小日本の遊び相手をしていたわんこだ。
「なんやとっ!!」
「まーまー、ついなっち。今日は戦いに来たんじゃないんだし」
絶妙な呼吸で田中がとりなした。
どうやら、今回は戦わなくてもよさそうだ。