>>175からの小ネタ。
「凄いねー。まさに世界を股に掛けるボーカロイド」PCの画面を見ていたテトが呟いた。
「はぁ。」鬼子の相槌。
「まぁ、アメリカトヨタが彼女を採用したとか聞くし。」
「はぁ」鬼子の反応は同じようなものだった。
「あっしには関わりのねぇことでござんす、って顔だな。」
「だって、オリンピックのオープニングだなんて、どう考えても縁が無さげだし。」
「もしからしたらオマケでも出れるかもしれんよ。」
「だといいですねぇ。」
「まぁ2位以下が組織票総動員なのは丸見えなので、どうなるか分らんけど」
「そこまでする必要があるのでしょうか。」
「ああ、あの人間未満共はそう考えているらしい。」
「人間じゃないんですか?」鬼子の疑問。
「大丈夫だ。問題ない。あいつらをまっとうな人間と思わないほうがいい。」テトの声は冷ややかだった。
「まぁ、併合した後、負の霊圧が少し減ったようですが。」
「そんなことがあったんだ。」
「それ以前も碌なものではなかったのですが。」
「大陸は?」
「あそこは土地が広いので、あまり霊圧は高くならないのです。」
「今は酷そうだな。」
「酷いです。私が言うのもなんですが人が増え過ぎました。とても祓い切れません。」
「で、例の国については。」
「上半分はもうお終いでしょう。助けようがないです。霊圧がどうという以前の問題です。下の方は上が蓋になっているので。」
「上は御臨終。下は水を入れ過ぎた風船か。」
「はい。あれで日本憎しの感情を止めて現実を見るか未来を良くする方に努力すれば多少は改善したかもしれません。」
「もう、手遅れか。」
「ですね。多分恐ろしい位悲惨なことになると思いますが、彼らの負の感情全部をこの国が引き受けるには余りにも量が多すぎます。」
「しかも彼等の正体に気がついている人が多くなったからねぇ。」
「引き受けたくないですよ。彼ら自身の負の感情が作り出した化け物に彼ら自身が囚われ過ぎています。
こちらはこちらでその作りだしたものにも向きあわなければなりません。」
「焚きつけようとする馬鹿には事欠かないが。」
鬼子はため息をついた。化け物と言っても妖怪の類ではない。彼等が作り出した憎悪や嫉妬が何を齎すかである。
そして彼等が作り出した感情と、破壊した国土のもの。それだけだったら良かったかもしれないが、もはや手遅れ。
国家が滅ぶというのは、てっぺんに置いてある巨石を転がすようなものだ。
転がすまでは梃子でも動かないが、転がり出すとだれにも止められない。そしてその間あらゆるものを手当たり次第に破壊しつくす。
しかも、問題は理性より感情を重視する連中とばかりときている。手に負えない。
欠片でも理性があれば何とか出来るかも知れないが、混乱が収束するまでは時間がかかる。
そして今の世界には彼らの面倒を見ることが出来る国家や機関等存在しない。
いやないことは無いが、その国は政権交代のお祭り騒ぎと震災の復興のツケを否応なく支払わなければならない。
鬼子とテトが深いため息をついたのは同時だった。