非リレー型バトルロワイアルを発表するスレ Part19

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1創る名無しに見る名無し
1999年刑行された小説「バトル・ロワイアル」

現在、様々な板で行われている通称「パロロワ」はリレー小説の形をとっておりますが
この企画では非リレーの形で進めていきます。

基本ルール
・書き手はトリップ必須です。
・作品投下前の登場キャラクター、登場人数、主催者、舞台などの発表は書き手におまかせです。
・作品投下前と投下後にはその意思表示をお願いします。
・非リレーなので全ての内容を決めるのは書き手。ロワに準ずるSSであればどのような形式、展開であろうと問いません。
・非リレーの良さを出すための、ルール改変は可能です。
・誰が、どんなロワでも書いてよし!を合言葉にしましょう。
・「〜ロワイアル」とつけるようになっています。
  〜氏のロワは面白いでは、少し話題が振りにくいのでAロワ、Bロワなんでもいいのでロワ名をつけてもらえると助かります。
・完結は3日後だろうが5年後だろうが私は一向に構わんッッッ!!

前スレ
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1306507059/

非リレー型バトルロワイアルwiki
ttp://www26.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/1.html
2 ◆YR7i2glCpA :2011/06/24(金) 00:16:54.61 ID:bnGkec5a
>>1スレ立て乙です!!
3 ◆VxAX.uhVsM :2011/06/24(金) 00:17:01.52 ID:G88Gqsv+
>>1
スレ立て乙です!
4 ◆8nn53GQqtY :2011/06/24(金) 00:17:11.27 ID:6w7Hx1D5
>>1乙です

ようやくスレが立ったよ…
5 ◆xzYb/YHTdI :2011/06/24(金) 00:46:03.25 ID:J4ki4hSy
>>1 スレ立て乙です!
6 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/24(金) 00:52:45.88 ID:9YCcdAe7
スレ立て乙です
7 ◆ymCx/I3enU :2011/06/24(金) 01:16:40.05 ID:KJ9HRa3R
>>1 スレ立て乙です! やっと…やっとか
8 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/24(金) 18:17:34.30 ID:sdNGiN/Q
スレ立て乙です。
9 ◆VxAX.uhVsM :2011/06/24(金) 18:38:42.54 ID:G88Gqsv+
スレ立て後一発目投下します。
DOL3rd10話 一度死んだ男同志の対面
登場人物:◆WYGPiuknm2、川田章吾、天野雪輝
10一度死んだ男同志の対面 ◆VxAX.uhVsM :2011/06/24(金) 18:39:33.60 ID:G88Gqsv+
「……本当、何の冗談だこれは」

川田章吾は歩きながら毒吐く。
E-2の鉄塔付近をうろついているが、人が誰もいない。

「……まさか、三度目となるとはな」

彼はこれで三度目の殺し合いとなる。
一度目は自分が恋した女を殺した。
二度目は生還まであと少しだったもの、半ば倒れた。
そして、三度目…。

「この場には、七原と桐山がいる…桐山をいかに避けて七原と合流するか、だな」

七原秋也は信頼できる。
絶対に殺し合いには乗っていないと断言できる。
しかし、桐山和雄は別だ。
あいつは警戒するべき男である。
七原、中川と協力してなんとか殺せた相手だ。
仲間のいない自分では、確実に負けるだろう。

「……どうしようか」

武器が無い自分は、銃を持ったこのゲームに乗った奴に会ったら死んでしまうだろう。
今すぐ何をすべきか、考えが付かない。

「とりあえず、眺めでも見て落ち着きながら考えるか」

川田は鉄塔を昇って行く。
カン、カンと一歩進むたびに音が出る。
数分経って、半分くらい昇ったところで景色が見える所に出る。

「…!?」

川田がそこで見たのは、血を流して倒れている男だった。
少し驚くが、すぐに男に駆け寄る。
息をしているか確認する。
息はしている、しかし…おかしい。

「なぜ、これほどの出血量で生きているんだ…?」

出血の量から言って確実に男は死んでいる。
なのに男は何もないように生きている。
11一度死んだ男同志の対面 ◆VxAX.uhVsM :2011/06/24(金) 18:40:01.56 ID:G88Gqsv+

「ん、ぐっ……」
「おい!アンタ!目を覚ませ!」
「……あ、おはよう」
「おはようじゃないだろう、おい…あんたこれは一体何があったんだ?」
「え?何が?どういう事?」
「今の状況が分からないのか?」
「……うわあああああああああ!!何これ!血まみれ!?」
「おい、興奮すると血がまた出て…って、なんでだ?」
「え?なんでって?何が?」
「……気付かないのか?」
「え…まさか、傷跡が…無くなってる!?」

そう、◆WYGPiuknm2の斬られただろう部分が完全に塞がっている。
まるで、全てを無かったことにされたかのように。

「お前、何者だ?」
「俺が聞きたい…」

頭を抱えて悩む二人。
そんな時、◆WYGPiuknm2がある事に気付いた。

「あ…理由、分かった」
「なんだと?どういうことだ」
「これ、俺の支給品だと思うんだけど」

鏡石を取り出して川田に見せる。
この石は一度死んでも生き返る機能を持つ。
説明をすると、今度は川田が悩むような表情を見せる。

「……いまいち分からないんだが、その石は生き返る事が出来る石…ってことか」
「とりあえず…そんな感じ」

そんな会話をしていると、川田の表情が変わった。
◆WYGPiuknm2は何事かと聞こうとした。
その時だった

バババッ

川田が反応してギリギリのところでかわす。
◆WYGPiuknm2は動けなかったが運よく当たらなかった。

「……チッ」

少しだけ見えた陰が消えた。
川田は追いかけることはなかった。
今の自分の武器では返り討ちにされるのがオチである。
だからここは仕方なく止まる事を考えよう。
12一度死んだ男同志の対面 ◆VxAX.uhVsM :2011/06/24(金) 18:40:45.97 ID:G88Gqsv+

「……ちょうど良い、あんた…名前は?」
「◆WYGPiuknm2…だ」
「…?」

川田は何を言っているんだというような顔をする。
まあ、こんな名前は何処にもないから。

「……偽名か?」
「そうじゃなきゃ何だって言うんですか、でも…本名は思い出せないんですね」
「…分かったよ」

川田は少し怪しんだが仕方なく了承する。

「あんた、WYGさんだったか?」
「ああ、なんだ?」
「俺に協力してくれないか?」
「……なんで俺?」

◆WYGPiuknm2は何故自分なのか全然分からなかった。
先ほど自分が撃たれそうになった時に動けなかったのを彼は見ているはずだ。

「…数がいればそれだけでも相手に重圧を与えれる…理由は他にいるか?」
「いえ、文句はありませんよ」

二人は、共同戦線を組む。
ここに一度死んだ二人がいるのである。

【真昼/E-2鉄塔】
【◆WYGPiuknm2】
[状態]健康
[装備]ペーパーナイフ
[所持品]基本支給品、鏡石×2
[思考・行動]
基本:死にたくない。
1:川田と行動、守ってもらいたい。
[備考]
※元々の世界の知識はある程度残っています。
※願いがなにかは不明です。
【川田章吾】
[状態]健康
[装備]
[所持品]基本支給品、不明支給品(1〜2)(銃に勝てる武器は入ってない模様)
[思考・行動]
基本:主催への対抗。
1:◆WYGPiuknm2と行動。
2:七原と合流する。桐山は警戒する。
[備考]
※願いがなにかは不明です。
13一度死んだ男同志の対面 ◆VxAX.uhVsM :2011/06/24(金) 18:41:03.94 ID:G88Gqsv+



   ◇          ◆


-------------------------------------
12:50
[E-2]
二人の男はあの場から動いてない模様
周りに他の人はいない
-------------------------------------

「由乃…どこにいるんだ…」

グロック18Cを構え歩いている天野雪輝。
無差別日記を見て周りに誰もいないのを確認する。

「…せっかくつかんだんだ…二度と放してたまるものか」

天野雪輝の眼に闘志が宿っていた。
この場にいるのはきっと強者ばかりだろう。
しかし、我妻由乃…彼女と会えさえできれば。

「待っててくれ…由乃!」

天野雪輝は、止まることなく歩きだした。

【真昼/E-2】
【天野雪輝】
[状態]健康
[装備]グロック18C(12/18)、無差別日記
[所持品]基本支給品、グロック18Cのマガジン(2)
[思考・行動]
基本:ハッピーエンドをつかむ。
1:我妻由乃と合流したい。
[備考]
※原作本編終了後からの参戦です。
※願いがなにかは不明です。

【支給品説明】
【グロック18C@現実】
天野雪輝に支給
グロック社が近接近戦闘用に開発したマシンピストル。
グロック17を原型にしているので一見拳銃の様にに見えるが、フルオート機能が付いているので民間人は所持できない。
室内戦などの近距離戦で強力な火力を要求とされる特殊部隊などに提示している。
スライドに丸いセレクターレバーがあるのが特徴。

【無差別日記@未来日記】
天野雪輝に支給
自分を中心とした周囲の未来を無差別に予知する能力がある。
全日記中最多の情報量を持つが、普段から雪輝が傍観者でいようとしたため、自分自身のことが一切書かれていないという欠陥がある。
また、あくまで雪輝主観の情報に依存するため、雪輝が間違った情報を把握した場合は間違った情報のままの未来が表示されてしまう。
14 ◆VxAX.uhVsM :2011/06/24(金) 18:41:43.11 ID:G88Gqsv+
投下終了です。
15 ◆VxAX.uhVsM :2011/06/24(金) 19:08:28.65 ID:G88Gqsv+
続けて投下します。
Re:DOL1話 二度ある事は三度ある、しかし二度目が起きるかは分かりません
登場人物:坂田銀時、相川友、リーナ
16二度ある事は三度ある(ry ◆VxAX.uhVsM :2011/06/24(金) 19:09:10.93 ID:G88Gqsv+
「……おい、どういうことだよ」

相川友は薬局内でつぶやく。
殺し合い、ただの学生である彼には縁どころかそんな事があるとも思わなかった。
しかし、現実はどうだ。

こんな場所に放り込まれる。
そして、今持っている僕の武器…コルトパイソン。
こんなものも持たされている。

「あーあ…林とか百合ちゃんとか先生はどうなってんのかね…」

青木林、青木百合、滝本豊。
この三人は自分の知り合いである。
正直言って、三人とも乗るような人間ではないが…。

「まあ、どうなんだろうな」

もう一つの支給品であるスポーツドリンクを飲みながら考える。
この先どうしようか。
正直言って、この後どうするとか言われてもね。
そんな事を考えていると、薬局に誰かが入ってきた。

「…お、そこの奴ー」

声をかけられた。
気軽な感じから言うと警戒する必要はないかもしれない。

「あ、どうも……」
「ちょいと聞いていい?ウチの従業員のメガネがいるんだけど、見てない?」
「……残念ながら会ったのは貴方が初めてですよ」
「そうか、ならいいや…悪かったな」
「いえ、こちらこそすみません」

そう言うと、その男の人は店の中に入っていく。

「あの…何しようとしてるんですか?」
「あ?分からないの?糖分補給だよ糖分補給」

そう言うと今度こそ奥に入っていく。
それを見た後に、また誰かが来ている事に気付いた。
17二度ある事は三度ある(ry ◆VxAX.uhVsM :2011/06/24(金) 19:09:46.27 ID:G88Gqsv+

「…なんでこんなに人が集中しているのかね?」

そう思いながら、そのいた人に声をかけた。
彼女はこちらに気付いて走ってきた。

「あの…貴方は殺し合いに乗っていますか?」
「いいや、乗っていないよ…だから安心してくれてもいい」
「あの…その…」
「…?どうしたの?」
「じゃあ、死んでもらえませんか?」

彼女が手に持っていた刀が僕を襲った。
僕は急いで右手に持っていたコルトパイソンを彼女に向けた。
その、僕が撃った弾は…。







「ったく…いまどきの薬局ってのは…」

結局何も手にせず坂田銀時は帰ってきた。
そして、先ほどの少年に声をかけようとする。
しかし、そこには誰もいなかった。

「…あれー?」

仕方なく薬局内を探そうと思った銀時は一瞬外に目が向けられた。
そこで、坂田銀時は事の重大さに気がついた。
18二度ある事は三度ある(ry ◆VxAX.uhVsM :2011/06/24(金) 19:10:27.96 ID:G88Gqsv+

「…チッ!」

外に飛び出す。
そこに立っていたのは、金髪の女性。
先ほど声をかけた少年の腹に刀が刺さっていた。

「お前…!なんでこんなことを!」
「え?決まってるじゃないですか…助かるためですよ?」
「……助かるためなら、何でもすると?」
「ええ、だから…私は貴方を殺します」
「……」

相川の腹から刀を抜き、銀時に襲いかかる。
銀時は動かない。
あと少しで刀が刺さる…そう言った時に、銀時が動いた。
腰から彼の木刀を抜き、彼女を地面に叩きつける。
彼女は、それで動かなくなった。
首がありえない方向に曲がり、動く気配もない。

「……クソ」

自分は目の前の少女を殺した。
しかし、それはもう戻らない。
銀時は今すべきことをする事にする。
彼は、相川友に近づく。

「おい!アンタ…大丈夫か!」
「う…ぁ……さっき、の…人?」
「くそ…なんつーことだ…俺がついてりゃあ…」
「いえ、あな、たは…わるく、ないです」
「そう言えば、自己紹介がまだだったな…俺は坂田銀時…あんたは?」
「相川、友です」

彼は最後にそう言って息を引き取った。
銀時が黙りこんだ。

「………」

空を見る。
どこまでも青かった、この少年の髪の色のように。

「……高杉」

あいつをどうにかしなきゃ気が済まない。
彼の手に握られていた銃をもらう。

「悪いな…貰っていくぜ」

彼は銃なんて使えない。
使う気もないだろう。
なのに、何故彼は銃をもらったのか。
そんな理由は簡単だ。

彼の事を、死んでも忘れないように、傍に置くためだ。

【リーナ@オリキャラ 死亡】
【相川友@オリキャラ 死亡】
19二度ある事は三度ある(ry ◆VxAX.uhVsM :2011/06/24(金) 19:10:52.55 ID:G88Gqsv+

【C-2薬局/朝】
【坂田銀時@銀魂】
[状態]健康
[装備]銀時の木刀
[所持品]基本支給品、コルトパイソン(5/6)
[思考・行動]
基本:殺し合いを止めて、高杉をどうにかする。
1:新八との合流。
[備考]
※原作歌舞伎町四天王篇終了後の参戦です。

※相川友の支給品(基本支給品+スポーツドリンク5本)とリーナの支給品(基本支給品+打刀)がC-2薬局前に放置されています。

≪オリキャラ紹介≫
【名前】相川 友(あいかわ とも)
【年齢】14
【性別】男
【職業】中学生
【性格】明るく陽気、正義感がある
【身体的特徴】青色の髪、細身
【服装】中学校の制服
【備考】DOL本家にて生還
≪オリキャラ紹介2≫
【名前】リーナ
【年齢】16
【性別】女
【職業】高校生
【性格】自己中心的
【身体的特徴】金髪
【服装】ブレザー
【備考】留学生で日本に来ていた少女
20 ◆VxAX.uhVsM :2011/06/24(金) 19:11:33.94 ID:G88Gqsv+
投下終了です…。
DOL1stとは終わり方が変わりまくります。
21 ◆YR7i2glCpA :2011/06/24(金) 22:18:42.46 ID:446O3ukJ
投下します。
ごちゃ混ぜロワ 27:会談レストラン
登場人物:灰原由起夫、長谷川泰三、食満留三郎
22会談レストラン ◆YR7i2glCpA :2011/06/24(金) 22:19:34.90 ID:446O3ukJ
E−4住宅街、灰原由起夫と長谷川泰三の二人は灰原の支給品であった詳細名簿を見ながら今後について話しあっていた。
詳細名簿には二人の知らない数多くの世界と、そこに存在する参加者の事が細かく書かれていた。
灰原も長谷川も、知り合いは殺し合いなんかには乗りそうにないと互いに判断したが、この殺し合いには危険人物も多くいると知った。
例えば、殺人クラブ。
例えば、スタンドを操る殺人鬼。
例えば、心を失った殺人者。
自分の知らない世界から多くの人が来ている、という事実に二人は驚きを隠せなかった。
「…ったくよぉ、殺人クラブだとかホムンクルスだとか殺人鬼だとかマジで勘弁してくれよぉ……」
「ダな、とにかく早く梢や白鳥たちと合流しなきゃあな……」
灰原の左手に装着されたハンドパペット、流星ジョニーが苦々しく言う。
「で、どうするバラさん?銀さんや梢ちゃんがどこにいるかは分からねえんだぞ?」
「…人の集まりそうな所に行くべきダな、この会場にはホテルやら病院やら集まりそうな場所は結構あるからな。」
「でもそれってやばくねえか?殺人クラブの奴らとかもそう考えるんじゃ…?」
「…だろうな、だが他にどうしようもないだろう。」
「…そうだな。えっと、ここは確かE−4だから近くには……」
長谷川が地図を取り出し、近くの場所を確認しようとした時、遠くの方で銃声が響いた。
23会談レストラン ◆YR7i2glCpA :2011/06/24(金) 22:20:12.81 ID:446O3ukJ

「…今のは!?」
反射的に身を伏せた長谷川は灰原の方を確認したのだが、そこに灰原はいなかった。
灰原はもう、その銃声のした方へと走っていたのだ。
「お、おいバラさん?!」
「すまねえ長谷川!」
灰原の頭を支配していたのは、あの銃声の先にいたのが梢たちだったら、という嫌な想像だった。
かつて若かった自分の世話をしてくれた鳴滝荘の住人が、危険な目に立たされている。
それだけで灰原の胸は張り裂けんばかりだった。
そんな時に響いた銃声は、まるで陸上競技のスターターのように灰原の身体を走らせた。
そして、その場には長谷川が一人残されたのだが……
「ま、待ってくれよぉー!」
長谷川には、一人になる事を選ぶことはできなかった。
無論、恐怖はあったが、このまま一人でずっといる恐怖の方が大きかったのだ。
24会談レストラン ◆YR7i2glCpA :2011/06/24(金) 22:21:04.70 ID:446O3ukJ

銃声のした方へ向かうと、そこには大きなレストランがあった。
開きっぱなしになった入り口を見た長谷川は、中に灰原が入って行ったと確信した。
恐怖で震える手をぎゅっと握りしめると長谷川は中に入って行った。
「おーい、バラさーん。どこにいるんだよぉー?」
「…こっちだ、長谷川。」
奥の厨房の方から、声が聞こえた。
無事そうな声に安心すると、長谷川は厨房へと入って行った。
だが、そこにあったのは長谷川の想像を超えるものだった。

紅い。
血だまりの中に、新八ぐらいの年に見える少女が倒れ伏していた。
むせかえるような血のにおいと、血だまりに長谷川は吐き気を覚えた。
その倒れている少女の前で、灰原が立っていた。
「…ば、バラさん……」
「…俺が来た時にはもう……」
「そうか……」
灰原の顔を覗き込むと、そこには沈痛な面持ちが見て取れた。
吐き気を押さえながら、灰原の視線の先を見る。
…一瞬の事だったのだろうか、まだ自分がどうなるか分からないようなそんな表情だ。
何故彼女は死ななければならなかったのか?
誰が彼女を殺したのだろうか?
長谷川の脳内に、感情が氾濫する。
怒り、哀しみ、それらがぐちゃぐちゃになったドロドロした感情。
その感情がもたらしたのだろうか、長谷川の眼から涙があふれていた。
25会談レストラン ◆YR7i2glCpA :2011/06/24(金) 22:21:50.18 ID:446O3ukJ

「…長谷川。泣いてる場合じゃねえぞ。」
「…な、何だよバラさん?」
「誰か入って来たぞ。」
「なっ!?」
この状況はまずい。
長谷川はそう思っていた。
えてして殺人犯というものは現場に舞い戻るとよく言われている。
もし彼女を殺した犯人が戻ってこようものなら一たまりもない。
長谷川も灰原も、武器になるものは何一つ持っていない。
片や彼女を殺した犯人はショットガン――多分、をもっているのだ。
厨房の出入り口は一つしかない。
長谷川の体中を嫌な汗がどっと伝った。

「誰かいるのか?」

まだ若い男の声が、入口の方から聞こえてきた。
(どうするバラさん?)
(…とりあえず話だけでもしてみるか。)
(正気かよ!?犯人だったらどうすんだよ!?)
(…そん時は、あんただけでも生き延びてくれ。)
(バラさん!?)
小声で話し合う二人だったが、その会話は何者かが厨房に入ってきた事で止められた。
「…!これは!?」
入ってきたのは、忍者装束に身を包んだまだ若い少年だった。
そして彼の手に握られているものは…日本刀。
その刀身の煌めきに、灰原と長谷川は一瞬死を覚悟した。
26会談レストラン ◆YR7i2glCpA :2011/06/24(金) 22:22:31.78 ID:446O3ukJ

「…そこの死体は、あんたたちが…?」
「…いや、違う。」
静寂の後に、かけられた声に灰原が答える。
目の前の少年は殺し合いに乗っているのかどうか分からない。
だが丸腰の灰原と長谷川よりも、武器的に有利である事は誰の目にも明らかだった。
「…本当か?」
「本当だ、俺たちはどちらも武器をもっていない。銃声がしたからこっちに来たらもう既にこの有様だ…」
「そ、そうだぞ!俺たちじゃないからな!」
少年は灰原と長谷川をじっと見つめたのち、少女の死体を見た。
「…さっきあんたは『銃声がしたから』とそう言いましたか?」
「ああ。」
「実は俺もそうなんだ。」
そう言うと目の前の少年は刀を鞘に戻した。
「…驚かせてすまない。俺は食満留三郎。この殺し合いには乗る気はない。」
「本当か?!」
「本当だ。」
(なぁ、バラさんあいつ信用しても良いと思うか?)
(ああ、名簿でも乗りそうにない奴だと俺は思ってた。)
長谷川と灰原は小声で言葉を交わすと、そっと前に出た。
「…留三郎といったな。」
「はい。」
「俺たちも乗っていないんだ。ここはひとまず情報交換と行かないか?…ここじゃちょっとやりにくいからテーブル席に移動するか。」
長谷川の身体を、今度は安堵の汗がどっと伝った。
27会談レストラン ◆YR7i2glCpA :2011/06/24(金) 22:23:17.15 ID:446O3ukJ



テーブルをはさんで、灰原と長谷川、そして留三郎は情報をそれぞれ交換していた。
灰原の詳細名簿の事もあり、思った以上にすんなりと事は進んでいた。
無論、留三郎からすると未来から多くの人が集められているという事実は留三郎には少々衝撃だったようだが。
「にしても助かったぜ、このまま丸腰じゃどうしようと思ったところだったんだ。」
「いえいえ、俺も六本全部使うなんてできないから。」
灰原と長谷川の腰に、二本ずつ日本刀がある。
留三郎に譲ってもらった六爪という太刀だった。
本来は六本一セットで使うのが六爪流なのだそうだが、当然そんな真似は出来ない。
ちょうど六本あったので各人に二本ずつ分配された。

「で、灰原さんと長谷川さんはこれからどうするんだ?」
「俺たちはこれから銀さんや梢ちゃんを探そうと思うけど…留三郎は?」
「俺は…」
留三郎は厨房の方にちょっと視線をやると、一瞬間をおいた。
「…彼女を殺した犯人を追おうと思っている。」
「何!?」
予想外の言葉に、灰原も長谷川も言葉を失った。
だが留三郎の目は真剣だった。
「何言ってんだよ!危ねえぞ!」
「危険は承知だ。だが俺は許せないんだ…彼女を殺した犯人も、この場で殺し合いを進めようとしている者も、全員。」
「そうはいってもよぉ……」
長谷川とて、許せない気持ちはあった。
だがそれ以上に彼の中にあったのは恐怖感。
相手はショットガンをもった、殺人犯。
そんな相手に留三郎は立ち向かうと言っているのだ。
正直とても自分にできる事じゃない。
28会談レストラン ◆YR7i2glCpA :2011/06/24(金) 22:23:46.67 ID:446O3ukJ
「灰原さん、長谷川さん、止めないでくれ。頼む。」
「…止めやしねえよ。」
「バラさん!?」
灰原の発言に、長谷川は驚き視線をそちらに向ける。
「止めねえ。だが一つだけ約束してくれねえか。」
「なんですか?」
「…梢たちを見つけたら、保護してやってくれ。」
そう言う灰原の目には、光るものがあった。
「…分かりました。それでは」
それだけを言うと、留三郎は立ちあがりレストランを出た。
灰原と長谷川は、その背中をただ見つめていた。

「なぁバラさん、本当に良かったのか?」
「…ああ。それより長谷川…」
「なんだ?」
「あの子…埋めてやるか。」
そう言うと灰原は厨房に向かっていった。
それを追うように、長谷川も厨房へと歩いて行った。
29会談レストラン ◆YR7i2glCpA :2011/06/24(金) 22:24:25.56 ID:446O3ukJ





【F−4レストラン/1日目朝】
【灰原由起夫@まほらば】
[状態]:健康
[装備]:流星ジョニー@まほらば、六爪の一本@戦国BASARA
[道具]:基本支給品一式(食糧小消費)、ヴァージニアメンソール@BATTLE ROYALE、詳細名簿@現実、六爪の一本@戦国BASARA
[思考]1:少女(柊かがみ)を埋葬する。
   2:梢をはじめとした鳴滝荘の住人を探す。
   3:殺し合いからの脱出。
[備考]:忍術学園の情報を得ました。

【長谷川泰三@銀魂】
[状態]:健康、やや汗
[装備]:六爪の一本@戦国BASARA
[道具]:基本支給品一式(食糧小消費)、ヴァージニアメンソール@BATTLE ROYALE、ライター@現実、六爪の一本@戦国BASARA
[思考]1:少女(柊かがみ)を埋葬する。
   2:銀さん達と合流したい。
   3:鳴滝荘の住人は保護したい。
   4:メガネの男(日野)に対抗したいが策は思いついていない。
[備考]:忍術学園の情報を得ました。
30会談レストラン ◆YR7i2glCpA :2011/06/24(金) 22:25:08.32 ID:446O3ukJ

【食満留三郎@忍たま乱太郎】
[状態]:健康
[装備]:六爪の一本@戦国BASARA
[道具]:基本支給品一式(食糧小消費)、六爪の一本@戦国BASARA
[思考]1:少女(柊かがみ)を殺した犯人を追う。
   2:道中で鳴滝荘の住人を見つけたら保護する。
   3:忍術学園の仲間と合流できればしたい。
   4:殺し合いを潰す。
[備考]:鳴滝荘の住人と万事屋トリオの情報を得ました。



【支給品情報】

【六爪@戦国BASARA】
食満留三郎に支給。
元は伊達政宗が使う六本一セットの日本刀。
六爪流という政宗の無茶な使い方でも折れないことから一本一本がなかなかの業物とみられる。
31 ◆YR7i2glCpA :2011/06/24(金) 22:25:34.59 ID:446O3ukJ
投下終了です。
32 ◆8nn53GQqtY :2011/06/24(金) 22:50:59.60 ID:srMzoa5O
投下乙です。マダオもバラさんもけまも良い人だなぁ

では投下します
雑多ロワ25話:「別に友達じゃねーよ」
登場キャラ・佐倉杏子、ゴールド
33「別に友達じゃねーよ」 ◆8nn53GQqtY :2011/06/24(金) 22:51:43.02 ID:srMzoa5O
世の中の出来事には、二種類ある。
諦められることと、諦められないこと。

「おい……どうなってんだよ。この名簿は……」

そして佐倉杏子は、諦めた人生の方が賢い生き方だと知っている。
他人と関わることを諦めれば、他人の為に力を使う必要もない。
他人の為に力を使うことを諦めれば、自分が傷つく必要もない。
だが、そうだと分かっていても、諦めきれないことはある。

例えば、会う度に喧嘩ばかりしていた相手を助けたくなって、勝算の薄い戦いを挑んでしまったり。

「……また、キュゥべえの胡散臭い企みか?
でもアイツは、死人を生き返らせたり魔女を魔法少女に戻したりは出来ないって言ってたよな。
まぁ、それが本当なのかも怪しいか」

けれど、どんなに足掻いても覆せない“掟”があることも、杏子はまた悟っていた。
例えば、死んだ人間は生き返らない。
世の中に魔法が存在したとしても、死んだ人間を生き返らせることはできない。
しかし、杏子が呼ばれた『殺し合い』の参加者名簿には、確かにその二つの名前が書かれていた。

巴マミと、美樹さやか。

「さやかは置いとくとしても、マミは確かに死んだはずだ。
まぁ、それを言ったら、魔法少女の時点でもう死人みてーなもんだけど。
……でも、もし、死んだ奴が生き返ってるとしたら、さやかは『どっち』で呼ばれてるんだ……?」


杏子は、美樹さやか『だったもの』のところへ向かう途中で、あの“魔女の結界”に似た空間に飛ばされていた。
今の彼女は、美樹さやかであって、美樹さやかとは言えない生き物になってしまっている。
『あれ』が『美樹さやか』という名前で殺し合いに参加しているとは……考えにくい。
あれには美樹さやかの意思は存在しないだろうし、そもそもあの巨大な魔女があんな広間にいたならば、目立つどころじゃない。

それに、もし『死んだ人間が生き返る』ような奇跡が起こるのだとしたら、さやかが元の姿で参加している、ということもあり得るのかもしれない。

34創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 22:52:17.63 ID:JjKjOzKx
 
35「別に友達じゃねーよ」 ◆8nn53GQqtY :2011/06/24(金) 22:52:42.93 ID:srMzoa5O
しかし、『死人が生き返った』などという説を信じられるほど、杏子という少女の半生は甘くなかった。
それが可能なら、杏子だってずっと後悔のない生き方ができただろう。
いくら特殊すぎる環境とはいえ、そんなご都合主義を簡単に受け入れることはできなかった。
しかし、仮に今のままの姿で呼ばれているとしたら、それはそれで問題だ。

「もし、あの姿のままでいたら、ヤバいよな……」

『実験に対してどう行動するか決める』と『さやかを助ける』を二つとも行わなければならない。

杏子は、美樹さやかを取り戻すことを、諦めたくなかった。
たとえここが戦いの場だとしても、その方針は変えたくない。
馬鹿なことをしているのは知っている。

「助けられないとしたら、ほっとくか?」

さやかの親友に尋ねた問いかけを、杏子はそのまま己に向かって自問する。

この期に及んで『愛と勇気が勝つストーリー』を夢想するほど、杏子は愚かではない。

けれど、いつだって、『夢を見たくなる時』と『諦めたくない時』は一致してしまうのだ。

でもこの『実験』の中では、例え奇跡が起こってさやかが助かったとしても、それでハッピーエンドというわけにはいかないのだ。
例えば、都合よく元に戻ったさやかと会えたとして、『無事で良かった良かった。じゃあ一人しか生き残れないから、殺し合いましょう』というわけにはいかない。

なら、さやかを助けると決めた時点で、杏子は殺し合いに乗らない選択をすることになるのだろうか。
それこそ、いつもの杏子らしくないことだ。

グリーフシード欲しさに使い魔を野放しにした時のように、己の為に多くの参加者を蹴落として生き残るか。
それとも、さやかの主張する『魔法で人を助ける』正義に同調して、『実験』に反抗するか。

その選択を、無謀なさやか救出計画の延長でそのまま後者に委ねてしまっていいものか。
かと言って、『成功する確率がますます低くなったからさやかを救うのを止めます』などと言い出す気もしない。
こちとら、そんな生半可な同情で命を賭けているわけではないのだ。
じゃあ、どんな気持ちでさやかを助けようとしているんだ、と聞かれると困るのだけど……。

「まぁ、後のことはさやかを見つけてから考えればいいか。……ここに魔女がいたら、それこそ人間同士で殺し合ってる場合じゃなくなっちまうしな」

こんな風に延々と悩んでいる内に、さやかが殺されてしまったらそれこそ本末転倒だ。まずは考えるよりも動くしかないだろう。
それに、仮に魔女の姿で参加しているとすれば、さやかの肉体は杏子が借りたホテルの一室に安置されているはずだ。
魔女化したさやかからソウルジェムを取り戻すなり他の方法で魂を元に戻すなりすれば、殺し合いの結果いかんに関わらず、さやかは殺し合いをせずして見滝原に戻れるということになる。
(まぁソウルジェムが戻って来た場合、誰かがそれを見滝原に持ち帰らなければという問題はあるのだが)
36「別に友達じゃねーよ」 ◆8nn53GQqtY :2011/06/24(金) 22:53:29.56 ID:srMzoa5O
なら、まずはとにかくさやかを探すこと。
そして、できればさやかと合流する前に、鹿目まどかも見つけること。
まどかの力を借りるのは、当初のさやか救出計画の予定通りだし、何より一般人の彼女が、こんなサバイバル環境のなかでいつまで無事でいられるかという懸念もある。
それに、あの不思議と邪気のない少女なら、こんな状況下でも親友を助ける為に動いてくれるだろう、という直感もあった。



そして、当面の問題に戻るわけだ。


「お前、使い魔……ってわけじゃねぇよな?」


『支給品』として出て来た、その巨大なカラスにそう話しかけた。
カラス――なのだろう。少なくとも、杏子の知る限りの生き物で例えるとしたら。
大きさは杏子の膝くらいまであるし、頭部に帽子のつばのような巨大なトサカが生えているけれど、それ以外の形は割とカラスに近い。
『ヤミカラス』と、説明書にはそういう名前で書かれていた。
そして、持ち主――『モンスターボール』という謎の収納道具を持っている限り――の言うことは、基本的に何でも聞いてくれるらしい。
どういう生き物なのかはよく分からないけれど、もしや当たりを引いたかもしれない。
杏子の目的は人探しだ。
特に当てはないが、さやかが魔女化している可能性も考えるなら、ひとまずソウルジェムの魔力反応を頼りに、魔女の出没しそうな市街地を探すことになるだろう。
幸い、杏子のスタート地点はD−4を流れる川の南岸であり、少し南下すればすぐに住宅地に出られる。
その間に、このヤミカラスには北部の森林を捜索してもらおう。
単純に人手が倍になるのは助かるし、空を飛んで探せば、視界の聞きにくい樹海の中でもより迅速に見回りができる。

「ジェムがなきゃ魔女は探せないから、こいつには鹿目まどかと人間の姿のさやかを探してもらうか。
……こいつにどんだけ言葉が通じるのか分からないけど」

『ヤミカラス』は杏子の方を、何だか胡散臭そうに見ている。
命令は聞く仕様らしいが、かと言って人懐っこい生き物というわけでもなさそうだ。
こんな真夜中に一羽きりで放り出して、大丈夫なのか。
狙撃でもされた時は自衛ができるのか。飛行速度は、戦闘能力はどの程度なのか。

まぁこればっかりは実際に使って慣らしていくしかないか、と杏子は思案し、


「お前、シルバーのヤミカラスじゃねえか!」

37創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 22:53:44.69 ID:G88Gqsv+
 
38創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 22:53:56.35 ID:JjKjOzKx
 
39「別に友達じゃねーよ」 ◆8nn53GQqtY :2011/06/24(金) 22:54:02.35 ID:srMzoa5O

驚きと喜びの入り混じった声が、杏子の鼓膜を叩く。
振り返ると、つり目の少年と目が合った。



☆   ☆

「つまりこのカラスの飼い主はシルバーって奴だから、そいつに返してやれって言いたいのか?」
「飼い主じゃねえよ。ポケモントレーナーだよ」
「だからそのポケモンっていうのがよく分かんねえんだって……」
「ポケモンはポケモンだろ。ポケットモンスター略してポケモン」

イマイチ噛み合わない会話に、毒気を抜かれて溜息をついた。
あまりにも無警戒かつ馴れ馴れしい少年に、半ば拍子抜けし、半ばイラつきながら。
まだ子どもだった。少なくとも、どう見ても小学校は出ていない年齢だ。
赤いパーカーにゴーグルのついた帽子、そして鋭い三白眼の金色の瞳が、なんだか『柄の悪そうな』印象を無自覚に与える。
(柄の悪さで言えば杏子も似たようなものかもしれないが)
『ゴールド』という名前からして外国人なのだろうが、それにしてはずいぶん流暢に日本語を話している。
そして、どうも互いの常識に齟齬があるというか、『ポケモン』という生物を一般常識であるかのように話し、どうにも噛み合わない。

住む世界が違うのは、知識だけではない。

支給品と『顔見知り』だったからと言って、杏子を見る限り無警戒に声をかけるのはどういうことだろう。
美樹さやかや鹿目まどかのように、誰かを糧にして生き延びることも糧にされることも考えもしない人種なのだろうか。

「あんた、今の状況分かってるのか? 殺し合いなんだぞ? つまり蹴落とし合い。
こんな状況で、他人にタダで支給品を施してもらえると思ってるのか?」
「だーかーらー、この殺し合いではどうだかしらねーけど、本来ポケモンは、トレーナー以外の命令は受け付けない仕様になってんだよ。
つまり、ポケモンにとってトレーナーと離されるのはそんだけ嫌だってこと。だから俺はこいつを元のトレーナーに返してやりたいんだよ」
ゴールドは地べたにあぐらをかいて座り、ヤミカラスの頭をなでている。
ヤミカラスの方も、知った顔らしくゴールドには懐いているようだ。

……いや、戦いと縁のない一般人の子どもなら、むしろこれが普通なのかもしれない。

最初に参加者名簿を見た限り、明らかに魔法少女じゃない奴ら――どう考えても『少女』じゃない名前――の参加者は大勢いる。
杏子たち魔法少女のように、戦いを日常として生きる存在ならともかく、平和な家庭で何不自由なく生活できるような一般人もいるだろう。
それこそ、鹿目まどかのような。
そんな連中がいきなり『殺し合い』をしろと言われて『なるほど、そうしなきゃ生き残れないんですか。それなら仕方ないですね』とあっさり覚悟を決められるとは思えない。
半端な覚悟や同情で戦いに介入されることを嫌う杏子にとって、主催者のそのやり口には正直苛立ちもする。
しかし、そのことに少し安堵してもいた。
そんな半端な覚悟に一般人に杏子がおいそれと殺されるとは思えないし、それなら行動方針を決める時間的余裕もそれなりにある。

40創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 22:54:07.94 ID:G88Gqsv+
 
41創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 22:54:20.18 ID:sdNGiN/Q

42創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 22:54:58.11 ID:G88Gqsv+
 
43創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 22:55:14.55 ID:sdNGiN/Q

44「別に友達じゃねーよ」 ◆8nn53GQqtY :2011/06/24(金) 22:55:14.66 ID:srMzoa5O
「代りに俺の支給品あげるからさー。どーしても駄目?」
「当たり前だろ。お前がシルバーってのを探してるように、こっちも知り合い探しにそいつが必要なんだよ。
だいたい、そのシルバーってお前の何なんだよ。友達か?」

カチン、とゴールドが固まった。一瞬で顔が赤くなる。

「べ、別に友達じゃねーよ! ……ただ、同じ敵を相手にしてるっつうか、気に食わねえ相手っつうか……」
右手をぶんぶん振りながら、オーバーリアクションで否定する。

杏子は納得して「分かった分かった」と遮った。
人間関係に鋭い方ではないが、その言葉の意味が分からないほど鈍感ではない。

つまり、友達なのだ。
ただ、そこに認められない要素――例えば、顔を合わせるたびに喧嘩してしまうとか、何故か反発してしまうとか、素直になれない理由があるだけで。

胸が、チクリと痛んだ。

顔を合わせるたびに喧嘩する。
何故か反発してしまうのに、関わり続けている。
それなら、杏子とさやかは友達と言えるのだろうか。

たぶん、友達とは言えない。
鹿目まどかは、間違いなくさやかの親友と言えるだろう。
戦いとは関係の無い一般人の少女が、危険の伴う魔女退治まで共にいようとするのは、それだけ彼女を大事に想っているからだ。
そういう意味では、杏子だって執拗にさやかに関わっていたし、彼女を救おうと無謀な賭けにも出ようとしていた。
しかしそれは徹頭徹尾、杏子が一方的にしていたこと。さやかも同じ感情を杏子に向けていたかは甚だ怪しい。
もう少し共に過ごす時間があれば、そういう関係にならないこともなかった、かもしれない、けど。

「とにかく駄目だ。どうして顔も知らない奴の為に支給品を譲らなきゃならねーんだよ」
「ちぇっ。……じゃあ、この支給品と引き換えってのはどうっスか?」
ゴールドはにやりとして、ディパックからそれを取りだした。
黒い宝石だった。
少なくとも、何も知らない人間にはそうとしか見えないだろう。
しかしそれは、『魔法少女』にとって大きな意味を持つ『見返り』。
「グリーフシード! なんであんたが知ってんだよ」
45「別に友達じゃねーよ」 ◆8nn53GQqtY :2011/06/24(金) 22:55:45.11 ID:srMzoa5O
『魔女』と『グリーフシード』の秘密は、キュゥべえに選ばれた魔法少女とその候補しか知らないはずだ。
「いや、使い方までは分かんなかったよ。でもさっきお姉さん『魔女』を探すとか言ってたよな?
説明書に『魔女を生む宝石』って書いてあったから、関係のあるアイテムだろうなー、と思ったんスよ」
読みが当たっていたことが嬉しいのか、えらく得意げにゴールドは解説した。
「そこまで知ってて聞かないのかよ……」
そこまで聞いたのなら、“清隆”の言っていた“魔女の口づけ”という言葉にも反応するだろうし、そうなれば、その意味について杏子に問いただしそうなものだが。
「ん?」
「いや、いい……」
聞かれても面倒だし、第一魔法少女のことに関わらせたくないので、答えるつもりはなかった。
「別に今、譲ってくれとは言わねーよ。ただ、途中でシルバーに会ったらその時に渡すって約束してくれればいいんだ。
それに姉さん、トレーナーじゃないんだろ? 言っとくけど、ポケモンの扱いは俺の方が上手いぞ。」
なるほど、交換条件としては悪くない。

「……って、ちょっと待て、それってアタシについて来るってことか?」

「当たり前だろ。俺だって俺のポケモンたちと合流したいんだ。
こうやってポケモンが支給品にされてる以上、俺の相棒たちも誰かに配られてるかもしれねーからな。
人(?)探しなら人数は多い方がいいだろ。だいいち、姉さんより俺の方がトレーナーとして優秀だし」

喋り方はいちいちカンに触る奴だが、最後の一言に関しては反論できない。
さっきから見ていると、ゴールドは明らかにヤミカラスとの意思疎通が上手いようだった。
杏子と話しながらも、ヤミカラスのガァガァという鳴き声を聞きとり、
「じゃあ連れて来られた時のことは覚えてないんだな」と会話を並行している。
ヤミカラスの知能指数がどれほどなのかも知らない杏子より、よほど有効に指示が出せるだろう。
しかし、それでも一般人を魔法少女の戦いに巻き込むことは、杏子の信条に反することだった。
美樹さやかに影響を受ける前でも、後でも、それは変わらない。

目に険を宿らせ、低い声で杏子は忠告した。
「だが断る。あたしが探してる奴はヤバい奴なんだよ。
悪い奴じゃないんだけど色々と事情があって、出会いがしらに戦いになるかもしれないんだ。
だから、命が惜しかったら、あたしに関わるな」



「そいつって姉さんの友達か?」



思考停止。

今度は、杏子が赤面する番だった。
「べ、別に友達じゃねーよ! ……ただ、腐れ縁っていうか、会うたび喧嘩になるっていうか……」

46創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 22:56:02.33 ID:sdNGiN/Q

47創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 22:56:24.46 ID:JjKjOzKx
 
48「別に友達じゃねーよ」 ◆8nn53GQqtY :2011/06/24(金) 22:56:34.79 ID:srMzoa5O
数秒前まですごんでいたのが嘘のように、しどろもどろになる。
ゴールドの、なるほど納得したという顔もやや腹立たしい。

そして彼は、ほんの数秒だけ考えて、言った。
「それは、一人でやらなきゃいけない決まりでもあるのか?」
「はぁ?」

「姉さんの言う友だち探しが危険なことだったとして、
それは誰かと一緒にやっちゃいけないことなのか?」

「決まりも何もないだろ。関係ないことに首を突っ込むな」
食いさがる少年に若干イライラしつつ、杏子は答えた。
そのお人好しぶりに、こいつ長生きできないなと思い、その事実に対してもイラつきながら。

彼はそんな杏子に構わず、爛々と目を輝かせて滔々と語りだした。
「いーや関係あるね。何故なら、俺のポケモンたちも『支給品』として配られてるかもしれないからだ!
俺は、相棒たちが人殺しの道具にされる前に、探して取り戻したい!
……そうなると、とにかくこの場所で起こる戦いを見に行く必要がある!
ヤバい奴が俺のポケモンを使っていないか、確かめる必要がある。
そんでもって、姉さんはその戦いが起こりそうな場所に向かおうとしている。
ほら。俺はぜんっぜん無関係じゃねえだろ!」

「……めちゃくちゃ薄い関係じゃねーか。だいたい、あたしは足手まといを連れて戦う気はないぞ。
これでもあたしには戦う力があるけど、あんたはそのポケモンってのがいなきゃ何にもできないんだろ?」

鹿目まどかをさやかの元に連れて行ったのは、あくまでさやかに正気を取り戻させる為だ。
足手まといを連れて戦えるほど杏子は器用ではないし、思いあがってもいない。
『人を守ろう』という思いあがりが、不幸を招くことを知っているのだから。

「分かった。連れて行きたくないなら別にいい。
……勝手について行く。
何故なら、俺がどこに行こうと姉さんに指図されるいわれはないからだ。以上!」

「あんた人の話聞けよ。危険だって言ったばかりだろ!?」

「危険なのはどこだって一緒だぜ? 姉さんの友達が俺の方に来るかもしれないんだし。
それにまだグリーフシードは俺のものだからなー……あんまり怖い顔されると、手が滑って川に落としちゃうかもしれないなー……」

「あんた無茶苦茶だ……」



結局、押し切られてしまった。



49創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 22:56:57.45 ID:sdNGiN/Q

50創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 22:57:08.21 ID:JjKjOzKx
 
51「別に友達じゃねーよ」 ◆8nn53GQqtY :2011/06/24(金) 22:57:12.26 ID:srMzoa5O

☆  ☆

さやかやまどかの特徴を伝えた上で、ヤミカラスに二つの命令をした。
周囲を探索し、二人の知りあいを見つけること。
無理に戦闘行為を行わずに報告を優先すること。

「じゃあ出発しましょうや。姉さん」
「へいへい…………」

まぁ、仮に魔女と出くわしたとしても、すぐ結界の外に放り出してしまえば問題はないか。


【D―4/川の南岸/一日目深夜】

【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]健康、いつもの服(変身前)
[装備]ソウルジェム(魔力満タン)
[道具]基本支給品一式、チョココロネ@らき☆すた(残り3/5)
[思考]基本:積極的に殺しにいくつもりはないが、襲われたら容赦しない
1・さやかが魔女化していないか確かめる
2・ヤミカラスに周囲の捜索を行わせると同時に、ソウルジェムで魔女(さやか)の気配を探す。
3・グリーフシードも欲しいし、ゴールドと同行(ただし我慢できなくなったら放りだす)
4・まどかを探す。
5・ほむらの力を借りるつもりはないが、合流できれば越したことはない
6・マミが生き返ったのかどうか気になる
7・しかし、「ポケモン」って何だ?
※参戦時期はまどか☆マギカ9話、さやかの魔女化を見てから、オクタヴィアの結界に侵入するまでのどこか。


☆   ☆

ところで、佐倉杏子の見立てには、ひとつだけ誤りがあった。

佐倉杏子は、ゴールドを『戦いと縁のない一般人』と判断したが、それは大きな誤り。
『ポケモン』という戦闘手段に守られてこそいるものの、彼は決して『戦いと縁のない』存在ではない。

ロケット団と敵対する少年、シルバーと関わることで、彼は彼の住む世界での巨悪である『ロケット団と仮面の男』の陰謀に深部まで関わり、多くの修羅場をくぐってきた。
何度も死にかけ、時には凍った湖に突き落とされ、時にはポケモンリーグの爆破テロに巻き込まれ、それでも己の正義感から、戦いから退くことを潔しとしなかった。

52「別に友達じゃねーよ」 ◆8nn53GQqtY :2011/06/24(金) 22:57:38.16 ID:srMzoa5O
『魔女』のように“人間への呪い”を背負った魔物と戦った経験こそないが、人間の持つ“悪”や“妄執”というものに触れた経験もあるし、
殺意を持って向かって来る敵と対峙したことも何度もある。
佐倉杏子に声をかけたのも、無警戒や不用心からの行動では決してない。
『仮面の男』のような、存在するだけで背筋を凍らせる殺気は、ヤミカラスを連れた少女からは感じられない。
だいいち、害意を持っているなら、シルバーのヤミカラスが――懐いてはいないといえ――平然とくつろいでいるわけがない。
だからこの姉さんは大丈夫。そう確信しての行動だった。
もちろん瞬間的にそこまで推理したわけではなく、直感ではあったのだが。

それに、“魔女の口づけ”のことだってちゃんと覚えていた。
それでも聞かなかった理由は単純。
『話したくないなら聞かねーよ』というだけのことだ。
ゴールドだって情報は欲しい。こんなふざけた『実験』を企画した主催者に関する情報なら、なおさら。
しかし、それを得る手段として『無理に聞き出す』ことを選びたくはなかった。
それに、この手の『他人を巻き込みたくない』というタイプは、無理に聞き出そうとしても余計に口をつぐむものだ。
ロケット団と秘密裏に戦っていた赤毛の少年との経験則から、ゴールドはそう判断する。

キョーコのことを放っておけないと思ったのも、半端な好奇心や蛮勇からではない。
彼女に説明した理由――『手持ちを探したい』――も、それはそれで本音ではあった。

しかし何より彼を動かしたのは、彼女の友人を思う気持ちが本物らしいこと。
そして、決定的なその言葉。

――命が惜しかったら、あたしに関わるな

危険だから自分に関わるなと、全てを一人きりで背負いこもうとするところに、
散々「関わるな」と言ってきた赤毛の少年をダブらせてムカついたというのもある。

何より、『あたしはこれから死ぬかもしれない戦いに行くよ。さようなら』と言われて
『はいさようなら』と素直にお別れできるほど、ゴールドは物分かりが良くなかったのだ。


53創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 22:57:47.72 ID:sdNGiN/Q

54「別に友達じゃねーよ」 ◆8nn53GQqtY :2011/06/24(金) 22:58:05.22 ID:srMzoa5O
相棒(ポケモン)たちがいない以上、いつもみたいには戦うことはできない。
ついでに言うと、キックボードやキューなども取り上げられているから、得意としているギミックの数々も使えない。
できることは限られるだろうが、しかし、いざという時に杏子を背負って逃げるぐらいはしてやれると思う。
少なくともこのまま別れるよりは、よほど後悔しない行動ができるはずだ。

そういうわけで今後の為にも、仮の目的である“手持ちとの合流”は必至。
単純な火力としてバクたろう(バクフーン)やニョたろう(ニョロトノ)がいるだけでも安心感がだいぶ違う。
この場が“人間同士の殺し合い”だということを考えれば、撹乱系の技が使えて小回りも効くエーたろう(エイパム)やトゲたろう(トゲピー)も頼もしい。
……もっとも、大切な相棒であり家族でもある彼らが巻き込まれていないのなら、それはそれで喜ばしいことなのだが。
できればキューやスケボーも欲しいところだが、これは最悪、現地調達と自作で代用が効く。
手近な民家に工具や大工道具があれば、回収しておきたいところだ。


「そういや姉さん、姉さんの支給品は他に何があったんだ? 俺的には工具とかがあればありがたいんスけど」
すたすたと先に立って歩く杏子を追いかけながら、ゴールドは持ち前の馴れ馴れしさで話しかける。
彼女は、とうとう根負けしたように振り返った。
「“姉さん”じゃねえ。佐倉杏子だ。……そうだな、グリーフシードの礼に、ひとつくれてやるか。
勘違いするなよ。あくまでグリーフシードとポケモンの貸しの釣銭なんだからな」

後半をムキになったように強調すると、“キョーコ”はもう一つの支給品を取りだした。

それは、袋に入ったチョココロネ。

「食うかい?」

「…………食うー!!」



そしてこの二人には、ある共通点があった。
二人共、買い食いや歩き食いが大好きなのだ。

55創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 22:58:30.38 ID:JjKjOzKx
 
56「別に友達じゃねーよ」 ◆8nn53GQqtY :2011/06/24(金) 22:58:55.60 ID:srMzoa5O

【D−4/川の南岸/一日目深夜】

【ゴールド@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]健康
[装備] いつもの服(ゴーグルは没収されませんでした)
[道具]基本支給品一式0〜2
シャルロッテのグリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ
核金(ナンバー不明)@武装錬金、S2U@魔法少女リリカルなのは
チョココロネ×1@らき☆すた
[思考]基本:白スーツ野郎の企みをぶっ潰す
1・杏子の人探しを手伝う。
2・ヤミカラスをシルバーに届ける。
3・ポケモンたちが支給品にされているようなので見つけたい。
4・仮面の男には最大限に警戒。
※14巻、仮面の男を追いかける最中からの参戦です。
(オーキド博士の手紙を読む前なので、名簿のレッド、ブルーの名前に反応しませんでした)

【ヤミカラス@ポケットモンスターSPECIAL】
シルバーの手持ちの一匹。
子ども一人程度ならぶら下げて飛行することが可能で、作中でもシルバーを抱えたままかなり機敏な動きで攻撃を回避していた。
覚えている技は“おいうち”“そらをとぶ”など。

※ヤミカラスが D−3方面の上空へと飛び立ちました。


投下終了です。
いっぱい支援ありがとうございました。
57創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 22:58:56.15 ID:sdNGiN/Q

58創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 23:06:32.00 ID:9YCcdAe7
「食った食った…。インスタントもたまに食うと旨いな」
「大体そんなもんだよ。さて、俺はちょっと店の中を見て回ってくる」
「俺も付いて行くよ。1人だと危険だろ?」

…とこんな感じで、2人で店内を見て回る事にした。
そんなに広くは無く、見て回るのにそこまで時間は掛かりそうに無い。
とりあえず、さっきの炊き立てご飯の謎を解く為に、厨房へ向かう。

「メシが炊き立てだったのが、そんなに気になるのか?」
「まあね。勝手にメシが炊ける訳無いし」

2人で厨房を探し回る。
棚の中や冷蔵庫の中。
その横の隙間まで覗き込んで探し回るが、誰もいない。

「棚の中とかはともかく、細い隙間の中に人がいると思うのか、お前は」
「…もしかしたらいるかも知れないだろ」
「んな訳あるか」

冗談なのか、そうじゃないのかは良く分からないが…。
とにかく、厨房には誰もいない。それは確実だ。

「誰もいねえならもう厨房を探す必要もねえな。一旦席に戻るか」





「…誰だお前」

さっきまでいなかったはずの外人が、何故か席に座っている。
敵意は無さそうだが、何だか妙な感じだ。
何と言うか…同性愛を連想させるような…。

「悪い悪い、丁度デイパックが置いてあったから中身を見せてもらったよ」
「人の物を勝手にいじれ、とお前は教育されたのか?」
「まあまあ、そうカリカリするなよ。せっかくいい物が入ってたんだからさ」
59創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 23:07:07.14 ID:9YCcdAe7
途中送信しちゃいました…。
スルーしてやってください
60 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/24(金) 23:39:46.88 ID:9YCcdAe7
投下します
タイトル:むさ苦しいぞこの店
61 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/24(金) 23:40:07.66 ID:9YCcdAe7
「食った食った…。インスタントもたまに食うと旨いな」
「大体そんなもんだよ。さて、俺はちょっと店の中を見て回ってくる」
「俺も付いて行くよ。1人だと危険だろ?」

…とこんな感じで、2人で店内を見て回る事にした。
そんなに広くは無く、見て回るのにそこまで時間は掛かりそうに無い。
とりあえず、さっきの炊き立てご飯の謎を解く為に、厨房へ向かう。

「メシが炊き立てだったのが、そんなに気になるのか?」
「まあね。勝手にメシが炊ける訳無いし」

2人で厨房を探し回る。
棚の中や冷蔵庫の中。
その横の隙間まで覗き込んで探し回るが、誰もいない。

「棚の中とかはともかく、細い隙間の中に人がいると思うのか、お前は」
「…もしかしたらいるかも知れないだろ」
「んな訳あるか」

冗談なのか、そうじゃないのかは良く分からないが…。
とにかく、厨房には誰もいない。それは確実だ。

「誰もいねえならもう厨房を探す必要もねえな。一旦席に戻るか」


62 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/24(金) 23:40:24.10 ID:9YCcdAe7



「…誰だお前」

さっきまでいなかったはずの外人が、何故か席に座っている。
敵意は無さそうだ。

「悪い悪い、丁度デイパックが置いてあったから中身を見せてもらったよ」
「人の物を勝手にいじれ、とお前は教育されたのか?」
「まあまあ、そうカリカリするなよ。せっかくいい物が入ってたんだからさ」

テーブルに俺たちの支給品と思われる物を置く。
銃、ノートパソコン、ボルトのような物。

「その銃、本物…みたいだな」
「確かに本物だぜ」

試しに持ってみる。
ひんやりとした感触、ずっしりとした鉄の重み。
確かに、本物だった。

「…で、お前は何者だ?」
「俺か、俺はガイエル・アゼリン。ボディビルダーやってる」
「見りゃ分かる」





ひと通り名前やら自分たちの知っている情報を交換しあう。
…お互い、情報なんて雀の涙程もないが。

「どっかアテはあるのか?何も無いのにブラ付くのは危険だぜ」
「まあな…だけど、何もしないってのもな」
「確かにな…今、5時ちょい過ぎだ。あと1時間もすりゃ明るくなる、その30分前に山を降りよう」
「ま、いつまでもこんなとこに引き籠ってる訳にも行かねえしな」

63 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/24(金) 23:40:42.95 ID:9YCcdAe7
【一日目・朝/A-7】
【斉藤卓造@オリジナル】
[状態]:健康
[装備]:コルトパイソン(6/6)
[所持品]:支給品一式、.357magnum弾×12
[思考・行動]
基本:殺し合いなんてしたくない
1:とりあえず、5時半まで待つ

【小林竜二@オリジナル】
[状態]:健康
[装備]:ボルト(1/∞)@S.T.A.L.K.E.R.シリーズ
[所持品]:支給品一式、ノートパソコン
[思考・行動]
基本:殺し合いなんてしたくねー。
1:5時半になったらここを出る

【ガイエル・アゼリン@オリジナル】
[状態]:健康
[装備]:スタンガン
[所持品]:支給品一式、男性用制汗スプレー
[思考・行動]
基本:殺し合いはしたくない。
1:とりあえず、こいつらに従っとくか

≪支給品紹介≫
【ボルト@S.T.A.L.K.E.R.シリーズ】
なぜか無限に出てくる。
投げて地面にある見えない罠を見分けるのに使う。
64 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/24(金) 23:41:08.75 ID:9YCcdAe7
投下終了です
65 ◆xzYb/YHTdI :2011/06/25(土) 21:25:55.06 ID:2hS8uklv
皆様投下乙です
投下します
支給品カオス:岡崎「なんか適当だな」
66 ◆xzYb/YHTdI :2011/06/25(土) 21:26:58.05 ID:2hS8uklv
昼。
サンサンと照りつく太陽はまさしく昼のそれである。
すがすがしくその分今のこの状況に酷く似合わなくていらいらするね。
……神様ー。俺何か悪いことしましかー?何だってこんな目に遭わなきゃいけないんだよ。
と、俺はここまで考えてため息を吐く。
あぁ、そうだった。
古泉が言うにはハルヒが神様なんだっけ?
ーーーはぁ、なんか理不尽だ。
改めて実感させていただきました。ごちそうさまです。
なんと言っても状況が変わるわけ無かったので渋々俺は歩き始めたのだった。

「……やれやれだ」

俺の声は恥ずかしながら異様に乾いていた。

 ◇

「ぷっ!はははははははははははははははっ!べ、便座カバー!?は、腹痛ぇ.....」

俺の笑い声が場所に似合わず辺りに響きわたる。
空気読んでねぇなってのはいやでもわかるが。
い、いやでもな―――。 便座カバーって。

「笑いすぎじぁアアアアア!!」

俺と同じく場違いに大きな声を出したのは、志村新八だった。
先ほど偶然出会ったのだけど。
それよりも聞いてくれ。こいつの声を。
67 ◆xzYb/YHTdI :2011/06/25(土) 21:27:27.35 ID:2hS8uklv

「岡崎さん!いい加減僕をからかうのやめてもらえません!?」

そう。『あの』春原陽平と同じ声なのである。
さすがにこれには驚いた。
この声は俺にとって日常と最も密接、関係している。
だからなのか、違うのか。
初めは震えていた俺の身体は、こいつと出会ってから自然と、極普通に、いつの間にかと言うべきか。
とにかく俺の身体の震えは、収まっていた。
俺の脳は単純だな、とも思ったけど今回はそれがプラスに作用した。
そして今では笑えるぐらい落ち着いた。いや落ち着いてねぇな。笑っているって。
―――まぁそれはいいや。
さて、もう俺のことはいいだろう。
つーわけで、次の話題。
ていうか今の話題。
今俺たちは一旦腰をおろし、自分たちの支給品を確認しあっている。
まずは新八からということに決まったので、新八からだしたのだが...。
そこで出てきたのが、先ほどから言っている便座カバーだった。
―――ぷっ!
やべ、また笑いがこみ上げて来やがった。
こ、今度は抑えなきゃな。



しかしその思考は本当に無駄だったようだった。



草を踏みにじる音が聞こえた。
そして、いつしか俺の前には、男が現れた。
名前も知らない、見たことのない人だった。
新八はまだ気づいていない。

そして。

その男の握っていた刀は、そのまま新八に振りかざされそうとしていた。
その時ようやく。
新八はその男に気付がついた。
68 ◆xzYb/YHTdI :2011/06/25(土) 21:28:44.51 ID:2hS8uklv

 ◇

俺はあれから訳なく古泉と合流できた。
不思議なことにだ。我が親愛なる団長様へ。不思議なことを見つけたので帰らせろ。
お前の力はこういうときに使え。それができなきゃ神様なんて辞めちまえ。
―――まぁそれをハルヒに思ったところでしかたないんだがな。
まぁなんつーかそういう訳で、俺は今マイナス100円(意:100円返せ)なスマイルを
向けられて、何やら聞かされている。
が、生憎俺の耳には入ってこない。
くそー。俺の耳め。いつの間に自動雑音遮断システムなんて取り入れたんだ?憎い奴め。

「聞いていますか。今回は割と重要パートですよ?」
「聞いてねぇよ。お前の話はいちいち長い。もっと短縮できないのか」

それでもさすがに最初の方は聞いていたが、
『機関』やらなんやらが出てきたときにはドーーーンと思考は爆発しちまったさ。

「そんなことだろうとは思っていましたよ」

困ったものです。と古泉は嘆息をつく。
わかっているなら行動に移せ。そう言おうと思ったが、
次の句を先に古泉にとられた。
そしてそのまま俺の台詞は暫くやってきそうになかった。
古泉は至って真面目そうに、それでありながら目に見えて沈痛のオーラを声に纏わせ言い放った。
69 ◆xzYb/YHTdI :2011/06/25(土) 21:29:51.64 ID:2hS8uklv
「ずばりですね。やはりこの件も涼宮さんが関わっているのではないか。と言うことです」

お前にはそれを言う以外に脳はないのか。

「で、ですが、その理由づけを先ほどまで話していたんですが、聞きたいですか?」
「…………」


曲がりなりにもこいつはハルヒのエキスパートだ。
一応、信頼にもおける人物だ。
こいつが言うならそうなんだろう。
でもなんだって、こんなことをハルヒは望んだ?
何でだ、―――ハルヒ。
そんな絶賛混乱中の俺を知らずか、古泉は次の話題を振ってきた。

「で、これからですが、
僕が今から言うこと怒らないで協力してください」

そして俺の有無を聞かず、さっさと発表しやがった。
いつもはうざいぐらいじらすこいつが、――――だ。
70 ◆ymCx/I3enU :2011/06/25(土) 21:37:54.99 ID:Ldk8BWLB
【報告】

xz氏はPCの異常により投下を中断されたようです
71 ◆xzYb/YHTdI :2011/06/25(土) 22:31:45.85 ID:2hS8uklv
再開


そんな事考えている間に、古泉の、その口が、開かれた。


「殺し合いに乗っていただけませんか」


―――。
ナンテイッタ?コイツ。

 ◇

どうやら俺は斬られたらしい。
思い出せるのは、新八が、
この男の声に、銀さ―――。という途切れた声を残し、二つの肉体に分かれ、死んで、
それを見て腰を抜かした俺の目の前に現れた男の、すまない。と
いう呟きにも似た小さな声だけだった。
そしてそのまま、俺は死んだらしい。
俺の頭の中は光に包まれた。

最後に見た景色は何故か親父と手を繋いだ、
幼き俺が見た花畑。
陳腐な言葉になってしまうが、


それはとても綺麗だった。


【志村新八@銀魂:死亡】
【岡崎朋也@CLANNAD:死亡】
72 ◆xzYb/YHTdI :2011/06/25(土) 22:35:52.72 ID:2hS8uklv

 ◇

「考えてもみてください
「僕たちが参加して、何事もなく、主催の思いのままに事が進んでしまっているこの事実についてです
「残念ながら朝比奈みくるをはじめとする未来人に関しては生憎何とも言えませんが
「長門有希をはじめとする我々で言う宇宙人、正式には対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイスがこれを黙認している理由
「そして僕をはじめとする『機関』が僕を放置している理由
「―――これでも僕は『機関』に嫌われては無いかと思っているんですけどね
「それはいいですか
「そうですね、では話を本筋に戻しましょう
「それでまずは『機関』についてですが、はっきり言って僕は愚か、あなたをこの様な場に放置する理由はありません
「この殺し合いを壊せるであろう力ももっています
「少なくとも僕でしたらこの殺し合いを何が何でも潰す為に働きますよ
「そもそもあなたは涼宮ハルヒさんの『鍵』なんです
「それなのにあなたが不可思議に不条理に不秩序に死ぬかもしれないという状況を無視する理由が僕には分かりません
「最悪の場合、そのまま世界は崩落です
「そんな不信な目をしないでください
「それぐらい、涼宮さんがあなたを必要としているということですよ
「もうそろそろそのぐらい自覚したらどうですか
「―――失礼、言い方が乱暴になってしまいましたね
「では次に長門さん他宇宙人についてです
「とはいっても僕が言いたいのは、『機関』のときとそう大差ありません
「ですが僕たち以上に、彼女たちが僕たちを放置している理由がよく分かりません
「情報を解析し、そのまま分解させればいいだけです
「いとも簡単に、僕たちを救えます
73 ◆xzYb/YHTdI :2011/06/25(土) 22:36:16.38 ID:2hS8uklv
「勿論僕たちがこの殺し合いに参加しているのはご存知でしょうね
「それでもなお、この状況を維持させているのかが気になります
「おそらく今でも、急進派ではなく主流派が彼女たちを代表しているでしょうし
「少なくとも昨日まではそうだったはずですよ
「長門さんも何も言っていなかったでしょう
「あと言っておきますが、涼宮さんが関わっていないなんてことはありませんよ
「何故なら、そうでなければ、彼女がこんなことを望む訳がないからです
「分かるでしょう
「ではなぜか、何故こんなことが起きたのか
「という問題ですが
「そこで我々『機関』と宇宙人、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイスに共通すること言えば、やはりこれしかないでしょう
「涼宮ハルヒという存在です
「願望を実現させてしまう力、ですよ
「僕としても彼女がなぜこのようなことを望んだのか些か不明なんですけど
「しかし考えるとするならば
「一つ目に僕かあなた、もしくはその両方を死ねばいいと望んだことですかね
「ですが、これは考えたくありませんね
「まず嫌われたことしたか自分では分かりませんし
「あなたに関してもないでしょうね
「―――まぁ、勘に近いものがありますが
「では二つ目に何かこのような物語、これに近い設定のアニメ、漫画、小説、ドラマ
「どれかは分かりませんが、それに感化された、という可能性ですか
「ありえなくはありません
「実際似たようなことがありました
「あなたの周りにもありませんでしたか
「この場合に関しての疑問点としては、何故僕たち二人だけなのかという点ですよね
「涼宮さん自身が参加しなければ意味無いですし、どうせならばSOS団5人で来るかと思われます
「なんだかんだいって彼女は仲間意識は高いです。味方という物を重んじりますよ
「その視線の意味は察しれます
「重んじるのなら、よりにもよって殺し合いという舞台に呼ばないかと思いますよ
「それでもあなたがここにいる理由は察しがつきますよ
「自分ではご存じないかもしれませんが、あなたは週刊少年ジャンプ的に言うのであれば、主人公に部類します
「そのあなたのこの危機的状況下での活躍もみたいというのがあるのかもしれませんね
「じゃあ三つ目はというとあなた、『キョン』という人物を確証させるためです
74 ◆xzYb/YHTdI :2011/06/25(土) 22:36:54.58 ID:2hS8uklv
「あなたは涼宮さんの精神に干渉しすぎたと言いますか、疑心暗鬼にさせてしまう断片を与えすぎたんだと思います
「あなたは、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者、それかそれ以外の人種ではないか、という断片です
「改めて言いますと、超能力者だけ浮いてますね
「まぁいいですが
「あぁすいません、話を戻しますね
「ですが、そのような場合でしたら、これに関しては、あなたに非はありません
「僕たちのサポート不足です
「僕がいる意味としては、――――まぁ僕も涼宮さんからみたら不審な行動をとったかもしれませんね
「自身が不機嫌な時に限って『バイト』でいなくなり、あなたとよく内緒話をしているのを目撃されました
「ですから僕がいても不思議ではないと思いますよ
「確証のしかたとしては、そんなすごい人物だったら、きっと殺し合いなんてものともしないだろうなー
「なんていう軽い気持ちで願ったことかもしれません
「ですからそんな目を僕に向けないでください
「僕としてもただの推測でしかありませんし、真実を知りたいところなんですから
「そうですね、僕としてはこんなぐらいしか思いつきませんね
「ですが共通して言えることと言えば、どの選択肢にしろ、涼宮さんはあなたに『ナニカ』を望んでいる
「て言うことが分かります
「一つ目の奴ではあなたの『死』を
「二つ目の奴ではあなたの『活躍』を
「三つ目の奴ではあなたの『正体』を
「あなたが『鍵』を握っていることには変わりありません
「実を言うと、僕が今こうしてあなたと話しているという事実も彼女が造りだしたものかもしれません
「それは別にいいのですが
「で、初めに戻ります
「あなたには殺し合いに乗ってもらいたいということです
「理由は、彼女がそう望んでいるからです
「――――と言ってもあなたは納得してくれそうにありませんね
「ですが、こちらにも種は所持していますよ
「まず、一つ目の理由にしろ、二つ目の理由にしろ、三つ目の理由にしろ
「あなたをこの殺し合いの場に呼んだという事実にかわりありません
「ではあなたの問いたいのですが、これは殺し合いである意味はあるのでしょうか
「例えば一つ目の理由だったら、別に呼ばなくとも、あなたが眠っている間に存在ごと消せばいいだけだと思いますし
「例えば二つ目の理由だったら、本当に殺し合いでなくとも、俗に言うサバイバルゲーム的なことを彼女は望むはずだと僕は思います
「例えば三つ目の理由だったら、殺し合いの場でなくとも、いつかみたいに、ゲームの世界にでも呼べばいいだけだと思います
「考えれば考えるほど、殺し合いである必要性はないんですよ
「ですが現に僕たちはこうして殺し合いに呼ばれてしまいました
75 ◆xzYb/YHTdI :2011/06/25(土) 22:37:59.25 ID:2hS8uklv
「それは、殺し合いでなければならない何かがあったためだと思います
「あくまで勘の域を超えたりはできないので確定はしませんよ
「ですが、僕の考えとして話させてください
「――――では言いますね
「今回招かれたのが殺し合いである理由
「それは、僕たちに殺し合いをしてもらいたいから
「それしか貧困なる僕の能ではそれしか思い浮かびませんでした
「理由づけは強引でいいのでしたら言いますよ
「ただただ単純にあなたが『普通』ではない
「いわいる殺人鬼でしたら面白そうだな、とか
「あなたのその怠けた考えを直したい
「その延長線上にあった殺し合いに乗ってもらいと、無意識下で考えてしまったのか
「無意識下のうちに、やっぱり実をいうと、あなたは足りない異世界人であるのではないか
「だったらこのぐらいのことをしたらどうなるのかな、と考えでもしたのか
「別に挙げればキリがありません
「ただしどれも決定打に欠けますけどね
「しかし逆に言うのであればどれをとっても、その通りだ、とも取れてしまうんですよ
「だから僕たち『機関』、そして対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイスは
「黙らざる負えないんですよ、きっとですけどね
「さて、ですが、こうは言っても、あなたはまだ納得しませんよね
「仕方ないことですが
「ですから最後に言っておきますよ
「僕とあなた両方ともが殺し合いに乗らないと、世界が滅びる
「という可能性があるってことですよ
「まず大前提として、僕とあなた、もしくは片方は生きて涼宮さんの元に帰るという役目があります
「そこは納得してもらえますね
「いいでしょう、では次に、帰らなければ涼宮さんは暴走する可能性が高い
「ということも納得していただけますか
「はい、そうですね
「実際問題彼女は精神面は非常に不安定で脆いところがあります
「SOS団2人がいきなり消える、それも『鍵』であるあなたが消えるとなると、きっと彼女は暴走します
「そうなると急速に神人は凶暴化し、『機関』でも手に負えないほど、暴れまわります
「そうなると勿論『閉鎖空間』は、『現実』と入れ替わるという現状が起きます
「そうなると―――――――世界は滅びた
「と言っても過言ではないでしょうね
「ですからあなたには殺し合いに乗ってほしいんです
「はぃ、あぁ確かにこれだけでは殺し合いに乗る必要は無いでしょう
「ですが考えてもみてください
「何もしなければ死にますよ
「人を殺す
「その意思がなければさっさと死ぬと思います
「不意打ちだろうが、闇討ちだろうが
「とにかく敵がいなければそれはイコール生きていられるということですよ
「ここにいると、きっと人は狂います
「こんな極限化の中で平穏を保てる人間なんてそうはいないでしょう
「狂えば、狂気に走ることになる
「実際似た様な人を『機関』で見たことがあります
「それは僕としても同じ心境ですし、あなたも同じでしょう
「ですから、皆さんが狂気に走る前に殺してほしいのですよ
「憂鬱になろうが、溜息を吐こうが、退屈しようが
「消失させようが、暴走しようが、動揺を誘おうが
「陰謀を抱えようが、憤慨を起こそうが、分裂に極めようが
「驚愕な出来事を、人を殺すという行為をばら撒いてください
「最後にもう一度
76 ◆xzYb/YHTdI :2011/06/25(土) 22:38:44.78 ID:2hS8uklv
 ◇

殺した
殺した
殺した

俺がーーーーー

でも止まることは許されないんだ、俺には
世界の為にも、ハルヒの為にも

だから喜んで成り染まろう。


―――修羅の道に―――


【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]健康?
[装備]鉄子の打った刀@銀魂
[道具]支給品一式×3、ランダム0〜7、便座カバー
[思考]
基本:?
1:?
77 ◆xzYb/YHTdI :2011/06/25(土) 22:39:13.93 ID:2hS8uklv

 ◇

ここにも死体一つ。
古泉一樹の死体だった。
古泉は頭から潮を噴き出す。

「いやー。あぶないあぶない。サイテー野郎に行動させちまうとこだったほんと死ねばいいのにな」

そこには零道一弥がいた。

「全く、殺し合いを広めようなんて死ねばいいのに。あっ、もう死んでいるか」
「まぁ、人を殺していいんなら、殺しちゃおっかな、死ねばいいのにな俺って」

彼は古泉たちの会話を陰から聞いていた。
これに古泉は気づいていた。
だが、負けた。
それは、単純に零道が強かったからにすぎない。
彼は大学生にして、殺しの道に走ったいわば犯罪者だ。
その彼は、ここにいる。
呼ばれてしまったのだ。
これも涼宮ハルヒの願いなのであれば、とても皮肉なものだった。
だが確かに、古泉一樹は死んだ。


キョンに最悪の道しるべを捧げて。


【古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱:死亡】


【零道一弥@オリキャラ】
[状態]健康
[装備]サバイバルナイフ@現実
[道具]支給品一式×2、ランダム0〜5
[思考]
基本:殺し合いに乗る
1: 適当にぶらぶら
78 ◆xzYb/YHTdI :2011/06/25(土) 22:40:43.91 ID:2hS8uklv
投下完了
一回8n氏みたいな感じなのやってみたかったが
見事失敗。
なんか矛盾していると思うが御愛嬌ということで
79 ◆ymCx/I3enU :2011/06/26(日) 00:52:51.18 ID:rOwf3T8R
投下乙です。新八が…

投下します。俺得5 18話 澄んだ瞳が呼び覚ます
登場:フラウ、大崎綾
80澄んだ瞳が呼び覚ます ◆ymCx/I3enU :2011/06/26(日) 00:53:27.89 ID:rOwf3T8R
18話 澄んだ瞳が呼び覚ます

ホテルかとも思ったが、どうも別の目的の建物のようだ。
どちらかと言えば「ラブホテル」のような雰囲気――ラブホテルに入った事は無いが。
狐の少女、フラウはその建物――娼館の個室を回りながらそう思う。

右手に持つのは支給されたCz85自動拳銃。
以前の殺し合いで支給されたM79グレネードランチャーと比較すると威力は低いが、
扱い易さは上だ。

(…ケトルに崖から落とされて意識を失ったけど、私はあの後どうなったんだろう…?
死んだのかな、やっぱり…微かだけど、首輪が爆発した音が聞こえたような気がしたし…)

以前自分が参加させられていた殺し合いにおいて、自分が結局どうなって、
今この荒神健児を名乗る男が催す別の殺し合いに呼ばれているのか、フラウには全く分からなかった。
ただ、崖から落ちた時に受けたはずの身体の傷、ケトルに斬られた肩の傷などは全て消えており、
体力も気力も十分になっている事は確かだった。

「あ…うあ」
「……!」

とある個室に入った時、自分と同じ狐獣人の少女がいた。
怯えている様子で震えながらフラウの事を見詰めている。

「こ、殺さないで…殺さないで…」
「……」

フラウは無言のまま、右手に持ったCz85を、

「……落ち着いて」
「……?」

スカートの腰部分に差し込み、少女に優しく語り掛けた。

「殺し合う気は無いから」
「…本当? 本当に?」
「本当よ」
「……」
「私はフラウ。あなたは…」
「お、大崎綾」

フラウは少女に自己紹介し、少女もまた自己紹介をした。

(ここには英人も由佳ちゃんもケトルもいない…私が前みたいに戦う理由は無い)

以前の殺し合いでは友人のために修羅になる決意をしていたフラウだったが、
名簿を見る限りその友人はいない。前のようになる必要は無かった。
今度はこの殺し合いを潰すために行動しようとフラウは決めていたのだ。

「綾さん、良ければ一緒に行動しない?」
「い、いいの…?」

誰一人知人もいない殺し合いの中で単独行動していく勇気など無かった綾にとって、
フラウの申し出は有り難い事だった。
81澄んだ瞳が呼び覚ます ◆ymCx/I3enU :2011/06/26(日) 00:54:50.97 ID:rOwf3T8R
「お、お願い、私からも、よ、喜んでっ!」
「宜しく。綾さん」

フラウと大崎綾は共に行動する事を約束した。

「綾さんは何を支給されたの? 私はこの拳銃だけど…」
「私は…」

自分のデイパックから自分の支給品を取り出す綾。
それは刺突専用の短剣スティレットと、ノートパソコン。
フラウがノートパソコンを受け取り部屋のコンセントに電源コードを繋ぎ起動させる。
しかし、特に変わった所は無い。

「…何かあるかなと思ったけど、そんな事は無かったなぁ」
「うん…」

仕方無く、フラウはノートパソコンの電源を切った。

「一応、持っておいた方が良いね」
「分かった…」

しかし何かの役には立つかもしれないと、パソコンは持っていく事にした。


【早朝/D-1娼館三階:305号室】
【フラウ@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]Cz85(15/15)
[持物]基本支給品一式、Cz85のマガジン(3)
[思考・行動]
0:殺し合いを潰す。
1:綾さんと行動。
[備考]
※本編死亡後からの参戦です。
※クラスメイトについてまだ話していません。

【大崎綾@オリキャラ】
[状態]健康
[装備]スティレット
[持物]基本支給品一式、ノートパソコン
[思考・行動]
0:死にたくない。
1:フラウさんと行動。
[備考]
※特に無し。
82 ◆ymCx/I3enU :2011/06/26(日) 00:55:29.21 ID:rOwf3T8R
≪支給品紹介≫
【Cz85】 支給者:フラウ
チェコスロバキア製の自動拳銃、Cz75の発展型。安全装置を両面に付け、左利きでも簡単に使用できる様になった。
しかし当初は破損事故が多発し商業的には成功していない。現行モデルでは改良されている。フラウに支給された物も、
現行モデルである。

【スティレット】 支給者:大崎綾
刺突専用の短剣。瀕死の重傷を負った騎士にとどめを刺すために用いられたということから、
「ミセリコルデ(慈悲の剣)」とも呼ばれた。

【ノートパソコン】 支給者:大崎綾
普通のノートパソコン、のように見えるが…。

≪オリキャラ紹介≫
【大崎綾(おおさき あや)】
17歳の狐獣人の少女。高校二年。廃墟好きで廃墟関連の写真集を大量に持っていたり、
廃墟に実際に行ったりしている。しかし、怖がりと言う矛盾した性質。貧乳。

投下終了です。
83 ◆ymCx/I3enU :2011/06/26(日) 21:17:58.22 ID:rOwf3T8R
投下します。俺得5 19話 浮かぶ残像でボルテイジ炎上
登場:太田太郎丸忠信、安達洋子
84浮かぶ残像でボルテイジ炎上 ◆ymCx/I3enU :2011/06/26(日) 21:18:43.92 ID:rOwf3T8R
19話 浮かぶ残像でボルテイジ炎上

裏口から健康センターに侵入した太田太郎丸忠信。
広いホールに設置された案内版を見る限りだと、理髪店やエステサロン、
食堂、ゲームコーナー、仮眠室、売店、日焼けマシン、大浴場に露天風呂など。
様々な施設があるようだった。

「外から見えたな露天風呂っぽいのは…広いな…一人で探索すんのはちと骨が折れる」

それなりに広い施設のため自分以外にも誰かいる可能性は高いが、
正直な話、館内を隅々まで見て回るのは面倒だった。

「まあ、まずは…一階の食堂にでも行ってみっか」

太田は一先ず、食堂を調べてみる事にした。

……

食堂のテーブル席に座って支給されたレバーアクション式小銃、
ウィンチェスターM1873を眺める淡い水色と白の毛皮を持つ狼獣人の少女がいた。

「へぇ、カッコいいなー…」

少女、安達洋子は試しにM1873を構え、適当な場所に狙いを定めて引き金を引いた。

ダァン!

狙ったテーブルに穴が空き木屑が飛び散る。

「おおお、凄い…」

M1873の威力に驚き、思わず笑いが込み上げる洋子。
その時食堂入口の扉が開いた。

「ん…」

洋子が入口に視線を向けると、日本刀らしい物を持った自分と同年代ぐらいと思われる、
背の高い中々イケメンの少年が入って来ていた。

「誰?」
「…一人いたか、やっぱ」
「誰よ?」
「俺は太田太郎丸忠信ってんだ…」
「ふぅん、私は安達洋子…太田君? あなたこの殺し合い、やる気になってる?」
「あんでそう思うんだ?」
「何となく…ちなみに、私は今考え中」
「そうか……それなら」
「…?」
85浮かぶ残像でボルテイジ炎上 ◆ymCx/I3enU :2011/06/26(日) 21:19:32.36 ID:rOwf3T8R
太田はゆっくりと淡水色の狼少女に近付く。
洋子は特に警戒する訳でも無く、太田が自分に歩み寄るのを見守る。
そして、太田は洋子の顎の所を右手の親指と人差し指で軽く掴み、ぐいと顔を持ちあげた。

「俺の奴隷になるってのはどうだ?」
「…奴隷…? ……へえ、面白いかも……」

太田は洋子を床に押し倒すと、手際良く衣服を脱がし始めた。

(ふぅん、テトの奴程じゃねぇけど…中々の乳だな…)
「最近ちょっとご無沙汰だからさ、優しくしてくれる?」
「どうかな? 保証は出来ねぇよ…それに、口のきき方がなってねぇな」
「ああ…最近、余りしていないので、優しくして下さい、ご主人様」
「……ククッ」

奴隷と言うには少し違うが、面白そうな手駒を手に入れられたと、太田は喜ぶ。

【早朝/D-1娼館三階:305号室】
【太田太郎丸忠信@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]菊一文字RX-7@銀魂
[持物]基本支給品一式
[思考・行動]
0:取り敢えず自分優先。
1:クラスメイトや仲間は特に捜す気は無いがテトと仲販遥は会ったら…。
2:安達洋子を奴隷として連れて行く。
[備考]
※本編死亡後からの参戦です。
※花丸木の容姿、名前を記憶しました。
※土井津仁のハーモニカ@浦安鉄筋家族は花丸木に投げ付け放棄しました。
※会場と外界を仕切る目印がある事に気付きました。

【安達洋子@オリキャラ】
[状態]健康、衣服を脱がされている
[装備]ウィンチェスターM1873(13/14)
[持物]基本支給品一式、.45LC弾(20)
[思考・行動]
0:取り敢えず太田君の奴隷として行動。
[備考]
※特に無し。

≪支給品紹介≫
【ウィンチェスターM1873】 支給者:安達洋子
レバーアクションで有名な、西部開拓時代もといアメリカを代表する名ライフル。「西部を征服した銃」と呼ばれ多くの西部劇に登場する。
使用弾薬は拳銃弾で、コルト社のシングルアクション回転式拳銃「S.A.A」と弾薬が共用出来る。

≪オリキャラ紹介≫
【安達洋子(あだち ようこ)】
18歳の狼獣人の少女。高校三年。淡水色と白の毛皮で、巨乳。飄々としており、何を考えているかいまいち掴めない。
性行為を遊びの延長として考えており全く抵抗無く行為に及ぶ。他人や自分に関心が無いようにも見える。
86 ◆ymCx/I3enU :2011/06/26(日) 21:20:14.73 ID:rOwf3T8R
投下終了です。
87 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/26(日) 22:18:07.66 ID:OzihRh+o
投下乙です。

続いて自分も投下します。
88 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/26(日) 22:19:01.04 ID:OzihRh+o
 浜面は森林と市街地との境界に沿って続く道路を走っていた。
 自分の足ではなく、街中の有料駐車場に泊めてあった車で、もっと言えば持ち前のピッキング技術で盗難せしめた車で。
 浜面は片側一車線の道路を猛スピードで駆け抜けていた。
 車種はライトバン。白色の車体から重低音のエンジン音を唸らせて、人間では到底追い付けない速度で道を進む。
 その速度は浜面の焦燥感を表しているようであった。

(ちくしょう、人っ子一人見当たらねえぞ!)

 周囲が暗闇だという事も影響しているのだろうか、幾ら車を走らせど参加者を発見する事はできない。
 焦燥感が浜面の心中に募っていく。
 『原子崩し』麦野沈利。
 『AIMストーカー』滝壺理后。
 どちらも暗部組織の一員として学園都市の裏側で生きてきた少女達である。
 片や学園都市に七人しかいない超能力者、片や学園都市の上層部にすら重宝される大能力者。
 レベル0の浜面如きが心配するような少女達ではないのかもしれない。
 だが、浜面は知っている。
 軍隊を相手取れる超能力者であろうと、将来的に学園都市最強の能力者に成りうる大能力者であろうと、その能力を振るう彼女達は少女だ。
 まだ酒も飲めない、煙草だって吸えない、成人すらしてない少女。
 分かっている。
 彼女達だって人並みに悩み、人並みに笑い、人並みに後悔だってする。
 そんな少女達がこんな殺し合いに参加させられている。
 そう思うだけでペダルを踏み込む右足に力が籠もった。
 呻りを上げるライトバン。
 法定速度をぶっちぎりで超過して、白色の車両が道を進む。
 そして数分後、浜面はとある少女と遭遇する事となる。
 その出会いは浜面からすれば青天の霹靂で、シチュエーションなどまさに空から降ってきた系のヒロインであった。
 いきなり空から降ってきて浜面の前へと現れた少女。
 少女の名前は美樹さやか。
 空から降ってきた系のヒロインであり、魔法少女でもあり、そして―――ヤンデル属性も持ったスーパー多ジャンルヒロイン。
 確認しておく。
 ヤンデ『レ』ではなく、ヤンデ『ル』のだ。
 もう半端ないくらい、それこそ浜面が和解を果たした超能力者の全盛期と同等か、それ以上のヤンデル具合を見せつけている。
 そんな少女との出会いを露とも知らず、レベル0の無能力者はライトバンを走らせる。
 彼が、空から降ってきた系のヤンデル魔法少女と出会うまで、あと一分を切っていた。







 そして将来の空から降ってくる系のヒロインにして、現ヤンデル魔法少女・美樹さやかは暗闇の森林を歩いていた。
 時間にして浜面と遭遇する30分程前。まだ彼が車を探し歩いている時間だ。
 何処か覚束ない足取りで森林を進むさやか。
 その表情は無表情で、瞳にも何の感情も宿していない。
 何も映さず、何も感じさせないその瞳は、言うなれば虚無。
 感情を何処かに忘れてしまったかのような、そんな虚無の表情。
 少なくとも、ただの少女が見せるような表情ではなかった。
 さやかは、思う。
 もうどうでも良い、と。
 気付かぬ間に拉致されていた事。
 爆薬の詰まった首輪により命を握られている事。
 殺し合いを強制させられているという事。
 その全てが、どうでも良い。
 彼女はもう分からなくなっていた。
 結局自分は一体何が大切で、何を守ろうとしていたのか。
 自分は何で命懸けの戦いを続ける魔法少女になったのか。
 自分は何で命懸けの戦いを続けていたのか。
 何もかもが分からなくなってしまった。
89 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/26(日) 22:20:06.95 ID:OzihRh+o
 命は、魂は、手中の小さな宝具にある。
 肉体はもう、命を動かす為だけに存在する入れ物となってしまった。
 もはや自分は動く死体で、まるでゾンビのようなものだ。
 そんな身体になってまで、何を守りたかったのか。
 そんな身体になってまで、自分はどんな願いを叶えたかったのか。
 何で、戦い続けるのか。
 何で、どうして、その全てが分からない。
 分からないから、別にもう全部がどうだっていい。
 死人のような瞳で、死人のような表情で、死人のような足取りで、さやかは道無き森林を進んでいた。
 全てが全てに興味をなくした魔法少女が、死人のような容貌で進んでいく。
 彼女の手中にある宝具が、見る見る内に色を変化させていく。
 やはり魔法少女は殺戮の場であろうと、変わらない。
 変わらずに破滅への未来へと突き進んでいく。


「あ〜腹へった〜。飯〜、肉〜。なのは、何か食い物持ってねえのか?」
「ルフィ君。ついさっき、食べちゃたじゃない。それも全部。分けるつもりで上げた、私の食料も全部」
「??? あれは繋ぎだろ?」
「あれで全部だよ。もう食料なんて何もないよ」
「えええええええ! どうすんだよ、なのは!!」
「それは私の台詞なんだけど……」
「くっそー、こうしちゃいらんねえ。早く飯屋を探さそう!」

 
 そして、破滅の寸前にてさやかは見た。
 暗闇の森林を歩く二人組の男女。
 麦わら帽子を被った快活な青年と、茶色のスーツに身を包んだ女性。
 こんな殺し合いの場だと言うのに、二人はギャアギャアと騒ぎ合って道を進んでいた。
 愉しげに会話をする男女。
 その光景を見て、何故だかさやかの胸中にある感情が沸き上がる。
 理性では醜いと感じていても、どうしようもなく沸き上がってしまう感情。
 その醜悪な感情は、嫉妬と呼ばれる感情であった。
 さやかの表情に色が灯る。
 この殺し合いに連れて来られて、初めて浮かべた感情。
 冷徹な瞳で二人組を見詰め、さやかは手中の宝石を胸元へと掲げる。
 さやかの身体が光に包まれ、一瞬にしてその姿を変えた。
 白色の外套に、太腿まで伸びる白色のロングブーツ。
 上半身は青と白の二色を基調にしたボンテージのような服。
 腰回りもまた青色のミニスカートで覆われている。
 先程までの学生服とは別次元にかけ離れた服装。
 ファッションセンスとかそういう言葉を遥かにぶっちぎった恰好であったが、そんな服装のインパクトすらも霞む程のものを美樹さやかは右手に持っていた。
 彼女の上半身よりも少し長い位のサーベル。
 まるで中世の騎士が装備していそうなサーベルを、さやかはそのまんま右手に握っていた。
 サーベルをクルリと一回転させ、そのまま中段の構えを取る。
 その構えの先には、並んで歩く二人組がいる。
90 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/26(日) 22:21:12.36 ID:OzihRh+o
 自分は何をやっているのかと、構えを取りつつもさやかは思った。
 こんな事をしてもどうにもならないのに、そんな事分かっているのに。
 さやか自身、自分を突き動かす感情の正体に気が付いていた。
 醜悪な嫉妬。
 おそらくは恋人同士ですらない、二人組。
 そんな二人組を見て、自分はこんな醜い感情を沸き上がらせている。
 醜い。
 気持ち悪い。
 さやかは、自分の事を心の底から、そう思った。
 だが、そう自身を断じて尚も、身体は動き出そうとしていた。
 心中に沸き上がる感情に任せて、身体が動く。
 自己嫌悪の最中にて、絶望の魔法少女は動いていた。
 渾身の力で地面を蹴り、最高の加速とスピードをもって視線の先の二人組へと迫る。
 標的は二人組の片割れ、麦わら帽子の青年。
 青年との間にあった三十メートル程の距離が一瞬で消失し、サーベルが暗闇で煌めきの軌跡を描く。
 横一閃にその頸部へと。
 木々の間から降り注ぐ月光に照らされながら、サーベルが振るわれた。


「うおっ!?」


 が、サーベルは青年の薄皮を切り裂くに終わった。
 魔法少女として強化された肉体による高速移動に、高速の一閃。
 常人では反応すら出来ないであろう一撃に、青年は易々と対応せしめた。
 上半身を弓のように反らし、ブリッヂのような体勢を楽々と取って回避する。
 加えて、青年の行動はそれで終わらない。
 上半身を倒したまま右手を振るい、返しの右拳をさやかの顔面へとぶちかました。
 シフトウェートも型すらもない、右腕の力のみで放たれた一撃は、だがしかし強烈であった。
 拳の刺さった右頬を中心としてさやかの身体を吹き飛ばし、再び三十メートル程の距離を造る。
 地面を三回程バウンドし、木々に激突する事でようやく勢いが止まる。

「あーびっくりした。何すんだよ、いきなり」

 額に小さく冷や汗をかきながら、青年は吹っ飛んでいったさやかを見詰めていた。
 回避の際に頭から外れた麦わら帽子を、右手で掴む。
 殺され掛けたというのに、その表情には純粋な驚きしかなかった。

「大丈夫、ルフィ君!」
「ああ。平気だ。何ともねえ」

 唐突な事態に慌てたのはスーツ姿の女性であった。
 焦燥を宿した表情で青年へと近寄り、安否の確認をする。
 僅かな傷を負っただけの青年に、女性は安堵の息を吐き、自身の臨戦態勢を整えた。
 青年と吹き飛んでいったさやかとの間に身を起き、右手を掲げる。

「私は、時空管理局機動六課スターズ分隊隊長・高町なのはです。現在が異常事態にあるのは確かですが、どうか落ち着いて下さい。でないと事態は悪い方にしか―――」
「おれはルフィ、よろしくな!」
「……ルフィ君、少し静かにしてて欲しいんだけど」
「へ? 何で?」
「今から彼女を説得するの。この状況で正常な判断力が低下しているかもしれないでしょ」
「ああ、たしかに」

 と、何とも引き締まらない会話を続ける二人―――なのはとルフィであったが、さやかは構わず動いていた。

「ッ!」

 再度の急加速をもって、今度はなのはの元へと急迫する。
91 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/26(日) 22:22:28.92 ID:OzihRh+o
 その速度はやはり人間離れしたもの。
 だが、歴然の魔導師を、管理局が誇るエース・オブ・エースを捉えるには余りに未熟。
 技巧も、威力も、速度ですらも、まだ足りない。
 少なくとも馬鹿正直に突撃するだけでは、エース・オブ・エースを切り裂くには至らない。
 掲げられた右手を中心にして、桜色の模様が浮かび上がる。
 円や三角形が組み合わさって構成された模様は、まさに御伽噺にでてくる魔法陣であった。
 魔法陣が、さやかの一撃を易々と食い止める。
 サーベルと魔法陣が火花を散らす。
 陣が破れる様子は、ない。
 均衡する魔法陣とサーベルを挟んで、二人の魔法少女の視線が交差した。
 少女の瞳を見て、なのはは思った。
 この瞳は、何処かで見た事のある瞳だと。
 思い、直ぐに思い出した。
 そう、この瞳は『あの時』親友が浮かべていた瞳だ。
 現在からもう十年程も前の事。
 母と信じていた女性から、全てを否定された親友。
 その時、親友が浮かべていた瞳と酷似している。

「君は……?」

 なのはの呆けたような声がさやかの鼓膜を叩くが、生憎としてさやかに会話に付き合うつもりはない。
 ただ今は、胸にたぎる感情に任せて、身体を動かす。それだけであった。
 一旦、さやかは大きく後ろに後退する。
 一跳びで距離を離したさやかが、再度の加速で襲撃する。
 今度は正面からではなく、木々の間を駆け抜けて攪乱を混ぜながら。
 さやかが月光に照らされた暗闇の中を、走る。

「話を聞いて! 今のこの状況は悪意ある人達によって造り上げられたもの、その人達の言いなりになっては事態は悪い方に転がるだけだよ!」

 必死の言葉がさやかに届く。
 だが、瞳に映る虚無に変化は見られず、疾走の速度にも変化はない。
 なのはとルフィを中心にして、円を描くように駆けながら、剣を構える。
 転調は唐突であった。
 円の動作から、一直線の突進へ。
 その急転も常人には、いや熟練の戦士であっても対処は困難であろう。
 
「盾!」

 だが、やはりエース・オブ・エース。
 熟練という肩書きすらも超越したなのはには、決して命中しない。
 背後からの穿突へ、なのはは振り向きざまにシールドを形成した。
 さやかの攻撃が、再び止められる。
 そして、今回の魔法は防御だけに終わらない。
 盾から伸びた桜色に輝く鎖が、さやかのサーベルに絡み付く。
 押せども引けども鎖はびくともしない。
 さやかの動きが、止まる。

「話を聞いてもらうよ。そして、アナタの話も聞かせてもらう。力づくでも」

 同時に、視界の端にて光が走る。
 桜色の何かが走ったと思いきや、瞬後、衝撃がさやかの頬を叩いていた。
 横からの衝撃にさやかの身体が横倒しに弾け飛ぶ。
 揺れる視界でさやかは見た。
 上下左右から迫る桜色の光球。
 四発の光る球体は、まるで意志を持つかのようにそれぞれが別々の軌道を描いて、飛行する。
 そのどれもがさやかを標的として動いていた。
 なのはが発動させた誘導型の射撃魔法である。
 並みの魔導師ならば一撃で昏倒させる事のできる射撃魔法が、四発。
 それら魔弾を前にして、だがしかし、さやかは怯まない。
92 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/26(日) 22:24:15.13 ID:OzihRh+o
 着地と共に態勢を整え、地面を蹴り抜いた。
 最短距離をひたすらに真っ直ぐ。
 サーベルの切っ先を、高町なのはへと向けて。
 三度の突撃を開始する。

「アクセル」

 その突進を阻止すべく桜色の魔弾が稼動する。
 迫るさやかへと、上下左右から動く魔弾。

「アクセル!」

 加速に次ぐ加速の末に、魔弾がさやかの身体に直撃した。
 四発の射撃魔法が全て直撃した事に、なのははさやかの撃墜を確信し―――だが、その確信は覆される。
 直撃の射撃魔法に、さやかは微塵の怯みすら見せなかったのだ。
 想定外の事態になのはの反応が僅かばかりに遅れる。
 その僅かな隙に、さやかは変わらぬ体勢と変わらぬ速度でエース・オブ・エースへと接近した。
 選択された攻撃は刺突であった。
 接近の速度そのままに、なのはの顔面へと刃を直線に走らせる。

(マズい……!)

 一瞬の隙が、なのはを窮地へ追い込んでいた。
 アクセルシューターが直撃して尚、怯みすらしない少女。
 非殺傷設定とはいえ、直撃すれば痛いですまない攻撃だ。
 先のルフィの一撃を喰らった際もそうだった。
 十数メートルと宙を飛ぶ程の勢いで顔面を殴られ、それでいて易々と戦線へと復帰してきた。
 その外見に反して相当な防御力を有しているようだと、なのはは考察する。。

(完全に隙を取られた。レイジングハートがいれば何とでもなる状況だけど……)

 刃が近付く刹那の間に、なのはの思考が急速の回転を見せた。
 この状況にあって、未だに余裕がある証拠であった。
 生半可な攻撃では動きの阻害すら困難な少女。
 速度も一級品で、生身でありながらなのはの愛弟子たる蒼きストライカーに迫るレベルだ。
 剣戟の技巧や戦闘の駆け引きなど、未熟な点も多々見えるが、それ補い得る長所を有している。
 難敵だと、なのはは素直に感じた。
 少なくとも相棒の居ない現状であるとはいえ、此処まで追い込まれてしまった。

(やるしかない……ね!)

 迫る切っ先に対して、なのはは右手を突き出した。
 瞬く間に迫る刃が右手に触れる。
 皮膚の裂ける感覚があったが、なのはは構わず魔力の操作に意識を集中させる。
 刃が徐々に肉へと食い込んでいく感触。
 皮膚どころか肉にまで刃が到達し―――そこで刃の侵攻が止まる。
 なのはが発動させた魔法にて、魔法少女の動きを封じ込めたからだ。
 『フープバインド』
 高速の剣戟を前にしての、超高速のバインド魔法発動。
 エース・オブ・エースの所以たる技量が、窮地において活路を開いた。
 桜色の光輪に拘束されたさやかの身体が、宙に漂うような形で静止する。
 虚無の瞳に僅かばかりの驚愕が見えるが、それも感情と云える程のものではない。

「ちょっとだけ、痛いの我慢してね」

 スタスタと歩いて距離を離しながら、なのはは声を飛ばす。
 右手に集まる桜色の淡い光。
 掌の裂傷から鮮血を滴らせながら、なのはは魔力のコントロールを行っていく。
 臨界に至るには五秒と掛からなかった。
93創る名無しに見る名無し:2011/06/26(日) 22:26:11.41 ID:zNaSw720
支援
94 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/26(日) 22:26:15.99 ID:OzihRh+o
「ディバインバスター」

 発動されるは小規模の砲撃魔法。
 桜色の光が一筋の線となって闇の中を突き進み、宙に拘束されるさやかに命中する。
 爆音と爆煙が巻き上がり、さやかの姿を呑み込んでいく。
 
「バスター、バスター」
 
 そして、駄目押しの追撃を二発。
 先までの防御力を見越しての砲撃三連発。
 相棒のデバイスが存在しない今、威力としては本来の半分程度しかないだろう。
 それでもなのはの砲撃は必殺と呼べるもの。
 どんなに防御力の高い魔導師であろうと、直撃を三発もくらえば撃墜は必至だ。
 それは驕りでもない事実。
 その筈だったのだが―――

(ッ! まさか!)

 ―――爆煙を切り裂いて現れたのは白銀の刃であった。
 砲撃の三連発を直撃し、それでもノータイムで突撃してくる少女。

(防御力じゃ……ない!)

 どれだけ堅牢なバリアジャケットといっても、エース・オブ・エースの砲撃を三発も直撃して無事な訳がない。
 ましてやノータイムでの突撃など現実問題として有り得ない。
 別の要因がある。
 防御力とはまた別種の何かを、この少女は持っている。
 ルフィに殴り飛ばされ、射撃魔法を喰らい、砲撃魔法すら直撃して尚、容易く行動する力。
 なのはの表情が、歪む。
 顔面へと迫る刃を、なのはは首を傾ける事で回避する。
 だが、踏み込まれた。
 完全なクロスレンジへと引き込まれた事に、なのはは幾分の焦燥を覚える。
 デバイスがある状況ならまだしも、現状では敵の速度故に距離を離す事は難しい。
 術の強度や発動速度も著しく低下している。
 さしものなのはも、事態に全力の集中を来さねばならないだろう。

(くっ!)

 顔の直ぐ横を通り過ぎた刃が軌道を変え、その首を刈り取らんと横に動く。
 それを上体を屈める事で避け、なのはは大きく後ろへとステップを踏む。
 なのはの後退に、さやかは一瞬と距離を離す事なく追いすがった。
 距離を離せないと思いつつ、射撃魔法を一発だけ放つなのは。
 射撃魔法は直撃するも、やはり怯みすら引き出せない。
 接近され、刃が振るわれた。
 直後、


「―――銃(ピストル)!!」


 なのはの顔の直ぐ横を何かが通り過ぎていった。
 ゴウと風を切り裂く音が耳を叩き、続いてグシャと何かのひしゃげるような鈍い音が聞こえた。
 なのはの知覚した光景は、何とも不可思議なものであった。
 後方から呻りを上げて直進してきた肌色の『何か』が、剣を振るう少女を吹き飛ばしたのだ。
 そりゃあもう、物凄い勢いであった。
 高速で近付いたさやかが、それ以上の速度にて遠ざかっていく。
 斜め上へ、斜め上へと、木々を突き破って闇の彼方へと吹き飛んでいく。
 何が起きたのかと、なのはは後方へと視線を移した。
95 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/26(日) 22:27:05.96 ID:OzihRh+o
 そこには、モンキー・D・ルフィが拳を振り抜いた体勢で、ピクリとも動かずに立っていた。
 ただ、その右腕だけが伸びていた。
 動かない体勢で、ゴムの右腕だけが前へ前へと突き進む。
 襲撃者を吹き飛ばす為に、その右腕が伸び続けていた。

「……ルフィ、君……?」

 なのはが呆然と声を掛けたその時、限界まで伸びたゴムの腕がようやく戻って来る。
 二秒程の時間を掛けて引き戻された右腕が、弾けるような音を経て元通りとなる。

「大丈夫か、なのは?」
「あ、ありがとう」
「しつこいから、殴っといた」
「う、うん……って、えぇ!?」

 ニッと、口角を吊り上げるルフィにお礼を零すなのはであったが、次いでの発言に愕然とする。
 殴っといたって、あの勢いで?
 襲撃者の少女はヤード単位で吹き飛び、夜空の彼方へと消えていた。
 馬鹿力とかそういうレベルの話ではない。
 下手すれば、というか常人であれば確実に死ぬレベルだ。
 なのはの仲間たる鉄槌の騎士であっても、あれだけの打撃を放てるかどうか。
 ルフィの持つ剛力に、なのはは正直に驚いていた。
 ……まあ、それでもあれだけのタフネスを見せ付けた少女ならばピンピンしているだろうが。

「ん? どうしたんだ、なのは?」
「……スゴいんだね、ルフィ君」
「まあな! 海賊になる為に鍛えたんだ」
 
 少女が吹っ飛んでいった方角へと視線を送りながら、なのはは思考する。
 この場には、生半可な力では通用しない猛者が集結している。
 先の襲撃者も、ルフィも、相当な強者だ。
 魔導師であるなしなど関係の無いところで、段違いに実力が高い。
 自分も相棒が居ない状況とはいえ、もしやと云うところまで追い詰められた。
 気を引き締めねばと思う一方で、仲間達の無事が心配になる。
 状況は予想以上に悪いのかもしれないと、なのはは眉を潜めて思った。




【一日目/深夜/E-5・森林】
【高町なのは@リリカルなのはStrikerS】
[状態]疲労(小)
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3(食糧なし)
[思考]
1:殺し合いを止める
2:ルフィと行動しながらルフィの仲間達や他の参加者達を探す
3:皆なら大丈夫だと思うけど……

【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3(食糧なし)
[思考]
1:なのはと一緒に食糧を探しにいく
2:仲間とも合流したい



96創る名無しに見る名無し:2011/06/26(日) 22:27:22.47 ID:zNaSw720

97 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/26(日) 22:28:19.09 ID:OzihRh+o




 頬を殴り抜ける感覚に視界を揺らしながら、さやかは空を飛んでいた。
 いや、飛んでいたというよりは、飛ばされているという表現の方が正しいか。
 頬に突き刺さる拳が、墜落を許してくれない。
 何がどうなっているのか、何処まで飛ばされど右拳が頬から離れる事はない。
 伸びる右腕に伴って、さやかの身体も飛んでいく。

(……何やってんだろ、私……)

 ただ、痛覚は存在しなかった。
 魔法少女である美樹さやかは痛覚を完全に遮断する事ができる。
 加えて、さやか固有の能力である超常の回復能力もある。
 だからこそ、エース・オブ・エースの大魔導師を相手にあそこまで立ち回る事ができた。

(……何もしていない人達を相手に魔法少女の力を使って……)

 流れていく視界の中で、遂に頬を殴る右拳が離れていった。
 それでも勢いは止まらない。
 さやかの痩躯が何処までも何処までも吹き飛んでいく。

(……剣を振るって……殺そうとして……)

 虚無の瞳に何か暖かいものが込み上げる。
 瞳に込み上げる『それ』が何なのか、さやかには分からない。
 何もかもが、分からない。
 もうどうでも良くなってしまったからだ。

(……そうだ……確かまどかにも酷いこと言っちゃって……)

 ごちゃごちゃとなった思考に、ごちゃごちゃとなった記憶が流れ込む。
 流れ込み、流れ込み、流れ込み……やっぱり何もかもが分からない。
 浮遊感に包まれた身体が段々と落下していく。
 地上から数十メートルの高さにあるというのに、美樹さやかは何の抵抗もしようとしない。
 やっぱり、何もかもがどうでも良くなってしまったからだ。

(……ああ……)

 落下の最中で、さやかは空を見ていた。
 淡い光で輝く満月が、さやかを見下ろす。
 さやかの身体(からだ)が、墜ちていく。
 さやかの精神(こころ)が、堕ちていく。
 墜ちていく中で、堕ちていく中で、さやかの瞳から『何かが』溢れ出した。
 暖かい、暖かい、『何か』。
 それが何なのか、やっぱりさやかには分からない。


(……あたしって、ほんと―――)


 思考が紡ぎ終える寸前で、さやかの意識は漆黒の中へと消えていった。
 その身体が地上へと墜落し、意識を喪失させたのだ。
 さて、全てがどうでも良くなった最中で、最後にさやかが思った感情とは何なのだろう。
 それは誰にも分からない。
 ただ一つだけ彼女が幸運だったのは、何もかもが破滅に向かう寸前で、その意識を途切れさせた事かもしれない。
 意識の喪失により、来るべき破滅への進行も一時的に中断されたからだ。
 穢れに染まり掛けたソウルジェムが、彼女の腹部を飾る。
98創る名無しに見る名無し:2011/06/26(日) 22:29:15.88 ID:zNaSw720

99 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/26(日) 22:29:57.83 ID:OzihRh+o
 そして、



「うおおおおおおおおおお!?」



 そして、甲高いブレーキ音が鳴り響く。
 こうして空から落ちてきた系のヤンデル魔法少女となった美樹さやかは、本人の預かり知らぬ所で出会いを経験する事となった。
 








「うおおおおおおおおおおお!?」

 こうして空から落ちてきたヤンデル系魔法少女に対して、浜面は全力でブレーキペダルを踏みしめた。
 甲高いブレーキ音が響き渡り、ライトバンは魔法少女にぶつかる寸前で停止した。

「な、何だ……空から女の子が……!?」

 ヘッドライトで照射される先には、地面に横たわる少女が一人。
 空から落ちて現れた少女である。
 何がどうなっているのか、と浜面は少女が現れた空へと視線を送るが、そこにはまん丸の満月と綺麗な星々深があるだけであった。
 視線を右に左に落ち着かない様子で動かす浜面。
 浜面は、少女が誰かに襲撃されたのだろうと考えていた。
 簡単に周囲を見た感じでは、人の姿はない。
 決断は直ぐであった。
 車から飛び出し、倒れ伏す少女の側に屈み込む。
 口元に手を伸ばすと、生暖かい吐息の感触があった。
 手首を触ると拍動を感じ取れる。
 目立った傷も見えない。
 派手に飛んできた少女であったが、奇跡的にも殆ど無傷で済んだらしい。
 浜面はホッと息を吐く。

(取り敢えずココから離れよう。こいつを襲った奴が近くにいる筈だ)

 しかしその安堵も束の間、浜面は気絶中の少女を抱きかかえて、ライトバンへと乗り込む。
 少女を後部座席へ押し込み、自分は運転席へ。
 乗車と同時に、ライトバンがフルスロットルで走り出す。
 人間一人をあれだけ吹き飛ばす能力だ。おそらく大能力以上の能力者だろう。
 武器も持たない無能力者が敵う道理などない。
 逃げるが勝ち。
 これを、この車を何の為に調達したと思っていやがる。
 こんな時の為、化け物から逃亡する為だ。
 
100創る名無しに見る名無し:2011/06/26(日) 22:32:42.85 ID:zNaSw720

101◇YcpPY.pZNg氏代理投下:2011/06/26(日) 22:37:04.64 ID:Iptk3hDU
◆YcpPY.pZNg氏の代理投下を開始します
102◇YcpPY.pZNg氏代理投下:2011/06/26(日) 22:37:40.33 ID:Iptk3hDU
 
(フゥーハハー! ざまぁ見やがれ能力者! てめぇの好きにはさせねーぞ!)

 少女の救出に舞い上がりながら、浜面は車を走らせる。
 不幸な事に彼は気付いていない。
 少女が空から落ちてきた経緯を、本当の襲撃者が誰なのかを、実は今拾った少女こそが完全なる厄ネタだという事を、
 浜面仕上は知らない。
 不幸な無能力者が、物凄い速度で走り去っていった。




【一日目/深夜/F-5・森林】
【浜面仕上@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康
[装備]白色のライトバン@現実
[道具]基本支給品一式、煙草@現実、ブレイバックル(ブレイド)@仮面ライダー剣、レガートの鋼糸@トライガン・マキシマム×5
[思考]
0:殺し合いには乗らない。滝壺と麦野と合流する
1:少女を襲った能力者(?)から逃亡する。
2:滝壺と麦野を探す
[備考]
※原作22巻終了後から参加しています

【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]疲労(中)、気絶中
[装備]ソウルジェム(穢れ九割)@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考]
0:気絶中
1:あたしって、ほんと……
[備考]
※魔女化直前・電車から下車した辺りから参加しています
103◇YcpPY.pZNg氏代理投下:2011/06/26(日) 22:38:23.76 ID:Iptk3hDU
投下終了します。
タイトルはマーメイド・ダンスです。
104 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/26(日) 23:37:59.92 ID:vL4OPw3O
代理投下ありがとうございました
105創る名無しに見る名無し:2011/06/27(月) 09:42:06.95 ID:HNIgi/Im
投下乙
主人公クラス二人相手に善戦とはやりおるでさやかちゃん…
何気に魔女化寸前だが浜面ならきっとなんとかして…!

>>86
投下乙
ロリコンでケモナーな太田君の守備範囲は広い
念願の奴隷ゲットだがどうなる?
106 ◆ymCx/I3enU :2011/06/27(月) 20:44:15.44 ID:4AfXOdWL
投下乙です。嗚呼凄い 嗚呼凄い 凄い

投下します。俺得5 20話 温い風が吹いて 登場:仲販遥、関直哉
107温い風が吹いて ◆ymCx/I3enU :2011/06/27(月) 20:45:12.97 ID:4AfXOdWL
20話 温い風が吹いて

仲販遥は今自分が置かれている状況が余り理解出来ていなかった。
自分は死んだはずなのだ。あの殺し合いで、太田太郎丸忠信に腹を撃たれて。
だが、現に今自分はこうして生きている。息をしている。目で物を見ている。

殺し合い。

今度は若狭では無く、荒神健児と名乗る男がそう宣言した。
つまる所、生き返っても状況は何も良くなっていない。むしろ再び死の恐怖に怯えなければならないのだ。
名簿を見る限りではクラスメイトも何人かいるようだったが、特にシルヴィアと、太田太郎丸忠信の二人が気になった。

「……成程、クラスメイトが呼ばれてるのか、遥ちゃんは」
「うん…」

学校の一階、保健室にて、遥は遭遇した参加者の一人と会話していた。
黒い毛皮を持った、狼にも似た風貌の巨大な犬の魔物、関直哉。
恐ろしい風貌からは想像もつかない程優しい性格だった。

「なおやさんも、しりあいが…?」
「ああ、細田英里佳、俺の彼女がね…あいつ無事だと良いんだけど」
「にんげん、なんですか?」
「ああ、人間だよ? 英里佳は。良いだろ? 魔犬が人間の女の子と付き合ったって」
「あ…いや、わるいとかそういうわけじゃないですけど…」

関直哉は、先述した通り、黒い巨大な犬の魔物である。
そんな風貌の彼が人間の少女と付き合っている光景は、彼とは住む世界が違う遥にとって、
余り想像出来ないものだった。そのため、疑問を呈した。
ただ、それはあくまで興味本位に近いものであり嫌悪感等は全く無かったが。
人間と魔犬が交際している事に不満を抱かれたのかと錯覚した直哉は少し気分を害したようだったが、すぐに治る。

「まあいいさ…とにかく、『太田太郎丸忠信』って奴に注意すれば良いんだな」
「はい」
「分かった…さて、これからまずどうするか…」

保健室の窓の外から校庭の様子を確認する直哉。
取り敢えず動く影は見当たらない。

「…下手に動くのは危ないかもしれんけど…英里佳も、遥ちゃんのクラスメイトも、捜さなきゃだしな。
…行くか…? 女の子一人ぐらいだったら、守れるよ」
「……(コクリ)」

殺し合いに呼ばれているクラスメイト、恋人を捜すため、
黒い魔犬と少女は学校の外に出る事にした。
108温い風が吹いて ◆ymCx/I3enU :2011/06/27(月) 20:46:13.32 ID:4AfXOdWL
【早朝/E-4学校:一階保健室】
【仲販遥@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]???
[持物]基本支給品一式、???(1〜2)
[思考・行動]
0:しにたくない。なおやさんとこうどうする。
1:クラスメイトをさがす。シルヴィアさんがきになる。でもおおたくんとはあいたくない。
2:わたしはしんだはずじゃ…。
[備考]
※本編死亡後からの参戦です。
※細田英里佳の情報を得ました。

【関直哉@オリキャラ】
[状態]健康
[装備]???
[持物]基本支給品一式、???(1〜2)
[思考・行動]
0:殺し合いはしない。英里佳を捜す。
1:遥ちゃんと行動。
2:太田太郎丸忠信に注意。
[備考]
※仲販遥のクラスメイトについての情報を得ました。


≪オリキャラ紹介≫
【関直哉(せき なおや)】
黒い毛皮を持った魔犬。23歳。細田英里佳と言う人間の少女と交際し、肉体関係も持っている。
少し前まで酷い早漏だったが英里佳のおかげで長持ちするようになった。
109 ◆ymCx/I3enU :2011/06/27(月) 20:47:14.91 ID:4AfXOdWL
投下終了です。
110 ◆ymCx/I3enU :2011/06/27(月) 21:52:53.74 ID:4AfXOdWL
投下します。俺得5 21話 運命なんて匙加減でずっと変わり続けるさ
登場:エーリアル、銀鏖院水晶、神楽
21話 運命なんて匙加減でずっと変わり続けるさ

公園を訪れた狼、エーリアル。
彼の目的は一つ、好みな女の子を捜し、性的な意味で食べる事である。
どうせ死ぬのだから好き勝手してしまおうという安易な思考の雄狼は、この殺し合いにおいて、
二人目の少女臭を嗅ぎ付ける。

近くの植え込みに隠れ様子を窺うと、銀髪の少女が現れた。

(うーん、また貧乳みたいだな…)

最初の中華風少女と同じく胸が小さい事にやや落胆するエーリアル。

(いや、まあ、可愛いから良しとしよう、フフ、行くかww)

エーリアルは舌舐めずりをし、植え込みから一気に飛び出す。

「!」
「ハッ! ハッ! ハッ!」

目指すは少女の****。エーリアルは涎を垂らし興奮しながら、銀髪の少女に向かって突進し、
そして思い切り飛び掛かり、地面に押し倒した。
そしてそのまま少女の股間を押し広げいきり立った己自身をねじ込――――む事は、出来なかった。

「……かっ」

少女の上に圧し掛かったエーリアルが急に苦しみ出す。
その胸元には、注射器の針が突き刺さっていた。容器の中身は、ガソリン。

「この、獣が」

少女、銀鏖院水晶は注射器の中のガソリンを一気に、エーリアルの体内に流し込んだ。

「ウ、ガ、アアアァァアアアァッ、ア、ア゛ーーーーーーーーーーーーーー」

心臓から、血に混じったガソリンが、エーリアルの身体中を駆け巡り、彼に形容し難い苦しみを与える。
水晶から離れたエーリアルはもんどり打ち、手足を激しく痙攣させ、口から泡を吹く。
やがて糞尿を垂れ流し、嘔吐し、悪臭が漂い始め、そしてエーリアルは動きを止めた。
白目を剥き、涎と涙と糞尿と精液を垂れ流した凄惨かつ悲惨な最期だった。
衣服に付いた砂を払い、狼の死体を忌々しげに見下ろす水晶。

「獣風情が私を襲うなんて百年早いのよ! …ああ臭い、酷いものね…ガソリン注射するとこうなるの?
…まあ良いわ、こいつ、何持ってるのかしら」

臭いに鼻を押さえながら、水晶はエーリアルのデイパックを開け中身を漁る。
すると、半自動散弾銃ブローニングオート5と予備の散弾10発、更にバタフライナイフが出てきた。

「良いもの持ってるじゃない…貰っておこう」

この先、自分に支給されたガソリン入り注射器で生き抜くのは難しいと考えた水晶は、
狼が持っていた銃と刃物を遠慮無く頂戴する。

「…さてと、臭いし、さっさと行こうかな…」

いい加減悪臭に耐えかねてきた水晶は、ブローニングオート5を携えその場を後にした。
……

数分後、水晶が立ち去った公園の、狼の死骸がある場所に再び人が訪れる。

「! こ、こいつ…あの時の」

中華風の格好の少女、神楽。
つい先刻図書館で自分を襲撃した狼が死体となって横たわっていた。
一体どのような最期を遂げたのだろう、白目を剥き、涙と涎を流し、糞尿を撒き散らしている。
周囲にはかなりの悪臭が漂っており、思わず神楽は鼻を押さえた。
すぐ近くに空の注射器が転がっていた。針に気を付けて拾い上げ中身を調べると、どうもガソリンらしかった。
恐らくこれでこの狼――エーリアルは殺害されたのだろう。それも、まだ殺されてそう時間は経っていないようだ。

「酷い殺し方をする奴がいるアルな…」

数刻前にエーリアルに襲われた時は彼に怒りを燃やしていた神楽だったが、
そのエーリアルの悲惨な死に様には流石に同情を禁じ得なかった。


【エーリアル@オリキャラ:死亡】
【残り:37人】


【早朝/???】
【銀鏖院水晶@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]ブローニングオート5(5/5)
[持物]基本支給品一式、12ゲージショットシェル(10)、バタフライナイフ、ガソリン入り注射器(2)
[思考・行動]
0:殺し合いに乗る。最終的には主催者も殺すつもり。
1:クラスメイトでも容赦しない。
[備考]
※本編死亡後からの参戦です。

【早朝/E-2公園】
【神楽@銀魂】
[状態]健康
[装備]ナックルダスター
[持物]基本支給品一式、???(銃器)
[思考・行動]
0:殺し合いには乗らない。万事屋メンバーとマダオとサド王子を捜す。
[備考]
※原作ラブチョリス編以降からの参戦です。


≪支給品紹介≫
【ガソリン入り注射器】 支給者:銀鏖院水晶
ガソリンが入れられた注射器。人体や生き物の身体に注射すれば命に関わる。

【ブローニングオート5】 支給者:エーリアル
銃の名工ジョン・ブローニングが設計した半自動散弾銃。
世界初の反動利用式半自動散弾銃で、1904年に発表された。信頼性は高く現在でも使用されている。

【バタフライナイフ】 支給者:エーリアル
折畳ナイフの一種で、一枚のブレード(刀身)に、溝のついた二分割されたグリップ (柄) がついており、
ブレードを上下からはさむように収納するのが特徴。
113 ◆ymCx/I3enU :2011/06/27(月) 21:55:31.12 ID:4AfXOdWL
投下終了です。実際にガソリン注射されたら生き物はどうなるかなんて知らない自分
114 ◆ymCx/I3enU :2011/06/27(月) 23:13:04.28 ID:4AfXOdWL
投下します。俺得5 22話 安心のルール捨てよう
登場:宮本春樹、クライヴ、シルヴィア、サーシャ
115安心のルール捨てよう ◆ymCx/I3enU :2011/06/27(月) 23:14:07.06 ID:4AfXOdWL
22話 安心のルール捨てよう

廃村から森に伸びる道のすぐ近くに、白い軽トラックが停まる。
運転席に乗るのは作業着姿の男、宮本春樹。

「多分、この道を走っていけば、市街地に行けるはずだ…襲われるかも知れないから、
注意しておけよ、三人共」
「お前もな、春樹」
「あー分かってるよクライヴ」

春樹は荷台に乗っている、PPSh41短機関銃を装備した紺色と白の毛皮の人狼、クライヴと、
先刻廃村内で知り合った二人の少女――シルヴィアとサーシャに声を掛けた。

「大丈夫だ」
「…だ、大丈夫」

シルヴィアはSKSライフル、サーシャは旧式の回転式拳銃ナガンM1895を装備し、
周囲に気を回す。春樹自身は助手席にクロスボウを置いていたが、運転しているため、
いざと言う時は恐らくクロスボウを取って攻撃、と言う事は出来ないだろうと思っていた。

「行くぞー」

そしてクロスボウともう一つの支給品である軽トラックを運転し、荷台に同行者三人を乗せ、
市街地へ続いていると思われる森の中の道を走り始める。

「しかし…俺と春樹の行為を見られた時は驚いたな」
「見たくない物みちゃったよ」
「……」

クライヴの一言で、サーシャとシルヴィアは春樹とクライヴに遭遇した時の事を思い出す。
――廃屋の中で、全裸の男と毛むくじゃらの人狼が濃厚に絡み合っていたのだ。
そして、二人の肉の竿から白い飛沫が飛び散る所まではっきりと見てしまった。

「うぷ」
「オエ」
「おいおい吐き気催す事無いだろ? 百合もあんなら、薔薇もあんだよ」
「いや、良いんだけど…初めて、見たから…その、男同士で…」
「やめてシルビー…生々しいからやめて」
「はっはっはっw」
「もっと見せ付けてやりたかったよなークライヴ?」
「だなw」
「やめよう、もうやめようこの話は!」

これ以上この手に話題を続けると本当に胃の中の物をデビューしそうになると思ったシルヴィアは、
強制的に話を中断させる。サーシャの顔色が青く見えたのは毛皮の青だけでは無いだろう。

「そう言うお前ら二人も百合っぽい臭いがすっぞ」
「! そ、そんなんじゃ…」
「そ、そうそう、そういう関係じゃ…ねぇシルビー?」
「ふーん…ニヤニヤ」
「何だそのニヤニヤってのは! やめろっつてんだろ! しまいにゃ殺すぞゴルァ!」
「い、いつものシルビーじゃない…」

騒ぐ三人を荷台に乗せ、その会話を聞いてまたニヤニヤとする男が運転する軽トラックは、
市街地目指し森の中の道を走る。
116安心のルール捨てよう ◆ymCx/I3enU :2011/06/27(月) 23:15:08.75 ID:4AfXOdWL
【早朝/G-5森:廃道】
【宮本春樹@オリキャラ】
[状態]健康
[装備]軽トラック(運転中)、クロスボウ(1/1)
[持物]基本支給品一式、クロスボウの矢(5)
[思考・行動]
0:殺し合いはする気は無い。脱出したい。
1:クライヴ、シルヴィア、サーシャと行動。市街地に向かう。
[備考]
※軽トラックを運転しています。クライヴ、シルヴィア、サーシャを荷台に載せています。
※シルヴィア、サーシャのクラスメイトの情報を二人から聞いています。

【クライヴ@オリキャラ】
[状態]健康
[装備]PPSh41(71/71)
[持物]基本支給品一式、PPSh41のドラムマガジン(3)
[思考・行動]
0:殺し合いには乗らない。襲われたら容赦しない。
1:春樹、シルヴィア、サーシャと行動。市街地に向かう。
[備考]
※宮本春樹の運転する軽トラックの荷台に乗っています。
※シルヴィア、サーシャのクラスメイトの情報を二人から聞いています。

【シルヴィア@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]シモノフSKSカービン(10/10)
[持物]基本支給品一式、SKS装弾クリップ(3)
[思考・行動]
0:殺し合いをする気は無い。
1:サーシャ、宮本さん、クライヴと行動。他のクラスメイトも一応捜す。
[備考]
※本編死亡後からの参戦です。
※宮本春樹の運転する軽トラックの荷台に乗っています。

【サーシャ@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康、衣服が少し汚れている
[装備]ナガンM1895(7/7)
[持物]基本支給品一式、7.62o×39R弾(14)
[思考・行動]
0:殺し合いはしたくない。
1:シルビー、宮本さん、クライヴさんと行動。他のクラスメイトも一応捜す。
[備考]
※本編死亡後からの参戦です。
※宮本春樹の運転する軽トラックの荷台に乗っています。
117安心のルール捨てよう ◆ymCx/I3enU :2011/06/27(月) 23:16:38.41 ID:4AfXOdWL
≪支給品紹介≫
【クロスボウ】 支給者:宮本春樹
西洋で用いられた専用の矢を板ばねの力で、これに張られた弦に引っ掛けて発射する装置(武器)。
引き金を持ち、狙いが定めやすい。 日本ではボウガンとも呼ばれる。

【軽トラック】 支給者:宮本春樹
小型トラック。主に農家で、農業機械や収穫した作物などの運搬のための必需品となっている。
本ロワに登場する軽トラックはホンダTN-360と言うかなり古い車種。

【PPSh41】 支給者:クライヴ
旧ソ連が1941年に制式化したゲオルグ・シュパギン技師開発の短機関銃。 PPSh41は、
Pistolet-Pulemjot Shpagina (Пистолет-пулемёт Шпагина)1941:シュパギン式短機関銃1941年型という意味。
ドラムマガジンを採用し装弾数71発と多装弾で、取り回しも良い。

【ナガンM1895】 支給者:サーシャ
1890年代初期に兄エミール・ナガンと弟レオン・ナガンによって、
ベルギーのナガン社で開発されたダブルアクション回転式拳銃。ガスシール機能と言う独特の機構を持つ。
装填・排莢は右側のローディングゲートから1発づつ行なう必要がある。

【バタフライナイフ】 支給者:エーリアル
折畳ナイフの一種で、一枚のブレード(刀身)に、溝のついた二分割されたグリップ (柄) がついており、
ブレードを上下からはさむように収納するのが特徴。


≪オリキャラ紹介≫
【宮本春樹(みやもと はるき)】
26歳の溶接工の男。機械に結構詳しかったりする。獣や獣人の♂好きで、
自宅アパートにはケモホモ系雑誌が山ほどある。

【クライヴ】
27歳の人狼の雄。紺色と白の毛皮で引き締まった身体。雌だけで無く同性からも人気があり、
両刀使いでもある。巨根。料理が得意と公言しているが実際に食べた者曰く「殺虫剤製造職人」との事。
118 ◆ymCx/I3enU :2011/06/27(月) 23:17:26.71 ID:4AfXOdWL
投下終了です。
119 ◆ymCx/I3enU :2011/06/28(火) 20:10:10.07 ID:JXFExTU1
投下します。俺得5 23話 煉獄炎
登場:井田亮太、へレーネ、テト、相馬祐実
120煉獄炎 ◆ymCx/I3enU :2011/06/28(火) 20:10:59.24 ID:JXFExTU1
23話 煉獄炎

代わりになる武器――もぬけの殻となった銃砲店にて、
警官、井田亮太は上下二連式散弾銃と予備弾5発、へレーネは護身用拳銃デリンジャー、予備弾無しを手に入れた。
はっきり言って全く心許無い。

「不安だ、不安過ぎる」
「そうですねぇ」
「まあ、青田くんよりはマシだけどな…」
「私もいますから、大丈夫ですよ…多分」

二人は市街地を北方向へ歩いて行く。
すると、とある曲がり角から学生服姿の猫獣人の少女が現れた。

「……」

少女――テトは、警官と思しき男と白髪に黒い身体の竜のような生き物の姿を確認する。

「…井田さん」
「どうした、へレーネ」
「あの子、何か、嫌な感じがする…」
「え…?」

先程までへらへらとしていたが、今は真面目な表情になっているへレーネが亮太に警告した。

「……」

テトは、無言のまま、二人に近付く。
武器は装備していない、腰に短機関銃と思しき物を差しているが、抜く気配は無い。
しかし、何も言葉を発せず自分達に接近する猫少女は亮太とへレーネに言い知れぬ恐怖を与えた。

「ま、待て、君! そこで止まるんだ」

散弾銃の銃口を向け止むなく威嚇する亮太。
引き金には指を掛けていない、撃つつもりは無いのだ。
テトが足を止める。距離はおよそ8メートル程。

「…俺は、井田亮太。見てくれれば分かると思うが警官だ」
「私はへレーネって言うの…あなたの名前、教えてくれる?」

二人はテトに話し掛ける。

「…テト、よ」

自己紹介すると、テトは右手を二人に向けて突き出した。
それが一体何を意味するのか、亮太とへレーネには分からなかった。

「…悪いけど…死んで」
121煉獄炎 ◆ymCx/I3enU :2011/06/28(火) 20:11:30.07 ID:JXFExTU1
炎。


亮太とへレーネの身体が、突然炎上した。

「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
「きゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!?」

炎はあっと言う間に二人の身体を飲み込み、皮膚を焼き、焦がす。
何が起きたのか理解出来ぬまま、激しい苦痛にもがき苦しむ亮太とへレーネ。
黒煙が立ち上り、肉の焦げる臭いが周囲に立ち込める。
やがて、二人は動きを止め、アスファルトの上に倒れた。このまま、炎に焼かれ灰と化すであろう。

「う…ぐ」

二人を焼き殺した張本人、テトもまた、身体が燃えた。
もっとも二人に比べれば軽微で、衣服と毛皮が少し焦げ軽い火傷で済んだが。

「…『力』は一応、使えるみたいね…」

煙を上らせている自分の右手を見ながら言うテト。
彼女はある神の力を降ろして自分に宿し、様々な能力を使う事が出来る。
そう言った一族の生まれなのだが、まだ身体が未熟なため、能力を使う度、反動を受けてしまう。

「でも、あんまり多用出来ないな、やっぱり…」

テトは先刻殺した少年から奪ったイングラムM10短機関銃を装備する。
今回能力を使ったのは、この殺し合いにおいてどの程度能力が使えるか試す目的があった。
やはりきつい反動を受けるため多用するのは危険と判断した。

「これを使った方が、まだ安全かしら…ね!」

そしてイングラムM10を構え、背後を振り向く。
そこにはピューマ獣人の若い女性が。

「あ―――」
「隙を突いて私の後ろを通って逃げようとしたみたいだけど、残念ね、じゃあ、さようなら」
「――――!!」

ピューマ獣人、相馬祐実は持っていたコルトパイソン回転式拳銃を咄嗟に構え、引き金を引いた。

ダァン!!

「うぐっ!」

.357マグナム弾の銃弾はテトの左肩を抉り赤い華を咲かせる。
衝撃で後ろに転ぶテト。祐実はテトとは反対方向の道路へ一気に走り出した。
122煉獄炎 ◆ymCx/I3enU :2011/06/28(火) 20:12:33.93 ID:JXFExTU1
「このぉ…ふざけやがって!!!」

肩の激痛に耐えながら、普段の彼女からは想像もつかない乱暴な言葉を発し、
テトは逃げ去ろうとするピューマ獣人女性の背中に向けイングラムM10を掃射した。

ダダダダダダダダダダダッ!!

「ぐあっ、う゛っ」

背中を殴られたような衝撃と共に、焼けるような熱を感じる祐実。
二発の.45ACP弾が祐実の身体に突き刺さった。

「ぐ、あ、あああああああああああああっぁああああああああぁあああ!!」

それでも祐実は大声を張り上げ激痛から気を逸らし、とにかく走った。
立ち止まれば待っているのは「死」だったから。
そして祐実の姿はテトからは確認出来なくなった。

「はぁ、はぁ、うう……」

獲物に逃げられた上手傷を負わされた事は悔しかったがまずはその手傷の手当てが優先だと、
テトは傷口付近に右手を翳す。どうやら弾は貫通したいるようだった。
ぼうっ、と、優しい光が右手から放たれ、そして徐々にテトの銃創が癒えていく。
やがて傷口は完全に塞がり痛みも無くなったが、短時間で能力を二回も使った代償は大きかった。

「はぁ…はぁ…流石に、まずいかな…力を使い過ぎたわ……」

まるで何時間も運動した後のような疲労感がテトを襲う。
実際、疲労していた。力を使い過ぎ、下手をすれば命の危険もあった。

「どこかで休んだ方が良いわね……」

ふらふらと、テトは燃え盛る現場から、どこか休める場所を捜し歩き始める。

……

撃たれた傷がとても痛んだ。
背中から入った弾は貫通し、祐実の自慢の乳房のすぐ下辺りに穴が空いていた。
そこから温かい血液がドクドクと流れ出ている。

「痛い…痛いよ…」

泣きながら傷を押さえ、ふらふらと歩く祐実。

「もう嫌だ……変だよこんなの……美帆…圭人ぉ……」

今更ながらに、なぜ自分がこんな目に遭わなければならないのかと、主催者を激しく呪う。
会いたい。仲の良い友達二人にとても会いたいと祐実は切に思った。

「うっ…えぐっ……あー……ぐすっ」

涙で顔をしわくちゃにしたピューマの女性は宛ても無く市街地を歩き続ける。
123煉獄炎 ◆ymCx/I3enU :2011/06/28(火) 20:13:23.53 ID:JXFExTU1
【井田亮太@オリキャラ:死亡】
【へレーネ@オリキャラ:死亡】
【残り:35人】


【朝/F-2市街地:路上】
【テト@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]肉体疲労(大)、精神に異常
[装備]イングラムM10(18/32)
[持物]基本支給品一式、イングラムM10のマガジン(5)、焼夷手榴弾(3)、洞爺湖の木刀(血塗れ)@銀魂、果物ナイフ
[思考・行動]
0:皆殺しにする。主催者も殺したい。
1:一度どこかで休む。
2:クラスメイトの中でも太田太郎丸忠信、愛餓夫、壱里塚徳人、吉良邑子は惨たらしく殺す。
[備考]
※本編最終話直後からの参戦です。
※能力は特に制限されていないようです。
※相馬祐実の容姿を記憶しました。

【朝/F-2、E-2境界線付近】
【相馬祐実@オリキャラ】
[状態]肉体及び精神疲労(大)、胴体に貫通銃創(出血多)、嗚咽
[装備]コルト パイソン(5/6)
[持物]基本支給品一式、.357マグナム弾(12)、FN M1906(6/6)、FN M1906のマガジン(3)
[思考・行動]
0:死にたくはない。圭人と美帆を捜す。
1:痛い…もう嫌だ…。
[備考]
※テトの容姿を記憶しました。


※井田亮太、へレーネの死体及び所持品はF-2市街地:路上にて炎上しています。
124 ◆ymCx/I3enU :2011/06/28(火) 20:14:04.81 ID:JXFExTU1
投下終了です。
125 ◆YR7i2glCpA :2011/06/28(火) 22:17:55.80 ID:yQGJToV6
投下乙です。
こちらも投下します。

ごちゃ混ぜロワ 28:初対面の相手には、言葉遣いを気をつけよう
登場人物:潮江文次郎、坂田銀時、泉こなた
忍者のたまご、潮江文次郎は現状に対し困惑していた。
いかなる事態に遭おうとも冷静に状況を判断できてこそ忍者だと常々思っていた彼にも、現在立たされている異常さは理解できなかった。
改めて記憶を辿っても、なぜ自分がここにいるのかさえも分からなかった。
だがそれでも、文次郎は怒っていた。
理由は、先ほど女性が首輪を爆破されて殺された事。
殺し合いをしろ、と突然言われたあの時に真っ先にメガネの男に食ってかかったのがあの桃色の髪の女性だった。
その女性の首を、メガネの男はいともたやすく爆破して殺した。
その事に、文次郎は怒りを隠す事は出来なかった。
(…情で動くとは、俺もまだまだだな……)
そう自嘲しながらも、その拳は固く握りしめられていた。
(仙蔵、小平太、長次、伊作、留三郎…あいつらも来ているのか…ここはひとまず合流したいところだが…)
「嘘だろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
どう動こうか思案していたその頭を揺さぶるかのように住宅街に響く、男の悲鳴。
それはこの殺し合いの場では非常に危険なものだった。
その声につられてどんな人間がやってくるかわからない。
文次郎は小さくため息をつくと、絶叫のした方へと走った。



(…あれ?これってかなりヤバくね?)
一方その頃、絶叫の主坂田銀時は冷や汗をどっぷりかいていた。
先程は突然の事態で頭もよく回っていなかったのだが、絶叫した事によりスッキリした頭で考えると現状は…この上もなく悪い。
この場は認めたくもないが殺し合いの場だ。
殺し合いに乗った奴がいる可能性は非常に高い、というかいなきゃおかしい。
そんな中、先ほど自分は何をした?
――でかい犬のぬいぐるみを前に絶叫してました。
はーい銀時君アウトー、廊下に立ってなさいねぇー…
って言ってる場合じゃねえええぇぇ!!
冗談抜きにやばいぞ今のは!って言うかなんだよ廊下って、三途の川行き廊下ですかこのヤロー。
とにかくこのでかいぬいぐるみの他に何かがデイバックに入っているはずだ。
あのメガネヤローは普通の子には二個、運のいい子には三個入ってるって言っていた。
なら当然銀さんには三個入ってるはずだな、うん……
そう思いデイバックをひっくり返したが…
出ない。
何も出てこない。
いや正確には食料や名簿が出てきたのだが、これは基本支給品だから参加者全員に配られているものだ。
その時銀時は思い出した。
運の悪い子には一個しか入っていないと、あのメガネの男が言っていた事を。
…ハイ終わったああああああ!!
銀時の目の前が真っ暗になろうとした寸前、銀時の目の前にぴょこんと頭にアホ毛の生えた背の小さい女の子が現れた。
その少女が握っていたもの――イングラムM10サブマシンガンを見た銀時は、もう汗すら出なくなった。

本当に終わったァー!!!!



泉こなたは、絶叫していた男と接触するか否かを迷っていた。
この場は殺し合いの場だ。
出来る限りの危険は避けなくてはならない。
先程のような大声は、大抵のアニメや漫画じゃ死亡フラグだ、
戦争ものとかそういうものはあまり読まないこなたでもそれは分かる。
だが問題は、その絶叫が奇妙だったことだ。
その叫び方とか叫んだ「嘘だろ」というセリフから恐らく――現段階で判断するのは軽率かもしれないが――恐らく絶叫の主は自分と同じようにこの殺し合いに乗る気はないと思う。
そんな人間を放ってこの場を立ち去ってしまうのは、正直気分のいいものではない。
ゲームなんかでも助けられる人を助けないで自分だけ助かろうと動けば待っているのはバッドエンドか死亡エンドのゲームオーバーだ。
もし万一相手が襲って来たとしても、自分にはイングラムという強力な武器がある。
こなたは意を決し、声の主の方へ向かった。
そこにいたのは、デイバックの中身をぶちまけ、大きな犬のぬいぐるみをわきに抱え、絶望の表情を浮かべんとしている銀髪天然パーマの男だった。



潮江文次郎は物陰からこの奇妙な二人の遭遇を見ていた。
銀髪の男の方はまだしも、小さい女の子の方は手に銃…多分、をもっている。
文次郎の身体に緊張が走り、手に持っていた武器――ライバルである食満留三郎の得意武器である鉄双節棍を握りしめた。
と、その時目の前の少女は銃を下した。
どうやら二人とも殺し合いには乗っていないようだ。
それを確認すると、文次郎は二人と接触する事を決めた。



「いやー、正直もうダメかと思ったぞ、つーか三途の川チラ見したぞ。」
「ごめんごめん、突然の事だったからちょっと警戒しちゃったよ。」
泉こなたも坂田銀時も、どちらも人見知りしない気さくな性格であったため、互いに殺し合いに乗る気が無いと分かるとすぐに打ち解けた。
現在では二人は食料を食べつつ今後どうするかを考えていた。
「まずしなきゃいけねーのは知り合いの保護だな。」
「皆…無事だと良いんだけど…」
こなたの脳裏に、先ほど浮かんだ嫌な想像が蘇りそうになる。
それを忘れようとこなたはもっているおにぎりを頬張った。
「俺の知り合いはまあしぶといから大丈夫だろうけど、こなたの友達は心配だな。」
「うん…あれ?銀さんどうしたの?」
「静かにしろこなた、誰かいるぞ。」
「え?」
こなたは咄嗟にイングラムを銀時の向いている方向に構えた。
「なかなかいい勘だな。」
だが声のした方向はこなたたちの向いている方とは逆の方だった。
二人が急いで振り返ると、そこには鉄のヌンチャクをもった忍者が立っていた。

「オイ誰だアンタ。」
「俺は怪しいものではない。」
「いや怪しいよアンタ。」
「…まあいい、俺もこの殺し合いには乗っていない。」
「え―本当かよ。」
「ああ、あなたたちも乗ってはいないんだろう?良かったら協力しないか?」
突然の忍者の申し出に銀時もこなたも唖然とした。
(…ねー銀さん、ああいってるけど大丈夫なのかな?)
(どうだかな。)
(ステルスマーダーだったら大変だよ?ほら汚いなさすが忍者汚いってネットでもよく言われるし。)
(とはいえあんなおっさんにそんな高度な真似ができんのか?)
「誰がおっさんだと?」
ヒソヒソ話をしていた銀時とこなたが振り向くと、そこに立っていた文次郎は額に二、三個青筋を浮かべていた。
「あらら、聞こえてた?」
「ばっちり聞こえてたぞバカタレ。」
「いや俺は思った事をそのまま言っただけだぞおっさん。」
「おっさん言うな!俺はまだ15だ!」
「じゅ、15!?」
潮江文次郎の自己申告に、さっき以上に銀時とこなたは驚いた。
「いやいやいやおっさん、嘘は良くないぜ。いくらこの不況の世の中若い子が優遇されるのは分かるけどさあ。」
「ま、また言ったな!」
「わ、私より年下だったなんて……」
「年下ぁ!?」
こなたの何げないつぶやきに、今度は銀時と文次郎が驚愕した。
「おいこなた…お前いくつなんだ?」
「むー、こう見えても18だよ私は。」
「じゅ、18!?そんなバカな!」
「…よく言われるよ。ちびでつるぺただし…」
「いやてっきり俺はうちの神楽と同い年かそれ以下かと。」
「神楽?誰だそれは?」
「うちの従業員、設定では14歳ぐらいって年だけど。」
「銀さん、何気にひどいよ……」

紆余曲折あったものの坂田銀時、泉こなた、潮江文次郎の三人は行動を共にする事になった。
…二人の十代の若者の心に小さな傷を残して。





【D−3住宅街/1日目朝】
【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:健康、ちょっと心に傷
[装備]:イングラムM10サブマシンガン@BATTLE ROYALE
[道具]:基本支給品一式(アイテム確認済み)
[思考]1:かがみ、つかさ、みゆきと早く合流したい
   2:銀時、文次郎の仲間とも合流したい
   3:…どーせわたしはつるぺただよ。

【坂田銀時@銀魂】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、亜米利加的犬@まほらば
[思考]1:主催者をボコボコにする。
   2:新八、神楽、長谷川、こなたの友人、文次郎の仲間と合流したい
   3:…言い過ぎたかな。

【潮江文次郎@忍たま乱太郎】
[状態]:健康、心にほんの少しの傷
[装備]:鉄双節棍@忍たま乱太郎
[道具]:基本支給品一式
[思考]1:主催者を倒す。
   2:銀時、こなたの友人と早いうちに合流したい
   3:六年生の仲間とも合流したい
   4:おっさんって…おっさんって…

【支給品情報】

【鉄双節棍@忍たま乱太郎】
潮江文次郎に支給。
元々は忍術学園六年は組の生徒、食満留三郎の得意武器。
分かりやすく言えば鉄のヌンチャク。
二本の六角形の鍛鉄でできており、刀の攻撃も受け止める事が出来る。

135 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/28(火) 23:06:50.09 ID:2VVG/My8
投下します
タイトル:新たに灯る決意の炎
136 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/28(火) 23:07:20.69 ID:2VVG/My8
「何とか陸に上がってこれたものの…武器も何も無くなっちゃったし…これからどうしよう」

びしょ濡れのまま、フラフラと橋の前まで歩いて行く。

(…ここで自分が死んだら…どうなるだろうか?)

守ろう、と思っていた茜ちゃんも守れなかったし。
武器も、今頃海の底に。

「…ゲームには、やっぱり乗りたくない」

何があっても、絶対に、ゲームには乗りたくない。
それだけは、確かだった。
こんな場所で幼い命を落とした、茜ちゃんのためにも。
だが、何も持っていない今の状態では何もできずに死ぬかもしれない。

「やっぱり、武器が必要なのか…」


辺りを見回すが、特に武器になりそうなものは見つからない。
遠くに見えるのは、明かりの灯るスーパーだけ。
それ以外は、所々に街灯が灯っていて、その近くを明るく照らしているのみ。

「都合よく、武器なんて落ちてる訳ないよね…」

仕方無く、橋を渡ろうとした時。
前方に、誰かが倒れているようだ。
辺りには血が広がり、どう見ても生きてはいない。

「近くに、乗ってる人がいるんだ…あっ、日本刀が…」

傷だらけの遺体の傍に、血の付いた日本刀が放置されている。
銃程では無いが、日本刀も十分強力な武器のはずなのに。
第一、刀身には血が付いてない。
柄に少し血が付いている以外は、全く血が無い。

(抵抗する暇も無かったのか、それとも抵抗したけど殺されてしまったのか…)

倒れている男を殺害したのが誰かは分からない。
だが、これほど酷い殺しかたをする奴だ。
きっと、ロクな奴じゃない。
137 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/28(火) 23:07:37.97 ID:2VVG/My8
「この人には悪いけれど、この刀と端末は使わせて貰おう…」

刀を拾い上げ、デイパックから端末を取り出しポケットに入れる。
とりあえず、少しの間なら何とかなるはず。

(誰か…いそうな所は…やっぱり、街かな…)

来た道を引き返し、スーパーの街に向かって歩き出した。

【一日目・朝/B-2】
【◆VxAX.uhVsM@非リレー書き手】
[状態]:健康、ずぶ濡れ
[装備]:名刀桜吹雪@龍が如く2
[所持品]:端末
[思考・行動]
基本:絶対、ゲームには乗りたくない。何が何でも生きる。
1:脱出のために、行動する。
138 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/28(火) 23:07:50.16 ID:2VVG/My8
投下終了です
139 ◆ymCx/I3enU :2011/06/28(火) 23:26:32.79 ID:JXFExTU1
投下乙です。

投下します。俺得5 24話 ジャポネスロンリーハート
登場:坂田銀時、大沢木小鉄、有田美帆、シャロン
140ジャポネスロンリーハート ◆ymCx/I3enU :2011/06/28(火) 23:28:17.00 ID:JXFExTU1
24話 ジャポネスロンリーハート

「足が痛い…」
「小鉄はタフだな、オイ」
「これぐれーへっちゃらだぜ、銀時にーちゃんも美帆ねーちゃんも体力ねーなぁ」
「お前が異常なんだよ!」

足が棒のようになりつつある銀時と美帆とは違い、小鉄は全然平気そうだった。

「くそっ、しゃーねぇ、どこかで休むか…」
「あそこにパン屋がありますよ銀さん」
「あ?」

美帆が指差す先には確かにベーカリーショップが。
だが、三人はもう一つ、別の物を見付けてしまう。

「…おい、ありゃ…」
「え…え? う、うああ!」
「な、何だ…うわっ!?」

ベーカリーショップの向かい側の通りに面した裏路地の入口付近に、死体が転がっていた。
頭を撃ち抜かれ、血がアスファルトに流れ出ている。

「ほ、本物かよ…本物の、死体…?」
「…ああ、そうみたいだな…」
「……酷い……」

凄惨な死体に沈痛な面持ちとなる銀時、小鉄、美帆。

「あ、あの」
「「「!」」」

三人の背後から女性の声が掛かる。
振り返ると、そこには金髪のエルフの少女が立っていた。
バズーカらしき物を背中に背負っている。

「誰だお前、いつからそこに」
「そこのベーカリーショップの中にいたんです」
「ねーちゃんその背中に背負ってるの、バズーカか?」
「え? あ、うん…支給されたの」
「あ? そのバズーカ、真選組のじゃねーか」
「そうなんですか?」
「ああ、サド王子こと沖田君が良く使ってるからな」
「沖田……名簿にそんな名前が……」
「と、取り敢えず建物の中に入りませんか?」

路上で立ち止まっているのは危険だと美帆が警告し、四人はエルフの少女、シャロンが居たベーカリーショップに入る。
141ジャポネスロンリーハート ◆ymCx/I3enU :2011/06/28(火) 23:29:41.64 ID:JXFExTU1
……

「成程な、虎の顔した女があそこに倒れてる男を殺した、と…」
「はい、そうです…間違い無いです…多分、東の方に行きました」

銀時とエルフ少女、シャロンは店先に置いてあったパンを食べながら情報を交換していた。

「んで、お前はずっとここに留まっていたのか」
「えーと、実はさっきまで寝てたんですよ」
「おいおい」
「色々食べてる内に眠くなってしまって」
「緊張感ねーな…」
「……」
「まあそれはそれとして…つー事は、誰にも会ってないんだな?」
「はい」
「そうか…」

銀時、小鉄、美帆にはそれぞれ殺し合いに呼ばれた知り合いがいるが、
シャロンは最初に、路地裏入口付近で男性を殺害した虎獣人の少女を見ただけで、
後は誰とも会っていないと言う。現実に死亡者が出ている事を確認した今、三人は知人達が無事かどうか、更に不安になっていた。

「のり子、仁、フグ夫、春巻、花丸木、十三階段…」
「圭人、祐実…」
「…ごめんなさい、役に立てなくて」
「いや、良いんだ…お前は知り合いはいないのか?」
「いえ…一人です」
「そうか、分かった…幸運だな」
「……」
「…その虎の女は東に行ったって言ってたよな」
「はい」
「となると…」

銀時はデイパックから床に地図を広げ、現在位置と思われる位置を指差す。
エリアB-2。東方向には橋、その先には健康センターがある。
しかし東の橋を渡った先には北向きの橋が二つある。
その先にはショッピングセンター、市役所、公民館、学校と言った施設が集中する中心街だ。

「…結構、そいつが行きそうな場所はあるな…だが、とりあえず東の橋渡って、役場の方行ってみるか。
どうだ? 美帆、小鉄、シャロン」
「…良いと思います」
「ああ、良いぜ」
「賛成…」
「よし……腹ごしらえもしたし、行くか……」

銀時、美帆、小鉄、シャロンの四人は市役所へ向かう事にした。

(あれ、思えば俺以外は女二人に子供……俺、完全にお守り役じゃねーか!
大丈夫か…? 子守り三人も出来んのか俺!?)

今更ながら、銀時は自分が三人もの命を預かっている事を思い知る。
142ジャポネスロンリーハート ◆ymCx/I3enU :2011/06/28(火) 23:30:18.92 ID:JXFExTU1
【朝/B-2市街地:ベーカリーショップTAKENAKA】
【坂田銀時@銀魂】
[状態]肉体疲労(中)
[装備]虎鉄Z-II@銀魂
[持物]基本支給品一式
[思考・行動]
0:殺し合いを潰す。新八達と合流したい。
1:小鉄、美帆、シャロンと行動。
2:襲われたら戦う。
[備考]
※原作ラブチョリス編以降からの参戦です。
※小鉄の知人と美帆の知人の情報を得ました。
※河野史奈(名前は知らない)を危険人物と認識しました。

【大沢木小鉄@浦安鉄筋家族】
[状態]健康
[装備]二十六年式拳銃(6/6)
[持物]基本支給品一式、9ox22R弾(12)
[思考・行動]
0:殺し合いはしない。のり子達を捜す。
1:銀時にーちゃん、美帆ねーちゃん、シャロンねーちゃんと行動。
[備考]
※原作最終話〜元祖!の間からの参戦です。
※銀時の知人と美帆の知人の情報を得ました。
※河野史奈(名前は知らない)を危険人物と認識しました。

【有田美帆@オリキャラ】
[状態]肉体疲労(中)
[装備]神楽の番傘@銀魂(残弾90、ビーム砲使用回数残り1)
[持物]基本支給品一式
[思考・行動]
0:死にたくない。圭人と祐実を捜す。
1:銀さん、小鉄君、シャロンと行動。
[備考]
※銀時の知人と小鉄の知人の情報を得ました。
※河野史奈(名前は知らない)を危険人物と認識しました。

【シャロン@オリキャラ】
[状態]健康
[装備]真選組バズーカ@銀魂(1/1)
[持物]基本支給品一式、真選組バズーカ予備弾(3)
[思考・行動]
0:取り敢えず殺し合いには乗らない。
1:銀さん、美帆、小鉄君と行動。
[備考]
※河野史奈の容姿を記憶しました。
※銀時、小鉄、美帆の三人の知人の情報を得ました。
143 ◆ymCx/I3enU :2011/06/28(火) 23:31:02.44 ID:JXFExTU1
投下終了です。
144 ◆ymCx/I3enU :2011/06/29(水) 22:36:52.92 ID:S4dXrZ+t
投下します。俺得5 25話 ウェップナー
登場:河野史奈、十三階段ベム
145ウェップナー ◆ymCx/I3enU :2011/06/29(水) 22:37:40.68 ID:S4dXrZ+t
25話 ウェップナー

市街地に銃声が響く。二種類。
虎の少女、河野史奈は車の陰に隠れ銃撃をかわす。

「ああははははっ…もう何も怖くない…何でもできるぞぉ」
「随分テンション高いおっさんねー…全く、面倒な奴に出会ってしまった」

狂った笑い声を上げながら史奈の隠れる車に向け持っている拳銃を乱射する男、十三階段ベム。

「私に遭ってしまうとは運の無い人ですねぇ、さっさと死んで下さーい」
「うざい…」

十三階段はなおも手にしたS&W M56オートの引き金を引き続ける。
しかし、突然スライドが後退したまま固定される。弾切れだった。
後先考えず撃ちまくればすぐに弾切れになるのは至極当然なのだが今の十三階段にそこまで気が回せるはずも無い。

「あ、あれ…た、弾切れ?」

突然弾が出なくなり、戸惑う十三階段だったが、すぐに我に返り、
デイパックの中から予備のマガジンを取り出そうとした。

ダァン! ダァン!

「ぎゃああぁああ」

史奈が撃ち放った二発の銃弾の内一発が十三階段の腹に命中した。

「うぎぃぃいいいいええぇぇええええ」

生まれた初めて感じる銃撃の痛みに悲鳴をあげる十三階段。

ダァン! ダァン! ダァン!

更に史奈は追い打ちをかけるかの如くマウザーC96の引き金を引き続ける。

「ぎぃっ」

今度は十三階段の背中から銃弾が入り、体内を抉る。
黒い一丁羅に黒い染みが出来、アスファルトの上に血が滴り落ちた。

「があああぁあああああああ!!! アアアアアアァアアァアアアアアアアアアーーーーーーーーーー!!!!!」

激しい激痛は彼の壊れた精神を更に細かく刻み、もう元には戻らない。
絶叫し、十三階段はどこかへ走り去ってしまった。
146ウェップナー ◆ymCx/I3enU :2011/06/29(水) 22:38:55.83 ID:S4dXrZ+t
「……」

どうにか危機は脱せたと、史奈は胸を撫で下ろす。
しかし随分と弾薬を消費してしまった。

「死ねばいいのに」

もう姿が見えなくなった男に向け蔑みの言葉を贈る史奈であった。


【朝/B-4市街地】
【河野史奈@オリキャラ】
[状態]健康
[装備]マウザーC96(0/10)
[持物]基本支給品一式、マウザーC96装弾クリップ(10×2)、卒塔婆スキー@浦安鉄筋家族
[思考・行動]
0:殺し合いに乗る。優勝を目指す。
1:獲物探し。
[備考]
※十三階段ベムの容姿を記憶しました。

【十三階段ベム@浦安鉄筋家族】
[状態]発狂、腹と背中に盲貫銃創
[装備]S&W M56オート(0/15)@自作キャラでバトルロワイアル
[持物]基本支給品一式、S&W M56オートのマガジン(3)、まわる〜まわ〜る〜脂肪は燃えるちゃん@銀魂
[思考・行動]
0:アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
[備考]
※原作最終話〜元祖!の間からの参戦です。
※B-4の南部に向かって走っていますがどこに向かうかは不明です。
147 ◆ymCx/I3enU :2011/06/29(水) 22:39:29.83 ID:S4dXrZ+t
投下終了です。
148 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/29(水) 22:41:00.70 ID:TCecYRSl
投下乙です、自分も投下します
タイトル:命を賭けろ
登場人物:Tさん、◆WYGPiuknm2、遠山純子、三田村哲也
149 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/29(水) 22:41:18.40 ID:TCecYRSl
「ここまで来ればもう大丈夫だろう…」
「ですね…」

お互い荒く息を付きながら、地面に座り込む。

(…いくら乗ってるだろうと予測できてても…なんかショックだな…)

知り合いがゲームに乗っている所を見ると、結構心に来る物がある。
何と言うか、「見てはいけない物」を見てしまった時と同じ感覚だ。

「…うううう…うおおお…殺すうううう」

ホームセンターから、異常な程の負のオーラを纏った男が出てくる。
その男は…左腕が切り落とされていた。
なのに、血は出ていない。

「マズいな…あの男…とてつもない負の気を背負っている」
「え…マジで…?」

豚のような男が、こちら目掛け矢を射ってくる!

「…!くっ!」

かわしきれずに、ボウガンの矢が◆WYGPiuknm2の肩を掠める。
そのまま、ボウガンの矢は暗闇の中へ消えて行く。
傷はそこまで深くなく、出血も軽い。

「うううう、矢がまた無くなっちまったあああ」

左腕が無い状態で、再び矢を装填するのにはとてつもなく時間が掛かる。

「また逃げる事になるな」
「…分かりました」

またもや逃走する事になってしまった。
しかし、今度は上手く行かなかった。
150 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/29(水) 22:41:37.86 ID:TCecYRSl
「とうとう見つけたわよ…Tさん」
「その声は…あいつか!?よりによってこんな時に…」

赤いワンピースの女…が憑依している遠山純子が2人の前に立ちふさがる。
前にはワンピースの女、後ろはあの男…。
絶体絶命だ。
Tさんが小声で◆WYGPiuknm2に耳うちする。

(今まで2人と戦ったが…ある事に気が付いたんだ)
(何ですか?)
(ここに呼ばれる前と、ここに呼ばれた後で…確実に「破ぁ!」の力が落ちている)
(えっ!あれで落ちてるんですか!?)
(ああ…いつもならノコギリ男なら1回で半身を吹き飛ばせるはずなんだが…)

そうこうしている内にも、どんどん間合いを詰められて行く。

「一か八か、俺が今持てる力全開であの女に「破ぁ!」する。その間にお前は先に行け」
「…それで、もしあいつを倒せなかったら?」
「その時はその時だ…。とにかく、お前は行け!」
「…ごめんなさい、Tさん!」

迷いを振り切り、女の横を走り抜ける。
それに目もくれず、ずっとTさんを睨み付けている。

「フゥー……」

Tさんが「破ぁ!」の構えを取る。
その目には、今までとは違う気…殺気が籠っている。

「…来い」
「今の貴方の力で…私を倒せる?」
「さぁな…やってみないと、分からないだろう!?」

Tさんの手に、どんどん力が集まっていく。
それを見て、一瞬たじろぐがすぐに落ち着きを取り戻すワンピースの女。

(…当たっても外れても…俺はただじゃ済まないな…)

上限ギリギリまで力を溜める。
既に、体力的にかなりキツい。
少しでも気を抜けば、失神してぶっ倒れてしまいそうだ。

(だが…関係無い他人を復讐に利用するなんて…許せん!)
「今にも倒れそうな顔しちゃって…すぐ楽にしてあげる!!」

ワンピースの女が飛びかかってくる、その瞬間。
Tさんの手が輝き…!

「破ぁ―――――――――――!」
151 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/29(水) 22:41:58.83 ID:TCecYRSl

とてつもない力が放出され、遠山純子ごとワンピースの女を包む!

「んああああああああ――――――!」

光の中で、もがき、苦しみ…。
体が、崩壊して行く…。

(何故…私は…!)

光が収まった時には、既にワンピースの女の姿は無くなっていた。
ついでに、憑依されていた人間の肉体も。

「………隕石を……撃ち落とした時に…使った……ヤツだからな……この距離で…食らえば……」

地球に飛来してきた隕石にかました光弾と同じタイプの物だった。
もの凄く離れていた隕石をも砕いた光弾だ。
いくら力が制限されているとはいえ、至近距離で食らえば間違い無く消滅する。

「体が……動かないな……疲れた……」

ワンピースの女が消えても、安心できない。
さっきの男が、まだ残っている。
今襲われたら、抵抗すら出来ない。

「ううううう、さっきのは何だああああ」
「っ…!」
「さっきのおお、食らってたら死んでたなああ。あんな攻撃を隠してたなんてえええ」
「ハァ…ハァ…は、破ぁ…」

わずかな力で「破ぁ!」するも、全く歯が立たない。
もはや、ここまでのようだ。

「……八尺様以来だな。ここまで、追いつめられたのは」
「あああ?何訳分かんねえこと言ってんだあああ」
「全く……先に行け、と言ったのに……」
152 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/29(水) 22:42:14.27 ID:TCecYRSl
豚の背後に誰か立っている。
慌てて振り向くが、その前に素早く何かで殴り倒される。
ばたりと倒れ、動かなくなるが死んではいないようだ。
多分、気絶したのだろう。

「あああああああ!」
「…やっぱり、先になんて行けませんよ」

さっき、先に逃げさせた◆WYGPiuknm2が、釣りざおを握って立っている。
おそらく、それで殴ったのだろう。
真ん中からポッキリ折れている。

「悪いな…」
「そんなことより、逃げましょう」

Tさんは立ち上がろうとするが、足に力が入らず立ち上がれずにフラフラと倒れる。
顔色も非常に悪い。
まだぐったりとしているTさんを背負って、今自分が出せる精一杯のスピードで走りだした。

【一日目・朝/D-2とD-1の境目辺り】
【Tさん@Tさんシリーズ】
[状態]:健康、疲労困憊
[装備]:特殊警棒
[所持品]:支給品一式、ガム
[思考・行動]:
基本:このゲームを壊し、主催者を破ぁ!する。
1:暫く、体力の回復を待たないと話にならないな…。

【◆WYGPiuknm2@非リレー書き手】
[状態]:健康
[装備]:折れた釣りざお@Tさんシリーズ
[所持品]:支給品一式
[思考・行動]
基本:ゲームには乗りたくない。
1:Tさんを背負って逃げる。
153 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/29(水) 22:42:28.82 ID:TCecYRSl
【一日目・朝/D-2】
【三田村哲也@オリジナル】
[状態]:健康、左腕欠損(傷口凍結)、気絶
[装備]:ボウガン
[所持品]:支給品一式、ボウガンの矢×3
[思考・行動]
基本:目に付いたヤツ全員殺す。
1:(気絶中)
※傷口が凍り付いています。暫くしたら氷が溶けます

【遠山純子@オリジナル 消滅】
【ワンピースの女@Tさんシリーズ 消滅】

---

投下終了です。
154 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/30(木) 00:15:51.18 ID:SsOex65t
投下します
タイトル:探りあい、探りあい
登場人物:◆8nn53GQqtY、◆YR7i2glCpA、お守りを貰った人
155 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/30(木) 00:16:21.20 ID:SsOex65t
「…おっと、あれは8n氏か?もう一人、知らないヤツもいるが」

念の為、遠くから観察する。
いくら仲間を連れているとは言え、乗っている可能性がゼロと言う訳では無い。

(…接触してみるか)

道を普通に歩いて行く。
変にこそこそしていると、逆に怪しまれる可能性がある。
誤解されて、悪い噂でも流れれば、自分の命が危うい。

「よう、8n氏」
「あっ、YR氏…」

話しかけた時の反応も、別段おかしな所はない。
この分なら、乗ってはいないだろう。

「この人が、さっき言ってた、新しく参加した奴か?」
「…ああ」

ここで、妙な事に気が付く。
何で俺が新しく参加させられた事を知ってるんだ?
新しく誰かが参加するのは参加者に知らせたが、それが「誰」なのかは知らせてない。
…と会場に送られる前に、黒服の奴に言われたのに。

(…前言撤回。念の為警戒しとこう)
「どうした?」
「いや、別に」

警戒していることを悟られてはマズい。
もしも、もしもこの2人が乗っているとしたら。
流石に2対1では分が悪い。
勝ち目の無い勝負をする程、自分も馬鹿では無い。

「YR氏はこれからどうする?目的地とかあるのか」
「いや、特に何も。病院はさっき見て回ったし」
「そうか。さっき爆発音が聞こえたが、あれは何だったんだろうな」
「さあ。俺にも良く分からなかった」
156 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/30(木) 00:16:46.40 ID:SsOex65t
他愛も無い会話を交わす間も、2人をチェックする。
8n氏は…見た所武装していない。
武器を持っていないのか、ただ仕舞っているだけか。
もう片方の男…名前が分からない。後で聞いてみよう。
そして肝心の武装だが…。鉈にしては長い物を持っている。
先が鎌のように湾曲している。鉈鎌とか言う物だろう。

「そうだ。8n氏、俺と一緒に行動しないか?仲間は一人でも多い方がいいんじゃないか?」
「…分かった、一緒に行こう」
(…肝心の乗っている「証拠」が無い以上、友好的を装って観察して行くか)







(出来る事なら、同行者は増やしたく無いが…ここで変に断っても怪しまれるかもしれない)

疑って掛かっているのは、◆8nn53GQqtYも同じだった。
いくら知った仲とは言え、そう易々と信用するはずもない。
お互い、腹の探りあいだ。

(早めに、YR氏は始末する必要がありそうだ)

【一日目/深夜/B-4】
【お守りを貰った人@Tさんシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:鉈鎌
[所持品]:支給品一式、アロー・ヘッドのフィギュア@R-TYPEシリーズ
[思考・行動]:
基本:殺し合いなんてしたくない。
1:自分含めて3人か、これは心強い
157 ◆6LQfwU/9.M :2011/06/30(木) 00:16:59.79 ID:SsOex65t
【◆8nn53GQqtY@非リレー書き手】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持品]:支給品一式、IMIデザートイーグル(7/7)、デザートイーグルのマガジン×2
[思考・行動]
基本(表向き):ゲームには乗らない。
基本(本心):ゲームに乗るが、その事を悟られないようにする。
1:YR氏を警戒。
2:早めにYR氏を始末したい。

【◆YR7i2glCpA@非リレー書き手】
[状態]:健康
[装備]:VSSヴィントレス(10/10)
[所持品]:支給品一式、VSSマガジン×2
[思考・行動]
基本:とりあえずゲームには乗らないでおく。
1:8n氏を警戒。観察のために同行する。


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投下終了です
158 ◆8nn53GQqtY :2011/06/30(木) 00:57:23.82 ID:p/PpeIR5
投下乙です。
YR氏に会えた。嬉しい(ステルスだけどな!)

では投下します
雑多ロワ26話:VSキラーレイビー
登場キャラ:櫻井流人、シルバー
159 ◆8nn53GQqtY :2011/06/30(木) 00:58:02.33 ID:p/PpeIR5

さて、ここに櫻井流人という少年がいる。

性格は明朗快活でポジティブ。ヒトの何倍も行動力があり、面倒見も良い。
ある少女からは“昼の少年”と例えられたほど。
これといったスポーツに打ち込んでいるわけではないが運動神経は優秀で、成績はさほど良くないけれど頭は良い。
容姿端正で背も高く、また内面も大人びているため、高校一年生だというのにしょっちゅう大学生と間違われる。
人望も交友範囲も――主に女の子から――大きく広く、彼に依頼すればご町内のたいていの人間の情報は集められる。それ故に有事の際は頼りにされる。



――ただし、性癖は『マゾ』だ。それも重度の。



160 ◆8nn53GQqtY :2011/06/30(木) 00:58:30.32 ID:p/PpeIR5
とは言っても、肉体的な被虐行為に快感を覚えるという意味ではない。            
むしろ精神的な暴力、すなわち異性から憎まれ罵倒され、拘束され束縛され、
『あたしだけのものにならないなら殺してやる』と殺意を持って首を絞めてくれるような、独占欲と嫉妬に溢れる異性を好む。
憎しみは愛情の反転であり、嫉妬も、独占も、全て愛情の産物。
ならば、“殺したいほど憎い”とは“殺されるほど愛されている”ということに他ならない。

そんな彼の夢は、『心から愛する女性に、殺してもらうこと』。

もし彼を殺したいほど独占してくれる女性が現れたとしたら、その時は命を捧げても構わない。
あくまで、『愛し愛される両想いの相手』というのがポイントなのであって、別に自殺願望者というわけではない。

しかし、彼を殺してくれる女性はなかなか現れない。
それも当然だ。『恋人になってもいいけど、俺を殺してくれない?』と言われて、イエスと答える女性はなかなかいない。
というか、よほどの奇跡が起こらない限りは現れない。
だから、彼の心には虚無ばかりが溜まる。
“殺されるほど愛されたい”という手段が、いつの間にか、“誰でもいいから殺してほしい”にすり替わり、
そして“殺して欲しい”からこそ“死ぬことができない”という悪循環。

だから、櫻井流人は、己の人生に価値を見いだせない。
だからこそ、櫻井流人は死ぬことを少しも恐れていない。

これだけなら、櫻井流人の悲劇は、ただの自己完結に終始する。
しかし、彼の“歪み”はそれだけではない。


櫻井流人には、姉がいる。


161 ◆8nn53GQqtY :2011/06/30(木) 00:59:55.64 ID:p/PpeIR5
姉の名を、天野遠子。
ドジでそそっかしい、けれど何かにつけて流人の女癖の悪さを説教する、流人にとってただ一人、頭の上がらない女性。
別の姓を持ち、別々の家で育ち、またある“事情”もあって、二人が姉弟なのだと知っている人間は少ない。
けれど、父を早くに亡くし、母からは育児放棄に近い環境におかれた流人にとっては、この世でただ一人の肉親といっていい存在。
彼にとって唯一の、マゾヒズムな“情欲”からではなく、“親愛”を込めて愛している女性だった。
そして、天野遠子もまた、実の母親から『殺され』かけ、育児放棄されて、幸薄い半生を送って来た女性だった。
にも関わらず、天野遠子は自己犠牲精神にあふれた高潔な女性だった。
己がどんな理不尽な目にあったとしても、少しも悲しい素振りを見せずに、自分の幸せより他人の幸せを優先する。
自分の人生の労力の大部分を、己の為でなく周囲の人間を幸せにすることに費やしている。

だから、櫻井流人は天野遠子の幸せを願う。
これまでの半生で、理不尽な不幸が多かっただけ、彼女が喪われることが、許せないと思う。
“天野遠子が喪われることだけは許せない”という強迫観念は、次第に櫻井流人の心を侵しつつある。
周囲の人間から犠牲を出してでも、天野遠子を守り抜かねばと思っている。
実際、彼は後に“天野遠子と彼女の想い人を結ばせる”為だけに、想い人に懸想していた少女に強姦未遂を働いているのだが、
それはこの『実験』に呼ばれた時点では知られていないこと。

さて、長々と彼の“歪み”について記述してきたが、要するにこれは簡単な、とてもありふれた問題だ。


そんな風に“己の命に重きを置いていない”少年が、“どんな非道を尽くしても守りたい”家族と共に、
“たった一人しか生き残れない椅子取りゲーム”に巻き込まれたら、どうなるかという問題だ。


162創る名無しに見る名無し:2011/06/30(木) 01:00:46.70 ID:EaN7VoWc
支援
163 ◆8nn53GQqtY :2011/06/30(木) 01:02:15.56 ID:p/PpeIR5

※  ※

「よっ、少年。お互いとんでもないもんに巻き込まれちまったな」

流人は顔見知りにでも会ったように気軽に親しげに、その少年を呼びとめた。
「お前も、参加者の一人か」
やけに事務的な硬い声音で、赤毛の小柄な少年は対峙する。
「ああ、そうだよ。しかし殺し合いに乗るつもりはない。
俺は櫻井流人っていうもんだ。少年の名前は?」
「シルバー……姓はない」
肩を越えるほど伸びたボサボサな赤毛の下から、眼光鋭い銀色の目が警戒を隠そうともせずに睨んで来る。人と距離を置くタイプの匂いがした。
どこかアウトローじみたその格好と態度が子どもらしくないけれど、実際の年齢はそれほど高くないだろう。せいぜい10歳前後か。

――もしこれがゲームに乗った人間ならば、楽な獲物を見つけたと喜び勇んで襲いかかることだろう。
無条件に生存率が下がるという点では気の毒だ。

――逆に天野遠子のようなお人好しなら、間違いなく保護対象として同行させることになり、そして足手まといとしてお人好したちの寿命を縮めることだろう。
無条件に仲間の生存率を下げてしまうという点ではなお気の毒だ。

「そうか、なら情報交換がしたいんだ。少年に知り合いはいないのか?
お互い知っている連中がいたら早めに合流したいだろ?」
「一応いるな……ゴールドという名前の、俺と同い年ぐらいの子どもに、“仮面の男”と名簿に書かれた参加者だ。
しかし、“仮面の男”に近づこうとは考えるな。アイツは己の為なら平気で人を殺すような人間だし、得体の知れないところがある。
俺もアイツの能力を正確には把握できていない……お前にはいるのか?」
「ああ。姉さんで二つ年上の天野遠子っていう女がいるんだ。腰まで届くような長い三つ編みしてるから、すぐに分かると思うぜ。
それから、その女性の未来の彼氏の井上心葉さんっていう人だ。学校は違うけど俺のいっこ先輩で、…………『俺と同じ』で、『作家』だな」
164 ◆8nn53GQqtY :2011/06/30(木) 01:04:12.75 ID:p/PpeIR5



――つまり、
天野遠子を生かす為に、この子どもは殺すべきである。




「作家?」

シルバーはけげんな顔をする。
それはそうだ。作家が自由業とはいえ、流人は定職に就くには若すぎる年だし、そもそも流人が『作家』になるのは、今、この瞬間なのだから。


「そうだよ。ハッピーエンドを描くのが仕事さ」


そう、櫻井流人は、物語の傍観者ではなく、物語の『書き手』になる。


「俺は――姉さんを殺し合いから生還させるっていうハッピーエンドな物語を描かなきゃならないんだ!」


今だ、と思えば体は即座に動いた。

拳の中に握りこんでいたその“笛”を素早く口元にあてる。


――――ッ!!


細く長く笛を吹き鳴らすと、転瞬の後に咆哮。


――ガルルルルルルルル!!


二頭の“狂犬”が、赤毛の少年を噛み殺さんと高く跳躍した。



※  ※

シルバーは、“サクライリュウト”と名乗った男を、最初から警戒していた。
だからかもしれない。
彼に“知り合いはいないのか”と聞かれた時に、誰よりも親しい姉、ブルーのことを教えられなかった。

リュウト自身には、先刻のスーツの男のような危険性は見られない、しいて言えば妙に虚無的な瞳をしただけの、普通の青年にみえた。

しかし、2人が立つ林の空気の異常さは、ひしひしと感じていた。
男の出現と同時に放たれた、背筋の寒くなるような殺気。
それは、例えるなら森の中で凶暴な野生ポケモンの出現を予知した時と似ていた。
音も影もないけれど、確かに感じられる“獲物を見る視線”。

165 ◆8nn53GQqtY :2011/06/30(木) 01:06:38.83 ID:p/PpeIR5

そして、男が突如として“笛”を取りだした瞬間、シルバーは『来る!』と確信した。


――ガルルルルルルルル!!


獣の鳴き声でありながら、金属同士をこすり合わせたようなキーキー音の咆哮。
耳触りな唸り声に威圧され、それでもシルバーは動いた。
奇襲として来る“それら”を回避すべく、逃げに徹した。

――眼の前の、サクライリュウトに向かって。


「な――!?」
襲った標的に逆に突進され、一瞬動転を声に出したが、リュウトは即座に目つきを鋭くしてシルバーを迎え撃つ。
思いのほか冷静だ。しかし、体格差を生かして拳の下をくぐり、これを回避。

シルバーが立っていた場所から鍵爪の空を切る風圧が届き、
がキン!と牙が撃ちあわされる音が背中のすぐ後ろで響く。

しかし、ほぼ同時にぎゃりぎゃりと地面がこすれる減速の音。
当然だ。シルバーを追撃しようとすれば、位置的に“命令主”である流人を傷つける危険性が大きい。
あまり小回りが利かない大型の獣ならば、当然に追撃を躊躇う。
それを見越しての前面突破。
リュウトの脇の下をくぐるようにして突破成功。減速せずに、姿勢を低くしたままくるりと前転。
前転の勢いを利用して数メートルの距離を空け、そしてシルバーは初めて、襲った獣の姿を認める。

鋼のデルビル――に似た、四つ足の機械だった。
機械、だろうと推測する。少なくともポケモンとしては見たことないし、同じ個体のポケモンを支給品として二個引き当てた偶然よりは、二体で一セットの機械と考えた方が妥当だ。
青紫色のメタリックボディに、バチバチを赤紫の火花が尾のように揺れている。
細長く鋭い鍵爪。ぞろりと並んだ牙。
そして、その体長はシルバーの身長よりも大きい。
奇襲に際して一瞬で距離を詰めたスピードといい、もしあの牙や爪で抉られれば、ぞっとしないことになるだろう。

このまま逃げ切るのは難しいと判断し、シルバーは舌打ちと共に己の支給品――モンスターボールをホルダーから取り出した。



※  ※

眼の前の少年、どうやら少なからず修羅場慣れしているようだ。
166 ◆8nn53GQqtY :2011/06/30(木) 01:08:24.56 ID:p/PpeIR5
流人の支給品“キラーレイビーズ”の奇襲を紙一重でかわし、喧嘩では場数を踏んだ流人の拳をかわしてみせた。
“足手まとい”と断じたことに心の中で謝る。悪かった。
しかし、だからといって流人の為すことが変わるわけではない。

殺す。
天野遠子を殺させない為に、全て殺す。

ぽん、と少年の投げた紅白の球体が煙を発し、そこから小さな“影”が飛び出す。

「エイパム! “こうそくいどう”!」

出現したのは、紫色をした“影”だった。

“影”と表現するしかなかったのは、とにかく疾かったからだ。
気配を察して飛び出した赤紫のキラーレイビーと空中で交差し、キン、と金属音を鳴らす。
レイビーを引っかくように一撃見舞った“影”はそのまま空中を横切り、木の上の影へと姿を隠す。
しかしレイビーは、以前として無傷。
当然だ。レイビーの材質は核金という超常の合金。
いくら素早いからといって、小動物の軽い一撃でそうダメージを負ったりはしない。
しかし、殲滅に越したことはない。

――――ッ!!

説明書に書かれていた通りに犬笛に息を吹き込む。
一体――仮に“A”と呼称する――を少年へ。もう一体の“B”を、“紫”の影へ。
生身の子どもや小動物に、彼らの牙に対抗する手段はない。少年には為す術はない。

“A”は“紫”を追尾。“B”は少年の退路をふさがんとカーブを描く。

“紫”を追う“A”が流人たちの周囲で円を描き疾走し、木の葉を散らす。
少年は“B”の一撃を左右に跳ぶことで回避。しかしレイビーの俊足が上回り、爪が左腕を微かに削る。
ぱっと血しぶきが舞い、赤紫の炎が少年の苦悶の顔を照らす。
“B”はすれ違いざまの一撃を加えると、再びカーブを描いて少年に向かって突進。
167 ◆8nn53GQqtY :2011/06/30(木) 01:08:53.10 ID:p/PpeIR5
レイビーを目で追えない少年を翻弄する。

二体のレイビーズが、一人と一匹を追い詰めるようにぐるぐると円を描く。
二頭が四肢を躍動させるたび火花が散り、林の中をテラテラとライトアップする。

流人はふと、思いつく。
狂犬たちはガゼルを追い詰めるハイエナのようにじわじわと優位を保って攻撃しているが、しかし流人に敵を嬲る趣味はない。彼はマゾではあったがサドではない。
一撃で仕留めるにはどうすればいいのだっけと笛の使い方を思案する。

そんな、勝者の余裕に浸っていた時だった。

周囲を旋回していた“紫”が、突如として“B”の射線上に飛び出した。
子猿のような小動物が、赤紫の炎の刹那、照らされる。
一秒後には“B”にぶつかって転倒し、“A”に仕留められる絶好の位置。
その一瞬、これで一体仕留めた、と流人は思った。
しかし


――ひゅん!


紫色の影が、瞬時に透けて消えた。


「な!?」

消失した“影”に、流人はその眼を疑う。

しかし、その“消失”は間違いなく現実で、そして致命的だった。

二頭のキラーレイビーズにとっては。

そう、狂犬の一頭は、影が倒れたところを飛びかかろうとしていた算段であり、“影”の消失は、大ぶりの攻撃が空振りしたことを意味し――


“A”の体躯が、“B”に横殴りに激突した。


通常の成犬の十倍の攻撃力を持つレイビーズ同士が衝突すれば、その衝撃は決して少なくはなく、
二頭の体はもつれ合うようにして、真横に何メートルも吹き飛ばされる。


「“かげぶんしん”――」

淡々とした少年の呟きが、耳に届き、流人は顔を挙げた。


そして、余裕が全て吹き飛ぶ。

いつのまに、取り出したのか、
銃口が、流人に向いていた。

168 ◆8nn53GQqtY :2011/06/30(木) 01:11:10.79 ID:p/PpeIR5

そのコンマ数秒、流人の周りの時間がゆっくりになった。
土壇場になると、時間がスローモーションに感じられるという“アレ”だ。

“殺される”と、そう思った瞬間、それに反発する執念が流人の脳を埋め尽くす。

殺されない。
殺されて、たまるか。

『殺してやる』と言われたことなら、何度もあった。

七股をかけてそれがバレタ時とか。三人の女の子にトリプルデートを提案した時とか。
けれどどの女も口ばっかりで、結局本当に人を殺す度胸なんかないのだ。

スローモーションになった視界に、銃を持つ少年の腕が震えているのが見える。
ほら見ろ。

迷ってるってことは、結局覚悟がないんじゃないか。

覚悟のない人間に、櫻井流人は殺されたりしない。

(撃ってみろよ。撃てる覚悟があるならな)

少なくとも櫻井流人には、その覚悟があり、迷いがない。

ベルトに挟んでいた小型拳銃に手を伸ばす。
誉めてあげたくなるほど、我ながら上出来な早撃ちだった。
初めて撃ったにしては上出来なほどに、銃身の狙いは安定した。


ぱん、と軽くて警戒な音がなった。


少年が右腕を左手で抑えた。
弾丸が少年の右腕を抉った。
それでも拳銃を落とさないのはさすがだが、その傷で狙いをつけることはかなうまい。

――勝った。
流人は今度こそ勝利を確信し、




まさのその瞬間、流人の視界が、暗くなった。



※  ※

計算通り。

169 ◆8nn53GQqtY :2011/06/30(木) 01:13:30.97 ID:p/PpeIR5

エイパムがシルバーの意思を理解してくれるかはぶっつけ本番だったが、
エイパムのトレーナーである少年と何度も交戦していたことが幸いした。
あいつはタイプ相性も知らない初心者の癖に、こういう不意打ちや奇襲はやけに上手いのだ。

リュウトの顔面にへばりついたエイパムに、シルバーは決め手とばかりに指示を出す。

「エイパム! 笛を狙え」

銃口を向けたのは、男の注意を逸らす囮。元よりシルバーに撃つつもりはなかった。

男から逃げる為には、あの狂犬たちを行動不能にするしかない。
しかし、現在のシルバーの装備でそれを達成することは困難。
エイパムの撹乱で同士撃ちを狙ったとしても、決定打になるかは疑わしい。

ならば簡単。狂犬たちに指示を与えているらしい、あの“笛”を何とかすればいいだけのこと。

シルバーは、あの合金の生き物に対処する方法など知らない。
しかし、これをポケモントレーナーのバトルに例えれば、その対処法は単純明快。
トレーナーの中にも、敵に技を悟られないよう、暗号化した指示を送る者はいる。
あの“笛”もその類のものに違いない。


ジムリーダーとの公式試合ならいざ知らず、敵を『倒す』ことに目的を置く野良バトルなら『無防備に孤立したトレーナーをポケモンで狙いにいく』など当たり前。
いくら手持ちのポケモンが強かろうと、指揮官がいなくなった時点で勝利は確定するのだから。

「いでいでいでいでええええっ!?」

エイパムの前足が男の顔面を縦横無尽にひっかき、その顔から笛が弾き飛ばされる。

「しまっ――!?」
男が混乱し、その手が笛を探すように空を切る。

ここが、潮時。

「よくやった。退くぞ」
簡潔にねぎらいの言葉をかけると、シルバーは高く跳躍。
負傷した腕をかばいつつ持ち前の俊敏さで木の枝へと飛び乗る。
エイパムがついて来るのを確認しながら、木から木へと軽く飛び移り障害物を上手く避けて逃げた。



※  ※

キラーレイビーズが回復して立ち上がるのは、思いのほか早かった。
ただし、流人が落とした笛を見つけられなかった為に、追尾の指示を与えられなかっただけで。

(やられた――)
170 ◆8nn53GQqtY :2011/06/30(木) 01:16:21.94 ID:p/PpeIR5

確かに、殺すつもりだった。

この手で人を撃った時は、確かにそれができると確信を持った。


しかし、肝心なところで爪が甘かったせいで失敗した。


原因は二つだ。
相手が五つも六つも年下の子どもだと思って甘くみたこと。
そして、強力な支給品を手に入れたことで、負けるはずがないと慢心をもってしまったこと。



厳密に言えば、流人の敗因はそれだけではない。
単純に、持っている能力の相性が悪かったという問題もあった。

流人は、喧嘩の経験こそあれ、生物を戦闘指揮した経験などなかったが、
シルバーはその戦闘指揮に長けていたという経験の違い。

普通のポケモントレーナーならいざ知らず、ロケット団のような徒党を組んだ悪人と対峙する際には“乱戦”となることが少なくない。
相手はこちらを拘束するか殺害する気で大勢のポケモンに襲わせるのだし、それらに対抗する為にはこちらも持っているポケモン全てを展開する必要がある。
6匹の手持ちポケモンの動きを瞬時に把握して的確な指示を出し、その上で自分自身は敵ポケモンから攻撃を受けない位置に立つという、一見して地味だが難易度を要求される行為。
その状況把握の力が試される戦闘行為で、シルバーは何度も実戦を積んでいたことが、決定打となり、だからこそ“自らを囮にして相手の気を逸らす”という計算ができた。
しかし、それはシルバーの住む世界を知らない流人には分かりようのないことである。



(蛍の時のように、失ってから後悔するんじゃ遅いんだ……
今度こそ死なせない。遠子姉は死なせない。
それぐらいしなきゃ、俺は本当に、生きてる意味がないんだから……)


【C―2/エリア東部/一日目深夜】

【櫻井流人@“文学少女”シリーズ】
[状態]疲労(少)、顔にひっかき傷
[装備]核金(破損、再生中)@武装錬金、『森の人』(残弾5/6)@キノの旅
[道具]基本支給品一式、不明支給品0〜1(確認済み)
[思考]基本・天野遠子を生還させる(一人蘇生が可能ならば、井上心葉と天野遠子の二人を生還させる)
1・天野遠子を優勝させる為に皆殺し(弱者とマーダー優先)

171 ◆8nn53GQqtY :2011/06/30(木) 01:17:15.52 ID:p/PpeIR5
「はぁ……はぁ……」

狂犬たちを撒いたことを確認し、シルバーは木の上で休息をとっていた。
右の二の腕と左腕の肩近くが、それぞれ血に染まっている。
止血するものは見当たらないが、失血死につながるほどではない。
だがしかし、早急な処置は必要だろう。

「そうだな……旅館を目指すか……」
病院は現在地から逆方向であるが故に、先ほどの男とまた出くわす可能性がある。
病院のすぐ南にあるコンビニもまた然り。
旅館なら最低限、宿泊客の緊急時に備えた救急セットぐらいは置いてあるだろう。

「姉さんから遠ざかるリスクはあるが、それはどこに行っても同じだな……」

最愛の姉、ブルーとの合流は依然として最優先事項だ。
問答無用で殺しに来る相手がいるとはっきりした異常、その危機感は否応にも高まる。

(殺し来る相手、か……)

サクライリュウトの、ぎらぎらとした視線を思い出す。

電光石火の速さで銃を抜かれ、撃たれたその時、シルバーは確かに『殺される』と思った。
あの目には、確かに“覚悟”があった。
それは、決して正しくない覚悟だけれど、それでも成し遂げると言う強い意思があった。

シルバーもと男に銃を向けた。
しかし、元より撃つつもりはなかった。
囮が目的だったのだから。


しかし、なら自分には“殺す為に撃つ”覚悟はあるのだろうか。


少なくとも、最後の一人になる為に殺そうと言う気にはなれない。
己が生きる為、そして復讐すると決めた相手の手がかりを得る為に、非合法に分類される行為を何度も繰り返してきた。
だからと言って、越えてはならない一線を越えるほど、落ちぶれたつもりはなかった。

しかし…………。

「姉さんを生き残らせる為に、人を殺す……?」

あの男は、そう言っていた。
姉を生かす為に人を殺すというのなら、つまり、そういうことになるのだから。

「参加者全員を殺して、自殺して、それで守りたい人を生かす……?」

それは、全く考えもしなかった発想だった。
“人を殺してはならない”と思いこんでいたばかりに、盲点になっていた発想。

シルバーにも、また、姉がいた。
血は繋がっていないけれど“姉さん”と呼び、また彼女も弟としてシルバーに接してくれた。
両親の顔も知らないシルバーにとって、たった一人の家族と言っていい存在。
シルバーに何があったとしても、彼女だけは守れらねばならない。
人を殺さなければ、彼女を守れないかもしれない。

――人を殺してでも?

172 ◆8nn53GQqtY :2011/06/30(木) 01:20:10.15 ID:p/PpeIR5

「……できるのか? 俺に……」

少なくとも、赤の他人とブルーがいて、どちらかしか助けられない時、シルバーはブルーを優先する。
しかし、ならば果たして彼女を助ける為に68人もの人間を殺せるのだろうか。

人を殺せる弾丸の六発収められた、大きなリボルバー式拳銃。
人間の頭蓋などたやすく貫通する、その重み。
これを撃つ覚悟が、果たして――

――視線を感じた。

「あ……」

先ほどの戦闘を共にした、エイパムがそこにいた。
不機嫌そうな、非難するような眼で、シルバーを見ている。

――シルバーは弱くねえ! トレーナーとして、人として大事なものを失わなかっただけだ!

そう、『皆殺し』を実行するということは、すなわち、このポケモンにとって“家族”にあたる少年をも殺すということで――。

「いや、そういうつもりはないんだ。すまない……」

想わず謝った。

――姉の命を誰より優先したいのは山々だったが、さりとてあの“馬鹿”を殺すという踏ん切りもつかないのだった。

【C−2/エリア西部/一日目深夜】

【シルバー@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]左二の腕に銃創、疲労(小)
[装備]カノン(残弾6/6)@キノの旅、
ゴールドのエイパム@ポケットモンスターSPECIAL
[道具]基本支給品一式、不明支給品0〜1
[思考]基本:ブルーを生かしたい。
1・救急用具の調達に旅館を目指す。
2・流人の言葉に困惑。
173創る名無しに見る名無し:2011/06/30(木) 01:44:28.40 ID:4TcMUIBC
さるさん食らったので携帯からですが、投下終了です
174 ◆ymCx/I3enU :2011/06/30(木) 21:54:00.50 ID:E9apPAru
投下乙です 投下します
俺得5 26話 私って、ほんとバカ 登場:西川のり子、細田英里佳、加藤字佑輔、十三階段ベム
175私って、ほんとバカ ◆ymCx/I3enU :2011/06/30(木) 21:54:42.62 ID:E9apPAru
26話 私って、ほんとバカ

市役所にやって来た西川のり子と細田英里佳は、馬と遭遇した。

「馬?」
「馬だね」

そう、馬である。どこからどう見ても馬。
茶色い身体を持ったそれなりに引き締まった身体の牡馬。
しかし首輪をはめデイパックも持っているので、殺し合いの参加者の一人だと思われた。

「ウウ……ブルル」

牡馬はのり子達には気付いていないようで、
自分の腹にいきり立った己を何度も打ち付け快感に浸っている。

「あれ何してるんやろ…?」
「…あれは自分を慰めているのよ」
「え?」
「ええと…つまりね」

牡馬が何をしているのかのり子はいまいち理解出来ないが、英里佳は理解出来ていた。
それをのり子にどう説明するべきか、英里佳が困っていると。

「ヒヒィーーーーン!」

牡馬が大きく嘶き、

ビクッ! ビクッ! …

市役所の床に白く濁った液を大量に撒き散らした。

「うあ」
「何か出たで」
「……」

牡馬の絶頂を目の当たりにした二人は、反応は別々なものの注目する。

「ハァ…ハァ…」

息を荒げ余韻に浸る牡馬。

「……よぉ、お嬢さん方。オス馬がイク瞬間見て感想はどうだい」
「…!」
「しゃ、喋った!?」

牡馬が突然言葉を発し驚くのり子。のり子のいる世界に喋る馬は存在しないが、
英里佳のいる世界では特に珍しい事では無い。

「どうしてこんな所でそんな事してるんですか…?」

何気無く英里佳が牡馬に尋ねる。
馬が喋っている事に対して何も突っ込まないのかと、のり子が英里佳に驚きの視線を送る。
176私って、ほんとバカ ◆ymCx/I3enU :2011/06/30(木) 21:55:37.30 ID:E9apPAru
「…そうだな。いつ死ぬか分からないし、出せる時に出しておこうと思って。
そして…他にも理由はあって…それは」

牡馬が少し二人に歩み寄る。
先端の部分が大きく開き白い液をポタポタと垂らすポールを股間にぶら下げながら。

「君達を油断させるためだ」

ドスッ

牡馬がそう言った直後、英里佳は首の後ろに違和感を感じた。
そして、すぐに意識がブラックアウトし、二度と戻らなかった。

「えっ」

突然床に倒れた英里佳に目をやるのり子。

「どうしたんや、英里佳ねーちゃ……!?」

声を掛けた時、のり子は気付く。
英里佳の後頭部付近に、ボールペンが深々と突き刺さっているのを。
そこからドクドクと血が溢れ、血溜まりが出来る。
何が起きたのか分からないと言う洋表情のまま、英里佳の顔は固まっていた。

「う、うあああああああぁあああ!!!!?」

英里佳がどうなってしまったのか理解しのり子は悲鳴を上げた。

「俺はただの馬じゃなくてね。ちょっと、魔力的な感じで物を操れるんだよ。
俺がオナってるのを見せつけてる間に近くの机からボールペン浮かしてその子の頭の後ろに」
「何でや…」
「ん」
「何でや! 何で、何で殺したん!? 何で殺したんや! 英里佳ねーちゃんアンタに何かしたんか!!?」

牡馬に対してのり子が怒鳴る。
その目には涙が溢れていた。

「何でって……そういうゲームしてるんだろ、俺達」

のり子の怒りの問い掛けに対し、牡馬の返答はさも当然と言ったような素っ気無いものだった。

「許さへん!!」

のり子は持っていた小型自動拳銃コルトM1903を牡馬に向けようとした。

ドゴォ!!

「がっ」

しかしその前に牡馬が前足でのり子の胸を思い切り踏み付け床に叩き付けた。
その衝撃でコルトM1903はのり子の手から離れ床に転がってしまう。
177私って、ほんとバカ ◆ymCx/I3enU :2011/06/30(木) 21:56:19.76 ID:E9apPAru
「子供がそんな危ない物持ってんなよ」
「がああ、あ、いた、い、ぐ、ル、しい」

固い蹄の付いた馬の前足が容赦無くのり子の小さな身体を押し潰す。
凄まじい激痛と呼吸困難に、のり子の意識が霞む。

「…あの世に行く前に教えてやるよ。俺の名は加藤字佑輔」
「き……ぎゃ……ァ」
「祈っとけよ…自分が早く、生まれ変われるように」

字佑輔と名乗った牡馬が更に前足に力を込め、のり子の胸を潰そうとした。

ダァン!

一発の銃声が響いた。

「…?」

のり子の胸の圧迫感が無くなった。
直後、ドサッ、と、重い物が倒れる音が響く。
咳き込みながら、のり子は何事かと身体を起こした。
字佑輔が、茶色い牡馬が、頭から血を流して床に伏し、死んでいた。

「え…? え…!?」

突然の事に頭の理解が追い付かず困惑するのり子だったが周囲を見回し、
自分が持っていた小型拳銃を構えた見覚えのある男を発見した。

「じゅ、十三階段…? 十三階段やんか!!」
「……」

見覚えのある帽子、一丁羅、老け顔、眼鏡。
紛れも無くそれは殺し合いに呼ばれたのり子の知り合いの一人、売れない恐怖漫画家の男だった。

「無事やったんやな、良かった…」
「……」
「ほ、ほんまおおきに、まさか、お前に助けられるなんて思って無かったわ…げほっ、うう、痛い…」
「……」
「なあ、小鉄とか、見てないか? あれ、怪我してるやんか! 大丈夫か?」
「……」
「…十三階段、どうしたん、何か言って――――」

のり子の言葉はそこで止まる。なぜかって? その男が銃口を自分に向けたから。

ダァン!

のり子の額に小さな穴が空いた。
そのまま後ろに倒れ、のり子は先程の英里佳と同じように何が起きたのか分からないまま、逝った。

「……」

男――十三階段ベムはぼうっと、撃ち殺した知り合いの少女を見下ろす。
よく見れば先程撃ち殺した馬の他にももう一人、少女の死体がある。
178私って、ほんとバカ ◆ymCx/I3enU :2011/06/30(木) 21:57:03.74 ID:E9apPAru
「……わ…た…し……は」

十三階段の脳裏にこの殺し合いが始まってからの記憶が蘇り再生される。
最初に、知らないグラサンの男を殺した。
次に、知らない虎の頭を持った女を襲ったが逆に撃たれた。
どこをどうやってここに来たのか思い出せない。
その次に、馬を殺した。
その次に、


そのつぎに


――無事やったんやな、良かった…
――ほ、ほんまおおきに、まさか、お前に助けられるなんて思って無かったわ…
――なあ、小鉄とか、見てないか? あれ、怪我してるやんか! 大丈夫か?


「小鉄君達もいるみたいですけど…どうせ私の事なんて気にも留めないでしょうね…。
もう、お終いですね、もう……」


自分は最初そう言った。
だがどうだ?
その「私の事なんて気にも留めない」と思っていた子供達の内の一人の少女は、
自分の姿を見て安堵していた。
無事を喜んでくれた。
礼を言ってくれた。
怪我している事を心配してくれた。


自分の思い過ごしだったのだ。勘違いだったのだ。誤解だったのだ。


でも、


コ ロ シ タ


「――――私は、大馬鹿者だ」



男は、拳銃の銃口を咥えた。


【細田英里佳@オリキャラ:死亡】
【加藤字佑輔@オリキャラ:死亡】
【西川のり子@浦安鉄筋家族:死亡】
【十三階段ベム@浦安鉄筋家族:死亡】
【残り:31人】
179 ◆ymCx/I3enU :2011/06/30(木) 21:57:52.91 ID:E9apPAru
投下終了です。タイトル元ネタは「あたしって、ほんとバカ」
多分分かる人多いかな?
180 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/30(木) 23:49:44.63 ID:wbsntOJG
皆様、投下乙です。では自分も
登場キャラはティアナ・ランスター、ウソップ、暁美ほむら、キング・ブラッドレイ、セラス・ヴィクトリアです
181GO!GO!市民館 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/30(木) 23:51:02.87 ID:wbsntOJG



 これはそう―――一人の男が引き起こした物語であった。







 にっちもさっちも行かない現状に、ティアナ・ランスターは思わず溜め息を吐いていた。
 殺し合いという異常且つ緊急的な事態に有効な手が浮かばない。
 何時の間にやら装着させられていた首輪が、あまりに痛い。
 本当に爆薬が仕掛けられているにせよいないにせよ、あんな凄惨なデモンストレーションを見せつけられれば人々は確実に恐怖を覚える。
 JS事件を戦い抜いた事で心身ともに成長したティアナでさえも、心底では恐怖を感じるほどだ。
 常人にとってこの恐怖はいかばかりか、凡人から這い上がってきたティアナにはそれが容易に想像できた。

(止めなきゃ……! 管理局の……機動六課の一員として!)

 だからこそか。ティアナの決意が固まるのに大して時間は必要なかった。
 ティアナの手中にある武器は、彼女の師たるエース・オブ・エースが相棒『レイジングハート』。
 真紅の宝玉にティアナは魔力を込める。
 一瞬の閃光と共に発現する魔法の杖は、ティアナの眼にこれ以上ない程に頼もしく映った。

「お願いしますね、レイジングハートさん」
『Yes,sir』

 穂先にて金色の装具に包まれる紅玉へと言葉を飛ばして、ティアナは行動を始める。
 現在、彼女がいる場所はC-8地点にそびえた小学校校舎であった。
 二階建ての木造校舎は、どうにも古めかしい印象をティアナに与える。
 いや、ミッドチルダで生活するティアナからすれば、古いを通り越して新鮮な印象すら与えるか。
 ティアナが立つ部屋は二階の最端にあたる音楽室であった。
 音楽界の偉人達の肖像画が飾られた壁に、巨大なグランドピアノ。
 様々な管楽器や弦楽器が収められた棚が壁に寄り添うように何個もあり、棚と棚の間には折りたたみ式の譜面立てがまとめて置いてある。

(まずは校内の探索ね)

 音楽室を見回すも、人の姿は見受けられない。
 ティアナは早々に音楽室を後にし、校舎の端から端までを横断する廊下へと足を踏み入れる。
 ティアナから見て右側には等間隔に窓が備えられており、左側にはこれまた等間隔に何個かの教室があった。
 それら教室の一つ一つに入室し、教壇の下から掃除用具の仲間で丁寧に教室を捜索していくティアナ。
 二階にある教室を一回り見て終えた時には、既に二十分程の時間が経過していた。

『周囲に人の反応はありません』
「そうですか……」

 周囲に人の気配はなく、殺し合いの場とは思えない程の静寂がある。
 ティアナは肩から少しだけ力を抜いて、息を吐いた。
 警戒心を保つ事は必要だが、あまり気張りすぎてもいざという時に疲労が現れる。
 最低限の警戒を残しつつも、心にある程度の余裕は持たせなくては。
 両手に握るレイジングハートを肩に置き、ティアナはデイバックから水を取りだし一口煽った。
 その時だった。


『あ、あー、ゴホン。えー、えー、ちゃんと動いてるかな、コレ?』


 校舎の外から、そんなふざけた調子の声が聞こえてきたのは。
182GO!GO!市民館 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/30(木) 23:51:47.75 ID:wbsntOJG
『えー、では……俺の名はヴァッシュ・ザ・スタンピード! お前らご存知のヒューマノイド・タイフーン様だ! 俺は今、D-8の市民館にいる! この俺の首が欲しい奴、腕に自信がある奴は市民館に集まりやがれ! 相手になってやるぜ、ヒャッハー!!』


 『ヴァッシュ・ザ・スタンピード』やら『ヒューマノイド・タイフーン』やら、声は良く分からない事を言って勝手に盛り上がっていく。
 放送は数分ばかり続き、そして一つの銃声により途絶えた。
 事態を上手く掴むことができず茫然と放送を聞いていたティアナだが、その銃声に我を取り戻す。
 あの放送が何の意図をもって行われたものかは分からない。
 ただ放送の送信元では何かがあった。
 銃声により放送が途切れたという事は、おそらく放送者である『ヴァッシュ』は銃撃でもされたのだろう。
 何らかの争いが発生した、そう断定したティアナはレイジングハートを担いで行動を開始する。
 目的地は『ヴァッシュ』が言っていたD-8の市民館。
 距離としては一、二キロ。全力で走れば十分と掛らずに到着できるだろう。
 一階を探索できなかった事に僅かに後ろ髪を引かれる思いを感じながら、ティアナは階段を駆け下りる。
 だが結局のところ、彼女が市民館へと辿り着くのは大分後のこととなる。
 階段を駆け下り終えたところでティアナは遭遇したからだ。

「う、うおおおおおおおおおおおおお!?」

 コチラの顔を見るや否や震えた大声を上げて腰を抜かす長鼻の男と、遭遇する。
 そのビビりように、逆にティアナの方が驚愕する程だ。
 バタバタと四肢を動かし逃げ出そうとする長鼻に、ティアナが手を伸ばす。
 腰を抜かした事が、運の尽きであった。
 本来ならば惚れ惚れする程の逃げ足で逃走を行う長鼻も、腰を抜かした状態ではスタートが遅れる。
 長鼻が走り出すよりも早く、ティアナはその肩を掴んでいた。

「ぎゃああああああああああああああ、殺さないでくれええええええええええええええ!!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて下さい。私は時空管理局の……」
「うわあああああああああああ、殺されるうううううううううううう!」

 そんな周囲に誤解を招くこと間違いなしの声を上げて、長鼻は許しを乞うていた。
 ティアナも落ち着くよう優しく声を掛けていたが、長鼻が冷静さを取り戻す様子はない。
 ギャアギャアと騒ぎまわる長鼻にどう対処すれば良いのか分からず、ティアナも頭を抱える。
 こんな感じで若き魔導師と、誇り高き海の戦士を目指す海賊とが出会った。
 少しばかりの時間の後に、二人組みの男女は自らの足で進んでいく事となる。
 『ヴァッシュ・ザ・スタンピード』が告げた市民館へと、放送に誘われた数多の人々が集まった市民館へと。

「ううわああああああああああああああああああああ!」
「……あの……話を聞いて……」

 今はまだ名前すら知らない二人。
 暗闇の校舎で向き合いながら、二人の凡人が互いの絶望に声を紡いでいた。


 ―――こうして若き魔導師と狙撃の王様は、台風の目へと進んでいく事となった。



183GO!GO!市民館 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/30(木) 23:52:33.43 ID:wbsntOJG
【一日目/深夜/C-8・学校】
【ティアナ・ランスター@リリカルなのはStrikerS】
[状態]健康
[装備]レイジングハート・エクセリオン@リリカルなのはStrikerS
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考]
0:話を聞いて…
1:男を落ち着かせる
2:機動六課の一員として殺し合いを打開する
3:仲間と合流する

【ウソップ@ONE PIECE】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考]
0:うわあああああああああああ、殺されるううううううううう!
1:仲間と合流したい。今すぐにでも





「殺し合え、ね……」

 暁見ほむらは、前方の暗闇へと視線を飛ばしながら、小さく言葉をこぼした。
 何時の間にか連れて来られていた謎の教室。
 謎の老人により語られた狂気のゲーム。
 混乱していないといえば嘘になる。
 冷静な風を装ってはいるものの、ほむらの心中は混乱で満ち溢れていた。
 コレまで幾度となくループの世界を繰り返してきただが、こんな出来事など初めてだ。

「……わけが、分からないわ」

 とある時間の中でループを続ける世界。
 とある少女を救う為だけの無謀で無茶な戦い。
 幾度の失敗があり、その度に少女の死を垣間見て、同じ時間の中を巻き戻してきた。
 今回のループも困難の連続であった。
 巴マミが死に、美樹さやかが魔女と化し、佐倉杏子も死んだ。
 どう立ち回ろうと結果に変化は与えられず、ただその過程が変わっただけだ。
 これが運命だと云うのか。
 定まった因果は決して変えられないと云うのか。
 ある種の諦観にも似た感情が胸に巣喰っているのを実感する。
 加えて、とある異能生命体から告げられた絶望の事実。
 自分が時間をループさせる度に、まどかへと集結していく因果の糸。
 絡み合う因果の糸は、一介の少女にすぎなかったまどかを最強の魔法少女へと変革させた。
 つまり、全ては自分の行いのせいだったのだ。
 自分が時間を巻き戻す度にまどかへと因果が集まり、彼女の魔法少女としての素質を爆発的に押し上げる。
 その素質に目を付けた異能生命体が、まどかへと付き纏い、その人生を変えてしまう。
 結局は、何度繰り返そうと同じ事。
 繰り返す度に因果は増え、異能生命体のまどかへのアプローチもより強いものになっていく。
 自分は、自分のしてきた事は―――、

(……でも、膝を折る訳にはいかない……)

 だが、それでも、救いたい。
 巴マミを、美樹さやかを、佐倉杏子を、自分を犠牲にしてでも、鹿目まどかを救いたい。
 それだけが、暁見ほむらの切願。
 叶えたいと思う願いであった。
184GO!GO!市民館 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/30(木) 23:53:44.32 ID:wbsntOJG
(このゲームにはまどかが呼ばれている……。死んだ筈の巴マミや佐倉杏子、魔女となった筈の美樹さやかも……)

 つい先刻見た『参加者名簿』とやらには、七十をも越える名前が記載されていた。
 その名前の中には、暁美ほむらも良く知る少女達の名もあった。
 魔法少女の先達者にして必ずの死を迎える少女・巴マミ。
 とある願いを成就させようと魔法少女になり、必ずの破滅を迎える少女・美樹さやか。
 魔法少女としての資質を十二分に持ち合わせ、精神的な強さも持つ少女・佐倉杏子。
 そして、鹿目まどか。
 ほむらの親友にして、絶対の救出を心に誓った少女・鹿目まどかだ。

(何がどうなっているの……死んだ筈の人物すらも呼び出して、殺し合いを開催……? まさか、死者を生き返らせたとでも?)

 何もかもが理解不能な現状に、ほむらは思わず頭を抱えたくなる。
 死者が記された『参加者名簿』、呼び出された魔法少女達、集結された七十以上の人々、自分達をこの殺し合いの場へと移行させた謎の技術力。
 全く理解が追い付けない。
 ただ出来事の端々から、主催者達が持つ異質で圧倒的な『力』が察知できる。
 魔女や魔法少女という異常の存在すらも霞む程の、『何か』を主催者達は有している。
 その予感を、暁美ほむらは漠然とながら感じていた。

(まさかインキュベーターが関与している……?)

 主催者達から感じた未知の脅威に、ほむらは思わずとある生命体を連想していた。
 魔法少女を生成する技術力。
 魔法少女が魔女となる際に発現するエネルギーを確保し、という超規模の計画。
 人間には到底理解できない種族が派遣した生命体。
 インキュベーター。通称・キュゥべえ。
 感情を持たぬ異能生命体だ。
 確かに、インキュベーターのバックにある組織ならば、こんな殺し合いを開催する事など朝飯前なのだろう。
 魔法少女を誕生させる際、インキュベーターは少女が持つあらゆる願望を叶える。
 瀕死の重傷から命を助け出したり、不治の病を完治させたり、時の因果を超越する力を与えたりと、ありとあらゆる事象の実現をインキュベーターは可能としている。
 時間の概念すらも超越した願いの実現。それすらも可能とするのが、インキュベーターであり、その背後にある種族だ。
 願いの成就には魔法少女となる人物の資質が大きく関わっているので、一概にインキュベーター達の技術力とは云えないが、それでも異質な『力』だ。
 少なくとも人類が持つ技術力など比較対象にすらならないだろう。

(……もしこの殺し合いにインキュベーターが関与しているのなら……)

 暁美ほむらは、インキュベーターの異常性を知っている。
 感情を持たない獣は、倫理を無視した行動を容易く選択する。
 口八丁で少女達の心の隙へと漬け込み、願いの成就という餌をちらつかせて、魔法少女となる契約を結ぶ。
 少女が背負う過酷な運命や、魔法少女としての戦いの末にある結末など、彼等にとってはどうでも良い事だ。
 目的を達成する為ならば、悲劇の少女達を幾人産み出そうと気にも止めやしない。
 それはこの殺し合いでも同様だ。
 インキュベーターが関与しているならば、この殺し合いは本当に最後の一人となるまで終わりはしない。
 泣こうが喚こうが何をしようが、ただ一人の生存者となるまでは、生きて元の場所に帰る事はないだろう。
 また首輪の解除も絶望的だ。
 インキュベーターが有する未知の技術力で作られた首輪を、七十二時間という時間制限がある状況で、ただの人間が解除できる訳がない。

(……最悪ね……)

 暁美ほむらは闇を睨んで、小さく舌を打つ。
 ほむらの考察は結局のところ想像に過ぎないが、言い知れぬ予感を拭い去る事はできなかった。
 インキュベーターも関与しているかもしれない殺し合い。
 そうでなくとも首輪で命を握られ、殺し合いを強制される現状だ。
 状況は、絶望的であった。
185GO!GO!市民館 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/30(木) 23:54:29.21 ID:wbsntOJG
「……まどかを、助けなくちゃ」

 何もかもが分からず、絶望的とすら云える状況にあって、ほむらは自身の中にある道標へと縋った。
 自分は今何をしたいのか、その問いに対する答えをただひたすらに追求する。
 自身が望む事など、改めて考えずとも把握できていた。
 鹿目まどかの救済。
 ほむらの望む事は、それしかない。

(……待ってて、まどか……)

 鹿目まどかは、魔法少女として絶対的な素質を有している。
 その力はもはや別次元のもので、最強の魔女と呼ばれる存在すら、魔法少女となったまどかの前では赤子同然である。
 魔法少女となった鹿目まどかは絶対の力を持つ。
 そう、魔法少女となった鹿目まどかは、だ。
 今のまどかは、魔法少女でも何でもない、何処にでもいる平凡な女子中学生である。
 戦闘は愚か、殴り合いのケンカだってした事はないだろう。
 魔女少女の戦闘に付いていったりはしているものの、実際に戦闘を行った事はない。
 運動音痴で勉強も苦手な女子中学生というのが、今のまどかである。
 そんなまどかが、殺し合いの場にいる。
 戦闘に陥れば、魔法少女と云った超常の力を持つ参加者どころか、普通の人間に殺害される可能性だって充分にあるだろう。

(絶対に、絶対に、アナタを死なせやしない)

 闇夜の森林を駆け抜けながら、ほむらは変わらぬ決意を胸に抱いた。
 親友たる女性を無事に生還させる。
 その結果に至る道程は分からないが、ほむらは行動を開始する。
 心中に込み上げる言い知れぬ不安に押し負けぬよう、ただ無心で走り出した。

(私が……障害となる全てをなぎ払ってみせる……!)

 疾走は、一つの決意と共に。
 何を見捨ててでも救ってあげたい少女。
 彼女を救う為に、ほむらは非情に徹する事を決意した。
 他の参加者を殺害し、まどかを無事に生還させる。
 自分の命だって、どうなろうと構わない。
 時を駆け、数多の悲劇を垣間見てきた少女。
 彼女のバトルロワイアルが今、開始し、


『えー、では……俺の名はヴァッシュ・ザ・スタンピード! お前らご存知のヒューマノイド・タイフーン様だ! 俺は今、D-8の市民館にいる! この俺の首が欲しい奴、腕に自信がある奴は市民館に集まりやがれ! 相手になってやるぜ、ヒャッハー!!』


 そして、彼女は聞いた。
 人間台風のその声を。
 放送を聞き、ほむらは行き先を決定する。
 闇雲に探索するよりは、確実に其処にいる参加者を殺していく。
 もしかすれば、放送に誘い込まれる参加者もいるのかもしれない。
 ほむらは地図を取り出し現在地を確認して、足を向ける方角を変える。
 『ヴァッシュ・ザ・スタンピード』がいるらしき市民館へと目的地を変え、歩き始める。
 一人の少女を救う為、それだけの為に全てを消し去る覚悟をして、少女は暗闇を行く。
 

 ―――こうして時かけの少女は、台風の目へと進んでいく事となった。


186GO!GO!市民館 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/30(木) 23:56:00.14 ID:wbsntOJG
【一日目/深夜/E-8・市街地】
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]健康
[装備]ソウルジェム(穢れ無し)@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考]
0:まどかを死なせない。
1:市民館へいき『ヴァッシュ・ザ・スイタンピード』と放送で集まった参加者を殺害する







 キング・ブラッドレイは夜の森林を抜け、市街地へと足を伸ばしていた。
 空へと伸びるビルの数々は、彼が良く知るセントラルの街並みとはまるでかけ離れた光景を構成していた。
 物珍しげに視線を回しながらも、その警戒心は臨戦態勢にある猛獣のソレをも遥かに凌駕している。
 手中の日本刀を武器に、人造の人間たる男が街を進む。
 獲物を探し出すべく、足を動かしていく。
 ブラッドレイがその参加者と出会ったのは、市街地に出て十分ばかりの時が過ぎた頃であった。
 ブラッドレイの『最強の目』が、闇の彼方にいる人物を捉える。

(む……?)

 その人物を捉え、ブラッドレイは小さな違和感を感じた。
 目と目があったような気がしたのだ。
 闇の先にいる、まだあどけなさが残る可愛らしい女性。
 その女性と、濃密な闇を挟んで視線がぶつかる。
 本来ならば有り得ない事だ。
 女性との距離は百メートルは離れている。
 『最強の目』を持つブラッドレイならまだしも、ただの女性が闇夜を透過して参加者の発見など出来る筈がない。
 ブラッドレイは警戒をもって、女性の方へと歩みを進める。

「あ、どーもぉー。何か大変な事になっちゃいましたねえ」

 やはり女性はブラッドレイの存在に気が付いていた。
 ブラッドレイが声を発するより先に、女性の方から声を掛けてきたのだ。
 何とも呑気で間延びした声。
 女性は引きつりの笑みを浮かべながら、ブラッドレイを見詰めていた。

「……いやはやその通りだ。面倒な事に巻き込まれた」

 女性に対してブラッドレイは平然の笑顔で返した。
 胸裏の行動指針などおくびにも出さない。
 気のいい上司のような様子で、ブラッドレイは女性に言葉を飛ばす。
 鋭い眼光を目蓋の裏へと隠し、柔和な微笑みを携えて女性と会話を行う。

「ですよねえ。もう超厄ネタというか、完全詰みゲーというか。あ、さっきの放送聞きました? ヒューマノイド・タイフーンさんの」
「聞かせてもらったよ。なかなか興味深い演説だった」
「変な人もいるもんですねえ。あんな事して何になるんだか」

 女性が出した話題は、ブラッドレイも良く知る話題であった。
 それは緑髪の剣士を撃退して直ぐの事。
 宛もなく森林を歩くブラッドレイへと、暗闇の奥深くから声が聞こえてきたのだ。
 声は自身の事をヴァッシュ・ザ・スタンピードと告げ、D-8の市民館にいると告げていた。
 その声に導かれるがままに森林を歩いたブラッドレイは、数分と掛からずに市街地へと到着した。
 ブラッドレイが到着した時には既に放送は鳴り止んでおり、痛いほどの静寂が市街地を包んでいた。
 そして、ブラッドレイはぶらぶらと市街地を進んでいき、この女性と遭遇した。
 言わば、先の放送が女性とブラッドレイとの邂逅を導き出したのだ。
187GO!GO!市民館 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/30(木) 23:57:26.71 ID:wbsntOJG
「私はこれから市民館に行こうと思う」
「はあ、そうなんですか」
「探し人がいてね。彼なら先の放送に誘い込まれているかもしれん」
「探し人スか」
「エドワード・エルリックという少年だ。小柄な少年で、金髪を三つ編みに結わっている」
「見たことないですねえ。で、そのエドを探してどうするんです?」

 その回答に、ブラッドレイは女性の殺害を決定した。
 エドワード・エルリックの情報を知らぬ以上、生かしておく義理はない。
 冷淡な即決と共にブラッドレイは全身に力を込める。
 一太刀で、勝負を決めるつもりであった。

「そのエドワード君を―――殺すんですか?」

 だが、ブラッドレイがその一歩を踏み出す事はなかった。
 寸前で、声が投げ掛けられたからだ。
 彼に僅かな驚愕を与える、声が。

「プンプン匂うんだよ、血の匂いが。お前から、お前の服から、お前の刀から」

 ゾワリと肌が粟立つのを、ブラッドレイは自覚した。
 女性の纏う雰囲気が、豹変していた。
 例えるならば、お人好しのお調子者から、何物をも獲物とする補食者(プレデター)へと。
 音も立てず、前触れもなく、豹変した。

「少し眠ってろ」

 女性の豹変に追随し、周囲の状況も変化する。
 闇夜の市街地が、ヌルリと動いたのだ。
 それはまるでホムンクルスの長兄が有する能力のように。
 闇が、動く。
 攻撃の為に使用する予定だった力の溜めを、ブラッドレイは回避に使用した。
 絞られた雑巾のように身体を捻りながら、両足で地面を蹴り抜き後方へとバク宙を決める。
 何処ぞの雑技団が如く動作を行いながら、抜刀。
 回転しながら宙を飛ぶ過程で、ブラッドレイは刀を振るった。
 ギンギンガンという鈍い音と共に、暗闇に青白い火花が散る。
 刀が、襲い来る脅威を打ち落としたのだ。
 一瞬の剣戟はブラッドレイを窮地から救い、無事な着地へと至らせた。

「……奇っ怪な『力』を使うな」

 着地と共に、デイバックへと隠しておいたもう一本の刀を抜く。
 二刀流の構えを見せ付けながら、ブラッドレイは事態を観察していた。
 闇が、蠢いていた。
 もっと詳しく言えば、女性の左手から伸びた影のような闇が動いていた。
 闇は、剣のような鋭さをもって、足元からブラッドレイを襲撃した。
 それに対しての回避行動が、一連の動作であった。

「アンタも良く避けたね」

 女性の言葉にブラッドレイは疾走をもって答える。
 ブラッドレイの突撃に女性は闇の刃を殺到させて応えた。
 闇が作る十数の刃が、まるで壁のようにブラッドレイの進行方向へと立ち塞がる。
 闇に混じって迫る闇の刃。
 十数の刃は完全にブラッドレイの進む道を防いでおり、その身体を貫かんと迫る。
 二本の刀で対象できるものには到底見えない攻撃であったが、

「なッ!?」

 ブラッドレイは、その壁を容易く突破した。
188GO!GO!市民館 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/30(木) 23:58:32.98 ID:wbsntOJG
 闇と闇の隙間へと刀を振るい無理矢理に活路を切り開き、其処に身体をねじ込む事で刃の防壁を抜ける。
 掠めた刃に身体の至る所で裂傷が刻まれるが、その程度で怯みはしない。
 ブラッドレイは必殺の攻撃にして防御をかいくぐり、女性の元へと接近する。
 その回避に対する、女性の驚愕は相当なものであった。
 あれだけの密度で放った刃の数々。
 例え自分であっても、たったあれだけの負傷で済む回避など出来やしない。
 完全に見切られた、と女性は考える。
 刃が、煌めく。
 必殺の一撃を避けられた女性は、まるで隙だらけの格好でブラッドレイの刃を受けた。
 驚愕の回避に、身体を動かす事すらできなかった。
 その豊満な胸から腹部に掛けてを斜めに切り落とされた女性は、膝を折り、崩れ落ちるように倒れた。
 女性から流れ出た鮮血が、闇を塗り潰して地面を染める。
 鮮血の溜まりは時間の経過と共に範囲を広げていき、止まる気配がない。
 完全な致死量の失血であった。
 ブラッドレイは女性へと一瞥を送り、歩き始める。
 その足先が向かうのは、『ヴァッシュ・ザ・スタンピード』がいるらしい市民館であった。

(……錬金術とはまた違う、未知の力か……)

 キング・ブラッドレイは一抹の危機感を覚えていた。
 先の女性が見せた、錬金術では説明の付かない不可思議な能力。
 ホムンクルスの纏め役たるプライドが持つ力と酷似した、闇を操作する力。
 『最強の目』をもってしても、無傷での勝利は困難であった相手。
 垣間見た現実を前に、ブラッドレイは思考する。

(この場にはあのような者ばかりが集結しているのか?)

 思考と共に浮かぶ感情は不安であった。
 先の剣士といい、先の女性といい、その実力は国家錬金術師にも迫るだろう。
 先の女性などは、実力だけを見ればホムンクルスの域にすら到達しているかもしれない。
 遭遇した参加者の殆どが殆ど、常識離れの実力を持っていた。
 その事実に、一抹の不安が拭い去れない。
 彼の目的は『鋼の錬金術師』を元の世界へと帰還させる事である。
 だが、この実力者だらけの殺し合いでは、最悪の事態に陥る可能性も充分にある。
 自分が参加者達を殺害しきるよりも早く、『鋼の錬金術師』が死亡してしまう可能性だ。
 『鋼の錬金術師』は人柱として必要不可欠な存在だ。
 父の野望成就の為にも必ず生きて帰さねばならない。
 だからこそ、全身全霊を賭けて参加者を殺害して回る。
 それが現状に於けるキング・ブラッドレイの行動指針であった。

「……フッ、老体に無理をさせる」

 のっぴきならない事態にあって、ブラッドレイは心中に不思議な感情が湧き上がるのを実感していた。
 それは今までの何十年にも及ぶ人生で、終ぞ感じる事のなかった感覚。
 ブラッドレイは、本人も知らぬ間に笑みを浮かべていた。
 ホムンクルスとして圧倒的な力を持って誕生した自分。
 敵対者とは、自分よりも遥かに劣る弱者であった。
 人生とは、用意されたレールの上を進む拙いものであった。
 だが、その人生が一変した。
 この殺し合いに呼ばれている敵対者は、自分ですら絶対の勝利はない存在だ。
 この殺し合いは、用意されたレールとまるで違う先の分からぬものだ。
 未知の状況に、感情が沸き立つ。
 それは憤怒とはまた別種の感情。
 その感情がブラッドレイの表情に薄い笑みを湛えていた。
 笑みのまま、ブラッドレイは殺し合いの会場を行く。



189GO!GO!市民館 ◆YcpPY.pZNg :2011/06/30(木) 23:59:29.14 ID:wbsntOJG





『セラス……セラス!』
(むぐぐ……痛い、チョー痛い、死ぬうー)
『お前がその程度で死ぬか。油断しやがって、アホが』

 そしてホムンクルスの立ち去った市街地にて、女性が一人寝転んでいた。
 切り傷から大量の血を流して、だがまるでそれを意にも介さぬ様子で仰向けとなる。

「あー! ヒドい、ヒドい! 普通そんなこと満身創痍のレディに言います!?」

 遂には上体を持ち上げる。
 無人の市街地で誰かに向けて声を上げ、起き上がる女性。
 端から見れば完全に痛い人であった。

『大声だすな! アイツが戻ってくるだろう!』
「うぅ、確かに……今の状態じゃ少しマズいかも」

 その女性はセラス・ヴィクトリアといい、元婦警であり現吸血鬼のトンデモない存在であった。
 肉体一つで人を紙切れのように千切り飛ばす吸血鬼。
 銃で撃たれようと、刀で切り裂かれようと死ぬ事のない、人間離れのタフネスを誇る身体。
 不老であり、桁外れの身体能力を有する存在。
 それが吸血鬼。
 それがセラス・ヴィクトリア。

「うぅー、痛いー。普通の剣で切られただけなのにー」
『……何か傷の治り、遅くねえか?』
「あ、やっぱそう思います? 私も変だなと思ったんですよ」

 加えて、セラスへと吸血鬼の能力を与えた者は始祖にして最強の吸血鬼である。
 人間を超越する吸血鬼をも超越する、そんな吸血鬼。
 夜の者(ミディアン)にすら畏怖を与える存在が、セラス・ヴィクトリアであった。

『楽勝かと思ってたが……やべェな。ここは旦那以外にも、お前と同レベの化け物がいるらしい』
「確かにさっきの人はスゴかったですねえ。あれに対応するとか、もう超ビックリ」
『反応がヤバいっつーか、体裁きがヤバいっつーか……あいつもアレか。お前ら的な人間やめちゃったって奴か?』
「違うと思いますよ。身体能力だけ見れば人間と同じくらいでしたし。ただ反応のレベルが吸血鬼越えてるっていうか」

 セラスは吸血鬼となって長きの間、血を飲む事がなかった。
 それは人間を捨て切れぬセラスの甘さであり、強さであった。
 夕方をおっかなびっくり進む、中途半端な吸血鬼のままセラスは戦いを続けていった。
 そんな彼女にも、血を吸う瞬間は訪れる。
 最後の大隊(ミレニアム)との激戦の最中で血を吸ったセラスは、一つの魂を内包する事となった。
 血とは魂の代価。
 吸った血液は魂となってセラスの内で生き続ける。
 それが先程からの会話の主だ。
 『ピップ・ベルナドット』。
 金の為に命を奪う、腐った傭兵集団のリーダーだった男である。

『どうすんだよう、セラス』
「……追っかけましょう。あの様子だと、あのオヤジ殺し合いに乗ってるみたいでした」

 そんな元傭兵リーダーへと言葉を飛ばしながら、セラスは勢い良く立ち上がった。
190GO!GO!市民館 ◆YcpPY.pZNg :2011/07/01(金) 00:00:54.69 ID:8CMorp8A
 胸元の傷は既に塞ぎ掛けており、出血などはもう止まっている。
 セラスは立ち上がり、先程の会話を思い出す。
 先のちょび髭は、『ヴァッシュ・ザ・スタンピード』の放送があった市民館へ向かうと言っていた。
 おそらく嘘ではないだろう。
 殺すつもりの相手にわざわざ嘘を言う事もない筈だ。

『はぁ、お前も物好きだな。こんなんはテキトーテキトーでやってきゃ良いのによお。一銭も貰えりゃしねえのに、わざわざ危ないとこ突っ込んでどうすんだか』
「いやあ。でも、私ってそう簡単には死なないし、こんなんで誰かが死ねのも可哀相じゃないですか」
『……ま、お前らしいよ、セラス』


 心中の仲間へ言葉を飛ばして、吸血姫が暗闇を行く。
 目指すは『ヴァッシュ・ザ・スタンピード』の放送にあった市民館。


 ―――こうして吸血姫は、台風の目へと進んでいく事となった。

【一日目/深夜/D-8・市街地】
【セラス・ヴィクトリア@ヘルシング】
[状態]胸腹部に切り傷(治癒中)
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考]
0:殺し合いを止める
1:髭オヤジの後を追い、ぶちのめす。
[備考]
※制限の存在に気が付きました。
※名簿の内容を確認していません。






 これはそう―――一人の男が引き起こした物語であった。


 『ヴァッシュ・ザ・スタンピード』の放送に誘い出された五人の人物。


 若き魔導師『ティアナ・ランスター』と狙撃の王様『ウソップ』。


 時をかける魔法少女『暁美ほむら』。


 最強の眼を有する人造人間『キング・ブラッドレイ』。


 吸血鬼の始祖たる存在が世に産み落とした吸血姫『セラス・ヴィクトリア』。


 五人が五人それぞれの目指すものを抱いて、市民館へと集結していく。


 放送により集まる五人の人物。そして、市民館にて来訪者を待ち受ける『ヴァッシュ・ザ・スタンピード』に『佐倉杏子』。


 彼等が描く物語は如何なるものか、それは誰にも知る由のないことであった―――、
191 ◆YcpPY.pZNg :2011/07/01(金) 00:01:36.68 ID:8CMorp8A
これにて投下終了です。
192創る名無しに見る名無し:2011/07/01(金) 00:52:07.91 ID:iRBCQeXx
投下乙
奉仕マーダーが2人か……果たしてどうなることやら
193 ◆VxAX.uhVsM :2011/07/01(金) 19:54:50.40 ID:jbOYyYKW
投下乙です!
ほむほむ奉仕マーダーですか。
しかし、上手い…自分も精進しなくては。
では投下します。
DOL3rd11話 とある殺人鬼の出落物語/とある女神の救世物語
登場人物:火山高夫、桐山和雄、◆8nn53GQqtY、相川友、黒神めだか、土方十四郎、日向秀樹
昼間…そんな明るい場所に似合わない格好の男がいる。
黒いコート、帽子、ガスマスク…。
そんな男…火山高夫は歩きまわっていた。

「………」

彼の支給品…というより所持日記の殺人日記を見ながら歩いていた。
現在は反応も見せず、何も書かれていない。
本来ならだいぶ先の事も書かれているのだが、能力が抑えられているのか反応もない。
そう考えていたところに、その携帯から音が生じた。
ザザ…ザ…、と。
それはまさにノイズそのものだった。
そして、日記の内容が変わる。

-------------------------------------
12:59
[D-2住宅街]
桐山和雄、◆8nn53GQqtYの二名を刺殺する。

13:01
[D-2住宅街]
相川友を刺殺する。
-------------------------------------

現在位置はD-2の住宅街付近である。
そして、現在の時間は12:52だ。
つまり、あと七分で殺人を行える。
そして、その後来るこの相川友という男。
これで合計三人を殺せるのだ。
火山は足を速めて、住宅街に向かう。


   ◇        ◆

元々いた世界…殺人は当然違法であり、裁かれるべき罰であった。
しかし、この場では咎められることはない。
何故かなんて聞くまでもない。
これが殺し合いだからだ。
さて、話は変わるが火山高夫にとって殺人とは何なのか…。
一周目の世界でも、二周目の世界でも、運命が変わった三周目の世界でも。
彼は人殺しであった。
一体何故、人を殺すのか…。
その理由は……


   ◇        ◆


「ああ……なんなんだ?こりゃあ…」

土方十四郎は、民家で何か作りながら言う。
手元にあるのは、素麺であった。
それを机に持っていき、民家にあったマヨネーズをかけ始めた。
一本目が終了し、二本目を半分入れた所で止めた。
それをズルズルと食べ始める。

「あー……どうすっかな……とりあえず沖田とあの侍と新八君だな…あとできれば山崎を探すか」

素麺…と言えないものが少しづつ減る。
食べ終わるのはいつになるか分からない。
その時には、どのようになっているか分からない。


   ◇        ◆


「……住宅街についたが」
「そうみたいだね」

◆8nn53GQqtYと桐山は住宅街についていた。
現在は12:57である。
大体開始から一時間と言ったところである。

「とりあえず、何か使える物でも探すか?」
「うん…とりあえずそうしようかな」

歩き始めると、桐山が後ろを向き、発砲した。
◆8nn53GQqtYは何事かと、後ろを振り向く。
そこに立っていたのは、黒いコートに帽子、ガスマスクの男。
銃弾は確実に腹部にあたっていた。
しかし、血は流れていない。

「…どういうこと?」
「防弾仕様なのか…それでなければ考えがつかない」
「……」

桐山は一旦距離を置こうとする。
しかし、火山もそれにつき迫ってくる。
桐山は少し考え、◆8nn53GQqtYに話しかける。

「……逃げろ」
「え?」
「あんたが場所を決めろ、いや…自由に行けばいいかな」
「………分かった」

◆8nn53GQqtYは走り出した。
何かを知ったかのように、その場から逃げだしていく。
見えなくなったところで、桐山は火山に対し発砲を再会する。
火山はそれを気にすることなく歩いて向かってきている。
そして、弾切れになったところで火山が走って迫ってくる。
桐山がリロードしている間に殺されてしまうだろう。
しかし、桐山は焦らない。
グレネード弾に切り替え、火山に撃ちだす。
火山は手の前に腕を交差させて、爆風から身を守る。
爆発音と爆風が収まって、周りを見渡す。
しかし、桐山の姿はなくなっていた。



   ◆          ◇


「……追ってくる事はないな」

桐山は街から離れて、とある場所に向かっていた。
それは、◆8nn53GQqtYへ話した場所であった。
桐山は信頼を寄せてはいる。
頭の回転は普通の人間より良い。
つまり、急な暗号でも分かるだろう…という考えであった。

「とりあえず、向かうか」

桐山は走って、その場所に向かう。
【真昼/D-2住宅街付近】
【桐山和雄】
[状態]身体的疲労(小)
[装備]M4カービン(30/30)(グレネード1発)
[所持品]基本支給品、 M4カービンのマガジン(1)グレネード弾(3)、ゲームセンターのコイン(19)
[思考・行動]
基本:◆8nn53GQqtYを護衛する。
1:◆8nn53GQqtYとの合流
2:七原と川田を探す。
[備考]
※願いは不明です。
※マンガ版死亡後からの参戦です。
【真昼/C-2、D-2】
【◆8nn53GQqtY】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品、不明支給品(1〜2)
[思考・行動]
基本:桐山和雄を利用して優勝する。
1:とりあえず、言われた場所へ向かう。
2:他の書き手さんは、どうしようかな。
[備考]
※願いは不明です。
※元の世界の知識はある程度残っています。



   ◆          ◇



-------------------------------------
13:01
[D-2住宅街]
3rd 火山高夫は銃殺される。

【DEAD END】
-------------------------------------

「……なんだと?」

火山高夫が次に聞いたノイズ、それは死の宣告のノイズだった。
さすがの彼も、少しの焦りが出てくる。
そして思い出す、この時間に殺すはずだった人物の名前を。

「……そいつを殺せば」

火山は急いで付近を探そうとする。
すると、探すまでもなく彼の目の前に一人の男が立った。

「……どうも」
「お前が、相川という男か」
「…なんで知ってるの?」
「……どうでもいいだろう」
火山は刀を構える。
相川は動きはしない。
走りだして、刀をまっすぐに構え、腹部に刺そうとする。
そう、最初の予知通りならそれで殺せた。
しかし、未来は変わったのだ。
一人の男の手によって。

「甘いんだ、よっ!」

刀の横部分を蹴り、怯んでいる間に相川が火山を抑え込む。
そして、ガスマスクを剥がす。

「く…!」
「……じゃあな、殺人鬼」

そして、この場に乾いた音が一つ響いた。



【火山高夫@未来日記 死亡】



   ◆          ◇



「……さて」

体についている血液を拭いて、立ち上がる。
傍に転がっている死体。
それを見て、彼は何も思わなかった。
こいつは人を殺そうとしたんだ。
だからこうして死ぬのは当然のことだ。
悲しむ必要なんてない。
これはしかるべき『罪』に対しての『罰』なのである。

「よし、自己完結終了…じゃあ行きますか」
「まあ、そういうでないよ…そこの者よ」

相川は後ろを振り向いた。
そこにいたのは、完全無欠の生徒会長…黒神めだかだった。
彼女はこの殺し合いの場でも、主催に対抗するために動いている。
彼女はどの場でも、凛としている。
この殺し合いの場でも、例外などは無い。

「……あなた誰ですか?」
「む?説明をしていなかったな…私は黒神めだか、箱庭学園第98代生徒会長だ」
「……箱庭学園?」

どこかで聞いたような名前だな…。
なんでだろう…思い出せそうで思い出せない…。
そんな変な名前の学校だったら忘れることはなさそうなんだが…。

「…?どうかしたのか?」
「あ…いや、気にしないで良いよ、ちなみに僕の名前は相川友だ」

まあ、言わないでも良いだろう…。
言ったところでさらに混乱するかもしれない。
だから、とりあえずここは黙っておこう。

「では、本題に入ろうと思うのだが…」
「本題?なんですか?」

めだかが目を閉じる。
相川に、何か冷ややかとした感じが襲った。
冷や汗が体から流れ出る。
そして、めだかの口が動いた。

「貴様…何故先ほどの男を殺した?」
「………」

ああ、やはりそうか…なんて思ってしまう。
きっと、この人は俺が殺したところを見ていたんだろう。
止めないで、この時に聞くという事は…俺が殺す瞬間だけを見たのだろう。
つまり彼女は

この男が二人の男女を襲っていた事も。
この男が僕を殺そうとした事も。
勿論僕が殺した理由も知らない。
一切何も知らないのだ。
僕から見れば赤の他人。
何を偉そうに言っているんだと言い返せるほどだ。

「……その人が僕を殺そうとしたから、じゃいけませんか?」
「…貴様、一体何を言ってるのか分かっているのか?」
「分かっているつもりですよ?僕の事を僕以上に知っている人なんている訳ないじゃないですか」

あくまでも、あくまでも冷静に対応する。
彼女の勢いに押されれないように。
押されたら巻き込まれる。
何か大きいものに…そんな感じがある。
だから、僕はあくまでも冷静に…冷静に対応した。

「なるほど…な」
「分かってくれましたか?」




「哀れな事だな」







「貴様はきっと本来明るく純朴な人物だったのだろう」
「しかしきっととある事件で間違った感情を抱いているに違いない」
「自分のやっている事が正義だと思い込んで」
「自分ほど正しいものはいないと錯覚してる」
「それからその間違った感情を治してもらえなかった」
「そんな善き人物に、会えなかったに違いない」
「安心しろ、私が貴様を更生させてやる」
「人を殺すなんて、そんな事を一切考えないように」
「矯正してやる、強制してやる、改善してやる、改造してやる」










「だから、私についてこい!」








そう、これぞ黒神めだかの真骨頂『上から目線性善説』である。
相川友は、殺し合いから生還をした事がある相川友は、その言葉の『重圧(おもみ)』に耐えられなかった。
それほどに、彼女…黒神めだかの言葉には『重圧(おもみ)』があったのだろう。

「…………」
「さあ、返事を聞こうではないか」

どうすればいいかなんて、分かるはずが無かった。
こんな『重圧(おもみ)』を乗っけられて。
それでいて食うに答えを聞くなんて。
まさに、こいつは『皇帝』と言うにふさわしいだろう。
結構精神面も強くなったと思ったのに。
そういう面では、ショックだな。

「……ああ、わかった……お前について行ってやる」
「感謝する、私に任せろ…お前はこの殺し合いで人を殺す事など無い」



「私が、皆を救うからだ!」



この言葉には、やはり『重圧(おもみ)』があった。
でも、それは嘘の『重圧(重み)』ではない。
だから、僕は…一応信頼しておいてやろう。
この『皇帝』…いや、『女神』を。

【真昼/D-1】
【相川友】
[状態]健康
[装備]コルトパイソン(2/6)
[所持品]基本支給品×2、コルトパイソンの弾(24)、火山の大型ナイフ、殺人日記のレプリカ
[思考・行動]
基本:殺し合いに乗った奴を殺す。
1:黒神めだかについて行く。
2:坂田銀時、青木林に会う…?
[備考]
※願いは不明です。
※DOLバトルロワイアル終了後からの参戦です。
※殺人日記の効果が消えたかは不明です。
【黒神めだか】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品、不明支給品(1〜2)
[思考・行動]
基本:この殺し合いへの反抗、乗ったものの更生。
1:相川友と行動する。
2:人吉善吉、球磨川禊、蝶ヶ崎蛾ヶ丸との合流。
[備考]
※願いは不明です。
※生徒会戦挙編終了後からの参戦です。



   ◆          ◇

ピンポーン

という音が家の中に響いた。
いまだ素麺、というかマヨネーズをすすっていた。
このまま放置すると素麺が伸びてしまうかもしれない。
まあ、それでも対応しないというのはあれだ。
とりあえず、あと三回インターホンが鳴るまで待とう。
……………………

「って鳴らないのかよ!」

思わずの一人ツッコミである。
とりあえず、立って玄関に向かう。
支給品の一つである棍棒を持ち、玄関を蹴る!

「ぐおわあああああああああ!!!」
「あれ、あれええええええええええええええええええええええええ!?
やっちまった、おいやっちまったよおおおおおおおおおおお!!!!!
タイムマシン探さないと…どこだ…どこだ…」

土方が靴をしまうタンスを開けて何かを探し始めた。
すると、すぐに傍にいた男が起き上がった。

「ちょ!なにするんだ……ってうおっ!あんた何してんだよ!」
「だからって、なんだよ…タイムマシン探しに決まってんだろ…」
「よし、まずあんたは落ち着く事から始めような!?」




数分後

「ったくよ…お前がインターホンなんて鳴らすから」
「俺が悪いの!?」

元に戻った土方と日向秀樹は話していた。
土方の土方スペシャル(素麺ver)を勧められたが、丁重に断った(命にかかわる)。
そこで、情報交換その他もろもろをしていた。
土方は半分日向の話を聞いていなかったが。

「で…土方さん?」
「なんだ?」
「話、聞いてます?」
「ああ、半分の半分の三分の一くらい」
「一割も聞いてないじゃないですか!」

そんなこんなで、こんな凸凹コンビが出来上がったのであった。
【真昼/D-2住宅街内のどこかの家】
【土方十四郎】
[状態]腹八分目
[装備]棍棒
[所持品]基本支給品、素麺セット(残り三人分)、マヨネーズ(現地調達・2.5本)
[思考・行動]
基本:主催への対抗。
1:日向と行動…するか?
2:総悟と坂田銀時と志村新八の捜索、できれば山崎も。
[備考]
※参戦時期は未定です。
※願いがなにかは不明です。
【日向秀樹】
[状態]健康
[装備]
[所持品]基本支給品、不明支給品(1〜2)
[思考・行動]
基本:殺し合いはしない。
1:土方さんと行動。
2:音無、ゆり、直井と合流する。
[備考]
※願いがなにかは不明です。
※最終話で成仏した後からの参戦です

【支給品説明】
【殺人日記のレプリカ@未来日記】
火山高夫に支給
自分が起こす未来の殺人の状況を記録する能力を持つ。
事前に犯行方法とその結果が分かるようになったため、完全なる殺人計画書とも言える。

【火山の大型ナイフ@未来日記】
火山高夫に支給
剣と変りの無いほど大きいナイフ。
柄の部分を持って感電した所から、柄の部分も金属でできていると思われる。

【素麺セット@現実】
土方十四郎に支給
市販で売られている素麺5人前。

【棍棒@現実】
土方十四郎に支給
人が握り振り動かすのに適度な太さと長さを備えた丸い棒のこと。
武器としては最も基本的な物の一つである。
204 ◆VxAX.uhVsM :2011/07/01(金) 20:02:35.78 ID:jbOYyYKW
投下終了です。
土方たちのをもう少し長くしたかったが続きが思い浮かばなかった。
205 ◆YcpPY.pZNg :2011/07/01(金) 20:50:54.56 ID:8CMorp8A
投下乙です。
めだかちゃん△。火神はまあ、このあっけなさこそ火神というか…w


それと報告を。
昨日投下した『GO!GO!市民館』に関してですが、自分自身内容に納得がいかず今後の展開にも支障がでると感じたので、ほむらに関する記述を削除してwikiに編集したいと思います。
ほむらに関しては、別の話でもう少し深く書かせて貰い、投稿をしたいと思います。
展開に関しても大きく変更がでる可能性がありますので、一応ここに報告をさせていただきます
206 ◆ymCx/I3enU :2011/07/01(金) 21:21:10.77 ID:3Ic8Bj9f
投下乙です 自分もば
俺得5 27話 EGO-IZUMU 登場:太田太郎丸忠信、安達洋子、壱里塚徳人
207EGO-IZUMU ◆ymCx/I3enU :2011/07/01(金) 21:22:09.68 ID:3Ic8Bj9f
27話 EGO-IZUMU

白いライトバンが市街地を走る。
運転するのは太田太郎丸忠信、助手席には狼の少女、安達洋子。

「あん…あいつは」
「……」

太田が前方に見覚えのある人影を発見する。

「壱里塚じゃねーか…」
「ご主人様が話していた…」
「ああ…面倒だな、あいつ、獣人嫌い、って言うかそんな感じだからな」
「……」

徳人は完全に太田の運転する車の進路上にいる。
この殺し合いの中で獣人に嫌悪感を抱いている彼がどのような行動に出ているのかは想像がつく。
折角得られた奴隷を下らない事で失いたくは無い。
しかし、素通りは出来そうにないので、仕方無く太田は車を止め、降りた。

「よお、壱里塚じゃねーか」
「…太田か…ん、そっちは…」
「ああ、こいつは俺の奴隷だ」
「……」

予想通り、徳人は獣人である洋子に蔑みの眼差しを送る。
それに気付き、洋子は少し不愉快そうな表情を浮かべた。

そして、いきなり持っていた一〇〇式機関短銃の銃口を洋子に向ける。

「!」
「おい」

突然の徳人の行動に驚く洋子、そして徳人に洋子から譲り受けたレバーアクション式小銃、
ウィンチェスターM1873の銃口を向ける太田。

「どういうつもりだ? 壱里塚…俺の奴隷に勝手な真似すんなよ」
「…獣人は見逃せない」
「下ろせ」
「…邪魔するなら君も殺す」
「てめぇ…」

「なめないで」

ガッ

「!?」

洋子が徳人の一〇〇式機関短銃の銃口を掴む。
そしてすかさずその股間を思い切り蹴り上げた。

「ぐあ……あ!」

男の最上級の痛みが徳人を襲う。

「この馬鹿が!」

そして太田がM1873の銃床で徳人の後頭部を思い切り殴り付ける。
短い悲鳴を発し、徳人は地面に崩れ落ちて気を失ってしまった。
208EGO-IZUMU ◆ymCx/I3enU :2011/07/01(金) 21:22:47.12 ID:3Ic8Bj9f
「…獣人差別思想…とっくの昔に風化した廃退思想をまだ持ってる人がいるなんて驚きね」
「風化…はしてないと思うがな」
「え?」
「いや、それより、こいつの装備頂こうぜ」
「…この人自体はどうするんです?」
「放っておけよ。こいつがどうなろうが知ったこっちゃねえ」
「分かりました」

太田と洋子は徳人が持っているめぼしい装備品を奪い取り、その場を後にした。


【朝/D-6市街地】
【太田太郎丸忠信@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康、ライトバンを運転中
[装備]ウィンチェスターM1873(13/14)、ライトバン(運転中、調達品)
[持物]基本支給品一式、.45LC弾(20)、一〇〇式機関短銃後期型(30/30)、一〇〇式機関短銃のマガジン(5)、
コルトM1917(2/6)、フルムーンクリップ(.45ACP弾6発×3)
[思考・行動]
0:取り敢えず自分優先。
1:クラスメイトや仲間は特に捜す気は無いがテトと仲販遥は会ったら…。
2:安達洋子を奴隷として連れて行く。
[備考]
※本編死亡後からの参戦です。
※花丸木の容姿、名前を記憶しました。
※会場と外界を仕切る目印がある事に気付きました。
※ライトバンを運転しています。どこに向かっているかは不明です。

【安達洋子@オリキャラ】
[状態]健康
[装備]菊一文字RX-7@銀魂
[持物]基本支給品一式、ワルサー カンプピストル(1/1)、26.6o炸裂榴弾(3)
[思考・行動]
0:取り敢えず太田君の奴隷として行動。
[備考]
※太田太郎丸忠信が運転するライトバンの助手席に乗っています。

【壱里塚徳人@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]股間及び後頭部にダメージ、気絶
[装備]無し
[持物]基本支給品一式
[思考・行動]
0:獣人の苦しむ顔を見て殺す。人間は基本スルーするつもりだが邪魔してくるようなら相手をする。
1:(気絶中)
[備考]
※本編死亡後からの参戦です。
※三田村圭人、安達洋子の容姿を記憶しました。
209 ◆ymCx/I3enU :2011/07/01(金) 21:23:35.62 ID:3Ic8Bj9f
投下終了です。
210 ◆VxAX.uhVsM :2011/07/02(土) 21:12:28.50 ID:Y2G5oZEk
投下乙です、アソコ蹴られるとか…マジいてぇだろ…
では自分も投下します。
DOL3rd12話 王子二人と…
登場人物:高坂王子、若王子隆太、長谷川智美
211王子二人と… ◆VxAX.uhVsM :2011/07/02(土) 21:13:46.14 ID:Y2G5oZEk
「うわーーーーーー!!意味分からねえええええええ!!」
「落ち着けよ…叫ぶと人が来ちゃうよ?」
「う……しまった」

E-6桜見タワー前…。
この場にいたのは高坂王子と若王子隆太の二人。
先ほど出会い、行動を共にしていた。

「ああ…畜生!雪輝と我妻はここにいるって言うし…探す…とろくな事が起きそうにない…あーイライラする!」

「じゃあ、さ」

そこで、女の声が聞こえてきた。
高坂は後ろを振り向いた。
そこに立っていたのは。

「ヤ ら な い か」

耳と尻尾を動かした猫の獣人…長谷川智美だった。
高坂は鼻を押さえて、何かをつぶやく。
そして、高坂が隣にいた若王子の鼻から赤い何かが流れている事に気がついた。

「若王子いいいいいいいいいい!!!しっかりしろおおおおおおおおお!!」
「ぐ…俺はもう駄目だ…」
「ふざけんな!こんな所であきらめるなんて…!」
「くそ…死ぬ前に…むねをもブッ」
「若王子いいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

高坂が若王子を担いで桜見タワーに入っていった。
結果、その場に残ったのは長谷川智美一人だった。

【真昼/E-6桜見タワー前】
【長谷川智美】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品、不明支給品(1〜2)
[思考・行動]
基本:この状況を愉しむ。
1:とりあえず、良い男を探す。
[備考]
※願いは不明です。
212王子二人と… ◆VxAX.uhVsM :2011/07/02(土) 21:14:22.93 ID:Y2G5oZEk
【真昼/E-6桜見タワー内】
【高坂王子】
[状態]若王子隆太を背負っている
[装備]NEO高坂KING日記
[所持品]基本支給品
[思考・行動]
基本:あの主催の野郎をブッ飛ばす。
1:若王子いいいいいいいいいいいいいい!!
[備考]
※願いは不明です。
※参戦時期はNEO高坂KING日記を取得した後からです。
【若王子隆太】
[状態]異常な量の鼻血
[装備]なし
[所持品]基本支給品、不明支給品(1〜2)
[思考・行動]
基本:殺し合う気はない。
1:……。
[備考]
※願いは不明です。

【支給品説明】
【NEO高坂KING日記@未来日記】
高坂王子に支給
元々自分が輝いていた瞬間を予知する「高坂KING日記」だった。
しかし、由乃に自分のことばかりで周囲のことが予知できないという欠点を指摘された。
その結果、自分及びその周囲の人間の輝いていた瞬間を記録する「NEO高坂KING日記」となった。

≪オリキャラ紹介≫
【名前】若王子 隆太(わかおうじ りゅうた)
【性別】男
【年齢】19
【職業】大学生
【性格】至って普通…エロさを除けば
【好きな物・事】アレな画像・動画
【嫌いな物・事】なし
【特殊能力】なし
【趣味】画像・動画探し
【備考】DTの19歳。本人はイケメンではあるが性格のせいでモテない。

【名前】長谷川 智美(はせがわ ともみ)
【性別】女
【年齢】17
【職業】高校生
【性格】明るい、やはりエロい
【好きな物・事】良い男、可愛い女
【嫌いな物・事】気持ち悪いオッサン
【特殊能力】なし
【趣味】×××(規制されました)
【備考】猫の獣人。男も女も行ける両刀。種族柄か服を着ない。
213 ◆VxAX.uhVsM :2011/07/02(土) 21:15:33.74 ID:Y2G5oZEk
投下終了です。

      ,. < ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ > 、
    /               ヽ   _
   〈彡                Y彡三ミ;, 全国の長谷川さん
   {\    \|_ \>ー 、  ト三三ニ:}  もうしわけございません…
   人{ >、,___.>、/三 ヾ\ |わ三彡;!
  /./ トミ;,_       Y/  \>ノー〜=- "
  V / /!   ̄ ̄ ゝ  |   /  _
  し/'┴──----─''|  ン}\-ヾ彡
              ヾ、___ノー'''`
214 ◆9QScXZTVAc :2011/07/02(土) 22:05:09.33 ID:SApg8hEA
申し訳ありませんがオリロワ打ち切って新ロワ開始します

『オリ版権ミックスロワ』
【主催者】
・リリーステイク@オリキャラ ・辻元造@オリキャラ
【参加者】
【オリキャラ】
・興呂史郎 ・辻結花 ・賀茂雅史 ・木下志保 ・久瀬英樹 ・遠藤和哉
・藤田健 ・エリメスト ・長谷川忠広 ・クールエル ・遠藤雪昭 ・氷川封
・石黒恭子 ・北野由比 ・長谷川遙 ・工藤クリスティ ・黒坂真利花 ・リーム
・椎名みゆき ・夜空藍色
【賭博破戒録カイジ】
・伊藤カイジ ・大槻 ・遠藤 ・一条
【めだかボックス】
・人吉善吉 ・球磨川禊 ・江迎怒江 ・鰐塚処理
【おおかみかくし】
・九澄博士 ・櫛名田眠 ・真名香織 ・賢木俊一郎
【コープスパーティーBCRF】
・持田由香 ・刻命悠也 ・篠崎あゆみ ・森繁朔太郎
【東方project】
・蓬莱山輝夜 ・チルノ ・藤原妹紅 ・フランドール・スカーレット

以上40名
215 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/02(土) 23:30:03.33 ID:dmprDREu
投下します
タイトル:魂揺(たまゆら)
登場人物:藤波栄太郎、五十嵐弘、五十嵐健児、◆ymCx/I3enU
216 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/02(土) 23:30:25.89 ID:dmprDREu
辺りに漂う、血の濃厚な臭い。
普通なら、厭な臭いだと認識するだろう。
今は違った。芳しく、官能的とさえ感じる。
こう感じるのも、自分が人ならざる物になったからだろうか?

「…どうでもいいか。とりあえず、道具探そ」
「待て!お主、ここで何をしておる?」

前方から、謎の老人が歩いてくる。
腰には日本刀を携えている。
何となく強そうだが、見ただけではイマイチ分からない。

「何だよ、何か俺に用か」
「何だではない。その返り血、お主まさか人を殺めたのか?」
「そりゃそうだ。そう言うゲームなんだから」
「…そうか。なら、ここで斬らせて貰う」
「何だ、アンタも乗ってるんじゃないか。なら話が早い」

返答を待たず、真っすぐに老人目掛け襲い掛かる。
それをバックステップでかわすと共に、一文字に日本刀を振り抜く。
どちらの攻撃も、お互いにダメージを与える事無く空振りに終わる。

「結構なやり手のようじゃな…こりゃ、本気で行かねばなるまい」
「どー見ても、俺の攻撃をかわしてちょっとだけ反撃するので精一杯みたいだが」

図星だった。
簡単な動作をするだけでも、体力の消費が多い。
やはり、これも高齢であるが故の宿命か。

「…ところで、背後は警戒しなくていいのかのう?」
217 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/02(土) 23:30:45.86 ID:dmprDREu
そう言われ、急に後ろを振り向いた瞬間、頭部に衝撃が走る。
フラフラとよろめいて、その場に膝をつく。
頭から、少し出血してしまったようだ。額を、血が伝う。

「…多勢に無勢じゃ、諦めて降参すると言うなら、命までは取らぬ」
「そうだ。おめーが誰か知らねーが、誰だって痛い目になんか遭いたくねえだろ」
「…いいや、痛い目になんか遭わないね。だって…」

背後にいる若い男の方に襲い掛かる。
さっきの戦闘で、あの老人には敵わないと分かったからだ。
さっきは不意打ちされたせいで攻撃が直撃してしまったが、今度はそうはいかない。
まさかこの状況で飛びかかってくると思っていなかったのだろう。
呆気に取られている男の喉元目掛け、爪を振りかざす。

「…っ!」

またしても、爪は易々と喉を貫いた。

「うぐえ…っ」

首から血を流しつつ、ゆっくりと仰向けに倒れて行く。
受け身も取らず倒れ、そのまま動かなくなった。

「…兄貴ぃ―――――っ!」
「来てはならん!」

受付内部から飛び出してくる男。
発言からして、さっき殺した男の弟か。

「…せっかくお仲間が来るな、って言ったのにさ。軽率すぎねーか」

こちらに目もくれず遺体に駆け寄っていく。
これほどの隙を見逃す手があろうか?

「ま、どの道すぐに兄貴の所に行けるんだから、別にいいか」

先程と同様に、喉を爪でつく。
また同じように、喉から血を吹き出しながら倒れ、兄弟が重なりあって倒れる。

「流石に3連戦はキツいな、ここは引かせてもらうぜ」
「…くっ…」
218 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/02(土) 23:31:09.45 ID:dmprDREu







奴が逃げて行った方向を、ただ眺める。
一気に2人も仲間を失い、呆然とする。

「…追わねば。追って、奴を斬るんじゃ」
(無残にも殺された2人の仇をとるためにも、奴は絶対斬らねばならん)

【一日目・朝/C-4】
【藤波栄太郎@オリジナル】
[状態]:健康、精神的ショック(中)
[装備]:日本刀
[所持品]:支給品一式
[思考・行動]
基本:殺し合いなぞやるつもりは無いが、襲って来るものは斬る。
1:さっきの男を追って、斬り殺す。
2:「矢部翼」に注意。



「多分、あいつは俺を追いかけてくるな。そして、今気づいたが…」
(これじゃ来た道を逆戻りする事になるな)

【一日目/朝/C-5】
【◆ymCx/I3enU@非リレー書き手】
[状態]:健康、人狼化
[装備]:なし
[所持品]:支給品一式、MP5マガジン×1
[思考・行動]
基本:とりあえず、ゲームに乗る。
1:多分追ってくるであろうあいつに警戒。
2:目的地が無くなったな…

【五十嵐弘@オリジナル 死亡】
【五十嵐健児@オリジナル 死亡】
死因:刺殺
219 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/02(土) 23:31:29.98 ID:dmprDREu
投下終了です
220 ◆9QScXZTVAc :2011/07/03(日) 07:59:22.30 ID:D04U7r7d
投下します
オリ版権ミックスロワ第2話:這い上がれ地獄の底辺から
登場:北野由比、一条
221 ◆9QScXZTVAc :2011/07/03(日) 08:14:00.69 ID:D04U7r7d
「ふざけやがって……神様とやらは俺をなめているのかっ……」

帝愛グループ『元』幹部の一条は、静かに怒りを燃やしていた。
彼は充実した暮らしを送れる未来が待っているのを確信していたのに、ある日ーーーーー彼に経営の任されている違法レートカジノに一匹の『野良犬』がやってきてから全てが悪い方向へと進んでいってしまった。
地下での労働すらまだ始まっていないのに、今度は殺し合いときたもんだ。
どこから、世界は崩れてしまったのだろう。
一条はデイバックの中から一丁のコルトバイソンを取り出す。
銃の使い道などさっぱりではあるが、引き金を引きさえすれば無慈悲な殺意の塊が相手に向かって突き進むのだ。持っておいて損はないだろう、と思った次第である。

「躍らされてたまるかっ……今度は俺が潰してやるっ……このゲームをっ…」

また。彼は、『野良犬』伊藤カイジとの戦いの中、そして度重なる絶望を知ったことでゆるやかに変わっていったのかもしれない。

ふと視界の隅に目をやると、茂みの中で震える少女が目に入った。
黒髪をサイドテールにしたごく一般的な女子高生、というのが率直な感想であった。
222 ◆9QScXZTVAc :2011/07/03(日) 08:28:50.76 ID:D04U7r7d
一条は人前に出る際の『一条』の顔で少女に話しかける。

「こんにちは。貴女もこの殺し合いに巻き込まれたのですか?」

笑顔で言った。少女の行動がすべて演技だとも考えられなくはなかったが、不審な動きをするようなら一切の容赦なく射殺する覚悟であった。

「は、はい…私は、北野由比っていいます…」

おとなしそうな少女だな、と一条は思う。
このような極限の状況では、下手に気が強い者はパートナーとしては不向きなのだ。下手に挑戦をしたり、プライドに固執して単純なミスをする。こんな考えができるのも全てあの忌々しい帝愛の恩恵だというのはどうしても認めたくなかったが。
つまり、北野由比と最初に会えたのはかなり後々有利になると推測した。

「私は一条という者です。早速ですが北野さん、貴女の支給された武器は何でしたか?私はコルトバイソーーー、銃です」

由比には銃の名前など分からないか、と思い言い直した。
どうやら由比には焼夷手榴弾らしきものが支給されたらしく、ひとまず武器の面では安泰か、と少し安堵し、自分がかなり幸運に恵まれていると一条は実感した。

とりあえず一緒に行動しよう、ということになり、首尾よくひとりの仲間を手に。
223 ◆9QScXZTVAc :2011/07/03(日) 08:35:44.75 ID:D04U7r7d
【一条@賭博破戒録カイジ】
基本:このゲームを潰す。
1:北野由比と行動する。
2:伊藤カイジについては保留。
3:敵対する者には容赦しない
※カイジに敗北した後からの参加です

【北野由比@オリキャラ】
基本:死にたくない。
1:一条さんにとりあえずついていく。

【北野由比】
17歳の女子高生。艶のある黒髪をサイドテールにしている。
ごく普通の人間で、特別勇気があったりはしない『普通』を体現したような少女
224 ◆9QScXZTVAc :2011/07/03(日) 08:38:08.93 ID:D04U7r7d
投下終了です
225 ◆9QScXZTVAc :2011/07/03(日) 14:38:18.10 ID:LJKL0yP7
投下します
オリ版権ミックスロワ第3話:救いの無い世界
登場:クールエル、江迎怒江、フランドール・スカーレット
226 ◆9QScXZTVAc :2011/07/03(日) 14:55:50.83 ID:LJKL0yP7
灰色の体毛の人狼ーーークールエルは、ひたすらに防戦一方だった。
どうしてこうなったのか、彼は思い出すーーー。


「殺し合い…ねぇ。乗ってもいいけどよ、別に叶えてぇ願いもねえしな」

クールエルは無気力な人狼である。かつてつるんでいた仲間たちにはめられて殺人の罪を着せられ、無罪釈放となったが、彼についた汚名はなかなか消えなかった。
死にたくないなんて甘い考えではない。いつ死のうが構わないくらいに、無気力で自堕落な出稼ぎのバイトを繰り返すだけの毎日は退屈であった。
適当に誰か探してから決めるか、と歩きだそうとした時、景色の異変に気付いた。

林が、腐敗している。まるで薬品を大量に散布したような腐り方。
しかし腐りは未だ新しく、急成長した巨大植物などがあまりにもアブノーマルな光景だと言うことをクールエルの麻痺した脳髄に伝えた。

面倒だな、とは思いながらも、林の中に好奇心で入っていくクールエル。
人狼には様々な種類があり、人間の姿をしながらも狼の習性を持つもの、人というよりは神々のような超人的能力を持つもの。クールエルは狼としての戦闘力に特化した種族である。
前述の異能の人狼とも互角に渡り合う自信はあった。
227 ◆9QScXZTVAc :2011/07/03(日) 15:14:27.25 ID:LJKL0yP7
待ち受けるのは一切の常識的思考の通じない過負荷(マイナス)だと知らなかったのが、彼の失策であった。


クールエルが林を訪れる数分前。紅魔館の吸血鬼レミリア・スカーレットの妹、『悪魔の妹』フランドール・スカーレットは、過負荷ーーー江迎怒江と遭遇していた。
しかしながら、今の江迎は初めて会うフランドールからすればもちろん、恐らくは彼女の仲間である者達でさえも異様と捉えることができただろう。
瞳の虹彩が消え失せ、両手からは目視できるほどの腐敗した空気が溢れている。
足取りもおぼつかず、明らかに精神崩壊している。

「(…何だろう。空気が腐ってるの?)」

幻想郷には様々な能力を持つ妖怪や人間が存在し、フランドールは『ありとあらゆるモノを破壊し尽くす程度の能力』を有しているが、『モノを腐敗させる程度の能力』など聞いたことがなかった。
危険な感覚を本能が告げていく。
フランドールは殺し合いに乗る者たちを殺すというスタンスーーー俗に言う危険派対主催であったが、きっとそうでなくともフランドールはこう判断しただろう。

こいつは危険だ。今ここで排除するーーー!

江迎はフランドールを視界に捉えると同時に空気を腐らせる。
228 ◆9QScXZTVAc :2011/07/03(日) 15:44:53.98 ID:B4FK2U16
空気を腐らせることでなら、幻想郷の妖怪を殺すことも可能かもしれない。しかし、フランドールの『破壊する』能力の前にはそれすらも無力だった。一撃で終わる。そう確信していた。
吸血鬼の肉体には腐敗した空気を吸わせるだけでは大きな痛手を与えることはできないと判断して、江迎は地面に両の手をつける。
次の瞬間、辺りの木が暴れるようにうねり、フランドールに迫った。
さすがにフランドールも驚くが、それでも破壊すればいい話であるーーー

筈だった。

「……え?」

破壊できなかった。『目』は視覚できるのだが、それを破壊しても対象に一切のダメージを追わせることができていない。吸血鬼の性質の一部以外は、完全に封印されていた。
横殴りに凪払われた木の一本がフランドールの華奢な肉体を跳ね飛ばしていた。


「……………」

気絶したフランドールにゆらゆらと近付いていく江迎。
腐敗させる過負荷ーーー『腐敗する草花(ラフラフレシア)』を頭にでも使用すればいくら吸血鬼といえども殺すことが可能だ。

「おいおい、気絶してる子供相手に大人気ないんじゃねえの?」

とっさに顔を後ろに反らす。
それは直感的な判断ではあったが、正解であった。
229 ◆9QScXZTVAc :2011/07/03(日) 16:00:36.54 ID:P6g5Vdny
江迎の顔のあった座標をクールエルの鋭利な爪が切った。
顔を反らさなかったなら、江迎の顔面は無惨にも真横に切り裂かれていたことは明らかであった。クールエルは眉をひそめる。腐敗した空気が鼻につき、呼吸を困難にされる。

「(……畜生。分が悪すぎる)」

人狼には吸血鬼ほどの適応力がない。
このまま戦い続けても、あの木を腐らせて操る能力で叩き潰されるのがオチだ。
だとするなら、フランドールを連れて逃げた方が早い。

二・三度威嚇として爪で空を切り裂く。江迎との距離を十分に取ったことを確認すると、人狼の脚力でフランドールを抱えながら一気に林を駆け抜けた。

「くそったれ…こういうのは性に合わねえんだが…」

空を仰いで一言呟いた。

【クールエル@オリキャラ】
基本:ひとまず状況を見てどうするか決める
1:このガキ(フラン)の目が覚めるまで待つ
2:江迎怒江に警戒を払う。

【フランドール・スカーレット@東方project】
基本:殺し合いに乗る奴を殺す。
1:………
※『ありとあらゆるモノを破壊し尽くす程度の能力』は封印されています
※日光に当たっても平気です


結局。江迎怒江の異常の原因は何だったのか。
230 ◆9QScXZTVAc :2011/07/03(日) 16:05:45.71 ID:P6g5Vdny
答えは単純に、『リリーステイクによる実験の一環として改造された』。
自我は二度と帰ってはこない。
彼女の先の道に、救いは無い。

【江迎怒江@めだかボックス】
基本:………
※参戦時期は少なくとも会計戦以降です
※主催により、過負荷の大幅な威力上昇、自我の崩壊を誘発されました
231 ◆9QScXZTVAc :2011/07/03(日) 16:06:56.32 ID:P6g5Vdny
投下終了です
232 ◆YcpPY.pZNg :2011/07/03(日) 20:12:51.67 ID:SiFdCGar
皆さま投下乙です
では自分も投下したいと思います
233創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 20:13:03.60 ID:Pah/DzZ0
支援
234創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 20:13:04.64 ID:J6hpOz+O
支援
235もう誰にも頼らない ◆YcpPY.pZNg :2011/07/03(日) 20:13:46.68 ID:SiFdCGar
(ここは……? ワルプルギスの夜は……どこに……?)

 気付けば、暁美ほむらは暗闇の中にいた。
 一寸の光すらも存在しない本当の暗闇。
 自分がどちらを向いているのか、座っているのか、立っているのかすらあやふやになる、そんな暗闇。
 暗闇の最中にて暁美ほむらは、困惑を表情に滲ませながら、首を左右へと振った。
 視界に映る光景が、唐突に切り替わったのだ。
 それはまるでテレビのチャンネルを変えたかのように。
 まばたきの間に、世界が一変していた。
 状況に対して、理解が追随しない。
 暁美ほむらの心中を、混乱が支配していた。

「やぁ、お目覚めかい。暁美ほむら」

 そして、混乱の最中にて暁美ほむらはその声を聞く。
 もはや聞き慣れたと云っても良い、何処までも何処までも纏わりつく悪魔の声。
 声が聞こえたと同時に、闇が切り裂かれ視界を光が占める。
 闇に慣れた瞳にとっては、暴力的なまでの光。
 ほむらは思わず瞼を閉じ、光から顔を逸らす。
 白色に塗り潰された視界が本来の役目を取り戻すまで、たっぷり五秒は必要であった。
 段々と色を取り戻していく視界。
 元通りとなった視界に、まず最初に飛び込んできたモノは案の定とも云える存在であった。
 インキュベーター。通称・キュウべえ。
 白色の獣が何時も通りの無感情な表情で座っていた。

「……キュウべえ、これはどうなっているの?」
「大した事じゃないよ。君に、一度チャンスを上げようと思ってね」

 暁美ほむらの質問に、キュウべえは簡潔に答えを吐いた。
 ほむらの眉根が吊り上がる。
 チャンスという言葉は、窮地にある者に対して投げられる言葉だ。
 確かにほむらは寸前まで窮地にあった。
 心の中にあった唯一の道標すら覆い隠す程の、幾度となく繰り返すと決心した時間のループすら諦め掛けた程の、大きな大きな絶望。
 絶望に捕らわれた心は、身体を動かす事すら忘れてしまった。
 ただ涙が込み上げ、心に漆黒が流れ込むのを感じる。
 覆し得ぬ因果の定めに、暁美ほむらの心は折れ掛けていた。

「君は知った筈だよ。君が時を繰り返す度に、因果はまどかへと集中していく」

 時を繰り返せば繰り返す程、その身に因果を背負い込む少女。
 ただ救いたいだけなのに、それだけなのに、自分が時を巻き戻す事で少女はより多くの因果を引き寄せる。
 引き寄せられた因果は、少女へ更なる資質を与えてしまう。
 『魔法少女』としての資質。
 絶望が確定付けられた存在としての資質。
 絶対的にまで引き上げられた魔法少女としての資質を、眼前の生命体は決して見逃さない。
 口八丁で少女達の心の隙へと漬け込み、願いの成就という餌をちらつかせて、魔法少女となる契約を結ばせる。
 その勧誘は資質が大きくなる程、執拗さも増していく。
 結局は、自分のせいなのだ。
 自分が時間を幾度と巻き戻したせいで少女へ因果が集中し、ただの平凡な少女は最強の魔法少女となる力を秘めてしまった。
 力を秘めてしまったが故に、眼前の生命体に付きまとわれる。
 恐らく見逃しはしない。
 これから何度と時間を巻き戻そうと、少女へ因果が集まるだけで結果は変わらない。
 自分がしてきた事は、自分が努力してきた事は、結局―――。

「結局、君のしてきた事は無駄以外の何物でもなかった。僕達にとってはラッキーな結果だけどね。まどかが魔女となった時のエネルギーは僕にだって予測がつかない。これで僕達も大分救われると思うよ」

 キュウべえの言葉に、ほむらは心がざわめき立つのを感じていた。
 今すぐにでも眼前の存在を消してしまいたい。
 それが無駄な行動だと理解して尚、心はそれを求める。
236もう誰にも頼らない ◆YcpPY.pZNg :2011/07/03(日) 20:14:33.69 ID:SiFdCGar

「……そんな分かりきった事をもう一度伝える為だけに、私を此処に連れて来たの? あなたも随分と暇なようね」
「まさか。さっきも言っただろう、チャンスを上げるって」

 変わらぬ表情で話を続けるキュウべえに、ほむらは薄ら寒いものを感じていた。
 悪寒といっても良い。
 ほむらは嫌悪感を隠す事なく面に出し、キュウべえを睨み付ける。

「そんな顔をされてもね。本来なら感謝の一つくらいくれても良いくらいだよ」

 そんなほむらを尻目に、キュウべえは言葉を続ける。

「良いかい? 君が一人でワルプルギスの夜に勝つ事は不可能だった。事実、僕が君を此処に連れてくる寸前では既に勝負は付いていたしね。軍事兵器を活用した攻撃も殆どダメージを与えられず、君は足を潰された。
 あの状況から勝利するなんて、何をどうしても不可能だよ。それこそ奇跡が起きたって、無理だ」
「そんな事は……!」

 事実のみを淡々と並べ立てた、言葉の数々を。
 その言葉に対して、ほむらは必死の思いで反論を紡ごうとした。
 だが、キュウべえの話は事実であった。
 キュウべえの語った通り、ほむらはワルプルギスの夜に完敗した。
 完敗し、絶望が全てを覆い隠した直後に、この謎の空間に連れられたのだ。
 事実であるからこそ、ほむらの言葉は勢い弱く失墜してしまう。
 ほむらの反論に被せるように、キュウべえが声を放つ。

「時を巻き戻したって結果は変わらない。結局はまどかに絡み付く因果が増えるだけさ。そうなれば、僕は何をしてでもまどかを魔法少女へと契約させる。
 君自身それを認めているから、直ぐに時を巻き戻そうとしなかったんだろう?」
「それは……」

 キュウべえの語る全てが事実であり、図星であった。
 ほむらは遂に言葉を失い、ただ唇を噛む。
 唇を噛む力だけが、ただ強まっていった。
 ともすれば、悔しさに涙が浮かび出す。
 ほむらからすれば、自分の無力感を改めて認識させられたようなものだ。

「君が何をどうしようと、僕はまどかを魔法少女にするよ。時を戻そうと、ワルプルギスの夜を倒そうと、まどかを見逃す事はない。そう、暁美ほむら。君の望みは決して叶う事がないんだ」
「ッ……!」

 遂に、ほむらの瞳から大粒の涙が零れ落ちた。
 彼女の魂が内包されている宝石。
 まるで彼女の感情を表すかのように、その宝石は急速に濁っていく。
 絶望だけが、支配する。
 非情な現実に、数多の悲劇を耐え忍んできた不屈の精神が崩壊を始めていた。



237創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 20:15:07.47 ID:J6hpOz+O
支援
238もう誰にも頼らない ◆YcpPY.pZNg :2011/07/03(日) 20:15:37.56 ID:SiFdCGar
「でもね」



 そんな中、絶望の化身は変わらぬ様子で口を動かす。
 涙で歪む視界で、絶望で歪む世界で、その声だけが響き渡る。
 拒絶の意思に反して、言葉は心の深く深くへと突き刺さる。



「一つだけ、鹿目まどかを救う方法があるんだ」



 そして、暁美ほむらはそっと……優しく手渡されたのだ。



「ねぇ、暁美ほむら―――」


 
 悪魔のカードを。



「―――僕と契約して、『ジョーカー』になってよ」


 死神の手によって。









「どういう、事……?」
「実はね。つい最近の事だけど僕達は新しいエネルギー収集法を考え付いたんだ。魔法少女システムよりも効率的に感情エネルギーを獲得できる、魔法のようなシステムをね」

 ほむらの問いに、インキュベーターは回答を紡いでいく。
 悪魔のようなシステムの、その概要を。

「システムの名は『バトルロワイアル』―――既に幾つかの並行世界で執り行われたものらしいんだけどね。命を賭けて戦わせるのさ、人間達を」
「命を賭けて……戦わせる……?」

 語られる内容は、凄惨な殺し合いについてであった。
 数多の並行世界から連れ出した参加者達。
 それぞれの首に爆弾型の首輪を付け、命を握った状況で殺し合いを強制する。
 8キロ四方の会場にて人々は殺し合い、最後の一人となったものが優勝となる。
 優勝者は元の世界に戻る事ができ、無事の生還を果たす。
 インキュベーターの説明は、大まかに言えばこのようなものであった。

239創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 20:16:31.72 ID:Pah/DzZ0
支援
240もう誰にも頼らない ◆YcpPY.pZNg :2011/07/03(日) 20:16:40.84 ID:SiFdCGar
「この『バトルロワイアル』は素晴らしいよ。人々の感情エネルギーを増幅させ、圧倒的な高みへと押し上げる。そのエネルギーの増幅はエントロピーを容易く覆し、宇宙の存続への大きな躍進となるんだ」

 確かに、話を聞いただけでもこの『バトルロワイアル』が絶望と狂気に満ちたゲームだという事は分かる。
 参加者として呼ばれた人々の胸中たるや、想像する事も難しい。

「本来ならば世界を救う程の力をもった存在が容易く死亡する事だってある。ただの一般人でしかない存在が最後まで生き残る事がある。死亡したとしても命の最期の瞬間まで抗い続ける者もいた。絶望に精神を壊し、無惨に死亡した者だっていた」

 表情を歪めるほむらを前に、インキュベーターの語り口は止まらない。
 淡々と、淡々と、語る。
 『バトルロワイアル』というゲームの異常性を、語っていく。

「でも、誰もが誰も感情を燃やす。普段の生活じゃ見せない程の、強大で、表裏もない、本物の感情を吐き出す。それが―――最高の感情エネルギーとなる」

 改めて、暁美ほむらは理解させられたような気がした。
 眼前の存在は、やはり別次元の領域にいる。
 倫理や道徳といった概念など知らぬ、ただ効率だけを望む機械のような存在。
 信念もなく、感情もなく、ひたすらに効率を求める。
 その姿に、暁美ほむらは今更ながらの寒気を感じた。

「だから、僕達は僕達の手で『バトルロワイアル』を開催する事に決定したんだ」

 それがさも当然のように、インキュベーターは告げた。
 『バトルロワイアル』の異常性を全て把握した上で、微笑みのような表情を浮かべて、眼前の生命体は言い切ったのだ。
 凄惨な殺し合いの開催を。

「暁美ほむら。君には、この殺し合いを盛り上げる『ジョーカー』となって欲しいんだ」

 そして、白色の悪魔が暁美ほむらに迫る。
 絶望に打ち拉がれた心へと、その心の隙間へと滑り込ますように言葉を与える。
 絶望に染まった、だが暁美ほむらからすれば唯一の希望。
 絶望でありながら唯一の希望である選択肢を、魔法少女へと示す。

「難しい事は何もない。この殺し合いの会場にいる人々を片っ端から殺害していって欲しいんだ。言わば、盛り上げ役さ。そして最後の一人となれば、君の役目も終了。
 勿論、殺害するのは君が救いたいと思うまどかを除いての話だ。まどかを除いた全ての参加者を殺害すれば、晴れて君とまどかは自由の身となる」
「ちょっと、待って。まどかも、この、『バトルロワイアル』に……?」
「ああ。他にも数人の魔法少女が参加しているよ」

 今度こそ、ほむらは動いていた。
 眼前の存在に対する恐怖心も、直前までの絶望感も押しのけて、身体が動く。
 インキュベーターの喉元を渾身の力で締め上げ、怒りに染まった瞳を向けた。

「まどかを、参加者から、除外、しなさい!」
「それは無理だよ。君の世界からの参加者は、彼女を中心として選出したものだ。彼女がいなくちゃ、話にならないよ」

 それに、と言葉を区切り、インキュベーターは続ける。

「それに、君もやる気が出るというものだろ? まどかが死んでも、ゲームオーバーだ。あの空間で時間の巻き戻しが可能かは僕にも分からないし、ループした先でこんなチャンスがまた訪れるとも限らない。まどかに集まる因果も増大してしまうしね」

 一度手に込める力を強めるほむらであったが、数秒後インキュベーターの喉元から手を離す。
 結局、自分が何をしようと変わらない。
 絶対の優位性は相手が有している。
 自分は眼前の存在の言う通りに動くしかない。

「理解できたかい? 君に残された選択肢は二つだけさ。『バトルロワイアル』でまどかを除いた全ての参加者を殺害するか、不毛で無意味なループを続けていくのかの、二つ。そして、君は僕の勧めを断らない。ようやく見えた希望だ。君は、すがらずには、いられない」
 
 激情を宿していたほむらの瞳が、暗く、深く、沈んでいく。
 そして―――まるで頭を垂れるように、暁美ほむらは首を縦に振った。
 その選択が絶望であると理解しながら、縋らずにはいられなかった。
 肯首したまま俯くほむらを、インキュベーターは満足げに見詰めていた。
241創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 20:16:43.89 ID:J6hpOz+O
支援
242創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 20:17:55.70 ID:J6hpOz+O
支援
243もう誰にも頼らない ◆YcpPY.pZNg :2011/07/03(日) 20:18:07.71 ID:SiFdCGar
「おそらく今回の『バトルロワイアル』で徴収できるエネルギーは、まどかが精製するエネルギーをも上回る。そうなればもう、まどかや君に手を出す必要なんてない筈さ。もしかしたら魔法少女というシステムすら無くなるかもしれない」

 感情を持たぬ筈のインキュベーターが、ほむらには愉しげに見えた。
 感情のない化け物にも達成感というものはあるのだろうかと、ほむらは投げ槍な思考で考える。

「―――やったね、暁美ほむら。君は魔法少女達を救う事ができたんだ」

 インキュベーターの言葉に、ほむらは想わずにはいられない。
 鹿目まどか。
 彼女が何をしてでも救いたいと思う存在。
 その名前と姿を想わずにはいられない。
 絶望に支配された世界で、ただそれだけが最後に残った道標。
 唯一の希望に縋った魔法少女は、絶大な絶望に追いやられながら、少女を想う。
 救ってみせると、自身へ言い聞かせるように繰り返し、面を上げる。
 造り物の笑顔を浮かべる悪魔と視線がぶつかる。

「……契約は完了ね。なら、私は行くわ。早く『バトルロワイアル』の会場へと連れて行きなさい」

 ぶつけた視線に、もう迷いはなかった。
 絶望を押しのけて、不屈の精神が復活を果たす。
 痛みを無理矢理に塗り潰し、いびつに歪んだ、復活。
 それでも彼女は決意を固めていた。
 何を犠牲にしてでも、鹿目まどかを救出する決意を。

「分かった。けど、その前に『ジョーカー』としての特典を君に上げるよ」

 インキュベーターの一言と同時に、首元からパキンという何かの弾けるような音が聞こえた。
 足元に何かが転がり落ちる。
 足元へ視線をズラすと、そこには半円状の鉄製の輪が二つあった。

「それが参加者の命を握る首輪さ。『ジョーカー』である君には必要のない代物だろう? 君が裏切るとも思えないしね」

 首輪が何時の間に装着されていたのか、インキュベーターとの会話に意識を集中していたほむらには分からない。
 ただ足元へ落ちた首輪を見て、自分は既に別の道へと進んでいる事を自覚する。
 『バトルロワイアル』の参加者ではなく、主催者陣営の尖兵として動く『ジョーカー』。
 自分は既に、ソレなのだろう。

「次にコレさ。このリストの中から君の好きなアイテムを三つ選んでくれ」

 次いでインキュベーターは、ほむらの眼前へとモニターを映し出した。
 何行にも渡り、何かの名前とその何かについての説明書きが連ねられたモニター。
 スクロールは遥か下にまで存在し、百をも越える程の名前と説明書きとがモニターには記されている。

「最初に参加者へ支給品を三つ配るんだけど、『ジョーカー』である君には特別に選定の機会をあげるよ。このモニターにあるのが参加者へと支給される予定のアイテムだ。この中から、好きなアイテムを三つ選んで欲しい」

 ほむらはゆったりと時間を掛けて、支給品の選定を行った。
 モニターと睨み合う事、数十分。
 最後の行に記された支給品と、支給品の説明書きとを読み、ほむらはインキュベーターの方を向く。
 退屈気にくつろいでいたインキュベーターが尻尾をなびかせ、立ち上がる。

「決まったかい?」
「ええ。コレとコレとコレを頂戴」

 モニターをスクロールさせ、目当ての支給品を示していくほむら。
 インキュベーターはその支給品の数々を見て、口を開く。

「ソウルジェムを回復させる為のグリーフシードと、コレとコレか。うん、良い選択だ。コレもコレも、君なら充分に使いこなせると思うよ」

 選択された支給品の数々に、インキュベーターも納得したように頷いた。
 ほむらの肩に乗り、前足を器用に使用してモニターを弄くる。
244もう誰にも頼らない ◆YcpPY.pZNg :2011/07/03(日) 20:19:05.13 ID:SiFdCGar
「この支給品を見た様子だと、どうやら君もやる気になってくれたみたいだね。嬉しいよ」
「当然よ。もう、迷わない。彼女を救う為なら、私は何もかもを切り捨てる」

 モニターを操作しながらの発言に、ほむらは凛とした言葉で返した。
 力強い、決意に満ちた言葉は、インキュベーターから笑顔を引き出す。
 『主催者』の一人と、『ジョーカー』が其処にいた。

「よし。これで全て終了だ。これから君を『バトルロワイアル』の会場へと送るけど、何か聞きたい事はあるかい?」

 インキュベーターの言葉と共に、モニターが消える。
 直後として、ほむらの足元に淡い紫色の光が灯った。
 その光は魔法陣のような形を描き、ほむらを照らす。
 何の感慨もなく開催されようとする『バトルロワイアル』。
 それでも決意の瞳は決して揺らがず、ほむらはインキュベーターを正面から見やる。

「最後に一つだけ確認させて」
「何だい?」
 
 再びぶつかり合う『主催者』と『ジョーカー』の視線。
 唯一の希望を胸に非情の道を行かんとする少女が、異能の生命体を見据える。


「私とまどかがこの『バトルロワイアル』に勝ち残ったら、まどかにもう手を出さないのね」
「最後まで生き残っていられれば、ね」
「……結構よ。私を、『ジョーカー』を、『バトルロワイアル』に参加させて」

 その解答に、暁美ほむらは一度だけ強く強く頷いた。
 足元の光が輝きを増していく。
 視界が光に包まれ、寸前にいるインキュベーターの姿すらも確認できなくなる。
 そして、暁美ほむらの姿が消えてなくなった。
 時を掛ける魔法少女は二人目の『ジョーカー』となり、殺し合いの場へと参戦する。
 希望に満ちた世界を歩む為に、魔法少女だった少女が、絶望のゲームを駆ける。


 歪んだ世界で、彼女の行き着く先は―――。







「よろしくお願いします。えっと……相川、さん?」
「始で良いさ。まどかちゃん」
「はい。よろしくお願いします、始さん!」

 殺し合いが開始してから一時間程が経過したその時、鹿目まどかは一人の男と出会っていた。
 ベージュのロングコートに身を包んだ男性・相川始。
 こんな殺し合いの場だというのに相川は堂々としていた。
 その態度からは、恐怖など微塵も感じさせない。
 恐怖に心が支配されていたまどかにとって、相川の姿はこれ以上なく心強く見えた。
 簡単な自己紹介を終えた二人は、今後の行動方針について話し合おうとしていた。

「まどかちゃんの知り合いは四人だね。皆、君の友だちかい?」

 優しげに語りかける相川に、まどかは複雑な表情を浮かべていた。
 まどかの記憶では、この参加者名簿に記されている知り合いの殆どは死亡している。
 一人は魔女との戦いで、一人は魔女となって、一人もまた魔女との戦いで。
 誰もが誰も『魔法少女』として戦い、そして死亡した筈の少女達であった。
245創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 20:19:16.62 ID:Pah/DzZ0
 
246もう誰にも頼らない ◆YcpPY.pZNg :2011/07/03(日) 20:20:10.33 ID:SiFdCGar
「はい、そうです」

 心中の疑問をまどかは口にしなかった。
 相談してどうこうなる話でもないし、いらぬ懸念を相川に与えるだけだと判断したからだ。
 疑問を胸中に仕舞い込み、そしてそれを悟られないよう感情を抑えて、まどかは答えた。

「そうか……。じゃあ、まずはまどかちゃんの友だちを探そう」
「え、でも、始さんの知り合いだって呼ばれてるんじゃ……」
「……大丈夫さ、奴らはこんな殺し合いなんかで死んだりしない。それに……会わない方が良い奴だって、いる」

 語る相川の表情は、数瞬前のまどか同様に複雑なものであった。
 記されていた名前。
 元仮面ライダーの二人に、新たな世界の『神』になろうとし死亡した筈の男。
 そして、剣崎一真。
 命の恩人にして、親友にして、決して相容れぬ存在。
 その男が、この8キロ四方の会場の中に、いる。
 心底の衝動が、僅かに強まる。
 衝動を抑え込むかのように、相川は胸を抑えていた。

「始さん……?」
「……心配ないよ。さぁ、行こう。取り敢えずこの市街地を探してみよう」

 混乱の最中で、相川はまどかへと行動を促す。
 心配げにコチラを覗き込むまどかに、相川はとある少女を連想させていた。
 まどかは、相川が連想した少女よりも一回りも二回りも年配だ。
 だが、二人は何処か似通っていると、相川は思う。
 その純真な様子に、心優しい性格。
 相川は、知らぬ間に心中の決意が固っていくのを感じていた。
 必ずまどかを親友達と再開させ、元の世界へと無事に帰還させる。
 アイツのようにやり遂げてみせる。
 自己を犠牲にする事で、『世界』と『親友』の両方を救った青年。
 この場にいるアイツのように、やり遂げる。

「行こう、まどかちゃん」
「はい、始さん」

 決意し、相川始は鹿目まどかへと柔和な微笑みを送る。
 相川の気持ちを察知してか、まどかも微笑みを造る。
 偶然に出会った二人が並んで歩き始めようとし―――、



「その必要はないわ」


 ゴバッ、という音が二人を引き裂いた。



 続く音は、もはや音と認識する事すら困難であった。
 それはまるで世界から音が消えたかのよう。
 絶え間なく続く轟音が、全てを塗り潰し世界から音を奪い取っていた。

「相川さんっ!!」

 音ともに吹き飛んだのは、相川始であった。
 まどかの視界の中で、突風に舞い散らされた紙切れの如く吹き飛ぶ。
 一瞬で視界外へと飛んでいった相川が、闇の中へと消えていく。
 轟音が止み音の戻った世界にて、まどかは叫んでいた。
247創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 20:20:28.01 ID:J6hpOz+O
支援
248もう誰にも頼らない ◆YcpPY.pZNg :2011/07/03(日) 20:21:31.68 ID:SiFdCGar
 胸中の愕然を吐き出すかのように、声を張り上げる。
 届く訳がないと、頭の片隅で理解して尚、声を飛ばす。

「まどか」

 そんなまどかに、優しげな口調で声が投げられた。
 聞き覚えのある声だ。
 声に引き寄せられるように、まどかの視線が動く。
 其処にいたのはまどかも良く知る少女で、だけど今までに見た事のない風貌であった。


「ほむら……ちゃん……?」


 視界の先に、暁美ほむらが立っていた。
 何時も通りに『魔法少女』のコスチュームで身を包んだ姿で、そして未知の『何か』を側に付き添わせ、未知の『何か』で武装した姿で。
 暁美ほむらが、立っていた。

「何で……何で、始さんを!」
「まどか。アナタは殺し合いが終わるまで、何処かに隠れていて。アナタが隠れている間に、私が全て終わらせるわ」

 まず目を引くのは、ほむらの背後に寄り添う人型の『何か』であった。
 逞しい、鋼のような肉体を持った人型の『何か』。
 頭髪は燃える炎のように揺らめきを持って天へと昇る。
 身体は人間のものでは有り得ない青色に染まっている。
 赤色のスカーフと、肩を覆い隠す巨大な肩当て。
 ほむらに寄り添う『何か』。
 見る人が見れば、驚愕に言葉を失うだろう。
 史上最強のスタンド―――『スタープラチナ』を、何故この少女が操っているのかと。

「どういうこと……訳が分からないよ、ほむらちゃん!」
「分からなくても良いわ。アナタは知る必要もないことよ。ただ、今は私の言う事に従ってちょうだい」

 次に目を引くのは、『スタープラチナ』が右手に装備する『十字架』か。
 十字架の長径が縦に割れ、スライドしている。
 スライドした先から覗くは、漆黒の銃口。
 銃口から伸びる灰色の煙は、瞬前まで『十字架』が稼働していた証であった。
 『スタープラチナ』が『十字架』を容易く振り回し、ほむらの足元へと突き刺す。
 揺れる地面に、『十字架』の途方もない重量が理解できる。
 『スタープラチナ』が装備する『十字架』。
 見る者が見れば、驚愕に言葉を失うだろう。
 最強の個人兵装―――『パニッシャー』を此処まで軽々と操る存在がいるのかと。

「お願い、私を信じて」

 『最強』のスタンドに、『最強』の個人兵装。
 二つの『最強』にて武装した魔法少女が、唯一の道標へと語りかける。
 信じて、と。

「……無理、だよ……! ほむらちゃんの事を信じたい……嘘吐きだなんて思いたくない……でも、駄目だよ。信じられない、全然大丈夫だって気になれない!」

 返答は、拒絶であった。
 事態が理解できないまどかには、ほむらが現在に至る経緯を知らないまどかには、ほむらを受け入れられない。
 躊躇いなく相川始を殺害した暁美ほむらを、受け入れられる訳がない。
249創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 20:21:34.29 ID:Pah/DzZ0
 
250創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 20:22:46.08 ID:J6hpOz+O
支援
251もう誰にも頼らない ◆YcpPY.pZNg :2011/07/03(日) 20:23:22.71 ID:SiFdCGar
「……そう……分かったわ」

 道標からの拒絶に、ほむらは表情を崩さなかった。
 この未来を予見していたのかもしれない。
 予見した上で、問い掛けたのだ。
 問い掛け、拒絶され、それでも良いのだと感じていた。
 もう誰にも頼らない。
 遠い過去に、そう決意したからだ。

「最後に一つだけ言わせて。絶対に、生き延びて。私は直ぐに全てを終わらせる。終わらせるから……お願い、生き延びて」

 言葉を残して、暁美ほむらは暗闇の市街地に消えていった。
 二つの『最強』を携えながら、時を駆ける魔法少女は進んでいく。
 不屈の心に、漆黒の決意を灯して―――ひたすらに『バトルロワイアル』の会場を突き進む。


【一日目/深夜/G-8・市街地】
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]健康
[装備]ソウルジェム(穢れ無し)@魔法少女まどか☆マギカ、スタープラチナのDISC@ジョジョの奇妙な冒険、パニッシャー@トライガン・マキシマム
[道具]基本支給品一式、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ
[思考]
0:まどか以外の参加者を全て殺す
1:『ジョーカー』として参加者を殺害していく。







「ほむらちゃん……何で……」

 そして、取り残された鹿目まどかは膝を折って、泣いていた。
 相川始の死に、暁美ほむらの行動に、心が追い付かない。
 押さえ切れぬ感情が涙となり、両の瞳から零れ落ちていく。

「うっ……!」

 泣きじゃくるまどかが、唐突に胸を抑えた。
 何故だか痛みが発生したのだ。
 何かが突き刺さるような、痛み。
 痛みにまどかは胸を抑え、そして聞いたような気がした。
 誰かの声を。
 声にもならぬ、絶望の声を。
 声が、心に直接流れ込んできた。

「な、何……?」

 流れ込む声は、一つじゃなかった。
 続いて、続いて、次々に流れ込む。
 絶望に満ちた、愉悦に満ちた、希望に満ちた、矜持に満ちた、拒絶に満ちた、信頼に満ちた、そんな声達。
 それぞれの感情を宿した声は、六つ。
 六つの声が、六つの痛みとなりまどかの胸に刺さった。

(天音……ちゃん……)

 声の中で、痛みの中で、まどかはもう一つの声を聞いた。
252創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 20:24:41.67 ID:Pah/DzZ0
 
253創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 20:24:42.45 ID:J6hpOz+O
支援
254もう誰にも頼らない ◆YcpPY.pZNg :2011/07/03(日) 20:25:20.67 ID:SiFdCGar
 それは、とても近くから聞こえたような声。
 声が届いてきたような方向へ、まどかは振り返る。
 其処には死体があった。
 相川始の、その死体が。

「始……さん……?」

 よろよろと立ち上がり、まどかは始の死体の側で屈み込む。
 そして、気付いた。
 相川始は、死んでいない。
 十字架からの銃撃に、胸を潰され、腹を潰され、足を潰され、それでも相川始は生存している。
 意識こそないものの呼吸は力強く、胸元に触れれば拍動も感じ取れた。
 顔色は悪いが、それも徐々に回復しているように見える。
 素人目にも致命的な傷の数々ではあったが、奇跡的に命に別状はないようだ。
 ただまどかは気付かなかった。
 薄暗に居る事もあってか、相川始の身体から流れる血液の色に気付かない。
 緑色の鮮血に、気付かない。

「生きてる……!」

 相川の生存を認識し、まどかはその場にへたり込む。
 安堵の息を吐くと、身体から力が抜けていくのが分かる。
 だが、それも一瞬。
 まどかは直ぐに行動を開始した。
 相川を引きずり、直ぐ側の民間へと入っていく。
 せめて誰の目にもつかなそうな所へ、というのがまどかの考えであった。
 入って直ぐの所にあった和室に相川を寝かせ、まどかはデイバックを漁る。
 何か治療に使えそうなものはないか、探しているのだ。
 暁美ほむらの行動、謎の胸痛、相川始の異常な耐久力……疑問は山のように存在する。
 ただ今は、一つの命を救う為だけに。
 最強の『魔法少女』と成りうる少女が、慌ただしく行動する。
 暁美ほむらの決意も知らずに、鹿目まどかは眼前の命を救う事に集中していた。



【一日目/深夜/G-8・市街地】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
0:殺し合いには乗らない
1:相川の治療。
2:相川と行動し、皆を探す。
3:ほむらちゃん、どうして……?
4:何だったんだろ、さっきの胸の痛み……

【相川始@仮面ライダー剣】
[状態]腹部、胸部、左足にダメージ大(治癒中)、ジョーカー化への欲求(極少)、気絶中
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、ラウズカード(ハートの2)@仮面ライダー剣、ランダム支給品×1〜3
[思考]
0:殺し合いを止める。兵藤の元へ行き、兵藤をぶっ殺す
1:まどかと共に、他の参加者とまどかの友達を探す
2:ラウズカードの確保
3:橘達とも合流する
4:剣崎……。
※原作終了後から参加させられています

255創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 20:28:40.36 ID:J6hpOz+O
支援
256創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 20:29:15.12 ID:Pah/DzZ0
 
257 ◆YcpPY.pZNg :2011/07/03(日) 20:30:08.72 ID:YNOpoGOx




「鹿目まどか」


 そして、インキュベーターは暗闇の中でモニターを見詰める。
 モニターの中には、相川始を救おうと躍起になる鹿目まどかの姿があった。


「並行世界の因果線をもその身に集めた存在」


 モニターを見詰めてインキュベーターは呟く。
 たったの一人で。
 感情を持たない存在が。


「君の身に更なる因果を集結させたら、どうなるんだろうね?」


 それは無邪気な呟きだった。
 呟きは、誰の耳に届く事なく、暗闇に消える。
 インキュベーターは見続ける。
 鹿目まどかの行動を、さも興味深そうに、見つめていた。

 異能生命体の思惑をも乗せて『バトルロワイアル』は廻り続ける―――、



さるったので携帯から。
これにて投下終了です。
ご支援ありがとうございました
258 ◆ymCx/I3enU :2011/07/03(日) 20:33:01.66 ID:hG9Jh4hu
投下乙です すげぇや すげぇや
自分も投下します 俺得5 28話 単独? 孤独? どっちだろう
登場:三田村圭人、吉良邑子、神楽
259単独? 孤独? どっちだろう ◆ymCx/I3enU :2011/07/03(日) 20:33:56.93 ID:hG9Jh4hu
28話 単独? 孤独? どっちだろう

【三田村圭人の場合】
素人治療だがどうにか出血は止められたようだ。
しかし、銃創の痛みは如何ともし難く顔を歪める。
足を引き摺ればどうにか移動は出来るがやはり走るのは無理と判断する。
何しろ銃で足を撃たれたのだから本来なら病院へ行かなければならない所だ。
地図上に病院の表記こそあったが現在いるホテルからかなり遠い上この状況で正常に機能しているとは思えない。

「大丈夫なのか? 美帆に、祐実は」

ホテル一階事務室の椅子に腰掛けながら圭人は考える。
自分が下手をすれば命に関わるかもしれない怪我を負っている中で、
他人の心配などしている場合では無いかもしれないが。

「あーくっそ、いってぇ……」

とにかく撃たれた傷が痛む。ズボンはもはや血塗れだ。
圭人は歯を食い縛って激痛に耐えていた。


【吉良邑子の場合】
「うーん、誰もいないのですかね」

森を抜け劇場に立ち寄った吉良邑子。
しかし、受付にも控室にも、ホールにも人の姿は無い。

「この殺し合いが始まってから、最初に殺した狼以外誰も会っていません。
流石にちょっと寂しいですねぇ……」

殺し合いに乗り、優勝すると言う目的を持つ彼女。
クラスメイトを含む、他参加者と遭遇すれば殺しに掛かるまでだが、
誰とも遭遇出来ないと、やはり寂しさが込み上げてくる。

「誰かに会いたいもんですねー…ふぅ」

溜息をつき、邑子は劇場の出口へと向かう。
260単独? 孤独? どっちだろう ◆ymCx/I3enU :2011/07/03(日) 20:35:39.85 ID:hG9Jh4hu
【神楽の場合】
「殺し合いが始まって結構経ったアルナ…銀ちゃん達大丈夫かな」

市街地を歩く神楽。
未だ見付からぬ万事屋トリオの二人、マダオ、サド王子の姿を捜し続ける。
――既にマダオはこの世にいないのだが彼女はそんな事知る由は無い。

「疲れたアル…もういいや、どっかで休むネ」

歩き疲れてしまった神楽は捜索を中断し、適当な建物の中で休む事にした。


【朝/D-7ホテル:一階事務室】
【三田村圭人@オリキャラ】
[状態]顔面打撲、後頭部に軽い瘤、右足太腿に貫通銃創(応急処置済)
[装備]霧江の脇差@銀魂
[持物]基本支給品一式
[思考・行動]
0:殺し合いをする気は無い。美帆と祐実を捜す。
1:足が痛い…。
2:少年(壱里塚徳人)は今度会ったら叩きのめす。
[備考]
※壱里塚徳人の容姿を記憶しました。

【朝/F-4劇場】
【吉良邑子@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]伊東鴨太郎の刀@銀魂
[持物]基本支給品一式、ジャスタウェイ(3)@銀魂、軍手、ピアノ線(血痕付着)
[思考・行動]
0:優勝し英人様の元へ帰る。
1:太田君達も殺す。でもテトさんは…?
[備考]
※本編死亡後からの参戦です。

【朝/E-3市街地】
【神楽@銀魂】
[状態]健康
[装備]ナックルダスター
[持物]基本支給品一式、???(銃器)
[思考・行動]
0:殺し合いには乗らない。万事屋メンバーとマダオとサド王子を捜す。
1:どこかで休む。
[備考]
※原作ラブチョリス編以降からの参戦です。
261 ◆ymCx/I3enU :2011/07/03(日) 20:36:34.62 ID:hG9Jh4hu
投下終了です 吉良邑子危うく存在忘れるところだった
262 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/03(日) 20:47:15.77 ID:nzlF1zY3
投下します
タイトル:そこまで立派じゃないよ
登場人物:野村和也、守谷彩子、斉藤卓造、小林竜二、ガイエル・アゼリン
263 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/03(日) 20:47:34.67 ID:nzlF1zY3
「アレ見ろよ、こんなところにカップルだぜ」
「冷やかしてる場合か。もしかしたら、俺達に協力してくれるかもよ?」
「ならいいが…」

山を降り、森を通ってもう少しで街に出るか、といった所で前方に男女2人組を確認した。
妙な圧倒感と、戦地を潜り抜けているような凄味を感じる。

「…おい!あんたら、ちょっと待ってくれ」
「何だ、お前ら。俺達に何か用か?」
「単刀直入に言うが、俺たちと一緒にゲームを脱出しないか?」
「…本当に単刀直入だな」

いきなりこんな提案をされて、普通なら少し疑って掛かるだろう。
仲間になってこっちを油断させて、背後から…。
しかし、何故かこいつらからはそんな感覚を全く感じない。
自分でも良く分からない。分からないが、妙な「安心感」がある。
自分より年下であろうこいつらについて行けば、脱出出来ると思える。

「分かった。協力するよ」
「ありがとう」
「…そういう事なら、俺はここでさよならだ」
264 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/03(日) 20:47:52.33 ID:nzlF1zY3
ガイエルが、いきなり妙なことを言い出す。
せっかく、強そうな奴らと仲間になれたってのに。

「一体何のつもりだ?」
「あんま、団体行動は好きじゃねえんだよ。さっきの3人が上限だ」
「…そうか、それなら好きにするといい」
「そうさせて貰う。まあ、勝手な行動取る詫びと言っちゃ何だが、これやるよ」

デイパックからノートパソコンを取り出し、和也に手渡す。
そのまま何も言わずに、ガイエルは立ち去った。

「あーあ、本当に行っちゃったよ」
「ま、いいさ。あいつがそうしたいと言うなら、こちらには止める権利なんてない」
「…仕方無いわ。私たちだけで、街に行くわよ」


【一日目・深夜/A-4】
【野村和也@自己満足ロワリピーター】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持品]:デイパック、血濡れの紙切れ
[思考・行動]
基本:自分の知識を活かし、このゲームを壊す。
1:こいつらと行動すると共に護衛もする
2:銃に付いた血が気になる。

【守谷彩子@自己満足ロワリピーター】
[状態]:健康
[装備]:ベレッタM92(14/15)
[所持品]:デイパック、ベレッタマガジン×2
[思考・行動]
基本:自分の知識を活かし、このゲームを壊す。
1:全員と行動する。
2:何故血が…?
265 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/03(日) 20:48:09.39 ID:nzlF1zY3
【斉藤卓造@オリジナル】
[状態]:健康
[装備]:コルトパイソン(6/6)
[所持品]:支給品一式、.357magnum弾×12
[思考・行動]
基本:殺し合いなんてしたくない
1:この2人なら…。もしかして、脱出できるのかも。

【小林竜二@オリジナル】
[状態]:健康
[装備]:ボルト(1/∞)@S.T.A.L.K.E.R.シリーズ
[所持品]:支給品一式、ノートパソコン
[思考・行動]
基本:殺し合いなんてしたくねー。
1:難しい事は分からんが、こいつらについて行く。



「ふぅ、やれやれ…」

皆と離れて少し経った後、誰にも聞こえないような声で呟く。
さっき言った「団体行動は苦手」と言うのは嘘だった。

「…考えてみれば、ここにいる奴ら全員赤の他人なんだよな」

仲間がいれば、自分が襲われた時に助けてくれることもあるだろう。その逆も然り。
だが、1人だと助けられることも無いが助ける必要もない。
つまり『自分は助けて貰いたい。でも自分が誰かを助けるのは危険だからやらない』。
これだけを聞けば、大体の人間が「何て自己中な奴なんだ」と思うであろう。
だが、それが人の『本質』だ。全ての人間の根底にある『本質』だ。

「赤の他人だし、殺すにも躊躇う必要もないような」

血の繋がった家族ならともかく、赤の他人の為に命を捨てるなんてバカバカしいにも程がある。
人の命を守るバカバカしさに気が付いた以上、もうあの男に反抗する気にもならない。

「何かの漫画で言ってたな、命は粗末に扱うべきだって…」

何の漫画かは思い出せない。
だが、そんな些細な事はどうでもよかった。
…急に、心の奥から沸き上がるモノがある。

「…んじゃ、俺も命を粗末に扱ってやろうじゃん?」
266 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/03(日) 20:48:24.46 ID:nzlF1zY3
声高々に宣言してやろうか?
「俺は、たった今ゲームに乗る事にした!」と。
しかし、周りに誰がいるか分からない状態でこんなことしても意味がない。
流石に、今の装備では丸腰の相手しか倒せそうにない。

「闇討ちするにも明る過ぎるし、あいつらの所に戻っても意味ないし」

決心するのが遅かったか。
山頂の店で、あいつら2人のデイパックを漁っている時に乗れば…。
首尾よくあの2人を射殺出来ただろうに。

「今更悔やんでも仕方ねえ。暫く森に隠れとくか」

【一日目・朝/A-4とB-4の境目】
【ガイエル・アゼリン@オリジナル】
[状態]:健康、狂気?
[装備]:スタンガン
[所持品]:支給品一式、男性用制汗スプレー
[思考・行動]
基本:やっぱり殺し合いに乗る。
1:誰も通りそうにないが…隠れておく
267 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/03(日) 20:48:35.19 ID:nzlF1zY3
投下終了です
268 ◆VxAX.uhVsM :2011/07/03(日) 22:06:41.68 ID:Pah/DzZ0
投下乙です。
お気に入り>ほむほむがスタプラを!そしてQBは死ね
俺得5th>それぞれぼっち…いい方向に傾けばいいな…
重要なし3rd>ガイエルさん乗ったか…考えて見れば知り合いいなけりゃ乗るだろうな。
では自分も投下
DOL3rd13話 射撃と狙撃と声の魂
登場人物:野比のび太、◆xzYb/YHTdI、リューグ
269射撃と狙撃と声の魂 ◆VxAX.uhVsM :2011/07/03(日) 22:07:13.66 ID:Pah/DzZ0
「ドラえもん…どこにいるの…?」

テレビ局のすぐ近くの平地。
H&KUSPコンパクトを構え、野比のび太は歩いていた。
誰一人会ってないのは幸運か不幸か。
それでも、誰かに会いたいという気持ちが強くなった。

「誰か…来てよ…」
「〈俺がいるぜ?〉」
「え…!?」

「〈死ね〉」

声が銃弾となる。
それはのび太の脇腹近くを通って消えていった。

「う、うわぁあああああああああ!」
「〈ちっ…外したか…〉」
「う、撃つぞ!け、警告じゃ済まないぞ!」
「〈撃つなら撃てよ…のび太君よォ〉」
「な…なんでぼくの名前を…!」
「〈あぁ?…ああ、隠すの忘れてた…まあいいか、殺すし〉」

メガホンを口の前に準備する。
これは、彼の会心の一撃の合図。
のび太は銃を撃つ。
そして、その銃弾は喉に向かって飛んでいた。

「〈死ね〉」

その声は銃弾をはじき、のび太の腹を貫いた。
のび太は仰向けに倒れ、呻き始めた。

「〈ごめんな…のび太君……なんて申し訳なさそうに言うと思った?〉」
「い、、いだ、、、、ぁ」

のび太の動きが、徐々に弱弱しくなってくる。

「じゃ、いあ…しず、かちゃ…す、…お……ドラ、えもん…」
「〈苦しまないように、〈死ね〉〉」

野比のび太の人生はここで終わった。
彼の最後の顔は苦しみに歪ませながらも、どこか安らかであった。

【野比のび太@ドラえもん 死亡】



   ◇        ◆
270射撃と狙撃と声の魂 ◆VxAX.uhVsM :2011/07/03(日) 22:08:00.78 ID:Pah/DzZ0


「〈よし……じゃあ、ここらへんをうろつくか〉」

野比のび太を殺した、◆xzYb/YHTdI。
彼は死体に目を向ける事もなくその場を去ろうとした。
その時の事であった。
急に◆xzYb/YHTdIの左肩に貫通痕が出来る。
その痛みに倒れてしまう。
そして、そこである男がテレビ局から出てきた。

「よお、殺人者さん」
「〈は…テメェも俺を撃ったくせに…何言ってんだよ…〉」
「そうかもしれないな…でもこれは正当防衛だからさ」

仕方のないことだよ。
と、男は言った。

「〈ぐ…〈死ね!〉〉」

銃弾が男を襲うが、それをいとも簡単に避けられてしまう。
◆xzYb/YHTdIはそのまま生きた、いや…死んだ声の銃弾を撃ち続けるが避けられる。
そして、彼の声がついに限界を迎えた。

「〈はぁ…は……こ、えが〉」
「はぁ…残念だな……じゃあ、さようなら」


パァン


乾いた音、それは赤き湖を作り出した。
◆xzYb/YHTdI…彼は、最後に何かをつぶやき、動かなくなった。

「はぁ…残念だな……」

男、リューグは死体に見向きもしない。
先ほどの彼の行動をまねているのだろう。
その手にかけてなお、侮辱し続ける。

「きーめた…俺も殺し合いに乗っちゃおう」

過負荷でも勝てない、そんな男は始動した。
彼の次の標的は、誰だ。

【◆xzYb/YHTdI@非リレー書き手 死亡】

【午後/B-4テレビ局】
【リューグ】
[状態]健康
[装備]ウィンチェスターM70(2/4)
[所持品]基本支給品、ウィンチェスターM70の弾(12)
[思考・行動]
基本:殺し合いに乗る。
1:とりあえず…どうしようかな。
[備考]
※願いは不明です。
271射撃と狙撃と声の魂 ◆VxAX.uhVsM :2011/07/03(日) 22:08:24.67 ID:Pah/DzZ0


リューグ、彼の間違いは一つだけあった。
◆xzYb/YHTdIが死んだ事を確認していないことだ。
つまり、彼は死んでいない?
いや、死んでいる…一体何が?そんな答えは一つだけに決まってる。

彼の人格の死だ。

それが過負荷の◆xzYb/YHTdIの死なのか、元の◆xzYb/YHTdIの死なのか…。
それは、まだ分からない。
彼が目を覚ました時、すぐに分かるから。
今はまだ、待つしかない。

【午後/B-4テレビ局】
【◆xzYb/YHTdI】
[状態]片方の人格の死、左肩に銃創、失血(中)
[装備]メガホン
[所持品]基本支給品、大螺子
[思考・行動]
基本:???。
1:???。
[備考]
※願いは不明です。
※元の世界の知識はある程度残っています。
※彼の元の人格か、過負荷としての人格が死にました。

【支給品説明】
【ウィンチェスターM70@現実】
リューグに支給
1936年にM54の後継としてウィンチェスター社が販売したボルトアクションライフルである。
ベトナム戦争ではアメリカ海兵隊の狙撃チームに採用された事でも有名である。
当時の狙撃銃はこのM70一本に絞られていた。

≪オリキャラ紹介≫
【名前】リューグ(-)
【性別】男
【年齢】23
【職業】傭兵
【性格】正義感と言える感情が欠損している
【好きな物・事】銃を扱う事
【嫌いな物・事】弱い敵の相手をする事
【特殊能力】なし
【趣味】武器集め
【備考】感情が一部欠損している。桐山和雄を悪化させた感じである。
272 ◆VxAX.uhVsM :2011/07/03(日) 22:09:26.97 ID:Pah/DzZ0
投下終了です。
時間は一旦午後になりましたが、次からはまた昼間となります。
ふつう体が死んだら人格両方死ぬよな…?
なんて思ったが気にしない
273 ◆8nn53GQqtY :2011/07/03(日) 23:27:04.51 ID:J6hpOz+O
皆さま投下乙です。では自分も

雑多ロワ27話:ログの樹海 経験の羅列

登場キャラ 坂崎嘉穂、瀬田宗次郎
274創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 23:28:14.54 ID:2PsN6gD8
shien
275 ◆8nn53GQqtY :2011/07/03(日) 23:28:31.67 ID:J6hpOz+O

「武器や防具は持ってるだけじゃ意味ないぞ。ちゃんと装備しないとな」

「刀を持つのと刀を装備するのはどう違うんですか?」

「分からないなら、分からないでいい」

「はぁ」

◆   ◆

というわけで、支給品の確認である。
ゲームをスタートしたら、まずスタートボタンをプッシュしてメニューを開き、「どうぐ」を確認。
どんなゲームで、どこへ向かい、どういう行動をするにせよ、その確認作業は欠かせない。
そういうわけで、坂崎嘉穂と瀬田宗次郎は互いの支給品を見せ合う作業をしていた。

果たして、嘉穂のディパックから出て来た支給品は三つあった。

「本と、テニスボールと、変な金属」

支給品としては小粒なそれらを、二人はひとつずつ取り上げて検分する。

「すべすべした書物ですねえ」
宗次郎はその本を手に取り、ハードカバーのつやつやした表紙をすべすべと撫でている。
いつもにこにこしているから感情の判別は至難だが、どうやら気に入ったらしい。
嘉穂は、宗次郎が満足するのを待ってから言った。

「瀬田。見せれ」
「はい」

宗次郎が表紙を上にして、両手で持って差し出す。嘉穂は受け取った。

『文学少女』

上品なHGP行書体で印字されたタイトルがまず目に入る。
長い三つ編みの少女の後ろ姿が描かれた表紙が目を引く。
若年層に売り込むことを配慮したのか明るい装丁だが、三つ編みの少女の雰囲気と淡い色調は、可愛らしさよりも清楚さが勝る。
そして帯には、『五百万部突破』とすごいことが書かれている。
出版社の名前は『薫風社』。著者の名前は『井上ミウ』。
「聞いたことのない出版社だ」
「ぼくも聞いたことがありません」
「いや、瀬田が知ってたらむしろおかしいから」
集○社も○談社もない、まだ明六社ができたばかりの時代だ。
276 ◆8nn53GQqtY :2011/07/03(日) 23:29:12.83 ID:J6hpOz+O
「坂崎さんは出版のことに詳しいんですか?」
「いや、それほどでもないけど。でも大手出版社の数は限られているし、五百万部も売れていたら、誰でも聞いたことがあるはずかと」
「この本が『学問のすすめ』の十倍近くも売れてるんですか……すごいなぁ」
「人工や購買層が大きく違うから一概には比べられない」
しかし五百万部とはとんでもない。
日本で一番売れている漫画だって初版発行部数が380万部だというのに。
嘉穂は裏表紙を開いた。
「どこを見ているんですか?」
「この本の奥付。発刊日が数年後になってる」
「印刷の誤植ですか?」
「その可能性もゼロではないけれど……瀬田が明治の時代から来たように、この本も未来の出版物かもしれないということ」
「なるほど。でも何で未来の本を支給品にしたんでしょう」
嘉穂は参加者名簿を取りだした。
「名簿に、井上……しんよう? このは? そういう名前がある。
もしかしたら、この井上ミウという名前は、その参加者のペンネームなのかもしれない」
「つまり、坂崎さんが未来から来ているように、嘉穂さんの時代より未来から来ている人もいるかもしれないと」
「可能性としては。それに、もし参加者の執筆した本なら、何らかの情報はあるかもしれない。
腰を落ちつける場所と時間があれば読んでみようかと」
「奥付の著者紹介を読む限りは、女性のようですが……女性でも本を出せる時代になったんですね」
「まぁ『ミウ』という名前なら女性かと……そう言えば瀬田、名簿は読みにくくなかった?
 明治初期と平成じゃ、活字の形も文字の形も全然違うはずだけど」
「そうなんですか? いつも読み書きに使ってるのと同じ、普通の字でしたよ?」
「…………普通に読めた? 例えばこの手塚国光って名前の『国』の字は?」
「こういう字でしたけど」
宗次郎は地面に旧字体の『國』の字を書いた。
「そうくるかよ」
嘉穂は額に指をあてる。
「坂崎さんにはどう見えたんですか」
「あたしの時代ではこういう書き方をする」
嘉穂は新字体の『国』の字を書いた。
「これは森下から聞いたまた聞きの話だけど……美鎖さんの曽祖父が使っていた魔法コードに、
『広告を呼んだ人間が、誰でも意味を理解できるように判読させる紙』というのがあった。
その広告を読めば、漢字の読めない幼児には宣伝がひらがなで書かれてるように見えるし、
江戸時代の難しい書体で書かれた字でも、明朝体で書かれているように見えるらしい。
もしかしたら、この名簿とルールブックにもそういったコードが組まれているのかもしれない。
あたしにはコードを感知する能力がないから何とも言えないけど」
「うーん……そこはぼくも『魔法』を知らないのでよく分からないのですけど」
「名簿を見る限り、明らかに日本人じゃない参加者も多数いる。
日本語に慣れない参加者の為にも、誰でも読める名簿を配った方が便利かと」
「つまり、その『コード』とやらを使えば、外国人にも日本語が通じるんですか。
便利な時代になったんですねぇ」
宗次郎はにこにことしたまま感心している。
277創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 23:30:26.96 ID:2PsN6gD8
  
278 ◆8nn53GQqtY :2011/07/03(日) 23:31:10.48 ID:J6hpOz+O
これら全ては推測の域を出ないわけだが、一冊の本から分かることはこれぐらいだろう。
嘉穂は『文学少女』をディパックにしまった。

宗次郎が、今度はテニスボールの入った缶を持ち上げ、ひっくり返したりしている。
「テニス……っていうのは、庭球のことですか。変わった形の球を使うんですねぇ」
「いや、ボールが入ってるのはその缶の中だから」
嘉穂は密封された缶の蓋を開けた。テニスボールが3個転がり出てくる。
「球に毛が生えてる……庭球はやったことないけど、こんな形の球を使うんですね!」
「たぶん、瀬田の時代は違う形のボールが使われていたかと」
嘉穂もそれほど雑学があるわけではないが、明治時代のボールの材質が現代と違うだろうぐらいは分かる。
嘉穂はボールを缶の中に戻し、これもまたディパックに入れた。
この支給品は主催者の言っていた『かわいいハズレ』だろう。
いや、嘉穂は『現代魔法』以外の能力を使う参加者がいると考察しているのだから、
もしかしたら、参加者の中には、テニスラケットとテニスボールで恐竜の群れをも倒せる参加者がいるのかもしれない。
しかし、少なくともそういう用法を使えない嘉穂と宗次郎にとっては完全に『ハズレ』と言える支給品だ。
しかし捨てる理由もない。

そして最後に残ったのは、問題の支給品。
「何だかずっしりした金属ですね。鈍器ですか?」
ローマ数字が刻印された六角形の金属が、宗次郎の手のひらの上にある。
「いや、核金というらしい。説明書がついてる」
嘉穂は説明書を黙読し、宗次郎の手から核金をもらった。
「とりあえず、使用法は叫ぶだけらしい……『武装錬金』!」

ダークブルーの発光と共に、金属の姿が一瞬にして変形した。

嘉穂の手に、六角形の小型の盾がバンドで装着されている。
盾の表面にはダークブルーの液晶画面が埋め込まれ、そこに表示された六角形の網目が座標を形作る。
右手にはいつのまに出現したのか、カラオケの選曲で使うようなタッチペンを握っていた。

「『ヘルメス ドライブ』、という名前のレーダーらしい……」

不思議なことに対する耐性が強い嘉穂でも、これには常識が覆るものを感じざるをえない。
なんせ、瞬間的に変形する金属、そして自動探知レーダーと、指定位置への人間ワープまでこなせるとか。


さすがの宗次郎もこれは驚くかと思いきや、
「『れーだー』ってなんですか……?」
……そう言えば、最初にレーダーが実用化されたのは二十世紀初頭だったか。
279創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 23:31:37.36 ID:eFZkXS+z

280 ◆8nn53GQqtY :2011/07/03(日) 23:32:13.87 ID:J6hpOz+O
「電気を使って物の居場所を探知する機械のことで……」
『コンピュータ』について教えた時と同様、なるべく分かる範囲で説明した。
ただ、その『仕組み』自体は、説明する内に飲み込むことができた。
二十一世紀初頭の日本に人間をワープさせる技術はない。
魔法使いの美鎖だって急いでいる時も箒を使うぐらいだから、瞬間移動の魔法はないか、あったとしてもとてつもなく高度な魔法だろう。
……まぁ、既に嘉穂たちはスタート時点でワープを体験しているのだから、今更の話だけれど。
しかし、この『ヘルメス ドライブ』がレーダー、つまり『電気』によって動いているならば、その仕組みは分からなくても、原理は納得できる。
魔法を生みだす仕組み、すなわち『コード』も、平たく言えば『電流』なのだ。
魔法プログラムの組みこまれたコンピュータは電気回線に電流を流すことで魔法を行使し、魔法使いは人体の生態電流を利用して魔法コードを流す。
つまり、電気を介して動く機械――高度なコンピュータが搭載されていればなお良い――は、『魔法』を発動させる基盤たりえるのだ。
この『核金』が嘉穂の知る魔法体系と違うものである可能性は高いが、少なくとも嘉穂の魔法体系でも説明すること自体は可能だろう。
と、説明しながら嘉穂はそこまで理屈づけて理解する。

「つまりこれは、会いたい相手の位置を探してくれるだけでなく、その場所まで瞬間移動させてくれるハイスペックなレーダーらしい」
「はー、便利な時代になったんですねぇ……」
「いや、あたしの時代にもこんなのは普及してないから」
とんでもない超常現象に驚くかと思いきや、宗次郎は本やテニスボールを見た時と大差ない反応だった。
珍しいものを見たというリアクションだが、それが『ありえないものだ』という認識に達していない。

「それ以前に瀬田は、瞬間移動なんてありえないとか思わないわけ?」
「……それは不思議だと思いますけど。でも今までだって、自分で考えて魔法まで使う『こんぴゅーた』とか、特殊な素材の書物とか、不思議なものはいっぱい見ましたよ」

意外な答えだった。
しかし、考えてみれば納得できる答えでもある。
『発達した科学は、既に魔法と区別がつかない』というのはクラーク第三の法則だったか。
嘉穂の時代には当たり前のようにある、コンピュータやインターネットだって、宗次郎の時代の人間からすれば、魔法を使っているようにしか見えないだろう。
その時代の人間の理屈ではありえないものなのだから。
宗次郎にとっては『すべすべした装丁の本』も『人間ワープを可能にする超常の合金』も、どちらも等しく『不思議なもの』なのだ。

そう考えると、宗次郎には見るもの見るもの全てが『理解できないもの』に見えているわけで、もしかして平然と会話ができている彼はすごく大物なのかもしれない。

281創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 23:33:07.99 ID:2PsN6gD8
282 ◆8nn53GQqtY :2011/07/03(日) 23:34:06.63 ID:J6hpOz+O
「移動の距離、回数は創造者の能力、精神力に比例するとある。
能力というのが、単純に戦闘力を差すのか、魔法的素質を差すのかは分からないけれど、一般人には負担がかかる仕様っぽい。
消耗度がどの程度か分からない以上、ひとまずは温存しておくべきかと」
「でも、人の居場所が分かってその場所まで飛べるなら、坂崎さんの知り合いと合流できるか試した方がいいのでは」
「そうしたいのは山々だけど、制限がある。
『実験開始以降に知り合った人間の居場所にしか座標を設定できない』と」
つまり、元からの知り合い――嘉穂の場合のこよみや弓子――の元へ飛ぶことはできないということだ。
「なんでそんな制限をつくったんでしょうね。どのみち他の参加者の居場所へ飛べるなら、便利なことに変わりないのに。
暗殺と襲撃には持ってこいの能力ですよ」
「すぐ質問ができるのは長所だと思うけど、少しは自分で考えてもいいと思われ。そう難しい理由じゃない」
いまいち鈍い割に、すぐにさま『襲撃』のことに考えが及ぶあたり、こんなのでも元暗殺者なんだなぁと思う。
宗次郎はむぅ、と考え、考え、数十秒たってから言った。
「元々の知り合いと強固な仲間を組まれると、戦力のバランスを欠いて、殺し合いには不向きだから、ですか?」
宗次郎が認識できる限界量の角度で、嘉穂は頷いた。
「たいへんよろしい」

「ところで、瀬田の支給品は刀だけ?」
「いいえ、三つもあったんですけど、あとの二つは使い方が分からないんです」
宗次郎はディパックを開けて、ごそごそと中身を取り出した。
まず取り出されたのは、どこにでもあるような『デジタルカメラ』で、そりゃあ使い方は分かるまいと嘉穂は納得し、



続けて、『赤』が、ディパックの中から現れた。



正確に言えば、2リットルペットボトルに入った、毒々しい赤色の液体であった。
そう、それは決して『飲料』ではなく、『液体』と表現すべき、危険信号の『赤』
赤ピーマン? トマト? タバスコ? この世のありとあらゆる『赤』を混合して作り上げたような、混じりけのない危険信号。
そう、その液体の名前は…………………。





………………『ペナル茶(ティー)』
283 ◆8nn53GQqtY :2011/07/03(日) 23:35:17.13 ID:J6hpOz+O

「――という名前の飲み物らしいことは分かったんですが、どうやって開封すればいいんでしょう」

宗次郎はにこにこしながらも困り顔という器用な表情をした。
つまり、明治時代出身の宗次郎はペットボトルの仕組みが分からずに、四苦八苦したらしい。
「こうやって開ければいい」
嘉穂がネジのようにフタを回す開け方を実演すると、宗次郎は『盲点だった』という顔をした。
「なるほどー。どんな飲み物なんでしょう」
どうやら不思議なものを見た宗次郎は、早くも異文化に対する学びの姿勢を持ち始めたようだ。
開封されたペットボトルを受け取り、飲料の匂いをかいで、少し顔をしかめる。

付属の紙コップではなくペットボトルのふたを取り、お猪口に注ぐように、ほんの少しだけ注いだ。
フタを傾け、くぴっと、一口だけ飲む。


――にこにこ笑顔のまま、ぱたりと倒れた。


「瀬田?」


――明治最強の暗殺集団の筆頭が、一介の中学生(が作った兵器)に負けた瞬間だった。


嘉穂は青ざめて倒れた宗次郎をしげしげと観察。

ふむ、と一考。

宗次郎を昏倒させた飲料を持ち、ふんふんと子犬のように匂いをかぐ。
無表情な瞳が、微かに熱をもってきらめいた。
なんと、紙コップを取り出し、赤い液体をなみなみとふちまで注ぐ。
そして、起き上がり制止しようとした宗次郎を無視して、


一気飲みでごくっ、ごくっと飲みはじめた。


完全に紙コップを傾け、すなわち完飲すると、「ぷは」と気持ちの良さそうな吐息をして、
「ん。なかなか」

無表情で、しかし、かなりの高評価を述べた。


――数少ない乾汁愛飲者が、また一人現れた瞬間だった。


宗次郎はしばらくぽかんとしていたが、やがて、嘉穂と地面のペットボトルを見比べ、
「どうぞ」
フタをしめたペットボトルを捧げ持ち、巫女にお神酒を捧げる一般人のように、恭しい手つきで嘉穂に謙譲した。
「ん」
嘉穂は頷き、下賜された飲料をディパックにしまった。
284 ◆8nn53GQqtY :2011/07/03(日) 23:37:04.90 ID:J6hpOz+O

◆   ◆

「それで坂崎さん、まずはどこに向かいましょう?」
「あたしたちの元の目的は、『魔法』関係の技術者を探すこと」
「そうでしたね」
「だから、まずは病院。割と近い施設で、人が集まりそうな場所」
「人が集まりそうと言えば、南にある大きな街もそうですよ。街も病院と同じくらい近いです」
「街は『人が訪れそう』なのであって『人が集まりそう』ではないと思われ」
宗次郎は小首をかしげた。
「仮にこの地図の川から北を北部、南側を南部としよう。面積は北部が会場全体の約三分の一、南部が三分の二。
参加者が無作為かつランダムな位置からスタートしたなら、参加者も同じぐらいの割合で北と南に散っていることになる」
「そうですね」
「そして、その南エリアの約半分を街が占めている。街の中には、警察署、公園、デパートなど施設も多い。
だからこそ、南側スタートの参加者は、目指す場所が散ってしまう可能性がある。
逆に、北の施設でめぼしいものは旅館と研究所と病院とコンビニ。
北は森が多いから、北側スタートだとこの中のどれかの施設を当てに進む可能性が高い。
この施設の中だと、病院が休息、治療、物資調達、籠城など多機能に対応している。
わざわざ南の『診療所』と区別しているから、設備豊富で広さもかなりあると思われ。
北から出発した参加者が『集まる』可能性は最も高い」
「なるほど……色々と考えがあるんですね」
「そういうこと。じゃあ、出発しよう」
嘉穂は地図をしまい、代りに核金をディパックから取り出した。
「これは瀬田が持ってて。あたしは戦闘に関しては専門外だから」
「いいんですか? ぼくが寝返った場合、坂崎さんは逃走手段を失いますよ」
「あたしを殺す予定はある?」
「……いえ、少なくとも今のぼくには、坂崎さんは必要な人だと思います」
「よろしい」
「…………でも」
「どうした?」

核金になかなか手を伸ばさない宗次郎に、嘉穂は尋ねた。

「こうやって話を聞いていて、坂崎さんはすごく色んなことを知っていて、頭も良いんだなと思いました」
「それだけが取り柄だから」
「それだけじゃなくて、この殺し合いでは、ずいぶん便利な技術もたくさんあることが分かりました」
「ん」
宗次郎なりに、未知の文明を見て思うところはあったらしい。
ゆっくりと、呟くように話した。
「例えばぼくの『縮地』も、誰でも『瞬間移動』ができるなら、不要な能力になってしまうかもって思ったんです」
『縮地』は武術ではなく仙術の類ではなかったっけ。まぁいいか。
どうやら宗次郎には、かなり己の自信に関わることをつかれたらしい。
「邪魔だった?」
「そうじゃないんです。ぼくは、今まで戦『強いものだけが生き残れる』と教わって、実際に生きる為に人を殺してきました。
でも、この世界では、強い人間でも、できることは少ないかもしれないと思ったんです。
……だから、出来ることを探すという目的が、ますます遠くなったような、そんな風に思いました」
こと戦闘に関して無力な嘉穂から言えば、宗次郎の方が十二分に自衛の術に長けているのだが、しかしここでその点を指摘するのも少し違う気がした。
285創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 23:37:22.51 ID:2PsN6gD8
286 ◆8nn53GQqtY :2011/07/03(日) 23:38:41.72 ID:J6hpOz+O

そして、思う。
どうやらこの青年は、戦闘面では頼もしいけれど、精神面ではまだまだ頼りないようだ。
しかし、頼りないからといって手を放そうという気は起こらなかった。
だからかもしれない。『核金を預ける』という、逃走手段(生命線)を預けることがあっさりとできたのは。
頭の回転の鈍い森下こよみのように、生温かい目を送りたくはなるが、嘉穂が嫌いなものではない。

「あたしは、さっき瀬田から説明された程度にしか瀬田の人生を知らないから、断定はできないけど……」

嘉穂は逡巡する宗次郎の手に、核金を握らせた。

「厳しいことを言うなら、瀬田はむしろ今まで考えなさすぎたんじゃないかと思われ。
だから、ここで色々と悩むことが増えたのは、逆に良いことなんじゃないかと」
そう、必要な答えは、嘉穂が教えるべきことではなく、宗次郎自信が考えて、体験して決めることだ。

宗次郎は手の中の核金を見つめた。
「緋村さんみたいなことを言いますね」
「あたしの時代は確かに便利な道具が増えたけど、道具を使うのは人間だし、その分人間のスキルが要求される。
そして、スキルを身につける早道は実際に使って慣れること。まずは慣れ」
「はい」
宗次郎はにこにこしたまま、しかし、しっかりと嘉穂の目を見て、核金を握りしめた。



◆   ◆

「使い方と言えば」
嘉穂は閃いて、ディパックからデジカメを取り出す。
「瀬田、こっち来て。あたしの隣」
「何をするんですか?」
瀬田は行儀よく、嘉穂に指示された位置――すなわち嘉穂のすぐ隣――に正座した。
「デジカメは一件ハズレ支給品だけど、証拠写真として使うことはできる。
こうやって写真として残しておけば、例えば私たちが離散しても、お互いの知り合いに会った時に話を通しやすくなるかと」
「なるほど!」
嘉穂は、デジカメを星の見える頭上へかかげる。
デジカメのレンズの中に、異なる時代から来た二人の顔が並んだ。



「はい、チーズ」

きゅいん、と電子音の唸り声がシャッターを切った。


【E―4/森の中/一日目深夜】
287 ◆8nn53GQqtY :2011/07/03(日) 23:40:05.86 ID:J6hpOz+O
【坂崎嘉穂@よくわかる現代魔法】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、『文学少女』@“文学少女”シリーズ、テニスボール@テニスの王子様
ペナル茶(残り1800ml)@テニスの王子様、そうじろうのデジカメ@らき☆すた
[思考]基本:自分なりの方法で殺し合いに反抗する
1.他の参加者と接触するために病院に向かう。


【瀬田宗次郎@るろうに剣心】
[状態]健康、舌に刺激臭
[装備]シズの刀@キノの旅
核金No.95
[道具]基本支給品一式
[思考]基本:自分に何ができるのかを探す
1・坂崎さんを手伝う
2・状況次第では緋村さんとも協力
3・志々雄さんに会ったら、どうしようかな…
※京都編終了後からの参戦です。


【核金No.95@武装錬金】
レーダーの武装錬金『ヘルメス ドライブ』。
能力は限定条件下における索敵+瞬間移動で、移動容量は約100キログラム(小柄な人間二人分)。
本編では使われていないが、打撃武器や盾としての用途も兼ね備えている。
このロワでは『元の知り合いの場所へは飛べない』という制限つき。
また、移動距離は使用者の能力に比例する為、一般人には操作が難しくなっている可能性が高い。


【『文学少女』@“文学少女”シリーズ】
現役女子高生作家井上ミウ(井上心葉)の、二作目にして復帰後の第一作品。
厭世的になっていた少年が、“文学少女”を自称する女性と出会い、そして別れるまでの物語。
ヒロインである“文学少女”のモデルは……言わずもがな。

【ペナル茶(ティー)@テニスの王子様】
乾貞治が、ランニングでタイムオーバーした部員への罰ゲームとして考案した特製ドリンク第二弾。
部員想いの乾は疲労回復の効果がある材料ばかりを使っているので……要するにとてつもなく辛い。
実物は↓を参照。
ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm3634153
ちなみに、不二周助の大好物。

投下終了です。
288 ◆YR7i2glCpA :2011/07/03(日) 23:49:00.82 ID:2PsN6gD8
投下乙です。
このコンビ和むなあ…

てな訳で俺も投下。
ごちゃ混ぜロワ 29:壊れた心、壊れぬ心
登場人物:黒崎沙夜子、高階ヨイチ
289 ◆YR7i2glCpA :2011/07/03(日) 23:50:24.31 ID:2PsN6gD8
殺し合いという狂気の沙汰が行われている会場の片隅、G−7に彼女――黒崎沙夜子はいた。
沙夜子の目の前に広がるのは大きな海。
その果ては視力の悪くない沙夜子でも見えない。
そして、沙夜子の目の前の波打ち際にはぷかぷかとボート――船首にアヒルの頭を設えた、傍から見れば滑稽に見えるボートが浮かんでいた。

沙夜子には、何ものにも代えがたい大事な娘がいる。
その娘さえ無事でいてくれるのであれば、自分はどうなっても構わない。
それだけの覚悟と愛情を、沙夜子は兼ねそろえていた。(尤も、家事能力や職業能力はてんでだめだが)
そんな彼女はこの殺し合いという場でどう動こうとしているのか。
それは――脱出。
初期位置が浜辺だった沙夜子に支給されたのは先述したようにボートである。
沙夜子はそのボートに乗って脱出しよう、とそう思っていた。
だが沙夜子はすぐにボートに乗る事をよしとしなかった。
その理由は、基本支給品にあった名簿。
その名簿の中にあった5つの名前。
白鳥隆士、蒼葉梢、茶ノ畑珠美、灰原由起夫、そして――最愛の娘、黒崎朝美。
朝美たちを置いて、一人で脱出することなど沙夜子にはとてもできない。
それにこの場は殺し合いの場なのだ。
いま自分がこうしている間にも襲われているかもしれない。
沙夜子の脳内に、メガネの男に反抗して首輪を爆破された桃乃の姿が浮かび、肌が泡立つ。
「…朝美、今、行くからね……」
ぐっと、拳を握りしめ沙夜子は歩き出そうとした。
その瞬間、何者かに後頭部を思いっきり殴られ沙夜子の意識は闇へと落ちていった。
290創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 23:50:25.25 ID:eFZkXS+z
支援
291壊れた心、壊れぬ心 ◆YR7i2glCpA :2011/07/03(日) 23:51:09.68 ID:2PsN6gD8





その男は、ただ生きたかった。
生きて、生きて、生きたかった。
そのためにはどんな事でもやろうと、そう思っていた。
たとえ何人の命を踏み越えても、生きたかった。
そう思っていた。
そうまでして生きたいと思っていた理由はただ一つ。
『姫』とともに、『楽園』へと向かうため。
そう、『楽園』。
ただそれだけを目標に働いてきた。

だが、それは叶わなかった。
日下兵真。
自分の前に立ちはだかったあの男と戦い、自分は負けた。
徹底的に、完膚なきまでに負けた。
無念だった。
何も考えたくなるほどに、無念だった。

死ぬその瞬間のあの浮遊感。
自分が自分でなくなって行くあの感覚の中、あとコンマ一秒で自分の精神が自分のものでなくなる瞬間に、突然呼びもどされた。

――見たこともない、小さな部屋に。



「やぁ、高階ヨイチくん。気分はどうだい?早速だけど君に見て欲しいものがあるんだ。」

その特徴的なシルエットと声に、男――高階ヨイチは唖然とすることしかできなかった。
292壊れた心、壊れぬ心 ◆YR7i2glCpA :2011/07/03(日) 23:52:20.58 ID:2PsN6gD8



事実は、時に何よりもえげつなく人の精神を穿つ。
例えば、過去が。
例えば、現在が。
例えば、未来が。

目の前にいる謎の男から突き付けられた現実は、ヨイチの心を踏みにじった。
自分の身体の欠陥も、それから来る寿命の短さも、全てをライゲンは知っていた。
それどころかその事実はシェリーには隠し、端から勝てる勝負ではないと分かっていながら兵真たちナイツと自分を戦わせていた。
許せない、とただその感情だけが黒く醜くヨイチの心を汚していく。
そして――兵真と共に戦うシェリーの姿――未来のそれを見たとき、ヨイチの心は完全に崩壊した。



「…さぁ、どうだったかね、ヨイチくん?君の未来と過去と現在。素晴らしかっただろう?」
「……ふ、ふふふふ………ふざけるなよ……」
「さて、ヨイチくん、今度はこれを見てくれないかな?」
ヨイチの目の前に広がる、新たな映像。
そこに映っていた大広間には多くの人間がひとまとめにされていた。
「ちょっとズームするよ。」
ズームされた先にいた顔を見てヨイチは驚いた。
そこに映っていた顔――因縁深い、自分を倒した少年。
日下兵真。
その横には兵真の仲間の環樹雫もいた。

「ちょっと動かすよ。」
「あ、おい!」
もっと見ていたい。そう思っていたヨイチの心を無視するかのように映像が動く。
文句を言おうとしたヨイチだったが止まった先にあった顔をみてその感情が爆発しそうになった。
ライゲン・ボルティアーノ。
シェルトラン・ボルティアーノ。
憎むべき、二人の人間。
感情がわき出るより先に、ヨイチはモニターをブン殴り破壊してしまっていた。

「おやおや、随分乱暴な事をするじゃないか。」
「…うるさい。」
「まぁ、あのまま見せ続ける気もこっちには無かったからよしとするか、本題に入ろうか。」
そう言うと謎の男は衝撃の事実を口にした。
293壊れた心、壊れぬ心 ◆YR7i2glCpA :2011/07/03(日) 23:53:14.58 ID:2PsN6gD8



これから、70名の参加者による殺し合いが行われる事を。
その中に、兵真、雫、ライゲン、シェリーの4人が入っている事を。

「で、だヨイチくん。僕は君をスカウトしたいんだよ。」
「スカウト…だと?」
「ああ、実は集めた70人の人間はこちらの手違いで、殺し合いに乗りそうな人間がやや少なめになっていたんだ。そして殺し合いを止めようと動く人間の中にはこちらの手にあまりそうな強力な力をもった奴もいる。」
「…何が言いたいんだい?」
「簡単なことさ。君に70人全員を殺して貰いたい。」
ビリ、と空気が揺れたような気がした。
「僕としてもこの殺し合いがうまくいかなくなるのは不本意でね、そこでヨイチくんの存在を知ったんだ。勿論それ相応の報酬も用意してあるよ?」
「報酬?」
「ああ……君の望む世界を作ってあげるよ。君は体を蝕まれる事もなく、邪魔をする者もいない。君の望む『楽園』へと行く事は70人の死をもって約束される。悪い話じゃあないと思うけど?」



心を壊したヨイチに、これを拒絶する選択肢ははじめから存在していなかった。
ヨイチは力強くうなずいた……

「実にすばらしいよ、ヨイチくん。それじゃあ君には特別ボーナスをあげようかな…とはいってもあまり露骨なものはあげられないけど。」
その声と同時に、ヨイチの手元にデイバックが握られた。
「おっと、まだ中身は見ちゃ駄目だよ、会場に行ってからのお楽しみってやつだからね。」
「……一つだけ、良いか?」
「なんだい?」
「あんたは…一体何者なんだ?」
「ふふふ、僕はね……」
294壊れた心、壊れぬ心 ◆YR7i2glCpA :2011/07/03(日) 23:54:02.84 ID:2PsN6gD8





ヨイチの目の前に倒れる、黒髪の女性。
後頭部に先ほど強烈にライフルの銃身を叩きつけてやったが、まだ息があるようだ。
ヨイチは何も言わずに、女性のデイバックを開く。
その中にあったものを見て、ヨイチは黒く微笑んだ。
中に入っていたもの――注射器と、その中に入った謎の液体。
説明書を読むとそれはどうやらHU599菌という細菌兵器であるらしい。
それを人間に投与するとどうなるのか……
そこまでは書いていなかったがヨイチは何の躊躇いもなく女性の腕に注射器の針を刺し、菌を注入した。



どろり、と沙夜子の肌が崩れていく。
みずみずしかった肌は張りを失い、やがて肌色だった色が緑色に醜く変色していく。
弱弱しい鼓動を刻んでいた心臓は、やがて鼓動を強くしていく。
むくり、とその原形をとどめていない沙夜子が起き上がった。
そしてそのままゆっくりと、どこかへと歩いて行ってしまった。

「…そうか、ゾンビか……くくく…」
ヨイチは、嗤う。
自分より弱い沙夜子を、自分より弱いという理由だけで。
醜い緑色のゾンビになったと言う現実だけで。
その表情はひどく醜悪で――





【G−7海・浜辺/1日目朝】
【高階ヨイチ@カオスウォーズ】
[状態]:健康、テンション高め
[装備]:ホッキョクツバメのライフル(弾無し)@ブシドーブレード弐
[道具]:基本支給品一式(アイテム確認済み)、沙夜子の支給品一式、空の注射器@クロックタワーゴーストヘッド
[思考]1:皆殺し。特に兵真、雫、ライゲン、シェリーは自分の手で殺す。
   2:全員殺したら『楽園』へと向かう。
295壊れた心、壊れぬ心 ◆YR7i2glCpA :2011/07/03(日) 23:55:04.35 ID:2PsN6gD8





これは、ヨイチにも知りえない事であったが…
HU599菌は確かに人間の中に寄生脳という新しい器官を作り意のままに動かす作用をもたらす。
だが、菌を投与する前に投与される側が何かを強く願っていたとしたら?

――鷹野秋代という少女がいた。
彼は殺人鬼、才堂不志人によりHU599菌を投与され、緑色のゾンビと化してしまった。
だが彼女は投与される前に、『家に帰りたい』と、強く願っていた。
その結果、彼女は自宅まで帰る事が出来たのだった……

だが、帰ったその先で何が起こったかは…?
それは悲劇以外の何物でもなかった。



さて、ここでこの黒崎沙夜子という女性の事をもう一度思い出していただきたい。
彼女は強く願っていた。
最愛の娘、黒崎朝美を守る事を。
たとえわが身を犠牲にしてでも、沙夜子は朝美を守りたいとそう願い続けていた。
そんな時に、彼女は菌を投与されてしまった。

沙夜子はどう動くのか?
何を目標に動くのか?

勿論それは、娘…黒崎朝美のために。



乗るべき人を乗せず、アヒルさんボートは波間に漂う。
ちゃぷちゃぷと穏やかな波が、ボートを揺さぶる。
やがて、やや強い波が来た。
乗る人のいないボートは波をかぶり……
296壊れた心、壊れぬ心 ◆YR7i2glCpA :2011/07/03(日) 23:55:39.38 ID:2PsN6gD8





【黒崎沙夜子@まほらば】
[状態]:HU599菌によるゾンビ化(寄生脳がどこにできたかは不明)、後頭部に傷(ほぼ完治)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]1:朝美……
[備考]:原作8巻、白鳥と梢が恋人同士になった以降からの参戦。
沙夜子の支給品はHU599菌の入った注射器@クロックタワーゴーストヘッド、アヒルさんボート@忍たま乱太郎でした。



【支給品情報】

【HU599菌の入った注射器@クロックタワーゴーストヘッド】
黒崎沙夜子に支給。
人間に投与するとゾンビ化する細菌、HU599菌の入った注射器。
感染した人間は寄生脳という器官ができ、人間を襲うようになるが、投与される前に何かを強く願っているとその行動をかなえようと動く。

【ホッキョクツバメのライフル@ブシドーブレード弐】
高階ヨイチに支給。
鳴鏡館の助っ人、ホッキョクツバメが愛用しているライフル銃。
銃の中では極めて実戦的なタイプのもので、長めの銃身に似合わず軽量で扱いやすい。
だがこのロワにおいては主催者の計らいにより弾丸が支給されていないので鈍器にしかならない。

【アヒルさんボート@忍たま乱太郎】
黒崎沙夜子に支給。
船首部分にアヒルの丸い顔がとりつけられた忍術学園備品のボート。
5人乗りの大きめサイズ。

297 ◆8nn53GQqtY :2011/07/03(日) 23:59:12.29 ID:J6hpOz+O
規制されたそうなので変わって、投下終了宣言をします
298 ◆9QScXZTVAc :2011/07/04(月) 13:17:31.89 ID:BhlJQQAu
投下乙です。
投下します
アニメロワ第32話:日陰の戦い
登場:橋田至、中川かのん
299 ◆9QScXZTVAc :2011/07/04(月) 13:30:38.32 ID:BhlJQQAu
ネットカフェ店内に、無事橋田至と中川かのんは辿り着くことができた。
橋田の思惑はかのんには一切伝えられていなかったこともあり、かのんは何故このような場所にやってくるのか意味が理解できなかった。
橋田は明らかにテンションが上がっているため、かのんはどこかおずおずと橋田に質問する。『ここに来てどうするんですか』と。

「中川氏。荒耶氏の作ったこの首輪さ、氏の一存で起爆する事が二次元みたいなスイッチ付きのリモコンひとつで出来ると思う?ちなみに答えは多分no」

「え…?でも、だったらあの女の子…高原さんはどうやって…」

かのんは確かに見ていた。荒耶が高原歩美の首輪を起爆したときには、間違いなく赤い【いかにも】なスイッチを押して首輪を起爆させていたところを。
が、橋田の答えはこうだった。

「『こんなに簡単に殺せるぞ〜』っていう一種の暗示でしょ常考。実際あれとは違う、何か大きなスパコンみたいなのがあると見るべき。もしそうなら……僕の出番だお」

USBメモリを勢いよくPCに挿入してPCを立ち上げる。
こうまでくれば理解できない者はいないだろう。橋田はプロもしくはウィザード級のハッカーだ。
300 ◆9QScXZTVAc :2011/07/04(月) 13:48:02.09 ID:BhlJQQAu
現に彼はあのSERNのハッキングに成功している。
今回の相手はただの一人。相当なセキュリティが掛けられていようとも、必ずある『隙間』を通って穴を開け、後はあるはずの『解除コード』をUSBメモリにコピーして首輪に打ち込む。
橋田至は一気にサーバーを立ち上げ、店に存在する機器やソフトを吟味して疑似ではあるが彼のハッキング環境を再現する。会場に流れる無数の電波を辿り、首輪起爆時の電波を拾う。

さあ、道は開けた。
少しばかり地味な『日陰』の戦いがやっと始まるーーー。

【深夜/c-6】
【橋田至@Steins;Gate】
基本:このゲームを潰す。
1:荒耶氏のスパコンから首輪のコードを奪い取る。

【中川かのん@神のみぞ知るセカイ】
基本:誰も死なせたくない。
1:橋田さんを見守る。





投下完了です。31話に訂正。
続いて
アニメロワ第32話:主人公たちの三つ巴
登場:織斑一夏、岡崎朋也、音無結弦
301 ◆9QScXZTVAc :2011/07/04(月) 14:02:48.26 ID:BhlJQQAu
e-6エリアにて。再び、血の海が広がっていた。
倒れているのは織斑一夏で、右の眼を指弾で撃ち抜かれてあっけなく死んだ。気絶していることもあり、痛みどころか死んだかも幸か不幸か分かっていないだろう。
『ジョーカー』音無結弦は、言葉を雑音のようにしか発しない。というよりも、彼の起源『献身』を開き、更に立華奏以外全てへの感情や罪悪の概念、更には自我や理性さえも失うように自ら力を使った。
代償と引き替えに、音無が手に入れたのは二つ。

まずは、愛する奏以外全てを容赦なく殺害できる殺戮機械になったこと。

そして、徐々に進化していく魔術の力。
元より人間には魔術の臨界点にある程度の線がある。荒耶やその旧友の蒼崎燈子のように生きたまま封印指定されるほどの素質が無ければ越えられないある程度の線。
どうしても越えられない線は、自分の起源を知り起源覚醒者となることで人間としての常識と引き替えに越えることは一応可能だ。
荒耶はかつて一人の少女を手にするために三人の覚醒者を用意したが、全て打ち破られてしまった。しかし音無は自ら起源覚醒者の線を越えて怪物となりつつある。
線を常に更新し、力は増していく。
302 ◆9QScXZTVAc :2011/07/04(月) 14:18:49.49 ID:BhlJQQAu
彼はどこまで踊らせられ続けるのか。
何もかも、きっと彼の全てが荒耶のサンプルでしかないというのに。


ダァン

音無結弦の背中に、一つの銃創が生まれた。背後には拳銃を構えて、どこか物悲しそうな雰囲気の少年が立っていた。古河渚ーーーもういない恋人を優勝させるために全てを賭けた男、岡崎朋也。
音無はまったく堪えていない。それもそのはず、彼はありとあらゆる感情を消し去って『痛み』を失い、起源の『献身』の覚醒により自らの生命力を跳ね上がらせたのだから。
音無の右の人差し指の先に、素粒子が集まって指弾を形成する。
速度は確かに早いが、弾丸に比べれば圧倒的に遅い。ぎりぎりのところで岡崎は指弾を避け、銃を構え直す。撃ち殺すために、殺意の引き金に指をかける。

二発目が発射され、右の腿に着弾する。
が、岡崎のミスは圧倒的な隙を生み、音無に攻撃のチャンスを与えてしまったこと。

光が無数に生まれ、全てが無慈悲に岡崎朋也の肉体を蹂躙した。

「う、があああああああっ!!」

胴体に幾つもの穴が開き、内臓を破壊し、即座に血を大量に奪っていく。
岡崎朋也は音無が去るのを見てから、ゆっくりと走馬燈を見るーーーーー。
303 ◆9QScXZTVAc :2011/07/04(月) 14:21:03.13 ID:BhlJQQAu
【織斑一夏@IS】   死亡
【残り22/40人】



投下終了です。
次に岡崎は出番があるので表無し
304 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/04(月) 22:18:56.83 ID:U1TtDu0a
投下します
タイトル:スロースターター
登場人物:杉谷守、ノコギリ男
305 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/04(月) 22:19:46.64 ID:U1TtDu0a
「まったく、ちょっと居眠りしてたら1回目の放送聞き逃したし。禁止エリアは地図見れば分かるからいいんだけど」

ちょっと苛立ちつつ、森を抜ける守。
食事の後、だいたい2時間近く眠っていた事になる。
2時間もあれば、1人は殺害できるはずだったのに…。

「こち亀が100巻まで揃えてあった、って以外はもう何も残ってなかったしな、あの部屋」

まあ当然のように、100巻みんなデイパックに入れて来たが。
かなりの重量になるはずなのに、デイパックは全く重くならない。
何で重くならないのか考えたが、1分でやめた。
分かったところで、何の役にも立たないだろうし、原理が理解できるかどうかも怪しい。

「生きて帰ったら、全巻売り払うか。結構な金になるはずだぜ」

殺し合いの最中だと言うのに、妙に呑気だ。
これも、1回死んだからだろうか?
死を達観しているのか、ある意味何かを悟ったのか。

(しっかし、誰もいねえな…今頃こんな地味な場所にいる奴なんていねえよなあ)

開けた場所に出る。
禁止エリアギリギリの場所に、銃らしき物が放置されている。
周りに死体がない、と言う事は誰かの遺品では無い事がわかる。
とすると、次に考えられるのは、「銃を餌にした罠」と言う可能性だ。
しかし、こんな開けた場所で罠なんか仕掛けても、引っかかるのはかなりのバカくらいだろう。
結局、なんであんな所に武器があるのかは理解できないままに終わった。

「まあ、落ちてるんなら貰って行くことにするか」
306 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/04(月) 22:20:07.15 ID:U1TtDu0a
落ちている銃に近づき拾い上げる。
見た所、普通の銃。取り回しも良さそうだ。
とは言え、まだG36が使えるのでデイパック内にしまっておく事にした。
…壊れているとも知らずに。

「ま、とりあえず街の方に行ってみるか…人もいるだろうしな」

行こうと思った矢先、突然目の前に壁が出現する。
いや…この体温がある物は…壁じゃない。

「うわああああああ!!化け物――!」

もはや「醜い」としか形容しようがない顔の男が立っていた。
見る限り2mはある。

「…この野郎!!!」

とにかく我武者羅に5.56mm弾を目の前の化け物にブチ込む。
弾が当たった所からどんどん血が吹きだしてくる。
いくら巨大な化け物でも、流石にそこは人と変わらないようだ。
しかし、何事も中途半端は良くない。
中途半端にダメージを与えたのが良くなかった。

「ああああ!!!」

いきなり滅茶苦茶にノコギリを降り回し出した!
おそらく、痛みで混乱しているのだろう。
下手に近づけば、あのノコギリでザックリ斬られてしまう。
後ろに引こうにも、1m先は禁止エリアの境目。
横に逃げようとしても、そこはあの男の攻撃範囲内だ。
もう、逃げ場は無い。

「仕方ねえ、勝てるかどうか知らんがやるしかねえ!」
(体を狙ってもダメ、となると狙うのは頭しかねえじゃねえか!)

出来るだけ頭を狙って、再度我武者羅に撃ち込む。

「ううう…うおおおおおおおおお!!」

頭部を弾丸が貫通し、そこから血液が吹きだす。
巨体が、ゆっくりと倒れて行く。
ズズーン…と重い音を立てて、ノコギリ男は倒れた。
頭部からの夥しい出血は、以前頭の周りに血の海を作っている。
307 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/04(月) 22:20:20.53 ID:U1TtDu0a
「こんな化け物だ。復活してくるかもしんねえし、トドメをさしとくか」
(首輪を撃てば十分だな)

首下まで近寄り、首輪目掛けて1発お見舞いする。
その衝撃で首輪が爆発し、首と胴が別れ別れになる。

「ヤバかったああ…」

安心感からか、その場にへたり込んでしまう。
一歩間違えれば、自分が殺されていた。
それほどの激戦の後で、自分の命が助かったことを喜ばない奴がいるだろうか。

(しっかし、マガジン1つ使い切っちまった。結構な消費だぜ、これは)

【一日目・朝/D-6】
【杉谷守@自己満足ロワ2ndリピーター】
[状態]:健康、疲労(中)
[装備]:H&K G36(0/30)
[所持品]:デイパック、G36マガジン×2、壊れたMP5A3、こち亀(100巻)
[思考・行動]
基本:ゲームに乗る。
1:ヤバかったぜ…。

【ノコギリ男@Tさんシリーズ 死亡】
死因:射殺
308 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/04(月) 22:20:36.18 ID:U1TtDu0a
投下終了です
309 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/05(火) 22:50:35.00 ID:8EJV9uQp
投下します
タイトル:新しい朝が来た?
登場人物:アンドレー・アヴェルチェフ、川内一輝、夜釣りの人
310 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/05(火) 22:51:04.78 ID:8EJV9uQp
「見ろ、日の光だ。これで、車を使えるだろう」
「ああ。やっぱ、あのトラックを使うのか?他の車は…」
「所々に車は停まってるが、どれも施錠してある上に、キーが刺さっていない。動かせんだろう」
「じゃあ、夜釣りが乗ってきたトラックは何なんだ」
「多分、支給品じゃないのか」

デイパック内に、適当にインスタントラーメンや惣菜等の食料を入れる。
結構な重量になりそうな物だが、デイパックは重くなっていない。
それについて、さっき3人で話し合ったが、結論は出なかった。
第一、仕組みが分かった所で、それを何に活かせると言うのか。
その原理で、首輪が外せるなら死ぬ気で解明するだろうが。

「…おーい、夜釣り!行くぞ!」
「今行くよー」
「別に急がなくてもいい。焦りは禁物だ」

別の場所でデイパックにペットボトル入りのお茶やミネラルウォーターを詰めていた夜釣りの人と合流する。
そのまま壊れた入り口をくぐり抜け、駐車場に停めてあるボロボロのトラックに向かう。

「おい、これ2人乗りだぜ。俺達は3人、誰かあまるんじゃないか?」
「俺が荷台に乗る。運転は…一輝、お前に任せる」
「俺がか?まあ、免許は持ってるけど…ペーパーだけど」

仕方無く、一輝と夜釣りの人が運転席と助手席に乗り、その後でアンドレーが荷台に乗る。
…さっき、トラックをここまで持ってきた時に、一応エンジンが掛かるか確かめてみたが…。
祈る気持ちで、キーを回す。
ブルルン、と独特の音を立てて、エンジンが動き出す。

「どこに向かおうか?」
「そうだな…。病院に向かおう。あそこは人が集まりやすいからな」
「分かった。行くぞ!」

ゆっくりとしたスピードで、駐車場を後にした。
311 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/05(火) 22:51:15.75 ID:8EJV9uQp
【一日目・深夜/A-3:スーパー付近】
【川内一輝@オリジナル】
[状態]:健康
[装備]:H&K MP7(40/40)
[所持品]:支給品一式
[思考・行動]
基本:ちょっとダルいが、ゲーム脱出の為に動く。
1:トラックを運転して病院へ向かう。

【アンドレー・アヴェルチェフ@オリジナル】
[状態]:健康
[装備]:FN ミニミ(200/200)
[所持品]:支給品一式
[思考・行動]
基本:ゲーム脱出の為に動く。
1:トラック(の荷台)に乗って病院へ向かう。

【夜釣りの人@Tさんシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持品]:支給品一式、トラックのキー
[思考・行動]
基本:殺し合いはしない。
1:トラックに乗って病院へ向かう。
※A-3のスーパー入り口が大破しています。
312 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/05(火) 22:52:00.63 ID:8EJV9uQp
投下終了です
そして時間帯は深夜じゃなくて朝です、すいません
313 ◆ymCx/I3enU :2011/07/05(火) 22:55:56.31 ID:3avZwyF4
投下乙です
投下します 俺得5 29話 本音建前焼き尽くす
登場:坂田銀時、大沢木小鉄、有田美帆、シャロン、エルフィ、花丸木
314本音建前焼き尽くす ◆ymCx/I3enU :2011/07/05(火) 22:56:39.71 ID:3avZwyF4
29話 本音建前焼き尽くす

街を歩く銀時、小鉄、美帆、シャロンの三人の前に二人の参加者が現れる。

「あ…」
「ちむー」
「……」

狼獣人の少女と、赤ん坊をそのまま大きくしたような少年。
また女子供かと、銀時は頭を抱える。
既に女性二人、子供一人を抱えていると言うのにこれ以上増えると言うのか。

「花丸木!」
「小鉄っちゃんらむ!」

小鉄と花丸木が再会を喜ぶ。
普段、いじめている側といじめられている側の構図だが、
殺し合いと言う状況下、もう二度と会えないかもしれないかもしれないと言う状況下で、
知っている相手と再び会えた事は双方とても嬉しい事だった。

「良かったね小鉄君」

美帆が祝福の言葉を述べる。シャロン、花丸木の同行者エルフィも同様だ。

(…へいへい、こうなりゃいくらでも面倒見てやるよ。元々二人のガキ面倒見てたんだから。
それが五人に増えただけだ。何てこたぁねぇ)

銀時もまた覚悟を決め、五人の女子供をまとめて守る事を決意した。

「まあ、取り敢えず自己紹介から……」
「パイルドライバー!!」
「ピャムーーーーー!!!」

嬉しさのあまり小鉄が花丸木に得意のプロレス技を仕掛けた。

「オイイイ! 何してんだアアアアア!!」
「ちょっと、アスファルト割れたよ!?」
「み、耳から血が」
「花丸木君ーーー!?」
「やべ、やり過ぎたかな」

泡を吹き耳と鼻と口から血を流す花丸木。
大恐慌に陥った小鉄以外のメンバー。
315本音建前焼き尽くす ◆ymCx/I3enU :2011/07/05(火) 22:57:12.37 ID:3avZwyF4
「おい、花丸木、しっかりしろ!」
「…小鉄っちゃん…僕はもう駄目みたいらむ…桜ちゃんに、伝えて欲しいらむ…」
「な、何だ? 何だよ?」
「…僕はもういないけど…どうか良い人を見付けて…幸せ…に……なって……て」

それだけ言うと、花丸木は目を閉じ、そして動かなくなった。

「…花丸木? …あ…あ……花丸木ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」



まるで赤ちゃんをそのまま大きくしたような風貌で

それでいてファッションには妙なこだわりがあって

なぜかいつも服が脱げて全裸になって

お尻に物を挟む事が出来た

花丸木

君の事は

永遠に忘れない

ありがとう

本当に

ありがとう


【花丸木@浦安鉄筋家族:死亡】
316本音建前焼き尽くす ◆ymCx/I3enU :2011/07/05(火) 22:57:45.74 ID:3avZwyF4
「んなわけねーだろ」

気絶してしまった花丸木を背負った銀時が恨めしそうに言う。
その後ろには銀時からきつい拳骨を食らった小鉄が頭に出来たタンコブを擦りながら、
美帆、シャロン、エルフィと共に歩いていた。


【朝/B-4市街地】
【坂田銀時@銀魂】
[状態]肉体疲労(中)、花丸木を背負っている
[装備]虎鉄Z-II@銀魂
[持物]基本支給品一式
[思考・行動]
0:殺し合いを潰す。新八達と合流したい。
1:小鉄、美帆、シャロン、エルフィ、花丸木と行動。
2:襲われたら戦う。
[備考]
※原作ラブチョリス編以降からの参戦です。
※小鉄の知人と美帆の知人の情報を得ました。
※河野史奈(名前は知らない)を危険人物と認識しました。
※花丸木を背負っています。

【大沢木小鉄@浦安鉄筋家族】
[状態]頭にタンコブ
[装備]二十六年式拳銃(6/6)
[持物]基本支給品一式、9ox22R弾(12)
[思考・行動]
0:殺し合いはしない。のり子達を捜す。
1:銀時にーちゃん、美帆ねーちゃん、シャロンねーちゃん、エルフィねーちゃん、花丸木と行動。
[備考]
※原作最終話〜元祖!の間からの参戦です。
※銀時の知人と美帆の知人の情報を得ました。
※河野史奈(名前は知らない)を危険人物と認識しました。

【有田美帆@オリキャラ】
[状態]肉体疲労(中)
[装備]神楽の番傘@銀魂(残弾90、ビーム砲使用回数残り1)
[持物]基本支給品一式
[思考・行動]
0:死にたくない。圭人と祐実を捜す。
1:銀さん、小鉄君、シャロン、エルフィ、花丸木君と行動。
[備考]
※銀時の知人と小鉄の知人の情報を得ました。
※河野史奈(名前は知らない)を危険人物と認識しました。
317本音建前焼き尽くす ◆ymCx/I3enU :2011/07/05(火) 22:58:24.77 ID:3avZwyF4
【シャロン@オリキャラ】
[状態]健康
[装備]真選組バズーカ@銀魂(1/1)
[持物]基本支給品一式、真選組バズーカ予備弾(3)
[思考・行動]
0:取り敢えず殺し合いには乗らない。
1:銀さん、美帆、小鉄君、エルフィ、花丸木君と行動。
[備考]
※河野史奈の容姿を記憶しました。
※銀時、小鉄、美帆の三人の知人の情報を得ました。

【エルフィ@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]ワルサーPPK(6/6)
[持物]基本支給品一式、ワルサーPPKのマガジン(3)、マイナスドライバー
[思考・行動]
0:殺し合いには乗らない。生き残りたい。
1:花丸木君、銀さん、美帆さん、シャロンさん、小鉄君と行動。
2:信用出来そうなクラスメイト(ノーチラス、サーシャ、シルヴィア、テト、仲販遥、フラウ)を優先的に捜す。
3:太田太郎丸忠信には注意する。
[備考]
※本編死亡後からの参戦です。
※大沢木小鉄、西川のり子、土井津仁、鈴木フグ夫の四人の情報を得ました。
※エルフィが聞いた銃声とは、死体の男(長谷川泰三)が殺害された時の音です。

【花丸木@浦安鉄筋家族】
[状態]気絶中、頭頂部にダメージ、後頭部に軽い瘤、上着の腹の部分が切れている、坂田銀時に背負われている
[装備]ドス@自作キャラでバトルロワイアル
[持物]基本支給品一式
[思考・行動]
0:死にたくないらむ。帰りたいらむ。
1:(気絶中)
[備考]
※原作最終話〜元祖!の間からの参戦です。
※太田太郎丸忠信の容姿、名前を記憶しました。
※エルフィのクラスメイトの情報を得ました。
※坂田銀時に背負われています。
318 ◆ymCx/I3enU :2011/07/05(火) 22:59:05.67 ID:3avZwyF4
投下終了です。
319 ◆ymCx/I3enU :2011/07/07(木) 16:16:48.35 ID:2cHf1bTe
投下します。俺得5 30話 ああ直哉君フォーエバー
登場:河野史奈、関直哉、仲販遥
320ああ直哉君フォーエバー ◆ymCx/I3enU :2011/07/07(木) 16:17:27.23 ID:2cHf1bTe
30話 ああ直哉君フォーエバー

市役所ロビーには死臭が漂っていた。
それもそうだろう、合わせて4人もの死体が転がっているのだから。
虎の少女、河野史奈はその死体達の元に立つ。

「ふぅん」

やはり自分の知らない所で死闘が繰り広げられているのだなと、史奈は思う。

「…う、うあ!」
「きゃああ!」
「ん…」

背後から男性と女性の悲鳴を聞き、後ろに振り向く史奈。
黒い大きな犬と、少女が市役所の入口付近で驚愕の表情を浮かべている。
この状況、史奈が四人を殺したのかと疑われてもおかしくないが、彼女自身は特に動じる事は無い。

「…こ、これ…何があったんだ?」
「……」
「なぁ…?」
「…取り敢えず自己紹介からしようよ。私は河野史奈」
「あ、ああ…俺は関直哉」
「わたしは…なかひさ、はるか」
「…言っておくけどこれは私がやった訳じゃない」

まず史奈はここでの惨劇の下手人では無い事を強調する。
しかしいきなりそう言われても、簡単に信じて良いものかと、二人は顔を見合わせ悩む。

「…信じてくれない?」
「あー、いや…何て言うか」
「し、しんじないってわけじゃないけれど」
「…まあ、あなた達が信じようが信じまいが――――」

マウザーC96自動拳銃の銃口が、直哉と遥を捉えた。
再び、直哉と遥が目を見開く。

「関係無いんだけど」

ダァン!!

「あっ…」

銃声が響き、遥の胸元から血が噴き出した。
大きく後ろに仰け反り、遥は床に崩れ落ちる。
321ああ直哉君フォーエバー ◆ymCx/I3enU :2011/07/07(木) 16:18:16.83 ID:2cHf1bTe
「はるっ」

ダァン!! ダァン!!

「ウグッ……ア」

二発の銃声、そして直哉の胸元と、左目から鮮血が噴き出し、直哉もまた床に倒れピクピクと痙攣する。
床に血溜まりが広がり、それは黒い魔犬の確実なる死を示しているようだった。
完全に二人を殺したと思った史奈は倒れた二人にゆっくり近付く。

「ウゥウオオ!!」
「!?」

しかし、黒い魔犬の牙が、虎娘の足を捕えた。
一気に鋭い牙が史奈の足に突き刺さり肉を裂き骨を軋ませる。

「うぐぁ…あ! この…」

激痛に顔を歪ませ、史奈は足に食らいつく魔犬を振り払おうとするが、
魔犬――直哉は全く顎を放す気配は無い。それどころかどんどん力を強めていく。
そして史奈を思い切り床に引き摺り倒した。

「きゃっ…!」

強か背中を打ち付け悲鳴をあげる史奈。倒された拍子に持っていたC96も手放してしまった。
すかさず直哉は史奈の上に圧し掛かりその細い首に食らい付き、顎に渾身の力を込めた。

グキッ

鈍い音が響き、直後、史奈は全く動かなくなった。
魔犬の強靭な顎は虎獣人の少女の細い首の骨をあっさりと粉砕したのだ。

「ゼェ…ゼェ…がぁぁ…痛ぇ…左目が見えねぇよ…くそ……」

左目付近と胸元がとにかく熱く、痛かった。

「は…るかちゃん……」

同行者の遥が気になった。
だが、倒れている少女はもう息をしていなかった。

「くそ……」

悔しげな、悲しげな表情を魔犬は浮かべ、牙を噛み締める。
322 ◆ymCx/I3enU :2011/07/07(木) 16:19:36.16 ID:2cHf1bTe
【仲販遥@自作キャラでバトルロワイアル:死亡】
【河野史奈@オリキャラ:死亡】
【残り:29人】


【朝/B-4市街地】
【関直哉@オリキャラ】
[状態]左目失明、胸元に銃創
[装備]???
[持物]基本支給品一式、???(1〜2)
[思考・行動]
0:殺し合いはしない。英里佳を捜す。
1:……。
2:太田太郎丸忠信に注意。
[備考]
※仲販遥のクラスメイトについての情報を得ました。


投下終了です。
323 ◆YcpPY.pZNg :2011/07/07(木) 17:02:07.04 ID:VZW1MLxc
投下乙です。では自分も。
お気に入りロワ・34話投下します
324飛んで火に入る夏の虫 ◆YcpPY.pZNg :2011/07/07(木) 17:04:10.01 ID:VZW1MLxc
 フェイト・T・ハラオウンは月明かりの落ちた薄暗い道を進んでいた。
 薄ぼんやりと見える周囲から、現在地が住宅街だという事が分かる。
 無人の民家がつらつらと並ぶその姿は、言いようのない圧迫感をフェイトに与えていた。
 生活感や人の気配のない民家が、ここまで異様なものに見える事をフェイトは初めて知った。
 空には満月があり、月光を住宅街へ降り注がせている。
 淡い月光だけでは何とも頼りないが、それでも視界は確保できた。
 出来る限り気配を殺して、それでいて迅速に、フェイトは住宅街を進む。
 管理局執務官して、機動六課の一員として、人々を救う為に深夜の行軍を続けていた。

(さっきの放送をした男の人はD-8にいるって言ってたけど……)

 フェイトはつい数分前にある放送を聞いていた。
 『ヴァッシュ・ザ・スタンピード』という男が執り行ったらしき、放送。
 唐突に始まり唐突に終わった放送は、フェイトに一先ずの行動指針を与えるに充分だった。
 市民館へと向かい、その近くにいるだろう要救助者や要保護者を探す。
 危険人物がいれば身柄を確保し、一時的に拘束。
 今回の事件が解決するまで大人しくしてもらう。
 今回の事件―――78人もの人々を拉致し、首輪型の爆弾で命を握り、強制的に殺し合いを行わせる陰惨な事件。
 事件の背後に垣間見えるは、ドロドロと凝縮された悪意であった。
 ただの大量殺人とも違う。
 拉致した被害者同士を、生存を望むならばと、互いに殺し合わせる。
 恐らくは拉致された人々も、先程殺害されたトミタケという男も、何ら悪い事をしていない。
 ただ殺し合わせる為だけに、殺し合う人々の姿を眺める為だけに、集結させた。
 その裏側には何か深い理由があるのかもしれない。
 このような殺し合いを執行せねばならない理由があるのかもしれない。
 だが、それでも許されるべき所業ではない。
 フェイトの心が、拒絶する。
 このバトルロワイアルを、バトルロワイアルを開催した人物達を、その奥底にある悪意を、許す事ができない。
 雷光の魔導師が、夜の住宅街を突き進む。

(それにしても、さっきの部屋でのバインドは……)

 フェイトには、先の惨劇の教室にて気掛かりに思う事があった。
 参加者を拘束していたバインド魔法。
 Sランク魔導師たるフェイトにも解除する事のできなかった、強固という言葉で片付けるには余りに凄まじいバインド。
 そのバインドの存在が、記憶の片隅に引っかかる。
 フェイトは、知っていた。
 先のバインドを、知っていた。
 幾度となく拘束された記憶がある。
 拘束され……折檻を受けた記憶がある。
 あれは、あのバインドは、まさか。

(……母、さん……)

 浮かんだ答えに、フェイトは暗闇の中で足を止めてしまう。
 それは有り得ない、有り得る筈のない答えであった。

「そんな、筈が。だって、母さんは十年前に虚数空間へ……」

 静寂の中で、声が零れた。
 思考の渦から導き出された答えを、思わず呟きにして否定する。
 有り得ない、馬鹿げた答えだと断定する。せずにはいられない。
 フェイト・T・ハラオウンの母親は既に死亡したのだ。
 十年前、もう遥か昔に感じる最初の物語。その物語の終幕としてフェイトの母親は死亡した。
 プレシア・テスタロッサ。
 幻想を追い求め、幻想に生き、幻想に死んでいった不幸な大魔導師である。
325飛んで火に入る夏の虫 ◆YcpPY.pZNg :2011/07/07(木) 17:05:12.44 ID:VZW1MLxc
(くっ……!)

 立ち止まるフェイトの表情が、苦々しげに歪んだ。
 あの時、届かなかった言葉。
 あの時、届かなかった手。
 もう大丈夫だと思っていた。もう乗り越えられたと思っていた。
 親友と、出会えた。
 仲間とも、家族とも、部下とも、守りたい者とも、出会えた。
 あれからの十年間で自分は掛け替えのないものを積み重ねていき、自分自身というものを手に入れられたように思う。
 だからこそ、もう大丈夫だと心の何処かで思っていた。
 その筈なのに―――、


 パン、という音が響いた。
 フェイトが自身の頬を両手で叩いた音であった。

「今は、事態の収集に全力を注ぐ……!」

 心中に渦巻く複雑な感情を、フェイトは無理矢理に心の奥底へと仕舞い込んだ。
 プレシアが生存している訳などないし、先のバインド魔法だけで相手魔導師を特定する事だって不可能だ。
 今は可能性に心を揺らがす暇などない。
 全力全開で事態の収集に努め、この狂気のゲームに巻き込まれ、恐怖の渦中にある人々を守る。
 一分一秒でも早く、だ。もしもに踊らされ、動揺をしている暇などない。
 再びの疾走を始めるフェイト・T・ハラオウン。
 数分後、彼女は遭遇する事となる。
 科学と異能が支配する都市にて、最強の二文字を冠する少年。
 周囲から怪物と忌み嫌われ、幼少時から暗い暗い道を歩いてきた少年。
 人工の力による人生を狂わされ、そしてとある男との出会いを切っ掛けとして自身の生き方を取り戻せた少年。
 少年の名は一方通行(アクセラレータ)といった。
 世界中の軍隊を相手取る事すら可能な、科学の産み出した最強の怪物である。
 科学の怪物と、魔導師のエースとが、邂逅する。





 面倒な事になった、と一方通行は心底から感じていた。
 始まりはつい数分前に出会った女性。
 外見からするに二十歳前後の年齢。だが、二十歳にしては何処か大人びた雰囲気を纏う女性であった。
 とはいえそれ事態は大して珍しい事ではない。
 『裏の世界』で生きていけば精神年齢が外見を上回る事など多々ある話だ。
 この一方通行も、まさにそうと言えるだろう。
 外見の幼さとは裏腹に、何処か達観した様相を見せる少年。
 しかし、そんな一方通行をもってしても、この女性は面倒に感じる。
 いや、そんな一方通行だからこそ、か。

「おい、もう付いてくんな。お前はお前で探してる奴がいるんだろォが」
「うん。でも、信じてるから。皆なら大丈夫だって」
「……こんな状況だぞ? 何が起きたって不思議じゃねェ。多少腕に自信があるくらいじゃ、あっさり死んじまうかもしンねェぞ」
「大丈夫だよ。それに、皆ならこんな状況で君を放っておいたりはしない」

 出会ってからずっと、こんな感じだ。
 この女もまた『善人』なんだろうな、と予感的に一方通行は感じていた。
 自分を殺し、他人の為に動く事のできる人間。
 こんな殺し合いの場で、このような行動ができる人間は稀だ。
 普通の人間ならば恐怖に我を忘れ、ただ自分の命を守る為だけに恐慌じみた行動を起こす。
 冷静を保っているだけでも相当なものだと思う、そんな殺し合いの最中だ。
 そんな最中で、この女は平然と赤の他人を救おうとしている。
 ヴァッシュ・ザ・スタンピードといい、この女といい、この場には常人以上の『強さ』を持った人物達が集められている。
326飛んで火に入る夏の虫 ◆YcpPY.pZNg :2011/07/07(木) 17:07:18.38 ID:VZW1MLxc
 ヴァッシュを襲撃した少女も自己を喪失している様子はなかった。冷静に考えた上で、あの行動を起こしたのだろう。
 精神的にも、おそらくは身体的にも、人間離れしたものを有している参加者達。
 もしかすれば、最強の超能力者たる自分をも上回る存在がいるのかもしれない。
 例えばエイワスのような、例えばロシアの上空に現れた青白の化け物のような、人智が理解できる範疇を飛び越えた存在。
 そんな奴等すらも、この場には存在するのかもしれない。

「チッ……」

 知らず科学の怪物は舌打ちをしていた。
 勝利が困難な存在の可能性に、苛立ちを覚えているのか?
 いや、違う。一方通行が苛立つ理由は他に在った。
 自分をも上回る存在がいるかもしれない殺し合いに、打ち止めが参加させられているという事。
 それが、どうしても心をざわめかせる。
 打ち止め。ただ一人、何をしてでも守り抜きたい存在。
 打ち止めが危機に陥っているのではないか、打ち止めを守り切れない事態に陥るのではないか……ただそれだけが恐ろしく、苛立たしい。

「どうしたの? 怖い顔してるよ」
「……何でもねェよ。それより、いい加減付きまとうの止めて貰えねェか。こっちとしても良い迷惑なんだよ。分かンだろ?」

 突き放すような一方通行の言葉に、フェイトは薄い笑みで応えた。
 その笑みを、一方通行は知っている。
 自分の元同居人であった二人の女性。その二人が自分に向けて良く見せていた微笑みだ。
 まるで子どもを見るかのような、それでいて見下している訳でもない、暖かい微笑み。
 この種の笑顔は、何となく、苦手に思う。
 まるで自分を見透かされているような、そんな気持ちになってしまう。

「……ごめんね。でも、ほっとけない。私は私の意志で君と行動したい」

 次いでの言葉に、一方通行は大きく、それこそ女性にも分かる位に大きく溜め息を吐いた。
 眼前で溜め息を吐かれて、それでも女性の表情に変化はなかった。
 ああ面倒な事になったと、改めて一方通行は思う。
 まるでアイツのようであった。
 自分の回りを勝手について回り、勝手に喜び、勝手に悲しみ、勝手に盛り上がる、そんな少女。
 アイツもそうだった。
 どれだけ突き放そうと、勝手に付き纏ってくる。
 自分がアイツに何をしたのか、全てを知っていてそれでも尚、無邪気に付き纏ってきた。
 何に賭けても守り抜きたい少女。
 ほんの少しだけ、その少女と似通った所があるように思う。
 年齢も、容姿も、性格も、何もかもが違うのに―――そう、一方通行は感じていた。

「……勝手にしろ」
「うん、そうする」

 三度目の溜め息と共に、一方通行は杖を付いて歩みを再開した。
 その後ろ姿にやはり笑顔を見せて付いて来る女性―――フェイト・T・ハラオウン。
 他者を拒絶し、他者を受け入れようとしない一方通行の態度に、彼女も何となくで感じていた。
 まだ子どもと云って良い風貌で、それでいて大人びた振る舞いを見せる少年。
 そんな一方通行を見て、何となく放っておけないと思った。
 その感情に従って、フェイトは行動する。
 事件を解決に導く事を決心して、この少年を守り抜く事を決心して、フェイトは一方通行に同行する。
 そして、彼女達は市街地を進んでいき、


「……これは」
「……やってやがンな」


 ―――異変に気が付いた。
327飛んで火に入る夏の虫 ◆YcpPY.pZNg :2011/07/07(木) 17:09:43.34 ID:VZW1MLxc
 市街地と隣接する森林から、何かと何かがぶつかり合うような音が鳴り響いていた。
 それも断続的に、何度も何度も鳴り響く。
 重機でも使用して硬質の何かを叩いているかのような、重く鈍い音。
 音は、機関銃の銃声のように連続で鳴り響く事もあれば、単発で終わる事もあった。
 一方通行は予想する。
 恐らくは能力者同士の戦闘が、この森林の先では行われている、と。
 フェイトもまた予想する。
 恐らく魔導師同士の戦闘が、この森林の先では行われている、と。
 両者ともに異能での戦闘を予測し、また疑問を思う。
 疑問もまた、両者同様のものであった。

「おい、此処は……」
「そう。会場の端の筈、だよ」

 現在地は互いに『ヴァッシュ・ザ・スタンピード』の放送を通して把握していた。
 二人が今いる位置はD-8。市街地の東側に続く森林は、既に会場の範囲外とされている筈の区間である。
 会場の外とされている区間から轟き渡る戦闘音。
 一方通行とフェイトは思考を回転させながら、轟音鳴り響く森林を見詰める。

「俺が行く。オマエはここで待ってろ」
「ダメだよ。私が行く。アナタがここで待ってて」

 思考の末の結論は、やはり同様であった。しかも同行人に対する配慮の内容までが完全一致である。
 互いに知らせていないが、両者は強力な力を有している。
 片や、学園都市最強の超能力者。
 片や、管理局トップエースの魔導師。
 力を有しているが故の同行人への配慮なのだが、互いの実力を知らない二人は此処にきて平行線に至る。

「ハァ? お前じゃ足手まといだって言ってんだ。大人しく待ってろ」
「この戦闘音、聞こえるでしょ。アナタ一人が向かっていっても、危険なだけだよ。大丈夫、私に任せて」
「……だからよォ……。あー、もう良い。オマエは後からゆっくり付いて来い」

 先に折れたのは、一方通行だった。
 まあ、『折れた』と言っても意見を曲げた訳でもなく、ただ不毛な論争をする事に対して『折れた』だけなのだが。
 首元のチャーカーへ手を伸ばし、最強の能力を開放する一方通行。
 杖を折り畳み持ち手の部分に収納すると、軽い調子で地面を蹴った。
 瞬間、その身体が欠き消える。
 能力の行使に粗方の問題は見られず、普段通りの使用が出来ていた。

(イヤ……違ェな)

 だが、能力者自身は使用による違和感を拭いきれずにいた。
 能力の使用毎に、頭の片隅で微少なノイズが走るのだ。
 微少なものだが、それは確実に存在した。
 その微少なノイズがベクトルの計算に僅かな間を造る。
 おそらくベクトル変換を発動させるまでの速度が制限されている。
 これは巨大なベクトルを操ろうとする程、大きなロスとして表出してくるのだろう。
 先の考察のように自分以上の怪物が存在する可能性を考慮すれば、かなりの痛手だ。
 時間制限だって存在する上での、コレだ。
 中々に厳しい制限だと、一方通行は思考していた。

(……だが、やる事は変わらねェ)

 制限された能力に苛立ちを覚えながら、一方通行が行く。
 先ずは戦闘が行われている地点へ。
 その戦闘に打ち止めが巻き込まれているならば保護そ、巻き込まれていなくても危険人物ならば排除する。
 殺すか、殺さないかはその時考えれば良い。
 一先ず戦闘を止める。
 迅速に、確実に、危険人物を潰していく。
 それが回り回って打ち止めの救済に繋がることだってある。 まずは、それで良い。良い、筈だ。
328飛んで火に入る夏の虫 ◆YcpPY.pZNg :2011/07/07(木) 17:10:29.79 ID:VZW1MLxc
 まずは、それで良い。良い、筈だ。

(……速攻で終わらせる。あの女に追い付いてこられても面倒だからなァ)

 音の轟く方角。会場の外側に至る森林だが、首輪が爆発する気配も、警告が起きる気配もない。
 音の方でも変わらずの戦闘が行われているようであった。
 何がどうなっているかは、分からない。
 何故、会場の外である筈の森林で戦闘が行われているのか。
 何故、会場の外に飛び出した自分に対して何の警告もペナルティーもないのか。
 分からない。
 何もかもが分からないが……それでも今は構わない。
 今は、戦闘の介入に全力を注ぐ。
 打ち止めを救う為に、また面倒ではあるものの後ろから追い掛けてくるであろう女性を巻き込まない為に。
 怪物としての能力をフルに活用して、全てを終わらせる。
 それだけであった。

(お楽しみの最中で悪ィが、瞬殺で行かせてもらうぜェ)

 学園都市第一位の怪物が、暗闇の森林を線となって駆け抜ける。
 たった一つの守りたい『幻想』を掲げて、最強の超能力・一方通行が疾走する―――。







 取り残されたフェイトもまた、自身の足で疾走を始めていた。
 相棒たるデバイスがあれば一方通行にも易々と追随する事ができたのであろうが、残念ながら現状でそれは叶わない。
 今彼女の手中にあるデバイスは一つ。教え子の少年が愛用していた槍型のデバイスだけであった。
 とはいえデバイスすら無い状態よりは遥かにマシ。加えて教え子とフェイトの使用する魔法には似通った点が多い。
 相棒のデバイスとまでは行かずとも、戦闘を行うには充分過ぎる程だ。
 時折に高速移動魔法を挟みながら、フェイトは進む。
 魔力消費を出来る限り抑えて、それでも現在だせる全力の速度で進行していく。

(スゴいな、あの子……)

 フェイトとて高機動戦を得意とするエース魔導師だ。
 その進行速度たるや相当なもの。飛行魔法を使わずとも、視界を流れていく森林の速度は常人の域を逸脱している。
 進行の最中でフェイトは素直に感心していた。
 暗闇の森林という悪路を、あれほどの速度で進んでいった少年。
 機動力だけ見れば、エース級の魔導師と比肩しうる程だ。
 彼自身、有数の魔導師なのかもしれない。

(でも、あの子だけじゃ危険だ……!)

 それでも胸中に込み上げる不安は正直であった。
 森林の奥から鳴り響く戦闘音は激化の一途を辿っている。
 数百メートルは離れているであろう地点にまで届く戦闘音だ。
 魔導師同士の戦闘でも有り得るかどうか。
 フェイト・T・ハラオウンが焦燥を滲ませながら、道を往く。


329飛んで火に入る夏の虫 ◆YcpPY.pZNg :2011/07/07(木) 17:11:57.47 ID:VZW1MLxc




 森林から轟く戦闘音を頼りに前進を続ける二人。
 さて、今現在彼等が知らぬ事は二つある。
 会場に仕組まれたある仕掛けと、戦闘を行っている者達についてだ。
 まず会場に仕組まれた仕掛けについて。これは大した問題にはならないだろう。
 この会場は端と端とが繋がっているのだ。
 まるで終わりの無い円環のようにグルグルと、会場の端と端とはループしている。
 その原理は主催者のみぞ知る事だが、現状で取り敢えず二人に問題を与える事はないだろう。
 問題はそう、彼女達の知らないもう一つの事―――音の先にて戦っている人物達である。
 一人は、黄金の精神を有した最強のスタンドを付き従える男。
 一人は、人間の滅亡を信条に掲げた『絶対』とも呼べる存在へと変化した人外の種。
 一方通行とフェイトの向かう先にあるのは、『最強』と『絶対』が交差する争乱の森林である。
 言ってしまえば一方通行の考察は的中していた。
 一方通行は、遭遇する。
 『最強』の能力者たる彼であっても敵う事のないだろう『絶対』と。
 絶対の存在たる人外の種、数多の融合を繰り返す事により絶対の存在となったミリオンズ・ナイブズと。
 『最強』と『絶対』が、交差する。
 その末に発生する未来を、二人はまだ知らない。
 最強の超能力者と雷光の魔導師は、知らずに突き進むのであった。


 そして、もう一つ。

 争乱の場には、もう一人の人物がいる。
 それは一方通行も良く知る人物で、彼の生き方に多大な影響を与えた人物でもある。
 今はまだ覚醒の兆しすら見せずに、戦闘の傍らで昏々と眠りを続ける少年。
 上条当麻。
 鳴り響く戦闘音の中で彼もまた勇敢に戦いを始めているのか、それとも一方通行が辿り着いた時には既に無念の死に至っているのか、それはまだ分からない。
 ただ一つ言える事は、この『絶対』との遭遇が、一方通行のバトルロワイアルに於ける在り方を決定付けたという事だけ。


 そう、『最強』と『絶対』が交差する時―――物語は始まる。




330飛んで火に入る夏の虫 ◆YcpPY.pZNg :2011/07/07(木) 17:12:47.70 ID:VZW1MLxc
【一日目/深夜/D-8・森林】
【一方通行@とある魔術の禁書目録】
[状態]健康、能力使用状態(残り29分)
[装備]チョーカー型電極@とある魔術の禁書目録、一方通行の杖@とある魔術の禁書目録
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考]
0:打ち止めを探し、守る。
1:戦闘音のする方へ行き、戦闘を止める。打ち止めがいれば何をしてでも守る。
2:周辺を探索し、打ち止めを探す
[備考]
※原作22巻終了後から参加しています

【一日目/深夜/D-8・森林】
【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]健康
[装備]ストラーダ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2
[思考]
1:殺し合いを止める
2:一方通行の後を追い、戦闘を止める。
3:皆とも合流したい

[備考]
※会場にはループ機能があります。





これにて投下終了です。

331 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/07(木) 22:13:38.39 ID:2LzxSkJ1
投下します
タイトル:何しに来たんだお前は
登場人物:Tさん、◆WYGPiuknm2、◆VxAX.uhVsM、三田村哲也
332 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/07(木) 22:14:06.33 ID:2LzxSkJ1
「…雨、か…」

いきなり降り出した雨に、驚くでもなく呟く。
既にずぶ濡れなので、今更少々濡れる事なんて気にならない。
むしろ、冷たい雨が気持ちよく感じる程だ。

「雨足、結構強いなあ…」

最初はパラパラと降っていた雨も、次第に強さを増して行く。
それでも、別に気にならない。
今は、そんなことを気にしている場合でもない。

(誰かいないかなあ…一人じゃ、出来る事は少ないし)

黙々と、雨の降る中を歩いて行く。
この状況を打開出来る方法はまだない。
自分の進む先に、それがあるかどうかもわからない。
だが、今は。
ただ進むしかない。
止まっていては何も始まらない。

(…あ、人だ)

誰かが、同じく雨の中を濡れながら歩いて来ている。
しかも、その相手は誰かを背負っているようだ。
もしかして、負傷しているのかもしれない。

「大丈夫ですか」
「俺は大丈夫、この人も、ただ疲れているだけ…って、お前はVx氏じゃないか」
「ああ、聞いたことのある声だと思ったらWYG氏だったのか。その人は誰?」
「Tさんだ。寺生まれの。この人、かなり強いけどさっきの戦闘で体力をかなり消費した」
「そう…だったら、どこかでゆっくり休んだ方がいいよ。ほら、あそこの木陰に入ろう」

言われるがまま木陰に入り、木の根元にTさんを寝かせる。
Tさんはいつのまにか眠っていた。それほど、体力の消費が激しかったのだ。
あの強さからは想像出来ないほど安らかな顔で眠っている。
一体、どんな夢を見ているのだろうか。
この過酷な現実よりも酷い悪夢はないだろうが。
333 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/07(木) 22:14:23.54 ID:2LzxSkJ1
「…今まで、Vx氏は何を?」
「始まってすぐに、小さな女の子に会った。そのあと、ホームセンターに行ったんだけど…」

あの時の光景が、生々しく蘇ってくる。
気が付くと、頬を涙が伝っている。

「…そこで、襲われた。女の子を守れなかったよ。でも、襲撃者は倒した」
「そうか…大変だったんだな…」
「そのあとふらふら歩いてたら橋から落ちて、流されるままB-2辺りに…」
「そして、ここまで歩いてきた、と」

◆VxAX.uhVsMが小さく頷く。
やっぱり、自分以上に苦労していたようだ。
いつもより、明らかにやつれている。

「WYG氏は?」
「ああ、俺はTさんに危ないところを助けられて以来、ずっとTさんと一緒に行動してた」
「そうだったんだ…でも、強い人と一緒に行動できるってのは大きいよね」
「まあね…。あ、そうだ!大事な事を思い出した」

今までバタバタしていたので忘れていた事を急に思い出す。
…ym氏が乗っていると言う事を。

「実は、前にym氏と遭遇したんだけど…襲われたんだ。ym氏は乗ってるよ。それと、何故か人狼になってた」
「人狼に?それはともかくゲームに乗ってるってことは…結構危険だなあ、武器は何を?」
「銃を持ってた。何て銃かは良く分からなかったが…。連射できる銃だった。あの時はTさんが戦ってくれたけど…」
「Tさんが…。そんなに強いんだ」

眠っているTさんに視線を落とす。
さっきも聞いたが、寺生まれってそんなに強いのだろうか?
「寺生まれ」と言うだけあって、特別な力でも持ってるのかもしれない。

「…雨、止みそうにないな」
「でも、この近くには民家なんてないし…」

今自分たちがいる場所は、特に何の変哲もない道だ。
ちらほら木が生えている位で、民家等はない。
今も、なんとか木の根本で雨を凌いではいるが、万全とは言えない。

「やっぱり、ここでグズグズしてる暇はないな。行こう」
「行こうって、どこに」
「…とりあえず、病院に行こうか」

依然眠っているTさんを背負い、木陰を出る。
まだまだ雨は降り続いているが、仕方が無い。

「…やっぱり、人生ってそう上手く行かない物なのか」

雨の向こうに人影が見える。
間違い無い。
さっき気絶させたはずの豚だ。
予想より、ちょっと早い。
334 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/07(木) 22:14:40.19 ID:2LzxSkJ1
「うおおおお、てめええええ」
「血が出てるぜ、止血しないでいいのか?」

腕が切り落とされているにも関わらず、さっきまで血は出ていなかった。
それが、今は出血している。
止血するにも、あいつは道具を1つも持っていない。

「まあ、何で血が出ないかなんてどうでもいいか…。手を下すまでも無いや」
「ううううう、あああああ」

始めは少しだった出血が、次第に量が増してくる。
見る見るうちに、豚の顔色が真っ青になっていく。
こちらが何かする前に、地面に突っ伏して死んでしまった。

「…何だったんだろうか?」
「さあ、こっちにも分からん。とりあえず、襲われないで済んだからよしとしよう」

【一日目・朝/D-2とD-1の境目辺り】
【Tさん@Tさんシリーズ】
[状態]:健康、疲労困憊、熟睡
[装備]:特殊警棒
[所持品]:支給品一式、ガム
[思考・行動]:
基本:このゲームを壊し、主催者を破ぁ!する。
1:(熟睡中)

【◆WYGPiuknm2@非リレー書き手】
[状態]:健康
[装備]:折れた釣りざお@Tさんシリーズ
[所持品]:支給品一式
[思考・行動]
基本:ゲームには乗りたくない。
1:Vx氏と共に病院へ。
2:寺生まれってスゴイけど…重い…。

【◆VxAX.uhVsM@非リレー書き手】
[状態]:健康、ずぶ濡れ
[装備]:名刀桜吹雪@龍が如く2
[所持品]:端末
[思考・行動]
基本:絶対、ゲームには乗りたくない。何が何でも生きる。
1:脱出のために、行動する。
2:WYG氏と一緒に病院へ行く。

【三田村哲也@オリジナル 死亡】
死因:失血死
335 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/07(木) 22:14:53.71 ID:2LzxSkJ1
投下終了です
336 ◆ymCx/I3enU :2011/07/07(木) 23:23:43.21 ID:2cHf1bTe
投下乙です

投下します 俺得5 31話 思うがままに勧善懲悪さ
登場:志村新八、春巻龍、長谷川春香、フラウ、大崎綾、銀鏖院水晶
337思うがままに勧善懲悪さ ◆ymCx/I3enU :2011/07/07(木) 23:24:41.57 ID:2cHf1bTe
31話 思うがままに勧善懲悪さ

ドゴォン!!

爆ぜるような音がショッピングモール二階の通路に響く。

「……っ」

春巻龍の細い身体が大きく後ろに吹き飛び、駄菓子屋の商品棚に突っ込む。
その腹にはぞっとするような穴が空き、内臓と思われるピンク色の物が見えた。

「春巻さんんんん!!!!」
「し……しん…ぱち……くん……」

口から大量の血を吐き、痙攣する春巻。
普段、彼の教え子達にプロレス技やら殴打を仕掛けられ似たような状況に何度もなったが、
今回は笑い事では済まされないと、春巻自身、遠退く意識の中で思った。

「ごぼっ…死にたく…ない……ぢょ……ぉ」

必死で意識を繋ぎ止めようとしたが、無駄だった。
内臓組織を散弾でズタズタにされ、生命活動を維持出来るはずも無く、
間も無く春巻龍は事切れた。

「……! よ、よくも……!」

春巻を銃撃し殺害した、猫獣人の少女に怒りの声を上げる眼鏡の少年志村新八。

「あなたももうすぐ死ぬよ」

猫の少女、長谷川春香は手にしたレミントンM870散弾銃の銃口を、
今度は新八に向け、そして引き金を引いた。

「うおぉ!」

ドォン!!

寸での所で新八は散弾の雨を避けるが、袴の裾が引き裂かれた。
まともに食らえば間違い無く命は無い。

(くそ、このままじゃ……)

新八が手にしている武器は包丁のみ。明らかに分が悪い。
少なくとも散弾銃相手に正面から挑もうなど愚の骨頂。それは新八にも分かる。
無茶な戦い方をする坂田銀時や神楽でもそんな真似はしないだろう。いや、分からないが。
新八はふと、二階から一階へ続く吹き抜けの方に目をやる。

(一か八か…!)

「無駄に暴れると痛いよー?」
「暴れる訳じゃない」

余裕の表情の猫少女に向け、新八は持っていた包丁を思い切り投げ付けた。
激しく回転しながら飛んだ包丁は、春香の右鎖骨付近に突き刺さる。
顔を歪め苦鳴をあげる猫少女の隙を突き、新八は吹き抜けに向けて一気に駆け出した。
338思うがままに勧善懲悪さ ◆ymCx/I3enU :2011/07/07(木) 23:25:41.00 ID:2cHf1bTe
「このぉ! 舐めた真似してんじゃないわよ!!」

牙を剥き出しにし怒りを露わにした春香が再びレミントンM870を発砲する。
しかしその時にはとっくに新八は吹き抜けの手すりを越え一階に着地していた。
散弾は手すりを吹き飛ばし破片を新八の上に降り注がせるのみに終わる。

(どこかに隠れよう…!)

ついに武器すら失ってしまった新八、これで再びあの散弾銃を持った猫少女と相まみえる事になれば、
今度こそ命の保証は無い。春巻龍の凄惨な死に様が頭に過る。
適当な通路に向かって走ると、背後で着地音が聞こえた。振り向かずとも何の音かは分かる。

「殺してやる!!」
「ふんぬおおおおおおおお!!!」

……

フラウと大崎綾はショッピングモール内のとある洋品店に隠れていた。
隠れている理由は一つ、追われているからである。

「何となく思ってはいたけど…やっぱり乗っていたのね…銀鏖院さん」
「……(ブルブルブル)」

「…隠れても無駄よ…どこにいるのかな…かくれんぼ…かくれんぼ」

自動散弾銃ブローニングオート5を携えた銀髪の少女が狐娘二人の姿を追い求め通路を徘徊する。
衣服の隙間からフラウは様子を窺う。
拳銃で狙い撃とうとも思ったが、自身は銃に関しては素人故、外す恐れがあった。
もし外せば、下手をすれば散弾の雨を一方的に撃ち込まれる事となる。
無理して戦おうとせず、やり過ごすのが無難と考える。

「…向こう行ってみようか」

水晶は隠れている二人には気付かず通路の奥へ歩いて行った。

「…行ったみたい」
「本当…?」
「…でも、もうしばらく様子を見よう」
「うん……」

……
339思うがままに勧善懲悪さ ◆ymCx/I3enU :2011/07/07(木) 23:26:21.56 ID:2cHf1bTe
「どこ…どこに行ったのあの眼鏡」

出血が止まらない右鎖骨付近の激痛に悩まされながら、
春香は散弾銃を携えショッピングモール内を探索する。
どこかに隠れているはずなのだ、自分の獲物である眼鏡小僧が。

「私の身体に傷付けるなんて…許さない…許さない…許さないよ…」

そしてたこ焼き屋の前の曲がり角を曲がった時。

「!」

発見する。
しかし、捜している獲物では無く、銀髪の同年代と思われる人間の少女。
目的の人物では無かったが元々殺し合いに乗る気でいた上負傷させられ気が立っていた春香は、
即座にレミントンM870を構えた。

一方の少女――銀鏖院水晶もまた手にしたブローニングオート5を構える。

そして。

ドォン!!

発砲音が重なった。

二人の身体に同時に複数の小さな穴が空き血が噴き出し、二人は大きく後ろに吹き飛ぶ。
ガチャンと、床に二人の使っていた散弾銃が落ちる。
床に倒れた二人の少女は、血溜まりを作り二度と起き上がる事は無かった。
死に行く中、二人は全く同じ事を思っていた。

まさか、相討ちになるなんて、と。

……

「これは……」

銃声を聞き付けた新八が警戒しつつ、音源を調べにやってくると、
先刻自分を襲い、同行者を殺害した猫の少女が死体となっていた。
すぐ傍には知らない銀髪の少女が死んでいる。

「……こ、これ……」
「うあ…!」
「…君達は…?」

そこへ、更に二人の参加者――フラウと大崎綾が現れる。
二人はついさっきまで自分達を追っていた銀髪の少女が見知らぬ猫獣人の少女と共に息絶えている光景に驚く。
340思うがままに勧善懲悪さ ◆ymCx/I3enU :2011/07/07(木) 23:27:12.32 ID:2cHf1bTe
「…これは…あなたが?」
「い、いや違う! 僕が来た時にはもう…僕は、この猫の人の方に襲われていたんです。
同行している人がいたけど、殺された……」
「そうなの…私と大崎さんは銀髪の子…私のクラスメイトの銀鏖院さんに襲われて…」
「…僕は志村新八です」
「私はフラウ…」
「…大崎綾」
「……僕は殺し合う気は無い……」
「私達も…一度、どこかで情報を整理しようか…志村君、で良いかな」
「……ええ」

兎にも角にも、まずは状況を把握し情報を整理する事が大切だと、
新八、フラウ、綾の三人は、死亡した二人の装備を回収した後、どこか落ち着ける場所を探し始めた。


【春巻龍@浦安鉄筋家族:死亡】
【銀鏖院水晶@自作キャラでバトルロワイアル:死亡】
【長谷川春香@オリキャラ:死亡】
【残り:26人】


【朝/D-3ショッピングモール「トヨミツ」:一階タコ焼き「銀たこ一番」周辺通路】
【志村新八@銀魂】
[状態]肉体疲労(中)
[装備]無し
[持物]基本支給品一式、テトの巫女服@自作キャラでバトルロワイアル
[思考・行動]
0:銀さん達と合流し殺し合いを潰す。
1:フラウさん、綾さんと情報交換。
[備考]
※原作ラブチョリス編以降からの参戦です。
※春巻龍の知人の情報を得ました。
341思うがままに勧善懲悪さ ◆ymCx/I3enU :2011/07/07(木) 23:28:27.58 ID:2cHf1bTe
【フラウ@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]肉体疲労(中)
[装備]Cz85(15/15)
[持物]基本支給品一式、Cz85のマガジン(3)、レミントンM870(0/4)、12ゲージショットシェル(8)、
スタームルガー スーパーレッドホークアラスカン(4/6)、.480ルガー弾(6)、パワーバングル
[思考・行動]
0:殺し合いを潰す。
1:綾さんと行動。志村君と情報交換。
[備考]
※本編死亡後からの参戦です。

【大崎綾@オリキャラ】
[状態]肉体及び精神疲労(大)
[装備]スティレット
[持物]基本支給品一式、ブローニングオート5(4/5)、12ゲージショットシェル(10)、バタフライナイフ、
ガソリン入り注射器(2)、ノートパソコン
[思考・行動]
0:死にたくない。
1:フラウさんと行動。志村君と情報交換。
[備考]
※フラウより、フラウのクラスメイトの情報を得ました。


※春巻龍の死体及び所持品はショッピングモール二階吹き抜け付近、
長谷川春香、銀鏖院水晶の死体及び所持品はショッピングモール一階タコ焼き「銀たこ一番」周辺通路に放置されています。
所持品詳細は以下の通り。

春巻龍=基本支給品一式、ゴルフクラブ(調達品)、拡声器、Owee@銀魂
長谷川春香=基本支給品一式、馬用精液採取器
銀鏖院水晶=基本支給品一式

また、文化包丁はショッピングモール二階に放棄されました。
342 ◆ymCx/I3enU :2011/07/07(木) 23:29:13.34 ID:2cHf1bTe
投下終了です
343 ◆VxAX.uhVsM :2011/07/07(木) 23:31:57.70 ID:K23+u/KQ
投下乙です。
浦安キャラがどんどん…小鉄頑張れ、超頑張れ。
では自分も投下します。
DOL3rd14話 未来のロボットと呪われた少年
登場人物:ドラえもん、佐々木いちろ
344未来のロボットと呪われた少年 ◆VxAX.uhVsM :2011/07/07(木) 23:32:46.80 ID:K23+u/KQ
「のび太くーん!ジャイアーン!しずかちゃーん!スネ夫ー!…皆どこなの?」

青い狸…いや、ネコ型ロボットのドラえもん。
彼は自分の仲間を探して歩き回っていた。
しかし、彼がどれだけ探していても見つからない。
すると、一人人間を見つける。

「よし、声をかけよう……すみませーん」
「ん?……って、うお!?なんだこいつ…まさか七不思議…タヌキのなんてあったか…?」
「僕は狸じゃないよ!失礼な!」
「え……そうなの?」
「そうだよ!」

案の定…そう言えるような会話だった。
ドラえもんがあった少年…佐々木いちろ。
彼には秘密がある。
「こっくりさん」をやって、呪われた。
そんな彼にはこの事件で、大事な物が一つ出来た。
彼女…鈴木とおこである。
自分は、彼女のためなら何だってする。
それが、人殺しでも。

「じゃあ、あの…すみませんが、脱出を目指しているんですが、協力してもらえませんか?」
「……うん!よろしく!僕はドラえもん!君は?」
「佐々木いちろ…よろしく」

一体のロボットと一人の少年。
彼らが手を組んだら、一体どうなるのだろうか。
少なくとも、普通の事にはならないのであろう。

【真昼/E-3】
【ドラえもん】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品、不明支給品(1〜2)
[思考・行動]
基本:殺し合いからの脱出。
1:いちろ君と行動。
2:のび太くん達との合流。
[備考]
※願いは不明です。
※参戦時期は未定です。
【佐々木いちろ】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品、不明支給品(1〜2)
[思考・行動]
基本:とおこと帰る。そのためなら何でもする。
1:青狸…ドラえもんと行動。
2:まずは遠子と合流する。
[備考]
※願いは不明です。
※参戦時期は本編終了後です。
345 ◆VxAX.uhVsM :2011/07/07(木) 23:33:23.82 ID:K23+u/KQ
投下終了です。
ドラえもんはどうあがいても絶望(のび太的な意味で)
346 ◆9QScXZTVAc :2011/07/08(金) 13:07:49.99 ID:ECBqUBUd
自分も投下します
オリ版権ミックスロワ第8話:信頼と安全の同盟
登場:西郷銀蔵、久瀬英樹、蓬莱山輝夜
347 ◆9QScXZTVAc :2011/07/08(金) 13:23:15.44 ID:ECBqUBUd
面倒な事になったなーーーー。
と、単なる農家を営む70代前半くらいの男性、西郷銀蔵は嘆息した。
戦争を経験してきた彼にとってあんな惨劇は見慣れているといえば見慣れているのだが、今回は『遊戯』として人の命を弄ぶ本物の屑が相手だ。
屑というのは侮れない。どんなに卑劣な行為をしてでも勝ちに固執するのは、極限の状況において最悪の敵ともいえる。

西郷はディパックからIMIマイクロウージーを取り出し、慣れた手付きで構えてみせる。
未だ、腕は鈍っていないようだ。

「貴方」

透き通るような声がした。声の先に居たのは、長い黒髪に美しい和服、しかしそれに負けない可愛らしさを持つ少女であった。が、どこか妖艶な雰囲気も醸し出している。

「何者だ。只の女児(おなご)では有るまい」

IMIマイクロウージーの銃口を躊躇なく少女に向ける。一方の少女は若干怪訝な顔をしたがすぐにまた不敵な笑みを浮かべる。

「私は月の都の姫君、蓬莱山輝夜。……いきなり攻撃的なのは感心しないわね」

「月の都…?馬鹿馬鹿しい、竹取物語とでも言うつもりか。わしは殺し合いには乗らないつもりだが、お前のような危険は排除させて貰う」

悪く思うな、と引き金を
348 ◆9QScXZTVAc :2011/07/08(金) 13:37:13.62 ID:ECBqUBUd


ーーーーー引けなかった。


引く前に、無数の光が西郷の全身を蹂躙し、爆散させたのだ。
五つの難題『ブリリアントドラゴンバレッタ』ーーー俗に言う『弾幕』。
いくら実践経験を積もうが、体が農業による労働で弱りきった西郷に避けられるものでは到底なかったのだ。

「そう、残念ね。でも貴方の意見には賛成よ」

輝夜の『五つの難題』にはかなりの弱体化が見られていた。いつもの威力ならそれこそ反則的な威力で全てを粉々にしてしまうだろう。
あの二人は殺す。
永遠亭で穏やかな暮らしを送っていた時を脅かした報いはしっかりその身に刻みつけて、たとえ地獄の業火で焼かれようと忘れられないほどの恐怖を与えてやる。
そうと決まればまずは主催の居場所を、と考えた刹那。

「動かないでくれ。動けば撃つ」

失敗した、と輝夜は思った。
自分はあれだけ派手に老人を殺したのだから、気付かれるのが当たり前なのに。

「聞かせてくれ。何故あの爺さんを殺した」

「ああしなかったら殺されていたからよ。私はまだ死にたくない。説得が効かないような奴まで説得してやる義理はないわ」

「……殺し合いには」

「乗ってない」

「ーーーーそうか。悪かったな」
349 ◆9QScXZTVAc :2011/07/08(金) 13:48:46.46 ID:ECBqUBUd
俺は久瀬英樹だ、と声は言った。
振り向くと、黒髪を短く生やしている眼鏡の青年がデリンジャーを持っていた。

「私は蓬莱山輝夜。月の都の…って言っても分からないわね」

「しばらく一緒に行動しよう。ただし人はなるべく殺すな」

【深夜/d-3】
【蓬莱山輝夜】
基本:主催者を殺して元の世界に帰る。
1:英樹と行動する。
2:襲われたら容赦はしない。
※蓬莱人としての性質は封印されています
※『五つの難題』は大幅に威力が低くなり、一回につき一時間のインターバルがかかります

【久瀬英樹】
基本:主催者を討つ。
1:人はなるべく殺さない。
2:蓬莱山を守る。


【久瀬英樹】
18歳の眼鏡少年。何故か状況への対応力が異常に高い。
ある意味冷めているともいえる。
350 ◆9QScXZTVAc :2011/07/08(金) 13:49:26.60 ID:ECBqUBUd
投下終了です
351 ◆9QScXZTVAc :2011/07/08(金) 16:19:45.00 ID:ECBqUBUd
ミスです。先ほどのssに
【西郷銀蔵@オリキャラ】  死亡
【残り42/45人】
と付け足しておいてください。
投下します
オリ版権ミックスロワ第9話:男は吠える、あの空に
登場:長谷川忠広、鰐塚処理、持田由香、賢木俊一郎
352 ◆9QScXZTVAc :2011/07/08(金) 16:34:22.79 ID:ECBqUBUd
「畜生…、俺が何したってんだ。ちょっとロリ盗撮しただけじゃねえか」

男ーーー、長谷川忠広はド変態のロリコン野郎である。今までに幾度となく幼女誘拐・幼女への痴漢行為・幼女盗撮などで刑務所(少年院)にぶち込まれている27歳童貞である。
顔は上の下くらいなのだが、いかんせん性格が変態すぎて誰も寄ってこなくなった。
そんなどうしようもない変態がこのゲームで取ろうとした行動は、

「しかし、殺し合いにロリが紛れていたらどうする気なんだ!あの年増共ぶっ殺してやる!」

………何度も言うがド変態である
彼はおもむろに支給品をチェックするが、入っているのは全部一の目のサイコロ、八朔など正直いらない物ばかりであった。

「クソッたれぇぇええええ!何か俺に恨みでもあんのかよ!?」

叫んでいると、唐突にドゴッ!という衝撃が長谷川を襲った。

意識が霞むが、気をしっかり持ち襲撃者を見る。
若い男だった。整った顔立ちに、片手には明らかな凶器ーーースパナ。

男は二発目を降り下ろそうとする。
しかし、長谷川がそれを逆に掴み、手首をひねって奪い取る。
昔長谷川にまだ希望を抱いていた親に通わされていた護身術が役に立った。
353 ◆9QScXZTVAc :2011/07/08(金) 16:49:34.26 ID:ECBqUBUd
「形勢逆転だな」

「ーーーーー馬鹿だな、お前」

ダァン!という破裂音が響き、長谷川の右肩に穴が開いた。
男はベレッタM92を構えて不敵な笑みを浮かべている。

「がっ…てめ……!」

「体勢を崩したままじゃあ狙いがつかねえな。だが次は外さない」

狂気の目だった。間違いなくこちらを殺しにくる。

一か八か、スパナを持って対応しようとしたとき、一発のゴム弾が男のこめかみを正確に捉え、男を跳ね飛ばした。ゴム弾とはいえ、人間がもらえば気絶する威力だ。
ゴム弾を撃ったのは、片目に眼帯をして髪をポニーテールにした少女で、その傍でおびえたような瞳で男を見ている幼稚園児のスモッグのような衣服を着た少女の姿もあった。

「説明は後です。気絶している時間も長くはありません…逃げますよ」

「誰……がぁッ!気絶してるって…?」

男はふらつきながらも立ち上がる。長谷川たちは走り出すが、後から銃声が連続して聞こえる。当たるかどうかは正に賭け。ひたすらに方向転換を繰り返して、森林の中でようやく撒いた。

「…悪いな、助かった」

「礼には及びません。…そうだ、私は鰐塚処理と申します」

「長谷川忠広だ。……」
354 ◆9QScXZTVAc :2011/07/08(金) 17:02:41.61 ID:ECBqUBUd
明らかにそわそわしながらもう一人の少女ーーー持田由香を横目で見ている長谷川。

「えっと…そちらのロr……女の子は?」

ロr?と不思議そうな顔をする鰐塚だが、隣の由香の紹介をしていなかったな、と思い出す。

「この子は持田由香。何かと危なっかしいので護衛しています」

「よろしくお願いします…、長谷川さん」

「……いっただきまビブゥッ!?」

ゴム弾が長谷川の腹に炸裂した!クリティカルヒット!
ピクピクと痙攣する長谷川だが、異常な生命力で飛び起き、

「何しやがる!!」

「あ、いや何か衝動的に」

ひどい!何この仕打ち!と悶える長谷川をよそに鰐塚は、「最近の人間はゴム弾を喰らった程度では気絶しないのか?」と不思議そうな顔をして、由香は訳が分からないといった風だった。
自己紹介が終わったのはいいがさすがにゴム弾を腹に受けてすぐには動き回れねえよ!という長谷川の主張(絶叫?)により、もう少し休憩することになる。
こうして彼らは殺し合いにおいて最も暢気なスタートを切った。

ちなみに後で由香が中学二年生だと本人から聞いた時には二人とも飲んでいた水をもれなく吹き出した。
355 ◆9QScXZTVAc :2011/07/08(金) 17:16:36.38 ID:ECBqUBUd
【長谷川忠広】
基本:主催者は許さない。
1:なん…だと……?
2:由香は超スーパーウルトラアルティメット守りたい。というかロリは守る。

【鰐塚処理】
基本:主催者を倒す。
1:この子が私の一つ下…?
2:人吉、球磨川と合流したい。
※参戦時期は少なくとも財部が球磨川に倒された後です

【持田由香】
基本:誰にも死んでほしくない。
1:処理さん、長谷川さんと行動。
2:刻命裕也、森繁朔太郎を警戒。
※原作終了後からの参加です


「………チッ、逃げられたか」

男ーーー、賢木俊一郎は長谷川や鰐塚たちを見失ったことに舌打ちする。
面倒な事になってしまった。折角『神人』を皆殺しにして、『あいつ』の無念を晴らして更に香織も救ってやろうと思っていたのに台無しになってしまった。
しかも、参加者には香織の名前がある。更には神人にして彼が最も憎む最悪の敵、櫛名田眠とそれを擁護する少年、九澄博士。
櫛名田眠は殺す。遅かれ早かれ決定していたことだ。
九澄博士。神人にとって最も強烈な誘惑となる少年。
彼は救いたくはあったがそこまでの思い入れはない。悪いが、殺させて貰おう。
生き残れるのはたった一人しかいない。
356 ◆9QScXZTVAc :2011/07/08(金) 17:22:46.46 ID:ECBqUBUd
首輪がある限り脱出などは不可能。ならば、彼は一つの目的に生きることにした。

ーーー真名香織を生還させる。

今までの神人討伐計画は無駄になってしまうが、彼は香織を守りたかった。香織を優勝させて、自害する。そう決めた。

しかし、賢木は知らない。
その真名香織が既に最悪の殺人鬼に殺害されていることを。

【賢木俊一郎】
基本:真名香織を優勝させて自害する。
1:櫛名田眠は必ず殺す。
※解答編、クーデターを起こす前からの参加です





投下終了
357 ◆VxAX.uhVsM :2011/07/08(金) 21:52:36.51 ID:gTzDbSfw
投下乙です。
長谷川は対主催…しかしロリコ(ry
では投下します
Re:DOL2話 それが「定め」よ
登場人物:青木林、志村新八、骨川スネ夫
358それが「定め」よ ◆VxAX.uhVsM :2011/07/08(金) 21:54:25.91 ID:gTzDbSfw
「銀さーん!どこですかー!」

B-2スーパー付近。
志村新八はこの場に呼ばれている自分の仲間である坂田銀時を探していた。
少しでも早く探し出せば、高杉への対策を立てられる。
そして、白夜叉と言われるほどの強さ。

「銀さんがいれば…絶対に殺し合いなんか止められる…!」

新八は、また声を上げて探し始めた。
と、声を上げてすぐに

「あの…そこの人ちょっと良いですか…」
「う、うおおおおおおおおおおお!!!待って!待って!僕を殺してもいいことなんかあああああああああ!!」
「………落ち着いてくださいよ」

黒い髪に凛とした顔立ち。
彼の名前は青木林。
彼もこの殺し合いを止めるために動いていた。

「えーと、俺は青木林って言います…貴方は何と言う名前ですか?」
「あああああああああ!!……ごめんごめん、僕は志村新八…この殺し合いには乗ってないよ」

新八がすぐに落ち着きを取り戻す。

「えーと、情報交換でもしませんか?」
「あー、うん…良い情報なんてないけどね…」

二人はすぐにその場に座って、情報を交換しようとする。
すると、そこに一人の人影が現れた。
その影は、ナニカを二人に向けると、人差し指をゆっくりと…。

引いた



   ◆         ◆
359それが「定め」よ ◆VxAX.uhVsM :2011/07/08(金) 21:55:00.19 ID:gTzDbSfw



パァン

乾いた音…。それが銃声と気付くのに時間はいらなかった。
青木林はすぐに立ち上がる。

「新八さん!逃げますよ!」
「う、うん!分かった!」

二人はすぐにその場から離れる。
それはこの状況に置いて正解である。
二人の姿はすぐに見えなくなり、この場には一人が残った。

「チッ…逃したか…」

角ばった顎、狐のような顔、骨川スネ夫はワルサーPPKを持ち木陰から出る。

「ドラえもんが殺される前に…あいつらを殺さないと…!」

彼は心底から狂っていた。
この極限の状況、正しい判断が出来ないのは当然である。

「早くドラえもん達を見つけよう…!」

心底狂った彼は歩き始めた。
絶望への道を、一歩づつ。

【B-2スーパー前/朝】
【骨川スネ夫@ドラえもん】
[状態]健康、精神不安定
[装備]ワルサーPPK(5/6)
[所持品]基本支給品、ワルサーPPKのマガジン(3)
[思考・行動]
基本:ドラえもん達と帰るために邪魔な奴を倒す。
1:ドラえもんと合流する。



   ◆         ◆
360それが「定め」よ ◆VxAX.uhVsM :2011/07/08(金) 21:55:24.54 ID:gTzDbSfw


「はぁ…助かった…のか…?」
「らしい、ですね…はぁ…」

新八と青木林はどうにか逃げていた。
周りには誰もいない。

「……行きましょう、新八さん」
「分かった、行こう」

こちらには、希望の小さな光が二つ。
少しづつ、殺し合いへと対抗する力を得ていた。

【B-2/朝】
【青木林@オリキャラ】
[状態]身体的疲労(小)
[装備]なし
[所持品]基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・行動]
基本:この殺し合いに対抗する。
1:新八さんと行動。
2:友と百合と滝本先生と合流する。
【志村新八@銀魂】
[状態]身体的疲労(小)
[装備]なし
[所持品]基本支給品、不明支給品(1〜3)
[思考・行動]
基本:この殺し合いに対抗する。
1:林君と行動。
2:銀さんと合流する。
[備考]
※原作歌舞伎町四天王篇終了後の参戦です。

≪オリキャラ紹介≫
【名前】青木 林(あおき りん)
【年齢】14
【性別】男
【職業】中学生
【性格】熱血漢…とは言えないが熱い
【身体的特徴】肩ほどの長さの黒い髪
【服装】中学校の制服
【備考】DOL本家にて一話死亡
361 ◆VxAX.uhVsM :2011/07/08(金) 21:55:43.07 ID:gTzDbSfw
投下終了です。
362 ◆ymCx/I3enU :2011/07/08(金) 22:13:21.91 ID:Jun8M75m
投下乙です。おお、今度は二人共生き残ったか、これからどうなる?
しかしスネ夫は相も変わらず…。

投下します。俺得5 32話 かつて夢見た美しき
登場:テト、沖田総悟、ノーチラス
363かつて夢見た美しき ◆ymCx/I3enU :2011/07/08(金) 22:14:07.52 ID:Jun8M75m
32話 かつて夢見た美しき

病院を訪れていたテトは二階通路にて二人分の死体を発見する。
青年と少年の死体。少年の方は頭を銃で撃ち抜かれたらしく無惨な状態だ。
もっとも今のテトにとっては特に気になるものでも無かったが。
無言で、死体の傍に落ちていた拳銃とスタンガンを拾い上げる。
更に青年のデイパックから拳銃のマガジンも入手した。

「……」

死体を一瞥すると、テトは一階へ戻るため階段を目指す。

……

自動ドアをくぐり、沖田総悟とノーチラスは病院のロビーへと入る。
特に変わった所は無い、ごく普通の病院のロビー、と言った感じの風景だった。

「とりあえず一階から見てみるかィ」
「ああ」

受付奥の事務室を皮切りに順に一階の部屋を調べて行く二人。
診察室、心電図室、医療相談室、喫煙室、職員食堂、厨房、リハビリ室、トイレ。

「誰もいねェみてェだな…二階行くか」
「良し…」

一階に人影が見当たらないと見た二人は二階を探索するため階段を目指す。
そして階段付近に差し掛かった所で、階段を下りてくる人影を発見する。

「! テト…」
「あァ? あいつが…お前のクラスメイトの一人の…」
「ノーチラス君…と…」
「…俺は沖田総悟。ノーチラスと一緒に行動してンだ」
「……そう」

沖田総悟の名前を確認した直後。
テトは持っていたイングラムサブマシンガンの銃口を真下の二人に向けた。

「「!!」」
「悪いけれど、死んで」

テトがイングラムの引き金を引く。

ダダダダダダダダダダッ

無数の.45ACP弾が銃口から放たれる。
総悟は間一髪で銃弾の雨を避けたが、ノーチラスはその身を灼熱の雨に穿たれる。

「があ…あ…!」
「ノーチラス!」

口から血を吐き、狼の少年は持っていたロシアンマチェットを床に落としその場にうつ伏せに倒れた。

「野郎…!」
「…まさか避けるなんて」

かなり至近距離だったのにも関わらず、銃弾の雨を回避した、
恐らく自分と同年代と思われる黒い服を着た少年にテトは驚きつつも、
即座に空になったイングラムのマガジンを交換しようとする。
しかし、それよりも総悟が刀を構えテトに突進するのが早かった。
364かつて夢見た美しき ◆ymCx/I3enU :2011/07/08(金) 22:14:46.63 ID:Jun8M75m
(こいつは危険だ…女みてぇだが、容赦はしねぇ、ここで斬る)

灰色の猫の少女を危険人物と判断した総悟は、一気に叩き斬ろうと刀を振り被った。

「…私の武器はこれだけじゃない」

しかしテトは余裕だった。
左手を総悟に向け翳すと、次の瞬間、電撃が総悟に襲い掛かった。

「ぐあああ……っ!?」

突然の身体中に走る衝撃に、総悟は為す術も無く吹き飛ばされる。
その時、刀も遠くに落としてしまった。身体を動かそうとしても、痺れと激痛で上手く動かない。

「がはっ……な…に……しやがった……このアマ……!」
「はぁ、はぁ、はぁ…ちょっと…力を使ったのよ。私は…特別な力を……ある程度、使える、から」

疲弊したように息を切らしつつも、テトはイングラムのマガジンを交換し、
床に倒れる総悟に歩み寄る。そして総悟の傍まで来ると銃口を向けた。

「沖田、総悟君だったね…あなた、中々強い、みたいだけど…はぁ…はぁ……。
油断、したわね……何か、言い残す事はある?」
「……さっさと、殺しな」
「……そう。じゃあ」

(へっ、ざまァねェ…ここで終わりとはなァ…万事屋の旦那、新八君、チャイナ娘…あんたらはどうか、生きて帰ってくれよ……)

ダダダダッ!!

四発の銃弾が、総悟の心臓と肺を撃ち抜き、総悟の意識は途絶えた。

「…これで何人目かな」
「…まだだ、まだ終わらんよ」
「え?」

聞き覚えのある青年の声が聞こえた。
衣服の腰の辺りが掴まれた。次の瞬間。

テトの衣服が消滅した。

テト は ぜんらに なった!

「……今度は、前よりマシな死に方…じゃねぇけど……冥途の土産には良いな……テトの…裸……」

最期の力を振り絞り、自分の能力でテトを全裸にしたノーチラスは、
それを言い切ると、床に崩れ落ち、今度こそ、もう動かなくなった。
365かつて夢見た美しき ◆ymCx/I3enU :2011/07/08(金) 22:15:18.66 ID:Jun8M75m
「……」

しばらく状況が飲み込めなかったテトだったが。

「…ああああああああああぁあぁあああああああああああああ!!!!?」

絹を裂くような悲鳴を上げるまでそう時間は掛からなかった。


【沖田総悟@銀魂:死亡】
【ノーチラス@自作キャラでバトルロワイアル:死亡】
【残り:24人】


【朝/F-3病院:一階階段付近】
【テト@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]全裸、パニック、肉体疲労(大)、軽い火傷、精神に異常
[装備]イングラムM10(28/32)
[持物]基本支給品一式、イングラムM10のマガジン(4)、焼夷手榴弾(3)、洞爺湖の木刀(血塗れ)@銀魂、果物ナイフ、
ベレッタM92FS(12/15)、ベレッタM92のマガジン(3)、スタンガン(違法改造済、残りバッテリー75%)
[思考・行動]
0:皆殺しにする。主催者も殺したい。
1:(パニック中)
2:クラスメイトの中でも太田太郎丸忠信、愛餓夫、壱里塚徳人、吉良邑子は惨たらしく殺す。
[備考]
※本編最終話直後からの参戦です。
※能力は特に制限されていないようです。
※相馬祐実の容姿を記憶しました。
366 ◆ymCx/I3enU :2011/07/08(金) 22:15:50.80 ID:Jun8M75m
投下終了です。
367創る名無しに見る名無し:2011/07/09(土) 08:28:04.83 ID:dXxegHy6
投下乙
よくやったノーチラス。
368 ◆9QScXZTVAc :2011/07/09(土) 14:04:31.52 ID:50+wZrDl
投下します
オリ版権ミックスロワ第10話:今宵狂いし道化
登場:森繁朔太郎
369 ◆9QScXZTVAc :2011/07/09(土) 14:23:46.28 ID:wcJ+qZIP
「繭……繭ゥ」

森繁朔太郎は、壊れていた。
もっともそれはこの殺し合いにおいてそうなった訳ではない。『篠崎サチコ』の呪いーーーーー天神小学校にて、彼は後輩であり、妹のような存在を失った。
何の因果か、自分は他人の不幸としてそれを写真に納めていたのだ。

潰された、死体。
臓物(ハラワタ)を撒き散らし、顔の判別もつかない死体。
彼が見てきた死体の中でも、一際無惨な死体。


ーーーーーみないで


「やめろ………」


ーーーーーわたしの、


「やめろぉぉおおおおお!」


森繁の絶叫だけが響きわたって、やがて静寂が訪れる。
襲ってくるのは、不思議と恐怖心ではなかった。

あの時、繭を守れなかった。なら、今回は僕が優勝して繭を生き返らせよう。

参加者名簿を冷静な面持ちで眺める。そこにあった名前で知っているのは『持田由香』『篠崎あゆみ』の二人。どちらにも自分が危険人物だと悟られているのは厄介だな、と舌打ちをする。
他の名前と写真を見ると、不可解なものに気付く。

「獣人……?何だそれ……?」

驚くのも無理はない。
森繁朔太郎の居た世界には獣人などという種族は存在していなかったのだから。
370 ◆9QScXZTVAc :2011/07/09(土) 14:37:25.73 ID:KabxwTQ1
だが、もしもそんな種族が実在するなら。狼や獅子の力に襲いかかられたなら生きてはいられないだろう。先手必勝で攻撃して殺すのが一番安全な方法だ。

幸い、森繁の支給品にはまさしく獣に対する最高の凶器、銃が支給されていた。
銃の型番はコルトガバメント。
これで狙い撃ちすれば、いくら狼の戦闘能力の高さを保ってしても逃れられない致命傷を与えることができるだろう。

ーーー運に恵まれている。

弱者をなるべく狙って殺して、少しずつ人数を減らしていく。
壊れた少年は堕ちていく。どこまでも、底へ底へと。

【深夜/d-1】
【森繁朔太郎】
基本:優勝して繭を生き返らせる。
1:弱者を優先して殺していく。
2:獣人に注意するが、見かけたらなるべき殺していく。
※錯乱した後からの参加です
371 ◆9QScXZTVAc :2011/07/09(土) 14:38:41.93 ID:KabxwTQ1
投下終了です
372 ◆YR7i2glCpA :2011/07/09(土) 22:06:57.32 ID:gUh0fUOH
投下乙です。
自分も投下します。

ごちゃ混ぜロワ 30:誤解が生んだ爆炎
登場人物:中在家長次、黒崎朝美、いつき
373誤解が生んだ爆炎 ◆YR7i2glCpA :2011/07/09(土) 22:07:51.80 ID:gUh0fUOH
中在家長次は、忍術学園に入学した時は良く笑う朗らかで闊達な少年だった。
だが忍術学園で過ごした六年間の間についた多くの傷。
それらは少年から笑顔を奪っていた。
否。
中在家長次は笑いを捨てたわけではない。
笑うと全身についた傷跡が引きつり激痛が走る。
それでも彼が笑う時とは――



「………」
中在家長次の前にあるのは、二つの女性の死体。
どちらもまだ若い。
そっと触れると、まだ生きていた頃の温かみが感じられた。
その現実が、中在家長次の心に重くのしかかる。

自分は、何をしていた。
何故、もっとここに早く来なかった。
そうすれば、この二人は死なずに済んだのではないか?

中在家長次は、怒った。
殺し合いを強要させたメガネの男に。
殺し合いに乗った存在に。
そしてなにより
その殺し合いの場に立たされていながら何もできなかった自分に激しく怒っていた。
374誤解が生んだ爆炎 ◆YR7i2glCpA :2011/07/09(土) 22:08:29.25 ID:gUh0fUOH



「…ふへっ」
長次の口元が歪む。
口の端が持ち上がり、不気味な声が起きた。
「………ふへへへへへへへへへ…」
長次は、たまに笑う。
それも、その心にある激しい怒りを表すために。
長次は優しい人間だった。
非情になるべき時は非情になれるが、それでも彼はまだ15歳。(とてもそうは見えないが)
その彼が、立ち上がろうとしている。
だが、その姿はとても不気味なもので――



「キャアアアアアアアアアアア!!」

墓場に響く、少女の悲鳴。
長次がその方を向くと、何か大きなものを持って一目散に逃げていく緑髪の少女の姿が確認できた。
長次は放っておくわけも行かず、デイパックを担ぐと駆けだした。
すまぬ、すまぬと少女の死体に心で詫びを入れながら。
375誤解が生んだ爆炎 ◆YR7i2glCpA :2011/07/09(土) 22:09:02.72 ID:gUh0fUOH



ただ、怖かった。
ただただ、怖かった。
鳴滝荘で共に過ごしてきた桃乃恵が死んだ。
いや、殺された。
その現実はあまりにもえげつなく、黒崎朝美の心をえぐった。
ただ、恐怖の感情のみが朝美の心を満たしていた。
恐怖の感情に支配されたまま当てもなくふらふら歩いていた朝美は出会ってしまった。
血だまりの墓場に倒れ伏す二人の少女に。
その少女の前で不気味に笑う、大男に。
それを見た瞬間、黒崎朝美の感情は――決壊した。

叫んだ。
涙があふれた。
ただ、逃げ出した。
あの大男に、自分も殺される。
恐怖が、どんどんと心をむしばんでいく。
376誤解が生んだ爆炎 ◆YR7i2glCpA :2011/07/09(土) 22:09:36.35 ID:gUh0fUOH

ざざざ、と後ろから音がした。
涙で滲む目で振り返ると、そこにはあの大男が猛烈なスピードで朝美を追いかけてきていた。



長次としては、誤解を解きたかった。
長次はこの殺し合いに乗る気は全くない。
だが長次の姿を見て、あの緑髪の少女は逃げ出した。
恐らく、いやきっとあの少女は誤解している。
自分があの二人の少女を殺した、と。
その誤解はなんとしてでも解かねばならない。
長次の顔に、もう笑みはない。
あるのは、真剣な眼差し。



物凄いスピードだ。
普通の中学一年生にすぎない朝美の脚力ではもう1分もしないうちに追いつかれてしまうだろう。
それだけは、ダメだ。
追いつかれたら、殺される。
377誤解が生んだ爆炎 ◆YR7i2glCpA :2011/07/09(土) 22:10:11.33 ID:gUh0fUOH

朝美の手にあった大きなもの……それはグレネードランチャー。
はじめ朝美はそれを見たとき、これは絶対使っちゃ駄目なものだと理解していた。
これは人を殺すものだ。
実物を見たことはない朝美でも、それが何であるのかは分かっていた。
とはいえ捨てるわけにもいかなかった。
自分が捨てた武器で誰かが傷つく可能性だってあったし、それにこの武器を捨ててしまったら自分を守るものは何もなくなってしまう。
朝美のデイバックに入っていた支給品はこれだけだったのだ。

撃つのか?
一瞬浮かぶ、黒い感情。
この引き金を引けば、あの大男を撃退する事が出来る。
朝美は、この武器の威力を知らない。
それゆえに、想像でしかこの先は測れない。
一つの判断ミスも許されないこの状況の中、朝美は涙をふるった。
そして、向かってくる大男の方を向いて、銃身を足元に向けた。
脚なら、もし万一当たっても致命傷になる事はない。
そう、朝美は思っていた。

(お願い、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん……皆、勇気を貸して!!)



引き金が、絞られた。
378誤解が生んだ爆炎 ◆YR7i2glCpA :2011/07/09(土) 22:10:55.56 ID:gUh0fUOH



爆炎が立ち上る。
轟音が、耳を突き刺す。
「あ、ああ……」
朝美の目の前にいた男は、どうなったのか朝美には分からない。
ただ、自分の撃ったグレネードランチャーの想像以上の破壊力に、朝美はショックを受けていた。

撃った。
自分が、撃った。
今思うと、あの男が二人の少女を殺した確証なんてどこにもなかったじゃないか。
そんな男を、私は撃った。
「……うあ…」
さっきまで流していた涙とは違う涙が、つ、と朝美の頬を伝った。
がっくり、と脚の力が抜け膝から地面につく。
朝美の意識は、暗闇の中へと落ちていった。
379誤解が生んだ爆炎 ◆YR7i2glCpA :2011/07/09(土) 22:11:27.76 ID:gUh0fUOH



「…今の音は?」
突然の轟音と火薬のにおいは、かつて自分も巻き込まれた戦場のそれを思い出させる。
いつきはその小さな体で爆音の上がった方へと走った。
「…!!」
そこには、火薬のむせかえるような匂いと焦げた大地、そしてその前で倒れ伏す緑髪の少女がいた。
「大丈夫だか?!しっかりするだよ!」
返事は、返らない。
その様にいつきは一瞬死んでいるのかとも思ったが、息はあるし、目立った外傷もない。
その事にいつきは胸をなでおろすと、朝美を背負い安全な所を目指し歩き出した。
その安全な所があるのかどうかは分からなかったが、このまま放っておくわけにもいかなかった。
380誤解が生んだ爆炎 ◆YR7i2glCpA :2011/07/09(土) 22:12:02.04 ID:gUh0fUOH



「…くっ。」
一方、自分の知らない武器による爆撃を受けた長次は西へと歩いていた。
グレネードランチャーの爆撃で左足に火傷を負ってしまったが、日々の鍛錬の賜物か、命に別条は無い。
本当は墓場の二人の少女の遺体を弔いたかったのだが、いま自分の手当てをしなければ自分が弔われる側に回ってしまう。
幸い、西の方には湖がある。
そこでなら治療をするに必要な水も豊富にあるだろうと長次は思っていた。
痛む身体に鞭を打ち、長次は歩き出す。
すまない、という謝罪の念を胸に抱いて。
381誤解が生んだ爆炎 ◆YR7i2glCpA :2011/07/09(土) 22:13:07.38 ID:gUh0fUOH





【F−6墓場/1日目朝】
【中在家長次@忍たま乱太郎】
[状態]:左足に火傷(中度)、体力消耗(小)、悔恨の念
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式(アイテム確認済み、治療に役立ちそうなものはありませんでした)
[思考]1:E−6の湖に向かい、脚を治療する。
   2:二人の少女の遺体(みか、福沢)を弔いたい。
   3:緑髪の少女(朝美)の誤解を解きたい。
   4:殺し合いには乗らない。

【黒崎朝美@まほらば】
[状態]:気絶中、精神的ショック(大)、いつきに背負われている。
[装備]:グレネードランチャー@のび太のBIO HAZARD(弾数不明)
[道具]:基本支給品一式
[思考]1:ごめんなさい……
   2:お母さんに会いたい。

【いつき@戦国BASARA】
[状態]:健康、朝美を背負っている
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式(アイテム確認済み)
[思考]1:殺し合いなんかには乗らねえ。
   2:女の子(朝美)を安全な所まで連れていく。
382創る名無しに見る名無し:2011/07/09(土) 22:13:16.41 ID:F1MT344h
支援
383◇YR7i2glCpA 氏代理:2011/07/09(土) 22:18:23.68 ID:F1MT344h
【支給品情報】

【グレネードランチャー@のび太のBIO HAZARD】
黒崎朝美に支給。
グレネード、すなわち手榴弾を打ち出す重火器。
出典元が出典元のため、小学生にも扱う事が出来る。


投下終了です
384 ◆ymCx/I3enU :2011/07/09(土) 22:40:06.62 ID:Z0LYduUh
投下乙です おおう誤解かえ
投下します 俺得5 33話 It goes to the surface danger area
登場:宮本春樹、クライヴ、シルヴィア、サーシャ、大谷裕次郎、レオポルト
385It goes to the surface danger area ◆ymCx/I3enU :2011/07/09(土) 22:41:28.90 ID:Z0LYduUh
33話 It goes to the surface danger area

「ん……」

森の中を軽トラックを運転し走らせていた宮本春樹は、人狼と少年と思しき竜種を発見する。
見る限りでは――――人狼が竜少年を性的な意味で襲おうとしているように見えた。

「おい、お前ら」
「ん、どうした春樹……ん?」
「あれは…」
「どうしたの…えっ」

荷台に乗っていた四人も気付いたようだ。
遠方で、少年(竜だが)が、大人(人狼だが)に襲われようとしている。性的な意味で。
これを見て見ぬ振りが出来る者は一人もいなかった。

「…お前ら」
「分かってる」
「良いよ」
「うん」

五人の意見は一致した。

……

「やっぱり我慢できねぇ、ここでお前を犯す」
「い、嫌だあ…」

嫌がる少年竜、大谷裕次郎の尻を無理矢理犯そうとするのは茶色の人狼レオポルト。
尻尾を上げ、その部分を露わにさせそこにいきり立つ己自身を宛がう。

「覚悟しな…もう逃れられねぇよ、呑まれちまえば楽になるぞ」
「さようなら、僕のお尻…」

子供の力で大の大人の力に敵う筈も無く、遂に裕次郎は運命を受け入れるかの如く、
涙を流し抵抗する事を止めた。

「うへへ、よし……行くか……」

邪な大人の欲望が無垢な少年を貫こうとした正にその時。

パアーーーーーーーーーーーーーーーーーー。

「!!」
「えっ」

けたたましいクラクションの音が響き渡る。

「うおおおお!!?」
「うわっ!?」

白い古い型の軽トラックが自分に向かって猛スピードで突進してくるのをレオポルトは確認し、
思わず悲鳴を上げる。裕次郎も然り。
そして二人のすぐ手前で急ブレーキにより軽トラックは停車した。
386It goes to the surface danger area ◆ymCx/I3enU :2011/07/09(土) 22:42:22.50 ID:Z0LYduUh
「な、何だ、何だよ」

突然の事に目を白黒させるレオポルトと裕次郎だったが、
やがて軽トラックの運転席から一人の男、荷台から人狼と、獣人の女子高生二人が下りてくると、
何が起きたのかようやく理解してきたレオポルトは一気に青ざめる。
五人は全員自分に対して蔑視の眼差しを送ってきていた。

「いかんなぁ、同族として見逃せんな、青少年に対する性的暴行とは」

人狼、クライヴが拳をポキポキと鳴らしながら低めの声で言う。

「大丈夫? 君」
「うん」
「あっ、てめぇ、いつの間に!」

青色の猫の少女がいつの間にか裕次郎を保護していた。
裕次郎は少女、サーシャの胸に顔を埋め嗚咽を漏らしていた。

「おいィ、殺し合いの中だからって、何でも許されるとか思ってんじゃねぇぞコラ」
「俺も男好きだが少年には手を出さないと決めている…ゲイとしてお前と言う存在は許すまじ」
「お仕置きが必要だな」
「ま、待て待て待てこれは、その、えーと」

自分に迫る白髪猫耳少女、シルヴィアと男、宮本春樹、そしてクライヴに迫られ、
必死に弁明しようとするレオポルトだったが生憎この場を上手く切り抜けられる言い訳を考えられる程、
レオポルトは機転が利く訳では無かった。



「アッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」



森に、激しい殴打の音と、男の悲鳴が響いた。

……

「…ありがとうございます、助かりました…もう駄目だと思ってました」
「いやいや無事で良かったよ」

再び森の中を走る軽トラックの荷台。
フルボッコにされ気絶したレオポルトと、保護された大谷裕次郎を含めた荷台組が会話していた。
シルヴィアとサーシャは自分達のクラスメイトの事を裕次郎に尋ねるが、裕次郎は知らないと答えた。
彼はこの殺し合いが始まってからずっと変態人狼に連れ回されていた。
387It goes to the surface danger area ◆ymCx/I3enU :2011/07/09(土) 22:43:10.60 ID:Z0LYduUh
「ごめんなさい…分かりません」
「そうか…」
「ありがとう」
「……なぁ、放っておくのもアレだし連れてきたけどコイツ起きたらどうする?」
「…(シルビーこんな喋りだったっけ)」

ロープで縛られた気絶中のレオポルトを指差しシルヴィアがクライヴに訊く。
サーシャはシルヴィアのいつもとは違う乱暴な言葉遣いに戸惑いつつも、慣れつつもあった。

「まあ、取り敢えず裕次郎、お前を襲わせるような真似はさせんから安心しとけ」
「は、はい」
「…俺がたっぷり味わうかもしれんがなぁ(ジュル)」
「「「ぞくっ」」」

レオポルトを見ながら舌舐めずりするクライヴにサーシャ、シルヴィア、裕次郎の三人は悪寒を感じた。

「しかしいつになったら森から出れんだろうな…」

軽トラックを運転する春樹は終わりが見えない森を疎ましく思っていた。


【朝/F-5森】
【宮本春樹@オリキャラ】
[状態]健康
[装備]軽トラック(運転中)、クロスボウ(1/1)
[持物]基本支給品一式、クロスボウの矢(5)
[思考・行動]
0:殺し合いはする気は無い。脱出したい。
1:クライヴ、シルヴィア、サーシャ、裕次郎と行動。市街地に向かう。レオポルトは保留。
[備考]
※軽トラックを運転しています。クライヴ、シルヴィア、サーシャ、大谷裕次郎、レオポルトを荷台に載せています。
※シルヴィア、サーシャのクラスメイトの情報を二人から聞いています。

【クライヴ@オリキャラ】
[状態]健康
[装備]PPSh41(71/71)
[持物]基本支給品一式、PPSh41のドラムマガジン(3)、バトルアックス、レオポルトのデイパック
[思考・行動]
0:殺し合いには乗らない。襲われたら容赦しない。
1:春樹、シルヴィア、サーシャ、裕次郎と行動。市街地に向かう。
2:レオポルトを監視。
[備考]
※宮本春樹の運転する軽トラックの荷台に乗っています。
※シルヴィア、サーシャのクラスメイトの情報を二人から聞いています。
388It goes to the surface danger area ◆ymCx/I3enU :2011/07/09(土) 22:43:52.99 ID:Z0LYduUh
【シルヴィア@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]シモノフSKSカービン(10/10)
[持物]基本支給品一式、SKS装弾クリップ(3)
[思考・行動]
0:殺し合いをする気は無い。
1:サーシャ、宮本さん、クライヴ、裕次郎と行動。他のクラスメイトも一応捜す。
[備考]
※本編死亡後からの参戦です。
※宮本春樹の運転する軽トラックの荷台に乗っています。

【サーシャ@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]健康、衣服が少し汚れている
[装備]ナガンM1895(7/7)
[持物]基本支給品一式、7.62o×39R弾(14)
[思考・行動]
0:殺し合いはしたくない。
1:シルビー、宮本さん、クライヴさん、裕次郎君と行動。他のクラスメイトも一応捜す。
[備考]
※本編死亡後からの参戦です。
※宮本春樹の運転する軽トラックの荷台に乗っています。

【大谷裕次郎@オリキャラ】
[状態]肉体疲労(中)、安堵
[装備]鉄子の刀@銀魂
[持物]基本支給品一式、自主製作映画企画書@自作キャラでバトルロワイアル
[思考・行動]
0:死にたくない。
1:とりあえず安心。
[備考]
※自主製作映画企画書@自作キャラでバトルロワイアルには目を通していません。
※シルヴィア、サーシャのクラスメイトの情報を二人から聞いています。
※宮本春樹の運転する軽トラックの荷台に乗っています。

【レオポルト@オリキャラ】
[状態]気絶、身体中にダメージ、拘束されている
[装備]
[持物]基本支給品一式
[思考・行動]
0:殺し合いをする気は無いが襲われたら戦う。
1:(気絶中)
[備考]
※宮本春樹の運転する軽トラックの荷台に乗っています。
389 ◆ymCx/I3enU :2011/07/09(土) 22:44:33.40 ID:Z0LYduUh
投下終了です 死者は出さず成敗させた
390 ◆3EXev08ZCE :2011/07/10(日) 04:54:02.77 ID:vqqFuHz8
投下乙です
こんな時間ですが、久々に自分も投下します
マイナー?ロワ 第5話 ふたりはスカーフェイス
登場人物:牛尾 政美、ママタビ

今回は短めです
391ふたりはスカーフェイス ◆3EXev08ZCE :2011/07/10(日) 04:55:53.40 ID:vqqFuHz8
「刑務所とは・・・俺にぴったりの場所を用意してくれたな」

元白峰組員、牛尾 政美は牢獄の中にいた。
彼は怒りに燃えていた。いきなり首輪を嵌められ、殺し合いに巻き込まれたせいもあるが、それだけではない。
元暴力団組員の自分はともかく、無関係な一般市民を巻き込んだこと。そして、罪なき少女の命を奪ったこと。
牛尾はヤクザという職業柄、他の組との抗争で多くの人間を傷付けてきた。中には命を奪ってしまった者もいる。
だが、それでも堅気の人間にだけは一度も手を出したことはなかった。それを奴らは・・・・
誰がこんな殺し合いに乗るものか。暴れ牛の異名に懸けて、俺がブッ潰してやる。

「さて、その為にはまず」

いかに暴れ牛といえど、40人以上の参加者がひしめく会場に、何も考えずに突っ込んでいけば返り討ちにあうだろう。
正直、頭を使うのはあまり得意ではないが、そんな事を言っている場合ではなさそうだ。
まずはデイバッグの中から地図を取り出し、凝視しはじめた。

「まずは仲間を集めねぇとな。えぇと・・・俺が今いるのが刑務所だから・・・E−3か。
 この近くで人が集まりそうな場所は・・・病院だな。よし、さっそく・・・ん?」

地図をデイバックにしまい、立ち上がろうとした牛尾の眼前に現れたもの。それは耳の大きな一匹のトラ猫。
右目は失われており、額にはバツ印の傷を残し、首からは真っ赤なマントを羽織ったその姿からは、
その猫が並々ならぬ人生を送ってきたことがうかがえる。きっと元暴力団の自分にも劣らぬ修羅の道を歩んできたのだろう。

「のぅ、お主」

どこから声が聞こえた。ここには自分とトラ猫しかいないハズだが。
牛尾は背後を振り向くが、やはりそこには誰の姿もなかった。

「お主、拙者が呼んでいるのが聞こえないのか?」

いや、本当はどこから声が聞こえているのかは分かっていた。
だが、彼はその事実を認めようとはしなかった。何故なら、彼の知る常識では、その生物は人語を発したりはしないからだ。

「おお、ようやく気がついたか。拙者はマタタビと申す」

元の向きに振り返った牛尾の目に映ったのは、二本足で立ち上がり、人語を発するトラ猫の姿だった。
392ふたりはスカーフェイス ◆3EXev08ZCE :2011/07/10(日) 05:00:05.67 ID:vqqFuHz8
「お、おぅ、そうかマタタビか。俺は牛尾 政美ってんだ。よろしくな。
 ところで、マタタビ。俺と手を組まねぇか?」
「お主と?」

「ああ、そうだ。他にも仲間を集めてこんな殺し合い、俺達でブッ潰すんだよ。
 あんな連中の言いなりになるなんて、ゴメンだろ?」
「・・・うむ、拙者もキッドに恨みを晴らすまで死ぬわけにはいかないからな。
 牛尾殿、よろしくたのむ」

牛尾はマタタビと牢屋ごしにガッシリと手を握った。
まさか最初の仲間が猫、しかも喋る猫になるとは予想だにしなかったが、彼は不思議と気分は良かった。
マタタビの外見に親近感を感じたからかもしれない。

「ところでよ、さっき言ってたキッドって誰なんだ?」
「ああ、キッドか・・・拙者の右目をくり抜いた黒猫よ!
 拙者はキッドに復讐するために旅を続けてきたんだ!!」
「へぇ・・・ひどい事する奴もいるんだな」

牛尾は牢屋のドアを開けると、マタタビと並んで歩幅を合わせて、ゆっくりと病院へと歩き出した。
ここに、牛と虎の凸凹コンビが誕生した。
393ふたりはスカーフェイス ◆3EXev08ZCE :2011/07/10(日) 05:17:53.05 ID:vqqFuHz8
1日目・深夜・E−3・刑務所

【牛尾 政美@街 ー運命の交差点ー】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品(確認済み)
[思考]
基本:殺し合いを止める
1:病院に向かう
2:仲間を集める
参戦時期は、本編終了後です

【マタタビ@サイボーグクロちゃん】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品(確認済み)
[思考]
基本:殺し合いを止める
1:病院に向かう
2:仲間を集める
参戦時期は、本編登場直後です
備考:キッド(クロ)が参戦している事に気づいていません

■参加者紹介
【牛尾 政美】
関東有数の暴力団である、元白峰組員。
白峰組内でもトップクラスの喧嘩の腕を誇り、暴れ牛の異名で恐れられていた。
半年前に足を洗ったあと、宝石店の店員にプロポーズしようとしたところ、宝石強盗に巻き込まれた不幸な男。

【マタタビ】
クロの親友であり、ライバル。クロの事はキッドと呼ぶ。
かつて事後によってクロに右目を奪われており、それ以来クロを恨んでいる。
生身の猫でありながら、人語を話し、クロと互角に戦うほど強い。
394 ◆3EXev08ZCE :2011/07/10(日) 05:21:21.32 ID:vqqFuHz8
投下終了。
この二人は前から出したかった組み合わせでした
395 ◆VxAX.uhVsM :2011/07/10(日) 18:37:40.17 ID:pAia5t8+
投下乙です、クロちゃんは読んだが、あまり覚えてないな…。
投下します。
DOL3rd15話 刑事とガキ大将に降りかかる「不慮の事故」
登場人物:来須圭吾、剛田武、蝶ヶ崎蛾ヶ丸
「来須さん、何か分かりましたか?」
「いいや、何にも反応を見せない…クソ…」

A-4漁村…この場で二人の男が歩いていた。
一人は少年、剛田武……友人たちからはジャイアンの愛称で慕われている。
もう一人は来須圭吾……捜査日記の持ち主である刑事である。
来須の捜査日記は警察の情報を知るものだ。
この場に警察なんていない…。
つまり、彼の日記はほぼ無力だと言っても過言ではない。

「……まあ、どうにでもなるさ」
「のびたやドラえもんを見つけないといけないってんのに…クソッ!」

殺し合いが始まってからから約1時間…。
二人が焦るのも分かる。

「早く行きましょうよ!来須さん!」
「落ち着け…誰かいるな…」
「え?」

とある民家、そこから一人の男が出てくる。
トランプを武器として使いそうな(笑)外見をした男。
蝶ヶ崎蛾ヶ丸であった。

「私を見つけるとは…なかなかですね」
「褒め言葉ありがとさん…剛田、逃げろ」
「え…でも、来須さん…」
「良いから逃げろと言っているんだ」
「……はい」

剛田武は走ってその場を離れる。
そして、その場に残ったのは二人だけとなった。

「まったく…お前みたいな化物が最初とはな…」
「いやいや、人を化物とはひどいですね」
「化物に化物って言って何が悪い」

来須は引くことなく話す。
相手は少なくとも普通の人間ではない。
今まで相手をしてきた奴とは違う。
恐怖の念から言えば、我妻由乃に匹敵するだろう。

「まあ、とりあえず…こちらにはやるべき事があるんです」
「そうか、じゃあまたな…」
「逃がしませんよ」

蛾ヶ丸は4メートルは離れていた来須に一瞬で近づく。
来須はやむなしとして、もう一つの支給品、S&WM19を蛾ヶ丸に向けて撃つ。
しかし、その弾丸は彼を貫く事はなかった。

「な…何故だ?」
「はあ、まあ…仕方ないですよね…」
「え、な……」

来須の心臓部分に穴が開く。
そして、すぐにその場に倒れた。
蛾ヶ丸はその死体を見て、こう言い放った。


「これは、『不慮の事故』なんですから」


【来須圭吾@未来日記 死亡】



    ◆       ◇



「はぁ…クソッ…来須さん……大丈夫…か?」

A-4漁村から少し離れた場所で剛田武は隠れていた。
自分を守るために残った刑事さんを心配しながら。

「……疲れが、取れたら…ドラえもん達を探しに行くか…」

彼はまだ知らない。
その刑事が死んだ事も、野比のび太が死ぬ運命にある事も。

【真昼/A-4漁村付近】
【剛田武】
[状態]身体的疲労(中)
[装備]なし
[所持品]基本支給品、不明支給品(1〜2)
[思考・行動]
基本:殺し合いからの脱出。
1:しばらくしたらここから離れる。
2:のび太、ドラえもん達、来須さんとの合流。
3:蝶ヶ崎蛾ヶ丸を危険視。
[備考]
※願いは不明です。
※参戦時期は未定です。
※蝶ヶ崎蛾ヶ丸の容姿を記憶しました。



   ◆       ◇


「さて…球磨川さんを探さないといけないんですが…どうしましょう」

S&WM19を拾い、死体を海に沈めた彼は海を見ながら言った。

「まあ、なんとでもなるでしょう…」

いつもの冷静な彼らしくなかった。
それはこの状況での焦りか、怒りか…。
でも、彼はそれを他人に押し付けてきたはずだ。
押しつけられない、理由でもあるのか。

「よし、じゃあ行きましょうか」

ここに一人の蝶が舞う。
しかし、その生き様はまるで蛾のようである。
そんな男、蝶ヶ崎蛾ヶ丸は漁村から離れていった。

【真昼/A-4漁村前】
【蝶ヶ崎蛾ヶ丸】
[状態]健康、若干の怒りや焦り
[装備]なし
[所持品]基本支給品、不明支給品(1〜2)、S&WM19(5/6)
[思考・行動]
基本:『過負荷』の敵となる者を殺す。
1:まずは球磨川さんと合流。
2:先ほどの少年は…まあいいでしょう。
3:黒神めだか、人吉善吉は早く抹殺したい。
[備考]
※願いは不明です。
※参戦時期は生徒会戦挙会計戦前です。
※剛田武の容姿を記憶しました。
※『不慮の事故』には制限がかかっています。
●感情を他人に押し付けることはできない。
●ダメージを他人に押し付けるのは10分インターバルが必要。
●首輪の爆発は即死です。

※A-4漁村内に来須圭吾の支給品と捜査日記のレプリカが落ちています。

【支給品説明】
【捜査日記のレプリカ@未来日記】
来須圭吾に支給
未来の自分の捜査状況が記録される能力を持つ。
これにより起こる事件を事前に知ることができる。
その特性上、得られるのは当人が所属する桜見署の管轄内の情報に限られる。
そのためこの殺し合いでは機能しなかった。

【S&WM19@現実】
来須圭吾に支給
スミス&ウェッソン社が発売している代表的なリボルバー拳銃。
コルトパイソンと共に世界の警察で使用されている拳銃。
日本の警察も使用している。
399 ◆VxAX.uhVsM :2011/07/10(日) 18:40:12.48 ID:pAia5t8+
投下終了です。
ガガ○さんはチートだから規制かけないと…
400 ◆YR7i2glCpA :2011/07/10(日) 18:53:55.64 ID:sjVZmmmf
投下乙です。
では自分も投下。

ごちゃ混ぜロワ 31:クレイジータクシーという名の都市伝説
登場人物:蝶野攻爵、中村元
都市伝説、というものがこの世には存在する。
例えば、徳川埋蔵金。
例えば、某レストランのキャラクターの看板。
例えば、アポロ月面未着陸説。

中村の目の前にいる人物も、ある意味では都市伝説といっても良い存在であった。
胸元と背中が大きく開いた紫色の全身タイツ。
先程まで自分の手元にあった蝶を模したマスクは異常なほど似合っている。
そして「パピ!ヨン!」と叫んだ後の独特すぎるポージング。
その姿はイタリア彫刻のようでもあり、ある種の美しさすら中村は覚えていた。

「おい、そこの貴様。なに人の顔をじろじろ見ている。俺の顔に何かついているのか?」
突然、目の前の都市伝説が中村に話しかけてきた。
突然の事に、普段は冷静沈着な中村も動揺を隠せない。
「あ、いや、その……」
「用もないのにじろじろと見るな。失礼だぞ。」
「あ…いや、そのマスク、似合っているな、と思って見とれていただけだ。」
迂闊な事を言った、と中村は先ほどの自分の発言を後悔した。
目の前の見た目都市伝説はこの殺し合いに乗っているかどうかも分からないのだ。
それなのに自分はそいつにみすみす支給品を奪われ、空気に呑まれてその独特すぎるマスクを褒めるなんて……
だが、その中村の心配は全く的外れになった。
目の前の見た目都市伝説は――笑っていた。
それも、心の底から現れる純粋な喜びの笑みを浮かべていた。
「ほほう、貴様このマスクの良さが分かるのか?」
「…ああ、とてもよく似合っているよ。」
中村の所属するクラスには、関譲治というクラスメイトがいる。
自分が大好きでよく突拍子もない格好をする彼を見てきたから、中村はパピヨンのような奇抜な格好をした相手にも対応する事が出来たのだろう、と自己完結した。
まぁ、本音を言えばあまり考えたくなかったのだが。

「ところで、貴様はこの殺し合いに乗っているのか?」
「…いや、乗っていない。」
「そうか…俺もだ。」
「はあ…」
目の前の見た目都市伝説はどうやら本当に乗ってはいないようだ、と中村は思った。
武器になりそうなものをもってはいなかったし(強いて言うなら、その独特すぎる外見はある意味武器だったが)、その眼は嘘を言っているようには見えなかった。
中村は、目の前の都市伝説と情報を交換する事にした。



超人パピヨンは人間だった頃はIQ230を誇る『蝶』天才であった。
そしてその頭脳はホムンクルスになってからも衰えることはない。
いやそれどころかそれ以上に研ぎ澄まされていると言っても良い。
そんな『蝶』天才の彼でも、今どうして自分がこういう状況に立たされているかは理解できなかった。
命の次に大事なパピヨンマスクを奪われ、道化のように彷徨っていた数分前の彼からは考えられないほどに、パピヨンは思考を巡らせる。
パピヨンはまず、目の前の中村という老けた男から様々な情報を得たが、その中身はパピヨンの想像を絶するものだった。

中村は、パピヨンの存在する銀星市を知らなかった。
それどころか、パピヨンもその中心にいたホムンクルスの一連の事件についても中村は一切知らないと言っていた。
そんなはずはない、とパピヨンは思った。
自分でいうのもなんだが、あの一連の事件は全国に大々的に報道されるに値するようなものだと思っていたし、世俗から遠く離れた隠者ならともかく、中村はとてもそんな人間には見えない。
また、中村の言う興津という土地も、パピヨンは聞いたことはあったが、パピヨンの知識と照らし合わせるとどうも合致しない部分が多い。
これは一体どういう事なのだろうか…

「…分からんな。」
「ああ、さっぱり分からん…」
二人ほぼ同時に嘆息し、天を仰ぐ。
このまま思考を巡らせていても埒が開かないので、二人はそれぞれに支給されたものを確認する事にした。

「俺の支給品はこれだ。」
パピヨンのデイバックから出てきたのは、一振りの大きな太刀と目覚まし時計だった。
太刀はともかく、目覚まし時計なんてこの殺し合いでは何の役にも立ちそうにない。
中村は小さくため息をつくと、自分のデイバックを漁った。
「…ん?なんだこれは?」
出てきたのは一枚の折りたたまれた紙。
そこには下手くそな字で『タクシー』とだけ書いてあった。
「何だそれは?」
「俺が聞きたいよ…他には何も入っていないみたいだから…どうやら俺も二つだったようだな。」
一つは、今現在パピヨンが装着しているパピヨンマスク。
中村は自分の不運に本日何度目ともしれない溜息をつくと、その『タクシー』と書かれていた紙を何とはなしに開いた。
その瞬間だった。
「うわああ?!」
「おいどうした、中村―?!」
突然の悲鳴に驚いたパピヨンが振り返ると、そこには信じられない光景があった。
中村が、どこから現れたか分からない小型タクシーに潰されそうになっていた。
「…一体これはどういう事だ?」
「俺にも分からんが助けてくれー!」
「…やれやれ。」
人間の何倍の力を持つホムンクルスであるパピヨンには、この程度の車を持ちあげるのは朝飯前の事だった。

「あ、ありがとう…助かった……」
「一体どういうわけだこれは?」
「俺にもさっぱりだ…ありのまま今起こった事を話すと、『俺はこの『タクシー』と書かれた紙を開いたらそこから本物のタクシーが飛び出て来た』。」
「…は?」
「…何を言っているか分からんとは思うが、俺も何が起きたのか分からないんだ…頭がどうにかなりそうだ……催眠術とかトリックとかそんなチャチなもんじゃあ断じてないもっと何か恐ろしいものの片鱗を味わったような気分だ…」
「…フン。」
馬鹿馬鹿しい、とパピヨンは思ったもののこの目の前にあるタクシーは使えるとも思っていた。
パピヨンと中村はタクシーに乗り込むと、中身を確認した。
どうやらS県杜王町(無論、そんな地名を聞いた事すらもないのだが)にある帝王タクシーという会社のものであるようだ。
「…ガソリンもバッテリーも十分。それに発煙筒に三角表示板、脱出板まであるのか…」
「こりゃすごいな、まさかこんなものが支給されるとは。」
「多少狭いが、この際贅沢は言えんな…おい、中村、お前が運転しろ。」
「…あー、それなんだがな、パピヨン。」
「何だ?まさか免許を持っていないとか言うんじゃないだろうな?」
「…そのまさかだ。というか『持っていない』んじゃなくて『持てない』というべきなんだが。」
「…?どういうことだ?」
「『持てない』んだよ…こう見えてもまだ俺は17歳なんでな。」
「じゅ、17…!?」
「よく驚かれるよ。」
「…蝶・ビックリだ。」
流石のパピヨンも、これには苦笑せざるを得なかった。



「仕方あるまい、ここはこのパピヨンが蝶・華麗なドライビングテクニックを披露してやろう。」
パピヨンはそう言うと中村を助手席に乗せ、エンジンキーを回した。
「なんだパピヨン、免許持っていたのか。人が悪いなあ。」
「いや、俺も持ってはいないぞ?」
「…え?」
ドルルン、と軽快な音を立て、タクシーは走り出した。
「免許など無くても、どこをどうすればどう動くかなど勘で分かる!」
「…なぁ、降りて良いか?」
「さぁ行くぞ中村!」
一刻も早くこの時が過ぎてくれ、と中村はシートベルトを握りしめながら思うのだった。
408創る名無しに見る名無し:2011/07/10(日) 18:59:22.35 ID:pAia5t8+
 





【B−5住宅街/1日目朝】
【蝶野攻爵@武装錬金】
[状態]:健康
[装備]:小型タクシー@ジョジョの奇妙な冒険、パピヨンマスク@武装錬金
[道具]:基本支給品一式、野太刀@ブシドーブレード弐、目覚まし時計@現実
[思考]1:中村と共に行動。
   2:ひとまず核鉄を探す。
   3:自ら殺しにかかる気はないが、襲われたなら容赦はしない。
   4:武藤と合流したい。

【中村元@せんせいのお時間】
[状態]:健康、冷や汗
[装備]:小型タクシー@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品一式
[思考]1:パピヨンと共に行動。
   2:…降りたい。
   3:クラスメイトと合流したい。
   4:殺し合いには乗らない。
410創る名無しに見る名無し:2011/07/10(日) 19:00:23.19 ID:pAia5t8+
 

【支給品情報】

【小型タクシー@ジョジョの奇妙な冒険】
中村元に支給。
杜王町にあるタクシー会社、帝王タクシーの小型タクシー。
このロワにおいてはエニグマの紙に内包された状態で支給された。
中には杜王町の地図、発煙筒、三角表示板、脱出板等基本的なものは入っている。
また、ガソリンもバッテリーも十分。

【野太刀@ブシドーブレード弐】
蝶野攻爵に支給。
大きな反りと長い刃が特徴の大太刀。
重量2.4キロ、全長119センチ、刃長93.2センチとかなり大きく、その重さと長さゆえに技の出始め、戻りがやや遅いが長い間合いからの豪快な斬り、払いに長け攻撃の一つ一つが力強さを伴う豪快な武器。

【目覚まし時計@現実】
蝶野攻爵に支給。
ごくごく一般的なアナログタイプの目覚まし時計。
結構うるさい。

412 ◆YR7i2glCpA :2011/07/10(日) 19:01:04.07 ID:sjVZmmmf
投下終了です。
413 ◆VxAX.uhVsM :2011/07/10(日) 20:28:51.11 ID:pAia5t8+
投下乙です。
パピヨンさん無免許運転とか流石です。
では自分も投下
DOL3rd16話 私の知っている日常はどこかへと飛んでいきました
登場人物:山崎退、鈴木とおこ、直井文人
414私の知っている日常(ry ◆VxAX.uhVsM :2011/07/10(日) 20:30:13.32 ID:pAia5t8+
「……おはようございます」

D-3の住宅街…。
すぐ隣のエリアで戦闘が起きている中、山崎退は目を覚ました。
開始してすぐに、悪い夢だと眠って今目を覚ましたのである。

「……ってやっぱ夢じゃないいいいいいいいいいいい!!!」

山崎は民家の中で叫んだ。
運が良い事に民家内なので誰にも気づかれなかったが、それでも不用心である。
すぐに民家から出て、周りを見渡す。

「……どういうことだよおおおおおおおおおおおおおお!!?」
「あんたがどういう事よ!?」

山崎がびくっとして後ろを振り向いた。
そこには、一人の女の子がいた。

「あ、えーと…誰?」
「こっちが聞きたいんだけど…鈴木とおこ、よ」
「ああ、とおこさんね、宜しく…俺は山崎退、真選組の密偵だ」
「新撰組…?」

とおこが首をかしげる。
首を傾げた理由は簡単、時代が違うからだ。
新撰組は江戸時代の物…しかし今は平成。
時代が違いすぎるのだ。

「まあ、いいか…で、聞きたいんだけど…佐々木いちろに会ってない?」
「えー、佐々木一郎?」
「いちろ、ね」
「いや、会ってない…と言うか君が最初」
「そう、じゃあね」
415私の知っている日常(ry ◆VxAX.uhVsM :2011/07/10(日) 20:31:01.32 ID:pAia5t8+

そう言ってとおこがその場をは離れようとした。
すると山崎がすぐにそれをせき止める。

「ちょっと待ってえええ!!なんで!?怖くないの!!?」
「はあ?殺し合いなんてのに乗る奴なんている訳が…」
「残念ながら、いるんですよ…それが」
「「!!」」

二人が揃って後ろを振り向く。
そして山崎はすぐに戦闘態勢に入る。

「まあ、すぐに楽にしてあげますから…我慢していてください」
「とおこさん…逃げておいて」
「はあ!?何言ってんの!?死ぬつもり!!?」
「まあ、俺なら何人死んでも大丈夫そうだし…」

ブラックジョーク、とでも言うのだろうか。

「……分かった、じゃあな」
「ああ、それじゃあ」

遠子はすぐにその場を離れる。
そして、すぐに男が発砲してくる。

「うおおおおおおおおおおお!!いきなりってひどくない!?」
「酷いも何もないでしょう…これは殺し合いなんですよ?」

男は冷静に言う。
山崎は、少しづつ近付く。
そして、一気に男に向かって走り出す!

「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
「な…当たれ!」

二発の銃弾が山崎に向かって飛んでいく。
その弾丸が片方、山崎の方に貫通した。

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

山崎は男を押し倒し、マウントポジションを取った。
そこから攻撃…はしなかった。

「この銃を…ドーン!」
「な…貴様、何を…!」

銃をコンクリートの壁に全力で投げつけ、破壊した。
そしてすぐに立ち上がり男から逃げる。

「やーい!銃のないお前なんて怖くないぜええええええ!!」

そう言いながらどこかへと行ってしまった。
その場に残ったのは、一人の男だけだった。

「ふ、ふふ…なるほど、神にはこれだけの反ハンデは必要ですね」

男、直井文人はすぐに立ち上がった。
破壊してしまった銃をそのまま放置して壁に寄り掛かった。
416私の知っている日常(ry ◆VxAX.uhVsM :2011/07/10(日) 20:31:46.20 ID:pAia5t8+

「音無さん…貴方は絶対に死なせない…!」

自分を救った男の事を思い浮かべる。
彼が死んでしまうなんて事はあってはならないのだ。

「行かなくてはいけない…僕には催眠術もある…」

山崎とは反対方向に進み始めた。
彼らは狂う、おかしい方向に。

【真昼/D-3住宅街西側】
【山崎退】
[状態]右肩に銃創、若干ハイテンション
[装備]なし
[所持品]基本支給品、不明支給品(1〜2)
[思考・行動]
基本:殺し合いからの脱出。
1:すぐさま退散!
2:万屋の旦那、新八君、土方さん、沖田さんとの合流。
[備考]
※願いは不明です。
※参戦時期は未定です。
【真昼/D-3住宅街西側】
【鈴木とおこ】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品、不明支給品(1〜2)
[思考・行動]
基本:いちろと脱出したい。
1:いちろ…どこ?
2:さっきの人、大丈夫かな?
[備考]
※願いは不明です。
※参戦時期は本編終了後です。
【真昼/D-3住宅街西側】
【直井文人】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品、不明支給品(0〜1)
[思考・行動]
基本:音無さんを死なせない。
1:音無さんを見つけたい…。
[備考]
※願いは不明です。
※参戦時期は本編最終回後です。

※D-3の住宅街に破壊されたシグプロSP2340があります。

【支給品説明】
【シグプロSP2340@現実】
直井文人に支給
シグ社が1998年に発表した自動拳銃。
世界的なプラスチックの使用による拳銃の軽量化を踏まえてフレームが金属製からプラスチック製となった。
他の拳銃と比べるとやや高価だが、フラッシュライトやレーザーサイトなどのオプションは充実している。
417 ◆VxAX.uhVsM :2011/07/10(日) 20:32:32.32 ID:pAia5t8+
投下終了です。
俺の山崎が生き残れるはずが無い。
418 ◆ymCx/I3enU :2011/07/10(日) 21:22:30.84 ID:Uw6YHnxf
投下乙です 山崎か
投下します 俺得5 34話 ボロボロの雌猫と眼鏡と二人の女狐
登場:相馬祐実、志村新八、フラウ、大崎綾
419ボロボロの雌猫と眼鏡と二人の女狐 ◆ymCx/I3enU :2011/07/10(日) 21:23:16.98 ID:Uw6YHnxf
34話 ボロボロの雌猫と眼鏡と二人の女狐

血が止まらない。とても痛い。
段々意識も朦朧としてきた。自分が今どこを歩いているのかも良く分からない。
大きな建物、有名ファーストフード店の看板が見えたような気がした。

「……痛い……もう……駄目かな……」

思えば銃撃され弾丸が身体を貫通したのだ。
もしかしたら内臓が損傷しているかもしれない、だから血が止まらないのだろうか。

足がもつれて思い切り倒れてしまう。
立ち上がろうと思ったが、身体が言う事を聞かなかった。
いよいよかと、祐実は思った。

(…美帆、圭人……死ぬ前に……もう一度……会いたかった………な………)

「……!」
「……」

何か遠くで声が聞こえたような気がしたが、それが何なのか特定する余裕はもう無かった。
祐実の意識は、完全に闇に呑まれ、消えていった。

……

目が覚めた。ここは天国? 地獄?

いいや。医務室だ。

「良かった、目が覚めたんですね」

蛍光灯が設置された無機質な天井が映っていた祐実の視界に眼鏡を掛けた着物姿の少年の顔が映り込む。

「良かった、駄目かと思ったわ」
「良かった…」

視界には映らないが二人分の少女の声が聞こえた。

「……あれ、私は……」
「ショッピングモールのすぐ前で、血塗れで倒れていたんですよ。
僕達がこの医務室まで運んで…簡単な手当てをしたんです」
「そう、なの……私、助かったの……?」
「ああでも、応急処置なのでまだ危ないと思います……」
「……ありがとう。私は……相馬祐実……」
「僕は志村新八です」
「私はフラウ」
「大崎綾…」
420ボロボロの雌猫と眼鏡と二人の女狐 ◆ymCx/I3enU :2011/07/10(日) 21:25:19.80 ID:Uw6YHnxf
どうやら自分は死の淵から救われたようだと祐実は思う。
ベッドの上に寝かされている身体は動かせないので顔を横に向けると、狐の少女二人の姿も見えた。

「もうすぐ放送がありますから……しばらく休んで下さい」
「え? あ…うん」

時刻は既に定時放送直前になっていた。
自分の友人二人はまだ生きているのだろうか、祐実は不安に思いながら再び天井を見上げる。



【朝/D-3ショッピングモール「トヨミツ」:一階医務室】
【相馬祐実@オリキャラ】
[状態]肉体及び精神疲労(大)、胴体に貫通銃創(応急処置済)
[装備]コルト パイソン(5/6)
[持物]基本支給品一式、.357マグナム弾(12)、FN M1906(6/6)、FN M1906のマガジン(3)
[思考・行動]
0:死にたくはない。圭人と美帆を捜す。
1:取り敢えず助かった……。
[備考]
※テトの容姿を記憶しました。
※医務室のベッドの上に寝かされています。

【志村新八@銀魂】
[状態]肉体疲労(中)
[装備]無し
[持物]基本支給品一式、テトの巫女服@自作キャラでバトルロワイアル
[思考・行動]
0:銀さん達と合流し殺し合いを潰す。
1:フラウさん、綾さんと行動。相馬さんから話を聞きたいが放送を待ってからにする。
[備考]
※原作ラブチョリス編以降からの参戦です。
※春巻龍の知人の情報、フラウのクラスメイトの情報を得ました。
421 ◆ymCx/I3enU :2011/07/10(日) 21:25:56.84 ID:Uw6YHnxf
【フラウ@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]肉体疲労(中)
[装備]Cz85(15/15)
[持物]基本支給品一式、Cz85のマガジン(3)、レミントンM870(0/4)、12ゲージショットシェル(8)、
スタームルガー スーパーレッドホークアラスカン(4/6)、.480ルガー弾(6)、パワーバングル
[思考・行動]
0:殺し合いを潰す。
1:綾さん、志村君と行動。
[備考]
※本編死亡後からの参戦です。
※春巻龍の知人の情報、万事屋トリオ及び長谷川泰三、沖田総悟の情報を得ました。

【大崎綾@オリキャラ】
[状態]肉体及び精神疲労(大)
[装備]スティレット
[持物]基本支給品一式、ブローニングオート5(4/5)、12ゲージショットシェル(10)、バタフライナイフ、
ガソリン入り注射器(2)、ノートパソコン
[思考・行動]
0:死にたくない。
1:フラウさん、志村君と行動。
[備考]
※フラウのクラスメイトの情報、春巻龍の知人の情報、万事屋トリオ及び長谷川泰三、沖田総悟の情報を得ました。

投下終了です。
422 ◆8nn53GQqtY :2011/07/10(日) 21:29:18.83 ID:ZAOpqU+2
投下乙です。こっちの新八は安定してるなあ。
こっち「の」。

では、自分も投下します
423 ◆8nn53GQqtY :2011/07/10(日) 21:29:52.81 ID:ZAOpqU+2

主催者の男は言った。

――中には立派な殺人兵器もあれば、可愛いハズレが入っていることもあるから、運次第で実力差を埋めることもできる。



そして、志村新八は憤慨した。
「全然まったく可愛くねーよ! むしろめっちゃ腹立つんですけど!!
こんなんで身を守れってか! 豆腐の角に頭ぶつけて死ぬより難しいわ!」

そして、地に手と膝をつき、正に『orz』というポーズで悲嘆する彼の前には、三つのランダム支給品。

つばの大きな羽飾りつき麦わら帽子。
黄色いアヒルのイラストが描かれたノートブック。
何の変哲もないテニスラケット。

誰から見ても、(ラケットはまだともかく)殺し合いはおろか自衛手段にすらならないハズレだった。
志村新八とて、戦いの経験がない素人ではない。むしろ、歴戦の侍と言っても過言ではない。
しかし、その地力の礎となるのは十年余りの道場剣術。
竹刀の一本もないこんな装備では女子どもにすら殺されかねない。

「しょうがない……こうなったら一刻も早く銀さんたちと合流しないと」
ろくな装備がない以上、誰かから分けてもらうしかない。
それでなくとも、こんな殺し合いの場では仲間との合流が最優先だ。
ひとまず新八は、ラケット以外の支給品をディパックにしまいこんだ。
ノートにはびっしりと女の子の可愛らしい字が書きこまれていたが、中身は読まないでおく。
誰が読むかも分からない会場に、自分の日記をばらまかれるのも酷い話だ。

……もっとも、ひとたびそこに書かれた内容を読めば、違う意味での酷さに戦慄していただろうが。

名簿に書かれていた彼の知り合いは、万屋の坂田銀時と神楽、そして真選組の土方十四郎。
いずれも血の気は多いが、決して殺し合いなどするはずもない、頼れる仲間だ。
万屋で働くうちに数々の事件を解決してきた新八は、こういう非常事態で結束が何よりも大事だと知っている。
銀さん、神楽ちゃん、待っててね。志村新八が今行くよ――武器もないけど。

――え? なにお前、丸腰なの? 勘弁してくれよ〜これだから新八はよ〜。
――そんなんだからお前はいつまでたっても新八なんだヨ。

「くじ運が悪いだけで新八という存在を全否定かよ。しかも人の頭の中で!」

万屋メンバーの予想されるリアクションに突っ込みを入れつつ、彼はなけなしの武器であるラケットを片手に森の中を行く。
424 ◆8nn53GQqtY :2011/07/10(日) 21:30:47.60 ID:ZAOpqU+2

「――ぁぁぁぁ」

おや?
誰かの声が聞こた気がした。
七十人もの人間が集められているのだ。人の声が聞こえるぐらい、べつだんおかしなことではない。
おかしいのは、それがどうも真上の方向から聞こえたということで――

「きゃあああああああああああっ!?」

もはや幻聴と呼ぶには無理がある、黄色い悲鳴。
新八はぎょっと上空を仰いだ。


そして彼は、少女と出会った。


真っ白い制服を着た幼い少女が、新八のもとへと真っ逆さまに落ちて来た。
新八の頭が、その一瞬『理解不能』の空白で埋まる。

――銀さん、空から女の子が……

志村新八、16歳。
彼女いない暦16年。これからもできる見通しは無し。
俗な言い方をすれば女性には餓えていた。
しかし、だからと言ってこんなベタベタなボーイ・ミ―ツ・ガール
――しかもこんな小さな女の子相手に――を幻視するほど虚しい男ではない。

何て言ってる間もなく、少女は等速運動に則った落下で地面へと迫り、
新八はとっさに少女の落下地点へと駈けつけ、

「ぐぼはっっ!!」

振って来た少女を、己の胸で受け止めた。

――というより、直撃を受けた。



※   ※

「ほんとうに、ほんとうにごめんなさいっ!」
「そんなに謝らなくていいよ。なのはちゃんが怪我をしなくて済んだんだから」

高町なのはが顔をあげると、そこにはメガネ少年――志村新八と名乗った――の笑顔があった。
なのはの落下を受け止めてくれたこの人は、あんな高さからの直撃を受けたにも関わらず、なのはのしたことを笑って許してくれた。
「僕のことなら大丈夫だって。ギャグ漫画で突っ込みを張るならこれぐらいで倒れてられないよ」
「ギャグ漫画? ……新八さんはお笑い芸人さんなんですか?」
激突の後はしばらくぴくぴくと痙攣していたし、メガネにはヒビが入っていたのだが……。
でも、落ちて来た先が殺し合いに乗っていない人で良かった。
425創る名無しに見る名無し:2011/07/10(日) 21:31:09.65 ID:pAia5t8+
支援
426 ◆8nn53GQqtY :2011/07/10(日) 21:32:48.84 ID:ZAOpqU+2
もしこの場所にいたのが危ない人だったら、なのははそのまま殺されていたかもしれない。

失敗の由来は、支給品の中に『跳(ジャンプ)』と書かれたカードを見つけたことだ。
レイジングハート無しではほとんどの魔法を使えないなのはだったけれど、そのカードからは何だか独特の魔力が感じられた。
説明書によると、そのカードを使っている間は天高くまで跳ぶことができるらしい。
デバイスを持たないなのはは思った。
これを使えば、ユーノ君やフェイトちゃんを探すのに役立つかもしれない。
カードを掲げ、その名前をとなえると、なのはの両の靴に光の羽根が生える。
アクセルフィンの翼に似ていると思った。
なのはは力強く地面を蹴った。
それがいけなかった。
予想していたより、ずっと高くまで跳んだ。
『アクセルフィン』と同系統の魔法だと思ったのも失敗だった。
いつも飛んでいる時と同じ様な先入観だったので、姿勢保持を間違えて空中で天地が反転した。
『跳』のカードにできることは、文字通りジャンプだけ。
飛行魔法と違って、落下中に姿勢を立て直すことはできないのだ。

一度使ったカードは、6時間後まで使えないという。もったいないことをしてしまった。

「結果的には、お互い殺し合いに乗っていない人と会えたんだから良かったじゃないか。
なのはちゃんも友達を探してるみたいだし、一緒に探そう。
二人でいれば、警戒されにくいだろうし」
なのはの支給品から譲り受けた日本刀を腰にさして、新八は立ち上がった。
「はい! がんばります!」
新八の人のよさそうな感じと言葉は、なのはを信用させるのに充分なものだった。
フェイトちゃんはユーノくんも、こういう信頼できる人と会えていますようにとなのはは思って、

ガサガサ、と茂みをかき分ける音がした。

なのはと新八はびくっと震え、後方を注視する。

そこに出現したのは、

「やぁ、はじめまして」

全身を、ターミネーターのロボットのような黒光りする鎧で覆った人間だった。

その顔面部を覆う面頬は、音楽の教科書で見た、能の『般若』のお面のよう。

なのはと新八は、再び悲鳴を上げて跳び上がった。



※   ※

結果を言おう、その人――『カノン・ヒルベルト』はいい人だった。
427 ◆8nn53GQqtY :2011/07/10(日) 21:35:11.74 ID:ZAOpqU+2
いい人、というか、覆面の下から出て来た『にぱーっ』という笑顔に、二人とも毒気を抜かれてしまったのが正直なところだ。
そしてその人は、二人の参加者を探していると言った。

「鳴海歩とミズシロ火澄という二人に心当たりはないかい?
この二人を死なせるわけにはいかないんだけど」

こんな状況で、自分以外の人を心配できるのなら、その人は殺し合いに乗っているわけではないのだろう。
「ごめんなさい。僕たち、この殺し合いで出会ったのはお互いが初めてなんです」
「その人は、カノンさんのお友達なんですか?」
カノンは涼しい顔をして言った。
「ううん。実は、ある人から二人の護衛を頼まれていてね。
その人は参加者じゃないんだけど、一応は依頼を守ってあげたいんだ」
護衛……という言葉がなのはの好奇心を刺激する。
もしかして、クロノくんが働いている時空管理局のように、何か専門的な仕事をしている人なのかもしれない。
だとしたら、味方としてはとても頼りになりそうだ。
「あの……良かったら、カノンさんもわたしたちと一緒に探しませんか!
そうやって味方が増えていけば、きっと殺し合いも止められます!」
「ふむ。……その前に、一つだけ聞いていいかな」
「はい!」

「君たちは、どうして殺し合いに乗らなかったんだい?」

なのはは少し困った。
「人殺しなんて、したくないから……だと思います」
「うん、それはそうだね。でも、単に誰も殺したくないってだけじゃ、どっちみち銃に時間ルールで全員が死んでしまうよね。
君たちには何か、ここから脱出する方法でもあるのかな?」
あくまで穏やかに、カノンは問いかけた。
なのはは、やっぱり答えに困った。
魔導師としての成長は著しいとはいえ、高町なのはは魔法を習い始めて未だ数カ月だ。
魔法を使っての戦闘はずいぶん上手くなったけれど、魔法知識自体はまだ知らないことばかりだし、『呪い』とやらを解除する方法も分からない。
もしかしたらユーノくんやフェイトちゃんなら、なのはより多くの魔導の知識で、刻印の解き方も分かるかもしれない。
でも、『もしかして』という方法を、脱出法として説明してしまっていいものか。
428創る名無しに見る名無し:2011/07/10(日) 21:37:03.14 ID:pAia5t8+
 
429 ◆8nn53GQqtY :2011/07/10(日) 21:37:20.82 ID:ZAOpqU+2
なのはが迷っていると、カノンが先に謝った。
「ああ、意地悪なことを聞いてしまったね。ごめんね。
ただ僕にも、脱出する方法が分からなかったものだから」
そのカノンは本当に悪かったと思っている風で、なのはから焦りが抜ける。
しかし、そこで明るく言葉をつづけた人がいた。新八だった。
「僕も脱出の方法は分かりません。僕の知り合いの人たちも、『呪い』の解き方なんて分からないと思います。
でも、少なくとも僕は殺し合いをするつもりはありません」
カノンと新八が、静かだが真剣な視線を交える。
「なるほど。その心は?」
「殺し合いをしない理由なんて、結局、殺し合いなんてしたくないからです。だって、命を奪ったら、取り返しがつかないじゃないですか。
殺された方も、殺した方も。それは、僕にとって、自分が生き延びるよりも大事なことです」
新八の答えは、あまりにも明快で、そして高潔だった。
それこそ、9歳のなのはでも、すぐに志村新八という人間を理解できてしまうほどに。
「僕の仲間は、一度、間違えて人を殺しかけたことがあります。
普段はとても優しい女の子なんだけど、一度だけ、我を忘れてそうなってしまったことがあります。
僕はその時、その子が人を殺すのが本当に嫌だと思いました。こんなことが二度とあってほしくないと思いました。
ましてや、それが自分で選びとったことじゃなく、人から無理やり命令されたことなら」
なのはの心に、わずかに沈殿していたわだかまりが消えていった。
そうだ、脱出できるかどうかは関係ないのだ。
なのはだって、ユーノくんやフェイトちゃんが人を殺したりしたら嫌だ。
それを止めようとすることの、どこが間違っているというのか。
カノンも心から感心したように、にこやかな笑顔を浮かべた。

「『取り返しがつかない』か……。そうだね、僕もそう思うよ」

しかし続けてカノンがディパックから取り出したのは、そんな希望にヒビを入れるものだった。

銃だった。
それがサブマシンガンだとかライトマシンガンだとかの種別はなのはに分からない。
しかしとにかく、大型の銃だった。
それはあまりにも、なごやかな空気に不一致で、なのはは首をかしげた。
なんでカノンさんはそんなものを取りだしたんだろう。
きれいな構えで銃を持ったカノンを見て、なのはは呑気に、そんなことを考えていた。

「だから、せめて君たちは苦しまないように――」
430 ◆8nn53GQqtY :2011/07/10(日) 21:38:52.44 ID:ZAOpqU+2



「そこの三人。状況を説明してもらおうか」



張り詰めた弦のように緊張感に満ちた声が、場の気温を下げた。

横合いの茂みから姿を現したのは、セーラー服を着たカノンと同年代の女性。
細長い両の指で回転するチャクラムのようなリングは、女性の剣呑な視線とも相まって、鋭利さを強く印象付ける。
そして何よりなのはの印象に残ったのは、鼻筋を真横に横切る、ひと筋の傷跡。

「君は?」
カノンが短く問う。その視線は、先ほどまでの笑みが嘘のように、鋭く、冷たい。
「悲鳴が聞こえたので駈けつけた。
そこのキミ、何故二人に銃を向けているのか、説明してもらおうか」

どうやら、なのはの悲鳴――『跳』のカードの時か、カノンとの遭遇時か――を聞きつけたらしい。
――いや、いま重要なことは、そんなことじゃなくて。

そう言えば新八さんも、いつのまにか日本刀を構えている。

どうしてなのは以外の全員が、武器を構えているのか。
どうして、先ほどまで『殺し合いはいけない』という話をしていたのに、まるで臨戦態勢のようになっているのか。

どうして、と問いかけながらも、なのはの深層、魔導師としての闘争本能は、警告を発していた。
逃げるか戦うかしなきゃいけない。
でも動けない。どうしたらいいか分からない。

――レイジングハートがないことが、ここまで心細いものだったとは。

なのはの困惑などまるで意に介さず、
実際にその膠着が解けるのは、ほんの数秒だった。

張り詰めた弦はすぐに切れた。

431 ◆8nn53GQqtY :2011/07/10(日) 21:41:12.01 ID:ZAOpqU+2


――ガキン!

――ぱらららっ



サブマシンガンの弾丸の雨が、なのはたち二人の立っていたすぐ右に着弾した。



※   ※

茶髪の少年の目を見た瞬間、斗貴子は悟った。

コイツの眼は乾いている。
躊躇なく人を殺せる人間の眼だ。

高速でモーターギアの片輪を射出。
狙いは正確だ。その正確さと速さこそが、モーターギアの強み。

――ガキン!

発砲に先んじてギアがマシンガンの、その銃身に火花を散らす。
手首は狙わない。暴発の恐れがある。

――ぱららららっ

銃身がブレたことで狙いをそれた弾丸の雨は地面に着弾。
それでも引き金が絞られていたのはゼロコンマ1秒。
無駄弾を減らす為の慣れたトリガー操作だ。間違いなく戦いなれている。

敵が妨害に驚いた一瞬の隙に、斗貴子は跳躍。
マシンガンと二人の民間人の間に割り込み、己が体で射線を遮った。

「その殺気……貴様、明らかに一般人ではないな。もしやホムンクルスか?」
「ホムンクルス……? 何のことかな。フラスコの中から生まれたという意味では間違っていないけど」
敵は武装錬金に取り乱した様子もなく、銃口を軽く揺らめかせて『照準』を探す。
その銃口は、明らかに斗貴子の『後ろ』を狙っていた。

「君、その女の子を連れて逃げろ」

モーターギア射出のタイミングを見定めながら、斗貴子は背後の少年に命令した。

「そんな! 助けてくれた人を置いて逃げられませんよ」
「いい、足手まといだ。それに、誰がその女の子を逃がすんだ」

背後からはっと息を呑む音。そして、前方からは機械のような声。

「させないよ」

敵が、飛んだ。

432 ◆8nn53GQqtY :2011/07/10(日) 21:43:54.47 ID:ZAOpqU+2

そう、『跳ぶ』ではなく『飛ぶ』と言った方が正しい。
何の助走も踏み込みも無しに、翼があるかのごとく二メートル弱も飛翔。
斗貴子の頭上を飛び越え、後ろの無力な一般人から仕留める為。
そうはさせじと、斗貴子もまた飛んでいた。

ガキキン!
――ぱららっ


どごっ


神速の影が二つ、空中で交錯した。

激突音は鈍く響き、火花ではなく血霧を散らして両者は着地。

カノンの覆面の、両眼にあいた穴からじわりと血がにじむ
右手の人差し指と中指を返り血でしめらせたのは守り手の斗貴子。
彼女もまた、代償として受けた左手の痛みに歯を食いしばる。

「強引に押し通ろうとしたら、眼突きを狙って来るとはね」
「人の腕を足場にして回避した奴が何を」

二つのモーターギアは、銃口の妨害と少年への囮として、懐に飛び込む為だけに使われた。
斗貴子の二つの指は、少年の装甲に守られていない、面頬の中の眼球を狙った。
しかし少年は、斗貴子への蹴りによって空中で方向転換を果たしてみせた。
少年の蹴りは重かった。直撃は避けたにも関わらず、腕の骨がみしりと軋んだ。

背後から、ばたばたと二人が逃走する足音が聞こえた。
斗貴子はほっと息を吐く。腕をひとつやられたが、収穫はあった。

サブマシンガンの射程は短い。あとは斗貴子がこの防衛ラインを維持すれば、二人の命は安全圏にある。

「なるほど、ここには相当の手練れもいるということだね。じゃあこういうのはどうかな」
敵が再び飛ぶ。
433 ◆8nn53GQqtY :2011/07/10(日) 21:46:34.46 ID:ZAOpqU+2
同じ手が二度通用するものかと、斗貴子は再びモーターギアを射出し、跳躍。
しかし、サブマシンガンの銃身は、斗貴子の予測した位置を逸れた。
敵はサブマシンガンを、後方に振りかぶっていた。モーターギアがかわされる。

投げた。

約3キロのマシンガンにあるまじき弾速が、ギュオと風を切る。
しかし狙いは粗い。斗貴子は空中で首をずらして軽くかわす。
あり得ない攻撃だ。回避はそれほど困難でない上に、銃を失うデメリットは大きすぎる。
斗貴子はかわされたギアを空中でキャッチして改めて丸腰のカノンを――


――――ぐしゃり


小さな音だった。

それにも関わらず、とても不吉な音だった。
何かが、潰れたような、めり込んだような、

あり得ない。と再び思う。
否定したかった。
十数メートル先を走っていた相手に向かってサブマシンガンを投擲して、その相手の『頭蓋を叩き割る』などという真似が、人間の握力でできるはずがない。

――しかし、マシンガンを投擲したあの腕力、あの驚異的な投擲の速度を生みだせる人間なら?

少女の悲鳴が、その『あり得ない』を否定した。
「新八さん!? 新八さんっ!?」
度を失った悲鳴。
振り返る余裕などなかった。いや、正直、振り返ることが恐ろしかった。
しかし、その絶望的な叫び声からは、『ぐしゃり』で何かが起こったことは明白で――。

(そんな――)

回避したせいで、一人、死なせた。
戦士斗貴子にとって、それはあまりに重い悔恨をもたらすもので、

「ひとつ教えてあげるよ」

その悔恨は、致命的な隙。



434創る名無しに見る名無し:2011/07/10(日) 21:58:57.38 ID:pAia5t8+
◆8nn53GQqtY氏の代理投下を開始します。
435Gun with Wing◇8nn53GQqtY氏 代理投下:2011/07/10(日) 21:59:50.32 ID:pAia5t8+


※   ※

――失敗した。

志村新八を倒した一撃に対する、カノンの評価はそれだった。
本当は、なのはを狙ったのだ。その低い位置にある頭は、カノンの滞空する角度から狙いがつけやすかったから、
しかし、志村新八はとっさに動いていた。死角の外からの完全な不意打ちに、とっさに対応した。
カノンは狩猟で培われた驚異的な動体視力から、それを確認した。
サブマシンガンは、なのはを突き飛ばした新八のうなじに突き刺さった。
結果を見れば、二人の内どちらかを攻撃して、動きさえ止めれば良かったのだから成功したと言える。
しかし、一撃で仕留め切れず、苦痛を長引かせる結果となってしまった。

(まだ迷っているのか……?)

考えられる可能性は、カノンの迷い。
無関係の『一般人を殺す』という行為に、投擲速度が鈍ったこと。
しかし、心揺らされている暇はない。眼の前の少女は、躊躇いながら倒せるほど容易い相手ではない。

「ひとつ教えてあげるよ」

凍りついた少女に、コンマ一秒で肉薄。

蹴った。

ギリギリで津村斗貴子が着地していたことはわざわいした。
完全な隙をついての一撃だったのにも関わらず、後方に飛んで受け身を取ったのだ。

「がぁっ…………!」

しかし、それでも小柄な体がたっぷり数メートルは吹き飛び、太い樹木の幹へと激突。
げほっ、と咳を吐くと、肺に衝撃を受けたらしく呼吸が止まる。
本当なら、この一撃で血を吐いて死んでいるはずだったのだが……。

「この世界に悲劇はなくならないし、
諦めを知らないのは途方もなく愚かだよ」

しかし、しばらくは起き上がれないだろう。

カノンは余裕を持って、先ほど倒した少年たちの元へと歩み寄った。


志村新八の言っていたことは、全く正しかった。
ひとたび人を殺してしまえば、取り返しはつかない。
既に何十人も殺してきたカノンは、その『取り返しのつかなさ』を誰よりも知っていた。
新八の主張は間違いなく正しい。そしてその正しさは、そのままカノンに跳ね返る。

カノン・ヒルベルトはもう取り返しのつかないところまで来ていたのだから。
436Gun with Wing◇8nn53GQqtY氏 代理投下:2011/07/10(日) 22:00:10.89 ID:pAia5t8+
イングラムの銃身が、新八のうなじ、首の皮膚にめり込んで刺さっていた。
なのはがそんな新八の体を、狂ったように揺さぶる。

「なの……ちゃ…………ニゲ……」

重要な神経を損傷したのか、その言葉はたどたどしかった。
イングラムを1メートルの距離で照準。
こればかりは、どんなに迷っていても、撃ち損じるはずがない。


――ぱららっ


ほんのちょっとだけ引き金を搾ると、パラベラム弾が新八の頭部を破壊した。

――『殺した』のではない。『楽にした』のだ。
カノンが殺さなくとも、いずれはほとんどの参加者が清隆の生贄となるのだから
そう己に言い聞かせる。

詭弁だった。
分かっている。

たった今この瞬間から、カノン・ヒルベルトは『殺人鬼』になったのだ。
“敵”だけを殺す『ハンター』ではなく、正しい人間をも見境なく殺す『殺人鬼』に。

「新八、さん……」

なのはは凍りついた瞳で、破壊された頭部をじっと見上げている。
怒るでもなく、悲しむでもなく、ただ恐怖している。
カノン殺されると怯えているのではない。
起こったことが『理解できない』が為に恐怖しているのだ。
当たり前の反応だ。
9歳の小学生が、人の頭が撃ち抜かれる光景を見慣れているはずがない。
それ以前に、人の『死』自体さえ、そう何度も経験するほどの年端に達していない。

――だから、せめて、その絶望を理解する前に楽にする。

カノンはイングラムの銃口を、きっちりとなのはの頭に照準した。
437Gun with Wing◇8nn53GQqtY氏 代理投下:2011/07/10(日) 22:00:49.72 ID:pAia5t8+


キュン、と風を切る音がした。

「何……?」

引き金を引く指が急激に重くなり、カノンはイングラムを再確認。
トリガーの間に、ちょうどいい大きさの小石がはさまり、イングラムの引き金を封じている

『小石を投げた誰か』が、引き金をひくことを妨害した。

「こんなもので……!?」
流石のカノンも絶句する。
こんな小さな石を投擲して、ピンポイントでトリガーの小さな隙間を狙えるとは、
いったいどういう人間なのか。

しかし驚く暇は与えられなかった。
『何か』が唸りを上げて迫り、カノンは横っ跳びに回避。
『銀色』の人影が、カノンのいた地面へと鋭い飛び蹴りを叩きこんでいた。

地面がえぐれ、銀色のコートが大きくひるがえる。



※   ※

「せ、戦士長!?」

気力だけで立ち上がった津村斗貴子は、現れたその姿に、まず己の眼を疑った。

全身を――顔さえも立てた襟で隙なく覆う白銀のコートに、同じく白銀のウエスタンハット。

――防護服の武装錬金、シルバースキン。

その鎧をまとえる人間は、この世にたった一人しかいないはず。
しかし、と斗貴子は思いなおす。
支給品の核金から、バルキリースカートではなくモーターギアが呼び出されたことを。
ならばあの人間は、
438Gun with Wing◇8nn53GQqtY氏 代理投下:2011/07/10(日) 22:01:14.43 ID:pAia5t8+
「どうやら、お前は津村斗貴子の言っていた『化け物』にあたる人間らしい」
感情の読み取りずらい淡々とした声で、彼は敵に呼びかけた。

「桐山君? 何故、ここに。待機しろと言ったはず」
斗貴子は打ちつけた体を鞭打って立ち上がり、桐山の元へと走り寄る。

「やれやれ……君たちは傭兵か何かかい?」
流石のカノンもシルバースキンの異様には驚いたらしく、距離をとってマシンガンの弾倉を詰め替えている。

桐山は、コートの詰め襟の奥の瞳で、斗貴子をまっすぐ見据えた。
「俺は戦える。そして俺はこの命を、お前の言った『目的』の為に使いたい」
恐れも濁りもない。ただただ純粋な瞳だった。
(……こんなに迷いなく戦いに飛び込んでくるとは……この少年、戦士としての素質がある?)
桐山は「すまない」となのはに声をかけて志村新八の遺体から引き離し、ディパックを回収。
そして遺体が持っていた日本刀を掲げて、敵に対峙し――

「待て」

斗貴子は右腕を出して、戦闘態勢に行こうした桐山を制止した。
蹴撃のダメージは、だいぶ癒えた。
彼ならば、この少女を預けても大丈夫だ。
それに斗貴子は、カノンの知らない支給品をまだ二つ持っている。
まだ、戦える。勝算はある。

「桐山くん……少し、キミに、興味がわいた。それでも、私は君たちがいない方が戦いやすい。
桐山君は、その少女を連れて走れ。何としても守ってほしい。
これは君を認めたからこその命令だ。それに」

チャクラムを再び指先に搭載。

「――こいつは、私の“敵”だ」

彼女を駆り立てるのは、簡単に罪のない人間を殺した、“敵”に対する憎悪。
そして、簡単に犠牲者を出してしまった己に対する激しい怒り。

「了解した」
「あ……」

桐山は命令を肯定するや否や、なのはを小脇にかかえる形で抱き上げ、シルバースキンの重装甲も苦にせず疾走した。

「感情をそのまま攻撃力に転化できるタイプか……これは少々、骨が折れそうだね」

二対一は不利と判断したのか、敵は桐山たちの逃走をそのまま見送る。

「それ以上、喋るな」

斗貴子にとって、敵とおしゃべりを交わす余地などはない。
この男は、無辜の少年を殺した。
例え殺し合いの場だとしても、殺戮を生む存在はその理由いかんを問わず、
斗貴子にとって完全な“悪”だった。
敵は、全て、殺す。

「貴様は私が、今ここでブチ撒ける!」
439Gun with Wing◇8nn53GQqtY氏 代理投下:2011/07/10(日) 22:01:51.26 ID:pAia5t8+

【津村斗貴子@武装錬金】
[状態]左腕の骨にひび、腹部に打撲、桐山に『少し興味』
[装備]モーターギア@武装錬金
[道具]基本支給品一式、不明支給品2(武器らしい)
[思考]基本・力無きもの(民間人)は保護し、化け物(殺戮者)は殺す。
1・眼の前の男を確実にブチ撒ける。
2・しかる後に桐山くんたちを追う。
3・ゲームの打倒
※桐山和雄を、正義の心を持った人間と判断しました。

【カノン・ヒルベルト@スパイラル〜推理の絆〜】
[状態]まぶたを負傷(眼球に異常なし)、殺人による精神的苦痛
[装備]装甲@吸血鬼のおしごと
イングラムM10サブマシンガン@バトルロワイアル
[道具]基本支給品一式、予備弾倉残り1
[思考] 基本・『実験』を早く終わらせる為に殺し合いに乗る
1・目の前の女性を殺す
2・ブレード・チルドレンでなかろうと殺す。
3・アイズ、浅月、亮子はできれば直接手にかけてやりたい。
4・アイズ・ラザフォードは、殺せる機会が来るかは分からないが、殺せると思っている。
5・機会があれば、鳴海歩がミズシロ火澄を殺すように仕向ける。
※参戦時期はスパイラル5巻、来日する直前です。
(鳴海歩とは面識がないものの顔を知っています。ミズシロ火澄とは面識があります。結崎ひよののことは完全に知りません)


「あの女の人、大丈夫かな……」
なのはは桐山に抱えられたまま、後ろを振り向こうとする。
しかし、男の右腕はなのはの体をがっちりと捕獲していて動けない。
コートの男の人は淡々と言った。
「俺は津村斗貴子から、あの場は任せてお前を保護するように指示された。
だから、俺は彼女の判断に従うしかない」

あの女の人もコートの人も、殺し合いには乗っていないようだけど、しかし襲って来た敵を迎え撃つことはちゃんとできていた。
あの場で、なのはだけが何もできなかった。
その事実が、なのはの心を軋ませる。

せめて、レイジングハートがあれば良かった。
魔法が使えれば、なのはだって、いつものように――

――本当にそう?

なのはの心にいた冷静な部分が、冷やかにそう尋ねた。

水をかけられたように、なのの温度が下がる。

――魔法で戦ったとして、本当にあの人を止められたの?

確かに、レイジングハートがあればシールドで銃撃を防ぐことも、砲撃でカノンを打ち倒すこともできただろう。
しかし、魔法でカノンを行動不能にしたとして、その後はどうしていただろう。
説得してあのカノンを反省でもさせるつもりだったのか?
あの戦いは、なのはの知る戦いではなかった。
フェイトとぶつかりあった時とは、根本から違っていたのだ。
440Gun with Wing◇8nn53GQqtY氏 代理投下:2011/07/10(日) 22:02:19.44 ID:pAia5t8+
フェイトという少女に対しては、お話がしたいと思った。
何度もぶつかって、戦ってきたけれど、寂しそうな瞳に共感し、友達になりたいと思った少女。
彼女は確かに悪いことをしていたけれど、それはそうしなければならない悲しいことがあったからであり、それを助けてあげられたらと思った。
だから、全力でぶつかりあって、そして私が勝てば、その時はお話を聞いてもらえると思った。

でも、あの時のカノンという人は違った。

言葉が通じないと、思った。
フェイトのような、悲しげな瞳ではなかった。
乾いた瞳だった。
人間の瞳をやすりにかけてボロボロに研磨したような、擦り切れた目だった。
なのはの言葉では、あの人は止まらない。
フェイトちゃんの時のように、戦ってぶつかり合えばお話を聞いてもらえるという自信が、欠片も持てない。

お話がしたいんだ、と
本来なら当たり前のように言えた、その言葉が言えない。

カノンを食い止めようとした津村斗貴子さんという女の人も、あの人を殺すつもりでいるように見えた。
あの戦いは、本当に“殺し合い”だった。
現に、新八さんが、死んだ。

なのはの魔法は非殺傷設定を搭載していて、それを解除しない限り敵を傷つけることはできない。
バインドで動けないようにしたとしても、なのはの今の技術では、殺し合いが終わるまで拘束しっぱなしにしておくことなどできない。


つまり、あの人を止めるためには、あの人を殺すしか――


できない、と思った。


人を殺す、ということを視野に入れたその瞬間、心が『できない』と言った。


なら、高町なのははこの『殺し合い』を止められない?
高町なのはは、無力でいるしかない?

――9歳の少女は、生まれて初めて覆しようのない『理不尽』を目の当たりにしていた。
441Gun with Wing◇8nn53GQqtY氏 代理投下:2011/07/10(日) 22:02:45.46 ID:pAia5t8+
【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】
[状態]精神的ショック(大)、桐山にだっこ
[装備]なし
[道具]基本支給品一式、不明支給品0〜1、『跳』のカード(6時間以内使用不可)
[思考]基本・殺し合いには乗らない……
1・新八さん……。


桐山和雄は、その対峙を見て、装甲の男を『化け物』、襲われた少女を『弱者』と断じた。
状況から津村斗貴子が彼と交戦したことは明白であったし、何より看過すれば少女はそのまま撃ち殺されていた。
そして、津村斗貴子の『少女を保護して逃走しろ』という命令によって確信を得た。
この少女は、津村斗貴子の定義するところの『保護すべき弱者』である。

桐山和雄は少女を抱えて走りながら、頭の中に会場の地図を描く。
津村斗貴子は合流場所を指定しなかった。
万が一にも襲撃者を取り逃がした場合、合流場所に先回りされる危険性を考えてのことだろう。
しかし、この会場には人の集まりそうな施設が幾つか配置されている。
戦闘を終えた津村斗貴子が、その内のいずれかを探索する可能性は高い。
近辺の施設は、警察署、病院、そしてコンビニ。
……津村斗貴子は負傷していたようだし、病院に向かう可能性が高いか。
桐山はそう考え、川の上流へと駈けた。

その少女、“高町なのは”は、決して弱者ではない。
人を殺す覚悟も備わっておらず、またあったとしても現状ではその
桐山和雄の住んでいた世界の常識からすれば、充分に“異端”と言える魔道の潜在能力を有している。

もしその事実を知った時、彼は、


【桐山和雄@バトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]シルバースキン@武装錬金、鉄子の刀@銀魂
[道具]基本支給品一式×2、不明支給品0〜2、竹田千愛のノート@文学少女<Vリーズ
イエローの麦わら帽子@ポケットモンスターSPECIAL、テニスラケット@テニスの王子様
[思考] 基本:「力なきもの(一般人)」を保護し、「化け物(強者と判断したもの)」は殺す。
1・少女を保護しつつ、病院へ移動。
2・装甲服の男を『化け物』と認識

【竹田千愛のノート@文学少女<Vリーズ】
竹田千愛が己の半生を回顧して書きつづった自伝とも言えるノート。
これを読めば、彼女の気持ちが理解できるかも……。

【鉄子の刀@銀魂】
村田兄妹の妹、鉄子が鍛えた日本刀。鍔の部分にウ○コのような形のとぐろを巻いた竜が彫られている。
鉄子の願いが込められた一振りであり、紅桜と互角に渡り合う切れ味を持つ。
442Gun with Wing◇8nn53GQqtY氏 代理投下:2011/07/10(日) 22:05:45.76 ID:pAia5t8+
◆8nn53GQqtY氏から訂正がありました。
>>441の桐山パートを以下に変えるそうです。


桐山和雄は少女を抱えて走りながら、頭の中に会場の地図を描く。
津村斗貴子は合流場所を指定しなかった。
万が一にも襲撃者を取り逃がした場合、合流場所に先回りされる危険性を考えてのことだろう。
しかし、この会場には人の集まりそうな施設が幾つか配置されている。
戦闘を終えた津村斗貴子が、その内のいずれかを探索する可能性は高い。
近辺の施設は、警察署、病院、そしてコンビニ。
……津村斗貴子は負傷していたようだし、病院に向かう可能性が高いか。
桐山はそう考え、川の上流へと駈けた。

その少女、“高町なのは”は、決して弱者ではない。
人を殺す覚悟も備わっておらず、またあったとしても現状ではそのデバイスも備えていないが、
後に『エース・オブ・エース』と呼ばれる膨大な魔力量は既に顕在。
桐山和雄の住んでいた世界の常識からすれば、充分に“化け物”と言える魔道の潜在能力を有している。

もしその事実を知った時、彼は、


【志村新八 死亡確認】

【残り65人】

【桐山和雄@バトルロワイアル】
[状態]健康
[装備]シルバースキン@武装錬金、鉄子の刀@銀魂
[道具]基本支給品一式×2、不明支給品0〜2、竹田千愛のノート@文学少女<Vリーズ
イエローの麦わら帽子@ポケットモンスターSPECIAL、テニスラケット@テニスの王子様
[思考] 基本:「力なきもの(一般人)」を保護し、「化け物(強者と判断したもの)」は殺す。
1・少女を保護しつつ、病院へ移動。
2・装甲服の男を『化け物』と認識
443◇8nn53GQqtY氏 代理投下:2011/07/10(日) 22:06:14.56 ID:pAia5t8+
以上で代理投下を終了します。
444 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/10(日) 22:12:45.58 ID:FdUI4yuX
代理投下乙です
自分も投下します
タイトル:理想は高く、現実は低く
登場人物:矢部翼、滝沢佑馬、◆9QScXZTVAc
445 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/10(日) 22:13:17.83 ID:FdUI4yuX
「うわぁ…」
「何があったんだ…」

壊れたスーパー入り口を、呆然と眺める。
まるで、車か何か突っ込んだような壊れかただ。
尋常な壊れ方では無い、と言うかこうやって壊れること自体、異常だ。

「…とりあえず入るか。これ以上、無駄に濡れることもない」

割れたガラス等が散乱する中歩いて行く。
壊れているのは入り口だけで、それ以外は普通だ。
店内は静かで、外から聞こえてくる雨の音と、2人の足音以外は何の音もしない。
むしろ、静か過ぎて気味が悪いくらいだ。

「気を付けろ、誰が隠れててもおかしくないんだからな」
「分かってます」

しかし、今の所誰の気配も感じない。
今まで、かなり神経をすり減らして来たのだ。
少し位、気を抜いても罰は当たらないハズだ。

「…ちょっと休もうか、地面に直接座ることになるがまあいいさ」
「ですね…精神的に、結構疲れてます」

壁にもたれかかり、深く溜息をつく。
少し眠気もあるが、今は眠る訳には行かない。
…少なくとも、このゲームを壊すまでは。

(しかし、どうすればいいのだろうか?首輪を外す方法すら分からないのに…)
446 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/10(日) 22:13:40.32 ID:FdUI4yuX
首輪を外す…。
言うだけなら簡単だが、実際にやるのは並大抵の事ではない。
外すためのテクニックも無いし、方法も知らない。

「…さて、そろそろ中を見て回るぞ」
「分かりました…あっ」

佑馬が、急に黙り込む。

「どうした?」
「あ、あれ」

素直に指差す方向を見てみる。
見るとライフルらしき物を持っている男が見えた。
屋外と違い、店内は明かりが付いているお陰で相手の姿がはっきり見える。
全身を見てみても、別段変わった所はない。
…気圧される程の殺気を出していることを除けば。

「…こりゃ乗ってるな。あれほどの装備じゃ、まともにやりあっても勝ち目はない。逃げ…」

その時、足元にあったガラスの破片を踏み割ってしまった。
パリパリ…と、ガラスが割れる音が響く。
その音に気づいて、奴がこちらに近づいてくる。

「…たい所だが、やっぱ戦うしかないってか?」
「ど、どうしましょう」

相手は…ダッシュで近づいてくる。
もはや、細かい打ち合わせをする暇もない。

「1度しか言わないからよく聞け。俺があいつの気を引く。その内に逃げろ!」
「えっ、でも…」
「もう時間が無い!行くぞ!」

◆9QScXZTVAcが勢いよく敵の前に飛び出し、アイスソードを一閃する。
バックステップでそれを避けた後、素早く銃を構えてくる。

「佑馬は上手く逃げ切れたようだな、これでいい」

自分に向かってくる弾丸が、まるでスローモーションのように見える。
極限まで生命の危険を感じた時に見る光景は、ゆっくりに見えるとどこかで聞いたことがある。
今の、この光景がまさにそれなのだろう。走馬灯は…違うか。

「…うおおおおおおおお!!」

己の命が潰える前に、全ての力を込めて。
手に持つアイスソードを、敵に向けて投げた。



447 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/10(日) 22:13:57.78 ID:FdUI4yuX
「…」

上半身に思いきり被弾し、吹き飛んだまま動かなくなった男を尻目に、壁に突き刺さるアイスソードを回収する。
刺さった部分は凍り付き、未だに冷気を発している。
…驚いたことに、かなりの力で壁に突き刺さったはずなのに、ヒビどころか傷1つついていない。

「…使えるな」

最期に相討ちを狙ったのか、どうせ死ぬならとやけくそで投げたのか。
どちらかは分からない。
だが、この剣は明後日の方向に飛んで壁に突き刺さっただけだった。
そのまま遺体に目もくれず、さっき逃げた男を追うために雨の降る外へ飛び出して行った。

【一日目・朝/A-3:スーパー前】
【矢部翼@オリジナル】
[状態]:健康
[装備]:FN SCAR-L(3/30)
[所持品]:支給品一式、グロック18(33/33)、ワルサーP99(12/15)、SCARマガジン×3
      P99のマガジン×2、グロックのマガジン×2、アイスソード
[思考・行動]
基本:妹を殺させないために、全員殺害する。
1:逃げていった男を追う。
※◆9QScXZTVAcの遺体の傍にデイパックが2つ落ちています。

【◆9QScXZTVAc@非リレー書き手 死亡】
死因:射殺
448 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/10(日) 22:14:09.06 ID:FdUI4yuX
雨の中、振り返ることもせず走り続ける。
何も持たずにとにかく走る。
自分のデイパックを、さっきのスーパーに置いてきたようだが、そんなことはどうでもよかった。
あの状況では、間違い無く…。

(9Qさん…!)

目には涙が浮かぶ。
自分が無力なばっかりに、自分だけ逃げることになってしまった。
今は、ただ逃げることしか出来ない。
それが、たまらなく悔しかった。

(…そう言えば、さっき、民家で…)

民家で出会った2人を思い出す。
9Qさんが、「xz氏」と呼んでいた人。
あの人は、確か銃を持っていた。

「…あの人に手伝ってもらってさっきの奴を殺す…!」

涙は、もう収まっていた。
その代わりに、目には暗い…「ドス黒い決意」の炎が灯っていた。
漆黒の狂気は、やがて人を蝕んで行く。
純粋であったころの「滝沢佑馬」は、もういない。

【一日目・深夜/A-3】
【滝沢佑馬@オリジナル】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持品]:なし
[思考・行動]
基本:…絶対、許せない…。
1:9Qさんの仇を取る。そのために、さっきの民家へ戻る。
449 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/10(日) 22:14:24.16 ID:FdUI4yuX
投下終了です
450 ◆YR7i2glCpA :2011/07/10(日) 22:51:17.73 ID:sjVZmmmf
どのロワも色々と動いてくるなあ……
てな訳で本日二度目の投下。

ごちゃ混ぜロワ 32:アイオブザハリケーン
登場人物:新堂誠、神楽、安藤守
451アイオブザハリケーン ◆YR7i2glCpA :2011/07/10(日) 22:52:00.67 ID:sjVZmmmf
『不満』とは、忘れ去るものではない。
『解消』すべきものだ。
昔から、それこそ幼い頃から、何かやられたらやり返さないと気がすまない、そんな性質だった。
喧嘩も反抗もそれなりにやってはいたが、どこか燻っているものがあった。
正直、満たされてなどいなかった。
喧嘩をしていても、いつかはどちらかのダウンか第三者の仲裁で止められる。
その『先』に一体何があるのか、ずっと分からないでいた。
そんなもやもやした晴れない梅雨時の空のような疑問を抱えたまま、俺は高校に入学した。
そして…『あいつ』に出会った。
『あいつ』はそんな俺の不満を見抜いていた。
見抜いていたから、声をかけたのだろう。
「我がクラブに入らないか?」
と。

初めて人を殺した時、俺の中に湧きあがった感情は決して『恐怖』なんかじゃなかった。
むしろ、それは『歓喜』。
いい気になっている奴が、恐怖し、泣き叫び、命乞いをする様を見るのはぞくぞくするほどの快感だった。
そしてそいつを殺した時の感情の昂ぶりは、何物にも代えがたい、まるで天国にでも登ったかのようなものだった。
そうして俺は、誰も知らない裏のクラブ――殺人クラブに3年間所属してきた。



そんな俺は今、クラブの長である日野の命令で、どこかも分からない地で、どこの誰かとも分からない誰かさんを相手に殺し合いをしている。
正直、日野が参加していない事や同じクラブのメンバーである岩下や風間と言った奴らも参加しているのは疑問であり不満でもあったが、それでも殺せると言うのなら構わない。
全てが終わったら、日野に話を聞いてみるのも悪くはない。
場合によっては――日野の奴も殺そうかな。
452アイオブザハリケーン ◆YR7i2glCpA :2011/07/10(日) 22:52:47.77 ID:sjVZmmmf



神楽のイライラは、決して消えさることはない。
空腹、ロクでもない支給品、つれてこられた大事な仲間、傘が無い…
全てが気に入らない。
こんな事に巻き込まれていなければ、今頃は万事屋でお気に入りの酢昆布を齧りながらテレビを見つつゴロゴロしていたと言うのに。
許せない。
あのメガネの男が、許せない。
全ての食料を食らいつくして幾分落ち着いていた心は、またメラメラと燃え上がる。
もし今彼女に危害を加えようとする命知らずがいたならば、決して命の保証はできない。
そう、命の保証など、できないのだ……

バン、と銃声が一発響いた。



新堂誠は、自分の幸運に歓喜していた――いや、酔っていた。
高校生である伸銅は、当然ながら銃を撃った事はなかった。
映画やドラマ等では見慣れていたのだが、実際に自分が撃つとなると少々不安があった。
だからまず、新堂は『練習台』を探していた。
その『練習台』に向いていそうなのはやはり、女子供。
女子供ならば抵抗しないだろうし、したとしても大したことはできないだろう。
そう考えてホテルを探索していた新堂の前に現れたのは、チャイナ服とお団子頭が特徴的な背も小さい見た目には弱そうな女の子だった。
新堂は、売店の物陰に隠れながら自分の幸運をかみしめていた。
そして彼女が油断しきっているところを狙い、ベレッタの引き金を引いた――

だが、その銃弾は少女には当たらなかった。
新堂は知らなかった。
目の前の少女―神楽は伝説の戦闘民族『夜兎族』で非常に高い戦闘力を有する事に。
そして今、彼女は猛烈に怒っている事に。
453創る名無しに見る名無し:2011/07/10(日) 22:53:20.53 ID:ZAOpqU+2
支援
454アイオブザハリケーン ◆YR7i2glCpA :2011/07/10(日) 22:53:41.22 ID:sjVZmmmf

銃弾をかわされた、と振動が認識した瞬間、新堂の身体は吹き飛ばされていた。
何が起こったのか、新堂には理解できなかった。
揺れる頭で何が起こったのか確認しようと少女がいたところを向くと、そこには――修羅がいた。

「…良ーい度胸アルな……?」
「ヒッ?!」
そのあまりにも圧倒的な威圧感に、ただの高校生にすぎない新堂の腰が引けた。
神楽が発する圧倒的威圧感は、本来小さいはずの神楽の身体をまるで巨人の如く大きく見せていた。
「このかぶき町の女王こと神楽様に楯突くとは良い度胸アルな……」
可愛らしい声質が、どんどん修羅のそれに変わっていく。
これまで何人もの命を奪って来た新堂であったが、初めて自分の生命の危機を覚えていた。

「覚悟はできてんだろーな…?ガキ。」
ぼきぼき、と神楽が指の節を鳴らした。
新堂はもてる全ての力を振り絞り立ちあがろうとした。
だが、立ち上がったその瞬間こそが、神楽から見れば絶好の機会だった。



新堂の左足に、強烈なローキックが入る。
と、同時に鳩尾に前蹴りが突き刺さる。
と、同時に左腕に手刀が叩きこまれる。
と、同時に右頬に強烈なフックがぶち込まれる。

驚くべき事に、これらの攻撃を新堂は『同時に』受けたように感じた。
普通の男子高校生でしかない新堂の判断力では、夜兎族である神楽の俊敏な攻撃の一つ一つを受けた事を判断しきれなかったのだ。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァ!」



時をも止める最強のスタンドもビビらん勢いで、神楽は新堂を殴り飛ばす。
ボロボロになり吹っ飛んだ新堂の方を見向きもせず、神楽の意識はもう売店の方に向かっていた。
「……お土産のまんじゅうすらないアルか。」
神楽の怒りはまた爆発しそうになったが、足元に転がっていた新堂のデイバックを見ると神楽の顔ににんまりと笑みが浮かんだ。
「このデイバックは没収アル。食料と有り金全部頂くネ。この神楽様に逆らった罰ヨ。」
まるでどちらが先に襲われたか、分からない状況であった。
455アイオブザハリケーン ◆YR7i2glCpA :2011/07/10(日) 22:54:25.48 ID:sjVZmmmf



怖い。
怖い。怖い。
怖い。怖い。怖い。
彼の頭はそれだけに支配されていた。
自分の犯した罪――殺人。
逃げ出した自分。
何もできない癖に、自分は何をした。
見ず知らずの少女を撃ち殺し、そしてその場から逃げ出した。
後ろは、振り返りたくなかった。
もし振り返ったら、そこにあの少女が立っている。
そんな妄想すら抱いてしまう。

――なんで?

安藤の頭に、不気味な声が響いた。
まるで地の底から染み出すような、呻き声ともつかぬ不気味な声。

――なんで、わたしをころしたの?

どど、と安藤の身体から汗が滝のように溢れる。
どこにもいない少女の亡霊が、いま自分を恨んで自分を呪い殺そうとしているんだ。
恐怖に捕らわれた安藤の頭は、まるで底なし沼にはまったかのように悪い方へ悪い方へと思考を進めていく。
そうして考えがどつぼにはまって行くたびに、その不気味な声は大きくなって行く。
456アイオブザハリケーン ◆YR7i2glCpA :2011/07/10(日) 22:55:05.87 ID:sjVZmmmf



――わたしがなにをしたの?

――なんでうったの?

――いたかったよ

――くるしかったよ

――なにさまのつもりなの?

――しんじゃえ

――しんでよ

――しね


シネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ



「―――アアアアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッッッッ!!!!!!!!!!!」
457創る名無しに見る名無し:2011/07/10(日) 22:55:34.91 ID:ZAOpqU+2

458アイオブザハリケーン ◆YR7i2glCpA :2011/07/10(日) 22:55:43.31 ID:sjVZmmmf



安藤守は――何の能も取り柄もない、ただのダメ人間であった。
いや、そのダメっぷり――否、クズっぷりだけは眼を見張るものがある。
自分の事を助けてくれた恩人を、僅かな金のために見捨て、その事実を正当化し、その恩人が戻ってきたと知るとそのおこぼれにあずかろうとする。

安藤守は、正真正銘のクズだったのだ。
それは、この殺し合いの場においてもそうだった。
何の罪もない少女を、ただ出会ってしまったという理由だけで射殺し、そしてその恐怖から逃げ出した。
その際、彼女の支給品はしっかり持ちさっていた。
生き残りたかったから。
死にたくなかったから。
そのために少女を殺した事すらも、安藤は正当化しようとしていた。

だが、安藤はただの一般人だった。
ただ臆病で、自分一人じゃ何もできない一般人だった。
そんな彼に、『殺人』という絶対的な悪を正当化させる知力も度胸もなく――


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッッッッッ!!!!!!!」


――安藤守の精神は、崩壊した。



壊れた精神は暴走する。
暴走した精神に支配された肉体もまた、暴走する。
壊れた安藤は、ただ走る。
その先にあるのは――ホテル。

今、血の雨が降ろうとしている――
459アイオブザハリケーン ◆YR7i2glCpA :2011/07/10(日) 22:56:28.42 ID:sjVZmmmf





【F−5ホテル/1日目朝】
【神楽@銀魂】
[状態]:健康、程よい汗、怒り、食い足りない
[装備]:なし
[道具]:新堂の支給品一式(アイテム未確認)
[思考]1:クソメガネヤロー(日野)をギタギタに叩きのめす。
   2:食料ゲットー!早速部屋に持ち帰って食べよう。
   3:銀時、新八と合流したい、マダオは保留。
   4:傘が欲しい。

【新堂誠@学校であった怖い話】
[状態]:全身フルボッコ、虫の息
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]1:……何が起こったんだ?
   2:殺し合いに乗る。

【安藤守@カイジ】
[状態]:精神崩壊、暴走、発狂
[装備]:レミントンM31RS@BATTLE ROYALE
[道具]:基本支給品一式、柊かがみの支給品一式(アイテム未確認)
[思考]1:暴走中
   2:もうなにもかもどうにでもなれ

[備考]
新堂のもっていたベレッタは売店の中に落ちています。
ちょっと探せばすぐ見つかりますが神楽は気付きませんでした。
神楽の支給品一式は最上階のスイートルームに放置されています。
460 ◆YR7i2glCpA :2011/07/10(日) 22:56:56.03 ID:sjVZmmmf
投下終了です。
461 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/10(日) 22:59:24.32 ID:FdUI4yuX
投下します
タイトル:第弐回放送
462 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/10(日) 22:59:38.81 ID:FdUI4yuX
「うーむ、お前らが頑張って短時間に殺しまくったんでちょっと早めに放送してやるよ。
まず、恒例の死者発表だ。

三沢里沙
小原雄二
尾上純一
友人のK
殺人鬼
緑川美沙子
白川剛
遠山純子
五十嵐弘
五十嵐健児
ノコギリ男
三田村哲也
◆9QScXZTVAc

以上13人だ。結構多いじゃねーか。1人で沢山殺ってるやつもいるじゃねえか。
不確定な情報だが、何か途中で霊も参加してたらしい。まあ、あいつは別に参加者じゃないぞ。
そいつも含めると死者は14人か…霊が死ぬってのも、変な表現だけどな。
ま、それは別にどうでもいいんだ。
次に、禁止エリアだが…。

D-3
B-5

以上2エリアだ。気を付けろよ。
…ところで、お前らの中で首輪を外してやろう、なんて考えてるやつはいないだろうな?
こっちには何でもお見通しだからな。
これがどう言う意味かは、頭のいいヤツじゃなくても分かるはずだぜ。
頭のいいヤツならなおさらな。
それじゃお前ら、頑張って殺しあえよ!」

【一日目・朝/???】
【富山由紀夫@オリジナル】
[状態]:健康
[装備]:謎のスイッチ
[所持品]:なし
[思考・行動]
基本:ゲームの遂行。
463 ◆6LQfwU/9.M :2011/07/10(日) 23:00:01.99 ID:FdUI4yuX
投下終了です
464 ◆ymCx/I3enU :2011/07/11(月) 21:52:37.02 ID:Q6KTzIcj
投下乙です 自分も放送を投下します
465第一回放送(俺得ロワ5th) ◆ymCx/I3enU :2011/07/11(月) 21:53:17.89 ID:Q6KTzIcj
35話 第一回放送(俺得ロワ5th)

『…あー、あー、聞こえているか? 今生きている連中。
俺だよ、荒神だよ。これから第一回目の定時放送始めるぞ。

まず禁止エリアからだ。

午前9時より、B-2、D-1.、D-6、F-3、F-6。もう一度言うぞ、午前9時より、B-2、D-1.、D-6、F-3、F-6だ。

それじゃあ次、第一回放送までに死んだ奴の名前を言う。
多少前後はあるが死んだ順番だ。言うぞ。

森永優也
愛餓夫
長谷川泰三
鈴木フグ夫
岡山琴美
イラリオン
小倉敦子
ゼルマ
瀬戸正行
土井津仁
エーリアル
井田亮太
へレーネ
細田英里佳
加藤字佑輔
西川のり子
十三階段ベム
仲販遥
河野史奈
銀鏖院水晶
長谷川春香
沖田総悟
ノーチラス

以上24人。丁度半分まで減ったって事だな…良いペースで安心したよ。

友達が死んだ奴もいるだろうけど、悲しんでばかりいても駄目だぜ。
死んだ友達の為にも頑張って生き残れ。

なんてな。

じゃあ次の放送は正午だ。また俺の声が聞けるように頑張れよーじゃあな』


【残り:24人】
466 ◆ymCx/I3enU :2011/07/11(月) 21:53:58.79 ID:Q6KTzIcj
投下終了です。
467 ◆SIN/KBm/.Y :2011/07/14(木) 03:06:01.67 ID:1izy9ddA
『罪ロワイアル-sin-』
 10話目、投下すめす。
46810 閃光 ◆SIN/KBm/.Y :2011/07/14(木) 03:06:45.09 ID:1izy9ddA
【1日目、早朝、飯塚巌】

 狩りに必要なのは、待つことと集中することだ。
 待てずに気が逸りすぎれば、相手の警戒心を呼び逃げられる。
 そしていざというときに集中力を発揮できなければ、当たるものも当たらなくなる。
 長年の狩猟経験で、イワオはその事を熟知していた。
 だから、彼は待つ。
 あのひらひらとした桃色のワンピースを来た少女が、動きを見せることを。
 或いは、その姿が察知できる程度に周囲が見渡せる様になることを。
 少女。
 月明かり星明かりの下に見たその姿を脳裏に描く。
 イワオの孫とは似ても似つかぬ、美しい少女だった。
 そういう事には頓着しない様な野暮天の彼だが、それでもそのくらいの事は分かる。
 ある種西洋の人形めいたその少女は、しかし肩には自分が持っていたのと同じバッグをかけ、手には草刈り鎌らしきものを持っていた。
 殺し合うのに便利なものが入っている、と言われたこのバッグ。
 イワオのそれに入っていたのは、狩猟用プリチャージ式空気銃であった。
 その鎌も、そうやって渡された「便利なもの」の一つなのであろう。
 それを手に、あの小太りの男を、中年男を追っていた。
 子どもらしい鬼ごっこではあるまい。
 逃げていた2人の慌てようからすれば、殺す気であったのだ。
 イワオは、そう判断している。
 勿論それには、確証など何もない。
 半分は、願望であったかも知れぬ。
 自分が今から殺そうとしている相手が、殺すに値するだけの"人殺し"なのだと思いたいのだ。
 そう。自分と同じ様な。

 老人であっても、自分のように激情に駆られ人を3人も殺める。
 子どもと思っていても、集団で1人の娘を襲い、危うく死に至らしめるほどに暴力を振るう。

 イワオは周囲のあらゆる気配に気をやりつつ、同時に視線は倒れ伏した中年男へと向け続けている。
 周囲より少し高く、それでいて茂みに囲まれたこの位置は、辺りからは見えにくく、それでいて周囲を見渡すのには適していた。
 次第に明けつつある空の元、イワオは何時間も待ち続けていた。
46910 閃光 ◆SIN/KBm/.Y :2011/07/14(木) 03:07:30.38 ID:1izy9ddA
 
 そのとき、は、間もなく訪れる。
 水平線からくっきりと顔を覗かせた太陽が、それまでうすぼんやりとしていた空間を切り裂いて、色彩と形を明瞭にし始める。
 どこだ。
 空気銃を構えたまま、イワオは周囲を探る。
 日が昇れば、お互いにその姿を、文字通り白日の下にさらすことになる。
 集中して、辺りを見回す。
 茂み、木陰、くぼみ、岩陰…。
 その視界に、イワオは見た。
 確かに、桃色のひらひらとしたワンピースの裾が、そこにあった。
 二発。
 二発、撃った。
 甲高い破裂音と共に、茂みに隠れている姿を捉えた。
 捉えた、はずだった。
 数瞬、待つ。
 反応が無い。声もない。手応えもない。
 しかしあの位置であれば当たっているはずだ。
 あのワンピースの裾は、ひらひらと風に揺れ、そして ―――。

 閃光。
 
 思っていた以上に自分の気が逸っていたと後悔する間もなく、視界が白熱する。
 目に入ったのは決して強い朝の光ではない。
 人工的で、強烈な光。正しく、閃光である。
 その閃光が、イワオの網膜を焼き尽くさんほどの強さで襲いかかってきた。
 ぐあっ、と、声を出していた。
 声を出し、しっかと握りしめている空気銃にしがみつくかのように、背を丸め蹲ってしまっていた。
 イワオの理解を超えて襲いかかってきたその光に、あらゆる感覚が狂わされている。
 視界は勿論、上も、下も、音も、匂いも、皮膚の感触も、気配も、全て。
 それまで持続させていた集中力の全てが、白紙になった。

 そして、痛みが。
47010 閃光 ◆SIN/KBm/.Y :2011/07/14(木) 03:08:12.83 ID:1izy9ddA

 
 混乱しつつも、それでもある程度周りの状況が分かる様になったときには、既にイワオは銃を撃てる状態ではなくなっていた。
 腕も、脚も、指も、或いはその他体中の至る所が、深く、浅く、様々に切り刻まれている。
 指が数本無い。足首の腱も切られている。耳が千切れかけている。右目も無い。それ以外にも、数えようとしたらきりがない。
 痛む。痛み以外の感覚が消え去ったかの様に痛む。
 うわごとのように、ああ、とか、うう、とか、そういう声か唸りか分からぬ音が、喉から出ている。
 そして次第に浮かび上がってくるのは、半裸のすらりとした少女の姿だった。
 下着のみを身につけた、黒髪の美しい少女は、しかし体中べったりとした血に塗れている。
 手には、同じく血に塗れた鎌を持っている。
 或いはそれは、鮮血のドレスを身にまとっているかのようであった。
 その足元には、空き缶のようなものが転がっている。
 それが、スタングレネードと呼ばれる、強い閃光を放ち対象を一時的に行動不能状態に陥らせてしまう非殺傷用手榴弾である事も、少女のバッグの中に入っていた「便利なもの」で、先程の閃光の正体であるという事は、イワオには分からぬ事だ。
 また、彼女が隠れる前に身につけていたワンピースを脱ぎ、それを茂みに掛けておくことで囮とし、銃を撃たせることでイワオの居場所を確認し、そこへスタングレネードを投げ込んで来たという事も、イワオの知らぬ事だ。
 見た目では、相手を計ることは出来ぬと、そう考えていた。
 しかしそれでもまだイワオは、この天使のような少女のことを、その見た目で計ってしまっていたのだ。

「赦します」
 涼やかな、慈愛に満ちた声が聞こえてきた。
「あなたの罪を赦します」
 その声は年相応に幼く、しかしどことなく年齢を感じさせない。
「あなたの罪を、浄化します」
 近くはない何処か。しかし遠くもない場所。
「あなたの罪を、私が、浄化します」
 くぐもった呻きのようなものが聞こえた。

 血に塗れた天使は、再びイワオの視界へと舞い降りる。

「あなたの罪を、私が浄化します」
 血に塗れたまま、にっこりと微笑んだその顔は、朝の光を浴びながら、やはり愛らしく美しかった。

 そして、サイレンが鳴り始める。

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【参加者資料】 
 
飯塚厳 (イイヅカ・イワオ)
男・68歳・農家
罪:猟銃による複数人の殺人
備考:改造狩猟用プリチャージ式空気銃、コンバットナイフ
ポイント:200
471 ◆SIN/KBm/.Y :2011/07/14(木) 03:09:29.05 ID:1izy9ddA
 以上にてござる。
472 ◆ymCx/I3enU
新スレ立ちました 立てて下さった方ありがとうございます

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