【長編SS】鬼子SSスレ4【巨大AA】

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82時の番人
今、ここ誰も使ってませんね〜!?
使ってないようなので今から

「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第十二章〜【ヒワイドリの怒り】
を投下します。

それと今回は、やっとこさ挿絵・・有りです。
絵を投下すると、何故か色が違って表示されてしまう所があるみたいです。
ご了承下さい。


◎NO、15さんが書いていた本スレ>>343の幹部鬼の設定画にあった、
 カマキリをモチーフに、言葉だけですがイメージして書かせてもらった所が
 一部あります。NO,15さん、イメージお借りしました。絵では表現していません。
 SSの中に出てくる全身カマキリタイプの輩は、幹部鬼とはいっさい関係なく、
 ただの使いっパシリみたいな扱いです。

◎ヒワイドリ擬人化のイメージも、何方かが書いていたものを使わせて頂きました。

◎音麻呂氏、歌麻呂氏、詠麻呂氏。名前使わせて頂いてます。
 山伏&陰陽師&古武道その他の神職経験者の【別天津神(ことあまつがみ)の民】として出ています。
 第十章から書かせて頂いてます。絶対駄目だ〜と言う事なら即変更します。

◎それと、田中さんに下の名前があったんですね・・・。
 みこと→たくみ(匠)に変更します。
 絵チャ・・行きそびれました。また有るのなら、ロム専でこっそり覗きに行かせてもらいます。

>>78 索引乙。いつも索引作ってくれてる人ですよね!?ありがたや〜。

>>79 感想有難う御座います。5変態は・・・サードシングル取り掛かり中〜。

では、SSを投下させて頂きます。
83時の番人:2011/03/02(水) 22:05:20.68 ID:knkjYirz
●「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第十二章〜【ヒワイドリの怒り】

 陽の光が傾きかけた午後。薄暗い森の中を凄まじい速さで駆け飛ぶ鬼子の姿があった。
その姿は・・角が光りながら鋭くなり、裾が短くなった紅色の着物から大量のもみじが舞い落ちている。
そして、妖しく光り輝く薙刀を右手に持ち・・・赤黒く染まったその瞳からは・・・
・・・涙が溢れ出していた。

皆が感じた歌麻呂の痛み・・・。その痛みが鬼子の心を強く締め付けている・・・。
みんなを守る・・・と、心で決めていたのに・・・。
 【無事でいて・・・】
そう思う一心で鬼子は、木々の小さな枝を避ける事無く森の中を一直線に駆け飛んでいる。
鬼子の顔は・・・木々の枝が当り、血が滲むようになってきていた。
自分のこの小さな痛みなどどうでもいい。歌麻呂の安否だけが・・・・・・。

 歌麻呂が何かの影を相手に、険しい表情で身構えている。
右手に錫杖(しゃくじょう)を持ち、その枝の先には、刀の様な薙刀の様な鋭い刃物が付いていた。
歌麻呂の左腕から・・血が流れ出ている。そして、足を引きずっていた。
 「くそう・・・。不意打ちたぁ〜卑怯な奴だな・・・。こ、これが心の鬼に取り付かれ、
  悪しき輩と変貌した奴の姿か・・・。醜い姿だな・・・」
彼が見上げたその先には、自身の身体の三倍ほどの大きさのある熊の様な姿の悪しき輩がいた。
歌麻呂は錫杖を左手に持ち替え、右手で素早く九字(くじ)を切り出した。
 「臨兵闘者皆陣列在前」←【指を四縦五横に切る動作を伴う】
その言葉を唱えた後、何かの紙をその悪しき輩に投げつけた。
そして叫ぶ。
 ≪「式神!!」≫
すると、その投げつけた紙が、獅子の姿に変わり悪しき輩に飛び掛って行った。
今回のこの力は、山伏ではなく陰陽師の力だ。
その隙に、歌麻呂は足を引きずりながら少し後ろへ後退する。
獅子にまとわりつかれている輩が大きな爪で、その獅子を一刀両断した。
 【ガシーン】
歌麻呂は、険しい表情で下唇を噛締める。
 「・・これなら」
そしてまた九字を切り出した。
 「朱雀・玄武・白虎・勾陳・帝后・文王・三台・玉女・青龍」
先ほどとは違う唱え方だ。
そう言いながら今度は木の板を懐から出し、それを輩めがけて力一杯投げつけ、叫んだ。
 ≪「霊符!!!」≫
 【ドドーーーーン】
大きな爆発音とともに、あたり一体が炎の海に飲み込まれる。
大きな炎が燃え盛る中、歌麻呂はその場で炎を見つめ身構えていた。
 「ハアハア・・・やったか・・・?」
目の前の炎の中で、黒くうごめく影が見える。
歌麻呂は、顔の前に腕をかざし、炎の中のうごめく影をじっと見ていた。
 【ドバァッ】
突然炎の中から悪しき輩が現れ、歌麻呂めがけて襲い掛ってきた。
歌麻呂は後ろに飛んで逃げようとしたが、くじいてる足が言う事を聞かない。
そして・・その場に倒れこんでしまった。
 「し・・しまった」
歌麻呂はその影を、目を見開きながら見上げた。
覆いかぶさる様に歌麻呂の前に飛び出して来た悪しき輩。
その輩が、大きな爪を勢い良く振り下ろしてきた。
 【ガシーーーーンッッッ】
辺り一面に鳴り響く大きな鈍い音。
 【ドスン】
と地面に落ちる輩の片腕。
その音に目を開いた歌麻呂の前には・・・・・仁王立ち姿の鬼子がいた。
鬼子が熊の様な悪しき輩の片腕を切り裂いていたのだ。
赤黒い瞳からは・・・小さく輝く涙が流れている様に見えた。
●挿絵1 http://loda.jp/hinomotooniko2/?id=735.jpg
84時の番人:2011/03/02(水) 22:06:31.23 ID:knkjYirz
 「ヒワイドリ、早く歌麻呂さんを安全な場所まで!」
人型に素早く変ったヒワイドリは歌麻呂を抱きかかえ、即この場から走り去る。
歌麻呂の目には、ヒワイドリの着物の合間から燃え盛る炎の中へ飛び込んでいく鬼子の姿が映る。
手を伸ばしながら歌麻呂は叫んだ。
 ≪「鬼子ちゃーーーーん・・・」≫

 燃え盛る炎の中で、鬼子とその悪しき輩は対峙している。
輩の爪を見ると・・・白い毛がその爪の中に挟まっていた。
鬼子には直ぐ解った。それが、ハチ太郎の綺麗な白い毛だと。
鬼子の髪の毛が逆立って行き、赤黒い瞳が怒りを爆発させる。
 ≪「・・・お前が・・・お前がやったのかーーーーー!」≫
鬼子は叫び、見た事の無い険しい形相でその輩に飛び掛って行った。
光輝く薙刀を力一杯振り下ろす鬼子。それをかいくぐりながら鋭い爪を
鬼子に突き出す悪しき輩。
炎の中では、【キーン】【ガスッ】【ドガッ】という音が何度も鳴り響いていた。

 少し離れた高台に、ヒワイドリは歌麻呂を降ろす。
ヒワイドリは、自分の白い着物の袂を破り、それを歌麻呂の怪我の部分に巻き付けた。
 「大丈夫かぃ?歌麻呂」
初めて見る優しい目つきのヒワイドリだ。
 「あ・・あぁ。俺なら大丈夫。ちょっと、足をくじいちまってね。それより・・
  鬼子ちゃんの方が心配だ。鬼子ちゃんがどれほど強いかは知らないけど、
  あの悪しき輩は・・・鬼子ちゃんにとっても強すぎるんじゃぁ・・・」
ヒワイドリが炎の方を見つめる。
 「・・・・・解らない。おいらにも解らないんだ。鬼子の強さがどれ程かは・・・」
後ろの草むらが急にガザガザと揺れる。
ヒワイドリは振り向き、とっさに身構えた。
すると、音麻呂と詠麻呂、秀吉が出てきた。
3人の目に、歌麻呂の身体の状態が飛び込んで来た。
音麻呂が、血相を変えて飛び寄って来る。
 「う、歌麻呂。大丈夫か!?」
 「あぁ、大丈夫。危ない所を鬼子ちゃんに助けられたよ」
秀吉が辺りを見回す。
 「お、鬼子ちゃんは何処に・・・?」
すると、ヒワイドリが指差した。
 「・・・あの・・炎の中さ・・・。悪しき輩とあの中で闘ってる・・・」
その言葉を聞いた秀吉の表情が、みるみる怒りに満ちた顔つきに変わっていく。
眉間にシワを寄せた秀吉は、ヒワイドリの胸ぐらを掴み、押し上げた。
 「お・・お前・・・。鬼子ちゃんを一人で・・・」
 「秀吉さん。違います。今さっきヒワイドリが俺をココへ運んでくれたんです」
歌麻呂は、痛む足を押さえながら立ち上がり、秀吉の腕をつかみながらそう言った。
 「そ・・そうか。すまん・・ヒワイドリ」
そう言った秀吉は、直ぐに鬼子の方に走って行った。
 「君達はココで待機だ。危ないと思ったらすぐ逃げるんだよ!
  決してあの場所には近づかないでね」
そう言い残し、秀吉は鬼子の方に走って行った。
秀吉が駆け込んで行った時、炎は煙へと変わっていた。
そして大声で叫んだ。
 ≪「鬼子ちゃん!鬼子ちゃん・・・」≫
黒く立ち込める煙の中から鬼子の声が聞こえて来た。
 「秀吉さん?こっちには近づかないで!」
その声がした方へ、秀吉は何も考えず駆け込んで行った。
薄暗い煙の中、秀吉の目に飛び込んで来たのは、鬼子の着物が所々切り刻まれていて、
口からも・・・頬からも血を流している姿だった。
 「鬼子ちゃん!」
 「ひ・・秀吉さん・・・」
鬼子は目を見開き驚いている。
 「な、何で来たんですか・・。ここは危険だって・・・」
 「・・・鬼子ちゃん・・。一旦下がるんだ。その状態では勝てなくなるよ」
85時の番人:2011/03/02(水) 22:07:33.38 ID:knkjYirz
2人の前には、異形の形をした悪しき輩がいる。こちらの動きをジッと見つめているみたいだ。
 「だ・・駄目です。先に逃げて下さい。秀吉さんは何も武器を持っていないじゃないですか」
その言葉が終わるのと同時に、悪しき輩が飛び掛って来た。
素早く鬼子の前へ出る秀吉。
輩の大きな腕を瞬時に掴み、相手の力を利用してそのまま下へ押しやる。
下へさがった輩の首元めがけて、秀吉の足が力強く食い込んだ。
 【ドガッ】
輩は地面に叩きつけられる。一瞬の出来事だった。
秀吉は、鬼子の腕を掴み後ろへと下がっていく。
 「これが僕の武器さ。古武道ってね、相手の力を利用しながら倒すんだよ」
鬼子は秀吉の力強さに圧倒されていて言葉が出なかった。
 「あ〜あ。鬼子ちゃんのその姿を織田さんが見たら・・・僕怒られちゃうな・・・」
 「で・・でも・・・。やっぱり秀吉さんは下がってた方が・・」
 「鬼子ちゃん。鬼子ちゃんがいくら強くても、倒せない相手がいるかもしれない、
  そういう時は、みんなの力を借りないとね。力を合わせれば勝てるようになるよ、きっと」
叩きつけられた輩の周りに立ち込めていた煙が、徐々に薄くなってきた。
その時・・・鬼子と秀吉の目に映ったのは、倒れている輩の後ろにもう一体、
大きな異形の形をした輩の姿が映った。
秀吉が、目を凝らしながらその輩を観察している。
 「形が違う・・・。やけに長い手足だ・・・」
 「あ・・あれは多分、昆虫か何かに取り付いた輩だと思います。でも・・・
  ここまで身体が大きくなるなんて・・・」
 「鬼子ちゃん・・少し距離をとろう。相手の動き方を読むんだ」
 「は、はい」

 少し離れた場所にいるヒワイドリ達。彼等もまた、鬼子達の状況を見ていた。
ヒワイドリが険しい表情でそれを見つめている。
 「やばい・・・やばいぞあれは・・・。もう一体出てきやがった。
  秀吉がいると言っても、一匹相手に苦戦していた鬼子では・・・」
 ≪「俺が行く!」≫
と声を張り上げたのは音麻呂だった。
 「まてぃ」
後ろからガサツな声が飛んで来た。出てきたのは、般若と奏麻呂だった。
 「後ろから近づいてるワシ達に気付かんようでは、あの輩は倒せんよ」
奏麻呂が歌麻呂の状況を見て、近くに飛んで来た。
 「ど・・どうしたの!?怪我してるじゃない・・・」
 「ハハ・・ちょっと不意をつかれちゃってね」
般若は、彼等の周りに素早く結界を張る。
 「この結界から出るんじゃないぞ。この中にいれば安心じゃからな。絶対に出るな!
  ヒワイドリよ、どういう状況か説明してくれ」
ヒワイドリは、鬼子がココへ到着してから今までの状況を般若に説明した。
 「・・・そうか。苦戦しとると言う訳じゃな」
 「そ、そうだよ。だから速く助けてやれよ般若」
ヒワイドリはそう荒々しく般若に言った。
 「・・・今は駄目じゃ・・・」
 「ハァ・・?何言ってんだ般若。お前は鬼子の守護者だろ!」
 「そうじゃ・・・。ヒワイドリは知らんのか?守護者とは、必要以上の事をしてはいけないんじゃ。
  もしワシが手助けなどしてしまったら、今必死になって考えておる鬼子が成長すると思うか?
  今以上に強くなろうとしている鬼子の邪魔をするだけじゃ」
 「しかし・・・あの状況じゃぁ・・・」
 「解っとる・・・。もう少し様子をみるんじゃ」
般若は鬼子達を見つめている。
ヒワイドリは、握り拳を作りながらその様子を眺めていた。
86時の番人:2011/03/02(水) 22:08:35.25 ID:knkjYirz
 ジリジリと後ろへ下がる鬼子と秀吉。そして秀吉が鬼子に言った。
 「あの這いつくばってる方の輩の攻撃パターンは解ったかい?」
 「はい、大体は。あの大きな爪でしか攻撃してきませんから」
秀吉は、もう一体の輩の方を見た。
 「じゃぁ後は、あの手足の長い輩の攻撃パターンが解れば、何とかなるかもしれないね。
  僕があの輩と対峙するから、鬼子ちゃんはその攻撃パターンを良く見ておくんだよ」
そう言い少し前へ出る秀吉。鬼子はその秀吉の肩に素早く手をやった。
 「だ、駄目です。危険ですよ・・・。秀吉さんは相手の力を利用して倒すんでしょ!?
  なら、あの手足の長い輩には不利なんじゃぁ・・・」
鬼子のとても不安そうな顔つき。秀吉はその鬼子の顔を見ながら微笑んだ。
 「さすがだね!良く見てる。僕の弱点も解ってるなんて凄いよ。
  でもね、今君は、肩で息をしているだろ。その状態で突き進んでも解決策は見つからない。
  僕は、自分の身が危なくなったら一度後ろへ下がるから、それまではその目で
  相手のパターンと弱い所を読み取ってくれるかな。それと、体力を回復させといてね」
 「わ・・・解りました・・でも・・・」
鬼子の表情はまだまだ不安そうだ。秀吉は、人差し指を立てて笑顔で鬼子に言った。
 「頼んだよ。これから光の世を守っていかなくちゃいけないのは僕じゃなく、鬼子ちゃんなんだ。
  その鬼子ちゃんには、もっともっと強くなってもらわなくちゃ。ね!」
そう言って、秀吉は輩の方へと飛び込んで言った。
 ≪「ひ・・秀吉さーーーん」≫
手を伸ばし叫ぶ鬼子の指先越しに、秀吉の姿が小さくなっていく。
手足の長い輩を一言で言うならカマキリのようだ。
秀吉がカマキリの様な輩の近くに行った時、鋭いその長い手が飛んで来た。
それをしゃがんで避ける秀吉。そして素早くその輩の真下へと潜り込んだ。
お腹の様な部分に、力一杯拳を振り上げる。
 【ドグッ】
少しヨロめく輩だが、長い足が横から飛んで来た。
秀吉はすかさず状態を反らす。目の前をかすめ飛んでいく輩の足。
とっさに、秀吉は輩の前に出て飛び上がった。
そして、秀吉の右足が空間を裂く様に輩の顔めがけて飛んでいく。
 【ガツーーーン】
輩の首が捻じ曲がる。
 「いけるか・・・」
秀吉がそう思った瞬間、背中に熱い激痛が走った。
中を舞いながら振り向くと、そこにはさっきまで横たわっていた熊の様な輩がいた。
その輩が、秀吉の背中をえぐったのだ・・・。
 【ゥグッ・・】
秀吉は・・地面に膝を付き、倒れ込んでしまった・・・。
それを見ていた鬼子の赤い目がさらに大きくなり、一瞬にして髪の毛が【ブワッ】と逆立つ。
凄まじい速さで駆け込む鬼子。その目には秀吉しか映っていない。
立ちはだかる二匹の輩の間に素早く入り、秀吉を抱きかかえてその場を飛び出して行った。
鬼子は右足で地面を蹴ると同時に、秀吉をその場に置き、
身体を反転させて、今度は輩に向かって突進して行った。
秀吉の身体の周りは、小さく光るもみじの葉っぱで覆い尽くされている。
輩に飛び込んでいく鬼子の表情は、怒りに満ちている。
激しく光り輝く薙刀が、動きの鈍い熊の様な輩を切り裂いた。
 ≪「萌え散れー!」≫
●挿絵2 http://loda.jp/hinomotooniko2/?id=736.jpg
大きく叫ぶ鬼子。その鬼子めがけてカマキリ型の輩の長い手が飛んで来た。
鬼子はその手を避けようとしない・・・。頬をかすめ、鬼子の頬を切り裂いた。
しかし、鬼子は瞬き一つしない。かまわず、そのまま突進する鬼子・・・。
鬼子の表情は・・獣のようだ。
87時の番人:2011/03/02(水) 22:09:37.71 ID:knkjYirz
 その様子を見ていたヒワイドリが何かに気付く。そして手を上げ指した。
 「あ・・あれ・・。あの輩の後ろに3匹目の輩が・・・」
その3匹目の輩の姿も大きく、トカゲと狼を合わせた様な姿をしていた。
 「も・・もう駄目だ。般若、鬼子を助けに行こうよ」
ヒワイドリは真剣な表情で、般若にそう言った。
しかし・・般若の答えは・・・。
 「・・・まだだ」
般若を酷く睨むヒワイドリ。
 「き・・・貴様〜・・・」
そして握り拳を作りながら叫んだ。
 ≪「鬼子を見殺しにする気かーーーーーーーーーーーーーー!!」≫
そう叫びながら、ヒワイドリは結界から出て、鬼子の元に走って行った。
 「は・・・般若・・さん」
そう声をかけて来たのは音麻呂だった。
 「俺も行きます。これは・・・どう見ても鬼子ちゃんには不利ですよ・・・。
  俺達の力が弱いのは解ってます。だけど、これじゃぁ・・・」
般若は腕組しながら語った。
 「駄目じゃ。お主等が行くと、鬼子は必ず守ろうとする・・・。
  今のあの表情では、自分の身を犠牲にしてまでもな。お主等にはそれが解ると思うがの」
音麻呂達4人は、般若の言葉は直ぐに理解できた。彼等もまた神職に精通する身。
鬼子の目からは、それが非常に解りやすく読み取れていたのである。
 「大丈夫じゃ・・・・・。そん時はワシが出る」
般若はそう語り彼等の動揺を抑えた。

 ヒワイドリが、怒りに満ち溢れている鬼子の目の前に飛び出てきた。
切羽詰った状況に似合わない笑顔のヒワイドリ。
 「よ!助けに来たぜ」
 「ヒ・・ヒワイ・・」
少しばかり鬼子の目の色が変わり、落ち着きを取り戻す。
そしてとっさに輩から離れる鬼子。ヒワイドリもそれに付いていった。
 「あ!あの輩は・・!?」
鬼子はやっと、3匹目の輩に気が付いた。
 「だろ〜。全然気付いて無かっただろ。もうチョッとで殺される所だったぜ」
 「・・・な・・何であんたまでココに来たの?」
 「何でって・・・助けに来たんだろ」
 「た・・助けにって・・・足手まといになんないでよ・・・」
邪魔だな〜と言いたげな表情の鬼子。そんな鬼子をよそに、ヒワイドリは腕まくりしている。
そして、ヒワイドリは鬼子の方を見て言った。
 「で・・・どうやって倒そうか・・?」
鬼子は口をアングリと開ける。やっぱり・・今のヒワイドリは
呪縛を解く前のヒワイドリと性格が同じだった・・・。
頭をかきむしりながら鬼子は言う。
 「あの手足の長い輩は、接近戦に弱いみたい。でも・・・その中に入るまでが危険なの・・」
 「接近戦に弱い・・・か」
ヒワイドリは【ニヤッ】っと笑った。
 「よ〜し。見とけよ鬼子」
そうヒワイドリは言いながら、目の前に両手をかざした。
すると、ヒワイドリの回りの空気が渦を巻く。髪の毛と着物が激しく舞い上がった。
 【ブワアァ〜〜〜】
●挿絵3 http://dl8.getuploader.com/g/oniko3/53/12-3.jpg
 【プッスン・・】
●挿絵4 http://dl8.getuploader.com/g/oniko3/54/12-4.jpg
 「あ・・・あれ・・・???」
ヒワイドリの姿が・・・弱々しい鶏に変わって・・・。
鬼子が後ろでこけている・・・。
88時の番人:2011/03/02(水) 22:10:38.48 ID:knkjYirz
ヒワイドリの額から、冷や汗が流れ落ちる。
情け無さそうな表情で鬼子の方を見た。
 「じゅ・・呪縛が・・・」
 ≪「ヒワイ!!下がって!!」≫
鬼子がそう叫ぶ。
カマキリ型の輩が襲いかかって来たのだ。
ヒワイドリはまた人型に変り、とっさにしゃがみ込んだ。
その背中をかすめる様に、輩の長い腕が飛んでいく。
鬼子が輩の近くに素早く走り込む。そして薙刀を力一杯振上げた。
 【ズバーーーン】
・・・空を切る薙刀。その鬼子めがけて輩の長い手が飛んでくる。
鬼子は、薙刀を振り切った勢いで体勢を整える事が出来ずにいた。
 【ドンッ】
ヒワイドリが鬼子に体当たりして突き飛ばす。
鬼子の身代わり・・の様な形になってしまったヒワイドリめがけて、
輩の手が・・・。
 【ガシーーーン】
ヒワイドリの頭にかすかに当った。脳震盪を起こしその場に膝を着くヒワイドリ。
カマキリ型の輩が、両手と前足2本で再びヒワイドリを襲う。
それを見ていた鬼子が叫んだ。
 ≪「ヒワイーーーーー」≫
 【ガキーーーーン・・・】
鈍い金属音が鳴り響く。
輩の長い手足が、ヒワイドリの目の前で止まっている。
ヒワイドリが首に巻いていた羽付きファーが、硬く鋭くなり七支刀の形になっている。
七支刀は2本出現し、それが鎖と紐で繋がっていた。
●挿絵5 http://dl8.getuploader.com/g/oniko3/55/12-5.jpg
それを使ってヒワイドリ自身が、輩の手足を止めたのだ。額から血を流しながら。
 「・・そうか・・・昔、こんな武器も使ってたよなぁ・・・」
輩の手足が、そのままヒワイドリを押しつぶそうとしている。
鬼子は、ヒワイドリを助けようとカマキリの様な輩に近づいて行くが、
輩の他の足に阻まれている。
押し潰されそうになるヒワイドリ。鬼子は強引にヒワイドリの方へと走って行った。
輩の足が、鬼子めがけてかすめ飛ぶ。鬼子の紅い目が、その動きを読み取ろうとしていた。
そして、薙刀を振りかざす。
 【ザシュ・・】
鬼子が、何とか輩の足一本を切り裂いた。
ヒワイドリを押し潰そうとしていた輩の手足がかすかに緩む。
その隙に、鬼子はヒワイドリの腕を掴み、外へと飛び出した。

 【ドガッ・・・】
・・・鬼子の頭から、血が流れ出す・・・。
輩の鞭の様にしなる手が・・・鬼子の頭に直撃したのだ。
ヒワイドリの目の前で、倒れていく鬼子。彼は、手を差しのべ鬼子を抱きしめた。
ヒワイドリが鬼子を見ると・・・輩の強い一撃で、気絶していた・・・。
 「・・お・・・俺なんか・・助ける価値なんてないのに・・・」

カマキリ型の輩が、ヒワイドリ達を再度襲い始めた。
・・長い・・輩の手足が・・・、身動き取れない彼等めがけて飛んでいく。
ヒワイドリは・・・鬼子を抱きしめたまま・・その場を動けないでいた。
彼は・・・黒い空を見上げ・・・力一杯叫ぶしか出来なかった。

 ≪「は・・・般若ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」≫
.
89時の番人:2011/03/02(水) 22:11:39.18 ID:knkjYirz
そのヒワイドリの叫びを聞いた音麻呂達4人が、般若の方を見た。
しかし・・・・・・・・・その場にはいなかった。
般若が立っていたと思われる部分だけ・・・草が揺れていた。
 【ズザーーーン!!】
鬼子とヒワイドリの前で、何故か粉々に切り刻まれているカマキリの様な輩。
その場には・・・赤く光る目を持つ般若の姿があった。可愛い姿には似合わない程の大きな妖気。
その般若が持つ強大な気が一瞬だけ、異形の形をかたどる。
●挿絵6 http://dl8.getuploader.com/g/oniko3/56/12-6.jpg
 「鬼子を連れて下がれ、ヒワイドリ」
 「は・・・般若・・・」
 「秀吉が横たわっている所まで、今すぐ下がるんだ」
そう言われたヒワイドリは、気絶している鬼子を抱きかかえ、
横たわっている秀吉の所まで駆け飛んで行った。
秀吉の横に、鬼子をそっと寝かすヒワイドリ。
彼が秀吉の方を見ると、鬼子から舞い落ちたであろう淡く光るもみじが、
秀吉の傷口へと消えていっている。ヒワイドリはそれに感づく。
 「あ・・もしかして、このもみじ・・・こにぽんと同じ癒し効果があるんじゃぁ・・・」
彼は、秀吉には届いていない淡く光るもみじをとっさに拾い上げ、
鬼子の傷口に当てた。

 鬼の形相で狼の様な悪しき輩を睨む般若。その輩は、ユックリと般若の周りをグルグル回っている。
般若が言葉を発する。
 「貴様か・・・犬避けの石を置いたのは・・・」
 【グルルルルー】
●挿絵7 http://dl8.getuploader.com/g/oniko3/57/12-7.jpg
輩は、口からヨダレを流しながらそう唸るだけだった。
 「・・こいつじゃ無いな。ただの輩だ」
すると、狼の様な輩の後方から何かがユックリと出てきた。
般若の目は、その何かを睨みつける。
輩の後方から出てきたのは、見た目人間の民の様に見えた。
しかし、両腕が異様に長く、指先には尖った爪を持っている。
背丈は3メートルほどか。そして青黒く艶やかな皮膚をしていた。
顔は・・・縦に長く、横長に切れた大きな目を持っている。
その人間の様な輩が、狼の様な輩の横で立ち止まった。
そして、般若をジロジロと観察しているようだ。
 「・・・非力な鬼娘に着く守護者か・・・」
●挿絵8 http://dl8.getuploader.com/g/oniko3/58/12-8.jpg
人間の様な姿の輩がそう喋った。
般若は目を見開いて驚いている。
 「・・や、やはりそうか。知恵を持ち得た輩が存在しとるとは思っとったが・・・。
  貴様・・・光の世に何しに来た?」
すると、その人型の輩が【ニタッ】っと笑い出した。
そして、長い両腕を左右に広げた。
 「何しに来た?お笑いだな。そんな事は決まっているだろう。
  この世を支配しに来たんだよ。人間の民を食い潰し、我が力にしてな。
  人間の民は美味しいぞ。食えば食うほど新しい知恵が付く。
  そして・・・闇世の大白狐をも食いつぶす」
 「ほほぅ・・・。大白狐様までも・・・か。それは大層な計画じゃな。
  その為に・・・その知恵で、光の世の力石を解読すると言うんじゃな」
輩の目つきが鋭くなる。
 「・・・頭の良い守護者だな・・。それに感ずいているとは。
  なら、お前の力では俺を止める事が出来んと言う事にも感ずいているだろう。
  力の差が大きすぎる。お前のその力では俺に触れる事すら出来んからな」
そう言われても、般若の顔つきは全く変わらない。
 「貴様は・・元々闇世の猿の民だな・・。その猿の民が人間の民を喰らい続け、
  今の姿になってるんだろう。貴様・・・何処を通ってこの光の世へ来た・・」
その輩は・・一度目を閉じ、そして見開いた。
そぉーっと右手を前へ出していく。非力な般若の事を少し警戒している様だ。
90時の番人:2011/03/02(水) 22:12:46.02 ID:6P9xs2dk
 「・・・何処を通って来た・・・か。色々調べているみたいだな。
  俺は、闇世で200年ほど色んな民を喰らい続けてきた。
  最近光の世に来たが、それでも50体くらいは喰ってるなぁ。」
人型の輩は、話をたぶらかしているみたいだ。
それを聞いた般若の目がさらに厳しくなる。
 「・・・何処かの川を・・通って来た・・・のだな!?」
人型の輩は、目で般若を睨み、鼻で般若の何かを読み取ろうとしていた。

 「お前は・・・鬼娘の守護者・・・・・・では無いな・・」

そう言葉をかけられた般若は無言だった。
輩がまた話しだす。
 「お前の力は、この輩と同等くらいか・・・」
これ以上の詮索を拒むかの様に、その輩が指を【チョン】と前へ出す。
すると狼の様な輩が、不意に般若を襲い始めたのだ。
 【ズバーン】
一瞬にして砕け散る輩。般若は動いた気配がなかった。
人型の輩が少し下がりながら、般若を睨み言った。
 「お前・・・何者だ・・。いや・・・元は何の民だ・・」

 ヒワイドリも、遠くにいる音麻呂達も・・身体に非常に強い殺気を感じている。
詠麻呂が自分の身を抱きしめながら言った。
 「い・・痛い・・。身体が痛い」
音麻呂が皆を抱きしめながら言う。
 「あ・・あいつの・・・。人型の輩の殺気が・・俺達の身体を痺れさせているんだ・・。
  は・・般若さんからも殺気は感じるけど・・・大きさが違いすぎる・・・」
ヒワイドリは未だに目を覚まさない鬼子の近くで、同じ殺気を感じていた。
 「は・・・般若・・。あ・・あんたの力でも無理だ・・・。お・・俺達・・もう・・・」

 般若を睨みつける人型の輩。その輩が、そおーっと右手を上げ鬼子達が居る所を指差した。
 「少しは早いみたいだが、俺の動きには付いて来れんだろう。お前が言う様に、俺は
  元々猿の民だ。色んな民の中でも飛びぬけた瞬発力を持っているからな。
  お前の目の前で、あの鬼娘の力・・・喰ってやるわ」
そう言い、人型の輩は鬼子達の方へ一瞬にして飛んで来た。
般若は・・・やはりその動きに付いていけずにいた。
人型の輩の大きな爪が鬼子達を襲う。ヒワイドリは、身構える動作さえ出来なかった。
 【ギュイィーーーーーーーーーーーーーーーーーン】
人型の輩の腕が、後ろへ弾かれネジ曲がる。
般若が腕を弾いたのだ。遠くにいた般若が・・・。
 「ヒワイドリ、2人を担いで直ぐに結界の中へ!」
焦るヒワイドリは、息を止め、鬼子と秀吉を担いで結界の方へと走って行った。
とても醜い形相で、般若を睨む人型の輩。
 「・・お・・・お前・・・」
般若の額に、薄っすらと光る文字が浮き出ている。
人型の輩がそれを見て、自分の顔の前に両手を持ってきた。
何か・・・黒く光る小さな文字が輩の手の中に浮かび上がる。
そして般若を見下ろしながら笑い、言った。
 「お前は・・鬼の民なのか・・・」
黒い文字を浮かべる輩を見た般若は、目を見開く。
 【あぶない】と思ったのだ。
般若は、ヒワイドリの方を見て叫んだ。
 ≪「速く結界の中へ入るんじゃーーーーーー!」≫
そう言い終わると、般若の額の文字が光輝き出した。
 【ブヮアーーーーーーーーーー・・・】
91時の番人:2011/03/02(水) 22:13:49.11 ID:6P9xs2dk
その光り輝く文字を見た人型の輩は・・・のけ反りながら後ずさりする。
 「・・そ・・その文字は・・・古(いにしえ)の民・・・・・。
  で・・・伝説の・・・・・龍の民か・・・・・・・・」
そう言いながら、輩の手の中の黒光りしている文字が渦を巻きだした。
般若は、大声で叫ぶ!
 ≪「速くしろーーーーヒワイーーーーーーーーーーーーーー!!!」≫
般若は力を解放した。
 【ドォーーーーーーン】
白いお餅を縦に伸ばした様な般若が・・・人型に変っていく・・・。
黒色の袴姿。解放した力の波に激しくたなびく金色の長い髪。
口からは・・・黒い妖気が溢れ出している。
そして、紅色と金色の瞳で輩を凝視していた。
●挿絵9 http://dl8.getuploader.com/g/oniko3/59/12-9.jpg
般若の黒い強大な妖気に、波打ち引き裂かれる輩の皮膚。
その波が、結界を張ってある所まで一瞬に飛んで来た。
結界の中から、ヒワイドリ達に手を差しのべる音麻呂達。
ヒワイドリは、間に合わないと感づいた。そして、鬼子と秀吉を結界の中に力一杯放り込んだ。
音麻呂達は、鬼子と秀吉を抱きかかえながら倒れこむ。少し遅れ、ヒワイドリも結界の中に飛び込んだ。
その瞬間、般若の解放した力が結界を貫く。その時、ヒワイドリの足はまだ結界の外にあった。
人型の輩の皮膚は引き裂かれ、タダレ落ちていたが、構わず般若に襲いかかって来た。
 【ドゥン・・・・・】
一瞬にして塵(ちり)となる輩。
輩が塵となり消えていきながら、ポツリと言葉を発した。
 「・・・な・・何故だ・・・。鬼の民と・・・龍の民は一緒にいる事が出来ないはず・・・。
  ぁあ・・まさか・・・。あいつは・・龍の民の・・しかも唯一の虐げられし者の・・・・・・」
そう言いながら、人型の輩は消えていった・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 空から、赤黒い雨が降り出してきている。
そんな中、般若は・・・中に浮きながら人型の般若の身体が輝いている。
のけ反りながらユックリと下へ落ちていく。一瞬、般若の力が暴走し鬼の民が実体化するが
すぐに消えて無くなってしまった。
●挿絵10 http://dl8.getuploader.com/g/oniko3/60/12-10.jpg
人型の般若から、お餅型の般若に・・・
・・・・・・・・・そして・・・般若面になりながら落ちていく。

 「・・・我墜ちて・・・守護神なり・・・」

 【コトン・・・】

地面に落ちた般若面は全く動かない。
結界の中にいる鬼子達は・・・皆気絶していた・・・。



投下終り。

「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第十三章〜【いつもの自分で】に続く。
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