【駄洒落で】ダジャレー夫人の恋人2【創作】

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8創る名無しに見る名無し
 アステラル暦785年。
ノカイドの時の皇帝レヴンは暴君として名を馳せていた。
行き過ぎた税の取り立て、そして彼を諫めようとする臣下を次々と断頭台に送った。
言うまでもない恐怖政治である。
役人はレヴンに賄賂を送り官位稼ぎに執心し、もはや国は崩壊の一途を辿っていた。
我が身可愛さに皇帝に反逆する者ははほぼ皆無と言って良かった。
 だが、例外はあった。
帝国の端にある自治都市シムカウプ。
ここには反帝国レジスタンスが存在していた。

「ムルーラ隊長、間者から情報が入りました」
 シムカウプのレジスタンスアジト、2人の男が話している。
ムルーラと呼ばれた男は若いながら貫禄があり、精悍な顔立ちをしている。
「して、内容は?」
「帝国軍は当初の予定通り定刻1600に税の徴収隊をユバールに向けて出発しました。
我々の目論見通り、ワーサム峠を越えてこちらに向かっております」
「来たか……よし、計画通り遂行する。兵を集めろ!」
 言うが早いか、ムルーラは席を立ち、甲冑を身に纏う。

ワーサム峠を中腹まで差し掛かった頃、徴収隊の護衛隊長であるベノロッホは異臭に気付いた。
「おい」
 彼は後続の兵に話しかけた。
「はっ」
「火薬の臭いがしないか?」
「少々お待ちを……。我々の荷物にも火薬がありますがこぼれたり臭いが漏れたりしている様子はございませぬ」
「んだと? おい、誰かこの辺りの地図をよこせ! ……なんてこった、ワーサム峠ってのは曲がりくねった長い悪路じゃねぇか! となると、この火薬は……」
 ベノロッホが言い終わるのと同時くらいに、四方から火矢が飛んでくるのが一同に確認できた。
 そして。
 一瞬にしてワーサム峠は火に包まれた。

シムカウプのレジスタンスが火薬を仕掛け、火矢を放ったのだ。
瞬く間に徴収隊と護衛隊は混乱に陥った。
炎に焼かれて死ぬ者、炎からは逃れたものの待ち構えていたレジスタンス兵に討ち取られる者……。
 王の権威の象徴と言われた1000人を越える徴収隊と護衛隊であったが、生存者はベノロッホを含め数名であった。
 ワーサムの屈辱。
後々まで語り継がれるシムカウプ反乱軍の開戦事件である。

「やったか」
 ムルーラはくすぶり続けるワーサム峠を眺め下ろして呟いた。
彼の後ろには戦いを終えた数十人の兵が連なっていた。
「もう後には退けん。レヴンは本気で我々反乱軍を消しに来るだろう」
「元よりその覚悟でございます」
「この命、ムルーラ様に預けました」
 ムルーラの言葉に兵たちが口々に言う。
うむ、とムルーラは頷いた。
「つらく苦しい戦いになるだろうが、我々を見て各地の反乱勢力も決起してくれるだろう」
 ムルーラが言うと皆が頷いた。
ムルーラは続けた。
「諸君! 我々はここに帝国からの独立を宣言する! これからも帝国に抵抗していこう!」

<了>