――あれでは宝の持ち腐れだ。
軍部創設以来史上初の快挙を、若干二十九歳の若さで成し遂げたその女性司令官は、憐れみにも似た思いを抱いた。
江滬型フリゲート二十隻を主力とした大艦隊を従えた海軍大将、陳?は、旗艦モニターに映し出された深紅の鉄人から視線を剥がせない。
その気になれば我が国の軍事力を数時間で無力化できるだろうと予想されている、怪物。
それはただ、辺境の離島とその沿海を警護し続けている。
快晴の東シナ海南西洋上。そこに浮遊しているのは彼の国が造り出したと思われる、
人体を模した一機の兵器だった。右腕には、対艦用と思われる巨大な薙刀が握られている。
恐らく着想の発端は世界的に有名なロボットアニメーションだろう。
背部には恐ろしいまでの姿勢制御機能と機動力を兼ね備えたバーニアが搭載されており、
レーザー兵器を主体とした武装の数々を見ただけでも、それは容易に想像がつく。
驚嘆すべきはあの国の人間のインスピレーションと、それを現実の物とする科学力と情熱。そして何より搭乗者だった。
これまでの度重なる小競り合いで得られた戦闘情報とこちらの被害から考えて、
例の深紅の機体のスペックは軽く数世代は先の物であるという結論で落ち着いている。
とはいえ、あの加減速と搭載兵器使用時の衝撃を殺し切れているのかどうかは、甚だ疑問だった。
当初あれが有人兵器であるという予想が出なかった最大の理由もそれだ。
しかし無人兵器とは思えないイレギュラー動作の多さが、あの機体の解析を更に遅らせた。
兵器の先進化が進み、パイロットの無意味化が叫ばれて久しいこの時代に、
精密機械を超える反応速度、判断力、応用力を併せ持った者が現れるとは誰も想像していなかった。
そして軍部には、滑稽且つ不気味な噂がまことしやかに流れ始めた。
尖閣諸島の覇者、深紅の鬼――通称リーベングイズの搭乗者は、人間ではなく鬼なのでは?
そんな内容だ。
たかだか全長十数メートルの兵器とその搭乗者が、世界の覇権に手を掛けようとしている我が国を深刻な恐怖に陥れているのだ。
「……面白い」
才色兼備と国民からの支持も厚いその女性艦長は、鮮やかなルージュに彩られた唇の端を歪めた。
機体の性能差は明らかだ。
しかし人民十数億の頂点と日本の鬼、どちらがより優れているかはまた別の話だ。
まるでオリンピック競技の決勝戦を見る時のような高揚感に包まれながら、陳?は無線を取った。
「総員に告げる。これより我が国の領土及び領海を侵犯し続ける赤い悪魔、リーベングイズの排除行動を開始する。
当作戦は、近年かつてない程の大規模で展開されている。それ故緊密な連携が不可欠だ。一人の小さな過ちが誇り高き我が軍の
敗北に直結するものと心得よ。以上。各員の奮起に期待する」
そして海軍大将は、軍部秘蔵のパイロットへの個人用回線に切り替える。
「中華支那子上等兵。聞こえているか」
「聞こえてるわよ。うっさいわね」
少女の声は不機嫌極まりなかった。
「聞いていたとは思うが、これより作戦行動を開始する。出撃前に、所定の薬品を摂取しておくように」
「判ってる。あの薬、不味いし後がキツイから、できたらパスしたいんだけど」
「それで鬼を倒せると思うなら、好きにしろ。しかし忠告を無視して死んだとしても、化けてくれるなよ」
強制などせずとも、どうせ彼女は例の薬物群を使うだろう。軍人としてのまともな訓練などまるで受けさせていないが、
負けず嫌いな気性そのものが戦士としての適性に満ちている。
結局この戦闘の勝敗は、支那子の行動如何で決まるのだ。わらわらといる御荷物を配置したところでどうせ無意味だろうが――
後方待機させたらさせたで、頭の固い総帥から不満が出るのも判り切っていた。
本国からの援護射撃の開始時間を考慮しつつ、陳?は手駒のフリゲート群を展開していった。
――勝負はあの、反則的な武装を本体から引き離してからだ。
光一つない、閉ざされたコックピット内にいたその鬼は、自らの機体を扇状に取り囲む海上の戦艦群には目もくれなかった。
およそ実効性のある配置には見えないし、そもそも脅威になりえない。
大方敵軍の指揮官も、見栄えを良くするためだけに動かしているのだろう。
どうせ今回の戦闘も、第三国の衛星越しに覗かれているのだろうから。
ストレートの黒髪に、深紅の瞳。
そして無数の電極が取り付けられた頭から角を生やしたそのパイロット、日本鬼子は人間ではなかった。
彼女の着用しているパイロットスーツの至る所にも、配線コードや操縦者情報を取り込むための装置が付与されている。
コックピットの中にその身を置いた彼女の姿は、まるでこの兵装の一つのパーツと化しているかのようだった。
『中距離弾道ミサイル、複数接近中』
イヤホンから、ナビシステム『小日本』の機械音声が入ってきた。同時にゴーグルモニター下部のレーダー状に、無数の点滅が生まれる。
『着弾予想地点、本国』
随分と買いかぶられたものだ。こちらが迎撃に失敗したら、あちらが国際社会の非難の的になるのは確実だというのに。
それとも一応直前で弾頭を逸らすのだろうか。
「システム『ヒワイドリ』起動」
『承認します』
鬼子の音声入力によってのみ発動するその兵器は、総数百八に及ぶ、自立機動型のビーム兵器である。
左肩の般若を模した収納庫から、無数の小型ポッドが上空へと射出されていく。
そしてヒワイドリがミサイル迎撃に出たのと同時に、洋上の敵軍船はこちらへの砲撃を開始した。
――こんな物、見てからでも避けられる。
勘でも精密機械の予測でもない、純粋な操縦者のスペックのみで大小無数の弾幕を回避していく。
システムヒワイドリを総動員したことで、リーベングイズはエネルギーを著しく消耗している。
適当にあしらったところで後退した方が無難だ、と思った矢先、船隊の後方に控えていた一隻の空母から、奇妙な機体が飛び立った。
リーベングイズを超える加速力でこちらに接近してきた、その黄金に塗装された機体は、奇しくも人型兵器だった。この機体の模造品らしい。
「初めまして! リーベングイズのパイロットさん!」
流暢な日本語が耳に飛び込んでくる。同時にモニター右上部分に、小さく相手のコックピット内映像が出た。
あどけない顔立ちの、黒髪で二つの団子を作った少女だった。どう高く見積もっても十五歳より上には見えない。
「ちょっと、聞こえてる!? 一方通行じゃ寂しいし、返事くらいしてよ! 『金盾』の正パイロット様がわざわざ通信してやってんのよ!」
金盾。あの機体の名か。
「今のメッセージの発信者と通信するわ。小日本、回線をつないで」
『了解』
「聞こえてるわよ」
「あら、あんた女だったの? できたら顔も見たかったけど、一応名乗っておこうかしら。
私の名前は中華支那子。一応国では最強のパイロットよ。少なくともデータ上ではね」
全力で後退しつつリーベングイズは高度を上げ、左腕で高出力ビーム砲『日本狗』を膝の収納部から取り出した。
そして狙いを付け、数度発射する。
放たれた赤い閃光を、海面すれすれを飛翔していた金盾は器用に避けている。
一切の武装を持っていない点からして、機動性重視の近距離戦闘型か。
蒸発した海水で出来た水蒸気の煙から、敵は悠々と姿を現した。よく喋るパイロットの方もそれなりにできるらしい。
「あんたに恨みはないし、正直御国への忠誠心なんかも持っちゃいないんだけど、一応仕事なんでね。あんたを撃墜させてもらうわ!」
「日本語が上手ね」
「そっちのアニメ好きだし、こういうシチュエーションにも若干憧れてたの!」
鬼子は違和感を覚えた。通信相手は薬物等の影響で、精神状態が不安定になっているのかもしれない。そんな雰囲気を感じる。
一切の武装を持たない金盾は、密着する程の距離にまで接近してくると、手足を使った格闘戦を挑んできた。
ろくに回避行動に移る間もなく前蹴りをまともに受け、後方に飛ばされる。
と同時に、鬼子はもう一度日本狗を放っていた。しかしそれも難なくやりすごされる。
『損傷軽微。作戦行動への影響は皆無』
小日本のナビゲーションを聞きながら、鬼子は言った。
「大した理由もなさそうなのに、よくこんな戦場の最前線に出てきたわね」
「受験なんてしたくないし、寒村の貧乏農家の娘が必死に勉強したところで格差なんて埋まらないしね。
そんな人生送るくらいなら、特技を生かして金稼ぎに精を出した方がずっとマシ」
どこの国も、抱えている事情は似たようなものか。
射撃を縫って再接近してきた金盾のパイロットは、何気ない様子で返してくる。
「そう言うあんたこそ、どういうつもりでこんな場所にいんのよ」
それは、と反射的に口を突いて出そうになる。
最後に故郷の山で別れた、あの男の言葉を思い出した。
――お前が前線に出て侵略を食い止めても、そう遠くない未来にこの国は破綻する。良好な経済もモラルも未来も帰って来ない。
だからお前がわざわざ危険に身を晒す意味なんてない。と言われた。
そしてその後に自分がした返答を、鬼子は今でもたまに後悔する。
――それでも私は、あなたのいるこの国を守りたいの。
実際は何だ。不毛な戦いに明け暮れ、操縦者すら死に追いやる忌々しい破壊兵器に身体を蝕まれている。
兵装の名前にもなっているその男の顔が脳裏に浮かんだが、鬼子は構わずリーベングイズ右腕の薙刀、
『ヤイカガシ』を金盾に向けて振るっていた。
「……遅い。思ったより退屈ね、あなた」
頭上を取った金盾に、踵落としを喰らう。そのままリーベングイズは海中に没した。
『損傷軽微。作戦行動への影響は皆無』
向こうは機動力の為に火力まで削ったらしい。致命打を受けることはなさそうだった。
しかし海中ではビーム兵器の日本狗が役に立たない。顔を出したところで、また金盾に頭を蹴られるだけだろう。
『上空の弾道ミサイル迎撃、完了。ヒワイドリ全機、これより帰還を開始します』
「ヒワイドリ全機に、現在交戦中の人型兵器の撃墜を命令する」
『了解。ターゲットのデータ入力完了』
直後、遥か上空から海面へと無数のビームが降り注いだ。
「危ないわね!」
回避行動にかかりきりになっている金盾が離れた隙に、リーベングイズは海中から脱出する。
「ちょっと、どこまでついてくんのよこいつら!」
凄まじいロールで全方位からの射撃を回避しながら、金盾が戦線を離脱していく。
相手が通信を切り忘れている為に、敵軍の会話も全てこちらに入ってきた。
「陳?! これじゃそっちに着艦出来ないわよ!?」
「そのまま本国まで飛べ。お前に群がっているその兵装も、本体から一定以上の距離へは追尾しないはずだ」
優雅な舞踏のような滑らかさで空中を舞う金盾は、既に部隊から遠く離れている。
「さらっと言ってくれるわね! あんたらはどうすんのよ!?」
「こちらもすぐにお前を追う。作戦は失敗だ」
「了解! リーベングイズのパイロットさん! 今日はここまでのようね! 最後に名前を教えてもらっていいかしら!」
本名を明かしてはならないと、軍部に固く命じられていたのだが、逡巡した後、鬼子は告げていた。
「日本、鬼子」
「覚えたわ! 次に会う時はもうちょっとマシな機体に乗ってくるから、覚悟しておきなさいよ!」
通信が切れ、間もなく金盾の姿は水平線の向こうへと消えていく。その後、洋上に散っていたフリゲートものんびりと方向を変えていく。
『ターゲットが限界射程から離脱』
「もういいわ。ヒワイドリを帰還させて」
『了解』
肩についた般若の口の中へとヒワイドリが帰ってくるのを待ちながら、鬼子は無意識に、故郷の方向へと視線を向ける。
――あの人は今、どんな思いで日々を過ごしているのだろう。
故郷の島国は見えず、青い水平線がどこまでも広がっていた。
完
>>2-6 タイトルは「だって書きたかったんだもん」で
9 :
鬼子vs桃太郎:2010/12/19(日) 13:49:03 ID:n+jjLBua
岡山県内の、ある豪農の邸宅。
畳敷きの主の居室にて三つ指を突いたのは、ある伝承の中に登場する人物の末裔だった。
「……怠け者のあなたが、この家の成人の儀を執り行えるのかどうかは、とても不安なのだけれど」
上座で嘆息したのは、齢六十を超えてなお、老いの欠片も感じさせない妖艶な母親だった。
始祖が『桃』を食べて以来、この家系の人間は老化現象とは無縁だ。
「あなたも今日で十五歳。そろそろ我が家系に課せられた使命を受け持ってもらわなければ困ります」
母は背後の床の間に飾られた、一振りの日本刀に目を向けた。
「従者との信頼関係は築けているようですが、剣の修練を怠り続けてきたに『鬼切』を使いこなせるかどうか、とても心配です」
育児も家事も全て使用人に押し付け、今の今まで放蕩にかまけていた女がよく言う。
「……ところであなた。男の子だったかしら、それとも女の子だったかしら? というかそもそも何番目の子供だったかしら?」
これだから困る。
「まあいいわ。とりあえず一匹だけでいいから鬼の首を獲って来て、親の前に差し出して頂戴。それが始祖から続く我が家系の、成人の儀」
「――承知しました」
極めて中性的且つ整った顔立ちと声を併せ持つ、そのポニーテールの十五歳は、胸中で呆れながらも真顔で面を上げた。
10 :
鬼子vs桃太郎:2010/12/19(日) 13:56:14 ID:n+jjLBua
結界の破られる破裂音が、その鬼の脳内に響き渡った。
偶然ではない。侵入者は故意に人除けの術式を破り、明確な意思を持ってこの山に立ち入っている。
午後三時。庭の洗濯物を取り込んでいたその鬼――日本鬼子は、自宅である家屋に戻り、居間の炬燵に入りながら絵本を読み耽っていた妹に告げる。
「こに、私ちょっと出掛けてくるけど、家から出ないようにね」
「うん……」
こに、と呼ばれた小日本は露骨な生返事をした。彼女が夢中になっているその絵本のタイトルは、鬼子の嫌いな『ももたろう』だ。
鬼子が買った覚えなどない。誰だ。こんな物を妹に贈った無神経な輩は。すぐに鬼子の脳裏に浮かんだのは、鰯と、鳥と、蛙の妖怪だった。
「そんな絵本、面白くないわよ」
何より子鬼の教育上よろしくない。
返事をしない妹にそれ以上構わず、頭部から鋭い角を伸ばした彼女は家を出て、山に分け入った。
冬の風が、紅葉模様の着物越しにも感じられた。しかし体温は一向に下がらず、むしろ際限なく上昇していくような気さえする。
間違いない。理屈では証明できないが、こちらに向かって来ているのは天敵だ。
最初の兆候は、獣の足音だった。四足。続いて不自然に揺れる木々の音。鳥類の羽音。そして靴を履いた人間の足音も混じっている。
襲撃者の正体を、鬼子はその時点でほぼ確信していた。まさかあの子が例の本が読んでいたから、などということもないだろうが。
――嫌な偶然もあったものだ。
直後、右手の斜面に広がる雑木林から、巨大な柴犬が牙を剥き出しにして飛びかかってきた。後方に跳んで避けると同時に、鬼子は着物の袖から一本の柄を取り出す。
その直後、柄の両端に長大な深紅の光を纏った刀身が出現する。所有者の精神に呼応することで初めて武器となる霊装、『鬼切』。
その幻想的な風情の双身刀を華麗に旋回させながら、鬼は猟犬の胴体を両断した。間を置かず樹上から飛びかかってきた人間並みのサイズの猿もまた、
二つの刃で縦横無尽に切り刻む。着地を待たずに解体された猿は、鮮血と臓器を撒き散らしながら鬼子に降り注いだ。
風を切って上空から急降下してきた雉もまた、猿と同じように斬り伏せる。
そして最後に正面から駆け寄って来た人間は、一本に縛った長い髪を揺らしながら日本刀の抜き打ちを仕掛けてきた。
とりあえず従者よりは遥かに手強そうだ。鬼切の刃で強烈な初撃を受け止めながら、鬼子はそんな第一印象を抱く。
「やってくれたね。あいつらのことは結構可愛がってたのに」
男とも女ともつかないその人物は、黒コートにスーツという出で立ちだった。まるでどこかの秘密組織のようだ、と鬼子はつい皮肉っぽい笑みを浮かべてしまう。
「恨み事なら受け付けないわよ。正当防衛なんだから」
「その見た目で言われても説得力ないな。まんま猟奇殺人者だ」
11 :
鬼子vs桃太郎:2010/12/19(日) 13:56:56 ID:n+jjLBua
線の細い長身のおかげで、黒服がひどく様になっているその人物に、鬼子は訊ねる。
「あなた、芥川の龍之介の桃太郎は読んだことある?」
「読書は趣味じゃない」
「童謡『桃太郎』の、後半の歌詞は」
「知らない」
鬼切の刃を振って敵との距離を開けた鬼子は嘆息する。
「自分の家についての歌や書物くらい、目を通しておきなさいよ」
「好きであんな家に生まれたわけじゃない。想像だけど、今そっちが挙げた作品群は、うちがいかに独善的で暴力的なのかを
表現してくれてるんだろ。指摘されなくても自覚してる。うちの家系の壊れっぷりは」
「ならさっさとお引き取り願いたいんだけど。あなたのペットを殺したことなら謝るわ。だから私たちのことは放っておいて」
「そうしたいのは山々だから」
直後、例の一族の末裔がこちらの眉間目がけて鞘を投げつけてきた。鬼切でそれを弾いた隙に、敵は鬼子の懐に飛び込んでいる。
「君の首だけ貰ったらさっさと退散するよ」
その一撃は避け切れず、頬に浅い太刀傷が走った。直後に、彼女もまた鬼切で横に薙ぐ。深く踏み込んでいた相手の腹部にも深い刀傷が生まれる。
損傷で動きの止まった相手に止めを刺そうとしたところで、敵は大きく後ろに跳躍した。
「しくったな……適当に相手を選んだのは間違いだった」
「せっかくの腕なんだから、もうちょっと有意義に使った方がいいわよ。最近じゃ人里の方にも鬼が出てるらしいから」
鞘を相手の足元に投げつけながら、返り血に塗れた鬼は言った。
「見逃してあげるから、さっさと帰りなさい」
「情けには感謝するけど……家に戻ったらこっちはまたお小言だよ。憂鬱だ」
受け取った鞘に納刀しながら、例の一族の末裔は背を向ける。
「最後に一つ頼み事をしていいかな。……ここに残す三匹のことは、手厚く葬ってやってほしい」
「判ったわ」
「有難う。優しい鬼さん」
それだけ言い残すと、例の一族の末裔は軽やかに山を駆け下りていく。
刃の消えた霊装を袖の中にしまい、鬼子は大きく伸びをした。
とりあえず妹の読んでいる忌々しいあの絵本は、さっさと捨ててしまおう。
完
乙。
見える、見えるぞ!「従者の墓参り」とか抜かしながら毎度シレッと遊びに来る桃太郎の姿が!!
あ、こには簡単にしゅうくりぃむ3つで買収されて懐いてそうw
「んしょ」と勢いをつけて葛籠から出てきた小日本(本作ではケモミミ金髪美少女)は、小梅の芳醇な香りを放つ袖を振ってくるりと回転した。めくれ上がった裾の下には子供用の襦袢しか身につけていない。
小日本は地獄絵図のように変わり果てた駅前を眺めながらくすくす笑っていた。
「源氏との戦いから八百年、日の本もずいぶんオシャレな島国になったものですよねぇ」
「小日本……」
駅前を眺めている小日本は、よく見ると体つきや見た目の年齢は鬼子さんとほとんど変わらなかった。
しかし、何かが自分とは決定的に違っていた。まだ化かされているような不安な気持ちになった。これが妖狐という種族の特性なのだろうか、彼女の一挙手一投足が不気味な存在感に満ちており、鬼子さんは封印によって生じる重力に抗いながら少しずつ後ろ退っていった。
目の前に居るのは正真正銘の大妖怪だった。鬼を相手に百戦錬磨の鬼子さんですら「これぞ妖気だ」というものを初めて見せつけられた、そんな風にさえ思われた。
「あなたが……本当の、小日本? 嘘でしょう、だって小日本は……」
鬼子さんには、かつて小日本という名の妹がいた。
鬼子さんと血が繋がっているのだから小日本ももちろん鬼の子だろう、戦乱の世に生まれたその子はやむにやまれぬ理由で一時妖狐の元に預けられており、その後鬼ヶ島に渡った鬼子さんの一族とは長い間離れ離れになってしまったのだった。
今はその妖狐の行方さえも分からなくなっている。
小日本を名乗る少女は、においたつ袖から今度は桜花を撒き散らし、桃色の花びらの渦のなかでふわりと姿を消した。
同じ事は自分でもできるのに鬼子さんは「わっ、消えた!」と子供のように驚いた。
鼻がぶつかりそうなほど目の前に小日本が現れると、鬼子さんは腰を引きずって退いた。しかし、結界の力のせいでじりじりと元の場所に押し戻されてしまう。
「わっ、わっ」
小日本は小さくかがんで鬼子さんが戻ってくるのを待っていた。鬼子さんは思わず頭を下げてしまい、額同士がぶつかってごちんと音がした。
「ご、こめんなさい・・・・・・!」
「ねぇ」
のけぞる鬼子さんを、小日本は同じ目の高さから覗きこんでいた。
「考え直してさしあげてもいいのですよぉ?」
小日本はくすくす笑った。内心この展開を待ち望んでいたかのようにわざとっぽい言い方をしている。鬼子さんは胸をはって精一杯虚勢をはった。
「ど、どういう事かしら?」
「もし、私の言うことをなんでも聞くんでしたらぁー、私たちの仲間に入れて差し上げましょー」
「なっ……」
鬼子さんは頬を真っ赤に染めた。
「仲……間?」
友達が居ないどころか遊びに誘われた事もない鬼子さんである、効果はてきめんだ! 鬼子さんの背景に大輪の花が咲き、虚勢は完全に崩れた。このさい相手が本当に小日本だとか偽者だとかそんなのはお構い無しである。
「そう! 私と日本狗はぁ、いま、共に戦う同志を募っているのぉ。チームの名前は『三大妖怪クラブ』っていうの!」
「さ、三大……!?」
鬼子さんはますます息を呑んで「なにそのクラブたのしそう!」といった風に目を輝かせた。
それがますます小日本の高飛車な心を刺激したらしい、彼女は自慢げにうんうん頷いて説明を始めた。
「日本三大妖怪の末裔が軍団を結成してぇ、安倍晴明の末裔をやっつけちゃえーっ、ていうノリの痛快なクラブなんですぅ。
幕末までは鬼族の末裔も含めてずっと三人でやってたんですけどぉ、ほら源氏は徳川家を最後に政権から退いちゃったでしょぉ、陰陽道が廃れちゃったら安倍晴明もすっかり凋落しちゃっててぇ。
鬼族の末裔は今さら戦ってもあんまりメリットがないって言って脱退しちゃったのよねぇ、ほら鬼族って妙に矜持にこだわる所があるじゃない?」
「それで二人になった今は何してるの? ただの仲良しクラブに形骸化しちゃった感じなの?」
「鈍そうな顔してズバリ言っちゃいますねぇその通り。けど、どうせならぁ、何かこう胸がすっとするような、おっきな事をやってみたいじゃない?」
小日本は立ち上がって大きく両手を広げた。いまだに分からないといった顔をしている鬼子さんを見下ろし、小さな顔に妖艶な笑みを浮かべている。焦れたようにぶんぶん両手を振った。
「ああんもう、国盗りですよぅ! 日の本を妖怪の国にするの!」
「ええっ!?」
鬼子さんは青鬼かというぐらいに本気で青ざめた。
「そんな事を、するの……? もし妖怪の国になったら、わ、いえ・・・・・・日の本に住んでいる人達は? 人間は、どうなってしまうの?」
わんこそばの心配をとっさに人間の心配にすりかえたあたり、鬼子さんはそこそこ欺瞞が使えるようだった。
しかし、小日本はその問いにはあえて答えなかった。自分たちが楽しければそれでいい、そんな事は些末な問題でしょうとでも言うように。
「鬼子さんなら、私たちの仲間に入ってくれるでしょ?」
きゅっと眉を吊り上げた鬼子さん。まるで邪気もない小日本に、鬼子さんは手を差し伸べようとした。肩を揺さぶろうとしたのかもしれない。
しかし彼女はその手をこわばらせ、ぎゅっと縮こまった。封印の力によって押し戻される前に。
恐怖が衝動にまさったのだ。本当はどう答えていいのか分からない、彼らの仲間になると何かとんでもない事になりそうな気がする。
苛められっこのようにかぶりを振るしかできない鬼子さんに、小日本の呆れた声が浴びせられた。
「ぶーう。ざーんねん。これは追試も失格ですねぇ、やっぱり、日本鬼子さんはダメダメですぅ」
小日本は鬼子さんに対して半身をむけると、両手を左右に精一杯広げた。片方の袖から桜の花びらがふわっとこぼれ、渦を巻いて上下に伸びる。弓だ、その手にはいつの間にか一メートル近い強弓が握られていた。
弦は張っておらず、常識なら矢の一本も射られそうにないその弓で、鬼子さんに狙いを定め、小日本は見えない弦をぎりりと引き絞った。見えない弦に引っ張られるように弓の両端がしなってゆく。
「そうでなくとも、あなたのような人間寄りの鬼が鬼族最大の異能をまとっているのは目障りですね、他の種族にとってみても鼻つまみ者なのですわぁ。ええ、個人的にも、やっぱり怖い。
私はあなたが怖い。その力、《酒天童子の酒杯》。回収させて頂きます!」
まるで恐れる様子も見せずに言った小日本だった。いまや面もなく、身を縛られて満足に動けない鬼子さんの何を恐れることがあるだろうか。薄い笑みを貼り付け、力を溜めたまま、しばらく不自然な間をあけていた。
「ねぇ、鬼子さん、ひとつ聞いていいかしら。あなたはどうして同族殺しをしているの? それさえなければパワーファイターの鬼族としては充分な素質をもっていらしたのに。
あなたを除け者にして炒り豆をぶつけてくるような人間たちが、どうしてそんなに好きになれるのですかぁ?」
今にも泣きそうになっていた鬼子さんは、不意に何かのスウィッチが入ったかのように落ち着きはらった。
「お友達にもならないうちに、そんな秘密は言えませんわ」
鬼子さんは小日本をじっと見つめて、そっと囁いた。
「それに、同族殺しをしているのは、貴女も同じでしょう?」
冷えた表情を浮かべていた小日本は、ようやく心から笑った。
「そうね、これで私も同族殺し。お揃いですねー、鬼子さんと」
ようやく意を決したという風に、勢いよく弓を引き絞った。
見えない弦が激しく振動する音が、目に見えるほどくっきりとした波紋を空気中に描いた。
ただの空気の振動ではない、退魔の魔力を秘めたその波紋に触れただけで、鬼子さんの肌がびりびりと痺れ、地に落ちていた般若の面がパンと音を立ててひっくり返った。
前かがみになってこらえようとすると、頭が、特に角の根元あたりが折れそうなほど痛い。
(わんこそば、わんこそば、わんこそば、わんこそば・・・・・・)
鬼子さんは痛みを忘れる呪文を唱える事に没頭した。しかし、意識を保つのが難しくなってくる。そろそろ本格的に死を覚悟しなくてはならなかった。結局、友達は一人も出来なかった。
遠い昔に交わした約束とか、うれしかった事とか、人間とか、そういったものを思い出そうとするのだけれど、頭はずしりと重く、文鎮のように上のほうにあって、体の方に何が浮かんでも頭まで到達してくれない。
「ねぇ、鬼子さん……」
小日本が歌うように言った。
「おねーちゃんって呼んでいい?」
鬼子さんは途方にくれた目で小日本を見つめ返した。
弦を持つ方の手から、ノイズのようにかき乱された波紋が放たれ、ガス風船が膨らむように急速に広がった。
びぃぃぃん
この振音は弦のものだ。響きに圧倒され、鬼子さんは見えない矢で胸を射抜かれたかのように飛び退いた。
弾かれた般若の面が、再びくるくると宙を舞った。くるくる、くるくると。
着物の袖からも懐からも大量の紅葉が散り、倒れる鬼子さんを優しく受け止めた。
小日本の手の中で、身の丈ほどもあった強弓は、いつの間にか大振りな桜の枝になっていた。大きな狐目は、矢を放つ瞬間までまったく揺るがなかった。
小枝を折って、花弁で唇をなぞり、その柔らかさを確かめていた。
「狩り帰り もみじ拾いつ 歩く人 いづくの人の 御手に似るめり……バイバイ、おねーちゃん」
>>1乙!
>>2-7くやしい、けど萌えちゃう・・・!
>>9-11桃太郎、カッコヨス・・・!
SSスレの暗黒面としてタラタラ書いてきてとうとう3スレ目突入。
どこまで書くのか、いつ終わるのか、いまだ不明。・・・ごめんなさい。
17 :
平安鬼子:2010/12/19(日) 22:40:13 ID:Ni2clJA4
平安時代。 それは都が平安京に置かれ、鬼というモノが認識され始めていた時代。
鬼が出始めたのは平将門の乱により、将門が死した一ヶ月後である……
都である平安京にも一人、鬼に心を喰われ、肉体を乗っ取られた者がいる。
年齢からすると30ぐらいだろうか。だが、見た目はまだ若く綺麗な外見をしている女性だ。
しかし、手には包丁を持ち、家に居る生きている者を刺し殺して邸内を回っている。
そのせいか着ている湯帷子には大量の血で赤黒く染められている。
「やめてくれぇ! どうして急にこんな事を……」
部屋の一室で生き残りであろう主人の男が背後にある襖を押さえながら問いかける。
「主は分かっておらぬようだのう……この体はもう我のモノだ。 主が悪いんだぞ?
手酷くこの女に毎夜、拳を振り上げ、追い詰めるからの。 ほれ、そこを退け」
手に持った包丁を振り上げ何度も男に振り下ろす。
その度に彼女の顔には血が飛び散り、顔を赤く染めていく……
「がっ……に、逃げ……ろ……」
最後の一振りを終え、ゆらりと立ち上がる。
血に塗れたその手で襖を開き、中に居る怯えた表情で見つめる少女を見下ろす。
「どうして……母さま……」
涙を流しながら包丁を持つ母さまと呼ばれる女性を少女が見上げる。
「大丈夫よ。 皆私と一緒になるだけだからね……」
そう言って女性が包丁を振り下ろす。
その時だろうか、部屋の中を風が通り抜けたと思うと少女は居なくなっていた。
「くそぅ! どこだ! 何処に行った!」
「ここだよ能なし」
女の背後から声が聞こえる。 勢い良く振り返りそこに立つ一人の青年を見つめる。
「だれだお前は! その子を渡せえぇええ!」
「悪いな。 これ以上殺させるわけにはいかないんでな。 晴明、ヒワイドリ……後は頼むぞ」
少女を抱えた青年がその場をずれると白い狩衣をまとった男が一人立っていた。
男の手には大量の札が握られており、男の横には奇怪な鶏が立っていた。
「ありがとう、狗。 ヒワイドリ……頼んだよ」
「わかってる」
ヒワイドリと呼ばれる奇怪な鶏は気がつくと顔立ちの整った青年に姿を変えていた。
「それで? 何をすればいいんだ晴明? あのとり憑かれたモノの形の良い乳を――」
バシンっと大量の札で晴明がヒワイドリの頭をたたき咳を一回して説明する。
「いいかい? 鬼の拘束をするんだ。 後は私がする」
「はいはいっと」
18 :
平安鬼子:2010/12/19(日) 22:41:04 ID:Ni2clJA4
そう言うとヒワイドリは鬼に駆け寄り、拘束しようとする。
もちろん鬼も対抗し包丁を振り回すのだが、その腕を逆に掴まれ羽交い締めにされる。
「これは良い乳だ。 後で記録でもしておくか」
「まったく……君はいつでも乳の事を……」
ため息を吐きながら鬼にとり憑かれた女性に近づき顔を合わせる。
「離せぇ! 貴様ら!我の邪魔をするな!」
とり憑かれた女性、晴明の顔めがけて噛み付こうとするが軽くかわされ、ヒワイドリに押さえられる。
「コレは……深く根づいていますね。 祓えば君は死ぬよ? それでもいいかい?」
空に向かって喋り始める。 晴明が見る場所には半透明の、鬼のとり憑いた女性と同じ姿の女性が
浮かんでいた。 顔は穏やかで、黙って頷くだけだった。
「わかりました。 すまないね。 君を祓うことになった。 安心してくれ、一瞬だ」
そう言うと手に持っていた札を押さえられている顔に貼り付け一歩下がり、何かを唱え始め女性が苦しみ始める。
「がああああ! 許さぬ……許さぬぞ!晴明!!」
すると急にヒワイドリが押さえていた女性が抵抗していた力をなくし全体重をヒワイドリにかける。
「おおぅ!? 急に重く……ということは祓えたのか?」
「ええ。 この女性の魂と共にこの家の人達も無事成仏できたようです」
「勿体無いな。 ということは……残るはあの子だけか……」
狗と呼ばれていた青年に抱き抱えられた女の子が震えながら必死で布で頭を隠している。
「ごめんよ。 何もしないからね」
軽く押さえている布をどけるとその下には角が二つ隠れていた。
「これは……」
「この子は鬼の子か晴明。 だが鬼は人に巣食ってこそ生きられる存在だろ?どうしてこんな」
「恐らく……ですが。 鬼に心を喰われ始めた状態で受胎したのが問題でしょう……この子はコチラで保護を」
その言葉を告げると狗とヒワイドリは目を丸くして驚く。
「いやいやいや、角が生えてるんですよ? どうやって匿うんですか? しかもこれ以上、理から外れたものを保護するのは……」
「晴明……あんた良い事言った! 猫しか乳成分がない野郎どもの巣に花を添えるきなんだな。憎いぜ!」
「お前、阿呆か! これ以上増えたら隠し通せなくなるの!」
「えぇ! でも乳は大切だろう乳は。 なんなら今日辺りでも一晩中乳の話を――」
晴明がため息を吐き、頭をかかえる。
だがその表情は少し笑顔で、嫌ではなさそうだ。
「隠しきれなくてもこの子は保護します。 その為にですが……」
少女の頭に手に持っていた札を貼りつけ印をきる。
「記憶は奪わしていただきます。 この人達に育てられたという記憶はない方がいい」
軽く少女の頭に貼った札を印をきったてでつつくと、札が一瞬で燃え、少女は眠りに落ちる。
「さて、名前を決めなくてはいけませんね」
「だったらさ! この子は良い乳の持ち主になるというかなってるから良い乳で良乳ってのは――」
言いかけている途中でヒワイドリが吹き飛ぶ。どうやら狗が蹴り飛ばしたらしい。
「乳以外のことも真面目に考えろっての。 だったらさ晴明。この国は日本って呼ばれてるだろ?それで、この子は
鬼の子だ。 そんで二つを合わせて日本鬼子っていうのはどうだ?」
「日本鬼子? 私は構いませんよ。 でも長いので鬼子と呼びます」
「ながっ……まぁいいけどよ。 それじゃ、これからよろしくな鬼子」
狗が少女……鬼子の頭を優しく撫で布を被せる。
「それじゃあ、帰りましょうか? そろそろ寒くなってきましたしね。 後のことは検非違使に任せましょう」
そう言って三人の……いや、一人の陰陽師と二匹の従者、そして一人の鬼の子がその家を後にする。
〜序章・完〜
>>17-18 ……ほとんどというか全く鬼子でなくてゴメンナサイ。
ただ、晴明と鬼子と愉快な仲間たちが書きたいなと思って載せていただきました。
これからも何回か続くと思いますがよろしくお願いしますです。
>>16 いつも見てますよ!
読んでて楽しいので頑張ってください。
鳥の羽ばたく音とともに小日本は目を覚ました。
「ん〜? ヒワイドリ?」
そう呼びかけるも返事はない。
周りを見渡すとそこは、綺羅星のごとき明かりが天井に輝き
床には闇色の絨毯が敷き詰められた壁のない不思議な部屋だった。
ここはどこなのか訝しみながらさらに目をこらすと遠くに少年が見える。
俯いて立ち尽くす少年はなんだか今にも泣き出しそうに見えて、気になった小日本は少年へ声をかけた。
「ねぇ、どうしたの? どこかいたいの?」
小日本の問いかけに驚いて少年は顔を上げた。
どうやら声をかけるまで小日本の存在に気づいていなかったのようで、
慌てて笑顔で挨拶をしてきた。
「こんにちは。 僕は大丈夫だよ、ちょっと失敗しちゃって落ち込んでいただけ」
少年は苦笑いしながら話を続けた。
「僕、とある女神様にアタックするためにここまで来たんだ。
でも、女神様に見とれてたら途中で躓いちゃって、
……気がついたら女神様は遠くに行っちゃってたんだ。
僕の足ではどうしても追いつけなくて。
どうしようと途方に暮れてたらお家から連絡が来て、
6年後にもう一度女神様がここを通るから、まだチャンスはあるよ!っていわれて
僕、もう一回アタックするためにここで待つことにしたんだ。」
「まぁ! 素敵!!」
恋の話に目がない小日本は両手を握りしめて目をきらきら輝かせる。
「でも、出会えなかったらどうしようとか、一人で待ってたらいろいろ考えちゃって……」
少年は再び俯いてしまった。
その様子に胸が痛んだ小日本は、自分に出来ることに気がついて決心をした。
「小日本に任せて! 必ず出会えるよ!」
「え?」
驚く少年をよそに、小日本は少年の小指の先の空間を掴む仕草をした。
すると少年の小指が何かに引っ張られる。
「な? なに?」
何が起きてるか理解できない少年をおかしく思いながら
小日本は手に取った見えない糸をたぐった。
「大丈夫、まだ縁は切れていないよ」
そうつぶやいて糸にくちづけ詔を唱えると
小日本の周りに桜の花びらが舞い、少年の小指に結ばれた糸が光りだした。
「いつの間にこんな糸が?」
光り輝く糸は少年の小指から遙か先の遠き闇へと伸びている
「君と女神様の縁を強く結びつけたよ。これで必ずあえるからね! あ、でも、アタックは自力で頑張ってね」
小日本はファイトと少年を応援した。
「この糸が輝いてる限り、僕は必ず女神様にあえるの?」
「うん、必ず出会えるよ! でも、アタックが上手くいくかは君次第だけどね」
「そっか、必ず出会えるんだ。ありがとう! 次こそはアタック成功させるよ!」
「うんうん、その意気よ! 頑張ってね!」
二人が笑顔をかわしていると、再び鳥の羽音が聞こえてきた。
そのとたん世界が輝きだして小日本は目を開けていられなくなる。
「そこで目が覚めたの」
洗濯物かごを抱えた鬼子の横で小日本がニコニコしながら今日見た夢を話していた。
「素敵な夢ね、6年後かなうといいわね〜」
リビングのこたつでくつろいでいた日本狗にも二人の話し声が聞こえている。
TVからは金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入失敗のニュースが流れていた。
あぁ、これかと気づいた日本狗は目の前にちょこんと座る黒い小鳥を見つめつつため息をついた。
小鳥は三本の足を使って器用にミカンの皮をむいて実をついばんでいる。
「小日本の夢枕に立ったのはお前だろ、八咫烏」
「ヤタは導くだけなう。 縁を結ぶのはヤタの仕事ではないなう」
「それで小日本を連れて行ったのか。 んで、思惑通りにいったと」
「なんのことかサッパリなう」
「けっ、よく言うぜ。 まぁ、小日本が喜んでるからいいけどよ」
再びため息をついた日本狗の頭の上に八咫烏がぴょんと飛び乗った。
「ヤタはそろそろ帰るなう お外まで送るなう」
「なんだよ、もう少し居てもいいのに」
「サッカーの試合があるなう 加護するなう」
「あ〜。そういやそっちの神様もやってたっけ」
やれやれと愚痴りながら立ち上がった日本狗は八咫烏を頭に乗せたまま玄関へ向かった。
「あら? お客様がいらしてたの? ずいぶん可愛らしい、黒い……すずめ?」
洗濯物を干し終えた鬼子は玄関先で日本狗達に気づいた。
「ヤタはすずめじゃないなう」
鬼子の問いかけにそう答えると八咫烏は日本狗の頭から飛び降りる。
地面に降り立つとその体長は人ほどのサイズになっていた。
「わっ でかっ! って、八咫烏様でしたの?」
「すご〜い でっかい烏だぁ。 背中に乗って飛べそうだねー」
鬼子の横で小日本も八咫烏に気づいて小躍りする。
「世話になったなう 上手くいったらハヤブサと一緒にお礼に来るなう そのとき背中に乗せてもいいなう」
「本当? 背中に乗せて飛んでくれるの−?」
「うむ、そのときを楽しみに待つなう」
「わーい で、何が上手くいったらなのー?」
「6年後まで内緒なう」
「えー?」
訝しげな小日本の頭を八咫烏は大きな羽でなでた。
「どういうこと?」
「さぁな」
鬼子が日本狗に問いかけるも日本狗は苦笑いするばかりだ。
そのとき、垣根の茂みから青年が飛び出してきた。
「ヤタちゃ〜ん! 探したよー」
その青年は大和朝廷時代のような髪型と服で、
その上からサムライジャパンの応援用ユニフォームを着ていた。
その素っ頓狂な出で立ちのため折角のイケメンが台無しである。
しかし、その身からは神気が漂い、位の高い神だと鬼子達は感じた。
「ヤタちゃん探してたら、すぽぉつ用品店見つけて〜、安かったから買っちゃったー」
「ジンムー 社で待ってろと言ったなう 無事に出会えたからいいけど、また迷子になったら困るなう」
ばさりと羽ばたいた八咫烏は神武の頭を鷲掴みにすると高々と飛び上がった。
「大丈夫大丈夫、結果往来! さぁ、試合会場行こう! 麦酒買っていい?ほっとどっくも食べたいなー」
「脂肪フラグたちまくりなう プニったら運ぶの大変になるから嫌なう」
「あ、来る途中の駅前におからどぉなっつ屋さんがいたからそれも買っていきたいなー」
「そんな時間ないなう 直行なう」
そんな会話をしつつ八咫烏と神武は遠ざかっていった。
「え? え? まさか神武天皇!?」
狼狽える鬼子をよそに、日本狗も小日本の頭をなでる
「上手くいくといいな」
「んー? なんだろ? でも上手くいくといいなー 背中に乗せてもらいたいもん」
笑顔の小日本につられ日本狗も笑顔になる。
その後ろではサイン貰えば良かったーだとかよく分からないことをつぶやく鬼子の姿があった。
ヤタスレ住人とここで会うとはw
つ☆☆☆
>平安鬼子
新しい方向だな。鬼子の成り立ちみたいなものかー前鬼後鬼のどっちかだったのかも〜みたいな
妄想が働くなー
>少年と女神
こっちは衛星ネタかーいろいろできるもんだなー
どっちもオモロかった。乙。
ヤタ様がこちらに居られると聞いて馳せ参じました
つ ☆☆☆
27 :
時の番人:2010/12/21(火) 19:51:46 ID:GCCt4K/P
今、ここ誰も使ってませんね〜!?
使ってないようなので今から
「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第四章〜【初めての友達】
を投下します。
俺設定です。それと挿絵、最近手抜きです。絵は難しい・・・。
「田中さん」名前使わせてくれて有難う。
28 :
時の番人:2010/12/21(火) 19:52:47 ID:GCCt4K/P
●「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第四章〜【初めての友達】
黒い雲が立ち込めるある日の昼、舞子が鬼子の所に【ドタドタ】と飛んで来た。
「鬼子ちゃん。で、出たかもしれない・・。」舞子は少し焦りながら鬼子にそう言った。
鬼子は口に魚をくわえ美味しそうな顔をしながら振り向いた。きび爺、きび婆と昼食の様だ。
「便秘治ったんだ!よかったね。」
舞子はずっこけてる。「ち、違うわよ。輩よ、悪しき輩。」と恥ずかしそうに顔を赤くしながら言った。
「さっきお参りに来た人から聞いたんだけど、二日前の晩に子供たちが近くの沼に遊びに言った時、
そこに青い服を着た一人の少年らしき子が居たんだって。子供たちはその場をすぐ離れたみたいだけど、
次の日、またその沼に遊びに行ったらまたその少年が居たらしいの。でも、雰囲気が何か違ってたんだって。
何かその・・人じゃ無い見たいだったって・・・。」一瞬にして、空気が張り詰める。
それを聞いたきび爺、きび婆は少し険しい表情をしていた。
鬼子は魚を口の中に全部押し入れて、【スクッ】と立ち上がった。厳しい目をしている。
「ばもぐもぐhぐうdjdsdもぐる。」・・・何を言ってるか解らない・・・。
鬼子は魚を飲み込んでもう一度言った。「場所どこ?今から行ってくる。」
きび婆が鬼子に言った。「鬼神様の角の繊維で編んだ物を付けとるかぃ?」
「うん。大丈夫。いつも付けてるから。」
舞子から場所を聞いた鬼子はすぐさまその沼めがけて走って行った。走ると言うより飛び跳ねながら。
すごい速さだ。木々の間をすり抜けながら鬼子は飛んで言った。その背中にはヒワイドリがくっ付いている。
【スタッ】鬼子はその沼近くに着いた。人間の民の足なら走っても20分ほどかかる距離だが、
鬼子は2、3分くらいでそこに着いた。鬱蒼と生い茂る木々、雑草。その向こう側に沼が見えた。そして・・・
はっきり見える。沼のほとりに立っている子供が。服は着ていない。青い服がその足元に散らばっている。
そして肌が黒ずんでいるようだ。その子供は【ボ〜】っと沼を見ている様だった。
http://loda.jp/hinomotooniko2/?id=411 ●画像挿入一コマ目
「典型的な輩だな。初期段階か。ああなっては元に戻れない・・・」と般若面が言った。
「・・・うん。解ってる。話では聞いてたから。」鬼子は落ち着いている。人間の民の前とは大違いだ。
鬼子は、本当は初めてなのである。自ら散らそうとする事は。その為の修行を闇世でしていたのである。
「気をつけるんじゃぞ。」般若面はそう言った。
「うん。」
鬼子は少しづつその輩に近づいて行った。輩は動かない。ジッと沼を見つめている様だった。
ヒワイドリは木の陰に隠れている。
鬼子は声を掛けた。「君の名前は?」
「・・・腹へった」ボソッとその輩は言った。
【・・・・・、あの時と・・似ている・・・。】鬼子はそう思い、悔しそうな、そして切ない表情になっていた。
鬼子はそっと手を差しのべた。すると、その輩が突然大きな口を空け襲い掛かってきた。【バクゥッ】
鬼子はとっさに後ろへ逃げ、目が赤くなる。スクッと立ち上がり、もう一度鬼子は聞いた。
「お願い・・・答えて。君の名前は?」と。
「腹減った。お前を食う」その輩はニヤッと笑った様に見えた。
「鬼子、ためらうな。」と般若面が言う。
「でもあの子・・・背丈からして、どう見ても10歳くらいにしか見えない。それに・・・言葉を話してる・・・。」
鬼子の心は、どうにか助けてあげたいと思う気持ちになっていた。
ゆらり・・ゆらりとその輩は鬼子の方に近づいて来ている。鬼子はユックリとその距離をとる。
「鬼子・・・皆最初は初期段階の輩を見ると悩むんじゃ。
しかし悩んでるうちに反応が遅れ、食い殺された者を何人も見てきている。」
般若面は幾度となく経験があるみたいだ。
「・・・本当にあの子・・・もう駄目なの・・・?」鬼子の目は、強い悲しみを背負っていた。
「皮膚が黒ずみ、さらに変化している・・・。初期段階と言っても、輩としての初期段階じゃ。
このまま放っておくと力をつけ、いずれ街に出て人間の民を襲うじゃろ。可愛そうじゃが散らすしか・・ないのう。」
鬼子は般若面の言葉を聞いてから、ジッとその輩を見つめている。【ゆらり・・ゆらり】輩は鬼子に少しづつ近づく。
鬼子はまた少しづつ距離をとりながら後ろへ下がっていく。鬼子は闇世での出来事を思い出していた・・・。
29 :
時の番人:2010/12/21(火) 19:54:11 ID:GCCt4K/P
夕暮れ時、鬼子がまだ11歳くらいの頃、近所の二つ上のお兄ちゃん2人と計3人で山間で遊んでいた時だ。
何処からか悪しき輩が現れた。まだ初期段階の輩・・・。
二つ上のお兄ちゃん達は、輩退治の修行をしているが、まだ見習い中だった。
その輩は、彼らが修行中教えられていた通りの初期段階の輩だったが、裸で居る事、皮膚が黒ずんでいる事を除けば
普通の人に見える。見た目はそのお兄ちゃん達と同じくらいの年齢か。それに女の子っだった。
近所のお兄ちゃんの一人がその輩に用心しながらそっと近づいていく。
「お水・・・ちょうだい」その輩が言葉を発する。
その言葉を聞いたお兄ちゃんは、目を見開いて、こう思った。
【この輩はまだ助ける事が出来る・・・】と思ってしまったのだ。
もう一人のお兄ちゃんも、そして鬼子もそう思った。
しかし・・・近づいていったお兄ちゃんが「こっちへおいで。」と手を差しのべたその瞬間・・・。
頭から腰にかけて、一瞬にして食べられてしまった。もう一人のお兄ちゃんと、鬼子の目の前で・・・。
ゆらり・・・ゆらりとその輩はもう一人のお兄ちゃんと、鬼子に近づいてくる。
彼等は、受け入れられない状況を目の当たりにし、ショックのあまり腰が抜けて立ち上がれず、
身動き出来ない状況にあった。
ユックリと輩が近づいてくる。鬼子の方に・・・。一歩、また一歩と。
その状況を見ていたもう一人のお兄ちゃんが、やっとのおもいで腰を上げ、鬼子に向かって叫んだ。
「ひのー!(鬼子の事)に、逃げるんだ。逃げるんだー。」
しかし鬼子は立ち上がる事が出来ない。その輩は鬼子の前に立ちふさがった。
ユックリと大きな口を開いて・・・鬼子に覆いかぶさってきた。【キャアアー】
【ガツン】・・・・・。お兄ちゃんが鬼子の前に立ちふさがり、輩を一生懸命抑えている。
「ひの・・・立て。立って逃げるんだ。」お兄ちゃんは必死に鬼子をかばう。
鬼子は立ち上がる事は出来なかったが、足で地面を蹴り一生懸命泣きながら後ろへ、後ろへと下がっていった。
その時、【ズンッ】と少し鈍い音がした。
鬼子がお兄ちゃんの方に目をやると、お兄ちゃんの背中から大きな何かが突き出ていた。
お兄ちゃんの口から血が流れる・・・。それでも必死に輩を抑えていた。
「ひの・・・はやく・・にげて・・・。」お兄ちゃんのかすれた声。目から涙を流しながら・・・。
鬼子は震えた声で「お・・・お兄ちゃん・・・。お兄ちゃん・・・。」それが精一杯だった。
【ドカッ】お兄ちゃんは輩に蹴り飛ばされ、鬼子の前に倒れた。
また輩がゆらり、ゆらりとユックリ迫ってくる。
「お兄ちゃん・・お兄ちゃん・・。」鬼子はお兄ちゃんの顔に手を触れながらそう言うしかなかった。
「ひの・・・」お兄ちゃんが震える手で鬼子の方に何かを差し出している。
「これで・・・これで皆を呼ぶんだ・・。この・・・笛を・・力一杯吹け・・・。」
「ひの・・・早く・・・。」その差し出された笛は、悪しき輩が出たと言う合図を送る笛。
鬼子は震えるお兄ちゃんの手を持ち、そのまま笛を吹いた。
【ピーーーーーーーーーーーーーー】
光の世での今の目の前の現状と、その出来事がダブって見えた。
鬼子は唇をキュッと噛んで、心を決め、般若面から薙刀を取り出し身構えた。
鬼子は左腕を前に伸ばし、人差し指と中指を立て、悲しそうな表情で涙を流しながら唱えた。
「神代に属するは闇、授けるは虚無・・・。」
http://loda.jp/hinomotooniko2/?id=412 ●画像挿入二コマ目
.
30 :
時の番人:2010/12/21(火) 19:55:26 ID:GCCt4K/P
輩の周りに光り輝く神代呪文の文字が舞う。
「ごめんね。助けられなくて・・・。」
鬼子は薙刀を使わず・・・・・「萌え散れ!」小さく、優しい心でそう言った。
神代呪文の文字が輩をそっと包む。【シュッ】・・・・・・・・・・輩は簡単に散って行った。
その瞬間、「あぁ・・・。」鬼子が声を漏らす。
そして、その場に膝を着き震えていた。「ああ・・・あああぁ・・・」
「どうした鬼子!?」木の陰に隠れていたヒワイドリが飛んできて、心配そうに聞いている。
「あぁ・・・伝わってくる・・・。苦しい悲鳴が伝わってくる・・・。」鬼子は自分の身体を抱きしめ震えていた。
「大丈夫か?鬼子?」あのヒワイドリが真剣に鬼子の事を心配している。
「初期段階の悪しき輩を散らすと、その散らされた輩の心が伝わってくるんじゃ。輩になるまでの心の叫びや辛かった事が
全て入り込んで来る。散らすとは・・・その者が光を失うまでの辛かった事を、全てを背負うって言う事なんじゃよ・・・。
今はまだ・・・鬼子はそれに耐える事が出来ないんじゃな・・・。」般若面は悲しそうな表情でそう言った。
鬼子は地面に座り込み、自分の身体を抱きかかえ、下を向き、泣きながら震えていた。
散らした輩の心の悲痛な叫びが・・・鬼子の心を締め付けている・・・。
般若面とヒワイドリは鬼子が自ら立ち上がるまで、その場を動かず、何も話さず、見守っていた。
散らされた輩の足元には・・・小さな赤い色のお守りが落ちていた。
小雪がちらつく山間。鬼子達はユックリと無言で歩いている。
彼らの足は、神社ではなく大きな湖のある方角だ。ヒワイドリが教えてくれた。
湖のほとりには大きな公園があり、綺麗な風景を見て心を落ち着かせる事が出来ると。
たまには気の利いた事を言う。彼等はユックリと湖に出た。
人影は無い。もちろんそうだろう。この寒い、小雪の舞う山間の湖に誰が好んで来るのか。
近くにあった石でできた椅子に腰掛けた。椅子はひんやりと冷たい。
「鬼子・・・。」般若面が声をかける。
「確かに悪しき輩がこの光の世に存在している事は解ったのう。その出所をどうやって調べるかが問題じゃ。
出来るだけ早い段階で輩を見つける事が出来れば、何かが解るかもしれん。」
「先ほど、鬼子が輩に話しかけたように、散らす前に輩本人に聞くのはいい手かもしれんのう。」
「ただ・・・輩事態にまだ人間の民の心が残っている段階でないと駄目じゃがな。辛いが・・・やれるか?。」
鬼子は無言でうなずいた。そして自分の手を見つめている。その手には、さっきの輩が持っていたお守りがあった。
鬼子がポツリと言う。「ねぇ般若。」
「んん?」般若が鬼子の頭の上でそう返事する。
「さっき、食い殺された者を何人も見てきているって言ってたわよね。」
「あぁ・・・、言った。」
「般若は私が生まれた時からずっと一緒にいたから、お父さんやお母さんがどこかでその時に
祈祷してもらったものとばかり思ってたけど・・・。違うみたいね・・。」
鬼子は般若への疑いではなく、輩をどうにかしたいと思う一身で聞いているのだ。
「・・・・・あぁ、ワシは鬼子が生まれるよりもずっと前から闇世で生きているらしい・・・。
ただ・・・記憶が無いんじゃ。断片的には覚えてるんじゃが、ほとんどの記憶がどこかに飛んでしまっとる。」
と般若は鬼子に告げた。
「・・・そっか。」鬼子はそれ以上話さなかった。鬼子はただ、本心から輩を出さないためにはと言う事を考えていた。
「鬼子。」ヒワイドリが言葉を発した。
「ん?な〜に?」鬼子は優しい口調で聞いた。
31 :
時の番人:2010/12/21(火) 19:56:35 ID:GCCt4K/P
「乳の話しでもしようじゃないか。」
【プッス】鬼子の薙刀がヒワイドリのお尻を刺している。
「いてて〜。」ヒワイドリはお尻を押さえながら辺りを飛び跳ねている。
「真面目な話をしてる時になんて事を言い出すのよ!」鬼子は立ち上がり、怒り口調で言った。
「だ、だってオイラ、こんな超〜重い空気は嫌いだからよ。それに、鬼子に乳が無いのは本当だろ!?」
「な・・・なにぃ〜。」鬼子は胸を押さえながら、目の色が変わる。
ヒワイドリは鬼子の前に立った。
「その年齢になって、乳が無いのはそれだけで罪だぞ!」ヒワイドリは指差しながら仁王立ちしている。
「う・・うるさい!」
鬼子はブンブン薙刀を振り回しながらヒワイドリを追いかけていた。
【ピタッ】とヒワイドリが止まる。【プッス】と薙刀が刺さる。
「いてててて〜。」ヒワイドリはまた飛び跳ねながらお尻を撫でている。
「な、何で刺すんだよ。」ヒワイドリは、何処から出してきたのか解らないが、バンソウコウをお尻に貼り付けていた。
「何でって、あんたが急に止まるから刺さったのよ!」確かに鬼子の言う通りだ。
「あれ!」ヒワイドリが何かを指さしている。
「ん?何?」と鬼子はヒワイドリの指差す方を見た。
少し離れた場所で、誰かが椅子に腰かけているようだ。
「あれ、おかしくないか?一人でこんな寒い中。」ヒワイドリが、そう真面目に言った。
「た、確かに変ね。でもあんたも変よ。真面目な事言うなんて。」
鬼子は細目でヒワイドリを見ている。そして、その座っている人の方へ目をやった。
学生服姿の女の子。青い髪をした女の子が座っている。歳は鬼子と同じくらいか。
鬼子の脳裏にまた、悲しい思い出が渦を巻き甦ってくる。
鬼子は、さっきの輩を思い出しながらそっとその女の子の方に近づいていった。
目を赤くし、角は尖がり、薙刀を持ったままそっと、そっと近づいた。
「何してるの?」鬼子はその女の子に聞いた。
声をかけられ振り向いた女の子は、鬼子を見て「キャアアア〜」と叫んだ。
その子は持っていた物を放り投げ、悲鳴を上げてビックリした表情で鬼子の方を見ている。
鬼子もたじろいでいる。
「わ、私・・・お金持ってないわよ・・・。何も持ってないわよ・・・。」その女の子は少し怯えた表情だ。
「い、いや・・・私物取りじゃなくて、ここで何してるのかな〜って思って・・・。」
鬼子は首を振り、焦りながらそう言った。
「な、何してるって・・・え、絵を描いてるの・・・。だからお金なんて持ってないよ・・・。」
女の子はかなり動揺しているようだ。
「そ、そうだったの・・。ごめんなさい。こんな寒い中・・・一人でここに居るのは何か妖しいと思ってしまって・・・。」
鬼子の素直な言葉だった。
「あ・・妖しいって・・・。そっちの方がとても妖しいわよ・・。着物姿だし、目が赤いし。角みたいな物を頭に付けてるし、
お面もつけて、手に・・・すごいもの持ってるし・・・それに鶏と一緒なんて・・・。」
確かに鬼子の方がとっても妖しい。物取りか、頭のおかしい人に見えてもおかしくない格好だ。
鬼子は焦りながらサッと隠せる物は後ろへ隠した。どちらが妖しいか、鬼子も解ったのだろう。
「ご、ごめんなさい。本当にごめんなさい。ビックリさせちゃって。」申し訳なさそうに鬼子はそう言った。
「さ、寒いのに大丈夫?動かず、ジッとしてたみたいだから。」と鬼子は言った。
「大丈夫よ。今、学校の冬休みの絵画の宿題やってたの。冬の風景画の宿題があってね。」女の子は顔を傾けながら
可愛らしくそう言った。
鬼子はそっと胸を撫で下ろす。「そ、そうだったの。本当にごめんなさいね。驚かせてしまって。」
「ううん。いいよもう。そう何度も謝らなくても。」そう女の子は鬼子のほうを見て言った。とても優しい表情だった。
「うぅ・・・優しい方ですね。許してくれるなんて。」鬼子は女の子の優しい表情をみてつい涙目になってしまった。
女の子はその鬼子の姿を見て、呆然としている。
32 :
時の番人:2010/12/21(火) 19:57:46 ID:GCCt4K/P
「うわぁ〜綺麗ね、この絵。」鬼子はチョコンと女の子の横へ座り、その絵を眺めた。
「すごいなぁ〜。こんな綺麗な絵、描けるなんて。」鬼子の目がキラキラしている。
女の子は少しためらいながら言った。「そ、そう?。有難う。」
鬼子はニコッとしている。
「私、ひのもとおにこって言います。宜しくね!」満面の笑顔だ。
「あっ。わ、私、田中みこと。宜しく。」その女の子は恥ずかしそうにそう言った。
「本当はね・・・」その田中さんが続けて言う。
「今日約束してた友達が、みんな駄目になっちゃって。・・と、友達少ないから他に誰も呼べなくて・・・。」
少し寂しい表情をしていた。
すると鬼子は目をキラキラさせながら自分を指差している。
「え?」田中さんは最初意味が解らなかった。
鬼子は目をキラキラさせたまま、まだ自分を指差している。
「え?友達になってくれるの?鬼子ちゃんが?」
その言葉を聞いた鬼子はブンブンと顔を縦にゆらす。
「あ・・・有難う。嬉しいなぁ。」田中さんは強引な鬼子のその提案を、理解しがたかったが、
嬉しさもあって受け入れてくれた。
「みことチャンかぁ。家には巫女さんがいるなぁ。みことチャンにみこさんかぁ。何か似てる。」とボソッと言った。
「え?何?」と田中さんが言う。
「ううん。何も無い。こっちの話し。」と鬼子は手を振り、苦笑いしながらそう答えた。
ヒワイドリは、後ろを向いて口に手を当て肩を揺らしながら笑っていた。俺に似てきたと思ってるのだろう。
「鬼子ちゃん。暖かいお茶でも飲む?寒いでしょ。」と田中さんが言ってくれた。
その言葉を聞いた鬼子は目から大洪水がおきている。鬼子は人間の民の優しい言葉に弱いみたいだ。
「鬼子ちゃんは何処に住んでるの?」と田中さんが聞いてきた。
「鬼狐神社です!」と鬼子は元気良く答えた。
33 :
時の番人:2010/12/21(火) 19:59:07 ID:GCCt4K/P
「え・・・鬼子ちゃんは神社の子だったんだ。めずらしいね。」田中さんは街中の子と思い込んでいたみたいだ。
「そ、そうですか?めずらしいですか?変ですか??」鬼子は田中さんの目をじっと見つめながらそう言った。
田中さんはたじろぎながら、「い、いや。私、街中に住んでるんで、まわりにそういう子居ないから・・・。」
「そうなんですか。じゃぁ私が神社の子第一号って訳ですね!」何故か喜んでいる鬼子。
「ハ、ハハハ・・。第一号って・・。」田中さんは反応に困っている。
「私最近こっちに引っ越してきたばかりで、知り合いも少ないし、友達全然いないんですよ〜。」と鬼子が言う。
この言葉はきび婆から教えてもらった言葉だが。
「街中も一度だけ出た事あるんですけど、もう迷っちゃって迷っちゃって。」と鬼子は照れ笑いしている。
迷ってはいないが、心が無く、色々あって記憶が飛んでいたのは確かだ。
「そう、引っ越してきた時って解らない事だらけだもんね!」田中さんは優しくそう言ってくれた。
「解ってもらえます?この寂しい気持ち!?」と鬼子はまた涙目になりながらそう言った。
田中さんは、やはり又たじろぎながら「解る、解る・・。最初は寂しいもんね。友達もいないから。」と言った。
鬼子は田中さんの方を見て、またまた目から大洪水をおこしている。
そんな鬼子を見ていた田中さんは、鬼子の事を可哀想な子だな〜っと思い始めた。
「あっそうだ。鬼子ちゃん明日は暇?」と田中さんが聞いてきた。
唐突な言葉だったが鬼子は「うん」と答えた。
「私いつも暇なんです・・。友達いないから・・・。」また、自虐的な鬼子の言葉・・・。
「そ、そう。よかったら私と一緒に街中へ出てみる?明日の午後から街がクリスマス用にライトアップされて綺麗なの。
それを見ながらショッピングでもしない?友達になった証として。」
田中さんもライトアップされた街中をワイワイと話をしながら友達と歩きたかったみたいだった。
【ダー】っと鬼子の目から涙が流れる。涙で体が流されていく勢いだ。
「い・・いいんですか?こんな私と一緒で・・いいんですかぁ・・?」
「い、いいよ。私も街中へ出たかったし、お喋りするの楽しいもんね。」そう言ってくれた田中さんの笑顔が
鬼子にはキラキラ輝いてるように見えた。
「た、田中さんって、優しい人ですね〜。本当に優しい人です〜。」
鬼子は涙を流し、鼻水を流し・・本当にグダグダだった。
田中さんと別れ、神社へ戻った鬼子。
友達が出来た事をきび爺、きび婆、その他の人達に楽しそうに話をしている。
鬼子の部屋には、そっと小さな赤い色のお守りが飾られていた。
「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第五章〜【鬼子はお洒落通!?】に続く。投下終り。
.
時の番人様
いつも楽しく読んでおります。田中さん、いい人ですよね。
気になった点が2つ。
台詞と地の文章は、行を空けた方が見やすいかと。
「い、いいよ。私も街中へ出たかったし、お喋りするの楽しいもんね。」そう言ってくれた田中さんの笑顔が
鬼子にはキラキラ輝いてるように見えた。
↓ ↓
「い、いいよ。私も街中へ出たかったし、お喋りするの楽しいもんね。」
そう言ってくれた田中さんの笑顔が、鬼子にはキラキラ輝いてるように見えた。
これは見やすさの問題。時の番人さんも誰かに読んでもらおうと書いていると思いますので、
行制限があるのは分かりますが、まずは読んでもらう最低限の工夫は必要かと。
眼の肥えた読み手は、内容がどんなに良くても敬遠しがちです。
次は、台詞内の最後に『、』 『。』は基本的につけません。
明確な決まりがあるわけではありませんが、小説・SSなどの慣習と言うべきでしょうか。
これからも頑張ってくださいませ。
ちょっと投下させてもらいます。
)
∩γハ゜ハ ヽ∩ |
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ぐ;:;リl、>_<;*リ/;:;:;::;;| |/ ) バ カ ーーーー!(
、、∧、∧\:;;ハy// |;::*/ (´´ ( /'⌒Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^/⌒ ○
ミVVwリミ レヒ三}じ/ ≡≡≡(´⌒(´≡≡ γ ハ゜ハヽ 、、∧、∧ /
⊂l、+_ + メ⊂)イ*:;;:ノミつ ≡≡≡(´⌒;;≡ ヘ*(ノ (V) リ> \人_人_wリミ イ
⊂ミヾ/  ̄ (´⌒(´⌒;; リ * `дノリ ) l、+ _+ メ彡 テッ
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┌┴┐┌─┐ ̄Tフ _ / / / 、、∧、∧、 ヽ C{三/:;:;/ {=∞=} (⌒) )
_ノ _ノ ノ ア --_/ 。。 ミVVwリミ (シ⌒(.j ハ、、、、イ
C= i、。−メ彡
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γハ゜ハ ヽ i⌒) / (_{=∞=} (⌒) )
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γ゜ハ ヽ Zzzz... ( さて、前回、ささいな事から狗くんとケンカしてしまった小日本。 )
(V) リ>*ヘ ) 大泣きした末、疲れて眠ってしまいました。 (
、、∧、∧、!、。- *ノリ ( そんな小日本を狗くんは鬼子の下に送り届け、 )
ミVVwリミy/ ̄ ゝ ) 泣き疲れた小日本は結局、朝まで眠り続けました。 (
l、゚ -゚ メ⊂\::;:;\ ( 話はその翌日。小日本が目を覚ますところから始まります。 ノ
ミ^V ̄ミ⊂_:;:;ノ ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ
{=∞=} (⊃⌒) ) γハ^ハ ヽ ZZzzz…
ハ、、、、イ_) ソ .__ (ノ (V) リ|
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\ ヽノ(,,⊃⌒O〜 ヽ
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.__ γハ^ハ ヽ ネ は こ |i)、_;|*く; Ψノ
( (⌒(ノ (V) リ|\ ネ ぁ お も に | |!: ::.".T
\ ヽ/ ̄)。-ノ~ \~ ° さ い き う | \ ハ、___|
\ (:;:;:ノハy/O〜::⌒) ま な 朝 \
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\`〜ー--─〜' )
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37 :
こにのお礼:2010/12/22(水) 00:24:25 ID:auRSYoqT
.__ γハ^ハ ヽ い か 朝 | <Ψ:::_;フ*く;:: ノ
( (⌒(ノ (V) リ|\ ら ら 餉 | ~T": ::::.! ~
\ ヽリ∩-。-ノリ~ \~ ° ○____ っ 顔 の \ |____ハ
\ (:;:;:ノハy/O〜::⌒) し を 支 \
(|*;;/⌒.)〜ー--( ゃ あ 度、''',,'' '\
''',,'' ' レ\::;;;*::::*:::*::::\ ''',,'' ' い ら で
\`〜ー--─〜' ) っ き
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る
i / 私 あ
.__ γハ^ハ ヽ  ̄ の れ
( (⌒(ノ (V) リ|\ 毬 ?
\ ヽリ∩ ゚ -゚ノリ~ \○ : こ
\ (:;:;:ノハy/O〜::⌒) : れ
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\`〜ー--─〜' )
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.__ γハ^ハ ヽ た こ ど
( (⌒(ノ (V) リ|\ し ん う
\ ヽリイリ ゚ -゚ノリ~ \ か な し
\ (:;:;:ノ⊃○O〜::⌒) : 所 て
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ぐ;:;リl、>_<;*リ/;:;:;::;;| |/ ) バ カ ーーーー!(
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ミVVwリミ レヒ三}じ/ ≡≡≡(´⌒(´≡≡ γ ハ゜ハヽ 、、∧、∧ /
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⊂ミヾ/  ̄ (´⌒(´⌒;; リ * `дノリ ) l、+ _+ メ彡 テッ
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_ノ _ノ ノ ア --_/ 。。 ミVVwリミ (シ⌒(.j U U
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γハ゜ハ ヽ i⌒) / (_{=∞=} (⌒) ) \ ) /
⌒*(ノ (V) リ>*ヘくn(⌒) / ; ハ、、、、イ_) ソ \ γ゜ハ ヽ /
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___ ゴ γハ ^ ハヽ|||| 出 日 み う 涛 。゚o::: ミVVwリミy/ ̄ ゝ
__ ̄ ̄ |  ̄ (ノ (V) リ| 来 の が に の ::。:::::::l、゚ -゚ メ⊂\::;:;\
 ̄ ̄ ン  ̄ |イリ ゚д゚ノリ 事 え ::゚:::::ミ^V ̄ミ⊂_:;:;ノ
 ̄ ̄ :  ̄ リノハy/ ヽ、 る ::゜o {=∞=} (⊃⌒) )
38 :
こにのお礼:2010/12/22(水) 00:25:23 ID:auRSYoqT
ど ど
.__ γハ^ハ|||||| う ’
( (⌒(ノ (V) リ|||| し
\ ヽリイリ ::::::::ノリ \ よ
\ (:;:;:ノ⊃○O〜::⌒) う
(|*;;/⌒.)〜ー--( :
''',,'' ' レ\::;;;*::::*:::*::::\ :
\`〜ー--─〜' )
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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┼─┨ ||─┨| ( |il| お ネ あ ハ そ い |
┼─┨ ||─┨| γ ハ゜ハヽ .|il| 聞 様 の ン れ わ |
┼─┨ ||─┨|⌒*(ノ (V) リ>*⌒ き ? : し の じ よ<・)こ>≡
┼─┨ ||─┨| レ,l *゚ -゚ノリ |il| し : ま 後 ゃ ? |
┼─┨ ||─┨| γ∩○∩ |il| た : A^^A し に ’ | ::
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┃ || |┃| じ'<_、__*_ゝ\l 事 |、^-^ .リlヾi| う , ,,|,,,,, ,
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m ∩
おっぱい!おっぱい!>Σ°)彡
( ⊂彡 <<食事中>>
))
≪そして食後・・・・・≫
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っ .ざ .れ な の | |\{ニニiニニiニ 私 ど ど |
て わ て .た 毬<・こ>≡ l;l^~| |il| |i| : う : |
く ざ き .を ? | :*.] |il| |i| 私 し : |
/,A^^A、 れ 取 た 狗 | :: .l.:] |il| ) : よ |
'''',,'' ' '' 卯ミ!|リノ)))リ た り 後 く,'' ,|,,,'', ''' ' |i三|i三 γ゜ハ ヽ う |
lヾ|l ゚ヮ゚ノリ の に ’ ん, ,|,,,, , ヘ(V) リ>*⌒ |
Lハ^∨/ヽ、 よ が,''',|,, ''',,, !、-゚* ノリ |
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 ̄ ̄ ̄くΨ:::_;フ*く;:: ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄〔 ̄ ̄ ̄〕ζO  ̄ ̄ ̄ ̄ ソ:;{三\:;:;:>  ̄ ̄ ̄ ̄\
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39 :
こにのお礼:2010/12/22(水) 00:26:09 ID:auRSYoqT
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| _________ そ 喧 助 こ 木 狗
'''',,'' ' '' | \\\\\\\\\ど れ し 嘩 け に か く
: .| |\{ニニiニニiニ う な ち し て の ら ん
: : <・)こ>≡ l;l^~| |il| |i| し の ゃ て く 事 落 ’
: : | :*.] |il| |i| よ に っ ヒ れ た
/,A^^A、 .: : | :: .l.:] |il| ) う : た ド た 時
'''',,'' ' '' 卯ミ!|リノ)))リ : ''''',,' ' |,,,,'', ''' ' |i三|i三 γ゜ハ ヽ ? .: °い の
lヾ|l .゚ -゚ノリ , ,,,|,,,, , ヘ(V) リ>*⌒ 事 に
Lハ^∨/ヽ、 '''''',,,,'', |,, ''',,, !、-゚* ノリ |
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 ̄ ̄ ̄くΨ:::_;フ*く;:: ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄〔 ̄ ̄ ̄〕ζO  ̄ ̄ ̄ ̄ ソ:;{三\:;:;:>  ̄ ̄ ̄ ̄\
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: .| |\{ニニiニニiニニiニニi|} |
そ : <・)こ>≡ l;l^~| |il| |i| : : .|
ウ う : | :*.] |il| |i| : : .|
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Lハ^∨/ヽ、 '''''',,,,'', |,, ''',,, !、_‐; ノリ : .|
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 ̄ ̄ ̄くΨ:::_;フ*く;:: ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄〔 ̄ ̄ ̄〕ζO  ̄ ̄ ̄ ̄ ソ:;{三\:;:;:> ̄ ̄ ̄ ̄\
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40 :
こにのお礼:2010/12/22(水) 00:26:57 ID:auRSYoqT
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'''',,'' ' '' ま 思 悪 本 | \\\\\\\\\\\ |
謝 ず う い 当.| |\{ニニiニニiニニiニニi|} |
ら の 事 に<・)こ>≡ l;l^~| |il| |i| |il| | |
な な を | :*.] |il| |i| |il| | |
/,A^^A、 く ら し | :: .l.:] |il| ) |il| | |
'''',,'' ' '' 卯ミ!|リノ)))リ ち ’ た |,,,,'', ''' ' |i三|i三 γ゜ハ ヽ 三ill} |
lヾ|l .゚ -゚ノリ ゃ と .,,,|,,,, , ヘ(V) リ>*⌒ .|
Lハ^∨/ヽ、 ね '''''',,,,,'', |,, ''',,, !、-゚* ノリ |
───/.::::< 三];;;::ヽ───────.|────────ハy// ヽ、────.|
 ̄ ̄ ̄くΨ:::_;フ*く;:: ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄〔 ̄ ̄ ̄〕ζO  ̄ ̄ ̄ ̄(ソ○⊂|:;:;:> ̄ ̄ ̄ ̄\
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'''',,'' ' '' ア 助 そ | \\\\\\\\\\\ |
お リ け し | |\{ニニiニニiニニiニニi|} |
礼 ガ て て<・)こ>≡ l;l^~| |il| |i| |il| | |
を ト く ’ .| :*.] |il| |i| |il| | |
/,A^^A、 す ウ れ | :: .l.:] |il| ) |il| | |
'''',,'' ' '' 卯ミ!|リノ)))リ る っ て ,|,,,'', ''' ' |i三|i三 γ゜ハ ヽ 三ill} |
lヾ|l .゚ ヮ゚ノリ の て ,,,|,,, , ヘ(V) リ>*⌒ .|
Lハ^∨/ヽ、 ° '''''',,,,'', ,|, , ''',,, !、-゚* ノリ |
───/.::::< 三];;;::ヽ───────.|────────ハy// ヽ、────.|
 ̄ ̄ ̄くΨ:::_;フ*く;:: ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄〔 ̄ ̄ ̄〕ζO  ̄ ̄ ̄ ̄(ソ○⊂|:;:;:> ̄ ̄ ̄ ̄\
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41 :
こにのお礼:2010/12/22(水) 00:29:00 ID:auRSYoqT
_________分_ 仲 そ_ .|___________________/
か 直 れ | __________ |
'''',,'' ' '' ら り .で .| \\\\\\\\\\\ |
な く し .| |\{ニニiニニiニニiニニi|} |
い れ て <・)こ>≡ l;l^~| |il| |i| |il| | |
け る .| *.] |il| |i| |il| | |
/,A^^A、 .ど か .| :: .l.:] |il| ) |il| | |
'''',,'' ' '' 卯ミ!|リノ)))リ ’は ''''',,'' ' |,,,'', ''' ' |i三|i三 γ゜ハ ヽ 三ill} |
lヾ|l .゚ -゚ノリ , ,,,,|,,, , ヘ(V) リ>*⌒ .|
Lハ^∨/ヽ、 ° '''''',,,,'', ,|, , ''',,, !、-゚* ノリ |
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 ̄ ̄ ̄くΨ:::_;フ*く;:: ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄〔 ̄ ̄ ̄〕ζO  ̄ ̄ ̄ ̄(ソ○⊂|:;:;:> ̄ ̄ ̄ ̄\
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_______________ .|___________________/
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'''',,'' ' '' 誠 ま | \\\\\\\\\\\ |
見 意 ず .| |\{ニニiニニiニニiニニi|} |
せ を は <・)こ>≡ l;l^~| |il| |i| |il| | |
な ち | *.] |il| |i| |il| | |
/,A^^A、 . き ゃ ::| :: .l.:] |il| ) |il| | |
'''',,'' ' '' 卯ミ!|リノ)))リ ゃ ん ' |,,,'', ''' ' |i三|i三 γ゜ハ ヽ 三ill} |
lヾ|l ^-^ノリ ね ° と ,,,|,, , ヘ(V) リ>*⌒ ウ .|
Lハ^∨/ヽ、 ? '''''',,,,'', ,|, , ''',,, !、__- ノリ ン |
───/.::::< 三];;;::ヽ───────.|────────ハy// ヽ、────.|
 ̄ ̄ ̄くΨ:::_;フ*く;:: ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄〔 ̄ ̄ ̄〕ζO  ̄ ̄ ̄ ̄(ソ○⊂|:;:;:> ̄ ̄ ̄ ̄\
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42 :
こにのお礼:2010/12/22(水) 00:30:34 ID:auRSYoqT
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い な 事 狗 さ | _________ .|
'''',,'' ' '' る っ に く 支 て | \\\\\\\\\\ .|
か て ん 度 ’ .| |\{ニニiニニiニニiニニi|} |
ら に し そ<・)こ>≡ l;l^~| |il| |i| |il| | |
/,A^^A、 稽 .な れ | ;*.] |il| |i| |il| | |
卯ミ!|リノ)))リ 古 く じ | :: .l.:] |il| ) ?? |
'''',,'' ' '' lヾ|l .゚ヮ゚ノリ を ち ,ゃ ' |,,,'', ''' ' |i三|i三|i三 γ゜ハ ヽ ill} |
ノ ハ^∨/ヽ、 つ ゃ , |,,,, , ヘ(V) リ>*⌒ .|
/.::::< 三];;;::ヽけ'''' °'',,,,,'',,|, , ''',,, エ !д゚* ノリ |
──── くΨ:::_;フ*く;:: ノ る─今── |───────ッ─ハy// ヽ、────.|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~T": ::..!T  ̄ ̄ ̄ 日 〔 ̄ ̄ ̄〕ζO ̄ ̄ ̄?!(ソ○⊂|:;:;:> ̄ ̄ ̄ ̄\
|____ハ は (____)O_O_ ⊂0):;:レ*;ノ \
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| _______ .|
'''',,'' ' '' 喜 そ そ 狗 今 | \\\\\\\ i⌒i \ |
ぶ お ん 獲 の く 厳 日 | |\{ニニiニニiニ | / ニi|} |
ん 弁 な れ 日 ん し の<・)こ>≡ l;l^~| |il| |i| レ | .|
じ 当 時 な は ’ い 稽 | ;:*.] |il| |i| .| |
/,A^^A、 ゃ が ’く ゴ 疲 か 古 | :: .l.:] |il| ) ○ | |
卯ミ!|リノ)))リ な あ な ハ れ ら は,,|,'', ''' ' |i三|i三ill|i γ゜ハ ヽ 三ill} |
lヾ|l .^ -゚ノリ い れ る ン て ス,,|,,, , ヘ(V) リ>*⌒ .|
| ハ∨/^ヽ、か ば か を ッ ,,| ''',,,,,.,'' !、-゚* ノリ |
L.ノ::[三ノ :.'、し も ゴ .|─────────∩○∩ _ヽ────|
i)、_;|*く; Ψノ ら ね ク  ̄ ̄〕ζO  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ソ:;{三\:;:;:>  ̄ ̄ ̄ ̄\
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ハ、___| <⌒⌒⌒⌒⌒> /:::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::O::l:;;:::::\ <⌒⌒⌒⌒⌒> \
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43 :
こにのお礼:2010/12/22(水) 00:33:48 ID:1EVYEeLV
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<・)こ>≡ l;l^~| |il| |i| |il| 狗 こ |
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/,A^^A、 : | : l.:] |il| γハ゜ハ ヽil| 弁 ん ガ |
卯ミ!|リノ)))リ ''''', ' '' ,,, |'', '', '''' |i ⌒*(ノ (V) リ>*⌒ 当 に ン |
lヾ|l .^ -^ノリ , ,,,,,|,, , リl ゚ヮ゚*ノリ 作 バ |
| ハ∨/^ヽ、 '''''',,,,,'',, |,, ''',,,,,.,'' ∩○∩ヽ る る |
L.ノ::[三ノ :.'、────────── .|─────── /::/三く、 \─! !─|
i)、_;|*く; Ψノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 〔 ̄ ̄ ̄〕ζO  ̄ ̄ ̄ ̄レ'<_、_*ゝ\l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
|!: ::.".T~ _ .(____)O_O_ ∪ ∪ \
ハ、___| <⌒⌒⌒⌒⌒> /:::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::O::l:;;:::::\ <⌒⌒⌒⌒⌒> \
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
おk。スレ建て失敗 ,Mn
.,//へ、 Σ ° )
.<< ( ◎ ≪ / ⌒i 誤爆とはパネェなヤイカガシ
.ノ 、(__ ノ、 | .ト、
,ノ ン丶/ ̄ ̄ ̄ ̄/. ト、゙ヽ、
_) ゙,,ニ,/ FMV / .| ..ト、゙丶、___ <<準備中>>
"⌒\/____/ (u ⊃
そ・し・て…… _________
き \\\\\\\\\\
’ |\{ニニiニニiニニiニニi|}
そ 最 気 l;l^~| |il| |i| |il| |
何 ん 初 に ;:*.] |il| |i| |il| |
ど ’ な は し l.:] |il| |i| |il| |
ろ こ も 誰 な ' |i三|i三ill|i三ill|i三ill三ill}
_,冂_冂,_ ダ の の で い っ __,亠_
{_____} ン よ も で っ っ {____} ___
__,,|____|,, ( ゴ !! A^^A 、 っ ( ___ ) ( ___ )
. └i------ γ ハ゜ハヽ : !|リノ(((リ卯 )n i⌒i i( )h i⌒i i(
. r゙;;;;i'  ̄ ⌒*(ノ (V) リ>*⌒ |、゚ヮ^ .リlヾ| / U U \ / U / \
. / |\;;;;;;;;; レ,lリ*T_Tノ : Lハ∨/^ヽi i i i U i
|;:;:;;:;:| /ハy/ ヽ、 .ノ::[三ノ :.'、 \____ / \____ /
______ |:;:;:;|__ i ,.イ⌒ヽ__ i),.-、く; Ψノ_______
.|:;:;:/っ \ 【 ト:■;j (,,■) ~~\ \
 ̄ \`‐ - ' ベチャ・・・ \ \
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ー 続く ー
作ってて、結構な分量になったため、分割して投下しました。
…最初の投下にタイトル入れ忘れてしまった……続きは1日後くらいに投下します。
こにぽん、健気だな。
鬼子はお姉さん・お母さん役をちゃんとしてるな。
続きが楽しみだぜ!!
>>34さんへ。
なるほど、そういう暗黙の了解的な事があるんですね。
指摘されなければ、このままずっとこの調子で
投下してたと思います。知らず知らず身勝手に投下してました。(恥。
最低限の工夫って言葉、勉強になりました。有難う御座います。
47 :
時の番人:2010/12/22(水) 21:55:44 ID:festCvvu
あぁ・・・投下する絵が思うように進まない・・・。
独り言でした。
48 :
こにのお礼:2010/12/22(水) 23:23:22 ID:RPjmziY9
え〜と、それでは続きを投下させてもらいます。
あらすじ・・・
狗くんと喧嘩してしまった小日本。鬼子に相談した所、
お弁当を仲直りのきっかけにしたらどうかと勧められて、
挑戦してみたのだが……結果は散々なことに。果たして、仲直りはうまくいくのでしょうか?
_,冂_冂,_ っ __,亠_
{_____} っ っ {____} ___
__,,|____|,, ( A^^A 、 っ ( ___ ) ( ___ )
. └i------ γ ハ゜ハヽ !|リノ(((リ卯 )n i⌒i i( )h i⌒i i(
. r゙;;;;i'  ̄ ⌒*(ノ (V) リ>*⌒ |、゚ヮ^ .リlヾ| / U U \ / U / \
. / |\;;;;;;;;; レ,lリ*T_Tノ Lハ∨/^ヽi i i i U i
|;:;:;;:;:| /ハy/ ヽ、 .ノ::[三ノ :.'、 \____ / \____ /
______ |:;:;:;|__ i ,.イ⌒ヽ__ i),.-、く; Ψノ_______
.|:;:;:/っ \ 【 ト:■;j (,,■) ~~\ \
 ̄ \`‐ - ' ベチャ・・・ \ \
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
49 :
こにのお礼:2010/12/22(水) 23:24:33 ID:RPjmziY9
<<<譲れぬ漢の戦い中>>>
マ 犯 い チ __ γ ^ミミ 手
や ネ 罪 い チ _|__|_ 彡ノリリリミシ ク の
め は み 予 か ド 彡・ _0 + i、∞・ -∩ミ イ ク ひ
た た 備 げ リ 斤ハゞ リ ソ\ ⊂厂 ヾ//勹 イ ら
ま い 軍 ん く し-ヘ=**}リ )ェヘ  ̄{∝ニニ} 正 サ
え な ん ////] .┃ {h i lЛ イ
° くノ //n」 ┃ // | | 」 義 ズ
⌒ ⌒ !! は
一方、日本狗と鬼子の稽古は・・・・
|;:i| |:::;iii~ ノ ,,|;;::ii| |;:i| |i| |;:i| |i::;;iii|~ .|;;::ii| ''\|i|
':;,`:ヽ|/,'|:;:;ii|:,:;*.,:;/.:::;.:":::"''''⌒ヾゞ γ''"""''""''"' |ii;;i;('')''"''''"""''"""'''''"""''
";*'.:.:;”:;゙|:;;iii|`:;,':,*”:;:;.,:;.:;'.:.:;”:;ヾヾ)) ((,:ソミ;.:';';';::;.:". |i;;;::;iii|`:;,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:';
.:;”:`:;,' *”|:;:;ii|:,:;*.,:;/.:::;,':,*”:;:;.,:;.:;'.:ソ "''~`''"゙"'''~ノ;;ii;:iilli;ゝ"''~`''"゙"''~`''"゙"''~゙
"''~`''"゙ ノノシillゝ"''~`''"゙"''~`''"゙"''~ "'''''''''''''''" ..,,、vji、iijww、ii..,
"'''''''''" '""'''""'"""
,..,., も ,..,., r⌒ヽ
''''""'"'''""" 前 う 、、∧、∧、 レわ I
,..,.,.,.,、 .|ヽ.,.ま よ 限 ''"""く ミVVwリミ ノノ ,..,.,.,.,、
''''""'"'''""" │|だ り 界 そ .l、゚д゚ メ彡コヽ
/,A^^A、 .│|ま は ? ''"""~っ ∪ ∪ し J
卯ミ!|リノ)))リ │/ だ 良 ,..,.,
iw、ii. lヾ|l .゚ -゚ノリ. ‖"ね く ''"""~ゼ
) ノ ハ^∨/ヽ、 ‖ な ,..,.,.,.,、 ェ
,..,.,.,.,、 /.::::< 三];;;::;:フつ っ ゼ ,..,.,.,.,、
くΨ:::_;|*;:;|:: ノ ‖ た ,..,., ェ
) ~T": ::..!~~ ‖ け ,..,.,.,.,、 :
''''""'"' |____ハ ‖ ど :
;;;ゝ);;));ヾ;;) . ° ’ ,,.,.,.,、 """~
))ゝ;;;ミ,,、,,;;;ゝ;;)ゝ))ゝ
|;:i| |:::;iii~ ノ ,,|;;::ii| |;:i| |i| |;:i| |i::;;iii|~ .|;;::ii| ''\|i|
':;,`:ヽ|/,'|:;:;ii|:,:;*.,:;/.:::;.:":::"''''⌒ヾゞ γ''"""''""''"' |ii;;i;('')''"''''"""''"""'''''"""''
";*'.:.:;”:;゙|:;;iii|`:;,':,*”:;:;.,:;.:;'.:.:;”:;ヾヾ)) ((,:ソミ;.:';';';::;.:". |i;;;::;iii|`:;,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:';
.:;”:`:;,' *”|:;:;ii|:,:;*.,:;/.:::;,':,*”:;:;.,:;.:;'.:ソ "''~`''"゙"'''~ノ;;ii;:iilli;ゝ"''~`''"゙"''~`''"゙"''~゙
"''~`''"゙ ノ /! "''~`''"゙"''~`''"゙"''~ "'''''''''''''''" ..,,、vji、iijww、ii..,
"''''' { ヽ、 |ヽ. '""'''""'"""
ヽ. } .│| 少 じ ,..,.,
ノ'" │|" し ゃ ビ 从 从
ノ、 ゙:\ │/.,.,、 だ ’''""" ク r ⌒ヽ
!、ノ ノ } ‖ け 今 ッ 从 /^∧从レわ I
:::::::::: /,A^^A._ノ\ .‖ 本 日''"""~ ,..,., ミVVwリミ ノノ
::::r''"卯ミ!|リノ)))リ ノ‖ 鬼 ’ ,..,., l、゚д゚ メ彡コヽ
::::、 lヾ|l.^-^ノリ. (:‖""~" 出 最 ''"""~∪ ∪ し J
) 、:::::)ノ ハ^∨/ヽ、 )‖ す 後,..,.,.,.,、
,..,.,.,.,::::://!::.::::< 三];;;::;:フつ か の ,..,.,.,.,、
::::{ ヽ、:::_;|*;:;|:: ノ:::::::‖ ら 課 ,..,.,
) :::ヽ. }T": ::..!~ /! ° :,..,.,.,. 題
''':::::ノ'":::|____ハ ! ノ : ね
;;;ゝ);;));ヾ;;) . :.,.,.,、 ° ''"""~
))ゝ;;;ミ,,、,,;;;ゝ;;)ゝ))ゝ
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::: 死 ん じ ゃ ダ メ よ ? :::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ハ
/ /
==― / )
_ -‐¬1 7// ̄ ミ> 、/メヽ
/ _ < _/,A^^A/ ー <、 -‐〉 ) .)
〃 ∠∠ ーz ´卯ミ!|リノ)∩ _,ノ ,.′/
.〈 ゞ ゝ、 ∩ヾ|l .゚ w゚ノリ.:\_ > ´ r ⌒ ヽ
` ー-ノ ハ^∨//\;:;:;> 彡 、、/^∧、 レわ I
ー= /:;:;;/ム三}  ̄ ミVVwリミ ノノ
く*/;:;:;:;::;/′ l、゚w゚ メ彡コヽ
( y! し'′ (シ (_j し J
彡
51 :
こにのお礼:2010/12/22(水) 23:26:45 ID:RPjmziY9
,、 /
, キ人_,/
` ) て
\ ,,_人、ノヽ /´⌒Y,.
)ヽ ( 、ハ, \
- < >─ ^ < て
) て ./'Y''~ヾ
/^⌒`Y´^\ `
` '
、 ノヾ '
)ヽ/ ヽ、ノ|ノ´
------- ―== ニ ニ二 二ニ ニ ==― --------
) (
, '´⌒`Y´⌒` 、
, \
じ ''''""'"'''"""
,ゃ..,.,、 ハ ,..,.,.,.,、 ''""" ,..,.,.,.,、
''''''' 私""""/│ /,A^^A、 課
失 は | │卯ミ!|リノ)))リ お''" 題 r ⌒ ヽ
礼 用 l │ lヾ|l .゚ -゚ノリ 今 疲 は ξ レわ I
す jw が ii. \‖| ハ∨/^ヽ、 日 れ ギ ''"""~ ξ 、、/^∧、 ノノ
) る あ ‖L.ノ::[三ノ :.'、 は,..,.様, リ ミVVwリミ/⌒)
,.. わ,.,、る ‖i)、_;|*く; Ψノ 休 ° ギ ⊂! x _ x メつ∪
か ‖ ' |!: ::.".T~"" ん リ キュウ…… ボロッ
ら.,.,.,、 ‖ ハ、___|..,.,.,.,、で 合 ''""" ,..,.,.,.,、
''''""'"'''""". ° い 格
;;;ゝ);;));ヾ;;) , い,.,.,、 ね ''"""~
))ゝ;;;ミ,,、,,;;;ゝ;;)ゝ))ゝ わ
;;;) ;;;)ヾミゞ((;;;ゝヾ;⌒;;) iijww、i よ """~" ''"""~
ヾミ;ソ(;;;ゝヾ;))ゝ;ミ;;(::;ゝ;;;)) ,..,.,.,.,、
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""
) ,..,.,.,.,、 今 敵 相 鬼 く
,..,.,.,.,、 r⌒ヽ 迄 わ 手 使 の そ,..,.,.,.,、
''''""'"'''""" 、、∧、∧、 レわ I の な に っ 力 っ
,..,.,.,.,、 ,..,.,.,.,、ミVVwリミ ノノ 俺 の か も て を ''""" ,..,.,.,.,、
''''""'"'''""" l、゚д゚ メ彡コヽ は か っ な
;;;ゝ);;));ヾ;;) ∪ ∪ し J ,.., : た.,., , い ''"""~
:
52 :
こにのお礼:2010/12/22(水) 23:27:58 ID:RPjmziY9
''''""'" ま"":
,..,.,.,.,、 ''"魚 ず ,. :.,.,.,、 、、∧、∧、 ''"""~ い こ
) で は : ミVVwリミ 果 つ ん ''''""'"'''"""
,..,.,.,.,、 も 腹 : l、゚ -゚ メ彡 た 誓 な ,..,.,.,.,、
''''"獲"'ご"" --- ミ^V ̄ミr " ̄`:、 せ い ん
,..,.,.,.,、 る ,し,.,.,、グ ∪∞∪} ( (⌒) ) る を じ ''""" ,..,.,.,.,、
''''""'"'''""" か ら グゥ〜/( Z )_) ソ か ゃ
;;;ゝ);;));ヾ;;) ,..,.,.,、 え グキュルルー/''"""~ :
))ゝ;;;ミ,,、,,;;;ゝ;;)ゝ))ゝ だ :
;;;) ;;;)ヾミゞ((;;;ゝヾ;⌒;;) iijww、ii. """~" : ''"""~
ヾミ;ソ(;;;ゝヾ;))ゝ;ミ;;(::;ゝ;;;)) ,..,.,.,.,、
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""
:::....::::::........ . .::::::... .... ..::::::::::::::::....::::::........ . .::::::... .... ..::::::::::::::::....::::::........ . .::::::... ....:::::::::
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''"
 ̄ − ;;;;;;;;;;;;;− ;;;;;;;;;; −  ̄ − ;;;;;;;;; 三− ;;;;;;;;;∠二ヽ.二 二  ̄
;;;) ;;;)ヾミゞ((;;;ゝヾ;⌒;;) iijww、ii. """~" ''"""~
ヾミ;ソ(;;;ゝヾ;))ゝ;ミ;;(::;ゝ;;;)) ,..,.,.,.,、
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""
:::....::::::........ . .::::::... .... ..::::::::::::::::....::::::........ . .::::::... .... ..::::::::::::::::....::::::. く..:... ....:::::::::
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''""''"''''""'"' っ""'''''"""''"
 ̄ − ;;;;;;;;;;;;;− ;;;;;;;;;; −  ̄ − ;;;;;;;;; − 魚 ;;動 疲 ダヽ.  ̄
rュ 三−:::;;;;;;;;;;;:  ̄;;;;;;;;;;; − 、、∧、∧、三 ;;;;;;  ̄ が か れ メ;;;;−  ̄
 ̄ −  ̄  ̄ −  ̄ −ミVVwリミ  ̄ 獲 全 ね で− だ  ̄
三−  ̄ ∠二ヽ. −l、゚ -゚; メ彡− 三 ま 然 ̄ぇ 身 −  ̄
::;__;; ^ . :. ミ^V ̄ミr" ̄`:、 ん : 体 ; ~
:;∠´... .. ̄\;,;,;::._; 二  ̄∠二ヽ...グ∪∞=}∪(⌒) ) ね  ̄ が−: ;_;_:,.;_:_;_ :
/´.::;:..\::.:、:... <::.´ ̄`ヽ::.._ . −l  ̄ − ;;;;;;;;; ぇ−
53 :
こにのお礼:2010/12/22(水) 23:29:29 ID:RPjmziY9
 ̄ − ;;;;;;;;;;;;;− ;;;;;;;;;; −  ̄ − ;;;;;;;;; 三− ;;_人_人_/ト 二
rュ 三−:::;;;;;;;;;;;:  ̄;;;;;;;;;;; − 、、∧、、/i、| / ;;;;;;  ̄). 狗 こ(| 二  ̄
 ̄ −  ̄  ̄ −  ̄ − ミwVVリ  ̄ | く ’ |
三−  ̄ ∠二ヽ. −冫 ゚ -゚メ− 三− | ん こ {二  ̄
::;__;; ^ . :. ミ^V ̄ミr" ̄`:、 ' :| ! こ ゝ ~
:;∠´... .. ̄\;,;,;::._; 二  ̄∠二ヽ... ∪∞=}∪(⌒) )三− ) こ(;_;_:,.;_:_;_ :
/´.::;:..\::.:、:... <::.´ ̄`ヽ::.._ . −  ̄ − ;;;;;;;;; 三−へwへイ;;.:;::::;:、:;゙ヾ
/〉 ::.:ニ;;.. ,/ ̄\:::..ハ''´ .::::\. 二  ̄ . ' . ... .::;/べ;:::.::'.:. ̄ヾ::;:;;;,:;
,ノ.::.:::':::.:.:..;;.;;:;::.:./.::、:/´ ̄`\:-:ー:┴- 、 . 二  ̄二 / .::;:.::::.:;:::::.;::':ヾ>ー-
:.:;:べ、___,,/ ̄`ヾ;:::.:..:;.:...::.:::;:.::/.:::.::......`ヽ::::::::.. r-、 ./ ̄::':::::;ィ;;;;;;;;:;;ツ::::::;;;;
 ̄ − ;;;;;;;;;;;;;− ;;;;;;;;;; −  ̄ − ;;;;;;;;; 三− ;;;;;;;;;∠二ヽ.二 二  ̄ あ
rュ 三−:::;;;;;;;;;;;:  ̄;;;;;;;;;;; − ;;;;  ̄ −;;;;;;; 二 お よ の
 ̄ −  ̄  ̄ −  ̄ − こ  ̄ −  ̄ 弁 良 ’
三−  ̄ ∠二ヽ. 、、∧、、/i、 に − 三−  ̄ − 二 当 か よ
::;__;; ^ . :. ミwVVリ :. ; ' : ; ~ を っ よ
:;∠´... .. ̄\;,;,;::._; 二  ̄∠二ヽ冫 ゚ -゚メ ̄: − 三−  ̄ −: ;_;_:,.;_:_;_ : た
/´.::;:..\::.:、:... <::.´ ̄`ヽ::.._ . ミ^V ̄ミr" ̄`:、;;;;;;;; 三− ;;;_;∠,´..... ̄)゙ヾ : ら
/〉 ::.:ニ;;.. ,/ ̄\:::..ハ''´ .::::\. ∪∞=}∪(⌒) ) ' . ... .::;/べ;:::.::'.:. γ゜ハ ヽ;,:;
,ノ.::.:::':::.:.:..;;.;;:;::.:./.::、:/´ ̄`\:-:ー:┴- 、 . 二  ̄二 /.::;:.::::.:;:::::.; ヘ*(V) リ>*⌒
:.:;:べ、___,,/ ̄`ヾ;:::.:..:;.:...::.:::;:.::/.:::.::......`ヽ::::::::.. r-、 / ̄;:::'::::: ;イ⌒ヽ !ヮ゚*ノリ
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"【」ト■j⊂厂\
`‐ - ' .ソ;:;:;:;:;:)
!、__*_)
∪ ∪
^
54 :
こにのお礼:2010/12/22(水) 23:30:57 ID:RPjmziY9
三−  ̄ ∠二ヽ. 、、∧、、/i、 あ − 三−  ̄ − 二
::;__;; ^ . :. ミwVVリ :. ; ' : ; ~ ’
:;∠´... .. ̄\;,;,;::._; 二  ̄∠二ヽ冫 ゚д゚メ : − 三−  ̄ −: ;_;_:,.;_:_;_キ
/´.::;:..\::.:、:... <::.´ ̄`ヽ::.._ . ミ^V ̄ミr" ̄`:、;;;;;;;; 三− ;;;_;∠,) ̄:;゙ヾャ
/〉 ::.:ニ;;.. ,/ ̄\:::..ハ''´ .::::\. ∪∞=}∪(⌒) ) ' . ... .べ;:::.γハ゜ハ ヽ;,:; ッ
,ノ.::.:::':::.:.:..;;.;;:;::.:./.::、:/´ ̄`\:-:ー:┴- 、 . 二  ̄;イ⌒ヽ / ⌒*(ノ (V) リ>*⌒
:.:;:べ、___,,/ ̄`ヾ;:::.:..:;.:...::.:::;:.::/.:::.::......`ヽ::::::::.. 【」ト■j . ̄;:::,/ リl ゚д゚ *|\
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''`‐ - ''"""''""\ヘソy//|;:;:;:ヽ、
{三三\_」
\;:;:;:;:*ソ
コケッ (シ (.j
^
三−  ̄ ∠二ヽ. −  ̄ − 三−  ̄ − 二  ̄
::;__;; ^ . 、、∧、、/i、 : ; ' : 作 せ あ
:;∠´... .. ̄\;,;,;::._; 二  ̄ ヽミwVVリ ̄ :− 三−  ̄ − っ っ あ :
/´.::;:..\::.:、:... <::.´ ̄`ヽ::.._ 冫 ゚ -゚メ. : ;;;;;;;;; 三− ;;;_; た か あ ヾ
/〉 ::.:ニ;;.. ,/ ̄\:::..ハ''´ .::::\.ミ^ヽ√了⊃ :. ' . ... .::/ の く あ :;:;;;,:;
,ノ.::.:::':::.:.:..;;.;;:;::.:./.::、:/´ ̄`\:-:ー:┴∪、=∞} 二  ̄二 / .::;: に ) >ー-
:.:;:べ、___,,/ ̄`ヾ;:::.:..:;.:...::.:::;:.::/.:::.::......`ヽ、ハ::::.. r-、 / ̄: : (;;;:;;ツ::::::;;;;
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''""''"''''''""" ) :' ""''""
;イ⌒ヽ γハ゜ハ ヽ i⌒)
【」ト■j ⌒*(ノ (V) リ>*ヘくn(⌒)
ベシャッ… ・";:'''"" ⊂厂リl ;д;*⊂√了川フつ
55 :
こにのお礼:2010/12/22(水) 23:33:37 ID:RPjmziY9
− 続く −
しまった。続くと入れるのを忘れてました。あと一回続きます。
一応、最後まで作り終えているので、明日、完結する予定です。
Go、こにぽん、Go!
>>55 乙!こにぽんと狗くんかわいいな!
(そういえば犬形態を初めて見た気がするw)
チチドリとチチメンチョウ自重wwこいつらはww
狗くんかわいい。
ところで、イヌくんって読みでいいのかな?
勝手にそう読んでるが。
>>53でこにぽんが「こ、こここ狗くん!」って
言ってるから狗(こう)だとおもわれ
コウくんか。
61 :
創る名無しに見る名無し:2010/12/23(木) 14:24:35 ID:Ar2OZRD0
なあ、なんで前スレは放置されてるんだ?
@ 埋めに使われる作品は、人目につく時間が短いから
A 埋めると、それまでの作品を見る事が出来なくなるから
B 単に書き込めないと思われている
C 創発板の風習(?)
どれ?
容量限界でDAT落ち待ち
じゃなかったかな
大型AAで埋めてしまえばいいんかな?
一番いいAAを頼む。
容量食ってるのが居残るのも問題だしね。
いつぞやの紅の鬼支援AAとか?
67 :
こにのお礼:2010/12/23(木) 21:23:25 ID:ZICxlSXt
えー、もっと遅くに投下するつもりでしたが、ちょっと都合上、早めに投下させてもらいます。
あ・ら・す・じ
仲直りしようと、お弁当を作った小日本。しかし、ここぞという時にまた転んでしまい
せっかく作ったお弁当も台無しにしてしまう。このまま仲直りできないのか?
ちなみに時間はお昼時です。
)
;イ⌒ヽ γハ゜ハ ヽ i⌒)
【」ト■j ⌒*(ノ (V) リ>*ヘくn(⌒)
ベシャッ… ・";:'''"" ⊂厂リl ;д;*⊂√了川フつ
::;__;; ^ . :. ; . ; ' : ; ~
:;∠´... .. ̄\;,;,;::._; も お ヽ...−  ̄ − 三−  ̄ ::;__;;
/´.::;:..\::.:、:... < も っ い っ  ̄ − ;;;;;;;;; 三− ;;;_;∠,´ ̄:;゙ヾ
/〉 ::.:ニ;;.. ,/ l て い :::.、∧、、/i、 ;イ⌒ヽ ' ... .::;/べ;:::.::'.:. ̄ヾ::;:;;;,:;
,ノ.::.:::':::.:.:..;;.;;:;::.:./.::、: ら ん も ー:ミwVVリ 【」ト■j  ̄二 / .::;:.::::.:;:::::.;::':ヾ>ー-
:.:;:べ、___,,/ ̄`ヾ;い じ ん .:::.:冫 ゚ ヮ゚メ:・";:'''"" r-、 / ̄,;:::':::::;ィ;;;;;;;;:;;ツ::::::;;;;
''"""'''''"""''""''''""'' ♪ ゃ''" ; ⌒ヽミ^ヽ√了つ''"""''""''''""''"''''''"" )"''"""''""
ん ( (⌒)∪==∞} γハ゜ハ ヽ i⌒)
′(ノイ、、、、ハ エッ ⌒*(ノ (V) リ>*ヘくn(⌒)
U U ?! ⊂厂リl ゚д゚ *⊂√了川フつ
俺 へ ダ
、、∧、∧、 の っ そ ’
 ̄ − 三−  ̄ −ミVVwリミ 食 日 れ ダ
 ̄ − ;;;;;;;;; 三− ;;;;; l、゚ -゚ メ彡 ど 生 頃 ド メ
− 三 ;;;;;;  ̄ − ; ⌒ヽミ^ヽ;イ⌒ヽ っ 活 の ロ っ
−  ̄ ( (⌒) ⊃【」ト■j0 て な ま
:. ; . ; / ̄ ̄: ′(ノイ、、、";:'''"" 事 め み
二ヽ...−  ̄ − /−  ̄ −::; U U シュタッ ね ん れ
. −  ̄ − /;;;;; 三− ;;;_;∠,´ ̄:;゙ヾ l な :
. 二  ̄ . /' . ... .::;/べ;:::.::'.:. ̄ヾ::;:;;;,:; っ こ ° :
:┴- 、 . 二 /  ̄二 ( .::;:.::::.:;:::::.;::':ヾ>ー- て ん :
.:::.::......`ヽ::::::::.. / γ ハ゜ハヽ:((⌒);ツ::::::;;;; の く
''"""''""''"ヽ、_,人ノ"''""⌒*(ノ (V) リ>*ヘ'n(⌒)""''"" ら
タンッ ( レ,l*゚д゚ノリ_li| _ソ い
∪ 〔_> ~∪
∪
゚ 。
二ヽ...−  ̄ − 三− ハ 、∧、∧、 ∵ ム
 ̄ − ;;;;;;;;; −  ̄ − ハ グ ミ、、、/)⌒ヽ シ ム
rュ 三−:::;;;;;;;;;;;:  ̄;;;; グ 冫wく_ト■j ャ シ
ミ√ 彡 )''"" ャ
; . ; ' : ; ⌒ヽ===/ ̄ ガ
二ヽ...−  ̄ − 三− ̄ −:( (⌒)_丿⊃ ツ ガ
. −  ̄ − ;;;;;;;;; 三 ;( ′∠,´ ̄:;゙ヾ ツ
. 二  ̄ . ' . γ ハ゜ハヽ ;:::.::'.:. ̄ヾ::;:;;;,:;
:┴- 、 . 二  ̄⌒*(ノ (V) リ>*⌒::.; : : ー-
:::.::......`ヽ::::::::.. r-、 レ,l *゚ -゚ノリ ':::::;ィ;;; : : ::::::;;;;
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""'γ∩y/∩"''""''" : : ""''""''
/:;:;/三く、 \ : :
じ'<_、__*_ゝ\l : :
∪ ∪
゚ 。 お
: 、∧、∧、 ∵ 鶏 っ
: ミ、、、 /)⌒ヽ 唐 ラ
: 冫wく_ト■j 入 ッ
ミ√ 彡 )''"" っ キ
; . ; ' : ; ⌒ヽ===/ ̄ て l
二ヽ...−  ̄ − 三 ) :( (⌒)_丿⊃ ん
. −  ̄ − ;;;;;;;;; γ゜ハ ヽ′;∠,´ ̄:;゙ヾ じ
. 二  ̄ . ' .ヘ* (V) リ>*⌒:'.:. ̄ヾ::;:;;;,:; ゃ
:┴- 、 . 二  ̄二 リ - ゚* ノリ.::::.:;:::::.;::':ヾ>ー- ん
:::.::......`ヽ::::::::.. r-、 ./y/ ヽ、:::;ィ;;;;;;;;:;;ツ::::::;;;;
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""|;:;::{三\:;:;:\''"""'''''"""''""''''"
⊂0)イ*:;:|:;;:;*;:|ストン…
::::::::
:::::::::::::::
:::::::::::::::::::::: :::::::::: ね:::::
::::::::::::::::::::::::::::::::: :::::::::狗 ぇ:::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :::: く : :::::
::::::::::::::: ア 昨:::: ん ん::::: :::ん: : :::::
:::::::::::::::::::: :: ご リ 日:::: だ ? : :::::::::::
:::::::::: あ :::: :め ガ は:::: よ :::::: ::::::::
:::::::::: 気 あ ::::: ん ト :::: ? ::::::::
:::::::::: に ° ::::: ね ’ : :::::::::::::::
:::::::::: す ま :::::: ? そ そ :::::::::::
:::::::::: る あ :::::::::::::::::::: れ の ::::::::::
:::::::::: な そ ::::::::::::: :::::と::::::::
:::::::::: う :::::::::: :::::::
:::::::::::::::::......
、∧、∧、
ミ 、、、/) い ま
冫w イ つ ’
⊂ミ√  ̄ 彡⊃ も そ
; . ; ' : ; ⌒ヽ===/ ̄ の れ
二ヽ...−  ̄ − 三−ピ ) :( (⌒)_丿⊃ 事 に
. −  ̄ − ;;;;;; ク γ゜ハ ヽ′;∠,´ ̄:;゙ヾ だ
. 二  ̄ . ' ッ .ヘ* (V) リ>*⌒:'.:. ̄ヾ::;:;;;,:; し
:┴- 、 . 二  ̄二 リ - ゚* ノリ.::::.:;:::::.;::':ヾ>ー- な
:::.::......`ヽ::::::::.. r-、 ./y/ ヽ、:::;ィ;;;;;;;;:;;ツ::::::;;;;
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""|;:;::{三\:;:;:\''"""'''''"""''""
⊂0)イ*:;:|:;;:;*;:|
っ
そ こ い ヤ っ
思 ん に ど つ ち ベ 、∧、∧、 っ ギ
っ な の う も 狗 ょ ッ ミ、、、、/) ク
て 風 事 い の く っ 冫wイ_ ッ
た に ’ う 事 ん と ミ√  ̄ 彡 )つ
; の . ; 意 っ ?: ; ⌒ヽ===/ ̄
二ヽ...−?  ̄ 味 て− ( :( (⌒)_丿⊃
. −  ̄ ? ;;;; γ ハ゜ハヽ;∠,´ ̄:;゙ヾ
. 二  ̄ . ' ⌒*(ノ (V) リ>*⌒ :'.:. ̄ヾ::;:;;;,:;
:┴- 、 . 二  ̄二 レ,l*゚д゚ノリ .::::.:;:::::.;::':ヾ>ー-
:::.::......`ヽ::::::::.. r-、 ./y/ ヽ、:::;ィ;;;;;;;;:;;ツ::::::;;;;
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""|;:;::{三\:;:;:\''"""'''''"""''""
⊂0)イ*:;:|:;;:;*;:|
、、∧、、/i、 り 食 よ
ミwVVリ ベ う ’
ち 冫 ゚ -゚メ ン も よ
ょ ; ⌒⊂ミ^ヽ√了つ ジ ん し
っ ( (⌒) ){=∞=} だ 食 !
; . ; 'と ′(ノイ、、、、ハ ! っ
二ヽ...−  ̄ − 三 ! ( U U た
. −  ̄ − ;;;;;;;;; γ ハ゜ハヽ;∠,´ ̄:;゙ヾ し
. 二  ̄ . ' ⌒*(ノ (V) リ>*⌒ :'.:. ̄ヾ::;:;;;,:;
:┴- 、 . 二  ̄二 レ,l*゚д゚ノリ .::::.:;:::::.;::':ヾ>ー-
:::.::......`ヽ::::::::.. r-、 ./y/ ヽ、:::;ィ;;;;;;;;:;;ツ::::::;;;;
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""|;:;::{三\:;:;:\''"""'''''"""''""''''"
⊂0)イ*:;:|:;;:;*;:|
_/\_
\ そ /
< り >
/ゃ く
\! >
|/
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│ │ \ \ \\
──┼──┼── ─────┐ \\
│ │ / _____ \ /
/ / /
/ / /
/ ノ __/
_/\/\/\/|/\/
\ きゃーー!? <
|/\/\/\/\/ ̄
|;:i| |:::;iii~ ノ ,,|;;::ii| |;:i| |i| |;:i| |i::;;iii|~ 卯|;;::ii| ''\|i|
':;,`:ヽ|/,'|:;:;ii|:,:;*.,:;/.:::;.:":::"''''⌒ヾゞ γ''"""''""''"' |ii;;i;('')''"↑"""''"""'''''"""''
";*'.:.:;”:;゙|:;;iii|`:;,':,*”:;:;.,:;.:;'.:.:;”:;ヾヾ)) ((,:ソミ;.:';';';::;.:". |i;;;::;iii|`:;,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:'; 食 と 調 こ 俺 へ
.:;”:`:;,' *”|:;:;ii|:,:;*.,:;/.:::;,':,*”:;:;.,:;.:;'.:ソ "''~`''"゙"'''~ノ;;ii;:iilli;ゝ"''~`''"゙"''~`' ゙い 鬼 い り 子 ん が へ
"''~`''"゙ ノノシillゝ"''~`''"゙"''~`''"゙"''~ ..,,、"'''''''''''''''" vji、iijww、ii.., っ 子 き す に く 本 っ
"'''''''''" '""'''""'""" て に れ ぎ の ら 鬼
や 持 な ち っ い 出
iijww、ii. """~" ''"""~ っ っ い ま て 朝 せ
) ふ ,..,.,.,.,、 て て 分 っ 飯 ば
,..,.,.,.,、 狗 わ ( ,..,.,.,.,、 く は た 前
す く ぁ γ ハ゜ハヽ ドッサリ・・・・ 、、∧、∧、れ ° さ
,..,.,.,.,、 ご ん,..,.:、⌒*(ノ (V) リ>*⌒ '"" ミVVwリミ ,..,.,.,.,、
''''""'"'''""" ぉ : レ,l* ゚ヮ゚ノリ >゜))⊇)≪ l、゚ヮ゚ メ彡
;;;ゝ);;));ヾ;;) い : γ∩y/∩ >゜))⊇)≪ (こ((゚< ミ^V⊂ミ r" ̄`:、
))ゝ;;;ミ,,、,,;;;ゝ;;)ゝ))ゝ /:;:;/三く、 \ ≫(こ((゚< こ((゚< ( {∞==}( (⌒) )
;;;) ;;;)ヾミゞ((;;;ゝヾ;⌒;;) iij じ'<_、__*_ゝ\l >゜))⊇)>゜))⊇)≪ ハ、、、、イ_) ソ''"""~
ヾミ;ソ(;;;ゝヾ;))ゝ;ミ;;(::;ゝ;;;)) ∪ ∪ ,..,.,.,.,、 U U
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""
:::....::::::........ . .::::::... .... ..::::::::::::::::....::::::........ . .::::::... .... ..::::::::::::::::....::::::........ . .::::::... ....:::::::::
''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''""''"""'''''"""''""''''""''"''''"""''"""'''''"""''"
 ̄ − ;;;;;;;;;;;;;− ;;;;;;;;;; −  ̄ − ;;;;;;;;; 三− ;;;;;;;;;∠二ヽ.二 二  ̄
rュ 三−:::;;;;;;;;;;;:  ̄;;;;;;;;;;; − 三 ;;;;;;  ̄ −;;;;;;; 二  ̄ −  ̄
 ̄ −  ̄  ̄ −  ̄ −  ̄ −  ̄
三−  ̄ ∠二ヽ. −  ̄ − 三−  ̄ − 二  ̄
※注意:ヤイカガシではありません※
73 :
こにのお礼:2010/12/23(木) 21:29:41 ID:ZICxlSXt
よ き !! 悪 鬼 だ だ 授 ば あ
|:: :|: .::| .:|:. l:| ろ っ う く 子 っ ’ 業 ’ 悪 っ
|::.,: :r.:| ::|:. l:| こ と ん な の た だ 料 バ い で
|: |:: |::.. ::. j:| .ぶ ネ っ い 味 ら っ だ ッ よ ’
|: |::. ::| .:|: ::| /「 よ ネ ! 噌 晩 て 授 カ う で
: .|: |::. ::l .:|: ::レ':/ ! さ そ 汁 飯 : 業 お : も
: A^^A 、 :| l :/ ま れ ° ’ : 料 め :
: !|リノ(((リ卯 | ィ も な あ 食 ° ’
: |、- _- .リlヾ| :| リ''"''''"""''"""'''''"""'""'''''"""ら''''"""''"れ''''わ'"''"''''"""''""稽""""'
ふ : Lハ∨/^ヽ i : { | は せ 古
ぅ ./{三三}|):;.'、 :. |:;,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';',,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:"ろ.:;.:',:;.,:;.:;';',: ':::;の.:;.:'
(_;;|*:;;:;:;;:| Ψノ :!:| ,,.., .,..;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';',: ':;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:".
/: ::.".:/~ ̄ | l;ハ._,,. ,,::;;.:. "''~`''"゙"''~`''"゙"''~゙"''~`''"'~`''"゙"''~゙"''~`''"゙"''~`''"゙"'`''"
ハ、__:;/ ::八 :ゝ::ヽ\_,,.,. :, ,.vVw,
大 |:: :|: .::| .:|:. l:| お え 食 こ と
丈 ど 一.|::.,: :r.:| ::|:. l:| よ 腹 ? う ん り
夫 う 時|: |:: |::.. ::. j:| ゆ 大 こ か だ あ
み な は.|: |::. ::| .:|: ::| /「 l 丈 ん け え
た る .|: |::. ::l .:|: ::レ':/ よ 夫 な 焼 ず
い か A^^A 、 :| l :/ ゆ ? に い
ね と !|リノ(((リ卯 ィ′ l ? て
°思 |、゚ -゚ .リlヾ| | リ''"''''"""''"""'''''"""'''"''''"""''"""'''''"""'''"''''"""''"""'''''"""'''"''''"""''"
っ Lハ∨/^ヽi ::{ |
た ./{三三}|):;.'、 :: |:;,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';',: '
け (_;|*:;;:;:;;:|; Ψノ :| ,,.., .,..;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;'
ど /: ::.".:/~ ̄ :l;ハ._,,. ,,::;;.:. "''~`''"゙"''~`''"゙"''~゙"''~`''"゙"''~`''"゙"''~゙"''~`''"゙"''~`''"゙"''~゙
’ ハ、__:;/ 八 :ゝ::ヽ\_,,.,. :, ,.vVw,
74 :
こにのお礼:2010/12/23(木) 21:31:34 ID:ZICxlSXt
出 |:: :|: .::| .:|:. l:| お お 探 葉 こ 貰 じ
さ 今 ふ .,: :r.:| ::|:. l:| 一 こ こ う し っ に う ゃ
な 日 ふ |:: |::.. ::. j:| 緒, し っ ’ て ぱ 運 ね あ
い は っ .|::. ::| .:|: ::| /「 に ' と ち く と ぶ ? こ
と と |: |::. ::l .:|: ::レ':/ 食 く は る 蔓 た れ
°っ |:i ::| :: :| l :/ お わ 火 め だ
お て /,A^^A、;| ィ′ウ l ’ の け
疲 お 卯ミ!|リノ))リ:| リ'' ン ぜ'"""'''''"""'''"''''"""''"""'''''"""'''"''''"""''"""'''''"""'''"''''"""''""
れ き lヾ|l .^-^ノリ:| | !
様 の .| ハ∨/^ヽ、 |:;,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';',: ':::
’ お L.ノ::[三ノ;:::.'、::| ,,.., .,..;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';
狗 味 (_;:;*>く; Ψノ;ハ._,,. ,,::;;.:. "''~`''"゙"''~`''"゙"''~゙"''~`''"゙"''~`''"゙"''~゙"''~`''"゙"''~`''"゙"''~
く 噌 |!: ::.".T~:ゝヽ\_,,.,. :, ,.vVw,
ん を ハ、___|.::::ヾ::\::\::ー、 ,;;::.. ,,:;;;.. .,:: ,;..,,.. ..
|:: :|: .::| .:|:. l:| 変 今、 ど ン
|::.,: :r.:| ::|:. l:| な 気 誰 う ?
|: |:: |::.. ::. j:| ', 狗 の か し
|: |::. ::| .:|: ::| /「 ' く せ そ た
|: |::. ::l .:|: ::レ':/ 、、∧、∧、 ん い こ の
|:i ::| :: :| l :/ ミVVwリミ か に ?
|:|: :| ::| :: ;| ィ′ l、゚ -゚ メ彡 : 居
|:|: :| ::| :: :| リ''"''''"""''"""'''''"""'''"''''":"''た'""'''"""'''"''''"""''"""'''''"""'''"''''"""''
|;} : :| :| :: | よ
|: .:| ;n ::| :: |:;,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';',: う ':".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';',: ':::
, . |: ::| ::{リ ::! :!:| ,,.., .,..;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;な .:;'':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';',: ':::;.:".:;.:':;,':,:;.,:;.:;';
;; /.::/ :::|i :.:| :l;ハ._,,. ,,::;;.:. "''~`''"゙"''~`''"゙"' ?'~゙~`''"゙"''~`''"゙"''~゙"''~`''"゙"''~`''"゙"''~゙
ノ,;ノ : ::八 :ゝ::ヽ\_,,.,. :, ,.vVw,
;:´.:: :/.::::ヾ::\::\::ー、 ,;;::.. ,,:;;;.. .,:: ,;..,,.. ..
75 :
こにのお礼:2010/12/23(木) 21:32:44 ID:ZICxlSXt
_______________ .|___________________/
| _________ .|
'''',,'' ' '' | \\\\\\\\\\ .|
| |\{ニニiニニiニニiニニi|} |
/,A^^A、<・)こ>≡ ;l^~| |il| |i| |il| | |
卯ミ!|リノ)))リ .| ;:*.] |il| |i| |il| | |
lヾ|l.^ヮ゚ノリ) .| :: l.:] |il| ) |il| | .|
'''',,'' ' '' 、、∧、、/i、'ノ ハ^∨/ヽ( |,/''',''' ' |i三|i三il γ゜ハ ヽ 三ill} , |
ミwVVリ /.::::< 三];;;ヽ.|, ),. , ヘ(V) リ>*⌒ |
冫 ゚ -゚メ くΨ:_っ〔 ̄ ̄.| ̄〕''''',,,,,' ,,.,'' リヮ^* ノリ |
─── ; ⌒ヽ ミ^ヽ√ミ ~T";:;.(___|_) ────── ∩日∩_ヽ─────|
 ̄ ̄ ̄( (⌒) )つ日⊂ ̄|____ハ ̄ ̄J  ̄ ζO  ̄ ̄ ̄ ̄ ソ{三\:;:;:\ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
′(人( Z ) ______O_O_ ⊂0)イ*:;:|:;;:;*;:| .\
<⌒⌒⌒⌒⌒> /:::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::O::l:;;:::::\ <⌒⌒⌒⌒⌒> \
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
- 完 -
76 :
こにのお礼:2010/12/23(木) 21:41:46 ID:ZICxlSXt
…という訳で、こにのお礼編、これで完結です。お付き合い下さり、アリガトウございました。
狗(こう)くんがなんかいいキャラになってきたような気がしますね。
鬼子の前では背伸びして、こにの前ではワルぶった口調になるのは犬の本能か
はたまたオトコノコだからなのか…
上の名前を「ひもと」にするか誰かがいっていた「やまと」にするか悩み中ですが、
下の名前は狗(こう)でいっています。
こにと狗くんの少しずつ成長していっている様が垣間見れたならさいわいでス。
【俺設定】オトコノコのプライド
狗くんが鬼子の所で食事の世話を受けていないのは掟とかは関係なく、「餌付けされてたまるか」という
当人のプライドによるところにあるようです。鬼子も色々と理由づけて食べさせているようですが、
交換条件みたいな形でなんだかんだと理由をつけなければいけないようです。
ちなみに狗の食生活を聞いた鬼子はその日、食欲がわかなかったとかw
それではこの辺で失礼します。
+
.|ヽ
.│|
/,A^^A、 │|
卯ミ!|リノ)))リ │/
lヾ|l .゚ -゚ノリ. ‖
ノ ハ^∨/ヽ、 ‖
/.::::< 三];;;::;:フつ
くΨ:::_;|*;:;|:: ノ ‖
~T": ::..!~~ ‖
|____ハ ‖
°
武装鬼子
ご苦労様でした♪ みんなで素敵な鬼子ワールドを創ってゆきましょう♪
メリークリスマス!!
78 :
時の番人:2010/12/24(金) 14:25:32 ID:FgcZ8/AM
今、ここ誰も使ってませんね〜!?
使ってないようなので今から
「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第五章〜【鬼子はお洒落通!?】
を投下します。
俺設定です。それと挿絵、最近手抜きです。絵は難しい・・・。
「田中さん」名前使わせてくれて有難う。パート2
79 :
時の番人:2010/12/24(金) 14:26:58 ID:FgcZ8/AM
●「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第五章〜【鬼子はお洒落通!?】
今朝方、冷たい雨が降っていた山間。水溜りが凍り、キラキラと太陽の光を反射している。
今はもう夕暮れまじか。その氷の上を夕暮れの太陽のスポットライトを浴びて、スイスイと滑っているヒワイドリ。
そんな余裕の有るヒワイドリをよそに、鬼子はバタバタしていた。
「きび婆〜きび婆〜〜〜!」
鬼子の大きな声が神社に響き渡る。
「なんじゃいさっきから。大きな声を出さんでも聞こえとるわぃ」
「この角、これで良いと思う?誤魔化せてるよねぇ〜〜」
「だからさっきから大丈夫じゃと言っとろうが」
こんなやり取りが、朝から今まで続いてるのだ。
きび婆もいいかげんにしてくれと言わんばかりに、きび爺に八当たりをしている。
「じゃぁ行ってきま〜〜〜っす!」
とすごく元気な鬼子の声。
神社の玄関の門付近で、弥次さん、喜多さんが手を振って鬼子を見送っている。
その鬼子の声をよそに、ヒワイドリは氷の上でトリプルアクセルを決め、スイスイと滑っていた。
ヒワイドリは鬼子から言われたのだ。
「今日は絶対に付いてくるな」と。
そう、今日は田中さんと言う初めてお友達になってくれた女の子と街へ遊びに行く日。
クリスマス用の街のライトアップがお目当てだ。鬼子にとってはとても大事な日なのだ。
鬼子は般若面を袂に入れ、角にはカチュウシャとヒワイドリアクセサリー・・・。
そんな出で立ちで勢い良く飛びはねながら山を駆け降りて行った。
街中に着いた鬼子は、昨日田中さんが書いてくれた地図を見ながらキョロキョロと待ち合わせ場所を探している。
その待ち合わせ場所は、金色に塗られた派手な10階建てのビル。その玄関口には大きな看板があり
人気歌手の写真が飾られている。このビルはレコードやCD,DVDなどを売っているビルらしい。
レコード、CD、DVDと言う言葉がどういう物か、きび婆から教えてもらったのだが。その前で待ち合わせなのだ。
鬼子はその場所に、20分前に着いてしまった。鬼子は街中の時計を見る。
「あぁ〜大分早く着いちゃったな。でも、遅れるよりいぃわよね」
鬼子は笑顔でそうつぶやく。
周りにいる人達は、鬼子の方を見てなにやらクスクス笑っている。
鬼子は自分が見られてる事に気付いていた。
「・・・やっぱり角が気になるのかなぁ・・・。この角、取る事が出来ないから何とか誤魔化してるんだけど、
人間の民には解ってしまうのかしら・・・」
鬼子はそう心でつぶやいた。鬼子の前を行き交う人々。楽しそうに話しながら歩いてる人もいれば、
鬼子の方を見てクスクス笑う人もいる。鬼子はモジモジしながらその場に立っていた。
鬼子は目のやり場に困り、金色のビルの大きな看板をジーーーーーっと見つめていた。
待ち合わせ時間の5分ほど前、田中さんが手を振りながらこちらにやってきた。
田中さんの目に飛び込んできた鬼子の表情は・・・泣いていた。
「お、鬼子ちゃん・・どうしたの?」
「だあああ〜〜田中さ〜〜ん・・。さ、寂しかった・・・。皆がジロジロ見てるし、とても緊張して・・・」
「えぇ?皆がジロジロ見てる?」
田中さんは周りを見渡したが誰もジロジロ見ていない。
「多分、着物が珍しいのよ。気にしない方がいいわよ鬼子ちゃん」
田中さんはそう言ってくれた。その優しい言葉を聞いて、鬼子の表情が徐々に明るくなる。
「行こ!」
と田中さんは言い、2人で街中を歩いて行った。
80 :
時の番人:2010/12/24(金) 14:28:02 ID:FgcZ8/AM
2人は街中を歩きながら、わきあいあいと話をしている。ふたりともとても楽しそうだ。
こっちの店に入っては、2人でワイワイ。あっちの店に入っては2人でワイワイ。
「あっそうだ。聞こう聞こうと思ってたんだけど」
田中さんが思い出したかのように言った。
「な〜に?」
鬼子はとても楽しい気分になっていた為、軽くそう返事をする。
「鬼子ちゃんはいつも頭に角、着けてるの?昨日も着けてたし」と。
鬼子は【ドキッ】とした。
「つ・・角だなんて・・・。違いますよ〜。アクセサリー付きとんがり付きカチュウシャですよ〜。ホホホ〜・・・」
鬼子は口に手をあて、苦し紛れにそう言った。
「そう。変わったカチュウシャね。あっそれから」
と田中さんが言うのと同時に、鬼子は身構えた。
また、何か疑いの言葉をかけられると思ったのだろう。
「な・・何ですか?」
鬼子はビクビクしながら聞いた。
「鬼子ちゃん。私に敬語なんて使わないでね。お友達なんだから」
その言葉を聞いた鬼子の表情がみるみる笑顔へと変わっていく。そして感激し【ダァー】っと涙を流している。
「わ、解った。優しいね、田中さんは」
「そのサンもいらないわ。私は鬼子ちゃんって下の名前で呼んでるから鬼子ちゃんもそうしてくれる?」
田中さんのその提案に、鬼子はとても驚き、感激してしまった。
鬼子は恐る恐る呼んでみた。
「・・・みことチャン・・・」
「はぃ!」
っととても澄んだ笑顔を田中さんは見せてくれた。
鬼子はその田中さんのやさしい気遣いに・・・泣いていた・・・。
田中さんは鬼子が良く泣く子だな〜っと思ってるに違いない。
「さぁ、点灯するぞ〜!」
誰かが何処かで叫んだ。
2人は、顔を上げ街中を見つめる。
すると2人の目の前に、小さな光が街を包むように沢山光輝きだした。
そして、クリスマスの音楽が何処からともなく流れて来た。
「おおぉ〜」
と街中がどよめく。
二人の目には、共有できる綺麗な光が目の前に広がっていた。
鬼子は両手を胸の前で握り、ドキドキしている。
「わぁ〜・・・綺麗。とても綺麗」
鬼子は何もかも全て忘れてその光景を見ていた。
「綺麗ね〜。鬼子ちゃんほら、街のずっと向こうまで続いてるわ」
みことが指を刺しながらそう言った。
その光は、神社近くの街まで続いていた。とても長くてとても綺麗な光が。
そして、街全体を覆う光は大きな大きなクリスマスツリーの様にも見える。
「うっわぁ〜、ほんと綺麗。闇世ではこんな事絶対ないもん」
思わず鬼子は口走ってしまった。
みことは、首をかしげながら
「闇世ってな〜にぃ?」
と、もちろん鬼子に聞く。
鬼子は我に返り、【バッ】っと口を塞いだ。
「え・・えぇ?闇世って言ってないよ・・。何かの聞き違いよ〜・・・」
「そ、そう?何かそう聞こえちゃって」
みことは首をかしげている。
「ホ、ホホホ〜。それよりあっち、行ってみよ!」
鬼子は慌てて話を変えた。
81 :
時の番人:2010/12/24(金) 14:29:04 ID:FgcZ8/AM
2人は服を売っているお店に入って行った。鬼子はみことに言う。
「わ、私あまりお金持ってないからどうしよう・・・」
するとみことは鬼子に小声で言った。
「買わなくていいのよ。着るだけ着て、楽しんじゃえば!」
みことはウインクしながらそう言った。
鬼子の目が輝く。それもそのはず、闇世で売っている服と言えば、着物がほとんど。
それ以外は袴や甲冑。武器、防具。またそれに付随する物ばかり。
鬼子は、もちろん着物は大好きだ。しかし目に入ってくる服が綺麗で可愛くて・・・。
2人は、店の中に有る洋服をキャッキャキャッキャ言いながらグルグル回り、見て回った。
「キャー、可愛い服ばかり。こんなの鬼子ちゃん似合うんじゃない?」
みことは、手に取った洋服を鬼子に見せた。
その洋服は、上は白色で少し短いジャケット風の服。首元にはファーが付いている。
下はピンク色でフリルの付いた、丈の短いワンピースだ。
「わっああ〜、それとても可愛いね」
鬼子が目を輝かせながら近寄って来た。
「鬼子ちゃん、着てみなよ!」
みことは鬼子に服をあてがいながらそう言った。
鬼子はこんな事初めてだ。
「え・・わ、私が?いいのかなぁ」
「いい、いい。皆着てるし」
みことは可愛らしく小声でそう言った。
「・・・じゃぁ・・着てみよっかな・・・」
鬼子も徐々にその気になってきたみたいだ。
「あっ、でも鬼子ちゃん。着物一人で着る事できるの?私着付けとか出来ないよ」
みことは、自分から言い出した事だが、少し心配になっていた。
鬼子は笑顔で答える。
「うん。生まれてから毎日着物だからもう馴れてるよ!」
それから2人は、色んな服を着ては、お互いに褒め合っていた。
時期的にクリスマスシーズンなので、クリスマス衣装もある。
その衣装を交互に着て、まるで小さな子供の用にはしゃいでいた。
http://loda.jp/hinomotooniko2/?id=430 ●第五章、一コマ目挿絵
82 :
時の番人:2010/12/24(金) 14:30:05 ID:FgcZ8/AM
はしゃぎすぎて少し疲れた二人は、近くのお洒落なケーキ屋さんに入っていた。
みことが舌を【ペロン】と出しながら言う。
「ここのケーキ、とっても美味しいのよ〜」
「えっ、ほんと?ほんと?どんなケーキが美味しいの?」
鬼子は早口でみことに聞いている。
「鬼子ちゃん、このメニューみて決めたらいいわ」
と、ケーキが沢山載っているメニューを見せてくれた。
「わっあぁ〜すご〜いぃ。美味しそうなケーキが沢山載ってるね〜」
鬼子の目はキラキラしている。そして・・・ヨダレが少し・・・。
「どれ?みことチャンはどれが一番好き?」
鬼子は、みことに聞きながら目を回している。メニューの端から端までグルグル見ていたのだろう。
「私はね〜」
と、みことは真ん中あたりのケーキを指差した。お気に入りのケーキがあるのだ。
「じゃぁ私もそれにする。みことチャンと同じケーキで」
鬼子は、あまりのケーキの多さに自分で決められなかったのだ。
注文してから少し時間が経つと、美味しそうなケーキと暖かい紅茶が2人の前に出てきた。
「これ・・・もう食べていいんだよね?いいんだよね??」
鬼子はヨダレを流しながら、みことに念を押し聞いていた。
みことは鬼子の表情を見て、苦笑いしながら言った。
「いいわよ、食べて。鬼子ちゃんこのケーキ本当に美味しいよ」
その声を聞いた鬼子は、フォークを持ち、ケーキの真ん中に【グサッ】と刺した。
「え?」
みことのその声と同時に、鬼子のケーキがそのままの形で口の中に・・・。【ガブゥ】
【モグモグモグ・・・】と頬を目一杯膨らませながらケーキを食べてしまった。
みことは、「・・・・・・・・・・」
その光景を見ながら声が出ない。鬼子の可愛い顔に似合わずの食べっぷりに驚いてるのだ。
【ゴックン】鬼子は一口でケーキを食べきってしまった。
「あぁ〜本当〜。本当に美味しかったわ〜」
鬼子は、みことの表情とは正反対の満面の笑顔である。
「ハハ・・・ハハハハ・・・。鬼子ちゃん。そうとうお腹が空いてたのかな・・」
と、みことはつぶやく様に言った。
とても楽しく遊んだ二人は、待ち合わせした金色のビルの前にいる。
そろそろお別れの時間。しかし、2人ともすごくいい笑顔だ。
「今日は本当に有難う。また遊ぼうね!みことチャン」
鬼子は元気良くそう言った。
「うん。必ずね!鬼子ちゃん。それと・・・鶏君もね」
みことはそう言って、大きく手を振りながら笑顔で帰って行った。
鬼子は・・・大きく手を振りながら、目が白くなっている・・・・・。
83 :
時の番人:2010/12/24(金) 14:31:19 ID:FgcZ8/AM
暗く、寂しくなった山間を、鬼子は駆け抜けている。手には薙刀。その先にヒワイドリが突き刺さっていた。
ヒワイドリは白目を向き、口から泡を吹いている。鬼子にそうとうキツク怒られたのだろう。
「ただいま〜!」
鬼子は大きな声で言った。縁側近くには車が止まっている。
「あっ、鬼子ちゃん。狐火様が呼んでるよ」
舞子はそう鬼子に言った。
「そう!?ありがと、舞子さん」
「今日はとても楽しかったみたいね!」
舞子は鬼子の笑顔を見てそう思ったのだ。
「そ、そうなんですよ〜。私ね・・・」
と鬼子は舞子に話しかけていて、狐火様の所に行こうとしなかった。
と言うより、舞子の言葉を忘れているようだ。
舞子は鬼子の話を聞きながら、鬼子の背中に手をやり、狐火様が居る方へ押していった。
「それでね、それでね」
鬼子は話が止まらない。それくらいとても楽しかったのだろう。
舞子はやっとの思いで、鬼子を狐火様の所に連れて行った。
部屋に入ると、きび爺、きび婆の前に男の人が一人座っている。縁側近くに止まっていた車の持ち主だ。
鬼子はその男性に気付き、角を手で軽く隠しながら、アクセサリーを付け、チョコンと頭を下げた。
「やっと帰って来たか。どうじゃ?楽しかったかぃ?」
きび爺は鬼子に優しく聞いた。
鬼子の顔が笑顔に戻る。
「うん。とても楽しかったよ。ありがときび爺、きび婆。あのね」
鬼子は話を続けようとした。するときび爺は、
「あぁ、その話しは後で聞くよ。それよりここへ座るんじゃ」
と少しそっけない感じ。
「は・・はぃ」
鬼子は下唇を出しながらその場に座った。
「君が、鬼子ちゃんだね!」
見知らぬその男性が言う。
「は・・はぃ。そうです・・・」
鬼子はきび爺の方に目をやりながらそう返事した。鬼子は「はぃ」と返事してもいいものか、
きび爺に確認したかったのだ。きび爺は軽くうなづいている。
その男性が話しだした。
「私は、この辺りを巡回している刑事で、あっ刑事ってのはね、悪い人を
捕まえて、街の安全、市民の安全を守る人の事だよ。その私がここへ来たのは・・・」
その刑事の人は、言葉を止めて頭をかきながら何故か苦笑いしている。
それもそのはずで、鬼子がきび婆の後ろに隠れて【何か悪い事したのかな・・・】とドキドキしていたからだ。
「あぁ、ごめんごめん。この話から言うべきだったね」
「私は光の世、闇世の事は知ってるよ。人間の民、力を持つ民の事も。狐火様から聞いてるからね」
その刑事はそう言った。
「え・・・。そ・・・そうだったんですか・・・。ビックリしちゃった・・・」
「うん。それでね鬼子ちゃん。鬼子ちゃんが昨日散らした輩について狐火様から呼ばれて、ここへ来たんだよ」
「え・・・きび爺が?」
鬼子はきび爺の方に目をやった。
「そうじゃ。昔から刑事さんの中には、ワシらの事を知っている者がいる。知っていると言うか、
色々あって、こちらから教えたんじゃがな」
きび爺は腕を組みながらそう言った。
「昔からちょくちょく行方不明者が出ていてね、こうやってお互いに情報交換をしてるんだよ」
その刑事は困った顔をしている。
84 :
時の番人:2010/12/24(金) 14:32:32 ID:FgcZ8/AM
「それで・・・、昨日鬼子ちゃんが散らした子の事について聞いてたんだ」
その刑事は、持っていた鞄の中から、鬼子が持ち帰った赤い小さなお守りを出した。
「あっそれは・・・」
鬼子は少し焦りながらそう言った。
「ワシが渡したんじゃ」
きび婆が鬼子の肩に手を沿えながら言った。
「鬼子ちゃんが帰って来てから中を空けようと思って、これはそのままにしてるよ。
先に鬼子ちゃんが散らした時の状況を聞かせてくれるかな?」
その刑事は優しく鬼子に言った。
「は・・ハィ」
鬼子はその時の状況を、言葉を詰まらせながら伝えた。悲しさを思い出しているのだろう。
「そっか・・。そういう事があったのか。それに、その子の心はそんな事を叫んでいたのか・・・」
「辛かったね、鬼子ちゃん」
その刑事は悲しそうな顔をしていた。
「じゃぁこのお守りの中を空けてみるね」
刑事は手に白い手袋を着ける。
中から出てきた物は、小さな小さな狐の形をした置物。それとクシャクシャに丸められた紙が入っていた。
この小さな狐の置物は、元々お守りの中に入れられていた物だろう。
もう一つ、小さく丸められた紙をそっと広げてみた。広げてみると20cm四方になった。
その紙の中に小さな文字が沢山書かれていた。文章の出だしの言葉は・・・
「ごめんね、お母さん」だった。
その刑事はそこに書かれている文章を一通り頭の中で読んだ。
「・・・話せる内容だから読んでみるね」
刑事は、その紙を少しの間見つめていた。そして・・・
「ごめんね、お母さん。ボクは弱虫で泣き虫でいつも皆からいじめられてて。そんなボクを見て、お母さんは
いつも元気付けてくれたね。お母さんの言うとおり、強くなろうと思ったんだけど、無理だったんだ。でも
お母さんはいつも私のせいだ、私のせいだと自分を責めてたね。それは違うよ。ボクが悪いんだから。
ボクが弱いんだから。いつも夫婦げんかしてるね。ボクが原因で。ごめんね。お父さん、お母さん。
ボクがお父さんからたたかれるのは、ボクが悪い事をしているからだと思うんだ。だからお母さん、
お父さんとケンカしないでね。別れるってボク知ってるよ。でもボクはお父さんもお母さんも大好きなんだ。
とっても大好きなんだ。だから別れないでほしい。別れてほしく無い」
「鬼子ちゃんの話しとまとめて解釈すると、彼は・・・友達から虐められてて、
父親から虐待を受けてて、そして離婚をむかえる・・・。そんな原因を作ったのは全て自分だと・・・
深く深く思っていたのかもしれない。そして・・・心の光を何処かに落としてしまったんだね」
と刑事はやり切れない表情を浮かべていた。
「その時に、悪しき輩に捕り付かれてしまったんじゃろう」
きび爺は目を閉じ、深く溜め息をつきながらそう言った。
刑事がお守りを見つめながら言う。
「名前が何処にも書いてないから、特定するのは非常に難しい。
親御さんの心配は・・永遠に続くんだろう。そして、この子も・・・親元には帰れないかもしれない」
「鬼子ちゃん。このお守り大事に持っててくれて有難う」
そう言って、その刑事は帰って行った。
85 :
時の番人:2010/12/24(金) 14:33:48 ID:FgcZ8/AM
鬼子は暗くなった縁側に一人腰掛けていた。横にヒワイドリがいるが。
「おぉ、こんな寒い中、よく縁側に座る事が出来るなぁ」
喜多さんが何処からともなくそう声をかけてきた。
「若いのはチンチン代謝がえぇから寒くないのかのう。フフオッフォッフォ」
鬼子は言葉が出ない。と言うか、反応出来ない内容だ・・・。
「それを言うなら新陳代謝だろ。エロジジィ」
と、ヒワイドリが喜多さんを突きながら言った。
「エロジジィとは何じゃ、エロジジィとは。これでもまだお前には負けぬ速さで動けるぞ!」
喜多さんとヒワイドリは2人でクネクネと、体が動く早さを競っている。
鬼子はその姿を見て【プッ】っと噴き出した。
「そう言えば、今日、お友達と遊びにいってたんじゃろ?どうじゃった?」
喜多さんは鬼子に笑顔で聞いた。落ち込んでいるのが解ってたのだ。
「あっそうそう聞いてよ、喜多さん・・・」
と、とても長い話が始まった。
ヒワイドリは少し離れた所で暖かそうなお茶を一人飲んでいる。
長い鬼子の話しに、喜多さんは縁側でカチンコチンに固まっていた。
喜多さんは、話しかけなければ良かった・・・と今さらながら後悔している。
「それでね、それでね。喜多さん聞いてる?」
投下おわり。
「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第六章〜【小日本(こにぽん)】に続く。
86 :
本スレ607:2010/12/24(金) 14:57:34 ID:Pkb2wROB
なんか、アニメ映画においてありそうなネタを考えてみたので、
モヤモヤした状態になっている頭の中を整理するため、ここに吐き出させて下さい。
台詞とか細かく考えていないので、かなりヘンテコになりそうですが、
目を瞑って頂けると幸いです。ではまずこれにしか出ないキャラ設定から…。
・金秋社長:人材派遣会社の社長にして、金秋寺の住職。
引きこもり解消支援の事業を行い、成功している。
・柚子女将:鬼子に助けられてから、下宿として部屋を貸す若女将。
・???:鬼子と姿形を同じくする、鬼娘。正体は不明。
・従鬼:全てにおいて、その主の言葉のみを優先してしまう心の鬼。
他は良く出る面々のイメージで…。お目汚し、失礼致します。
87 :
本スレ607:2010/12/24(金) 15:09:54 ID:Pkb2wROB
1:鬼の凶暴化
ある晴れた日…轟音と共に、林から土煙が上がる。そこで戦っているのは、
赤い着物に身を包んだ日本鬼子であった。対峙するは鋭い爪を持った、熊の様な鬼。
鬼子「…っつ!こんな心の鬼、見た事が無い…それになんで本体となる人も居ないの?」
薙刀を気丈に構えながらも、深く傷ついたのかその腕からは血が滴り落ちている。
謎の鬼「グギャァー!!!」
雄たけびを上げると共に、更に大きくその腕を振り下ろしてきた鬼を、
どうにか避けて両腕で薙刀を握り直す。狙うはその眉間、飛び上がり打ち下ろす鬼子は、
傷ついたとはいえ、巨大な鬼が身を守る構えを見せるより幾分か早く行動出来ていた。
鬼子「潔く!萌え散りなさい!」
薙刀が深く眉間を突き刺すと、そこから花びらが噴出し、いつもと同様に虚空へと消えていく。
だが、鬼子自身は感じた違和感を否定できず、その様をいつも以上に強く見つめていた。
鬼子「なんでこんな強力な鬼に今まで気づかなかったのかしら?」
88 :
本スレ607:2010/12/24(金) 15:30:08 ID:Pkb2wROB
柚子「はい。できましたよ。本当に病院行かなくて大丈夫?」
鬼子「有難うございます。私、これでも一応鬼ですから。人の病院にはちょっと…」
いつもお世話になっている旅館に戻り、女将の手当を受けた鬼子は恥ずかしそうに顔を赤らめた。
ガシャーン!!「キャアー!!」風呂場の方から大きな音や悲鳴が聞こえてくる。
小日本「ネネさま〜!またヒワイドリ達が…」
鬼子「しょうがないわね…ちょっと待ってて。すぐ行くから」
柚子「体に響くでしょうから、無茶はしないで下さいね」
温泉へヒワイドリ達が侵入するのはいつもの光景である。
人間の三大欲求の一つである彼らに対しては、どれだけ祓おうともまたやってくる。
それは彼らが人の欲望を体現するだけではなく、時には個々人の興味を元にした縁結びや、
子孫繁栄などの役割さえ持っている神々の一部でもあるからだ。
しかし場や時を弁えないならば、出て行って貰う他は無い。
ヒワイドリ「鬼子!今日こそその胸を揉ませて貰うぞ!」
鬼子「煩い!今日は機嫌が悪いのよ…とっとと萌え散りなさい!!」
女性客を避難させつつ、露天風呂へと追いやると、強打者の如く薙刀で一気に打ち上げた。
ヒワイドリ「クッ…また来てやるからなぁ!!」
鬼子「まったく…あんたは下世話な合同お見合いの場にでも行ってりゃ良いのよ」
激戦を終えた疲れに、煩わしい相手をして気が滅入った鬼子は、大きなため息をついた。
89 :
本スレ607:2010/12/24(金) 15:40:58 ID:Pkb2wROB
人の離れた女湯では、ヤイカガシが客の下着を漁ろうと手を伸ばしていた。
鬼子は慣れた手付きで薙刀の石突で頭を強く殴る。「グゲッ」っと泣いたヤイカガシは、
半泣きになりながら浴室を出る鬼子について行った…。
小日本「ネネ様早く!早く!ご飯を食べようよ〜!」
食堂で呼ぶ小日本を見て、鬼子の顔にようやく笑顔が戻った。
一方その頃、ある山の地下において…。
…厚いガラスの奥、入り口以外何も無い無機質な部屋で、二人の少女が格闘している。
その手には少女には似合いそうも無い、文字の刻まれた不気味な鎌。
???「どれが残りそうだ?」
研究員「お疲れ様です。恐らく12号かと。体力・霊力共に他を大きく上回っています」
???「うむ。こちらも順調だ。心の鬼のコピーは既に1000体を越え、量産の準備も整った。
あとは邪魔な他の心の鬼を消せる、こいつの完成を待つだけだ」
―二人が話す間に、少女達の戦いには決着が着いていた。その顔はどちらも同じ。
違うのは冷たく光る首輪についたナンバーだけ。その瞳には感情の色すら見えない。
???「オリジナルの捕獲作戦はどうだ?後から鬼を消されてはかなわん」
研究員「そちらも順調です。先日放った改造体に対し、かなりの苦戦をしているデータが届きました。
明日にでもオリジナルを上回る心の鬼が出来上がります」
男は聞き終えるのとほぼ同時に、エレベーターで地上へと戻っていった。
90 :
本スレ607:2010/12/24(金) 15:59:00 ID:Pkb2wROB
しまった…どうせ本スレで既にネタバレしてるんだし「???」なんて入れなきゃよかった。
朝の支度を終えた鬼子は、窓からカーテンに身を隠しつつ通勤へ向かう人の群れを見ていた。
鬼子「ねぇ、柚子さん…人って不思議ですよね。この会社という場所へ向かう人々は、
みんなその目的が同じで息が詰まったりはしないのかしら?」
柚子「そうねぇ…中には自分の目標を持って、一人で頑張ろうって人もいるだろうけど、
みんなに合わせるだけで日々の生活を維持出来るなら、その方が楽なのかもね」
鬼子「楽…なのかぁ」
柚子「そうよ。目標を明確に持つのって大変なのよ。叶わないとなれば、心が折れそうにもなる。
もし誰かがそれを用意してくれるなら、甘えちゃう人は多いと思うわ。
それに大きな事をするには、同じ目的の人が沢山居ないと無理だから…持ちつ持たれつね」
鬼子「そっかぁ…でも、私みたいに人から受け入れて貰えない人はどうするの?」
柚子「あら?私は鬼子ちゃんを受け入れてるつもりよ?でも…どうしても人との交流が苦手な人は、
自分の目標が見つかったり、どうにか人と話せるまで閉じ篭っていたりするそうね。
…さ!お風呂の準備をするわね。もう他のお客様はみんな出発したから」
鬼子は、どうにも腑に落ちてはいなかった。今他に誰もいない時間に入るのは、
以前角が衣装ではなく本物だと、他のお客にバレて大騒動になったからだ。
柚子さんと入るのは、それはそれで楽しい。でもどうしようも無く受け入れられなかった時、
変わるのは自分側でしかやりようが無いのか、その点の疑問を解決する何かは未だ見つからないのだ…。
鬼子「…この角、取れないのよね」
以前に迫害された時、折ろうとしても折れず、悔しさと寂しさに泣いた事を不意に思い出してしまった。
91 :
本スレ607:2010/12/24(金) 16:16:18 ID:Pkb2wROB
鬱々と考えている中で、不意に強い鬼の気配を感じ、辺りを見渡した。
鬼子「どこ??それに…この気配は昨日の奴とすごく似ている…」
窓から身を乗り出してみると、山で樹が突然倒れていく。
薙刀を握り締めた鬼子は、自分が生まれた時から目的とする、
『人を惑わし、傷つける心の鬼を祓うため』に跳躍した。
柚子「…鬼子ちゃん、用意できたわよ〜。??あら出かけたのかしら?」
現場に到着した鬼子は、目を見開いていた。そこに立っているのは昨日とほぼ同じ心の鬼。
やはりその元となる心を宿した人の姿は見えない。違う点は更に動きが俊敏になっている点だ。
鬼子「なんでこんな突然これほど強力な鬼が何度も現れるの?それにまた誰もいない…」
考える暇も、しゃべる暇も与えてくれない猛攻を避けながら、反撃の機会をさぐる。
だが不意に後で扉の開くような音が聞こえて、そこを見てしまった瞬間、鬼の一撃が身を捉えた。
鬼子「痛ッ…あ、あなたは!」
一撃に身をもだえる鬼子であったが、それ以上に物音の正体に驚いていた。
薄れゆく意識の中「もういい。止めろ」と話す男の声を聞き、鬼の動きが止まる。
体が動かない鬼子を、心の鬼は軽々と持ち上げて扉の奥へと消えていった。
92 :
本スレ607:2010/12/24(金) 16:20:49 ID:Pkb2wROB
前半部分は以上です。残りは夜中か明日に投下予定…。
皆さんのSSは上手いなぁ。色々参考にさせて下さいませ。
失礼致します。
93 :
本スレ607:2010/12/25(土) 00:40:19 ID:MoMxnzH0
【ID変わりつつ続き書きます。イメージは浮かんだけど、流れが浮かばない…。】
鬼子はその日、遅くに旅館へと戻った。そこには待ちに待っていたチチメンチョウが。
チチメン「やい!遅いではないか!鬼子よ、今日こそはこの豊胸吸引カップを身に…」
全ての言葉を言い終わる前に、鬼子の武器がチチメンチョウに刺さる。だが、萌え散りまではしない。
チチメン「い、痛いではないか!突然何をする!そりゃあ私のセクハ…」
怪訝そうにしていた鬼子は、またもや鳥の言葉が紡がれるのを待たずに、
今度は武器を手にチチメンチョウの全身の羽を、盛大に毟り始めた。
チチメン「やぁ…止めて下さい。鬼子さん…鬼子様…鬼子女王!」
何を言おうと止まらない。普段ならば低俗といえ神の一人と見逃されており、
付け上がっていたチチメンチョウだが、その肌はまさに『鳥肌』となり恐怖に震える。
全てを毟り終えた鬼子は「こんな羞恥プレイ…言葉攻めが足りない!」と喚く鳥を無視し、
足を握り逆さ吊りで運ぶと、旅館のオーブンへ放り込んで焼いてしまった。
哀れ丸焼きとなったチチメンチョウは…まぁ巨乳への強い思いが誰かの心にあれば、
いつかは復活するのだが、一度この世界から消え去りご馳走となった。
【というわけで、皆様メリークリスマス!【】内は無視でストーリーはまだ続きます。】
94 :
本スレ607:2010/12/25(土) 00:54:42 ID:MoMxnzH0
夜が明けて、食堂へと向かった鬼子は、昨晩と同じく表情も無く言葉も少ない。
「頂きます」と「ご馳走様」以外一言も話さない鬼子を、心配そうに小日本が覗き込む。
小日本「ネネさま?どうしたの?元気ないの?お腹でも痛い?」
普段なら何か言葉を返す鬼子だが、一言だけ「何も無い」と返すだけだった。
女将の柚子も心配そうである。昨日突然消えたと思えば、抜け殻の様になって帰ってきた。
鬼子はそんな周りの心配を他所に、食器を片付けると出かける準備をした。
柚子「どこへ行くの?」
鬼子「心の鬼を、祓いに行きます。私の目的はそれだけだから」
見送るヤイカガシは茶碗を嘗め回しながらふと首をかしげた。
ヤイカガシ「…?あいつの武器って鎌だったっけ?」
95 :
本スレ607:2010/12/25(土) 01:11:46 ID:MoMxnzH0
その日も鬼子はすぐに帰らない。帰る頃には着物が目に見えて汚れ、
履物は磨り減っている。空を飛んでいたチチチドリによれば、
普段なら出かけない三つ先の町まで、心の鬼を祓いに出かけていたという。
小日本「ネネさま…大丈夫?ねぇ、絵本を読んでくれない?眠れないのぉ」
眠い目をこすり、ずっと帰りを待っていた小日本に対しても、
朝と変わらず鬼子の視線は澱み、表情は冷たい。
鬼子「私の役目は心の鬼を祓う事。自分で読んで下さい」
小日本「どうしちゃったの?いつもみたいに笑ってよ!いつもみたいに読んでよ!」
半べそになりながら駄々をこねる小日本にも、相変わらず無表情なままである。
鬼子「笑う必要なんてどこにあるの?心の鬼を祓う事、それが私のやるべき事でしょう?」
小日本「違うもん!ネネさまはいつも『皆が笑顔になれる様に』って言ってたでしょ!
心の鬼で皆が困って、泣いたり怒ったりしない様に頑張るって言ってたでしょ?
そのネネさまが一番笑えてないなんて変だよ!そんなネネさまなんて…もう嫌いよ!」
怒った小日本は、絵本を鬼子に投げつけて涙を振りまきながら寝床へと走って行った。
96 :
本スレ607:2010/12/25(土) 01:28:29 ID:MoMxnzH0
司会者「本日のゲストは金秋社長です!今回は1000人にも及ぶ引き篭もり状態の解決を、
人材コンサルティングと寺の説法を合わせた新たな手法で成功させたとの事ですが、
一体どの様な方法をもってすれば、この社会問題解決へ結びつける事が出来たのでしょうか?」
金秋「なに、簡単な事ですよ。若者というのは目標が無い事、協調する事が出来ない事で、
社会との接点を断ってしまい、閉じこもりがちになってしまうのです。
それをしっかりと準備してやれば、誰でも自ずと社会へと出る事が出来ます」
司会者「つまりそれは更生の段階での受け皿として、派遣先の斡旋を行うと共に、
説法における協調性の成長によって、社会復帰を迅速に促しているという事ですね?」
金秋「その通りです。今研修中の1000人についても、既に相手の言葉をしっかりと聞き取り、
設定課題を目標として、一直線に行える力を既に身に付けつつあり…」
旅館では、珍しく食堂のテレビがご飯時についていた。泣き腫らして赤い目の小日本と、
食卓を包む重い沈黙に耐え切れなくなり『食事中はテレビを見ない事』というルールを破ったのだ。
鬼子はまた食事が終わるとすぐに出かける準備をしている。その時柚子は気づいた。
三日前にあれだけ大きく傷ついた腕が、何の後も残らず治っている。
何かがおかしい…一同は鬼子の後を尾行する事を決め、頬を膨らす小日本も連れていった。
97 :
本スレ607:2010/12/25(土) 02:06:41 ID:MoMxnzH0
一方その頃…鬼子はあの無機質な部屋に居た。両手足を鎖で壁に縛られ、
鬼子を一撃で倒れさせた鬼に監視されている。そして彼に指示を出した金秋にも…。
金秋「気分はどうだ?もし協力する気になったと言うなら、外してやっても良いが」
鬼子「ふざけないでよね!あなたは何がやりたいの?どうしてここに鬼が平然と残っているのよ!」
金秋「簡単な事だ。そいつは私の操る式神でもあるからだよ。もっとも、特別製だがね」
鬼子「?!式神?でもどうみてもこれは『心の鬼』よ。人の感情の残渣も感じる…」
にやりと笑った金秋は、懐から一枚の呪符を取り出した。そこには赤い文字で何かが書いてある。
金秋「簡単な方法だよ。心の鬼から特に恨まれている、君の血を餌に使って祓われた心の鬼の思念を、
この呪符へと呼び寄せたのさ。式神は術者に忠実に従う…心の鬼は人の行動すら操る…。
組み合わせる事で人間自体を、自在に操る事が可能になったのだ!!」
高笑いする金秋がスイッチを押すと、部屋の奥から無機質な目をした人々が大勢現れた。
恐らくその誰もが、人造の心の鬼を植え付けられているのだろう。表情が全く無い。
鬼子「外道が…!けど、私はおまえに血を与えた覚えなんてないわよ?」
金秋「君もみただろう?同じ姿をした『鬼娘』を!彼女達から分けて頂いたのだよ。
『クローン技術』と言っても、何も解らないだろうけどね。
その大きな奴には骨も肉も用いている…まぁどれも君には霊力が及ばぬ失敗作ばかりだが」
鬼子「何言ってるか解んないけど、一つだけ解る事があるわ。
あなたに憑いた『支配欲の鬼』を祓わないといけないって事!」
鬼子「来い!!鬼切!!」そう叫ぶと部屋の片隅に置かれた薙刀が、
引き寄せられる様に鬼子の元へと動いた…が、巨大な鬼に寸前の所で止められてしまう。
金秋「まぁ、そう吼えずに気が変わったら声をかけてくれ。
心の鬼を察知できる力は、どうしても計画のためには必要なんだよ」
歯軋りする鬼子を尻目に、金秋は平然と立ち去って行った。
98 :
本スレ607:2010/12/25(土) 02:32:42 ID:MoMxnzH0
鬼子(偽)の後をつけていた一同は、ある山の斜面に来ていた。
途中振り向いた鬼子に姿を見られ、ヒワイドリが危うくフライドチキンにされかけたりしつつも…。
ヤイカガシ「確かこっちの方へ来てたでゲスが…」
チチチドリ「おい!ここに通気口みたいなのがあるぜ!」
ヒワイドリ「じゃあ…この中に鬼子が降りていったとか?」
チチチドリ「まぁ、何にせよ入ってみないと解らないだろ」
通気口の網を外すと、ヤイカガシが一番乗りとばかりに滑り降りた。
後続の面々は、そのヤイカガシのヌメヌメを潤滑剤にして一気に下っていく。
途中小日本が鼻を強くつまんでいたのは、いつもながらの光景である。
鬼子(偽)「ご主人様、次の指示を下さい。近辺で見当たる心の鬼は、ほぼ全て祓い終えました」
エレベーターで降りた鬼子(偽)は、金秋に指示を仰いでいた。心の鬼を察知する力を持たないクローンは、
自身すらその鬼に囚われている事など気づくはずも無く、迷う事無く金秋を主人と信じる。
その部屋に向けて長い落下の後、ヤイカガシが落ちてきた。それはまさに指示を待って、
整然と人々が並ぶ鬼子の隣の部屋。金秋達の目の前であった。
ヤイカガシ「痛たたた…みんな酷いでゲス。自分を座布団代わりにするなんて…」
鬼子「みんな!!どうしてここへ?」
チチチドリ「え?なんで鬼子が二人?
そういえばこっちの変な鬼子はいつもより自分好みの胸だった様な…」
ヒワイドリ「何馬鹿な事言ってるんだ?あの美乳こそ我が至宝、我の鬼子!今その乳揉んでやる!」
繋がれて抵抗できない鬼子に、欲望を隠さないヒワイドリが走りより、小日本がまだ呆然と二人の鬼子を見比べる。
そして…突然の来訪者達に驚いた金秋だったが、すぐに全員へ指示を出した。
金秋「やつらを全員捕らえてしまえ!一人残らずだ!」
99 :
本スレ607:2010/12/25(土) 03:05:29 ID:MoMxnzH0
鬼子へ走り寄っていたヒワイドリに、偽鬼子が飛び掛った。
とっさに羽で鎌を押さえ、抵抗するヒワイドリ。しかし徐々に押され始める。
チチメンチョウはヒラヒラと虚ろな目をした人の手を避けてはいるが、
何しろ地下は天井がそう高くない。止まり木も無い空間では既にバテ始めていた。
そして小日本には、何故か意思が残っている様な様相の人々ばかりにじり寄っていた。
男集「鬼っ子…ちびっ子…取り押さえる…羽交い絞め…フヒヒヒヒ!!」
小日本「来ないで…!!来ないでぇ!助けてぇえネネさまぁ!」
恐怖に耐えかねた小日本が泣き叫ぶと、背負った縁切り・縁結びの守り刀『御結』が、
青白い光を放ちつつ鞘から浮かび上がり、直後に鋭い金属音を立てながら鞘へと戻った。
目を覆いたくなる光と、耳を塞ぎたくなるほど大きな音は、部屋中に広がると奇跡を起こしていた。
それぞれの人々から浮かび上がる鉄錆の様な人魂は、まさしく呪符で作られた心の鬼。
『御結』が持つ縁切りの能力によって、どうにか分離させる事に成功したのだ。
人々が徐々に意識を取り戻す中、ヒワイドリは女子更衣室の扉で鍛えた開錠術で、
鬼子の枷を順に外していく。一際大きな人魂が、浮かぶ中今度こそ薙刀を手に取る鬼子。
それを忌々しそうに睨んでいたのは…金秋だった。
100 :
本スレ607:2010/12/25(土) 03:27:55 ID:MoMxnzH0
こんな所で句読点の位置変にしちまった…『一際大きな人魂が浮かぶ中、』が正解です。
金秋「何故邪魔をする!こんな屑どもにせっかくチャンスを与えてやったというのに!」
鬼子「チチチドリ!みんなを避難させて!ガラスの向こうに昇降機があるわ!」
怒りに震える金秋が、恨み言を吐きながら近づくその時にも、鬼子は的確に指示を出す。
小日本は涙を拭きながら本物の鬼子へと駆け寄る…その間にも金秋は物々と愚痴を繰り返す。
金秋「どうして理解しようとしない!?愚かな群集を、賢き者が束ね動かすのは人の世の摂理!
その最も簡単な手法を編み出したこの私に!何故従わないのだ!」
次第に背中から黒い煙の様な気配が漂い始める…そして鉄錆色の人魂が、
その煙にドンドンと引き寄せられていく!モヤはまるで意思を持つように人魂を吸収しだした。
鬼子「いけない!鬼に体ごと食われてしまうわ!」
慌てた鬼子が黒いモヤを払おうと鬼切を振るうが、時既に遅く手によって止められてしまった。
…いまや異形と成り果てた金秋の、その巨大で禍々しい手によって。
支配欲の鬼と化した金秋は、あの鬼子をおも倒した鬼を超える速さで腕を叩きつけてくる。
ヤイカガシは棘で、ヒワイドリはその嘴で関節などを狙って攻撃するが、
あまりに早く動くので掠る程度にしかならない。ヤイカガシの匂いなんて逆にこちらの戦意を削いでいる…。
小日本は今一度『御結』を使おうとするが、以前と同様に鞘からは抜けない。
仕方無しに縁結びの桜吹雪を、目晦ましにと散らすが効果は薄い様子だ…。
鬼子はつい先ほどまで繋がれており、怪我もあって早くは動けず避ける足元さえおぼつかない。
101 :
本スレ607:2010/12/25(土) 03:51:25 ID:MoMxnzH0
そんな攻防の中、小日本が重い一撃を食らって吹き飛んでしまう。
ヒワイドリ「危ない!!」
とっさに壁との間に体を挟んだヒワイドリだが、二人共を吹き飛ばすほど攻撃は重い。
そして窮地の中で、偽鬼子すらも立ち上がってきた…。
金秋「よし、12番よまずはその弱った奴らから消してしまえ!!」
弱者をいたぶる愉悦に満ちた支配欲の鬼は、手塩にかけて育てた部下に命じる。
とっさにヤイカガシと鬼子が間へ割って入るが、既に二人も満身創痍だ。
だが…思いがけない事態が起き、まず目を白黒させたのは金秋の方であった。
偽鬼子は支配欲に取り付かれた鬼となりし金秋の足の腱を、心の鬼を狩る力を持った鎌で
一撫でに切り離した!途端に膝を着いてしまう金秋…。
驚いたのは鬼子達も同様である。だがクローンの鬼子が初めて瞳に光を見せて話し始めた。
偽鬼子「その子が教えてくれたのよ。私の本当にやるべき事は『みんなをえあぉヒューヒュ…」
…話し始めてすぐに、小さな爆発音と共に偽鬼子の喉から血飛沫が上がっていた。
その首にあった支配されていた証の首輪は、金秋の押した爆破スイッチにてもう無くなっている。
だが同時に声を出せるだけの力も、そこからは無くなっていた…。
金秋「主人に逆らう道具など、とうに用済みだ」
鬼子「お前は!!なんて事を!!」
憤る鬼子の目が真紅に輝き、角が急激に伸び、鬼切も光に包まれる。
抵抗する鬼が吸収した式神を弾丸の様に飛ばすが、鬼切の光に当たっただけで散っていく。
足が使えず動けぬ金秋に、もはや逃げる場所すらも無く鬼子は静かに切り祓った。
102 :
本スレ607:2010/12/25(土) 04:07:05 ID:MoMxnzH0
鬼子が旅館へ戻る頃には、先に逃れた人々に呼ばれ警察が到着していた。
捕まっては何をされるか解らない鬼子は、先にヤイカガシの誘導で隠れ、旅館へと戻る。
研究所の中で多数見つかった角のある少女達の遺体については、
遺伝子操作の産物として処理される様子だ。だがその日以来こんな噂も立つ。
『実は角のある人造人間が一体生き延びていて、まだ街にいるんだって』
走る魚やエロい鶏に加えて、また新たな不可思議な話が増えたようだ。
数日後
…鬼子には、未だに自分の役割や、人との距離の取り方が解らない。
自分のやるべき事は人々を心の鬼から守る事、この街を守る事。
でも一人は寂しいし、もっと仲良くしたくもある。
そういえばあの噂が流れて以降、角をあまり隠さずとも歩けるようになった。
鬼子「私は、あいつみたいに支配するのも、一人閉じこもるのも嫌だな…」
小日本「ネネさま〜!見て〜!綺麗な紫陽花が咲いてるよ〜!」
鬼子「わかったわ。今行くからちょっと待って〜」
少し微笑むと鬼子は歩みだした。
今は自分に仲間が居る。一緒に同じ目的へ動ける仲間が。
鬼子が参っている石の山には、いつも季節外れでさえ紅葉が降り積もっていた。
おわり
え〜と…大量にスレ消費してごめんなさい。
自分の考える「もし日本鬼子が劇場版アニメになったら?」は以上です。
本スレの「数人の『鬼子』が殺しあって生き延びた一人が『鬼蟲』」からイメージを頂き、
ほぼやっつけで書きながら考えていたので、色々と矛盾とかを含んでいるかも…。
チチチドリではなくチチドリで、最後の『鬼子が旅館に戻る頃』は『鬼子が地上に出る頃』です。
全部の名前に加え、ラストですらってなにやってるんだ…もう眠ります。失礼致しました〜。
乙。なんか知らない衝動で創作したいときってありますよね。じっくりやるのもいいですが、
衝動に押されるようにしてつくるのも荒削りでパワーのある作品が生まれる事ってありますね。
ま、後で細かい所が気になってこうしておけばよかったとのた打ち回るまでが醍醐味ってことでw
>>104 そう…衝動は抑えきれないでいました。w
昨日一日のたうち回ったので、今後は少なくとも紙に書いてから書くでしょう。
>99の『チチメンチョウ』は『チチドリ』ですね。
…見直そうと思えば、ほとんど直せるレベルだわ。本当にすいません。
ちょっと、平安鬼子の二章的なものを投下させてもらいます。
完全な自己満足ですが失礼します
107 :
平安鬼子:2010/12/28(火) 01:10:05 ID:VPesy7hc
「こら、待て!」
「待たないでゲス!」
屋敷に響き渡るような大声で鬼子がヤイカガシと呼ばれる奇怪な歩く魚を追い立てる。
鬼子を助けてから三年の月日が流れ、彼女は無事に大きく育った。
が、鬼の影響なのか一年位前から成長が止まっている。ただ、彼女が元気なのが幸いといったところだろう。
「げふっ!」
走り回っていたせいか、角から出てきた人の足に当たり踏まれる。
「おぉ、悪い悪い。 ん?何持ってんだお前」
ぶつかられた狗がヤイカガシを片手でひょいっと持ち上げる。
ヤイカガシの手には布のような物が握られており、動きを止められたことに対して相当焦っているようである。
「わわわ、離せでゲス」
「そのまま動くな!」
鬼子が廊下の曲がり角から走ってくる。 手には木製の薙刀が握られており、その表情はまるで鬼のようだ。
「ええい、もう! 離せと言ってるだろうが!」
「うわっ! 急に人にば……」
「そこだ!」
煙をあげて人型になるヤイカガシ。 そして、その人型に振り下ろされた薙刀に対する盾として扱われる。
ガンッ!
と強烈な音が当たりに響く。 練習用の薙刀であったためか、斬れはしなかったものの狗は
叩かれた痛さのあまり、その場にしゃがみ込んでしまった。
「いってぇ……」
「わわ、だだだ大丈夫!?」
叩いた鬼子は薙刀を床に置いてしゃがみこみ、叩いてしまった狗の頭を心配している。
「悪く思わないでくれよ狗。 俺はまだ死ぬわけにはいかないんだ!」
そう言って、ヤイカガシが再び走りだそうとするがまたも人にぶつかってしまう。
「何やってるんですか? ん?その布は一体……」
「いてて……って、晴明!」
「あ、晴明!ヤイカガシを捕まえて!」
鬼子が叫ぶ。 その声に晴明にぶつかった事に対してしばらく静止していたヤイカガシが再び走りだそうとするが、
晴明に軽く肩を叩かれ、元の姿に戻ってしまった。
「ひ、酷いでゲスよ晴明! この布を盗るのにどれだけ――」
「つーかまえた……」
「ひぃ!」
鬼子に片手で頭を鷲掴みにされ持ち上げられる。 それと同時に手に持っていた布も取り上げられる。
持ち上げている鬼子の表情は怒っているのか笑っているのかなんとも言えない表情になっていた。
「ねぇ……なんで盗ったのかな?」
引きつった笑顔でヤイカガシに質問をする。
「いや、それについてなんですが……欲しかったからとしか言えないでゲス。 あだっ!痛い!痛いでゲス!
手の力が締まってきてるでゲス! ごめんなさいでゲス!!」
「俺も混ざろう……」
少し離れた所にしゃがみ込んでいた狗もヤイカガシにゆっくりと歩み寄る。
「許してゲス! 晴明!助けて!」
「はぁ……鬼子、狗。 そこまでにしときなさい。 彼も反省してるんだ。 それより、少し話があるから私の部屋に来てください」
「いや、でも私のですね……その……」
「鬼子。 許せば人として一つ成長するのです。 次に同じことをしたら今回の分も入れて仕置をしなさい。 それでいいでしょう?」
「……わかりました」
「晴明がそう言うなら仕方ないな」
「た、助かったでゲス」
108 :
平安鬼子:2010/12/28(火) 01:10:51 ID:VPesy7hc
鬼子の手から放されたので、急いで離れようとするが直ぐに狗に捕まってしまう。
そして小声で
「結局あの布はなんなんだ?」
質問を投げ出される。
しばらくキョロキョロとあたりを見回し、鬼子に声が聞こえないのを確認すると、質問に答え始めた。
「実はですね。 あれは鬼子がいつも下につけてい……」
「下につけて? 私も続きが聞きたいなー」
「待て!早まるな鬼子!俺も居るんだ!」
「何を盗んだのか聞こうとした時点で同罪です」
笑顔で薙刀を思いっきり振り上げる。 男性の大事な一部に向かって。
言葉にならない叫びを上げ、股間を押さえながら倒れこむ二人。
相当痛かったのだろうか。 ふたりとも泡を吹いて倒れている。
鬼子は仕置をした事で満足したのか、さっさと晴明の部屋に走って行ってしまった。
股間を押さえながら倒れこむ二人に対して晴明はゆっくりと歩み寄り、しゃがんで話しかける。
「コレに懲りたら、もう鬼子のを狙うのはやめなさい」
「あ、諦めないでゲス……」
「俺は……やめておくよ……」
廊下に横たわる二人を置いて晴明は自分の部屋へと向かっていってしまった。
ため息を吐きながらも少し楽しそうな表情して……
周囲に札が隙間なく貼られている小さな部屋にヒワイドリ、ヤイカガシ、狗、鬼子、そして晴明が集まっている。
五人が部屋に集まったのだが誰一人として喋らず、ある”人”が来るのを待っている。
一時間ぐらいたった頃だろうか、部屋の襖がゆっくりと開かれ一人の妖艶な雰囲気の女性が現れる。
が、この女性も人では無いようで頭に二つ、獣の耳が生えている。
「遅かったですね。 何かあったんですか?」
「……ちょっと遅すぎるだろ猫。 それで、今回のはどういう奴だ?」
「ちょっと冷たいんじゃないの? もっとこう「仕事お疲れ様です」とか先にあるんじゃないの?」
「荒事を専門としてないんだからそれはないだろ! 俺が言われてみたいわ!」
「狗、ちょっとうるさいです。 猫、さっさと座って必要なことを」
「えー、もう少し良い事でもあれば私も直ぐに話しちゃうんだけどなー」
晴明に背中から抱きつき、耳元で囁く。
眉間に手を当て、少し考えたあとで晴明が交渉に出る。
「わかりました。 なんとかしてみますよ」
「えへへ、ありがとねー。 それじゃあ、報告ね。 今回の目標は堕鬼であるとほぼ断定しても間違いはないです。
都周辺に群れをなして、行動しているとの情報もあり――」
109 :
平安鬼子:2010/12/28(火) 01:15:06 ID:VPesy7hc
「あのー」
ゆっくりと鬼子が手を上げ、猫の報告を中断する。
「ん? どうしたの鬼子? お姉さんがなんでも答えてあ・げ・る」
「猫さんが言ってる堕鬼ってなんですか?」
「……え?」
質問の内容に驚いたのか、猫が固まるが狗がその質問に答える。
「鬼子……この前、俺が説明したよな」
「狗の説明はなんかこう……頭に入ってこないというかなんというか……」
「……また、説明しなきゃならないのか」
小声で何かをつぶやき、落ち込む狗を尻目に晴明が説明を始める。
「私が説明しましょう……いいですか鬼子?鬼には三種類の存在が確認されています。一つは溢れ鬼。
これは、人々の心から過剰に出過ぎた感情が溢れ出てそれが実体化しているモノです。例としてはヒワイドリや
ヤイカガシがそうです。 二つ目は心鬼。 これは人々の心に棲み、溢れ出ようとする感情を喰らうモノです。
これは、基本的には悪さはしません。ただ、肉体的、精神的に追い詰められている状況や、心を喰らう行為に
歯止めが効かず、心を鬼が完全に喰らってしまった場合は負の感情に心鬼が影響され暴走します――」
心鬼の事を話し終わると、鬼子以外の皆が表情を暗くする。
三年前の鬼子が育てられていた家、それが無くなってしまったことはこれから話す堕鬼が原因あることは明白だからだ。
だが、その事を鬼子は知らない。 それでも、彼らはコレの説明は極力避けてきたのだ。 一度の説明で住むように。
再び、鬼子が育てられていた家の事を思い出さないように。
一瞬の沈黙の後、晴明が続きを話す。
「最後に、堕鬼。 これは非情に厄介です。 心鬼となり人々の心に入り込むこともできるし、溢れ鬼として姿を
実体化させ直接的に人を喰らうこともできるからです。 先に説明した二種類の鬼は邪気を祓うだけで簡単に
浄化が出来るのですが……コレだけは違います。 完全に邪気に侵されている状況なので祓うというよりも、殺す
という表現のほうがあっています。 私たちが今から相手にするのはこの鬼です。わかりましたか?」
「わかりましたけど……堕鬼は絶対に殺さなきゃならないんですか?」
「えぇ……今は……それしかありません。 彼らは存在するだけで邪気を振りまく鬼ですからね」
「けど、彼らだって……」
「鬼子。 彼らは堕鬼です。 周囲に不幸をもたらす鬼なんです」
「それだったら……私も死ななきゃいけないです!」
頭に着けている布を外し、角を見せる。
先端は少しかけており、ものをぶつけられたと思える傷がが少し見える。
「鬼子……お前、その傷は……」
狗が傷を見て、目を丸くして驚く。
周りにいるモノたちも全員そうだ。 まったく気が付かなかったのだろう。
邸内では明るく振る舞い、なにも心配事が無いように思えた鬼子が傷ついていたのだ。
110 :
平安鬼子:2010/12/28(火) 01:16:56 ID:VPesy7hc
「子供達に石をぶつけられた時の傷です……それで思ったんです。 私は存在しちゃいけない鬼なんじゃないのかって。
存在するだけで皆の不幸にして……迷惑を……ぐすっ……かけてるんじゃ……ないのかって。 現に、晴明様は
私のせいで、都の子供たちから鬼の子だとか言われていて……だから……だから……」
最後の方は声が泣き声に変わっていってしまっており、聞き取れなかった。
今まで溜めていた不安を吐き出したせいだろうか、完全に泣き出してしまい部屋中に鬼子の泣き声が
響き渡る。
「っ!」
手に持っていた調査の報告書だろうか、それを床に落とし猫が鬼子を抱きしめる。
「大丈夫。鬼子は堕鬼なんかじゃない。だってそうでしょ? いつもご飯の支度をしてくれてるし……
庭の木の手入れだって一人でしてるじゃない。 家が襲われたって大丈夫なように薙刀を使えるように練習だって
毎日してるじゃない。この家を守ろうとしてるじゃない。そんな子が存在しちゃいけないわけ無いでしょ。」
鬼子を抱きしめている猫の周りでオロオロしながら狗達が見守っている。
晴明が抱きしめられている鬼子に近づき、頭を撫でる。
「鬼子……君は堕鬼じゃない。君を拾った時から私はそう思っている。 私は君を拾ったことで生活するのが
楽しくなった。それは嘘じゃない。 だってこんなにも可愛い子を毎日見ていられるんだからね。 それに、堕鬼を
祓うことはできます。 先程はなるべく言わないようにしていたんですがね……巻き込みたくなかったから――」
「え?……それって……どういう……事ですか?」
鬼子が少し涙を拭きとり、晴明に質問する。
狗が今から言うことに対して止めようとしたが、ヤイカガシとヒワイドリに立ち上がるのを止められる。
これは晴明の判断に任せるという事なのだろう。 狗も大人しく座りなおし、腕を組み晴明が話すことを黙って聞こうとしている。
それを見た晴明は話を続ける。
「私は……これまで数多くの鬼を浄化し、退治してきました。 そこである人物が殺さないで浄化させていたのを一回だけ見たんです。 狗と共にね。
その人は堕鬼に対し、刃を突き立てそれを引きぬく事を平然と行なっていました。
ただ、それだけでは従来の退治と代わりはなかったのですが、私が見たのは違ってました。
傷口から草木の芽が生え、それが一瞬であたりに充満している邪気を吸いとり葉が散るんです。
その行為を行った後、堕鬼から邪気が消え失せ、溢れ鬼のような純粋な、悪さをしない鬼になったのです。
退治しなくて済む、そう思いその人に聞こうとしたのですが……」
「どう……したんですか?」
「彼、いや……彼女は人ではありませんでした。 鬼子と同じように額には一本だけですが角があり、彼は自身の事を
”善鬼”そう言いました。 どうやら、その堕鬼を殺さない行為は人やヤイカガシなどの理を外れたモノたちには使えないらしく……
理と人の間に居る私にしか使えないと、そう言ってました。 そして彼女は別れ際に薙刀を私に手渡すと、こう告げたんです。
「私と同じような、安定しないモノが都にはひとりだけ居る。 その子が、妙齢になったらそれを渡しなさい。
必ずその子の力になる」とね。 どうする鬼子。 ここからは君自身が決めなさい。 私たちと一緒にこれから行く
退治に同行するか、いつものように家で帰りを待つか」
111 :
平安鬼子:2010/12/28(火) 01:19:58 ID:VPesy7hc
その言葉を告げられると鬼子は少し考え、袖で涙を拭き取り立ち上がる。
「私は……一緒に行きます!」
「そうですか……狗。 薙刀を出しなさい」
晴明がそう言うと、黙って狗が立ち上がり壁に貼ってある札を剥がし、壁の裏から一本の薙刀を取り出す。
それと共に一枚の着物も取り出す。 着物には紅葉の模様があり、時折それが風に吹かれたかのように動いている。
「コレが君に渡す薙刀です。 そしてコレが、その時に一緒に貰った着物です。 どうやら、この着物には特殊な術が
かけられているようで……一定状況下では力を最大限に引き出せるようです。 着替えてきなさい。これから現場に向かいます」
「はい!」
鬼子はそれらを受け取ると喜んで自室へ向かい、ヤイカガシとヒワイドリ、猫も後を追っていった。
理由はちゃんと着物が着れるか心配だからだそうだ。 ヤイカガシとヒワイドリは違う目的だろうが……
部屋に残された狗と晴明は少しほっとした表情をし、表情を曇らせる。
「晴明……あの薙刀について最後まで言わなくてもいいのか」
「えぇ。 話の続きである”薙刀を使えば私がひと月の間に死ぬ”という事を言ってしまえば、彼女は薙刀を手にしても
堕鬼に対して戦うこともせず、死んでしまうでしょうからね。彼女はそれだけ優しい」
「だが、その事を知れば必ず悲しむぞ。 それでいいのか」
「はい。 その為の行動は起こしています。 もう一人の陰陽師、蘆屋道満……彼に頼んでね」
一瞬だけ、狗が嫌な表情を見せたが文句も言わず「そうか」の一言で話は終わった。
鬼子達が着替えを終えたのか、部屋に戻り出発の時刻になった。
薙刀の話は狗と晴明しかしらない。 幼少期から共に行動し、共に鬼を退治してきた猫ですらしらない話。
〜一章・完〜
112 :
時の番人:2010/12/28(火) 12:14:19 ID:h+e43MQv
今、ここ誰も使ってませんね〜!?
使ってないようなので今から
「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第六章〜【小日本(こにぽん)】
を投下します。
俺設定です。それと挿絵・・とうとう無しです。
「田中さん」名前使わせてくれて有難う。パート3
注)俺設定で、日本狗を登場させ、名前も付けてしまいました。
般ニャーも登場させてしまいました。
日本狗、般ニャーを描いた人、文字で書いた人、使わせてもらいま〜っす。
113 :
時の番人:2010/12/28(火) 12:15:26 ID:h+e43MQv
●「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第六章〜【小日本(こにぽん)】
寒牡丹(かんぼたん)咲く寒空の下、新年を迎えた大勢の初詣客が鬼狐神社へと足を運んでいる。
この神社では、厄除け、初宮詣、無病息災、交通安全、合格祈願、家内安全、御千度、商売繁盛、
安産祈願、良縁、縁むすび、身体健康、災難除、誕生祭などなど数多くの祈祷、祈願を扱っており、
とても名高い神社なのだ。そういう方向に持っていったのが先代の狐火様で、
今現在、きび爺がそれを引き継いでいる。神社の境内には色んな出店が並び、それは多くの人達で
賑わっている。鬼狐神社ではパート、アルバイトを多数雇い、お客様に御奉仕していた。
もちろん、きび爺、きび婆、弥次、喜多、織田、秀吉、舞子、鬼子も皆慌しく走りまわっている。
昼頃、鬼子はアルバイトの巫女さんと並び、お守りなどをいそいそと売っていた。
そのお守りの傍らに、角突きヒワイドリアクセ付きカチュウシャも並んでいる・・・。
このお守りは、災難避けになるとか・・・。
「鬼子ちゃーん!」
そう声を掛けてきたのは田中みことである。
鬼子がお守りを売っている初詣客の列の中ごろに、田中みことの姿があった。
みことは鬼子に向かって笑顔で手を振っている。その後ろで、みことのご両親が鬼子に頭を下げ挨拶をしていた。
鬼子はその姿を見て笑顔になり、お守り売り場から【バッ】と飛び出し、みことの前まで素早く飛んで来た。
売り場客はその鬼子の姿を見て、皆一様に「おぉ〜」っと驚いた声を出している。
「みことちゃん!来てくれてありがと〜」
鬼子は辛い仕事から解き放たれた様な笑顔で、みことの手を取りそう言った。
「鬼子ちゃん居るかな〜って思って探してたの。人が多いからとても大変だったわ」
みことは苦笑いしながらそう言い、そして手を両親2人に向けた。
「私のお父さんとお母さんも連れてきたわ」
みことの両親がまた頭をちょこんと下げた。
「明けましておめでとう御座います。あなたが鬼子さんですか。みことと友達になってくれたそうで、
本当に有難う御座います。これからもお友達でいてやって下さいね」
みことのお母さんは優しい笑顔でそう言った。
鬼子は照れながら言う。年始の挨拶を忘れていたからだ。
「あ、明けましておめでとう御座います。わ、私の方こそ宜しくお願いします。
みことチャンには色々教えてもらってばかりで」
「鬼子ちゃん、鬼子ちゃん」
と、みことは少し焦りながら鬼子を呼んだ。
「ん?何?」
「お守りを買う皆さんが待ってるよ・・・」
振り向いた鬼子の目に映った光景は、初詣客の無言の怒りの目・・・。
「あっ」
鬼子は売り場に飛んで戻り、頭を下げて謝っている。
その光景を見て、みこととその両親は苦笑いしていた。
あっそうそう、ヒワイドリは・・・部屋の中で寝そべり、年始のお笑い番組を見て笑いながらくつろいでいる。
114 :
時の番人:2010/12/28(火) 12:16:34 ID:h+e43MQv
神社から遠く離れた険しい山間に、何か動く物がある。ソレが草むらから這い出て来た。
ソレの姿は、目が大きくそしてその目が出っ張り、腕は鋭い鎌の様になっている。
その姿は間違いなく悪しき輩で、初期段階ではなさそうだ。
その悪しき輩は、辺りの匂いを嗅ぎ方向を見定めている。
その動きが【ピタッ】っと止まった。そしてジッと見つめる。
その方向とは・・・鬼狐神社の方である。
悪しき輩は、神社の方に向かってユックリと歩き出した。
初詣客の足が途絶えない夕方頃、神社の方では未だに皆がバタバタ動き回っている。
さすがに朝より詣で客は少ないが、それでも境内はまだまだ賑わっていた。
朝同様、沢山のアルバイトの巫女さんがお守りを売っている。
その中に田中みことの姿もあった。
実は昼頃みことが神社に初詣に来た時、人手が少ないときび婆から頼まれたみたいだ。
もちろんみことは快く引き受けてくれて今の現状がある。
そして夕方過ぎ、表は織田と秀吉、舞子、そしてアルバイトの巫女さんに任せてきび爺、きび婆、
鬼子、弥次、喜多、みことの六人は客間で少しくつろいでいた。
テーブルの端の方で弥次さんと喜多さんが笑いながら話をしている。
「今年も一年、良い投資して行かなきゃいけんのぅ!ガハハハハ〜」
と、弥次が周りの空気も読まず言葉を発している。
「それを言うなら“良い年に”じゃろヒャッハッハッハ」
喜多はそれに突っ込みを入れる。
こんな繰り返しが一年中続いているので、皆は反応していない。
唯一、この雰囲気に馴れていない田中みことだけが苦笑いしていた。
きび婆がミカンの皮をむきながらみことに言った。
「本当にありがとね。急に押し付けてしまった様になってしまって」
みことは小さく手を振りながらきび婆に返事した。
「いえいえ、初詣以外暇だったんでちょうどよかったですよ。気にしないで下さい」
「それに私の両親も、このお手伝いの申し出に喜んでましたから」
きび婆は指で頬を掻き、苦笑いしていた。
「いぃ子じゃのうみことチャンは。本当に鬼子と友達になってくれて有難うね」
その言葉を聞いたみことはちょこんと頭を下げる。
そんなやり取りを聞いていた鬼子は、ずっと、ずっと笑顔だった。
きび爺も【うんうん】とうなずいてばかりいた。
みことが鬼子の方に少し近づき、何やら話をしている。
「ねぇ鬼子ちゃん。弥次さん喜多さんっていつもあんななの?」
みことは面白い人達ねと言う言葉を含めたつもりで言ったが、その心は伝わっていなかった。
鬼子は、きび婆からみことの事を褒められて有頂天になっていた。
「そうなのよ。あのヒワイドリとは気が合うみたいなんだけどね」
・・・鬼子は何も考えずその言葉を言ってしまった。
みことはキョトンとしている。
115 :
時の番人:2010/12/28(火) 12:17:30 ID:h+e43MQv
「ヒワイドリってなぁ〜に?」
みことのその言葉に、きび爺、きび婆、鬼子は凍りつく。
弥次と喜多はみことに背を向けたままボケたふり・・・。
部屋の空気が凍りついている。
「ねぇヒワイドリって」
とみことが続けて言葉を発した時、ふすまが【バッ】っと開いた。
「おいらの事呼んだか?」
みことが声のする方を振り向くと鶏がいる・・・見た事の有る鶏・・・。
「なぁなぁ、おいらの事呼んだだろ?」
みことの目には、喋る鶏の姿が・・・。
「キャアアアアアアアァァァァァァァァァァ」
みことが叫ぶと同時に、きび婆、きび爺、鬼子はヒワイドリに飛び掛り、
何とかみことの目線から隠そう、遠ざけようと焦っている。
ヒワイドリは皆の腕の間から顔を出し、そしてみことに指差しながら言った。
「もう・・・遅いんじゃない・・?」
「キャアアアアアアアァァァァァァァァァァ」
みことは再び悲鳴を上げる。
「こ、これは機械仕掛けで動いとる鶏で・・・」
きび爺が冷や汗を流しながらそう言った。
「そ、そうそう。電池で動いてるんじゃよ・・・」
きび婆もきび爺の言葉に釣られそう言った。
鬼子は呆然としている。鬼子の頭の中には、
【あぁ・・・バレちゃった・・友達が居なくなる・・・】
と言う言葉がコダマしている。
弥次さん喜多さんは・・・部屋の片隅でボケている。
そんな状況の中、この部屋の中に何かが不意に飛び込んで来た。【ドガッ】
そして言葉を発する。
「狐火様。何かあったのですか?」
その言葉を発したのは・・・白くて大きな狗(いぬ)だった。
「あぁ〜ハッちゃん!(八太郎)何でここに居るの?」
と鬼子はビックリした様子。
「あ!鬼子ねぇちゃん。久しぶり〜。もちろんこにぽん(小日本)の護衛だよ」
その大きな白い狗は普通にそう答えた。
「えぇ?こにぽんが来てるの?」
鬼子はビックリした様子でその白い狗と話をしている。
「そっかぁ、こにぽんもこっちに来たんだ!と言う事は狐様の了解出たのね!」
「でも、こに(小日本)、居ないけど・・・」
鬼子は完全にみことの事を忘れている・・・。
「あぁ、台所で綺麗なお姉ちゃんにオニギリ作ってもらってるよ。あのお姉ちゃん、おいらの姿見ても
驚いてなかったなぁ」
その白い狗、ハチ太郎はそう言って部屋の匂いをクンクンと嗅いでいる。
そしてハチ太郎の目線が、きび爺、きび婆が取り押さえてるヒワイドリに行った。
「・・・ん?そいつ・・輩じゃねぇ〜か!?」
ハチ太郎が口走る。
116 :
時の番人:2010/12/28(火) 12:18:24 ID:h+e43MQv
きび爺ときび婆は目を見開いて、首を振っている。こいつの事に触れるなと言いたげな顔で。
また、お前も喋るなと心で訴えてた・・・。しかし、その訴えは通じない・・・。
ハチ太郎がヒワイドリに近づく。
「おいらは輩じゃね〜よ。鶏の民だ。犬っころ!」
ヒワイドリがハチ太郎に言葉で噛み付いている。
その言葉を聞いたハチ太郎はジリジリとヒワイドリに近づく。
【クンクン】匂いを嗅ぎながら
「んん〜??かすかに輩の匂いがするんだけどなぁ・・・狐火様、こいつ輩じゃないの?」
ハチ太郎の純粋な心の言葉だ。
「ち、違う違う。こやつは機械仕掛けの・・・」
しかし、そのきび爺の言葉が虚しく空を舞う・・・。
ヒワイドリとハチ太郎が大声で言い合いを始めた。
その光景を、弥次、喜多は【あ〜ぁ】と言わんばかりに首を振りながら見ていたが、
みことは・・・口をあんぐり開け、目を見開いたまままったく動けなかった。
そこへ、大声を出しながら少女が飛び込んで来た。
「あぁ〜ネネ様〜。会いたかったよ〜」
鬼子にそう言いながら抱きついて来たのは、頭に小さな角を生やし、黒髪のおかっぱ頭。
そして白い帽子みたいな物を被っている。そして短い桃色の着物をまとい、
背中には背丈ほどある日本刀を背負っている少女、そして手にはオニギリ。
その少女の名は、こにぽんと言う。
「こに〜やっとこっちへ来る事出来たのね!よかったぁ〜、心配してたのよ」
と、鬼子は懐かしそうにこにぽんをギュッと抱きしめた。
「鬼子ちゃん、元気にしてた?」
と、言葉をかけてきたのはこにぽんが被っていた猫の様な形の帽子だった。
「あぁ〜般ニャーも来る事出来たんだ!良かったわねぇ〜」
鬼子は闇世で、心を許せるいつものメンバーに、すごくいい表情をしている。
「そらそうよ。あたいもこにぽんの守護だからね」
白い帽子の般ニャーはそう言い、皆と懐かしそうに笑っていた。
ヒワイドリとハチ太郎はまだいい合いをしている。
「鬼子ちゃん、みことチャンの事忘れとりゃせんかぃ?」
と、弥次さんが空を切る言葉を発した。
「あ・・・・・」
鬼子はみことの方へ目線をやる。
みことは・・・頭から煙が出ている・・。白目を向き口をあんぐりと開け、座りながら呆然としていた。
「にわとり・・・喋る・・犬・・・喋る・・帽子・・・喋る・・・ハ・・ハハハ・・・」
「みことチャン・・みことチャン?・・」
鬼子は呆然としていたみことの肩を揺すりそう言ったが、みことから返事はなかった。
それから一時間くらい経った頃、みことは目を覚ました。と言うかやっと正気にもどったのだ。
みことの横には鬼子ときび爺、きび婆だけ。きび爺が恐る恐るいきさつを話し始めた。
みことはきび爺の言葉を理解できているのかそうでないのか・・・。
「そうですか」と「ハハハ・・・」と言う言葉しか出て来なかった。
全てを聞いたみことは、「ハハハ・・・またね・・・」と言いながら、自宅へと帰って行った。
鬼子は心配そうな表情をしている。友達を無くしてしまうんではと言う思いと、
ふいに怖がらせてしまったと言う罪悪感・・・。
鬼子は神社の門の所でボーっと階段を眺めていた。
もともときび婆からこんな話を鬼子は聞かされていた。
117 :
時の番人:2010/12/28(火) 12:19:20 ID:h+e43MQv
【みことチャンと仲良くなればなるほど、鬼子自身の事を言わなくちゃいけない時期、状態になるじゃろぅ。
そんときは覚悟しといた方がえぇ】と。
今回、急にそう言う状況になってしまったが、遅かれ早かれみことには伝えないと、と言う
思いでいた。人間の民との心の通じる交流をしたい時、これは致し方ない事なのである。
鬼子の心に迷いは無かったが、寂しい思いが立ち込めているのも確かだ。
鬼子ときび爺、きび婆が客間に戻ると、
鬼子達の心配事とは裏腹に、客間はドンチャン騒ぎ状態で、皆が嬉しそうに話をしている。
鬼子が客間に入ると、すぐこにぽんが飛んで来た。
「ネネ様、ネネ様、聞いてくれる?」
こにぽんは光の世に行ってしまった鬼子と別れて寂しかったらしく、
膝上にチョコンと座りながら闇世での出来事を楽しく鬼子に話している。
鬼子はそのこにぽんの話をとても優しい表情で聞いていた。
般ニャーが何かに気付く。
「ん?なんか嫌な気配がするねぇ」
その言葉を聞いた鬼子は袂から何かを取り出し、言った。
「これでしょ!般若面」
そう言い、鬼子が般若面を自分の頭の方に【ポンッ】と軽く投げた。
すると、般若面に付いているヒモが勝手に鬼子の頭にシュルシュルと巻きついた。
般若面は【ジロリ】と般ニャーの方を見ている。
その般若面を見た般ニャーは眉間にシワを寄せながら言う。
「ゲゲ・・。やっぱりお前さんも来てたのか。あ〜やだやだ」
般若面はその般ニャーの言葉を聞きつぶやいた。
「シワ、増えるぞ」
般若面と般ニャーは鬼子、こにぽんのお互いの頭の上で睨み合っている。
その部屋の傍らでは、ヒワイドリの周りをグルグル回っているハチ太郎。
ハチ太郎は、ヒワイドリの事がどうも気に入らないらしく、にらみつけていた。
ふと、ハチ太郎が顔を上げる。
座っていたきび爺がそれに気付く。そしてきび爺は、膝に手を付いた。
何かを感じているのだ。
きび爺は、弥次さんと喜多さんに目で合図を送る。
その合図に合わせる様に、弥次さんと喜多さんは部屋を出て行った。
鬼子は2人が出て行った事は知っていたがその理由は解らなかった。
客足が少なくなり始めた夜、きび爺が少しソワソワしている。
「遅いなぁ・・・もう帰って来てもおかしくないんじゃが・・・」
きび爺がつぶやく。きび爺が心配しているのは弥次さんと喜多さんの事。
「ちょっと見てくる」
と、ハチ太郎がきび爺に言い、部屋を出て行った。
ハチ太郎は解っていたのだ。悪しき輩の匂い、気配がした事。それに感づいたきび爺が
弥次さん喜多さんに様子を探るように指示を出した事。
何故あんなお爺さん達に、行かせたのかが理解出来なかったが。
「どうしたの?きび爺」
と鬼子が声を掛けてきた。
「んん〜・・・実はな、皆が騒いどる時にちょっと嫌な予感がしてのう。
弥次さんと喜多さんに様子を見てくる様に言ったんじゃが、まだ帰ってこんのじゃよ・・・」
118 :
時の番人:2010/12/28(火) 12:20:18 ID:h+e43MQv
「きび爺・・その嫌な予感ってもしかして・・・」
鬼子は心の動揺を隠し切れなかった。
「私行ってくる」
「待て、待つんじゃ。闇雲に走ってもこんな暗い中、見つかるもんじゃない。ハチ太郎の
声を待つんじゃ」
きび爺はそう言い、その場に座り込んだ。
鬼子は・・・胸に手を当て、【無事でいて】と強く念じている。
そんな姿を見ていたこにぽんは鬼子の手をギュッと握り締めた。
「ネネ様、大丈夫?とても苦しそう・・・」
こにぽんは小さいながら、鬼子が狐様から命じられた使命をしっかり理解している。
そして10分後、どこかの山間から【ワオーン】と言う犬の遠吠えが聞こえてきた。
ハチ太郎の声だ。
客間に居てる皆が一斉に立ち上がる。
「行ってくる。こにぽんは待っててね」
と鬼子は言うのと同時に、部屋を飛び出して行った。
「大丈夫かなぁ・・・ネネ様・・・」
こにぽんは寂しそうな顔をしながらそう言った。
こにぽんもハチ太郎の声で、悪しき輩が出たと言うのは解っているみたいだ。
「大丈夫よ。鬼子ちゃんは強い子なんだから」
と、般ニャーはこにぽんに優しく言った。
鬼子の背中にはいつも通りヒワイドリが勝手にくっ付いている。
鬼子は飛ぶように山を駆け抜けていく。すると、【ワン】と言う
ハチ太郎の声がした。その声のする所に降りていくと・・・
弥次さんが口から血を流し、肩を揺らしながら身構えている。
そしてその横で、喜多さんは片膝を付き腰を抑えながら、【ゼェゼェ】と
呼吸をしていた。その2人の前には険しい目をしたハチ太郎がいる。
「弥次さん、喜多さん」
鬼子は2人の側に付いた。
「ど、どうしたの?大丈夫ですか?」
鬼子の目が赤くなっていく。2人の老人をこんな目に合わせた輩に怒りを感じているのだ。
喜多さんが笑いながらポツリと言う。
「最近運動不足でな、ぶそく(不測)の事態に体がついてこなんだわぃ。フオッフォッフォ」
すると弥次さんが、
「そんなトンチの効かん話はきかん(聞かん)でえぇからな、鬼子ちゃん。フオッフォッフォッフォ」
鬼子の焦りをよそに、この2人は何故か余裕の駄洒落・・・。
「な・・・何言ってるんですか。二人とも怪我をしてるのに」
鬼子は少し怒った様子だ。当然だろう。
当の2人の老人が血を流し、ゼエゼエ言いながら身構えてるのに、笑いながら駄洒落を言っているのだから。
「鬼子ねぇちゃん」
そうハチ太郎が言った。
鬼子はハチ太郎の視線の先に目をやる。
すると草むらがガサガサと揺れた。
ハチ太郎が鬼子に言う。
「あの輩、強いよ」
「うん。気配で解るわ。完全な悪しき輩って事ね」
鬼子はそう言いながら般若面から薙刀を取り出した。
119 :
時の番人:2010/12/28(火) 12:21:32 ID:h+e43MQv
その瞬間、【シュッ】悪しき輩が草むらから飛び出し、鬼子達めがけて飛んで来た。
すかさず鬼子は薙刀で応戦する。【キーン】薙刀が輩の爪を弾き飛ばした音が響く。
その悪しき輩は反対側の草むらへと隠れて行った。
「は・・・早い」
鬼子はかなりビックリした様子だ。
「鬼子ねぇちゃん。何で、こんな輩が光の世にいるんだ?これじゃぁ闇世に出てくる輩と同じじゃないか。
奴の匂いからすると、最初昆虫だったんだろう。
それに輩が取り付き、色んな物を吸収していって今の姿になってる様だよ」
ハチ太郎は、輩が潜む草むらの方を睨みながらそう言った。
鬼子は唇を噛締めながら言う。
「うん。でもまだ解らないの・・・」
弥次さんが口から流れる血を拭き取りながら言った。
「へぇ〜こんな強い輩が、闇世にはうじゃうじゃしとるのかぃ。少しは気合入れんとのぅ。喜多さんや」
すると喜多さんも腰をグリグリと揉みながら立ち上がり、首を左右に振りながら言った。
「そうじゃのう。久しぶりに気合い入れるかのう弥次さんや」
そんな2人の掛け合いにモジモジしながら鬼子は言った。
「弥次さん、喜多さん。そんな悠長な事言ってる場合じゃ・・・」
その言葉が終わると同時に、輩が不意に飛び掛って来た。
ハチ太郎は斜め前へ逃げ、鬼子は後ろへ真っ直ぐ地面すれすれに飛ぶ。
鬼子が後ろへ飛び跳ねたのは、輩との距離を測りやすくし、そのスピードを目で追いやすくする為だ。
弥次さんと喜多さんは・・・・・鬼子が後ろへ飛ぶより素早く真上へ高く飛び上がっていた。
鬼子の目には2人の姿も見えている。人間業には見えない2人の姿にかなり驚いている様子だ。
そして、2人は素早く懐に手を入れ、鎖のような物を輩めがけて投げつけた。
【ガツン】とても素早い動きの輩が、その鎖の先に着いた鉛で地面に叩きつけられる。
「今じゃぃ、鬼子ちゃん」
弥次さんの大きな声が飛んで来た。
鬼子の目がさらに赤くなる。そして着物からは、もみじが舞っていた。
「神代に属するは闇、授けるは虚無」
口早に唱え、薙刀に念を送ると薙刀が光輝きだした。そして、振りかざしながらその輩へと。
「萌え散れ!」
鬼子は叫んだ。
【ザシュッ】鬼子の薙刀が輩を切り裂く。
【ギュィィィィ】と言う輩の叫びとともに、少しずつちりと成っていき、
もみじと共に風に吹かれて消えていった。
鬼子とハチ太郎は、弥次さん、喜多さんの方を見て驚いている。
真っ暗な山間を駆け抜ける鬼子とハチ太郎。
そのハチ太郎の背中には、弥次さんと喜多さんが乗っていた。
弥次さんが笑いながら言う。
「おぉ〜このワンちゃん。力が強いのぅ。ワシら2人乗せて飛んで走るとは。
さっきは助けてくれてありがとな」
弥次さんも喜多さんも、始めてみた闇世の犬の力に関心があるみたいだ。
「じっちゃん達もすげえな!人間の民があんな事出来るなんて」
ハチ太郎は心底関心していた。
しかし、鬼子は不機嫌そうだ。
「鬼子ちゃん。どうしたんじゃ?さっきから黙り込んじゃって」
喜多さんが腰をさすりながらそう言った。
「・・・・・だって・・。すごく心配したんだもの・・・。輩に・・・」
鬼子は不安そうな表情でそう言った。
120 :
時の番人:2010/12/28(火) 12:22:49 ID:h+e43MQv
「鬼子ちゃん。忍者ってしっとるかぃ?」
弥次さんがそう言った。
すると、ハチ太郎が目を輝かせながら言った。
「忍者?えぇ〜!?じっちゃん達、忍者なの?おいら聞いた事あるよ。
忍者って隠密行動する人達の事だろ?」
「おぉ〜良く知っとるな、ワンちゃん。そうじゃ。もう隠居の身じゃがな」
弥次さんが自慢げにそう言った。
鬼子も少し驚きながらその話しに交わる。
「私も聞いた事があるわ。忍者の事。でも昔の話しじゃないの?」
「フフオッフォッフォッフォッフォ!!!」
弥次さん喜多さんが大声で笑い出した。
「力を持つ民達と同じじゃ。今では忘れ去られてるって方が正しいがな。
ワシは伊賀の陽忍の忍者。陽忍ってのは先頭に立って行動する忍者の事じゃ。
喜多さんは甲賀の陰忍の忍者。陰忍ってのはな、陽忍を後ろから守る忍者の事じゃよ。
昔は中が悪かったらしいが、今は色々交流があってな。意気投合したんじゃよ。
で、隠居生活になってボ〜っとしとる所に狐火様から声を掛けられてな」
2人はなんとも得意げな表情だ。
「そ、そう。でも良かった。本当に心配したんだから・・・」
鬼子はやっと心を落ち着かす事が出来た。
ハチ太郎は興奮している。
「おぉ〜すげえすげえ!陽忍、陰忍ってのがいるのかぁ。ゾクゾクするなぁ」
「ゴメンよ、鬼子ちゃん。助けに来てくれてありがとな」
弥次さんと喜多さんの笑顔を見ていた鬼子は、【ホッ】っと一息つき、神社に戻って行った。
神社へ戻ると、皆が心配そうに待っていた。
「け、怪我をしとるんかぃ、弥次さん喜多さん」
きび婆が駆け寄ってきた。
弥次さんは頭を掻き、笑いながら言った。
「ぃやあまいったまいった。輩さんが早くてのう。準備運動しとらんかったから不意を突かれちまって」
「そっかぁ。しかし、大事に至らんで良かったわぃ。舞子や、怪我の手当てをしとくれな」
と、きび婆は2人を客間に入れた。
それを見ていたこにぽんが弥次さんと喜多さんの近くにやってきた。
こにぽんは、2人が怪我をした部分をジッと見ている。
「お爺ちゃん達、ネネ様(鬼子)のお友達?」
そう言いながら、こにぽんはジッと2人の顔を見ている。
「そうそう、鬼子ちゃんのお友達じゃわぃ。さっき助けてもらったんじゃよ」
弥次さんがそう言うと、二人の顔と怪我をした所を何度も交互に見ていた。
「怪我治すの?じゃぁこにぽんがやったげる〜」
こにぽんは自分の手のひらを2人が怪我をしている所にそっと当てた。
鬼子が思い出す。
「あっそうか。こに(小日本)は治療の神代呪文が使えるんだった!」
きび婆は驚いた様子で言う。
「えぇ!?神代の治療が使えるのかぇ?」
「うん。でも治せるのは軽い怪我くらいだけど」
その鬼子の言葉と同時に、こにぽんの呪文が始まった。
こにぽんの手のひらが少し光りだした。そして、
「神代に属するは光、授けるは癒(いやし)」
.
121 :
時の番人:2010/12/28(火) 12:23:50 ID:h+e43MQv
小さく光り輝き、2人の怪我がみるみる治っていく。
それを見ていた弥次さんと喜多さんは、
「おぉ〜すごいね〜お嬢ちゃん」
と、こにぽんの頭をナデナデしている。
「こにぽんって言うの。こひのもと(小日本)だからこにぽんなの!」
そう言って、こにぽんは2人に笑顔を見せる。
「そっかそっか。こにちゃん。ありがとな。もう全然痛くないわぃ」
と、弥次さんは言い、続けて、
「しかしあの時、喜多さんが腰を痛めなかったらワシは怪我しなくてすんだんだけどなぁ」
弥次さんは喜多さんを細めで見ながらそう言った。
すると喜多さんも負けじと言う。
「なにぃ!?弥次さんの動きが悪いから、輩の手からかばおうとして腰を痛めたんじゃないか!」
2人はこにぽんの目の前で言い合いを始めた。
こにぽんが鬼子の側に寄って来る。
「あれ〜お爺ちゃん達、喧嘩してるの?」
鬼子は呆れ顔でこにぽんに言う。
「本当は仲がいいんだけどね」
その鬼子の言葉を聞いたこにぽんは、
「じゃぁ」
と言いながら、また2人に近寄っていき、振袖を振り始めた。
「あっそれは」
と鬼子が止めようとしたと同時に、こにぽんは初めてしまった。
「さくらの花びら恋のもと〜萌え咲け〜」
振袖を振ると、ヒラヒラと2人を桜の花びらが包む。
すると、弥次さん喜多さんの表情が変わる。
「あれ・・?喜多さん腰、大丈夫かぃ?」
「大丈夫じゃ。弥次さんこそ大丈夫かぃ?」
「ほれ!ピンピンしとるぞ!」
と、2人は声を掛け合いながら抱きつき、踊りだしてしまった・・・。
鬼子達は、【やっちゃった・・・】と言わんばかりに後ろを向き、
知らん顔をするしかなかった。
122 :
転載:2010/12/28(火) 12:48:44 ID:jnC6GEcA
760 名前:時の番人[sage] 投稿日:2010/12/28(火) 12:30:43 ID:h+e43MQv [2/2]
すいません。どなたかSSスレに下記の文章を書き込んでもらえますか?
最後の文章を投下しようとしたら・・・
規制がかかってしまいました。
ーーーーーーーーーーーーーー
雪が舞い散る寒空の中、綺麗な満月が神社を照らしている。
神社の風呂場からキャッキャ言う大きな声が響いている。こにぽんの声だ。
鬼子とこにぽんが久しぶりに2人でお風呂に入っていた。
「ネネ様〜もう遠くへ行かないでね」
「うん。大丈夫よ。心配かけてごめんね」
2人はとても楽しそうにお風呂で話をしていた。
鬼子はふと風呂場の窓から外をのぞく。
するととても綺麗な満月が鬼子の心を洗う様にそっと見守っていた。
いとしごの
かたをいだきて
ひゃくかぞえ
ゆばのこうしに
はくれいせつが
(こにぽんの 肩を抑えて 百の数字を数えさせる
ふと顔を上げ お風呂場の窓から外を覗くと 真っ白でとても綺麗な 雪と満月が見えます)
BY,詠麻呂 ◆HxC0abXB7c氏から引用。〜茜葉日記 第三拾六章 湯浴ミ歌 〜
ふと、鬼子は詩を詠った。
「ネネ様〜それどういう意味?」
「こういう意味よ」
と、鬼子はこにぽんの肩を抑え、百まで数字を数えさせた。
「あついよ〜。もういいでしょ?」
「だ〜め、風邪引いちゃうからもう少し温まるの!」
真っ白な雪が、浅く積もる1月2日の鬼狐神社。今日も初詣客が沢山来ている。
バタバタと朝から走り回る皆の姿とアルバイトの人達。
そんな中、お守りを売る売り場に田中みことの姿があった。
投下終り。
詠麻呂氏、詩を使わせてもらいまし〜た。
「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第七章〜【寄り合い所?】へ続く。
.
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
以上です。宜しくお願いします。
つづき
ヒワイなるヤイカガシ(注:ヒワイドリとヤイカガシの融合体)は、日本狗との熱戦の最中に手を休めた。
眼下では小日本(本作では金髪獣耳美少女)の操る矢を使わない弓術によって、鬼子が紅葉の中に倒れていた。
「しまった、あれは鬼退治の神器『追難大弓』だ! ヒワイ!」
身体の大部分を占めているヤイカガシが呼びかけると、主に翼の大部分を占めているヒワイドリが激しくはばたいた。
(うおおっ! しまった鬼子ぉぉぉっ!)
「落ちつけヒワイドリ! いまは落ちついてじっくりパンツ(パンツを穿く方向に飛べ)だ!」
(落ち着いてパンツなんか見ていられるか! まずはおっぱいを助けて人口哺乳だろっ!)
「取り乱すのは分かるが落ち着けそれを言うならパンストはぁはぁ呼吸だ!」
(俺にものを言うときは先ずおっぱいに例えろ! おっぱいに言葉はいらない、感じるんだ! ちくしょう来るぞ!)
ヒワイなるヤイカガシは意識の水面下で仲たがいをはじめ、混乱状態にあった。
すでに日本狗(本作では大型二足歩行犬)の接近を感知していたヤイカガシはヒイラギの剣を振るったが、その剣筋は目に見えて鈍っていた。
その隙を日本狗は決して見逃さなかった。
「いまだ! 異武鬼(コトブキ)十二将《申鬼》機動之術《大返し・レベルテング》!」
かつて戦国の世に名をとどろかせていた第六天魔王の片腕、時空太閤が得意としていた時空間を超越した術が発動する。
ヒイラギの剣を前にかざした直後、ヒワイなるヤイカガシは日本狗の姿を見失った。
気がつけば全身が爆風に晒されており、左右上下に幾筋もの飛行機雲がたなびいている。
瞬時に背後へと移動していた日本狗の攻撃を、ヒワイなるヤイカガシはまったく防ぐ事ができなかった。
振り上げられたハリセンを、ただ見上げるしかない。
「残念だったな華麗なるヤイカガシ! また私の勝ちだ!」
(だから間違えんな狗ーっ!)
「倒してみろ、私は何度でもよみがえる! 言ったはずだ、冬は『柊の季節(ワタシのシーズン)』だとっ!」
(まてお前の台詞じゃない俺の存在を上書きするなぁーっ)
ぱしーんという上空に響く快い音に見向きもせず、小日本は鬼子を見下ろしていた。
ちょうど同い年の女の子が、眠ったように横たわっている。
その顔に達成感も喜びも何一つ浮かんではいなかった、ただ沈痛な顔をしている。
そのとき、小日本はキツネ耳を震わせた。背後に何者かの気配を察知したようだった。
小日本が険な眼差しを向けた先には不気味なネコがいた。
般若の面をかぶり、牙のならんだ口をがたがたと震わせている。面が面だけにその仕草はいちいち怒っているように見える。
「おやおや、狐が感傷に浸るなんてらしくないね、おチビちゃん」
「誰ですか? 怖いのでその格好で話さないでくれます?」
ネコはやがて紙のようにくるくると丸まってしまうと、長い手足を伸ばして、そのままギブソンのギターを背負った女の子の姿へと入れ替わった。
真っ黒い女子高生の制服に茶髪、顔には真面目そうなメガネをかけているが、年齢的にはすでに女子高生を超越していることは確かだ。大学生であるかどうかも危うい。
その証拠はたるみ気味の胸のサイズにも、全てを見透かした感のある不敵な笑みにも現れている。周囲の異様な空気をはね返すようにでんと構えていて、むしろこの空気に馴染んでいるような風情さえあった。
「私は通りすがりの猫又だよ。やれやれ、ヒワイもヤイカも犬っころ相手に苦戦するとはな。こんな時にあいつらは役に立たないね」
「だから、なんですのあなた? あれは犬っころじゃありません、くぅたんですよ。猫又さん、あなた低級妖怪のくせにちょっと偉そうですよ?」
小日本の眉が不愉快そうなラインを描いて頬も膨らんだ、女子高生姿の猫又は意に介さない様子で、二本に枝分かれした尻尾をふらふら振っていた。
「あらあら、手のひらサイズのくせに生意気なおチビちゃんだな。すっげぇ萌えるんですけど?」
なにが手のひらサイズなのか? と問いたげな顔の小日本だったが、急にとてつもない怖気を感じたように身震いし、思わず自分の胸をかばった。
「な、なに……これは、この、全身にまとわりつくような邪悪な気配は……!?」
猫又はメガネをぎらりと光らせ、声高に言った。
「ふふっ、かかったね。これは私が生まれもって授かった『瞳術』……」
「ど、瞳術!?」
「そう……二千年に渡って蓄積された私の寝込み友人帳によって相手を男しか存在できない世界に閉じ込め、
一分間に約五千時間もの長さにわたって男性化・掛け算を繰り返させられてしまうのだよ主に脳内で」
「か、掛け算!? 男性化!? なにそれ!? やめて、そんな目で私を見つめないで! いやぁぁーっ! 低級妖怪のくせにぃぃーっ!」
「にゃっはっはっはー!」
小日本が嫌悪感に苛まれると、般ニャーは尻尾をぷるぷる回してますます楽しそうだった。
「般ニャー!」
不毛なやりとりを繰り広げている二人に、日本狗が空から野太い声を響かせた。
縦にざっくり割れたアパートの残骸からひょっこり姿をあらわした日本狗の、その足元には白い羽毛と鰯の干物が散らばっている。
「どさくさに妙な暗示をかけるな! お前は分かっているのだろう、一体この気配はなんなのだ!」
般ニャーは暢気な表情を一転させ、厳しい目で融合の解けたヒワイドリとヤイカガシを見やった。どちらも既に戦闘不能のようすだ。
「あーあ、やっちゃったね、お前。言っとくけど、鬼子の中の鬼を抑える方法は、そいつらしか知らないよ?」
日本狗は口元を醜く歪めた。不可解な事を言われたようにくびをかしげている。
「鬼の中に住まう鬼、だと? そんなものが存在するのか」
「いると思うよ? 《酒杯》ってのはもともと心の奥底に眠る鬼を呼び覚ます怪器だからね。
鬼子が童子から《酒杯》を受け継いでいるって事は、当然そいつの中の鬼も受け継いでいるはずさ」
「そ、そ、そんなの平気だもん! かかってきなさいよー!」
先ほどの弓をすでに構えて、小日本は虚勢をはった。
だが、言葉とは裏腹にすっかり怯えきった様子で足を震わせ、耳などぺったり頭にはりついていた。
「狐だけあって、妖気に敏感みたいだね、おチビちゃん。けど鬼子の中の鬼は、そんな生半可な武器では退治できないよ。
どんな鬼かは私にも想像つかないけどさ、そんなちっぽけな神器が通用する相手じゃないはずだ。
なにしろ神代の怪物の血を引いている子だからね、鬼子は」
「ずいぶん遠まわしに言うものだな」日本狗は不愉快そうだ。「もう調べはついているのだろう、はっきり言ったらどうだ。鬼子の中の鬼とは……」
そのとき、生ぬるい風が生まれ、鬼子さんを中心にして紅葉が渦を巻いた。
小日本が足元に飛んできた紅葉から遠ざかった。
「き、きゃあーっ! なにこの虫っ! 顔に、顔に足が生えているぅ!」
妖気に長じた狐の目には一体なにが映っているのか、傍目にも愉快そうなものではなかった。
「くうたん、逃げましょう、なんか、ヤバいですぅ!」
「動じるな、相手はまだ私の封印の中だっ。『オーダー!』」
日本狗の発声とともに、鬼子さんの上空にあった光の紋章がひときわ強く光った。
だが、ほとんど同時に鬼子さんの右腕がびくりと動き、がばっと身を起こした。その上半身は、少しずつ、少しずつ地に押し戻されていく。そして元のように寝そべると、まるで二度寝を決め込んだかのようにごろんと寝転がった。
「ひゃっひゃっひゃ、そうそう、しっかり抑えときなー。あの鬼が目覚めたら日の本がマジで危ういからねー」
「たわけた事を、この国などどうでもいい! あんな怪物を解放してたまるか! 小日本、手伝え!」
しかし、小日本は弓を抱えたまま一歩も動かない。ぺたりと座り込んで泣きそうになっていた。
「ふぇぇーっ、怖いよぉ、くぅたん何とかしてぇーっ」
「どうしたんだ小日本っ!」
「無駄だよ、どうやら心の鬼『任せっ鬼狸(きり)』に支配されているようだ……なんだかこのへんの邪鬼が活性化してきているみたいだねぇ、あれなんかもその影響かな?」
般ニャーの指差す先には、それまで置物のようにうずくまっていたガンダムが立っていた。
ボロボロ破片をこぼしつつ、ぎしぎしと軋みながら動いていた。半身の大破した体が舞い上がる火の粉にさらされている。
「ば、バカな……。あの人形にかけた術はすでに解いてあるはず……どうやって動いているというのだ!」
「心の鬼が操っているんだね」
「心の鬼にそんな事が出来るというのか?」
「私に聞くなよ、けど、たぶんそのくらいはできるんだろ」
『ふざけるな、ふざけるな……』
ただぶつぶつと文句を繰り返しているだけのガンダムだったが、次の挙動に誰しも息をのんだ。
『僕がガンダムを一番うまく使えるんだぁ!』
意味の通らない発言と共に力任せにビームサーベルを振り下ろした。
「あ」
「あ」
その先端は上空に浮かんだ五芒星を貫いていた。見る間に空に亀裂が走り、世界が崩壊した。
閃光。
とてつもない爆発によってビル群が次々と薙ぎ倒され、ガンダムはおもちゃのようにばらばらに吹き飛んだ。
小日本は桜の木に捕まって吹き飛ばされるのをどうにかこらえていた。
「にあああっ! くうたん、なんとかしなさいーっ」
同じく爆発をこらえていた日本狗は片膝をつきながら、苦しげに呟いた。
「くそっ、今日は、なんだかだるいや、明日から本鬼だす」
「何を言っているのーっ」
桜の木から飛び出した小日本は、日本狗の両肩を掴んで、熱くなった鼻面に額をぐりぐり押しつけた。
「しっかりしなさい、くうたんっ、やる気出して! 今くうたんが倒れたら、日の本を乗っ取る計画はめちゃくちゃですぅーっ!」
がくがく揺すぶっても日本狗はまるで上の空だ。どうやら完全に心の鬼に支配されているらしい。
ようやくその事を悟った小日本は、うぅ、と唇を結んで振り返った。
彼女の目に映る元駅前は、もはや更地のように荒廃していた。駅前のガンダムはおろか駅すら存在しない。
空に封印はなく、清廉な星空ばかりが広がっている。ただの空虚な空間の底で、紅葉だけがカサカサと音を立てている。
「うう……これは、これはまずいですぅ」
二〇一〇年とある冬の日。宇宙の中心のような大きな満月に照らされながら、日本鬼子さんはむくりと身を起こした。
>>123おおう、ご苦労様です。
見づらいという事はそれだけコンテンツが増えてきたということですね。
決算が楽しみですな!
時の番人さんのSSは一話からずっと連載なんやな!
細かい設定がめちゃ魅力や。完成度がイイ。
そんなに続いている人もいるんか。自分もSS書き始めたけど、やたら長くなって
完成したら投下できるか心配だったんだけど、大丈夫かな。
場面が切り替わるごとに時間を置いて投下するかID切り替えつつ
イッキに全部投下するかで悩んでいるんだけど。
>>130 どっちでも良いかと
大事なのは途中で投げない事だからぬ
みんなの反応を見つつ投稿でもいいと思うし
予告開始します。
長編AAストーリーは鬼子にとっても、自分にとっても初めてなので。
至らぬ点があった場合は他山の石にするなり、たたいて矯正するなりして
鬼子ライフの糧にしてください。
∧∧∧∧∧∧∧∧∧
では、<ザ・ワールド!!!!>
∨∨∨∨∨∨∨∨∨
三三三三三三三 ( |
三三三三三 )) |話をしよう、
三三三三)ミ,((^^彡ミ彡 /彼女に出会ったのは今から50、
三三三三 ((三三 6)彡//\
三三三∩三ミl三三 /ミ彡 /) |いや、60年前だったか。
三三三|彡ミ三l三 / \ / /、 |
三三三ヽ_)二 | ̄ ノ / ミl :l、\懐かしいな。そのとき南京で天界と魔界の代理戦争をしていたんだ。
三 /二 /ミ ‐v-― ´/ )ミ/ / /ヽ ̄ ̄ ̄ ̄
三/  ̄ /ミ lミ (_/ 三`´`´`´
ノヽ、 ノヽ、 みなさん、お久しぶりでゲス。
) y ( ) ( ヤイカガシでヤス。
)ヽ|/( ) (
) ( ( ヘ/////へ丶、
⌒\ ソ << ( ● ≪
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ノヽ、 ノヽ、 今日、鬼子タン達は、一仕事終えて
) y ( ) ( 温泉に休養にきているでヤス。
)ヽ|/( ) ( 今日こそ誰がこのスレの主か
) ( ( ヘ/////へ丶、 みんなに知ってもらうでヤス。
⌒\ ソ << ( ● ≪
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ノヽ、 ノヽ、 思えば、わいが地面に潜れると
) y ( ) ( 知られてからは、家の周りに容易に
)ヽ|/( ) ( 通り抜けられないよう、あちこち五寸釘を埋められたため
) ( ( ヘ/////へ丶、 ローアングルから近づけないよう処置を
⌒\ ソ << ( ー ≪ 施されて幾星霜……
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ノヽ、 ノヽ、 だが、ここならそんな備えもなし!
) y ( ) ( しかも露天風呂!!
)ヽ|/( ) ( 地中から近づくには絶好の条件!
) ( ( ヘ/////へ丶、 石や土なら十分勝つる!!
⌒\ ソ << ( ○ ≪
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ノヽ、
) y ( ヾ 。°っ そんな訳でいざ、レッツゴーでヤス!!
)ヽ|/( r トプン
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄W ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あ、タイミング悪く、割り込んでしまった。スミマセン。先にどうぞ。
規制食らっちまったぜコンチクショー
ハ ,,、--───--、ハ
lハ':::::::::::::::::::::::::::::::::/-.|、
ハノ\:::::::::::::::::::::::::::,ゝ-l:::\
/::ゝノ::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::::ヽ
,':::::::::. . .|:ヘ::::: :::',::::::::ヽ:::::', 華のような美貌。
,':/:: ...|::|ヘ..... ___ゝ::::::ヽ:::::ヽ
,' l /::::::::ィ''__ヘ| ヽ:::::,_===、\::::\::::ヘ
,': :|,'|:::::::/モムゝ `´''".モカミ:::ヽ-ヾ::::::ヽ
,'::::::':`´:::|ヘ |鳴} ヽ .鳴リ|::::::::::|:::::::::ヽ 雪のような肌。
l::::::l:::::::::ヘ /// i ///.|::::::::::|::::::::::::',
. ,'::::::',:::::::::::ゝ _ _ ..|::::::::::l:::::::::::::::ヘ
,':::::::::,:::::::::::',:::> /:::::|::::::::::l::::::::::::::::,:',
,':::::::::::l::::::::::::l::::::::::| ::::: |:: ::|:::::::::,':::::::::::::::::ハ', 血のように赤い眼。
/:::::::::::::',:::::::::::',:::/イ l/,'::::::::,:::::::::::::::::::| l::ヽ
,':::::::::::::::::',:::::::::::l. ',',', ハ、 l::::::::/\::::::::::::/ }::::',
,':::::::::::::::::,,,l:::::::::::', ',',', // ヽ \__l,,/ ̄ ̄´ヽ l:::::::',
,'::::::::::::::::/ ',:::::::::::l ',','/// \、 ノ ゝ `ヽ::', 黒檀のような髪。
,':::::::::::::::/. ',::::::::::', ゝ// /|::::/ , 、、,__ ヽ',
,'::::::::::::::/ | ',:::::::::', . // /.,':::::{ 丿 ゝ─=== {::',
.,'::::::::::::::/ .| ヽ:::::::l .// ./ ..,':::::::| ,,/リ { ゞ─〃 ヽヽ
/:::::::::::/ | ヽ::', / ,':::::::/} ィ─"", ヽ ゝ_ /::::ヽ
/:::::::::/ ヘ / / ,'::::::/ ヽ ィヽ-''',,,,,, ノY::::::::::ヽ
/::::::::/ ヽ / / /::::/_ \ \从从ヽゞ{ .{::::::::::::::ヽ
./:::::/ r二二==___=./ノ__ノ、 ヘヘ ( ヘ ∨丿:::::::::::::::
/ | | (\ヽヽ ∨ |\::::::::::
/ | | (\ ノl ヽ::::::: そして、
/ | | { \ / | ', ヽ:::::
/::::::::::::::::::::::::::::/::::::::::::::/イ:::::::::::::|l!:::::::::::::::::::::|l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
/.:::::::::::::::::::::::::::::,l:::::::::::::::, l!|:::::::::::::|l!:::::::::::::::::::::|l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
,.::::::::::::::::::::::::::::::::l !::::::::::::l |! !::::::::::::|l !::::::::::::::::::::|!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
,.:::::::::::::::::::::::::::::::::::l |::::::::::::l |! |::::::::::::|| l:::::::::::::::::::l l::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::::
l::::::::::::::::::::::::::::|::::::l、!::::::::::::| |! l::::::::::::川:::::::::::::::::::l7::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::
l::::::::::::::::::::::::::::l:::::::l |::::::::::::|=―ゝ::::::::lゝゝ─ヶ' ,, -'':゙:゙:゙゙:':'|l::::::::::::::::::::::
|:::::::::::::::::::::::::::\:::j_7 - 'i': : : : :゙:'ヽ | | i i/ |: :(●): :| |l::::::::::::::::::::::::
〉::::::::::::::::::::::::::::::::\'ヽ, |': :(●): :|'ヽ /.,,,,,,,|: : :''''' : リ |l::::::::::::::::::::::::
.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ト、丶|,,: :'''': :,,リ,-,,,|: '''',ヾミミ゙゙''''__-'''_|:::::::::::::::::::::::::
l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'. --゙'''''''''゙-=≡ ` ̄ ,|l::::::::::::::::::::::::: 鬼の血。
l::::::::::::::::::::::::/:::::::::::::::'. / |.l::::::::::::::::::::::::::
. l:l:::::::::::::::::::::;::::::::::::::::::::、 ヽ ‐ |l::::::::::::::::::::::::::
|:l|::::::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::::、 ,,・-..,┬,,,,...--,,・-..,┬,,,,. |::::::::::::::::
|::L:::r── ′7::::::::::::::::::::\ v || |:‖ -__w ヽリ゙リ゙|j: |::::::::::::::::
7 /:::::::::::::::::::::::::::> 、 \゙Vri ri | ‖iヾソノ , イ::::::::::::::
|. /::::::::::::::::::::::::::::::::::/::::::丶、,゙''''''゙゙''''''゙゙ < //l:::::::::::::::
|! /:::::::::::::::::::::::::::::::/l::::::::::::/ 77 ハ / / .ハ::::::::::::::
それらすべてが彼女の魅力だった。
, '´ ̄ ̄` ー-、 枢軸側、まあ魔界サイドだったんだが。
/:::::::::::::::::::::::::::::::\ そちらに保護されたとき彼女はまだまだ弱くてね。
/:::/:::::::::Δ::::::::::::Δ:::ハヘ 後で聞いた話なんだが、悪魔になったのはつい数日前だった。
|i:::|:::::::::::| |:::::::::::::| |:::}_}ハ
|i |::::从 ノ \l小N
|i (|:::| i ● ● li|ノ
|:::::::i⊂⊃ 、_,、_, ⊂ノi|
|:::::::l::|:::x>、 __, イl:::|
|::::::lノ::::::::::::::`/:::::ノl::::lヽ
|::::::l( ⌒ )..::::/:::::/:::( ⌒ )
从⌒゙ヽ,
,; |i 、、)iリ,._,⌒ヾ, |!
ヽ〃 A´`Aヽ;';、人 l! だが素質はあった。
.从~Kiミ!|ノノ)))) ,〉 k
γ゙ ノ ヘ.|l.゚ ヮ゚ノ|!_〈,k_ノ 彼女は短時間でメキメキ力をつけていって、
( ハ.,_,ノ~r このままいけば鬼札(ジョーカー)のひとつになると皆に予想されていた。
)'‐-‐'l γ´⌒゙ヽ、
,、-ー''( |!〜、,il ゝ、
γ |! 〈 ヽ ミ、 丿
ゝ ( | ノ _,,,..、,,ゝ、 _,.イ /
\'´ γ゙ヽ.,_ ) ゙|! ̄  ̄~゙il γ⌒ヽ`(/
Σ ゝ.,__゙゙'k{ ヾ / !、,___丿 て
> ゝ-ー'゙ <メキメキッッッ
,.‐-、,...___ ____ ___.....、
,i ,ヘ ,r'へ、ヽヽ ::;`ヾ、
,i/;;::ヽf ,rヘ `ヽ`、`''' `ヽ、
,i':i;::;:;:::.V,;;::::i ;. iヽ;;;,`、 ,, ` 、
,f,;!;;;;!;;;;/'''ヽ,;;i ! i;;;;;; ;ヽ ;;;, . ヽ.
,ri:;i'::;;;:;ソ;:. :;, `i i ;;;;;;; ;i ;;;, ヽ ヽ
,r'´i:;;i';;;;;/、、 :;;'';; ,i .: :! ! 、;; ;i ;;;;; i. 、 i
____..,,,,._ ____ / ,i__,i.. トコ´;ヽ、,i' .:;; ! .i; i;;; ,;;i ;;;;;, i ;; i
,ノ':::´::::,;;;;;;;、ヾ:::::::::::`ー‐./___ i, i;;;;;;;<ヽ'i .;;;;; ; i;; ..;i;;; ;;;i ;;;;;;;! ! ;; | だが不幸なことにある鬼女に封印されてね(コンクリで)。
i;;,, :.::::::::::''''''ー- 、;;;;,,,,,:::::.!.::::: ,r` i;;<ヾ゙、i' ,;;;;;;; ,;;;; i;;; ;;;i;;; ;;;i ;;;;;;;;i !;;; !
`、;;;;, ::::::::,r''''´ ̄ ヾ;;;;;;;;;;.|.;;;;;, .! , `'ヽi'; ,;;;;;;;; ,;;;;/一、;i;;;; ;;i ;;;;;;;;;i, !;; !
、;;;;;;;;,, ,f´ ,r''',´へヘ;;;;.,!;;;;;; '、 ヽ ,i;; ,,;;;;;;;;;;;,;;;,/ つ i;i;;;; ;;i ;;;;;;;;;;;i, !;;; !
ヽ;;;;;;;f:::::.:::r',r'´::::::::,r‐''~ヾ;;; i' ,i'´;,;;;;;;;;;;;;;;;;;/ヽつ .i|;;;,,;;;i ;;;;;;:;;;;;!;; , !;;; !
ヽ;:f::::::;:f'';;;, ,r'´ □ ,r''''''`ヽ、f;;;;;;;;;' ;;;;;;;;;;/,,,r‐-‐''i;;;;;;f´ ,;;;::::;;;;;!;; ;, !;; |
ヾ、;;f';;;;;;;;,,f':::.. .,:::r''´□,,r‐'',ゞ‐--、;;;;;;;;;/ ´i;;;; ;;;/;;;;f´ ,;;;;:::,;;;;;;i;;;; ;; |;; !
`ヾ;;;;;f :::::::i::f::.. ,r''r'''´ `'''ヽ,!;;; ;;;/;;;/ ,;;;; :::;;;;;;;;;i;;;;; ;; |;;; !
,rヾi ::::::i::!::::::::!:i':::::::::..... ,i;;;; ,;;;;/;;/ ,;;;'' ::;;;;;;;;;;i;;;;;;; ;;; i;;; !
ノ ヾ、,,i:i::::::::i::i:::::::::::::::::::.. ,i ;; ,;;;/;/ ,;;;;;;;;;λ;;;;;;:: ;;;; |;; !、
__,,.....-‐'''´ __,,...- Y `´ヾ:::i::i:::::::::::::::::::::::::.....:,i´ ; ,;;;;i/, ,,;,;;;;;;;;;;/;;;, i;;;;;: ;;;;; !;; ! i
ヽ.........-‐,,r' ,r i´ i´ノ `>ヾ、:::::::::::::::::::::,i ,;;;;r'´/ ,;;;;;;;;;;;;/ヾ;;;, i;;;;. ;;;;i; !;;; ! i
.f´ ,/! i、 i iノ ,,r'''´::::::::::;;;;`i`ヾ;;;;,i´ ,;;// ,;;;;;;;;;;;/ ヾ;; i;; ;; i; !; i ! i
,i' ,i i :i ヾ´.f´ ::::::::::;;;;;;;;;;i ,/ ,;// ,,,;;;;;;;;/ i i i;; ;; i; !; i i;;;,ヽ
,,r''' し´,,;;; i i ;;ヾノi ::::::::::;;;;;;;;;;;;;ヾ ,;// ,,;;;;;;;;;;;;;/ | ヾ !; ;;; i; !;; i i;;;;, i
,r''´r''´ ;;;;;;;;;; し ;;;;;;;'' i;; ::::::;;;;;;;;;;;;;/// ,,,;;;;;;;;;;;;;;/ ノ i ; ;;;i; |;; i i;;;;;; i
,r'´, / ,,,;;;;;;;;;;;;;;;;;r''´ ヽ;;: ,,;;;;;;;;;;;;;;// / ,,,;;;;;;;;;;;;;;∠,,,_ , ' i ;;;;i; i;;; i i;;;;;;;i
,r´/ ,f ,,,;;;;;;;;;;;;;;;;r''´ ヾ;;;;;;;;;;;ノ ´ ,r'´ ,,,;;;;;;;;;;;;;;;;/、_ `‐-、 i ;;;i; i;;; i |;;;;;; i
,r´ノ ,r´ ,,,;;;;;;;;;;;;;;;;f´ ヾr'´ / ,,;;;;;;;;;;;;;;;;;r'''´  ̄''‐-、 ヽ f ;;;;;i; i;;;;; i i;;;;;;;;i
,,_ // ,,,_ ` イ ,、 ヽ _,,,,,,_丶、 ,
. `¨'''ー--、,,,,,,____,,,,,,,__,,..,,,,__,,,,,,__ / .r' ィ し iミ`l / ,, ’、 ¨´ _,,/
| ! r'´/ / `''-''´ ' 7'' ', -‐''´ _,,/〃
i 〈 ', /イ《i ノ ノ,,_ _,,ノ /
〉人> .ソ /゙ヘミ / /´ .`¨´、_ まあそんなわけで力のほとんどを失って、
/ '7/_ノi |.《'弐ゞ ∠´ /´ ,,゙ 廴ノ 封印されていたわけなんだが。
; ∠ィ´/イ l.ハ l ゞミ、ヾ / イ´ /,‐--ー'
、 ! /´;| i;;;;/::::〉!:::::::::, /〃ミ三二ニ彡ミニ 彡ー-‐ン
.Y'-、 / ,ィ'´;;;l/;:;/:::::|/::::/ |ル' く`弍ン〃 彳 `''''´ 彼女が復活したらしいじゃないか。
/ `'''ー-、_ / _,,,,, -ィ'´;;;;;;;;;;;;;;;;;;i::::::::::::r' ゙''不ニ'゙ r'_,,,,,,-ィ'7 それに今この土地は人の心が生み出した陰(シャドウ/オニ)が
`Y _-イ;;-ニ=、;;;;_;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l::::r‐, ト、,,,_ :::: レ'´ ,,ノ / 出現し始めたみたいだし。
/_,,レ'''ニ-‐へ,,___>-‐-- 、:|〈 ヽ、- 、 :::: / ‐'´_/ / この二つは関係性があるのかも知れないな。
ζ´ r''¨´ (', ,へ、,_ `ヽ \\ヽ、゙==、, ..:: /ー'7¨´ ζ
/::::>'_,,-‐‐ー''''''´ ` _, >、_>、\ヽ,__ ,, '´ / / /
,<;;-‐´ ( /;;;:::::.;' `¨''-ゝ_,, _=<,´_,,,- ´/ / //
. ;ー--t-‐¨''''''T'⌒¨''ヽ、/ `゙ヾ `<;;;;;;;;;;;;;::::::://///;;i
/;;;;::::::;;::::::;;:::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;( ゙,,... `ヽ;;:::::://イ´イ /;;;;;!
/:::::::::::;:::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ ,--゙::::::''⌒ヾ,, ヽ'イ/ノ/∠へ;;ノ
. /:::::::::::;;::;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ、 〈r'i r'⌒ヽ ゞ:::.:.:.. ∨;;|/イ ハ
. /::::::::;':::::;:;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::::;;;;;>、: レ ::! ノ ' :::.:.:.:.. ヽ/ i
.i;;;;;;;;;::::::::::;;:;:;:;:;;;;;:;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ `¨´ '::::: :.: | i
入 /
y'" ̄ i l〈 i / /! / /
/r'" ./ノ入_y Y ´ / / -‐'"
! / y、/ /´ ゞく ´ -‐'" ∠へソ
l i / rヘ イ¨ ̄`ヽ ´ ̄`ヽゞ-一 まあ、人の持つ最大の力。
リ//ftテ> ___, ヽ二二二> それは、自らの意思で進むべき道を選択するということだ。
y-‐─'"二/i. / ktrュ-、 /≦三斤彡
x-─=‐'" 〉 /::::| { 廴 `ー'" / ̄ヾ=イ´
/ ィ ヾ ヘ -='" i:::::::| `ー- ノー./ヘ_.,,入
. / r-‐{ \\ 入:::廴_ ,z-─'".:://:::::i∧ 君自身の目で認識し、最良の未来を選択して行って欲しい。
/ i ` i:::::\ .:: \:::::::::::::......_ノ:::::::::::::} }
/ { }:::::::::`ー--───'" ̄:::::' l::::::::::/ /
. { 人 |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'¨´ .|:::::::/ /.i
. Y |\______>--‐'"|:::ノ .∧
入ゞノ^~´ .|:::::::::::::::::::::::::y-、___y-x_,y=z//∧
. /::::弋 .|ヽ、___,/ .__/ / `ヾ、∧
∧:::::::::ヽ |:::::::::::::::::::{-tr'".r-、 ¨ _,. .:::/ } .|ノヽ
:::::\:::::::`ー,'....:::::∧:::::::::::::::::ト、//叱_}/ / .:::/ ノ`ヾ∧
∧::λ:::::::::::::::::::::/:::弋___ iソ-r'" .ノ / / /圭イ勿;\
:::ヾ、 `ー──-/:::::::::::::::::::::./ ./ / , イ /i_,人圭才ト、〉/:.:
:::::::::::`ー─==/:::::::::::::::::::: /ー/ ´-ヽ、 ノ ,才 {:.:.:.:.\く歹,/.:.:.:.
`ー──---,/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. 'ー'" ー─'" ̄ .∨:.:.:.:.:\ソ.:.:.:.:.
____
/ \
/─ ─ \
/ (●) (●) \ 目が覚めたら病院でした。
__ | (__人__) | __ 知らないにーちゃんに思い出話されました。
| |= \ ` ⌒´ _/====| |
| | / l ヽ | | 病室の外からうめき声がします。
| | / /l 丶 .l .| |
| | / / l } l ̄ヽ___.| |
/ ̄ーユ¨‐‐- 、_ l !__ノ /| |
/ ` ヽ__ `- {し| ./. | | もしかしなくてもやる夫ピンチ?
___ / ヽ `ヽー、} /. /| |_____
ノ ヽ__ `ヽ./. / |_|
/ ノ| ./
/ / |/
| .| | .| | |
|. | .| .| |_ |/
| | | |へ | | ノ| ||/
|_|___ノ|___| \|__|_ノ |_|
| 三_二 / ト⊥-((`⌒)、_i | |
〉─_,. -‐='\ '‐<'´\/´、ヲ _/、 | 女神転生二次創作ストーリー「鬼子とやる夫と時々シャドウ」
|,.ノ_, '´,.-ニ三-_\ヽ 川 〉レ'>/ ノ
〈´//´| `'tt_ゥ‐=、i |:: :::,.-‐'''ノヘ| 3月発表! できなかったら諦めてね。
. r´`ヽ / `"""`j/ | |ゞ'"フ/i/
. |〈:ヽ, Y ::::: ,. ┴:〉: |/
. \ヾ( l ヾ::::ノ |、
j .>,、l _,-ニ-ニ、, |))
! >ニ<:| 、;;;;;;;;;;;;;,. /|
| | !、 .| |
ヽ| | ヽ\ _,..:::::::. / .|
..|.| | :::::ヽ<::::::::::::::::>゛ |_
..| | | _;;;;;;;_ ̄ ̄ |
:.ヽ‐'''!-‐''"´::::::::::::::::: ̄ ̄`~''‐-、 完結までのプロット書き終わったら投下始めるから。
'´ _,. -‐'^ヽ i ヽ┐
\ l r'^ヽ \ノ / l_
\ _/ ,.-、/ ヘ、 // l では選択の時間だッ!
,三.l i-‐‐,! ,!ミr‐v‐<^i ハ
ーァ' /__.二/-弋 、 ,ハ¨i l l
<_ノ`゙ニ_‐-x )`ヾV ! / 新しくスレを建てるべきか、ここに投下するべきか。≫150
'´/i _ヽ.\でアミ、.、ノ _,.ォ'"ノ
ト-'i" l ` ̄ /-‐キイヲ'´!
ミ ,' '、 l ∨ さらに作者はなんと名乗ったらいいか。≫155
\'´_ブ
ハ. i. r' ,. _`',.l せっかちさんの規制の避け方も募集するッ!
i. ', 弋ニ´-‐‐〈!l
. i `¨´ ̄ニ!
ヽ、 ヽ `¨"´T^!
ノ 丶、 '、_,,.. 二ノ 無効だった場合1個したとする。
─----...,,、_`´: :>''´
:::::::::::::::::::::::::::`ヽ、!
ト、::::::::::::::::::::::::::::::|、
>>134 ; ヾ; ;ヽ. . . .:.. .:.. . 。 .. . ....;ゞ:;ヾ:ヾ;;>;ゞヾ;ゞヾ;;>ヾ;ゞ'';ゞ... . .... .. .. . .. ,.r≦彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡≧z、
" ; ; ; ヾ , ..:... i . ヾ;;>ヾ;ゞ'';ゞ ;ゞ:;ヾ:ヾ;;>;ゞヾ;ゞヾ::..:...... ... ,.r≦彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡≧z、
;ゞ ; ヾ ;ゞ .. ... .,人,. ;;ゞ:;ヾ:ヾ;;>;ゞ |ii;ゞ:;ヾ:ヾ;;>;ゞヾ;ゞヾ:ヾ.. . ,.r≦彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡≧z、
" ;" ; ; ヾ,.... く,r个、ゝゞ;;ゞ:;ヾ:ヾ;;>;ゞ;;::iiゞゞ;;ゞゞ;;ゞヾ;;>;ゞヾ;ゞ ,.r≦彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡≧z、
ゞ ; ヾ ;ゞ.. .. . ヽ_|_/ゞヾ;ゞゞノヾゞ:ヾヾiii| <:;ヾ:ヾ;;>ヾ;ゞ'';ゞ.r≦彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡≧z、
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,, ,,,,;::,, ,,;;:,;;:;-,,;;.,,. wwwwwwWwwWwwW:: :;;; ;::;;;::;;; ;::;;;:::;::::::: ::;;;::;;:;;:;;;;:: :;;; ;::;;;::;;; ;::; ふ
" "' ""'':i;,, ::;;;::;;:;;:;;;;: 。。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・゚゚oo::;;;A^^A ;:: :;;::;;;::;;:;;:;;; ぅ
お "':; ::;;;::;;:;;:;;o0o゚゚ ∬ 気 ネ ∫ ( !|リノ(((リ卯 ::;;;::;;:;;:;;;;:疲
潜 k "':; ;::;;:;;:。oO 持 ネ γ ハ゜ハヽ |、- _- .リlO0o ;::;;:;;:;;;れ
入 ’ "':; ;(~~)ヽ ∬ デ ち さ ⌒*(ノ (V) リ>*⌒ 〜〜(´^ヽO, ;::;;:;;:;;; が
成 "':; ;::;(⌒ヽ ス い ま レ,l*^ヮ^ノリ (⌒)(゙゙゙)~ ;::;;:;;:;;; と
////へ功 "':;:;;:;;/~゙゙ヾ⌒`ゝ-(~ l い ⌒~ヽ/~゙゙ヾ⌒`ゝ-(~´`(⌒(⌒~ヽ~;::;;:;;:;;; わ れ
<< ( ● ≪;,,li;;i;i,,li,;li;;;;;ll ゝー ′ '":;;:;;:;;;;:: :;;::;;;::``" ゝー ′ '";::;;:;;:;;;;::;;:;;:;;;;::;;:;;:;;;;::;;:;;:;;; ね る
( ノ
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>>149 " ; ; ; ヾ , ..:... i . ヾ;;>ヾ;ゞ'';ゞ ;ゞ:;ヾ:ヾ;;>;ゞヾ;ゞヾ::..:...... ... ,.r≦彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡≧z、
;ゞ ; ヾ ;ゞ .. ... .,人,. ;;ゞ:;ヾ:ヾ;;>;ゞ |ii;ゞ:;ヾ:ヾ;;>;ゞヾ;ゞヾ:ヾ.. . ,.r≦彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡≧z、
" ;" ; ; ヾ,.... く,r个、ゝゞ;;ゞ:;ヾ:ヾ;;>;ゞ;;::iiゞゞ;;ゞゞ;;ゞヾ;;>;ゞヾ;ゞ ,.r≦彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡≧z、
ゞ ; ヾ ;ゞ.. .. . ヽ_|_/ゞヾ;ゞゞノヾゞ:ヾヾiii| <:;ヾ:ヾ;;>ヾ;ゞ'';ゞ.r≦彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡≧z、
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゙| ゙̄| ゙̄| ゙̄| ゙̄| ゙̄| | "'''''''''''''''" ..,,、vji、iijww、ii..,.|_[__] ll || || |:::::::::::::::::|| 所 ||::::::::::::::::::::| || || ll | | |
,, ,,,,;::,, ,,;;:,;;:;-,,;;.,,. wwwwwwWwwWwwW:: :;;; ;::;;;::;;; ;::;;;:::;::::::: ::;;;::;;:;;:;;;;:: :;;; ;::;;;::;;; ;::; そ じ
" "' 早 ""'':i;,, ::;;;::;;:;;:;;;;: 。。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・゚゚oo:: A^^A :;;::;;;::;;:;;:;;; あ ろ ゃ
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/ / _/ `ヽ、'ー '^` -='イ .,..-" .ヽl、゙l .| :,!
ノ イ_,r-‐'"´ `ヽー<、_ | .l .|、 "''''ツ ./
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_ \ `ヽ,、 _ -‐'´ / .l゙r┘,l゙ ゙l.,i´ .!,_,,,/
`ヽ、 `ヽ、 /, -‐'"´ l゙../ | .,i´
>>152 /! そ
{ ヽ、 |ヽ. ま れ
ヽ. } .│| た は
ノ'" │| ’ コ
ノ、 ゙:\ │/ あ ッ
!、ノ ノ } ‖覚 な チ
:::::::::: /,A^^A._ノ\ .‖悟 た の
::::r''"卯ミ!|リノ)))リ .ノ‖は な 台
::::、 lヾ|l.^-^ノリ. (::‖い の 詞 ギ
、::::::)ノ ハ^∨/ヽ ‖い ? ° ノヽ、 ノヽ、 ク
:::::/!::/.::::< 三];;;::;:フつ ? ) y ( ) ( ゥ
::::{ ヽ、:::_;|*;:;|:: ノ:::::::‖ )ヽ|/( ) ( !!
::::ヽ. }T": ::..!~ /! ° ) ( ( ヘ/////へ丶、
:::::ノ'":::|____ハ ! ノ ⌒\ ソ << ( ○ ≪
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
\\\\\\\////////
>>燃え散れ!!このナマモノ!!<<
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_、 _ |゙.! ./ミ/ヽ
'|ニ- / !│ lニニニニ 'ニ─‐'"´ ,,..、 .,i-、
././ .! ヽ , -----! ーニ二) } .!,, " ¬-、
l .! ! l \ `  ゙̄二二 \ i-'''_ ,i‐'"゙´゙'i ! /''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''',!
! | / | ヽ` ./',.-─‐'‐‐‐' '"゛ l l〈,゙''''''゙,./ '冖冖冖冖冖冖冖'"゙゙"゙゙゙゙゙"゙゙゙゙゙"゙゙゙゙゙"゙゙゙゙゛
ヽゝ-__-‐'ノ |,ヽ___ l l `´
─‐'''´ ` ー‐‐‐'′ ゙‐'"
−終−
その後、各ナマモノらの対処が済んだ後、じっくり休んだそうです。
安価wwww
新スレ立てればいいんでね?
やる夫スレあたりに
>>155 了解です。
では、新スレ立てたらここか本スレで連絡します。
∧二ヘ
( ・ω・ ) おいらをどこかのスレに送るんよ
./ ̄ ̄ ̄ハ お別れの時にはお土産を持たせるんよ
| 福 | |
| 袋 | |,,,....
 ̄ ̄ ̄ ̄
現在の所持品: 帽子 老眼鏡 爪楊枝 ステテコ コタツ 栗きんとん 手帳
NintendoDSi LL 劇場版ガンダム00BD 肝油ドロップ 仁丹 8Pチーズ
バードカフェのおせち うみねこEP8 FF14 USBオナホール ダイアモンド
無の力 最後の鍵 みかん 1024ガルド 源氏の小手 DQバトル鉛筆
アイスソード カニタマ マグロ テレビデオ 粉っぽいカレー 皆伝の証
イオナズン マスカレイド ずんだ餅 コーラ ハワイ4泊5日 エネループ
穴抜けの紐 古文書 マドレーヌ ピーナッツ ブリキの鎧 ジャムパン
ファミチキL オルタリング MSK-008 地方妖怪マグロ オナホ
カンパニーのマイルCSゼッケン ゲゲゲの鬼太郎 異聞妖怪奇譚 キッシュ
『淫乱委員長と鉄壁ツンデレっ娘、禁断の放課後』 ( ゚д゚ ) 小島文美画集
キッチリ計量して作ったフルーチェ
つーか、「フー」にも何処の志那系動画サイトにも日本鬼子動画は、
有って数本しかアップされてないしタイトルでさえ日本字のままだから誰も見ていないな。
(多くて2〜300View、HAKUMEI Ver.でさえ280View)それも日本悪魔ってなに?ググる直訳だろw?
結局津辺もニコ動も倭人しか見ていないから結局「オマイラのオナニー精液垂れ流し」でしか無いわけだな。
文句が有るなら事実を持って反証志那w。
悔しければ翻訳してあっちにうpれ。オマイラの「オナニー見せ合いっこ」には何時も反吐が出る。
つづき
神器の一撃を食らって倒れていた鬼子さんは、周囲の不気味な気配に誘われるように目覚めた。
袖や懐からは紅葉が後から後からとめどなく散っており、膝元を静かに埋め尽くしていく。気ままに風に舞っていたそれらはやがて連携して有機的な動きをはじめ、幾つもの真っ赤な人影に転じた。
いずれの影も人のものではない。かろうじて人に似ていても角や翼を持っていた。
鬼子さんは火のように躍るそれらの形をひとつひとつ見回していた、それらは鬼子さんのよく知っている「心の鬼」たちの姿だった。しかし、それらが鬼子さんに襲い掛かってくる様子はない。
さらに紅葉は深紅の敷物になり、鬼子さんの座する場所に広げられた。続いて五段の重箱、茶釜に柄杓、茶筅に湯のみ、敷物の隅っこには番傘が開き、月の影をゆらゆらと落としている。
鬼子さんがぼんやりと座り込んでいる間に、またたくまに茶会が催されそうな雰囲気になってしまった。
そんなおり、不意に満月の中に丸い影が生まれ、鬼子さんの隣に大きな器となって落ちてきた。
落ちたというより、目に見えない誰かがそこに置いたような穏やかな落ち方である。
鬼子さんは、そこに気配だけ存在する見えない巨人を見上げていた。
「酒呑……童子……さま……」
鬼子さんの前に供えられたのは日本三大怪器のひとつ《人喰い鬼の酒杯》である。
縁はひと抱えほどの広さがあるのに対し、極端に底が浅い器だった。まさに鬼の杯のようなつくりをしている。
「わたくしに……飲めとおっしゃるの……」
そこに何者かがいるとしても、酒呑童子であるはずはない、彼はすでに源氏によって討たれているのだ。
――早よう召せ
それは鬼子さんの心の闇が生んだ幻聴だったかもしれない。
――退魔の傷も癒えよう
鬼子さんは、満月から落ちてきた朱塗りの杯をじいっと見下ろした。
誰か見てはいないかと不安になって、ついあたりを伺ってしまう。心の鬼が深紅の壁となって鬼子さんを取り囲み、外からはよく見えなくなっている。それ以前にそこはほぼ無人の焦土である。
「あの、わたくしまだ未成年……いえ、齢の方ではなくて、いまの体のつくりが、という意味ですけど……」
もごもごする鬼子さん。法律がどうこうという訳ではなく、単に飲むとすぐに酔ってしまうから格好が悪いだけなのだが。
――どうした、酒も飲めぬとはそれでも我が娘か、日本鬼子。そのままではいずれ朽ちてしまうぞ
鬼子さんは渋い顔をして杯に向かった。
重たい杯を抱え上げてみたが、中身は空だ。ただ酒の甘い香りが鼻腔をくすぐった。
鬼子さんは杯の底にうつった自分の顔を見ながら、何度も飲むのを躊躇っていた。
死にたくない、飲んでみたい、という欲求が杯を持ち上げ、しかし、指先にのしかかる杯の質量で後退する。
「酒呑童子さま……いえ、あなたは……あなたは、本当に酒呑童子さまですの?」
鬼子さんはある瞬間、ふと我にかえった。
彼女をそそのかしているのは、ひょっとすると心の鬼かもしれなかった。
彼女の封印を解いたのも心の鬼、遠くのほうで日本狗や小日本を動けなくしているのも、おそらく彼女の周りにいる心の鬼たちの仕業だろう。
彼らの目的は一体なんなのだろうか。まるで鬼たちがひとつの意志を持って、鬼子さんの中の鬼を解放しようとしているかのようだった。
鬼子には透明な巨人の透明な笑い声が聞こえる。
――頼むよ、鬼子
いきなり名前で呼ばれて、かあっと顔が赤くなる。
「いえ……でも……」
彼女の心は重さを決めかねた量りのように揺れはじめた。そして般若の面を持たない鬼子さんの心を揺さぶるのはじつに簡単なことだった。
――鬼子の心の鬼が見てみたいな
「い、いきます、飲みます、見ててください! ていっ」
杯の縁に口をつけ、大きく傾ける。
鬼子さんは空気を吸い込んでいく。エア飲酒である。大きく空を仰いだ姿勢のまま硬直し、やがてぐてんと仰向けに寝転がった。
杯がからんと脇に転がって、鬼子さんは忘年会の帰り道の酔っ払いのように頬を染めている。
「はふ……ね、ねぇ、酒呑童子さま……」
朦朧とした意識の中で、鬼子さんはもう一度巨人の方を見た。
「わ、わたくし、じつは……その、あなたの事が……あなたの……」
酒の力を借りた鬼子さんは、再び酒呑童子に挑戦しようとしていた。
しかし、そこにいたのは酒呑童子ではなかった。牛である。
「そうではなくて、そのですね、友達からはハートフル軍曹と言われていまして…………あれ?」
鬼子さんは首をひねった。彼女が話していたのは金棒を携えた、屈強な牛頭鬼の石像である。
石像は二体あり、阿行、吽行のように大きな門の左右を守っていた。
門。高さ10メートルは下るまいという、巨大な門がそこにあった。
地獄の門と呼ばれるにふさわしい不気味な門扉が、とつぜんこちら側に開かれた。
ゆっくり、ゆっくりと。完全に開く頃には日が昇るのではないかという重々しさだった。
隙間から向こう側が見えたのはほんの一瞬だった、鬼子さんは箱からつまみ出されたティッシュのように勢いよく吸い込まれてしまった。
息をひそめて様子をうかがっていた心の鬼たちは、ぶわっと紅葉を投げ散らし、大歓声をあげた。
「なんなの……これは、一体……!」
乱れ飛ぶ紅葉の向こうの巨大な門を、小日本は凝視した。
「東北の門……《鬼門》!? まさか、異界と現世にこんなに大きな門を開けてしまうなんて……!」
鬼族は異界と現世をつなぐ門番である、その最たるものとして閻魔大王が知られている。知られざる鬼族の秘術に小日本はただ言葉を失ってしまう。
それ以前に異様だったのは紅葉の鬼たちである。彼らは長年にわたって門の解放を待ち望んでいたかのように、ますます狂喜して踊り狂っていた。
小日本はただ見守るしかなかった。日本鬼子の中の鬼の、復活を。
門扉の隙間から顔をのぞかせたのは、どす黒い竜だった。それも一匹や二匹ではない、数百匹もの竜の群れである。
鬼灯(ほおずき)のような赤い目、背にはかんざしのような黄金の柱が突き刺さり、ただれた腹からは血がだらだらと垂れている。
それらの竜は胴体の一カ所でつながっていて、数百匹で一匹の竜を構成しているようだった。
あたかも神代の怪物、ヤマタノオロチの姿に酷似していた。
そして門の奥にある胴体とおぼしき場所から光が放たれている。
小日本は金縛りにあったように動けなかった。いや、まさに不動明王の金縛りの力を持った、神通力の眼光だったのだ。
それは竜たちより何十倍も巨大な生き物の目から発せられていた。
鬼たちの興奮は最高潮に達し、やがて地獄の門が強引に蹴破られた。
中から長い裾をひきずり、高さ10メートルもの門から登場したそれは、門に見合うだけの背丈を持ちあわせていた。
頭部には黒い竜たちがひしめき合い、髪の毛のようにうじゃうじゃとうねっている、その間に黄金のかんざしが乱雑に飾られていた。
顔形は鬼子さんを一回り大人にした感じがあり、二十歳前後だ。眼光は鋭く、瞳は見る者を屈服させる、太陽のような金色に満ちている。
真っ赤な着物の上から黄金色の羽織りを重ね、右肩をはだけて袈裟懸けにし、白い首筋とサラシを露わにし、手には禍々しいつくりの薙刀を握りしめていた。
鬼子の中の鬼子、本成日本鬼子。
ヤマタノオロチの頭髪、明王の眼、まさに鬼神そのものの出で立ちである。恐怖しか与えないおぞましいもののはずが、同時にそれは圧倒的に美しかった。小日本はもはや気圧されているしかなかった。
本成日本鬼子がゴミを見るような視線をくれてやると、心の鬼たちは歓喜雀躍し、救いを求める民衆のように両手を上げて喜んだ。
ちっ、と苦々しげに舌打ちし、乱暴に薙刀をふるった鬼子さん。箒で払ったように一振りで眼下の鬼たちをなぎ払った。
「うぜぇぞ鬼ども! 勝手に私の復活を待ち望んでんじゃねぇっ!」
その恫喝に地面が震えた。鼻血を吹いて失神する者が若干名、感涙にむせぶ者が若干名いた。
散らされても、蹴飛ばされても、それでもなお心の鬼たちは寄りすがり、熱狂する。完全に本成日本鬼子に心酔していた。
小日本は思った。ああ、こいつらは、ただのファンなんだと。
「おい、そこの狐面」
本成日本鬼子が指さすと、心の鬼たちは一斉に道をあけた。ずざっと遠のいた鬼たちの壁の間で、ひとり取り残された小日本はかたかた震えていた。
「な、なにかしら、鬼子さん……」
「国盗りの仲間を探していると、そう言ったな?」
「は、はひ……」
すると本成日本鬼子は黙ってうつむいた。なぜかその表情は憤怒に満ちている。
何を怒っているのか分からない、うつむきたいのは小日本のほうだ。
やがて鬼子さんは、うじゃうじゃうごめく黒竜の間から、上目遣いになって言った。
「私じゃ、ダメか?」
「ひぇぇっ!?」
本成日本鬼子は目にちょっぴり涙が浮かんでいた。
「ダメか? 恐いのか? 私はちょっと胸が生意気だから仲間はずれにするのか?」
「こ、こ、こ、恐い、いいいいえ、確かに、けど恐いとか、そういうのではないのです!」
小日本は尻尾をびんと立てて弁解した。
「わ、私とあなたでは、つ、釣り合わないと思うのですぅ!」
鬼子さんはどうしてかわからないといった風に首を傾げていた。小日本のほうもすでにいっぱいいっぱいだ。
「わ、私は、くぅたんはどうか知らないけど、私は、ただ、せ、先代玉藻の前から力の一部と怪器を授かっただけ……
だから、ほんものの酒呑童子はおろか、その神祖にまで遡るあなたが、三大妖怪クラブなんてマイナーな会に入るなんて、釣り合いません。ダメです、ご自分を卑しめるような事は、してはいけませんわ……」
顔を真っ赤にして、わてわてと袖を振って桃の香りを振りまいていた。もはや自分でも何を言っているのかわからない。
「大丈夫、守ってあげる」
本成日本鬼子は、何でもない事のように言った。
「生成の時の私は頼りないけど、その代わり、今の姿の時は、私がみんなを守る。だから、みんなで日の本を盗りましょう。頭のオロチに誓って、あなた達を傷つけさせはしない」
意味はないのに無駄に頼もしい台詞だった。小日本はますます答えに窮して途方にくれていた。
あー、すんません。恐縮ですが後々面倒なことになる前にぶっちゃけると、
イラスト系AAはほぼ全て先人の作成物っス。
必要なパーツがあったら毎回検索したりそれ系スレで聞いたりして集めてます。
で、それに自分でアレンジを加えてちまちまイジって作ってます。ヘタレAA使いですよ。
一応ぷちAAは自前で作ったの多いですが、よく他の人のパーツの使い方を参考にしてますでス。
そんな訳で興味を持って挑戦してくれる人が増えたらいいな〜と。
絵が描けない人にとっては、視覚的に訴えることができる一つの手段ですから。
167 :
時の番人:2011/01/07(金) 20:14:46 ID:smzeaL6f
今、ここ誰も使ってませんね〜!?
使ってないようなので今から
「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第七章〜【寄り合い所?】
を投下します。 二次創作です。
それと今回も挿絵・・無しです。
168 :
時の番人:2011/01/07(金) 20:15:53 ID:smzeaL6f
●「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第七章〜【寄り合い所?】
冷たい風が吹き降ろす山間。新年の行事も一通り終り、鬼狐神社はいつもの静けさを取り戻している。
しかし、詣で客はやはりいつもより少し多めか。
いつもなら、こにぽん(小日本)と行動をともにしているハチ太郎(日本狗)が、
単独で裏庭の辺りの匂いを【クンクン】嗅いでいた。
そして首をひねっている。
「う〜ん・・・。何か匂うような、匂わないような・・・」
ハチ太郎はその裏庭をグルグルと回り、また止まって辺りを【クンクン】と嗅いでいる。
それが何度も何度も続いていた。
ヒワイドリは鬼子の横に・・・ではなく、神社本堂の屋根の上で一人暖かいお茶を飲んでいた。
そのヒワイドリも何故か周りの匂いを【クンクン】と嗅いでいる。
匂ってはお茶を飲み、飲んでは辺りの匂いを嗅いでいる。そして首をひねっている。
ハチ太郎は遠目で、そのヒワイドリの行動を見ていた。
また、ハチ太郎は首を振る。
「ちがうなぁ〜。ちがうんだよなぁ〜・・・」
と、ハチ太郎は言いながらまた、裏庭をグルグル回っていた。
鬼子と舞子は裏庭の奥にある古井戸に来ている。年末に作ったお餅が無くなった為、
綺麗な井戸の水を使い、お餅を作ろうとしているのだ。ちなみにこにぽんも一緒だ。
水道水で作るより、この井戸の水でお餅を作る方がとても美味しく出来上がるのだ。
弥次さんと喜多さんは相変わらず駄洒落を言いながら、ノンビリと本堂の掃除。
織田さんと秀吉は境内でお客様のお相手を。
きび爺ときび婆は囲炉裏に当り、暖を取っている。
そんなノンビリした鬼狐神社。しかしハチ太郎とヒワイドリだけがいつもと様子が違うのだ。
古井戸で水をくみ上げてる鬼子と舞子、それにこにぽん。
「あれ〜、井戸の水が少ないわね・・・」
舞子が、いつもと違う井戸の水かさに首をかしげている。
「おかしいなぁ」
と、舞子は井戸の中を覗くが、水かさが少ない意外は何も変化がなかった。
鬼子も一緒に井戸の中を覗きながら舞子に聞いた。
「いつもなら、どの辺りまで水があるんですか?」
舞子は指をさしながら、鬼子に答えた。
「ほら、あそこの黒くなってる所までいつも水があるんだけど、
今はそれより2mくらい低くなってるわ。こんな事初めてよ」
鬼子は首を伸ばしながら中を覗いているが、原因など解るはずは無い。
「年末は、いつも通りお水があったんだけど・・・」
舞子はそう言いながら、水をくみ上げた。
「ネネ様〜。こっち来て!こっち!」
元気のいいこにぽんの声が、古井戸の奥の林の向こう側から聞こえて来た。
「どこ?どこにいるの〜こにぽん」
と、鬼子と舞子は声のする方へ歩いていく。
古井戸から歩いてほんの10Mくらいだろうか。こにぽんの姿が見えてきた。
そして、こにぽんの姿が視界に入るとその足元には、キラキラ光る綺麗な水溜りがあった。
水溜りと言うより、小さな池の様にも見える。とても澄んだ水で直径5Mくらいだろうか。
「あれ〜・・・?こんな所に池なんて無かったのに・・・」
舞子は境内の地形を思い出しながら首をかしげている。
「うわ〜、綺麗な池ね」
鬼子はこにぽんに近寄りながらそう言った。
169 :
時の番人:2011/01/07(金) 20:17:03 ID:smzeaL6f
「あっ、何か浮いてる!」
こにぽんは指をさしながらその浮いている物をじっと眺めていた。
その浮いていた物が、【スー】っとこちらに寄ってきた。
鬼子と舞子は小さく眉間にシワを寄せながらその動く物を見ている。
こにぽんは池の縁にしゃがみ込み、その近寄ってきてる物を目を凝らしながら見ている。
「なぁ〜んだ。葉っぱかぁ〜」
こにぽんはそう言いながら、木の枝を拾いその葉っぱを突っついた。
すると、【ピョコッ】と葉っぱの間から奇妙な魚の顔が出てきた。
「ヒャッ」
こにぽんは小さく声を出し、少しビックリして後ずさりしながら鬼子の後ろへ回った。
「ネ、ネネ様〜、あれなぁ〜に?何か気持ちわる〜い・・・」
こにぽんは鬼子を少し前へ押しながらそう言った。
「お、押さないでよこにぽん。私も気持ち悪いんだから」
鬼子の目に映っているソレは、目と口が少し大きめの魚?の様に映っている。
その魚が、池から【ピョコッ】と飛び出して来て、トコトコとこちらに歩いて来た。
舞子はとっさに鬼子の後ろへ隠れた。
「お、鬼子ちゃん・・・。あの気持ち悪い魚・・何・・?」
「わ、私に聞かれても解りませんよぉ〜・・。舞子さん、光の世に歩く魚っています?」
舞子は鬼子の腕を掴み、首を振りながら言った。
「そ、そんな魚見た事ないよ・・・」
鬼子は2人から離れ、少しだけその魚に近づいた。鬼子の手には、こにぽんが持っていた
木の棒が握り締められている。
鬼子がその木の棒をそと突き出す。
するとその変な魚も手を前へ突き出した。
手と言うより、葉っぱみたいな形をしているが。
鬼子は気持ち悪い物を見るような表情で固まっている。
変な魚も、大きな目で鬼子を見つめジッとしていた。
「パンツを寄こせでゲス」
唐突にその変な気持ち悪い魚が言葉を発した。
鬼子はビックリし肩をすくめ、【ピュー】っと舞子とこにぽんの所に飛んで行った。
悪しき輩みたいに、怖いとか危ないとかそういう類ではない。
一言・・・気持ち悪いのだ。
「あ、あいつ喋ったよ・・!?」
こにぽんが鬼子の後ろから出てきてそう言った。
そしてこにぽんは、また木の枝を拾いその変な魚に少しづつ近づいて行った。
今度は、こにぽんとその変な魚がにらめっこをしている。
「こにぽん・・あんまり近づいちゃだめよ・・」
と鬼子は言うが、こにぽんは先ほどの気持ち悪さを通り越して、興味がわいているみたいだ。
こにぽんは【ニタッ】と笑った。
「お魚ちゃん、臭いね」
そう言いながらこにぽんは、その変な魚のお腹を突っついている。
「ポヨン、ポヨンしてるね。お魚ちゃんのお腹〜」
こにぽんはとうとうその変な魚を使って遊びだした。
その変な魚は一歩も引かず、ジッとこにぽんを見ている。
170 :
時の番人:2011/01/07(金) 20:18:08 ID:smzeaL6f
「お前のパンツを寄こ・・・」
とその変な魚は言いかけたが、止めてしまった。
そして、こにぽんと鬼子を見比べている。
「お前のは要らないでゲス」
そうこにぽんに言って、鬼子の方に近づいて来た。
「俺、ヤイカガシでゲス。ヨロ!」
と言いながら、その魚は葉っぱの様な右手を上へ上げた。
それを見ていた鬼子と舞子は身体に寒気が走る。
「ぃやぁ〜・・気持ち悪い〜・・・」
鬼子は声を震わせながらそう言った。
「鬼子ちゃん・・・これって輩なの?」
舞子は気持ち悪さに身震いしながらそう聞いた。
鬼子はそのヤイカガシ(変な魚)をジッとみながら少し首を振った。
「いや・・・違うと思います。危険って言う感じじゃ無くて・・気持ち悪いから・・・」
「と、とにかく捕まえなくちゃ・・・」
その言葉を聞いた舞子は、鬼子の方に疑いの目をやった。
「つ、捕まえるって・・鬼子ちゃん正気・・?」
「だ・・・だって、歩く魚ってどう見ても変でしょ!?光の世に存在していない
生き物だったら、捕まえなくちゃ・・・」
鬼子はその言葉を言いながら腰が引けている。
「舞子さん・・・捕まえてくれる?」
鬼子は苦笑いしながら舞子に思いもよらぬ言葉を発した。
「えぇ〜・・・な、何で私がぁ・・・これは鬼子ちゃんの役目でしょ!」
舞子は鬼子を、そのヤイカガシに差し出すように押し出した。
「ぃ・・いや〜止めてよ舞子さん」
「鬼子ちゃんがやってよ!」
そんな2人の掛け合いが虚しく辺りに響く。
【ピトッ】
何か冷たい物が鬼子の足首に当った。鬼子の全身に寒気が走る。
そして鬼子は、恐る恐る足首に触れる冷たい物を見た。
すると、黄緑色の蛙が鬼子の足首を触っている。
【キャー】
鬼子は思わずそう叫んで、足を振り回しその蛙を振りほどいた。
「桃もすもももモモのうち。生足は萌えるでケロ」
その蛙がそう口走っている。
「おいら、モモサワガエルでケロ。ヨロ!」
そう言いながら気持ち悪い蛙は右手を上へ上げた。
「な・・・何なの・・アレ・・・」
鬼子と舞子は抱きつきながら二人でそう言った。
「ま、また気持ち悪いのが出てきた・・・。アレも・・・輩じゃなさそうだけど・・」
鬼子は、一応得体の知れない蛙の気配を、そう感じ取っていた。
舞子は身の危険は無さそうに思ったが、気持ち悪さは拭えない。
「そ、そうなの?私には解らないから鬼子ちゃん捕まえてよ」
舞子の素直な言葉である。
その言葉を聞いた鬼子の背中にまた悪寒が走り、舞子の腕をさらにギュッと抱きしめた。
「い、嫌ですよ・・。あんな気持ち悪い蛙・・・」
しかし舞子は、自分にこの得体の知れない蛙の処理が降りかからないようにと、
鬼子の方に顔を向け、少しずる賢い発言をする。
「でも、街に出て悪さしたらどうする?」
・・・舞子の勝ちである・・・。
「・・・そ・・それは・・・」
鬼子の頭の中は、気持ち悪い、退治、ほおって置く、狐様の命、やっぱり気持ち悪い、使命・・・
と言う言葉がグルグル回っていた。
171 :
時の番人:2011/01/07(金) 20:19:23 ID:smzeaL6f
ヤイカガシとモモサワガエルは引き合うように二匹で見つめ合っている。
ヤイカガシがお尻を左へ振る。すると、モモサワガエルもお尻を左へ振る。
そして、またヤイカガシがお尻を右へ振る。すると、モモサワガエルもお尻を右へ振る。
そのままヤイカガシは左手を上へ上げた。するとまた、モモサワガエルも左手を上へ上げる。
そして、2人・・二匹同時に
「イェ〜ィ!」
・・・鬼子と舞子はその様子を呆然と見ていた。
「イェ〜ィ!」
今度はこにぽんが二匹の近くでそう言いながら左手を上へ上げていた。
「私、こにぽん。宜しく〜」
こにぽんはにこやかな顔でそう二匹に話しかけた。
「こにぽん、話しかけちゃだめ!」
鬼子のその言葉は、こにぽんの好奇心にかき消される。
「あんたたち、お友達なの?」
こにぽんは座り込みながらその二匹に聞いた。
ヤイカガシがモモサワガエルの方をジッと見つめそして、
「いいや、初めて見たでゲス」
と言う。すると、モモサワガエルも
「そうそう、初めて会ったケロ」
と、二匹仲良く握手をしている。
その様子を見ていた鬼子と舞子は、さらに気持ち悪さがこみ上げて来た。
【ワオン】
何処からかハチ太郎の声が聞こえて来た。そしてハチ太郎が草むらから飛び出てくる。
「あ、ハッちゃん。いい所に来たわ。この気持ち悪い生き物を捕まえてくれる?」
鬼子は少し安堵感を抱きながらそう言った。
そしてハチ太郎は、ヤイカガシとモモサワガエルの近くに行き、匂いを嗅いでいる。
「こいつらかなぁ・・?」
そう言いながら、ハチ太郎は二匹の周りをグルグル回りだした。
ヤイカガシとモモサワガエルはビクビクしながら硬直している。
さすがに、狗(犬)の前では怖いみたいだ。それに、ハチ太郎に闇世の匂いが漂っているので、
それを敏感に感じているんだろう。
「・・・ん〜・・・違うなぁ・・・まぁいっか。腹減ったから帰ろっと」
とハチ太郎は言いながら、またそそくさと裏庭の方へ戻って行った。
「あ・・ハッちゃん!どこ行くのよ。戻って来て!」
しかし鬼子の言葉は儚く消えていく。そしてハチ太郎は戻ってこなかった・・・。
鬼子と舞子の表情が、蛇の前に取り残された小鳥の様になっている。
「いぃじゃん。二匹とも輩じゃないみたいだから。友達になっちゃえば」
こにぽんの純真な無情の言葉。
「いやよ〜〜〜そんな気持ち悪い生き物・・・」
鬼子の純真な悲痛な言葉・・・。
「お、鬼子ちゃん。とにかくこのお水持って行きましょ・・・。ここから離れたいから」
舞子は身震いしながら鬼子にそう言い、鬼子の手を引いて裏庭の方に歩いて行った。
「こにぽんも早くこっちに来て!」
鬼子はそう言ったが、こにぽんはその二匹と一緒に笑顔で歩いている。
と、言う事は、その二匹が鬼子と舞子の後を付いて歩いてると言う事だ・・・。
鬼子と舞子はやっとの思いで、裏庭に出てきたが、【ピタッ】と2人の足が止まる。
その時鬼子達の目に飛び込んで来た光景は、ヒワイドリの前にまた二匹の変な鳥が居たからだ。
172 :
時の番人:2011/01/07(金) 20:20:27 ID:smzeaL6f
「何あれ〜〜〜、また変なのがいるよ」
鬼子はまた舞子に抱きつきそう言った。
そして何やら三匹で話をしている。
「おいら、ヒワイドリ。ヨロ!」
右手を上げてヒワイドリが言った。
すると、ヒワイドリの右前に居た変な鳥がそれに答える。
「俺、チチメンチョウ。ヨロ!」
と、右手を上げながらそう言った。
そして、左前に居た変な鳥が今度は答えた。
「おいら、チチドリ。ヨロ!」
同じ様に右手を上げながらそう言った。
そして、お互いに匂いを嗅ぎあっている。
その輪の中に、ヤイカガシとモモサワガエル。そしてこにぽんも駆け寄り、また自己紹介が始まった。
その光景を見ていた鬼子と舞子はもう、言葉が出てこない。
2人はその輪の横を、そ〜っとそ〜っと音を立てずに歩いて行こうとしていた。
すると、ヒワイドリが鬼子達の方を指差しながら言った。
「ほら、あれが鬼子だ。その横にいるのは舞子。2人とも貧乳なんだよなぁ〜」
2人は、【ドキッ】として立ち止まってしまった。
チチドリが2人に近寄り、その周りをグルグルと回りだした。
「ふ〜ん。おいらは、貧乳が好きだからこれでいいと思うぞ!」
その言葉を聞いたヒワイドリは、こにぽんの方を指差した。
「じゃぁこれは?」
チチドリがこにぽんの方を見ながら言う。
「子供のチチに興味はねぇ。おいらが好きなのはあくまで大人の形のいい貧乳だよ」
すると、ヤイカガシがその話しに割って入る。
「お前達は、パンツに興味ないでゲスか?」
今度は、モモサワガエルが話しに割って入って来た。
「おいらは、生足派!特に太ももに萌えるでケロ〜」
「君達、色々意見が有るようだが、まとめるとこう言う事だな」
チチメンチョウがしゃしゃり出てきて、落ち着いた口調でそう言った。そして、
「無乳は罪なり、乳は巨乳なり」
鬼子達の方を指差しながら自慢げにそう言った。まとまっていない・・・。
鬼子達は2人で抱きついたまま動けない・・・。
そして、チチメンチョウが2人に近づいて来た。
「君達、栄養はちゃんととっているかね?」
チチメンチョウがお説教??まがいの言葉を発する。
すると、鬼子が顔を真っ赤にしてやっとの思いで発言した。
「あ・・あんた達には関係ないでしょ!」
つられて舞子も言う。
「そ、そうよ。ほっといてよ」
そんなどうでもいい話し合いが、裏庭で続いていた。
173 :
時の番人:2011/01/07(金) 20:21:37 ID:smzeaL6f
きび婆は、鬼子と舞子の帰りが遅いので、探すため裏庭に出て来た。
すると、きび婆の目に変な生き物達が映るではないか。それに鬼子と舞子が囲まれている。
その光景を見たきび婆が、血相を変えて駆け寄ってきた。
「悪しき輩か!?」
ときび婆は大きな声を出しながら近づいて来た。
鬼子と舞子はきび婆の顔を見ながら・・・泣いている。
「なんじゃぃ、この気持ち悪い生き物達は」
きび婆がその気持ち悪い生き物達を狐火になりながら蹴散らした。
「んん?輩・・じゃないのう。それにヒワイドリも一緒か?」
きび婆は元の姿に戻り、鬼子達をかばう様に近くに来てくれた。
「き・・きびバァ〜〜〜〜〜〜〜・・・」
と鬼子は泣きながらきび婆に抱きつく。
舞子も思わずきび婆に抱きついて、涙を流している。
鬼子と舞子のその涙は、気持ち悪さと屈辱感が入り混じった複雑な涙だ。
蹴散らされた、ヒワイドリを含めた五匹の気持ち悪い生き物達は、
また、鬼子達の方を指差しながら自分勝手に話しだした。
「乳の話を・・・」
「モモに萌え〜・・・」
「おパンツが・・・」
「大人の貧乳・・・」
「無乳は罪・・・」
それを聞いていたきび婆は、徐々に、徐々に、徐々にイラついた怒りがこみ上げて来る。
そしてまた、狐火になりその五匹に飛び掛って行った。
「いいかげんにせんと、焼いて食っちまうぞ!」
きび婆の闇世の恐ろしい気を感じたその言葉に、一瞬にして五匹の会話が止まってしまった。
「ほんに・・・また変なのがこの神社に寄ってきよるわ・・・」
きび婆はそうつぶやき、鬼子と舞子のお尻を【ポン】と叩いた。
きび婆の心は、こんな力の弱い変な生き物に動じるな、とでも言いたげな行動だった。
鬼子と舞子はきび婆に付き添われ、やっとの思いで神社に入って行った。
こにぽんは・・・その五匹を木の棒で突きながら遊んでいる・・・。
いつもなら、真っ先に神社へ入りくつろいでいるハチ太郎だが、
彼は寒い中、奇妙な五匹の生き物達から離れ、裏庭に出て暖を取っていた。
その夜、裏庭では遅くまでその五匹の噛み合わない談笑が続いたとさ!
投下終り。
「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第八章〜【結界】に続く。
ーーー
新しい登場人物=ヤイカガシ・モモサワガエル・チチメンチョウ・チチドリ。
作者様、お借りしました。また、スレなどに投下されたそれぞれの言葉なども
お借りしました。
ーーー
乙。とうとうギャグパート組合流ですかw ある意味ワールドブレーカーなこのキャラ達が
この世界ではどんな立ち回りをしてくれるのやら……
175 :
103:2011/01/09(日) 22:21:22 ID:da/M7eB+
避難所でご意見を頂き、創作支援の目的にて現代版の基本ストーリー案をアニメ風に、
とにかくベタなネタを目指し書いてみる事に挑戦する事にしました。
第一話はこちら↓をお借りする事にして、第二話から続きとして素案のみ書いていきます。
日本鬼子(ひのもとおにこ) 〜架空の街を作ろう〜
アニメ用第1話(第1稿)
http://www22.atwiki.jp/onikocity/pages/34.html 出来るだけ一話一レスに収まる形を目指しますが、失敗したらごめんなさい。
あと第十一話は手前味噌ですが87〜102を、一時間スペシャルとかで入れるイメージで…。
かなり粗雑なものになるやもしれませんが、何かの参考になりましたら幸いです…。
176 :
103:2011/01/09(日) 23:25:59 ID:da/M7eB+
夕暮れ時…露天風呂にゆったりと浸かる女性の近くに、ヒラリと羽が落ちる。
一体どこから…ふと見上げた先には、大きな赤い目…黄色い嘴…。
女性客『きゃあぁぁぁぁあ!!!!』
・第二話:温泉への侵入者…ヒワイドリ!
???「申し訳ございません、料金は結構ですので…」
女性客『本当にビックリしましたよ!もう二度とこんな事無いようにして下さい!』
???『はい、本当に申し訳ございません。今後ともどうかお願い致します』
警察『柚子さん…やっぱり何もいないよ。たぶんもう逃げたんだろうね』
お客を見送る若女将は、最大限に下げた頭を上げると、ゆっくりと警察の方へ振り返った。
女将イメージ設定>
http://loda.jp/hinomotooniko2/?id=474 柚子「そうですか…やっぱり屋根や壁をもっと用意すべきですかね〜。
でもそうしたら露天風呂の意味があまり無くなりますけど…」
この旅館に引かれた冬至温泉は、昔から街の高台に湧いており、以前なら他に高い建物も無く、
小さいながらも訪れる人の絶えない隠れた名所となっていた。だが最近では近くに大きな道も出来て、
覗こうと思えば誰でも入り込めるし、高いビルからも見ようと思えばみれてしまう。
最近続く不審者騒ぎに、女将は何度も警察を呼ぶがどうにも逃げ足が速く、捕まらないでいた。
柚子「どうしたものかしらね…」
入浴時間を越えて、一息つく頃には女将自身も風呂に入る…すると茂みの向こうに赤い目が…。
柚子「あれね…え!なんで全身羽毛に…あなた!!誰なの!!」
???「名前か…とうに忘れたわ。仮に『ヒワイドリ』とでもしておこうか。
それよりも…乳の話をしようじゃないかぁ!!」
177 :
103:2011/01/10(月) 00:11:20 ID:rjIKjq8i
う…結局一レスには収まらない感じだったので分けました。
そして一話目をお借りした所に、二話や他の設定案もあるのに今更気づいた。
完全にオリジナルな流れになってしまう事を、ここにお詫びしておきます。
柚子は掃除用の高圧バルブをひねると、熱い湯をヒワイドリに向けて放出した。
驚いたヒワイドリは一目散に生垣を飛び越えて逃げていった…。
柚子「あんなにピョンピョン飛び跳ねられるなんて、人間じゃないのかしら…」
場面は変わって山の中にある家…小日本が料理をする鬼子の手元を見ている。
小日本「ネネさま、知ってる?最近白いお化けが温泉を覗くんだって〜」
鬼子「いつのまにまた街へ降りたの?あんまり一人で遠くへ行っちゃ駄目よ」
小日本「降りてないよ〜。この近くだもん。ねぇ、そのお化けって心の鬼じゃないのかな?」
鬼子「最近はそんな気配を感じないわ。幾度も人の目にまで触れるなら、相当強い鬼のはずでしょ」
小日本「…ネネさま、一度行かない?私も大きいお風呂に入りた〜い!」
鬼子「私達は入れないでしょ。でも…気にはなるから一度見に行きましょうか?」
小日本「やった〜!お風呂、お風呂!」
場面変わって夜の旅館の入り口…笠を被った鬼子が訪ねてくる。
鬼子「あの…ここで人外の者が悪さをしていると聞いたのですが…。
もしかしたら私が力になれるかとおもいまして…」
柚子「まぁ、あなたは?確かに私自身も見ましたけれど」
鬼子「私はひのもとおにこと申します。そういった人外の者を狩る事を生業として…」
話しているうちに、奥から悲鳴があがる!タオル一枚で出てくる女性客数人。
女性客『お…女将さん、また…また出た!』
鬼子と柚子は一緒に温泉まで走っていく。露天風呂には白い、鶏の様な外見の異形がいた。
ヒワイドリ「さぁ、乳を見せるが良い。最高に淫靡な乳の話を共にしようじゃないか!」
柚子「あれです!私が入っている時にもあいつが出てきて…」
鬼子「この気配…心の鬼じゃあ無い?あなたは一体何者なの?」
小日本「ネネさま、あの鳥信じたく無いけど私と似た感じがするよ」
ヒワイドリ「そこのお嬢ちゃんが何者かは知らないが、私は名も忘れられた神の一人だそうだ…。
さぁ、それよりも一緒に乳の話をしようじゃないかぁ!」
鬼子はその声を聞くと身構え、薙刀を振り下ろした。ヒョイと避けるヒワイドリは、屋根に乗る。
鬼子「あなたが神様ですって?なら…おとなしく社にお帰り願いたいところね」
ヒワイドリ「知るか!この温泉に来る者達の乳があまりにも美乳だからか、
それを見たさに目を凝らす人々の淫(引)力に惹かれて来ただけさ!見よ!エロを力に変えた人々の強さを!」
ヒワイドリが羽を大きく広げると、その先には双眼鏡を持った人やビルから見下ろす人々の姿が。
鬼子「だからって人々を驚かして良い事にならないわ!女将さん、あなたはあの覗き達をどうにか…」
言うなり、鬼子自身もヒラリと屋根に飛び乗る。その時、笠が不意に落ちてしまう。
月夜に照らされた鬼子のシルエットは、角もあらわに見えるが、柚子は恐怖よりも感動を覚えた。
柚子「綺麗…同じ人と違う姿でもまるで違うわ」
178 :
103:2011/01/10(月) 00:59:04 ID:rjIKjq8i
ヒワイドリは鬼子の薙刀をヒラリヒラリと避けていく。だが鬼子も負けていない。
徐々に崖際へ追い詰めると改めて薙刀を構え直した。
鬼子「観念なさい!いくら神様でもお痛が過ぎますよ…帰って頂きます!」
ヒワイドリ「私は消えない。エロは人々の夢だからだ!エロ心は何度でも蘇るさ!」
ふざけた話をするヒワイドリを薙刀で切り払うと、ヒワイドリの体は散り消える事無く、
白い人魂状になって、いずこかへ勢い良く飛び去っていった。
柚子女将は鬼子が戻ってくるのを待っていた。その手には落としていった笠を持ちながら。
鬼子「あの…やつは去りました。しばらくは現れないかと思います」
柚子「そう。有難うね。今度屋根を付けて頂く事にするわ。それと…ハイ、これ」
そっと笠を差し出すと鬼子は慌てて角を隠す。その姿を見て不意に笑ってしまう柚子。
鬼子「…?怖く、無いんですか?こんな角のある姿の私なのに」
柚子「えぇ。大丈夫ですよ。むしろとても綺麗でしたわ。…もし良ければ、お風呂に入っていかない?」
小日本「わ〜い!やったぁ〜!」
その日は、他のお客が帰ってしまった事もあり、小日本と鬼子はゆっくりと広い湯船で疲れを落とした。
…第二話の案は以上です。自分のイメージでは普段は五右衛門風呂に入っている鬼子さん。
三話目では冬の暮らしに困る鬼子をほぼ無声で紹介し、旅館に居候するまでを書く予定です。
しかし…全然短くまとめられないので、残りは明日以降にボチボチと書かせて下さい。
お目汚し、失礼致しました。
乙です。どんな感じで最終話になるか見守っていきたいと思います。
……ちなみに夏休み怪奇スペシャルネタとか、2期作成ネタとか、春休み3時間スペシャルネタは…
ハッいえ、何でもありませぬ。
>>179 有難うございます。今の所本スレに以前張ったのとほぼ同じく、
鬼子が自身の内面と向き合う話で終わらせようとしています。
もし継続意識するなら何故か学校へ通う話とか、ギャグ要員ではないライバルとかですかね…。
あとは毎回違う心の鬼が出てきて、バイキンマンポジションのヒワイドリ達との絡みかなぁ。
今の所自分には別ストーリー考える余裕はありませんですので、他の方々へ期待します。
…誰も使っていない様子なので、嫁のお弁当詰めたら後ほど一話位書くと思います…多分。
181 :
103:2011/01/11(火) 09:01:39 ID:W7OizjBI
―肌寒い吐く息白く霞む朝、鬼子が井戸から水を汲んでいる。
小日本は恐らくまだ寝ているのだろう、その姿はない。
第三話:温もりの場所(ほぼ全部無声で場面のみ流れる感じで)
人里から離れて暮らすという事は、並大抵の苦労ではない。
時折角を隠し街へと降り、托鉢に回っては必要最低限の物を揃える。
檀家を持つわけでもなく一人心の鬼を祓う鬼子にとっては、お金無しに暮らしが成り立たない状況は、
一歩間違えれば行き詰まってしまう生活が続く。だが心の鬼を祓う事で報酬を得ようなどとは、
微塵にも考えず、ただ自らの使命として祓い、自らの角で怯える人々からは離れていた。
山小屋に帰ると小日本がお腹を空かせていた。裏にある畑に行くと、朝の寒さで霜が降りていた。
葉をやられて萎れている大根。その根はまだまだ細く、多少の食にしかならない…。
(場面切り替え、CM等?)
一方の冬至温泉の女将・柚子は覗き騒動から客足も戻り、忙しなく働いていた。
時折思い出すのはあの二人、今はどうしているのだろうと考えるも再会はしていなかった。
不意に街外れで心の鬼と戦う鬼子を見かけるが、常に笠を気にしながら戦う姿を見て思い出す。
『角のある姿は怖く無いですか?』そう…もし普通に見かけたら恐れ、迫害するかもしれなかった。
助けられた事もある上、彼女の儚さや美しさに触れたからこその感覚かもしれない。
鬼子が多少怪我をしているのを見て、柚子は思わず声をかけてしまう。
怪我の手当をするとお礼をしたいと言う鬼子。共に山小屋へ帰るとそこには小日本もいた。
お世辞にも裕福な生活とは言えない状況にありながら、いくつかの料理を振舞おうとする鬼子に、
いたたまれなくなった柚子は不意に思いついた事を話す。
柚子「もし良かったらうちに住まない?」
鬼子「そんな!お金も無いですし…それに…こんな角のある者がいては迷惑でしょう?」
柚子「お金なら要らないわ。それと刺青がある人お断りでも角のある人お断りでは無いのよ?遠慮しないで」
小日本「わ〜い!私温泉大好き〜。ネネさま、良かったね〜」
躊躇う鬼子に、小日本は無邪気に笑い、喜ぶ。不安が入り混じった表情をしていた鬼子も、
柚子の優しさに触れて「宜しくお願い致します」と頭を下げて、居候する事に決めた。
182 :
103:2011/01/14(金) 00:15:21 ID:5mxLItBd
うう…避難所の議論に参加すると、正直モヤモヤと疲れるなぁ。
でもそこから思い浮かぶネタもあるわけで。でも大分先の話数だけど…。
誰も使ってない様子なので、四話と五話辺りを書いてみますね。
しかしヤイカガシの合流は書きにくいなぁ…どう書こうか。
まあ、本スレがああならなかった事を喜ぼう。
しかし、いつも思うのだが、たまに投下されるヤイカガシネタって
こにと仲がいい事多いのは気のせいだろうか?
ひょっとしてこに、ヘンなモノに愛着を感じる趣味とかじゃなかろうか……?
普通の人がヒくようなヘンな仮面やら木彫りやらを「カワイ〜〜〜」っていって周囲に
『そうか?』と一斉に(心のなかで)ツッコミ受けてたりして。
184 :
103:2011/01/14(金) 01:08:22 ID:5mxLItBd
旅館の朝は早い。鬼子は女将と一緒に、忙しなく朝食の準備をこなしていく。
眠たそうな目を擦りながら小日本も起きてきた。この日は、11月15日である…。
第四話:小日本を追う者?チチドリ飛来!
柚子「今日は七五三ですからね〜。鬼子さん、お客様の着物着付けを手伝って下さる?」
鬼子「解りました。何を用意すれば良いですか?」
柚子「そこのふんどしとゆもじをとって頂戴。七歳の子は、今日が初めてつける日なのよ」
(参考:七五三をウィキで調べてて、多少欝になりかけた…)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%83%E4%BA%94%E4%B8%89 鬼子は宿泊客の子供達の所へ、ふんどしとゆもじを運んでいった。
流石に老舗の旅館である。小さいながらも行事毎の着付けなどは卒なく用意できる。
小日本「ネネさま〜。私も着たい!千歳飴も欲しいよう…」
鬼子「いつも着ているでしょう?…ちょっとまってね、後で手伝ってあげるから」
たしなめようとして半分泣きそうになった小日本を見て、すぐさま優しい笑顔に戻る鬼子。
小日本「わ〜い!やったぁ〜!後で神社にも行こうね〜」
そんな鬼子達を、松の枝影からジッと見ている鳥の姿があった…。
(CM?)
小日本の着付けが終わると、鬼子達は水子供養を行っている神社と寺の併設している場所へ来た。
住職「こんにちは…!!おお、あなたは…お久しぶりです。小日本さんも元気そうですね」
鬼子「はい。お久しぶりです。この子ももうすっかり私に懐いてくれました」
小日本「おじちゃん!お久〜刀も大切にしているよ〜」
七五三の御参りを自分もしたいと言っていたので、と話す鬼子に対して奥から千歳飴を出してくる住職。
だが、その千歳飴は渡される前に地面へと落ちてしまった。その理由は―突然住職へぶつかってきた鳥だった。
???「チチ!チチ!うらやましけしからんぞ!そこの坊主!こんな発展途上のチチ持ちと戯れるとは!」
小日本「チチチチ煩い鳥ね!あんたは何様なのさぁ?」
チチドリ「フン!名前なぞ忘れてもうたわ。チチチチ煩いと思うならチチドリとでも呼べばよかろう!そぅれ!」
そう言うなりチチドリは小日本にもう一度近づき、無理やり着物の隙間から胸元に潜り込もうとする…。
鬼子「何をやっているのよ!この変態目白は!」
怒った鬼子(中成化)は「ムヒョー!」とか「クンカクンカ!」とか奇声を上げるチチドリを引っ張り出した。
チチドリ「貴様のような成長し終えた者に様は無い!さぁ早く戻せ!」
呆れた鬼子はもう何も言わず薙刀で切り祓った…が、ヒワイドリの時と同じく散らず白い人魂に。
しかもすぐには離れていこうとせず、小日本のそばをグルグル回りながら飛んでいる。
小日本「シッシ!あっち行ってぇ!くすぐったいんだよぅ!」
人魂は小日本にバタバタと追い払われると、ようやく遠くへフヨフヨと飛んでいった。
鬼子「…前の奴と同じ、って事はまさかあいつも神様の一人の成れの果てなの?…ふぅ」
ため息をつく鬼子であったが、きっとまた彼に会ってしまうのだろう。
185 :
103:2011/01/14(金) 01:18:30 ID:5mxLItBd
>>183 そのネタ(設定?)は良いなぁ。般若面を何故鬼子が持っているか説明に使える。w
小日本「ネネさま!ネネさま!見てみて〜。これネネさまみたいで可愛いでしょ〜?」
般若面を片手に持ち、ブンブンと振り回して喜ぶ小日本。
鬼子(う…小日本には私はあんな顔に見えているの?でも前からあんな感じで色々拾ってくるし…)
鬼子「そ、そうね。可愛いわね〜。私にそっくりだわ」
小日本「じゃあさ!じゃあさ!今度から心の鬼を祓う時はコレ付けてやってよ!えいやぁ!って感じで!」
…えぇ、暴走しました。自分の作品内では般若面の由来は書かないかと思われます。
186 :
103:2011/01/14(金) 02:47:07 ID:5mxLItBd
第五話:『鬼』であるということ
鬼子は、旅館を手伝う傍ら『心の鬼』の気配を見つけては狩っている。
『心の鬼』の気配は、鬼として形を成す前にあっても、心の揺らぎとして見えてくる。
だからこそ、心に鬱屈したモノを溜め込んでしまっている人を見つけると気になってしまうのだ。
鬼子「あの人…どうしてあんなに影を背負っているのかしら?」
街中を、何かソワソワとしながら見渡している女の人を見つけた鬼子は、つい声をかける。
女「あの…この辺りに冬至温泉という温泉はありませんか?」
鬼子「はい、ありますよ。ちょうど私もそこで働いているので、一緒に行きますか?」
女「えぇ!そうなんですか?宜しくお願いします」
一緒に旅館へ向かう間も、女性は周りをそわそわと気にしている。
そして男性が通るたびにビクッと震えている様子であった。
鬼子「…?もしかして男性がお苦手なんですか?」
女「はい…どいうしても自分と違う何かが苦手で…多分昔痴漢にあってからなんですが。
それで精神疾患に対しても、多少なりと効能のあるというここの温泉に」
どうやら道行く先ほとんどで男性を見るたびに方向を変えていくと、次第に迷っていた様子だった。
タクシーを拾おうにも男性運転手では拾えない。鬼子との出会いはまさに渡りに船だっただろう。
鬼子「着きましたよ。今日は男性のお客様もいらっしゃらないはずなので、大丈夫かと」
女「ありがとうございます!おかげで助かりました!」
CM
鬼子はうっかりしていた。飛び込みの客位いくらでも想定出来たはずだった。
女将の柚子も、さすがに『男性恐怖症の方がいるから』と他のお客を帰すわけにもいかない。
何時辿り着くか解らなかった女性も、同様に予約など取っていなかったからだ。
食堂で別の男性客を見た女性は、体をガチガチに固めてしまい、ほとんど食事も喉を通っていない。
女「あ…あの…失礼なんですけど…あの男の人が突然覗いてきたりしませんよね?」
不安に震え続ける女性客に対して、背中の影がより色を濃くしていくのを見る鬼子。
鬼子「大丈夫ですよ。まずは落ち着いて下さい。もし心配なら私が見張っていますから」
なりゆきで風呂場の監視をする事になった鬼子は、いつ心の鬼が具現化してもおかしく無い状態に気が気でない。
女「あの…何度もごめんなさい。怖くて手が動かなくて…一緒に入って背中を流してくれませんか?」
快く承諾するも、一つ誤算があった。自身も『鬼』という異形の存在である事を…。
女「…あの、鬼子さん?なぜその角をお風呂でも外さないんですか?まさか本物の…イヤァ〜!!」
鬼子「え!?まさか私自身がきっかけで…」
(本スレ243さん、お借りします。後で報告もせな…)
http://loda.jp/hinomotooniko_kokoronooni/?id=24.jpg 気を失った女性から、恐怖の心の鬼『青鮫』が具現化する。湯船に沈み始める体は鉛の様に重い。
鬼子「鎮まりなさい!心の鬼よ!お前を生み出した主がどれほど傷ついているのか解らないのか!」
青鮫「う…煩い!この異形の者め!胃袋に沈めて、目の前から消し去ってくれる!」
温泉の中を湯の温度なぞなんのそのと、泳ぎ回り噛み付こうとしてくる青鮫。
いそいで温泉から飛び出た鬼子は、薙刀を取って戻り、着物も纏わず構えた。
青鮫「なんだ!?その武器は…ますます持って恐ろしい…早く目の前から去れぃ!」
鬼子「この薙刀は神刀『鬼切』…人を惑わす邪気・心の鬼を、人の感情へと返す刀。恐れず受けよ!」
素早くもう一度飛び掛ってきた青鮫に対して、飲み込もうとする口へそのまま刃を突き立てる。
切り口より萌え散り、花びらと消えて一部が女性客の体へ戻っていくと、ゆっくりと目を覚ました。
女「あの…私は一体?でも…なんだか前よりすっきりした感じがします。やっぱりここの効能かしら?」
鬼子「えっと…ごめんなさい。私の角は『本物』なんです。その私を見てあなたは…」
女「!!そうなんですか?でも…何となくあなたが助けてくれた気がしています。本当に有難うございます!」
女性客は、ジッと鬼子を見つめた後抱きついてきた。ボソッと『男が苦手なら女の子でも』と、
鬼子にとっては一瞬背筋が凍るような事を言われたとか、いないとか。
…一応今回はここまで。時系列を何となく考え始めたので、ヤイカガシはまだしばらく登場しない予定です。
正月の初詣ネタでヒワイドリに対して罰当たりな別名称(別擬人化案)を付けようか悩み中…。
それではお休みなさいませ。お目汚し、失礼致しました。
>>185 般若面はある意味鬼子のキャラ性というか本性の一部っぽいからそれはない……と、
ツッコもうとしたけど、過去の投下絵の中に時々ヒョットコやおかめ面を付けてる
鬼子って居るんだよね……まさか…w
188 :
時の番人:2011/01/14(金) 18:31:18 ID:Qb5+xOop
今、ここ誰も使ってませんね〜!?
使ってないようなので今から
「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第八章〜【結界】
を投下します。
それと今回も挿絵・・無しです。
>>174 前回、第七話でギャグパート組合流しましたが、
そのワールドブレーカーなキャラが第九章では・・・
189 :
時の番人:2011/01/14(金) 18:32:32 ID:Qb5+xOop
●「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第八章〜【結界】
真冬の寒い季節だが、今日は朝からポカポカと暖かな日差しが神社を照らしている。
そんな暖かな、とても穏やかな光の世の鬼狐神社の裏庭で、例の奇妙な生き物達が
和気あいあいと話をしていた。こにぽんもその中に入っている・・・。
今は朝食の時間。きび爺、きび婆はハチ太郎と話をしながら食事をしている。
弥次さんと喜多さんは2人でいつもの様に駄洒落三昧。
織田と秀吉は織田が秀吉にチョッカイを出しながら食事をしている。
鬼子と舞子は・・・昨日の気持ち悪い余韻から立ち直る事が出来ないでいた。
2人は食事をしているが、たまにその気持ち悪かった事を思い出し、身震いをしている。
食べては身震い。身震いしては食べる。それを繰り返しながら朝食を取っていた。
朝食が終わる頃、きび爺はきび婆の方を見て軽くうなずき、一息つきながら言った。
「皆よ。少しワシの話を聞いてくれるかぃ」
そんなきび爺の改まった言葉は、大事な何かを伝えようとしている事と容易に感じとれた。
みんながきび爺の方を向き、静かになる。
「最近おかしな事ばかりじゃ。今までは、悪しき輩が年に一度か二度程度、それに
力の非常に弱い輩しか出てこなかったが・・・。最近は頻繁におかしな事が起こりよる」
きび爺は鬼子の方を向いた。
「鬼子の命(使命)は、悪しき輩を散らす事を目的としとるが、光の世で、悪しき輩が芽生え始めた
初期段階の輩が出現するのは予想外じゃった。そして、辛い思いをさせてしまった」
そして、弥次さん喜多さんの方を向く。
「力の強い輩も出てきよる様になった。いくら2人が歳をとっているとは言え、
弥次さん喜多さんは忍者八門の使い手。それに2人とも郷士をまとめる大将を勤めた立派な忍者。
その2人が不覚にも傷を負うと言う事は、一大事じゃ」
きび爺は今度、織田と秀吉の方を向く。
「織田と秀吉は、古武道、古武術の使い手じゃが、
弥次さん喜多さんを襲った力の有る輩が相手だと、どうなるか心配じゃし・・・」
きび爺は、横にいたハチ太郎の頭を撫でながら神妙な面持ちで続けた。
「このハチ太郎も、昨日から何かおかしな胸騒ぎがしよると言う・・・。それに、昨日のあの
奇妙な四匹の出現じゃ。悪しき輩の匂いはしないみたいだが、何故一度に出現したのか・・・
そして、裏庭の古井戸近くの池もじゃ」
きび爺は少し間を置き、舞子の方に寂しそうな、切なそうな視線をやった。
「舞子、お前さんは・・・一度街に戻った方がえぇと思うんじゃが・・・」
舞子は驚いた表情できび爺の話を聞いている。
鬼子も舞子と同じ心境できび爺の話を聞いていた。
「舞子、お前さんはよう働いてくれよる。それに、ワシはお前さんを家族の様にも思っとる。
そんなお前さんが危険な目に逢わんとも限らんからのう」
きび爺は少し悲しい表情で下を向いた。
舞子は自分の胸の近くに手を持っていき、笑顔で握りこぶしを作った。
「狐火様、私は大丈夫です。こちらにご奉仕する事を決めた時からその事は解っていましたし、
それを踏まえて、織田さんから古武道を習っていますから。
・・・それに・・・皆さんは・・もう私の中では家族同然ですから・・・」
舞子の表情は、何かの決意の表れの様にも見えた。
弥次さん、喜多さん。織田と秀吉もその言葉にうなずいている。
「狐火様」
と弥次さんが話しだした。
「舞子ちゃんなら大丈夫ですよ。ワシらも、そして織田、秀吉も付いていますからな。
それに、ハッちゃん(ハチ太郎)は鼻が利くらしい。何かおかしな気配がしたら、
誰かが舞子ちゃんに着いとりゃえぇんじゃから」
みんなも鬼子も大きくうなずいている。
その表情を見たきび爺は、嬉しくもあり、心配でもありという複雑な思いでいた。
きび爺は少しの間、うつむいて沈黙している。
そして顔を上げ、大きく深呼吸しながら何かを決心する。
190 :
時の番人:2011/01/14(金) 18:34:06 ID:Qb5+xOop
きび爺は鬼子を指差した。
「鬼子よ、般若面を前へ」
鬼子は唐突なきび爺の言葉に驚いている。
「え?般若面を畳に置けばいいの?」
「そうじゃ」
きび爺は軽くうなずく。
「え?何??壊したりしないでね、かあ様(母様)からもらった大事な面なんだから」
鬼子はそう言いながら、般若面の方に右手を添えた。
すると、勝手に般若面に付いている紐が鬼子の頭からスルスルと取れ、手の上に落ちた。
そして、般若面を畳の上に置き、前へ出した。
きび爺は【スクッ】と立ち上がり、般若面の近くに歩み寄った。
「解っとる、壊したりせんよ。ちょぃと封印を解くだけじゃ」
「封印?何?封印って・・・」
鬼子は何も解らないと言う表情で、きび爺にそう聞いた。
「いいから見とくんじゃ」
と、きび爺は言いながら腕まくりをする。
そのきび爺の行動を見ていた般若面が、ポツリと言う。
「きび爺、痛くするなよ!」
軽く笑いながら、きび爺が答える。
「痛い訳がなかろう般若面」
すると、般若面が口を歪めながら
「ふん!」
と、言葉を返した。
きび爺は念を集中する。すると狐火の姿に変わった。
そして、両手を前へ突き出し神代呪文を唱え始めた。
『神代に属するは印、授けるは解』
神代呪文の文字がきび爺の両手に浮き出てきて、光りだす。
その輝く文字が般若面を包んでいった。
そして、念を込めながら再び唱えた。
『いでよ、古(いにしえ)の骸(むくろ)よ』
すると、般若面は光り輝き、そして赤く激しく燃え出した。
その炎は一気に皆を包み、そして部屋中に充満する。
皆は驚き、炎に手をかざし身を守ろうとしているが、皆はには飛び移らず熱くはなかった。
炎の中、般若面からなにやら白い物が浮き出ている。
そして、般若面が消えると同時に、【ピョコッ】とその白い物が飛び出して来た。
渦巻く炎が静かに消えて行く。
その飛び出して来た物の形は、焼いた餅が縦に伸びた様な形だ。
それに、少し下っ腹が出ている様にも見える。背丈は20センチくらい。
色は白く、顔は・・・般若面を丸くした様な、ちゃめっ気のある様な顔・・・。
皆は、封印を解くものすごさに圧倒されていたが、それには似付かない物が飛び出して来たので、
言葉が出なかった。
191 :
時の番人:2011/01/14(金) 18:35:24 ID:Qb5+xOop
「あぁ〜やっと封印が解けたか。今回は短かったけど、身体の節々が痛いわぃ」
と、その白い者が腰をくねらせ、頭を回しながら柔軟体操をしている。
鬼子は・・・目を丸くしながら固まっている。鬼子が生まれてからずっと一緒に居た般若面が、
今まで見た事も無い形に変わっているからだ。
「は・・般若?あの般若面?」
心配そうにそう聞いた。
すると、丸いお茶目な顔の般若が笑いながら鬼子に言った。
「そうじゃ、これで少しは鬼子の助けになるじゃろなぁ」
しかし、鬼子の心配事は消えなかった。
「じゃ・・じゃぁお面・・・はどうなるの?」
母親から貰ったお面が、気になっている様だ。
「ハハハ。自由に変化出来るぞ。いつも通り般若面になったり、この姿になったり。
般若面の時はそないに自由は効かんが、この姿の時は百人力じゃぃ。ガハハハハ〜〜〜!」
般若はそう言い、鬼子の心配事を他所に、腰に手を当てながら胸を張って大笑いしている。
「そ、そう。よかった」
般若の姿を見ながら、鬼子は複雑な気持ちでいた。
「久しぶりじゃのう般若よ」
狐火の姿から元に戻ったきび爺は、その般若の姿を懐かしそうな顔で眺めていた。
「あぁ、久しぶりじゃな狐火よ。光の世でこの姿でお主に会うとは思わなんだがな」
そう言い、般若面から飛び出して来た白い般若は、その場にチョコンと座った。
その言葉を聞いた鬼子は、やはり複雑な思いでいる。鬼子が生まれる前から般若面が闇世に
存在していたと言う事を最近知った。それに、今のきび爺と般若の言葉だ。
鬼子は言葉にはしなかったが、かなり複雑な、そして今までずっと一緒に過ごしてきた般若面の事を
ほとんど知らなかった自分に、苛立ちさへ感じていた。
そして、少し寂しい思いに包まれていた。
「ちょぃとおまえさんに聞きたい事があるんじゃがのぅ」
そう言うきび爺の横で、きび婆はお茶を入れている。
般若は、目を閉じ軽くうなずきながら再びきび爺の方を見て言った。
「わかっちょる。変な生き物や輩が沸いて出てきてる今の現状の事じゃな」
きび婆がお茶を般若に差し出した。
きび爺は頭を掻きながら言う。
「そうじゃ。わしらではどうも理解出来んでのぅ。今まで見てきて、般若はどう考える?」
「狐火よ。力石のせいじゃよ。アレは輩を呼び寄せる」
その般若の言葉に、鬼子や舞子、弥次さん喜多さん、織田や秀吉は少し驚いた表情をする。
きび爺は、口を真一文字にし少し考え込んでいる。
「しかし、その力石は何千年も前から光の世に存在しとるし、ワシや先代の狐火様の時も
そないに輩が現れんかったんじゃがなぁ」
そう言いながらきび爺は、顔を左右に振っていた。
般若は、そのきび爺の言葉は解ってるというようにうなずく。
「きび爺も知っとるだろうが、力石は微弱ながら得体の知れない力を発しとる。
闇世に住む力の民は、力を付けると自然にその力石に書いてある文字が解読でき、
さらに、その者の力を増幅させる。闇世にある力石は全て狐の民によって解読されとるがな」
般若は続けて言う。
「闇世では、悪しき輩との戦いの他に、力の民同士のいざこざや戦(いくさ)も多々あるだろう。
鷲の民、蟲の民、獅子の民、猿の民、狼の民、虎の民、蛇の民それに鬼の民もな。
まだまだ他にもあるが・・・」
般若は、闇世で繰り返される争いを思い出しながら悲しそうな表情になる。
そしてまた言葉を続けた。
192 :
時の番人:2011/01/14(金) 18:37:00 ID:Qb5+xOop
「ココからは、ワシの推測なんじゃが、力の民は皆、光の世の力石の存在は知っとる。
それと、光の世の力石は狐の民ですらまだ少ししか解読出来ていないと言う事も」
その言葉を聞いたきび爺は、焦りながら般若に言葉を返した。
「ちょぃまて、般若・・・・・。他の民より、力を付けたいが為・・・と言う事か・・・?
しかし・・・もし、そうであったなら狐の民、しかも狐様の力を借りないと、光の世には
出てこれないぞ。狐様がそのような事をするとは思えんし・・・」
きび爺は、般若の言葉を受け入れがたかった。
般若はその言葉にうなづいている。
「そこでだきび爺。お主が光の世に行った後の事なんじゃが、ワシが闇世で聞いた話しでは、
非常に頭のいい狸の民、そしてとても力の強い象の民の街が、悪しき輩の大群に襲われたらしい。
それを率いて指示を出す輩がその中に居たそうなんじゃ」
きび爺の目の色が変わる。
「なに!?大群・・?それに指示を出してた輩じゃと!?」
きび爺は、信じられないという表情になっている。
般若は、険しい目をしながら言った。
「そうじゃ。その時、狸の民、象の民の街はほぼ半分がやられたと聞く」
般若のその言葉を聞いたきび爺は、動揺を隠せないでいた。
「・・・あの、狼の民でも手を出さんほどの知恵と強さを誇る狸と象の街がか・・・」
きび爺は、肩を落としながらそうつぶやいた。
鬼子は、その般若が言う話しは闇世で聞いていて知っていた。
そして、怒りが込み上げてくる。膝の上で手を【ギュッ】と握り締めながらその話しを聞いていた。
般若は一口お茶を飲み、また語りだした。
「そうじゃ。遙か昔から今まで悪しき輩は単独行動が基本じゃった。
時には群れる輩もいたが、初期段階の輩以外は、ほとんど心は残っておらん。
しかしじゃ、もし本当に指示を出す知恵のある悪しき輩が居るとしたら・・・
そして、何らかの形でその輩が光の世の力石の存在を知ったとしたら・・・」
般若のその言葉が、きび爺の胸を刺す・・・。
「・・・もしそうじゃとしたら・・・散らばっている狐様を襲い、
無理やり扉を・・・恐ろしい事じゃ・・・」
きび爺の額から汗が流れ落ちる。
般若の目つきがさらに険しくなっていく。
「狐火よ、感づかんか?闇世と光の世が何処かで繋がってる・・と」
「つ・・繋がってるだと?」
きび爺は、目を見開いて般若にそう聞いた。
鬼子達もみんな同様を隠せないでいる。
「そう。ワシの推測じゃがな」
と般若は言いながら、ハチ太郎の方を見て言った。
「ハチ太郎よ、ヒワイドリをここへ連れてきてくれ」
「やだよ。あんな訳のわからない連中と絡むのは」
ハチ太郎は、輩まがいの気配がする連中と関わりたくないのだ。
それに、このままこの部屋で般若の話を聞きたいのだ。
いつものわがまま・・・から出てきた言葉である・・・。
般若はハチ太郎を【キッ】っと睨んだ。
ハチ太郎の毛並みが何かに揺れる。
すると、ハチ太郎の身体全身にとても強大な恐怖がこみ上げてきた。
裏庭にいるこにぽんの頭の上の般ニャーがその気配に気付きつぶやいた。
「・・・そっか・・・、狐火様が・・・。あ〜ぁ・・・口うるさい嫌な奴が出てきたわ・・・
まぁそれ以上はないよね・・・」
ハチ太郎は石の様に固まり、震えている。
般若はまた、ハチ太郎に声をかけた。
「今すぐヒワイドリを呼んできてくれぬか」
「はい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
とハチ太郎は言われるがまま裏庭に飛んで行った。
193 :
時の番人:2011/01/14(金) 18:38:06 ID:Qb5+xOop
5、6秒後、
【ドガッ】
っと、ふすまを勢い良く開けて、ハチ太郎が帰って来た。一瞬の出来事だ。
そのハチ太郎の口の中に・・・ヒワイドリ・・・とその他のヤイカガシ、モモサワガエル、
チチドリ、チチメンチョウ・・・。勢ぞろいだった。
そのハチ太郎の背中にはこにぽんが乗っている。
ハチ太郎は、「ゼェゼェ」言いながら飛び込んで来たのだ。
弥次さん喜多さんの2人を乗せても息が乱れなかったあのハチ太郎が・・・。
そうとう急いで戻って来たのだろう。と言うより、般若の強大な恐怖に身体が震えている様にも見える。
「い・・・急いでたので、とりあえず全部連れてきちゃいました・・・」
みんなは唖然とそのハチ太郎を見ていた。
「まぁいい。ごくろう」
と、般若が呆れながら言った。
こにぽんが鬼子の側にくる。そして部屋の気配に感づき、腕をギュッと掴んだ。
そしてこにぽんは、小声で鬼子に聞いた。
「なにあれ?あの小さな白い物・・・」
鬼子はこにぽんの耳に手を当て、そっと小さな声で言う。
「あの人は、こにぽんも良く知っている私の般若面よ」
こにぽんはキョトンとした顔をしている。鬼子が言うので疑ってはいないが、
似ても似つかぬ姿に驚いていた。
「えぇ〜・・・遊んでくれるかなぁ・・・」
鬼子はこにぽんのその言葉にずっこけてる。
こにぽんの心配事は・・・遊んでくれるかどうかだった。
「どうする気じゃ?般若」
きび爺はそう般若に聞いた。
「ワシも解らない事だらけなんでな。確信が無いからこやつらにちょぃと聞いてみるわぃ」
と般若は言いながら、五匹の変な生き物達の方を見た。
ハチ太郎の横に、連れてこられた五匹が並んで座っている。
彼らも、この部屋の空気を少しは感じているようだ。
感じてはいるが、空気を読めない・・・。
ヒワイドリが般若を指差しながら言った。
「誰?こいつ」
【バシッ】
ヒワイドリはハチ太郎に頭を叩かれた。
「い・・いったいなぁ。叩くなよ〜」
頭を撫でながらヒワイドリがまた言う。
「で、あのちっこいのは何?」
【ガブゥ】
今度はヒワイドリの頭にかぶりついている。
「いて、いてて〜いたいよ〜犬っころ!離せよ〜」
他の四匹は、退屈そうなその空間の気配に一緒になってざわめきだした。
般若が、ヒワイドリを含めたその五匹を睨み付ける。
すると、彼らの皮膚が波打つように振動し始めた。
そして、一瞬にしてその五匹は固まってしまう。
194 :
時の番人:2011/01/14(金) 18:39:23 ID:Qb5+xOop
「ヒワイドリよ。お前さんは、どうやってこの光の世に来た?」
般若のその言葉に、みんなは驚いている。
きび爺が、ヒワイドリを見ながら言う。
「ワシは、狐様が寄こしたとばかり思っとったが、違うんかいのう」
「あぁ。こんな低能な鳥の民を狐様が寄こすはずがない」
きび婆は、その般若の言葉にやけにうなずいている。
般若が、ヒワイドリを見ながら続けて言う。
「鬼子が初めて街に出た時、『過去を思い出す。あの忌まわしい過去を』と言うとったろうが」
般若はそう言いながらヒワイドリをジッと見ている。
ヒワイドリは、その般若の表情を見ながら汗を流している。
「ゲゲ・・・。き、聞いてたの?おいらのつぶやきを」
ヒワイドリは頭にバンソウコウを貼りながらそう言った。
鬼子は驚きの表情を隠せない。
「え・・・?もとから光の世にいるんじゃなかったの?」
鬼子は少し焦りながらそう聞いた。
般若は顔を横に振りながら言う。
「こんな奴が、もとから光の世に居るわけなかろう。何か事情がありそうだ。
それにお前は、誰かにその姿にされたんじゃないのか?」
みんなの少し厳しい目が、ヒワイドリに集まる。
「は・・・はぃ・・・」
ヒワイドリの返事の仕方がいつもと違う。やけに素直なのだ。
それはもちろん、般若の持つ巨大な力によるものである。
「元は、闇世の何処にいた?」
般若の口調が少しキツクなる。
「そ、そこん所の記憶が無いんです。何か悪さをしてたのは覚えてるんですけど・・・。
気がついたら、誰かの般若面にこんな姿にされてて・・・」
ヒワイドリのその言葉を聞いたきび爺も少しキツイ口調になる。
「般若面!?強い念を入れながら祈祷された般若面だな。多分、大目付(おおめつけ)が
持っている面だろう」
舞子はキョトンとした表情をしている。そして鬼子にそっと聞いた。
「鬼子ちゃん。大目付って何?」
すると、きび爺が舞子の方を見た。
舞子はビックリして、姿勢を正す。
きび爺は、にこやかな表情になりその舞子に向かって言った。
「ごめんよ、舞子。みなに解る様に説明せんとな。大目付と言うのはな、
光の世で言う、警察官みたいな者じゃ。悪い者の偵察・監視・検挙。
大目付はな、必ず守護する者を持ち合わせていて、その中に般若面もあるって事だ」
舞子は、口に手を当てて、
「は、はい」
と一言だけ答えた。口を挟んでしまった事に対して恥ずかしかったのだろう。
「それから、どうなったのじゃ?」
般若がヒワイドリに聞いた。
ヒワイドリは緊張しながら答えた。
「もうろうとしながら何処かの森の中を歩いてて、次に気がついた時は、川に流されてた・・・。
そして、次に気がついた時には、光の世の川を流れてた」
そうヒワイドリが答えると、
「あ、俺も一緒でゲス」
と、ヤイカガシが言った。
「他の者はどうだ?」
と、般若が聞く。
皆【ウンウン】とうなづいている。
きび婆が、やはり・・・と言うような表情で言う。
「・・・お前たち・・・。みんな闇世で悪さをしてたんじゃな・・・」
その言葉を聞いた五匹は、
「エ・・・エヘへ・・」
と、苦笑いしている。
195 :
時の番人:2011/01/14(金) 18:40:36 ID:Qb5+xOop
きび爺は、部屋の天井を見上げながら言った。
「行き来出来る何かが、自然に出来たのか。それとも誰かが意図して作ったのか。
とにかくその行き来出来る扉を見つけて閉じなくてはなぁ」
般若が短い足を組みなおしながら言う。
「そうじゃな。それと、特にこの神社に有る力石は必要以上に強大な何かの力を持っておる。
だから、自然とココに輩やこういった者が近寄ってくるんじゃ」
鬼子は、五匹を指差しながら言う。
「じゃぁ、近寄ってこない様にする為にはどうしたらいいの?」
やはり、鬼子は気持ち悪いのだ。もちろん舞子も同じだが。
その言葉を聞いた般若は、鬼子を正すように言う。
「ワシはそれが逆に良い事だと思っとる」
鬼子の表情が少し暗くなる。舞子もまた、同じ気持ちでいた。
「いい・・事?」
「そうじゃ。この神社に引き寄せられるって事は、他の街や村には出没しにくいって
事じゃからな」
般若は鬼子の気持ちは解っているが、しかたがなかった。
鬼子もその言葉を聞いて、納得するしかなかった。何の為に光の世に来たのか・・・
と言う事を、正された形になった。
「そ・・・そう・・・」
鬼子の願いは打ち消される・・・。
舞子も・・・その五匹を見ながら、肩を落としている。
きび爺が般若に問いかける。
「では・・・力石を持つ他の神社や寺、祠は・・・危険・・と言う事じゃな」
うなずく般若。
「そうじゃ。狐火に連絡が来ていないって事は、まだ出現していないって事だろうが、
今後はどうなるか解らんからなぁ」
その言葉を聞いたきび爺は、腕を組みながら自分自身に語る様に言う。
「そうか。では、他の守り役(神社、寺、祠を任されてる民)とも、連携を今以上に
取っていかねばならんのう」
「よっこらしょっ」
般若は立ち上がりながらそう言い、みんなの方を見た。
「後は、結界じゃな。結界を神社の周りに張って、輩が境内には近づけぬ様にしておかないと。
それも、近づきやすく、逃げ出せない結界をな。
幸いにも、ワシ、狐火の爺、鬼子、こにぽん、般ニャーと神代呪文を使える者がいる。
ちょうど五人で同時に結界を張れるから、強い物となろう」
きび婆が五匹の方に厳しい目をやる。そして、ヒワイドリに言った。
「ヒワイドリよ。他の者に、光の世での立ち振る舞いを
しっかりと叩き込んでおくんじゃぞ!しっかりと、じゃぞ!」
そう念を押した。
「わ、解りました・・・」
ヒワイドリ達は、しょんぼりした面持ちで部屋を出て行く。
きび爺がハチ太郎に言う。
「ハチ太郎。北に向かって進め。あくまで偵察じゃ。無理はするなよ」
ハチ太郎が、きび爺に【北から吹いて来る風が、少し匂う】と言っていたので、
偵察に出す事にした。
196 :
時の番人:2011/01/14(金) 18:41:50 ID:Qb5+xOop
まだ、参拝客がこない時間帯。般若、狐火の爺、鬼子、こにぽん、般ニャーの五人は
鬼狐神社から、それぞれ1キロほど離れた所に立っていた。
神社を中心に直径2キロの結界を張ろうとしている所だ。
バラバラに散らばった彼ら五人の神経は、神代の力で一つに繋がっている。
きび爺が両手を前へ突き出した。すると、他の四人も両手を前へ突き出す。
そして、同時に神代の属性を唱え出した。
『神代に属するは守(しゅ)、授けるは結(けつ)』
すると、【ゴゴゴ】と地面から石の柱が出てきた。高さは1メートルくらい。
その先端には、石の丸い板の様なものが付いている。
そして、再度念を入れながら唱える。
『土神』
すると、その丸い石の板が柔らかく光出した。
そして、その光りが天高く舞い上がり、それぞれの光と交わりだす。
交わった光は、一つの大きな光となり神社を包み込んでいった。
「よし、終わった。これでひとまず安心じゃな」
きび爺はそう言い、みんなを神社へ戻した。
昼過ぎの鬼狐神社。パラパラと参拝客がお参りに来ている。
鬼子は縁側に座っていた。こにぽんも鬼子の横にいる。
目の前では、ヒワイドリが他の四匹に光の世での立ち振る舞いを教えていた。
朝食後からずっと教えているみたいだが、
すぐに話が鬼子が聞きたくない変な方に脱線していて、中々進まないのだ。
こにぽんが鬼子の膝上に乗り、足をブラブラさせながら言う。
「ハッちゃん(ハチ太郎)居ないと寂しいなぁ。早く戻ってこないかなぁ」
そんなこにぽんを他所に、五匹の奇妙な生き物達は、各々ニタニタ笑っていた。
「へへ、あの狗(ハチ太郎)が居ないと気分的に気楽でいぃなぁ」
「そうでゲスね」
「そう、そうケロ」
「じゃぁ、大人の貧乳の話しを」
「いや、無乳は罪だって」
・・・・・・・・・・。
197 :
時の番人:2011/01/14(金) 18:43:00 ID:Qb5+xOop
日が暮れ、月明かりが森を照らしている。しかし、その森の幹までは月明かりは届かない。
ハチ太郎は暗闇の中、鬱蒼と生い茂る森の中をとてつもない速度で走っている。
一度止まり、辺りの匂いを嗅ぐ。そしてまた走り出す。それを何度も何度も繰り返していた。
ハチ太郎は、急に止まった。何か気配を感じたのだろう。
辺りを入念に警戒している。
「・・・いる・・のか・・?しかし、まだ遠いか・・・」
「あ〜あ・・。闇世でちゃんと訓練しとけば、弱い者の匂いでも、
嗅ぎ取る事が出来たのになぁ・・・」
そう言い、また走り出した。その瞬間・・・
【ドガッ】
ハチ太郎が地面に叩きつけられる。ふら付きながら何とか立ち上がったが、
ハチ太郎の背中からわき腹にかけて、大きな傷が付いていた。
そして・・・血が流れ落ちている。
【ハァ・・ハァ】
ハチ太郎の目の前の大きな木の向こう側に、黒い影が揺れている。
ハチ太郎は、その影に警戒しながら後ろへと少し間合いをとった。
「・・・解らなかった・・・。こんなに近くに居たのに・・・」
ハチ太郎は、不意に左側に強い匂いを感じる。
振り向く間もなく、
【ガシィ】
ハチ太郎はまた、殴り飛ばされてしまった。
「ガハッ・・・」
今度は口から血が流れ出す。
少し離れた所で黒い二つの影が、ハチ太郎の目に映っている。
しかし、目がかすんでよく見えない。
震える足で、やっとの思いで立ち上がるが・・・ハチ太郎はすでに戦いが出来る状態ではなかった。
「・・・やばい・・・やばいなぁ・・・。ハァハァ・・。自分さえ守る事が出来ないなんて・・」
ハチ太郎は唾を飲み込む。
「こんな俺が、こにぽんを守るなんて、よく言えたもんだな・・・。
狗の民の・・・恥さらしだな・・・俺・・・。とにかく・・この現状を何とかしないと」
ハチ太郎は警戒しながらジリジリと後ろへ下がっていく。
目の前には、悪しき輩の影が二体。近づいてくる気配はない。
その時、ハチ太郎は頭上で強い匂いを感じた。
とっさに振り向いたハチ太郎の目には、悪しき輩の姿が。
空には月明かりをさえぎる様に、黒い雲が出てきている。
深い寒い森に、ポツリ、ポツリと雨が降り出した。
投下終り。
「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第九章〜【呪縛の解読】に続く。
.
この文章は、心の鬼企画に関して本スレに投下したものの続きです。
そのため、SSスレに相応しくない、他者の作品や文章からの引用を多く含んでいます。
出典は詳らかに記載していきますので、どうかご容赦ください。
もともとキャッチコピーを書こうとしたものが、
必要以上に長くなってしまったという理由で投下しただけなので、
あまり大げさなものだと思わずに読み飛ばして頂ければ幸いです。
あまり愉快な内容ではないので、不快を感じた場合は、すぐに読むのを中止して下さい。
さて本題に入りますが、さっきまで何の話をしていたのかというと、
鬱を退治する、というか、鬱状態の人を生存させ続けるにはどうしたらいいか、
根本的にはもちろん抗うつ剤の投与による医学的治療に任せるとしても、
文字によってメランコリーに対処しようとした場合に、
どのようなテキストが適しているのか、ということなのでした。
先にも書いた「怠けるな」「頑張れ」という言葉は、
実は鬱病患者の頭の中を常に駆けめぐっている言葉なのです。
だから、外から同じ言葉をかけたところで、その結果は、元気づけるどころか、
相手を痛めつけ、弱らせ、最終的には相手が自殺してしまうか、そこまでいかなくても、
寝たきりの状態になって全く動こうとしなくなるかどちらかになります。
◆「自分の中に鬼がいる!」と自覚した体験談
私自身はどうかというと、もし今生きていなかったら、この文章は書けないはずなので、
後者のほうだった、ということになります。一番病気の症状が重かった頃は、
なにごとにも不決断で、やる気がなく、動作が緩慢で、
そのくせ朝も晩も神経がピリピリしていて、数
週間後のこの日に死のうと決めでもしない限りは、眠ることもできませんでした。
ところが実際その日になってみると、鋏で頸をひっかくとか、布団で口を塞ぐとか、
そんな方法で死ねるわけがない、もっと確実な手段があるはずなのに、
無駄な試みをしては、それがうまくいかないとわかると、
だらだらと計画を引き延ばすばかりだったのです。
何もできない上に、死ぬことすらできないとは。
私は自分のことを美化して語っていないでしょうか?
これを読んでくれる人がいたら多分こういう有り様は滑稽だと思うでしょうし、
そうであってほしいと思いますが、私の記憶に間違えがなければ、
私自身自分を滑稽であると笑っていたつもりだったのです。
統計を見る限り、誰もが私と同じように死ねないという事実は認められません。
そうこうしているうちに、家の者が私を心療内科に連れて行ってくれましたが、
診療の日に医者へ行けなかったことも二度三度ありました。
何故というに、体が行きたがらなかったとしか言いようがありません。
この不可解な状態は、例えばキェルケゴールによると、次のように説明されます。
比喩的に語るならば、それはいわば或る著作家がうっかりして書き損ないをしたようなものである、
この書き損ないは自分が書き損ないであることを意識するにいたるであろう、
(中略)さてこの書き損ないはその著作家に対して反乱を企てようと欲する、
著作家に対する憎悪から既に書かれた文字の訂正されることを拒否しつつ、
狂気じみた強情をもって彼は著作家に向ってこう叫ぶのである、
――「いや、おれは抹消されることを欲しない、おれはお前を反駁する証人として、
お前がへぼ著作家であることの証人として、ここに立っているのだ。」
Sygdommen til Doden (1849)
死に至る病 第1編 死に至る病とは絶望のことである
岩波文庫 斎藤信治 訳 第88刷
彼に言わせると、私は自分が無力であるがゆえに、無力のままでいようとしているのだ、
ということになります。おかしいですよね、普通なら苦痛である状態にいることがわかったならば、
なんとかしてそこから抜け出そうとするものなのではないでしょうか。
それに、こういう認識がDSM-IVで示されているところの鬱病患者が示す客観的な症状
――ボーっとすることが多くなり、口数が少なくなる。集中力がなくなり、ひとの話を聞かなくなる。
頭痛。睡眠障害。食欲不振あるいは過食。自己中心的な行動が多くなり、対人関係が悪化する――
といったものにつながるのはなぜなのでしょうか。
精神分析の嚆矢にして、現在でも臨床心理学の二大潮流の片側を成している
ジークムント・フロイト Siegmund Freud の鬱に関する所見は以下です。
患者は彼の自我がつまらぬもので、無能で、道徳的に非難されるにふさわしいものだとみなし、
自責し、自嘲し、追放と処罰を期待する。彼は誰の前でも卑下し、
彼の身についたものを、かくもつまらぬ人格に結びついているといって歎く。
彼は自分におこった変化が判断できず、過去のことにまで自己批判を及ぼし、
今までに一度だってましだったことはないと言い張るのである。
こういう――おもに道徳的な――微小妄想の病像は、不眠や拒食によって彩られ、
さらに、あらゆる生物を生命に執着させている衝動を、
心理的に甚だ極端に克服することによってその病像が完全なものになる。
自我に対して、こういう訴えを提出している患者の主張に逆らうことは、
科学的にも、治療上からも、同様に無駄なことである。
彼にも一応の正しさがあり、彼にそう見えるままの状態をのべているにちがいないのである。
彼のいう二、三の点は、何の制限もなく、すぐ確かめられる。
自分でいう通りに、実際に関心を失い、愛情がもてず、能力がなくなっているのである。
だが前述のように、このことは、二次的なことであり、それは患者の自我をすりへらす、
内心の、われわれにわからない、悲哀に対比される作業の結果なのである。
他の若干の自責についても、同様に彼は正当だと思われ、メランコリー的でない人よりも、
真実を鋭く掴むように思われる。彼が、そのきびしくなった自己批判の余り、
自分をとるに足らぬ、利己的な、誠実ではない、独立できぬ人間で、
いつも自分の本質の弱点をかくそうとしていると語るばあい、
常識的にみた自己認識にかなり近いのだろうし、われわれはただ、
こうした真実に近づくのには、何故、病気にならなければならないのだろうかと、
自問するだけである。何故かというと、こういう自己評価――それはハムレット王子が、
自分にも他人にもいだいていた評価 ――を見出して、それを他人に告げる人は、
真実を語るにせよ、多少は間違っているにせよ、病気であることは、
疑いがないからである。われわれの眼からは、この自己卑下の程度と、
その本当の資格とが、相応するものではないことは、たやすくわかる。
Trauer und Melancholie. (1916)
悲哀とメランコリー 加藤正明 訳
日本教文社 改訂版フロイド選集・10 不安の問題 第3版
なるほど、言い方はきつい気もしますが、少なくとも、
一番上の部分で言われていることは実際に私が病気であったころに感じたことと
一字一句同じでしたし、鬱のひとの認識は、完全に間違っているわけではない、
病気でないひとには苦痛から逃げているようにしか見えないのでしょうが、
実際に鬱病のひとには生活をする能力がなくなっているのである、という見方には、
私も賛同します。
ここで鬱の具体的な症例を挙げたいのですが、私自身の話をしてもまるで面白くないし、
適切な説明ができるとも思えないので、上の引用にありますように、
古典的名作であるシェイクスピアの戯曲、「ハムレット」を例にとって説明を試みたいと
思います。ハムレットが鬱病である、ということを前提にすることが
作品解釈をするにあたって不可欠であるとは私は言いませんし、
そういう風に読むばかりが能ではないと思いますが、
ここではあくまで解釈の一例としてそうするのだということを
是非念頭に置いて頂きたいのです。
とはいえ、ハムレットの言動から鬱病のサインを読み取ることは容易です。
自己卑下の発言、動作の緩慢さ、自分勝手な行動は、戯曲のありとあらゆるところに
存在しています。問題は、ハムレットが鬱病にならなければならなかったのは何故か、
父親の亡霊によって叔父への復讐を命令されて、慎重すぎるほど用意周到に計画を練り、
王位簒奪者の処刑という立派な大義名分があるにもかかわらず、
その実行にあたってはだらだらと行動を引き延ばすという不可解な状況は
どのような理由からきているのかということです。
フロイトによると、こういうことなのであるそうです――
父王が死んで内心喜んでいるという点では、実は叔父とハムレットでは心理的には
大差ないのだと。ハムレットは心の奥底では、母親の愛を独占したいと思っていたので、
父親の存在を邪魔であると感じていたのです。
でも、父親を愛しているという感情は決して偽物でも虚偽でもない、
本当の愛情だったので、そういう風に感じている自分を心の底から責めているというのも
真実なのでした。だから、劇が始まった時点で、ハムレットは父親に対して
「父親が死んで嬉しいと感じる」という罪を犯していることになります。
ハムレットは自分の罪意識を自己処罰によって償わなくてはなりません。
でもどのようにして自分を罰したらいいのでしょうか。
父王の亡霊は叔父に復讐せよ、と命じています。
しかしその命令に従って良いのでしょうか。もしそうしたら叔父を殺した結果、
母親が自分の手に入るのですから、そうすれば良さそうに思えますが、
そんなことをするわけにはいかないのです。何故かというに、
自分が母を独占することを父が面白く思うわけがない、
それでは叔父がしたこととまるで変わらないではないか。
そういう風にハムレットは考えているからです。
父親の命令には従わなくてはならない、
なぜなら私は父親に対して罪を既に犯したのだから。
でも母親を独占することは許されてはならない、
なぜならそれは犯罪者の考えたことと同じだからだ。
この互いに矛盾した命令が常にハムレットの心を支配しています。
オフィーリアは自分を愛してくれている、自分も彼女を愛しているが、
自分には母親への愛とオフィーリアへの愛とを区別できない。
ハムレットは自分のオフィーリアへの愛情が、
叔父のものとなった結果、もはや以前ほどには自分を愛してくれなくなった母親の愛の、
代償欲求に過ぎないということに気づいているので、
彼女の愛を受け入れてはならないのです。
それでも計画はゆっくりと、しかし確実に進行します。
最終的には、矛盾した二つの命令の間で絶妙な妥協が交わされて、
ハムレットは「父の死を喜ぶ」、「母親を独占する」という二つの罪を、
「自分が死んで王位継承権を放棄する」、「母親を彼岸に送ってその愛の独占を放棄する」
という二つの罰を以て償うのです。しかし現実には、
一家が断絶し他王朝にその支配を奪われてしまうということが客観的真実なのであって、
つまりそのギャップが「ハムレット」の悲劇たる根幹を成しているのだと言ってもいいかもしれません。
この悲劇は、ハムレットのような、道徳的でしかも行動力も兼ね備えている人間だからこそ成立したのだと、
私は言わなくてはなりません。私がもし彼だったら、というのも愚かな考えですが、
全く無為になってしまって、身動きが取れなかったでしょう。
王位を他国の人間にみすみす譲り渡すという、現代の感覚では最悪な行動こそ、
ハムレットが取り得た精一杯の行動だったのです。
私は、ハムレットが死ぬ間際まで自分の欲求を抑えつけながら
それでも行動することができたという事実を素直に凄いと思いますし、
もう少し彼が道徳的でなかったら、もう少し行動力に欠けていたら、
この悲劇は起こらなかっただろうと確言できます。
こうした理解を充分に示した上で、
悲劇にならずに済むはずのものをわざわざ悲劇に仕立てているという理由から、
この作品が滑稽であるという人の気持には、共感はできませんが、理解はできます。
こういう人間に対しては上から見下ろして笑ってやるべきなのだ、
と考えている人が多いのもうなずけます。
こんなものは飢えや不治の病に苦しんでいる人のそれに比べれば些細なものであると
一蹴する人もたくさんいることでしょう。
ただ、空腹な者の気持は現在空腹である者にしか解らない、という箴言が示しているように、
鬱病の者を元気づける言葉は、そのレベルに下がったものの見方ができる者しか持ち得ないと私は信じます。
一応、根拠がないわけではありません。ユング派の臨床心理学者であるアーノルド・ミンデルはこう言います。
ランク(個人の持つ力や能力の違い。筆者注)の無自覚な使用は、
他者の問題に対する無関心として現れる。(中略)
大変な剥奪や迫害を乗り越えることで心理的ランクを得た人々は、
他人の苦難に対して、「それはたいしたことないよ。私なんて……」と
反応してしまいがちである。自分の経験をひけらかすことで、他者を脅かしてしまうのである。
あるいは、「不平を言うのは止めて、さっさと着替えて仕事に行きなさい」
という態度をとることも、他者を脅かす。このようにして、
「困難を乗り越えた」非主流派グループの人々は、
ときどき自分の属する集団の他人の困難を真剣に受け取らず、
その士気をくじき、元気を奪い、集団全体を弱めてしまう。
紛争の心理学――融合の炎のワーク
第4章 人間関係における力と偏見
著者 A・ミンデル
講談社現代新書 第一刷
私は上の文章を読んで、喉元に匕首を突き付けられた気分がしましたし、
実際に自分自身こういうことをした覚えもされた覚えもあります。
上記のことをいつも意識して生活している人は絶望的に少ないと
思わずにはいられないのですが、どうでしょうか。
とにかく、話を先に続けます。
いま元気である者は得てして次のようなことを言いがちです。
チャーリー
「宇宙の力を考えろ
地球が動き 樹木が育つ
その力は君の中にもある
勇気と意志がその力を呼び起こす」
「ライムライト」 ‘52 監督 チャールズ・チャップリン
われわれ人間のリビドーは、その対象に事欠けば欠くだけますます強烈に、
残されているものにしがみつき、こうして祖国愛、隣人愛、共同体に対する誇りが
急激に高まってきたことは何ら驚くには当らぬことである。
しかし、今は失われてしまった、あの文化財も、それらがかくも脆く消え去り、
その運命に抵抗することができなかったということが判ったからといって、
果してわれわれにとって本当に無価値なものになり下ってしまったであろうか。
多くの人々はそう思っているようだが、私は再びいうが、それは間違いだ。
私は信ずる、そんな風に考えて、貴重なものが頼りにならなかったと判った故に、
そういうものを頭から断念してしまおうという気になっている人間は、
単に損失を歎き悲しんでいるだけのことにすぎない。
悲哀がどんなに傷ましいものであろうとも、それは自然と消滅してしまうものである。
悲哀が一切の失われたものを断念する時は、
同時に自己自身の精力を費い果してしまう時でもある。
そうすると、われわれのリビドーは再び自由の身となり、われわれがまだ若くて、
生命力に富んでいるかぎりは、失われたものと価値の同じの、
或いはそれ以上に価値の高い新しいものへ向って行こうとするものなのである。
こんどの戦争が齎した数々の損失もこんな工合に償われるだろうと思う。
悲哀が克服されて初めて、文化財を尊重しようとするわれわれの気持は、
文化財の脆さを経験したのちも依然として旧の如くであることが判明するであろう。
われわれは戦争が破壊し去った一切のものを再び築き上げることであろう。
恐らくは以前よりもっと強固な土台の上に、そして以前よりもさらに永持ちがするように。
Verganglichkeit (1915)
無常ということ
改訂版フロイド選集・14 愛情の心理学 4版 日本教文社 高橋義孝 訳
いま二つ例を挙げましたが、
前者は劇が進行するにつれてその活力を失くしてゆく運命にあり、
後者の場合は、これを書いた20年後に、第二次世界大戦が起きるのです。
そんな不平不満を後知恵で言ったところで、
これらの精神の偉大さが否定されるものではありませんけれども、
いずれの場合も、元気を失くしているひとに上からものを言ったところで、
単にそれはそれを言った者が言われた側に対して心理的に優位に立っていることを示すばかりで、
言われたものがそれによって奮い立つということは、ないとは言いませんが、
あまり期待できるものではありません。
しかし鬱病の人を元気づける言葉はあると私は信じます。
以下にそれを挙げますが、フロイトはレオナルド・ダ・ヴィンチが芸術活動においては
非常にその作業が緩慢だったことを指摘し、
その要因は幼年時代の不幸な身の上から発しているとの推測から、
彼は科学的探究においてはじめてその症状を克服したのだという認識のもとに、
幾分それを批判的に分析して、以下のように言っています。
世界の関連の壮大さとその必然性に気づきはじめた人間は、
とかく自分自身の小さな自我を忘れてしまいがちである。
讃嘆の念に身も心も奪われ、心底から謙虚になってしまって、
とかく人は自分自身もその世界を動かしている諸力の一部を成しているのだということを、
忘れてしまいやすいものである。その個人的な能力の程度に応じて、
世界のあの必然的な運行の一部分を、すなわちそこにおいては小なるものといえども、
大なるものに劣らず讃嘆に値し、重要な意味をもっているところの、
あの世界の運行の一小部分を改変しようと試みてもよいのだということを、
実に容易に忘れてしまいがちなものである。
Eine Kindheitserinnerung des Leonardo da Vinci (1910)
レオナルド・ダ・ヴィンチの幼年期のある思い出
改訂版フロイド選集・7 芸術論 日本教文社 11版 高橋義孝 池田紘一 共訳
私は、この文章を読んだ時、目から鱗が落ちる思いが致しました。
「自分も万物の運行を司っているところの、あの運命の一部なのだから、
その自覚を持っていなければならないのだし、そうしてもよいのだ」ということを、
私はこれを読むまですっかり忘れていましたし、このような文章を書いた人に
畏敬の念を感じずにはいられませんでした。もっとも、本を読むなどという行動は、
重い鬱病を患っている人にとっては、非常に困難なことであるということを
言っておかなくてはなりません。私は治りかけのときに上の文章を読んで感動したのであって、
病のどん底にある人にも同じ効果があるとは言い切れません。
でも、充分に気遣いの施された文章ではあると思うのです。
この文章は、一方では「お前も万物の運行の一部なのだから、
その力が小さいからといって、みだりに人や物を傷つけるようなことはあってはならない」
という厳格な心の審級の要求を充たし、もう一方では、
「ぼくも必然的に要求される万物の運行の一部なのだから、
少しくらい自分の思う通りに動いても構わないよね」という
我が侭な心の審級の要求をも充たすのです。
失敗を恐れる心も、「自分は精一杯やった、事がうまく運ばないとすれば、
それはもともと自分のやろうとしたことに、自分の全力が及ばないからなのだ」と
信じられるうちは、たとえ努力に相応する報いが得られなくても、
自分を慰めることくらいはできるでしょうからね。
妥協という言葉は嫌いだ、というひともいらっしゃるでしょうが、
これは言って良ければ妥協の徹底的な追求なのであって、
その時点でようやく鬱の人間も一歩踏み出す勇気が得られるのだと私は思います。
上の文章を見つけていなかったら、私はこの企画に提案を出す勇気を得ることはできなかったでしょう。
さて、ついにこの問題に結論を出す時が来たようです。
心の鬼企画において私が主張したいことは、
煩悩を抑圧しようとするところの「勇気」と「意志」が、逆に、症状を形成することもある、
ということであります。
私がそう言ったからといって、決して私はこの企画に異議を唱えているわけではありません。
むしろ、逆です。抑圧が症状となることを知っておくことは、
決して心の鬼を斬るにあたって不都合なことではない、
むしろ作品に説得力を持たせるために必要なことだと思います。
もともと日本鬼子(ひのもとおにこ)は、まともに提示してはとても正視には耐えがたいことを、
可愛らしい風貌を持たせることによってはじめて受け容れられるものにするという
智慧によって、導き出されてきたものであったはずです。
実際、「日本鬼子」と言われながら殺されてしまった日本人がいるのは事実ですし、
そう呪いの言葉を呟きながら死んでいった大陸の人々に関しては、言うまでもないことです。
文化的行動を以て憎しみを克服するという行動は、
その憎しみが自民族や家族に帰属しているところの正当な誇りに根ざしている以上は、
一部の文化的才能に恵まれた人たちのみに許された特権なのであって、
よって圧倒的多数の人々はそれをうまく成功させることができないのです。
そのような、日本鬼子の創作に当って反異民族的な傾向を抑圧することができない人々を、
自分自身は抑圧に成功したが故に、悪意によって彼女をけがそうとしている人間と見なして、
活動の輪から締め出してしまおうとする動きがあることは悲しく思います。
絵を描くことによって自分自身の敵意を和らげることに成功したとしても、
それは自分が意識できる感情のうちの、ごく僅かな部分に過ぎないのであって、
自分のもっと深い内面や他人のそれまではどうすることもできませんし、
いわんや大陸の人々の日本に対する敵意は依然として旧の如くなのです。
私の歴史観が間違っていなければ、私兵に略奪を禁じてそのかわりに占領地に軍税を課す、
戦争は戦争によって糧を得るという、あるひとりの傭兵隊長が成功させたやり方を、
常備軍編成資金の素地にしたのが、そもそも近代国家というものなのであります。
「平和」なんてものは近代においては白昼夢に過ぎないと言っても言い過ぎではありません。
朝鮮戦争は休戦のまま継続中ですが、なにもこれは朝鮮半島に限らない、
すべての国家は本来お互いに敵なのです。
われわれにとっても同じことです、国は民衆の財産を根こそぎ絞り取っては、
外国で戦争を繰り返し、いつかは豊かな生活が送れるようになると約束はしたけれども、
清やロシアに勝っても、世界大戦で勝利しても生活は一向に楽にならない、
どういうことなのだ、早く結果を出せ、と政府や軍部に迫った結果が、
あの結末であります。
戦争をしてもそう思ったほどには儲からないと考えれば解りそうなものですが、
システムが出来上がってしまっているから、それに従う他に道はないのです。
歴史はわれわれに、「戦わなければならないときには戦わなくてはならない、
神も悪魔も人間も、その運命からは逃れられない」ということを教えています。
なるほどそれは全く正しい。しかしそうだからといって、
戦争は不毛ではないとか、野蛮ではないなんてことは、
その経験者には全然信じられないことだと思います。
反面、可愛らしい子どもを絵のなかに見出すと、
われわれの心に暖かいものが湧いてくるのを感じるとは、人間とは不思議な生き物ですね、
銃を連射するのも、絵を描くのも、大地に引っ掻き傷をつけるという意味では全く同じなのに、
こんなにも受ける印象が違うなんて。
それならば、企画にとって都合の悪いようにも思える私の主張も、
彼女たちなら受け入れてくれるのではないでしょうか、私はそう勝手に信じ込んでいます。
なにも斬るばかりが解決手段ではない、たとえ小さい力でも、いや、小さい力だからこそ大きな成果を、
絶望に瀕した人の感情を再び昂ぶらせるという、文化のみが為しうる大きな成果を、
挙げることが可能なのではないでしょうか、そのためには、中成の鬼子よりも、
生成の鬼子と小日本の優しい手のほうが、もしかしたら相応しいかもしれません。
我ながら何と不愉快な文章を書いたものだと思います、
ここまでお読みになった方も少ないと思いますが、
厭な気持ちにさせてしまったことを深くお詫び申し上げます。
もうこれ以上私の言うべきことはありませんが、最後に一つだけ、
これは本筋と関係ないことなのですが、言わせて下さい。
ErosとSexell (ドイツ語です)なものは、よく似ていますが、全く同じものなのではありません。
特に日本人は、そういう勘違いをしている人が多いと私は見ています。
私はErosには18禁的な内容が含まれていると思いますし、
したがって日本鬼子のそういう本が出ても、全く問題であるとは考えませんが、
しかしそうだからといって、性的な内容が日本鬼子の創作にあたって必要不可欠であるとは信じられません。
文化のエロス的な結合は、必ずしもその性的結合と同一視して語られる必要はないのだ、
と声を大にして主張した上で、この小論を終えたいと思います。
スレ違いに対してのレスで申し訳ありませんが、少し失礼します。
>>198-210 一通り読みました。心の鬼が出てくるものだとばかり思ってた(笑
まぁ鬱がどうのこうのは正直ID:ZDDBALYcさんの企画参加の理由であってココではあんまし必要ないような気がしました。
それと戦争についても人それぞれの考え方があるので一概に同意する事はできないです。
えろすとせくしゃる?云々の性的内容の件、必要不可欠だとは思いませんが、完全否定もしません。
力の強い言葉は歪を生みやすいので、太極を見た上で各々の判断でおk程度かなぁと。
言いたいことが沢山あるって事は伝わりましたが、ココのスレ以前に鬼子ちゃんとは関係ほとんど無いぐらいスレ違いなので自重しませうぜ!
心の鬼についてですが、都合が良いも悪いもID:ZDDBALYcさんの解釈のプレゼン次第だと思いますよ。
ID:ZDDBALYcさんの考えに対し自分の解釈で何ですが、
鬼子ちゃんは心の鬼(煩悩)を「抑圧」するのではなく、「切り離す」もしくは「浄化」するに近いです。
煩悩と言う「陰」の価値観に囚われた心からその陰を切り離す。
仰るとおり逆に「勇気」や「意志」が心の鬼になる事も十分あると思います。それは「陽」の価値観に囚われた心でしょうか。
それは傍から見ると勇気でなく無謀に見えるものだったり、意志ではなく強迫観念になりえる事もあるんじゃないかと思ったり。
人の心には陰と陽があって、陰陽のバランスが崩れた時にその心の隙間に心の鬼が滑り込んでくるんじゃないかと
そのバランス取りの為に鬼子ちゃんは心の鬼を切る、そんな盆栽かよと言わんばかりの日本的な考えで自分は2次創作してたりします。
その滑り込んできた鬼とはどんな心の鬼なのか、そして鬼子ちゃんにどう萌え散らかされ心の鬼を退治して欲らいたいのか。
それらの成り行きを他の人にどう面白く興味を引くように伝えることが出来るか。
真面目なものから、クダラないものまで沢山あると思います。
そいつらをストーリに組み込んで鬼子ワールドを広めて行けたらって考えたら面白そうじゃないですか?
妄想して萌え散らかされるのも一興、楽しんでやりませうぜ!
以上、駄文長文並びスレ違い失礼しました。
スレ違い失礼とか深くお詫びとか書けば、明らかに板違いなものを投下しても良いのか?
幾ら何でも違うだろう。
もしそれが通るのなら、今までスレの趣旨に合っていて且つ面白いものを投下してたのに、
何故か追い出された書き手達が哀れすぎる。
彼らはもう既にこのスレを見ていない可能性が大だとしても。
だが、スレの基本姿勢は「否定の言葉より作品で語れ」だからなあ。
簡単に否定の言葉は投げかけないでネタ投下した方がいいと思うよ?
…とはいえ、ここしばらくいいネタないかなあと探している最中だもんなー
某雑誌のおかげで新規さん増えるかもしれないチャンスなのに
なんかないかな〜
>>212 良いとは思ってはいないが、どうにも変な流れに思えたのでレスしてしまった。
軽い気持ちで書いたばかりに、スレ住人に多大な不快感を与えてしまった様ですね。
ただ、その何故か追い出された云々の話について自分は知りもしないし、今回のレスには関係なく八つ当たりに感じました。
とりあえず暫くは自重します、すいませんでした。
215 :
世紀末もの:2011/01/16(日) 23:22:14 ID:zpK87o72
銃が出るようなの書きたいなーと思い書いてみますた。
なんか駄目だな。纏まらん。鬼子がほとんど出ないような気がする。
あと、心の鬼とかもう関係なくなっちゃった!
次のレスから投稿します。
216 :
世紀末もの:2011/01/16(日) 23:26:55 ID:zpK87o72
――人など、もう要らぬ。我らの依代はもう要らぬ。
ただの器に過ぎぬ人に進化の余地は見られぬ。我らが代わりになろう。
人の心に住み、人より優れている我らが人の代わりになろう。
20XX年、8月16日
未確認生命体の目撃情報を市街地で確認。近隣住民により調査依頼。
これは大型生物により飼い犬が喰い殺された為である。
同年、8月17日
山奥で猟師が謎の生物を射殺。以後、研究対象へ
同年、8月18日
市街地で射殺した生物と同じ生物が出現。死者13名。政府が特別調査室を発足。
同年、8月22日
山の中に謎の洞窟を確認。調査隊を派遣。なお、GPSにも映らない模様。
映像機器は撮影不可能。通信は可能のようである。
同年、8月24日
調査隊が洞窟を抜けた先で角の生えた少女を拘束。研究対象へ
同年、8月26日
民間人が角の生えた少女を引き取りに来るがそれを拒否。
同年、8月27日
市街地の大多数の民間人が謎の生物へと変異。以後「鬼」と表記
同年、8月29日
世界各地で変異を確認。以後各地との連絡は取れず。
同年、8月30日
拘束していた少女が一人の調査員により解放。以後、消息不明
同年、8月31日
変異侵食は食い止められず。特別調査室は生存者と共にビル群へと避難。
各地の生存者も駅などの隠れられる場所へ避難を開始。
XXXX年、X月XX日
「鬼」によりライフラインの全てが停止。以降は消耗戦となる。
どれだけ時間が経った?
もう痛みも何も感じなくなってきた。鬼に貫かれた右腕も動かない。
唯一出来るのは残された両足と左腕で、目の前にある拳銃を拾って自殺することだけか。
助けを待てばいいと思っていたが……避難地から5キロも離れてるんだ。
待つだけ無駄というものか。
くそっ……あの少女を逃がしてから変異が一気に拡大したような気がする。
いや、それは責任を押し付けてるだけか。
彼女は関係ない。俺達が角が生えてるという理由で無理矢理連れてきたんだ。
無事に……帰れただろうか?
いや、無事に帰っていてもらわないと困る。
そうじゃないと仕事が増えるだけだ。
「なぁ?そうだろ?」
横に倒れている隊員に話しかけるが返答はない。
当たり前だ。鬼による最初の一撃で死んだんだ。
遠くに人影が見える。瓦礫の隙間からコチラへゆっくりと歩いて来る。
217 :
世紀末もの:2011/01/16(日) 23:27:46 ID:zpK87o72
「あぁ……くそ。鬼かよ」
呆気無く希望は打ち砕かれる。
そんなに人生甘くはないよな。ゆっくりと鬼がコチラへ近づいてくる
3メートルはあろう巨体に見合うビルの鉄骨のような刀を持ちながら。
倒すには弱点である額か胸に光る小さな物質を破壊するだけ。
言うだけだったら簡単なんだがな……当たるもんじゃねぇんだよ。
力のあまり入らない左腕で銃を拾い上げ、構える。自分の米噛みに向けて。
「これで、23年間の人生に幕か……少し寂しいな」
米噛みから銃口を話し鬼に向ける。
「最後まで抵抗してみるか。無駄だろうけど」
一発、鬼に向けて撃つ……が、案の定外れる。
続けて二発。鬼の体に当たるが弾かれる。
続けて一発撃ちこむがそれも外れ、弾が切れる。
カチンカチンと金属と金属がぶつかり合う音を聞きながら引き金を引き続ける。
それが無駄だと理解する頃には鬼は目の前に立っていた。
はぁ……映画みたいに援軍が来ることはないか……
鬼が静かに刀を振り上げる。
「優しく頼む……痛いのは嫌いなんでね」
目を瞑り、振り下ろされる刀を大人しく受け入れる。
が、何時まで経ってもその刀が来ない。
片目をそっと開いてみると少女が鬼を斬っていた。あの少女だ。
あの日、家に帰したはずの角の生えた少女だ。それがあの巨体を一撃で斬り伏せた。
信じがたいこともあるものだ。それにしてもなぜこの少女がここに?
「なんで君がここに?。帰ってもいいと言っただろう」
「こんな来たこともない所で置き去りにされても帰れませんよ!」
怒鳴られた。といってもこの少女が言ってることは正しい。
「悪かった。帰り道は駅員に聞いてくれ。君の降りる駅は○△駅だ」
「冗談言ってるんですか?街中廃墟だらけですよ?」
「いや、すまなかった。もしかしたら俺の言葉で世界が元に戻るかもだろ?」
「漫画の読み過ぎです。私は早く家に帰りたいんです。案内してもらいますよ?」
「悪いな。足の感覚がない」
「それは"そいつら"のせいでしょうね」
少女が薙刀を肩に掛けながら俺の足を指さす。
指の差された足を見てみると変な生物が二匹、乗っかっている。
「うぉう!?」
思わず飛び上がって立ち上がってしまう。
あれ?立てるじゃないか俺。というか痛みはどうした?
218 :
世紀末もの:2011/01/16(日) 23:28:36 ID:zpK87o72
「立てるじゃないですか。さ、案内してもらいますよ」
「いやいやいや、その前にこの気持ちの悪い生命体の説明を――」
「失礼でゲス!オイラはれっきとした厄払いのお守りだぞ!ヤイカガシだぞ!」
「……じゃあそっちは?」
「乳の精霊。ヒワイドリだ。文句あるか?」
「あるに決まってるだろ!なんだその……魚みたいなお前!厄払いのお守りが立ち歩く訳が
ないだろう!それにそこの鳥!なんで鳥が喋るんだよ!それに乳の精霊ってなんだよ!」
「乳の精霊っていうのはだなっ!?」
ゴスンッという音と共に薙刀の石突の方がトリの頭に振り下ろされる。
あれは痛そうだ。
「それで……案内してくれるんですか?」
「いや、そのだな」
「案内!してくれるんですか?」
すごい目付きで睨まれた。
恐らくこの目付きならライオンでさえもしっぽを巻いて逃げ出すだろう。
「わかった。わかったよ。だが避難地には帰らさしてくれ。話はそれからだ」
「ふぅ……仕方ないですね。そうと決まったら早くしてください。待ってる子がいるんですから」
「待ってる子?あの小さい子か?」
「そうです。家を出るときに猫おば……猫お姉さんに任せてきましたけど心配なんです」
「それは悪いことをしたな……」
「本当です」
ぷいっとそっぽを向かれてしまった。
足元であの二匹が笑いながら少女の前に走っていく。
なんだあれ。すごいムカつく。撃ちたい。
「っとそうだ。君の名前を聞いてなかったな?名前は?」
「日本鬼子」
「……なんていった?」
「日本鬼子」
嘘だろ?こいつがあの"日本鬼子"か?
〇〇駅周辺を調査していた調査隊の通信が途絶える前に襲撃してきたあの鬼の?
いや、研究結果じゃ鬼とは断定されていない。
だとしたらどうして?逃がした後に変異したか?
「一ついいかな?」
「なんですか?避難地はもう目の前なんですよ?」
確かに……避難地はすぐそこだ。
ほんの500mぐらい。だけどこれだけははっきりしなきゃならない。
「今まで何処にいた?」
「〇〇駅」
「どうしてそこに?」
「家に帰る手段を探してたんですよ。なんでこんな事を聞くんです?」
「じゃあ、最後に。人を喰らったか?もしくは殺したか?」
「……いいえ」
「そうか。ならいいんだ……今のことは忘れてくれ」
219 :
世紀末もの:2011/01/16(日) 23:29:24 ID:zpK87o72
どうしたんだ俺は?あり得るはずがないじゃないか。
こんな少女が調査隊を……いや、あれを見たからか。
この少女があの屈強な鬼を一撃で斬り伏せたのを見たからか。
どうする?このまま避難地に入れれば彼女が内部から崩壊させる事があr……
「あれが……避難地?」
彼女が立ち止まり、その場所を指さす。
嘘だろ?今朝出てきたときはまだ無事だったはずだ。
なのに何故こんなに燃えている?なぜ鬼だらけなんだ?
「変異侵食っすね。このまま行くのは危険っすよ。どうする鬼子?」
トリが淡々と喋る。
変異侵食……だと?そんなのはわかってる。
あの避難地には600人以上の兵士がいたんだぞ?
それが一日で陥落するなど……
「どうするんです?行きますか?もう陥落してますよ?」
「……行くに決まってるだろ。まだ生きてる奴が居るかもしれん」
「無駄です。あそこには鬼しか居ませんよ」
「お前に何がわかっ……」
そうだ。どうして人間に角がある。
そんなの最初っから分かってるじゃないか。
「私が……鬼だからですよ」
「ちょっ!?何言ってるんだ鬼子!状況をこれ以上ややこしく」
「黙って!これは彼自身が決めること」
どうする?相手は鬼だ。武器も持たない人間の俺が敵うはずがない。
それに……彼女は人を遅っていないと言っている。
今は信じるしかないだろう!
「避難地へ急ごう」
「えぇ」
そう言って避難地へ向かって走りだす。
避難地に着くと想像以上の被害だった。
人の姿は既に無く。代わりに大量の鬼が住み着いている。
だが、まだ変異が不完全なのだろう。所々に人であった名残が見える。
それが俺に対して助かる余地のない人ばかりという現実を突きつける。
「すまない……」
足元に落ちている銃を拾い上げ、殺していく。
中には子供もいる。だが、こうなればもう助からない。
変異が始まれば元の姿には戻れない。
歯を食いしばりながら冷静にまだ人である頭の部分に弾を撃ちこんでいく。
「調査隊か……」
下半身が既に鬼と化した一人の兵士が俺に話しかけてくる。
220 :
世紀末もの:2011/01/16(日) 23:30:24 ID:zpK87o72
「……何があった?」
「人だと思い……受け入れた少女が……鬼だった」
「なに?人型か?」
「違う。人なんだ。頭に小さな角を二本生やしている長髪の……少女だ。
〇〇駅で全滅した調査隊を襲ったのと同じ……少女だ」
どういう事だ……やはりあの子が……日本鬼子が調査隊を……
「わかった……仇は取ってやる。約束だ」
「すまない……最後まで調査隊には世話をかける」
半分侵食された兵士に礼をし、引き金を引く。
彼は知っている。二日前、家族と再会できた数少ない人間だ。
右腕は使えない。
既に体中は傷だらけ……その身で彼女を殺せるか?
仇を討てるか? 不可能だ。勝機は99%無い。
だが、残りの1%にかける努力はしてみる。正々堂々とだ。
周りの鬼を切り倒している日本鬼子に近づいていく。
「日本鬼子。 俺はどうやらお前を殺さなきゃならなくなった」
照準が合わない左腕で鬼子に向けて構える。
鬼子のほうは驚きの顔を隠せないようだ。
「どういうつもり?」
「……目撃者が居たんだよ。頭に角を二本生やした長髪の少女!それがここを襲った!
そして、その少女が今、俺の目の前に立っている!お前がそうなんだろう日本鬼子!」
「違う。私じゃない!私はただ……家に」
「ふざける……な?」
なんだ?なんで刀の刃が俺の目の前にある?
なんで体を貫いている?
「ごふっ……」
「残念。心臓は外れたから侵食は遅いわよ」
勢い良く刀を引きぬかれ、日本鬼子の前に投げ飛ばされる。
呼吸をするたびに激痛が全身を駆け巡る。
俺を刺した奴の姿を見る。
あぁ……そういう事か。同じ姿の鬼か。
「く……そっ……」
「喋らないでください。ヒワ!早く処置を」
「わわ分かってるって!」
傷口を塞ごうとトリが必死で傷口を押さえる。
「日本鬼子……疑って、すまない」
「許して欲しかったら私を家に送り届けてくださいね」
笑顔で返される。あぁ……この少女に俺は銃口を向けたのか。
助けようと。俺を助けようとしてくれていた少女に対して銃を向けたのか。
酷い奴だな。俺は。
「どうでもいいけどさー。その男はもう死ぬよ。それに侵食がはじまってるし」
刀に付いた血を拭きながらもう一人の鬼子が鬼子に喋りかける。
だが、鬼子少し笑うと直ぐに反論を始める。
221 :
世紀末もの:2011/01/16(日) 23:31:34 ID:zpK87o72
「馬鹿にしないでくださいよ。何年前から人を救ってきたと思ってるんです?
この侵食具合なら処置できます」
「馬鹿にはしてないけどね。まぁ、いいや。あんたも鬼なんだから素直になりなよ」
「嫌です。本能に従うなんて馬鹿な事はしません」
「はぁ……イエスと答えてれば良いものを!」
「はあぁああ!」
ガキンッっと刀と薙刀がぶつかりあう。
普通なら折れるような鍔競り合いをしながら戦っている。
周りの空気が震える。
出来ればもう少しこの戦いを見ていたかったが……もうだめらしい。
意識が断続的に飛び始めた。
トリが何を叫んでいるのかも聞こえない。
もう……だめ……だ……
男は倒れ、獣が2匹、男を介抱する。
少女は自分自身と戦い、男を守る。
「はぁはぁ……やるじゃないか日本鬼子」
「はぁ……はぁ……」
「けど、まだ強さが足りない。成長が待ち遠しいねぇ」
鬼子と同じ姿をした少女は踵を返し、鬼子に背を向ける。
「強くなったら家に帰ってきな。 かわいいかわいい小日本が待ってるよ。
あ、そうだ。 コイツは返しておくね」
麻袋のような物を鬼子に投げつけると同時に彼女は消えた。
「なんなのよ……ん?これは……血?」
鬼子が急いで袋を広げる。
中には猫が一匹。 血だらけで入っていた。
「般若……猫?」
「鬼子……ごめんね。小日本……守りきれなかった」
「喋らないで!ヤイカガシ!早くこっちに!」
「だめでゲス!この男の出血が止まらないでゲス!」
「こっちもハンニャが!」
辺りを瓦礫に包まれ、崩壊し燃え続けるビル群。
そんな中に死にかけの二人を助けるために奮闘する三人。
そんな彼女たちの熱を冷ますかのように雨が降り始めた。
終わり。
なんだこのぐだぐだは。
乙。バイオハザードならぬoniハザードですか。
そのうち、スタートレックな鬼子SSとか出てきてもおかしくな……いやいや、まさかw
前回のあらすじ――本成日本鬼子さん(こんなんどない?)復活。
一方その頃、一世代前のパソコンで埋め尽くされた部屋の巨大モニタに本成日本鬼子さんと小日本、進撃の巨人のような体格比の二人の姿が映し出されていた。
地下にしては広すぎる、地上にしては暗すぎる謎の部屋にいるのは二人組みの男。そのうち片眼鏡の男がくつくつと声を立てていた。40がらみの顔を臆面もなくにやつかせ、本成日本鬼子が出現してからずっと笑いが止まらない様子だ。
「ふ、ふふふ、くはははは! あっはっはっはっは! 見ろ、まるで乳が岩のようだ!」
男は本成日本鬼子の乳を指さして言った。
隣には緑髪の青年がおり、こちらもちょんまげを揺らして笑いを堪えている様子だった。
「ふっ、愚かな……そんな事よりもご覧なさい、あの柔らかそうな太ももを!」
青年の目は着物の裾からのぞく日本鬼子の太ももに釘づけだった。
「あの絶妙なライン、まるで職人技の賜物です。見えそうで見えないチラリズムこそ至高の芸術!」
「ふっ、こんな所で喧嘩はよそうモモサワ君。巨乳原理主義的に言えば巨乳と太ももはベストパートナー、決して相容れぬ仲ではない……」
「そうですね。その点で私は巨乳原理主義には一目を置いているのですから……ぬっ!? しゃ、しゃがんだ!」
「おおっ! これはいい! 子供を叱るお姉さんぽい表情ナイス!」
二人の怪しい人影は、姿勢を低くして画面の見えない角度まで覗こうとしていた。
「ふふふ、しかし、とうとう日本鬼子が本成になってしまいましたか。『あのお方』はここからどう決着をつけるつもりかな……」
「くくく、それは計画のすべてを知っている『あのお方』に委ねるしかないだろうね……封印された状態での討伐に失敗したいま、『あのお方』を除いてはいかような手段が残されているのか知る者は……はっ、腕組みしてむぎゅうとなっているっ!」
「ああっ岩の影に……カメラもう少し右に寄れ!」
「駄目だモモサワくん、これは衛星カメラだ!」
「ならば地球よ傾け!」
「君一人の力では足りない、みんなで祈るんだ!」
怪しげな二人が騒いでる一方、映像の中の本成日本鬼子は小日本に仲間入りをせがんでいるのだが、小日本はますます答に窮して肩をすぼめてばかりであった。
「じゃあ時給百円でいい?」
「安い! 子供のお遣いなの! というかいつの間に私が給料を貰う話になっちゃったの!?」
「時給百円で友達になってくれない?」
「ダメです鬼子さんいくら寂しくったってそこまで堕ちちゃだめですぅ友情をお金で買っちゃだめですぅ!」
「やっぱり……ひぐっ、私じゃダメなんだぁ……」
「あうぅ、それは、それはぁ――くぅたぁん! ひとりにしないでくぅたん! ていうか般ニャーいつの間に消えたの!? 皆どこへいっちゃったのぉ!?」
助けを求める小日本の声が、見渡す限り瓦礫と化した大地に響き渡った。
その時――どこからか空気を震わせるような野太い声が響いてきた。
「バン・ウン・タラク・キリク・アク! 『オォぉ〜ドゥァぁ〜! 陰陽道風本格派結界、呪詛符縛りいぃ〜』!」
まるで声に呼応するかのように、小鳥の軍勢がいくつも集合したような群れを成して呪符が飛んできた。
本成日本鬼子さんはぶんっと残像を残して右に百メートルほど移動していたが、呪符は向きをかえて迷うことなく飛びかかってゆく。
「燃え散れ……!」
薙刀を振り払い、業火の柱で呪符を一枚残らず焼いた。だが、それらは燃え尽きる事なく炎をくぐってくる。
その時点で鬼子さんはもう諦めるような表情になっていた。
「やれやれ《呪詛符》かい。こいつは参ったね」
呪符が鬼子さんの竜の髪の毛や体に貼りつき、血で書かれたような文言が怪しげな光を放った。
先ほどまで気ままにうごめいていた頭髪の竜が痺れたように動かなくなった。動きの自由を奪われたらしい、鬼子さんも両手をだらりと下げ、じっと前方を見据えていた。
その視線の先に、くるくると回転しながら飛んでくるけむくじゃらの姿があった。
鬼子さんの頭髪の竜が一匹、長い首をもたげ、けむくじゃらはその頭に着地した。
「お前は誰だ? 大天狗じゃあないね」
日本狗は正面にかぶった天狗の面を掴み、自ら剥ぎ取った。面を取った途端、獣の姿からすらりとしたスーツ姿の青年の姿に入れ変わった。
銀髪に意志の強そうな澄んだ瞳、その姿は意外なほどの美青年である。
「ふふふ、そちらがご存知ないのも無理はない、はじめまして日本鬼子さん。私は安倍晴明の末裔です」
頭髪の竜が本成日本鬼子の体を這い、美しい体のラインを締め上げた。
日本鬼子さんが苦痛に顔を歪め、周囲の鬼たちの歓声が大気を震わせる。
「最初から私の討伐が目的だったね。天狗の振りまでしてあの子を引き入れて、あの陰陽師の考えそうな事だ」
「ちょうど親戚に妖狐がいましてね、まったくラッキーでしたよ」
日本狗が指をパチンと鳴らした。日本鬼子さんの頭髪の竜が足元の小日本に向かって伸びていった。
「く、くぅたん……?」
小日本は日本狗が消えたかのように力なく尋ねた。目の前に迫った竜の鼻息に髪が浮かび上がった。
「……くぅたん、なの……?」
小日本は真っ青になって唇をわななかせていた。
本成日本鬼子は無駄にあがこうとせずに、目の前の豆粒のような人間にただ縛られるままになっていた。
「私を討伐して、いったい何が望みだ」
「スサノオは酒を飲ませてヤマタノオロチを退治したでしょう。源頼光は酒を飲ませてその息子である酒呑童子を退治した。
私もあなたの存在を知ったとき、やはり酒を飲ませてあなたを退治するのが筋かな、と思いまして」
「食えん奴だな、陰陽師とはみなそういう下種な男ばかりなのか?」
「それはたぶん的を射ていますね。しかし、もっといい方法があるのですよ。今の時代に則した方法が」
日本狗は皮肉をまったく意に介さない。それどころか、ますます鬼子の事を気に入ったかのような様子であった。
「あなたに協力者になって欲しいんですよ、いえ、それ以上の……仲間にね」
本成日本鬼子の眉がぴくりと動いた。
「仲……間……だと?」
本成になっても相変わらず仲間という言葉には弱いようだ。
「さっき小日本が言ったでしょう、ああ、天狗の耳はよく聞こえましてね。我々の目的は妖怪の国を作る事だと」
「それはお前が吹き込んだ方便だろう?」
「いえこれは私の本心です」
鬼子さんは日本狗の本心がどうも見えないといった目つきを投げかけた。
「協力は惜しみません、まずはそれを成し遂げてくださいませんか」
「正気とは思えんな、お前は人間ではなかったのか」
「いたって正常ですよ、妖狐から生まれた者が人間かどうかはともかくね。ここが妖怪の国になっても人間が全滅することはありません。そこまでするメリットが妖怪側にないですから。
しかし妖怪がはびこるこの国で、人と妖の間を取り持つ陰陽師の需要が高まるのは目に見えています」
「……」
「妖怪と人間が共存していた中世のような世界を再現したい。妖怪がただの恐怖の対象ではなかった時代。四季の変化や生命の営み、目に見えぬあらゆるものが妖怪であった時代。
そのような時代を再び生み出し、そこで陰陽師として活躍したい、それが私の願いです。
その為に鬼族を率いるあなたに協力をしていただきたいのです。どうです日本鬼子さん、私の仲間になりませんか?」
目的というより野望を語る日本狗の笑みは、それが笑みであると言われなければ分からないほどに歪んでいた。
鬼子さんが足元に目を向けると、小日本は自分を丸呑みできる大きさの竜に睨まれて動けないようだった。
本成日本鬼子は視線を日本狗に戻して言った。
「断る」
日本狗は杓を投げ捨てて憤慨した。
「なぜだーっ! 俺は妖怪の国を造ろうって言ってるんだぜ! 鬼もハッピー陰陽師もハッピー! ハッピーバースデー新しい世界だ、そうだろお前たちもハッピーだろぉぉ!」
しかし、心の鬼たちは動こうとしない。さっきからずっと彼に敵視を向けている。日本狗は戸惑いながらその視線を受け止めていた。
「お前は中世がどんな時代だったかを知らないんだね」本成日本鬼子は言った。「時代が移り変わって得るものもあったし、失うものもあった、妖怪にとってもそれは同じだよ。お前の提案は粋じゃなかったのさ」
「なっ……」
日本狗は一瞬絶句し、ぎりりと歯を食いしばった。
「粋じゃない……無粋……無様……やられやく……三下の悪党……だと……おのれその言葉、後悔しても知らんぞっ!」
規制がかかってて書けなんだ。みんな凄いなぁ。ガンアクションものも面白いなぁ
>>198 長いのでまだ全部読んでいませんが、面白そうですね。
文章も上手いし、個人的にはこういうの好きです。
スレ違いだけど長文を載せられるのはここしかないし、鬼子に関係ないわけでもないと思うのでいいと思います。
ただ避難所のレスは流れてしまうので説明文も再掲載してもらった方が良かったと思います。
リード文がないので唐突な感じがしました。
本来ひとつの作品を作る為には表面に現れる文章の下に、関係があるないに関わらずこれぐらいの思索があるべきだと思います。
それでこそ説得力のある作品になるのです。
読んでいる人は読んでいると思うので、気落ちせずにまた書いて下さい。
227 :
時の番人:2011/01/22(土) 12:16:03 ID:Qqhev4Hh
今、ここ誰も使ってませんね〜!?
使ってないようなので今から
「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第九章〜【呪縛の解読】
を投下します。
それと今回も挿絵・・無しです。
228 :
時の番人:2011/01/22(土) 12:17:13 ID:Qqhev4Hh
●「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第九章〜【呪縛の解読】
冷たく硬い雨が地面を突き刺している、まだ日が昇らない朝方。
人間の民には見えない結界が、鬼狐神社を静かに包んでいた。
そんな中、神社に仕える織田と秀吉が目を覚ました。
「フワァ〜アァ」
織田は大きなあくびをしながら起き上がり、布団を片付けている。
同じように秀吉も布団を片付けていた。
「ゥウ〜寒い寒い。今日は、雨ですね〜」
秀吉は部屋の練炭に手をかざしながらそう言った。
「よ〜し。ジャンケンだ!」
と、織田が寒さで身震いする自分の身体を擦りながら言った。
秀吉は、練炭のそばで、身体を丸めながらその言葉に返す。
「えぇ〜今日、鐘を鳴らすのは織田さんの番ですよ・・・」
「いぃじゃねぇか。朝食のシシャモを一匹あげるからジャンケンしようぜ!」
織田のいつもの強引な提案・・・。秀吉は膝を抱え、下あごを前に出しながら小声で言った。
「・・・シシャモ一匹で・・・子供じゃあるまいし・・・」
【ズザ・・】
その時、裏庭で何か小さな物音がした。
「ん?何の音だ?」
織田が裏庭へ続くふすまの方に目をやった。そして、
「秀吉、ちょっと見に行ってくれ」
と言う織田に対して、秀吉がすかさず言葉を返した。
「えぇ〜、行かなくていぃじゃないですか・・。風で何かが倒れたんじゃ」
秀吉は、練炭にしがみ付く様に織田に背を向け丸まっている。
「そんな事言わずに、シシャモもう一匹付けるから。
それに悪しき輩だったら俺こわいもん!」
と、織田は鼻をピクピクさせながら言った。
織田が、鼻をピクピクさせながら言う時は、決まって怠けようとしている時だ。
しかし、この光景はいつもの事なのである。織田が無理難題を言い、
秀吉がそれをやらされる・・・。
織田が言い出すと、秀吉が動くまで言葉は止まらない。
秀吉は、仕方なく上にちゃんちゃんこをはおり、傘を差して冷たい雨が降る裏庭に出て行った。
織田は、そんな秀吉をよそに練炭に当って暖を取っている。
「おぉ〜。今日も冷えるなぁ。こんな日に鐘楼に行って鐘を鳴らすのはキツイぜ」
【ドカドカドカ、バン】
秀吉が走りながら勢い良くふすまを開けた。傘を持っていないようだ。
「お、織田さん。あの・・その・・」
秀吉はかなり焦ってる。
「なんだよ〜また、あのその言って・・何言ってるか解らんぞ」
織田はそう言って、秀吉の方に振り向いた。
「い・・狗(犬)。狗ちゃんが倒れてます」
秀吉は焦っているので、狗の名前が出てこないみたいだ。
「狗!?狗ってハチ太郎の事か?」
「そ、そうです。しかも・・・血だらけで・・・」
一瞬にして織田の表情が厳しくなる。そして慌てるように立ち上がった。
「な、なにぃ」
織田と秀吉は、冷たい雨が降る裏庭に傘無しで飛び出し、倒れてるハチ太郎の所に走っていった。
229 :
時の番人:2011/01/22(土) 12:18:24 ID:Qqhev4Hh
織田は・・・自分の目を疑う・・・。
「・・・こ・・これは・・・むごい・・。どうしてこうなった・・・」
ハチ太郎の姿は、白い毛並みが全て血で赤黒く染まり、深い傷が何箇所もあった。
織田がハチ太郎の身体にそっと手を触れる。
「・・・冷たい・・・」
そして、自分の耳をハチ太郎の横たわる身体にあてた。
「・・・・・・」
【ドクン】
「!、かすかに鼓動が聞こえる。秀吉、狐火様を今すぐ起こすんだ。そしてお湯を沸かせ」
織田は、そう大声で言い、ハチ太郎を担ぎ上げる。
秀吉は、バタバタときび爺、きび婆の名前を呼びながら寝室へ飛んでいった。
その騒動でこにぽん以外の全員が目を覚ます。
こにぽんの近くで眠っていた鬼子、般若、般ニャーもこにぽんを起こさない様に表へ出て行った。
鬼子達が見たのは、織田が血まみれのハチ太郎を運んでいる姿だった。
鬼子は、心の動揺を隠せず、織田に駆け寄る。
「は・・ハッちゃん!?ハッちゃん!ど、どうしたのハッちゃん」
目の前の受け入れられない悲惨な状況に、鬼子は気が動転していた。
「鬼子ちゃん、舞子。部屋の暖を早く」
織田はそう言ってハチ太郎を抱えながら部屋の中へ駆け込んで行った。
弥次さん喜多さんは、ハチ太郎が横たわっていた付近を調べている。
般若と般ニャーは神社の結界の状態と、浸入した物が無いか調べる為、
神社周りを走り回っていた。
暖かい部屋の中、血で赤く染まったハチ太郎が柔らかい布団の上に横たわっている。
鬼子は、タオルに暖かいお湯を染み込ませ、ハチ太郎の身体を泣きながら拭いていた。
「何でハッちゃんが・・・私のせい・・。私が悪い・・。私が・・・」
鬼子はそう小さくつぶやく。
きび婆は、鬼子の近くでハチ太郎の傷口に薬を塗っていたので、鬼子の小さな言葉を聞き逃さなかった。
「どうして鬼子のせいなんじゃ?輩と対峙した傷じゃろうて」
きび婆は、そう言いながら鬼子の方へ目をやったが、
鬼子はきび婆と目を合わさず、ジッとハチ太郎を見つめていた。
「・・・私のせい・・・」
その言葉と同時に、鬼子はその場にうずくまってしまった。
「お、鬼子・・」
きび婆の声が部屋に響く・・・。
鬼子は・・・身体に力が入らずその場で泣き崩れてしまった。頭を布団に擦りつけながら・・・。
「本当は・・・私が行かなきゃいけなかったのに・・・。
命(命令)を受けてるのは・・・私なのに・・・」
側にいたきび爺が、首を振りながら言う。
「・・・行かせたのはワシじゃ・・。ここのみんなを守ってるのもワシじゃ・・・。
ハチ太郎がこのようになってしまったのは、全てワシのせいじゃ・・・」
鬼子は布団から顔を上げ、きび爺ときび婆の方を見て声を張り上げた。
「違う!」
「きび爺ときび婆の命は、この鬼狐神社を守っていく事でしょ。
この中で輩退治の命を受けてるのは私だもん・・・それなのに、
原因が解らないまま、時間だけが過ぎていってしまって・・・
私がもっと、賢くて、強くて・・・」
鬼子は言葉を詰まらせた。自分の不甲斐なさに苛立ち、下唇を強く噛んでいる。
その唇に・・・血が滲んでいた。
「鬼子よ、それは違うぞ。ハチ太郎はただこにぽんに付いて来ただけじゃない。
鬼子の手助けになればと、一緒にきたんじゃろうて」
きび婆は、自分のせいと思い込んでしまっている鬼子に対し、そう言ったのである。
そして、ハチ太郎の傷を狐様の毛の糸を使いながら縫い合わしている。
230 :
時の番人:2011/01/22(土) 12:19:44 ID:Qqhev4Hh
鬼子の瞳には、ハチ太郎の横たわる顔が映っている。
「・・・みんなに迷惑かけてしまう・・・。私なんて・・・
私がこうなればよかったのよ」
鬼子の心は潰れそうにそう叫んでいた。
「馬鹿な事を言うのはおよし!鬼子ちゃんが傷だらけになって帰って来たら
誰が喜ぶって言うの!」
般ニャーがそう叫んだ。見回りから帰って来た般ニャーが
鬼子の言葉を聞いて一喝したのだ。そして、般ニャーの姿が26、7歳くらいの
女性の姿へと変わっていく。般ニャーは、鬼子を両手で包み優しく言った。
「・・・鬼子ちゃんの気持ちは解るわ。でもね、ハチ太郎がそんな事聞いても
喜ばないわよ。傷ついた身体で、やっとの思いでみんなの所に戻って来た
ハチ太郎を褒めてあげようよ」
その言葉を聞いた鬼子は、また泣き崩れてしまった。
先ほどまで暗かった空が、うっすらと明かりを帯びている。
雨も小雨になり、静かに夜が明けようとしていた。
女性の姿になって、鬼子とハチ太郎の側にいた般ニャーが静かに立ち上がる。
「こにぽんを起こしてくるわ。治療をしてもらわないといけないから」
鬼子は力なく小さくうなずいた。
少しすると、般ニャーがこにぽんを起こしハチ太郎のいる部屋に連れてきた。
般ニャーは猫帽子風の姿に戻っている。
「ふわ〜、おはよう」
眠たそうな声で挨拶するこにぽんの目に、横たわるハチ太郎の姿が映る。
白い毛並みが所々赤くなっていて、縫い合わせた生々しい傷口が
こにぽんの目に飛び込んできたのだ。
「・・・・・・は、ハッちゃん。ハッちゃんハッちゃん」
きび婆の心が痛む。こにぽんの守護についたハチ太郎は、毎日、毎日一緒に
行動していただろうし、笑う時も、泣く時も、怒る時も心は一つだったはず・・・。
そんなハチ太郎が目の前で傷だらけで倒れてるのだから・・・。
「こにぽんや、大丈夫じゃ・・もう大丈夫じゃよ・・・」
優しい言葉で、そうこにぽんに言った。
こにぽんの目から大粒の涙が溢れ出す。
そして、涙を流しながらハチ太郎にしがみ付いた。
「は・・ハッちゃん。・・・ハッちゃん」
自分のせいでこういう状況になったと思い込んでいる鬼子は、
その様子を直視出来ないでいた。
「・・・ごめんね・・こにぽん。ごめんね・・・」
そうつぶやくのが精一杯だった。
きび婆が、泣いているこにぽんの背中に手をあて優しく撫でている。
「こにぽんよ。ハチ太郎の怪我の治療をしてくれるかぃ」
「うん」
幼いながら、こにぽんは自分の役目をちゃんと理解しているが
心が大人に成長している訳ではない。
震える自分の手のひらを、ハチ太郎の怪我の上にかざし、
そして泣きながらハチ太郎の治療を始めた。
231 :
時の番人:2011/01/22(土) 12:20:56 ID:Qqhev4Hh
冬の冷たい朝陽が、鬼狐神社のある山を照らしている。
ハチ太郎の、怪我の治療をしている部屋に般若が見回りから帰ってきた。
「狐火よ、結界の方は大丈夫じゃ。浸入された気配も無かったわぃ。般ニャーの方はどうじゃった?」
「私の方も同じね。匂いはハチ太郎のものだけだったわ」
弥次さんも自分が調べた事を言う。
「ワシらの方も問題無しじゃ。ハッちゃんの血痕は雨で既に消えとった。
足跡もかすかに残っとったが途中で消えておる」
きび爺はとりあえず一段落した状況に少し安堵する。
「そうか・・・。みんなごくろうじゃった。冷えた身体を温めておくれ」
「っぷぅ〜・・・」
ヒワイドリが吐息をもらした。
この部屋に、ヒワイドリ、ヤイカガシ、モモサワガエル、チチドリ、チチメンチョウ・・・
の五匹がいたのだ。彼等はこの事態の空気を敏感に察していたので、言葉を発しなかったのだ。
この状況で・・・冗談など言えるわけが無い。
少し緊張がほぐれた舞子が織田に話しかける。
「ハチ太郎君・・・、本当に大丈夫なんでしょうか・・・あんなに深い傷・・」
「いや・・・。解らないな。普通の犬なら即死だったかもしれんが・・・」
般若が舞子や織田の方に振り向き、親指を突き立てて言う。
「大丈夫じゃ。狗の民は簡単にゃぁ死にはせん。安心してくれ。ただ・・治るのにちと時間が掛かるがのぅ。
狗の民の特徴はな、全てにおいて俊敏であり、判断能力に優れておる。それゆえ先頭に立って
偵察したり誘導したりするから、傷を負うこともしばしあるんじゃ。
だから、怪我の回復力も他の民より優れておるよ。安心せい」
きび爺が、般若の近くに行き話しだした。
「ハチ太郎がこんな事になるとは・・・。ワシの判断ミスじゃ・・・。
単独で行かしたのは、ワシじゃからな・・・」
「狐火よ、もうそれを言うのは止そうじゃないか。ワシはこの傷には納得できん。
狗の民は、守る者が近くに居ない時は自分より力の強い輩に対しては決して無理はしない民なんじゃが・・・。
どうして、ここまでの傷になってしまったんじゃ・・・。」
「狐火様・・・」
ハチ太郎がユックリと目を明け、かすれ声でそう言った。
「は、ハッちゃん。ぅええぇぇぇ〜ん」
こにぽんは、まだ治療の途中だがおもわずハチ太郎に抱きつきながら泣いてしまった。
鬼子は、そんなこにぽんとハチ太郎を見ながら膝上で手を【ギュッ】と握り締めた。
「・・・よかった・・・」
鬼子の顔にも、すこしばかりの笑顔が戻る。
きび爺がハチ太郎の方に振り向き、
「おぉ・・やっと気が付いたか。心配したぞぃ」
と言いながら近寄ってきた。
「ご・・ごめん・・・。やられちゃった・・・こにぽん、俺は大丈夫だよ。
こんな傷くらいすぐ治してみせるから」
こにぽんは、抱きつきながら大声で泣いている。
幼い心の痛みと安堵感が、そうさせているのだろう。
「狐火様・・・本当にごめん。こんな情けない姿を見せちゃって・・・」
「いやいや、良かった。本当に良かったわぃ。ハチ太郎や、目を覚ました所ですまんが、
休むのをちょぃと我慢してくれるかぃ。とにかくその時の状況を説明してくれ。
それからユックリ休むがえぇ」
「は、はぃ」
232 :
時の番人:2011/01/22(土) 12:22:09 ID:Qqhev4Hh
身体に激痛が走るハチ太郎は、顔を歪めながら一生懸命いきさつを話しだした。
「走っても走っても、輩の匂いが全然強くならないんだ。近づいて行ってると思うんだけど・・
輩の匂いはちゃんと感じてた・・・でもその匂いはまだ遠くの所に感じたんだ。
その時、輩に不意をつかれちゃって・・・」
「不意を付かれた!?何故じゃ?弱い輩の匂いは今のお前さんは感じにくいじゃろうが、
力の強い輩の匂いには敏感に反応できるじゃろう」
きび爺は驚いた表情でそう聞いた。
「・・・それが・・・感じなかったんだ・・」
「気配を?匂いを感じなかったと言うのか?」
「うん・・・それに・・・三匹いた」
「さ、三匹もか・・・」
「う・・うん。力の強い輩が三匹。力の強い輩は匂いが強くて解り易いんだけど・・・。
はほとんど匂わなかった・・・」
「奴等に不意をつかれ一発づつ食らっちゃって・・・。その後、俺はもうろうとしてたけど、
フラフラになりながらユックリその場を後退して行ったら全く追ってこなかった。
今でも、抜け出せたのが信じられない・・・」
ハチ太郎の表情が痛みで歪んでいる。きび爺はそれ以上聞く事が出来なかった。
「そうか、解った。もう喋らんでえぇ。ユックリ休むんじゃ」
「はい」
そう言って、ハチ太郎はまた直ぐ眠りに落ちてしまった。
般若がきび爺の近くに歩み寄って来た。
「狐火よ。・・・動ける奴を・・・増やした方がいいかもしれん。
奴等の・・・五匹の呪縛を解かねばならんかな・・・」
その言葉を聞いたきび爺は少しビックリするが、今の状況と
今後の事を考えるとしかたの無い事なのかもしれない。
「・・・そうじゃな。少しは役に立つかもしれんわぃ」
そのやり取りを聞いていた鬼子が、般若に問いかける。
「え・・?呪縛を解くって・・?」
「そうじゃ。あの五匹は闇世の大目付によって今の姿にされとるようじゃ。
まぁ、罰を与えられたと考えるがよい。その呪縛を解くんじゃよ。
完全にって訳じゃ無い。悪さ出来ない程度に呪縛を解くんじゃ。」
「そ、その呪縛を解いたらどうなるの?」
「元の力が使えるっちゅう事じゃ。悪さしてた頃の力がな」
「えぇ〜〜〜嫌よ〜〜。そんな事したら余計にからかわれるじゃない・・・」
「・・・我慢せぃ・・・」
「・・・・・」
そんなやり取りがあった後、鬼子と般若、そしてきび爺は、その五匹を連れて
隣の部屋に入って行った。
般若が鬼子に言う。
「鬼子、こにぽんから般ニャーを借りてきておくれ」
「・・・は、はぃ・・・」
しぶしぶ鬼子は、こにぽんが被っている般ニャーを連れて来た。
「何?何かあたいに用事?」
ちょっと無愛想な般ニャー・・・。
般若は、あぐらを掻きながら般ニャーに言う。
「あぁ。般ニャー、元の姿に戻っておくれ」
「え・・なんで?理由を言ってくれなきゃ私は嫌だよ」
「・・・ちょぃと、狐火の爺さんと一緒に、あの五匹の呪縛を解読してほしいんじゃ」
「えぇ〜・・。い・・いやよ。あんな奴等の呪縛の解読なんて・・・。あんたがやりなさいよ!」
「ワシは・・・嫌じゃ」
「あ〜あ、いつもこれ。あんたは私に命令ばっかり・・・。ほんっとに胡散臭いオヤジだわ」
と、般ニャーは言いながらも猫帽子の姿から、女性の姿へと変わっていく。
ちなみに、般若を睨みながら。
233 :
時の番人:2011/01/22(土) 12:23:23 ID:Qqhev4Hh
「やるよ!そこのニワトリ、こっちへこい!」
般ニャーの言葉使いが・・・非常に荒い。目もつり上がっている。綺麗な顔立ちなのだが、
怒ってる時の顔は、まるで般若面のようだ。
「お・・・俺を殺すなよ・・・ねぇチャン」
ヒワイドリはビクビクしながら一人、前へ出てきた。
「ふん。私を怒らせるとあんたを殺しかねないから、注意するんだね。
それと、動くんじゃないよ」
きび爺と般ニャーは立ちながら、両手を前にかざした。
ヒワイドリは、2人の間に挟まれた形でその場に正座している。
「いくぞ、般ニャー」
「あいよ」
2人は同時に神代の呪文を唱えた。
『神代に属するは印、授けるは読』
2人の手のひらが光だし、神代の文字が浮かび上がってきた。
その文字がヒワイドリを包んでいく。
すると、ヒワイドリの目が真っ白になり、石の様に固まってしまった。
その状況を見ていた他の四匹がざわめきだした。
般若がそれを見て、その四匹に対して右手を軽く一振りする。
すると、その四匹も目を白くして固まってしまった。
この場の空気を乱したくなかったようだ。
一瞬の事だったので、誰もそれに気が付いていない。
2人の前で固まっているヒワイドリ。
少しするとヒワイドリの体から、赤く光る文字が浮かび上がってきた。
円を描くように、小さな神代文字がヒワイドリの頭の上に沢山並んでいる。
その円とは別に、バラバラに浮かび上がる黒い光の神代文字がある。
般ニャーがそれを見て言った。
「あぁ、成る程。一般的な印だけど、やっぱりいじってるわね」
鬼子は、印を解く呪文をみるのは初めてだ。
「いじってるって・・?」
鬼子はそう般若に聞いた。
「そうじゃ。封印した術を簡単に解読出来んようにするんじゃよ。
ある一定の法則は残したまま、後の文字の配列をバラバラにしてしまうんじゃ。
かなり高度な技じゃよ。今は、あのバラバラになった黒く光る文字を、元の配列に戻していくんじゃ。
それが・・・大変なんじゃがな」
「狐火と般ニャーには声をかけれない。鬼子、隣の部屋に戻るぞ」
「は、はい」
そう言って、鬼子と般若の2人はハチ太郎達のいる部屋に戻って行った。
鬼子は部屋へ入るとすぐハチ太郎の横についた。
般若は狐火の婆を呼ぶ。
「婆よ、今後どうしたもんかの」
きび婆はお茶を般若に出しながら言う。
「・・・う〜ん・・・。危険じゃが調べに行くしかありゃしませんのぅ。しかし、ハチ太郎の鼻を
当てに出来んと言う事は・・・かなり厄介ですわな。雨が降っててハチ太郎の血痕も消えとるし、
場所の特定も難しい・・・」
きび婆は、チラッと鬼子の方を見た。
「鬼子の落ち込みようは、尋常じゃない・・・。全て自分のせいだと思い込んでおるし・・・。
今の状態では、必要以上に無理をしてしまいますやろぅ。自分が傷つく事で、周りの者を
守ろうとするかもしれん・・・」
234 :
時の番人:2011/01/22(土) 12:25:37 ID:Qqhev4Hh
般若は、その言葉を聞き悩んでいる。今すぐその悪しき輩を探すため出発したい所だが、
相手の居場所もわからず、鬼子の心の状態も不安定だからだ。
きび婆がアゴ下に手を当て、何かを考えているようだ。
「鬼子だけの力では心配ですわぃ。彼らの力を借りるしかないか・・・」
「彼らとは?」
般若がきび婆に聞いた。
「光の世の人間の民なんじゃが、力を持っとるんですわ」
「なんじゃと!?力とな・・・。それは闇世の力か?」
「いいえ、良くは解りませんのじゃが、力の種類がどうも違うみたいですわな」
そうきび婆は言いながら、織田を呼んだ。
「織田よ。ちょぃと一筆書いてくれぬか。力を貸してくれるようおぬしにもちょぃとな」
「・・・奴ら・・ですか・・・。いい奴等なんですが、わがままだからなぁ・・・」
きび婆は、和紙に筆でお願い事を書き込んだ。そしてその後、織田もその和紙に書き込む。
その和紙の手紙を丸め、呼んでおいた白烏に渡した。
この白烏は、守り役(神社、寺、祠を任されてる民)が誰かに敬意を込めてお願い事をする時に使う烏の事だ。
その白烏は天高く舞い上がり、朝陽さす空へと消えていった。
その日の夕方頃、まだヒワイドリの呪縛を解く作業が終わっていない。
きび爺と般ニャーは、朝からずっとこの作業を続けてるのだ。
解読の難しさに苛立っている般ニャーが、一言きび爺に言った。
「狐火様、こいつを散らしてもいいですか?」
「おぃおぃ・・・」
投下終り。
「日本鬼子・ひのもとおにこ」〜第十章〜【別天津神(ことあまつがみ)の民】に続く。
.
235 :
103:2011/01/22(土) 23:28:31 ID:Q0/DU+ZH
風邪引いてもうた…おまけに家族にもうつしてもうた…。
時の番人さん凄いなぁ。こんな長文自分では思いつかなくてあかんわ。
でもアニメなら一時間以内に収まりそうなやつもあと一つ思いつき、
創作意欲と体力が地味に戻ってきたので、まずは先日の続きを少しでも終わらせます。
…いま、どなたも使われていませんよね?
欝病かぁ…太陽の光を浴びると、脳内物質が正常に近づくらしいね。
日照時間少ない地方に住んでいると多かったり、昼が短い冬に症状重くなる人もいるそうだ。
だから斬るだけでなく『日本(ひのもと)』鬼子の笑顔が欝に利くと言うのも案外合ってて良いのかも。
日の本(ひのもと)、つまり太陽の様な存在でもあるって事ですしね。
236 :
103:2011/01/23(日) 00:28:09 ID:rjew0RfF
???「とうさま〜また学校でイジメられた〜」
半べそになりながら、駆け寄っていく幼い少女。
???「よしよし、大丈夫、もう大丈夫だよ」
???「ねぇ、どうして私には角があるの?なぜ皆私の事が嫌いなの?」
???「大丈夫、父さんは鬼子の事を嫌いになんてなったりしないよ…」
???「!!…とうさま…誰か怖い人が近づいてくる気がする…」
場面が移り、小さな病院の前、小さな女の子は妖艶な女性に抱きかかえられている。
かなり暴れているが、まともな抵抗にはなれていない。
???「なぜ本家に黙っていたのですか?あなたご自身も定めについてはご存知であったはず」
???「鬼子はたとえどんな姿だろうと私の娘だ!お家存続の道具なんかじゃない!」
???「ですが、その甘えが奥方を失う結果に繋がった事、忘れないで下さい」
唇を強くかむ男性、そこで女の子が男性へ大きく手を伸ばした所で、鬼子は目を覚ました。
第七話:クリスマスの主役?チチメンチョウ
旅館は和風だ。だが和風だからといってクリスマスを祝わないかと言えば、そんな事は無い。
商売である以上何でもやって集客に繋げるのはさすがである。柚子はいつもと違いはだけたサンタ服だ。
鬼子「…凄いですね」
沢山の飾り付けを見て言ったと柚子は感じていたが、鬼子の視線は違った。
普段ならみかけない柚子の…かなり大きな胸。発展途上とはいえ、まだ鬼子はそこまで大きく無い。
もう年頃の娘だ、どうすれば大きくなるのかと気になる所だが、流石に聞けない。
小日本「ねねさま〜。クリスマスって他に何を用意すれば良いの?」
鬼子「そうね、七面鳥やケーキとかかしら。小日本は初めてのクリスマスね」
二人で暮らしていた時は、一緒に楽しんでやる事も出来なかった。正直鬼子自身も嬉しい。
柚子「じゃあ、一緒に買出しに行きましょうか!」
鬼子・小日本「…その格好のままで?」
柚子「???そうよ?」
ミニスカートで胸は半分出ていてる様な服装。旅館の半纏だけ羽織り出かける柚子はどこか天然である。
237 :
103:2011/01/23(日) 01:38:49 ID:rjew0RfF
うわ!話数間違えてるし。…現在第六話を書いております。
街に出かけると、やはりクリスマスの電飾などで大層に飾られている。
小日本は玩具やツリーに興味津々だが、目指しているのは食料品店だ。
街に溢れるカップルや家族連れを避けつつようやく辿り着いた先では、前に見た姿が…。
鬼子「!!!あなたは確か…ヒワイドリ?どうしてここに?」
ヒワイ「ふ・・・知れたことを。この聖夜とは名ばかりのこの雰囲気!
エロを力とする我が復活するのは造作も無いこと!さぁ鬼娘よその乳を拝ませろ!」
以前の速さを多少思い出し、身構える鬼子だったがそこへ横槍が入る。
???「愚かな若者よ!その隣に並ぶ至宝に目が届かぬか!」
声の方向を見ると、大きな七面鳥が…何故かふんぞり返って偉そうにしゃべっている。
ヒワイ「何奴?むしゃぶり揉みたくなる乳こそ最上であろう!我を愚弄するか?」
チチメン「違う違う!何度も言っておるだろう!今にも母乳がでそうなはちきれんばかりの乳が、
もっとも必要とされる乳!例え形のみ良かろうとも、本質を失っては本末転倒!」
ヒワイ「おお!チチメン殿でしたか…。これは失礼をした。そなたの拘りも我は尊重するぞ!」
完全に置いていかれる鬼子に、欠伸をしている小日本。柚子は新たな鳥類の出現にも動じず食材を選ぶ…。
鬼子「…とりあえず、この場所から消え去れ!」
流石に人里まで鬼切を持ち歩きはしていなかった鬼子は、角隠しの般若面と笠を振り回して追い払う。
だが大きい体にも似合わず、チチメンチョウも中々素早い。
普通に乳談義をしながら街を外れていく。だがその実は驚き逃げる人々を減らすため、
少しづつ鬼子が周りを見ながら追い詰めた結果だった。柚子「ご飯までには戻って下さいね〜」
裏道まで来ると鬼子は「来い鬼切!」と叫んだ。遠くの方から薙刀・鬼切が宙を飛んでくる。
ヒワイ「チチメン殿、あの刀は厄介ですぞ。また力を失いかねん…」
チチメン「むう…ならば我らの社に戻るぞ!あそこなら負けはせんはず!」
二人は示し合わせるとバラバラにではなく、共に裏道の奥へと走り出した。
鬼子「こら!待ちなさい!いい加減人にいたずらをするのを止めなさい!」
追いかけていくと、着いた先は完全に朽ち果てた神社だった。
鬼子「ここは…一体何?」
その境内には社が三つ。どれもボロボロで手水場も枯れ果てている。
…以上です。三羽揃い踏みと彼らの属性は風邪が治りきってからの、
「第七話:集めろ!初詣」で書く予定です。喉痛いよ〜すぐ喉乾くよ〜。
皆様も体調にはお気をつけを…今年のは厄介そうだ。ヤイカガシに追い払って貰わないと。
>>237 乙
ヤイカガシを呼ぶと臭いで悪化するぞww
さて……話を考えるか
239 :
時の番人:2011/01/24(月) 12:50:13 ID:675sFTjh
>>235 思いつくままダラダラと書き込んでしまってるだけですよ〜
文章のまとまりが無くてスルー対象になっちゃってます・・。
そういえば、SS投下後、本スレにリンクはったりしなくなったのな。
普段は見てない人もいるらしいから、貼ったら見人もいるかもしれない。
貼ってなくても見てるぜよ
>>242 ありがたいです!
と早速で悪いんですが投稿させてもらいますね。
鬼子成分はすごい低いですが……ヒワイドリ好きすぎたな俺……
タイトルは関係ないです。
寂れたビルの一室にその事務所はある。
「鳴木相談所」(なるきそうだんじょ)
この事務所で請け負う相談はただ一つ。
人の力では解決できぬ相談事のみ。
心霊現象、妖怪退治、そして人の世界とアチラの世界の仲介……
この事務所で働く人を紹介しておこう。
事務所のオーナーである"鳴木 陽介"(なるき ようすけ)
陽介の右腕である最も古いメンバー"日輪 氷取"(ひわ いどり)
そして新人の"夜烏賊 樫"(やいか がし)
陽介はただの人。目立つところは特に無く、唯一人と違うところは
"心の鬼"を見ることができることである。
日輪と夜烏賊については事務所の三番目の仕事。
仲介により雇わられた"鬼"である。
おっと、今日もまた此処、「鳴木相談所」に相談が来たようだ。
コンコンっと二回、扉を叩く音が事務所内に鳴り響く。
「はいはい。開いてますよ」
椅子に座りながらやる気の無さそうな返事を出す俺こそが鳴木 陽介だ。
返事をするとゆっくりと扉が開き、いかにも農作業をしてそうな
身なりをした男性が入ってきた。どうやら彼が今回の依頼人らしい。
「し、失礼します」
やたらとペコペコと頭を下げながら入ってくる。
何を謝る必要があるのか聞いてみたいものだ。
「あれ?お客さんですか?」
ヒョイっと給湯室から顔を覗かせる彼女は"日輪 氷取"
この仕事を始めた際に初めて依頼されたストーカー被害(人外の)の犯人だ。
訳あって今はここで暮らしてもらっている。
「あぁ、依頼人だよ。 お茶だしてくれ」
「三ヶ月ぶりですね……」
そう言ってお茶を入れに給湯室へ再び戻って行く。
嫌なことを言って行きやがって。
そりゃ給料もまともに払えてないけどさ。
「っ……ほら、そこのあんた。 ボーッと立ってないでさっさとそこのソファーに
座って依頼内容を喋る。 依頼じゃないなら回れ右をして帰れ」
「い、依頼なんですが……」
「だったら早くその内容を喋る。こっちも忙しいんだ」
「え?でも三ヶ月ぶりって……」
「それは聞かなかったことにしてくれ」
「はぁ……」
依頼主の男性がソファーに座り依頼内容を話し始める。
依頼内容はこうだ。
この男性は山の地権者らしく、山でのんびりと農作業をしながら暮らしていたそうだ。
だが、ここ2ヶ月ぐらいで大量の農作物が盗られるということが起き始めた。
はじめのうちは野生動物だと思い、設置していた金網を電流が流れるタイプに変更し、
様子を見ることにしたらしいのだが、設置1日目で金網が切断され農作物が盗られたそうだ。
そこで一日中隠れて畑を見張ることにしたらしいのだが……ここで俺達の依頼対象が現れる。
頭部に二本の角を持ち、着物姿で薙刀のような長物を携えた少女が現れたそうだ。
それを見た依頼主は怖くなり、警察へ相談するがマトモな対応はしてもらえず此処へ相談に来たそうだ。
「えーと、簡単にいうとその少女を畑に来ないようにしろと?」
「はい。そうです」
「その活動に許せる時間は?」
「1日ぐらいなら……」
「1日!? おいおい、それは幾ら何でも……」
「お願いします!依頼料は100万円は用意してますから!」
「ヒャク……農作物の為にそんなにもかけるのか?」
「いえ……家族が彼女に斬られたんです。けど傷が無くて……警察は
私の事は一切信用しませんし……気味が悪くて……」
「家族が?分かった……ただし依頼料は10万で良い。100万は多すぎる」
「えー! 何言ってるんですか! 私たちの給料はどうなるんです!」
「うるせー!そう思うんだったらさっさと仕事しろ!」
依頼主にお茶を渡し終わって待機していた日輪が騒ぎ立てる。
給料もなにも住む所を提供してやってるんだからありがたく思ってほしいぜ。
「分かりました。それじゃあ、前金の為に用意した10万です」
依頼主がウエストポーチの中から封筒を取り出し、さし出してくる。
それを受け取り中身を確認し、日輪に渡す。
「確かに依頼料は受け取りました。 それじゃあ、畑まで行きましょうか」
「あ、私……単車で来てしまったんですが……」
「あー、じゃあ住所を……」
「すいません」
紙とペンを渡し、住所を記入してもらう。
鬼仙地方か……あの辺の山は色んなのがいるからあまり近づきたく無いんだが……
「それじゃあ、私どもは夜にでも伺います。先に帰っていてもらって大丈夫ですよ」
「はい、それじゃ失礼します」
またも頭を下げながら男性は帰っていった。
「よし!久しぶりの依頼だ。気合入れて行くぞ日輪」
「嫌ですよ。私、男には興味ないんで」
「今回の依頼主は男だが依頼対象は少女だぞ?」
「よしきた!さぁ!今直ぐ行こう!すぐに話しをしに行こう!」
「落ち着け。夜烏賊が帰ってきてからだ」
「え?あれを待つんですか?臭いじゃないですか」
「いや、あいつはな――」
ガチャッと扉が開き、ビニール袋を抱えた男が入ってくる。
ちらりと中の商品が飛び出ており、どうやら中身はクサヤのようだ。
ちなみに彼が夜烏賊 樫だ。
「いやー、そこの商店街でさクサヤが安売りで……」
「クセえ。回れ右してとっととこの部屋から出て行けコノヤロウ」
「おまっ……クサヤを馬鹿にするなよ!なんなら食うか!」
「やめろお前ら。日輪もすぐにクサイとか言うな」
「クサイものはクサイんです。なんでクサヤばっかり買ってくるんだか……」
「それについてはこの前も言っただろう?これにはふかーい訳があってだな……」
「もういいから黙れお前ら。夜烏賊、仕事が入ったんだ。準備しろ」
「へー仕事きたんですね。あ、クサヤ食べてからでも間に合います?」
「クサヤは食べるな。そして風呂に入ってこい。臭うぞ」
「!?そんな馬鹿な……この匂いはどう嗅いでもフローラルな花の――」
「クサヤの匂いだ。それとお前の体臭。厄払いが仕事だろうがお前は少し臭う。
幾ら仕事のためとはいえ、今回の件には臭いを落としてから行くぞ」
「……まさかここまで心にダメージを負うとは……銭湯行ってきます」
「1時間な。日暮れまで4時間しか無いからな」
「了解っす……」
とぼとぼと肩を落としながら夜烏賊が銭湯用具を一式持って歩いて行く。
少し言い過ぎたかもと心が揺れるが別にそうでもないかと
違う心がそれを打ち消してしまう。
「あー、私にクサイと言うなって言ったの誰でしたっけ?」
「俺だ。正直悪かったと思ってる」
「ですよね……」
それから夜烏賊が帰ってくるまで2時間待った。
2時間まったが、夜烏賊の独特の臭いはなくなり代わりにシャンプーと
ボディソープの花の匂いしかしなくなっていた。
依頼主の山に着き、テントで畑を見張ること5時間。
まったくもって、依頼の少女が現れる気配はない。
まぁ、時刻はまだ0時を回っては居ないんだがな。
「現れませんね。あぁ、はやくあの子と乳の話がしたい……」
「ちょっと変態は黙ってろ」
「そうだぞ。少女と言えばむっちりとしたお尻と太ももに挟まれたパンツが一番の収穫だろ」
「お前はもっと黙ってろ」
張り込みをして5時間という時間が経つため少し苛々している。
日はあと30分もすれば昇ってしまうだろう。そう思っていた矢先だ。
目標が現れた。確かに薙刀を携え、頭には二本の角を持っている。
だが、ここから見ただけではあの角が本物か分からない……近づくか?
「ヒャッホーーウ! そこの素敵なお嬢さん!今日は二人で乳の話を――」
「っ!」
「おぅふぁ!」
馬鹿がテントから勝手に飛び出していって散った。
だが、そんな事はどうでもいい。問題は少女が俺達の存在に気がついて逃げていってしまったということだ。
「夜烏賊。追いかけるぞ」
「了解っす」
テントから飛び出し、少女をを追いかける。
思ったより足が遅い。着物のせいか?これなら……
「夜烏賊。挟み撃ちだ。先に回れ」
「えー、しんどいじゃないですか」
「うるさい。さっさと行け。給料をちょっとだけ上げてやるから」
「それだけじゃ足りないっスね。新作のアイドルのDVDを」
「あーもう。分かったから早くいけ!」
「ありがとうっス」
要求を聞き入れると直ぐに走って行きやがった。
現金なやつめ。 そういえばあいつが好きなアイドルって誰だ?
「ふっ……その下に履いてるパンツを渡すんだ!」
「っ!」
夜烏賊が先回りに成功したようだ。
なんか言ってはいけないことを言ってるような気がするが……
「夜烏賊!よせ。さて、もう逃げられないぞ。大人しく――」
話してる途中で風を斬る音が耳元を通り過ぎる。
どうやら少女の方はやる気があるらしい。夜烏賊は何処かへ隠れたな。
自分だけ逃げやがった!
「いや、まず話を聞いてくれるかな?」
「嫌!」
「ひぃ!」
ぶんぶんと薙刀を振り回しやがって。
なるべく使いたくなかったが……仕方ない。
振り回している隙を見て、一気に懐に潜り込む。
「悪いな、少し寝ててくれ」
「えぅ!?」
首もとにスタンガンを押し当てる。
コレで鬼じゃなかったら犯罪者だな俺は。
いや、鬼相手でも十分犯罪者か。
「さてと……調べるか」
気絶している所を悪いが、角を触らしてもらう。
ふむ……固いな。本物で間違いなさそうだ。薙刀も本物。
ほぼ鬼でいいだろうな。だが、なんで一般人にも姿が見えるんだ?
こちらで登録はしていないしな……まぁ、いいか。
「よっと……うはっ、軽いな」
倒れている少女を抱えて乗ってきた車まで戻る。
「あ、夜烏賊。逃げたから約束は無しな。あと、テント片付けといて」
「そんな!あんまりだ!」
木の上から叫び声が聞こえる。
あのやろう。もとは魚みたいな格好してやがるくせに、動きは素早いな。
「いいから行くぞ。吹き飛ばされた日輪も心配だ」
「DVD……アイドルのパンツ……」
なんか悲しい声が聞こえてきたが無視しておこう。反応しているとキリがない。
しばらく歩くと日輪がテントで寝転んでいた。
「なにやってんだ日輪」
「起きたらみんな居なくなってたのでさがすのもめんどくさ……ってその子あれですか!
捕まえれたんですか!胸は何カップでした?私の目測だとAあたりかと思うんですが
確認の為に剥いじゃってもいいですか!」
「なにいってんだお前は。ダメに決まってるだろう。それにカカカカップなんてしらん。
鬼なのか確認しただけだ。この子は連れて帰るぞ」
「ヒャッホーーウ!」
騒いでいると奥の民家から男性が出てきた。依頼主だ。
「捕まえることができたんですか!早速警察へ……」
「いや、それはできない」
「え?」
「この子にはコチラの事情が通用しない。保護させてもらう」
「いや、しかしそれでは」
「なんと言われようが保護はさせてもらう。依頼主のあなたの指図も受けない」
「……分かりました。ちなみにその子はなんなのですか?人ではないと……」
「そうだ。コチラの住人だが住人ではない。鬼だ」
「鬼……ですが私の考えている鬼とはずいぶん違うのですが……」
「鬼にも種類ってものがある。この子の種類はしらないが、貴方達にも見える鬼は初めてだ」
「どういう事です?」
「普通は鬼というのは一般人には見えないんです。すぐ側にはいるが認識できない。
そういうふうになってるんです。とはいっても俺のような能力がある人には見えるんですがね」
「そうなんですか……では依頼は達成ということで?」
「はい」
「お疲れさまでした」
男性はさっさと家へともどって行ってしまった。
今回の依頼はなんとか成功。ただ、この子をどうするかが問題だな。
事務所に戻るとまだ気絶しているというか眠っている少女をソファーに寝転ばし、椅子に座る。
彼女が起きるまでは何も出来ないな。寝るか……
いやいやいや、寝たらあのハイエナ共(日輪と夜烏賊)が何をするか分かったものじゃないな。
「んっ……」
そんな事を考えていると、少女が目を覚ます。
しばらくボーッと部屋を見渡しているかと思えば急にソファーから飛び降り、身構える。
「ななななんなんですか貴方達は!」
「落ち着け!話を聞きたいだけだ!」
「話……ですか?」
「そうだ。だから落ち着いてくれ。危害は加えない」
「……分かりました」
なんとかなだめると、ソファーに座らせる。
すると少女が起きたのを察知したのか、給湯室から日輪が顔を覗かせる。
「わぁー!起きたんですか!可愛いな可愛いなぁ……どうだいお嬢ちゃん。お姉さんと
これからの乳の行く末を――」
「ちょっと黙ってろ日輪。っとすまないな。コイツは君と同じ鬼だから安心してくれ。
といっても……乳の話しかしないんだがな」
「はぁ……そうですか」
「で、早速だが君の名前は」
「鬼子です。日本鬼子」
「日本鬼子。そうか、ありがとう。じゃあ君は何処から来た?」
「……わかりません」
「うん。次に君は何時から生きている?」
「分かりません。名前以外は分からないんです」
「そうか。覚えている事は他には無いのか?」
「無いです。気づいたらあの山にいて……食べ物を探してたら畑があったので……」
「まぁ、良い。君はこれからどうする?というかどうしたい?」
「分かりません。記憶が無いからやりたい事も何も思いつかないんです」
「ありがとう……ちょっとそこで休んでいてくれ」
鬼子をソファーに座らせたままファイルを取り出す。
このファイルには俺が調べた限りの鬼の情報がのっている。
確か記憶を食べる鬼も居たはずだ……えーと……
いたいた。
”記憶喰”(きおくばみ)
普段は浮遊しながら、要らなくなった記憶を食べて生活しているが
稀に食欲に歯止めが効かなくなるものが居る。
その記憶喰に目をつけられれば名前以外の記憶全て忘れてしまう。
記憶喰に食べられた記憶を取り戻すには、食べた個体が持つ
結晶体から記憶を引きずり出す必要があるが、記憶喰は10日程度で
分裂してしまうため、記憶も拡散してしまう。
早急の回収が望ましい。
……鬼が鬼の記憶を食べたのか。
記憶を取り戻すには、食べた個体を探すしか無いか……
彼女が出始めたのは2ヶ月前……60日として記憶喰の数は6匹程度。
回収できなくはないな……しょうがない。手伝ってやるか。
「なぁ、鬼子ちゃんだっけ?」
「はい、なんですか?」
日輪が出したお茶の飲みながら返事をする。
着物の模様がさっきと少し違うような気がするが……まぁいいか。
「君の記憶は恐らくだが……記憶喰という鬼に食べられた。
記憶を取り戻すには君の記憶を食べてしまった記憶喰をさがすしか無い」
「そう……ですか」
「そこでだ、力を貸してあげないでもない」
「え?」
「今、働き手が少し足りないのでね。等価交換といこう。君が仕事を手伝ってくれるなら
君の記憶を探すのを手伝ってあげてもいいよ。どうする?」
「手伝う仕事なんかありもしないのに何いってんですか」
「日輪は黙ってろ。どうする?良い条件だと思うが」
「けど、それではみなさんに迷惑が……」
「関係ないな。俺の仕事は相談屋だ。悩みがあるなら聞くし、報酬によっては手伝う。
迷惑だなんて思ってないよ」
「で、でも……」
「もう、めんどくさいな!」
日輪が立ち上がり、彼女の手をとり朱肉に指を付け契約書に押し付ける。
「はい!コレで鬼子ちゃんもここの一員!コレで問題ない。仲間の悩み事は解決してあげる!」
「あ……ありがとうございます……」
「強引だなー」
「関係ないですー。さて、悩みの解決の報酬とはいかないが……」
「「?」」
「早速、乳を拝ましてもらいましょうか!」
「ひっ!」
「やめろ日輪」
「そうだぞ!やっぱり見るならパンツからだ!むしろ、その着物の隙間から見えるパンツを……」
「お前もやめろ夜烏賊」
「「またまたー。陽介さんも見たいくせにー」」
「見たくない!」
「え……見たくないんですか」
「そこで鬼子もションボリとするなよ!」
こうして鬼子という新しい仲間も加わり、少しだけ賑やかになる「鳴木相談所」
どうやら、少し厄介なものも近づけてるみたいだが……大丈夫か?
「やっと見つけた……私のおねいさま……」
終わり!
スレ利用させていただきました。
乙。
記憶を失っていたということは……初期の頃の初々しい鬼子さんをたんのーできるチャンス?!w
いやまあ、最近はなんとなく貫禄ある描写が増えてきた気もするしw
乙!ちょっと荒削りだけど、新鮮な切り口でわくわくする。
ヒワイドリ女性かー。たしかにありかもしれんな。
うちの妹も乳の話がわりと好(ry
面白いから、ぜひ本スレにリンク貼ってほしいな。
254 :
103:2011/01/27(木) 00:15:53 ID:6j/gQDi/
>>242 まとめて頂き、有難うございます。
じゃあチョビチョビでも書いたら本スレへもチラッとリンク張るかな…。
もし記憶失ってたら、自分だったら都合の良い偽の記憶を…いや、なんでもないです。
風邪を舐めていたら血痰出ました…今の所これ以上回復しそうに無いので、
誰も使って居ぬうちにアニメ風?第七話辺りを投下致します。ヒワイ達に自分設定明示しちゃいます。
オタ中国人の憂鬱…エロ本系雑誌のコーナーにあったんで少し恥ずかしかった。w
255 :
103:2011/01/27(木) 01:12:47 ID:6j/gQDi/
さびれた神社の入り口に聳え立つ、古びた木製の鳥居から声がする。
チチドリ「ここは我らが寝床、忘れられた者達が住まう場所なり」
鬼子「…貴方達、本当に神様だったの?だったら何故人の欲に任せて悪さなんて」
ヒワイ「知れた事を。我らへの信仰など確立された信用や溢れる情報の前では薄いもの」
チチメン「何も名の無い庶民よりの力で、支えられてきた零細の柱など心の揺らぎに生きるのみよ
第七話:集めろ!初詣
寂れた社に三羽の乾いた声が木霊する。その響きはやけに自嘲気味だ。
ヒワイ「今の世界に生きるもの達は、何かで悩んだ時、神仏でなく本やエレキテルに頼り、
わざわざ神頼みに訪れるものなどおらん。人気のある神仏は未だそれらの及ばぬを扱うものばかり」
チチドリ「だが今は祀られぬ神であれど、対象も無く願う心が多く集まれば形ともなる」
チチメン「誰の祈りかも解らぬなら、ただその感情に流されるまま動いてしまうのも道理というもの…」
自嘲気味な語り口ではあるが、徐々に言い訳染みて来た話を聞き飽き始めた鬼子たちを、
昼を迎えた光が社ごと照らし始める。ボロボロの社の奥から本体である御神体が、姿を見せ始めていた。
鬼子「じゃあ…貴方達は一体何の神様だっていうのよ?
チチドリ「我は子供の成長を見守り、幼き頃を病から守る者であった!」
一番小さな社から、千歳飴を抱えたお地蔵様の姿が見え始めた…。
恐らく医療・薬学が発達してからは、薬師如来にほとんど集約されたのであろう。
チチメン「我は母となりし者の、生育を助けんとする祈りを集めておった!」
社の奥に、大きな乳房が鎮座している。今では粉ミルクなどもあるが、
昔は栄養状態も含めて、乳の出が悪い事は子供の生死に関わる一大事だ。
ヒワイ「我は無事に男女の営みが成功する事を祈られておった!」
…最後に、社の奥から光に照らされた御神体は、流石に言葉とするのは阻まれる姿である。
男女の営みに用いられるアレ…要するにピーーとピーーーが、そのままの形で置かれてある。
春画がここまで溢れていたり、知識が広く浸透していなかった時代には祈るものもいただろうが…。
鬼子「い…いやぁー!!!」 流石に年頃の娘の鬼子は、大きな悲鳴をあげて逃げてしまった。
鬼子「ようするに…ここに参拝に来る人が増えてくればちゃんと神様としての仕事に戻るのね?」
柚子や小日本と共に神社へ戻った鬼子は、何度も現れるヒワイドリたちの対策として、
神社建て直しを考えていた。小日本はチチドリの社だけを向かされて、膨れている。
ヒワイ「さよう。だが出来ると言うのか?人の信心など取り戻すのは用意ではないはず」
鬼子「まぁ私達に任せておきなさい。でも貴方達にも手伝ってもらうわよ?」
ヒワイドリ達と、手始めに社を直し御神体を磨く。木材は鳥達が運び、小日本がチチドリの御神体を、
柚子がチチメンの、鬼子が目隠しをしてヒワイの御神体をそれぞれ磨き上げた。…時折チチメンが柚子の胸を揉もうとするなどありつつも。
手漉きの時間を見つけて、何日もかけて気づけば大晦日。もう神社はほとんど元通りになった。
チチメン「おお!ここまで見違えるとは…あり方や。大変かたじけない」
鬼子「じゃあ、仕上げは小日本、お願いね?」
小日本「了解!…この街に暮らします悩めるものものよ…今改めたる社に導かれたまへ!萌え散れ!」
祝詞を上げると小日本の体が桜の花びらに包まれ、それが町中に広がっていく!
するとどうだろうか…少しづつ神社へと人が集まりだした。…が、どうにももてなさそうな方々が大勢。
鬼子「こ…これは?ねぇ小日本、どんな人達を呼んだの?」
小日本「ただ…ヒワイのお兄ちゃん達にお願いがありそうな人を呼んだだけだよ?」
よくみると小さな子供を抱えたお母さん方もチラホラいる。成功はしているのだ…が…。
チチメン「おお!今にも母乳が出そうな乳が沢山!どうれ今揉んでやるぞ!」
母親達「きゃあ〜!変態〜!!近寄らないで〜!」
結局…変態に成り下がってしまっていた三羽が、墓穴を掘ってしまった。
最終的にヒワイドリを童貞・処女が時折御参りする程度に落ち着き、今でも彼らの悪戯は絶えない…。
256 :
103:2011/01/27(木) 01:17:20 ID:6j/gQDi/
また間違えた…×萌え散れ!>○萌え咲け! 小日本だからこっちだよね。
向こうでコメつけたからこちらは乙で。
…ところで400KB超えたけど、次スレはどうする?
前々スレ辺りで400超えた人が建てるとか方針で決まったとおもうけど、
ここはある程度書き込みないと落ちるとかあったっけな?
じゃあ俺かな。
ちょっと立てて来てみる。
駄目だったらお願いします
おっと、どうやら違ったみたいだ。
450K超えたらだった。
危ない危ない
ぅわ、マジだ。ロクに確認もしないで誤ってスレたてさせる所だった。マジでごめん。
刺すような日差しが絶え間なく降り注ぐ、馬鹿みたいに暑い夏の日。
競技用のユニフォームを着ていた俺は、欠片も苦痛を感じることなく走り続けていた。
まるで風そのものになった気分だ。
ゴールも目前に迫り、体力などとうに尽きているはずなのに、速度が衰える気配は一向にない。足は勝手に、この身体を目的地まで運んでくれる。
更に加速してやってもいいくらいだ。
本当にそれとやってしまうと、足が縺れて転倒する危険があるのでやらないが。足音から察するに、後続との距離もまだ充分にある。
それにしても――
俺は今、本当に手足を動かしているのだろうか?
身体の重みなど質量がゼロになったような感覚。
典型的な、ランナーズ・ハイ。
先頭を維持したまま、競技場トラックの最後の一周に差し掛かる。
周囲を取り囲むすり鉢状の観客席の一角に陣取っている、自分の学校の制服を着た一団からの声援が、更に大きくなる。
そんなに騒がなくてもいいだろうに。声を張り上げているクラスメイト達を視界の端に捉えながら、俺は胸中で苦笑していた。
心配しなくても、一位でゴールしてやるよ。
あと半周走れば、この競技も終わ――
「……ん?」
自分の洩らした呻き声で、布団に入っていた俺は目を覚ます。
終わったのは、眠りの方が先だった。
カーテンの掛かった窓の外はまだ暗く、枕元の置時計は丁度五時の位置で止まっている。
もう幾度も見た夢だった。
それこそ、飽きる程。
良く晴れた冬空の下、クラスメイト達はサッカーボールを追いかけ回している。
中学に上がる頃には、俺は陸上に力を入れている学校に声を掛けられていた。
知り合いの誰もいない学校に、わざわざ電車を使って通うのは億劫だし寂しいと感じもしたが、先方の熱意の結果か、いつの間にか学区外の中学に進むことになっていた。
そこでは割と露骨な特別扱いを受けていたので、悪い気もしなかった。総体で輝かしい成績も残していたので、当然のように陸上競技の名門高校であるここに放り込まれていた。
そんな順風満帆な生活が終わりを告げたのは、今年の春、練習中に靱帯を断裂してからだった。
長い療養生活を終えて学校に戻ってきてみると、俺のふんぞり返っていた玉座は別の部員の指定席になっていた。
全国レベルの選手に故障は付き物である。当時は気にも留めなかったが、一線を離れてしばらくしてようやく気付いた。
あれは脱落者が出ることを前提として組まれたメニューだったのだと。
深刻な怪我から奇跡の復活、などという美談は良く語られるが、そんな話はごく一例に過ぎない。
実際何カ月も練習を離れていた人間に対して、指導者はそっけないものである。
実際に体験した本人が言うのだから間違いない。
まさか怪我が完治して学校に戻った直後に、顧問に切々と退部を勧められることになるとは思わなかった。
顧問の言うことは至極正論であった。
人生最大の成長期に、半年近い遅れは余りにも大きい。
怪我が癖になる可能性だってある。
周囲との間に生まれた余りのレベルの差に苦しむだろう。
お前も今まで朝から晩まで練習で辛かったはずだ。
他に目標や生き甲斐を見つけた方が、お前の人生を豊かにしてくれる――
全部正しい。
だが連中の本音が、自分などに余計な手間と時間など掛けている暇などない、という一点のみであることを、俺は経験上知っている。
実際そうやって切り捨てられた奴を今まで何人も見てきた。
現実的に全国一を目指すようなチームは、伸びしろのない者や躓いた者の面倒まで見てくれる仲良しクラブではないのだ。
定期的に部員の間引きを行うのは、効率的な練習を実施する上で必須と言っても良い。
そして三カ月前に陸上部を退部した、元5000メートル走選手の俺は今、年末の球技会に参加している。
グラウンドで行われているサッカーの審判を務めているのは、奇しくも我が校の誇りである陸上部顧問、俺に三行半を突き付けてきた男性教諭であった。
あれ以来、俺たちはまともなコミュニケーションなど取っていない。
向こうはこちらになど一切興味を抱いていないし、こちらも敢えて話すような事案がなかったからだ。
別にそれでいいと思う。
あの教師だってそうやって成功を収めてきたのだろうし、俺だってそんな連中に乗せられて随分と良い思いをしてきたのは事実だ。
ただ、それでも原因不明の怒りに駆られる時もある。
丁度、今のように。
ゲームの流れから離れ、コートの隅に立ち尽くした俺は、いつの間にか顧問を注視していた。
視線で人を殺せるなら――
と、弾かれたような勢いで元顧問がこちらに顔を向けた。目は口ほどに物を言う、なんて諺があるが、もしかしたら俺の思いが相手に通じたのかもしれない。
「――おい田中!」
ぼんやりしていたせいだろうか。クラスメイトに名前を呼ばれても、側頭部に衝撃があるまでサッカーボールが飛んで来たことに気付けなかった。
仕切りのカーテンが引かれた保健室のベッドの上で、目を覚ます。
「……情けねえ……」
微かに鈍通の残る頭部に手を当てながら、上体を起こした。
いくら最近不眠の気があったにしても、ボールが当たった程度で気絶するとは。
病弱な女の子じゃあるまいし。
「あら、起きたの?」
呟きが聞こえたのか、白衣姿の美女が仕切りの中を覗き込んできた。
「大丈夫? えーと……」
「田中です。田中、巧」
「あぁ、どこかで見たことある顔だと思ったら」
当然のようにベッドの脇に置かれた丸椅子に腰かけた保険医――確か般谷とかいう名字だったか――は、長い銀髪を細い指でいじりながら言った。
「確か春に大怪我しちゃった陸上部の子で合ってるわよね」
「ええ、合ってますよ」
そしてあの怪我以来、順調に転落の一途を辿ってもいます、と胸中で付け加える。
「今回は災難だったわね〜。まあ大きな怪我じゃなくて何よりだけど。もうすぐ冬休みだってのにまた入院、なんて話になったら堪んないわよね」
「別に」
溜息と共に、つい正直な感想を口走っていた。
別に無理してリハビリをする必要もないし、あの静かな病室に戻るのもありかもしれない、とすら思う。
投げやりな気分になっていることを見抜かれたかもしれない。般谷は妙な問いを口にした。
「……ねえ。もしかして田中君って、『バーンアウト・シンドローム』に罹ってる?」
「違いますよ」
即答すると、扇情的なスタイルを誇る猫目の保険医は、不服そうにルージュの引かれた唇を尖らせた。
「ちぇ、つまんないの。てっきり知らないと思って訊いたのに」
「一応そういうことに興味を持った時期もあったんで」
『バーンアウトシンドローム』とは、いわゆる『燃え尽き症候群』である。
仕事熱心な人間やスポーツ選手が陥りやすい精神疾患の一種だ。
目標や生き甲斐を失った人間に起きると言われ、対人関係の希薄化や無気力化が主な症状とされる。
「髪を染めたりはしないの? 私みたいに」
彼女のそれは明らかに先天的なプラチナブロンドにしか見えないが、善意で話を振ってくれているようなので、形式的に乗ることにする。
その程度の協調性はまだ忘れていない。
「あまり興味が湧かないんで」
そんな下らないことをして憂さが晴れるなら、誰も苦労しない。
「勿体ないわねー。若いうちにやりたいこと潰しておいた方がいいわよ」
般谷が深く考えて言ったとは思えないが。
「やりたいこと、ですか」
真剣に考えてみても、一向に思い付かなった。少なくとも、人前で口に出来るような内容は。
「何もないの? じゃあ次に私と会う時までに考えておいてね。これは君への宿題だから、忘れないように」
「はあ……判りました」
「よろしい」
年齢不詳の美女は、にっこりと笑った。
年明け早々、変な夢を見た。
数か月前に退部勧告を言い渡された進路指導室で、俺は顧問と口論しているのだ。
やがて互いの間に置かれた机を横倒しにして、顧問の目の前に歩み寄った俺は拳で顔面を殴りつける。
そして無抵抗で床に倒れたその男の頭部を、俺は何度も足で踏みつけるのだ。
そいつに向けて延々と呪詛の言葉を吐いていた気もするが、そこまで細かくは憶えていない。
やがて男の頭部は巨大な豆電球へ形を変え、それは俺の脚によって粉々に粉砕されていた。
同時に部屋全体にも亀裂が走り、視界は硝子のようにあっけなく砕け散る――
「お」
コマーシャルが終わっていたので、テレビに意識を集中させた。
いま流れているのは箱根駅伝だが、開始前の各校の意気込みや練習風景の特集を観ていたら、複雑な気分になってしまった。
新年早々張り切っている彼らの何倍、いや何十倍の人間が、自分と同じように何らかの障害にぶつかり、別の道を選んでいるのだろう。
漠然とそんなことを考えながら、リビングのソファに身体を沈み込ませていた俺の携帯に、電話が掛かってきた。
朝から初詣に出かけた妹からだった。
「どうした、匠」
『兄貴? これから家に友達連れて行こうと思ってるんだけど』
友達。匠と同じ、アニメや漫画が趣味の人間だろうか。
「別に大丈夫だと思うけど。親父もお袋もまだ帰って来そうにないし」
両親も揃って初詣に出かけていた。俺が自室で大人しくしていれば、実質この一軒家は無人と変わらない状況になるはずだ。
『そう? 連れてくのは可愛い女の子だから、期待してていいよ。じゃあね』
「はいはい」
俺はソファから腰を上げる。生憎だが妹の友人と顔を合わせるつもりなど全くない。さっさと自室に――
などと思っていたら、勢い良く玄関の扉が開く音がした。
「ただいまー!」
「ちょっと待て!」
反射的にリビングから玄関に通じる廊下に飛び出し、当然のように仁王立ちをしている妹に尋ねていた。
「いくら何でも速すぎないか!? お前どっから電話掛けて来たんだよ!」
「いや、このドアの前で」
駄目だ。ついていけない。たまにこの妹は理解に苦しむ行動を取る。
「さあさあどうぞ、ひのもとさん」
妹、匠が招き入れたのは、今時珍しい和服姿の女の子だった。
まあ客観的に見て可愛いと呼べるルックスだと思った。しかし紅葉柄というのはどうだろう。季節感を完全に無視している気がする。
何より頭に着けている飾りが不可解だった。鬼が生やしていそうな角形のアクセサリーに、般若の面。
今が節分だったら、子供たちに的にされそうな格好である。
「お、お邪魔します」
ああ、この子は内気なんだろうな、と一瞬で感じさせるような雰囲気だった。
まあ初めて入る他人の家で取る態度なんて、大体こんなものになるのかもしれないが。
とりあえず、顔を合わせたからには挨拶をするのが礼儀なので、自己紹介をする。
「妹がいつもお世話になってるそうで。兄の巧と――」
目があった瞬間、言葉に詰まった。
その客人の瞳が、赤く煌めいたような錯覚に陥ったからだ。
何だ、今のは。
良く判らない。ただ何となく、同類と言うか、馬の合う人間に遭遇したような気がした。完全に第六感だが。
そしてその日。彼女、日本鬼子は帰る直後にこっそり一通の手紙、というか呼び出し状を寄こして来た。
その近所の公園は結構な面積を有しており、遊具だけでなく、園内を一周する遊歩道なども敷設されていた。
どうでもいい話だが、匠が日本鬼子と初めて会ったのはここらしい。
草木も眠る丑三つ時なのでさすがに無人だが、昼間は多くの子供たちが駆け回っているはずだ。
そしてその公園の中央広場に、冬物のジャンパーを羽織った俺は立ち尽くしていた。
することもないので、星の良く見える冬の空を見上げる。
勉強などとまるで無縁の生活を送っていたので、特徴的な正座の名前もろくに思い出せなかった。
普通の人が勉強や塾や遊びで費やしているはずの時間の全てを、俺は陸上競技の記録向上に費やしていたんだなと実感する。
これからどうするかな。
あまりに暇なので、あまりに壮大な事案について思いを巡らせてみる。
今更勉強をして、学校の授業に追いつけるだろうか。偏差値的に十近く上の高校だったので、絶望的な気もする。
今更陸上競技に戻るというのも不可能だろう。
となると、俺はどこを目指して生きればいいのだろう?
「――夜分遅くに失礼します」
聞き覚えのある声に、背後を振り向く。
闇の中から染み出すようにして現れた妹の友人は、淡々と言う。
「呼び出しておいて何ですが、本当に来ていただけるとは思ってませんでした」
「それはこっちの台詞だよ。こんな夜中に女の子が一人で出歩くのは、感心しない」
相手は全くの無反応である。
昼間と打って変わって険しい顔つきをしている赤目の少女に、俺は尋ねる。
「随分物騒な物を持ってるけど、それは何?」
巨大な薙刀を構えた日本鬼子は、低い声音で答えた。
「これは、あなたを助けるために持ってきたんです」
話は全く見えなかったが、その恩着せがましい言い草はひどく鼻についた。
「助けなんて求めた憶えはないんだけどな」
「あなたは、心の鬼に憑かれているんです」
「は?」
新手の宗教勧誘とも取れそうな台詞である。愛らしい顔立ちをした黒髪の大和撫子は、至極真面目に言葉を継ぐ。
「巧さん……でしたよね。あなたは気付いているはずです。自分の中に巣食う暗い感情、鬼に。私がそれを祓って差し上げます」
妹がこの女に、余計なことを吹き込んだのかもしれない。
「そりゃ俺だって落ち込んだり暗い気持ちになる時はあるけど、そんなの誰にでもあることだろ」
「そういう次元の話ではありません。あなたの心は、あなたでない存在に操られているんです。巧さんに巣食っている鬼の名前は――」
「黙れ」
舌打ちと共に言葉を遮った俺は、殺意を込めて女を睨みつける。
「俺の心は、俺だけのもんなんだよ。あんたの言う鬼って代物もひっくるめて、全部俺なんだ。俺の一部を勝手に枠に嵌め込むな。祓うな」
言葉を探しながら、敵意に満ちた声で続ける。
「俺の鬼を、人格を否定するな」
不条理に誰かを憎む気持ちも、一度の挫折に打ちひしがれるような弱さも、前を向こうと足掻いているのも――
目の前の女と闘うことを決意してるのも、全部俺自身なのだ。
「今はまともに制御できてないかもしれないけど、自分の心と向き合って折り合いつけんのは、俺の仕事なんだよ。だから――」
険しい表情をしている妹の友人は、眉一つ動かさない。
「赤の他人のお前になんて、俺の鬼は譲れない。あんたから見てどんなに醜悪でみっともないと思われても」
心だけが、俺が俺であることを証明してくれる唯一の物なんだから。
「考え方としては理想的です。でもこのまま放置すれば、あなたの鬼はいずれ人間に害を及ぼします」
鬼子がこちらに向けた薙刀の刃が月光に照らされ、鈍く輝いた。
「見過ごすことはできません。力づくでも祓わせてもらいます」
「なら俺は、あんたを追っ払うよ」
意識は薄れていくのに、五感はどこまでも冴え渡ってゆく。奇妙な感覚だった。
選手時代に何度か経験した、ランナーズ・ハイに似ていなくもない。
何かが光っていることに気付いて、俺は自分の身体に視線を落とす。
両の掌に蒼い炎が宿っていた。熱は痛みも、全く感じない。
ほとんど一瞬で解釈した。これは俺の一部、心の鬼が表出した姿だと。
思わず笑ってしまった。
何だ。まだ俺は、燃え尽きていなかったんだ。
「八つ裂きにされても文句言うなよ」
これが鬼になるということなのだとしたら、悪くない気分だった。
「――兄貴、何やってんの?」
意識を取り戻すのと同時に、固く冷たいコンクリートの感触が頬に伝わってきた。
「……あ?」
見慣れた我が家の玄関前に横たわっていた。寝間着姿の妹が、怪訝そうに俺を見下ろしている。
「呼び鈴が鳴ったから出てきたんだよ。そしたら兄貴がそこで寝てた」
こちらが前後不覚に陥っていることが表情で伝わったのか、匠は説明口調で言った。
「……今、何時だ」
「え? 三時だけど」
「あっさり出てくんなよ……せめて親父だけでも呼んで来い。不用心だから」
「だってみんな、もうぐっすり寝てるし」
溜息と共に身体を起こした俺は、猛烈な不安に駆られる。
鬼は――
俺の一部は、無事なのだろうか。
これまでの人生を回想してみる。
神童と言われた小学生時代を。
幾つかの記録を塗り替えた中学生時代を。
ひどく惨めな現在を。
――無事だ。
暗い感情はまだ心に根付いている。
あの和服の女との闘いの顛末は判らない。
でも俺は、俺のままだった。
全くの偶然だが、新学期の初日、体育館で行われた始業式から帰ってくる途中に、廊下で保険医の般谷と顔を合わせた。
周りの男子が色めき立っているのも気にせず、白衣に身を包んだ美女はつかつかとこちらに歩み寄り、俺に声を掛けてきた。
「あら、君は。え〜と……」
「田中です」
「そうそう田中君。あけましておめでとう」
「おめでとうございます」
「さっそくだけど、私が去年出した課題はクリアできたかしら?」
どことなく意地の悪い笑みを浮かべた保険医の質問に、俺は頷く。
「一応」
「それは良かった。で、君はこれから何をするの」
「『やりたいことを見つける』。それが今の俺のやりたいことです」
それを聞いた彼女は、露骨に顔を顰める。
「……何か上手くごまかされたような気がするんだけど」
「そんなことありませんよ」
今のは紛れもない本心だ。
少なくともその目標がある内は、俺は心の鬼と上手く付き合える。
「まあ、そういう考え方もありかもね」
「……俺、何か言いましたか」
「ん? 別に」
言葉に出した憶えもないのに、般谷が俺の思考を読んだかのようなタイミングで笑みを浮かべたのは、かなり不可解だった。
完
乙。読み応えあった。早速新キャラが活躍してますな〜この世界で再び顔を合わせる
ことになったらどうなるのか。あの保険のおb……おねーさんの正体は一体なんなのか
興味が尽きませんね〜(棒y(ry
burnout良作発見。鬼と一緒に生きていく田中兄、鬼子さんがピンチになると鬼に覚醒して戦う展開とかマジで燃えますな。
burnout凄い面白かった。
この後の展開がワクワクしすぎて目が離せぬ……
前回のあらすじ――日本狗→安倍晴明
「きゃああっ!」
聞こえてきた小日本の悲鳴に鬼子さんはピクリと眉を動かした。足元に視線を落とすと、竜の一匹が口から泡を吹きながら小日本ににじり寄っている。角には札が貼りついてまやかしの気配を漂わせていた、鬼子さん同様に体の自由がきかないようだ。
「くくく……何を動揺しているのですか?」
鬼子さんは目の前の男に視線を戻し、その邪悪な笑みを睨みつけた。
「そんなに怖い目をしないでくださいよ、勘違いしているなら言っておきますけど、あの子はあなたと血の繋がった妹じゃありませんよ?」
鬼子さんは目を伏せた。着物の柄は今は混沌とした渦を巻き、激しい紫電をほとばしらせている。
「お前には分かるまい」
「いいえ分かりますよ。だいたい彼女はあなたの命を狙っている敵ですよ。あなたの命なんかこれっぽっちも顧みない。隙さえあればいつでも弓の一撃をくれます、どうしてそんなにあの小鬼が気になるのですか」
日本狗はそこで言葉に詰まった。顔をあげた鬼子さんの目から大きな滴が流れていた。
「お前には分かるまい」
しばし固まっていた日本狗はふっと笑って、それをきっかけに再び話し出した。
「いいえ分かりますとも、分かるんですよ、私には。そうでなければ、あの子を仲間にした意味がないでしょう?」
どこからか降ってきた扇が、日本狗の手に再び握られた。
扇を前にかざして、日本狗は清らかな声で言った。
「私がこの扇を閉じた瞬間、札の貼られた竜が暴走を開始します。
妖怪退治の七仙《忘音坊》の秘伝『蝕』。
この術に捕らわれた妖怪はあらゆる物を喰らいはじめ、最後には自らの仲間を喰って自滅してゆく」
「なるほど触手プレイか」
「身も蓋もない言い方をしないでください、もっと別な感想とかないんですか」
「陰湿な技だ、それがどうした」
「意思確認はこれで最後という事です、なにか言い残した事はありますか?」
鬼子さんはしばし迷ったすえ、
「萌え散れ」
と言った。
涼しげな表情を保ったまま、日本狗の手の中で、扇がぱちんと閉じられた。
鬼子さんの頭髪の竜が電流を流したように伸び上がり、頭上で巨大なつぼみを形作った。
つぼみが開花すると同時に、竜は目の色を失って四方八方に伸びはじめた。
先ほどまで鬼子さんを見守っていた心の鬼たちは紅葉を散らして逃げ惑った。竜は悲鳴にも似た甲高い鳴き声を上げて地上を駆け巡り、手当たり次第に鬼たちを食べていった。
心の鬼に取り憑かれて震えていた小日本だったが、その鬼が逃げてゆき、ようやく手足の自由がきくようになった。
「……萌え咲けっ!」
すばやく弓を構えて弦をはじくと、青い結界が生じて竜の突進を防いだ。だが、竜は途絶えることなく矢継ぎ早に頭をぶつけてくる。その重圧で結界がきしみはじめた。
「そんな……!」
とうとう結界が破れ、竜が大口を開いて飛びかかってきた。そのときだ。
「伏せろ、虚乳ちゃーんっ!」
空から降ってきた白い鳥が、真っ先に飛びかかってきた竜を地面にねじ伏せた。
さらに埃の舞い上がる地面から、和服の男がむっくりと立ち上がった。
「もう少し優雅な復活をしたかったが、無理な相談か」
小日本は突然の二匹の登場に当惑していた。
「そんな……どうして……」
ヤイカガシは小日本に背を貸しながら、手のひらを差し出した。
「とりあえずいま穿いているものを寄越せ、話はそれからだ」
降下してきたヒワイドリがヤイカガシに直撃した。ヤイカガシは下半身がずっぽり地面にうずまったまま不平をもらした。
「美女のパンツを求めるのは紳士の嗜みではないか」
「うるさい、今度は俺が活躍する番だからな。お前はそこで大人しく見てろ」
「ひどいな、私たちはいちど融合した仲ではなかったか」
「やめろ二度と思い出させるな!」
「きゃああんっ、そんな所はいっちゃダメぇ〜っ」
そのとき、鬼子さんの方からいかがわしい悲鳴が起こり、二匹はぴたりと諍いを止めてそちらを見た。
まさにその隙に彼らの背後を一匹の竜が猛スピードで通過していった。
「きゃああああっ」
小日本は断末魔を残して姿を消してしまった。
「はっ、しまった……こに……!」
ヒワイドリとヤイカガシは慌ててあたりを見回すが、彼女の姿はもはやどこにも見あたらなかった。
雑になってしまった
もっとクオリティ高いもの投下したい今日このごろ
SSスレに書き込みはじめてな上に
文章下手ですが、投下してもよろしいでしょうか。
長編というより、微妙につながりのあるけれど
それぞれは短編オムニバスなカンジになると思います。
いいと思いますよ
マフラーを巻きながら飛び出した。
こんな時間に出歩くなんて、普段の母なら許さなかっただろうけれど
今夜は、今夜だけは特別なのだ。
凍りつくような空気も、どこか明るく感じてしまうのは
今日という日のせいなのか、自身の心の内から来るものなのか。
ねぇ、今頃キミも同じだろうか。
浮足立っているのだろうか。
でもね、それはきっと、今のアタシ程ではないはずだよ?
今宵の街は眠らない。
人波をすりぬけて、あの山を目指す。
【日本カレンダー・一月】
「あけましておめでとうなの、ねねさま!」
満面の笑みで蕎麦をすする鬼子に
これまた満面の笑みで飛びつく妹分。
年越し蕎麦の名にふさわしく年越しの瞬間に蕎麦を食すのが、日本家の習慣となっている。
年中蕎麦食ってんじゃん、等とツッコミを入れたヒワイドリは
焼き鳥になって転がり、新年の食卓を間違った方向に彩っていた。
いつもならば疾うに床に就いている時間だが、今宵ばかりは夜更かし御免。
蕎麦にお餅にお菓子にシュース。ささやかながら新年会。
TVでは芸人達が「ア・ハッピーニューイヤー!」と賑やかすぎる程に繰り返している。
「あけましておめでとう。今年もよろしくね」
鬼子は小日本の頭を優しく撫で、微笑んだ。
「これは私からのお年玉よ、はいどうぞ」
「!! お団子だ!ねねさまが作ったの!?」
「ふふ、あなたがお昼寝してる間にこっそりね。気に入ってもらえたかしら」
「わぁい、ねねさま大好き!ヤイカガシー、ヒワイドリも一緒に食べよ!」
小日本の為に作ったのだから一人占めしたって怒らないのに、
ハイどうぞ、と分け与えるその姿に、優しく育ってくれたものだと自然に笑みがこぼれた。
皆そろってのお正月。
…否。鬼子の頭をもう一人、ここにはいない誰かが過ぎった。
嗚呼、彼女もここにいてくれたなら、きっともっと楽しかったのに。
“ひのもとさん。”
明るく元気な声が聞こえた気がして、苦笑い。
初めてできた、人間のお友達。
今頃は家族と楽しく過ごしている事だろう。
“ひのもとさん。”
それでも、と。鬼子は思った。
せめて三箇日の間には会いに来てくれるだろうか。
いいや、親戚の家なんかに遊びにいってしまうかもしれな「ひのもとさん?」
「!!! 田中さん!?」
幻聴でも回想シーン突入でもなく、匠本人がそこにいた。
「勝手に入ってごめんね、明りがついてるのに何回呼んでも出てこないから…」
「あ、田中だー!あけましておめでとうー!」
「あけましておめでとう。今年もよろしくね、こにぽん!」
足元でキャッキャとはしゃぐ小日本に微笑む彼女。
鬼子は茫然とみつめていた。
「ど、うしてここに…?」
「もちろん新年のご挨拶だよ。親には“友達と初詣”って言ってあるから大丈夫!」
びっくりさせようと思って来ちゃった!大成功!と匠は笑う。
あけましておめでとう、と差し出されたハガキ。
可愛らしい絵柄で描かれた少女が二人、仲良く手をつないでいる。
赤い着物、桃色の着物をまとったそれは、自分と妹分なのだろう。
「田中さん、これ…」
「だって日本さん宛の年賀状、ポストに入れたって届かないでしょ?だから直接持ってきちゃった!」
イタズラっぽく笑う匠に、鬼子は顔を赤くして礼を言う。
「ありがとうございます!嬉しいです!ありがとうございます!」
「えへへー、それ、日本さんとこにぽんを描いたつもりなんだけど…似てないよね、ごめんね」
「いいえ!こんなに可愛く描いて下さって嬉しいです!…でも、」
「あ、やっぱり…気に入らなかった?」
少しばかり不安そうにする匠に、鬼子はあわてて首をふった。
違うんです、嬉しいんです。本当に嬉しいんです、でも、
「この絵、田中さんがいません」
年賀状を優しく返し、鬼子が笑う。
「ここのスキマに、描いて下さい」
そんな、一月の思い出。
終
以上、スレお借りしました。失礼しました。
気が向いた月の終わりごろに、
その月をふりかえった話を書きたいなぁと思います。
乙
鬼の家だからあえて年の最初に食うのか、福島の某地方に住んでいるからなのかわからないけどw
>この絵、田中さんがいません
なんか、そこのスキマ、プリクラが貼ってそうw
……で、やっぱり、額縁に入れて飾ります〜とか言い出して、
「大げさだなーせめて写真立てにしてよ〜」
とか、言うんだろうなあ。
281 :
103:2011/01/31(月) 01:43:23 ID:K8RayYwq
本スレの小日本<=>鬼子大きさ入れ替えネタに、burnoutさんや長芋さんの恋愛キャラを混ぜれば、
不思議系恋愛ものに時々ある、入れ替え中に告白されて困惑という話も組み立て可能か…。
NHKでの放送も杞憂に終わった所で少し第八話を投下予定…誰も使ってませんよね?
鬼子の過去話…自分の中でも全然定まらないや。こればっかりは下書き必要だったかも知れない。
282 :
103:2011/01/31(月) 02:20:16 ID:K8RayYwq
ひだまりで机に伏せ、まどろむ鬼子…その姿が日が雲に隠れ、また日が差す時には幼い姿へ変わっていた。
目を覚ますと、周りにいた小さな女の子が、鬼子の顔を覗き込んでいる。
???『ねぇ、どうして鬼子ちゃんには角があるの?』
???『おいそいつに関わらない方がいいぜ!変なものが見えるとか言うんだから…』
男の子に呼ばれた女の子は、そそくさと離れていく。いつもの慣れた風景、いつか通った道。
鬼子『私は本当にお母さんの子供なのかな…どうして私にはこんなものがあるんだろう?』
第八話:いつか通った道、これからも通る道
外で遊ぶ同じ学校の子供達を、窓から眺めている鬼子。不意にどす黒い気を背負った人を見つけ、
慌てて教室を飛び出し、近寄っていく。どこか苛立っている風な、子供が近づくべきでない男へと。
鬼子『ねぇおじちゃん、どうしたの?どこか苦しくない?何か辛い事でもあったの?』
男『ちょっとね…探し物がどうしても見つからなくて、イライラしているんだよ』
鬼子『あのね、心が苦しいならそこの坂の上にある「日本心療所」って所に行くと良いよ♪』
男『そうかい…ありがとうよ。もし気が向いたなら行ってみるよ』
鬼子が見送ると、男は学校から遠のいていく。心に影を背負った者が見える体質…。
父や母の仕事の手伝いが出来ると、安易に考えていた鬼子にとってはただのお客様を見抜く力だった。
???『おい!鬼子!いけないんだぞ!知らない人に声かけたりしちゃあ!』
???『OOO君、止めなよ。どうせ鬼子ちゃんには解らないし、関係ないよ』
???『うるせぇ!!鬼の癖に豆をぶつけてもどこにも行かないし、俺達がお前を怖がってると思ったら大間違いだ!』
男の子が鬼子を突き飛ばすと、角を隠していたお面が取れる。
慌てて拾い上げてまた角を隠すが、その姿を遠くから見ていた者がいた。
男『…見つけた…やはりこの時代にも産まれていた…』
鬼子『痛いよ…止めてよ…なんで私だけこんなに酷い事するの?』
???『煩い!そんなに嫌ならその角折ってから学校に来いよ!出来ないって言うんだろ?作り物の癖に!』
なおも苛める男の子。巻き込まれないようにと、周りの生徒は誰も止めようとしない。
??『お…こ…鬼子さん…鬼子さん!』
鬼子『ハイ…ごめんなさい!え〜と…?』
突然声をかけられて、ビクッとしながら鬼子が目を覚ますと、そこには雑煮を抱えた柚子がいた。
柚子『そんな格好で寝ていたら風邪を引きますよ?お雑煮、作ったんでどうぞ』
鬼子『すいません、有難うございます。』
柚子『こんな事聞いて悪いかも知れないんですけど、鬼子さんは実家に帰らなくても大丈夫なんですか?』
聞かれて、表情が少し暗くなる鬼子。悪気が無いのは解っているのだが…。
鬼子『私には、帰って良い場所かよく解らなくて…最近まではこの近くで鬼の祓い方を住み込みで学んでいたんですよ』
柚子『そうなんですか?ごめんなさいね…変なこと聞いちゃって。このお雑煮お口に合うか迷っちゃって』
正月のお雑煮は、丸餅・角餅、白味噌・澄ましと、地域によって千差万別である。
実家に帰ってその滅多に無い味を楽しむのも、新年の醍醐味の一つと言えるだろう。
鬼子『大丈夫ですよ。頂けるだけでもあり難いですから。頂きます』
柚子『じゃあ、そのお師匠さん?に挨拶も行かなくちゃね。何か好物とかあられます?』
鬼子『鰹節…というか、ごめんなさい、実は喧嘩して出てしまったのであまり会いには…』
柚子『そうだったの…重ね重ね不躾な事を聞いてごめんなさいね』
二人が話していると、小日本が近づいてきて鬼子の袖を握っていた。
小日本『ねぇ…ネネさま、御節も食べて良い?』
三人は宿泊客も居ない旅館の食堂へ戻ると、新年の空気を窓辺に見ながら正月料理を頬張った。
>>282 過去編きたー!気になる過去がちょっとだけ分かったのでワクワクしてますが
男の子をぶん殴りたくなった。ちょっと壁を殴ってくる。
誰も使ってないようなんで使わしていただきま……す!
冬も終わりを迎えようとしている今日この頃、俺は銀行のATMの前で呆然としていた。
前回の一件で10万という収入が入り、生活用の貯金は60万となっているはずだった。
もちろん、仕事に使う道具や、夜烏賊や日輪などを人型に長時間保っておくための薬代も入っている。
だが、前回の一件からまだ二日。それなのに貯金の残高が2万しか無い。おかしい。
どう考えても引き出した覚えが無いのに月初めからほぼ毎日引き出されている。5万ずつぐらい。
昨日なんか12万も引き出されている。なんだこれは……一度帰って確認を取ってみなければ
「という訳でだ。銀行の貯金が無くなっていっている。それはどういう事を意味するでしょうか!」
「生活出来ないっスね」
「夜烏賊、正解。そこで俺が聞きたいのは誰が引き出したかってことだ。心覚えがある人は言ってみよう」
「私は……覚えがないです……」
「鬼子はいいんだよ。暗証番号自体知らないでしょ」
「はい。お役に立てず……すいません」
「いや、いいんだよ。最初から怪しいと思ってたのはそこの二人だから」
「えっ!?なんで俺達なんスか!」
「いや、お前らが一番怪しいだろう。前科もあるしな」
「ぐぅ……言い返せないっス……」
「それはそうと……なんで今日はそんなに大人しいんだ日輪は?」
今日は銀行から帰ってきてから一言も喋っていない。というか目も合わせようとしない。
おかしい。いつもなら「新刊のエロ本買ってきてくれました?」とか「あの歩いてる人の乳なかなかですよね」
とか、オッサンの思考を表に出してくる変態なのにこれはなんだ?怪しい……
「聞いてるのか?日輪」
「き、聞いてますよ」
「じゃあ、なんで目を合わさない?」
「昨日は遅くに寝たので目のくまが……」
「ほう……今朝はあんなに目を合して話してくれたのにか?」
「うっ……」
この反応は……犯人だ!
なんて隠すのが下手なんだろうか。夜烏賊みたいに堂々としていれば疑わなかったのに。
あ、夜烏賊はなにもしてないんだけどね。今回は……
「お前、昨日何処に行ってた?」
「ちょっと散歩に……」
「財布、出してみようか?」
「だだ、駄目ですよ!恥ずかしいです!」
「うるさい馬鹿!お前が一番怪しいんだよ!」
無理矢理、財布を奪い中身を確認する。なんだこのレシートの数は?
……ゴールデンタイムのテレビならズキューンと効果音が入るような店名ばっかり……
えーと、支払額は総額で……80万……だと……?
「なんだ、これは?」
財布から抜き取ったレシートを机の上に広げる。
それをソファーに座っていた鬼子と夜烏賊もゆっくりと覗き込む。
「うわっ……一軒で10万も使ってる所もじゃないッスか。この前の報酬と同じじゃないッスか!」
「……」
夜烏賊の方は普通にレシートを見て、驚いているのだが……鬼子の方はというと……
店名を見ただけで顔を真赤にし、近くにあった枕で顔を隠してしまった。
「どういうつもりなんだ?日輪」
「だって……だって……」
「だって?」
「一緒に乳の話をしてくれないからじゃないですかー!」
「は?」
ちょっと意味が分からない。なんだ乳の話を一緒にしてくれないからというのは。
「だって陽介さん。私が乳の話をしだすと怒るじゃないですか!」
「いや、聞きたくないからな」
「それに鬼子ちゃんに話しかけても顔を真赤にしてまともに聞いてくれないし、夜烏賊は臭いし――」
「ちょっと待て。最後は関係ないだろう!俺をなんだと思ってるんだ!」
いや、ストレスが貯まる要因にはなってるだろう。臭うし……くさやを大量に購入してくるし
くさやのせいで冷蔵庫を二つにしなければ他の食品がダメージを負うぐらいになってしまったし
「と、とにかく!皆が悪いんですよ!」
「それは責任転嫁だ。自分でやったことは自分で取り返してもらうぞ」
「それはお断りします!」
「やれ!」
「嫌です!」
「やらないと一週間、外出禁止に加え目隠しだ」
「……やります」
「よろしい。じゃあ……知り合いの仕事先がちょうど開いてるみたいだから行ってもらおう」
まぁ、知り合いと言っても昔に保護したアレなんだが……コレは黙っておこう。
どうやらコイツらは折り合いが合わないみたいだしな。
「何処に行くんですか?」
「着いてからのお楽しみだ。そうだ、ついでに鬼子もやってくるといい。世間勉強だ」
「え、あ……わかりました。けど角はどうすればいいでしょう」
「心配ない。コスプレと思われるからな」
「?」
「なんだろう。今の一言を聞いて凄い心配になってきた」
所変わって場所は、オタクの聖地と呼ばれる電気街。
さすがにここまで来れば分かるだろうが、仕事先はそう!メイド喫茶だ!というかコスプレ喫茶。
とりあえず店の中に入る。もちろん表からではなく裏からだが。
「ん……やっと来たか」
「久しぶりだな。秋田(あきた)」
「いや、そのネーミングセンスはどうかと……」
「そんな事はどうでもいい。どうだ?薬の調子は」
「問題ないよ。もう一ヶ月持っている。それで?今日は何のよう?」
「前にバイトが欲しいって行ってただろう?連れてきてやった」
「あぁ、あの件ね。いいよ、面接だけでも……日輪じゃん。それと、後ろのはだれ?」
「後ろは新しく入った鬼子って言うんだ。よろしく頼む」
これでやっと収入が入るな。それにしても今月の食費をどう切り詰めるかだな。
2万というと外食はできないし、基本は家で作るしか無いか。
苦手なんだよな……料理。あ、鬼子につくらせてみるのも良いかもしれないな。
「うーん。鬼子って子は気に入ったから良いけど日輪はなー、ちょっと……」
「えっ?なんで?」
「いや、前に同じような事頼んだ時に暴れたじゃないか。乳の話で」
「そこをなんとか……」
「私は別にできなくてもいいけどね!」
「ちょっと黙ってろ日輪。頼むよ秋田。やっとてくれないと薬、次から用意してやらないぞ」
「脅しじゃないか……まぁ、いいよ。一週間だけ試用期間で雇ってあげる」
「そうか、よろしく頼む」
「気にするな。じゃあ、鬼子ちゃんは……こっちの部屋でこの服に着替えて。日輪は好きにしてくれ」
「ちょっと!私は?」
「好きな場所で着替えてくれ。なんならトイレを貸そうか?」
「いらないわよ!」
「可愛い……」
服を見てなにかを小声で呟きながら鬼子が先に着替えをしに行く。
日輪の方はというと……うむ、ちゃんと追いかけていってくれたようだ。こんなところで着替えられたらコッチが
恥ずかしくなるからな。あれ……あの乳馬鹿と一緒に着替えってことは……まぁ、気にしないでおこう。
しばらくすると二人が着替えを終えて戻ってきた。鬼子の方は涙目になりながら顔を真赤にしているが、
日輪の方は何故かすごく元気になっていた。もう何も聞くまい。
「おー、いいですねー。似あってますよ鬼子ちゃん。これは売れっ子確定だな」
「あ、ありがとうございます……」
うむ、なかなか似合っている。黒髪ロングにメイド服というのもなかなかあっている。
普段の着物姿とはいい勝負の似合い具合だな。
しかもこの恥じらい方。全てにおいていい感じじゃないか。
「ちょっと待て。私の姿は?」
「え?日輪?なんというか馬子にも衣装だって感じだよな」
笑いながら日輪の印象を説明する。いや、かなり似合っている。実際、赤髪がここまで似合うとは思っても居なかった。
ただ、あれだ。普段のイメージがあるから何ともいえないんだなコレが。
「鬼子パンチラキター!」
「きゃあああ!」
ずしゃあああっとスライディングをしながら二人の足元を抜けていく夜烏賊。
いや、それはパンチラではなくて覗きだぞ夜烏賊。
「ま、ふたりとも似合ってたから明日から出勤ということで。お疲れ様ー」
その言葉を残して秋田は店長室へと消えていってしまった。なんといういい加減な面接だろうか。
まぁ、そのおかげで生活が助かるんだから問題はないんだがな。
とか思いながらスライディングをした夜烏賊を見てみると顔に足跡がくっきりと残ったまま倒れていた。
きっと元の服に着替えに行った二人にというか日輪にやられたんだろう。バカめ。
着替えから戻って来た二人を連れて店から出ると一人の鬼の子がじーっとコチラを見ていた。
なんだあの子は?あの角と背中にある刀を見れば明らかに不審者だが……さすがにこの電気街でそれは通用しないか。
「ん?どうしたの陽介さん」
「いや、あそこの子。コッチをずっと見てるんだ」
「あら、本当だ。ん?こ、これは!」
「どうした?」
「私の乳眼が叫んでいる!あの子はきっと良い乳をした子になるに違いないと!陽介さんも感じませんか!?」
「悪いな。俺はそんな変態的スキルは持っていない」
なんだよ乳眼って。訳の分からない能力を持ちやがって……まぁ、人には害がないからよしとするか。
「ちょっと、何者なのか聞いてくる!あと、乳のサイズも」
「待て!相手は子どもだぞ!乳のサイズなんかあるもんか!」
静止を振り切り、鬼の子の元へと駆け寄っていく日輪。
しゃがみ込んで何かを聞いているのだろうか。しきりにコチラを見てくる。
あ、鬼の子を連れて戻ってきた。
「えーと、とりあえず事務所で話したいそうです。依頼っぽいですよ」
「なんだ、そうか。じゃあ、事務所に行くか」
帰りの電車で変な目付きで見られていたのは仕方が無いと思おう。
「で、お嬢ちゃんの名前は?」
ソファーに座りながらもぐもぐと口いっぱいに団子を詰め込んでいる鬼の子に訪ねてみる。
「ひょにほむ!」
「いや、食べ終わってからでいいよ」
急いで口を動かして中の団子を飲み込もうとする。
ハムスターみたいだな。ちょっとこの子一家に一人欲しいわ。疲れた心が癒される。
「こにぽん!」
やっと食べ終わったのか、自分の名前を叫ぶ。
いきなり叫ぶものだからちょっとびっくりしてしまった。
「そうか。じゃあ、依頼の内容は?」
「ネネさまを返して欲しい。私のおねいさま!」
「ん?誰のこと?人攫いなんてした覚えはないよ」
「した!」
といって鬼子を指差す。ん?鬼子の事をネネさま?
ということは家族ということになるな。なにか手がかりがあるかもしれない。
肝心の鬼子はネネさまと言われてかなり驚いているようだが……
「んー、攫ったんじゃないんだけどな。まぁ、いいや。君のお姉さんは病気になったから俺達が
保護してあげてるの。分かる?」
「分からない!だって、ネネさまは病気になんてなったことないもん」
「いや、今なったんだよ。記憶喪失、分かった?」
「きおくそーしつ?」
「そう、記憶喪失」
「なにそれ?」
「えー、なんていうのかな……」
簡単な説明が思いつかない。単に記憶がなくなるっていっても色々あるからなぁ……
なるべくやんわりと答えて住んでいた場所を割り出さないと。
「簡単に言うと鬼子の記憶にはこにぽんと過ごしたの記憶がないんだよ。生まれた場所も、一緒に過ごした人
たちも全部忘れたの。 だから俺達はこの病気を治すために頑張ってるの分かった?」
夜烏賊、そんなに直球でいかなくても良いじゃないか?
こにぽんは何を言ってるのか理解出来ていないようだし……
「で、でもネネさまだよ?」
「そうだな。でも鬼子は君のことを知らない。忘れているんだ」
「……」
事務所が一気に静寂に包まれる。
やりやがった。ハッキリと現状を伝えるのはいいことだが、ここまで伝えるとは。
「もういい、夜烏賊は黙ってろよ。……鬼子と一緒に住んでいた場所を教えてくれ。そうすれば早く
鬼子を家に返してあげられる」
「分からない」
「え?」
「ネネさま探してたら、おうちの場所が分かんなくなっちゃった……」
oh...想定外です。
ここまで姉を求めて探しにきているもんだから家の場所ぐらい知っていると思ったが、まさか迷子とはな。
「じゃあ、家には電話かなにか連絡を取るものある?」
「ない。ニャーなら知ってるかもだけど……」
「ニャー?」
「うん、般――」
「は、般ニャー?」
「「!?」」
なんだ?なんでこにぽんより先に名前が出てきた?
まさかとは思うが、記憶が……戻ったのか?
「鬼子、お前記憶が……」
「え?」
「え?」
「戻ってないです……よ?」
「だってこにぽんより先に名前を……」
「いや、なんとなくですよ?なんとなく……あれ?なんて名前出てきたんだろう?こにぽんちゃんの事も
なんとなくだけど名前が分かってたような気がしますし……」
無意識か。ということは大分つながりが長いということになるな。その般ニャーと会うことが出来れば、
記憶の解決も早くなるんだが……家の場所が分からないんじゃ仕方がないな。
「まぁいい。今日の所はな。こにぽんも家が分からないんだったら分かるまでここに居ていいから」
「分かった!あ、ネネさまの事をわかりそうな人ならまだいるよ!」
「誰?」
「ヒワイドリとヤイカガシ!」
「「え?」」
いやいや、そんな馬鹿な。
ここまで個体を保持できているのはこの二人だけのハズ。
しかし、世界は広いというしな……ありえない事ではない。
「で、そのヒワイドリとヤイカガシは何処に?」
「先に出て行った!」
ということはだ、既にこの街に来ているということも考えられるということだ。
でも、なんでこの事務所に来ないんだ?仲間を探しに来たというのであれば、この場所に来るはずなんだが。
待てよ。日輪と夜烏賊と性格が同じだとしたら……まさか。
「なぁ、まさかだけどさ。その二人って、乳とパンツが好きなんじゃ……」
「好きだよ!ネネさまのばっかり狙ってた!」
あぁ……頭が痛くなってきた。
こいつらの性格と同じだとすると、確実にここに辿りつく。狙った獲物は逃さないからな。
「ん、ありがとう」
「いいよ。ネネさまの記憶を取り戻すためだもん!」
「そうだな。ん?何だその手に持ってるのは」
なにやらウネウネと蠢いているものが居る。
どっかで見たことあるな。なんだったっけ……えーと……
「これ?記憶喰だよ!」
そうだ、そうだ。記憶喰だ。いやぁ、答えが分かってすっきりしたって
「えっーー!」
「どうしたの?」
「それ、何処にいた!?」
「この椅子の上に寝てた」
「寝てた?」
「うん」
寝てた。うん。そうしとこう。
さて、問題なのはこれが鬼子の記憶を持っているかだな。
「ちょっとそれ貸して」
「いいよ。はい」
素直に渡してくれた。
うぇ……何度触ってもヌルヌルしてて気持ちが悪いな。
そうだ、この触手は輪ゴムでしばってと……
「なんなんですか、それ?」
「ん?気になるのか鬼子」
「だって、初めて見ますし……」
「んーとな、これがキミの記憶を食べたのと同じ種類の鬼だ。記憶喰。前に説明しただろ?」
「はい……そうですけど……初めて見たのでちょっと驚きました」
「ははっ……ま、ちょっとまっててくれよ。コイツが鬼子の記憶を持ってるか確かめてみる」
えーと、記憶を閉じ込めてる結晶体は……と。多いな、何年生きてるんだコイツ。
「鬼子、済まないけど手を突っ込んでくれないか?君の記憶があれば青く光るはずだ」
「……これに手を突っ込むんですか?」
「うん。突っ込むの」
「わかり……ました」
鬼子が記憶喰の中に手を突っ込む。すると透明な液体が床に流れだす。
はぁ、後で部屋を掃除しなくちゃならないな。外でやればよかった。
しばらくすると、鬼子が手を突っ込んで触っていた結晶体が青く光り始めた。
見つけたぞ。だが、欠片が少し小さいな。少しだけの記憶が蘇るだけか。
「鬼子、それを取ってくれ」
「はい」
ねちゃねちゃとした液体が付いた結晶体を鬼子から渡される。
とりあえず、その結晶体を空になっていた牛乳瓶の中に入れる。
あとは、そうだ。薬だ薬。それと水を混ぜあわせてっと……
「なんスか?その気持ちの悪い液体は?」
「あれ?お前、見るの初めてだっけ?」
「え?前にも作ったんですか?」
「……ちょっとな」
「あー、それですか。あの時は面白かったですよね。夜烏賊にはあとで話してあげる」
「こにも聞きたい!」
「あ、私も聞きたいです」
「駄目だ!絶対に話すなよ!」
あんな事があったなんて知られたら恥ずかしくてやってられない!
「えー。いいじゃないですかー。あの時の陽介さんは良かったのになー」
「頼むから黙っててくれ。本当に怒るぞ」
「そんな事言って怒ったこと無いくせにー」
「っ……分かったよ。今日は話に付き合ってやるから黙っててくれ。いいな?」
「了解でーす」
なんでこんなところで自分で墓穴を掘るような発言をしたんだろうか。
夜烏賊はあのときは居なかったっていうのに……恨むぜ俺自身
「とにかくだ。これを飲んでくれ鬼子」
鬼子に青く光る液体が入った牛乳瓶を差し出す。
臭いは……ブルーハワイだな。完全なブルーハワイ。
夏じゃないのに甘ったるいかき氷のような匂いがプンプンする。
「これを?」
「うん。グイっと」
言われたとおり、グイっと液体を飲み干していく鬼子。ちょっと表情がキツそうだ。
さて、ここで簡単に説明しておこう。この液体。実はなんというか興奮作用がある。
誰かれ構わず特攻もとい積極的になるのだが、今のところ鬼相手には試したことがない。
なので何が起こるのか、ものすごく心配である。
「どうだ?」
「ちょっと、美味しくないですね」
「何もない?体に異常とかは?」
「ないですよ?」
「ん、そう。じゃあ、記憶は明日の朝ぐらいには戻ってると思うよ。一部だけど」
「そうですか。色々とありがとうございます」
異常はないようである。安心した反面、少し残念な気もしないでもない。
「それよりここ、暑いないですか?」
そう言って鬼子が着物の帯を外そうとする。
やっぱり異常があったー!
「待て待て待て!ここで脱ぐな!それに今はまだ寒い時期だろうが!」
「えー、だって暑いんれすよぉ?」
「暑いても脱ぐな!それは薬の副作用だ!」
「良いじゃないか脱がしても、俺は構わん!パンツが見たい!」
「私も構わん!乳が見たい!」
「こ、こにもー!」
「ちょっと全員、見てないで脱がないようにするのを手伝え!というはこにぽんは周り見て答えただろ!」
「離してくださいよぉー。暑いんですよぉ」
鬼子の着物を脱がないように押さえつけていると勢い良く事務所の扉が開く。
入ってきた客人はというと、なんだか見たことがあるような二人で。
「鬼子!無事……か……」
客人の動きが止まる。
俺が脱がないように押さえて居る着物はグシャグシャになっており、これでは
俺が襲っているように見えるだろう。というか完全に襲っている。
ふっ……そりゃそうだよな。ここまで上手く事が運びすぎたんだ。
「ヒワイドリとヤイカガシだー」
こにぽんが二人の元に走っていく。けど、二人はまだ止まったままである。
そして俺も止まったままである。どうしよう……
「なんてことしてんだお前は!俺の乳だぞ!」
「何処の馬の骨だこらー!私のパンツだぞ!」
「だー!待て待て待て!まず、鬼子が着物を脱ぐのを止めさしてくれ!というか何だその発言は!」
「それに関しては別に止めなくていいと思う。あと鬼子の乳は俺のだ」
「私も同意見だ。鬼子のパンツは私の物と決まっている」
「性格もやっぱり一緒じゃねぇか!ちょっと変わってるのは自己主張だけかよ!」
「暑い〜」
「ネネさま……こにもぬぐー!」
「脱ぐな!」
293 :
代理レス:2011/01/31(月) 22:48:52 ID:mIVPOwIz
その後、誤解を解くのには鬼子の薬の副作用が切れるまで続き、鬼子に至っては
着物を脱ごうとしたり、鳴木に頭突きをしたりで大変であった。
日輪と夜烏賊、ヒワイドリとヤイカガシは当たり前といえば当たり前なのだが、何故か
意気投合し、次の日の朝までパンツと乳について語り合ったという。
「だから嫌なんだ。同じ性格の変態が集まるのは!もう寝る!」
少し離れたビルの屋上から鳴木の事務所を覗いている人影が二つ。
――どうだ?なにか見えるか?
――記憶は無事にもどったみたいだよ。
――それは良かった。記憶喰を探すのは苦労したんだからな。
――けど、誰が一体何のために鬼子の記憶を?
――さぁな?俺達はただ、記憶を取り戻すのを手伝って、早く家に帰ってもらうだけさ。
――そうだね。早く帰ってもらわないと前みたいに小日本と遊べないしね。
――お前、小日本好きだったのか?
――ばっ……そんなんじゃねぇよ!
一つだけ、鬼子の記憶の欠片を手に入れた相談所のメンバー。残る欠片は5つ
しかし、新たに合流した小日本と、日輪と夜烏賊と同じ性格、種族であるヒワイドリ、
ヤイカガシが面倒事をまた持ってきたみたいで。まだまだ終わりそうに無さそうです。
終わり!
gdgdだな。再確認。というかアレですよ。鬼とか殆ど関係ないね。次はしっかりと鬼を登場させよう。
新しいスレ立ててきます。
立てれなかったら次の人よろしくです。
携帯より小ネタ投下
青年の姿となったヒワイドリの指先と鬼子の指先が触れ合った瞬間、鬼子の体に電流が走った。
心臓は早鐘の如く鳴り響き、
鬼子の目は潤み、一言呟く。
「静電気が痛い」
「という出来事があったのだよ、冬の鬼子の帯電率は異常」
「静電気で鬼子殿の髪の毛がぶわっと広がって怖かったぞ」
「いっそ『ダーリン許さないっちゃ』と電撃打てるようになると良いかもしれん」
「良いですね、是非ともあの虎柄ビキニを着てもらいましょう」
「いやいや、名案だが楓柄に変更せねば著作権的にやばかろう」
「成る程、流石はヒワイドリ殿。しかし、あの衣装は良いですな太股のラインがよく見える」
「ふふふ、乳のたゆんたゆん揺れる様もよく確認出来るし、実に素晴らしい衣装だ」
二匹がニヤニヤと会話していると背後に気配がし、
はっと振り返ると鬼の形相の鬼子が立っていた。
「あんた達いい加減にしなさいっ!」
二匹に雷が落ちましたとさ、どっとはらい
ワロタw そっちの雷かよw
299 :
103:2011/02/03(木) 09:02:34 ID:mCov9aN9
話数合わせて丁度ヤイカガシの登場を節分に出来たぜ…。
九話・十話、どなたも使われていない内に書かせて頂きます。
怪しい薬を飲むと、死に掛けてパワーアップとしか思い浮かばない自分はもうオッサンか…。
和服って静電気溜まるんだろうか?材質次第なのかな…。冬の寒い中で着られている、
あのすっぽり全身を覆うような和服の名前が、何なのか全然解らない…。
300 :
103:2011/02/03(木) 09:29:51 ID:mCov9aN9
−『ガタッガタガタ…』 不気味に動く箱を、三つの影が運んで持ってきた。
それをそっと旅館の前へ置くと、影は方々に散っていった。箱はまだ動いているが、
どうやら蓋がされているようで中身までは飛び出していない。今日は節分である。
第九話:鬼子の苦手なものってなあに?
温泉でもあり、旅館でもある冬至温泉では、季節ごとの催し物を大切にする。
鬼子達が台所で作っているのは、本日旅館で振舞う太巻きである。
柚子『鬼子さん、干瓢は出来上がりました?ご飯は炊けたんですけど…』
卵を焼きながら聞く柚子の横では、小日本が焼き海苔を切り揃えている。
鬼子『はい。無事戻りましたよ〜。でも…本当に全部やるんですか?』
柚子『何をですか?』
鬼子『その…節分の行事を、全部です』
言っている意味が良く解らない感じで、首を傾げる柚子。
柚子『もしかして…鬼子さん、節分が怖いんですか?』
ビクッとする鬼子に対し、不意に意地悪そうな顔をする柚子、
そしてその真似をして、手を怪しげに動かしながら近づく小日本。
鬼子『そ、そんな事ないですよ。さぁ!早く作っちゃいましょう!』
急いで釜の蓋を開けた鬼子は『アツッ』と湯気で仰け反りながらごまかした。
その時『ガタン!』っと大きな音が玄関から聞こえ、鰯頭にヒイラギを刺しながら柚子が玄関へ。
柚子『ようこそいらっしゃいませ…あら?』
玄関には誰もいない。だが、倒れた箱が、今なおゴトゴトと動いている。
箱には『年末に頂いたご恩をここに返したいと思います:忘れられた者達より』との紙が。
301 :
103:2011/02/03(木) 10:23:56 ID:mCov9aN9
箱を中に運ぶと、小日本が近づいてくる…が、中から漂う匂いに思わず鼻を摘んだ。
小日本『これ…なぁに?すっごく生臭い』
柚子『さぁ?年末にお世話になりましたってあるけど、心当たりが無いのよね…』
不意に小日本が何かに気づき、ガタガタといつまでも動く箱に手をかざしてみる。
小日本『ねぇ…これあの変態の鳥さん達と同じ感じがするよ?あの人達からじゃない?』
その声を聞き、箱が今までで一番大きく動き下へ落ち、中から大きな声が聞こえてきた。
???『は、はやく開けて欲しいでやんす!あの三方の選ぶ箱は小さすぎでやんす!』
廊下でビチビチと飛び跳ねる様に動く箱から、恐る恐る紐に手をかける柚子。
きつく縛られた紐を外すと、勢い良く飛び出してきたのは…足のある魚だった。
???『た、助かったでゲス。あっしは今日からここにお世話になるヤイカガシと申しやすでゲス』
柚子『え?お世話になるってどういう事ですか?勤務者の募集はしていないけれど…』
訳のわからない来訪者の、訳の解らない申し出に混乱する柚子。
喋る魚に突然あった状況を想像して欲しい。誰がすぐに受け入れられるか?しかも臭い。
ヤイカ『あっしはあのお三方と同じく、人を助ける宿命を背負っているでやんす。
昨年お世話になった女将さん達を助けるように、あのお三方に頼まれたでやんす』
鬼子『どうしたんですか?酢飯は出来上がりましたよ〜』
ヤイカ『この旅館には鬼が出ると聞いて来たでゲス。あっしも鬼を追払う存在の代表。
例え信ずる者が少なくとも、ここから鬼がいなくなるまで戦う所存でゲス。
これはほんの手土産でゲス。どうぞ歳の数だけ食べて病を防ぐでゲス』
素のまま紙袋に入れていた炒り豆は、ヤイカガシの体臭を吸って…臭い。さすがに食用には向かないだろう。
柚子『…もしかしてあなたはこれと同じなのかしら?』
手に持った鰯とヒイラギの飾りを、クルクルと回してみせる柚子。
それをみて死んだ魚(確かに死んだ魚なのだが)の様な目をしていたヤイカガシは目をキラキラとさせた。
ヤイカ『お…おおおおおおお!あっしをまだ信じて頂いている方がいるとは!
あっしは一生あなたについて行くでゲス!女将さん、有難うでゲス!』
柚子に抱きつこうとするが、余りの臭さにヒョイと避けてしまう。
小日本『…とりあえず、お風呂に入っちゃえば?流石に臭過ぎると思うの…』
柚子『このお豆は、有りがたく頂きますけど、食べるんじゃなくて撒きますね』
二人に直接、間接的に臭いと言われ、ショックを受けるヤイカガシ。
だが、既に腰を抜かしていたのは鬼子の方だった。嫌そうに逃げ腰になりながら、
廊下の隅へ行くとガタガタと震えている。『止めて止めて…投げないで…』と呟きながら。
柚子『…?もしかして鬼子さんヤイカガシさんが怖いんですか?』
手に豆を持ちながら、無遠慮に柚子が近づき、『ヒィ!』っと叫びながら、
もっと遠くへ逃げようとする鬼子。ヤイカガシは小日本からお風呂の場所を聞いている。
小日本『柚子オオネネさま、ネネさまはお豆さんが苦手なんだよ〜』
ガタガタと余りにも震える鬼子を見て、柚子は流石に可愛そうになり外に出た。
外からは、柚子の声が聞こえてくる。大きく、透き通った声だ。
『鬼は〜内!福も〜内!鬼は〜内!…福も〜内!』
柚子『鬼子さん、鬼も一緒に迎える地方もあるんですよ…』
自分が追い出されないと、豆をぶつけられ無いと気づいた鬼子は震えるのを止めた。
その頃の三羽…ヒワイ『やつが鬼子を追い出せば、どんな乳も拝み放題だ…』
チチドリ『ヤイカガシ、上手くやっているチチかね?』チチメン『うむ、恐らく今頃鬼子は匂いに鼻ももげているはず』
ヒワイ『…でも、鬼子って奴は病気の類いだったっけ?』二羽『あっ!!』
302 :
103:2011/02/03(木) 14:14:31 ID:mCov9aN9
10話目…どうしてもまとまらないや…また後で書きます。失礼しました。
乙。そういえば、最近の豆まきは、掃除が大変だからという理由で、回収しやすいように
袋入りのままやったりするらしいですなあw
後片付けがラクだし、食べ物を粗末にする訳でもないとか。
あと、地域によっては豆じゃなく、お菓子やお餅の所もあるんでしたっけ。
ラッカセイを殻ごとというのも聞いたことがあるような……
そういうのも苦手なのかなあ?
>>303 東方Projectに出てくる吸血鬼と鬼は
炒った豆が苦手とあるから、それ以外は存外平気じゃないの?
落花生は殻ごと投げても効果ないような…
鬼子はきな粉も駄目なんやろか?
小日本はきな粉好きそう
306 :
103:2011/02/04(金) 00:53:32 ID:2UWKHoNd
避難所で呼ばれた気がするが、自分に出来るのはスペシャル二回(一回は最初のヤツ)を含めた、
アニメ風での全25(?)話をしっかり完結まで書ききるまでだ…。
というわけで、今から第十話も拙いながらも書いてみます。
いつか基本ストーリーの叩き台になると嬉しいけれど、色々努力せんとなぁ。
鬼子は炒り豆の、投げられて痛い粒状のだけ苦手なのでは?と想像してます。
だから落花生や袋入りの豆では全然怖がらない…可能性もある気が。
307 :
103:2011/02/04(金) 01:31:47 ID:2UWKHoNd
―風呂場でヤイカガシがコソコソと宿泊客の脱いだ服を漁っている。
手に持って…大きく深呼吸するヤイカガシ。その姿はまさに変態そのものだ。
ヤイカ『ふぅ〜。これも良い匂いでゲス…』
怪しげな動きをするヤイカガシを、物陰から小日本が覗いていた。
第十話:ヤイカガシってなぁに?
小日本『ネネさま〜。本当にあの魚って祓わなくて良いの?』
そう…節分が過ぎてもヤイカガシは何故か消えないまま。おまけに変態行動も繰り返す。
鬼子『でも、アレも一応神様の一人みたいだし…住む場所は色々な家みたいだけど』
小日本『すぐ帰ると思ったのに、いつまで居るんだろう…』
ヤイカ『あっし、少々出かけやすのでこれを代りに置いてくでゲス』
普通に動かない鰯とヒイラギを差し出すと、ヤイカガスはペタペタと街へ歩き出した。
小日本『あの子、よく出かけるけど普段何してるんだろう?』
どうしても不信感を拭えない小日本は、ヤイカガシを一日尾行する事にした…。
308 :
103:2011/02/04(金) 02:09:32 ID:2UWKHoNd
街中に出ると、ヒタヒタと食べ物屋に入っていく。そこでも一々匂いを嗅ぐヤイカガシ。
店の客でその姿に気づいた者は、軽い悲鳴を上げている。当然だ、生臭い魚が練り歩いているのだから。
ヤイカ『ここも大丈夫でゲスね〜。次を回るでゲス』
どうやら今日だけでなく、毎日の様に色々な場所で匂いを嗅ぎまわっているらしい。
今度はドブ川へとやってきたヤイカガシは、ヒイラギの葉で出来たヒレで扇ぎ匂いを嗅ぐと仰け反った。
ヤイカ『やっぱりここは何も変わらないでゲス。あっしには無理な話でゲスが…』
どうやら何か基準があるらしい。しかし怪しい行動なのは変わらない。
河原に下りたヤイカガシは、そこで花を一輪摘むと、またヒタヒタと歩き出した。
次にヤイカガシが辿り着いたのは…大きな病院だった。今度は薬品の匂いでも嗅ぐつもりか。
相変わらず、ヒタヒタとゆっくり歩いている。診察棟を抜け、入院施設へと向かう。
ヤイカ『調子はいかがでゲスか?もう手術は受けたんでゲスか?』
少女『まだよ、ヤイちゃん。もっと検査が必要なんですって…。
ところで後ろの人はヤイちゃんのお友達?』
ヤイカガシは少女に花を渡すと、慌てて隠れようとする小日本の方向へ振り向いた。
…ヤイカガシが言うには、少女は極めて珍しい病気になったらしい。
先ほど見ていたドブ川に落ちてからという物、体が上手く動かない状態になっているとの事だ。
ヤイカ『あっしは匂いを嗅いで、自分の匂い以上に危険な物で人が病気にならない様に防ぐ立場でゲス。
けれども一度病気になってしまった人を、治すような力は持ってないでゲス…』
主治医の先生がやってくるが、ヤイカガシを見るなり蹴飛ばしてくる。
主治医『何度も何度も汚らわしい化け物め。あの子の病気が川のせいだと?
寝言は寝てから言っていろ…ちゃんと別の原因を私が突き止める』
小日本『どうしてヤイちゃんに酷い事するの!ヤイちゃんはオイシャサマを頼りにしているのに!』
反論をされた医者はブツブツと苛立ちを隠さず、怒りの表情を向けてくる。
309 :
103:2011/02/04(金) 02:49:50 ID:2UWKHoNd
主治医『餓鬼はいつも煩い…あの川が原因であってはならないんだ…。
あの川が原因でない事を証明しなくてはならないんだ!
でないと私に研究費が降りない!上流の工場から研究費が!』
もはや狂気とも呼べるほどどす黒い気配は、次第に形を成していく…。
不気味なフラスコを揺らすアフロヘアーの心の鬼は、小日本やヤイカガシには正体もわからない。
解っているのは、とても危険であるであろう事だった。鬼に憑かれた医者は、
女の子の方へと近づき、手を伸ばしていく…が!それを止めたのはヤイカガシだった。
ヤイカ『あっしはこいつらを祓う力は無いでゲス!早く鬼子さんを呼んで欲しいでゲス!』
小日本『解った!ネネさま…お願い、この場所を見つけて!導きたまえ!』
病院の床に手を付くと、そこから薄紅色の糸が外へと伸びる!
鬼子は心の鬼の気配を感じて、鬼切を片手に向かっていたなか、糸の端が飛んでくるのに気づいた。
鬼子『小日本…有難う。今すぐ行くわ!』気合を込めると、角が伸び着物が散り始めると共に加速した。
ヤイカガシがヒイラギの葉で切りつけたり、匂いで鼻を潰しながら戦うが流石に手厳しい。
相手はメスを取り出したり、薬品を爆発させたりしてくる。対してヤイカガシは戦闘向きではない。
徐々に押されつつあった時に、鬼子が到着した。女の子は既に気を失っている。
主治医『ぎぃ!貴様も私の研究を邪魔するというのか!キエロ!』
鬼子『人を救う存在が、金や名誉の欲に目を晦ますとは何事ですか!萌え散れ!』
ヤ鬼子は相手の武器を一気にへし折り本体も切り払う。心の鬼の欠片が散り行く中で、
ヤイカガシはいつの間にかその場所を離れていた。医者は何かを失ったかの様に呆然としている。
小日本『…ネネさま、あの子は大丈夫なのかな?』
鬼子『私にもどうする事も出来ないわ。ただ、より良いお医者様が見つかると良いけど』
主治医は呆然としていたが、程なく気づき慌てて片づけをし始めていた。
もしまた自分の保身を思い出したら、同じ事の繰り返しにもなりかねない。
ヤイカ『大丈夫でゲスよ…あっしは臭い部分については詳しいでゲス』
見ると、ヤイカガシが大きな封筒でバタバタと体を扇いでいる。体臭がかなり臭い。
鬼子『それは何なの?重要な書類みたいだけど…』
ヤイカ『あの薮医者が工場から受け取ってた資料でゲス。病気の元も書かれてたでゲスから、
これさえあれば治療法もすぐ解るはずでゲス。今頃あいつますます慌ててるでゲス』
なんだかんだ言って黒い家庭の守り神であるが、程なくして工場は対策を余儀なくされ、
小日本は退院した女の子と一緒に、綺麗な川へ花を摘みに行けるまでになった。
…以上です。第十一話は
>>87-91、
>>93-102で、一時間or二時間スペシャルの感じで。
十二話にてハンニャー登場予定で、鬼子の過去やらも掘り下げます。
マッドサイエンティストの心の鬼ってもしかして既にいたかな?いたら借りれば良かったか…。
乙
マッドサイエンティストタイプの鬼はけもの耳に取り憑かれた奴が居たけど、
この話には合わない設定だったなw
乙です。
柚子姐さんがなかなかいいキャラだね。
くるくると表情や動作がよく動きそうだし。
これまでの設定にわりと忠実で、そう派手でもないのに、なんだか作品に芯を感じるよ。
ぜひ最後までがんばってほしいな。
312 :
103:2011/02/06(日) 02:12:35 ID:vget+vt5
>>310 獣耳の方もいましたね〜。学術探求のため他を犠牲にするタイプはまだだったか…。
ヤイカガシに美味しい所持って行かせるのは、賛否両論あるだろう点も考えればギャグ落ちのが良かったかな?
>>311 有難うございます!芯があるというより終わりを意識してるので、一本道なだけかも知れませぬ…。
柚子姐さんはヤイカガシの仲間をあと三人(冬至・端午の節句・秋の彼岸)ってのが最初だったりしますが、
全年齢対象にするため、ストライクゾーン拡大目的もあったりしますです。
・小日本>幼女で子供好きの人対象
・鬼子>16〜22歳の一番好きな方が多そうな範囲
・ハンニャー(自作内の名前は若般又苗)>年上御姉さん、多少Sでしっかり者?
・柚子>お母さん系の包容力、天然ボケのお色気等担当?
…こんな感じでいたらどうだろうか?なんていう安直な考えであったり。
避難所の議論まとまるまで、もう少し待った方が良いのかなぁ。
鬼子の設定詰めた方が良いのも確かだし、自分のはただの暴走だったかも…。
でも、それで投下が止まるのも勿体無いねえ。
今までのパターンからすると、gdgdなまま結局決まらずじまいな可能性も高そうだし。
あくまで、一作品だという姿勢で最後まで走り抜くって選択肢もありだと思うよ。
314 :
103:2011/02/07(月) 01:39:32 ID:2IwGg5oQ
>>313 有難うございます。しかし…相当嫌われてるなぁw
まぁ、他の方々の気持ちも考えずにやってきた報いとして、しっかり受け止めます。
めげずに端くれ創作者としてボチボチ書いていきます。
最初から暫定的なものとしてスタートしたんだし、これだけ続けてSSスレ引っ張ってきたんだし
責められるような事は何もないと思う。
口の悪い人の言うことなんて気にするなよ。
つづき
「奥義、忘音坊『蝕』!」
日本狗の発動した術により、本成日本鬼子さんの頭髪を構成する数千匹もの竜が荒れ狂った。互いに牙を突き立て、縦糸と横糸のように絡み合い、連綿と続く錦を大地に生み出していた。
ところどころ心の鬼が入り乱れるその絵柄は、まさに百鬼夜行を連想させるものであった。
「姉御ォ!」
上空に飛び上がっていたヒワイドリが、収穫したての魚のようにヤイカガシの背中を掴んだまま叫んだ。
「ちくしょう、あのわんこめ許せんでヤンス!」
「待つでゲス、あっしらはまだ戦えるほど回復していないでゲス!」
「鬼払い、完了」
日本狗は背広からクシを取り出し、乱れた銀髪を整えていた。
彼が見つめるまだら模様の中に、竜を従えていたはずの鬼子さんの姿さえも覆い隠されている。
「鬼族の力を得られなかったのは残念ですが、いいでしょう。最終的に友好的か強制的かの違いになるだけでしょうからね。
……まあ、妖怪の国を欲している種族なら他に腐るほどいる」
彼は満月を見上げるような仕草で細い顎を上げ、真っ赤な天狗の面を被った。
途端に黒いスーツ姿からけむくじゃらの犬の姿になり、四つん這いの獣のように遥か遠くまで飛び跳ねると、そのまま暗闇のどこかに消えてしまった。
後には混乱する黒い竜たちだけが残された。
「どうなってんだ、中がさっぱり見えない!」
「ヒワイ、こうなったらあれだ!」
「おう、あれか!」
何やら合図を交わしあうと、ヤイカガシがヒワイドリの背中に飛び乗った。両手の柊を交差させ、気合を発しはじめた。
「はぁはぁはぁはぁはぁ……!」
なにやら怪しげな声を出してぶるぶる震えはじめたヤイカガシは、全身からオーラのようなものを発し始めた。
それはよほど重たいガスなのだろうか、ヒワイドリが白い翼を打ちながら上空を飛び回ると、たちまち辺り一面が同じオーラに満ち始めた。
布地を作っていた竜はぴたりと活動を止め、複雑に絡み合っていたそれらは本物の頭髪のようにか細くなり、さらりとほどけた。
中心の大きな繭も割れ、その中から真っ赤な着物の鬼子さんが現れた。
東西を問わず、目に見えない臭気は目に見えない鬼の力に対抗できると信仰されている。
その力によるものか、本成から生成の状態にまで戻された鬼子さんは、目立った外傷こそ残されていなかったが、ひどく青ざめていた。まるで二日酔いの症状でも現れたかのように頭を押えている。
「姉御ーっ!」
「姉御、大丈夫でヤンスかーっ!」
すぐに駆けつけてくるストーカーたちだったが、鬼子さんは首をぶるぶる振った。
「私なら大丈夫、私の中の鬼が、守って、くれたから……ああっ!」
黒竜が消え、露わになった焼け野原に鬼子さんは目をむいた。
鬼子さんはふらふらになりながら、そこに倒れている人影に駆け寄っていった。
「こにぽんっ」
そこには小日本が倒れていた。鬼子さんが抱きかかえると、うっすらと目を開いた。
「ヤイカ、ヒワイ、急いでお蕎麦持ってきて! ひどい、いったい誰がこんな事をっ」
「うぐ……おねーちゃん」
小日本の細腕が、鬼子さんの着物をぐっと掴んだ。
不思議なものでも見るように鬼子さんを見上げている。
「どうして……私、おねーちゃんを……だまして」
鬼子さんは何も答えずに、ふるふると首を振っていた。
「それは……」
「姉御ーっ」
「お蕎麦持ってきやしたぜーっ」
二匹がどこからか岡持ちごと調達してきた蕎麦を、鬼子さんはさっそく箸ですくってふーふーしていた。
その懸命な姿を見ながら、小日本は悲しみにかげった笑みをかえした。
「惜しかったな、妖怪の国も見たかったけど……妖狐の里を抜け出したとき、本当は私が日本狗についていったのは……ごふっ」
鬼子さんはわんこ蕎麦を小日本の口にぎゅうぎゅう詰め込んでいた。
「しっかりして、お蕎麦食べて! 元気になるから!」
小日本は口の中のそれを頑張って嚥下してから言葉を紡いだ。
「本当の、家族を、探したかったから……」
鬼子さんは次の蕎麦を手にしたまま固まってしまった。
「こに……」
小日本は口元に蕎麦の切れ端をくっつけ、まっすぐに鬼子を見つめていた。
「わたし、本当はずっと思っていたの……鬼子さんが、私の本当のおねーちゃんなんじゃ、ないかって……」
鬼子さんは再び言葉に出来ない悲しみを表情に浮かべた。小日本はわざとそれを見ようとしない。
「違うよね、そんな訳ない、だって、本当の私は全然違うもの。私は悪い子だし。髪の色だって、目の色だって……けど、もし、生まれ変わったら……」
言葉の途中で気を失いかけた小日本に、鬼子さんはさらに蕎麦を詰め込んだ。
「こにぽん、しっかりして!」
「姉御、無理でヤンス!」
「それ以上喋っちゃだめだ!」
「もし、生まれ変わったら……角も、髪の毛も、みんな、おねーちゃんと一緒が、いいな」
「目を開けて! 開けてってば! 開けないとヤイカガシの刑よ!」
ヤイカガシは一瞬息が詰まったように自分の胸に手を当てた。
「こにぽん、私は何があったってあなたの事を心配するわ、たとえあなたが何をしたって許すわ。
だってそう決めたもの。血が証になってくれなくとも、それが姉妹の証になってくれると思うの。
私の中にも鬼が巣くっていたの、自ら生み出した鬼がいたの。
戦乱の時期に、たくさんの鬼の子が妖狐の里に預けられた話を聞いて、私の妹もその一人だって。けれど、ほんとうの私の妹は、もう……」
ヤイカガシは上げた手をそのまま誰にも気づかれることなく動かし、さりげなく首筋をかいた。
小日本は最後の力を使って、微笑んだ表情を保っていた。
「ヤイカガシの刑……なんだか、凄そう……」
あたりには、どこからともなく降ってくる桜の花びらがふわふわと舞っていた。
その一片が小日本の頬に当たってはらりと落ちた。
「ごめん、お腹がいっぱいになったら、なんだか凄く眠いわ……私もう寝るね……」
数日後、静岡駅前もようやく復興の目処が立ち始めた。
鬼子さんは山奥で見つけた小屋に居を構え、一人静かに縁側に座っていた。
奥では全身に包帯をまいたガノタ青年がゴロゴロころがりつつ、般若の面を被った猫から逃げ惑っていた。
「やめろーっ、じゃれるなーっ」
「コラじっとしてな、治してやんないよ!」
「ぎゃあーっ……がくっ」
瓦礫の中に埋もれていたのを救出された青年は、なんの縁があってかこうして鬼子さんの家に転がり込んでいた。
こういうキャラは本当にしぶとく生き残るのが世の常である。
いつもやられ役のヤイカガシとヒワイドリが縁側の下に身をひそめ、般ニャーの暴れっぷりに戦々恐々していた。
「姉御、食べないんでヤスか、それ」
ヒワイドリが横目でじいっと見ているのは、鬼子さんの手の中の桃の実であった。
鬼子さんはそれをいつまでも飽きずに眺めていた。
「食いしん坊の姉御が珍しい。あっしが食べてもいいっすか?」
「バッカだなお前、プリン事件の事を忘れたのか」
「う……(説明しよう、プリン事件とは! とある妖怪が大事にとっておいたプリンをどこかの食いしん坊さんが横取りして怨みを買ってしまい、壮絶な死闘にまで発展した事件である!)」
「姉御はあの戦いで敵の考えに触発されたんだよ、プリンも桃も、熟した方が数段美味しいと考えるようになったんだ」
「な、なるほど、すげーなヤイカ天才かお前は」
どうでもいい雑談をする彼らの目の前に、般ニャーの鋭い爪が突き立てられた。二匹はぎゃっと声をあげてウサギのように退散した。
「まったく、こんな時ぐらいバカやらずにいられないのかね。食い物じゃないよ。そいつは魂だ」
般ニャーは鬼子さんの隣に猫らしく丸まり、退屈そうにあくびをした。
鬼子は桃を撫でながら薄く微笑んだ。
「ありがとう、般ニャー」
「にゃっはっは、わたしはこの面を貸しただけだよ。どんな厄介な子が生まれてくるか知らないし、うまく復活できるかどうかもわかんないからね。最悪の場合――戦う事になるかもしれない」
あの後、再びどこからともなく現れた般ニャーが、小日本に面をかぶせた。猫又の面である。
猫は複数の魂を持っており、死んだ後に猫又となって蘇るという。しかし全ての猫が蘇る訳でもなく、蘇っても前と同じ猫になるとは限らない。
それでも、鬼子さんはその魂をじっと見守っていた。
「うん、分かってる。……けど、いいの。私の妹だもの。
――どんなおっぱいでもいい――
元気に育ってくれれば、それで」
「まだ居たのかい、トリィ!」
血相を変えた般ニャーは、ヒワイドリを追いかけて勢いよく飛び出していった。
「あ、は、般ニャー……」
鬼子さんが呼び止めようとしたそのとき、手の中で桃が勢いよく光りはじめた。
「わっ、般ニャー、この子いきなり光りはじめたわっ、ど、ど、どうするのっ?」
しかし、般ニャーの姿はそこにない。人里はなれた屋敷には気を失ったガノタ青年がひとり伸びているだけであった。
鬼子さんはパニックになり、庭に駆け出していった。
「般ニャーっ! ヒワイ、ヤイカ、だ、誰かっ! 誰か来てーっ!」
やがて桃からひときわ強い光が放たれ、周囲は春のような汗ばむ陽気になった。
白い蝶がひらひらと目の前をかすめてゆき、一瞬幻かと鬼子さんは疑った。
どこからか鶯の声がし、何も無かった庭には緑が萌え、黄色い花がぽこぽこと芽吹き始めた。
「う、生まれるっ!? どうしたらいいのっ!? 誰か、妹が生まれるっ! 助けてっ!」
わたわたする鬼子さんの手の中で、桃が勢いよく二つに割れ、やがて春が生まれた。
終わり。想像以上に長くなった。
実はこにぽんデザイン募集期間中にこの終わり方をしたら面白いんじゃなかろうかという計算をしていたのだけど、色々あってそううまくはいかなかった。
修正したい……けどたぶんしません。前に見栄はったけど。編集の人ごめんなさい。
それよりも今は新しいものをどしどし書いていって、鬼子のパラレル世界とかコンテンツを充実させていったほうが賢いやりかただと思うのであります。
324 :
103:2011/02/08(火) 20:00:55 ID:1mlkfEwm
>>315 SSスレを引っ張ってなんていませんぜ…私は掻き乱してきただけですわ。
>>316 有難うございます。すぐ凹むのは現実でも悪い癖だ…。
>>317-319 いつもまとめて頂き、有難うございます。このスレもそろそろ容量越えか。
>>320-323 最後のシーンを鬼子自身による出産シーンと読み違えた私を殴って下さいw
小日本生誕の謎、色々考えてみてもダークな方面にしかならない自分はどうすれば…。
第十二話今から、ちょっと挑戦してみますね。途中で所用で一度消えるかも知れませんが…。
乙!そして大作をありがとうw
ほんとたくさんの世界があっていいよね、その方が絶対楽しい
ちょwwwwさりげにプリン事件の事が語られているw
この世界でもおきた事件なのかw
そういえば、似たようなパターンで小日本投票発表直前に眠っているこにを
確認しようとしてそこで話が終わるSSがあったっけ。
327 :
103:2011/02/08(火) 21:24:02 ID:1mlkfEwm
一応、今までの話は『HAKUMEI』がOPで、十二話以降は『BLOOD』がOPのイメージです。
…一話のみ登場以外のオリキャラは、出来るだけ柚子のみに留める予定だったけど、
鬼子の父に仮名を付けても大丈夫かなぁ?後々話が組み立てにくい気がしてきた…。
ヒラヒラと、赤い血文字の書かれた札を振りながら寝転がる鬼子。
鬼子『やっぱり、若般さんに相談しないと駄目かなぁ…』
先日の激戦(十一話、偽鬼子等)で見つけた『心の鬼』を留める札の処分を、
どうしたら良いのか解らなくなっていた鬼子は、師匠のもとへ行く事を決意した。
第十二話:鬼祓いの師匠、ハンニャー
鬼子と小日本は、札と一緒に、鰹節も持って隣町にある図書館へ向かった。
小日本『ネネさま…もうハンニャーと喧嘩したりはしない?』
鬼子『大丈夫…大丈夫よ、小日本』
図書館へ向かうと、正面玄関へは向かわず離れの古びた建物へ向かう。
「開封厳禁!関係者以外立ち入り禁止!」と書かれた横に、何故かインターホンがある。
ポーン…ポーン…。無機質な音が何度か響くと、相手へと繋がった。
???『はい、こちら古書課の若般です。どの様なご用件でしょうか?』
鬼子『え…と私は日本家の…』 言葉が上手く繋げない鬼子であったが、それを遮って小日本が話す。
小日本『ハンニャー!!遊びに来たよ!鰹節もあるよ〜!』
ハンニャー『小日本!じゃあ鬼子も来ているの?すぐ開けるわ、ちょっと待ってて』
中からカツカツカツと、乾いた足音が上がってくる。しばらく待っていると扉が開いた。
ハンニャー『…お帰り、鬼子。調子はどう?小日本も…元気そうね』
鬼子『はい、どうにか上手くやっております。小日本はあれからも何も問題は無く…』
小日本『あのね!ハンニャー!最近は私達温泉に住んでいるんだよ!とっても気持ち良いからハンニャーも来ると良いよ!』
ハンニャー『!!二人とも、普通の人と一緒に過ごせているの?まぁ話は中で聞くわ』
(若般さんのイメージはこちらの方が描かれた左上の姿で。性格は違いますが)
http://loda.jp/hinomotooniko2/?id=261.jpg 扉の内側は、すぐに階段となっていた。薄暗い明かりの間をゆっくりと降りていく。
階段の両側は、古びた書物が山のように並べられている。どれもが数十年では効かない位の歴史を感じさせる。
ハンニャー『じゃあ、この札にあなたの血が使われていたのね?相当厄介な事をしてくれたもんだわ…」
眉間に皺を寄せて言うと、ハンニャーは机の上から自分の作っている別の札を取り上げて見せた。
鬼子『やっぱり、人を操る程の霊力を持ってしまってるんですか…その、私の血のせいで』
ハンニャー『問題はこの札そのものより、あなたの分身として生み出されていた娘達が、
何人も亡くなっていたという事よ。心の鬼は、抱えたまま死ぬと実体を持った鬼や妖怪となる事も、
その想いが強かったり重なったりしていたなら、災いを呼ぶ強力な怨霊や神と呼ばれる者にすらなるのよ』
言い終わると、ハンニャーは小日本の方を見た。それに気づき、鬼子はそっと小日本を後に隠す。
鬼子『この子は、今も誰も傷つけてはいません。その様な者には決して…』
ハンニャー『大丈夫よ、鬼子。決して人を傷つけるものばかりが生まれるとは限らないわ。
あの時にはちゃんと話せなかったけど、人を守り助ける存在として生まれる者もいるのよ』
小日本『ネネさま…どうしたの?』
ハンニャー『大丈夫よ、小日本。小日本は鬼子と一緒に居るのが嬉しい?』
小日本『うん!ネネさまも、柚子さまも…とっても臭いけどヤイカガシも良い子で大好きだよ〜』
ハンニャー『そう…じゃあこれからも一緒に仲良く暮らしなさい。応援してるわ!』
小日本の頭をハンニャーが撫でると、小日本はニコニコと笑っている。
その様子を見て、鬼子はホッと胸を撫で下ろしている。
328 :
103:
ハンニャー『鬼子、あなたが普通に人と共に暮らせているとは思ってもいなかったわ。
今までに教えていた感情の抑え方や戦い方だけでなく、心の鬼を調整する力も教えられそうね』
鬼子に対して小さな地図を差し出す。
ハンニャー『あなたが感じ取っていたのは、ほぼ邪な人に害なす心の鬼よ。
二人が出て行ってから、ここに現代における鬼絵師とまで呼べそうな人を見つけたから、
一度会ってらっしゃいな。ただし、その子が抱えている『鬼』を無闇に消さない事』
鬼子『鬼絵師って…ここに封印してある様な、読むだけで心の鬼に囚われる作品を作る作家でしょう?
そんな方を放っておいても大丈夫なんですか?もし大事になったなら…』
ハンニャー『大丈夫よ。前に大事になってから私が教えておいたから。怖いなら一緒に行きましょう』
オドオドとする鬼子の横で、スルスルとハンニャーは猫又の姿へ戻り、普通の猫の大きさになる。
すぐに小日本が喉をゴロゴロと触ると、気持ち良さそうに一声上げて階段へ飛び乗った。
ハンニャー『さぁ、早めに行きましょう。あなたにとっても勉強になるはずだから…』
…一レスに収まらなかった。以上です。次はいよいよ(?)田中さん登場、もう公式で良いだろうとの意見も多数なので、
普通にストーリーへ組み込んでおりました。まぁ…今となってはそこまで考えなくて良かった状態ですけど。
もし基本設定(物語)が個々人が発表して、その中から選ぶ形になったら応募したいなぁ。誰かの創作の参考程度で良いから。