panneau氏、ありがとうございます。
このままじゃ寂しいと思うので、昨年自分が書いたまま放置してたSSを投下。
http://www16.atwiki.jp/hinomotooniko/pages/157.html の続き。
決して新作長編ではありませんのでご了承あれ。
(1/2)
寝そべると、くしゃりと鮮やかな葉っぱの絨毯が音を奏でた。
紅葉山に広がっていた朝霧の露だろうか、葉っぱはひんやりと冷たく、火照った全身の熱をそっと吸いとってくれる。
空は青い。雲一つなく青い。夏のように群青色をしているわけでも、冬のように白んでしまっているわけでもない。青を眺めて、僕は身体を宙に浮かすような気分に浸る。
とさり、と葉の潰れる音がする。
僕の隣で 鬼子おにこさんが横になって空を眺めていた。ん、と身体を伸ばしている姿がなんともいえない艶めかしさを薫らせる。
「はぁ、軽い運動のあとの伸びって、格別ですねえ」
気持ちよさそうにため息を漏らしているけれども、僕は違った。確かに気持ちはいいけども、とてもじゃないけど格別だなんて言える気分じゃない。
「二日間走り続けてあとの軽い運動、ね……」
運動不足の僕にとっては……いや、例えマラソンのランナーだとしてもさすがに四十時間耐久ランはキツイのではなかろうか?
もう息も絶え絶えで、吸っても吸っても酸素が結びついてくれない。
「ふひぁ〜」
鬼子さんに擦りつくように 小日本こひのもとが寝転がった。こちらは休む暇なく睡魔と戦っている。
おかしい。わけが分からない。
人外の存在にわけも何もないのだろうけど、とっくに合理化されてしまっている僕のような下級の神にとっては、人外な人体構造に困惑するばかりだった。
「はぁ……はぁ……」
と、僕と同じように息切れして肺をひゅーひゅーと鳴らす存在がいた。
「か、観念したか、姉ちゃんよぉ……」
ヒワイドリ君だった。
そう、こいつのせいで……こいつらのせいで、僕らは延々と走り続けられたのだ。
逃げに逃げ続けた結果、ヒワイドリ一族を少しずつ脱落させることが出来たものの、ヒワイドリ君だけは僕らの逃避行に――鬼子さんのお尻にしっかりとくっついてきたのであった。
「……逃げようと思えばあと二日は逃げられますけどね」
「マジかよ……」
マジかよ、はこっちのセリフだ。これ以上走ったら天ツ神の住まう世界へ引っ越せざるをえなくなる。
「でも、あなたはヤイカガシさんとも仲が良さそうですし、もし宜しければご一緒に旅をしませんか?」
その一声に、ヒワイドリ君に圧し掛かる疲労の荷は全て吹き飛んでしまったようだ。
「鬼子ルート来たぜええ!!」
何を言っているんだ、この卑猥な鳥は。
「宜しくね! 鳥さん!」
小日本がひょこりと起き上がり、結んだ髪を揺らした。
「おうよ! っしゃあ、早速だが乳の話を――」
白鳥は、即座にその小さな胸を見つめる。
「――十年後、しようじゃないか」
「じゅーねんご?」
「ああいや、なんでもねえ、なんでもねえんだ」
「むぅ、きかせてくれないといじわるするよ!」
ぱっと桜を散らして立ち上がった小さな女の子は、てこてことヒワイドリ君を追いかけはじめた。
幼い子に優しいのか、胸が小さな子にはそのような雑言は慎むのだろう。
きっと、小日本とヒワイドリ君はいいコンビを組むことになるんだろうなと、一人心の中で呟いたのだった。