【BL】ボーイズラブ・やおい創作総合【801】

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50Pride −君の誇り−
駈け出しの社会人のお兄さん×男娼の少年という組み合わせでこれから投下
後半、少しだけえっちいかも
51Pride −君の誇り−:2010/10/03(日) 18:19:14 ID:OMip+oDK
「ああ、貴方が今日、俺を買った人なのか。 じゃ、とっとと初めようか。
俺、今日は、終わったら、ここに泊らないで、家に帰りたい気分なんだ」

俺の目の前に立っていた少年は、そう言って微笑むと、自らが着ていたTシャツを何の躊躇いも無いかの
ように、あっさりと脱ぎ始めた。
そして、そのTシャツを、この部屋のでかいベッドの上に、脱ぎ棄てるようにして放り投げた。
既に上半身に何も身につけてはいない、その少年の艶やかな肢体は、同性の俺からみても、端正で、美し
いという形容詞のほかに思いつく言葉は無かった。
17,8歳位の少年にとっては、理想的とも言える彼の肉体は、しなやかかつ、程良い筋肉を備えた大型の
美しい猫科の獣を思わせる雰囲気を漂わせていた。
また、少年の短く整えられたプラチナブロンドの髪と、少しばかり怜悧な印象を与えているアイスブルーの瞳
の整った面立ちは、正に美少年と呼ぶに相応しい容姿だと思った。
52Pride −君の誇り−:2010/10/03(日) 18:23:11 ID:OMip+oDK
「ちょっと、待ってくれ! 俺は、君を呼んだ覚えなんかないんだ!」

俺はその少年に慌てながら声をかけた。後で思うと、その時の俺の様子は、きっと滑稽だったに違いない。
だが、海外出張で訪れたその宿泊先で、仕事を終えて自らの泊っている部屋に帰ってきたら、見ず知らず
の美少年がいて、しかもいきなり服を脱ぎ始めたら、きっと誰だって驚くと思う。

そう、俺と彼が出会ったのは、正にそういう状況だったのだ。
俺は今年、25歳になったばかりだが、父の稼業を継ぐ立場にあるため、今回、通訳として、この海外での
商談に同行していた。
仕事柄、宿泊していたホテルのランクは、いつもの通り、申し分のないものだ。
それに、専門用語が飛び交う中で通訳をこなしたり、相手先や周りの連中に気を遣ったりと、それなりに多
忙なスケジュールを終えて、これからようやく一息つけると思いながら、宿泊先のこの部屋に帰ってきた矢
先の出来事だったのだから、驚くなと言われても無理がある。
53Pride −君の誇り−:2010/10/03(日) 18:24:45 ID:OMip+oDK
「えっ、あんたが今夜の俺の相手じゃないの?」

少年の方も俺のその言葉に驚いたように、上半身裸のままで、俺を見つめていた。
彼はそれから、ジーパンのポケットに片手を突っ込んで携帯を取り出すと、何処からかのメールらしき画面
を確認してから俺に言った。

「ああ、ミスター、申し訳ない、確かに俺の相手は、貴方じゃなかったみたいだ。
どうやら、連絡ミスみたいだね。俺の代わりにはもう、他の奴が行ってるってさ」

彼は俺に対して、少し申し訳無さそうな表情で微笑んだ。
それから、ついさっき、自らが脱ぎ捨てたTシャツを拾って、手早く着ると、彼はこの部屋から早々に立ち去
ろうとしていた。
彼はベッドルームの扉の前に立っていた俺とすれ違うようにして、外の廊下へと、つながる扉の方へと足早
に歩いていく。
54Pride −君の誇り−:2010/10/03(日) 18:26:58 ID:OMip+oDK
「待てよ!」

彼が俺とすれ違ったその瞬間、俺は、彼の片方の肩を掴むようにして、呼び止めていた。
後から思い返しても、その時、どうして彼を呼び止めたのか、明確な理由は思い出せない。
とにかく、彼をそのまま帰すのは嫌だったからだとしか言いようが無い。
彼が俺に肩を掴まれて振り向いた瞬間、彼のアイスブルーの瞳と、俺の黒い瞳の視線が間近で重なり合う
よう至近距離の中で、お互いを見つめ合うような格好になった。

「……何?」

そんな状況にも関わらず、彼は冷静にアイスブルーの瞳で射るように、俺を見つめながらそう言った。

「君は……自らの身体を売る仕事をしているのか」
「そうだよ」

後から思えば、誰もが呆れたくなるような俺のその質問に対して、彼は自らの瞳に宿る強い意思と誇りを崩
すことなく、端的にそう答えた。
55Pride −君の誇り−:2010/10/03(日) 18:28:57 ID:OMip+oDK
「……なんでそんな……」

彼のそのあっさりとした返答に、俺は思わず小さな声で、母国語でそうつぶやいた。
彼のような容姿と身なりもそれなりに整った少年が、そんなことを生業にしているとは、にわかには信じがた
かったからだ。
そうなのだ。彼は、ホテルのコンシェルジュがこの部屋に通しただけあって、ラフな格好をしてはいたが、決し
て、薄汚れた身なりなどでは無かった。

「なんでって、決まってるだろう。 
俺と、俺にとって、大切なものを守りたいからだよ。 俺は、この場所でこうして生きていく為に、してるんだ。
あんたこそ、何の為に働いてるんだ?」

ほんの少しの間だが、驚きを隠せないと言った表情をしていた俺に対して、彼は射るような視線で俺を見つ
めたまま、そう言った。
彼は、俺が小さな声でつぶやいていた、その言葉の意図を読み取っていたようだった。
いかにもヤングエグゼクティブらしいといった感じに見せるために丁度良いといった位には、仕立ての良いビ
ジネススーツを着てはいるものの、黒髪黒目で年齢よりも幾分幼く見える、良家のご令息といった風貌の俺
に対し、彼は、少し意地の悪い問いかけをしている子供のような表情で、ほん一瞬だけ、微笑んだ。
それから、自ら肩に乗ったままになっていた、俺の手を振り払うようにして退けると、再び廊下へとつながる
扉の方へと歩いていこうとする。
56Pride −君の誇り−:2010/10/03(日) 18:36:54 ID:OMip+oDK
「おい、待てよ!」
「何だよ!」

彼は、今度は、彼の片手を取るようにして、引きとめようとしていた俺の手を振り払うようにして、俺の方へと
振り返った。

「俺が……俺が、今夜、君を買うって言ったら、君はここに、このまま居るのか」

彼は、俺が馬鹿正直な気持ちで言ったその言葉に対して、一瞬驚いたような表情をしていた。
だが、彼は、その場で短く息を吸い込みながら、一呼吸置くと、先程と同じように冷静な表情を取り戻し、俺
に対して、挑むような視線を投げかけたまま言った。

「そうだよ。ただし、俺を一晩買うには、
あんたが今、泊まっているこの部屋の代金の倍は、積んでもらわないとならないけどね」
57Pride −君の誇り−:2010/10/03(日) 18:40:00 ID:OMip+oDK
「いいよ、君を買おう。 とりあえず、これは手付け金だ」

俺は、彼の挑むような視線を受け止めながら、自分のスーツの内ポケットに入れたままにしていた、札入れ
に入っている札束―その場に持ち合わせていた現金の全てに等しい額を彼の手元へと差し出した。
彼は再び驚いたような表情で、その札束を見つめてから、俺の顔へと再び視線を上げた。

「あんた……本気なのか? ……いいよ、分かった。あんたに買われてやるよ、来な!」

俺をほんの暫くの間、見つめてから、彼はそう言うと、手元に差し出された札束を受け取ることも無く、きび
すを返すように、この部屋のベッドルームへと向かって歩いて行った。
彼が俺の側を通り過ぎていく、その様子を振り返るようにして、俺はベッドルームへと足を向けた。

そこには、先程と同じく、俺が一人で寝るには、少し寂しく感じる位に立派な大きさのクイーンサイズのベッド
がある。
そして、そのベッド端には、そこ座りながら、先程と同じように射るような視線で俺を見る少年の姿があった。
58Pride −君の誇り−:2010/10/03(日) 18:42:56 ID:OMip+oDK
「あんたは、俺を買ったんだ。俺を好きにしていい」

少年は、自らの側に立ち止って、そのまま一歩も動かずにいた俺を見上げて、先程よりも熱を帯びた、ほん
の少しだけ、潤んでいるかのようにも見える瞳で俺を見つめながら、そう言った。
恐らく少年は、今まで毎晩のようにして、数多くの男達から受けてきた、あの行為を、これから俺がすぐにで
も施し始めるのだと思っていたのだろう。
だが、彼の瞳が潤んでいるその理由は、その先に在る快楽を期待してのものなどでは決して無く、自らの誇
りを犠牲にしてまでも、大切なものを護るのだと言っていた、その決意と覚悟の表れのようだと、俺は思って
いた。

「金はいいのか?」
「あんたを信用して後払いにしてやるよ。さあ、俺を抱くといい」

俺の問いかけ対して、彼はそう言うと、俺の腰の辺りに手を伸ばし、俺の身体を自らの方へと手繰り寄せる
ように引き寄せる。
それから、彼は俺の腕を取って、そのまま自らの身体の方へと引いた。
59Pride −君の誇り−:2010/10/03(日) 18:45:06 ID:OMip+oDK
それは、恐らく、俺がベッドの上へと倒れ込み、彼の上へと、そのまま覆い被さるような体勢になるようにと、
仕向けていく為の所作なのだろう。
彼は同時に、もう片方の手を俺の頬へとあてて、そのまま顎の辺りをなぞるようにした後で、俺の胸元のネ
クタイを軽く引きながら、彼自身の身体をベッドに預けるように、ゆっくりと後ろへと倒してゆく。
彼が自分自身の身体を後ろに倒していくのに合わせて、彼にネクタイを引っ張られたままの俺は、自然と彼
に覆い被さるような姿勢になっていった。
俺の身体の動きにタイミングを合わせるようにして、自らの身体をゆっくりと後ろへと倒してゆくその様は、本
当に小慣れた男娼の仕草のように見えたが、よく見ると、俺のネクタイに添えられたその指先は、少し震え
ていた。

「なあ、無理してそんなことしなくていいよ。それより、君の名前を教えてくれないか」

俺は自らの片方の手を優しく添えるようにして、彼の震える手首に添えると、その腕をシーツの上へと降ろ
しながら、そう言った。
彼は、抵抗するでもなく、無言のままで、暫くその体勢のまま、俺の顔を見つめていた。
まあ、体躯では、かろうじて俺の方が勝っていたから、あまり抵抗する気になれなかったのかもしれないが。
60Pride −君の誇り−:2010/10/03(日) 18:50:56 ID:OMip+oDK
「マリア」

小さな声でそう言った彼の言葉を聞いて、俺は彼に問いかけるように、再びその言葉を繰り返した。

「……マリア?」
「俺の男娼としての渾名だよ、お兄さん」

彼は、俺を見上げるようにして、見つめたまま、小さく微笑みながらそう言った。
その言葉を聞いて、今度は、俺の方が一瞬無言になった。
男娼にして、慈悲深き聖母の名を渾名に戴くだなんて、滑稽な話だとは思うが、この少年が、その美しい容
姿と躯で、数多くの男達に対して、これまでにもずっと、慈悲にも勝る快楽を与えてきたのだと考えれば、逆
にこれ程相応しい渾名は、無いようにも思えた。

「俺の名前は、それで呼んでくれればいいよ。で、あんたの名前は何ていうの?」
「俺は、聖人って言うんだ」
「ふうん、マサト、貴方は日本人なんだろ?」
61Pride −君の誇り−:2010/10/03(日) 19:09:06 ID:OMip+oDK
彼のその言葉に俺は、再び驚いて、彼を見つめた。

「どうしてそんなこと、解るんだ」
「こんなことをやっていても、昼間はそれなりの教育を受けてるんだよ。お兄さん」

俺に組み敷かれたその体勢のまま、彼はにっこりと笑いながら言った。

「なあ、マリア、君の本名を教えてくれないか」

「それは俺が、貴方を本当に気に入ったら教えてやるよ、お兄さん。 
さ、早く本気で俺を抱いてくれないかな。
俺はね、今日は早めに仕事を終わらせて、一度家に帰りたいんだ。 
兄さん、あんたは割と綺麗な顔立ちと身なりをしているし、俺の仕事の中では、これは楽な方だから。
あんたは、俺に対して、何か気兼ねしてるようだけど、俺を抱くのに躊躇う必要なんか全く無いんだよ」
62Pride −君の誇り−:2010/10/03(日) 19:10:26 ID:OMip+oDK
彼の本当の名前を聞こうとしたことが、よほど気に食わなかったのか、彼は俺を再び挑発的な鋭い視線で
見つめてそう言った。
それに対して、俺の方も彼を挑発するような口ぶりで返事を返す。

「それは無理だな……俺は、今夜、君に、ここに居てもらうっていう条件で、君を買ったつもりなんだよ。
だから、今夜は君を家に返すつもりは無いな」
「……何、馬鹿なこと言って……」

彼は俺のその言葉に驚いたような、半ば呆れたような表情を見せた。
ただ、彼は、俺の言葉を聞いて、少し苛々した気分になったらしく、俺のネクタイを先程よりも少し、強め引っ
張り、俺の顔を自らの顔の前へと寄せるようにする。
彼が相変わらず俺に組み敷かれている状況には変わりはないので、俺達は、再び互いを強く見つめ合うよ
うな格好になった。
彼の瞳からの強い視線に構うことなく、俺は真っ直ぐに彼を見つめながら、話を続けた。
63Pride −君の誇り−:2010/10/03(日) 19:12:28 ID:OMip+oDK
「それに、俺は、君を抱くつもりは無いんだ。 君も俺に抱かれたいなんて、本気で思っていないだろう?
俺が君を一生涯、買い取るから。君が心無く誰かに抱かれる事なんて、もう無くなるんだ。俺は、本気だよ」

「……えっ……!」

その驚きを現わす小さな声を発した瞬間、彼は、俺のネクタイを引っ張っていた手の力を自然と抜いた。
彼は、本気で驚きを隠せないといった表情で俺を見つめている。
俺の言葉を冗談だとでも受け取ったのだろうか?
でも、その時、口にしていた俺の言葉に、嘘偽りは全く無かった。
そうなのだ。俺には彼を抱く気など元から全く無かった。
ただ、先程、初めて彼の姿を目にしてから、無意識のうちに、彼を何とかこの境遇から救い出したいと思っ
ていただけだ。

「……っ! そんなの……嘘だ!!」
64Pride −君の誇り−:2010/10/03(日) 19:18:38 ID:OMip+oDK
彼は、俺を真下から見上げた、その姿勢のまま、信じられないといった表情で、声を上げた。
無理もない。
きっと、今までにも、客である男達と身体を重ねる度に、甘い睦言を囁かれてきたのだ。
そして、それが現実になることなど、絶対に無いと、自らに言い聞かせてきたのだろうから。
今、急に俺の言葉を信じろと言うのには無理がある。
それでも、俺は自分の言葉が嘘偽りでは無いことを信じて欲しかった。
俺は、もう一度、自らの正直な気持ちを心の底から込めるようにして、彼にその言葉を告げる。

「俺は、本気だよ」
「嘘だ……嘘だよ……こんなの嫌だ……」

俺のその短い言葉を聞いた後、彼の瞳からは、自然と涙が零れ落ち始めていた。
それは、きっと無意識に零れ落ちたものなのだろう。
彼は、その涙を拭う事なく、俺を見上げるようにして見つめながら、泣いていた。
こんな風に優しくされてから、その掌を返されるような事があるのなら、
それは、心が悲鳴を上げる程に痛い。
だから自分に構うなと。
彼の瞳は、俺にそう告げているように思えた。
65Pride −君の誇り−:2010/10/03(日) 19:20:05 ID:OMip+oDK
俺は、自らの下に組み敷いたままの少年の乱れた金色の髪を額から除けるようにしてそっと撫でた。

「……っ」

たったそれだけのことで、少年の背中は、ほんの少し怯えるように、震えて撥ねた。
俺は、そんな彼を見つめながら、自らの指で、その目尻から零れる涙を掬う。
その場で安心しろと言っても無理なのは、十分に解っていたが、少しでも彼に安心して欲しかった。

「どうして? 嘘じゃないから。君はもう、泣かなくて良いんだ。頼むから……もう泣くな」

そう言った俺は、自らの心に従うように、彼の整った曲線を描く額へと、そのまま、そっと口付けていた。
その俺の口付けに、彼の背中が再び小さく震えて撥ねた。

「……や……マサト……頼むから……俺にそんなに風に優しくしないで……」

彼は、俺からの視線を避けるようにしながら横を向くと、未だに涙に泣き濡れた横顔を俺に晒しながら、小さ
な、その場から消え入りそうな声でそう言った。
66Pride −君の誇り−:2010/10/03(日) 19:21:08 ID:OMip+oDK
「俺が君を気に入ってしていることだから、もう、気にするな」
「……っ、あ……」

俺は、彼に対して言葉さえならない、この自分自身の内側から強く湧き上がってくるかのような、情熱的とさ
え言える親愛の情にも似た気持ちを行動で示したくて、彼のしなやかな躯を抱えるようにして抱きしめた。
それから、俺は、自分の身体と彼の身体の隙間が無くなるかのように、互いの身体を重ね合わせ、先程よ
りも強く抱きしめるようにしてから、彼の額へともう一度、口付けを贈った。
先程、彼を本気で抱く気など全く無いと言っていた筈で、事実そんな風な気持ちは全く無かった筈なのに、
今、俺は、彼に対して何故だかそうせずにはいられなかった。

そんな俺の気持ちを見透かしたのか、俺の腕の中にいた少年は自らの両腕を俺の首筋の辺りへとまわし
て、今度は、彼、自らが俺を強く抱くようにして、そのしなやかな身体を俺の方へと寄せた。

「……頼む……から……俺を抱いて……」

彼は俺の耳元で、まるで小さな子供が大切な願い事をするように囁いた。
小さな声に魅かれるようにして、俺が再び彼を見つめると、そこには、その瞳に真摯な光を宿す、少年の姿
が在った。

そして俺は、彼の真摯な蒼い瞳を見つめながら―その柔らかな唇へと口付けた。

【END】
67Pride −君の誇り−:2010/10/03(日) 19:22:09 ID:OMip+oDK
−The Sequel−

その夜、結局、俺は、そのまま彼を抱くことになった。
あの出来事からは、もう既に何年かが経ったが、今も変わらず聖母は俺の傍で微笑んでいる。
68Pride −君の誇り−:2010/10/03(日) 19:26:39 ID:OMip+oDK
投下終了

後半だだ甘な気もしますが、楽しんでいただければ良いかなと
69創る名無しに見る名無し:2010/10/03(日) 19:38:05 ID:OMip+oDK
あと、今までの作品を創作発表板@wikiの保管庫に収録してくださった方がいるようなので、
一応、ご案内

【BL】ボーイズラブ・やおい創作総合【801】
作品まとめページ
http://www26.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/898.html

収録してくださった方、乙でした。
これからもどうぞよろしくお願いします。
70創る名無しに見る名無し:2010/10/03(日) 23:24:21 ID:B/AnCpZm
>>68 
おぉ! 投下乙です!!
読み応えのあるSSが続けて投下されるとは嬉しい限りだw
一見すると少年の方が強気で、大人っぽいとこが好きだなw
またの投下をお待ちしてます!

まとめページの方にも収録してきました
ご報告まで
71創る名無しに見る名無し:2010/10/04(月) 23:36:53 ID:arpMsPnI
>>68
乙です!
ここのところ定期的に投下があってなんか嬉しいなw
72−英国に吹く風 U−:2010/10/09(土) 23:12:25 ID:6FFnrJG6
>>11の続きを6レス程投下
前回とは逆の相手方視点でちょっと短めのお話です。
73−英国に吹く風 U− act.1:2010/10/09(土) 23:14:23 ID:6FFnrJG6
 ずっと。
 弟分のように思っていたのだ。
 それが何時から、それ以上の感情を伴って見るようになったのか、はっきりとは覚えていない。

 だが、一見冷たそうに見える、プラチナシルバーの短く整えられた髪とアイスブルーの瞳の同室の少年−
ヴィットーレ・ディ・イエッリ−彼がその容姿に似合わぬ、屈託のない笑顔で微笑む度に、魅かれていって
いた気はする。

 あいつは、そういう意味では、本当に天然なのだ。自分の何気ない表情や仕草が一体どれ程の人々を惹
きつけているのかなんて、全く自覚していないのだろう。
74−英国に吹く風 U− act.2:2010/10/09(土) 23:16:27 ID:6FFnrJG6
「……んっ、あぁっ……トォガ……や、ぁ……」

 これだよ。
 奴は先程も俺の隣のベッドで、こんなにも悩ましげな寝言をあげて、俺の名を呼びやがった。
 その日、元々眠りの浅かった俺は、その声に呼び覚まされるように、目をあけた。
 そして、それは、俺が眠り初めてから、まだ余り時間が経っていないうちの出来事だったので、ある意味当
然のように、まだ辺りは暗く、夜の闇に包まれたままだった。
 今は、ちょうど、真夜中を少し過ぎた位の時間帯のようだ。
 
 全くどんな夢を見てるんだか……。
 俺はそう思いながら、自分自身の長くて、鬱陶しい長い髪をかきあげながら、ベッドから上半身を起こし
て、奴が眠るベッドの方へと振り返る。
75−英国に吹く風 U− act.3:2010/10/09(土) 23:18:17 ID:6FFnrJG6
 あー、案の定、ブランケットが奴の身体の上に掛ってないよ……俺にブランケットを引き剥がされた夢でも
見てるんだろうか、こいつは……
 奴のそんな姿を見た俺は、ため息をつきながら、自分のベッドから静かに立ち上がって、奴のベッドの傍
へと歩いて行き、その一見華奢に見える奴の身体へと、そっとブランケットをかけてやる。

 「……んう……やぁ……ん……あぁっ、トーガぁ……」

 俺がブランケットをかけて、奴の顔を覗き込むようにした瞬間、見ているこちらの方が切なくなるような、ま
るで、情事に喘ぐ美少年といった風な表情をしながら、奴は小さな声で、そう呟いた。
 もちろん、それも寝言だし、表情だって、寝苦しさ故のものだろう。
 俺は、多少、呆れるような気持ちを伴いながら、再びため息をついた。
76−英国に吹く風 U− act.4:2010/10/09(土) 23:22:29 ID:6FFnrJG6
 それから、再び、奴の整った顔へと自らの顔を寄せて、奴の額へと軽くキスをしてから、その場を離れる
と、近くの窓をほんの少しだけ開けて、冷たい夜の空気が入るようにした。
 窓を開けた途端に、少しずつ入って来る秋の気配を伴った、穏やかな風が、俺の長いプラチナゴールド
の髪を掬っていく。
 奴の所為で、ほんの少しだけ熱を帯び始めていた自分の身体とっても、その冷たい風は心地良かった。

 ここは、全寮制の男子校の寮棟の一室なので、今、俺が、気分を変るために外に行きたくとも、基本的
にこの部屋の外に出ていくことは難しい。
 この真夜中の時間帯でも、シャワー室やラウンジなど、自室以外の場所も寮内であれば、基本的出入り
自由なのだが、こんな真夜中なには、それこそ、世間一般で言う、不謹慎な逢瀬を重ねている生徒も幾人
かはいるということを識ってはいるので、そういう輩に遭遇したくないだけの話だが。

 世間一般では、そんな色恋を絡めた逢瀬を男同士で、なんて、不謹慎だと思うのだろうが、そういう性的
な代償行為を欲する傾向が強い年頃にある若者−しかも男だけを集めて長いこと寮生活を送るなかで、そ
うなるなと言われも、決して自己擁護する訳ではないが、少し無理があると思う。
77−英国に吹く風 U− act.5:2010/10/09(土) 23:25:39 ID:6FFnrJG6
 全く、俺が同室じゃなかったら、お前なんか、すぐにそういう輩に手を付けられていたと思うぞ。
 俺は、そう思いながら、先程とは変わって、もう既に、安らかな寝息を立て始めていたヴィーの方へと振り
返った。
 まあ、こいつは、見た目よりも相当強いので、そう簡単には、手籠にされたりはしないと思うけど。

 本当に……どうしてこんな奴を好きになっちゃったんだか……。
 それこそ天使のような微笑みを浮かべて眠る奴を見ながら俺は、そう独りごちた。
 
 俺は外の空気を入れるために、少しだけ開けていた窓を閉めると、自分のベッドへと戻って、腰を下ろし
てから、ベッドサイドテーブルに置きっぱなしにしていたミネラルウォータを一口飲んだ。
 それから、手近に置いてあった携帯音楽プレーヤーを手にして、イヤホンを耳にすると、お気に入りの曲を
かけながら、横になる。
 もちろん、奴の悩ましい声をこれ以上、聞かなくても済むようにするためだ。
78−英国に吹く風 U− act.6:2010/10/09(土) 23:27:37 ID:6FFnrJG6
 「まあ、何にせよ、俺が護れるうちは、必ず、お前を護ってやるよ」

 今は静かな寝息を立てているであろう、本来の護衛対象ではない、その少年の背中に向かって、俺は小
さな声でそう告げた。

 それは、唯一人、俺のみが知る、奴への告白になるのだろう。

【END】
79−英国に吹く風 U− act.6:2010/10/09(土) 23:48:25 ID:6FFnrJG6
セリフだけは、ちょっと頑張ってみましたw
しかし、相手方の方が以外と冷静で書くのが難しかったよ……
80創る名無しに見る名無し:2010/10/10(日) 13:14:05 ID:5D2CV6QR
>>79
続きキター!!
ヴィーが可愛いw 可愛いよ、ヴィットーレ!!

投下乙でした!
またの投下を楽しみにしてるよw
81創る名無しに見る名無し:2010/10/12(火) 08:53:11 ID:pTVTwoAB
    ___
   ,;f     ヽ
  i:         i
  |         |
  |        |  ///;ト,
  |    ^  ^ ) ////゙l゙l;
  (.  >ノ(、_, )ヽ、} l   .i .! |
  ,,∧ヽ !-=ニ=- | │   | .|
/\..\\`ニニ´ !, {   .ノ.ノ
/  \ \ ̄ ̄ ̄../   / .
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82慟哭:2010/10/13(水) 00:22:24 ID:ohWDNPbq
思い付きで投下
ひたすら暗くてごめん
短いくせに鬱属性高いです
83慟哭 1/2:2010/10/13(水) 00:23:52 ID:ohWDNPbq
「ああぁあぁぁあ!!」

ただ、叫ぶことしかできない
君が一体何をしたと言うのだ

互いが同じ性だという
ただ、それだけで

僕が君を
君が僕を

互いに心通わせ
互いに愛おしく思い

ただ、一度、愛しあったという
ただ、それだけで
84慟哭 2/2:2010/10/13(水) 00:25:38 ID:ohWDNPbq
永遠に君に会えなくなるなんて
君を永遠に失うなんて

この怒りと哀しみを
抱えたまま、僕は何処へ

何処へ

僕は、今、ただ、泣き叫ぶ
君の面影を求めて

−end−
85慟哭 :2010/10/13(水) 00:31:31 ID:ohWDNPbq
SSにするにはあまりにも悲惨になっちゃったので、
とりあえずネタとして晒そうかと
本当にすみません……
86創る名無しに見る名無し:2010/10/13(水) 21:58:02 ID:h8wAUE7w
四谷シモーヌのオウムネタ(青山弁護士・早川×上祐マイトレーヤ)を
上祐本人に見せる企画をニュースサイトがやってるw
ttp://www.tanteifile.com/diary/2010/10/11_01/

動画もあるwwwやたら出版社にこだわる上祐wwwwwww
ttp://www.youtube.com/watch?v=EOmURXkBGZo

確かに同人誌じゃないから本人に見せるのはアリっちゃーアリなのかね?w
シモーヌの同人は昔からアレなんでまーいーとして
こんなトンデモ本を商業出版した太田出版がトチ狂ってるよなwww
87創る名無しに見る名無し:2010/10/14(木) 16:33:15 ID:vDv23KpB
88創る名無しに見る名無し:2010/10/14(木) 22:30:47 ID:MdQ+XcAx
>>85
投下乙です!
このスレは、シリアスでもばっちり受け止めるから大丈夫!
SSもぜひぜひ投下しちゃってくださいw
89−英国に吹く風 V−:2010/10/17(日) 06:04:47 ID:gnULuWmu
>>73の続き?を投下
今度は、護衛対象の御方に新たな同室の友人ができてからのお話です。
おい、話がちょっと先に進みすぎだろっ!とは思いますがご容赦ください。
90−英国に吹く風 V− act.1 :2010/10/17(日) 06:07:29 ID:gnULuWmu
「ごめん……俺は……君のことが好きなんだ……」

 僕の隣に座っていた少年は、その瞳から不意に涙を零しながらそう言った。
 彼は何時から、僕に対して、そんな気持ちを傾けてくれていたのだろうか。
 今、この瞬間まで、僕はその想いに全くと言って良い程、気付いていなかった。
 それでも、彼が今までずっと、その想いを伏せたままで、僕に対しても、誰に対しても、分け隔て無く、そ
れこそ、常に普通の友人と一緒にいる時と何ら変わりが無いかのように、接してくれていたことを思うと、胸
が痛くて、張り裂けそうになった。

 自分がその時、どんな表情をしていたのか、良くは覚えていない。
 ただ、僕は、つい先程、彼が僕にしてくれたのと同じように、彼の頬にそっと手を添えると、彼に対して、自
らキスを贈っていた。

「ミカ……エル……僕も……君が好きだよ」

 僕は彼の唇へと短くキスをした後で、やっとの思いで、自らの気持ちを小さな声で彼に伝えていた。
 そうなのだ。
 僕の方こそ、まるで宗教画の天使のようだと形容するに相応しい容姿を持つ、この金髪碧眼の少年の
笑顔に出会ってから、もうずっと、普通の友人に対する想い以上に好きだという感情を抱いてきたのだ。
 それは、当然、僕が一方的に持っている感情だし、決して恋愛感情にまでは至らないものだと、自らに言
い聞かせてきた、いわば叶わぬ想いだと思っていたものなのに。
91−英国に吹く風 V− act.2 :2010/10/17(日) 06:11:02 ID:gnULuWmu
 僕が小さな声でようやく口にした、その言葉を聞いてから、彼は、一瞬、驚いたような表情のままで、僕を
見つめていた。
 それから、彼は、ほんの少しだけ蒼みがかった色を残す僕の黒い瞳に視線を合わせるようにして、相対
する僕の表情と、その言葉には嘘偽りが無いのだということを認識すると、本当にほっとしたような表情を
見せた。
 そして、僕が好きだと言ったその言葉よりも、嬉しい事なんて、他には無いのだとでも言いたげな表情で、
僕に向かって、いつものように屈託のない笑顔で微笑んだ。
 僕は、彼のその優しい笑顔に対して、どう振舞って良いのか解らなくなった。
 おまけに、彼とそのまま目線を合わせているのが、気恥ずかしくなった僕は、不意に自らの瞳を閉じた。

「……っ!」

 それを見計らっていたかのように、彼は先程、初めて僕に対してキスをした時と同じように、僕の頬へとそ
っと手を添える。
 僕は、彼の暖かな掌が僕の頬へと触れたれだけで、その場から全くと言っていい程、動くことができなくな
っていた。
 そして、僕がその場から動くことができないと思っていた、その瞬間、上手くタイミングを合せるようにし
て、彼は僕の唇へと優しく口付けた。

「……っあ!!」

 僕は瞳を閉じたまま、抵抗らしい抵抗をみせることも無く、彼の口付けをそのまま受け入れていた。
その口付けは、徐々に、先程の軽く触れ合うようなキスとは異なる、大人同士の熱を帯びた抱擁へと繋
がる、互いの吐息さえも深く交わるものへと変わっていく。
92−英国に吹く風 V− act.3 :2010/10/17(日) 06:15:24 ID:gnULuWmu
「……ん、あぁっ!!」

 彼が僕の唇を一度、解放した瞬間、僕は自分でも恥ずかしくなるような、小さな悲鳴にも似た声をあげな
がら、無意識のうちに彼の肩へとしがみつくと、自らの身体を彼の方に預けていた。
 僕のそんな様子に構う事無く、彼は僕の制服のネクタイを緩めると、シャツのボタンを2つ程外し、その所
為で露わになった僕の首筋へとキスを降ろす。

「……ふ、あぁっ!!」

 生まれて初めてそんなことをされた僕は、訳も解らず再び小さな声を上げた。
 だた、彼の唇が触れる度に、触れられたその部分が熱い。
 まるで、熱に浮かされるような感覚が僕の中へと注ぎ込まれていくように熱い。

 「……く、あぁっ!! ……んっ!!」

 彼の舌先がほんの少し触れてから、今までとは異なる、甘く噛まれるようなキスを首筋に施された僕は、
たったそれだけのことなのに、また声をあげていた。
 その時僕は、本当に―自分でも自分の事をどう制したら良いのか、全くと言っていい程、解らなくなって
いたのだと思う。
 後ろで一束に束ねていた僕の真っ直ぐで長い黒髪が邪魔になったようで、彼は、自らの手で僕の髪を梳
くようにして、反対側の肩へと寄せた。
 それから、彼は再び僕の首筋へと丁寧にキスを施してから、そこから更に下の胸元へと唇を移動させて
いく。
93−英国に吹く風 V− act.4:2010/10/17(日) 06:18:45 ID:gnULuWmu
「……っあ!! ……っ、や……ミカ……エル……」

 そこまできて、僕はようやく、彼の行為を拒む言葉を必死になって口にしていた。

 ここは、この場所は、寮棟の僕等の自室ではない。
 今、この自習室には、僕等二人しかいないのは、解っている。
 それでも、不意に誰かがこの部屋の外を通るかもしれなくて、なおかつ、こんな有様を見咎められるかも
しれない状況の中で、これ以上の行為に及ぶなんて、絶対に無理だ。絶対に嫌だ。
 僕は、そう思いながら、もう殆ど力の入らなくなっていた自らの腕で、必死に彼の肩を押し戻す。

「……お願い……だから」

 僕のその声に、彼は、はっとしたように、顔を上げると、僕を真っ直ぐに見つめた。
 彼でもこんな風に我を忘れることがあるんだな……。
 などど、僕は急に呑気なことを思いながら、彼と顔を合わせたまま、その場でぼんやりと彼を見つめてい
た。
94−英国に吹く風 V− act.5:2010/10/17(日) 06:21:46 ID:gnULuWmu
「……済まなかった。俺は一人で先に部屋に戻るよ。
 アカリ、本当に申し訳ないんだけど、
 俺よりも少し後で、部屋に帰って来るようにしてくれるかな? その……本当にごめん、待ってるから」

 つい先程までの行為を思い返した所為か、彼は顔を真っ赤にしながら、僕にそう告げた。

「……あ、うん、解った。僕は後から行くようにするよ」

 その言葉に合わせるように、僕は、彼に返事を返しながら、乱れた制服の襟元を直す。
 彼は、僕が制服の乱れを直し終えたのを見ると、ほっとしたように、ため息をつき、申し訳なさそうな表情
で僕の額へと軽くキスをした。
 それから、彼は先程、この部屋に来た時に脱いでから、反対側の椅子に掛けたままにしていた、制服の
ブレザーを手にすると、ふわりとそれを羽織りながら、そのまま自習室を出ていった。
95−英国に吹く風 V− act.6:2010/10/17(日) 06:24:56 ID:gnULuWmu
 自習室を後にしていく彼の後ろ姿を見送り、部屋の扉を再び閉めた後で、この部屋に一人きりになった
僕は、ようやく、少しあたふたしていた気持ちから解放された所為か、無意識のうちに大きなため息をつい
ていた。
 その時僕は、はたと気付いた。

 僕と彼は、今、二人で、寮の同じ部屋で、過ごしている訳で……
 その部屋で僕を待っているって、ことはその、えっと……その……
 ……これから僕は一体、どんな表情をして、あの部屋に帰れば良いっていうんだぁ!!

 嬉しいような、泣きたいような、複雑な気持ちになりながら、僕は再び大きなため息をついた。
96−英国に吹く風 V− act.7:2010/10/17(日) 06:26:55 ID:gnULuWmu
―― 一方、それから遅れること数分後の寮棟内では ――

 彼―ミカエル・レアン・ダイ・クと僕―海堂 朱里の部屋の前で、プラチナシルバーの髪とアイスブルーの
瞳の少年―ヴィットーレ・ディ・イエッリが僕等の帰りを待っていた。

 ヴィットーレは、廊下の向こう側から唯一人で帰ってきた、彼の護衛対象でもある、主 ― ミカエルの姿
を目に留めると、彼の表情から何かに気付いたように、微笑んだ。
 それから、ミカエルの方へと歩いていき、互いがすれ違うようになったその瞬間、その相手に向かって軽く
声をかける。
97−英国に吹く風 V− act.8:2010/10/17(日) 06:29:10 ID:gnULuWmu
「ミカ、一度だけだ、一度だけは、見逃してやるよ」
「煩いよ、君は」

 二人は、すれ違い様に互いの拳で軽く肩を小突き合うとそのまま反対の方向へと歩いていった。

 結局、僕はその後で、そのまま自習室へと迎えに来たヴィットーレに連れられて、寮の自室へと戻った
が、その間、二人の間でそんなやり取りがあったということは、もちろん全く知らなかった。

 そして―寮の自室に戻ったその日の晩に、僕とミカエルの間でどんな約束が交わされたのかは、ここでは
秘密にしておきたいと思う。

【END】
98−英国に吹く風 V−:2010/10/17(日) 06:40:55 ID:gnULuWmu
ぎりぎりのところを狙ったはずなのに、なんだか詰めが甘い気が……

>>80
ヴィットーレを気に入ってくださってありがとう! 感謝です!
99創る名無しに見る名無し:2010/10/17(日) 12:04:38 ID:4HJMQ5Mr
>>89
おぉ! 3作目の投下乙です!
護衛対象の御方が意外と積極的で、しかも攻めとは……
こちらのカプの今後も楽しみだなw
100:創る名無しに見る名無し:2010/10/23(土) 22:14:43 ID:7qPhDeeI
http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2010/1022/357891.htm?g=04

これリアルにホモなんじゃなかろうか
101好敵手−ライバル−:2010/10/26(火) 12:14:07 ID:k00r7awb
某長編演劇少女漫画の主人公2人の性別を変えて書いてみました。
いや、そのほかの設定も若干、変えてます。
そういうものでも大丈夫って方は、よろしかったら、どうぞー
102好敵手−ライバル−1/5:2010/10/26(火) 12:16:37 ID:k00r7awb
彼にだけは……どうしても負けたくない。
僕は前の鏡に写る自らの姿を見ながら思った。
彼と、そのたった一つの役柄を巡り、互いに切磋琢磨するようになってから、もう、何年経っただ
ろうか。

その舞台は、ようやく試演にこぎつけてはいたが、正式公演に向けたキャストはまだ決定されて
はいない。
僕等は、今、その役柄を巡り、本当に最後のたたかいを繰り広げている最中なのだ。
103好敵手−ライバル−2/5:2010/10/26(火) 12:17:38 ID:k00r7awb
「本当に……小さい頃からの夢だったんだ……絶対に諦めたくないんだ」

僕は鏡の中に写る自らの姿に語りかけつるように、小さな声でそう言った。
その僕の姿は、今、僕の目には、ぼんやりとしか映っていない。
ここは、ある劇団の稽古場の一角だ。
僕は、この前の稽古の際に、うかつにも転んでしまい、照明機材に頭を強打するような怪我をし
た為に、一度、検査入院をしたのだ。そして、その頃から、少ずつ眼を悪くしていた。
今となっては、こんなに目の前の自らの姿でさえ、良くは見えていない。

「それでも、諦めることなんかできない」

僕は、誰もいないこのスタジオで、自らに言い聞かせるようにそう呟いてから、その役の振り付け
を演じ始める。
既に数えきれない程の練習を積み重ねてきた、その役柄にあわせた舞いをただひたすらに、無
心で踊り続ける。

今の僕に出来ることは、ただ、それだけしかないからだ。
104好敵手−ライバル−3/5:2010/10/26(火) 12:20:11 ID:k00r7awb
僕は、誰もが知る名女優と映画監督の一人息子として、生まれた。
母親譲りの明るい色の髪と、どちらかと言えば、中性的なこの容姿の所為もあって、演劇の世
界では、王子様と呼ばれる程度には、持て囃されてきた。

だがそれも―周りの期待に応える為に、僕が人一倍の稽古を重ねてきた、この成果があっての
ことなのだ。
そのことは、僕自身が一番良く理解している。

そして―父と母も仕事で忙しく、結局、僕は、たった一人だというあの孤独な感情に押しつぶさ
れそうになった時でも、演劇だけが、演劇に打ち込むことだけが、僕の唯一の救いになってきた
のだ。

だからこそ―
僕は、小さい頃から憧れ続けたその役を、真の表現者でなければ、演じる事ができないと言わ
れてきたその役を、どうしても、自らの手で演じたかった。
その役を演じることを熱望し、もう、ずっと―努力を積み重ねてきたのだから。
105好敵手−ライバル−4/5:2010/10/26(火) 12:21:22 ID:k00r7awb
僕は、そんな風に思いながら、演技に無心になれくなっていた自分に嫌気がさして、ふと舞うこと
を止めた。
僕がこんな風に思い悩んでいるこの瞬間にも、彼は―もう、この役柄の真意を掴み、いつものよ
うに、まるで、その役柄の魂が乗り移ったかのような、迫真の演技を掴みかけているのだろうか。

彼は、僕自身が努力と修練で身につけてきた、美しい型を基本とする演技などではなく、そう、
天性の―人を惹きつける演技というものを彼は無意識のうちに、知り得ているかのように、僕には映る。
彼の平凡な容姿と、役柄を表現するための技術力が未だ伴わないことから、彼のことを三流
役者などと嘲笑っている人々もいた。
だが、僕は、彼のその迫真の演技こそが、真の演劇者に至る過程の中で、どれ程に難しいこと
であるか、演技者としての本能で、理解しているつもりだ。

恐らく、ライバルという意味でなら、僕は、彼と彼の演技をこの世界で、一番愛しているだろう。
彼に対する僕のこの感情は……ただ、それだけのものだと思いたかったのかもしれない。
106好敵手−ライバル−5/5:2010/10/26(火) 12:24:23 ID:k00r7awb
「アユムさん、そろそろお帰りになりませんと、奥さまが心配されますよ」

その稽古場のドアが開く音と、僕を迎えにきた執事の声に、僕は、自分自身が直面する現実
へとふいに引き戻される。

「ああ、わかったよ。支度をしてから戻るから、もう少しだけ、控室で待っていてもらえるかな」
「かしこまりました」

自分の眼があまり見えていないことなど、あまり気にもかけていないという様子を保ちながら、僕
が執事へとそう声をかけると、執事の方も慣れたもので、僕の気持ちを慮って、そつの無い返事
だけを返してくれる。

執事の後ろ姿を見送った僕は、もう既に頭に叩き込んである『稽古場から控室までの道のりを
眼が見えている人々と変らぬ様子で帰るという演技』に集中するために、小さく息を吸い込むよ
うにしてから、呼吸を整える。

「北島真矢……僕は、君には、君にだけは、負けられないんだ」

僕は小さな声でそう呟くと、稽古場を後にした。

【了】
107好敵手−ライバル−:2010/10/26(火) 12:26:10 ID:k00r7awb
最初は、以外といけるんじゃない? と思ったのに、あんまりBLっぽくならなった気が……
お目汚し失礼しましたー
108創る名無しに見る名無し:2010/10/26(火) 22:09:31 ID:AIpvnhbt
面白い試みでの投下乙ですw
原作でも、二人で泊まりこみで演技指導受けたりしてるし、確かになんとか
なりそうな気もするねw
109煉獄 :2010/11/21(日) 01:10:19 ID:xd4FRe7q
これから2レス投下
属性は特にありませんが、ひとりHものです。
うん、でも、表現はぎりぎり全年齢板だと思うんだ。
そんなのでもよろしかったらどうぞ
110煉獄 1/2:2010/11/21(日) 01:11:46 ID:xd4FRe7q
「……っ、うっ……あぁっ!」

自分でも馬鹿だと思うけど、声が止められない。
あんたとの事を想う度に、こんな風に自分でも止められない程に、おかしくなる。
そして、こんな風に、自らの手を自らの中心へとあてがうことになるのだ。

あんたの事を想う度に、あんたが俺の胸に刻みつけた、あの封印が疼く。
あの封印が切なくて、甘くて、狂おしい程の感情を呼び醒ます。

「……ふ、あぁっ!」

その渦巻くような熱を帯び、沸きあがる感情に堪りかねて、自らの胸元へと手を這わせれば、
あんたに全てを覚え込まされた俺の身体が、それだけで満足する筈もない。

「ん……ああっ!」

結局は、こうして自らで泣く程に、自分の身体を弄ぶことになるのだ。
ただ一人で、こんなことをする破目になるのだ。
解っているのに。
111煉獄 2/2:2010/11/21(日) 01:13:00 ID:xd4FRe7q
「ん……ふ……っ、あぁ……」

俺が声をあげる度に、余裕で微笑んでいた、あんたを想い出す。
あんたは、こんな風に身を焦がす俺を情けない奴だと微笑うのだろうか。

「…っ、ふ……や、っあ!!」

そうだよ、あんたは
どうして俺を……
どうして俺を一人でおいて逝ったんだ!!

「……っあ、もう……嫌……だ……嫌なんだ……」

それでも、そう思いながらも、俺は泣きながら、
俺が気を失い果てるまで、全てを奪い尽くすように
愛してくれた、あんたを想って、

ただ、一人、その熱にうかされながら、
ただ、一人、その熱に狂わされながら、

自らを絶頂へと、あんたに一番近い場所へと、導くのだ。

−end−
112煉獄 :2010/11/21(日) 01:14:04 ID:xd4FRe7q
BLはファンタジーなんだからねっ!
一人で何をしてるのかなんて、深く考えちゃいけないんだぜw
113変態という名の紳士:2010/12/29(水) 10:33:07 ID:bajTLkkR
コミケですね
114いとしのメリー:2011/01/17(月) 15:50:53 ID:/5FkPLKE
メリーさんVSしがない大学生。
そんなにホモホモしくないですごめんなさい

「わたし、メリーさん」
携帯電話を通話ボタンを押すと、単調な声が響く。マイク越しに聞こえる喧騒からして店にでもいるのだろうか。
「いま、街にいるの」そう一言付け加えると電話は勝手に切られた。
十数分後。
「わたしメリーさん」またかかってきた。今度はカンカンと踏切の音。
何処かで迷子にでもなったか、と心でため息をついた所でまたスピーカー越しに
「いま、家に向かっているの」とだけ聞こえて、電話が切れた。
グツグツと鍋の中身が音を立てる。もう良いくらいかな、と蓋を開け湯気に煽られながらジャガイモの欠片に菜箸を通す。そろそろルーを出してこよう。
「わたしメリーさん」三回目の電話。
「今日はシチューだぞ、とっとと帰って来い」
「今、でっかい犬に吠えられた」若干声が震えている。怖かったのだろう。電話が切れる。
ルーを手で割って鍋に放り込むとぶつぶつと大きな泡が立ってルーがどろどろに溶ける。
かくして野菜と鳥肉の水煮はめでたくホワイトシチューに進化した。めでたしめでたし

115いとしのメリーA:2011/01/17(月) 15:51:57 ID:/5FkPLKE
布巾で手を拭いていると、後ろで声がする。
「わたしメリーさん」
「おかえり」振り向くと、程よく透けた少年が鍋を覗こうとしていた。
「シチューだって聞いたから走ってきた」肩が上下して、頬が少し赤い。
「いい加減趣味の悪い悪戯はやめて欲しいんですが」
「やだ」
「というか本名を思い出してください」
「思い出してたらここにはいないよ、馬鹿」口の減らない餓鬼だ。

「メリーさん」はたぶん中学生のピチピチの亡霊だ。
悪戯で「わたしメリーさん」を掛けている最中に事故で死んだ…というのは本人談。
その拍子に自分の本名やら家族やら全て忘れてしまったというのだから尚更タチが悪い。
今日もまた死んで暇なのをいい事に、「プチ・自分探しの旅」へ出かけていたらしい。毎日毎日勉強漬けの大学生からすれば羨ましい限りの優遇である。
「で、何か手がかりは有ったのか?」
「・・・むはひからいぬはきはいみたい」勝手にコタツへ入りシチューをほお張りながら「メリー」が答える。というかいつの間にシチューよそいやがった。やっぱり幽霊ってすばしっこいのか。
突っ込み所は山々だったが、早くコタツに入りたいので自分の分のシチューをよそうと早々にキッチンを後にした。
「あ、そうだ」
これあげる、と紙袋がコタツの上に置かれる。何かの景品らしい。
袋を開けると、フェルト地の羊のぬいぐるみが入っていた。
「…ひつじ?」
「ん、メリーさんといえばやっぱ羊じゃん」
「…どうやって取ったんだよ」お前お金持ってないじゃん、と突っ込む。
「んー?ないしょ」にぃっとまだ幼い顔で笑う彼が恐ろしい。そしてゲーセンの人ごめんなさい。
羊の顔をまじまじと見つめる。プラスチックのくりくりとした目が俺を見つめ返す。
116いとしのメリーB:2011/01/17(月) 15:56:41 ID:/5FkPLKE
「…そっくりじゃん、お前に」
「マジで!?ってかウルトラねーよ」
「お前、人間じゃなくて案外羊の霊かもしれないな。犬嫌いだし」
「いや普通に人間だから…あ、元人間か」

こうして俺とメリーさんの一日は過ぎてゆく。

出来るならもう少しだけ成仏しないで欲しい、と少なからず思う俺がいる。
何だかんだで、メリーさんのいる生活は楽しい。



【END】
117いとしのメリーあとがき:2011/01/17(月) 16:04:33 ID:/5FkPLKE
メリーさんが本当は乳臭い少年だったらこの世はヘブンだと思って書いてみました。
いかに絡み無しでBLっ気を出すかを試みてみましたが見事な惨敗っぷりです…
お目汚し失礼しました。
118創る名無しに見る名無し:2011/03/05(土) 09:21:15.94 ID:KbY591Rr
てすと
119創る名無しに見る名無し:2011/03/10(木) 16:56:29.84 ID:MjEyj9Po
てすと
120創る名無しに見る名無し:2011/03/24(木) 15:50:27.99 ID:KVtvvhwK
水嶋ヒロは比喩の部分などを、村上春樹やリチャード・ブローティガンから
パクったようだが、パクリきれていないという。
121創る名無しに見る名無し:2011/03/25(金) 15:13:55.00 ID:lpaxUxWx
122創る名無しに見る名無し:2011/03/27(日) 20:17:11.51 ID:WzFN2W+2
エロ絡みじゃないけど、ストーリーの設定的に、『両性具有』要素のあるネタ考えてるんですが、
スレ的には受け入れられるでしょうか?
123創る名無しに見る名無し:2011/03/27(日) 21:54:42.69 ID:A8lpJotZ
もともと耽美的なものまでカバーするスレだと思うので、OKだと思う
投下を楽しみに待ってるよw
124創る名無しに見る名無し:2011/04/05(火) 15:20:59.00 ID:Cbme29Kr
きも
125創る名無しに見る名無し:2011/04/14(木) 02:32:11.31 ID:7Jh8nCgc
だれかこのマンガの詳細おしえてください
http://livedoor.2.blogimg.jp/newsteams/imgs/7/6/76a15d4a.jpg
126創る名無しに見る名無し:2011/05/04(水) 22:05:40.11 ID:VXTYumAH
俺も125知りてええええええええええええ
頼むううううううううううううううううう
眠れねええええええええええええええええ
127−EST−存在の証:2011/05/05(木) 20:35:17.82 ID:Ke4p4m0K
>>26のシチュをお借りしてSSを書こう!と思ったら、なんか違うものになったけど投下
少年×青年で、一応、サイキックファンタジー風味
よろしかったらどうぞ
128−EST−存在の証 1/12:2011/05/05(木) 20:42:22.03 ID:Ke4p4m0K
「お帰り」

エントランスのドアを静かに閉めた瞬間、そう声をかけられた少年は、ほんの一瞬、僅かに肩を竦め
て、相手の方へと振り返った。
相手の方へと、振り返った瞬間、短く整えられた少年の淡い空色の髪が真夜中過ぎの暗闇の中で
揺れる。

「うん、ただいま。まだ、起きてたんだ」

少年は彼のことを待っていたプラチナブロンドの青年に向かって、何事も無かったかのように、微笑
んだ。
それから、羽織っていたモッズコートとジャケットを脱ぎ、それを近くのコートハンガーに無造作に引
っ掛けると、両手に嵌めていた黒い革手袋を外して揃えて持ち、軽く俯いてから、小さく息をつい
た。

その間、彼を見ていた青年の方はと言えば、先程、一度、少年に声をかけてからは、一切、声を発
していない。
ただ、静かな表情で、目の前の相手に対して少々きつい印象を与えている、自らの青銀の瞳の
視線の先を、淡い空色の髪の少年の方へと、合わせたきり、そのまま、じっと彼を見つめていた。

「うっ! ……ごめん!! ……えっと、……予定より、その……ちょっと……手こずって」

その気まずい雰囲気に耐えられなくなった少年は、自らの顔を思い切り良く上げ、視線を青年の
方へ向けると、自分の非を認めて早々に謝った。
そんな少年の様子を見て、青年は壁に寄り掛かったまま、軽く溜息をついた。
129−EST−存在の証 2/12:2011/05/05(木) 20:44:12.05 ID:Ke4p4m0K
「……で? 途中まで付けられてた?」
「うん。相手を撒くのにちょっと時間がかかった」

自分が投げかけた質問の答えを聞くと同時に、青年は少年を自らのもとへと引き寄せた。
その弾みで、少年が手に持っていた手袋が彼の手を離れ、小さな音を立てながら、床へと落ちた。
青年はそれに気を留める事なく、目の前の少年が無事であることを確認するように、しなやかな
その少年の身体をそっと抱きしめた。

「……エル、良いけど、あまり心配させるな」
「……ん、ごめん……」

エルにとって、自分とたった三つしか年が違わないのに、目の前の青年は、十五になったばかりの
自分自身と比べると、随分と大人びて見えた。
いつものことではあるのだが、この青年のしっかりと体躯で、こんな風にして抱きしめられると、エル
は、いつも自分自身がどうして良いのか判らなくなる。

彼にこんな風にされると、普段は自分の内に完全に封じ切っている、熱く激しい感情が急に引き出
されるような気がする一方で、とても切ない、痛みを伴うような感覚さえも、一緒になって、エルの心
中をひどくかき乱しながら、覆ってゆくような気がするからだ。
                                                        
だから、エルは青年自身が自らその腕を振りほどいてくれるまで、いつもその場で、身動きひとつす
ること無く、青年に自らの身体を委ねたままでいることが多かった。
それに、こうして青年に抱きしめられながら、互いの体温を感じている、この時だけは、自分が紛れ
もなく、命ある生命のひとつなのだと実感できているような気がしたからだ。
ただ、それは、この青年が、エルの背中にある、あの証の解放を求めたりしない場合に限られては
いたが。
130−EST−存在の証 3/12:2011/05/05(木) 20:47:31.31 ID:Ke4p4m0K
「ん……シオン、駄目だ! ……嫌だ! ……俺の背中には手を出すなと言った筈だ!!」

シオンと呼ばれたその青年の腕が、一層力強く自分自身の背中へと廻された、そのとき、エルは、
彼の腕の中で、喘ぐようにして、その行為の制止を求めた。
それと同時に、普段の自らの腕力にも、全くもって遠く及ばない、頼りないといった程度の力しか
出せていない分自身の手をシオンの腕へと重ね、彼の行為を止めにかかる。

だが、シオンは、そんなエルの言葉や仕草にも慣れているらしく、その腕の力を緩める様子は無い。
それどころか、エルを抱きしめるその体勢を保持したまま、エルの躯のその場所に、更に力をかけな
がら、エル自身の意識がその一点へと向かうように仕向けていく。
それと同時に、シオンはエルの耳元でいつものように、甘い声で囁く。

「エル、もう、誰も見ていないのだから、大丈夫だ」
「……っ、う……嫌だって、ば……」

この状況になると、今、エルの背中にかかるシオンの腕の力が弱まることは、エル自身がシオンの
意思に従うまで絶対にありえない。
エル自身も、そんなことは、何度も経験しているから、解りきっている。
それなのに、毎回、無駄な抵抗を試みる自分が、こんな隙を見せることなど、本来なら、絶対に無
い筈なのに、唯一、シオンにだけは、幾度かこんな目に遭っていても、尚、全くもって敵わない自分
が、本当に嫌になる。
131−EST−存在の証 4/12:2011/05/05(木) 20:49:31.28 ID:Ke4p4m0K
「……く……うっ、嫌だ……あぁっ!!」
「……エル、本当に嫌?」 

耳元で囁かれる、シオンの優しく心地良い声と、自分自身の背中へと、徐々にかかってくる、熱く、
痺れるような、それでいて、身体の芯が疼いてくるような熱量を帯びた感覚が、いつものように、エ
ルの意思と思考力を少しずつ、削ぎ取るようにして、鈍らせていく。

「……うぁ……っあ、や、嫌っ!……っ、あ!」
「エル、もう、それを自分の能力で抑えるな、俺は、今、君のそれが見たい」

こんな風に、シオンからそれを解放することを肯定され、促されたとしても、嫌なものは嫌だ。
だから、エルは、エルなりに、いつも自分が保つところまでは、必死でその言葉への抵抗を試みる。
エルの背中にかかるその掌の力は、普通、世間一般の人々が、感じるものとしては、大きな痛み
を伴うものではないし、彼自身にとっても、肩を壊したりする類のものではない。
それでも、彼自身の身体が、世間一般で言うところの人間と大きく異なるものであるという、あの
証が、シオンの力の所為で抑え込めなくなる。だから、嫌なのだ。

「あっ……もう……嫌だ……や、あぁあっ!!」
132−EST−存在の証 5/12:2011/05/05(木) 20:52:48.69 ID:Ke4p4m0K
自分の背中が、徐々に熱を帯びていくその激しい感覚に耐えかね、エルがシオンの力に抗うこと
を止めた瞬間、それは彼の背中に現れた。

彼の背中へと現れたそれは、虹色の透き通った輝きを持つ4枚の大きな羽根だ。
それは、彼が身につけている衣服などを損なうことなく、その背中に唐突に出現していた。
恐らく、エルが自身の能力を併せることによって、他には影響が及ぶ無事の無いようにとの配慮
をしたのだろう。

そして、その光輝く羽根が背中に在るというだけで、元から端正な姿をしているエルは、傍から見
ている者には、彼自身が現実の世界には存在しない神々しい次元からからやってきた、精霊や
妖精といった類の存在のようにさえ、思わせた。

だが、エル自身は、自分がそういった類の者ではないことを、自覚している。
そう、自分は、この世の金持ちの気まぐれと、その莫大な資金と、遺伝子科学などの最先端技術
の全てを注ぎ込まれた結果として生まれた、人工生命体なのだということを。

それ故に、この容姿と、その羽根を背中に封じ、なおかつ、普通の人間には成しえない奇跡を成
す力 ー そう、俗にサイキックといわれる能力 ― を持ち合せているのだから。
同じ能力持ちの彼、シオンに自らの本来の姿を晒すという、ただ、それだけのことなのに、それで
も、自分が人工生命体であることを改めて実感することになる。
133−EST−存在の証 6/12:2011/05/05(木) 20:57:31.65 ID:Ke4p4m0K
「っ、あぁ……」
「相変わらず、美しいな」

シオンはエルを抱きしめたまま、背中に現れたその羽根に目を遣りながら、そう言った。
シオンが幾度となく、エルのこの在りのままの姿が好きだと言ってくれていても、正直、エルにとって、
この姿の自分自身の存在自体が受け入れ難い。
だから、嫌なのだ。
エルにとって、これを改めて認識することは、未だに、この上ない嫌悪感に満ちたものだ。

それに、これを自分の意思から外れたところで、シオンに引き出されるのは、毎回、無駄に抗う所為
からか、自らの身体に大きく負荷がかかる。
また、直後にほんの少しの間ではあるが、自分自身の身体がとても気だるくて、普段のようには動く
ことなど出来はしない状態に陥るということが、エルがこれに嫌悪感を抱く状況に更に拍車をかけた。

シオンは、エルのそんな気持ちを知ってはいたが、それでも、今となっては、自分だけが良く知ってい
るこの少年の在りのままの姿をただ、純粋に見たいと、そう思ったから、無理を承知で、その背中へ
と自分の能力の一遍を充てた。

そうでもしない限り、エルは、滅多なことでは、この美しい羽根を纏った姿を見せてくれはしない。
今回は少々無理矢理が過ぎただろうかと、幾分反省をしながら、自分の腕の中で、未だに少し震
えるようにして、身体を預けたままでいるエルの体調を気遣いながら、シオンは声をかけた。
134−EST−存在の証 7/12:2011/05/05(木) 21:01:38.46 ID:Ke4p4m0K
「……エル? 済まなかった。まあ、何とか大丈夫そうかな……
羽根が出現していても、君の能力は、まだコントロール出来ているみたいだね」

「……この鬼っ!! アンタには、これが無いから……だから解んないんだよ!!」

エルは、シオンの腕に支えられ、抱きしめられたその状態のまま、相手に向かって、少し投げやりな
気持ちになりながら、そう言った。
彼と同じように、遺伝子科学の粋を集めて生み出された身の上であることには、代わりは無いのに、
シオンの背中には、羽根が無かった。
それとあわせて、シオンがその身に兼ね備えている特殊能力の方が、自らの能力よりも秀でている
という現実が、エルの心の深い処に在る傷を抉る。

そう、自分は、どちらかといえば、裕福な身の上の人間の観賞用として役割も果たすようにと、創ら
れた存在なのだということを改めて思い知らされる気がするのだ。
その上で更に、自分自身が、所詮、権力者達の気まぐれによって生み出された存在なのだというこ
とを改めて、突き付けられている気さえする。
そんなことも全て解っている癖に、エルが嫌がるその背中の羽根を度々見たがるこの青年の気持ち
など、エルには、全くもって理解できなかった。
だから、いつもは絶対の信頼を寄せている存在だとしても、今、この瞬間は、この青年の傍から、と
にかく離れたかった。
135−EST−存在の証 8/12:2011/05/05(木) 21:03:35.25 ID:Ke4p4m0K
「シオン、もういいから、手を放せ」
「まだそんなこと言える状況にはないだろう、無理はするな」

エルはそう言って、シオンの腕を振りほどこうとしたが、やはりまだ足元がおぼつかない為に、すぐに
よろけそうになった。
その様子を見かねたように、シオンは再び自らの片腕でエルをしっかりと支えると、それ同時に、空
いている方の手をエルの羽根の根元辺りへと添える。

「……っ、うぁ!! ……触るなっ!!」
「何で?」
「……何で、って……真顔で聞くな! 馬鹿!」

エルの身体のその場所は、唯でさえ、まだじんわりとした熱く疼くような感覚を残し続けていた。
だからこそ、今、シオンには、絶対にそこに触れて欲しくなかった。

相手に今、ほんの少し、触れられただけで、こうなのだから、もう暫くの間とはいえ、このままこうして、
シオンに身体を預けていなければならないのかと思うと、エルはそれだけで気が遠くなりそうな気持ち
になった。
136−EST−存在の証 9/12:2011/05/05(木) 21:05:38.26 ID:Ke4p4m0K
「……っ、ぁ! ……触るなって、言ってるだろ!!」

そんなエルの言葉を耳にしても、シオンは感覚が鋭敏すぎるままになっている彼の身体を抱きしめ
ることを止めなかった。
ただ、いつものようにエルの身体をしっかりと受け止めるようにして、彼の心と身体に拡がっている
熱を帯びた感覚が落ち着いていくのを静かに待っていた。

それでも、今日は何故か、エルの身体に籠る熱が引いていく様子は一向に無かった。
むしろ、こうしてシオンに抱きしめられていればいる程、エルの身体の熱は、昂っていくような気がし
た。
自らの身体の傍に、相手の身体の熱を感じている状況に在るというだけなのに、自らの身体が受
けるこの感覚が生み出し、もたらしていく、痺れるような熱量の力から受ける影響の方が大きい。

それは、背中だけではなく、全身に熱く、疼くような感覚として、拡がったまま、和らいていく気配は
一向に無かった。
それどころか、その熱さは、エル自身に、再び自らの身体の芯へと向かってゆく、痺れと熱量を増
していくような感覚さえ起こさせた。
137−EST−存在の証 10/12:2011/05/05(木) 21:07:25.56 ID:Ke4p4m0K
「……シオン……もう、いいから……俺……このまま、アンタと居ても、落ち着かないから……」
「エル、俺の前では、もう、そんな風に振舞わなくて良いから」
「……えっ、何……」

エルが少し顔を上げた瞬間、シオンは、エルの唇を塞ぐようにして軽く口付けた。
エルがそれに驚いて口を開けた瞬間、シオンは、その柔らかな唇を割って、更にほんの少しだけ
深く口付けるようにしてから、それを止めた。

「……っ、どうして……!!」

唇を解放されたエルは、今、この状況で、自らが持て余す程の熱を既に帯びている自分自身の
身体に対し、その感覚を更に強くするような口付けを相手から施されたことに、ただ、驚いていた。

今までにも、身体の芯が熱く融けていくようなこの感覚の中で、まるで何かに焦れているかのよう
な自分の姿を、今、目の前にいる相手に情けなく晒すことになったことは、確かにあった。

それでも、彼は、シオンが、エルにこんなことをしたことは、今までに一度も無かった。
彼は、今までずっと、エルの気持ちと身体の状況を推し量るように、待っていてくれただけなのだ。
互いが、互いにとって、ただ、それまでの関係でしか無い筈なのに。
138−EST−存在の証 11/12:2011/05/05(木) 21:08:56.32 ID:Ke4p4m0K
エルは熱を帯びた感覚を引きずっている所為で潤んでいる瞳で、自らの気持ちを諮りかねている
のだとでも言いたげな表情のまま、シオンを見つめていた。
そのエルの視線に応じるように、シオンは自らの眼差しを再びエルの方へと向けた。
それから、ほんの少しの間を置いて、シオンは小さな声で呟くように、その言葉を告げた。

「君が好きだから」
「……なに言って……」

相手から突然告げられた言葉に対して、エルは、ただ、相手を見つめることしか出来なかった。

嘘だ。だって、いつだって、俺の方が、一方的にアンタに身体を預けているだけで。
ただ、それだけの関係なのに、アンタが俺を好きだなんて、そんなの、絶対にあり得ないだろう。
エルのそんな戸惑いを乗せた想いは、言葉にさえならかった。

その様子を黙って見ていたシオンは、エルのしなやかな線を描く身体を再び引き寄せるようにして、
彼を抱きしめる腕に力を入れ直してから、強い意志の宿る真摯な眼差しを改めてエルへと向けた。
139−EST−存在の証 12/12:2011/05/05(木) 21:12:03.68 ID:Ke4p4m0K
「もう一度、言おうか?」
「……もう、いい……」

エルは、シオンに対して、それ以上の言葉を掛けることなく、シオンの肩越しに自らの腕を絡め、相
手の身体を抱き返した。
それが、今のこの自分が抱えている感情に最も近しく、それを素直に表した行為だと思ったからだ。

今は、ただ、目の前の相手の身体から感じるこの体温だけが、エルが欲する全てだった。
そして、それは、自らが此処に存在する唯一の証のように思えた。

その気持ちを察したように、シオンは自らの腕の中に留まっている、エルの身体を強く抱きしめ直す
と、その唇へと再び口付けた。

それが、今、相手に示すことができ唯ひとつの証だから。

【END】
140−EST−存在の証 :2011/05/05(木) 21:13:29.60 ID:Ke4p4m0K
久々に書いたらなんか色々難しかったよ!
お目汚し失礼しました
141創る名無しに見る名無し:2011/05/10(火) 01:00:52.91 ID:138R3Vv3
投下乙です

二人の距離感が良いですねー
楽しませていただきましたw
142−MENS− 心の在処:2011/05/21(土) 12:40:46.94 ID:mpv1crl0
>>127の続きを投下
青年×少年で、サイキックファンタジー風味
今回分だけでも一応、読めるようになっているはず…
よろしかったらどうぞ
143−MENS− 心の在処 1/10:2011/05/21(土) 12:44:08.45 ID:mpv1crl0
窓から見える空が青い。
こんなに、雲ひとつ無く晴れ渡った日の朝だというのに、青年の隣で眠る淡い空色の柔らかな髪と
端正な顔立ちをした、その少年が目を覚ます気配は、一向に無かった。

そもそも、昨晩、少年が帰って来た時刻が真夜中過ぎではあったので、まあ、これはこれで、仕方な
いか、などと思いながら、流れるようなプラチナブロンドと青銀の瞳の精悍な顔立ちをした青年は、
今日、何度目かの溜息をついた。

そうして、今、このベッドの上で、少し背中を丸めるような姿勢になりながら、相変わらず、穏やかな
顔つきで眠り続けている少年の方へと改めて目を遣った。
これまで、この少年と付き合ってきた経験から察するに、少年は、今、このまま彼が起きれば、その
瞬間、ひどく不機嫌な表情をすること、この上ない格好で眠っている。
144−MENS− 心の在処 2/10:2011/05/21(土) 12:45:57.37 ID:mpv1crl0
少年が、今、身に着けているのは、そもそも穿いていた少し細身のカーゴパンツと、申し訳程度にかかるブランケットのみだ。
この年頃の少年としては、見た目にもバランスがとれた柔らかな筋肉を兼ね備え、滑らかな線を描く
彫像のような美しさを見せているその上半身には、何も身につけてはいない。
まあ、それは、昨晩、少年自身が、上半身に何か着たまま寝るのは、鬱陶しいので、脱がせてくれと
言った所為なのだが。

更に、若干背中を丸めたような姿勢のままで眠っている、少年の背中には、彼が普通の人間と異な
る者であるということの最大の証となっている、四枚の透明な羽根が出現していた。
今、少年は、今、本来であれば、彼が滅多に見せることのない、生来の姿のままで、眠りに落ちてい
たのだ。

朝の陽射しを受け、様々な色合いで淡い光を反射している透明な羽根を身に纏ったその少年の姿
は、昨日の真夜中に見ていた時よりも、より一層、その姿が何か現実離れした存在のようにも思え
た。

また、それは、少年本人にとっては、少年自身が自分の存在を酷く否定しがちな要因をともなって
いたが、他人から観賞されるという趣向を踏まえて創られた、人工生命体としての彼の端正な容姿
もあって、この殺風景で、決して広ない部屋では、彼の存在が相当場違なものにも感じられる。
145−MENS− 心の在処 3/10:2011/05/21(土) 12:49:14.07 ID:mpv1crl0
「まあ、このままだと、昨日、何かあったのかと疑いたくなる光景にはあるかな……」

青年は、ベッドに片肘をつき、自らの上半身を少し起こしたその姿勢のまま、溜息をつきながら、小
さな声で独りごとを言った。
それでも、少年の方は、先程から、同じベッドの上で背中を丸めるようにして、眠り続けたまま、起き
る気配など全く無い。

「……にしても……本当に相当、疲れてたのかね? 無防備もいいところだと思うぞ、エル」

エルと呼んだその少年の反応が無いことを承知の上で、青年は小声のまま、続けてそう声をかけた。
そうなのだ、エルがいつもは自身の能力をもって封じている羽根を晒した本来の姿のままで、こんなに
も無防備な状態でいることは、極めて珍しい。いや、むしろここまでの状況は無かったといっていい。

エルが自らの意思で背中の羽根を彼に見せてくれたのは、二人が研究所を出ることになったあの時
だけだったし、その後は、その場の状況に応じて仕方なく、というものばかりだった。
そういった時でさえ、羽根を封印しても差し支えない状況に戻れば、即座にそれを封じていたというの
に。
146−MENS− 心の在処 4/10:2011/05/21(土) 12:51:29.43 ID:mpv1crl0
これだけ深く眠っているとはいえ、こんな状況は今までに無かった。
青年は、そう思いながら、昨晩の真夜中にエルが帰って来た時の状況を思い返す。

まあ、いつもよりも無理強いが過ぎたのは認めるし、エル自身の反応もいつもより若干強かったとは
思うが……結局、あの後、ベッドまで運んで、上着を脱がせてやって、こうして添い寝までする破目に
なっただけだ。
思い返したところで、結局、青年には、エルが無防備な状況のまま眠っている理由は、今のところ全
く思い当たらなかった。

青年は昨日のこと思い返しながら、それでもまだ、この状況の原因を探すように努力はしていたが、
不意に、あの時、自分自身がエルに対して、想いを告げた瞬間、それを受けた相手方の反応を思
い返すと、それだけで、少し笑ってしまいそうになる程、なんとも可笑しな気持ちになった。

あの時、エルは、「好きだ」と告げた、自分の言葉にとても驚いていた。
まあ、彼がこちら側の気持ちになんぞ、全く気付いていないというのは、十分理解しているつもりだ
ったが、エル自身が、自分自身の気持ちの揺れに対しても、全く無自覚なのだということが解って、
今更ながら、それがなんだか余計に可笑しかった。

そんな風にして、いつもエル自身の方は、全く無自覚に振舞っているくせに、昨日、彼をベッドの上
へと運んでいった際には、自分の目の前で涙を零しながら、お願い……傍に居て……とか言うのだ
から、本当に性質が悪い。

おまけに、それ以前に、いつも自分に対して、あれだけ気があると言っているかのようにも受け取れ
る素振りを素で見せているくせに、その本人が全く気付いていなかったなんて、無自覚が過ぎるだ
ろう。
147−MENS− 心の在処 5/10:2011/05/21(土) 12:53:04.39 ID:mpv1crl0
……それに、研究所を出る際に、俺の気持ちが変わる程に、力強く口説いてきてくれたのは、君の
方なのにね。

「……シオン! 俺は貴方のことが好きだよ! 俺にとって、貴方は必要な人で……大切な人だよ。 
だから……これから先もずっと、貴方と一緒に居たい。……それじゃだめかな?」

青年は、あの時、生来の姿を晒すことも厭わず、自分の方へと手を差し伸べながら、真摯な眼差しを
もってそう言った、エルの姿を思い出した。
その所為もあって、目の前で眠り続けている少年の姿を眺めたまま、自らの面ざしに浮かべていた微
笑みを一層強くしながら、笑い出しそうになるのを堪えた。

「……う……シオン?」

そんなシオンの様子に気付いたのか、隣で眠っていたエルがようやく目を覚ましたようで、片手で瞼を
擦りながら、青年の名を呼んだ。
148−MENS− 心の在処 6/10:2011/05/21(土) 12:54:49.68 ID:mpv1crl0
「おや、おはよう、エル、そろそろ、目が覚めた?」
「……おはよう……」

エルの思考は、どこかまだぼんやりとしているようで、今、シオンが先程と同じように、その横で間近に
様子を見ている限りでは、エルが昨晩深夜からこれまでの状況を把握できているとは言い難いようだ
った。
シオンは、未だにベッドに横たわったままの自分と向きあうように、ゆっくりと顔を上げたエルの額へと
軽く口付けてから、相手の体調を気遣うようにして、再び声をかけた。

「エル、体の具合はどう? 先に言っておくけど、
あれから、特に手出しはしていないから、そういった意味では安心して良いと思う」

「えっ、あ……その、すまない! ……って、うあぁっ!!」

それを聞いたエルは、急に我に返ったようで、すぐに飛び起きるようにして身体を起こそうとした瞬間、
バランスを崩して、ベッドの上から落ちそうになった。
シオンは、そんな風にバランスを崩しかけたエルの片手を引き、それとほぼ同時に自らの身体を起こ
すようにして、エルがベッドから落ちる前に抱き留めてやる。
149−MENS− 心の在処 7/10:2011/05/21(土) 12:57:06.84 ID:mpv1crl0
「大丈夫?」

互いにベッドの上で膝をつくような体勢になってはいるが、昨日と同じように、エルを自らの腕の中に
抱き留めたその体勢のまま、シオンは、エルに再び問いかけた。
それに対して、先程よりも更に相手に詫びるべき項目を増やす事態に陥ったエルは、目の前のこの
事態にまだ少々、混乱しながらも、シオンに対して、詫びる言葉を早々に口にした。

「えっ、ああっ、もう!! ……その……ごめん! 昨日は、本当にすまなかった、ごめん!!」
「ここに帰って来てからの件なら、エルのが謝るようなことは何もないよ?」
「……いや、俺の方が……また色々と迷惑をかけた」
「こちらこそ、無理強いして済まなかった。
……えーっと、それにしても、その背中……ていうか、そのままで大丈夫なのか?」

二人はどこか咬み合あわないような会話を続けていたが、エルが未だに、背中の羽根を封じていな
い上、更に彼が上半身に何も身につけていなかったことに改めて気が付いたシオンは、それを気遣
うように、声をかけた。
150−MENS− 心の在処 8/10:2011/05/21(土) 13:04:17.84 ID:mpv1crl0
エルの背中の羽根は、いつもなら、もう、とっくに彼自身が封じている筈の状態にあるものなので、
今までにこんな風に声をかけたことなど無かった。

おまけに、エル自身は、それ程、気にしていないらしく、機嫌を損ねたりしている訳ではないのだが、
こんな風にエル自身が平然とした状況で、なおかつ、衣服を身につけていない彼の背中の近くへ
と、自らの掌が触れることなど、今までには無かったことなので、正直、シオンの方が、今、この状
態に在ることに驚いていた。

「……ああ、そういえば、このままだと、少し寒いかな……。
それから、これは、アンタが望むなら、それは、それで良いかなと思って。
これからは、封印しなくても済む状況の時は、なるべくそのままにしようかと思ってるんだ。
まあ、そのままにしとくと、色々と邪魔なんで、必要が無い時は、普段も封じるようにはするけど」

エル自身は、そのことを特段気に留める様子もなく、普段と同じように、シオンに微笑みながら、返
事を返した。
自分の心の内を素直に思えば、今も自分の背中に、この羽根があることについて、肯定的になりき
れている訳では全くない。
それでも、シオンが重ねて好きだと言ってくれている、自分自身を構成する要素の一つだと思えば、
少しでも、これについて、嫌悪している自分の気持ちを和らげることができるような気がしたのだ。

だから、エルは、自分が唯一、信頼しているシオンがこの羽根を現すことを望んだ時にまで、敢えて
逆らうようにしないことを決めた。ただ、それだけのことだ。
ただ、それだけのことで、他に何が変わったという訳ではないが、エルは、自分自身の気持ちが、何
処か少しだけ軽くなったような気がしていた。

そうして、自分が人工生命体であるという事実から目を反らすことなく、何時も強い気持ちでいられ
る自分で在りたい。
少しずつでも良いから、そんな自分自身の想いに自分を近づけていくようにしたい。
エルは、そんな想いを新たにしていた。
151−MENS− 心の在処 9/10:2011/05/21(土) 13:06:37.88 ID:mpv1crl0
「えっ、それはちょっと……
要するに、これからは君が、ああいう表情をすることが、あんまり無くなるってことだよね」

シオンは、自分の腕に抱かれたままの状況にいながら、強い意思を宿す瞳で、こちらの方を見つめて
いたエルに対して、ほんの少しだけ驚いたような表情をした。

「……っ、何だよ、シオン! それって、どういう……」
「いや、別に……そういうところも全部含めて、君が好きだってことだよ」

先程からエルを抱きしめたままでいたシオンは、自らの片方の手をエルの後頭部へと添えて、その額
に軽く口付けてから、小さな声でそう言うと、ようやく自らの腕を振りほどいた。

「えっ、あっ、それって……」


エルが驚いた表情のまま、その場で一瞬、固まったように、動くことを止めていた合間に、シオンは、
エルの身体からベッドの上へと落ちていたブランケットを自らの手元に手繰り寄せ、エルの前へと差
しだした。
それから、ベッドの淵に手をついて立ち上がり、再び、エルが膝をついて座っていたままのベッドの
方へと振り向くと、普段の朝と変らない、いつもの笑顔で、エルに声をかける。
152−MENS− 心の在処 10/10:2011/05/21(土) 13:08:18.96 ID:mpv1crl0
「さて、紅茶でも淹れてくるよ。ミルクティーでいい?」
「えっ、あ、うん」

そのまま、シオンの後ろ姿を見送ったエルは、ようやく少しおちついた気持ちを取り戻しながら、小さく
息をついた。
そうして、自らの背中羽根か一瞬にして封じ、シオンから渡されたブランケットをふわりと羽織るよう
にしてから、肩にかけながら、これからのことに想いを馳せる。

昨晩、遭遇した追手は、そう遠くないうちに、この場所を特定するだろう。
それでも今は、それが少しでも遅れることを祈らずにはいられなかった。
いずれは、今のこの場所からも去らなければならないだろうし、いつもシオンの足手纏いになりがち
な、自分のことを考えると、また、シオンとも、別れなければならない時がやってくるかもしれない。

「それでも、俺は、今は、ただ、シオンの傍に居たい。ただ、それだけが、俺の望みなんだ」

シオンが去っていった後、今は、ただ一人きりになった、この部屋のベッドに座ったまま、エルは小さ
な声で、そう呟いた。

【END】
153−MENS− 心の在処 :2011/05/21(土) 13:10:48.31 ID:mpv1crl0
レスありがとうございました!

ちなみに、エルには、普段からどちらかといえば、寝起きは良くない方…なんて設定があったりします
細かい設定を色々と考えるのも大好きなのですが、SSにあまり活きない裏設定の方が多くて困るw

以上、お目汚し失礼しました
154創る名無しに見る名無し:2011/06/07(火) 22:23:54.60 ID:oxbF8Gqo
性表現ってありなの?
全年齢板だよねここ
155創る名無しに見る名無し:2011/06/08(水) 15:02:21.79 ID:DQCmwgiZ
自分で考えた上で、小学生に見られても良いと思う物を投下すればいい
156創る名無しに見る名無し:2011/06/22(水) 02:44:07.00 ID:e4/KnOcq
騙しリンクも多いけど、携帯からだけだが、かなりの数のBL同人読める。
ttp://bl.doujin-mob.com/
157創る名無しに見る名無し:2011/06/22(水) 04:40:42.28 ID:quEXYunC
【源氏物語】"光源氏"と"匂宮"と同性愛を描いた「幻の第55巻」が発見される ★3
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1306046832/
158創る名無しに見る名無し:2011/06/22(水) 14:05:56.05 ID:wL4jfIqY
159創る名無しに見る名無し:2011/07/16(土) 11:18:59.10 ID:P/49eqP5
一応保守
160創る名無しに見る名無し:2011/07/24(日) 17:06:44.96 ID:P/ber06C
BLも韓流? 韓国人Jリーガー×日本人大学生のCPのBLマンガがBL雑で連載開始
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/news2/1291898789/
161創る名無しに見る名無し:2011/07/27(水) 14:14:41.76 ID:bWSeIxUg
保守
162転生:2011/08/06(土) 15:30:21.07 ID:vPFfUNMD
保守ついでに投下
うん、よくある転生ネタです
163転生 1/2:2011/08/06(土) 15:31:55.12 ID:vPFfUNMD
はじめて君を見た時は、そりゃ驚いたさ
正直あり得ないと思ったね

俺が長いこと流転を繰り返しながら
探し求めていた貴女が、

まさか男として転生していたなんてね

だけどね、君のその笑顔を見る度に、
やっぱり、俺は貴方が好きなんだなぁ…って、

それしか、思い浮かばなくなった
164転生 2/2:2011/08/06(土) 15:34:11.97 ID:vPFfUNMD
だから、たとえ、
君自身が俺のことを覚えていなくても、
世間一般でいうところの恋人同士のように、触れ合うことさえ、叶わなくても
実際の距離が近いとか、遠いとか、そんな形式なんかも、もう、どうでもいいから

ただ、君の傍に居たいんだ

俺は、君が好きだよ
愛している

この想いだけを胸に
俺は、いつものように君に笑顔を向けた

−end−
165転生:2011/08/06(土) 15:36:33.04 ID:vPFfUNMD
相変わらず、SSにするまでの気力がなくてごめん
皆も気が向いたら、ネタとか、設定とか
思いつくままに投下してくださいな
166創る名無しに見る名無し:2011/09/03(土) 06:52:59.76 ID:EkLgXlX4

花王デモ、日時確定。

9/16 11時集合 11時30分開始

集合場所:中央区坂本町公園
167創る名無しに見る名無し:2011/09/19(月) 03:44:14.80 ID:/kT88vWn
【ひと夏の思ひ出】
あの夏、俺は初めて男に抱かれた。
それは唐突かつ不可抗力としかいいようがなかった。
男は何故か俺の秘密を知っていた
おちんちん
そう、生殖器の機能を俺は海外での事故で失っていたという事を事前に男は知っていたのだ
俺の沽券と股間に関わるデリケートな問題だった。
当時、俺には婚約者がいて婿養子となる身だった
彼女はそんな俺でも良いと言ってくれていたが、
彼女の両親は生殖機能のない男との結婚を許さないだろう
彼女は1人娘で子供が産まれないとしたら名家の血筋が絶えてしまう
彼女の両親には絶対に知られるわけにはいかないのだ
男は臭かった
いつも大量のコロンを使用しているスカした奴だった
当主の秘書であった奴は俺の身辺調査をして秘密を知ったのだ
俺は奴に服従するしか方法がなかった
そしてあの悪魔は俺にこう言った
「さあ絶望を見せてやろう。恥辱と快楽に咽び泣くお前自身の姿をな」
そこにはビデオカメラに映る無様な俺の姿があった。
俺は京子のことを片時も忘れたことがなかった。
しかし俺はあの時、ただ目先の快楽を求め続けていた。
男の眼鏡には何かに縋るような俺が映っていた。
ネクタイをきつく閉めすぎて、男は俺は死んだ。
男に惹かれた俺の京子への愛情というアイデンティティは、
…完全に死んだ。
今年の夏、また新しいアイデンティティを手に入れる
168創る名無しに見る名無し:2011/09/19(月) 03:46:48.55 ID:/kT88vWn
>>167
ジャンルなど投下し忘れました
リーマン/ノンケ→ホモ/凌辱/女出演有/安価
169創る名無しに見る名無し:2011/09/19(月) 03:47:37.30 ID:eZ5BKoqt
斬新な設定ですね
170創る名無しに見る名無し:2011/09/19(月) 03:51:08.61 ID:/M2eO8eI
>>167
ざ…斬新すぎる…バイトをサボってまで見てしまったではないか…
171創る名無しに見る名無し:2011/09/19(月) 03:53:06.45 ID:lYBmlWfJ
いいじゃないですか、こういったの好きです
172創る名無しに見る名無し:2011/09/19(月) 22:52:50.72 ID:iSCTILqM

【温暖化】独イケメン活動家。「海氷面積の縮小」を表現したビキニで抗議デモ(画像有)
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1306046832/701-800
173創る名無しに見る名無し:2011/10/08(土) 06:19:19.79 ID:6VV993/K
ほしゅ
174創る名無しに見る名無し:2011/10/09(日) 23:04:56.63 ID:tEZUIT/C
少年漫画において、男女関係がまったく描かれないのを『腐媚び』というならまだしも、
美少女キャラからの男キャラへの想いがなかなか報われないのや、
男キャラからの矢印が描かれないまたは男キャラからの矢印が女キャラからの矢印より少ないのをさして、
『腐に媚びてるからだ』という意見を聞くとこの意見は女のそれだなと思う。


青少年漫画にそういう傾向があるのは青少年漫画が基本的に男が主人公に感情移入するのを前提にしてつくられることと、
自分の分身×女の子より自分の分身←女の子のが優越感に浸れるからってのがそれらの一番の理由だろ。
青少年漫画から腐媚びが消えてもこの傾向は変わらないわ。


カプオタ女が好きな男女関係と腐女子が好きな男女関係もちがうが
男の好きな男女関係とカプオタ女の好きな男女関係も違うんだから。
なに全部女のせいにしてるんだか。
175創る名無しに見る名無し:2011/12/24(土) 18:58:52.22 ID:0ME2xpBM
【アンケート】X'mask恒例。童貞をカウントするスレ ★3
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1320157236/
176創る名無しに見る名無し:2012/04/17(火) 07:00:28.23 ID:ijcjxpp3
「雨に咲く花」http://shiguresakuya.yukishigure.com/


【舞台設定】
郊外に佇んでいる寂れた建物
そこは知る人ぞ知る高級遊郭
そこで男娼として働く時雨と咲也
ネコ同士の二人はそれぞれのお客様の
相手をしてからでも求め合い・・・



【時雨】
15歳 156cm 細身で華奢
色白で黒髪の碧眼 少年らしいシャツと半ズボン B型

小さい頃から母親の再婚相手の義父から暴行を受けていた
それを知っていた母親も助けてくれなかったことがトラウマで
両親の愛に飢えているくせに
それを望んでも叶わなかったことで
誰も愛せない性格になってしまった

家出同然に飛び出した繁華街で
この高級遊郭の上客に見初められ
もう帰る家もないと諦めた態度で連れてこられる

誰に抱かれても快感を感じてしまう淫乱
その分誰のことも愛せないで冷めた性格だったが
咲也と出逢い徐々に内面が変わっていく

咲也の最初の「教育係」として
咲也の初めてを全て奪った先輩
今でも乱暴な客が咲也につかないようにと
自分が身代わりになるなど
無意識に咲也を気遣っている


【咲也】
14歳 152cm 少女と見紛う容姿
和風を好むお客のために用意された和室と着物姿 AB型

実業家の一人息子として両親の愛をたくさん受けて育ったが
事業に失敗し多額の借金を残して父親が自殺してしまう
お嬢様育ちで病弱な母親の入院費用のため
父親の取引相手だった人物から高級遊郭の存在を知らされ働くことに

女みたいとからかわれるのが嫌で護身術と兼ねて習っていた
柔道はかなりの腕前だが普段は人見知りの大人しい性格

遊郭に売られて初めての「教育」を時雨にシてもらったため
時雨に特別に懐いている

時雨への依存にも似たヤンデレ
時雨がお客から「いきすぎたプレイ」をされたりすると
普段の大人しさからは想像できないような執着を見せ
お客に手を上げてでも時雨を守ろうとしてしまう
177創る名無しに見る名無し:2012/04/30(月) 09:07:58.46 ID:QubLnfJ5
>>176
投下乙!切ない設定に萌えました!

が、ここは全年齢板ですから、
直接的なエロ表現を含むページへの誘導は駄目ですよ!エロは!
微エロ位までの表現に留めてくださいませ!

よろしかったら、801板の方にも遊びにきてね
(あ、18歳未満の方は遊びに来ちゃだめだよ!!絶対だよ!!)
178創る名無しに見る名無し:2012/04/30(月) 15:13:42.62 ID:8b96T6gI
華麗な誘導乙
179創る名無しに見る名無し:2012/05/07(月) 23:14:55.04 ID:n6lFBy8I
180創る名無しに見る名無し:2012/06/28(木) 14:46:19.83 ID:ocURBMqo
EUREKA Act.1 Olam Atziluthいかがでしたでしょうか?
ビブリオマニアクスさんにて売ってます
181創る名無しに見る名無し:2012/11/21(水) 00:13:03.93 ID:TvImXxBx
神様がほしゅしてるよ…
182創る名無しに見る名無し:2013/01/02(水) 01:57:03.05 ID:igBe/GoO
183創る名無しに見る名無し
>大阪府三島郡島本町の小学校や中学校は、暴力イジメ学校や。
島本町の学校でいじめ・暴力・脅迫・恐喝などを受け続けて廃人同様になってしもうた僕が言うんやから、
まちがいないで。僕のほかにも、イジメが原因で精神病になったりひきこもりになったりした子が何人もおる。
教師も校長も、暴力やいじめがあっても見て見ぬフリ。イジメに加担する教師すらおった。
誰かがイジメを苦にして自殺しても、「本校にイジメはなかった」と言うて逃げるんやろうなあ。
島本町の学校の関係者は、僕を捜し出して口封じをするな

>島本町って町は、暴力といじめの町なんだな

子供の時に受けた酷いイジメの体験は、一生癒えない後遺症になるなあ