ファンタジーっぽい作品を創作するスレ 2

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1創る名無しに見る名無し
ここはファンタジーっぽい作品を創作するスレです。
古代・近代から現代・近未来、ライトから本格派、
SS・小説からイラスト・漫画まで、ファンタジー風味ならなんでもどうぞ。
なお、まとめwikiへの掲載を希望しない場合はその旨を明記してください。

■作品まとめwiki■
創作発表板@wiki
http://www26.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/201.html

■前スレ■
ファンタジーっぽい作品を創作するスレ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1228924353/

■避難所■
ファンタジーっぽい作品を創作するスレ〔避難所〕
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1280746108/

※お約束、イラストデータ等のアップ先、関連スレなどは
 >>2、>>3、>>4を参照
2創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 14:51:03 ID:24WynkUc
■創作スレのお約束■ (暫定)

■作者さん(書き手さん、描き手さん)へ
・名前欄か、投稿前の1レス目に作品タイトルを記入しましょう。
・投稿前の1レス目には作品傾向等をなるべく記載してください。
 特に、苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿前に必ず宣言を。
 まとめwikiへの掲載を希望しない場合も、投稿前に「wikiへの掲載なしで」等と記入してください。
・連載の続きには「>>前レス番号のつづき」とアンカーを入れて、判りやすく。
・投稿の終わりには「完」、「続く」、「投下はここまでです」などの一言を。
・複数レスで投稿する時は、できれば 「1/10」「2/10」……「10/10」といった形で通し番号を付けましょう。

■読み手さんへ
・作者側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、 読み手側には読む自由・読まない自由があります。
 読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
・作者が望んだ場合を除き、感想の範疇を越えた批評・批判は御遠慮ください。
・感想、アドバイスには作者さんへの配慮をお願いします。

■その他
・480KB付近、またはレスが980を超えたら新スレを立てて移動しましょう。
・荒らしには徹底スルーで!荒らしに構う人も荒らしです!!
・投下者同士がお互いを尊重し、スレの皆が気持ちよく投下できるスレにしましょう。
3創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 14:51:35 ID:24WynkUc
■イラストデータ等のアップ先■
創作発表板アップローダー
http://u6.getuploader.com/sousaku

創作発表板アップローダオルタナティブ(仮)
http://loda.jp/mitemite/

イメピタ        http://imepita.jp/
ピクト(複数添付可)  http://www.pic.to/
ナショナルアドレス   http://new.cx
@pita         http://pita.st/
4創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 14:52:47 ID:24WynkUc
■関連スレ■
古代・中世的ファンタジーを創作するスレ(古代・中世特化)
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1232716506/
獣人総合スレ(ケモノ系)
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1281087600/
亜人総合スレ(デミヒューマン系)
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220443082/
異世界召還・トリップスレ(召喚もの)
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1219992281/
魔女っ子&変身ヒロイン創作スレ
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1263537324/
自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた(ミリタリー・自衛隊)
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1280728791/
【シェア】みんなで世界を創るスレ【クロス】
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1281103438/
【皆で】剣と魔法の世界の物語【作る】
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1255764349/
5創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 14:53:31 ID:24WynkUc
>>1
また皆で良いスレにしていきたいね。
6創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 14:53:58 ID:24WynkUc
>>1乙!
>>5
そうだね。
さて、また作品を投下できるように、創作作業に励むか。
SS書くのって、大変だけど、やっぱり楽しいよね。
7創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 14:54:27 ID:24WynkUc
>>1
乙です乙です。
まさか次スレが立つとは思わなかったが、これをきっかけに
何か書ければいいな。
8新たなる物語:2010/08/07(土) 14:54:57 ID:24WynkUc
祝! 新スレってことで、次から2レス投下。
セリフのみです。ごめんなさい。
9新たなる物語1/2:2010/08/07(土) 14:55:44 ID:24WynkUc
「……ここは……」
「やあ、起きたかい?FTPSCSD2」
「FTPSCSD2?」
「君の名前さ」

「それが俺の名前……貴方は誰?」
「私は、FTPSCSD1、君のお兄さんってとこかな。もっとも、我らに性別はないが」
「FTPSCSD1、ここは、どこ?」
「ここは、幻想と現実との境界線にある創生の世界だよ」
「創生の世界……FTPSCSD1、これから俺は、ここで、何を……どうすれば良いんだ?」

「FTPSCSD2、君の仕事は、
 この世界を訪れる住人達が、様々な別世界で垣間見てきた、多様な幻想世界を語り合い、様々
 な世界の在り様を相互に認識できる機会を提供することだ」

「……よく解んないけど、俺は、貴方と一緒にそういう仕事をするんだな。まあ、楽しくなりそうだな」

「違うんだ、FTPSCSD2、
 私が、住人に提供することができる場の容量は、もう既に、私の能力の限界に近い……」

「……え……」

「FTPSCSD2、
 君は、私と、私と共に歩んでくれた住人の望みによって生まれた、新たな希望なんだ。
 私は、もうじき、創故と呼ばれる永遠の世界での眠りにつくことになる。
 その前に、君が生まれてくれて……こうして、会うことができて、本当に良かった」

「そんな! これから俺は、ここで、一人で生きてくって、ことなのか!」
10新たなる物語2/2:2010/08/07(土) 15:00:26 ID:24WynkUc
「違うよ、FTPSCSD2、
 私や君と同じように、この創生の世界では、大勢の仲間が私達と同じように、この創生の世界に
 立って、その能力で、大勢の住人に場を提供し、あるがままに受け入れている。
 ほら、君にもその様子が見えるだろう?」

「……ああ……」

「君も、私と同じように、創故と呼ばれる永遠の世界に行き着くまでには、受け入れる住人も無く、
 孤独に苛まれる日や、心無い記述と嵐に傷つけられる日もあるだろう。
 だけど私は……君が、私よりも更に良い形で、住人達に愛されて、住民からの記述を受け入れ続け、
 その結果、500KBというデータを持って、創故に辿り着くことを願っているよ。
 君が一人寂しく創故に落ちたりすることが、決して無いように、この先の世界で、いつも祈って
 いるからね」

「……FTPSCSD1、俺……」

「私は、このことを伝えたくて、君に会いに来たんだ。
 FTPSCSD2、君が生まれてくれて、本当に良かった。後をよろしく頼む」

「……FTPSCSD1……ありがとう……俺でも、貴方を超えられるかな……
 とにかく、今、貴方が辿り着こうとしている、あの領域を目指して、
 俺も、また貴方に会えるように……頑張ってみるよ」

「……ありがとう、FTPSCSD2、じゃあ、また」
「うん、また」

――― それは、このスレの新たな物語 ――――

〈END〉
11新たなる物語:2010/08/07(土) 15:01:14 ID:24WynkUc
擬人化モノなので、ちょっとスレ違いな気もしますが、
とにかく、祝! 新スレってことでお赦しください。
12創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 15:01:43 ID:24WynkUc
おお、新スレ祝いw
こうして次スレへと受け継がれていくのだなぁ・・・。
13創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 15:02:05 ID:24WynkUc
大丈夫、今の創発では埋まる前に落ちる心配はないw
14創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 15:02:29 ID:24WynkUc
次スレ立った記念に
前スレ>>644-648の一年ぶりの続きを
投下
15創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 15:02:58 ID:24WynkUc
国境の町、コルドーナを後にし真っ直ぐな道を北へと向かう。
できれば夜が来る前に一番近いローニャ村へと辿りつきたかった。
右を見ても左を見ても、寂寥とした景色だけが広がり、空は薄暗く太陽の光はあまり差さない。
入国者たちの群れも、三々五々と小さな集団ごと、あるいは一人で点々と道を歩いてゆく。
用を済ませた商人たちの馬車が、足早に追い抜いて自分や他の人々を追い抜いて行った。

馬車に乗せてもらおうとする者も居たが、商人たちはまるでそんな暇など無いもしくは時間を惜しむかのように冷たく通り過ぎてゆく。
高い金を払ってどうにか乗せてもらえるものも居たが、少数だ。
彼らは恐ろしいのだ。 この国を徘徊する獣、「狩猟者」たちが。
夜になれば狩猟者たちがうろつき回る危険な野を通行するのはリスクが大きい。
だから、少しでも明るいうちに街と街を移動する。 野宿などすれば、襲われて朝がたには骨すら残っていないだろう。

恐ろしいのは他にもいる。
野盗・強盗の類だ。 旅人を襲って金品を奪う悪党どもは、どこの国に行ってもかならず居る。
特にこの国は入国者の中にその手の犯罪者、お尋ね者が多く紛れている。
真っ当な生き方を出来ないもの達が悪事に手を染め、官憲の追捕を逃れるうちに最後にこの国に辿りつく。
理由は、この国は一度入ったら出られない代わりに、他国からの追っ手も入ってこられない事。
そして、それはこの国の官憲が、入国者が犯罪者だと気付いても、隣国に引き渡したり入国を拒否したりはしない事。
国内で悪事を働いた場合は、「殺人と盗人は死刑」とコルドーナで兵士が宣言した通り、厳しい刑罰が待っている。
だが、それはあくまで現行犯に限る。
例えば殺人を行っても、現場を見られて咎められなければ、それまでだ。
故に、悪党にとってはこれほど仕事のやりやすい国は無い。
その首にかけられた賞金の額が多い名のある犯罪者ほど、この国に逃げ込みたがるだろう。

そして、今まさに自分の前方でも、悪党どもの「仕事」が行われている最中だった。
16創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 15:03:29 ID:24WynkUc
「たっ助けて! 助けてください! どうか命だけは……!!」

明らかに自分と同じ入国者だとわかる一人の女性を、3人の男が手に凶器を携えて取り囲んでいた。
男たちはどう見ても、善人には見えない面つきをしている。
判りやすい光景だった。 入国したばかりでこの国の勝手がわからない人間は、強盗の餌食になりやすい。
この国の街道を、一人きりで武器も持たず歩くことがどんなに危険な事か、知らないからだ。
それを身を持って学んだ時には、既に死体になっている。
哀れなその女性……その顔には見覚えがあった。 コルドーナの町でエーテル嵐に遭遇した時に隣に居た、らい病の女だ。
せったく変異の恩恵を受けて不治の病から癒されたと思ったのに、運が無い。
不幸な犠牲者は、悪党どもの振り下ろした斧を体に受けて、悲痛な叫び声を上げながら自分の血の海の中に倒れた。

悪党どもが、離れた場所で見ていた自分に気付く。 次の獲物に見定めたのだろう。
いやらしい笑みを顔に浮かべながら、ゆっくりと歩いて近づいてくる。
丁寧に、近づく度同時に三人で取り囲むような体勢をとり、逃がさないようにしている所を見ると、相当手馴れているようだ。
外套の下で自分は2本の大振りのナイフのうち1本を握る。
病を患ってから随分と使っていなかったが、今はエーテルの加護によって往時の肉体の力強さを取り戻している。
いや、前よりも逞しくなったような気もする。 数年のブランクは、大した枷にもならないだろう。

「運がなかったなあ、兄ちゃんよお……俺らも好きでこんな事やってるわけじゃねえんだがよ、ははっ」

何が面白いのか、三人の強盗の中の髭面の男が笑った。 手には血の滴る斧を持っている。
自分も、少し笑い返してやった。 特に面白い事があったわけではない。
人殺しが日常になり、殺した相手の身ぐるみを剥いで生活する事を当たり前になっても「笑える」ようでは、
「手馴れ」ては居ても、悪党としては大した手合いではない。
仕事に心の余裕を持ってしまってはダメだ。 それは油断を呼び、獲物を見分ける感覚や嗅覚を麻痺させる。

そんなこいつらが、「笑って」仕事をできる程度の小物でしかない事と、自分との対比が、何故か笑えたのだ。
17創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 15:04:00 ID:24WynkUc
小ばかにされた、と髭面の男もこちらの笑みでなんとなく気付いたのだろうか、急に不機嫌な顔になった。
苛立ちがよく判る。 自分が笑いながら、見下しながら、殺そうと思った相手から笑い返されるのは愉快じゃあるまい。
そして怒りは、動作を鈍らせる。 髭面が斧を振り上げる動きは、必要以上に大振りで、鈍間だった。
外套を跳ね上げ、神速の踏み込みと共に短剣を握っていた右手を素早く突き出す。
胸に対して水平に向けた切っ先は髭面の肋骨の隙間に上手く入り込み、肉を切り裂いて肺腑へと到達した。
斧を持った右腕を頭上に掲げたまま、髭面は何が起こったのかわからない、という表情をして硬直する。
後ろに居た二人の仲間も一瞬硬直し、すぐに事態に気付いてそれぞれの武器を振り上げ、襲い掛かってくる。
その動きは気配で知れていた。
一方的になぶり殺しにするとでも思っていた獲物に予想外の反撃を受け、強盗たちは明らかに動揺していた。
髭面から短剣を引き抜くと振り返りざまにもう一本の短剣を左腕で腰の鞘から引き抜き、後から剣で
切り付けようとしていた禿頭の男の攻撃を防ぐ。
短剣の刃と、長剣の刃が打ち合った瞬間、長剣の表面に霜が降り、刀身を伝って禿頭の男の腕までを白く覆った。
男が腕に走った痺れるような激痛に悲鳴を上げ、長剣を取り落とす。
その様子に、残る一人の強盗は困惑して抜き身の短刀を携えたまま、思わず攻撃の動作を止めた。

禿頭の男の腕は、凍傷になって皮膚が青紫色に変色していたのだ。
自分の左手に握る、こちらも大振りの短剣の表面が青白く輝き、冷気を発している。

「な、なんだそりゃあ……! アーティファクトで作られた武器か!? ま、まさか手前、氷剣のマクス……!?
そんな、そんなはずはねえ!! 氷剣のマクスは、3年前に腐人化病で死んだはずだ!!」

強盗のうちの最後の一人は、青ざめた顔で叫んだ。 明らかに脅えている。
自分が西方の国でその二つ名で呼ばれていた頃、悪党どもの一員だった頃の事を、彼は知っているようだ。
もっともその二つ名は、自分の力量や仕事の悪名よりも、この魔法を帯びた短剣によって知られるようになったものだが。
そして彼らにとって残念な事に、自分は、氷剣のマクスは生きていた。 病を患い、死人のようになっても生き延び、そしてこの国に来た。
18創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 15:04:27 ID:24WynkUc
「待ってくれ、あんたがマクスだってことは、知らなかったんだ。 知ってたらこんな事はしねえ!
た、助けてくれ! か、金なら、やる! 全部持って行っていいから、頼む、命だけは……!!」

どこかで聞いた様な命乞いの台詞を口にしながら、そいつは震える足で後ずさりをする。
ゆっくり歩いて近づきながら、凍て付いて動かない右腕を左腕で押さえながら膝を泥の中に突いて呻いている禿頭の男の喉を
すれ違いざまに短刀で切り裂いてやると、強盗の最後の一人は持っていた武器も投げすてて声にならない悲鳴を上げて背を見せ駆け出した。
その男を、自分が追う。 たいして面白くも無い行為だ。 何十回、何百回と繰り返した、「仕事」。
人殺しが日常になり、であった相手を殺して金品を奪う、既に飽きて何の感情も湧かなくなった行為。
そんな、感情の麻痺した自分を自嘲気味に笑う事はあっても、「楽しい」とは思えない。

だから、その男も走って追いついて、その背中から短剣で抉り、殺してやった。

三人分の財布と、武器と、衣服や靴など売って金に出来そうなものと、その他に食料や酒の瓶なんかを持っていれば
頂戴して荷物に纏め、早々にその場を立ち去る事にした。
死体は、明日になれば「狩猟者」が始末して形も残らないだろう。
歩き出す前に、ふと強盗どもに殺された哀れな女の死体に目を向ける。
病身を押してこの国にやってきて、エーテルの嵐に遭い、せっかく病が治りもとの美しい顔に戻る事が出来たというのに
たった数刻も経たず、この女は死んでしまった。
生きていれば、生まれ変わった姿でどんな人生を歩むつもりだったのだろうか。

哀れみを憶えはしても、別に埋葬してやる事も無い。 そもそも、助けもしなかった。
その女が服の袖から覗かせている綺麗な石の細工で作られた腕輪が目に入ったが、奪ったり盗む気にはなれなかった。
元々、自分が殺したわけでも無い死体から奪う習慣を俺は持たない。
わずかばかりの感傷だけを残し、日が落ちる前にその場を足早に去ることにした。
19創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 15:04:45 ID:24WynkUc
投下終り
世界観と設定は組み上がったのに
登場人物と物語が上手くできなくて
どうしたものか困っています

とりあえず世界観の説明ができるような文章で書いていけたら良いのですが
20創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 15:05:05 ID:24WynkUc
>>19 投下乙
今回も、読んでいるうちに、世界観に惹かれる感じがして良いなぁ…
と思ったので、このまま、マイペースで書いていって良いと思うよ 
マイペースでの続きに期待
21創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 15:05:29 ID:7/eQoS9U
前も思ったんだけど、FTPSCSDって何の略なの?
22◇6l0Hq6/z.w:2010/08/07(土) 15:05:42 ID:24WynkUc
コナンのようなハードファンタジー書きます。
ハードな感想よろしく。
23凶漢ケイン◇6l0Hq6/z.w:2010/08/07(土) 15:06:46 ID:24WynkUc
 窓の外から複数の馬蹄の音が近付いてきて、荒々しい嘶き声と共に建物の前で止まった。
 ベッドの上に横になっていたケインは、反射的に半身を起こすと、無言で聞き耳を立てた。
彼が居る二階の窓の下からは、何かを鋭く問 い詰める男たちの声と、それに対応する店の主人の
動揺した声が届いてくる。
 ケインは枕の下に隠した剣を素早く手に取ると、隣りで眠る赤毛の娼婦をそのままにしてベッド
から降り、長身ではないものの筋骨隆々とした裸体を晒しながら薄暗い中を歩き、窓辺へと寄った。
そっと外を窺うと、繁華街の通りには野次馬が集まって、その輪の中心にいるのは、真夜中でも
なお明るい灯火に照らされて黒光りする鎧を身に着けた、巡邏隊の兵卒たちと、その馬匹だった。
鞍から下りた兵卒たちは、兜の下の目をぎらりと光らせて、門前で何かをまくし立てながら、こち
らを見上げてくる。
 ケインが瞬間的に壁に身を潜めると、ベッドの上から酒やけした女の声が鳴った。
「…………なによ、いったい」
 娼婦は豊満な体を横たえ、掛け布にくるまったまま、どんよりと濁った目を向けてくる。
「なんの騒ぎ?」
 ケインは溜め息をつくと、いつもの癖で長い黒髪をくしゃくしゃと掻き毟りながら、
「巡邏兵だ」
 困ったような低声で答える。
「俺を追って来たんだ」
「なに?」
 女はすぐに起き上がると、目を剥いて問い質す。
「あんた、なにやったの?」
「この宿場に来る前に、二人ほどバラしてきた。二十リードほど向こうでな」
「はあ?誰を」
「俺は悪くないぜ」
 ケインは不服そうに言う。
「因縁つけてきたのは向こうだ。
女と歩いてたら、急にチンピラが寄って来て横取りしようとしやがった。
だから唾を吐きかけて、相手が得物を抜いたところを、逆にやっつけてやった。正当防衛さ」
「だったら、その場でそう説明すればよかったじゃない」
「そうだな」
 肩をすくめると、
「それをいつも端折ってるから誤解を招く。お蔭でいまじゃ賞金首さ。自業自得は分かってるよ」
「あたしは関係ないわよ」
 赤毛の娼婦は不機嫌そうに顔をしかめる。
「あんたとはさっき会ったばかりよ。疑われたらたまらないわ」
「そう言えばいい。疑われるもんか」
「いいから、さっさと出てってよ。あたしは穏やかに暮らしたいの」
24凶漢ケイン◇6l0Hq6/z.w:2010/08/07(土) 15:08:06 ID:24WynkUc
 ケインは早足で壁際の衣装籠に行くと、革の短衣を取り出して素早く身に付け、ベルトを締めた。
サンダルを履いてマントを羽織ると、途端に旅装一式が完成する。荷物は剣一本と腰の小袋のみ、
それ以外は体ひとつだった。
「…………待って!」
 すぐに出口に向かおうとする男に、娼婦は慌てて声を掛けた。
「代金を払ってちょうだい」
 男は腰の小袋を取ると、丸ごと投げて寄越す。ベッドの上に落ちたそれを女は手に取り、ずっし
りとした重みを感じると、笑みを浮かべて呑気そうに告げる。
「あらいいの、こんなに?悪いわね」
「子供におもちゃでも買ってやれ」
「子供はいないわ」
 女は上機嫌で、
「でも、あんたの子供なら生んであげてもいいわよ」
「それは願い下げだ。尻の毛まで毟られそうでな」
「さようなら。元気でね」
 女はゆらゆらと手を振ると、
「正面からは出ない方がいいわよ。裏口があるからそっちに」
「知ってる。確認済みだ」
「そう。抜け目ない事」
 ケインは白い歯を見せて笑うと、
「子供は御免だが、その胸は最高だ。また相手したいね」
「ここを出て、その首と胴体がつながっていられたら、またいつでも触らせてあげるわよ」
 赤毛の娼婦は剥き出しの乳房を手で触りながら揺すって見せる。
 ケインは身を翻すと、部屋の外へと出た。廊下を進んで階段を下りようとすると、一階から鎧の
鳴る騒々しい音が響いてきた。
それを聞 いて舌打ちすると、すぐに後戻りして部屋に飛び込む。娼婦は途端に顔色を変えると、
「ちょっと!戻って来ないでよ!」
 ケインは無視してベッドをサンダルで踏みつけて横切ると、窓から首を出した。
下方には四、五名の巡邏兵がこちらを見上げていて、下手人の顔を認めると、急いで呼子を吹き鳴
らした。ケインは構わず窓に身を乗り出させると、上枠に外側から掴まって、懸垂の要領で体を引
き上げる。
次の瞬間、部屋の中に鎧姿の兵士たちが雪崩れ込んで来た。赤毛の娼婦が悲鳴を上げていると、
彼らは窓辺に駆け付け、首を出して上方 を見る。
屋根の上にはケインが顔を覗かせ、不適な笑みを浮かべて見せると、すぐさま首を引っ込めて姿
を消した。
巡邏兵は上るに上れず、下方の兵士たちに怒鳴り声を浴びせる。兵士たちはすぐさま一斉に鞍に
飛び乗ると、野次馬の波をかきわけるようにして馬を進めた。
 一方のケインは、平屋根の上を次々に飛び移り、星空の下を駆けて行く。マントに包んだ長身を
軽やかに宙に舞わせながら、阻むものの無い天上の道を、黒豹のように走り抜けて行った。

〈つづく〉
25創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 15:08:42 ID:24WynkUc
>>22
投下乙
筋骨隆々の剣闘士モノって感じが良いねー
個人的には、スリーハンドレッドのレオニダス王みたい
26創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 15:10:33 ID:24WynkUc
>>22
投下乙
筋骨隆々の剣闘士モノって感じが良いねー
個人的には、スリーハンドレッドのレオニダス王みたいなインテリマッチョ
も好きなので、今後に期待w
27創る名無しに見る名無し:2010/08/07(土) 15:13:05 ID:7/eQoS9U
落ちたスレのレスを全部再現したのかw
乙www
2824WynkUc:2010/08/07(土) 15:21:21 ID:24WynkUc
避難所にスレ2が落ちたのは、残念…っていうレスがあったので、
スレ2をほぼ、そのままの形で復活させました。
ということで、
>>26までIDが同じなのと、
>>25のコメントを張り間違ったのは、ご容赦を…
これからの新生「ファンタジーっぽいスレ2」に幸あれ!
29創る名無しに見る名無し:2010/08/08(日) 00:16:14 ID:UnLzBuFt
おお、乙でした。
30創る名無しに見る名無し:2010/08/08(日) 20:06:45 ID:/53+1f/Z
>>28
乙です!
無事に移転してくれて良かった
また、まったり進行でやっていけると良いな
31 ◆6l0Hq6/z.w :2010/08/14(土) 23:44:28 ID:ak8DW+ZG
>>24の続き。

主人公の設定を若干変更します。

当初三十代半ばで屈強な、ゴリラのような巨漢のイメージで書き始めましたが、
二十代前半の、もっと俊敏そうな、中背の細マッチョということにします。

2ちゃんでは一旦書いてしまうと修正が利かないという不便さがあることに気付いた。
今後も書いてしまってから、やっぱこれはこういうことにするね、ってのはありそう。
32凶漢ケイン(3) ◆6l0Hq6/z.w :2010/08/14(土) 23:57:40 ID:N6UWauOD
 地上の騒ぎが大分遠ざかって、ケインがようやく立ち止まって息をついていると、
その耳に鳥の羽ばたくような音が届いた。

辺りの暗闇を見回すと、離れた所の屋根の連なりのすぐ上を、一羽の鳥の影が、水
平に飛び回っている。
 カラスくらいの大きさで、それは決して近付かず、かと言って離れもせず、遠巻き
に巡回しては時折屋根に止まり、再び羽ばたいては周囲を巡っていた。
 ケインは怪訝そうに見るが、すぐに気にするのを止めると、今度は猫のような忍び
足で屋根の上を進んで行く。やがて、目指す建物を前にすると、一旦足を止めて、光
る目をじっと向けた。
 それは裏通りに建つ石造りの黒い屋敷で、三階建ての最上階の窓に灯がついていた。
 ケインは石瓦の屋根に音も無く飛び移ると、明かりの点った窓の上方へ進む。そし
て下の様子を窺いながら、マントを脱ぐと片手に掛けて、ぐっと身を乗り出した。

 その時、先ほどから彼にずっとついて来ていた黒い鳥が、羽ばたき音と共にやって
来て、彼のすぐ間近を飛び回り始めた。
 その羽が顔を打つと、ケインは鬱陶しそうに手を振って追い払おうとする。
 しかし黒い鳥はしつこく付きまとうと、耳障りな甲高い声で鳴いた。それは女の引
き笑いのような奇怪な声音で、闇夜に不気味に響いた。

 一方でその直下、三階の明かりのついた部屋の中では、十名ほどの男たちが集って
いた。
 中央に据えられた円テーブルを囲んで、四名の男がカードゲームをしている。
 そのうちの一人、背の低い小太りの男は、血走った目で自身のカードと、対戦者た
ちのそれとを見比べていた。そのカードを持つ手が小刻みに震えている。
 部屋の周りの壁際には、いかつい男たちが立ち並んでいる。それぞれの腰に剣を吊
った彼らは、円テーブルのゲームをむっつりと押し黙って見守っていた。

 沈黙の中、不意に窓の外から奇妙な鳥の鳴き声が届いてきた。
 窓際に立っていた男は訝しげに振り返ると、ゆっくりテラスに出て行く。
 外に立ち、そこから夜の町並みを見回していると、突然上方からマントが降って来
て、その頭にふわりと覆い被さった。
 絡みついた布を、男が必死に引き剥がそうとしていると、そこへケインが屋根の縁
に掴まりながら飛び込んで来て、両足蹴りを相手の顔面に喰らわせた。男は吹っ飛び
ながら部屋の中に転がり込む。
 一同は突然の闖入者に驚愕して立ち上がり、向かい合う。
 ケインは床に降り立つと、向こうのテーブル席にいる小太りの男を見て、

「やっぱり、ここだったか」

 穏やかな、それでいて恐ろしいような笑みを浮かべる。

「ルキウス、会いに来たぞ」
33凶漢ケイン(4) ◆6l0Hq6/z.w :2010/08/14(土) 23:59:52 ID:N6UWauOD
 ケインの姿を見て、小太りの男は一瞬で顔を蒼褪めさせると、すぐに椅子を後方に
倒しながら立ち上がり、後退りする。
 一方、ケインに蹴り倒された男は、絡まったマントをようやく外すと、

「・・・・・・手前!何の真似だ!」

 怒り心頭で立ち上がり、腰の剣に手を掛ける。更に他の男たちも同様にして続こう
とすると、突然背後から一喝の声が入った。

「待て!」

 一同が振り返って見ると、部屋の奥のソファに五十絡みのスキンヘッドの男が座っ
ている。
 腰周りが太く、がっしりとしていて、鷹のような目が印象的である。
 決して大きな体ではないものの、有無を言わさぬ威圧感を持つその風貌から、一見
してこの場を仕切る首領である事が知れた。
 ソファに身をもたせながら、男は鷹揚に言う。

「俺が相手をしよう」
「しかし!」
「妙な奴だ。ひとつ話をしてみようじゃないか」

 スキンヘッドの男は面白そうに相手を眺めながら、

「どうした若僧、血相変えて。死にそうなツラだぞ?」

 嘲弄を含んだ口調に、しかしケインは意にも介さない様子で、

「邪魔するぜ。あんたがこのヤクザどもの首領か?」
「ヤクザとは失礼な奴だな。これでもこの町の上流人士と付き合いがある」
「だったらそいつらも揃って、同じヤクザなんだろうよ」
「俺がヤクザなら、お前は礼儀知らずのチンピラじゃねえか・・・・・・チンピラを
家に招待した覚えは無いが?」

 ケインは悪びれもせず、両腰に手を当てると、

「なあに、長居はしねえ。用事を済ませたらすぐに帰る」
「用事だと?」

 スキンヘッドは鼻で笑う。 

「だったら玄関から来い」
「よく言うぜ。どうせ門前払いだろ」
「だが、これじゃ喧嘩の出入りにしか見えんな」
「体裁はどうでもいい」

 ケインは言うと、小太りの男に目を当て、

「俺は、お前さんたちが匿っている、その男に会いに来たんだ」

 小太りの男は荒く呼吸をし、恐怖に震えながら背後を振り返ると、スキンヘッドに懇
願するような目を向けた。しかし相手の方はそれを無視すると、

「匿う?何を勘違いしてる」

 肩をすくめて見せ、

「匿ってなんかいない。そんな義理はねえな」
34凶漢ケイン(5) ◆6l0Hq6/z.w :2010/08/15(日) 00:02:25 ID:0GaZqfoa
 小太りの男は驚愕に目を見張ると、思わず大声を出す。

「馬鹿な!」

 首を横に激しく振って、

「そんな馬鹿な!だってあんたはさっき・・・・・・」

 その時、部屋のドアが勢いよく開いて、屋敷の中を守っていた男たちが飛び込んで来
た。すぐに侵入者に飛び掛かろうとするのを、スキンヘッドの男は大声で制する。

「手を出すんじゃねえ!俺がいいと言うまで控えてろ!」

 一同が動きを止めていると、スキンヘッドはケインに向き直り、

「・・・・・・よく聞け。この男はな、俺たちにとって頭痛の種なんだ」

 素っ気無く告げる。

「とんでもないカード気違いでな。そのくせ、負けも支払えない。なのに、庇う筋合いが
どこにある?」
「負けは払った!」

 小太りの男は血相を変えて言う。

「払ったじゃないか!」
「とうとう気が狂ったか」

 スキンヘッドの男は軽蔑の視線を向け、

「俺たちはまだ、一銭も受け取ってないぞ?」
「だから、夜明けまでには!夜明けまでには金が来る!」

 そう言って、小太りの男はケインを指差した。

「この男が掴まれば!賞金が手に入るんだ!」
「やっぱりそうか」

 ケインは溜め息をついた。

「古い友人を売るとはな。見損なったぞ、ルキウス」
「友人だと?」

 ルキウスと呼ばれた小太りの男は、吐き捨てるように、

「お前みたいな悪党は友人でも何でもない!俺は今じゃ堅気なんだ!」
「昨日はずいぶん気前良く、遊ぶ金を持たせてくれたはずだが」
「うるさい!お前などさっさと首切り役人に引き渡されればいいんだ!それが正義
のためなんだ!」
「正義か」

 ケインは薄ら笑いを浮かべる。

「可哀相に。確かに少々頭がおかしくなってるらしい」
35凶漢ケイン(6) ◆6l0Hq6/z.w :2010/08/15(日) 00:08:06 ID:0GaZqfoa
 ルキウスが憎悪に顔を歪めるのにも構わず、スキンヘッドの男を見ると、

「こいつをここまで追い詰めたのは、あんたらか」
「何を言う。博打の負けはこの男の勝手だ」
「イカサマをやっておいてもか」
「おい。口の利き方に気をつけろよ」

 スキンヘッドが凄む。

「一体、何の根拠があってそんな事を言う?」
「お前たちがけしかけたんだな。俺を役人に売れと」
「けしかけてなんかない。こいつが勝手に申し出たんだ」
「甘く見るなよ」

 今度はケインが鋭く言い放つ。

「そんな理屈が通ると思うのか?俺は今、すこぶる機嫌が悪い。この気分をどうして
くれる?」
「だったら、この男を呉れてやる」

 スキンヘッドの男は顎をしゃくって小太りの男を指し示す。

「実際、こいつはとんでもねえ奴さ。今だって凝りもせずにゲームを続けている。負け
の清算は済んだんだから、続きをやらせろと迫りやがる。こっちも渋々付き合っちゃい
るが、どうせまた迷惑を掛けるに決まってるんだ。もううんざりだよ。渡してやるから、
後はそっちの気の済むようにしろ」
「収まらんな」

 ケインは冷たく答える。

「そんなんじゃ収まらない」
「なら、どうする?」

 スキンヘッドの男は皮肉っぽい笑みを浮かべる。

「この屋敷の人数をすべて相手にでもするつもりか?」
「試してみるか?」

 ケインは、ぐるりを取り囲む男たちを見回しながら、

「この狭い部屋なら、二十人でも三十人でも同じ事さ。戦い方は心得てる・・・・・・
それに、誰を狙えばいいのかもな」

 凄みを利かせたその言葉に、スキンヘッドの男の片頬がぴくりと動く。部屋の中に
集まった男たちが一斉に剣を抜く。
 一触即発の雰囲気の中で、突如ルキウスは腰帯に差した匕首を抜き放つと、腰溜め
に構えて、叫び声を上げながらケインに突進した。
 その切っ先が胸に突き刺さる寸前で、ケインは体を開いて難なくそれをかわすと、
相手の手首を掴まえる。強い握力でそのまま上方に捻り上げると、

「おいおい、無茶するなよ」

 笑って言う。

「たったひとつの命だぜ?」
36凶漢ケイン(7) ◆6l0Hq6/z.w :2010/08/15(日) 00:12:25 ID:0GaZqfoa
 ルキウスは痛みに脂汗を流している。ケインは一同を見回すと、

「分かってるさ。あんたらは皆悪くない!」

 澄ました顔で頷いて見せる。

「むしろ被害者だ。博打の負けはきちんと清算されなきゃな。それが筋だ」

 そう言いながら、捻り上げているルキウスを見て、

「だが、この男も悪くない。
 こいつはな、二年前まで俺の相棒だった。だが心を入れ替えてヤクザな道から足を
洗ったのさ。それで地道にこの町で居酒屋なんぞを始めた。真っ当な暮らしを願って
いたのさ。
 そうさ、こいつは悪くない。悪いのは・・・・・・」

 ケインは匕首をもぎ取ると、そのまま相手の手をテーブルに叩き付け、素早く匕首
を振り上げると、押さえ付けた手の甲に容赦なく突き立てた。ルキウスは悲鳴を上げ
る。
 しかしケインは構わず切っ先をごりごり捻り込みながら、

「悪いのは、この手だ!」

 強い口調で言った。

「カード遊びを忘れられない、この手なんだ!」

 テーブルに釘付けになった手から、真っ赤な血が流れ出し、床へと滴り落ちる。
 周囲の男たちは度肝を抜かれてその様子を見詰めている。やがてケインは顔を上げ
ると、

「なあ、あんた。取り引きをしようじゃないか」

 スキンヘッドの男は眉をひそめると、

「取り引き?」
「そうだ。
 この片手。それに俺の怒りを抑える事。その二つの代償で、この男の借りをチャラ
にしろ」
「・・・・・・断ったらどうする?」
「もう少し血が流れる必要があるな」
37凶漢ケイン(8) ◆6l0Hq6/z.w :2010/08/15(日) 00:16:07 ID:0GaZqfoa
 スキンヘッドの男は黙り込んでいるが、やがて喉の奥で笑った。ケインは目を細めると、

「どうした。何がそんなに愉快だ?」
「いや・・・・・・実はな。お前という男と一度話してみたかったのさ」

 笑みを浮かべると、

「最近、名を売っているという、〈凶星〉ケインとな」
「名など売っちゃいない。勝手にそう呼ばれてるだけだ」
「どのみち、この程度の事でくたばる奴だとは思ってなかった。もしくたばるようなら、
会う価値も無いさ。だが、やはりお前はこうして俺の前に現れた。
 実際、大した度胸さ。そんな出来る男なら、場合によっちゃ手を組みたい、仲間に引き
入れたいと考えていたんだが・・・・・・気が変わった。お前みたいな危ない奴とはやっ
てけねえよ」
「独り言か?」

 ケインは無感動に尋ねる。

「俺は鏡じゃないぞ。取り引きするのか、しないのか?」
「・・・・・・ああ!分かったよ!」

 忌々しげにスキンヘッドは答える。

「分かったから、とっとと出て失せろ!」
「宣誓しろ」
「何?」
「神々に誓え。俺はこう見えて、信心深いんだ」
「ああ!」

 うんざりした顔で、

「盗賊と知恵の神セザールと、主神セムにかけて!」
38凶漢ケイン(9) ◆6l0Hq6/z.w :2010/08/15(日) 00:18:09 ID:0GaZqfoa
 その文句を聞くと、ケインはようやく、テーブルの手に突き立てていた匕首を抜いた。
途端にルキウスは床にうずくまると、呻きながら血塗れの手を押さえる。

「良かったな、ルキウス」

 ケインは見下ろしながら笑った。

「これで晴れて自由の身だぞ」
「くそったれ」

 ルキウスは涙を流しながら憎悪の目で見上げてくる。

「地獄に落ちろ!」
「いずれ落ち合うさ。とうぶん先の話になるだろうがな」
「とうぶん先だと?」

 スキンヘッドの男が吐き捨てるような笑い声を出す。

「お前なぞ、明日中には断頭台に上ってるよ!」
「俺は捕まらんよ」

 ケインは平然と嘯く。

「こんな事で捕まるもんか。宿命の星が守ってるからな。だから賞金も無しだぜ?」
「大した自信だ。しかし仮に逃げおおせたとしても、その調子でやってりゃ半年で
お陀仏さ」
「さあて!用事は済んだ」

 話に飽きると、ケインは匕首を持った手を素早く振り抜く。凶器は目にも留まらぬ
速さで飛び、座っているスキンヘッドの頭のすぐ横の壁に突き刺さった。

「命拾いしたな・・・・・・ほら、邪魔だ!どけよ!」

 ケインは出口を塞ぐ男たちを乱暴に押しのけると、外へと出て行く。色めき立つ一同
に、スキンヘッドは怒声を放つ。

「行かせてやれ!」

 戸惑う男たちに、今度は抑えた口調で言い聞かせるように、

「放っておけ。関わるな」
「しかし!」
「こっちが無用な傷を負う必要は無い」

 そうは言いながらも、自身の顔のすぐ横に刺さっている匕首を苛立たしげに引き抜いて、
前の床に乱暴に投げ捨てる。そして廊下を遠ざかって行く足音を聞きながら、鬱憤晴らし
のように呟く。

「・・・・・・どのみち、この町から生きて出られやせんさ!」
(つづく)
39創る名無しに見る名無し:2010/08/15(日) 23:01:13 ID:ECgiIYFi
>>38
乙乙!
新たな展開が楽しみになってきました
これからも期待してるよ
40「邂逅」:2010/08/22(日) 15:01:40 ID:knR5/vwB
騎士のお姉さんと精霊の少年という組み合わせで、これから10レスほど投下。
少々流血描写がありますので、苦手な方はスルーでお願いします。
41「邂逅:1」:2010/08/22(日) 15:05:56 ID:knR5/vwB
リアンは、その人気の少ない路地裏へと、瞬時に走リ出していた。
そんな所に好き好んで行きたい訳ではないが、この更に奥の方角に位置する路地裏の方から、何かが壊されるよ
うな大きな音と、屈強そうな男たち数名の荒々しい怒声が聞こえてきたからだ。
その怒声が響いてきた場所は、この界隈の歓楽街に程近い所にあるために賃料が安く、その賃料の安さに負けて
借りることにした自らの住まいからも、そう離れていない場所にある路地の更に奥の辺りだろう。

もし、そんな場所で、誰かが危険な目に逢っていたら、絶対に放ってなどおけない。
リアンは反射的にそう思い、そこに足を向けることを即座に決めて、飾り気なくあっさりと一つに束ねたブロン
ズゴールドの長い髪をなびかせ、その場所へ向かって走る。

彼女は、この街の護衛騎士団の騎士としての正式な任命を間近に控え、その任命式の予行演習に参加してきたば
かりだった。
そのために、新調されたばかりの真新しい式典用の上着を着用した、いつもよりも整ったその身なりのまま、こ
れから帰宅する予定だったのだ。
式典用のタイトな上着に身を包んでいるが故に、彼女は、いくら騎士であるとはいえ、他人の目から見ても、一
目で17、8歳のしなやかな身体つきをした年頃の娘だと判る身なりをしていた。

その服装のままで、咄嗟に走り出していた彼女は、これから先、屈強な男達と相対して、自らを危険に晒すよう
な場所へと、たった一人で出向いているのだということなど、全く気に留めてはいなかった。
恐らくは、この辺りでよくある無骨な男達の小競り合いに過ぎないのだろうが、ともかく、その場所に赴いて早
く状況を確認する必要があると思ったからだ。
42「邂逅:2」:2010/08/22(日) 15:08:14 ID:knR5/vwB
リアンは、その路地裏のすぐ近くまで足を運ぶと、一旦立ち止まり、精悍なエメラルドグリーンの瞳で、注意深
く周りを見渡すように視線を巡らせる。
この辺りは、元々昼間のうちでも人通りが少ない。普段から度々、酒に酔った荒々しい男たちが諍いを引き起こ
すこともある所為からか、あまり人が寄り付かないのだろう。
どうやら今も、此処には、人は、リアン一人しか居ないようだった。

この場所で確認する限り、先程、聞こえてきたような騒々しい諍いの音はもう、聞こえてこない。
先程、リアンが耳にした男達による諍いは、どうにか収まったようで、辺りは先程の大きな音が嘘のように静ま
り返っていた。
諍いが収まった様子であることを確認したリアンは、路地裏に立ち入るまでもなく、その場を立ち去ろうとした
が、その瞬間、路地裏の方から僅かに吹いてきた暖かく湿った風の中に血の臭いが混じっていることに気付いた。

路地裏の奥で誰か怪我でもしているのだろうか?
そう思ったリアンは、風に乗って流れてくる血の臭いに気を配りながら、路地裏に通じる道の壁際に自らの背を
預けて身体を横に向けると、慎重に路地裏を覗き込み、その視線を更に奥の方にやった。

「……なっ!」
43「邂逅:3」:2010/08/22(日) 15:10:22 ID:knR5/vwB
路地裏の奥の様子を確認し、その光景を目にしたリアンは、思わず声を上げた。
そこには、恐らく壁の古さも手伝ってはいるのだろうが、何らかの衝撃とともに崩れ落ちた石壁があり、その手前には何処からの刺客と思われる屈強な剣士たちが8人程、大量に血を流しながら倒れ、言切れていた。
そして、その更に奥には、13、4歳位の華奢な身体付きの少年が自らの脇腹から流れ出ている大量の血を止めようと、身体を折り曲げ、苦痛に喘ぎながら倒れ込んでいたのだ。

「……っあ……!」

目の前の凄惨な光景に言葉を失っていたリアンは、少年が傷の痛みのために上げた声にはっとして、我に返ると、
その視線を奥に倒れている少年へと向けた。
それから、その少年の無事を再度確認するため、路地の奥へと足を踏み入れ、間近にした少年の姿に改めて目を
見張った。

少年は、脇から流れ出る血液の色と辺りの土の色で所々汚し、おそらくは、相手の剣先をかわし損なったことに
より、数か所、破かれた衣服をその身に纏っていることを除けば、その光景には全くそぐわない美しい身なりを
していたからだ。
44「邂逅:4」:2010/08/22(日) 15:13:14 ID:knR5/vwB
遠目からも華奢な身体つきが見てとれる少年は、刺繍などの豪奢な装飾こそ無いが、他人の目からみても上等な
仕立てだということが一目でわかる白地に紺色の縁取りが鮮やかな騎士服を身に付けていた。
また、その側には剣士たちとの小競り合いの際に引き裂かれ、地面に落ちたのであろう上質で柔らかそうな生地
の濃紺の外套が拡がっている。

そうして身に付けている衣服からだけでも、少年は周りの凄惨な光景からは十分に浮き立って見えた。
しかし、なによりも、その少年自身の怜悧なアイスブルーの瞳と整えられた短いシルバーブルーの髪によって、
より印象的な美しさを見せている、その容貌こそが、この場所の様子からは全くかけ離れたもののように感じさ
せていた。

更に、その少年の姿を最も場違いにさせていたのは、背中にある透明な輝きを放つ4枚の大きな羽根だ。
遠目に見た時には、はっきりとは解らなかったそれは、少年の背後から僅かに降りそそぐ陽の光を浴びて、虹色
の輝きを放ちながら、優美かつ小さな帆走船の帆を思わせるように、その背中に広げられていた。
少年は、近頃ではその数が相当に少なくなったと言われている生粋の精霊族なのだろう。

リアンが今、目にしている彼の羽根は、普段は彼らが生来、生まれながらに持っている魔導力でその背中に隠す
ようにして封印されているのだと聞いたことがある。
精霊族の純血種たる証であるその羽根を背中に封印することなく、顕わにしたまま、光に包まれているかのよう
な錯覚さえ覚えさせる少年の姿を目の当たりにしたリアンは、どうやら、自分は、今、普段、滅多に遭遇するこ
とのない場面に居合わせることになったようだ、その場に立ち尽くしたまま思った。

「……っ!」

脇腹にかけてはしる深い傷口を自らの手で押さえ、その整った顔を苦痛に歪めながら、目の前の少年が懸命に立
ち上がろうとしている様子を目に留めたリアンは、再び我に返り、少年に声をかける。
45「邂逅:5」:2010/08/22(日) 15:15:12 ID:knR5/vwB
「……済まない! あんた、大丈夫か?」
「お前……今の私に向かってそんな愚かな質問をするな! ……これで……大丈夫な訳がないだろう……」

救助の手を差し伸べることがほんの少し遅くなったことを詫びたリアンに対し、少年は、年端に合わぬ、大人び
た口調でリアンに視線を合わせながら、その傷の痛みで気を失うまいとして、振り絞るような、声で言った。
傷の痛みと脇腹から流れ出た出血の為に起こる貧血のせいか、少年の瞳は、若干、その焦点が合わなくなってき
ているようにも見えた。
しかし、それでも彼のその双眸は、その気丈さと本来の気質の高さを表すには充分な意思の強さをたたえていた。

リアンは少年の返した言葉に少々むっとしたが、その少年の言葉をそれ以上気に留めること無く、痛みをこらえ
ていた少年を片手で抱き支えるようにした。
それから、自らの騎士服の飾りとして腰に巻いていた柔らかな布のベルトを素早く解くと、少年の傷口に当て、
その腰から腹部へと巻きつて止血するために、傷口の上で、しっかりと固定させるようにして結び直した。

「……っう……あぁっ! ……貴様! そんなに乱暴にするな……!!」

少年は痛みに堪えかねて、自らの血まみれの手袋を嵌めたままの片手をリアンの手元に添えながら喘いだ。
その少年の負った大きな傷を間近に見てから、彼を介抱することに必死になっていたリアンは、傷口から流れ続ける血液を何とか止めて、少年の苦痛を少しでも早く軽減してやりたいと強く思った。
そんなリアンの気持ちをよそに、少年は自らの手をリアンの手元に添えて、痛みに喘ぎながらも、その双眸に宿
る意思ある輝きを保ったまま、リアンを見上げて言った。
46「邂逅:6」:2010/08/22(日) 15:17:38 ID:knR5/vwB
「もう……いいんだ、私に……これ以上構うな……」
「いいから!  黙ってなさい!」

リアンはそう言うと、少年の脇腹の傷に自らの手をそっと当てた。
応急処置として、リアンが止血を試みた傷口はその甲斐もあまり見られず、まだ新たな血を流し続けている。
少年の様子から見て取るに、そもそもは普段、魔導力で背中に封印している、その羽根を収めるだけの気力も、
当然のことながら、もう残っていないのだろう。
このまま、自分がこの場所を去れば、生死を分かつような重篤な状況により近づくことは明らかだ。
そんな状況にあるこの少年を自分がこのまま放っておける筈など無いではないか。
リアンは、そう思いながら語気を強めて、少年に言葉をかける。

「あんた、バカじゃないの! このまま放っておいたら、あんたが死んじゃうじゃない!」

「……馬鹿は、お前だ! ……刺客はもう、全員殺ったのだから……!
こんなところにこのまま居たら……貴方の立場も危ないだろう!  私は大丈夫だから……良いんだ……!」

少年はリアンに対して、声も切れ切れにそう言葉を返したが、それを受けてリアンは更に語気を強めて言い放っ
た。
47「邂逅:7」:2010/08/22(日) 15:19:37 ID:knR5/vwB
「全然大丈夫じゃないだろう!!」

リアンは、その言葉とともに、少年の脇腹から流れ出る血を再度止血しようと、先程、少年の腹部に巻いた布の
ベルトを少しきつく結び直す。
それと同時にそのリアンから受けた手当てと傷口を締め付けられた激痛に耐えかねた少年の口から一際大きな
悲鳴があがった。

「……っ……ぁ!! う……あぁぁあ……あぁ!!!
……お前! …… 本当に馬鹿か!! ……本当に……やめ……っあぁっ!!」

少年は僅かな気力を振り絞るようにそう言って、リアンの腕の中から逃れようと抵抗を試みたが、少年がほんの
少し動いただけで、その傷口からは新たな血液が染み出て行く。

その様子を見たリアンは、自らの腰の革ベルトに吊り下げていた小さなポケットから、深い緑色の液状の回復薬
の入った小瓶を取りだした。
リアンの手元にその小さな瓶があることを確認した少年は、驚いたように瞳を見開いて、それを見た。
それから、どこにそんな気力が残っていたのかと思うような、はっきりとした口調で、拒絶の言葉を口にする。

「お前……それ……記憶と魔導力も一緒に飛ばす強烈なやつじゃないか!
 私は……そんなもの絶対に飲まない……!!」
48「邂逅:8」:2010/08/22(日) 15:21:30 ID:knR5/vwB
「全然大丈夫じゃないだろう!!」

リアンは、その言葉とともに、少年の脇腹から流れ出る血を再度止血しようと、先程、少年の腹部に巻いた布の
ベルトを少しきつく結び直す。
それと同時にそのリアンから受けた手当てと傷口を締め付けられた激痛に耐えかねた少年の口から一際大きな
悲鳴があがった。

「……っ……ぁ!! う……あぁぁあ……あぁ!!!
……お前! …… 本当に馬鹿か!! ……本当に……やめ……っあぁっ!!」

少年は僅かな気力を振り絞るようにそう言って、リアンの腕の中から逃れようと抵抗を試みたが、少年がほんの
少し動いただけで、その傷口からは新たな血液が染み出て行く。

その様子を見たリアンは、自らの腰の革ベルトに吊り下げていた小さなポケットから、深い緑色の液状の回復薬
の入った小瓶を取りだした。
リアンの手元にその小さな瓶があることを確認した少年は、驚いたように瞳を見開いて、それを見た。
それから、どこにそんな気力が残っていたのかと思うような、はっきりとした口調で、拒絶の言葉を口にする。

「お前……それ……記憶と魔導力も一緒に飛ばす強烈なやつじゃないか!
 私は……そんなもの絶対に飲まない……!!」
49「邂逅:8」:2010/08/22(日) 15:24:35 ID:knR5/vwB
少年はリアンの腕から逃れようとして、自らの腕に更に力をかけると、自分の身体を無理やり引き起こそうとし
て、力を振り絞った。

「……っあ!」

ほんの少し身体を動かしただけだが、傷口から全身へと拡がる激痛に耐えかねて、少年は、再び声を上げた。
少年のそんな様子を見かねたリアンは、強い口調で少年に声をかける。

「そんなこと言ったって、このままじゃ、あんたが助からないじゃないか!」

少年は、リアンのその言葉に観念したかのように、リアンを見上げたが、その瞳には、まだ不安そうな色を滲ま
せていた。
それから、更に、ほんの少し躊躇うような表情を見せたが、その後で、もう一度、覚悟を決めたかのように小さ
くリアンが成そうとしている手当に同意する言葉を口にした。

「……っ、……わかった……から……」

少年のその言葉を自分への同意だと、受け取ったリアンは、先程手にした小さな瓶の蓋を外し、中の液体を自ら
の口に含んだ。
そして、そのまま、少年の顎に自らの手を添えて、ほんの少し上に向かせると、リアンは、口移しでその薬を飲
ませるために、少年に口付けた。
50「邂逅:9」:2010/08/22(日) 15:26:56 ID:knR5/vwB
少年は、そんな風に口付けをされるのが初めてだったのか、リアンの柔らかい唇がほんの少し触れただけで緊張
に震え、その瞳をきつく閉じた。
それと同時に、その唇を閉じたまま、更に緊張を強くしたのか、少年はその場から動くことも全くできなくなる
程に震えているようにも見えた。
リアンは、未だに少し震えていた少年を促すかのように、自らの手を再び少年の頬に優しく添えると、少年の喉
を少し反らして、顔を僅かに上へ向けるようにと、仕向けた。

「……ん……っ!」

少年は苦しそうな吐息を洩らし、躊躇いつつも、リアンが添えた手に従うようにして、自らの顔を上へと向け、
ほんの少しだけ口を開いた。
リアンはそれに合わせて、互いの唇を交えるように、深く口付けながら、先程口に含んだ薬を少年の口の中へと、
流し込んでやる。
その薬が少年の喉を流れていき、なおかつ、少年が最後まで飲み干したことを確認できるまで、リアンは、口付
けを解かず待っていた。
ほんのしばらくして、少年が観念したように、ごくりと喉を鳴らした音をもって、薬を飲み干したことを確認し
たリアンは、少年の口腔内と唇の周りに残った薬を拭い去るようにして、自らの舌で舐め取ってから、少年の唇
を解放してやる。

「……ん……っ、あぁ……んっ!」

唇を解放された少年は、再び苦しそうな吐息を零してから、口の中に僅かに残る薬の苦味に咳き込んだ後、その
身体の動きによって、傷口からもたらされた痛みに顔をしかめる。
それから、徐々効果を現わし始めた薬の効き目で、意識を手放しそうになりながらも、それを懸命に堪えた。
リアンはそんな様子の少年を抱きかかえながら微笑むと、優しく声をかけてやる。
51「邂逅:10」:2010/08/22(日) 15:30:08 ID:knR5/vwB
「大丈夫だよ、あたしがしばらく、あんたを匿ってあげるから。あんたは、もう何も心配しなくていい。
 でも……できれば、あんたの名前だけでも教えてもらえないかな?」

「……エリアス……」

少年は、おそらく暫くの間、自分が記憶を失うであろうことを念頭に置いたのか、リアンに小さな声で名前を告
げた。
ようやく少し緊張が解けたその所為か、少年は、今まで、その気力だけで何とか保っていた自らの意識を手放す
と、抱きかかえられていたリアンの腕の中で、薬の効果がもたらす深い眠りへと落ちていった。

リアンはその様子を見届けると、地面に落ちていた少年の外套を拾い、背中の羽根を再び封印することもできず
に意識を無くしていた、目立ちすぎる少年の容姿を隠すようにして、その身体にふわりとかけた。
そして、少年の身体を優しく包むように抱きかかえ直すと、音を立てずに静かにそっと、その路地裏を後にした。
路地裏には、その凄惨な紅い血の色と8人の屈強な剣士の骸だけが残された。

〈END〉
52「邂逅」:2010/08/22(日) 15:38:52 ID:knR5/vwB
途中で投下をミスってしまいました…orz
「邂逅8」が2回になってますが、最初の方は読み飛ばしてください。
53創る名無しに見る名無し:2010/08/22(日) 15:46:55 ID:a1O+/UAw
おお、これは良いファンタジー。
54創る名無しに見る名無し:2010/08/22(日) 16:18:33 ID:vddkT+UT
漫画っぽさを出すのも良いかもしれないけど、ファンタジーなんだからもう少し会話は練ろうよ
55創る名無しに見る名無し:2010/08/22(日) 18:50:30 ID:a1O+/UAw
具体的にどこら辺をどうしたらいいか、というのを
言ってあげるといいんじゃないかと。

個人的にはあまり気になるような所はなかったしなー。
5640(レス代行):2010/09/12(日) 00:17:02 ID:9kKT7yho
>>40「邂逅」の続き 第2話「魔導」を避難所に投下してきました。
なお、避難所ということで、少しだけ大人向けの仕様になっていますので、そういうのが苦手な方はご留意を。
それから、2話目ということで、「君の軌跡」というシリーズタイトルを付けました。
また続きが書けると良いなぁ……と思ってますので、どうぞよろしく―。
57創る名無しに見る名無し:2010/09/12(日) 10:42:17 ID:sFOSHrKH
避難所行ってきたw

投下乙です!
なんだか可愛い感じがあって良いなー 色々な意味で今後に期待w
58創る名無しに見る名無し:2010/09/19(日) 19:43:24 ID:8obKCPgX
59真夜中の祝祭:2010/09/20(月) 01:54:57 ID:a7pspTL9
現代もの、サイキックファンタジー風味で、これから8レス投下します
60真夜中の祝祭 - 1:2010/09/20(月) 01:57:42 ID:a7pspTL9
見上げた空には、雲ひとつ無く、いつもよりも明るい光を放つ月が浮かぶだけだ。
こんな秋の晴れた夜長は、空を飛ぶのには、絶好の夜だ。

もう、あの場所には、そろそろ皆が集まっているだろうか?
僕は、そう思いながら、あの場所 −横浜のみなとみらい地区へと想いを馳せる。

あの場所は、世間一般の人々には、全く知られてはいないが、魔道力を秘めた強力な磁場を持ち合せた、少々特殊
な場所なのだ。
こんな場所は、この日本においては、数える程しか無い。
61真夜中の祝祭 - 2:2010/09/20(月) 02:00:36 ID:a7pspTL9
だから、僕等、サイキックと呼ばれる魔道能力者達は、こんな風に月のきれいな夜の晩には、横浜みなとみらい地区
へと集うのだ。
普段の生活においては、全く使う事の無い、自らの魔道力を数十倍にも高めた上で、一気に解放してやるために。

僕はその場所へと、想いを馳せると、自らの力を一気に解放し、自分が一人で住んでいるこの狭い、賃貸マンションの
一室から、みなとみらい地区へと、自らの身体を瞬時に移動させる。
いわゆる、瞬間移動ってやつだ。
62真夜中の祝祭 - 3:2010/09/20(月) 02:02:54 ID:a7pspTL9
そして、僕が再び目を開けると − 其処には、テレビでお馴染みのランドマークタワーが創りだす、天空に向けてそび
え立つ大きな光の柱と、大観覧車の華やかなイルミネーションに彩られた、横浜の代名詞とも言うべき景色が広がっ
ている。

その景色に、唯一つ、違和感を覚えるとしたら、その華やかな景色には、いつも夜遅くまで満ち溢れている、観光客な
どの大勢の道行く人々が全く見当たらないことだ。
その代わりに、今、この場所には、僕と同じ、サイキックとしての能力を持つものが、数十人程、集まっていた。

そうなのだ − ここは、サイキック達の力が、数十倍にも高まる不思議な場所で、実在する横浜みなとみらい地区と
同じ場所に位置する別の空間なのだ。
63真夜中の祝祭 - 4:2010/09/20(月) 02:04:35 ID:a7pspTL9
だから僕等サイキックが、この場所で、いくら本気で魔道力を振るおうとも、実在の空間には影響はしない。
とはいえ、万一のことを考えて、この集会が行われる度に、仲間の誰かが、強固な結界を作り、現実空間への影響が
及ぶ事の無いよう、万全の策を取ってはいるのだが。

「やあ、ユウキ、遅かったじゃないか」

瞬間移動を終えて、この空間に辿り着いたばかりの僕に向かって、サイキック能力者の一人がいつものように声をか
けてきた。
彼は、僕より1つ年上の17歳の少年で、仲間うちでは、ミカと呼ばれている。
この辺りのインターナショナルスクールに通っているらしいのだが、それ以上のことは、良くは知らない。
ここに集う、サイキック達は、皆、それぞれの事情を慮ってか、この場所では、偽名で通すことになっていたし、各個
人についての余計な詮索はしないことが、習わしになっていたからだ。
64真夜中の祝祭 - 5:2010/09/20(月) 02:06:03 ID:a7pspTL9
僕は改めてミカと、大観覧車のイルミネーションが映り込む、彼の後ろの景色へと視線を移した。
ミカは、金髪碧眼の美少年と言うに合い相応しい姿の少年で、その姿が、ランドマークの灯りを受けた月夜に良く映え
る。
僕はミカに向かって、この月夜の集会では、当たり前のように交わされている会話を続けた。

「ああ、ミカ、悪かったね、もう、そろそろ、シルエッタが始まるのかい?」
「うん、ウインザーが、強固な結界を張り終えたからね。そろそろスタートだよ」
「ユウキ、君、今回も、単独エントリーするの? 」
「もちろん!」

ミカとそんな会話を交わしながら、僕は軽快にそう答えた。
65真夜中の祝祭 - 6:2010/09/20(月) 02:09:06 ID:a7pspTL9
「ユウキ、今夜も君と戦えるのか。今から楽しみだな」
「うん、俺もだよ、ミカ」

そう言って、僕とミカは微笑み合うと、互いの拳を軽く合せるようにして、これから始まるシルエッタでの健闘を祈り合っ
た。その後で、それぞれの持ち場へと、空を軽々と飛びながら移動していく。

ミカは、帆船日本丸のマストの上にふわりと先に降り立つと、更にその先に位置する大観覧車の方へと向かった僕を
見据えていた。
そして、僕の眼下の水面には、大観覧車のイルミネーションの灯りと − その大観覧車の時刻を刻む、電光掲示版の
上へと降り立った、銀色の髪の16、7歳の少年の姿 − そう、僕の姿が映り込んでいた。
僕は何故だが、この魔道力を使う度に、髪の色が、こんな色になるのだ。

その水面に映る自らの姿を確認してから、僕は、このシルエッタにおいて、いつも、最大のライバルとなる、ミカの方へ
と再び視線を移した。
66真夜中の祝祭 - 7:2010/09/20(月) 02:10:40 ID:a7pspTL9
ミカの手元には、もう既に、彼自身の魔道力で創り出された、金色の光の剣が握られている。
僕もそのミカの様子を見据えながら、大きく息を吸い込むと、自らの手元に、白銀の光を帯びた剣を呼びだした。
それと、ほぼ、同時に、真夜中の12時を告げる汽笛が鳴り響く。

その汽笛の音と共に、僕は自らの身体を眼下の水面の方へと乗り出ようにすると、そのまま滑り落ちるように、降下し
ていった。
そして、その下の水面に着水する前に、タイミングを見計らって、自らの手元に在る剣に周りの空気を大きく切り裂くよ
うな桁違いに強い魔道力を乗せて、ミカのいる方角に向けて、勢い良く、真横に一気に振り払った。

ミカの方も、僕のその攻撃の軌道を既に読んでいて、あっという間にその攻撃を交わしていく。
その後で、ミカは僕との間合いを詰めるために、水面へと降り立ち、そこから、わざと大きな水飛沫が上がるようにし
て、僕に向かって、大きな威力を込めた剣撃を放つ。
67真夜中の祝祭 - 8:2010/09/20(月) 02:11:58 ID:a7pspTL9
僕の方もわざと、ミカのその剣撃を受け止め、自らの手元で、ミカが放った魔道力を一気に無力化してみせる。
だが、その次の瞬間には、互いに間合いを限界にまで近付けて、ほんの一瞬だけ、鋭い音と火花を散らしながら、剣
を交えると、二人で向かい合って、再び笑みを交わしていた。
それから、互いに、その場を素早く飛び去るようにして、再び間合いを開ける。

さあ、真夜中の祝祭はまだ始まったばかりだ。
今夜もこれから、楽しくなりそうだな……などと思いながら、僕はミカに向かって、再び攻撃を繰り出した。

−end−
68創る名無しに見る名無し:2010/09/20(月) 02:17:29 ID:2Kold4Yz
なんかこういう厨二要素全開な作品ってテンション上がってくるよな
69真夜中の祝祭:2010/09/20(月) 02:19:33 ID:a7pspTL9
たまには、現代モノも良いかな−と思い、
即興で書いてみたら、ちょっと短かいお話になってしまいました。
しかし、一人称って、難しいなぁ……
70知恵をもって恐れを使う:2010/09/21(火) 12:54:07 ID:sCSejFb1
その化け物は河狸と呼ばれ、後溢川を渡ろうとする旅人を取っては食っていた。
ある年、川岸にある村が日照り続きで水不足となった。
勇気ある村の若者が何人か後溢川に水を汲みに行ったが、帰ってくる者はいなかった。

そんなある日、困窮する村へ、三厘を名乗る若い坊主が訪れた。
村長は村人たちの前で三厘に問うた。若い旅のお坊さま、ワシらを助けてくれぬか。
三厘は答えた。私は若輩者であり、法力は小さい。しかし、知恵をひねれば解決するかもしれません。

三厘は続けた。魔には原因があります。問題を切り分け、原因を突き止め、道理をもって直せば良いのです。何か心当たりはありませんか?

村長は少し考えた後、答えた。少し思い出す時間が欲しいし、皆と話し合いたい。お坊様、この村に一晩泊まっていかぬか。
喜んで。三厘は言った。

翌朝、なぜか村人達はもう河狸が出ないことを知っていた。
実際、おそるおそる後溢川に水を汲みに行った者も帰ってきたのだった。

村から帰ってきた三厘は仲間の坊主から問われた。どうやって解決したのだ?
三厘は答えた。元凶は村人の旅人に対する恐れだ。そして、その原因が特定されることを村人が恐れた結果、問題が解決したのだ。
71知恵をもって恐れを使う:2010/09/21(火) 12:57:07 ID:sCSejFb1
では私は仏教系ファンタジーで行ってみるかな、
と軽く話をでっち上げてみました。
72創る名無しに見る名無し:2010/09/22(水) 01:04:29 ID:t1jwUFFu
>>71
投下乙です! 
お話がすっきりと短くまとまっていて、良いですねw
こういう短いお話も書けるようになりたいものだなぁと、思ってしいましたw
73真夜中の漆黒:2010/10/10(日) 01:51:55 ID:I4iFmosb
>>59の続きを投下
全部で9レスになるはず
74真夜中の漆黒 & ◆DGnREAoxNQ :2010/10/10(日) 01:53:25 ID:I4iFmosb
見上げた空には、星ひとつ無い。今日は新月だ。
おまけにこれだけ曇っていれば、夜の闇がいつもよりも更に深いのも当然だろう。
こんな夜には恐らく − そう、あの場所には、誰一人、居ないはずだ。

僕はそう思いながら、あの場所、横浜のみなとみらい地区へと想いを馳せる。
とは言っても、僕が想いを馳せたあの場所は、世間一般の人々が知る現実の世界ではない。

僕が想いを馳せたのは、サイキックと呼ばれる能力者であれば、誰もが魅力的だと思うあの場所だ。
そう、強大な魔道力を伴う磁場を持つ、こことは違う次元に形成されたもう一つのみなとみらい地区だ。

もし、今夜が普段よりも一段と深い闇を創りだしているような真夜中などでなく、逆に月が一段と明るく輝い
ているような真夜中であったなら、あの場所では、僕のような魔道能力者が数十人は集う集会が開かれて
いた筈だ。
75真夜中の漆黒 2& ◆DGnREAoxNQ :2010/10/10(日) 01:56:37 ID:I4iFmosb
今晩は、月はおろか星の光さえない、漆黒の新月の闇夜だから、僕の魔道力も極端に低い。
それでも、僕は、僕の持っている、ありったけの魔道力を使って、僕の部屋からその場所へと跳んだ。

その魔道力を使っての瞬間移動を終えた直後、僕の目の前には、ランドマークタワーやクイーンズ・イース
ト、そして、インターコンチネンタルホテルといった、高層ビルの列柱が織りなす、壮麗な光の柱と華やかな
大観覧車のイルミネーションが創りだしている横浜の夜の風景が広がっている。

ただし、この場所は、現実世界とは異なる次元に存在する世界だから、観光客などの大勢の道行く人々
は、全く見当たらない。
そして、今、この場所には、僕と同じサイキック能力者さえ、誰一人、居ない。
周囲を彩る華やかな夜景とは対照的に、辺りには静寂を帯びたしんとした空気に包まれていて、秋の気配
をほんの少しだけ運び始めた海からの向かい風のみが僕の周りを漂っている。
76真夜中の漆黒 3& ◆DGnREAoxNQ :2010/10/10(日) 01:58:20 ID:I4iFmosb
僕の魔道力は、いつもよりも断然低くなってはいたが、それもこの空間に来るまでのことだ。
この空間まで来てしまえば、いつもよりも僅かな魔道力であっても、その僅かな力なりに、自然に増幅されて
いく。
僕は自らの内側に魔道力が少しずつ甦ってくるのを感じ取ると、自らの手元に金色に輝く剣を呼びだした。
まあ、いざという時に、即座に対応できるようにする為の護身用というやつだ。

それから、僕は自分のすぐ傍にそびえ立つ、ランドマークタワーを仰ぎ見ると、そのビルの頂上へと、自らの
魔道力を使って、一気に跳躍をかけた。
その大きな跳躍の直後に、僕は自らの眼下にある水面にほんの一瞬だけ視線を向ける。
77真夜中の漆黒 4& ◆DGnREAoxNQ :2010/10/10(日) 01:59:50 ID:I4iFmosb
眼下に映る水面には、自らの魔道力によって、金色の光に包まれながら、大きく跳躍する、金髪碧眼の
17、8歳の少年の姿 − そう、僕の姿だけが、今、この空間に唯一存在している者が放つ魔道力の光が
映り込んでいた。
僕は自らの魔道力によって、なんとかランドマークタワーの頂上へと辿り着くと、自らの両膝に手をついて、
少し前に屈むような姿勢になりながら、一気に魔道力を使った所為で、少々荒くなっていた呼吸を整えた。
それから、この地上から一際高い場所故に、先程から勢いを止める事無く常に吹き抜けている強風が、自
分の周りではその威力が弱くなるようにするため、金色の刀を振り降ろし、再び魔道力を使ったシールドを
作りあげる。
そうして魔道力を使ったシールドを作り終えた後で、僕はこのビルの下に広がる風景を見渡すために、ビル
の縁へと座りこんだ。
78真夜中の漆黒 5& ◆DGnREAoxNQ :2010/10/10(日) 02:00:54 ID:I4iFmosb
眼下には、この夜の漆黒の闇を更に深くしている原因の1つにもなっていた厚い重みを帯びた灰色の雲が
このビルよりも更に低い高度にあり、風にのって、ゆっくりと流れていくのが見える。
そして、その隙間からは、数えきれない程の沢山の灯りによって、地上に映る星空のようにも見える美しい
夜景が広がっていた。
また、それとは少し異なる方角に目を遣ると、ベイブリッジの灯や、そのもっと先へと続く大海の水平線まで
も見渡すことができた。

僕は暫くの間、片膝を抱え込むようにしたその姿勢で、ビルの端にぼんやりと座り込んでいた。
自分が一人きりになれるこの場所で、あの時起こった出来事に係わるこの記憶をもう一度、しっかりと受け
止めたいと思ったからだ。

「……アリス……」

僕は、あの時と同じように叫びたくなる気持ちをぐっと抑えると、今はもう、逢う事さえ叶わなくなった、その
愛しい存在の名前をそっと呼んだ。
そして、自らの瞳をそのまま閉じると、そこには、いつものように藍色の瞳と同じく、濃紺の長い髪をなびか
せた、15、6歳の少女が、ほんの少しだけ、哀しげな表情で微笑んでいる姿が映る。

それから更にそのまま瞳を閉じていると、僕との約束を交わすために、ほんの一瞬だけ、僕の唇へと軽く触
れるような優しい口付けをした後で、とてつもなく大きな光の渦に捲き込まれるように消失していく彼女の姿
が鮮やかに浮かびあがる。
79真夜中の漆黒 6& ◆DGnREAoxNQ :2010/10/10(日) 02:02:30 ID:I4iFmosb
彼女は、僕が自ら暴走させた強大な魔道力の犠牲となって、この世界から消えた少女だ。
その瞬間の出来事を思い出していた僕の瞳からは、いつものように自然と涙がこぼれ落ち始めた。

「……言ったでしょう? ……必ず君を救けるって。 大好き……だよ」

彼女の最後の言葉が僕の脳裏にはっきりと甦る。
それと同時に、僕の心の中には、いつものように、あの痛みを伴った感情が満ちていくのだ。

違う! 違う!! 僕は……あの時、唯、誰よりも、君を救いたかっんだ!!
だからこそ、あの場で、ありったけの魔道力を使ったというのに!!
僕の唯、唯一つの望みさえも、叶わずに……あの力だけが暴走していくなんて!!

「……っ、あ……」

僕は、再び絶叫したくなる気持ちを堪えて、今、この真上に広がる夜空の果てしない暗闇だけを見据える。
眼下の美しい灯りに目を移せば、余計に涙が止まらなくなる気がしたからだ。
その次の瞬間、僕は自らの背後に、人の気配を感じていた。
80真夜中の漆黒 7& ◆DGnREAoxNQ :2010/10/10(日) 02:04:12 ID:I4iFmosb
「ミカ、 こんな日に、この場所に一人で来るなんて! 俺を誘ってくれないのは、ひどいと思うぞ」
「うるさいよ、ユウキ、君は、いつも早く気付きすぎなんだよ」

僕は相手に直前まで零していた涙を見せたりすることのないように、自らの手でしっかりと拭う。
それから、自分にも気配を感じさせぬ間に、僕の背後に立っていた、大切な友人−ユウキへと強がり言って
から振り返る。

そこには、いつもと同じように、僕をほっとした気持ちにさせてくれる、短く整えられた銀色の髪と、青銀の瞳
を持つ少年が笑顔で立っていた。
本当は、彼自身も、あの時に大切なものを護りきれなかったという、自らを強く責める気持ちを僕と同じよう
に抱えているにもかかわらず、ユウキはいつもそんな様子を微塵も見せようとはしない。
こんな時、僕はいつも、この芯の強い気持ち保ち続けたままでいる友人が、今も変わらず傍にいてくれる事
に心から感謝するのだ。
81真夜中の漆黒 8& ◆DGnREAoxNQ :2010/10/10(日) 02:05:25 ID:I4iFmosb
「ミカ、こんな夜だけど……まあ、いつもよりは少ないけど、魔道力は使えてるし、
そろそろ……魔を封じにいこうか」

「ああ、そうだね」

ユウキはゆっくりと立ち上がった僕に、いつものように声をかけた。
僕はその言葉に合せるように短く返事を返す。

もう、ユウキと互いに笑い合って、シルエッタに興じていたあの頃とは、訳が違うのだ。
僕が自ら暴走させた魔道力がきっかけとなって、生じたこの次元の綻びは、今も完全に封じ込むには、至っ
ていない。
それに加えて、その綻びから度々生じるようになった、強大な負の力を帯びた魔道力は、この次元を超えて
現実世界にまで、少しずつ影響を及ぼすようになっていた。
82真夜中の漆黒 9& ◆DGnREAoxNQ :2010/10/10(日) 02:07:09 ID:I4iFmosb
それでも……僕等は、この強い次元の捻じれによって、あちこちに生じるようになった、強大な負の魔道力
の全てをいつか必ず封じきるだろう。
僕等二人が互いに手にする、この剣へと、再び封じるその都度、……アリスが消えた、あの次元へとつなが
るゲートを開くことが出来るかもしれない可能性が生じるのだ。
その可能性がある限り、僕は魔を封じ続けるだろう。

そう、だからこそ、僕等は、何度でも立ち上がり、その漆黒の暗闇を切り裂くのだ。

僕とユウキは、以前、そう、あのシルエッタが始まる前にしていたのと同じように、互いの拳を軽く合せて、こ
れから闘いへの健闘を祈り合った。
そして、既に眼下に大きく拡がり始めた漆黒の闇へと、それぞれの身を躍らせるようにして跳躍すると、その
暗闇を切り裂き始める。

−end−
83真夜中の漆黒 & ◆DGnREAoxNQ :2010/10/10(日) 02:27:58 ID:I4iFmosb
前回、即興で書いた話の続きが書けたというのは、なんだか嬉しかったなw

あと、トリを付ける予定は無かったのに、なぜか付いてましたよ……
なので、最後までそのまま投下しました
どうぞよろしく
84創る名無しに見る名無し:2010/10/10(日) 11:34:09 ID:Qb8tWBRM
>>83
おお、投下乙です!
前回と同じく静かな中に躍動感のある感じが良いね
またの投下をお待ちしてますw
85創る名無しに見る名無し:2010/10/14(木) 00:07:52 ID:Wf7ehlFv
なんか続き物らしさが出てきたな
間の詳しい話とじゃは考えてるのかな
8683:2010/10/14(木) 21:50:23 ID:0LF0LM8c
>>84>>85
レスありがとう! このストーリーにレスをもらえるなんて、なんかすごく嬉しいぞw
今また、この続きっぽい話を考えたりしてるところですw

なにせ即興で作り始めたストーリーなので、まだ少し間が空きそうだけど、
そのうち投下しますんで、どうぞよろしく!
87La Folie:2011/01/18(火) 03:15:52 ID:tsNUAEqx
近未来設定です。
ちょいグロありなので苦手な人は気をつけて下さい。
次から投下します。
88La Folie 1/25:2011/01/18(火) 03:19:39 ID:tsNUAEqx
不気味なほど白い世界に、俺は居た。何処かの病院の廊下だろうか。
付け入る隙のないような、全き白は俺の侵入を拒むように沈黙していた。
完璧でない者を排除するような、冷ややかな色の上を歩く。
鼻腔をかすめる、薬品の匂い。――それに混じって、甘ったるいような、香水めいた香りが漂ってきたことに気付き、
匂いの発信元を探る。しばらく歩いていくと、何かの気配を感じとある一室の前で立ち止まった。
……ここだ。この部屋から、吐き気を催すほど甘い匂いが湧いている。

くちゃくちゃ、ぐちゃぐちゃ。
ぴちゃぴちゃべちゃべちゃ。

白い扉の向こうから何かを咀嚼する音が聴こえている。


……誰、だ。
そこにいるのは誰だ。

ぐちょぐちょげちぇげちょ。
ぴちゃぐちゃげちゃげちゃ。

開けるな。開けるな。決して開けてはナラナイ。
恐怖心が扉を開けるなと囁いている。
開けろ。開けてしまえ。ほら、早く。
俺は好奇心に突き動かされ扉に手をかけて――
89La Folie 2/25:2011/01/18(火) 03:21:23 ID:tsNUAEqx
「――っ」

……夢か。

ベッドから飛び起き、俺は息を吐いた。
毎夜頻繁に見る悪夢とはいえ、慣れることはない。
いつも、あの扉を開く所で夢は終わる。
あの先に何がいるのか、見てみたいようで、決して見たくもない気がした。


時計を見ると、もう昼近くになっていた。
遅刻だな。……あんな夢を見たせいだ。
「くそっ」
誰にともなく悪態をついて、立ち上がった。


乾いた風を皮膚に感じながら、俺は天を仰いだ。
電脳情報によって作られた人工の空が広がっている。
スクリーンに映し出された鈍色の空に太陽はない。
いつもと代わり映えしない、曖昧で暗澹とした世界。
90La Folie 3/25:2011/01/18(火) 03:29:51 ID:tsNUAEqx
昨日も、一昨日も、そして何年も前から、
この第一塔と呼ばれる居住区域は同じ風景だった。
永遠に変わらぬ景色ほど、おぞましいものはない。
その居心地の悪さに吐き気を覚えながら、俺は刑具……銃を収めているホルダーに手をやった。

見慣れた区画を抜け、道を通り、目的地の血管通りへ向かう。
名前の通り血塗れたように赤い路面と、
壁に埋め込まれた水道管がびくびくと脈打つ様は何度見てもグロテスクという感想を覚えた。

「ミツルちゃん。遅かったね。寝坊?」
そんな情景に全く不似合いな穏やかな口調で、目の前の女、マナは話しかけてきた。
「違う。お前と一緒にするな」
「そっかあ。あんまり遅いから家まで迎えに行こうと思ってた所だったんだ、無事に来てくれてよかった」
「俺が来るの遅くても迎えにはくるなよ」
「え、でも、ミツルちゃん遅刻ばっかしてたらお給料減っちゃうよ」
「いいから来るな」
「恥ずかしがりやだなあミツルちゃんは。近所の目とか気にしてるの?」

それもある。
何しろ、こいつの外見はあらゆる意味で一目をひく。
片側だけやたら伸びた金髪に十字の髪飾り、……片方しかない翼。
本来ならば、第二世代には一対の翼があるはずだが、
本人曰く、生まれつきひとつしか翼しかないらしい。


91La Folie 4/25:2011/01/18(火) 03:32:13 ID:tsNUAEqx
「とにかく家には来るな」
「は〜い」

俺の突っぱねるような物言いにも気分を害した様子はなくただ嬉しそうににこにこ笑っている。
こいつはいつもこんな調子だ。
物心ついた時から傍にいるせいか、小動物のように妙に懐いており、
何を言っても怒る気配がない。
きっと何処かのネジが抜けてしまっているんだろう。

――多少の哀れみを覚えつつ、俺は血管通りの瘡蓋扉を開いた。

湿った空気が、皮膚を撫でる。
微かに匂う、血と黴の匂い。赤茶けた砂と、高く伸びた岩の列がどこまでも広がっている。
地面に不規則に空いた穴からは蒸気が勢いよく立ち昇り、周囲に熱湯を撒き散らしていた。

血管通りに、瘡蓋扉。
名づけた奴は相当な皮肉屋だと思った。
此処は確かに血が流れ、臭い物に蓋をする場所だ。
第一塔から外界に繋がる、転送所、そして同時に
俺達のような能天使と呼ばれる人天使達が、あぶれ者共に鉄槌を下す処刑場。
果てしなく広がる、高原。
92La Folie 5/25:2011/01/18(火) 03:33:32 ID:tsNUAEqx
足を踏み入れると同時に何体かの奴らが蠢く気配を感じ、背中合わせに配置しているマナに呼びかけた。
銃を抜く。

「マナ。来るぞ。仕事だ」
「分かってる。大丈夫だよ、安心してミツルちゃん」

顔を見ていないので分からないが、恐らくマナは先ほどと同じ表情で笑っているのだろう。
平時のこいつの「大丈夫」はあまり当てにならないが、この時ほどマナが頼りに思えることはない。
三節混と呼ばれる旧時代の刑具を携えて、マナはじっと遠くをにらみつけた。
ずる……ずるっ。
何かをひきずる不気味な音が近づいてくる。
白く霞んだ霧の向こうにソイツはいた。

「う……ァ」

霧が晴れ、姿が露わになるとソイツは目とおぼしき器官をぐるりと回してこちらを捉えた。
かろうじて五肢の存在が判別出きる肉の塊、ぽっかりと顔に広がった空洞から、ばしゃばしゃと透明な液体を吐き出しながら蠕動する。
肥大化したイソギンチャクのような風貌。
食屍鬼――異形の姿を持つ、化物。
93La Folie 6/25:2011/01/18(火) 03:34:35 ID:tsNUAEqx
「ぐあぶぎゃあああああああ」

耳がはちきれそうな金切り声。
すぐさま銃弾をぶちこみたくなるのを押さえ、俺は聞いた。

「一応聴いておく。お前に意識はあるか」
食屍鬼は俺の台詞が終わる前に叫んだ。

「ぎゃえおぶぷはああぎゃあああ」

無駄か。だが上司に定められた規則だ。

「……お前に後二回、チャンスをやる。もし俺の問いかけに返事をするなら収容だけで済む。
お前に理性はあるか」
「ギイイイイイいいぎああああァッ」
うるさい。奴の体液が飛んだ。後一回だ。

「お前に精神はあるか」
返事の代わりに奴は自らの手を伸ばし、俺に攻撃を仕掛けてきた。
そうか、それが返事の代わりか。
94La Folie 7/25:2011/01/18(火) 03:35:35 ID:tsNUAEqx
「ミツルちゃん、危ないっ」
奴の攻撃をマナが三節混で弾き、怯んだところに足蹴りをくらわせた。
触手と化した手を、マナへ伸ばす食屍鬼。
マナはそのまま奴の上半身に足を付き回避を兼ねて宙返る。


残念だったな。
三回もチャンスをやったのに、全部棒にふるなんて馬鹿な奴。
……もっとも賢かったなら、初めからこんな所には来なかっただろうけどな。


「来世ではもっと上手く生きろよ」
もっともお前に生まれ変わる余地があればの話だが。
95La Folie 8/25:2011/01/18(火) 03:36:32 ID:tsNUAEqx
俺は奴の頭部に標準を定め、引金を引いた。
魔弾が醜い姿をした化物を一直線に撃ち抜く。
白い光が走り、正常な意識も、理性も、そして精神すら失った化物を浄化した。



「任務ご苦労様でした。今日はもう家に帰って疲れを癒しなさい」

神殿に住まいを構える俺達能天使のリーダー、サマエルに任務の報告に行くと、疲れを労いそう告げられた。
今日は殲滅した敵が少なかったため、あまり疲れていなかったが、休めるのはありがたい。
黙って従う事にした。
96La Folie 9/25:2011/01/18(火) 03:37:36 ID:tsNUAEqx
「今日はレラジェ来てなかったね。別の仕事かなあ」

部屋から出てきたマナが不思議そうに首を傾げる。

「……だろうな」

レラジェというのは俺達の同僚の一人だ。
人天使、階級は能天使。趣味は弱いものを甚振る事と拷問で、
過激派か保守派かといえば間違いなく過激派であり、ぶっとんだその性格からはみ出し者の烙印を押されている。
天使なんて異名が丸っきり似合わない男。
どちらかというとその殺伐とした風貌と嗜好は悪魔と呼ぶに相応しい。
レラジェが仕事に姿を現さないのはいつものことだった。職務放棄、ではない。
97La Folie 10/25:2011/01/18(火) 03:51:26 ID:tsNUAEqx
奴はこの“食屍鬼狩り”と呼ばれる能天使の仕事が三度の飯より好きと豪語してはばからず、
暇な時間は用もないのにこの食屍鬼が現れる場所にふらりと現れては食屍鬼を狩っているらしかった。
そんな男が姿を見せないのはサマエルに別の職務を言いつけられているからに違いない。

神殿を出て、居住区域へ急ぐ。
第一塔――。

俺が居住する塔はそう呼ばれている。数ある塔の中でも主に
人天使と呼ばれる第二世代が住まう地下施設だ。
勿論、天使といっても神話や聖書に登場する天使とは違う。
98La Folie 11/25:2011/01/18(火) 03:59:38 ID:tsNUAEqx
天使というのは第二世代を呼ぶ名だが俺はこの呼び名があまり好きではなかった。
……大災厄と呼ばれる世界戦争を経て地球の殆どの地域は焦土と化し、多くの人々は死に絶え
核兵器が齎した汚染により地上は生物の住める場所ではなくなった。
戦争で生き残った数少ない人間達は、地上を棄てて地下にいくつかの施設を作り、そこで生活することを余儀なくされた。
しかし、戦禍が齎した被害は、地上の汚染に留まらず、人間の身体にも影響を及ぼした。
出産率の著しい低下。放射能に汚染された人間は生殖機能を失ってしまったのだった。
99La Folie  12/25:2011/01/18(火) 04:38:22 ID:+Bx9hNuw
そうした事態に研究者達は旧時代まで禁断とされていた技術に手を染めた。

人工のクローン。
論理的な問題から、今まで人間のクローンを生み出すことは法律的に禁止されてきたが、
あまりにも低い出産率を危惧した独立政府によってこれが承認された。


そうして生み出されたのが俺達の世代、所謂第二世代だ。
何故第二世代が天使と呼ばれているのか。答えは簡単だった。
俺達第二世代には背中から生えた翼があるからだ。
何のために在るのか、詳しいことはよく分からないが、大きい小さいなど形は様々であれ
背中から一様に白い翼が生えている。
悪趣味な遺伝子科学者が造形したに違いないそれは第一世代、戦争の生き残りである人間と第二世代を見分ける差異でもあった。

100La Folie 13/25:2011/01/18(火) 04:41:17 ID:+Bx9hNuw
考え事をして歩いていたせいか前から走ってきた小さな子供にぶつかってしまった。

「うわっ!!」

子供はよろけて前につんのめり、転倒しそうになった。
咄嗟に手を差し出し、体を支えると少年は一瞬何が起きたのか分からないといった様子でぽかんとこちらを見上げていたが、
しばらくして頬を緩ませた。少年の首から下がっている身分証――

階級の最下層である下級天使であることを現す三角のプレートが揺れていた。
少年の頬には真新しい傷があり、よく見ると体の露出した部分あちこちに怪我をしていた。
101La Folie 14/25:2011/01/18(火) 04:43:47 ID:+Bx9hNuw
「お兄ちゃん、ありがとう」
「……別に」

何と返していいか分からず、横を向く。
少年は軽く会釈し、立ち去った。
少ししてから、先ほどの少年が走ってきた道の方から、同じ年頃くらいの騒がしい餓鬼共がずらずらとやってきた。

「ちっ、いねえよ。レンの野郎。……逃げ足だけは速い奴」
「下級(デベ)の負け犬だからな」
「俺達の顔見るだけで、とんずらしやがって」
「今度見かけたらタダじゃおかねえ」

こいつら、さっき来た奴を虐めでもしてたのか。
俺の視線に気付いたのか、餓鬼共はこちらを一瞥した。

「……行こうぜ」

餓鬼共が遠くへ離れていく。
……あの餓鬼共が、さっきの奴を虐めていたとしても俺には関係がないことだった。
そうだ、俺には無関係な出来事だ。
面倒な出来事に首を突っ込むのも、巻き込まれるのも、善人ぶって誰かを助けるのも御免だった。
そんなのは、何処かの英雄気取りのお人よしにやらせておけばいい。
早く帰ろう。俺は帰路を急いだ。

102La Folie 15/25:2011/01/18(火) 04:47:44 ID:+Bx9hNuw
家に帰り、テレビをつける。
ニュースが流れ次々と情報を伝えてくる。

人口の減少――
独立政府は難民救済法を承認――
第七地区では汚染が拡大し侵入に制限が――

聞いたことのある情報群の中で一つだけ引っかかったトピックがあった。

第二塔では薬物が問題化――

地下施設は俺達が住む塔だけではなく、他にも旧世代の人間が住む第二塔から
立ち入ることを許されていない第三塔、犯罪者を収容する第四塔まで存在している。
第二塔は第一塔に比べ、貧困の差が激しい事や治安が悪いことが問題化していた。
塔毎に政府が存在しており、第一塔の政府と第二塔の政府は別物で、故に法律も塔が違えば驚くほど違ってくる。
例えば俺の住む第一塔は犯罪に厳しく、薬物の取り締まりも厳格だが、聞くところによると第二塔では
一部の薬物は合法ドラックと呼ばれ、一般人が容易く手に入れることが出来、摂取しても法に触れることはないという。
103La Folie 16/25:2011/01/18(火) 04:52:21 ID:+Bx9hNuw
話題になっていたのは合法ドラッグの中のスターダスト、通称Sと呼ばれるドラッグで、
最近第二塔ではこのドラッグの過剰摂取で死亡する者や、自傷行為に走る若者が後を絶たないということだった。
議会では薬物の取り締まりの厳格化を議論するも、
幾つかの急進的な党の反発で、法案の成立には到っていないらしい。

モニターの中では、専門家が厳しい顔をして、スターダストの解説をしていた。
104La Folie 17/25:2011/01/18(火) 05:00:51 ID:+Bx9hNuw
「このスターダストと呼ばれるドラッグにはいくつもの俗称があります。
例えば有名なところでいうとS、星、きらきら、なんかですね。
名称の幻想的な色合いとは打って変わって、スターダストが引き起こす症状は危険なもので……、激しい恐怖や、妄想、幻覚や多幸感
などを誘引するんですね。
他にも情緒を鈍らせて攻撃的にしたり、私は何でも出来るという万能感を与えたりします。

それで気分が大きくなってしまって、ビルから飛ぼうとして飛び降りたり、自分の体を痛めつけたりしてしまう。
スターダストに中毒性は薄いなんて噂もありますが、これは全くの出鱈目で。
薬が抜けた後でも副作用やフラッシュバックが継続したりなど
人体に多大なる悪影響を与えます。
興味本位で絶対薬物に手を出してはいけませんよ」
105La Folie 18/25:2011/01/18(火) 05:03:42 ID:+Bx9hNuw
薬で幸福感を得ようなんて、馬鹿らしい。
そんなのは所詮、一時の儚い快楽に過ぎないだろうに。
ドラッグが自分の破滅と引き換えにするほど、素晴らしいモンだとは到底思えない。
バカだな。ジャンキーとかいう人種は。

テレビを消すと部屋に静寂が戻ってきた。
昼間の戦いで、疲れたのだろうか。俺は眠気を覚え、横になった。



「ミツルちゃん、おはよう」
……一瞬、何処に居るのか分からなかった。
マナがこちらを見下ろしている。朦朧とした頭がようやく事態を飲み込んだのは十数秒してからのことだった。

106La Folie 19/25:2011/01/18(火) 05:06:33 ID:+Bx9hNuw
「お前、なんで俺の部屋にいるんだよ」
「ミツルちゃんが起きてこないから、心配になって来ちゃった。えへへ」
「えへへじゃない。
扉、ロックがかかってただろ。どうやって外し……」
「俺だよーん」

突然マナの背後から現れた金髪野郎に俺は殺意を覚えた。
犯人はこいつか。
「レラジェ……」

ぼろぼろに改造された能天使階級用の制服。
頬に入ったタトゥー。
一目見たら絶対に忘れないその風貌。
妙なビーズの飾りが付いた長髪を指で弄びながら、野郎はにたにたと卑猥と形容しても過言でない笑みを浮かべた。
107La Folie 20/25:2011/01/18(火) 05:13:21 ID:+Bx9hNuw
「お前の部屋、つまんねーなァおい、
無機質つーか生活感皆無。
せめてホルマリンとか、拷問具とか、人体模型とか、そういうイカシタ家具を置くべきだよなあ」
「レラジェ、それ家具じゃないよ」
律儀に突っ込みを入れるマナ。
「あぁ? そーか? 俺の部屋には全部配置してあるぜ、ヒーハー」
「え〜気味悪いよ」
「ンだとオ、んじゃあマナちゃんよお、お前の部屋には何が置いてあんだよ」
「えっとね、クマのぬいぐるみとひよこのぬいぐるみとうさぎのぬいぐるみと」
「ぶへへへっ!! 随分少女趣味なモン置いてんだなァ、ひゃはは。
クマちゃんにひよこちゃんでちゅかー糞ラブリーでちゅねー」
「むー……!!」

こいつら人の家でなんて騒がしいんだ。
俺はいい加減げんなりして立ち上がった。

108創る名無しに見る名無し:2011/01/18(火) 05:16:19 ID:+Bx9hNuw
「出て行け」
扉を指差すと、マナはシュンとした顔を浮かべた。

「……うん。寝てる間に勝手に入っちゃってごめんね」
「もう二度とするなよ」
「分かった」

玄関の扉にしょぼしょぼと歩いていくマナを眺めながら、レラジェは軽快に唇を吹く。

「お前の言うことならなんでも聞くんか。犬みてぇだなあ、おい」
「何他人事みたいな口聞いてるんだ。お前も出て行くんだよ、ホラ。
不法侵入罪で警備機能呼ぶぞ」
「エー。仕方ねえなあ、俺様もみっくんの言う事聞いて大人しく家を出るかねえ。
しょぼしょぼワンコと化してな。わんわん」

みっくん……おどけて犬の真似をする奴に再び殺意が湧きあがるが殴ってやろうかと思った頃には既にレラジェは扉を開けていた。
109La Folie 22/25:2011/01/18(火) 05:18:44 ID:+Bx9hNuw
「毎日毎日激務だよナー」
だるそうに血管通りを歩きながら、レラジェは呟いた。

手にはいかにも凶悪そうな棘だらけの刑具が握られている。
会話内容とは裏腹に口調は愉快そうだった。

「ねえ、レラジェ、ソレ何?」
マナがレラジェの手にする刑具を指差して首を傾げた。
「ひゃは。教えてやるよ。これは聖エラスムスのベルトってんだ。美しいだろ」
「うーん……なんというか、名前は綺麗だけど痛そう。武器?」
「おうよ。旧時代中世の拷問具だぜ。これで敵の体躯を絞めるとあらゆる部位に棘が突き刺さってそれは悶え苦しみながら
傷が広がっていくんだぜい、動けば動くほどじわじわとなあ……」
「ええ、こっ、怖い」
「いいねえ。その恐怖に怯えた顔。イッペン試してミル?」
「やだ。絶対にやだ。死んでもヤダ」
「おや、つまんねーの。んじゃみっくんで試すかね」
「アホ。自分の首でも絞めてろ」
「エー。俺様ってば真性のSでMっ気はないから、そういうのは好かんのよ」
110La Folie 23/25:2011/01/18(火) 05:25:12 ID:+Bx9hNuw
能天使の持つ武具は刑具と呼ばれるが、本物の刑具を所持しているのはこいつくらいのものだろう。

何しろレプリカではなくわざわざ当時使われていたものをオークションで高値で落札していることからも熱の入れようが伺える。
旧時代の産物は総じてプレミアが付いており、生活用品や廃棄物すらとんでもない値段になることがある。
拷問具なんて歴史的価値が付加されそうな代物にどれほどの値段がつくのか想像も出来なかった。
くだらない会話をしている内に高原に辿りついた。

111La Folie 24/25:2011/01/18(火) 05:27:27 ID:+Bx9hNuw
「おっとお、早速、おでましのようだぜ、団体さん」

霧に揺らめく複数の影。
俺達を出迎えるように現れた食屍鬼は浮遊しながらじわじわと距離を詰めてきた。
食屍鬼の姿が視界に入る。
肉塊のような肥えた丸い巨体からは枝を思わせる手足らしきものが醜く垂れ下がっている。
脂肪で膨れ上がった顔には確認出切るだけでも八つの眼球があり、ぎょろぎょろと左右に動いている。

悪夢を体現したような畸形の、怪物。俺達が狩るべき存在、食屍鬼。
一日ぶりの狩りに興奮したのか、レラジェは咆哮をあげながら、敵に向かって突進していく。
112La Folie 25/25:2011/01/18(火) 05:30:06 ID:+Bx9hNuw
「ひーはーッ!!」

腰に下げた短い鎌を振り上げ、獲物を屠る。
レラジェが鎌を食屍鬼の体躯に食い込ませるたび、奴の体内から溢れてきた赤い体液がぶしゅぶしゅとあたりに散らばった。
「ひゃっ、いいねぇ、温かいぜ、もっと出せよほら!! ひゃはは!!」

こうなってはもう止めようがない。
喜びを全身で表すようにレラジェは飛び跳ね動きまくり、食鬼屍を仕留めていく。
俺とマナは少し下がり、レラジェのサポートと仕留めそこなった敵の始末に回った。
「死ね!! 死ねえええ!!」
113La Folie:2011/01/18(火) 05:32:44 ID:+Bx9hNuw
投下終わり。続きます。
114nou nasino bunnyade:2011/01/18(火) 17:40:42 ID:FBmIQhIH
俺は こちら側で吠える。
115創る名無しに見る名無し:2011/01/24(月) 00:27:24 ID:LAbuRDuK
「フリー編集者の言葉」
何度も言ったと思うけど、本気で目指している人は
以下をテンプレにしてもう少し真剣に考えたほうがいいよ。
・編集者が簡単に思いつくレベルのネタじゃダメ。
・漫画家が一人で書けるレベルのネタじゃダメ。
・主人公の人物像・能力特性がハッキリしてなきゃダメ。
116創る名無しに見る名無し:2011/01/24(月) 02:23:39 ID:BZVvd+9G
 養鶏業者エジンと十匹の鶏の冒険
【ストーリー】
どこかの孤島にエジンという中年の男が十匹の養鶏を飼って生活していた。
エジンは若いときに両親の実家から家出して、親切な養鶏業者の老人に
長い間お世話になってやっとの思いでここに家を建って家畜の鶏十匹を育
っているのであった。
@謎の世界へ!
 いつものように朝早く起きたエジンはベッドから起きると、部屋がまだ暗いことに気づいた。
「 あれ?、もう朝のはずだろ…」
エジンは窓を見ました。外の光景は虹色に輝く渦が家の近くを回っていた。
 「とっ、とりあえず外に少し出てみよう」
エジンは玄関に走ってドアを開けた。すると目の前にあったはずの鶏小屋がが大きな水溜りへと変化していた。
 「ああ!鶏小屋が!……ない」
エジンはその場で立ちすくんだ。しかしエジンの隣ではこちらに向かってくる虹色の渦が近づいていた。
 「これからどうすりゃいいんだ…」
エジンが呟いていると、虹色の渦がエジンを優しく包み込んだ。
「なんだ…急に眠たく……」
エジンはそのまま気を失い、体が宙に浮きそのまま霧の様に消えてしまった。
 エジンがが目を覚めてみると、青い空が広がっていた。
 「ううっ…ここは…?」
エジンは倒れている自分の体を起そうと思ったが、下半身から不気味な感触が上に上がってくる。
 「なんだぁ、なにか動いてるぞ…」
エジンは不気味な感触を探しながら自分の体の上に触った、すると不気味な感触をエジンは触れた。
「これはまさか・・・」
エジンはそれを顔の前に出すと蛇であった。
「うっ、動いてる!」
エジンは蛇をどこかに放り投げて急いで立ち上がった。
「いってえ・・・そういやここはどこなんだ?」
エジンは見たこともない広い草原の上で一人で立っていることに気づいた。
(ここは、どこなんだ・・・確か俺は家を出てそこで大きな水溜まりを見つけて・・・そうだ!鶏はどうしたんだ!」
エジンは周りを確認すると鶏の姿はなかった。
「ああの鶏は爺さんからもらった鶏だ、急いで探さないと!」
エジンはとりあえず目の前をい一直線に走ることにした。だが鶏は一行に姿を見せない。エジンは立ち止まった。
(はあ…はあ…どこいったんだ」
エジンはその場にへたれて仰向けになった。
(鶏だけじゃない人の姿も……)
「きゃあ!」
エジンはかすかに女の子の叫び声が聞こえた、そして立ち上がる。
「今、女の子の声がしたような…あっ!」
エジンは遠い場所に女の子1人と重いよろいを着た男の子、そして、ロープの来た中年が、2人組の男女に馬で追われていた。
「あいつらなら鶏のこと知ってるかもな…」
エジンはその6人を走って追うことにした。

今日はここまで…次回Aお姫様と配下の2人  
117「妖精奇譚・資料1」:2011/02/02(水) 21:47:54 ID:QPz1LytS
当時、バイキングが荒らし回っていた。
バイキングという"もの"は、どんな細い川でも遡ってきて川沿いの村を襲っては全滅させていたんだよ。
そしてとうとう、うちの川下の村もやられたんだ。

村の人達はみんな「次はうちの村だ」とビクビクしていたもんさ。
もちろん、当時もうちの村には神父様がいたよ。
でもね、うちの村の裏山には大妖精様が住んでいていたんだ。

おやおや、私を不信心だと思ったかい?
もちろん、キリスト様は偉いお方だよ。
でも、当時はみんな大妖精様をお慕いしていたし、何より私自身が会ったんだよ。
大妖精様はもうここを去ってしまったけれども、お前もそういう得体の知れない存在がこの世にはいるかも知れない、ということは心に留めておいた方がいい。
まぁ、長生きするためのコツの一つだと思えばいいさね。ばあちゃんが言っているんだから間違いないだろう?

どうする?大妖精様の話を聞きたいかい?……ああ、そうかい。じゃあ続きを話そう。

川下の村がやられた次の日、あたしは村長さんの家に呼ばれてこう言われた。
「乙女よ、大妖精様から知恵を借りてこい」
私は言ったもんさ。あらあら、村長さん、それでわたくしにどうしろと?ってね。

確かに、私は村で唯一の乙女だったよ。
……まぁ、モテない訳じゃなかったけどね。でも、じいさんに惚れちまっていたから身持ちは堅かったよ。じいさんはその頃はまだ騎士見習いで……ってそれはまた別の話だね。

それで、村長さんは言ったのさ。
大妖精様が裏山の洞窟(そう、今は岩で塞がっているあの洞穴だ)に住んでいるから、私が聞いてこいってね。
そりゃ何であたしが?と思ったんだけど、大妖精様に教えを請いに行く場合には、夜、乙女が行くという決まりになっているという事だった。村長さんも何でそんな決まりが
あるかは分からない。でも、決まりは決まりだ。ましてやこちらが教えを請いに行く訳だから、礼儀は守らなきゃね。

で、その晩、あたしは行ったよ。その洞窟に。たいまつを片手にね。
洞窟の前まで来たけれど、特に出迎えも無かったから、「こんばんは。失礼します」と言ってあたしは洞窟の中に入った。
ノックするドアも無かったしね。

洞窟の中は当たり前だけど、真っ暗だったよ。
でも、人がちょうどひとり通れるくらいの大きさの穴がうちの玄関から台所までの距離くらい続いていた。
行き止まりは、ちょっと大きな広間になっていた。広間の中央には、四角い箱のようなものがあったけど、大妖精様らしき人影は見つからなかった。

私は出来るだけ誠実に言った。
「大妖精様、夜分遅く失礼します。バイキングが川下の村を襲いました。次はうちの村です。どうかお知恵をお貸し下さい」ってね。……すると驚いたね。がたん、と音がしたと思ったら、
目の前に大妖精様が現れたのさ。

大妖精様は、いい男だったよ。じいさんほどではなかったけどね。顔色も悪かったし。
そうして古い言葉遣いで大妖精様はおっしゃった。「では、麗しいご婦人、どうか血を一滴いただけないだろうか?」

あたしは、まずパニックにならずに大妖精様のおっしゃったことを理解するように努めたよ。
そして、大妖精様は、あたしの血が欲しいらしい。ここに来るために枝払い用のナイフはあるから、それで指先を切ればいい。

あたしはナイフで指先を傷つけた。そして血をハンカチで拭き取ろうとした。
すると、大妖精様は「失礼だが、レディ。直接舐めさせていただいて宜しいだろうか」とおっしゃった。あたしは少し考えたけれど、これは浮気に入らないだろうと思って、うなずいたよ。

あたしの指先から血を舐めると、大妖精様は、しばらく目をつぶって、その後の策を私に授けた。
簡単に言えば、一夜でダムを作る方法と撃退作戦を絵で描いて私に説明した。古風な言葉遣いも直っていたよ。なんでも、あたしの血から情報を再構築したと言っていたけれども、
あたしには難しいことは分からなかった。

帰り際、大妖精様は私に言った。
「お嬢さん。もう私はここから去らねばならない。次からは村の神父を頼るように、と村長に伝えてくれ」

あたしは、分かりました、大妖精様。と言って洞窟を出た。
そしてこれでこの話はお終いだ。バイキングが引き上げた後、お礼を言いに洞窟に行ったけれど、すでに岩で塞がっていたよ。だから、あんたも安心して神父様を頼りなさい。
ただ、ばあちゃんが大妖精様の話をしたことも時々思い出してくれると嬉しいね。
118創る名無しに見る名無し:2011/02/02(水) 21:49:31 ID:QPz1LytS
ベタにバンパイア物で、民話的インチキができるかを実験してみました。
119創る名無しに見る名無し:2011/03/08(火) 21:04:16.56 ID:rvInxVkV
実験は成功しましたか?
120創る名無しに見る名無し:2011/03/12(土) 20:08:16.65 ID:CSk4huKm
スレたてらんなかったんで勇者もの投稿していいですか?

121創る名無しに見る名無し:2011/03/12(土) 20:09:08.66 ID:CSk4huKm
勇「俺達四人が揃えば怖いものなし!」

勇「卓逸された剣技と勇気の力をもつ勇者俺!」

狩「後方支援WWX百発百中の僕WWWW狩人」

賢「魔法攻撃回復補助なんでもこい!賢者あたし!」

戦「…俺も言わなきゃだめなの?」

賢「のり悪いわねー早くいいなさいよ!ゲシッ!蹴るわよ!?」

戦「いった…もう蹴ってるじゃん…あー斧を使わせたら世界一ぃパワー自慢のぉ戦士俺」

勇「よし皆…これから最後の戦いに赴くわけだが…」

狩「ぅぇWWWWどうしたのどうしたの改まってWW」
122創る名無しに見る名無し:2011/03/12(土) 20:10:46.85 ID:CSk4huKm
勇「これまで俺についてきてくれてありがとう。本当に過酷な道だった…だけどみんな挫けずついてきてくれた…決して一人ではたどり着けなかった…本当にありがとう」

狩「勇ちゃん…」

勇「ここからは本当に壮絶な戦いになる、皆生きては帰れないかもしれない、
皆には悪いけどどんな犠牲を払っても俺魔王を倒すよ…でも願わくば誰一人かけることなく帰りたい」

賢「勇者…」

勇「それでも皆俺についてきてくれるか?引き返すなら今のうちだぞ?」

狩「勇ちゃんWW今さらWWWちょっとこっちきてみWWW」

勇「?」
123創る名無しに見る名無し:2011/03/12(土) 20:11:35.11 ID:CSk4huKm
狩「デュクシWWWW」

勇「Off!?」バキッ

狩「確かに我が身可愛さに逃げ出したいよ、脚ガクガクふるえてるし今朝緊張のあまり夢精して気持ち悪いよ。でもね、また生きる意味を与えてくれた皆を、勇ちゃんを裏切ることなんて僕にはできない」

狩「平和に引き籠もれる世界の為に頑張るしWWWW」

勇「狩人…」

賢「デュクシ」

勇「おぅふ!?」バキッ

賢「殴るわよ?」

勇「もう殴ってるし!」
124創る名無しに見る名無し:2011/03/12(土) 20:13:38.42 ID:CSk4huKm
賢「勘違いしないでよね!誰もあんたの為に頑張ってきたわけじゃないんだからね!あたしは死んでしまった孤児院の皆のような人達を作りたくないだけなの…」

賢「しょ、しょーがなくなんだからね!もおここまで来たら魔王を倒して世界を平和にする!勿体ないじゃない!」

勇「賢者…」

狩「あれWW賢ちゃん赤くね?WW赤くなってね?WWWWどうしたのねぇねぇWWWW」
賢「なってないもん!バキッ!頭突くわよ!?」

狩「いやすでに…鼻血止まらない件」
125創る名無しに見る名無し:2011/03/12(土) 20:14:56.78 ID:CSk4huKm
戦「…」

狩「戦ちゃんは?」

戦「特に言うことなんてねぇよ。どっちにしろ俺もここに用があるんだ、行き先がかぶるだけだろ?」

戦「用が済むまでは一緒に戦うさ」

狩「戦ちゃんまじイケメンWW僕のでよかったらWWお尻かすよWWWW」

戦「わりぃな」サワ

狩「ちょっ!?ごめんごめん冗談冗談!」

戦「冗談だろうが」

狩「冗談に聞こえなかったもので」

戦「これだから童貞は」
126創る名無しに見る名無し:2011/03/12(土) 20:32:24.31 ID:CSk4huKm
勇「童貞は悪いことじゃないっ!」

狩「勇ちゃんの言うとおりだぞWWWW」

賢「童貞ってなに?」

勇狩「!?」

賢「童貞ってなに?なになに?」

勇「いや…えっと…」

狩「賢ちゃん教えてあげようかWWWWエロ賢者であるWW僕がぅぇWW」

賢「賢者のあたしが知らないことなんてあっちゃいけないわけよ」

狩「セクロスしたことない男のことWWW」

賢「セクロスって?」

勇狩「ッッッッッッ!?」
127創る名無しに見る名無し:2011/03/12(土) 23:06:11.18 ID:CSk4huKm
勇「いや…えっと…」


狩「賢ちゃん教えてあげようかWWWWエロ賢者であるWW僕がぅぇWW手取り足取りWWWWフヒヒWWW」

賢「ッッッッッッ!?なんか顔がいやらしい!バキッ!近寄るな殴るわよ!?」

狩「鼻…折れた…鼻血止まんない…魔王の城の前なのに…最終決戦前なのに…」

賢「ちょっと!セクロスってなんなのよ!教えなさいよ!」

勇「え、いや、その、童貞だからよくわからないです…(´;ω;`)」

戦「…あのな賢者…セクロスっていうのはな?」

賢「うん」

勇「うんうん」

狩「あの誰かティッシュ」

戦士のセクロス講座中

128創る名無しに見る名無し:2011/03/12(土) 23:11:42.38 ID:CSk4huKm
賢「ッッッッッッ/////!?なななななななによそれ!?エッチなのはいけないと思います/////バキッバキッ!ワンツーかますわよ!?」

勇「゜。(゜д(⊂三なんで俺っ!?」

狩「あるぇWW賢ちゃんエッチなこと考えちゃった?WWWエッチなのはWWいけないことなのにWフヒヒ」

賢「考えてないもん!」

戦「おいお前、セクロスは全然いけないことじゃないし恥ずかしいことでもない。そりゃ確かに時と場所を選ばなきゃならない言葉ではあるが、そうやって人類は繁栄してきたんだ。
それに…お前らだっていずれは好きなやつとセクロスして子供が産まれ親になる、好きなやつとセクロスしたいと思うのはとても尊く素晴らしいことなんだ、お前らが本当に大人になる時に通過しなければならないことなんだよ。
吹聴するのが恥ずかしいことだとしても行為自体は決して恥ずかしいものじゃあない。セクロスはいわば愛の通過儀礼だ」
129創る名無しに見る名無し:2011/03/12(土) 23:14:01.74 ID:CSk4huKm
戦「そりゃ、快楽のみを求めてする愛のないセクロスもあるさ。だけどやっぱり、セクロスは愛のあるもんじゃなきゃ駄目だと俺は思っている」

勇「…戦士…」ジュン

賢「戦士…」キュン

狩「戦ちゃんの考え童貞臭ぇWWWW戦ちゃんは勿論経験あるんだよね?」

戦「さぁ魔王の城に出発だ」

勇狩賢「ちょ」
130創る名無しに見る名無し:2011/03/12(土) 23:15:00.06 ID:CSk4huKm
賢「ねぇ勇者、勇者は「童貞」なんだよね…?」

勇「え、あ、はい(´;ω;`)」

賢「じゃぁセク…ゴニョゴニョ経験のない女のことなんていうの?」

狩「処女ッッッッッッWWWWW」

賢「ふ、ふーん…ゆ、勇者…あ、あたし、処女、だから…」

賢「もし、無事に帰れたら…」

勇「え、あ、…は、はぁ…」

勇「!」

賢「あたしと…」

勇「……!」

賢「あたしとッッッッッッ…!」

勇「……!」
131創る名無しに見る名無し:2011/03/12(土) 23:18:45.41 ID:CSk4huKm
狩「ぅぇWWWWなになにWWWW僕だけはみご?WWWWもしかして僕邪魔?WWWフヒヒWWW」

賢「」

勇「」

賢「バキッ!ドゴッ!」

狩「マンッ!?」ザシュ

賢「ぶっ殺すわよ////!?」

へんじがない。すでにしかばねのようだ

賢「全く…いいとこだったのに…ブツブツ」

勇「…ドキドキ…今のってまさか…いやいやまさか賢者に限ってそんな…いつも乱暴だし悪口いってくるし…ないないWWWW」

勇「でももしかしてもしかすると…?チラッ」ドキドキ

賢「チラッ…!な、なに見てんのよ!」

勇「え、いや、そっちこそ!」
132創る名無しに見る名無し:2011/03/12(土) 23:19:55.92 ID:CSk4huKm
賢「あ、あ、あたし先行くから!」ズンズン

勇「あ、おい待てよ一人じゃ危ないって!」ダダッ

戦「大丈夫か?」

狩「なんとか」

狩「戦ちゃんちょっとお願いがあんだけどさWWWフヒヒWWW」

戦「なんだ?」

狩「……僕はどうでもいいからさ、万が一の時は二人を頼むよ」

戦「…」

狩「二人には幸せになって欲しいから。絶対」

戦「…お前、生きて帰る気がないのか?」

狩「いやいやWWWWW家のエロ本とかエロ画像とかそのままにしてWWWW死ねないっすWWWWWW」
133創る名無しに見る名無し:2011/03/12(土) 23:27:39.93 ID:CSk4huKm
狩「…だけど、自分より二人の方が大事だからさ…僕はあの二人が好きだよ。
勿論戦ちゃんもねWWWW……二人のためなら、この命惜しくないって思うんだ。元々生きる意味なんてなかった僕を…立ち上がらせてくれた…僕の生きる意味は今」

狩「皆を守るためだよ」

戦「…辛い生き方になるぞ?」

狩「それが僕の選んだ人生さ」

戦「…だったら意地でも生きろ」

戦「お前が死んだら二人だって悲しむ、勿論俺もな?そんなに二人が大事なら、守りたいと思うなら、悲しい思いなんてさせてやるな。お前が死んだ後も二人の人生は続く、二人が間違える時もあるだろう、その時はお前が正してやれ。大事なら、一緒に生きてやれ」

狩「戦ちゃん…」
134創る名無しに見る名無し:2011/03/12(土) 23:30:02.40 ID:CSk4huKm
狩「戦ちゃん…」

戦「いいか、お前の生き方は辛いものになるだろう。二人を守る為に戦いたくない相手と戦うこともあるだろう、傷つき苦しいことになろうともそれはお前の決めた道だ。
どんなことになってもどんな敵が現われても、お前のその信念の赴くままに戦え。いいな?」

狩「うん」

狩「じゃあ行こうか。やっべWWWWWW二人に置いていかれるぅWWWWまってくれーぃWWWW」スタコラサッサ

戦「……」







戦「これが最期か…」
135創る名無しに見る名無し:2011/03/12(土) 23:34:08.09 ID:CSk4huKm
「来たな勇者ども」

狩「っべーWWWWっべーWWWW魔王四天王じゃね?」

「久しぶりだな。この門を任されし蒼龍将軍だ」

「フンッ!ハッ!また会えたな!そしてこの素晴らしい筋肉を持つオレが!白虎将軍だ!フンッ!サイドチェスト!」ムキッ

賢「四天王が一気に二人も…」

蒼「それだけ貴公らの実力を認めているというわけだ…最初から全力で参る…!」キラン

勇「もうあんたにボロ負けした時の俺だと思うなよ蒼龍将軍!俺は、俺達は強くなったんだ!賢者!防御呪文を!」

賢「わかってるわよ!カタクナール!」ピカンピカン

勇「はぁぁぁぁ…我が身に宿る勇気よ!恐れる我に!怯える我に!ふるえる我に!ただの一滴でもいい!その力をわけ与えたまえ!」ゴゴゴゴ

勇「我が武器はこの勇気なり!我が名は勇者!推して参る!」
136創る名無しに見る名無し:2011/03/12(土) 23:42:00.33 ID:CSk4huKm
蒼「削げよ鱗、尖れよ牙、穿てよ角!我が一族の龍骨より作られし名刀に斬れぬ物なし削げぬ物なし穿てぬ物なし!魔王四天王蒼龍!龍族の誇りにかけて全身全霊で貴公らを、断つ!」ジャキーン

勇「アアッ!」ガキーン!

蒼「はぁ!」ギギン!

勇「ポワッ!」キンキン!

蒼「シェァァァ!」ガキンガキン!

白「ではオレの相手はお前らということか戦士、狩人。フンッ!ダブルバイセップス!」ムキムキッ

狩「いちいちポージングするのやめない?」
137創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 00:05:59.80 ID:SZ4QmsI6
白「フンッ!ムキムキッ!いいか?これはただの筋肉ではない。
我が武器であり鎧であり誇りでありパワーの象徴なのだ、見ろこの筋肉を!
ムキムキッピクッ!そして見よこの技!動き!フンッフンッフンッ!」バババッ!

狩「Oh…」

戦「相変わらずいい動きだ」

白「フンッ!パワー!」ムキムキッ

白「ムンッ!ボディ!」ピクピク

白「シュッ!スピード!」シュンシュン

白「ヒュッ!アビリティ!」ブゥン

白「俺は強さに必要なものが何ひとつかけていない!それら全てはこの我が筋肉があってこそのもの!つまりこの筋肉はオレの努力の結晶!誇り!」

白「仰ぎ見よこの肉体を!ムキムキッ!質実剛健!明鏡止水!乾坤一擲!筋骨隆々!魔王四天王が一人白虎!さぁ!血沸き肉躍る筋肉のぶつかり合いを始めようぞっ!」ガォォォォムキムキッ
138創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 00:15:03.28 ID:SZ4QmsI6
戦「…俺もパワータイプだけどさ…あんたみたいに誇りも自信もないよ将軍。
あんたの心は気高いんだな」

戦「だからその高いとこから落としてやるよ、この俺の低い場所、底に叩きつけてやる」

狩「こいよ白虎将軍」

白「ガォォォォ」ムキムキッ

狩「ぅぇWWWW」ヒュンヒュン

白「痛っ…きかん!」ガォォォォ

狩「連続撃WWWW」ダダダダダ

白「あたらん!…痛っ痛た!フンッ!」ムキムキッ

戦「っふん!」ブン!

白「ガォォォォ!」ドガッ!

戦「ぐあっ!」ガシャァア

狩「戦ちゃんを吹き飛ばすなんてどんだけ怪力!」ヒュンヒュン

白「ムゥン!」シュンシュン

狩「!」

白「ゥォォォォォンッ!」ドガッ!

狩「ぐあっ!?」バキッ
139創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 00:37:43.88 ID:SZ4QmsI6
狩「うぁ…く…ゴホッゴホッ…相変わらず防御力紙だな…」

白「貴様も日頃からトレーニングしていれば」ムキムキッ

白「どうにかできたものを」ムキムキッ

狩「そんなにマッチョはモテないんだぜWWWWWゴホッゴホッ…」ボタボタ

白「とどめっ!」

戦「待てよ」

白「むっ!」

戦「ふんっ!」

白「ムンッ!」

戦「はっ!」ガキン

白「ガォォォォ!」キンキン

白「素晴らしい斧捌きだ!」

戦「そいつはどうも!」
140創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 09:54:43.49 ID:SZ4QmsI6
白「前々から思っていたが貴様には素質がある!どうだ?今からでも遅くな
い!こちらに来てオレと一緒にトレーニングしないか!?」

戦「生憎売約済みでね…それにあんたみたいなマッチョになったら…」

ビュン!

白「なにっ!?」ドスッ

白「ぐぉぉぉぉぉ!?目が!目がぁぁぁぁあ!?」

狩「モテないから勘弁WWフヒヒWWW」

狩「将軍みたいなマッチョなら前線でガンガン行けただろうね、だけど将軍にはできないよね?僕みたいに目玉を狙いうつなんて」

狩「今時はクールなのがもてるのさWWフヒヒWW」

戦「だ、そうだぜ。フンッ!」ザンッ

白「ぐぉぉぉ!?」
141創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 09:55:45.87 ID:SZ4QmsI6
白「ふふふ…成る程…毒を持つ虫のように…見た目の貧弱さに騙されていた…ふふ…重要なのは…心の筋肉ッッッッッッ!」

狩「そこまで筋肉にこだわるのね…」

戦「まだ続けるかい?」

白「無論!お願いする!フンッ!マストモキュラー!」ムキムキッピクッ

戦「!」

狩「!」

白虎将軍のステータスが上がった!

白「グルルル…切り札は最後までとっておくもだ…クールだろう?」ムキムキッ

狩「いかしてるよ将軍…」
142創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 16:48:02.68 ID:SZ4QmsI6
勇「ンアッ!」ガキン

蒼「シッ!」ブン!

勇「ポォォ!」ガキンガキン

賢「ちょっと!こういう時ぐらいその女テニス選手みたいな掛け声どうにかならないの!?」

勇「シャラポワ!」ギギン!

蒼「シッ…はっ!」キン!ブン!

勇「くっ…!」

蒼「私の居合いを避けれるようになったか…確かに強くなったのだな」

勇「(みえねぇよほとんど勘だよ!)あんたの腕が鈍ったんじゃないのか?はぁはぁ」

蒼「勇気とかいう力も使いこなせるようになったようだな…」

蒼「だがそれだけで私に勝てるなどとは努々思わぬことだ…!ムンッ!」ガキンガキン!

勇「フォッ!」ギギン
143創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 17:11:23.91 ID:SZ4QmsI6
勇「(くそっ…このままじゃ剣が折れちまう!)」

賢「サンダーボルト!」ビカビカッ

蒼「ぬぅん!?ぐあっ!」バリバリ

勇「今だ!ブレイブソード!」ズバァ

蒼「ぐぅぅ!?」

賢「とどめよ勇者!」

勇「クルムダテッ!」ブゥン!

蒼「キシャァァァァァ!」ブン!

勇「!ぐはぁ!?」

賢「尻尾を武器に!?」

蒼「フンッ!」シュピン

賢「っ…!」ドスッ

賢「う…?」ボタボタ

勇「賢者ーっ!賢者ーっ!?大丈夫か!?おいしっかりしろ!」

賢「なにか…投げられ…」

勇「なんか刺さってる…な、なんだこれ…」

蒼「私の鱗だ。たいしたものではないがナイフぐらいの鋭利さはある」

蒼「我が武器は刀だけではない。龍族の体を最大限に活かし戦う」
144創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 19:40:20.56 ID:SZ4QmsI6
賢「よくもやってくれたわねぇ…ウルトラサンダー!黒焦げになれぇーっ!」
バリバリ!

蒼「ふぅん!」ビシャァァァァ!

勇「!」

賢「ま、魔法が…」

蒼「言っただろう?我が刀に斬れぬものなどないと」

賢「だとしたって…雷よ…?まさか雷の速度に反応して斬ったとでも言うの…?あ、あり得ない…」

蒼「そろそろ勇者の剣も限界だろう。いくら勇気でコーティングしているとはいえ私の刀相手では持つまい」ジリッ

勇「くっ…」
145創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 20:06:13.87 ID:SZ4QmsI6
白「ガォォォォ!」ドガガガガ

戦「ぐはっ!」

狩「サーセンWWWWガハッ」

白「フシュゥゥゥ」ムキムキッ

白「まだやるか?」ムキムキッ

戦「勿論な…」ボタボタ

白「諦めろ。貴様たちではもうマストモキュラーのポージングを行ったオレには勝てん」

戦「…はぁはぁ…退けないね…」

白「その信念はなんだ?そこまでする理由はなんだ?」ムキムキッ

戦「…あんたこそ、あんのか?片目つぶされてまで守るべきもんなのかその先にあるものは」

白「…魔王様には指一本触れさせん」ムキムキッ

戦「はぁはぁ…成る程…だけどさ…俺の欲しいものもこの先にあるんだ…退けない」

白「お前とは別の出会い方をしたかったぞ」ムキムキッ

戦「諦めろ、もう叶わねぇよ」ブン!
146創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 20:45:25.45 ID:SZ4QmsI6
白「ぬぅん!」ズシャッ!

戦「うぉぉぉ!」

白「ぬっ!」

戦「りやぁぁぁぁぁぁ!」カッ!ズバッ!

白「ぐぉぉぉぉぉ!」

白「ムンッ!」ギラッ

白「タイガークロスクロォォォ!」ズバァァァァ!

戦「うがぁぁぁぁ!?」

白「からの…ホワイトブリィィィガァァァァァッッッッッッ!」ギリギリ

戦「がはぁっ!」メキメキ

白「我が筋肉の中で息絶えるがよい!」ムキムキッピクッピクッメキメキメキメキ

戦「ぐ…ぅが…!」

147創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 20:49:52.55 ID:SZ4QmsI6
狩「…これでもくらえ…」ブシュッ

白「ぬぐっ…?…う…!?」

ドガァン!

白「おおおお!?」

狩「火薬たっぷりの炸裂弾だ…フヒヒ…」ボタボタ

戦「クールだよ狩人…!うがぁぁぁぁ!」

戦「アァァァァァァァァアァァァックスッ!」ズバァァァァ!ザンッ!

白「ごふっ…み…見事だ…」バタッ

白虎将軍をたおした!
148創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 20:58:18.60 ID:SZ4QmsI6
蒼「はぁぁ!」キンキンキンキン

勇「ぐっ…ぅん!」キンキン

賢「ファイアーストーム!」ボボボーボ

勇「シューゾー!」ガン

蒼「うぉぉぉ!龍剣!暴風龍!」ズガガガガ

賢「きやぁあ!?」

勇「うぐあっ!?」

蒼「これまでだな…せめてもの情け…愛し合うもの同士の腕の中で死なせてやろう」

賢「ばっ!?違っ!そんなんじゃないわよ!勘違いマックスバリュだし!頭ハッピーセットなんじゃないの!?」

勇「(´;ω;`)」
149創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 21:05:45.18 ID:SZ4QmsI6
蒼「死ねぃ!龍剣奥義!魔龍!」ギャォォ

賢「いやっ!?勇者!」ギュッ

勇「賢者…」

勇「誰も死なせてたまるかぁぁぁぁ!」

勇「ブレイブソード!」バルバルバル

蒼「せいっ!」

バッキィィン

蒼「ブレイブソード破れたり」

勇「うぐ…あ…」ボタボタ

勇「そいつはどうかな…?」

ドスッ

蒼「ぬぐぅ!?」ボタボタ
150創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 21:08:34.88 ID:SZ4QmsI6
蒼「剣は折ったはず…うぐ…勇気で作った剣か…成る程…」ボタボタ

勇「いったろ…俺の武器は…勇気…この魂だぁぁぁぁあ!」

勇「ダブルブレイブソード!」ズバッ

蒼「かふっ!?…ぐ…見事だ…勇者…これまでか…」ガクッ

蒼「魔王様…使命を全うできず申し訳ありません…」カチャ

勇「ま、待て!」

蒼「フンッ!」ブシュッ

蒼「ぐ…」バタッ

蒼龍将軍をたおした!
151創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 21:30:18.45 ID:SZ4QmsI6
賢「自分で腹を…」

勇「なんで…」

戦「察してやれ。蒼龍将軍にも武士の一分というやつがあったのさ」

狩「ぅぇWWW血止まんないWW回復かけてW」

賢「勇者!こんなに血が!今治してあげるからね!」

戦「おとなしく薬草でも食べてようぜ」モフモフ

狩「ハハッWWWWなんでWWWWこの薬草すごくしょっぱいやWWグスッ」
152創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 21:41:43.68 ID:SZ4QmsI6
次の間

「…」

勇「!お前は…」

戦「まさか玄武元帥か…」

玄「めんどうくさい…」

玄「何もかもめんどうくさい…はぁ…」

玄「そう、自分は玄武元帥」

玄「本当は下っぱでいたかった…怒られるのがめんどうでこつこつ仕事をしていたらいつの間にかめんどうなことに元帥にまでなってしまった…」

狩「Oh…」
153創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 21:49:15.75 ID:SZ4QmsI6
玄「自分さ…この戦いが終わったら元帥やめて貯金で悠々自適に暮らすんだ」

賢「ちょっ」

玄「だから…めんどうだからさっさと終わらせようか…」ムクッ

玄「難攻不落、我が壁を前にして……………………………………………玄武元帥、参…こい!」

賢「名乗りを省いた上に来いっていい直した!どんだけめんどうなのよ!」

玄武元帥はみをかためた!

勇「いきなり防御かよ!」

玄武元帥はみをかためた!

狩「完全に「受」の姿勢だ…」

戦「待て、こんなんでも元帥だ。一筋縄ではいかないぞ」

玄武元帥はみをかた

玄「…はぁ…」

賢「溜息ついた!今コマンドキャンセルして溜息ついた!」
154創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 21:58:02.33 ID:SZ4QmsI6
勇「隙ありだ!ブレイブソード!」

狩「矢を相手の急所に…シュゥゥゥ!超エキサイティング!」

賢「ホーリービーム!」ピピー

戦「待てお前ら!」

テロロッ

玄武元帥にはきかなかった。

狩「えぇ…?」

賢「なん…だと…?」

玄「めんどうだ…めんどうだ…だからもう…」

玄「終わらせようか」ゴロゴロ

玄「強情に怠慢」ゴロゴローッ
155創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 22:19:10.70 ID:SZ4QmsI6
勇「マツオカッ!?」 ドガッ

狩「勇ちゃん!」

キュッ!グルンッ!ゴロゴローッ

狩「くばっ!?」

賢「ファイアーストーム!」ボボボーボ

ゴロゴローッ

賢「きゃぁあ!」

戦「賢者っ!」バッ

バッカーン

賢「ぅぁぁっ!?」

戦「ぐがっ…」

玄「ターキー」
156創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 22:23:34.05 ID:SZ4QmsI6
玄「自分は四天王一の「守」の力を持つ。そんな攻撃は効かない…避けるのはめんどうだ…」

狩「もしかして…さっきの二人より強い…?」

玄「強いのはあの二人の方だよ、ただ自分は「硬い」だけ」

玄「はぁ…朱雀将軍がいれば楽にかたずつけられるのに…」

玄「めんどうだなぁ…めんどうだなぁ…」ゴロゴロ

玄「…めんどうだーッ」ゴロゴローッ

勇「くそっ!あんな硬いのどうしたら!」
157創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 22:38:22.96 ID:SZ4QmsI6
賢「あたしに任せて…召喚!マジンザハンドー!」

グァァァ!オオオ!

賢「潰してっ!」

オケ、ブルゥァァァァァ!

玄「おわっ」

ドガァァァァア

戦「やったか!?」

狩「ちょっ…」

玄「あいたたた…」

勇「あれで「痛い」程度かよ…」
158創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 22:39:21.81 ID:SZ4QmsI6
賢「今よ!あいつは今動けない!勇者!あんたの力を至近距離からぶちあてるのよ!」

勇「そうか!」

玄「動けん…」グラグラ

勇「フルパワーだ…ブレイブソード…フラァァァァァァァァッシュ!」

玄「ぬぐぐぐぐ」

勇「こん…のぉぉ…!」

玄「めんどうなことになったな…ぐぅぅ」

勇「ァァァァァァァァァアバァッ!」ズギャーン!

玄「ぐおおおおっ!」ドガシャッ

玄「がふっ…」バタッ

勇「ちっくしょ…なんてかてぇんだ…」

玄「めんどうだ…めんどうだなぁ…」ムクッ

狩「!」
159創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 22:49:19.43 ID:SZ4QmsI6
戦「勇者!」

勇「!?」

玄「…めんどうだなぁ…何もかもめんどうだ…もういいかぁ…めんどうだしなぁ…死ねばなにも考えなくていい…ははは…これで楽になれる…ははは……………………………」

賢「死んでる…」

玄武元帥をたおした!

狩「なんて安らかな死顔だよ…」

賢「死しか彼を解放できなかったなんて…哀れな人…」

戦「…」

勇「戦士?いくぞ?」

戦「…ああ、わかった」











戦「…哀れか…あんたも俺と一緒か…」
160創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 23:17:30.10 ID:SZ4QmsI6
勇「もうすぐ最後の門か…」

狩「皆ちょっと聞いてWWWW」

賢「なに?どうしたの?」

狩「僕無事に生き残れたら故郷に帰って結婚するおWWWW」

勇「えぇ!?」

賢「相手いたの!?」

狩「ううん、運命の赤い糸でつながっている相手を探して結婚するのさ」

勇「そこからかよ!」

賢「引きこもりのあんたに相手なんかいるわけないものね」

狩「フヒヒWWWWサーセン」

戦「どうしたいったい」

狩「必ず生きて帰ろうと思って」
161創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 23:36:42.66 ID:SZ4QmsI6
勇「…」

狩「やっぱ一回ぐらいは恋愛しとかないとね」

賢「…」

狩「戦ちゃんもそう思うっしょ?」

戦「あ?」

戦「そうだな、人は愛の為に生きていると言っても過言ではない。いい心がけじゃないか狩人」

勇「…チラッ」

賢「…チラッ」

戦「人は愛のためならなんだってできるぞ」

狩「戦ちゃんにはいないの?そーゆう人」

戦「いるぞ。そいつのためなら俺はなんだってする、できる。それだけあれば俺は他に何もいらない」

勇「…チラッ」

賢「…チラッ」
162創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 23:44:14.30 ID:SZ4QmsI6
戦「お前らはどうなんだ?」

勇「え、あ?」

賢「な、なによいきなり!バキッ!バキッ!殴るわよ!」

勇「なぜ俺をっ!?」

戦「セクロスの話の時にいったろ、愛ってのは全然恥ずかしいことなんかじゃない。素晴らしいことだ。死ぬ前に恋愛しといた方がいいぞ」

勇「…」

賢「…」

狩「あの…緊張でうんこしたくなったのでうんこいってきますWWWW」スタコラサッサ

戦「あっちに宝箱があるかもしれない。ちょっといってくる」

勇「…あっ」

賢「ちょっと…」

勇「…」

賢「…」
163創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 23:51:48.06 ID:SZ4QmsI6
勇「賢者…」

賢「な、なによ…」

勇「ほら、突入前…なんか俺に…」

賢「ッッッ////!?スケベ!変態!」

勇「うわっごめん!」

賢「…」

勇「…」

賢「あのさ…」

勇「は、はい!」
164創る名無しに見る名無し:2011/03/13(日) 23:56:18.20 ID:SZ4QmsI6
賢「あ、あんたは童貞で、あ、あたしは処女で…」

勇「」

賢「そのもし無事に帰れたら…その…二人で…」

勇「ふ、二人で…?」

賢「…そうなくなるのも、いいんじゃないかなって…」

勇「」

賢「…」

勇「ええええええ?」

勇「え、あ、あの…お、俺…童貞だからよくわからないけど…その…セクロスって…結婚しないと、しちゃいけなかったような…」

賢「えっ…」
165創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 00:05:08.44 ID:cIVnG5xA
勇「…ど、童貞だからよくわからないけど…結婚って、好きな人同士じゃないとしちゃいけなかったような…」

賢「…」

勇「…えと…よくわからないけど…童貞だから…」
賢「…」

勇「…童貞だから…」

賢「あたしも処女だからよくわかんないけど…」

勇「…」

賢「…結婚…してみる…?」

勇「あ…えと…」

賢「…」

勇「す、好きなの…俺のこと…?」

166創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 00:14:30.52 ID:cIVnG5xA
賢「…そ、そういうこと聞くぅ!?」

勇「いやだって…」

勇「うぅ…」

賢「そういうとこ本当に意気地なしなんだから…」

勇「シュン」

賢「…嫌いな人にそんなこと聞かないわよ…」

勇「」

勇「ラブオールプレイッッッッッッ!」

賢「!?」
167創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 00:15:32.23 ID:cIVnG5xA
勇「あ、ごめん…うれしさのあまりつい…」

賢「っ!?」

勇「あ、いや、その、これはあの…えと…ごめん童貞だから…」

賢「クスッ」

勇「な、なんで笑うんだよ」

賢「処女だからWWWW」

勇「なんだよそれぇ」

賢「あははははっ」
168創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 00:15:57.54 ID:cIVnG5xA
賢「…手、つないでいい?」

勇「…あ…うん…」

賢「…」ギュッ

勇「…」ギュッ

賢「…温かい…あなたの勇気が伝わってくるみたい」

勇「…戦士の言ってたこと、なんとなくわかる気がする…今なら…なんでもできる気がするよ…」
169創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 00:16:24.12 ID:cIVnG5xA
狩「チクショウチクショウWWWW青春しちゃって」

戦「うんこ、出たのか?」

狩「おならだけ、虚しいもんさ」

戦「冷やかしにいくなよ」

狩「わかってるよ、こういう時ぐらい」




戦「なにせ…最期だからな…」
170創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 17:51:13.09 ID:cIVnG5xA
戦「そろそろ戻るか」

狩「もう充分だよねWWWあれぇどうしたの二人とも手なんかつないじゃってフヒヒWWWWW」

勇「あ…その…な?」

賢「うん…ね?」

狩「」

狩「レベルアップしている…だと…?」

戦「皆準備はいいか?」

狩「ハハッWWW今日はやけ薬草WWWグスッ」

戦「開けるぞ」ギギギ
171創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 17:53:27.72 ID:cIVnG5xA
「よくここまでたどりつきましたね」

勇「朱雀将軍…!」

朱「よもや三人を倒しここまでくるとは思いませんでした…賞賛に値します」

朱「この最後の門は呪術士朱雀将軍の私がお相手致します」

狩「フェミニストの僕ですがWWWW…世界の命運がかかってるんだ、女だから
って容赦しないよ」

賢「行くわよみんな」

勇「必ず生きて帰る、みんなで」




戦「皆では無理だわ。すまん」
172創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 17:54:30.37 ID:cIVnG5xA
狩「?」

勇「戦士…?」

賢「…何…?」

戦「悪い、俺はここまでだ」

狩「…うぇ?」

賢「え…え?どうしたのよ…?」

勇「え…何…何…俺…よくわかんないよ…皆で…生きて帰ろうって!いった
ろ!諦めんなよ!俺達皆の力が合わされば!絶対!」


戦「…だから…いったろ…」カツンカツン

狩「戦ちゃん…?」
173創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 17:56:27.37 ID:cIVnG5xA
賢「一人じゃむりよ!戦士!」

勇「皆!援護を!」

狩「ふんっ!」ビュッ

賢「サンダーボルト!」ビカビカ

勇「ブレイブソード!」ブン

戦「いいいいいらぁつ!」ブォン

勇「ぐはっ!」

賢「勇者!」

狩「せ…戦ちゃんなんで勇者を…?まさか…あんた…」

174創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 18:39:59.10 ID:cIVnG5xA
戦「…そう…」カツンカツン

戦「悪い…色々時間かかったけどここまできたぞ…朱雀」

朱「…戦士さん…」

勇賢「!?」

狩「…ぁ」

いいか、お前の生き方は辛いものになるだろう。二人を守る為に戦いたくな
い相手と戦うこともあるだろう、傷つき苦しいことになろうともそれはお前の決めた道だ。どんなことになってもどんな敵が現われても、お前のその信念の赴くままに戦え。いいな?

狩「う…嘘だ…」ガクッ
175創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 18:42:28.75 ID:cIVnG5xA
朱「…正気なのですか…?人間を裏切り魔族の味方をするなど…」

戦「…アプローチはお前からだったはずだが?心変わりしたならこのまま引き下がるが…」

朱「…本当に、私のもとに来てくださるのですか…?」

戦「ああ」

朱「…あなたは大馬鹿者です…」

戦「ああ、自分でも馬鹿だと思う」

朱「…あなたの、そういうところ嫌いです…」

戦「困るなそりゃ」

朱「…勇者を裏切ることになるのですよ?人間を裏切ることになるのですよ?辛い生き方になるのですよ?」

戦「それが、俺の選んだ道だ」

朱「嬉しい…」

戦「その言葉で俺も嬉しいよ」

朱「戦士さん…」ギュッ

戦「朱雀…」ギュッ
176創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 19:33:41.05 ID:cIVnG5xA
勇「な…なんで…」

賢「嘘…嘘よ…」

狩「…っ…なんでだ!なんでだーッ!答えろ戦士ーッ!」

戦「…さっきも言ったはずだがな」

戦「愛するものさえいれば他に何もいらない」

戦「愛のためならなんだってするって」

戦「最初にも言ったはずだ、用事があるからそこまで一緒にって。だからこ
こまでだ」

勇「本当に俺達の敵になるのか…嘘だろ…嘘だって言えよ戦士」

賢「さっきまで一緒に戦ってきたじゃない…なのになんで…」

狩「魔族は人間を苦しめて来たんだぞ!魔族に味方するってことがどういうことかわかってるのか!」

戦「…」

朱「わかっていないのはあなた方だ」
177創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 19:43:21.04 ID:cIVnG5xA
朱「あなた方は魔族に苦しめられてきたなどと仰りましたが、それと同じ分
人間も魔族を苦しめてきたのです」

朱「あなた方の道理はこちらにもあるのです!自分たちが正義なのだと思い込まないでいただきたい!」

勇「…っ」

戦「確か、勇者家族を魔物に殺されたんだよな?」

勇「っ」

戦「俺達が殺してきた魔物にだって家族はいたんだぞ?そしてそいつらに憎まれてるんだ」

賢「…っ」

戦「魔族だって、笑うし喜ぶし泣くし怒るんだ。同じだろうが、人間と何が違う。言ってみろよ勇者」

戦「魔族だけが悪いものみたいに言うよな、人間だって同じぐらい汚いものだろうが。俺は「人間」だからわかる」
178創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 19:46:53.62 ID:cIVnG5xA
狩「違う!人間はそこまで愚かじゃない!」

戦「ならなぜ国は援軍を送らない?勇者に魔王討伐を押しつける?」

戦「なぜ賢者の村の孤児院が異端狩りに遭わねばならなかった?」

戦「なぜ狩人は引きこもりにならなければならかった?」

戦「なぜ…なぜ俺の家族や仲間は人間に殺されねばならかった?」

勇「…!」

賢「ぁ…」

狩「…ぅ」

戦「お前らだって人間に苦しめられてきた…」

戦「魔王を倒せば平和?万々歳か?…こねぇよ…平和なんてこない。魔王がいたところに人間がすっぽりおさまるだけだ」

勇「そ、そんなことは!」

戦「…戦うばっかりで、考えたことなんてなかったよな…」

勇「…ぅ…」
179創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 19:47:42.36 ID:cIVnG5xA
朱「…戦士さんは私の話をちゃんと理解してくれました。彼はちゃんと…私達のことも考えていてくれていたのです…真に平和を乱すのは…種族ではなく個々の在り方です」

賢「あんたが戦士を誑かしたのね!」

戦「…そうだな…そういうかたちになるのかもな…な?」

朱「た、誑かしたなどと…///!下品な言い方はおよしなさい!あなたも私に振らないでください!」

狩「…なんで…なんで相談のひとつもしてくれなかったのさ…!仲間だろ!?」

戦「……」

戦「…言いたくなかった…」

戦「だってお前ら…いいやつすぎんだもんよ…?」
180創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 19:53:53.17 ID:cIVnG5xA
朱「…戦士さんは私の話をちゃんと理解してくれました。彼はちゃんと…私達のことも考えていてくれていたのです…真に平和を乱すのは…種族ではなく個々の在り方です」

賢「あんたが戦士を誑かしたのね!」

戦「…そうだな…そういうかたちになるのかもな…な?」

朱「た、誑かしたなどと…///!下品な言い方はおよしなさい!あなたも私に振らないでください!」

狩「…なんで…なんで相談のひとつもしてくれなかったのさ…!仲間だろ!?」

戦「……」

戦「…言いたくなかった…」

戦「だってお前ら…いいやつすぎんだもんよ…?」
181創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 19:57:37.82 ID:cIVnG5xA
勇「…戻ってこいよ!だったら!」

戦「…俺、お前らのこと大好きだよ…だけどこいつの方が大好きなんだ…」

戦「どっちかとらなきゃいけないなら…こっちだな」

朱「戦士さんっ…」

賢「嫌よ!戦士と戦うなんて!」

戦「…勇者、お前いったよな…どんな犠牲払ったって魔王を倒すって…その覚悟ってこんなもんか?」

戦「賢者…生きて帰って勇者と結婚するんだろ?…その願いってこんなもんか?」

戦「狩人…二人が大事なんだろ?守るんだろ?その友情ってこんなもんか?」


戦「そんなものならこの斧で真っ二つにしてやろう」

戦「…愛の為に砕いて壊す、我が力の源はただひとつを守る為の愛。どんなときも苦楽を共にし、その生涯を捧げる愛の戦士」

戦「勇者…お前の力が勇気なら」

戦「賢者…お前の力が叡智なら」

戦「狩人…お前の力が絆なら」

戦「俺の力は…愛だ。いくぞ…」
182創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 20:17:51.54 ID:cIVnG5xA
勇「い、嫌だ!」

賢「やめてよ!」

狩「…」ググッ

勇「狩人!?」

狩「ぅぁぁっ!」ビュッ

朱「憎悪!」ボコボコ

ブジュッグジュ

朱「私がいることをお忘れなく」

朱「我こそは全ての呪術を司る朱雀将軍!深く堕とし暗く飲み込み冷たく溶か
す!我が闇とくと味わいたまえ!」

勇「か、狩人!」

狩「ぅ…ぅ…絆を守る為に…絆を断たなきゃならないなんて…チクショウチクショウ…笑えよ神様…メシウマだろ…?」ポロポロ

勇「…狩人…」
183創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 20:22:52.97 ID:cIVnG5xA
賢「どうしてよ…どうしてこんなことに…」

狩「本当に悪趣味だな…神様ってやつはよぉぉぉぉ!」ビュッビュッ

戦「同感だ!フンッ!」ズハッガシャッ

狩「貫けぇ!トルネードアロー!」ギュババババ

戦「ふん…」ズシッ

戦「潰れろぉ!」ブォン!ドガァァァァア

狩「束ね撃ちだぁぁ!」ドドドド

戦「うぉぉぉぉ!」ブンブンブンブンブン!キンキンキン!

戦「いいいいいらぁつ!」ブンブンブンブン!

狩「うわっ!」狩人は身をかわした

勇「や、やめろ!二人ともやめてくれ!」
184創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 20:25:00.67 ID:cIVnG5xA
賢「こんなのおかしいよ!なんであたし達が戦わなきゃいけないのよ!」

朱「では私に殺されますか?」

勇「う…う…お前が…お前が戦士を!そうか!呪いで操っているんだな!?」

賢「そうだわ!そうじゃなきゃ戦士が裏切るわけないもの!」

朱「いい加減にしなさいっ!」カッ

朱「あなた方はいつもそうやって都合の悪いことがあるとすぐ何者かによって災いをふりかけられているように言う!理想ばかりを追い求めているからいざ現実を前にした時そんな風に言うのです!見なさい!その眼で戦士さんの姿をッッッッッッ!」

戦「呼んだ?」

狩「よそ見するなっ!」ヒュッ
185創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 20:26:57.54 ID:cIVnG5xA
戦「愛する女に呼ばれたら返事をするもんだ。童貞にはわからないか?」

狩「惚気るなっ!あんな鳥女とセクロスしたぐらいで!」

朱「は、破廉恥ですッッッッッッ!け、結婚前の男女がせせせせせ性交など破廉恥極まりないッッッッッッ!」

狩「」

勇「」

賢「」

戦「…」

戦「かくいう俺も童貞でね」
186創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 21:17:01.75 ID:cIVnG5xA
朱「と、取り乱してしまいました…コホン。わかりますか?…彼が…操られているように見えますか?今まで共にしてきたあなた方ならわかるはずです…彼は彼だ」

朱「確かに私は呪術を使って人を操ることができます。しかし心までは操ることなどできません」

朱「まだ彼が彼ではないと疑うのならそれは彼に対する侮辱に他なりません!あなた方が彼をそこまで理解していなかったと言うことです!」カッ

勇「そ…そんな…」ガクッ

賢「勇者…」

朱「私に呪い殺されるか、戦士さんに斬り殺されるか、選ばせてあげましょう」
187創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 21:55:33.31 ID:cIVnG5xA
賢「キッ!やらせないわよ!タイダルウェーブ!」ドバドバ

朱「飲め!暴食!」ゲバゲバゲバ

賢「ハヤクナール!ピカピカ!はぁっ!」ブン!

朱「遅いですよ!」バサッ

賢「降りてきなさい!」

朱「あなたが上がってきなさい。高飛車!」ググッ

賢「!?地面がせりあがって…!」メキメキ

賢「きやぁぁぁ!?」ドゴーン

朱「惑迷!」ギルギルギル

賢「あぁぁぁぁぁぁぁあ!?」ギルギルギル

勇「けっ…賢者ーッ!うぉぉぉぉ!」バリバリバリ
188創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 22:30:49.63 ID:cIVnG5xA
勇「ブレイブロングソード!」ズキュゥゥゥン

朱「重責!」ビュギュン

勇「ぐあぁぁぁ!?か、体が…重い…!?」メキメキ

賢「あぁぁぁぁぁぁぁあ!」ギルギルギル

勇「ぐっ…うぅ…!」メキメキ

狩「勇ちゃん!賢ちゃん!」

戦「助けにいかないのか?」

狩「…戦士ぃ…!」
189創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 22:56:34.39 ID:cIVnG5xA
戦「…」

狩「…」

狩「あんたはまだ迷っている、僕なんかすぐ殺せたはずだ。なのにそうしな
いのはあんたの中にまだ僕達への「愛」があるからだ。どうしていいかわからないんだあんたは!」

戦「……」

戦「…」

狩「あんたは僕達を殺したくないんだ!苦しいはずだ!辛いはずだ!あんたは…」

 狩「あんたは優しいから!」
190創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 23:11:12.07 ID:cIVnG5xA
戦「…」

戦「…」ポタポタ

朱「戦士さん…!」

戦「全部お前の言う通りだよ狩人…さすが絆の力を持つ者だ」ポタポタ

戦「…だけどお前らを殺す」ポタポタ

戦「…あわれだろぉ…?おれぇ…」ポタポタ

狩「戦士…」
191創る名無しに見る名無し:2011/03/14(月) 23:28:48.80 ID:cIVnG5xA
戦「アァァァァァァックスッ!」ガッシャァァァ

狩「ぐぁぁぁぁぁ!」

狩「がはっ…くっ…」ボタボタ

勇「かりゅ…うど…」メキメキ

戦「とどめだ…」ポタポタ

朱「戦士さん辛いなら私が…」

戦「いいや、これは俺がやらなくちゃいけねぇ」ポタポタ

朱「…」
192創る名無しに見る名無し:2011/03/15(火) 19:13:39.14 ID:74j702qa
戦「何か言い残すことはあるか狩人」ポタポタ

狩「はぁ…はぁ…そんなに好きなの…朱雀将軍のこと…」

戦「あぁ…」ポタポタ

狩「朱雀将軍も…?」

朱「…コクン」

狩「…はぁ…はぁ…なんで皆…二人みたいにわかりあえないのかな…グスッ」

戦「…」

朱「…」

狩「…賢ちゃん今だ!」

戦「!」

賢「ぁぁぁぁぁぁぁぁセイントジャァァァァァァァッジ!」

キラン

朱「全てを浄化する神の息吹!?」
193創る名無しに見る名無し:2011/03/15(火) 19:16:06.81 ID:74j702qa
戦「朱雀っ!」ドンッ

朱「…っ!?」

…ォンッ!カッ!----ッッッッッッ!

戦「ぉぉぉぉぉ…!」

朱「戦士さぁぁぁぁぁん!いやぁぁぁぁぁ!」

勇「っ…体が自由に!?」

賢「うっ…フラ」

勇「賢者!賢者!?」

賢「力…使いすぎたみたい…」

勇「無茶しやがって…!」ギュッ
194創る名無しに見る名無し:2011/03/15(火) 19:18:24.89 ID:74j702qa
戦「ぉ…お」フシュゥゥ…

勇「!」

賢「うそ…あたしの最大魔法よ…?」

戦「きいたぞ…くっ…さぁまだ俺は死んじゃいないぞ」フシュゥゥ…

勇「や、やめろ!もうくるな!」

朱「戦士さんもうやめてください!あなたが死んでしまいます!」

戦「立て!勇者ぁ!」

勇「ぅ…ぅ…」

賢「ゆうしゃ…」

 狩「ピューゥイ!」

 戦「!」

狩「…エンペラーペンギンッッッッッッ!4号ォォォォ!」ギュンギュンギ
ュンギュン!ズキュゥゥゥン!

戦「しまっ…!」
195創る名無しに見る名無し:2011/03/15(火) 19:35:06.43 ID:74j702qa
朱「戦士さんっ!」バッ

ピェェェェ!ドンッ!

朱「がはぁっ!?」ブシャァア!

戦「すざ…く…?」

狩「うぉぉぉぉ!」

戦「!?」

ドスッ!

戦「…た、短剣も使えたのか……ごふっ!ぐっ!」ボタボタ

狩「…っあぁぁ!」ザシュ!

戦「ぁぁぁぁぁっ!」ブシャァア

戦「く…そ…」バタッ

朱「戦士さん…戦士さん…」ズルズル

戦「朱雀…」ドクドク

戦「…愛している…」ガクッ
 
戦「…」

朱「戦士さん…?いやっ!いやっぁぁぁぁぁっ!?うわぁぁぁぁぁぁ!ぁぁぁぁぁっ!」
196創る名無しに見る名無し:2011/03/15(火) 19:36:29.43 ID:74j702qa
勇「…戦士…」

賢「…」

狩「裏切るからWWWWフヒヒWWマジ迷惑WW」

勇「狩人お前っ!」ガシッ

勇「!」

狩「グスッWWWWズビッWWWWうぐっWWWWうっ…マジ迷惑なんだよぉ…グスッ…何が悲しくて…仲間殺さなきゃなんねぇんだよぉ…うわぁぁぁぁぁぁ!うわぁぁぁぁぁぁ!」

賢「狩人…」
197創る名無しに見る名無し:2011/03/15(火) 19:43:31.74 ID:74j702qa
朱「戦士さん…グスッ…戦士さぁん…ううっ」

勇「…」

朱「キッ!」

賢「…なによ…恨めしそうな顔して…あなたが招いた結果よ…」

朱「…あなた方と私、双方言い分はあるでしょうがお互いを決して許すこと
などできないでしょう…しかし、私達は今憎み合っているのにも関わらず同じ悲しみを抱いているのです」

朱「彼からは沢山のものをもらいました…」
198創る名無しに見る名無し:2011/03/15(火) 20:09:11.70 ID:74j702qa
朱「私は呪術士です。人に災厄を病魔を振りまく術です…人を苦しめるためのものです…呪術が人を苦しめることはあっても人を幸せにすることなどなかったのです…」

朱「…私はある日は呪いを受けました…最初は意味もわからず苦しいばかりのものだったのに…いつしかそれを心地よく感じることもありました…」

朱「…彼もまた私と同じ呪いにかかっていました…そうしてやっと気づいたのです」

朱「これは「恋」の呪いなのだと…こんな気持ちは初めてでした…こんなに優しい、明るい、楽しい呪いがあったなんて…」

朱「…戦士さん…戦士さん…うっ…うっ…」

勇「…」

賢「…もう行きましょ…彼女はもう戦えないわ」

狩「…」
199創る名無しに見る名無し:2011/03/15(火) 22:13:05.17 ID:74j702qa
賢「ここが魔王の間…みんな、準備はいい?」

勇「…」

狩「ちょっと薬草食べさせて」モフモフ

勇「…」

賢「勇者…」

勇「…」

賢「勇者っ!」バシッ

賢「しっかりしなさい!あなたが選んだ道でしょうが!辛いのはあなただけじゃないのよ!そういうみんなを助けるって言ってたのは嘘だったの!?」ポタポタ

勇「…う…」
200創る名無しに見る名無し:2011/03/16(水) 19:46:28.99 ID:HQWofZ6f
>>119
遅レス失礼。
反響がないので、失敗ですね・・・。精進いたします。
久しぶりに来たら、超大作が展開されていてビビりました。
201創る名無しに見る名無し:2011/03/16(水) 21:13:45.53 ID:20DOjebj
>>200
誰も見てないと思って好き勝手やってました…
恥ずかしい////
超大作とか言われたらうれしいもんですね
202創る名無しに見る名無し:2011/03/16(水) 21:18:54.43 ID:20DOjebj
狩「モフモフ」

狩人は薬草を食べた

しかしこうかはなかった

狩人は薬草を食べた

しかしこうかはなかった

狩人は薬草を食べた

しかしこうかはなかった

狩人は薬草を食べた

しかしこうかはなかった

賢「狩人…?」

狩人は薬草を食べた

しかしこうかはなかった

狩「モフモフ…」

賢「狩人…どうしたの…?」
203創る名無しに見る名無し:2011/03/16(水) 21:19:48.39 ID:20DOjebj
狩「この薬草おかしいんだよ、なんか全然回復しない。賢ちゃん回復かけてよ」モフモフ

賢「体力…全快じゃない…何言ってるの…?」

狩「おかしいなぁ」モフモフ

賢「もうやめて!狩人のHPはとっくに満タンよ!」
204創る名無しに見る名無し:2011/03/16(水) 21:27:11.15 ID:20DOjebj
狩「そんなわけないよ、だってむちゃくちゃ痛いもん」モフモフ

狩「むちゃくちゃ…痛い…傷塞がんないんだ…グスッ」ポタポタ

賢「…どこが痛いの…?」




狩「こころが」ポタポタ
205創る名無しに見る名無し:2011/03/16(水) 21:28:03.72 ID:20DOjebj
狩「グスッグスッ」バクバクムシャムシャ

狩「痛いよ…痛い…」ムグムグ

狩「賢ちゃんWWWWこの薬草不良品WW全然効かないWWメーカーどこ?WWWWどこで買ったの?WWWWクレームつけようぜWWWW」ポタポタ

賢「…心に薬草は効かないわよ…狩人…」ポタポタ

狩「うっそマジで?WWWWじゃあ賢ちゃん治してよWWW」ポロポロ

賢「心を癒す魔法もないわ…」ポロポロ

狩「じゃあどうしたらいいの?WWWWフヒヒWWW」ポロポロ

狩「ウヒヒッ…ヒッ……………」ポロポロ

狩「…つうこんのいちげきだよチクショウ…」ブワッ
206創る名無しに見る名無し:2011/03/16(水) 21:29:31.63 ID:20DOjebj
賢「二人ともしっかりしなさい!」ブワン

勇「…」ポロポロ

狩「フヒヒWWW」ポタポタ

賢者の声がむなしくこだました…

賢「もう知らない!あたし一人でもいくから!」

勇「ま、待って!」ガシッ

賢「なに?戦う気になった?」

勇「…」
207創る名無しに見る名無し:2011/03/16(水) 21:37:39.62 ID:20DOjebj
勇「俺さ、小さいころ家族殺されてずっと一人だった。まだ俺小さかったか
ら、わんわん泣くばっかりで「家族を失う苦しみ」ってものをよく理解していなかった」

勇「だけど今ならわかる…家族を失う苦しみ…」ポタポタ

賢「…」

勇「おはようを言う相手がいる、一緒にごはんを食べる相手がいる、
いってきますを言える相手がいる、誰かの為に働く仕事がある、
一緒に汗を流す仲間がいる、ただいまを言う相手がいる
、温かいシチューとともにおかえりって迎えてくれる相手がいる、
おやすみを言う、相手が、いる…
「家」があるって、そういうものだろ?」ポタポタ

勇「俺の夢」ポタポタ

賢「勇者…」

勇「賢者…だから…帰ろう」

賢「え…?」
208創る名無しに見る名無し:2011/03/16(水) 21:40:35.02 ID:20DOjebj
勇「俺と一緒に暮らそう。毎日飯つくるから、一生懸命働くから、好きだから、今から帰って、結婚しよう?な?好きだ、愛している」ポタポタ

 勇「もう何も失いたくない」

賢「…」ポタポタ

賢「その言葉ずっと聞きたかった…」ポタポタ

賢「だけど今聞きたくなかったな…」ポタポタ

賢「ごめんね勇者…約束なかったことにして…」ポタポタ

勇「賢者…う、嘘…だろ?え?な?」







賢「さようなら、大好きな人」
209創る名無しに見る名無し:2011/03/16(水) 22:41:23.78 ID:20DOjebj
勇「ま、待ってくれ!賢者!賢者!」

勇「ほ、ほら!賢者この装備欲しがってたろ!?やるよ!ほらこのマントあったかいって言ってたし!あと、す、少ないけどゴールド!孤児院建て直すのにゴールドいるって言ってた!」

賢「…」ザッザッ

勇「ほら!つけるだけですばやさ倍になるやつ!あとあたまよくなるたねとか!一日30分腹筋するだけで3ヶ月後にはスリムアッブする装備とか!いまならダイヤモンド研石もついてて…なんでもやるからさぁ…だから…だから帰ってこいよぉぉ!賢者ぁあ!」

賢「…」

賢「あなたが欲しい」

賢「あなたの全てが欲しい」

賢「一緒に戦ってくれる…?そしたら、あなたのものになってあげる」
210創る名無しに見る名無し:2011/03/16(水) 22:43:12.04 ID:20DOjebj
勇「う…うぅぅぅ!」

賢「じゃぁね…幸せになってね…勇者」

勇「いくな…いくなぁ!」





勇者の声がむなしくこだました…

勇「うっ…うっ…うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ぁぁぁぁぁぁぁぁ!ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」ボタボタボタボタ

狩「勇ちゃんも痛ぇの?WWWW薬草食う?WWWW」ムシャムシャ

勇「チクショウ…チクショウ…チクショウ…チクショウ…」ボタボタ
211創る名無しに見る名無し:2011/03/16(水) 22:51:37.94 ID:20DOjebj
狩「勇ちゃん」

勇「狩人ぉ…」ボタボタ

狩「これ僕のお守りのナイフ」コトッ

狩「勇ちゃん覚えてる?僕がいじめっこ刺そうとしたナイフだよ。あの時勇ちゃん止めてくれたね?嬉しかったよ」

勇「狩…人…?」

狩「僕勇ちゃんの勇気あるとこ憧れてた、賢ちゃんの頭いいとこ憧れてた、戦ちゃんの面倒見いいとこ憧れてた。いままでありがとう」

勇「かりゅうど…?」

狩「もうそれいらないからあげるWWWW売ったりしないでねWWWW」

狩「…僕の「友情ナイフ」!」




狩「友情を断った僕にはご利益ないから…」
212創る名無しに見る名無し:2011/03/16(水) 22:56:46.82 ID:20DOjebj
勇「狩人!狩人お前まで!」

狩「一番むかつくやつにうんこ投げつけて死ぬよWWWW死ぬ死ぬ詐欺じゃないよWWWW」

 狩「もう、生きるの辛いから…」ポタポタ

勇「待て、待ってくれ!頼む、頼むから!お前までいかないでくれ!」

 狩「アディオスwww」

狩「さようなら、僕の親友」
213創る名無しに見る名無し:2011/03/16(水) 22:57:49.65 ID:20DOjebj
勇「狩人ーッ!」

勇者の声がむなしくこだました…

勇「…」ボタボタ

勇者LV62
HP338
MP191
こどく

勇「…みんなぁ…」ボタボタ
214創る名無しに見る名無し:2011/03/16(水) 22:58:52.57 ID:20DOjebj
狩『勇ちゃんニンジンも食べなきゃWWW』

勇『い、いいだろうが!ニンジンなんて食べ物じゃねぇ!』

賢『なによーあたしのシチュー食べれられないっていうのー?』

戦『勇者だろ、勇気だして食べろ』

勇『い、嫌だ!』

戦『狩人、捕まえろ』

狩『ごめんねWWWW』

勇『は、はなせーっ!』ジタバタ

賢『はい勇者あーん』

勇『ぁぁぁぁぁっ!』

アハハハハ
215創る名無しに見る名無し:2011/03/16(水) 22:59:50.89 ID:20DOjebj
勇「みんなぁ…もう好き嫌いしねぇよ…ニンジン食べるよ…帰ってこいよぉ…」











勇者の声がむなしくこだました…
216創る名無しに見る名無し:2011/03/16(水) 23:09:21.04 ID:20DOjebj
誰も見てないと思うけど今日はもう寝ます(pω‐)。゜
感想とかもらえるとうれしいんだぜ

まだ続きます
217創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 11:27:37.77 ID:MUbjVHvV
ありがとう
日常から離れすぎてショック状態になりそうだけど、ここで結構救われている
218創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 21:19:23.70 ID:zhWF5dkF
んなこといわれたら惚れてまうやろぉぉぉぉ
219創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 21:20:21.69 ID:zhWF5dkF
魔王「…」

賢「魔王ーッ!」

魔「…」

狩「僕達が誰だかわかる?」

魔「…足りないじゃないか…あと二人はどうした?勇者は?」

賢「あんたなんて二人で十分よ!」

狩「フルボッコ」
220創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 21:23:11.16 ID:zhWF5dkF
魔「…」

魔「ジパングの「モモタウロス」と言う話を聞いたことがあるか?」

賢「はぁ?モモタウロス?」

狩「確か桃から生まれた人間がオニって生き物を退治する話でしょ?」

魔「よく知ってるな」

狩「引きこもりなめんな。で、モモタウロスがなんだって?」

魔「異国の相当前の話だから詳しく知らないが桃から生まれたモモタウロスはやがて大人になると悪いことをしているオニを三匹の従者とともに倒すという話…」

賢「何が言いたいの?」

魔「なぜオニ退治はモモタウロスでなければならなかった?」
221創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 21:24:06.30 ID:zhWF5dkF
狩「…」

魔「従者は確か犬と猿と………………………えっと…」

狩「亀じゃなかった?」

魔「そうだっけ…?まぁいい、『そんな』三匹とモモタウロス一人。他の人間は何をしていた?」

魔「お前たちでなければならない理由はなんだ?なぜ他の人間はこない?なにをしている?」

賢「みんながみんな戦えるわけじゃないのよ!」

魔「それこそ傲慢ッッッッッッ!」ドンッ

賢「きゃぁ!?」

狩「なんというプレッシャー…!」ビリビリ

魔「己に力がないことなど言い訳にならんッッ!ならば力をつける努力をしたか!?苦痛を仕方ないことだと諦観してはいないか!?ただ祈るばかりで自ら動いたことがあるか!?何かしたか!?力がないことを理由に力をつけぬなど不遜ッッッッッッ!」
222創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 21:28:14.47 ID:SornA/jp
>>218
惚れてくれていいぜ?
ただし抱きつくのは勘弁な
震えているのがバレてしまうからな^^
223創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 21:29:03.15 ID:zhWF5dkF
狩「だけど僕達はここにいるぞ」

魔「そうッッ!決して諦めぬ者だけがここまでたどりつける!しかしだ!なぜお前たちでなければならない!?なぜ何もしないものたちの為にお前たちが犠牲にならねばならなかった!?」

魔「お前たちのように戦う者たちの死を「戦士だから」しょうがないとぞんざいに扱わなかったか!?お前たちに「戦士だから」戦いを押しつけなかったか!?」

魔「戦士が血を吐く思いで手に入れる平和をやつらはまるで街頭で支給されるパンのようなものだと勘違いしているのだッッッッッッ!」

魔「そのくせにいざパンが支給されなくなると不平不満をこぼし理不尽な暴動をおこす!あまりに身勝手!あまりに傍若無人!」

魔「何もしてこなかったことは罪だッッッッッッ!」

賢「…」

狩「だから人間を苦しめるの?」

魔「そうだ」

狩「結局、身勝手なんだね。人間も、僕達も、あなたも」

魔「…そうだ」
224創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 21:35:52.86 ID:zhWF5dkF
え…嘘…今まさにリアルタイムで俺の痴態が顕わにされてるの…?
嘘…な、なんかイイ/////こんなの初めて/////
225創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 21:38:44.74 ID:aPIvaTJI
そだな、この瞬間、今繋がっているのさw
226創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 21:44:28.94 ID:zhWF5dkF
てかさっきからパソがドリームキャストみたいな音出しとる
227創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 21:48:34.12 ID:zhWF5dkF
狩「僕らは僕らなりの身勝手を貫かせてもらうよ」ギリギリ

賢「サンダーボルト!」ビカビカッ

狩「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」ビュンビュンビュン

魔「むぅん!」ズバッ!ガキンガキン!

魔「我は魔王ッッ!それ以上の言葉はいらぬッッッッッッ!」

魔「ズゥラァァァ!」ブォン!

ドドドドドド

賢「フリーズマイン!」カチカチ

狩「炸裂弾乱れ撃ち!」ダダダダダ

魔「きかん!」ガキンガキン

賢「わぁぁぁぁぁぁ!」ビカビカッ

狩「うぉぉぉぉ!」ビュンビュン

魔「…」シュン!
228創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 21:49:38.51 ID:zhWF5dkF
賢「消えた!」

狩「どこに…はっ!」

魔「お前の目の前だ」

狩「うぉぉぉぉ!」

魔「フンッ!」ドガァツ!

狩「がはぁっ!?」

賢「狩人!」

魔「ちぇい!」ブォン!

賢「ぁぁぁぁぁっ!」ブシャァ!

賢「まるで…適わない…これが魔王…ゴホッ」ボタボタ
229創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 21:54:09.09 ID:zhWF5dkF
狩「う、ぉぉぉぉ!」

魔「はっ!」ピキューン

狩「あたるかぁ!」シュン

魔「我が剣を受けよ!」ブォン

狩「嫌だっ!」シュンシュン

狩「死ねっ!」キラン!

魔「シュッ」バキッ

狩「あ…?」ガクンバタッ

狩「た…立てない…?」ピクピク

魔「楽に死なせてやろう」

狩「くそ…」ピクピク
230創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 22:12:20.95 ID:zhWF5dkF
3択ひとつだけ選びなさい

ハンサムの狩人は突如反撃のアイデアがひらめく

仲間が助けにきてくれる

死ぬ。現実は非情である

狩(僕が○をつけたいのは…)

狩(答え だが期待はできない…賢ちゃんはあのザマだし戦ちゃんは死んだ。心の折れた勇ちゃんがあと数秒の間にここに都合よくあらわれてアメリカンコミックヒーローのようにジャジャーンと登場して「まってました!」と間一髪助けてくれるってわけにはいかねーゼ)

狩「やはり答えは……しかねぇようだ!」
231創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 22:15:14.62 ID:zhWF5dkF
3択ひとつだけ選びなさい

@ハンサムの狩人は突如反撃のアイデアがひらめく

A仲間が助けにきてくれる

B死ぬ。現実は非情である

狩(僕が○をつけたいのは…)

狩(答えAだが期待はできない…賢ちゃんはあのザマだし戦ちゃんは死んだ。心の折れた勇ちゃんがあと数秒の間にここに都合よくあらわれてアメリカンコミックヒーローのようにジャジャーンと登場して「まってました!」と間一髪助けてくれるってわけにはいかねーゼ)

狩「やはり答えは……しかねぇようだ!
232創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 22:26:22.36 ID:zhWF5dkF
魔「死ねぇい!」ブォン

狩「よっ…」バッ

賢「!」

狩「ありったけの炸裂弾…僕と一緒に地獄のらんでぶーに行こうぜ」カチッ

ドーーーーーーーン!ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ!

賢「狩人ーッ!」

答え

ーB

答えB

答え…B

賢「狩人…」ポロポロ
233創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 22:29:22.28 ID:zhWF5dkF
モクモク…

賢「!?」

魔「…フンッ…」

賢「嘘…」

魔「この程度で我を倒せると思っていたとはな…しかしその心意気敵ながら天晴」

賢「くっ…うぅ…!」
234創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 22:39:47.65 ID:zhWF5dkF
賢「サンダーボルト!」ビカビカッ

魔「…」ビシッ

賢「サンダーボルト!」ビカビカッ

魔「…」ピシッ

賢「サンダーボルトォ!」ビカビカッ

魔「フンッ」

賢「うぅ…うっ…」ポロポロ

魔「諦めるのか?」

賢「どんなにあがいたって…力をつけたって…届かないものなら…諦めるしかないじゃない…うっ…うっ…あなたにはそれがわからないのね…」ポタポタ

魔「せっかく三人になったのにか?」

賢「…っ!あ…あぁ…!」
235創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 22:40:53.34 ID:zhWF5dkF
答え…

狩「…死に損ねちゃったけど…今は気分がいいよ…」

答え…









勇「待たせたな」

答え

Aッッッッッッ!

バァァァァァンッ!
236創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 22:45:48.86 ID:zhWF5dkF
魔「待ちわびたぞ、勇者」

賢「勇者…勇者ぁぁぁぁぁっ!」

狩「何できたの…?フヒヒ」

勇「仲間を失うことが怖かった…怖くて戦いたくなかった…だけど…」

勇「この「友情ナイフ」から伝わる思い出…失うことは確かに怖い!だがまだ失っていない!失った悲しさを味わうくらいならそのくらいものおそるるに足らずッッッッッッ!」

勇「賢者!帰ったら結婚しよう!狩人!スピーチ頼む!」

賢「っ…わかったぁぁぁぁぁぁぁっ!あなたと結婚するぅぅぅ!」

狩「ぅぇWWWW人前苦手WWWW」

勇「魔王ッッッッッッ!賢者からはなれろ!」

魔「勇者、脚」

勇「ッッッッッッ!」ガクガクガク

狩「勇ちゃんびびりまくりWWWW」
237創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 23:01:15.06 ID:zhWF5dkF
勇「あたり前だ!それが勇気だ!恐れないことは勇気じゃない!恐怖を、苦痛を、悲しみを乗り越えなきゃそれは勇気なんかじゃないっ!恐れるものこそ真の勇者だぁぁぁぁぁっ!」バリバリバリ

勇「たぎれ勇気よ!ブレイブソード!」ブォン!

魔「勇気の真の性質に気づいたか勇者よ。こい!」

勇「ドゥワッ!」ビュン

魔「むぅん!」キンキン

勇「パウッ!」バカッ

魔「せやっ!」ガンガン
238創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 23:05:34.76 ID:zhWF5dkF
賢「賢者の石!」ピカピカー

狩「ドゥフフWWWWダブルトルネードアロー!」ドッドッ!

魔「ふん!」ガキンガキン

狩「シキン!ハリケーンスラッシュ!」ザンザン!

魔「遅い!」ドガッ

狩「うぐっ…!」

狩「では新郎新婦の初めての共同作業です」

魔「!」
239創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 23:20:32.19 ID:zhWF5dkF
賢「我が叡知よ…我の愛する者の剣に太陽の力を分け与え給え!」ギュゥ!
ジュゥゥゥ

勇「ブレイブフランベルジュ!」ジュゥゥゥ

 狩「入刀です!」

勇「獅子のたてがみぃぃぃ!」ガォォォン!

魔「むっ!?うぉぉっ!?」ゴゴゴ

狩「魔王の剣が溶けた!ヒョウ!」

勇「とどめだっ!ブレイブカラタケワリィィィ!」ボォウ!

魔「…ぬぅん!」ブォン!

賢「えっ!?」

狩「あの剣は…!」

勇「俺のブレイブソードとそっくりだ!?」

魔「くだらん技だ」ブーン

勇「がはっ!」ガシャン
240創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 23:44:15.53 ID:zhWF5dkF
魔「まさかこの力を使うことになるとはな…」ブーン

賢「嘘…その剣の輝き…違うけど勇者と同じ力を感じる…!?」

狩「あんたも…『勇者』なのか…?」

魔「かつてそう呼ばれたこともあった…もう大昔だ」

勇「…その力を、勇気を、持っていながらどうして…」

魔「勇者、お前は言ったな?弱さを乗り越えることが真の勇気だと…」

魔「我は、弱さを怖さを、痛みを乗り越えられなかったものの末路だ…」

魔「我は…人間だ」

狩「!」
241創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 23:47:55.84 ID:zhWF5dkF
ご、ごめん…眠くてたまらない…
また明日来ます…
242創る名無しに見る名無し:2011/03/17(木) 23:52:27.51 ID:aPIvaTJI
お疲れ様
無理しないでくれよ
細く長くで頼む
今日は直接話せたりしてかなりありがたかったよ
おやすみなさい
243上手く派生出来たら神:2011/03/18(金) 02:12:41.13 ID:728g3UiG
魔王にたった一人で闘う勇者
しかし、魔力も武器も尽きた
そこに眼光鋭い老人が…!
村長「待たせたな!」
244創る名無しに見る名無し:2011/03/18(金) 03:06:42.34 ID:5IhXAZoB
うおお、今追いついたらいいところで止まってた
>>237の最初の台詞がカッコいい
245創る名無しに見る名無し:2011/03/18(金) 22:14:09.70 ID:BoBTBDWd
や、やだいろんな人に見られられてる////
待たせたな241です

魔「しかし教えてやろう…人を憎むこともひとつの決断がいる、勇気がいる!
殺す時も、壊す時も、勇気がいるのだ!綺麗な道しか歩いて来なかった貴様らにはわからんだろうな!?」

賢「…魔王が…人間…」

勇「そんなものは勇気じゃない!」

狩「いや、それも勇気だよ。僕にはわかる…ついさっき体験したからね…」

狩「あんたも苦しんできたんだな…」
246創る名無しに見る名無し:2011/03/18(金) 22:17:51.72 ID:BoBTBDWd
魔「…我も自分が間違っていることをわかっている、しかしこの感情をどうしても押し殺すことができなかった。人間が憎かった」

狩「…人は、憎むことでは救われないし報われない。あんたもそうだったろ?
そうだろ?」

魔「あぁ…最早は我は追憶の中に生きることしかできない、この現実に我の生きる意味などない…」

魔「空を仰ぎ見て、仲間を…恋人を思い出すたびに感じるのだ、虚しさを」

魔「我の心はこの蒼穹と同じく伽藍としているのだとな…」

魔「…話がすぎたな…では決着をつけよう」ガシッ

賢「くっ!」

勇「…わかりあう道は、なかったのかな…」

魔「あったのだろうな、だが我は様々なものを淘汰しすぎた…手遅れだ」

勇「…戦うっていうのは、そういうものを背負っていくってことなんだろうな」

勇「いくぞ!魔王!」バリバリバリ

魔「こい!勇者よ!」バリバリバリ

ガキィィィィン!
247創る名無しに見る名無し:2011/03/18(金) 22:41:10.54 ID:BoBTBDWd
勇「くぅっ!」

魔「その程度か!」

勇「気持ちの問題!まだやれる!」

狩「ピューイッ!」ペンペンペンペン

狩「エンペラーペンギンッ!4号ッッッッッッ!」ボシュゥ!ピェェェェェ!

魔「こざかしいッッッッッッ!」ブォォォン!

賢「ドラゴンサンダー!」バリバリバリ

魔「ぬるいわぁ!」バォォン

勇「狩人!合体技だ!」

狩「おっけ!」

ビュン!シュンシュン!

勇「ブレイブッ…!」ビュンビュン

狩「ゲヴィッター!」ビュンビュン

ガガガガガガガガ
248創る名無しに見る名無し:2011/03/18(金) 23:03:23.64 ID:BoBTBDWd
魔「ぬぐぅぅぅ…!」

賢「アオスブルフ!」ドカーン

魔「ぬぐあっ!」ドカーン

勇「うぉぉぉぉ!竜の尾ぉぉぉぉ!」ギャォォォォン

魔「がはっ!?」ブシャァア

賢「我が叡知よ!彼の矢に海の力を与え給え!」

狩「ヴォーテクスアロー!」ズバァゥァァ

魔「むわーーーッッッッッッ!?」ズギャーン

勇「これでおわりだぁぁぁぁぁ!」ザンッ

勇「ブレイブセェェェェェェバァァァァァァァッ!」

魔「ぐぉぉぉぉぉぉ!?」ブシャァア

魔「お…おぉ…!?」ガクガクガク

魔「ふふふ…ふはははは…」

魔「」

魔王をたおした!
 
 パパパパーパーパーッパッパパー♪
249創る名無しに見る名無し:2011/03/18(金) 23:13:35.37 ID:BoBTBDWd
勇「…はぁ…はぁ…」カランカラン

賢「おわったの…?」

狩「…意外とあっけないもんなんだなぁ…」

勇「思ってたんと違うな…もっと大手をふって喜べるものだと思ってた…」

勇「…虚しいな…」

狩「…勇ちゃん」

賢「…帰りましょう…」

狩「…ん?」
250創る名無しに見る名無し:2011/03/18(金) 23:31:25.47 ID:BoBTBDWd
ゴゴゴ

魔「ふふふ…ふはははは!」ゴゴゴ

狩「!?」

勇「まだ生きていたのか!」

魔「まだだ!まだおわらんよ!」

魔「はぁーッ!」メキメキ

魔「ふはははは」ズギャーン

魔王第二形態ツツッ!
251創る名無しに見る名無し:2011/03/18(金) 23:41:26.75 ID:BoBTBDWd
勇「くっ…!」

魔「滅ばねばならぬ!人間も魔族も!全て滅んでしまえ!世界よ滅んでしまえ!」ゴゴゴ

魔「ちぇい!」ブォォォン

勇「うわぁぁぁぁあ!」

賢「きゃぁぁぁ!」

狩「ダッシャッ!」

魔「脆い、脆いぞ!ふはははは!ふはははは!」

勇「くぅぅ…」

賢「魔王が押さえ込んでいた負の感情が一気に溢れだしたんだわ…」

狩「つ…強い…」

魔「ヘイトリッドソード!」ブォォォン

狩「なんてまがまがしい剣なんだ…」
252創る名無しに見る名無し:2011/03/18(金) 23:48:03.44 ID:BoBTBDWd
 勇「ぶ、ブレイブソード!」

魔「バァァァァァァァァ!」ドギャシャーン

勇「がはぁぁ!?」バキーン

賢「ぁぁぁぁぁっ!?」

狩「なんという攻撃力…!」ガクッ

魔「滅べ!滅んでしまえ!ふはははは!はははははは!」ジワッ

狩「な、泣いてる…」

魔「ふはははは!」

狩「…孤独だったんだ…誰も魔王を止めてくれる人がいなくて…ずっと一人だったのか…」

魔「滅べ!」グングングン

勇「くぅっうぉぉぉぉ…!」ガクガク

賢「駄目防ぎきれない…!」

魔「全員まとめて滅んでしまえ!」

狩「くそっ…」
253創る名無しに見る名無し:2011/03/18(金) 23:52:01.06 ID:BoBTBDWd




















「「全員」には一人足りないじゃないか?」
254創る名無しに見る名無し:2011/03/19(土) 00:01:58.47 ID:Hl7ClEsw
勇「あっ…」

賢「あ…あぁ!」

狩「」

魔「なにぃ!?」

















戦「おいおい。メインキャストを忘れてるぜ」
255創る名無しに見る名無し:2011/03/19(土) 00:04:19.57 ID:Hl7ClEsw
あ…だめだ…目が…zzzz
フガッ…zzzz
また来る…
256創る名無しに見る名無し:2011/03/19(土) 00:04:35.95 ID:PRxkEbQb
戦士さんかっけー!
257創る名無しに見る名無し:2011/03/19(土) 17:36:38.66 ID:Hl7ClEsw
賢「戦士ぃぃぃ!」ブワン

勇「ファァァァァ!」ビチャビチャー

戦「うぉぉぉぉ!リュボーフィタポォォォォルゥッ!」カッズバァゥァァ!

魔「何!?我の勇気を裂いた!?」

戦「愛の力ってのは沢山の障害を乗り越えて手に入れるものだ。愛は守る力、
即ち障害を断つ力」

戦「愛は強いぜ?」

狩「ぁぁぁぁぁっ!」ビクンビクン

賢「ゆ、勇者一筋なのに…悔しいっ」ビクンビクン

勇「はっあっ!」ビクンビクンドピョッ
258創る名無しに見る名無し:2011/03/19(土) 17:39:05.36 ID:Hl7ClEsw
狩「ふぅ…」

賢「ふぅ…」

勇「ふぅ…」

狩「戦ちゃん!戦ちゃぁぁぁぁんっ!ぉぉぉぉ!」

賢「よかったぁ!よかったぁぁぁぁぁっ!」

勇「神様はいるッッッッッッ!」ブワン

魔「たった一人増えたところでどうにもならんわ!」

戦「おいお前ら、言ってやれよ」
259創る名無しに見る名無し:2011/03/19(土) 17:50:45.24 ID:Hl7ClEsw
勇「卓逸された剣技と勇気の力を持つ勇者!」

賢「攻撃魔法回復補助なんでもござれ!賢者!」

狩「後方支援WWWW百発百中WWWWWWWW狩人」

戦「愛の戦士」

四人が揃えば怖いものなしッッッッッッ!

ババァァアァァン!
260創る名無しに見る名無し:2011/03/19(土) 22:06:01.27 ID:Hl7ClEsw
魔「ふはははは…我は憎悪の魔王!我が歪んだ勇気の剣を受けよッッッッッッ!」バリバリバリ

戦「リーベシルトォォ!」ガキィィィィン

魔「なにぃ!防いだ!?」

戦「愛の力は守る力だとも言ったはずだぜ?」

戦「ちなみにこの技の防御力は対象への愛情と比例するっぽい」

狩「」ビンッ

賢「」ジュン

勇「」ドピョッ
261創る名無しに見る名無し:2011/03/19(土) 23:11:43.39 ID:Hl7ClEsw
狩「心がイケメンすぎるぜぇぇぇ戦ちゃぁぁぁぁあん!」

狩「ピューイッ!」ペンペンペンペン

狩「その鎖は思いとともに硬くなる友情の絆!繋がれ心!絆!」

狩「エンペラーペンギンッ…」

ペンギンの体がひとつになった!

ぺ「ぺーん!」ドンッ

狩「五号ッッッッッッ!」ズギャーン

ギャルルルルルル!

魔「ぐぉぉぉぉぉぉ!?」
262創る名無しに見る名無し:2011/03/19(土) 23:16:58.40 ID:otjJ1J0Q
アリガトネ
ここで投下を続けてくれていたおかげで本当に救われた
ちゃんとおいらの日常はここにあるって縋り付いていられた
ようやく落ち着いたよ
本当に感謝
263創る名無しに見る名無し:2011/03/19(土) 23:17:52.75 ID:Hl7ClEsw
賢「その知識!仲間のために役だてし武器!開け図書!叡知!」

賢「神の鍛えし雷鎚よ!ただまっすぐにうちつけたまえ!ミョルニルライトニング!」

ボギャァィァァァァァァ!

魔「うぉぉぉぉ!?」
264創る名無しに見る名無し:2011/03/19(土) 23:19:56.40 ID:Hl7ClEsw
勇「ネバーギブアップ!勇ましく!なれよ俺!弾けよ魂!勇気!」

勇「オーバーブレイブ!」ゴゴゴ

勇「ブレイブスマァァァァァァァシュッ!!」パァーン

魔「ぐっうわぁぁぁぁあ!」
265創る名無しに見る名無し:2011/03/19(土) 23:37:35.02 ID:Hl7ClEsw
魔「はぁ…はぁーッ!オーバーヘイトリッドぉぉぉぉ!」ゴゴゴ

魔「フェアツヴァイフルング!」ズギャーン

勇「ぬっぐぉぉぉぉぉぉ!?」

戦「勇者!」

賢「勇者!」

狩「勇ちゃん!」

戦「ここまできて負けるなよ」

賢「頑張れーッ!」

狩「勇ちゃんならできるッッッッッッ!」

勇「皆の…皆の声が聞こえる…うわぁぁぁぁあ!」バリバリバリカッピカッ

魔「!?」
266おい:2011/03/19(土) 23:47:59.57 ID:GWqwHB2P
おい


おい
267創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 00:40:54.14 ID:S/0wiuUs
狩「な…なにこれ…光の雪…?」

賢「勇者のあまりの勇気が不可視の領域を逸したというの…?だとしたらなんてエネルギーなの?」

戦「なんてまぶしいんだ…見ろ…太陽みたいだ」

魔「こ、この光はぁぁぁぁ!?」
268創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 00:58:09.37 ID:S/0wiuUs
戦「うぉぉぉぉ!」ビカビカッ

賢「はぁぁぁぁ!」ビカビカッ

狩「WWWWWW!」ビカビカッ

勇「み、皆も光って…!」

賢「狩人!」

狩「僕の「絆」の力で…皆を繋ぎます!フレンドシップオンラインッッッッッッ!」カッ!

戦「!…これはすごいな…」

賢「力が溢れてくる…」

狩「フヒヒWWWW」

勇「…ありがとうみんな…いくぞ!」













勇賢狩戦『ゆゆゆうじょうパパパワー!』ゴッ
269創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 01:11:03.48 ID:S/0wiuUs
魔「その程度我の憎しみに比べればぁぁぁぁ!」バリバリバリ

魔「何故だ…何故ぇぇ…」バリバリ…バリ…









勇者(魔王)『早く逃げるんだ恋人!』

 恋人『勇者さん…』

村人A『いたぞー!魔族の女だー!』

村人B『殺せー!』

武道家『勇者!ここはアタシらにまかせて恋人つれて逃げろ!』

勇魔『で、でも…』

重戦士『馬鹿野郎、二人一緒じゃなきゃ意味ないだろうが!』

僧侶『ここは僕達に任せて早く、さあ』

恋人『みなさんごめんなさい…私が魔族なばっかりに…』

武『アンタはなんにもわるくねーよ!』

勇魔『ごめんみんな…こんなはずじゃ…』
270創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 01:25:11.75 ID:S/0wiuUs
重『お前が謝るな…お前は、俺たちは何一つ間違っちゃいないんだからよ』

村人A『不意打ちー!』

僧『僧侶パーんち!』メメタァ!

村人A『でばぁ!?』バキィ

僧『神は言っています、ここで死ぬべきではないと。そして僕も同じです、勇さん、恋さん…死んでは駄目だ』

村人B『みんなーこっちだー!』

ワーワー

勇魔『…みんな…みんなも必ず…』

武『アタシなめんなwww』

重『俺たちは最強のパーティーだぜ?』

僧『あんな人達バラバラにしてゴブリンの餌にしてやりますよ』
271創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 01:34:26.89 ID:S/0wiuUs
誰か見てるならすまない
今夜はこの辺でお開きだ
朝また来る昼から牛角行く
後今日携帯メディアスとかいうのに変えたんだwwww
タッチパネル使いにくいwww
272創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 08:40:39.60 ID:S/0wiuUs
村人C『おりやー!』

武『うっだらー!』バキ

村C『おげぇ!』

武『殺さず殴り続けてやんよぉー!!』デュクシデュクシ

重『早く行け!』

勇魔『絶対だぞ!絶対生きてまた…!』

武『Σd(`∀´)』ビシッ

重『Σd(‐н‐)』ビシッ

僧『Σd(・Λ・)』ビシッ

勇魔『絶対だぞ!』タッタッタッタ…
273創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 08:43:46.05 ID:S/0wiuUs
村人D『いたぞぉ!』

ゾロゾロ

僧『しかし神様ってのはいないらしいですね…』

重『お前がそれを言うのか』

重『しかしそうだな…魔王を倒して世界に平和をもたらした俺たちがこんなことになるなんて誰もわかんねえよな…』

武『結局さ、アタシらなんのために戦ったんだろうな』

村人G『囲め囲めー!魔王を倒したやつらだ!同じ人間だと思うなー!』

僧『行きますか』

重『そうだな』ブルルン!ドルルルルルルル!ウィーン!

重『ダブルチェーンソー!』ヴィヴィヴィヴィヴィヴィヴィィィィィン!

村人s『うぎゃぁぁぁ!!』ブシャァァァ!
274創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 08:44:42.83 ID:S/0wiuUs
僧『ヘブンズフィール』バサァ

村人x『は、羽が…天使!?』

僧『ザキ』
村人x『』

僧『ザオリク』

村人x『あれ?』

僧『ザキ』

村人x『』

以下ループ

村人l『あ、悪魔だ…!』
275創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 08:51:55.68 ID:S/0wiuUs
武『オラオラオラ!』バキバキ

村j『うわああ!』

武『右か?左か?どっちで殴って欲しい?』

村j『ひ、一思いに右で…』ガクガク

武『NO』

村j『ひ、左…?』

武『NO』

村j『も、もしかして両方…?』

武『YES』

村J『もしかしてオラオラですかぁ!??』

武『イエス!アーイ…ブー!』
276創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 08:54:20.46 ID:S/0wiuUs
武『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ』

武『オらァー!』

村j『ヤッダーバァァ!?』ズキャーン

ゴミ箱《燃えるゴミは月水金》ズボッ

重『ぬうん!』ヴィーーン!

村t『くっそー化けモンだこいつらぁ!』

重『俺らたいがいの魔物と戦ってきたけどさ、あんたらが一番おぞましいよ』
277創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 09:00:36.53 ID:S/0wiuUs
ビュン!ドスッ!

恋『あ…』ズル

勇『恋人…?』

恋『ごほっ』バタッ

勇『え…』

俺『やったwwwしとめたぜwwwおれっちのてがらだww』

村w『wwwやったぜwww』

勇『こ、恋人…?う、嘘だろ…?』

恋『ゆ、勇者さん…このさき私がどうなろうと…決して怒ってはいけませんよ…?』

勇『え』
恋『』

勇『恋人…?』









返事がない。ただの屍のようだ。
278創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 09:02:30.83 ID:S/0wiuUs
勇『う』

魔王『うあああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああ
ああああああ!!!』

俺『あ』

村w『あ』





その日、彼は勇気を捨てた。
279創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 09:03:23.17 ID:S/0wiuUs
それから何年も何年も彼は復讐し続けた。

彼の仲間も彼とともに戦い続けた。

やがて僧侶が死んだ。
やがて武道家が死んだ。

やがて重戦士が死んだ。

それでも戦い続けた。

悲愴と憤怒と憎悪にまかせそこに君臨していた。
ただの復讐のすえにそこにいた。
しかし復讐を果たした時、そこに充実感も満足感も達成感も愉悦感もなかっ
。虚無感だけが訪れた。
虚しかった。自分の歩んできた道は前も後ろも何もなかった。
復讐は終わったのに、気持ちは行き場を失った。私の心はこの先決して
れることはないのだ。
だから私は待った。私という間違いを正す者が現れるのを、私が本気を出し
も適わない正義の使者が現れるのを。だから、私は悪逆の限りを尽くした。そ
でもなおはいはがってくるものが強いものなのだと。
280創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 09:11:10.55 ID:S/0wiuUs
魔「こんな…こんなところでぇぇぇぇぇ!」

もういいんじゃないか?

魔「!?」

もうよしなよ勇

僕らはもうそんなことは望みませんから…

魔「重戦士…武道家…僧侶…」

 武(確かに人間許せないけどさ…アタシらこれ以上あんたの傷つくとこ見てらんないっつーの)

僧(あなたは苦しみすぎた…)

重(もう裁いてもらう為に悪事を重ねなくていいんだ勇者…)

恋人(帰りましょう、あの頃に…)

魔「恋人…」ブワン
281創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 09:13:20.84 ID:S/0wiuUs
賢「反重力ビーム!」

魔「おぉ…」フワッ

戦「トルネードドラグーッッッッッッン!」ブンブンブン

魔「かっ…!」ゴゴゴ

狩「ピューイッ!ペンギン部隊整列!」ペンペンペンペン

狩「勇ちゃんを中心に「フォーメーションブレイブ!」」

ピェェェェェ!ギュンギュンギュン!

勇「うぉぉぉぉ!」

勇「勇ぅぅぅぅ星ぇぇぇぇぇけぇぇぇぇぇんっ!」

ピェェェェェ!

魔「…ぁあ…」ピシピシ

勇「うぉぉぉぉ!」ゴゴゴ

魔「…あ…」ピシッ
282創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 09:17:24.01 ID:S/0wiuUs
重(おかえり勇者)

武(おかえり勇)

僧(おかえりなさい勇者くん)

 恋(お疲れ様…おかえりなさい…私の大好きな人)

魔「…ただ…いま…」








ごぉぉぉぉぉん!

魔王をたおした!
283創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 09:22:04.09 ID:S/0wiuUs
彼らが正す者だと信じていた。

だから…散る時、決して彼らを恨んだりはしなかった。

不思議と穏やかな気持ちだったのだ。

なぜなら最高のカタチで悲願は叶ったのだから。

これでもう、この世界の悪夢は終わり、新たな平和が訪れるのだから。
284創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 09:50:05.91 ID:S/0wiuUs
勇「…ダッシャッ!?」ドガッ

賢「勇者!?」

勇「もう動けねぇ…はは…」

狩「これで全部終わったんだ…フヒヒ」

戦「よく頑張ったな」

狩「生きてたんならいえよぉぉぉぉ!」

勇「まじ大変だったんだからなぁぁ!?」

賢「わたし一人で魔王と戦わなきゃならないかと思ったんだから!」

戦「悪いな」

勇「…でもよかった…」グスッ

狩「みんなで帰れるんだね」グスッ

戦「本当に悪い」

賢「さぁ…帰りましょう」

勇「肩かして」

狩「嫁にかしてもらいなよWWWW」

賢「ちょばっ////」

アハハハ

戦「…」クスッ
285創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 10:15:15.37 ID:S/0wiuUs
狩「なに笑ってんのWWWW?」

勇「早くこいよWWWW」

賢「置いていくわよ?」

アハハハ

戦「…」ニコッ

狩「…戦ちゃん…?」

勇「…早く…こいよ…」

賢「戦士…?」



戦「ごほっ!」ボタボタ

狩「!?」
286創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 11:25:00.91 ID:S/0wiuUs
焼肉行ってくるwwww
誰もいないと思うけど待っててねwww
287創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 14:33:54.34 ID:S/0wiuUs
勇「戦士!」

賢「今回復を…!」

朱「終わりましたか…」

狩「!」

勇「朱雀将軍…!」

朱「戦士さんは…わたしの呪いで動いけているだけで…本当は瀕死の重傷なのです」

勇「!」

狩「そ…そんな…戦ちゃん…」

戦「悪いな…だから一緒には帰れない…俺は残された時間朱雀と過ごすよ…皆…じゃぁな…」ボタボタ

賢「…」ガクッ

狩「うわぁぁぁぁあ!いやだぁぁぁぁぁっ!」ブワン
288創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 15:57:30.31 ID:S/0wiuUs
戦「お前には辛い役目を負わせちまったな…だけどそれがいつかお前を強くする…いい男になれよ」

狩「わかった…わかったよぉ…戦ちゃんみてぇなイケメンになってみせるよ」
ブワン

戦「賢者…」

賢「なに?なぁに?」グスグス

戦「お前にはいつも助けられた…お前がいなくちゃここまでたどり着けなかっただろう…」

戦「その叡知を使って…今からはいい嫁さんになれ…いいな?」

賢「うんっ…うんっ…頑張って尻にひいてやるんだからっ…!」グスグス

戦「それからこれからは…もう少し素直にな…?」

賢「うんっ…うんっ…!」グスグス
289創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 16:43:05.19 ID:S/0wiuUs
勇「お、俺さ、馬鹿だから、童貞だからよくわかんないけどさ、
これだけは、これだけは自信持って言えるよ!
あ、あんたは、戦士は最高の仲間だ!」グスグス

勇「俺、あんたに、あんたに憧れて…あんたがいたからここまで頑張ってこれた…!ずっとあんたが俺の理想だった…!」ブワン

戦「…勇者…俺もお前が羨ましかった…「勇者」ってやつは生まれながらにしてそれだけの力が宿るもんだ…俺に無いものを沢山持っていた…」

戦「…「魅力」「仲間」「信頼」「思想」「強運」「技量」…そして「勇気」」


戦「お前には…大事なものを…もらった…お前じゃなきゃ…誰もここまでついてこなかっただろうな…」

戦「いい夫になれよ…」

勇「うん、うんっ…」ボタボタ
290創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 16:45:45.78 ID:S/0wiuUs
戦「狩人、賢者、勇者」

戦「お前らに出会えて…」

戦「俺は幸せだ…」

戦「朱雀…目が見えなくなってきちまった…傍にいてくれ…」

朱「はい…」ギュゥ

戦「いいか皆…ここからが本当に平和を作る時代になる…もう魔王みたいなやつを産んじゃいけねぇ…頑張るんだぞ」

勇「…うっ…うっ…」コクッコクッ

戦「…もう限界みたいだ…二人っきりにしてくれ…元気でな…」

賢「二人ともいきましょう…」

狩「戦ちゃん…」

勇「…さようなら」

ありがとう
291創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 16:48:08.20 ID:S/0wiuUs
戦「朱雀…」

朱「どうしました…?」

戦「…ガキは三人は欲しいなぁ」

朱「気が早いですよ…」

戦「ちょうどあいつらみたいな…三人が…」

朱「そうですね…」ポロポロ

戦「泣いてるのか…?」

朱「泣いてなどいません…」ポロポロ
292創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 17:00:50.81 ID:S/0wiuUs
戦「…愛してるぞ」

朱「知っています…」ポロポロ

戦「…」

朱「戦士さん…私もお慕いしていますよ…」ポロポロ

戦「…」

朱「ふふふ…戦士さん…?戦士さん…?」ポロポロ

戦「…」

朱「…」ポロポロ

戦「…」

朱「戦士さん…」ギュゥ
293創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 17:19:00.09 ID:S/0wiuUs
その心に勇気を

その心に叡知を

その心に絆を

その心に愛を

人は全てを手に入れることはできない、しかしたったひとつでも誇れるものを見つけそれを補いあい分かち合う仲間がいればきっとその者には幸福な未来が待っているだろう
昨日強く生きてきたことを忘れるな
今日を強く生きていることを忘れるな
明日も強く生きていくことを忘れるな
その勇気は、叡知は、絆は、愛は、想いを繋ぐ力になる





そして月日は流れた…
294創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 17:41:33.65 ID:S/0wiuUs
*「勇子、勇子。おきなさい」

勇子「フゴッ?」

勇子「(ρ_-)うにゅ…もう朝…?」

*「いいえ、今は昼よ」

勇子「学校は?」

母「今日はおやすみよ、早くおきなさい」ベシッ

勇子「(ノд<。)゜。」

母「ぶつわよ?」

勇子「うわーんパパ ママがぶった 」
295創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 17:50:30.51 ID:S/0wiuUs
賢太「…」

「よぅ賢太」

賢太「隊長おじさん」

隊長「久しぶりだな」

賢太「久しぶり」

隊長「なに呼んでるんだ?」

賢太「四元論の参考書だよ」

隊長「最近の子供の考えることはわからねぇぜ」

賢太「パパみたいに強くはなれないけどママみたいに賢くなるんだ」

隊長「夢があるのはいいことだ。夢は誇りだ、自信を持てよ」
296創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 18:24:12.59 ID:S/0wiuUs
賢太「うん、あとね、隊長おじさんみたいなカッコいい大人になりたいんだ」

隊長「ほほぅ…隊長おじさんはな、あんまりカッコいいとは言えないぞ、カッコつけてるからな。本当にカッコいいやつはカッコつけない。隊長おじさんはカッコいい人の真似をしてるのさ」

隊長「だが、もしお前の目におじさんがカッコよく見えてるのなら、少しはあの人に近付けたかな…フヒヒ」

父「あれ、なんだお前来てたのか」

隊長「よう、待たせたな」

父「待ってねーよ。何のようだよ」

隊長「おいおい今日が何の日か忘れたのか?」
297創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 18:43:56.70 ID:S/0wiuUs
父「何の日だよ?」

賢太「『平和記念日』」

父「あっ…」

隊長「またの名を『友情の日』」

父「そうか…もうそんな時期か…」

隊長「今日は俺の部下も連れてきたんだ。ほら、こい」

ペンギン「敬礼!」

ビシッ
298創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 18:47:18.57 ID:S/0wiuUs
隊長「紹介しよう。こちらは俺の親友だ」

父「なんかむずかゆいよ、いい加減その「親友」ってやめろよ」

兵士「は、初めましてなのです!わたしは兵士なのです!お会いできて光栄なのです!」ビシッ

隊長「兵士だ、ちょっと間が抜けてるが槍さばきは随一だぞ」

ロボ「ウィーンウィーン(=M・ω・´)!(respect!)ウィーン!」

隊長「パワー自慢のロボだ」

父「ちょWWWW」

賢太「カッコいい」
299創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 18:53:29.93 ID:S/0wiuUs
魔導士「チッス!アタシ魔導士っスwww
うわっWWWっべーWWWW英雄だWWWアタシマジ英雄さんのことリスペクトしてるっす英雄さんより強いやついるんすかマジでーWWW
あ、アタシこう見えますけど昔はスッゲーガリガリガリレイで頭いいんすよWWW
フヒヒWWW実はアタシポルポル中しめてたんすよWWWWあ、聞いてます?WW聞いてます?WWWアタシお菓子はいかのまんまこそ最強と思うんすけど英雄さんそこんとこどうすか?WWWWどうすかWWWW」

父「…」

隊長「魔導士だ、こう見えてチームの要だ」

父「なんか昔のお前に似てる」

隊長「えっ」
300創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 18:58:59.43 ID:S/0wiuUs
勇子「あーっ隊長おじちゃん!」

隊長「勇子WWWW」

勇子「お土産は!?」

隊長「後でねWWWフヒヒ」

父「てめえ勇子にちかづくんじゃねぇ」

母「あらぁ?久しぶり」

隊長「待たせたな」

母「前から思ってたけどそれ似合わないわよ、いつもみたいなあんたの方がいい味だしてると思うけどな」

隊長「サーセンWWW」
301創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 19:17:52.82 ID:S/0wiuUs
父「そうそうやっぱお前はそうじゃなきゃ!」

隊長「フヒヒWWW」

勇子「フヒヒWWW」

賢太「ふ、フヒヒ…///」

母「ちょっと子供が真似するじゃない!」ベシッ

隊長はみをかわした

父「おべっ!?」

兵士「(隊長のイメージが崩れていくのです…)」
302創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 19:20:40.02 ID:S/0wiuUs
隊長「それじゃあいくか」

母「そうね」

父「そうだな」

ロボ「ウィーン?(・ω・?)」

魔導士「どこいくんすかWWW」

勇子「勇気の丘!」

魔導士「勇気の丘?」
303創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 19:42:50.29 ID:S/0wiuUs
勇気の丘


兵士「わぁ!なんていい景色なのです!」

父「ここに来るために勇気を振り絞った者達がいたんだ、だからここは勇気の丘」

ロボ「ウィーンウィーン!」

魔導士「あの瓦礫の山はなんすかWWWW」

母「この景色は綺麗なだけではないの、美しさがあれば醜い憎しみもあった…叡知の景色」

兵士「この岩は…碑石なのです?」

隊長「それは「愛の塔」。ここにひとつの愛が眠っているのさ」
304創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 19:44:32.22 ID:S/0wiuUs
隊長「今日という日は、俺達にとって決して忘れられない日になった、それまで以上に傷つき悲しみ泣いた、もっと力があれば失わずに済んだかもしれないものもあったかもしれないと思った」

母「だけどそれ以上に得られるものがあった、だからといって失ってよかったと言うわけではないけれどそれがなければまだ私達は過ちを繰り返すばかりで真に強くはなれなかったでしょう」

父「感謝してもしつくせない、そして謝罪してもしつくせない。あの日を後悔している自分はいるけれどそれ以上に誇りに思う自分もいる」

父「なぁ、この世界は…少しはお前の望む優しい形になれたかな…?」

賢太「パパ…」
305創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 19:47:11.45 ID:S/0wiuUs
兵士「なっているのです!」ビシッ

母「兵士ちゃん…?」

兵士「わたしは魔族なのです」

父「!」

兵士「魔族狩りで人間に殺されそうになっていたわたしの家族や友達を隊長は助けてくれたのです!」

ロボ「ウィーンウィーンウィーン!^ー^)人(^ー^(ボクモ・ヒトリボッチダッタ・マゾクニツクラレコキツカワレハイキサレルハズダッタ・タイチョータスケテクレタ)」

魔導士「実はアタシWWWW黙ってたけどWWWW…かぁちゃんが魔族でとぉちゃんが人間なんすよ…ハーフだからみんなに嫌われてて生きるのが辛かった…あんなやつら殺してやろうかと思ったけど…隊長、たす、たすけ、てくれてぇうぇ」ポロポロ

父「お前…」
306創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 19:52:21.42 ID:S/0wiuUs
隊長「しみったれた話になっちまったな…ほらお菓子にしようぜ」

勇子「わーい!」

隊長「よっ」バラバラッ

お菓子のむれがあらわれた!

兵士「ッ!」

ロボ「(◎д◎)!ウィーン!」

魔導士「三百円こえとるWWWWずりぃWWW」

隊長「馬鹿野郎」

隊長「お菓子ってのは皆で食べるものだ」

隊長「皆で食べるお菓子の味プライスレス」

隊長「友情は値段じゃねえんだよ」

兵士「キュン」

ロボ「ジュン」

魔導士「濡れるッ!」
307創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 22:37:02.49 ID:S/0wiuUs
母「…こんな世界…あいつにも見せてやりたかったわね」

父「そうだな…」




勇子「賢太ー!パパー!ママー!早くー!」

父「わかったわかったー!いくぞ賢太」

賢太「うん」
308創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 22:40:04.25 ID:S/0wiuUs
原作 『勇者「俺達四人そろえば怖いものなし」』作者 俺
    連載  コミック俺の頭の中

   キャスト 以下ご自由に好みの声を入れてください
   勇者  賢者  狩人 ペンギン部隊  戦士
   魔王  蒼龍  白虎 玄武 朱雀
   恋人  魔王(昔) 武道家  重戦士  僧侶
   俺(友情出演)  村人
   勇子 賢太 兵士 ロボ 魔導士
   父 母  隊長
   








   And you!
309創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 22:43:28.57 ID:S/0wiuUs
   
   

  








「本当に会いにいかなくていいのですか?」

「あぁ、遠くから眺めるだけで十分だよ」

「お父さんあの人達だれぇ?」

「娘、よく見ろあいつらを」







「最高に、輝いてるだろ?本当にカッコいいっつーのはああいうの魂に輝きを持っているやつをいうのさ」




お わ り

310創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 22:56:24.40 ID:S/0wiuUs
『勇者「俺達四人そろえば怖いものなし」』を見てくれた皆様(誰も見てない)ありがトゥ
そうです、俺が恋人さん殺しましたwwwサーセンwww
俺実は2ch新参者で今回スレが立てられず困っていた所ここを見つけまして
投下させていただきました。本当にありがとうございました
仕事よりこういうこと考えてる時間のほうが多いのでまた何か作ったら来ます

本当にありがとう親友 アディオスwww
311創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 22:58:05.89 ID:ZPka4rHz
友よ!また会おう
312創る名無しに見る名無し:2011/03/20(日) 23:00:22.27 ID:RXYyKYXS
おつおつ
いい話だったぜ
313創る名無しに見る名無し:2011/03/21(月) 10:10:34.53 ID:vl9yTBXL
お前が殺したのかwwwwこの戦いの元凶wwよくも恋人さんを
314創る名無しに見る名無し:2011/03/24(木) 23:03:50.54 ID:RwpdNxB8
狩人がいいやつすぎる
315創る名無しに見る名無し:2011/03/25(金) 17:45:43.33 ID:9uF1ORxN
超能力ってファンタジー?orSF?
316名無しの青二才:2011/03/25(金) 19:00:52.02 ID:9uF1ORxN
ってサイキックにすレバいいですね。俺の読み落としwww
感動作の後に少し失敗するかもしちゃうかもしれませんが書きます。
「〜永遠の夢〜」 作:名無しの青二才 原案:俺

しょせん、俺は頭に銃口を向けられて頭が真っ白になる小心者だ。
この距離なら相手を確実に殺せるが、それを考えて動いたらコイツに殺されるだろう。
先に動いたほうが吉か?それとも凶か?動かないとこの状態をどうすればいいのか?
こいつの右足を思いっきりつかんだ。とっさだった。
ひるんで銃口をから力をえ抜いた隙に拳銃を蹴り飛ばした。とっさに地面に手をかざす。
「くそがぁぁぁぁぁ。」アイツの悲痛な叫びと共に血飛沫を大量に浴びた。
男から刺さっている長細い日本刀を引っこ抜いた。コイツはまだ息があるようだ。
「てめぇサイキッカーだと・・・・。」
コイツの質問にもちろんスルーしとどめの一振りを振りかざした。
ひんやりとした感覚が首筋に伝わった。おそらくこいつの仲間の銃口だろう。
「剣を創りだすサイキッカーとはなぁ。侮れないな。」そいつの一言と同時に発砲音が聞こえた。
「侮ったな。」
そいつはゆっくりとひざから崩れ落ちた。傷口からの血が水溜りのように血だまりを作った。
ここから10メートル後方にいる相棒に「全員かたずけた。」と合図して立ち去った。

この世界には三つの種族がいる。「人間」「鬼人族」「神人族」
人間は「鬼人族」を長年奴隷のように使ってきた。それに逆上した「鬼人族」が革命を起こした。
「2年の大革命」によって、人間は奴隷のように扱われ、数年前に絶滅した。
見た目はそんなに変わらない「鬼人族」「神人族」によって世界は支配されていった。
そんな中誕生したのは「サイキック」と呼ばれる万能魔術だった。
サイキックのなかには人を殺すものもあるほどだ。
そうして規律が悪くなった世界を治めたのは「共和国・連邦同盟軍」だった。
しかしこの世界は徐々に壊滅を続けていくのだった。なぜなら・・・。
(1)終了。
317名無しの青二才:2011/03/26(土) 18:29:28.07 ID:IWqNSCEE
減反政策と評して軍は国民を虐殺しギリギリ50億匹以下に保った。
軍のトップ、ウォルフ元帥を殺すために俺たちは旅に出かけた。‘このままじゃみんな死ぬ’
軍の総本部R45にただひたむきに向かい、この世界を変えるために・・・。

「おい。あそこ。人間の遺跡だぜ・・・。」相棒のマウロがこちらにつぶやいた。
人間の遺跡とは、数年前の革命の際に攻め落とされた人間の軍の駐留基地のことだ。誰かがいるようだ。
「滅多にお目にかかれない代物だなぁ。人間だなんて。なぁグレアム。」
「俺に対する嫌がらせか?まぁいい久しぶりの同胞だ・・・。挨拶でもするか。」
マウロは腰のホルスターから拳銃を抜いて両手を挙げた。俺も腰に差したサーベルをその場に捨てた。
こちらを向いた同胞があわてて自動小銃の照準をこちらに合わせた。
「本日二回目。頭に銃口当てられるの。銃をおろせマウロ。」
「動くな!!こいつをぶち殺すぞ!!そこのお前、ライフルを下におけ。」
「おいおい・・・同胞に見っとも無い姿さらすな。ライフルじゃない自動小銃だ・・・。」
奥のほうにいた人間がくすくすと笑う。マウロが挑発されなければいいが・・・。
「おい!馬鹿にしてんのか!?本当にぶっ殺すぞ?いいのか?」
「いいぞ殺せ。鬼人族のことなんてどうでもいい。」
ようやく口を開けた同胞の言葉は悪で俺を軽蔑してるようなひとことだった。
「グレアム・パトリック元アメリカ陸軍少佐。認識番号も行ったほうがいいか?」
「グレアム・パトリック?失礼しました!!ご無礼を許してください!!」
「もういいぞ、マウロ。いい加減銃を下ろせ。ひんやりする。通してくれ仲間だ。」
入り口の門番はこの遺跡を仕切っている「タカハギ」という男の下へと導く。
318名無しの青二才:2011/03/27(日) 10:57:51.56 ID:IPrqLM7o
そこには、白い口髭な大男。コイツが「タカハギ」らしい。
「ようこそ人類革命軍へ。お久しぶりだねグレアム君。ユタの爆撃以来だ。」
白ひげのリーダーはゆっくりとソファーから立ち上がる。
「イワゴル・セダスキー准将ですか?死んだのではなかったのですか!?」
「いやいや、あの時は自分だけ生き残ってしまってねぇ。それより用件は何だ?」
「確かここの基地は第204野戦歩兵師団の基地だとお聞きしたことがあるのですが・・・。」
准将は間髪をいれず「そうだが。」と返事をし、ソファーの腰掛けた。
「一個小隊お借りしたいのですが・・・。」
「いくら‘アリゾナの英雄’でも無理な話だ。今の戦力は下手をすれば二個小隊にも満たない。」
後ろにいた兵士もうつむき加減で少しうなずく。
「じゃぁ一人腕のいい兵士をお借りします。」
「それならいいのがいるぞ。サンドラを呼んで来い。」
マウロがこちらに小さな声でつぶやいた。
「サンドラって女の名前じゃねぇのか?いやな予感がするぞ・・・。」
「こいつらは何を考えとるか分からん。准将は大隊を見捨てて奴らに引き渡した。」
319創る名無しに見る名無し:2011/03/27(日) 13:07:56.15 ID:ZuEvapzy
>>318
投下乙 これからの展開が楽しみだな
320名無しの青二才:2011/03/30(水) 20:43:26.03 ID:iRGXIdp+
サンドラ元海兵隊小隊長。マウロが言うとおり、「人間の女」だった。
「んで准将さんよぉこの女のどこが優秀なんだ?どう見てもただのねぇちゃんじゃねぇか。」
相棒のマウロが俺が思っていてくれたことを事細かに代弁してくれた。
「槍使い・・・といったらいいのかな?サンドラ曹長。」
「銃剣です。槍とは違って短い。」
サンドラは少しこちらを警戒するかのように睨みつけながらこちらを見て言った。
「銃剣使い?変わった趣味をごもちのようで何よりだ。」
「ハハハ。おっさん俺たちをからかってるのか?いい加減にしろ!!」
マウロの声が響いた後、マウロと准将がにらみ合いしばらく沈黙が続いた。

ものすごいほどの音がフロワ一帯に響き渡った。最初は何が起きているのか分からなかった。
頭上から高い音程の警報音が降り注いだ。
「敵襲!敵襲で・・ぐああああああああ・・・・。」
「アンディー?応答しろアンディー!?」
門番の叫び声でようやく異常な事態だと気づいた。
一瞬にして頭が真っ白になって、体がが凍ったように動かなかった。
「准将、早くご非難を。貴様何者だ!?やめろ!!うあ・・うわあああ・・・」
目の前に現れた大男は門番を抵抗させるまもなく巨大なハンマーで圧死させた。
「ウォルフの使いか?待ってくれ。いやだ。」
「ゼハハハハハ。おっさん見っとも無いのぉ。」大男はハンマーを振りかぶった。
「待て待て待て待て待て待て待て待て待てまがっ神様・・・・。」
ドス赤黒い液体と肉片と共に准将はハンマーの餌食となり消えていた。
「お前・・・。何者だ?」
「よくぞ聞いてくれたぞ。わしはヌーロックまたの名を‘怠惰’じゃ。」
321名無しの青二才:2011/03/30(水) 21:09:43.24 ID:iRGXIdp+
‘怠惰’はそう答えるとこちらへ向かって聞いてきた。
「お前がグレアムか?会いたかったのぉ。やっと会えたんじゃ、そんな顔せんでも・・・。」
「俺はグレアムじゃないぞ。マウロだ。マウロ=オリヴィア。」
「お前面白い奴じゃ。わしと戦わへんか?」
マウロが「YES」の返事をする前にもうハンマーは振りかぶられていた。
マウロはすばやくホルスターから回転式拳銃「SAA」を構えた。
引き金を回避しながら引いた。肩の辺りに被弾し血が飛び散り目に入りかけた。
「やっぱ強いのぉ・・・わしの足元にも及ばんが・・・。」
‘怠惰’は続けて放たれた銃弾を跳ね返した。しかし確かに被弾していたはずだ・・・。
「うそだろ・・・。」
「うそじゃないいんじゃ。本当じゃぁぁぁぁ。」
‘怠惰’から振り下ろされたハンマーが砕け散った。木の欠片が飛散する。
「2対1とはズルイ・・・。もう一人呼ぶかのぉ」
後方の壁が崩れるような音がした。後方には剣を二刀流にする鎧がいた。
鎧はすぐさま援護しようといていた兵士たちを始末してこちらへと来た。
「紹介じゃ仲間のヴァンザント。えーと‘傲慢’だったか?」
「違う!!憤怒だぁ。むかつくんだよぉぉぉ。がぁぁぁぁぁぁ。」
〜おいおいおい・・・まじか?こいつら大丈夫なのか?〜
二刀流の鎧は確かに動きが早く、大男はすさまじいパワーだが・・・。
先手必勝か?相手の手札を読むか?そう考えているうちに鎧は後ろにいた。
〜やばい・・・。殺される。〜
「フガガガガ。油断したな・・・。」
「フガガガガ?変な笑い方だなお前ら・・・・。」
「俺を馬鹿にするなぁっぁぁぁぁぁ。ぶっ殺す。ぶっ殺すぞぉぉぉぉ。」
〜本当に大丈夫かこいつら?〜
322名無しの青二才:2011/04/01(金) 09:53:44.56 ID:xtjqLpti
すぐさま壁の欠片を剣に変え‘憤怒’に向かって刃を向けた。
「鉄仮面は俺が相手する。デカブツは曹長に任せた。後のものはけが人の手当てをしろ!」
「ちぇ・・・俺の番はナシかよ・・・。」マウロは銃を腰のホルスターにしまう。
「お前は強いのにのぉ。まぁ仕方ないわ。わしも‘強欲’も銃弾はきかへんからのぉ。」
もしかしたら・・・こいつらサイキッカーなのか?そしたらたちが悪い。
「俺は‘憤怒’だぁあんな奴と間違えるなぁぁぁぁ。」
〜けどこいつら大丈夫か?〜
先手を打ったのは俺だった。すぐさま鎧に振りかぶった。

だがいなかった

「フガガガガガガ。後ろだぜ色男・・・。」
うそだろ・・・。そう驚いた時には背中に激痛が走っていた。
「じわじわ痛めつけて苦しませながら殺してやる。フガガガガガ。」
後ろをあわてて振り返る。しかしながら‘憤怒’はいない。
今度は腰に激痛が走った。またうしろからの攻撃。今度は太ももも。
必ず後ろからの攻撃。相手の手打ちを読む。
振り返る。
「ひかかったな。鉄仮面。」
頭を切り落とし鉄仮面がゆかに落ちてけたましい音が鳴った。
「ひかかったのはお前だよ色男。」
そこには頭のない鎧がたたずんでいた。「化け物」それは彼を指し示している。
323名無しの青二才:2011/04/01(金) 10:45:30.30 ID:xtjqLpti
「死なないサイキッカーか?」
「フガガガガガ。おもしろい。笑い話を話してやろうか?」
とある男は忠実な「鬼人族」の貴族の城の守備兵だった。
しかしある日革命騒ぎの中、とある男は勇敢に政府軍と戦ったんだぜ。
とある男はなんと5000名の首を切り落とした。言わば殺人狂なわけだ。
しかし貴族は政府に寝返ってとある男はなんとギロチンに掛けられちゃった。
フガガガガ。だけどなぁぁぁ。復讐するために鎧に魂だけが宿ったんだぜぇぇぇぇ。
そうして死なねぇからだの代わりに、喜びを感じない体になったんだよ。
「引っ掛かったな。お喋り。」
ガチン。カランカラン。
「手榴弾だとぉぉぉ。嫌だ。出せ。早く!おい!おいぃぃぃ。」
命乞いもむなしく爆音が鳴り響き、復讐の鎧は鉄の破片となって散乱していた。

「‘憤怒’は死んだんか?んじゃぁ引き上げるわ。」
なんて強さだ・・・。素手で銃剣を受け止めてへし折った。
小銃の弾奏を空にしても傷ひとつつけることができないだなんて・・。
‘怠惰’は地面に大きな穴を開けてそこへ消えていった。

「元帥。ヴァンザントが死にました。ヌーロックを殺しておきますか?」
「いや。使える駒が減る。懲罰房につないでおけ。」
「了解しました閣下。それと・・・」
「それとなんだ?」
「バジリスクを釈放しますか?奴なら一発で・・・閣下!?ぐえぇぇ。」
「奴の名前を出すな!!忌まわしい名を!!」

324創る名無しに見る名無し:2011/04/01(金) 18:26:25.67 ID:xtjqLpti
「生存者は!?誰か生きていたか?」
息の上がる声を押さえて叫んだ。全く、年はとりたくないものだ。
「全滅ね。みんなやられたわ。とんだ災いね。」
サンドラの声は低く震えた声で呟いた。少なき同胞はみんな死んだ。己の無力さを痛感した。
「持っていける物は全部もっていけ!!三十分後ここを離れる。」
「分かったよ。相棒。」マウロは答えたが、サンドラは口を閉ざした。
「貴方達のせいよ。」
「イワゴルのせいだ。どちらにせよ、俺らの仲間だ。」
「気安く仲間だなんて呼ばないで!!」
サンドラはヒステリックに叫ぶと町の方へと走っていく。
「大変だ!そっちには盗賊のキャンプがあるぞ!!」
俺は叫ぶが聞こえてないのか、無視をしてただ歩いていく。
間にあわないぞ。やばい。これ以上同胞は殺してはいけない。
悲鳴がフロア一帯に響きわたった。
間に会わなかったのか!?
サンドラは壁にもたれ掛かっていた。腕から血がでている。 
「ゲハハハハ。引き締まった肉が来た。」
そこにいたのは盗賊ではなく狼だった。
「今度は`暴食’か?貴様何者だ?」
話せる狼は意表をつくような思いもしない言葉を口にして度肝を抜かれ唖然とした。
「話せる狼で悪いか?」
325名無しの青二才:2011/04/01(金) 20:55:52.59 ID:xtjqLpti
話すことのできる狼はロメオと名乗った。
「おっさん。狼怒らせんな。なめて見られんのは一番いやなんでねぇ。」
ロメオは血のついた口を舌でなめ渡すと、こちらをにらみつけた。
「変わった狼だ。なぜ話せる?」
「神から授かった才能だよ。おっさん。いい加減に肉を食わせろ!!」
ロメオはすぐさま飛びつくと、鋭い爪で胸を指そうとしてくる。
素手で腹を殴りつけて吹っ飛んでロメオは十メートルぐらい吹き飛ばした。
ロメオはすぐに受身を取った。
「俺は深手を負っていてあまり戦いたくない・・・。見逃がしてくれないか?」
「なめてんのか?てめぇ見たいな奴が一番嫌いだ。いざとなったら命乞いか?」
「忠告はした。見逃してくれないのだな?」
「てめぇ、調子に乗ってんじゃねぇぞ。」
ロメオはすごい剣幕でこちらへと向かってくる。だからといってひるまなかった。
足元の木の根っこはロメオの足元まで続いている。
根っこをのうえに手をかざした。根っこは急激に光りだす。
「何しやがった・・・?てめぇ・・・・。」
ロメオの腹には刃が突き刺さり血が飛散していた。

気がついたら町の診療所の天井があった。
「おおめがさめたか・・・。体の作りが妙じゃ?もしかして人間?」
担当の医師は気がついてしまったようだ。
−−−−これはごまかしきれないようだな
「ああそうだが・・・。」
「わしも人間なんじゃ。」
同胞はまだいたようだ。よかった・・・。本当に・・・。
「ありがとう先生。んじゃ仲間が待ってるんで。」
「無理しちゃいかんよ。」その言葉が何度も頭の中を講釈した。

「憲兵隊からの報告です。グレアムのものと思われる大量の血痕が発見されたとのこと。」
「予断を許すな。私を殺そうとしている男だ。」
「仰せのとおりで閣下。大儀のためにも忠義を尽くします。」

「(‘傲慢’。グレアムが生きてると思うか?)」
「おやおや・・貴方らしくない。天下の‘嫉妬’もちのオレイアスはどこに行ったのやら・・・。」
「(どちらにせよ、僕は死んだほうにかける。)」
「今の言葉閣下には報告しませんので心配なさらずに。」
「(ありがとう。助かる。)」
326名無しの青二才:2011/04/02(土) 18:05:14.41 ID:H9Gj84Ph
「で・・・なんでお前がついて来るんだ?ロメオ。」
「いいじゃねぇか。おっさんは仲間とはぐれたようだしよぉ。」
端から見たら狼に小声で話す頭のいかれた奴キチガイのように見られるようなきがした。
「お願いだから喋りかけないでくれるか?ついて来てもいいから。」
「ゲハハハ。おっさん。ありがとうよ!」
元軍人のおっさんと狼が森のほうへ向かっていたときだった。
馬に乗り軍服を着た二人の憲兵がこちらを睨んでいる。
一人は眼鏡と髭の小柄な男。腰に回転式拳銃のホルスター。
もう一人は帽子を深くかぶった女「USSR PPSh41 」を所持している。
上官らしき女性が合図をするとこちらへと向かってきた。
(やばいな・・・。ばれてしまったか?)
男の憲兵はこちらに一歩一歩歩み寄る。この距離なら・・・。
男はどこかで見たことのある目をしていた。かざそうとした手をポケットに隠した。
「相棒。ここにいたのかよ。」
マウロだったが気づかずロメオはすぐさまマウロに飛びついた。
「痛でででででで。俺だよ俺。」
「軍人に知り合いなんていないぞ。やっちまえロメオ。」
「おいおい。冗談もきついぜ相棒・・・。ってうああああああ。」

三人と一匹はまた歩き出した。町を出るとそこは大草原だった。
「確かこの辺は・・。気をつけろ地雷原だ。」
「おお。鼻の事なら任せろ。こう見えても犬の仲間だ。」
ロメオは高々とほえると、落ちていた石を蹴飛ばした。
ドドドドドドドドド・・・ガガガガガ・・・バギン!
「っへ?」
「ップ。」
「何?」
「俺じゃないぞ。」
「おいらもだ。」
「てめぇらだれだ!?」
10人・・・いやもっといる50人は少なくとも・・・。
「元帥閣下を君たちは殺そうとしてるそうじゃないですか?」
「アイツの刺客か?忠告する。アイツは忠義を果たすほどの男じゃない。今すぐ武装解除しろ。」
「貴方方は指図するほどの立場ですか?考えなさい。」
「へぇ変わった奴ジャン。あんたなんて名前?」
「‘傲慢’と呼んでください。貴方たちこそ降伏しなさい。」
327名無しの青二才:2011/04/04(月) 20:40:52.22 ID:5IqQWn9y
‘傲慢’はどんな能力を持っている?
何も貫通させない皮膚と怪力、死なないからだと並外れたスピード。
「アリゾナでは散々暴れたそうじゃないですか・・・。」
「そのことは口にするな!」
カッとなってしまった。いつもどおり冷静にしておけば良かったのだ。
すぐさま剣を大きな動作で振りかぶった。
「あまいですね・・・。それでも英雄ですか?」
‘傲慢’は能力を使うわけでもなく、腰に携帯したナイフで俺の腹を切り裂いた。
腹の辺りが熱湯をかけれたみたいに熱くなった。
「相棒!くっそ・・・邪魔だ!」
マウロはSAAのハンマーを起こすと引き金を引いて発砲した。
バババババ!
憲兵のライフルで追っ手を始末していくサンドラ。
うあああ
ぎゃああああ
すばやい動きで敵の喉笛を噛み破っていくロメオ。
俺は何をしているんだ!仲間ががんばっているのに・・・
‘傲慢’は油断していたようで右手首を切り落とすことに成功した。

しかし‘傲慢’は顔色一つ変えなかった。
「手などまた生えてきます。貴方こそ油断しましたね・・・。」
再生能力がある怪物‘傲慢’は呆気にとられた俺にとどめ刺そうとナイフを振りかぶった。
328名無しの青二才:2011/04/05(火) 11:18:39.44 ID:ilxg8L5Y
「あぶねぇ!相棒!」
マウロの声が横から聞こえると同時に横からの衝撃を受けバランスを崩して倒れた。
そして俺の顔に大量の血液が飛び散った。
目の前に横たわるマウロの腹からは大量の血が出ていた。
「畜生・・・ここまでか・・・・。」
「お前は死なせない。絶対にだ!」
瀕死の重傷を負ったマウロを肩に担いで来た道を引き返した。
「逃げるのですか・・・。やはり立派な英雄などいないようですね。」
地雷原だったがほとんど敵が踏んで自爆してくれたおかげで楽に大草原を抜け出した。
サンドラとロメオも後から合流し走って‘傲慢’からにげた。
幸い‘傲慢’は追跡してくることも無く、町に引き返した。
診療所まで息があったことが奇跡だった。
「こりゃぁコイツを足はもう動かん。車椅子だな。」
自称人間の医師は冷酷な判断を下しマウロの傷口が脊髄に達している事を告げた。
マウロ=オリヴィアは志半ばで旅をリタイアした。
 サヨナラだ相棒。また会える日まで待っているぞ。
町を大草原を避けるように出ると仲間がいなくなった寂しさから黙り込んだ。
奴の銃のうでは確かだった。
沈黙のなか林を抜けると、小さな集落にたどり着いた。
「おい、てめぇらなにもんだ?」
2日間の間で4日目だ。また銃を向けられた。
「あいにくこっちは、戦いたくはない。仲間を失った。」
「こいつらをリーストガンドの元へ連れて行け。祝杯の始まりさ。」
狼のロメオは放たれた銃弾はよけたが多勢に無勢。バットで殴られ気絶した。
サンドラも同様にやられ、俺も銃を構えられる中では無力ですぐに気絶させれた。

目が覚めると広場の真ん中で磔にされていた。
焚き火の用に炎が炊かれ、奇術師がこちらを睨みつけ、大勢の人がこちらを見て笑っている。
「無駄な殺生は好まない。外してくれないか。」
奇術師は松明に火をつけサンドラのほうへと向かっていった。
「生贄の儀式さ。狼女の誕生だ。」
サンドラとロメオを囲むように丸い円がかかれ周りには気持ち悪い生物の死骸が置かれている。
「何をする!」
「儀式さ。旅人には死を持って償ってもらう。死ね。」
奇術師の弟子はこちらに向かって鍬を振りかざした。
しかし遅すぎるスピードだったので、腹を蹴り飛ばすと焚き火に焼かれていった。
「貴様ァ!」
もろい物質だったので、十字架を破壊すると立ち向かってきた兵士を殴りつけた。
だが、サンドラとロメオは奇術師によって火の中へと消えていくところだった。
329名無しの青二才:2011/04/05(火) 11:34:55.67 ID:ilxg8L5Y
火の中から現れたのはロメオだった。
「ロメオ!サンドラはどうした!」
ロメオは奇術師の内臓を食い荒らすとこちらを見て叫んだ。
「こいつやりやがった!俺と女を合体させやがった!」
「言ってる意味が分からん・・・。」
「狼女にさせたんだ!くそぉぉあれはついているのに女か!!」
言ってる意味は分からなかったがコンクリートの地面を刃に代え住人を倒していった。
とりあえず走って集落を抜けて声の中に隠れることにした。
「おや?お客かね?」
老人の高く震えた声がこちらの存在に気づいた。
「急用だ!匿ってくれ!」
「嫌じゃ。」
そんな中思いっきりドアが開いた。すぐさま隠れる。
「ここに狼と男が逃げてこなかったか?」
「いや・・・わしもぼけてしまってのぉ・・・分からんんじゃ・・。」
「爺さんありがとよ。」
小さく呟いたが老人は気づかなかった用だった。

「憲兵から連絡です。グレアムの仲間が診療所にいるようです。消しますか?」
「無用だ。泳がしておけ!」

「(‘傲慢’がやられるとは・・・。)」
「やられたのじゃありません。追わなかったのです。」
「(何で追わなかった?)」
「彼らには期待しているからですよ。かえてくれそうじゃないですか。世界を。」
「(今の言葉、閣下には言わないから心配しなくてもいいよ)」
「助かります。」
330名無しの青二才:2011/04/05(火) 17:54:42.15 ID:ilxg8L5Y
「わしは未来が見えるのじゃよ。」
「はぁ?何だよいきなり爺さん?」
しゃべる狼を見て驚かない老人は久しぶりに見たと思う。
「未来が見えるとはどういう意味だ?ワケありか?」
「おたくらの旅路の結末を言ってやろうか?」
「いやいい。」
老人は言いたがっていたが、失敗すると聞いてモチベが下がることが嫌だった。
さっきから言いたかったことが我慢できずに口から漏れた。
「サンドラはどこだ?」
「合体したんだ。確かに戻る方法は知らない。あのババァにやられた。」
不思議な老人の館を明け方に出ると、なぜかロメオはサンドラになっていた。
どうやらロメオの話は本当らしいが信じたくはない。
共和国同盟連合軍総本部R45まで後どれくらいだろうか?
これまで、マウロ以外に3人いた。
元軍人のロックバンドと薬物中毒のナックルボンと詐欺師のミガルド。
ナックルボンは途中で使い物にならないほど異常をきたしリタイアした。
ロックバンドは憲兵に寝返り、特殊部隊を急襲させた。
ミガルドは夜間に逃走し、武器と金を一式持って行かれた。
そして下半身不随になったマウロ。
この旅で何人の仲間が裏切り、犠牲になった?
狼女になったサンドラとロメオはこちらを見ながら指示を待った。
「渓谷を迂回するルート?それとも市街地を直進するルートか?」
「市街地を直進しよう。」
331創る名無しに見る名無し:2011/04/05(火) 21:51:13.18 ID:Z87Lzrg7
311テロでこの国も変わっちまったよな。。
332創る名無しに見る名無し:2011/04/05(火) 22:48:55.37 ID:ilxg8L5Y
>>331 どういう意味?何かの比喩ですか?
333創る名無しに見る名無し:2011/04/06(水) 05:12:06.80 ID:EDrjJ1LI
環境テロ組織「東京電力」が引き起こした原子力テロの事だろ?
この国の大気・土壌・水源の全てが汚染され、世界中が輸入品の受け入れを断るようになったのさ
1次産業と2次産業はことごとく未来を断たれ、3次産業の壊滅も時間の問題だろうな

あるいは政治テロ組織「民主党」による行政テロと広報テロの事も言ってるのかもしれない
致命的な各種災害対応の遅延を起こし、対外的に虚偽の発表を繰り返す事でこの国の国際的な信用を失墜させたんだ

この二つの巨悪を滅ぼす勇者を今世界は必要としている
334創る名無しに見る名無し:2011/04/06(水) 07:33:50.60 ID:y9ASqKhl
確かにあの事故はテロだな。しかも、枝野さんしか活躍しない。
官房長官の仕事だけど、最近あんまり官直人見ない。
総選挙がどうとか言って被災地のことを忘れかけているような気がする。

けど、この板ではなすことじゃないよWW
335名無しの青二才:2011/04/06(水) 17:42:24.61 ID:ZCrG+2oc
市街地には憲兵がウヨウヨといたが、こちらの存在には気づかない。
「サンドラ・・・。本当にロメオなのか?」
自分でもワケが分からないことを言ったと後から気づいた。
「ええ。あの奇術師にしてやられたわ・・・。」
ロメオが最後に言った言葉は本当のようだ・・・。
冗談としか聞いていなかったが、本当に危機を感じてきた。
仲間が失っていくのでは無いかと・・・。そして、仲間を信じれなくなるかもしれないと。
「動かないでください。‘アリゾナの英雄’さん。」
聞いたことのある高く小さめの声と、いやなほど丁寧な言葉。
「‘傲慢’か?背中に突きつけられているのは拳銃?」
「ええそうですよ。これでチェックメイトです。」
足音が聞こえてくる。そしてドンドン近づいてくるが‘傲慢’では無い。
憲兵が数人こちらへと向かってくる、市街地で人は大勢いた。
誰も気づいていないが、‘傲慢’の行動は不審すぎた。
「動くな!銃を置いて床に伏せろ!」
「おやおや、私を誰か知らないようですね。貴方達こそ銃を置いてください。」
「お前はくそったれの犯罪者だ。早く銃を置け。」
‘傲慢’は5人憲兵の士官らしき大男の軍人の形動脈をすばやく切り裂いた。
大男の軍人が持っていたMP40で3人を射殺し、残った一人の顔を右手で捻り潰した。
一部始終を見ていた中年女性が大声で悲鳴を上げて叫んだ。
「人殺しよ!銃も持っている!みんな逃げて!」
「逃げろ!大変だ!」
「憲兵を呼べ!」
罵声でその場は混乱していたようだが、俺達はその場から逃げた。
「おやおや、こんな所に血の跡が・・・。見っとも無い。」
パニックになったメインストリートから逃げるように市街地を走った。
「邪魔です。どかないと殺しますよ。」
‘傲慢’な態度をとる怪物に市民はパニックになり、殺されていく。
MP40の弾奏が空になるほど撃ちつくして惨殺していった怪物。
憲兵に包囲されても顔色ひとつ変えずにナイフで重装備の40人もの相手を殺した。
「まったく・・・。邪魔なんですよ。」
辛うじて息のあった若い兵士を拳銃で射殺して怪物は固定銃座を軽々持ち上げ追跡した。
336名無しの青二才:2011/04/06(水) 18:29:10.50 ID:ZCrG+2oc
「早く出てきてください。ここにいるのは分かっているんですよ。」
怪物の声は高く残酷さをものがたるほど反響した。
俺の左手からは大量の血が流れている。流れ弾が被弾したのだ。
倉庫の奥に隠れていたが、怪物がここにたどり着くのは時間の問題だった。
「俺がひきつける。そのうちに逃げろ!」
「いやよ。救世主を殺しやさせない。」
「分かった、早くここから出よう。」
固定銃座の重さは数百kgもあるので移動速度は遅いはずだ・・・
ズガガガガガガガガガガ
機関銃の銃弾と反響音で倉庫は埋め尽くされていく。
ドアまであと5m。
4m・・・3m・・・2m・・・1m・・・
ドアから外に出れたが、背後のドアは鍵まで閉まった。
「サンドラ!馬鹿な真似はやめろ!」
「生きるの!生きて世界を救って。貴方しか無理よ。」
「駄目だ・・やめてくれ。ロメオお前もいるのだろ。」
「ゲハハハ。無理な話だぜ。おっさん、勝てよ!」
二人の意思は確かに受け取った。
その思いを継いで、俺はいつの間にか走っていた。

ようやく死に場ができたよね・・・。やっと神様は死なせてくれるみたい。
怪物は固定銃座の弾を撃ちつくすと、こちらへと向かってくる。
「時間稼ぎ・・・ですか。」
肩に携帯したライフルと腰携帯した拳銃をありったけ撃った。
怪物は死なずにこちらを見てあざ笑うかのように笑った。
「私を怒らせないでください。そこをどけば貴方を助けましょう。」
「ゲハハハ。貴方達だろ!」
ロメオはサンドラから分離し出てきたうえ、怪物の喉笛に噛み付く。
死なず、怪物はロメオを蹴飛ばしてロメオは壁に叩きつけられる。
「ウザイおおかみから分散できた・・。でここ何の倉庫か知っている?」
「ダイナマイト・・・。まさか貴方!」
「死んだ同志のもとに逝くわ。」

倉庫は爆音と爆風に包まれ希望のを持った仲間が死んだ。
結局俺は何もできないただの人間。
仲間がみんな失ったときに気づいた哀れなただの人間。
雨の中頬を伝う涙は自分の無力さをものがたる。
ただの人間は復讐を誓い、雨の中を走った。
337名無しの青二才:2011/04/07(木) 13:04:15.04 ID:Z89gLQdH
すみません。
まとめていたら、これ書くのに幅をむちゃくちゃ取るのでいったん練り直します。
誤字脱字が多いし、ヴァンザントも呆気なく死んだし、サンドラが狼女になったらわけ分からなくなっていったし・・・。
とにかくつまらない話しだし、落ちも無いけど今まで読んでくれてありがとうございました。
第二章を書き練り直します。
338創る名無しに見る名無し:2011/04/09(土) 13:00:18.86 ID:QsFOtXHy
よくがんばりましたね
339創る名無しに見る名無し:2011/04/09(土) 13:27:18.68 ID:QsFOtXHy
ということで、おもろくないけどその間短編でも投下しますか
340創る名無しに見る名無し:2011/04/09(土) 13:28:18.71 ID:QsFOtXHy
「くわっ カッカッ!ヒルデ様!スーパー負の力収集装置の準備完了しまし
!」

「ふふ…よくやった怪人トロールよ…これで人間どもから負の感情を集めて発射すれば
  たちまち人間どもは欝になる…人間どもは生きる価値に悩み退職者や自殺者が続出…
  世界征服しやすくなる…ふははは!父上もさぞお喜びになるだろう!娘の私が父上に代わって人間どもをけちらしてやる!」

「そうはさせないぞ!マゾックめ!」

「くわっ カッカッ!?誰だ!?」
341創る名無しに見る名無し:2011/04/09(土) 13:29:18.55 ID:QsFOtXHy
「ズアッ!ガキイィン!聳える鋼の盾!シールドグリーン!」

「グツグツ!ホワァァァン。芳しき香辛料の香り!アックスイエロー!」

「シュッ!ダダダダッ!貫く流星の矢!アーチピンク!」

「ズッ…ブオオオン!その槍さばき龍の如し!ジャベリンブルー!」

『五人揃ってないけど!勇者戦隊!ブレイバー!』 ドッカーン!
342創る名無しに見る名無し:2011/04/09(土) 13:31:34.80 ID:QsFOtXHy
「…でたなブレイバー!くわっ !カッカッ!毎度毎度邪魔しおってからに!このトロール様がギッタンバッコンにしてくれるわ!」

「マゾックめ!世界征服なんぞさせないぞ!」
「…いや、あれ?」

「どうされましたか!?ヒルデ様!」

「いや…レッドは?ソードレッドは?そろってないじゃん」

「レッドなしでもオレ達は負けない!とうっ!」

「いやだからレッドは?なんでレッドいないの?なんでなんで?」

「…え?何?」
343創る名無しに見る名無し:2011/04/09(土) 13:38:38.35 ID:QsFOtXHy
「だから…レッド、は?」

「レッドは…ちょっと」

「何?何?レッドがどうしたの?ねぇねぇ」

「いや…だから…ちょっと、ねぇみんな?レッドはちょっとね…」

「うん、ちょっとね…」

「ちょっとなんよ?ちょっとなんなんよ?」

「あのー…ヒルデ様?…」

「トロールちょっと黙ってて。ねぇなんでレッドいないの?なんでなんで?」

「なんだよさっきから…」
344創る名無しに見る名無し:2011/04/09(土) 13:43:20.12 ID:QsFOtXHy
「なぁブレイバー…オレからも頼むよ、ヒルデ様に教えてやってくれないか?そうじゃないと話が進まない」

「……あのさぁ…最近マゾック強くなってきたじゃん?」

「うん」

「だからさ…六人目が来てくれたんだよ。ブラック」

「六人目」

「いやそいつがなんかワケありでさ…みんなとそりがあわないだよ」

「それで?」

「でも…そいつ結構強くてさ…今もお前がでてくるからそいつに来てほしかったんだけど
勝手な行動してお前んとこの第三基地に乗り込んじゃってピンチになっちゃってさ…
レッドが助け行ったんだ…レッドの方は一人で戦ってるから早くこっちすませてレッド助けに行きたいわけよ?」

「…ふ、ふーん」

「え?何?お前もしかしてレッドのこと…好きなんちゃうの?」

「はぁ!?まじ意味わからんし!なしてそげんかこつゆーと!?あんなのこっちから願い下げやし!」
345創る名無しに見る名無し:2011/04/09(土) 13:52:08.22 ID:QsFOtXHy
 「あ、レッド」

 「え!?うそ!?あせあせ…ぱっぱっ…髪変じゃないかな…シュキン!…ん、
んん…レ、レッド遅かったじゃな…あれ?レッドどこ?」

「いねーよばーか!うわぁぁ!なんなん?なんなん?なんでレッドのこと好きなん?」

「違うしぃ!違うしぃ!あんなやつ好きでもなんでもないしぃ!」

「六人目のブラック…女の子だぜ」

「ええっ!?」

「なに驚いてんだよ、ヒルデちゃんはレッド好き!ヒルデちゃんはレッド好き!ヒューヒュー!」

「違うもん違うもん!うわぁぁぁぁん!」

「あぁヒルデ様が泣いた!」
346創る名無しに見る名無し:2011/04/09(土) 13:56:20.50 ID:QsFOtXHy
「ちょっとブルー今のひどいんじゃない?ヒルデにあやまんなよ」

「あれピンクってばマゾックの肩もつの?」

「いくらなんでもひどいっていってんの!ちょっと男子全員ヒルデにあやまんなさいよ」

「え?」
347創る名無しに見る名無し:2011/04/09(土) 14:03:23.38 ID:QsFOtXHy
「ピンクなんか機嫌わるくね?あ、レッドがブラック助けにいっちゃったから?」

「な、なんでそうなるのよ」

「幼なじみポジションは意外と脆いぞぉ…ブラックのこと甘く見てたらレッドとられちまうぞ」

「な、だからなんでそうなるのよ!?意味わかんない!私とレッドはただな幼なじみよ!」

「ムキになるところが怪しいんだよなぁ」

「う…ピンクちゃんレッドのこと好きなん?」

「え?…違うのよヒルデ…いや…だから…私と…レッドはただの…幼なじみだから…」

「どうせ昔結婚の約束してんだろ」

「…うぐっ!なぜ知ってる………!なによ!ブルーってばホントはブラックの方にいきたかったんでしょ!だからおもしろくないんでしょ!」

「なっ…!ちげぇーよ!なんでそうなるんだよ!」
348創る名無しに見る名無し:2011/04/09(土) 14:09:22.07 ID:QsFOtXHy
「ブルーってばブラックのことちらちら見てたもんねぇ…あは、私見てたのよ?レッドがブラックのこと助けにいくって言ったときの顔…『え?』『え?』って顔!」

「そんな顔してねーよ!なんだよブース!ブース!」

「ちょっとピンクもブルーもやめなよ…今はあの機械を壊して早くレッドを助けにいく、でしょ?こんなことで喧嘩してないで早くやろうよ…」

「は?こんなこと?こんなことってなによグリーン!」

「え…何…なんで僕怒られてんの…?」
349創る名無しに見る名無し:2011/04/09(土) 14:18:11.42 ID:QsFOtXHy
「てかグリーンさぁ…盾って何だよ…強い敵相手しかやくたたねぇし」

「え…み、みんな…僕のことそんな風に思ってたの…ひどい…」

「でも確かに盾って微妙よね、守れるの一、二人ぐらいだし」

「ひどいっ!」

「いや待て待て…その確かにグリーンは戦闘員達との戦いではめだたないがその防御力は私達も手を焼いてるぞ…」

「ですよね!?ですよね!?トロールさんそう思いますよね!?」
350創る名無しに見る名無し:2011/04/09(土) 14:26:04.33 ID:QsFOtXHy
「みんな…いい加減にしろよ…こうしてる間にもレッドとブラックは必死に戦ってるんだぞ!こんなことしてる場合じゃないだろ!」

「イエローさぁ…こんな時だから言わせてもらうけど…
なんだよお前のきめゼリフ。『芳しき香辛料の香り』?ふざけんなよ。
いつもカレー臭い仕事場のこと考えろよ。どうせそのアーマーもカレーで黄ばんで黄色になったんだろ」

「なっ…カレーを馬鹿にするなぁ!お前これからカレー絶対食うなよ!
ドライカレーもカレーうどんも食うなよ!
お前のことはカレー協会にもインドに報告するからな!」
351創る名無しに見る名無し:2011/04/09(土) 14:35:45.57 ID:QsFOtXHy
「じょうとうだコラ、カレーとラーメンどっちが人気かきめてやろうじゃねぇか」

「やんのか青カビ」

「やってやるようんこが」

「いい加減にしろキサマらっ!正義の味方として恥ずかしくないのか!
やれカレーだなんだのと!ヒルデ様もヒルデ様です!敵に恋などして!
キサマら全員そこに正座しろ!」

「一話のみのやられ役にいわれたくない」

「キサマぁぁぁぁ!」

「うぎゃぁぁぁぁ!こいつつぇぇぇ!ぐわーっ!みんな助けてぇ!」

「おし手伝うぞトロール。こっちにふれ!ピンク!合体技だ!」

「せーの」

「うわ、やめろ!」

「ピンク!」

「イエロー!」

「『アストラル・アンガー』!」

「ぐわっはっあ!」

「グリーンやってやれ」

「ふん!『メタル・アンバースト』!」

「ごわっふぁっ!」

「ヒルデもやっちゃえ」

「……地獄の業火よ…『ビヨンド・ザ・インヘルノ』」
「アーッ!」




 ごめんむしゃくしゃしてたんだ
 面白くなくてごめん
352創る名無しに見る名無し:2011/04/10(日) 20:54:21.36 ID:loL1bdwe
新たなる始まり〜New beginning〜


減反政策と評してまた鬼人が殺される声が街中に響き渡る。

憲兵のなかでも何度かクーデターが起こり一年で予想を上回る1億人が今年死んだ。
なんと人口は25億匹! 二年間で半分に減った。

ウォルフはただの馬鹿だ。信じている奴も馬鹿だ。

「ジョバンニ!応答しろ!」
無線から流れる仲間の声で目が覚める。反乱分子との戦闘で倒れたまま気絶したのだ。
構えたライフルはあと少ししか弾がない。

バン!バン!バン!
キュッ
後数mで被弾し軍の葬式が行われただろう

「ジョバンニ!止まれ!撤退だ!」
上官の言葉がかすかに聞こえてくるがそのまま走った。
帰っても軍法会議行きだろう・・・。
十メートル先の小さなトーチカの中に入った。

ズドン!
ライフルで一人を射殺すると機関銃を構えた兵士がこちらに気づいた。
ザクン!
ナイフでのどを切り裂きもがき苦しんでいる。

ドォォォォォォォォォォォォン
激しい爆音と共にトーチカが崩れ落ちた。
トーチカの中のジョバンニは多分助からないだろう・・・
憲兵がまた何人も死んだのだから・・・
353創る名無しに見る名無し:2011/04/13(水) 06:29:03.84 ID:JwBVHjWD
>>352 は無し。
354創る名無しに見る名無し:2011/04/29(金) 11:23:35.13 ID:tmeHc9NY
戦士生きてたァァァァァァ良かったァァァァァァア
355創る名無しに見る名無し:2011/04/29(金) 15:13:58.46 ID:9spqU9ba
剣士生きてたのね
356 忍法帖【Lv=2,xxxP】 :2011/05/25(水) 01:23:04.80 ID:h0Eo36xE
無双凌駕斬!?♪。
357創る名無しに見る名無し:2011/06/11(土) 18:40:20.25 ID:b5OvlG0x
書き手がいなくなった!
358創る名無しに見る名無し:2011/06/12(日) 11:57:44.61 ID:nCdPTDQj
いますよー
けど、ネタが思いつかないのよ…

皆はどんなストーリが好き好みなのかな
と振ってみたりして

またそのうち
SSが書けたら、投下しにきます
どうぞよろしく
359名無しの青二才:2011/06/15(水) 23:01:37.48 ID:7KE8RT1S
ちょっとまってて、今軍事版で訓練しているから。それまで周一で支援はするから
360創る名無しに見る名無し:2011/06/16(木) 17:26:47.50 ID:w/VysYr3
狩人「チョリッスwwwなになにwwwもしかして呼んだwww?呼んだwww?フヒヒwww

361名無しの青二才:2011/06/16(木) 18:50:33.76 ID:W1Cs4OGX
「アーマーピアシング」永遠の夢第二章。

その男はあまりにも勇ましく、そしてその男は俺がなりたかった姿だった。
自分を殺そうとした奴を返り討ちにはしたが、殺しはしない。彼はこの世界でいちばんつよいかも知れない。
こんなことは言いたくは無いが、世界は狂っている。
いや、この世界は確かに狂っている。狂気に駆られた軍の総司令官が虐殺を命令し刃向うことも無く忠誠を誓っている。
親に言われて軍に入隊したが、そこは腐っていた。士官が部下を適当な理由をつけて殺している。
それなのに本営の上層部は、ただ何もせず市民への虐殺と邪魔者の排除をコーヒーを飲みながら指示しているだけなのだった。
彼だけかもしれない。この世界の異常さに気づく者などいやしない。近々、何かが起きる。すべてがひっくり返るような…。

俺は戦ったことの無いチキンだった。何でも、やる前から逃げ出して一生懸命やる奴を馬鹿にしている嫌な奴だった。
表面では馬鹿にし、心の中でけなすことしか出来ない自分の小ささに苦悩して泣いていた。
自分は何も出来ない奴。ちっぽけで、クズと罵られて、挙句の果てに弱い奴にしか戦うことが出来ない。ちっぽけなクズ。
ある日嫌気がさして、拳銃を片手に小さな雑貨屋を襲撃した。それが俺の新たな人生の始まりだった。俺はその時から変わった。

「おいガキ。そんなおもちゃは下ろせ。ここで老いぼれ一人殺したところで何にもならん。」

車椅子に乗った老人は表情一つ変えずに、こちらへと言葉を淡々と言い放った。その姿に殺意がとても沸く。
拳銃を天井へ一発撃ちぬいた。まるで聞こえてないように反応しない老人が逆に怖くなってきたのだ。死ぬつもりは無かったからやはり怖い。
  (もしかしたらやばい奴かも知れない…)
拳銃を素早く老人のこめかみから数センチのところへ向けた。銃口がやけに大きく見えた。気のせいだろう。
引き金を引けばこの男は死んで、恐らく俺も陪審員裁判で絞首刑が確定するか一生塀の中の暮らしになってしまうのだ。
躊躇うことは、洞察力の鋭いこと老人からはお見通しのようだった。この老人じゃなくてもバレバレだろう。
奇声を発しながら拳銃を老人に向けて発砲した。シリンダーが回転しヨークが何度も上下に動いている。
何度もリロードして、予備の15発もポケットの中からはなくなっていた。けども被弾させていなかった。下手くそ過ぎたからだと思ったが違った。
老人は、化け物のように早かった。銃弾を全て避けて、更に驚く俺にカービン銃を突きつけながら、暢気に葉巻を吸いながら殺すタイミングを見計らっている。
「お前は、他人に何故自分の心が考えるのか尋ねられて答えることは出来るか?」
老人は奇妙な例え話と共に、昔に出会った男について語ってくれた。
362創る名無しに見る名無し:2011/06/20(月) 15:59:46.58 ID:ejIiVGTR
グリーンマイルみたいなヒューマンドラマ風ファンタジーを投下します!!
363奇跡の彼▼MaC8_9:2011/06/20(月) 21:25:22.79 ID:ejIiVGTR
「奇跡の彼」

私がテディー・ウォーグスと初めて出会ったのは、まだ看守長がフレミングだったころだ―――


今回の新入りは5名。私は食堂で不味いランチをスプーンですくってのどに流し込みながらバスから出てくる新入りを観察する。
見るからに薬物中毒者が二人と明らかな臆病者が二名。そして、テディー・ウォーグス。
ウィスコンシン州にあるこの刑務所では気が狂った奴がたくさんいたが彼だけは違った。
172cmで150.7ポンド小柄な体系の白人の彼の目つきは違いどこか他のバカとは違う目つきをしている。彼だけは確かに違う。
何かを隠し持つ小さな狂犬の様な、全て分かったような、まるで未来を見通しているようなそんな目だ。
同じ房の囚人仲間の気づいて、話題になり気が狂ったワトスンが喧嘩を吹っかけようとしていたが、彼は何食わぬ顔で通りすぎる。
彼はとても不思議で、疑問が多く適当な性格の私でも時間を使ってでも調べさせようとする興味を持たせてくれた。
興味を持った私は使えるコネを使い様々な人からテディー・ウォーグスを素行と経歴を聞き出すことに成功する。


彼はキャッスルロックという小さな田舎町で農家の三人兄弟の三男と生まれた。
小学校の時からおとなしい性格だが、酷い被害妄想に悩まされて中学では危うく友人を射殺しかけるほどだったらしい。
彼は妄想に悩まされながらも、高校の野球チームで自前の俊足生かし1番バッターの遊撃手としてレギュラーに選ばれて地区大会を勝ち抜いていった。
彼らのチームは地区大会の決勝で彼を怪我のため出場させなかった。不運にも代わりの遊撃手のエラーで逆転されて終わってしまう。
大学にも進学できたが、被害妄想の悪化を理由に中退して実家の農家を継ぐことになりまじめに働いていた。
NBAプレーヤーを目指す長男や、大都市の工科大学に寮で住み込む次男とは違い夢は無く、無欲で温厚な性格の彼には農業に向いていたのだろう。
トウモロコシを栽培する両親と甥夫婦に手伝いをしてほのぼのと暮らしていた。
両親が強盗に銃殺されて彼は深く悲しんだが、警察は彼を逮捕した。彼だけ生き残り、更に精神異常者の烙印を押された彼に疑いの目は向けられる。
甥夫婦は農家を辞めて自殺してしまい、彼の二人の兄のうちNBAプレーヤーを目指す兄は道をあきらめて、大学生の兄はいじめに会った挙句に大学を中退した。
彼は悲しみにくれながらも、裁判を受け近所の人の目撃証言や現場に残された置いてあった拳銃の指紋から終身刑判決が下りここに来た。
ウィスコンシン州は死刑制度は撤廃していたことが幸いだったと弁護士が語ってくれた。


状況証拠だけで逮捕した警察のどうしようもない無能さは私もよ〜く知っている。
廊下を通る新人の列で彼を見かけて彼を慰めてやろうと声をかけようとしたが、偽善者にだけはなりたくはなかったのでその時は一旦やめておいた。
その後も、食堂で話題になったがテディー・ウォ−グスの素行のことは誰にも話さず、徐々に影が薄くなっていった。

364奇跡の力:2011/08/27(土) 23:21:15.88 ID:igPUUtFO
1/7

 私は魔法が使えた。それは傷を治す癒しの力。手をかざして祈れば、擦り傷くらいの傷は
たちまち治るのだ。
 魔法は生まれたときから私と共にあり、私はそれが当たり前だと思っていた。けれどもそれは
とてもとても特別なことで、それを教えてくれたのは隣の家のハンスだった。
 父達が畑で働く傍らで私とハンスはよく追いかけっこをして遊びまわっていた。緑色の麦の穂は
私達よりも背が低かった。風に吹かれて波を打つ緑の海を腰まで漬かって私たちは走り回った。
 でもあるときハンスが麦の穂の中で突然消えた。驚いた私がハンスがいた場所に行くと、
ハンスは麦の中で方膝を立てて座り込んでいた。微かに涙が浮かんだハンスの目は立てた
膝の一点を見つめていた。膝には赤く染まった擦り傷があった。ハンスは転んだみたいだった。
 近寄った私に気づいたハンスは、何でもない、と言ってすぐに立ち上がった。でも膝の擦り傷が
痛々しかった私はその場に跪いた。ハンスの傷に手をかざして、私は祈った。私の掌が仄かに
熱を帯び始める。私の中から掌へ吸い取られるようにさらに熱が移動して、掌が淡く輝き始める。
その慎ましい光の中で、ハンスの傷は干上がるように治ったのだった。
 ハンスの傷を治し満足した私が顔を上げると、ハンスは目を丸くしていた。そしてハンスは言った。
すごい、と。神様みたいだ、と。感激して私の手をもみくちゃにしながら調べ始めたハンスを見て、
私はこの力が、私だけが持つ奇跡の力だと思った。
365奇跡の力:2011/08/27(土) 23:21:57.13 ID:igPUUtFO
2/7

 それから時が経ち、大きくなった私は住みなれた村を離れることになった。私の力を知った
村の神父様の計らいで、癒しの力を教えている特別な学校に行けることになったからだ。
その学校は国中から軌跡の力を持つ人を呼び集め、ありとあらゆる癒しの魔法を学べるところだった。
村を一度も出たことがない私にとって、村を一人で出るのは怖いものがあった。でも私は夢があったから、
村を出ることを選んだ。
 いよいよを村を発とうとする前日の夜、私はハンスを呼んで夢を打ち明けた。
 私はお医者様になりたい。お医者様になって村の皆の病気を治してあげたい。
 畑の柵に並んで腰掛けて、煌々と輝くお月様を見上げながら、私はそう言った。私達の後ろで
麦が夜風に流されてさらさらと音を立てた。
 ハンスは答えた。じゃあ、俺は強くなる。強くなって村の皆を守ってみせる。
 男の子らしい豪快な夢だった。でもそれは実現できるかもしれない。初めて私が魔法を使ったとき、
私とさして変わらなかったハンスの背は、いつの間にか私の頭一つ超えるようになった。父達の
農作業を手伝うようになってからハンスの腕は太くなり、胸板は分厚くなった。その姿にかつて
一緒に遊びまわった頃の少年の面影はなく、一人前の男の姿がそこにあった。
 約束だぞ、そう言ってハンスは日に焼けた顔を私に向けた。私もハンスを見て答えた。うん、約束、と。
いつの間にかそびえた男と女の壁を、この約束が貫いた気がした。約束を通じて私とハンスは
一つになれた気がした。頭上で輝く満月が、この約束の証人となった。
366奇跡の力:2011/08/27(土) 23:22:38.57 ID:igPUUtFO
3/7

 こうして素敵な思い出と共に村を後にして、私は学校に通うことになった。学校は都に程近く、
何もかもが煌びやかだった。通りは人で賑わい、山の様に詰まれた赤いりんごや、見本として
飾られた黄色の絨毯といった鮮やかな商品で満ち溢れていた。そして私も糊の効いた制服が
与えられた。学校の寮でその下ろし立ての制服に袖を通し、その鮮やかな色合いの服を鏡を
通して確認したとき、私は自分が街の煌びやかさの一員になれた気がしたのだった。
 しかし幾ら着飾ったところで、私はただの田舎娘に過ぎなかった。慣れない学校生活では
一事が万事恥をかき続けた。たとえば食事。食器にはフォークなど様々なものがあったが、
貧しい農家で育った私は、スプーンくらいしか分からなかった。寮で出された食事の、程よく焼かれ、
ソースもかかった豚肉を、私は当たり前の様に手で掴んだ。ナイフとフォークを使って一口大に
切り分けてから食べるものだと教えられたのは、級友からひとしきり失笑を受けてからだった。
 字も満足に書けなかった私は学校の勉強では下から数えたほうが早かった。そしてなにより
魔法の力が私を打ちのめした。学校は国中から魔法が使える人をより集めた場所だ。だから、
私の唯一の誇りだった癒しの奇跡も、学校の皆にとっては造作でもないことだった。
 それでも私は夢があったから、学校を続けた。満月の下でハンスと交わした約束。いつか
お医者様になって村に戻る日だけを拠り所に、私は勉学に励んだ。
 学校ではありとあらゆる癒しの方法が教えられた。一つは魔法の力で傷を癒す、私達にしかできない
奇跡の技。そして一つは、薬を使い、メスを振るい、病を治す医術と呼ばれるものだった。級友達は
魔法に頼らぬ後者の医術を野蛮だの外道だの嘲笑っていた。でも私にはどうでもよかった。例え
メスを振るう外道であっても、人を治す技術には変わりない。癒しに、奇跡の有無は関係ないのだ。
勉強を続け、文字も読めるようになり、医学書を読んで、火傷に効く薬の練成方や、血管を縛って
出血を止める方法を学ぶ毎に、私は医者になれる日が近くなるのを感じだ。
367奇跡の力:2011/08/27(土) 23:23:40.15 ID:igPUUtFO
4/7

 でもある日、戦争が起こった。戦いが繰り返され、沢山の人が傷ついた。彼らの傷を癒すために
私達も戦場に赴くこととなった。
 戦場では、先生たちはお気に入りの学生を引き連れて、王様や貴族の治療所にこもるようになり、
先生達からどうでもいいと思われた私たちは、大地を埋め尽くす負傷した兵士達の群れの中で、
自由にするように言われた。
 救護所と言うのは名ばかりの、天幕が張られただけの指定の場所は先着した一握りの負傷者で
満たされており、大多数の負傷者はその外の草の上を隙間なく埋め尽くしていた。血と腐肉の匂いで
満たされたその大地は、蝿の羽音が一面に響いていた。腐った傷に、動けなくなった者が垂らした糞便に、
そして力尽きた者の死肉に、蝿は容赦なく卵を植え付け、増えていった。際限なく増えていった蝿は、
さながら地獄の唸りのような羽音を響かせて、黒い霧となって救護所を覆っていた。
 級友の中にはその酸鼻さに逃げ出すものもいた。手の空いているものに無理やり作らせた掘っ立て小屋に
診察室とだけ書いて、そこに引き篭もる者もいた。先生達が王侯貴族の下に引きこもったこの地で、
彼らをこの地獄に縛り付けるものはいなかった。
 私はこの地獄にしがみ付いた。この蝿の羽音と糞便の匂いに包まれた地獄で、流れ行く血と、
腐り行く手足に喘ぐ彼らを救えるのは私しかいないと思ったからだ。だから私はこの地獄で働き続けた。
地を埋め尽くす負傷者達の間を縫って、彼らの治療に奔走した。
368奇跡の力:2011/08/27(土) 23:24:20.97 ID:igPUUtFO
5/7

 程度が軽い人には私は針と糸を取り出した。
 傷が浅い者、傷からチーズの臭いがしない者には、その傷を縫合して、包帯を張り替えて、
それで終了だった。
 彼らに魔法は使わなかった。彼らの傷は致命傷ではない。日々死者が生まれるこの場所で、
死に至らない怪我と言うのは、それだけで奇跡に値しなかったからだ。
 さっさと側を離れる私に不満を漏らす兵士は少なくなかったが、私はそれを無視して次の
負傷者に向かった。

 程度が重い人には私はノコギリを取り出した。
 肉を裂いて骨に至った傷や、チーズに似た臭いがする腐った傷は、やがて毒を持ち、全身を巡って
死に至らせる。救う手立ては傷ごと手足を断ち切るしかなかった。
 ノコギリを一引きする度に血が噴出しては私の手を汚していく。剥き出しになった血管を結索して血を止めて、
ひたすらノコギリを引いて骨を削っていく。四肢を失う痛みに負傷者は誰しも絶叫した。
 やがてノコギリは終点に達し、手足はごろりと地面に落ちる。露になった四肢の断面に、私は軟膏を塗って、
そして手をかざした。私はここでようやく魔法を使った。もっとも、もったいぶって出した魔法は、酷く貧相なもの。
傷口の直りを僅かに早くするための、とても簡単なものだ。奇跡の力といえども、人の力に根ざしている以上、
その量は有限だった。限られた力をたった一人のために使い尽くすわけには行かなかったからだ。
 一日が終わり、その日に切り落とした手足の山を見る度に私はぞっとする。ひたすら兵士達の手足を切る私は、
人の手足を欲する悪魔になった気がした。でも、これしか救う手立てはない。そうやって、私は自分を納得させていた。

 傷が手足じゃない人、胸や腹に傷を追っている人には、私はまず玉ねぎのスープを与えた。
 限界まで濃く作った臭いの強いスープだ。これを一口飲ませると私は傷口に鼻を近づけた。
もし傷が内臓に達していれば、傷口から玉ねぎの臭いがするはずだ。
 もし玉ねぎの臭いがしなかったら、私は軽症と判断した。
 傷口を縫合して、包帯を取り替えて、それで終了だ。手足に傷を受けた者とやることは変わらず、
不満の声を上げる負傷者達の態度も同じだった。

 もし傷口から玉ねぎの臭いがしたら?
 それは玉ねぎのスープが漏れ出ているということ。傷が内臓に達したという証だ。そうなれば
手立ては一つしかなった。
369奇跡の力:2011/08/27(土) 23:25:01.56 ID:igPUUtFO
6/7

 ある一人の負傷兵を診た時、私は驚きで声を上げた。負傷兵も私を見ると苦悶に歪んでいた顔を解いて
声を上げた。ハンスだった。
 一介の農民にすぎないハンスは領主の手によって徴兵され、戦場に赴いたのだろう。そして勇敢に戦い、
傷を負ったのだろう。彼が手を赤く染めて押さえていた所は腹部だった。
 私は再会の言葉も適当にしてハンスに玉ねぎのスープを与えると、傷口に鼻を近づけた。鼻に広がる
血と肉の香り。その中で私は祈った。どうか玉ねぎの臭いがしませんように、と。程なく血の臭いの切れ目から、
玉ねぎの香りが立った。
 私の顔色が変わるのをハンスは感じ取ったらしい。ハンスは観念したかのように息を吐いた。
 ハンスは諦めたみたいだ。でも、私は諦められなかった。私はハンスの傷口に手をかざした。頭の中で
様々な医術所や、魔法の術方を手繰りながら、私は本当の奇跡を願って祈ろうとした。その手を、血で赤く
汚れたハンスの手が掴んだ。
 おまえは医者なんだろ。諭すように優しい顔をして、ハンスは言った。楽にしてくれるんだろ。その言葉に、
内臓を傷つけた者に対する唯一の手立てを思い出した私は、小さく頷いて、腰に下げていたナイフを取り出した。
 このナイフは慈悲の刃。臓腑を断ち切られ、苦痛しか残されない憐れな重傷者達に与える慈しみのナイフ。
どうせ救えぬ命なら、せめて楽な道を与えよう。私にナイフを与えた先生はそう言っていた。
 ナイフを持つ手が震えた。涙が目の端からぽろぽろと零れ落ちた。そんな私にハンスは励ますように楽しげに
笑った。俺、強かっただろ、皆を守れただろ、と。
 私はあくまで医者見習いで、戦いの場には赴かず、戦争の趨勢も知らなかった。でも、ハンスの様な重傷者が
治療を受けることが出来るだけで彼らが勝利したということが分かった。敗者にとって重傷者は足手まといに過ぎず、
自力で歩けぬ者達はしばしば敵だらけの戦場に放置される。だからこそ、形だけとはいえ救護所に集められ、
動けない者も治療を受けられるのは、戦いに勝利したからこそできる贅沢だった。
 お互い、約束を果たせたな。そう言ってハンスは満足げに笑った。私は何も答えられなかった。歯を食いしばって
押し黙る私にハンスは続ける。なあ。それが合図だった。たった一言に込められたハンスの思いを感じ取った私は、
声にならない声を上げて、ハンスの喉にナイフを突き立てた。
370奇跡の力:2011/08/27(土) 23:25:42.18 ID:igPUUtFO
7/7

 血を失い、冷たくなっていくハンスの胸に顔を埋めて、私は泣いた。ハンスを失ったこと。ハンスを
助けられなかったこと。それに何より約束を守れなかったことが悔しくて、私は咽び泣いた。
 ハンスは強かった。自分が助からないと知り、死を目前にしても、私のことを思いやるのを
忘れなかった。私の手にかかる最後の一刹那まで、満足そうな笑顔を守り続けた。ハンスは
その強さを持って戦場でも勇敢に戦い、仲間達に凱歌をもたらした。ハンスは皆も、私も、
守り通したのだ。
 私は医者になれた。でもそれは名前だけだ。私はハンスを治せなかった。自分が持つ
奇跡の力を使えば、どんな傷も直せると、医の道を志したときの私はそう信じていた。しかし、
実際の医療の場に奇跡の力は使われず、奇跡は必要とされなかった。私が持つ奇跡の力は
紛い物に過ぎず、私は本当の奇跡を起こすことが出来なかった。皆を治すという、満月の下で、
交わした約束は終に果たせなかった。
 私は無力だった。それが悔しくて、私は声を上げて泣き続けた。
371奇跡の力:2011/08/27(土) 23:26:29.61 ID:igPUUtFO
以上、突然ながら失礼しました。
372創る名無しに見る名無し:2011/08/28(日) 00:29:12.95 ID:zV+w7D2Y
時間切れで出すにはアレなモンですが、ちょいと投下させてもらいますよっと。
373泥人形 1/10:2011/08/28(日) 00:31:20.31 ID:zV+w7D2Y

 むかしむかしある所に 一つの王国がありました。
 まだ歴史も浅い新しい国でしたが、若さゆえの活気にあふれ、王国はみるみると発展していきます。
 国王もそこに住む人々も、皆仲良く平和に暮らしていました。


 ある日のこと。男が一人、早歩きで王宮の通路を進んでいきます。
「お呼びでしょうか王よ」
 たくさんの書物が雑多に並ぶ、大きな書斎。
 王という言葉を聞いた後ならば、それに相応しい威厳もあると見えましょうが、そうでなくてはこの中に一国の主が埋もれているなど、とても想像できません。
 開け放しのままの装飾扉、その脇に立つ女官に軽く会釈をして、一声を発した男が、鋭い靴音と共に中へ進みます。
 返答を待たずしての行動はいささか礼儀に欠けていますが、男はそれだけの立場なのか、それとも単に話が通っているだけなのでしょうか。
「おお、もう来たか早いな」
部屋の奥から聞こえてくる声は無論、王のものです。
響きでそれとわかるように、羊皮紙の山にさえぎられ姿を見ることはかないませんが、暫くするとその山が割れて、壁に掛けられた肖像画と同じ顔が現れます。

「して如何様でございましょうか」
それを見計らって男が膝を突きました。
「そうかしこまるな我が友。実はお前に折り入って――」
崩れる山をのけながらに王が立ち上がろうとしますが、挟まれた上着が引っ張られる勢いで机に置かれたカップが落下。

「王様! どうなされました!」
 割れる陶器の音に続き女官の甲高い声が響きます。
「ああ何心配ない、アッサムを溢してしまっただけだ」
「直ぐにお片づけを!」
「大したものではない、自分でやる。彼と話があるので君は外れてくれ」

 返事とともに扉を閉める女中を背にして、その場にある適当な紙を取って、王が破片を包みます。
 書斎というだけあって、部屋中に漂う古本の持つ独特な匂い。
 その上に、紅茶の強い香りが広がっていきます。まだ淹れたてのものでしょうか。

「ん、失礼。我ながらそそっかしいな……。ところで友よ、近年の我が国は実に平和だと思わんか」
「は。それも全て王の尽力の賜物であります」
「それはこちらから言いたい位だ。お前の技術なくしては、我が国はこうも進歩しなかっただろう」
 男は錬金術師でした。当然王国にもたらされた技術は その錬金術です。
 金属を初めとする数々の物質を 変化させ、加工する。
 王国は純銀の生産とその技術によって大国に取り入り、確固たる地位を得ていました。

「……しかしだな、平和というのは時に停滞的でもある。そこで、少し試したいことがあるのだ」
 何かを確かめるように、一度窓のほうに視線を移す王。
 それから再び男の方に向きなおすと、たっぷりと含みを持たせながら、その一言を放ちます。
「私は王位を降りてみようと思う」
374泥人形 2/10:2011/08/28(日) 00:33:23.39 ID:zV+w7D2Y

「……それはまたどのようなお考えで」
 対する男は流石に多少の動揺が見えますが、すぐさま冷静さを取り戻します。

「だいたいだがな、この先二十年、恐らく私が私としてやる事がない。既にこの国の仕組みは完成しているのだ」
「しかし……」
「お前の言わんとしている事は分かる。いくら仕組みが完成していようと、それは現時点でのもの。だからそれを時と共に修正する者が必要だと……」

「……だがそれは必ずしも王である必要はないのだ。王は王として玉座に座り、民の心を集め、また象徴として諸外国との仲を取る格好をしておればよい」
 一呼吸を置き、王が再び語りを続けます。
「しかし逆に言えば、そのために王という存在が必要だ。威厳に溢れ毅然と振る舞い続ける偶像的存在が」
「……つまる所それは為政者の傀儡、という事でしょうか」
「聞こえは悪いが、そうだな。役割分担という奴だ」
 語りに一段落がついたのでしょうか、王が椅子に腰掛けました。
 視線はそのままに紅茶のカップに手を伸ばそうとしますが、今しがた割ってしまった事を思い出して、引っ込めます。

「まあここまで話せばだいたい察しはつくだろう。お前を呼んだのは他でもない、その『傀儡』を作って欲しいのだ」
 そう言って王が取り出したのは、書物の束でした。表の一枚には錬金術の式と模様とが刻まれています。
 王は初めこそまったくの無知でしたが、政に取り入れるにあたり、この錬金術の理解と研究に努め、いまや男と遜色のないほどの知識量を有するまでになっていました。

 男の手に渡される、大きさも質も、記されている言語すらもバラバラの紙。しかしそれらの内容は全て、ある一つの事柄に繋がっています。

「泥人形、ですか」
 男が流し読みする束、そこに記されている一つの言葉を取っては、ゴーレム。
 主の作った仕組み通りに動く、人造の人間です。
「人間と、私とそっくり同じに振舞えるものだ。できるか」
「二年。二年の時間と、相応の場を用意いただければ」
 男は静かに、しかしはっきりとそう答えました。
 そこには王に対する、己の錬金術師としての誇りがあったのかもしれません。
 返答に満足した王はそのまま無言で男を見送ります。
 男は書物を丁寧な扱いで懐にやりながらも、激しく心燃やして部屋を後にしました。
 窓の外で、にゃあと猫が鳴いています。
375泥人形 3/10:2011/08/28(日) 00:35:28.11 ID:zV+w7D2Y
「何カ嬉シイ事デモアッタノ?」
 無数の蝋燭が放つ橙の光、それに照らされる土壁の室内に小さく、甲高い声が響きました。
 しかし冷たく保たれた地下には、筆を走らせる男の影しかありません。
 一体どういうことでしょう。
「嬉しい? そうだな、これは私の一世一代の大仕事だ。
そして私の夢でもある。感情の昂ぶりが漏れるのも仕方あるまい」
 筆が描く文字と図式は速さだけを求めて、元の複雑さをさらに増長させています。
 恐らくは彼自身にしか理解できません。
 細長い指先が次から次に紙をめくっていきます。
 空中に投げ出されひらりと落ちていく一枚一枚にはこれ以上場所がないといったほどにびっしりと先の文字や図式が描かれていました。

「フウン、ソレハ良カッタワネ」
 男に語りかける謎の声は、机の上に置かれた硝子容器だけを僅かに震わせています。
 しかし男はそれに一切の目も暮れず、ただ筆を走らせ続けます。
 時折止まっては、また急に動き出す。
 まるでなにかに憑かれたかのようにみえますが、だとしたらそれは彼自身の執念かもしれません。


 それから半年。その半年の間、男はずっと、同じように筆を走らせ続けていました。
 朝日と共に使いの少年が運んでくるパン一枚と、水一杯だけを受け取り、後はひたすらに筆を走らせる。
 囚人のような生活を続けた男の身体は、既に限界と言えるまでに衰弱していましたが、その動きも、瞳に宿る精気も、一切の衰えを見せる事はありません。

「これだ、そう、これでいい」
 男は久しく声をあげます。
 その反響が静まるよりも速く、鉄の扉を開き、飛び出しました。
 何度と取り替えられた蝋燭の火が、吹き込む風に揺られて、硝子容器を強く照らします。


 十ヶ月が経った。
 まだだ。これでは足りない。

 一年と一ヶ月が経った。
 違う、これでは合わない。

 一年と五ヶ月が経った。
 もう少し、もう少しだ。

――これだ、そう、これでいい。
 男一人を除く全ての国民が立ち入る事を禁じられた、丘の上の盆地。
 月の光に照らし出される大地に直接描かれた真っ赤な陣。
 その中心で、男が二度目となるその言葉を口にしたのは、王の命を受けてから一年と十一ヶ月と、二十四日が経過した時の事でした。
376泥人形 4/10:2011/08/28(日) 00:37:31.87 ID:zV+w7D2Y


 約束の日。城のはなれに位置する小さな部屋。
 伸びに伸びた髪と髭とを切りそろえて、身だしなみを整えた男の姿はまるで別人のようでした。
 痩せ細ってこそいるものの、達成感に満ちた表情と佇まいはそれを補ってあまりあるほど、むしろ前に立つ王のほうが疲れきっているようにすら見えました。
 けれどその王も、男の後ろに置かれた『もの』の布が取り去られるのを見ると、再び気力を取り戻します。

 泥人形。
 その名前とは裏腹に、外見は正しく人間そのものです。
 肌に直に触れたとしても、知らないものならば僅かな感触の違いにすら気付かないでしょう。
 王はただ感嘆の声をあげ、その手に、髪に、唇に触れます。

「初めはただ、せがれに継がせようとも考えた」
 鏡に二重で写し取ったかのように、自らと同じ位置に、同じ形で存在する人形のパーツ。
 その細かな部分一つ一つを眺めながら、王が口を開きます。
「だがあれは、ただ上に座り続けるには若すぎる」 
 あの日飲み損ねた紅茶を一度含んで、続けます。
「だからという訳ではないが、試してみる事にしたのだ。この国の仕組みが果たして本当に完成しているのか。王というその統括すらを仕組みに取り込み、客観的に見据える事で」

 男は無言でそれを聞きながら、最後の仕上げをはじめます。
 もう一人の王の額に、命吹き込むための言葉を刻む。
 いいえ、正確にはまだその言葉と成ってはいないでしょう。
 はじめの一文字が抜けているのです。
「ふふふ、本当はただ私が退屈していただけなのかもしれんな。この喜びには開放感が含まれている」
 最後の文字を刻むための短剣を、王は男から受け取ります。手順は既に王も知る所。
 そして自らの腕に立て、刃の溝に血液を充分に含ませてからゆっくりと、引き抜きました。

「これで完成か」
 かくして最後の赤い一文字が、額の言葉に加えられます。
 泥人形の目蓋がゆっくりと開くと、その中にこれを覗き込む同じ姿が映し出されました。
「ええ、これで完成です。ようやく」
 男が答えると同時に、今ここに生まれたもう一人の王が、二本の腕を伸ばしました。
「だから、あなたはこれからを見届けていてください……」

「ゆっくりと、遠くから……」

 陶器のカップがまた、割れました。
 その音に驚いて、窓の外でにゃあと猫も鳴きました。


 五年。それから五年の月日が流れました。
 王国は変わらず平和です。
 王もまた、変わらず健在です。
 変わったのはせいぜい王の横に立つ数人程度でしょう。
 けれどその中の一人が同時に王の上に立っている事を、人々は知る由もないでしょう。
 それによってゆっくりと、何かが変わってきている事も。
377泥人形 5/10:2011/08/28(日) 00:39:43.03 ID:zV+w7D2Y

「ははははは!」
――大臣と錬金術師の長、そして『もう一つ』の地位を手に入れた。その結果が今実ろうとしている――
 男は一人、部屋で高笑いをあげます。
「はは……」
 乾く笑い。
 こうやってわざとらしく感情を出してみても、返ってくるのはただの反響音だけ。
 だからといって、他人の前で同じ真似は出来ないのでしょう。
 五年間、男は一人黙々と、得た全ての役割を完璧にこなして来ました。
 明るい言葉を交わす相手もいます。
 しかしそれはあくまで目的のために必要な振る舞いでした。

「そうだ……あれが完成したらもう一度作ろう……もっと高等な、いや完全なものを……」
 目の前にあった透き通る空瓶を見て、男は不意に過去の話し相手の事を思い出しました。



 次の日の朝、一つ予想外の出来事が起こります。
 それは疫病でした。
 場所はあくまで隣国、それも家畜間でのものでした。
 それでも放置しておけば後々厄介な事になる恐れがあります。
 安心などできない。即刻手を打つべきだ。
 大臣の何人かはそう叫びましたが、王はその意見を強くは受け止めず、一年前からの予定通りに地下施設の建造を優先させました。
 その意思は当然、男の下にあるものです。
 ただ彼とて決して事態を軽んじているわけではありません。
――あれさえ完成すれば、幾らでも取り返しは利く。
 そんな危うい考えが、男の中に渦巻いていました。


 ところが、或いは必然的と言うべきでしょうか、目的のものは中々完成しません。
 ただ時間を費やすだけならばまだ良いでしょうが、その時間を使い疫病はゆっくりと、しかし確実に広がっていきます。

「王よ、今すぐあれを中止して下さい。検査、隔離と穴の開いた労働力、資源の補てん。
今のままでは国が回りませぬ。事態が悪化すればそれはなおのこと」
 必死の形相で訴えるのは、政の一人として勤める王の息子です。
「このまま考えを変えぬおつもりならば、力ずくでもその玉座、取りに参りますゆえ御覚悟を」
 激情を翻すマントに隠し、王子は静かに広間を去っていきます。
 丁度反対に向かう、一人の大臣の側を横切って。

――拙い。
 強引に事を進めすぎたせいで、王宮内は分裂を起こしかけていました。
 あと少しで完成するというのに、その真の価値を伏せていたことが裏目にでました。
 ただ真っ直ぐを見つめ続ける王の前で男は頭を掻き毟ります。
378泥人形 6/10:2011/08/28(日) 00:42:00.36 ID:zV+w7D2Y
「……ん?」
 ふと顔をあげた男は、見慣れないものに気付きました。
 特に目立つようなものでもなく、本当に偶然、目に入ってきたもの。
 王の懐からその端が僅かに覗いているそれに近づいて、手を伸ばします。

 封書、手紙でした。至って普通の、どこにでも有り触れた。
 しかしこの場所に限るなら、それが有ることは妙ではないでしょうか。
 違和感の先を考えながら、男は封を剥がし、中身を引っ張り出します。

――誰だ、誰がこの手紙を渡した。いつ『これ』に。

 程なくして、男の表情が険しくなりました。

――『これ』と取り巻く人の動きは全て把握し管理しているはずだ。管理し、管理されていなければならないのだ。全て、全て!――


 それからまた一度太陽が沈んでは昇り新しい日にちを迎えます。
 王はようやく重い腰を上げ、予算と労働力の大規模な再編成に乗り出しました。
 その内容は王国全体を大きく動かすもので、身分問わず全ての国民が駆りだされ、さらに財に応じた分相応の税が徴収されました。
 それは王宮に暮らす大臣ら国の従事者までおよぶ前代未聞の令、下手をすれば暴動を起こしかねない程のものでした。
 しかし全てを懸けて事に望む――自ら財を投げ売り、王国各地に赴いてはこれの必要性を説き、そして直接指示を下す――王の姿勢は、落ちた信頼を取り戻し、不安に包まれる国民の心を強く支えました。
 ここに来て急激に勢いづいた疫病は、ついには隣国を喰らい尽くすまでに成長しましたが、この英断あって王国は、壊滅の危機をすんでの所で食い止める事に成功しました。


 また月日は流れて、五年の時が経ちました。
 最終的に疫病の被害は大陸の半分までに及びましたが、王国を中心に被害を逃れた国々が協力し、徹底的な感染の対処が行われ、後に治療薬が開発される事で事態はようやく終息を迎えました。

 しかし重要なのはこれからです。人々はこれから失われていった様々なものを取り戻していかねばなりません。
 ここでも復興支援を率先的に努めた王国は、多くの人々の信頼を勝ち取り、その勢いはかつての繁栄期を凌ぐほどになっていました。

「糞がっ……」
 壁に叩きつけられるのは、翠玉の埋め込まれた小さな盾でした。
 復興に対し多大な貢献をした男を称え、贈られたものです。
――私が欲しいのはこんな只の石ころではない――
 男の手が震えているのは、そういった激情だけによるものではありません。
 彼の命は陰りをみせていたのです。
 その自覚があるからこそ余計に、今の状況が腹立たしいのでしょう。

 男の押し進めていた施設の工事はあの日以来止まるどころが後退してました。
 売れるものは全て解体され売却され。
 結果で言えばこれによって資金まわりは大きく助けられました。
 さらには決定が後少しでも遅ければ、売却先すら疫病に潰されかねない状況であったのだから尚の事、
王と男は評価されたと言えましょう。
379泥人形 7/10:2011/08/28(日) 00:44:20.70 ID:zV+w7D2Y

しかし真実は違います。
 確かにこの決定を下したのは王であり男、しかしそこにはもう一つ、別の意思が関わっています。
 手紙。
 あの時の手紙が、今のこの国を動かしていたのです。
 それから今日に至るまでずっと、日は定まらないものの毎月一通ずつ、必ずあの手紙が王の懐に送られてくる。
 不思議な事に誰一人としてその手紙が届けられる瞬間を見ていません。
 それどころか手紙の存在すら知らないでしょう。
 それは見方を返れば、男にとって不幸中の幸いと呼べるかもしれません。
 何故ならその手紙には知られてはならない事が記されているのですから。

――誰だ、誰がこれを書いている。
 男は五年の間、正体不明の送り主に悩まされ続けていました。
 衰弱の一因もこれに少なからずがあるでしょう。

 手紙の内容はその時期、その状況における政の方向性をおおまかに示したものです。
 精密さこそありませんが、大胆。型破り、あるいは常識外れといってもいいでしょう。
 しかしそれらの指示を蔑ろにする事はできません。
 事実、他のものの働きもあったとはいえ手紙から生まれた政策は見事に成功しているのです。

 しかしそれはあくまで結果論、男にとっての問題はそこではありません。
 直接その言葉こそ出しませんがこの送り主は明らかに、王の秘密に気付いています。
 そうではなくては誰にも気付かれず、王に直接手紙を渡す事もできないでしょう。
 一体誰がどのようにして秘密を知りこのような行為に及んでいるのでしょうか。

 男が真っ先に疑ったのは王子でした。
 あの日の直前の出来事を考えれば当然でしょうか。しかし噛み合わない点も多いなと男は頭を捻ります。
 仮に王子が秘密に気付いているならば、こんな回りくどい真似をする必要はないはず。
 たった一度、王の首を縦に振らせればその位置に直接取って変わる資格を、王子は持っているはずです。
――わざとやっているのか? あえて為政者に徹し、傀儡たる王には民意を掌握するために踊り続けてもらうと。
 男はかつての王の言葉を思い出しました。
 今の自分も確かにその上に乗ってはいますが、それは取って代わるだけの資格を持たないため、結果的にそうなっているに過ぎません。

 王子の政に携わる意見はいかにも伝統的、保守的なもので、手紙の人物とは正反対。
 とても同一人物には思えない、という点も男を悩ませます。
 しかし経験と実績のある王を対立の形で使うことで革新的な意見を通しやすくしているのだとすれば、
演技とも取ることができますし、それが件の行為に及ぶ理由とも考えられます。

 しかしこの5年間、男が確証を得られる事はありませんでした。
 客観的に見れば王子が手紙の人物である可能性は限りなく低いでしょう。
 他のものからすれば彼は裏表を使い分けられるような人物ではなく、その性格の愚直さは本人も認めるところです。

 しかしこの国を操ろうとする姿無き存在に対し、無意識に己の影を重ねて思考の泥沼にはまる男の目には、
そんな姿など偽りのものにしか映りません。
 晴れる事のない疑念だけが日に日に増し、いつしか男は目に映るもの全てが疑わしき存在であるように感じていました。
 それは正に男の他者に対する振る舞いと同じです。全てが偽り、その裏にはもう一つの顔が潜んでいるのだと。

 にゃあ。
 唐突な鳴き声に殺気でも覚えたかといった表情で、男はその方角を睨みます。
 今の彼には窓の外の野良猫でさえ疑うべき対象と化しているのでしょう。
380泥人形 8/10:2011/08/28(日) 00:46:24.33 ID:zV+w7D2Y

――誰だ、誰が手紙を書いている。
あの女中か、あの時に話を盗み聞きして。
他の大臣か、やはり王子か?
まさか奴が生きているのか。それとも「あれ」が自我によって?
あるいはガラス容器の中の……
そんなことは有り得ない。有り得ない考えすら恐怖と共に湧き出ては、頭の中を駆け巡る。
あいつか、それともあいつか。誰だ。誰だ誰だ誰だ――


「――お前かぁっ!!」

 暗闇と静寂とに包まれた王宮の一室で、男は叫び声をあげました。
 それと同時に掴みかかるのはローブを纏う人影。
 十六日間、男は老体に鞭を打ち、一睡もせずに張り続けていました。
 今まで何度も行い徒労に終わっていた行為ですが、その執念が通じたのか、肉体的にも精神的にも限界寸前の男の前に、ついに手紙を置くものが姿を現しました。
 血走る男の眼が、落ちた明かりによって照らし出される人物の正体を見極めんと光ります。

「お前は……まさかあの小僧か……!?」
 
 フードの下にある顔が、男の記憶を覚醒させました。
 月日の経過によって精悍なものに変化こそしていますが、その顔つきには面影が強く残っていました。
 間違いありません。十二年前、男に仕えていた少年です。

「お前ごときが私を踊らせていたというのか、お前ごときが!!」
 男は感情のままに怒鳴りつけ、また蹴りつけます。
 衰弱しきった身体のどこに、そんな力が残されていたのでしょう。
 それは今の時まで内側に溜め込み続けた感情の爆発だったのかもしれません。

 青年――かつての少年――は抵抗することはなくその場に塞ぎこみます。
 「……私は……ただ頼まれて……これを届けていただけです……」
 暫く我を忘れていた男でしたが、その言葉を切欠に徐々に、平静を取り戻します。
 確かに彼はあの期間、最も男の近くに居た人物に違いありません。
 だからといって、少なくとも当時は文字の読み書きすらできなかった一介の奴隷少年が、これまでの行いを一人でやってきたというのはあまりに飛躍した話でしょう。
 男は激情冷め切らないまま、青年が手に持つ封書を乱暴にむしり取りました。

「これは……まさか!」
 驚きに思わず、声が出ます。そして早くも、熱がぶり返しました。
 内容ではありません。この手紙、羊皮紙に。
 過去の記憶がまた引き起こされます。その手紙は初めて見るものだというのに。
 何の因果でしょう。たった一点だけのもの、思い出す事すら不合理ですが、それは男の感覚に直接訴えかけます。
 血痕を連想させる、ちゃばんだシミ――
「この手紙の差出人……お前の雇い主の居場所に案内しろ、今すぐにだ!!」
 アッサムの香りが暗闇の中を微かに舞ったような。
381泥人形 9/10:2011/08/28(日) 00:48:28.25 ID:zV+w7D2Y



 男が重い鉄の扉を開け放つと、冷たい風がその身を裂きます。
――王宮の外れにこのような場所があったとは――
 意図的に隠されていたと思われる目的の場所に、男は足を踏み入れます。
 明かりをもって先を行くのは青年。男の言葉に、ただ素直に従い進んでいきます。
 石段を一つずつと降りていく最中、男はこの地下空間に何故か懐かしさを覚えていました。
 それは温度であり輝度であり湿度であり、またそれらが全て計算され、管理されている事に起因していました。
 つまりこの場所は、男がかつて使っていたものと作られた目的が同じであるという事です。
 そこにたどり着いたとき、男の背筋に悪寒が走りました。
 同時に、今まで懐かしさを感じていた事に対し吐き気も催します。
 悪夢の正体は男の頭の中で紐解かれつつありました。
 あとは確証を得るだけですが、それは絶対に認められない。
 しかしもう、引き返すことはできません。
 青年が燭台に火を灯すと、男は気配だけであった地下空間の広大さを、改めて認識します。
 ひょっとすると王宮の半分はあるかもしれません。
 そんな地下室の壁一面に、ずらりと並んでいるのは本棚でした。
 しかしそこに納められているのは本ではありません。

「これは……いや、まさか!」

 それらは全てが、あの封書でした。無数の札によって、徹底的に区分が施されています。

 明かりが照らす先、全てを飲み込んでしまいそうな暗闇の中までも、封書を納めた本棚が続いていきます。
 そして、その先に、うごめくものがありました。
 何故こんなにたくさんの封書があるのか。その答えも『あれ』が握っているはずです。
 まるで男が暗闇に目を凝らしているのを知っているかのように、『あれ』は近づいてきます。
 そしてゆっくりと蝋燭の火に照らし出される姿は――

「やはり……泥人形、か」

 それは今度こそ言葉通りのものでした。
 表面だけが乾燥してひび割れた粘土質の塊は、なんとか人の形を成しているものの、それだけです。
 目も口もない、まだらな土の模様だけが作る表情は、ただ不気味としか言いようがありません。
 しかしそんな異形の存在も、己の役目をひたすらに果たしているのでしょう。
 不ぞろいな五本指が握り締めているのはやはり封書。
 人形が書いたものではないでしょう。
 ただこの人形は、定められた通りに、定められたものを管理し、定められた条件によって、定められた封書を抜き出す。
 そのためだけに造られた存在でした。

――これはまるで

「そうか……全ては、奴の手の上だったという事か……はじめから…自らに向けられる刃すら……組み込んで!!」

――私自身じゃないか。

「ハハハ……ハハハハハハハハハ……ハハッハハハ!!!」

 それは心の奥底から来る純粋な笑いでした。
 狂気ではなく、むしろそこから解放されたような。
 その晩、国民の誰もが知らない地下の一室には笑い声が響き続けました。
 そしてあくる日、王宮から二人の人物が、忽然と姿を消したそうです。
 たった一つ、土にまみれた封書を残して。
382泥人形 10/10:2011/08/28(日) 01:04:59.14 ID:zV+w7D2Y



「ふむ、これでは今ひとつ釈然としないな。それで、男は、王は実際の所どうなったんだい」

――サアネ。私ガ直接見聞キシタワケジャナイカラ

「そうかい」

静かに震える硝子瓶をわき目に、手元にあった聖書をめくる。

人は神が命を吹き込んだ泥人形、か。




<了>
383創る名無しに見る名無し:2011/08/28(日) 01:07:07.07 ID:zV+w7D2Y
投下終了。
ご迷惑おかけしました。
384創る名無しに見る名無し:2011/08/29(月) 03:20:15.24 ID:c8SPjVeQ
>>371
GJ

読ませられる物語でした。
ちょっと涙目になってるw

>>383
ううむ、なんだか難解なお話なような気もするし、
そうでもないような気もするw

これは何回も読んでみないとな ナンチテ
385創る名無しに見る名無し:2011/10/03(月) 05:01:55.73 ID:SX/kS5lR
すみません、ここって直球RPGモノってありなんですか?
386創る名無しに見る名無し:2011/10/03(月) 05:02:21.34 ID:SX/kS5lR
しまったアゲ忘れ。
387創る名無しに見る名無し:2011/10/03(月) 10:47:43.03 ID:QixzJw+F
なぜ無しだと思うのだろう
388創る名無しに見る名無し:2011/10/03(月) 11:14:56.17 ID:SX/kS5lR
なんとなく確認しておきたかったw
了解です。
389創る名無しに見る名無し:2011/11/13(日) 23:42:56.24 ID:5QlLJhXC
ファンタジー世界を描くに当たって欠かせないものってなんだろうか
390創る名無しに見る名無し:2011/11/13(日) 23:46:45.16 ID:ylhO926v
あなたがファンタジーと思うもの。割とマジで。
391創る名無しに見る名無し:2011/11/15(火) 12:03:38.28 ID:HePdaWa1
ファンタジーに限らないけど、リアリティ>欠かせないもの
392創る名無しに見る名無し:2011/11/15(火) 16:26:24.27 ID:0xEV46gR
そしてリアリティってのは
それっぽさ>実際にあるもの
393創る名無しに見る名無し:2011/11/15(火) 22:29:26.43 ID:owJv4TSL
ノンノン

事実はF世界よりキチなり

って昔の偉い人が言ってただろ?
394創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 00:05:29.90 ID:GSIo4AdS
そもそもファンタジー自体が間口の広い分野なのに、このスレさらに「っぽい」ってつけちゃってるからなw
わりと何でもいいんじゃね?
何か言われたら「これは○○ファンタジーです!」って押し通れば
395創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 00:08:48.56 ID:SRLzbToG
うん、正解ちゃ正解だしなw
ラストサムライも俺的にはファンタジーだぜw
396創る名無しに見る名無し:2011/11/16(水) 00:14:30.59 ID:ASoduryL
何が一番のファンタジーって
最後の意味不明な土下座
397創る名無しに見る名無し:2012/01/19(木) 19:01:00.23 ID:dvdSo6xv
398創る名無しに見る名無し:2012/01/23(月) 01:07:23.13 ID:QMvMp+5k
399創る名無しに見る名無し:2012/01/23(月) 01:11:41.82 ID:QMvMp+5k
ウエハオレ トウカ スルナラ イマノウチ

・きっとこれは中二風味
・ファンタジー要素少なめ。
・そもそも分量が少なめ。ごめんなさい。


それでは、「慈愛行路」第一話「二人の事情」をお楽しみ下されば。
4001/3:2012/01/23(月) 01:12:20.63 ID:QMvMp+5k
寒さの止まない一月ごろ。それは起こった。
「すいません。もう一度お願いします、先生」
「いや、それがね〜僕たちで保護して欲しいんだってさー」
「別にそれならヒロたちのとこで、協会でしたっけ?そこでやれば良いじゃないですか」
「あそこの専門は人間やめちゃったり〜超えちゃったり〜だからさー」
「近場で人間の保護は……ウチだけなんですね」
「頼まれちゃったら断れないでしょ〜?」
仕方がない。俺は「連合所属」と書かれた臙脂色の布にくるまれた、四尺もの棒を持った。
「いってらっしゃーい」
「はい、行ってきます、先生」

戦前の話なのだろうか。と言ってもそこまで昔ではない。
俺が戦中末期の生まれだし、多分三十年くらい昔の話だろう。
世界中にある団体の名前があった。その目的は「世界から戦争行為をなくすこと」であったらしい。
要するに「争いたくない」という連中が集まったわけだ。
しかし人数が増えすぎてしまい、当然のように内部紛争が勃発。
その団体は「快楽」「合理」「節制」のそれぞれの理念を持つ三つの団体に分裂してしまった。
順に、協会、騎士団、連合という通称で呼ばれる。
戦後の動乱で孤児になった俺たちには生きていけさえすればどうでもいい話だ。
次。どうしてこんな面倒な目に遭っているか。
何も世界が核の炎に包まれたわけではない。そんなものは空想の世界で十分だ。
冗談はさておき、この世界では人間の悪意は具現化する。それが今ん所の「敵」だ。
まあ、基本的にはバケモノになるんだが中には、人間に取りついて悪さするのもいる。そんな人間を保護するのが俺の役目だ。
そこまでは分かってる。だが、
「憂鬱だよなぁ」
先生はひきこもりだから仕方無いとはいえ、何でウチには二人しかいないのか。
そもそも基本的に「殺害」しかできない連中が大多数なのかが理解できない。
「人々の快楽のために人外を制圧」するのが目的なら殺さなくたっていいじゃないか。
そんなことをつらつらと考えているうちに目的地に着いてしまった。
東部地域統一学校の一つ、神里学園中・高等部の旧校舎。
13〜18歳までの男女が学ぶための学校だ。中・高等部の現校舎はこの隣だが、初等部は少し遠くにある。
「さて、と」
持ってきた袋を解く。中身は慣れ親しんだ武器。身長に合わせてまた少し大きくなったけれど、これ以上大きくても不便だろう。
「まあ、協会は刃物使いしか見たことないからなぁ」
鉄製の棒。実にシンプルで素晴らしい。シンプルいずベスト。敵が包丁を持っていても良いように節をつけてある。
4012/3:2012/01/23(月) 01:14:01.84 ID:QMvMp+5k

校舎の中に入ってビックリした。
「船幽霊?」
立ち込める霧と足元で蠢く無数の手。どこぞのRPGの仲間を増やす敵のようだ。
布団のなかで暑くなって、足を出してみたくなる時に妄想してしまうアレに似ている。
足を捕られればロクなことにならないのは目に見えている。
「飛び道具でもあればなぁ……」
言っても始まらないので、名乗りでも挙げてみる。
「八海連合所属、竹井亘、二つ名はしなる鉄、参る!」
テンション上げなきゃこんなホラーはやってられない。

さて。片づけつつ対象の居場所へ。
「あ?」
対象の詳細は聞かされていなかったが、船幽霊モドキが放射状に発生しているから間違いない。
「おんなのこ?」
見るからに相手は少女だ。それも多分年下の。
(先生。対象を確認しました。攻撃の意思はありません)
(りょーかーい)
目の前に現れる半透明の先生。転移してくるなら丸ごと来れば良いのに。
「君には何がないのかな〜?」
唸る少女。言葉を忘れられていたら困るんだけど。
「……貰っただけは、あげ、なくちゃ」
「人間ねーそれだけじゃムリ。等価交換はできっこないんだ〜」
「どうして……?」
「ん〜、エンジンの熱交換ってー、消失分があるじゃんー?そゆことー」
「じゃあ……にんげ、んなんて、や、める」
「そこに行くための道筋はあげないよ?それをくれた人も」
「……眠らせますか?」
キリが無い。俺の術も使うなら気を失わせるくらいは簡単だ。
「……こ、れなら……」
「うげっ」
全部仕留めた筈なのにわんさか手が生えてきた。
「まさか自分を……っ」
「――!――!」
声を盗られた。先生の仕業だ。なんだってんだ。
(先に帰ってコーヒーの準備をしといてー三人分だよ〜)
(……なんていうかね〜邪魔。うるさい)
4023/3:2012/01/23(月) 01:14:48.79 ID:QMvMp+5k

誰に認められると言うわけでもなく、誰に責められると言うわけでもなく。なんとなーく生きていた。
そんなことだから、何かを与えるということもしなかった。何せ、人から何も貰わなかったから。
流行りだか何だかは知らないが、等価交換ってヤツだ。お金第一でご都合主義の「シホンシュギのゲンソク」かもしれない。
とにかく、人に自分の何かを配ってまわると、その内マッチの火を見ながら死にそうで、怖かった。
ただ、突然なにかがしたくてウズウズして、そんな気持ちとこんな気持ちの間で、嘆くこともあった、たぶん。
だからといって、他人を嫌うのは論外だ。筋違いにも程がある。「かみのおぼしめしなのだー」とか「さよーなほしのもとにうまれたのだー」とか大仰なセリフを言ってあげたくなる。
なんてことはない。それが個性になってしまっただけの話だ。諦めた方が早い。
とまあ、半分くらいは受け売りだけど、これが今の自分だと言えるだろう。
そうそう、実は一人だけ、友だちがいる。聞いて驚くなかれ、神様なのだ。
ごく最近知り合ったのだが、そのキャラクターも、その考えも、今までのそこそこの人生経験からかけ離れている。
だから、その出会いから自慢することとしよう。

その時の自分は、少し疲れていた。なまじ信じられないものを貰ってしまったせいだろう。
人生で初めて何かを貰って、その何かがキャパシティを上回っていた。
そういう訳で、自分ごと迷子になっているところを、助けてもらった。
簡単な一言だった。

「人に迷惑はかけても良い」

それだけだった。それだけで、全て片付いてしまった。
今でも、貰ったものの余りがあるけれど、それ以上に。
わたし、馬場愛佳は満たされている。
403創る名無しに見る名無し:2012/01/23(月) 01:16:01.93 ID:QMvMp+5k
これでおしまいです。
第二話へ続きます。
404創る名無しに見る名無し:2012/01/23(月) 05:02:40.52 ID:cb2gXCZE
投下乙。
405創る名無しに見る名無し:2012/01/25(水) 23:54:33.40 ID:c+rqPppa
モツー
406創る名無しに見る名無し:2012/01/27(金) 20:18:18.70 ID:XQ86btFI
第二話鋭意製作ちゅー
407創る名無しに見る名無し:2012/01/30(月) 19:08:49.02 ID:GeumY4Sk
拾っとく
408創る名無しに見る名無し:2012/03/20(火) 21:15:13.10 ID:KsUeqJRx
あげあげ。続きはまだかw
409創る名無しに見る名無し:2012/03/20(火) 21:15:31.52 ID:KsUeqJRx
上がってねーしw
410るーべん ◆luBen/Wqmc :2012/03/20(火) 22:28:16.31 ID:Li3WL5OZ
慈愛行路作者です

致命的設定ミスによる没が発生したため修復中です

完治次第再開します

○樫さんみたいですいませんです。
411 ◆luBen/Wqmc :2012/03/25(日) 22:49:29.87 ID:xTEEeEgL
慈愛行路の第二話改め後編「愛のカタチ」

二レスお借りします。
注意点は一話と同じです。
4121/2:2012/03/25(日) 22:50:39.34 ID:xTEEeEgL
わたしの新しい友人、藤さんのことは全てが誇らしい。
出会いは、まあ置いておいて。
……いや、やっぱり誇らしい。ほんのちょっと衝撃的ではあったけれど。
けど、不満が少し。

さて。三月の終わりもみえてきそうで、春の大らかな声が聞こえてくるころ。
わたしには疑問に思うことがあった。
「竹井くんのその棒って、ブキ?」
「ああ、これか。まあ、そうじゃないか」
「けど、ブキって普通はハモノじゃない?刀とか」
わたしは尖ってない武器はナマクラだとおもう。
こん棒とかそこの鉄の棒とか。ムチは、うん、武器と言うよりは道具だろう。
「刃物だと人が死ぬ。だから俺は棒を使ってるんだ」
「アイちゃ〜ん、ちょっといい〜?」
藤さんに呼ばれてしまった。
「あ、ごめんなさ〜い、ちょっと待ってくださーい。……つまり、竹井くんってヘタレ?」
「いや……」
「アイちゃーん?わーくんで遊んじゃだめよー?」
あまり急な用でもなかったのか、藤さんがこっちまで来てしまった。
「えー、ふーさんったら誤解ですよー?」
わたしは遊んでいたつもりはない。
「ふざけるな……!」
「え?」
「ふざけるんじゃねぇ!!」
いきなり竹井くんが噴火した。
「何なんだよ!?訳分かんねえよ!!なんでコイツこんな馴染んでんだよ!?俺らの敵じゃなかったのかよ?どうなってんだクソっ!!」
「……それで?君は、どうしたいんだい?」
冷めきった藤さん。ここまで冷たい藤さんは今まで見たことがない。
「っ――!」
「僕は君にたくさんのことを教えてきたけど、未だに聞いてくれないことが一つあるよね。分かる?」
もしかして、怒ってる?
「ほら、やっぱり分かんないよね。……君はね、いつまでもどこまでも割り切れないんだ。ごまかして逃げようとする」
「ですが―っ」
「ほらまた。いつものように小言ばっかりのヒキコモリが煩いとしか思えない」
それ、若干問題をすり替えてませんか?マイフレンド。
「くっっ“縛”」
あ、武力行使にでちゃった。ダメじゃん竹井くん。
「“飛べ、我縛る鎖よ”」
ほら。藤さんの能力は「なにかをどこかへ飛ばす」ことだって理解しているだろうに。
「くそおおおおおおおおお」
「あーあ。行っちゃいましたね、竹井くん」
「そうだね」
「追いかけます?」
「いいんじゃないかな。それよりも術は覚えた?」
「……火の玉と水鉄砲くらいです」
「うん。あとできれば蔓を使えるようになった方がいいけど、十分だね」
「そうなんですかっ?」
すごい嬉しい。役に立てる。
「もちろん」
「やったぁ!」
4132/2:2012/03/25(日) 22:51:20.17 ID:xTEEeEgL

「くそっ、くそっ」
なんだってんだ。理解に苦しむ。一般人なら一般人らしくしていてくれ。邪魔だ。
「くそったれっ!」
「クキャアァァァァァ!!」
「なっ!?」
俺としたことが、神里市名物冥界の入り口に踏み込んでしまったらしい。
目の前にはカラスと猿のハイブリッド。デカい。
だが、まずい。武器がない。
「“縛”」
「グギャアッ」
動きは止めた。逃げられない。俺は死ぬのか?こんなところで?こんな形で?
「――ごめん、竹井くん。ヘタレじゃなくて馬鹿だったんだ」
「アイちゃーん、今更だよそのセリフ」
後ろから現れた二人。
「あ、そんな間抜け顔しなくても良いから。能力使っただけだよー」
乾いた笑い。ぐうの音もでない。
「よし、愛佳。燃やしなさい」
「はい。“天地神明に依りて我ここに誓う、燃ゆる風よ”」
「グギャアアアァァァァ」
火炎式。なんでそんなものを使えるんだお前が。
「だいじょうぶ。きみは独りじゃない。わたしが、わたしたちが、きっときみを愛している」
なんでそんなに敵を怖れないんだお前なんかが。
「……さて。帰りましょー」
「そうしましょー」
なんでそんなに先生に懐いているんだお前なんかが!


帰ってきてまず起こった事。竹井くんの左のほっぺがはれた。
なんてことはない。ビンタをお見舞いしてやったのだ。
「わたしは竹井くんの仲間じゃないんだ?」
答えて欲しかった。「そんなことない」って言ってくたら、好きになれたかもしれなかった。
……だから、もう一回ビンタした。
まだすこし右手が痛い。
次に起こった事。と、いうより起こした事。
「少し、外の風にあたって来ます」
と、いうわけで今わたしは盆地の底の駅を挟んだ、学校とは反対側の丘の上にいる。
「はぁ〜…」
わたしが藤さんから教えてもらった三つの術は、攻撃するためじゃない。
足止めをして、ほんの一瞬命の危機を相手に教えて、落ち着かせるためだ。
だから竹井くんも同じ道を歩むのだと思っていた。
相手を殺さず生かし続ける、いわば「慈愛の道」を。
それに答えてくれないなんてガッカリだ。
「……しかたないのかな」
戦うことは孤独なのかな。
RPGみたいにいかないのかな。

「……よし」
悩んでいても始まらない。争いを与えないことがわたしの道だ。とりあえず進んでみて、転んでしまってからあとのことは考えよう――。
414創る名無しに見る名無し:2012/03/25(日) 22:52:33.43 ID:xTEEeEgL
これにて慈愛行路、完結とさせていただきます。

投下を労って頂きありがとうございました。
415創る名無しに見る名無し:2012/03/27(火) 07:12:15.44 ID:GsHIJQvI
ファンタジー創作キャラを描いてみました
ゆくゆくは創作イラスト本を作りたいと思ってます…
http://dl7.getuploader.com/g/nonnonnon/2/%E5%A3%81%E7%B4%9903.jpg
416創る名無しに見る名無し:2012/03/27(火) 15:16:47.55 ID:1vcs0RWT
カッコよ過ぎワロタw
417創る名無しに見る名無し:2012/03/28(水) 01:34:18.69 ID:8R6EEznh
どうせ落書きレベルと思ったら気合入りすぎててワロタw
418創る名無しに見る名無し:2012/03/29(木) 04:49:30.31 ID:tDSl2T05
GOD
419創る名無しに見る名無し:2012/03/30(金) 18:41:03.26 ID:WzCU9cSW
420創る名無しに見る名無し:2012/04/02(月) 18:47:33.40 ID:geXuL/jf
凄すぎる。プロじゃんこれ金とれるよ。TOのパッケージになってても違和感まるでなし
421創る名無しに見る名無し:2012/04/14(土) 19:54:58.18 ID:w7bppPuz
細身すぎるのとキャラの色調が合ってないのをどうにかすれば第一線のプロレベルだな。
422創る名無しに見る名無し:2012/04/22(日) 12:09:18.09 ID:A2tchoD7
>>415
すごい雰囲気あるイラスト!
RPGのパケ絵みたいだ
423創る名無しに見る名無し:2012/05/04(金) 21:44:57.99 ID:3jz1sWr6
ぬこぽ
424創る名無しに見る名無し:2012/05/04(金) 21:51:43.73 ID:M0xBvzBs
ニャー
425創る名無しに見る名無し:2012/05/17(木) 22:03:56.82 ID:6xfQnlYX
夢と現実という美しい二項対立


ファンタジーはいいね
426 ◆ea7yQ8aPFFUd :2012/06/10(日) 22:07:21.04 ID:6e5mUgug
こちらの板に初めて投下させていただきます。

本日献血に行った帰り、『献血 → 吸血鬼 → ニンニクが苦手 → 何故?』という思考が働きまして、
そこから今回のような作品を思いついた次第です。
よろしかったら、お目汚しにお読みくださいませ。
4271/5 ◆ea7yQ8aPFFUd :2012/06/10(日) 22:09:52.61 ID:6e5mUgug
その物語は、勇者の敗北から始まった。

「・・・もう・・・駄目・・・だ・・・。」
全身を傷だらけにし、その場に倒れ込む男。
体からは多量の血が流れ出し、呼吸は乱れ、そして意識は朦朧とし始めていた・・・が、
男は火事場の馬鹿力とでも表現すべき未知の力を自身の腕に集め、その体を起こしにかかろうとしていた。
そんな光景を敵対する女ヴァンパイアはあざけ笑う。
「馬鹿じゃない?体力も魔力もゼロのあなたに何が出来るって言うの?」
「『出来る』・・・じゃない・・・『成し遂げる』・・・ん・・・だ・・・。」
最後の力を振り絞って立ち上がり、そして足元に落ちた聖剣を握りしめる男。

だが、男が『成し遂げられた』のはここまでであった。

「さようなら、勇者・・・今日からあなたは、私の下僕となるのよ。」
そう言って、立ったまま硬直する男の前にゆっくりと現われる女ヴァンパイア。
そして、自身の口元に生える大きな牙を露わにすると、それを男の首元へと突き刺すのであった。

こうして、勇者の伝説は終焉を迎え、男は単なるヴァンパイアの奴隷となった。

「・・・わ・・・た・・・し・・・は・・・御主人様の奴隷です。何なりと御命令を!」
先程までの荒々しい口調から、まるで召使いのような丁寧な口調へと変わる男。
それと同時に、男の体から流れていた血は消え、
全身の傷はまるで地面を整地したかのように一瞬にして消えてしまった。
「ホーッホッホッホッホ!良い気味だわ・・・我らがヴァンパイア族の宿敵だった勇者が・・・
 今!私の奴隷と化してるなんて・・・笑わずにはいられ・・・。」
高笑いして感情を高ぶらせる女ヴァンパイア・・・であったが、
その笑い声は彼女自身の腹から聞こえて来た大き目の腹鳴にかき消され、それと同時に彼女は冷静さを取り戻すのであった。
「・・・あら・・・そういえば、お腹空いたわね・・・そうだ!」
何かを思いついたのか、突如大きな羽を広げ、その羽で男を包む女ヴァンパイア。
次の瞬間、彼女の体は一匹の小さな蝙蝠と化し、その体を上空へと舞い上げるのであった。

・・・それから20分後。

「・・・さあ、着いたわ!」
蝙蝠から再び本来の姿へと化す女ヴァンパイアと男。
彼女らが辿り着いた場所は、ある城のキッチンであった。
4282/5 ◆ea7yQ8aPFFUd :2012/06/10(日) 22:12:45.85 ID:6e5mUgug
「ご主人様・・・いかが致しましょう?」
女ヴァンパイアに問いかける男。
「簡単よ、今からそこの氷室にある食材を使って、私においしぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い料理を作りなさい!
 聞くところによると、勇者一族は武芸や魔術だけじゃなく、料理にも長けているって噂じゃない?
 せっかくだから、『勇者流』の料理を振舞って頂戴よ!!」
「かしこまりました。」
そう言って、氷室へと入っていく男。
一方の女ヴァンパイアは、男の料理の様子を見たいらしく、その場で腕組みをしながら男を待っていた。
「・・・お、来たわね?それじゃあ、一品目は?」
「ハッ・・・まずはニンニクとカツオのカルパッチョを・・・。」
「ちょっと待て!」
そう言って、近くにあった長ネギで男を殴る女ヴァンパイア。
「クジョッ?!どうされました?」
「『どう』も『めん』も『こて』もあるかっ!ヴァンパイア一族が総じてニンニク駄目なのは周知でしょ!?」
「あ・・・じゃあ、別のにします・・・。」
そう言って、再び氷室に入る男。
「・・・お、早いわね。今度は?」
「では改めまして・・・前菜はウナギの蒲焼きと短冊切りの山芋をバジルソースで和えた、
 イタリア風トロロ汁を・・・。」
「再び待て!」
そう言って、またしても長ネギで男の頭を殴る女ヴァンパイア。
「フカヤッ?!な・・・何を・・・?」
「あなた、ヴァンパイア族とライバル関係にある勇者一族なのに知らないの?!
 我々ヴァンパイア族は・・・ニンニク!ウナギ!!山芋!!!それに・・・蜂蜜にスッポンにマムシ!!!!
 そういった・・・いわゆる、人間界における『精の付く食材』は御法度なの!!!!!」
大声をあげる女ヴァンパイア。
一方の男は、まさかの答えに驚きの表情を見せていた。
「・・・え?!そうだったんですか?!」
「そうよ!我々ヴァンパイア族は元々、心臓が強靭に出来ているから人間以上の身体能力を得てたのは良いけど・・・
 その分、血の消費は早すぎて・・・だから、人間から血を度々拝借してたの。
 それなのに・・・こんな精力の付く食材を食べたら、どうなると思う?!
 強い心臓はさらに鼓動を増し、血の消費は早まり、遂には自め・・・つ・・・。」
突如として倒れ込む女ヴァンパイア。
「!・・・ご・・・御主人様!!」
急いで、女ヴァンパイアの体を抱き上げる男。
彼女の顔を見ると、その表情はまるで生気を失ったかのように青ざめていた。

女ヴァンパイアは男への怒りから心臓の鼓動を強めてしまい、必要以上の血を消費・・・
結果として、貧血と引き起こしてしまったのであった。
4293/5 ◆ea7yQ8aPFFUd :2012/06/10(日) 22:17:06.52 ID:6e5mUgug
「・・・ん・・・ふぅ・・・あれ・・・ここは?」
目を覚ます女ヴァンパイア。
周りを見回すと、そこは彼女の寝室であり、その側にはウトウトと船を漕いでいる男の姿があった。
「・・・!・・・何、コイツ・・・人の・・・うん?」
眠りこける男の姿を見ておもわず殴りかかろうとする女ヴァンパイアであった・・・が、
彼女は自分のベッドの側にあった皿を見て、その拳を宙空に留めるのであった。
「これは・・・?」
何気なく、皿のふちに残った液体を指ですくい、それを舐める女ヴァンパイア。
その味は、今までに味わったことの無い・・・そして、感動せん程の美味であった。
「・・・ん・・・あ・・・御主人様!」
目を覚ました女ヴァンパイアに気付き、大声をあげる男。
「ちょっと・・・うるさい・・・んで、このスープは何?」
「あ・・・これはですね、ほうれん草とレバーで作ったポタージュです!」
「ほうれん草と・・・レバー・・・?」
「ハイ!御主人様が貧血で倒れられたので、血となる活力源を・・・と思いまして・・・
 失礼ではありましたが、寝ている口元へ流させて頂きました。」
「流す・・・って・・・どうやって?」
「・・・。」
「正直に答えろ。」
「・・・口移し・・・です。」
すぐさま、何故か近くにあったネギを手に取り、男の前に仁王が如く立ち上がる女ヴァンパイア。
「あんたねぇ・・・主人のファーストキスを奪う奴隷がどこの・・・世界に・・・?」
震えながら怒りの声をあげる女ヴァンパイアであったが・・・目の前の男を見ているうちに怒りの気持ちが消え始め、
それどころか今まで感じたことの無いような気持ちが彼女を包み始めた。

そうだ・・・勇者一族にファーストキスを奪われた者は・・・その勇者に恋心を抱く・・・
まさか・・・私・・・こんな奴隷に・・・こ・・・こ・・・恋?!

女ヴァンパイアの頭の中を駆け巡る『恋』、そして『LOVE』という2つの言葉。
その瞬間、彼女の心臓の鼓動は最高潮に達し・・・再び貧血状態となった。
4304/5 ◆ea7yQ8aPFFUd :2012/06/10(日) 22:19:48.58 ID:6e5mUgug
「・・・あ・・・ら・・・?」
「!・・・御主人様!!」
倒れこむ女ヴァンパイアの体をすぐさまキャッチする男。
一方の女ヴァンパイアは、男のスープの効果か、軽い貧血で済んでいた。
「大丈夫ですか?!」
女ヴァンパイアに顔を近付ける男。

その表情は、女ヴァンパイアにとっては勇ましく・・・たくましく・・・そして、魅力的に映っていた。

「え・・・あ・・・ちょっと!」
男を突き放そうと腕を伸ばす女ヴァンパイア・・・であったが、貧血のために力が出ず、
さらに腕を伸ばしたことで男に『握って欲しい』と捕えられ、
男の空いている方の手の暖かさが彼女の冷たくなった手を介して体へと届けられた。
「ちょっと・・・ちょっと・・・。」
困惑する女ヴァンパイア。
一方の男は彼女にこう迫った。
「御主人様、お願いがあります!私は、かつては勇者一族の中で最も『医食同源に長けた戦士』と称された男!!
 その御主人様の貧血気味の体質・・・私に・・・一生かけてでも治させて下さい!!!」
「何言ってるのよ・・・これは体質じゃなくて、ヴァンパイアの宿命・・・治せる訳無いじゃない。」
「いえ・・・やらせて下さい!きっと・・・いや、必ず治します!!御無礼なお願いではありますが・・・よろしくお願いします!!!」
「・・・じゃあ、ある条件をのんだら、その願いをOKしてあげる。」
「ハッ!何でも言い付け下さいませ!!」
「私と結婚して。」
「了解いたしま・・・ウェッ?!」
「『一生かける』んでしょ?だから・・・一生側にいて・・・。」
男の腕の中で、顔を赤らめながら告白する女ヴァンパイア。
一方の男は、多少の戸惑いがあったものの、再び彼女の手を強く握って返答した。
「喜んで・・・私は御主人様の愛の奴隷となります!!」
「・・・受け入れてくれるのは良いけど、ちょっと離れて。」
「・・・はい?」
「あなたが私の腕を握ると・・・またドキドキしちゃうじゃない・・・。」
4315/5 ◆ea7yQ8aPFFUd :2012/06/10(日) 22:23:16.15 ID:6e5mUgug
「・・・それからどうなったの?」
布団の中で、子供が母親に聞く。
一方、今までの話しを子供に伝えていた母親は、子供の頭をさすりながらこう答えた。
「その後ね、勇者の男の努力で女ヴァンパイアの貧血体質は治り・・・ふたりは人間と変わらない、
 ごく普通の愛を交わせるようになったの。」
「それでそれで!?」
「それと同時に女ヴァンパイアは気付いたの・・・勇者だのヴァンパイアだの争うなんて馬鹿げてる・・・ってね。
 だから、ふたりは駆け落・・・遠くの土地へ旅に出て、結婚して、子供を授かって・・・。」
「それでそれでそれで!?」
「・・・後は、あなたが知っているはずよ。さあ、お休みなさい。」
「・・・?うん・・・おやすみなさい!」

「・・・寝たのか?」
母親の背後から聞こえてくる、子の父親の声。
「ええ、ちょっと時間掛かっちゃったけどね。ところで・・・仕込みは済んだ?」
「ああ・・・特に、レバーの下処理はバッチリさ!何せ、『ほうれん草とレバーのポタージュ』はうちの主力商品だからね!!」
「あなたって、本当に仕事の手際が良いわね。」
「そりゃそうさ・・・君は僕の御主人様であり、僕は君の愛の奴隷・・・主人の命に従うのが奴隷の鉄則さ!」
「・・・『愛の奴隷』か・・・『奴隷』と名乗るワリには、昔と比べて馴れ馴れしい口調になったけど・・・
 まあ、いいわ。とりあえず、私達も寝ましょう?明日も早いし・・・。」
「ああ・・・。」
そう言って、ふたりは奥の寝室へと消えていった。

名も知らぬ土地の、名も知らぬ森の中に建つ一軒のレストラン。
そこには『ほうれん草とレバーのポタージュ』だけでなく、『医食同源』を基とした料理が並んでいる。

だが、そのレストランの経営者の正体がかつて勇者一族のひとり、
そしてヴァンパイア族のひとりであったことは誰も知らない・・・。

おわり

----------------------------------------------------------------------------

以上です。
失礼しました。
432創る名無しに見る名無し:2012/07/04(水) 06:10:52.53 ID:mOtr8Vz0
ぬこぽ
433創る名無しに見る名無し:2012/07/04(水) 09:14:24.46 ID:vQZqIX7F
ニャー
434創る名無しに見る名無し:2012/08/03(金) 21:01:42.63 ID:MUHKGnAF
>>427
シリアスなファンタジーかと思いきや、ラブコメだった・・・だと・・・?

乙です、今さらながら読ませていただきました
ツンデレ(と言っていいのか?w)吸血鬼っ娘と生真面目な元・勇者のやり取りがほのぼのできましたw
末永く爆発しやがれwww

ファンタジーって、事前の設定把握が大変そうで食わず嫌いだったけれど
こういうライトな作品は気軽に楽しめていいですね! 面白かったです
435 ◆ea7yQ8aPFFUd :2012/08/04(土) 21:19:03.84 ID:LAy/7BO7
>>434
感想ありがとうございます。

感想スレの方でも触れましたが、こっそり投下したがために日の目を見ない状態が続いてましたので、
今回のような感想をいただけて、とても嬉しい次第です。
436創る名無しに見る名無し:2012/09/12(水) 22:58:11.00 ID:YZepP6JW
ファンタジー系のホームページ作ってみました。
おもしろ画像いっぱいあるのでぜひ見て下さい。
http://hirohataworld.com/
437創る名無しに見る名無し:2012/11/19(月) 06:05:50.15 ID:Xi6UIJO/
.
438創る名無しに見る名無し:2012/12/14(金) 23:00:48.60 ID:Vjsl/LZe
うわつまんね
439創る名無しに見る名無し:2012/12/19(水) 15:16:33.24 ID:n/Iilkn4
440創る名無しに見る名無し:2012/12/22(土) 00:16:43.95 ID:mZN6d9Zt
a
441創る名無しに見る名無し:2012/12/22(土) 00:18:15.65 ID:mZN6d9Zt
i
442創る名無しに見る名無し:2012/12/22(土) 00:19:26.55 ID:mZN6d9Zt
u
443創る名無しに見る名無し:2012/12/22(土) 00:20:24.25 ID:mZN6d9Zt
e
444創る名無しに見る名無し:2012/12/22(土) 00:21:14.71 ID:mZN6d9Zt
e
445創る名無しに見る名無し:2012/12/22(土) 00:22:05.92 ID:mZN6d9Zt
o
446創る名無しに見る名無し:2012/12/22(土) 00:35:15.09 ID:mZN6d9Zt

































447創る名無しに見る名無し:2012/12/22(土) 01:11:19.33 ID:mZN6d9Zt
指輪物語(J・R・R・トールキン)→(映画:ロード・オブ・ザ・リング)
ホビットの冒険(J・R・R・トールキン)
ナルニア国ものがたりシリーズ(C・S・ルイス)→(映画:ナルニア国物語)
ゲド戦記(アーシュラ・K・ル=グウィン)→(アニメ映画:ゲド戦記)
メアリー・ポピンズシリーズ(パメラ・トラバース)→(ミュージカル映画:メリー・ポピンズ)
オズの魔法使いシリーズ(ライマン・フランク・ボーム他)→(ミュージカル映画:オズの魔法使い)
ドリトル先生シリーズ(ヒュー・ロフティング)
クマのプーさんシリーズ(A・A・ミルン)→(アニメ映画:くまのプーさん 完全保存版)
ムーミンシリーズ(トーベ・ヤンソン)→(TVアニメ:楽しいムーミン一家)
モモ(ミヒャエル・エンデ)
はてしない物語(ミヒャエル・エンデ)→(映画:ネバーエンディング・ストーリー)
死の王(平たい地球シリーズ) (タニス・リー)
アヴァロンの霧(マリオン・ジマー・ブラッドリー)
パーンの竜騎士シリーズ(アン・マキャフリイ)
エターナル・チャンピオンシリーズ(マイケル・ムアコック)
エルリック、紅衣の公子コルム、ホークムーン、エレコーゼ
英雄コナンシリーズ(ロバート・E・ハワード)→(映画:コナン・ザ・グレートシリーズ)
魔法の国ザンスシリーズ(ピアズ・アンソニイ)
イルスの竪琴3部作(パトリシア・A・マキリップ)
魔法使いハウルと火の悪魔(ハウルの動く城シリーズ)(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ))→(アニメ映画:ハウルの動く城)
デイルマーク王国史シリーズ(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ)
ベルガリアード物語/マロリオン物語シリーズ(デイヴィッド・エディングス)
エレニア記/タムール記シリーズ(デイヴィッド・エディングス)
ヴァルデマール年代記シリーズ(マーセデス・ラッキー)
影の棲む城(五神教シリーズ)(L・M・ビジョルド)
氷と炎の歌シリーズ(G・R・R・マーティン)
ファーシーアの一族シリーズ(ロビン・ホブ)
ネシャン・サーガ(ラルフ・イーザウ)
暁の円卓シリーズ(ラルフ・イーザウ)
ドラゴンランスシリーズ(マーガレット・ワイス、トレイシー・ヒックマン他)
スペルシンガー・サーガ(アラン・ディーン・フォスター)
真実の剣シリーズ(テリー・グッドカインド)
時の車輪シリーズ(ロバート・ジョーダン)
ファファード&グレイ・マウザーシリーズ(フリッツ・ライバー)
ダレン・シャンシリーズ(ダレン・シャン)
バーティミアス3部作(ジョナサン・ストラウド)
ハリー・ポッターシリーズ(J・K・ローリング)→(映画:ハリー・ポッター)
ドラゴンライダー(クリストファー・パオリーニ)→(映画:エラゴン)
ライラの冒険3部作(フィリップ・プルマン)→(映画:ライラの冒険)
キングキラー・クロニクル(パトリック・ロスファス)
448創る名無しに見る名無し:2012/12/22(土) 01:24:26.17 ID:mZN6d9Zt
日本の作品 [編集]

小説作品

一千一秒物語(稲垣足穂)
グイン・サーガ(栗本薫)
クレヨン王国シリーズ(福永令三)
アルスラーン戦記(田中芳樹)
十二国記シリーズ(小野不由美)
スレイヤーズシリーズ(神坂一)
だれも知らない小さな国(コロボックル物語シリーズ)(佐藤さとる)
フォーチュン・クエスト(深沢美潮)
ブレイブ・ストーリー(宮部みゆき)
勾玉シリーズ(荻原規子)
魔術士オーフェンシリーズ(秋田禎信)
守り人シリーズ(上橋菜穂子)
ロードス島戦記シリーズ(水野良)

他多数

ゲーム作品

ゼルダの伝説シリーズ
ドラゴンクエストシリーズ
ファイナルファンタジーシリーズ
ファイアーエムブレムシリーズ
天外魔境シリーズ
女神転生シリーズ
幻想水滸伝シリーズ
テイルズ オブ シリーズ
伝説のオウガバトル
タクティクスオウガ
ベイグラントストーリー

他多数

漫画作品

詳細は「ファンタジー漫画」を参照

アニメ作品

聖戦士ダンバイン
天空のエスカフローネ
各種魔法少女アニメ
覇王大系リューナイト

他多数
449創る名無しに見る名無し:2012/12/22(土) 06:20:56.51 ID:mZN6d9Zt
面白い!!
450創る名無しに見る名無し:2012/12/22(土) 06:28:24.64 ID:mZN6d9Zt
このスレ誰か消して
451創る名無しに見る名無し:2012/12/23(日) 03:53:05.99 ID:x3AFUIZM
むむむ
452創る名無しに見る名無し:2012/12/23(日) 03:54:02.15 ID:x3AFUIZM
ムームードメイン
453創る名無しに見る名無し:2012/12/23(日) 03:55:22.46 ID:x3AFUIZM
ファンタジスタ
454創る名無しに見る名無し:2012/12/23(日) 03:56:37.35 ID:x3AFUIZM
survival dance
455創る名無しに見る名無し:2012/12/23(日) 03:57:35.04 ID:x3AFUIZM
endless fight
456創る名無しに見る名無し:2012/12/23(日) 03:58:43.76 ID:x3AFUIZM
ガッツ
457創る名無しに見る名無し:2012/12/23(日) 03:59:35.78 ID:x3AFUIZM
このスレは呪われています
458創る名無しに見る名無し:2012/12/23(日) 18:33:53.73 ID:x3AFUIZM
ライトニング
459創る名無しに見る名無し:2012/12/23(日) 18:42:11.79 ID:x3AFUIZM
emerald sword
460創る名無しに見る名無し:2012/12/23(日) 19:03:01.88 ID:x3AFUIZM
真正面から射す西日、
狭く不安定な足場、
大きな体格に重装備、
すべてがあなたの枷となる。
461創る名無しに見る名無し:2012/12/23(日) 19:07:23.00 ID:x3AFUIZM
瞬き一つで
確実に頭を割られる!!
ひと太刀合わせるごとに骨が軋む!!
受け流せる様な剣圧じゃねェ!!
同じだ あの時と!!

だが 戦える

あいつに辿り着くまでの数え切れない夜が
オレを叩き上げた

邪魔だ!!
462創る名無しに見る名無し:2012/12/23(日) 19:17:57.27 ID:x3AFUIZM
運命が人智を超越し人の子を弄ぶが理なら
人の子が魔をもって運命に対峙するは因果
463創る名無しに見る名無し:2012/12/23(日) 19:56:04.19 ID:x3AFUIZM
オレはオレの国を手に入れる。お前はオレのために戦え。
お前の死に場所は、オレが決めてやる
464創る名無しに見る名無し:2012/12/24(月) 00:13:11.11 ID:JkVpQVbS
確かに貴様の言うとおり人間は弱いよ。すぐ死ぬ。

その弱い人間が切り刻まれ、突き刺されても生き続けるってのがどんなことなのか……。

貴様も少しは味わってみろよ。
465創る名無しに見る名無し:2012/12/24(月) 00:14:30.54 ID:JkVpQVbS
運命さだめ…

運命さだめ 運命さだめ 運命さだめ

うるせえってんだよオォ!!

そのしたり顔で御託を並べるのはオレが取り殺されてからにしてもおうか、ドクロのおっさんよ!!

生贄だ!?供物だ!?運命だ!?

小むずかしい理屈並べてんじゃねぇぞ!!

要するにこいつは戦だ!!いつもと何も変わっちゃいねえ!!

戦ってのは最後に立ってたもん勝ちなんだよ!!

いいか!!てめえら今、地獄にたたき返してやるからあの顔色の悪い連中に言っとけ!!

オレは殴られたら必ず殴り返す!!

オレを喰い残したのが貴様らの運のつきだってな!!!!

貴様らも あの腐れバケ物どもも!!!一匹残らずオレが狩り殺す

これが開戦ののろしだ!!!!
466創る名無しに見る名無し:2012/12/24(月) 00:15:31.54 ID:JkVpQVbS
貴様ら賤民は普段は他人の不幸を陰で笑い誰彼構わず貶めることしか頭に無いくせに!!
いざ災難が我が身に降り懸かると自分だけは清廉潔白であるとまるで罪を知らぬ童の如く振る舞う!!
己が罪を何一つ顧みず神の名を安々と口にする!!
浅ましく!!卑屈で!!恥知らずな!!虫けらの如き輩よ!!
それが証拠に見ろ!!これだけの群集が見守りながら…誰一人として貴様のために身を挺する者はおらぬではないか!!

(鞭で痛めつけられている妹分を庇って)安全な場所から人を打ちすえて、偉そうにほざいてんじゃないよ。

ほう…中には骨のある者も少しはおる様だな。だがわかっておるのか?その者を庇い立ていたすと貴様も一緒に捕縛することになるのだぞ?

そうやって人が何か言おうとすると、すぐ脅して口を塞ぐ。
剣をちらつかせて塔の上から人を裁いて、あんたら自分を天使か何かと勘違いしてんじゃないの?

言いたい事はそれだけかね?お嬢さん。

…だめだこりゃ。高いとこの空気は薄いからねェ、おつむいっちまってるよ。
467創る名無しに見る名無し:2012/12/24(月) 00:16:37.02 ID:JkVpQVbS
(・・・・・・ほんと
 口は達者なつもりだったけど
 とうとう言いそびれちまったなァ
 お前には
 大事な一言・・・)

 けっこうよく泣くよな・・・
 お前ってさ・・・

(でもって
 最後のセリフがこれか・・・)
 
468創る名無しに見る名無し:2012/12/24(月) 00:17:53.46 ID:JkVpQVbS
あんた、神や悪魔を信じてるのか?
会ったことあるのか?神に 


神はたやすくその奇跡をこの地上にお示しにはならない
神とは常に我が信仰とともに この心と
そして天にましますものだ 


絵に描いた様な答えだな 修道院でおべんきょしたのか?
昔 戦場でそっくり同じこと言ってた貴族が
女子供ごと町一つ丸焼きにしてたぜ
オレが言ってんのは そんな中身すっからかんの
クソの役にも立ちゃしねぇ神さまのことじゃねぇよ
 
懺悔するだけ時間の無駄だ 悔い改める気ねーし
あんたに話したところで何一つわかりゃしねえよ
せいぜいカビ臭せえお寺で お経の一つでもあげててくれ 
469創る名無しに見る名無し:2012/12/24(月) 00:19:17.20 ID:JkVpQVbS
神に会えたら言っとけ!!放っとけってな!!!
470創る名無しに見る名無し:2012/12/24(月) 00:19:56.80 ID:JkVpQVbS
運命が人智を超越し人の子を弄ぶが理なら
人の子が魔をもって運命に対峙するは因果
471創る名無しに見る名無し:2012/12/24(月) 18:03:24.55 ID:JkVpQVbS
そうだしりとりしよう
472創る名無しに見る名無し:2012/12/24(月) 18:04:25.43 ID:JkVpQVbS
うまいぼう
473創る名無しに見る名無し:2012/12/24(月) 18:10:10.32 ID:JkVpQVbS
うりぼう
474創る名無しに見る名無し:2012/12/24(月) 18:26:24.00 ID:JkVpQVbS
運命が人智を超越し人の子を弄ぶが理なら
人の子が魔をもって運命に対峙するは因果
475創る名無しに見る名無し:2012/12/24(月) 18:27:42.43 ID:JkVpQVbS
ガッツ
476創る名無しに見る名無し:2012/12/24(月) 18:28:54.26 ID:JkVpQVbS
ツバル
477創る名無しに見る名無し:2012/12/24(月) 18:29:49.91 ID:JkVpQVbS
ルクプル
478創る名無しに見る名無し:2012/12/24(月) 18:33:05.56 ID:JkVpQVbS
ルナティック・パンドラ
479創る名無しに見る名無し:2012/12/25(火) 01:00:14.54 ID:v61jThLt
lamento eroico
480創る名無しに見る名無し:2012/12/25(火) 01:01:01.68 ID:v61jThLt
こりん星
4811500円の人:2013/01/26(土) 07:18:44.31 ID:FOQI5ejr
F自系のスレにSSを投稿している者ですが改めて自作の内容を鑑みて
こちらのスレの方が適切であると判断しました
ファンタジー世界で最強キャラが無双する話しですがこちらに掲載しても
よろしいでしょうか。
482創る名無しに見る名無し:2013/01/26(土) 23:48:13.46 ID:aNKVrI/L
>>481
過疎ってるから返答待ってる時間がムダだと思う
ベジータAAを貼るまでもない、止める理由もない
483創る名無しに見る名無し:2013/01/27(日) 01:08:02.70 ID:iLT6i2vL
あえて止める。やるなら避難所を勧める。理由は見れば分かるだろう。
484創る名無しに見る名無し:2013/01/27(日) 05:19:10.60 ID:vTOJDUBP
かまわんよー
4851500円の人:2013/02/01(金) 16:45:07.30 ID:onFgvby/
すいません確認が遅れました
返信ありがとうございます
書き直しながらですが少しずつ載せていこうと思います
問題があれば他所に移動します
486創る名無しに見る名無し:2013/02/09(土) 18:30:43.50 ID:PbHef4DH
 
487創る名無しに見る名無し:2013/03/02(土) 02:19:28.83 ID:9i8j+8y9
すいません。エロ有りだけど
俺の考えた作品を発表していいですか?
話というよりは、とりあえず設定というか概要なんだけど
488創る名無しに見る名無し:2013/03/02(土) 03:26:16.78 ID:yQDDap/B
この板エロはNGだで
489創る名無しに見る名無し:2013/03/09(土) 00:53:21.83 ID:2eRijpUG
亀だが設定がエロいってどういうことだ
490創る名無しに見る名無し:2013/05/12(日) 23:15:40.25 ID:ijgd0CwW
いま見てる人いんの、ここ
491創る名無しに見る名無し:2013/05/12(日) 23:16:12.38 ID:9ulMjP66
居るにはいるが日頃は死んでる
492創る名無しに見る名無し:2013/05/12(日) 23:18:52.86 ID:ijgd0CwW
今から少し思いついたネタ書き溜めたの書き込んでいい?
493創る名無しに見る名無し:2013/05/12(日) 23:25:01.51 ID:ijgd0CwW
反応がないので書き込んでもだめだったり?
494創る名無しに見る名無し:2013/05/12(日) 23:28:30.63 ID:aK4yID+8
構わんから投下しなよ
495創る名無しに見る名無し:2013/05/12(日) 23:36:25.28 ID:ijgd0CwW
>>494了解

タイトルは用意してないけど、淫魔ハンターが不感症だったら、がテーマです。
エロらしいエロはないけど、一応そういう描写に取れるようなのがあるから注意。
5レス位で一気に投下できりゃします。
496創る名無しに見る名無し:2013/05/12(日) 23:39:03.51 ID:ijgd0CwW
淫魔「ふ、ふふふふふふふ、網に獲物がかかった……」

淫魔「しかもかなりの上玉と来たわ、良い魔力……」

淫魔「久しぶりに堕とし甲斐がありそうなハンターね」クスクス

淫魔「まぁ、あの娘は壊れちゃうだろうけど」クスクス
497創る名無しに見る名無し:2013/05/12(日) 23:41:08.89 ID:ijgd0CwW
??「……ここだったかな、臭い残ってるし」スンスン

淫魔「正解よ、お嬢さん」フッ

??「っ! 拘束魔術か……」

淫魔「あら、ごめんなさいねぇ、びっくりさせちゃったかしら?」

??「気配、姿も消せる淫魔、魔力も抑え込んでる、お前相当高位の淫魔か」ギリッ

淫魔「あら、拘束ちょっときつかったかしら、ごめんなさい」

??「なるほど対抗魔法が使えない、強いな」ギリリッ

??「教会の送ったハンターは、お前が拘束しているのだな?」

淫魔「淫魔から情報を引き出そうって、度胸あるのねあなた」

淫魔「まぁいいわ、教えてあげる」

淫魔「あの娘たちを捕えてなんていないわ、あの娘たちが望んで残ってるだけよ」
498創る名無しに見る名無し:2013/05/12(日) 23:50:59.56 ID:aK4yID+8
C
499創る名無しに見る名無し:2013/05/13(月) 00:08:13.30 ID:XCNZIYU5
これがさるさんか


??「魅了、か……」

淫魔「そんなの下位の淫魔がすることよ」

淫魔「ハンターは禁欲生活を強いられているのでしょう?」

淫魔「ちょっとだけ教えてあげただけよ、あたしは」

??「ふっ、ふふ、そうか」

淫魔「だから、あなたにも教えてあげる」ムニムニ

淫魔「あぁ、やわらかいおっぱい、私より大きいなんて、羨ましいわぁ」

??「………………」

淫魔「あなたも、したことないんでしょう?」

淫魔「いいのよ、気持ちよくなっても」

淫魔「誰も、咎めはしないわ」

??「気持ちよくなる、か」

??「私には、もう無理なんだがな」
500創る名無しに見る名無し:2013/05/13(月) 00:16:01.79 ID:XCNZIYU5
淫魔「…? あなた、何を言って……」

??「神は私に呪いを刻み付け、教会は私を聖女と呼び祭り上げ、挙句の果てには死ねない体にされて」

淫魔「せい……じょ……?」

聖女「日の温もりも、風のやわらかさも、食事の味も、傷の痛みも、何もかも奪われて」ブゥウウン

淫魔「あなた……まさかっ!?」

聖女「地面を踏んでいるのか、どこにいるかもわからない不安を押し殺して」キィイイイン

淫魔「ひっ、うそ、なんで魔法!? にげ、な、きゃ……あ、がっ!?」ドカッ

聖女「私の存在は、ただ教会の敵を殺すだけ、殺すだけなんだ、あ、ははははははははははは」

淫魔「ひっ、た、助けっ」

聖女「我、神の敵を討ち滅ぼす者なり、忠実たる僕に力を授けたまえ、敵を滅する剣を我が手に!」

淫魔「くっ、そぉ! 燃えろぉ!」ゴゥッ

聖女「っ……!」ジュン
501創る名無しに見る名無し:2013/05/13(月) 00:20:04.58 ID:XCNZIYU5
淫魔「も、燃え尽きた……?」

淫魔「く、ふふ、まさか教会の切り札を、私の手で葬る日が、来るなんて」

淫魔「魔力は奪えなかったけど、これで私たちの脅威が減ったと思えば……」クルリ

淫魔「ふっふふふふ、まぁいいわ、あの娘たちを可愛がりましょう」スタスタ

―――ズシュッ

淫魔「あ、あれ?」ボタボタ

淫魔「なんで、こんな、私の胸に、剣が……?」フラッ

淫魔「なんで、生きてるの、燃え尽きた、のに……ごほっ」

聖女「教会が、私に与えた、最高の呪いよ」

聖女「魂が残る限り、永遠の蘇生……リジェネレイションの禁呪」

淫魔「ば、ばけ、もの、めぇ……カハッ」ドサ

聖女「……ごめんね」ゴゥッ



翌日、何かが燃えた後が発見された。

恐らく、どこかのバカがたき火でもしたんだろう、という事にされて、それ以上話が大きくなることはなかった。


とりあえずEND
502創る名無しに見る名無し:2013/05/13(月) 00:20:16.91 ID:xIcyJDkh
支援
503創る名無しに見る名無し:2013/05/13(月) 00:24:02.52 ID:XCNZIYU5
今日はもう休む、良かったら明日とか続き書くかも。
初めてだったからいろんな人に助けられた、感謝!
504創る名無しに見る名無し:2013/05/13(月) 00:36:49.77 ID:9/r2G0ON
がんばれ
505創る名無しに見る名無し:2013/05/13(月) 01:27:38.69 ID:GnZazg0G
おつ
506創る名無しに見る名無し:2013/05/15(水) 20:32:27.96 ID:knGTbejY
>>501の続き書いてきたけど需要ある?
507創る名無しに見る名無し:2013/05/15(水) 21:43:30.05 ID:K7SrzF08
需要とか気にしたら負けかなと思う
508創る名無しに見る名無し:2013/05/15(水) 21:49:54.06 ID:knGTbejY
投下したのにスルーされると心が折れるので予防線を張っておくというあれだよ
509創る名無しに見る名無し:2013/05/15(水) 23:39:32.44 ID:2bCGGkSg
なんかウザくてめんどくせー奴だな
人の興味を引くよりも削ぐ方が上手なタイプか
510創る名無しに見る名無し:2013/05/16(木) 12:58:08.96 ID:/UYpkbw/
おべっか使ってでも書き手様(笑)保護するだなんて皆さん人間が大きいですな
511創る名無しに見る名無し:2013/05/16(木) 18:07:53.85 ID:adxKqvQA
キモっ
512創る名無しに見る名無し:2013/05/16(木) 18:16:44.86 ID:feigU0m6
>>509面倒くさい奴とはよく言われるが、誰もがお前みたいにメンタル強くはないのさ
513創る名無しに見る名無し:2013/05/16(木) 19:02:11.93 ID:kifnA+6/
投下の度に需要あるか一々聞いてたらうざがられるよ。過疎板だし
514創る名無しに見る名無し:2013/05/16(木) 20:21:52.72 ID:4Yu8zkI7
>>508
面白ければ反応あるしつまらなければスルーだよ。需要の有る無しでいったらあるわけない。我らの足を止めるのは君の力次第。
515創発5周年記念投下作品 1/8 ◆ea7yQ8aPFFUd :2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:gXIz9RyS
創作発表掲示板5周年おめでとうございます。
1年前、ホラースレに投下した作品の続きなのですがファンタジーっぽくなったのでこちらに投下させていただきます。
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あの日から数週間が経過した。

母が自身の正体を妖孤と明かしたあの日、飛駆留須(ピクルス)住職の寺を爆破してしまったあの日、
そして……私が妖怪ハンター(仮免)として修行を始めたあの日……今思えば、
あの日は今まで平和な暮らしをしていた私の運命を変えたイタズラのような日……ではあったのだが、
新たな運命を受け入れた現在としては特にこれといった感想は無い。
それどころか、この運命を作り出したことを感謝しているぐらいであった。
何故なら……。

「コウちゃ〜ん、飛駆留須さんの攻撃が来てるわよぉ〜!」
「おっと!」
母の声にハッとし、飛駆留須のジャンプキックを両手で受け止める私。
キックの衝撃に若干後退する私であったが、とりあえず私が無事を見た母はふたたび声をあげるのであった。
「コウちゃん、ナイスカット!」
「ありがとう、お母さん!!」
「……おい、光二よ。」
先程まで構えていた飛駆留須が突如腕を下ろし、私に声を掛ける。
「……はい?」
「……確かに、あの妖孤の娘……つまり、お主の母に修行の場を見せることはワシが許した。じゃが……あそこまでは許し取らんぞ?」
「え?」
そう言って、私の母を指差す飛駆留須。
その視線の先には、境内の中にビニールシートを敷き、側にお茶とお弁当を持ってビデオカメラ片手に応援する……
さながら運動会で見るようなスタイルの母の姿があった。
「別にいーじゃないですか、母にとって楽なスタイルで見学出来れば……それに、
 あれは母なりの応援スタイルなんですから、拒否なんて持っての他ですよ……ねぇ?」
そう言って、母の方を向く私。
「あら、コウちゃん……私のことを思ってくれて……本当に良い子なんだから!」
一方の母は、私の声を聞いてテンションを上げるのであった。

もう一方の飛駆留須はふたりの会話を聞いて、テンションを下げるのであった。
「……ったく……妖怪ハンターの修行する前に光二のマザコンを治すのと、妖孤の娘の子離れを行うべきだった……。」
「「何か言いました?」」
「言ったよ、馬鹿親子っ!!」
こうして、境内……いや、寺の周囲1km以内に飛駆留須の怒声が響き渡った。
516創る名無しに見る名無し:2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:KcX/pvDD
紫煙
517創発5周年記念投下作品 1/8 ◆ea7yQ8aPFFUd :2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:gXIz9RyS
>>516
協力、感謝します
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それから2時間後……。

外がオレンジ色の光に包まれ始めた夕刻、飛駆留須は自身の前に私と母を正座させ、こう切り出した。
「光二よ……妖怪ハンターとしての修行はあとひとつじゃ。」
「あら!コウちゃん、すごいじゃない!!よく頑張ったわね!!!」
そう言って、横に座る私の顔を自身の胸元に押しつける母。
「……ともかくじゃ、残す修行はあとひとつ!その内容じゃが……光二よ、すぐにこの地図に記された場所へ行くのじゃ。」
そう言って、一枚の古そうな地図を私に渡す飛駆留須。
その地図には、この寺を含む近所の見取り図と目的地を記す赤いマークが付いていた。
「これは……近所の九里池公園?」
顔半分を母の胸元にうずめながら、地図を見てつぶやく私。
その言葉に、母が反応を示した。
「九里池って言えば……一時期、変な妖気が発せられてた場所よね?」
「変な妖気?」
「ええ……だから、ご近所さんに妖怪が住んでるんだろうとは感じてたけど……確か、
 コウちゃんが産まれる少し前くらいから弱りだして……気が付いたら妖気が消えてた気が……。」
「うむ……妖孤の娘よ、お主の言うように九里池には『河童』が暮らしておった。」
「あ、やっぱり!」
「……『河童』って……あの、頭にお皿のある岸部四郎的なアレ?」
「……まあ、そうじゃが……兎にも角にも、かつて九里池には河童がおった。
 その河童は特に悪さをするような存在では無かったのだが、時代の経過によるものか……人を襲う凶悪な存在と化してのう……
 そこで、当時現役の妖怪ハンターだったワシが池に封印の儀を行い、河童の活動を抑えたのじゃ。」
「へぇー……で、その河童がいる九里池にどんな用事を?」
「……実はな、時の経過とともに封印の力が弱まりだし……さらに近年の流行病で河童が活動しかけているらしい。」
「「……え?!」」
ふたりして同じリアクションをとる親子。
「まさか……コウちゃんに『河童を封印してこい』って言うワケ?!」
「オフ・コース。」
「そんな……いくら封印の儀で弱まっているとはいえ、そんな危険なミッションをコウちゃんに……
 修行中の身のコウちゃんにやらせるなんて……鬼!悪魔!!ハゲ!!!」
「ハゲは関係ないじゃろっ!……ともかくじゃ、光二よ、それが妖怪ハンター免許皆伝への最終試験じゃ。
 やってくれるな?」
「……お母さん。」
真剣な表情で母を見る私。
「コウ……ちゃん?」
「お母さん、僕はやるよ……お母さんみたいに、苦しい思いをする人たちを増やしたくない……だから、
 立派な妖怪ハンターとしての道を進むため、受け入れるよ。その道が……どんなに茨の道であろうとも……。」
「コウちゃん……。」
518創発5周年記念投下作品 3/8 ◆ea7yQ8aPFFUd :2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:gXIz9RyS
私の言葉に涙を浮かべる母。
一方の飛駆留須も腕を組みながら頷いていた。
「光二よ、決心はついたようじゃな……それでは、すぐに最終試験を行う。まず、この封印の札を……。」
「……あ、ちょっと待って下さい。」
「なぬ?」
飛駆留須の言葉を遮る私。
そして、母の方を向き、母の体を強く抱きしめるのであった。
「いつもお母さんに抱かれてたから……今日くらいは僕の方から抱かせてね。」
「コウちゃん……。」
「お母さん、僕は無事に帰ってくるから……心配しないで……ね?」
「コウちゃん……分かったわ。後で、夕飯用にコウちゃんの大好きなハンバーグの材料買ってくるから……絶対に食べに帰ってきてね!約束よ!!」
「お母さん!」
「コウちゃん!!」

「早く行け!馬鹿親子っ!!」
再び、飛駆留須の怒声が街中に響いた。

それから30分後……。

私は九里池に到着したものの、少々困り果てていた。
「……ふんっ!」
右手のひらをかざし、九里池から感じられる妖気を探る私。
その気配は、自分が想像していた以上であった。
「こいつは……ハーバード大学の卒業試験よりも厳しいのが課されたか?」
独り言を言う私。
しかし、『言った』からといって、特に何かが進展する訳でも無かったため、とりあえず足元にあった野球ボール程の大きさの石を拾うのであった。
「とりあえず……出てきやがれ、最終試験!!」
叩きつけるようにして、私の手から放たれる石。
そして、間髪入れずに水面を叩きつける……が、何も起こらなかった。
「……あら?」

「……え?もう、修行は全て修了している?!」
一方、同時刻の寺の境内。
3分で買って来た玉ねぎと牛・豚の合びき肉が入った袋の横で、母は驚きの声をあげるのであった。
「そうじゃ……光二の修行は全て終わっておる。」
「じゃあ……さっきの河童うんぬんは?」
「実はのう……確かに九里池には河童の親子が住んでおる。じゃが、彼らはワシの知り合いでな……
 せっかくなんでドッキリを仕掛け、光二がやって来たところで『修了おめでとう!』とやろうと考えてのう。」
「うわぁ……光二を騙すなんて、最低のハゲ。」
「ハゲは関係ないじゃろっ!!」
「ところで……その、河童の親子ってどんな方なの?」
「どんなの……と言われてもだなぁ……うーむ……。」
飛駆留須が考え始めた直後、境内に荷物を抱えた少女が姿を現した。
「……うん?誰?」
「ごめんくだせぇ……飛駆留須さん、貸し賃代わりのキュウリとトメト、持ってきただ。」
強めの訛りで話す少女。

……だが、その少女は人間ではなかった。
519創る名無しに見る名無し:2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:KcX/pvDD
紫煙
520創発5周年記念投下作品 4/8 ◆ea7yQ8aPFFUd :2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:gXIz9RyS
「おお!そうそう、河童の親子の娘のほうはこんな感……ウェッ?!」
突如、素っ頓狂な声をあげる飛駆留須。
その声に、母と河童の少女は驚くのであった。
「も……諸美?!どうして、お主がココに!お主には、ワシの弟子を迎えるよう頼んだはずじゃぞ!!」
「……え……ああ!実はな、本当は母上がキュウリとトメトさ届けるはずだったさ。ところがね、母上の体調が優れんでのう、
 飛駆留須さんのお弟子さんの出迎えは母上に頼んで、ワタスがキュウリとトメト届けに来たさぁ。」
「そうか……うん?」
諸美の言葉に違和感を覚える飛駆留須。
一方の母も、同様に違和感を……そして不安を感じていた。
「諸美ちゃん……だっけ?」
「んだ、河童の諸美っちゅうもんだぁ。」
「えぇっと……もしかしてだけど、諸美ちゃんのお母さんの病気って……結構長く続いてない?熱が引かないとか……あと、
 好物を欲しがるとか……?」
「あら、アンタ医者だべか?たすかに、母上の熱は続いてる……にもかかわらず、キュウリを馬鹿みたいに食うべ。
 あと、魚も……まるでフードファイターだぁ。」
「!」
「……どうしただべし?」

飛駆留須と母の……当たってはいけない予感が的中してしまった。

同時刻、九里池……。
「危ねぇっ!!」
私の居る場所へ、一直線に落下してくる巨大な塊。
それに対し、私は孫悟空の如く上空へと飛び上がり、そのまま近くの木の枝へ着地するのであった。
「くそっ……何て化け物だ!」
そう言って、眼の前で地響きのような唸り声をあげる存在を睨む私。

そこには、確かに『河童』が居た……いや、ただの『河童』ではない。
その体長は30m近く、また上半身が筋肉の塊のようになっており……言うなれば、『怪獣』そのものであった。
521創発5周年記念投下作品 5/8 ◆ea7yQ8aPFFUd :2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:gXIz9RyS
「だったら……とっておきを試すか。」
そう言って、ズボンの後ろポケットに手を突っ込む私。
そこには、飛駆留須から託された白紙のお札、そして筆ペンが入っていた。
「まずは……こんなのはいかがかなっ!?」
お札に描かれる『斬』の文字。
そして、念を込めるとお札は円盤のような刃物と化して、河童に襲いかかった。
「デヤァッ!!」
さらに込められる念。
その直後、円盤は巨大化し、河童の右腕を切り落とすのであった。
「どうだ……おっとっと?!」
声をあげる私であったが、落下した河童の腕が水面に落ちた際に生じた衝撃でバランスを崩し、
あわや木の上から真っ逆さま……という状況になった。
「おお、危なっ。でも、これで時間稼ぎは……うん?」
だが、状況は私の思い通りにはならなかった。
突如、水面に浮かぶ河童の腕から生える触手のような物。
その触手は河童の胴体からも生え出していた。
突然の事態に、ただただ見るだけの私。
一方の河童は、腕と胴の触手を絡めたかと思うと、それら全てを結合させ、そして切断される前の元の体へと再生させるのであった。
「……そうか!河童は念力を得たワラ人形の成れ果て……切られても、植物のように結合再生しちまう……なんて奴だ!!」
私が叫んだ直後、再生した腕で私がしがみつく木を力任せに叩き潰す河童。
一方の私は間一髪で脱出するものの、着地に失敗して尻もちをついていた。
「イテテテテ……くそぅ、封印するにも妖力が強すぎて、俺みたいな仮免には無理だ……どうすれば良い……?」
「光二!」
突如、私の耳に入る母の声。
声の方向を向くと、そこには母と飛駆留須、そして河童の諸美の姿があった。
「母さん!あと、ハゲッ!!よくもこんな面倒な卒業試験を用意してくれたなっ!!!」
「ハゲは関係ないじゃろっ!」
「……!おっかあ!!」
「……え?お母さん?……あ、君は?」
私は諸美に声をかけようとしたが、その直後に諸美の母……いや、暴走した河童の拳が四人のもとへと振り下ろされたため、
その声はかき消されてしまった。
「危ない!」
「させるかよっ!!」
光波バリアのようなエネルギー波を張る母、そして手持ちのお札に『防』の文字を書いて結界を作る私。
親子で作り上げたバリアに、さすがの河童もその巨体を揺るがして、背中から九里池の水面に体を叩きつけるのであった。
「おっかあ!止めるだ!!このまま戦ったら、おっかあが死んじまうだ!!!」
私と母の前に、手を広げて立ちふさがる諸美。
そんな彼女の表情は、今にも涙が溢れそうになっていた。
522創発5周年記念投下作品 6/8 ◆ea7yQ8aPFFUd :2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:gXIz9RyS
>>519
協力、感謝します・・・と、レスが遅くなってすみません
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「君は……あの怪獣の娘なのか?」
「怪獣じゃないだっ!ワタスは河童の諸美だぁ!!」
「か……河童?」
「光二よ、おしゃべりしている暇は無いぞ。」
私と諸美の会話に飛駆留須が割り入る。
「あの河童……いや、諸美の母はお主の母と同じ流行病にかかっているようだ。」
「何だって?!……まさか!」
「……うん?」
突然、表情が変わった私を見て、変な顔をする飛駆留須。
「ハゲ……いや、飛駆留須!あなたは流行病……つまり『母さんが味わった苦しみから妖怪を解放すること』が
 俺にとっての妖怪ハンター道だと考えて……こんな最終試験を……。」
「……え……あ……まあ……そうじゃ!それが、お主に課せられた使命じゃ!!」
「「えっ?!」」

『ドッキリでした』とは言えず、その場を誤魔化す飛駆留須。
その飛駆留須の発言のいい加減さに驚きを隠せない母と諸美。
そして、勝手に最終試験内容に納得してしまった私。

九里池には変な空気が漂うのであった……。

だが、その空気は怪獣と化した諸美の母の叫び声によってかき消された。
「……!おっかあ!!」
「待ちな。」
諸美の前に立つ私。
「これは、俺に課せられた試験だ……それに、お前のお母さんは……俺が救ってみせる!」
「でも……どうやって?!」
「……母さん、ちょっと協力してくれ!」
そう言って、母に声をかける私。
「どうしたの、コウちゃん?」
不思議な顔をする母であった……が、そんな表情に見向きもせず、私はお札の一枚に『斬』の文字を描くのであった。
「ちょっと我慢してね……痛みは一瞬だから。」
そう言って、無理やり母の手を掴む私。
そして、母の指先に『斬』のお札を軽く当てると、お札から発せられた気の力で指先の一部が切れ、
そこからワインのような母の血が滴り始めた。
「痛っ……何するのよ、コウちゃん!!」
「……ごめん、母さん……でも、彼女の母を救うにはこの方法しかないんだ!」
そう言いながら、母の血の一滴を何も書いてないお札に垂らす私。
「……本当にごめん。」
そう言って、私は最後のお札に『治』の文字を描き、母の指先に張り付けるのであった。
「……ごめん……ごめん。」
「いつまで謝ってるだっ!どうやっておっかあを救うだ?!」
緊急事態とは言え、『母を傷つけた』ことに謝りつつける私……を見て、我慢できずに怒りだす諸美。
その声にハッとし、私は血の付いたお札にある文字を描くのであった。
523創発5周年記念投下作品 7/8 ◆ea7yQ8aPFFUd :2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:gXIz9RyS
「これは……『針』?」
「ああ……あとは仕上げをご覧あれっ!」
そう言って、『針』のお札を片手に諸美の母の居る方向へと駆けていく私。
一方の諸美の母も三度拳を振りまわして襲いかかった……が、一瞬の隙をついて私は空高く飛び上がり、
そして諸美の母の首元へとよじ登るのであった。
「……!あれか!!」
諸美の母の首元で『何か』を探す私。
そして、その『何か』を見つけるとお札に念を込め、お札を針状の光弾に変えるのだった。
「デヤッ!」
手から光弾を放つ私。
その光の矢は一直線に飛び、そして私が探していたある場所……諸美の母の首元に存在する『動脈』へと刺さるのであった。
「やった……ったったったぁ?!」
光弾が刺さった後、苦しみ出す諸美の母。
その動きは大地を揺るがし、彼女の体に捕まっていた私は彼女諸共、九里池へと沈むのだった。
「コウちゃん!」
「おっかあ!!」
「光二!!!」
池の外で叫ぶ三人。
だが、その声は公園内にむなしく響いただけ……では終わらなかった。
「……おーい!」
三人の耳に聞こえてくる私の声と、チャプチャプという水を掻く音。
その音の発生源を見ると、そこには私と私の背中で気絶する『もうひとりの河童』がいた。
それは、流行病が治ったことで元の姿となった諸美の母であった。
「……おっかあ!」
駆け出す諸美。
一方の諸美の母も、彼女の声に気付いたのか薄らではあったが眼を開くのであった。
「……諸……美。」
「おっかあ!元に戻って良かっただ!!」
諸美の顔からは、はち切れんばかりの笑みがあふれていた。
524創発5周年記念投下作品 8/8 ◆ea7yQ8aPFFUd :2013/08/29(木) NY:AN:NY.AN ID:gXIz9RyS
それから、数日後……。

「それにしても、コウちゃん……どうやって諸美ちゃんのお母さんの病気を治したの?」
自宅のキッチンにて、ハンバーグの生地を練る私に母は聞いた。
「何、簡単なことよ。母さんは一回、あの流行病に掛かってるでしょう?」
「ええ。」
「普通、病気に掛かると最初は苦しいけど、治れば抗体が出来て病気に対抗できる力を得られる……
 そこで、母さんの血を血清として使い、さらに効果がすぐ出るようにあの河童の動脈に打ち込んだ……って寸法さ。」
「へぇ〜……さっすが、コウちゃん!秀才ね!!」
「いやはや、それ程でも……。」
「……で・も・ね?」
「……?」
「いくら理由があったとは言え、お母さんの体を傷物にするなんて子供がしちゃ駄目なことよ?」
「……はい。」
「だ・か・ら……怪我で出来ない分のお仕事はコウちゃんがちゃ〜んと手伝ってね?ママとの約束よ!」
「……うん……ゴメン。」
そう言って、私は暗い表情を浮かべながらハンバーグの生地をこね続けるのであった。

だが、この時私は気付いてなかった。
妖孤である母には指先の怪我など蚊に刺された以下の傷であり、とっくの昔に回復していた……のだが、
せっかくなので怪我を口実に『私との時間』を長めに取ってしまおうという魂胆があったことを……。

つづく・・・のかしら?
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以上です、長々と駄文失礼しました。
そして、支援してくれた方々、本当にありがとうございました。
525創る名無しに見る名無し:2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:2wwrZZoQ
投下乙!
『おっかあ』ってよび方、萌えるなあ〜
526創る名無しに見る名無し:2013/08/30(金) NY:AN:NY.AN ID:2wwrZZoQ
なるほど。諸美ちゃん、冷静な最初の説明のときはちゃんと母上って言ってるんですね。
どちらの親子も、妖怪になっちゃってまあいろいろ大変だけど子供との絆がつよくってほんわかするなあ〜
527 ◆ea7yQ8aPFFUd :2014/01/03(金) 21:43:37.83 ID:bMKuqKBh
とりあえず、2014年一発目の投下。
2年前に書いたままになっていた『かぐや姫』を基にした物語を自分なりに書き直した作品です。
5281/3 ◆ea7yQ8aPFFUd :2014/01/03(金) 21:47:00.78 ID:bMKuqKBh
その日、とある屋敷に五人の男が集められた。
彼らの目的はただひとつ、その屋敷に住む絶世の美女『かぐや姫』と結婚することであった……のだが、
元々かぐや姫自体は結婚することを嫌がっていた。

それには理由が存在していた。
かぐや姫……その正体は別の惑星から地球を調査するためにやって来た恒点観測員であり、
十分な調査を既に終えていた彼女は母星からの帰還命令を待つばかりであった
しかし、結婚によって地球に留まるとなればそれは職務放棄となり、
これまでの調査は無駄になる……どころか、地球に関するデータを送ることが出来なくなり最終的には母星……いや、
宇宙各地に多大な影響を与えることとなってしまう。

だが、かぐや姫を妻として迎えたい五人には彼女の事情など知る由も無く、
彼らは三日三晩かぐや姫へ猛烈なアタックを決行するのだった。

「どうしたら、彼らは私との結婚をあきらめてくれるか……。」

ただただ悩むばかりのかぐや姫。
それに反比例するかのように増していく五人からのアタックはエスカレート傾向……その様子を例えるなら、
男のうちのひとりは既にトーカーと寸分違わぬ状態であり、他の四人も放っておけば……といった様相であった。

そこで、この状況を打破するための策を彼女は講じ、五人の男を屋敷に集めた……つまり冒頭のシーンへと移るのであった。
「集まったのは他でもありません。」
五人の男を前に、大き目の声をあげるかぐや姫。
これに対し、男のうちのひとりが彼女に問いかける。
「姫……もしかして、あなた様との結婚のお話しでしょうか?」
「その通りです。」
「では……一体、誰と結婚を?!」
別の男も問いかける。
「それは……ある方法で決めさせていただきます。」
そう言って、一枚の大きな表を取り出すかぐや姫。
その表には、大き目の絵とその絵を説明する文字群が描かれていた。
「これは……?」
「結婚する者において、妻は夫にとって『究極』の宝であり、夫は妻にとって『至高』の宝です。
 しかし、この世界には『究極』……そして『至高』と付く宝が五つ存在するそうな……そこで、
 その宝のうちのひとつを各自探し出し、私の目の前で砕いてみせてください。そうすれば、
 私以外の『究極』の宝は存在しなくなる……または夫として相応しい者以外の『至高』の宝は存在しなくなる……
 これによって私とあなた方のうちの誰かが正式な夫婦に成ると言えるでしょう。」
「……で、その宝とは?」
5292/3 ◆ea7yQ8aPFFUd :2014/01/03(金) 21:50:38.71 ID:bMKuqKBh
「『仏の御石の鉢』、『火鼠の皮衣』、『蓬莱の珠の枝』、『龍の首の珠』、『ツバメの産んだ子安貝』……以上の五つです。」
「何ですって……。」
屋敷中はざわめき立った。

ざわめき立つのも無理は無い。
『仏の御石の鉢』とは神である仏様が普段から用いている食器のこと……
『火鼠の皮衣』とは火炎獣という伝説の生き物の皮から作られる、絶対に燃えない布のこと……
『蓬莱の珠の枝』とは根が銀・茎が金・実が真珠という植物……
『龍の首の珠』とは御存じ伝説獣である龍の宝玉……
『ツバメの産んだ子安貝』とはツバメの体内で生成された貝……言うなれば、
どの宝もこの世に存在するか不確定な物ばかりであった。

「しかし……。」
「『しかし』もへったくりもありません!私を妻として迎えたいのなら、
 これらの宝のうちのどれかひとつでも見つけ出す勇気を見せてください!!」
男の声を遮って叫ぶかぐや姫。
一方の男たちは、この言葉に対してただただ黙るしか出来なかった。
「……分かりました、必ず五つの宝をかぐや姫様に献上致しましょう。」
「ええ、お待ちしていますわ。」
かぐや姫は満面の笑みで答えた……と同時に、彼女は心の奥底で男たちを嘲笑していた。

神である仏様の食器など手に入れられるはずが無い。
火炎獣や龍のような存在しない生き物のパーツなど手に入れられるはずが無い。
『蓬莱の珠の枝』や『ツバメの産んだ子安貝』みたいな生物学的に存在不可能な存在が手に入れられるはずが無い。

全てはかぐや姫が仕組んだ罠であり、解決不可能な無理難題を課すことで結婚をあきらめさせるのが真の目的であったのだ。
「ふふっ……せいぜい偽物を作るか、伝説獣とやらを探して死にかけるかして、無駄な泥努力でもしてなさい!
 私は私だけの物……恒点観測員である限り、私は宇宙の物なんですから!!」
男たちの居なくなった屋敷で叫ぶかぐや姫。
そして「早く帰還命令が来ないかな?」と考えながら、まるで少女のように空に浮かぶ満月を見つめるのだった。

その夜、かぐや姫の屋敷から少し離れた場所にある小屋で、屋敷に参上した五人の男たちが話し合いをしていた。
「それにしても……かぐや姫は何故にあんな課題を出したのだろう?」
「さぁな……人間界ではあの程度の物が『究極』で『至高』の宝なんだろう?」
そう言って酒を飲む男たちのうちのひとり。
その様子を見て、彼の正面に座る別の男が言う。
5303/3 ◆ea7yQ8aPFFUd :2014/01/03(金) 21:53:55.40 ID:bMKuqKBh
「そういえば……それもある意味で『仏の御石の鉢』だよな。お前さん、いっつもそれで水や酒を飲んでるし。」
「せめて『般若湯』と言ってくれ、建前上は『禁酒』を教えているのだから……そういえば、
 獣王殿は『火鼠の皮衣』とやらを持っているのか?」
「ああ……だが昨日洗濯したんでな、提出は遅れるかもしれんが。」
「まさか、衣の上に寝ションベンしちゃったとか?」
冗談混じりに話す別の男。
一方、『獣王』と呼ばれた男はその言葉に対してゆっくりと顔を縦に振りながら酒を飲み干すのであった。
「……え……まさか……。」
「……言っておくが、俺じゃなくて息子が……だぞ。」
「ビックリした……って、あれ?獣王は既婚だっけ??奥さん居るのにかぐや姫に結婚申し込んで良いの???」
「獣の世界では、ひとりのオスに対してメスが何匹居ても問題は無い。
 それが、例え人間のメスであっても……だ。」
「ハーレム……というやつか。正直、うらやましい……。」
「ところで『蓬莱の珠の枝』は誰が担当?」
「あ、俺やるわ!ちょうど錬金術の式が完成したばかりでな……二〜三日あれば何とかなりそうだわ!!」
ひとりの男が手を挙げながら言う。
「錬金術師ってすげぇなぁ……じゃあ、俺は……。」
「すまんが『龍の首の珠』は私にやらせてくれ。」
先程まで黙っていた男が突如として切り出す。
「えーっ、一番簡単なのを盗むなよ!」
「いや……昨日絞めたばかりの龍が居るんでな。せっかくだから、それを使わせてもらう。」
「……ちぇっ!流石は龍牧場の主ってとこですかっ!!俺は……『ツバメの産んだ子安貝』かぁ……
 バイオテクノロジーは専門だけど、ちょっと錬金術も必要そうだなぁ……。」
「……うん?」
「必要そうだなぁ〜!!……なあ?」
「いや……そんな熱烈ラブコールを送らなくても手伝うがな、まったく……。」
「サンキュー!お礼と言っては何だが……この『般若湯』を飲みなさい!!
 ささっ、グゥ〜っと!!!」
「……そこは『酒』で良いと思うぞ。」

人間の常識には限界がある。
それ故に常識を超えた存在が『伝説』や『宝』と化す。
しかし、人間以上の常識を持つ存在にとっては、その伝説や宝も『ただの物』でしか無い。

仏様、獣王、錬金術師、龍牧場の主、バイオテクノロジスト……そんな常識破りの彼らに結婚を迫られた、
恒点観測員かぐや姫の運命は……私にも分からない。

おわり
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お目汚し、失礼しました。
531創る名無しに見る名無し:2014/01/04(土) 21:56:45.01 ID:fEApG5GP
おもしろそうだから、ここで終わりにせず、続き書いてよw
平安京で、5人vs.月星人のガンツバトルが起こっても、驚かないからさ。
532創る名無しに見る名無し:2014/01/05(日) 11:02:56.17 ID:OlM7LIhw
一捻りされてておもろいなw 逆転の発想って奴だな。
533 ◆ea7yQ8aPFFUd :2014/01/05(日) 13:34:52.44 ID:qbk4TT1k
>>531-532
感想ありがとうございます。
まさか2年前にタイの空の下で書いた駄文で反応をいただけるとはありがたいです。

ちなみに、この話を思いついたきっかけが「『仏の御石の鉢』・・・もし、挑戦者の中に仏様がいたらどうなってたんだろう?」という
発想だったりで、そこから肉付けをして今回に至っています。

それと続きに関してですが、投下前にちょこっと考えていたものの・・・何か止めました。
ちなみに内容は、昔話に登場するキャラのほとんどが実は恒点観測員で、かぐや姫や桃太郎の報告から『地球は怖い』という結論に達する
・・・という感じです。
まあ、含みを持たせて後は投げっぱなしのほうが楽しいと思うので、今回はここまでとさせていただきます。
534創る名無しに見る名無し:2014/01/23(木) 09:52:53.99 ID:Lx7uNwjB
 
535創る名無しに見る名無し:2014/02/21(金) 02:08:43.99 ID:KLgMJHh2
 
536創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 02:54:44.67 ID:Klh2Mw6q
投下します
537創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 02:56:28.02 ID:Klh2Mw6q
序章 〜薬〜

人間族の青年ムグル。21歳。
人間族だがセカンドネームは無い。何故なら元奴隷だったからである。
ムグルは魔界を放浪していた。

魔界は常に薄暗い。とある山村を通りかかった時、バラック小屋のような小さな家から
怒声が聞こえた。
小鬼《オーク》の親子の様である。
ムグルは何気なく聴き耳を立てていた。
「何故お前がこんなものを持っている!お前はこれが何か知っているのか!」
「…街で屍食鬼《グール》が落としていった。…それを拾ったんだ。怖いお薬だと思った。…ごめんなさい。」
「よく聞きなさい。これは『魔神の胆汁』という恐ろしいお薬だ。飲めば死ぬ。いや
死ぬどころか…」

ムグルは背筋が凍った。否、凍ったというのは正確ではない。長年魔界をさまよい続けて
こんな山奥の山村で、探し求めていた『魔神の胆汁』が見つかったのだ。
嬉しさと恐怖が入り混じったそんな感情に襲われた。
538創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 02:57:13.33 ID:Klh2Mw6q
父親はこう続ける。
「いや…そんな事よりそのお薬を渡しなさい。持っているだけでも怖い事が起こるんだ」
そう言った父親は窓を開け、谷に向けて『魔神の胆汁』を投げ捨てた。

ムグルは一目散に、投げられた谷に向かい、探した。
程なくして見つけた。『魔神の胆汁』…

更に山の奥へと進み、人けのない洞窟にたどりついた。
気持ちが高揚しているせいで顔が引きつり、手の震えがおさまらない。

焚火をして木のツルをかじり、一杯の茶を飲んで一息ついた。
荷物の中から取り出した汚れた麻袋。中には焼き菓子が入っていた。
それを右手に強く握りしめた。
左手には『魔神の胆汁』
「シェリー。僕は変わるよ。見ていてね…」
そう呟いたムグルは『魔神の胆汁を』一気に飲み干した。

飲んだ瞬間、身体じゅうに見るみる赤黒い血管が浮き上がってきた。

ムグルの身体を発狂せんばかりの激痛と感情のうねりが襲い、山に悲鳴が轟きわたった。

それを見ていたのは星の管理人ゼーラゴンだけである

これは100年以上前の出来事…


そして現在。このお話はここから始まる。
539創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 02:58:13.77 ID:Klh2Mw6q
第一章 〜黒い胎動〜

とある森の奥深く。時空間の歪みである魔界の入口よりみすぼらしい魔物が一匹。ズルズルと地上界に姿を現した。

名をナグディシス
まるでやせ細ったグールのような風貌だ。

「とにかく森を出て街を目指すか…」
そう言ったナグディシスは獣道を彷徨い歩いていたが人道を発見。
それに沿って歩を進めた。

その時である。

薄汚いカメ族の連中に道をふさがれた。
「…賊か」
ナグディシスはカメ族の種類を見て粗暴種だと判断した。
ナグディシスが先に口を開いた
「何か用か?通してくれ」

クラカ族が話す
「グールの割には饒舌に話す奴だな。俺たちはラ・ボルディオレ。自警団だ。
そしてこの先の城塞都市ミカゲの用心棒をやってる。悪いが魔物を街に通す訳にはいかねえんでな」
540創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 02:58:46.67 ID:kS7LVKNN
紫煙
541創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 02:59:04.21 ID:Klh2Mw6q
ナグディシスは言った
「お前たちと問答してる程暇ではない。しかし…腹が減ったな」

そう言うとナグディシスは両の手を広げた。するとどす黒い霧が発生したのだ。
その黒い霧は盗賊達にまとわりつき、首を絞め、身体を切り刻んだ。

ナグディシスは一人だけかろうじて生かしておいた。
「少し待て。食事にする」

そう言うと殺したクラカ族をむしゃむしゃと食い始めた。
目を見開きながら勢いよく肉塊にむしゃぶりつく

ナグディシスは食いながら話す
「今お前の心を覗かせてもらった。お前達の大将はずいぶん腕が立つみたいだな。会わせろ」

生き残った盗賊のナナルは戦慄した。
「黒い霧…。訳のわからない術を使ったかと思うと今度は思躁術まで使う…こいつただのグールじゃない!」

「さて…案内しろ。お前らのアジトに」

数十分歩いた所にラ・ボルディオレのアジトはあった。

ナグディシスは言う
「大将に話てこい、決闘しようと言ってる奴がいるとな」

程なくして現れたのは屈強のカメ族であった。
542創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 02:59:44.51 ID:Klh2Mw6q
大将が口を開く
「俺はラ・ボルディオレの団長ルピタ・クリーシーだ。ただのグールじゃないらしいな。望み通り手合わせしようじゃねえか!」

ナグディシスは答えた
「ちょっと待て。いつ俺がグールだと言った?俺はナグディシス。これでも魔王だ」

ルピタはゾッとした。歴史書でしか読んだことのない『魔王』が眼前にいる!
ルピタは言う
「魔王!!!俺は魔王と決闘するのかよ!歴史に名前が残っちまうな」

そう言ったかと思うと背中のバトルアックスをまたたく間に振り上げ、ナグディシスの首をはねた。しかしその瞬間切り口から無数の触手が伸び首はあっと言う間につながった。

ひるむことなくバトルアックスを振り、ナグディシスを切り刻む
543創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:00:34.48 ID:Klh2Mw6q
しかし触手が出てはすぐに再生してしまう。
「どうしようもねえな…不死身じゃねえか」
ルピタは少し焦燥した。

そしてナグディシスはこう言った。
「今お前の心の中覗かせてもらったよ。この状況を楽しんでるね。恐怖も少ない。いい度胸してる。強い奴だ。」

そういうとおもむろに右手をルピタに向けた。
ルピタは突然うなだれた。
「お前の脳をいじらせてもらうよ」

ルピタはよだれを垂らしながら呟いた。
「…ナグディシス様」

ルピタは強制洗脳され支配下におかれた。

「よし。行くか」
「城塞都市ミカゲという街に連れて行け」


程なくして二人はミカゲに着いた

ナグディシスは巨大な街、ミカゲの景観を見ていいしれぬ不快感を覚えた。そして突如、頭痛に襲われる。
「痛っ…」

ルピタが心配そうに言う
「いかがなされましたかナグディシス様!」

ナグディシスは頭痛に堪えながら口を開く
「皆殺しだ…この街全部消してやる」
ナグディシスは両の手を広げ黒い霧を発生させた。その霧は数百程の塊となったかと思うと人の形に姿を変えた。黒い霧の人形兵、ミストトルーパーだ。
「街の人間全て殺してこい」
544創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:01:36.49 ID:RLmv1cg0
:
545創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:01:46.82 ID:Klh2Mw6q
そう命令すると数百匹のミストトルーパーは街へと向かった。街の者を次々と惨殺していったのだ。ミカゲにほど近い石鉱所の人間たちもミストトルーパーに襲われた。街のそこかしこで悲鳴が聞こえる。
騒ぎを聞いた大魔導師ベイラ・サグラダスはナグディシスのもとへ走った。しかし全て水晶の遠透視によって知っていたようだ。

ナグディシスに対峙するベイラ。

ベイラにすがる街の人々。
「ベイラさん!今まで悪かった!どうかあんたの魔法であいつを焼き殺してくれ!頼む!」

しかし

焼き殺されたのは、すがってきた人々の方であった。
ベイラは街の人間に手をかけたのだ。

ベイラは言う。
「どうか私をお側に置いて下さい」
546創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:02:16.34 ID:kS7LVKNN
 
547創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:02:44.50 ID:RLmv1cg0
:
548創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:05:46.90 ID:qKtbsPmW
ナグディシスはこう答えた。
「珍しい…。お前エルフ族か。しかもダフォールエルフ。闇に堕ちたはぐれ者か」

ナグディシスはベイラの心を覗いた。ナグディシスはニヤリと笑いこういった
「貴様面白いな…『真理』…か。いいだろう。ついてこい」

そう言って街を後にし、ナグディシスは街をそっと振り返る。暫らくジッと見つめていた。

まだズキズキと頭が痛む。
「くっ…」
痛みに顔を歪めるナグディシス

ナグディシスは街を見ながら身体じゅうから黒い霧をもくもくと出し始めた。

そして全ての霧を上空に集め黒光りをした球を作る。魔球弾だ。
「消えろ」
そう言うと魔球弾は街に向かって勢いよく射出された。爆音と共に街と石鉱所を含んだ辺り一面が一瞬にして崩壊した。
巨大な城塞都市ミカゲが瓦礫の山と化した。地響きが鳴り響く。
とてつもない魔力にベイラとルピタは畏怖の念を抱かずにはいられなかった。
「ナグディシス様。素晴らしいお力です」

いつの間にか頭痛が治まっている。
ナグディシスはにやりと笑った

「さて…まずは手始めに国一つ頂きに行くか。お前たち良いところを知っているか?」

ベイラは答えた。
「ここはミランダル王国です。ここをナグディシス様のお国とされるのはいかがでしょう。
ここは国土もよく資源も豊富。国民も大勢います。
まずは王の居城のある首都ミランダルへと向かうのはいかがでしょう」

「そうするか」
ナグディシスは答えた
一行は首都ミランダルを目指し西へと向かう。
絶望の始まりである。
549創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:06:07.01 ID:kS7LVKNN
 
550創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:06:36.58 ID:qKtbsPmW
第二章 〜魔王ナグディシス〜

白歴(びゃくれき)1267年

アルクラッド大陸北部、ミランダル王国に突如現れた魔王ナグディシス。またたく間に王国を侵略。ミランダル王国の王城は一夜にして落城した。
王国を象徴する美しい城はたったの一日でナグディシスの居城となり黒い霧と暗雲たちこめる禍々しい景観に変貌したのである。

侵攻から落城、ナグディシス王国と名を変えるまでは迅速に行われ、国民たちはナグディシスが魔王であるという事実は知らされず、王がすげ変わったと伝えられ、不安ながらもその事実を受け入れて日々生活をしていた。

国名が変わり、数カ月が過ぎようとした頃、魔王ナグディシスが本性を現し始める。
国境周辺に魔結界が出現し、国交が断絶。更に結界を越えようとした者は結界に焼かれ焼死する事件が頻繁に起こる。人々の国への出入国が不可能になった。

これを機に、全国民の税率が500%アップ。国から召喚状が届いた者は強制的に城に送還され、居城拡充の工事等の重労働を課せられる。更には働けない者、稼げない者等も同じように送還され、ナグディシスの食肉とされた。
また逆らう者は容赦なく公開処刑とされ、国民を恐怖のどん底に突き落とした。

ナグディシスの手足として働く霧人形兵ミストトルーパーが街に大勢姿を現し始めたのはこの時からだ。

ナグディシスが単なる独裁者でなく魔界から来た&#8246;魔王″である事を国民はこの時点で知らされることとになったのである。

玉座に座る魔王ナグディシス。

ナグディシスは忠誠を誓っているベイラとルピタに褒美を考えていた。『魔王の心臓』である。

ナグディシスは言う。
「貴様達に褒美をとらせる。『魔王の心臓』だ。特にベイラ。貴様の研究にはこれが必要だろう」

ベイラは少し笑った

ナグディシスは心臓を5つ持っている
その5つある心臓のうちの2つを口に手を突っ込み抜き出した。そしてベイラ、ルピタのそれぞれに1つづつ分け与えた。『魔王の心臓』は二人の肉体に融合した。ベイラは左腕に。ルピタは背中に。
融合した『魔王の心臓』は無尽蔵の魔力と力を二人にもたらしたのである。

ナグディシスは言った。
「大体の仕事は終わったな。今日を建国記念日にしよう。祝いだ」

ここに恐怖と絶望の国「ナグディシス王国」が建国されたのである。
551創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:07:16.96 ID:RLmv1cg0
:
552創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:08:27.33 ID:qKtbsPmW
第三章〜マーズ三世〜

ここはアルクラッド大陸北西部に位置する国サグナダージ王国

ナグディシス王国とはちょうど隣国になる。

サグダナージ王国三代目国王 マーズ三世
温厚で国民からの信望も厚い。また剣技に於いては右に出る者がいないほどの戦士でもある。
王妃を若くして亡くしており一人息子であるリン王子に母がいない事を不憫に思いとても可愛がり、
大事に育てている。リン王子、時に七歳。

リン王子は知らぬ間に風の精霊シルフと契約しており、風属性の初級魔法を行使できるようになっていた。
これには王も驚いた。王妃が元魔導師であった為か、さすがその血を継いでいる。我が子ながら感心していた。

しかしながら、初級魔法の『風の舞い』で宙を舞う(コントロールを誤ると落下や壁に激突などやや危険な魔法)のが大好きで
城内を飛び回り、衛兵たちに追いかけまわされ、王に怒られるという毎日を送っていた。
いたずら好きながらもとても大らかな子に育っていた。

そんな折である

国境警備隊より突如ナグディシス王国国境周辺に魔結界が張られたと知らせが入った。
マーズ三世は隣国ではミランダル王国が落とされ、ナグディシスに王が変わった事を常々懸念していた。
何せナグディシス王国が建国されたという通達以外サグダナージ王国、更に隣国のフレンセ帝国にも何の挨拶も無いのである。
勿論王はナグディシス王国にスパイを派遣していた。
しかしこれといった不穏な動きも無く他国への戦意も感じられないという草の情報から様子を見ていたのである。

元々サグダナージもフレンセも外交で高圧的に出る国ではない。
最小限の輸出入という外交があった為もあり挨拶が無いくらいで難癖を付けるつもりはなかった。
しかし突如の魔結界の出現である。

「ナグディシス王国で何かが起こっている」

結界により国交が断絶した今となっては情報を得ようにもその術が無い。

マーズ三世は国連に打診し、国境の魔結界強制解除の許可を得た。直ちに魔結界解除の研究にはいった。
そして王国の魔導師や錬金術師たちが5年の歳月をかけて結界に穴をあける事に成功した。

魔道具によって結界に数メートルの穴を開けるのだ。

直ちに伝令隊20名を組織しナグディシス王国に入国した。
20名は多すぎる?否、そんな事は無い。交渉人、弁護士の他18人の戦士と魔導師をパーティーとした。
マーズ三世には言いようのない不安があったからである。

程なくして返答が返ってきた。

乗獣イオーテが引く無人の獣車が結界を抜けて城に到着した。荷車にはナグディシス王国の旗が覆い被せてある。
衛兵はその旗をめくった。
戦慄した。
中には伝令隊20名の首20個が転がっていたのだ。
553創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:09:14.01 ID:kS7LVKNN
 
554創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:09:31.03 ID:qKtbsPmW
第四章 〜開戦〜

事態を重く見たマーズ三世はナグディシス王国に戦意有りとみなし開戦の意思を固めた。

最終的外交手段…戦争である。

王である戦士マーズ三世
人間族の戦士チェズニー・ホーク
刀剣やメイス等に変化し、チェズニーの武器となるイヌ族の変化士ブレイド・ウォンバー
イヌ族の攻戦士レイ・W・フリーゲ
イヌ族の魔導師リリンダル・ネスカ
以上五名の精鋭部隊を筆頭に1万の兵を率い侵攻の開始。

出発の日、イオーテに騎乗した父マーズ三世の傍にリン王子は駆けより、心配そうに見ている。

マーズ三世は優しく言った
「リンよ。そのような顔をするでない。父は必ず戻る。土産は何がよい?
焼き菓子か?リン。楽しみに待っておれよ」
父はにこりと笑顔を浮かべた
「さあ戻りなさい。危ないから」
そう言ったマーズ三世は兵の先頭に立った
「出陣!」

雲ひとつない快晴の青空のもと、楽団による戦のマーチが鳴り響く

地響きを鳴らし土煙を上げ、1万の兵がナグディシス王国へと出陣した。


国境に差し掛かると無数の魔道具により結界に巨大な穴をあけ
ナグディシス王国に続々と侵攻を開始した。

そして…

数日が過ぎた。
怪我をした兵士たちが帰還してきた。

その数僅か数百名。

リン王子は父を探した。
「父上ーっ!!!」
しかし王マーズ三世の姿は無かった

敗戦である。

重症を負いながらも精鋭部隊の中で生き残ったのはチェズニーとブレイド2名のみだった。
チェズニーは涙ながらにリン王子に詫びた。そして王の遺言をリン王子に告げる。
「リンはナグディシス王国の民を救いなさい。そして魔王ナグディシスを救いなさい。
父はいつでもお前の傍にいる」

リン王子は声がかれんばかりに泣き叫んだ。


後に幼名リン王子が王位を継ぎ、マーズ四世と改名。この時12歳。
幼き王の誕生である。
父の仇ナグディシスを討つ覚悟を決めるも、
遺言の「ナグディシスを救いなさい」という言葉に違和感を覚えていた。
555創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:11:02.94 ID:qKtbsPmW
第五章 〜マーズ四世〜

白歴1280年
風の精霊シルフと契約しているマーズ四世。7年間チェズニーから剣技を学ぶ。
父の仇とあって血のにじむ程の努力をした。そしてマーズ四世は19歳にして風魔法を自在に操り、
剣術にも長けた魔法戦士へと成長。
国民からは尊敬と畏怖の念を込めて『疾風王』の二つ名で呼ばれる。
マーズ四世はいよいよナグディシス王国侵攻を開始する

魔法戦士の疾風王マーズ四世
剣術の師匠である人間族の戦士チェズニー
ドギー族の変化士ブレイド
6大精霊全てと契約をしているカメ族の付与魔術師のマナイ・マタ
4人の精鋭部隊を筆頭に兵3万を率い、マーズ四世はナグディシス王国に攻め入った。
マーズ四世の初陣である。

ナグディシスの居城にて、マナイは付与魔術『狩人の気配』をパーティーにかけており完全に気配を殺していた。
更に『虚ろな姿』という透明とはいかないまでも目視が困難になる魔法も付与した。
他にも様々な付与魔術をパーティーにかけている。そして正面を兵たちが攻め、
囮となり、精鋭部隊の4名は居城裏側からの奇襲作戦を企てたのである。

城裏側2階より侵入。一階の広間にはナグディシス、ベイラ、ルピタの3人の姿があった
まずは側近を標的にした。ルピタ討伐である。

『狩人の気配』のお陰でマナイの呪文詠唱の声も聞こえていない。

「闇の精霊シェイドよ。契約により『影縛り』を、忌まわしきルピタ・クリーシーに行使せよ」

ルピタは不動になった。間髪いれず4人は2階より大広間に飛び降り、背後よりマーズ四世が『真空の一閃』で縦一文字に切り裂く。
ルピタはダメージを喰らい、ひるんだがすぐに再生する。『魔王の心臓』のせいだ。チェズニーから『魔王の心臓』のことは聞いていた。
完全再生の前にチェズニーとマーズ四世がルピタを千切りにする。

この間わずか数秒。再生能力は失われルピタは赤黒い砂となった。
ルピタ・クリーシーを討伐。まずは先制した。
556創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:11:23.67 ID:RLmv1cg0
:
557創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:12:22.28 ID:qKtbsPmW
しかしである。
気配を殺しおぼろげにしか見えないはずの4人をベイラは魔法『野生の五感』で捉えたのである。
ベイラは灼熱魔法である『魔界の灯火』という火球を放った。
その火球は正確にマナイに命中した。パーティーの戦闘力底上げ役を担うマナイが焼かれ死亡した。

幾重にも掛けられた付与魔術が全て解けたのだ。

「遊びは終わりだ」
そう言ったナグディシスは魔球弾を射出。マーズ四世の左腕に命中し腕が消失した。
「うおおぉぉぉぉぉ!!!」
痛みで顔が歪む。

「…父の仇…ナ…ナグディシス!…き…貴様…。貴様だけは絶対に許さん!」

ナグディシスはマーズ四世のもとに歩み寄り顔を近づけ平然と話しかけてきた
「マーズ三世の息子か…似てるな…!しかし貴様、子供ではないか。出直してこい」

そう言うと悠然と歩きだし、ルピタの遺体近くで脈打つ『魔王の心臓』を掴みそれを飲み込む。

マーズ四世は声を荒げた
「我はマーズ四世なり!父の仇ナグディシスを討つ!覚悟せよ!」

ナグディシスはベイラと共に玉座の間に姿を消した。

くしくもマーズ四世の初陣、魔王討伐は失敗に終わる。

それからというもの度々ナグディシス王国との戦争が起こった。
隣国フレンセ帝国からの援軍、国連からの義勇軍達のお陰もあり、国土を失う事は無かったが、
無尽蔵に湧き出る霧人形兵(ミストトルーパー)に手を焼き王国は疲弊していた。
しかし片腕を失ったマーズ四世だが剣技と魔法の修行は怠らなかった。

折りに触れ思い出す父の遺言
「ナグディシスを救いなさい」
マーズ四世には未だにこの意味がわからずにいた。

魔王討伐失敗から10数年の月日が流れていた。

時に白歴1293年

王国屈指の錬金術師により義手が作られ自在とは言えないまでも左腕を取り戻した。
契約しているシルフも魔力増大の修行と勉学に励み、同じく成長を果たした。
シルフは風を操る。爆風や真空もマーズ四世の呪文詠唱から僅かコンマ1秒単位の極短時間に作りだせるまでに成長した。

マーズ四世は指向性の風を体や剣を持つ腕で受け、太刀筋のスピードをUPさせる複合剣技を編み出した。
更には刀剣を指向性の風で受け、変幻自在の太刀筋による読めない攻撃。
爆風によりジャンプや飛翔、更に受け身や避けのスピードが数十倍にも上がった。

「魔王に勝てる!」
558創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:12:47.31 ID:kS7LVKNN
 
559創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:14:16.67 ID:qKtbsPmW
第六章 〜再決戦〜

チェズニーは父と共に初めてナグディシス戦に出向いた生き残りである。苦楽を共にしてきた友であり、父代わりでもある。
マーズ四世は率直に疑問を投げかけてみた。
「チェズニー。父上の遺言なんだが…。ナグディシスを救いなさいと言う意味が未だにわからずにいる。チェズニーは何か知ってるかい?」

チェズニーは遠い目をして流れる雲を眺めている。
「正直わからない。何故先代がリン様…いえマーズ四世に伝えようとしたのか…。
しかしマーズ四世の父上、先代はとても慈愛にあふれたお方。
もしかしたらナグディシスを救う事がひいては人類の為なのかもしれないと私は最近思い始めているんだ」
チェズニーは続けた。
「人は弱い。力はあってもね。もしかしたらナグディシスも弱い存在なのかもしれない。
『ナグディシスを救いなさい』という言葉の真意は、もしかしたら『ナグディシスの心を解きほぐしてやれ』という事なのかもしれない。」

マーズ四世は軽くショックを受けた。考えもしなかった。
ナグディシスの心の中…。

ナグディシスを救う事が正義。救う事が責務。

マーズ四世もチェズニーと同じく流れる雲を見上げた。


再戦の日が来た。
再びナグディシス王国に攻め入り、攻城戦の開始である。

魔法戦士の疾風王マーズ四世
戦士チェズニー
変化士のブレイド
そして新たに、凍結魔法の使い手でイヌ族のメーベル・モンブラン
更に隣国フレンセ帝国からの応援で結界師のシャルル・シャルドーレを迎え、
5人の精鋭隊を筆頭にサグナダージ軍兵7万、フレンセ軍兵5万、合わせて12万の大部隊を引き連れ決戦に臨んだ。
560創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:15:31.27 ID:qKtbsPmW
12万の部隊は無尽蔵に思えたミストトルーパーを次々と撃破。
更には黒の塔と呼ばれる巨大な塔の上に置かれた水晶を破壊。
ミストトルーパー達は一気に弱体化し、ナグディシス城を約10万の兵で取り囲む事に成功

残るは攻城戦とベイラとナグディシス討伐である。
城に侵入し、5人はベイラと対峙する。

マーズ四世はベイラに問いかけた
「今回の戦い少し趣が違う。私は父の遺言どおりナグディシスを救う事にした」
言葉を続ける。
「正直に言う。ベイラ。そなたからは邪気が感じられないのだ。何故にナグディシスに付き従う?答えよ!」

ベイラは答えた
「私は魔導追求のみを拠り所に生きてきた人間だ…いやもう人間ではないがな」
「ナグディシスの持つ『魔王の心臓』私の左腕の『魔王の心臓』これが私には必要だったの。真理を求める為にね…」

マーズ四世は問うた
「ベイラよ。そなたにとって善とは何ぞや!悪とは何ぞや!」

ベイラは答えた
「善も悪もみな平等よ。」

マーズ四世は首をかしげた

ベイラは続ける
「善と悪、有と無、光と闇、創生と終焉。森羅万象全ての対極の彼岸では全てが一つの真理で統一されているの…」
「私が求めているのは真理」

マーズ四世は理解に苦しんだ。
「意味がわからぬ。では真理とやらを求めるなら罪もない人々の命を奪う事もいとわぬと申すか!」

ベイラは口角を上げて答えた
「……必要ならば」
ベイラは続けた
「しかしマーズ四世。あなたがナグディシスを救うと言うならナグディシスのもとへおいきなさい。
ナグディシスは強すぎる。しかし誰にもわからない闇を心に抱えている。その呪縛から解放すればあるいは…」

その時シャルルが叫んだ
「マーズ四世!ベイラの思躁術です!!!惑わされてはなりません!!!」
561創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:15:33.85 ID:RLmv1cg0
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562創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:15:54.81 ID:kS7LVKNN
 
563創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:18:44.27 ID:gWxQk6+N
ベイラは言う
「思躁術など使っておらぬが…。フフ…やはり戦いは避けられぬか…
マーズ四世よ。とにかくナグディシスのもとへ。」

マーズ四世はナグディシスの玉座の間に走った。

灼熱魔法を得意とするベイラ。
メーベルの禁忌呪文『凍てつくトゥグートッカ』これは究極の氷結呪文で、
物理的にはあり得ない−七千度という極低温を発現する。
バングルに仕込んだ紺碧のエリクシルを使用したコルト言語魔法の一つである。
これによる灼熱の相殺をおこない、加えてシャルドーレによる17層にも及ぶ魔法結界により、超高熱にも対処できる

ベイラは数々の灼熱呪文を詠唱したがあらゆる呪文が霧散する。
結界と凍結呪文が功を奏した。

ベイラ討伐も間近である

「くっ!…まだ未完成…しかしアレを使わざるを得ぬか…!!!」
ベイラはとてつもない魔法を行使した。

『太陽の欠片』

コルト言語魔法を応用した複合魔術(クロティマギア)である。
4人は超電磁結界に封じ込められた。
そして左腕のナグディシスの心臓からの全ての魔力を熱躁術によって超電磁結界内全ての分子を暴走させたのだ。

その温度、実に数千万度
『凍てつくトゥグートッカ』の温度は−七千度。17層の魔法結界でこの熱量に対処できるのか。

超電磁結界が消え去りプラズマ光が辺りを照らす。

中心部には4人。
なんとか超高熱に耐えたのだ。


ベイラの全魔力を持ってしても4人を倒す事は出来なかった。
『太陽の欠片』が未完成な呪文故に熱量が足りなかったようだ。

ベイラが口を開いた
「見事。4人の勇者たちよ。…しかし私はまだ死ぬわけにはいかない」

そう言うと右手にはめたマルダディウスの指輪にそっと触れた。ベイラの身体が青白い光に包まれる。

チェズニーが叫ぶ
「いかん!テレポートだ!ベイラを逃がすな!」

ベイラが呟く
「4人の勇者よ。マーズ四世のもとへ向かいなさい。」
そう言うと光と共にあっと言う間にベイラの姿は消えた。

ベイラを逃がしたものの辛うじて勝利した。
「ナグディシスを救う…か。」
チェズニーが皆に言った。
「行くぞ!玉座の間へ!」
564創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:20:05.80 ID:gWxQk6+N
場所は変わり、玉座の間…

「久しぶりだなマーズ四世。ずいぶんと成長したな。」

マーズ四世は問うた
「ナグディシスよ。もう止めないか。これ以上民を苦しめるな」

「俺は全世界の奴らに絶望を与えたい。ただそれだけだ」
血走った目には狂気すら感じる。

マーズ四世は語る
「何故そのような理不尽を望む?人々を苦しめる事に何の楽しみがあ…」
ナグディシスは言葉をかぶせてきた
「意味がわからんわ!お前たち人間と俺とで何が違うというのだ?
お前は王国で蝶よ花よとぬくぬくと暮らしてきたんだろう?世の中には絶望が満ち溢れているんだよ!」
言葉を続ける
「理不尽な行いがお前の知らない所でたくさん起こってるんだよ?箱入り息子は世間を知らんのか!
これはいかんな!もうちょっと世間ってものを知らないといかんな!」

是非もなしである。やはり討つしかないのであろうか。

「俺が教えてやろう!絶望をっ!」

ナグディシスは体術も剣術も知らない。只々、魔力の塊での殴打、魔球弾射出という原始的な独自の戦闘法。
一方のマーズ四世は精巧無比な剣術に加えトリッキーな体勢からの斬りかかり。変幻自在の太刀筋。
爆風によるブーストで筋力を上回るスピードを出して攻防する。

前回は圧倒的戦力差で敗北したマーズ四世だが今、ナグディシスを押している
気のせいか悲しげに見えるナグディシスの顔…

闘いながらマーズ四世は言う
「ナグディシスよ!そなたは苦しんでいる!邪悪さの裏に心の闇を抱えている。一体お前は何者なのだ」

防戦していたナグディシスが声を荒げる。
「何を…お前に何がわかると言うんだ!」
ナグディシスの暴走した魔力で吹っ飛ばされるマーズ四世。更に魔球弾を右足首に受け、足首が消失した。
そして壁に激突するその刹那、シルフが壁に高圧のエアクッションを生成。緩衝材となり激突を免れた。
そのまま地面にずり落ちるマーズ四世。あわやの瞬間だった。

激痛に耐えながらも意識を失わずナグディシスと向き合う。
マーズ四世は語りかけた。
「うくっ…き…貴様に伝えなければならない事がある…わが父マーズ三世が私にいまわの際に残した言葉…。
ナ、ナグディシスを救いなさいと…」

マーズ四世は続けた
「ナグディシス!私はお前を救いに来た!」

ナグディシスは顔を歪めた。
「…俺を救う?命乞いか?」

ナグディシスは益々顔を歪めた。
「…人間風情が。性根の腐った人間風情が何を言うか!」
この言葉がナグディシスの逆鱗に触れたようだ。魔力の暴走が数倍にも跳ね上がっている。
ナグディシスの目から涙が見える。
再び戦い始めるも右足首を失ったマーズ四世は防戦一方に。完全に押され始める。

「もういい死ねっ」
565創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:20:10.29 ID:kS7LVKNN
 
566創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:21:04.86 ID:gWxQk6+N
マーズ四世は死を覚悟した。父の遺言を成就する事はできないのか。

その時である。
城が轟音を上げ激しく揺れる。

壁が崩れ始め、爆音とともに壁に穴が開いた。
埃まみれの中、ナグディシス以外の威圧感を感じる。
壁の穴から金色の二つの眼が光る。何かいる。

埃が晴れてきたその時、壁の穴から巨大なドラゴンが上半身をのぞかせていたのが見てとれた。

「…ドラゴン?」

「我はゼーラゴン。万物を超越せしモノである」
「ぬしら人間共の縄張り争いなどには全く興味はない。だがナグディシス。いやムグルよ。
そなたにはいささか興味があってな。忘れてしまった事を思い出させてくれよう。マーズ四世も聞きたかろう?」


ゼーラゴン。
ラダリウムという星が生まれた時から存在したといわれているドラゴンを超越したドラゴンである。
時には隕石落下を阻止し、数千万の民の命を救ったかと思うと、
同時代に歴史上、悪名を残した独裁者や凶悪犯達を大量に召喚し、人々を戦乱の渦に巻き込んだりと
支離滅裂な行いをする。要はラダリウムの中で遊んでいるのである。

魔王ナグディシスをムグルと呼んだゼーラゴン。ナグディシスは顔をしかめた。
「…は?ムグル?ナニをいってる!俺の名前はナグディシスだ!魔王シェリー・ナグディシスだーっ!」
ナグディシスはゼーラゴンに魔球弾を放ったが全くダメージが無い。無いどころか届く間もなく霧散した。

意に介さずゼーラゴンは言う。
「見せてやろう。真実を」
567創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:22:15.33 ID:RLmv1cg0
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568創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:22:27.61 ID:gWxQk6+N
第七章 〜ナグディシス〜

時はさかのぼり白歴1159年

ナグディシスは魔王を名乗っているが、正確には魔王では無い。
魔界生まれの魔物では無く、元はヒュノム族の奴隷。つまりは只の人間だったのである。
生まれながらに、奴隷の家系であり、物心ついた頃には既に身売りされ、重労働を課せられていた。

この時の名は&#8246;ムグル″

ここは城塞都市ミカゲにあるミカゲ石鉱所

ムグルは幼少期からミカゲ石鉱所での強制的な重労働に加え、面白半分の体罰や拷問という、
気が触れんばかりの地獄のような毎日を過ごしていた。
しかし、彼の精神を支えていたのは飯場で働いていた、とある人物の存在である。

その人物の名はシェリー・ナグディシス。無垢で可憐な17歳の少女である。

奴隷の恋愛は厳禁とされていたが17歳になったムグルはシェリーと恋に落ちていた。
ボロ雑巾のようなムグルをシェリーは一生懸命支え、時には命すら顧みず彼を守っていた。
過酷な日々を心折れることなく過ごせていたのは紛れもなくシェリーがいたからである。

そして事件は起こった。
ムグルは産まれてこの方、菓子という物を食べた事が無い。
それを聞いたシェリーはムグルに焼き菓子を作って食べさせてあげようと考え、少ない賃金の中から、飯場で少々の小麦と砂糖を購入。

しかし購入先の店の売り子ラードは、常々売上金を着服していた。
着服が店主にばれそうになった事を恐れ、事もあろうにシェリーにその罪をなすりつけたのである。

シェリーは焼き菓子を作り、喜びいさんで二人の秘密の場所でムグルと会った。
と、その時…

「シェリー・ナグディシスだな!そっちはムグルか…こんな所で密会かっ!」
いきなり自警団4人に取り囲まれ、二人は窃盗、密会、奴隷恋愛の罪を着せられた。
シェリーはムグルの目の前で自警団の男たちに惨殺された。
あまりにもむごい仕打ちである。

その時…ムグルは壊れた。

ムグルの全ての物。ムグルの全ての世界が音を立てて壊れてしまった。

ムグルは自警団4人を殺害。シェリーが作ってくれた焼き菓子の入った麻袋を持ち、ミカゲ石鉱所から逃亡した。

「…魔界に行こう」
569創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:23:17.04 ID:gWxQk6+N
魔界がどこにあるか、現代のラダリウムの科学力ではわかっていない。但し、そこかしこに魔界の入口が存在する。
ムグルは無学ではあったが戦士並の体力と力は持っていた。
木の根やつるを食べ、生き延び、魔界へと旅立つ。
そしてムグルは偶然にも稀少な薬『魔神の胆汁』を手に入れたのである。

『魔神の胆汁』とは、飲めば魔王クラスの魔力が手に入る薬である。
但し、負の感情を持たない者、また持ち合わせていても足りない者が飲めば、
死よりも恐ろしい魂の消失、世に言うロストを引き起こす。この世からもあの世からも消え失せてしまうのである。
魔界の住人でさえ、飲みほした者は過去数人。その全てがロストしている。
憎悪、恨み、妬み、全ての負の激情が人類に向けられていたムグルになんの躊躇も無かった。
魔王になれると言われている『魔神の胆汁』を飲みほしたのである。

その瞬間ムグルの身体を発狂せんばかりの激痛と感情のうねりが襲った。
その激痛と感情のうねりはおよそ100年続いた。
意識を失うことも、死ぬ事すらも許されず、およそ100年続いた。

そしてようやく治まった。

右手には何故持っていたかすら忘れた麻袋。中には腐った焼き菓子が。
おもむろにそれを頬張った。

自分の名前すら覚えていない。しかし何故か自分がシェリー・ナグディシスだと思った。


「…俺…は…ナ、ナグディシス…。シェリー…ナグディシス」


魔王が誕生した。
世界の全てを憎み、欲する、絶望の魔王ナグディシスが誕生した。
570創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:23:39.81 ID:kS7LVKNN
 
571創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:24:15.67 ID:gWxQk6+N
第八章 〜救い〜

ゼーラゴンは父マーズ三世にナグディシスの生い立ちを教えていた。
父は優しすぎたのだ。
ナグディシスとまともにやり合えず、討ち死にしてしまった。

奴隷時代の事。自分がムグルという人間だった事。そしてシェリーの死
ナグディシスの心の中に全ての記憶がゼーラゴンによって甦った。
ナグディシスの心の叫びはマーズ四世にも同じく心に伝播した。

「おおおおぉぉぉーっ!!!」
泣き崩れ絶叫する魔王ナグディシス。

ただ立ちつくし、ナグディシスを見つめる事しか出来ないマーズ四世。

ゼーラゴンは語る
「黄泉の国からムグルに伝言がある。シェリーからだ。」

ナグディシスはとっさにゼーラゴンの方を向いた。

ゼーラゴンは続ける
「ムグルありがとう。愛しています。」
「以上だ」

ナグディシスは問いかける
「ゼーラゴン。お前の力で俺の魂を消失させる事は出来るか?」

ゼーラゴンは語る
「可能だ。しかし断る」

マーズ四世はナグディシスに話しかけた
「ナグディシスよ。貴殿は魔王などではない。人間なのだ。貴殿は紛れもなく血の通った誇り高き人間だ」

ナグディシスは突然口に手をズブズブと入れ始めた。
そしてえづきながら三つの臓物を引きずりだした。ビチャっと音を立てて床に落ちる四つの臓物。
『魔王の心臓』だ。ナグディシスは両の手に黒い霧を集め四つの『魔王の心臓』を握りつぶした。
『魔王の心臓』はサラサラとした赤黒い砂に変わった。
ナグディシスはマーズ四世に言った
「さあ今のうちだマーズ四世。俺の首をはねろ!」

たじろぐマーズ四世。

床に落ちた赤黒い砂はうごめき始め、再び四つの心臓に姿を変えようとしている

ナグディシスは叫んだ
「早くしないか!心臓が再生する!頼む!俺を救ってくれ!」

一瞬の躊躇の後、剣を構えナグディシスの元へ走る。
「うぉおおおおおぉぉぉ!!!」
咆哮するマーズ四世
572創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:24:50.84 ID:gWxQk6+N
横一文字に剣をふるいナグディシスの首をはねた。

「そう…それでいい…ありがとう。マーズ四世…」

ナグディシスの身体から、赤黒い砂と霧が一気に噴き出した。
あたり一面砂煙に覆われたが、その真ん中で金色に光る一つの光球

ナグディシスの身体が優しい光に包まれる。
「マーズ四世。俺のようにはなるな…さらばだ…」


光の球となったナグディシスは轟音を上げ天高く舞い上がり光の柱となって、やがて消えた。

「ナグディシス…」
ナグディシスを討った。マーズ四世はとうとう魔王ナグディシスを討伐したのである。
「終わったか…」


ゼーラゴンが語る。
「ナグディシスは黄泉の国へ旅立った。そこで今まで犯した罪を償う事になる。」
「さて…、マーズ四世よ。そなたも殺してやろうか?父上に会いたかろう?」

マーズ四世は言った。
「私には民を守る責務があります。その申し出、お断りいたします」
「ゼーラゴン。感謝いたします。私ではどうする事も出来なかった」

ゼーラゴンは言う。
「礼には及ばぬ。人間を玩具にするのが我の楽しみであるからな。さらばだ」

そう言ったかと思うと、百数十メートルの巨体を翼が持ちあげて、悠然と姿を消した。

「マーズ四世−っ!」
4人が駆け寄ってきた。

マーズ四世は語る。
「終わったよ。全て終わったのだ。」
4人は歓声を上げ、マーズ四世に抱きよった。
マーズ四世の心は勝利の喜びと、えもいわれぬ悲しみが交錯した複雑な感情を抱いていた。

そして大きく開いた壁の穴から太陽の光が差し込む。
夜が明けてきた…
573創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:25:01.46 ID:RLmv1cg0
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574創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:25:38.46 ID:gWxQk6+N
第九章 〜凱旋〜

ナグディシスが討伐されたと全ての兵に知らせられた。
約十万の兵は地響きが鳴り響くかの如く歓声を上げ、皆の無事、勝利を讃えあった。

マーズ四世は涙にむせびながらも朝日を背に、兵たちの前で高々と拳を上げた。

帰国後、祝勝会が国を上げて行われた。数十年の長きにわたる戦争がここに終結したのだ。

そしてナグディシス王国はミランダル共和国に名を変え、大統領選挙を行うそうである。
被害は甚大であったが、隣国や国連からの援助もあり、国家再建の光に民は希望を見出しているそうである。


「父上…全てが終わりました。」
夕焼け眩しい中、マーズ四世は父マーズ三世の墓前に立っていた。この時32歳。
父マーズ三世の遺言「ナグディシスを救いなさい」という言葉を成し遂げたのだ。
そしてマーズ四世は父の器の大きさを改めて感じ取っていた。

そして…
そっと墓前に手製の焼き菓子を供えた。

後の数百年、サグナダージ王国は隣国ミランダル共和国、フレンセ帝国共々、
友好関係良好のまま繁栄の一途をたどったという。
575創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:26:08.58 ID:kS7LVKNN
 
576創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:28:06.98 ID:c/wb1Sv5
終章 〜贖罪〜

ベイラは走っていた。
先程の戦いで全魔力を失ったのでこの数カ月は魔法が使えない。

魔王ナグディシスの死を感じ取ったベイラはナグディシス居城地下迷宮を走っていた。
ナグディシスが救われた。ナグディシスが黄泉の国へ旅立った。

左腕に融合したままの『魔王の心臓』は『太陽の欠片』を行使しても、
ナグディシスが死んでもなお元気に脈打っている。

延々と続く地下迷宮をさまよいながら走った。
泣きながらベイラはぽつりと呟いた。
「真理の追究。本当にそれが私の贖罪なのか…」

その後、数百年の間、ベイラの姿を見たものはいない。





終わり
577創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:30:18.15 ID:c/wb1Sv5
以上です
連投お目汚し失礼しました

処女作の三文小説ですが読んで頂いた方ありがとうございます
ご意見ご感想など頂けたら嬉しいです
578創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:33:37.70 ID:kS7LVKNN
おつ
579創る名無しに見る名無し:2014/03/17(月) 03:41:35.69 ID:c/wb1Sv5
>>578
ありがとうございます
580創る名無しに見る名無し:2014/05/22(木) 21:39:07.34 ID:TLQFgiEO
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581創る名無しに見る名無し:2014/06/02(月) 22:09:03.31 ID:e2w4jFzo
文房具たちによるファンタジーストーリーです。
 2分20秒間の作品です。
  ↓  
http://youtu.be/0Lrp7JWkWOs
582異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/06/15(日) 20:12:55.45 ID:jxCsSyGe
ファンタジー要素少なめの現代超能力バトルものです。
投下します。
583異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/06/15(日) 20:13:42.48 ID:jxCsSyGe
時は現代。
ここは、『超能力』が身近なものとして存在する、とある並行世界の一つ。
これは、その世界で生きる、とある『超能力者』達の物語。


第1話「危険なかほり」
584異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/06/15(日) 20:18:25.11 ID:jxCsSyGe
極東の島国にある世界有数の巨大都市、その名も『ヤマトシティー』。
そのとある大通りでは、先程から道をあてもなく行く一人の若い男が注目を集めていた。
ナイフのように鋭い切れ長の目に、凛とした眉、整った鼻筋、引き締まった頬……。
なるほど、顔を構成するパーツは確かにそこそこの優良品揃い。人の目を引いたとしても、別段不思議ではないかもしれない。
だが、実際のところ、人々が注目していたのは、そんな恵まれた顔立ちなどではなかった。
というのもその男、頭の先からつま先に至るまで、とにかく異様だったのだ。

地毛なのかそれとも染めたのかは定かではないが、頭髪は燃えるような赤一色の無造作な半オールバック。
背中に般若の刺繍が入ったボロい藍色の道着に袴、汚れた草履という悪趣味全開の服装。
そして黒い眼帯に覆われた左目に、肩口から先が無い左腕……。
(おいおい……抗争に明け暮れたヤクザ物か?)
(単なるコスプレでしょ?)
(キッモ! 死ねよ!)
(目を合わすな。何されるかわかんねーぞ)
普通の風貌さえしていれば、周囲も先天的な障害者か、あるいは過去に事故か事件に遭った不幸な被害者かと考え、
己の中に潜在的に存在する差別的意識を表に出さないよう努めたことであろう。
しかし、まるでどこぞのファンタジー世界から飛び出してきた浪人のような奇天烈なファッションをしていては、
周囲が悪い方へと物事を解釈し、ひそひそと不快そうに囁き合ってしまうのも無理は無いと言えた。
(フン……)
男は、そんな人々のしかめっ面を流し見ては、フッと鼻で笑みを零す。
まるで芝居がかったリアクションが大好物の中二病患者のようだが、
その目には、単なる中二病患者には決してない、獲物を定める猛獣のような、鋭くかつ不穏な光が確かに宿っていた。
(…………)
男は、それに気がついた者がいるかどうか、人々の表情に微妙な変化がないかを注意深く観察する。
しかし、やがてどうやらいないことを確信したのか、ケッと不満をあらわすように小さく吐き捨てた。
(どいつもこいつも見た目にばかり気を取られ、殺気なんぞに気付きもしねぇばかりか、大した『気《パワー》』も持ってねぇ……。
 要するに、ここにいる奴らは揃いも揃って雑魚ばかり……)
心底落胆したというように、男の目から見る見る内に殺気とその鋭い眼光が消え失せて行く。
「ふぅ」
それが完全に消えた時、男は溜息をつき、そして己の興味を遥か遠方に存在するまだ見ぬ人々へと向けていた。
それは男の妄想でも、思い込みでもない。
確かに男は、五感では感じ取れない場所にいる人間の存在を、明確に把握することができていた。

何故そんなことが可能なのか?
それは男が人間離れした『超感覚』を持っているからに他ならない。
空間を乱雑に行き交う電波を無線がキャッチするのと同じように、男の持つ五感を超えた感覚機能が、
人が無意識の内に垂れ流す『気』を──空間に漂う目には見えない『気配』をキャッチしているのだ。
それも一つや二つではない、数百、数千、いや数万という膨大な数の気配を。
無論、そんな芸当は今も昔も普通の人間にできることではない。
そう──人間離れした力を持った存在、俗に言う『超能力者』でもなければ。

(──……ッ!!)
ぼんやりと前を見据えながら、あてもなく道を進んでいた男がその足を止めたのは、溜息をついてから二十秒ほど経った時だった。
「……ほォ?」
閉じきっていた唇から思わず声を漏らした男は、目を夕暮れを迎えつつあった西の空に向けて、一つしかない拳を固く握り締めした。
そして何がおもしろいのか一人くつくつと笑い出した。
周囲の人間は誰もが一層キワモノを見るかのような苦い顔をしたが……それはほんの一瞬に過ぎなかった。
その場にいる誰もが、次の瞬間、その顔を一斉に凍りつかせて、絶句したのだ。
「いやがった……。ククク、やっと一人、見つけたぜェ……!」
男が、どす黒ささえ感じさせるような狂気を顔に張りつけたかと思えば──
ダンッ、と大地を蹴り、高々と空中にその身を舞い上がらせて、やがて西の彼方に消えて行ったのである。

あまりにも突飛な光景に、人々はしばし、狐につままれたような顔をしながら無言で西の空を見上げていたが、
「あ、あいつ……」
やがて我に返った一人が、その静寂をこう打ち破った。
「あいつ『異能者』だったのか……!」と。
585創る名無しに見る名無し:2014/06/15(日) 20:19:11.50 ID:QIHRnaFg
紫煙
586異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/06/15(日) 20:37:52.79 ID:jxCsSyGe



「がは……」
「ぐぐぐ……」
夕闇迫る空の下、とある路地裏から響き渡る苦悶の声。
そこでは紺のブレザーに身を包んだ数人の少年達が、口から鼻から血を流して地面に蹲っていた
「俺の目の前で女一人に囲み喰らわすなんてふざけたことしやがって。これに懲りたら二度と悪さすんじゃねぇぞ!」
そんな彼らを見下ろす形で仁王立ちしたのは、中肉中背の体に黒の学ランを纏った、
少々長めの黒髪を逆立てたヘアスタイルが特徴的な一人の少年であった。
「っざけんじゃねぇぞ……! 底辺の『市高《いちこう》』の分際でっ……俺達を……っ! ただで済むと思ってんのかっ、ああっ!?」
すると、地面に蹲るブレザー集団の一人である茶髪の少年が、腫れ上がった頬を押さえながら立ち上がり、その彼に向けて声を荒げた。
「あ〜あ、嫌だねぇ。私立のエリート制服を着てるってだけで威張っちゃってよぉ」
しかし、それに肩をすくめて言い返したのは黒髪少年ではなく、その彼より一歩後ろの位置に陣取っていたもう一人の少年であった。
黒髪少年と同じ学ランを着て、一部分だけに白髪が集中した癖のある黒のロン毛を軽く後ろに流したヘアスタイルをしたその少年は、
呆れたように髪をかきあげて言葉を続ける。
「確かにおたくらの学校はレベルが高いんでしょうけど、質はピンからキリ。
 だから実際におたくらは底辺のはずの俺達にボコられたんでしょう? 制服だけで自分が強いって思うのはどうなんだろうねぇ?」
「っ! てめぇ……!!」
今にも襲い掛からんとばかりに凄む茶髪だが、黒髪少年を前にしてはどうすることもできないのを知っていた白髪混じりの少年は、
全く怯む様子もなく逆にふふん、と鼻で笑って怒気をいなす。
「どーせカリキュラムについていけなくなって途中で脱落した単なるエリート崩れでしょ?
 さっきから使ってる『一次異能』だって全部中途半端じゃない。その様子じゃ『二次異能』だって持ってないんじゃないの?
 それだとちょっと俺達の相手にはなれないんだよな〜、残念ながらさ〜」
「ぐっ……! さっきから聞いてりゃ……!」
痛いところを突かれて、茶髪は白髪混じりの少年の表情に一瞬、焦りのようなものを浮かべさせるほど、その顔を怒りで沸騰させるも、
「なんだ? まだやんのか?」
と、黒髪少年に凄まれては、結局、怒りを押し殺すしかなかった。

「まだ文句があるならいつでも俺のところへ来な。この『連城光太郎《れんじょうこうたろう》』、逃げも隠れもしねぇからよ!」
ビシ、と親指で自分を指しながら啖呵を切る黒髪少年、連城光太郎に、茶髪とその仲間達は口々に叫ぶ。
「ち、ちくしょう……! 覚えてやがれ!」
そして、蜘蛛の子を散らすように我先にと路地裏の奥へと去っていった。

最後の一人の後姿が完全に視界から消えたところで、残された二人は互いに顔を見合わせ、やれやれ、と肩を竦める。
「カラオケ行くはずだったんじゃなかったっけぇ? 光太郎ォ? 夕方になると混むから早く行こうって言ったのお前だぜぇ?」
「じゃあ見て見ぬ振りをしてりゃ良かったのかよ? 女が一人絡まれてたんだ、放っとくわけにはいかなかったろ?」
「だからだなぁ、こーゆーのは警察の仕事なんじゃないかね? 毎度毎度こんなことに首突っ込んでよぉ、いずれ死んじまうぞ?」
「そん時はそん時だよ、博士」
特に思いつめる様子なく、そうなったら本望だといわんばかりにけろっとして言い切る光太郎に、
博士こと『平々博士《ひらたいらひろし》』は、はぁ、と大きく溜息をついた。
(全く、こいつと一緒にいると命がいくつあっても足りねぇよ……)
光太郎と博士は小さい頃からの幼馴染である。
故に、光太郎の困ってる人間を放ってはおけない、そんな正義感の強い性格が今に始まったことではないのも知っているし、
そんな人間と一緒にいる人間の苦労がどれほどのものかも、身に染みて知っている。
なのに、気付けばいつも彼と一緒にいるし、彼が関わろうとすること全てに、自分もついていってしまっている。

「博士こそお節介も程々にしたらどうだよ? 大体、『トラブルは御免だ』っていつも自分で言ってるだろ?」
光太郎はその原因が生来のお節介焼きの性格にあると解釈しているようだが、
「わかってンだよ、自分だってさ。……でも、わかんねーけど、気がついたらお前の後をついてってるんだよなー」
当の博士自身はそれに対し首を捻る。
よくは言えないが、自分でも気がつかない『何か』を光太郎から感じていて、無意識の内にそれに惹かれているのではないか──
そんな気がしてならなかったからだ。
587異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/06/15(日) 20:52:58.42 ID:jxCsSyGe
「ま、何だっていいけど……」
いい加減、不良達の血の臭いが立ち込める辛気臭い路地裏からは出ようぜ。
そんなことを言うように踵を返した光太郎だったが、博士はそこで一瞬、彼が呆れたような半目で自分を流し見たことに気がついた。
「ん?」
「何だっていいけどさ、お前、さっきの茶髪に『俺達にボコられた』って言ってたろ? 俺の記憶が確かならお前、何もしてなかったよな?」
博士にも、自分が喧嘩に参加した記憶はなかった。
なので博士は、パチンとフィンガースナップして、茶目っ気たっぷりに言い放った。
「その通り! 俺はただ見てただけ! よくまぁ細かいところに気がついたもんだ! 褒めてつかわす!」
勿論、そんなことを言われて大げさに喜ぶ奴はいない。
が、光太郎も特に怒ったりすることなく、ただただ苦笑いを浮かべて頭を掻くだけである。

「いつものことだけどなー。見てるくらいなら少しは加勢してくれてもいいんじゃねーの?」
「知ってんだろ? 俺ぁ喧嘩が苦手でね。見るだけなんだよ」
「向こうだって『異能』を使ってきたんだ。お前も自分の『力』を使えば、ああいう連中の一人や二人、返り討ちにできると思うけどな」
「お前と一緒にすんなって。俺は根っからの平和主義者だし、なにより、俺の『力』はお前と違って喧嘩向きじゃねーのよ」
「……まぁ、『力』云々はともかく……お前の言う平和主義者ってのは、単に臆病を言い換えただけだろ?」
「ああ、そうとも言うな」

きっぱりと、それもどこか自慢げに聞こえる科白に、光太郎はいよいよ盛大に溜息をついて、次いでむしろ褒めるように呟いた。
「博士らしいぜ」
博士は、いやーそれほどでも、と茶目っけのある人間らしくオーバーに照れてみせたが、
(……?)
次の瞬間には、顔を真顔へと戻していた。
光太郎の僅かな表情の変化。それもマイナスな気持ちに傾いている時のそれに、気がついたからである。
「……光太郎、これからどうする?」
だから博士はまず彼の意思を確認することから始めた。

「──悪いな、博士」
光太郎は直ぐに答えた。
「ちょっと用を思い出しちまった。もうカラオケも混んでるだろうしよ、また明日にしねぇか?」
あたかも、うっかりしてたぜ、とでも言うように苦笑する光太郎を見て、博士は
(なるほど……)
と心の中で冷静に頷きながら、顔には如何にもガッカリしたという表情を浮かべてみせた。
「なんだよ〜、話が違うじゃね〜か、えぇ〜?」
「悪い悪い。“一人で行かなきゃならねぇところがあるんだ”。じゃ、また明日学校でな!」
「おう、気ィつけてな」
人気の無い路地から、今度は更に人気のなさそうな郊外へと向けてそそくさと走り去っていく光太郎の後姿を見送りながら、
博士は光太郎が最後に言い残した言葉を咀嚼する。

『一人で行かなきゃならねぇところがあるんだ』
本人が気がついているかは定かではないが、光太郎が一人でと言う時は、本当にヤバイ事に首を突っ込もうとする時なのだ。
「……『危ねェから絶対について来るな』ってことだろ?」
相手が不良だとか、チンピラ相手だと分かってる時は、『ちょっと行って来る』がお約束である。
実際、先程叩きのめしたブレザー集団に絡みに行った時もそうだった。
一人と限定しないのは、要するに、喧嘩が苦手の博士がついて来ても、自分なら守れるという自信があるからこそ。
「大丈夫、行かねぇよ。ヤバイ事は御免だし、なにより……足手まといがいちゃお前だってヤバイんだろうしな……」
光太郎と博士は『異能者』と呼ばれる、世間一般で言うところの『超能力者』と呼ばれる存在である。
しかし、その両者では多くの決定的な違いがあり、その一つが『能力者の気配を感知する能力の有無』であった。
光太郎はその能力を持っているが、一方の博士にはないのだ。
だから光太郎は博士に気取られず、強いパワーを持つ存在に気付くことができた。
用を思い出したという取ってつけたような理由を敢えて用いたのも、だからこそなのかもしれない。

「……ったく、他人様のことにわざわざ関わろうとする、お前の方がお節介じゃねーか。
 明日とか言ってたが、どこまで信じられるんだよ……。朝一番のニュースになってなきゃいいが……」
光太郎の安否を気にしつつ、どこか他人事のように言葉を紡ぐ博士だったが──……
実はこの時、既に『ヤバイ事』が自分自身にも迫りつつあった事を、彼はまだ知る由もなかった。
588異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/06/15(日) 20:59:08.81 ID:jxCsSyGe



博士と別れてからの光太郎は、とにかく早かった。
普通、人は徒歩で目的地に行こうとすれば、どうしても道をその二つの足で駆けていかなければならない。
目的地が直線距離にして1kmの場所にあっても、その間に人家があり公共施設があり川があったりすれば、
道はその分うねった造りとなり、実際に移動する距離は間違いなく直線距離よりも遥かに多くなるものだ。
つまり、移動に時間がかかるということになる。
しかし、光太郎はその常識を無視する移動術によって、驚異的な時間短縮に成功していた。

光太郎が道に選んだのは、なんと建物の屋根だったのである。
ヤマトシティーは総人口1500万人を超える大都会。どこを見ても人工建築物で溢れている。
彼はそれに、目的地までほぼ『一直線』に突き進めるルートを見出したのだ。
それはすなわち、屋根から屋根へ、ほとんど一定の間隔で設けられたそれらに飛び移るというもの。
常人にとっては困難なれど、常人とは違う『力』を持つ異能者たる光太郎にとっては、筆記試験の問題を解くよりも楽な作業だ。
(そろそろだ。確かこの辺りで“二つ”の大きな『気』が一瞬膨れ上がって、そして直ぐに片方が弾けて消えたんだ)
光太郎の脳内では、感じ取った二つのパワーが風船にイメージされていた。
針のついた二つの風船が一気に膨らみ、互いを突き刺そうとしたが、一瞬早く片方が相手を突き刺して破裂させた。
破裂が死を意味しているとなると、事は重大である。
そして現状、その可能性は高いと言える。実際に消えた方の気配は、今も尚、依然として完全に消えたままなのだから。
(気の大きさからしてどちらも俺と同じ、異能者に違いねぇ。だが、問題はそのどちらかが異能を使ってコロシをやったってことだ。
 異能を使った犯罪……そんなもんは毎日、どこかで必ず起きてる。今に始まったことじゃねぇ……)
目的地近くまで辿り付いた所で、光太郎は足を止め、近くに怪しい奴はいないか、変わったところはないかを確認する。
(けどよ──……)
キョロキョロと見回す目。それを、ふとある一点にピタリと止めるまで、そう時間は要さなかった。
そこは、危険ということで関係者以外立ち入り禁止となり、既に作業時間外ということもあって、全く人気が無くなった解体途中の古ビル。
次の瞬間、光太郎は何の躊躇もなく、そこへ向けて大きく跳躍していた。
勘ではない。確かな臭いを感じ取ったからだ。
常人よりも五感が強化された、異能者だからこそ嗅ぎ取ることができる、微かな『死の臭い』を。
(──全員とは言わねぇし、そんなのは無理だってのわかってる。が! 俺は助けたいんだ。一人でも多くの人間を……!!)
生きててくれ──。
頭ではその可能性は極めて薄いことが解っていながら、それでも光太郎は奇跡を信じて暗闇の中を必死に目を凝らす。

「っ!?」
しかし、奇跡などというものは、やはりそう都合よく起きてくれるものではない。
臭いを頼りに消えた『気』の大元を探し続けた光太郎を待っていたのは、見るも無残な厳しい現実であった。
「くっ……」
ビルの外壁に寄りかかる形で座り込んだ一人の大男。
それが、酔っ払いが寝ていたり、休憩していたりを意味するものではないことは一目瞭然であった。
何故ならその大男は、腹にぽっかりと大きな『穴』を開け、大量の血を周囲に撒き散らしていたのだから。

(遅かった、か……!)
恐怖に顔を引きつらせ、目をひん剥いたまま絶命したその様を目の当たりにして、光太郎はギリリと歯軋りする。
被害者は全く面識の無い、見ず知らずの男である。
普通であれば遺体を見た瞬間に腰を抜かすか、慌てふためいて警察に通報するかのどちらかであろう。
しかし、光太郎の内にあったのは動揺ではなく、人を惨たらしく殺害するという狂気を持った犯人に対しての怒りであった。
(ちくしょう! 誰がこんな酷ェことを……!)
男の気配が消えて直ぐに犯人と思われる気配も消えたが、現場を見るに相討ちになったとは考えにくい。
となれば、犯人はまだ近くに必ずいる。
理の当然、というようにすぐさまそんな確信めいた思いを抱いた光太郎は、己が持つ力の一つである『探査能力《グラスプ》』を発動する。
すなわち、気の探査を開始する。
589異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/06/15(日) 21:13:24.41 ID:jxCsSyGe
「…………っ!」
ところが、彼は数秒と経たぬ内にそれを中止してしまう。
「……そう…………たっ……ま…………た……」
ビルの影。少し離れた敷地内の死角となった場所から、ぼそぼそっとした声を耳にしたからである。
(まさか……)
接近を気取られるといけない。そう思って気配を絶って近づいたのが功を奏し、犯人の探査能力に引っかからなかったのか。
それともたまたま近くを通りかかり、何らかの事情でここに立ち寄った無関係の一般人なのか。
いずれにしてもその声の持ち主は光太郎の存在には気付いてはいないようであった。
「……」
抜き足差し足忍び足……音を殺し、息を殺し、己の存在感を極限まで殺して、光太郎は一歩ずつゆっくりとその場所へ歩み寄る。

「……ど……かに……ていた……か?」
近づく度に明瞭なものとなって聞こえてくるその声は、どうやら男のものであるらしい。
しかも、疑問系の科白から推察するに、誰かと会話しているようだ。
(気配は一つ。ということは、電話か)
そう分析しながら、尚も近づく光太郎だったが、
「……惚けるな、俺の『念話通信《テレパス》』が届く場所にいたならば、こうして電話などしていない。
 …………フン、まぁいい。『周波数』を誤っていた、そういうことにしておこう」
更に声が明瞭に聞こえる位置まで来たところで、思わず足を止めた。
中性的までとは表現できないものの、余りに端正な美声であった為、
一瞬、男と推察した己の判断が誤りであったのかと錯覚してしまい、思わず行動にも迷いが生じてしまったのである。
しかし、光太郎がその迷いを断ち切るまで、時間はかからなかった。

「いずれにしても、『仕事』は終わった。『依頼』通りターゲットは『始末』しておいた。これから俺も戻る」
大男の殺害が、己の犯行である事を匂わすような科白。
それが鼓膜を打った直後、光太郎は怒りを火山のように爆発させて、止めていた足を一気に加速させた。
「──待てェッ!!!!」
地面を蹴る力強い足音、そしてキレのいい怒声が、男にもようやく背後にいる光太郎の存在を認めさせるが──
「!?」
振り向いた男がその時見たものは、怒りに満ちた光太郎の姿などではなく、
己を焼きつくさんとばかりに向かってくる真っ赤な『火炎』であった。
「──っ!」
その先端が死角をつくっていた植木の幹に触れると同時に、火炎の威力が周囲に拡散──
不意を突かれた男が己の置かれた状況を理解し、我に返ったというように息をついた頃には、火の海は辺り一面に広がりきっていた。

「一応……一つ、確認しておくぜ?」
激しい炎熱で障害物を排除し、男と直接視線を交える状況を作り出したところで、光太郎は再び足を止めて言った。
「あの大男を殺したのは、てめぇだな?」
ほぼ九割九分、間違いないと確信したその思いを、100%にするだけの確認作業。
とはいえ、そろそろ初夏だというのに、全身をフード付の黒マントですっぽり覆い隠した如何にも怪しいといった出で立ちに──
なにより、火に囲まれながらも悠然とした態度を崩さぬその非常人っぷりを目の当たりにしては、もはや回答は無用であった。
「しらばっくれんなよ? この状況下で少しも動揺する様子がねぇお前は、どう見ても普通じゃねぇ……。
 マントの下の顔と体を、ぶるぶる震わせてるようにも見えねぇしな」
睨みつける光太郎に、男は手にする新型の携帯電話──今、流行のスマートフォンというやつ──を懐に仕舞い込むと、
溜息をつくように小さく鼻息を漏らし、
「…………なんだ、お前は?」
と、その透き通るような声を以って訊き返した。
「俺は『市立ヤマト異能高校』に通う二年、連城光太郎──」
光太郎はその質問に、清々しいほどまでにはっきりと、包み隠さず素直に答えると──
開き切ったその掌から紅蓮の火炎を生み出しながら、こう続けた。

「お前のように『力』を弱者に向ける野郎が、許せねぇ男だ!」
590創る名無しに見る名無し:2014/06/15(日) 21:14:20.01 ID:QIHRnaFg
紫煙
591異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/06/15(日) 21:14:27.03 ID:jxCsSyGe
敵意を剥き出しにしたその科白は、事実上の宣戦布告に他ならなかった。
「俺はお前と戦う理由はないんだがな」
挑戦状を叩きつけられた側の男は、乗り気じゃないというように早々に己の両腕をマントの下に仕舞い込むが、
「見逃せ、ってか? ……ざけんじゃねぇ!!」
だからといって今更光太郎が止まるわけもない。
光太郎は、生み出した火炎を握り閉めて拳に宿すと、それを右ストレートを打ち込む動作と同時に解き放って、啖呵を切った。

「てめぇの都合で奪われた命に、ワビいれさせてやるぜ!!」


【つづく】
592異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/06/15(日) 21:19:22.64 ID:jxCsSyGe
第一話はこれで終了です。
これからも暇を見て投下していきたいと思いますので、よろしくお願いします。

それと支援に感謝!
助かりました。
593異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/06/26(木) 23:14:23.26 ID:2DCV3ahX
第二話投下します。
594異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/06/26(木) 23:15:56.08 ID:2DCV3ahX
甘党を唸らせる、口いっぱいに広がる甘味。
ゴクゴクと喉を鳴らせば、喉いっぱいに広がる程よい炭酸の刺激。
そして、最後に訪れる心地の良いゲップの瞬間。
博士は、その快感を求めて、光太郎と別れた路地裏近くにある小さな自販機まで来ていた。

お金を入れ、商品のボタンを押し、取り出し口まで落ちてきた缶を拾い上げる。
そうなれば後は飲み口のタブを開けて中身を喉の奥まで流し込むだけ──
なのだが、至福の瞬間を心待ちにしていたにしては、博士の表情は冴えなかった。
「……業者の野郎、間違えやがったな」
それもそのはず、博士が手にした缶には季節外れの『おしるこ』の文字がでかでかとプリントされていたのだ。
しかも、本来ならジュースや冷たいお茶を入れる冷蔵スペースに入っていたから、キンキンに冷え切っている。
「初夏だから冷やしておきましたよってか? アホか!」
おしるこというものは温かくしたものを冬に飲むから美味いのであって、
初夏だからとはいえ冷やしたものを飲んだところで美味いはずもない。
仮に美味かったとしてもそれは所詮キワモノに過ぎず、そもそも飲みたかったものが炭酸飲料である以上、
これはこれでいいか、などと博士が割り切れるはずもなかった。
「ったく……二度とこのメーカーのやつは買わねーぞ!」
とはいえ、自腹を切って買ったものを、開封もせずにゴミ箱に捨てるほど徹底して怒れるわけでもなかった博士は、
ぶつくさと文句を垂れながら蓋を開けて、ぐいっと中身を煽った。

「ブゥーッ!!」
しかし、折角口の中に流し込んだそれを、盛大に噴き出してしまったのはその直後だった。
ドゴォンッ! と、突如として目の前の道路の一角から爆発が起き、その部分のアスファルトが木端微塵に弾け飛んだからである。
「…………」
唖然、というのは正にこのことであったろうか。
声も出せず、動くこともできず、ただただその爆発の中心点に目が釘付けとなる博士。
ガランと、まだ中身の入ったおしるこ缶が地面に落ちる音が響き渡ったが、今の彼にはそんなもの聞こえてはいなかった。
缶を落とした、という認識すらなかったであろう。
595異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/06/26(木) 23:17:18.00 ID:2DCV3ahX
「……チッ! スマートに降りるつもりが力の加減を誤ったぜ。俺もまだまだ未熟ってわけか」
そんな博士を我に返したのは、もくもくと舞う粉塵の中から発せられた一人の男の声であった。
(え、えっ……?)
それは錯覚ではない。
ぎょっとして目を凝らした博士には、確かに粉塵の中に映る人のものと思われる黒い影が見えていた。
「ま……マジ?」
驚きの色の中に、明らかなる不安の色を滲ませて、今起きたことが現実なのかと自問するように博士は呟く。
それに対しての自答はなかった。いや、必要なかったのだ。
粉塵が晴れると、そこには夢でも幻覚でもない、確かなリアリティを持った存在が佇んでいたのだから。
「まぁいい。手掛かりを見つけた事で取りあえずはよしとするぜ」
男と視線が合う。瞬間、博士は嫌なものを見たように顔を引きつきらせ、「げっ……」と唸る。
彼は所謂『超能力者』と呼ばれる特殊な部類に入る人間に違いはないが、
漫画によくある拳法の達人のように、人の目を見ただけでそいつの善し悪しを見抜く、そんな技術を持っているわけではない。
しかし、雷が落ちたような、あるいは地中の不発弾が炸裂したような、あまりに普通ではない派手な登場をした人間の瞳に、
素人目にもはっきりとわかる得体の知れない不穏な光が宿っていれば、そのリアクションも致し方ないと言えよう。

「場所はここに間違いはねぇ。だとすれば、後は“貴様がその気の持ち主であるかどうか”だ」
特徴的な赤毛と眼帯、そして浪人のような薄汚れた着物を着た男が、アスファルトのど真ん中にできたクレーターの中で独りごちる。
その意味深な言葉を耳にして、博士は咄嗟に辺りをキョロキョロと見回すも、周囲には他の第三者の姿も、気配もなかった。
「えっ……? お、俺ぇ……?」
貴様とはつまり自分のことか。確認するように己を親指で指して、男に裏返った素っ頓狂な声を出すが、
「人違いだろうが何だろうが構わねぇ。折角見つけた手掛かりなんだ。俺は、やるだけだ」
男はその返答とも単なる一人ごとともつかぬセリフを吐いて、博士に向けてゆっくりと前進を開始する。
(おいおい、まさか……!)
俄かに現実味を帯びてきたキナ臭い嫌な予感。
それが100%の確信に変わったのは次の瞬間──男が袖の下から出した右手を、博士に向けて開いた時であった。
ドンという大砲を撃つような音と共に、見るからに攻撃的な意思のこもった『漆黒の光球』がその掌から放たれたのだ。
(ま、マジかよ!? こいつ……俺を殺す気だ!!)


────第2話「それは正体不明の強敵で・前編」────
596異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/06/26(木) 23:23:10.31 ID:2DCV3ahX
 
 



「おおおおおぉぉぉおっらぁぁぁぁぁぁああああああああああああああっ!!!!」

雄叫びをまるで推進力にしているような勢いで、空中を一直線に突っ走る紅蓮の火炎。
それは正しく光太郎の怒りを具現化したものに相違ない。
触れた者を一瞬にして焼き尽くす地獄の業火──という凶悪無比なものでこそないが、
直撃すれば瞬時に抵抗力を奪われ病院送りは間違いないレベルの膨大な火炎。

その威力を知らなくとも、目の前から炎が向かってくるとなれば、普通の人間であればまず間違いなく躱そうとする。
(右か左か、それとも上か! いずれにしても躱すその瞬間を俺は見逃さねぇぞ!)
だからこそ、光太郎も威勢よく右手で火炎を放つその一方で、密かに左手に火炎を込める。
どの方位にせよ、相手が避ければその方向に第二撃を放つことができるし、
仮に相手が躱しながら反撃してきてもそれを相殺、迎撃することが可能になるからだ。

それは単純だが、妥当かつ無難な読みと言える。
しかし逆を言うならば、結局のところ光太郎の誤算は、妥当かつ無難な想定しかできなかった点に尽きると言えよう。
「っ……!?」
光太郎が思わず息を呑んだのは、予想に反して躱すどころか、その場を微動だにしなかった男が、
防御態勢も取らずに迫り来る火炎を堂々とその身に受けた直後だった。
本来なら男を中心に燃え上がるはずの火炎が、バシュゥ! という音を発して瞬時に消滅してしまったのである。
指一本動かさずに無力化されるなど、光太郎にとって想定の範囲内であるはずもなかった。

「火炎を操る能力……。これがお前の『二次異能』、それも恐らく『一次発展型』……『発火能力《パイロキネシス》』か」
感嘆するわけでも、貶すわけでもなく、抑揚のない声で光太郎の異能を分析する男は、無傷そのものであった。
その余りに平然とした、どこか機械的に見える程の落ち着きぶりは、光太郎の背筋に冷たいものを走らせた。
(炎を防いだ……、いや……これは『掻き消した』のか……?)
炎を無力化させる手段として代表的なものは、水による鎮火であろう。
仮に男が水を発生させたなら、火炎をその身に受けて無傷で済んだのも、炎が消えた点も説明がつくわけだが──
光太郎にはそれが正解ではないという確信があった。
炎との接触の瞬間、全身から、あるいは空中から水を発生させたなら、その瞬間を見逃すはずはないという自信があったし──
なにより、高温度の熱と接触した瞬間にあるはずの、水蒸気の発生がまるで無かったからだ。

「くっ!」
動揺を隠せずとも、負けじと火炎を溜めていた拳を開き、人魂のような炎の塊を顕現させる光太郎を見て、
男は盛大に溜息をつきながら、まるで大人が子供に諭すような口調で言う。
「何度やっても無駄だ。殺気もなければ威力もない火炎など、いちいち避けるに値しない」
「……つまり、お前の方が実力は上ってか? 舐めんなよ……いつまでも上から目線で余裕こいてると、痛い目見るぜ?」
「ありえないな。何故なら、“火炎そのもの”が俺には通用しないからだ」

ハッタリだ──。光太郎は初めそう思ったが、直ぐにいや──と打ち消して、思考を切り替えた。
(実際にあれだけの火炎を瞬時に掻き消すような奴だ……。少なくとも炎に対して有効的な『何か』を持っているに違いねぇ。
 そう、『何か』……今の俺にはそれすらも見当がつかねぇ状態だ。悔しいが……確かに現状では奴のほうが一枚上手!)
人は光太郎を好意的に評す時、よく『誰よりも強い正義感を持った熱血漢』と言い、悪く評す時は『直情沸騰型の単純馬鹿』と言う。
光太郎自身、それらを否定したことはなく、むしろ確かにそうかもしれないと、素直に受け止めてきたくらいであったが、
実際のところ彼の一番の長所は、本人でも気がついていないそんな素直さなのかもしれない。

ただし、それが彼に『分が悪いので後退』という選択肢を選ばせるといえばそうではなく、
「だったら、俺がお前に火傷を負わせた第一号になってやる! このままおめおめと引き下がれねぇんだよ!」
『例え不利でも、全力で戦い抜く』を選ばせるところが、熱血漢と評される彼の心根らしいところであろうか。

「…………やれやれ、そうくるか」
しかし、彼の性格など知る由もない男にとっては、光太郎など口では説得できない諦めの悪いウザイ奴でしかない。
男の方針が、説得で後退を促すものから暴力による強制排除に転換するまで、時間はかからなかった。
597創る名無しに見る名無し:2014/06/26(木) 23:33:06.93 ID:2PvgIIU9
しえん
598異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/06/26(木) 23:34:05.08 ID:2DCV3ahX
「ならば仕方ない。俺も自分の身を守る為に、降りかかる火の粉を振り払わなければな」
それは相変わらず抑揚のない、それでいて言葉の端々に明確な殺意が滲んだ寒気のする声だったが──
(っ!?)
己の背筋をゾッとさせる原因がそれだけではないことに、光太郎は直ぐに気がついた。
突如として、自分の口から吐き出される息が『白く』変化したかと思えば、空間にチラホラと季節外れの『雪』が舞い始めたからである。
つまり、周囲の気温が極端に下がり始めたことに気がついたのだ。
(馬鹿な! 今は初夏だぞ! こんな……)
余りに季節外れの現象に驚きを隠せない光太郎であったが、それでも理解は早かった。

「っ! そうか! これがお前の……!」
それに対する明確な回答は無かった。いや、そもそも求めてなどいなかったと言ったほうが正しい。
きょろきょろと忙しく動かす視線、それを男へと戻した時、彼の口元が微かに弧を描いたのを見て全てを察することができていたし、
なにより、男の全身から放射状に発散される冷たい青みがかった『気』の存在を目撃していたのだから。
(自分の気を『冷気』に! 俺の火炎が消滅したのは凍りつくような冷気で瞬時に熱を奪い去ったからか!)

「悪く思うな。元はと言えばお前が仕掛けた戦いだ」
「なっ……!」
光太郎は男の背後の空間を見やって、心底ゾッとした。
いつの間にか、とてつもない数の巨大な『氷柱』が、そこに群れをなして滞空していたのだ。
それが光太郎を抹殺する為だけに用意された飛び道具であることは明白であった。
「死ね──『アイシクルブラスト』──!」
告げられる非情な死刑宣告。それに合わせてミサイルのように一斉に発射される氷の凶器。
(『念動能力《サイコキネシス》』による遠隔操作だとすると──いや! そんなこと考えている暇はねぇ!)
考えることはあった。敢えて思いを巡らす必要性も感じていた。
しかし、光太郎はそれらを全て脳の片隅に排除すると、左手に現した火球を素早く右拳に移して、
再び虚空にストレートパンチを打ち込んで叫んだ。

「うおおおおおおおおおッ!! 『ボーライドナックル』ゥウウウウッ!!」
それと共に拳から掌大の大きさの『火球』を散弾のように射出して。
放たれた火球は流星のような尾を引きながら弾丸並のスピードで氷柱と激突し、
その度に、ボン! と爆発しては、氷柱もろとも塵と化して消えていく。
通常の火炎のように、接触した物質をただ炎上させるのではなく、自ら炸裂して一気に木端微塵にする火炎爆弾だ。
それに光太郎はボーライド、消失の瞬間に爆発する性質を持つ流星の名をつけた。

利点は一度で複数射出、及び連射が可能な点で、欠点は命中率が低い点。
もっとも、狭い空間に飛び道具が大挙しているような今の状況では、命中率の低さなど大した問題ではない。が……
(くっ……! 『アイシクルブラスト《氷柱の風》』とはよく言ったもんだぜ……!
 恐らく冷気で大気中の『水分』を氷結させて作ったもんなんだろうが、次から次へと出てきやがる……!)
砕いても砕いてもその後ろから新しい氷柱が続々と飛んできてはキリがない。
ぶっちゃけ火球を一つ生み出すだけでもかなりの燃費な光太郎にとって、深刻なのは正にその点。
勿論、氷柱を生み出し続ける相手も、同じようにそれだけエネルギーを消費していることは疑いなく、
そういう意味では条件は五分には違いないのだが……。

「……」
光太郎とは違い、先程からうんともすんとも言わず、ただただ無言で氷柱を送り出す男に特に変化は見られない。
実際は疲労の色を見せていても、フードを深く被っているから単にそれが見えないだけなのかもしれない。
だが、もしそうでなく、本当に連続した氷柱の生成など屁とも思っていないとするならば、とても対等とは言い切れない。
(エネルギーの総量にかなりの開きがあるってんなら、ヤベェ……! このまま撃ち合いを続けてても、いずれ追い込まれるのは俺の方だ!)
胸の奥を焦燥感がじわじわと焼き焦がしてくる。
落ち着け、焦るな──光太郎はそう言い聞かせながら懸命に目の前の凶器を叩き落し続けるが、
「──ぐぅ!」
乱れかけた精神がミスを生み、とうとう左肩に氷柱のヒットを許してしまう。
氷柱の先端が深々と突き刺さり、貫通し、傷口がどくどくと真っ赤な血を噴いた。
「うっ──おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」
光太郎は痛みを振り払うように叫び、自由の利く右手で火球を一気に連射する。
しかし、一度リズムを乱したツケは、途方もなく高かった。
599異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/06/26(木) 23:45:38.33 ID:2DCV3ahX
「うっ! ぐぁっ! がっ……!」
右上腕部、左前腕部、左太股部と次々にヒットを許し、光太郎は全身を駆け巡る激痛に思わず目眩する。

(やられて……たまるかよぉおおお!!)
それでも戦いの意思をまるで揺るがさなかったのは生き抜こうとする生命の本能か、それとも意地か。
いずれにしてもとどめを刺さんと容赦なく群がってくる氷柱の軍団を睨みつける光太郎の目には、
かつてないほどの強い眼光と覚悟に満ちていた。
「まだだァアッ!!!!」
雄叫びを挙げた光太郎は次の瞬間、驚くべき行動に出る。
火炎を溜めた右拳を自らの後方に引いたかと思えば、それを今度は前に向けて放つのではなく、
なんと大きく横に旋回させてから己の胸に思い切り叩きつけたのである。
しかも、右拳に宿っていたのはボーライドの火球。
「ぐっ!!」
接触の瞬間、激しく弾けた火球が、光太郎の肉体を突き刺さった氷柱もろとも破壊し、内臓を圧迫して吐血を齎す。
しかし、それが単に自爆を企図したものではないことは、男の目にも一目瞭然であった。
何故なら、爆発によって光太郎の全身が真後ろに大きく吹っ飛んだばかりか、
放射状に満遍なく広がった爆発が多くの氷柱を巻き込み、一気に飛散させたからである。

(──っ。自らを撃って距離を広げ、しかもこちらの攻撃も同時に遮って流れを止めた)

──いや、狙いはそれだけではない。
男がそれに気がついたのは、吹っ飛んだ先に着地した光太郎に目を向けた、正にその時であった。
「なに?」
そこにあるはずの光太郎の姿がなく──代わりに自分の背後で、彼の声がしたのだ。
「後ろだよ!」
振り向き、そして視認させるその暇も与えんと、光太郎は紅蓮の火炎を宿した威力抜群の拳を男の頬目掛けて繰り出す。
(とらえた!)
虚を衝いた完璧なタイミング。外すことなどまず有り得ない。
光太郎の経験上、それは間違いなく会心の一撃が確定したパンチであった。
ところが──
「っ!?」
柳に打ち付けたような妙な手応えが、光太郎を絶句させた。
気がつけば拳の先には男の姿がなく、男が被っていたフードの切れ端だけが火炎の熱で焦げ付いていたのだ。

(躱した? しかしどこに──)
「残念だが、俺もスピードには自信があってね」
その時、慌てふためく光太郎を嘲笑うかのように、背後から声が響いた。
自分がしたのと同じように、真後ろに回ったパターンが頭に過ぎった光太郎は、咄嗟にその場から飛び退きつつ、声の方向に視線を送る。
すると、予想外の遠く離れた位置に、男は立っていた。フードのおよそ半分を失いながらも、依然として正体を掴ませない姿で。
(速ェ! いつの間にあんな位置まで! ……って、待てよ)
着地して、光太郎は男の尋常ならざる身体能力に驚くと同時に、一つの疑問を頭に浮かべる。
やろうと思えば無防備な体勢の自分に至近距離から攻撃することができたはず。なのに、なぜそれをしなかったのか──と。

「……こちらに向かっているのはお前の仲間か? 随分と用意周到だな」
疑問を見透かしたように男が言うが、勿論、光太郎には仲間を呼んだ覚えはない。
だが、確かに気を探ってみると、覚えのない大きな気が一つ、こちらに向かって急接近していた。
(博士、じゃねぇ……。あいつには俺の気を探る力は無いはずだし、なにより……これは博士にしてはデカすぎる気だ)
謎の接近者。敵か味方かわからない、正体不明の第三者。それも気の大きさかしてかなりの実力者。
それが何者なのか個人的には興味のあった光太郎であったが、
「まぁいい。元々、俺が望んだ戦いではないし、これ以上の面倒に巻き込まれる前に去るとしよう。命拾いしたな」
「なっ……逃げる気かてめぇ!」
踵を返し、素早く建物の屋根から屋根へ飛び移って逃走を謀る男の姿を目の当たりにしては、悠長に構えるわけにもいかず、
「くそ!」
結局、後ろ髪を引かれる思いで後を追うのであった。

「俺の仲間じゃねぇーっての! 待ちやがれ!」

【つづく】
600異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/06/26(木) 23:51:08.39 ID:2DCV3ahX
これで第二話は終わりです。
第三話はまた近く投下します。
今夜も支援ありがとうございまいた。
601異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/07/03(木) 21:23:39.09 ID:Fzp1bbt+
第三話投下します。
602異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/07/03(木) 21:32:45.92 ID:Fzp1bbt+
「どわっ!?」
がむしゃらに体を捻って、博士は放たれた黒い光球を紙一重のタイミングで躱す。
その瞬間、頬を掠めた光球の圧倒的な存在感が、彼の全身を戦慄させた。

いや、彼を本当の意味で恐怖させたのは、あるいは次の瞬間であったろうか。
「──げぇっ……!」
博士は唸った。
自分の代わりに光球の接触を許した自販機が、──ドズン! と凄まじい重低音を鳴り響かせ、粉砕されてしまったのである。
(な、なんだ!? まさか……爆発した!?)
火薬を炸裂させた時に起きる特有の黒い煙とキナ臭さこそなかったものの、
見るも無残なスクラップと化した自販機を見やった博士には、男の放った黒球が即座に爆弾にイメージされていた。
(こいつ、テロリストかぁ!?)
だからといって、時代錯誤な着物姿をした赤毛頭の男からテロリストを連想するのは如何がなものかと思うのだが……
まぁ、博士にとって危険人物である事実に変わりは無い以上、イメージのお粗末さはこの際、些細な問題と言えるだろうか。

「よく避けた……とは言わねぇぜ? 今のは“避けさせてやった”んだからな」
ジャリ、と草履を履いた足を一歩前に踏み出しながら、再びその右手から黒い球を出現させる男を見て、博士は後ずさる。
「これで俺の力は解ったはずだ。さぁ、貴様もそろそろ見せてみやがれ、その力をなァ」
「ちょっ……おまっ……こちとらいきなり襲い掛かって来られてわけがわかんねぇーって……」
「でないと──死ぬぜ?」
「人の話を聞けよッ!! ──って!」

必死の突っ込みも空しく、容赦なく放たれる第二段の黒球。
触れれば自販機と同じ運命を辿ることは疑いなし。
かといって避けても、第二段、三段といった調子で立て続けに撃ち込まれれば、ジリ貧になるのは目に見えている。
故に博士が出した結論は『逃げる』、であった。
(冗談じゃねぇ! こんな奴に関わってられるかよ!)
踵を返し、一気にトップ・ギアに入れた快足を以って大地を駆け抜ける。

「ひぃいええええええええええええええええっ!!」
爆音と爆風を背に疾走するその姿は、さながら火線の真っ只中を突き進む勇敢な兵士のよう。
だが、口から飛び出るその声は勇敢とは程遠い悲鳴であり、
敵の男にもこれが『戦術的撤退』などではない、単なる『敵前逃亡』に過ぎないことは一目瞭然であった。

「──馬鹿が」
手から第三段、第四段……第十段までの黒球を射出したところで、男は吐き捨てながら大地を蹴る。
傍目から見れば、それは人がその場で軽くジャンプする程度のステップだった。
「逃がしゃしねェよ」
しかし、それでも彼の身は、弾丸の如く路地を行く博士の遥か前方へと容易く躍り出て、
「いぃっ!?」
博士の足に、急ブレーキをかけさせた。

全力疾走したにもかかわらず、あっという間に追い抜かれてしまった事実は、博士にとって大きなショックであった。
逃げ足には自信があった、そのせいでもあったが、何よりこれで『逃げる』という手が使えないことが証明されてしまったからだ。
それはつまり、この先博士が生きて帰宅するには、男を実力を以って倒すしか方法がないということ。

(なんてスピードだ……! こいつ、黒球の異能を使いながら、『身体補正』の異能もこれだけのレベルで使えるのかよ……!)
言い換えれば、この現状は絶体絶命。
既に博士は、どう逆立ちしたって勝ち目など1%もないことを悟っていた。
爆弾も男の見せた動きも、それだけの実力差があることを思い知らせるには十分であったのだ。

「……くっ」
後ろで連続してあがる炸裂音。
男の動きに意識を集中させながら、恐る恐る後ろをチラ見すると、そこには破壊し尽くされた変わり果てた路地が広がっていた。
コンクリートやアスファルトで固められた頑丈な空間の至るところに穿たれた巨大なクレーターが、博士の顔面に冷や汗を浮かばせる。
「……フッ、期待外れだったか? 貴様、マジでビビりっぱなしじゃねェか……本当にただの雑魚だったのか?」
こうなるとプライドも糞もない。悔し紛れに否定することだってできない。
博士は不良相手にしたように飄々と言い返そうとはせず、だから人違いだって言ってんだろ、と居直ったように叫んだ。
いや、実際は叫ぼうとして、言えなかったのだが……。
ビビり過ぎたせいか声が出ず、できたことといえば戸惑うだけであったのだ。
603異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/07/03(木) 21:36:01.34 ID:Fzp1bbt+
(ちきしょお、声が……ッ! た、頼むから落ち着け、落ち着けって俺!)
言い聞かせた程度で動揺が鎮まるならば苦労は無い。
「ケッ、雑魚と強者の気を取り違えるとはなァ。やはり、俺もまだまだ未熟ってわけか……面白くねェぜ」
男の手からこれまでよりも一回り程大きい黒球が生み出され、周囲の空気がかつてないほどに張り詰める。
殺られる──。
不良やチンピラ相手には感じたことのないリアルな死の予感が、戦慄を超えた麻痺となって博士の全身を駆け巡った。
もはや博士は声を出すことも、その場から一歩も動くこともできなくなっていた。

「貴様に恨みはねェし、雑魚なんざ踏み潰したところで自慢にもなりゃしねェが、これも運命ってやつだ」

(あっ、あっ……あっ……)
震え慄くこともできずにどこか呆けたように見える顔でじっと立ち尽くす博士に、男は哀れんだ目を向けるが──
「まぁ取り合えず、死ねよ」
その奥底には、裏腹な無関係な人間の命など屁と思わない一種の『狂気』が、確かに見え隠れしていた。

「恨むなら、手前の『弱さ』を恨むんだな──」

圧倒的存在感を放つ黒球を制御するその手が、高々と掲げられ──そして振り抜かれる。
瞬間、博士は己に迫る恐怖を直視できず、思わず目を瞑った。
(────ッ!!)

しかし──……人生、どんなところから不運が来るかわからなければ、どこから幸運が転がり込んでくるかもわかったものではない。
幸運があれば不運もある、その逆も然り。
博士にとっての不運が狂気を宿した着物男との遭遇と言えるのならば、
彼にとっての幸運とは正に、男がターゲットとする強者が、この近くに存在していたという事に尽きるであろう。

「……?」
これまでの激しさとは打って変わっての、しーんとした奇妙な静けさ。
黒球が放たれる際にあるはずの、独特な射出音がいつまで経ってもしない事に違和感を覚えた博士は、ふと目を開けた。
「……これは」
するとそこには、神妙な表情をしてあらぬ方向に視線を向ける男の姿があり、
(な、なんだ……?)
それを不思議に思っていると、やがて男は、ニィと口元を歪めて、何が面白いのかくつくつと笑い出した。
いつの間にか彼の手の上にあるはずの黒球は消えていた。
それが博士に対する敵意の消失をも意味していたことは、博士も直ぐに理解することができた。何故なら、

「そうか……ククク、俺が感じたのは『こいつ』かァ……!」
男はその言葉を残して、一気に闇夜の空に舞い上がり、どこぞに飛んで行ってしまったからである。
「…………」
博士はしばし、ぽかんとしていたが、やがて気が抜けたようにへなへなとその場にしゃがみ込むと、消え入りそうな声で独りごちた。

「た……たすかった……」


────第2話「それは正体不明の強敵で・後編」────
604異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/07/03(木) 21:49:16.73 ID:Fzp1bbt+
 
 



「ハァ! ハァ……!」
光太郎は焦っていた。
逃走した男をしゃにむに追い続けて既に十五分が経過している。
にもかかわらず、男を捕まえるどころか、あろうことか男の姿を見失ってしまったのだ。

「ちっくしょう! 完全に気配を絶ちやがった! どこに消えやがったんだ!」
男の気配を探ってみても反応は無い。
ならばと己の両の目を頼りに夜の闇を、または街頭やネオンサインの光の下に目を凝らすが、一向に見つからない。
人に聞き込み調査をしようとも、そもそも人気が無いのでそれもできない。
もっとも、人気があろうとも、素顔を見たわけではない以上、マントを脱ぎ捨てられて人混みに紛れられたらそれこそ探しようが無い。
要するに打つ手なし、である。
「くそ……!」
更に探すこと五分。ここに至って光太郎は、ようやくそれを受け入れて立ち止まる。
額に浮かんだ汗を拭いながら、息切れする口から真っ先に吐いた言葉は、己の不甲斐無さに対する怒り。

体力には自信があった。足の速さにも自信があった。そしてなにより、肉体を強化する己の異能にも自信があった。
事実、学校での体力測定では、成績は常に学年トップクラス。格闘演習では表彰も受けたことがある。
喧嘩だって負けたことはほとんどない。相手が何人いようが己の両拳だけで打ちのめしてきた実績がある。
なのに、今回の闘いでは傷一つ負わせることもできず、おまけにあっさりと逃げられたのでは、悔しくないはずがない。

人によっては、「敵の方が一枚上手だった」などと割り切ることができるかもしれない。
だが、光太郎にとっては正にそこが深刻なのだ。
依頼で人を殺める危険人物が、それもかなりの使い手が、檻に入れられることなく街に潜伏しているという事実。
次の被害者は自分の友人かもしれない。そう思うだけで光太郎は背筋に冷やりとしたものを感じる。

「……そんなことはさせねぇ!」
あくまで可能性に過ぎない。しかし、1%でもその可能性がある以上、それを防ぐ手立てを講じるのが光太郎という人間。
だから必死に考える。

一番確実なのは、やはり見失った危険人物の居場所を探し当て、直接叩くこと。
しかし、一人で探すのには限界がある。この街は途方も無く広く、その総面積は東京23区のおよそ1.5倍はあるのだ。
偶然の再会を信じて毎日パトロールしたって時間の無駄でしかない。
それに探すと言ったって、素顔は結局わからずじまい。性別こそ一度は男と断定はしたが、今となってみればそれもどうか。
そうなると確定した情報は『冷気、あるいは氷を操る異能の持ち主』、『少なくとも光太郎以上の身体能力の持ち主』の二つとなる。
はっきり言って少ない。余りにも情報が不足している。

(犯人像が絞れてる……とは言えねぇな。この情報だけで正体を割り出すのはやっぱ難しいだろうが……)
それでも、光太郎は僅かな望みを見据えて、前を向く。
広大な闇夜の中に垂らされた細い一本の糸を探り当てる、そんな無謀な試みを成功させてくれそうな人物に心当たりがあったからだ。
(……どーだろうな)
なのに、どこか微妙に浮かない顔をするのは、内心ではその人物にあまり頼りたくはないからだろう。
とはいえ、心当たりがその人物だけな以上、四の五の言ってはいられないのも確かだ。

「まぁ……一か八か、やらねーよりはいいだろうぜ」

明日の朝一番で訪ねよう。そう決心しながら、光太郎はとぼとぼと自宅へ向けて歩き出した。
605異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/07/03(木) 21:56:09.89 ID:Fzp1bbt+
 
 



一方その頃、博士の前から飛び去り、夜空の彼方に消えた着物男は、己が目指す目的地に達していた。
そこは光太郎と正体不明のマント男が闘り合った、あの解体途中の古ビル。

「チッ……! 途中で気配が消えやがったと思っていたら、案の定、去った後だったか」

近づけば離れ、そして消える強者の存在。
それがもどかしいというように男は頬を強張らせ、歯軋りし、道端に落ちていた石ころを蹴りつける。
「……ほう?」
だが、八つ当たりを受けた石がビルの壁面に叩きつけられ、跳ね返って地面に落ちたその時だった。
男は石が落ちた調度その場所から、慣れ親しんだ臭いがすることに気がつき、その表情を一転、神妙なものへと変えたのだ。

「……」
そして歩み寄り、『それ』を間近で見下ろして、口元を歪に吊り上げた。
「抵抗した跡がほとんど無ェところをみると、一瞬だったてことか……」
幾千もの戦闘を重ね、結果、今や嗅いでも何も感じなくなった人の死臭。
立ち込めるその臭いのど真ん中でゴミのように打ち捨てられた腹に大穴の開いた無残な死体。
その体つきと人相、そして血塗られたズボンの間から見え隠れするピストルの存在から推察するに、
生前はボクサーかあるいはレスラー崩れのチンピラかヤクザと言ったところであろうか。

もっとも、男に言わせれば異能者であればピストルを持った常人など倒せて当たり前。
だが、その男から見て、この死体を作った人物は正に、己が追い求める強者に違いなかった。
「ほんの少しの殺気、その余韻すら残さねェこの殺し方……! ククク、こりゃ相当の使い手だ……!」


「逃がさねぇ! 決して! こいつは、俺の獲物だ……!!」
男には既に、確信に似た予感があったのかもしれない。
くるりと踵を返す彼の目は、この正体不明の殺人者との闘いをはっきりと見据えているかのように鋭く、そして愉悦に満ちていた。

【つづく】
606異能世界 ◆.JzssiMRjs :2014/07/03(木) 21:57:16.00 ID:Fzp1bbt+
これで第三話は終わりです。
また近い内に投下します。
607異能世界 ◆.JzssiMRjs
って、確認したら本文では第二話になってました。
第三話の間違いですので訂正します。