141 :
創る名無しに見る名無し:
「「 自由な人たち 」」 2012.24.3.26--087-023
*** 頭の中の映像 *** 023+1
< 1 >
現実と頭の中の映像を同時に見て生きている男が自転車で街の中のいつも
の道を通って、今日の仕事を終えて家に向かっていた。
目に見える現実と頭の中で作り出された映像が常に頭の中を巡っているので、
男の精神状態はいつも不安定であり、的確にものごとを判断出来ない。
現実の映像が自分の脳に入る事で自分の意志とは違う映像が頭の中で作ら
れる、現実と非現実の中でいつも戸惑って生きているのだ。
いつも通る薬屋の前で、いつものように店の中を見て、店員の幸恵さんを探し
ガラス越しに挨拶をした。少し会釈をして笑った。店の前で止まって商品を見て
いる振りをして幸恵さんの姿を見ていた。
幸恵はこちらに気付き、手を上げて待ってと言っているように口を動かした。
幸恵は急いで、外に出て来た。
「今、帰ったの、奥さん実家に帰ったは」
「お世話に成りました」
「奥さん何か言っていなかった」
「いえ、別に何も言ってなかったです」
「そう」
「昭夫さん、食事どうするの、奥さんが心配していたけど」
「何とか」
「もし、良かったら、私のところで食べない。奥さんもそんな事を言ってたわ」
142 :
創る名無しに見る名無し:2012/03/27(火) 11:21:30.51 ID:t3d2rptg
「「 自由な人たち 」」 2012.24.3.27--088-023
*** 頭の中の映像 *** 023+2
< 1 >
幸恵は薬局で薬剤師として働いている少し年上の感じのいい女性で、妻の
美紀がよく子供の薬と生理用品などを買うので友達になった人で、見た目は
清潔でふくよかな感じの素敵な人だ。
「ご迷惑ですよ。二日間ですから、何とかなります」
「そう、かまないのに、奥さんからもそうして欲しいって言われたのよ」
「でも、それは」
「迷惑じゃないの、私もそうしたいの、おかしいかしら」
「そんな事もないと思うけど、ただ、幸恵さんの家族に悪いですよ」
「大丈夫、誰も気にしないし、食事は大勢の方が楽しいわよ」
「悪いですよ。今日は一人で何とかします、大丈夫です」
「もう直ぐ、交代だから、後で電話するから、じゃね」
昭夫は突然、話を打ち切られ、唖然としながら、幸恵の目がキラリと鋭く刺すように
昭夫の脳を刺激した。
「私はもう決めたの、パスタは好きでしょう。奥さんがよく言っていたわ」
「バスタですか。食べたいな」
「クリーム味ですっきりまろやか、麺に纏わり付くクリーミーの味でどうかしら」
「そうですか、美味しそうですね、クリーム味、早く食べそせてください」
「一時間後に来て、一緒に作りましょう」
「え、一緒に」
143 :
創る名無しに見る名無し:2012/03/27(火) 12:00:50.59 ID:t3d2rptg
「「 自由な人たち 」」 2012.24.3.27--089-023
*** 頭の中の映像 *** 023+2
< 2 >
白い白衣の後ろ姿が昭夫の目の前を嬉しそうに遠ざかって行く。昭夫の脳は
明らかにこれから起こるであろう映像を映し出し、昭夫は憂鬱に成った。
白い白衣の後姿から浮かぶ体のライン、そのラインを辿る目線、スロー
モーションの映像がいつしか野原を追いかけている映像に変わり、白衣が
羽衣ように薄くなり、包まれた女体が野原を飛び回り、その後をただ追い
駆けながら、羽衣を掴もうとするが中々掴むことが出来ない。
「待ってください。話があるです」
「話なんか無いわ、付いて来れるの」
「少し止まりませんか」
「それは出来ないわ」
「なぜです」
「楽しいからよ。捕まえなさいよ」
「捕まえていいんですか」
「勿論よ、捕まりたいの」
幸恵の後ろ姿が店の中に消え、昭夫の脳の映像も消えた。昭夫は思った。
これまでも脳に浮かんだ映像が現実になったことはないが、映像を作り出す
切っ掛けは自分が感じる思いと相手の思いがなぜか、刺激し合い、思わぬ
思いを映像として見えるのではないかと言う事だ。多分、幸恵さんの思いは
羽衣をまとった女体であり、その映像から想像すると男から追い駆けられる
ことを期待している。
144 :
創る名無しに見る名無し:2012/03/29(木) 00:36:45.25 ID:iGfVp2AR
「「 自由な人たち 」」 2012.24.3.28--090-023
*** 頭の中の映像 *** 023+4
< 1 >
難しい選択を迫られている感じがする。白衣に包まれた清潔感のある女性から
食事に誘われると言う事は平凡な生活を送っている昭夫に取って、一生の内に
在るか無いかのことであり、無いのが当然であり、在ったらそれは人生を天秤に
駆けるほどの出来事になるに違いない。
妻である美紀が薬屋の店員である薬剤師の幸恵さんに本当に自分の食事を
頼んだのか、それは冗談で、そんな話になっただけで、本当は妻である美紀は
そんな事は望んでいない。
妻である美紀に対しては絶対服従であり、如何なるときも逆らったことはなく、
学生のとき、家庭教師のバイトで知り合って以来、美紀は昭夫を支配して来た
のは間違いなかった。
「やあ、どうそちらは」
「どうしたの、寂しくなった」
「まあ、そんなところかな、何かあったら連絡待ってる」
「ありがとう」
「そうだ、薬屋の幸恵さんに食事を頼んだ」
「頼んだわよ。幸恵さん、いい人よ。お世話に成ったら、何となくそうなったの」
「言ってくれればよかったな、突然、薬屋の前でそんな話になって」
「驚いたの、でも、冗談のつもりだったけど、本気だったんだ」
「断ってもいいかな、どうもおかしいよ」
「どうして断るの、断らなくてもいいでしょう。帰るとき、お土産を買って渡すから」
「本当にいいのかな」
「また、連絡するから、何も無ければ連絡はしないけど、子供も元気よ」
「そうか、分かった」
145 :
創る名無しに見る名無し:2012/03/30(金) 09:58:00.66 ID:XKpjZRkG
「「 自由な人たち 」」 2012.24.3.30--092-023
*** 頭の中の映像 *** 023+5
< 1 >
夕日が落ちて、何十分か過ぎただろうか。家の近くの公園のベンチの背に
体を寄せて夜空に輝く星を眺めた。星は何も語らないが星を見ることで星が
語りかけてくるように感じるときがあるが今夜がそんな感じだ。
「何かある筈だ。薬屋の幸恵さんは何かを期待していると思うよ」と星が言った。
「だろうね。でも、分からないよ。妻美紀との成り行きで食事をつくることになった」
「相手は塾女だ」
「塾女と言うほどでもないと思うけど」
「そうか、顔は幼顔というか非常にあどけないけど、眼差しは鋭いように感じる」
「確かに、目から伝わる女の気持は熟しているようないないような」
「お前も何か期待している。してないなんてことはないよな。それは失礼だ」
「失礼の無いようにするけど、男と女の関係になるとすると」
「ほら、男と女の関係を望んでいるな」
「それは仕方ないと思うけど、ただ、それはどうかな」
「それしかないだろう。食事が終わり、食事の後始末で台所で急接近する」
「台所で、それはないだろう。台所では難しい」
「そんな事は無いさ、台所でも可能だろう。経験済みってことは知っている」
「それはどこでも可能だけど、確かに体が接近したときが一番その感覚は伝わる」
「だろう。それしかないよ」
「でも、全てはそのときが来ないと、もし来たら」
「来ると言う前提で行かないといけない。まずは家に帰り、身を清めないと」
「清める。ただの食事だけでか」
「そうだよ。正にただの食事だろう。ささと家に帰り、身を清めろ」と星は言った。
146 :
創る名無しに見る名無し:2012/03/31(土) 00:53:21.95 ID:Sed15Oy4
「「 自由な人たち 」」 2012.24.3.30--093-023
*** 頭の中の映像 *** 023+6
< 1 >
ベンチから腰を上げたとき、携帯がなった。胸がどっきんとした。
「はい、川辺です」
「中西です。薬屋の幸恵です。今、家に着きました。これから造りますから
良かったら、直ぐに来て貰ってもいいでよ。造るまで、休んでいてください」
「はい、えーと、20分、いや、30分かな、それぐらい後でいいですか」
「はい、いいです。いつでもいいです。でも、遅くなるときは連絡ください」
「30分前には必ず、20分は無理だな、早く行きます。出来るだけ、そうします」
「焦らなくても」
「ではまた、そうだ、本当に失礼ではないのですか」
「本当になんて、本当に失礼ではないです。余りに期待しないでくださいね」
何でだ。なぜか焦った。おかしな感じ、精神に異常来たしたような、何となく
幸恵さんのところで失敗しそう。
「清めると言っても、30分じゃ無理だ。行くのに10分は掛かる。自転車で5分、もし、
酒が出たら、自転車では違反になる。歩けばいいか」と独り言を言った。
「清めるって、どうする訳だ」
「食事だけならいいが、もし、何か別な方向に進んだとすると」
「別な方向って、私と何か起こるというの」と頭の中で、想像人間の幸恵が言った。
147 :
創る名無しに見る名無し:2012/03/31(土) 00:53:58.36 ID:Sed15Oy4
< 2 >
「勿論、何も無いとは思うけど」
「私の体はそのままよ。働いたままで、昭夫さんを待っている。清める時間なんて
ないわ。働いて汗を欠いたわ、汗をかいた体は不潔なの」
「そういう意味で言った訳ではない」
「汗をかいた塾女は不潔だわ」なぜか、想像人間の母親が現れた。
「汗は刺激的で魅力的な物質で、汗は異性を感じさせる要素だ」
「汗は汗よ。人間が出す不純物でしかないないのでは」
「求める対象としての異性の汗は別段気にならない」
「汗は臭いわ」
「臭い汗はシャワーで洗えばいいだろう。シャワーの後の新鮮な汗ならいいよ」
「好きにしなさい。私の夫は汗臭い私を好きじゃなかった」
148 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/04(水) 00:39:26.68 ID:hua+w++B
「「 自由な人たち 」」 2012.24.4.3--094-023
*** 頭の中の映像 *** 023+7
< 1 >
生活の中に締める異性への欲望は大きいがその欲望を満たす機会はほんの
僅かであり、ほとんどは日々の生活の中で埋没し、生きる為に如何に生活費を
稼ぎ、家族の願望を満たす為の時間が過ぎ去っていくだけで、異性への欲望
を達成する為の努力は気薄になり、当然では在るが欲望の捌け口は妻である
美紀と言う事になり、いつのまにか美紀の体の全てを知り尽くしてしまった。
知り尽くしたとはいえ、欲望を満たす秘めたる技は発展途上であり、真新しさは
無くなっても意外性は存在し精神的にも肉体的にもまだ美紀で満足している。
勿論、他の人に異性を感じない訳ではないが、その異性と無理に関係を持とう
としていないのは事実だ。
中西幸恵の家に近くに来たので、確認の為電話を掛けて着いたことを知らせた。
「もしもし、川辺です。これから伺います。よろしいですか」
「はい、いつでもいいですよ」
思いのほか、幸恵の声が明るく感じた。何となく、不思議な感じだ。なぜか、
この場に及んで断ればよかったと思った。でも今更どうにもならず、恐る恐る
インターホーンを押した。玄関のドアが押すと同時に開き、そこには幸恵が
満面な笑みを浮かべて立ってた。服装は白衣ではなく黄色いタイトな上着と
下は紺色のパンツ姿で髪をポニーテールに束ね意外に若く感じだ。
149 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/04(水) 00:50:16.93 ID:hua+w++B
< 2 >
「本当にお邪魔ではないですか。図々しい感じがして」
「まだそんな事を言っているですか。娘も居るんですよ。那美さん、川辺さんよ」
「いらっしゃい」幸恵の長女で薬学科の学生だ。
「しばらく、また、美しくなったね」那美さんも感じがいい人で何回か会っている。
「美しいですか、何処がって聞きたいけど、止めておきます」
「美しいのならそれでいいでしょう。川辺さん、どうぞ」
「那美さんとは半年振りぐらいかな、お母さんの店の前で、少し話したね」
「そうですね。あの時は楽しかったです」
「何が楽しかったの、そんなに話した」
「何を話したか忘れたわ。川辺さん覚えています」
「僕も忘れたな、特に大した話はしなったかな、うちの妻とお母さんの話を
聞いていただけだったような」
「私は食事の途中で失礼するかも知れませんが」
「これから、学校の寮に帰るです」
「これからですか」
「いつもこんな時間なんです。でも、十分、門限には間に合います」
「門限があるんですか」
三人は食事をしながら取り止めの無い話をして、楽しいひと時を過した。
「そろそろ帰るわ。川辺さんも一緒にどうですか」
「そうですね。私もそろそろ帰ります」
「冗談ですよ。まだ、食事終わってないです」
「川辺さんに冗談なんて言うものではないでしょう」
「川辺さんゆっくりしていってくださいね」
「送らないで大丈夫ですか」
「送って貰いたいけど、でも、今日は一人で帰ります」
「これ寮に帰ったら食べて、サンドイッチよ」
150 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/04(水) 12:03:26.43 ID:hua+w++B
「「 自由な人たち 」」 2012.24.4.4--095-023
*** 頭の中の映像 *** 023+8
< 1 >
女は怖いと思った。幸恵さんの異様な色気はなんだろう。自分の家で安心して
いる感じと自分の姿に自信があるのか、人生が満たされている感じで、何となく
女力に魅了される。食事に招待されたことで思いがけない経験が出来るかも
しれないと思うとラッキーと思わざるを得ない。
「びっくりするようなご馳走なんで、驚きました」
「娘がいて驚いた。娘が会いたいって言い出して、疑いの目で見られちゃた」
「それはそうでしょうね。少し無理があったような、お断りすれば、ただ、努力は
したつもりなんですが」
なんだろう。方向性は見えているがその方法が定まらない。妻の約束を安易に
考えて、それに少しは興味深い人でもあったのは事実で下心は無かったと思う
けど、確かに勝手におかしな映像が頭の中を流れたのは間違いないが、それは
成り行きであり、現実ではないが、今となっては目の前に現実が存在する訳で、
その現実を如何に頭の中の映像に近付けるか。
「色々と用意はしておいたの、私、誰かを呼んで食事をする事が趣味なの」
「そーですか」
「でも、男の人は少ないのよ。親戚ぐらいかな、ほとんど女友達よ」
151 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/05(木) 00:12:35.05 ID:rZYaxtWj
「「 自由な人たち 」」 2012.24.4.4--096-023
*** 頭の中の映像 *** 023+9
< 1 >
どのような話題に興味を持つのだろうか、こちらの方から話を振って、もしも、
失敗したらと思うと取りあえず様子を見て、今後の成り行き次第にしようと思う。
それにしても中々の家で驚いた。部屋もそれなりに整理され、結構まめな人
なのか。見た目も清潔感が溢れる身なりで、部屋も同じように何処からも気持が
いい感じに成れる造りで色彩も豊か、調度品や美術品もいい感じで申し分が
ない、こんな空間で生活するなんて羨ましいと思った。
「自分なりに用意したもので、口に合いました」
「驚きました。家でこんなに美味しいものが造れるんですね」
「お世辞が上手いですね」
「お世辞だったらすみません。本当に美味しいと、余り料理の味を理解して
いない人間が言っても駄目ですよね。でも、僕は美味しいと」
「私が悪かったわ、素直に喜べばよかった」
「料理の味は本当に難しいと思います。同じ料理でも家によって調味料の量が
違う訳で、初めて、食べる料理が美味しいと感じるのは奇跡に近いと思います」
「色々と失敗を重ねながら、料理の味を見つけるの、自分だけの味では何か
満足できない。だから、誉められるより、何か意見を言っていただくと料理を造る
側に取っては嬉しい。厳しい意見は歓迎するわ」
「そうですか、確かに、でも、それは難しいですね。美味しいものは美味しいと
しかいいようがない」
152 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/05(木) 00:16:13.14 ID:rZYaxtWj
< 2 >
「無理に言わなくてもいいですよ。でも、美味しかったと言ってもらえればそれに
越した事はないです」
「例えば、次があったとして、この味を覚えていれば更に美味しくなっていれば」
「次があったとすれば、多分、別な料理を作ると思う」
「なるほど、それも楽しみですね」
「招待するとき、何を食べたいか聞かない事にしているの、味覚をその人の
人格や雰囲気から判断して、その人に合った料理を考えるのが楽しいわね。
肉とか魚、野菜もその人が好きそうなものを工夫する」
「料理によって、人格が分かる」
「人格によって、料理が分かる。料理によって、色々なことが分かると思う」
「なるほど、それでは今日の料理で、私の性格が分かる訳だ」
「大体、分かるわね。生ものの好きな人と焼いたものが好きな人では違うわね
でも、外れることが多いの、人間の性格って千差万別よ」
「料理って奥が深いですね。驚きました」
「薬剤師と料理の話聞きたい」
「聞きたいですが、そろそろ帰らないと」
「え、そんな時間」
153 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/06(金) 00:25:55.74 ID:qGWZ7oiJ
「「 自由な人たち 」」 2012.24.4.5--097-023
*** 頭の中の映像 *** 023+10
< 1 >
職業は薬剤師で料理が得意で、気の利いた家に住み、家族も居る。こんな人を
どう扱えばいいと言うのだ。一つ間違えば全ての歯車が狂い身の破滅ではないか。
自分自身も家庭があり、不満もなく満足している生活を送っているのに、今置
かれている状況は非常に危険であり、この状況から逃げることが一番懸命であり
それ以外の選択は考えられない。
「これが最後なの、ケーキとコーヒーよ、ケーキは手作りで口に合えばいいけど」
「もう、満足です。これ以上の食事はこれまでもこの先もないと思います。ご家族
が羨ましいです」
「アルコールを出せなかったのが残念ね」
「アルコールはいけません。それは正しい選択と思います」
「もっと、色々な話がしたかったけど」
「人生ってこんなものでしょう。最初は何となく断ることを考えたけど、今は断らなく
でよかったと思っています」
ケーキとコーヒーを持ってきた幸恵はこれまで縛っていた髪の毛を肩まで下ろし、
更に、女の魅力を増した。
もう限界だった。これは妻からの試練なのか、それとも罰ゲームなのか、男と
してここで立たなくて、何処で立てというのか、全く、いかれている、なぜ、美紀は
夫にこんな試練を与えるのか。
美紀と幸恵はタイプは違うが本質は同じとすれば、正に、服従してもいい女で
あり、服従する事で、更なる喜びが得られるとすれば、服従せざるを得ない。
服従するは我にありってなものだ。
154 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/06(金) 00:28:45.48 ID:qGWZ7oiJ
< 2 >
欲望から愛情に変わり、そして、信頼へと辿る男と女の人生は欲望だけでは
犯罪であり、欲望の無い愛情は偽りであり、そして、本来最も必要とする
ものは信頼であり、信頼のない欲望も愛情も中身の無いプレゼントのような
もので、見た目は美しいが結局、心のない人形でしかない。
欲望を満たすだけでは収まらないのが人生であり、欲望だけで終わる人生
なんて何処にもない。
欲望を満たす為に愛情を語る事は余りにも簡単なことではなるが、欲望を
満たす事で愛情を育む労力は並大抵ではない。愛情が得られた後の後始末は
信頼へと発展し、切っても切れない関係がそこで生まれる。
もし、そんな事になれば、妻である美紀の運命はどうなってしまうのか。
155 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/09(月) 00:27:20.18 ID:lCJ5V7af
「「 自由な人たち 」」 2012.24.4.8--098-023
*** 頭の中の映像 *** 023+11
< 1 >
生きていく上で障害は沢山あり、それをどのように処理するかによって、人格は
形成され、人生に深みを与え、自らの知識となり、歴史になって存在するとすれば
何事も経験であり、経験しない限り、新たな知識は生まれない。
人を愛することは人格を形成する中では大きな試練であり、それを経験する事で
得られる知識は非常に重要であり、貴重と言える。
問題は目の前にいる幸恵さんに愛情を感じているかだ。確かに男として女に
対する感情は存在するがそれは愛情ではなく欲望でないか。ふくよかで温か
そうな白い肌と若々しく整った顔は多分、誰でも抱きしめたくなり、その肉体に
体をうずめたくなるだろう。そして、それによって得られる快楽はそれまで形成
した人格を破壊する喜びと満足を与え、生きている証明を強く印象付けるので
はないか。
欲望は人間に取って必要であり、欲望が無ければ強い意志と幸運を掴むことは
出来ない。
ただ、愛情に対する欲望は単なる生理現象であり、欲望では在るが理性のない
欲望になったとき、それは犯罪であり、ただ、人を傷つけるだけの存在であり、
そして、自らの人格さえも破壊しかねない。簡単に言えば、トイレを求めるときは
トイレ以外はトイレにしてはいけないと言う事だ。
妻である美紀に対する最初の感情は欲望だった。それは正に男として異性で
ある女の肉体を求めた欲望であり、一人の人間として必要な愛情へと進む道を
切り開く上での生理的現象であり、経験すべき人間の道程と言えた。
156 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/10(火) 23:25:38.30 ID:ULM6OfjS
「「 自由な人たち 」」 2012.24.3.26--099-024
*** 月影 *** 024+1
< 1 >
夜も深まり月の光が強く、長い影を作っていた。信夫は月に背を向け自分の
影をじっと見ていた。
風が吹いて来た。月の光に照らされた木の枝の影が風に吹かれて揺れた。
その中で信夫の影は微動ともしない。じっと動かない影を見詰めたその目は
死人のように動くことは無かった。
耳に風の音が微かに聞こえだし、風が強くなって来たようだ。突然、突風が
吹き目には見えないが土ぼこりが顔を襲い、微動だもしなった信夫の体が大きく
揺れた。
風の音に混ざり、明子の声が月の方から聞こえた。信夫は振り返った。月の
光は強く、信夫は明子の体の輪郭しか見えなかった。月に照らされた信夫は
明子からよく見えたが月を背にした明子の顔は暗く何も見えなかった。
明子は信夫に小走りで近づいて来た。信夫は僅かに後ずさりをした。
「信夫さん待った」
「いいえ、そうでも」
「家に入ろう」
月明かりが二人の影を映し、二人はその影を追うように牧場の作業場に急いだ。
157 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/11(水) 11:17:24.76 ID:9+Y7zYH5
「「 自由な人たち 」」 2012.24.4.11--100-024
*** 月影 *** 024+2
< 1 >
古びた牛舎にある作業員の仮眠室が二人の密会の場で、ここで二人はしばし
昆虫のように狭いベットの上で蠢き、絡み合い命を作り出す生き物としての姿を
繰り返した。理性を持った人間としては考えられない動物のように欲望を隠さず
お互いの肉体を求め合う姿は人であって人とは思えない、二人の体が一つに絡み
在ったその姿は月明かりの中で人ではない別な生物のように息づいていた。
狭い部屋を月の光がうっすらと照らし、蠢いていた生物は姿を消し、信夫の胸の
上に興奮から醒め始めた心臓の音を聞いている明子の体が覆い被さっていた。
明子の肌は僅かに汗で濡れて、信夫の指がその肌を欲望から醒めて行く気持
を羨むようにその余韻を感じながら蠢いていた。
「信夫さんはいつも満足させてくれる」
明子は満足そうに言った。体中から染み出した汗がほてった体を冷やし、
よく張った肉付きのいい明子の肌が信夫の肌に張り付いた。
月明かりの中で、明子は信夫が求めるままに体を許した。そして、それが明子の
心を癒したのだ。
ほんの僅かな時間の間に凝縮される喜びを教えてくれたのは信夫をだった。
158 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/11(水) 11:17:51.77 ID:9+Y7zYH5
何一つ纏わない二人の肉体が生み出す喜びによって、苦しみから開放される
喜びを知った明子はこの喜びが永遠に続く事を願っては居るが、今の二人の
関係からはそれは叶わぬもので、また、新たな苦しみを抱えたのも事実だった。
太陽が沈み、月が上がり、夜の闇に光る月が異様に明子の体を興奮させ、
その興奮した体を癒してこれる信夫を失う訳には行かなかった。
それは今夜のように月が全ての物に影を落し、物静かな夜のことだった。
信夫は慣れない牧場の仕事に疲れ、牛舎の前で月夜を見上げていたときから
この二人の関係は始まった。
159 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/12(木) 11:11:36.18 ID:ueykaqAn
「「 自由な人たち 」」 2012.24.4.12--101-024
*** 月影 *** 024+3
< 1 >
夜の闇の中に月明かりで大きな影を作る林の太い幹の大木の根元で何かが
動くのを信夫は見た。
月の光は闇の中では全てのものの色彩を奪い、知識の目が識別する事でその
存在を捕らえる。目で見えるというより感じるということか、夜の暗闇の中で月
明かりの見辛さが五感を敏感に働かせ、色彩の無い闇の中で、変化をする影を
信夫は感じ取った。
じっとその影を見詰めた。そのとき、なぜか信夫は体が興奮してくることに
驚いた。何で在るかも分からないのになぜか見詰められているような、何かが
自分を狙っているような、そんな気持がしたので、確かめる事にした。
以前、牧場主人が家畜泥棒のことを話していた事を思い出した。ここは少し民家
から離れているし、主要道路にも近いので、油断は出来ない。ただ、実感としては
泥棒ではないように感じた。
信夫はあの林の中で動く月影は人かそれとも動物か、確かめる為に、まず、
牛舎に入り、それから牛舎を抜け出し、その月影に気付かれないように後方に
回って、確認することにした。
160 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/12(木) 11:14:57.19 ID:ueykaqAn
< 2 >
もしものことを考え、仮眠室にある素振りようの棒を持って行こうとしたが何かの
間違いでも起こしたら大変なので、武器は持たない事にした。何となく、子供の
頃のことを思い出したのだ。夕方、犬と散歩するとき、祖父の杖を持って行かないと
散歩が出来なかった。杖は夜の闇が子供ながらに怖かったのだ、しかし、怖がる
ことで、益々、武器になるものを求める自分に気付き、このままでは暗闇を歩けなく
成るのではないかと思い、杖を持つのを止めて、犬と共に散歩を始めた。最初は
怖かったがなぜか、武器になる杖を持たなくなった開放感の方が心地よくなって
いる自分に気付き、夜の闇が怖くなくなり、犬の散歩が楽しくなったのだ。
今、まだ、慣れない土地で在るが、ここで武器を持ってしまったら、自分の弱さを
表す事になるので、何も分からない今は不必要なものになるかもしれない武器を
持つ事を止め、懐中電灯をもって、仮面室の窓から外に出た。
161 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/16(月) 11:22:08.72 ID:d13hDOGk
「「 自由な人たち 」」 2012.24.4.16--102-024
*** 月影 *** 024+4
< 1 >
暗闇の草むらを注意深く、月明かりを頼りに、未確認の人間らしきものに気付
かれないようにまだ不慣れな地形の中を急いだ。
牛舎から一旦、反対側に行って、それから、裏手を回り、動く未確認物体が見える
ところまで来た。身を隠しているので、向こうからは見えないはずだ。
林の暗がりの中をじっと見詰めた。中々、見えない、月の光は木々の葉に光が
遮られ、全てが大きな闇の塊となって、その未確認物体は塊の中で牛舎を見定めて
いるのだろうか、信夫はもう少し、近づいて見る事にした。そして、二三歩いた
とき、大きな闇の塊の片隅からその未確認物体が月の光を受けて確認できる
位置に立っているのに気付いた。
その姿を見る限り、人間であるのは間違いなく、斜め後ろから見ているので、
誰なのか定かではない。もう少し近づき、その人が後ろを向けばある程度は
検討が付きそうだ。しかし、月明かりでは難しいかも知れない。
信夫は息を凝らし、身をかがめて更に近づいた。僅かな音でさえ。気付かれ
そうなところまで来た。ここだったら、何となく、誰であるかは分かりそうなところまで
来た。
そして、信夫はその姿に驚いた。それは顔を見るまでもなく、その人は牧場主の
妻である明子婦人だった。
信夫はこの牧場で働き出して、まだ、僅かで、色々と仕事を明子から教わって
いる最中で、明子の姿を間違えることは無かった。
162 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/19(木) 01:02:31.80 ID:bUmbxu8w
「「 自由な人たち 」」 2012.24.4.18--103-024
*** 月影 *** 024+5
< 1 >
はっきりしたのは確かにあの陰は動き、信夫の姿を見ていたのだ。その未確認
物体が明子婦人とは思わなかったが、現実に目の前に立っている訳で、どのよう
な理由で暗闇の中から信夫を見ていたのかと考えると何となく分かるような感じが
するがあくまでも推測であり真実は分からない。それにしても動く陰を確認して
から時間は大分経ったのではないか。
明子婦人は牧場の仕事は素人の信夫に熱心に教え、早く成れて欲しいと言って
信夫の体を手のひらで叩いた。その手の感覚は何処か親近感を感じるもので、
暖かく、何故か、明子婦人の態度から信夫に好意を擁いているように感じていた。
暗闇の中で明子婦人は何を思い信夫がいる牛舎を見ているのか、信夫は
明子婦人に声を掛けるべきか悩んだが、信夫は声を掛けないで、このまま
牛舎に戻ることにした。ここで声を掛けてもどのような展開が起こるのか予測も
付かないし、明子婦人の気持も理解していない今は明子婦人の行動を見守った
ほうが自然のように思った。
信夫は仮眠室に帰り、ビールとラジオを持って牛舎の外で夜空でも見ながら、
明子婦人の出方を見ようと思った。
ラジオのボリュームを少し抑えて、いつも天気のいい夜にビールを飲みながら
夜空を見上げ、星を見ながら色々な事を考える事が信夫は好きで、この牧場に
来た当初から、外でラジオを聞きながら、ビールを飲んでいた。
もしかすると明子婦人はそんな信夫をいつも見ていたのかと思ったがそれは
ない筈だ、信夫はあれこれ考えてみたら今日は牧場主が突然、他県の友達
から連絡があり、出かけた事を思い出した、それに牧場主と明子ぶじんが少し
口争いをしていたようだった。
163 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/19(木) 10:46:26.47 ID:bUmbxu8w
「「 自由な人たち 」」 2012.24.4.19--104-024
*** 月影 *** 024+6
< 1 >
信夫は明子夫人の潜む林の方は見ないように星空を眺めながらビールを
飲み終わった。信夫はビールを飲むと決まってする事は広い草原に向かい
子供のように放尿した。これが結構開放感があり、たまらなく気持のいいもで
誰も見ていない夜にする放尿は男の特権とも言える思っている。
信夫は酔っているほどではないが、今日はどっちを向いて放尿をしようか
それとも、近くの簡易トイレでしようか迷った。なぜなら、明子夫人が夜の闇の
中でこちらを見ているのに違いないと思った。
信夫は考えた所詮この世は男と女がいて、お互いが好意を持ってば求める
ものは同じ、そして、求める者が放尿する姿を見ることも好意を持っている
者と何も感じない者の放尿では天と地ほどの違いがあり、好意を持っている
者がする放尿は底知れない興奮をするのではないか。ただ、それも人による
とは思うが少し酔った信夫には明子夫人は多分、興奮し精神的に理性を失う
のではないかと思った。
かれこれ考えているうちに放尿と明子夫人を思う男の性によって、昭夫の陰茎は
限界に達したようだ。信夫を明子夫人が見ているであろう方向に向けて、自慢
出来るほどの陰茎ではないがズボンのチャックを外し、放尿を始めた。
164 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/19(木) 10:52:46.49 ID:bUmbxu8w
< 2 >
信夫はこんなに放尿に興奮したことはこれまで無かった。正に興奮そのもので
あり、このままで、明子夫人の所に突撃したい気分だ。
興奮と生理現象とで、はちきれんばかりの陰茎が放尿により、落ち着きは
したが、興奮は未だに収まらず、まだ、スボンに納めるには少し、大きさが治
まっていない、信夫はまだ納まっていない陰茎が良く見えるように月明かりが
照らすかもしれないので、90度、体を回転させ体から突き出た陰茎の大きさを
見せるように放尿の残りの水滴を陰茎を指で勢いよく上下に左右に振り回し
残留する尿を陰茎の尿道から振り飛ばした。
陰茎もスボンに収まる大きさになり、満足した思いでおもむろに収め、チャック
をして、なんとも言いがたいこどものような経験をした信夫はこれで明子夫人が
どう出るか全ては明子夫人に任せることにした。
165 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/23(月) 00:28:44.53 ID:P/Iaue3U
「「 自由な人たち 」」 2012.24.4.22--105-024
*** 月影 *** 024+7
< 1 >
仮眠所には簡単なシャワー施設があり、作業で汚れた体と家畜の匂いを消す為に
備えてあり、ここで仮眠するときはいつもシャワーを浴びて、仮眠室でごろ寝をして、
夜を過している。
ビールで少しほてった体と今日の作業による体の汚れ、そして、もしかして、
現れるであろう明子夫人を受け入れる体にする為に、信夫は衣服を脱ぎ
シャワー室に入った。
家畜の世話による匂いは明子夫人も同じであり、多分気にはならないはず、
でも、出来れば明子夫人を受け入れるのに相応しい香りを体に付けておきたくて
女と過すときにいつも使っていた石鹸を思い出し、荷物入れを探して見た。
普段は石鹸なんてどうでもいいのだが、女と会うときは特別な空気を吸いたくて
ほのかに漂う香水の香りのする石鹸を使っていた。特別な香りに包まれ体で
女を抱きしめる心地よさはなんとも表現しがたい満足感を味わえた。
信夫はシャワーを体に当て、肌を濡らし、その肌の上にいい香りのする高給な
石鹸を滑らせた。いい匂いが狭いシャワー室に漂い、気分はもうその気十分で、
今まで、静かに収まっていた陰茎は心のままに勃起した。
勃起した陰茎は信夫に取って特別な状態ではなく、男なら誰でもシャワーを
浴びながら嫌らしいことを考えれば起こる生理現象であり、当然なことだ。
166 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/23(月) 00:30:59.19 ID:P/Iaue3U
< 2 >
信夫は勿論、勃起した陰茎にも石鹸を塗り、手で陰茎を握り、石鹸を泡だたせた。
この石鹸はあわ立ちもよく、タオルに石鹸を塗り込み体中を泡だらけにした。
石鹸が泡立ち、いい香りがシャワー室に充満した。
体を早々と洗い、シャワーでその泡を洗い流し、タオルで体を拭き、新しい
タオルを腰に巻いて、シャワー室を出た。
そのとき、何となく、第六感に人の気配を感じた。
167 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/24(火) 11:10:58.92 ID:k+Ao0CwU
「「 自由な人たち 」」 2012.24.4.24--106-024
*** 月影 *** 024+8
< 1 >
シャワー室から出て、牛舎の家畜たちに飼料をやる通路を覗いてみた。
腰にタオルを巻まいたままの姿で、夜の保安灯に照らされた薄暗い通路を
見ると、長い通路の出入り口を塞ぐように人がこちらの方に歩いてくるのが
分かった。
信夫は素早く、仮眠室に戻ろうとしたが、信子夫人の方が早く、信夫を
呼び止めた。
「信夫さん、います」信夫はとっさに答えてしまった。
「はあ、なんですか、今、シャワーを浴びたところで、着替えさせてください」
「そっちに行っていい。行くわね」明子は信夫を無視し、仮眠室に入って来た。
「あら、シャワーだったのごめんなさ」信夫は急いで、パンツを穿き、スボンを
穿くところだった。
「今、着ますから」
「こんな時間にごめんなさい」
「いいですよ。なんですか」
「きよう、渡し忘れた健康診断の結果を持って来たの」
「そうですか」
「明日でも、よかったわね」
「いいえ、ありがとうございます」
「診断書見ないの」
「そうですね、見ますか」
168 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/24(火) 11:12:25.23 ID:k+Ao0CwU
< 2 >
明子は健康な男を求めていた。今日は覚悟を決めて来たのだ、ただ、健康な
肉体が条件であり、自分の体を自由にされる限りは健康で逞しい肉体でなけ
れば成らなかった。
「健康そうね。どこか悪いところはないの」
「何となくこの診断書分かりずらいな、明子夫人、見て貰えます」
「いいわよ、貸して見て、どれどれ」
なんだ、簡単に信夫の健康状態を知ることが出来たので、少し、嬉しくなって
しまった。
信夫の体はいたって健康そのもので、特に問題はなかった。
「大丈夫そうよ、健康そのもの」
「そうですか、それは良かった」
明子は健康かどうか確かめに来た訳だ。取り合えず体に関しては合格という事か。
信夫も明子夫人の診断を聞きたくなった。
「明子夫人はどうでしたか」
「大丈夫だった。信夫さんと一緒で健康そのもの」
169 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/24(火) 11:16:35.71 ID:k+Ao0CwU
< 3 >
確かに、見るからに健康そうな人で、もう、我慢の限界に近いわけで、どうすれ
ばいいのか。自分から迫るべきなのか、それとも、流れを見るのか。
切っ掛けだけなのにその切っ掛けを作るべきか、それとも、様子を見る冪なのか。
それは簡単だった。切っ掛けは明子の方から作った。
「信夫さんはどんな人が好きなの」
信子は早く、進めたかった。もう、体から分泌物が溢れ出しそうで、これ以上
は肉体的に持たない。
信夫ももうどうでもいいと思った。男と女、ここまでくれば、もうどうでもいいの
ではないか。
二人の健康を確かめ合い、こんな時間に女が尋ねて来て、こんなむさくるしい
仮面室に推し掛けて来た女を黙って帰す訳にはいかない。
「例えば、例えばですよ。明子夫人のような人は好きですね」
「嘘でしょ、嘘よ」
「嘘じゃないですよ。明子夫人だったら何でもできますよ」
「本当に」
「任せてください」
「任せるって、何を」
「それは明子夫人の体、なんて、言ってまったりして」
「本当に、私は何をすればいいの」
二人の探りあいはお互いの心を開き、そして、肉体を快く開く為に順調に進んだ。
170 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/24(火) 23:26:05.68 ID:k+Ao0CwU
「「 自由な人たち 」」 2012.24.4.24--107-024
*** 月影 *** 024+9
< 1 >
大問題なのは明子は人妻ということだ。信夫は独身だ、明らかに明子に取って
不倫で夫に対して不貞を働く事になる、それは姦通罪ではないか。
信夫は少し、怖いと思った。不倫ということで事は重大と思う。
「明子夫人は」と信夫は名前を言って尋ねようとしら、明子が突然、信夫の
口を手のひらで抑えた。
「明子夫人じゃなくて、明子か明子さんでいいわ」
「明子さんにします。明子さんは僕のことを好きですか」
「そうね、どうかしら、好きじゃなければだめなの」
「好きなのかなって思ってみたりして」
「好きじゃなければ、ここにこないと思わない」
「僕は男で独身です。明子さんは女で人妻、もし、男と女の関係に成れば、
明子さんの方が大変なことになる」
「詰まらない話ね、そんなことは分かっている。でも、来てしまったのよ」
「遊びですよね。好きと言っても」
明子は信夫の口を自らの口で塞いだ。力強く抱きしめた。
「遊びよ、遊びにきまっているでしょう」と明子は言って二人は信夫の万年床
に倒れ込んだ。
171 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/24(火) 23:27:40.51 ID:k+Ao0CwU
< 2 >
信夫はある程度観念した。男と女ただそれだけだ。別に特別なことは一つも
ない。ただ、本当に好きになり、愛情を感じるようになることが怖いのだ。
肉体を求め合えば必ず愛情が芽生え、相手を独占することになり、もし、障害が
あれば、その障害を取り除こうとするか、その障害から逃れようとして、本来の
人生から外れることになる。
どんな人生もその人に取っては本当の人生であり、本道もわき道もないのかも
知れないが、他人の強い意志により、人生が曲げられるのは耐えられないと
信夫は思っている。
明子は遊びというが、この関係は遊びでは済まされない。
「遊びじゃ駄目でしょう。遊びだったら明子さんが傷付くと思う」
「もう遅いでしょう。もう、遊びじゃなのよ。でも、遊びじゃなければいけない、
遊びじゃなければ、信夫さんの負担に成ってしまう」
172 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/25(水) 10:44:02.91 ID:0BkPFFlR
「「 自由な人たち 」」 2012.24.4.25--108-024
*** 月影 *** 024+10
< 1 >
女の体はいたってふくよか、抱き締めれば締めるほど陶酔の世界に吸い込まれ
て行く。二つの肉体が合わさる事で生み出される神秘な世界は時には未来の
生命すら生み出す訳で、生物が生きて行く上に必要な底知れないエネルギー
が存在する訳で、だから、男と女が抱き合う事は人間に取って特別な行為と
成り得る訳だ。
「好きに成った理由は」信夫は唐突に聞いた。
「信夫さんは、どうして、受け入れるの」明子も聞いた。
明子は運命と思った。ただ、体が燃え上がったのだ、誰でもよかったのかも
知れないし、信夫じゃなければいけなかったのかもしれないが、信夫に会った
ときから、心と体には大きな渦となって支配する異性への欲望が次第に現実感
を帯びて襲いかかる日々に耐えられそうもない自分と葛藤していたのだった。
信夫はいたって冷静だった。明子の目の輝きを何となく気付いてはいた。そして、
いつしか、その目の力に押し切られるときが来るのではないかと思った。
毎日の仕事の中で家畜たちの糞尿との戦いを制し、牧場の利益を生み出す
力強い肉体は強さだけではなく、女としての美しさを備えていた。確かに、一緒に
仕事していて、明子の後ろ姿を見て、どれほど、嫌らしいことを想像したか
分からない。しかし、それはあくまでも男としての助平な目線であり、それを実現
にしようなどということは一度も思わなかった。明子は雇い主であって、欲望の
対象には成りえなかった。
173 :
創る名無しに見る名無し:2012/04/25(水) 10:48:14.33 ID:0BkPFFlR
< 2 >
男の嫌らしさは明子の作業着に包まれた肉体と家畜たちの無防備な肉体を比較
することだ、比較するのもおかしいが明子と家畜が並んで尻を信夫を方に向けて
いるときなど、嫌らしい想像をしない男なんていない訳がないのだ。
明子は信夫の陰茎が既に十分に勃起していることを確認した。それと共に
自分の膣口に分泌物の存在を感じている。
「もう、こうなったら仕方ないわね」と明子は期待感で満足そうに言った。
「あまり、期待しないでください」信夫は明子の目に圧倒される自分を感じた。
「別に期待なんかしないわ、私は未経験者じゃないのよ」
明子は洗い立ての作業着を脱いだ、抱きしめたときから、信夫とは違う少し
香りの強い香水が明子の体から発せられていた。作業着を信夫にまたがった
ままで脱ぎ捨てた明子の体から更に強い香りが信夫を襲った。
「いい匂いだ。この香り好きです」信夫は明子の腰に腕を回して、体に鼻を
押し付け、強くその香りを吸い込んだ。
「特別なときに着ける香水なの、いい香りでしょう」
「こんなに強いと何日も残らない」
「残ってもいいでしょう」
次第に、二人の肉体は特別な雰囲気に包まれ、誰にも邪魔される事の無い
野生の生き物へと変容して行く人間の性を感じながら、安らかで力強い
エネルギーを秘めたお互いの肉体が求める未知なる世界を堪能し始めた。