獣人総合スレ 10もふもふ

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1創る名無しに見る名無し
獣人ものの一次創作からアニメ、ゲーム等の二次創作までなんでもどうぞ。
ケモキャラ主体のSSや絵、造形物ならなんでもありありです。
なんでもかんでもごった煮なスレ!自重せずどんどん自分の創作物を投下していきましょう!
ただし耳尻尾オンリーは禁止の方向で。
エロはエロの聖地エロパロ板で思う存分に。
荒らしには反応せず相手せず、完全無視が一番安全です。

獣人スレwiki(自由に編集可能)http://www19.atwiki.jp/jujin
あぷろだ   http://u6.getuploader.com/sousaku
あぷろだ2 http://loda.jp/mitemite/
避難所 http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1237288452/


【過去スレ】
1:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220293834/
2:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1224335168/
3:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1227489989/
4:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1231750837/
5:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1236878746/
6:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1243614579/
7:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1250254058/
8:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1263143962/
9:http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1277458036/
2創る名無しに見る名無し:2010/08/06(金) 22:58:06 ID:yqBg9xFz
>>1乙。お前なかなか目端が利くな、鹿馬ロ入るか?」
「GJだよ>>1くん!御褒美にこの“生キャラメル(?)”をあげるよ!」
「やめろよサン……>>1、それ多分ジンギスカンキャラメルだからな。コーヒー置いとくぞ」
>>1さん手際良いっス!怪我したらこの保健委員を呼んで欲しいっス!手厚く看護するっス!」
「中身を見たい生き物がいたら持って来ると良いっス。僕がヤってあげるっス……うふふ」
「白倉先生、保健委員とキャラ被ってますよ」
「……ぼそぼそ(跳月先生こそキャラ立ってなくて埋没してまスよ)」
>>1おつ。おい塚本、お前《馬鹿ロリータ》とかいうチーム作って小学生襲ったらしいな。指導室来い」
「塚本……君はハルウララだと思っていたのに。少年院でも達者でな。僕は祈ってるよ、別名祈り虫だけに」
「お前も馬鹿ロリータの一味だって聞いたぞ鎌田。指導室来い」
「ナ、ナンダッテー>Ω ΩΩ」
>>1おっつー。私がハルカ特製肉じゃが作ったげる」
「……お前マジでおかんみたいだぞ」
「うっさい爬虫類、タバコ食べさせるぞ☆」
3創る名無しに見る名無し:2010/08/06(金) 22:59:58 ID:yqBg9xFz
「持つべきものは友ニャ。そして乙するべきは>>1なのニャ」
「おお、さすがクロにゃ、シャコージレイをわきまえてるニャ」
「あの、えっと……>>1さん、乙かれさま、ニャ」
「ニャー!コレッタ、おまえ天然ぶりっこするなニャ!」
「ひゃっほーー!!雪ゆきユキ!え?>>1?僕は雪で頭がもうなんかもうひゃっほーー!」
「コラ犬太!待て!ステイにゃ!」
「うおー!何処だ冬将軍!!寒いだろーが!!」
「確かに寒いなー。それに探しても全然冬将軍て居ないなー。ちょっとベンチで休むかー」
「そうだな!もう何か月も探してるから、焦ってもすぐには見つからないのかもしれない!」
「へー、そんなに探してるのかー、大変だなー。とりあえず>>1乙しとくかー」
「雪ゆきユキ〜〜!あれ、こんな所に雪だるま?……うわ!でっかいカマキリが死んでる?!」
「こら犬太!虫の死骸食べるんじゃないニャ!」
「ぐえっ、食べてないってばっ、り、リード緩めてっ、ぐえっ
4創る名無しに見る名無し:2010/08/06(金) 23:01:41 ID:yqBg9xFz
「よ…葉狐ちゃーん…」
「もたもたしてると置いてくでー。こっちや、こっち。」
「ちょ、ちょっと待ってってば、ふぅ」
「しっかりしいや、香苗姐ちゃんは体力ないなァ。
 なんやまだ>>1乙もやっとらんやないの。ほんなら私が済ませてまおか」
「あんまり年上からかっちゃダメよ。レイギっていうのがあるでしょ」
「そうよ、店長さんなんだから敬意払わなくちゃ」
「はーい、メイドのお姉ちゃん。」
「「私はメイドじゃないの。ウェイトレスなのよ」」
「ふーん、どっちかわかんないや」
「はぁ、はぁ(こ、こいつ………!)」
「それじゃ私たちも>>1乙やっておきますかー うふふ」
「(あぁ!息あげてる間にタイミング逃した!)」
5創る名無しに見る名無し:2010/08/06(金) 23:03:21 ID:yqBg9xFz
「ほら、ソウイチ! 何をそんな所でぼさっとしてるのよ、>>1乙しなくちゃ行けないでしょ!」
「うっせーなー、そんなに尾羽広げて急かさなくたって>>1は逃げ出したりしねーだろ?」
「何言ってるのチビ助! 何事も手早く行動するのが一番なのよ!」
「なっ……! い、言ったなぁぁぁっ!? 誰が豆粒ドチビだこの白髪頭!」
「そ、そっちも言ったわねぇぇぇっ!! アンタみたいなチビ助に言われたくないわよ!」
「風間部長も空子先輩も落ちついてください、それより早く>>1乙しないと行けませんよ?」
「「鈴鹿さんは黙ってろ!(黙ってて!)」」
「ちょ、風間部長、空子先輩!?」
「あらあらぁ、お二人ともほんまに仲がよろしおすなぁ、うちの部員にも見習わせたいくらいどすぇ」
「あ、烏丸さんも見てないで二人を止めてくださいよ!」
「いややわぁ…夫婦喧嘩は犬も食わぬと言いおりますし、うちは>>1乙だけしてお暇しておきますぇ」
「え? あの!? そんな烏丸さん!? 帰らないでくださいよ!?」
「誰が超マイクロドチビだっ!!」
「誰が白髪葱みたいな頭よっ!!」
「……ああもう済みません、私が風間部長と空子先輩の代わりに>>1乙しておきます」
6わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2010/08/07(土) 22:05:07 ID:xTLb/s7o
スレ復旧お祝い&これを投下できるのはきょうだ!投下。
78月7日にお願いを ◆TC02kfS2Q2 :2010/08/07(土) 22:05:56 ID:xTLb/s7o
件名:夜会のお誘い
本文:夏の空もますます眩しい季節になりました。さて、8月7日深夜から8日未明にかけて、夜会を開催したいと思います。
おいでの時間も、お帰りの時間も自由です。お時間よろしければネコ族のみなさま、どうぞ、この会にご参加いただければ幸いです。

時:8月7日午後11時より(終了未定)
所:蕗の森公園にて
参加料:無料
その他:雨天中止

蕗の森町内会・夜会実行委員

7月下旬、泊瀬谷の携帯にこんなメルマガが届いた。前の季節の置き土産か夕立の降りしきる街を走る市電。
車中で頬を緩めながら画面を眺める泊瀬谷は、久しぶりに参加する夜会に早くも心躍る。
「この日、晴れるかなあ」
降るなら今のうちにどんどん降っておくれ、暦は盛夏の季節だぞ。忘れ物をした生徒は、叱ってあげられるけど、
入道雲を忘れて行った季節にお小言を言うことが出来ない。傘の先から雫が垂れて、車内の木製の床に濃い丸を広げてゆく。
家路に向かう、夕方の市電。雨とケモノの毛並みでほんのりと湿度が上がる。隣の空席にはイヌの毛が残っていた。

市電は停留所に止まる。扉が開くと、夏の蒸れた空気が車内に遠慮なくお邪魔するが、誰もとがめることも無い。
暑くない夏なんて無いし、寒くない冬なんて無い。誰もがそんなこと知っているし、文句は言わないのだ。
泊瀬谷の対面に座るイヌの女性がすっと立ち上がると、パンプスの音を木の床で鳴らせながら降り口の方へ歩いていった。
バッグからすっと財布を取り出す姿は、まるで映画のワンシーンを思い起こさせるようではないか。と、泊瀬谷は彼女を視線で追う。
(格好いいな…あの人)
白く輝き、ウェーブがかった髪の毛からは、よその国の香水のかおりが漂う。
スーツは泊瀬谷が雑誌でしか見たことのないような、有名ブランドもの。
バッグも泊瀬谷が幾ら頑張っても、爪に火を灯す生活をしないと買えないほどのものだった。
たわわな尻尾を揺らしながら、彼女は降り際に片手で携帯を取り出すと面倒くさそうに話し始めた。
「もしもし?あなた?ええ、鈴だけど…」
白いイヌの女性は、灰色に飲み込まれるように雨の街に消えていく。泊瀬谷は彼女のようになることは出来ない、と悟った。
誰かが願いを叶えてくれるなら、いや、望みなんか叶わなくたっていいので自分の願いを聞いて欲しい。
『わたしも格好よくなりたいな…』
でも…いざ、話なしなさいってなると、そんなこと出来るわけが無い。
例えば、夜会に来たネコたちに、こんな話をしたらきっと尻尾を地面に叩きつけて笑われるに決まっているだろう。
泊瀬谷は寝たふりをしながら、使い古したトートバッグを抱きしめる。教科書とちょっとの文庫本ばかりの中身は、
ずっしりと泊瀬谷のふとももにのしかかる。泊瀬谷の尻尾は知らず知らずのうちに、隣の女学生を叩いていた。
雨の日のために出したショートブーツに傘の雫が垂れる。お気に入りなんです、と泊瀬谷が言い訳して履いているが、
裏を返せば新しいものが買えないだけの悲しいお話。風に流された大粒の雨は古い市電の窓ガラスを打ちつける。
「夜会、晴れればいいな…」
88月7日にお願いを ◆TC02kfS2Q2 :2010/08/07(土) 22:07:08 ID:xTLb/s7o
夜会当夜。世間さまは葉月の夜。でも、旧暦の『七夕』で忙しい地域もあるんだとか。それ、頂き。で今回の夜会は七夕祭りだ。
この間までの雨はウソのように上がり、雨粒の代わりに星くずたちが降り注いでいた。
傘なんていらない。合羽なんて必要ない。今宵は夜会を楽しむがいい、と星空の誘いにかどわかされて泊瀬谷は、蕗の森公園にやって来た。
八月でも『七夕』ということだけあって、広場の真ん中には大きな笹が据えられて、葉っぱが夜風に拭かれて揺れている。
集まってきたネコたちは、とくにざわつくことなくのんびりと時間を共有するのが、ここでの不文律。
その中の輪に入ろうと泊瀬谷は公園の門を潜るが、沈んだ気持ちに包まれていた。

「残念だな。白先生も、帆崎先生も来れないなんて」
たった一人でやって来た泊瀬谷は、寂しくベンチにパンツ姿の脚をそろえて座っていた。
今回は、白先生と帆崎先生を誘って今宵の夜会に臨んだのだ。
が、医者の不養生とよく言ったもの、白先生は季節の急な移り変わり目に付いてゆけず体調を崩し寝込んでいる。
帆崎は帆崎で夏休みだから、生徒指導の会議や文章作成というこの季節ならではの仕事があるということ。
さらに、常連・尻尾堂のおやじはマタタビ酒の飲みすぎで今宵は来ない、との風の噂。
泊瀬谷は一人暮らしだから、一人ぼっちには慣れているはず。なのに、お祭りというせいか寂しさが募るばかり。
こんなときに、自分に構ってくれる人がいれば。
こんなときに、何も言わず自分の話を受け止めてくれる人がいれば。
遠くから聞こえる、誰かの笑い声は泊瀬谷の周りに透明な殻で包み込む。

一人だけ暇で悪うございました。天の川なんか梅雨の豪雨で増水してしまえ。彦星も現をぬかさず仕事しろ。
織姫もペルセウスに浮気してしまえ。ソイツの方が将来安泰だぞ。ふと泊瀬谷は、夜空に瞬く二人に嫉妬をしてしまった。
泊瀬谷は他のネコたちを眺めながら、楽しそうに集うネコたちを冷たく、そして遠い目で眺めていた。
コツンとスニーカーで小石を蹴る。

天には甘い星の川が流れているというのに、泊瀬谷の寂しさを癒すことは出来ない。
大勢ネコたちがいるというのに、逆に寂しさを感じてしまうのはどうしてだろう。
自分ひとりここから立ち去っても、夜会はつつがなく続いてゆく。それを考えると泊瀬谷の瞳が星に照らされてしようがない。

『願い事を短冊に書いて、この笹の葉に吊るしましょう』
誰が書いたか知らないが、こんな立て札が広場中央の笹の側に立っていた。
そうだね、せっかくのお祭りだもん。楽しまなきゃね…。彦星、織姫、ごめんなさい。生意気言ってごめんなさい。
泊瀬谷は備え付けの短冊とサインペンを手に取り、泊瀬谷なりのささやかな願いごとを込めて筆を走らせた。
せめて、わたしのくだらない祈りごとでも見て、二人してせせら笑ってちょうだい。それがわたしからの差し入れです。
と、泊瀬谷は人に見られぬようにこっそり笹の葉に隠すように吊るした。

周りは見知らぬネコばかり。こんなに蕗の森町にはネコが住んでいたんだと再認識していると、一人のネコが泊瀬谷の肩を叩く。
はつらつとした声が泊瀬谷の背中を叩く。振り向くと、いつぞや学園内で出会った、若いネコの女性ではないか。
98月7日にお願いを ◆TC02kfS2Q2 :2010/08/07(土) 22:07:53 ID:xTLb/s7o
「せんせい!お久しぶり!!」
「杉本さん?」
「ミナでいいよ」
金色の短い髪を揺らし、白い尻尾をピンと立てた杉本ミナは、相変わらずラフな格好をしている。
泊瀬谷の横に腰を掛けるミナも、どうやら一人でのこのこ夜会に参加したらしく、話し相手を探していたのだ。

「あの、ミナさん。この夜会のことは…」
「淺川くんに誘われたんだよね、はじめ。『芸術家たる者、美しいものを芸の糧にしなければならないっ!』ってね。
でね、きょうの午前にウチの店で淺川くんに会ったとき、丁度出版社の人から打ち合わせの電話が淺川くんにあってからさ、
ちょっとした仕事が入りそうって言ってたんだ。でも、あの人それを蹴って夜会にわたしと一緒に来そうな勢いだから…」
「行かせたんですか。出版社に…?せっかく夜会に誘ってくれたのに」
「もちろんね。最後まで悔しそうだったよ。今頃、担当の人とどこかの居酒屋で飲んでるんだろうね。オトナって大変じゃん」
「ですよねー」
もしも、自分がミナの立場だったらどうしただろうか。周りを気にせず、自分をさらってゆく白いイヌを思い浮かんでいた泊瀬谷は、
ほぼ同世代のネコなのに、ミナはどうしてこんなにオトナなのか、と自分のことが恥ずかしくなってきた。

「でもね、仮に…泊瀬谷先生がわたしの立場で、淺川くんじゃなくてヒカルくんだったら……、
泊瀬谷先生の方をヒカルくんは取るんじゃないかな。仕事なんかすっ飛ばして」
「ミナさん!ヒカルくんは…ヒカルくんは…」
「淺川くんみたいな純粋な仕事人間もいいけど、好きっていうことに純粋な子も好きだよ、わたし。ほら、せんせ。尻尾、尻尾」
知らず知らずに尻尾をベンチ叩きつけていた泊瀬谷は、眉を吊り上げる。
わたしは素直すぎるところがある。通信簿の数字は5ばかりでも、先生からの評価はけっして5ではなかった。
『泊瀬谷さんのいいところはみんなにやさしいところです。でも、本当にそれがいいのか考えましょう』
夏が来ると思い出す一枚の通信簿。自分がつける側になって、初めて言葉の重さを実感した。
そんな気持ちを忘れていないか、泊瀬谷スズナ。気まぐれなネコだからって、誰もが許しちゃくれない。

「織姫と彦星って、バカ正直だよね。年に一度だけ会えるんなら、会ったその日にどこか逃げちゃえばいいのに」
ミナはベンチに座って天の川を見上げながら、ぴんと足を伸ばした。伸びをするのはネコの気まぐれ。
一方泊瀬谷は、相変わらず眉を吊り上げていた。自分のこと言われているのではないかと勘違いする。
だが、ミナは照れ隠しに手首を舐めながら話を続けた。
108月7日にお願いを ◆TC02kfS2Q2 :2010/08/07(土) 22:08:35 ID:xTLb/s7o
「でもさ、わたしはバカな方が好きだな。そんな子を見ると、なんだか応援したくなるしね。せんせ、分かるでしょ?
それにさ、わたしもバカだから…。ボヤボヤしてるうちにアイツも離れていって、たまに会うとケンカばっかり」
「アイツ……ですか?」
「アイツの代わりに謝るね。いつもイタズラしてごめんなちゃい」
両手で丸メガネを作り、体を小さくするミナの言いたいことは泊瀬谷に伝わった。くすっと、泊瀬谷に笑みが戻る。

夜という時間がこの世に存在してよかった。
24時間明るいままで、毎日暮らしていくのはつらすぎる。
昼間、走り疲れたたケモノたちを夜はやさしく受けいれる。
昼間が自分を叱り飛ばす父親だとすれば、夜は自分が生まれた胎内で抱く母親。
泊瀬谷とミナは、夜の弱い星の光りを心地よく受け止めていた。

「ねえ。今度のお休みの日、またここに来ない?昼間だけどさ」
「……大丈夫ですけど」
「キャッチボールしよう。キャッチボール」
泊瀬谷は運動がいささか苦手なことを気にしていたが、星を見ているうちにどうでもよくなっていた。
長居してもしょうがないからと、泊瀬谷とミナは揺れる笹の葉を見ながら蕗の森を去る。
公園の入り口にある駐輪場には、ミナが乗ってきたバイクが月夜に照らされて鋼の輝きを放っていた。
青い夜になるとすこぶる調子がいいらしい。白いヘルメットをミナがひょいと手に取ると慣れた手際で頭に被る。
「ここに来る途中、ウチの事務のミミさんを家まで送っていったの。丁度メットがひとつ空いてるから泊瀬谷先生も送ってあげるよ。乗ってって」
「いいんですか?」
「いいの。いいの」
ミナと同じ形をしたクリーム色のヘルメットを泊瀬谷は受け取ると、髪の毛を気にしながらぎこちない手つきで被る。
ネコミミの形をしたヘルメットの耳あてに収まる泊瀬谷の耳。はじめて被るヘルメット。
既に愛車に跨り、エンジンを掛けていたミナが後ろを振り向くと、大きくミナのヘルメットに包まれた頭が揺れる。
「せんせ。乗ったり乗ったり」

初めて乗るバイクは体の底から振動が伝わり、高揚感とシンクロする気がする。
不安になって、泊瀬谷はミナにぎゅっとしがみ付き子ネコに戻った気がする。
白いヘルメットから顔を見せる襟首の髪に、女の子を見た気がする。
「涼しいね」
優しいエンジン音を立てて、二人の声が公園から遠ざかってゆく。
ゆっくりと眠る街を走り流し、休んだ軌道がライトに照り返されて、月夜のツーリングに誘われ。
信号は既に黄色の点滅でまどろみを覚えていた。ふと、二人の乗せたバイクは歩道の脇に止まる。

「ところで、せんせは何てお願いごとを書いたの?」
「えっと……『月がきれいでありますように』って」
「せんせらしいね!」
夜会を抜け出した二人のネコの、小さな笑い声が空に光る。


おしまい。
11わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2010/08/07(土) 22:09:37 ID:xTLb/s7o
8月に七夕の地域って、意外と多いのねー。
投下おしまい。
12創る名無しに見る名無し:2010/08/11(水) 17:34:33 ID:XNi6gx3T
安定して面白いってすごいよね
わんこ乙コレはポニーテールうんぬんかんぬん
13創る名無しに見る名無し:2010/08/12(木) 23:31:33 ID:a4yXo2Xz
携帯規制解除やっほい!

ミナは本当に気持ちのいいお姉さんだ
はせやん乙女ちっくでかわいいね
14創る名無しに見る名無し:2010/08/14(土) 23:53:28 ID:3N8pBswm
案外、くすぐったい。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1313.jpg
15創る名無しに見る名無し:2010/08/15(日) 00:19:43 ID:Yg5x6pcb
これまた意外なシーンがw
はせやんの顎なでなでしたい
16創る名無しに見る名無し:2010/08/19(木) 07:53:21 ID:GRhaBfRn
顎をまふまふしたい
17創る名無しに見る名無し:2010/08/19(木) 18:16:51 ID:8v8ox+67
表情がエロいw
18創る名無しに見る名無し:2010/08/23(月) 15:53:40 ID:a+ySjtbY
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1328.jpg
この後走って逃げた
19創る名無しに見る名無し:2010/08/27(金) 09:32:17 ID:ghXuu8Yf
清志郎はすごいぞおお
20代理:2010/08/29(日) 10:22:06 ID:Hlpt9BTF
すいません、一寸思うところが有って削除してありましたが、再度あげました。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1205.jpg
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1206.jpg
21代理:2010/08/29(日) 10:22:47 ID:Hlpt9BTF
以前、絵師さんが乗せて頂いた相関図の絵を使って、ケモ学SSガイドを作ってみました。
相関図を見て「登場キャラが多い」と感じられる方もいらっしゃるようで、主要キャラ中心に
初期作品をまとめました。よく出るキャラは多くはないので、初めてケモ学に触れる方の力になれば幸いです。

また、事後になってしまいますが、いつもの絵師さんの絵を使用させていただきました。すいません。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1246
22代理:2010/08/29(日) 10:23:33 ID:Hlpt9BTF
http://www19.atwiki.jp/jujin/pages/868.html
の冒頭を勝手に絵コンテ切ってみた。

http://loda.jp/mitemite/?id=1251
23代理:2010/08/29(日) 10:24:26 ID:Hlpt9BTF
最悪だ。
カレーうどんのつゆが、わたしの手にはねた。
母さんが弁当を作り忘れたから、たまに学食に行くとコレだ。ほっておとくと、取れなくなるからたちが悪い。
「風紀委員長であるわたしとしたことがー。あーん!!」
自慢の白く柔らかいウサギの毛並みが、カレーの香りとともに染み付いて午後の授業のための集中力を奪ってしまう。
とろみの付いたうどんのつゆは、なかなか冷めずわたしのメガネをいたずらに白くするだけ。カレーの風味もどこかへ消えてしまった。
今日は毎月楽しみにしている『コミック・モッフ』の発売日だから、きっと浮かれてしまっていたのだろう。

返却口に食器を返すとすぐさまに、学食側の洗面所へとはせ参じた。誰かが見ているような気がして、落ち着かない。
無駄だと思いつつ、洗面所で染まった箇所を洗うが、悲しくも事態は前と変わることはなかった。
ただ、手が冷たいだけ。ただ、濡れた毛並みが情けないほどわたしの体にへばりついているだけだった。

「あ……」
誰もいないと思っていた洗面所に、誰かが使っている気配がする。あれは同級生の小野悠里。
大きなキツネの尻尾を揺らし、銀色の艶かしい髪を片手で掻きあげ、そして胸元からははみ出さんばかりの豊かな胸。
鏡を前に歯ブラシを咥え、また熱心に歯を磨いている。ブラシの音が洗面所に微かに響き渡っていた。
歯磨きをしているというだけなのに、図り底得ない色気を感じ、よからぬ妄想図がわたしのメガネに焼きつく。
彼女は本当にわたしと同じ高等部の生徒なのか、と誰も得しない自問自答を繰り返しながら、自分のお情け程度の胸に手を当てる。
何もかも正反対なわたしは、小野の不思議な魅力に取り付かれたのか、何故か彼女をじっと見つめていた。
ハッカのような歯磨きチューブの香りが、わたしの瞳を半開きにさせる。

「小野さん?」
ハンカチで手を拭きながら、わたしの呼びかけに振り向いた小野は、ちょっと頷くと再び鏡の方を向く。
歯ブラシを口から出すとともに、磨いたばかりの白い泡がたらりと口からこぼれる。糸を引いた白い泡が彼女の口を汚す。
流しに垂れた泡の音をわたしは聞き逃すはずが無い。むしろ、その音に理由なき色気を感じたのだ。
手持ちの赤いコップで小野は口をゆすぐと、再び口からぷくぷくと白い泡を細い口元からこぼしていた。

「委員長だ。リオちゃん、珍しいね。ここで会うなんて」
「ちょ、ちょっとね。お弁当を忘れて学食で食べたんだけど……」
「いつもお弁当だもんね、委員長は。ンフフ」
そういえば、小野と面と向かって話すのは、これが初めてかもしれない。
小野悠里。キツネの高等部女子生徒。実家がお寺で弟が一人。わたしの持つ彼女に関するパーソナルデータはこのくらい。
そして、横から彼女を見ると、制服からでもやゆん、よゆんとたわわに実った胸が誇らしく見える。きっと柔らかい。
「わたしとちょっと、あそばない?」だなんて言葉が口癖でも不思議じゃない、学園の妖女。
仮に同じセリフで男子を誘惑しても、わたしなら「ぷっ」と一笑されるだけかもしれないが、彼女なら化かされたように
男子は彼女の後を付いてゆくのであろう。はいはい、男子なんかそういう生き物なんだよっ、バーカ。

「小野さんは、いつも……」
「あら、『小野さん』だなんて。『悠里』でいいわよ、リオちゃん」
使った後の歯ブラシを洗いながら、悠里はわたしより遥かに年上っぽい声で、わたしを同級生と認めてくれた。
コップとお揃いの歯ブラシケースは、お年頃の女の子のもの。水気を切ってポーチに収めると、悠里はわたしを教室へと誘った。
24代理:2010/08/29(日) 10:25:08 ID:Hlpt9BTF
悠里といっしょに歩くと、女のわたしでも男子の気持ちが分かる気がする。
一歩ごとに大きな尻尾は揺れて、わたしの純真な乙女心を落ち着かせない。見慣れている二次元の世界では、ここまでの色気は出せない。リアルの勝利か。
銀色の髪の毛は、ミステリアスな彼女の雰囲気とよく似合い、例えば悠里の為にお小遣いをすっからかんにされても後悔は無い。
「そうだわ。今日の放課後、わたしとご一緒出来ないかしら。りんごちゃんは吹奏楽部、翔子はバイトなんだって」
もちろん、わたしは無言で首を縦に振っていた。悠里のことに、俄然興味が湧いてきたのだ。
わたしと悠里との共通である友人は、わたしと同じウサギの星野りんごだ。
りんご曰く「年下でも年上でも、うぶな男子をからかうのが趣味」だとか。悠里とつるむことの多い翔子は、
そのことにやや苦心しているようだが、悠里の側に立って御覧なさい。理由はすぐに分かるから。

放課後、約束どおりに悠里とわたしは、帰り道を共にした。彼女がローファーを履く姿に見とれる。
足を靴に入れる仕草、屈むとふわりと顔を覆う前髪、スカートから覗く太腿、そして母なる大地を思い起こさせる胸がゆらり。
悠里の一つ一つの仕草が、どうしても色っぽくわたしの胸に訴えてくるのだ。足音さえ、大人を感じさせると思わないか。
とんとん!とつま先を床で叩くと同時に二つの豊かな胸が声を合わせるように揺れている。夏服のせいか著しく見える。

それを見ながら、わたしは自分の小さな胸を触ってみたが、何かが起こるということはなかった。
そうだ。出かけたことは無いけれど、デートに行くとしたら男子は、きっとこういう気持ちになるのだろう。
言葉で表すにはもったいないほどなのだけど、あえて言うなら「どぎまぎ」「はふはふ」「くらくら」そして「ふわふわ」。
まるで綿菓子の上を歩いているような感じ。雲ではなくて綿菓子だ。ここだけはどうしても譲ることは出来ない。
ちらりと横目で悠里を覗き見するわたしは、周りからはどう見てもおかしな子のようにしか映らないのだろう。
スタイルが良い悠里は、制服の着こなしが洒落ている。白いソックスが、キツネの細い脚によく似合う。
普段はどんな格好をしているのだろう。トップスも大人びたものも似合うんだろうし、スカートも短くても格好が付く。
流行のサンダルもちゃっかり履きこなして、世の『オトコノコ』たちを独り占めするんだろうな。
勝手に悠里を着せ替え人形にしてしまったわたしは、彼女の潤んだ目を見るのが少し恥ずかしくなった。
「お気に入りの店に行こうかと思ってね。誰かを誘おうと思ったんだけど、ごめんなさいね。リオも委員会がなくてよかったね」
「そうね、うん!うん……。わたしもさ、お……悠里と話したいなぁ!って思っててさ!ね!ね!」
悠里から誘われなければ、彼女の服装のことでやかましくお小言をしていたのかもしれない。
ただ、今は、悠里に興味津々。悠里の気になる店とは、一体どのような店なのか期待が高まるとともに、果たして自分が来店しても
一人で浮いてしまわないのだろうかと、少々心配になってきた。大人の世界にいてもおかしくない悠里のお気に入りの店だもの。
だってさ、銀座のおしゃれなカフェで「ガリ○リくん」をかじるようなものじゃないか。

この間は教室で落雁を食べていた。どうやらお取り寄せで手に入れた『鱚屋』の落雁。甘い物にはぬかりの無い
わたしたちの年代の子にしては、なかなか大人びた選択だ。上目遣いで甘えて来る洋菓子もいいが、三つ指付いて迎え出る和菓子もいい。
街の書店の脇を通り過ぎるが、悠里といっしょなので『コミック・モッフ』の表紙を直に見ることが出来ない。
今月の表紙『若頭』なのになぁ。むっはー!

「ここなのよ。ここ」
郊外へと伸びる私鉄の乗換駅前。わたしたちと同じ学生の姿も多い。悠里が指を差した店舗は、出来たばかりのものだった。
だが、すこしばかり「今日の」わたしには、ちょっと足止めしたくない店なのは致し方ない。
なぜなら、看板には『しの田のうどん』と書かれていたのだから。
25代理:2010/08/29(日) 10:25:49 ID:Hlpt9BTF
店内に入ると学生で一杯だった。
わたしたちの通う佳望学園のほか、隣町の学校、海岸沿いの女子高の生徒が多い。寄り道してまで食べてみたいということか。
壁際の席に座ったわたしたちは、さっそくオーダーを決めようとしたところ、悠里はすぐさまオーダーの伝票に書き込み始めた。
ここでは、お客が自らメニューが書かれた伝票に印をつけて、オーダーするシステムのようだ。
「きつねうどんねー。リオちゃんは?」
少し考える演技をする。お昼のトラウマを若干蘇らせながら、わたしはつゆがはねても少々平気である
悠里と同じきつねうどんにすることにした。それに、出来上がる時間も同じだから待つこと無い。なんて聡明なわたし。

「ここの油揚げは最高ね。豆腐はたんぱく質たっぷりだから、美容にもいいし」
「もしや!」
じっと、悠里の胸元を凝視するわたしはもうだめかもしれない。彼女が手を拭くたびに、二つの胸が揺れてどうも目を困らせる。
しかし、もっとわたしを困らせるものが目に入ってしまったのだ。毎日顔を会わせてる、ソイツの顔。
(う……。マオのやつ。朝のことは覚えてろよ、この愚弟が)

わたしと違う天秤町学園に通う中学生の弟のマオ。どうやら帰り道、友人たちといっしょにここに来ていたらしい。
いつも利用する私鉄の乗換駅だから、ここに来ていても不思議は無いが、せめてわたしがいない時間か日に来て欲しかった。
呑気にうどんをすすりながら、友人たちと談笑しているマオは、もしかしてわたしの悪口でも言っているのだろうか。
あちらが笑えば笑うほど、わたしは取り残されたような孤独感を抱いてやまないのだよ。

「お待たせさまでした」
二つどんぶりが並んでわたしたちのテーブルの上に並ぶ。熱々の湯気が夕飯前のわたしたちの食欲をかっさらい、
それに答えてわたしは油揚げが麺の上に浮かぶ姿に見とれる。すうっと息を飲み込むと、出汁の効いた風味が鼻腔をくすぐる。
揺れるつゆの香りと、油揚げの甘い香りが混ざる独特の風味なら、わたしの体の一部であるメガネを曇らせる価値が十二分にある。
つゆに浮かぶ葱はゆっくりと回転し、麺と葱の色合いが食欲を誘った。悠里は丁寧に割り箸を割ると、手を合わせていた。

「い、いただきます!」
割り箸で摘んだ麺は程よい硬さ。やや少なめにわたしは口にすると、わたしの口に麺の腰の強さが伝わる。
つるっと暖かい麺を一口ですすると、先からつゆがはねてわたしのメガネに張り付いた。
油揚げを口に咥えると、甘い汁があふれ出て口いっぱいに広がりつつも、熱さで少し舌が痛い。
半分に噛み切られた油揚げは、つゆに浮かんで丼の中でくるりと葱といっしょにまわっていた。

「やっぱり、ここの油揚げはいいでしょ?あら、そうだ。リオちゃん、お冷を汲んでくるね」
悠里は開いたコップを片手に席を外すと、尻尾を揺らしてお会計そばの冷水機へと向かっていった。
一人取り残されたわたしは、マオをじっと監視し続けた。ヘンな気持ちは無いけれど、アイツがヘンにさせるんだ。
26代理:2010/08/29(日) 10:26:36 ID:Hlpt9BTF
悠里が自分のコップで水を汲む。こんこんと糸のように冷水湧き出る機械の前で、彼女は大きな尻尾を揺らしていた。
ここで言うのもなんだが、悔しい。何だか悔しい。悠里の後姿は、色気の溢れる大人のシルエットだったのだ。
ローファーを鳴らして冷水機に向かう姿、一歩進むたびに尻尾がやゆん、よゆんと揺れて、ふわりとスカートもつられている。
お年頃の青少年だったら、かどわかされても「それじゃあ、仕方ないね」と呆れられるオチ。
オンナノコに甘い幻想を抱いて、本物の女の子を知って壊れることを恐れる世代の「オトコノコ」の考えることって!!そんな「オトコノコ」が、
妖しい色香を漂わせるわたしの同級生と冷水機の前でかち合った。ソイツは、毎日会っているウサギの少年だった。

「お先にどうぞ」
悠里はわたしの弟のマオに、順番を譲り一歩下がってマオを立てた。コップ片手にマオは、会釈をする。
とくとくと冷水機は白い糸を描きながら、のどを潤す水を湛えていた。その時間は短いようで、意外と長い。
「あ、ありがとうございます」
「いいのよ、ボク。どうもね」
悠里はマオの後に続いて冷水機から水を注ぎ始めたのだが、わたしはふと星野りんごの言葉を思い出した。

「年下でも年上でも、うぶな男子をからかうのが趣味」

きっと、悠里はマオと目を合わせたと同時に、りんごの言葉を如実に現すスイッチを入れているだろう。
イヌ科独特の尻尾のゆれを御覧なさい。マオのような少年は、きっと尻尾を見ているだけで、よからぬ妄想を抱くのだ。
マオが喜んで読んでいる少年マンガ誌で連載されてた『ているずLOVE』でも、やたら尻尾の描写がリアルだったじゃないか。
マオはそういう「ぱんつはいてない!」的な作品は読み飛ばしていた(と思う。多分)。そういう文化を小バカにするヤツなんだ。
だけど、女のわたしが読んでも萌えたというのに、弟ぐらいの中学生が見たら……。おっと、ジャッジメント!!

「あっ」
わたしと悠里が同時に同じ言葉を呟く。
悠里は冷水機からの水を不注意で溢れさせ、手を濡らしてしまったのだ。いや、不注意では無いことは、わたしにだってわかる。
濡れた手で持っていたコップを側の机に置くと、ぶんぶんと手首を振って、真珠のような水滴を飛ばす。
ケモノの手は一度濡れると後始末が悪い。ハンカチを探そうと(している振りの)悠里を見てマオが彼女の甘露溢れる蜘蛛の巣へ。
「いけない。ハンカチがバッグに……」
「お姉さん、コレをお使いください!!!」
手持ちのコップをすぐさま置いて、自分のポケットからハンカチをすっと渡すマオは、ここだけ見れば非常に紳士的であり、
騎士道を重んじる勇者のようだ。しかし、経験値の足りない勇者は魔女のまやかしに玩ばされるんだ。
27代理:2010/08/29(日) 10:27:37 ID:Hlpt9BTF
「ありがとう。助かったわ」
「は、はい」
机の上には、冷たい水が湛えられたコップが並んでいる。
片方は悠里のもの。もう片方はマオのもの。ぱっと見、どちらが誰のものか分からない。
悠里のコップは、年上のお姉さんの甘い口元触れた、オトナの甘味。甘くて、イケなくて、そして甘くて……。
「えっと……。どちらでしたっけ?」
「……えっと…」
弟は悠里の甘い口元を気にしながら、自分のコップを思いだそうとしていた。
きんきんに冷えた水。年上のお姉さんの口元。そして、彼女の口元が触れたかもしれないコップ……。

「ふふふ……。どうぞ?」
弟はじっと並んだコップを見つめながら、悠里の口元を想像していたに違いない。バーカ。

「そうだ、こっちだったね。ごめんね」
わたしが見つめていたから間違いないが、確実に悠里は悠里のコップを拾い上げ、マオに微笑みかけた後わたしの席に戻ってきた。
マオは自分のコップだというのに、恐る恐る残ったコップを掴み明らかに動揺した足つきで友人の待つテーブルへと戻る。
せめて、悠里が今日の日のことを忘れるまで、あのウサギがわたしの愚弟だとバレませんように!

悠里とさよならをして、自宅に戻ると残念ながら弟は帰宅していなかった。
わたしの高貴な趣味をバカにして、リア充街道まっしぐらの因幡マオ。この間、楽しく汚れなき二次元少女を愛でていたら、
渋柿を十食べたような顔をされた。彼に一矢報いるために、わたしはあの光景を目に焼き付けてきたんだ。
清く正しい少年も、妖艶な女子にとってはおもちゃ同然なんですよって。わたしだって!わたしだって!
弟の帰宅が待ち遠しい。制服のまま、居間で待つわたしのおもちゃになっておくれ。リアルに「コレなんて○○?」だよ。
くんくんと開きたての文庫(ラノベですが)を匂う。結構気に入っているスカートを揺らす。ニーソックスの脚をバタつかせる。
白く雪のような毛並みがはためくスカートから見えるじゃない?そうよ、わたしってば、みんな大好き女子高生だよ。
オトナの色香漂う悠里と同じだよ。おまけに頭に『文学』ってつけていいんだから。希少価値!
弟の声が玄関からゆっくりと響く。おかえり!わたしのおとうとくん!
「ただいまー」


おしまい。
28創る名無しに見る名無し:2010/08/29(日) 10:28:24 ID:Hlpt9BTF
上の作品はわんこ ◆TC02kfS2Q2氏の 「きつねの子」です
29代理:2010/08/29(日) 10:35:26 ID:Hlpt9BTF
連続で代理失礼します。
ているずLOVEはチラ裏?的なものかしら?念のため本スレには代理しないようにしておきます。

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ttp://loda.jp/mitemite/?id=1283.jpg
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30代理:2010/08/29(日) 10:37:32 ID:Hlpt9BTF
港に城が現れた。鉄(くろがね)で組み立てられ、街のどの建物と比べても大きく見える。
人々は仕事の手を休め、安らぎを忘れ、じっとその城を見ていた。
「帰って来たぞ!」
「おかえり!」
「いつ振りかねえ。『双葉』が帰って来たのは」
街の人々と、港の城は顔見知り。この街で生まれ、この国で育まれ、この大洋を駆け巡る、八嶋の国の自慢の戦艦『双葉』。
海軍工廠の建物と並び、波は白い泡を立てて洗い、船は長旅の疲れを癒しているかのように人々の目に映った。

「おかあさん!軍艦が帰って来たよ!」
「そうね。それじゃ、和豊さんも帰って来たのかね。この間絵はがきが届いてたしね」
丘の上に立つ小さな家屋。屋根に上ったネコの少年は、土間で回覧板を隅々まで読んでいた母親に「軍艦、軍艦」と叫ぶ。
屋根の下の畳の部屋では、少年の姉が小さな手帳に短くなった鉛筆で、せっせと書き込んでいた。
久しぶりにご馳走が食べられると、少年は目を輝かしながら屋根の上でピョンと飛び跳ねる。
青い空に少年の毛並みの白さが、雲と重なっていた。眩しい夏の光を全身に受けて。

「この間さ、笠置のねーちゃんが港の近くを飛んでて、憲兵さんに怒られたんだって」
「久しぶりのお天気だから、翼が黙ってなかったんだろうね。ハヤブサって子は」
「でも、笠置のねーちゃんが軍の機密を……」
と、言いかけた途端に母親の視線を感じ、ヘビに睨まれたカエルのように固まる。
ずり落ちそうな足を踏ん張りながら、なんとか話題を変えようと。

「この間のご飯はお腹いっぱいだった!」
「まずかったよね」
縁側に顔を出した姉が耳をたたんで目を細めた。
手にしている手帳にはぎっしりと文字が並んでいた。
「何言ってるんだよ。あれは『楠公飯』ってね、少ないお米であんたたちをお腹いっぱいにする不思議なご飯なんだよ」
「お母さん。あれ、手間は掛かるけど……あんまりね、味は」
強火で玄米を倍の水でそのまま炊き上げ、一晩寝かす。そしてさらに炊くと乏しい食事事情の時代でも、満腹になる『楠公飯』の出来上がり。
だが、味の保障はない。毎日は到底食べられない、とスズ子は大地の有り難味に愚痴る。
でも、人々は船の帰りや大海原に安らぎが訪れることを祈り続けていたことは、変わらないのであった。
「スズちゃん!読み物書いている暇があったら、回覧板を早くお隣に回してちょうだい。小説なんてね!あんた……」
「はーい。でもさあ……いずれね、この国は読み物でいっぱいになる時代が来るよ。きっと」
ゆらゆらと母親の尻尾が、五つの大洋を駆け抜ける艦隊の旗のように揺れていた。

―――その日の夕方、父母、姉弟は揃って夕方の涼しい風に当っていた。
縁側から居間に風が吹きぬける。虫が誤って入ってきた。姉弟揃って虫を追い駆けて天井を見上げるが、そこには板はない。
爆撃弾が引っ掛かるのを防ぐ為だ。この間、傷めた腰を庇いながら父親が取り払ったのだ。
時間が経つのを感じながら、誰かの帰りを待ち続け、夜空と星に浮かんだ『双葉』の影を遠くに望む。
31代理:2010/08/29(日) 10:39:36 ID:Hlpt9BTF
「泊瀬谷一等兵、帰宅しました」
子供たちが若々しい声を聞くなり、玄関に駆け出す。彼らが飛んでいった先には、海軍の軍服姿の若人が姿勢を正して玄関で敬礼をしていた。
その脇で父の姉が彼の側に申し訳なさそうに立って、同じように小さく敬礼。
「和豊、お帰り」
「お兄ちゃん!ねえ、アレやってよ!アレ!」
少年は和豊の尻尾に飛び掛るや否や姉に自分の尻尾をつかまれる。
「春男、和豊さんは入湯上陸で帰って来たんだから、ゆっくりさせてあげなさい」
「お姉ちゃんも見たいくせに!バーカ!」
べーっ、と舌を出して姉のスズ子は弟をあしらうが、和豊には微笑ましく映った。
潮風に洗われた和豊の毛並みは、不思議と垢抜けて見えた。

その日の夕飯はいつもと比べて格別に豪華だった。居間を包む香りがいつもとは違う。
真っ白いご飯に、野菜を煮たもの。どれも、彩が豊か。子供たちも争っておかずに群がるが、母親から尻尾をつかまれる。
和豊にとってはご馳走続きの一日だ。なぜなら、昼は昼でカフェにおいて『入港ぜんざい』を口にしたからだ。
しかし、このことは子どもたちに知られるとうるさいので、泊瀬谷家では「機密事項」である。
「和豊、軍艦はどうだ」
「仲間も上官も、みな良い人ばかりです」
久しぶりに実家に戻った和豊は兄の横顔を伺う。もう、どのくらい会っていないんだろうか。
地面が揺れていないなんて、和豊にとっては海軍学校を卒業して以来のことだった。
一方、兄は国民学校の教師だ。腰を痛めているので、地上で黙々と働くことが彼にとっては誇り。
この瑞穂の国を背負うお子たちを育て、教鞭を振り、繁栄させるのだと、兄は口にはしないが目で語っていた。

夕飯も終えて、それぞれがゆっくりとした時間を過ごしていると、家の外を出ると一つも物音さえしない夏の夜が広がっていた。
折角だからと家に帰って来た和豊と兄は、配給で少しばかり手に入れた酒を酌み交わしていた。
「ネコに入湯上陸だなんて、上官も洒落たことを賜りますね」
「海軍は昔から洒落ているのだ」
水の貴重な軍艦では風呂に入るために、上陸を許可する。それを『入湯上陸』と呼ぶ。
部屋の奥から「お風呂が沸きましたよ」と、声が飛んでくる。和豊はこの言葉でさえ懐かしい。
そのころ、和豊の姉が和室に蚊帳を広げていた。
スズ子は相変わらず手帳に文字を書き続け、春男は和豊の尻尾に絡み付いていた。
天に白鳥が羽ばたき、星の一粒一粒が眩い。誰もが星空が恒久に変わらぬことを願いつつ、『双葉』に一筋の願いを託していた。

「まあ、お前は海軍で散々使われるんだな」
「兄さん、ひどいですよ。ぼくが三毛猫だからって」
「お誂えだよ。『オスの三毛猫が船に乗ると沈まない』って昔から言うからさ」
兄に酒をゆっくりと酌みながら、和豊は頬を赤らめた。
「じきにお前はすぐに出世するよ」
「ご冗談を」
「教師は昔から洒落ているのだ」

また、ご馳走を食べたいなと願いつつ、子供たちは蚊帳の中に潜っていった。
和豊は自慢の三色の毛並みを夏の風に揺らして、風呂場に向かう。


おしまい。
32創る名無しに見る名無し:2010/08/30(月) 20:29:27 ID:nr7ysre4
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1353.jpg
※二週間ぶりの投下になります。暑くてバテバテでしたが、これからまた頑張りマスです。
※創発二周年おめでとうございます。私は来月9日がここの二周年だ。
33創る名無しに見る名無し:2010/08/30(月) 21:01:00 ID:tBOWgIeL
           /         \
          /        \  . \  ここはお前の日記帳じゃないだろ・・・常識的に考えて
        /  \   /   \ ヽ   |  こういうことはチラシの裏にでも書いてろ、な?
        \●/   \● /    .|
        /  ∧  \         |
        \_/ l_/        .|
____    ヽ ` ̄ ̄´         . |
     \--‐‐{              |
  u   . \ /{             .|//
        \. {           / /
u     u   │ ヽ  .      / /
34創る名無しに見る名無し:2010/08/30(月) 23:27:20 ID:DVKb48gZ
>>32
英せんせー!オレだー!結(ry
35創る名無しに見る名無し:2010/09/03(金) 18:11:21 ID:xugddbnp
ケモノじゃないけど魚人ネタってアリ?
36創る名無しに見る名無し:2010/09/03(金) 21:04:10 ID:cUklFbbk
とりあえず投下しちゃえよ。
37創る名無しに見る名無し:2010/09/11(土) 23:50:06 ID:nQqTQHhq
>>35です。
言い訳付きで避難所に投下しました。
38見習い:2010/09/14(火) 01:41:08 ID:rUtL05Ct
39創る名無しに見る名無し:2010/09/16(木) 17:18:10 ID:dWdFTa5K
>>38
わらたww
40わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2010/09/18(土) 16:25:18 ID:DSWcO7XV
>>38 かわええのう。

夏を忘れてしまう前に、こんなSSを。
41きっと、ずっと ◆TC02kfS2Q2 :2010/09/18(土) 16:26:15 ID:DSWcO7XV
泊瀬谷が誰もいないと思っていた保健室には、犬上ヒカルが一人で本を読んでいる姿があった。
とくに身体の具合が悪いというわけでもないのに、純白のベッドに腰掛けてハードカバーの本を黙々と捲っていた。
しかし扉が開く音に気付いたヒカルは、必死に大きな本を背中で庇おうとする。
「ヒカルくん?」
顔ではウソを突き通しても、尻尾が全てを暴き倒す。白い毛並みが真実ならば、足元の影は虚言を表す。
真っ直ぐに閉じた口から、誰からも見透かされるウソが聞こえてくる。
「具合、悪いのかな……」
「いいえ」
「それじゃ、保健室に来ちゃだめでしょ」
「……ごめんなさい。一人っきりになりたくて」
保健室の主・白先生の姿はない。こともあろうに、無用心にも鍵がかけられていなかった。
消毒と薬品の匂いは保健室が保健室であることを物語り、飾られたマグカップやコーヒーのサイフォンも端役として演じている。
部屋に置かれたベッドのシーツは乱れていない。几帳面な白先生が整えたままの姿であろう。
そのベッドにイヌ独特の毛が然程付いていないということは、ヒカルがここに来てそれ程のときは経っていない証拠。

スリッパの足音を鳴らさぬようにイヌの少年に近づくネコの泊瀬谷。ヒカルの担任教師だからこそ、気がかりで、ほっとけなくて。
泊瀬谷の白い毛並みを窓からの夏最後の光を浴びる。白い毛並みが真実ならば、足元の影は虚言を表す。
「先生は?」
「具合なんか悪くないよ。ただ」
後ろに見え隠れする本をヒカルが隠す姿は、親にお説教された幼稚園児と比べてもなんら変わりがなかった。
と、例えても誰もが納得するようなものだった。秋の稲穂に被さる綿雪を思わせる尻尾がベッドからこぼれる。

泊瀬谷は一介の現国教師。
泊瀬谷はただのネコ。
教えてくれなくたって分かっている。それでも、イヌの少年を自分の瞳に映そうと、映そうと。眼球に焼きついたって構わないぐらい。
だけど、理屈はどうしても答えられません。理屈は考えるもの。考えても、考えても、考えても。
この場から離れたくないという理屈はどうしても答えられません。だからと言って、親切な答えはご遠慮いただきたい。
内に秘めたる思いをひたすら隠し続けることの苦しさで、我慢が出来ずに爪が顔を見せるのだが、ヒカルには悟られたくはない。

「先生、一人で本を読みたいなって、思ってね」
「先生もですか」
つい『先生も』と、こぼすヒカル。気付いているのか、わざとなのか真意は不明。
そこに深入りすることなく、泊瀬谷はトートバッグから適当に一冊取り出して、笑顔を繕う。
ひとつウソをついて、またひとつ自分を苦しめ、泊瀬谷は自分の爪をそっと仕舞う。
42きっと、ずっと ◆TC02kfS2Q2 :2010/09/18(土) 16:28:13 ID:DSWcO7XV
     ××××××

泊瀬谷が生を受けて17度目の夏。

学校からの帰り道に親友である飛鳥の恋人の話を聞くのが、泊瀬谷の日課になっていた。
潮風が飛鳥と泊瀬谷のスカートを揺らし、ごろごろとのどを鳴らしているかのように二人は目を細める。
垢抜けない白いカラーのセーラー服に反抗して、ちょっとばかしオトナっぽく紺色のソックスが足元を引き締める。
突き抜けるような青い空と、物静かな海には花が咲き始めた二人のネコには良く似合う。
「はせやん、タケルのことなんだけどー」
「またー?」
「うん」
甘えるような言葉で飛鳥の相談ごとはいつも始まり、泊瀬谷もその相談ごとを受けることは、苦であるよりもむしろ楽しみであった。

飛鳥は背中まで伸ばした黒髪が自慢のシロネコの少女だ。揃えられた前髪が清楚さを物語る。
泊瀬谷からは飛鳥のことが非常におとなしく見え、飛鳥から見ると泊瀬谷こそ大人しいと言う。
しかし、泊瀬谷は飛鳥の方が同い年なのに年上のように感じ得る。それは、タケルの存在だ。
タケルは彼女らが通う高校から少し離れた狗尾高校という男子校の生徒。大柄な洋犬で女の子なら
だれでも抱きしめられたくなるような、真っ白く誇り高い毛並みを持つ男子生徒だ。
学校から帰りの電車の中で、飛鳥にタケルが話しかけてきたことから二人は始める。

飛鳥がタケルと付き合い始めたのは、それぞれが高校に入った頃のこと。
「ここ、涼しいですよ」
タケルの心遣いからだった。
青い海の見える涼しげな窓際、タケルの純粋な親切心が恋心に変わる。そして、二人が付き合うようになるには、そう時間は必要なかった。
そのとき泊瀬谷も一緒に電車の中に居たので、タケルのことは少しばかりは知っている。
始めこそぎこちない二人だったが、日に日に二人はお互いのことを深く知るようになる。
立派な体格のタケルの姿を見て、泊瀬谷は飛鳥のことを嫉妬したと同時に心から幸せを祝った。
友人の恋人だもの、応援しなきゃ。

あるとき、飛鳥はタケルの普段見せない仕草を嬉しそうに話していた。
タケルの尻尾にきゅっと爪立てちゃった、だの。
「尻尾を握ると嫌がるんだよ。大きい体してるのに。で、いきなりわたしが指から爪を出すと『ひっ』って声出して驚くんだ。かわいい」
泊瀬谷は飛鳥の話を勝手に自分に当てはめて、にこにこと楽しんでいたのだった。

「飛鳥も果報者だぞっ。あれだけの男子を彼氏にできるって」
「ううん。そう思われても仕方ないけどね」
「だって、タケルくんすごい人気者だよ」
海岸沿いのコンクリの護岸の上、両手を広げ尻尾を立てて歩く。飛鳥は子どものようにはしゃぐ泊瀬谷と違う目をして俯いていた。
両手でしっかりとカバンを携えた飛鳥が歩くたびに、膝でぽんぽんとカバンの背がぶつかる。
海風がスカートを捲ろうとふわり。泊瀬谷は海側に背中を向けてカバンを持ったまま押さえる。
同時に飛鳥の黒髪が揺れて足取りを止める。遠くで私鉄電車が揺れる音が聞こえてきた。
しかし、飛鳥の不安を誘うような、何かに必死に縋りたいような気持ち。泊瀬谷にはそれが分からない。
43きっと、ずっと ◆TC02kfS2Q2 :2010/09/18(土) 16:29:46 ID:DSWcO7XV
「わたし、タケルと別れようかなって、思ってるんだ」
「えっ」
興味から理解。知ることは気持ちの晴れることかもしれないが、同時に伏せたくなる事実もはらむ。
「タケルと付き合ってきて考えたんだけどね」
両足揃えて護岸から飛び降り、ローファーの足音鳴らす。スカートがふわりと舞い上がる。

大柄なイヌが小さなネコを連れて歩く姿は、学校の女子たちの間では目を引くものだった。
できることなら、ずっと二人が幸せでいて欲しい。たとえ、自分の幸せを二人に分けて、ぽっかりと穴が開いてしまってもいい。
だからこそ、飛鳥の気持ちを理解するのが困難だった。

「タケルくん、優しいのにどうして」
「どうしてって……。なんだかねえ、優しすぎてイヌのことが分かんないのよね」
「頼り甲斐があって」
「そうなんだけど、ほら。わたしたちってネコじゃない。それが彼には分からないみたいなのね」

種族が違う。
イヌとネコだから。
ツメが違う、牙が異なる。
瞳も違う、そして何もかも違う。
言い訳を見つければ見つけるほど、湧いてくる二人の違い。
所詮はオトナの言い訳だ、と吐き捨てても泊瀬谷には受け入れられない純粋な子どもの気持ち。
「タケルはタケルで『お前は気まぐれすぎる』って言うし、わたしはわたしでタケルのこと『真面目すぎだよ』って思うんだよね」
「真面目って、だめ?」
「うーん。放っておいて欲しいときに心配してくれるんだよね。うれしいけど」
「……うん」
同じネコ同士だからこそ分かる、ネコの価値観。
親切心が恋心、恋心が老婆心へと変わるとき。
「はせやんもイヌの男子はやめた方がいいかも。はせやん、恋愛初心者だし」
「教習所も通ってないけどね。それに、わたし」
「いつかは『泊瀬谷センセ』って呼ばれるようになるんだもんね」
「なれるかな」
「なれるよ」
海岸沿いに立つ古い建物が目に入る。同じ制服の男女が群れ、解きかけのクロスワードパズル雑誌を伏せて駅員が改札を始めていた。
二人が乗る私鉄の郊外線に、成人式を二回ほど迎えた電車がゴトゴトとホームになだれ込む。
ブレーキの空気が吐き出される音に、身体の小さな生徒は怯えていた。運転士が窓から顔を出す。
その中には狗尾高の男子生徒が幾ばくか乗り合わせており、イヌの生徒ばかりとあってか、かなり車内が狭く感じる。
『好きっていうことと、なりたいっていうこと』
泊瀬谷が悩み続けているうちに、飛鳥は駅入り口に駆け込んで定期券をすっと出す。
44きっと、ずっと ◆TC02kfS2Q2 :2010/09/18(土) 16:31:36 ID:DSWcO7XV
――――恋が実ることなんて無いと思っていました。
全ての恋は、氷漬けにされた花。眺めているうちは美しい。だけども取ろうと思って氷を触ってみると手を傷めてしまうのです。
爪を立てても、けっして花には届かない。いつかあの花を手にしたいと、氷が融ける日を毎日ずっと待ち続けていました。
わたしが高校生のころ、友人たちは、氷を一ミリでも融かそうと熱心に暖めたり、かじったりしていたのですが、
わたしにはその頃それに興味が無かったのです。いや、無かったと言えばウソになります。手を出すことが出来なかったのです。

時間はわたしに残酷です。
頭をぶつけて母親を追い駆けていた子ネコは、いつの間にか大きくなって、一人だちの日が来てしまったのです。
教師である父の元、わたしは一生懸命に教師になる勉強をしました。大学に入りました。学校に勤めることになりました。
社会的な地位も手に入れることも出来ました。しかし、氷漬けの花のことをすっかり忘れていたわたしが、
がむしゃらにオトナになることだけ考えていた頃は、終わっていたと気付きます。そして、花のことをふと、思い出したのです。
すっかり氷が融けて、水に濡れた若い花をオトナになってしまった今、手にしてしまったのでした。

花はきれいでした。何処にでもあるような花でした。そして、もうそれは、冷たくもありませんでした。
一輪の花を手にすることがこんなに嬉しいことだとは思いもしませんでした。しかし、同い年のみんなは、
とっくにわたしよりも大きくてお値段も高い立派な花を両手一杯に抱えていたんです。

それでも、わたしは自分が手にしている小さな花が愛しくて堪らないのです。

―――時と雲は流れる。

     ××××××

交わす言葉は無くていい。
そっと側にいることだけが、約束だから。
45きっと、ずっと ◆TC02kfS2Q2 :2010/09/18(土) 16:33:34 ID:DSWcO7XV
義理を重んじるイヌと自己を愛するネコだって、二人を繋ぐものがあれば、きっと。
種族が違っても、きっと上手くやっていけるはず。
「先生、分かってるよ。一人で本を読んでいたってこと」
「……ごめんなさい」
耳をたたんだヒカルは、そっと隠していた本を腿の上に差し出す。
ヒカルの一緒にベッドに腰掛けて、顔を赤くしてお説教。だって、泊瀬谷は担任教師。

「いけないことしていたから『めっ』てするよ」
白くて豊かなヒカルの尻尾を泊瀬谷は握る。そっと、大切なものを手にするように。
柔らかい。温かい。くすぐったい。そして、ヒカルの表情が胸を打つ。
小さなネコだって、イヌを困らせることができるんだよ。と、言いたげな泊瀬谷は、ヒカルが油断している隙を狙って、指から爪を伸ばす。
「ひっ」
「へへへ!」
するりと抜けたヒカルの尻尾の感触が泊瀬谷に残る。もう、二度は触らせてくれないのだろうかと、心残り。

「お仕置きはおしまい。だから、もう何も言わないよ。今度は、ヒカルくんが先生にお仕置きする番だからね」
「……お仕置きだなんて」
「具合も悪くないのに、保健室に来たんだもん。ヒカルくんからお仕置きされなきゃ」
泊瀬谷の声は授業のときよりも明るい。そして、つづけて。
「こんなお仕置きはどうかな。『ヒカルくんが保健室に勝手に入っていたことをわたしはずっと黙っておく』っていうの」
いつの間にか泊瀬谷はヒカルの肩に寄り添って、瞳をそっと閉じる。
「だって、先生はきまぐれなネコだもの。こんなお仕置き、苦しくて苦しくて……」

きっと大丈夫。ずっと大丈夫。
わたしはヒカルの気持ちをきっと、ずっと分かっているはずだから。
泊瀬谷は自分がネコでヒカルがイヌであることに深く感謝しながら、くんくんとヒカルの襟首を嗅いだ。


おしまい。
46わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2010/09/18(土) 16:35:48 ID:DSWcO7XV
秋がやってるよ!
投下終了。
47創る名無しに見る名無し:2010/09/18(土) 20:43:11 ID:L3VA9tLN
もう最高です。このふたりは萌える。
はせやんかわいいなあ本当にもう。
48創る名無しに見る名無し:2010/09/19(日) 03:07:48 ID:8OoVzPFX
はせやーん!ヤーンヤーンヤーン(エコー)
結婚してくださぁぁぁい!サアーイサアーイサアーイ(エコー)

……ヒカルきゅんと、な!
49創る名無しに見る名無し:2010/09/20(月) 01:16:41 ID:aBxpAx/M
言い過ぎかもだけど、書き込みをためらうほどクオリティ高いスレだな まったく
50創る名無しに見る名無し:2010/09/22(水) 03:13:08 ID:9y2c2PKf
にやにやにやにやにやにや
51 ◆/zsiCmwdl. :2010/09/28(火) 19:50:56 ID:gVjf2POY
久しぶりに投下しにきた俺が通りますよ。
すっかり気温も下がって涼しくなったけど、今回は夏の名残のようなSSを一つ。

次レスより投下。
52ネコ科と空 ◆/zsiCmwdl. :2010/09/28(火) 19:52:44 ID:gVjf2POY
 
「くそ……最悪だ」
 
 未だ残暑も厳しいある日。
 晴れ渡る空の下、両手に押すバイクの重みを全身に感じながら、私は様々な事に対して悪態を漏らした。
 じりじりと毛皮を突き刺す日差しを浴びて、目玉焼きでも焼けそうな位に熱くなったアスファルトから陽炎が立ち昇る。
 こんな地獄のような状況の中、わざわざクソ重い愛車を延々と押して行こうだなんて、普通は考えたくも無いだろう。
 しかし生憎、今の私はこの炎天下の中、愛車を押して行かざるえない状況にあった。
 
 始まりは今から三十分ほど前、私が愛車のZUと共に一陣の風となっていた時の事だった。
 残暑も風の彼方へかっ飛ぶ軽快な走りから一転、唐突に前輪から生じる不快な違和感。
 嫌な物を感じた私が咄嗟に愛車を止めて見た物は、重力に負けて力無く潰れた前輪のタイヤだった。
 そう言えば、少し前くらいに交通事故の現場の、交通整理しているその脇を徐行して通り過ぎたのを思い出す。
 恐らく、其処で鉄片かガラス片でも踏んでしまったのだろう、これでは流石の愛車も性能の発揮しようが無い。
 
 しかし、直ぐに異変に気付く事が出来たから良かったのだが、、
もし気付かずに走ってタイヤをバースト(破裂)でもさせていたらと思うと、私は背中の毛皮を毛羽立ててしまう。
 なにせ、高速走行時においてのタイヤのバーストほど、バイク乗りにとって恐ろしい事態は無いからだ。
 
 当然、私は足を痛めた愛車を走らせる訳に行かなくなり、
結果、厳しい日差しの中、愛車の修理工具のある自宅のマンションまで重量230キロ超の愛車を延々と押す羽目になったのである。
 こういう事になるのなら、せめてパンク修理の道具ぐらい持っていけば良かったと後悔しても後の祭だ。
 今は、せめてチューブが揉まれてヨレヨレになる前に家に辿り付ければと祈るくらいか。
 
「……暑い」
 
 茹だるような暑さに、私は何度目とも付かぬ愚痴を漏らす。
 こういう時に限って綺麗に晴れ渡った空が、今の私には酷く恨めしく感じる。
 雲と言う傷害物が無い事を良い事に、太陽がこれ幸いと強烈な日差しで私の不快指数をがんがんと上げて行くから。
 暑さに喘ぐ私の横をごぉっ、と轟音をあげてトラックが通りすぎて行く。後に残るはむわっとした熱気と鼻に突く排気ガスの臭い。
 自宅のマンションまで後数キロ、それまで私はこの状況をずっと耐え続けなければならないのか。
 全く、夏もとうに過ぎたというのに……この蒸し暑さは何なんだ?
 
「……そうだった、これがあったんだ……」
 
 それでも舌は出すまいと我慢して押し続けて幾数分、
私は目の前に広がる光景を前に、絶望感を入り混じらせた呟きを漏らした。
 高低差約35メートル、総距離1.5キロに渡って続く長くキツイ上り坂。
 この坂を乗り越えた先に、私の自宅のマンションがある。
 
 何時もならば、愛車の馬力に任せてあっという間に通り過ぎてしまうこの坂、
しかし、今の私の目には、この坂が何処までも高くそびえる険しい山岳にも見え、思わず尻尾をくねらせてしまう。
 
 今の気分としては、このまま残った体力を振り絞って坂を一気に上り切ってしまいたい所ではある。
 だが、未だ暑さ厳しい時にそんな無謀なマネをすれば、即、熱中症でぶっ倒れる事になってしまうだろう。
 しかしだからといって、このくそ暑い中をのんびりと登って行こうという気にもなれない。
 
 さて、どうした物か……ま、ここは取り敢えず、煙草でも吸いながらゆっくりと考えるとしよう。
 誇り高き獅子族ものんびり気質なネコ族の親戚、時にはゆっくりと考えたい時もある。
 
 そうやってバイクのスタンドを立てて、ヘルメットを小脇に置いた私が、懐から煙草を取り出そうとしたその矢先。
私の横を通り過ぎた軽トラが少し離れた場所で急に止まり、そのままするするとバックして戻ってきた。
 そして、怪訝な眼差しを向ける私の前に軽トラが止まり、その開いたままの窓から作業着姿の白猫の女が身を乗りだし、
 
「ねえ、其処のライオンの貴方。一緒に乗っていかない?」
 
 とうの昔に過ぎ去った夏空の様な笑顔を私へ向けて、そう切り出した。
53ネコ科と空 ◆/zsiCmwdl. :2010/09/28(火) 19:53:36 ID:gVjf2POY
「にしても、あんな所でパンクするだなんて、災難だったね」
「…………」
 
 ばつの悪そうに助手席に座る私へ向けて、軽トラのハンドルを握る彼女が話しかける。
 しかし、私は何も答えず、代わりに窓の外を流れ行く景色を眺めながら。尻尾の先でシートをぺしぺしと叩くだけ。
 そんな私の態度に彼女は少しだけ苦笑すると、ホンの少しだけ軽トラのスピードを上げた。
 
「やれやれだ……」

 こちらから軽トラの運転の方へ意識を傾けた彼女を横目に、私は小さく漏らしつつ荷台の方の窓へ視線を向ける。
 その荷台の上には、足を痛めた私の愛車がロープでしっかりと固定されて、風を一身に受けている所。
 
 本当の所、こう言う事は自分自身で何とかするのが私のスタイルなのだが、
それで変に意地を張って、結果ぶっ倒れる事になったら余計に恥かしい事になると考え
結局、家がバイク屋をやっていると言う彼女の勧められるがまま、私は彼女の世話になる事となった。
 
 ……こんな所、もしあの”とっつあんぼうや”に見られでもしたら、
奴はそれこそ鬼の首を取ったかのように私をからかってくる事だろう。
 その様子を思い浮かべただけで、癪に障る。
 
「ねえ、獅子宮先生、だっけ?」
「ん、あ…ああ?」
 
 物思いに耽っている所で、彼女に初対面にも関わらず名前を言われ、思わず戸惑う私。
 何故、彼女は私の名前を知っている? 名前なんて言った覚えなんぞ無い筈だが……。
 その思考を表して訝しげにくねる私の尻尾。それを見て取った彼女は少し慌てて説明する。
 
「あ、驚かせてゴメンね? 実は言うとわたし、何度か佳望学園に来た事があって、その時にあのZUを見た事があったのよ。
それで、持ち主が誰なのかがちょっと気になって学園の生徒に聞いてみたら、あなたの物だって」
「…なるほど」
 
 なんだ、そう言う事だったのか、驚いて損した気分だ。
 思わず溜息を漏らす私の横顔を眺め、彼女は不意にクスリと笑う。
 
「ん…? 何故笑う?」
「わたしね。今まで獅子宮ってどう言う人だろうってずっと思ってたのよ。
何十年も前に産まれたZUを、まるで新品みたいに磨いて大事に乗り続けてる人だから、素敵な大人の女性なのかなって。
けど、実際に会ってみるとせんせって何だかワイルドな感じな人だったから、ちょっと意外だなぁって思っちゃって」
「む……それって遠回しにバカにしているのか?」
「バカにしてないって。むしろ誉めている方よ?」
 
 どうもそうは聞えんのだが……まあ良い、くだらない事は気にしないで置くとしよう。
 それより、今は少しだけ気になった事を聞くとする。
 
「所で…えっと」
「あ、わたしの名前は杉本 ミナ。ミナと呼んで良いよ」
「じゃあ、ミナ。お前は何度か学園に来た事があると言っていたが、一体何の用で学園に?」
「んと、学園に昔からの知り合いが居てね……っと」
 
 其処まで言った所で、目的地である自分の家のバイク屋傍の駐車場へ到着したらしく、
軽トラを止めた彼女――ミナは早速、荷台の愛車を下ろすべく尻尾を靡かせて外へ出ていってしまった。
 ……むぅ、聞くタイミングが少しだけ悪かったか? 肝心な事が聞けなかった。
 
54ネコ科と空 ◆/zsiCmwdl. :2010/09/28(火) 19:55:31 ID:gVjf2POY

「ここがミナの店か……」
 
 ミナに少し遅れて軽トラから降りた私は、まだ秋らしくない暑い日差し注ぐ中、駐車場から彼女の店を見やる。
 恐らく戦前から存在しているのであろう、木造の長屋並ぶ商店街の光景に溶け込む様にして佇む、一軒の古びた店舗。
 その瓦屋根に掲げられた所々錆びの浮いたホーローの看板には『杉本オート』と大きく書かれ、その存在を無言で示していた。

「ん、手伝おうか?」
「別に良いよ。私にとってこれが仕事だし」
 
 店の観察を終えた私がミナの方へ目線をやれば、
彼女は軽トラの荷台から私の愛車を降ろそうと、尻尾を左右にくねらせている所であった。
 その様子に少し心配した私が彼女へ手を貸そうと声を掛けるが、返って来た答えは少々つれない物。
 そして、軽トラから降ろした愛車の前輪に移動用の台車を取りつけた彼女は、愛車を店内へ押しつつ私へ話しかける。
 
「それにしてもこのZU、本当に良く手入れされているね。これ、せんせにとって大事な物なのかな?」
「ああ、大事な人からの貰い物だからな」
 
 私の短い返答にミナはふぅんとだけ返し、店内の修理スペースへと押した愛車のスタンドを立てた。
 そして、ふと店内を見まわした私は、使い古しのパンク修理用工具を戸棚から取り出す彼女の背にむけて問う。

「この店、ミナ一人でやってるのか?」
「ううん、お父さんと一緒にやってるんだけどね……おと―さーん! お客さーん!」

 ミナが答えて、店の奥にいるであろう父親へ声を掛けるも、返って来るのは静寂ばかり。
 その様子に今、店には父親が居ないと察したのか、ミナは不機嫌に尻尾を左右に振って、

「もうっ!、お父さんったら店開けっぱなしにして何処行ったのよ! 大方、友達に誘われて囲碁の勝負って所かな?
……ごめんね、せんせ。ちょっと時間掛かりそうだけど良いかな?」
「別に構わん。こうやって修理してもらえるだけでも僥倖なんだ。文句は言ってられんさ」
「ありがと、せんせ。なら30分程で仕上げるから」

 言って、ミナは手馴れた動きで工具を使い、手際良く愛車の前輪のタイヤのチューブを露出させる。
 そして、少しだけ空気を入れたチューブを盥に入れた水に浸してパンクの個所を探しつつ、彼女は私へ問う。

「所でさ、せんせはこのZUは貰い物だって言ってたけど……誰から貰ったのかな?」
「……何故その様な事を聞く?」
「んー、ちょっとね、昔に私の親戚が乗ってたのよ、これと同じ色をしたZUに。
でも、その親戚の乗ってたZUはある事情で貰われちゃったから、ひょっとしたら同じ物なのかなって」
「……」

 言いながら作業する彼女の、バイクに向けるその眼差しは、何処か遠くへ置き忘れた恋心を見つけた少女の様で、
その様子を前にした私は、何だか聞き返すのも悪い気がして、喉元に出かけた言葉をそっと胸中へと戻した。
 と、そうしている内に、にわかに動きを慌しくした彼女がある所を指差して言う

「せんせ、ちょっと見て。たぶんパンクの原因はここね。ガラスか何かを踏んだ物と思うけど」
「ああ…パンクする前に交通事故の現場横を通ってな、恐らくそれでかもしれん……直せるか?」
「大丈夫! バイクを押してたからチューブが揉まれてないか心配だったけど、その様子も無さそうだし。
この程度なら15分も掛からないわ」

 私の問いにミナは自信満万に拳を軽く振り上げ、早速とばかりにパンクの補修へと取り掛かる。
 パンク個所周りをグラインダーで軽くヤスリ掛けした後、補修用接着剤を丁寧に塗ってその上に補修パッチをペタリ。
 チューブ式である故、自転車のタイヤ修理と同じ感じでは在るが、彼女はよほど手馴れているらしくその動きは実に手際が良い。
 私が以前、一人でやった時はけっこう時間が掛かった物だが……流石はその手の職についた者と言うべきか。
55ネコ科と空 ◆/zsiCmwdl. :2010/09/28(火) 19:56:17 ID:gVjf2POY

「ふぅ、おおむね良しって所ね。けれどせんせ、分かってると思うけど修理したタイヤでは…」
「高速走行は危険だろ? 如何しても強度が落ちるからな」
「そうそう! 最近のバイク乗ってる子ってそれが分かってないから危なっかしいのよね…っと」

 私と話しながらも、ミナは手際良く修理したチューブをホイールへ戻し、金属のヘラを使って外側のタイヤもホイールへ戻す。
 その一才の無駄の無い彼女の動きには、流石の私でさえも思わず感心してしまう。
――と、丁度ミナが作業を追えた所で店内に入ってくる誰かの足音。

「ふぅ、あっついあっつい、やっぱクーラーの効いてる店が一番だわ」

響いた声に、耳をピクリと動かして振り向くと、其処にはミナと同じ作業服姿の白猫の中年男性の姿があった。
同じくその姿に気付いたミナは耳と尻尾を一瞬だけピンと立てると、直ぐ様尻尾を不機嫌に左右にくねらせて、

「あ、お父さん!」
「おう、ミナ。帰っていたのか?」
「もぅっ! 『帰っていたのか』じゃないわよ! 店開けっぱなしで何処行ってたのよ」

不機嫌に尻尾をくねらせるミナに対して、白猫の中年男性――もとい彼女の父親は苦笑い浮かべつつ、

「いやぁ、ちょっと、二軒隣の田中さんにバイクのブレーキの調子が悪いって言われて見に行ってたんだけどな。
その修理した後で田中さんに『一局行きません?』って誘われて、それでつい対局に熱くなってる内に……」
「それで店のことすっかり忘れちゃった訳ね……後でお母さんに引っ掻かれても知らないわよ?」
「う゛、いや、悪いけどミナ、この事はお母さんにはナイショにしてくれねぇかな? この前も怒られたばかりだし……」

酷く申し訳無さそうな表情で頼みこむ父親をミナは一瞥し、溜息一つ。

「…分かったわ。今回だけよ」
「わりぃ、物分りの良い娘もって助かったぜ」
「でもその代わり、今日の後の仕事はお父さんがやってね?」
「ぐっ…分かった。やっぱそうは上手くいかねぇわな……」

上手く娘にやり込められ、たははと苦笑して見せるミナの父親。
如何も、ネコ科のケモノの夫婦は総じて恐妻家の様である。本人は満更でもなさそうであるが。
56ネコ科と空 ◆/zsiCmwdl. :2010/09/28(火) 19:56:57 ID:gVjf2POY

「じゃあ、後の仕事は俺がやっておくから、ミナは上がって良いぞ……っと、そのライオンの姉ちゃんは?」
「ん? この人は、お使いの帰り道にこのバイクのタイヤがパンクして困ってるのを見掛けてね。
それで、帰るついでにって店まで来てもらって、今修理終わった所」

 私を指し示しつつのミナの説明に、彼女の父親は何故か溜息一つ付いて言う。

「なんでぇ、折角美人の姉ちゃんのバイク弄れるのかと思ったのに……もう少し早く帰ってりゃ良かったか?」
「お 父 さ ん っ ! !」

 ちっとも反省の様子が見えない父親の様子に、思わず尻尾の毛並み逆立てて怒鳴るミナ。呆れる私。
 しかし父親はひらひらと「へいへい、スマンね」と言う感じに尻尾の先で答えるだけ。
 と、その流れでちらりと私のバイクを見た父親は、ふと何かを思い出す様に言う。

「そういやこのZU、どっかで……」
「所でお父さん、この前に頼まれた宮永さんのバイクの修理まだ終わってないんでしょ?」
「――おっとそういやそうだった。いけねいけね」

 ――しかし言いきる前にミナに仕事を促され、父親は修理最中の別のバイクの方へ行ってしまった。
 私は父親の話を無理やり切り上げるような彼女の妙な行動に、一瞬だけ妙な物を感じた。
 はて、このZUの事で話されたくない事でもあるのだろうか? ……まぁ、人様の事情に深入りしてもしようがないか。
そんな私の思考とは余所にして、ミナは何処か疲れた様にふぅ、と深い溜息一つ付いて、

「ゴメンね、せんせ。お父さんがあんな人で……。
腕前は良いんだけどね、あんな性格だから何時もお母さんに怒られっぱなしなのよ」
「いや、良いさ。亭主関白よりかはネコの夫婦らしくて良いじゃないか」
「まぁ、そりゃそうなんだけどね」

 と、私に向けてニシシと明るく苦笑して見せた後。
ミナははと何か思い立った様に尻尾をピンと跳ね上げて、

「ねぇ、折角だからさ。パンク修理後の試験走行もかねて、わたしとツーリングしてみない?」
「…んな? 別に良いが…しかし随分といきなりだな」

 一応了解しつつも怪訝な表情を向ける私へ、
彼女は初めて出会った時と同じ、夏空の様な笑顔を向けていう。

「ふふっ、ネコは気まぐれなのよ」
57ネコ科と空 ◆/zsiCmwdl. :2010/09/28(火) 19:58:27 ID:gVjf2POY
 吹きぬける風に、ほんのりと潮の香りを感じる潮騒通り。
 夏の盛りを過ぎて若干車通りも少なくなったこの道を、2台のバイクが風を切って走り行く。
 一台は私の駆るZU、そしてもう一台はミナの駆るエストレア。

「今日は絶好のツーリング日和ね、せんせ!」
「ああ!」

 吹き付ける向かい風に構う事無く、私とミナは言葉を交わす。風になびくミナの尻尾。
 作られた時代も場所もコンセプトも異なる2台だが、今は足並み揃えてエンジンの二重奏を奏でる。
 特に私のZUはパンクして走れなかった鬱憤を晴らすかの様に、鋼の心臓からDOHCサラウンドの鼓動を鳴り響かせている。
 しかし快調に飛ばしていた私とミナへ無粋にも待ったを掛けたのは、顔を赤くした信号機。
 
「ねぇ、これからちょっと寄りたい所があるけど、せんせにも付き合ってもらってもいいかな?」
「……ん? 別に構わないが……?」

 信号待ちで止まった所で、私の横へ止まったミナから突然の提案。
断る理由も見付からなかったので頷いてみた物の、このタイミングで何処へ行くのやら?
 そんな疑問を表情と尻尾に出さないように私は彼女へ問う。

「それで、何処に行くんだ?」
「んっと、ここからだと5分程度の場所。そう遠くないわ」

 ミナのその答えと同時に信号機が青という名の緑色へ顔色を変え、再び私と彼女は走り出す。
 そして、彼女の先導にしたがって走る事、約五分。着いた場所は海の見える小高い丘にある小さな墓地であった。
 駐輪場へバイクを止めた私は、こんな所に墓地があったのだななどと周囲を見まわしつつ、彼女の尻尾追って付いていく。

「ここよ、わたしが寄りたかった場所」

 言ってミナが指し示したのは、墓地の片隅の、海が見渡せる場所にある一つの墓。
その墓石には『杉本家先祖代々之墓』と掘られていた。

「墓参りか」
「まぁ、そういった所ね」

 私の問い掛けに答えながら墓に線香を上げるミナのその横顔は、
手の届かぬ遠い――遠い何処かへ行ってしまった者を想うような、何処か深い思いを滲ませる、そんな表情。
その横顔を見ている内に、私の中に膨らみ始める『ひょっとすると、まさか……?』という思考。
何だかとてもイヤな予感を感じつつも、私は彼女へ問う。

「……まさかとは思うが、修理中に言っていた親戚と言うのは……」
「違うわよ、せんせ」
「……なに?」

 しかしミナから返ってきた返答に、思わず間の抜けた声を漏らす私。自分とした事が……。
そんな私の様子がおかしかったか、彼女は少し苦笑して続ける。
58ネコ科と空 ◆/zsiCmwdl. :2010/09/28(火) 19:59:36 ID:gVjf2POY

「私がここに来たのはおじいちゃんの墓参り。お盆は忙しくて行けなかったからね。
それに、おじいちゃんはZUが好きだったから、ついでにせんせのZUを見せてあげようと思ってね」
「なるほど……それで、その親戚は?」
「んー、彼だったら今頃はアメリカ辺りで元気にやってると思うわ」

 なんだ、驚かせる。一瞬、その親戚に何か関係あるのではないかと思ったではないか。
……いや、待てよ? そう言えば私の愛車であるZUを譲ってくれたかつての先輩も確か、ネコ族で今は海外に……。

「それじゃ、線香も上げた事だし。そろそろかえろっか。わたしの我侭に付き合ってくれて有難うね、センセ」
「ん、ああ……」

 物思いに耽っていた所にミナに声を掛けられ、私はまたも気の抜けた返答を返してしまった。
その様子を何と思ったか分からないが、ミナはクスリと笑うと、さっと尻尾を翻して歩き出す。
 彼女のその背中へ向けて、私は先ほど思っていた事を聞こうとし――途中で思い直し、言わない事にした。
私なんかの下らぬ好奇心の所為で、彼女の夏空のような笑顔を曇らせて良い物か、と思い止まったのだ。
 そんな私の様子に気付いたのかそれとも気付いていないのか、ミナが足を止めて振り返り、

「……? どうかしたの、せんせ?」
「ああいや、少し考え事しただけさ」
「ふーん……あ、そうだった! せんせに一つ言い忘れていた事があった!」
「……言い忘れてた事?」

オウム返しに問う私へ、ミナは言う。

「アイツが学校で悪戯しても、怒るのは程々にしてやってね?」

 言いながら小さく身体を縮めて、両手の指先で丸眼鏡をつくって見せるミナのその仕草に、
私はようやく、店に向かう最中に彼女が言った、『昔からの知り合い』が誰であるのかを理解した。
 そんな私の頬を、ホンの少しだけ秋の香りを混じらせた風が吹き抜けてゆく。

何気に空を見上げると、何時の間にか流れてきた鰯雲が私を見下ろし笑っていた。

――――――――――――――――了―――――――――――――――――――
59ネコ科と空 ◆/zsiCmwdl. :2010/09/28(火) 20:00:48 ID:gVjf2POY
以上です。

すっかり肌寒くなってきた……。
60創る名無しに見る名無し:2010/09/28(火) 21:49:52 ID:Sjy2RIgC
GJ! ミナ素敵です。
また新しい交友関係ができた。世界が深まっていいねいいね。
杉本オートと父親はほぼ初出か。いい雰囲気のお店、行ってみたいなー
61創る名無しに見る名無し:2010/09/29(水) 17:38:51 ID:SoLbY/Wt
バイクでツーリングしてみたいな
獅子宮先生とかミナ姉さんの話見てると本当にそう思う
62創る名無しに見る名無し:2010/09/29(水) 21:10:29 ID:jA1l1ghW
原付から初めてみたら?スクーターなら簡単だし五万から買えるよ。
原付で隣の県まで行けたら中型で日本一周できるって岐阜から東京にきた黒猫が言ってた。
63創る名無しに見る名無し:2010/10/01(金) 23:32:22 ID:X0UOXJwV
バイクに乗りたい俺は痔がヤバい
64創る名無しに見る名無し:2010/10/02(土) 10:08:03 ID:s54Pfwvl
>>63
保健室の三十路ばばあに痔薬を塗ってもら……ん?休日の日中に
誰か来t
65創る名無しに見る名無し:2010/10/04(月) 04:50:58 ID:4Sb9Da87
新聞部のメンバーに蛇人がいたら、やっぱり潜入取材とかが得意なんだろうか。
66創る名無しに見る名無し:2010/10/05(火) 00:21:43 ID:fGpJMvUY
それどっちかっていうとカメレオンの領分じゃね
67創る名無しに見る名無し:2010/10/05(火) 00:23:35 ID:Uv1sMalH
CV:大塚明夫 的な意味だろう
68創る名無しに見る名無し:2010/10/05(火) 10:16:15 ID:kQHd6u1K
>>67
誰が上手いこと言えとww
69創る名無しに見る名無し:2010/10/07(木) 23:47:51 ID:2wsi0ODU
wikiトップのアクセス数がなんかやばいんだけど
70創る名無しに見る名無し:2010/10/08(金) 08:04:16 ID:lCd0Jhc5
どっかで晒されたか?

怖いな…
71創る名無しに見る名無し:2010/10/08(金) 23:30:10 ID:y+jD+CM3
72わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2010/10/14(木) 18:23:55 ID:P7VKTvfQ
73心のままに〜in my heart〜 ◆TC02kfS2Q2 :2010/10/14(木) 18:25:23 ID:P7VKTvfQ
終礼のチャイムと同時に外へ跳ぶ。
秋の晴れ間にうさぎ跳ぶ。
凪に囲まれたウサギ島。緑の雑木が美しい。

「せんせー、さよならー!パン太郎!!プリントかじらない!」
ボブショートでメガネ、真面目ちゃんを絵に描いたような小さな小さなウサギの子が、真っ赤なランドセル背中に声を響かせていた。
誰よりも早く外に出るんだとクラスメイトをすり抜けて、秋の気配を感じ取る。
山は紅葉、海は凪。大分落ち着いてきてたけど、まだまだやる気の太陽がウサギの瞳を赤く染める。

「おーい、ハル子」
木造の校舎を背にして秘密の場所にまっしぐらに跳び込もうとしたとき。
クラスの男子の声が足元から、まるでハル子の細い脚を舐めるようにじっと見つめるかのごとく聞こえてきた。
ハル子が視線を落とすとグラウンドの片隅が穴だらけ。ちょうど、ハル子が入れるぐらいの大きさの穴から土がばっさばっさと泉のように溢れる。
「どうだ!おれが掘ったんだぞ!いちばん立派な穴が掘れるウサギが偉いんだぞ!」
ぴょこんと穴から顔を出した男子ウサギが、ハル子の短いスカートに向かって自慢するも、無邪気な視線がハル子を突き刺す。
「えっち!!!!」

          #

ハル子は小さなウサギの子。
きょうは頑張って島を渡った。島の大人の手を焼かずに、いつもの船長に感謝した。
誰もいない船着場。待ち時間はふんだんとある。潮風だけが話し相手、だと思いきや。
どこかで見たことある大人。カギ尻尾の靴下ネコ。半分垂れた前髪は、一度見ただけでは忘れられない。
その名は淺川・トランジット・シャルヒャー。旅する根無し草の写真家のネコ。
白と黒の毛並みと、カギ尾は会う者全てに印象付ける。
「淺川はどうしてココに来てた!」
「気まぐれ」
「気まぐれって?」
「気まぐれ」
「もう!」
淺川はいつもそうだ。子どもを、子どもだからってからかって!と、ハル子は小さく煮えたぎる。

きょうもおてんとさまが味方して、青いお空を見せてくれた。秋の昼間に珍しく、雲ひとつない日本晴れ。
それに負けじと海原も、青い波を立ててたが。「きょうは波が強いね」と小さなウサギに一蹴されるこの有様。
そう。ハル子は小さなウサギの島の住人である。ウサギばかりが住み着く『宇佐乃島』は、他の種族の進入を拒んできた。
一日数本の渡船に乗って、朝が早かったハル子は本土の船着場の小屋ですやすやと寝ていた。
そこにバイクのヘルメット片手に淺川、トタン屋根のお粗末な小屋を覗いてみると、いつか見たウサギの少女がだれていた。
きょうは日曜日。島のゆったりした時間から離れるのも良かろう。
74心のままに〜in my heart〜 ◆TC02kfS2Q2 :2010/10/14(木) 18:26:13 ID:P7VKTvfQ
ハル子は目をこすりながら、大人のネコの顔をはっきりと見た。こんなヤツ、一度会えば誰だって覚えているはずだ。
「淺川だ。どうして淺川なんだ!」
「悪いね、淺川で」
「わたしね、淺川がここにやって来るんじゃないのかなって、思ってたところだよ」
小さなポーチを庇いながらベンチから飛び跳ねるハル子の姿は、淺川にはまるでぬいぐるみのように見えていた。
そばに置いておいても飽きることのない、小さなウサギのぬいぐるみの話は留まることを知らない。

「そうだ。わたしの話聞いてくれるかな」
「100万円くれたら」
「ふざけてる!」
「おれはいつも真剣だよ」
「やっぱりふざけてる」
船着場の自販機でMAXコーヒーを淺川が買うと、飲んだことがないというのでハル子にぽんと手渡した。
目を丸くしたハル子は、お辞儀をして缶を開ける。いつもは見ているだけのコーヒーは想像以上に甘く、舌触りが滑らかでもあった。
キャラメルをコーヒーにしたような舌触り、未来の飲み物のような味はハル子にとっては新鮮でもある。
甘さの割には後味を引かないのは、分別をわきまえた大人の身振りにも似ている。ハル子にはまだ遠い。
「ごちそうさま」
「どーも」

缶を両手で握ってハル子は話を淺川に始めた。
「わたしの島って、ウサギ以外はいないんだよ」
「知ってるよ」
「でも、見たの。ネコの子がわたしの島に居るところ」

           #

ハル子は良く晴れた放課後には、秘密の場所に行くことがお決まりになっていた。
アスファルトで固められた道を走り、脇には涼しげな風薫る雑木林。枝と枝の間には波打ち際が見え隠れ。
ひと気のない丘を目指すと、とうの昔に役目を終えた発電所の建物が視界に入る。
真っ暗に、そして蔦が絡みついたコンクリートの建物は、島の歴史をよく知っているはずだ。
『立ち入り禁止』の看板が錆び付いていた。フェンス脇の切り株にハル子は腰を掛けて、ランドセルを下ろす。
無機質なコンクリート、物静かな雑木林、土地の色。そして真っ赤なランドセル。映画のパートカラーのように、
ぽつんとハル子のランドセルが、彩色を忘れた背景に一輪の花を咲かせる。飴玉のような、女の子の甘い香りが廃墟に漂う。
ハル子はその中から隠していたカメラを取り出した。小さなハル子には釣りあわない、機械と言ってよいがたいの良いカメラ。
見る人が見れば結構な値段のするカメラだ。それは、こっそりと兄の部屋から持ち出したもの。大体の使い方は分かると、ハル子は少し自慢げだった。
75心のままに〜in my heart〜 ◆TC02kfS2Q2 :2010/10/14(木) 18:26:54 ID:P7VKTvfQ
この風景を心のままに切り取りたい。
この風景を色あざやかなまま持ち帰りたい。
そして、大人になって、島を出ても、この島のことをずっと覚えていたい。

夢中でシャッターを切る。技術は二の次、感じたままにフイルムに焼き付ける。
カメラは不思議な機械だ。機械ってものは冷たいものや、頑固者だと思われがちだが、カメラだけは違う。
持ち主の言うことを聞くどころか、持ち主以上の感性を持っているのではないのだろうかという、人間じみた印象を植えつける。
そして秘密の場所で、ハル子は島で暮らしているだけでは分からないことを知る。

「あなた、だれ?」
カメラを下ろして、人影を見つめる。じっと相手もこちらを見る。
じょしこーせーみたいな制服着た女の子。年はハル子と同じぐらい。肩にかかった髪に憂い気な瞳。
しかし、この島には制服を着て通う小学校はない。それどころか、高校もないし、その子はネコの子だ。
「この島にどうやって来たの?」
「……」
静かな無音。
期待した答えは戻ってこない。
「ねえ、教えてよ」
またしても、返事はない。
むしろ、返事を否定するような。でも、血の通った生き物が側にいることは確か。言葉だけのコミュニケーションはいらない。
だから、ネコの子はつかつかとハル子の方へ歩み寄り、大きなカメラを興味深げに見つめていた。
そうしていると、カメラの持つ不思議がまたひとつ明かされる。それは、心を開かせること。
「あなたもカメラが好きなの?」
「は、はいっ」
ネコの少女の言葉に、思わずハル子も返事する。
ハル子を認めた彼女は、初めて言葉をつらつらと繋げる。
「わたしもカメラは大好き。だって、ウソがつけないから」
76心のままに〜in my heart〜 ◆TC02kfS2Q2 :2010/10/14(木) 18:28:44 ID:P7VKTvfQ
ざっざと土地を踏むネコの子の足元は都会的なローファー。胸元の赤いリボンが目に残る。
時間に取り残されたこの島に、彼女の格好は進んでいるように見えた。それは、島のせい。
ハル子は彼女の「あなたなら、もしかして知ってるかも」との言葉に首をひねっていた。
何?何を?それにどうやってこの島に?シャッターを切る手が動かない。
少し怖くなったハル子は急いでカメラをランドセルに仕舞いこみ、秘密の場所から逃げ去ろうと駆ける。
ネコの子も同じ方向へと脚を向けていた。発電所跡が元の時間を取り戻す。

ハル子の通い慣れた帰り道は、ネコの子がついて来るだけで不安なものになった。
大人に見つかったらどうしよう。この島できて以来ネコが立ち入ったことはない。
それを覆すと大人たちが騒ぎを起すことは分かっている。それを知ってか知らずか、彼女はハル子の後をついて来る。
誰も通らないのがいつもの道。いつも通りに誰も通らず、家まで着けばいいのにとハル子は背後を気にしていた。

「いない……」

どこにも見当たらない。さっきまでいたはずの子。この道は一本道だから、どこかで別れるはずはない。
気にしたくはないけれど、気にはなる。せっかく戻った道をハル子は戻ると、ネコの少女は寂しげに道端に立っていた。
「来ないの?」
「……」
アスファルトを濡らしそうな涙が一滴。
「折角、会えると思ったのに」
「……ねえ。だれにかなあ」
憂いた気持ちなのに空は青い。
お構いなしと言わんばかりの天気は、皮肉にも二人を締め付ける。
何もこんなときに晴れなくても、と。だんだんとハル子はネコの少女に心引かれる。

「あっ」
一本道を軽トラが登る。見慣れた車。見慣れた影。
エンジンの音で子ネコはたじろぎ、脚を振るわせる。
車窓がハル子の前で止まると、窓からハル子の両親が見えた。
「おとうさん!」
「ちょっくら出かけるからな。ハル」
「え?」
「夕方には戻る!なあ、母さん」
家のことなどどうでもよい。自分の背後に隠れた彼女が心配。
思いもよらないとはこのことか。ハル子の両親を乗せた軽トラは、なにごともないまま通り過ぎたのだ。
「気付かれなかったね」
「……うん」
「そういえば、自己紹介まだだったよね。わたしは『ハル』。学校に『はるお』がいるから『ハル子』って呼ばれてるの」
いつの間にかネコの少女は昔からの親友のように、ハル子の手首を掴んでいた。

          #

「淺川、聞いてる?わたしの話し」
飲みかけのMAXコーヒーを手に、ハル子は隣の淺川を横目で覗き込んだ。
相変わらずの淺川は「ああ」と軽く返すだけ。
「もう!」
「聞いてるって。その証拠に、その女の子の名前を当ててやろうか」
「分からないくせに」
淺川は耳の後ろを掻きながら一言。
「『モモ』だろ」
77心のままに〜in my heart〜 ◆TC02kfS2Q2 :2010/10/14(木) 18:29:27 ID:P7VKTvfQ
          #

丘の上に建つ日本家屋。歴史があるといえば通りが良いが、逆を言えばがたがきている。
両親は出かけているし、兄も当分戻らない。祖父は朝からお隣に、と言っても数百メートルは先の家。
「ここがわたしのうちよ」
「……」
「遠慮しないで。モモちゃん」
扉をチキンと閉めておけば、鍵なんか要らない。島ではよくあること。
がらりと土間に通じる引き戸を開けると、静かな空気だけが二人を包んでいた。
子供用のスニーカー脱いで、木目が美しい廊下を駆けると柔らかい音が響く。「こっちよ」とハル子が手招きするので、
モモはローファーを土間で揃えてお邪魔する。木と紙だけで出来た古い家に二輪の小さな花が咲く。

この家にネコの子がいる。
それを知ってるのは、ハル子とモモだけ。
二人だけの共有感。
すっと抜ける風。
少し破れた障子紙。
「迷路みたいでしょ。おじいちゃんのおじいちゃんが建て増ししたんだって」
「おもしろい」
「でしょ?」
モモが笑うと、ハル子も笑う。

ランドセルを揺らして廊下の突き当りまで行くと、薄い桜色のふすまが目に入る。
「ここがわたしの部屋」
自慢しようとふすまを開けると、六畳ほどの和室が広がる。
勉強机に、マンガが詰め込まれた本棚。さりげなくウサギのぬいぐるみが転がる。
そして、立て掛けられたコルクボードにはいっぱいの写真。モモが興味を引いたのはそれだった。
「モモちゃん、カメラ好きなんだもんね」
耳の後ろを掻きながら、モモは呟く。
「……すごい」
くいるように写真を見つめるモモに、ハル子は何故だか分からない影を見た。
写真がモモの心が締め付ける。はっきりと分からないものほど、苦しいものはない。
ハル子はランドセルの中のカメラをそっと取り出して、クッションの上に置いた。
「カメラマンになりたいな」
「えっ」
「うん。早くこの島を出てカメラマンになるんだ。だって、カッコいいんだよね」

ハル子は机の引き出しを開き、一冊の雑誌をモモに見せる。
両親の部屋から勝手に持ち出しであろう週刊誌。鶉の水彩絵が描かれた表紙をひとつ捲ると、海の色あざやかな写真のページが眩しかった。
ニ、三ページ風景画が続き、終わりのページの下段には文章が記載されていた。
「『世界中旅してると、やっぱり生まれた国が落ち着くんだよなあって思うじゃないですか?ある国では耳を齧られたりしたぼくですが、
落ち着くとまた旅に出て行きたくなる衝動にかられるんですよね。わかります?これ?そうだ、今度の日曜日ウサギの島への港町に
久しぶりに行ってみようかなぁ。まったくきれいなところでしたよ……と淺川氏はあっけらかんと語る』だって」
「……」
頭を垂れるモモ。パタンと週刊誌を閉じるハル子。雑誌の日付は最新号だった。
「わたし、この淺川って人好きだなー。写真もだけどね!」
「好き、なの?」
「うん。すんごくカッコイイよね」
メガネ越しに目を輝かせるハル子とは対称的に、モモの目は光るものを湛えていた。
78心のままに〜in my heart〜 ◆TC02kfS2Q2 :2010/10/14(木) 18:30:13 ID:P7VKTvfQ
「お兄ちゃんがまた遠くに行ってしまう」
聞こえるか聞こえないほどのモモの声。ウサギのハル子が聞き逃すことはなかった。
『淺川』と言う人は一度会ったことがあるだけだ。しかも殆どすれ違いのようなもの。
ハル子がこうして淺川についてつながりを保てるのは、今のところ雑誌やネットの媒体のみだけだある。
その淺川のことを「お兄ちゃん」と呼ぶものが居た。
モモだ。

「どうしたの?モモちゃん……。ほ、ほら!マンガでも読む?『ているずLOVE』一巻が出たんだよ!やっと島に届いた……」
「どうして、みんなお兄ちゃんのこと好きになるの」
小さな影が落ちる。
「港町に来たら、お兄ちゃんに会えると信じてた。お気に入りの港町があるからって。でも、そこには居ないからこの島に来たのに」
「知ってる?この島……ウサギ以外は……」
「知らなかったの」

          #

「そのあとモモちゃんは部屋を飛び出したの。尻尾が廊下に着かないくらいの速さで」
「……」
「淺川っ」
「続けて」
「ふん。……それからモモちゃんの姿を見ることがなかったのね。二度とわたしの島に来ないのかなって。でも、どうしてモモちゃんは」
「『わたしの島に来ることが出来たんだろう』だろ」
淺川にセリフを盗られたハル子は頬を膨らます。理由は分かる。淺川にとってこの問題は易過ぎる。

あのとき、引き止めればよかった。自分が行くって言えばよかった。でも、モモが笑いながら淺川のもとに戻ることはない。
ほんのわずかな出来事だったと聞く。不慮の事故。しばらく交差点に花束が絶えることはなかった。
写真家になることを自分以上に望み、応援し、そして写真家としての姿を見せられなかったことを悔いて。
「お兄ちゃん、フイルム買って来てあげる」
淺川が耳にした妹の声は、これが最後。ハル子にモモがかぶさって見える。

そして

「用事思い出した。帰る」
「え?何しに来たのさ!淺川!」
すっくと淺川自慢の長い脚で立ち上がり、壊れそうな待合室を立ち去る。
飲みかけのMAXコーヒーを片手にハル子が追い駆けると、後ろ向きで淺川が置き土産。
「今度連休の日にでも、佳望町に連れてってやんよ。お前みたいなじょしこーせーのお姉さんに案内役をしてもらってさ」
「あーさーかーわーっ」
太陽はいつの間にか天高く昇っていた。

船着場の最寄り駅。一時間にわずかな私鉄沿線。公衆電話の側に淺川の愛車が休息をしていた。
鈍い光を反射して、革のシートが美しいリッター級のバイク。そして、傍らにはネコの少女。

「よお。久しぶりだな、モモ」


おしまい。
79創る名無しに見る名無し:2010/10/17(日) 23:24:57 ID:IbKMnUxF
面白かった

こんな小説俺も書きたい
80創る名無しに見る名無し:2010/10/23(土) 17:30:01 ID:r/riXb6d
ここ最近絵師さんが来なくて寂しい……飽きちゃったんだろうか?
81創る名無しに見る名無し:2010/10/23(土) 17:34:09 ID:7tJKBjih
創発板にはいるけど、他のスレにいるみたいだね。ろだで見かける。
82創る名無しに見る名無し:2010/10/25(月) 06:51:41 ID:yxOkZG13
        ∧,,∧        : :: :: :::::ヽ  やあ ようこそ、香川県へ。
       (´・ω・)    / ο : : :: :: :::::ヽ このうどんはサービスだから、まず食べて落ち着いて欲しい。
.    シュッ  >、/⌒ヽ   |  ν : : :: : ::::::::l  うん、「また香川」なんだ。済まない。
  ───ミ'-‐y' / i_ ヽ、  : : :: :: :::::::/   うどんは別腹って香川じゃ言うしね、うどんで許してもらおうとも思っていない。
        `⌒ー′ | |::|  )゙  ..::::〃:ィ´    でも、このうどんを見たとき、君は、きっと言葉では言い表せない
      \\  \ | |::|  /" ''  : : ::⌒ヽ   「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う。
            \=::| i       、 : ::::|____ 殺伐とした水不足の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
  .    (,,_@三 ミ_,,)\ |      ..::| : :::|::::::|;;;| そう思って、このうどんを茹でたんだ。
  .     \__/  \      : :::| : :::|::::::|;;;| じゃあ、2杯目の注文を聞こうか。
83創る名無しに見る名無し:2010/11/01(月) 07:34:43 ID:HtYyYnIS
いぬの日!
84創る名無しに見る名無し:2010/11/01(月) 22:56:08 ID:LerOp/lh
はっ!!ここはイラストもオケ?
最近描いたのに心当たりがあるんだけど。
85創る名無しに見る名無し:2010/11/01(月) 22:58:29 ID:s5d11m0n
おーけーおーけー
歓迎よ
86創る名無しに見る名無し:2010/11/02(火) 00:54:10 ID:r283KbVI
>>84
期待!
87創る名無しに見る名無し:2010/11/02(火) 00:55:04 ID:r283KbVI
>>84
期待!
88創る名無しに見る名無し:2010/11/02(火) 00:55:44 ID:r283KbVI
うう、まぬけな連投すいませんorz
89ロールちゃん ◆ofcJfFhaRAmV :2010/11/02(火) 06:47:43 ID:5eG8C+nP
こころあたり有り

http://imepita.jp/20101102/230140
90創る名無しに見る名無し:2010/11/02(火) 07:41:03 ID:wz2npK2l
>>89
可愛すぎる!!
もっふもふが暖かそうでいいなあ。
91創る名無しに見る名無し:2010/11/02(火) 08:54:10 ID:urDFOKGP
>>89持ち帰りは可ですか?
92創る名無しに見る名無し:2010/11/02(火) 23:42:56 ID:6EOf5mJz
ファンシーな世界だな
93創る名無しに見る名無し:2010/11/03(水) 17:36:24 ID:lwhJOPgQ
白倉先生と同種
94創る名無しに見る名無し:2010/11/03(水) 19:00:39 ID:4gTVPls0
>>89
もふもふ!
地平線まで続くもふもふロードにダイブしたい
95わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2010/11/20(土) 20:56:33 ID:qtMyMoAg
獅子宮せんせいで書いてみた。短いものでも。
96ライオンに大切なもの ◆TC02kfS2Q2 :2010/11/20(土) 20:59:26 ID:qtMyMoAg
自転車は自分だけの時間を与えてくれる。一人になりたいならば、自転車に乗ればよい。
ペダルに己の力を込めて、ハンドルに自身の行き先を委ねて、すうっと空気に溶け込めば一人きりの時間が流れる。
「……」
風が心地よい。カーディガンでも少し寒いぐらいだ。だけど、体の毛並みはふかふかと体温を護ってくれる。
頬をなぞる風が毛並みを揺らし、季節の変わり目だと自己主張しているのがびしびしと分かる。
学校からの坂道を犬上ヒカルは自転車で駆け下りていた。すっかり秋めいた周りの景色にヒカルの白い尻尾に毛並みが映える。
ヒカルはイヌのケモノの少年。秋の稲穂に負けないぐらいのたわわな尻尾が、吹流しのように風に乗る。

きょういいことがヒカルにあった。そんなときの自転車はまるで自分の考えていることを知っているかのように、
ヤツは素直に忠実に走ってくれる。足取りが軽い。ヒカルはもともと感情を露にしない子だが、尻尾は隠しきれなかった。
前かごに収まっているヒカルのカバンがほんのちょっと重い。だけど、重いから嬉しい。家に着くまで重みでヒカルを押さえくれる。
いつしか自転車は坂道を降りきって、商店街へと差しかかる。賑わいの前の静けさか、欠伸をしている店主を横目に走り去る。
とくに用事はないけれど『商店街』と聞くと、買い物欲が掻きたてられるのはご愛嬌、ですよね。

「あっ」
反射的にブレーキを握り、金属が軋む音を散らばらせると、ヒカルはぐらつく前輪を固める。両足が地面に降り立つ。
尻尾が静かにサドルをなぞる感覚が、尻尾から腰、腰から背中へと伝播してくるのがビシビシと分かる。
「獅子宮先生だ」
学校で現代社会の教鞭をとる獅子宮怜子。その人だ。

八百屋で獅子宮先生を見た。
野菜を吟味する獅子宮先生を見た。
獅子宮先生はライオンだ。ライオンのケモノは皆勇ましい。
威風堂々、教室の空気をごっそりもぎ取ってしまうほどの気配を持つ女教師。
獅子宮怜子の姿をヒカルは視線で追うと、さらにブレーキをぎゅっと握る。

ざわざわと昼下がりの商店街は教室よりも騒がしく、人一人居なくなっても誰も気付かなくないぐらいの賑やかさ。
ただ、獅子宮怜子は違った。彼女はライオン。どんなにたくさんのケモノに囲まれても、彼女が吠えれば皆が振り向く。
もっと言えば、もはや彼女のトレードマークになっている隻眼が、獅子宮怜子の持つ存在感を誇張するぐらいに創り上げていたのだ。

ヒカルは自転車を押しながら獅子宮怜子が物色している八百屋の脇に近づくと、自分自身の気配を消したくなった。
獅子宮怜子に気付かれるのがけっして嫌というのではなく、なんとなく、ほんとうになんとなく、理屈では伝えられない気まぐれ。
野菜選びに夢中になる獅子宮怜子と自転車の前方を気にしながら、カチカチと自転車の車輪を廻すと、
ぴょんとヒカルの目の前に子ネコが飛び出した。反射的にブレーキを握る。金属の軋む音が飛び散る。獅子宮怜子が振り向く。
「なんだ、犬上少年か」
八百屋の中の獅子宮怜子は絶壁の上で雄叫びを上げる獅子と言うより、ダンボールの中に放り込まれた新たな飼い主を待つ獅子のようだった。
ごくりとつばきを飲み込んで、ヒカルは小さく会釈を獅子宮怜子に交わした。
97ライオンに大切なもの ◆TC02kfS2Q2 :2010/11/20(土) 21:01:13 ID:qtMyMoAg
ヒカルは元々口数の少ない子だ。その代わりに言葉や表情を使わずに相手に印象を伝えるのが得意な子だ。
それだけ相手の気を許しやすいタイプの少年。しかし、ヒカルが尻尾を隠して警戒すれば話は別。
「おかしいか?わたしがここにいることが」
「……」
雑踏の中。午後の日差し。
「わたしだって料理ぐらいは……」
意識的に目を合わせまいと獅子宮怜子が横を向く。手には袋詰めされた男爵イモが息苦しそうに詰まっている。
土から顔を出したばかりの男爵イモは、洗ってそのまままるかじりしてもよいぐらいに、生きが良く見える。誰もしないと思うが。
それに気付いたヒカルは恐る恐る獅子宮怜子に言葉をかけた。
「カレーですか」
「ああ、カレーだ」
忙しなく店主が他の客をさばいている中、獅子宮怜子は他の具材を適当に選び会計を済ませた。
一方、ヒカルは心なしか尻尾を揺らすことが隠せなかった。ゆらゆらと、揺れる尻尾。

      #

隻眼のライオンが野菜を詰め込んで、その隣を白いイヌの少年が自転車を押す。増えてきた人ごみの中通り抜ける。
商店街をさよならして、人通りが少なくなった電車通りに抜けると、ヒカルは車道側に獅子宮怜子と歩道で並んだ。
教師と教え子。その関係を知っている者から教えてくれなければ、その答えを導くことが出来ない雰囲気を獅子宮怜子は持っていた。
「先生、カレー作るつもりなかったですよね?」
たわいのないヒカルの言葉に獅子宮怜子が足を止め、ビニール袋の中で野菜がもみ合う音だけを残す。
ヒカルは獅子宮怜子に横顔を許す。逆を言えば、横顔しか許さない。
犬上ヒカルはそういう子だ。ヒカルをよく知る獅子宮怜子だって知っている。しかし、返事はやや歯切れが悪い。

「そ、そんなことはない。料理は苦手だが、わたしだって女の端くれだ。カレーの一杯や二杯」
「カレーに使うのはメークインですよ」
大きく息を吐いたのは獅子宮怜子。これ以上少女のように恥らっても仕方がない。
「そうなのか?」
「型崩れがしませんしね。ぼく、ちょっと先生を試してみたんです。わざと『カレーですか』って。そしたら先生は『カレーだ』と返した」
牙を見せずに、ぐっと堪えるライオンの姿があった。
二人をからかいに後方から路面電車が轟音と共に近づいてくる。
「オトナをからかうんではないっ。犬上少年」
「ごめんなさい。ちょっと……」
路面電車の音が二人の間に割り込む。地響きがするかのような鉄の車の音。
98ライオンに大切なもの ◆TC02kfS2Q2 :2010/11/20(土) 21:03:26 ID:qtMyMoAg
「なんだろう。先生の印象に八百屋さんってなかったから」
レールと車輪のつなぎ目が二人の開いた会話の隙間を救う。モーターの音がけたたましい。
二人の間を繋ぐ電車の音はヒカルにはちょっと恐ろしくも聞こえた。だって、獅子宮怜子が許してくれるのかヒカルには想像出来ないから。
路面電車が通り過ぎませんように。ヒカルは白い毛並みを揺らしながらまだたきをして祈った。
「ふふふ。面白いな、犬上少年。野菜も食うぞ、わたしは」
あっけない答え。
二人に呆れたのか、昭和生まれの電車は遠くに過ぎ去って行った。
再び、二人は歩き出す。信号も二人を見つめてちょっと青ざめていた。

「先生は……、あの」
俯いたままヒカルは獅子宮怜子を呼ぶ。
「先生はライオンですね」
「ああ、どう見てもライオンだぞ」
「えっと、あの。『オズの魔法使い』のライオンですね」
信号機が気を利かせたのか、顔を赤らめて二人の足取りを止める。
「『オズの魔法使い』のライオンは勇気が欲しい『臆病ライオン』。勇気が手に入ると噂を聞いて、人間の少女のドロシー、
イヌのトト、そしてブリキのきこりに藁の案山子と共にエメラルドシティを目指すんです。先生はライオンです」
「わたしがか」
「本当は女の子らしく料理をこなしてみたい。でも、料理は苦手。男爵イモでカレーを作ろうとしてましたからね。
それで勇気を手に入れようとエメラルドシティ……八百屋に向かった。ですよね、獅子宮先生」
「わたしにメルヘンを当てはめるとは思わなかったぞ」
「メルヘンでしょうか?あの物語は。オトナが読んでも十分面白いと思いますよ、多分。
誰だって自分の欠けているものを補いたく思うでしょうしね。でも、ぼくはまだまだそれが分からない」
「若いな」
「若いですね。ダメダメです」
白く大きな尻尾は少し元気がなく見えた。

「犬上少年。ひとつ聞いていいか」
ピンと跳ね上がるヒカルの尻尾がサドルに当たる。道端に落ちていたタバコの吸殻をぎゅっと踏んで、獅子宮怜子は恥ずかしげに問いかけた。
「男爵イモで、なにが出来るかな」
「……」
いきなりヒカルは自転車に飛び乗ると、ペダルに足を掛けた。獅子宮怜子の問いかけを無視しているわけではなく。その証拠に
「コロッケとか、ポテトサラダですね」と、背中を向いたまま答えていたのだから。
「うむ、犬上少年。礼を言おう、ありがとう」
ヒカルは軽く会釈をすると「ここで曲がりますから」と言い残して、自転車をこいで自宅へ向かっていった。
カバンに『オズの魔法使い』の和訳初版を詰め込んで。


おしまい
99わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2010/11/20(土) 21:04:42 ID:qtMyMoAg
獅子宮先生……。もっと、おはなしが書きたいです。
投下終了です。
100創る名無しに見る名無し:2010/11/21(日) 15:02:51 ID:TbDFneep
乙ですー
視点と光の当て方を変えるとキャラに深みが出るなぁ
101創る名無しに見る名無し:2010/11/21(日) 22:26:52 ID:nUjKqddd
ヒカルくんがメルヘンだ
きっとどこぞの先生と嬉しいことがあったんだろうねw
102創る名無しに見る名無し:2010/11/28(日) 02:37:21 ID:9qRnBNlv
周囲をよく見渡せ
常に赤ら顔ででっぷりと突き出た腹、短足、風呂嫌い、そいつが狸だ
最近は飲みに行く同僚も金もなくて寂しがってるからちょっと相手してやれ
103わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2010/12/14(火) 20:34:36 ID:BjcHlq5L
クリスマスですか。そうですか、早いですか。
連投すいません。
104雪と、うさぎと。 ◆TC02kfS2Q2 :2010/12/14(火) 20:36:14 ID:BjcHlq5L
ウサギのリオが化学準備室の窓からグラウンドを眺めていると、白いものが風に舞っているのに気付いた。
集団でふわふわと灰色の空をほしいままにする光景は、この季節には珍しくも無い。もう師走。雪が降ってもおかしくはない。
「お前、風紀委員長だろ。下校の時間を破るつもりか」
化学教師のオトナな忠告をよそに、長い耳を伏せることなくリオは外を眺め続けていた。
人肌恋しい季節に、ひんやりとした雪を降らせるとは天気もなかなか意地悪なやつだ、とリオは短い髪をいじっていた。
一方、朝からの強い風に煽られて、うたかたのように消えてしまう宿命を抱えた雪たちは、渦を巻いて風に身をゆだねていく。
「跳月先生はきっとクリスマスは、楽しみなんじゃないんですか?」
「うるさいな」
雪が自分と同じ毛並みの色なのは、はたして幸せか不幸せか。ストーブで蒸し暑い部屋の中のリオは粉雪に自分を重ねて悩む。

部屋の主である化学教師も半ば呆れ顔で居残りさんのリオを諭し、乱雑に放り込まれたがらくたで溢れかえるりんご箱から電気コードを取り出した。
ときはもう夕方近く。授業も終わり、これから自由な放課後だというのに、未だ不自由な校舎の中に望んで残る生徒はそうはいない。
逆に考えると、何か望むことがあって学び舎に居残ると考えたほうがよかろう。
「ウチに帰れよ、いい加減」
「クリスマス楽しみですよね、跳月せんせい。彼女さんと一緒に」
「お前、ぼくの言うこと聞いてないだろ」
みのむしクリップの付いた長い電気コードをぽんと壁際の机に置くと、長く垂れた耳を揺らして跳月は眉間にしわを寄せる。
彼もリオと同じくウサギだ。ただ、垂れた耳と十代と三十路というところが違っていた。

部屋はもので溢れかえっていた。棚という棚には電気機器、磁石、そして化学、物理学、心理学などの蔵書。
人を見ずして人となりがわかる例もなかなかない。PCは相変わらずスクリーンセイバーを躍らせていた。
スチール棚に据えられた、時空を超えた大きな箱を跳月は抱えて、部屋中央の木製の机に置いた。追うようにリオも机の椅子に座る。
アルミで出来た平べったい箱からは、ガラス製の縦長い真空管が伸びる。中に電極のような部品があるのが見えた。
メタルの小さな箱が真空管の隣に整然と並び、その光景はまるで開拓され始めた街のよう。大きなビルがやってきた。
小さな建物も伸びてくる。リオは好奇心を押えきれずに、真空管のビルの合間から街を見下ろす。

リオのメガネに昭和の香り漂うガラスの球が映り込む。その間に跳月は黙々とクリップをカーテンレールに咬ませていた。
「せんせい。聞いてもいいですか」
「知らないのか、これ。ぼくが小さい頃よく作ってたんだぞ」
「いや、違うんです。わたし、ふと思ったんです」
粉雪舞う外を眺めながら、跳月はしばらく黙り込んだ。

「例えば誰かがわたしを好きになるとしたら」
踵を返して、身に纏う白衣を揺らす跳月。では、なかった。
彼はハナタレの色恋沙汰にいちいち動じる三十路男ではない。
リオは続ける。
「わたし『因幡』を好きになるってことだからでしょうか。それとも、わたしが『ウサギ』ってことだからでしょうか」
跳月が口をつぐんで天井を仰ぐ。腕を組む。腕を組むのは警戒心が高い証拠だと、ものの本に書かれていたことを跳月は思い出す。
軋む木製の椅子に腰掛けて、ニーソックスの脚を揃えてリオはベーシュのカーディガンの裾をつまんでいた。

「例えばわたしが『イヌ』になっても、誰かはわたし『因幡』を好きでいてくれるのか。と、考えてしまうのです」
しばらく沈黙が続き、跳月の足音だけが響く。古い室内はよっぽどさびしがり屋さんなのか、床の一人ごとが多くなってきた。
跳月はカーテンレールから伸びるコードを手にして、リオの目の前に据えられた古めかしいアルミの箱に繋いだ。
そして、コンセントをテーブルに貼り付けられたテーブルタップに差し込む。慣れた手つきで。
105雪と、うさぎと。 ◆TC02kfS2Q2 :2010/12/14(火) 20:38:11 ID:BjcHlq5L
「人を好きになったことはあるのか。因幡」
「……」
好きということ。
リオにだって思春期の訪れと共に、淡い思いを抱いたことだってある。
ただ、一歩踏み出せない。彼氏が欲しいです歴から年齢を割るとジャスト『1』であるリオには口にするにはつらい問い。

もしかして、好きということは雪と同じものなのかもしれない。
はじめはそんなに意識もせずに、何の気なしにしていたけれど積もり積もって身動きできない。
一歩踏み出すと足跡が付く。二歩進むと足跡が増える。きれいなままでいて欲しいのに、自分で傷つける勇気が無い。
そのうち陽気がよくなって、雪もだんだん消えてゆき、無くなった頃には後悔をする。

「お前、もっと後悔しろ」と、ぽんとリオの頭を軽く叩く跳月はアルミの箱のスイッチを捻る。
じわじわと真空管のガラスが頬を赤らめてゆく。ほんのりと、そしてゆっくり。命の息吹さえ感じる。
跳月が微妙な手つきでダイヤルを廻す。じっとリオの瞳は跳月の指先に集中していた。
「因幡は恋だの好きだので傷つきたくないから、そんな言い訳している。図星だろ」
「うう、はづきち!」
「考えてみろ。お前がウサギでもイヌでも『因幡リオ』だったら、結局『因幡リオ』が好きってことだろ」
「でもでも、一目惚れとか、ウサギには興味ないとかだったら……」
「三十路の理論に恥をかかせる気か」
目をつぶって、カーディガンの裾を握って、ニーソックスの脚を揃えてリオは身を縮ませる思いをしていた。
ただ、リオには跳月の声が自分にとって存在を認めてくれているような、弱気な心を踏みつけても内心許してくれているような気がした。
不思議な身震いがする。寒いからではなく、悲しいからではなく。初めて生を受けたときぐらいの喜び。

ふと、長い耳にはこの部屋にいない誰かの声が、ぼそぼそと広がり始めていた。ノイズ交じりの荒い声。
リオはくるくると長い耳を立てながら、声の元に傾ける。
「ラジオだよ。真空管のラジオだなんて見たことないだろ」
明々と真空管は灯り、いつの間にか配線されていたスピーカーからはAMラジオの声が響く。
真空管のラジオは電源を入れてから鳴り出すまでに時間がかかる。カーテンレールはアンテナ代わり、と跳月は言う。
『さあ、いよいよクリスマスも近づいてきました。こちら宇佐乃島からラジオネーム・ご飯さん……』
「こいつったら、中学の頃に作ったんだ」
「すごい」
リオが生まれる前のものなのに、じっと見ていると、いっしょにいるとほっとするような魔法がこのラジオにはあった。
そして、本当に勝手にリオはこのラジオと跳月を重ねていたのだった。じっと見ていると、いっしょにいるとほっとするような……。
106雪と、うさぎと。 ◆TC02kfS2Q2 :2010/12/14(火) 20:39:49 ID:BjcHlq5L
『さて、時計の針は5時45分を廻りました!雪も降り止んだようですけど、駅前の……』
「因幡、いい加減帰れ」
「はっ」
雪が消えた代わりに、灰色の空が真っ暗になってきた。リオはいつまでもこの部屋に甘えている場合ではないと、カバンを持ってダッフルコートを羽織り、
いそいそと帰る準備を始めた。扉を開くと、廊下の冷たい空気が割り込んでくる。いままでぬくぬくとしていたから余計に寒い。
もじもじと入り口でリオは暖かい部屋から出ることを渋るように立ち尽くし、跳月からじっと見つめられる。

「あの。せんせい」
「ん」
「……」
「ぼくは仕事がたまっている。わかるよな」
跳月の声に尻を叩かれるように、因幡は家路を急いだ。

化学準備室には跳月とラジオが残る。
壁際の机の引き出しを開くと、冬休みの課題の資料と共にラジオの設計図、パーツ取りしたコンデンサ、
そして跳月の想い人の写真が顔を見せる。AMラジオが一人ごとを続ける中、跳月はたまった仕事をこなしながら頭の中で呟く。
「コイツを作ってた頃のぼくを因幡が見たら、どう思うんだろうかな」
ガラリと引き出しを閉める音が部屋に響いた。

    #

トントンとひとりでローファーを履くと、コンクリの床に響く音が耳に残る。
雪が止んだとはいえ、夕刻の空気は身を縮ませ、ニーソックスからはみ出した白い毛並みの太腿が食い込む。
冷たい廊下の風が意地悪くリオの脚を晒すと、すこし瞳に涙が滲んだ。マフラーをしていても長い耳が冷たい。
「はづきちーっ。寒いよー」
下校のアナウンスに追い出された風紀委員長が校舎から出て、ふと振り返ると化学準備室には未だ明かりが灯っていた。

「クリスマスは、はづきちが一人ですごしますようにっ」
リオは瞳に湛えるものを寒さのせいだと言い訳をして、ひと気のない校門をくぐる。


おしまい。
107わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2010/12/14(火) 20:41:19 ID:BjcHlq5L
はづきちー!投下おわりー!
108創る名無しに見る名無し:2010/12/14(火) 21:12:30 ID:/MY+NYbY
はづきちー!真空管ラジオとはまた乙なものを・・・
109創る名無しに見る名無し:2010/12/16(木) 16:07:05 ID:meovCPpG
はづきちー!そのラジオくれー!

久々に漫画など。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1602.jpg
110創る名無しに見る名無し:2010/12/16(木) 23:32:08 ID:hCK3O9m3
リオとはづきち、くっついちゃえよ!(ウソ)
111光先生男。:2010/12/16(木) 23:43:17 ID:c7pFmmBx
一刻も早く今直ぐ恋愛して婚約して就職して結婚して人生を大成功して大量の幸福を出来るだけ忘れずに入手してね!?♪。
112創る名無しに見る名無し:2010/12/19(日) 23:30:56 ID:HYJWzQVi
リオの顔が可愛すぎて萌える。
113創る名無しに見る名無し:2010/12/25(土) 16:17:34 ID:z3bnTrXg
投下しようか迷ったけど一応ここのキャラなので。
クリスマス全然関係ないなぁ……。

ttp://loda.jp/mitemite/?id=1621.jpg
114創る名無しに見る名無し:2010/12/25(土) 20:38:50 ID:N0+dcbGj
おおお?こ、これは!
いいぞ、もっとやれ
115創る名無しに見る名無し:2010/12/26(日) 01:56:12 ID:bFpBP/PD
あぷろだより転載
http://loda.jp/mitemite/?id=1613.jpg
116 【凶】 【620円】 :2011/01/01(土) 00:23:27 ID:01ZGhvm/
謹賀新年!
117!otosidama:2011/01/01(土) 23:01:16 ID:2fRwmgdR
もふもふ!!
118わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/01/08(土) 12:13:27 ID:XlOk4aRv
ケモすれ今年初投下ー
119Break Out 〜月の灯〜 ◆TC02kfS2Q2 :2011/01/08(土) 12:14:34 ID:XlOk4aRv
はじめに言っておきます。
ここからわたしがお話しすることは、いわゆる『夢オチ』です。
しかし、夢だからこそ広がる世界があると思うのです。
因幡リオという現実と空想の狭間を思い違う愚か者がいるということをお許しください。

    #

きょうも新しい夜が来た。カーテンを開けると雲ひとつない夜空が広がり、雪の季節には珍しく清々しい。
時計の針は7時を差し、慌しく準備をする両親の生活音が下の階から聞こえる。
まだ眠い目を擦りつつ、パジャマを脱ぐ。
スカートを履き、脇腹のクリップを止めてジッパーをじりりと上げると、ちょこんとわたしの短い尻尾がスリットから取り残された。
後ろ手で尻尾のクリップを探りながら、きょう一日のことを考える。いつものことだが、癖になっている事実。
「きょうは定例委員会かあ。やだなあ……部費の話し合い」
風紀委員長を務めるからには、委員としてわたしも参加しなければならない。
早く日が昇ってくれればいいのに。そして、何もかも照らしてしまえ。しかし、日が昇るのは全ての授業が終わった頃。

冷えた空気の中、カーディガンに袖を通す瞬間は気持ちが良い。ベッドに腰を掛けて、履きなれたニーソックスに白い脚を通すと、
まるで命を吹き込まれたかのようにニーソはふくらみを帯びだした。膝上の食い込みから溢れるわたしの毛並みが眩しく見えた。
教科書と休み時間に読もうと考えているラノベが詰め込まれた通学かばんを手に、わたしの部屋から夜ごはんの待つキッチンへと向かう。

「マオ、こんばんー」
遅くまで昼ふかししていた弟のマオがだらしなく自分の部屋から出てきた。
冬服のマオはすこし背が伸びたように見える。
やる気の無い声で「……姉ちゃん、こんばん」と返す弟へ、少しちょっかいを出したくなった。
キッチンではごはんに味噌汁という、甚だしくオーソドックスな夜ごはんが並べられているが、飽きが来ないのが優秀だ。
テレビからは「こんばんは」とアナウンサーが揃って夜の挨拶。一日の始まりとしては元気が余りすぎる。
「早く食べないと、学校に遅れるよ」と、母親の声。テレビの占いは、わたしたちウサギがきょうのラッキー2と報じる。
ラッキー1よりかは、何となく気が軽く思える。そう考えると、ラッキー1のイヌが気の毒になってきた。

    #

いつも通う通学路は、光に満ちて星空の存在を忘れさせていた。ある街灯は切れかけてチカチカと点滅する。
夜も浅いので人通りは少ない。わたしたち学生や勤め人がちらほらと眠い目を擦りながら、行く先へと歩いているだけだった。
「リオー、こんばんー」
満天の星空のような底抜けの声でイヌの芹沢モエがわたしに近寄ってきた。彼女とは同級生なのだが、わたしよりしゃれこけている。
その証拠に尻尾の柔らかそうな毛並みが、他の女子よりも噴水のように華やかなのだ。同性のわたしでも触ってみたい。
と、思っているとモエはわたしに抱きついてくる。少しくすぐいったがるわたしを見て、幸せそうに感じる、そういう子なのだ。
120Break Out 〜月の灯〜 ◆TC02kfS2Q2 :2011/01/08(土) 12:15:14 ID:XlOk4aRv
「わたしをはづきちと思っていいよ!」
「は、跳月先生は……そういう人じゃありません!」
わたしと同じウサギの化学教師・跳月先生。耳が垂れているのがオトナな雰囲気を醸し出す。
跳月先生の名前を聞くと体は拒まないのに、気持ちは高鳴る。だけど、言葉で拒んでしまうのは不思議だ。
わたしと同じく跳月先生も占いナンバー2だと思うと、ナンバー1のイヌであるモエより気楽に、そしてちょっと共犯意識のようなものが芽生える。
こそこそと、そしてわくわく。それを考えるとわたしはぎゅっと片手を握り締めたくなった。

でも、モエの腕がくるりとわたしの腕に絡んでくる。彼女は「あまがみしちゃうぞー」と、頬を寄せる。
肩まで伸ばしたモエのセミロングの髪が、わたしの口元をなぞる。女の子同士、恥じらいが心地よい。
モエのちょっかいを受け止めながら、わたしたちは市電の走る大通りへと向かった。空は時を刻むに連れて暗くなる。
はっきりと月が浮かぶのが見えた。青白い月にはうっすらとウサギの姿。わたしが月明かりに上せていると、モエがわたしの短い尻尾を握った。
「一時限目は化学だもんね、はづきちの」
はっきり言うと、化学は苦手。複雑に絡み合う無機質な化学式を眺めなければならない苦痛。しかし、それを教えるのは血の通った人と言う不思議。

電停で市電を待ちながら、天に昇る月を見つめていると月のウサギに手招きされているような気になった。
一時限目がゆううつだから、ちょっと月まで遠回り。でも、わたしは風紀委員長。抜け駆けなんか許してくれない。
悲しくも、学校へ向かう市電が灯りを先頭につけて電停へと近寄ってくる。差すように眩いヘッドランプが、わたしたちの影を地面に落とす。
わたしとモエが市電に乗り込むと、暖房で車内がぬくもっていた。しかし、不思議なことに乗ってきた乗客はわたしたちだけ。
冬風に晒されたわたしのメガネが一瞬で曇る。何もかもがぼんやりと目に映るのは、見たくないものを遮ってくれて少し嬉しい。
曇ったメガネを指差してモエは笑っていた。モエが笑ってくれれば、それでいい。

「やだなあ……はづきちの授業」
言葉はウソをつく。ヒトがウソをつくのではなく、言葉がウソをつく。
化学抜きで跳月の化学の授業を受けてみたいと、思いながらメガネをクリーナーで拭くと市電は街をすり抜けて、街灯りを映していた。
ふと、鉄の車輪が刻むリズムが消えて、一瞬お尻が重くなった。お尻どころか、体もだ。
やがて車窓の灯りは消えて、街路樹の枝葉をかすめて、窓の外からはヒトの息づく屋根が眼下に広がって、わたしたちの街から遠ざかる。
長い耳が空気圧のせいかツンと痛くなった。次第に今度は体が軽くなり、ふわりと翻るスカートを慌てて押さえる。
「何?」
「飛んじゃったね……。って、マジどうする?」
121Break Out 〜月の灯〜 ◆TC02kfS2Q2 :2011/01/08(土) 12:15:56 ID:XlOk4aRv
わたしたちは月へと向かって飛び立つ市電からほしいままにされるしかなかった。
はるか遠くにわたしたちの学校の校舎が見える。全ての校舎の明かり。夜の始まりと共に、授業が始まろうとしているのだ。
「わたしたち……サボり?」
「ってゆうか、サボり」
モエは心なしか自慢の尻尾が元気がないように見え、わたしはわたしで苦手な授業から逃れられたことの安堵と、
風紀委員長としての責務放棄について悩んでいた。しかし、市電の正面からの月光でそれをぼやかせてくれるような気がしてきたので、
しばらくは学校のこと、授業のこと、そして跳月先生のことを忘れることにした。

    #

「いい加減起きろ。因幡」
目が覚めると、窓は暗かった。夜が近づく。昼が逃げる。黄昏どきと人は言う。
はっとして、ずり落ちたメガネを掛けなおすと、明々と働くストーブとその側に一人の男がいた。
「はっ」
となりにはモエはいない。モエとは「委員の仕事、がんばー」と背中を叩かれた後廊下で別れたはずだ。
しかしモエの代わりにいたのは、化学教師の跳月だった。ここは校内の化学準備室。市電のようなシートもつり革もない。

「あの……。学校サボって、ごめんなさい。わたし、月に行ってました。それで」
「まだ寝ぼけたことを言っているのか?『はづきちー!漕艇部ったら部費がどーたらこーたらで』って泣きついたのはどこの誰だ」
「ひーん。月が、月が」
わたしが向かっていたはずの月は、ぼんやりと東の空に浮かんでいる。月はどう足掻いても、眺められるだけの役しかできないのだと今頃分かった。

月は冷たい。化学のようだ。冷徹な教師のように見える。
「はづきち、聞いてくれますか。わたし、不思議な夢を見ていました」
「……ふう」
帰り支度をしながら、わたしは跳月先生に夢の一部始終を話した。
呆れられるかもしれない、笑われるかもしれない。それでも、わたしはそれでよかった。
だって、跳月先生とどのような形でさえ関われれば、わたしはちょっと幸せなのだから。
ウサギの待つ月へ行かなくて、本当によかったと思いながら、わたしは跳月先生の長い耳を独り占めした。


おしまい。
122わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/01/08(土) 12:16:44 ID:XlOk4aRv
リオとはづきちのお話ばかり書いてるような……。

ま、いっか!
123創る名無しに見る名無し:2011/01/12(水) 08:46:29 ID:wsevxtCI
もうリオとはづきちは付き合っちゃえYO!
教師と生徒とか危険な香りまんまんでやばい
124創る名無しに見る名無し:2011/01/19(水) 07:33:39 ID:TuOW/aHc
獅子宮先生描いたつもりだったけどケバイ上になにかよく分からないものに(´・ω・`)
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1672.jpg
125創る名無しに見る名無し:2011/01/22(土) 00:23:26 ID:8aAlacK9
http://u6.getuploader.com/sousaku/download/357/%E3%81%86%E3%81%A1%E3%81%AE%E3%81%8A%E7%8A%AC%E6%A7%98.jpg
シェルティー彼女。
擬人化してくれると聞いて貼りつけてみる。
126創る名無しに見る名無し:2011/01/22(土) 00:26:02 ID:8aAlacK9
http://u6.getuploader.com/sousaku/download/358/%E3%81%94%E3%82%8D%E3%81%94%E3%82%8D.jpg
俺がリビングに降りると、彼女がごろごろしていた。
カメラを向けると「何か用?」とこっちを見てきた。
127創る名無しに見る名無し:2011/01/22(土) 00:33:52 ID:ath0SV8h
これは…誘ってる…!
128創る名無しに見る名無し:2011/01/22(土) 00:41:06 ID:8aAlacK9
名前は「舞」(マイ」っていいます。
こう見えて立派な大人なのに大きさが子供並。
耳の横のアホ毛が立ってるときがほんとに面白可愛いw
129創る名無しに見る名無し:2011/01/29(土) 00:17:40 ID:piyrC+TP
うpロダより転載
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1691
130創る名無しに見る名無し:2011/02/13(日) 12:27:02 ID:OboEp0Fs
リオ「来栖!学校の施設を壊すんじゃない!」
ザッキー「指導室来い。ほかの生徒が怖がってるぞ」
白「後で鉄分の点滴してやるから保健室にも来い」
来栖「お、おれじゃねえよおおおおお!」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110213-00000003-maip-soci
131創る名無しに見る名無し:2011/02/13(日) 15:00:28 ID:iiE2kAux
なんだこれひでえw
132創る名無しに見る名無し:2011/02/13(日) 17:16:14 ID:OaGW+74h
あま噛みを超える歯応えに誘われているというのかー!くるすー!
133わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/02/14(月) 20:37:23 ID:sLmGH10L
間に合ったかな。季節ネタ!


初めてここにいらしてくれる方へ。
こんな子が出ます。

モエ。 http://loda.jp/mitemite/?id=530.jpg
左:悠里。右:リオ。 http://loda.jp/mitemite/?id=855.jpg
134ちょこっと!お願い ◆TC02kfS2Q2 :2011/02/14(月) 20:38:34 ID:sLmGH10L
学校帰りのコンビニから出るたびに胸を痛める。時の流れが速くならないかと願う日々。
顔を背けるということは、認めたということと同じ。
「どうする?バレンタイン!」
ウサギの子は長い耳を伏したかった。一瞬でもいいから、友人の言葉を遮りたかったから。
聞こえないふり、聞こえないふり。でも、うそをつくのはよくないな。
うそはいつか暴かれる。暴かれなければうそじゃない。
さっき買ったばかりのチョコレート。誰かにあげるつもりじゃないけれど2月14日はまだまだ遠く、
黒タイを履いてきたのに少し寒いのをぐっと我慢するのが女の子。リオはじっとコンビニの入り口を眺めていた。
コンビニ入り口のポスターの中では、二人の少女が華やかな飾りでバレンタインのお祭り騒ぎではしゃいでいた。

「もしかして、リオって『ポチ×ミミ』ヲタだったり?」
「ち、違うって!モエ!ちょっとさ、期末試験のことを考えてただけなの」
「リオのことならなんでも知ってるし!真面目のまー子もアイドルヲタ系?」
「ちがいますっ」
ニッと目を細めるモエの尻尾は振り切って、視線をコンビニ入り口を飾る横断幕のポスターに向ける。最近はやりのアイドルコンビが、
如月の甘味を誘っている。甘く、熱しすぎると扱いに厄介、かと言って冷めすぎるとひびが入る。チョコレートは恋の味とはよく言ったもの。
店内は学校帰りの寄り道をしている同い年ぐらいの女子高生がしきりに出入りしていた。

正直リオは、『ポチ×ミミ』のことをほとんど知らない。ただ、最近ポスターとかでよく見る、とかテレビに映ると弟が釘付けになるって程度の存在だった。
しかし、最近モエがあんまり騒ぐので無性に気になるのも仕方がない。花の香りがしてきそうな制服姿の『ポチ×ミミ』は、やけに甘ったるい。
「あの二人、ウチらに似てなくね?イヌとウサギのコンビだし」
モエは『ポチ』と呼ばれるイヌの女の子と同じポーズと取ってみせる無邪気さを見せるも、リオはリオで友人を恥ずかしそうに見るだけだった。

じゃあ、わたしは『ポチ』の相方の『ミミ』なの?ウサギってだけで?そんなに、わたし……かわいくも、愛嬌もありません。
だって、あの子らアイドルだもん。プロだもん。二次元よりも二次元な、おとぎの国の女の子。
彼女らが世界でいちばんバレンタインデーを楽しんでいるのではないかと思うと、なんだかリオの吐く息が白いことに悔しくなってきた。
童話のカメのようにウサギを置いてきぼりにしてか、コンビニを横目にモエは右腕を上げて飛び跳ねていた。
135ちょこっと!お願い ◆TC02kfS2Q2 :2011/02/14(月) 20:39:14 ID:sLmGH10L
「バレンタイン、がんばるぞー!渡す相手もいないけどっ」
モエがうらやましい。ポチもうらやましい。ミミもうらやましい。
いつまでもうらやましいって、思ってちゃだめ。お祭りだから、思う存分楽しまなきゃ。
ほんのちょっとリオはポスターの中の女の子に自分を重ねてみた。妄想なんてバレなきゃOK。
「ってか、きょうの店員さん。研修生?袋入れるの初々しい系ってヤツ?」
「なに、それ萌える」
「『ポチ×ミミ』みたいに?」
もしかして、自分の方が『ミミ』よりかわいいかも。いっそ、モエといっしょにポーズでもとってみようかな。

リオが桃色の吹き出しを浮かべていると、彼女らの背後から大人びた声がリオの妄想をかき消した。
そろって振り向くと、彼女らと同じ制服に身を包んでいる一人のキツネの娘が、コンビニの袋片手に大きな尻尾を揺らしていた。
「リオちゃんにモエちゃん、帰りも寒いね」
銀色の髪が滝のように流れ、制服の上からでも分かる豊かな胸。歩くたびに揺れる髪の毛が無性に女子を揺さぶる。
「小野さん、あったかそうね」と目線を定めることを恐れながら、リオは頬を赤らめると「あら、悠里でのいいよ」と返される。
これがオトナの余裕ってヤツか。ガサガサとビニルの袋が悠里の短いスカートの裾をなぞっていた。

しかし、気になる。どうしても気になる。やけに派手な包装が飛び出しているから、気にならないはずがない。
どうやら研修生が袋に詰めたので、ひとサイズ小さなビニル袋に入れてしまっているようだ。
さて、この時期に女の子が気にしないはずはないものは、無論ここで語るほどのものではない。
もの?ひと?どっちも!
マイペースな悠里は両手で鞄といっしょにビニル袋を持ち直す。そして、思い出したかのように口を開いた。
136ちょこっと!お願い ◆TC02kfS2Q2 :2011/02/14(月) 20:39:57 ID:sLmGH10L
「そういえば、学校の裏山に神社があるでしょ。おキツネさまを祭った」
「あるある!!」
「そこにね、この時期あまーいものをお供えして、ぱんぱんって拍手打ってお願いするの。そして、それを持ってわたしたちの勝負に挑むと……」
モエは悠里の言葉につばを飲む。一方、リオはそんなモエを遠い目で見つめていた。
尻尾を振るモエを手なずける、甘い誘いがそんなに欲しいのかと。リオはトントンと靴のつま先で地面を突いている。

「……そういえば、二人とも『ポチ×ミミ』に似てるよね。そっくり」
「ゆ、ゆーり!途中ではぐらかさないでよ!!続きは?」
「だって、コンビニのポスター見てたら思い出すんだもの。二人ともそっくりだし」
悠里は笑っても大人のように見え、モエは叫んで子供のように見える。
「ふふふ、わたしたちの戦いはこれからよ。いっしょにがんばろうね」
悠里のスタイルのよい後姿は女子の目から見ても惹かれるものがあった。おまけにたわわな尻尾がゆっさゆさ。
ほんのちょっとヒールアップしたローファーが悠里の脚には似合う。オトナの足音と尻尾のリズムが艶かしい。
女子でさえ心奪われるんだから、無垢で手垢のつかない男子でさえ。色香を残して悠里は去ってゆく。

いつの間にかモエはこぶしを作って胸に当てていた。
「リオ、いい?わたし、負けない!」
「誰に?」
「バレンタインはぜったい負けない!」
「渡す相手もいないじゃない」
しばらく黙ったモエはリオが隙を見せた瞬間、リオの口に買ったばかりの小さな小さなチョコを突きつけた。
銀紙を剥いだチョコがリオの白い毛並みを染めて、甘い香りをリオに自らの体を溶かしてささげる。
137ちょこっと!お願い ◆TC02kfS2Q2 :2011/02/14(月) 20:42:57 ID:sLmGH10L
もしかして、キスの味。
ひょっとして、好きの味。
でも。わたし真面目のまー子の因幡リオは、そんなことしたことないから分かりません!

「リオに」
上目遣いの女の子。上目遣いのモエ。
くちについた溶けたチョコ。毛並みに付いた溶けたチョコ。
ぺるっと舌でチョコを舐め、モエもぺろっと舌を見せる。
鏡に映したようなモエの姿に、リオの鏡にひび入る。
柔らかな毛並みに付いたから、ひと舐めでそれが消えないし。
もしかして、モエの気持ちが突き刺さったから?だから、何度も舌で味わった。

もしかして、キスの味。
ひょっとして、好きの味。
でも。わたし真面目のまー子の因幡リオは、そんなことしたことないから分かりません!

初めてが、これだったらいいな。
でも、悲しいかな。初めてと言わない。
わたしのことをいちばん知っている人からもらいたいのに。
わたしのことをいちばん知っている人にあげたいのに。

「あげるんだもん……ぜったい」
「恥ずかしいよ」
「ぜ、ぜったい渡すからね!だから、今から神社にお参りに行くのっ!悠里なんかに負けないよっ」
「ええ?意味わかんない!」
女の子ははっきりしている。だって、あの子よりほんのちょっとでもエヘンってしたいんだもん。
たとえ、あげたチョコの相手が誰であっても。たとえ、それを笑うヤツがいても。恥らう想いを誰かに届けたら勝ちだもの。

バレンタインデーが寒い月の日にあってよかった。お互いのことを気にしている子といっしょにいるだけで、
ほんのちょっと暖かい気持ちになれるんだから。なんとも粋なお祭り騒ぎじゃないか。意味わかんなくても感じちゃえ。
リア充が爆発する代わりに、わたしとモエの気持ちがはちきれますように。リオは小さな胸で願っていた。

そのころ、一足先に学校の裏山にある神社に着いた悠里が、きれいな包装の甘いお菓子を供えてぽんぽんと拍手を鳴らしていた。
「期末試験でいい点取れますように」


おしまい。
138わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/02/14(月) 20:47:30 ID:sLmGH10L
そして、今宵は二本立て!

初めての方へ。
右:泊瀬谷(はせや)先生。 左隣:ヒカル。 http://www19.atwiki.jp/jujin/pages/140.html
「先生なんだから、しっかりしてください!」

風紀委員長のリオは悔やんだ。感情に任せて怒鳴るなんて、いくらなんでも自分は子どもすぎるだろ、と。
しかし悔やんでも覆水盆には戻らず、ネコの教師の泊瀬谷は尻尾を巻くだけだった。ウサギの声にネコがおびえる。
どうしよう。ちょっとたしなめれば良かったかもしれないのに。先生相手に委員長ごときが注意するなんて。
泊瀬谷の代わりに抱えている出席簿をぎゅっと抱きしめて、リオは俯くほかに出来ることはないかと考える。
「因幡さん、ごめんなさい」
セリフをとられる。それは、わたしが言うべき言葉。先生が謝る理由はひとつもございません。

「先生、浮かれすぎてたかな」
「そんなことありませんって!ごめんなさい!」
「……そう」
「わたし、帰ります。もうすぐ下校時間だし……」
リオは出席簿を泊瀬谷に押し付けると、脱兎のごとく長い耳をくるりと回し、自分の荷物を持ってその場を立ち去った。
やけに鞄が重い。どうして。もしかして、イヤな子に見られているんだろうか。生意気な子って思われただろうか。
リノリウムを蹴る上履きの音が乾ききっている。なんでもいいからわたしを叱って欲しい。ここで転べと言われれば、転んでも泣かない。
誰かが幸せそうな顔をしていても恨まない。だって、2月14日ほど涙が似合わない日はないんだから。

長い廊下を抜け、階段から降りようと足元に注意を払ったときのこと。目下の踊り場で、段に腰掛けているイヌの生徒が目に入った。
後ろ向きの彼は白く秋の穂のような尻尾を携えて、黙々と本を読んでいるかに見えた。ベーシュのカーディガンが清潔感を与える。
「犬上ーっ」と、リオがイヌの男子生徒を呼ぶと、イヌミミを回しておもむろに彼は声の元へと振り向いた。
それでも犬上と呼ばれた少年は、リオをじっと見つめて口をつぐむ。

「なにやってんの?もうすぐ下校時間だよ!」
「……」
見上げると、女子生徒。しかもその子はニーソックス。だからスカートもちょっと短い。風紀委員長もいっぱしの女の子。
自慢の白い太もももまじまじと見られると恥ずかしい。犬上の目線が突き刺さる前に、リオは自分の鞄で隠す。
「よい子の犬上ヒカルくんも居残りさんだなんてどうしたのかなー」
「本を読んでたんだ」
確かにヒカルの手元には一冊の文庫本。リオはほんの好奇心に逆らえず、どんな本なのかを確かめようと階段を一歩ずつ下り、
ヒカルはヒカルで止めた手を再び動かして本の続きを読み出した。ひんやりとした空気が包み込む。
普段は人とつるむことが少ない犬上ヒカル。時間があるときはこうして一人で書に親しむことが多い。
不良というわけでもなく、かといってクラスの中心になるような男子でないことは、風紀委員長のリオも承知。

「ねえ、寒くいない?」と、ふと感じた疑問に「うるさいよりかはいい」と軽く返す犬上。
リオは「どうして」と聞こうとしたが、どうせ「因幡がうるさいから」と言われるんだろうなと思い、のどの奥に閉じ込めた。
ヒカルの耳にリオの足音が近づく。話をつなごうと、どうでもいい質問。不安だから、なんとか誰かとつながりたい。
「犬上の毛並みって、暖かそうだもんね」
「……」
「もしかして、ウザいって思ってたり……」
「そんなことはないよ……」
スカートがヒカルの顔のそばをかすめかけ、リオはとっさに鞄で乙女のガードを固める。

夢中で本の世界に入り込むヒカルは、リオがそばにいることさえ気にしていなかった。
何故なら「横に座っていい?」と、リオが声をかけるまで気づこうとする素振りさえ見せなかったのだから。
なんだか女の子の武器が失われたような気がする。だから、負けない!だって女の子!
リオは自分の鞄を挟んでヒカルの横に腰掛けた。横目で本を覗く。
「面白い?」
「うん」
「どういうところが?」
「主人公と読み手の共犯意識を揺さぶられるところ」

共犯意識。
この言葉に魅力を感じたリオは、ますますヒカルが読んでいる本に興味を持った。
ところが、さらに興味深いものがリオの目に入る。
(なにこれ。チョコレート?)
リオと反対側にはヒカルの鞄。半開きのそこから覗かせる不自然なリボン。おまけにピンクの包装紙で施されている。そして、きょうは2月14日。
別にリオはヒカルのことを気にしているわけではなかった。ただのクラスメイト。ただの男子生徒。
たかが、同じ学び舎で学び、同じ教室で過ごし、同じ年代に生きる、瞬けば吹き飛ぶような関係。
なのに、ちょっと悔しい。嫉妬する。
リオは女の子、ヒカルは男の子。
チョコをあげる人、チョコをもらう人。
比べることさえ間違っている関係なのに、湧き上がるジェラシーをとどめることが出来なかった。
「ねえ。今、どんなシーン?」
黙ってじっとヒカルがページを捲ると、まだまだあざやかなインクの香りがふんわりと二人を包み込んだ。

一瞬の出来事だった。
「あっ」
ヒカルの鞄にリオが夢中になってバランスを崩し、ヒカルの方へ倒れ込む。
思わずリオの片手がヒカルの太ももに乗る。ヒカルも驚き、本ごとリオと反対の方へと手を付く。
消えた。リオが見つけたリボンの付いた小さな箱はヒカルの鞄の中へと姿をくらました。
もはや、ヒカルに聞くことも出来ず。
「ごめん、犬上」
なんだかきょうは謝ってばかりだ。だからこそ、誰かに頼りたい。もう、誰でもいいや。そして、思う存分叱られたい。

「こ、こらー!もう下校の時間だぞーっ」
リオとヒカルが階段の上へと振り向くと、一人のネコの教師が叫んでいるシルエットが浮かぶ。
肩を縮ませて、何かに怯えるように、子ネコのように叱責する泊瀬谷の姿。
「ご、ごめんなさい!さっ、帰るよ。下校下校!犬上遅いぞー」
リオの短いスカートがヒカルの目の前で翻り、白い毛並みの太ももが輝く。お尻を片手ではたいたリオは、ヒカルを置いて階段から立ち去った。踊り場にヒカル、階段には泊瀬谷が残った。
静けさが校舎に居座り、リオの足音が消えていくのを確認。ヒカルは鞄からリボンが付いたピンクの小箱を取り出す。
その姿に泊瀬谷はにこっと頬を緩めた。ヒカルの一言で。
「先生、ありがとうございます」


おしまい。
142わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/02/14(月) 20:50:45 ID:sLmGH10L
ばれんたいん!

初めてここを覗いた方もゆっくりしてってね!!
投下おしまい!!
143創る名無しに見る名無し:2011/02/15(火) 00:15:45 ID:dFWDNLRn
投下乙!
氏の作品はいつも心の微妙な動きが面白いなあ……
144創る名無しに見る名無し:2011/02/15(火) 23:11:05 ID:2MnoX3Iz
女子高生いいなぁ…
リオもモエもはせやんもみんなかわいいよ
145避難所スレより代理:2011/02/18(金) 17:44:30 ID:Vzxrv2N6
もうすぐ猫の日(2/22)ということで、当日に忘れない内にフライング。
ケモ学用に初めて作ったキャラも猫だったので、ザッキー。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1776.jpg


仁科学園のwiki(http://www15.atwiki.jp/nisina/)TOP絵を描いて
思い出したのですが、スレを初利用する方にもっと覗いてほしいなーなんて願いつつ
こちらもwiki用ナンチャッテTOP絵など。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1777.jpg
146創る名無しに見る名無し:2011/02/18(金) 23:32:09 ID:rR5aJMW2
わんこさんの小説も絵師さんの絵もほっこりして素敵!
チョコ誰からももらえなかった悲しみが癒される……
147創る名無しに見る名無し:2011/02/18(金) 23:49:17 ID:+KpKojT+
やっぱり猫はケモスレに欠かせない!
かわいいよ猫かわいい
148創る名無しに見る名無し:2011/02/19(土) 21:12:28.95 ID:9v/gBncC
>>145
早速、wikiのトップに張ってみた。
149創る名無しに見る名無し:2011/02/20(日) 01:31:48.89 ID:lR73vv3E
リオ・モエ「せーのっ『けもらじ!』」
モエ「今週から惜しまれながら始まりました『けもらじ!』。パーソナリティを務めるのは、わたし芹沢モエと」
リオ「因幡リオですっ」
モエ「さて、唐突に始まりましたこの番組。創作発表板・獣人総合スレで展開されているシェアードワールド『ケモノ学園』の紹介っていう番組なんだよねー」
リオ「そうそう。初めてこのスレを見て下さっても、おそらく『どこから読めばわけわかめ!』って思ってる方も多いでしょう!」
モエ「わたしのかわいいところを見て欲しいって系!まとめwikiでわたしの活躍が見れるんだから、ちょっとでもきっかけがあればね!」
リオ「2年ほど前からスタートした、『ケモノさんたちの学園物語』を一人でも多くの方に見ていただければ、嬉しいな!」
モエ「では、はじまりはじまりー!」

  ♪

モエ「『しょうかい!』のコーナー!!」
リオ「うわー……。捻りの無いコーナー名だ」
モエ「その方が印象に残るってば!さて、このコーナーでは過去にこのスレに投下された作品に光を当てようって趣旨って感じ?」
リオ「ここではSS、イラスト、マンガって多種多様の作品が投下されてますからねー」
モエ「では、ちょっとここにあるノーパソでまとめwikiを見てみるぞー」

カチャカチャ……

リオ「おおおお!トップページにいきなりイラストが出てきたよ!これは保健の白先生にオオカミの張本くんだね」
モエ「こうして迎えてくれるのは、初めて訪問される方も超喜ぶね!ありがとう、絵師さん!画面左にメニューがあるじゃん?そこから『ケモノ学校シリーズ』を展開すると」
リオ「へえ!登場人物、絵、漫画、SS……って作品の種類別に見れるようになってるんですね」
モエ「あと、下の方にキャラ名タグから作品を見ることもできる系みたいな!」
リオ「って、なんでわたしの名前が大きくなってるの!?」
モエ「ちょーウケる!!」
リオ「うるさいよー!ンモー」
モエ「それじゃあ、まずは絵から入ってみる?絵から入るって手もあるしね!ぽちっ」
150創る名無しに見る名無し:2011/02/20(日) 01:32:35.59 ID:lR73vv3E
リオ「うわあ……。1スレ目、2スレ目……ってどこから見ればいいのかなあ」
モエ「とりあえず、1スレ目をクリック!」
リオ「1スレ目でもこんなに絵が投下されてるんですね!なにこれ!『スク水』『スク水』『体操服ブルマ』って萌える!!」
モエ「はいはい。じゃあ『スク水コレッタ』を見てみよー」

かちっ

リオ「むっはーーーー!」
モエ「初等部のコレッタちゃんですねー」
リオ「コレッタかわいいよコレッタ……、むはあ」
モエ「このイラストがきっかけでみんなでSS書こうってなって『ケモノ学校』シリーズが始まったんだよねー」
リオ「うわーん!『スク水性格悪い子コンビ』もわたしを萌えさせる気なの?」
モエ「ケモロリ恐るべし……。では、次は漫画を見てみる?漫画の1スレ目を」

かちっ

リオ・モエ「ちょ!初の漫画作品は『飛び出せ、変態教師!』」
リオ「おまわりさーん!ここに……」
モエ「おまわりさんはいいから、見てみよーよ」

かちっ

リオ・モエ「おまわりさーん!ここに……」
帆崎「なんだ、騒々しい」
モエ「きゃああ!変態!変態!」
リオ「は、早くザッキーの目を隠すんだ!」
帆崎「なんだお前ら!うわあ!ま、前が!!」

  ♪(ジングル)

モエ「さて、次はSSの紹介をしようかな」
リオ「ザッキーはほっといていいの?てか、平然と進めるなー!」
モエ「では、1スレ目の記念すべきSS第一号『ヌコ小学校』からいってみよう!」
リオ「このころは『佳望(けもう)学園』って名前がなかったんだよね」
151創る名無しに見る名無し:2011/02/20(日) 01:34:45.10 ID:lR73vv3E
モエ「さっきイラストや漫画で登場したコレッタが出てくるって系?もー、かわいす!」
リオ「ケモロリスク水、むはあ!!」
モエ「と、保健医の白先生!お(ピー)さんって呼ぶと、オキシドール攻撃が来るからね!」
リオ「誰も白先生のこと(ピー)ばさんなんて呼んでないって!」
モエ「あんまり、おば(ピー)(ピー)さん言うと、白先生来ちゃう系だよ!」
リオ「でも、コレッタかわいいいよコレッタ。白先生、いいなあ。コレッタを独り占めできて」
モエ「うわー、同類!」
リオ「おば(ピー)と一緒にするなー!」
白「待ってろ。オキシドール持ってくる」
リオ「うわああ!やめてー!」

ばたばた(リオ退席)。

モエ「白先生の声をmpgで録音してて超良かったかな?このコーナーではどんどん作品を紹介しちゃうかもね!このラジオが続けばだけど!」
帆崎「やる気ねーのかよ」
モエ「きゃあ!おまわりさーん!」

  ♪

モエ「さて、お別れの時間になりました!」
リオ「(急いで着席して)で、ちゃんと紹介できたんですかねー。」
モエ「とりあえず、わたしとザッキー、そしてコレッタの名前は覚えておいて損はないって系?」
リオ「うう、わたしが登場するのはまだまだ先なんだよね……」
モエ「あと、白先生の名前も!って感じ!」
リオ「果たして次回はあるんでしょうか?それともわたしたちが呼ばれることはあるんでしょうか?」
モエ「それじゃあ、あるかどうか分からないけど」
リオ・モエ「まったねーー!」

  ♪
152創る名無しに見る名無し:2011/02/20(日) 03:40:57.01 ID:BiRKW7uA
おお!紹介ラジオ的なものがw
どたばたした感じがイイ!
153創る名無しに見る名無し:2011/02/20(日) 19:34:43.70 ID:OwZQrXug
リオが相変わらず変態で安心した
154わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/02/22(火) 04:13:08.00 ID:8scHaCAb
ネコの日!

出てくる人

  ザッキーこと帆崎先生。 >>145
  ハルカにゃん。 http://www19.atwiki.jp/jujin/pages/105.html
  泊瀬谷先生。  http://www19.atwiki.jp/jujin/pages/124.html
155ネコの願い ◆TC02kfS2Q2 :2011/02/22(火) 04:15:54.68 ID:8scHaCAb
「ネコの日は、ネコの願いをなんでも叶えてくれる日」
そう信じていたころを思い出しながら、ネコの古文教師・帆崎は学内にある図書館の本棚を見上げていた。

実家で読み漁った本は、爪で傷だらけになるまで読んだ。
初めて夜更かししたときは、同じネコたちが他の種族に見せない姿を垣間見た気がした。
恋心に苦しむようになったときは、自分の尻尾の存在に疑問を感じていた。
社会に飛び出したとき、自分は果たしてガキな大人なのか大人なガキなのかと悩んだ。
そして、一生を捧げることが出来る娘を抱いたとき、大人になる前の帆崎の姿はいなかった。

何の因果か、古文を教える職に就いた。「つれづれなるままに、日くらし、硯にむかひて」とのんきに暮らすことなんかは出来ない。
今を生きる古文教師なのに、昔の物書きの気持ちを汲み取らず、現代の物差しに当ててしまうなんて。だから、誰もが書に逃げる。本に頼る。
本に囲まれていると落ち着くのはそのためだ。カウンターでは「返却は2週間後の3月8日です」と、図書委員の声が聞こえてくる。

「せんせー。なにしてるの」
先生と呼ばれるほどのヤツでない。自覚が無い。それでも教師か。自分を責めても仕方あるまい。
そんな言葉で突き刺されても文句の言いようが無いぐらい上の空。帆崎は声の方へゆっくりと耳を傾けた。
声の主は帆崎と同じネコのハルカだった。彼女は帆崎の教え子。きちんと揃えられた前髪が礼儀正しい。
「ネコの日ですね!」
「ああ」
「昨晩は月がきれいでしたね!」
両手でしっかりと握られたカバン。それも彼女の真面目さか。しばし、二人してじっと本棚に並んだ蔵書を眺める。
この日の夜2時22分『ネコの時間』には、ネコたちがいっせいにお祝いをする。
『夜会』と称して公園に集う者、大切な人と家でその時間を過ごす者、無論一人きりで過ごす者も居る。それはみな自由。
この日は学校でも授業の間、何人かのネコはまぶたを擦っている者も多く見受けられた。
156ネコの願い ◆TC02kfS2Q2 :2011/02/22(火) 04:16:36.17 ID:8scHaCAb
「ネコの日かあ」
「そうですよ!」
何度目のネコの日だろうか。去年、おととし、そしてその前……。思い出してもきりが無い。
そして、いつしかどうでもよくなる2月22日。隣で甘い髪の毛を揺らす、十代半ばの少女には理解は出来ないのだろうかと、
オトナになって三十路にお邪魔した自分の枯れた思考を悔やんだ。お祭りだぞ。楽しめ。
じゅうたんを踏みしめる足が進むたびに、ハルカのリボンが揺れているのが横目で帆崎に見えた。
帆崎だってこんな小娘にかどわかされる歳でもなかろうに。

「ネコの日は、ネコの願いをなんでも叶えてくれる日」

いつまでも子どものような甘ったるい言葉に目を潤ませている年ではないと、帆崎はいつまでもその言葉を頭で繰り返した。
「おなかすいたな」
小首を傾げるハルカは照れ笑いをしながら尻尾を跳ね上げた。帆崎が聞くところによると、ハルカは少しダイエットをしているという。
「朝ぐらいは食えよ」と帆崎は諭すが「食べてますよー」と笑われる。
「先生、お昼なに食べたんですか」とハルカが尋ねるので「バナナだけ」と答えると、くすっと笑った後に
「じゃあ、バナナはおやつに入りませんね」と返された。「わたしもそうしよっかなあ」と甘い声で付け加えて。
どうでもいい話題をしながら二人は図書館を歩いているうちに、児童書の棚へとたどり着いていた。

「わーい」
静かな図書館。静けさだけは自慢だが、来る者の胸の高まりは止められない。
小さい頃は大きく見えた本棚も、高校生にもなるとタメになり、大人になると年下に見えてくる不思議。
もしかして、本棚も生きとし生けるものと同じく、命を持っているのかもしれない。
ハルカが両膝揃えて屈み込むと、ふわりとセミロングの髪が翻る。短いスカートからハルカの女の子らしい身体がくっきりと。
帆崎だってこんな小娘にかどわかされる歳でもなかろうに。
157ネコの願い ◆TC02kfS2Q2 :2011/02/22(火) 04:17:18.28 ID:8scHaCAb
「児童書の棚って、一人で来るにはちょっと恥ずかしいけど……。先生といっしょなら平気だな」
「……ふーん」
「やっぱり、『ネコの日』ってネコの願いを叶えてくれる日なんですねっ」
耳をちょっと、ほんのちょっと伏しながら、ハルカは本棚からくたびれた『11匹のねこ』を拾い上げた。
ハルカはましてや、帆崎が生まれる前に世に出た絵本とのめぐり合い。この本もずっと毎年『ネコの日』を過ごしているんだろうかと考える。

「ふふっ。もう一度ちょっと手にしてみたかっただけ!」
照れ隠しを忘れずに、ハルカは大分痛んだ絵本をしまった。誰かがきっと手にするだろうから。
子どもたちが手にするだろうからと、絵本の本分を全うさせたかったからと、心残りながら児童書の棚から遠ざかる。
後ろ手で鞄を持って振り返ると、二人が来る前の本棚が変わらぬまま居場所に立ち続けていた。誰かが来るのを待ちながら。
帆崎とハルカは結局のところ本を借りることなく、書の館に別れを告げる。
「おなかすいたなあ」と白い歯を見せながら、ハルカはぱたぱたと廊下を駆けて下駄箱へと急ぐ。
「廊下を走るなよ」と腕を組みながら、帆崎は尻尾を揺らして職員室の扉を開ける。

ふと、甘い香り。
若い女子高生のような花の香りとは違う、幾つか酸いも甘いも吸い尽くし、ほっと一息つかせてくれるような母親の香り。
焼き芋だ。泊瀬谷が焼き芋を抱えて職員室のストーブに当たっていたのだった。
カーディガンに厚手のスカートでも、やはり寒いものは寒い。ふわっと泊瀬谷の尻尾が心なしか温かそうだ。
「帆崎先生、こんなに焼き芋が手に入ったんですよー」
きょうはもうおしまいをしようと火を消していた焼き芋屋さんの屋台。残ってもしょうがないから、安くするからとたくさん焼き芋を譲ってくれた。
折角だからみんなにお裾分け。でも、職員室に残っていたのは帆崎と泊瀬谷ぐらいだったのだ。
158ネコの願い ◆TC02kfS2Q2 :2011/02/22(火) 04:18:07.09 ID:8scHaCAb
「食べますか」
「食べます」
小さな焼き芋はその分火が通りやすいので、いくらか香ばしい。というより、やや焦げ臭い。でも、美味しいものは美味しい。
新聞紙に包まれた焼き芋を両手で丁寧に割ると、白い湯気がのほほんと昇り立った。
黄色い誘いを断りきれず、渋い皮を捲りながら鼻をくんくんと鳴らす。
「ネコの日ですね!」
「ああ」
「ネコの日って、わたしたちネコの願いをなんでも叶えてくれる日なんですよね!」
あまりにも泊瀬谷が無邪気に語る姿は、帆崎にはハルカの姿と多少重なって映る以外にないものだった。
「実はわたし、教育課程を取ってた頃のネコの日に『ぜったい、高校の教師になるんだ』って誓ったんですよ。
やっぱりネコの日って、ネコの願いごとを叶えてくるんですよね!ふふーん」
若い泊瀬谷は頬を緩ませながら、ネコの日の夕暮れを見つめていた。ネコの日の終わりが近づき、窓からグラウンドを横切る生徒が見える。
彼らの影は長い。一人、そして一人と家路を急ぐ。そのなかには、図書館で一緒だったハルカの姿も。

「焼き芋食べたいなー」
「え?帆崎先生……」
「いや。なんでもない」
きっと、ハルカはそう考えながらぱたぱたと駆けていっているんだろう、と帆崎の頭に浮かんだことをそのまま口にしてしまったことに、
帆崎自身は非常に恥ずかしくなってしまった。ネコのシルエットが夕日に照らされて景色に浮かび上がる。
職員室の窓は、部屋の明かりに照らされてうっすらと帆崎と泊瀬谷の姿を描いていた。
「ネコの日って、ネコの願いをなんでも叶えてくれる……とは限らないんだな」
「……そうなんですか」
「あいつを見ていて、そう思ったから」と、帆崎は小さくなりつつあるハルカを指差す。
泊瀬谷は額を窓にくっつけると、すでにハルカは校門を潜ってしまった後であった。

「帆崎先生らしくて、素敵ですっ」
帆崎だってこんな小娘にかどわかされる歳でもなかろうに。
口にしようとした焼き芋が泊瀬谷の言葉でのどに詰まりそうになり、帆崎はネコの日が過ぎ去ってしまうことを惜しんでいた。


おしまい。
159わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/02/22(火) 04:19:04.46 ID:8scHaCAb
にゃーーー!

投下はおしまい。
160創る名無しに見る名無し:2011/02/22(火) 10:02:10.04 ID:S0kkNzhm
ザッキー、自分も猫なのに猫に遊ばれているな
161創る名無しに見る名無し:2011/02/22(火) 23:17:56.27 ID:C73QQaEr
投下乙にゃー
そういえば今シーズンは焼き芋食べなかったな。こんなの見てたら食べたくなるなあ
162創る名無しに見る名無し:2011/02/22(火) 23:42:07.85 ID:/kMQmNLD
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1785.jpg
猫の日合わせで急ごしらえ
ネタが浮かばなかったのと上ので思い出したので一番最初の絵に合わせたんじゃよ…
163創る名無しに見る名無し:2011/02/23(水) 00:17:52.07 ID:M2xd4HWT
コレッタたそかわいいいいいeeee!
164創る名無しに見る名無し:2011/02/23(水) 03:15:29.05 ID:jomB69YE
kawaiiiiiiiii!!!!!!!
165創る名無しに見る名無し:2011/02/25(金) 01:42:29.51 ID:OY3fJVT5
ぬこのスク水ってしっぽの付け根とかえろい
166創る名無しに見る名無し:2011/02/25(金) 21:01:38.45 ID:GP4OMXuD
リオ・モエ「せーのっ『けもらじ!』」
モエ「なんと、驚いたことに二回目が始まっちゃったよ!」
リオ「何を考えてるんでしょうかね!製作委員会は」
モエ「このラジオは創作発表板・獣人総合スレで行われているシェアードワールド『ケモノ学園』の紹介って感じで始まりました!」
リオ「惜しまれながら遂にね!」
モエ「今週はネコの日があったってことで、投下もたくさんありましたって感じ?」
リオ「コレッタかわいいよコレッタ」
モエ「スク水は正義系!」
リオ「という訳で、コレッタちゃんがこの後放送室に来てくれます!お楽しみに!」
モエ「では、前回はまとめwikiを見ながら、ケモノ学園の創設期に投下された作品を見ていったわけだし、今回もそうする?」
リオ「それより、コレッタ『ぼくと契約してよ!』」
モエ「おっと、今回は電話での中継がつながってる系?もしもーし!」

  プルルルルルル

サン先生「みんな!数学担当のサン・スーシです!きょうは学校内のグラウンドから電話でお邪魔します!」
モエ「ちょ!サン先生なにしてるのー!?」
サン「実は久々に台車に乗りたくなってね!お気に入りの手押し台車に乗ってるんだよ」
モエ「……もしかして、 http://www19.atwiki.jp/jujin/pages/115.html って感じで?」
サン「これから台車で学校の周りをレポートしようと思うんだよね!ハンドフリーフォンだから両手が使えるし、ではGO!」
リオ「せんせー、校門から出るとすぐに下り坂ですよー」
サン「ひゃっほー!」
モエ「声しか聞こえないけど、なにこれかわいいい!」
リオ「せんせー!下り坂!下り坂!すぐに右カーブだって!」
サン「ただいま校門通過ー!うわ!ブ、ブレーキがないぃぃ!くおお!ぶつかるうう!ここでインド人をみ……」

  ドンガラがしゃーーーん!

  ♪(ジングル)
167創る名無しに見る名無し:2011/02/25(金) 21:02:38.82 ID:GP4OMXuD
モエ「『しょうかい!』のコーナー!」
リオ「モエ、いいの?サン先生は」
モエ「このコーナーは過去に投下されたイラスト、漫画、SSをわたしたちの独断と偏見で紹介し、初めてこのスレに来ていただいた方へ
ちょっとでもこのシリーズに興味を持って頂けるきっかけができればいいな!と思って始まったコーナーだよ!で、今回紹介するのは」
リオ「あの……サン先生は」
モエ「 http://www19.atwiki.jp/jujin/pages/118.html です!」
リオ「よりによって……コレですか」
モエ「このサン先生、かわいすぎるんですけど!」
リオ「おっと!また電話がつながったようです。もしもーし」
サン「こちら、サン・スーシです!今度はちょっと改造してカーブをきれいに曲がれるようにしました!」
モエ「先生!あぶないことはやめてくださーい!」
サン「握り手を可動できるように改造して、ステアリングを実現させることに成功しました!
これで、約時速50キロの速度でもGに耐えながら華麗なコーナリングができるんだよ!では行ってきます!」
リオ「せんせー!せんせー!あぶないよ!あぶなーい!!」
サン「うひょーーー!風が気持ちいなあ!おっと右カーブ!くおおお……

 すぽっ

ぎゃあああ!握り手が外れたああ!」

  がしゃーーーんん!

モエ「せ、せんせーーーー!!!!」
リオ「もうわけがわからないよ!」

  ♪(ジングル)
168創る名無しに見る名無し:2011/02/25(金) 21:03:25.21 ID:GP4OMXuD
リオ「『しつもん!』のコーナー!!」
モエ「わーい!」
リオ「このコーナーでは、このスレを初めて見てもわかんないよ!て方の為に親切丁寧な解説をしようってコーナーですっ」
モエ「へえええ。それじゃあ、いってみる?」
リオ「では、愛知県尾張旭市にお住まいの『ポチ』ちゃん!小学6年生の女の子!手紙ありがとうございます!『毎回楽しく聞かせていただいてます!』」
モエ「前回始まったばっかりじゃない!」
リオ「『わたしはリオさんの声を聞くたびに……』きゃー!ジャッジメントですの!ぼくと契約しようよ!ようじょようじょ」

  ぱしっ!

モエ「えっとお……『ケモノ学園の皆さんの顔と名前が一致しません!優しいリ……モエさん!教えてください』です」
リオ「うわあああん!ハガキが取られちゃったよお」
モエ「えっと、ですね。
   http://www19.atwiki.jp/jujin/pages/202.html とか
   http://www19.atwiki.jp/jujin/pages/203.html とか
   http://www19.atwiki.jp/jujin/pages/204.html を見ればわかります!でも、まだ、キャラの名前が安定してない頃だし、
「犬飼」って誰?ってなってもしかたないんだよねー。一応相関図みたいなのもあるよー!はい!」

相関図・入門編!  http://loda.jp/mitemite/?id=1792.jpg

リオ「おお!wikiにあるのは完全版なので人数が多いんですが、これならすっきりだね!」

  プルルルルルル

サン「もしもーし!今、放送室の廊下を台車で快走中!ひゃっほー!!」
リオ「サ、サン先生!!自ら学園の風紀を乱さないでください!」(がらっ!)
モエ「リ、リオー!!ああ、出て行っちゃった。リスナーのみなさん、質問、要望、苦情があれば『佳望学園放送委員会・けもらじ係り』までおたよりかメールにてね!」
コレッタ「こんにちニャ」
モエ「おおお!スペシャルゲストのコレッタちゃん、って言うかかわいい!!こんにちは!」
コレッタ「ありがとうニャ」
モエ「コレッタちゃんは『ケモノ学園』の初登場人物だもんね。コレッタちゃんのおかげで10スレまで続いてるんだね」
コレッタ「て、てれるニャ。あと、サン先生とか白先生のおかげだニャ」
モエ「もーかわいい!リオも……」
コレッタ「ニャ?」
モエ「いや、さっきまでリオが居たんだけど、サン先生を追いかけて……」
コレッタ「いなばさんなら、さっきすれちがったニャ。そういえばサン先生がまた……」

どんがらがっしゃーん!
169創る名無しに見る名無し:2011/02/25(金) 21:04:00.76 ID:GP4OMXuD
モエ「わー!センセー!リオ!大丈夫?」
コレッタ「わわわ!ふたりともだいじょうぶかニャ!?」
サン・リオ「いたたた……。あ!そこに居るのはコレッタ!ぼくと契約してよ!」

(リオ・サン先生が並んで向かってくる)

リオ「ぼくと契約してよ!」
サン「ぼくと契約してよ!」
コレッタ「きゃあああ!ちかよるニャ!あっちいけニャ!!」
モエ「誰か、誰か止めてー!!!!」
リオ「ぼくと契約してよ!」
サン「ぼくと契約してよ!」
リオ「ぼくと契約してよ!」
サン「ぼくと契約してよ!」
コレッタ「あっちいけニャ!!!」
サン「ぼくと……、って。何?このネタ」
リオ「はっ(しまった!隠れヲタがばれてしまう!)な、なんでもありません!」

  ♪(ジングル)

モエ「という訳で今回もお時間が来てしまいました!コレッタちゃんありがとう!」
コレッタ「また来るニャ」
リオ「きゃー!終わっちゃうよお」
モエ「今度は白先生に来てもらおうかな。いろいろお話ききたいしぃ?」
リオ「この際、ババアでもいいや。ぼくと契約……」

  ザァーーーーーーーー

本日の放送は終了しました。
170創る名無しに見る名無し:2011/02/25(金) 21:07:38.08 ID:QFZdlXlT
QBやめろww
171創る名無しに見る名無し:2011/02/25(金) 21:26:12.00 ID:2EfB+uSe
                                。‰‰
                  |\           ‰8%%@°
                /|ノ  ^w           \;;;|
            _,.-‐''"´     〈、        / `╋  |
          ,/        ⌒ヽ\       \  .┃  |
         /    /⌒      ', ト 、       '|  ┫  |
        , '        ヽ、  ,イ`∨  `゙''-、    | ┃  /
       ,ィ    _ノ ,イ( {} d-|{}、ノ、''ー‐-''"´    \ κ/
     /     , イ A. ', ''―"ノ  ̄"∠ゝ〕        A(,.-‐ヽ
    ,.-''   ,.-''" V ),〆つ 、    ,、!        〈≦,,,_ 〕
  <,,,_,.一''"  _,ノ ( 「 /")  `‐-‐一''/        '! ,.〉_ }
           ̄wト、  ⌒)_,.-''"ィ⌒"          ト、^‐‐ '!
             ト‐--ィィ  /;;;ノ'`゙''-、_       /┤\ /
             〉-υ}/`| ̄ 亅\   ̄\,__/ \_/|
             |   }  ',   ',::::::\  , '  ,)イ   ,ノ,/
             !   Y '}    ヽ::::::ヽ/   ^  / /
             }     !    弋=ヽ__,    _,,,/
             `゙''-、_,ィ'      ト、::::::::〈`゙''ー‐-‐''"
                /      |;;|::::::::::|
     _,.-‐一----、__、 \__/_|;;|:::::::::::|
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  ,.'              /_/ !   !  〈
  〈  >''"´ ̄ ̄`゙''-、_,.-''"//    |  〈  '{
  "∨           / |    ゞ  》/\
               {:::|    /  〈 / ̄\
               |::|_____\/―\|
               く        〕‖   \
                ヽ''"´ ̄ ̄`゙''ヽ     ヾ
              廴,ノ        }      }
             ,,,,》         ,!      |
             〉        _,ノ´      ,/
             \     ,__/      /
              ト    ,イ    _,.-‐''"´
              `i    ‖   /
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             ,,,:::::;;;;;;;〉、ト 、  ヽ―""";;;;:::::,,,,
              "":::::::::`゙''''"´ ̄:::::::::::::::::::"""
172創る名無しに見る名無し:2011/02/25(金) 22:08:39.16 ID:kwkAYYtn
わーー、投下ラッシュ!いいぞもっとやれ!
>>145の続きザッキー。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1793.jpg

>>148
wikiのTOP編集有難うございます!もうちょっと解りやすく
短い文章の方が良いですかねえ。
173創る名無しに見る名無し:2011/02/25(金) 23:41:18.45 ID:LobBCu18
>>171
きゃー!サン先生!かわいいよ!
174創る名無しに見る名無し:2011/02/25(金) 23:50:33.59 ID:eXSdwtAT
>>166-169
なんかもういろいろと壊れててワロタ
175創る名無しに見る名無し:2011/02/26(土) 01:23:26.88 ID:EsqVbfPj
放送室ならオキシドールが使用不可だから安全に違いない!?
176創る名無しに見る名無し:2011/02/26(土) 16:23:39.93 ID:SbS091Nr
>>172
文章はちょうどいいと思うよ!
作品も乙乙!恩師っていいなあ。
177創る名無しに見る名無し:2011/02/26(土) 18:38:09.92 ID:/p0CU245
「娘はそっとジッポを取り出し火をつけた」
って文章をシッポに空目してサァ
178創る名無しに見る名無し:2011/03/07(月) 22:36:25.87 ID:VEdn3cDk
啓蟄も過ぎたけれど、虫さんたちは元気かなあ
179創る名無しに見る名無し:2011/03/11(金) 06:49:39.91 ID:b713I+E2
お昼休みはモンハンがデフォ。
ストーブの回りを取り囲み、皆がカチャカチャとPSPを弄っていた。
雄々しいタテガミを掻きむしりながら、獲得報酬一覧を見て馬が叫ぶ。
「クッソ!なんだよ!?なんで雌火竜の紅玉でねんだよ!妹連れてこいや利里!」
「んあー?失礼だぞー。俺の妹がこんなに可愛くないわけないぞー」
竜の利里はウロンな目付きでそう返す。
利里はリオレウスにとってもよく似てるから、レウスやレイアへの怒りは自然に利里に飛んでくるのだ。
“俺の妹がこんなにかわい″まで利里が喋った瞬間、
近くの席に居たウサギのリオのおっきな耳が脚気の診断みたいに立ち上がったが、誰も気にはとめなかった。
「コレ確率おかしいだろ!レイアと金火竜あわせたら2Gの頃のクック先生なみに倒してんのに!」
「…それはお前の運が悪すぎるんじゃね?」と、鹿の来栖は冷静である。
「もうお前の紅玉集め付き合うの飽きたわ。利里、俺アルメタ造りたいから狩りに行こうぜ」
「わかったぞー。クーラードリンクだなー」
「閃光玉も頼む」
「おい勝手にアルバトリオン行くなよ!長期戦必至じゃねーか!火竜狩りに行けね…あー!出発しやがっ、あー!」
塚本、オイテケボリ。
「ファーーック!もういい!俺はライダーと遊ぶ!モンハン持ってないから話に加われない可哀相なライダーと遊ぶ!」
塚本はストーブの横に転がってるドテラの塊みたいな物体を蹴った。
中には虫の鎌田が詰まっている。
「カーマタくん!あーそびーましょ!」
「zzz…陽太くん…僕、バッタは食べないよ……」
「起きろよライダー。冬物衣類のバーゲンワゴンで塊魂プレイしたみたいな恰好しやがって」
「バッタが出せる…つまり食べたこと……ああ、佃煮か……ZZZ」
「ケイチツだぞ!春だぞ!警視庁試験近いぞ!」
「うー……うるさいなぁ。おはよう塚本、なんか用?」
「いったいなんの夢見てたんだよ」
「え?僕なんか寝言でも言った?」
「ああ、バッタを食わせられそうになってたみたいだぞ。肉食昆虫だからってヒデェな、ライダーの夢の中の奴」
利里に竜狩りを手伝わせていた塚本にそんなことを批難する権利はない。
寒さと午睡とに戦うための休息時間は、そんな感じで更けて行った。

終わり
180創る名無しに見る名無し:2011/03/11(金) 20:05:23.38 ID:+8oc/ntW
いくら似てるからってひでえw
夢の中の人は何やらせようとしてんだよww
181創る名無しに見る名無し:2011/03/31(木) 10:26:07.37 ID:5R56vtGF
最後のレスの日時が地震の時とか縁起悪いな…

誰か蝶の獣人を創作してくれ!
いのりんと来栖と蝶の獣人が揃えばなんか縁起良い気がする
182創る名無しに見る名無し:2011/03/31(木) 14:16:32.88 ID:fH+4vW+F
い、いのしかちょう!
183創る名無しに見る名無し:2011/03/31(木) 18:22:11.45 ID:duJvV9yh
どうせだったら五光狙おうぜ
よろしくお願いしまあああああああああああす!
184創る名無しに見る名無し:2011/04/01(金) 01:08:29.17 ID:4b8wkk4L
185創る名無しに見る名無し:2011/04/01(金) 02:28:16.58 ID:M5ZA6939
おお、イラストきた!
姓は蝶野だけど名は蛾次郎って雰囲気ですねw
186創る名無しに見る名無し:2011/04/01(金) 08:08:25.22 ID:+Ys1oTJj
うおなんだこいつかっけぇ!
187創る名無しに見る名無し:2011/04/02(土) 12:51:39.88 ID:JtrDygwP
そういえば今月は卯年卯月卯の日が三回あるな
ウサギネタを書かねばならん
188創る名無しに見る名無し:2011/04/02(土) 14:34:24.08 ID:3hioQp44
そうなんだ。一番近い日で4月6日か。うさうさ
189創る名無しに見る名無し:2011/04/12(火) 19:43:23.39 ID:IpcATjNn
たまにうpろだに絵がアップされてるけど
一見さんや、たまにしかスレ覗かない人、偶然足を運んでくる人には
絶対気づけないと思うんだが
190創る名無しに見る名無し:2011/04/14(木) 12:40:30.24 ID:QRhzr8FD
訳あって本スレに張らないんでしょうね。多分。
ただ、古参の住人以外の方もこのスレを楽しんで欲しいんですよね。
191創る名無しに見る名無し:2011/04/14(木) 13:42:07.12 ID:8Q3Maspb
別にスレに絵とか連投してもいいと思うんだよね。ケモ学やオリジナルや
版権もの関係なく。
古参や内輪(は少し違うか?)にしかわからない所にアップされ
続けるとちょっとなぁ…と最近。
実際見逃してる絵もあるし…
192創る名無しに見る名無し:2011/04/14(木) 20:31:45.04 ID:R0ku6V9/
ろだにうpするだけでなくスレに絵を投下すれば、間違いなくここに来てくれた一見さん、古参の住人は喜ぶ。
そして、他の絵師さん文章書きさんも刺激になる。そして、スレが盛り上がる。はずだ。
うpされた絵にも申し訳ないし。
193創る名無しに見る名無し:2011/04/15(金) 12:34:22.78 ID:jtH8HP9x
遠回しな言い方できないのでストレートに書くけども、どうして
住人も中々気付けないうpろだにしか絵をうpしなくなったんだろ?
悪く言ってる訳じゃないけど。それってスレにとって意味のある
ことなんだろうか…
194鵜飼い  ◆yWuD4MWnebo6 :2011/04/21(木) 00:13:04.59 ID:/Ht/I+rW
ちぃとピリピリした流れになってるけど、自分のキャラ使ったやや眺めの話を小出しにして投下します。
トリップの使い方これで合ってるのかしら。
195鵜飼い  ◆yWuD4MWnebo6 :2011/04/21(木) 00:14:17.22 ID:/Ht/I+rW
しろくろ 第一話 卯月

 夢、というのは厄介なものである。
何処からともなく生まれ人を魅了させ、それが叶うのはごくわずか、限られたものだけである。
その上失敗したならば、多大な時間の浪費と周囲の人々を振り回してしまった、という罪悪感が待っている。
第一夢が叶ったところで得られるもので一番重要なものは充足感だろうが、それを得たところで死んでしまえば何にもならず、だれかに託せるわけでもない。
だから、夢は、持つべきではない。
それが香取徹の持論である。
196鵜飼い  ◆yWuD4MWnebo6 :2011/04/21(木) 00:14:39.33 ID:/Ht/I+rW
 ぽかぽかとした日差しと陽気が猫人である彼にはたまらず、おもわず居眠りしてしまいそうな春の午後のことである。
休日の昼下がりで人も疎らな電車内で、徹は窓の端から端まで流れる桜吹雪を眺めていた。
この櫻木線はその名の通り線路沿いに桜の木が植えられており、この季節になると桃色の飛沫が絶えることなく窓辺に映し出される。
春の光を受けながら輝く桜の花びらは淡く柔らかで、浅瀬に舞う白波を思わせ、まるで水中を走っているような錯覚をしてしまう。
それは一種の催眠術のようであった。
 その光景に魅せられてじっと眺めていると、電車の速度が徐々に落ちる。
それに伴い花びらの流れが穏やかになり、目的の駅名である佳望病院前を告げる車掌の声が流れた。
徹が降りようと席を立つが、隣で座っていた大柄な狼人は、ほんの十数分しか経っていないというのに、大きな口を開けて寝息を立てていた。
この、隙あらばこうやって居眠りをするのは張本丈という、徹の幼なじみである。
唯一覚醒しているタイミングと言えば好物の甘い菓子を貪っている時と、趣味の忍者同好会の活動をしているときくらいだろうか。
幸せそうな寝顔を見ると起こすのがはばかられるが、そのままにしていくわけにもいかない。
「おい、丈。もう駅着いたぞ。早くしないと発車しちゃうって」
 そう言いながら肩を揺さぶっても起き出す気配がない。
菓子にまみれた夢でもみているのか、これ以上は血糖値が、などと寝言をほざいている。
手加減なしに髭を引っ張ると、うぎゃあと悲鳴を上げながら飛び起きた。
「おまえ、髭はやめろよ髭は」
「そんなこと言って病院の面会時間過ぎたらどうするつもりだよ」
「その時はその時でいいじゃん」
「よくないよ、バカ」
 言いながら透は、持っていた花束で丈のぼさぼさの頭を打った。
車内から出た二人を春らしい温もりが包み込む。
二人で話しながら改札を通り、目的の佳望病院まで向かう。
道中にも桜並木がはらはらとその花弁を散らせており、入院中の患者だろうか、多くの人々が桜を見ながら談笑している。
たしかにこの一本道を桜が一面満開に咲いている様子は、病気や怪我などといった陰鬱な物事を吹き飛ばしてくれる程に、美しく、鮮やかだ。
しかし一方で丈はそのことを気にもとめずに、近くに美味しい菓子屋があるから寄ってもいいか、などとうきうきしている。
なんでも、狐の女性が経営している行きつけの店があって、桜を材料に使った新作菓子を作ったのだそうだ。
花より団子とはこのことか、などと思いながらも徹は病院の入り口へ向かった。
197鵜飼い  ◆yWuD4MWnebo6 :2011/04/21(木) 00:15:08.46 ID:/Ht/I+rW
 病院の中は特有の薬品や衛生材料の入り交じった、何かしらの生々しい匂いで溢れていて、否が応にも鼻を刺激させる。
獣人である二人にはより一層それが強く感じられ、揃って気難しい顔をする。
受付を済ませると、鼻をひくつかせ、花束をがさがさいわせながら目的の病室を探す為に歩き出した。
「しかし清志郎も阿呆だよなぁ、一目惚れして屋上から飛び降りるなんて」
「あの時は驚いた。気づいたときには空に飛び出してたし」
「最初は勉強が嫌になったのかと思っちまったよ。しかも、よりによってりんごに惚れるたぁ……
「おかげで太股を骨折って、笑える話じゃあないね。野生動物だったら死活問題だよ」
「そうでなくてもあいつ陸上部だろ?足折るのなんてまずいんじゃねえの?」
「医者の話だと骨にヒビが入った程度で済んだし、その上驚異的な速さで回復してるって」
「愛の力ってヤツかねぇ。りんごへの一途な思いが、回復力に繋がっているというか」
「それでも後先考えずに行動するのは、愚かだと言わざるを得ないね。ん、ここかな」
 二人でその病室の前で立ち止まる。”水前寺清志郎”の札が掛けられている。
198鵜飼い  ◆yWuD4MWnebo6 :2011/04/21(木) 00:15:29.88 ID:/Ht/I+rW
 三月、徹たちがまだ高等部一年で、もうすぐ春休みに突入しようかという時節。
昼休み、徹と丈とチーターである清志郎の三人は佳望学園高等部棟の屋上で昼食を取っていた。
透、丈、清志郎の三人は高校一年で同じクラスに配属されており、よく三人組でつるむ仲になっていた。
春休みの予定について、宿題だの部活だの色恋沙汰だの話していた時のことである。
柵に寄りかかって何となしに中庭を眺めていた徹が、
「あ、りんごたちだ」
 丈と同じく幼なじみの、人間の礼野翔子と兎の星野りんご、そして同級生の狐の小野悠里の三人組が中庭で昼食をとっているのを目にした。
女子高生三人が集まってなにか話している姿は、遠目に見てもそれだけで絵になるものだ。
少しの間眺めているとあちら側も気付いたようで、屋上に向かって手を振ってくる。徹も手を挙げて応える。
「あれ?徹ちゃんなにやってんの?」
「いや、りんごたちが中庭にいたから」
「おっ、本当だ。ついでにおっぱい要員の悠里さんもいるな」
「ほう、りんごってのはお前らが普段話してる、例の幼なじみってやつか。どれ、俺がみてやろう」
 丈につられるように清志郎も柵から身を乗り出す。徹は三人を指さしながら、
「ほら、あの白い兎がりんごで、人なのが翔子。狐は知ってると思うけど悠里ね」
 と説明した。小野悠里は胸が大きいことと妙に大人びていることで有名で、胸に関心のある佳望男児でその名を知らぬ者はいないとさえされている。
「……これは……!」
「何か言った、清志郎?」
 清志郎が何かを呟いたので聞き返そうと徹が横を向いたとき、そのチーターの青年は既に手すりの上に座り、”飛ぶ”体勢になっていた。
「お、おい清志郎!」
「早まるな!いくら期末試験の成績が留年ギリギリだったからって、身投げはマズい!」
 慌てた二人が清志郎を引きとめようとしても、
「俺を止めても無駄だ!恋の炎は消火できん!」
 と叫んで聞く耳を持たない。
「恋って、ちょっと何を……!あっ」
 二人に止める間を与えず、清志郎は屋上から地上まで10メートルの急降下を果たした。
そしてその足でりんごの目の前まで歩いていき、一目惚れした、という熱意を交えた自己紹介をやってのけたわけである。
清志郎曰く、
「一目見て電流が走った。運命の相手は彼女しかいないと思った。
 あれはすぐにでも側に駆け寄りたいと考えた末の結果であって、後悔も反省もしていない」
 だがその結果、清志郎は陸上部の命とも言える太股にヒビを入れるという事態になってしまった。
本人は特に気にしてはいないが、陸上部員にしてみれば春期の大会を目前にして欠員を出されては迷惑千万だろう。
199鵜飼い  ◆yWuD4MWnebo6 :2011/04/21(木) 00:15:50.40 ID:/Ht/I+rW
 無茶な清志郎の愛情表現に呆れながらも徹が部屋に入ろうと手をかけた瞬間、
「水前寺ィ!お前はいったいなにを考えてるんだ!大会目前に骨折などとは!」
 なにか物が爆発したのかと思えるほどの、耳をつんざくような怒号があたりに響きわたった。
声の振動は建物全体へと伝わり、窓ガラスがびりびりと震えた。
「うおお……ビビった……。この声は……」
「……陸上部部長の伊織先輩、だな」
「すげえ声のでかさだ……。ヒゲが共振してやがる」
 その声量の大きさはもはや声と呼べるものではない。
清志郎が何か反論しようと試みているようだが、全てその濁流に巻き込まれてしまい、ノイズのようにしか聞こえない。
徹と丈の二人が声で振動する毛先を感じている間も声が止むことはなく、むしろ加熱しつつある。
「この調子だとしばらく待たないと清志郎との面会は」
「無理そう、だね。まあ清志郎も自業自得というか」
 片耳を押さえながらも、二人は何とか会話をする。
この分では修羅場は30分以上、最悪数時間は続きそうだ。
面会時間はまだ余裕があるが、この声量に耐えながら廊下で町続けるのは堪える。
二人して顔を見合わせ、どうしようかと思いあぐねる。
ふと、丈が何かを思いついたような顔をして、
「そんじゃあ俺、その間気になってる和菓子屋行ってくる!」
 と叫んだ。
「えっ、ちょっと待って……、てもういないし」
 徹が止めようと横を向くが、既に丈の姿は消えていた。
「逃げ足速いよ……」
 成す術もなく取り残された徹は、轟音に耳を塞ぎながらつぶやいた。
200鵜飼い  ◆yWuD4MWnebo6 :2011/04/21(木) 00:16:15.20 ID:/Ht/I+rW
 手すりにもたれ掛かり夕日を眺めながら、徹は音楽を聴いていた。
丈と違い特に行く宛もなく、かといってじっと病室前で待つわけにもいかなかった徹は、仕方なしに屋上で時間を潰すことにした。
屋上にいてもなお、伊織の叫び声は聞こえており、足下のコンクリートづたいに振動を感じ取ることができる。
看護士が取り押さえようと試みているだろうが、しばらくは無駄足に終わるだろう。
「何のためにここに来たのやら……」
 夕陽で染まる空を見ていると、なにやらやるせないやらもの悲しいやら、焦心に浸ってしまう。
イヤホンから聞こえてくるバラードで風景が哀愁に彩られ、殊更何ともいえない気分になる。
 ふと、視界になにかひらひらしたものが映り、横に顔を向けた。
それは風にたなびく髪の毛であり、髪の持ち主の徹と同い年くらいの少女が、徹と同じように手すり越しに夕陽を眺めていた。
少女の茜色に染められた純白の獣毛。
風に舞う藍色の長い髪の毛。
夏の快晴の空の色をぎゅっとそこに凝縮したような瑠璃色の、そして少し憂いを含んだような瞳。
それらが春風に舞う桜の花弁とともに、徹の網膜に深く焼き付いた。
そしてその一瞬が、徹には引き延ばされたように長く長く感じられ、そして彼の世界の全てを埋め尽くしてしまった。
 それが、黒猫の香取徹と白猫の椎名ちひろの最初の出会いで、二人にとって忘れることの出来ない物語の始まりであった。
201鵜飼い  ◆yWuD4MWnebo6 :2011/04/21(木) 00:17:35.89 ID:/Ht/I+rW
つづく って付けるの忘れた!
とりあえず最初の話は以上です。
ちょっと読みづらいかも?
202創る名無しに見る名無し:2011/04/21(木) 01:23:29.23 ID:HEZw7QLj
投下きた!清志朗はやっぱりかわいいなあ
203創る名無しに見る名無し:2011/04/21(木) 23:09:14.07 ID:rBV6p9L1
飛び降りwww清志朗パねえwww
ついでにおっぱい要員ってのもまたひでえなw
徹主役の話は初かー。これは続きに期待。
204創る名無しに見る名無し:2011/04/25(月) 01:13:11.29 ID:fHTG3SO1
白先生「誰だ!勝手に私の漫画を描いたのは!」
リオ「私じゃありませんよお。どんな漫画ですか」
白先生「私が幕末にタイムスリップして、人々に現代医療を施し…」
リオ「テレビのドラマで見たような内容ですね。そのドラマ、私ハマっちゃいました」
白先生「うーむ、そのドラマを見てると、医療の発達が命を救うことに貢献してるか、医療に関わる者として改めて思うな」
リオ「そうですね。平均寿命もぐんと延びてますしね」
白先生「あ、あぁ」
リオ「三十路なんか、まだまだ若い方ですよねー。でも、オバサンは江戸時代に行ってもオバサンかぁ」
白先生「おい、因幡。仕入れたてのオキシドールの掛け具合を試させろ」
リオ「わー!待って下さい!『神は乗り越えられる試練しか与えない』んですよー!」
白先生「何が言いたいんだ」
リオ「つまり、神が与えしババアの壁を乗り越えた白先生は、もう何も怖くない…。ぎゃああああ…!」

日曜劇場 SHIRO〜白
205創る名無しに見る名無し:2011/04/25(月) 01:56:19.34 ID:+ugMWsKd
なにしてんwwww
206創る名無しに見る名無し:2011/04/25(月) 18:11:34.13 ID:/QwG2Ws7
                           _____
                  ,____    ,.‐''"´   |
              _,.-''"´:::::::: ̄`゙''''"::::/, '  ,','/
            /:::::::/::::::::::::::::::::::::`ヽ ヽ  .,.' /
           /://レ'ヽ、ヽ、::::::::::::::: ヽヽ、ミ /
         /:::/// ̄`゙'':::::\\''"´ ̄ `、`、,.'/
        /:::::::///〃~んハ:::::::::::::んハ\l::::ヽィ
       ∠:::::::レi i iヽ、弋!ノ ''''' 弋!フ ,ノノ:::: }彡/!
         `゙∠ヽヽ:::::::::::::::▼:::::::::::::::_,ノ::::::::ノ::::::::/
        ゝ`゙''::::::::>、::::::::: /\ :::::::彡::::::::/:::::∠
        `゙''ー‐、`゙''ー>x._ ̄ ̄._x<::::::::ィ‐一''"
         <__,.-__!, ̄ ̄__!´::::::ト、_\_
              >:.:.ゝ.:.:ヽ、 _,ノ`ヽ〃 ̄~``ヽ
             <.:.:.:.:.:.:.:._,ノ// ̄`ヽ卅卞 !|
        _,.-''"´∨`ヽ/ r-x、/y    \――|
       ,イ`ヽv/   ィ-'"`:::::` |     〕o ̄(゚|
        〉:::::/    ヽ、::::::::::::::::〉    ノ|| ̄ .||
        |:::::./     i }:::::::::::::::{__  /| |  .||
        |:::::{      〈〈:::::::::::::::ヽヽ/|. |ク   ||
        ヽ、_\     \i::::::::::::::::::/ |. |ヒ..  ||
           | ̄ ̄ ̄ ̄i\__,ノi | |     ||
          厂 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/ ̄`゙''ー‐-、___||
         /   ̄ ̄   ''"       フ`ヽ
         /                 }  }
        .|                 ‖ }
         |                〃 〉
       ./               ≪  〉
      /ゞ               〃 __〉
    /::::\ \  ==   =≠〃  __〉|
   /::::::::/`ヽ /`゙''ー‐-=== ,.-‐''"ヽ/::::|
  /:::::::/ _ ', ̄`゙''ー‐--、__――''":::::::::::::::|
  {::::::::ト、/::::`ヽヽ:::::::::::::::::::::::\::::::::::::::::::::::::::::::ト 、
  ト、:::::::::::::::_/  \::::::::::::::::::: |\:::::::::::::::::::::::::::::}
   `゙''ー‐''"     ヽ、:::::::::::::::::〉 `ヽ::::::::::::::::::::::|
207創る名無しに見る名無し:2011/04/25(月) 19:17:16.73 ID:fHTG3SO1
俺だー!クロ!結婚してくれ!
208創る名無しに見る名無し:2011/04/27(水) 07:59:43.03 ID:+gRonHL6
「イヤにゃ」
209創る名無しに見る名無し:2011/05/11(水) 14:22:27.61 ID:rQc0EF5i
210創る名無しに見る名無し:2011/05/11(水) 16:18:48.20 ID:+/b0lCFH
化物語w
211わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/05/12(木) 13:03:02.33 ID:b0E8wyZl
コレッタかわいすぎる!久しぶりに投下します。

初めてさんガイド。
ヒカルくんと泊瀬谷先生。
ttp://www19.atwiki.jp/jujin/pages/140.html
白先生
>>209
212さよならの朝 ◆TC02kfS2Q2 :2011/05/12(木) 13:24:20.93 ID:Oaz8F0cr
 初めての夜を過ごした泊瀬谷は、頬を赤らめながら毛先を指で摘んだ。さっきまでの夜空が泊瀬谷に二度と訪れることは二度とない、
彼女の一夜の記憶。薄暗い中で満天の星が広がる。人肌恋しい季節はとおに過ぎたと言うのに、誰かに縋りたい気持ちだけは
変わらないなんて。でも許してくれた寛大さ。何となく花を散らせた道路脇に並んだ桜の樹の視線が後ろめたく感じる。
それは夜を馴れ親しんだ教室で大人だけの時間を過ごしたからか。オトナに馴染んだ泊瀬谷は、朝の光線の中でオトナを知らぬヒカルを
独り占めに。それが少年と青年の狭間のイヌを相手にしても、泊瀬谷にはかまわない。
 「誰かと過ごした夜って、ずっと思い出になるんだよ。ヒカルくん」
 「……」
 「教室ってだけで、どきどきする」
 泊瀬谷は肩に付いたケモノの毛を摘み取る。白く柔らかい、優しい毛。ネコの泊瀬谷にまとわりついて、未だ興奮冷めやらぬとは、
彼女のためにある言葉なのか。一方イヌであるヒカルは冷静に泊瀬谷の初恋顔に視線を落としていた。彼女が自分より年上だとしても、
ヒカルは落ち着き払って指先まで視界に入れる。ネコの泊瀬谷は高校の現国教師。イヌのヒカルはその教え子。教壇の上と下、
帰り道の路上では世間さまがこしらえた垣根なんか取っ払え、っていっても構わないはず。
 「いつもいる部屋なのにね」と、泊瀬谷の言葉は浮き足立つ。
 朝の日差しが面倒くさい。いっそ来ないで欲しいって、世界中の誰かが思っているはず。でも、ヤツの顔ぐらい立てればいいじゃないか。
早起きさんの勲章は、それをするだけでもらえるのだ。でも、泊瀬谷はそれを否定する。勲章はいらない。ずっと、ずっと。 
 「ずっとずっと、この夜が続きますように、って……大切な時間が……」
 「また、来ますよ。きっと」
 「うん。だと、いいな」
 爽やかな早朝の風が二人を晒す。街はまだ眠気まなこ。泊瀬谷とヒカルが二人っきりなのも見逃している。
 ヒカルの跨る自転車は坂道でじっと堪え、よく磨かれた金属が反射する。やさしい白い毛並みのヒカルは瞬きをしていた。
 「そういえばさ、あの席から先生のこと……ヒカルくんはいつも見てるんだよね。へへへ」
213さよならの朝 ◆TC02kfS2Q2 :2011/05/12(木) 13:25:53.75 ID:Oaz8F0cr
 「……うん」
 「初めて、ヒカルくんの椅子に座っちゃったんだよね。昨日の夜」
 悪ふざけのような言葉を呟いて、泊瀬谷はヒカルの自転車の荷台に腰掛けた。泊瀬谷の肩がヒカルの背に寄り添うように
足を揃えて座ると、ネコの尻尾がイヌの尻尾をいたずらするように撫でる。ヒカルの白いシャツからの淡い香りが泊瀬谷をくすぐる。
ヒカルの香りで安心したのか泊瀬谷は急に不安になった。いいオトナがなんだ。年上なのに、と泊瀬谷は自覚してもよぎる不安。
 「どうして、わたし……ヒカルくんの先生になっちゃったのかな」
 よく磨かれたパンプスのつま先をじっと泊瀬谷は見つめる。
 「先生ね、小さい頃からずっと『先生になるんだ』って思ってたの。何も疑問は感じなかった。つまんないって思うかもしれないけど
 その頃の先生は本気だったんだよ。ほかのお仕事が考えられなかったから。でも……これでよかったのかな?ヒカルくん」
 無意識に泊瀬谷がヒカルの尻尾に爪を立てると、ヒカルは小さく声を出した。それが可笑しくて、泊瀬谷はくすっとほほを緩める。
昨晩のことなんか早く忘れてしまえばいいのに。取り戻せないのを分かっているのに。それでも泊瀬谷は目を細める。 
 「なーんてね」
 「……」
 
 照れ隠しが痛々しい。分かっているけど、泊瀬谷はそんなセリフを言うしか出来ないのだから。後悔したときほど笑うしかない。
 「ごめんね」
 「先生」
 「なあに?」
 再び泊瀬谷は、ぎゅっとヒカルの尻尾を握る。爪なんか立てない。
 「行ってきます」
 「うん。さようなら……犬上ヒカルくん」
   # 
 ヒカルの学校は相変わらずだ。何があっても動じない。自転車を止めながらカバンを肩にかけると青い空がいやに澄んでいた。
街を走り抜ける市電もまだ走り始めたぐらいなので、誰かが来る気配さえないんだから遠慮することはない。気まぐれで来た朝いちばんだし。
 校門までの坂道での出来事をふと思い出しながら、下駄箱で上靴に履き替えてヒカルは誰もいない学園の廊下を歩く。
 
 気持ちがいい。
 気持ちがいい。
 気持ちがいい。
 当たり前の言葉を三度並べても、誰もが頷ける心地よさ。
 だから、またひとつ。気持ちがいい。
214さよならの朝 ◆TC02kfS2Q2 :2011/05/12(木) 13:27:12.49 ID:Oaz8F0cr
 朝が早いと周りが広く見える。一時限目の時間まではまだまだ。春と夏を行き交う制服の袖が、いやに涼しくなるのは
この季節だけに味わえる特権。いつもは賑やかな教室が静まり返るなか、ヒカルは上靴の音だけぎゅっと鳴らして自分のクラスへと歩く。 
 思った通り教室には人っこ一人いなくて、扉を開ける音だけが響く。生徒を迎える扉さえでしゃばることを憚ったのか、
ヒカルを通す程に開くと声を上げることをやめてしまった。木目がずらりと並ぶ、暖かいようで冷たい教室はヒカルには新しく思えた。
朝一番に教室に入ったヒカルは、たわわな尻尾をゆっくりとゆらして一歩足を入れるが、誰もいないのがむしろ心地よい。
 さっきまで泊瀬谷がいた教室だ。お日さまはいなくて当然な時間だが時間が経つと、まるで実りの季節の青空市場のようにどこかからとなく人が集う。
それまでの時間はヒカルだけに与えられた自由な時間。だと言っても、ヒカルはただ自分の好きな本をのんびりと捲って過ごすことだけ考えていた。
 
 くんくんとヒカルは鼻を利かす。ここに座っていた泊瀬谷の甘い香りがしたような気がした。
 お行儀悪いが机の上に腰掛けて、夏へと向かう窓の陽射しを受け止めて、朝のまどろむ時間をしばし過ごしていると、
何でもいいから本の一冊でもいいから読みたくなる気持ちだ。時間だって、まだまだクラスメイトがやって来るまでの余裕はある。
静かで優しい時間と空気はヒカルに何か期待でもしているのだろうか。
   #
 「教室で夜を過ごすって、初めて」
 洗い立ての泊瀬谷の髪の香りが甘く、そして自転車に跨るヒカルに届く。
 「窓から陽射しが差してきたとき……ちょっと嬉しかったし、寂しかった」
 人肌を確かめるかのように泊瀬谷はヒカルの尻尾の付け根を握る。ヒカルの白いイヌの毛並みが泊瀬谷の指に埋もれていた。
ヒカルはそれをしあわせに感じていた。泊瀬谷に尻尾を撫でてもらったこと、それだけでいいんだから。
 「一緒にいてくれてたこと……それだけで、いいんだ。ね、ヒカルくん……」
 「……」
 「しばらく、バイバイね」
 ピョンと泊瀬谷は自転車の荷台から跳ねると、ひとつ大きなあくびをした。少女のように両手で握りこぶしを作りながら、
石畳の坂道を歩く。パンプスの足音ぎこちなく、くるりとヒカルの方へと振り向く泊瀬谷。遠くで市電が走り抜ける音がしていた。
215さよならの朝 ◆TC02kfS2Q2 :2011/05/12(木) 13:28:48.06 ID:Oaz8F0cr
 「きょうはね、先生……お休みです。ネコだけの特別なお休みなの」
 「えっ」
 「昨日の晩は『ネコの夜会』でしたから!」
 
   #
 昨晩、ヒカルが通う学園で「ネコの夜会」が開かれたという。
月明かりの美しい夜に街のネコたちが集まって、とくに何かをすると言うことなくだらだらと星空を共有する「ネコの夜会」。
文明に操られたネコたちも、どこかできっと野生の香りを嗅ぎ付けて「ネコの夜会」を開きたかったんだろうか。
そんな集いが公園で夜な夜な開かれていた。だって、ネコだから。そう、ネコだから。集まるだけの簡単な会。老いも若きも、
ネコなら誰でも歓迎します。お代は一切要りません。気の向いたときにふらりと寄って、気の向いたときにふっと消えても構いません。
そんなネコの夜会が泊瀬谷が教壇に立ち、そしてヒカルが通う佳望学園で行われた。
 『夜中の学校って、いいよね』と、ネコの誰かが言い出した。そんな呼びかけが、街中のネコに伝わって佳望学園に白羽の矢が立った。
学園の許可は得た。告知も十分にした。あとはその夜が来るのを待つばかり。
 ほらさ、考えて見なさいよ。
 夜の教室。
 夜の廊下。
 夜の職員室。
 夜の体育館。
 夜の保健室。
 日差しに照らされたときとは違う匂いがするから。静かにネコだけの時間を過ごすにはお誂えの場所なんだから。
児童、学生たちにはおすそ分けでないオトナだけの時間をネコの集会に使ってしまおう、ってのがこの企画だったのだ。 
泊瀬谷がこの会を見逃すはずがなかった。教え子が来ない教室に興味を覚えない教師がいるだろうか。
 「ちょっと、わくわくするね」
 近所中のネコが集まった。ある者は教壇に立ち、ある者はベランダから夜空を眺め、ある者はお互いに作ってきたお弁当を見せあいっこ。
学校から離れたオトナたちが、学校を思い出す。誰だって学校にはお世話になったはずだ。でもさ、夜の学校なんて……知らないよね。
 その晩、ひっそりと泊瀬谷はやって来た。トートバッグを肩にかけて、通い慣れた坂道を登る。空には星、丘には校舎。いつものようでいつもでない。
教師と言う身分を忘れて、指定された教室へ足を運ぶ。そこはヒカル、そして泊瀬谷のクラスだった。
 「やっぱり来たか」
 「こんばんは、白先生」
216さよならの朝 ◆TC02kfS2Q2 :2011/05/12(木) 13:30:54.85 ID:Oaz8F0cr
 教室に入るとすでに教室に来ていた先輩の白先生が、生徒たちの机の上にティーセットを並べていた。ゴールデンウィークを利用して、
とある地方の陶器市で仕入れたそうだ。白先生曰く「有意義な無駄遣いができた」らしい。教壇の上には湯沸しポットが白い息を立てながら、
白先生を催促していた。保健医である白先生、普段の保健室と違って普通の教室にいることに少し落ち着かないのか、そわそわとしきりに
自慢するほどでもない脚を組み直していた。色気を振りまく三十路じゃなかろうに。その度に愛用のスリッパが不安定な動きをする。
 「教室で夜を過ごすって、初めてなんです」
 「これもネコだけの特権だからな。ほら、お茶を入れるから飲みなさいよ」
 真っ白なカップは予め温められていた。こうしておくと、お茶の温度がカップに奪われないからだ。ポットにイヌハッカを入れてお湯を注ぐ。
慣れた手つきで蓋をする白先生を、生徒に戻ったかのように、生徒たちが座る椅子に腰掛けて泊瀬谷は目線で追いかける。ジロジロ見るなと白先生は照れ笑い。
 「ほら、ハーブティーだぞ」
 「いただきます」
 こぽこぽと注ぎ口からこぼれる『イヌハッカ』のハーブティー。周りで管を巻いていたネコたちも、魅惑の香りに誘われて心を奪われる。
泊瀬谷と白先生はしばらくお茶をしながら、他愛のない話をしていた。ネコだけの時間だから、何しても自由。ネコたちはそんなこと分かっているし。
 「こうして教室でお茶をしていると、学生時代を思い出しますね。もっとも、こんな高級なお茶なんて手に入りませんでしたけど」
 「ふふふ。生徒に戻った気がするからな。遠い昔の話……だ、なんて生徒の前では口にできないけどな」
 「白先生らしいですね。それにしてもあの頃のわたし、何を考えてたんだろう」
217さよならの朝 ◆TC02kfS2Q2 :2011/05/12(木) 13:34:17.27 ID:Oaz8F0cr
 そろって黒板のほうへ振り向くと、誰もいない教壇が意外と大きく見えた。泊瀬谷は教壇に立つ自分をふと振り返ると、どうして教師の道を選んだのか
自分がまだ生徒だった頃を思い出した。夢だけは見るのも罪はなかったあの頃と、夢を見ることさえ罪な今の泊瀬谷。夢なんか昔に
もっと見ておけばよかったのに。かちゃりと磁器の音が痛く突き刺さる。残りのお茶がカップの中で波を立てて揺れていた。
いっそ、ハーブの香りの力を借りて、自分を都合よく化かしてしまおうか。
 「小さい頃から、先生になるんだって思ってました。何も迷わずに。父が教師をしてたから当然自分も教師になるんだって。
でも、それでよかったんでしょうかね。どう思いますか、こんなわたしのことを。でも……困りますよね、白先生」
 白先生は答えを教える代わりに、泊瀬谷にお茶のお変わりを注いだ。イヌハッカは弱ったネコにいちばん効く。
 泊瀬谷は日に日に短くなる夜を惜しんでか、カップに口を付けて昔を忘れることにした。
 「泊瀬谷が何者であろうと、泊瀬谷とわたしがこうして一緒にお茶をしてるだけで儲けものじゃないか」
 三十路の理論は世を捨てているようで、そして優しすぎる。ポンと泊瀬谷の肩を軽く白先生が叩くと、白先生の白い毛が泊瀬谷の服にまとわり付く。
 
 夜も過ぎて。明け方になる頃、教室の者たちは学園のシャワー室で汗を流して帰途に着いた。白先生は「ウチより職場のほうが落ち着く」と
言い訳をしてそのまま保健室へ出向き、泊瀬谷はここから帰ることを名残惜しんでか、みんなが帰ってしまった頃に校門を潜ったのだった。
湯上りの体に受ける風が心地よい。花の香りがする。ネコのツメに残る学生時代の思い出を胸に、朝早くやって来るヒカルと帰り道の坂道で出くわしたのだった。
 学生時代の苦味を口に残しながら。
   #
 
218さよならの朝 ◆TC02kfS2Q2 :2011/05/12(木) 13:36:12.25 ID:Oaz8F0cr
 
 自転車にまたがるヒカルを目の前にして、泊瀬谷はその夜白先生に尋ねたことをヒカルにもらしたて後悔していた。。
 どうして、自分よりも年下の子に悩みなんか打ち明けてるんだ。先輩の白先生ならまだしも、自分の生徒じゃないか。
 もう、夏の風が吹き抜ける季節がやってくる。学校へ続く坂道、灰色の石畳、彩を捨てた桜の樹。季節が変わる。泊瀬谷も肌で感じる。
でも、記憶はけっして裏切らないし、悪意なく無邪気に泊瀬谷を苦しめる。甘い香りがヒカルに絡み付く。
 「そうだ!ヒカルくん。確か、前にさ。自転車の後ろに乗せてってくれたこと、覚えてるかな」
 「……」
 「先生が自転車の鍵なくしちゃって、帰り道のヒカルくんが……」
 「……」
 「この坂道を一緒に下ってさ……、忘れてるよね」
 自分勝手じゃないか。淡い思い出話をでっちあげたかのような、泊瀬谷のひとりよがり。何昔のことを引きずってんだ。
叱ってよ、どこかの誰か。泊瀬谷は焼けっぱちだ。そういうネコはたちが悪いけどヒカルはそれさえ気にしない。
だって、ヒカルはイヌだから。泊瀬谷は自分がネコであることが嫌になりそうになった。
 「覚えてます」
 泊瀬谷は耳を立てる。
 過去から苦しめられたり、救われたりといい加減にしろと、泊瀬谷は自分自身を恥ずかしく思った。
いやなことを思い出したくないから、一人っきりの夜が短くなればいいのに。だけど、誰かと一緒いるときは、
夜が長いほうがほっとするからそっちの方がいいのかなと、次の夜会を楽しみにしながら泊瀬谷はヒカルに朝のさよならを言うと
家路を急ぐ。歩いて下る坂道は、風が心地よい。

おしまい。


終盤に出たお話のこと。
ttp://www19.atwiki.jp/jujin/pages/101.html
以上ですー。
219創る名無しに見る名無し:2011/05/12(木) 16:57:14.57 ID:scSmDhq5
冒頭で朝チュンにびっくりwww

http://loda.jp/mitemite/?id=2068
挿絵描いてみました
220創る名無しに見る名無し:2011/05/12(木) 18:35:04.27 ID:Wkx9ATfc
空気感とか質感ぱねぇ!
話とあいまってすごくいい!
221創る名無しに見る名無し:2011/05/13(金) 00:38:20.44 ID:VDHDA1nW
>>219
すごく透明な色使いで素敵すぎる。
いいぞ!もっとやれ!!ババアに惚れるぜ!
222 ◆4c4pP9RpKE :2011/05/13(金) 23:24:20.80 ID:nmOZgjKv
>>210
>>211
>>220
>>221
レスありがとうございます!
絵の練習した甲斐がありました
223創る名無しに見る名無し:2011/05/13(金) 23:35:22.04 ID:vKsLctWk
>>218
これはびっくりしたw
白先生なんか達観しちゃってて寂しいな
224創る名無しに見る名無し:2011/05/14(土) 07:09:18.34 ID:avYVISYh
はせやんの前だからババアもおとなしいのかな。
225創る名無しに見る名無し:2011/05/15(日) 21:43:16.66 ID:kbfqL+RB
226創る名無しに見る名無し:2011/05/16(月) 09:53:07.07 ID:ZU5GJK3V
真っ先に目が行くover30の文字
227創る名無しに見る名無し:2011/05/16(月) 21:11:45.30 ID:sFgQ6w84
鼻血w
228創る名無しに見る名無し:2011/05/17(火) 01:15:32.65 ID:jookpEvq
バンド名は略してオバサンに違いない
229創る名無しに見る名無し:2011/05/18(水) 00:19:32.64 ID:59Yoaab3
ちょい質問いい?
爬虫類系(リザードマンとか)も獣人扱いになるのか?
230創る名無しに見る名無し:2011/05/18(水) 00:36:01.10 ID:qonsE6pX
手足のないヘビさんだっているよ。
231創る名無しに見る名無し:2011/05/18(水) 00:38:37.33 ID:59Yoaab3
お、素早い回答ありがとう。
今度投下させてもらいます。
…SSだけど。
232創る名無しに見る名無し:2011/05/18(水) 01:30:24.29 ID:VtN4kxxu
>>228
だれ
うま
233創る名無しに見る名無し:2011/05/21(土) 17:31:38.01 ID:CJbEQ4IK
234創る名無しに見る名無し:2011/05/21(土) 17:49:11.96 ID:O7qmEM2l
>>233
やたらかわいい。
235創る名無しに見る名無し:2011/05/21(土) 19:09:40.15 ID:vZ9XTGKQ
>>233
ババアかわいいよババア
236創る名無しに見る名無し:2011/05/21(土) 19:23:06.32 ID:hqBuqts2
ババア可愛いなぁ
237創る名無しに見る名無し:2011/05/22(日) 00:24:57.94 ID:w1uc5l4p
ババアブーム延長希望!
ttp://loda.jp/mitemite/?id=2117.jpg
238創る名無しに見る名無し:2011/05/23(月) 07:51:37.12 ID:KmsdY7WW
この三人はww 鉄板やで!
239創る名無しに見る名無し:2011/05/23(月) 20:10:59.66 ID:Q/ysTUum
うはwww
240創る名無しに見る名無し:2011/05/24(火) 02:37:14.65 ID:AW3nzC9o
このシリーズ、何気に楽しみだ。みんなかわいいよ。
241創る名無しに見る名無し:2011/05/24(火) 23:55:02.98 ID:3P4UOVmD
ババァが美し過ぎて生きるのがつら……くはないな。

むしろハッピーさ!
242創る名無しに見る名無し:2011/05/25(水) 18:27:02.41 ID:HDbVEpXu
>>233
人相悪いけど猫人ってのがなんとも萌える
こんな厳ついのに喉とか撫でたらゴロゴロ言っちゃうんだろうか?w
243わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/05/28(土) 00:56:05.98 ID:HzA1LSD5
小ネタ的な、ろりろり話。

葉狐(ようこ)たん
ttp://www19.atwiki.jp/jujin/pages/429.html
244牛乳会 ◆TC02kfS2Q2 :2011/05/28(土) 00:59:12.89 ID:HzA1LSD5
 「みんなで飲めば大丈夫だニャ」

 ミケ、クロ、そしてコレッタの仲良し三人組がそれぞれ牛乳瓶を持ってお昼休みの教室に固まっていた。きんきんに冷たくなった
牛乳瓶は冷や汗をかきながら、佳望学園・初等部のお子たちの手に収まる。じわじわと彼女らの浅い手の毛並みを濡らしてゆく。
 勝気なクロ、マイペースなミケ、そして不安げなコレッタ。彼女らが挑まんとする相手は『牛乳』。そう、白くて舌触りのまろやかな
地上に生きとし生ける者が口にする『しろいえきたい』。くんくんとにおいを気にするのは白い子ネコのコレッタだ。
 みんなで牛乳を飲もうね。彼女らが始めたのが『牛乳会』であった。会の始まりのきっかけはコレッタだった。
いくら瓶の口のにおいを気にしても仕方がないことは分かりきっているのに、コレッタはくんくんと鼻を鳴らす。それをバカにするのは
決まってクロだ。クロはコレッタに焼いてか、上履きの足でコレッタのすねを蹴る。『しろいえきたい』を零さぬように、しっかりと
牛乳瓶を握り締めるコレッタだが、どうしても牛乳を飲むことができない。

 「コレッタが『苦手な牛乳を飲みたいニャ』って言うから、『牛乳会』を作ったニャよ」
 「でも、でも……」
 「ほら、コレッタ。葉狐ちゃんも牛乳大好きだって言ってるにゃよ。ね、クロ」
 「そうだニャ。葉狐ちゃんみたいな『とらんじすたぐらまー』になりたいにゃね?」
245牛乳会 ◆TC02kfS2Q2 :2011/05/28(土) 01:01:29.83 ID:HzA1LSD5
 クラスメイトの子ギツネ、二葉葉狐(ふたばようこ)が窓際で彼女らを眺め、自慢の尻尾をいじりながらけらけらと笑っていた。
夏に入りかけた、皐月のおわり。クラスの子たちの制服はみな薄くなってきた。そのなか一際目立って、子供を感じさせない子がいた。
それが二葉葉狐だった。明るい髪を短くまとめ、たわわな尻尾を揺らす姿は大人顔負け。噂によると、小学生向けのファッション誌への
読者モデルへの推薦が密かにあったらしい。あくまで噂なのだが、それさえ真実として受け止められるスタイルは評価されるべきものだ。
 白いワイシャツに映える赤いリボン。胸元は女子の自慢なんやで、と葉狐はスカートの裾を握る。ちらりと見せる太ももがキツネ色。
日に日に濃くなる影が床に映る。まだまだ年端のいかない子供なのに、かどわかされても仕方がないとしか言いようがない色気。
彼女の明るい性格が周りに夏の花を咲かせる。葉狐が笑えば、つぼみやって咲かせてみせるや、と。
 「もう、夏なんやな。今年も水着でみんなの視線、集めたるねん」
 彼女独特の関西風味の訛りも、人をひきつける魅力の一つであった。
 
 「コレッタ!」
 「ニャ、ニャ!!」
 「いくニャ!せーのっ」
246牛乳会 ◆TC02kfS2Q2 :2011/05/28(土) 01:03:31.15 ID:HzA1LSD5
 純然たる『ろりっ娘』体型を気にしてか、牛乳会の趣旨をすっかり忘れてしまったコレッタ。気が付くと、ミケとクロは既に牛乳瓶を
口につけてごくちごくりとのどを鳴らしながら飲んでいた。たらりと白い筋が黒ネコのクロの口元を汚す。白と黒の不協和音。
牛乳瓶はガラスで出来ているので一気飲みには不都合だ。微妙に瓶の口を開けて空気を入れながら体の中に流し込む。体を揺さぶって
流れるように牛乳を飲み込むテクもある。それは、給食をバトルに変えてしまうお子さまな男子がやる手法だ。女子には女子の頂き方。
品よく、誰からも愛される頂き方をしなくてはならない。未来のれでぃーたちはタイヘンなんですニャ!とクロは語る。
しかし、淑女と呼ぶには何千メートルと遠すぎるクロは、ぎこちなく飲んでいるだけで絵になるのであった。
 コン!と机の音が響く。飲み干して空になった牛乳瓶の底が机にあたる音。はあ、とクロが吐く息は牛乳の香りがした。
無意識に口元をぬぐうクロの手は、少し牛乳くさい。牛乳会・リーダーということを差し引いても、残念なこと。いや……。
それがむしろ、よいではないか。という御仁もいらっしゃることだろう。誰とは言わないが。
 
 
 「にゃはははは!コレッタたら、お子さまだから牛乳飲めないんだニャ!」
 「の、飲めるニャよ!お子さまじゃないニャ!」
 本当か、コレッタ。お前の牛乳瓶は未だに満たされてるではないか。
 「じゃあ、わたしたちの前で飲んでみるニャよ」
 「うぐぅ……」
 クロに遅れて牛乳を飲み干したミケがぺろりと口元をなめる。クロよりかは上手に頂いたようだった。
コンという瓶の音がいくばくか控えめ。ごちそうさま、とお辞儀をする姿が大人に近づく。
247牛乳会 ◆TC02kfS2Q2 :2011/05/28(土) 01:05:43.48 ID:HzA1LSD5
 「美味しかったニャ!ね、コレッタ」
 「ぎゅ、牛乳なんか飲めなくても……せくしーになれるニャね!葉狐ちゃん……あれ」
 「コレッタ。葉狐ちゃんは呆れてどこかに行ったニャよ」
 目を潤ませながらコレッタは尻尾を揺らしていると、それを手に付いたにおいを気にしながらクロが笑う。
ミケが気をとられてクロの指先を甘噛みしようと首を伸ばすと、すかさずクロはミケをねこぱんちした。
机の上には空の瓶が二つと、牛乳が満たされた瓶が一つ。教室はのんびりとした昼休み。雲が日に日に厚くなる。
 
 その頃、コレッタは一人で保健室に走っていた。
 理由はない。とにかく、誰かにすがりたい。はっと思いついたのは保健室の白先生だ。同じネコ同士だから
自分のことを理解してくるかもと、勝手な解釈で動くからだを止めることが出来ず、ぱたぱたと廊下に足音を響かせる。
金色の長い髪がふわりと舞う。尻尾を立てて走る。廊下の隅っこを駆け抜ける。職員棟にたどり着き、保健室近くに来ると
足が止まった。にゅうっと尻尾がよれてゆく。聞き覚えのある声がするではないか。
 
 「あの声……ニャ」
 耳を立てる。上靴と靴下を脱いでそっと肉球を踏みしめて扉に近づく。音を立てないように。

 「もうすぐ、コレッタがやって来るさかい……白先生、お願いすんで」
 「二葉、分かった。とびっきり美味いカフェオレ作ってやるから安心しろ」
 「全くコレッタったらお子さまや!」
248牛乳会 ◆TC02kfS2Q2 :2011/05/28(土) 01:07:44.56 ID:HzA1LSD5
 あまーい、あまーいカフェオレなんかよりも、牛乳が飲めなかったことよりも葉狐がコレッタの行動を見透かしていることに
コレッタは目を丸くしていた。くやしいから保健室の扉に爪を立てようとしたけども、大人な『れでぃー』を目指すコレッタは
それを控えることにした。よく見ると、扉には思ったより多くの爪の跡が残っていた。誰もが通る道なのか。
 扉に耳を当てると葉狐の声が聞こえてきた。おしゃべりな葉狐はどこにいても目立つ子だ。

 「お願いやけど、コレッタにはあたいがここに来てたことを教えんといてくれへんやろか」
 「ほうほう」
 「コレッタは紛れもなく牛乳を飲んだんや、カフェオレでやけどな。でもそれを白先生が見た言うたらそれ証言になるし、
  あたいがノータッチ言うたら証拠も残らへんしな。空の牛乳瓶見せたらええやろ。頼むで、白先生。いや、白おねーさん」
 ぺろっと舌を出しながら、葉狐は自慢の胸を白先生の腕に当てていた。
 
 
 「全く二葉は。どこでそんな知恵付けたんだ」
 「そんな作戦、100年前から考えとったわ!」
 むしろ、嬉しそうな声色で白先生はコーヒーを沸かし、同時に保健室の冷蔵庫から取り出した新鮮な瓶詰め牛乳を鍋で温めていた。
IH調理器にかけられた鍋に牛乳がくるくると、その側ではサイフォンからはドリップされた褐色のコーヒーがこぽこぽと。
一滴、一滴しずくをたらす様子を葉狐は目で追っていた。大人びた視線ではなく、見るものすべてが新鮮な子供そのもの。
白先生「お前にブラックはまだ早いよ」と葉狐をからかうと、すかさず「ウチは宇治茶が好きなんや!」と返す。
その表情がなんだか嬉しかったのか、白先生はにまにまと笑っていた。それでも、ただでは起き上がらない葉狐。
249牛乳会 ◆TC02kfS2Q2 :2011/05/28(土) 01:09:46.14 ID:HzA1LSD5
 「でも、白先生もコレッタが来るからやる気出したんやろ?」
 「う、うるさいっ」
 「白先生、赤くなったで!ほな、あたいは教室に帰るさかい……」
 と、噂をすれば影。保健室の扉を開くと、金色の長い髪のネコと出会った。

 「葉狐ちゃんニャ」
 「ウ、ウチはな……ぽんぽんが痛くなっただけや!」
 その割には元気すぎるとコレッタが疑う隙を与えずに、ぺろっと舌を出した葉狐は保健室からたわわな尻尾を揺らしながら
駆け出していった。一方、裸足で立ちすくむコレッタに白先生は心ときめかせていた。サイフォンがのどを鳴らす音だけが響く。
白い制服、白い毛並み、高級なシルクのような金色の髪。白先生を惑わす一人の子ネコ。ささ、美味しいカフェオレがお待ちですぞ。
 「なんだか、いい香りがするニャ」
 「コレッタ、牛乳苦手だろ。カフェオレ作ってやるからな」

 『牛乳』の一言でコレッタの脳裏に牛乳会のことが甦る。
 「ぎゅ、牛乳なんて温めなくても飲めるニャ!」
 「うそつけ」
 「『うそつけ』って……。でも、どうしてそんなこと知ってるニャね?」
 南無三。
 白先生、葉狐の口調を思い出しながら、頬を赤くして。
250牛乳会 ◆TC02kfS2Q2 :2011/05/28(土) 01:11:47.51 ID:HzA1LSD5
 「100年前から知っとる……わ!」
 コレッタは目を白黒させながら、コーヒーの香りに包まれる。

 教室に戻った葉狐を待っていたのはクロとミケだった。
 二人の間では、すっかり牛乳会のことはお開きになっていた。ミケが持ってきた小学生向けのファッション誌を捲りながら
夏の洋服についてクロとお話している途中だった。このスニーカー、かわいいニャとか。お泊り会したいニャとか。
それよりも、二人が気になっていたのは葉狐の胸だった。実際、近くで見ると大きい。同じ小学生同士なのにと、収まりが付かずに
自分のものと比べてしまう悲しさ。それさえ手に入れれば、ファッション誌のようなコーディネートで友達から差をつけられるのに!
 「葉狐ちゃんニャ……」
 「牛乳会はどないしたん」
 「きょうはおしまいニャ」
 残念そうな素振りを見せながら葉狐はポンと手を打った。
 
 「そうなんや。あたいも牛乳会に入りたかったわ」
 「ニャ?」
 「あたいも牛乳、苦手なんや」と言いながら、ぺろっと舌を出した。


 おしまい。
251わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/05/28(土) 01:13:48.16 ID:HzA1LSD5
葉狐たんをもっと出してあげたい!
投下おしまい!
252創る名無しに見る名無し:2011/05/28(土) 02:13:21.98 ID:DhXQiMYD
ろりろりな話ににやにや
253創る名無しに見る名無し:2011/05/28(土) 02:23:39.83 ID:Wt1xlHnk
GJ乙!
初等部可愛すぎるwww
254創る名無しに見る名無し:2011/05/28(土) 08:22:57.34 ID:9RECbhBq
うわああんコレッタたあああん!キミはろり体型でいいんだよおお!!
葉狐たんなんていい娘
255創る名無しに見る名無し:2011/05/29(日) 08:10:51.85 ID:N1BSnz/A
葉狐&コレッタのコンビなんてきたらバbシロ先生鼻血で失血死してしまうやろー!
かわいすぎるうおー!
256創る名無しに見る名無し:2011/05/29(日) 22:31:05.60 ID:Fa/XwBLV
257創る名無しに見る名無し:2011/05/29(日) 23:49:52.11 ID:3JN60sSb
ヨーコたそかわゆす
258 忍法帖【Lv=1,xxxP】 :2011/05/30(月) 00:35:00.61 ID:sMPJv8Wy
ヨーコたん!俺や!結婚してくれや!
もっと、ヨーコたんが活躍しますように
259創る名無しに見る名無し:2011/05/30(月) 02:17:30.13 ID:I5eY9u2E
黒いつま先がセクシー!!
260創る名無しに見る名無し:2011/06/01(水) 09:53:23.07 ID:RbBqQG1c
逢魔ヶ刻動物園の大上かわいいよ大上w
261創る名無しに見る名無し:2011/06/01(水) 13:26:19.80 ID:xnmFW8H+
コレッタw
262 忍法帖【Lv=2,xxxP】 :2011/06/02(木) 19:18:11.89 ID:B6DnYSBw
すみませんが、このスレで校歌を作曲されていた方っていらっしゃいますか?
263創る名無しに見る名無し:2011/06/03(金) 11:29:16.69 ID:/ku45ZND
ばばあの流れで思い出したけど白衣着てる教員ってほとんど
三十路前後…… ん?誰かがドアをノックしt
264創る名無しに見る名無し:2011/06/03(金) 13:44:51.51 ID:KBPri+9U
だがそれがいい
265創る名無しに見る名無し:2011/06/03(金) 21:57:15.58 ID:i94ZjTgf
白衣の人達が学生の頃はポケベルとか使ってたんだろうなw
266創る名無しに見る名無し:2011/06/03(金) 22:21:11.13 ID:KBPri+9U
それだと四十オーバーにならないかw
267創る名無しに見る名無し:2011/06/03(金) 23:19:11.42 ID:/ku45ZND
ばば…紳士淑女も度胸試しのように家電を使い青春してたに違いねえ…
268創る名無しに見る名無し:2011/06/04(土) 01:22:19.42 ID:O/0g31b2
PHSを使いルーズソックスを履きこなすババア……なんか気持ち悪っ
269創る名無しに見る名無し:2011/06/04(土) 09:22:26.06 ID:TCEnMjFj
ちょうど俺らの先輩連中がそんな奴多かったなw
たしかに気持ち悪いwww今あんな美人系なのにwww
270創る名無しに見る名無し:2011/06/04(土) 11:05:44.37 ID:O/0g31b2
気持ち悪いが有り得そうではあるww
先生がたの過去編とか見てみたくなってきたw
271創る名無しに見る名無し:2011/06/04(土) 16:24:13.48 ID:TCEnMjFj
世代的に女子高生が一番うざい頃の後期って感じだよなw
272 忍法帖【Lv=2,xxxP】 :2011/06/04(土) 23:30:44.24 ID:eFH386fF
リオ「せんせいもルーズソックスとか履いていたんですか」
白「そ、そんなものは履かん!わたしは流行り物なぞ興味はない」
リオ「でも、プリクラとか撮ったこと、ありますよね」
白「うっ」
リオ「友達と一緒に放課後タイム。女子高生なら誰もが過ごすスリーダムなひと時!ですよね、元・女子高生」
白「あ、あるぞ!こんなわたしでも。当時の機械はあまり映りがよくなかったけどな」
リオ「へー。逆にそれがよかったですよね。でも最近のプリクラは性能がよくなってるから『お断りします』って感じですよねー」
白「因幡、このボトルの文字が読めるか」
リオ「えっと……『オキシ……ドール』。   きゃーーー」
273創る名無しに見る名無し:2011/06/04(土) 23:56:39.54 ID:TCEnMjFj
やめれwww
274創る名無しに見る名無し:2011/06/05(日) 04:53:36.89 ID:PzAK6kOr
ばばあがプリクラwww
275創る名無しに見る名無し:2011/06/05(日) 04:57:47.68 ID:BBN0T4pD
おいばかやめろ
276創る名無しに見る名無し:2011/06/05(日) 13:29:51.42 ID:4aHB7mAm
おまいらそろそ夜道に気をつk…
277創る名無しに見る名無し:2011/06/05(日) 18:33:21.24 ID:PzAK6kOr
シロ(そういえば生徒の忘れ物にルーズソックスがあったな)

ごそごそ

シロ(ほう、この歳で履くとコスプレにしかならないだろうと思ってたけど…なかなか可愛いではないか)

ガラッ

コレッタ「せんせぇー、お腹痛いにゃあ……ミルク飲み過ぎたにゃ」

シロ「こっこここ、こけっ、ここ、ここコレッ…!?」

コレッタ「にゃ?シロ先生、なんで椅子の上で三角座りして、にわとりさんの真似してるにゃ?」

シロ「いやっ、その、白衣で隠すにはこの態勢が良いっていうかなんていうかなんでもないっ」

コレッタ「にゃあ?なんだかせんせい変にゃ」

シロ「気にしないでよろしい!ラッパのマークがガラス戸の棚の上の段に入っているから飲みなさい」

コレッタ「わかったにゃ」

カチャ…ギュー、ピョンピョン

コレッタ「棚が高すぎて背伸びしても跳ねても届かないにゃ。シロせんせい、取ってほしいにゃ」

シロ「マジか……」

ガラッ

リオ「すいませーん、ラッパのマークありますか?モエのグラマラス願望が斜め上に作用して牛乳飲み過ぎちゃったみたいで」

モエ「うぐ、おっきい声で喋らないでリオ。貸された肩を通して振動がボディブローのように効く」

シロ「マジか、マジでか。なんでこのタイミングで繁盛しちゃうの。神は死んだ」

リオ(なんで椅子の上で三角座りしてシャフト角度で泣きっ面なんだろうこのばばあ)



ばばあの運命や如何に。
278創る名無しに見る名無し:2011/06/05(日) 18:44:57.47 ID:LSGE/YYZ
ババァかわいいなw
279創る名無しに見る名無し:2011/06/05(日) 20:46:26.54 ID:hdei9iNq
体育座りシャフト角www
280277続き:2011/06/06(月) 22:51:02.24 ID:Bg/7K0HO
ガラッ

保健委員「わぁお!患者さんがいっぱいっス!手当するっス処方するっス手術するっス!」

シロ「おおお!委員くん!助かった!コレッタとモエにラッパのマークを処方してくれ。コレッタは知ってるな、モエはウルフィーな娘だぞ」

委員「了解っス!ていうかシロ先生はなんでデスノートみたいなかっこしてるんスか?」

シロ「大人の事情だ」

委員「了解っス!コレッタちゃん、僕にまかせるっス!」

コレッタ「お願いするにゃ」

シュタッ

コレッタ「……何してるのかにゃ?」

委員「踏み台になってるっス!さぁ、僕を踏み付けて薬を取るっス!医療には自己犠牲の精神がイタタタタ!最後まで聞いてよぉ!」

コレッタ「ごめんにゃ、不安定だから爪立てちゃったにゃ」

委員「くっ、なんのこれしき……!患者さんの痛みを考えればなんてことないっ…ス!」

コレッタ「うー、届かないにゃ」

ピョン、ドス

委員「ぐえ」

ピョンピョン、ドスドス

委員「おごぉ、ひぎぃ」

コレッタ「ジャンプしても届かないにゃ」

委員「駄目っス…人の上でためらいなく跳ねちゃだめっス……もう降りてほしいっス……ぐは」

リオ(面白いから見てたけどそろそろ助けるか。ばばあ働けよ)

リオ「私が取ってあげるよ。モエも瀕死だしはやく薬飲ませたいからさ」

モエ「中は空っぽなのに腹痛のみ続いている地獄ェ……」

シロ「薬飲んだら出ていけよ!過敏性腹痛くらいで保健室の神聖なベッドは貸せないんだから!か弱き生徒の最後の頼処なんだから!」

リオ「ぼそっ(ばばあ働けよ)」

モエ「ぼそっ(ばばあ超KY)」

シロ(聞こえている……聞こえているよ糞餓鬼供。Oxydolぶっかけてぇ)

コレッタ「せんせぇ、またくるにゃあ」
リオ「お邪魔しました」
モエ「OPP有り得ない」
委員「また委員の時間にくるっス」
281277続き:2011/06/06(月) 22:53:05.17 ID:Bg/7K0HO
シロ「……乗り切ったか。あーあ、足しびれちゃったぁ。脚を伸ばせる幸せ(はぁと)」

シャッ

ザッキー「……あの……いつもみたくカーテン裏に隠れてて……出るタイミング、見失いまして……」

サン「ひひwwwふ…ぷは……wwwwwww」

シロ「……」

ザッキー「……か、可愛いですよルーソ、似合う似合う!ははっ」

サン「やめれwwwww追い打ちになってるよwwwwふはははへへへひひひひあははははwwww写メ撮って良い?www」

カシャ

シロ「か……帰れーーー!!!!死ねぇぇぇ!!!!!!」

次の日、シロのルーズソックス姿の写真が、ギャル時代の写真とともに校内新聞に載りましたとさ。
282創る名無しに見る名無し:2011/06/06(月) 23:52:42.68 ID:Sm7xfDo6
ババアのギャル時代とな!!
283創る名無しに見る名無し:2011/06/07(火) 00:32:04.52 ID:F+cjGlSM
レア度高いぞ!
確保っ!確保っ!!
284創る名無しに見る名無し:2011/06/07(火) 01:48:03.83 ID:iFvU/i1P
ば、ばばあはきっとハイソ派だ!紺のハイソだ!
285創る名無しに見る名無し:2011/06/07(火) 03:01:58.21 ID:R67osgH+
シロ先生の心に去来したBGMは、ドリフの「盆回り」だろうか時代的に
286創る名無しに見る名無し:2011/06/07(火) 04:43:22.75 ID:xNrJ0vOb
ギャルwww
287創る名無しに見る名無し:2011/06/07(火) 04:53:33.20 ID:CBfYkM2I
最近なんだか人が増えた気がする
いいことだ
288創る名無しに見る名無し:2011/06/07(火) 05:58:54.19 ID:xNrJ0vOb
ババァ効果かw
289創る名無しに見る名無し:2011/06/08(水) 10:00:24.78 ID:hZ3lwk3X
はづき「ソユーズ打ち上げられましたね」

パンダ「そうなんスか?」

はづき「今朝飛んでったんですよ。良いですよねー宇宙」

パンダ「はづき先生も宇宙飛行士とか憧れてたんスか?」

はづき「まさか。宇宙ロケットに興味があるんです。宇宙飛行士になったら何ヶ月も禁欲状態なんですよ?僕は耐えられないなー」

ぱんだ(遠回しにリア充を感じる…)
290創る名無しに見る名無し:2011/06/08(水) 11:40:48.60 ID:71nug4iE
おいパンダ言うなw
291創る名無しに見る名無し:2011/06/08(水) 16:15:43.78 ID:z75aJfIU
www
292創る名無しに見る名無し:2011/06/08(水) 22:59:27.15 ID:ZTPViJJk
百武そら「ソユーズ打ち上げられましたね」

はづき「え、ええ。百武せんせいも気になっていましたか」

百武そら「もちろん!夏の夜空に旅立つソユーズ♪清き天の川に洗われて、届け恋しきアルタイル♪」

はづき(相変わらず、星のことになると…)

そら「そうだ!今度、教師陣で『夏の大三角形』を見ようね会をしませんか?こと座 モ・エ!わし座に乗って世界一周!」

はづき「(三十路を超えると12時超えが辛いんだよな…)考えときます」

そら「おや、フクロウの佐藤せんせい。どうですか?『夏の大三角形』を見ようね会とか?」

さとう「いいですね。夜は素敵ですね。ぜひ、参加させて頂きます。はづき先生も…ご一緒に」

はづき(どうして…夜行性の人ばかりと…)
293創る名無しに見る名無し:2011/06/08(水) 23:13:44.31 ID:hZ3lwk3X
タヌキ、フクロウ、ウサギ……
ウサギはディナーですね?!
294創る名無しに見る名無し:2011/06/09(木) 11:04:58.12 ID:ksu2r9RV
食うなwww
295創る名無しに見る名無し:2011/06/09(木) 21:36:34.99 ID:wWk2YET5
水前寺清志郎が放課後、陸上部の練習で走るたびに女子から黄色い声援は日常茶飯事のもて野郎。一方、清志郎は星野りんごラブだが、りんごはファザコン…。
まで妄想した。
296創る名無しに見る名無し:2011/06/09(木) 21:46:39.76 ID:rjLJEnDg
ファザコンって描写あったっけ?
297創る名無しに見る名無し:2011/06/09(木) 21:56:53.78 ID:wWk2YET5
妄想なんです…。っぽい、という。
298創る名無しに見る名無し:2011/06/10(金) 00:33:33.63 ID:PX7WexuD
ザッキーはかあちゃん優しそうだから割とマザコンだったりしそう
299創る名無しに見る名無し:2011/06/10(金) 04:22:29.39 ID:xULrwCyo
りんごは兄弟がいないので叔父のフランス料理店で働いてるソムリエのにーちゃんにベタぼれという裏設定
300創る名無しに見る名無し:2011/06/10(金) 15:43:24.34 ID:PX7WexuD
脚の獣化具合とともに描かれてたギャルソン犬さん
あの人とは違うんだっけ?
301創る名無しに見る名無し:2011/06/10(金) 21:25:38.85 ID:0hOh1JL8
これは盛大な脱線の予感
302創る名無しに見る名無し:2011/06/10(金) 21:25:55.63 ID:0hOh1JL8
ごめん誤爆った
303創る名無しに見る名無し:2011/06/11(土) 00:16:21.64 ID:99T5lBVZ
夏のアマガミ同好会は大変そうだよな
汗ばみながらくんずほぐれつ互いの身体にやわやわと牙を這わせてハミハミ
みことおねぇたまはクロも噛んじゃったりするんだろうか
304Back to the sky 1/6:2011/06/13(月) 03:07:45.70 ID:8cZG8OQi
   美しい青空が広がる、まさに絶好の天気だった。風は緩やかな向かい風、
  遠くで木々の葉が揺れるのが鮮明に見える。誰かの合図で走り出し、空へ舞い上がった。
  みるみる小さくなる地上。風を受けて更に昇っていく。
  突然、右側から衝撃音。バランスを失い、落下していく。そして暗転。

   「うわぁっ!!」
  跳ね起きてみると、いつものベッドの上だった。窓の外で、街灯がぼんやりと光っているのが
  カーテン越しに見える。どうやら、まだ夜が明けるまで時間がありそうだった。
  右の翼が痺れている。事故の後遺症なのか、体の下になって血行が妨げられたせいなのかは分からなかった。
  心臓の鼓動は速く、喉が渇いていた。台所へ行って冷たい水を飲み、気分を落ち着かせた。

   ベッドの縁に腰掛け、大きなため息をひとつ。
  このまま眠るのは怖い。嫌な夢はもう見たくなかった。
  このまま起きているのも嫌だ。やる事がなければ、どうしてもあの事故の事を思い出してしまう。
  どちらも怖かったが、結局は眠気が勝って布団に戻った。


 ハヤブサ人の中島眞真(なかじま まさし)は事故に遭い、長期の入院とリハビリを経て学校生活に復帰した。
しかし、数年前には滑空垂直降下の中学生記録を打ち立てた彼が、もはや飛ぶことはできない。
事故は翼の腱を切断し、彼を空から絶対的に切り離してしまったのだ。

 彼に希望の光を見出させたのは、同級生の風間だった。
飛行機同好会という非公式のクラブ活動があるという事を知った中島は、その部室まで足を運んだ。

   そこを訪ねたのは何か目的があるからではなかった。
  理由の一つには、新聞部の烏丸に紹介されたから、というのもある。その勧めに従わないのも嫌だったから。
  でも、ひょっとしたら、少しでも空を飛ぶという行為の近くにいたかったのかもしれない。

  ―― そこには失ったものがあった。少なくともそれに近いものが。
  忘れるはずはない。風を切る感覚、急降下から引き起こして一気に減速するスリル、
  そして、飛ぶ者の全身を包み込む、ひとつとして同じものがない大空の色。

   圧倒的な感覚が押し寄せて、何も考えたくない。
  もう少し風間と話がしてみたかったが、その場から立ち去らずには居られなかった。
  もちろん、勝手に押しかけて勝手に帰ったことに引け目は感じていた。
  だが、それ以外にどうしようもなかったのだ。
305Back to the sky 2/6:2011/06/13(月) 03:08:57.26 ID:8cZG8OQi
 最初に飛行機同好会を訪れてから数日後、中島は風間に呼び出された。
放課後の中庭には人影がなく、校舎の向こうからは部活動の声が聞こえてくる。

  学校の中で、ここだけが切り離されたみたいだ。

松葉杖に体重を預けながら中島が考えていると、後ろから頭をかすめて、何か白いものが飛んできた。
 驚いたが、彼は慌てなかった。
瞬時の判断を冷静に行えなければ、空のスポーツでは生き残っていけないのだ。
幼い頃から培ってきた条件反射は、たとえ飛べなくなっても簡単に消えるものではない。

 飛んできたものは軽い音を立てて、植え込みの手前に滑り込んだ。
中島が植え込みに近寄り、中庭に松葉杖の冷たい音が響く。
飛んできたものを拾い上げてみると、それは変わった形をした飛行機の模型だった。
胴体の代わりなのか、下には鳥人の人形がぶら下がっている。
飛行機の部分は軽い素材を削りだしたようで、なかなか精巧に作られていた。
だが人形の形はともかく、描かれた顔はちょっと上手とはいえない。

 「もう少し驚くかと思ったんだけどな」

 飛行機の模型を見ていると突然、声をかけられた。
振り返ってみると、声の主は風間だった。風間は続けて言う。

 「2日ほど考えたんだが、基本配置はそんな感じで進めたい。何か意見があれば今のうちに頼む」

 風間が何を言っているのか、しばらく理解できなかった。ふと、手の中の飛行機を見つめた。
数秒の後、中島の心は揺れ動き始め、その声にも動揺が現れる。

 「部室にあった、あれに乗るんじゃ……」
 「ブルースカイは俺みたいに『空を飛べない』奴のための機体だ。お前にはお前に向いた機体を作るさ」
 「僕は、空を飛びたかっただけで……そんな、僕のための飛行機を作るなんて……」

 「中島?もう一度、『空を翔びたい』んだろう?俺みたいに『自分の飛行機を作る』んじゃなくて」


 風間のその一言で決心がついた。
止まっていた時計が動き出したような感覚。もう一度、風を切って空を駆ける事ができるかもしれない。
冷え切っていた心のエンジンに、新しい火が点ったような気がした。
―― 再び口を開いた彼の目には強い意志が宿り、その口ぶりも確信に満ちていた。

 「……頑丈な脚が欲しいな。少し荒い着地になるかもしれないから」
306Back to the sky 3/6:2011/06/13(月) 03:10:17.99 ID:8cZG8OQi


――※――――※――――※――――※――――※――


 それから2ヶ月と少し。中島の姿が河川敷にあった。その背中には、大きな機械の翼が背負われている。
これから中島専用機、「疾風(はやて)」の初飛行を行うのだ。
それはダクテッドファン2基を持つ、総重量210kgの全翼機。風間が寝食を忘れて設計と製作に没頭した結果、
「疾風」の機体は夏休み期間中に完成したのだった。そしてバッテリーやモーターといった動力部品が
組み付けられた今、「疾風」は数度の地上テストを経て初飛行の日を迎えたのだった。

 風間が飛行前の機体チェックを終え、中島に話しかける。

 「いよいよだな。何度も言うが、生身の時よりも翼面積が大きいんだ。縦の安定に気をつけろよ」
 「ああ、分かってるよ。慎重に飛ぶさ」
 「間に合わせのモーターだから効率が悪いのを忘れるなよ」
 「15分以内に戻れば安全、だったね」
 「もう半年以上も飛んでないんだからな。過信は禁物だぞ」
 「ああ。何かあったらすぐに戻るよ」

 離陸滑走用の台車に乗り込む。
離陸姿勢をとると、台車から生えている支柱が着陸脚の根元部分にフィットした。
台車の前にはゴム索が伸びている。集められた運動部員たちが、風間の指示でゴム索を引き始めた。
後ろはケーブルで固定されていて、そのロックを外せばカタパルトのように急加速できる。
大出力モーターが間に合わず、滑走距離を河川敷の直線部分に収めるための手段だ。

 ゴム索を持った運動部員たちが座り込み、風間が発進地点に戻ってきた。
かくして飛び立つ仕掛けは整った。

   深呼吸。
  フラップを下げ、着陸脚の横木を掴んだ。
  モーター始動。
  次第に甲高い音が大きくなっていく。
  後ろを振り返ってみると、風間がこちらに視線を送っている。
  それに応えて、小さく頷いた。そしてまっすぐ前を向いた。

 「発進!」
風間がプロペラ音に負けないように叫び、合図の腕を振り下ろす。
そして飛行機同好会の虎宮山が、機体を押さえていたケーブルのロックを解除した。
307Back to the sky 4/6:2011/06/13(月) 03:11:28.76 ID:8cZG8OQi
   軽い衝撃の直後、急加速。出力全開。
  顔に風が当たる。久しぶりの感覚だ。
  充分に速度が出たところで、尾羽を少し動かしてやる。
  浮いた。
  勢い良く昇っていく。

   ゴム索による加速のおかげで、一気に高度を取ることができた。
  もう同じ高さには何もない。川沿いの道が、街並みが、自分の下を流れていく。
  再び、空に帰ってきたのだ。
  嬉しかった。全身が高揚感に満たされ、精神が研ぎ澄まされたような感覚に包まれる。

   モーターの出力が足りないせいだろう、フラップを下げていてもなかなか上昇しない。
  出力全開で、ゆっくりと高度を上げていく。このままでは空気抵抗が大きいから、速度も遅い。

   それでも高度は500mくらいまで取ることができた。
  速度が欲しい。ここまで昇れば急降下しても大丈夫だろう。思い切ってフラップを上げた。

   次の瞬間、世界が回った。
  一瞬、何が起こったか理解できなかった。そして、前転した事に気がついた。

   どうやらフラップを上げたことでバランスが崩れたらしい。尾羽でバランスを取ったはずだが、
  尾羽の動かし方が遅かったのか不十分だったのか……
  とにかく回転を抑える。尾羽とフラップ、左右のモーターも総動員して体勢を立て直した。
  引き起こしすぎて上を向き、そこからどうにか前に向き直って、ようやく姿勢が安定した。

   だが気付いた。前進速度が遅すぎる。さっきの引き起こしで失速したのだ!
  あるいは生身の時の癖が出て、ホバリングしようと迎え角を大きくしすぎたのかもしれない。
  モーターからは嫌な音が聞こえてくる。プロペラが過回転してモーターに大きな負荷が掛かったのだろうか。
  このままでは河川敷に戻る前に不時着だ。無理に進入すれば立ち木や建物に引っかかる。

   急いで周りを探す。開けた場所は……あった!公園だ。ほとんど目の前だ。高度はどんどん下がっていく。
  迷っている暇はなかった。思い切り、緊急用の紐を引っ張る。

  翼中央のパネルが開き、機体が震える。そして勢いよくパラシュートが飛び出す音。

   強く体を上に引っ張られ、落下が止まった。
  地面からの高度は30mくらいだろうか……危なかった。着陸脚を伸ばし、着地の衝撃に備える。
  思ったより大きな音はしなかった。金属音に続いて、役目を終えたパラシュートが地面に身を横たえる音。
  ……運が良かった。心の底から、そう思った。

   地上に降りると、ほっとした。何も考えないで済む安心感。と同時にどこか悔しい気分でもある。
  空から、誰かが降りてきた。ぼんやりと、それを見つめていた……
308Back to the sky 5/6:2011/06/13(月) 03:12:38.29 ID:8cZG8OQi
 鳶人の警官が飛んできて、機体の横に降り立った。警官は警察手帳を見せ、口を開く。
確かに、これは事故だった。中島は最悪の事態も覚悟した。

 「ちょっと危なかったな、怪我はないだろうね?」
 「ええ、大丈夫です」

その警官は制服のポケットから手帳を取り出し、何かを調べていた。

 「ええと、届出のあった『佳望学園飛行機同好会』の機体というのは、君の背中にある奴かな?」
 「はい、そうです」
 「……なるほど、ずいぶん野心的な機体のようだ。ところで、君は鳥人だが……」

中島は事情を説明した。

 「そうか……いや、すまない。つまらない事を尋ねてしまったな」
 「という訳で、この事故は僕の操縦ミスで起こったものなんです。なので設計がどうのこうのという訳では……」
 「ん?誰が事故だなんて言ったかな?子供が自転車で転んだくらいじゃ事故のうちには入らないよ」

中島は意表を突かれた。そして驚いた顔で、相手の顔を見上げた。警官は悪戯っぽい笑みを浮かべている。
その表情には子を見守る親のような、ある種の優しさと頼もしさが感じられた。そして警官は真顔に戻り、

 「まあ、今後は充分に気をつけて飛ばすように。君一人の体じゃないんだからね」
 「はい、すいませんでした」
 「謝らなくてもいいよ。もう一度、いや、前よりも自由に飛べる日が来るさ。頑張れよ!」

 そう言い残して警官は飛び去っていった。
その直後、息を切らせた風間が自転車で駆けつける。

 「中島、大丈夫か?!」
 「ごめん、少し調子に乗りすぎたみたいだね。とりあえず怪我はしていないよ」
 「今飛んでいった警察は、大丈夫だったのか?」
 「ああ。少し話を聞かれて、今後は注意するように、ってさ」
 「それなら良かったけど……それにしてもパラシュート付けておいて正解だったな」
 「操縦に慣れるまでは必須だろうね。で、機体はどうやって運ぼうか」
 「ああ、それならもうすぐ鈴鹿さんが来るから……」

 その後、部員全員で機体を分解し、リヤカーに載せて部室小屋まで運んだ。
機体を風間が調べた結果、モーターが過熱して故障していた事が判明する。
出力不足のモーターに無理をさせたのが原因のひとつだった。
309Back to the sky 6/6:2011/06/13(月) 03:13:50.69 ID:8cZG8OQi


――※――――※――――※――――※――――※――


 秋も深まり、生徒たちが集まるグラウンド。
佳望学園祭の開幕を告げるアナウンス。生徒たちの歓声が上がる中、放送は切られなかった。
ごそごそ、ぼすん。と、マイクを交代する音に続いて、澄んだ声が響く。
その声に従って上空を見上げる生徒たち。すると上空に、ふたつの矢印のような影が現れた。

 白頭と「疾風II」による空中演舞の幕開けである。
煙花火を使って航跡を描き出すという演出は、中島のアイデアだった。
虎宮山のアナウンスに乗って、ふたつの白い線が、秋晴れの青い空にくっきりと浮かび上がる。

 中島の操る「疾風II」の飛行には、かつての頼りなさを感じさせない安定感があった。
「疾風II」の描き出す力強い航跡と、白頭の描く軽やかな曲線。
その絡み合いはまるで、青空をキャンバスに大きく描かれたスケッチ。演技時間はおよそ20分。
その時間が終わると魔法が解けたように、グラウンドにざわめきが戻ってきたのだった。


 飛行機同好会によるデモ飛行は、2部構成だ。
学園祭の開幕と常時に、白頭と「疾風II」の空中演舞。
続いてブルースカイシリーズ最新型による体験搭乗ができる限り行われる。

 体験搭乗の主役はもちろん、パワーアップにより搭載量を大幅に増した「ブルースカイXI」だ。
体験開始前のデモンストレーションでは、虎宮山を乗せても安定して飛行可能という、
ある意味破格の搭載能力を見せ付けた。
また、白頭と中島の鳥人ふたりが体験搭乗の宣伝を行うという視覚効果の高さもあってか、
体験飛行の予約はあっという間に埋まり、操縦者の風間を喜ばせつつも疲れさせたのだった。


 夢のような時間は、あっという間に流れ去る。
模擬店の食べ物の匂い、いつもにも増して楽しげな生徒たちの声。そういったものを吸い込んで、
いつしか空は赤く色づき始めていた。

 夕刻迫る空をバックに、大きさの異なる3つの影が現れた。
幾人かの生徒はそれに気が付き、グラウンドから、教室の窓から、学校前の坂道から、再び空を見上げた。
横一列に並んでいる、白頭の小さな影、「ブルースカイXI」の大きな影、「疾風II」の少し大きい影。
一番小さい影を内側に、ゆっくりと旋回する。一回、二回、三回……

 そして彼らは大きく翼を振り、もと来た空へ向かって遠ざかっていった。
まるで空を飛ぶ喜びを噛み締めるように、飛ぶ者のすべてを包み込む、無限の色を持つ大空に向かって。
310創る名無しに見る名無し:2011/06/13(月) 03:16:58.56 ID:8cZG8OQi
投下終了です。
はやぶさ帰還一周年ということで、飛行機同好会の皆さんをお借りしました。
以上、お目汚しさまでした。
311創る名無しに見る名無し:2011/06/14(火) 00:06:51.96 ID:t6YijYLk
おお!中島くんだ。気持ちいいお話だ。
312創る名無しに見る名無し:2011/06/14(火) 00:29:51.95 ID:RICVOaE2
飛行中の飛んでる感が好きだ
313創る名無しに見る名無し:2011/06/17(金) 17:02:37.02 ID:YvS7vuhZ
ぬこぽ
314創る名無しに見る名無し:2011/06/17(金) 21:15:34.96 ID:Lirc3rrt
わん!
315創る名無しに見る名無し:2011/06/17(金) 23:33:10.85 ID:YvS7vuhZ
コレッタとクロが遊んでいたところに犬太が乱入した気がする
316創る名無しに見る名無し:2011/06/18(土) 04:00:03.72 ID:kMfJvCyj
【絵巻】鳥獣戯画。幻の第5巻"猫の巻"が見つかる(画像有)★3
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1306046832/
317創る名無しに見る名無し:2011/06/18(土) 14:25:45.59 ID:gUPeYk0r
318創る名無しに見る名無し:2011/06/18(土) 21:46:10.02 ID:F+rGgWB1
みな暑さで脳みそ蕩けたw
上半身裸で直にネクタイ締めて「スーパークールビズだぁぁぁっ!!」とか
やりだす木島さんが見たいw
319創る名無しに見る名無し:2011/06/18(土) 21:47:01.76 ID:idXYFtC7
ザッキー!正直すぎや!
320創る名無しに見る名無し:2011/06/19(日) 00:18:15.75 ID:ja8rueCd
ドSなルル女嬢は焦らしに焦らして結局お預けを食らわすに違いない
321創る名無しに見る名無し:2011/06/22(水) 16:55:12.51 ID:8DZQHBjQ
いのりんは父の日になんかしてもらったかな?
322創る名無しに見る名無し:2011/06/23(木) 06:08:23.70 ID:hyJ/bu5+
娘と息子から父の日のプレゼントもらって
顔をくしゃくしゃにして喜ぶいのりんが見えた
んで、お返しに家族みんなで焼肉を食べに行くとw
いのりんはそういうのがよく似合う
323創る名無しに見る名無し:2011/06/23(木) 08:44:28.81 ID:ToeGEi3j
太っても仕方ないなw
324創る名無しに見る名無し:2011/06/23(木) 22:03:40.95 ID:MysEtN2f
コレッタ「お父さんにとびっきりの『ねこまんま』ごちそうしたいニャ!」
コレッタお母さん「そうね。えっと…。どうやって作ればいいかなあ。ね?コレッタちゃん」
コレッタ「え?えっと…。おばさ…いや!シロせんせいに聞くニャ!」
325創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 17:54:32.86 ID:sJUW5yJu
今更だけどコレッタって名前からしてハーフなのか?
326創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 20:27:55.16 ID:2gSAEUYq
ハーフどころか完全に外人かもしれない
少なくともお母さんは金髪だったような
327創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 21:24:45.39 ID:SuXI78xQ
髪の色までは気にしたことないなー。色んなケモノの種類いるし。
328創る名無しに見る名無し:2011/06/24(金) 22:13:52.33 ID:2gSAEUYq
それもそうか
種族超えて集まってんだから毛色や国籍くらい瑣事だなw
329創る名無しに見る名無し:2011/06/25(土) 07:54:05.27 ID:aawLnHzj
最近流行りのバファローベルたんは小学生らしいな。でもって牛と鹿のハーフとか。
ロリかわいくて良い。実に良い。

ロボ?なにそれおいしいの?
330創る名無しに見る名無し:2011/06/25(土) 11:07:56.81 ID:TV2xBmWs
来栖と花子先生の娘ですね
331創る名無しに見る名無し:2011/06/27(月) 01:22:52.35 ID:AdbMp72c
ハルヒの既刊読み返してて思ったんだがケモ学の校門前には坂があるんだよな
チャリ通のヒカルは夏とか辛そうだ
332創る名無しに見る名無し:2011/06/27(月) 07:57:01.27 ID:zBXhYfdO
モエ「わたしもチャリ通にしようかな」
タスク「ただでさえ大根なのにこれ以上太くしてどうすんの」
モエ「さあ、電気按摩が待ってるからこっちに来なさい」
333創る名無しに見る名無し:2011/06/27(月) 14:27:12.44 ID:AdbMp72c
でもケモ人でたくましい脚ってカッチョ良いかもw
334創る名無しに見る名無し:2011/06/27(月) 15:42:55.73 ID:LFoaGN/v
モエ「今はスタイリッシュでスポーティーでカッコいい体が
モテモテだし!」
そして運動を三日坊主でやめる姿が……!
335創る名無しに見る名無し:2011/06/27(月) 18:32:10.38 ID:De3SzoLh
馬の後ろ足(トモ)みたいな筋肉美してたら惚れる
336創る名無しに見る名無し:2011/06/27(月) 19:35:21.86 ID:n0k25Pfv
ケモ逞しい女子は番場ミサコたんだ!
337創る名無しに見る名無し:2011/06/28(火) 12:52:04.48 ID:CrtqPiBi
「ば番場ばんばんばん♪」
(サ・ラブ・レッド♪)

「駄馬んばばんばんばん♪」
(バーカ・ツカモト♪)

「良い子だな♪」
(ミ・サ・コ♪)

「鹿馬螂だな♪」
(駄・馬・は♪)
338創る名無しに見る名無し:2011/06/28(火) 19:40:04.05 ID:fhncLPwX
>>337
【審議中】
      _,,..,,,,_   _,,..,,,,_
   _,,..,,,_/ ・ω・ヽ/・ω・ ヽ,..,,,,_
  ./ ・ω_,,..,,,,_  l _,,..,,,,_/ω・ ヽ
 |   /   ・ヽ /・   ヽ    l
  `'ー--l      ll      l---‐´
     `'ー---‐´`'ー---‐´
339創る名無しに見る名無し:2011/06/30(木) 06:00:24.74 ID:8fnxBoWw
なにこのかわいい毛玉w
340創る名無しに見る名無し:2011/07/01(金) 01:06:34.86 ID:1uoFnM8P
コレッタ・ミケ・クロ・葉狐・犬太・梢の6人
341創る名無しに見る名無し:2011/07/01(金) 09:54:09.83 ID:cuuB2rUj
もうすぐ七夕がくる!
342創る名無しに見る名無し:2011/07/01(金) 16:49:43.62 ID:FLr0UZJM
だなー
343創る名無しに見る名無し:2011/07/03(日) 05:28:59.28 ID:mjGRi5Jf
シロ「はせや先生は、もののけ姫を見たかい」

はせや「この前のテレビですか?見たことあるのでテレビ放送は見ませんでした。というか、シロ先生がジブリ作品なんて見るんですか?なんだか意外です」

シロ「いや、普段はあんまり見ないんだけど、ふと目に止まってね……あの映画は残酷だよ。私は戦慄した」

はせや「そうですねぇ。御しきれない自然の脅威とか、増長する文明の愚かさとか、胸が痛くなるほど描いてますよね」

シロ「ほう、そんなストーリーなのか」

はせや「え?見たんじゃないんですか?」

シロ「見たのは少しだけだよ。ふと目にとまっただけ」

はせや「はぁ。えっと、じゃあどのシーンに戦慄したんですか?」

シロ「でっかい白犬が二、三匹いるシーンなんだけど」

はせや「モロと家族ですね。私、白犬って好きだな……うふふ」

シロ「ん?何ニヤニヤしてるんだ?」

はせや「い、いえ、なんでもありません」

シロ「?ま、いいか。で、犬は白いんだが、毛色にやけに手が込んでたんだよ」

はせや「毛色ですか?みんな白だったような」

シロ「違う。でかい犬の毛並みがさ、黄ばんでたんだよ」

はせや「はぁ」

シロ「白い毛並みは老いると黄ばむ。それをあんなにもはっきり映像にするなんてっ!私は戦慄した!御しきれない加齢への恐怖が駆け巡った!」

はせや「ま、まぁアニメですから誇張してるだけですよ」

シロ「私はどうしたらいいんだ。黄ばんじゃったらどうしよう。おばさんだと紫に染めたりするけど、紫なんて嫌だ」

はせや「あの、シロ先生、落ち着いてください」

サン「わぁ、紫の猫ってなんか怖ーい。二十歳まで覚えてたら死にそう。シロ先生、紫に染めたら保健医やめてくださいね。学校の七不思議になっちゃうもの。ははっ」

シロ「サン、この瓶の文字が読めるか」

サン「オキシ(ryぎゃー」

この後、英先生によってシロ先生とサン先生、正座の刑。
344創る名無しに見る名無し:2011/07/04(月) 20:01:17.76 ID:hzyYjwTL
マッドw
345創る名無しに見る名無し:2011/07/04(月) 21:57:04.11 ID:RU8B4kNr
正座ですんでよかった。
346創る名無しに見る名無し:2011/07/05(火) 02:31:01.30 ID:Ef1A56mU
ただし日なたのアスファルトの上
347創る名無しに見る名無し:2011/07/05(火) 07:15:20.99 ID:yhBQ5FcE
つーかサン先生のケモ脚で正座は普通にきっつい気がするぞ
348創る名無しに見る名無し:2011/07/05(火) 18:54:23.61 ID:XtlP2I08
今さら細けぇこたぁいいんだよ!
349創る名無しに見る名無し:2011/07/06(水) 02:11:05.87 ID:UjRV208/
この味が
いいねと君が
言ったから
7月6日は
ケモノ記念日
350創る名無しに見る名無し:2011/07/06(水) 09:10:20.41 ID:VncxnzMr
ポン・デ・獅子宮せんせい
351創る名無しに見る名無し:2011/07/06(水) 12:23:15.31 ID:+3WjN/uS
さよなライオネル獅子宮先生
352創る名無しに見る名無し:2011/07/06(水) 12:47:35.11 ID:prmttcTh
地味過ぎな校長先生も思い出してあげて
353創る名無しに見る名無し:2011/07/06(水) 17:44:48.85 ID:+3WjN/uS
校長……?
山羊の人だっけ
354創る名無しに見る名無し:2011/07/06(水) 19:12:58.43 ID:prmttcTh
そっちは教頭じゃい!メェー!
355創る名無しに見る名無し:2011/07/07(木) 02:34:18.34 ID:wfOxVVh3
校長は本当に影薄いよね。
いや、俺も教頭先生の方しか思い浮かばなかったけどw
BMWに乗って来た絵がインパクトあったわ。
356創る名無しに見る名無し:2011/07/07(木) 04:22:21.38 ID:/zEYw/jY
校長「よーしワシ暇だから七夕の笹飾りしちゃうぞー!校門前にドーンと建てちゃうぞ!」

数時間後

校長「疲れた……なんで一人でやったんだろう、生徒にやらせればよかった。とにかくこれで後は短冊吊すだけじゃ、七夕が楽しみじゃ。
あー腰痛い、首痛い。保健室で湿布もらってこよ」

5分後

白倉「やや、こんなところに新鮮な笹が」

ブチ、むしゃむしゃ

ブチブチむしゃむしゃむしゃ

むしゃむしゃむしゃむしゃ……

白倉「むしゃむしゃ……よく考えたらむしゃむしゃ……明日七夕じゃんむしゃむしゃ……やべぇ!ほとんど食っちゃった!」

教頭「おや白倉先生、どうしましたか真っ青な顔して竹の棒持って」

白倉「きょ、教頭…!いやいや、な、なんでもないんスよ?はははは、僕仕事ありますんで行きます」

教頭「……行ってしまった。白倉先生は少し変わった人だなぁ」

教頭「ん?なんで裸の竹に色紙で飾りがしてあるんだろう。始末しておくか」

ビリ、むしゃむしゃ

ビリビリ、むしゃむしゃむしゃ

むしゃむしゃむしゃむしゃ

教頭「ごちそうさま。やはり紙のゴミは食べるに限るな、リサイクルリサイクル」

5分後

校長「……なんで笹、ただの棒になってしまうん……?」
357創る名無しに見る名無し:2011/07/07(木) 07:03:39.39 ID:2PKC8MFe
おいそこのパンダwあと山羊何やってんだw
358わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/07/07(木) 18:03:20.23 ID:Ixbr1zcs
>>356
ひどいwwwwww

七夕ネタで。
359願い。 ◆TC02kfS2Q2 :2011/07/07(木) 18:05:13.66 ID:Ixbr1zcs
 気が付くと窓から地球がぼくを覗いていた。それにしても体が軽い。少しでも体を動かすとあらぬ方向へと進んでゆく。

 「旅のお供になって頂いて、わたし嬉しいわ」
 初めて聞く声、初めて見る顔。異国の血筋を漂わせるイヌの少女がぼくといっしょに体を浮かせていた。
慣れたような動きでぼくのほうへと一歩足を差し出して、両手でバランスを取っている。上手い。
 無機質な室内は言うならば、快適さを取り払ったジェット機の機内のようだ。座るための椅子も、見栄を張るためのテレビもない。
外からぼくらを守るためだけに存在する丸い空間だった。彼女は自慢するように宙返りをぼくに見せると、幼いスカートが翻る。
 
 「亜細亜州日本国・認識番号19465-0567。犬上ヒカルくんだよね」
 「……そうだけど」
 「ようこそ。もうすぐ月の側を通過するよ。窓辺に行こっ」
 ぼくと彼女がまるでめぐり合わせることを知っていたかのような口調。自慢の巻き毛を指でつまんでいる姿は
どこから見ても、ぼくらよりか世界をまだ知らない少女にしか見えないのに、彼女は見た印象よりも聡明にぼくの目に映っていた。
 静けさで耳が痛い。

 「そういえば、きょうってヒカルくんの国々では」
 「え?」
 「ヒカルくんたちの住んでいる国の地域のこと」
 星屑が宇宙船の窓を飛ぶ。音もなく飛び去っては、また飛び去ることを繰り返す。
 真っ白な船内を賑わせているのは、夜空に浮かぶ星座たちだけ。大きな白い鳥が川の水面で翼をかする。

 名前の知らない女の子は丸い窓にくっついて、はるか遠くに輝く星と星を指でつないでぼくに見せた。
 「こと座アルファ星、わし座アルファ星。知ってるよね」
 「……」
 「太陽暦7月7日、二つの星が再会する誓い。恥じらいながらも河原を挟んで向かい合い、たった一日そのときを待つ姿。
  たとえ二人が星になろうともわたしたちが愛する地上に住む人々は、けっしてその日や二人のことを忘れないんだよね」
 水と大気に包まれた青い星が気がつくと遥か遠くに小さく見えている。その手前にゆっくりと割り込んできたのは月。
毎晩のように見慣れた月がこんなに冷たく乾いて見えたのは初めてであった。窓から飛び出せば、着地できそうなぐらいの距離を掠める。

 「彼方なる空に於いて永遠の命を与えられたとき、地上に住むものにとっては忘れることの出来ない存在になる」
 「永遠の命」
 「現世の命と引き換えに永遠の命。その証として天に一つの星を刻む」
 「星……」
 「わたしは遥か前にそれを授かったのね。わたしたちの星に二度と戻ることが出来なかくなったのは正直寂しかったけれど、
  こうしてわたしのことを忘れずにいてくれる人たちがいるんだから、それはそれで感謝しなきゃね」
360願い。 ◆TC02kfS2Q2 :2011/07/07(木) 18:06:27.08 ID:Ixbr1zcs
 大人のような冷静さのまま、無邪気な子供のようなことを言い出す彼女には、何もかもを知った言葉は正直似合わない。
それでも不思議と素直に彼女の気持ちを受け入れられたのは「ヒカルくんは好きな子とか居るの」という、乙女な問いかけをされたから。
 すっと言葉が出てこないことに、ぼく自身が悔しい。地上を覆う夏の雲にそれは似ている。
 「ネコの……人なんだ」
 「そうなんだ。ネコね」
 星に戻ってその人と再び教室で目を合わせ、短い学校での日々を過ごすことが出来るかどうかだけが不安だった。
 
 「ほら、見て。ヒカルくんの国が見えたっ」
 「え?」「二人とも『お星さま』になって授けられた永久のとき。二人ともずっと。たとえ地球が消える日が来ても」
 「……」
 「以上、任務完了!って、ずいぶん昔に終わってたんだけどね。これから『オリヒメ』と『ヒコボシ』を冷やかしに行って参ります!」
 もしかして、ぼくらが乗る宇宙船は帰り道を知らないのかもしれない。怖いものを知らず、誰かの願いためにただひたすら。
窓にしがみつく彼女の横顔は、重い鋼の首輪から開放されたかのような自由に満ちた顔だった。ただ、自由を彼女が本当に求めていたのか
どうかはぼくには分からない。彼女のことをもしかして知っているかもしれないという僅かな自信がぼくを迷わせた。 

 「ひとつ聞いてもいい?」
 「ええ」
 ビー玉のように光り、地球のように丸い彼女の瞳に吸い込まれていく。
 宇宙に飛び立った地球のイヌのお話。ぼくらが生まれるずっと前のお話。一人のイヌが空から故郷を見ながら、
小さな星へとなったという。彼女にその話をすることはもしかして彼女を悲しませるかもしれない。
 
 「きみの名前……『クドリャフカ』?」
 いや、彼女が宇宙に旅立ったのは風が冷たくなり始め、紅葉が彩る季節だ。季節が違いすぎる。
 「わたしは、ずっとずっと地球の周りを回り続ける。だって、もう、一度この世から居なくなってるんだもんね」
 「つまり?」
 「わたしは『オリヒメ』と『ヒコボシ』と同じよ」
 月がいつのまにかに遠ざかり、再び青い星だけが目に入る。大きな大陸を見つめながらイヌの少女は呟いた。
 「クドリャフカは家に帰りません」

    #

 霞んだ視界に入ってきたのは、七夕飾りのシルエットと白く浮かぶ天の川だった。
 見慣れた街の景色が夜のカーテンに隠されて、天を仰げば星屑の暗幕。天然もののプラネタリウムに溶け込んでいると、
自分はネコのくせにとろとろっとまどろみにかどわかされてしまった。学校の屋上は夏だというのにすこし冷たいが背中は温かい。
ほうき星のような白い尻尾がわたしの太ももとに付くか離れるかの位置で垂れているのが見えた。襟首に若いイヌの毛並みが触れる。
 「先生、見えた見えた」と、遠くからは生徒たちの声。タヌキの天文部の顧問が元気よく生徒以上にはしゃいでいた。
 今夜は七夕。生徒たちに誘われて、わたしはヒカルたちといっしょに二つの星を眺めていた。わたしはみんなからちょっと離れて
屋上よりもひとつ高いコンクリの屋根で座っていたのに、ヒカルはわたしに付いて来た。「ここが落ち着くから」と、背中を合わせて
夏の思い出を紡ぐことにしたのだった。誰にも見つからない、学校でいちばん空に近い場所だった。そのうち……。
 
 教え子から借りた本を抱えていたら、夢うつつに本の書かれたイヌの娘が出てきた。
 昼間の仕事に疲れてうとうととしていたら、夢うつつに教え子になりきっていた。
 「泊瀬谷先生」と、後ろからヒカルが声をかけられて我に返る。地に足が着く。

 「願い事とかしましたか」
 「ううん。もう、願い事は叶ったからいいや」と、答えたことにちょっと恥ずかしくなった。


  おしまい。
 
361わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/07/07(木) 18:08:24.13 ID:Ixbr1zcs
みんなの願いが叶いますように。

投下おしまい。
362創る名無しに見る名無し:2011/07/07(木) 23:07:48.84 ID:86ieJHUh
「クドリャフカは家に帰りません」で切なくなった。ぬおお…

ttp://loda.jp/mitemite/?id=2261.jpg
ピニュで「B(組)'s」という三人ばらばらなコンビがあったなー
というのを思い出し。
363創る名無しに見る名無し:2011/07/07(木) 23:50:02.91 ID:/zEYw/jY
はせやんはヒカルと婚姻すべき
>>362
リオかわゆい
364創る名無しに見る名無し:2011/07/08(金) 12:22:49.37 ID:OuNuvgqq
>>281の写メが活用されたようです
http://loda.jp/mitemite/?id=2262
365創る名無しに見る名無し:2011/07/08(金) 23:02:09.23 ID:B3PoL/iK
ババアの人気に嫉妬。
366創る名無しに見る名無し:2011/07/09(土) 17:53:57.79 ID:x77I3sxr
>>362の左側の子は誰だっけ?
367創る名無しに見る名無し:2011/07/09(土) 18:03:37.34 ID:ysHXMJhF
悠里おねいさま、か。
368創る名無しに見る名無し:2011/07/09(土) 18:28:51.10 ID:x77I3sxr
あー、そっかそっか
ありがとう
369創る名無しに見る名無し:2011/07/10(日) 20:48:36.49 ID:zg+vVTq4
wiki編集お疲れ様です
370創る名無しに見る名無し:2011/07/11(月) 19:34:33.86 ID:n4ek9wfe
>>362
コンビの意味わかってるか?
371創る名無しに見る名無し:2011/07/11(月) 19:44:12.45 ID:oyr3Ogr/
>>370
なんか嫌なことでもあったの?
372創る名無しに見る名無し:2011/07/11(月) 19:53:06.68 ID:cw6YBk0/
一人多い四天王なんてよくあることですよ
373創る名無しに見る名無し:2011/07/12(火) 00:17:26.00 ID:0DPur2rN
>三人ばらばらなコンビ
これはたしかに赤面するレベル
なんで>>371はただのツッコミにそんな過剰反応してんだw
374創る名無しに見る名無し:2011/07/12(火) 06:48:54.92 ID:LlWN8zMh
そういう小さい間違いにいちいちずるずるつっかかるからじゃないの
たまにスレに現われるよね、こういう人達
375創る名無しに見る名無し:2011/07/12(火) 08:15:12.36 ID:JX/xGlnb
細かいツッコミをしなければ良かったのに
細かいツッコミに過剰反応せず流せば済んだのに
細かいツッコミに過剰反応せず流せなかったのをあげつらわなければ終わった話なのに
細かいツッコミに過剰反応せず流せなかったのをあげつらうのをあげつらう人のせいに(ry

終了
376創る名無しに見る名無し:2011/07/12(火) 15:13:24.62 ID:Vx2efGB6
ケモ学のお色気担当って誰だろう
377創る名無しに見る名無し:2011/07/12(火) 15:14:41.18 ID:x434zRKC
ババァ。
378創る名無しに見る名無し:2011/07/12(火) 19:30:10.96 ID:Vx2efGB6
えー熟女じゃんかー
379創る名無しに見る名無し:2011/07/12(火) 20:36:51.32 ID:lFIExn8y
ケモ学!抱かれてたいレース!

1枠:小野悠里 おっぱいは正義!こんなキツネさんなら化かされたい!
2枠:飛澤朱美 大空は正義!こんなコウモリさんなら一緒に飛びたい!
3枠:二葉葉狐 ロリっ娘は正義!こんな小学生なら一緒に遊びたい!
4枠:星野りんご 続・おっぱいは正義!こんなウサギさんのお料理食べたい!
5枠;白先生 ババアは正義!こんな三十路なら人生捨ててもいい!かも。


さあ!誰?
380創る名無しに見る名無し:2011/07/12(火) 20:48:33.94 ID:Vx2efGB6
うーむ…
悩ましいが、若さ・スタイル・お色気担当の自覚、三つを兼ね備えた悠里おねーさまに一票!
381創る名無しに見る名無し:2011/07/12(火) 20:49:22.23 ID:YBxurgvg
伊織先輩でお願いします
382創る名無しに見る名無し:2011/07/13(水) 00:46:59.53 ID:ftFGgjom
ババアか英先生で頼む
383創る名無しに見る名無し:2011/07/13(水) 03:22:54.13 ID:gJWyHoQN
>>378
大人の色気ってもんがあるだろぉぉぉぉぉぉおお(血涙
384創る名無しに見る名無し:2011/07/14(木) 00:50:08.24 ID:RWlM0XUS
ババアはまだまだ半熟女だってさー
385創る名無しに見る名無し:2011/07/14(木) 03:21:01.61 ID:ddbbXyj5
俺らの年代になると30そこそこだと「お姉さん」としか感じなくなって困る。
386創る名無しに見る名無し:2011/07/14(木) 04:40:52.19 ID:B/cBr/7B
多分立ち振る舞いとか性格の問題だよな
はせやんとか30になってもまだまだおねえさんって感じだけど
白先生は…ほら…なんか…
387創る名無しに見る名無し:2011/07/14(木) 05:00:00.35 ID:ddbbXyj5
お……おつぼn(謎の薬品を嗅がされ失神
388創る名無しに見る名無し:2011/07/15(金) 01:35:50.32 ID:WHw3/I8w
馬「暑いしヒマだしエアコン付いてる教室いこうぜ」

鹿「そうすっか。ライダーも来いよ」

虫「いやー、僕はいいよ。暑いほうが調子いいからね」

馬「んだよ、これだから昆虫はよぉ」

鹿「根性無しだな、大体ライダーはバッタじゃねーか。偽ライダーめ」

虫「あ、謝れ!バッタ以外がモチーフの全ライダーに謝れ!しかもライダーってあだ名は塚本が付けたんじゃん!」

馬「まずは図書室行ってみようぜ」

鹿「れっつらごー」

虫「む、虫を無視……!?」
389創る名無しに見る名無し:2011/07/15(金) 01:39:04.07 ID:58X4uuqR
某夫人「呼ばれた気がした」
390創る名無しに見る名無し:2011/07/15(金) 10:23:40.06 ID:NCCt4iXs
>>388
キャラ名使わないの?
391創る名無しに見る名無し:2011/07/15(金) 12:15:51.26 ID:WHw3/I8w
彼らを成す重要なファクターとして「馬と鹿が仲良し」であるという言葉遊びを交えた設定があると考え、
セリフだけで書くことによってその設定が死んでしまうと思いキャラ名でなく種類を代名詞として用いました。
と同時に一文字で表すほうが楽ですし。
392創る名無しに見る名無し:2011/07/15(金) 13:02:01.99 ID:NCCt4iXs
ふーん。名前ありの方がわかりやすいから助かるんだがな。
一見にも好印象だろうし。
393創る名無しに見る名無し:2011/07/15(金) 13:15:22.28 ID:7tZycT5S
「一見あの連中のことに見えて実は別のトリオ」っていう罠だよきっと
394創る名無しに見る名無し:2011/07/15(金) 13:43:32.25 ID:NCCt4iXs
尚更タチ悪いだろw
395創る名無しに見る名無し:2011/07/15(金) 16:36:04.90 ID:DXN7qpxA
三十路は半熟卵だそうで、腐った卵は水に浮くそうです
あ、浮いてる
http://loda.jp/mitemite/?id=2276
396創る名無しに見る名無し:2011/07/15(金) 19:35:00.23 ID:BZDJgAMX
セクシーなのにそうは見えない。不思議!
397創る名無しに見る名無し:2011/07/16(土) 01:01:38.45 ID:qf0x7FXd
初等部の濡れスクミズが見たくてプールに潜入したに違いない
398わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/07/16(土) 05:02:30.50 ID:MbBlvQms
>>395
誰かババアを止めなさいーー!

投下します。清志郎くんをお借りします。
399瞳に恋して! ◆TC02kfS2Q2 :2011/07/16(土) 05:07:34.69 ID:MbBlvQms
   『Can't Take My Eyes Off You 〜瞳に恋して!〜』


 「わたしもお料理頑張るから、清志郎くんも陸上の大会頑張ってね」
 
 この一言で水前寺清志郎は胸を弾丸で打ち抜かれたような気がした。甘い言葉に気をつけろ。でも、その甘さに甘えていいじゃないか。
ジャージ姿の清志郎は学校の渡り廊下で想い人から告げられたセリフを何度も繰り返していた。星野りんごというウサギの子を目の前に。
 星野りんごはレストランの娘だ。なので料理はお手の物。もちろん、清志郎の目当てはりんごの作る料理ではない。

 清志郎が星野りんごに夢中になった理由をよく覚えていない。人を好きになる理由はいらない、とはよく言ったもので清志郎も
その理由を探ろうとはしなかった。ただ、彼女をずっと追いかけていたい、そして心を奪ってしまいたいと思っていたのだから。
 敢えて言うなら、彼女の瞳だ。紅い瞳はルビーのように、そして誰をも魅了する金平糖。りんごの瞳に吸い込まれても後悔はない。
手に届かない瞳ほど美しい。だから清志郎は力の限り追いかけた。で、結果はこれだ。当然と言えばそうだろう。りんごの言葉は
女の子が答えに困ったときに使う常套手段だということを清志郎は気づいているのだろうか。恋は盲目。

 これから1000本ダッシュをこなしてくると言い残して清志郎はりんごのもとを離れた。これだけ見れば陸上に青春をささげる少年、
だと……見えるのに。りんごや彼女の友人たちはそう思わざる得なかった。友人の一人、礼野翔子も例外ではない。何故なら、
水前寺清志郎という男は星野りんごにくびったけだからだ。くびったけでは弱いかもしれない。寝ても覚めても星野りんごのことを
考えているに違いない。彼女追いかけて屋上から華麗なるジャンプを魅せたり、家庭科室に潜り込んだりと伝説は尽きない。
それを苦々しく思っているのは清志郎を知っている者なら全てのものだ、と言っても言いすぎでないのだから呆れるではないか。

 翔子は人間の少女だ。りんごとは幼馴染、だからこそお互いのいい所をよく知っているし、そうでない所もつつき合える。
幼馴染は残酷だ。小学生の間は公園での遊び仲間でつるんでいたのに、思春期にお邪魔しかけるお年頃では女子はほんのちょっと
よそよそしくなる。りんごも翔子も違わず。ただ、清志郎は小学生のハートのまま高等部に進んだ大きな小学生であった。
だからこそ、りんごへの思いを惜しげもなく伝えることができるんだ、と。それは生きとし生けるものにとって羨ましいことかもしれない。
 半袖のシャツにリボンを下ろして着こなす翔子、ショートの髪から吹き抜ける風で覗かせるうなじが少女を彩る。
そして、ぽんとりんごの肩を気さくに叩いている姿は少年のよう。翔子はひまわりの花のように青空に映える。
 
 「りんごちゃん。わたしが水前寺のヤツをしっかり監視してるからさ」
 「翔子ちゃん、いいのよ。水前寺くんもしばらく大会に打ち込むだろうし」

 グラウンドでは白球が打ち上げられる音がしていた。夏の青空の元、絵になる光景。
 「今度りんごちゃんを困らせるようなことがあったら、水前寺のバカヤロウをバットでぶっとばしてやんよ」
 「へへ……いいのかな」
 
   #
400瞳に恋して! ◆TC02kfS2Q2 :2011/07/16(土) 05:09:35.63 ID:MbBlvQms
 「いいよ、いいよ!じゃあ、ラスイチいくよーっ。ヒカルくん、バックバック!!」
 白いシャツ、白い球、そして白い大人のネコ。軽く投げられたボールに吸い付くように大きく振られたバットに当たる。
ポカチーンと弓の弧を描くように空へと舞い上がり、地上のケモノは己の脚でそれを追いかける。勢いを失ってくる球に狙いを定め、
犬上ヒカルはグローブの嵌めた左手を伸ばしていた。日光がまぶしい。
 「だめだめだめ!手で取っちゃだめ!体で取らなきゃ」
 バッターボックスではバットを肩にして、子供のようにはしゃぐ大人のネコ。素振りのせいか、活発な少年を思わせた。
彼女の声はグランドの中でいちばん大きかった。

 「よーし!ナイスキャーッチ!ヒカルくん、大分上手くなったね」
 軽い音を耳にして、ヒカルはボールをグローブに収めたまま首を縦に振り、大人のネコの号令でグラウントの上の少年たちは
一同に会した。大人のネコは自分の手の毛並みが砂埃で汚れることだけを気にしていた。
 「みんな集まったかな。じゃあ、後片付けして解散しようか……な」
 「どうしたんですか、ミナさん」
 ミナと呼ばれた大人のネコは呼びかけたネコのメガネ男子の少年の肩を叩いて気になるほうへと指を伸ばす。
 「ナガレくん見てよ。あの子、すんごい脚が速いなって」 
 一緒にノックをしていた少年と共にミナが指差したのは、チーターの少年だった。そう、水前寺清志郎。
大人しくしていても、走っていても目立つ彼をミナが見逃すはずはなかった。片付けたボールをひとつ拝借。

 「じゃあ、もう一度ラスイチいくよ!」
 「え?」
 「そこのチーターくん!それっ」
 ヒカルたちが考えている間もなく、ミナは軽く手元のボールを打ち上げると、あっという間にグラウンドから消えそうになるや否や、
チーターの少年は天に舞うボールに向かって跳んだ。そして、キャッチ。こちらへと踵を返したかと思うや、砂煙を立てながら
ミナの方へ駆けつけていた。

 「どうも、ぼくの名前は水前寺清志郎。今後お見知りおきを」
 「きみ、清志郎くんって言うんだ……」
 ジャージ姿だというのに、清志郎はまるでタキシードを着ているかのような挨拶をミナにしていた。
一方、Tシャツにジーンズという楽な格好のミナは清志郎のことが一瞬で気に入ってしまった。無論、恋心ということでなく。
 「どうも。この町のバイク屋で働いている、杉本ミナです」
 「すぎも……」
 「ミナでいいよ!きみ、足速いね!」
 自慢の脚力を褒められ、ちょっと調子に乗る清志郎は本当のバカヤロウだ。そのバカヤロウを諌めに翔子が後から付いてくる。
男勝りな翔子は「迷惑を掛けるな」と青筋立てるが、清志郎はどこ吹く風とさほど問題にしてはいなかった。
401瞳に恋して! ◆TC02kfS2Q2 :2011/07/16(土) 05:11:36.87 ID:MbBlvQms
 「ん?あなたはもしかして清志郎くんの彼女さんかな」
 「違いますっ!ただの知り合いです!」
 本気の目をした翔子に清志郎はにこにこと笑っているだけだった。
 ミナがバットを地面に下ろすと、音に驚いたヒカルは尻尾をぶんと振った。

 「今度さ、わたしとヒカルくんたちとで野球しようよ、野球。いつも河原で走ってるよね?姿を見ているよ」
 「は!ぼくのことをご存知なんですね。ソイツは光栄だ。でも、ぼくは陸上部。投げる、打つは専門外でっ」
 「清志郎くんの脚なら、いい盗塁王になれるのになあ。それに取るのもすんごい上手いし」
 「ははっ。短距離バカですから!」

 問題・思春期の男子を手なずけるにはどうすればいいか述べよ。
 
 周りの者から見れば、簡単に答えを導き出せるのではないかと。それを端的に表した光景だった。
後片付けを終えると、ミナは彼らを引き連れて学園の駐輪場へと足を向けた。ヒカルのナイスプレーに会話の花咲く。
 自転車や原付に混じって止まる一台のレトロなバイク。ロックを外し押して屋根のある駐輪場から出庫したミナはバイクに繋げていた
白いヘルメットを被り、あご紐を結ぶとライディング用のグローブをゆっくりと手に嵌めだした。白いネコ用のヘルメット。頭から
ネコの耳がつんつんと生える。じっと黙ってヒカルや清志郎たちはミナの乗車前の空気を肌で感じていた。まるで厳粛な儀式のように。
確かにバイクに乗ることは儀式かもしれない。鉄と鉄が組み合わせただけの機械に命を吹き込むなんて、儀式以外の何者でもない。
それ相応の礼儀をわきまえて、ミナのバイク・エストレヤに片足上げて跨ると固めのサスペンションが地面に食い込んだ。
ミナは思わず、ぱん!とシートを尻尾で叩く。セルモーターでエンジンを掛けると、独特のリズムでマフラーから音を奏で始めた。
 「時間つぶしはここまで。また、来るねっ」
 ライダーに二言は不要。ミナは振り向くこともせず、尻尾をなびかせながらエストレヤを校門の方へと走らせて行った。

 「おい、ナガレ。なんか言えよ」
 「……」
 リア厨真っ盛りの彼らは妄想を爆発させながらミナの後姿を見送るだけだった。が、清志郎は違った。
 「大人のレディか。ミナさんの瞳も突き抜ける青空のように澄んで美しい。だが、りんごちゃんの瞳も魅力的だな」
 「何、言ってるんですか。水前寺先輩」
 「ふっ。きみたち厨房にはまだまだわからない話さ。女の子の目は分かるかい?恋をしているのか否かって」
 ジャージの上着を肩に掛けて、清志郎は去っていった。まさに誰得。
 ヒカルたちは清志郎の話を聞き流して教室へと戻っていった。
 
   #

 街のとあるレストランの前には、一台のバイクが止まっていた。洋風のエントランスにランプがひとつ、不釣合いなことは
全く感じられなかった。バイクはレトロなデザインのよく磨かれたエストレヤ。車体脇のヘルメットホルダーには白く明かりを
反射するネコ用のヘルメットがぶら下がる。むしろ、バイクとレストランの持つ雰囲気は絵に描いたようにマッチしていると
いってもいいぐらい。影を落としたバイクは落ち着いて主人の帰りを待っているようにも見えた。
 そして、エストレヤの隣にはレトロなたたずまいのスクーター。わき腹のエンブレムには『ラビット』の文字が貼られている。
402瞳に恋して! ◆TC02kfS2Q2 :2011/07/16(土) 05:13:37.42 ID:MbBlvQms
 ミナは携帯電話の画面を指摩りながら約束相手を恨んだ。恨むと言うより、呆れたのかもしれない。店内にはミナと幾人かの客。
ウサギのカップルに一人きりのキツネの夫人。そして、杉本ミナ。この街で流行のレストランなのに、落ち着けるのは有り難い。
ずっと開いている向かいの席を見つめながら、ミナは注文の料理を待ち続けていた。流行の店の厨房からはコンロの音が聞こえる。
 夕暮れを迎えて、入口のランプの明かりが灯り、レストランの娘がフロアで忙しそうに仕事をしていた。ミナはお冷に口を付ける。
ウサギのカップルは席を立ち、料理が評判通りだと笑みを零していた。それがミナには恨めしい。男の方がお会計を済ませると、
二人は玄関先の『ラビット』にタンデムを組んで街のとばりに消えていった。これから二人は二人きりの時間。一日は都合がよすぎる。

 「お待ちどうさまでした。ドリアでございます」
 店員のウサギの娘がトレーに載せてきたドリア。熱々の容器からは湯気が立つ。チーズの焦げる香りは嬉しい。
どうしてドリアなんて食べ物を発明できたんだろうかと、食するものを唸らせるコラボレーション。
 「ありがとう。いただきます」
 客はすぐに手を付けようとはしなかった。何故なら。熱いから。そして、人を待っていたから。
人は来ない。だけども、ちょっとぐらいは待ちたいものだ。品の良い内装はいくら見ていても飽きがこない。

 「こんなことなら、グラウンドで野球してたらよかったなあ」
 約束よりも約束を守るほうが正しい。子供ならしも、取引きの大人の世界。
 会うはずだったヤツは今日は来ない。それは約束ができたから。予約まで取ってこのレストランに招いてみた。
だけど、ヤツは仕事バカ。アイツはきっと「夏期講習の準備が忙しくてね!実はぼく、先生だから」とあっけらかんと答えるだろう。
 「サン先生もわたしより仕事を選ぶなんてプロだよね。だから、今日だけは『先生』って、名前につけてあげるよ」
 とみに開いてしまった時間は相棒と過ごすしかない、とミナは時計の針を目で追いながらドリアを口で冷ます。
座るはずだったサン先生の席には何も食器は置かれずに、ミナが過ごす一人だけのディナーを無彩色に彩っていた。

   #

 日の落ちかけた河川敷。陸上部であるTシャツ姿の清志郎は一人で走り込んでいた。
 堤防の上を持てる力振り絞って、何往復したんだろう。それでも体をいじめ続け、力として蓄える。
薄暗い河川敷では大きな川に注ぎ込む水路との水門で水がぶつかり合う音だけが聞こえてくる夜の始まり。

 陸上競技ほど自分に過酷な種目はない。自分がヘマをすればひとりにヘマがのしかかる。誰も助けを差し伸べてくれないのだから。
あえてそれに身を捧げてみんなのために、学校のために体力を使い果たすまで走りこむ。清志郎は敢えてそれを望んだ。
 夏の河川敷は涼しい。風がこれでもかと通り抜けるから、気持ちがよい。清志郎も好んでこの場所で練習をしていた。
その姿を昼間会った、オトナのネコが見ていたのだから清志郎はいやでもやる気が倍増していたのだったが、所詮は人の子。
脚には乳酸が溜まり続け、天から授かった瞬発力を奪い、清志郎を苦しみ続けていたのだった。
 
 夕暮れに一筋の光。
 落日に染まる河原に一台のバイク。そして、バイクを傍らには大人のネコ。
ミナがエストレヤを押しながら河原の土手を歩いていた。学校の側を流れる大きな川は人気(ひとけ)がないのがもったいない。
だからこそネコだけに涼しい場所を知ってかミナは帰り道を自然とここに選んだのだから。
 待ち人は来なかった。自由になった時間ほど苦しいものはないから、自分で進んで自由を埋める。先が見えないほど長い川の上流、
昼間はきっと子供たちの声であふれていたであろう公園、取り残されてゆく場所。そこへ一歩入り込む気楽なバイク乗り。

 「涼しい……」
 シャツの袖を通り過ぎる夕時の風、バイクを走らせていないのに心地よく、そしてくすぐったく髪の毛をなびかせる。
ミナが帰り道、ここを通る理由がもうひとつ。奇しくもミナと同じことを考えていた少女が一人ギターを傍らに土手の上。
 「ねえ、もしかして……あなた」
 彼女の名は礼野翔子。
 翔子はミナの声に振り向くと体操座りをし続けて、軽く首を縦に振った。
403瞳に恋して! ◆TC02kfS2Q2 :2011/07/16(土) 05:15:38.78 ID:MbBlvQms
 「昼間に会った……」
 翔子は思い出す。昼間のことを。
 「気になるんだ。清志郎くんのこと」
 「全然っ」
 あまりにも単純な返答にミナはくすっと笑った。バイクのスタンドを立ててロックを掛けると昔少女だったネコは今少女である少女の
傍らに体操座りで並んで河川敷の少年を眺めていた。翔子はミナに顔を向けると、エストレヤの方に視線が向いた。
 沈みかけの太陽の光に磨かれたフェンダーが照らされて輝き、車輪のハブがバイク乗りの生き方のように真っ直ぐに夕焼けに映える。
ミラーに掛けられたネコ用のヘルメットとひとつに繋がったエストレヤは切り絵のように見えた。

 「あれ、お姉さんのですか」
 「うん」
 「大きいですね」
 「250だから、大きくないよお。あなたでも取り回せるかもね」
 「そうかな」
 「じゃあ、乗ってみる?スタンドを立てたままで」

 ギターをミナに預けて翔子は目を丸くしてすっと立ち上がると、ぱんぱんっとスカートを叩いてはやる気持ちを抑えた。
間じかに見たバイクのサドルは思ったより低く感じた。タンクを触ると良くなれた動物を撫でている感覚だが、コイツは野生だ。
いったん体に秘めた内燃機関のプラグに火が付くと、地面を蹴るように走り出すんだからね。それでも構わないと思っているのか
翔子は制服姿のままミナのバイクに跨り、ハンドルを握るとすうっと風が吹いたような気がした。両手でグリップを握る心地よさ。
ブレーキをぎゅっと締めて彼を操る快感さ。共に旅に出かけようと生き物と機械がひとつになる爽快さ。翔子はミナが羨ましくなった。
ふっと翔子の頭に優しく締め付けられるもの。軽く上から押さえ付けられて空気の重さを感じる。
 「似合ってるかも。翔子ちゃんも免許とりなよ」
 「……へへ」
 ミナのネコ用のヘルメットを被った翔子の姿が右手のミラーの中に薄っすらと見えた。

 「清志郎くんとコイツ、どっちが速いかな」
 「ミナさーん。アイツとなんか勝負しちゃだめですよ」
 「じゃあ、今度本気だして勝負を挑んじゃう」
 荒々しいエンジンむき出しの乗り物に添えられた、初夏の草木のような女の子の声。
ミナは河川敷の少年の方へネコの耳が向くと、川とは反対側の土手へイタズラ顔をして身を潜めた。翔子は何かを言おうとしたが
チーターの少年の声に掻き消されてしまった。ミナはにっと歯を見せる。

 「だめだああ!!タイムが縮まんねえ!!」
 精根皆尽きた。大地に吸い込まれても仕方がない。両手両足を投げ打って芝生の生えた土手に清志郎は体を沈めた。
星が美しく目に刺さる。夏の星座。メロスがセリヌンティウスを投げ出してしまおう、という気持ちが分かる。
 息が深くなればなるほど体が揺さぶられ、いっぱいに酸素を体内に取り込む。口をあけて。肩を揺らして。
404瞳に恋して! ◆TC02kfS2Q2 :2011/07/16(土) 05:17:39.37 ID:MbBlvQms
 「はぁあぁ。りんご……ちゃん。アンデルセンの気持ちが分かるかい!たった一つの目標だけ目指して走った人のことを」
 気が付いたら既に日は落ちていた。いくら日が長くなったと言っても、いづれは昼が消えてしまう宿命。
河川敷は街灯が少ない。かたちある物は全てシルエットとして清志郎の目に映っていた。人、木、そして一台のバイクとライダー。
芝生を枕にしたまま首を傾けると、昼間見たエストレヤとネコのヘルメットを被ったシルエットが土手の上にひっそりと現れている。
バイクに跨ったまま動かない、動こうとはしない。ここにいることを罪深く恥じているように。
 「ミナ……さんですよね」
 返事はない。
 「ぼくですね。どう思いますか」
 無論。
 
 「走るだけしか興味のないやつってもしかして思われてるのかもしれないんですよね。それはそれでいいんです。事実だし。
  もしかして彼女もそう思っているのかもしれないんですよ。あっ!ぼく好きな子がいましてね!」
 (コイツ、バカだろ……)
 「彼女、ウサギの子なんですよ。ぼくはチーター、彼女はウサギ。彼女を優しく受け止めてあげる自信は誰よりもあるんです。
  でも、彼女……ウサギだから。どうしてあげようかなって考えなきゃな、って。だけど、頭より脚がでちゃうんです。ぼく。
  ルビーみたいで優しい目をしてるんですよ、彼女。ぼくらのような人が言う『鋭い目』じゃないし、ヘンな言い方『疑わない目』
  ってそれは素敵なことじゃないですか。誰をも信頼する、大人びた……そして、あらゆる濁りを浄化するウサギの目」
 (聞いてるこっちが恥ずかしいし!)
 「そんなぼくのこと、りんごちゃんは受け入れてくれるのかな。だから、ぼくはすぐ行動に出ちゃうんです。不安だから!」
 (だから、バカなんだよ……)
 「言うなれば『きみの瞳に……』」
 (清志郎の野郎、いい加減にしろ)
 
 ミナのヘルメット越しに聞こえてくる清志郎の大きな独り言にいちいちツッコミを入れながら、自分の姿がバレないように
翔子は体を小さくしながらバイクに跨るミナを演じ続けた。そして、内に秘めながら叫ぶ。
 「わたしはミナさんじゃない!!!」と。

 「りんごちゃんに無様なところは見せられないから、ぼく頑張りますよ!今度の大会!」
 青春に、グラウンドに若い命を懸ける一言を久しぶりに発したかと思うと、水前寺清志郎は起き上がり闇の向こうへと消えた。
残されて、そして真っ赤になった翔子はミナに顔を向けることさえできなかった。長かった太陽の出番が終わる。
 「羨ましいなあ、りんごちゃんって子」と、ミナは土手に寝転んで頬を緩めていた。

   #

 翔子と別れたミナはエストレヤを走らせていると、ディナーを一人で取った店の前を通りがかった。店内はまだ明々と。
ゆっくりと速度を緩め、店を眺めるかのように。そこではウサギの娘が店先で打ち水をしていたが、ミナを見かけると手を止めた。
半袖のシャツに腰に巻いたビストロエプロンが初々しい。通り過ぎるかの瀬戸際、店内から中年の男の声がミナの耳に届いた。
愛車を止めてまでミナの耳を傾けさせたのは、すれ違ったウサギの娘の名前。

 「りんご。レジを頼む」
 
 ぎゅっとブレーキを握り愛車を止めて清志郎の想い人の顔を見届けようとしたが、ウサギの娘は既に店内に戻って姿を消していた。


  おしまい。
405わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/07/16(土) 05:23:20.75 ID:FM1zZ6To
翔子さんもお借りしました。
あと、白先生なんだかんだ言って幸せもん。

投下おしまい。
406創る名無しに見る名無し:2011/07/16(土) 05:48:52.27 ID:uO1Jw3DO
投下乙。
てか避難所にも投下してなかったか? どんだけペース速いんだw
407創る名無しに見る名無し:2011/07/17(日) 18:38:43.37 ID:88Gu+G6T
くそっ、この暑いのにケモの淡い恋心なんて生暖かいもんを柔らかで優しい文章で表現しやがって、モフ暑苦しいんだよ
しかもなんだその絶妙な気まずさを演出するバイクのシーンは
いい加減にしろよこの匠め、わんこ師匠と呼ばせろ
408創る名無しに見る名無し:2011/07/17(日) 22:20:16.03 ID:7/TLto+p
サン先生ってば本当に罪作りなお方やで
ミナさん負けるなミナさん
409創る名無しに見る名無し:2011/07/22(金) 05:58:34.81 ID:rCgX0sIM
そろそろ夏休みネタとかしっくりくる時期だねぇ
410創る名無しに見る名無し:2011/07/22(金) 20:56:40.21 ID:lsavd1Gd
いのりん→家庭サービス。
そら先生→天体観測へ山へ。
英先生→一人旅。
跳月先生→電子工作三昧。
ザッキー→ルルに引っ張りまわされる日々。
白先生→(ry
411創る名無しに見る名無し:2011/07/22(金) 23:57:38.85 ID:rCgX0sIM
ババアwww
412創る名無しに見る名無し:2011/07/23(土) 00:06:41.19 ID:jGFI3eBi
なぜ略したしw
413創る名無しに見る名無し:2011/07/23(土) 11:53:35.46 ID:SHOrtU5E
実際は先生に夏休みってあんまりないんだってね、
部活の顧問や事務仕事に追われてほとんど学校にいるそうな
だからババアは婚期を逃(ry
414創る名無しに見る名無し:2011/07/28(木) 18:56:38.19 ID:y/QBIBVj
モエ「ねー、リオは夏休みどうすんの?ヒマならどっか遊び行こう的な」

リオ「うー、ごめんっ。私しばらく忙しいんだ…」

モエ「えーマジ?いいんちょ付き合い悪いしっ。なんで忙しいの?」

リオ「そりゃあ夏コ」

モエ「え?ナツコ?ってなに?」

リオ「な、夏、ナツコ……ミ………マツコ!マツコデラックス見に行くのっ!24時間に出るんだよ確かっ」

モエ「えーマジー?生マツコいいなー。24時間ていつだっけ?」

リオ「わ、わからん」
415創る名無しに見る名無し:2011/07/28(木) 22:54:45.38 ID:1gQTidD8
生マツコには会えなかったけど、リオはコレッタを連れて生放送を始めたようです。



リオ・コレッタ「「せーのっ。『けもらじ!夏休みすぺしゃる!』」ニャ!」

リオ「久々の放送!因幡リオです」

コレッタ「はじめましてニャ!コレッタですニャ!」

リオ「モエちゃんが来るはずだったんですが、きょうはコレッタちゃんと二人っきりの放送です!むっはー」

コレ「どうしたニャ?あめ玉がつっかえたニャか?モエちゃんはあとから来るって聞いたニャ」

リオ「そ、そうだっけ?!そうでしたー!そして、今回はスペシャルゲストをお招きします。保健の白先生です!!」

コレ「わーい!……あれ。放送室にいないニャ?」

リオ「そうです。多忙な白先生は保健室からの中継なんでーす。もしもし!」

白「因幡、どうして始めから放送室に呼んでくれないんだ」

リオ「オトナな白先生は多忙ですから!」

白「いやいや、今日は暇だぞ。夏休みだし」

リオ「一人……いや、一人身で寂しくお仕事している白先生に、涼しげなものをご用意しました!」

白「誰が一人身だ」

モエ「なにこれニャ?あ!そっくりニャ!」

リオ「白先生の氷像です!保健室での白先生をイメージして美術の水島先生と製作しました」

コレ「かっこいいニャね!」
416わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/07/28(木) 22:57:37.03 ID:1gQTidD8
リオ「脚を組んで椅子に座る姿は大人の色香を感じますねー。せくしーですねー」

白「何故、棒読みだ。うーん。音声だけだからどんな風なのか分からないな」

リオ「では、この氷像を放送室に飾っておきましょー!いやあ、涼しげって感じだな。コレッタちゃん、壊れちゃうから触っちゃダメよ」

コレ「ニャ」

リオ「さて、今日の放送はバ……、大人のおねーさんの魅力についてお送りしますよ!」

コレ「オバ……、おとなのおねーさんニャね」

リオ「ぜひ白先生もお仕事が終わったらこちらへ来て涼んでくださいね」

白「だから今暇だって。今そっちへ……あれ。(ガタガタ) 扉が開かない」

リオ「白センセー。早くニャ」

リオ「早くー」

白「保健室の扉が……あれ、おかしいな。開かないんだ」

リオ「(実は保健室の扉を廊下からつっかえ棒で止めてるんです)さあ!始まり始まり!」

コレ「最後まで聞いてニャ!」

白「おーーい!」



   ♪(ジングル)


417わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/07/28(木) 22:59:37.98 ID:1gQTidD8
リオ「(と言うのは……ウソで、放送をいいことにコレッタと二人っきりで『むはむは』するのだ)さあ、コレッタちゃん」

コレ「ニャ?」

リオ「大人のおねーさんのお話をする前に、ちょっとコレッタちゃんのランドセル背負ってみようか?」

コレ「ニャニャ??う、うん……(ランドセルを背負う)。こうかニャ?」

リオ「(むっはー。両手で肩紐を握って内股のポーズなんか眼福眼福)うん!いいよいいよ!」

コレ「じゃあ、早速始めるニャ……。佳望学園でいちばんのオトナの……」

リオ「おねーさんを選ぶ前に、ちょっとコレッタちゃん。くるって回ってみようか?」

コレ「う、うん……ニャ。(くるり)」

リオ「(金色の髪の毛からみるくのシャンプーの香りがするぅ……!)ふあああ。それじゃあ」

コレ「えっと……。(「次のコーナー」のメモがリオから)事前に学園でアンケートをしました素敵なおねーさんの仕草……」

リオ「のランキングの前に、ちょっとコレッタちゃん。牛乳飲んでみようか?」

コレ「ニャ???」

リオ「コレッタちゃんは『牛乳会』で苦手な牛乳、飲めるように頑張ってるんだよね。だから、頑張ってるところをババ……いや、白先生に」

コレ(まだ、牛乳苦手ニャのね……)

(ガラッ)

モエ「わー遅刻遅刻!!みなさん、ごめんなさい!芹沢モエでーす。のどかわいた!」

コレ「わーい。モエちゃんだ」

モエ「ん?わたしの為に牛乳用意してくれた系?コレッタちゃんは気が利くね!せくしーばでぃ目指して(ごくごく……)」

リオ(ぐぬぬぬ…。折角コレッタがごくごく飲むところをむはむはしようと思ったのに)

モエ「あー。牛乳飲むと張りが出てくるね」

コレ「何のニャ?」

リオ「コレッタにはまだまだ早いお話!」(ロリばでぃでイインダヨ!)

白「おーい。早くここを開けてくれ!」

モエ「ん?どうした系?スピーカーから白先生の声が」
418わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/07/28(木) 23:02:00.02 ID:1gQTidD8
リオ「なんでもないの!白先生を保健室に閉じ込め…」

白「なんだと。リオ、説明してくれ」

リオ「わー!聞こえない聞こえない!!」

モエ「あれ。なにこれ!うける!白先生の氷の像??涼しそー。抱きついちゃえ」

白(やめろ!芹沢!!わたしが溶ける)

リオ(きゃー!壊さないで!)

モエ「きもちいいなあ。ほら、コレッタちゃんもこうしてごらん。涼しいよ」

コレ「こうニャ?ふわああ。涼しいニャ」

リオ(頼む!氷像代わってくれ!!って)「だめよ!コレッタちゃん。白先生に抱きついちゃ!!!」

白「なに!頼む!氷像代わってくれ!!今行くから……(ガタガタ)うう、扉が開かない!」

モエ「え?白先生、何言ってんの?」

リオ「だめよ!コレッタ。制服が濡れちゃうよ!」(コレッタを氷像から引き離す)

コレ「やだニャ!こうしてるほうが涼しいニャ!!」(ガリガリガリ)

モエ「わーーー!やめて、コレッタ!白先生の像に爪立てちゃダメえええ!」

(ガリガリガリ!)

白「や、やめろおおお!わたしが削れる!!」

コレ「離れたくないニャ!」

リオ「コレッタあああ!!」


   ♪(ジングル)


モエ「というわけで、エンディングの時間になりました。『けもらじ』では「ふつおた」や「企画案」を大募集!スレッドに書き込んで
   頂ければもしかして、もしかして採用されるかもー?ってね!というわけで…お時間になりました!」

リオ「きゃー!白先生の尻尾がああ」

コレ(ガリガリガリ)「やだニャ!離れたくないニャ!」

白(ガタガタガタ)「放送室で何が起こってるんだ!説明してくれ!」

モエ「残り5秒!!じゃあ、まったねーー!」

   
  ♪エンディング曲。


419創る名無しに見る名無し:2011/07/28(木) 23:17:00.16 ID:8aw+7uqj
わんこさんの台詞系は新鮮に見えるw
420創る名無しに見る名無し:2011/07/30(土) 19:49:24.19 ID:zDNHaZt0
なんというコントw
421創る名無しに見る名無し:2011/08/03(水) 21:08:08.00 ID:rbqHtIr2
白ちゃん先生、白ちゃん先生。公園にはラジオ体操をしに来たロリっ子がいっぱいですよ。
422創る名無しに見る名無し:2011/08/03(水) 22:40:42.61 ID:H2dLIVJl
シロ「ちょっとデジカメ買ってくる」
423創る名無しに見る名無し:2011/08/04(木) 14:51:01.82 ID:Z+xCzn+R
おまわりさんこっちです!
424創る名無しに見る名無し:2011/08/04(木) 16:53:53.69 ID:KS4L9jUU
やべぇババア来たぞ逃げろ!
http://loda.jp/mitemite/?id=2312
425創る名無しに見る名無し:2011/08/04(木) 20:53:03.08 ID:CkIHoBHP
>>424
歪んだ愛だよわかってくれw
426創る名無しに見る名無し:2011/08/08(月) 08:23:41.78 ID:viFCY8v+
今日は八月八日でババアということでシロ先生の日ですね
427創る名無しに見る名無し:2011/08/08(月) 11:07:29.42 ID:DA6j+z6+
最近ずっと白先生の独壇場だよね
428創る名無しに見る名無し:2011/08/08(月) 19:59:37.78 ID:zFhRyO2V
よもやババアの日が制定されるとは!
なんも用意してないのでラクガキでもhttp://loda.jp/mitemite/?id=2336
429創る名無しに見る名無し:2011/08/08(月) 21:21:25.37 ID:G0JurxXZ
ババァババァって、白先生がババァならそれより年上な英先生はどうなるんですか!
430創る名無しに見る名無し:2011/08/08(月) 22:09:07.99 ID:lnFdZh7s
ババア!サン先生!コレッタ!保健委員!はづきち!雨宮!リオ!

かわええよ!
431創る名無しに見る名無し:2011/08/09(火) 02:19:56.65 ID:CmRfPb9Y
ババアはガサツだからババアなんですヨ
英先生は大人の女性!淑女!正真正銘の熟J(ry
432創る名無しに見る名無し:2011/08/09(火) 02:40:08.81 ID:YjCONM77
ババアがどんどん人間離れしていく……!
433創る名無しに見る名無し:2011/08/09(火) 15:20:34.90 ID:GvYrezly
ババアばっかりで飽きてきた
434創る名無しに見る名無し:2011/08/09(火) 20:55:52.27 ID:TdpbB/qM
20代ぐらいのお姉さんは…

はせやん
ミナさん

いるじゃないの。
435創る名無しに見る名無し:2011/08/10(水) 11:20:05.65 ID:Krdjel/K
別に20代の女性に限らなくても
436創る名無しに見る名無し:2011/08/10(水) 11:27:28.49 ID:zF6G2wzG
夏といえばホットパンツ

ttp://loda.jp/mitemite/?id=2339
437創る名無しに見る名無し:2011/08/11(木) 07:59:33.49 ID:rwhPVrrm
お御脚美しいぞ。
きつねさんはセクシーなのが似合う
438創る名無しに見る名無し:2011/08/12(金) 01:44:58.64 ID:ySlr/01d
おねーさまはもっと評価されていいはず
439創る名無しに見る名無し:2011/08/12(金) 22:39:56.59 ID:SkJX4ReW
もう、あの人こないのかな。
飛澤さんのSS、鉄ヲタかわいいのに…。卓とのお話は????池上先生の渋いお話…!に!萌えるぜ!

作者さん。ここにもう来ないのかなあ…。書いてくれないのかなあ。見てるかなあ。
440創る名無しに見る名無し:2011/08/13(土) 02:29:39.65 ID:CfRBulbT
確かに通りすがりさんのSS読みたいな
小ネタとかでも全然良いんですぜ!?どうです息抜きに一本書いてみては?
441わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/08/13(土) 16:22:35.77 ID:0yTL6TaH
呼ばれてないけど、わたくしめが通り過ぎますよ。
夏のお話!
442ゆきうさぎ ◆TC02kfS2Q2 :2011/08/13(土) 16:25:01.10 ID:0yTL6TaH
 「ゆきうさぎの目が赤い理由って知ってますか?」
 
 ウサギの島から渡ってきた、小さなうさぎのハル子が玄関先から上を見上げて言う。
 お盆の季節にゆきうさぎ。ハル子は客人に『ゆきうさぎ』のことを得意げに話していた。

 「どうしてだろうね」
 「……うーん」
 「ほら。夏って夜更かししたくなるじゃない。お祭りとか、花火大会とか」
 「そっか!」

 自慢するはずが教えられた。客人がついた適当なウソに気付かないハル子は改めて傍らの『ゆきうさぎ』をちらと見た。
 
 「杉本さん……」
 「ミナでいいよ!」
 
 彼女がそう言うんだから、ハル子も遠慮がちに「ミナさん」と呼んだ。
 とある港町の旅館。白いTシャツ姿のミナは旅の疲れを癒そうと、狭い畳敷きの部屋で手足を伸ばしているところだった。
ごろんと仰向けになって畳に寝転がることが出来るのは、身のある一日を過ごした者の特権なのかもしれない。ミナは自分の街から
バイクに乗ってはるばるガイドにも地図にも小さくしか載らないような港町にやって来た。夏だから。海が見たいから。
理由は何でもよい。一人旅するために誰からも咎められる訳が無いんだから、どこぞへでも飛んでゆけ。それでたどり着いたのはここ。

 内海への島へ渡る桟橋と人家だけで形成される港町。旅するネコのミナが町に訪れたのはその日の暮れのことだった。
一旦宿に入れば外に出る理由を見つけるのが難しいような町なので、蛍光灯と土壁だけの和室でお布団と一夜を過ごすつもりだった。
 二階の窓からは波の音だけが聞こえてきて、ひと時の息抜きには余計な飾りはいらないと訴えてくる。
 だが、この旅館に居たのは宿の主だけではなかった。内海の島からやって来た子うさぎ。夏休みだからか、旅館で気ままな時間を
過ごしているところらしい。島と本土の港町は町ぐるみで知り合い同士なので、ハル子はちょくちょくここに訪れているという。
 季節はお盆前。夏休みの宿題も一息ついた、星空が金平糖のように甘く輝く宵のころ。
 
 古い家屋の玄関先でゆきうさぎと一緒に誰かが帰ってくるのを待ち続けるハル子。
彼女が言うにはお盆の頃、各家庭には玄関先でゆきうさぎがこの地域では多く見られるという。
 小さな、小さなウサギの子。いっちょまえにメガネなんかかけちゃて、いっちょまえに大きなカメラをぶら下げちゃって。
それでも子どもっぽくハル子は大人に薄い胸を張って、自分を育んだ町のことを自慢げに話し出した。そりゃ、自分の町だもの。
443ゆきうさぎ ◆TC02kfS2Q2 :2011/08/13(土) 16:27:22.23 ID:0yTL6TaH
 「ご先祖さまがゆきうさぎに会いに来るんですよ」
 「ゆきうさぎに?」
 「そう!ご先祖さまだって夏は暑いからひんやりしたいんですよー」

 ウサギの祖先が帰ってくるとき、よそのイヌだのオオカミだのの一族とかち合って怖がるので、
彼らが住む港町や内海の島では、若干よそより早くお盆を迎えるらしい。
 昼間の暑さを残したまま晩を迎え、夏の星座に見守られながら木製の盆に盛られたゆきうさぎを玄関先に置く。
内海の波音は優しい。ざざあ……と暗闇から聞こえてくる潮のぶつかる音は地上のウサギには聞き慣れたもの。
かき氷で盛られた『ゆきうさぎ』。洗面器大に丘のように固められ、小豆で目がこしらえられて、耳は夏みかんの皮でぴんと立つ。
 やっぱり暑いせいかゆきうさぎはたらりたらりと汗をかき、町を積み重ねてくれた先人に捧げるようにじりじりと体を削ってゆく。

 「ねえ、ミナさん。そっちに行っていい?ご迷惑ですか」
 「おかまいなく。どうぞ」
 
、ハル子が首からかけた大きなカメラを両手で抱えながら屋内に引っ込むと、ミナの耳に階段を登る小さな足音が
だんだんと近づいてくるのが聞こえた。やがて足音はミナの部屋の前で止まり、がらりとふすまが開く音に変わる。
 
 「こらあ、ちゃんと『入りまーす』って言わなきゃだめだぞ」
 「ごめんなさい……」
 「へへ。お姉さん、偉そうなこと言っちゃいました」

 ぺこりと頭を下げていたハル子を迎えてくれたミナは腕を伸ばして旅の疲れを癒しているところだった。

 ふと、ハル子はミナの部屋の隅に置かれた荷物に目が向いた。
こざっぱりにまとめられたナップザック、磨かれた白いヘルメット。その傍らに並べられた、バイク用のグローブ。
男の子のアイテムばかり並んだ旅の荷物のようでもあるし、ナップサックのポケットを挟んだ淡い色の髪留めを見ると、
そうでも無いように見える。女の子の直感は正しい。ハル子はすかさずそれらに食いついて、ミナを独り占めしようとたくらんだ。
 
 「ミナさん、バイクに乗ってるでしょ?」
 「どうして?」
 「あの……。あのヘルメット、バイクに乗ってる人のだもん!」
 「そうなの?知らなかったー」
 「ええ?もう!!だって!だって!淺川……。じゃなくって、そーいう人がここに来てね、ソイツもバイクに乗っててね、
  すんごい大きんだよ。真っ黒で、鉄って感じがして、まるで……とにかく大きいの。淺川みたいだよ!」
 「淺川って人はどんな人?」
 「えっと。白と黒のネコのお兄さん……いや、男の人で、いつもカメラを持ってて、バイクに乗ってて、耳がちょこんと欠けてて、
  尻尾が曲がってて。そして、自分のことを『根無し草』って言ってる大ばかやろうのこと!だよ……」
 「すんごく詳しいね。わたしがその人に会ったら、もしかしてお友達になっちゃうかも」
444ゆきうさぎ ◆TC02kfS2Q2 :2011/08/13(土) 16:32:26.77 ID:0yTL6TaH
 同じ街に生まれ育った旅人兼写真家兼根無し草。彼の名は淺川だ。ミナにとっては「普通」の「バイク乗り同士」の「よい」
「お友達」程度のヤツ。そう言えば、以前淺川に会ったときに話だけは聞いていた。だからこの港町を宿に選んだんだ。
 「この町にカメラを持った子ウサギがいる」と。その子に興味はあった。その子は誰だ。目の前に居るじゃないか。ハル子だ。
 ミナはハル子の方から淺川のことを口にしたことに幸運と見えざる縁を感じた。
 妹をからかうようにミナは手のひらでハル子を転がして、くるくると目を回している様子を一人で楽しむ。
あんまり放し飼いにしておくと可愛そうなので、ポンと雄弁に語っているつもりの子ウサギの髪をてっぺんから優しく掴んだ。
 にこりとハル子に笑みを浮かべるミナの姿が蛍光灯に照らされてハル子のメガネに反射していた。

 柔らかかった。
 ネコの白い毛並みの指と指の間から、けがれを知らない子どもの黒髪が覗く。
 萌え出でる若草のよう。ごろんと寝っ転がるのもいいかもしれない。くんくんと初めて尽くしのにおいに囲まれることも。
 首をすくめたハル子はいっちょ前な上目遣いでメガネを蛍光灯の明かりで反射させて手元のカメラをいじっていた。

 「ハルちゃん、写真撮るの?」

 小さく頷いて、カメラの自慢をしようとしたが、また怒られるかもとそれはやめた。
 そのかわり、ミナのことをいろいろ聞かなきゃ。写真はカメラで撮れるけど、お話はわたしが聞かなきゃ、と。
旅館の玄関先に止めてある、クラシカルなバイクのことを思い出した。このあたりで見かける乗り物といえば、カブか軽トラぐらいだし。
しかしながらそのバイクは寂れた港町の軒先をお借りしても、なんら違和感を感じることも無いたたずまいを持っていた。

 「表に止めてあるの、ミナさん乗ってきた?」
 「あれ?うん、そうね。あれでなかなか可愛げがあるヤツだよ」
 「ふーん」
 「そうだ。港町に来たから、潮風に吹かれてるよね。明日洗ってあげなきゃ」

 ミナから離れたハル子は窓際に駆け寄り、真下の玄関先を覗き込んだ。
 ゆきうさぎと一緒にミナのバイクがのほほんと疲れを癒す。気ままな性格は持ち主によく似ている。

 「いいなあ。わたしも乗ってみたいな」
 「淺川って人みたいになりたいからかな」
 「ち、違います!淺川なんて人知りません!もう!」

 二人の間で「淺川」という人物が話に出ることの不思議。
 ミナはナップサックから携帯電話を取り出して、画面を指先でくるくるとなぞる。爪を立てないように、優しく画面を扱うのが
どうもネコの間では難しいらしい。だが、慣れてくるとそれも気にならなくなるという。 

 「わたしはハルちゃんみたいな大きなカメラは扱えないけど、これでハルちゃんを撮ってあげるね」
 「じゃあ、わたしはミナさんを撮る!」
445ゆきうさぎ ◆TC02kfS2Q2 :2011/08/13(土) 16:35:51.35 ID:0yTL6TaH
 ミナは最新の携帯電話、ハル子は使い慣れた大きなカメラ。お互いに向かい合って構えると、ハル子は「ちょっと待って」と
レンズのキャップを取り忘れていたことに気付く。ミナがそれを笑うと先にシャッターを切る。畳に座った子うさぎが慌てる。
 「ずるい!」と憤慨したハル子は仕返しするようにミナをファインダー越しに怒ってみせたが、その姿さえもミナの携帯電話に
納められてしまった。その姿を見せようとハル子にミナが画面を向ける一瞬のこと。

 「あ!淺川!」
 「どこどこ?」
 
 携帯電話のフォルダに納められた淺川の写真がまぶたに焼きつくぐらいの短さでハル子に飛び込んでいた。
自分の愛車に腰掛けて、ニシシと笑うどうしようもない淺川の写真だった。どうしようもなくても、ハル子にはどうしようもなくもない。
 白々しくミナは「いないよ」と答えるとないしょの手紙を読むように携帯電話を隠してハル子のふてくされた写真を見せた。

    #

 明け方になるとゆきうさぎは姿をくらましていた。
 ハル子が言うには、ご先祖さまたちが美味しく頂いたらしい。小豆と夏みかんの皮だけが濡れた盆に残っていた。
 ゆきうさぎと一夜をともにしたミナのバイクも同じように玄関先に姿は無い。

 ミナが過ごした畳の部屋は布団と小さな子うさぎだけが居た。
 大事そうにカメラを抱えて、すやすやと明け方の光を受けながら夢を見る。
 ミナの代わりに一枚の手紙が。大人の文字で「ハルちゃんへ」と宛名が記されていた。

    #

 ハル子が住む島を背景にしてミナは愛車で海岸沿いを走る。潮風が毛並みを傷めるのも旅の味わいのうち
登り始めた太陽の光がバイクのミラーで跳ね返されて、磨かれたむき出しのエンジンを照り返す。
 次の街に着いたら、まずコイツを洗ってやって……と考えながら加速する。シールドにびゅんびゅんと風が当たる幸せ。
 人気すら無い隣町への県道を道なりに走らせると、道端のウサギの看板を見てミナは忘れ物を思い出した。

 「ゆきうさぎの目が赤い理由を聞いてなかったっけ……」

 グリップを緩めて愛車を道の隅に止めると、ハル子が寝ている港町の旅館の方へ振り向いた。
 また次の夏会うときの言い訳にしないといけないね、と。


  おしまい。
446わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/08/13(土) 16:38:38.91 ID:0yTL6TaH
投下おしまいー。
447創る名無しに見る名無し:2011/08/13(土) 21:53:25.62 ID:R2b3AeVR
投下おつですー!
うさぎのお盆が肉食より早めとか、いろいろ考えられていていいすなー
448創る名無しに見る名無し:2011/08/14(日) 01:16:41.84 ID:K3wAwJok
うさぎモフりたいなモフモフ
449チースケ:2011/08/18(木) 20:53:27.14 ID:CK6uBTC8
http://rebellion0610.blog.fc2.com/

知り合いが新しく作りました。良ければ来てね♪
450創る名無しに見る名無し:2011/08/26(金) 09:52:48.42 ID:OGTbpOma
サルベージ
451わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/08/27(土) 00:01:01.60 ID:a8xh4zVo
三周年!投下します。
452リオとキツネと打ち水と。 ◆TC02kfS2Q2 :2011/08/27(土) 00:03:02.87 ID:a8xh4zVo
 校舎の窓に映る白い雲を見上げ、キツネの女子高生・小野悠里は肩に掛かるビキニの紐をゆっくりと摘んだ。
悠里は黒色のビキニが隠れるようにブラウスを羽織り、裾を胸元で結んでおへそを見せていた。学校指定のスカートと
合わせて着ると、何でもない服さえも少年誌のグラビアぎりぎりの色気を醸し出し、リオをはじめとして見るもの全てを惑わせる。
 学園でも一ニを競う豊かな胸がちらと見え隠れして、さりげなく悠里のスタイルのよさを見せ付けていた。
 
 きょうは学園の打ち水まつりの初日。集まったのは風紀委員長のウサギのリオとキツネの小野悠里、そしてちらほら程度だけだった。

 木の桶にひしゃくを片手に準備は万全。蒸し暑い校庭に水を撒いて、夏休みに勉学に励む生徒たちがちょっとでも涼しげに
思ってくれればと立ち上げられた風紀委員の企画。なにせ日頃から生徒指導に熱心な敵役の多い風紀委員だからか、それとも
せっかくの夏休みだから勉強を忘れてしまいたかったのか、リオが思ったほど人は集まらなかった。無念にも企画倒れか。

 「小野さんっ。学校だよ!」
 「ふふっ。すぐ赤くなるリオちゃんって、かわいい」
 「これは委員会の活動なんだから、わたしの言うことを聞いてくださいね!」
 
 メガネを光らせながら注意を促すリオの襟元のボタンを悠里はそっと外す。
 放課後お茶会とお友達の『まなべさん』や、とあるおねえさまと『くろこちゃん』はそんな着崩しはしません!と、
のど元までセリフを出しかけて、ぐぬうとリオは堪えた。周りの目がちょっとずきずきと突き刺さる。

 (これだから、おっぱいキャラは!)

 真面目のまー子のリオは、あまり悠里のことを咎めると周りから妬いているように見えると察し、ぎぎぎと歯軋りして黙認した。
それにこの企画は悠里から風紀委員長のリオに提案されたものだから、お願いごとは聞いておいてあげたいしと仕事はきちんとしたい。
 しかし、横から見ると悠里の胸と比べてリオのものがおこちゃまに見えてしまう。片足のかかとを上げる仕草が色っぽい。

 「リオちゃん。とりあえず、暑くなってきたから始めるよ」
 「……うん」

 空元気も元気のうち、リオはあまり乗り気でないものの、悠里やその他参加者を引き連れて校庭に出た。
空に浮かぶ白い雲がだんだん悠里に見えてきた。あれが耳、これが尻尾、それがおっぱい。地上をなぞるように見下ろす悠里の雲。
 大空に夢をはせるなら絶好の青空。健全な青少年なら翼があれば、優しい悠里へと飛んでゆきたくなると考えたくなるだろう。

 「ところで、わたしの夢。聞きたい?」
 「小野さんの」
 「ふふふ。わたしの夢は、かわいいお嫁さん。女の子の夢だよね」
453リオとキツネと打ち水と。 ◆TC02kfS2Q2 :2011/08/27(土) 00:05:39.29 ID:a8xh4zVo
 つや消しした黒ビキニの少女が言うセリフか。と、リオは水を撒く手を止めた。
 自分の夢はなんだろう。ついこの間、クラスの教師との進路についてのリーディングがあった。
 正直、リオはまだ何も決めていなかった。誰もが夢を抱いていると言うのに、焦りだけがリオを責める。

 「先生も……学生時代、委員長してたから因幡さんも教師とかどうかなあ」
 「なんですか、泊瀬谷先生。教師は風紀委員長の成れの果てですか」

 親身になって言ってくれたのに、ついついあたってしまった自分が恥ずかしい。

 「リオちゃんはフリルが胸元に付いた水着が似合うかもね。色は明るい黄色とか」
 「そ、そう?似合うかな」

 そう言われて嫌な気になる女の子はいない。リオだって、女の子の端くれだ。

 「水着のお披露目は女の子・夏のイベントだもんね」
 「夏のイベント……」
 
   #
 
 夏のイベントと言えば『こみけ』を真っ先に浮かべるリオにとっては、悠里はラノベやアニメのキャラのようなものだった。
ベタだけど、これを入れなきゃ読み手は納得しない!海!すいか割り!めがねっこ!そして、びきにのおねーさん!
リアルも二次元もあるんだよ。でもさ、本当はイベントに行きたかったのだ。近所のちょっと大きな街で開かれる『同人本即売会』。
随分前から狙っていた二次創作の薄い本。憧れのサークルがやって来るんだから、これは行くしかなかろう!
 だが、苦しいのだ。即売会と委員会の活動を天秤にかけると『委員長の事情』を選ばなければならない心苦しさがリオを締め付ける

 『正しいことをしたければ偉くなれ』。でも、偉くなったら好きなことが出来なくなるのよ……。

 学園のため、みんなのためにと自分の時間を割いて、怒られて、蔑まれて、そしてちょっと褒められて。委員長はやめられない。
薄い本がバタバタと群れを成して湾岸の埋立地の空を飛び去って、リオの元からだんだんと遠ざかってゆく。

 「さよなら、わたしの夏……。サイン本、欲しかったよおお」
 
 悔しさをぶつけようと自宅のソファーにて、たれ耳ウサギのぬいぐるみを後ろからハグしながらじたばたと暴れるリオ。
弟から「見たくも無いぱんつを見せるな」と叱責されると、リオはぬいぐるみを投げつけた。
454リオとキツネと打ち水と。 ◆TC02kfS2Q2 :2011/08/27(土) 00:09:04.05 ID:a8xh4zVo
   #

 「それっ」

 悠里の撒くひしゃくの水はきらきらと輝きなら弧を描き、粒となり、乾ききった地面を潤した。虹が微かに浮かび上がる奇跡。
もう一度、ひしゃくに水を汲もうと俯くと、ブラウスがはだけてビキニのラインが隙間から見える。無防備のようで守りを意識した
彼女の姿にリオは思わず見とれた。ぱっと打ち付けるポーズは子供のように無邪気で、動きにあわせて左右にしなる悠里の胸と尻尾は、
ゆっくりと揺さぶられるほど大人の余裕のようなものを感じるではないか。僅かに零れた水滴がブラウスを濡らし、柔らかい毛並みが
じっとりと透けて張り付いていた。通り過ぎる風がひんやりとする。二人のスカートを揺らしながら学園を涼しげに飾る。
 参加者誰もが悠里の艶姿に見とれて、打ち水まつりは初日を終えた。

 悠里と別れたリオは帰り道、同じく校門を潜る男子生徒の声を聞いた。
 声変わり前の青臭く、恥ずかしくなる声。

 「あしたもあの打ち水、やるのかなあ。タスク」
 「わかんない」
 「おめー、参加するだろ。ぜってー」

 リオは初めて悠里の気持ちが分かったような気がした。

 帰宅したリオはリビングに戻るとクーラーの恩恵を受けた。外の洗濯物を瞬時に乾かす夏の光線から逃れるひと時。
 刺すぐらいの冷気はいくらなんでも寒すぎるから、温度を上げろとテレビを見ていた弟に命じる。「いいところなのに」とふて腐れて、
弟はクーラーのリモコンに手を伸ばすと、彼はテレビの画面に食いついた。どうやら夏のイベント『こみけ』の特集らしい。
 画面には学校での悠里のような格好の子たちがポーズを取ってよい気分になっているところだった。ツイン逆三角の建物を背景に
戦利品両手一杯に夏を謳歌する人たちの映像は、リオにとってリビングを少々居心地悪くしてしまうのだった。
 それよりもリオは悠里の方ががスタイルも考えもはるかに自分より大人なことが羨ましく思い、テレビどころではなかった。

 「ほら、『ねーちゃん特集』だよ。嬉しいだろ」
 「う、うん……」
 「珍しいな。いつもなら『うるさい』ってキレるくせに」

 とみに。外は明るいのにガラス戸に水滴がぶつかってきた。
 だんだんと強く。水滴が創るレンズで快晴よりも余計に眩しい。

 「ほら!ねーちゃん!雨、雨!洗濯物!」 
 「ところでさ、マオ。学校に水着のお姉さんがいたら……どうする」

 何言ってるのと弟に呆れられる。

 お天気雨。別名・キツネの嫁入り。

 弟にせかされて、リオは雨振る青空の夏雲にに悠里の姿を見て洗濯物を取り込んだ。


  おしまい。
455わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/08/27(土) 00:12:47.78 ID:a8xh4zVo
ぼーなすとらっく

「コンビニとリオ」 http://loda.jp/mitemite/?id=2373.txt

さんしゅーねん!よろしゅう!投下おしまい。
456創る名無しに見る名無し:2011/08/27(土) 23:22:54.58 ID:ZAHuiY58
ゆうりおねぇたまくんかくんかしたいお!
457創る名無しに見る名無し:2011/08/28(日) 00:01:58.51 ID:g/YA99NW
夏はおねえさまの季節やで!!
リオの翻弄されっぷりが好きや……!
458創る名無しに見る名無し:2011/09/05(月) 22:46:31.66 ID:iJ9HW9cw
塚本「あれっ?」

来栖「あん?どうした?」

塚本「もしかして夏休み終わってね?」

来栖「……夏休みならなんで今学校で会ってんだよ」

塚本「マジか、登校日かと思ってた!」

来栖「…………」

鎌田「夏は短いよねぇ。僕は夏が一番好きだよ」

塚本「秋には死ぬもんな」

来栖「虫は儚いなぁ」

鎌田「いやいやいや、死なない、死なないよ」

塚本「嘘こくなよ。秋の枯れ葉バージョンのカマキリは見たことあるけど、冬季対応のカマキリなんか見たことねーぞ」

来栖「そうだそうだ。ライダーお前スノボー出来んのかよ」

鎌田「いやそりゃ冬季カマキリはいないしスノボーはやったことないけど」

塚本「短い付き合いだったな、ライダー」

来栖「葬式にはポインセチア献花してやるよ」

鎌田「初等部からの付き合いじゃん!?目の前で7回か8回は冬越ししてるでしょうが!そんでクリスマス的な献花やめてよ!」

塚本「おいおいライダー、アツくなるなよ。ただでさえヒーローオタとかウゼェんだから」

来栖「触角がみょんみょんウゼェんだから」

鎌田「触角は関係ない、全く関係ない」

ザッキー「確かに長いな」

来栖「な、ザッキーでもそう思うよな」

ザッキー「前髪は目に架からない程度と決められているからな。よし、切ろう。跳月先生、ニッパー」

跳月「ほいきた」

鎌田「待って、ストップ理不尽なバイオレンス。目が完全に隠れるほどの長さの人もいるでしょうが」

ザッキー「先んじて眼隠れキャラとして定着しているものはこの限りではないって書いてあんだよ」

鎌田「嘘でしょ!?」

ザッキー「嘘に決まってるだろ。そんなストレートな返しじゃつまらんじゃないか」

塚本「ほんと、ライダーはライダーだなぁ」

来栖「いつまでたってもライダーのまんま」

鎌田「何この敗北感」
459創る名無しに見る名無し:2011/09/06(火) 00:09:18.36 ID:d7py2lNH
\キャー/ \鎌田カワイイー/
460創る名無しに見る名無し:2011/09/06(火) 06:03:51.51 ID:CckfeOHS
なんだこれw
461創る名無しに見る名無し:2011/09/06(火) 08:35:23.83 ID:P+xBK+3i
アバンギャルドすぐるww
462創る名無しに見る名無し:2011/09/06(火) 22:39:31.50 ID:WC+MIgCi
リオ「いい季節になったね、ミサミサ。涼しくなったし、新刊ラッシュだし、食べ物も美味しいし、まさに『天高く馬肥ゆる秋』……あっ」
番場ミサコ「え?」
リオ「いや……なんでもない」
ミサコ「因幡先輩、わたしは気にしていませんので」
リオ「う、うん。ごめん」

その日の放課後。

ミサコ「めーん!!どーお!!こてー!!すねー!!」
なぎなた部員A「あの……。番場さん、練習時間は過ぎているんですが」
なぎなた部員B「ってゆーか、いつもより声でかくね?」
部員A「そろそろおしまいにして、帰りにクレープでも食べません?」
ミサコ「めーん!!どー……。クレープですって。部員Aさん!寄り道よりも、わたしと互格稽古しましょう!!」
部員A「い、いやああ。やっぱり、きょうは用事が……えええ?ちょっと!Bちゃん!待ってえええ」
ミサコ「さあ。面を着けて!秋は少しでも体を絞らなければなりません!」
部員A「ちょ、ちょおお!番場さーん!」

体育館を覗き込むリオ。

リオ「わたしのせい、わたしのせいだよね……。ひーん」
463創る名無しに見る名無し:2011/09/07(水) 05:44:44.84 ID:0ez35PKg
天高く馬肥ゆる秋、我史上最大の体重
464創る名無しに見る名無し:2011/09/08(木) 23:23:15.30 ID:31rPe6yX
465創る名無しに見る名無し:2011/09/09(金) 00:22:18.26 ID:QRH3bBP4
おお、久しぶりの単発作品ではないですか
どちらかと言えばケモノより後ろのレディーが気になりますがw
466創る名無しに見る名無し:2011/09/10(土) 16:15:06.90 ID:M7xxBwPT
確かにw
467創る名無しに見る名無し:2011/09/11(日) 22:36:18.60 ID:ogJ5JwRH
はづきち「世界がサザエさん時空なら良いのに」

コレッタ「サザエさんじくう?なにかにゃそれは?」

はづきち「僕はまだ彼女との結婚を考えなくてもいいし、コレッタは大人にならなくても済む世界のことだよ」

コレッタ「わかんないにゃ」

はづきち「仮に時間が螺旋を描いて徐々に進むものだとして、その螺旋を円環にしてしまったような世界だよ」

コレッタ「???」

はづきち「時は一年という周期で元の位置に還り、過去一年に積み上げられた事実もその地点で元に戻る。そんなお伽話みたいな世界さ」

コレッタ「とりあえず、シロ先生が喜びそうな世界だにゃ」

シロ「お前にもわかる日が来るさ……三十路街道は299792458m/s(光速)より速いぞ…」

コレッタ「にゃ!?し、シロ先生、聞いてたにゃ……?」

シロ「そうだ、コレッタ、虫歯検診をやろう。私が舌でなぞって調べてやろう」

コレッタ「にゃ!にゃにゃにゃ!!?」

シロ「悪い口は消毒しなきゃなぁ(じゅるり」

はづきち「やめときなさい」
468創る名無しに見る名無し:2011/09/12(月) 03:32:28.52 ID:4efi+0sI
ホントにやめとけw
469わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/09/13(火) 21:36:15.65 ID:96/guL68
勢い余ってババアが可愛いすぐる!


日にちが過ぎたけど、まあいいか!
投下するよ!
470月と牙。 ◆TC02kfS2Q2 :2011/09/13(火) 21:38:16.80 ID:96/guL68
 「いけないことばかりしているのかな……。わたしたち」

 学園の誰も使っていない古ぼけた小部屋。
 片隅のには一日を終えた学生カバンが二つ折り重なる。傍らには秋の匂いのサブバックが学生の本分を詰め込んでいる。
飛び切り新しいというわけでもないが、使い古されているというわけでもない。きれいに使用されている合皮のカバンの持ち主は、
学園でも「お姉さん」の香り漂う、女子生徒らのもの。彼女らもカバンと同じように二人折り重なって、秋の匂いを確かめ合う。

 クロネコの佐村井美琴(みこと)、イヌの大場狗音(くおん)。人知れず、彼女らは集い確かめあう。何を?
 言葉は少なく、お互いのことは口で分かり合う。どうやって?
 ケモノのハートを揺さぶって、ケモノの瞳で見つめあう。何故に?
 
 『甘噛み同好会』の過ちに、疑問を持ってはいけない。
 背徳の香りすら鼻腔をくすぐらせる『甘噛み同好会』は、答えなど期待していないのだから。

 「ホント、わたしたち。いけない子ね」
 「くーちゃんが咎められても、わたしがいるから大丈夫」
 「ミコったら。そういえば、今日は9日だから『くーちゃんの日』よ。ご褒美とかは?」
 「ふふふ」

 二人して机に腰掛けて寄り添って、美琴は左手で狗音の太ももを指でなぞり、右手で狗音のポニーテールを掻き揚げる。
晒された狗音のうなじに爪を立て、気がひるんだ隙に首筋にそっと牙を立てる。「あん」と小さな声をあげると美琴は
得も知れぬ興奮を感じ、さらにもうひと噛み。もじもじと太ももを擦り合わせ、紺ハイソックスに包まれた脚を上下に動かしていると、
狗音の上靴が右片方がころりと床に転がり落ちる。構わずに狗音は美琴の牙を求め続け、頬を差し出すと願った通りに美琴は口をつける。

 「くーちゃんばっかり、ずるい」
 
 獲物を狙い済ましたケモノの瞳、吸い込まれてしまったほうが狩る側のほしいままにされることは道理。
照れを隠せずにはにかむ狗音に美琴は容赦もせずに砂糖菓子のような瞳と、氷のような牙で彼女を虜にした。
 テーブルには飲みかけのオレンジジュース。からりと氷が溶けて崩れる音がした。
 放課後の学園は甘ったるくて、アンニュイな時間が流れる。

 「ミコ。いいこと考えたの」
 「何かしら」
 
 狗音はグラスから氷を一欠けらつまみ上げ、口の中に含んだ。口元を押さえて氷を口にしたまま美琴の二の腕に口を沿わせ、
白い牙を滑らかに押し付ける。美琴の腕に狗音の前髪が触れてくすぐったい。それと同時にひんやりとした狗音の口元が美琴を責める。
 あごを上げて恍惚とした表情を浮かべながら、狗音の牙使いに美琴は深く堕ちていった。
 
 「冷たくて、気持ちいいよ。くーちゃん」
 「いけない言葉ね。ミコ」

 9月9日、金曜日の放課後。
 下校を促す校内放送が二人に聞こえてきた。

 「きょうはおしまいだね。見回りの風紀委員に怒られちゃうし」
 「そうね。じゃあ、また来週ね。ミコ」

     #
471月と牙。 ◆TC02kfS2Q2 :2011/09/13(火) 21:40:18.89 ID:96/guL68
 土日をはさみ、翌月曜日・9月12日の昼休み。
 美琴は秘密の小部屋に花を飾ろうと一人でやって来た。いつも一緒の狗音は坂の下のコンビニへとお買物。
 「どうしても欲しいものがあるの」と言い残して教室と美琴をチャイムと共に後にした。美琴はニコリと狗音の後姿を見守ると、
教室片隅に置いてあった秋の花の束をバケツから取り出した。あたり一面に花の香りが漂うお昼休みのひと時。
 花を胸に、秋風を尻尾に、遠くから聞こえてくる声を耳に美琴は人気の無い廊下を歩く。ぎしぎしと上履きで鳴らす木目の感触。
きょうも放課後は狗音と一緒に時間を共有しようと、美琴自身はもう既に放課後タイムの真っ最中だった。
 
 「あれ」

 おかしい。秘密の小部屋に誰かいる。僅かに開いた扉。不審に思いながら美琴は小部屋に近づくと、見覚えのある後姿があった。
長い耳、ショートの髪、ひくひくと震える丸い尻尾。ウサギの子だ。美琴はネコ、静かに覗き見するのは得意中の得意。
美琴が確認したのは風紀委員長である因幡リオであった。美琴と狗音が愛用する机に窓に向かって腰掛けて、背中を丸めているリオは、
南の空に浮かぶ正午の太陽に照らされて、シルエットとなって美琴の瞳に浮かんでいた。
 
 (あら……。風紀委員に見つかっちゃったのかな、この部屋)

 静かにため息をこぼし目をつぶり、「仕方ないよね。勝手に使ってたのはわたしたちだもの」と、美琴は教室に戻った。
 しかし、長い耳のウサギはその音を聞き逃さない。ため息の声さえも。
 くるりと短い髪を揺らして振り向いたリオはメガネ越しに目を震わせて、手元のPSPをしっかりと握っていた。PSPからは
白いコードが延びて、リオの耳に繋がっていた。リオのPSPを持つシルエット姿は、幸い美琴にははっきりと見えていなかった。

 「音量を下げててよかった……」

 ゲーム……ではなく、アニメの動画をこっそりと堪能していたリオは背中に涼しい風を受けて、背筋を凍らせた。
 誰も来ないと思ってたのに、だから話題のアニメのDVDをPSPに落として秘密の小部屋で見てたのに。今見といておかないと、
ネットの話題に遅れるんだもん!こうした僅かな時間を利用する熱心なファン活動こそ、もっと評価されるべきだとメガネを光らせて
小さな画面に浮かぶ二次元キャラに思いを寄せていた。雑誌のおまけで付いていた秋の新番組プロモーションのDVD。
宣伝のわりには豪華なクオリティで、もしかして第0話?といっても申し分ない内容だった。

 「#01『ているず・LOVEつづきっ』は無印よりもまして際どいなあ。プロモ用だからやりたい放題だよ」

 雑誌についていた解説のブックレットを背中を丸めながら覗き見る。それぞれ15分ほどのミニムービーに秋の期待を込める。

 「でも、なんで#03『書痴探偵』、ウチの地域は放送しないの?ち、ちくしょおおおお!」

     #

 「そう……。残念だったね」
 
 狗音が買物を済ませて教室に帰ってきた。腰にカーディガンを巻いて歩く姿はコンビニの袋を持っていても絵になるスタイルだ。
 小部屋に飾るはずだった花を教室の棚へと花瓶に生けた美琴は、狗音にことの一部始終を話した。
 狗音は残念がるどころか、くすっと手を添えて笑みを浮かべコンビニの袋を机に置いた。がさっと音を鳴らしたビニル袋から
小さな大福がころりと顔を覗かせた。ふと……美琴は白く丸い誘惑のかたまりを見て合点がゆく。

 「そっか。きょうは」
 「ね。因幡さんたちには特別な日だし、あの部屋って街の明かりに影響されないしね」
 「そうね。いい夜になりそうだし、きょうは因幡さんに譲っちゃお」
 「うん。しっかりものの因幡さんのことだから、お昼休みを使ってまで入念に準備していたのよね」

 転がる大福を毛糸の玉に見紛った美琴は片手でくいっと追いかける。狗音はその姿が子ネコのように愛らしく見えた。

 「大場さん!佐村井さん!昼休み明けは移動教室だよっ!1分遅れるとはづきちの屁理屈が長くなっちゃう!」

 次は化学の授業。教科書、ノートを抱えたウサギの風紀委員長がうるさいので、美琴と狗音は大福は後まわしにして
学生カバンから教科書とノートを取り出して、教室を後にした。

     #
472月と牙。 ◆TC02kfS2Q2 :2011/09/13(火) 21:43:34.73 ID:96/guL68
 12日月曜日。すなわちその日の放課後、人気の無い下駄箱の陰でリオはひっそりと携帯をいじっていた。
 デートの約束?そんな訳無い。かちかちと片手で文字を打っては直し、打っては直しを繰り返す。

 「むはあ!じゃあ、今夜9時からだよ!……と」

 この時間なら学生も社会人も大丈夫だろう。折角の夜だからみんなで揃って見たいもんだ。
涼しくなってきた頃だから、秋の夜長をのんびり過ごすのもよかろう。秋という季節は涼しくなる分、
人々を優しく温かい気持ちにさせてくれる季節なのかもしれない。リオは夜が待ち遠しくなった。

 「じゃあ。9時きっかりにDVDをスタート。ここでまた会おうね!……よしっ。リプ返しおしまい!」

 リオは携帯の画面の中を飛ぶ鯨を見て「いやー!混雑しないで!」と焦っていた。
 
 「ふう……。9時から『書痴探偵』のプロモDVDを見ながらみんなと一緒についーとして、10時からは
  『ているず・LOVEつづきっ』のアニラジ配信をチェックして……。むはあああ!だから、改編時期の秋は大好きだよっ」

 しまった?声が大きすぎた?と自重しながらリオはリプを受け取った。

 「じゃあ、今夜は楽しくね!……と」

 その側を美琴と狗音が通りがかる。いつもの小部屋に立ち寄ることを中止して、他の場所で『甘噛む』つもりだったのだ。
放課後スタイルの二人は足並みをそろえて下駄箱に歩み寄る。片手にブランドものの紙バッグをぶら下げている姿から、
誰もが『甘噛み同好会』などで活動しているとは想像できないであろう。下駄箱から狗音がローファーを取り出そうとすると、
誤って片方床に落としてしまった。コン!とすのこに靴のかかとが当たる音が響き渡ると、驚いた長い耳が下駄箱の陰から見え隠れした。

 「因幡さん?」
 「ひんっ?」
 
 狗音はリオにびっくりさせてごめんなさいと頭を下げたが、リオはリオで独り言を聞かれたのではないのかとひやひやしていた。
 一方、美琴は「もしかして、デートの約束?」と冷やかすが、リオは黙って首を横に振るだけだった。

 「ああ。そう言えば、因幡さんたちは今夜は特別な夜だもんね」
 「う、うん……」
 「みんなで見るのって楽しそうね」

 今夜はみんなで見るんだ。
 そして、みんなであーだこーだと呟きながら、秋の夜長の片隅でひんやりとした時間を楽しむんだ。
 リオは背中にむずがゆいものが走る気がしてきた。床に落ちた靴を揃えて、狗音はリオに声をかけた。

 「じゃあ、楽しんでね。お月見」

 狗音の言葉でリオは救われたような……。
 とんだ、勘違い。
 携帯片手でリオは足並み揃えて校舎から去ってゆく大人びた二人を見送っていた。

 「大丈夫だよね?大丈夫だったよね……?」

     #




473月と牙。 ◆TC02kfS2Q2 :2011/09/13(火) 21:47:59.83 ID:96/guL68
 「うん。大丈夫」
 「じゃあ、今晩ミコの家でね」

 一見、美味しいお菓子でも頂く約束をしているのかもしれない。
 一見、いっしょに勉強でもする約束をしているのかもしれない。
 学園の側を走る市電の中、狗音と美琴はつり革に捕まってカーブに揺られながら、今夜の『甘噛み同好会』の約束をしていた。
ごくごく普通の会話をしているのに、内容はちょっといけないこと。そんな背徳感が二人を金曜日までの期待で胸を膨らませる。
 足元から響く電車のモーターが靴越しに二人の脚に伝わって、魔性の夜への誘いなんだと体に言い聞かせた。

 折角の月見の夜だから、月の力を借りていっしょに時間を共有したいし。
 折角の十五夜だから、月光の元牙を確かめ合いたいし。

 ゆらゆらと左右に揺れながら市電は走り、二人の娘の尻尾を揺らし続けていた。

 「いけないことばかりしているのかな……。わたしたち」
 「いけない子だよね、わたしたち。因幡さんみたいな良い子にごめんなさいしなきゃ」
 「ミコが謝るなら、わたしも謝るよ」
 「うん、いいの。そんなことより、いつもより強く……」

 狗音はブランド物の紙袋から包装されたままの大福を取り出して、ぎゅっと美琴の口に当てて塞いだ。


   おしまい。


   
甘噛み同好会さんたちをお借りしましたが、これでええんか?ええのんか?
投下おしまい!!!
474創る名無しに見る名無し:2011/09/13(火) 22:47:52.06 ID:YLi9ePKM
投下乙ですー
いろんな意味のドキドキ感が楽しいw
475創る名無しに見る名無し:2011/09/14(水) 02:54:09.46 ID:DO5wDM1u
アウ……セー……
エロいからセーフ!!
476創る名無しに見る名無し:2011/09/14(水) 12:52:35.42 ID:6jdkpAvH
あまがみ同好会!ええやないですか!
なんてアダルティな同好会
477 ◆TC02kfS2Q2 :2011/09/14(水) 22:20:07.22 ID:xIUwavww
ttp://www19.atwiki.jp/jujin/pages/399.html  

……の設定をお借りしたんや(左がミコ、右がくーちゃん)。
って、2年以上前のネタやったんやな…。
478創る名無しに見る名無し:2011/09/14(水) 22:27:07.62 ID:cWnhmqPl
479創る名無しに見る名無し:2011/09/14(水) 22:41:39.04 ID:xIUwavww
>>478
え、えろいいい!
480創る名無しに見る名無し:2011/09/14(水) 22:50:10.56 ID:6jdkpAvH
絵になるエロさ!
481創る名無しに見る名無し:2011/09/14(水) 23:54:28.73 ID:MUyiVJkf
これはいい色香
482創る名無しに見る名無し:2011/09/15(木) 03:14:56.95 ID:AiCWYneL
      _ ヽ\ |\
      \\| |/ |
    _ \    |    これはまぁセーフかな。
    \ ̄/ ̄ ̄ルヽ    
      /  (◎/ ̄ ̄~ヽ
     /     ト、.,.   \
   =彳      \\    ヽ  
  , /         \\   |  
   /        /⌒ヽ ヽ  |  
   |         |   | |  /
  /         \   \|/

483創る名無しに見る名無し:2011/09/18(日) 19:10:13.26 ID:ju2dwr1O
最近出番ないなあ。



\はっせやーん/
484創る名無しに見る名無し:2011/09/18(日) 19:14:14.04 ID:EZDw3507
485創る名無しに見る名無し:2011/09/18(日) 19:56:22.09 ID:X1wUpuO/
はせやん出番多いほうじゃね?
486創る名無しに見る名無し:2011/09/18(日) 20:34:25.28 ID:hgPDh1qf
>>484
かわいい
487創る名無しに見る名無し:2011/09/18(日) 23:01:33.54 ID:AnIQ+tkb
>>484
せくしーと真面目ちゃんのコンビって萌える。

>>458
もっとはじけさせなきゃ!
488創る名無しに見る名無し:2011/09/19(月) 03:24:25.73 ID:9kZq7ojO
>>484
ゆりさいこうっす!!
ハァハァハァハァ
489創る名無しに見る名無し:2011/09/21(水) 00:40:23.22 ID:vXP5TkkH
おねぇさま達は百合百合でしとやかやのう
クロやケンタはおしとやかとかそういう要素皆無なのにw
英先生は百合の先輩として二人をどう思っているのかしら
490創る名無しに見る名無し:2011/09/23(金) 08:32:53.37 ID:dr387BCG
リオ「白先生、映画『モテキ』見ましたか?」

白「いや……。まだ見てないが」

リオ「先生も来るといいですね」

白「どういう意味だ!オキ…うう、切れてる。後で買って来るか」

リオ「(ひやひや…)。そういえば保健室前の廊下にこんなポスターが」
 
   二人廊下に出る。

白「なんで『モテキ』のポスターが貼ってあるんだ」

リオ「よく見てください。おみこしを担いだコレッタにクロ、ミケ、ヨーコちゃん。おみこしの上には白先生」

白「ちょっと、おみこし買って来る」
491創る名無しに見る名無し:2011/09/23(金) 14:08:21.25 ID:DtBuFSy6
買うなw
492創る名無しに見る名無し:2011/09/27(火) 12:30:14.01 ID:nUfXdCgh
そういえば夏休み明けに学園祭やらなかったな
運動会もやってないし
なんかやらないか?
493創る名無しに見る名無し:2011/09/29(木) 07:48:44.91 ID:wvhqAJTo
じゃあ、チアリーダーを葉狐たんで。
494創る名無しに見る名無し:2011/09/29(木) 07:57:24.43 ID:8jt9qpZT
俺ぶっ倒れるんでババァよろしく
495創る名無しに見る名無し:2011/09/29(木) 23:22:07.98 ID:5HrVBnm9
496創る名無しに見る名無し:2011/09/29(木) 23:39:32.85 ID:yaUTVRlL
ハァハァ
ってかこれはいてn
497創る名無しに見る名無し:2011/09/29(木) 23:41:11.03 ID:WD1rAEFg
見え……?!
履いてない!!!!!!!
498創る名無しに見る名無し:2011/09/30(金) 00:26:51.52 ID:zfOTHL04
こんな娘が応援してくれたら燃える
萌えるじゃなくて燃える
499創る名無しに見る名無し:2011/09/30(金) 15:41:46.18 ID:mDVgJVMt
こんなチアガールがいたら雨天でも決行
500創る名無しに見る名無し:2011/09/30(金) 19:37:47.27 ID:ymZa4/2O
これはきわどい
501創る名無しに見る名無し:2011/10/01(土) 00:44:20.08 ID:xu+mMVpJ
毛色の境目がヤヴァい
脚先の黒さとかもうねもうね
502創る名無しに見る名無し:2011/10/04(火) 21:15:19.09 ID:l2IZSIMa
スポーツの秋、庭球部。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=2516.jpg
503創る名無しに見る名無し:2011/10/04(火) 21:20:23.19 ID:R7zgoYs/
高等部の野球部のエンブレム誰か作ってくれませんか
504創る名無しに見る名無し:2011/10/04(火) 21:42:25.29 ID:vhvYp69G
得手さんとヒカルくんがテニス対決をしました。

得手「さあ!もっと熱くなれよ!本気になれよ!」

ヒカル「……」

(スコーン!)

得手さんの球をヒカルが打ち返せず。

ヒカル「……」

得手「だめだめだめ!諦めんちゃだめだ!出来るんだ、出来ると信じるんだ!」

ヒカル「……」

まわりのみんな「あの二人(イヌとサル)、仲がいいんだか悪いんだか…」
505創る名無しに見る名無し:2011/10/04(火) 22:00:24.19 ID:pUl/F0lF
すまん、なぜかコネックスに吹いたw
506創る名無しに見る名無し:2011/10/05(水) 08:34:44.49 ID:uZMul89i
>コネックス
細かいwww
得手さんはその身長と長い手足をいかしたパワーテニス。
隣のワン娘さんは小柄だけど右に左に走り回ってコートをカバー。
そんな相性バッチリの二人がコンビを組んで
ここいらの高校庭球部を震え上がらしちゃうよ。
507創る名無しに見る名無し:2011/10/05(水) 17:11:39.27 ID:50x48O+t
もう片方はミズノっぽいが解らんかったw
508創る名無しに見る名無し:2011/10/05(水) 19:59:02.24 ID:q0rRGJTp
よく見たらコメックスじゃないか
509創る名無しに見る名無し:2011/10/05(水) 20:13:29.23 ID:ZRKm2K3E
ほんまや……!
二重に罠を仕掛けるとはさすが……。
510わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/10/07(金) 23:20:20.71 ID:TegaSA8Q
体育の秋を忘れていたわけじゃないのよー。

以下、投下。
511ヒカルとバイク乗り ◆TC02kfS2Q2 :2011/10/07(金) 23:22:45.13 ID:TegaSA8Q

 仕事をサボった杉本ミナは、愛車に跨り街並みと街並みを風切って走っていた。

 「お父さん、お母さん。ちょっと悪い子に育ててくれてありがとう」

 Tシャツが涼しかった頃が懐かしい。懐かしいとは大げさかもしれないが、季節の移り変わりだから仕方が無い。

 「ミナはこれから、仕事を……忘れに行きます」

 仕事はバイク屋、自宅もバイク屋。家に居ても仕事と離れられる環境ではないので、要は家からちょっと離れたかっただけだ。
気まぐれな性格なもので、空が青かったからと父親に言い残し小さな旅の支度をする。ネコだから、ふらっと出たって不思議ではない。
 ネコの家だからお互いのことは干渉せず、父親もミナの気まぐれをさほど気にはしていなかった。

 自分と同い年ぐらいの者たちは今頃仕事に汗流している時間だというのに、自分だけの時間を築いて風で吹き飛ばすのは快い。
大通りは昼間だから閑散として走りやすかった。通りの中央を走る市電も運転士と僅かな客を乗せているだけで、モーターの音が
街の隙間に響き渡る。嫉妬をしたのかミナはスロットルを廻し、意味もなくヒマそうな市電と競争をしてしまった。
 市電の方がミナの跨るエストレヤより随分と年上なのに、胸を貸すようにミナを先へと譲る。

 品性正し過ぎる大通りに飽きて、ちょっと捻くれた脇道に入ると望みどおりの手ごたえを感じる。左手に丘を見ながら曲がり道も多く、
未だコンクリートで固められた道を走り続けると、学生たちが下校している姿がちらほらと見えてきた。この辺は学校が近い。
 制服ではなく、ジャージや体操着のまま下校している生徒がちらほらといた。紅白の鉢巻を通学カバンにくくりつけている女子もいる。

 「そっかあ。もう、そんな季節なんだ」

 彼らに気をつけながらスピードを緩めると、見飛ばしていたものが見えてきた。さらにブレーキを握り、クラッチを切る。
 街中ながら曲がり道が多い丘陵地域、耳を突き抜けるエンジンの音がミナの気持ちを高ぶらせ、学生時代を思い起こさせていた。
自由との引き換えに財力を。でも、財力は新たなる自由を生み出すことも出来る。バイクのおかげで。

 「あれ?ヒカルくん?」

 顔見知りのイヌの少年が、自転車を脇に止めてしゃがみこんでいた。ペダルを乗ってくるくると廻すも、後輪は空回りをしている。
カチカチという刻むような音だけがヒカルをせせら笑うように鳴り続けていた。自転車のチェーンが外れるなんてよくあることだ。
だけど、思いもしないときに出会うのはちょっと勘弁して欲しい。
 あまりいじくると自分の白い毛並みが汚れてしまう。お年頃の男子は過剰なぐらいに毛並みの汚れを気にする。

 「外れちゃった?もしかして」
 「あ。杉本……ミナさん?」
 「いかにもー。杉本ミナでーす」

 バイクに跨ったミナから話しかけられたヒカルはペダルを廻す手を止めて、イヌ耳を彼女のほうに向けた。
 ヒカルはそんなに表情を表に出さない子だ。逆を言えば、気を許した相手にだけ表情を露にする。
 ミナはヒカルの気持ちが分かっていた。

 ミナはバイク屋の娘だ。
 機械いじりなど、生まれたときから見続けていた。ヒカルを困らせる事態なんて、ミナにとっては見飽きたもの。
うずうずとライディンググローブからネコの爪が突き抜けそうであり、ミナはとてもじゃないが我慢出来ない。
512ヒカルとバイク乗り ◆TC02kfS2Q2 :2011/10/07(金) 23:24:52.15 ID:TegaSA8Q
 「わたしに直させてくれるかな」
 「……え?」
 
 ヘルメットを脱ぐと金色の髪がふわりと襟首に広がる。バイクに跨って居たときとは違う表情だ。ミラーにヘルメットをかけて、
エンジンを止めるとヒカルと一緒に自転車の横にしゃがみこんだ。仕事に向かう顔は獲物を追う姿に似ていた。

 「どのくらい乗ってる?」
 「結構……」
 「へえ」

 変速つきのシティサイクル。チェーンはカバーで覆われている。とりあえず、ミナはバイクのシートを外して車載工具を取り出した。
シートが外れる光景にヒカルはちょっと意外そうな顔をして、ライディンググローブを外して本気になったミナの腕を見守ることにした。
 このお年頃の男子には堪らないメカ。ヒカルも例外ではない。鋼がかみ合う曲線美、吸い込まれるのではないのかと錯覚する
マフラーの光り具合、良い旅へと誘うシート。そして頼もしく唸るエンジン。ヒカルは自分の自転車とミナのバイクをちらと見比べた。
 男性の野性味あふれるマシンのメーカーだというのに、ミナのバイクは女性らしい優しさと勇敢さがヒカルを揺すぶらせる。

 ふと、ヒカルは考えた。
 自分もバイクに乗ることが出来たなら、自分と想い人それぞれのバイクに乗って、いっしょにそれぞれの風を感じてたい、と。

 二人いっしょに海岸沿いの道を走る。エンジンむき出しのネイキッドだが、粗暴さはない優等生の黒いバイクにヒカルは跨る。
教習所で初めて乗ったマシンと同じ型、四気筒のエンジンが揺れ動くのが体全体でひしひしと伝わってくる。
 ヒカルは自分のバイクの音を確かめて、後から続く想い人が付いてくるのを耳で感じる。ヒカルの無垢な尻尾が潮風になびいて、
彼女も必死に追いかける。スロットルを緩めカーブミラーの側でバイクを止めて見上げると、ミナと同じ型のバイクで彼女が
だんだんと近づくのがミラーに写っていた。ぎこちないブレーキ裁きで彼女は走り足りないバイクを落ち着かせ足を着く。
 彼女のレトロ調のマシンは、隅々まで磨かれて主の几帳面さを体現していた。

 「こらー。ヒカルくん、速いぞ」
 「……」
 「250と400じゃあ、しょうがないよね。でも、ヒカルくんの後姿を見ていたいから、先生ずっと付いていってあげるよ」

 ヒカルが想うのは先生ではなく一人の女の子だ。確かに250ccのバイクに跨っているのは、教壇で現代文を教えている先生だ。
でも、今はそんなことを吹き飛ばしてもいいじゃないか。ヒカルは黒いヘルメットを脱ぐと、自分の顔が写りこむほど磨かれた
グラマラスなボディ自慢な黒いタンクの上に置いて、肌寒くなった潮風の恩恵をイヌ耳で受ける。風の音を改めて聞きなおす。
 一方、彼女はライディンググローブを外し、ヒカルと同じようにヘルメットを脱ぐと同じ潮風にショートの髪がなびく。
彼女はネコだ。ネコ故に不安になるとちょこっと爪を伸ばしてしまい、がりがりがりとタンクに爪立てる。その姿は子ネコ。

 彼女が懸命になる姿を見ていると、先生を好きになってよかったのか悪かったのかがヒカルには判断が付かなかった。
バイクから降りて彼女の方へ近づいてと「だめっ?」と軽く胸にネコパンチをお見舞いされた。
 「いつか、わたしもヒカルくんみたいに乗ってみせるんだ」と、バイクのミラーで崩れた髪形を整えて白い毛並みを自慢する。
冗談めいてヒカルは子供のようなオトナをからかうと「女の子なめんなよー」と照れながらお返しを頂いた。

 お互い尻尾の付け根に結んだ色違いのバンダナ。ヒカルは水色、彼女は桃色。後姿でも分かるようにと、彼女が提案したものだ。
初めは「恥ずかしいですよ」と拒んだもの、彼女が無邪気に見せびらかすので付けてもらったものだ。だからお返しに付け返した。
 誰も知った顔がいない田舎道。エンジンの音を止めると波の音しか聞こえてこないような田舎道。
 

 「先生」
 「先生じゃないよっ」
 「ごめんなさい」
 「えへへ。ヒカルくんは相変わらずだね」

 バイクのタンクの上に折り重ねてあったライディンググローブがぽとりと落ちると、ヒカルはそっと拾い上げて我に返る。
 ヒカルの目の前には、先生なんかいなかった。海岸沿いでもなかった。そして、自分が乗りこなしていたのはバイクでなく自転車。
513ヒカルとバイク乗り ◆TC02kfS2Q2 :2011/10/07(金) 23:26:54.44 ID:TegaSA8Q
 「ヒカルくんは好きな子とかいるのかな」
 「……えっと」
 「好きな子とタンデムとかしちゃう?でも、ヒカルくんは一人で走るのが好きそうだからなあ」

 ミナは着々と修理の準備に取り掛かりながら、器用にヒカルをおもちゃにした。

 「『鉄の馬』って言いえて妙だよね。コイツと一心同体で海岸沿いを走ってるときなんて、ホントコイツったら嬉しそうだよ」
 「……うん」
 
 ヒカルがタンクに手を置くと、ミナは「撫でてもらってよかったな」というような顔をしてヒカルをからかった。
 「そういえば、今度ぼくも……」と言いかけるとミナは再び真剣に自転車の修理へと取り掛かった。

 ラジオペンチで器用にカバーが外されてゆく。さほど時間はかからない。露になった自転車のチェーン。左手で後輪の歯車に
チェーンを掛け直し、右手でペダル側の歯車にチェーンを引っ掛ける。外れないように抑えながらペダルをゆっくり廻すと自転車が
息吹を吹き返してきた。ペダルを廻しても十分な手ごたえがあるのだ。全てを終えたのにはさほど時間はかからない。

 「もしかしてチェーンが緩んでいるかもしれないから、今度はお店で見てもらったほうがいいよ」
 「あ、ありがとうございます。あの……」
 「御代はいらない!頂くならヒカルくんの出世払いでね!それか、ヒカルくんが騎馬戦でいいところを見せてくれる。か、だね」

 ぱんぱんっと手を叩くミナの毛並みは油で汚れていた。
 ヒカルもミナの一言でほっとしていた顔が驚きに変わった。

 「びっくりした?カンが当たったね。『そういえば、今度ぼくも』ってヒカルくんが言うから、何かに乗るのかなあって。
  ここに来る途中、体操着姿の子たちを見つけたから多分体育祭で乗るって言ったら、騎馬戦しかないよねーって。ね」
 「……はい」
 「ちゃんと、聞いてるよっ。女の子なめんなよー」

 ヒカルはミナに年齢の差をさほど感じなくなってしまったことに驚いた。

 「ヒカルくんのきれいな毛並みを汚しちゃいけないから」と、ミナは平気な顔をして言う。
 「ヒカルくんが砂埃に塗れながら闘ってるのもいいな」とも、ミナは平気な顔をして言う。
 ヒカルは近づく体育祭のことを考えながら、そしてミナの方を振り向きながら、尻尾をなびかせ自転車に乗って去っていった。

 「ホントは仕事サボりに出かけてたのになあ。わたしのばかばか」

 ミラーにかけたヘルメットを被ろうと手を伸ばしたが、自分の手のひらを見てそっと引っ込めた。


   おしまい。
514わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/10/07(金) 23:29:06.91 ID:TegaSA8Q
ヒカルくんが乗るとしたら、あーゆーのがいいと思うんだ。

投下おしまい。
515創る名無しに見る名無し:2011/10/08(土) 01:09:14.74 ID:MUJPKLFv
投下乙です!
うおーわんこさんの小説はなんかこう、こっちも恋してる気分にさせますね!
ヒカルくんももっと野獣になりゃいいのに
516創る名無しに見る名無し:2011/10/08(土) 04:43:28.13 ID:u8TwcvAR
最初に乗った車とかバイクってのは初恋の人に似て
いつまでも忘れられないものなんだなー、と経験者は語ってみる。
大抵の場合、経験値とスキルの低さが元で相手と心が通じ合えなくて
悲しい別れ(乗り換え)に至る所までそっくり。
その後、伴侶(愛車)を得て、あの頃をボンヤリと思い返した時に……。

……ナニヲカイテイルンダオレワ。
深夜テンションという事で許せ。
517創る名無しに見る名無し:2011/10/10(月) 08:12:33.61 ID:EHIygbKD
野獣のヒカルくん、想像できなねー。
むしろ、壁バーーーンってされる方かも。葉狐ちゃんやクロやリオから。
518創る名無しに見る名無し:2011/10/10(月) 08:13:39.06 ID:EHIygbKD
オゥ!
「できねー」だ!
519創る名無しに見る名無し:2011/10/11(火) 00:40:52.54 ID:EfLN6qpI
塚本とかバイクの教習通ってそう
520創る名無しに見る名無し:2011/10/11(火) 01:53:42.91 ID:FDLj0uS7
馬が鉄の馬に乗るとな。


は、さておき。

りんご→お洒落なカブ
リオ→ラビット
とか。
521創る名無しに見る名無し:2011/10/12(水) 00:19:28.66 ID:5glthKyl
522創る名無しに見る名無し:2011/10/12(水) 04:13:59.57 ID:+wS3cFun
ネタ細かいわwww
523創る名無しに見る名無し:2011/10/13(木) 01:35:49.19 ID:NyWwXeVj
塚本の面憎い顔がいい感じw
524創る名無しに見る名無し:2011/10/13(木) 20:54:38.58 ID:9MiN2gjH
>>521
アメ車は馬鹿が買うものを地で行っててワラタ
ちなみにクルマの名前がカマロとマスタング(野生馬)でキャラにかかってます
作者さんに代わっていちおー説明しておきます

525創る名無しに見る名無し:2011/10/14(金) 00:50:54.29 ID:1u+3YLOF
バイク派の俺はヒカルきゅんとツーリングしたいな。
526創る名無しに見る名無し:2011/10/14(金) 04:20:51.23 ID:wRUMhAHZ
俺は獅子宮先生と一緒に峠に朝練しに行きたい。
527創る名無しに見る名無し:2011/10/14(金) 16:49:28.75 ID:ygDrJegz
じゃあ俺はババァと一緒にコケるわ。
528創る名無しに見る名無し:2011/10/15(土) 19:54:52.47 ID:BCGs5MpA
学園創世猫天買った
529創る名無しに見る名無し:2011/10/15(土) 22:08:45.45 ID:Wh3cQe2i
>>528「学園創世猫天買った!」

白先生「保健室にマンガを持ち込むんじゃない」

>>528「せんせ、せんせ。マンガは誇れる文化ですよ。舞台は学園。バトルものですよ」

白先生「わたしは闘いとかは…」

>>528「そうそう。舞台の叉美学園は生徒一人一匹ネコを飼っていいんですよ」

白先生「ちょっと叉美学園にコレッタを連れて入学し直してくる」
530創る名無しに見る名無し:2011/10/16(日) 08:36:13.00 ID:k1egDnXB
ババァ何してんw
531創る名無しに見る名無し:2011/10/22(土) 20:42:55.14 ID:VneGXH2r
帆崎「われら!三銃士!」

跳月「え?ぼくもですか」

帆崎「あと一人は…白先生!」

白「え?わたしが?はは…男装の麗人か。悪くないな」

リオ「白先生にぴったりですよ。だって『さんじゅうし』だなんてリアリティありすぎるよ」

白「ひらがなで書くな!」

帆崎「どういう意味ですか」

白「聞くな!」

跳月「どういう意味ですか」

白「……」

リオ「えっと、はづきちに説明するよ。女一人身・三十四近くになると…きゃー!!」


え?白先生って、幾つ…だなんて言いませんよ。
532創る名無しに見る名無し:2011/10/22(土) 21:15:00.22 ID:UOAbXVJ4
三十路じゃなくて半ばだったのかよw
でもババァかわいいよババァw いじられ役がw
533創る名無しに見る名無し:2011/10/23(日) 08:24:37.28 ID:DxjBOj7N
リオ「ババ……シロ先生はエリア51って漫画知ってますか」

シロ「おい今なんて言いかけた」

リオ「バステト(猫女神)とワーウルフ(人狼)が恋する話しがあるんですよ」

ヒカル「……」(ぴくっ)

ハセヤン「……」(どきっ)

シロ「おい質問を流すな。なんて言いかけたんだ」

ハセヤン「シロ先生!生徒が必死に!教師である貴女に!伝えたいことがあって喋っているんです!」

シロ「え、えぇ…?いやあの……」

ハセヤン「しっ!黙ってきく!」

シロ「は、はい」

リオ「バステトは父親であるラーに反対されながら、下級モンスターのワーウルフと恋におち、子供までつくってしまいます」

ハセヤン「ま……」(ぽっ)

シロ「人と猫と犬だなんてとんだミックスだな」

ヒカル「……先生、フィクションにそういう批判は野暮…です」

シロ「わぁい何言っても反駁くらうわぁ」

リオ「ま、最後はワーウルフが死んでバステトも死んで子供だけ残っちゃうバッドエンドなんですけどね」

ハセヤン「シロ先生、私その子がババアと言うの聞きました」

ヒカル「ええ、確かに聞きました。ぼくも証言します」

リオ「?!」

シロ「やっぱり因幡、薬品掛けても大丈夫!!」(毛が白いから脱色してもわかりにくい)

ヒカル「いや…それはダメですよ。ドクハラでパワハラです」

シロ「いやこれは体罰ではなく……き、教育的指導?」

ハセヤン「れっきとした体罰ですよ!振り上げたオキシドールを降ろしてください」

シロ「……」(ちゃぽん)

リオ「(やった、なんかわからないけど助けられた)」

ハセヤン「悪口を言うことくらい、担任に言って内申書に書いてもらえばいいんです」

シロ「うん、たまには正式な処罰をくだすか」

リオ「ぎゃふーん」
534創る名無しに見る名無し:2011/10/23(日) 13:05:01.24 ID:/Zdqq4IL
やっぱり因幡、100人乗っても大丈夫!
535創る名無しに見る名無し:2011/10/27(木) 13:25:49.29 ID:U9yYM224
コレッタや葉狐ちゃんならいいよ!犬太、てめーはまだはやい。
536創る名無しに見る名無し:2011/10/29(土) 22:47:36.73 ID:E9JOw/Dc
獅子宮先生のお話読みたいです!
537創る名無しに見る名無し:2011/10/30(日) 19:09:50.37 ID:MWIbPfLX
538創る名無しに見る名無し:2011/10/30(日) 19:14:52.63 ID:VKQrwPdJ
いたずら好きそうな顔だなw
539創る名無しに見る名無し:2011/10/30(日) 19:22:25.46 ID:7jouT4iN
おおーすごい迫力
540創る名無しに見る名無し:2011/10/30(日) 19:31:33.06 ID:BJGGsfB3
クロw?こわいw
541創る名無しに見る名無し:2011/10/30(日) 21:55:29.13 ID:wd8VlYxF
おかしをあげちゃう!!
542創る名無しに見る名無し:2011/10/30(日) 22:16:50.40 ID:6cYNRlHr
うまいなあ
543創る名無しに見る名無し:2011/10/31(月) 22:47:55.92 ID:6Egg6qqP
かわいいのう
544創る名無しに見る名無し:2011/11/03(木) 20:55:56.42 ID:oSnagTbb
獣人スレのみなさまこんにちは

創作発表板避難所にて、創発シェアードワールドクロス企画(仮)を立ち上げました!
と言ってもほぼ何も考えてない状態で勢いだけで立ち上げたので、具体的な内容は
まだ何も決まっていません!

「じゃあ俺が一緒に考えてやろうじゃん」というアグレッシブな書き手さんはもちろん、
「お前が決めろ。そしたら俺も書いてやる」といった書き手さんもぜひご参加ください!
「書かないけどこんなの面白そうじゃね?」といった読み手さんも大歓迎です!

また「こういうお祭り騒ぎはちょっと…」という書き手さんもいらっしゃると思いますが、
企画が進む中で貴方が書かれたキャラをぜひ使わせてほしいとお願いすることがあると思います。
今は企画の中身がまるで決まっていない段階なのでその内容次第だとも思うのですが、「こんな
企画にうちの子を出せるか!」という場合は気兼ねなくスレにて意思表示をしていただければと
思います。

では、何も決まっていませんが下記スレにて
創発シェアワスレクロス企画(仮)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1320313119/
545わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/11/04(金) 19:23:18.90 ID:Rnpj639U
>>544
自キャラの参加させます。いちおう、ご報告まで。
546創る名無しに見る名無し:2011/11/12(土) 23:34:47.43 ID:9c9yhL9C
白い毛並みの猫がいる。
彼女は玄関の鍵を開け、部屋に入る。
「ただいま」とは言わない。「お帰り」ってこだまが期待できない以上、言うだけ虚しい。
バッグをソファに放り、賃貸マンションを選ぶ際にちょっと重視したバスルームに入る。
セーターを脱ぎスカートを降ろし下着を外す。
押し付けられていた毛並みがくたびれている。
白い猫は鏡に写るくたびれに眉をひそめ、くしゅくしゅ、と撫でて掻き混ぜてみる。
直らない毛並みに、ふぅ、とため息をつき、タオルを持って洗い場に入る。
シャワーを浴びて、ちょっと良いシャンプーで全身を洗う。
ちょっと重視したバスルームなのに、浴槽に湯を張るのが億劫でもっぱらシャワーしか活動していない。
濡れそぼった毛並みの下にはそれなりに魅力的な曲線と隆起が見られるが、それを見せつけて誘惑するべき殿方は今の所彼女にはいない。
寝間着に着替えたらすぐさま冷蔵庫から麦酒を取り出す。
ぷしゅっ、シュワー。
くっくっくっくっ……。喉がシアワセの音を奏でる。

「あー、しあわせ」

ただいまは言わないのに麦酒に対する感想は口から零れる。
習慣が家や家族から遠ざかり酒に近づいている証拠のようでもあるが、今の所注意してくれる人はいない。
カレンダーを見る。
2011年11月11日。時刻は既に22時を回っている。
彼女はふと思う。

──2011年11月11日11時11分11秒、私は何をしてたっけ。

稀に見るポッキー日和にいったい自分は何をしていたのかしらと考えてみれば、当然の答えが閃く。

──間違いなく仕事だなぁ。

味も素っ気もない答え。
ルーティンに囚われざるを得ない社会人には仕方のないこととは言え、彼女は無味乾燥な自分の日々が少し恨めしくなる。
金曜日のその時間だと、たぶん保健室でコーヒーをいれてたりしたに違いない、と彼女は考える。

──そうして、初等部の体育があって……そうだ、クロが、転んで膝を擦りむいたコレッタを連れてきたっけ。

保健委員がやたらに包帯を巻いて、コレッタはまだしもクロまでまきこんで包帯の繭にしたのが、ちょうどそのころ。


「ぷ」と吹き出し、「あははは」と、白い毛並みの猫は笑う。
子供達との賑やかな日々が、単なるルーティンで済むはずがない。
何処までも続くルーティンに眩んで、ディティールを忘れていたのだ。
残ったビールを飲み干し、洗面所で口を濯いで、特注の猫ベッドに丸まる。

「おやすみなさい」

返事はないけど、月曜日に会う子供達に夜の挨拶をし、彼女は眠りについた。
おわり
547創る名無しに見る名無し:2011/11/13(日) 16:23:50.01 ID:OIQn3zMe
ばばあ、かわいいなあ。もう
548創る名無しに見る名無し:2011/11/13(日) 19:53:42.12 ID:JcszIJy/
やだババァ素敵。
549ヴぉお将軍 ◆JDhsVOOkg6 :2011/11/21(月) 01:24:37.18 ID:e1yaMPZb

    /`゙''ー‐ 、         _,,,,,-------,,,,,,
    !     `゙''ー‐-、__,.-''"´ ,, −===−- `ヽ、
    l ヽ       /// ̄ ̄`゙''ー‐--、_,.-‐一''"´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄フ'''ヽ,,
    i  \    〃, ', '`ヽ⌒ヽ `丶     `丶           ,_,r''   .i
    l ヾ   ヽ、/ /./.   \  ヽ、 ヽ、    ヽヽ      _,.-‐'´,.,,;   /
    ', ::.:ヽ:.:. .‖//,'     `ヽ  `、  ` 、    ', `、_,.,,r''    /:::..  〃
     ヽ ::.:.:.ミ、.i! ‖.i  ,     ヽ、  \  ヽ    .',    _,/:::::..:.:  /
     .`、 ::.::.:ミ! ! l.  λ ',     \  `、  ',   ',i ',,_,.r''´;;;;::''::''..  , '
       \ ::.:|. l  |  .ハ ヽ     `、.  ',  ト   l l;;;;;;'''::'':.::..  ., '
        ヽ、!  .!  !  ',  \     `、  :  i i   .l! .|;;:::::.:.:.:: _,.r'´
         k.t  i! l  `、  ヽ、    `、.   l. i  ‖ |,,___,,.r''"
         | |ヾ、 l!ヽ! / \  \   ヽ  !ヽ! ./.l | l ll |
         | | llヽ! !     `ヽ、.,,`ゝ、___^ゞ,ノ l ./‖| | | || |
         | | ||!`ト、!                レ'レ',' | !l |i  |
         .l ! !! ! !. _,.-‐一-、     _,.-―-、  !/i ! || |.i  l
         l i .!! l i!.,,,.`´ ̄ `´     `´ ̄ `´.,,,.ii l i || | .l  i
        .l l  ll ,イヽ、       ’       フヽ! !.|| | ! .l
        i |  || //`゙'‐、_   `´`´   _,.,, イ´\.! !!||  |、 .! .l
       .‖ ii. || l l / / >=、ー--一、≦ヽ  !!   | | ||  | ', .! |
       / ‖ |.| i i i// // ヽ::::::::::::::::〉  ハ  l l  | | ||  | ', i |
      .// //‖i l l//// .|   >  ,ノ、  〈\l l .| | ||  |  ',! |
      // //‖‖l lレ' { ! .|/ヾ、∧/〃~\∧ハ! .| | ||  |  ',ハ
    // // //‖/│  !_,.-''"´ ̄!二j ̄`゙''ー、-/ ハ | | ||  |',  ', ヽ、
   // // //‖/ |  \::::::::::/ハ \ヽ:::::::::\|  \| .| ||  | ヽ  ヽ \
550創る名無しに見る名無し:2011/11/21(月) 19:40:41.96 ID:Bx7sidsR
コレッタ!
白先生、お持ち帰りしちゃだめですよ!
551創る名無しに見る名無し:2011/11/22(火) 23:34:45.42 ID:N4aQ3m+k
わんわんにゃんにゃんの日でしたね
552創る名無しに見る名無し:2011/12/05(月) 20:00:10.20 ID:XaFafqiv
鎌田「そろそろ冬眠すっか…」
553創る名無しに見る名無し:2011/12/05(月) 21:42:58.36 ID:e2tUzNK/
いや、カマキリは冬になると……いや、言うまいw
554わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/12/17(土) 21:52:53.36 ID:arczi6h3
久し振りに投下しよー。
ミナねえさんです。
555バイクとメガネ ◆TC02kfS2Q2 :2011/12/17(土) 21:56:32.48 ID:arczi6h3

 涙の顔を愛車に見られるのが嫌だった。
 ちょっと悔しかっただけだし、そんな顔は拭い去ればいいこと。
 でも、愛車がそんな顔を見ちゃったら、どう思うかな……。関係ないよね。わたしの相棒だもの。
 ミナは無理に笑ってみせて、自分の潤んだ瞳を誰かに認めさせたくなかった。

 「わたし、泣いてなんかない」

 ぐすりと、しゃっくり。
 ぐすんと、鼻をすする。
 泣いてなんかない。
 本当か、その言葉。
 ミナは耐え切れず、ヘルメットを被り、ミラーで自分の顔を見ながら息を吸い、愛車に跨ってエンジンを噴かす。
エンジンをかけると、下半身にリズムよい単気筒の鼓動が響き、小さな旅へと誘う約束をしてくれた。

 そうだ。
 コイツはわたしの話し相手だし。
 
 気分も晴れるかもと、バイクに乗って風切ってみた。相棒との息遣いをタンクを通じて感じているうちに、
自分が悔しがっていたことが、なんだかくだらなくなってきた。まるで鉄の馬が生身のミナに語りかけてくるように。
気が付くとミナは、たいせつな男友達が勤めるとある学園のグランド脇にたどり着いていた。
 ゆっくりとバイクを止めて、ネット越しにグランドを眺める。時間は放課後、たいせつな男友達も暇を持て余しているはず。
エンジンを切ると、余計に周りの声がヘルメットを伝って際立ってくる。

 「……」

 市電を追い抜いたときは、爽快だったのに。

 「……やだ」

 銀杏並木を潜り抜けたときは、ほっとしたのに。

 「誰かに見られたら、どうしようかな」

 曲がりくねった丘を一気に登ったときには、なにもかも景色とともに吹っ飛んでしまったのに。
 ミラーはバカ正直だ。嘘つくぐらいの気を効かせろ。シートに跨がっていると、嫌でも今現在のミナの顔を写す。
 きっかけは些細なことなんだから、それを忘れさせてくれるだけの清々しい景色を見せてくれるだけでいいのに、
ミラーがよけいな慰めをしてくれるから、思い出して目頭がついつい熱くなる。

 
556バイクとメガネ ◆TC02kfS2Q2 :2011/12/17(土) 21:57:31.26 ID:arczi6h3

 遠くで生徒たちが、清く正しい学園生活を送る声が響き、ミナの胸に突き刺さる。
 陸上部だろうか、短距離の走り込みを繰り返しは休み、繰り返しは休みと、まるで自分の体を虐めぬくことを楽しむかのよう。
 寒いのによく頑張るなあと、ミナは風に晒されながら、彼らの練習する姿をじっと見ていた。
 そのなかで、抜きん出て足の速い子がいた。小さな顔に、しゅっとした体が引き締まる。遠くからでも見栄えのする毛並みで、
彼はどうやらネコ科の者だと分かる。もしかして、ミナの知っている子かもしれない……。そんな思いがふつふつと沸いてきた。

 「ゼンー!タイムまた縮まったなあ」
 「はははっ。速くてごめん!」

 そいつはチーターだ。
 足の速いチーターだ。
 チーター?見覚えがあるかも。
 そんなヤツが陸上競技に血をたぎらせていた。
 ヤツの姿はなんだか、気持ちがいい。
 
 ミナがバイクに乗ってひとっ走りすれば気分が晴れるように、彼がトラックをひとっ走りする姿を見ればミナも気分が晴れる。
 不思議なことだ。自分が走っているわけではないのに、彼が自分の気持ちを分かってくれているようで。

 
557バイクとメガネ ◆TC02kfS2Q2 :2011/12/17(土) 21:58:16.99 ID:arczi6h3

 「清志郎くんだ」

 以前、出会ったことがある。もしかして、彼はそのことを忘れているかもしれないけれど、自分ははっきりと覚えている。
確か彼には思いを寄せる子が居たんだっけ。素直すぎて、正直すぎて、その恋に引きずられて……そして、河原でこっそりと
彼の名は水前寺清志郎、チーターの陸上部。得意種目はもちろん短距離。

 「ちょっと、りんごちゃん家まで40秒で走ってみせるぜ!」
 「無理無理」
 「お前ら、水前寺清志郎を見くびるなよ!」

 イヤミのない明るい声は、陸上部のムードメーカーだ。清志郎が笑えば、みな笑う。
仲間に囲まれた清志郎は明らかに幸せ者だった。
 清志郎の声は、ミナをくすぐり、ちょっと笑える気にしてくれた。ヘルメットを脱いで、タンクの上に置くと
ミナは袈裟懸けしていたバッグからメガネケースを取り出した。度のない伊達メガネをかける。赤いアンダーフレームが、ミナの白い
毛並みに良く似合う。普段かけることのない伊達メガネ。初めてかけてみると、まるで自分が自分でないように思えてくる。
 「ゼン、どうした?」
 「いや……。また、ぼくは誰かの心を燃え上がらせてしまったようだ。罰を受けなければならない」

 不穏な動きをミナは受け取った。明らかに彼らはミナの方を見て、何か話をしているのだから。
 清志郎がアキレス腱を伸ばし、軽くアップをしている様子も伺える。

 「罰ってなんだよー」
 「鉄の馬に勝利するまで、走り続けることさ!」
558バイクとメガネ ◆TC02kfS2Q2 :2011/12/17(土) 21:59:02.88 ID:arczi6h3

 ダッシュした清志郎は、仲間たちから飛び抜け、グランドから離れ、ミナが走ってきた公道へと飛び出してきた。
 チーターの脚は思ったより速い。目で追っているうちに、清志郎の瞳に焔立つのが見えるまでに近づいていた。ミナは慌てて
ヘルメットを被り、エンジンをかけようとキーを回そうとした。軽くバイクを走らせて、清志郎を巻いてしまおうと思ったのだ。
 だが、焦るときほど思うようにいかない。セルモーターの音がしたかと思えば、クラッチを繋ぐのに失敗してエンストしてしまう始末。

 「あれ……。ちょっと、やばっ」

 再びキーを回すも、背後から清志郎の気配が近づいて、上手くエンジンがかかってくれない。
 そのうち、清志郎はぴったりと足音をさせずにミナの真横に現れた。素足だ。道理で足音がしないはず。

 「杉本ミナさんですね!」
 「……聞き覚えのある声だなー」
 「ぼくも見覚えのある姿だと思いまして!」

 息ひとつ切らすことなく、ミナのもとへ駆け付けた清志郎。ジャージ姿が眩しく見える。
 清志郎はミナのバイクの後部シートに手を置いて、陰のある男のポーズを決めてみたもの、ミナは振り向くことはなく
後姿のままミナは清志郎との会話を続けていた。自分の今の顔なんて、彼には見せたくないもの。
たとえ、メガネでその顔を隠していても。

 「ミナさん。ミナさんがイヌになれと命じれば、ぼくはイヌにだってなります」
 「じゃあ、イヌになれっ」
 「わんわん!」

 
559バイクとメガネ ◆TC02kfS2Q2 :2011/12/17(土) 22:00:18.45 ID:arczi6h3

 真剣な眼差しの清志郎と一刻も早く涙を脱ぎたいミナの目がミラーを通じて合ってしまった。ミナは涙の理由をバイクの風が
目に染みたからと、子どもじみた言い訳をしたくなったが、あまりにも清志郎の気持ちにねじ伏され、その気を失せてしまった。
 だから、ミラーはバカ正直なんだから。

 ミナはライティンググローブを脱いだ手で、タンクの上で丸を描き続けた。

 「サン……先生は元気かな」 「ええ。今日も初等部の子たちと高オニしてました」
 「らしいや」
 「実は、大人の女性に聞きたいことがありまして」

 執事のような落ち着いた声でミナの手を止めた清志郎は、バイクの後部座席に横座りした。
清志郎の体重により車輪のサスペンションが沈んだせいで、ミナは後ろに体が引っ張られる。 ミナは清志郎の声を良く聞こうとヘルメットを脱ぐと、金色の髪がジャケットの襟首に広がる。

 「恋とお金以外のことなら、なんでも相談に乗るよ」
 「では、恋の相談で」

 無意識にかりかりとヘルメットに爪を立てながら、静かにミナは清志郎の話に耳を立てた。

 「実はぼくには想いを寄せる子がいまして。りんごちゃんという子なんですが」
 「う、うん」
 「この間、市場の路地で彼女を見かけたんです。家がレストランで、彼女は料理人の姿をしていました。
  凛々しい姿でした。片腕に買い物カゴを下げて、野菜を物色していたのです」

 もしかして、以前に聞いた子のことかもしれないと、ミナは爪を立てるのを止めた。

 
560バイクとメガネ ◆TC02kfS2Q2 :2011/12/17(土) 22:01:12.25 ID:arczi6h3

 「彼女、いつもは赤いリボンをカチューシャのように留めてるんですが、その日は青色だったんです」
 「へえ。偉いね、気付くことは大切だよ」
 「なのに、気付いていたのに、ぼくは彼女にそのことを伝えられなかった。『リボン、変えたんだ』って」
 「ふふ」
 「もしかして、せっかく違う色にしてみたことを気付いてもらえなくて、残念がってたら悪いことしたなあ。って」
 「大丈夫だよ。プラスはないけどマイナスもないし」
 「その答は、ぼくに希望せよの意ですか」
 「かなあ」

 再びミナは自分のヘルメットに、かりかりと爪を立てていた。

 「ところで、ぼくは気になって仕方ないんです。何がって?ミナさんが跨がる鉄の馬、
  彼が写す右のバックミラーに、ミナさんの顔が写っていることで。
  以前お会いしたときと違って、メガネをかけていますね。この清志郎、気付きましたよ」
 褒められているはずなのに、顔を隠したくなるくらいな気持ちだ。
 頬を赤らめたミナは、ヘルメットを抱えると、迷わず右のバックミラーにかけた。

  おしまい。
561わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/12/17(土) 22:03:24.93 ID:arczi6h3
寒くなってきたねえ。

投下おわり。
562創る名無しに見る名無し:2011/12/17(土) 23:38:10.67 ID:EbzfuZ/8
清士郎がなんか軽妙w
良いスケコマシに成長しそう
563創る名無しに見る名無し:2011/12/19(月) 19:15:12.89 ID:ARAhDtk2





F 飛澤朱美、獅子宮先生
G 星野りんご、大場狗音、伊織先輩

I 小野悠里

勝手な想像。異論は大いに認める。
564創る名無しに見る名無し:2011/12/19(月) 22:40:41.87 ID:3leqn/vQ
眼鏡ミナさんとな!
565創る名無しに見る名無し:2011/12/24(土) 03:02:53.92 ID:ZkmiKz76
566創る名無しに見る名無し:2011/12/24(土) 04:32:43.90 ID:qPBwz1Z4
これはかわいいw
567創る名無しに見る名無し:2011/12/25(日) 21:41:52.84 ID:jxntB5+Q
りんごサンタ!
リオサンタ
568わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/12/29(木) 21:19:47.16 ID:XSgAsLMI
http://www.toshocard.com/corporate/poster.html

本屋さんに行く度に出会うポスター。思わず、こんな妄想をしてしまいました。
年の瀬にぴったりなお話を。
569本が読みたくなる、甘噛みしたくなる ◆TC02kfS2Q2 :2011/12/29(木) 21:20:33.38 ID:XSgAsLMI

 柴犬の犬太がこたつで本を読んでいると、背中が異様に寒く感じた。
 どうやら今日はいつもよりか、手が凍えるくらい格別に寒いらしい。ページをめくる手をこたつから出すのも億劫なのに納得し、
背中を丸めて本の世界に入り込む。活字に集中していたはずだが、ちらと横切る陰が気になった。
 小学生の犬太には、まだまだ遠い存在の女子高生。彼女は足を止めて、犬太の動向を覗いてみた。
 別に、姉の姿に頬を赤らめているわけではない。
 犬太の表情を確認した彼女は、肩にかけたピカピカのトートバッグを見せ付けるように振り向いた。

 「犬太。ちょっとお買い物に行ってくるね」
 「う、うん。どこに行くの?」
 「本屋さんよ」

 よそ行きの装いで長い髪をふわりと犬太の姉・狗音が弟を誘ってみたが、一緒が恥ずかしいことを理由に断られた。
優しい瞳で狗音はにこりと「じゃあ、いってくからお留守番よろしく」と、笑って居間を出た。襖から寒気が遠慮なく押し入るのを
犬太はイヌのくせに震えながら、そしてイヌだからと堪えた。
 いくら毛並みに包まれた彼らも、寒いものは寒い。雪なんぞ降ってこようなら、
 喜んで外出しようとする者など限られる。まだ遥か彼方の春。それまでどう過ごそうが、のほほんとしたものだ。

 言うならば、獣は偏屈だ。
 それに対して、街は素直。

 寒いなら、寒い。
 暑いなら、暑い。

 めぐる季節に振り回されながら、彩りを変えてゆく。
 狗音が最寄の電停まで歩いてゆく途中、少しながら後悔をしていた。

 「明日にすればよかったかな……」

 いやいや。本は欲しいときが買い時と言うではないか。
 狗音はダウンジャケットを深く羽織り、北風から首筋を守りながら欲しい本を思い浮かべては含み笑った。
 ふわふわの髪にダウンのファーで防寒は完璧に思われたが、所詮は人が造りしもの。ぶるるっと、震えながら
街行く人々も自分と同じ気持ちなのを確認すると、ふと安心してしまうのだった。電車を乗り継ぎ、人の群に巻き込まれる。
 「こんなことなら、ミコを道連れにする……?」
570本が読みたくなる、甘噛みしたくなる ◆TC02kfS2Q2 :2011/12/29(木) 21:20:53.42 ID:XSgAsLMI
 狗音の親友、ミコこと美琴の顔が灰色の空に浮かんだ。
 彼女とは『甘噛み同好会』の仲。もっとも、狗音と彼女しかいない学校非公認の同好会。
 美琴はネコだ。同級生のクロネコだ。人肌も恋しいし、寒いし、ミコと寄り添ってジャケットから覗く自分の首筋を
甘く噛んでくれれば、この寒さだって乗り切れる。ついでに無ア理して買ったブーツを自慢する野望だって叶っちゃう。
 そう。彼女とはお互いに気が許せる限りの距離で牙を立て、爪を立て、ともに甘い果実のような時間を過ごす、
狗音にとってちょっと特別な間柄だった。快楽の追求こそ、幸福の極み。と彼女らは信じてやまない。

 「メールしとこっ」

 とりあえず、相手の都合もあろうし、狗音はつやが美しいトートバッグから、使い込まれた携帯電話を取り出し、
親愛なる友へ『今、暇かな』と、控え目な文章を送ることにした。
 この場に美琴がいないことを悔やみ、そして新たな出会いを求め、こつこつと歩道をブーツの踵で鳴らしながら、
狗音は海沿いのショッピングモールに向かった。女子高生と言うより、何もかもを知り尽くした大人の女という出で立ちだった。
 

 一歩一歩と歩くにつれ、ダウンのフードとファーがともに上下に揺れる。狗音の後ろ姿は、絹のような尻尾とファーとのふしだらな
絡み合いで魅力的に見えて、やゆんよゆんとフードと尻尾が揺れるたびに、甘い香りを歩道に振りまいていそうでもあった。
 いざ、知る読む見るの森へ。

   #

 目当ての本が手に入った。
 それだけで懐が温かい。
 本を棚から探す幼き日のような不安、お目当ての本を見つけたときの安堵、その本がちゃんと取り扱ってくれたお店への感謝、
「この本、いいかも」と表紙買いする冒険心、レジに並んで順番待ちのときの期待感、いざ自分の番がやって来た際の胸の高まり。
レジ係からの「カバーお付けになりますか」という思いを「お願いします」と受け入れる勇気、そしてただで配布している
レジ脇の栞を二、三枚頂く悪だくらみ。本屋には生きる上で大切なものが詰まっている。
 狗音はトートバッグのほんの少し増えた重みに幸福感を感じながら、再び肌寒い街を歩きだす。
 帰宅したら、早速読書のディナーを頂こう。だけど、待ち切れずに『すたば』でつまみ食いするのもいいかもしれない。
インクの香りは最高の香辛料、こだわり屋の職 人による装丁は食欲をそそる。

 「……やっぱり、ウチに帰って読も」

 狗音は帰りの市電を待つ間、吹き抜ける風を鼻の先で感じながら、帰宅した後のことの妄想を始めた。

 狗音が妄想モードのスイッチを入ると、リミッターをいとも軽く突破してしまう。
 自分の脳内だけならフリーダム、目眩く豊かな官能の世界。色に乏しい師走の空だって、花咲き乱れる
温暖な離れ小島に舞台を変えちゃうことさえ出来るんだから、妄想ってヤツは素晴らしい。

 こたつに入って本を読む。こんな幸せなことは他にあるか。
 部屋着に着替え、こたつに身を落ち着かせる。先客の弟が見事なこたつむりに化けていた。
起こすのは忍びないので、こたつの中で膝を折る。きょうはよく歩いた。本を探すという目的ならば、いくら歩いても
構わないと思う。寒さを防いでくれたブーツも、本の森をさ迷う間お世話になった。そのせいか、狗音の脚は肌や毛並みの
蒸れた温もりに包まれていた。ほっこりとため息をついて、太ももをすり合わせる。
571本が読みたくなる、甘噛みしたくなる ◆TC02kfS2Q2 :2011/12/29(木) 21:21:10.67 ID:XSgAsLMI
 「あら……。ミコ」

 向かい側で同じくこたつで暖をとるのは、美琴であった。何故、狗音の家に居るかは分からない。両手をふとんに入れて、
顔を綻ばせる。本から目線を反らすと、美琴の瞳が狗音を飲み込む。ちくりと、こたつの中で狗音の太ももに心地好い刺激が走った。

 「もう、ミコ」
 「わたしの爪で、くーを奪っちゃう」
 「だめ……。いけないよ」
 「わたしを連れて行ってくれなかった罰だから」
 
 狗音の太ももには、美琴の足の裏の肉球と爪の感触が触れるか触れないかの加減で、付け根から膝までを行き来していた。 
もしかして、誰もが家に閉じこもりたくなるような季節だからこそ、人の触れ合いに、ふわふわの毛並みに、
そして毛並みを掻き分けるように切り裂く甘くいじわるな美琴の牙を求めてしまうのだろう。
 美琴をわたしが求めている!

美琴が白い牙を光らせたかと思うと、狗音はこたつの中で脚をくねらせる。俯いて聞こえない程の甘い声。

 「犬太が起きちゃう」
 「起こしちゃだめよ。くーの恥ずかしがる顔は、わたしのご馳走ね」

 すやすやと夢心地の犬太には、姉が同じこたつの中で蕩けるような辱めを受けているとは気付かなかった。
 こたつから抜け出せない体になった狗音は、汗ばんでくる太ももがむしろ快感だった。蒸れた脚が美琴の爪を誘い、
さらに美琴を挑発する。苦悶する狗音を美琴は美味しそうに賞味していた。

 「……。やだ」

 悪い癖だ。

 妄想だ。

 何もかも、膨れ上がる妄想は誰のせいだ。

 「あっ。ミコからだ」

 本屋に入る前に送ったメール。今頃返事が返ってきた。
 多少かじかむ手で内容を確認すると、美琴はこたつの中でうとうとしていて、たった今、狗音からのメールに気付いたらしい。
狗音はにんまりと頬を緩め、添付されていた『イヌのぬいぐるみを甘噛みする動画』を見ながら自分と重ねた合わせた。
 電車が来るまでの寒い中、美琴からの動画は狗音を汗ばませた。

 「ミコったら」

 お仕置きは、ミコだけにしか許さないから。
 
  #

 「遅かったね」

 帰りを待ちくたびれた弟の声。心配する気もないなら、そんな言葉はいらない。
 ただ、美琴なら受けてあげるから。甘い牙とともに。

    

    おしまい。
572わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2011/12/29(木) 21:21:49.34 ID:XSgAsLMI
みなさん、良いお年を。

投下おしまい。
573創る名無しに見る名無し:2011/12/30(金) 07:03:10.81 ID:x45gnKze
おおう、アマガミの女神達がお戯れになられておわせられる!
仲の良い犬猫がコタツでじゃれるだけのシーンが何故こうも官能的になるのか?w
574創る名無しに見る名無し:2011/12/30(金) 11:05:59.93 ID:eesWC8vM
ヤバイですねこれは!
下手したらエロパロ行きなんじゃないすか!
ハァハァハァハァ
575創る名無しに見る名無し:2011/12/31(土) 13:55:44.85 ID:pmLSSWlN
ミコタソとクータマのクビスジかむかむしたいお
576創る名無しに見る名無し:2012/01/01(日) 00:04:59.41 ID:c8WUomW4
あけましておめでとうございます。
ttp://loda.jp/mitemite/?id=2714.jpg
577創る名無しに見る名無し:2012/01/01(日) 03:01:42.33 ID:gmimtNAh
kawaii!!
竜人さんは着物の赤がよく映えるねー
578創る名無しに見る名無し:2012/01/01(日) 21:30:26.32 ID:z950eTiY
雌火竜!最小全長間違いなし!
579創る名無しに見る名無し:2012/01/10(火) 22:58:56.69 ID:aOc057v9
580創る名無しに見る名無し:2012/01/11(水) 00:35:11.45 ID:DMfA+1LS
こいつ絶対寒がりだよ
鎌田に次ぐ寒がりだよ
581創る名無しに見る名無し:2012/01/11(水) 06:28:05.95 ID:sditOXhu
 
582創る名無しに見る名無し:2012/01/12(木) 22:22:25.45 ID:kR8LVMSd
583創る名無しに見る名無し:2012/01/12(木) 22:52:12.81 ID:lc/N6Lkg
物書くのがうまい
584創る名無しに見る名無し:2012/01/13(金) 00:27:09.33 ID:VFMTB9mQ
サバンナつながりでRX-7(FB)かよwww
これは良い引用www
獅子宮センセ、真冬にダウンとジーンズはダメっすよ
せめて中にババシャツと股引を…
(謎の悲鳴を残して消える投稿者
)
585創る名無しに見る名無し:2012/01/13(金) 09:31:27.03 ID:+iAxb1nY
無茶しやがって…
586創る名無しに見る名無し:2012/01/13(金) 23:50:36.63 ID:Gak3h/D9
ミナ「あーあ。消えちゃった。アレだけ元気なら心配ないね、ヒカルくん」

ヒカル「え?すぎも…」

ミナ「ミナでいいよ!」

ヒカル「はい。ミナさん。サン先生がどうしたんですか」

ミナ「いや。最近さ…見ないから」

ヒカル「……」

ミナ「でも、あんな姿見ちゃったらわたしね、サンを追いかけたくなっちゃったんだ。でもさ、冬だから寒いし…。それにわたし、ネコじゃん」

ヒカル「……」

ミナ「ネコは寒さに弱いんだよねー。でもさ、ほら。こう…。背中だけでも、温かければなあって…」

ヒカル「……」

ミナ「別にお姉さんのバイクの後ろに乗ってかない?って言ってるんじゃないよ!ヘルメット…もう一つって、ここにないし」

ヒカル「……」

ミナ「わたしのバイク、エストレヤって…レトロなタイプだからサンみたいにぶっ飛ばして走るのに不向きだし、二人乗りってむずい…」

ヒカル「乗りましょうか?後ろに。獅子宮先生のヘルメット借りてきますよ」

ミナ「え?」

ヒカル「冗談です。獅子宮先生は校舎に入っていきましたよ」

ミナ「こら!オトナをからかわない!それにさ、わたし…ネコだもん。一人の方が気楽だし!じゃあね!ヒカルくん!」


 ぶろううううう…


ヒカル(いいなあ。バイク、乗ってみたいな)
587創る名無しに見る名無し:2012/01/13(金) 23:52:15.07 ID:Gak3h/D9
失礼。

前半部分

サン先生「ううう!寒いよおお!寒っ!指先寒っ!こんな寒い中にZ-Uで来る獅子宮センセもセンセだよな」

杉本ミナ「へへ?わたし、好きだなあ。そんなオトナって。それに比べてサンはイヌのくせに寒がりなんだね?」

サン先生「う、うるさいな!学校までこの愛車・ポケバイで風切って走ってきたところだからだよ!ううう」

ミナ「大分ガタがきてるからノロノロじゃないのかな?よかったらさ、わたしの店で見てあげようか?タ・ダ・で」

サン「ポンコツじゃないってば!ぼくの腕はすごいぞ。峠道のサンって異名を…」

ミナ「そう?じゃあ、走り具合をわたしに見せてくれないかな」

サン「え?え…。いいよ。うりゃ!いななけ!ぼくの愛馬!!うおおおおお!!」

 
 ぶろろおろろろろろおろ!!!

>>586へ続く。
588創る名無しに見る名無し:2012/01/14(土) 22:34:47.73 ID:i7xdkqn4
シシミヤ「ババシャツや股引きを着けろだとか言うから引きずり回してやったんだ」

シロ「ふぅん……(ババシャツ暖かいのになぁ」

シシミヤ「ん?何か言ったか?」

シロ「いや、風邪薬くらい自分で買えよってぼやいただけ」

シシミヤ「そう言うなよ、どうせ保健室の風邪薬なんて腐らせて棄てるだけなんだろう」

シロ「まぁそうだ。はい、薬とコーヒー、どうぞ」

シシミヤ「ありがとう、コーヒーちょっと持っててくれ。さっきババシャツが暖かいのなんの言ってたよな」

シロ「聞こえてたのか」

シシミヤ「聞こえたさ。どんなの着てるんだ?ちょっと見せてくれ」

シロ「うわっ、やめ」

シシミヤ「なるほど、ヒートテック的な奴のホワイトか。あんたの毛色だと目立たなくていいな」

シロ「服めくるなって。寒いしコーヒー零しそうだし」

シシミヤ「ん?嫌か?体はこんなに正直だぞ。ここをこんなに硬くして…」

シロ「言い回しが卑猥に!?尻尾が緊張してるのは寒いからだっつの!ああもう触るな」

シシミヤ「ふぅ、ぬくい」

シロ「むしろ暖めて欲しい年頃の乙女を捕まえて暖をとるなって」

シシミヤ「乙女…?はて……」

シロ「はいはいお約束お約束。さがすなって私が乙女なんだって」

シシミヤ「三十代ババシャツ装備が乙女かどうかは置いておくとして、はやく風邪薬をくれ。遊びに学校にきてるんじゃないんだ」

シロ「パワハラか?パワハラだな?この訴訟は勝てるぞ!」

シシミヤ「新聞記事の見出しは『女教師、同僚教師に「三十路」と言われ勝訴』かな」

シロ「すみません、訴状は取下げます。お騒がせしました」
589創る名無しに見る名無し:2012/01/14(土) 22:35:40.35 ID:i7xdkqn4

シシミヤ「ふぅ、手が暖まったし薬も飲んだから帰る。保健室では静かにしなきゃダメだぞ」

シロ「お前にはもうコーヒー出さないことに決めたよ。水にオキシドール混ぜて出す」

シシミヤ「ところで、ドアの隙間から私たちの戯れ事を覗いてる子は誰だ?」

コレッタ「!! み、見てないニャ!シシミヤせんせとシロせんせぇが服をめくりあったり体をさわりあったりしてたところなんて見てないニャ!」

ぱたぱたぱたドテッ……ぱたぱたぱた

シロ「ああっ!コレッタが勘違いしたまま走って転んで走って帰っちゃった!」

シシミヤ「かわいい子だなぁ」

シロ「だろ?可愛いだろ?うんうん、話のわかる奴は嫌いじゃない。またコーヒーいれてやるよ」

シシミヤ「ニヤニヤ(おもろい三十路だなぁ)」

おわり
590創る名無しに見る名無し:2012/01/14(土) 22:38:41.35 ID:YylzdgjM
なんだろう。ケモスレのお姉さまがたの緩さはw
591創る名無しに見る名無し:2012/01/15(日) 01:56:30.68 ID:U0WgL5b5
>>582
尻尾から腰に冷えが来そうですよセンセ
592創る名無しに見る名無し:2012/01/18(水) 19:09:59.95 ID:TVo6FilB
593創る名無しに見る名無し:2012/01/23(月) 22:47:32.20 ID:OGODJxK2
クロ「こんにちニャ」

シロ「おや、クロ。お前が保健室にくるなんて珍しいじゃないか」

クロ「質問があるからヒマそうなせんせいを探してたのニャ」

シロ「別に暇だから保健室に詰めてるわけじゃないんだが……まぁいい、質問してみ」

クロ「道徳の時間に、こどもが出来ないフウフにコウノトリが赤ちゃんを運んでくるお話を聞かされたニャ」

シロ「ほう」

クロ「でもコウノトリなんて見たことないニャ。ふぃくしょんにちがいないニャ。本当は赤ちゃんてどこからくるのニャ?」

シロ「ううん、お父さんお母さんが困っちゃうパターンの質問だな。よし答えてしんぜよう、心して聞け」

クロ「ニャ」

シロ「子宮内に精子が入り卵が授精すると受精卵となって嫡床し卵割が始まる」

クロ「…にゃ?」

シロ「卵割が始まると一つが二つに、二つが4つに、卵内で細胞分裂が始まる。
細胞は互いに何の役割を果たす細胞になるか分子的な鍵を差し合って相談して決める。
ある程度分裂と分化が進むとビコイドが放出されてその濃淡で頭と尻尾が規定される」

クロ「にゃにゃ?」

シロ「精子には胎盤形成の指令を司る遺伝子も含まれているから、卵とともに胎盤が形成され、子が育ち分娩されると胎盤も排出される」

クロ「…………」

シロ「わかったかな?」

クロ「わからないとわかったにゃ」

シロ「そうか。まぁ三年生くらいになったら具体的に教える機会がくるからそれまで待ちなさい。
ちなみにその質問は答えにくいので、あんまり聞き回っちゃダメだぞ」

クロ「そうなのかニャ?」

シロ「うん。世の中の大人の8割くらいは聞かれたら困る」

クロ「シロ先生は大丈夫なのかニャ?」

シロ「保健室の先生だから慣れてるからな。だが実は困ってる」

クロ「やっぱり答えにくいのかニャ」

シロ「いや、自分に赤ちゃんを授かる日が来るのか否か考えてしまって視界が絶望に染まる」

クロ「先生、元気だすニャ。コウノトリのお話聞かせてあげるニャ」
594創る名無しに見る名無し:2012/01/23(月) 22:53:52.66 ID:cb2gXCZE
シロ先生、最後のセリフは重いwww
595創る名無しに見る名無し:2012/01/26(木) 00:07:09.43 ID:je9w63HP
最後にピアノの「ズーン」というBGMが聞こえた気がした
596創る名無しに見る名無し:2012/01/30(月) 20:15:13.21 ID:wq7lUKcD
597創る名無しに見る名無し:2012/01/30(月) 20:51:26.91 ID:Zv6UT8iW
一瞬落ちたかと思った
サーバーの不具合かしら
598わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2012/02/06(月) 22:11:47.69 ID:YDETZAPr
原案・a氏。
599ごめんね ◆TC02kfS2Q2 :2012/02/06(月) 22:12:23.71 ID:YDETZAPr

 自習の時間、芹沢モエが堰を切ったようにバンと机を両手で叩いた。響き渡る音にクラスのみなは驚いて手を止め、口を閉じ、
そしてモエの方へと視線を向けていた。しかし、こぼれたミルクはコップに戻らぬ。ばつが悪くなったモエは小さく

 「ごめん」

 と、言葉をこぼした。

 自習が終われば楽しいお昼休み。誰もが楽しみにしていた語らいの時間を前に、場の空気を冷やしてしまったことをモエは恥じた。
 モエの行動で騒がしかった自習の時間は一転し、ひそひそ声だけ淀んだまま終わりのベルを迎えてしまった。
何事だろうか。話だけでもいいからわたしに聞かせて欲しいなと、いまだ机で脚をぶらぶらと揺らすモエの元に駆け寄って来た、
モエとの良き『仲仔(なかこ)』であり、そしてみんなの風紀委員長を務める因幡リオ。さも取り返しの付かない大罪を犯したかのような
面持ちで視線を合わせることを拒むモエは、間柄を良く知るリオにさえもそれを許さなかった。

 何を聞いても「ごめん」の一点張り。幼稚な隠し事をしているようにリオの目には写った。それでも、モエは「ごめん」と。
お昼休みを「ごめん」の一言だけで消費してしまうことはなんとも心苦しいとモエは悟り、席を立ち、リオを置いて教室から
去ってしまおうとしたときのこと。背後からの声に足を止め、モエは「ごめん」以外の言葉をこの時間初めて口にした。
 背後にはクラスの男子。モエの後姿の前で穏やかに待ちわびる。

 「犬上、何か?」
 「芹沢。タスクくんにさ……」
 「タスクのことは気にしないで!!」

 一冊の大判本が入るぐらいの紙袋を手携えたまま、思わぬ返答に面食らうのはクラスの男子・犬上ヒカルであった。
モエに用事があるから声をかけたのに、「タスク」という名前に過剰に反応するのは困る。そんなモエにリオとヒカルはただならぬ
気配を感じずに得られないことは言うまでもなかろう。モエは手にしていた携帯電話をいきなり慣れた手つきで開き、口をつぐむ。

 「ウチの弟が……ごめん」

 この時間、モエは何度「ごめん」を繰り返したのか。片手では数え切れず、もう片方に差し掛かったときモエは廊下を駆けていった。
ヒカルはリオにことの経緯を尋ねようとしてみたかったのだが、空気が許してくれるはずがなかたので諦めるしかないであろう。
リオはちらりとヒカルの携える紙袋を一瞥すると、このへんの女の子なら誰もが憧れる洋菓子店の紙袋であることに気付いた。

 「ねえ。犬上、知ってる?」
 「何を?」
 「そこ、すっごく美味しいんだよ。『ふるねこ堂』のシュークリーム。モエなんかさ、この間タスクくんの分を奪い取ってまで……」

 ただの本好きの男子であるヒカルはなにのことをリオは話しているのか理解できずに、呆然とモエの後ろ姿を見ているだけだった。

600ごめんね ◆TC02kfS2Q2 :2012/02/06(月) 22:12:48.66 ID:YDETZAPr
 そのころモエは中庭に立つ大きな木に寄りかかり、その場所から真正面にあたる保健室をじっと外から見つめていた。
もちろん部屋の中は伺うことは出来ず、風に晒されながら弱い光に反射する窓ガラスを見守ることしか出来ないというのに、
モエはまるで駅前で主人の帰りを待つイヌっころのようにその場を守り続けていた。ゆらりと前髪が頬をくすぐる風が憎たらしい。
 寒さと温かさが入り混じる。暦の上では立春を過ぎた。土の中から虫たちも顔を見せる時期もやって来るというのに、
素直に大地の贈り物を喜べない自分が居ることが、モエにとって非常にもどかしかった。耐え切れず、つい目から光る物が。

 「春物、準備しないとなあ」

 季節の変わり目こそ油断ならない。

 女の子なら見栄を張れ。
 街は誘惑してくるぞ。
 春風に似合うワンピースに、桜舞い散る石畳にぴったりなブーツ。
 浮き立つ心、ふわふわと。
 ただ、わたしは学生さん。欲しい物がなんでも手に入るような身分ではないけど、やっぱり買っちゃう小心者。

 人は古から言う。『女の子が買い物するのは、無理してでも欲しい物があるからだ』と。

 「そうだ。今度の休みはリオを誘って春物見に行こう。そして、帰りは……」
 「モエ!見つけたよ!!」
 「わ!リオだ」

 またもモエはリオと視線を合わせることが出来なかった。理由は教室でのものとは違うが。

 「犬上から聞いたよ。タスクくん」
 「弟の話は……」
 「モエもちゃんとタスクくんをぶん殴ってでも学校休ませなきゃ!」
 
 普段の自分を見透いているような表現は伊達に『仲仔』同士ではないと感じたモエは、じっと弟が休む場所を外から見続けていた。
確かに無理を強いてでも弟を休ませるべきだった。体調が良くないのに、登校させてしまったこと。しかし、過ぎ去ってしまった
ことを悔やむことは何も生まないし、何も解決しない。解決を望むなら、自分がタスクの体調をいち早く嗅ぎ付ければよかったのだ。
それをも出来ぬ、姉。そして、身の程知らずな、弟。お似合いの姉弟じゃないかと、笑い合えばいいではないか。

 「犬上がね。『タスクくんは「返すのいつでもいいよ」って言ってたんだけど、あんまり長いと悪いからぼくが「三日後で」って
  言っちゃったから』って言うんだよ。それが丁度、三日前のことだって。犬上も」
 「は?何の話?」
 「ああ……。犬上、タスクくんから本を借りてたんだよね」
 「そうなんだ。アイツ、そんなこと一つも話さないから」
 「犬上、『ふるねこ堂』の紙袋持ってたでしょ」
601ごめんね ◆TC02kfS2Q2 :2012/02/06(月) 22:13:12.10 ID:YDETZAPr
 モエは思い出した。以前、『ふるねこ堂』のシュークリームを買って帰り、タスクと取り合いになってしまったことを。
タスクはその紙袋に入れてヒカルに本を渡していたのだった。そして、『タスク』の名前を頭に浮かべただけで、涙が溢れてくる。

 「タスクくんは犬上が来るから、犬上はタスクくんが待ってるから……ってお互い、ね」

 優しいリオの言葉が仇となる。モエは形振り構わず、『仲仔』に醜態を見せた。

 「タスクも犬上も、もうみんなばかだ!一日ぐらい本を返すの遅らせりゃいいじゃん!!約束ばかー!!」
 「そ、そうね……。モエ、大丈夫?」
 「リオ!今度ざあ、ワンビース……見に行ごうよー。赤いリボンにストライプ……ぐずっぐずっ……。ブーツだって、あだらしいの」
 「う、うん」
 「やくぞぐだよ……ぜったい」

 とりあえず、リオは鼻セレブの携帯用をモエに差し出して、モエの涙と洟をぬぐってやることにした。
 もうすぐ春だというのに、泣き顔で春を迎えるなんてことは、リオもモエも遠慮したいし!と。休み時間も残り少なくなったので、
リオはモエを連れて教室に戻る。校舎に入り教室近い廊下にて、大人しくなったモエは静かに携帯電話を開いた。

 「『体調よくなったから、教室戻ったなう』って……。始めから学校くんな!!」

 モエは弟からのメールの文面が液晶画面なのに不思議と滲んで見えた。
 リオはモエの姿をくすくすと笑っていると、教室でヒカルが『ふるねこ堂』の紙袋傍らに置いて、本を捲っているのが目に入った。
モエの姿をヒカルに気付かれないようにリオはそっと教室の扉を開き、脚をおもむろに入れると続いてきたモエは扉に脚をぶつけた。
木製の扉は響かせながら音をヒカルの耳を突き刺すものだから、ヒカルは本を置いて音のほうへと振り向いた。 

 「せ、芹沢。大丈夫?」
 「あんたなんかに何がわかんの!?この本の虫!!見んなばか!!!!」

 リオは今度の週末のショッピングを楽しみにしながら、モエとヒカルのやりとりを笑うしかなかった。


   おしまい。
602わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2012/02/06(月) 22:14:13.66 ID:YDETZAPr
投下おしまい。
二月になっちゃった!
603創る名無しに見る名無し:2012/02/06(月) 23:00:04.67 ID:lujfBK6Q
兄貴とか姉貴って仲悪くてもなんだかんだで妹や弟を気にかけてくれますよね。
良い話だなー
604創る名無しに見る名無し:2012/02/13(月) 15:33:33.48 ID:gP9nIdGn
携帯から絵うpしてもいいですか?
605創る名無しに見る名無し:2012/02/13(月) 19:13:55.24 ID:WObvqxWw
ええよ!期待!
606創る名無しに見る名無し:2012/02/13(月) 21:39:31.62 ID:gP9nIdGn
他スレでイラスト投下してるから特定されたらちょっと恥ずかしいな…
下手なりに描いてみました。
雑誌っぽくw
ライオンのレオナルドです。
http://i.pic.to/33hb3
607創る名無しに見る名無し:2012/02/13(月) 22:26:46.47 ID:gP9nIdGn
↑あ、二枚あります。
608創る名無しに見る名無し:2012/02/13(月) 23:03:32.86 ID:1dplt5WN
目がこええw
609創る名無しに見る名無し:2012/02/13(月) 23:43:23.60 ID:e6k7Un+Z
猛獣紳士!
610創る名無しに見る名無し:2012/02/14(火) 11:35:12.08 ID:+ai5lpYY
昨日酔っぱらって描いたせいか、体が人間すぎて愕然としたw
もっかいケモノホルモン注射してから書き直して来ます…orz
611創る名無しに見る名無し:2012/02/14(火) 16:45:28.18 ID:+ai5lpYY
ケモノホルモン注入しましたw
http://g.pic.to/87iyx
612わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2012/02/24(金) 19:48:24.80 ID:F+PhHkyQ
>>611
かっけー!


カッコイイキャラが苦手なわちきです。書き方おせーてくれ!
そして、ド遅刻なネコの日ネタ。ネコの日、おめ!!!です!
613わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2012/02/24(金) 19:48:53.31 ID:F+PhHkyQ

 ベランダから遠くに浮かぶ光の森。年に一度だけ現れる大きな輝きは、季節外れの蛍たちが街にたくさん舞い降りたよう。
 深夜だというのに池を囲んだ公園は賑やかだ。光あれば、人が集う。人集えば、光ある。

 「……群るのは嫌い」

 しんと静まり返る住宅街は、彼女をそっとしてくる気の優しいヤツだ。立て筋のキズ、爪で引っ掻いた跡が刻まれたカーテンの隙間から
光の森を見下ろしながら遠い目で見つめる一人のネコの娘。雲ひとつない夜に、彼女の白い毛並みは明る過ぎ、漆黒の長い髪は
ひとりぼっちの間もなく日付が変わる夜にはいささか似合いすぎる。

 あとわずかで2月22日。世間はネコの日。街中のネコたちは揃いに揃って、年に一度の夜を共に過ごすネコだけの夜。だけど。

 今夜だけ、今夜だけはそっとしておいておくれ。わたしを理解しようとしようもなら、およしなさい。
 彼女曰く、『猫とは、解答のないパズルである』という格言もあるらしいじゃないか。と、娘はカーテンを閉じた。

 外の空気を吸ったのは久し振り。真夜中の街が眩いので、目に優しいパソコンのモニタに目を移す。
 ネトゲに浸ってCGだけど顔馴染みの面々の元へと彷徨うが、あいにくバーチャルな世界でもネコの日のお祝いをしていた。
ネコミミのキャラばかり集って、のんびりと、特になにかアクションを起こすことなく時間を過ごす。

 「ネットもリアルもネコの日ですか」

 ネットワークの上だが、娘は気付かれないようにその場を去った。

 マンガにラノベばかりの本棚は爪跡だらけ。あかあかと暗い部屋にともるパソコンのモニタも無機質な文字で、取り留めのない
独り言の呟きがずらりと並ぶ。「にゃー」「にゃー」「にゃー」と、今夜は特にネコの声の文字が目立つ。ご丁寧にハッシュタグも
『#222』と彼女への嫌がらせのようだ。目をぱちくりとさせず、電光石火の指裁きでリプを飛ばす。
 
 「@wan_wan_ko お前、イヌだろ」

 同じ文字だらけのタイムラインは、雪解けの頃の急流を思い起こさせて、それを黒髪の白ネコは、ジト目でじっと眺めていた。
 彼女と外との接点は、このモニタ越しでバーチャルなリアルを見通すか、部屋の窓から覗くだけ。
 読みかけの本に挟まった履歴書の名前欄に『夜月野茉代』とだけ書かれていて、続きを書く予定まったくなし。

「この日が、一年の中で一番嫌いなんです」

 真っ白なモニタの灯かりが部屋を薄っちらく照らす。


614「ネコの日なんで、嫌い」 ◆TC02kfS2Q2 :2012/02/24(金) 19:49:48.90 ID:F+PhHkyQ
    #

 白先生がなじみのコンビニでおでんを買うと必ず店員は「お箸は一膳でよろしいですね」と尋ねる。

 知った顔の店員だから気を利かせているのか、それとも遠まわしでバカにしているのか。白先生は湯気立つ器を覗き込むと
「二膳でお願いします」と答えた。店員はにこやかに割り箸を二膳用意した。仕事帰りに寄るコンビニはよく訓練されている。
 最近はコンビニでビールを買うのにもひと手間掛かる。年齢確認をお願いします、とレジの液晶画面を指差された。
成人ならば画面をタッチしてくれとのことだ。もちろん成人して早十ンー年の白先生は優しく画面をタッチした。

 「何もかも、変わるんだな。しんどい」

 コツコツとブーツのかかとを鳴らして店を出る。片方のコンビニ袋からおでん、もう片方からビールの缶を二つ透かせて
すっかり夜の底に落ちた佳望の街並みを一人白先生は歩いていった。入口でたむろする青年たちなどは無視無視。
「いいの?」という突っ込みはお断り。教育者としては見過ごせないが、一人身の三十路女としての意見を白先生は通したかったのだ。
 時間に間に合いますようにと、おでんの汁をこぼさぬように小走りすると、かかとの音も付いてくるように聞こえる。
白先生だって、いっぱしの女子。歩きにくたって、かかとのあるブーツで街を闊歩したいお年頃なんですよね……センセ。

 「……」

 無言で光放たれる公園の側を通りがかる。大きな池を囲んだ遊歩道がちょっと自慢、今宵はネコたちだけに時間を譲って
静かなる森のまったりとした「ネコの日」を許してくれる大らかなヤツ。
 白先生はこの公園の側を通りがかるのがちょっと後ろめたい。学園の小さな子から指差されて笑われるかもしれないと、
ひやひやとした想いが、脳裏にぶり返してくる。そして、嫌な予感ほど良く当たる。

 「あ!白せんせー!」
 「白せんせにゃ!」
 「コレッタにクロか……。おめでとう、ネコの日」
 「おめでとうニャ!!」

 この夜は特別な夜。いつもはおねんねの子ネコたちも、夜更かし出来るネコの日だからと喜び勇んで暗い公園をきゃっきゃと跳ねる。
白先生とはおなじみの学園の子ネコ、コレッタ、クロにミケが夜を楽しむ。普段の制服とは違って私服の彼女たちは色とりどりで、
お菓子のような甘い香りがする。コレッタは最近買ってもらったローラーブレードを履き、ぶかぶかのプロテクターを付け、がたがたと
ローラーを鳴らしながら白先生に近づいてきた。ぎこちないコレッタの足元に白先生の爪がうずく。うずうずうずうずと……。
コレッタの魅力に打ちのめされそうになりながらも、白先生は理性を保つ。幼い金色の髪は夜でも美しく見えた。

 「白せんせー。コレッタね、ローラーブレードすべるのじょうずになったニャよ!」
 
 ピンク色のローラーブレードを履いてコレッタががらがらと走る。
 決してお世辞にも上手くない滑り。滑っているというより、滑らされている。

 「どう……ニャ?」
 「ああ。上手いな」
 「コレッタ!夜中だから静かにするにゃ!ローラーはうるさいにゃよ」
 「うるさいのはクロだニャ!くやしかったら、クロもはいて……」
 「どーせ、コレッタよりも上手く滑れてコレッタがかわいそうだから、はいてこなかったにゃよね」

 お互い尻尾を膨らませながら、かわいいケンカをする二人を白先生はなだめながらコレッタの足元を見てふと思い出した。

615「ネコの日なんで、嫌い」 ◆TC02kfS2Q2 :2012/02/24(金) 19:50:10.81 ID:F+PhHkyQ
 (最近、ローラーブレードの練習してないな)

 ほんの出来心で購入したローラーブレード。
 コレッタたちと一緒に公園を滑走したかった。それだけの理由で、自分の歳のことも考えずに始めてしまったローラーブレード。
 しりもちついて、木にしがみつき、プロテクターがキズだらけになるまで七転八倒しながら練習していたが、何時しかここに
来ることさえも無くなってしまった。今頃、多分、ローラーブレードは保健室のどこかに放置されているはずだ。

 「おーい。コレッタにクロにミケー。あんまり騒ぐなよ」

 夜の公園には学園の生徒指導も来ているので、白先生も安心した。もちろん、彼ももちろんネコだ。

 「おや、帆崎先生。お連れさんはよろしんですか?」
 「ルルにはちゃんと『仕事』だと伝えてますし」
 「確か二十歳……だったかな。若い嫁さん家に一人にしちゃって」

 あくまで帆崎は保護者代わり、自ら進んでコレッタたちへと近づくことはなく、ベンチに腰掛けて役目を果たしていた。
一人で時間を貪るのも、たまにはいいなと、表情の起伏を少なくする帆崎。「あんま、遠く行くなよ」の声が棒読みだ。
 帆崎はマフラーに顔を埋めてぼやく。

 「うちのツレはああ見えて……なんでもないです」

 公園から深夜にも関わらず、小さな子の声が聞こえてくるのも、この夜だけが持つささやかなる特権だった。

    #

 遠い人との言葉のやり取りも飽きてきた。茉代は何も考えることなく時間を潰せると、とある動画サイトにたどり着いた。
ネットで話題の連続アニメ、第一話こそお試し無料だが、それ以降は課金制だ。『かきんせい』と言うナイフが深代に突き刺さる。
「お祭りの夜になにやってるんだろう」という思いがナイフを捻る。「わたしはわたし」という彼女の主義がナイフを消し去った。

 アニメを見るにも『かきんせい』。
 アイテムを得るにも『かきんせい』。

 誰でも容易く登れる木も、深代にはてっぺんがはるか高く見えて登る気さえ失せてしまう。

 今頃、同級生のネコたちは公園に集まって、夢物語を語り合い、なんやかんやで時間を共有しているんだろう。
 今頃、オトナのネコたちはのほほんと顔を合わせて、解決することのない愚痴をみんなでこぼしているんだろう。
 今頃、小さなネコたちは……。

 もう、やめよう。空しいよ。

 たった。たった、六畳の世界。半径三キロの宇宙。そして、わたしだけの時間。壊されたくはないから。
 学園を出て、自分の意思で人との交流を絶ってきたのだから、根気のある子って褒めてくれればいいじゃないですか。
 
 って言う理由なぞ、まかり通らない。って言っていた。オトナの世界は理不尽だ。と。確か学生時代、毎日通っていた保健室の……。

616「ネコの日なんで、嫌い」 ◆TC02kfS2Q2 :2012/02/24(金) 19:50:37.28 ID:F+PhHkyQ
 「ババァ……だっけ」

 カチカチカチとマウスをクリックし続ける。新たなる歌い手さんを発掘してみたいな、と。

 カチカチカチ……。

 時間だけが過ぎる。

 カチカチカチ……。

 ひたすら。

    #
 
 カチカチカチ……。

 シャーペンの芯をまた伸ばす。ひと時、紙の上を滑らせる乾いた音に変わりだした。気分もよい。筆が進んでいる証拠だ。
制服姿の茉代は保健室の机を占領して、ひたすらノートに文字を書き続けた。沸き立つ妄想欲が彼女の手を止めることを
許してくれないかった。欲望に誘われて、自分だけの物語を文字に託し、ひとつの作品として紡ぎ上げる。
 勢いで物語を書くことは、邪道にも見えるが、思い切りぶつける作法もたまにはよかろう。職業作家もよくやる犯行だ。

 「夜月野。まだ、書いてんのかよ」
 「はい。区切りがつかなくって」
 「出来上がったら、読ませてくれよ」

 茉代はコーヒーに興じる白先生の問い掛けを聞いていないことにした。
 冬の保健室は暖かい。窓から差す光も、手元を明るくするにはちょうどよい。

 「文芸部に入ればよかったのにな」
 「群れるのは嫌いなんです」
 
 保健室でも会話はいつも不毛だ。それを嘆くようにがらりと保健室の扉が開く。
 古文担当の教師・帆崎だった。ぶっきらぼうな顔をして、わざわざ茉代の様子を伺いにやって来た。
 
 「夜月野、古文の授業だけは出てみらんか?きょうはお前の好きな……」

 男のネコの声に深代は筆を止め、ノートの内容を庇うように抱き抱えた。秘密を守るように。
 帆崎と目を合わせることを躊躇った茉代は、長い髪を見せながら焦った。

 「ザッキー、まだですっ。まだ、七割の出来なんです」
 「帆崎っ、なんだ?わたしにだけダメなんだ?」

 保健室に通うことだけが楽しみだった日々。白先生も帆崎先生も、思い出に変わってしまった日々。
 脳裏に浮かんで消えて。リアルが彼女を呼び込む。
617「ネコの日なんで、嫌い」 ◆TC02kfS2Q2 :2012/02/24(金) 19:51:31.33 ID:F+PhHkyQ
    #
 
 茉代の携帯が鳴き出したのだ。
 動悸が激しくなる。
 まるで命を吹き込まれたように叫ぶ機械。

 ソイツが怖い。

 黙れ。
 黙れ。
 口を閉ざせ。
 自重しろ。

 でも、ちょっと……嬉しい。
 だけど、話なんかしたくない。
 けれども、嬉しいかも。

 着信なんて、何ヶ月ぶりだろうか。でも、光りが怖い!音が怖い!そして、誰かといるのが怖い!恐る恐る携帯に近づき、意を決して
両手で携帯を持ち上げる。震える人差し指で受話器のキーを押す。着信音は止まった。だが、受話器からの声に対峙しなければならない
という試練が茉代にはまだ残っていた。しかし、心配は無用。電話の相手が彼女を落ち着かせたのだから。
 
 どこかで聞いたネコの声。ネコの声。

 「夜分、申し訳ございません。覚えてる?夜月野だよな?」
 「ババ……、白先生?ですか?ですよねっ」

 茉代が口にしかけた『ババァ』こそ、声の主だ。
 耳元をさわさわとくすぐる、あの声。懐かしくもあり、まどろっこしくもあるオトナの声だ。
 
 「今、あなたの家の前にいるんだけど。寄っていいかな」
 
 キズだらけのカーテンを開け、二階の窓から飛び出してきた茉代は玄関先に白先生がいるのを確認すると、
携帯片手に「うん」と頷いた。そのお返しに白先生も「うん」と頷く。あの日見慣れた白衣はないけれど、茉代は心を許す。

    #

 DVD。
 CD。
 マンガ。
 ラノベ。
 小説。
 ガレキ。
 同人誌。
 パソコン。

 そして、星の明かり。

 茉代の部屋の全てだった。

 「どうしてわたしに電話をかけたんですか」
 「通りがかったら、お前が二階の窓から覗いていたからだよ」

 そんな薄暗い部屋のまま茉代は白先生を迎えた。両親は寝静まっているので、この家は茉代の欲しいまま。
 大しておもてなしすることもない、ちょっと前まで生徒と学校の保健医だったという街ではよくある関係だ。
暗さのせいか、茉代には白先生の顔が何気にニ、三歳若く見えるような気がしたが、正直な決して茉代は口にしないのだ。
618「ネコの日なんで、嫌い」 ◆TC02kfS2Q2 :2012/02/24(金) 19:52:01.19 ID:F+PhHkyQ
 「お仕事帰りですか」
 「そうだな。寄り道していた」
 「でしょうね。保健室に篭ってばかりの白先生が残業をする訳がないですね」

 茉代はそっとクッションを二つ用意する。ふわふわのクッションは一部分が異様によれていた。
丁度、茉代の手の位置に当たる部分なので、白先生はなにかピンとくるものを感じた。何かを掴むとついつい気を許すから、
何気ない話が弾む。

 「まだ、書いてるのか?」
 「はい」
 「どうだ?誰かに見せるとか」
 「してません」
 「たまには保健室に来るか?何もしていない毎日だったら、わたしが見てやるから、さ」
 「ザッキーだったらなあ……ですね。でも、最近妄想が続かなくて」
 「体動かせよ」
 
 なんでもない言葉を許す白先生、ブーツを脱いだ脚を自らの指でマッサージしていた。脚は働き者。働くことを拒む茉代は口を塞ぐ。
 茉代は決して白先生と目をあわせて話そうとはしなかった。そして、座っているクッションをやたらに抓る。抓る。そして、抓る。
そんな茉代の手癖を白先生は見逃すことはしない。ババァと言えども、感覚は劣っていないからな。といわんばかりに。

 「保健室のシーツもお前のせいで、随分とよれたからなあ。これからは働いてシーツ代返してもらおうか」
 「なんですか。青少年育成のために投入された歳費をたった一個人に負担しろと……ですか」
 「お前もな、オトナだぞ。冗談ぐらい解せよ」
 「まだ、十代です!いちおう」

    #

 転んだコレッタがローラーブレードを脚にまとい、膝付いて立ち上がる。池の淵でゆらゆらと明かりが揺れる背景を背負い、
コレッタは遊歩道を前へ前へと滑ろうとしていた。自分が思うほど上手に滑ることが出来ないのが悔しいニャ、
振り払うようにぱんぱんっと手を払う。自慢の長い金色の髪は月に照らされて、コレッタは遠い星空を見上げていた。
 星空は公園の森を慰めて、静かにするように諭す。ざわわと枝さえ揺らさない。

 「クロ!笑うなニャ!!公園の森さんたちも、コレッタをおうえんしてるニャ」
 「んな、バカにゃ」

 砂だらけになったコレッタのスカート。にやにやと笑うクロとミケ。公園の森は諦めに似た感情で彼女らを眺めていた。

 森を照らす月。
 遠く、彼女らを優しく見守り夜を飾る。

 窓から公園を覗く茉代もまた、コレッタと同じ月に照らされて2月22日を迎える。

 「今年の夜会は静かだな」

 腕時計をチラ見して帆崎はコレッタたちを見守りながら、マフラーに顔を埋めた。

    #

 「ネコの日の夜会が賑やかですね」

 茉代は遠い目で光あふれる公園を眺めていた。普段はしんと海の底かと紛うほど、子ネコの囁きさえも許さない夜の公園。
一人きりの茉代はそんな公園が気に入っていた。黒いマントを被せたように静かに闇に包まれる時間だよ?たった一日だとは言え、
茉代に見せたことのない笑みを晒すなんて。自分だけの親友が、自分の苦手なヤツと笑いあって手を叩いているような気がする。

 結局は一人じゃないか……。
619「ネコの日なんで、嫌い」 ◆TC02kfS2Q2 :2012/02/24(金) 19:54:54.46 ID:F+PhHkyQ
 白先生は茉代に気付かれないように、そっと携えたコンビニの袋からおでんの器を取り出して勧めたが、もちろん答えは。

 「群れて食べるのが苦手なんです」
 「じゃ、わたしだけが食べるぞ」

 頷いた白先生は一人でおでんの蓋を外す。ふんわりと薄い出汁の香りが茉代の部屋に広がっていった。
 くんくんと、昆布出汁の香りを楽しむために言葉を慎んでいると、パソコンから笛の音が響いた。動画サイトが時を告げている。

 「午前零時ぐらいをお伝えします……」

 淡々としたアナウンスをわざと聞こえるように陰口を叩く者の声のように茉代は聞いていた。
白先生は自分の腕時計で時間を確認すると、コンビニの袋から缶ビールを二つ取り出し蓋を開け、茉代にそっと差し出した。
そっと手を缶に差し伸べた茉代は、ゆっくりと口に付け缶を傾ける。じわりと口の中に炭酸と苦味が混じりあい、喉を通過すると
いままで特に感じることのなかった食欲が不思議と沸いてきたのだった。これがオトナの味か。

 「ほら、ちくわもあるからな」

 オトナになって初めて口にしたものは、案外いいヤツなのかもしれない。 茉代はおでんの器を手に持つと、世間の暖かさを感じた。

 「お前、『二十歳になったら先生と呑みに行きたいです』ってずっと言ってたろ」
 「保健室での話ですか」
 「毎日聞かされてちゃ、叶えてやるしかないだろ。オトナとして」

 ネコの日が誕生日だから、いつもその日はわたしのことを忘れ去られているような気がしていた。

 (だから、ネコの日は嫌いだ)

 しかし、それは若い頃に罹る熱病のようなものだったと、二十歳になったばかりの茉代は気付いた。
 初めての酒が入った茉代は、体の奥から熱くなる未体験ゾーンに踏み入ったことに戸惑い、
ほんのりと頬を桜色に染める。風に当たろうとキズだらけのカーテンを開けると、手に届く距離でネコの日の公園が見える。

 「公園でちっちゃい子が遊んでますよ」
 「ネコの日だからな」

 ほんの一瞬、ほんの一瞬だが、茉代は自分がネコの夜会に紛れて帆崎の姿を探している場面を思い浮かべ、そしてそんな自分を恥じた。
 白先生も並んで公園を眺めていたが、帆崎の姿を見つけることはできなかった。

 「ホントはザッキーと呑みたかったなあ。できれば一晩中飲み明かしながら」
 「わたしの前で嫌なこと言うなあ。でも、ザッキーはなあ……」

 茉代は白先生に言葉の続きを催促したが、白先生はビールを口にしてごまかした。手にした器でゆらゆら揺れるおでんの出汁を見つめながら、
茉代はいつも眺める公園の池を思い出した。池?そういえば、池を囲む遊歩道での出来事。茉代なら、毎日見ているから、なんでも知っている……ぞ。

 「そういえば、以前ですけどあの公園で白先生に似た人がローラーブレード?かな……。アレやってるのが見えたんですが、
  違いますよね?人違いならごめんなさいですね。いつも転んでばかりで上達していないように見えたから」
 「なにっ」

 わたしだ……と、素直に即答できない白先生は箸を止めた。箸に摘まれたこんにゃくからは薄い出汁が雫となり、
白先生の代わりに冷や汗をかいてくれていた。ぶざまな姿を見られていたことを茉代に早く忘れてもらいたいと願いつつ、
こんにゃくをくわえた。それに習って、茉代は白先生に勧められたちくわを咥える。

 「文章、書けないんだったらさ。体動かしてみるか?」
 「白先生に似ている人だったら、その人に習ってもいいかも……ですね」
 「やめとけ。お前、群れるのは嫌いなんだろ」

 茉代はリコーダーのように、ちくわを咥えてひゅーっと吹いた。


   おしまい。
620わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2012/02/24(金) 19:56:14.85 ID:F+PhHkyQ
にゃあああああああ!

投下おしまいなのだ。うん。
621わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2012/02/24(金) 20:00:27.76 ID:F+PhHkyQ
タイトルは「ネコの日なんて、嫌い」です。

はずーーーっ!
622創る名無しに見る名無し:2012/02/24(金) 23:51:21.68 ID:vL0RDQhf
投下乙。おとにゃのかいだんのぼる〜
623創る名無しに見る名無し:2012/02/25(土) 15:06:29.12 ID:2m6uHn1r
ちゃらんぽらん教師達がちゃんと仕事してるw
624創る名無しに見る名無し:2012/02/25(土) 15:56:32.53 ID:A7MBzN/g



【サッカー】日本、アイスランドに3-1勝利!前田、藤本、槙野が決める ハンドスプリングスローに場内沸く キリンチャレンジ杯★4



http://awabi.2ch.net/test/read.cgi/mnewsplus/1330093829/




625創る名無しに見る名無し:2012/02/25(土) 16:14:02.72 ID:GB4n/NwN
>>621
乙です〜
しかし素晴らしい文才ですな!!
>>611です
ライオン描きたくなったんで画像検索して見ながら描いただけですよ〜。
自分マッチョが好きなんで男はみんなガチムチにかいてしまうのです。
626創る名無しに見る名無し:2012/02/25(土) 23:40:52.70 ID:xJa1av4S
627創る名無しに見る名無し:2012/02/26(日) 01:03:01.24 ID:Wuolj+ex
ふーゆーの〜帰り道〜?
これからお家で食べる晩御飯の事を考えると
心がポカポカしてくるね
628創る名無しに見る名無し:2012/02/26(日) 09:29:13.19 ID:+0nNkBVN
>>626
雰囲気出てる!!
アングルもいいね。
寒そうなのに心暖まる!
尊敬してます。
629創る名無しに見る名無し:2012/02/26(日) 20:01:10.26 ID:oyrlOgCb
beautifulやわぁ
630創る名無しに見る名無し:2012/02/27(月) 13:29:41.79 ID:ddch3gEy
わんこさんの小説も女の子の焦りがこっちにも間近に伝わってくる描写で素晴らしいし、いつもの絵描きさんもすげー雰囲気があっていい!
631創る名無しに見る名無し:2012/03/03(土) 23:33:22.48 ID:R06CoqrN
632創る名無しに見る名無し:2012/03/04(日) 00:22:32.02 ID:lTWuBxW3
これは綺麗な
633創る名無しに見る名無し:2012/03/04(日) 12:38:32.93 ID:bdUvca1V
>>631
あえて横からってのがまたいいね。
美人だー!
634創る名無しに見る名無し:2012/03/04(日) 23:38:59.11 ID:Nn9d4YTD
今年もお内裏様なし、という暗示かこれは
635創る名無しに見る名無し:2012/03/07(水) 00:53:45.00 ID:c7/IrG8n
>>631
この人形ほしい!ミオ先生のとこのかしら

みそじ
ttp://dl6.getuploader.com/g/6%7Csousaku/532/%E5%86%99%E7%9C%9F+12-03-7.jpg
636創る名無しに見る名無し:2012/03/07(水) 08:45:11.99 ID:yWgRWN3x
ババアかわいいなぁ。
性格で損してるよこのババア。
勿体無いババアだ。
637創る名無しに見る名無し:2012/03/07(水) 18:07:20.96 ID:RLMTpqYI
ババァかわいいよババァ
638創る名無しに見る名無し:2012/03/07(水) 21:26:04.12 ID:c7/IrG8n
そういえばオルタロダがアップできなくなってたね。
3月で運営停止で、アップロードされてるファイルも削除しちゃうみたい。
639創る名無しに見る名無し:2012/03/07(水) 21:40:29.78 ID:+qeESLFz
640創る名無しに見る名無し:2012/03/08(木) 11:54:05.86 ID:/pZi7U5/
かっこいいw
641創る名無しに見る名無し:2012/03/08(木) 17:13:41.86 ID:BBETsFKh
黙ってしゅっとしてりゃ美人w
642創る名無しに見る名無し:2012/03/08(木) 23:23:22.23 ID:FRtCbuvP
残念美人ババア3○歳独身
643創る名無しに見る名無し:2012/03/08(木) 23:26:07.15 ID:Oj6YssIC
絵だけみりゃすごいセクシーな三十路なのにw
644創る名無しに見る名無し:2012/03/20(火) 23:22:12.87 ID:OlSkNYMw
保守
645創る名無しに見る名無し:2012/03/21(水) 21:35:57.87 ID:BWpsrvKK
美琴「噛めば噛むほど、あまーくなるものって…なーんだ」

狗音「うーん。ミコの首筋?」

美琴「ぶー!チューインガムでした。はい、お仕置き」

かぷ…。

狗音(計画通り…)
646創る名無しに見る名無し:2012/03/21(水) 22:24:58.71 ID:PVFApKH1
なにその頭脳派w
647創る名無しに見る名無し:2012/03/23(金) 21:56:39.49 ID:bRz+7EFm
648創る名無しに見る名無し:2012/03/23(金) 22:09:41.80 ID:2y3oPMcx
三十路猫「するめ!」
649創る名無しに見る名無し:2012/03/30(金) 18:30:40.07 ID:LgVLc2E7
では齧り残しを(ry
650創る名無しに見る名無し:2012/04/01(日) 17:21:29.01 ID:J2g/GamB
三十路猫のかじり残し、まずは100円から入札スタート!
651創る名無しに見る名無し:2012/04/01(日) 18:53:04.90 ID:OITGAGaQ
35万!
652創る名無しに見る名無し:2012/04/01(日) 22:52:30.44 ID:tjxtSebB
653創る名無しに見る名無し:2012/04/02(月) 01:09:52.22 ID:3a4Y/6fl
うまそーだ
654創る名無しに見る名無し:2012/04/02(月) 12:26:42.20 ID:WXMhijSd
おおww
お茶すんげー熱そうだw
655わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2012/04/05(木) 22:07:59.33 ID:T8GdtG/3
サン先生といえば…そう!ですね!もっと、サン先生を見たいよ!読みたいよ!
だから。書いた。
春が街を覆ってしまう前に投下します。
656冬の風、春の兆し。 ◆TC02kfS2Q2 :2012/04/05(木) 22:08:47.39 ID:T8GdtG/3

 「美味しいもの食べに行こうよ」と誘われたから、普段は縁遠いスカートを履いてみた。
 新調したコートに初めて袖を通し、久しぶりに履くブーツも、ちゃんと太股を収めてくれた。

 わくわく。
 ちょっと、わくわく。
 
 女の子は気になる男子から誘われれば、いつでもわくわくできるもの。

 しかし、誘ってくれたヤツは「あれ?ミナのことだから、きっとバイクに乗ってくるんじゃないかなと思ったのにね」と、
小さな小さなポケットバイクに跨がり、子供のような眼差しで大人っぽく洒落た格好のミナを見ていた。
 あまりにもミナは悔しかったから、ポケバイに乗った小さな大人の内股に、お久しぶりのブーツで蹴りをお見舞い。
 自分が蹴られた理由が分からない小さな大人を残して、ミナは「サンせんせー。また、今度ね!」と、屈託のない笑顔を見せながら
そのまま遠くへと去ってしまった。

 サン・スーシは背負ったリュックからペットボトルを取り出して口に含むと、すぽすぽと鼓動を揺らすポケバイのタンクに置いて、
ヘルメットのゴーグルを下ろし、グローブを嵌めると小首を傾げてサン先生は呟く。

 「どうしたかな」

 ペットボトルを戻すと、サン先生はキーを挿し、愛車のエンジンをかけてスロットルをぐいぐいと廻す姿はコドモだった。

 自宅に戻ったミナは、とくに早々に帰宅した理由を家にいた両親には伝えなかった。深く掘り下げて欲しくもないしと、
ミナは判断したからだ。せっかく着替えた洋服も、ろくに外の景色を愉しまないままクローゼットに帰ることになった。
 履き慣れたジーパンの有り難み、着慣れたパーカーの親しみ安さ。見回した自室で目に入る、本棚の書籍や架けられたジャケットに、
白く蛍光灯の光を反射するヘルメット。改めて、ミナは自分はバイク乗りなんだと、そして男友達からもそのように思われているんだと
認識した。それが、なんだか悔しかった。

 「寒いな……」

 きょうはとくに寒い。風は冷たい。
 ガレージに出ると、ひんやりした空気が一層感じられる。衣類の隙間という隙間から寒気が忍び寄る。
 ミナは寒さを堪え、自分の相棒を乾いたタオルで撫でる。丸みを帯びた鉄の胴体が優しげに輝いて、逞しい二つの車輪が
大地を踏み締める。ロックを外して相棒をゆっくりと外に出した
657冬の風、春の兆し。 ◆TC02kfS2Q2 :2012/04/05(木) 22:10:25.64 ID:T8GdtG/3

 「お尋ねします。もしや、お姉さんは……」

 風の冷たい海浜公園のあずま屋で自販機で買ったホットコーヒーを嗜んでいたミナは、とみに声をかけられて振り向いた。
ナンパ目当てならお断り、今はちょっとのめり込んでいるものがあるから、それより魅力的なお誘いなら考えてあげてもいいよ。
でも、きっとそれは敵わないと思うし。と、言いたげにミナはにこっと声の主に微笑んだ。冬の風は冷たく、いくら着込んでも、
すき間風だけは逃れられない。コートの衿元をマフラーで巻いていても所詮は姑息的、顔だけはどうしようもない。
とくにミナのようなネコにとっては、風が幅をきかす日の外出は避けるものも多いのだが、逆にミナのように敢えて冷たい空気が
幅をきかす日の外出を好む者たちもいた。

 「バイク乗りでしょう」
 「……さあ。どうでしょうかね?」
 「わざわざ、こんな寒い日、寒い場所で温かいコーヒーを飲む。ぼくのようなイヌならまだしも、お姉さんはネコさんだ」
 「そういうことが好きな人もいるかもしれないね」

 白い波の方を見ながらミナはホットコーヒーの温度で、凍てついた手を温めていた。じっと握っているだけで、
まるで薄く手に張り付いた氷がじわじわと溶けてゆく感じがする。
 ミナがジーンズに包まれた脚に温まった手の平を置く。足の先はごついブーツ、お洒落のために履くにもちょうどよい。

 「無駄もなく、隙のないファッション。ぼくがバイクに乗るとしたら、そんな服装を選ぶね」
 「そんな街の流行りもあるかもね」
 「仮にお姉さんがバイク乗りだとしよう。街を歩いていても、そのまま喫茶店でカフェオレを愉しんでも不自然ではない服装だ。
  お姉さんはきっとレトロチックなバイクに乗っているのではないのかな」

 静かにミナは残りのコーヒーを口に含んだ。

 「ああいう型のバイクはスピードを愉しむより、走ることだけを愉しむんだ。お姉さんの服装だと、後者の愉しみ方に相応しいと思う」
 「なるほどね。素晴らしい着眼点だと思うよ」

 とくに感心したという訳ではない素ぶりを見せて、ミナは既に冷えてしまったコーヒーを飲み干した。
 すっと立ち上がると、余計に風を強く感じる。隣で続く声が下から聞こえてきた。

 「やけにわたしのことをバイク乗りだってお兄さんは推理してるけど、どうしてだろうね」
 「それを成立させるヒントが揃いすぎなんだ」
 「どれも危ういけどね」
 「それじゃあ。最後に一つ。お姉さんのブーツの先は擦れている。女の子ならば、そんな擦れ方は不自然だな。
  きっとギアを蹴るときに出来た擦り傷だ」

 ミナは黙って男子の声に耳を傾けていると、すくっと立ち上がり声の主を蹴り飛ばした。
 きゃんと鳴く間もなく、声の主はウサギのようにすっとんで海岸への階段へ転がりそうになっていた。

 「これはね、あんたを蹴り飛ばしてたから擦り切れたんだよ」
 「そう来なくちゃ」
 「何が、そう来なくちゃだよ!サンせんせー!」

 春風をきっと吹かしてみせると、ミナはサン先生をまたひとつ小突いた。


  おしまい。
658わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2012/04/05(木) 22:11:37.21 ID:T8GdtG/3
好き勝手やって、ごめんなさい。

投下、おしまいです。
659創る名無しに見る名無し:2012/04/06(金) 00:30:12.90 ID:rwwxl16/
わんこさん。お願いがあります。



ミナさんを私にください!
660創る名無しに見る名無し:2012/04/06(金) 17:13:33.04 ID:t/gdTyPR
俺はサン先生と友達になりたいw
661創る名無しに見る名無し:2012/04/06(金) 20:53:15.21 ID:e5o97uox
怪我してババァに赤チン塗ってもらいたい。
662創る名無しに見る名無し:2012/04/07(土) 22:33:55.80 ID:9wjdybBO
663創る名無しに見る名無し:2012/04/07(土) 22:46:00.69 ID:TSY4WlUp
最高ですwww
優しいw
664創る名無しに見る名無し:2012/04/07(土) 23:15:36.51 ID:K2Atl7GA
わぁーいwww
665創る名無しに見る名無し:2012/04/07(土) 23:28:07.95 ID:90osHvTa
ババアが真面目に治療してる!!
666創る名無しに見る名無し:2012/04/07(土) 23:29:24.11 ID:nFemH+pE
ええわぁ…
667創る名無しに見る名無し:2012/04/11(水) 11:01:23.57 ID:C5bzWSZx
↑くっそ獣の数字とられた!(666:一般的には悪魔の数字と呼ばれてますが旧約聖書の黙示録によると獣の刻印とされる数字)
新米ケモナーですが皆さんに質問です。
このスレにソラトロボというかリトルテイルブロンクスの二次創作投下はOKでしょうか?
まだ妄想しかしてないんですが時間とか気力が余った時にでも小説におこして投下したいです

以下あらすじ

主人公(人間♂)は、とあるきっかけで死の淵にたたされる。
走馬灯の中で蘇る今は亡き愛犬との思い出…
気がついた時、目の前に佇んでいたのは愛犬…の面影をもつ獣人の少女。
主人公はイヌヒトとネコヒト、
ふたつの種族が共存する世界"リトルテイルブロンクス"にとばされていた。
今、新たな物語が動き出す…
668創る名無しに見る名無し:2012/04/11(水) 13:20:37.85 ID:W1tr6hiS
もちろんOKですよ!
どしどし書いて、完成したら投下したれい!
669創る名無しに見る名無し:2012/04/11(水) 20:58:04.04 ID:C5bzWSZx
了解!
ただいつになるのか予定は未定
次スレかもしれない
ソラトロボはじめリトルテイルブロンクス構想はケモナー界では賛否両論らしいので不安だったから質問したんだが
早くもOKレスがついて嬉しい

以下さっき書けなかった注意点

ラブコメ、バトル、変身ヒーロー、ロボと要素てんこ盛りな作風になると思われる
特に著者がロボ魂も合わせ持つゆえロボ描写過多になる可能性がある
人間×獣人アリですので、獣人×獣人以外認めない!という方はご注意を
舞台はリトルテイルブロンクス世界のどこかにある国(完全に創作)
ソラトロボ、テイルコンチェルト、まもる君など既存作品のキャラの登場予定はありませんが、用語などは出ると思われる(クリステルとかノノとか)

以上の点を考慮した上でOKかNOか判定願います
670創る名無しに見る名無し:2012/04/11(水) 21:07:35.49 ID:W1tr6hiS
個人的には全然OK!
書きたいもの書いて、投下する。それが「創作発表板」じゃーん!
671創る名無しに見る名無し:2012/04/11(水) 23:32:45.01 ID:Aon3dlsg
672創る名無しに見る名無し:2012/04/12(木) 00:20:53.45 ID:9dzBQ35S
お美しい。
673創る名無しに見る名無し:2012/04/12(木) 00:21:39.99 ID:nt805pdB
花見ですなぁ
674創る名無しに見る名無し:2012/04/12(木) 18:26:45.43 ID:KVh2ooLU
お年を感じさせない美しさ…ウットリ
地元の桜は昨日の雨であらかた散ってしまった
今年も仕事でろくに桜見れなかったな〜
675創る名無しに見る名無し:2012/04/17(火) 10:18:02.22 ID:6cKfGbF5
676わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2012/04/27(金) 23:32:36.10 ID:gQGXKqxs
着るものが薄くなる日々ですね。

ミナ姐さんとのお話です。
677ひきこもり姫 ◆TC02kfS2Q2 :2012/04/27(金) 23:33:09.82 ID:gQGXKqxs

 恋に落ちるならコイツだと、一台のバイクをしげしげと近くで眺める少女がいた。
 男子を見るなら足元から、教科書どおりのチェックポイントから逸さず黒光りする泥除けを見つめていた。
 吸い込まれそうな黒いタンクに彼女の真っ白な毛並みが反射する。同じく真っ白な外はねショートの髪が乱れても
気にしないぐらい、彼女はじっとバイクを見つめ続けていた。学校帰りの寄り道は楽しいと、言わんばかりに。

 「おや?いらっしゃい。また来たね」
 
 店頭に並んだバイクが眩しい。中古とはいえタンクは輝き衰えず、マフラーも錆が無い。
 曲線美を主張したタンクは女性らしさを髣髴されて、むき出しの空冷のエンジンは野性味あふれた男性らしさ。
単気筒のシンプルな構造は一本気な性格とも言えるし、見方によっちゃあ一途だとも言える。物は言いよう。
 女の子が男子に恋焦がれ、女子に憧れるのは世の理だ。そして、美しいものに手を出して傷つけたくなるのも世の理。

 「チコちゃん、だっけ?」

 本当は『莉子』だ。『りこ』だ。
 でも、ちっちゃいからみんなから『チコ』『チコ』と呼ばれていた。聞きなれた呼び名だというのに耳に届かない。
自分の名前を呼ばれたときには、すでに莉子は自分の世界に肩まで浸かりシートに薄い手をかけていたところだった。
厚みがあって、包容力に優れたシート。いつかこれに跨ってと風切る初陣を夢見て。

 「ね!チコちゃん!」
 「わ!すいません!すいません!」

 莉子は店の者から声をかけられたことに驚いて、思わずシートに爪を立てた。薄らと跡が五つの点で残る。
 しかし、時すでに遅し。尻尾を丸めてお詫びするしかない、寄り道だけの分際で何を言う。と、自分を責める。

 「ミナさん!すいません!シートに……」
 「いいよいいよ。こっちこそ、驚かしてごめんね。中古だから、このくらい『前オーナーがネコでしてね』ってごまかせば」
 「すいません」
 「でもさぁ。コイツ、10000キロぐらい走ってここにやってきて、それでもピカピカなのは正直嫉妬しちゃうね。
  羨ましすぎるぞって。『ボルティ』ってヤツは軽いし、足つきいいから、小柄なチコちゃんにはちょうどいいかも」

 ミナと呼ばれた大人のネコは店の雰囲気とは違ってスーツ姿に身を包んでいた。すらりとタイトスカートから伸びる足元は
ブーツでもなくパンプス、汚れても構わないシャツではなく襟元整ったブラウス。不真面目に例えるならば、女教師か。
 確かに焦った。確実に焦った。照れながら困り果てている顔をしているミナに申し訳立たないと。莉子は深々と頭を下げた。
 ぶらぶらと合皮のバッグをぶら下げながら、ミナは「なんか、落ち着かないんだよねー」と自分の身なりの違和感を
にこにことしながら文句を垂れた。きちんとした身なりでないといけないところに行かなきゃならないから仕方ないと。

678ひきこもり姫 ◆TC02kfS2Q2 :2012/04/27(金) 23:33:29.58 ID:gQGXKqxs

 「ちょっと、行って来るね。あー、暑いし、歩きにくいし。でも、アイツのお願いごとだからちゃんとしないといけないし」
 「ねえ、ミナさん……」
 
 バイクを傷つけることを恐れて、一歩後ずさりしていた莉子は体の線が浮き上がったスーツ姿のミナにすがりたかった。
 例え、その姿が『バイク乗り』の姿でなくても。

 「このバイク、下さい!」

 中学生の率直な叫び。 
 ミナはちょっと首をかしげて意地悪そうに人差し指を口に当ててはにかんだ。

 「だーめ」
 「すいません」

 莉子は自分に諦めをつけるように謝った。

     #

 同じ空の下。 

 「すいません!すいません!」としきりに通り掛かる人達に謝る若いネコがいた。

 コンビニの前で右往左往としているのだから、嫌でも目立つ白ネコだった。二十歳ぐらいか、長い黒髪を揺らしながら、
メモ帳片手に入り口でたじろぐ娘、そしてそんな彼女に興味を抱いたちょっと年上なネコの女。じっとバイクに跨がって
白いヘルメットを脱ぎながら、自分に無いものを黒髪の娘からびしびしと感じていた。
 ふわりと金色の短い髪が揺れると、黒髪の娘のスカートも同調した。
 ミナが店内に入る間際、鈍い音がしたかと思うとまたもや同じ声。音の方を気にしていると、黒髪の娘が判で押したように。

 「すいません!」

 振り返ると店から立ち去るがたいの良いイヌの男に向かって何度も何度も黒髪の娘は頭を下げていた。
 そして、ミナが一番気になっていたことは彼女の手元にメモ帳がなかったこと。黒髪の娘のメモ帳はミナがぶら下げて持っていた
ヘルメットの中に転がっていた。おそらく黒髪の娘と男が肩をぶつけた際に、手からメモ帳が離れてしまったのではないか、と。
 ミナはメモ帳を拾い上げ、黒髪の娘を呼んでみた。そしてもちろん返ってきた言葉は。

 「すいません!すいません!」
 「謝ること無いよー。はい、大事なものでしょ」

 黒髪の白ネコはつばを飲み込んでメモ帳を受け取ると、コンビニの中に入るミナを呼び止めて、
一世一代の告白をするような勢いの目つきをして叫んだ。もちろん、ミナと目を合わせることを拒絶して。

 「わたしといっしょに、入ってください!」
 「え?」

679ひきこもり姫 ◆TC02kfS2Q2 :2012/04/27(金) 23:33:51.59 ID:gQGXKqxs

     #

 「初めてなんです。こういうお店に一人で行くの」

 小さなビニル袋をぶら下げた黒髪の娘は胸を押さえながらミナと肩を並べてコンビニを出ると、きょろきょろとあたりを見回していた。
本当は買物が済んだらそそくさと立ち去ろうと考えていたのだが、ミナから先制されて「ちょっと、お話しようよ」と誘われた。
 コンビニの駐車場の片隅にいると、行き交う人々が気になって娘はなんとなく世間の歯車になったような感じがした。
 少々息が荒い娘はメモ帳に書かれた文字を何度も見直して、そして口に出していた。かすり傷負ったと思い込んだ自分を
庇いたいから自分で自分を慰めるように。

 「妹と一緒にこういうお店は行ってました」

 前髪パッツン、流れるような黒髪が萎れる。
 聞かれもしないのに、口から出る言葉。自分を守りたい一心にだろう。

 「なんか、しくじるのが怖いっていうか。傷つくのが怖いんです」
 「うんうん」
 「だから、ずっと自分の部屋にいた。パソコンさえあればなんでも出来ちゃうこの世の中を否定したくなかったし、ずっと続くと
  思ってた。きっと、傷つくことは同時に誰かにバカにされたり、笑われたりすること……きっと、それに怖気づいていたですよね」
 「へえ。そんなものなのかなぁ」

 こけて、倒れて、倒れてこけて……のバイク乗りだから、いつもどこかで傷ついたりしている。二人の差は体とハートの違いかも。
 あたりを気にしすぎている茉代の姿をミナは気にしていた。茉代は後姿でミナに自分を吐き出す。

 「いつもと違う場所だと、言い方が貧相ですけど……落ち着かなくて、そわそわしちゃう、ような。お姉さんもありますよね!」

 ミナは黒髪の娘がなかなか自分と目を合わせてくれないことが少し寂しかった。だからバイクのミラー越しに目を合わせてみると、
透き通るような紺碧の瞳が彼女の白い毛並みに似合っているじゃないのかなあ……と、眉を下げた。
 黒髪の娘の毛並みはまるで汚れたことを一度も許さないような、清潔感、いや聖域のような輝きさえ感じられた。

 「わたしもあるよーな?うん」
 「でしょ!でしょ!」
 「そうね。きょうほどどんだけ早く身軽になって、コイツに乗りたいなぁって思った日はなかったし」

 昼間、スーツ姿にならなければならない用事があった。
 正直、パスしたかった。
 それでも、自分が行かねばならぬ。
 羊飼いのボロ着で冷徹な王の前で謁見できるほどの勇気など持ってはない。

 コンビニの片隅に止められたミナの愛車。裾が擦り切れたジーンズに楽な格好の上着が彼女のことを端的に言い表していた。
 バイクに跨ったミナはタンクの上に置いたヘルメットに両腕をかけて、夜と夕方の境目を彷徨う天を見上げていた。

 「お姉さんとわたし、住む世界は全然違うけど、なんか分かってくれて……嬉しいです」
 「あなたの素敵な名前、もっといろんな人に知られたらいいのにね」
 
 ミナは黒髪の娘が手にしているメモ帳を指差しながら、バイクのキーを挿して回して白い歯を見せた。
 唸るセルモーターとエンジンの爆音にびくっとした黒髪の娘は手をもたつかせ、あわててメモ帳を読み直してみる。
680ひきこもり姫 ◆TC02kfS2Q2 :2012/04/27(金) 23:34:09.96 ID:gQGXKqxs

 『買うもの。

  エクレア 2個
  オレンジジュース 1本

  分からなかったら、わたしに電話すること。

               茉代ちゃんへ』

 「チコ!」
 「ん?」
 「あ、あの、あの。いも……、いも、妹の名前です!本当は『りこ』なんですけど、ちっちゃいから!」

 エンジンの起動音で体が反射した茉代は同性なのにミナがいつか現れる王子、いや誇り高き王女のように見えてきた。
 片手を挙げて「また、会うかもねー」と、ミナが愛車に跨ってコンビニから立ち去ると、茉代は元の鞘に戻っただけなのに
寂しさを感じた。もしかして、茉代にとっては初めての感情かもしれない。だから、どこかに爪をたててみたい。
だからといって、自分に爪を立てるつもりか。ぎゅっとコンビニの袋を握り締めて、茉代は足早に家路に着いた。

 何度も何度も買物リストを口にしながら茉代が帰り道を急ぐ途中、何故、コンビニで誰かに声をかけてしまったのかと
自分で理由を探してみたが、思い当たるものが見つからなかった。ただ、自分と同じネコだったから?年上の人だったから?
そういえば、ネットの上では性差、年齢差、何もかも分からずに付き合えるのに、リアル世界でも出来たことが茉代には
不思議でたまらなかった。どうしようもないのに、どうしようもできない自分が悔しくて。

 「すいません」

 茉代は自分に諦めをつけるように謝った。

     #

 ネコは家につく。昔の人はそう言った。

 まだ手に入ることのない愛車に跨り、海岸の道を走る夢を莉子は見ながら畳の居間でごろ寝していた。
 そろそろ風が涼しくなってきて、着のぬくもりがひんやりと冷たさを帯び始める季節。莉子はそんな季節の変わり目が好きだった。
座布団を掛け布団代わりにして畳の上で転がっていると、嫌でも天井からぶら下がる蛍光灯が丸く見える。手うんと伸ばしてみるも
届くわけがない。ちょっと照れ隠しと畳にがりがりと爪を立てる。

 いきなりふすまが開いたかと思うと、コンビニの袋が飛び込んで莉子のわき腹にぶつかった。
 莉子が起き上がったときには既にふすまはぴしゃりと閉じてしまっていた。

681ひきこもり姫 ◆TC02kfS2Q2 :2012/04/27(金) 23:34:39.72 ID:gQGXKqxs

 「茉代ちゃん!帰って来たんだったら『ただいま』は?」

 逃げる足音を追いかけて、階段を登り、茉代の部屋まで走り抜ける。扉越しに耳を当てると、スリープ状態だったPCが
目を覚ます音が聞こえてきた。片手で茉代が買ってきたコンビニの袋をぶら下げて、莉子は姉の部屋の前で佇む。
 姉の名前をささやいても、扉を優しく叩いても、予想通りのなしのつぶて。
 気付かれないように、音を立てずにそっと扉を数センチあけ覗いてみると、真っ暗な部屋でモニタの明かりに照らされている
姉のシルエットが妹の目に飛び込んだ。椅子の上で体育座りをして、耳にはネコ用のヘッドセットをかける。零れる音楽の歌詞は
合成された声で生身の生き物をずきずきと突き刺すような、隠したくなるような誰もが抱える痛みを正直にえぐる唄であった。

 脆い、ガラスの部屋。

 ここにいれば、外の景色はよく見えるけどいつかはきっと息苦しくなる。そして、ガラスが割れるとき、真っ白な毛並みを
突き刺さる破片で穢しながら、途方もなく立ちすくむことしかできしかないかも。
 茉代はガラスの部屋の居心地を非常に心地よく思っていた。

 だって、ネコは家につく。昔の人はそう言ったから。

 姉をそのままガラスの部屋に置いて居間に戻った莉子は一人でエクレアを食べていた。
 座布団にちょこんと座って頂く洋菓子、畳の部屋とは実に相性がよろしくって。

 「そういえば。茉代ちゃん、エクレア嫌いだっけ。『毛が汚れるから』って」

 エクレアはまだまだ少女の口には大きく、先の方だけで口いっぱいだ。舌でチョコを溶かすと、口いっぱい甘く広がる蜜に虜となる。
 口の周りをチョコ色に染めながら、莉子は残ったエクレアとオレンジジュースのペットボトルを見つめていた。

     #

 ミナは部屋の中でハンガーに掛かったスーツを下から眺めていた。脇には箱に再び納められたパンプスが一揃え。
 もう、着ることなんかないんじゃないのかと。もう、履くことなんかないんじゃないのかと。

 「チコちゃん。明日も来るかな」

 そればかり考えて、寝転んで背伸びをする。アイツの願い事が難航すると思ったことが、あっさり片付いたから反動で余計眠い。
 ミナは一日をうやむやにしたくなった。しかし、莉子のこと、そして茉代のことを一緒くたにして忘れたくはない。

 「すいませんでした」

 ミナは自分に諦めをつけるために謝った。

     #

 「きょう、一つ傷つきました。でも、嬉しかった」

 初めて知らない誰かに縋った。
 お姉さんからしたら、自分は迷惑かもしれないし、ウザいと思われても仕方がない。
 茉代はどうしようもない自分を許すためにキーボードに思いをぶつけ、ネットの波を羽ばたく小鳥の力を借りて呟いてみたが、
季節外れに枯れた葉が小川に落ちたようにただただ流されてゆくだけだった。そんなものかと、ヘッドセットを外す。

 「エクレア、食べよっか」

 一度、傷ついたらもう怖いものなんかない。と、茉代はブラウザを閉じた。

     
    おしまい。
682わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2012/04/27(金) 23:35:56.28 ID:gQGXKqxs
おしまい、なのだ!
683創る名無しに見る名無し:2012/05/01(火) 20:31:23.06 ID:sm4/RLoK
英先生のGW

3日 初夏の装いで公園を散策。
4日 里帰り。地元の友人たちと食事会。デジカメで記念撮影。
5日 帰省帰りの電車の中、疲れて読書しながらうとうと。
6日 明日からの激務に備え、自宅でひとりのんびり。


白先生のGW

3日 偶然を装いコレッタを公園で観察。
4日 里帰り。地元の子供(ようじょ)たちの水遊びをデジカメで撮影(未遂)。
5日 帰省帰りの電車の中、疲れて寝ている子供(ようじょ)をちらちら。
6日 昨日までの自分に涙して、居酒屋でひとり反省会。
684創る名無しに見る名無し:2012/05/01(火) 20:35:51.20 ID:eB3LKI/t
ひでぇw
685創る名無しに見る名無し:2012/05/01(火) 22:34:54.23 ID:WfdckE8X
大人に見えないから無罪
686創る名無しに見る名無し:2012/05/01(火) 22:52:53.30 ID:wOkyT+s+
687創る名無しに見る名無し:2012/05/02(水) 01:00:13.19 ID:hIBz51HN
>>686
茉代&莉子、かわええ!
黒髪ロングええよ!クンカクンカハスハスハス!
688創る名無しに見る名無し:2012/05/04(金) 02:03:14.76 ID:cji+YAzn
>>686
読んだあとに見てもっかい読み直すと可愛すぎてもう……

もう…………!
689創る名無しに見る名無し:2012/05/04(金) 22:27:59.87 ID:utsKIPG4
690創る名無しに見る名無し:2012/05/07(月) 22:13:56.08 ID:MX1G2QAW
691創る名無しに見る名無し:2012/05/07(月) 23:36:12.82 ID:rhu6R5dn
またそんな趣味のいいやつ乗っちゃって〜
チープコンパクトなのに格好良く見えるぞ
692創る名無しに見る名無し:2012/05/17(木) 22:47:39.16 ID:E9zkVizv
693創る名無しに見る名無し:2012/05/17(木) 23:13:22.73 ID:638vE7WR
転んだんかw
694創る名無しに見る名無し:2012/05/18(金) 04:30:24.20 ID:N4Nd8Tlt
焼き付くと突然急ブレーキかかって乗り手が前に吹っ飛ばされるから危ないのよ
つかバイクの壊れ方がぱネェわ
レバーの曲がり方とか現実感あって古傷をえぐ(トラウマプレイバック)
サン先生は見た目痛々しいけど軽症でよかった…
695創る名無しに見る名無し:2012/06/03(日) 18:56:00.87 ID:Yyv60CIt

 ・学園、職員室にて。


 サン先生「獅子宮だぜぇー。ワイルドだろぉー?」

 リオ「サン先生。それ、獅子宮先生のコスのつもりですか…?」

 サン先生「白先生の誕生会を開いたんだぜぇー。歳の数だけリアルにろうそく立てたんだぜぇー」

 白先生(びきびき…)

 サン先生「全部吹き消せなくて息継ぎしちゃうんだぜぇー。途中で蒸せるんだぜぇー」

 リオ(ぷっ…)

 サン先生「オキシドールの瓶のふた、捨てちゃうんだぜぇー」

 白先生「(職員室から飛び出しながら)ちょっと、オキシドール持ってくる」


=========================


 ・学園の職員駐輪場にて。


 獅子宮「じゃあな、犬上少年。課題、忘れるなよ」

 ヒカル「はい」

   獅子宮、愛車に跨り爆音立てながら学園から去る。

 ミナ「獅子宮先生の相棒のZ-Uって、男っぽいね」

 ヒカル「『ゼッツー』って言うんですね。杉本…」

 ミナ「ミナでいいよ!」

 ヒカル「ミナさん。ところで、このバイク…」

 ミナ「ん?これ?ヤマハの『ZEAL(シール)』ね。どう?獅子宮先生の相棒と違って、なんだか雰囲気違うよね」

 ヒカル「そうですね。獅子宮先生のはごつごつしているけれど、ミナさんが乗ってきたのはなんだかイルカが飛び跳ねているみたいですね」

 ミナ「鋭い。デザイナーもイルカをイメージしたんだよ。コイツったらさ、あまりにも個性的なデザイン過ぎて今や希少車なんだよね」

 ヒカル「で、どうしたんですか。ミナさんが乗ってるいつものと違うんですけど」

 ミナ「そうそう!サンのヤツに頼まれてね。コイツのエンジン音を聞きたいっていうから、ウチのガレージから引っ張ってきたんだよね」

 ヒカル(また、サン先生のワガママか)

 ミナ「よーし!サン・スーシの所へ出撃するよ!ほら!男の子!ふぉろーみー!」

 ヒカル「は、はい」
696創る名無しに見る名無し:2012/06/03(日) 18:56:24.56 ID:Yyv60CIt
=========================


 ・再び学園、職員室。


 サン先生「ワイルドだぜぇー?同い年の有名人が年々変わっていくんだぜぇー。干支も変わるんだぜぇー」

 リオ「……サン先生!うしろ!」

 サン先生「ん?獅子宮センセなら帰った…って、うぎゃああああ!」

 ミナ「こらーっ。サン・スーシ!なんでさ、あんたはマニアックなオーダーばかりする?」

 サン先生「うげげげげ、タンクトップは引っ張らないで…。いや、いや。この国のものづくりって世界に誇れ…。ぐるじい…」

 ミナ「サン先生も世界に誇れる教師になれればいいね!」

 ヒカル(……)

 ミナ「じゃあ!職員室の皆さん。お疲れ様っす」

   サン先生、ミナに引きずられながら退室。
   入れ替わりに白先生、青筋立てて職員室に入室。

 白先生「サン・スーシ!この、オキシドールが目に…あれ」

 リオ「逃げました」


=========================


 ・再び、学園の職員駐輪場にて。

 ミナ「もう…。これ限りだからね!エンジン、駆けるよ」

 サン先生「ミナ」

 ミナ「ん?」

 サン先生「恩に着るよ」

 ミナ「たまたま、わたしも乗ってみたかっただけだって!ほら!」

 サン先生(そういう意味じゃないけど、ま、いっか)




ヤマハ・ジール。 http://www.bbb-bike.com/history/data71_1.html

雑談スレでイルカが話題になってたので思い出した。
697創る名無しに見る名無し:2012/06/06(水) 23:14:22.68 ID:9p207oDM
698創る名無しに見る名無し:2012/06/07(木) 23:05:41.46 ID:pxs7cN47
失礼ながらグラサンのサン先生とか、笑うてしまうげなw
699創る名無しに見る名無し:2012/06/08(金) 00:02:46.92 ID:IATBRQlw
700創る名無しに見る名無し:2012/06/08(金) 00:17:52.74 ID:mC8H2jrP
仕事はえーwwww
大門みたいを想像してたけど、このグラサンはアリか?
701創る名無しに見る名無し:2012/06/08(金) 01:49:57.44 ID:T7++ipxp
似合ってるなw
702創る名無しに見る名無し:2012/06/11(月) 23:25:43.39 ID:oRGj8T+X
703創る名無しに見る名無し:2012/06/12(火) 01:15:51.45 ID:BniVPFlB
しゃったーちゃんす!
704創る名無しに見る名無し:2012/06/25(月) 21:49:32.06 ID:oHLQTyya
か…過疎ってる…
何か投下したい所だがオリ作はまだ設定ネリネリしてる段階…

ところで今年
自分が知る限りではふたつものケモノアニメ映画が公開されるもよう

ひとつは「狼子供の雨と雪」
どうやらヒトの母と狼の父の間に生まれた二人(二匹?)の兄弟(兄妹or姉弟?)の物語っぽい
異種婚姻とか俺得!
予告映像を見る限り
人間体・獣人体・獣形態の三段変化できるようだ

もうひとつは「グスコーブドリの伝記」
どうやら宮沢賢治作の物語をベースにした
登場人物が全て擬人化(獣人化?)された猫というネコスキーにはたまらない世界の物語のようだ

皆さんはこの映画 どう思われますか?

705創る名無しに見る名無し:2012/06/25(月) 23:55:08.11 ID:pUnYwBIf
おおかみこどもは細田守監督作品だから普通に期待してる
706創る名無しに見る名無し:2012/06/27(水) 01:46:14.62 ID:eP/wuxYX
7月はケモケモしいな

グスコーブドリも銀河鉄道の夜のスタッフだし、期待はできそうに思う。
主人公のストレートな自己犠牲にどう説得力を持たせるのか心配もあるけど
707創る名無しに見る名無し:2012/06/30(土) 09:07:37.78 ID:M5MsdUdh
「やべぇ。閃いた」

馬の塚本が呟いた。

「あん?なにがよ?」

鹿の来栖が参考書を置いて、馬の閃きを問う。

「ここから外見てみ。あそこに草むらがあるだろ」
「ああ、それがどした?」

塚本が座るヤンキー席、つまり教室後方窓際席の窓からは、校舎の外の敷地が見える。
路地駐車場の残骸というか、絶賛放置中で草伸びまくりの私有地が視界にはいるのだ。

「よし、俺の閃きお前に見しちゃる。待っとけ」

「わかった」

塚本が馬の実力の片鱗を見せつけるかのように教室を疾駆する。
カマキリの鎌田ことライダーをひっつかまえて教室から飛び出して行く。

塚本が出てった瞬間、来栖は改めて参考書を読み出す。塚本みたいなタダの馬鹿にだけはなりたくないな。とか来栖は思う。



来栖は顔をあげる。
窓から見える私有地駐車場から塚本の声が聞こえたからだ。

草むらには、ライダーが立って(いや、多分立たされて)いた。
上半身裸で、いかにもカマキリって感じのポーズで。
草むらに埋まってズボンが見えないため、その姿は本当に獲物を狙うカマキリぽかった。
ライダーと目が合う。表情のわかりにくい外骨格虫人が、それを差し引いても明らかに困った顔をしている。困るくらいならわざわざやらいでも。

と、そこで教室の扉が勢いよく開く。
息を切らせた馬が珍入してきて、来栖に一言。

「な?」

俺の閃き、素晴らしいだろ?そういう意味が込められた「なっ」だった。

来栖は「草むらに合うなライダー」とか言いながら、塚本は本当にバカだな、と思った。
708創る名無しに見る名無し:2012/07/01(日) 11:02:38.25 ID:H8py9MxY
因幡リオ。
ウサギでまじめ、まじめのまーこ。
彼女は見てしまった。
草むらに隠れるようにして、馬の塚本がカマキリ鎌田の服を荒々しく脱がすのを!
たまたま風紀委員の活動で休み時間に校内ゴミ拾いをしていたら、校舎の外にある草むらがざわざわ鳴るので、そんなものを見てしまったのだ。
感度良好なバニーイヤーがいけないのです。

(うわー!女性向け同人展開がわが校にもキタのか?!来てしまったのか?!!)

でも、もっと良い掛け算があるでしょ、×が。
リオの脳内にある妄想機関がフルに回転を始める。
白倉×はづきち。うん、グッドだ。実験道具も使っちゃったりするに違いない。
犬上×張本。意外とリードする犬上、おっかなびっくりな張本。ムッハァ!
ヨハン×ザッキー。おお!旧知の仲がいやらしいハッテンを遂げちゃうパターン。ヨハン、お前、綺麗な髪してるよな。とかザッキーから迫ってムハー。

「何してんだ因幡?」
「『ルルのことは良いんだ…』とか言いはじめて、はぁはぁ……はっ!」

塚本に話しかけられて、リオは妄想のインナースペースの大海から急速浮上した。
あわてて口角のヨダレを拭って言う。

「そ、そっちこそ何してるのっ!」
「みればわかるだろ」

塚本は草むらに目をやる。
リオもつられてそちらを見る。
鎌田が、青々しげる草むらに、上半身裸で立っている。

「な?」
「…………」

わからん。全然、ひとかけらも意味がわからん。

「なんだよ、わかんねぇかな。この違和感のなさ。俺的にはちょっとした閃きだったっつーのに」

塚本は、その場にリオを残して猛ダッシュ。教室の方へ駆けていった。
残されたのは因幡リオというウサミミ少女と疑問符と、草むらに立たされたカマキリだけだった。
709創る名無しに見る名無し:2012/07/01(日) 21:37:44.99 ID:O05IIc/E
むっはー!
710創る名無しに見る名無し:2012/07/02(月) 15:53:59.83 ID:PkItWnaZ
>>704


 日曜日に映画を見る約束をしているコレッタたち。
 机の上にチラシを並べ、あれやこれやとお菓子のような声で物色していた。
見ている側としては微笑ましいが、コレッタたちにとっては真剣そのものだった。通り掛かりに目に入ったリオはふと足を止めた。
 よこしまな気持ちでコレッタたちを眺めながら、「フンハッ、すんげー萌える。これだから幼獣はけしからん」と鼻息を荒くした。

 「コレッタ、これが見たいニャ」

 カルタ取りのようにコレッタがぱんと手を置いたのは、ネコの青年が描かれたアニメのチラシだった。
 クロがチラシを手にとってタイトルを読み上げると、コレッタは首を傾げた。

 「『グスコーブドリの伝記』だニャ」
 「でんき?むずかしいお話かニャ?」
 「童話だニャ」

 クロは姉の本棚に宮澤賢治の作品集があったので、この童話のことを知っていた。姉がいてよかったとクロは密かににやけた。
 一方、リオはコレッタにクロ、ミケと両手に花で映画館にいる自分を思い浮かべていた。ポップコーンを取る手が触れるもよし、
銀幕に見入る横顔に悶えるもよし、帰り道おんぶしてか細い脚に温もりを感じるもよし。リオの魂がどこぞに出掛けている間に、
クロが綱渡りな作品解説を始めだした。

 「お兄ちゃんのブリドがみんなのためにぎせいになるお話ニャ」
 「ぎせい?」
 「みんなのいのちとひきかえに、ブリドが死んじゃうんだニャ」
 「どうしてニャ?」
 「自分がぎせいになることでみんなを助けたかったニャよ……」

 目に涙を浮かべながら、コレッタはチラシを見つめていた。

 「コレッタにお兄ちゃんがいたら、お兄ちゃんがみんなのために死んじゃうのやだなって言っちゃうニャ」
 「コレッタはばかだニャ。ブリドのおかげでみんなが助かるニャよ。みんな死んじゃうかもしれないニャよ」
 「お兄ちゃんが死んじゃうのもやだニャ。みんな死んじゃうのもやだニャ」

 コレッタたちの会話を聞いたリオは「フンハッ」と息巻いていた途端に自分が恥ずかしくなり、そそくさとその場を去った。
711創る名無しに見る名無し:2012/07/02(月) 15:58:21.78 ID:4TbeeEb4
712創る名無しに見る名無し:2012/07/02(月) 20:46:11.67 ID:27x4cXOo
713創る名無しに見る名無し:2012/07/03(火) 06:01:48.29 ID:N4RZsh/U
714創る名無しに見る名無し:2012/07/04(水) 05:53:14.70 ID:sxsvl7eR
 
715創る名無しに見る名無し:2012/07/14(土) 03:31:11.79 ID:B/g59h12
ちょっと考えたんだが、46都道府県には県鳥とか県獣っつーもんが定められてるらしいのよ、wikiペドさんが正しければよ

つまりさ、県鳥県獣を素体にして県擬人化的に性格や設定を付ければ、46キャラ増やす余地があるわけよ



サァミンナデヤッテミヨー
716創る名無しに見る名無し:2012/07/14(土) 03:53:45.32 ID:Rbcl9a+v
千葉県にはすでにチーバくんというマスコットキャラがある
千葉県の県境そのままなぞって赤く塗るというベタなデザイン
ttp://www.pref.chiba.lg.jp/kouhou/miryoku/chi-ba-kun/profile.html

だが、ちば犬の衝撃的な姿の前にはかすむ
ttp://www.ckz.jp/saisei/unei/chibaken.htm
717創る名無しに見る名無し:2012/07/14(土) 05:00:43.22 ID:84E9I4ef
国鳥で鳥人版ヘタリアができるな
718創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 03:15:10.72 ID:cwQFRYmG
クロ「おねぇちゃんに、『せんせいっていうのはスゴい人達なのよ、何でもできちゃうのよ』って教わったにゃ」

白「ほう、美琴は良くわかってるな」

クロ「私はそんなのうそっこだと思うにゃ」

白「お前は全然わかってないな、ダメダメだな。世間知らずのかわいこちゃんだバーロー」

クロ「(ヒマ)だから、ちょっとだけチャンスをあげるから、実力をみせてほしいにゃ」

白「ヒマって聞こえたぞ。オキシドールブチマケタロか」

クロ「まずは女子力検定に欠かせないお料理にゃ。午後からある家庭科実習の食材をきざんでみせてほしいにゃ」

白「ふん、なんだそんなもん簡単だ」ザクザクザクとんとんとんしゃきしゃきしゃき

クロ「うーん、あざやかな包丁さばきにゃ(ダテに長くないどくしんせいかつ)」

白「」ぶしゅ

クロ「ああ!せ、せんせい!やっちまってるにゃ!ざっくしイッテるにゃ!」

白「おまえが変なこと口走るからだろ!ボソッと猛毒吐くのやめろ!」ぺたり

クロ「と言いつつ自分でバンソウコウを巻いちゃうあたりさすがの保健室登校にゃ」

白「登校ちゃうわ、わたしゃ虚弱児かいじめられっ子か」

コレッタ「ごめんニャさい。コレッタ、虚弱児でもいじめられっ子でもないのに保健室に居ちゃったにゃ」

白「あ、や、コレッタは居ても良いんだよ、うん。かわいいこも保健室に居て良いんだってば。私も可愛いだろ?なんつって、はははは」

クロ「」

コレッタ「にゃ?クロどうしたにゃ?目が新鮮じゃない魚みたいになってるにゃ」

ザッキー「コレッタにゃん、察するんだ。クロは、あの残念巨乳先生を痛んでるんだ。むしろ悼んでるんだ。ナム」

白「誰が残念巨乳か、嫁さんでもギュッてしてろ。というか何処から現れた?何時から見てた!?」

ザッキー「カーテン引いたベッドで6時半から」

白「職員室の朝礼後から!?ありえねぇ今昼休みだぞ!」

ザッキー「エアコンのある部屋は誰にでも開放されているべきものだと思うんだ。素晴らしいよなエアコン」
719創る名無しに見る名無し:2012/07/31(火) 14:01:13.82 ID:w/a14pWI
暑さで苛立つ三十路か。
残念巨乳って、本当に残念過ぎてどうしようもないなw
720創る名無しに見る名無し:2012/07/31(火) 16:19:40.14 ID:VjPCIA5v
残念巨乳ってお前w



かわいいから許す
721創る名無しに見る名無し:2012/08/01(水) 22:26:31.98 ID:hYl7ZlJK
巨乳か
巨乳だったのか
722創る名無しに見る名無し:2012/08/02(木) 03:56:39.91 ID:pE6eRL0K
イラストを見る限りかなりセクシーではある白先生。確かに残念巨乳であるw
723わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2012/08/03(金) 00:41:37.04 ID:Mf/aJj87
ケモ学キャラアンソロジー!イキます!
724コレッタ『夏が来た』 ◆TC02kfS2Q2 :2012/08/03(金) 00:42:20.23 ID:Mf/aJj87

 コレッタが体操座りをしながら廊下の片隅で寝ていると、すいかがころころと引き寄せられるように転がってきた。
 夢見心地だった子ネコの放課後はひと玉のすいかによって脆くも壊された。細い脚に当たり、朝、母親が揺り起こすように
緑色の球体はコレッタに遅いおはようを言ったまま、そのまま黙り込んだ。返事を待ちながら。

 「もう少し、もう少し寝るニャ」
 
 無言のすいかはコレッタを許すのか。

 「にどね……ニャ」

 すいかへと覆いかぶさるように寝返りうったコレッタは帰りの会の途中からうとうとしていた。だって、ねむいニャと。
 教室から出ると廊下の日だまりに誘われて、ランドセルを下ろすと昼寝の寄り道に誘われてしまった。ランドセルを大事そうに抱いて
すやすやと廊下のひんやりとした床とガラス窓からの温もりで、ちょっと早いおやすみの園へとコレッタを引きずり込んでいた。
 子ネコのお仕事はお昼寝。寝る子は育つ、果報は寝て待て。昔から寝ることは随分と推奨されているではないか。
無論、コレッタの頭にはそんな理屈は一遍もないが、本能として刻まれていると言えば誰もが納得するだろう。

 暑い季節がやって来るとはいえ日差しは気持ち良い。そこにころころとひと玉のすいか。夢の中で夏休み気分のコレッタは言う。
「目の前にすいかが現れたもんだから『いただきますニャ』と捕まえるでしょ」と。今年初めてのすいかは新緑のように目に眩しい。

 眠気まなこのコレッタは放ったランドセルと同じぐらい大きな緑色の球体に両手でしがみ付いた。

 むにゅ……と。柔らかい。乳呑み児が母親にすがるときと同じように、頬触れ合って、爪立てて。

 「コレッター。おいてゆくニャよ」

 廊下の遥か遠くでランドセル担いだクロとミケが声を上げるけど、くるりと耳だけ向けてコレッタはすいかに甘えるように抱き続ける。
しかし、すいかはそんなに甘くない。みるみるうちに萎み、前髪吹き上げ、小さくなって、やがてはぺったんこと、コレッタの胸の中で
一枚の干からびたすいかと化した。うっすらと夢と現の境目を綱渡りするコレッタの夢はすいかのビーチボールと共に脆くも弾けた。

 「こ、こらーーー!コレッタがつめ立てるから、ミケのビーチボールがしぼんだニャ!」
 「あーあ……。もう、コレッタ!べんしょーのかわりにばつゲームだニャ」
 「ええ?ちょ、ちょっと待つニャ!ふぇぇ……クロのも、ミケのも重いニャ」

 身軽になったミケとクロはすいかのかわりに自分たちのランドセルをコレッタの右手左手に持たせて、萎んだすいかを振り回しながら
青い空が待つ校庭へと駆けていった。コレッタはもう少し寝てればよかったニャとあくびをした。
725白先生『お互い様』 ◆TC02kfS2Q2 :2012/08/03(金) 00:43:07.77 ID:Mf/aJj87

 マンションの窓を全開にしていると、風が心地よくビールが美味い。
 思えば遠くに来たもんだ……と初めてビールを口にした初々しい舌触りの感傷に浸っていると、さらに炭酸が染み渡る。
飲めば飲むほどお互いの相性が分かり合える、なんて人間らしいヤツなんだなと白先生は喉を鳴らす。

 今年の初すいかは学校で頂いた。同僚がすいかを貰ってきたから、遠慮がちにご相伴にあずかることにしたからだ。
 さくっと包丁が入ると、鮮明な赤色が切り口から溢れそうで、すいかの夏への手招きが白先生には聞こえてきそうだった。
真昼間に現れた赤い半月はやがて同僚たちの笑顔を糧に三日月へと成りを変えた。

 「来年も初すいかはまた学校でかな」

 ビールの泡が微かに残るきんきんに冷えたグラス。くらっとこめかみを刺激する程度のアルコール。頬が熱くなって、食が嫌でも進む。
箸をのばした先には『すいかの皮のかき揚げ』が皿に申し訳なさそうに夏の食卓を演出していた。
 まさか、すいかの皮まで食べられるとは知らなんだ。ちょこっと聞きかじったネットの情報を元に白先生は新たなメニューに挑む。
 人生、なんでも冒険だ。恥かいて、ベソかいて、そして……ババアになって。残り物の気持ちが分かるお年頃。
 夜汽車に揺られるように白先生はゆらゆらと心地よく目を閉じた。

 すいか。すいか。
 昼間の出来事が甦る。

 「残ったすいかの皮、頂いていいか?」と白先生は同僚たちに尋ねると、何人かは目をぱちくりとさせていた。
 すいかを持ち込んだ張本人である数学教師が「漬け物ですね」と食いついたから、白先生は「ああ」とそっけなく返事した。ウソだけど。

 水気を切って短冊にしたすいかの皮に衣を付けて油で揚げるだけ。白先生は一日の締め括りの共にすいかの皮を選んだ。
 すいかの皮をジッパー付きの袋に詰めていると、職員室に風紀委員長がノートを抱えて入って来た。白先生が手にした袋を
まじまじと見つめながら、風紀委員長はノートを担当教師の机に置いた。

 「白先生。すいかの皮にまで同情を禁じえないんですか。捨てられるだけの存在ですのにね」
 「因幡も自分の将来を見るようだろ。ちょっと保健室からオキシドール持ってくる」

 昼間の白はちょっと(教師として)違う。夜中の白はもっと(女子として)違う。
 いいぞ、もっとやれ。
 今のわたしには怖い物などない。

 憎まれ口を叩かれても、白先生はビールさえあれば何でもできると、昼間のやり取りを思い出しながらすいかのかき揚げを口にした。
726アマガミ部『二人の時間』 ◆TC02kfS2Q2 :2012/08/03(金) 00:43:52.44 ID:Mf/aJj87

 影が濃くなったあまがみ部の部屋の中、佐村井御琴が牙を立てて口に含む度に糖度100%の声が微かに耳に過ぎった。
 履き込んだ上履きを片方脱いだ御琴は脚を伸ばして、一日付き合ったソックスで締め付けられたふくらはぎを労った。

 緊張と緩和。支配と奉仕。加虐と被虐。部屋の二人の関係なんて、漢字なんかで説明はつかない。

 「美味しい」
 「なに?」
 「ミコ。美味しい」

 声の主は大場狗音。ふわふわゆるゆる高校生な彼女、大人のような狗音の囁きが、殺風景な部屋を淫靡な世界に塗り変えていた。
 もし、あなたがその場に居れば心乱すかもしれない。なぜなら二人の行為はそれくらい扇動的だからだ。誰彼目を気にすることない、
小さな部屋でカチコチと古時計が鳴らすリズムだけが平常心を保って見守っていた。

 本能のまま、思うまま。迷ったら、かぶり付いちゃうぞ。

 「あんっ。そんなに欲張っちゃダメよ」

 狗音のダメは喜びのダメ。御琴は彼女の声に興奮する。 

 「久し振りの出会いなんだから言いっこなし。ほら……だんだん指先がしっとりと」
 「ミコのせい……だからね。ぜーんぶ。許さない」
 「くー。スカートにシミが」

 ぽたりと狗音の口から甘いエキスが雫となって、御琴を逃しまいとしがみつく。もう、すべてはわたしのもの。勘違いにも似た独占欲。
 ふたりで分かち合った経験は、きっと永遠の誓い。抜け駆けなんか、許しはしないからともう一度、口いっぱいに……。

 「誰にも内緒だよ」
 「もちろんよ」
 「こっそり持って来たんだからね。このすいか」

 二人揃って食べかけの輪切りのすいかを皿の上に置いた。彼女の歯型が付いたすいかはゆらゆらとシーソーのように揺れる。

 「ミコ。美味しい」

 御琴はにやにやと狗音が牙を立てるすいかに自分を重ね合わせながら、狗音からのすいかのお返しを待っていた。
727リオ『すいかさん』 ◆TC02kfS2Q2 :2012/08/03(金) 00:44:32.72 ID:Mf/aJj87
 
 リオが真夏の光線を浴びながら、『こみけ』の会場を背にしてベンチに座っていると、すいか頭のガチムチ男が横に並んでいるのに
気付いた。こみけへと一緒に訪れた後輩を待ちながら食べようとしたすいかバーを齧るのをちょっと躊躇った。

 上半身は鋼のような肉体美、鍛え抜かれた筋肉を滑る一筋の汗は金剛石にも似た輝き。但し頭はすいか。
 隆々とした力こぶ、均整が取れた逆三角、無駄を全て排した正しく『ガチムチ』。但し頭はすいか。
 ぴたっと張り付いたレスラーパンツ、幾多の闘いをかい潜ったかのようなリングシューズ。但し頭はすいか。

 都会の海風に撫でられた『すいか』は明日への道を自ら切り開かねばならぬ宿命を持っていた。なぜなら彼は『すいかさん』だからだ。

 リオは失礼と思いながらもすいかさんの胸部から脇腹、恥骨までの完璧なるラインに、いにしえの人たちが追い求めてきた理想である
彫刻像にも負けない整えられた筋肉を横目で見ていた。そうのち横目では飽き足らず、気付かれぬように遠くの雲を見ているつもりで
ちらちらとすいかさんの姿を目に焼き付けていた。くわえていたすいかバーをセキレイの尾のように上下させる。

 「あの……!」

 すいかさんはすっくと立ち上がり、太陽のほうへと逆光の中、人が集う駅へのプロムナードを歩いていった。後姿もまた隆々としていた。
 繋がりかけた糸を切らぬようにリオがすいかさんを引き止める言葉をかける間もなく、その糸はぷっつりと切れて海風に飛ばされた。

 「因幡せんぱーい!買って来ましたよ!すいかバー!」
 「あ。うん。ありがと」

 ヲタ友で後輩の更紗がすいかバーを片手に駆け寄ってきた。数少ないリオとの共通の仲なので、先輩後輩の壁を感じずに
気を置くことなく相談出来る。袋に入ったすいかバーをぴたとリオの頬にくっつけた更紗は真夏の太陽のような笑顔を見せた。
リオは夕立の降る黄昏れどきのような顔を見せた。

 「更紗。見なかった?すいかさん」
 「すいかバーならここですよ」
 「いや。すいかさんってば」

 事細かにすいかさんの姿、筋肉、彼の持つ闘志を更紗に語るが彼女からはよい返事は返ってこなかった。

 「コスの人でしょ。第一、何のキャラ、アニメのコスか分かりませーん」
 「でも、見たんだよ。すいか……」

 リオが手にしていたすいかバーは暑さで次第に小さくなり、棒から滑るように落下した。

 「あ。ハズレだ」
 「え?うそ?」

 印字された三文字は冷静だ。今のリオには納得のいかない結果だった。
 静かにすいかバーを開ける更紗を恨めしく見ながら、更紗がハズレることを願った。
728サン・ミナ『そよ風のすいか』 ◆TC02kfS2Q2 :2012/08/03(金) 00:45:17.00 ID:Mf/aJj87

 久し振りにサン先生の職場に寄ってみたものの、厄介なお土産を抱え込んでしまったミナは笑うしかなかった。
 小玉とは言え自宅に持って帰るには難しい。バイクの後部シートにあれやこれやと載せることを試みるけれど、ネットだけでは
不安定なので無事にすいかを持ち帰る自信はミナにはなかった。断ればよかったかもしれないけれど、旧知の腐れ縁だから仕方なしに
引き取ったと、自分に対して口上を垂れればよかろう。ミナの愛車はご主人さまの命令を素直に待ち続けていた。

 「アイツもアイツだよね。こうなることを知っててさ」

 小脇にすいかを抱えて夏の日差しを反射するフェンダーの光りに気を取られていると、すいかよりも小さな球がミナのバイクの
前輪に引き寄せられるように転がってくる。球の行方を追いかけるようにカッターシャツ姿の男子たちが足並み揃えて駆け寄った。
 真っ白なシャツが青空に良く似合う。グラウンドを駆け回るイヌ、ネコの少年もそれまた似合う。あまりにもナイスキャストなので
ミナはくすっと白い歯を見せて、少年たちに手を振った。思春期まっしぐらの彼らの匂いは今しかない。

 「君たち、いつも球拾いだね」

 白球を拾い上げたミナは少年たちを手にしたボールのように扱う。 

 「そんなことありません!アキラのばかっ」
 「タスクがしっかり取らないからだろ!な!ナガレ!」

 こうやってばかを言い合える仲、ばかを言い合えるお年頃をミナは遥か遠くの記憶に仕舞っていたことを思い出した。確かすいかの
贈り主とそうやって、毎日学び舎の元で過ごしていた日々。たった数年なのに、たった幾つか夏を越しただけなのに、遠い昔のようだ。

 「はい!はい!みんなばかだよ!いいじゃん、いっしょにばかでで」
 
 イヌの少年のちっぽけな言い合いを静視していたネコの少年に、ミナは彼の腕信じてすいかをぽいっとスルー。
 ネコの少年は見せなかった驚きの顔をこの場で初めてミナに見せた。

 「そこで黙っていた君も一緒だね!連帯責任でそのすいかをわたしの家まで運びなさい!見事にミッションクリアしたら
  わたしの家でそのすいかをご馳走してあげよ……かなぁ。特典はわたしと一緒に食べられること。君たちさ、ウチ、分かるよね?」
 「ぼくが行きます!ぼくに行かせてください!タスクはすっこんでろ」
 「い、いや……ぼくが」
 
 さっきまで白球を追いかけていた少年たちが瑞々しいすいかを奪い合う。滑稽な光景にミナは一笑し、静視していたネコの少年に
 「はい!ナガレくんも奪い合う!」とけしかけてみた。
729白先生『残念巨乳』 ◆TC02kfS2Q2 :2012/08/03(金) 00:46:06.00 ID:Mf/aJj87

 「子供たちのいないプールなんて(おんなのこに限る)、金魚のいない金魚すくいなようなものだ」

 午後の学校のプールは人を詩人にさせる。内容が残念だろうが、それはそれは構わない。
 水泳の授業が無いのにも拘らず、折角水着を持ってきたのにその苦労が報われないなんて。思いっきり尻尾をぶつけてやりたい。
 ショートでメガネな白ネコの生徒がうな垂れるとスクール水着の胸元からちらりと顔を出す自分の深い谷間が見えた。

 「わたしの夏。終わったな」 

 泊瀬谷が小玉すいかを抱えてやって来た。学校のプールサイドで食べようと言うのだ。

 「なんだ。ネコかきの補習か?何ならわたしが教えようか」
 「いや……。あの」

 二つの小玉すいかを胸に抱きかかえ、落っことしそうになりながら背中を丸めて体勢を整える泊瀬谷はどうも水辺が苦手だ。
いわんやネコかきをや。それでもプールサイドまで同じくスクール水着姿でやって来たのは、敬愛する先輩の笑顔が見たい為。

 「あのー。白先輩!立派なすいかですよね」
 「立派って……小玉だぞ」

 真っ白なネコはきらきら光る水面を恨めしそうに見つめて、泊瀬谷のすいかを同じく恨めしそうに見つめていた。
 そんな格好、どう見ても。

 「白先輩!あの。落っこちそうです!胸の……胸の」
 「いや。わたしのはそんなに大きく」
 「すいか、すいかです!この夏、初めてのすいかを一緒に楽しみましょうよ!」

 紺色のスクール水着が白先輩の真っ白な毛並みを際立たせ、体の線を惜しみなく誰も皆へと見せ付ける。そう。もちろん。
白先輩の胸に誇る二つの小玉だって、例外ではないんだから。白先輩がいくら謙遜しても、全ての女子の目には自慢にしか見えなかった。
 肩から掛けたハンドタオルで隠してみようと恥らう白先輩が何ともいじらしくコンクリの渚に咲いていた。
 そんな花を摘みにやって来た、ワンピース姿の似合う子ネコが尻尾を膨らましてプールの網越しに叫んでいる。

 「こらー!プールに勝手に入っちゃだめニャ!はせやんに白ちゃん!」
 「コレッタ先生っ」
 「何?せ、先生!わたしに水泳の授業をつけてくれ!」

 よい子は真似してはいけません。

 一つ、プールサイドを走ること。
 一つ、ネコに水泳を教えること。教わること。
 一つ、残念巨乳を……。

 全て背いた白先輩。コレッタ先生を追いかけて、ぴたぴたと走るたびに締め付けられる胸が揺れる。

 「ああ……。コレッタ先生が帰ってしまった。グッドバイ、マイサマー」

 いやいや、白先輩の残念な夏は始まったばかり。だって。はせやんが持ってきたすいか、まだ食べてないし。


   おしまい。
 
730わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2012/08/03(金) 00:47:30.93 ID:Mf/aJj87
初めての経験!
投下おしまい!
731創る名無しに見る名無し:2012/08/03(金) 01:05:11.66 ID:rgZdpiqj
まさかのすいかさんwwww
乙っしたー
732創る名無しに見る名無し:2012/08/03(金) 01:35:13.46 ID:Mbc2HXKt
すいかさん…何者なんだ…
733創る名無しに見る名無し:2012/08/03(金) 16:28:09.08 ID:1/4FYNPj
このスレですいかさん見るとはww
734創る名無しに見る名無し:2012/08/05(日) 13:36:22.53 ID:pHo9FqjB
白「私をロリコンだと思っているな貴様」

リオ「違うとでもおっしゃるか」

白「違うんだなこれが。ちょっとコレッタに協力してもらおう」

コレッタ「ニャ」

白「コレッタ、因幡と一緒に、そこのベッドに隣り合わせで座ってくれ」

リオ「なんですか、私はかわいい後輩ちゃんに手を出したりはしませんよ」

コレッタ「おねぇちゃん、お耳かわいいニャ。触らせてほしいニャ」さわさわ

リオ「わ」

リオ(やべぇ…この子、超良い匂いしますよ先生!しかもメチャンコ温かい手してるんですけど!髪とか…髪とかサラッサラですよ?!)

白(どうだ、誘惑がすげぇだろう)ニヤニヤ

リオ「ちょ、ちょっとコレッタちゃん、私の耳を触るのはやめて一旦座りましょうか」

コレッタ「にゃ」

リオ「な、撫でてもいい、かな?」

コレッタ「にゃ。なでられるの、好きニャ」

リオ「…」ナデナデ

コレッタ「にゃーん」

リオ(この温かな手触り、甘いようなミルクくさいような匂い、指先に感じる柔らかな肌と毛並み、照れたような表情……)

リオ「白先生。この子、危険ですよ。兵器として運用できるレベル(?)ですよ」

白「だろうな」

リオ「でも白先生がロリコンという事実は何ら否定されてませんよ」

白「」
735創る名無しに見る名無し:2012/08/05(日) 17:40:27.72 ID:Lf4H7oDH
白先生ェ。
736創る名無しに見る名無し:2012/08/15(水) 23:19:06.87 ID:YvGCi4mp
737創る名無しに見る名無し:2012/08/15(水) 23:25:00.67 ID:BPHv2tuZ
きゃわわ
738創る名無しに見る名無し:2012/08/16(木) 05:54:44.86 ID:IAt1Mhh6
かわええw
739わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2012/08/16(木) 23:02:57.19 ID:5AJhl6UF
>>736
かわいいは正義!

白先生、投下します。残念は無敵!
740白先生のなつやすみ ◆TC02kfS2Q2 :2012/08/16(木) 23:03:51.20 ID:5AJhl6UF

 これはあまりにも何かを捨てていると感じながらも、白先生は八月半ば・深夜の公園でひとり花火をしていた。
 ぱちぱちと光と煙を焚きながら真っ白な白先生の手が毛並みが浮かび上がり、火薬の香りで鼻腔を擽る。
 夏だから、いっか。でもひとり。中腰で屈むのも、こんなに辛いものだなんて、なんでも全てを夏のせいにしてしまおうか。
夏なら心が広いから何でも許してくれるだろうし。買ったばかりのクロックス。空色のサンダルはぽつんと土色の地上を涼しく彩る。

 「きれいだな」

 やがて花火は衰えて音も無く萎む。花の命は短くて、人の記憶に残すだけ。潔い引き際は生きとし生けるもの皆の憧れ。
萎れた花を水の張ったバケツにぽいっと突っ込むと、公園に燈る水銀灯がだけが白先生の影を描いた。
 昼間の出来事も朽ちた花びらを捨てるように、潔く記憶から消してしまおうかと、白先生はライターに火を点す。

 太陽が照りつく午後のこと。自由な時間を持て余す頃。
 暑い夏だからせめてバスタイムでも涼しくしようとクールタイプの入浴剤を買ってきた。ネコハッカの香りのするいいやつだ。
もうお風呂に入ったつもりでくんくんと目を細め、買物袋をぶら下げて白ネコ三十路が濃い影落ちる歩道をひとり歩く。
 街は何故かいつもよりも浮き足立っているような。そんな中に溶け込むのもいいかもしれない。夏のせいにしてしまおうか。
 それにしてもネコハッカはいいヤツだ。こんなお風呂でちょっとばかし涼しげになれるから、夏も意外と悪くない。

 そんな帰り道、ばったりと夏休みのコレッタたちに出会った。パステルカラーで彩られた彼女らの私服姿に白先生が疼いた。
 この瞬間が苦しくて、必ず終わる夏休み。短くてはかない幼獣の輝き。

 「しろせんせー!ニャ!」
 「はっ」
 「白先生も今夜は花火かニャ?」
 
 そうだ。まばゆい太陽がなりを潜め、星空たちが囁き始める頃だ。
 ぱっと花咲く薄命の花。花火にも似た幼女たちのいちページ。誘うしかないね、白先生。

 「花火……か?ああ!今夜、花火しようと思ってな?い、いや!姪っ子が来るんだ!どうせやるならみんなで……」
 「そうニャね……ごめんなさいニャ。クロと犬太のお姉ちゃんたちといっしょに行くニャよ」

741白先生のなつやすみ ◆TC02kfS2Q2 :2012/08/16(木) 23:04:22.05 ID:5AJhl6UF
 ふわり、尻尾ふりーず!いっしょに行くニャ?

 「花火大会ニャ!花火大会にクロと犬太のお姉ちゃんたちが連れてってくれるってニャ」
 「そ。そうか……花火大会だったな、今日は」
 「コレッタ!迷子になるんじゃないニャよ」
 「クロ!ミケ!コレッタはもうオトナなれでぃーニャよ!れでぃーは迷子にならないニャ!」

 コレッタはスカートの裾を摘んで、小さなお姫さまを路上の舞台でプンスカと演じてみた。

 もし仮に、白先生を訪ねる姪っ子が存在するのならば、きっと残念な眼差しで見つめられるのだろう。
 コレッタたちはクロとミケたちとじゃれあいながら、白先生に手を振って夜を首長くして待ち続けた。

 「花火大会かあ……。わたし、花火大会に負けたんだ」

 ぱっと花散る薄命の願い。晩夏にも似た三十路のいちページ。花火するしかないね、白先生。

 その夜、花火は物言わずとも白先生を慰めてくれた。
 人からお一人さまと言われようとも、残念な子と笑われようとも不惑の歳にならずとも、もう何も怖くないさと、また一つライターを
花火に近づける。か細くって心もとない線香花火。赤く繊細な模様が暗闇のなか、健気に葉っぱの脈のように広がっていた。

 「何やってるんだろう。いい年してさ」

 やがて線香花火の先は丸い球を作り上げ、葉っぱを折りたたむとぽつんと地面に落っこちた。
 同時に白先生の背後で華やかな音と光が真夜中の向日葵と意気込んで花咲かせていた。夏の星座たちに負けじと夜の帳を色染める。

 今夜は花火大会。
 コレッタたちは大きな花を仰いでいる。
 みんなで育てた大きな花。
 消え去る大切な時間を共に過ごしていることをコレッタたちはまだ知らない。

 「コレッタたち、楽しんでるかな」

 最近独り言の多い白先生は引き際潔い花火がオトナに見えて嫉妬して、ぽいっと水の張ったバケツに投げ入れた。
 花火ばかりしてたら、自慢の白い毛並みが煙臭くなるかともう一本を躊躇ったが、ネコハッカの入浴剤が待ってるからいいかと
夜の向日葵を背にして、自分だけの小さな花を育てていた。


   おしまい。
742わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2012/08/16(木) 23:04:57.87 ID:5AJhl6UF
かわいいババアください!

投下おしまい。
743創る名無しに見る名無し:2012/08/17(金) 19:04:22.91 ID:sAkdF5CP
ババェ……。
一人で花火はかわいそうすぎるw
744創る名無しに見る名無し:2012/08/17(金) 23:21:23.98 ID:UXVubVwR
745創る名無しに見る名無し:2012/08/17(金) 23:54:00.29 ID:nO3dNfsy
wwwwwwwwwwwwwwww
746創る名無しに見る名無し:2012/08/18(土) 02:19:58.48 ID:BAY6GI9L
さみしいwwww
747創る名無しに見る名無し:2012/08/18(土) 02:49:27.71 ID:YtZZVGE2
大人の情緒ってやつさ!!
748創る名無しに見る名無し:2012/08/18(土) 18:14:57.19 ID:/ECadg1/
思った以上にさみしすぎるwww
749創る名無しに見る名無し:2012/08/18(土) 18:22:23.01 ID:Kdh7gfdQ
ババァに厳しいケモスレw
750創る名無しに見る名無し:2012/08/18(土) 23:20:48.43 ID:xHpLe75a
き、厳しくない!
ババアへの愛情ある故の次第だ!

それにしてもババア、寂しいなあw
751創る名無しに見る名無し:2012/08/19(日) 16:00:11.77 ID:DVuMEMzS
やっとサン先生の新車ができました。
ttp://dl6.getuploader.com/g/6%7Csousaku/759/furry515.jpg
752創る名無しに見る名無し:2012/08/19(日) 23:06:03.77 ID:uMIenuNm
モンキー!
あんどバイク少女きた!
753創る名無しに見る名無し:2012/08/20(月) 20:52:10.22 ID:6dOIKik+
犬なのに猿!
Dog&Monkey!!
サン先生似合い過ぎ!!
サイズからしてジャストフィットとか反則反則!!
サイズで思い出したけど、これに熊系の獣人が跨ると
まんまボリショイサーカスの熊状態にwww
754創る名無しに見る名無し:2012/08/25(土) 03:58:30.66 ID:T5U3DuO4
サン「山野先生!クマの山野マーシャ先生!僕のニューマシン乗ってみてよ!」

山野「えー、遠慮するわ。あたしは自分の足で歩き回るのが好きだもの」

サン「そう言わずに!ほら、新聞部も記事にするべくスタンバってますから!」

烏丸「良い写真撮りますえ姐サン」

山野「うへぇ、記事にまでされちゃうの?仕方ないなぁ、かっこよく撮りなさいよ」ぶるるん、ブイイイン

サン「おお!ボリショイ!」

烏丸「サン先生、口滑ってます」パシャパシャ

烏丸「良い写真取れました。新聞刷り上がりましたらサン先生にお渡ししますんで、山野先生も見てくださいな」


後日


新聞『ケモウボリショイサーカス初公演!(写真はバイクをのりこなす熊さん)』

山野「うふふ、なかなか良くできてるわねぇ」

サン(あれ?怒ってない…イタズラの遣り甲斐がない人だなぁ)

山野「サン先生、ハグとゲンコと引っ掻かれるの、どれがお好き?」

サン「え?そりゃハグされるのが良いよ。ゲンコや引っ掻きなんて痛いじゃん」

山野「それでは熱い抱擁を」

サン「え…ぎゃー!痛い痛いコレがホントのベアハッ(ry」ゴキリ
755753:2012/08/25(土) 08:33:09.06 ID:gi2Y3wqQ
サン先生と烏丸姐さんは最初から確信犯すぎる…。
え? ボリショイ言い出しっぺの私にも熱い抱擁…を?!
ちょ! ダメ! 山野先生ほんとに勘弁!あ、やめ!
マジでダ……くぁwせdrftgyふじこlpー!!!
756わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2012/09/14(金) 23:12:59.75 ID:/pPdxLiE
はせやんのお話書きたくて書きました。
757はせやんと黒ストッキング ◆TC02kfS2Q2 :2012/09/14(金) 23:13:46.75 ID:/pPdxLiE

 「それじゃ……黒ストッキング」
 「片足脱いだ靴」
 「つま先、丸め込む!」
 「うーん。なら、ウチらの制服」
 「ミコ。それ、反則だよお。かわい過ぎるし」
 「あらクーったら、もうお手上げ?いくよ。突然の雨!」

 外を眺めて教室のベランダで風にあたりながら、佐村井美琴が品やかな指を頬から顎にかけて滑らせる。
こうすると、もくもくと言葉が浮かぶという。隣で美琴の妄想にあやかろうと、大場狗音が美琴の頬を指でなぞっていた。
 手すりに掴まり揃って下界を覗き込むと、まるで背中に羽根が生えて空を飛んでいるような気分。

 「いくよ、ミコ。雨上がりの足の裏」
 「……えっと」
 「『くんくんしてみる?恥ずかしいけど、いいよ』っていう、セリフ」
 「……うーん」
 「ミコ。わたしの勝ちかな?はせやんはわたしの物ね」

 『はせやん』こと泊瀬谷はこの学園の女教師だ。ボブショートに生えたネコ耳が誰もを優しく受け止める、よくいえばお姉さん先生。
だけども悪くいえば当たり障りのない先生だ。その日午後のはせやんの授業を思い出しながら、二人ははせやんを頭の中で遊ばせていた。
 黒ストッキングを履いて制服姿のはせやんが帰り道ににわか雨に遭う。湿気が立ち込めるアスファルトの上、雨宿りで飛び込んだ
潰れた商店の軒先で片足立ちで靴を脱ぐ。脱いだ黒ストの指の付け根と白く透き通る肉球、そして足元のあたりから混じり合う雨と
自分の毛並みと黒ストの匂い。美琴と狗音は自分たちの教師を操って、匂い立つワンシーンを言葉を紬ぎ合ながら、誰も立ち入れない
二人だけの甘美な妄想に耽っていた。

 「やっぱり、クーったら……」
 「なーに?ミコ」
 「こらっ」

 と、美琴が感服すると、悔しいから狗音は美琴の手首を抓った。ベランダからの眺めは二人の妄想とは反して、からっとした秋空だった。
 黙っていれば姉系キレイ目女子高生、そんな二人の後ろ姿を廊下から見かけ、下校を促す真面目のまー子の風紀委員長。
 黙っていればメガネ系地味っ子女子高生、因幡リオは「先生たちの仕事増やさないでくれる?」と風紀委員長らしいセリフを投げた。
 
 端から見れば、花きらびやかなイヌネコの二人に妬いている地味子が吠えているだけのように見える。しかし、リオはウサギなので
いまいち迫力に欠けていた。リオは教師からのお説教に共々巻き込まれるのはゴメンだと言いたげに、上靴履いた靴で床を鳴らす。

 教室から離れたリオは背中で下校を促す声を聞いた。若い、いわゆるお姉さん先生。ネコの泊瀬谷だ。

 「こらー!さっさと帰るんだぞ!佐村井さん、大場さん。新学期もがんばろうねっ」
 「はーい。泊瀬谷先生、さようなら」

 はせやんは二人に向かって小さくガッツポースを見せて、ベランダに居残る美琴と狗音を呼ぶと、二人は素直に教室に戻って来た。
リオの耳にもはっきりと確認できる顛末だったが、はせやんの声は明るくも夜明け前の街明かりを感じさせた。
758はせやんと黒ストッキング ◆TC02kfS2Q2 :2012/09/14(金) 23:14:17.54 ID:/pPdxLiE
 (なんだろう……。悔しいな)

 教室を見回しているはせやんの姿を真面目のまー子が勝手に作り上げた好敵手のように見ていると、ベランダのキレイ目な二人が
視界を遮りながら通り過ぎていった。ショートの髪の御琴と長い髪を束ねた狗音が廊下を歩くだけで、おしゃれなショッピングモールの
ような華やかさだ。ゆらゆらと甘い香りを振りまいてお互い尻尾を揺らしながらリオをすり抜けて行ったときにはもう、はせやんは既に
いなかった。その代わりにメガネ男子の三十路ウサギがリオの首根っこを言葉で摘む、不機嫌そうな顔をして見回りをしている教師が一人。

 「風紀委員長なら仕事しろよ」

 学園の化学教師・跳月だった。
 リオは跳月の顔を見るなり、気弱な借りてきたウサギのような態度で声を細めた。

 「は、はづきち。今日も熱心に残業ですか?風紀委員の仕事……頑張ってますよ。はづきちもとっとと仕事終わらせて……」
 「用事があるから残っているんだ。因幡。用事ないなら早く帰れ」
 「これだから、大人は!」

 跳月ははせやんと違って大人びた性格だ。リオの秤ではみんなのお姉さんより大人びたメガネ男子の方に傾く。
 理知的なメガネに吸い込まれて、冷たくて優しい言葉でぐりぐりと。きっとどこかで頑張っている自分を否定して欲しいという
ひねくれにも似た願望がリオにはあるのだろう。リオは跳月に「用事がないから帰りますっ」と返事を残して玄関へ向かった。

 玄関から一歩出ると風が冷たい。夏が過ぎ去って、一雨ごとに寒くなる季節。リオの脚からちらりと光る絶対領域が冷える。

 「はっせやーん。はせやんかわいいよはせやん。あー!でも、はづきちにもガンガン怒られたいお!」

 午後のはせやんの授業中、リオはノートの片隅に泊瀬谷の落書きをしていた。明らかに年上なのにリオにははせやんが年下のように
見えた。こんな妹がいてくれたらいつも弄くって遊んでいたのにと、誰にも聞こえないことをいいことにリオははせやんの絵を描いた。
 はづきちが兄で妹がはせやん。そして、わたしははづきちから叱られて、はせやんに意地悪く当たる。なんて幸せ植物連鎖。

 「でも、なんか悔しいなあ」

 急に校舎から離れてリオは一日が過ぎてしまうこと、彼らとの日々が過去の物になってしまうことに感傷の思いが風と共に通り過ぎた。
 余りにも物思いに耽っていたので校門で自転車に轢かれかけた。犯行はクラスメイトの男子だった。犬上ヒカルだった。

 「因幡。ごめん、大丈夫?」
 「大丈夫じゃないよ!だ・い・じ・けーん!」

 ホントの気持ちを隠そうと作り笑いで、ゆるりゆらゆらと口ずさむ。

 「なにそれ」
 「なんでもない」
759はせやんと黒ストッキング ◆TC02kfS2Q2 :2012/09/14(金) 23:14:50.33 ID:/pPdxLiE

 自転車に乗った犬上ヒカルはきょとんとした顔でリオを見つめていた。
 正直、同級生には興味はなかった。年上の誰かに振り回されたいと思っていたからだろうか。でも、日々が過ぎ去ってしまう悲しさを
共感して、かつ共有してくれるのはコイツだけしかいないと、リオは自転車に跨るヒカルの脚を止めた。

 「犬上。一緒に帰らない?」
 「え?」
 「女子が一緒に帰ろって言ってるんだけど……」

 女子高生の誘い。ヒカルには唐突に感じた。リオは兎に角、誰かと一緒になりたくてたまらなかった。心もとなくて、寂しくて。
真っ暗闇の中を単独でボートを漕ぐような気持ちだった。ヒカルは断る理由がないのでリオと共に校門から続く坂を自転車を押しながら
下った。真横にいるのは紛れもなく女の子だというとこは、何となく意識しながら坂の下へと並んで歩く。

 歩幅を合わせるだけなのに、同年代の女子と歩くことだけなのに。いや。同年代だからこそ、いろんなものが見透かされる気がする。
年上ならば気を許せるし、年下ならば気を許してあげられる。だが、同級生だとお互い対等だから見透かされる気がするのだ。
 ヒカルは自転車のチェーンの音だけ聞きながら、坂の下にあるコンビにを目指す。そして、しばらく沈黙が続くとリオが口火を切った。

 「犬上。どこ行くの」
 「コンビニ」
 「わたしも行く」

 他愛のない会話にヒカルとリオは救われた。

 予定外ながらもリオはヒカルの後を追う。別に買うものはないけど、誰かの側にいたかったからだ。
 理由なんか後付けで十分だし、理由の内容が無ければしらばっくればいい。自動ドアが奏でるお出迎えのチャイムと一緒に鼻歌を
歌ってみた。店内は下校途中の生徒たちがわさわさと賑わっていた。買い物一つで人が出る。大柄な男子は両手にいっぱいの菓子パン、
華やかな女子は控え目で色鮮やかなパックのジュース。そして、ヒカルは肉まんを一つ手に入れただけで満足していた。
 一方、リオはヒカルの尻尾が触れるか触れないかの距離で、口をへの字にして時間を潰していた。ヒカルの尻尾がふらりとリオの
ニーソックスに包まれた膝を撫でた。

 「因幡は買わないの?」
 「う、うん。とくに決めてなかったからさ」

 姑息的な寄り道だからと店を出るチャイムに後ろめたさを感じた。ヒカルはリオが両手でスクバをぎゅっと抱え込む姿を不思議そうに
見つめていた。外の空気が涼しく、ヒカルはスタンドを立てた自転車に跨って肉まんを頂く。二つに割った断面からは程よい加減に
蒸された肉と食欲を誘う湯気が顔を出す。片方をベンチに座っていたリオに勧めたが首を横に振っていた。

 「犬上聞いてくれる?今日、はせやんに負けちゃった」
760はせやんと黒ストッキング ◆TC02kfS2Q2 :2012/09/14(金) 23:15:21.53 ID:/pPdxLiE

 何に?
 どうして?

 いきなりの会話はある種、人の興味を掻き立てる。ヒカルはスタンド立ちの自転車のペダルを漕いで空回りさせていた。

 放課後、ヒカルに会うまでに起きた校舎内での出来事を話す。
 居残りさんの美琴と狗音を見つけた。だから注意した。でも、帰らない。はせやんの一言で二人は帰り支度を始めた。
 なにか、悔しいな。わたしとはせやん、二人とも同じこと言ってるのになんで違うの?と、愚痴を零すリオを受け止めるように、
ヒカルは肉まんを口から離してじっと泣き虫ウサギの泣き言を聞き続けた。

 「なんか、風紀委員長やってんのに。悔しいな、わたし。委員長なんだよ?なのに……はせやんに負けちゃったって」
 「そうだろうね」
 「犬上、はせやんの味方するんだ」

 後悔の矢が二人の胸にそれぞれ突き刺さる。
 「こんなこと言うんじゃなかった」とヒカル。
 「こんなこと言うんじゃなかった」とリオ。
 だが、覆水盆には帰らず。顔を赤くしたリオはヒカルからハンドルを奪い、自転車のブレーキをぎゅっと握った。

 「そうだ、因幡。泊瀬谷先生で思い出した。今日のさ、現国のノート。見せてくれない?」
 「ひっ?」
 「写し逃したとかじゃないけど、確認したいんだよね。ノートした内容があってるかなって」

 ヒカルはカバンからノートを取り出すと、あわてふためくリオの顔にも冷静に対処していた。リオの周りに二次元の汗が雫のように
光ることを突っ込みもせず。あのノートにははせやんの落書きしてんのよ!ちびキャラになって教壇でかりかりと板書するはせやんなんよ!
誰かに見せる気もないのに描きあげた落書きが他人の目に止まるかもしれないという恥ずかしさ。出来ることなら断りたかったけど、
断る理由が見つからない。

 「いいよ。ちょっとだけなら」

 スクバをまさぐる振りを利用して、なるべくヒカルの目を見ないようにリオは片手でノートを差し出した。
 
 「ありがとう」と一礼したヒカルがはらはらとノートを捲る。紙の音がリオには判決が下されるまでの秒針に聞こえた。
何世紀も時代をかい潜った法廷で、一人高い天井の間に取り残されて天秤を持つ目隠しの神の声を待つ。
 紙を捲る音が止まった。ヒカルの目線はリオが確かに落書きをした片隅にあった。

 「これ。泊瀬谷先生?」

 ドンと裁判長が座る机のハンマーが下ろされる。肩をすくめてリオは小さく泣いた。


761はせやんと黒ストッキング ◆TC02kfS2Q2 :2012/09/14(金) 23:15:52.64 ID:/pPdxLiE

 「かわいいね、これ」

 リオを囲む薄暗い暗幕が開き、希望の光り照らす。太陽がこんなに明るいなんて!背中に羽根が生えて、雲さえ飛び越えられるような
気がしてきた。リオを苦しめた呪縛から解放してくれたヒカルに……。

 「無理に褒めなくてもいいって!ばかばか!」

 目を赤くしながらリオはヒカルの脇腹を浅く抓った。
 恋人同士でもないのに、付き合っているわけでもないのに。ましてやただのクラスメイト。ヒカルはリオが抓った脇腹が
今まで感じた痛みの中で、いちばん心地よく感じた上に、罪悪感をも背負った気がした。

 「もしかして犬上って、はせやんみたいな『危なげお姉さん』がタイプとか?」
 「なにそれ」
 「いや。なんかさ、はせやんの絵を『かわいいね』とか言ってたし」

 同級生同士だから、なんだかお互い見透かされているような気がする。確証はないけど、気がするだけ。

 「例えば、黒ストッキング履いてオトナだよって振りまいてても、結局中身は妹だよねって、とか。犬上好きそう」
 「……さあね」
 「わたしはさ!メガネ男子だな!」

 メガネ男子。
 めがねだんし。
 メガネダンシ。

 リオには跳月の顔がぽっと浮かんだ。

 「そうなんだ。因幡のタイプって」
 「それだけ?もっと、聞かないの?レンズ越しの冷たい目がいいよねとか?なんかさぁ……わたし、気持ちががさがさしてきたよ!」

 自爆に近いリオの独白。リオが叫べば叫ぶほど悲哀に満ちる。
 乙女なゲエムならば「きゃんきゃん吠えるなって。もっと困らせたくなるだろ?」という男声ボイスがリオのヘッドフォンに
溢れるだろうシチュエーションだが、残念かな、相手は犬上ヒカルだった。じゃあ損も得もない相手なら、好き放題してもよかろう。

 「犬上さあ。わたしを萌えさせて!萌えさせてちょうだいよ?」
 「え?」 
 「いいから!いいから!」
762はせやんと黒ストッキング ◆TC02kfS2Q2 :2012/09/14(金) 23:16:36.51 ID:/pPdxLiE

 リオは自分が掛けているメガネを外し、ヒカルに無理矢理掛けさせてみた。女の子のメガネを掛けている……と、ヒカルは初めて
好きな人と隣り合わせになった気持ちに近い恥ずかしさが背中を走った。メガネ男子になったヒカルの羞恥プレイにも関わらず、
リオはもやに掛かったかの如くぼんやりとしかヒカルの顔を見ることが出来ず、リオが理想とした萌えは図らずとももやに消えた。

 「メガネ男子……ひーん」

 言うまでもなく度の合わないメガネを掛けたヒカルにも、同じようにリオがもやに掛かったかのように見えた。
 ぼんやりとして輪郭がはっきりしないのに不思議と不安な気持ちにはならなかった。

 
     #


 生徒たちが帰った校舎の生徒指導室で、隣り合わせの席で座るのはせやんとはづきちだった。
 「時が進むのは早いなあ」と、こつこつと時間を刻み続ける古時計を二人揃って見つめていた。

 「跳月先生。きょう、わたし自身を指導出来ませんでした」

 膝小僧を抓りながらはせやんは午後の授業を振り返り、実の兄に打ち明けるようにはづきちに弱気を吐いた。
 窓から差す日差しがはづきちのメガネを白く光らせた。

 「生徒がですね、授業中ノートに落書きしてるの見ちゃったんです。こんな小さいこと注意しなくてもいいよねって
  思ってたんですが、わたしの授業が何だか飽きられているのかなって考えちゃって」
 「泊瀬谷先生がそう思うんだったら、それでいいじゃありませんか。先生ですし」

 はづきちの言葉は冷たくもあり、温かくもある不思議な言葉だった。
 はせやんの膝小僧に黒いストッキングが似合うにはまだまだ遠かった。
  

     #


 「だからさ、犬上のタイプは?教えてよ!ばかばか、ずるいぞ!」
 「因幡……とは逆のタイプな子かなあ」
 「もう!」

 ただ……。

 ヒカルには落ち込んだリオが泊瀬谷に見えてきた。
 ボブショートの髪に気弱になった姿。お姉さん先生の泊瀬谷と風紀委員長のリオが重なるメガネの魔術にヒカルは操られていた。
 恥ずかしいから目を合わせないようにリオの下半身に目をやると、スクバで露になるべき純白なる絶対領域が隠されて、
インチキメガネ男子になったヒカルの視界からは黒ストッキングを履いているかのように見えた。



     おしまい。
763わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2012/09/14(金) 23:17:52.17 ID:/pPdxLiE
\はっせやーん/

終わります。
764創る名無しに見る名無し:2012/09/14(金) 23:28:09.10 ID:dlMf4gO0
萌えさせては無茶振りw
765創る名無しに見る名無し:2012/09/16(日) 00:29:18.81 ID:Ny1XIH2t
766創る名無しに見る名無し:2012/09/16(日) 15:51:18.31 ID:Rh1AUnrR
目つきwww
767創る名無しに見る名無し:2012/09/16(日) 22:51:22.58 ID:Ny1XIH2t
768創る名無しに見る名無し:2012/09/16(日) 23:12:20.27 ID:jKLg1Z85
おつp…じゃなかった、乙!
769創る名無しに見る名無し:2012/09/16(日) 23:32:42.30 ID:vPsjTIkM
おつp  じゃない乙
770創る名無しに見る名無し:2012/09/16(日) 23:41:58.81 ID:ZutTG1Ex
おっぱい!!!!!
771創る名無しに見る名無し:2012/09/18(火) 00:16:18.38 ID:+5FP+2+D
リオ「さあ!犬上!制服姿で颯爽と空を舞う飛澤朱美。スク水姿でウブな男子を惑わす小野悠里。そして白衣から覗くババ…オトナの色気溢れるブラウスの白先生。
   どの巨乳がいい?さあ!犬上も思春期真っ只中の男子ならば、おっぱいのひとつやふたつ…」
ヒカル「そんな胸だけ写した写真パネル、いつ撮ったの?それより、文化祭の打ち合わせで委員会室に呼んだんだろ?」
リオ「いいの!そんなの中止中止!でも、いいなっ!みんなおっきくて!犬上!盛れ!」
ヒカル「いや…。別に」
リオ「うそついたら罰金バッキンガムだよ!」
ヒカル「……。それより、胸だけのパネル前に抱えて持ってると、因幡の顔と合体してさ…」
リオ「うそっ?わたしが巨乳に見える!?むはっ!悠里のむーカップがわたしのものだ!朱美ちゃんのむーカップがわたしのものだ!」
ヒカル「白先生のも?」
リオ「そ、それは全力で断る!そんなババアにされたら泣いちゃうよ」
白先生「何?何をしちゃうだと?」
リオ「え?え!え!?えっと…文化祭の打ち合わせ、しちゃうよ…って」
ヒカル「…うそついたら罰金バッキンガムだよ」
772創る名無しに見る名無し:2012/09/18(火) 02:22:40.20 ID:v9SokTRD
リオなにしてるんすかwwwww
773創る名無しに見る名無し:2012/09/18(火) 22:47:29.34 ID:JNYvra2h
774創る名無しに見る名無し:2012/09/18(火) 23:13:06.29 ID:VZWtMuCm
ちょw
775創る名無しに見る名無し:2012/09/19(水) 02:43:55.90 ID:U9v3fsVA
描きやがったwww
776創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 19:02:08.54 ID:3bfsS9io
ttp://www19.atwiki.jp/jujin

ウィキを更新したよ!
ババアいじられまくりwww
777創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 19:18:47.65 ID:1oI+I9Ck
大量更新乙です!!
778創る名無しに見る名無し:2012/10/08(月) 20:25:19.85 ID:AZNEE5g4
ババァかわいいよババァ
7791/2 ◆ea7yQ8aPFFUd :2012/10/11(木) 22:24:48.00 ID:sVhJTlkD
思いつきで書いた作品をこっそり投下してみる
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ある夜、一匹のタヌキが空の酒瓶を前にして腕を組んでいた。
「ついに無くなってしまった……。」
神社から盗んできたお神酒の味を覚えて以来、自分で集めた木の実やら、人間から貰った食べ物やら、
はたまたお地蔵様のお供え物やら……兎にも角にも、食べられる物を手に入れてはそれを肴に酒を飲むという日を続けていたタヌキ。
しかし、そんなことを毎日していれば酒が無くなるのは当然である……が、そんな日々を当たり前に過ごしていたタヌキの頭は
『いかにして新たな酒を手に入れるか?』でいっぱいになっていた。
「また、あの神社から盗むか?……いや、数日前に通ったらタコみたいな神主が怒りでテンタクルと化していたし……
 人間みたくスーパーで買おうにもお金は無いし……第一、葉っぱを使ったお金の偽造はタヌキ的にも倫理違反だし……。」
そう言いながら、近くにあった葉っぱを指でつまみながら回すタヌキ。

その時、突如強めの風がタヌキの体を通り抜け、そして葉っぱをタヌキの指から解放するのであった。
ジェットコースターのように孤を描く葉っぱ。
そして、それは風に戸惑っていたタヌキのおでこに着地した。

その瞬間、タヌキにひとつの悪知恵が浮かんだ。
「そうだ!これで行こう!!」

それから数分後、タヌキは闇夜が広がる道の草むらに隠れていた。
「ふふふ……ここで人が来るのを待つ。その間に、この葉っぱで人間に……そうだなぁ、『お涙頂戴路線』で行くなら、
 『鬼のような亭主に「酒を買ってくるまで帰ってくるな!」と追い出されたか弱き人妻』に変身して、お酒を買って来てもらう!
 ……設定としては『お金を落としてしまい、買いに行くことが出来ない。お金を再度取りに帰ろうにも、亭主が怒りを露わにしている。
 どうか、お助けを……』ってな感じ……かな?……お?」
独り言を続けていたタヌキの眼に飛び込む、自転車のライト。
そこには、酒瓶のような物を買い物袋に入れてペダルを漕ぐ男の姿があった。
「ナイスタイミング!それじゃあ、この葉っぱで変身を……。」
そう言って、タヌキはおでこに葉っぱを乗せるのであった。
「3……2……1……変身!可哀相な人妻キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」
「どわぁっ?!な……何だぁ?!?!」
テンション高く現われた女性の出現に驚く男。
そして、その拍子に自転車から落ちそうになる……が、ギリギリで踏み留めると、男はその場に自転車を止めるのだった。
一方、タヌキはタヌキで若干バツの悪い表情を見せてはいたが、すぐさま落ち着きを取り戻し、
先程自分の脳内で組み立てていた脚本を男の前で演じ始めた。
「……申し訳ありません……私、夫に頼まれてお酒を買いに行こうとしていたのですが、お金を落としてしまい……
 お金を取りに帰ろうにも夫は暴力的なため、酒を買わずに帰って来た日には何をされるか分かりません……申し訳ありません、
 お礼は致しますから私の代わりにお酒を買って来ていただけないでしょうか?それか……失礼なお願いではありますが、
 そのお酒を譲っていただけないでしょうか?」
7802/2 ◆ea7yQ8aPFFUd :2012/10/11(木) 22:32:32.18 ID:sVhJTlkD
お酒のため、丁寧な言葉で男に話しかけるタヌキ。
対する男は、最初の『異常な登場』が頭に残っていたために不安になっていたが、タヌキの見せる『可哀相な人妻』の幻と
その言動に心を奪われてしまい、タヌキのお願いを拒否出来ない心境となっていた。
「えぇっと……よろしかったら、さっき買って来たお酒があるんで、よろしかったらこれを……。」
そう言って、買い物袋の中にあった酒瓶をタヌキ……いや、人妻に渡す男。
酒瓶の中には透明な液体が並々と注がれており、ラベルにはタヌキの読めない文字が描かれていた。
「これは……?」
「……ああ!僕、洋酒の……特に変わった物を買うのが好きなんですよ。」
「変わった……洋酒……。」
今までお神酒しか味わったことの無かったタヌキ。
そんなタヌキにとって洋酒は興味深い存在であり、さらに男の言う『変わった酒』という言葉にも心を踊らされ……
最終的にタヌキの頭は「今すぐ飲みたい!」という気持ちでいっぱいとなった。
「あの……。」
「何です?」
「申し訳ありませんが、味見してよろしいですか?あの……貰っておいて言うのも何ですが、
 夫の口に合うか確かめたいので……。」
「……ああ、いいですよ。」
そう言って、酒瓶のフタを開ける男。
そして、金属製のフタをコップ代わりにして酒を注ぎ、人妻に渡すのであった。
「どうぞ。」
「それでは、頂きます。」
そう言って、タヌキはフタに入った酒を一気に飲み干した。

……その直後であった。
酒が体内に取り込まれた瞬間、まるで火傷したかのように熱を帯びるタヌキの喉。
その熱さにおもわずむせる……が、せき込むと同時にタヌキの視界はグニャグニャと曲がり始め、そして暗転した。
「……!だ……大丈夫で……?!」
顔を真っ赤にして卒倒する人妻を抱えようとする男であった…が、人妻の姿は消え去り、
そこには眼を回して倒れるタヌキの姿が露わとなるのだった。

男がタヌキに渡した変わった酒……それは100%に近い高濃度のウォッカであった。

おわり
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昨日、スーパーへお酒を買いに行った帰り道に思いついた話を本能のまま書かせていただきました。
お目汚し失礼しました。

ちなみに今作ではウォッカを登場させましたが、書いた本人はあまりウォッカを飲んだことが無かったりです。
(もっぱらバーボンのロック)
781創る名無しに見る名無し:2012/10/12(金) 16:20:37.73 ID:jZLFeNOa
ス、スピリタス…
782 ◆ea7yQ8aPFFUd :2012/10/12(金) 20:31:28.00 ID:lNeOwDjK
>>781
イメージはまさしくソレです。

ただ、スピリタスという言葉が『種類としての名称』なのか『商品名』なのか良く分からなかったので、
今回は『高濃度のウォッカ』とさせていただきました。
・・・まあ、調べてみたらスピリタスという言葉は前者の意味合いっぽいので、無用の心配だったみたいですが。
783創る名無しに見る名無し:2012/10/14(日) 17:25:38.47 ID:3y93Fleo
タヌキィ…。数日は酒類トラウマコースだな。

何故か「顔を真っ赤にして卒倒する人妻」にどきりとした。
784創る名無しに見る名無し:2012/10/26(金) 23:36:26.55 ID:esc5Pwww
785創る名無しに見る名無し:2012/10/26(金) 23:44:51.17 ID:qN6V+VxG
うッ!




ふぅ……
786創る名無しに見る名無し:2012/10/27(土) 03:15:29.81 ID:OLpnVNFt
けしからんこれはけしからん。もっと寄越せ
787創る名無しに見る名無し:2012/10/28(日) 18:22:25.70 ID:EAjZ2XBB
ババアはビールが良く似合う。
788 ◆/zsiCmwdl. :2012/10/31(水) 20:04:12.31 ID:cSWvXc5P
すごく久々に俺が通りますよ……

ちょいとリハビリにハロウィンネタで投下してみるテスト。
次から投下
789 ◆/zsiCmwdl. :2012/10/31(水) 20:05:02.75 ID:cSWvXc5P
「Trick or Treat!」
「……は?」

 ドアを開けるや唐突に言い放たれた耳慣れぬ言葉に、私は咥えタバコが落ちるの気づかず間の抜けた声を漏らした。
 季節も晩秋に入り風が若干冷たくなり、暖かい日差しが恋しく感じ始めたある日の夕暮れ間近、
この日は貯まりに貯まった有給を消化する為、休暇をとったは良いがやる事もないので、家のリビングのソファーで寝転がりうつらうつらとしていた矢先、
突然のチャイムで呼び出されて頭を掻きながら応対に出た時の事である。

 今、私の前に居るのは身長や声から言って、学園の初等部の竜崎 奈緒と中等部の三島 瑠璃だろうか?
……だろうか? と疑問系になったのも無理もなく、その子達は一様に奇妙な格好をしていたからだ。
奈緒の方はインクでおどろおどろしい目と口を書いたシーツを被っているだけだったり、
はたまた瑠璃の方はパリッとしたスーツに裏地が血の様な真紅の黒いマント、そして閉じたマズルからも見えるやたらと大きな付けキバをしていたり、
 おそらく、お化けと吸血鬼といった風体なのだろうか……しかし何でこんなコスプレを?

「ほら、獅子宮せんせー! 今日ははろうぃんだよ!」
「『Trick or Treat』って言われたら、お菓子を渡すかイタズラされるか選ばなきゃいけないんだよ」
「それともせんせーはイタズラされたいの? イタズラしちゃうよ!」
「あ? ……ああ、そうか」

 状況が飲み込めず、落ちたタバコを拾うのも忘れて呆然と佇んでいた所で、
尻尾をぶん回す二人に囃し立てられ、私はようやく、今日のこの日が何の日であるかを思い出した。

 ――ハロウィン。
 確か、もともとはある地方での収穫感謝祭が、他の民族や地域にも行事として伝わった物が始まりで、
それが宗教などの行事と入り混じる事で今の形へと変わって言ったものだった、と思う。
まぁつまりはこの日はこの年の収穫に感謝すると同時に、ついでに悪い物を追い払ってしまおうという志向で行ってる行事と思えばいい。
んで、その日はお化けやら吸血鬼などの魑魅魍魎のコスプレをした子供が、かぼちゃのランタン片手に各家を回ってお菓子をねだって行くとか……。

 ああ、だからこの子達はこんなコスプレをしていたのか……
よく見れば、彼女らは恐らく母親の手作りと思われるかぼちゃのランタンを片手に下げていたりする。
790 ◆/zsiCmwdl. :2012/10/31(水) 20:06:31.68 ID:cSWvXc5P

「ほら、早くしないとイタズラしちゃうよー!」
「イタズラの準備は万端なんだよ!」
「ああ、分かった分かった。少し待ってろ」

 ハロウィンの事を思い出していた所で子供達に更に囃し立てられ、
私は可愛いお化けたちに何も渡さんのも難だと家の中へと引っ込み、尻尾を揺らしながら適当なお菓子がないか探し始める。
数分ほど戸棚を探した結果、出てきたものは酒の肴にと買っていたおやつカルパス一箱とあたりめ一杯、
そして禁煙の場所での口寂しさ避けのキャラメル一箱……と、まぁこんなものか。
更にそれ以外にもう一つあったのだが、これは子供に渡すのは少々酷だと戸棚の奥へと押しやり、
ひとまずおやつカルパスとキャラメルの箱を開けて、適当な数を可愛いお化けたちに渡してやる事にした。

「ほら、これで良いか?」
「わーい! ありがとー! でもせんせー、一つ忘れてるよー!」
「……ん? ああ、Happy Halloween。暗くなる前に、気をつけて家に帰れよ?」
「はーい! 先生もHappy Halloween!」

 戦利品を手に、「後で分けっこしようねー」などとはしゃぎながら元気に駆け出してゆく子供たちの背を見送った後、
床に転がる煙草を拾ってゴミ箱に捨て、そういえば今年ももう後二ヶ月か、などと取るに足らない事を考えつつ、
玄関からリビングに戻った私はソファーの定位置に寝転がり――

ピンポーンピンポピンポピンポーン

「…………」

 耳に飛び込んできた耳障りな位に連打されたチャイムの音に、私は再び玄関に向かわざるえなくなった。
……全く、行事にしても、もう少し寝る暇を与えてほしい物である……。
 そう、少しだけ不機嫌になりつつ玄関へ向かい、ドアを開ける。

「Trick or Treat!」
「…………」

 そこに立っていた者を前にして、私は無意識に咥え煙草を強くかみ締めると共に、尻尾を不機嫌にばたりと揺らした。

「おい、とっつあんぼうや……お前其処で何やってるんだ」
「えっ? やだなぁ、獅子宮センセ。僕はサン・スーシじゃないよ! ハロウィンに現れる妖精、ジャック・オー・ランタンだよ」

 不機嫌に尻尾を振り回す私の問いに対し
私の前に立つ、やたらと大きなかぼちゃの被り物に、全身を覆う外套をつけた背の小さな犬の男、サン・スーシはおちゃらけた様に答えた。
おそらく、私の予想が正しいなら、こいつはお菓子目当てでこの変装をして各家々を周っていたのだろう。
その証拠に、片手に下げたバスケットには、既に彼方此方から集めたのであろう戦利品が山の様に入っている。
……無論の事だが、さっき自分で正体をばらしていた上にその特徴的な声とさっきからぶん回している尻尾で正体はモロバレである。
791 ◆/zsiCmwdl. :2012/10/31(水) 20:08:10.78 ID:cSWvXc5P

「で、そのジャックと豆の木が何の用だ? 新聞なら間に合ってる」
「ちょ、ジャック・オー・ランタンだって! それに新聞屋でもないって! ほら、ハロウィンだからさ、お菓子くれないとイタズラしちゃうよ!」
「あーあー、そういえばそうだったな…ったく、其処でおとなしく待ってろ」

 一瞬、追い返してやろうかとも考えたが、このとっつあんぼうやの事だ、本気でイタズラをしてくるのは確実だろうと寸でで思い直し、
仕方なく私はさっきのおやつカルパスでも渡そうと戸棚へと向かい……先ほど見つけた”それ”の存在を思い出し、会心の笑みを浮かべた。
 ……そしてそれから数分後。

「ほら、これで良いだろ? 満足したならとっとと墓場に帰れ」
「……あれ? 妙に素直に渡してくれたね? どして?」
「……流石に菓子一個を惜しんでイタズラされるのは面倒だと思っただけだ。用が済んだならとっととどっか行け」
「変な獅子宮センセ……まあ良いや。そいじゃ、Happy Halloween!」

 何も知らずに”それ”を受け取り、意気揚々と去ってゆくサンの奴の姿を最後まで見送った後、
笑いが堪えきれなくなった私は遂にその場で噴き出してしまった。

「ぷくっ…くくっ…くははっ! あいつめ、まさかタコヤキキャラメルを渡されてるなんて、夢にも思わんだろうな」

 そうである、奴に渡したのは、あのジンギスカンキャラメルほど有名ではないが、それに匹敵、いやそれ以上の不味さのタコヤキキャラメルなのだ。
以前、大阪出張から帰ってきたいのりんから、何かの話のタネにとお土産としてもらった物なのだが(その際、サンの奴は出張で不在だった)、
噂にこそ耳にした事はあったが、一粒食べただけで全身の体毛が総毛立ち、箱ごとゴミ箱に投げ捨てたくなったと言うのは流石に初めてであった。
 なんと言うべきか、ピリ辛のソース掛けたタコヤキそのままを甘くしたような味、と言えば分かるだろうか、
いや、むしろ分からないままの方が良いかも知れない。つまりそれだけ酷い代物なのだ、”それ”は。

 その後、捨てるにしてもせっかく貰った物を捨てるのは気が引ける、かといってアレな味だから食べる気にもなれず、
結局、処分も保留のまま消費期限切れまで戸棚の奥で眠る事になったのだが……まさかここで役立つ事になるとは、世の中分からない物である。
 ……無論、渡すその前に匂いでばれない様、普通のキャラメルの箱へ、普通のキャラメルと混ぜるように詰め直しておいた。

「さて、タコヤキキャラメルを食った奴の吠え面が見物だな……くくっ」

 そうして、私はタコヤキキャラメルを食べて浮かべたサンの表情に思いを馳せつつ、再び怠惰に耽るべく部屋に戻るのだった。
792 ◆/zsiCmwdl. :2012/10/31(水) 20:10:54.72 ID:cSWvXc5P
                            ※      ※      ※

 ……それから翌日。

「――妙だな……?」

 時刻は既に放課後の時間帯へと移り変わり、外の景色もやや薄暗くなりつつある頃。
私はこの時刻特有のけだるい雰囲気、疑問の呟きをもらした。

「あのとっつあんぼうや、何も反応が無かったが……まさか、アレを食ってないのか……?」

 そう、私が疑問を感じたのは他でもなく、サンの奴の様子が何ら変わりが無いと言う事である。
何時もの奴ならば、私から何かしらの酷い目にあった後、次に校内で私に会った時に何かしらの態度を見せる筈なのだが……。
今日会って見た限りでは奴の様子は何時もの何ら変わりは無く、何時ものおちゃらけた調子であった。
……はて、これは一体……?

「みんなー! 僕にちゅうもーく!」

 噂すればなんとやらと言うか、何時もの体格の割りに無駄に大きい声が私の耳を振るわせた。
その方向へゆっくり視線を向けてみると、そこには思った通りの妙に胸を張って尻尾ぶん回すサンの奴の姿。
……そして、その片手には何処かで見たバスケットが……何か嫌な予感がしてきた。

「おやサン先生、どうしたんですかいきなり」
「昨日、ハロウィンだったでしょ? その時にお菓子を集めたんだけど、皆親切だから結構な量になっちゃってね。
それを僕一人で食うのも難だし、ここは皆におすそ分けしようと思って」
「おお、そういえばそろそろおやつの時間ですね……折角ですし、ご相伴に与らせてもらいますか」
「猪田先生」
「良いじゃないですか、英先生。たまにはこういうのを楽しむのも」
「しかし……」

 いのりんと英先生とのやり取りを他所に、私の視線はバスケットの中のある物へと注がれ、心中を焦りの色へと染め上げていた。
なぜなら、其処には昨日しがたサンへ意向返しにと渡した、タコヤキキャラメル入りキャラメルの箱があったのだから……!
 こ、これは本気でまずい……まさかこうなるとは私自身予想だにしていなかった。
サンだけが被害を被るならともかく、他の同僚まで被害を被ってしまうのはさすがに私も望んじゃいない。
しかも、もし万が一これが私の仕業と判明しようものなら、それこそ英先生&いのりんによるダブル説教in生活指導室も三時間ではすまないだろう。
 ……それだけは何としてでも避けたい。いや、避けねばなるまい!
793 ◆/zsiCmwdl. :2012/10/31(水) 20:12:20.83 ID:cSWvXc5P

「さて、いのりんからも許可も貰った事だし、早速おやつタイムと行こうか♪」

 拙い! このままでは本当に私の恐れていた事が現実になってしまう!
かくなる上は……仕方あるまい!

「さーさー、皆並んで……って獅子宮センセ?」
「ちょうど煙草切らして口寂しかったんだ、これを貰うぞ」
「え、あ、え? ちょ?」

 突然の行動に戸惑うサンに構う事無く、私は徐に周囲にあったキャンディやクッキーごとキャラメルの箱を掴み取ると、
キャラメルの箱をあけて一息に口へ放り込み、包装紙が付いたままであるのも一切気にせず一気に咀嚼して飲み込む。
当然、それによる気持ち悪さが怒涛の如くこみ上げるが、持てる精神力の全てを使って我慢する。

「し、獅子宮先生……?」
「用事を思い出した。少し早いがここは早引けさせてもらおう」

 そして、私は泊瀬谷を初めとした同僚達の視線から逃れるように踵を返し
その場で吐き出しそうな気分が表情に出てしまわないよう、必死に我慢しつつ足早に職員室を後にした。

 ミッションコンプリート……これでダブル説教から逃れる事は出来た。
 だが、代償はあまりにも大きく……うっぷ



 ……その後、私の素早い行動が功を奏したのか、幸いな事にハロウィンの件について、いのりんと英先生からは何のお咎めも無かった。
だがしかし、無茶をした代償かお腹を壊してしまったらしく、それから数日の間寝込んでしまう羽目になってしまい、
その上さらに聞いた話では、その時の事が誰かの口から漏れたらしく、「獅子宮先生乱心事件」として生徒の間で語られる事となったそうだ……。

 因果応報、自業自得とは、この事か……。

―――――――――――――――――――おわれ―――――――――――――――――――
794 ◆/zsiCmwdl. :2012/10/31(水) 20:13:37.50 ID:cSWvXc5P
以上、獅子宮先生の一人相撲な話でした。
いつの間にか今年ももう二ヶ月、時間の流れは速いというか……
795創る名無しに見る名無し:2012/11/01(木) 20:07:35.49 ID:Q20/DY5I
ししみゃー先生ムチャしたなw
ジンギス飴を平然と食ったババアにでも食わせときゃ良いのにw
796創る名無しに見る名無し:2012/11/03(土) 12:08:23.99 ID:H6X8eu0U
みやしし先生諦めいいなw
漢らしいぜ
797創る名無しに見る名無し:2012/11/03(土) 21:26:33.36 ID:DKrxrZ1m
次スレの季節がやってまいりました。
取り合えず10スレ目のSSをwikiに纏めておきました。
次はわんわんスレ目ですね。
798創る名無しに見る名無し
新スレ移行しました。

獣人総合スレ 11もふもふ
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1352420647/