1 :
創る名無しに見る名無し:
2 :
創る名無しに見る名無し:2010/04/21(水) 12:50:22 ID:BofwaeRE
いちおつ
3 :
創る名無しに見る名無し:2010/04/21(水) 13:28:53 ID:t7gzjGIX
連載小説 タイ〜ホ日記
シャブでパクられる中年のオッサンの爆笑小説
タイ〜ホ日記でググってみよう
2スレ目おめでとう!
おつかれーション
即死阻止
7 :
創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 20:15:35 ID:BWfg6JVz
咲き誇れ!百合の花!
やばい
いま書き溜めてるのが18禁しかない。
書きためてないなら今から書けばいいじゃない
ちょっとヤバイ・・・事はないか。
百合、か…
過去作を晒してもOKなの?
いいんじゃね?
何かあまりにも投稿がないと寂しいんで、他所のスレ用に書いた奴をこっちに投下してもいいんかいのう?
創作とは呼べん代物だが
15 :
創る名無しに見る名無し:2010/05/03(月) 07:17:32 ID:/exzSJxL
OKOK
16 :
14:2010/05/03(月) 10:43:41 ID:yzeWX8yH
17 :
1/7:2010/05/03(月) 10:44:22 ID:yzeWX8yH
私と妹の日常
「ん……」
カーテンの隙間から差し込む強い日差しに、私は眠りから現実に引き戻される。
――今……何時だろ……
時間を見て、もう一度寝直そうかと思った私だが、時計の針を見て、考えを修正せざる
を得なくなった。
「もう十時……休みだからって……さすがに寝過ぎたわ……」
睡眠の欲求ではなく、寝過ぎによって硬直した体を無理矢理引き摺り起こすと、長い髪
をバサッと後ろに流す。
「そろそろ美容院……行かなきゃなー……」
ズボラな私は、どうも行こうと考えてから実行に移すまでに時間が掛かる。予約の電話
を入れる事からのプロセスをボーッと考えて何となくめんどくさいなー、などと思いなが
らしばらくベッドに座り込んでいたが、やがてそれ自体無駄な事に気付く。
――ま、どうしても行きたくなったら自然に体動くでしょ。
頭をボリボリと掻いてベッドから降りると、そのまま部屋を出てキッチンに向かう。ま
ずは喉を潤さねば。まだちょっとボーッとした顔で冷蔵庫を開けようとすると、妹の敬花
が、顔を上げた。
『おはようございます、姉さん。随分とごゆっくりですね』
その言葉に微妙ではない量の棘が含まれているのを感じたが、私はそれは無視して小さく頷いた。
「うん。だって休みだしー」
『休みだからといって、ぐうたらし過ぎです。姉さんは。いっつもそうですけど。せめて
八時には起きて貰わないと。朝ごはんだって片付かないし、それに母さんの手伝いとかや
る事あるじゃないですか。姉さんがだらしないせいで、全部私がやる羽目になるんですからねっ!!』
またお説教モードか。内心でため息を吐きつつ、私はオレンジジュースをドパーッとグ
ラスに注ぐと、そのままゴクゴクと飲み干す。
『ちょっと。姉さん。聞いてますか?』
「うん。聞いてる」
そのまま流しにグラスを置くと、敬花は立ち上がって私をキッと睨み付ける。
『ちょっと姉さん。飲み終わったグラスはそのままにしないで下さいっていつも言ってる
じゃないですか。どうしてそのままにしちゃうんですか』
18 :
2/7:2010/05/03(月) 10:45:03 ID:yzeWX8yH
「んー…… 大丈夫。後でちゃんと自分で洗うから」
『後でじゃダメです。今すぐに洗ってください』
何で我が妹はこうも潔癖なんだろう。いつもの事ながら同じ姉妹でこうも違うものかと
首を捻りつつ、仕方無しに妹に背を向けて流しでグラスを洗うと、敬花が驚いた声を上げた。
『ねっ……ねねね……姉さんっ!!』
「どーしたの? 変な声出して」
『どーしたのじゃありませんっ!! その……パジャマのズボン……ずり下がってるじゃ
ないですかっ!!』
「あん?」
確認すると、妹のご指摘どおり、パジャマのズボンが少し下がっていて、パンツのゴム
が見えていた。
「あー……そういえばこのズボン、ゴムが緩んでたっけ」
ボリボリと頭を掻くと、妹の怒声が返ってきた。
『緩んでたっけじゃありません!! さっさと直して下さいみっともない』
「どーでもいいけど、何でアンタの顔、そんな赤いの? 見せてるの私なのに」
何故か敬花の顔の方が真っ赤に染まっていた。さすがに毎日一緒に過ごす妹なので、そ
れが怒りだけでない事はよく分かっている。
『どうでもいいなら指摘しないで下さいっ!! 姉さんのバカッ!! 大体、姉さんこそ
平然としてる場合じゃないじゃないですか。そもそも、部屋から出る前に着替えてくるの
が常識じゃないんですかっ!!』
常識と言うのは、大勢の人が共有して抱く考えだから常識なんであって、これは人それ
ぞれだと思うけどなーとは口が裂けても言わないでおく。そんな事を言えば、敬花が暴走
して大激論を一方的にぶちまけられるので、また朝ごはんを食べ損ねる。
「いいじゃん。家の中なんだし。誰に見られるって訳でもないんだから」
『父さんがいるじゃないですか!! 身内だからって一応男性なんですよ』
それを聞いた私は、ひょいとリビングを覗く。すると、父がソファに浅く腰掛け、テレ
ビとにらめっこしつつ、テーブルに置いた碁盤に碁石を置いていた。
「あ、お父さん。おはよー」
「ああ。おはよう清実。昨日は遅かったのか?」
19 :
3/7:2010/05/03(月) 10:45:50 ID:yzeWX8yH
「うん。連休前で仕事が詰まっちゃってさー。まあ、それでも終電には余裕の時間だった
から前よりマシだけど」
「そうか。まあ、忙しいのは今の時代、いい事かも知れないけど無理はするなよ」
「うん。ありがと」
穏やかに父と会話してると、敬花が怒鳴り込んできた。
『普通にその格好で呑気に挨拶しないでください!! みっともない!!』
「ズボンは直したよ?」
『そういう事じゃなくて!!』
憤慨する敬花をとりあえず無視し、父の方を向いて言った。
「ごめんねお父さん。喧しくして。碁の邪魔じゃなかった?」
『何で私が悪いみたいな言い方になってるんですかっ!!』
背後からまた突っ込まれるけど、気にしない。
「いや。俺は大丈夫だけどな。あんまり敬花を怒らすなよ。頭に血を上らせ過ぎたら大変だからな」
「はーい」
可愛らしく笑って返事をしてから妹の方に振り返ると、そこに鬼がいた。
『信じられません姉さんはっ!! 恥じらいも何もあったものじゃないんですから』
このまま放っておくと、延々とお説教が続きそうだなと思った私は、敬花の最大の弱点
を突付く事にした。
「私は別に恥ずかしくもないし、お父さんも見慣れたもんだと思うから、別に恥らう必要
なんてないと思うんだけどなぁ?」
敬花の隣に腰掛けて、真っ直ぐに顔を見ながら言うと、敬花はちょっと顔を赤らめて背けた。
『相手がどうとか、そういう問題じゃありませんっ!! 姉さんも年頃の女の子なんです
から、少しは気を遣うべきです』
私はそういうのはめんどくさいと思ってしまうのだが。
「そっか。むしろ、敬花が私のこういう格好を見るのが恥ずかしいんだ。そういう事か」
『なななっ……何で私が姉さんのパジャマ姿に興奮しなくちゃいけないんですかっ!!
馬鹿げてますそんなの有り得ませんっ!!』
敬花はこっちに顔を向けようともせず、背筋をビクッと伸ばすと、どもりながら慌てて
答える。その仕草でバレバレなのになあ、と私は苦笑する。
20 :
4/7:2010/05/03(月) 10:46:31 ID:yzeWX8yH
「じゃあさ。こんなのはどう?」
わざと私は胸をはだけさせた。咄嗟にこっちを向いた敬花の視界に、ノーブラの私の胸
元が飛び込む。
『キャアッ!! ななな……何わざわざ見せてんですかっ!! ねねね、姉さんの変態、
露出狂っ!!』
顔を背けても耳まで真っ赤なので、敬花が沸騰して湯気が噴出しそうなほど興奮して熱
くなっているのが分かる。
「露出狂って失礼な。女の子同士なのに。ねえ」
パジャマの胸元を直すと、私は立ち上がった。
『おおお……女の子同士だからって……しし……姉妹だからって……限度って物があるじゃ
ないですかっ!!』
うん。だから、世の中の姉妹でも、姉の胸元に興奮する妹はそう多くはないと思うぞと
思いつつ、そんな敬花だからこそ可愛がりたくなるんだよなあと思ってしまう。
「可愛いなあ、敬花は。照れちゃって」
『てて……照れてなんていません!! バカッ!!』
可愛いと言ってバカと返されるなんて理不尽もいい所ではあるが、とにかくこれでパジャ
マについては終わったと安心すると、次に来るのは朝ごはんの問題だった。
「そーいえば敬花。お母さんは?」
返事が無いのでもう一回聞く。
「敬花?」
『ふぁ、ふぁいっ!?』
慌ててこっちを向く敬花。一体何を妄想していたのか、ちくちく苛めながら問い質してやりたい。
「お母さんはどうしたのって聞いたんだけど。いないの?」
すると敬花は、二、三秒呆然とした後で、我に返って言った。
『母さんはいません。お友達と演劇に行って、その後お食事だそうです』
それを聞いた瞬間、腹がクウ、と小さい音を立てて鳴った。裾をはだけ、お腹をポリポ
リと掻きながら、私は自分の朝ごはんをどうしようか考える。
21 :
5/7:2010/05/03(月) 10:47:12 ID:yzeWX8yH
「てことは、朝ごはんは……敬花。何か作って?」
『お断りです!! あと、お腹を出して掻くのは止めて下さい!! ホントのホントにみっ
ともないですっ!!』
これ以上怒らせるのもなんだし、それに出し続けると冷えるので、大人しくお腹をしま
うと、私は哀願するように敬花を見つめた。
「お腹を空かせた私を飢え死にさせようって言うの? 敬花がそんな冷たい妹だなんて知
らなかった」
『朝食抜いたくらいで飢え死になんてしません。大体、だらしなく寝坊して朝ごはんに間
に合わなかったぐうたらな姉に、何でわざわざ私が朝ごはんの用意なんてしなくちゃいけ
ないんですか。バカバカしい』
バッサリと断ち切るようなにべもない返事だった。
「うーん……やはり胸元くらいで完全篭絡は無理か。かといって、朝からエッチなことも
あれだしな」
『不埒な事を口に出して言わないで下さいっ!!』
「あれ? 聞こえてた?」
『聞こえてた? じゃありませんっ!! わざとのクセに……』
ぶつくさ言いながら、敬花は視線を本に戻す。でもあれは絶対内容は頭に入ってないな
と、私は確信に近い思いを持った。
「仕方が無い。自分で何か作るかぁ。ハムくらいあるかなぁ……」
トーストにチーズとハムでも乗せるかと思って冷蔵庫を開けると、ど真ん中にででん、
とラップに包まれたサンドイッチがあるではないですか。
「ねー? 敬花。このサンドイッチ、何?」
一旦冷蔵庫を閉じて振り向いて妹に聞く。すると敬花はツンと澄ました口調で言い返した。
『私は知りません。そんなの。母さんが作り置きでもしたんじゃないんですか?』
「ああ。そのサンドイッチな。今朝、敬花が――」
『父さんっ!!』
父が何か言おうとするのを遮って叫ぶと、敬花は慌ててリビングに飛び込んだ。
22 :
6/7:2010/05/03(月) 10:47:53 ID:yzeWX8yH
――ダメじゃないですか父さん。姉さんにそういう事言わないで下さい……
――姉さんは甘やかすとますますダメ人間になっちゃうんですから……
何だか聞こえないよう小声で話してるつもりらしいんだけど、興奮してちょっとトーン
が上がってるせいで、全部こっちまで筒抜けなんだけど。我が妹よ。
散々父を説教してから、やっと落ち着いた顔で席に戻る敬花に、私は微笑みかけた。
「ありがと。このサンドイッチ、私のために作ってくれたんだ」
一度椅子に座った敬花が慌てて立ち上がる。すると、ガタンッと激しい音がした。どう
やら立ち上がった時に、太ももをテーブルの縁にぶつけたらしい。
『いたっ!! いったああああああ〜〜〜〜〜〜〜……』
「ありゃま。大丈夫敬花?」
まさか肉体的ダメージが行くとまでは予想していなかったので、私は慌てて敬花に駆け
寄ると、太ももを擦ってあげようとした。その手を敬花がペッと払う。
『大丈夫じゃないですっ!! 大体姉さんが悪いんです!! 私が姉さんのために作った
とか、変な事言うからっ!!』
涙目の敬花に、私は真顔で聞き返す。
「そうじゃないの?」
『違いますっ!! あれはその……父さんと私のために作った分が余っただけで……それ
を父さんが勝手に勘違いしてただけですから!! 大体なんで私が姉さんの分まで気を遣
わなくちゃいけないのか訳が分かりません』
この期に及んでまだ嘘を吐く妹を、私は感心する思いで見つめた。まあ、余っただなん
て、照れ隠しの常套手段だけどね。
「そっか。余っただけか。残念」
敢えて、ちょっと気落ちしたように言うと、敬花は顔を背け、ぶつくさと独り言のよう
に呟いた。
『で……でもその……姉さんが食べたいって言うなら、別に食べちゃってもいいですよ。
どうせ、ただの余り物ですから……』
「えへへ。ありがと」
笑顔でお礼を言うと、敬花は恥ずかしそうに真っ赤な顔してそっぽを向く。
『別に礼なんていりません。気持ち悪いです』
「嬉しいくせに」
23 :
7/7:2010/05/03(月) 10:48:56 ID:yzeWX8yH
『嬉しくなんてないですっ!! 適当な事言わないで下さい!!』
また怒らせてしまった。でもしょうがないじゃない。だって可愛いんだもん。
「じゃあ、食べ物は確保出来たし。お茶淹れるとしますか。敬花は何飲む? 紅茶? コーヒー?」
『い、要りません。姉さんの淹れるお茶なんて、どうせティーバックかインスタントでし
かないんですから』
敬花はキッパリと拒否した。ここで納得すればそれはそれで面白いが、今はサンドイッ
チのお礼もあるし、苛めるのは止めよう。
「じゃあ、お湯沸かし過ぎたら、もったいないから飲む?」
そう聞くと、敬花は頷いて答える。
『ま、まあ沸かし過ぎたら……って何でそんな事前提なんですかっ!! ガスがもったい
ないんですから、適量で沸かして下さいよ。いいですねっ!!』
「はいはい。分かりました」
そう言いつつ、私はこっそりと二人分のカップとティーバッグを用意するのだった。絶
対敬花は飲んでくれるから。だって、こんなの、いつものやり取りだからね。
終わり
お目汚ししました。
懲りずに何かネタがありましたら、また投下します。
24 :
創る名無しに見る名無し:2010/05/03(月) 17:18:49 ID:/exzSJxL
ニヤニヤしながら読みましたw
とっても面白かった
ツンデレ妹がかわええやないかw
妹かわいいよ妹
過去作ですみませんが転載しちゃいます
タイトルは当時のものなので気にせず
↓
「あついぃー!! ジュースかアイス欲しいー! 両方でもいいけど」
なつきが居間で足をバタバタさせながら叫ぶ様を尻目に、あたしは穂先に含ませた水滴を画用紙に慎重に落とし、
独自のエメラルドグリーンを作っていた。
水彩色鉛筆は微妙な表現が出せるが、それでも思うがままの発色とはいかない。
なつきがあたしのほうにごろごろ転がってくる気配を察したので、
「あーもう、うるさいうるさい。学校のプールでも行ってきなさい」
「だって五年生の時間は午前中なんだもん」
「……じゃあ宿題してなさい」
「勉強は暑くない朝のうちにしとくんだよー」
なつきは、してやったりという風に胸を反らして見せる。
さっき、叔母さんが昼ご飯にそうめんを出してくれた。テレビの高校野球は今日の3試合目までいっている。
――くそー、赤ペン先生の入れ知恵だな……。
あたしは自分が中学生の時に挫折した、いまいましい某通信教育教材の代名詞をつぶやいた。
.
なつきはあたしの従姉妹にあたる女の子だ。
あたしが小さい頃は、当然なつきは赤ん坊だったので、とくに気にも留めないただの「親戚の子供」だった。
それが、昨年久しぶりに会った時にはびっくりした。
あたしが小学三年生のころ会った以来だから、あれから六、七年経ったことになる。
四年生になったなつきは、とってもかわいらしい女の子に成長していた。
かわいいだけじゃなくて、妙に危うい艶っぽさもあった。
あたしはそれ以来、なつきの隠れファンになってしまい、なにかともっともらしい理由をつけては
彼女の家に遊びに行った。なつきもあたしの家によく来たがった。
この、「なつき大好き」感情を表に出してはいけない。
なぜだかよく分からないけれど、なんとなく後ろめたい感じがする。
けれどなつきは、そんなあたしの気持ちなど知る由もなく、抱きついたり耳元で囁いたりするのだ。
あたしはつとめて彼女のスキンシップに気のない返事を装った。
「あ、そうだ! かき氷食べに行こうよ。公園のところの」
なつきは元気よく起き上がると、背中からあたしの肩に抱きついて耳元で叫ぶ。
「あー」
夏休みシーズンに入ると、近くの公園でかき氷を売るようになる。
なつきはそれを買いに行こうと誘っているのだった。
「小学生は本当に元気だなー」
耳がキンキンなりながらあたしは気のない返事をする。その実あたしはとてもドキドキしていた。
「それで帰りに花火買ってさ、夜に二人でやろうよ! ね! 決まり!」
なつきはあたしを背中から羽交い絞めにしている。
魅惑的なシャンプーの匂いがふんわり漂ってきて、あたしはオリジナルエメラルドを作るのをあきらめた。
“花火”という単語に惹かれたのもある。
花火なんて、ここ数年していない。
いつのことからか、花火=打ち上げ=恋人同伴が必須、みたいな式が出来上がっていて、
恋人がいないあたしは無意識に花火から遠ざかっていた。
なつきと二人でする花火。
手持ちのスパークルとか噴き出すオーソドックスなやつ。ベタだけど線香花火。
ちょっと危ない感じのねずみ花火、トンボ花火。男の子専用、って感じのロケット花火。置き型の噴出する花火。
楽しそうだ。よし、行こう。
あたしは描きかけの絵に区切りをつけ、色鉛筆をケースにしまった。
自分の主張が受け容れられたと知ったなつきは、あたしの手を引っ張って玄関へ急ぐ。
そして、この手をいつまでもつないでいたいと想うあたしがそれに続いた。
.
夜になると夜気が入ってきて、あたりをひんやりとさせる。
叔父さんがろうそくを持ってきてくれて、火種をつけてくれた。叔父さんちの前の空き地で、あたしはなつきと花火をした。
「奈穂ちゃん、火ちょーだい」
「また消したの。ろうそく短いから、大事に使おうよ」
「だって、風が盗っていっちゃうんだもん」
ねずみ花火に火を着けるなつき。
「ちょっと、なつき? それ、手に持ってたら危ないから!」
あわてて放り投げる。
しゅるしゅるいいながらねずみの奴は予測不可能な動きをして足元を這う。
きゃあきゃあ叫ぶなつきを抱え上げ、あたしも逃げ惑う。
ぱふ、というなんとも気の抜けた音を立ててねずみの奴は力尽きた。
気がつくと、抱き上げたなつきと目が合った。
なつきの目はとてもきれいに澄んでいて、あたしをまっすぐに見つめていた。
――こんなに近くで見たのは初めてかも。なんで、こんなにドキドキするの……
あはははは、となつきが突然笑いだした。つられてあたしも笑う。
何が可笑しいのか良く分からないけれど、とにかく可笑しかった。あたしとなつきは抱き合ったまま、大笑いしていた。
「あんたたち、いいかげんにしなさいよー!」
叔母さんが奥から声をかける。買ってきた花火も、もう無くなった。
ちょっぴり寂しく思いながら、火薬の匂いの中でなつきと片付けをした。
なんとなく、流れで一緒にお風呂に入った。
なつきはあたしの胸をじーっと見ている。
「な、なによスケベ親父みたいに」
「……触っても、いい?」
「え……いいけど」
なつきは耳まで真っ赤にして、あたしの胸を触った。
たぶん、あたしの耳も真っ赤になっていることだろう。それは、お風呂でのぼせたわけじゃない。
たどたどしく触る感触は、とっても気持ちが良かった。
でも、何故だか罪悪感があって、それを続けることは躊躇われた。
「いつまで触ってるの」
冗談っぽく言うと、なつきは慌てて手を引っ込めて、俯いた。
その後はなつきの背中を流してあげたり髪を洗ってあげたりした。
そうしていると、とっても幸せな気持ちになれる自分が不思議だった。
.
↑
以上です
「……触っても、いい?」に萌えた。
こういうのいいなあ
この何ともいえない距離感
すごいキュンとなる
35 :
27:2010/05/13(木) 23:45:34 ID:sCoEYg7t
ありがとうございます!
これは某ぴんく板の「女子高生×小学生女子」という企画で書いたものです
三部作で、あと二編あります
手直ししたら投下させていただきます
失礼いたしました
36 :
創る名無しに見る名無し:2010/05/15(土) 09:02:19 ID:FwIWeyPa
早く続きが読みたい!
叔父さんの家に遊びに行く時は、母さんか父さんが一緒だった。
けれどあたしが中学生になってからは、一緒に行くことがなんとなく恥ずかしかったので、あたしは行かなくなっていた。
ところが、高校生になった去年の夏、あたしは一人で叔父さんの家に行った。
母さんたちが行けなくなったからだが、ちょっとした一人旅がしてみたかったのもある。
無理してまで行くこともないし、今年は無しね……と母さんと叔母さんが電話で話していた時、あたしはとっさに、
「あたし、行く! 一人でも行く!」
と叫んでしまった。
話はあっさり進み、父さんが新幹線の切符をとってくれて、
母さんから叔父さん宅へ届けるお中元を持たせられて、あたしはあれよあれよという間に瀬戸内海を渡っていた。
なつきに会ったのは、そのときだ。
叔父さんの家に着いて、玄関の呼び鈴を鳴らすと、出てきたのが彼女だった。
あたしは三、四歳くらいのなつきしか知らなかったから、小学四年のなつきとどういうふうに接していいかわからなかった。
かろうじて面影をみとめるのが精いっぱいだった。
お互いはじめはぎこちなくて、会話らしい会話も無かった。
でもなつきは、あたしと一緒にいるのを嬉しがってる風だった。
あたしが画材を広げてスケッチをしていると、そばに来て座っていたり寝転がっていたりした。
話しかけると、まっすぐこちらを見て全力で答えようとしてくれた。
なつきに連れられ、近くの沢や山に行った。
あたしは部活ではパレットとイーゼルくらいしか持たないし、美術室と学校の中庭の花壇を往復する程度なので、沢だの山だのは息が切れる。
しかも日差しが強い。一応日焼け止めを塗ってはきたが、それでも心配だ。
「奈穂ちゃん、早くー!」
「ちょ、ちょ……っと、待って、はぁはぁ……」
「あっ、カワセミが来てるよ!」
なつきはバテているあたしなどお構いなしにずんずん山道を入っていく。
なつきの華奢な四肢は健康的に灼けていた。
沢でメダカをすくったり、色の綺麗な野鳥を見たりしているうちに、あたしとなつきは打ち解けていった。
かわいい妹。そんな感情があたしの中に生まれた。
.
夕食は、豪華にお刺身やら天ぷらやらが所狭しと並べられた。
叔母さんは「張り切って作ったから、たくさん食べてね!」と言い、なつきは盛り付けや配膳を手伝わされてぼやいていた。
叔父さんはビールを飲みながらオールスター戦を見ていたが、ふとあたしたちのほうを見ると誰ともなしにつぶやいた。
「こうしてると二人は姉妹みたいだなー」
ちょうど、あたしがなつきの皿にお刺身を取ってあげているときだった。
「なつき、お姉ちゃんができて嬉しいね」
叔母さんもそれに便乗する。
「え、そ、そんなこと…」
なつきは照れて俯いてしまう。
叔母さん、妹ができて嬉しいのはあたしのほう。
誰かを愛おしく想うのって、こういうことなんだろうか。
普段は使っていない部屋に蚊帳が張られ、蚊取り線香の匂いがした。
蚊帳の中に新しい布団が敷いてあり、扇風機が弱風で回してあった。
あたしが布団の上に座ってタオルで髪を乾かしていると、
「奈穂ちゃん」
なつきが蚊帳の外から遠慮がちに声を掛けてきた。
「なつき? どうしたの」
「あの……、一緒に……寝てもいい?」
俯いて、掠れた声で呟く。上目遣いがなんともかわいい。
そういえば、さっき寝しなに見たテレビで心霊写真特集をやっていた。
「はは〜ん、さてはお化けが怖いんだな?」
あたしがからかうと、
「ち、違うよ! こっちの部屋のほうが涼しいんだもん」
そう言いながら、すばやく蚊帳の中に潜り込んできた。
.
一人用の布団に、二人並んで寝る。
くっついたところから、なつきの体温が伝わってくる。
暑さも忘れて、もっとくっつきたいと思う。
なつきの細い腕。なつきの薄い肩。
抱きしめたい。キスしたい。
でも、それをしたらなつきがショックを受けるだろうから、それだけはしちゃいけない。
――こうして添い寝するだけで十分。あたしは“仲の良いお姉さん”でいなくちゃね。
あぁ、でも。
やっぱりなつきはかわいい。
そしてあたしを寝かせてくれない。
くっついた腕が、おそるおそるといった感じに動いて、あたしの腕に絡みついてくる。
あたしは無言で、なつきの手を握る。
ドキドキしているのが聞こえてきそうだ。
.
鈴虫の声が聞こえる。
扇風機は回ったり止まったりを繰り返し、微風を送り出している。
蚊取り線香の匂いと畳の匂いがする。
電気の消えた部屋は、月明かりが差し込んで青く染まっている。
指を絡めて握ったなつきの手。
それをそっと持ち上げると、胸のあたりに導いた。
なつきは何も言わない。でも、なんだか緊張しているのが分かる。
胸の前に置いたなつきの小さな手を、両手でそっと包み、胸に当てる。
あたしのドキドキが伝わるように。
「……奈穂ちゃん……」
青暗い部屋に、なつきの囁き声が浮かぶ。
「すごく……ドキドキ……してるでしょ……」
あたしの声も掠れている。
するとなつきは、そっと身体を動かして横からあたしに密着した。
握っていないもう片方の手を、あたしの身体に巻きつけてきた。
なつきも、ドキドキしているのが伝わってくる。
あたしは手を一旦ほどいて、片手でなつきの肩を抱いた。
もう一方の手は再び、なつきの手を握る。
なつきはあたしの胸に顔を埋めて、つぶやく。
「奈穂ちゃん……、帰らないで。ずっと家にいて」
「うふふ、それもいいかもね……。でも、あたしはなつきを連れて帰りたいな」
なつきの髪を撫でながら、あたしは複雑な幸せを感じていた。
とっても満たされているような、もっと満たされたいような。
なつきに気付かれないよう、そっと髪にキスする。
なつきの髪は、シャンプーと日なたの匂いがする。
まったく眠れたものじゃない。
きっと明日の朝、あたしは目の下にクマを作っていることだろう。
叔母さんになんて言おうか。
.
↑以上です
28-30の続きです、三部作の真ん中ですね
『from〇〇』とあるのは、当時SSのプロットになりそうなネタを
「妄想」と称して投下してくれていた方のレス番号です
今は、そのスレも様変わりしていてその方の行方もわかりませんが……
ヒントを下さった方へのリスペクトとして、このタイトルは残しておこうと思っています
()づきのタイトルの方は、有志の方がwikiにまとめてくださった時に
付けていただいた仮タイトルです
これも気に入っているので、ありがたく使わせていただきました
wikiの方、ありがとうございます
自分はネーミングセンス無いので、ホントに有り難いです……
この話は本当に好きだ
百合要素と直接関係ないようなところの文もすごく良く雰囲気を作ってる
>>17-23の続きみたいなのを投下します。
正直、
>>41さんの高クオリティなSSの後だと気が引けるけど、まあ賑やかしだと思って読んでくれれば幸いです。
では行きます。
44 :
1/10:2010/05/16(日) 21:39:59 ID:jARZfJPp
私と妹の日常 その2
せっかくの日曜日ともなれば、やっぱり一日は何もせずにゴロゴロしたい。お茶飲んで
ソファに寝そべりながら積んであった本やマンガ読んだり、録画するだけして見てないド
ラマ見たりしたい。それなのに、私にそんな自由は認められないらしい。
『姉さん』
ほら。鬼が来た。
「なーにぃ〜 今忙しーんだけど」
無気力さ満載の返事をすると、我が妹は、両手を腰に当て、仁王立ちで私を上から呆れ
たような顔で見据える。
『ソファで寝転がっているだけで忙しいと言うなら、世の中の人は過労でみんな死んでし
まいます』
「……休養もね。社会人としては大事な義務なの。分かる?」
『午前中いっぱい、たっぷりと休養したじゃないですか。そこまでだらけると、却って明
日からの仕事に支障が出ると思いますけど』
理屈ごねようとしたが、にべも無く突っ撥ねられた。しかも無表情で。相変わらず冷た
いな。我が妹は。
「そーでもないと思うけどなぁ…… 世の中のサラリーマンの大半は、お休み中ゴロゴロ
してると思うんだけど……」
『思うのは勝手ですが、それを都合よく真実にはしないで下さい。確かに姉さんのお仲間
みたいにだらしない人もいると思いますけど、ああやって家族サービスに勤しんでいるお
父さんもいっぱいいるんですよ。ほら』
敬花がテレビを指すと、ちょうど情報番組でどっかのテーマパークが移っていた。何で
も今日から新しいアトラクションが出来るとか。画面に映った30代くらいの男の人が、並
ぶ為に朝4時起きで来たとか何とか。というか、都合良くそういうの映すなテレビ。
「……人は人。私は私。うにゅぅ〜……」
クッションを枕にして寝そべり目を閉じると、敬花は強引にクッションを取り上げる。
髪の毛が引っ張り上げられるのとほぼ同時に私の頭がソファに直接落っこちる。
『さっきまで世の中の人と比較してたのに、真逆のこと言わないで下さいっ!! どんだ
け自分に都合よく出来てるんですか姉さんの人生はっ!!』
「……酷いことすんなぁ。敬花は」
仕方なく体を起こすと、ソファの上で片足を胡坐のように広げて折り曲げ、もう片方は
立てた姿勢で座ると乱れた髪を手で梳いてそのままボリボリと頭を掻く。すると敬花が小
さく悲鳴を上げた。
45 :
2/10:2010/05/16(日) 21:40:41 ID:jARZfJPp
「あん?」
顔を上げると、何故か敬花は体はこっちに向けていたものの、顔を背けている。
「どーかした?」
『どうかしたじゃありませんっ!! なんて格好してるんですか姉さんはっ!!』
怒り興奮して敬花が叫ぶ。私は自分の格好をチェックして顔を上げる。
「普通の部屋着だけど。これが何か?」
『服装の事じゃありませんっ!! 格好って……姿勢の事です!! その……そんな風に
股を広げてっ!! 恥じらいとかないんですか姉さんはっ!!』
何気に無意識に取ったポーズだったが、どうやら敬花的には色っぽく見えるらしい。私
はちょっと悪戯っぽくニンマリと笑うと、立てた脚のショートパンツの内側の裾を僅かに
上げて付け根ギリギリまで素足を露出させた。
「敬花なら見てもいいよ。ほら」
『見たくありませんそんなものっ!!』
そう言いつつ私の方をチラ見した敬花はまた慌てて顔を逸らした。顔、真っ赤にしてる
んだろうか? ちょっと真正面から見つめてあげたい誘惑に駆られる。
「ちぇっ。せっかく敬花の為にセクシーポーズ取ってあげたのに」
立てた脚を寝かせて胡坐を掻く。足首に手を乗せ、肩を竦めた姿勢で顔を上げて口を尖らせた。
『そんなもの要りませんっ!! だだっ……大体ですねっ……その……人の前で下着が見
えるようなポーズ取らないで下さいっ!! いくら姉妹だからって、その……限度がありますっ!!』
「妹に見せなかったら誰に見せればいいのよ?」
率直に疑問を提示すると、敬花は耳まで赤くなって怒鳴り返した。
『誰にも見せなくていいんですっ!!』
「それじゃあつまんない。ほら。こっち見て」
『絶対嫌ですっ!! 姉さんが姿勢良く座るまでは見ませんっ!!』
隠しても照れているところが丸分かりなのが、敬花の可愛い所なんだよなと、一人納得
して頷くと、仕方なくちゃんと座り直す。
「はい。もういいよ、照れ屋さん」
すると、敬花はまだ赤い顔のままでギッ、と激しくこっちを睨み付けた。それからツカ
ツカと傍まで来ると、上から私の顔に顔を近付けて怒鳴った。
『誰も照れてなんていませんっ!!』
すると、私の顔にピピピッと液体が掛かるのが感じられた。
46 :
3/10:2010/05/16(日) 21:41:22 ID:jARZfJPp
「うー…… 敬花。唾飛んだわよ」
もっとも私はそんなに気にしないので、手でちょちょいと拭う。すると敬花がまた顔を
顰めて怒る。
『そんな指でなんて拭かないで下さいっ!! 汚いんですから!!』
それから慌てたようにティッシュ箱を手に取ると私に差し出す。しかし私はわざとティッ
シュを取らずに敬花をジッと見つめただけだった。
『……何なんですか。早くこれで拭いて下さい』
それから、私の表情をジッと窺うように見つめた後で、眉間に皺を寄せて聞いて来た。
『まさか姉さん。私に拭けと訴えているんじゃないでしょうね?』
「さすが我が妹。以心伝心、バッチリだね」
嬉しそうな声で言うと、あからさまに敬花はため息を吐いた。
『ハァ…… 幼稚園児ですか、姉さんは』
そう言いつつも、敬花はティッシュを二枚取ると手で構えた。
『で、どこなんです?』
「こことここ。あとここも」
ほっぺに二箇所。おでこに一箇所。指し示した所をティッシュで強く、しかし優しく擦
りながら敬花がぶつくさと文句を言った。
『もう……何で私がこんな事を…… そもそも悪いのは姉さんなんですよ』
「そうかな?」
『そうです。姿勢もですけど、大体その服装もですよ。ほとんどパジャマと変わらないじゃ
ないですか。人前に出る格好じゃありません』
そんな敬花の格好は、白のタンクトップにジーンズだ。どうせ一日家にいるだけなのに。
私は、上のパーカーをちょっと摘んで小首を傾げてみせる。
「そうお? 可愛いでしょ? このデザイン」
すると敬花は手を止め、ちょっと恥ずかしそうに顔を背けた。
『可愛くてもダメです。大体、そんな太もも露わなパンツ、大胆過ぎです。お父さんだっ
ているんですし、他所から人が来たらどうするつもりなんですかっ……』
「別にいいけどな。これくらい。別に太ももなんて、海でも行けばバッチリ男の人に見せ
るもんじゃん」
『うっ……海と家は別です。水着だとイヤらしく見えなくても、部屋着だとそう見えるこ
ともあるんですからっ……』
47 :
4/10:2010/05/16(日) 21:42:44 ID:jARZfJPp
敬花の言葉が若干詰まる。その隙を逃さず、私は攻勢に打って出る事にした。
「ほほう。つまり、敬花には、今の私がエッチっぽく見えると。そういう事?」
すると敬花はちょっと顔を背ける。
『エッチっぽいって言うか…… 男の人にも見られかねない格好としてはしたないって言
う事ですっ……』
「つまり、お姉ちゃんの太ももは私だけが独占したいから、他の人には見せないでくれと」
その瞬間、パアッと花を散らしたように敬花の顔全体が真っ赤に染まる。
『誰が……誰が姉さんの太ももをっ……その……どくっ……どくっ……独占したいとかっ!!
バカな事言わないで下さいっ!!!!』
また目の前で怒鳴られた。今度はさすがに両手でガードしつつ、敬花に注意する。
「敬花。唾、唾」
『あぅっ…… す、すいません……』
慌ててまたティッシュを取り、私の顔を拭い始める。
『でも、今のだってその……姉さんが悪いんですからねっ…… 何で私が姉さんの太もも
なんかに…… 変な事言わないで下さいっ……』
ぶつくさ言ってはいるけど、やっぱり顔は赤い。実にからかい甲斐のある妹だ。
『はい。これでいいですよねっ』
「うん。綺麗になったよ」
小さく吐息を吐くと、敬花は立ち上がってティッシュをゴミ箱に捨てた。その背中に、
私はまた、さっきの脚を片方立てた姿勢に戻し、膝の上に手を置いてさらにその上に顎を
置くと、じっと妹を眺めつつ、聞いた。
「んで……何の用事なの?」
『え?』
咄嗟に振り向く敬花に、私は言葉を継ぎ足す。
「私の貴重なだらだら時間に声掛けて来るって事は、何かして欲しい事があるんじゃない
の? 敬花がそういう文句を言う時って、大体用事言いつける時じゃん」
ちなみにそれは、我が母上も一緒だ。私は父親似で、休みといえばゴロリンだらんとし
ているのが大好きなのだが。
『そうでした。姉さんのあまりのだらしなさに、話が脇道に逸れてしまいましたが』
すると敬花は、ポケットに手を突っ込むと、ごそごそと一枚の紙切れを出す。
48 :
5/10:2010/05/16(日) 21:43:39 ID:jARZfJPp
『はい』
「何これ……げっ!?」
怪訝に思いつつ、差し出された紙を受け取り広げる。そしてそこに書いてある内容を見
た途端、私は思わず呻いてしまった。
『何がげっ、ですか。姉さん。そういう言葉は女性としてどうかと思いますけど』
「いーのよ。敬花以外の誰に聞かれる訳でもないし。ていうか、別に普段から遠慮とか全
くしてないけど。それよりこれって……買い物のリストじゃない?」
ぺらん、と紙を裏返して敬花に指し示すと、無表情で頷いた。
『そうですよ』
「これ……あたしに行けって事?」
そう聞くと、全く同じように敬花は頷く。
『そうですよ』
「えーっ!! めんどくさい〜っ!!」
ソファの背もたれに体を預けると、私は天を仰ぐ。うちの母は基本週末にまとめ買いを
して、後は足りないものだけ補充するタイプだ。つまり、日曜の買い物はそれだけ量が多
い。4人家族の一週間の食生活とその他生活雑貨の類は、見るまでも無くその買い物の大変
さを窺わせた。
「ていうか、敬花。体よく私に回してるけど、ホントはアンタが頼まれたんでしょ? ア
ンタが行って来なさいよ〜っ」
しかし、敬花の答えはあっさりしたものだった。
『お母さんは私と姉さんのどっちでも構わないと言ってました。一応言っておきますけど
ね。姉さん。今朝から私がどれだけ働いたか分かりますか? 朝昼のご飯の支度に洗濯も
して。姉さんはお昼にちょこっとお皿を並べたりするのを手伝っただけでしたよね』
非常に冷静に自分の功績と私のだらしなさを並べ立てる敬花に、私は両手を上げて降参
の態度を示す。
「あー、あー、分かったわよ。私も何か一つくらいは手伝えって、そういう事でしょ?」
すると敬花は頷くと、まっすぐに私の目を見据えた。
『丸一日、無駄にゴロゴロとして人生を浪費しているだけの姉さんに、せめて我が家の約
に立つ事をして貰おうという、私からの最大限の配慮ですから。むしろ感謝して貰いたい
ものです』
49 :
6/10:2010/05/16(日) 21:44:21 ID:jARZfJPp
「あー、そう。そうね。そんな配慮なんて要らないっての……」
ぶつくさ文句を言いながら、困りつつもどうにもならない時の癖で後頭部をガリガリ掻
く。すると、すぐさま頭の上から冷たい声が返ってきた。
『私の配慮なんて要らないと、そう言うんですか姉さん。じゃあ、今後一切、朝起こすの
も、ついでとはいえ姉さん分の朝食を作るのも、あとせめて姉さんの部屋に溜まったゴミ
を片付けて出すのも、全部要らないんですね』
もう一度、私は後頭部を掻く。こうやって並べられると、いかに私が妹に依存して生き
ているのが分かる。一人暮らしとかしたら、速攻でゴミ屋敷になっちゃうだろうなー、と
か考えた。私は諦めのため息を吐く。
「分かったわよ。行って来ればいいんでしょ? 父さん、どこ?」
まだ、めんどくさいなーと思いつつも、嫌な事はとっとと済まそうと立ち上がる。する
と敬花は、怪訝そうな顔で聞き返してきた。
『……パソコン部屋にいると思いますけど。それがどうかしましたか? 姉さん』
「車、貸して貰えるようにお願いしとかないと。勝手に乗ってったら怒られるじゃないやっぱり」
すると敬花はいきなり、私の前にスッと立ちはだかった。
『車使うなんて、ダメに決まってるじゃないですか。ただでさえ姉さんは運転が下手くそ
なんですから。一人で出かけたら、事故を起こすに決まってます』
「大丈夫だって。一応これでも、仕事でも社用車運転してんだから。だーいじょうぶ大丈夫」
ちなみに私は、車を運転するとどうしてもせっかちになり、ついつい飛ばしてしまう癖
があるため、社内ではかっ飛びクイーンなんていうあんまり有難くない呼び名を貰ったり
している。一度、敬花も隣に乗せたけど、完全に硬直しちゃって、その後は二度と乗りた
くないとか言ってたな。
『その大丈夫、という根拠のない過信が一番事故に繋がるんです。会社でも大きな事故は
起こしていないそうですが、細々としたトラブルはしょっちゅうだそうじゃないですか』
ハァーッ、と私は深いため息を吐いた。誰だ全く。妹にとんでもない適当な事吹き込ん
だ同僚は。明日、見つけ次第とっちめてやる。
「でも、これだけの量よ。車無いと、行きはいいけど、帰りは大変よ?」
そう抗議したが、敬花は全く全然、聞く耳を持たなかった。
『努力するのは姉さんですから、私は関係ありません。そもそも、会社に入ってからずっ
と、運動不足で最近太り気味なんでしょう? 体を動かすいい機会じゃありませんか』
50 :
7/10:2010/05/16(日) 21:45:04 ID:jARZfJPp
「何でそれを!? こればっかりは誰にも秘密にしてたのにっ!!」
驚いて聞き返すと、敬花は何故かちょっと恥ずかしそうな顔で視線を逸らす。
『ね、姉さんはその……隠してるつもりでも、自分の部屋で騒ぐから……だからその、隣
の私の部屋には筒抜けなんですっ!! 本当に隠しておきたかったら、声に出さないか、
せめてもう少し小さな声にして下さいっ!!』
そんな大きな声出してたっけな、と私は自問自答する。それにしても、聞こえたくらい
で何故そんな態度を取るのだ。我が妹は。
「自重する。けど、歩きはやだなー。せめて自転車使っちゃダメ?」
そう提案するも、即座に拒否された。
『ダメ、ダメです。大体姉さんは自分の自転車持ってないじゃないですか。大学生の時壊
れちゃって、もう使わないからって捨てちゃったでしょう?』
「敬花のがあるじゃない。あれ、貸してよ。電動アシスト付きだし」
『絶対嫌です』
敬花の頑なな心をどうやって解きほぐそうか。それを考えて私は止めた。どう考えても、
敬花を説得するより歩いた方が早い。私はげんなりとため息を吐いた。
「ハアーッ…… 分かったわよ。全く、敬花ってば、ケチなんだから」
ちょっと悪態を吐くと、速攻でお返しが来た。
『ケチとか人聞きの悪い事言わないで下さいっ!! 大体、姉さんはだらしがなくてぐう
たらなんですから、少しでも苦労した方がいいんですっ!!』
偉い言われようだなーと思いつつも、姉妹喧嘩をする気にもなれない私は、降参したと
ばかりに両手を上げる。
「はいはい。分かったわよ。じゃ、まあ夕方にでも行って来ますかね」
車使えないとなると、ちょっと暑いしな。そう思って私は時計を見る。まだお昼過ぎた
ばかりだし、もうちょっとゴロゴロしててもいいかな、なんて思っていると、また敬花が怒鳴る。
『何で姉さんは面倒くさい事をいつもそうやって後回し後回しにするんですかっ!! 絶
対にダメです!! 今すぐ出かけて下さいっ!!』
「えーっ!! 今すぐぅ?」
うっかり不満を漏らすと、敬花の口が、壊れたラジオのように喚きたて始める。
『当たり前ですっ!! 大体姉さんがそう言って後回しにする時って大体グズグズして時
間に間に合わなくなるじゃないですかっ!! もしかしたら、車で行かないと夕飯の支度
に間に合わない時間まで粘る気じゃないでしょうね? そんな事絶対に絶対に許しませんから』
51 :
8/10:2010/05/16(日) 21:45:45 ID:jARZfJPp
げんなりしつつ、私は敬花を両手でまあまあと抑え付ける。ちなみにこの場にお母さん
がいたら、ラジオがステレオになるから始末に悪いのだ。
「分かった分かった。ちゃんと行くから、黙って」
『最初っから素直にそういえばいいんです。姉さんのせいで、私の方が無駄な体力使っちゃった
じゃないですか』
無駄だと思うなら、最初っからお説教なんかしなきゃいいのに。とは、口が裂けても言
えない。言ったらまた敬花が怒りまくるに決まってる。
「ほんじゃ、行って来ますかね」
さすがの私でも、この格好で外に出る訳にも行かないので、着替えるために部屋に戻ろ
うとする。まあ買い物だし、デニムとブラウスでいっかとか、化粧どうしようかなー、すっ
ぴんじゃダメかなーとか考えていると、後ろから声が掛かる。
『姉さん。たかが買い物だからってメイクとかサボろうとしちゃダメですよ。人前に出る
んですから、ちゃんとそれなりの格好して下さいね。出掛けに私がちゃんとチェックしますから』
「うげ」
思わず気持ちが言葉に出ると、棘のある言葉がザクザクと突き刺さってくる。
『ほら。今、面倒くさいとか思ったでしょう。これだから姉さんはダメなんです。もう少
し女の子だっていう自覚を持って行動してください。姉さんがだらしないと、近所の人に
見られた時に私が恥ずかしい想いをするんですからね』
『はいはい。ちゃんとやります。やります』
正直、メイクはあんま得意じゃないんだけどな。大学の時からぼちぼちやり始めたけど、
こればっかりはなかなか思うようになってくれなくて、敬花に手直しされた事もしょっちゅ
うだったりする。
――今度、真剣に敬花に習おう。うん。前に一度強引に教えられた時は乗り気じゃなかっ
たから身に付かなかったけど、多分その方が今後は楽だわ。
ただ、その時に言われるであろう暴言の数々を覚悟しなくちゃ行けないだろうけどな。
そんな事を考えつつ、私は出かける準備に取り掛かるのだった。
52 :
9/10:2010/05/16(日) 21:46:26 ID:jARZfJPp
「ま、こんなもんよね」
薄手の化粧に、デニムに黒のふんわりしたチュニックを被り、ブレスレットを付けると、
財布だけ持って私は部屋を出た。一応、オシャレっぽく見せてるし、仮に敬花に見つかっ
ても大丈夫だろう。もっとも、うるさく言われたら敵わないから、チェック入る前に黙っ
てこっそり出掛けようかな、とも思ったのだが、やはりそれは甘かった。
『ちゃんと支度はしましたか? 姉さん』
玄関先で声が掛かり、私は思わず肩をビクッと震わせてしまう。それが敬花に見咎められた。
『何を驚いているんですか? こっそり出掛けようとか、まさかそんな事を考えていた訳
じゃないでしょうね?』
「べ、別にそんな事考えてた訳じゃないわよ。ちゃんと声は掛けるつもりだった……」
振り向きつつ、言い訳していた私の声が、敬花を見て途切れた。すると敬花が不思議そ
うにこっちを見た。
『どうかしましたか? 姉さん』
「どうかしたかじゃないわよ。何、アンタ。その格好。どっか出掛けるつもりなの?」
ミニスカートに膝を覆うニーソックス。タンクトップに薄いカーディガンを重ね合わせ、
バッチリお化粧もしている。どう見てもよそ行き姿だ。私の問い掛けに、平静を装ってい
た妹の頬が、パッと赤くなった。視線を逸らし、小声でブツブツと呟く。
『……姉さん一人じゃ……その……信用出来ませんから……』
「は?」
聞き返すと、敬花は急に私の方を向くと、怒ったように睨み付ける。
『ですからっ!! その……姉さんを監視する為に、付いて行くんですっ!!』
「要するに、一緒に行きたいわけか」
一言でまとめると、敬花の頬の赤みが増し、一気に顔全体に広がった。
『ちちち……違いますっ!! 私は別に姉さんと買い物に行きたい訳じゃ……ただその、
姉さんが余計な寄り道してお金使ったり、書かれた物と別な物を買ってきたりとか、買い
忘れとかあったりしたらいけないから……』
口ではそう言うものの、格好はどう見ても気合入ってるし、表情だって誤魔化しきれて
ない。思わず可愛くなって、私は敬花の頭を撫でた。
「分かった分かった。それじゃ、久し振りに敬花とデートしましょうかね。時間はたっぷ
りあるから、途中美味しいスイーツも食べてさ」
53 :
10/10:2010/05/16(日) 21:47:20 ID:jARZfJPp
『ちちち、違いますっ!! 何でその……ししし、姉妹でデートなんですかっ!! ば、
馬鹿げてますっ!!』
「じゃあ、買い物だけにする? そしたら、一時間くらいで終わっちゃうけど」
ちょっと意地悪な質問をすると、敬花は見るからに慌てた。
『いっ……いえその……ていうか、姉さんのせいで私まで貴重な休日の時間を使ってしま
うんですから、お茶くらいご馳走してくれたって、その……バ、バチは当たらないかと……』
思わず、ギュッてしてあげたくなるくらいの可愛らしさだったけど、それは我慢して、
私はニッコリと笑顔を見せると、言った。
「そういう時はね、敬花。お姉ちゃん。嬉しい。ありがとうって言えばいいのよ」
すると敬花は、恥ずかしそうに俯き、小声でブツブツと答えた。
『……なっ……何でそんな事……言える訳ないじゃないですか。バカですか……姉さんは……』
やれやれ。どこまでも素直じゃないんだから。そう思いつつ、敬花の手を取ると、敬花
は一瞬ビクッと手を動かしたものの、拒否は示さなかった。
「それじゃ、行こうか?」
『……は、はい。姉さん……』
大人しく頷く妹の手を引いて、私は玄関から外へ出た。澄み渡る空が眩しい。
――こういうのもいいわよね。うん。
横目でチラリと、大人しく歩く妹を見ながら、私は思った。
こうして私たちは、姉妹での休日デートをたっぷりと満喫したのだった。
終わりです。
我ながら長いw
読んでくれた方、お疲れ様です。
乙でーす!
妹ちゃんかわいいなぁ
名前の読みは、「きょうか」ちゃんでいいのかな?
姉妹にしては丁寧すぎる?言葉づかいと、お節介すぎる「生活指導」が不思議。
この二人はどういういきさつでこうなったんだろう? とか、いろいろ興味深いっす
また投下して下さいね!
世はにわかに天体観測ブームだ。こないだの皆既日食の影響だろう。
昨日もなつきが言ってたっけ。
「宿題で、日食の仕組みを調べるのと、星座の観測をしなきゃなんないの」
一昨日から、なつきはあたしの家に泊まりに来ている。しかも学校の宿題持参で。
「ふーん。まぁ百科事典を丸写しすればいいから楽勝でしょー」
「ダメだよ! 自分で見てみたいの」
なつきは変なところで真面目だ。
「えぇ? 庭からじゃあんまり見えないよー?」
「だったら見えるところまで行こうよ。奈穂ちゃん、一緒に行こうよ」
「あたしも行くのー?」
思い浮かんだのは近くの山だった。ここからだと自転車で30分はかかる。
子供のころ行ったきりで、最近は存在すら忘れていた。
郊外の街なので、ちょっと市街地を外れれば緑はまだたくさんある。といっても、なつきの地元にはかなわないけれど。
「なつき、自分ちのほうが星見えるじゃん。その宿題、家に帰ってからやったら?」
「ダメなの! ここでやんなきゃダメなの!」
なんでダメなのかよく分からないまま、いつになく頑固ななつきに、あたしは根負けしてしまった。
そして結局、今夜二人でその山に行くはめになった。
.
山と言っても神社のある小高い丘といった感じで、10分もあれば登れるようなところだ。
すぐに頂上の神社まで着いて、適当な草むらを見つけた。
アウトドアに慣れているなつきは、草むらに寝そべって空を見上げる。夜露が服につこうがお構いなしだ。
全身に虫よけスプレー&携帯式虫よけ音発生器装備で、対策は万全。
あたしもなつきの横に腰を下ろす。
見上げると、意外にも星空が近く見えた。
正直、こんなに見えるとは思ってなかった。
夏の夜の外出は、なんだか特別な感じがする。
わけもなく楽しくなってきて、あたしは昔聞きかじった適当な星の話を思い出しながら話していた。
なつきは口数少なく聞いていた。不安に思って、
「どうしたの、お腹でも痛いの?」
と聞くと急になつきが口を開く。
「あの、あのね、こうやって、夜に、星を見たいって言ったのはね、
宿題だからっていうのもそうだけど、ホントは、本当はね、二人でこうして……」
あたしにぴったりくっついて 、なつきが話し始めたその刹那、
「あ、流れ星!」
夜空に一筋の光線がさっと走って消える。
「うわーラッキーだねー!」
はしゃぎまくってるあたしの横で、なつきは呆気にとられていた。
.
「あ、話途中だったね。なんだっけ?」
思い出してなつきの顔を見つめると、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてそっぽをむく。
「……?」
あたしは数秒ぽかんとしたが、急に合点がいった。
「あぁ、さてはあれか。流れ星に願い事がうまく言えなかったとかそういうことか。
なんだかんだ言って子供だなーまったく」
にやにや笑いながら冷やかすと、
「ち、違うよ! もういいもん! 奈穂ちゃんなんて……」
なつきはまだそっぽを向いたままだ。
「でも大丈夫だって。あたしが二人分お願いしといたから」
「……?」
なつきがちらっと振り向いた。
そこをとらえて、あたしはなつきを抱き寄せた。
「『また二人でこうやって星を見られますように』って」
それは、あたしの本心だ。
なつきといつまでも一緒にいたい。
ほんとうは、なつきが言おうとしたことも分かってた。
照れ隠しに、流れ星を見たことにしてしまったのだ。
流れ星の代わりに、あたしは今夜の夜空に願いをかける。
なつきを背中から包み込む。
なつきは耳まで真っ赤になって、
「勝手に願い事決めないでよ。もう……」
なんてぶつぶつ言っている。
それでも、あたしの腕からは抜け出ようとせず、ぴったり寄り添うようにして、星座をノートに記録していた。
.
なつきはあたしのこぐ自転車の後ろで、背中にしっかりしがみついている。
「ね、さっき本当はなんて言おうとしたの?」
「……知らない。願い事は秘密にしてないと叶わないもん」
なつきは嬉しそうに言う。
そうして、ますますぴったりと背中に密着する。
あたしは来年の夏のことを想像した。
美大に受かることはほぼあきらめているから、きっと美術予備校生になっていることだろう。
一年間、受験のために絵を描く生活。
なつきは中学一年生。部活も始まる。
あたしと反対に運動が得意ななつきは、間違いなく運動部だ。夏休みは練習漬けになることだろう。
お互いが、今までより離れてしまうかもしれない。
二人の夏休みは、今しかないのだ。
.
「あ、流れ星!」
突然、なつきが大きな声を出した。
あたしは自転車を止めて夜空を見上げた。
ひとつ、またひとつ。夜空に光の線がシュッと走る。
――ああ、これが天気予報で言っていた「〜〜流星群」というやつなんだ。
あたしの横で、なつきは一生懸命夜空を見上げている。
両手を、胸の前で組んで。
そんななつきの横顔を見ているうち、たまらなくなって、あたしはなつきの頬にキスした。
するとなつきは、すかさずあたしの首に腕を回して、唇にキスを返してきた。
――! ……この、生意気な。ファーストキスを奪いやがって。
でも、大好きな人にファーストキスをあげることができた、あたしは幸せ者だ。
そのままいつまでも見つめあっていたかったけど、やっぱり照れてしまう。
代わりに抱きしめて頭を撫でた。
「さ、帰ろ」
なつきを後ろに乗せて、あたしは再び自転車をこぎだした。
あとから本当になった流れ星。
あの願いが、本当に叶うといいなと思う。
願い事は、秘密にしていないと叶わない。
なつきのことが、本当に大好き。
あたしのこの気持ちは、なつきには秘密にしておきたい。
夜の国道を走りながら、あたしはなんだか楽しいようなさみしいような、何とも言えない気持ちになっていた。
.
↑以上、これで三部作はおしまいです
季節的にはちょい早かったかもww (当時はリアルタイムでした >夏休み、流星群etc)
>>43さんの続きも待ってますよ〜♪
夏が待ち遠しくなるような素敵SSだよGJ!!!
いや。最後キスで締めるのはキュンと来た
GJ!!
age
65 :
創る名無しに見る名無し:2010/07/24(土) 03:11:11 ID:0bkjdgih
つづき期待age
66 :
創る名無しに見る名無し:
専用板でやれ