mugenバトルロワイアル

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549代理投下 そうだ、京都へ行こう ◇.LMglw2/zs:2010/04/05(月) 14:31:50 ID:ON+QSQMP
島国日本において、唯一地平線が確認できる北の大地、北海道。
初めて北海道を訪れた日本人の観光客にとって、その雄大さから受けるカルチャーショックは計り知れない物がある。
『北海道はでっかいどー』なんてシャレが出来るのも当然と言える。

だが、ドイツ生まれのヴォルフガング・クラウザーにとっては地平線などありふれたものは興味の対象にすらならない。
唯々、己の体のみで地平線の先を目指し歩き続けるだけである。
目指す方角は西。理由は単純、支給品の中にあった白地図でここが日本の何処かであることが判明した為である。
日本は海外ではFar East、極東と呼ばれているので、ならば西に向かえばどうにかなるだろうというシンプルな考えからなのだ。
市街地を通り過ぎる際に見かけた道路標識に富良野や夕張や札幌などと書かれていても、ドイツ人の彼では現在地を把握出来なかった。
そして――

「ふむ、船か」

クラウザーが到着したのは札幌の西隣、小樽。その港には一隻の船が係留されていた。
その船は現代的な船舶ではなく木造の帆船であり、帆には一文字三つ星の紋所が印されている。
この家紋だけでは日本史に詳しい人しか理解は出来ないだろうが、この船がMUGENにおいて
どの様な場面で登場するのかを説明するのに実に解り易い言葉がある。それは、

オーモーイーガー

……察しの良い方はお気づきだろう。

曰く戦国陸上最強、
曰くトキよりも理不尽な性能を誇るキャラ、
曰くダイヤグラムは全キャラに対して7:3以上をつける、
曰く彼を選ぶことは(試合をさっさと終わらせて)飯食いに行こうぜの合図。

戦国BASARAX最強の男である毛利元就。その彼の軍船、通称『オクラ号』が瀬戸内海から遥か遠く、北の日本海に浮かんでいた。
550代理投下 そうだ、京都へ行こう ◇.LMglw2/zs:2010/04/05(月) 14:33:00 ID:ON+QSQMP
尤も、彼の戦闘能力から言って一撃必殺技が使用可能になるよりも早く、
相手のライフが尽きてしまうことがかなりあるのでこの船を見かけることは余り無い。
その辺は同じ理不尽キャラ満載の北斗の拳ならトキよりもレイに近いのかもしれない。

クラウザーにとって、この船がどういう物なのかは知りもしないし、どうしてここに有るかは気にも留めない。
彼にとって肝心なのは、オクラ号が接岸している岸壁に掲げてある一枚の看板。
それは『フェリー乗り場』と書かれた文字と、行き先を図で説明している看板だった。

「なるほど……この船はどうやらキョウトの近くに向かうのか」

日本の都市の中で、海外にその名前と場所が知れ渡っている都市は決して多くはない。
一番は首都である東京。次点が大阪や京都と言ったところだろう。そしてこの船は京都府舞鶴付近が目的地のようだ。
クラウザーも流石に東京や大阪、京都の位置は知っている。特に大阪の場所を彼が知らない筈はない。SNK的に考えて。

「キョウトと言えば、ジャパンでも有数の名所が数多くあると聞く。そのような場所こそ、私が戦う舞台に相応しい」

クラウザーには戦いにおける一つの信条がある。
彼にとって自身の戦いは芸術であり、自身の完璧な勝利は勿論の事ながら対戦相手も一流に拘るのだ。
そうでなければ己の戦いが一流に昇華されず、芸術には成り得ないのだ。
そんな彼が古都・京都での戦闘を望んだとしても何の不思議もない。

「それにもしあの男がこの場に呼ばれているなら、キョウトを目指してもおかしくは無いしな……」

クラウザーが思い浮かべる男。決して何時までも京都を探し続けている某キワミではない。
それは彼の異母兄弟であり、因縁の相手であるギース・ハワード。
彼らが子供の頃にはクラウザーがギースに対して圧勝した事もあったが、現在ではお互いに警戒するべき存在となっている。
そのギース、若い頃に日本に滞在し自らの戦闘スタイルである古武術を学んだ事もあり、日本文化に造詣が深い。
どの程度かと問われれば、彼のステージには甲冑や仏像が数多く並んでいたり、
「 覇我亜怒 」や「 大悪党 」等の指し物や提灯が有るくらい。
極めつけはテーマ曲のタイトルが「ギースにしょうゆ」。
これほどの日本被れであるギースが京都を目指さないはずが無いというのがクラウザーの考えである。


残念ながらギース・ハワードはこの場に呼ばれていないのだが。
551代理投下 そうだ、京都へ行こう ◇.LMglw2/zs:2010/04/05(月) 14:35:03 ID:ON+QSQMP
どういう仕組みか、クラウザーが乗船するとオクラ号は自動的に進み出した。
どう見ても帆が風を受けて進んでいるようには見えないが、そこは戦国のGUNKANなのでよくある事なのだろう。
大海原の遥か先、水平線を眺めつつ、クラウザーは京都で待ち受けている戦闘に心を踊らせ一時の休息を取る。
京都で彼を待っているものは何であるのか、それを知る者は誰もいない。


【北海道小樽港/海上/1日目/黎明】

【ヴォルフガング・クラウザー@餓狼伝説シリーズ】
[状態]:軽い疲労
[服装]:甲冑とマント
[装備]:同上
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品x1
[思考]
 1:参加者全員及び次元意志と戦う
[備考]
 ライン移動あり。


※オクラ号について
オクラ号は北海道小樽〜京都府舞鶴間を移動します。ぶっちゃけ桃○郎電○と航路は同じです。
無人で移動することは有りません。船上で戦闘することが出来る程度の大きさはあります。
あくまで『乗り物』であり、『のりもの』ではないので武器も積んでいません。



以上です。タイトルは「そうだ、京都へ行こう」で。
552創る名無しに見る名無し:2010/04/05(月) 21:54:06 ID:zO2rMcuL
投下乙!
きいたああああああ!
SHIKIの極死返しは是非ともやって欲しかったから燃えた
熱苦しいし馬鹿だけど最後までカッコよかった
そしてサウザー無双は流石世紀末!
押されたら弱いのも流石世紀末w
一気に4人も殺したのに地味さが抜けない強マーダーなはずのヨハンも流石通行人!
MUGEN臭溢れる面白い話でしたw
553創る名無しに見る名無し:2010/04/05(月) 23:42:41 ID:NDQ12ipT
一度に四人も殺すとはたいした奴だ・・・
554創る名無しに見る名無し:2010/04/06(火) 01:13:26 ID:8lxwx358
それでいてこの面白さだもんなあ
まじ大した奴だぜw
555創る名無しに見る名無し:2010/04/06(火) 13:07:37 ID:BA/9ItgJ
投下乙です!

みょメガがどんどん可愛くなってきてしまった・・・SHIKIめw
通行人さん4人殺しても薄いなあw
こんなにバンバン死んでも許されるのはまさにMUGENだからか・・・


そしてGUNKANすげえええw

ナカノティーアールエフ・・・きっとお師さんにぬくもりを求めたら「甘えてんじゃねえよ」とサウザーは悲しみを背負ったんだろうな
556創る名無しに見る名無し:2010/04/07(水) 00:55:05 ID:YWnCPCeb
みんな乙!
四人も死んだか。まぁ、バトロワはじゃんじゃん殺していかないと終わらないしね
>某キワミ
あの人はいつになったら京都に行くんだろう・・・
>あくまで『乗り物』であり、『のりもの』ではないので武器も積んでいません。
逆説的に『のりもの』は武器を積んでいる、という風に読めるけど、武器を持った奴が相手ならh
557代理:2010/04/07(水) 20:25:12 ID:wQHACdVh
305 :豪と響け鬼の舞 ◆Y9kguUm6vs:2010/04 /05(月) 23:21:48 ID:V.M7w3jo0
「ジェネラル、フェルナンデス、ルガールにゲーニッツに織田信長にDIO……有名人が勢揃いだな」
「いや、チートすぎるのがちらほらいるじゃないですか、ジョインジョインとか、尖兵さんとか、ありえん(笑)とか、私正直言って勝てる気しませんよ?」

 この殺し合いに呼び寄せられた参加者のファイル、そこに書かれたそうそうたる面子(ヨハンさんとか、印象の薄い人もいたけど)に、改めて私は言葉を失った。
 70人、全員が全員実力者だ。その中には私より遥かに強い人もいる。つまり、あの次元意思という人はその70人を傷一つつけず、そして傷一つつけられずに、この殺し合いに拉致できる力を持っているのだ。

「……私達、あの主催に勝てるんですか?」

 今更ながら、とんでもない存在を相手にしているのだと、私は気付いてしまった。殺し合いになんか乗りたくない、そりゃあ、その気持ちは今でも変わらないわよ。それでも、敵はあまりにも強大過ぎるんじゃないかしらとも思ってしまう。
 私だって格闘家だ、そんじょそこらの一般ピーポォウどもに負ける気は更々ないし、ここにいるほとんどの参加者とはいい勝負を演じられる自信もある。だけど、逆に言えばいい勝負を演じられないのが何人かいると言う訳だ。
 さっきの美ケツにだって私は敵わない。尖兵? 論外に決まってるじゃない。開幕十割で 玉 砕 ! されちゃうに決まっている。

「俺達だけじゃあ無理だな、だが仲間を集めれば……」
「集まった皆よりも強い人が乗っていたらどうするんですか」

 尖兵やゲーニッツが殺し合いに乗っていなければ心強い、だけど、仮に乗っていれば? 私は勝てる気がしない。
 士さんだってあの美ケツに苦戦するレベルだ。正直、狂クラスから上に立ち向かえるとは思えない。
 っていうか弱点の項目まであるのはいいけど、地味とか童貞とかばっかりで戦いに役立つ様な弱点の情報が殆どないってどういう事だ。
 おまけに士さんの項には「無数の世界を渡り歩き、全てを破壊する悪魔の仮面ライダー」、だなんて、士さんを知らない人が見たら確実に誤解する様な内容だ。当の士さんは「案外鳴滝の奴でも絡んでいるのかもな」とこともなげに受け流していたが、やはり腹は立つ。

「それに、仮に仲間が集まっても首輪はどうするんですか、この中に何人外せる人がいるかわからないんですよ」

私達を縛る首輪、今ここに呼ばれた人間で、機械に明るい人は少ない。
その人達がいなくなったらその時点でゲームオーバー、私達にできる事はなくなってしまう。
 何より、主催者は私達が簡単に解除できる様な首輪を準備するだろうか? 少なくとも私なら絶対にしない。
558創る名無しに見る名無し:2010/04/07(水) 20:25:54 ID:wQHACdVh
「だからって、諦める理由にはならない。少なくとも、俺にとってはな」

 思わず、息を呑んだ。士さんだって馬鹿ではない。ここにいる参加者がどれだけチートなのかも、今さっき身を持ってわかった筈だ。
 だというのに、その言い草、その表情からは自棄になった感じは一切窺えない。本気で士さんはそんな無謀な真似をしようとしているのだ。

「どうして、そう簡単に言い切れるんですか?」

 気付けば思った事を口に出していた。
 変身道具が無ければまともにも戦えず、その変身をしても、それでやっとまともに戦える様なレベルであるのに、どうして、迷い無く、そう言ってのけられるのか。
 私の言葉を受けて、士さんは不敵に笑った

「当然だ、俺は仮面ライダーで世界の破壊者だからな」

 誇り高く、胸を張ってそう言う士さんが、私には少し羨ましく思えた。

「こんなふざけたバトルロワイアルの世界なんて、俺が破壊してやる。それに、あいつらがここにいたら同じ事をするだろう。
なんでも、『人類の自由と平和の為』、そして『命ある限り』戦うのが仮面ライダーらしいしな」

 あいつら、それはきっと士さん以外の仮面ライダーの事なんだろう。うっかり幼女を爆殺させてしまうと評判の1号と2号さんの他にもmugenには何人か仮面ライダーの人がいる。
 面識はないけど、皆が皆、誰かの笑顔を守る為や誰かの夢を守る為に戦っていたらしい。
 不意に、師匠を思い出した。見た目は怖くても、皆の為にヨガを駆使して戦い抜く、人格者の師匠。
 あの師匠の事だ、こんな場所に連れてこられたら、きっと誰かを救う為に、どんなに強い相手にでも立ち向かって行くに決まっている。
 改めて、私は師匠には及ばないな、と思う。私はあまりにも大きな壁を前にして折れかけてしまった。きっと、師匠や師匠の友人ならこんな壁を前にしても、躊躇わずに登って行くのだろう。士さんの様に。
 だったら、師匠の弟子である私も、無様な姿を見せる訳にはいかない。
 息を大きく吸い、肺に目一杯空気を溜め込む。

「ん? おい、どうし「よ ぉ し っ ! !」」

 あまりにの無理ゲーっぷりに弱気になっていた。もしかしたらこのファイルって私達みたいな対主催の心を折る為にあったのかもしれない。
 少なくとも、普通の人ならここにいる面子を見ただけで戦う事を放棄したくなる様なのがゴロゴロいるし。自棄になってもおかしくない。
 現に私はそうなりかけていた。
 それでも、私はあの師匠の弟子だ、それにカンフーマンもいる。一人無様な姿は見せられない。
 人類の自由と平和の為とか、そんな大それた物は背負えないけど、師匠に教わった心構えとか、えとか、そういった物なら背負っていける。
 やる前から諦めてた私自身に喝をいれる。たしかに私ではチートなやつらに太刀打ちはできない。でも、太刀打ちできないなら太刀打ちできないなりに何かが出来る筈だ。
 幸か不幸かここは私達がいつも戦っているMUGEN以上に何でもありな空間なんだ。某現人神風に言わせてもらえば常識に囚われてはいけないという事である。
559創る名無しに見る名無し:2010/04/07(水) 20:26:46 ID:wQHACdVh
「士さん! 私、もう頑張っちゃいますよ! 相手が狂だろうが、凶だろうが、神だろうが、絶対に諦めたり「馬鹿! 近くに乗っている奴がいるかもしれないのに大声を出すんじゃねえ!」……あ゛」

 や、やっちまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
 まずい、これはまずい。尖兵あたりが聞きつけてここに来られたら開幕二十割で、どこぞの忍者じゃないけどシシヨってしまう。
 いや、でも今しがた美ケツとあったばかりなんだし、そうそう乗ってる奴が来る訳が……。

ざり

 え、何、この音。何かすぐ後ろから足音みたいなのが聞こえ……。

「手負いの小娘、もう一人は本郷達と似たベルトを付けた小僧か。まあいい、早速死合おうぞ」

 私が振り向くと。そこには社長さんとガチでやりあえる鬼がいました。
 これはもう駄目かもわからん。

「いきなりとは穏やかじゃないな。あの次元意思とやらに踊らされててもいいのか?」

 殺意の波動全開、息苦しくなる様なプレッシャーの中でも、士さんは物怖じしないで、豪鬼に話しかけている。

「我は死合えればそれでよい、ここにいるものを全て屠り、最後はあの次元意思とやらも滅するのみよ」

 まるで石像の様に表情一つ動かさず、仏頂面で豪鬼がさも当然の様に答える。うん、この人はこういう人だ。もう、案の定すぎて言葉もでない。
 その答えを聞いた士さんが溜め息を一つつきながら、その手にカードを一枚掴んだ。おそらく戦うつもりなんだ。よし、なら私も……。
560創る名無しに見る名無し:2010/04/07(水) 20:27:52 ID:wQHACdVh
「何馬鹿な事言ってるんですか士さん! 私も一緒に……」
「手負いのお前に勝たせてくれる程、あいつは優しいのか?」
「うぐ」

 痛い所を突いてくる、本調子で無い上に、まだ受けた傷が痛む私では、豪鬼にはとてもじゃないが対抗する事はできない。
 士さんと組んで動くにしても、あの化け物相手に一撃を叩き込めるかも難しいレベルだ。

「だ、だからって、士さんを置いて行く訳には」
「今のお前じゃ足手まといだ。それに、さっきみたいに策はある。…それに、あいつなら手負いの相手を狙う様な真似はしない。そうだろ? 豪鬼」
「無論。我が望むは強者との死合いよ。次元意思を滅するにはいずれ屠らねばならずとも、うぬが死合うというのであれば見逃さぬ道理はない」

 変身の体勢に入った士さんに応える様に、身に纏った殺意の波動を色濃くする豪鬼。今の私には立ち入れそうにない。
 それでも、私にだって何か出来る筈なんだ。ここで逃げたらさっきの決意はなんだったのよ。
 無力な自分への悔しさに私は拳を握りしめる事くらいしかできない。

「……何も、戦う事が全てじゃない。今一番大事な事は信用できそうな奴に、そのファイルを渡して、協力する事だ」

 こちらを見ないで士さんが呟く。その言葉に、ハッとした。
 自分自身で思ったじゃないか、太刀打ちできないのなら太刀打ちできないなりに何か出来る筈だと。
 なら、今がその時だ。士さんを置いて行くのは心苦しい、でも、今の私はそうしなければいけない、それが今の私にできるベスト。

「また、約束守ってくださいよ?」
「当然だ」

 士さんが笑顔を浮かべながら頷くと同時に、私は二人分の荷物を手に駆け出す

――カメンライド、ディケェイド!!――
――カメンライド、響鬼ィ!!――

 続けざまに鳴り響く電子音。
 きっと、士さんなら約束を守ってくれる。そう信じ、私は工場を後にする。目指すは、北。

【高知県/一日目 深夜】

 【カンフーガール@MUGEN】
 [状態]:左肩重症、肉体疲労大
 [服装]:胴着?
 [装備]:支給品一式×2
 [道具]:ネタバレファイル@MUGENロワ
 [思考]
  1:北に向かい、仲間を集める。そして士さんとの合流
  2:自分なりに殺し合いに反逆
  3: ファイルの信憑性にちょっとした疑問
 [備考]
  ※ライドブッカーは士に譲渡しました。
  ※首輪の制限、機能を知りました。
  ※すべての参加者の情報を得ました。
561創る名無しに見る名無し:2010/04/07(水) 20:29:05 ID:wQHACdVh
「響く鬼か」
「ああ、鬼の相手には持ってこいだろ? その禍々しい気も、俺の音撃で清めてやるぜ」
「笑止!!」

――アタックライド、音撃棒、烈火ァ!!――

 殺意の波動を纏う豪波動と、音撃棒から繰り出される業火がぶつかり合い、相殺する。
 だが、豪鬼はそれを確認するよりも早く、すり抜ける様な移動で響鬼へと急接近する。だが、それは豪鬼の技の一つとして紹介されていたファイルを読んだ士の想定の範疇内。

「悪いがその行動は想定済みだ!!」
「ぬぅ!!」

――アタックライド、鬼火ィ!!――

 豪鬼が近づくよりも速く、ベルトにカードを滑り込ませた響鬼の口から放たれた高熱火炎を諸に受けた豪鬼は、直ぐさま飛び退る。
 豪鬼に炎が燃え移るが、それは彼の身から発せられる殺意の波動により吹き飛ばされる。
 再度、豪鬼が駆ける、響鬼がすかさず音撃棒から火炎弾を放つが、豪鬼はそれを、殺意の波動を纏った手刀でなぎ払い、構わず前進する。
 鬼火も同様にいなされる、そう察した響鬼は鬼の爪を生やした拳で豪鬼を迎え撃つ。
 鋭く尖った爪と波動を纏った拳が激突する。生身の拳で鬼の爪と打ち合っているというのに、豪鬼の拳に傷一つついていない。
 痺れる様な振動を腕に感じながらも、響鬼はもう片方の拳を抜き放つ。

「甘いわ!」

 だが、その拳は豪鬼のブロッキングにより弾かれ、致命的な隙を晒してしまう。刹那、豪鬼は響鬼の懐へと潜り込む。

「滅殺!!」
562創る名無しに見る名無し:2010/04/07(水) 20:30:21 ID:wQHACdVh
 波動を纏った拳が勢い良く撃ち上がり、拳圧と波動は響鬼の胸を焼き、拳が響鬼の顎を捉える。
 その姿は、さながら邪龍が空へ昇るが如く。

「豪昇龍!」

 打ち上げられた響鬼はなす術も無く地に落ち、響鬼からディケイドへと戻り、もがき苦しむ。
 焼ける様な痛みに胸を焼かれ、また、顎への打撃から軽い脳震盪を起こしたせいで上手く立ち上がれない。
 豪鬼渾身の一撃を受けてこの程度で済んでいるのは鬼の耐久力があったからであろう。もしも、生身でこの一撃を受けていたならば、今頃士の顎は完全に粉砕され、胸を裂かれて生きてはいなかっただろう。

「ごっ、がはっ……!」
「どうした、この程度でうぬは終わるのか? 我のしる仮面ライダー達とやらはこの程度で終わる事は無かったぞ?」
「俺が終わる? まさか、この程度で終わる訳……、ないだろっ!」
 倒れたディケイドを見下ろす豪鬼を見上げ、よろよろと立ち上がりながら、ディケイドは2枚のカードを続けざまに読み込ませる。

――カメンライド、響鬼ィ!!――
――フォームライド、響鬼・紅!!――

 再び響鬼へと姿を変えたディケイド、そしてその響鬼の体が炎に包まれ、紫色をしていたその体が紅に染まる。
 炎を纏った音撃棒を片手に響鬼が駆けるその音撃棒を振るう。
 勢い良く振り下ろされた音撃棒を豪鬼は両腕で受ける。刹那、太鼓の音と共に、纏った殺意の波動が吹き飛ばされる。
563創る名無しに見る名無し:2010/04/07(水) 20:31:15 ID:wQHACdVh
「何!?」
「言っただろう! 俺の音撃で清めてやるってな!」

 殺意の波動が吹き飛ばされた事による動揺と、それによる一瞬の力の減退により、豪鬼は一瞬の間無防備になる。

――アタックライド、音撃打、灼熱真紅の型ァ!!――

 そこを逃さず、響鬼は続けざまに音撃棒を振るう。一打を受けるごとに豪鬼の纏う殺意の波動が吹き飛ばされて行く。
 響鬼・紅の特製、それは魔を清める音撃鼓無しに音撃が放てる事。その一打一打が、人を取り込む魔の力といっても差し障りの無い殺意の波動を打ち払って行く。
 必殺音撃、音撃打、灼熱真紅の型が、豪鬼に炸裂する。

「ぬ、ぐ、おおおおおおおおおおお!?」
「こいつで、どうだぁっ!!」

 響鬼渾身の一撃が豪鬼を吹き飛ばす。転がりながら工場の外へと飛ばされた豪鬼を士は追う。
 工場の外、倒れた豪鬼はぴくりともせず、その身に纏っていた殺意の波動は感じられない。
 ひとまずは何とかなった士さんは安堵の溜め息と共に膝をつく。

「清めてやったし、これでもう悪さはできないだろ。さて、早くあいつと合流しないと……」

 そう言って振り向き、士は変身を解こうとする。
 その背を悪寒が襲った。

「…… 何?」
「よもや、殺意の波動を打ち消す事ができるとは思わんかったわ」

 振り向くと、そこにいたのはゆらりと立ち上がる豪鬼、その身に纏うのは今しがた掻き消した筈の殺意の波動。

「馬鹿な!? 殺意の波動はさっきの音撃で清めた筈だ!」
「笑止、その程度で消える程、我が纏う殺意の波動は脆くはない」

 打ち払ったと思っていた殺意の波動の復活、今度は士が驚く番であった。
 そして、先程とは逆に、今度は士がその隙を突かれる形となった。
 音もなく、瞬時に近づかれた響鬼はなす術もな、豪鬼に捕まる。そして。
564創る名無しに見る名無し:2010/04/07(水) 20:32:27 ID:wQHACdVh








           一          瞬



           千          撃
565創る名無しに見る名無し:2010/04/07(水) 20:34:11 ID:wQHACdVh
 何が起こったのか理解するよりも早く、士の全身を衝撃と激痛が襲った。
 瞬獄殺を受け、仰向けに倒れる士の姿は、既にライダーではなく、人間の物。許容量を遥かに越えるダメージを受け、変身が一気に解けてしまったのだ。

「が……、ぐ……」
「まだ、意識があったか。流石はあの男達の仲間なだけはある」

 満身創痍の士の前に豪鬼が立ち拳を握る。
 振り下ろさんとするはトドメの一撃。これでこの死合いに幕が降りる。
 無慈悲に、豪鬼が拳を振りあげる。

「さらばだ小僧。あの世で待っていろ」
「勝……手に、殺す……んじゃ……、ねぇ!!」

 拳が完全に振り下ろされるよりも速く、ベルトにカードが挿入された。

――カメンライド、ディケェイド!!――

 機械音声と共に、赤く四角形をした七枚の板が豪鬼を吹き飛ばし、その板が変身したディケイドの顔へと装着され、バーコードを思わせる奇怪な顔へと変わる。
 そのまま、ディケイドは立て続けに2枚のカードを挿入する。

――カメンライド、電王!!――
―― フォームライド、アックスフォーム!!――

 電子音、そして電車の音と共に、ディケイドがその姿を三たび変える。
 更に、赤い配色のソードフォームから、黄色い配色の、どこか騎士を連想させる格好をしたアックスフォームへと変身を遂げる。
566創る名無しに見る名無し:2010/04/07(水) 20:35:09 ID:wQHACdVh

「今度は電王とやらか、うぬは一体何者だ」
「さっき……も、別の奴に言……ったん……だが、まあ、いい」

 豪鬼の問いに、息も絶え絶えながら士が答える。
 次で決める。互いが互いに次に動くべく構える。

「通り、すがり……の、仮面、ライダー…… だ。覚えて、おけ!」

 その言葉を合図に豪鬼と士が駆け出す。
 豪鬼の放つ拳を電王はすんでの所で掴む。すかさず豪鬼は次の一撃を叩き込むべく行動を移そうとするがそれよりも速く電王に投げ飛ばされ、地面に叩き付けられる。
 うっかりとベンチを壊す様な膂力で叩き付けられた豪鬼が、バウンドして浮かび上がる。すかさず、電王はベルトにカードを差し込む。

――アタックライド、ツッパリ!!――

 放たれる無数の突張りが豪鬼を捉え弾き飛ばす、それでもまだ、士の攻勢は止まらない。

――フォームライド、ソードフォーム!!――
―― アタックライド、俺の必殺技ァ!!――

 ソードフォームへと姿を変えた電王の剣、デンガッシャーの刃の部分が分離し豪鬼を捉えながら工場の壁を破り、豪鬼ごと奥へと突き進み、見えなくなった。
567創る名無しに見る名無し:2010/04/07(水) 20:35:58 ID:wQHACdVh
「さて、やっと、これの出番か」

 電王からディケイドへと戻った士は一枚のカードを取り出した。

――……ライド、……ビジ……!!――

 電王への変身が解除されデンガッシャーの刃は消滅するも、そのまま慣性の法則で吹き飛ばされ、もんどりうって転がった豪鬼は、工場の外から聞こえた電子音により、何が来てもいい様に警戒し身構える。
 だが、来ると思われた攻撃も、士自身も来る気配がない。
 まさか。駆け出し工場に出るも、周囲には誰もいない。
 跳躍し、工場の屋根の上から周囲を見回す。それでも、それらしき人影は発見できない。わずか数十秒の時間であったというのに、士は跡形も無く消え失せてしまった。

「……逃したか」

 屋根から飛び降り、それだけを呟くと豪鬼は工場を後にする。逃した事は腹立たしいが、生きていれば、いずれまた出会う。決着はその時にでもつければいい。
 その体には心地の良い痛みと、打ち払われた殺意の波動を急激に呼び起こした事による激しい疲労が支配している。それでも豪鬼は止まらない。
 次なる死合いを求め、豪鬼は歩き出す。士と同行していた手負いのカンフーガールの姿を見て、豪鬼はこの近辺に殺し合いに乗っている人物がいると考える。
 相手にとって不足はないだろう。闘気を充満させながら、豪鬼は一歩踏み出した。

【高知県/街/1日目 深夜】
【豪鬼@ストリートファイターシリーズ】
[状態]:全身に打撲、疲労(大)
[装備]:無し
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:強者と死合う
2:小僧(士)といずれ決着をつける
3:いずれは次元意思と死合う。
568創る名無しに見る名無し:2010/04/07(水) 20:37:33 ID:wQHACdVh
「行った、か」

 豪鬼が去った工場、その入り口から突然ディケイドが姿を現した。
 種明かしをするならば答えは簡単。彼の挿入したカードは『インビジブル』、自身の姿を掻き消す、多用するとお子様から呆れの溜め息が出、大きな友達からはへたれ扱いされるカードだ。
 それ使い、自身の姿を隠して、ディケイドは豪鬼をやり過ごしたのだった。

「さて、今度こそ……あいつに合流しな、い、と……」

 一歩踏み出そうとして、士の体が前のめりに、崩れるようにして倒れる。
 t単位の威力の攻防を行なうライダーの頑強さ故か、全身に無数の痣が出来上がっている物の骨折は見当たらない。
 だとしてもそれは骨折を免れただけで、その体に蓄積したダメージはいつ気絶しておかしくないレベルであった。

(まずい、せめて……身を隠さないと……)

 地べたを転がり、這いずる様に移動しながらも、士はなんとか工場の中へと入り込み、隅に隠れた所で、完全にその意識は闇に包まれた。

【高知県/工場/一日目 深夜】

 【門矢士@仮面ライダーディケイド】
 [状態]:全身強打、気絶
 [服装]:私服
 [装備]:なし
 [道具]:ディケイドライバー@仮面ライダーディケイド、ライドブッカー@仮面ライダーディケイド、二眼レフのトイカメラ@仮面ライダーディケイド
 [思考]
  1:気絶中
  2:アーカードの実力に不信感(本気を出していなかったと考えています。
  
  3:カンフーガールの信頼回復(信頼されていないと思っています。
  4:カンフーガールとの合流。仲間の捜索
 [備考]
  ※ライドブッカーを譲渡されました。
  ※首輪の制限、機能を知りました。
  ※すべての参加者の情報を得ました。
569創る名無しに見る名無し:2010/04/07(水) 20:38:37 ID:wQHACdVh
代理投下終了
570創る名無しに見る名無し:2010/04/08(木) 21:07:31 ID:jz5ZHI2G
ジョニー、高嶺響の代理投下します
571飛翔◇JQwUHiE1ZY 代理:2010/04/08(木) 21:09:39 ID:jz5ZHI2G

海岸線の砂浜を踏みしめる二足の足跡。
黒衣の男ジョニー。彼にに付いていくと決めた響。

「まずはこの島からの移動を考えないといけないですね」

二人の現在地は言うまでもなく縮小日本の最南端沖縄。
更には無数の無人島が散らばるその一角が彼らのスタート地点だった。
響の最もな問いに口笛を吹くように返事が返ってくる。

「なあに、そいつに関しては心配しなさんな。
 俺の支給品は運がよくてね。とっておきをお見せしよう」

半歩先を歩いていたジョニーが自信満々で嘯く。

「ところで響、お前さんの支給品は何だったんだい?」

「えっ、ああそうですね。まだ確認していませんでした」

殺し合いをしろ。その言葉に悩む中でジョニーと出会い、切り結んだ事。
今まで支給品すら確認する余裕がなかったのか、
その事に軽い溜息をつくも、すぐに気を取り直し
デイバックに入っている物を取り出してみる。

それは古風な一振りの剣だった。

刀身を守る鞘がなく。柄頭に碧玉を埋め込む以外装飾の少ない
柄から刀身が一体化した切先諸刃の直刀。
手にしたそれから何か神々しい力を感じるのは気のせいだろうか。

「ほぉう。こいつはまた見事なもんだ」

「これは古刀の一種みたいですけれど。
 私たちが扱うには少し不向きですね」

「確かに。それでも相当の業物に違いないだろう」

響と同様の感想を口にするジョニー。
屈指の腕を持つ二人の居合い使いである彼らは
抜身の刃を扱えない、という訳ではないが。
その刃はやはり、二人の戦闘スタイルにそぐわないのだろう。
572飛翔◇JQwUHiE1ZY 代理:2010/04/08(木) 21:11:36 ID:jz5ZHI2G
その時。
『あー、あの狭っ苦しいところからやっと出られたわ。
 ん、外の空気はやっぱりおいしいわね』

不意に。二人の傍で声が聞こえ。
「今の声は、お前さんじゃないよな?」
「ええ、私じゃありません」
怪訝な表情を見合わせる二人。
『ちょっと、このわたしの麗しい美声を
 聞いておいてその顔はひどいんじゃない』
なおも響く出所不明の声にジョニーが顔を顰める。
「できればその。姿を現してもらえないかい。
 それとも、この美声のお嬢さんは恥ずかしがりやなのかな」
『おっけー、少し待ってなさいよね』

声が止み。響が手にしている直刀から真っ白な光が溢れ。

「これは!?」

乳白色の光がひと際大きく輝き。それが姿を変え人の容を取る。

現れたる者は、年の頃は十八歳か十九歳位だろうか。
黒曜の輝きを湛えた瞳。瞳同様に肩口から腰まで流れる黒髪。
和風とも古風とも取れぬ独特の衣装を纏い、悠然とその姿を現す。

「なっ…」

「こいつは…」

不可解な出来事や怪事に慣れている二人だが、
剣が人に変わった、その事実に驚きを隠せない。

すると。

「うんうん。見惚れちゃったのもわかるわ。
 いきなりこんな美少女が目の前に出てきたら
 言葉を失っちゃうよね。胸がドキドキだよね」

「えっ、いや…」

目の前の少女の態度に言葉を失う響。
ジョニーは開いた口を辛うじて塞ぐ。

「なあに、人の顔をじろじろと見て。
 あ、やっぱりあまりの美少女っぷりに心奪われた?
 あー、美しいって罪だね…」

「えっと…」

「うむぅ…」

返答に困る二人。その様子にお構いなしで口を開く謎の美少女。
「でもまだお互いのことをよく知らないからね。
 こういうのは順を追っていかなきゃ。
 積極的なのも、そりゃ悪くないとは思うけど」
573飛翔◇JQwUHiE1ZY 代理:2010/04/08(木) 21:13:25 ID:jz5ZHI2G

軽い。軽すぎる。ジョニー好みの美女なのは確かなのだが。
そのあまりの残念っぷりについ言葉が詰まる。
二人の様子に謎の美少女はぷぅ、っと頬を膨らませ。

「ちょっとはこっちの話に答えてよ。つまんない」

ジョニーの胸を人差し指で突っつく。

「いやはや、こいつは驚いた。ところで美しいお嬢さん。
 お名前を聞かせてもらえるかい?」

ふふん。やっとわたしの事を聞いてくれたわね。
とばかりに、万遍の笑みで胸を前に突き出しなが言う。

「あたしの名前はナルカナ。総ての神剣の頂点に立つ、
 永遠神剣第一位『叢雲』の化身。ナルカナ様よ」

えっへん。
そう名乗りながら。先程響が取り出した剣、
それが人の姿を取った存在が目の前のナルカナであり。
本人談曰く。高位の神剣でなければ人の形態を取る事は不可能らしい。

ナルカナはジョニーと響へ交互に向き直りその顔を見つめる。

「このあたしには到底及ばないけれど。
 あたたたちも、それなりの実力はあるみたいね」

でもこのわたしを使うにはまだまだね。などとナルカナは好き勝手に話す。
その様子に響はナルカナの存在を不思議というよりは、
残念なものを見てしまったと顔を伏せ。
ジョニーは笑顔を湛えながら黒い帽子を片手で跳ね上げると。
再びこの言葉を口にした。

「我が、ジェリーフィッシュ快賊団に入らないか?」

「んーそうねえ」

人差し指を唇に押し当てながら。少しだけ考える素振りをみせる。

「まあいいわよ、力貸してあげる。
 でも、わたしを扱っていいかどうかは別だからね」

軽く返事をするとその拳を握り。

「このナルカナ様を支給品扱いなんて舐めた真似した、
 腋臭野郎にもキツイお仕置きをしてあげないとね」

それに最近は平和すぎてちょっと退屈してたのよね、などと口走る。

「簡単に言いますけど。貴方、本当に大丈夫なんですか?」

ナルカナの軽い態度に戸惑いを隠せない響。

「ま、大丈夫だって。なにしろあなた達のパーティーに
 この最強の神剣である、あたしが仲間に加わるんだから」

変わらずに、あっけらかんとした口調で返す。
574飛翔◇JQwUHiE1ZY 代理:2010/04/08(木) 21:17:20 ID:jz5ZHI2G
「それじゃあお嬢さん方。立ち話も野暮ってもんだ。
 そろそろ俺の取っておきに案内しようじゃないか」

ジョニーが黒の外套をはためかせ、二人を誘い浜辺を遮る小高い丘を登る。

「ほおら、ようやく見えてきた」

丘を越えた対岸。水面に揺られながら、ソレは鎮座していた。

その全身を紅と白銀の装甲で包み、天高く張り巡らされた帆。
月明かりが照らすは飛行艇の白き翼。

両手を掲げ、ジョニーが静かにその名を叫ぶ。

「これが俺の。いや俺達三人の船、ジェリーフィッシュ号だ」

その巨体に感嘆の声をあげる響。
三人の足元で搭乗ハッチが開き。
歓迎の意を込めて、ジョニーは美女に二人に手を差し伸べた。

「これが、本当に船なんですか?」

悠然と佇むその巨体、響は驚きながらもジョニーに導かれ船内を歩む。

「へえ、なかなかいい感じの船じゃないの」

特に臆した様子のないナルカナ。

ジョニーの導きで内部甲板を通過、メイン艦橋に到着する三人。
それを合図、艦橋内部に光が灯り、自動管制制御システムが立ち上がる。

「さあて。ここからがジェリーフィッシュ怪賊団の新しい船出だ」

ジョニー率いる義賊集団、その帆船たるジェリーフィッシュ号。

南海の空、月の煌きが降り注ぐ光の中。

ハンサム一人、美女二人と共に。

彼らは今、無限の大空へ飛翔した──。
575飛翔◇JQwUHiE1ZY 代理:2010/04/08(木) 21:18:47 ID:jz5ZHI2G
【沖縄県 上空/ジェリーフィッシュ号艦橋/1日目/深夜】

【ジョニー@GGXXシリーズ】
 [状態]:健康
 [服装]:スタンダード
 [装備]:刀
 [道具]:基本支給品一式、ジェリーフィッシュ号@GGXXシリーズ
 [思考]
  1:響、ナルカナと共に行く。
  2:女は勧誘。
  3:メイや団員が居るなら探して合流する。
 [備考]
 ※ジェリーフィッシュ号とはGGジョニーステージに背景に見える飛行艇の事です。

【高嶺響@月華の剣士 第二幕】
 [状態]:健康、髪が解かれた
 [服装]:スタンダード
 [装備]:形見の刀
 [道具]:基本支給品一式、永遠神剣第一位「叢雲」(の化身ナルカナ様)
 [思考]
  1:とりあえずジョニーに付いていく。
  2:殺しに関して……?。

 [備考]
 ※ナルカナの「思考」
 1:とりあえずジョニーと響に付いていく。
 2:腋臭野郎をぶっ飛ばす。
 3:働きたくないでござる。

 ※人間形態を取れるのは30分。再度人間形態になるには4時間の休憩が必要。
  剣形態でも会話は可能です。

代理投下終了です
576創る名無しに見る名無し:2010/04/08(木) 21:52:13 ID:jz5ZHI2G
続けて紅美鈴代理投下します
577温もりの中で、誓う思い  ◇UcWYXJfnkk 代理:2010/04/08(木) 21:54:05 ID:jz5ZHI2G
「……うー気持ち悪い」

ネオンの光が溢れる街を一人の少女がとぼとぼと歩いていた。
うな垂れながら、当ても無く、ゆっくりと。
少女――紅美鈴は纏わりつく衣服が不快で仕方なかった。

「仕方ないとはいえ……」

そう呟き、また大きく溜息をつく。
気持ち悪さの原因は水に濡れた服のせいだ。
フェルナンデスから逃げる為とはいえ、盛大に水の中に飛び込んでしまった。
結果として、着ていた衣服はびしょ濡れ。
綺麗な真紅の長髪はあちこち跳ねてしまっている。
とはいえ、生き延びる為ならこれくらいはやすいものではあるはずだ。
なのに、こんなにも機嫌が悪くなってしまっている。

「さむ……」

不意に吹く夜風が、とても冷たい。
冷え切った美鈴の身体を更に冷やしていく。
心なしか、震え始めてきている気がする。
美鈴はその身体を両手で抑えながら、内心少し焦っていた。

「早く着替えなきゃ……」

このままだと風邪を引いてしまう。
それ以前に体調不良で万全に戦えないかもしれないのだ。
そんな最悪な事態だけは避けなければならない。
下らない自分のミスで命を落とす事、護れない事だけは絶対にしたくは無かったから。

「でも……」

この震えこそが、今生きている証。
あの暴君から生き延びた証でもある。
死んでも可笑しくなかった。
けど、今、美鈴は生きている。

その証は大切にしておこう。


生きているこの実感を、忘れる訳にはいかなかった。







◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
578温もりの中で、誓う思い  ◇UcWYXJfnkk 代理:2010/04/08(木) 21:56:38 ID:jz5ZHI2G
「ふう……」

暖かいお湯が、身体を伝って行く。
冷え切った身体を少しずつ温めていく。
沢山の雫が豊満の胸を伝って、落ちていった。

「…………ふぁ」

美鈴の表情が喜びに満ちていく。
あの後、何とかホテルを見つける事が出来た。
濡れた服は一通り洗い、そのまま乾かしている。
そして、暖を取る為に、今はシャワーを浴びていた。

雫が緩やかに流れ、股につたわっていく。
湯気が美鈴を覆い隠していった。

やはり、湯浴みは心地よい。
沈んでいた気持ちが浮き上がっていく感じがする。
凝り固まった思いを解していくような感じもした。

「うん……何時までも悩んでいられない」

雫が太腿をつたって落ちていった。
そして、また絶え間なく暖かい雫が美鈴に降り注ぐ。

また、先程と同じように顔見知りが襲ってくる事が有り得るかも知れない。
だけど、美鈴は不思議にその事で悩みなんて無かった。
迷っていたら、戦えないから。勝てないから。
護りたいものすら護れないから。

だから

「諦めずに……戦ってみせる」


此処に、誓う。
諦めずに、戦うと。

湯を浴びて、艶やかに輝く紅い長髪を揺らし、

拳を天に突き上げ。


美鈴は戦い抜く事を。
自分を貫く事を。

強く、誓った。


――――全裸で。

579温もりの中で、誓う思い  ◇UcWYXJfnkk 代理:2010/04/08(木) 23:00:23 ID:jz5ZHI2G
【岡山県/ホテル一室/一日目 黎明】
 
【紅美鈴@東方Project】
 [状態]:全身に軽度の打撲、
 [服装]:全裸
 [装備]:なし
 [道具]:基本支給品、ケン○ッキーのフライドチキン(残り4本)
 [思考]
  基本: 殺し合いには乗らず、首輪を解除して脱出する
  1: 戦い抜く。
  2:出会った参加者は警戒
  3:知り合いに出会っても、最初は警戒する…?

※いつもの服一式が乾されています。

代理投下終了です
580創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 13:54:07 ID:tx6nXLK2
カンフーマン、ドラクロ代理投下します
「…どうした?襲ってこないのか?」
 いきなり私の目の前に現れたドラクロに内心少し驚いたが冷静に会話を試みる。まずは相手の出方を伺うのだ。
「……。」
「そう言えば喋れないのだったな」
 そう。コイツはだだの機械だったのだ。感情が在るのかさえ不明。感情が読めないのなら出方を伺うなんて無駄なことだったか…。
 なら、
「始めるか」
 私はそういうとドラクロに向かって飛び掛ろうとする。が、ドラクロは待ったといったように手?を突き出す。
「…なんだ?いきなりギブアップか?」
 そう聞くとヤツはブンブンと凄まじい勢いで首を左右に振る。首が動くたびに機械が擦れる時に発するあの独特なキィ〜という嫌な音があたりに響く。…コイツ錆びてるんじゃなかろうか。
「――――。」
私が耳を押さえていると、こちらが止まったのに気づいたのか首を振るのをやめる。音攻撃が止んだので耳から手を離す。
 するとドラクロは少し考えた後、しゃがんで地面に何かを書き始める。このまま襲ってやっても良かったのだが相手はあのドラクロだ。 
 多分ここに連れて来られた者(物?)の中でもなかなかの実力者だろう。そんなヤツに比べて私はただのカンフーマン。相手が悪い。
 もちろんこちらには龍騎のカードデッキがある。だがせめて並キャラクラスの相手で龍騎がどれほどの力を有するのか確かめてからの方が良かった。
 目の前のロボットだかアンドロイドかは実力を試すでは済まないだろう。下手したら返り討ちに遭う可能性も有るのだ。
 私が思考に耽っているといつの間にか立ち上がっていたドラクロが地面に指?を刺す。そこにはギリギリ解読できるレベルな汚い字でこう書いてあった。

 ~こるしぬい いくない~

 この時なぜか私はヤツの顔が~図工などで何か分からない物を作り上げ得意げに見せつける子供の顔~に見えた。
※※※

 殺し合いは止めてという私の思いは伝わっただろうか?そもそも私は海外産なのだから日本語は得意ではない。
 なら自分の得意な英語などで書けばいいのだが彼はカンフーマン。その数はどれ程居るか…。
 もし彼がカンフーマンでは無く和訳カンフーマンで英語が通じなかったら?私はその可能性を拭い切れなかった。
 そこで私の頭は計算した結果日本語で伝えるのが一番だと出た。かつて私はある大会で彼が同じカンフーマン系のキャラと日本語で会話をしているのを見かけたことが有る。
 それならば日本語、それも平仮名なら通じるだろうと私は考えた。平仮名なら嘗て大会で会った幻想郷から来たという妖精に習ったことがある。あたいはさいきょ−だからなんでも知ってるよ!といって親切にも教えてくれた。
 その時に教わった通りに一字も間違えてないで書けたはずだ。ならば彼がどのカンフーマンでも通じたはず。
 完璧な作戦だ…。時々自分の頭が恐ろしくなる…。これで彼は殺し合いに乗らないはずだ。
※※※

 私は早くこの場から離れたかった。というよりドラクロから離れたかった。
 普段は寡黙キャラで通してるのにテンション上がって叫んだところを見られてるし、なんかもう殺しあったりする雰囲気では無いしドラクロの相手をしていると頭が痛くなる。
 コイツ絶対にアホの子だよ。龍騎とかバトロワワとかどうでも良くなってきた…。
 もういい。適当にウソでもついて誰か別の対戦相手を探そう。

「……どらくろ、きみのかんがえはよくわかった。わたしはどうかしていたようだ。ころしあいはぜったいにしないよ」
「――――!」

 物凄く棒読みだったがドラクロは目に見えて喜んでいた。やはり思ったとおりコイツはただのバカだ。……いいアイデアを思いついた。

「私はこれから仲間を集めて脱出しようと思うのだが、君も手伝ってくれるか?」
「!!!!!」

 ドラクロは首を何度も縦に振る。其の度に先ほどのキィ〜という音が辺りに響く。物凄く耳が痛い。これは立派な攻撃だ。
 しかし目に見えてテンションが上がってきてるなコイツ…。だがバカの付き合いもあと少しで終わる。
「で、では二手に分かれて仲間になりそうな人を探そう」
「……!?」

 ドラクロは急に動きを止めてこちらに目を向ける。話をちゃんと聞くくらいの知性はあったか…。

「私はこれから仲間集めに九州方面を行こうと思う。君は人の多い東京方面へ行ってくれ。君にしか出来ないことだ」
「………。」

 勿論仲間を探すなんて事はしない。私の目的はこの究極のトーナメントで優勝することなのだ。
 だがここにはドラクロ以上の狂レベル、もしくはあの場に現実が居たことを考えれば神や論外レベルのキャラが居るかもしれない。
 そしてそんな連中や単純バカが集まるとしたら東京などの大都市だろう。理由は人が沢山居るイメージが有るからだ。確かにここではなく実際日本の東京などは人が腐るほどいる。そういうイメージも手伝って多くのキャラが向かうはずだ…。
 そんな所に向かうなどわざわざ死にに行くようなものだ。だからヤツに向かわせる。無駄に強いだけのバカにはちょうどいい仕事ある。

「それとこれからもし私の様に乗っている人に出会ったら、まず説得などしないでくれ。辛いのは分かるが彼らが罪を犯す前に止めるんだ…。意味は判るな?」
「―――――――!!」
「驚くのも無理は無いが、君のためだ。約束してくれ」

 ドラクロは決意したようにコクンと首を縦に頷く。自分が利用されているとも知らないで…。素直な態度に多少罪悪感があるがこの際気にしない。ヤツには出来るだけ多くの優勝狙いのライバルを減らしてもらわなければな…。

「…最後にドラクロ、集合地点を決めよう。場所は…そうだな…、三回目の放送時に大阪で落ち合おう」
「……。」

 多分微塵も疑いをしていないだろう目で私を見つめる。上手く行き過ぎて噴出しそうになるが我慢する。
 三回目に集合といったのは適当だ。出来るだけ先の時間にすればそれだけヤツが死んでいる可能性が増えていると思ったに過ぎない。
「…では、無事を祈る!!」
「……!」

 わざとらしく手を振りながらこの場を去る。ドラクロには感謝しないとな。さっきまでの私はここに居る全員とでも戦うつもりだった。
 だがヤツの書いたメッセージ、~殺し合いは良くない~。いい忠告をもらった。つまりは今は動かずに居ること。
 下手に殺し合っていれば多くの人物と戦うことになる。
 この序盤で体力を使い切るわけにはいかないし、切り札の龍騎の実力はいまだ未知数だ。それに全員敵というわけではない。
 現にドラクロのようにいい駒になるヤツが居るかもしれないのだ。

「ヤツはもう居ないな」

 私はおよそ30分近くかけ辺りをうろうろし、ドラクロが居なくなったことを確認した後、住宅地に戻って着た。
 ドラクロとの約束を守るつもりは無い。第一ヤツはただの駒だし三回目の放送まで生き延びているのかどうかさえ分からないのだ。
 暫らくして適当に見つけた家に入る。ここに暫らく隠れていることにしよう。そこそこ弱そうなヤツが来たら龍騎のテストに使ってもいい。  
 どの道一回目の放送まではここに居るつもりだ。気長に待つとしよう。

 【愛知県/一軒家/一日目/深夜】
 【カンフーマン@MUGEN】
 [状態]:健康
 [服装]:胴着
 [装備]:無し
 [道具]:基本支給品一式、
 [思考]
  1:第一回放送までこの場で待機。
  2:並キャラレベルのキャラが一人で来たら龍騎のテストに使う。
  3:ドラクロのように利用できる駒を捜す。
※※※

 私は迷っている。
 彼はやはり殺し合いに乗ったままであった。私の思いは通じなかったのだ。
 彼は乗っている者達を殺せと言ってきた。私の思いは踏みにじられたのだ。
 だから私は彼に騙されるふりをした。彼に見つからないよう見張る為だ。
 彼が大げさに手を振りながら去っていく。
 彼の次の行動を計算した結果、ここに戻ってくるらしかったので隠れてここで彼を見張ることにした。
 彼は言った。罪を犯す前に止めろと。
 ならば彼がもし誰かを手にかけようとしたその時は……。果たして自分に出来るだろうか?
 私は迷っている。



 【愛知県/住宅地/一日目/深夜】
 【DragonClaw@MUGEN】
 [状態]:健康
 [装備]:無し
 [道具]:基本支給品一式 、ランダム支給品
 [思考]
  1:カンフーマンに見つからないように見張る。
  2:カンフーマンを止める。が自分に出来るか疑問。
  3:殺し合いには乗らない。次元意志を打倒する。
  4:殺し合いに乗っている者を止める。
 [備考]
  ※喋れません。ですが、同じ機械にならテレパシーを送れるかもしれません。

代理投下終了です
588創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 19:15:34 ID:9+iT1WdH
投下乙です

まさかドラクロに萌えてしまうとは・・・w頑張れドラクロ

つかタイトルおかしいだろww
589創る名無しに見る名無し:2010/04/10(土) 18:58:15 ID:FhyqKDQZ
ロワが動き出したな。
大体のスタンスをまとめると

・マーダー(強い奴と戦いたい奴も)
飛竜、ジェネラル、クラウザー、豪鬼、ヨハン、咲夜ブランドー
・仲間を利用して優勝狙い
カンフーマン、ユダ
・ロワなんてそんなの関係ねぇ

・対主催(?)
その他多く

こんな感じか。適当に挙げてみた。
まだ七夜のように迷っている参加者もいるが流石MUGEN。熱い参加者ばかりだなw
しかしこれ、首輪を解除出来そうな人間がいるのかな・・・
590創る名無しに見る名無し:2010/04/10(土) 19:51:36 ID:+3A95onw
>>589
煉がいるじゃないか
591創る名無しに見る名無し:2010/04/10(土) 22:07:17 ID:FzIcWp5t
ユェン・ソイレン代理投下します
592創る名無しに見る名無し:2010/04/10(土) 22:08:44 ID:FzIcWp5t
ユェンはクラウザーの相手を引き受けた雪姫と離れ繁華街の一角にある家電量販店に来ていた。
ここも例外なく照明は落とされており、外からは中の様子は伺えない。
玄関前に降り立ったユェンは周囲に人の気配がない事を確認すると僅かな逡巡を経て開かない自動ドアをGXマグナムで破壊してお辞儀をしながら店内に入っていった。
制服姿に戻り月明かりに広がる入り口でシンと静まり返る店内を一通り見回すが、覗くのは空間を埋め尽くす闇のみ。
このままでは探し物が困難と判断したユェンはおもむろに腰を落としデイパックの中身を確認しはじめる。
「…確かこの中に…」

ランダム支給品であるプレートの入った赤い帽子とUSBメモリの他に参加者共通の基本支給品というものがある。その中に照明器具があったのを思い出したのだ。

「…あった懐中電灯。これで」

問題なく点く事を確認したユェンはその唯一の光源を頼りに店内の探索をはじめる。
ここまでまさに泥棒そのものだがこの場所全体が舞台装置で参加者以外人がいないのを理解しているためそこまで良心の呵責は痛まなかった。
逆にそんな世界そのものを創るような大仰な事をやってのけた次元意思の力には改めて戦慄したが。
しかし打倒の鍵になるかもしれない物を今ユェンは持っていた。
そしてそれを守るためクラウザーの相手を引き受けた雪姫のためにもその鍵は必ず次に繋げなければいけない。
コツコツと自身の足音だけがこだまする店内で陳列された商品の一つ一つを慎重に確認していたユェンはやがて目的の物を見つけ足を止めた。
彼女の視線の先−−そこには様々な機種のパソコンが並んでいた。

「あった、けど…ここじゃまともに使えないよね」

パソコンの一つを開け電源を入れてみる。
起動音が鳴り、点くのは点いたが数秒すると電池切れを起こしてすぐに画面はブラックアウトしてしまった。
ためしに足元の壁コンセントにコードを差し込んで充電を試みるがこれも効果なし。

「…やっぱり、どこかで電源を供給できる施設を探さないとダメか……」
593創る名無しに見る名無し:2010/04/10(土) 22:10:30 ID:FzIcWp5t

マップは広くても機動力が売りの自分なら生きた施設の一つや二つを見つけるのはそう苦労しないとユェンは考える。
とわ言っても手元に既に重要な物が揃っているだけにやはり口惜しさは残った。

「…まさか、そんな施設もないって超難易度はないよね? ……う〜ん…って、こんなとこでもたもたしてる場合じゃないんだった!」

そこで大事な事を思い出したユェンはパソコンを素早くデイパックに入れ、床を蹴った。
その大事な事というのは当然だが雪姫の事だ。
緊迫した状況の中合流を誓い別れた彼女は適当に相手をした後逃げると言ったがやはり心配だった。
もちろん信じてないわけではなかったが無傷であの場を切り抜けたと思える程ユェンは楽観視していなかった。
あるいは傷付いた姿で今も自分を探して平原をさ迷よっているかもしれない。 そんな光景が脳裏を過ぎり駆ける足にさらに力が入った。
自身が破壊した玄関を抜け外に出た彼女は雷光に包まれ戦闘用スーツに換装すると再びブーストを吹かして夜の空を轟音と共に飛翔していった。





どこからか嫌な予感はあった。別れた場所が近付くたびにそれは膨らみでも杞憂であると頑なに思った。 そして現実は無情だった。

「……そ……ん…な…」

そこに辿り着いた時ユェンは愕然と呻いた。
彼女の目の前には風に曝された物言わぬ雪姫の骸が転がっていた。
彼女は雪姫は自ら望んで命をかけた事をユェンは知らない。
たとえそれを知っても彼女は自分を許せなかっただろうが。

「…嘘…だよね?」

目の前の事実が受け入れらず搾り出した声にしかし返事は返ってくるはずもなく、そのまま茫然自失と立ち尽くしていたユェンにやがて波のような罪悪感が押し寄せてきた。

「……私が…私があの時……」

一瞬に戦っていればこんな残酷な結果にはならなかったかもしれない。
あの時すぐに引き返していれば間に合ったかもしれない。
そんなifを考え更に自己嫌悪に苛まれる。
悔しくて悔しくてしかしもうどうにもならなくて次第に涙が込み上げてきた。 うなだれるように頭を下げふと何かに気付く。

「…え?」

足元でキョロキョロと動く小さな影。
その影と目が合ったかと思うと突然それが胸元に飛び越んでくる。
594創る名無しに見る名無し:2010/04/10(土) 22:11:40 ID:FzIcWp5t

「ッ!…リスギツネ?」

そのリスギツネは咄嗟に胸元に掲げた両の手の平の上でユェンに頭づきを繰り出してきた。
ライフゲージは減らなくともなぜかズキズキと胸が痛んだ。

「……あなたは…」

そのリスギツネは雪姫のペットのぺぺだった。
ぺぺはまるで何かを訴えるように頭づきを辞めようとしない。
結果的に見捨てるような形になってしまったこの不甲斐ない自分を責めているのかと最初は思ったが、どうやら違うようだった。

「…そっか、そうだよね……一番悔しいのはあなただよね…」

掛け替えのない主を失ったこの子の悲しさと悔しさを如何な程なのか。
考えても到底わかるものじゃなかった。
ただわかったのはしばらくこの場から動けそうにないという事だけだった。



【北海道/平原/1日目深夜】

【ユェン・ソイレン@オリジナル】
[状態]:疲労(小)精神的疲労(中)深い悲しみ
[服装]:戦闘時の格好
[装備]:必殺技で使う武器など一式
[道具]:基本支給品一式、プレート付きの赤い帽子、USBメモリ
[思考]
 基本:殺し合いを止めてゲームから脱出する
 1:……………
2:パソコンの電源を供給できる施設を探す
3:USBメモリの中身を調べる

代理投下終了です
これはせつないな…
595創る名無しに見る名無し:2010/04/10(土) 23:16:21 ID:n0i3YPz0
代理投下乙です!
ユェンはかわいい
596 ◆8CxJmLvFOI :2010/04/11(日) 11:37:36 ID:nz96WAPV
すいません、タイトルは
失ったものは−−
です。
代理投下ありがとうございました。
597創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 18:56:38 ID:/EW/Zxti
容量が残り少ないので新スレ立てました
最初のテンプレは少しいい加減なので不味い部分がありましたら変えてください

http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1271065838/
598創る名無しに見る名無し
保守