【無限桃花】創発発のキャラクター総合2【H・クリーシェ】

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1創る名無しに見る名無し
創発発のキャラクターで創作するスレです。
もちろん新たなキャラを創作するのもアリ。
ハルト閣下は専用スレがあるのでそちらでやったほうが喜ばれるます。
【魔王】ハルトシュラーで創作発表するスレ 2作目
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1241082450/


作品まとめ。
創作発表板@wiki - 創発発のキャラクター総合
http://www26.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/300.html

キャラまとめ
創作発表板 裏まとめwiki - キャラクター
http://www1.atwiki.jp/souhatsu_ggg/pages/35.html

過去スレ
【無限桃花】創発発のキャラクター総合【あんてな】
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1264928015/
2創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 02:27:01 ID:5ReZODvU
>>1
3創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 03:07:45 ID:eil92oro
これは>>1乙じゃなくてネズミの尻尾が云々
4創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 03:54:07 ID:eil92oro
5創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 05:50:47 ID:tVJM7UM8
>>1
乙。
6無限桃花〜Over the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/19(金) 05:58:21 ID:tVJM7UM8
では早速投下!
昨日は迂闊にも途中で途切れてしまったので改めて最初から。
7無限桃花〜Over the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/19(金) 05:59:52 ID:tVJM7UM8
「数が多過ぎるな。いくら何でもこりゃ大変だ」
「だから言ったんですよこのバカガラス!」

 黒丸と理子は寄生に囲まれている。無数の妖の寄生はいくら倒しても再現なく蘇る。
 天叢雲剣を持ってしても、「寄生」を消す事は出来ない。
 ただ薙ぎ払うのみ。寄生を切り裂けるのは寄生の力しか無いのだ。村正のような。

「先輩!どうするんですか!?弾もそんな無いですよぉ!?」

 理子は叫ぶ。携行したMP5に使用する特殊な9ミリ弾は無限には無い。ここに居る寄生程度ならば、その特性上一発で消す事が出来るが、なにしろ数が多い。
 圧倒的な数の力。それはただの人間である黒丸達には変えられない。
 黒丸は天叢雲剣を振るう。しかしそれでもなお寄生は押し寄せる。皆、捨て身なのだ。
 影糾にとって、彼方にとっては彼等はただの捨て駒に過ぎなかった。
 そもそも、たとえ黒丸を殺しても全滅しても、彼方にはどうでもいい事なのだ。

「先輩‥‥!ヤバイです」
「何がだ!?いいから撃て!!」
「撃つ弾がもう無いんですよ!!」
「何!?ウソだろ!!?」
「ウソ言う余裕無いです!持ってきたマガジン7個もう無いです!!」

 既に黒丸達は数十の寄生を消した。しかし、もう限界に近い。周りはいまだ無数の寄生だらけだ。
 その時‥‥‥‥‥
 突如、寄生の動きが鈍りはじめる。まるで魂が抜けたように。

「なんだ?どうしたんだ?」
「先輩‥‥。どうしましょう‥‥?」
「俺が知るか。まだ動くな」

 寄生は動かない。まるで時が停まったようにーーー


「何が起きている‥‥‥‥?桃花さん‥‥」
8無限桃花〜Over the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/19(金) 06:01:52 ID:tVJM7UM8
 桃花は走っていた。いや、正確には地面スレスレを飛んでいる。
 身体からは黒い影が噴き出す。纏う闇の衣は翼のように広がり、黒い稲妻をたたえる。
 婆盆は言った。覚悟がお前を強くすると。
 桃花の覚悟。それは全てを投げうってでも、彼方を救う事。宿命すら捩曲げる。それほどの覚悟。
 やがて見えてくる湖。その中に立つ剣のように鋭い岩山。その頂上を目指す。
 桃花にはもはや足場など関係なかった。ただ直線的に進むのみ。地面も、水面も。そびえ立つ断崖すら無意味だった。
 剣のような岩山、天神の細道を桃花は登りはじめる。
 頂上は紅い雲が覆っている。血のように紅い、この世の物では無い雲。その先に居る。

「彼方‥‥‥」

 桃花は呟いた。

 歌が聞こえ始めた。初めて聞く声。だが、それは間違いなく彼方の物だとすぐに解った。
 驚くほど透明で、憎しみが篭った声

とおーりゃんせーとおりゃんせー
こーこはどーこの細道じゃー
天神さーまの細道じゃー‥‥‥

クスクスクス‥‥‥‥

 彼方の声は遥か天空から響く。向こうも解っている。もうすぐ相対する事を。


とおーりゃんせーとおりゃんせー‥‥‥

クスクスクス‥‥‥‥‥
姉さん、早く来て。
こーこはどーこの細道じゃー
天神さーまの細道じゃー‥‥‥。

クスクスクス‥‥‥‥


 桃花は紅い雲に飛び込む。その雲は水蒸気では無かった。血だ。血が混じった雲だった。
 分厚い雲が薄くなり、うっすらと太陽の光が見える。もうすぐ雲を抜ける。
 そして‥‥‥‥‥。

「これは‥‥‥‥」

 桃花が見た物。それは紅い雲の海に浮かぶ荒野。
 あの細長い岩山の先、雲に隠れた場所には、ただっ広い地面があった。彼方が用意した、決戦の場所だった。
 そこに一人立つ少女。桃花のように影を纏い、紅く輝く瞳をした‥‥‥。

「‥‥‥彼方」
「久しぶりね。姉さん」
9無限桃花〜Over the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/19(金) 06:03:42 ID:tVJM7UM8
 桃花はそこへ降り立つ。
 そして目の前に少女と目を合わせた。もう桃花の記憶にある彼方ではない。
 歳の割に背が高く、黒い長髪を下ろした少女。少しだけ、自分に似てる気がした。

「姉さん‥‥‥」
「彼方‥‥‥。会いたかった」
「最初見た時は姉さんだって解らなかった。でも無限桃花なんていう名前してるのは姉さんしかいない」
「何を言ってるの?」
「覚えてない?練刀と戦う前から、ずっと見てたの。寄生を斬る事が出来る敵として‥‥‥」
「彼方‥‥‥」
「だから練刀との戦いの後、私どうしたらいいか解らなかった。私がこの世に転生したから、私を殺す為にアイツも転生してるハズ。でも‥‥。それが姉さんだったなんて」
「婆盆は‥‥。教えてくれなかったの?」
「うん。自分で確かめろって。過去の私の記憶もそこは教えてくれなかった。多分、相手が誰でも関係ないから」
「過去の‥‥彼方」
「姉さんもたまに過去の記憶と話すでしょ?私はずっと話してた。だから姉さんの秘密も全部知ってる。酷い話だよね。だから、何も知らせたくなかったの」
「私は‥‥‥」
「姉さんが練刀を斬った後、私が止めをさしたの。だってアイツは‥‥私のお父さんを殺した奴だったから‥‥‥」
「あのね、彼方。私は‥‥‥」
「姉さん変わったね。こんな綺麗な人になるなんてビックリしちゃった」
「‥‥‥彼方も変わったね。十年も経てば当然だろうけど‥‥‥」
「姉さん。私は彼方だけど、彼方じゃない」
「‥‥彼方?」
「私は全部知ってる。この世がどれだけ醜いか。人が人の下になった時、それは敗退の始まり」
「彼方‥‥‥」
「私は彼方。でももう一つの名前もあるの。姉さんだってそうでしょ?昔の名前があるはず。私は現代でまたその名前を使う」
「彼方、私は‥‥‥‥」
「クスクスクス‥‥‥。私は彼方。でもそれだけじゃない」

「クスクスクス‥‥‥私の名前は影糾」

「私は影糾寄生・菅原道真。クスクスクス‥‥‥」
10無限桃花〜Over the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/19(金) 06:06:34 ID:tVJM7UM8
「彼方‥‥‥!」
「その名前で呼んでいいのは姉さんと婆盆だけ。婆盆は‥‥まだ生きてるのね。ちょっと安心しちゃった」

「姉さん。私はかつて帝に仕えた。知ってるかな?歴史にもちゃんと載ってるはずよね。でも、嫉まれて殺されちゃった」

「私は憎んだわ。それはもう全てをね。でも、本当の怨みはそこじゃ無いの」

「私は日本最大の怨霊とまで言われたわ。それはそうね。仇を呪い殺したり、京都に何度も火を放ったり。仕方ないと思う。けど‥‥‥」

「後醍醐天皇は私を恐れて太宰府に私を奉ったの。見た事ある?あそこには私‥‥。天神が奉られてる」

「でも真実は違う」

「天皇は私を奉るフリをしたの。私を恐れて。私を消そうとした」

「あれほど仕えたのに‥‥。あれほど‥‥‥貴方の為に‥‥‥!‥‥あれほど‥‥‥あれほど尽くしたというのに‥‥‥!!!」」

「それから何度も陰陽師が現れた。私を再び殺す為に。私はぜーんぶ返り討ちにしたの。」

「表向きは私は天神として奉られてる。だから人々の思いは私に天神の力を与えた。でもそれだけじゃ足りなかった。だって、私は日本を覆そうと思っていたから」

「もう裏切りは要らない。君主も従者も。富める者も貧しい者も。人も神も妖も。全てを一つにまとめようと思ったの。そうでもしなきゃ、人はまた誰かを裏切る。自分の為に他人を殺す」

「そして生み出したの‥‥‥。寄生の力を‥‥‥!」

「同時に私は魔道へと侵入したわ。そこには神と真逆の存在、魔物が居る。彼等を懐柔し、地上を滅ぼす軍団を組織した」

「その頃に、私は闇の天神となったの。稲妻は黒く染まった」

「でもそこでアイツが邪魔をしたの。無限悠斗。‥‥過去の姉さん」

「戦いはあっさり終わったわ。悠斗は自分自身を結界に、自分の身体に私を封印したの。それが無限一族の呪いの始まり」

「私は悠斗の魂と融合し、一緒に転生を待った。その間に悠斗は私の闇の天神の力をコピーしたの。人の持つ奇跡の力。思いの力でね」
11無限桃花〜Over the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/19(金) 06:08:22 ID:tVJM7UM8
「クスクスクス‥‥‥。そして私は彼方として現代に蘇った。それを察知した悠斗は一足早く姉さんとして現れた」

「出来れば教えたくなかった。でも、私と姉さんのどっちかは今日死ぬ。誰かが引き継がねばならない。だから、教えた」

 彼方の口調はもう彼方ではなかった。
 かつて存在した天神・菅原道真。邪悪に染まった天神のそれへと変わっている。

「彼方‥‥。私はね‥‥。」
「何?姉さん」
「私は‥‥。過去なんてどうでもいいの。ただ‥‥‥。彼方に会いたかった。ただそれだけ。」
「姉さん?」
「私は‥‥‥。もう貴方に会えて満足。後は貴方を助けるだけ」
「助ける?私を?フッ‥‥‥‥。はははははははは!!!」
「彼方‥‥‥。」
「何を世迷い事を!私の何を助けるというのだ!!私の名は影糾!影糾寄生・菅原道真!!」
 彼方の纏う影は次第に濃くなる。それは闇の衣となり彼方を包む。そしてその手には一降りの黒い刀、村正が握られていた。

「私は再びこの世に火を放つ!全て焼き払い、浄化してくれよう!そして‥‥‥この世界に真の平等を実現する!
もはや何者にも従う必要は無い!
何処にも隷属する事も!
私は全てに寄生し、全てを統一する!
世界は私一人で十分なのだ!!!」
「彼方‥‥‥!」
「その名で呼ぶな無限の天神!さぁ。決着をつけよう。我等の千年に渡る闘争。今ここで終わりにしよう」
「ええ。そうしましょう‥‥‥。彼方」

 二人は同時に剣を掲げる。そして同時にその一撃を放つ。

「来たれ龍!」
「来たれ龍!」

「爆ぜよ天!」
「爆ぜよ天!」

 二匹の黒い龍は天高く舞い上がる。
12無限桃花〜Over the BLOODSKY〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/19(金) 06:09:34 ID:tVJM7UM8
投下終了。
13創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 07:13:07 ID:ea0D6AY1
あおもりさん乙

>>4
まて、さりげなく投下してるが誰だ?
14創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 07:20:04 ID:tVJM7UM8
コテで呼ぶんじゃねぇw

>>4は俺も誰か気になってたw
15創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 10:11:11 ID:x7SKd9l7
描いちゃの串子と見た。
16創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 13:27:13 ID:5ReZODvU
>>4
串子可愛い
魔法少女みたいな中華服素敵

>>12

とうとう影叫戦か
17創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 00:29:30 ID:7mP2Qtzp
あれ?
>>4ってもしかして…はいてない?
18創る名無しに見る名無し:2010/03/20(土) 06:51:33 ID:K0p3D13m
気がついたらまとめられてた。エロい人乙。
19無限桃花〜Gods of thunder〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/21(日) 11:42:27 ID:yWg1ApIu
投下開始。
20無限桃花〜Gods of thunder〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/21(日) 11:44:07 ID:yWg1ApIu
 二匹の龍はぶつかり合い、閃光と爆音に変わる。衝撃波が辺りに広がり、紅い雲海は大きく波立つ。

 彼方は猛然と桃花へ斬りかかる。有り得ない程の速さで。
 神速の体術を修めた桃花ですら受けきるのは至難の業だった。振られる剣は桃花が知る技では無い。恐らくもっと昔の、古の剣術。
 道真の記憶と婆盆による指南が、彼方にそれを与えた。
 桃花とて受けるばかりではない。機を狙い必殺の一撃を放つ。
 彼方は村正でそれを受ける。
 二本の村正がぶつかる度に、黒い稲妻が紅い雲の間に走り、地上に落ちる。
 さながら地獄のような光景だった。

「クスクスクス‥‥‥はははははは!」

 彼方は笑う。現代に蘇った道真として。

「彼方‥‥」
「その名で呼ぶなと言っただろう無限の天神よ。妹とは言え千年の仇。手心加えては私を斬れぬと心得よ。姉さん?‥‥クスクスクス」
「そのつもりは無いわ」

 彼方は腰貯めに構えた刀を真横に振る。桃花は袈裟斬りでそれを払い、回転を殺す事なく必殺の二撃目を放つ。だが。
 彼方も同時に身を回し、払われた剣を再び桃花へ向け放つ。
 剣は衝突し、地上にはまた地獄の稲妻が降り注いだ。

「それが無限一族の剣か姉さん。父によく扱かれてたな。京都に移ってさらに技を磨いたらしい。私はついに教わる事は無かったが‥‥‥。
代わりに婆盆が私に剣を教えてくれた。我が師の剣はどうだ?姉さん」

 彼方の村正は稲妻を纏う。そして村正の刀身そのものが黒い稲妻へと変化し、彼方はそれをトンボに構える。

「迷わず逝け姉さん。この一撃で」

 彼方は稲妻の剣を一気に振り下ろす。それは天空に造られた荒野を砕き、雲が割れるほどの一撃。閃光と爆音が辺りを支配する。

「‥‥‥逃れたか。しかし避けきれなかったと見える」
「ぐッ‥‥‥‥‥」

 桃花の左腕は斬り落とされ、傷口からは黒い影と鮮血が流れていた。
21無限桃花〜Gods of thunder〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/21(日) 11:45:46 ID:yWg1ApIu
「片腕失い惨めな様だな姉さん?クスクスクス‥‥‥‥」
「‥‥‥」
「もはや口を聞くつもりも無いか?いいだろう。それでこそ我が仇。もはや姉さんとは呼ばぬ。さてと、隻腕でどれほどの技が振るえるか、見せてもらおう。悠斗よ」
「‥‥彼方、私は‥‥‥」

 桃花は何か言おうした。だがその隙を与えず彼方は再び斬りかかる。稲妻の速さで。
 桃花の出血は既に止まっていた。だが、片腕では満足に剣を振るえるはずも無かった。

「惨めなり悠斗よ。もはや受けも攻めも満足に出来ない。このまま争っても、私に刃を届かせる事は出来ない」
「違う彼方‥‥‥‥。私は‥‥‥」
「先ほどから何だ?今際の言葉でも言いたいか」
「彼方‥‥‥。私は‥‥‥」
「フッ‥‥‥。まだその名で呼ぶか。まぁ良い。言ってみろ。姉さん?クスクスクス‥‥」
「私は‥‥‥桃花。悠斗じゃない。あなたも‥‥‥。菅原道真なんかじゃない。あなたは、彼方。道真なんかじゃない!」
「はははは!愚かなり無限の天神!今だ理解出来ないか?」
「出て行け‥‥‥」
「何だと?」
「彼方から出て行け!」
「‥‥‥まだ解らぬか。私が彼方だ。道真の魂、それが今、彼方として存在している。お前もそうだろう悠斗?」
「違う‥‥‥」
「何が違うというのだ。お前は千年の時を超え、私を殺す為にこの世へ来た。それが宿命よ。それこそ千年前、悠斗が望んだ事。
お前はその為に今ここに居るのでは無いのか?その意思は、悠斗の物では無いと言うのか?お前自信が、妹を殺す事を選んだと?」
「違う‥‥違う‥‥!」
「何が違うと言うのだ!」
(いい加減目醒ましたらどうや道真)
「その声‥‥。悠斗か」
(お前は彼方にいらん事吹き込んだだけや。実際彼方は桃花をどうしようとした?何も知らんまま、普通の人間として生きる事を望んだハズや)
「その思いは踏みにじられたではないか悠斗よ。お前は戦う事を選び、そしてここに来た。私を殺す為に」
(そこが間違いや)
22無限桃花〜Gods of thunder〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/21(日) 11:47:43 ID:yWg1ApIu
(私はただついて来ただけ。ここへ来る事を望んだんはあくまで桃花自信や。
まだ解らんか?お前も私も、この世に居てはイカン。本来は桃花と彼方、二人が全て決めるべき事。お前は彼方の意思を殺し、千年前の道真そのものになりたいだけや)
「それで何が悪い?彼方は私であり、私は彼方だ。輪廻転生には逆らえぬ。私は千年続く魂の決意の元に行動するまで」
(阿呆め。その輪廻転生に逆らう者が、今目の前に居るではないか)
「お前が?笑止。ではなぜ転生した。なぜ今ここに居る!?私を斬る為だろう!?」
(私や無い。桃花や。ここに来る事、お前を消し、彼方を取り戻す事。全部桃花が決めた。その娘は宿命なんぞ全部否定してくれたわ。お前なんかと違って‥‥随分強い娘や)
「何だと?」
(まだ気づかないか。彼方がそう望んだように、桃花も彼方が普通に生きる事を望んだんや。私はその手助けしたまで。桃花がそう望んだんなら千年前の化石は黙って見ているだけ)
「何ぃ?何を考えている?」
「今に解るわ‥‥‥。彼方。」

 隻腕の桃花は村正をだらりと構える。もう腕に力は入らない。血は止まったが最初に大量に流れた。意識は朦朧とする。痛みはほとんど無かった。
 むしろ奇妙なほど、心地良い気分だった。
 桃花はじりじりと道真に詰め寄る。切っ先は地面を擦り、カラカラと音を立てている。
 剣を振る気配は無かった。 

「何が望みだ‥‥。悠斗」
「私は悠斗じゃない」
「何をしようとしている?」
「彼方を‥‥返して貰う」
「無駄だ。私こそ彼方。もう解っているだろう。お前が望む事は出来ない」
「‥‥出来るわ」

 桃花は互いの剣が届く場所まで近づいた。刹那、彼方は村正を桃の胸へと目掛け突き立てる。

 一方の桃花は‥‥‥。剣を捨てた。

 立ち尽くす桃花。その胸を、彼方の村正が貫いた。黒い刀身には紅い雫がたれ、背中の傷口と村正の鍔に貯まる。桃花はそこから一歩踏み出し、剣はさらに深く刺さる。
 そして彼方の身体に寄り掛かり、両の手を背中に回し抱擁した。

「もう‥‥放さないよ。彼方‥‥」
23無限桃花〜Gods of thunder〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/21(日) 11:48:29 ID:yWg1ApIu
投下終了。
時間ねぇよテクセウ。もうすぐ完結だ。早く終わらせたい。
24創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 13:06:57 ID:0GL6rQOz
うおおおおお桃花どうなるんだうおおおおおおお
25創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 15:01:46 ID:gbb0CgQH
タイホから判決に至るまで留置場、拘置所生活を
描くバラエティー小説

小説家になろう連載中 
 第7話 魔女4 更新しました
タイ○ホ日記で検索してください
 
新作 200文字小説 70文字小説 20文字小説
 同時 連載中




26創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 16:43:12 ID:yWg1ApIu
重大なミスに気付いた。桃花の腕www
27創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 17:39:03 ID:LWTbvOYg
尋常じゃない回復力www

訂正どぞ
28無限桃花〜Gods of thunder ◆wHsYL8cZCc :2010/03/21(日) 17:47:12 ID:yWg1ApIu
ではお言葉に甘えて‥‥‥。

最後のセリフ前の一行は

 そして彼方の身体に寄り掛かり、残る右手を背中に回し抱擁した。


に訂正します。


危うくナメック星人にする所だったw
29 ◆EROIxc6GrA :2010/03/21(日) 19:38:05 ID:LWTbvOYg
ただいま

前スレでまとめられてない作品がある気がするけど、確認するのめどい
30創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 19:48:40 ID:yWg1ApIu
一個あるで!
ももかの二話目w

それはさておきいつも乙。
31 ◆EROIxc6GrA :2010/03/21(日) 19:52:09 ID:LWTbvOYg
え、?ももかは二つともまとめて……あるよな?


ま、まさか、俺がももかの作者だと知っていて、ちゃんとした二話目を書けということかっ
32 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/21(日) 20:01:11 ID:yWg1ApIu
お前だったのかw
というか俺の携帯のせいか?なぜかいつも桃花の最新のまとめが見れないんだ。
いつもはまだ編集中だったりするからだとか思っていたが。
同時にももかも編集忘れてるのかとw

あと早くももかの続きくれハァハァ
33創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 20:05:23 ID:LWTbvOYg
よく分からないんでkwsk
リンク先に移動できないって意味?
34創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 20:07:34 ID:yWg1ApIu
「編集されていない。もしくは削除されている云々」って出る。
で、新しくまとめが来るとそれが見れる。

どういう症状これ?
35創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 20:09:09 ID:LWTbvOYg
つまり今26話目が見れないってこと?
36創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 20:10:49 ID:yWg1ApIu
そうそう。
あとももかは今確認したら見れたよハァハァ。

37創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 20:11:50 ID:LWTbvOYg
PCからは見れるんだ。キャッシュを削除して、接続しなおすとかは?
38創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 20:18:51 ID:yWg1ApIu
ダメだった。
まぁそのうち見れんだろw

騒がしてすまぬ。
39創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 20:22:45 ID:LWTbvOYg
ほんとだ!携帯からだとリンク辿れないや

でも前話から辿ると見れる不思議
40創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 20:23:52 ID:yWg1ApIu
なんとそんな業がw
コレデミレルイヤッホォォォゥゥウ!
41無限桃花〜FallenSky〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/22(月) 00:23:07 ID:OF2TDdAK
投下開始。
42無限桃花〜FallenSky〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/22(月) 00:25:19 ID:OF2TDdAK
 桃花は彼方を抱きしめる。捨てた村正は影となり消えた。

「何をしている?自ら死に臨む事がお前の意思か。我が刃を自らその身に受けたとて、それでどうなる?」

 桃花は彼方に寄り掛かり、彼方共々その場に膝を付いた。彼方を抱く腕のみに力が入る。
 身体を貫く刃からは今だ血が流れる。

「‥‥彼方。もう逃がさない。どこにも‥‥連れて行かせない」
「何を言っている?今にも死にそうな身体で何が出来る?何を考えている‥‥‥?姉さん?」
「死なないと‥‥‥出来ない。後は‥‥‥悠斗がやってくれる‥‥‥」
「悠斗が?何だ?何を考えている!?」
「じゃあ悠斗‥‥‥後は‥‥お願‥‥‥い‥‥‥。彼方を‥‥‥助けて」

 桃花はズルズルと彼方の身体を滑る。その腕だけはまだ力が入ったままだった。膝を付いた彼方はそれにつられ、地面に完全に座り込んだ。

「姉さん?」
(行くで道真。これが桃花の決断や。千年前みたいには行かんぞ)
「悠斗!?姉さんは‥‥桃花はどうした!?」(見て解らんか?‥‥桃花は、お前の刃で死んだ。そうしないと出来ないから)
「なんだと?どうするつもりだ!」
(千年前‥‥、アンタは私に取り憑いた。今度は私達の番や。彼方の魂のアンタと、桃花の魂の私の部分‥‥。それを取り替えたる)
「何?‥‥まさか!」
(そうやで?アンタは桃花と一緒に地獄へ堕ちる。それが桃花の決断。アンタを永遠に地獄に縛り付ける為に、アンタに殺された。彼方に生きて貰う為に)
「‥‥なんて事を‥‥!」
(アンタ人の事言えるかい。さて、覚悟はいいか?道真?桃花の死に行く肉体に入って貰うで?)
「‥‥やめろ!」
(何がや?どうせ元々そこの住人やろがい。帰るだけやろ?)
「やめろ!!」
(往生際悪いな‥‥‥‥)

 桃花の肉体から離れた魂は彼方へ取り憑く。
 抜け殻となった桃花の肉体はどっしりと彼方の膝の上に落ちていた。
 
43無限桃花〜FallenSky〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/22(月) 00:27:06 ID:OF2TDdAK
 彼方はそれを見つめている。村正からは影が溢れていた。ゆっくりと影に解け、空へと混じって行った。そして‥‥‥。

「姉さん‥‥‥?」
(彼方。桃花は命を懸けてお前を自由にしようとしたんやで。お前を殺すという宿命に逆らって、己の命すら捨てて‥‥)
「悠斗‥‥!なんで‥‥‥!なんで止めなかったの!」
(‥‥‥桃花がそう決めたからや。私に何が言える?桃花は桃花や)
「そんな‥‥。姉さん‥‥‥」
(まぁ待て。私とてそのままやるんは酷や思う。少しだけ、桃花に逆らわせてもらうわ)
「何をするの‥‥?」
(お前達にはホンマ苦労かけた。私達が悪い。地獄に行くのはアイツと私)
「どういう事?」
(彼方、今、桃花は眠っている。目ぇ覚ます事は無いやろうけど、仲良くな。お前の魂の欠けた部分、そこに桃花はいつも居る。忘れるな)
「悠斗?どういう事なの?」
(桃花と違ってニブイ娘やな。どっちかってば私に似てるわ。まぁええ。そろそろお別れやな。16年、ホンマ苦労かけた。桃花にも謝っといてな)
「悠斗‥‥!姉さん!」
(アイツはもう桃花の身体や。じゃあ私も行くわ。ほんじゃ、さよなら)

 紅い雲は少しずつ晴れて行く。
 そこに浮かぶ荒野に座り込み、彼方は桃花の身体を抱いていた。もう抜け殻に過ぎない身体。しかし、その表情はうっすら笑っているように見える。血まみれの汚れた顔はなぜかとても安らかで、美しく見えた。
 雲は晴れる。闇の天神の呪いは消えかけていた。彼方の自由と引き換えに。
 地上には太陽の光が届き始めている。そこへ居た黒丸達も状況の変化を感じている。

「先輩!雲が‥‥!」
「晴れてきたな。終わったみたいだ」
「寄生達‥‥‥。動かないですかね?」
「さぁな。動いたとしたら殺せばいい」
「どうやって?」
「さぁな?」
「あのな‥‥‥‥」

 黒丸達は事が終わったと感じていた。空の上で何があったかは知らなかったが。
44無限桃花〜FallenSky〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/22(月) 00:28:30 ID:OF2TDdAK
 突如、黒丸の持つ無線から声がする。田父神航空幕僚長の声だ。

『黒丸!聞こえるか黒丸!!』
「聞こえてます幕僚長。こっちは‥‥‥終わったようです」
『そいつは何よりだ。だがそれどころじゃない!今すぐそこを離れろ!』
「どうしたんですか?」
『先ほど三沢からF2が離陸した。米空軍のC130もだ。そこの寄生もろとも例の岩山を破壊する作戦だ』
「ちょっと待って下さい‥‥!?誰が命令を!?」
『総理だ。雲が晴れて来たら即座に破壊せよと予め命令が下っていた。少しでも寄生の情報を外に出す訳には行かないらしい』
「そんな‥‥!まだ上には桃花さんが!!」
『‥‥もう間に合わない。諦めろ。サイロバスターなら岩山を簡単に貫通する。そのあとMOABで辺りを吹っ飛ばすつもりだ。早く逃げろ‥!』
「ちょっと待って下さ‥‥‥うおっぉ!!」

 黒丸は上空からの爆音と突風に身を屈める。見上げた先には四つの黒い影が見えた。来たようだ。

「さすがに速いな。それも四機も」
「先輩!速く逃げないと!」
「しかし桃花さんが‥‥!」
「何にも出来ないでしょ!今は逃げるの!」

 黒丸は空を見上げる。同時に四つの白い雲が伸びている。
 それは岩山の中腹にぶつかり、爆炎を上げた。辺りには破片が降り注ぐ。

「ホラ!早くしないと巻き込まれちゃいます!」
「だが‥‥!」
「グチグチ言うな馬鹿!いつもの決断力はどこ行った!今は逃げるの!逃げて生きるの!」
「‥‥クソ。桃花さん‥‥‥!」

 四機のF2は旋回し、再びサイロバスターを発射する。岩山は大きくえぐれ、中腹から自らの重みで崩れそうだった。
 その上では、彼方が桃花の遺体を抱いて座っていた。

「姉さん‥‥」

 座り込んだ地面は激しく震えていた。天神の細道は崩壊する。闇の軍団が通るはずの道はその役目が来る前に消え去るだろう。
 彼方もまた、そうなる寸前だった。
45無限桃花〜FallenSky〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/22(月) 00:30:12 ID:OF2TDdAK
 声が聞こえる。いつかどこかで聞いた声。それは近づいて来る。

「間に合わなかったようだな」
「貴方は‥‥‥。なぜここへ?」
「お前達がこの霊域へ入った時から見ていた。‥‥‥桃花も来ると思っていたからだ」
「そうなんだ‥‥」
「私もお前同様、あの娘に救われた。‥‥‥自由になれた」
「悪世巣‥‥‥。ごめんなさい」
「私はもう気にしてはいない。桃花に再び会えぬ事だけ心残りだが‥‥」
「姉さんに‥‥‥?なんで?」
「フ‥‥‥。婆盆がお前に付き従うのと同じ理由だ。惚れただけだ。その魂に」
「姉さんに‥‥?」
「もう時間が無い。もはやここは無くなる。お前の助けも来たようだ」
「助け‥‥?誰が?」
「忘れたのか?奴はずっと見ていたはずだ。お前をな」

 悪世巣の見上げる先、そこには黒い翼を持つ何者かが居た。遥か天空から、それは近づいてくる。

「婆盆‥‥‥‥‥」
「さぁ行け。桃花の魂、下まで持って行け」

 地面は崩れ始める。天神の細道の中腹はすでにサイロバスターで破壊された。あとは放っておいても崩壊するだろう。

「悪世巣‥‥」
「その名はお前に返そう。今の私は天からこぼれた一匹の狐に過ぎん。では、また会おう。彼方」

 悪世巣は天空の荒野から飛び降りる。婆盆の影はもうすぐそこまで来ている。
 今度は違う声が聞こえる。もう聞く事は無いと思っていた声。
 幻聴かも知れない。でもそれは確かに一言、はっきりと聞こえた。桃花の声で。


 私は生きていたよ、と。
46無限桃花〜FallenSky〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/22(月) 00:34:12 ID:OF2TDdAK
終了。
47創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 00:34:27 ID:7TGD+s5d
行ってきたよ!
48創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 00:37:15 ID:OF2TDdAK
神速wwwwwwwwww
まとめ乙。


なんという男だw
49創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 00:37:15 ID:7TGD+s5d
やっぱり最新話は携帯では見れないみたいだね

@wikiのバグかな?
50創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 00:39:58 ID:7TGD+s5d
さて、結婚しようか
51創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 00:44:39 ID:iTZE3GNr
うわああああああ桃花桃花桃花うええええええええん!
52創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 01:09:35 ID:OF2TDdAK
>>50
ちょっと性転換してくる。
53創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 13:00:57 ID:7TGD+s5d
ハルトゴーストの初回起動台詞が思いつかねえ
先に細々した台詞だけ改変して時間を稼ぐか……
54創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 17:59:19 ID:cdsGSLW8
>>53
「修羅となれ!」
55創る名無しに見る名無し:2010/03/22(月) 19:25:42 ID:OF2TDdAK
>>53
こんな物があるからー!(バリバリバリ
56創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 07:02:19 ID:nmu4z8QU
セリフは決まったか?
57創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 21:22:58 ID:vO44pnZ4
桃花あああああああああああああああああああああ
58無限桃花〜桃の花散り彼方へと〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/23(火) 21:23:44 ID:nmu4z8QU
さて、完結させてもいいかね?
という訳で投下開始。
59無限桃花〜桃の花散り彼方へと〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/23(火) 21:25:25 ID:nmu4z8QU
 電子音が部屋へ鳴り響く。耳触りな目覚ましの音はいつ聞いても不快だった。
 孝也は目覚まし時計を叩くように止め、のそのそとベッドから身を出した。
 桃花がマンションから出て行ってもう二年が過ぎた。
 桃花に貸していた部屋はいまだがらんとしている。いつでも帰って来れるように。
 孝也はまだ、桃花を待っている。

 孝也は身仕度を済ませ玄関のドアを開ける。
 暖かい空気が流れ、土の匂いとどこかで嗅いだ事のある花の香りが鼻を摩る。
 春が来ていた。

 仕事場へ向かう道には相変わらず雑多な人間が溢れていた。途方もない数の人間がそこかしこを歩いている。
 孝也もその中に入り、無個性な集団の一員として黙々と目的地へ向かう。

 途中、孝也の鼻は懐かしい匂いを感じた。
 その香りは孝也の横を通りすぎ、雑多な人間の中に再び混じろうとしている。
 孝也は振り返る。香りの元を目で追う。そして、見つけた。

 孝也は少し期待したが、すぐに間違いだと気付く。
 そこに居た人物は女性にしては背が高く、長い黒髪を背中へ流し、布で包んだ長い棒を抱えていた。あまりに似ている。だが、違う。
 孝也は思わず話し掛ける。違うと解っていたが、そうしないと気が済まなかった。
 その女性は振り返り、顔を孝也へ見せた。

「はい?」
「あ、スミマセン。人違いでした。その‥‥似てたんで。知り合いに‥‥‥」
「はぁ‥‥」
「スミマセン。呼び止めてしまって。お急ぎでしょうから。これで」
「気にしないでください。それじゃ」

 その女性は踵を返し再び歩き始める。その出で立ちはますます似ていた。
 孝也もまた歩き出す。そして懐かしい香りを思い出し、その名前を呼んだ。

「‥‥‥桃花」


 孝也が話し掛けた女性は少し急ぎ足になった。さっきの間に連れ合いと少し離されてしまったようだ。
 幸い、それはすぐ近くに居た。
60無限桃花〜桃の花散り彼方へと〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/23(火) 21:27:15 ID:nmu4z8QU
「どうしたんです?」
「何でもないよ。話し掛けられただけ」
「昼間からキャッチ居るんですか」
「なんでそんなモノ知ってんのよバカ。単なる人違い」
「冗談通じない娘ですねぇ」
「アナタが言うとなんかヘン。でも‥‥‥もしかしたら人違いじゃないかも」
「どういう事です?」
「なんか分かんないけど‥‥。なんか懐かしい人っぽい」
「そんな支離滅裂な」
「しょうがないじゃん。そう思ったんだから。それに‥‥‥」
「それに?」
「それに多分‥‥‥。私あの人の事好き」
「そんな事言うと男はすぐ勘違いしますよ。それが一番泣かされるんだ」
「茶化さないでよ!私は結構マジで言ってんだけど」
「はいはい。それよりもう時間ないですよ。行きましょう。彼方」
「むぅ‥‥。解ったわよ。婆盆」


 二人は歩きだす。向かう先は霞ヶ関。そこで待ち合わせをしているのだ。
 そこでは既に、二人を待つ人物が到着を待っている。

「‥‥‥眠い。春ってなんでこんなに眠いんだ‥‥‥。早く来ないかな‥‥‥」

 理子は車に寄り掛かりダラダラしている。
 せっかくのスーツにシワが寄りそうだが、そんな事を気にしている様子は無かった。
 二年前から今日に至るまで、これほど忙しい日々今まで無かった。
 訳も解らぬままテレビで見るような大物の前に連れ出され、数万枚に及ぶ報告書を書かされ、しまいには神社庁を退職し、出来れば絶対に入りたくなかった組織へと加わる事になった。
 ヤタガラスは別の巣を見つけたのだ。

「んぐ‥‥‥。はっ!!」
「‥‥理子さん。寝てたね」
「ふあっ!!か‥‥彼方ちゃん!!いつの間に!」
「ついさっき。寝てたから見てた」
「見てたって‥‥。起こしてくれても‥‥」
「だってすごいマヌケな光景だったもので」
「‥‥‥ヒドイ」
「ウソウソ。疲れてそうだから起こすのが忍びなかっただけ!」
「ウソだろ!」
「はい」
「なんちゅう娘だ‥‥‥‥」
61無限桃花〜桃の花散り彼方へと〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/23(火) 21:28:45 ID:nmu4z8QU
「あの‥‥婆盆は?」
「近くで待ってるって。一緒には行けないって言ってた」
「そう‥‥‥」
「あ、気にしないで。あのジジイ多分メンドくさいだけ」
「絶対違うと思うけど‥‥‥」
「いいの。そういう事にしといて。そのほうが婆盆も楽だと思う」
「そう‥‥?解ったわ。じゃそういう事にしとく」
「まぁ絶対ホントにメンドくさいだけだと思うけど」
「彼方ちゃん‥‥。毒吐くな‥‥‥」

 この二年で理子と彼方は随分と親しくなった。最初に会った時は理子は驚いた。桃花の遺体を抱え、泣いている少女がまさか影糾だとは。
 あの頃の面影は消えていた。どちらかと言えば桃花に似てきている。髪をポニーテールにすれば見間違えるかもしれない。今の身長も桃花とほぼ同じくらいだろう。

 今でこそ打ち解けては居るが、黒丸始めヤタガラスは彼方の存在を快くは思わなかった。
 今まで戦い続けた寄生の大元にして、ヤタガラスの切り札を殺害した張本人だったから。

「さぁーて。行きますか彼方ちゃん」
「みんなは揃ってるんですか?」
「ええ。あの馬鹿も待ってると思うよ」

 彼方は理子に連れられビルの中に入る。二年前、桃花が通った道を。
 目的の階はいつもの場所では無かった。既にそのフロアは空になり、ヤタガラスは別の場所に移動している。今日、ここに来た目的はカラス達の新たな生き方を見る為だった。
 エレベーターは大会議場のあるフロアに止まる。扉が開くと、黒丸とスーツの男数人が話してた。
 どこかで見たことがある光景だと彼方は感じた。そんなはずは無いのに。

「先ぱ‥‥じゃなかった。黒丸一佐、彼方ちゃんをお連れしました」
「先輩でいい原田ニ尉。彼方さん。ご足労おかけします」
「いいえ。呼んでくれてありがとう」
「‥‥‥では、早速行きましょう。既に会議は始まっています」

 黒丸は会議室へ彼方を通す。理子もそれについていく。
62無限桃花〜桃の花散り彼方へと〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/23(火) 21:30:43 ID:nmu4z8QU
 会議室にはスーツを着込んだ老人達がひしめき合っていた。皆どこかで見たような面々ばかりだ。
 それもそうだろう。今、この会議室に居るのは総理大臣始め、国防に関係のある大臣と関係省庁の大物ばかりだった。
 ヤタガラスは二年前の事件以来、正式に自衛隊の一組織となった。今、メンバーはそのまま自衛官となり、ヤタガラスは陸海空とは別の、第四の自衛隊として存在している。
 内閣直系の指揮系統を持つ、秘密の戦闘組織として。
 今日はその新生ヤタガラスが掴んだ情報を、関係各所に報告する為の会議だった。

「‥‥‥‥では、今我々が一番警戒している事柄から報告させていただきます」

 黒丸の言葉で会議は本格的に始まる。

「今、我々は寄生監視ネットワークを日本各地へ設置しております。その監視システムがここ最近無かった動きを感知しています」
「‥‥‥ちょっとまて黒丸君。寄生は滅びたはずだ。事実今まで寄生による被害は出ていない。むしろ寄生から解き放たれた妖怪達のほうが厄介では?」
「今まではそうでした。実際我々の活動もそこに重点を置いていた。それに監視システムにも寄生は全く探知されていなかった」
「ではなぜ?寄生がまた現れたと?」
「そのようです。どういう訳か再び現れた。今のところはそれぞれ勝手に動いているだけですし、被害も出ていない。ですが、現れた以上放っては置けない」
「それはそうだが‥‥‥。寄生は普通の化け物じゃない。君はよく知っていると思うが‥‥」
「そこで、専門家の方に来て頂きました」
「専門家?君以上のか?そんな奴が居るのかね?」
「ええ。では、こちらへ」

 彼方は前へ出る。その姿を見た老人達は皆一様に驚きの表情を見せた。
 この少女は一体何者なのか。桃花亡き後、そのような存在が他に居たというのか?
 そんな表情だった。

「‥‥君は、誰だね?」
「私は‥‥」

 彼方は胸に手をやる。少しだけ心の中で己の決意を呟いた。
 魂の奥に居る桃花向かって。

「私は‥‥。二代目・無限桃花」


63無限桃花〜桃の花散り彼方へと〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/23(火) 21:33:29 ID:nmu4z8QU
「お疲れ様でした」

 会議が終わり、黒丸は一言彼方に言った。

「いいえ。自分が巻いたタネですから」
「‥‥‥そうでしょうか?」
「えっ?」
「寄生の大元、菅原道真は消えた。私はあの時見ました。妖怪達から影が放たれ、彼らが解き放たれて行く様子を」
「どういう事です?」
「寄生は‥‥‥。別に生まれている。二年間は何も居なかった。それは間違いない。どこかで、また誰かが寄生を生み出している」
「そんな事有り得ない」
「‥‥‥すみません。最悪のケースを考えるクセが付いてしまっていて」
「気にしないで下さい‥‥。でも、ちょっとムカついたかな?」
「ははは。はっきり言う人ですね。では、今日は本当にお越しいただいてありがとうございます。また何かあったら、声をかけます」
「ええ。よろしくお願いします」

 彼方はビルを後にする。すると、出口では一人の老人が彼方を待っていた。

「なんだ。結局来たんじゃない」
「中には入ってません。入ったら何されるか」
「ビビってんじゃないわよ婆盆」
「ビビってなんか‥‥‥。しかし、本当にいいんですか?せっかく天神の宿命から解放されたんだ。もっと普通に生きる道もある」
「いいの。姉さんには悪いけど、これは私が決めた事」
「やはり寄生退治は無限一族の役目なんですかねぇ‥‥‥」
「関係ないわ。これはあくまで私がやりたくてやる事なんだから。道真も悠斗も、姉さんも関係ない。私の事」
「我が道を行く性格は変わりませんね」
「いいじゃん別に」




 外は既に暗くなり始めている。一日が終わり、人々はそれぞれの帰路に付く。孝也もその中に混じり、一部屋空いたマンションへと向かっていた。
 今朝あった少女の事が頭から離れない。桃花を思わず連想させた少女の事が。

「桃花‥‥‥。今どこに居る?」

 孝也はぼそっと言う。誰にも聞こえないように。しかし‥‥‥

「‥‥‥‥‥るよ」
「!!?」
64創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 21:33:48 ID:5NUWi1/K
.
65無限桃花〜桃の花散り彼方へと〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/23(火) 21:34:24 ID:nmu4z8QU
 声が聞こえたような気がした。
 それは確かに、孝也の独り言に答えた。

「‥‥桃花!?」

(また会えたね)

「何処だ‥‥。何処に居る!?」

(今朝会ったじゃない)

「桃花‥‥‥」

(ゴメンね。ちゃんとさよなら言え無かった)
「そんな事無い。‥‥それより、帰って来てくれよ‥‥」

(ちゃんと仲直り出来なかったね)

「やめてくれ‥‥‥。そんな事言わないでくれ!!」

(私は、そこにいるよ。多分また会えるから)
「桃花‥‥。桃花!」

(私の事忘れないでね。私は生きていた。その事、忘れないで)

「当たり前だろう!だから‥‥‥」

(私は生きていた。ずっと‥‥‥一生懸命に)



ずっと‥‥‥好きだったよ。孝也。



   無限桃花〜落つる天〜 完
66無限桃花〜桃の花散り彼方へと〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/03/23(火) 21:35:10 ID:nmu4z8QU
終了。
数年の後、例のレンジャーに続く?
67創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 21:36:46 ID:5NUWi1/K
うおおおん桃花…彼方…うおおおおん!
乙ですた!!!
68創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 21:39:24 ID:nmu4z8QU
あとは過去の道真VS悠斗編と影糾VS悪世巣と桃花VS孝也と勘違い理子か‥‥‥‥。
69創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 21:40:02 ID:vO44pnZ4
乙!
彼方いいこ

>>66
レンジャーかよっw
70創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 21:45:59 ID:nmu4z8QU
フッ‥‥。レンジャーをよく読め。伏線ははってあるぜ。外伝も単なる気まぐれだけじゃねえんだぜ。

さて、キャラ設定のまとめとか居る?
今日から数日携帯止まるから出来るなら今日中に投下したい。
71創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 21:51:14 ID:vO44pnZ4
なんと!
72創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 22:05:29 ID:5NUWi1/K
ぜひとも
73創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 22:13:13 ID:nmu4z8QU
じゃなんとか今日中に投下するw
74落つる天キャラまとめ ◆wHsYL8cZCc :2010/03/24(水) 00:00:30 ID:nmu4z8QU
無限桃花
本作主人公。167cmBカップ。
無限悠斗が現在へ転生した姿にして闇の天神様の能力を有する。書かれてはいないが寄生も可能。
好きな食べ物はバームクーヘンと紅茶花伝。その他甘ったるい物。
ぶっちゃけ最後のプロットは三つあって、内二つとも死ぬ話だった。回避しようとしたがムリだった。

無限彼方。
桃花の妹にして菅原道真の転生した姿。
164cmでバストサイズはちょっとなにするのやめくぁwせdrftgyふじこlp。
ジャンクフード好き。よく食べすぎで婆盆に小言を言われている。毒舌。作者は実は桃花より好きだったりする。

黒丸昌
34歳。男性。ヤタガラスエージェント。
防衛大卒で自衛隊でのエリートコースを歩むはずが、シックスセンスが有ったためヤタガラスにスカウトされる。超鈍感の典型的仕事に命を燃やす男。甘いものを食うと死ぬ。

原田理子
25歳。女性。
バカと天才の境目に居る存在。稀に頭が冴える。
本人はのんびり過ごせると思い、神職である両親の進めもあり神社庁に入ったが、両親とも神職のサラブレッドでありシックスセンスがある。
おかげで入庁直後に拉致もといヤタガラスにスカウトされ、その一週間後には陸上自衛隊レンジャー課程にブチ込まれた悲劇の女。
スリーサイズは90・57・89だッ!!

古川英子。
桃花の母の妹に当たる人。生粋の津軽衆。
人はいいが豪放過ぎて一人身。いい人なんだが‥‥‥。
桃花の母は彼方誕生と共に道真によって殺害されている為(!)、桃花と彼方にとっては母親代わり。


無限鷹寅。
桃花の父にして、適当に付けすぎて作者も読めない名前を持つ凄い男。
幼少より無限流の剣と柔術の鍛練を熟しているので、一般人から見れば達人の領域。桃花にも幼い頃から仕込んでいる。
しかし、人生を懸けた剣も練刀には通じなかった‥‥‥。

75落つる天キャラまとめ ◆wHsYL8cZCc :2010/03/24(水) 00:01:12 ID:ll1YlB9q
孝也(苗字不明)。22歳。
京都時代から桃花と顔見知り。実はボンボン。
桃花が上京した後に就職の為上京。それを嗅ぎ付けた桃花は部屋に転がり込む。
その後アレな関係となるが、ある事件により微妙な関係となる。お互いデレデレだが。

京都の無限一族の分家の陰陽師。
そのまんま。本家がド田舎でひっそり生きていたのに対し、彼らは京都にデカイ社と道場を構える。
本編で書いてないけど、実は桃花達と血縁は無い。

南澤防衛大臣。
モデルは北澤防衛大臣。

真先統合幕僚長。
モデルは初代統合幕僚長の先崎氏。

田父神航空幕僚長。
モデルは言うまでもなくアイツ。


練刀寄生・九十九神
四天王のパシ‥‥一角。
人斬りが愛用した剣が人々の思いにより九十九神となる。
道真はついでに寄生したような物だが、妖怪としてはかなりの物。だって刃物の化身だし。

悪世巣寄生・野狐
かつては御前稲荷と呼ばれた天狐。
神なので実は天神に匹敵するほどのとんでもない妖怪。道真は婆盆と二人組で寄生にかかった。
影糾を除く、四天王最強の存在。

猿参寄生・石川猿鬼
元ネタは石川県の猿鬼伝説から。
練刀の正式な後釜。桃花殺害という解りやすい任務の為に寄生された。もちろん伝説となる程の鬼なので弱い訳が無い。
しかし、天神には及ばなかったようだ。

亜盆寄生。
どうみてもやられ役です。ありがt(ry

婆盆・無縁天狗
四天王の一角だが、寄生ではない。道真がまだ存命中に知り合い、付き従う事となる。
人間の姿を取る時はおじいちゃん。こう見えて俗者。

大寄生・八岐大蛇
説明不要の怪獣。メタルジェットは普通に火吹かせるより強そうだな〜。という安直な理由。でもそのビッグネームもやられ役として(ry
影糾寄生・菅原道真
言うまでもなくあの天神様。実在の人物にして日本最大の怨霊と呼ばれた存在。
作中では太宰府に奉られる事なく抹消されようとし、それを指示したのがそれまで仕えた後醍醐天皇と知り激怒。天神は闇に落ちる事となる。


76落つる天キャラまとめ ◆wHsYL8cZCc :2010/03/24(水) 00:02:57 ID:ll1YlB9q
無限悠斗。
菅原道真と同時代に生きた陰陽師。女性。
闇の天神の始末を後醍醐天皇に依頼された陰陽師の一人。抹殺に失敗し、おまけに取り憑かれる。
仕方なくそのまま自らの身体に道真を封印し、彼女と闇の天神の千年に渡る戦いが始まる。


MP5
世界中の軍、警察で使用されるサブマシンガン
ヤタガラスで使っているのはSAT仕様の特殊用途自動けん銃。


ミネベア9mm自動けん銃。
シグP220を日本のミネベア社がライセンス生産したピストル。
納入先は自衛隊。

F2支援戦闘機。
日本お得意の素材開発技術とソフトウェア技術を駆使した戦闘機。
特筆すべきはその搭載量。巨大な対艦ミサイルを四発搭載できるのは、このクラスの戦闘機では珍しい。
ソフトウェアも優秀で、スイッチ一つで飛行特性を対地向きから対空戦闘向きに変えられる。
F16との模擬戦闘の際、米空軍兵士が「レーダー性能はF16の三倍だ!」と言ったのは有名。

08式空対地誘導弾・サイロバスター
架空兵器。キネティック弾頭の精密爆撃用ミサイル。その目的は頑強な地下ミサイルサイロや、洞窟内の軍事施設破壊である。
標的は某将軍様の国。
77創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 00:14:49 ID:8zFk6+MF


>最後のプロットは三つあって、内二つとも
消えたプロットの謎w

>スリーサイズは90・57・89だッ!!
なん…だと…
78創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 00:15:57 ID:ll1YlB9q
もうキャラ設定までまとめてやがる!
乙乙!

携帯もあと1時間は持つかな?
79創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 00:19:52 ID:ll1YlB9q
>>77
元々二つあって、でもこのままじゃあまりに桃花不備だろwとか思ってもう一つ作ったんだけど結局こうなった。
80創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 12:55:40 ID:fGD7Zov5
ここは海沿いの創発の館(仮)。の廊下。
節電だかなんだか知らないが灯りは最低限しか灯っておらず、昼だというのにほの暗い。
そんな廊下をサムライポニーテール少女、無限桃花はじりじりと移動していた。
彼女の表情に余裕はない。吹き出る汗も拭かず、細心の注意を払いながら、前に進んでいる。
話はあの大人桃花には聞いていた。しかし、これほどだとは思わなかった。目暗ましをして逃げなければ今頃。
汗が玉となり、床に落ちる。
不意に灯りがゆれる。電気じゃなかったのか、ここの灯りは。
少しゆれて、何事もなかったかのようにいつも通りの明るさを放つ。しかし先ほどとは違うものがあった。
「見〜つけた」
桃花の前方。数メートル先に人影。人影はゆっくりと近づいてくる。
「だめだよぉ。あたしから逃げようなんて。あたしの鼻は犬よりすごいのよぉ」
そしてその人影が桃花の数歩先に立つ。
お馴染みのポニーテールは金色。もうパンツと変わらないんじゃないかと思われるようなピチピチのズボン。
とりあえず布をつけました程度のシャツは無駄にでかい胸を強調している。
脇に刺した刀は通常のそれと比べ短く、太い。切ると言うよりも殴る刀なのかもしれないと桃花は推測する。
「いい子ね。そのままじっとしてるのよぉ」
いや、そんなことを推測している場合ではない。眼の前のそれを対処しなければならない。
逃げ切ることはどうせ出来ない。ならば。
桃花が構えるのを見て、その桃花は残念がる。
「そう。そんなに嫌なの。残念ね。なら仕方ないわよね」
間合いが瞬時に縮まる。低い姿勢から顎を目掛けての右手のアッパー。後ろに下がり、回避する。
アッパーが大きく空振り……のはずが動作が途中で終わり既に左手にストレートに移行している。
当たるすんでで左手で払い、左後方に逸れる。今なら、首が空いてる。右手で首に。
しかし振り下ろす手刀とりも早く、相手の右手が桃花のわき腹を襲う。が、体勢が悪く掠める程度。
だが効果はあった。
桃花は小さく声を出して、動作が一瞬止まったのだ。その隙に相手は間合いから抜ける。
悔しがる桃花と対照的に嬉しそうな表情を浮かべる相手の桃花。
そう、桃花はわき腹が弱点なのだ。思わず身を縮めちゃうほど弱い。そしてそれを悟られてしまった。
不気味な笑みを浮かべながらそう離れていない間合いを歩いて詰めて来る相手。
思わず少しずつ後退してしまう桃花。今や、両者の間は三歩ほどしかない。
相手が一歩で間合いを詰めると振りかぶった右手を降ろしてきた。動作は大きい。
この右手を掴むと、相手に背を向ける。相手の手を左肩に乗せて、投げれば。
ふにゃり。

真っ白になった桃花を最初に見つけたのは食事を配達し終えたロリ桃花だった。
大丈夫かと揺り動かすものの「ああ、ごめん……私はもうだめなんだ……もうだめなんだ……」
としか呟かない桃花に焦りを感じ、カートに載せると急いで医務室に運ぶ。
医者(白衣桃花)は桃花の様子と格好を見ると
「外傷は多分ないが心に深く傷を負ったかもしれない」と診断した。
服を入院服に着替えさせようとすると
「ああ! やめてくれ!」と叫んで拒んだが「うるせぇ寝てろ」と白衣桃花が頭を叩き、黙らせた。
「何時治るかもわからんがとりあえず安静にしとけば治るだろう」という判断の元、桃花は入院することになった。
一方、桃花を襲った桃花はとても満足そうにしていた。心なしかお肌つやつや。生き生きとしている。
どっとはらい。
81創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 13:01:04 ID:8zFk6+MF
金髪きょぬーおねーさんだと!
82創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 14:42:52 ID:ll1YlB9q
なにやらキナ臭い桃花出てきたなハァハァ。

そしてス既にまとめられているだと!?
83創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 14:58:33 ID:fGD7Zov5
そんなわけないだろうと思ったら本当だった。

お疲れ様です
84創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 19:37:06 ID:ll1YlB9q
このスレ、感想少ない方だけど投下されたネタは結構使われてるよなw
85創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 09:27:46 ID:WisGWfC+
つまり・・・のスレのネタが他のスレでも使われているということか!
86創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 20:55:26 ID:XTwCN5S3
青森さんがいなくなると過疎が酷くなると予想
87創る名無しに見る名無し:2010/03/26(金) 20:23:23 ID:EuIGOtKJ
なら他の人たちが書けばいい。
おらおら続け続けー!
88創る名無しに見る名無し:2010/03/26(金) 21:15:50 ID:u9SP+stI
ザッ
こちらcodename:H、Codename:H。
現時刻を持ってゴーストの制作を一通り終了した。
これより調整に入る。どうぞ。
ザザッ
89 ◆EROIxc6GrA :2010/03/26(金) 22:27:59 ID:u9SP+stI
ver.αできたよー
https://www.sugarsync.com/pf/D750636_803776_85115
デベロッパの人以外はダウンロードしない方がいいよー(主にシェル的な意味で)

@募集中
・シ
・トーク
・オープンソース化したい
dic_talk.txtなんかをオープンな場所に置いて誰でも編集出来るように。んでそれをネットワーク更新に対応出来るようにしたらいいんじゃね?って思ってるが、出来ない。
90創る名無しに見る名無し:2010/03/30(火) 19:51:59 ID:tjnmsshR
醍醐と後醍醐を間違えてないか?
91創る名無しに見る名無し:2010/03/31(水) 01:15:24 ID:+OA/ElUm
魔法少女age
92創る名無しに見る名無し:2010/03/31(水) 01:27:26 ID:74RxAHpc
>>89
ちょwwwシェルwwwww
93最近アンテナ分が足りない気がした:2010/04/01(木) 02:09:34 ID:1x+h8Ln8
嘘テナさん「湯葉のラー油掛け総合スレに投下がありました」

アンテナさん「ちょっとちょっと! 適当なことを言って住民を混乱させるのはやめてください! 第一そんなスレありませんよ!」

嘘テナさん「適当なことではありません。“嘘”です。私は嘘情報を全力でお知らせする存在」

あんてなたん「うそはよくないんだよ」

嘘テナさん「……さっき創発キャラ総合スレに投下がありました」

アンテナさん「また嘘ついて……あれ?」
94創る名無しに見る名無し:2010/04/02(金) 01:48:29 ID:TYDpWm4Q
桃花「じゃじゃーん! 見舞いに来てあげたぞー!」
桃花「なんだ……お前か……」
桃花「うわーすごいがっかりされてるー」
桃k「で、こんな時間に何ようだ?」
桃「そうそう、実は言わなきゃいけないことがあってね」
と「ほう。言わなきゃいけないことか」
t「実はね……魔王ハルトシュラーとは私の仮の姿なんだよっ!」
「はい、おやすみなさい」
「え、ちょっ。もう少し何か反応を」
「病人のところへ夜中に言いにくることがそれか」
「だってー、今しかないと思ったんだもん」
「知ってるか? もう夜中過ぎて日付変わってるんだぞ」
「えっ」
「知ってるか? 夜中に訊ねるのは非常識なことなんだぞ」
「う、うん……」
「……知ってるか? お前の後ろに人が立ってるぞ」
「はっ!」
「いいぜ、てめぇが常識の欠片も備えていないと言うなら
 まずそのふざけた脳みそぶちまける!
「や、医者でしょ、あんた、そんなトンカチ、何のじょうd」

            ニュウイン
おしゃべり桃花  再起不能

反省なんてしないよ。絶対に
95創る名無しに見る名無し:2010/04/02(金) 02:38:19 ID:znmKM8JA
テスト
96創る名無しに見る名無し:2010/04/02(金) 04:07:42 ID:kamiPNbL
入院ですみそうもないw
97創る名無しに見る名無し:2010/04/07(水) 22:22:10 ID:8ToGYjxz
避難所にスレを立てました
寄生に苦しんでるそこのあなた、ぜひご活用を

http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1270365319/
98創る名無しに見る名無し:2010/04/07(水) 22:25:29 ID:S1VhpKxT
創発発のキャラクター総合in避難所
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1270365319/

「みなさーん! 気づいてらっしゃらない方もおられるかもしれませんが、
 創発避難所に創発キャラ総合スレの避難所が立ちましたよー。
 気づいてない規制中の方がおられましたら、向こうでわいがやしましょう。
 ……という感じでいいですかね、ID:9sf2Nlrw0さん?」
99創る名無しに見る名無し:2010/04/10(土) 13:19:58 ID:cxzqBFwd
ここは海沿いの創発の館(仮)。の医務室。
「うぃーっす、お見舞いに来てやったぞ」
「ちっ……」
「あれれ、舌打ちですか。いいんですか、泣きますよ?」
「……お見舞いありがとうございます」
そんなわけでサムラポニーテール少女、無限桃花の病室におしゃべりな桃花がやってきた。
病室とは言っても個別の部屋になっているわけではない。学校の保健室を思い浮かべてもらえればまさしくそれである。
医者の能力の関係上、入院する人間は稀でそのためか医務室はこの通常よりちょっと広い程度の一部屋しか存在しない。
おしゃべりは持ってきた林檎の入った籠を台の上に置く。
「どうせ見舞いに来る人間なんていないだろうと思って来てやってるのになんたる態度だ」
引き出しを開けて、果物ナイフを取り出して林檎の皮をむき始める。
「私はなんで頭を割られた人間が一晩で退院出来るのに私が退院出来ないのか不思議でならないよ」
「そりゃあのヤブ医者の能力が実体修復限定だからでしょ。心の傷は治せないとか使えないよねぇ」
「心の傷と言われてもあまり実感がないな」
「そりゃ本人はよくわk」
おしゃべり桃花の背後で何かが揺らめいた。その瞬間、鈍い光が彼女の頭部を叩き壊す。
白いカーテン、ベッド、入院服が赤に染まる。それ桃花が認識するよりも早く、光はおしゃべり桃花に二発目を加えていた。
何の抵抗もなく、首から離れていく半分欠けた頭。壁に叩きつけられた音が頭部の最後を示していた。


今日も良く晴れている。雲は少なく、海の果てで固まっている。海より来る風は温かく、外にいれば居眠りしてしまいそうな陽気だ。
湿った洗い立てのシーツの皺を伸ばし、物干し竿に干す。風がそれを撫でるようにはためかせている
「この前洗ったばかりだったんですけどね」
「いやー、うざかったからついうっかりね」
白衣に眼鏡を掛けた桃花が頭を掻きながら答える。風が彼女の不揃いの髪を揺れる。
「何度も何度も殺されていると私の命の重さがなくなる気がするよ」
ぶつくさと文句を言いながらカーテンを物干し竿に洗濯ばさみで固定していくおしゃべり桃花。
洗濯籠の中身が空になる。桃花は踏み台代わりの椅子に腰を掛ける。
自分の分を干し終えた医者桃花とおしゃべり桃花がやってきて、桃花の椅子を背もたれにして座る。
暖かな白い海の中。桃花はゆっくりと目を閉じた。
どっとはらい。
100創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 00:34:17 ID:SKOcBZBe
                     ,.イr ,.   _       ゙゙゙` 、
                    / / 人  ヽ ̄'ー-、       ヽ
                    |:/ l /  \ ヽ.  ヾi        l
                   リ l /     ー-゙ミー-ヽ  、 ヽ  i l
                   │ l | _      _ ゙゙゙'''ヾ.  |  |  |!  ___
__    /l    r;;;;ァ     l l l ´   `   ´   ̄` |  |  _! i |/
    \  l;l    l;l       l l l 〃⌒゙ヽ   〃⌒゙ヽ  |  | 'ハ i |
は や |i l;l _,,,,...l;L _      ヾ l 〃〃    〃〃´   |  lちノ | |  い 100
さ  っ . |i ,l;l´:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヽ     ヽl    、'         | ilイi|  |   っ  レ
み た |i/;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:派ミ       i|     r‐--ー、    │i|  i| |  た  ス
さ .ね |i:;:;:;:;:;:;:;:;/ ̄ ゙゙゙゙̄ヽ     |ハ    .イ_ _,,ツ     イ| i|   i<  よ
ん    |i;:;:;:;:;:;:;:;i'    ・  t、    |!|\__     ,.;:;´ │i|  i| |  !!
!    |i:;:;:;:;:;:;:;:l   〃 ∀l >    |i| `ー==三三ミ):;:;:;   | i|`ト...._|
__/ |;:;:;:;:;:;r┴一、___ .ノ梶@   |!|  __,,.. -─ハ八 /  | i| |   |
      ヽ:;_;:;:|___||[二≫'<‐、   ト|./´   _:ヘ:ニヾL\ /| !| |   |
        i;:ヽ   ヾ ̄ ヾ〉`、   |/   r‐'___ `   ヽ / | |/  |
        r‐ァヽ   `      \ /   ゝ- 、 ヽ     |' , |i|    \___
         / /;:;:ノ_     / ⌒`)⌒) j  ゙ー ;      i く リ ;       |i| ヾ;:ヽ
       | レ´二.ム    メ   / ノ |    i      i/   |     |i| /:;/
101創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 04:35:40 ID:8A0j1FIN
おしゃべり生命力どんだけw
102創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 05:06:03 ID:AzM3LDla
桃花さんどいつもこいつもww
103 ◆wHsYL8cZCc :2010/04/11(日) 17:04:35 ID:NWY7BapQ
>>90
携帯止まってる間色々調べたら間違いだらけだったよ。
104創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 22:49:44 ID:WL8KGlFd
おしゃべり桃花凄まじすぎるwww
105 ◆akuta/cdbA :2010/04/11(日) 23:02:12 ID:T3G5+LQU
>>100
ラジオスレに投下した絵がAAにされてるときいてksksしに
来まs……;`;:゙;`(;゚;ж;゚; )ブフォ
106100:2010/04/11(日) 23:51:40 ID:SKOcBZBe
ラジオスレに投下しようとしたら避難所のほうが規制されてるという珍しいケースに嵌まっていて出来ませんでしたwww

見直してみるとはさみさんの髪とか不自然に見えるんで改良の余地アリかもしれませんね……
107創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 01:29:32 ID:04pNZwQJ
二時間半ほど書けてそこそこの長文を書いたが
なんともまとまりが使うないので消した。
眠いの我慢して何やってるんだろう。寝るか
108創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 19:25:32 ID:f376FC4/
まとまりがないと言うのは、逆に言えばあらゆる可能性を秘めているという事だ。
109 ◆wHsYL8cZCc :2010/04/13(火) 21:45:00 ID:vWM8QIs0
今度は携帯じゃなく電気が止まった件。
払えるのは明後日かよ。

今コンビニの便所で充電中w
110創る名無しに見る名無し:2010/04/13(火) 22:45:33 ID:uNuoCTk9
それ窃盗だから。
犯罪自慢のDQNはもう来なくていいよ。
111創る名無しに見る名無し:2010/04/13(火) 23:08:29 ID:vWM8QIs0
マジか。知らんかった。
次は断り入れてからにしよう。

今は友人宅に移動し充電器ごと借りてる。
112創る名無しに見る名無し:2010/04/13(火) 23:21:49 ID:HWMiwEo6
コンビニとか駅のコンセント勝手に使用して逮捕された事例がある
被害額が一銭でも訴えられるぜ、「電気は財産物」ときっちり明記されてる
知ってか知らずか公共の場で充電する奴の多いことよ
113創る名無しに見る名無し:2010/04/13(火) 23:48:23 ID:Az1QUWmH
ここは海沿いの創発の館(仮)。
「というわけでまぁ退院してもいいンじゃないかなぁ」
「あまりにも適当な判断ですね……」
「いやー、実際のところどこまでいけば完治かってわかりにくいからさ」
医務室にて二人の桃花が会話をしている。
片方はサムライポニーテール少女、無限桃花。長い間入院していたが今日を持って退院という運びになった。
もう片方はドクターポニーテール少女、医者桃花。眼鏡白衣の彼女は対象物の状態時間を戻すという能力を保持しており、
これを使って自らの刀で気に食わないものを破壊しては状態時間を戻すというのを繰り返してストレスを解消している。
最も彼女の刀は世に言う刀というよりもトンカチに近く、医者桃花自身は『ミョルニル』と呼んでたりする。
「私の能力じゃあ心は治せないからね。ちゃんと傷になってないとどこ治せばいいかわからないし」
「そういうのは医者自身のスキルが試されるだろう」
「私は精神科医じゃないんだよ。外科医なのー。専門はー」
「そういえばずっとこの姿なのによく医師免許なんて取れたな」
医者桃花は鼻を鳴らして、口を尖らせる。
「これでも生まれたのはかなり昔だからね。ちゃんとしたルートで入れたよ」
後ろを肩越しに指す。先には額縁がかかっているのが見える。その中にはちゃんとした医師免許的な何かが入っているのだが
桃花の視力では見ることが出来ない。
「まぁ苦労したことは認めるよ。だけどまぁ丁度能力に合う仕事に就けて……」
医者桃花が言葉を切る。桃花は不審に思い、口を開こうとするがすぐにその原因がわかる。
誰かが走ってくる足音。誰だかはわかる。医者桃花が腰のトンカチを手に取る。
医者桃花が飛びかかる。同時にドアが開く。しかしそこにいたのは予想外の人間だった。
「げぇ、ハルトシュラー!」
そこにいたのは見慣れた黒髪ポニーテールではなく銀髪のロング。魔王ハルトシュラー。
いや。桃花はすぐに思い直す。ハルトシュラーが来るはずがない。それに腰に下げているものは正しく。
医者桃花も瞬時に気付いたのだろう。でも、一瞬の迷いが隙を生んだ。
魔王の刀は抜かれ、一瞬の煌きを残し再び鞘に戻る。
医者桃花の左脇から右肩に一本の線が入り、赤に染まる。
「はっはー! そう何度もやられるか!」
しりもちをついた医者桃花を見下ろして、魔王、いや、おしゃべり桃花は言う。
先ほどまでの銀は黒く染まり、後ろで一つに結ばれ、体型も見る見るうちに大きくなる。
「私の能力はとっても地味だけどねぇ。こういうときは使えるんだよねぇ。
 ふっふーん。思い知ったか! たとえ何度治されようが痛いものは痛いんだよ!
 たまにはその痛みうおっ!」
深手を負っているはずの医者桃花が飛び跳ねるように起きるとその勢いのままトンカチを振るった。
左脇腹への攻撃をなんとか刀で防ぐ。が、おしゃべり桃花の本来の刀に対し、医者桃花のそれはあまりにも近接に特化しすぎていた。
少ない面積。その一点に注がれた力は想像を遙かに超える力を生み、そして。
「あっ」
おしゃべりの刀を折った。
医者桃花の口が裂けているかのように笑う。
「貧弱貧弱ゥ!」
刀を砕いたトンカチをそのまま振り切り、おしゃべりの右肘から先が飛ぶ。
「我がミョルニルは!」
返す刀、いや、トンカチで左肩が消し飛ぶ。
最早防御すら出来ない。だが、医者桃花は攻撃をやめない。
トンカチを右手に持ちかえると、一歩大きく踏み出した。
「砕けない!」
振りかざされた一撃はおしゃべり桃花の心臓に直撃した。

今日も良く晴れている。昨日は雨だったが雲は既に流れていってしまったようだ。
だが、予報によると明日も雨が降るらしい。三寒四温とはいつくるのだろうか。
風と沈黙が流れる。桃花もさすがに言葉が浮かばない。
医者桃花もおしゃべり桃花も何も言わず洗濯物を干している。
桃花はやれやれと肩を竦める。
どうやら暗雲は思ったよりか早くきたようだ。
どっとはらい。
114創る名無しに見る名無し:2010/04/14(水) 23:05:46 ID:QFEtNfut
医者ヒドスw
115創る名無しに見る名無し:2010/04/15(木) 01:19:14 ID:jUtWIMPM



               , -ー - 、- 、
              /ノvv、_ヾ ヾ l     辛い思い出の出来事を
              l|┃ ┃ Y l {
              l 、−  、、} l'ヽ_ソ     打ち消すように虹を引いた
            =(^レ(ヾy/_, レ`、ニニニニニニフ
              レ l,桃==\__ゝ          あの人は幻だったのでしょうか?
              [=],> 、ミ,ミゝ
                   ヽ_」  )  )   wW,w,.
                                     ,.,.,
116創る名無しに見る名無し:2010/04/15(木) 02:41:53 ID:2mobRHR8
>>115
茶木みやこさんの「まぼろしの人」かと思ったけど
微妙にちがうね
117無限桃花外伝〜新世界へ〜 ◆wHsYL8cZCc :2010/04/16(金) 23:43:25 ID:/Oh/ddnl
「終わったわね」
「ああ。終わった」
「で、どうだった?書き終わった感想は?」
「……ヒドイ出来だ。出来れば抹消したい」
「ふふ。それじゃ私もみんな消えちゃうね」

 男はまた幻覚を見ている。
 居ないはずの桃花との会話は、はたして疲れから来る気の迷いか、アルコールの成せる業か。
 とにかく、男はある決意を桃花に伝えようとしていた。

「俺さ……」
「なに?」
「もう桃花は書かない。書こうと思ってた外伝も、繋がるはずだったあのレンジャーも」
「それでいいの?」
「解らない。お前は?」
「さぁ?あなたがそう思ったんなら私はそれでいい。それを決めるのは――」
「俺か」
「そう。私はまだ何の思いもない。まだあなたは書いてないから」
「だよな。そしてもうお前を書かないと決めた」
「私からその答えが出る事は無い」
「そうだな」
「でも何で書かないって決めたの?」
「簡単だ。お前は俺が考えた物じゃない。彼方もだ。寄生共も最初から用意してあった物だ。
俺はそれに物語を付けただけ。それも破綻したクソみたいな物を」
「ヒドイ言い草ね。私がけなされてるみたい」
「だがお前は俺の物じゃない」
「……そうかもね」
「もっとちゃんとした作品もある。俺は自分の話よりあのクロスオーバーのほうが好きだ」
「そうなの?」
「さよならだ。桃花」
「……ええ」
「たまに思い出したら読み返してみるよ」
「それまでは何をするの?」
「俺だけの世界を造る。どれだけかかるか解らないが……」
「そう。大丈夫なの?」
「大丈夫さ。君が教えてくれたから」
「私が?何か言ったっけ?」
「忘れたのか?いつも君に助けられたじゃないか」


――物語は一人で歩き出すって
118創る名無しに見る名無し:2010/04/16(金) 23:44:56 ID:/Oh/ddnl
酔って書いた。
後悔はしている。
119創る名無しに見る名無し:2010/04/16(金) 23:55:30 ID:/Oh/ddnl
エロイ人凄ぇよwww
120創る名無しに見る名無し:2010/04/17(土) 21:52:28 ID:T/mw/oN3
ここは海沿いの創発の館(仮)。
時は四月。季節は春。桜は咲き、生物たちの命が再び溢れゆく季節。
窓の外には暖かそうな、思わず猫のように丸くなってしまいそうな陽射しが
ない。
久しぶりに自分の部屋で起床したサムライポニーテール少女、無限桃花が見たものは
所謂ホワイトアウト。猛吹雪であった。
しばし窓の外を見た後、再び寝ることにした桃花。寝つきはいいほうではあるが起きたばかりだとさすがに眠れない。
もう一度外を見る。吹雪。桃花はタイムスリップでもしたのだろうと考えることにした。
控えめなノックがされる。どうやら朝食が来たようだ。声をかけると見慣れた人物が入ってきた。
「おはよー」
「ロr、いや料理長さん。おはようござます」
「ロリ桃花、ね。そうかそうか。君はそういうやつだったか。食事はボッシュートさせていただきます」
「いや、待て。待ってください。すみませんでした」
仕方ないなーと言いながら部屋に入るロリ桃花。荷台の上には二人分の料理が載っている。
他の部屋にも配達があるのかと思ったがそうではないらしく、荷台をテーブルまで持っていくと二人分並べていく。
桃花が椅子をもう一つ持っていく頃には、いつも座っている席にロリ桃花が着いていた。
「それじゃあいただこうか」
「そうですね。いただきます」
ちなみに本日の朝食はごはんとみそ汁とおかずという和風セット。詳しい説明は省くがそれはそれはおいしいもので
思わず頬が落ちてしまいそうな出来である。こんなおいしいものが食べれるのは正しくこの館に住まう者の特権であろう。
「ところでこの天気は一体なんなんだ?」
食後のティータイムに桃花がロリ桃花に訊ねる。
「うーん、突然異常気象になったみたいだけどね」
「突然?」
「そう。昨日までは今日の天気は快晴のはずだったんだけどいきなり天気が崩れて」
ロリ桃花が外を見る。いきなり天気が崩れることはあるだろうが四月に吹雪なんてのはおかしい話だ。
桃花もここに来て決して長いほうではないが、普段の気候から考えると南極だとか北極ではないと思っている。
ならばこの天気。春の吹雪の理由とは一体。
「冬の妖精でも暴れてるのかな」
「確かにファンタジーみたいな天候だが……」
「いやいや、いるよ。冬の妖精」
ロリ桃花曰く、冬の妖精とは冬にやってくる可愛らしい少女(無限桃花ではない)で春になると寒い地方に去っていくらしい。
俄かには信じがたい。確かに無限桃花のいたこともある日本では妖怪などが信じられていた。が、実際にいるとは思っていない。
しかしロリ桃花は至って普通にその話をする。雨が降った後、虹が出ることがあるよ。と同じくらい当たり前に言ってのけてしまう。
「こういうのは図書館にいけばわかるかもね」
「図書館か。行ってみるかな」
残念ながらロリ桃花はこの後も仕事らしく、桃花一人で行くことにした。
部屋の前で別れ、桃花は図書館に向かう。ここの廊下は相変わらずあまり光度が高くない。
薄暗いせいかどこか寒いくらい。両手で体を抱いて少し温まる。寒い。そう、おかしいくらい寒い。
前から明らかに気温に違う空気が流れてくる。どこかで窓が開いているのだろうか。そんなことを考える。
しかしそれがすぐに違うことに気付く。廊下に白い物が落ちていたからだ。それは正しく現在外を埋め尽くしているものと同じ。
「なんで雪が……」
霜を踏むような音が聞こえる。空気が段々と寒いを通り越して冷たくなっていく。
「ふふふ」
少女の笑い声。しかしそこに温かみはなく、ただただ冷たい。冷笑とはまさにこのこと。
「桃花」
背後からの声に驚く。振り返るとそこには室内だと言うのに雪山に向かうかのような防寒具を着込んだ人間が立っていた。
仲間である感じはする。だがいかんせん格好が格好だ。分厚い服のせいで体格はわからず帽子とゴーグルで不審人物にしか見えない。
だが前方からは謎の冷気を伴う少女。仕方ないので不審人物に駆け寄る。
「これを被れ」
ぶっきらぼうに言うと大きな毛布をかけられる。寒さが幾分和らぐ。さらに桃花の体を引っ張り、胸に引き寄せた。
あまりのことに開いた口が塞がらなくなる。桃花は乙女なのだ。不審人物だがこんなことされろとなんだかときめく。
「ふふふふふ」
ときめいている場合ではない。冷気はすぐそこまで来ている。不審人物は桃花を右手で抱き、空いた手で腰に着いていたものを
冷気に向かって投げた。
それは一瞬形をゆがめた後、廊下中に炎をばら撒いた。
そこまで来ていた冷気がなくなる。桃花は不審人物に抱かれたままその場から逃げ出した。
121from goddess ◆wHsYL8cZCc :2010/04/18(日) 10:55:32 ID:rfUNeAXM
 蒼い空が見える。
 長い冬が過ぎ去った後に見える途方もない蒼。それは精神にプラスの効果をもたらし、新たな始まりへの不安や葛藤を一時は忘れさせる。
 ほんの一時の事とはいえ、それだけで癒される。

「頑張り過ぎないで」
 誰かがそう言った。土に交じった花の蜜のような甘い香りがした。
「大丈夫。きっと出来る。自分でそう思わなきゃ、何にも出来ない。自分を信じて」
 蒼い空は僅かに揺れた。同時に身体を包むような暖かさを感じる。
「あなたは思いを形に出来る。それは素晴らしい力よ。みんな持ってる力だけど、あなたはそれに気付いた。だから、きっと大丈夫」
 蒼い空がまた揺れた。花の香りがまた鼻を摩る。
 身体の力が心地よく抜けて行く。
「『それ』を行うのは簡単ではない。『それ』を終えるするのはもっと大変。だからこそ挑むの」
 突如、蒼は放れて行く。
 頬を触れる蒼はゆっくりと彼から遠ざかり、蒼はその姿を表す。
 彼が見ていた蒼は、空では無くその長い髪。「自分を信じなさい。私は何も生み出せない。だから生み出す者を私は愛します。
偽り無く自分に挑みなさい。自分に嘘をついたら、何も生み出せない。
だから、もっと自分を信じて」
 蒼は放れて行く。甘い残り香をその場に置いて。
「迷う事は仕方がない。悩む事だって当然の事。でも、それはすべてあなたの為よ。
大丈夫。私はいつも傍にいます。見守っています」
 蒼は遠くへ去っていく。残ったのは今度こそ本物の青い空。
 幻覚かも知れないが、彼は十分に癒されていた。

 彼は女神に抱かれていたのだから。
122創る名無しに見る名無し:2010/04/19(月) 01:28:26 ID:Hw4xtHxO
引き続きここは海沿いの創発の館(仮)。
サムライポニーテール少女、無限桃花は謎の防寒具不審人物に抱かれたまま廊下を疾走、否、運搬されていた。
厚ぼったい防寒具を来ているにも関わらず、止まることも転ぶこともなく走っている。
話しかけようと思ったが答えるのは難しいだろうと思い、やめておくことにした。
どのくらいは知っただろうか。長い回廊を抜けた先には玄関のサロンがあった。
サロンと洒落た名前が付いているが専ら『玄関広間』だとか『玄関』だとか言われることが多い。
ソファーにテーブルと少し洋風な造りにはなっているがやっていることと言えば将棋を打ったりトランプをしたり
テレビ争奪戦を繰り広げていたりするのでどちらかと言うと一般家庭の『居間』にあたるのではなかろうか。
普段から人がそこそこいるがソファーは必ず座れる程度の混みようでしかない。
だが今日は違った。桃花のいる二階部分から見下ろすサロンにはその辺中人人人、というよりも桃花だらけである。
桃花は思わず目眩を感じる。これだけの桃花がここにいたのかと痛感した。
防寒具の動きが止まり、開放される。桃花はちょっとだけ躊躇った後、離れてお辞儀をした。
「助けてくださってありがとうございます。この恩はきっとお返しします」
「律儀な奴だな」
防寒具が帽子とゴーグル、マスク等を取り、顔を露わにする。その顔を見て、桃花はなんとなく気持ちが落ち込んだ。
そこにいたのは屋上で会ったことのある大人桃花だった。
「気にすることはない」
大人桃花はそう言うと階段を降り始めた。慌てて桃花が着いていき、横に並ぶ。
ちょっと俯き、もじもじしながら言う。
「その、感じが男っぽかったから……。まさかあなただったとは……」
「この格好だ。仕方あるまい」
「それ、暑くないんですか」
「暑い。が、君を救出するには必要だった」
大人桃花がちらりとこちらを見る。心なしか頬が赤い。それでも言うほど暑くは見えない。
しかしこの細身の体からあれだけの力が出るなんてどうなっているのだろうか。
この館は常識というものを知らない人間も多いし大人桃花もそうなのかもしれない。
大人桃花が机を囲む集団に向かう。その周りにはいくつかの防寒具が転がっていた。
「戻ったぞ」
大人桃花が声をかけながら防寒具を放り出していく。机を注視していた集団が全員こちらを見る。
その中に一人だけ見知った顔があった。
「おー。大丈夫だったか。結構危なかったな!」
おしゃべり桃花は立ち上がると桃花が被っていた毛布を取った。
「怪我はないみたいだね。うんうん。よかったよかった」
「……一体何があったのか教えてもらえないか?」
「そうだな。実は……」
おしゃべり桃花はその名(あだ名ではあるが)に恥じないおしゃべりなので割愛させてもらうが
簡単に説明すると冬の妖精がここから北へ向かう途中、『寄生』されてしまったそうだ。
『寄生』された妖精は桃花に対して恐ろしいほどの敵意を持っているらしく、館内で暴れまわっている。
決して弱いわけではないのでこうして一箇所に集まることにより、個別撃破を防いでいる。
「しかし寄生はこの世界にいなかったんじゃないのか?」
「いなかった、はずなんだけどね。どうやら発生したらしい。もしかしたら他世界で何かがあったのかもね。
 どちらにしろ推論の域は出ないわけだしとりあえずは目の前の問題を対処しないとね」
おしゃべりが机のほうを見る。先ほどまでの集団に大人桃花も加わって、机の上の何枚かの紙を見ている。
どの真新しい紙にも細いがはっきりした線といくつかの動く点が書かれていた。
「これは……地図か」
「その通り。動く点は実際の生物だね。この能力は本当にいいよね。便利そうだよ」
どうやら誰かの能力ではあるらしい。しかし集団の中の誰かまではわからなかった。
先ほど大人桃花がいいタイミングで駆けつけてきたのもこれがあったからなのだろう。
しかし相手の動きを把握しているということは、つまり迎え撃てるのではないだろうか。
桃花がそう言うとおしゃべりはにやりと笑い、ゆっくりと青い点に近づくねずみ色の点を指した。
「餅は餅屋ってやつだよ。妖精なんて魔法の塊みたいな生物にはこちらも魔法の塊で対抗するのさ」
そう言っているうちに二つの点は一つの廊下で向かい合っていた。
123創る名無しに見る名無し:2010/04/19(月) 01:31:33 ID:Hw4xtHxO
そこに漂う冷気は今までの比でないくらい強い。その桃花は眼鏡を上げる。
しかしその強力な冷気も眼鏡桃花までには届かない。なぜなら図書館でついでに得た防寒の術を知っていたからだ。
「ふふふふふ」
冷気のそれは笑っている。片手にはまるで桃花たちのように黒い刀らしきものが握られていた。
威圧しているのかもしれない。だが眼の前の眼鏡桃花は懐から小さな図鑑を取り出すと、中の挿絵と妖精を見比べていた。
「冬の妖精……ではあるみたいね。なんだか黒い羽が余計に生えてるけど寄生のせいかしら」
霜を踏むような音を立てて、妖精が一歩ずつ間合いを詰めていく。眼鏡桃花はそれを気にすることなく図鑑に没頭している。
「捕獲、してみたいけど出来るかしら。あと新しい魔法も試してみたいのよね……」
あと一歩で刀の間合い。と言ったところで眼鏡桃花が図鑑を閉じる。それを合図に妖精が刀を振りかぶって遅いかかって来た。
眼鏡桃花はそれを見ることなく、後ろに跳んで避ける。風で浮力を得た体はより遠くまで運ばれ、再び間合いが開く。
妖精が刀を上げると、黒い電気が走り始めた。眼鏡桃花は図鑑を懐に戻し、一枚の紙を取り出す。
電気がはじける音。振り落とされた刀から黒いそれが一直線に眼鏡桃花に向かう。眼鏡桃花は手に持っていた紙を投げる。
紙は一瞬だけ勢いよく飛び、雷に当たって消えた。
妖精の羽が震えると空中にに氷柱が出来始めた。眼鏡桃花はそれを見て、右手を少し前に出す。
「炎よ。壁を作れ」
氷柱が先ほどと同じように飛んでいく。だがそれも炎の壁に阻まれ、眼鏡桃花には届かない。
「氷よ。足を掴め」
妖精の周りに漂っていた冷気が急速に妖精の足に集まると一瞬で凝結した。
刀を振り上げて、氷を破壊しようとする。しかし氷は硬く表面が削れるだけ。
ゆっくりと眼鏡桃花が近づいていく。懐から何枚かの紙を取り出し投げると彼女の周りを包むように周り始めた。
妖精が再び雷を飛ばす。周っていた紙が雷にあたり、消える。
この時、初めて妖精の顔に恐怖の表情が浮かんだ。いや、それは妖精自身ではなく、中にいる寄生の感情なのかもしれない。
妖精が次の攻撃をやるよりも早く、眼鏡桃花の刀が抜かれた。あまりにもあっけなく妖精の刀を握っていた手が地面を転がる。
悲鳴を上げる妖精を横目に眼鏡桃花は刀身を持ちながら、握り手を上げた。刀は音もなく折れ、塵となって消えた。
「期待はしてなかったけど偽物ね。さてと……」
周っていた紙が一枚。空を切る音と立て、残っていた手が床に落ちた。再び悲鳴が上がる。
眼鏡桃花はそれを気にすることもなく、床に水を撒き始めた。片手には先ほどとは違う図鑑。
記憶はしているつもりだが儀式というのは手順を間違うととんでもないことになりかねない。だから彼女は確認しながら作業する。
「無限……桃花」
妖精が絶え絶えに言う。眼鏡桃花はちらりと妖精を見て、作業を続ける。
「必ず……地獄に落としてやる」
「そう」
最後の作業が終わり、図鑑を閉じる。眼鏡桃花の後には一つの魔方陣が出来上がっていた。
「それじゃあ先に言ってもらおうわ。最も私は行く気ないけど」
彼女が鞘に収めていた刀を再び取り出し、切っ先を魔方陣の端に合わせる。
「冥界に住まうモノよ。この門を通りて、来たれ」
魔方陣が紫色の炎に包まれた。妖精はその炎の先に悪魔の姿を見た。

突然現れた黒い点は青い点にぶつかり消した後、これまた当然消えた。
そこにはねずみ色の点しか残っていない。つまり終ったということなのだろう。
その報を聞いて、サロンに歓声が響き渡る。ガラス窓の外はいつの間にか青空が広がっていた。
その空は冬の終わりと春の始まりの青だった。
どっとはらい。



自分もそろそろキャラまとめとか題決めとかしようかな
124創る名無しに見る名無し:2010/04/19(月) 02:15:43 ID:d4lWCI+6
桃花だらけなんでキャラまとめは是非欲しいところだw

寄生がより不気味に書かれてるのが世界観にマッチしてていいな。
125創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 01:48:56 ID:5mhYi29g
>>124のためじゃなくて俺のためにまとめるんだからな!
タイトル:無限桃花の愉快な冒険(元クロスオーバー)
キャラまとめ
無限桃花
本編の主人公。『他世界を旅する』という能力を持っている。
現代の日本における一般的なセーラー服を着用し、長い刀を腰に挿している。
刀を抜かないことを信条としているが、他人の刀は平気で使う。
脅すのに音を立てる程度に抜く。そのため戦闘は素手のみ。なかなか強かったりする。
初期のころはやたら空気が読めない性格だったりしたかもしれないけどきっと気のせい。
背も高くなく低くなく体型も至って普通。主に突っ込み役に回っている。
ハルトシュラーを探す旅をしていたが目的を達成した今は適当に館で生きている。
弱点はわき腹。

おしゃべり桃花
よく喋る甘いモノが好物な無限桃花。『他人になりきる』という能力を持っている。
おしゃべりではあるが悪いやつではない。自身曰く「戦闘力はさっぱり」。
ちゃんとした刀を持っており、必要とあらば抜く。いろいろと悲惨な目に合いやすい。
バームクーヘンのくるくるを剥がすタイプ。

ロリ桃花
身長は主人公の腹ぐらい。スーパーロリータガール。この館の料理長であり、『他人の心を読む』という力を持つ。
本人は「お と な」と言い張っているが見た目言動どれをとっても残念ながら子どもである。
心は読めるが会話をするのも好きらしい。

大人桃花
無理矢理にまとめたポニーテール。冷めた目つき。長い足。立てかけた黒い刀。控えめな膨らみ。
煙草も吸う大人っぽい桃花。口数も少なく、いつも一人で屋上にいる。
細身だが恐ろしく体力があるのか、重防寒具の上、人を抱いたままでも走れる。

眼鏡桃花
眼鏡をかけた図書館にいる桃花。『魔術を扱う能力』を持っている。
膨大な書籍を毎日読み進めている。創作者の気分で抹消される身分が嫌らしく
日夜枠を超えた存在について研究している。
新魔法開発にも余念がなく、実験体を探しているようだ。

変態桃花
金色のピニーテールにパンツと見間違えるようなピッチピチのズボンと巨大な胸部を強調するようなシャツ。
『犬並みの嗅覚』を持っているらしいか能力か不明。短く太い刀を所持している。
人を襲い、相手の心に深い傷を残していく。襲うと言っても目立つような外傷を与えるわけではない。察しよう。
人を襲った後はとても生き生きしている。

医者桃花
白衣と眼鏡をつけた桃花。『対象の状態時間を戻す』能力を持っている。
補足をすると頭が吹き飛んだ桃花に使用した場合、頭が吹き飛ぶ前の状態まで心身とも修復するというもの。
ちなみに記憶は頭が吹き飛んだ「後」のも残っているため臨死(実際は死んでる)が体験出来る。
殴るために刀『ミョルニル』を所持し、戦闘能力はかなり高い。さらに暴力的。
正規ルートで大学を卒業しており、専門は外科。

冬の妖精 冬をもたらす可愛らしい妖精。寄生されたがために眼鏡桃花に無残なことになる。
配給係の桃花 仕事は性格丁寧。
弟子 男性。苦労人。
ハルトシュラー 魔王創作者
クロスオーバーが14と15ダブっているようなのでその分登場話数は前倒しにしました。
本当に既存の情報をまとめただけだからね! 一段落的なまとめだからね!
126創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 01:52:11 ID:5mhYi29g
登場話数とか書いてるけど途中で消したので存在しません。
眠いとだめだな。寝るか
127創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 02:23:59 ID:IYtKKdCf
乙。そういえばセーラーだった事を思い出したw
128孤高の王様 ◆wHsYL8cZCc :2010/04/20(火) 15:56:10 ID:IYtKKdCf
「笑止」
 一言だけだった。
 淡い期待は打ち砕かれ、彼女はその一言を放った者に憤りすら覚える。
「いくらお前が創作者を愛でようと、それを行う者が進化を続ける確証はない」
 それは彼女も十分理解している。しかし、その可能性そのものを彼女は護りたいのだ。
「突き放すべきだ。無駄な援助など不用。いや、むしろ害悪と心得るべき」
 これだけは理解しがたい。
 彼女は自らの信念のもとに言い返す。
「それは甘えなのだ。何も生み出せぬお前にはやはり理解できないか?
造ると言うのは孤独だ。限界まで己と対話し、自らの血を搾り出す。それが創作だ。
それ故に創作物は貴重なのだ。
そして、それを行うのは結局は己自身のみ。それも孤独な……」
 蒼い髪は震えた。
 何も生み出せない。だからこそ、彼女は生み出す者達を愛するのだ。
「お前が行っているのは創作者に血肉を差し出すよう催促しているに過ぎない。
それはお前が最も忌み嫌う『壊す者達』と同じではないか?何も生み出さず、何も受け入れない者達と……」
 蒼い髪は悲しげに揺れる。
 己では解っていた。しかし、決してそんなつもりでは無い。
「……お前がどう思っても、結局は変わらない。創作者達はお前が居ようが居まいが、造り続ける。
お前の意思など、結局は関係ないのだ」
 解っている。彼らはそういう生き物なのだ。
 なぜ創作するのか?彼らにも、恐らく目の前の少女にすら答えられない。
 誰かの為でも、自分の為でもない。
 ただ、造るのみ。
 それはまさに、目の前に居る魔王と同じ姿だ。

「私は孤独でいい。それこそ私が求める物。誰よりも高く、何者も追いつけぬ境地。
それこそ私の望み」
 魔王はそう言ってのける。
 彼女には到底不可能な事だ。ならば、彼女は何をすべきか――


「ならば……私は貴女すら愛するわ。たとえ貴女の血肉すらも」
 何も生み出せない。故に、彼女は生み出す者を全て愛する。例え世界を二分した宿敵すらも。

 蒼い髪がまた揺れた
129創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 20:54:22 ID:jG/AqvtA
なんだこのカッコいいハッちゃんw
うちのとは大違いだw
130 ◆wHsYL8cZCc :2010/04/20(火) 21:25:51 ID:IYtKKdCf
じゃあカッコ悪いハッっちゃん投下。

「妹よ、姉の頼みを聞いとくれ」
 だらし無く床に垂れた髪。頭頂部にはテキトーに造ったおだんご。それに突き刺さる簪もとい達磨の耳かき。
 見間違いでは無い。彼女は間違いなく、あの『女神様』である。

「なんですかぁ」
 間延びした声が聞こえる。発子の妹ひなのである。本来は表には出ないが一応彼女も女神様。家に帰れば姉とも会う。
「コンビニまで行っとくれ」
 発子はガマグチから四つに畳んだ千円札を差し出す。
「またファミチキですかぁ〜?サンクスのほうが近いのにぃ〜」
「脂っこいんだもんサンクスの」
「自分で行けばいいじゃないですかぁ〜。だいたい私あんまり表に出るのは……」
「見とくれこのだらっとした髪を。またまとめんのはすんごい面倒なわけ。着替えるのだって面倒。あのタイツすんげー伝線するし」
「別にコンビニくらいドテラきたまま行けばいいじゃないですかぁ〜」
「一応イメージってもんがあるのさね。さっきもあの銀髪のクソガキに大見栄切ったばかりだし……」
「(イメージもへったくれもねぇだろ。テレビ買い替えろや)」
「何か言った?」
「何にも言ってないですぅ〜」
「というわけで頼むよ」
「ぶうぅ〜(マンドクセ)」

 ……。
 彼女達は女神様。



こうしてメインの作業が遅れて行くのだ。息抜きにはなるけど。
131創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 21:37:42 ID:jG/AqvtA
ひでぇw
でも何かホッとするのは何故だw
132創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 21:50:58 ID:5mhYi29g
発子も設定が安定してきたな
あとはひなのが安定すれば創発三大女神が完成する
何かと使えそうだし楽しみだ
あとwiki見てたんだけどクロシェア面白そうね
133創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 21:53:41 ID:jG/AqvtA
ロウとカオスとニュートラルと見せかけて全員カオス、という三女神な気が・・・w
134創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 21:56:10 ID:5mhYi29g
創作者全てを愛する発子のロウ
創作者とは孤独たれと説くハルトのニュートラル
なんか妬んでるイメージがあるカオスのひなの

何の問題もない。強いてあげれば俺がロウカオスニュートラルを理解してないことくらいだろう。
誤差の範囲
135創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 22:11:10 ID:IYtKKdCf
しまった。ミカンを皮ごと食わせるのを忘れてた。
136創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 22:24:50 ID:Q8MssYak
法と秩序を重んじるロウ
自由と混沌を重んじるカオス
どちらにも属さないニュートラル

加えて別の属性があり

建設的で前向きなライト(Light)、
中庸のニュートラル、
邪悪で破滅的なダーク(Dark)

がある、これで大体の思想を表すことが出来る

スレの維持と秩序を絶対のものとし、献身的に働く発子さんはLaw - Light
奔放で無邪気、気まぐれで俺達にに近い存在の裏ハルトさんはNeutral - Neutral
破壊と創造、創作の表裏を併せ持つハルトさんはChaos - Light

てとこかな
137創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 22:53:30 ID:5mhYi29g
ほほう
秩序と混沌っていうのはなんとなくわかってたが
そんな区分けされてたのか
ちぃおぼえた
138創る名無しに見る名無し:2010/04/21(水) 22:55:53 ID:jklyc0uh
>>135
それは忘れてていいと思うぞw
139創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 22:28:14 ID:fpere/VA
エロパロで暴れてる奴いい加減にしろ
桃花ひいては創発のイメージ最悪だろあれじゃ
どんな過疎スレでも見るだけならかなりの人数が見てんだよ
140創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 23:35:51 ID:x9WLYzbv
こっちじゃなくて雑談でやってくださいよ…
141創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 02:10:38 ID:ntHzIll7
エロパロで暴れていらっしゃる糞桃花さんのSS作者さんのスレはこちらですか?
早くしたらばに移動してくださいねw
移動しないならこれから張り切って粘着させてもらいまーすw

ていうか桃花ってw昭和のかほりwwプ
142創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 02:24:55 ID:keLN9FIa
その作者がここの住人かどうかは知らないが無限桃花はここのキャラだね。
あんまり張り切るとあとで飽きるから適度にしたほうがいいよ。
それと桃花って名前は投下と書けてるから致し方ないことなのさ。
ついでに言うと荒らしとわかった時点でNGに放り込まれるだろうから自治スレとかにちゃんと言った方が
相手にされると思うよ。
143創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 02:54:03 ID:ntHzIll7
勝手に張り切ってますからどうぞお気遣いなくw
自治スレ?死んでんじゃんw
雑談だの自治だのスルーでも自力で処理するんでもなくて
他スレ投げ出しさすがっすねーwwなっさけなww
それ冷静なつもりですかー?クソだなwww
144創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 03:01:52 ID:ntHzIll7
あ、ちなみにうんこ色桃花さんの作者さん的には
創発の自治スレや雑談行っても意味ないそうですよw
あくまでエロパロに居座って意見とやら求めてるそうですw
それじゃーこっちだって何してもいいですよねーwwww
145創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 03:20:03 ID:4p+1lZUo
よくねぇよ。とんだとばっちりだ。
146創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 05:15:46 ID:RORHX8G0
かまってちゃんがおるな
147創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 09:44:56 ID:ntHzIll7
とばっちり?それはこんな板のスレ立てられてるエロパロ板住人のほうじゃないっすかねーw
かまってちゃんはかまわないでスルーされると消えるもんですけどねw
なんでだろ144から2つもレスついてるーw
ああ、どうしても一言言い返さないと気が済まないんですよねこちらはww
板全体ゴミかw
148創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 01:09:02 ID:mQGBlOLB
ぬるぽ
149創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 01:12:56 ID:O6iCwm4+
         
          oノ oノ
          |  |  三
 _,,..-―'"⌒"~⌒"~ ゙゙̄"'''ョ  ミ  >>148
゙~,,,....-=-‐√"゙゙T"~ ̄Y"゙=ミ    |`----|
T  |   l,_,,/\ ,,/l  |
,.-r '"l\,,j  /  |/  L,,,/
,,/|,/\,/ _,|\_,i_,,,/ /
_V\ ,,/\,|  ,,∧,,|_/
150創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 01:43:45 ID:Bz8fdIQN
ガッ!
151ウパ太郎:2010/04/25(日) 03:17:54 ID:KMHeGr6E
 ウパ太郎はモバイルの精神感応基(テレパススキャナ)越しに悪意を感じ取った。
 ウパ太郎は複雑な心持ちのまま、その悪意を責め切れずに感知し続ける。
 善意が必ずしも善で無いように、悪意もまた絶対の悪足り得ることは無く、ともすれば
世界を生み出してしまうほどのプリミティブな切っ掛けとさえ成り得る事を、ウパ太郎は
自らの存在が発生した“軸”の開闢を神格生物との語らいから知った時から、深く埒に置
いていた。ウパ太郎が生まれた“軸”もまた、悪意を初端として開闢し、善意による構築
と倦みによる放逐を経験し、流浪し、あって無いようなかそけき軸をおぼつかないまま手
繰りよせて結び合わせ、なんとか生き延びてきたのだ。
 ウパ太郎の生きる“軸”は、無限多元平行宇宙の形を成していない。
 神格生物の有限の処理能力によって都度ごとに構成され、その軸が観測される価値無し
と判断されれば、割り当てられた有限の処理能力をより観測される価値がある世界の構築
に回される。そうなれば“軸”は鼓動を止め、断絶した可能性は近傍の軸に収束するかエ
ントロピーの彼方に霧消する。
 ウパ太郎の存在する“軸”はそのようにして神格生物の興味関心の数だけ分岐分枝を伸
ばし、処理能力との兼ね合いによって収束してクビレ、また神格生物の気紛れで分岐し、
そしてクビレる。ミミズが蠢動するように“軸”は前進する。
 生と死は同様に辛く厳しい。だがウパ太郎は自らの生をそれだけのものとは考えられず、
また、そうでは無いと信じたいがゆえ、自らの存在を理由付けた悪意というものをただ単
純に一絡の悪として捉えられなかった。
 現に神格生物は、ウパ太郎達のようなモバイラーにモバイルという手段を与えた。武力
均衡を計ったほうが長く楽しめる、という考えがその根底に在ったとしても、少なくとも
延命処置を施したくなる程度には、世界を構成する者に気に掛けられている、と言える。
 だからこそウパ太郎は与えられた力の意味を考え、考え過ぎて腹を減らす。
 水面近くに浮上して口をパクつかせると、腹減ったのかウパ太郎、とか言ってスーパー
モバイラーが餌をくれる。
 飯を食って腹が膨れている間、ウパ太郎は生と死が辛いだけにとどまらないことを痛感
するのだった。

152創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 20:20:02 ID:fsAqwNyv
>>151
相変わらず無駄に頭が良さそうな事考えてるな、ウパ太郎・・・。
そして言ってる内容はワラタw ちゃんと反映させてるとかすげえw
153創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 22:01:08 ID:O6iCwm4+
ここはとある創発の館。
「あらぁ。久しぶりねぇ」
サムライポニーテール少女、無限桃花は危機に直面していた。
冬の気配も消え去り、やっと春が来たようなのどかな日。ちょっとサロンにでも顔を出すかと廊下を歩いていたら
なんと不幸なことだろうか。出逢ってしまったのだ。桃花を病院送りした張本人に。
本能的に一歩後ろに下がる桃花。一度植えつけられた記憶はそう簡単には消えない。入院生活とは一体なんだったのか。
「そんなに怖がらなくてもいいじゃない。あの時はちょっと遊び過ぎちゃったかなって反省したのよぉ」
果たして本当にそうだろうか。
そうやって油断させてまた口に出せないような、それこそ違う板でやりなさいと言われるような行為の数々を受けるのではなかろうか。
とくにあの刀。刀というかなんというかとりあえず刀であることは確かなんだがいかんせん刀というよりも棒に似たあの刀。
あれが危険なのだ。医者桃花のように純粋な破壊力を求めているわけではない。だがあの刀は女性に対しては医者桃花のソレ
を遙かに越える精神攻撃が可能なシロモノだ。どんな攻撃か気になる人間もいるだろうが今はここに書くことじゃない。
桃花にとって重要なのはいかにこの場を切り抜けるかだ。次同じ目にあったら人生からリタイアする可能性が高い。
変態桃花が一歩踏み出す。無駄にでかい胸部が意味もなく揺れる。
「ち、近づくな! 次、一歩近づいたら……斬る」
腰に差した刀を少しだけ相手に見せる。脅すために。だがそれは何の意味も果たさなかった。
「知ってるわよぉ。あなた、刀を絶対に抜かないんだってねぇ」
変態桃花は知っていたのだ。桃花が刀を抜かないことを。ならばこの行為がどれだけの意味があっただろうか。
体術では敵わない。とすれば逃走するしかない。だが変態桃花の嗅覚は犬のそれと同じ程度と自称している。
「別に今日は襲うわないわよぉ」
その嗅覚から逃げることは出来るのか? 犬のそれと言っても桃花にはどのくらいのものかはわからない。
ただ漠然と「すごくいい」ぐらいの知識なのだ。眼鏡桃花なら知ってるかもしれない。だが、ここに眼鏡桃花はいない。
要は自分の匂いを残さなければいいのだ。それにはどんな方法があるだろうか。そういえば雨の日は嗅覚が効き難い
という話を「ねぇ、聞いてるのぉ? ちょっとお話したいだけじゃない」聞いたことがある。室内である以上は雨は多分
期待出来ない。ならばいっそのことをどこかで水を被ればいいのではないだろうか。濡れるがアレを受けるよりかは
ましだ。しかし水に濡れたら匂いは断てるのか? そもそも水を浴びる時間を変態桃花がくれる保障は?
ずっと逃げ回っていれば変態桃花も疲れるだろう。だが奴が自分以上の体力があったらどうしようもない。
ならば鞘に入れたままの刀で対抗するのはどうだろうか。奴の刀は所詮こちらとくんずほぐれつになったときにしか
使えないものだ。リーチがあ「ちょっとぉ。大丈夫ぅ?」る分近づかせず攻撃することが出来る。桃花は体術よりかは
劣るが剣術だってそこそこの自身がある。相手が一瞬でこっちに近づく技を持っていなければそのまま間合いを取りつつ
その時、桃花は肩に何かが置かれる感覚がした。思考が中断し、反射的に自分の肩を見る。
そこには手が置いてあった。そのまま手を辿っていくと心配そうに桃花を見る変態桃花の顔が近くにあった。
「本当に大丈夫ぅ? 汗すごいわよぉ?」
「あっ……が……」
一瞬。さっき見たときは数十歩の間合いがあった。なのに一瞬で。
今、変態桃花と桃花の間合いは一歩もない。刀の懐。そしてあの刀の間合い。
桃花の眼の前は真っ白になった。

目を開けるとやはり眼の前は白かった。だが、その天井はつい最近まで見ていた天井。
上体を起こすと横で読書をしていた医者桃花に気付いた。
「あの変態。結構ショックを受けてるよ」
医者桃花がコーヒーを差し出す。桃花は礼をいいつつ、受け取る。
「あいつは間違いなく変態だ。だけど結構繊細なんだよね。自分でやっておきながら自分で苦しむなんて器用なやつだ」
コーヒーはブラックだった。とても苦い。だけどぼけた頭を冴えさせるのにはいい薬になる。
「あの変態は……私以外にも同じことをしてきたのか?」
「してきた。ただし一回しかやらなかった。それとお前ほど激しかったこともない」
「私にだけ特別激しかったってことか・・・…。一体なんで」
医者桃花がひとつため息を吐く。その後、コーヒーを飲む。
「生憎恋の病は専門外でね。なんにしろ変態はアレさえなければいい奴なんだ。そう怖がらずに接してやるといいさ」
その後、話が夜中まで続いたのは言うまでもない。
どっとはらい。
154創る名無しに見る名無し:2010/04/26(月) 03:13:06 ID:1K4JY02U
一瞬、襲うのか襲わないのかはっきりしろと思ったw

しかし、変態の癖に繊細とは面倒な奴だw
155創る名無しに見る名無し:2010/04/26(月) 16:23:09 ID:BHOTh2E2
素晴らしい変態だw
もっとやれw
156創る名無しに見る名無し:2010/04/28(水) 23:38:05 ID:iDaiCkzH
ここは普通の創発の館。
「というわけなのよ」
「はぁ……」
サムライポニーテール少女、無限桃花が頭を掻く。
相変わらず陽が差さない図書館内部。ランプに照らされた机の上の資料たち。
これらは眼の前で今まで熱弁を振るっていた眼鏡桃花が用意したものだ。
「訪問する無限桃花の減少ねぇ……。重大なことなのか?」
「重大かどうかはわからないわ。でも今までコンスタントに来ていた無限桃花が
 ここまで減少するということはなにかしらの異変が起きていると考えるのが普通じゃないかしら」
この館には日夜問わず無限桃花が訪問してきているということは桃花も知っていた。
確かに最近新入りの桃花を見ないような気がする。てっきり人数オーバーでほかにでも回されて
いるのかと思っていた。
「しかし考えすぎじゃないかな。長い目で見ればこういう期間があってもおかしくないよ」
「まぁ確かにそうね。ただ単に偶然で済ませちゃえばいい話かもしれないけど」
「そもそもさ、この館に全ての桃花が到達するわけでもないんでしょ」
前に眼鏡桃花に教わったことがある。無限桃花の中には自分がそういった存在であることすら
知らないやつらもいると。それはとても幸せなことかもしれない。
ここでふと疑問が浮かんだ。
「そもそもなんでこの館に集まるんだ?」
「それは……」
眼鏡桃花が口を開けたまま固まる。視線を少し動かした後、口を閉じた。
「……そういえばなんで私たちはこの館に集まったのかしら」
桃花はこの館など来るまで知らなかった。自分の能力に気付き始め、自ら自分の能力を使い始めた
ころにあの不設定のカフェで魔王の弟子と出会い、ここに連れてこられたのだ。
だがあの時。魔王に会うために自ら連れてかれることを望んだではないか。
「全ての桃花は引かれあうのかしら」
「そんな磁石じゃないんだから……。それにこの館を全員が全員目指しているわけじゃないんでしょ」
「そこがわからないところね。桃花が集まる以上は何かあるに違いないのにそれが全ての桃花に適用
 されているわけではない。集まる桃花と集まらない桃花の差……」
眼鏡桃花は本格的に考え始めてしまったようだ。こうなれば何を言っても聞こえないだろう。
仕方ないので机に散らばる資料を整理しながら内容を読む。
訪問者の増減数。訪問者の特徴。最近の気候。政治。戦争。とりあえず少しでも関係あるかもしれない
ものをかき集めたようだ。その中の一枚が桃花の目についた。
寄生に関するものだ。
先日襲来した、春の妖精寄生。あれはこの資料を見る限り下っ端らしい。
上位寄生種たちはほとんどが退治されている。しかも一人の無限桃花によって。
これだけの英雄が訪問していれば自分の耳にも入る。つまりこの桃花も集わない桃花。
他にも寄生について細々と書かれているが今は必要ないので置いておく。
「……仕方ないわね」
眼鏡桃花が顔を上げて、立ち上がる。
「どこ行くんだ?」
出入り口に向かって歩き始めた眼鏡桃花に並ぶ。
眼鏡桃花は前を見据えたまま答えた。
「魔王に会いにいくのよ」
どっとはらい。
157創る名無しに見る名無し:2010/04/28(水) 23:48:22 ID:oJfhnm6K
ごくり…
158創る名無しに見る名無し:2010/04/28(水) 23:56:04 ID:vSuPpc5I
おお……
159創る名無しに見る名無し:2010/04/29(木) 21:31:12 ID:8FsnIerg
ここは謎に満ちた創発の館。
最上階に程近い、通常よりも大きく作られている部屋。
様々な創作品が置かれた部屋に一人の少女がいた。
いつだって創作をしているか創作物について思案をしている銀髪の少女は、今は珍しく
何かを創作するわけでもなく、何かを思案するわけでもなくただ窓から海を眺めていた。
「そろそろか……」
海が見渡せる最上階に程近い、通常よりも大きく作られている部屋
創作物に埋れたその部屋には今は誰もいない。

サムライポニーテール少女、無限桃花は眼鏡桃花とともに魔王ことハルトシュラーの
部屋を目指して歩いていた。ハルトシュラーに質問するために。
幾度かの廊下を曲った後、またしても桃花は会いたくなかった人物と遭遇してしまった。
「げぇ、変態!」
「出会い頭にそんなこと言うなんてひどいじゃない」
残念そうにする変態桃花。いつも露出多めの服を着ているが今日はなんだか普通の服を着ている。
普通じゃない部分と言えば無限桃花では珍しい金色の髪とスイカでも詰め込んだかというように
でかい胸部、そして腰に差した刀くらいだろう。結構多かった。
変態桃花は桃花と眼鏡桃花を交互に見ている。
「そういえばこの前の話、聞いたわよ。こいつと会って倒れたそうね」
眼鏡桃花が横目で桃花を見ながら言う。
「な、なんでそんなことを……」
「この館には噂話が好きな上にやたら喋る桃花がいるのよ」
「ああ、バカな上に変身出来るよく喋る桃花か」
倒れたところを見られたのか医者桃花に聞いたのかわからないがこうなった以上は
全無限桃花に噂が伝わっていると考えていいだろう。
「ああ、それと変態があなたのことが」
「ちょっとまちなさぁい!」
眼鏡桃花の台詞を途中で止める。言わんとしたことはきっと医者桃花が話していたことだろう。
そしてその噂が広まっているのはあのバカのせいだろう。桃花は一度おしゃべりをぶん殴ることを決心した。
変態はそのことを知らなかったらしく、顔を真っ赤にしながら眼鏡桃花の両肩を掴み揺さぶっている。
「なんでその話を知っているのよぉ! 忘れてしまいなさい!」
「や、やややめてー、ゆゆゆらささないいでえええ」
結構な力で揺さぶっているらしく壊れた人形のように揺れる眼鏡桃花。
とりあえず救援を求めているようなので止めることにする。
不服そうだが素直に従う変態桃花。目を回してふらふらしている眼鏡桃花を支える。
「接近戦はあんまり得意じゃない……」
「そんなの普段の君を見てればわかるよ」
「普段からその眼鏡のことを見てるのぉ?」
「え、う、うん」
「そう。仲がいいのねぇ」
えらく寂しそうな顔をしているが下手に同情すると眼鏡桃花以上に痛い目を見る気がする。
残念ながら桃花にはそっちの趣味がない。諦めてもらうことしよう。
「ありがと。もう歩けるわ」
「そういえばどこ行く気なのぉ?」
「魔王のところよ」
「げぇ……頑張ってねぇ」
引きつった笑いを浮かべながら変態桃花は足早に去っていった。
なにかトラウマでもあるのだろうか。あの変態が逃げ出すほどのトラウマが。
気を取り直し、桃花たちはハルトシュラーの部屋へと向かった。
どっとはらい。
160創る名無しに見る名無し:2010/04/30(金) 01:00:34 ID:2aTNwo91
え? ハルトさん、変態が引く程の大変態なんですか?(違
161創る名無しに見る名無し:2010/04/30(金) 23:36:45 ID:YtwwiIRj
ここは秘密の創発の館。
時折廊下から見える海は遙か眼下にある。この館を外から見たことないが相当大きな建物であることは
確かだ。この辺りの階には人が住んでいる部屋が少ないらしく普段の廊下よりひっそりとしている。
音もサムライポニーテール少女、無限桃花と眼鏡桃花の足音くらいしか聞こえない。
「なっ……」
階段から上がって五個目と六個目の間にある部屋。そここそが魔王の部屋のはずだった。
しかしどういうわけかそこには部屋はおろかそもそもドアすら存在しない。
「どうやら本物の壁ね」
眼鏡桃花が壁を触って確かめている。桃花も触ってみるが冷たい壁しかそこにはない。
叩いてみると音が響く。中は空洞のようだ。
「確かにここに部屋があるみだいだが……」
「ハルトシュラーがこの部屋を隠したのかしら。まぁそのつもりなら」
眼鏡桃花が右手を壁につけ、目を瞑る。
「大気の力を封印する陣よ。ここに刻まれよ」
魔法発動時に風が吹く。が、特に何かが起きたわけではない。
眼鏡桃花が手を離すと壁に手の平サイズの魔方陣が刻まれていた。
「さてと、隣の部屋に行くわよ」
「え、これで終わり?」
「ここじゃあ危ないから避難よ」
言われるがままに隣の空き部屋に逃げ込む。ドアを閉め、備品として置いてあった
テーブルを盾にする。
「ちゃんと抑えてなさいよ」
眼鏡桃花が右手を上に向ける。手の平には先ほどと同じ魔方陣が刻まれていた。
「解放」
手の平を握る。同時に轟音が響き、部屋のドアが吹っ飛んだ。
テーブルを慌てて抑える。ドアがテーブルに当たる衝撃が伝わってきた。
影からそっと見ると部屋の外は想像と違い、煙はほとんどなかった。
眼鏡桃花が部屋から出て行くのを慌てて追いかける。
「ちょっと強すぎたかしらね」
廊下は思ったよりもひどくはなかった。
ただし灯りは全て消えていて、見える限りでは全てのドアがなくなっている。
そして先ほどまで魔方陣があった壁は鯨も優に通れるほどの大穴が開いていた。
部屋の中も全ての物が壁を中心に放射状に広がっている。先ほどまでちゃんと
形を保っていただろう創作物を気にすることなく眼鏡桃花は奥に侵入していく。
桃花は部屋についていた窓から外を覗く。ガラスは既に消失しており、海からの風が部屋に渡る。
魔王の部屋から見える海は桃花の部屋から見える海と同じように規則正しく時折不規則に揺れていた。
「もぬけの殻だわ。逃げられたのかしら。何か見つけた?」
「いや、何も……」
窓から目を離そうとした瞬間、空が不自然に光った。
もう一度、目を凝らしてみるがいつも通りの空だ。曇っている以上は飛行機などではないだろう。
「どうかしたの?」
「いや……」
「……屋上に行くわよ。行けばはっきりわかるでしょ」
どっとはらい。
162創る名無しに見る名無し:2010/05/01(土) 00:21:29 ID:0GvhDCu8
話が続くときにも「どっとはらい」をつけるのはどうかと思うんだが
163創る名無しに見る名無し:2010/05/01(土) 00:29:26 ID:9apDI1IQ
>>162
                              /    丶
                               /  気  !
                           l      |
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::::::/l:::ハ:|,/  i ヽヘ,       '〈|         ソ'''''、
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/ | ''      \ 丶.ll''r、.,_   /::`':.、 ヽ--‐',.イ、::::::::::::::'、
:‐┴:、.       `i''y'l |: : : ``''ヽ‐''ヾil´`i';、''" /  >、:i、::::::',
    \       '-'、/ : : : : : : :`: : : lL,, l  /_ ,//: :\'、;::、
   ,.-‐ヽ,       `'-、: : : : : : : :l: 〈<,_i-‐l_,>〉′:i|: : \ヾ
  //´`.ヽ         `'-、 : : : : | : :`'ヾ l''": : : : :| : : : :ヽ
164創る名無しに見る名無し:2010/05/01(土) 04:00:44 ID:cBU+pFuR
165創る名無しに見る名無し:2010/05/01(土) 20:42:09 ID:9apDI1IQ
ここは疑惑の創発の館。
春だというのに屋上に出ると少し肌寒かった。
もう一度空を見上げるが、やはり曇り空しか見えない。
「待っていたよ」
こんな天気でもいつも通り一人で空を眺めていた大人桃花がこちらに気付く。
「何かあったんですか?」
「君達が来るということは何かあったからだろ」
そういうと持っていた望遠鏡を差し出した。眼鏡桃花がそれを受け取る。
大人桃花が海のほうを指差し、眼鏡桃花が望遠鏡でそちらを見る。
「私もさっき気づいたもんでね。いつからあるのかなんとも」
眼鏡桃花が慌てた様子で望遠鏡から目を外し、右手を前に出す。
「光よ! 矢となり影を払い、全てを貫け!」
音もなく眼鏡桃花の右手から光の矢が海に向かって放たれる。
しかし海に出てすぐ、空中に光の輪を残して消えていった。
眼鏡桃花が上げていた右手を下ろす。表情があまりにも暗い。
「他世界に渡る能力、今使える?」
大人桃花が煙を吹きながら、桃花に言う。
桃花は頷いて、目を閉じた。そういえば能力を使うのはいつ振りだろうか。
何も考えないように。自分という存在をこの世界から剥がしていく。
唐突に眼の前に壁が現れ、目を開ける。先ほどと何も変わっていない。
当然、壁など眼の前にはない。
「渡ろうとしたら壁みたいのが……」
桃花は感じたままに話す。大人桃花は再び煙草を銜える。
眼鏡桃花の眼には明らかに失望の色が混じっていた。
「魔法の障壁が張り巡らされているわ。範囲はこの館周辺ね」
「魔法の障壁? なぜそんなものを」
「館へ入れないように。と言うよりも」
眼鏡桃花がゆっくりと顔を上げて、桃花を見る。
「館から誰も出さないためにね。隔離されたのよ。この館は」
「そんな……何のために」
「理由はわからないがこれだけの魔法が使えるのはハルトシュラーとこの桃花くらいだな」
「ちょうど訊ねたいことがあって行ったらドアは壁だし、中には誰もいないし」
「さっきの轟音は君の魔法か……」
その時、間の抜けた放送を知らせる音が鳴った。
「この館の住人全員に通達。至急サロンに集まれ」
若干の空白の後にされた放送。その声の主とは一度しか会ってない。
だが絶対に聞き違えることはないだろうその声。
「ハルトシュラー……」

つづく
166創る名無しに見る名無し:2010/05/01(土) 20:47:37 ID:OYd++d+2
ごくり…
167創る名無しに見る名無し:2010/05/01(土) 20:56:29 ID:YSrzcvGN
どきどき
168 ◆EROIxc6GrA :2010/05/01(土) 21:10:43 ID:UjmKfxno
てす
169 ◆EROIxc6GrA :2010/05/01(土) 21:11:39 ID:UjmKfxno
おおおおおおおお!そうじゃんここ違う回線だから規制ないんじゃん!

チラ裏ゴメス
しゃあらじ終わったらまとめる
170創る名無しに見る名無し:2010/05/01(土) 21:15:21 ID:YSrzcvGN
久しぶりだなw
171創る名無しに見る名無し:2010/05/01(土) 21:25:15 ID:UjmKfxno
ただいま
172創る名無しに見る名無し:2010/05/01(土) 21:26:13 ID:UjmKfxno
それにしてもすさまじい更新速度だ
少し前のあおもりさんを彷彿とさせる


……まさか?
173創る名無しに見る名無し:2010/05/01(土) 21:31:23 ID:YSrzcvGN
違うよ。
174創る名無しに見る名無し:2010/05/01(土) 21:43:03 ID:UjmKfxno
ですよねー
175創る名無しに見る名無し:2010/05/01(土) 21:53:33 ID:YSrzcvGN
フフフ。
176創る名無しに見る名無し:2010/05/01(土) 22:31:51 ID:UjmKfxno
デスヨネー
177創る名無しに見る名無し:2010/05/02(日) 23:40:44 ID:5BEbPnK9
どことも知れぬ最果ての世界。外と隔離されたハルトシュラーの館。
桃花と大人桃花、眼鏡桃花の三人がサロンに着いた時には既に人で溢れかえっていた。
寄生襲来時もたくさんの無限桃花が集合していたがこれほどまでは集まっていなかっただろう。
どの桃花も何があったのか推察しているようだ。
「お、三人一緒だったのか」
おしゃべり桃花がにやりと笑う。とりあえずぶん殴っておく。
文句を右耳から左耳に受け流し、隣にいる桃花について説明を求める。
「ん? ああ、会ったことあるでしょ。ほら、寄生の時に探知してた桃花だよ」
大きなフードを被った探知桃花が頭を下げる。体がこじんまりしているように見えるのは
フード着きのコートのせいか本当に小さいせいなのかはわからない。
「しかしなんだろうな。こんなこと初めてなんだよね。
 もしかして館を改築するからお前ら手伝えとかか?」
「いや、ハルトシュラーの場合は創作すればいいのだからその必要もないわ」
「すぐにわかるだろう」
大人桃花の目線を追う。
そこに魔王は立っていた。館の主にして、無限桃花の最初の創作者。
ハルトシュラーは階下にいる無限桃花の群れを見渡した後、フンと鼻を鳴らした。
「さて、これで全員集まったわけだ。総勢173名の無限桃花たちよ」
いつの間にかハルトシュラーの声以外の音が一切消えていた。
先ほどまでの話し声も布の擦れる音も。まるで世界がハルトシュラーのために音を出すのをやめたようだ。
「この館について疑問に思う人間が出たようだからな。丁度いい機会だし説明してやろう」
ハルトシュラーがこの時、こちらを見た。
確かに微妙な違いがあっても根本的には同じ人間である桃花の軍団から正確に
こちらを見たのだ。桃花は思わず目線をそらす。
「最初に言葉が生まれた。すなわち『無限桃花』という名前だ。そして三つの設定を加えた」
ハルトシュラーが指を折りながら数える。
「即ち、『黒い刀を所持』『ポニーテール』『18歳程度の女』の三つだ。これはお前達も知っているだろう」
無限桃花を構成するための大前提。多少の差異はあれどほとんどの無限桃花がここに当てはまる。
同時にこの設定を破ることが出来ればそれは創作者の手から離れた何かになれると眼鏡桃花は言っていた。
「しかしここに私はもう一つ、言うなれば裏設定を付け足した」
初めて無限桃花たちがざわつく。隣の眼鏡桃花も驚いたような表情をしている。
「その設定は最初に出した三つの設定よりも遙かに簡単に越えることが出来る設定だ。
 逆にこれほど簡単な設定を乗り越えることが出来ない無限桃花は他の設定を乗り越えることなど
 到底出来やしない。その時点のそれらの無限桃花は創作物としても、そして無限桃花としても成長
 を望むことは出来ないし、何の魅力も感じやしない。悪く言えば失敗作と言ったところか」
ハルトシュラーが再び階下を見渡す。桃花は嫌な予感がした。
この創作者は自分がもしも失敗作を創ってしまったらその作品はどうするのだ?
「その設定とは『この館に集まる』というものだ。つまりお前達のことなのだよ」
一斉に叫び声が上がる。建物が震えるほどの音が館に響き渡る。
それが悲しみなのか怒りなのかはわからない。
しかしハルトシュラーの声はそれらにかき消されることはない。
決して大きな声ではないのにこの音の嵐の中でも桃花はハルトシュラーの声を聞き逃すことはなかった。
「本来ならば予定にはなかったがこの裏設定に気付きそうな無限桃花がいた。
 この裏設定がこの館外にまで知れ渡ったら選別の意味がなくなってしまう。
 なので情報が漏れる前に処理することにした。今回集まったもらったのはそのためだ」
集団の中から一人の桃花が空中に躍り出た。刀を振りかざし、声を上げながら飛び掛っていく。
ハルトシュラーの背後から人影が飛び出す。白く鈍い残光が剣の奇跡を描き、宙にいた桃花の体が半分に分かれた。
「私自身が相手するのも面白いかもしれないがどうせなら無限桃花、いや『元』無限桃花が相手をしたほうがいいだろう」
ハルトシュラーに並び立つその人はハルトシュラーよりも幾分か背が高い。
体は白い軽鎧に覆われている。手には持つ白く美しい刀身は赤く濡れていた。
そして桃花とよく似た顔と不釣合いなおかっぱ頭。
それは正しく物語が出てきたような騎士の姿をしていた。
「我が名は異世界の騎士シカ・ソーニャ。私と同じ源流を持つ者たちよ。勝負なり!」

つづく
178創る名無しに見る名無し:2010/05/02(日) 23:52:19 ID:uJJjeu9N
なんだなんだどうなるんだハァハァ
179ウパ太郎放浪記:2010/05/03(月) 03:09:22 ID:3YzHJZnO
 ウパ太郎はキッチンに備え付けられた生簀から、一様に似た背格好の集団と、ハルトシ
ュラーと呼ばれる凛然たる立ち振る舞いの子供を観察して居た。
 超空間発生装置/モバイルはこの“軸”に存在していないものの、ウパ太郎が悪意への
観察を実行した際に発生した重力震の動揺が軸と軸の間隙を曖昧に繋ぐワームホールを形
成しており、それによってこの館に於いてモバイルは存在しないにも関わらず機能をしっ
かりと果たしウパ太郎に力を与えて居るのだった。
 重力震は軸と軸を繋ぐ荒技によって大きなうねりをうみ、ちょっとやそっとでは収まら
ない状況になっている。ウパ太郎が帰るとき、うねりによる歪みをより高次元の構造に分
散させ、画像処理で言うところの誤差拡散の要領で四次元から八次元程度の次元に別けて
埋め込み、均すことで鎮める予定だ。
 この重力震を均す作業が曲者であり、あまりに遠い軸同士を繋げると膨大な処理負荷が
モバイルの機能を遅延させ、転送の目的物であるウパ太郎が誤差に紛れて消失したり、移
動先の軸に負荷が掛り過ぎてデフォルトの宇宙になってしまう危険性がある。ゆえに、超
空間発生装置/モバイルによる移動には息継ぎが必要である。
 この軸に止どまって居るのも実は息継ぎのためであり、モバイルの酸欠状態/メモリ不
足が解消したら、すぐに発つつもりではあったのだ。
 だが。

 血糊が中空に弧を描く。
 一様に似た者達/無限桃花の一人が、血に塗れて床に突っ伏す。口角に泡立つ血の飛沫
がやけに鮮烈で、ウパ太郎は目を逸らせなかった。だが、次いで響き渡る少女の宣告に耳
朶を打たれ、その姿を観測する。

 ──まるで神格生物だ。

 ウパ太郎はハルトシュラーと呼ばれる少女に、彼に軸を移動し空間を超越する力を与え
た存在との類似を観る。
 彼女/ハルトシュラーは、彼女ら/桃花達に何をさせたいのか。
 ウパ太郎は、人間の言語を学ぶために研究所で見せてもらった、洋画のアーカイブに存
在した映画をじっと思い出していた。平行世界の自分を倒し、宇宙最強の自分になろうと
する物語。
 果たして、ハルトシュラーの望むものは、一体なんなのか。
 ウパ太郎は、静かな生簀の底に隠れた。
180創る名無しに見る名無し:2010/05/03(月) 12:49:08 ID:mHGXMBaM
ちょw唐突に出て来たなウパ太郎w
さりげなくハイレベルな仕事してやがるw
181創る名無しに見る名無し:2010/05/03(月) 20:26:43 ID:jcSrbsQd
破滅に至る館内部。
騎士は名乗り上げた後、何の躊躇いもなく無限桃花の真ん中に飛び降り
大剣に変化した獲物で周りをなぎ払った。死体が一瞬で作られていく。
逃げる桃花。戦おうとする桃花。ただただ呆然とする桃花。
サロンは一瞬にして地獄と化した。
無限桃花はそれを眺めている。
あまりにも現実味のないその惨劇を。積み重なっていく死体を。
横から誰かがぶつかり、尻餅を着く。
ゆっくりと横を見ると眼鏡桃花が倒れていた。その側には腕が一つ落ちている。
眼鏡桃花の服は赤く濡れていた。
「そんな顔しなくても……私の腕じゃないよ……」
眼鏡桃花が二本の腕で桃花に抱きつく。体の力がふと抜けた。
眼鏡桃花は桃花に肩を借りて、立ち上がると近くにあった手を蹴り飛ばした。
「死を司る者よ。破壊されし者に仮初の命を与えたまえ」
トンと床を叩くと血まみれの床の中に一本の曲線が浮かび上がり、薄い光の壁が出来あがる。
先ほど曲線内に蹴った腕が近くの死体と繋がっていき、一つの人型になっていく。
「な、なにこれ……」
「ゾンビよ。足止めなんだから早く逃げるわよ」
「そんな……ひどいじゃないか!」
ぐいっと首元を掴み、引き寄せられる。怒りに満ちた眼がそこにあった。
「死にたくなければ動きなさい」
手から開放されて、体が床に落ちる。眼鏡桃花が離れていく。
追いかけなきゃ行けない。ここにいても殺されるだけ。なのに足が動かない。
今度は後ろから引っ張られて体が持ち上がる。気付いたら体が人の肩に載っていた。
反対側の肩には眼鏡桃花が乗っている。
「少し我慢しろよ」
大人桃花に背負われて、桃花たちはサロンから逃げ出した。

続く
182創る名無しに見る名無し:2010/05/03(月) 20:33:25 ID:mHGXMBaM
うををををを!
183創る名無しに見る名無し:2010/05/04(火) 21:15:33 ID:ObtCToLr
「さてと、どうしよっか。まじで」
館内部。とある一室に五人の無限桃花がいる。
その中で最初に口火を切ったのはおしゃべりだった。
「まだ結構残ってはいるみたいだけどどれがあの騎士なのかはわからないわね」
と眼鏡桃花が相槌を打つ。それを聞いて、おしゃべりの横で丸まってた探知桃花が懐から地図を取り出す。
「やっぱり便利だなー。お前の能力。今どのへんかな」
「えと、あの……広間から出て、その、下の階から殲滅しているみたいですね。残りの無限桃花は51人です」
大人桃花が煙草をくわえて、火を付ける。
「総勢173人と言ってたから既に3分の1まで減らされたというわけか」
煙を吐く。眼鏡桃花が露骨に煙たそうにしたので大人桃花が灰皿に煙草を押し付ける。
場を沈黙が包む。この先どうするべきなのか。桃花にはわからなかった。
沈黙が嫌なのか、おしゃべり桃花が探知桃花の地図を覗く。
「そういえばハルトシュラーはまだこの館にいるの?」
「えっと……そうですね。屋上にいるみたいです」
探知桃花が一番小さな地図を指す。屋上の見取り図が書かれた地図には赤い点が点滅していた。
「それでこれがあの騎士です」
今度は違う同じような模様が続く地図を取り出す、白い点を指す。白い点の正面には灰色の点が動いていた。
白い点が一直線に動き、灰色の点の当たる。灰色の点がパッと消えた。また一人仲間がいなくなった。
「残っている奴らと手を組んで総攻撃でも仕掛けてみるか」
「返り討ちに合いそうね。そもそもあっちもこちらを探知できるみたいだしすぐにばれるわね」
おしゃべり桃花が提案してみるがすぐに眼鏡桃花が否定した。おしゃべり桃花が口を尖らせる。
「じゃあ何かあんのかよー。正直自殺なんざしたくないぞ」
「そうね……」
眼鏡桃花が眼を伏せて、考えに耽る。大人桃花が懐から取り出し、煙草に火をつけた。
「ちょっと。少しくらい禁煙してくれないかしら」
「これをくわえているほうが頭が冴える。……気がする」
大人桃花がそっぽを向いて、煙を吐く。白い煙が宙を漂っていたがすぐに空気に溶けていった。
「君は何かないか?」
「えっ」
唐突に訊ねられて、変な声が出る。周りを見れば、みんなの視線が桃花に刺さっている。
何か言わねばならない。桃花が頑張って頭を捻る。
「……あの騎士はこの館のギミックについては知っているのかな」
「えっとですね。知らないみたいですよ。ギミック使って逃げている人は追いかけてないみたいですから」
成功するなんて思えない、あまりにも無謀な作戦が桃花の頭に浮かんだ。
仮に桃花が司令官でこんな作戦を部下に下したら、間違いなく首が飛ぶであろう。
だけど桃花はほかに浮かばなかった。この状況を打開できる策が。
桃花は意を決してその作戦を提案した。


つづく
184創る名無しに見る名無し:2010/05/05(水) 01:24:35 ID:2ErRy6cp
やっぱり低レベルだねぇぇ作品がぁぁ
185創る名無しに見る名無し:2010/05/05(水) 14:23:26 ID:0G8Ufog6
無限の館内部廊下。
シカ・ソーニャは混乱していた。
ソーニャは無限桃花の気配を探知することが出来る。この能力は大抵の無限桃花には備わっているものらしい。
しかしどういうことか。気配を見つけ、部屋の中に飛び込んだと思ったらその気配が消えるのだ。
実際に部屋に入ってみるが中には人はおろか埃が積もっていたことすらある。
ハルトシュラーはこの館がギミックだらけなのを知って、ソーニャは知らせなかったのだ。
長い付き合いがあるわけではないがなんとなくはハルトシュラーの趣味がわかっている。
きっとソーニャがぼろぼろに疲れて帰還したのを見て、笑いたいのだろう。
「本当に趣味の悪い人だ……」
そして今、ソーニャは窮地に立たされている。
そもそもその無限桃花は最初から行動がおかしかったのだ。他の無限桃花はソーニャと普通の無限桃花の
区別がつかないらしく自分から寄ってくることもある。だが、その無限桃花はある一定以上の間隔を
つめることがなかった。まるで寄ってくるのを待っているように。廊下の灯りが貧弱なせいで遠くから
攻撃しようにも当たりそうにない。仕方なく近くに寄ろうとすると同じ間隔で逃げていく。
やがて体力が尽きたのか速度が落ちていき、廊下の真ん中で足を止めた。
やっと倒せると思ったら前後左右の扉が大量の無限桃花が現れたのだ。
数は30はいるだろうか。廊下は大剣を振り回すには少し狭い。
「少し聞いてもいいかしら」
軍団の中の一人。眼鏡をかけた無限桃花が前に出る。
「あなたはもう創作者の手から離れた存在なのになぜハルトシュラーに従うの?」
「従っているわけではない。仕事を持ってきたから承諾しただけだ」
「それじゃあ、あなたは無限桃花を殺戮するとわかった上で来たわけ?」
「そうだ」
眼鏡をかけた無限桃花の顔が歪む。あの表情は憤怒だ。理性がなければ襲い掛かってきたことだろう。
「なんのために?」
なんのためにか。一瞬、間が開いた。
「あいつの依頼は奇妙なものが多い。私のいる世界では体験することの出来ないものばかりだ。
 半分は己の経験のために。半分は興味のために。この依頼も同様だ」
「そう……」
空気が変わった。ソーニャが怯むほどの魔力を感じる。
あまりにも暴力的な魔力の塊がソーニャを睨んでいた。
「もういいわ」
ソーニャは持っていた剣を少し長く変化させる。
眼鏡をかけた無限桃花が腰の刀を抜いた。
「自らの行動を呪いながら死ね」
「来るがいい。無限の力を見せてみろ」
廊下にいくつもの魔方陣が瞬時に展開された。

続く
186創る名無しに見る名無し:2010/05/06(木) 00:23:21 ID:8amVrf4n
ごくり…
187創る名無しに見る名無し:2010/05/06(木) 19:15:33 ID:5aUir9iH
雲の切れ間から光が差し込む。ハルトシュラーはその様子を椅子に座ってみていた。
風はないが、春だというのに少々肌寒い。コーヒーを少し飲み、テーブルに置く。
館屋上部分。今はまだハルトシュラーしかそこにはいない。
この屋上に繋がる階段は一つしかない。最初にあの扉を開けるのは誰だろうか。
少しずつ雲が切れていく。天候は晴れに向かっている。
ドアノブを回す音に続き、少々錆びついた扉が開かれていく。
出てきたのはおかっぱ頭の騎士だった。だがその体はあまりにも血にまみれている。
「ハルトシュラー。私達の勝ちだ」
騎士が膝をついて倒れる。その後ろから出てきたのはサムライポニーテール少女、無限桃花だった。
桃花も血にまみれているがそこに伏す、騎士ほどではない。手には長く黒い刀が握られていた。
「君は刀を抜けない設定だったはずだが……」
「そうだ。私は決して自分の刀を抜かない信念があった。だから死んだ友人から刀を貰ったのだ」
「そうか」
ハルトシュラーが立ち上がり、桃花のほうへと歩く。
桃花もゆっくりとハルトシュラーのほうへと歩く。
いくらかの間合いを取り、止まる。
「ソーニャが倒されるなんてことはないはずなんだがな」
「自慢の完成品が失敗作に殺されるはずがないってか」
桃花が自嘲気味に笑う。ハルトシュラーの表情は変わらない。
「あとはお前だけだ」
刀を真っ直ぐハルトシュラーに突き立てる。ハルトシュラーは答えず眼を瞑った。
桃花は刀を構え、一歩近づく。
「お前達に可能性はないのだよ」
ハルトシュラーが眼を開け、にやりと笑った。
桃花が刀を振り上げ、真っ直ぐ跳ぶ。ハルトシュラーが右手を軽く上げる。
「土よ。隆起せよ」
屋上のコンクリートが盛り上がり、桃花との間に割り込む。
桃花は隆起した壁を蹴って、後ろに下がる。
「槍となり貫け」
盛り上がったコンクリートが形状を変える。
一旦、地面の少し上で大きな玉になると大きな槍に変わり、勢いよく桃花のところへ向かっていく。
桃花はそれをジャンプでかわすと槍の上に乗り、走り始めた。
「風よ。薙ぎ払え」
ハルトシュラーが右手を横に振るう。海側から風の塊が迫ってくる。
桃花は足を止め、風のほうへと向く。そして下に構え、振り上げる。
轟音がハルトシュラーの前を横切った。しかし桃花はコンクリートの上に立っている。
「風を斬ったのか……!」
再び桃花が走り出す。その刀の間合いを目指して。
ハルトシュラーが右手を前に真っ直ぐ伸ばす。
「光よ。その身を圧縮し、打ち出せ」
右手から眼が眩むほどの光を放ち、ハルトシュラーの右手の方向を焼き尽くしていく。
その光に思わず、眼を瞑ってしまったハルトシュラーが次に眼に映った光景はまっさらになった屋上だった。
あったはずの屋上階段も消し飛んでしまい、今はその身を直に晒している。
雲は流れ、青空が覗いていた。

続く
188創る名無しに見る名無し:2010/05/07(金) 19:12:53 ID:Vze1lmnO
屋上を踏む足音がした。
「土よ! 盾となれ!」
振り向きざまに詠唱する。桃花の拳は寸前のところで壁に阻まれた。
ハルトシュラーはすぐに異変に気付く。先ほどとは違い、服が血まみれになっている。
「刀はどうした。なぜ持っていない」
「そりゃあ……」
桃花が後ろに飛ぶ。ハルトシュラーも追いかけようとしたが背中に衝撃が走って、止まる。
眼の前に血塗られた刀があった。根元は自分の体から出ている。
「私の勝ちだ。ハルトシュラー」
背後から声が聞こえた。それはまさしく眼の前の桃花と同じ声。
刀が抜かれて、勢いで後ろに倒れる。自分を見下ろす全く同じ顔が2つ。
言葉を喋ろうとするが先に血が口から出てくる。背中が濡れていく。
「見事……だが……残念だったな」
顔を血で濡らしながら無理矢理喋る。桃花が怪訝な顔をする。
「どういうこと?」
「私を殺しても……絶望はお前達の前から消えることはない……」
急速に光が失われていく。桃花たちの声が遠くなっていく。
痛みはもうない。舌は血の味を感じないし、海の匂いも消えていった。
全てが失われていく世界でただぼんやりと意識が浮いている。
一刻一刻と滅びていく身体を意識が他人事のように見ている。
やがて肉体は活動を停止した。何も感じることのない意識だけが残る。
あてどない闇と静寂が意識が抱擁している。その時、ハルトシュラーは悟った。
これが死か、と。

続く
189創る名無しに見る名無し:2010/05/07(金) 21:42:46 ID:5pZ5p0UC
閣下死んだー!?
190創る名無しに見る名無し:2010/05/08(土) 05:08:26 ID:a5lxEo0a
なん…ですと…?
191創る名無しに見る名無し:2010/05/08(土) 18:40:37 ID:O3jJE00F
雲は既に遠くに流されている。上空は風が強いのかもしれない。
屋上に残されたのは2人の無限桃花と1つの幼い子どもの死体。
眠るように眼を瞑り死んでいるそれを、2人が見下ろしている。
「ハルトシュラーを殺しても変わらない……?」
桃花が呟く。そんなはずがない。あの魔王が死ねば何かしらの異変が起きるはずなのだ。
だけど実際には何も起きていない。世界は相変わらずなのだ。
海はいつもの調子で寄せては引いてを繰り返している。天にある太陽は雲の壁を突き抜けて、光を注いでいる。
何かの鳴き声なのか。どこからか変わった音を風が運んできてくれる。
もう1人の血まみれの服を着た桃花の形が変わっていく。
「つまりあの騎士を倒さなきゃ話は進まないってことかよ」
変身を解いたおしゃべり桃花が毒づく。
「ここまで必死に来たのに……」
「まぁそう言うな。騎士はあいつらが今頃倒したところさ」
「それは残念だったな」
2人が振り向く。そこには本物の騎士が立っていた。
鎧は最初見たときよりも汚れている。それはどれだけ戦闘が激しかったかを物語っていた。
「他のやつらは片付けた。いや、ここは散らかしたというべきだな」
騎士が剣を振るいながら、近づいてくる。付着していた血が払われて、その白さが増していく。
「後はお前達だけだ。だが、流石に私も少し疲れた。遠くから失礼させてもらう」
剣先をこちらに向ける。桃花たちは油断をしてしまった。何かしら来るであろう攻撃を
見てから避けようとしたのだ。
どこかで聞いた銃声によく似た音がした。隣に立っていたおしゃべり桃花が地に膝を着く。
「え……」
剣先がこちらを向いている。いや、既にそれは剣先ではなく銃そのものに変化していた。
血がおしゃべり桃花と地面を濡らしていく。ハルトシュラーと同じように。
死んでしまったハルトシュラーと同じようにおしゃべり桃花が。
気付いたら走り出していた。叫びながら真っ直ぐに騎士の下へと。
銃声が鳴るたびに前に構えた刀を少しずらし、玉を弾く。
騎士の手に持つ銃声が形を変え始める。だがそれが完成するよりも早く。
早く奴の身体をこの刀で。
2人がすれ違う。そして勝負はただそれだけで終った。


続く。次でおわり
192創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 17:39:00 ID:QP1Zbu6m
銃声が鳴るたびに前に構えた刀をずらし、弾をはじく。
騎士の手に持つ銃が形を変え始める。だがそれが完成するよりも早く。
早く奴の身体をこの刀で。
二人がすれ違う。そして勝負はただそれだけで終わった。
193創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 17:41:18 ID:QP1Zbu6m
ラジオ幻滅した
声が・・・
194創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 20:20:46 ID:ku52s2pe
音楽が聞こえる。何の楽器だろうか。近づくにつれ、音が大きくなっていく。
ゆっくりと静かな曲だ。彼女が創作しているのだ。
私は大きな風穴の開いた部屋を覗く。そこに彼女はいた。
大きな黒塗りの楽器を弾いている。ソレは荒れた部屋には不釣合いなくらい美しい姿をしていた。
曲が終るまでしばしの間待つ。彼女は創作中を邪魔されるのが好きじゃない。
やがて音が止む。私は拍手しながら彼女に近づく。
「すごくいい音を出す楽器だな。なんて言うんだ?」
「ピアノだ。ソーニャの世界にはないのか」
「見聞したことはないな」
「勿体無いことだ」
彼女が椅子から降りる。あまりにも小さい体躯。ピアノに負けないくらい美しい銀髪。
私が剣を振るえば簡単に切れそうな彼女。でも私がそれをすることはない。
「全て終ったようだな」
「ああ」
彼女はゆっくりと窓まで近づいていく。荒らされて、足の踏み場が見当たらない部屋なのに
その足取りは野原を歩くかのように自然だ。
「迷っているな」
壊れた窓から外を眺めていた彼女が唐突に言う。私は心を見透かされてしまったのかと動揺してしまった。
「鎌をかけたつもりだったが図星のようだな。大方自分のやったことが正しかったのか悩んでいるのだろう」
「あなたなら特定の記憶だけぐらい消せるはずだ。こんなことをしなくてもよかったんじゃないのか?」
「裏設定流出を防ぐ。これは半分の理由でしかない」
彼女は一旦言葉を切る。私から見える窓の外はとても晴れていた。
彼女はあの窓から何を見ているのだろうか。
「もう一つの理由は調査のためだ」
「調査?」
「そうだ」
彼女がゆっくりと歩き出す。
「私の分身が言ってなかったか? あいつらは創作物としての成長がこれ以上見込めないと。
 逆に言えばあいつらは創作物の終着地点にあるとも言える」
「創作物の……終着地点」
「創作は今までも、そしてこれからも永久に続く。そこに終着地点などない。生物の進化と同じだ。
 だがあいつらは創作物の袋小路に辿り着いた。最もそこまでの過程が非常に短かったがな。
 故に洗練された終わりではない。乱雑な終わりだ」
饒舌に喋る彼女に圧倒される。私はただ観ているだけ。彼女は喋り続ける。
「そのために私の分身とお前を呼んだのだ。おかげでいろいろとデータが取れた。
 私が直接相手したほうがいいだろうが出来ないからな」
「なぜだ?」
やっとどうにか口を挟むタイミングを見つけたので発言する。
普段は喋り役なのでどうも聞き役は居心地が悪い。
「私の強さは次元が違う」
彼女はにやりと笑う。自信満々に言うが私は彼女がどれほど強いのかは知らない。
しかしこれだけ断言できるのだから相当強いようだ。
「さてと、館を改装して戻るか。まだここを目指す無限桃花はいるからな」
「……また同じような事態になったら私を呼ぶのか」
「いや、呼ばない。もうこれ以上は無意味だからな」
部屋の物から光が玉となって上っていく。この館に刻まれた幾許かの歴史が失われていく。
ふと私は疑問に思った。あいつらの魂はどこへと向かうのだろうか。
この屋敷が消えれば彼女たちがいた証明も消える。存在しなかったことにされた魂の行方。
「ハルトシュラー、一つ頼みごとがあるのだけど聞いてくれないか?」
魂があるかどうかなんてわからない。でもないよりかはきっとマシなものになるだろう。
この館にいた全ての無限桃花たちのために。
195創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 20:21:43 ID:ku52s2pe
ここは海沿いの創発の館(仮)。
天気は晴れているが風が強いためか思ったよりも涼しい気温だ。
最近は専ら異常気象が通常気象になりつつあるのでこういった天気は実に嬉しい。
はためくシーツの間を2人の無限桃花が歩いている。片方は最近来たばっかなので
もう片方が館を案内しているのだ。こういった心遣いは実に大事なものだ。
やがて2人は他のところよりもほんのちょびっと海に突き出している岬に辿り着いた。
そしてここにはありがちだがお墓が1つ置いてある。残念なことに風化しているため
文字を読み取ることは出来ない。どのくらい昔からあるのかはわからないが相当野ざらしにはされていただろう。
先輩のほうが薄く青い花を一束、墓に添える。
これからもずっと誰かがこの墓に花を添えることだろう。
どっとはらい。
196創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 23:15:42 ID:2dodClze
閣下分身だったか
桃花たち負けちゃった…

197創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 23:23:33 ID:C2BuzvM8
ワシの閣下は108人までおるぞ!

乙でしたー。
198創る名無しに見る名無し:2010/05/10(月) 01:10:29 ID:FbKup/do
おまけ
シカ・ソーニャ
白い軽鎧を身に纏ったおかっぱ頭の女騎士。背はハルトシュラーより少し高いくらい。元無限桃花。
鎧と同じように白い獲物を所持している。獲物は使用者の意思によって形を変える。
本来は違う世界のとある国のとある町の護衛兵団団長。町を守るためなら老若男女魔物問わず切り伏せる。
ハルトシュラーとは旧知というほどの仲でもなく時折変わった依頼を持ってくるので受けているだけ。
ちなみに年齢は23歳。恋人などいない。今日も荒くれ者を率いて町を守る。

ハルトシュラーの分身
ハルトシュラー本体が無限桃花を見て実験的に作った個体。
本体ほどの能力を持たないためあまり強いわけではない。
今回の個体は魔法を行使する個体だったが無限桃花の前に破れる。

探知桃花
フードを被った小柄な無限桃花。探知系の能力を持っている。
懐には館の詳細な地図を所持しており、地図には生物、非生物問わずあらゆるものが記載されている。
この能力は主に落し物、探し人で使われていた。
人前で話すのが苦手で、よく喋るおしゃべりに懐いていた。
199創る名無しに見る名無し:2010/05/14(金) 15:26:47 ID:PrS5aG6I
創発発のキャラクター総合in避難所
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1270365319/

避難所にも作品の投下があります。
知っているとは思いますが念のため貼り
200創る名無しに見る名無し:2010/05/18(火) 12:38:45 ID:S7nEhk8g
ヤッテヤルゼー
201創る名無しに見る名無し:2010/05/18(火) 18:42:55 ID:lpTJCbQP
ダンクウホウフォーメーションダ!
202無限桃花外伝〜桃花十六歳・呪編「前」〜 ◇wHsYL8cZCc:2010/05/21(金) 21:57:50 ID:z8AVXMuO
目を閉じ、右手を伸ばして意識を集中させる。
 身体から黒い影が滲み出し、それは身体を伝い伸ばした右手に集まり、一本の棒のように長く伸びる。

 ――まだだ。もっと。もっと……。

 さらに深く集中し、額には汗が一筋流れる。黒い影は少しだけ形を変え、細長くなっていき、右手には質量を感じ始める。
 まだだ。もっとだ。
 桃花は一本の剣をイメージする。黒い刀身の、一振りの剣。村正を。そして右手に金属的なひんやりした感触を覚え、ずしりと右手に重みが乗る。
 目を開けた時、桃花の手には村正が握られていた。

 桃花は時計を確認する。村正を影から剣に変える迄にかかった時間を知る為に。その所用時間は約十分。これでは時間がかかり過ぎだ。敵の前でのんびり集中など出来はしない。一瞬で出来るくらいにならなくては。

 出しっぱなしならば苦労は無いが、法治国家である以上、常に刀を出しっぱなしでどこでも行ける訳ではない。
 かといって、村正から離れる訳にもいかない。
 村正無しでは、寄生に襲われたら手も足もでないのだ。
 ガチャリ

 玄関のドアが開く音。桃花は手にした剣をなんとか急いで影に戻し、自らの身体に還していく。戻すのは出すより楽だったが、それでも精神をすり減らす。

「ただいまぁ〜。腹減ったぁ」

 部屋の主の孝也が帰宅したようだ。パラサイトしている上に明らかに銃刀法に触れている村正を見られたら通報されかねない。
 いくら昔からの知り合いと言えど向こうは一般人だ。寄生の事も、村正の事も知られる訳には行かなかった。
 桃花は少し疲れている。出かける予定時間まで暇だったので、剣の出し入れという単純な訓練を二時間ほど続けていたのだ。

「……おい。おい桃花」
「……えっ。……ひぃあ!」

 いつの間にか孝也は部屋の中央まで来ていた。ぐったりしていた桃花はそれに気付かなかった。

「何驚いてんだお前? ぼけーっとして……」
「ああ。その……。うたた寝を」
「突っ立ったままでか? まぁお前なら出来そうだけど……」
「それは酷くない?」
「実際やってたろ今」
「う……」
203無限桃花外伝〜桃花十六歳・呪編「前」〜 ◇wHsYL8cZCc:2010/05/21(金) 21:58:13 ID:z8AVXMuO
「まぁどうでもいいや」

 孝也は台所の冷蔵庫に向かう。買ってきたジュースやらをぶち混んで、次にビンの漬物を出す。京都の母親が送って来た物だ。

「お前晩飯どうすんだ。食うならなんか作るけど?」
「あ……。いい。要らない。ちょっと出かけるから」
「もう夜だぞ? 補導とかされんなよ。俺がめんどくせぇ事になる」
「大丈夫だよ。ブっ飛ばして逃げれば」
「……お前がやったら死ぬぞ」

 孝也の小言に付き合った後、桃花は洗面所で顔を洗い、ポニーテールの位置を直す。訓練では肉体的な疲労は少ないのが幸いだ。

「よっし……。行くか」
「変な事してトラブル起こすなよ」
「分かってますぅ」

 二度目の小言に適当に返しながら、桃花は玄関を飛び出す。
 村正は、その手には握られていなかった。



※ ※ ※



 時刻はだいたい午後七時四十分。桃花とボブカットの少女が一緒に歩いている。
 彼女の誘導でこじんまりした喫茶店に入り、奥の人目が付かない席に向かい合って座った。もっとも、この店に来る客はほとんど居ないのであまり気にする事でも無いのだが。

「で、今度は何?」

 桃花がいぶかげに少女に尋ねる。

「それがさー! ついに完成したのよ! 『呪殺霊札』!」
「そ……そう」
「あら、リアクションが薄いわね」
「明るいテンションで言う物でもないでしょ。何だ『呪殺』って。誰か殺るのか」
「いやいやそこじゃないでしょ。人を呪い殺せるまでに到達した私が凄いって事に驚いてよ!」
「そこかよ」

 高いテンションで物騒な事を口走るこの少女の名前は安藤珠里。ひょんな事から桃花と知り合い、気が付いたら友達になっていた。
 呪い師の家系だったらしい珠里は、当代きっての呪力を誇り、今では占い謀殺なんでも来いのトンデモ能力を持っている。さらに一つ、彼女は桃花と同じく寄生を見る事が出来てしまう。
 それによって命を狙われ、呪術では対処出来ない怪物に対向する為に占いで対寄生の能力を持つ桃花を探し出して、助けを求めて来た。
 それが彼女達の出会いだった。
204無限桃花外伝〜桃花十六歳・呪編「前」〜 ◇wHsYL8cZCc:2010/05/21(金) 21:58:37 ID:z8AVXMuO
「その呪術が何の役に立つってわけ?」
「役には立たないよ? 人殺しするワケないじゃん。多分」
「多分なの?」

 桃花と珠里は古風なミルクセーキを飲みながら楽しそうに話している。内容は物騒だが、桃花にとっては唯一の友人だった。もちろん珠里にとってもだ。
 お互い他人に言えない秘密を持ち、それを理解しあえる友人など他に居る訳も無かった。

「最近寄生出てる?」
「ん〜ん。あのお札効いたのかな?」
「お札? また怪しげなモノ作ったの?」
「いやいやいや、この前、桃花の髪の毛貰ったじゃん。寄生殺せる桃花の髪の毛使えばもしかしたら〜と思ってさ」
「髪? あげた覚えは……」
「あ、しまった黙ってようと思ってたんだゴメン」
「藁人形に入れたりしないでよ……」

 もし珠里ほどの呪術師が行えばお馴染みの丑の刻参りも必殺の儀式になりかねない。背中に冷たいモノを桃花は感じた。

「でさぁ。見に来て欲しいんだよねぇ。ソレ」
「何を?」
「桃花の髪の毛貼ったお札。ホントに寄生を追っ払えるなら凄くないコレ」
「そりゃそうだけど」

 桃花は面白いと思った。確かに寄生に対して何かしらの効果があるのなら、有用な武器になる可能性もある。
 ……あと自分の髪の毛を回収しようとも思った。

「じゃーすぐ行こう! 今行こう! 急げ!!」
「……落ち着け」

 珠里の家はそう遠く無い。物騒な話をしていた喫茶店から歩いて十分ほどだ。見た目こそ普通の一軒家だが、周囲にはさりげなく対魔の札が配置されている。
 玄関には訪問販売のセールスマンが残した謎の記号と一緒に呪詛返しの札が貼られ、呪いから身を守っている。
 代々行っているらしいが、珠里が作った札に替えてからはより一層強固になり、霊的には完全に要塞だった。

「たっだいまぁ〜。友達連れてきたよお母さん」
「遅い! 何時だと思ってんの!」
「怒んなくていいじゃん」
「怒るわ! 連絡も寄越さずに探知も出来ないように細工してこの娘は! 心配すんだろ!」
「私はお守りだらけだから大丈夫ですぅ〜」
205無限桃花外伝〜桃花十六歳・呪編「前」〜 ◇wHsYL8cZCc:2010/05/21(金) 21:59:00 ID:z8AVXMuO
 激しく言い合う親子。珠里のテンションは母親譲りらしい。桃花は完全に置いてけぼりを食う。

「あーっとそうだ。忘れてた忘れてた。さっそく見せなきゃ。じゃ、二階行こ。桃花」

 強引に会話を切り上げ自室に桃花を連れていこうとする。珠里の母親もスっと切り替えて桃花に「ゆっくりしてきなさい」と声をかける。面白い親子だ。それが桃花の印象だった。
 二階の珠里の部屋はパッと見ると普通だが、棚にはおどろおどろしい置物が置いてあったり人の名前が書いた札があったりする。要らぬ妄想が頭に浮かぶので見なかった事にする。
 珠里がベッドの下に手を伸ばして何やら探っている。見せたい物を何処にしまったか忘れたらしい。
 高校の制服のままの珠里は四つん這いになって探索している。おかげでスカートの中のパンツがまる見えだ。
 笑いを堪えて見ていたが、桃花はちょっぴり羨ましくもなる。
 本来なら自分も高校生のはずなんだな、と。

「ああ〜。あったあった。コレよコレ」

 珠里はベッドの下から取り出した物は縦横十センチ程の小さな箱。ただし、呪札がべったりと貼られているが。

「この箱の中?」
「違う違う。この箱そのものが寄生追っ払うお札。中に桃花の髪の毛入ってんの」
「お札ぁ〜? コレが?」
「インスタントで作ったらから。この箱だってお菓子の箱使ったし」
「そんなんでいいの?」
「こまけぇこたぁ(ry」

 何か言いかけたが聞かない事にする。
 それよりも気になるのはこの箱の効果の方だ。もし本当に寄生を追い払えるのなら。それが重要だ。

「で、さっそくやってみたい事があるワケ」
「やってみたい事? なに?」
「桃花」
「なに?」
「ごめんなさい」
「えっ?」

 珠里は箱を開ける。中には確かに桃花の物と思われる長い髪が入っていた。だが、それから飛び出したのは黒い影。溢れるのは寄生の気配。

「珠里!?」
「ごめんなさい。ごめんなさい。桃花」
206無限桃花外伝〜桃花十六歳・呪編「前」〜 ◇wHsYL8cZCc:2010/05/21(金) 21:59:25 ID:z8AVXMuO
 寄生の気配は一気に部屋の中を埋め尽くす。箱を持った珠里は無表情で言う。

「ごめんなさい桃花。ごめんなさい。ごめんなさい」
「珠里……! これは何!?」
「これは寄生を追っ払う事は出来なかったの」
「珠里!?」
「でも寄生を封じ込める事は出来た。だから箱にしたの。だってこの箱は桃花の力があるんだもん。寄生を封じるには十分。
 でも、桃花と同じだから、寄生を引き寄せてしまった」
「じゃあ、その箱の中に封印されてたのは……」
「封印してたんじゃないの。『隠れてた』の。ごめんなさい。ごめんなさい桃花」

 寄生の気配は一匹や二匹では無かった。小さな箱の中に無数の寄生が一つにまとめられて入っていた。
 それが今、一気に外へと飛び出してくる。

「ごめんなさい桃花。私、寄生されちゃったの。桃花の髪の毛で作ったお守りで、その気配隠してた」
「寄生……された……? 珠里が!?」
「私は今はなんとか私のまま。寄生されてもまだ完全には乗っ取られてない。でもそれは桃花をおびき寄せる為。油断させる為。ごめんなさい。桃花」

 無数の寄生が珠里の中へ入って行く。形骸を持たないと活動出来ない寄生達は、強力な呪力を持つ珠里を器に選び、珠里は無数の寄生を一度に抱えるキャパシティを持つ。寄生にとっては、これ以上ない巣だった。

「珠里!」
「ごめんなさい桃花」

 珠里の腕に黒い影が漂う。そして桃花は村正を出そうと試みるが――



※ ※ ※



 ――暗闇。うっすら目を開けた桃花が最初に見たのは、母を食う珠里の姿。場所は珠里の家のダイニングだった。
 窓は全て雲の糸のような物で何重にも覆われている。電灯は壊れ、破れた呪札が散乱している。
 珠里の母が寄生と化した娘と戦い、敗れ去った後だった。

「珠里……!」

 桃花は呼び掛けた。珠里は母の肉を貪るのを止め、立ち上がり母の骸を床に捨てる。
 べちゃ、と、肉が地面にたたき付けられた音がする。

「あら桃花。目が覚めた?」


――続く。
207創る名無しに見る名無し:2010/05/21(金) 22:00:06 ID:z8AVXMuO
ここまで代理投下
 めりめりと音がする。珠里の手足はまるで蜘蛛のように細く長くのびる。背中からは新たに四本の長い脚が現れ、珠里の身体を持ち上げる。
 珠里は身体はそのまま、八本の脚の蜘蛛のような姿に変化する。それが、寄生となった珠里の姿だった。
 照明が破壊された室内で、砂嵐が映るテレビがぼんやり珠里を照らしている。その足元には珠里の母の死体と、撒き散らされた呪札。

「気が付いた? 桃花」
「珠里……。なんで」
「私は寄生。桃花の敵」

 珠里の長い脚の一本が桃花へ振られる。左の内受けで防御するが、簡単に吹き飛ばされ桃花は食器棚にたたき付けられる。ガラスが割れ、中の食器が飛び出し床へ落下していく。床に落下した食器が割れたガラスと共にがしゃんと音を立てた。
 桃花は痛みと衝撃で顔を歪める。それに耐え顔を上げると、珠里の身体が今にも触れそうな程に近付いていた。
 珠里の口周りと身体は自分の母の血で真っ赤になり、その目も真っ赤に染まっている。寄生された証だ。

「珠里……!」

 桃花は言う。寄生となった珠里は無表情のまま。しかし、その声は友であった時と同じだった。

「ごめんなさい桃花」
「珠里……。どうして」
「……。桃花の髪で札を作った後、あれは寄生を呼び寄せた。桃花だと思ってね。
 私には寄生に対処出来ない。でも、桃花の呪札で追い払う事が出来ると思ったの」

 無表情まま言う。真っ赤に燃えた目で。

「……。でも出来なかった。寄生は桃花の札を消そうとしてた。だから私の所に来た。そして、桃花の札の力は寄生を追い払う事じゃなく、寄生の気配を殺す程度しか出来なかった。
 私にはどうにも出来ない。だから、寄生された」
「なんで……。殺さなかったの? 気を失っている間に」
「……言いたかった。一言だけ。さよならって」
「……珠里?」
「私は寄生。でも、私は私のまま」
「じゃあなんで……! なんで珠里!?」
「……逆らえない。寄生には、影糾には敵わない。でも桃花はそれと戦わなくちゃダメなんだよね。……私にはムリ」
「桃花、私はあなたを殺さないといけない。だって、逆らえないもの」

 珠里の身体が一気に遠ざかる。次に再び長い脚が桃花を襲う。壁にがりがりと巨大な引っ掻き傷を付けながら、桃花の首を狙って迫ってくる。
 間一髪でそれを避けるが、今度はもう一本の脚が串刺しにしようと上から襲う。
 それを上段受けで防御する。その反動を利用し、桃花は素早く横へと身をかわす。
 本来ならば人間では受けきれないほどの打撃だろうが、桃花もまた寄生の力を持っている。その力と幼少からの鍛練が、桃花の命をなんとかつなぎ止めた。
 しかし、桃花はまだ修業が足りない。
 意識を集中し、黒い影が桃花から滲み出る。その時。

「ダメよ桃花」

 珠里は真横に脚を伸ばす。巨大な手足はダイニングの中のどこでも攻撃出来る程に伸び、桃花は常に身をかわす事を強いられる。床を転げ壁を蹴り、なんとか攻撃から身を守る。
 とても他の事に意識を集中できない。

「ダメよ桃花。村正は出させない」
「珠里……!」

 寄生となった珠里は知っている。桃花から出る影が村正になる事を。それが寄生にとってどれほどの脅威かも。
 もっとも、それを出す桃花には元々その余裕が無いのだが。

「どうしてなの珠里!?」
「私は寄生。だからあなたを殺すの。目を覚ますのを待ってたのはさよならって言いたかっただけ。謝りたかっただけ」

 桃花は珠里の攻撃をかわすしかない。相手は寄生。だが、友達だ。それも、お互い秘密を共有しあった特別な。

「ごめんなさい。ごめんなさい桃花」

 珠里の脚はしつこく桃花を追う。壁は既に傷だらけになり、珠里の母の死体も巻き込まれて砕けて行く。

「桃花。桃花……」
「珠里……」
「ごめんなさい桃花……。私を殺さないと、私は桃花を殺す」
「殺す……? 珠里を!?」
「覚悟を決めて桃花。私はあなたを殺す。逆らえないから。敵わないから」

 珠里の攻撃は止まらない。割れたガラスや陶器の上で飛び回った桃花は一度も攻撃を食ってはいないが、全身に傷が出来ている。
 幾度目かの跳躍の後、桃花はとうとう珠里の脚に捕らえられる。天井付近から床に一気にたたき付けられ、痛みに息が詰まる。目が眩み、頭がぼけっとしてしまう。
 珠里は身体の正面を桃花の方へ向け、ゆっくり止めを刺そうとしている。桃花の意識はまだ完全には戻らない。だが、朦朧とした意識と目で、床に落ちる一枚の札を見つける。
 『安藤珠里』と書かれた、一枚の呪札。
 桃花はそれを拾う。札にはどっしりとした重みがあった。気のせいだろうが、桃花にはそう感じられる。
 それはまさしく、珠里の家系に伝わる殺人の為の呪い札。呪殺霊札。

「ごめんなさい。ごめんなさい桃花」

 珠里が誤りながら接近する。桃花は札を持ち、それを両手で摘んだ。
 珠里はそれを目撃する。しかし、次に来る桃花の行動を阻止しようとはしなかった。
 桃花は身体の正面を珠里へ向け、お互いに顔を見合わせる。

「桃花。ごめんなさい」
「……珠里。ごめんなさい」

 二人はお互い誤り合う。
 そして桃花は、両手に持った珠里を殺す為の札を引き裂く。珠里の身体と同調した札を。

「……ッ!! 珠里!!」

 目の前が一瞬で真っ暗になる。ぼんやり部屋を照らすテレビも、照らしだされていた珠里も見えない。
 次に桃花が感じたのは温かさ。全身にそれが降り懸かる。血だ。大量の血が桃花に降り懸かった。珠里の血が。
 最後に見えたのは、身体を引き裂かれ死にかけの珠里。正確には少し違う。寄生となった珠里は寄生の力、村正でしか殺せない。
 死するほどのダメージを受け、なお死ぬことが出来ない。桃花の共は今そうなっている。

「……珠里?」
「ごめんなさい桃花。ごめんなさい……」

 珠里は譫言のように繰り返す。血まみれの桃花は珠里に近付いていく。

「珠里……! 珠里!!」
「ごめんなさい桃花。……痛いよ。もう終わらせたいよ」
「ごめんなさい珠里……! ごめん!!」
「悪いのは私。私は寄生に勝てなかった。そして寄生と戦うのは桃花の役目」

 珠里の身体は少しずつ再生していく。珠里の身体を切り裂いた呪札でも、珠里の寄生は殺せない。そして桃花からは、黒い影が滲み出る。

「珠里! 珠里!」
「今は動けない。村正を出すなら今のうちに……。それで終わるから」

 それはつまり、珠里に止めを刺せという事。桃花の影はみるみる形を整える。今までに無い早さで。
 そして村正は桃花の手に握られる。

「ごめんなさい。ごめんなさい桃花。さよなら。さよなら……」



※ ※ ※



 冷蔵庫が唸っている。暗闇と静寂の中でのそれはとても耳障りな物で、眠りをこれでもかと妨げる。疲れている身体にはなおさら不快だった。
 時刻は夜中の二時。いわゆる丑の刻だった。

 孝也は目が覚める。時計を見て嫌な時間に目が覚めたと思う。
 なぜ目を覚ましてしまったのか。普段ならば考えもしないだろう。だが、この時は違った。
 気配がするのだ。妙な、えらく陰欝な気配が。
 孝也は起き上がる。気配の正体を探る為に。場所はすぐに解った。玄関だ。
 自室から一歩出ると、暗闇の中に漂う独特の臭い。武道を修めた孝也にはそれが何か解る。血の臭いだった。
 玄関の照明のスイッチを探し、明かりを付ける。そして見えたのは、血まみれで、そこにうずくまる桃花。
 その横には、同じく血にまみれた真っ黒な剣、村正。

「ととと……桃花!?」

 慌てて駆け寄る孝也。桃花はゆっくり顔をあげて孝也を見る。

「どないしてん!? 傷だらけや……。」
「大丈夫だよ。ほとんどは私の血じゃないから」
「お前の血じゃない……? 何があった……何をした!?」
「はは。せっかく言葉遣い直したのに。元に戻ってる」
「笑い事ちゃうぞ! お前何があって……。この刀は!?」
「言えない。言えないけど。これが私のやるべき事だからいいの。心配かけてゴメン」
 桃花がどこで何をしたのか。それが秘密だとは知っていた。しかし、まさか血まみれになり刀を使うほどの事だとは、孝也は知らなかった。

「お前、このまま帰ってきたのか……?」
「うん。誰にも見られなかったのは、運がよかったのかな」
「そんなんどうでもいいわ。お前、どんな事してんねん」
「だから言えないよ。でも大丈夫。やりたくてやってる事だから」
「……ウソつけや。そんな泣きッツラになる程の事してるクセに」
「泣いてないよ。泣いてる暇無いもん」

 うずくまったまま、桃花は淡々と言うが、それはウソだ。実際は泣いている。
 友を、自らの手で殺したのだから。

「桃花」
「……うん?」
「もっと泣いてええねんぞ」
「泣いてない」
「強がるなや。人間つらい時は泣いたほうがええ。お前が変な事にい首突っ込んどるのは昔から知ってる。それが何かは知らんけど……。
 それにとやかく言う立場やないけど、お前が悲しそうにしてるのを見るんは俺がつらいねん。昔っからの付き合いやろ。なんで強がる? 俺の前ではそんなんいらん」
「……私より弱っちいクセに」
「そやな。逆立ちしても敵わんわ」
「簡単に認めるんだ。」
「当たり前や。自分の事くらい分かってるわ」

 血まみれの桃花はうずくまったまま。一部は渇いているが、あまりに大量の為にまだ全身べっとりと濡れている。 孝也は桃花を抱き寄せて、頭に手を置いた。それしか思いつかなかったから。桃花はガタガタ震えている。それほどの事があったのかと思わせる。

「……止めてよ。血が付いちゃうよ。私は大丈夫だから」
「ガタガタいうてるクセに強がるな。そりゃ俺は何にも出来ん。お前と比べたら蟻んこみたいに弱っちいかも知れん。
 でも泣く場所くらいなら用意できる」
「……ダメだよ。私強くならなきゃダメだもん。泣いてる暇ないもん」
「自分の弱さ知らんと強くもなれへん。先生も言うてたろ。己を知れってな。弱みを見せる事は悪い事やないで」
「ダメだよ。弱くなったら、自分も守れなくなっちゃうよ。私は誰も守れないのに、自分の事も守れなくなる」
「気にせんでええ。今は俺が守ったるから」

 孝也は震える桃花の頭をぽんぽん叩きながら言う。横には血まみれの村正。
 そしてこの日以来、桃花は村正を隠すのを辞めた。
213創る名無しに見る名無し:2010/05/23(日) 15:04:41 ID:ME479H09
以上、代理。
214創る名無しに見る名無し:2010/05/31(月) 15:27:23 ID:2MuYWmgB
215創る名無しに見る名無し:2010/05/31(月) 15:29:36 ID:TRaDqbhS
また才能の無駄遣いだ……
216創る名無しに見る名無し:2010/05/31(月) 17:48:11 ID:lMlYo0P8
おお、かっけー
217創る名無しに見る名無し:2010/05/31(月) 18:22:57 ID:ZKDJwIkM
なにこの覇王翔吼拳を破らぬ限り勝ち目が無い人
218創る名無しに見る名無し:2010/06/15(火) 17:37:36 ID:QJWvqXTn
保存した。
219創る名無しに見る名無し:2010/06/16(水) 18:15:01 ID:N37nyTcL
本職投下後は忍びないが……

寄生解除記念。悪世巣(子供)
http://imepita.jp/20100616/654890
狐版を描こうとしたらまったく描けなかった件。まぁこれも描けてないけど……
220創る名無しに見る名無し:2010/06/18(金) 00:17:24 ID:EiS6QZIU
221創る名無しに見る名無し:2010/06/18(金) 00:20:48 ID:3mTHIHnx
かっけえw
敵役でも人気が出るパターンの奴っぽいw
222創る名無しに見る名無し:2010/06/18(金) 00:34:09 ID:TkolSg1O
>>219
イケメンすなあ
炎カッコええ

>>220
うおおおお
なんというか恐怖感みたいなものがすごい出てる
223創る名無しに見る名無し:2010/06/18(金) 01:08:01 ID:bxdCKHSx
>>220
やられ役とは思えねぇw
さすがだw
224創る名無しに見る名無し:2010/06/18(金) 16:07:56 ID:bxdCKHSx
毎回思うが作者の脳内イメージすら軽く超えていってる……w
225 ◆EROIxc6GrA :2010/06/19(土) 01:52:23 ID:ocruKS3s
>>214
>>219
>>220
大人しくその絵をこちら(wiki)に渡して貰おう。
さもなくば土下座する!
226 ◆wHsYL8cZCc :2010/06/19(土) 02:00:03 ID:ovO6Ofsc
個人的に保存している俺に隙は無かった。
227創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 02:05:20 ID:ovO6Ofsc
って、>>219俺じゃねぇか。それはやめてくれ。
228創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 02:06:16 ID:ocruKS3s
そんなあ、ショタ分がぇ……
229創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 02:08:11 ID:qt8cXVno
でもどこかで雌だって言ってた気が
230創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 02:09:25 ID:ovO6Ofsc
本体はメスですが口から出まかせのエロ狐の可能性だって……
231描いちゃったりするの人 ◆bEv7xU6A7Q :2010/06/19(土) 02:10:39 ID:CEGazo56
>>225
おkですよん。
232創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 02:11:17 ID:ocruKS3s
またまた、こんな凛々可愛い男のこが女の子なワケないじゃないですか
233創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 02:16:53 ID:ocruKS3s
>>231
ありがとうございますした
234創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 02:17:53 ID:ovO6Ofsc
許可が出たぞぉぉ――!

あ、ついでにお聞きしたいのですが、SDスレの桃花姉妹と婆盆はどうでしょうか?

まとめるの俺じゃないんだけどw
235描いちゃったりするの人 ◆bEv7xU6A7Q :2010/06/19(土) 02:19:56 ID:CEGazo56
私は一向に(ry
236創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 02:22:07 ID:ocruKS3s
実はスレの存在を知らなかったってゆう
頭身美味えww

行ってまいります
237創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 02:22:30 ID:ovO6Ofsc
うっひょぉぉぉぉおお!!!!!!!!
238創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 02:37:48 ID:ocruKS3s
行ってきた。が、オルタじゃない方の創発ロダはサムネ貼れなかったんで、リンクだけになってしもうた。
解決策知ってる人いたら教えてほしいです。
239創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 02:38:06 ID:qt8cXVno
まとめおつ
240創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 02:40:18 ID:ovO6Ofsc
相変わらず仕事が速い奴じゃ。
241創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 02:41:53 ID:ocruKS3s
思わぬところで描いちゃ成分補充してほっこりしたので寝ます
242創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 03:03:44 ID:qt8cXVno
アカウントとってwikiにうpればいいのぜ
どうせだからやってきたぜ
243創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 03:17:39 ID:ovO6Ofsc
おおーサルネイム表示されているー。
244もし創発の館に他の桃花が来ちゃったら ◆wHsYL8cZCc :2010/06/19(土) 04:09:24 ID:ovO6Ofsc
「本当にやるんですか?
「無論だ。私に二言は無い」

 無限の先の創発の館。
 銀髪の少女と、苦労人のオーラが滲み出る男性が話し合っている。

「なんでわざわざ……。だいたい、裏設定を超えられない桃花を集めるだけがここの目的でしょう? わざわざそれを乗り越えた者を――」
「だからお前は青いのだ」

 男性の言葉を一刀両断する少女は、かけていたソファから立ち上がり、小さな身体でつかつかと男性に歩み寄る。
 見た目はどうみてもただの小さな女の子だが、言動は威厳すら漂い、纏う気配は永遠とも思える底の深さを感じさせる。
 少女――ハルトシュラーは弟子の前まで来ると、少し期待感が篭った声で今後の展望を語りだした。

「可能性の追求だ」
「可能性……ですか」
「そう。この館は言わば出来損ないを集める施設だ。故にここに居るのは出来損ないの桃花ばかり。元無限桃花と戦わせたりもしたが、それだけでは足りないと気づいたのだ」
「だから、ここまで無茶な事をすると?」
「無茶では無い。そもそも創作など想像の力の産物。故に『想像出来得る物』ならばなんでも可能なのだ」
「だから、設定を乗り越え独り立ちした無限桃花をここに引き込むと?」
「そうだ。その無限桃花達がここへ来た事は今だかつて無かった。迂闊だったよ。まだこの館から何かが生まれる可能性を見落として居たとは……」
「しかし……。シカ・ソーニャに皆殺しにされたはずの桃花達を甦らせてまで……」
「言っただろう? 可能性の追求なのだと。およそ創作に関する全ての事に、私は目を光らせねばならない。たとえそれが、『全てが終った』桃花達の物語と言えど……な」

 ハルトシュラーは踵を返し、テーブルのティーポッドからカップに紅茶を注ぐ。予めカップに入れられたミルクとそれは一瞬だけマーブル色を見せた後に混じり合い、見慣れたミルクティーとなる。
 これから行う事も、この一杯のミルクティーのように結果は見えているかも知れない。だが、ハルトシュラーが見たいのは結果ではない。
 紅茶が一瞬見せたような、なんとも言えないマーブル模様。それを求めている。
245もし創発の館に他の桃花が来ちゃったら ◆wHsYL8cZCc :2010/06/19(土) 04:10:59 ID:ovO6Ofsc
 分厚い本を手に取り、嬉々としてそれをめくり上げる。その本に書かれているのは、数多い、それこそ無限に存在する無限桃花達。
 そして、あるページを開いて、ニヤリと笑みをこぼす。そして……。

「よし、まず最初はコイツにしよう」
「うわ……。よりによってこの桃花ですか」
「さて、どうなる事やら。この桃花の特性ならば館全体が大騒ぎになるやもしれぬ」
「探知桃花辺りは大騒ぎしそうですね……。しかも伝達係はあのお喋りか……」
「はは。楽しそうじゃないか。よし、最初に館に引きずり込む桃花は決定した。
 まずは桃花の宿敵、寄生と同じ力を持つ、最強の桃花だ!」

 ハルトシュラーは本のページを引きちぎる。そしてそれはハルトシュラーの頭上までひとりでに舞い上がり、閃光を放つ。
 弟子の目は眩む。奪われた視界は真っ白な世界だけを映し、やがて少しずつその本来の機能を取り戻して行く。

 そして見えたのは、創発の館の一角で倒れる黒い剣を持つコートを着た桃花の姿だった――




さて、どうなる事やら?
246もし創発の館に他の桃花が来ちゃったら ◆wHsYL8cZCc :2010/06/19(土) 04:13:55 ID:ovO6Ofsc
以上、したらばで出た企画モノのコマーシャル編でした。
ちんまい桃花の方もハルトシュラーズ桃花の方もニート桃花の方も随時参加待ち。

もっとも愉快な冒険の作者様がいいとおっしゃって頂けたらですがw
247創る名無しに見る名無し:2010/06/30(水) 03:46:06 ID:6drWPgSB
248創る名無しに見る名無し:2010/06/30(水) 04:03:42 ID:/DHqwlTs
直りん…かな?
かっこいい!
249創る名無しに見る名無し:2010/06/30(水) 07:54:53 ID:0yq2Lx1x
ちくしょう見れねぇ……
250創る名無しに見る名無し:2010/07/01(木) 00:23:32 ID:gMPqr5kI
オルタロダの不安定さは最早慣れてきたw

>>247
なんだこの溢れ出るパワーは・・・!
251創る名無しに見る名無し:2010/07/01(木) 09:53:39 ID:tKSrTfUz
>>247
カッケェ。
252創る名無しに見る名無し:2010/07/07(水) 20:49:11 ID:rpLQ3Whg
某ロボスレで流行ってたので
http://shindanmaker.com/30875


S・ハルトシュラーが短冊にかいた本当の願い事は『公務員になりたい』です。
倉刀作が短冊にかいた本当の願い事は『家が欲しい』です。
裏ハルトシュラーが短冊にかいた本当の願い事は『首相になりたい』です。
裏刀作が短冊にかいた本当の願い事は『アニメイトで働きたい』です。

発子・クリーシェが短冊にかいた本当の願い事は『首相になりたい』です。
ひなこ・J・ひなのが短冊にかいた本当の願い事は『首相になりたい』です。

無限桃花が短冊にかいた本当の願い事は『願いが欲しい』です。
無限彼方が短冊にかいた本当の願い事は『脱毛にいきたい』です。

スーパーストロングパンツマシーンが短冊にかいた本当の願い事は『ネコが欲しい』です。


ひなちゃんのフルネーム何だっけ
それはそうと首相の競争率が異常
253創る名無しに見る名無し:2010/07/07(水) 23:43:05 ID:5TlMnq87
結構キャラごとの個性出てるなw
254創る名無しに見る名無し:2010/07/08(木) 09:52:20 ID:3cc8Tn23
「あいつが公務員になりたいと願うなら、それをこき使う首相になってやるわ!」
「姉さん、その動機はどうかと思いますー……」
「あんただって首相になりたいって書いてるじゃないの」
「だって、首相になれるようになるという事は、それだけの政治基盤が手に入るって事で、そうなったら
 今のどうしようもない政治家よりもそれを活かせる自信はありますし、しっかり活かして日本を良くすれば
 歴史に名が残って影が薄いとか、え?お前誰だったっけ?とか言われる事もなくなるかと思いましてー」
「……な、何か、割と真面目に考えてんのね」
「はいー」
「ちなみに、首相になったらまず何をやるの?」
「今のどうしようもないクズどもを、残らずクビにしてやりますー」
「……そ、そう……頑張ってね」

一方その頃、ウラトさんは、首相になっても働かないといけない事を教えられて「んじゃやめた」と言っていた。
255創る名無しに見る名無し:2010/07/09(金) 01:04:36 ID:39aoyObp
さすがウラトさんは格が違った
256創る名無しに見る名無し:2010/07/09(金) 10:12:00 ID:ZvpY3Yrb
「私が国税庁、通称マルサの女 ハルトシュラーだ」
「そ、それを先にいってれぼ!」
257 ◆wHsYL8cZCc :2010/07/14(水) 06:48:41 ID:GaRDQ/bN
とりあえず生存報告。
258創る名無しに見る名無し:2010/07/26(月) 01:50:51 ID:bbtX9MVe
期待age
259創る名無しに見る名無し
創作発表板2周年の企画として、キャラクターの人気投票ページを作りました。
http://www26.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/801.html

さあ早く無限桃花ちゃんに投票連打するんだ