『……君は人を助ける時に、人に対して見返りや感謝を求めるかい? つまりそういう事さ。これは理解とか理解しないとか、そういう問題じゃないんだ。分かってくれ』
『改めて言うよ。君は、全を救える程に強い力を持っている。其れほどの力を使うのは何の為か、君はもう一度じっくり考えなければいけない。
ただし覚悟は決めておけ。君自身がどんな代償を払おうと、人は当事者でない限り無関心だ。何時の時代もね。さぁ、次に行こうか』
……もう、動けない筈なのに、足が勝手に立ち上がる。
充分だよ。俺はもう、充分苦しんだ。なぁ、聞いてくれよ、このまま俺を殺してくれないか?
嫌なんだ、全てが。ロボットの事とか、そういう事一切合切が、俺にとって何もかも億劫なんだ。ついでに言っちゃえば生き――――。
っ! 眩……しい!
またいきなり景色が変わってるし……。で、次はどこなんだ? やけに立派な建物の中だな。石造の柱だの色々。
見渡すと様々な色のコートを着た人達が、壇上に向かってカメラを撮っている。にしてもホントにフラッシュが眩しい。ちょっと自重してくれ。
檀上の上で、スーツに身を包んだ大柄な男が何処の言語かは分からないが、堂々とした立ち振る舞いで何かを喋っている。
『前の男の人は科学者でね。新型兵器の開発が成功したって事で記者会見を開いているんだ』
声が、耳元で囁く。どうせ飛ばすなら崖とかに飛ばしてくれれば良かったのに……。
『彼はこの兵器が世界に対する抑止力となると誇らしげに語っているけど……どう思う?』
どう思う? って言われても……そんな事考えた事も無いよ……。つか抑止力って核の事なのか?
あれだろう? その……戦争しない為に、とか、そういう感じの……ごめん、分からない。
『……君はもう少し世界に対して関心を持つべきだね。というか社会に対して』
ごめん……ホントにごめん……。声はため息をつくと、再び話し始める。
『まぁ今はそんな事はどうでもいい。君に伝えたいのは一つ。人はね、大きな力を持つと、その力に飲まれるんだ。そして自分自身の欲望の為に使う様になる』
すると俺の周囲がメリーゴーランドの様に回転しだした。不思議な事に目は回らないが、奇妙な感覚に囚われる。
段々回転のスピードが遅くなってきて、やがてゆっくりと止まった。ココは何処だ……?
周囲に目を映すと、天文模型やら、大きな実験器具やらが……あぁ、研究室なのか、ここ。
ふと、白衣を着た人達が一か所に集まっている事に気付く。相変わらず何を話しているかは分からないが、一応近寄ってみる。
『この前発表した兵器……というか爆弾の実験場所をどこにするかで揉めているんだ。どこに落とすかをね』
落とすって……あの兵器、爆弾だったのか。どこに落とすってそんな事で悩む必要があるのかな。
てか更地とか荒野とか、人がいない場所に落とすんだよな。……あぁ、なるほど。近隣住民が煩いとかそういう事か。それで揉めて
『いいや。少数の村人が住んでいる辺鄙な村に落としたいんだよ。人体実験を兼ねてね』
声が言った言葉に、俺は耳を疑う。人体実験? 何だよそれ……そんな非人道的な事、許される筈……。
誰かが大声を上げた。白衣の人達の方に目を向けると、若い男の人が叫びながら、誰かの胸倉を掴んで食いかかっていた。
胸倉を掴まれている男は、壇上で記者会見を開いていた、あのスーツ男だった。周りの人達が、男の人の肩を押えこんで、地面に無理やり突っ伏させた。
『今激怒している彼は元教師でね。今爆弾が落とされる村で昔、ボランティアで子供達に授業を教えていたんだ』
そうか、だからアレほどスーツ男に対して怒っていたのか。いや、怒るなんてレベルじゃないだろ、それは……。声が、スーツ男が言っている事を翻訳する。
『君の怒りは理解できる。だがな、よく考えろ。
この実験は、世界を変えうるかもしれない実験なんだ。その為の尊い犠牲だと思って理解してくれ。君も科学者のはしくれなら分かる筈だ』
スーツ男の言葉に、男の人はひたすら叫んで抵抗しようと、体を動かす。スーツ男は小さくため息をつくと、ズボンの腰元に手を伸ばして、何かを取り出した。
……拳銃だ。スーツ男は男の人の前にしゃがむと、拳銃の銃口を、男の人の頭頂部にピタッとつけて、言った。
『これが最後の警告だ。私の計画に賛同しろ。人類は、いや、科学は常に進歩の裏に尊い犠牲を出してきた。
君が科学者なら、そんな事は既に理解していると私は思ったのだがな。トンだ思い違いだったようだ』
『確かに……確かに進歩の裏には多くの犠牲者がいる事は分かる。だが! アンタのやっている事はただの快楽殺人だ! 自分の兵器を試したいだけのな!』
男の人がスーツ男にそう叫んだ。スーツ男は無表情のまま、男の人に返答する。
『それは業、だ。我々科学者は進化の裏にある、犠牲という名の業を背負わねば生きていけない。特に、兵器を作る人間ならな』
目を、背けた。研究室内に、無慈悲な銃声音が響いた。俺は自らの両手を見た。汗でべっとりと、濡れていた。
またも周囲が回転しだし、止まる。
本当に辺鄙な村だ。どの家の屋根も藁とレンガで出来ていて、動物や老人達、子供達がのんびりとしている。
誰もかれもが、楽しそうに人生を生きているって感じの屈託のない笑顔を浮かべている。こんなむ……村?
空から飛行機が飛んでくる音が、遠く聞こえる。心臓の鼓動が経験した事の無いくらい早くなる。
まさか……頭の中ではあり得ないと思っていても、胸騒ぎは止まらない。そんな……そんな馬鹿な事……本気でやろうってのか?
幸いな事に体は自由になっていた。そして口も開く。俺は喉を枯らすくらい、大声で叫ぶ。
「早く逃げろ! 爆弾が落ちてくるぞ!」
しかしいくら叫んでも、皆俺には全く気付かない。俺は……いや、諦めるな!
俺は本気で誰かに気付いて貰う為に、手当たり次第に周囲の物を壊す。自分自身のモラルに反していると分かっていても、やらなきゃいけない。
誰でも良い、誰でも良いから俺に気付いてくれ! 早くしないと、早くしないと皆……!
ふと、自分のいる位置が薄暗くなっている事に気付く。飛行機が曇って来た空の合間から覗いている。
視線を戻すと、一人の少女が空を見上げていた。何も知らない無垢な瞳が、ぼんやりと空を見上げている。
頭の中に砂漠で死んだ少年と子供達の事が浮かぶ。この子だけ……この子だけでも俺は……!
瞬間、空が眩く光って、俺は派手に吹き飛ばされた。背中から壁にぶつかって、俺は、そのま、ま。
……どれだけ気絶していたんだろう。頭を弄りながらゆっくりと、俺は目を開ける。青い空だ。
ぶつかった拍子にだろうか、右手の甲に斜めに傷が出来ていた。深くは無いが、爪痕みたいなその傷はズキズキと痛む。
立ち上がると強烈なめまいがするが、激しく頭を振って気を取り直し、前を、見る。
何もかも、消えていた。
村があった場所は、巨大なクレーターになっていた。建物はおろか、生物さえ残らない、何も無い、本当に、何も無い。
あの一瞬で、全てが消えてしまったのか。誰も泣く事も、叫ぶ事も出来ず、皆一瞬で、消えて、しまった。
また、救えなかった。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!」
『あの男はこれからも、科学という名の力を、自らの実験の為に使い続けるだろうね。彼にとって科学は既に、自分の欲望を充足させる為の兵器になり下がったんだ』
『もちろん彼は最初からあんな性格になった訳じゃない。兵器開発は彼にとって力であり、毒だったんだ。無常だね、世の中という奴は』
『さて、これで力に関する授業は最後だ。力に飲まれる人間がどうなるか、その体で良く実感できたと思う』
『君はどうかな? 君もあの男と同じ様に、力を自分の欲望の為に使おうと、一度は考えたんじゃないか?』
……確かにそうかもしれない。俺は自分の為にヴィルティックを使って……。
『ヴィルティックを使えばどんな事だってできる。俺の自由に、好きな事が出来る。そう、考えてたんだろう?』
そうかも、しれない……。少しくらい被害を出しても、俺は皆を救えればいいと……そう、考えていたのかも。
『それでは聞かせて貰おうかな』
『君は、ヴィルティックという力を使って、何がしたい?』
俺は……俺がしたい事……。目を瞑って、俺は考える。俺が成すべき事、俺が……。
「隆昭さん、悩んだら私に相談して下さい。少しでも、隆昭さんが楽になれば」
メルフィー? 確かに今、メルフィーが俺の声を呼ぶ声がした。
「たくっ、お前は何時も考え過ぎなんだよ、隆昭」
「貴方は貴方が出来る事を背一杯やれば良いんじゃない?」
草川……会長……。
「貴方一人で闘ってる訳じゃないのよ。だから思いつめないで。私達がいるから」
スネイル……さん……。
「だから帰ろう、鈴木君。君の、仲間の所へ」
特徴的な三つ編みが揺らして、彼女がそう言った。俺に、笑顔で。
「俺は……俺は逃げない! 全だろうが個だろうが関係ねぇ! 救いを求める人がいれば幾らでも救ってやる!
俺は俺が救いたいから救う! 例え力に飲まれようと、その時は人類全体を救ってから幾らでも飲まれて、それで死んでやるよ!」
「だから……だから俺に力を貸せ! ヴィルティック!」
真っ暗闇を切り裂き、青い風を纏ってそれは、俺の目の前へと来てくれた。忠誠を誓う様に、片膝を下ろして。
吹き抜ける様な気持ちの良い青空と心地の良い春風が、俺とヴィルティックの間に流れる。ヴィルティックの膝に触れる。
ヴィルティックが俺の言葉を聞く為だろうか、俺の方へと頭部を向けている。俺は、一字一句しっかりと、ヴィルティックに伝える。
「まだまだ俺は未熟で青二才かもしれない。けど、それでも俺には救いたい世界と、守りたい人達がいるんだ」
「だからもう少しだけ、俺に力を貸してくれ、ヴィルティック」
ヴィルティックは何も言わず、俺を見つめている。だけど俺には、ヴィルティックが頷いた、様に見えた。
『……君の信念、しかと受け取ったよ。分かった、ヴィルティックは間違いなく君の機体だ。しかし忘れないでくれ。力というものの、重大さを』
「分かったよ。けど、もうこの授業はこりごりだよ、博士」
俺がそう言うと、声、いや――――――――は、ふふっと笑った。
「またな、未来の」
『さらばだ、過去の』
「鈴木、隆昭」
「……さん」
「……昭さん」
「隆昭さん、起きて下さい」
ん……メル……フィー……? 窓から差し込む朝の光が眩しく、目が痛い。
「中々起きないからどうしたのかなっと思って……朝ごはん、もう出来てますよ」
メルフィーがそう言って俺にささやかな笑顔を見せてくれた。そうか、もう朝だったな……。
ソファーから立ちあがって、メルフィーと共に1階へと降りる。あれは夢だったみたいだ。それにしちゃやけに具体的だったけど。
『メルフィーを宜しく頼む』
一瞬、あの声が聞こえた様な気がして立ち止まる。
「隆昭さん?」
「……何でもない。行こう、メルフィー」
―――――――右手の甲の傷、何か、良いな。
ビューティフル・ワールド
the gun with the knight and the rabbit
に続く
支援の程、誠に有難うございます
一先ず古時計屋さん、かなり容量を削ってしまい申し訳ないですorzどうにか間に合えばいいのですが……
さぁ、投下された奴を読まねば……
投下乙!
さあ、感想の前にスレ立てだ
>>950踏んだのはたろ氏だけど、いける?
無理なら俺が行くよ!
>>965 あーすみません、最近スレ立てたんで無理っす
お手数ですが宜しくお願いしますorz
>>965 その時はお手数ですがテンプレ内のタイトル「剣神鋼王ミカズチ」を「武神鋼臨タケミカヅチ」へ変更して下され
おk、行ってくる
969 :
創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 23:30:11 ID:btcX2tQd
うめ
>>964 投下乙です!
それでは、ゆっくり読ませていただきますね!
……って、そういえばもうとっくに次スレの季節ですね。
よし、オレが行こう
クソ、無理だった……
>>973、悪いが、後は……頼んだ……
いってらっしゃい
作品一覧のミカヅチのタイトル変更も忘れずに!
あと20号機の最初の方で色々テンプレ修正出てたからそれも見た方がいいかもです
あw踏んだw
この前18号機建てて失敗したから不安ですがいってみますねー
申し訳ない駄目でした……orz
どなたかお手空きの方お願いしますー(>△<;)
……もしかしたら良く考えたらいけるかもしれません
ちょっと行ってみて良いですか
突発的1レス作品
俺の名前はジョー、今回の仕事はは塗装と接工だぜ!
「おーい、ジョー!ここの塗装を任せてもいいか?」
いいぜ!悪山博士!
「では頼んだぞ!ワシはこれから全ロボスレ、悪の組織寸評会に出席しなくてはならんからな」
分かったぜ、夕方頃には仕事が終わってるから安心してくんな!
とは言ったものの…この馬鹿でけぇのを一人でか?
せめてもう一人助手が欲しいぜ!
<こんにちわ、悪山博士はいますか?>
うん?あんたは?
<私の名前はリヒターと申します>
リヒター?変わった名前だな。それでここに何のようだい?
<とある物を博士に頼んだのですけど・・・>
残念だけど博士は出かけちまったぜ!
<そうですか、いないのであれば帰りま…>
ちょっと待った!あんた、なかなか良い面構えだな…どうだい、一緒にこのロボの塗装手伝ってくんねぇか?
<え?しかし…>
なぁに、指定された所に塗料をぬりゃあ良いだけだから、な?
<……そうですね、帰っても何か予定があるわけでもないので…>
よし、きまりだ! 早速、そこのだな…
ふぅ、終わったぜ!
<……疲れました、オイルかバッテリーを所望します>
はいよ、鉄印のバッテリーだ!
<ありがとう>
……
<どうしましたか?>
いや、なんか物足んねぇと思わねぇか?
<指定された所を塗っただけですからね>
なあ、俺たちでこいつをさらにすげぇ物にしてみねえか?
<……賛成>
よし、それじゃ――
「はっはっはっ、久しぶりだな!田所カッコマン!」
「その声は悪山博士!生きてたのか!」
「そうだ!今回のロボは凄いぞ!見るが良い!」
「………は?」
「どうだ!すごいだろう!」
「いや、確かに凄いが…なんて目に悪いカラーリングなんだ!これでは町の人達の目が悪くなってしまうぞ!」
「それだけではないぞ!スイッチオン!」
「背中からのぼりと紙ふぶきが!これでは確実に後で掃除のボランティアだ!」
「ぬわはっはっはっはっは!恐れ入ったか!」
「だが、俺は諦めないぞ!行くぞ、悪山博士!」
「博士、悪山博士からお礼をいただきました」
「何だと?あのロボット学会で奇人、変人、廃人と呼ばれたあの悪山から?」
「中身は…チーズケーキです!」
「……頂いておこう」
「そうですね、ところで…このケーキ5個入ってるんですけど…3個は私に…」
「何を言う!これはワシのモンじゃ!」
「酷い!またそうやって…」
俺の名前はジョー、仕事帰りのいっぱいのオイルが好きな派遣ロボットだ。
仕事の苦しみもこの一杯で流れていく。
「こら!わしのチーズケーキを返せ!」
「嫌です!このケーキは私の――」
近所迷惑だ!静かにしろぃ!
やっぱり駄目でしたorzホントごめんなさい
手の空いた方はどなたかマジでお願いします
>>979 お願いします!
>>967の件とテンプレのGEARS紹介文のスピード感の修正、
あとR,B&Gを削るのをお忘れ無くー!
試しに行ってみるわ
ネクソンクロガネ、及びパラベラムのキャラを無断で使った事を深くお詫びいたします
こんなの俺の〜じゃないと言うのもきちんと理解しております
お願いします!
うわぁ
また二重で建っちまったよ……
俺のにテンプレ入れるべきか
>>987 ではお願いしますね
自分のは放置という方向でお願いします
宣言をしろとあれほど!
黒歴史……の前にURLプリーズ
深夜のテンションだから多少のミスは仕方ないとして、次から気を付けたいですね!
そして
>>987 新型器建造乙です!
>>987 スレ立て乙!
よくやった、黒歴史の悪夢を再来させる権利をやろう。
あと、wiki更新してきました!
画像の表示の仕方も理解したんで、その内画像うpしたいと思いますw
>>987 スレ立て乙!
さて……、
>>988では「SSへの感想等は次レスから 」と書きましたが、
やはり21号機の方に書かせて頂きます。
特に今回、蜥蜴氏への質問があるんで、確実に読んでもらわないと、というのがあるので。
>>995 そろそろ882氏にはロボットを描いて貰おうと思うんだ……
何で終了直前で止まってるんだwww
ここを埋めておきましょう
1001 :
1001:
/■\
(_´∀`)_ 創る阿呆に見る阿呆!
/,/-_-_-_-_-_\ 同じ阿呆なら
( ( /,, /― ((神輿))―\ 創らにゃソンソン!! //
(。'。、。@,。,。,。,。,。,。,。,。,。,。,。@ ) )
∩ヽヽ∩ヽXXXXXXXX/ .∩
i||i ∩i||i:||::::¥_][_¥::::||. i||i
†人=†††¶┌┐¶†††† このスレッドは1000を超えた!
/■/■\[/■ /■\/■\] /■\■\ 今度は新しいスレッドで
(´∀(匚二二( ´∀( ´∀( ´∀`).□´∀` )Д´)□ レッツ 創作発表!!
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