ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第九部

このエントリーをはてなブックマークに追加
1創る名無しに見る名無し
      ,..-''" ̄ ̄ `'" ̄ ̄`ヽ、
      /             ヽ
   ./     ,,,... -――- ...._    ',
   |    /'´         `!  |
   |  ,ノ           |  :!   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    |   |   ,. -==、 ,.==-、 |.  |   / これからジョジョキャラ達に、殺し合いをしてもらうよ
   l:  l  ィてフ_> :i i ィてフ_> | ;'  |ルールはwikiに乗ってるから詳しくはそれを読んでくれ
    iヘ:|         | |       |''|   |とりあえず残酷な描写やキャラ死にネタが苦手な人にはお勧めしないよ
    |,ハ|       r_!__ト,     /ノ   | 僕は悪い事をしていません
    ヽ'_l、    ,___,   /'′  _ノ   まちがいをするだけなのです……。
     `l \     ―‐  ,/   ̄ ̄ヽ、_______________
   _,. -l    丶、___.. 1"i''''''―-
‐''"´ |\        /  |
    |:  \      /   |
     |     \    / _   |
    l   _,,. -へ   // \ |
2創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 21:21:00 ID:DbJVC3GH
まとめサイト
http://www10.atwiki.jp/jojobr2/

したらば
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11394/

前スレ
ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第八部
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1256142830/l50
3創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 21:21:09 ID:2p0Mf9ZR
まとめサイト
http://www10.atwiki.jp/jojobr2/

したらば
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11394/

前スレ
ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd第七部
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1250743192/


【第一部:ファントムブラッド】11/11
○ジョナサン・ジョースター/○ディオ・ブランドー/○ロバート・E・O・スピードワゴン/○ウィル・A・ツェペリ/
○エリナ・ペンドルトン/○ジョージ・ジョースター1世/○ダイアー/○黒騎士ブラフォード/○タルカス/○ワンチェン/
○ジャック・ザ・リパー


【第二部:戦闘潮流】10/10
○シーザー・アントニオ・ツェペリ/○リサリサ(エリザベス・ジョースター)/○ルドル・フォン・シュトロハイム/
○スージーQ/○ドノヴァン/○ストレイツォ/○サンタナ/○ワムウ/○エシディシ/○カーズ


【第三部:スターダストクルセイダース】15/15
○ジョセフ・ジョースター/○モハメド・アヴドゥル/○花京院典明/○J・P・ポルナレフ/○イギー/
○ホル・ホース/○ラバーソール/○J・ガイル/○エンヤ婆/○ンドゥール/
○オインゴ/○マライア/○アレッシー/○ダニエル・J・ダービー/○ヴァニラ・アイス


【第四部:ダイヤモンドは砕けない】12/12
○東方仗助/○空条承太郎/○虹村億泰/○広瀬康一/○岸辺露伴/○山岸由花子/○矢安宮重清(重ちー)/
○トニオ・トラサルディー/○川尻早人/○片桐安十郎(アンジェロ)/○音石明/○吉良吉影


【第五部:黄金の旋風】15/15
○ジョルノ・ジョバァーナ/○ブローノ・ブチャラティ/○グイード・ミスタ/○レオーネ・アバッキオ/
○パンナコッタ・フーゴ/○トリッシュ・ウナ/○サーレー/○ホルマジオ/○ペッシ/○プロシュート/
○ギアッチョ/○リゾット・ネエロ/○ティッツァーノ/○チョコラータ/○ディアボロ


【第六部:ストーンオーシャン】 15/15
○空条徐倫/○エルメェス・コステロ/○F・F/○ウェザー・リポート/○ナルシソ・アナスイ/
○エンポリオ・アルニーニョ/○ロメオ/○グェス/○サンダー・マックイイーン/○ラング・ラングラー/○ケンゾー/
○ヴィヴィアーノ・ウエストウッド/○ミュッチャー・ミューラー/○ドナテロ・ヴェルサス/○エンリコ・プッチ


【第七部:スティール・ボール・ラン】 10/10
○サンドマン/○マウンテン・ティム/○リンゴォ・ロードアゲイン/○マイク・O/○オエコモバ/
○スカーレット・ヴァレンタイン/○ブラックモア/○フェルディナンド/○ミセス・ロビンスン/
○ベンジャミン・ブンブーン


【88/88人】
4創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 21:22:22 ID:2p0Mf9ZR
スレ立て遅れてゴメンなさい
5創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 21:23:03 ID:DbJVC3GH
【第一部:ファントムブラッド】4/11
○ジョナサン・ジョースター/○ディオ・ブランドー/●ロバート・E・O・スピードワゴン/●ウィル・A・ツェペリ/
●エリナ・ペンドルトン/○ジョージ・ジョースター1世/●ダイアー/●黒騎士ブラフォード/○タルカス/●ワンチェン/
●ジャック・ザ・リパー


【第二部:戦闘潮流】2/10
○シーザー・アントニオ・ツェペリ/●リサリサ(エリザベス・ジョースター)/●ルドル・フォン・シュトロハイム/
●スージーQ/●ドノヴァン/●ストレイツォ/●サンタナ/●ワムウ/○エシディシ/●カーズ


【第三部:スターダストクルセイダース】5/15
●ジョセフ・ジョースター/●モハメド・アヴドゥル/○花京院典明/○J・P・ポルナレフ/●イギー/
○ホル・ホース/●ラバーソール/○J・ガイル/●エンヤ婆/●ンドゥール/
○オインゴ/●マライア/●アレッシー/●ダニエル・J・ダービー/●ヴァニラ・アイス


【第四部:ダイヤモンドは砕けない】7/12
●東方仗助/●空条承太郎/○虹村億泰/●広瀬康一/○岸辺露伴/○山岸由花子/●矢安宮重清(重ちー)/
●トニオ・トラサルディー/○川尻早人/○片桐安十郎(アンジェロ)/○音石明/○吉良吉影


【第五部:黄金の旋風】8/15
○ジョルノ・ジョバァーナ/○ブローノ・ブチャラティ/●グイード・ミスタ/●レオーネ・アバッキオ/
○パンナコッタ・フーゴ/●トリッシュ・ウナ/●サーレー/○ホルマジオ/○ペッシ/●プロシュート/
●ギアッチョ/○リゾット・ネエロ/○ティッツァーノ/●チョコラータ/○ディアボロ


【第六部:ストーンオーシャン】 6/15
○空条徐倫/●エルメェス・コステロ/○F・F/●ウェザー・リポート/○ナルシソ・アナスイ/
●エンポリオ・アルニーニョ/●ロメオ/○グェス/●サンダー・マックイイーン/●ラング・ラングラー/●ケンゾー/
●ヴィヴィアーノ・ウエストウッド/○ミュッチャー・ミューラー/○ドナテロ・ヴェルサス/●エンリコ・プッチ


【第七部:スティール・ボール・ラン】 3/10
○サンドマン/○マウンテン・ティム/○リンゴォ・ロードアゲイン/●マイク・O/●オエコモバ/
●スカーレット・ヴァレンタイン/●ブラックモア/●フェルディナンド/●ミセス・ロビンスン/
●ベンジャミン・ブンブーン


【35/88人】


【支給品・生物】
●ダニー犬/●ココ・ジャンボ亀/○サヴェジ・ガーデン鳩/●ヴァルキリー馬/○エル・コンドル・パサ馬/○ヨーロッパ・エクスプレス馬
【スタンド生物】
●モハメドアヴドゥ竜/●ロビンスン翼竜A/●ロビンスン翼竜B
【支給品・人間】
○吉良吉廣/●空条承太郎のワイフゾンビ
【スタンド】
●アヌビス神/●ブラック・サバス(本体のポルポは生存?)/●ヨーヨーマッ
6 ◆Y0KPA0n3C. :2010/02/11(木) 21:27:14 ID:axYJvwIr
新スレ、テンプレ お疲れ様 & ありがとうございました。それにしても>>1の荒木www



「ハァ………ハァ………ッ!」

おっと少年何処へ行く?そんなに急いちゃ、怪我するぜ?
まずはゆっくり語れや、その理由。走る行く先、その目的。

「早く逃げないと…殺されるッ!」

それは一人の男の優しさが、拗れに拗れた集大成。
二人が過ごした短い時間。男が背中で語った不器用さ。捻れに捻れた少年の決意。

「スタンド使いばかり…僕は、弱い。だけどそんなこと敵が考えてくれるわけがない。何か…何か方法は………ないのか?!」

男の気遣い、疑惑に変わる。供に過ごした老人の、行き先知れず疑う目。そこに写るは火傷に傷。
もしやの思いが確信に。担いでもらったことすら恐ろしい。なぜなら男は嘘つき狼。

「………いや、あった」

無論それのみ決めつけて、結論急かす意味はない。だがだが、決して出るなと念押され、訝し後をつけてみる。
疑惑は恐怖に変わってく。狼、牙向き、躍り出る。戦い、暴れ、一騎討ち。少年確信するには充分だ。

「上手くいくのか…?いや、やらないといけない。やらないと駄目だ」

少年なにより己の無力さを、噛み締め悔やみ涙する。力もなけりゃ知恵もない。あるのは並外れた度胸だけ。
その自信がきっかけに。再び走る電流が。少年閃くアイディアを。度胸だけしかないならば、度胸だけを使えばいい。

「死ぬかもしれない…うまくいかないかもしれない。だけどどっちみちお前にはようがあるんだ………ッ!」

全ては己の命のため?いやいや、どっこい、少年は、過去を眺めて罪悪感。恩を返せ、と己に課す。

「吉良吉影………!」

故に一つの賭けをする。握るは情報、やるは脅し。相手は一流殺人鬼。要求、仇を討つことだ。返答次第で少年は、その身を炎に包まれる。

「待っててね、ウェザーさん。僕が必ず…必ず………ッ!」

行き急ぐなよ、少年よ。その身を焦がすな、復讐に。然れど声など聞こえやしない。少年見つめる過去のこと。
それは未来のためなのに。仇なんぞはとれやしない。偉大な男が成し遂げたのだから。

7創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 21:28:21 ID:2p0Mf9ZR
支援
8 ◆Y0KPA0n3C. :2010/02/11(木) 21:29:39 ID:axYJvwIr

【F-5 中央/1日目 午後】
【川尻早人】
[時間軸]:吉良吉影撃破後
[状態]:精神疲労(極大)、身体疲労(中)、腹部と背中にダメージ大、上半身ダメージ(小)、右手人差し指欠損、
    服がびしょ濡れ、漆黒の意思、殺意の炎
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×2、鳩のレターセット、メサイアのDISC、ヴァニラの不明支給品×1(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:荒木を倒したい。吉良吉影を殺す。殺し合いにはのらないけど、乗ってる参加者は仕方ない。
0.吉良吉影を脅し、ウェザーの仇をとるのを手伝わせる。とりあえず吉良を探す。
1.絶対にウェザーの仇を見つける。
2.吉良吉影を殺す。邪魔をするような奴がいたらそいつも・・・
3.荒木の能力を解明したい
[備考]
※吉良吉影を最大限警戒、またエンポリオの情報によりディオ、プッチ神父も警戒しています。
※ゾンビ馬によって右足はくっついていますが、他人の足なので一日たてば取れてしまう可能性があります。
 歩いたり、走ったりすることはできるようです。
※ある程度ジョセフたちと情報交換しましたが、三人を完全に信用していないので吉良吉影について話していません。
 ジョセフも本人かどうか半信半疑なので仗助について話していません。
※第二回放送をほとんど聞いていません。「承太郎の名前が呼ばれた気がする」程度です。





     ◇   ◆   ◇
9創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 21:29:45 ID:2p0Mf9ZR
支援
10創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 21:30:11 ID:DbJVC3GH
sien
11創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 21:31:14 ID:2p0Mf9ZR
支援
12 ◆Y0KPA0n3C. :2010/02/11(木) 21:31:30 ID:axYJvwIr


「―――――ってわけだ」
『それで…結局てめぇは何がしたかったんだ?』
「何っていうのはねーだろ、何って。情報収集さ。それだけでもたいしたもんだと思うぜ?なんせ5人の情報が丸わかりだ。それもただで!どうよ、うん?」
『…お前、本当にプロか。アマチュアじゃねぇんだぞ、俺たち暗殺チームは』
「おいおい、何も殺すだけが俺たちの仕事じねぇはずだ。それに俺の希少価値ぐらいお前だったらわかってるだろ?プロシュート」
『てめぇで希少だの重要だの言ってちゃ世話ねぇぜ…』
「やれやれ、お前と一緒のペッシの奴が気の毒だよ」
『何言ってんだ。お前らじゃ信用できねぇってリゾットが判断したんだよ。自分の無能さに気づけ、馬鹿』
「少なくとも俺は見境なく喧嘩をしかけることなんてねぇし、女を捜して不法侵入をしたりはしねぇぜ?」
『喧嘩はともかく不法侵入はしてんだろ。お前のスタンドで不法進入以外の使い道なんてねぇ』
「…試してみるか?」
『…ア?』
「ここで試してみるか?って聞いてんだよ、このモウロク爺。スタンドの能力で自分まで老けちまったか?」
『…ホルマジオ、口に気をつけろ』
「………」
『………』
「………」
『………』
「………わかった、わかった。しょうがねぇ〜なぁ〜、俺が悪かったよ、プロシュート」
『………』
「おい、そんな怒るなよ。おふざけさ。わかる?」
『………』
「おいおい、だんまりかよ。悪かったって言ってるじゃねーか」
『………』
「なぁ、プロシュート…」
『………』
「おい………」
『………』
「いつまで黙ってんだよ…悪かったって言って――――」
13 ◆Y0KPA0n3C. :2010/02/11(木) 21:32:14 ID:axYJvwIr

プロシュートの右足に大型のゴミ箱が当たる。ホルマジオに半ば引きずられるように歩いていたプロシュートはそれだけでバランスを大きく崩す。
当然ホルマジオもプロシュートという決して重くない荷物に引っ張られ、よろめく。力が拮抗していたのはほんの僅か。
プラスチック製の大型ゴミ箱と共に二人は倒れる。無抵抗に投げ出されるプロシュート。重なるように倒れるホルマジオ。

暢気な音を立ててゴミ箱のフタが綺麗に転がる。大きく円を描いてぐるりと廻りホルマジオの目の前でグルングルングルン…と音を立てるとやがて停止した。
それを掴むと同時にスクッと何事もなかったかのように立ち上がるホルマジオ。服の汚れを叩き落とすとツカツカと横たわるゴミ箱に近寄り。
ゴミ箱とゴミ袋が華麗に宙を舞った。
飽き足らずに追いかけるようにして二発目をぶち込もうと足を勢いよく振り上げ、急に虚しさがこみ上げる。

行き場のない苛立ちを胸に溜め込むと同じように転がる仲間の元へ向かう。仲間は何も言わなかった。ホルマジオをも何も言わない。
肩を貸して持ち上げてやるとスーツについたゴミを叩き落としてやる。シワも片手ながら伸ばしてやり、身だしなみを整える。
プロシュートは何も言わない。

「なぁ、プロシュート…俺実はさっきよぉ、第二回放送の後に思ったことがあるんだよ。聞いてくれよ…」
『………』
「俺たち所詮人殺しさ…だからよ、俺自身ろくな死に方はできねぇと思ってた…今も思ってるぜ」
『………』
「でもよぉ、まさか殺し合いのクソッタレゲームに巻き込まれるなんて想像もしてなかったぜ…本当勘弁してくれよ、ってのが俺の感想だ」


「ギアッチョが死んで、その後俺なんとあのアバッキオと三人組組んで戦ったんだぜ?これいい情報じゃねーか?リゾットの奴…報酬弾んでくれねーかな」
「まぁ、それで色々あって、結局アバッキオの奴も死んじまってだな、うろうろしてるところに第二回放送と来たもんだ」
「驚いたぜ?あの無敵の男プロシュートが!殺しても死なねぇプロシュートが!鬼の皮を被ったプロシュートが!…ああ、悪ぃ言い過ぎた」
「…それで俺はよォ………ここだけの話な…これ頼むからリゾットとペッシには内緒にしてくれよ?」
「…死にたくなかった。だから最後の一人になるしかない。そう思ったんだ」
「そんで…それからはさっき言った通りだ。なにやら騒がしい音がしたんで俺の能力の出番、小さくなって忍び込んだってわけだ」
「大惨事大惨事。しかもヤッたのがあのフーゴだ。パンナコッタ・フーゴ、ブチャラティん所の。いや、流石の俺もビビッタね」
「んで…フーゴが逃げ、花京院とポルナレフが………ってわけだ」
「それで事が終わって花京院のポケットから飛び出たホルマジオ。南下中にお前さんを見つけた、ってわけ。ここまでOKか?」
「驚いたぜ。本当にいるんだもんなぁ…お前が。お前が倒れてるとこなんて初めて見たぜ?貴重な光景だったぜ、あれは」
「それでよォ…そん時思ったわけよ。殺し合いなんて馬鹿げてる、ってな」
「当然…優勝したいなんて思いはなくなったぜ。あっという間だった。本当にすぐになくなった」
「俺たちがいうのも的外れだと思うけどよ…この殺し合いはクレイジーだ。みんなが皆、傷だらけだ」
「男も女も、ガキもいい年の大人も、老人も中年も、犬もいたんだぜ、プロシュート。びっくりだろ」
「間違ってるぜ、こんなの。絶対におかしい」
「お前に聞きたいのはよ、プロシュート…そうやって一時でも、ほんのちょっとでも裏切った俺をアイツらは受け入れてくるのか、ってことだ」
「女々しいか、こんな俺が?小っせいか?…ああ、そうだろうな。スタンドが何よりもそれを示してるさ」
「なぁ、プロシュート…おまえだったらどうする?お前が俺だったらどうする?お前があいつらの立場だったらどうする?」
14創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 21:32:33 ID:2p0Mf9ZR
支援
15創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 21:33:04 ID:tsS6D0fv
 
16創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 21:33:33 ID:2p0Mf9ZR
支援
17 ◆Y0KPA0n3C. :2010/02/11(木) 21:34:22 ID:axYJvwIr







「なぁ、プロシュート…」
『………』
「おい、答えろよ」
『………』
「なぁ………」
『………』
「………」
『………』








「…くそったれッ……………!」



返事はない。プロシュートは何も言わない。





18創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 21:34:45 ID:DbJVC3GH
sien
19創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 21:34:58 ID:2p0Mf9ZR
支援
20 ◆Y0KPA0n3C. :2010/02/11(木) 21:35:20 ID:axYJvwIr

【G-5とG-6の境目 食屍鬼街/1日目 午後】
【ホルマジオ】
[時間軸]:ナランチャ追跡の為車に潜んでいた時。
[状態]:カビに食われた傷、精神的疲労(中)、肉体的疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、万年筆、ローストビーフサンドイッチ、不明支給品×3(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:荒木を『ぶっ殺す』!
0:ちくしょう………
1.ボスの正体を突き止め、殺す。自由になってみせる。
2:ディアボロはボスの親衛隊の可能性アリ。チャンスがあれば『拷問』してみせる。
3:ティッツァーノ、チョコラータの二名からもボスの情報を引き出したい。
4:もしも仲間を攻撃するやつがいれば容赦はしない。
5:仲間達と合流。
[備考]
※首輪も小さくなっています。首輪だけ大きくすることは…可能かもしれないけど、ねぇ?
※サーレーは名前だけは知っていますが顔は知りません。
※死者とか時代とかほざくジョセフは頭が少しおかしいと思っています。
※チョコラータの能力をかなり細かい部分まで把握しました 。
21創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 21:37:05 ID:2p0Mf9ZR
支援
以上で投下完了です。
途中さるさんに引っかかってしまったり、容量を見ずに投下してしまったために新スレを立ててもらったり迷惑かけっぱなしで申し訳ありません…。
沢山の支援ありがとうございました。感謝します。

誤字・脱字があれば指摘ください。矛盾点やわかりにくい箇所もあれば遠慮なくどうぞ。
グェスの拡声器の言葉が一時投下した際に抜けていたので入れておきました。
また状態表もスッキリさせたため、削りすぎた部分があるかもしれません。判らない点があれば言ってください。
改めて支援、スレ立て、ありがとうございました!
23創る名無しに見る名無し:2010/02/12(金) 10:48:17 ID:oWo0O/4l
乙!
なんという鬱展開
24創る名無しに見る名無し:2010/02/12(金) 11:47:39 ID:K81TUS1U
乙!
登場人物全員鬱とは…
グェスは徐倫から逃げ切るとはなんという幸運!
25創る名無しに見る名無し:2010/02/12(金) 14:19:31 ID:BRje7+Du
自分用に超簡易現在位置地図作ったんで、一応あげときます。
もし、よかったら使って下さい。パスは jojo
http://kissho.xii.jp/1/src/1jyou104632.jpg.html
26創る名無しに見る名無し:2010/02/12(金) 21:26:39 ID:eMGeFv8t
投下乙

救いがなさすぎるだろこの話……
レストラン組みの火薬がこの形で後に引き継がれて拡散していったか
グェスなんか絶頂から急に付き落とされたって感じで胸が痛い
FFもマーダー化してから初めて弱みを見せたし、ジョリーンもいい感じに暴走してるし
だけど読んでて辛いけど面白い作品ではありました
改めて乙です
27創る名無しに見る名無し:2010/02/13(土) 00:32:51 ID:gprbPW2q
投下乙
例えるならコインが何回も裏の目が出まくるような絶望感っ!
でも、すごく面白くてひきつけられました
28創る名無しに見る名無し:2010/02/14(日) 18:25:40 ID:BbpXPGJ7
投下乙です
みんな救われないですね
ポルナレフは花京院じゃなくて承太郎だったら信じてたのでしょうか
グェスと花京院の行動を全部ポルナレフが一緒に見てれば誤解もとけてたのかな
ジョリーンの容赦の無さがディオ組に被害を与えそうでわくわくします
FFがかわいそうですが、これがきっかけで更に変貌するかもしれません
それはフーゴも早人も一緒で、もう少し深く堕ちそう

大人数をちゃんと書ききるなんてすごいと思いました
とっても面白かったです
29創る名無しに見る名無し:2010/02/14(日) 18:26:20 ID:BbpXPGJ7
>>25
地図作成ありがとうございます
とてもわかりやすいです
30創る名無しに見る名無し:2010/02/14(日) 21:48:35 ID:ITT2hb9v
◆fedyYYAe9Q氏、もうWikiに作品掲載してもいいんじゃないですか?
31 ◆WH6yNHm7g. :2010/02/15(月) 03:56:29 ID:3Joco0BG
連絡が遅れてごめんなさい
今、@ウィキにSSを入れました。
あと、前スレで宣言したとおり、すこし加筆して編集しました。
どこまで編集すればよいのかわからないので、SSだけのせました。


>片桐安十郎に対する感情でホル・ホースの心情は揺らいだ。
>女を大事にするホル・ホース。ミューミューに対する感情。
>大事にしようとしていたオモチャを近所の友人に盗られて壊されたような気持ち。

>「ひどいことしやがる……“もったいねぇ”……」

>これからミューミューに何をしようか、具体的に考えていたわけではない。
>だがいくらでもあった“チャンス”をタイミングを全て潰されてしまったのだ。
>“もったいない”という言葉が口から出たホル・ホースは、それを己の本音とみなした。
>J・ガイルが連れてきた人物という時点で、読めていたはずだ。J・ガイルは婦女暴行殺人犯。

>「気持ち悪い……ぐうう……」
32 ◆fedyYYAe9Q :2010/02/15(月) 03:58:12 ID:3Joco0BG
トリップてすとします
33 ◆fedyYYAe9Q :2010/02/15(月) 04:02:01 ID:3Joco0BG
あってた
よかった
34 ◆fedyYYAe9Q :2010/02/26(金) 19:03:34 ID:OjGkDfiE
投下します。
35 ◆fedyYYAe9Q :2010/02/26(金) 19:10:01 ID:OjGkDfiE
コオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーー
トンネルの中で鳴り続ける風の振動に、ペッシは耳を傾けていた。
ぼんやりとて頭をポリポリかく仕草が、彼のやる気の減退を示している。

「兄貴ィ……」

また1人仲間が死んだ。それも、自分がもっとも頼りにしていた仲間が死んだ。
親しい人間が死んだとき、多くの人は2つに別れるという。
周りの目を気にせず思いっきり泣くか。
現実を受け入れられず呆然とするか。
ペッシは両方だった。
ギャングでありながら、まだ一度も人殺しをしていない彼にとって、全てが受け入れがたい事実だった。
まだブチャラティたちと遭遇する前の世界から連れてこられた彼には、この事実は重過ぎる。

「畜生! でも! 」

しかし彼をかろうじて支えるのは、プロシュートへの執着と甘えよりも。

「わかってたことだ……わかっていたんだ……兄貴は……俺たちは……ギャングだ」

リゾットと命がけの戦いをしたことで得た覚悟と誇り。
黄金に輝く精神が彼を助けていた。

「だけど……兄貴ィ……兄貴ィ! 」

怖がっちゃだめだ。
恐れちゃだめだ。
いつかはこうなっていた。
自分はプロシュートの分まで立派にならなければだめだ。
逃げちゃだめなんだ。

「う……う〜……う〜〜〜〜! 」

皮肉にも、彼の輝ける黄金の精神が、彼の心を脅迫していた。
兄貴に認められる前に、独り立ちを強制されてしまったのだ。
覚悟を持って『殺し』をしていないのに、先輩たちの言葉が大きくのしかかる。

――『ブッ殺す』って心の中で思ったならッ!スデに行動は終わっているんだッ!
――お前の成長には目を見張るものがある。これから先、お前はいい暗殺者になれただろうな…。

いよいよペッシが試される時が来たのだ。
すでに土台は整った。精神も気高い。あとは行動に『移す』だけ。
本当の意味で、プロシュートとリゾットの言葉を実にする。

「俺はこの試練を、乗り越えなきゃいけねぇ。兄貴の敵を……必ず……」
36 ◆fedyYYAe9Q :2010/02/26(金) 19:11:20 ID:OjGkDfiE
震える手は恐怖か武者ぶるいか。
ペッシは無意識に、ポケットの中にあった紙切れをくしゃりと潰していた。

「!……、これ、まだポケットに入ってたのか」

それはペッシの支給品のひとつ。
ダービーズ・アイランドへのチケット。
彼はそれをバトル・ロワイアル開始時に、バッグから取り出していた。

「そういえば、しばらく旅にも行ってなかった」

ペッシはただの広告としてしか見ていなかった。

「死ぬ前に、こういう島に兄貴たちと行っておきたかったな
 カプリ島とかでバカンスって感じで……」

迷える青年、夢の島へご招待。

☆ ☆ ☆

「リゾットッ! 敵襲だッ! 聞こえるかッ! 」

正午を過ぎているため、太陽の恩恵は大分衰えて始めている。
下がり始めた気温がペッシの肌を冷やしていた。
いきなり表れた島の風景に動揺したのか、ペッシはスタンドを構えて戦闘体制に入った。

「そこのてめぇ! もしヤル気じゃないんだったら今すぐこの幻覚を解除しやがれ! 」
「ゲームで私と勝負をしましょう」

いきり立つこの若者の声に、ダービーはため息をついた。
こんなやり取りをあと何回繰り返せばいいのだろう、とでも考えているのだろうか。
悔しいことに、チケットを持つものが島に転送される仕組みは荒木飛呂彦にすべて牛耳っている。
ダービーは荒木の指示に従うだけの執事にすぎない。

「俺たちは遊んでる暇はねーんだよ。早く解除しろッ! 」
「帰りたければ、応じます。また来たいと思ったらそのチケットを使えばいい」
「じゃあとっとと俺を元の場所へ返せよッ! 」

ダービーはわかっている。

「よろしいのですか? ゲームに勝てば、どんな願い事も叶うというのに」
「……!? 」

相手がこの一言で態度を180度変えることも。

「100%ではありませんがね。しかし努力はしましょう。あなたに有益なことは間違いありません」

ダービーはペッシの人物像を完全に知っているわけではない。
とはいえダービーにはわかる。彼が立派なカモになるという直感が動いていた。

「お前、なんなんだよ」
「テレンス・T・ダービーと申します。ディーラーでありギャンブラー。それが私の仕事」
「……」

ペッシはダービーから目をそらすと、島の土や海水をおもむろに触り始めた。
目の前にある自然の質感のリアルさに驚いたのか、彼の顔はますます汗を出した。

「あんたの話、仲間にチクるぜ。俺は。だから元の場所に返してくれ」
「どうぞご自由に。私の目的はゲームで勝負すること。それだけなのです」
「もし返さなかったら、こ、こ、殺してやるからなッ! 」
37 ◆fedyYYAe9Q :2010/02/26(金) 19:12:58 ID:OjGkDfiE
こうして、精一杯の勇気で虚勢を搾り出した青年は元の場所へ還った。
ダービーは新たな戦いが近いことに興奮しながら、島の片隅にある収納棚へ移動した。

「彼も、私のコレクションになってくれるといいですね」

ガチャと開いた扉の先には、人形が入っていた。

「寂しいでしょう? ご安心ください。もうすぐ仲間が増えますよ。MR.ジョージ、MR.シーザー」

ダービーに話しかけられた人形たちは、ゆっくりと頭をあげた。

『あ……あ……ジョナ、サン。ジョナ、サン』
『負け……負け……はい、ぼく、敗、北……』

そこには、ダービーの能力で魂を人形に閉じ込められた男たちがいた。
彼らの名はジョージ・ジョースターとシーザー・アントニオ・ツェペリ。

「私の精神も万全ではない。疲労がたまれば、ミスをするかもしれません。
 だからこそ負けるわけにはいかない。どんな相手であろうとも」

敗北者たちの末路。
リゾットのもとへ急ぎ走るペッシも、人形になってしまうのだろうか。


【G-10 北西部 小島(ダービーズアイランド)/1日目 午後】
【テレンス・T・ダービー】
[時間軸]:承太郎に敗北した後
[状態]:健康 精神疲労(小)
[装備]:人形のコレクション
[道具]: 世界中のゲーム
[思考・状況]
1.参加者ではなく、基本はG-10にある島でしか行動できない。
2.荒木に逆らえば殺される。
3.参加者たちとゲームをし、勝敗によっては何らかの報酬を与える(ように荒木に命令されている)。
4.露伴と決着をつける(勝負もあるが、足首は回収したい)
※ダービーは全参加者の情報について、名前しか知りません(原作3部キャラの情報は大まかに知ってます)。
※ダービーズ・アイランドにも放送は流れるようです。
※アトゥム伸の右足首から先を露伴の体内に食い込ませています。(原作を見る限り)ダービー本体の足首はちゃんと存在しています。
※第二放送を聞き逃しました
38 ◆fedyYYAe9Q :2010/02/26(金) 19:14:32 ID:OjGkDfiE

【ジョージ・ジョースター1世】
[時間軸]:ジョナサン少年編終了後
[状態]:【肉体】右わき腹に剣による大怪我(貫通しています)、大量失血で血はほとんど抜けました
    【魂】テレンスの作った人形の中。禁止エリアに反応して爆破する首輪つき。
[装備][道具]: なし
[思考・状況]
基本行動方針:ジョナサンとディオの保護
1.むう、なんということだ……!
※テレンスに一回勝利しないとジョージの魂は開放されない。 ただしテレンスの死はジョージの死。
※肉体を治療しないと魂を解放しても失血死する可能性大
※ジョージの人形がどこまでちゃんと喋れるのか不明(話相手ぐらいにはなる?)。
※第二放送を聞いてはいましたがメモ等は出来ていません。記憶しているかも不明です。


【シーザー・アントニオ・ツェペリ】
[時間軸]:ワムウから解毒剤入りピアスを奪った直後。
[状態]:【肉体】疲労(大)、ダメージ(大)、ヘブンズ・ドアーの洗脳
    【魂】テレンスの作った人形の中。禁止エリアに反応して爆破する首輪つき。
[装備]:スピードワゴンの帽子。
[道具]:支給品一式、エリナの人形、中性洗剤。
[思考・状況] 基本行動方針:ゲームには乗らない。リサリサ先生やJOJOと合流し、 エシディシ、ワムウ、カーズを殺害する。
0.…………………精神的敗北。
1.荒木やホル・ホースの能力について知っている人物を探す。
2.スピードワゴン、スージーQ、ストレイツォ、女の子はできれば助けたい。
[備考]
※テレンスに一回勝利しないとジョージの魂は開放されない。 ただしテレンスの死はシーザーの死。
※さらにテレンスに一回勝利しないとシーザーの魂は解放されない。
※シーザーの人形がどこまでちゃんと喋れるのか不明(話相手ぐらいにはなる?)。
※第一放送を聞き逃しました。
※第二放送を聞いてはいましたがメモ等は出来ていません。記憶しているかも不明です。
※ヘブンズ・ドアーの命令は以下の1つだけです。
 1.『岸辺露伴の身を守る』
39 ◆fedyYYAe9Q :2010/02/26(金) 19:16:45 ID:OjGkDfiE
途中まで投下完了です。
明日までにリゾットと音石を加えたペッシの話を投下します。
ごめんなさい。
40創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 19:43:49 ID:G8DtLXFF
素朴な疑問ですけどダービーズチケットってこれで何枚目になるんですかね?
41創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 19:58:44 ID:mdYc9+9D
ジョナサン、露伴、オインゴ、今回のペッシで計四枚
42創る名無しに見る名無し:2010/02/26(金) 21:55:04 ID:mdYc9+9D
Wikiの支給品情報を見れば載ってるぞ
43創る名無しに見る名無し:2010/02/27(土) 11:31:53 ID:eq1F5J5M
投下乙です。

ペッシの状態表ないですよ。
あと、ジョージとシーザーの状態表の「話し相手くらいにはなる?」はSSを見る限り変更または消去で良いかと。
44創る名無しに見る名無し:2010/02/27(土) 16:13:54 ID:iJHmhv6m
>>43
>>39にある通り、次の話にペッシが出てくるんじゃない?
45創る名無しに見る名無し:2010/02/27(土) 21:53:33 ID:RaAJTUYo
>>45
投下乙
しかし、そろそろ最後の一枚にしようぜ
チケットばっかじゃねーか
46 ◆fedyYYAe9Q :2010/02/28(日) 00:01:57 ID:SkNYTUKP
続き投下します。
47 ◆fedyYYAe9Q :2010/02/28(日) 00:03:27 ID:SkNYTUKP

☆ ☆ ☆

「ねーよ」
「ないな」

彼らの会話は、筆談で進んでいる。

「何でだよッ! 」

しかし3人の議論は白熱している。
この上ない緊急事態を伝えるために、全力で走ってきた青年の好意を、2人の男は真っ向から否定した。

「悪いけどよ、俺はアンタ……ペッシだっけ? ペッシよぉ、俺はそれ罠だと思うわ」

まず意見をあげたのは音石明だった。
ダービーズ・アイランドそのものがスタンドの幻覚である可能性。
ダービーという男の言葉すべてが嘘である可能性。
わざわざペッシを無事に元の場所へ帰したのは、新しい餌を口コミで広げさせる可能性。

「そのチケットを持って、“島に行きたい”と願った。これはもうスタンドの条件に他ならねーぜ。
 勝負して勝ったらたら願いを叶えるとか、これも何かを発動させる条件かもしれねーよ。
 相手にケンカ売るやつは、大抵ほかの目的があると思うぜ〜〜俺は〜〜……」
「本当に俺が餌だったら無事に返そうなんて考えないだろーがよッ! 」

音石明は、自分があらゆる悪事をしてきたからこそ、悪党の気持ちがよくわかる、と思っていた。
ダービーの真実に目を向けようとせず、“ああ、この手の輩はたいていゲスだな”と決め付けているのだ。

「待てペッシ。誰も奴に会うなとは言ってない」

次に意見をあげたのはリゾット・ネエロだ。
ペッシがダービーの名前を正確に覚えていなかったため、彼は勘違いを起こしていた。
即ち、テレンス・T・ダービーをダニエル・J・ダービーであると思い違いをしていたのである。
放送で死を告げられたはずのダービーが生きている? だとすれば、ペッシが会ったダービーは何者なのか?

「万が一、奴が死んだフリに成功して生きているのならば、首輪の問題を何らかの問題で解決したということだ。
 しかし、どうしてペッシにチケットを渡せたのかが不明だ。本来は、この場で俺たちの目の前で証明すればいいはずなんだ。
 ペッシに口止めもさせず返したんだ、辻褄が合わない。つまり俺たちが壮大な勘違いをしているかもしれない」
「リゾット、あいつは……たぶん、首輪をつけてたと思ったんだけど。俺の勘違いだったのかな」


リゾットは持ち前の用心深さゆえ、迂闊にダービーと接触する危険性を回避するという九死に一生を得ていた。
しかしそれゆえに、取るに足らないテレンスの真実から遠ざかりつつあった。

「会ってもいいが、もう少し落ち着くべきだ」
「だいたいな、そうまでして叶えてほしい願い事があるのかよ」

彼らは、やはり動かなかった。

「……兄貴だよ。兄貴を見たかったんだ」
「プロシュートを蘇らせようとしたのか」
「馬鹿馬鹿しいぜ、死人が生き返るもんか」
48 ◆fedyYYAe9Q :2010/02/28(日) 00:05:26 ID:SkNYTUKP
彼のこころは

「違うッ! 見たかっただけなんだッ!
 兄貴の姿をッ 兄貴の最後の生き様をッ
 この目に見せてほしかったんだッ! 
 兄貴を殺した奴の姿とッ 兄貴の勇姿をッ! 」

こんなにも熱く燃えているというのに。

「――ひとまず情報を整理し直そう。サンドマンの情報も含めてな」



【F-2 ナチス研究所 研究室/1日目 午後】
【暗殺チーム(現在メンバー募集中)】
【ペッシ】
[時間軸]:ブチャラティたちと遭遇前
[状態]:頭、腹にダメージ(小)、喉・右肘に裂傷、強い悲しみ、硬い決意
[装備]:リゾットにタメ口の許可認証 、ダービーズ・チケット
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1、重ちーが爆殺された100円玉
[思考・状況] 基本行動方針:『荒木』をぶっ殺したなら『マンモーニ』を卒業してもいいッ!
0.リゾットはダービーをどうするんだろう。
1.兄貴ィ……最後の姿を見たかった…
2.誰も殺させない。殺しの罪を被るなら暗殺チームの自分が被る。
4.チームの仲間と合流する
[備考]
※ペッシの信頼度
ホル・ホース>ミューミュー>(よくわからないの壁)>音石、サンドマン、ブチャラティチーム
※100円玉が爆弾化しているかは不明。とりあえずは爆発しないようです。
※音石の経歴や、サウンドマンとリゾットが交換した情報の内容を知りました。

※リゾット、及びペッシのメモには以下のことが書かれています。
[主催者:荒木飛呂彦について]
荒木のスタンド → 人間ワープ…見せしめの女の空中浮遊、参加者の時間軸の違い(並行世界まで干渉可能)
         → 精密機動性・射程距離 ともに計り知れない
開催目的 → 不明:『参加者の死』が目的ならば首輪は外れない
           『その他』(娯楽?)が目的ならば首輪は外れるかもしれない 
※荒木に協力者がいる可能性有り
49 ◆fedyYYAe9Q :2010/02/28(日) 00:08:15 ID:SkNYTUKP
【リゾット・ネエロ】
[スタンド]:メタリカ
[時間軸]:サルディニア上陸前
[状態]:頭巾の玉の一つに傷、左肩に裂傷、銃創(『メタリカ』による応急処置済み)
[装備]:フーゴのフォーク 、首輪の設計図(ジョセフが念写したもの)
[道具]:支給品一式
[思考・状況] 基本行動方針:荒木を殺害し自由を手にする  
1.…………ダービーか。
2.首輪を外すor首輪解除に役立ちそうな人物を味方に引き込む。
  カタギ(首輪解除に有益な人材)には素性を伏せてでも接触してみる(バレた後はケースバイケース)。
3.暗殺チームの合流と拡大。人数が多くなったら拠点待機、資材確保、参加者討伐と別れて行動する。
4.荒木に関する情報を集める。他の施設で使えるもの(者・物)がないか、興味。
[備考]
※盗聴の可能性に気が付いています。
※フーゴの辞書(重量4kg)、ウェッジウッドのティーセット一式が【F-2 ナチス研究所】に放置。
※リゾットの信頼度(味方にしたい度)
ホル・ホース>サンドマン>(メッセンジャー頼むぞの壁)>音石>(監視は頼りにしてる壁)>ミューミュー>(皆殺しにするぞの壁)>ブチャラティチー

ム、プッチ一味
※リゾットの情報把握
承太郎、ジョセフ、花京院、ポルナレフ、イギー、F・Fの知るホワイトスネイク、ケンゾー(ここまでは能力も把握)
F・F(能力は磁力操作と勘違いしている)、 徐倫(名前のみ)、サウンドマン

※サウンドマンに伝えた情報↓
[主催者:荒木飛呂彦について] のメモ、盗聴の可能性、電気伝達の謎、
スピードワゴン、ツェペリ、タルカス、ディオ、ワムウ、ポルナレフ、ラバーソール、エンヤ婆、ンドゥール、康一、億泰、トニオ、由花子、吉良、
ジョルノ、マックイィーン、プッチ、リンゴォのおおまかな人相、名前、能力、危険度。

※リゾット、及びペッシのメモには以下のことが書かれています。
[主催者:荒木飛呂彦について]
荒木のスタンド → 人間ワープ…見せしめの女の空中浮遊、参加者の時間軸の違い(並行世界まで干渉可能)
         → 精密機動性・射程距離 ともに計り知れない
開催目的 → 不明:『参加者の死』が目的ならば首輪は外れない
           『その他』(娯楽?)が目的ならば首輪は外れるかもしれない 
荒木に協力者がいる可能性有り
50 ◆fedyYYAe9Q :2010/02/28(日) 00:10:13 ID:SkNYTUKP
【音石明】
[時間軸]:チリ・ペッパーが海に落ちた直後
[スタンド]:レッド・ホット・チリペッパー(黄色)
[状態]:体中に打撲の跡(中)、『レッド・ホット・チリ・ペッパー』をスピットファイヤーに乗せて飛行中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×3、不明支給品×1、ノートパソコンの幽霊、首輪の設計図(ジョセフが念写したもの)、スピットファイヤーのコントローラ、バッテリ

ー充電器
[思考・状況]基本行動方針:優勝狙い
0.……ダービーねぇ。
1.ナチス研究所周辺を監視中(しばらくは研究所に待機)。チャンスがあれば攻撃を仕掛ける
2.首輪解除なんて出来んのか?
3.サンタナ怖いよサンタナ
4.電線が所々繋がっていないのに電気が流れているこの町は何なんだッ!? あやしすぎて怖えー!
[備考]
※バトルロワイアルの会場には電気は通っているようです。
 しかし様々な時代の土地が無理やり合体しているために、電線がつながっていなかったりと不思議な状態になっているようです。
 スタンドが電線に潜ったら、どうなるかわかりません。(音石は電線から放電された電気を吸収しただけです)
※音石の情報把握
ブチャラティチーム、ホル・ホース、ミューミュー(ここまでは能力も把握)
ミセス・ロビンスン(スタンド使いと勘違い)、ホルマジオ(容姿のみ)
※早人とジョセフとディアボロが駅を出た理由を知りません。
※盗聴の可能性に気がつきました
※スピットファイヤーを【F-2 ナチス研究所】付近に旋回させています。
 少なくともブチャラティチームやプッチ一味(と判断できた場合)、虹村億泰が近づいてきたら攻撃を仕掛けるつもりです。

※暗殺チーム全体の行動方針は以下のとおりです。
基本行動方針:首輪を解除する
1.首輪解除のためナチス研究所を拠点として確保する。
2.首輪を分析・解除できる参加者を暗殺チームに引き込む。
3.1・2のために協力者を集める。
4.荒木飛呂彦について情報収集
5.人数が多くなれば拠点待機組、資材確保組、参加者討伐組と別れて行動する
51 ◆fedyYYAe9Q :2010/02/28(日) 00:21:36 ID:SkNYTUKP
投下完了しました。
タイトルは「ペッシ・サウンズ」です。
元ネタはザ・ビーチ・ボーイズのペット・サウンズから。
メンバーのブライアンが思うがままの気持ちで作ったけど、
発売前の周りの予想通り、やっぱり評判がよくなかった(後に再評価された)アルバムです。
ペッシの葛藤とか「わかっててやってるんだよ」的な要素を入れてみました。
52創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 16:18:38 ID:VljWkg+f
ほっしゅ
53創る名無しに見る名無し:2010/03/23(火) 23:15:07 ID:nFaBuHxS
うわあい、予約が楽しみだー
54創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 22:48:20 ID:tsATBhJy
ルーブルの露伴が設定変わりすぎで萎えた
代わりにロワの露伴にがんばってもらいたいところだ
55創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 23:27:25 ID:OE5My+UP
あれは17歳に見えない…
露伴はダービーとの絡みが今後気になるところ
56創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 07:45:30 ID:MX+fsAky
期待してたのにつまらなかったな>ルーブル
57創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 14:59:35 ID:mdy8esmZ
というか最近のジョジョは…
58創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 15:19:17 ID:P5Lf51CU
おもすれーよ
59創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 15:48:19 ID:+XpELldi
ってか、最近のジョジョうんぬんとかここで言われてもしらねーw
60創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 19:07:06 ID:MX+fsAky
ぶっちゃけ5部以降のジョジョの面白さはここのロワを下回ってる
61創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 20:02:14 ID:lzpEmvwy
じゃあ5部以降のキャラ殺しますか
62創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 20:04:37 ID:I2tPv2Dj
まさにお前が言うならそうなんだろう(ry状態だわ
そしてそんなこと書かれてもお前の感想なんて知ったこっちゃないという
つーかいくら予約がないからってお前らスレ違いはよくないと思うよ
63創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 20:14:39 ID:mdy8esmZ
俺が駄目なレスしたから悪い、変な流れ作って申し訳ない
64創る名無しに見る名無し:2010/03/25(木) 21:07:20 ID:HqpNUpya
>>63
気にしない気にしない。投下を楽しみに待とうぜ
65創る名無しに見る名無し:2010/03/26(金) 08:06:06 ID:k+pZUvNa
スピードは、いくら経っても終わらなかった。
露伴とダービーは考えるのをやめた。
ってなったら最高に面白いのに
66創る名無しに見る名無し:2010/03/29(月) 00:55:21 ID:9KiKizmw
一時投下スレに新作キター
67 ◆yxYaCUyrzc :2010/03/31(水) 15:08:23 ID:8+zBMS/t
本投下開始します。
68ピノキオ ◆yxYaCUyrzc :2010/03/31(水) 15:10:46 ID:8+zBMS/t
――帰りましたか。さてと。もしもし?

……。

――返事、出来ますか?あなたですよ、ミスター・ジョースター。

……う、う。む……

――少しは落ち着きましたか?ずいぶん呻いていましたもんね。
  まぁ……あれだけやって落ち着かないと言ったら流石に私も怒りますが。
  さて、話が出来るとわかれば早速本題です。私と会話、出来ますね?
  まあ会話と言っても私の意見にあなたが答えてくれればよろしい。いいですね?

ふむ……ああ、いいだろう。私も君と話をしてみたい。

――ありがとうございます。では、前置きとして【現状】を説明しましょう。
  簡潔に言いますと、そろそろゲームが終盤に差し掛かろうとしています。
  さて、ここで一つ質問です。
  【あなたはこの先、どうするおつもりですか?】

それは……もちろん息子たちに会い、彼らを保護する事が第一だ。
そして、皆で協力してこの殺し合いを止めて見せようではないか。
ジョジョは私を刺した事を気にしているだろうがきっと立ち直る。
この世界で知り合った私の友であるブラフォード君とも協力してくれるはずだ。

――素晴らしい。自分の肉体よりもまずは子供。父親の鑑ですね。
  ですが……あなた、自分の体の事分かっていますか?
  あなたの身体は今やただの人形なのですよ。気絶とは訳が違う。

それが何だと言うのだ?やれる、やれないではなく、やらねばならんのだ。

――なるほど、さすがです。が……もう少し、あなたの身体について話しましょうか。
  あなたは現在、私の製作した人形にその魂を宿らせています。
  では、肉体は?というと……刺された傷口から血液が流れ続けた結果、生物学的にはもう死んでると言って差し支えないでしょう。
  つまり……あなたが私の人形から解放されたとしても、その瞬間にあなたは死んでしまうのです。
69ピノキオ ◆yxYaCUyrzc :2010/03/31(水) 15:12:45 ID:8+zBMS/t
……もう一度言おう、それが何だと言うのだ?

――本当にあなたの意思には感服させられます。まったく素晴らしい。
  では……少しだけ話題を変えましょうか。ここからは私の話です。
  私もあなた方と同様に、主催者……荒木氏に命を握られています。
  私の首輪、見えますか?こういう時に相手が人形って便利ですね。持ち上げて視線を自由に動かせる。
  ……と、話がそれました。要するに、私だってあなた達のようにいつ死んだっておかしくない、という訳です。

ふむ。

――それで……あっと、その前に私のスタンドについて説明しましょう。
  スタンドが何かっていうのは長くなるので詳しくは省きますが、まぁ超能力の一種だと思ってください。
  私の持つ能力。あなたが今体験しているとおりです。人間の魂をつかみ取り、それを人形に込める、と。

随分と突飛な話だが、信じるしかないようだ。この世界は不思議な事が多すぎる。

――ありがとうございます。
  そして、この能力なんですが、本体である私が死んでしまえば能力は消滅してしまいます。
  ここで……普通なら私が死んだ場合、魂は肉体に戻る事なく天に昇って行ってしまいます。
  ですがこの場ではどうもそうとは限らないようでして。解放された魂は元の肉体に戻るかも知れません。
  まぁ、こればっかりは死なないと分からないですがね。
  荒木氏が私のスタンドに細工した僅かな可能性、と思っていただければそれで結構。

なるほど……話はおおよそ呑み込めたよ。

――ご理解が早くて助かります。でもまぁ、せっかくですから最後まで聞いてください。時間もありますし。
  とりあえず結論から言いますと【私は死ぬ。どっち道】って事です。
  溢れんばかりの正義を心に持つあなたのような人が荒木氏の打倒に成功した場合、共犯である私もただでは済みません。
  また、逆に荒木氏が全ての参加者を意のままにした時。この時も私は用済みになって殺されてしまうでしょう。

……。

――そして、それが何を意味するか分からないあなたではないでしょう。
  私と共に【あなたも死ぬのです。どっち道】って事です。

確かに深刻な事態だ……君が冷静に話しているのがより恐怖を煽るよ。

――別にあなたをビビらそうと言う訳ではないんですがね。
  そうそう、もうひとつ重要な話をしましょうか。
  【あなたは今、この世界の人間達に忘れられています】。
  ミスター岸辺が帰った後も来訪者が幾人かありましたが、彼等がここに来た理由は、多少方向性は違えど己の欲望のため。
  あなたを、また、そこで未だ唸ってるミスター・ツェペリを救う気はないでしょう。きっとね。

私の耳にも彼らの声は多少届いていたが、まさかそんな……

――世の中にはそういう連中も多いものです。
  さて……改めて聞きましょうか。
  【あなたはこの先、どうするおつもりですか?】
70ピノキオ ◆yxYaCUyrzc :2010/03/31(水) 15:14:25 ID:8+zBMS/t
私は……それでもここで指を咥えて死を待つ訳にはいかん。
ジョジョを、ディオを、多くの人を荒木の魔の手から救い出したい。もちろん君の事もだ。
この殺し合いの根幹に近い場所にいる君が私達に力を貸してくれれば荒木の打倒もも不可能ではないッ。

――素晴らしい。本当に素晴らしい。
  敵である立場の私にも手を差し伸べるあたり、本物の紳士です。
  ですが……その手を今取る訳にはいきません。

何故だ!?君はここで死を待つ事を選ぶのか?

――まぁまぁ、落ち着いてください。
  私だってこんなとこで死にたはないですよ。その言葉と差し伸べられた手にはすぐにでも飛びつきたい。
  ですが……それがどういう事かわからないあなたではないでしょう?
  下手すれば「はい」と言ったその瞬間に頭と胴体が泣き別れするかも知れません。
  そして私の死はあなたの死。先ほど言ったとおりです。
  ドゥー・ユー・アンダスタン(ご理解いただけましたか)?私たちはここから動けないのですよ。

な……なんという事だ。

――まぁ、そう悲観的にならないでください。チケットを持ってる人は現在四人もいるんですから。
  彼らが誰かにチケットを譲る、あるいは奪われるなどした場合、状況は大きく転がるのです。

ふ……む。だが、それならば私の言葉も君に届いていると考えて間違いはないね?
私は本心で君を救いたい。君だって荒木の犠牲者なのだ。

――そのお言葉、もちろん忘れはしませんよ。
  私の話はとりあえず以上です。また話がしたくなったらいつでもどうぞ。

こちらこそ。私はいつでも戦うつもりだからね。


* * * * *
71ピノキオ ◆yxYaCUyrzc :2010/03/31(水) 15:15:40 ID:8+zBMS/t
――さて、今度はあなたですよ、ミスター。

……。

――まさか、まだ敗北の事でウジウジと言っているのですか?

……命を握られてる相手に軽々とお喋りするほど腐っちゃいねぇ。

――なるほど。ですがまァ、話くらいは聞いてくださいよ。
  とはいっても、今まで聞いていたでしょう?
  一度でいい事を二度言うってことは……

聞いてるからさっさと話せ。

――これはこれは。失礼しました。では答えてもらいましょう。
  【あなたはこの先、どうするおつもりですか?】

俺はまず、テメェをブチのめす。
俺の身体をこんなにしやがったんだからな。

――おお、怖い怖い。
  ですが、それも当分は無理な話ですね。

くッ……!

――ま、そうなるとミスター・ジョースターと共に脱出の機会を練り、そして祈る事。
  あなたに今できる事はそのくらいですかね?

……クソッタレが!

――ふぅ、あなたはあまり私と話していたくないようですね。
  ではこの辺で切り上げましょうか。
  私をブチのめす時が来るまでゆっくり休んでいては?


* * * * *
72ピノキオ ◆yxYaCUyrzc :2010/03/31(水) 15:18:41 ID:8+zBMS/t
――とまぁ、こんな感じです。どう思われますか?

どうもこうもないだろう?
それよりも君は連絡してくるなよ。ルール違反じゃあないか。
そもそも君にそんな立場を与えたつもりではないけど?てゆうか会話なら聞いてた。筒抜けだもの。

――すみません。ですが私とて自分の命は惜しい。

僕にどうしろって言うんだい?まさか今すぐ僕のところに乗り込んできてやりあう、っていうのかい?
君だって参加者なんだ。そして……僕だって立場は主催者だが広い視点で見れば参加者でもあるんだよ。

――分かりました。少々考える時間を頂きたい。

頂くも何も、他の八十八人はみんな考えて行動してるんだ。
っていうか、少々、なんて生ヌルイよ。じっくり考えたら?
ほら、岸辺露伴との決着だってまだみたいに見えたし。第一、君はスタンドの足首ほったらかしだろ?
っていうか【永遠に終わらないスピード勝負をしてる内に考えるのをやめた】なんて結末だってあるんじゃない?
そうなったら最高に面白いと思うけどな、僕は。
まぁ、君のプレイヤーとしてのプライドがどう答えるかな?ってとこだね。
それ以外にだってほら、僕に勝つ勝算とか己の命とか、そもそもあの小島を出て他の人と合流する方法は?とか……。
考えるべき事は山ほどあると思うんだけど。
あなたはこの先、どうするおつもりですか?って、君が言ってたセリフじゃあないか。

――……失礼いたします。

……フン、せいぜい頑張る事だね。
さてと。僕もそろそろ動こうかなぁ。でもまだ早いかなぁ〜。
まだ放送にも時間あるし、僕が介入したらやっぱりルール違反になりそうな気もするしなぁ〜。
やる気のある連中が減った訳でもなさそうだし……とりあえず、本でも読もうかな。


To be continued ...
73ピノキオ ◆yxYaCUyrzc :2010/03/31(水) 15:21:25 ID:8+zBMS/t
【G-10 北西部 小島(ダービーズアイランド)/1日目 午後】

【テレンス・T・ダービー】
[時間軸]:承太郎に敗北した後
[状態]:健康 精神疲労(小)
[装備]:人形のコレクション
[道具]: 世界中のゲーム
[思考・状況]
思考1.私だって死にたくはないですよ。
思考2.この先の方針を考える。
思考3.露伴と決着をつける(勝負もあるが、足首は回収したい)と思っている、が……?
状況1.参加者ではなく、基本はG-10にある島でしか行動できない。
状況2.荒木に逆らえば殺される筈だが……?
状況3.参加者たちとゲームをし、勝敗によっては何らかの報酬を与える(ように荒木に命令されている)。
[備考]
※ダービーは全参加者の情報について、名前しか知りません(原作3部キャラの情報は大まかに知ってます)。
※ダービーズ・アイランドにも放送は流れるようです。
※アトゥム伸の右足首から先を露伴の体内に食い込ませています。(原作を見る限り)ダービー本体の足首はちゃんと存在しています。
※第二放送を聞き逃しました。
※ジョージ・シーザーと会話をしました(情報の交換ではありません)
74ピノキオ ◆yxYaCUyrzc :2010/03/31(水) 15:22:44 ID:8+zBMS/t
【ジョージ・ジョースター1世】
[時間軸]:ジョナサン少年編終了後
[状態]:【肉体】右わき腹に剣による大怪我(貫通しています)、大量失血で血はほとんど抜けました。
    【魂】テレンスの作った人形の中。禁止エリアに反応して爆破する首輪つき。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:ジョナサンとディオの保護
1.むう、なんということだ……!
2.今は状況の好転を祈るばかり。シーザーと脱出法を練る?
[備考]
※テレンスに一回勝利しないとジョージの魂は開放されない。 ただしテレンスの死はジョージの死。
※肉体を治療しないと魂を解放しても失血死する可能性大
※第二放送を聞いてはいましたがメモ等は出来ていません。記憶しているかも不明です。
※ジョージの人形がどこまでちゃんと喋れるのか不明(話相手ぐらいにはなる?)。
 →話し相手にはなります。肉体(人形の手足)を動かす事はほぼ不可能です。
※テレンスと会話をしました(情報の交換ではありません)


【シーザー・アントニオ・ツェペリ】
[時間軸]:ワムウから解毒剤入りピアスを奪った直後。
[状態]:【肉体】疲労(大)、ダメージ(大)、ヘブンズ・ドアーの洗脳
    【魂】テレンスの作った人形の中。禁止エリアに反応して爆破する首輪つき。
[装備]:スピードワゴンの帽子。
[道具]:支給品一式、エリナの人形、中性洗剤。
[思考・状況] 基本行動方針:ゲームには乗らない。リサリサ先生やJOJOと合流し、 エシディシ、ワムウ、カーズを殺害する。
0.精神的敗北から立ち直った。テレンスをブチのめしたい。
1.今は状況の好転を祈るばかり。ジョージと脱出法を練る?
2.荒木やホル・ホースの能力について知っている人物を探す。
3.スピードワゴン、スージーQ、ストレイツォ、女の子はできれば助けたい。
[備考]
※テレンスに一回勝利しないとジョージの魂は開放されない。 ただしテレンスの死はシーザーの死。
※さらにテレンスに一回勝利しないとシーザーの魂は解放されない。
※シーザーの人形がどこまでちゃんと喋れるのか不明(話相手ぐらいにはなる?)。
 →話し相手にはなります。肉体(人形の手足)を動かす事はほぼ不可能です。
※第一放送を聞き逃しました。
※第二放送を聞いてはいましたがメモ等は出来ていません。記憶しているかも不明です。
※ヘブンズ・ドアーの命令は『岸辺露伴の身を守る』の一つだけです。
※テレンスと会話をしました(情報の交換ではありません)
75 ◆yxYaCUyrzc :2010/03/31(水) 15:26:04 ID:8+zBMS/t
以上で投下終了です。
会話のみの文章なので句読点、特に「……」が多くて読みにくいかと思いますがどうでしょう?
テレンスが荒木に接触するのは一時投下スレの指摘より携帯電話(あるいはそれに準ずるもの)に変更しました。どっち道内容としては少々問題あり?
あとは人形二人の空気化防止として会話できるレベルにしてしまいました。
その辺についてご意見、指摘ありましたらよろしくお願いいたします。
もちろん他の点についてもアドバイスや何かありましたらお願いします。キャラの口調とか不安でしょうがない。

タイトルは一時投下スレ595(586)氏の案をいただきました。
「ひょっこり…」だと昔話をそれてる?と思ったのでピノキオで。

wiki掲載は週末の予定です。

最後に改めて、ご意見ご感想お待ちしています。では。。。
76創る名無しに見る名無し:2010/03/31(水) 21:39:22 ID:v2L3dRk8
投下乙です!
久々の新作で楽しかった〜。
テレンスがなんとも策士な雰囲気でかっこいい…。
ジョージもシーザーも久々登場なのにギリギリすぎるwすごく応援したいッ

読みにくさなどは自分は何も感じませんでした。内容も問題ないかと…。
会話のみの文章であっても、そういう演出なのだという説得力がある作品だったと思います。
氏の得意とするのは「つなぎ」ですが、いつもハイセンスなムードで脱帽します。
次作も楽しみです。

しかしチケットを持ってる中で危険な因子はジョナサン…
ダービー島が悲劇の舞台にならないことを祈るッ
77創る名無しに見る名無し:2010/04/01(木) 23:38:21 ID:YMbDqSJE
くそwwwwウィキ編集したやつ出てこいwwww
キンタマ噛み切ってやるwwwwwwwww
78創る名無しに見る名無し:2010/04/01(木) 23:54:57 ID:ZzQ36P5h
ウィキワロタww
79創る名無しに見る名無し:2010/04/02(金) 22:26:33 ID:RorzpbLY
一体なにがどうしたんだ
80創る名無しに見る名無し:2010/04/03(土) 20:58:33 ID:lFqDL60H
>>79
本投下乙です
私の出したタイトル案を使っていただき光栄です
実は「赤ずきん」の案を出したのも自分なので二回目になりますね
こんなものでよけしれば今後も考えていきたいと思います

ジョージ、シーザー両氏は、今後どうするんだよ?と思っていたのでいいテコ入れになったと思います(といってもまだ自力では動けませんが・・・
今チケットを持っているのは露伴、ジョナサン、オインゴ、リゾット組ですか・・・
露伴とリゾットは期待できるかもしれないですが、後の二人は危険ですね
下手したらダービーズアイランドでダービー無視のガチバトルという展開もありえるか・・・?

そういえば、「チケットを持ってる人は現在四人もいるんですから」
というセリフがありますが、チケットは現時点確認されている4枚が全てと考えてもいいのでしょうか?
正直これ以上チケットが増えると、ロワ全体がダービーに振り回され過ぎてしまう気がします

昨日だけwikiのトップがエイプリルフール仕様だったんだよ
ジョジョロワ2nd完結おめwとか荒木先生からコメントが寄せられてますwとかだっ


81創る名無しに見る名無し:2010/04/03(土) 20:59:48 ID:lFqDL60H
安価の場所間違えた
>>79は下3行に対してです
82 ◆yxYaCUyrzc :2010/04/03(土) 21:43:34 ID:aevTHBM2
wiki掲載しました。
◆fedyYYAe9Q氏の作品「ペッシ・サウンズ」が未収録だったので同時に掲載しておきました。
不足等ありましたらご一報ください。

チケット持ってる人に関する議論はここ又は問題議論スレで議論するべきだと思いますので、
少々話し合った後に文章を改変する必要があったら更新、という形を取りたいと思います。
83◇Y0KPA0n3C氏代理投下:2010/04/04(日) 19:08:59 ID:BeIv3lXI
「そう、敵がこの先にいるのね。詳しく聞かせて」

思わず掴んだ手の柔らかさ。姿よりもその感触と温かさがホル・ホースに目の前の人物が女であることを感覚的に知らせる。
まじまじと観察してみる。頭の先からつま先まで、上から下へと視線を向けていく。
整った顔立ち、大人びた中にまだ少女のあどけなさが残る。僅かに傾く太陽の光を浴び黒光りする髪の毛。それをかきあげる色白な手、細長い指。ウエストは引き締まりスカートから突き出た足が眩しい。
こんな上玉久しぶりだなとホル・ホースはぼんやりと思い、沈みがちだった気分が少しだけ浮き上がったように感じた。

ああ、この先は危ねぇぜ、お嬢ちゃん…なんてたって極悪殺人鬼、しかも女子供関係なしに襲い掛かるヤツがいやがる。その上二人組、頭も働くっていうんだから質が悪い。悪いことは言わねえ、行かないほうが身のためだぜ。
そう言おうと口を開き、だが直前にふと気づく。だらしなく口を半開きにしたまま自分のしていることに愕然とする。

おいおい、マヌケもいいところじゃねーか。俺は何をしてやがる?いきなり現れた美少女に心を奪われ、情報を垂れ流し………一体どこのガキだよ。
そもそもなんだ、『お嬢ちゃん、俺は一体どうすればいいんだ?』だって?本当に俺はどうしちまったんだ?見ず知らずの女にすがって…センチな気分ってか?

「…?どうしたの?」

マヌケ面を誤魔化そうとホル・ホースは曖昧な笑みを浮かべる。掴んだままだった手を放すと帽子の縁をつかみ表情を見えないように深く被りなおした。
ひょうひょうとしたいつもの自分を取り戻すため心の中で自分自身に言い聞かせる。

「いや、なんでもないさ、お嬢ちゃん。まあ、立ち話もなんだ、敵ってやつについてはじっくり腰を落ち着けて話すとしないか?」

そうだ、冷静さを取り戻すんだホル・ホース。利用相手の情報を垂れ流し?しかもなんの見返りもなしに?馬鹿言っちゃいけねぇ。どうせ話すにしてもコイツから情報を聞き出してからだ。
イーブンイーブン、最悪でも情報交換にしねえとまったく意味なしだ。そうだろ?だから落ち着こうぜ。
コイツがミューミューに重なるなんてことはない。そもそも星の数だけいた女の一人が死んだだけだ。それなのにさっきの俺の狼狽っぷりっていったら………目も当てられねぇ。
クールダウン、クールダウン。いつものお調子者、つかみ所のない風来坊、根っからのウソつきハンサムガイ、ホル・ホースはどこに行った?

「あら、そんな誘い方じゃなんかやましい考えがあるみたいよ。誘うならもっと気のきいた言葉じゃなきゃ」
「こりゃ失礼。若い人には縁がなくてな」

互いに笑顔を浮かべるも水面下では腹の探り合いは続く。微笑を交わしつつも目は一切笑っていない。
近くの民家のひとつを適当に選ぶとホル・ホースはレディファーストです、とドアを押さえ由花子に入室を促す。
上品な礼をし、先に家内に入っていく山岸由花子。玄関にのぼる時に靴を揃えることも忘れない。可憐な少女を演じることは由花子にとって訳ないことだった。
入った先のリビングの向かい合うソファー。足の低いテーブルを挟んで二人は座る。何気ない一連の流れの中、ホル・ホースはまたしても自問自答を始める。

レディファーストです、なんて扉を押さえてやったのはやりすぎだったかもしれねぇな…。いつもの自分でもやったか?まだ俺はミューミューの野郎のことを引きずってるんじゃねーか?
とにかく今のこの俺の席はよろしくないぜ。窓に背を向けてるこの席じゃJ・ガイルの旦那やアンジェロの奴らが道路に出てもまるでわからねぇ。もしもあいつらが勝手に動き出したら………

「それで…なんて言ったかしら?命がいくつあっても足りない、この先は危ない、敵がいる…だったかしら?どういうことなの?」
84◇Y0KPA0n3C氏代理投下:2010/04/04(日) 19:11:20 ID:BeIv3lXI
冷や汗がホル・ホースの額を伝う。自分はこの女を騙すわけじゃない。ただ情報交換をするだけだ。なんの見返りもなしに一方的に情報を垂れ流す、そんなお人好しいないだろう?当然のことなんだよな?なあ、そうだろ?
そう自分に言い聞かせても自分の中で罪悪感が沸き上がる。正しいことをしているのか、いつもの自分になれているのか、不安感が次々と募ってくる。心が揺れ落ち着きがないことを自覚する。

「まあ、そう焦るなって。俺の名前はホル・ホース。お嬢ちゃんの………」
「由花子。山岸由花子よ」

この女に、由花子に全てぶちまけてしまいたい。自分がいかに悪党であるかを。
天性のウソつきである自分の心中を全てさらけ出したい。
ホル・ホースの心は決壊寸前だった。

どうしてこんな弱気になってるんだ、俺は。女一人騙すなんて日常茶飯事だろ?いやいや、騙すんじゃない。今からするのは情報交換だ。対等だ。イーブンだ。それどころか俺はコイツの命を救ったんだ。
あのまま俺がコイツの手を掴まずにいたらどうなってたと思う?J・ガイルの旦那とアンジェロだぞ?コイツだってあのさっきのミューミューみたいに………

自覚はなく、まるで忍び寄る病魔のように。じわりじわりとホル・ホースの心は折れていく。
あれ、いつもと違うぞ、自問自答。
必死に言い聞かせるも沸き上がる疑問。
何が正しく何が間違っているのか。答えは出ない迷宮へ、さあいらっしゃい。

―ジョニィ・ジョースターは心が折れるなか、遺体に導かれ答えを出した。
 心が迷っているなら撃つのをやめなさい。
 それに対してジョニィはこう答えた。
 もう迷っちゃいないさ。
85◇Y0KPA0n3C氏代理投下:2010/04/04(日) 19:12:05 ID:BeIv3lXI



遺体のため、自分のため、動かない脚のため。
『生きる』とか『死ぬ』とか誰が『正義』で誰が『悪』だなんてどうでもいい。自分のマイナスをゼロに戻したいだけ。
それがジョニィの答えだった。自分を貫き通す、ジョニィ・ジョースターとしての言葉だった。
ジョニィは折れなかった。

だが

「由花子…由花子嬢よォ」
「お嬢ちゃんでいいわよ、ホル・ホースさん」
「お嬢ちゃん…俺は…どうしたらいい………?」

フラリフラリの根なし草。次から次へと主を変え、女を変え、渡り歩いていく放浪者。
都合が悪けりゃ我関せず。下手をうったらそれ、逃げろ。
No.2にはNo.2の苦労がある。世渡りするにはそれなりの実力がなければならない。

だが心が折れそうな時、彼は何を信じればいい?
自分の腕?いやいや、それがないからホル・ホースはNo.2であり続けるのだ。
自分の頭脳?決して悪くはない。だが幾度となくドジを踏み逃げ回り、高跳びしてきた。
自分の信念?何が信念?何が自分?ホル・ホースという男の根本は?自分は一体………

「俺は………何を信じればいい………?」

心が折れそうな時、支える仲間もいない。苦楽をともにした相棒もいない。一生を誓った伴侶もいない。
皇帝(エンペラー)気分でホル・ホースは好き放題してきた。腹の底では舌を出し、相手を見下し自分の利益ばかり考えてきた。
ホル・ホースは皇帝(エンペラー)、しかも飛びっきりの暴君だった。

「何も心配する必要はないわ、ホル・ホースさん。信じて。私を信じて教えて。何があったの?何があるの?」

つまるところ、全ては簡単なところ。
ホル・ホースは利用していた女に利用されただけ。
ただそれだけのことだった。

因果応報というのならばなんという皮肉だろう。
だがそれも仕方のないこと。
それこそがホル・ホースという男の答えなのだから。

―――ニーチェ曰く
『男が本当に好きなものは二つ。危険と遊びである。男が女を愛するのはそれが最も危険な玩具であるからだ』




86◇Y0KPA0n3C氏代理投下:2010/04/04(日) 19:13:08 ID:BeIv3lXI

「ホル・ホース、お前どこ行ってた?」
「なに、ちょっとした野暮用ですよ、旦那」

野暮用…野暮用か。フン、どうも気にかかるな。
アンジェロとJ・ガイルがそれぞれの趣味をたっぷり味わい終わった頃、フラリと姿を消していたホル・ホースは帰ってきた。
リビングの扉をバタンと開けるといつものお調子者顔で軽く謝るホル・ホース。それを見てアンジェロは鼻をならす。

どうも気にくわねぇな…野暮用で誤魔化してるけど結構な時間があったはずだ。その間なにしてやがった?別の『旦那』とやらに媚びへつらっていたんじゃねぇのか?
アンジェロは思った。しかし同時にまあいいかという気持ちも沸き上がっていた。
久しぶりの死体。ほんのりと暖かみが残る中、硬くなっていく体。醜く歪んだ表情。苦痛と恐怖をくっきりと残し、何かを掴もうと伸ばしたまま固まった手のひら。
背筋がゾクゾクするような久しぶりの喜びにアンジェロは上機嫌だったから。

「ところでこの後どうするか、予定はあるんですかい、旦那?」
「いや、俺はこれと言ってないな。アンジェロ、お前は?」
「やっと一人殺せたけどよ…まだ満足してねぇな。どうもここにはイイ気になってるやつらばっかいるみてえだ。ぶっ殺してやりてえって気持ちが次から次へと沸き上がってきやがる。
「ほう………」
「南のサンタ・ルチア駅から北上してきたわけだから今度は東、繁華街か特別懲罰房辺りに参加者が固まってる気がする。まぁ、向かうならここらあたりだろうな」
「そうかい。となると俺たちとは別行動になりそうだな」
「ってことは何か行く先が決まったのか、ホル・ホース?」

J・ガイルが尋ねる。答え代わりに、机に広がっていた地図を引き寄せるとニヤニヤしながらホル・ホースはある一点を指し示す。指先はDIOの館。

「アンタたち二人がお楽しみだった時、何も俺はボーッとしてたわけじゃねえ。ちょいと情報を集めに出かけてな…スピードワゴン、さっき言ったよな?俺の約束の相手がどうやらここにいるらしい。そして、旦那、あのDIO様もいるとのことだ」
「ククク…ホル・ホース、お前やっぱり抜け目ねぇな。DIO様がいるんだったら話は早い。アンジェロ、お前とはここでお別れだ」

地図を手早く片付ける。慌ただしくデイバッグを担ぐと席を立つ。ホル・ホースもそれにならい、出発の準備を整える。一足早く終わらせると先に待ってると言い残し玄関のドアを開け出ていった。リビングに取り残されたのは二人の快楽殺人鬼。
87◇Y0KPA0n3C氏代理投下:2010/04/04(日) 19:14:26 ID:BeIv3lXI
「ククク…短い付き合いだったがお前とは気が合いそうだと思ったんだがな」
「…いい気になってるんじゃねえぞ、J・ガイル。俺はお前と仲良しこよしした覚えはねぇ」
「確かにそうだ。まぁ、いい。それより20時にDIOの館集合っていう例の約束はどうする気だ?」
「ブラックモアもいねぇ。ウェザー・リポートもいねぇ。ヴァニラ・アイスもいねぇ。全く魅力もねぇクソみたいな約束だ。俺は俺のやりたいようにやるし、そもそも俺がどうしようかをお前に言う必要もねえ。違うか?」
「ククク…違いない」

それだけ言い残すとJ・ガイルは家から出ていった。別れの言葉もない。捨て台詞も皮肉も何一つない。やけにアッサリしやがるな、アンジェロがそう思うほど呆気ないものだった。
そしてそれが逆にいかに今J・ガイルが上機嫌であるかを示しているかのようでアンジェロはたちまち不愉快な気分になる。
イイ気になってやがる、ぶっ殺してやればよかったぜ。誰にともなくそう呟いた。
自分も上機嫌だっただけにJ・ガイルと同等と扱われた気がしてさっきまでの高揚感は割れた風船のように萎んでいく。空気を入れ換えるようにイライラがあっという間に広がった。

このイライラを解消するには誰かを殺すしかねぇ。さっきみたいにスカッとザマアミロって気分が味わいてぇな。いや、今度はじっくりいたぶってみるか?いやいや、最初の野郎みたいにラジコンカーにするのも面白えかもな。
とにかく東に向かうか。そう決心するとアンジェロは動きだす。ホル・ホースとJ・ガイルがやったように荷物をまとめ出発の準備を整える。部屋を出ていく直前、アンジェロは何かを忘れてるような気がして部屋を振り返った。
視界に何かキラリと反射するようなものがみえた、そんな気がした。
もう一度部屋の中央に立ち、辺りを見渡してみる。気のせいではなかった。キラリ、キラリと光が反射し次から次へと光が『渡っていく』。不思議な、奇妙な光景にアンジェロは本能的に身構える。
何か、ヤバい。そう感じた瞬間、台所でガラスが割れた音が聞こえた。侵入者だろうか。だが確認する暇もなく、迎え撃つかどうかも考える暇なく

―――住宅街に轟音が響いた




88◇Y0KPA0n3C氏代理投下:2010/04/04(日) 19:15:31 ID:BeIv3lXI
「ククク…バァ〜カめッ!!ヘヘヘ…イイ気になってるって?なってるのはお前だろうが、アンジェロッ!」
「ヒヒヒ…旦那、それより急ごうぜ。あんなアホ野郎のせいで遅れたらつまらんことになるぜ」

先を行くJ・ガイル。後ろを歩くホル・ホース。互いの健闘を称えるように満面の笑みを浮かべ下品な笑い声をたてる。
J・ガイルは腹のそこから面白そうに、始末した相手を見下すように。ホル・ホースは厄介ごとを片付けホッとしたように。
作戦事態はシンプルそのものだった。
J・ガイルのスタンドで偵察且つアンジェロの注意を引く。その隙にホル・ホースのエンペラーでガスタンクをぶち抜きボンっ!
そして結果は大成功だった。

これで借りは返した。敵討ちというわけじゃないがどこかスッキリしたものをホル・ホースは感じる。ミューミューの無念を晴らすだとか、冷静に考えればそんなものはないはずだ。二人の間はそんな深いものでないのだから。
けれども心が落ち着いている。なぜか。
きっと一度自分の心をさらけ出したからだろうか。山岸由花子に全部吐き出したからだろうか。

ホル・ホースは全て語った。今までホル・ホースがどんなに女を裏切ってきたか。そしてどれだけ女を愛してきたか。
自分は都合がいい方につく軟弱野郎で、天性の大嘘つきです。そこまで告白してしまった。
心が折れかけていたホル・ホースは由花子の言葉に呆気なく陥落した。そして語っている内に怖くなってきた。今自分が否定されたら俺はどうなるんだろう、と。
そして同時に並の人間なら嫌悪を示さない訳がないこともわかっていた。そういうことをやってきていたのも心では理解していた。

だが山岸由花子は違った。まるで聖母のように優しくホル・ホースを受け入れた。全てを聞き終えても眉一つ動かさず、むしろホル・ホースが生き抜いてきた世界の過酷さに同情し、そしていくつもの修羅場を潜り抜けてきたことを褒め称えた。
折れかけた心は再び元に戻った。完全とは言えない。タイムリミットも当然変わらない。だがホル・ホースは確かに救われた気がしたのだ。
89◇Y0KPA0n3C氏代理投下:2010/04/04(日) 19:16:42 ID:BeIv3lXI
少しボンヤリしていたようだ。気づくとJ・ガイルの背中が大部遠くなっていた。J・ガイルはアンジェロをぶっ殺せたことが相当嬉しかったのだろう、DIOの館に向かう足取りは軽く、ホル・ホースのことなどかまわずズンズン進んでいく。
やれやれ、ため息を一つつくとホル・ホースは少し小走りになる。冷静に考えればホル・ホースだって時間はあまりない。J・ガイルを仲間としてスピードワゴンとの約束を果たさなければ。そうすればようやく白ネズミから解放されるのだ。

俺も急ぐとするか、そうホル・ホースが考えて駆け出した時だった。突然足を何かに取られる。あっ、と叫ぶ間もなく地面が近づいてくる。手をつこうにも金縛りにあったように体は動かない。
きれいな『気を付け』の格好のままホル・ホースは顔を激しく打ち付けた。痛ェ、そう反射的に言おうにも下もまるで何かに縛り付けられたように動きはしない。
何がおきているんだ、確認しようにも首が動かない。そのホル・ホースの視界に動くものが移る。ゾワリゾワリと視界を黒が埋め始める。顔の後ろから大量に視界を埋め尽くす程の髪の毛。目の前の光景が一体何が起きているのか、ホル・ホースにはまったくわからなかった。
そして一面真っ黒となる。

一体何が起きてる?何だ、何だ、何だ?
パニックにも似た感情がホル・ホースを襲う。得体の知れない恐怖と暗闇に押し潰されそうになる。

旦那、助けてくれ。旦那、気づいてくれ。
一体何がどうなってやがる。

そして轟音。
ホル・ホースは自分がなぜ死んだか、どうやって死んだか、誰に殺されたか。
何一つわからぬまま死んだ。

爆発音に振り向いたJ・ガイルが見たものは首輪が爆破し頭と胴が離れ離れになったホル・ホースの死体だった。




90◇Y0KPA0n3C氏代理投下:2010/04/04(日) 19:17:32 ID:BeIv3lXI


さて…

「どうしようかしら」

山岸由花子は考える。眉間にしわをよせ悩ましげに考える姿はまるでデートコースに悩む乙女のようで。意中のあの人の心を思う少女のように由花子の悩みはつきない。
今しがた人を一人始末したとは到底思えない、普通の女の子がそこにいた。

ホル・ホースは由花子にとって最も嫌悪すべき男だった。
多人数の女に言い寄る尻軽男、使い捨てかのように女を扱ってきたことを聞いた時はその場で絞め殺してやろうかとも思った。
純愛。年に相応しく、恋に一途な由花子にしてみればホル・ホースは汚物のような存在だった。
何もホル・ホースに騙された女性へ同情し彼女らに代わり神の鉄槌を!…そう言った気持ちはさらさらなかった。由花子はホル・ホースを一切信頼してなかったし、そのためにも遅かれ早かれ口封じの目的でホル・ホースを始末する気であったから。

「………ほんと困ったわ」

そんな彼女の悩みの種。行く先はもう決まっている。由花子の次の目的地はF-2のナチス研究所。ならばその悩みとは?

「首輪を外して…脱出…か………」

歩きながらも手の中の妨害電波発信装置をもて遊ぶ。お手玉のように軽く放り投げ、落ちてきたのをまた掴む。そしてまた投げ掴み投げ掴み投げ………。
由花子の中には確信があった。手の中のこれを使えば間違いなく首輪を外すことができると。吉良吉影の携帯電話の電波を止めることができたのだ。首輪にしても遠隔操作ならば電波を送っているに間違いない。
ならば携帯電話の電波を止めることができたこの妨害電波発信装置で首輪への電波はシャットアウトできるのではないか。

「それが困るのよ…」

だがもし首輪を外したとしたら?それは間違いなくイレギュラー。何らかの措置は取り計らわれ、最悪『GAME OVER』、優勝賞品も取り上げ。なんてことも考えうる。

「それに…」

だがもし『イレギュラー』でなかったら?由花子はそちらの確率のほうが高いと踏んでいる。なぜならそもそも妨害電波発信装置などを支給した意図がわからない。首輪を外すキーアイテムとなるものを配るメリットは荒木にまったくない。
強いていうならば希望にすがった参加者の首が吹き飛ぶのを馬鹿にするといった悪趣味な楽しみかただろうか。
どちらにしても新木野狙いは不明慮だ。
荒木は首輪を外して欲しいと思っているのか?それともこれじゃ外せないのか?ただの罠なのか?外したにしてもどうしようもないなにかがあるのか?

「………まあいいわ」

どっちみち変わらないわ、と由花子は呟く。これは最後まで隠しておくべきだ。ホル・ホースからの情報によるとリゾットとペッシ、両名の敵対者は多い。そしてその中にはあのジョルノ・ジョバーナも含まれているのだ。ならば話は簡単だ。
DIOの館はあのニセ早人が、ナチス研究所は自分が。それぞれがつつきあえば勝手に潰しあってくれるだろう。この妨害電波発信装置は信頼を勝ち取る最終手段としなければ。

行く先に足を勧めながら由花子は考えをまとめた。そしてそこまで考えて思わず苦笑する。

なんだ…

「私がやってることもホル・ホースがやってることと一緒じゃない」

空を見上げる。少し紅く染まった視界の中でゆっくりとラジコン飛行機が旋回してるのが見えた。
91◇Y0KPA0n3C氏代理投下:2010/04/04(日) 19:18:18 ID:BeIv3lXI









J・ガイルは戸惑いながら逃げる。ホル・ホースの首輪が爆発した理由はわからない。原因不明、謎の爆発。だがそこに留まっていては間違いなく殺られる。
ひとまず距離を取るため逃げる。逃げながら考える。
どういうことだ…?アンジェロの野郎を殺り損ねたのか?いや、まさか。ホル・ホースのエンペラーは操作可能、間違いなくガス爆発で木っ端微塵に吹き飛ばしたはずだ…。
だがなら誰が?どうして?どうやって?どんなスタンド能力だ?
とにかく逃げねば。DIOの館はもうすぐだ。



92◇Y0KPA0n3C氏代理投下:2010/04/04(日) 19:19:05 ID:BeIv3lXI






アンジェロは怒り狂っていた。未だかつてない怒りに震え完全にプッツンしていた。
窓ガラスが割れた瞬間、何だかわからんがヤバい、そう判断したアンジェロは直ぐ様アクア・ネックレスで全身を包むと窓を突き破り家内から脱出した。
それでも直後のガス爆発の熱風は防ぎきれず身体中に火傷を負い、また地面に叩きつけられた時のダメージも吸収しきれずに、まさに満身創痍だった。
そんな体も今のアンジェロは気にならない。痛みよりも怒りが勝っているのだ。

ホル・ホース、J・ガイル、二人ともブッ殺してやるッ!俺の痛みよりも何倍も、何十倍も痛みつけ、身体中をギッタギタのめった切りにしてブッ殺すッ!俺の受けた屈辱よりも下劣な、這いつくばるような敗北感を味わせてやるッ!
そう思ったアンジェロがアクア・ネックレスで死んだホル・ホースを見つけるのに時間はかからなかった。
クソッタレ、先をこされたッ!J・ガイルの野郎、絶対ブッ殺してやるッ!口封じか、それともただ単に利用価値がなくなったのか。とにかくお前は許さねェ!泣こうが喚こうが必ずお前は俺がブッ殺してやるッ!

荒木によってか、アクア・ネックレスはいつものようにどこまでも広がってはいけなかった。いつものアンジェロならば自分に枷をかけた荒木の態度に腹を立てただろう。しかし今のアンジェロに荒木は映らない。
スタンドを手元に呼び戻すと自らも一緒に北上していく。J・ガイルが目指すであろう、DIOの館を目指しアンジェロも走る。










【ホル・ホース 死亡】
【残り 33人】
93創る名無しに見る名無し:2010/04/04(日) 19:25:45 ID:MMbJ38ph
 
94◇Y0KPA0n3C氏代理投下:2010/04/04(日) 20:48:12 ID:BeIv3lXI

【F-3 北東/1日目 午後】
【山岸由花子】
[時間軸]:4部終了後
[状態]:健康、強い覚悟
[装備]:妨害電波発信装置、サイレンサー付き『スタームルガーMkI』(残り7/10)
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜1 承太郎の首輪
[思考・状況]基本行動方針:優勝して広瀬康一を復活させる。
0.ナチス研究所に向かい、ペッシ・リゾットと接触。信頼を勝ち取り利用する。
1.吉良吉影を利用できるだけ利用する。
2. DIOの部下をどうにか使って殺し合いを増進したい。
3.正直知り合いにはなるべくあいたくない。けど会ったら容赦しない。
4.一応ディオの手下を集める
[備考]
※荒木の能力を『死者の復活、ただし死亡直前の記憶はない状態で』と推測しました。
 そのため、自分を含めた全ての参加者は一度荒木に殺された後の参加だと思い込んでます
※吉良の6時間の行動を把握しました。
※空条承太郎が動揺していたことに、少し違和感。
※プッチの時代を越えて参加者が集められていると考えを聞きました。
※ラバーソールのスタンド能力を『顔と姿、声も変える変身スタンド』と思ってます。
 依然顔・本名は知っていません。
※スピードワゴンの名前と顔を知りました。


【D-4 中央/1日目 午後】
【J・ガイル】
[時間軸]:ジョースター一行をホル・ホースと一緒に襲撃する直前
[能力]:『吊られた男』
[状態]:左耳欠損、左側の右手の小指欠損、全身ずぶぬれ、右二の腕・右肩・左手首骨折(治療済み)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
0.とにかくのこの場を離れる。目指すはDIOの館。
1.アンジェロとホル・ホースを可能な限り利用し、参加者を減らす。
2.自分だけが助かるための場所と、『戦力』の確保もしておきたい。
3.20時にDIOの館に向かう?
[備考]
※『吊られた男』の射程距離などの制限の度合いは不明です。
※ヴァニラアイスの能力、ヴェルサス、ティッツァーノ、アレッシーの容姿を知りました。
※第二放送をアンジェロに話しました。
※ホル・ホースのデイバッグ一式がD-4 中央に放置されてます。
95◇Y0KPA0n3C氏代理投下:2010/04/04(日) 20:49:47 ID:BeIv3lXI
【D-4とE-4の境目/1日目 午後】
【片桐安十郎(アンジェロ)】
[スタンド]:アクア・ネックレス
[時間軸]:アンジェロ岩になりかけ、ゴム手袋ごと子供の体内に入ろうとした瞬間
[状態]:全身を火傷(中度)、身体ダメージ(中)、プッツン
[装備]:ディオのナイフ ライフルの実弾四発、ベアリング三十発  
[道具]:支給品一式×2
[思考・状況] 基本行動方針:安全に趣味を実行したい
0.J・ガイル、ぶっ殺すッッッ!
1.荒木は良い気になってるから嫌い
2.20時にDIOの館に向かう?
[備考]
※アクア・ネックレスの射程距離は約200mですが制限があるかもしれません(アンジェロは制限に気付いていません) 。
※ヴェルサス、ティッツァーノの容姿を知りました。
※第二放送をJ・ガイルから聞きました。
※ミューミューの基本支給品を回収しました。

以下書き手氏より↓

Devil In His Heart ◆Y0KPA0n3C.:2010/04/04(日) 17:27:47 ID:xFiu6wdc
投下完了しました。
誤字脱字、矛盾点、修正すべき点などありましたら指摘してください。


96◇Y0KPA0n3C氏代理投下:2010/04/04(日) 20:51:38 ID:BeIv3lXI
さるさんもとけたので、代理投下完了。感想は後ほど。

長すぎるとエラーが出た行は任意で改行しました、悪しからずご了承ください。
97創る名無しに見る名無し:2010/04/08(木) 22:54:09 ID:ER9YHlu/
投下乙

ホルホースはここで退場か〜
あの二人との合流は完全に失敗だったな
片方は互いに(ある程度)信頼してる相棒だったはずなのにw
ゆかこは相変わらず怖いな〜
半端な実力差なら簡単にひっくり返せそうだ

そしてマーダコンビにもヒビか
DIOの館は忙しいなwwwwww
98創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 01:47:52 ID:mD8DimnR
投下乙です

ホル・ホースは見事に女運が無かった…
NO.2にも苦しみはある、という下りがなんとも哀愁漂う感じで良かったです。

だがマーダーコンビは仲良くできなかったかw
でも彼ららしくふるまえば当然の結末かな。
やつらの目指すDIOの館が最高にやばいw

そして由花子さん無双は止まらない…
この子ほんとに女子高生かよォ〜?w
99 ◆33DEIZ1cds :2010/04/09(金) 19:06:49 ID:mD8DimnR

ディオ・ブランドー、タルカス、リンゴォ・ロードアゲイン、吉良吉影、投下します。
100vengeance ◆33DEIZ1cds :2010/04/09(金) 19:07:43 ID:mD8DimnR
良かれ悪しかれ、という前置きは必要にせよ___幾多の人々の感情を他所に、目まぐるしく移り変わる戦況。
それは家屋の陰に潜む男、吉良吉影の頭上を迅速に飛び交っている。

喜劇の様な悲劇が生まれ、冗談の様な奇跡が生まれた。
笑って死ぬ者、泣き叫んで死ぬ者、黙って死ぬ者、先に託して死んでいった者。
そんな様々な群像の中に、吉良もまた含まれている。
そして、彼が考えているのは日常への回帰、ただそれだけ。

(重要なのはそれだ。)

見知らぬ、気味の悪い男、荒木により彼の平穏は崩された。
彼の愛した日常はここには存在しない。
習慣のストレッチはおろか睡眠さえ取れない。
揚句、一時は人生最大の危機に瀕してしまう始末。
その危機は今や完全に去ったが、それすら問題の一部が解決したに過ぎないのだ。
先程シアーハートアタックを使役して決着を付けた事柄も、また。

吉良は歯噛みした。

解決に迫られる幾多の問題、本来ならば関わる様な道理のなかった代物。
常軌を逸した光景、自分に降りかかる厄災。

しかし。

(あの手だけは…捨て置けない。)

ディオの手を手に入れるために最も近い手は何か?

館を出てからすでに幾時間かが過ぎている。
時刻はそろそろ午後2時と言ったところ。

少し前まで考えていたのは、コロッセオへ足を踏み入れるか否か。
いやらしい笑顔の奇怪な男、チョコラータの言葉を信じるならば、あそこには虹村億泰がいるのだとか。
そして少しでも危険がある場所には向かわない事を信条とする吉良に、コロッセオへ行く選択肢はまずあり得なかった。

それならば、次に取る行動は自然と決まってくる。
DIOの館へと戻る事。
その場合の問題は、館に戻ったとして、どうするのか。
戻れば質問を浴びせられるだろう。

エシディシの返答は?
コロッセオの状況は?

どのように嘘をついても、当然後でばれる危険が大きい。

(ばれないギリギリの線は…)

『コロッセオ付近で、怪しげな風体の人物を見た。武器を所持しており、どうやら好戦的スタンスらしい。
自分はみっともないが臆病風に吹かれ、大事を取って引き返すことを選択した。相手に気付かれた様子は皆無。』

コロッセオに入れなかったこと、メッセージを伝えられなかったことは素直に謝ればよい。
『怪しい人物』の風体はチョコラータに準じれば良いだろう。
それに、何せ自分は非力な一般人なのだ。
このくらいの怯え、弱気は当然。
後は自分の演技力次第。
長年己を偽り、無害な羊のふりをしてきた吉良にとっては造作もない事の様に思われた。
その後は徐々に館の人間達に取り入って、最終的にはあの手を我がものに。

自らのプランに満足し、唇を舐めつつスーツの打ち合わせを整えると、吉良は館への道を引き返した。
101vengeance ◆33DEIZ1cds :2010/04/09(金) 19:08:48 ID:mD8DimnR
※   ※   ※

「貴方は…俺とは相容れぬ存在。よって話す事柄は何もない。」

「なるほど?君が誰を気に入ろうと知った事ではないが、質問に答えて貰わないと困るんだ。」

DIOの館、その門前にて2つの影が揺れる。

門番と目される男にそう言いつつ、吉良は薄く笑い手を腰に当てた。
館に戻るまでに、吉良は保身の対策を出来うる限り考えていた。
そうしてまず初めに思い浮かんだことは、ディオの館にのこのこと舞い戻るのは危険だということ。

自分が離れている間にどんな不測の事態が起こっていてもおかしくない。
ここならば大丈夫、などという場所はこのゲームフィールド内には存在しないのだから。

幸い此処には門番がいる。
そしてこの門番は吉良には興味が無いらしい。
山岸由花子と共に門を通過した時、路傍の石を見るような眼で見られたのを吉良は覚えていた。
彼から、あらかじめ館内の情報を聞き出さなくてはならない。

「別に何が減るわけでもないだろう?私が離れている間、ここで何かがあったのなら、教えて欲しい。それとも、何もなかったのかね?」

この門番の男、初めて見たときからどこか浮世離れした腹の底の読めぬ感じだった。
極端な推測だが、ゲームの動向に興味が無いのかもしれない。
ともかく、館内の様子を自分に教えても、別段損をすることもないはずなのだ。
眼をしっかと見つめ、根気良く待つこと数秒。

「……2人死んだ。殺した奴はどこかへ行った…。」

足元にできた新しい土の膨らみを見やりつつ、根負けしたリンゴォはつぶやいた。
この土の下にはラバーソールとエンリコ・プッチがいる。
タルカスが屍を担いで来、ロビンスンの近くに新しく埋めたのであった。
彼はイエロー・テンパランスの攻撃によって引き攣る表皮を気にした様子もなく、悠々と作業を終了してすでに館内に戻っている。
なぜわざわざ死体を埋めに来たのか尋ねると、ディオ様の館に醜悪な死体などあってはならぬ、とのこと。

タルカスは何があったのか尋ねるリンゴォに、『ディオ様が新しい力にお目ざめになった』と少し興奮気味に語りながら土を堀り返していた。
その新しい能力の内容は巧みに伏せられてはいたが、館内での一部始終をリンゴォは把握していた。
突如窓ガラスを破り外へと躍り出てきた巨大な男の正体も同様に聞かされ、改めてその異常さに心が揺れた。
だが現段階では自分の気持ちがよくわからない。
あの獣の様な異形の徒と、自分は闘争を望んでいるのか、いないのか。

「誰と誰が死んだ!?」

戦いに飢えて疼く利き腕も、今は震えることもない。だが心は何か落ち着かない。
吉良の焦った様子をどこか上の空で流しながら、リンゴォは思考に沈んでいた。

吉良には興味が無かった。闘争心も、何かを切り開こうとする意志も、彼からは感じられなかったから。
そして、リンゴォは聞かれたことにしか答えない。
吉良はまだ死者にしか興味を向けられないらしい。

まさかディオが、と焦りを含んで詰め寄る吉良。
そんな彼にちらと視線を投げ、リンゴォは答える。

「ラバーソールという、少年に化けていた男、そしてプッチと名乗っていた神父姿の男。」

吉良の懸念は杞憂に終わったが、上がった名前に小さく動揺する。
館の一室でつい先ほど、大演説をぶっていたプッチ神父。
ジョルノと館に戻って、他の参加者と共に籠城しているのだとばかり思っていた。
102vengeance ◆33DEIZ1cds :2010/04/09(金) 19:10:13 ID:mD8DimnR
そして、川尻早人の姿を模していたチンピラ。
忌々しい早人の面を拝まずに済むようになって些かすっきりした気はするものの、奴とてやり手のスタンド使いだったのではないのか。
少なくとも、この殺し合いで取り乱すこと無く他者と渡り合うだけの知と暴を備えているように見受けていた。

「襲撃した人間の名前は?風貌も聞きたい。」

「名前はエシディシ、とタルカスは言っていた。風貌は」

「何だと!?」

次の返答には、吉良は驚愕を隠さなかった。
聞かされたその名は、自分が尋ねるはずだった人物のもの。

(エシディシは仲間ではないのか!?どういう事だ。もしコロッセオではち合わせていたら私がやり合うはめになったかもしれないのか?)

プッチによれば、エシディシは古代戦士風の大男で、人間ではないのだとか。
そんな男と渡り合えば、負けはせずとも無傷では済まなかったろう。
深刻な面持ちで黙り込んだ吉良を、リンゴォは訝った。風貌に付いて言いかけたまま口を閉じる。
そしてそれ以上言葉は発さず、もう用が無いのなら、と館の壁に背をつき座り込んで目を瞑った。
そんなリンゴォの様子をたしなめる様な口ぶりで、吉良は質問を続けた。

「勝手に寝るんじゃあない…今館に誰がいるのか。最後の質問だ。答えてもらおう。」

吉良はますますディオの手確保の為の考えで頭がいっぱいになり、自らの焦燥感と相反するリンゴォの自由奔放振りにイラつく。
彼は、大嫌いなストレスがどんどん蓄積されるのを感じている。
そんな吉良の思枠などどこ吹く風で、リンゴォは座った状態で折れた腕を庇うように体制を整えていた。

「タルカスとディオだ。」

「何…ジョルノ君と山岸由花子はどこかへ行ったのかね。」

畳みかけるような質問に、リンゴォは瞼を再度開くと目の前に仁王立ちになった吉良を見る。

「最後の質問じゃあなかったのか?」

「無駄な問答はやめたいのだが。」

吉良の眼は、質問を質問で返すな、と言っていた。
焦れる吉良に対し、リンゴォは眼を閉じて一瞬沈黙を作る。
わずかな間の後で口唇をゆっくりと開くと、疲労から掠れ気味になった声で答えた。

「…ジョルノ・ジョバァーナは後から来たチンピラの様な男とどこかへ行った。
由花子という少女もどこへ行ったのかは知らない。2人は館にはいない、俺が知っているのはそれだけだ。」

言い終えるか終えないかというところで焦ったような足音が響く。
油を注さないせいか軋む扉の音を聞き、リンゴォは再び訪れた静寂にゆっくりと嘆息した。

※   ※   ※
103vengeance ◆33DEIZ1cds :2010/04/09(金) 19:11:18 ID:mD8DimnR
「誰かと思えば…先刻のすかした紅茶男じゃあないか。…フン……」

場所は一階の図書室。
館内へとその身を滑り込ませた吉良は、見上げるような大男・タルカスによってディオの元へと案内された。
案内の間、タルカスは日光を巧みに避けながら寡黙を貫く。
この男が無害なのか有害なのか、タルカスにとってそれは問題ではない。
ディオが消せと言えば消す、言わないのなら何もしない。
現状、どちらの命も受けていなかった。だから彼は何もしない。

たどり着いた図書室内にて2人は、未来の自分の所有物をいくつか拝借し、読書をしているディオの姿を見出す。
無論、ディオはこの場で実戦には大して役に立たないコーランを読みふけっていたわけではない。
スタンドに関する本、あるいはホワイトスネイクを完全に発現するために役立つものはないかと考えての行動だった。

吉良をその眼に捉えたディオは、顎に手を当て、面白そうな表情で先の様に呟くと、何かを思案している様子だった。
相変わらず、輝くような美しい手。
そんなディオを子細に観察しつつ、吉良はゆっくりと近付く。

「この館内には君とあの大男しかいないらしいね?ディオ君。」

吉良は無害な表情を装い、気軽な調子で声をかける。

「いや、門番の彼にも聞いたんだが、私がゲームに乗っていない人間であることは分かってもらえてるだろうから…」

獲物を前に昂ぶる精神は吉良を饒舌にさせた。
場の空気を割って空回りかけた自分の発言に気付き、口を閉じる。
一方吉良の思考など知る由もないディオは、吉良の背後にたたずむタルカスにつと眼をやると顎をしゃくって見せる。

「タルカス、貴様は持ち場へ戻れ。」

「ディオ様、それだけは。どうかおそばに…」

タルカスは巨躯に似合わぬへつらった様子で言い縋る。
主と、どこの誰かもわからぬ輩を2人きりで室内に留めるなど、あってはならないと思った。

「くどい。二度同じことを言うのは無駄だ。そうは思わないのかお前は?それともお前は、俺を無能とでも思っているのか?」

「決して!滅相もありません、決してそのような。」

自分の献身が、どうやら主人には不快だったらしい。
忠義が不実に終わることもあるのだと分かっているタルカスは、深々と頭を垂れることで服従の意を表した。

「ならば黙れ。さっさと行け。」

「は…。」

そんなタルカスの様子に満足したのか、ディオは鼻を鳴らしながら吉良に視線を向けた。
静かな室内に扉を閉める音と、戸惑いがちに部屋から遠ざかる重々しい足音が響く。

吉良は黙して待った。その間も視線はディオの手へと注がれ続ける。
ディオは再び吉良を見、膝の上に開いていた本を閉じると立ち上がった。
104vengeance ◆33DEIZ1cds :2010/04/09(金) 19:12:47 ID:mD8DimnR
「失礼、…そう、館内には奴と俺だけだ。」

サイドテーブルに本を置きつつそう言う。
隣に置かれた支給品のペットボトルが、日光を反射してきらめいている。

その光に目を細めた吉良は、ディオの瞳が険色を帯びてゆくのを感じていた。

場の空気が色を変えていく。
ディオの独白の様な言葉が続いている。

「ところで、俺は先程ちょっとした成長を経験してね…その成果をこの目で確かめたいんだ。わかるだろう?」

いたずらっ子の様に歯をのぞかせた笑顔で、ディオは吉良の眼を覗き込んだ。
沈黙を保ったままの吉良の心情をどう解釈したのかは不明だが、ディオは満足そうな表情で話し続けた。

「ああ、話が抽象的過ぎたかな。ンン〜…言いにくいんだが、多分貴方の命をもらうようなことになると思うんだ。」

ずいぶんと回りくどい言い回し。
ディオは自分の手に入れた力の影響力を楽しみたいのだった。
相手の顔が恐怖に歪めば、今まで味わった雪辱の念を、少しは晴らせるというもの。
そして現状では不確定だが、この東洋人もスタンド使いの可能性がある。

プッチの話を聞いてあの程度のリアクション。一般人なら混乱が当たり前だと言うのに。
そして、ゲームに乗ったユカコに始末されず、行動を共にしていた。
抜け目ないユカコに、そうしても良いと判断させるような能力があるのでは?
それがすなわちスタンド能力なのか、別の何かなのかはわからない。
だが、今最も濃い線はそれ。

「貴様もスタンド使いなんじゃあないのか?見せてみるがいい、この俺に。そのチンケなスタンドを。」

吉良は決断をする時だと思った。
自分のスタンドを他人に見せるのは、よほど事態が切迫した時。
だが、今のこの機を逃せば、ディオの手を永遠に逃す可能性がある。
マップ内でも目立つ方の建物であるこの館には、まだまだ人が集まってくるだろう。
今、館内にはディオとタルカスだけ。
リンゴォはこれから起こることには、おそらく興味を示さない。
タルカスはディオに命じられた以上、手を出してくることはなさそうだ。
それに奴の現在地は図書室から離れた館内の正面ゲート。
奴がここに来るまでに逃げる間くらいいくらでもある。

ディオが最初の命を撤回すれば話は別だが、この男はどこから見てもプライドの塊。
負けそうだから助けてくれ、と言うくらいなら死を選ぶだろう。

何よりもディオ自身が相当やる気らしい。
一番最初に挑まれたのが自分であったのが幸いなのかもしれない。
戦闘事体が気の進まない事柄だが、今はとにかく『手』だ。

「”貴様『も』”?…君はスタンド使いだったのか?いや、意外だ…」

吉良は決心した。今ここで、その手を頂くと。
内心では舌なめずりをしている状態だ。
それにここでディオの手を手に入れたら、次は由花子の手も貰いに行かなくてはならない。
由花子も単身でどこかへと立ち去ってしまった以上、いつどこで死んでもおかしくはない。
本人が死んでいようが生きていようが構わないが、手が破壊されたりすればそれこそ取り返しがつかない。
105創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 19:18:56 ID:0dqI7BbH
支援
106vengeance ◆33DEIZ1cds :2010/04/09(金) 19:23:13 ID:mD8DimnR
「私は争い事は嫌いなんだ…夜も眠れないような敵を作る行為は生き方として賢くないからね…」

吉良は手を額に当て、やれやれという様子で首を振る。
勿論、出来る限りは無害な一般人を演じたい。
だが、何もせずにここを出ていくことをディオが許しそうにない。
ならば迎え撃つしかないではないか。もう止められない。
ディオは得意の侮蔑的な態度でその言葉に噛みついた。

「フン、軟弱を絵にかいたような人間め…俺はどんな障害をも克服し、帝王として真に絢爛たる永遠を生きるのだ。」

「絢爛などチカチカと煩わしいだけ…植物の様に風に揺らいで時間が過ぎるのを待つ、これが最良の人生だ。」

思考の隔たりは底の見えない大きな崖のごとく、二人の間に横たわっていた。

「…、トークはここまでだ、東洋人。」

ディオはホワイトスネイクの腕を発現させる。
プッチの遺したウェザーという人間のディスクはすでに把握済み。
業深き彼らの人生に驚嘆こそすれ、それ以上のどんな感情もディオの心を訪れはしなかった。
それよりもホワイトスネイクの様途多彩な能力に感嘆したが、腕だけではどこまでやれるのか。

いくつか試した結果は、あまり良いものではなかった。

(命令を刷り込んだディスクを作るだけの、能力。しかも命令の効果は数秒で消えてしまう。)

相手を幻覚の中に落とし込むことも、記憶ディスクを作ることも、できなかった。
だからさらに知識を補完したくて、この部屋で文献を漁っていたのだ。
ちょうどいい、とディオは思っていた。
この東洋人で、己の新しい力を磨こう、と。
その後で小生意気なユカコや他のスタンド使いどもに、目に物を見せてやるのだ。
自分が負けるという事など、微塵も考えなかった。
プライドと自尊心を糧に自らのし上がってきたディオに取って、そんな仮定は自己否定と同義だった。

決して油断があったわけではない。
ただ、彼はスタンド戦においてはアマチュアもいいところだった。
己の力を誇示したい彼にとって、先手必勝が今最上の考え。

「ああ…言い忘れていた。君が始めるのはこれからかもしれないが、済まない、私はもう勝手に始めていたんだ。」

だから、突如もたらされた吉良の言葉に驚愕する。

「何……」

『コッチヲ見ロ』

吉良との会話に気を取られていたディオが、後方を見る。
そこには髑髏をモチーフとした小型戦車の姿。
吉良は得たのだ。獲物を孤立させる状況を。
そして密かに積み上げられていた彼の策。
それは保身のために予め後方に控えさせていた『第二の爆弾・シアーハートアタック』。

爆弾戦車はまっすぐにディオを目指す。

「クソッ」

何のスタンドかわからずとも、とにもかくにも距離を取るため、大学時代に鍛えた強靭な肉体で素早く距離を取る。
しかし戦車型爆弾は追跡機能を発揮し、どこまでも追いかけてくる。

「なるほどいい判断だなァ…。しかし、何故腕しかヴィジョンが無いんだね?そういうタイプのスタンドもあるのかな?」
107vengeance ◆33DEIZ1cds :2010/04/09(金) 19:24:09 ID:mD8DimnR
未熟なまま発現したヴィジョンのことを指摘され、ディオの額には青筋が浮かぶ。
率直に疑問を呈しただけの吉良ではあったが、ディオにとっては己の不完全さを指摘されたようなものだった。

「フン…ッ。こんな小手先に、俺が惑わされるかッ」

本能なのか、論理的思考の末に取った行動なのかわからないが、ディオは迷わず本体を叩くため、吉良に接近を開始した。
背後からはキャタピラを唸らせるシアーハートアタック。
吉良は薄笑いを浮かべつつ避けるそぶりもない。
なぜなら吉良が触れれば最後、ディオは全身が爆弾そのものになるのだから。
獲物の方から近寄ってくるのを待てば良いだけだ。
だがディオとてイエローテンパランスのような能力もある事を理解していた。
スタンドには触れるだけで肉を溶かすような危険な能力もあることを。

よって、何の考えも無しに突進したわけではない。

「何をたくらもうと無駄無駄ァ!こいつを食らえ!」

ホワイトスネイクの腕を経由してディオが示したのは、少し小さな『命令ディスク』。
元の使い手であったプッチ神父のレコードのサイズではなく、8インチCDの様なサイズのディスクだ。

(このディスクの性能は、タルカスによって実験済みだ。一瞬、ほんの5秒ほど…『気絶』の命令を刷り込めるッ)

腕のみでやっと発現できる、あまりにも不完全なその性能は、自らに与えられた試練。
スタンドはあくまでも補助、何かを乗り越えるのは自分が本来持っている知恵と力。
そう考えながら、ディオはスタンドの腕を振りかぶりディスクを標的に投げつける。

(避けるか?避けるなら避けるがいい、直接拳をお見舞いしてやる。)

ディオは注意深く相手を見た。
一方の吉良はすさまじい勢いで向かって来るディスクを、角砂糖で迎え撃つ。
ポケットに忍ばせていたそれを、優雅な動作で放る。
爆破の規模は最小限。ディスクは壊れはしなかったものの、大きく軌道をずらして床に落ちた。

「チッ」

盛大な舌打ちと共にディオは吉良を避けるように大きく軌道を変え、いくつもの列を作って並んでいる本棚と本棚の間へと走りこむ。
吉良の視界からディオは消えるが、足音や服のこすれる衣擦れの音が響く。
シアーハートアタックの追撃をかわすために走り回るディオは、今の吉良の能力について考えていた。

(何かが爆発した?爆弾を作りだす能力…か?では俺を追いかけてくるこの小賢しいおもちゃも、爆発物なのか?…ならば。)

自分が吉良に近づけば、おいそれと爆発を起こすわけにもいくまい。
未完成なホワイトスネイクで最大限できることは、再度接近し、命令ディスクを腕から直接叩き込むこと。
本棚の陰から躍り出て、接近を開始した。
ディオと、未だ棒立ち状態の吉良の距離はみるみる内に近づく。
今も未完成の美を持つディオの手が、吉良のすぐ目前に迫る。

(そうだ、来い。そのまま、そのまま。)

何度見ても、『良い』手だ。
そんなことを考えていた吉良の顔面にホワイトスネイクのディスクがめり込む直前、キラークィーンの腕がそれをガードし、そのまま掴んだ。
吉良はディオの懐へとに瞬時に入り込むと、負傷の無い左腕を直接わしづかみにする。吉良にとって、最も心踊る瞬間がやってきた。

そして極めて小さな、爆発。

それは小さいながらも、ディオの手を千切り取るには十分な規模のものだった。

「ッ……?!!」

108創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 19:25:39 ID:0dqI7BbH
 
109vengeance ◆33DEIZ1cds :2010/04/09(金) 19:25:46 ID:mD8DimnR
手首から血しぶきを迸らせ、ディオは床に膝をつく。
吉良は手首をうっとりと眺め、心が温かいものに満たされてゆく感覚に酔いしれた。
今やはっきりと別れた、勝者と敗者の構図。
その様相は古今東西、おおよそ同じものだ。

「ああ…良い。ほんとにいい手を持っているなあ…君って奴は。」

床に膝をつく敗者を、勝者が見下ろす。
ディオは手首の切断部分を、残った反対の手で力いっぱい握りしめた。
勿論、握ったくらいで出血が止まるはずもない。
その傷は、おそらく数分放置しておくだけでも致命傷となりうるような代物だった。
痛みとショックのあまりに浅く短い呼吸を繰り返しながら、額に脂汗をにじませるディオ。

(爆弾を作りだすんじゃあない…ッ!触ったものが爆発する能力だと…ッ!クソッ、軽率だったッッ!!)

「君を手首だけ残して消滅させても良かったんだが、少々聞きたいことがあってね…。」

数秒前までディオのものだった手をしっかりと握り締め、吉良は笑っていた。
ここ数時間の飢えがようやく満たされ、彼は上機嫌。鼻歌でも歌いたい気分だ。
手首の切断面を注意深く床へ向け、滴り落ちる血液を落とす。
何故そんなことをするのか見当もつかないディオだったが、痛みに目を白黒させながらも状況の打開を必死に思案していた。

「外にいる男、そしてさっきのタルカスとかいうデカ物の能力を教えてもらおう。勿論、他に知っている能力があればそいつも歓迎だ。ジョルノ君の能力とかね。」

勝負が終わったと思った瞬間の勝者が、一番虚を突きやすいのだとディオは知っていた。
相手はまだディオの命を奪わないつもりでいるらしい。
ならばまだチャンスがあるはず。

「いいだろう?もう君、その出血では反撃にはつらいだろう。死ぬ前に私に情報をくれたって別にいいじゃあないか?」

こっそり命令ディスクを発現させてもう一度投げる?
だが今もう吉良はディオと距離を取って離れている。さっきの様に避けられる可能性の方が高い。
タルカスを呼ぶ?
そんな馬鹿な。そんなことをするくらいなら、自分は………

「だんまりかね?私はこのままこっそり君を始末し、後の2人も同じ様に処理しなければならないんだ。」

吉良は笑う。
世界が光に満ちて、空気さえ自分に微笑みかけているような気がした。
平静な心をかき乱す全てを避けてきた吉良にとって、今回は全くのスペシャルケース。
そしてこの館は全滅させなければならない。追いかけられる羽目になるなんて冗談じゃない。

(出来ればいらぬ戦闘などしたくなかった…しかし、この手を前にしては…やれやれ…)

手の為に多少のリスクはどうしようもないことだと考えての行動だった。
持ち主から離れた以上、もはやそれはディオではなく、『手』という個体として吉良の愛を受けるにふさわしい存在となったのである。
対するディオは焦れば焦るほど、頭の中が空白で埋め尽くされていった。
傷口からは依然出血が止まらず、このままでは失血死は避けられない。

意識が遠のき、目の前がじんわりと歪んでいく。
キラークィーンが吉良の背後に揺らめいたのが見えた。

ディオは眼を閉じ、ありったけの意識をスタンドへと集中する。
吉良はディオの意識が混濁し始めているのを見て、とどめをさすために再度近づいた。
シアーハートアタックで爆破するのは、あまりにも騒音が立ちすぎる。
近寄って、静かに引導を渡そうと考えたのだった。
110vengeance ◆33DEIZ1cds :2010/04/09(金) 19:26:50 ID:mD8DimnR
「もう一度聞くが…さっきの私の質問に、答えてみる気はないのかな?」

依然沈黙を貫くディオを、吉良は何の感情もこもっていない眼で見た。

ディオは考えていた。

___ここに来てから、何度生命の危機に遭遇しただろう?

リンゴォに襲われ、祖父の仇だなどと因縁を押しつけられ、ヤマギシユカコとラバーソールにおもちゃのように扱われ…。
一体全体何なんだ?俺はこの世全ての悲劇の体現者か?
そして何もかも全ての諸悪の根源、荒木。
あいつはそんなに偉いのか?
このディオをこんな目に合わせる権利など、エホバだろうとキリストだろうとアッラーだろうと持っていない筈ッ!

意識はうたかたのごとく宙をさまよい、吉良の顔も大きく歪んだままだ。
ディオの心に幼少のころから巣くう、『怒り』という悪性腫瘍が今また熱を持ち始めた。

___ここで終われない。それだけは嫌だ。

荒木を地面に這い蹲らせ、許しを乞わせるまでは。
ユカコの顔を恐怖と後悔に彩るまでは。
自分を軽んじ、侮辱した全てのスタンド使いや化け物どもに復讐するまでは。
しかし、これ以上何ができると言うのか?
腕だけのスタンド能力。未完成の、不格好な能力。

___ホワイトスネイク。もっと俺のものになれ。

全てを俺によこせ。お前がプッチの精神を体現したものだと言うのならば、それを譲り受けた俺の精神に馴染め!
こいつを殺す、スタンド使いどもを殺す、荒木を殺す力をよこせ!!

「強情だな…まあ、あまり時間もないし諦めよう。君の手は貰っていくよ。趣味なんでね。」

キラークィーンが猫の様に光る眼をディオに向け、手刀を振り上げた。
ホワイトスネイクは答えない。
場は沈黙を保つ。

「では、さようならだ。」


手刀はディオの首を狙い、まっすぐに振り下ろされた。



___ところが。




キラークィーンの腕は、片方が欠損しているものの、力強いスタンドヴィジョンの両腕によって阻まれた。

完全に戦意喪失をしたと思っていたディオの防御に、吉良ははっとした様子で彼の背後へと視線を滑らせる。
そこに聳え立っているのは、横縞と風変わりな文様を乗せた腕を、その両側に控える奇妙な胴体。
薄暗い館の中で、吉良とディオの戦いはまだ決着とはならなかった。

「……悠長に話し過ぎてしまった様だ。今まで出さなかったんじゃない…出せなかったのか。」

何もかもが捻じ曲げられたこのバトルロワイアルにすら、運命が働きかけると言うのなら。

今、ディオはまた一つその駒を進めたことになる。
111創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 19:29:27 ID:0dqI7BbH
 
112vengeance ◆33DEIZ1cds :2010/04/09(金) 20:05:45 ID:mD8DimnR


吉良の目前に突如現れたそれは、天国を目指したディオの友人の置き土産、その本来の姿___


完全発現したホワイトスネイクだった。


「フフ…ハハハハ!!わかったぞ…精神をスタンドと馴染ませるために必要なのは…」

傷の痛みによろけながら、ディオは立ち上がった。
髪の毛が眼元に作る濃い影の中から瞳をぎらつかせ、吉良を視線でとらえる。
そこには、もう非力なディオはいなかった。

「“こいつを絶対に許さない”という強い気持ちだぁぁああッッ!!」

咆哮と共に、片腕で力いっぱい吉良を殴り飛ばす。
突然の反撃に吉良は叫び声もあげずに吹き飛び、壁に叩きつけられた。

「馴染む、馴染むぞッ!!これが完全なるホワイトスネイクかッ!」

スタンドと精神が合致した感覚による興奮を隠すことも無く、ディオは声高に笑う。
髪の中に右手を突っ込み、金の髪が抜け落ちることも厭わずに乱雑にかきむしった。
次に上着の裾を破り取ると、ひも状のそれを左手首へと素早く巻きつけ止血を施す。

「が、ぐ…」

吉良はうめき声と共に上半身を起こし、窓枠に手をついて起き上がりかけた。
スタンドが完全に出せない使い手がいるなどと、今まで聞いたことのないケースだった。
しかし、どんなに万能であろうとスタンドは使い手の『精神の力』。
どのようなイレギュラーがあってもおかしくはないのだ。
慎重を重ねているつもりでも、手の事で精神が高ぶったせいか、やはり考えに手落ちがあったらしい。
その時、部屋へと駆け寄る重々しい足音がさらに吉良を大きな動揺へ落とし込む。

(タルカスかッ!?入口まで戻らず潜んでいたなッ。戻れと言われたのだから戻ればいい物を…いや、私の考えが甘すぎた…ッ)

素早く立ち上がり、窓枠から離れる。

「『キラークイーン』ッ!」

次の瞬間、窓枠のあった壁が吹き飛んだ。
太陽は高く上って、晴天の空を切り取る様にその存在を主張している。
壁をなくした図書室内には、3分の2ほどの面積に日光が燦々と差し込んだ。
吉良は日光のあたる場所へと転がり出る。
自分をここまで案内した時、タルカスはあからさまに日光を避けていた。
おそらくエシディシと同じ、太陽に当たる事の出来ない体なのだ。

それとほぼ同時、吹き飛んだ壁と反対側に位置するドアを開けたタルカスは場の状況を掌握し、憎々しげに吉良を睨む。
次にディオの腕の負傷を見て、毛を逆立てんばかりの怒りがタルカスの背後から立ち上った。

「ディオ様ッ!…命令に背いた処罰は受けます、ですがどうか私にこいつを殺す許可をッ!」

「だまれッッ!!俺の邪魔をするな!それにこの状況でお前に出来ることなど無い…灰になるのが関の山だ。引っ込んでいろッ!」

忠臣をも邪魔であれば排除せんばかりの気迫で、ディオは叫ぶ。
タルカスは沈黙でこれに答えた。
113vengeance ◆33DEIZ1cds :2010/04/09(金) 20:08:17 ID:mD8DimnR
「…」

吉良はまたしても考えあぐねていた。
このまま逃げるか、タルカスとディオ、リンゴォを始末するまで粘るか。
じっくり時間をかけて吟味したい様な難題だ。
だが当然、ディオはそんな時間を与えてはくれなかった。
ホワイトスネイクの手元に、再度現れるディスク。
先程まで8インチディスクだった命令ディスクは、レコードサイズの本来の大きさでディオの手元に発現した。

「くらええッ!」

「クソッ!」

絶叫と共に、ディスクを投げつけるためディオも日の下へと駆けだした。
吉良は自らの不利へと流れかけた戦況に、苛立ちを募らせる。
せっかく欲しい物が手に入ったのに、どうしてこいつらは私を放っておいてくれない?
そう考えながら、片手でずいぶん伸びてしまった爪を噛み、反対の手でポケットから砂糖をつかみだして迎え撃とうと身構えた。

しかし、ディスクがディオの手から離れる前に、屈強な腕がディオの後ろへと伸びる。
伸びた腕はそのままディオの首筋に打ち当てられ、その衝撃によりディオは意識を宙へと放り投げた。

「お許しを…とは、もう申しませぬ。」

腕の主は、タルカス。
ウインドナイツ・ロットの「77の輝輪(リング)」と呼ばれる地獄の訓練法に勝ち残った騎士。
しかし今は屍生人である彼は、二度と日の下へ出られぬ身体。
その身を日光にさらした今、タルカスの体からは煙が上がり、アイスクリームのように溶け出していた。

「俺が完全に消滅するまで1分か?30秒か?」

朦々と沸き立つ己の体を見つめながら、タルカスはスレッジ・ハンマーを振り上げた。
己の消滅など問題ではない。
ディオは生き残らねばならない。
我が主人は、世界の頂点に立つために存在する方。

「いずれにせよ、出来ることを最大限やり遂げることに変わりはない…俺は、ディオ様をお守りするッ!UROWOOOO!!」

絶叫と共にスレッジハンマーを頭上で振り回し、遠心力によって勢いを付ける。
その反動を保ったまま、吉良に向かって投擲した。
吉良は見たこともないような巨大なハンマーに驚き、身を屈めて避ける。
すさまじい風とともに、ハンマーは頭上を通り過ぎた。
吉良がほっと息を吐いたのもつかの間。

「UWOOOOO!!」

全身から蒸気の様なものを発しながら、タルカスは吉良に向けて突進を開始していた。
その時、開け放たれたままだった図書室の扉から、飛び込んでくる影があった。

「タルカス、貴様ッ」

影はリンゴォ・ロードアゲイン。
リンゴォの姿を認めた吉良は、面倒くさそうにつぶやく。

「『シアーハートアタック』」

※  ※  ※
114vengeance ◆33DEIZ1cds :2010/04/09(金) 20:10:00 ID:mD8DimnR

「やめろ…。時を戻して…あの男がまたディオ様に危害を加えたら、事だ。」

足元に潜んでいたシアーハートアタックで半身を吹き飛ばされた上、太陽による浸食でタルカスの肉体は崩れていた。
吉良は攻撃と目くらましを兼ねて、シアーハートアタックを爆発させたのだった。
爆風による土埃が晴れた時、そこに吉良の姿はなかった。

すでに虫の息となり地面へと横たわるタルカスの横に片膝をつき、リンゴォはタルカスの顔を覗き込んだ。

「貴様…果たし合いの約束を反故にする気か。」

彼は突然の爆音を訝り、負傷した体を引きずりながら様子見に来たのだった。
図書室へ来た時、あれほど避けていた日光に全身を惜しげもなくさらしているタルカスを見、リンゴォは己の願望が達成されないだろうと悟った。
数刻前に取り交わした決闘の約束は、結果的に破られたのだ。

「言うな。俺の立場はやはりディオ様の僕…。何としてもお守りせねばならんのだ。」

リンゴォの口調に、責めるようなニュアンスはなかった。
タルカスも、リンゴォとの約束を決して忘れたわけではない。

彼らの間に存在するのは一体何なのか。
まだ決着を付けるまで戦っていないが、そこには既に無言の男の詩が存在した。

タルカスは大きく嘆息し、真っ青な空を見つめると一人ごちた。

「久しぶりに……浴びる…日光…悪くない……。」

そしてその言葉を最後に、長い長い人生を終えた。
リンゴォは、気体となって空へ立ち昇るタルカスの肉体と魂を見つめる。
数秒の間の後、何か言おうと口を開きかけた時、



『コッチヲ見ロ』



ついで爆音。
115vengeance ◆33DEIZ1cds :2010/04/09(金) 20:11:35 ID:mD8DimnR
※  ※  ※
館から少し離れたところで、至って普通のサラリーマン姿の男が移動していた。
だが、手には人間の左手を握り締めている。
常人にはおぞましいであろうそれは、彼にとって人生の宝といっても過言ではなかった。

手首を大事そうに持ちなおすと、吉良は周囲に気を配りつつも一本の木の下で立ち止まり、爪先を口元に持ってきて考え込んだ。
下を見ると、木の根元に雑草ではあるが小さな白い花が咲いていた。
早くこんな木の根元で、こんな天気のいい日にサンジェルマンの焼きたてのパンが食べたいと、吉良は目をつぶり眉間に指をあてる。

「素晴らしい気分になったかと思えばまた絶望に落ち込んだり…、こんな激しい気分の波は大嫌いだ。」

誰にともなくつぶやいたその時、シアーハートアタックが爆発した感覚を体に覚えた。
眼を開きにやりと口の端をゆがめる。

「フフ…あの爆発で無事では済むまい。またしてもすぐ確認できないのは不満だが…。」
吉良は単に尻尾を巻いて逃げたのではなかった。
館から十分距離を取ってから、再度シアーハートアタックを放ったのだ。
狙いはリンゴォとタルカス。後は全てを消し飛ばすだけ。

「タルカスは放っておいても死んだかな…だが、ディオを仕留めそこなった…どうする…。しばらく時間をおいてから戻るか…?」
ディオだけは自分の目の前で確実に死を見届けなければ安心できない。
敵を作りたくないがゆえに今まで地味に地味に行動をしてきたのに、手に対する欲望のせいで少々まずいことになった。
せっかく目的を達したというのに、完全に予定通りとはなっていない。
しかしいつまでもここで立っているわけにはいかないと、あてもなく歩きだす。

「クソッ!せっかく手に入れた『もの』をゆっくり堪能する暇もないとは…ッ。腐食が始まったらどうしてくれる…。」
小声で悪態をつきながら数メートル進んだところで、吉良はふと横を見、小さな違和感を感じた。
先程と同じ、根元に白い花を咲かせた木が佇んでいたのだ。

「…?さっきこの木を通り過ぎたはずだが…」
小さな異変を訝る気持ちはしかし、ディオをどう処理するかという思考へと飲み込まれ、そのうち忘れられた。

【B-4 中央/1日目 午後】
【吉良吉影】
[時間軸]:限界だから押そうとした所
[状態]:左頬が殴られて腫れている、掌に軽度の負傷、かなりハイ、爪の伸びが若干早い
[装備]:ティッシュケースに入れた角砂糖(爆弾に変える用・残り4個)、携帯電話、折り畳み傘、クリップ×2 、ディオの左手
[道具]:ハンカチに包んだ角砂糖(食用)×6、ティッシュに包んだ角砂糖(爆弾に変える用)×7、ポケットサイズの手鏡×2
    未確認支給品×0〜2個、支給品一式×2、緑色のスリッパ、マグカップ、紅茶パック(半ダース)、ボールペン二本
[思考・状況]
基本行動方針:植物のような平穏な生活を送る
0.同じような木くらいいくらでもあるだろう…気にするまでもない。
1.館に戻ってディオにとどめをさすか、他の場所へ行くか考える。
2.最も手に近い手を考える
3.手を組んだ由花子と協力して億泰、早人を暗殺する。ただし無茶はしない。
4.当面はおとなしくしていて様子を見る。そのためにまず情報の入手。
5.他に自分の正体を知る者がいたら抹殺する
6.危険からは極力遠ざかる
7.利用価値がなくなったと思ったら由花子を殺して手を愛でる。
8.なんとしても“生き残り”杜王町で新しく平穏を得る
[備考]
※バイツァ・ダストは制限されていますが、制限が解除されたら使えるようになるかもしれません。
※荒木のスタンドは時間を操作するスタンドと予想しました。が、それ以上に何かあると思っています。
※場合によっては対主催に移っても良いと考えてます。
※平穏な生活を維持するためなら多少危険な橋でも渡るつもりです。
※自分がどうやって死んだのか全てを知りました。ショックを受けています。
※空条承太郎が動揺していたことに、少し違和感。
※プッチの時代を越えて参加者が集められていると考えを聞きました。
※携帯電話の録音は削除しました。
※シアーハートアタックに何らかの制限がかかっているかは不明です。
116vengeance ◆33DEIZ1cds :2010/04/09(金) 20:12:40 ID:mD8DimnR
※  ※  ※

戦いの後の静けさはさびしいものだ。
風が巻き上げた砂塵が渦巻く中で、一人の男が静かな怒りに震えていた。

リンゴォは爆発の瞬間、抜け殻となったタルカスの甲冑を盾に、爆風を和らげたのだった。
当然完全に防ぐことなどできない。
頭部と上半身をメインに守ったので、足は凄惨たる有様。
だが爆発の収まった次の瞬間に己がスタンドを発動させる。

「『マンダム』。奴のスタンドには”爆発した”という記憶だけが残る…」

手首の時計、そのねじを戻して、全ては6秒前へ。
爆発の衝撃で負ったはずの傷も、至る所が欠損していたタルカスの甲冑も、元に戻った。

「装身具を借りたぞ…悪く思うな。約束を違えたのだから、これで貸し借りは無しという事にして頂く。」

ゆっくりと立ち上がる。骨折したままの腕が激痛によって存在を訴える。
その痛みにわずかに眉をひそめながら、リンゴォは辺りを見渡した。
壁の無い図書室の床に突っ伏して、気絶したまま動かないディオを横目に見る。
タルカスの捨て身の献身も、憎悪に支配されたディオの心には何も訴えないだろう。
そう考えつつ、タルカスの甲冑を静かに地面へと横たえる。

「爆弾のスタンド使い…お前は俺の神聖な決闘を汚した。当然、死でしかその罪は贖えない…」

彼の夢見る男の世界。
光輝ける道は、受け身の対応者には歩むことが許されない。
その道へと達するためには、お互いがその魂を剥き出しに命のやり取りをすること。
タルカスは好敵手だった。
そして、常人には理解の埒外であろうリンゴォの行動原理に対して、一番あってはならない事を吉良はやってのけたのだ。

ロビンスンやタルカスの死に敬意を表し、自分の運命に決着を付けるため、奴に復讐を。

「…感謝いたします。」

タルカスの遺した装具品に深々と頭を下げると、リンゴォ・ロードアゲインは砂塵の中に消えた。






【タルカス 死亡】


【残り 32名】
117vengeance ◆33DEIZ1cds :2010/04/09(金) 20:13:59 ID:mD8DimnR

【C-4/1日目 午後】
【リンゴォ・ロードアゲイン】
[スタンド]:マンダム
[時間軸]:果樹園の家から出てガウチョに挨拶する直前
[状態]:全身にラッシュによるダメージ(中)、身体疲労(大)、右上腕骨骨折、エシディシに対し畏怖の念
[装備]:ジョニィのボウィーナイフ
[道具]: 基本支給品 不明支給品0〜2
[思考・状況]
基本行動方針:参加者達と『公正』なる戦いをし、『男の世界』を乗り越える
1.吉良を探すため、移動する。見つけ次第吉良に復讐する。
2.遭遇する参加者と『男の世界』を乗り越える。
3.怪我の手当てがしたい。

[備考]
※骨折は気力でカバーすれば動かせます。
※ミセス・ロビンスンのこともあり、男の世界を証明したいという願望がさらに強くなってます。


※【C-4 DIOの館 門前】にヨーロッパ・エクスプレスが、【C-4 DIOの館】にラバーソールのデイパック
 (支給品一式 ×5(内一食分食料と方位磁石消費)、ギャンブルチップ20枚、ランダム支給品×1、サブマシンガン(消費 小)、
  巨大なアイアンボールボーガン(弦は張ってある。鉄球は2個)、二分間睡眠薬×1、剃刀&釘セット(約20個))が放置されています。

※リンゴォがヨーロッパ・エクスプレスを使うかどうかは、次の書き手さんにお任せします。
※この後どこへ向かうかも、後の書き手さんにお任せします。


【ディオ・ブランドー】
[時間軸]:大学卒業を目前にしたラグビーの試合の終了後(1巻)
[状態]:最高にハイ、内臓の痛み、右腕負傷、左腕欠損(簡易処置済み)、ジョルノ、シーザー、由花子、吉良(と荒木)への憎しみ、『ホワイトスネイク』全て使用可能
[装備]:『ホワイトスネイク』のスタンドDISC
[道具]:チャーイ(残量1.5g)、ヘリコの鍵、ウェザーの記憶DISC、基本支給品×2、不明支給品0〜3
[思考・状況]
基本行動方針:なんとしても生き残る。スタンド使いに馬鹿にされたくない。
0.…また気絶…
1.スタンド使いを『上に立って従わせる』、従わせてみせる。だが信頼などできるか!
2.ジョルノ、由花子に借りを返す(現在は気分がいいので借りについては保留)
3.勿論、行動の途中でジョナサン、ジョージを見つけたら彼らとも合流、利用する
4.なるべくジョージを死なせない、ジョナサンには最終的には死んでほしい(現時点ではジョルノにジョナサンを殺させたい)
5.ジョルノが……俺の息子だと!?(半信半疑)
[備考]
1.見せしめの際、周囲の人間の顔を見渡し、危険そうな人物と安全(利用でき)そうな人物の顔を覚えています
2.チャーイは冷めません
3.着替えは済んでいます
4.ジョルノからスタンドの基本的なこと(「一人能力」「精神エネルギー(のビジョン)であること」など)を教わりました。
  ジョルノの仲間や敵のスタンド能力について聞いたかは不明です。(ジョルノの仲間の名前は聞きました)
5.ジョナサン、ジョージの名前をジョルノに教えました。エリナは9割方死んでいるだろうと考えていたのでまだ教えていません。
6.シーザー戦で使用したロードローラー(3部のあれ)はD−3南部に放置されています。壊れたか、燃料が入っているかは不明です。
7.参加者が時を越えて集められたという説を聞きました(本人は信じざるを得ないと思っていますが、実感はありません)
8.ラバーソールと由花子の企みを知りました。
9.『イエローテンパランス』の能力を把握しました。
10.『ホワイトスネイク』の全能力使用可能。頭部を強打されればDISCが外れるかもしれません。
118 ◆33DEIZ1cds :2010/04/09(金) 20:15:18 ID:mD8DimnR
投下完了しました。
引き続き、指摘がありましたらよろしくお願いします。
119 ◆33DEIZ1cds :2010/04/09(金) 20:16:03 ID:mD8DimnR
おっと、支援ありがとうございましたー。感謝感謝ァ!
120創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 21:06:36 ID:aUXIXPC2
投下乙!

ディオの失敗は!
ディオの失敗は自分のその能力を楽しんだことだった!
ヤツは実験し自分の能力の限界を知りたがった…

どう考えてもディオは油断します本当に(ry

そしてタルカス……もうすぐ日が沈んで屍生人の時間になると思ったんだが……
リンゴォもようやっと動き出したし、これからが気になるぜ
121 ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 13:27:52 ID:0BUwf+P+
反対意見もないようなので、夜10時ごろ投下予定です
122創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 19:24:20 ID:blDT/P8u
支援
123 ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 21:46:37 ID:0BUwf+P+
投下します
124プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 21:47:43 ID:0BUwf+P+
「放送の内容と、空条徐倫を知っているかを聞かせろ」

どだい人に物を頼む態度ではない。
それもそうだ。アナスイからすればギブアンドテイクではなく、ただ得られさえすればいいのだから。

「知り合いか?」
「俺の手で、守るべき人だ」

ひとえに愛が彼を盲目にさせる。
この一言で、ブチャラティも億泰もそれを察した。
アナスイは、腫れ物に触るかのようなブチャラティの態度に業を煮やし、歯を軋らせる。

「早くしろ。死者だけ確認出来ればそれでいい」

これ以上探りを入れれば、どうなるか分からない。
灰色の男に対し、ブチャラティは決断をためらう。
ここに至るまでの経緯を説明出来るほどの時間的、精神的余裕があるかどうか?

「ブチャラティ! いるんですか!」
「まさか、ジョルノか!?」

邂逅は新たな邂逅を生む。思いがけぬ再開。
タイミングの悪さに舌打つアナスイ。
ティッツァーノが口にした情報など、この求愛者にとっては瑣末なもの。

「お前たちは空条徐倫を知っているか?」
「いえ」
「……知らないな」

それを捜索の機会とすることも出来なかった。
もっと時間をかければ、それに準ずる情報も得られるだろうに。
急いては事をし損じると言うものの、アナスイにとっては急かねば損。

「放送内容はここに記した」

ブチャラティは追及を諦める。
メモ書きを奪い取るように乱暴に受け取ったアナスイ。
立ち去ろうと駆け出し、はたと止まる。
125プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 21:48:41 ID:0BUwf+P+
「……特別懲罰房に脱出を目指す仲間がいる。行きたきゃ行け」

振り向き、ぶっきらぼうな礼を述べ。
それだけ残してホームを駆け足で出るアナスイ。

「何なんだあいつ……」
「露伴、お前無事だったのか!?」
「ジョルノ!」

露伴に歩み寄る億泰。ブチャラティも体を引きずるようにして続く。
二人に無理をさせまいと、椅子を押す力が強まるジョルノ。
あっという間に距離が縮まった。

「見ての通りさ、まるで無事じゃあない」

爛れた腿に視線を落とし、指し示すように小突く露伴。
痛々しい傷跡を目にした億泰は苦悶の表情を浮かべる。

「ひとまず傷の治療を。痛みは消せませんが埋め合わせることは出来るので」

『ゴールド・エクスペリエンス』の眩い手のひらがブチャラティの肩に触れる。
巻かれた包帯が、スライムのような動きを伴い血肉に変容、体組織と一体化。

「ジョルノ、いつの間にそんなことが……」
「……その辺のことも含めて治療しながら説明します。時間のかかることですし」

奇妙な光景を前に瞬くブチャラティを尻目に、ジョルノは露伴にも同様に手を差し伸べる。

「僕はいいや。その、八つ当たりって言ってもらっても構わないんだけどね……。
 前に僕が賭けに負けた奴がいてさあ、確実にイカサマだったんだけど。そいつがちょうど治療が出来るスタンド使いなんだ」

手を振って拒否を示す露伴。
彼はこんな状況下でもいつもと変わらない。
子供でさえ舌を巻くであろう大人げなさは申し分なく発揮される。

そう、岸辺露伴は、岸辺露伴であり続けようとしていたのに。
億泰の眉間にしわが寄ったのを、人間観察に長けているはずの彼は見逃した。

「その件まだチャラにしてないから、こんな状況だし、法外な条件叩きつけても良いんじゃあないかって」
「仗助は死んだよ」
126プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 21:49:44 ID:0BUwf+P+
現実は残酷だ。

「何だって?」
「仗助も康一も、承太郎さんも死んだ」

予兆も何も無しに降りかかり。

「何の冗談……」
「冗談なんかじゃあねえ!」

ただ一つしかないうえ、決して覆らないのだから。

「もういい、やめろ」

声を荒げる億泰の肩を、ブチャラティは強引に引っ張る。
口を開け、ポカンとしたままの露伴。

「……少し一人にさせてくれ」

しばらくして、不意打ちのせいで締まった顔を作れないのだろう、手で表情を隠しそっぽを向く露伴。
まだ言い足りないとばかりに億泰は身を乗り出したが、今度はジョルノに遮られる。

「……情報交換といきましょう」
「なっ、ちょっと待ってくれよ」
「貴方とブチャラティの右腕は、この状態だと一から作らなきゃいけない。時間がかかります。
 ブチャラティはそのうえ目も埋め合わせる必要があるんですから」
「その間に少し頭を冷やせ」

しばらく口をまごつかせる億泰。
両の拳は握られていない。
赤くなっていた顔が、突然冷水を浴びたかのように、元の色を取り戻していく。

「……俺は、虹村億泰」
「ブローノ・ブチャラティだ」
「ジョルノ・ジョバァーナです。よろしく」

感情任せに突き進むことはしなかった。
繰り返して、そのたび反省せねばと誓ったのだから。
127プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 21:51:01 ID:0BUwf+P+
  ★


「ジョナサン・ジョースターが危険人物?」
「はい、ディオからはそう聞かされました」
「ディオ!?」
「DIOだって!?」
「え、ええ……ですがディオは吸血鬼でもスタンド使いでもない、ただの人間でした」
「そうか……それはいいとして、俺が初めてジョナサンに会った時は錯乱こそしていたが……」
「今現在危険ではある、という認識でいましょう。説得の余地はなかったんでしょう?」
「そう、だな。ミスタを殺った落とし前は必ず付ける」
「ええ……」



「吉影に会ったのか!?」
「暗躍する殺人鬼、ですか……見た目に反してスケールの大きい敵ですね。だからこそ厄介なんでしょうけど」
「姿勢を見せたとはいえ、協力は難しいな」
「協力ゥ!? 御免だぜ! あいつは重ちーを殺したんだ! 他の奴だってもしかしたら……」
「それと、由花子さん、知り合いのようですが……殺し合いに乗っていると見ていい」
「……そうか。由花子、康一って奴と付き合ってたんだ。あり得なくはなかったけどよ……」
「必要となれば俺たちが戦う。穢れ役は俺たちギャングで十分だ」
「ちくしょう……」



「エシディシは?」
「路線を伝わって走っていったぜ。泣き叫んで、線路引きちぎりやがったよ。ほら、そこに」
「タイミングが悪かったか……」
「あいつと、エシディシと協力は出来ないのか?」
「何とも言えないな。ジョルノの情報からしても、エシディシ個人の目的が不明瞭だ」
「敵にならないことを祈りたいですね……」



「地図の外側は禁止エリア……」
「おそらく、ずっとな。禁止エリアに拠点を据えているなら、首輪を外してしまえば攻め込める」
「けどよお、荒木の野郎だって『ここが拠点です』みたいにデーンと構えてなんかいねえと思うぞ?」
「ブラフの可能性もある、というのは重々承知だ。だがやるしかない」
「首輪を外すためにナチス研究所に行くことになってましたが、急いだ方がいいでしょうか」
「じき日が沈む。次の放送後にディオ達が動き出すのなら、出来る限り早い方がいい」
「特別懲罰房の方は?」
「罠にしては雑すぎるやり方だ。奴を信用したわけではないが……」
「選択肢の一つとしてはありですね」


  ★
128プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 21:52:09 ID:0BUwf+P+
「ところで」

情報交換も治療も煮詰まってきたところで、背後の存在に声をかけるジョルノ。
振り向いた先には、車椅子の上で所在なく項垂れる岸辺露伴。

「どうせ僕はろくな情報持ってないよ。ほぼずっと鉄塔の近くでたむろってただけさ」

自嘲するように言葉を零す。

「では、前にチラッと言った『島』について詳しく聞かせてください」

岸辺露伴は捻くれ者だ。
危機的状況下でも正直に助けを請わない。
火事の一件をとってみても、仗助に対し嫌味嫌がらせで攻め立てた。
普段、アホの億泰と心の奥底で舐めてかかる男相手にきつく言われた後で、露伴は何を思うのか。
およそまともな返答が期待できるはずがない、彼を知る者ならそう考えるだろう。

「命がけの遊戯場」

しかし素直に返答する。

「このダービーズ・チケットで行ける。相手はかなりのやり手で、僕の仲間も一杯喰わされた。
 僕も勝負を挑んだが、結局のところ引き分けたよ」

見せびらかすようにひらひらと、チケットを振る露伴。
仲間と言うには語弊があるが、露伴は無用な誤解を好まない。
自己中心的ではあるものの、周囲に盲目であり過ぎれば読者を意識した漫画家などやれはしない。

「貴方のスタンドなら、どうとでもなりそうですけど」
「億泰から聞いたのか? だって、普通警戒するだろ?」

『ヘヴンズ・ドアー』の優位性は、ジョルノも理解している。
情報交換に嘘がまぎれていようと見抜ける、殺人遊戯における強力なアドバンテージ。
協力を得たいのは当然。

「命がけというのは?」
「負けたら魂を奪われる。厳密には死ぬってわけじゃあないらしいがね。
 勝ったら、それ相応のものがもらえると思って良いんじゃあないか」

アバウトな回答。真摯に向き合うつもりはないらしい。
そんなに気になるか、といった風に溜息つく露伴。
気に入らない来客をやり過ごそうとする家主のような冷やかな目つき。

「行くのか、ジョルノ?」
「ええ」

対するジョルノは返答しつつ、さらさらと紙上にペンを躍動させ、包んでブチャラティに渡す。
129プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 21:52:58 ID:0BUwf+P+
「これは後で開いてください」
「おいおい、僕の断りなしに勝手にチケット使おうっていうのかい?」
「勝算はあります」

あるかどうかなど知らないが――自分の都合を無視したことに機嫌を悪くした露伴。
しかしジョルノの一言ではっとし、口元に手を抑えしばし黙考。

「……条件がある。勝ったら、いろいろ『取材』させてもらいたいんだ。ゲームマスターのダービーにね」
「おい露伴! テメエどこまで汚ねえんだ!」
「僕はジョルノと話をしてるんだ」

礼だの儀だの気にしない露伴は、億泰を指さし、尚も乱暴に言葉を吐き捨てる。

「それとだな億泰。僕はまだ放送内容を信じるつもりはないぞ。漫画家だからな、自分の目で真実を見極めたい」

岸辺露伴は捻くれ者だ。
こんな言い訳で体裁を保とうとする。
普段表に出さない杜王町住人への信頼の表れ、認めたくないという意地、それらをも含んだ発言だが。

ジョルノにも、それが伝わった。

「わかりました。僕たちはハナッから命懸けだってこと、そいつに見せつけてやりますよ」

ジョルノは、露伴の間違いを正す。
その前提が間違っているから。


  ★


目を開けば、そこは四方に海を臨む孤島。
息をすれば、肺に満たされる磯の香り。
耳を澄ませば、押しては引きを繰り返す波の音。
別世界への移転を、五感で把握させられる。

「ようこそ、露伴様。それと」
「ジョルノ・ジョバァーナです」

簡略な自己紹介。もとよりそれは目的ではない。
彼らが求めるのはヌルい馴れ合いではなく、身を焼き焦がさんばかりのギャンブル。

「ま……約束は破ることになる、のかな? どっちでもいいんだけどさ。
 でも君はギャンブラーだろ? 迫られた勝負を前に退却ってことはしないはずだ。
 それが気に食わないなら、僕の勝負の代理をジョルノが引き受けたってことで納得してくれ」
「確かに、開かれた場で個人の都合を持ちだすのは勝手が過ぎるというもの。それではジョルノ様」
「あ、ちょっと待ってください」

ジョルノが砂浜に倒れ伏す中年男性を指さす。
顔面蒼白、血色乏しく死体と言っても差し支えない容体だ。
130プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 21:54:03 ID:0BUwf+P+
「そこの方、僕の能力で治療したいんですが。構いませんね?」
「ゲームを始める前でしたら、かまいま」
「無駄ァ!」

――金色の拳迫るも、矛先のダービー、微動だにせず。

「失礼。勝負の途中、スタンドで露骨な妨害行為をされる可能性は捨てきれなかったので、確認取らせてもらいました」
「……私とて誇りあるギャンブラーです。粗野なやり方で勝とうなどとは思いませんよ」

自らの半身を納め、軽く一礼するジョルノ。
修羅場のような静けさがそこにあったが、両者、声調に変化なし。

「それと、もし私に何かあったら二人の安全は保障できないということをお忘れなく」
「わかりました。あと、僕たちもここでチンタラするつもりはないので。勝敗は早めにつくものにしましょう。
 ……ババ抜きなんてどうです?」

トランプケースを握りしめ、ジョルノが言う。

「やり方はお好きなようにしていただいて結構。しかし、そこの二人を救いたければ……相応のものを賭けていただく必要があります」
「そうですね。では、僕の『魂』を賭けます」
「……グッド」


ババ抜き(英:Old Maid)は、トランプの遊び方のひとつ。
元々はジョーカーを加えるのではなく、クイーンを1枚抜いて51枚のカードを使って行われていた。
古いルールブック(『世界遊戯法大全』など)にはこの形で紹介されていることも多い。

英名の「Old Maid(適齢期を過ぎた独身女性)」は、1枚のクイーンが「Match(一組みになる、結婚する)」の相手がおらず、独り売れ残ることから名付けられた。また、ババ抜きという名前も1枚残るクイーンを「ババ」と呼んだ事が由来と考えられる。

アレンジとして、クイーンではなく任意のカードを1枚抜いて行うババ抜きをジジ抜きと称する。
ババ抜きと違い、1枚残るカードが誰にもわからないのがみそである。ジョーカーを加え任意の1枚を抜いて行う「ジジババ抜き」という遊びもある。

最後に悪い物を持ったまま損害を被る状況になることをババ抜きになぞらえて表現をすることがある。
また、掴まされた偽札を他人に回してしまうことの隠喩としても使われる。

(wikipediaより抜粋)


「ガンカードらしきものはない。この54枚からジョーカー一枚を引いた、53枚のカードで勝負する」

扇状に開かれた、十人十色、個々別々の絵柄。
ジョーカーの一つを人差し指ではじき、ケースの中へしまうジョルノ。
掬いあげ、長方形の山を形成し、ダービーの眼前にとんと置く。
131プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 21:54:53 ID:0BUwf+P+
「では」

ダービーは受け取った札を二分し、端を弾いてテーブル上で噛み合わせていく。
その様から、『スティッキィ・フィンガース』が生み出すジッパーの連なり以上の芸術性を垣間見る。

「カットを」

ジョルノは山を三分し、また束ね統一。
カードをテーブル中央へスライド。

「カードは僕が配る。いいね?」

手を差し出し、了解の合図とするダービー。
札が擦れる音を立て、宙を舞い、ジョルノとダービーの手札に、運命になる。

「これから僕が話すのは、なんて言うかこう、独り言みたいなものだと思ってください。返答は結構です」

一枚、また一枚と、滑らかな手つきでカードが配られていく。

「さっき僕が治療したあの英国紳士風な方、あの失血量は相当なものでした。彼はおそらく直接勝負してはいないはず」

息もつかせぬ速度で飛来。

「失血量からして、直前まで立っていたかも怪しいんですから。彼は誰かの代理として魂を抜かれたのでしょう」

一分と待たず、露伴の手元からすべてのカードが放たれる。
運命は、決した。

「許可を経て、賭けに勝って初めて魂を奪える能力……ですね?
 自由に奪えたら、僕は殴りかかる時点で魂を抜かれていたでしょうから。
 でも、だとしたら、あなたのさっきの対応は明らかにおかしい」

十重二十重、捨て札の山が積み重なる。
ジョルノの言霊とともに、連なり飛び交う。

「殴られそうになった時、もっと狼狽しても良かったんじゃあありませんか?」
「答える必要はありません。先手はそちらからで」

手札の整理は終了。

「殴られないと分かっていた? それでも疑問は残ります。もっと根本的な疑問が」

ジョルノが引き、場に捨てられるハートとクローバーの9。
ババ抜きを二人でやれば、ジョーカーを引かない限り必ず手札を捨てられる。
となれば、求められる要素はいかにジョーカーを引かないか、引かせるかに限られる。

「仮に貴方が死ねば魂は……おそらく肉体に戻らないのでしょう。さっき言ったことを考えると」

ポーカーフェイス。
石膏で塗り固められたかのように表情を固持。
悟られれば、それすなはち敗北を意味する。
即座にジョルノの手札を引くダービー。放り出され、着地するダイヤの、ハートの3。
132プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 21:55:49 ID:0BUwf+P+
「魂を抜かれた人が死者扱いなのかはわかりませんが、最後の一人を目指す人にとってあなたは間違いなく殺害対象です。
 死者扱いでも、復帰されると困るからあなたは殺される。死者として扱われないなら、なおのこと。
 先の男性のことを考えても、貴方の存在は殺し合いを阻害するものでしかない」

クローバーとハートの8がはらりと舞う。
ダイヤとスペードの10が空を切る。
ジョルノがダービーに尋問するように語る。
ダービーがジョルノから目線をそらす。

「それはともかく、このように危険な立場にいる割にあなたは、身を守る手段がない。
 強力な武器を持っている? ないでしょうね、スタンド使いにまで対抗できる武器なら役割を忘れて暴走する恐れがある」

ダービーの目は長いことジョルノを捉えていない。露伴に首ったけ。
質問漬けに嫌気がさしたのか。

「反撃に転じることのできないスタンドだけで、どうしろというのでしょう?」
「答える必要はないと言ったはずです」
「一流のギャンブラーでスタンド使い……代わりも利かないでしょうね。
 そんな風に余裕こいていられる立場じゃあないって、貴方ほどの方が分からないとは思えない。だから、不自然」

殴られそうになった時、ダービーはスタンドを出すことさえしなかった。
あのまま殴られれば頭蓋骨は腐ったカボチャのように大穴ができていたはず。
ジョルノは、口を紡がない。持論の展開を更に続ける。

「いえ、実は選択肢は他にもありました。強力な護衛をつける……というのがね」

ダービーが持つ、残り2枚の手札。
片方を摘んでは離し、もう片方も摘んでは離すジョルノ。
この間は、決断できないがための迷いか。
ダービーの微細な変化を見破るための吟味か。

「いるんでしょう? ここに。命を預けられる強力な護衛が」

手をつけたカードは、

「手元にある、『彼』が」

スペードとダイヤのJ。
ダービーに残されたカードは、唯一残されたカードは――


――ジョーカー、荒木飛呂彦。


  ★
133創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 21:58:23 ID:qesG5i7M
 
134プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 22:00:31 ID:0BUwf+P+
「さて、テレンス・T・ダービー……いや、ここは親しみをこめてダービーと呼んだ方がいいかな?
 殺し合いという殺伐とした雰囲気にちょっとした風を送り込むために、ある催しを君に任せたい」
「何でしょう?」
「君とゲームをして勝った者は何らかの報酬を僕から与えようと思う。生唾ゴックンなボーナスをね」
「……命の保証は?」
「首輪はつけさせてもらうけど、僕の方から何かしようなんて考えないよ。
 ……もしかしてあれかい? 自棄になった参加者から攻撃食らうのが怖いのかい?」
「……」
「承太郎君のオラオラはさぞ痛かったろうからね。あれは君の敗北のせいだけど」
「……!」
「調べはついていないと思ったかい? でも、まあ……そうだね。
 『相手の脅しに屈して負けました』なんて言い訳し始めたら興が冷める。どうだい? 僕が君の近くにいて守るっていうのは。
 情報の受け渡しもそれで少しは手間が省ける」
「なん、ですって?」
「とびきり破格の大サービスだと思わない?」


  ★


「いやあ、すごいペースで進むんだよ!
 一度の戦闘で三人死亡だなんて予想できなかったね! あとそれから」
「余計な情報は結構と言ったはずです」
「そう……つまんないね。ただ、君に配慮するってのも面倒だから、『放送』と『『現在の』参加者の名前、必要があれば顔』
 君が要求したこの二つ以外は聞き流してくれないかい? 聞き流してる時も適当な相槌うってくれると嬉しい。無視されるのいやだから」
「では、そのように」
「しっかし、真面目だねえ。余裕と言うべきかもしれないけど。
 君の兄さんなんかカビ塗れになるわ手足引きちぎられるわ上空から落とされそうになるわ、もう散々なのに」
「!」
「言ったろう? 君は必要な事以外聞き流してくれればいいって。
 それに、拗ねた僕は君を動揺させようと、わざと嘘ついてみてるのかもしれない」
「……私の能力を知ってて言っているでしょう?」
「答える必要はない、ってね」


  ★


「どう思うって?」
「顔に現れてましたから」
「それは………そうだね、正直に言うと楽しいよ。これ以上ないくらいね。
 フフフ…本当のことを言うとだね、暇つぶしにこうやってチェスに興じる時間も惜しいぐらいだね」
「持ちかけたのはあなたですが」
「わかってるって。それよりどうしたらいいと思う?」
「……何がです?」
「彼だよ、彼。そうだな…言うなればポーンだよ、ポーン。
 そう、ポーン。プロモーションもしないポーンなんてルール違反も甚だしくないかい?」
「私はとやかく出来る立場ではありませんので」
「どうだかね…まぁ、この放送次第だね。鬼が出るか蛇が出るか…」
「出たら、どうすると言うんです?」
「その時は…そうだね、ランプの魔人にでも活躍してもらうかね? まぁ、じっくり待つよ… 「その時」が来るまで、ね」
「……」

「フフフ…フフフ、ハハハハハーーーーッ!!」


  ★
135プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 22:02:10 ID:0BUwf+P+
「やれやれ、まずったね」
「何か?」
「いや、花京院とグェスを招待したのはいいんだけど。
 ちょいと大切にしてた『日記』をさ、パチられちゃったんだ、グェスに」
「余裕ですね」
「ちょっと取り返しに行ってくるよ」
「しかし……」
「なに、心配ないさ、すぐ戻る。ちょっと動かない駒のテコ入れも兼ねて、ね」
「始末しないのですか? グェスと花京院を」
「まったまたぁ……ほんとはグェスなんかどうでもいいくせに。君が始末してほしいのは花京院だけだろ?
 『法皇の緑』でここがG-10の孤島だって知られてたらまずいもんね」
「……」
「でもしてあげないよ。それは『ない』って言いきれるからね。
 第一それじゃあ面白くない、駒はゲームの中でこそ死ぬべきだ。駒に手を加えたりはするけどさ」


  ★


「人数が人数だから、3日ぐらいはかかるかなと思ったけど、このペースだと一日以内で終わりそうな勢いだね」
「……」
「だけど空条承太郎まで死んじゃうとはね、僕も彼の奥さん殺したりして揺さぶってみたりしたけどさ。
 あそこまで綺麗に繋がるとは思わなかったよ」
「私の動揺を誘う腹ですか?」
「フフ……どうだかね」
「……」
「こうやって、チェスに興じれる時間が持てるのは良い事だけどさ。
 早く誰か殺し合ってくれないかな、面白い死合いがあったみだけど見逃したみたいだし、退屈でしょうがないよ」
「……」
「ひょっとして君、勝手に参加者に接触した事を怒ってるのかい?
 しょうがないだろ「日記」盗られちゃったんだから、イレギュラーだったと思って見逃してくれよ」
「見逃したのは自分の責任では?」
「それを言われると弱いなあ」

(プライドより我が身を選ぶ彼だから、変な行動に出ないのはありがたい。まぁ、僕に甘いってことなんだよね。きっと)


  ★


「……こういう結末、アリなのかな? でも、これじゃあねぇ。
 というより、ああなっちゃった状況から、僕、カーズ君を助けられるのかな?

(これじゃあカーズは死んだ扱いだね)

「……カーズ君、悪いけどさぁ、やっぱりこの話は無しってことで。
 よし、放送にいこう。ダービーも露伴君に付きっきりだし、次の手考えるのにチェス盤眺めるのも飽きちゃったよ」


  ★


「兄の体を借りている者がいると聞きましたが」
「そりゃあ、F・Fじゃあなくダービーの名前を呼ぶに決まってる。
 自分たちが目にしたものをまず信じるよ、誰だって。それで混乱した方が面白いしね」
「……それと、勝負の合間に何かと騒がれていたようですが」
「……穴を塞ぎに行かないのかって? まあ、穴があいてて別段問題があるわけじゃあないし。
 割とどうとでもなるもんさ、そういうのは」
「……」
136プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 22:03:26 ID:0BUwf+P+
「いや……『なるようにしかならない』、と言った方が妥当かな?
 無敵のスタンド使いと謳われ、殺し合いの打破を目論んだ空条承太郎は、身内の死に動揺して命を落としたし。
 僕らの居場所を調べ始めたブチャラティ達は、間もなくして重傷を負ったし。
 プロモーションしなかったポーンも、こっちから干渉はしたけど、結局は他の人たちのお陰でようやく動き出した。
 ある程度は放っておいても割と『なるようになる』力が働く。人によってはその力を『運命』とか言いたがるけどね。
 とにかく、そういうのに怯えてビクビクするのは性に合わないんだ。もっとドーンと構えていようじゃあないか」
「饒舌ですね。あれを奪われた時とは大違いだ」
「……『日記』に関しては反省してるよ。変な希望を彼らに与えてしまった」
「……」
「……分かってる。時期が来たらちゃんと動いてやるよ」
「……」
「持てるカード全てで――与えられた『運命』でもって勝負する、その行為に価値があるんだ。
 プロモーションなんて後から都合よく与えられるものはないさ。
 そもそもプロモーションは、チェスの正式なルールじゃあないんだから」


  ★


「……またですか、あなたは」
「何が?  いいじゃないかい、別に。いやいや、そんな深くは考えてないよ。
 そうだな…強いて言うならそっちのほうが『面白そう』だから、じゃダメかい?
 それにこういうのは『僕らしい』じゃないか」
「前も放送直後でしたね」
「放送ごとに動く…なんて…そんなことはないさ、たまたまだよ、たまたま。
 だって一回目にしたってイレギュラーだろ? 今回だってそんな感じじゃないか。
 それになるようになる、なんて言ったけど、なら君だったらあのままジョナサンを『爆☆殺』してたって言うつもりかい?」
「察せませんか? 盤上の駒は盤上で死ぬべきとおっしゃったのはあなただ」
「随分慎重だね…わかったよ、もう無茶はしないさ………(多分)そんなことより僕の演出どうだった? イカしてた?」
「さあ。前まで持っていたランプを使ったとしか」
「ああ、そうだよ。やっぱ利用出来るものは利用しないと。それに彼も暇そうだったからね。
 尤もあれを望んだのがジョナサンだったからこそできたわけだ」
「『審判』のスタンド能力は確か……」
「土に投影する、だろ?スタンド能力をねじ曲げるなんてことはしないさ。
 ああ、それにしても楽しみだね。君もそう思うだろ?」
「……」
「それでだね…その、言いにくいんだけど………君とのチェスも…もういいかな、切り上げて」
「負けのサイン、ととらえてよろしいでしょうか? 魂は賭けてませんがね」
「…わかったよ。僕が悪かった」


  ★
137プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 22:04:39 ID:0BUwf+P+
「で? 誰の話聞きたいのさ? ――オインゴ?
 また渋いとこついてくるねぇ。で、いつ頃の話? ふんふん、ダービーのところから帰ってきて第二放送跨いだあたりね。
 オーケー。じゃあ資料取ってくるからちょっと待っててよ」
(無駄話を聞くのは面倒だが……オインゴがチケットを持っている以上、顔は常に把握しておきたい)
「――そうそう!食事と言えば今大変な事になってるところがあってさァ〜!今まさにって感じなんだよ!」
「……」
「あ、その話はいいの? いやでも――あ、いや。うん、そうだよね」
(能力を使って知るにも、タイムラグは避けられない。
 下手に誰か居合せれば、私の能力を教えるみたいで勝負の公平性を欠く可能性もある。それほどまでに、奴の変装能力は優れている)
「で……なんだっけ。ああパン食べて。そこからね。「ここは……“待ち”だな」 なんて言ってたよ、ニヤニヤ顔で。
 ん? あぁ今はオインゴ本人の顔だよ」
(オインゴの顔か。しかし、奴に潜水艦を支給するとは。本当に私を守る気があるのか?)
「――そっちにはティッツァーノとかヴェルサスがまだいるだろうから。逆に東ならグェスだね。移動範囲はそっちの方が圧倒的に広くなるし」
「東……? 何ですって? グェスが海沿いに? 他には!?」
「――え? そのグェスやティッツァ達は今どうしてるか? 他に海沿いに向かう人間?
 ちょ、ちょっと待ってよ。そんないっぺんに答えられないよ。そもそもオインゴの話だけって言ったじゃあないか」
(まさか……まさかだろ? 島がばれてるなんてことは、ない、よな? だが、島は位置次第で肉眼で確認できなくもない距離だ。
 あまり注目されたくはない……。グェスの始末……いや、花京院のように望みが薄い。クソッ! 荒木め、厄介な男だ!)
「え、あぁ、まあいずれって事で今回は勘弁してくれよ。ね? 僕だって流石にそこまで纏まった時間は取れないし」
「……わかりました。それでは」
「……うん、そう言ってもらえると助かるよ。それじゃあまた―――」


  ★


「――とまぁ、こんな感じです。どう思われますか?」
「どうもこうもないだろう? それよりも君は連絡してくるなよ。ルール違反じゃあないか。
 そもそも君にそんな立場を与えたつもりではないけど? てゆうか会話なら聞いてた。筒抜けだもの」
(やはり、ああ見えて抜け目ないな……! これでは、露骨な反抗は現状避けざるを得ない。
 バレているならバレているで、開き直ってあちらに付くのも良いかもと思ったんだが、甘かった)
「すみません。ですが私とて自分の命は惜しい」
「僕にどうしろって言うんだい? まさかここで僕とやりあう気はないだろ?」
(支配人を任された以上は務めを果たせ、と……。無茶を言う)
「君だって参加者なんだ。そして……僕だって立場は主催者だが広い視点で見れば参加者でもあるんだよ」
「分かりました。少々考える時間を頂きたい」
「頂くも何も、他の八十八人はみんな考えて行動してるんだ。っていうか、少々、なんて生ヌルイよ。じっくり考えたら?」
(考えてどうにかなるものならな)
「それ以外にだってほら、僕に勝つ勝算とか己の命とか、そもそもあの小島を出る方法は? とか……。
 考えるべき事は山ほどあると思うんだけど。あなたはこの先、どうするおつもりですか? って、君が言ってたセリフじゃあないか」
「……失礼いたします」
「……フン、せいぜい頑張る事だね」


  ★
138プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 22:05:53 ID:0BUwf+P+
ぱち、ぱち、ぱち、ぱち。


「フフ、フフフフフ……ハハハハハ……」

勝者に祝福を。勝者に賛辞を。勝者に喝采を。
地下より出でしは、邪悪の化身。盤上の王。

「ババ抜きの英名Old Maidは、1枚のクイーンが一組みになる相手がおらず、独り売れ残ることから名付けられたらしい」

王の玉座に辿り着いた者、近付く者、眺望する者数多。
だがそれだけでは足りない。王を刺す役割は尖兵のみでは重すぎる。
ではどうするか。

「おめでとう、ジョルノ・ジョバァーナ君。嫁ぎ遅れは見事クイーンにプロモーションした。
 いや……こういう場合、君こそがこの殺し合いにおけるジョーカーだ、と言うべきかな?」

――昇格(プロモーション)。
敵城に踏みこんだ兵士が勝利掴むため為し得る、進化。
ジョルノ・ジョバァーナは、見事進化を、王を斃す権利を手に入れた。

「荒木……」
「……飛呂彦!」


荒木飛呂彦を討ち取る権利を。


「いつから気づいたんだい?」
「露伴さんから『島がある』と聞かされた時から」

勝者は語る。己が勇気を示すように。

「地図に島らしいものはなかった。せいぜいサン・ジョルジョ・マジョーレ島くらいしか。
 だが、露伴さんはずっと鉄塔周辺にしかいなかった。その島は特別な場所、と疑いを持つには充分過ぎる」

単に地図に載っていないか、隔絶された空間なのか。
どちらにせよ、特別な場所なのは変わりない。
普通に殺し合っていれば関わらない、関われないシークレットプレイス。

「有人の賭博施設というのは殺し合いの場では違和感がありすぎる、これは前述した通り。
 本拠地として地下や上空の線もあるとは思っていたが、現状疑わしかったのは間違いなくここ」

木を隠すなら森の中、という言葉もある。
荒木の手下であるが故に見抜くのは至難。二重の隠れ蓑。
しかし半日間に生じた僅かな綻びは、積み重なって穴を空けた。

「ここまでくれば分が悪い賭けでもなかった。
 付け加えるなら、地図の外側にお前がいるとしたら最初から禁止エリアの数を多くして外側を塞ごうとしたはず」

ジョルノは、最初から禁止エリアはブラフと踏んでいた。
荒木の守備が首輪ただ一つに依存しているなら、手薄としか言いようがないから。
だったら、枷を首輪なんて見える形で存在させる必要もない。
解析されるリスクを少しでも背負うくらいなら、別のディフェンスを厚く固めるべき。
139プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 22:07:18 ID:0BUwf+P+
「決め手に欠けるけど、なかなか素晴らしい回答だ。こうも早くバレるとはね」

腹芸は、もはや意味がない。
誤魔化そうと策を弄すれば、惨めなだけ。
王の姿勢は健在だ。

「いいや……まだ謎は残っている。ジョルノの言う通り、殺し合いを促進しない彼をなぜ必要とする?」
「これ以上君たちに何かを教える必要はないね」

そう、王はこの場に健在。
玉座を離れ、反逆者らに肉薄。無論逃走を図るためでないのは明白。
盤を返しうる反乱分子を前に、如何様な選択を下すか。

「それで……お前はどうするんだ、荒木?」

『ゴールド・エクスペリエンス』を発現させ、両の拳を前に突き出させるジョルノ。
膠着状態。一触即発。臨戦態勢。

「バレたからにはここで始末……と言いたいところだが。駒はゲームの中で死ぬべきって言ったのを自分から覆すのも癪だ。
 元々勝ったらボーナスをやろうって話になってたんだけどさ。ここで君たちを見逃すってのを報酬の代わりにしたい」

王が選んだのは、休戦だった。

「だが、今度君たちがテレンスに勝ったら、僕と戦う権利をやろう」
「何!?」
「これは、常に命を賭けていた君たちを侮辱した詫びだと思ってくれ」

それでも、城を見抜く知性と度胸をかう気概はある。
でなければ、王など到底勤まるまい。

「うう……、ん……」
「う、ぐ……」

囚われの敗者、あるいは人質も解放された。
見合う対価は十二分に支払われ、後は帰還を残すのみ。

「彼らの相手するのも面倒だからね。ここでお引き取り願おう、DIOの息子さん」
「僕は……ギャングスターを目指すジョルノ・ジョバァーナです!」

落ち着きはらっていたジョルノが、ここで怒声を響かせた。
しかし、対する荒木は鼻で笑ってあしらう。

「それじゃあ、またの機会に――」

そして、運命に仇為す兵士はいなくなった。


  ★
140プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 22:08:50 ID:0BUwf+P+
「負けちゃったね。いやあ、負けちゃったねえ〜ダービィ」

ダービーの両肩をぽんぽん叩き、笑顔を近づける荒木。
笑顔の筈なのに、そこからは、喜怒哀楽、何も読み取れない。
ダービーはスタンドを行使するどころか、表情を窺うことさえしない。
ただ汗を滝のように流し、全身を小刻みに震わせ、揺らすのみ。

「いや、怒ってないよ、全っ然。ただ、負けちゃったなあ〜、って。二重の意味でさ」

元々ダービー島を本拠地にすると提案したのは荒木の方からだった。
いいアイデアだと自画自賛していたのだが、ご覧のありさまである。
しかし、荒木は失態を晒していない。拳撃に反応しなかったダービーのミスが主たる敗因。

か細い理とはいえ、勝利を掴んだジョルノに荒木は敬意を表さずにはいられない。
では、隙を見せた負け犬のテレンス・T・ダービーに対する処遇は?

「どうしたんだい、そんなにビクついてぇ。平気さ、抜き差しならない事態になれば君は守ってやる。
 君に死なれると、僕の楽しみが減るんでね」

許しを得たにもかかわらず、ダービーの喉は舌を飲み込んだかのように動かない。
湿気に富んだ場所なのに、ひゅうひゅうと乾いた呼吸音が波、潮風と混じって吹きすさぶ。

「あ、僕と戦う権利をちらつかせたけど……死なない限りわざと負けたっていいんだよ?
 こっちの妨害をする邪魔者は、自然な形で始末したいっていうのが本音だし」

クスリと、呼気を漏らす荒木。
ダービーのボロボロのプライド、言いかえれば琴線に触れたのか、目だけ向けて荒木を睨む。
睨むと言っても、その眼光に重みはない。

「そんな、ことは」
「ま、どっちだっていいんだけどね」

絞り出すように声を発したダービーにシカトを決め込み、目もくれず荒木は地下へ降りていく。
その心はまだ、誰であろうと覗けない。



【G-10 北西部 小島(ダービーズアイランド)/1日目 午後】
【テレンス・T・ダービー】
[時間軸]:承太郎に敗北した後
[状態]:健康、精神疲労(大)
[装備]:人形のコレクション
[道具]:世界中のゲーム
[思考・状況]
思考1.なん……だと……。
思考2.私だって死にたくはないですよ。
思考3.この先の方針を考える。
状況1.参加者ではなく、基本はG-10にある島でしか行動できない。
状況2.荒木に逆らえば殺される筈だが……?
状況3.参加者たちとゲームをし、勝敗によっては何らかの報酬を与える(ように荒木に命令されている)。
[備考]
※ダービーは全参加者の情報について、名前しか知りません(原作3部キャラの情報は大まかに知ってます)。
 ただし、変装している参加者の顔は荒木が教えています。
※ダービーズ・アイランドにも放送は流れるようです。
※アトゥム伸の右足首から先は回収しました。
※第二放送を聞き逃しましたが、死亡者の名前は随時荒木が教えています。
※ジョージ・シーザーと会話をしました(情報の交換ではありません)
141プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 22:10:19 ID:0BUwf+P+
【G-10 北西部 小島(ダービーズアイランド)地下/1日目 午後】
【荒木飛呂彦】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:日記、???
[思考・状況]
基本行動方針:???
1.さすがだ、ジョルノ君。
2.ダービーのことは出来る限り守る。楽しみが減るから。
3.次にダービーに勝った参加者には、自分と勝負する権利を与えてやっても良い。


  ★


ジョルノが用いたロジックは実に単純。
ジョーカーのカードのごく一部に、自らの能力で生命エネルギーを注ぎ、区別していたのだ。
露伴は、ジョルノに配る順番しか指示されていない。
ジョルノは、ジョーカーが自分の方に行かないように仕向けただけ。

ダービーは、カードを配った露伴がイカサマをしていると誤解した。
そして露伴はイカサマを――具体的には聞いていないものの、勝算があると聞かされていたため――認識していて、自覚があった。
しかし、どのような手段が用いられているか露伴は全く知らないので、ダービーの能力ではイカサマの方法を見抜けない。
いくら質問を投げつけても、分からないものは分からないのだから。
「岸辺露伴はスタンド能力を明かしていない。自分だけが明かせば必ず露伴を疑うだろう」
という理由でやったことだが、ダービーの能力が仇になるという幸運が後押しした。

トランプはもう一組あったが、すり替えにそれを用いるのは実質無理だった。
裏地が違ったから。
露伴はスピード勝負を二組のトランプで行ったが、それゆえ再勝負の準備に手間がかからなかった。
だからこそ、決着つかない激戦が息つく間もなく繰り広げられたのだが。

「な、何だ!? どうしたんだ、ジョルノ!?」
「落ち着けよ、億泰。……でも今になって考えると惜しいことをしたなあ! 取材できるチャンスを棒にふるっちゃうなんて!」

文面だけ見れば未練たらたらであるはずの露伴は、しかし、笑顔を溢れさせている。

「どういうことだ、ジョルノ? あの紙と言い、この二人と言い……」
「そうですね……、先に二人にいろいろと説明する必要があるので」

ブチャラティの持つ紙に綴られていたのは。

『露伴さん一人が戻ってきた時は、僕が負けたと思ってください。
 二人とも戻ってこない場合は、荒木に繋がる何かを得た可能性があるので、『ゴールド・エクスペリエンス』で生物化させた紙を飛ばします。
 半分に破ったメモ用紙は元へ戻ろうとそちらに向かってくるはずです』

だが、目の前にはそのどちらでもない結末。
億泰はきょろきょろと視点を安定させず慌てふためき、ブチャラティも程度の差はあれ動揺する。

「ジョナサンは……私の、息子は?」
「なあ、ロハン。今まで一体何があった?」
142プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 22:11:34 ID:0BUwf+P+
ジョルノは勝利した。だが、完全な勝利には程遠い。
問題は山積している。
同じ手を使って勝てるとは思えないし、イカサマ防止の監視が厳しくなることもありうる。
しかも、荒木はダービーを死守すると言ったようなものだ。下手な行動は起こせない。

それでもせめて、せめてこれだけはと、掴み取った勝利を記し伝えておく。

『荒木の居場所が分かりました』



【E-3 コロッセオ駅ホーム/1日目 夕方】

【新生・チームブチャラティ】

【ブローノ・ブチャラティ】
[時間軸]:護衛指令と共にトリッシュを受け取った直後
[状態]:トリッシュの死に後悔と自責、アバッキオとミスタの死を悼む気持ち
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、シャーロットちゃん、スージーの指輪、スージーの首輪、
   ワンチェンの首輪、包帯、冬のナマズみたいにおとなしくさせる注射器
[思考・状況]
基本行動方針:打倒主催、ゲーム脱出
0.一体何が?
1.特別懲罰房へ行くか? ナチス研究所へ行くか? それとも……
2.いずれジョナサンを倒す。(殺害か、無力化かは後の書き手さんにお任せします)
3.絶対にジョセフと会い、指輪を渡す。彼にはどう詫びればいいのか…
4.チームの仲間に合流する。極力多くの人物と接触して、情報を集めたい。
5.ダービー(F・F)はいずれ倒す。
6.“ジョースター”“ツェペリ”“空条”の一族に出会ったら荒木について聞く。
  特にジョセフ・ジョースター、シーザー・アントニオ・ツェペリ(死亡したがエリザベス・ジョースター)には信頼を置いている。
7.ジョージはどこに行ったのだろう?
8.他のジョースターと接触を図りたい。
9.ダービー(F・F)はなぜ自分の名前を知っているのか?
10.スージーの敵であるディオ・ブランドーを倒す
[備考]
※パッショーネのボスに対して、複雑な心境を抱いています。
※ブチャラティの投げた手榴弾の音は、B−2の周囲一マスに響きわたりました。
※波紋と吸血鬼、屍生人についての知識を得ました
※荒縄は手放しました。
※ダービー(F・F)の能力の一部(『F・F弾』と『分身』の生成)を把握しました。
※参加者が時を越えて集められたという説を聞きました
※ブチャラティが持っている紙には以下のことが書いてあります。

@荒木飛呂彦について
 ・ナランチャのエアロスミスの射程距離内いる可能性あり
  →西端【B-1】外から見てそれらしき施設無し。東端の海の先にある?(単純に地下施設という可能性も)
 ・荒木に協力者はいない?(いるなら、最初に見せつけた方が殺し合いは円滑に進む)
A首輪について
 ・繋ぎ目がない→分解を恐れている?=分解できる技術をもった人物がこの参加者の中にいる?
 ・首輪に生死を区別するなんらかのものがある→荒木のスタンド能力?
  →可能性は薄い(監視など、別の手段を用いているかもしれないが首輪そのものに常に作用させるのは難しい)
 ・スティッキィ・フィンガーズの発動は保留 だか時期を見計らって必ず行う。
B参加者について
 ・知り合いが固められている→ある程度関係のある人間を集めている。なぜなら敵対・裏切りなどが発生しやすいから
 ・荒木は“ジョースター”“空条”“ツェペリ”家に恨みを持った人物?→要確認
 ・なんらかの法則で並べられた名前→国別?“なんらか”の法則があるのは間違いない
 ・未知の能力がある→スタンド能力を過信してはならない
 ・参加者はスタンド使いまたは、未知の能力者たち?
 ・空間自体にスタンド能力?→一般人もスタンドが見えることから
143プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 22:13:24 ID:0BUwf+P+
【虹村億泰】
[スタンド]:『ザ・ハンド』
[時間軸]:4部終了後
[状態]:自分の道は自分で決めるという『決意』。肉体的疲労(中)、精神的には少々弱気。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式。(不明支給品残り0〜1)
[思考・状況]
基本行動方針:味方と合流し、荒木、ゲームに乗った人間をブチのめす(特に音石は自分の"手"で仕留めたい)
1.一体何があったんだ?
2.特別懲罰房へ行くか? ナチス研究所へ行くか? それとも……
3.エシディシも仲間を失ったのか……。こっちに危害は加えないらしいが。
4.仗助や康一、承太郎の意思を継ぐ。絶対に犠牲者は増やさん!
5.もう一度会ったならサンドマンと行動を共にする。
6.なんで吉良が生きてるんだ……!? 何にせよ、協力なんて出来るか
【備考】
※オインゴが本当に承太郎なのか疑い始めています(今はあまり気にしていません)
※オインゴの言葉により、スタンド攻撃を受けている可能性に気付きましたが、気絶していた時間等を考えると可能性は低いと思っています
 (今はあまり気にしていません)
※名簿は4部キャラの分の名前のみ確認しました。ジョセフの名前には気付いていません。
※サンドマンと情報交換をしました。 内容は「康一と億泰の関係」「康一たちとサンドマンの関係」
 「ツェペリの(≒康一の、と億泰は解釈した)遺言」「お互いのスタンド能力」「第一回放送の内容」です。
※デイパックを間違えて持っていったことに気が付きました。誰のと間違ったかはわかっていません。
 (急いで離れたので、多分承太郎さんか?位には思っています。)
※エルメェスのパンティ(直に脱いぢゃったやつかは不明)はE-4に放置されました。
※『グリーン・ディ』のカビは解除されています。
※参加者が時を越えて集められたという説を聞きました



【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:メローネ戦直後
[状態]:健康、精神疲労(中)、トリッシュの死に対し自責の念、プッチからの信頼に戸惑いと苛立ち
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜3
[思考・状況]
0.荒木の居場所が分かった!
1.特別懲罰房へ行くか? ナチス研究所へ行くか? それとも……
2.『DIO』は吐き気を催す邪悪なのでは?
3.トリッシュ……アバッキオ…!
4.ディオに変な違和感(父という事には半信半疑)→未来のDIOには不信感。
5.吉良に不信感。
6.ジョナサンの名前が引っ掛かる
7.プッチとエシディシに対して不信感(プッチは特に)
8.プッチとエシディシを警戒。プッチを放っておくのはまずいが、彼は疑わし過ぎる
[備考]
※ギアッチョ以降の暗殺チーム、トリッシュがスタンド使いであること、ボスの正体、レクイエム等は知りません。
※ディオにスタンドの基本的なこと(「一人能力」「精神エネルギー(のビジョン)であること」など)を教えました。
 仲間や敵のスタンド能力について話したかは不明です。(仲間の名前は教えました)
※彼が感じた地響きとは、スペースシャトルが転がった衝撃と、鉄塔が倒れた衝撃によるものです。
 方角は分かりますが、正確な場所は分かりません。
※ジョナサン、ジョージの名前をディオから聞きました。ジョナサンを警戒する必要がある人間と認識しました。
※参加者が時を越えて集められたという説を聞きました
 (他の可能性が考えられない以上、断定してよいと思っています。ただし、ディオが未来の父親であるという実感はありません)
※「吉良はスタンド能力を隠している」と推測しています。
※ラバーソウルの記憶DISCを見、全ての情報を把握しました。
※自分がDIOの息子であることは話していません。
※ダービーズアイランドに荒木がいることを知りました。
144創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 22:21:02 ID:qesG5i7M
 
145創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 22:47:13 ID:yhp+TCiX
146創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 22:49:18 ID:yhp+TCiX
147創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 22:55:38 ID:yhp+TCiX
148創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 22:57:27 ID:yhp+TCiX
※三人は自分たちが知る限りの危険人物、信頼できる人物の情報を交換し合いました。
※三人はブチャラティのメモに目を通しました。



【岸辺露伴】
[スタンド]:ヘブンズ・ドアー
[時間軸]:四部終了後
[状態]:右肩と左腿に重症(治療済みだが車椅子必須)、貧血気味(少々)、若干ハイ
[装備]:ポルナレフの車椅子
[道具]:基本支給品、ダービーズチケット
[思考・状況] :
基本行動方針:色々な人に『取材』しつつ、打倒荒木を目指す。
0.荒木に取材を申し込みたかったんだが。
1.“時の流れ”や“荒木が時代を超えてヒトを集めた”ことには一切関与しない
2.隕石を回収……ああ、そんなのあったね
[備考]
※参加者に過去や未来の極端な情報を話さないと固い決意をしました。時の情報に従って接するつもりもないです。
 ヘブンズ・ドアーによる参加者の情報を否定しているわけではありません。 具体例は「知りすぎていた男」参照。
※名簿と地図は、ほとんど確認していません(面倒なのでこれからも見る気なし。ただし地図は禁止エリアの確認には使うつもり)
※傷はシーザーのおかげでかなり回復しました。現在は安静のため車椅子生活を余儀なくされています。
※第一放送、第二放送の内容はまだ聞いていません。仗助、康一、承太郎の死に関しては半信半疑です。
※ダービーズアイランドに荒木がいることを知りました。



【ジョージ・ジョースター1世】
[時間軸]:ジョナサン少年編終了後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:ジョナサンとディオの保護
1.ここはどこだ?
[備考]
※第二放送を聞いてはいましたがメモ等は出来ていません。記憶しているかも不明です。
※テレンスと会話をしました(情報の交換ではありません)
149プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 23:01:25 ID:0BUwf+P+
【シーザー・アントニオ・ツェペリ】
[時間軸]:ワムウから解毒剤入りピアスを奪った直後。
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、ヘブンズ・ドアーの洗脳
[装備]:スピードワゴンの帽子。
[道具]:支給品一式、エリナの人形、中性洗剤。
[思考・状況] 基本行動方針:ゲームには乗らない。リサリサ先生やJOJOと合流し、 エシディシ、ワムウ、カーズを殺害する。
0.ここはどこだ?
1.精神的敗北から立ち直った。テレンスをブチのめしたい。
2.荒木やホル・ホースの能力について知っている人物を探す。
3.スピードワゴン、スージーQ、ストレイツォ、女の子はできれば助けたい。
[備考]
※第一放送を聞き逃しました。
※第二放送を聞いてはいましたがメモ等は出来ていません。記憶しているかも不明です。
※ヘブンズ・ドアーの命令は『岸辺露伴の身を守る』の一つだけです。
※テレンスと会話をしました(情報の交換ではありません)



[備考]コロッセオ地下は駅ホーム以外は遺跡(7、8巻参照)のような構造になっています。
   コロッセオ駅の線路が一部破壊されました。電車の運行にどの程度影響があるかは後の書き手さんにお任せします




【E-4/1日目 午後】
【ナルシソ・アナスイ】
[時間軸]:「水族館」脱獄後
[状態]:健康(?)、全身ずぶぬれ、右足欠損(膝から下・ダイバーダウンの右足が義足になっている)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料、水2人分)、点滴、クマちゃん人形、双眼鏡、首輪(ラング)、トランシーバー(スイッチOFF)
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームに乗った参加者の無力化、荒木の打倒
1.仲間を捜す(徐倫は一番に優先)
2.殺し合いに乗った奴ら、襲ってくる奴らには容赦しない
3.ウェザー…お前…
4.徐倫に会った時のために、首輪を解析して外せるようにしたい
5.アラキを殺す
6.あの穴を作ったのは誰だ?
7.徐倫に会えたら特別懲罰房へ行く…のか?
[備考]
※マウンテン・ティム、ティッツァーノと情報交換しました。
 ベンジャミン・ブンブーン、ブラックモア、オエコモバ、ブチャラティ、ミスタ、アバッキオ、フーゴ、
 ジョルノ、チョコラータの姿とスタンド能力を把握しました。
※ティッツァーノとの情報交換で得た情報は↓
 (自分はパッショーネという組織のギャングである。この場に仲間はいない。ブチャラティ一派と敵対している。
  暗殺チームと敵対している。チョコラータは「乗っている」可能性が高い。
  2001年に体に銃弾をくらった状態でここに来た。『トーキングヘッド』の軽い説明。)
  親衛隊の事とか、ボスの娘とかの細かい事は聞いていません。
150創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 23:02:20 ID:yhp+TCiX
※マイク・Oのスタンド能力『チューブラー・ベルズ』の特徴を知りました。
※アラキのスタンドは死者を生き返らせる能力があると推測しています。
※ラバーソールとヴェルサスのスタンド能力と容姿を知りました。
※ティッツァーノの『トーキングヘッド』の能力を知りました。
※デイパックには『トーキング・ヘッド』入りの水が入っています。
※首輪は『装着者が死亡すれば機能が停止する』ことを知りました。
 ダイバー・ダウンを首輪に潜行させた際確認したのは『機能の停止』のみで、盗聴機能、GPS機能が搭載されていることは知りません。
※ヴェルサスの首筋に星型の痣があることに気が付いていません
※自分達が、バラバラの時代から連れてこられた事を知りました。
※ヴェルサスとティッツァーノも穴に落ちたと思っています。
※ダイバーダウンが義足になっています。(原作神父戦でウェザーにやったように)
 その為、スタンドの行動に制限があると思われます(広範囲に動き回れない等)。その他の細かい制限は後の書き手さんにお任せします。
※この後どこへ向かうかは次の書き手さんにお任せします。


646 : ◆0ZaALZil.A:2010/04/11(日) 22:18:58 ID:???
投下完了。支援感謝。
今までのフラグや伏線をかなりまとめて回収したので、ボロがあるかもしれません。
誤字脱字矛盾点など、指摘があればお願いします。

--------------------------------------------------------

さるさん規制に引っ掛かったので、どなたか代理投下お願いします。
151プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 23:02:42 ID:0BUwf+P+
※マイク・Oのスタンド能力『チューブラー・ベルズ』の特徴を知りました。
※アラキのスタンドは死者を生き返らせる能力があると推測しています。
※ラバーソールとヴェルサスのスタンド能力と容姿を知りました。
※ティッツァーノの『トーキングヘッド』の能力を知りました。
※デイパックには『トーキング・ヘッド』入りの水が入っています。
※首輪は『装着者が死亡すれば機能が停止する』ことを知りました。
 ダイバー・ダウンを首輪に潜行させた際確認したのは『機能の停止』のみで、盗聴機能、GPS機能が搭載されていることは知りません。
※ヴェルサスの首筋に星型の痣があることに気が付いていません
※自分達が、バラバラの時代から連れてこられた事を知りました。
※ヴェルサスとティッツァーノも穴に落ちたと思っています。
※ダイバーダウンが義足になっています。(原作神父戦でウェザーにやったように)
 その為、スタンドの行動に制限があると思われます(広範囲に動き回れない等)。その他の細かい制限は後の書き手さんにお任せします。
※この後どこへ向かうかは次の書き手さんにお任せします。

--------------------------------------------------

投下完了。支援&代理感謝。
今までのフラグや伏線をかなりまとめて回収したので、ボロがあるかもしれません。
誤字脱字矛盾点など、指摘があればお願いします。
152プロモーション・キング ◆0ZaALZil.A :2010/04/11(日) 23:03:38 ID:0BUwf+P+
ぎゃあ被った、申し訳ない
153 ◆yxYaCUyrzc :2010/04/13(火) 12:30:55 ID:EZ54Vr6G
投下乙です。

いやぁ、クライマックスに向けて動いてますねぇ。
描写もしっかりしてて最高でした!

それと、俺の作品からセリフ使っていただいて感謝感激です。この場を借りてお礼します。

……実はオインゴのSSは【語り手がゼロ自身説】があるわけで。
つまり荒木は俺でしt(ry
154創る名無しに見る名無し:2010/04/15(木) 01:33:18 ID:4AhkizQ+
支援
155創る名無しに見る名無し:2010/04/17(土) 18:03:42 ID:QWGbRLLH
何と言う展開・・・よくもまあまとめたもんだ。
ジョージ&シーザー復活おめ!
156 ◆Y0KPA0n3C. :2010/04/18(日) 01:46:27 ID:FTpZeKLE
投下します。
157 ◆Y0KPA0n3C. :2010/04/18(日) 01:49:31 ID:FTpZeKLE
何を以てスタンド攻撃を受けているか、それを定義するのは非常に難しい問題だ。
なぜならスタンドという概念上での戦いはいかに互いの能力を明かさないかが大きな要素を占めている。そういう理由で『既に襲われていた』『気づいたらスタンド攻撃を受けていた』という状況になることも少なくはない。

では幾度なくスタンド使いによる襲撃を退けてきた男はこの問題に対してなんと答えるだろうか。男、J・P・ポルナレフはなんと答えるだろうか。
ポルナレフの場合、答えは『勘』だった。
目に見える危険、耳から入ってくる危険。そんなものは信頼できない。視覚、聴覚を操るスタンド使いがいることも想定できるのだから。
『殺気』『第六感』『嗅覚』エトセトラ………それらを研ぎ澄ませ『何かおかしい』と感じることこそスタンド使い同士の戦いにおいて重要なことだった。
そして今ポルナレフはその匂いを嗅ぎとった。
何か来る、そう感じとった。

十数年苦楽を共にした相棒、シルバー・チャリオッツを傍らに呼び出すとどこから襲われても反応できるよう背中合わせの形をとり神経を研ぎ澄ませる。
最初に異変として感じとったのは振動だった。そして同時に音をとらえる。リズムよく、一定の間隔をあけ、ダンッ、ダンッ、と力強く何かを叩くような音。
そして次第にその音は大きく、速くなっていく。ポルナレフは集中力を高め音源を探る。敵は、襲撃者はどこからやってくるのか。既にスタンド能力に陥ってしまっているのか。
迫り来る存在の圧迫感(プレッシャー)は圧倒的だった。ただ近づいてくるだけじゃない。そんな確信がポルナレフの中にあった。
そしてポルナレフは気づく。音が一段と大きくなった時、一段と近づいた時、その音の正体と迫り来る存在の位置が―――

「上かッ!シルバー・チャリオッツッ!」

瞬間ポルナレフは影に覆われる。太陽光を遮ったのはニメートルを超える大男。ポルナレフが耳にしていたのは豹がジャングルを飛び回るように男が住宅街の屋根を駆け巡っていた音だった。

「クソ、浅いかッ!もう一度だ、シルバー・チャリオッツッ!」

全てを呑み込むような殺気を隠そうともしない男への攻撃に躊躇いはなかった。
空中で体をひねり、僅かに表面を掠めるだけに終わった初撃。本来なら当たるはずだった一撃がその程度に終わったのはひとえに男の異常といえる身体能力。
それはポルナレフに隙を見せたら殺られる、そう思わせるに値するほどだった。
超スピードで屋根を飛び回りいきなりの一撃。にも関わらず男は地面に激突することなく、ヒラリと地面に降り立つ。
男は進行方向にポルナレフいることに気づいていた。しかしだから何なのだ。わざわざ避ける理由は見当たらなかった。

「FUM………」

思ったより鋭い一撃だったなと男、エシディシは軽くひっかき傷のついた左肩に手をやり傷口を観察する。目の前には以前戦闘体制のポルナレフがいる。しかし興味はもはや自分の体に移っている。
相手の攻撃が斬撃であることも関係してか、少し開いたかりそめの皮膚。そこから入り込んでくる僅かな太陽光が自分の体を焼き焦がしていくように感じる。
やはり相性がいいといってもスタンドを自由自在に扱うには時間が必要なようだ。

「となると………」

とエシディシは呟く。そして目線をポルナレフへ向ける。
いい構えだ。隙がなく長年の鍛練が感じられる。戦士という言葉が相応しい。面構えも悪くない。
左手を顎にあてじっくり見定めるとエシディシは考える。

俺は必ずや全ての頂点に立たなければならん。だがここでこの男と戦って負けるはずはないにせよ苦戦とダメージは必須ッ!
当然逃走なんぞという腰抜けのような選択もできん。となると………
158 ◆Y0KPA0n3C. :2010/04/18(日) 01:50:47 ID:FTpZeKLE


いくら待っても目の前の男は動かなかった。それでもポルナレフは踏み込まない。自ら間合いを詰めようとしない。
隙がなかった。ただ突っ立てるように見えて目の前の男は余裕はあるにせよ慢心や油断は一切してなかったから。

二人の視線がかち合う。少しの間二人はそうして見つめあい、そしてポルナレフが見つめる中、男はニヤリと笑った。
膝に軽く力を入れフワリと飛び上がる。それだけで二階建ての家の屋根に到達する。超人的な筋力だ。ポルナレフは目の前の光景に思わず唖然とする。

「俺はこれから南下しながら目についた参加者を全て殺して回る」

視線はすでに南に向いている。軽く体を伸ばしながらエシディシは独り言かのようにポツリと話す。

「止めれるものなら止めてみろ、人間…いや、戦士よ」

そうしてポルナレフの返事も聞かずに再び屋根から屋根へと走り出した。段々と遠ざかっていく男の背中を見つめポルナレフは緊張をとき脱力した。
その口から思わず言葉が漏れる。

「アイツは…アレは一体何なんだ………?」

答えてくれる人は誰もいなかった。ただポルナレフの『勘』は叫んでいた。
目の前にいた『モノ』は紛れもないモンスターであることを。




【E-4とE-5の境目/1日目 午後】
【J・P・ポルナレフ】
[スタンド]:『シルバー・チャリオッツ』
[時間軸]:3部終了後
[状態]:右手負傷(軽症)、鼻にダメージ(中)
[装備]:無し
[道具]:不明支給品0〜2(戦闘や人探しには役に立たない)、携帯電話
[思考・状況] 基本行動方針:殺し合いに乗ってない奴を守り、自分の正義を貫く
0.なんだったんだ、あいつ…
1.仲間を集める
2.死んだはずの仲間達に疑問
3.J・ガイルを殺す
[備考]
※この先何処に向かうかは次の書き手さんにお任せします。
※アヴドゥル、トニオの遺体は埋葬されました。



159 ◆Y0KPA0n3C. :2010/04/18(日) 01:51:48 ID:FTpZeKLE



焦燥を心の中に納め、クールな表情を保つ。言葉にすればわけないんですがこれがなかなか難しい。
まぁそうはいってもギャングにとってこれは死活問題。ビビったり少しでも隙を見せようもんなら問答無用で鉄パイプやら鉛玉をぶちこまれる世界にいれば多少は慣れますよ。特に自分のスタンドは身を守ることに関しては一切無力ですからね。

特別懲罰房へ向かう途中、私は思いきってティムに提案してみた。
アナスイと合流してから特別懲罰房へ向かってはどうだろうか。これといって待ち人がいないならば戦力を分散するのは賢い選択肢とは思えない、と。

しかしこれは逆効果だった。なにせよ聞いた直後に行動しなかったのが手痛いミス。
ティムからしたら唐突に思えたのでしょう。何故このタイミングで、と不思議に思われても仕方ない。ティムからアナスイの居場所を聞いた直後にいうならまだしも私の中でじっくり吟味してしまったのが間違いだった。
まるで何かを企んでるような、実際それに近いことは間違いないのですが、印象を与えてしまったようだ。
ティムは先の宣言通り私を信頼することなく加えて間の悪い私のこの提案に何かを嗅きとったのでしょう。
私に向かって俺はアナスイを信じたい、と事実上の拒否を示したうえに、それ以来やけにペースを遅くしたように感じます。

やれやれ…提案を却下された以上私としてはさっさと特別懲罰房につきなんとか抜け出しいち早くアナスイと合流したいところなのですが…流石現役保安官ですね。
今さらグダグダと愚痴を述べても仕方がないのですがやはり後悔はある。
ティムにアナスイとの合流をすぐに提案すればよかったのでしょうか。ティムとヴェルサスと別れてでもアナスイを追うべきだったんでしょうか。
この際結果論でしか語ることはできませんね…。前を行くティムの背中を眺めると思わずため息が出た。
いっそのこと素直に打ち明けたほうがいいだろうか?いやいや、信頼は崩れるは易し、築くは難し。尤も既に信頼なんてないに等しいんですが…いやはやこれは本当に困った。

「どうしましょうか…ヴェルサス」

私はなんともなしに傍らにいる相棒に聞いてみた。勿論事情は話してない。だが一人でグチグチ考えるよりは誰かとの会話の中でヒントが掴めるかもしれない。そう思って口にしてみたまでだった。

「………?…ヴェルサス?」

だからこれは予想外。少し後ろを歩いていたはずのヴェルサスがどこにもいない。周りを見渡すも影一つ見つからない。
いつの間にかはぐれてしまったのか、とにかくこれは一大事だ。もしかしたら自覚もなくスタンド攻撃に陥れられたのかもしれない。

「ティムッ!」

私の声が切羽詰まっていたのもあったのだろう。ティムはすぐに振り返り私の顔を見てから、足早にこちらに向かってくる。
事態は思ったより深刻なのかもしれない。そもそもヴェルサスが消えた理由が皆目つかない。スタンド攻撃から逃げたのか?どこかに連れ込まれたのか?それとも…もう始末されてしまったのか?
とにかくティムに話してみなければ。そう考えた時だった。

160創る名無しに見る名無し:2010/04/18(日) 01:51:52 ID:HaFWQ9o7
支援
161 ◆Y0KPA0n3C. :2010/04/18(日) 01:53:07 ID:FTpZeKLE
パカァン、とやけに小気味いい音とともに私の目の前でマンホールが空高く吹き飛ぶ。ティムがもしあと一歩でも踏み込んでいたらマンホールごと吹き飛ばされていただろう。
鼻先を掠めたマンホールがティムのカウボーイハットを弾き飛ばす。見とれるように二人の目線が二つを追う。
青空をバックに鉄のマンホールがクルクル回転し、帽子は風に乗りフワフワと浮かびあがる。私は馬鹿見たいに暢気に、ああ綺麗だな、なんて思ったのを今でも覚えてる。
視界の先の太陽の中に影を感じた。何かがマンホールの穴からものすごいスピードで飛び上がったようだ。なんだろうか、動物にしては大きすぎる。
マンホールと帽子が最高地点に到達し、そこから引力にしたがって落ちてくる。入れ替わりにそれは、その男はグングン上昇していく。
ニメートルを超す大男だった。鼻にピアスをつけ太古の民族衣装のような格好に肩当てをつけている。不思議と野蛮な印象はなく王のような、何かの上に立つような高貴さを醸し出していた。
そしてその右手に『右腕』を握っている。『右腕』………?

視界の端でグラリと倒れ込むティムが見えた。現実感がわかない。あまりに唐突に出来事が起きている。それでも私は自分が何をすべきかはわかった。
その後のことはあまり覚えていない。ただ私は逃げた。後ろでドサリと何かが倒れる音を耳にしながらも私は振り返らずに逃げた。
卑怯だとか臆病だとか正義感だとかそんなものを考えてる余裕はなかった。ただ生き物としての本能が逃げることだけをひっきりなしにかき鳴らしていた。
そんな中で私がわかったことはただ一つ。

『ヤツ』は『人』ではないってことだけだった。








フワリフワリと落ちてきたカウボーイハットを捕まえる。
すぐ側ではマンホールが騒音とも言えるような音をたてながら暴れまわっていた。

「………フン」

プイッと興味をなくしたように目の前の『モノ』からエシディシは目線をそらした。つまらん、そう一言付け加えると手の中の帽子をもてあそぶ。
既にエシディシからしたらティムは人ではなくなっていた。反撃するわけでもなく、意思を見せつけるように睨むこともなく、イモムシのように地べたに這いつくばっている。そんなティムはもはや『死体』と同等。

太陽光を完全に、100%克服したわけではないと悟ったエシディシは、それならば、と地下に潜った。
骨格をバラバラに捻り、地下から参加者たちを狙うように方針を切り替えた。ついでに骨格をねしまげながらスタンドを操る練習もできるし、常にスタンドを出現させなくてよいのも好都合だった。

荒木の手解きか、はたまた柱の男の体質なのか、イエロー・テンバランスを操作しはじめてからエシディシは少しずつ疲労がたまっていくのを感じた。
本来柱の男はそれこそ人間離れした強靭な体力をもった人種だ。だというのに疲労がたまっていくというのもおかしな話。ならばその理由は一つ。
『柱の男』がスタンドを操るのに『この場』では大量の体力を必要とする。
エシディシはそう考えた。
そういうわけで地下に潜ったエシディシ。だがその最中でも獲物を狙うことは忘れない。地下配管からの温度差で地上にいるティムたちを捕捉、そして今に至る。

横たわる男の胸を踏みつける。呻き声にも関わらず体重をどんどんかけていく。足の裏の下でポキッと音が何回かした。どうやら肋骨が何本か折れたようだ。だがエシディシはさらに体重をかけていく。

「…下らない。時間の無駄だな」
162創る名無しに見る名無し:2010/04/18(日) 01:53:17 ID:/IMJftP2
 
163 ◆Y0KPA0n3C. :2010/04/18(日) 01:54:07 ID:FTpZeKLE

唐突に振り替えるとティムの体の上から足を退ける。痛みと屈辱を与えてもティムは何の変化も見せなかった。そのことにエシディシは若干ながらも落胆した。
エシディシはこんなものが見たかった訳ではない。即死させようと思えば簡単にできた。だがあえてしなかった。

エシディシはプッチの言葉を思い出していた。
『スタンドは精神力』…ならばこのイエローテンバランスを自分の精神に馴染ませねばならない。
しかしどうやって?

「貧弱な人間はどうやって生き延びてきたのか?どうやってその数を増やし栄えてきたのか?」

地下から伺った時熱源は3つ。その内一つは追跡しはじめて間もなく逃げ出した。
二つのうち一つはたった今、右腕をもぎ取り肋骨を何本かおった。もう助かりはしないだろう。
部は悪いが最後の一人に賭けてみよう。

「スタンドとは何だ?それは人間の進化の過程で生まれた新たな力なのか?」

そこまで考えてエシディシは無意識の内に笑っていた。
屋根から屋根へ飛び回り、いるはずのもう一人を探しだそうと縦横無尽に駆け回る。

「スタンドは精神力。ならば精神力とは?それはすなわち『生きたい』という意志ッ!死にたくない、そう思った時の力は凄まじい!
そう!ジョセフ・ジョースターがかの大陸で我々一族のひとりを倒したように!ディオ・ブランドーが僅かながらもスタンドを出したように!」

エシディシは期待していたのだ。追いつめられた人間が進化をするところをこの目で見たかったのだ。
慢心でも余裕でもなく、エシディシは今の自分を倒すのに並大抵のものではかなわないと見ていた。実際そうだろう。

波紋がなければ触れることもかなわない肉体。波紋を込めた一撃も今はスタンドの鎧に阻まれる。
超人的な体力。圧倒的な暴力。絶望的ともいえる回復力。
贔屓目に見ても冷静に見てもエシディシはまさに究極の生命体一歩手前。そんな自分を追いつめるような、進化させるような存在はこの世に居ないように思えた。

だから人間を追いつめる。スタンドの本来の持ち主、人間を追いつめ進化させる。その過程で自らの進化のヒントをつかむ。
エシディシの目的はまさにそれだった。
先ほどのポルナレフとの遭遇にしてもそう。ポルナレフに対しての宣言は『進化』の可能性を見極めるためだ。
圧倒的な力の差を見せつけられて尻尾を巻いて逃げるというなら『そこまで』の男。さっきの宣言は一種の試金石であり、また同時に『立ち向かってこい』というエシディシの挑発であった。


そうこうするうちに獲物を見つけた。元々脚力が違いすぎる。平面での追跡で人間が逃げ切れる道理はなかった。
獲物は民家と民家の間、ちょうど逃げ道もない路地で追い詰められた。両側にはコンクリートブロックの塀、道の幅はおよそニメートル程度。横道もなく前に進むか背中を見せて逃げるかの二つのみ。そして柱の男を前に逃走も闘争も無意味。

地響きを響かせエシディシは獲物の、男の目の前に着陸した。今から始まるのは戦いでもなく狩りでもない。
実験だ。それもとびっきり過激なやつだ。



164創る名無しに見る名無し:2010/04/18(日) 01:54:50 ID:/IMJftP2
 
165 ◆Y0KPA0n3C. :2010/04/18(日) 01:56:12 ID:FTpZeKLE


これは…

「困ったことになりましたね…」

私の目の前には先程の怪物が陣取りこちらを養豚所にいる豚かのような目で眺めている。
自棄になって特攻するのも手の一つ、逃げ切れるはずがないとわかっていても少数点の可能性に賭けて走り出すのも手の一つ。だが私はどちらもしなかった。大男と私の間に流れる沈黙。お互い動くことなく膠着状態が続く。

「…何故逃げたさない?」

ほら、来た。思った通り。
こいつは殺そうと思えば私が瞬きする間もなく私を殺せる。素直に私の目の前に降り立つことなく奇襲の一撃。それだけで私はあの世へ一直線に向かえるでしょう。
だけどしなかった。奇襲もせずにわざわざ私の目の前に降り立った。
つまり私を『ただ』殺すだけでなく、『何か』目的を果たした後殺すつもりなのでしょう。
そう考えれば辻褄があう。

「逃げたって無駄でしょう。実際ティムが襲われてからずっと全力疾走した俺に貴方はたちまち追いついた」
「何故スタンドを出さない?何故抵抗しない?」
「俺のスタンドは戦闘に向いてないんですよ。それに抵抗するにも武器がない」

肩をすくめ私は返事をする。どことなく会話が噛み合わない気がしますが、まぁどうでもいいことです。私が死ぬ、その結果は変わらないんですから。

「ああ、あと付け加えさせて貰うと情報を聞き出そうってならやめたほうがいいですよ。どんな拷問でも吐かない自信はあるし、なによりどれだけ貴方が速かろうが私が舌を噛みきるほうが早い」
「………」

自分の命を人質とする。なんて馬鹿げてるんだ、笑えないジョークですよ、本当に。
私は死ぬのは怖くない。ギャングなんだからいつかは死ぬ。しかもとびっきりの痛みを伴って、必要以上の苦しみの中で死ぬ。そう覚悟してましたから。
それに実際一回死んでますしね。そう思うと何だか面白くて笑えてきた。

「気でもふれたか…お前は死ぬのが怖くないのか?」
「もうとっくに私の命は売却済みでしてね。それにギャングに『ブッ殺す』なんて脅しは通用しませんよ。気づいたら『ブッ殺されていた』なんて世界なんですから」

唯一の心残りは…ヴェルサスのことですかね。彼には恩がある。だけど『それ以上のもの』もある『かもしれない』。
それがわからないのが、ハッキリしないまま死ぬのが惜しい。
何故彼がいなかったのか。何故彼は見当たらなかったのか。私には心当たりがあった。

…死ぬのが怖くない、とはまた違うんでしょうね、この感覚は。でも確かにそうだ。私はまだ死にたくないらしい。
張り付けていた笑顔を消し去ると私は視線を真っ直ぐ男と合わせる。考え込むような表情の男はそれに気づき私をじっくり見つめてくる。少しの沈黙の後私は口を開いた
目の前の敵に、自分を殺す相手に意志を託すというのも不思議な気分ですが…仕方ない。

こいつが私を見逃してくれることはないでしょう。それになにより―――

「俺を殺す貴方に頼みたいことがある」

裏切者には死の鉄槌を。
もしもお前が裏切者ならば…許しはしない、ドナテロ・ヴェルサス。
それが俺達ギャングの掟だ。



166創る名無しに見る名無し:2010/04/18(日) 01:56:43 ID:/IMJftP2
 
167 ◆Y0KPA0n3C. :2010/04/18(日) 01:58:42 ID:FTpZeKLE
親指、OK、異常なし。ちぎれてもないしちゃんと曲がる。人指し指、くっついてる。痛みなし、つっぱりなし、普通に動く。中指、くすり指、小指…よし、大丈夫だ。
だが力が入らない。加えて呼吸がしにくい。息をするたび肺を締め付けられるような痛みに襲われる。当然だろうな…アバラを何本が持ってかれたからな…。それに何より―――

「…血が足りない」

言うことを聞かない体に鞭うって右腕に近づき『くっつけた』だけでもはや限界だった。さすがに道路の真ん中で寝転がってるわけにもいかないしな…ここまでか。
固い地面の上で寝るのには慣れてる。ただ何回経験してもこの『縫合』には慣れやしない。死ぬギリギリまで動けなかった今回なんて特例中の特例だ。二度と経験したくない。
ならばその元凶、荒れ狂うバイソンならぬ、台風のようなあの大男をお縄頂戴したいところだが………

「…無理だな、今の俺じゃ」

ティムは悪を許さない強い正義感の持ち主だ。だがだからと言って自分の実力をろくに考えない馬鹿ではないし、自分の状態を無視して感情で動くほど子供でもなかった。
小綺麗な民家のガレージに背を預け、乱れる呼吸を整えるように息を長く吐く。額には異常とも言えるほどの大量の汗。足元には道路中央から体を引きずった際にできた赤いライン。いつも被った自慢のカウボーイハットは胸の上。

「そういうわけでお前に依頼したい」
「…俺は見返りがなければ動かない」
「情報は渡した。ただ俺はそれをお前一人のものにしなければそれで満足だ。この俺をこのザマにした怪物とはお前も戦いたくはないはずだ」
「違いない」
「特別懲罰房へ向かってるんだろう…ついででいいさ。俺も遅れて行く」

顔をあげるのも疲れるのか、ティムは必死に引きずり込まれるような眠気と戦いながら言葉を吐く。
視線の先には見知った『脚』。いつも自分の先を駆けていく少し気に入らないライバルの脚だ。
何も言わない。ティムの荒れた呼吸だけが聞こえる。そうしてしばらくした後、ティムの視線の先から足が消えていった。それはあっという間だった。背中が見えたと思ったらいつの間にか見えなくなっていた。
だがティムにはどちらでもいいことだった。クルリと背中を向けた時点で、目の前の男が仕事をやってのけてくれるとわかった時点でティムは眠りに落ちていたのだから。
ティムはサンドマンをよく知らない。だが利益のためなら動く、そして約束は破らないだろうという不思議な信頼があった。
そんなティムの上を一羽の影が通り過ぎて行った。

【F−4 南東/1日目 午後】
【マウンテン・ティム】
[時間軸]:SBR9巻、ブラックモアに銃を突き付けられた瞬間
[状態]:左肩と腹部に巨大な裂傷痕(完治)。左足に切り傷(小、処置済み)、服に血の染み。全身ずぶ濡れ。右足が裸足。
    肋骨骨折、右肩切断(スタンドにより縫合)、極度の貧血、体力消耗(大)、気絶中
[装備]:物干しロープ、トランシーバー(スイッチOFF)、アナスイの右足(膝から下)
[道具]:支給品一式×2、オレっちのコート、ラング・ラングラーの不明支給品(0〜3)
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームに乗った参加者の無力化、荒木の打倒
0.気絶中
1.特別懲罰房へ向かう
2.特別懲罰房を拠点にしたい(そこでアナスイを待つ)
3.もしアナスイが再び殺人鬼になるようなら止める。生死を問わず
[備考]
※第二回放送の内容はティッツァーノから聞きました。
※アナスイ、ティッツァーノと情報交換しました。アナスイの仲間の能力、容姿を把握しました。
 (空条徐倫、エルメェス・コステロ、F.F、ウェザー・リポート、エンポリオ・アルニーニョ
  ブチャラティ、ミスタ、アバッキオ、フーゴ、ジョルノ、チョコラータ)
※ティッツァーノとの情報交換で得た情報は↓
 (自分はパッショーネという組織のギャングである。この場に仲間はいない。ブチャラティ一派と敵対している。
  暗殺チームと敵対している。チョコラータは「乗っている」可能性が高い。
  2001年に体に銃弾をくらった状態でここに来た。『トーキングヘッド』の軽い説明。)
  親衛隊の事とか、ボスの娘とかの細かい事は聞いていません。
※自分達が、バラバラの時代から連れてこられた事を知りました。

※ティムはサンドマンにエシディシについて知りえる限りのすべてを伝えました。具体的には次の書き手さまにお任せします。


168創る名無しに見る名無し:2010/04/18(日) 01:59:32 ID:/IMJftP2
 
169 ◆Y0KPA0n3C. :2010/04/18(日) 02:00:23 ID:FTpZeKLE
空をかける男。その背中に迫る白い姿。
白い姿が追い付きかける。だがたちまち男に引き離される。負けじとその翼を必死に羽ばたかせる。
民家を抜け、木を飛び越し、電線の上を通り抜ける。それなのに男には追い付けない。どれだけ飛んでも男の脚は止まらない。
それでも足にくくりつけられたメッセージを託すため彼は飛んだ。羽を撒き散らし必死に飛んだ。

男は翔んでいた。彼は飛んでいた。
男は託されていた。彼は託されていた。
違いは渡す相手だった。

特別懲罰房にたどり着いた男はスタンドを互いに出し、にらみ会う二人を見つけた。
戸惑いの表情を浮かべ、唇を噛み締める男。疲れきった表情を浮かべ、自棄になっている青年。
メッセンジャーは一人と一匹。先にメッセージを伝えるのは、ゴールを先に向かえるのはどっちだ?




【F-5 特別懲罰房/1日目 午後】
【花京院典明】
[時間軸]:ゲブ神に目を切られる直前
[状態]:精神消耗(大)、右肩に銃創(応急処置済み)、全身に切り傷、身体ダメージ(小)、脇腹に銃創
[装備]:なし
[道具]:ジョナサンのハンカチ、ジョジョロワトランプ、支給品一式。
[思考・状況] 基本行動方針:打倒荒木!
1.目の前の状況に対処
2.自分の得た情報を信頼できる人物に話すため仲間と合流したい
3.甘さを捨てるべきなのか……?
4.巻き込まれた参加者の保護
5.荒木の能力を推測する
[備考]
※ハンカチに書いてあるジョナサンの名前に気づきました。
※荒木から直接情報を得ました
「脅されて多数の人間が協力を強いられているが根幹までに関わっているのは一人(宮本輝之助)だけ」
※フーゴとフェルディナンドと情報交換しました。フーゴと彼のかつての仲間の風貌、スタンド能力をすべて把握しました。
※アヴドゥルとフェルディナンドの考察から時代を超えて参加者が集められていることも知りました(納得済み)。
170創る名無しに見る名無し:2010/04/18(日) 02:04:22 ID:/IMJftP2
 
171 ◆Y0KPA0n3C. :2010/04/18(日) 02:04:56 ID:FTpZeKLE
【ディアボロ】
[時間軸]:レクイエムジョルノに殺された後
[状態]:右手に負傷(小)。肋骨二本骨折。身体疲労(中)、精神疲労(中)鼻にダメージ(中)強い決意。強い恐怖
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(水は全消費)、ジャイロの鉄球
[思考・状況]
基本行動方針:ジョセフの遺志を継ぎ、恐怖を乗り越え荒木を倒す。
0.目の前の状況に対処
1.懲罰房に戻って早人と合流。その後はその時考える。
2.ジョルノには絶対殺されたくない。来るなら立ち向かう。
3.恐怖を自分のものとしたい。
4.自分の顔と過去の二つを知っている人物は立ち向かってくるだろうから始末する。
5.電車内の謎の攻撃、謎の男(カーズ)、早人怖いよ。だが乗り越えたい
6.駅にあるデイパックを回収したい
[備考]
※音石明の本名とスタンドを知りました。
※参加者が時を越えて集められたという説を聞きました
※『恐怖を自分のものとして乗り越える』ために生きるのが自分の生きる意味だと確信しました。
※アレッシーとの戦闘により、『エピタフ』への信頼感が下がっています。
※キング・クリムゾンになんらかの制限がかかってます。内容は次の書き手さんにお任せします。

【サンドマン】
【スタンド】:『イン・ア・サイレント・ウェイ』
【時間軸】:ジョニィの鉄球が直撃した瞬間
【状態】:健康、満腹、暗殺チーム仮入隊(メッセンジャー)
【装備】:なし
【道具】:基本支給品×2、不明支給品1〜3(本人確認済み) 、紫外線照射装置 、音を張り付けた小石や葉っぱ、スーパーエイジャ、荒木に関するメモの複写
【思考・状況】 基本行動方針:元の世界に帰る
0.目の前の状況に対処
1.「ナチス研究所にて、脱出の為の情報を待っている」というメッセージを、脱出を目指す人物へ伝えて回る。
2.荒木の言葉の信憑性に疑問。
3.名簿にあるツェペリ、ジョースター、ブランドーの名前に僅かながら興味
4.もう一度会ったなら億泰と行動を共にする。
【備考】
※7部のレース参加者の顔は把握しています。
※億泰と情報交換をしました。
※プッチの時代を越えて参加者が集められていると考えを聞きました。
※早人がニセモノだと気づきましたがラバーソールの顔・本名は知っていません。
※リゾットと情報交換しました。が、ラバーソールとの約束については、2人だけの密約と決めたので話していません。
※F・F、ブチャラティチーム、ホル・ホース、ミューミューの容姿と能力を知りました(F・Fの能力は、リゾットが勘違いしている能力)。ホルマジオの容姿を知りました。
※盗聴の可能性に気付きました。

【備考】
※ラバーソールが送ったハトがサンドマンに追い付きました。
※ティムはサンドマンにエシディシについて知りえる限りのすべてを伝えました。具体的には次の書き手さまにお任せします。



172創る名無しに見る名無し:2010/04/18(日) 02:05:44 ID:/IMJftP2
 
173 ◆Y0KPA0n3C. :2010/04/18(日) 02:09:29 ID:FTpZeKLE
「ハァ…ハァ………ッ!」

何故ヴェルサスがいなかったのか。襲撃者が地下からやって来たこととヴェルサスのスタンド能力を考えると一つの仮説が浮かび上がる。ティッツァーノの考えはこうだ。
アンダー・ワールドで過去を掘り起こしたヴェルサスは襲撃者の存在を知った。地下に潜む異常性と素人目でもわかる殺気を前に恐れをなしたヴェルサスは逃走を選択した。
一緒に行動していたティッツァーノとティムは囮として使って逃げた。自分への注目をそらすため二人を利用した。

「ハァ…ハァ…もう大丈夫かァ〜〜〜?いや、地下配管に体を捩じ込むバケモンだ。もう少し逃げたほうがいいな」

そして実際そうだった。ヴェルサスは逃げた。ティッツァーノとティムにバレないよう己の胸中に迫り来る危険を納めるとそのまま逃げ出した。
裏切った、その罪悪感はわいてこない。ヴェルサスにとってなによりも大切なのは『幸せ』になること。それで誰が死のうが誰を利用しようかはどうでも良かった。

「くそったれ、死んでたまるか…絶対生き残ってやるッ!俺は絶対死なねェぞッ!俺は幸せを掴むんだッ!」

帝王DIO。過程や方法も省みず、他人を踏みつけ、他人を踏みにじる。
受け継がれる意思。悪意の継承者。
彼の血はしっかりとヴェルサスに受け継がれていた。



【F−4 北西/1日目 午後】
【ドナテロ・ヴェルサス】
[時間軸]:ウェザー・リポートのDISCを投げる直前
[状態]:疲労(中)、服がびしょぬれ
[スタンド]:アンダー・ワールド
[装備]:なし
[道具]:テイザー銃(予備カートリッジ×2)、杜王町三千分の一地図、牛タンの味噌漬け、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:絶対に死にたくない、幸せになる。
0.とりあえず逃げる
1.どんな事してでも生き残って、幸せを得る。その方針は依然変わりなくッ!
2.プッチ神父に会ったら、一泡吹かせてやりたい。
[備考]
※ティッツァーノ以外のマフィア、ブチャラティ達の事、パッショーネの事を聞きました。
(ブローノ・ブチャラティ、グイード・ミスタ、レオーネ・アバッキオ、パンナコッタ・フーゴ
 ジョルノ・ジョバァーナ、チョコラータ) 。
※荒木の能力により『アンダー・ワールド』には次の制限がかかっています。
 ・ゲーム開始以降の記憶しか掘ることはできません。
 ・掘れるのはその場で起こった記憶だけです。離れた場所から掘り起こすことはできません。
 ・『アンダー・ワールド』でスタンドを再現することはできません。
 ・ただし、物理的に地中を掘り進むことは今まで通り出来ます。
※アンジェロ、Jガイルの容姿と『アクア・ネックレス』のスタンドビジョンを知りました。
※星型の痣を持つ相手(ジョナサン、ジョルノ、徐倫)の位置が大体わかります ただし、誰が誰かまでは判別出来ません。






腰にととかんばかりに伸びた髪の毛、上背に比べ華奢とも言える体、腕の筋肉には余分なものがついてなく一見すれば女性のようである。
何かを確かめるようにその人物は自分の手のひらを見つめる。手を握ったり開いたり、膝を曲げたり伸ばしたり、体が動くことを確かめるように腕を曲げたり伸ばしたり…。

「どうも人間の体は窮屈だな」
174創る名無しに見る名無し:2010/04/18(日) 02:09:58 ID:/IMJftP2
 
175 ◆Y0KPA0n3C. :2010/04/18(日) 02:11:08 ID:FTpZeKLE
唐突にその人物が言葉を口にする。だがその光景はどこか奇妙だった。まるで腹話術をしているかのように、見てる人を錯覚させるようなそんな光景だった。
男は傍らに捨て置かれていたデイパッグを2つ拾うとまた一段と大きい伸びをした。鼻から息をはくと挙げていた手をゆっくりと下ろし、閉じていた目を大きく開ける。まつげの長いその瞳に沈み始めた太陽が写る。

綺麗な夕日だった。

長い間太陽を見つめていた男は頬を緩める。しばらくの間そうしていたがやがて気が済んだのか、足に力をこめると近くの民家に飛び移っていく。ゆっくりと散歩をするように、それでも身軽に男は屋根を伝って行く。
結果からいえば実験は失敗だ。結局ティッツァーノは何一つ抵抗することなく、傷一つエシディシにつけることなく死んでしまった。圧倒的暴力を前にティッツァーノは屈した。
だが『魂』は違う。『精神』は違う。ティッツァーノは折れなかった。その眼は最後まで『立ち向かうモノ』だった。

「フフフ………」

スタンドはあるのに精神が伴わないもの。精神は熟しているのにスタンドは戦いでは役に立たない。まったくもって不思議な生き物よ。
エシディシは心底思う。興味深い。人間とは何だ?なぜこうも矛盾してる?

『もし貴方がドナテロ・ヴェルサスという男を殺す時が来たなら伝えて欲しいことがある。お前は裏切者なのか、と。
…ええ、それだけでいいです。ああ、ティッツァーノより、と付け加えてくれたらベストです。後は煮るなり焼くなりして下さい。どうせ貴方は見逃してくれないんでしょ?だったらせめてこれぐらいはよろしくお願いします。
…スタンド?彼の?う〜ん、それは言えませんね。ただ彼は“生き残る”ってことに関してはすごいですからね。
…ええ、精神力という意味なら彼は持ってますよ』

「ドナテロ・ヴェルサス…か」

上機嫌なのか、男は今にもスキップをしかねない様子だった。爛々と目を輝かせるその様は新しい遊びを見つけた子供のようだった。
その内本当に楽しくなってきたのか、男は笑いをこらえることなく、笑い声をこぼす。
この舞台で初めて出会った男はまるで自分を『人間』かのように扱った。王に付き添うを聖職者のように、それでいて自分の友人が侮辱された時には激昂するなど人間臭いところもあった。
その友人はまさに人間の本性の生き写しのような者だった。自分の無力さに震え、その一方で人間という種を統一することに関しては未熟ながらも才能の片鱗を見せつけていた。そして最後には『力』を得た。

「面白い…実に面白いぞ、プッチ。人間は面白いヤツばっかだ」

『最後に貴方に?そうですね………』

「ドナテロ・ヴェルサスよ………お前の相棒は実に面白い男だった。今度はお前の番だ」

『地獄で待ってるぞ、このクソ野郎』

「お前は何を見せてくれる?」

一陣の風が吹きティッツァーノの髪の毛を巻き上げる。
沈み行く太陽の光を浴び彼は笑っていた。
176創る名無しに見る名無し:2010/04/18(日) 02:12:03 ID:/IMJftP2
 
177 ◆Y0KPA0n3C. :2010/04/18(日) 02:13:33 ID:FTpZeKLE


【D-5/1日目 午後】
【エシディシ】
[時間軸]:JC9巻、ジョセフの“糸の結界”を切断した瞬間
[状態]:ティツァーノの体、人間の強さを認めた
[装備]:『イエローテンパランス』のスタンドDISC
[道具]:支給品一式×2、『ジョースター家とそのルーツ』リスト(JOJO3部〜6部コミックスの最初に載ってるあれ)
    不明支給品0〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに優勝し、全生物の頂点にッ!
1.南で参加者を殺して回る
2.億泰には感謝せねばなるまい。
3.常識は捨てる必要があると認識
4.ドナテロ・ヴェルサスを殺す際にメッセージを伝える。ヴェルサスの『進化』(真価)に期待
[備考]
※時代を越えて参加者が集められていると考えています。
※スタンドが誰にでも見えると言う制限に気付きました 。彼らはその制限の秘密が首輪か会場そのものにあると推測しています
※『ジョースター家とそのルーツ』リストには顔写真は載ってません。
※ダービー=F・Fと認識しました。エシディシ本人は意図的に広めようとは思っていません。
※『イエローテンパランス』の変装能力が使えるかは不明です。
※頭部を強打されればDISCが外れるかもしれません。

※この後どこに向かうかは次の書き手にお任せします。
※エシディシは原作六巻でサンタナがやったようにティツァーノの体に潜り込んでます。制限などがあるかは次の書き手さまにお任せします。
※イエローテンパランスはまだ完全にコントロールできてません。また具体的な疲労度などは後続の書き手さまにお任せします。





【ティツァーノ 死亡】
【残り 31名】

178創る名無しに見る名無し:2010/04/18(日) 02:15:43 ID:/IMJftP2
 
179 ◆Y0KPA0n3C. :2010/04/18(日) 02:19:34 ID:FTpZeKLE
投下完了しました。
誤字脱字、矛盾点・修正点、よくわからない点がありましたら指摘よろしくお願いします。
一時投下の際に色々言ってくださった方々、こんな時間に支援してくれた方、ありがとうございました。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


突然ですが支援ラジオ、やります。
予定日は今週の金曜日、4/23の午後9時です。時間はまだ変わる可能性がありますが一応告知しておきます。
初めてなのでどうなるかわかりませんがよろしくお願いします。
では。
180創る名無しに見る名無し:2010/04/18(日) 02:38:23 ID:fUc9VNJA
期待
でもまだwikiから脱出できてねーんだよな。早く読まないと
181創る名無しに見る名無し:2010/04/18(日) 20:00:06 ID:yyxfomb5
投下乙です

やっぱエシディシはディオと違って追いつめられる機会があんまりないからスタンド使うのきついのかね
……あれ?じゃあ追いつめたらパワーアップしてしまいそうな……これまた厄介だな

ティッツァーノ……嘘をつかせる能力(笑)って馬鹿にしてごめんなさい
実にギャングらしい散り様だったぜ

ラジオも期待してます!
182創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 00:21:07 ID:jC8f9D+E
一番くじ買うよな?
183 ◆Y0KPA0n3C. :2010/04/20(火) 01:48:20 ID:te62okTq
↑であんな大口叩きましたが私用のため金曜日は都合が悪いことが判明しました。
すみません…orz
ですが必ずラジオはやります!また変更の可能性はありますができる限り、次の日・4/24土曜日九時を予定してます!
まだどうなるかわかりませんが…どうか、よろしくお願いします…すみません、本当
184創る名無しに見る名無し:2010/04/21(水) 23:49:11 ID:0VSR5jAd
ちょうどよかった俺も期待とか言っておきながら
金曜は都合が悪かったんだ
185創る名無しに見る名無し:2010/04/22(木) 23:30:08 ID:BJbkRN69
予約来てるねー
地図の人に空気って言われたらすかさず予約していくスナイプさんが素敵です
186創る名無しに見る名無し:2010/04/23(金) 23:26:47 ID:T21LBryo
明日はジョジョ2nd・2人目のDJ氏のラジオッ!聞かずにはいられないッ!!
187創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 14:12:07 ID:sUrqISAo
やったーwiki読み終わって追いついたぞォオオオオ
188創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 17:19:30 ID:1r76EX/0
ようこそ、現行スレの世界へ
189創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 17:39:51 ID:1C6XvXxo
懐かしいなァ、そういうロワ見てハマってwikiを一から見て
現行スレまで追い付くまで齧りついてみるの。
俺も、別のロワなんだけどそうやって初めてロワを見て
現行スレまで追いついた時すっごく快感を覚えた。
190創る名無しに見る名無し:2010/04/24(土) 20:51:48 ID:RKioHiLi

九時だよ!全員集合ゥ!(21:00より開始。それまでは無音です。)


聴き方解説ページ→ ttp://cgi33.plala.or.jp/~kroko_ff/mailf/radio.htm
アドレス→ttp://ladio.net/src/bmYD
またはlivedoorねとらじにて「ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd in ラジオ 〜パート1〜」と検索しても見つかります。
実況スレはこちら↓
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12752/1271444229/1

乱入大歓迎、横やり大歓迎です。俺のトリップで検索すればスカイプで捕まえれます。
「リスナーを楽しませる」「ジョジョロワを盛り上げる」両方ともしなきゃいけないのがDJのつらいところだな…
覚悟はいいか?俺は不安だ
191 ◆33DEIZ1cds :2010/04/25(日) 00:38:28 ID:89geZClC
ラジオ中に『偉大なる死』の支援絵を投下してみる。
絵板に投下出来ればよかったんですが、フリーズが起こってどうにもならないのでこちらに。

http://a-draw.com/up/download/1272123250.jpg
passはaniki

お粗末さまでした。
最後に、ラジオ最高!
192 ◆xrS1C1q/DM :2010/04/30(金) 23:53:30 ID:5znxYRYP
>>191

兄貴イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
カッコよさと切なさが同時に伝わってきました
支援絵乙です!


ではナルシソ・アナスイ、F・F投下します
193空条徐倫の仲間、そして友 ◆xrS1C1q/DM :2010/04/30(金) 23:55:07 ID:5znxYRYP
「お前は空条徐倫のために命を懸けれるか?」

ふと、声をかけられ繁華街へと向かう俺の足は止まった。
知らない町。初めて見る通り。アメリカとは微妙に違った造りの家々。
見知らぬ顔。記憶にない服装。聞いたことのない声。そして、どこかで聞いたことのあるような質問。
前回は「いいや」と答えたはずだ。
けれども今回は「ああ」と答える。
彼女のため、ジョリーンを護れるなら死んでも構わない。
俺は救われた。
結婚したいとは言っているが、それはあくまでもあわよくばという可能性の薄いことに賭けているだけだ。
あくまでも俺は殺人鬼、世間はそう呼ぶし俺自身もかなりそうだと思っている。
彼女が俺を好きになるって確率がほぼないのは分かってるさ。
だが……ジョリーンは死んでいた俺の心を生き返らせてくれた!
俺の今にも崩壊しそうな心の闇を光で照らしてくれる!
最後の叫びだけを小さく呟いた。
それが聞こえたかそうでないかは分からないが、相手は満足そうに笑みを見せると俺に人差し指を突き付けてこう言った

「ならばお前は空条徐倫のために人を殺せるか?」

この言葉の意味は簡単に理解できた。
目の前のコイツはジョリーンを狙う敵を殺せと言ってるんじゃない。
嫌らしくニヤつく姿の奥底に見える限りなく黒い何かはそんなに甘いものと感じることはできない。
ジョリーンの為にこの会場にいる全ての人間を殺せと言っているんだ。
握りしめていた拳を滲み出てくる汗が濡らした。
自分の髪の毛が額に張り付いてうっとおしく思う。
何度か頭を過ぎりはしたが切り捨てた最悪の選択肢。
マウンテン・ティムと一緒に行動したお陰で過ぎりはしたものの深く考えるには至らなかった俺の未来の一つ。
人殺しに対する忌避感などとうの昔に消えうせた。
それでも……他に可能性があるのに俺は彼女の為に無実の人間を手に掛ける事ができるのか?
出来る、出来るに違いないがしかし―――――

「一つだけヒントをやるよ。お前は荒木飛呂彦に勝てると思うか? 自分達が束になってでも?」

……そうだ。
今までは倒せると思って行動してたがまだそんな確証なんて全くない。
けれども徐倫は荒木を倒すために動くだろう、たとえヤツが両親の敵でなかろうとも。
それが、勝ち目が万が一、億が一、いや那由也の彼方にあったとしてもだ。
だからこそ俺は彼女に惹かれたのだし、その行動を止めることはできない。
確かにそうだ、確実にジョリーンを生かしたいなら彼女を優勝させるのが一番確実だ、何もかもが万事解決するなんて都合のいい解決法なんてそうそう出てこない。
ウェザーは死んだ、エルメェスもエンポリオも……そして彼女の両親も。
皆殺しにすれば、プッチを含む全ての参加者を殺せば彼女は元の世界に帰っても安泰だ――――刑務所で一人ぼっちになること以外は。
そう、この方法でジョリーンを生かすならば俺の命は間違いなく無いということだ。
命を捨てる覚悟は出来ている。いや、覚悟するまでも無いことだ。
だが、ここで上手く脱出出来ても残るのは俺とF・Fだけだ。
彼女にとっては何が幸せか?
孤独を味わってでも生き延びる事か?
それは間違いなくNOだ。誇りややるべき事を投げ出して一人おめおめと生きて行けるほど彼女は安い魂を持っていない。
だけども……俺の我が儘であるが……どんな形であれどもジョリーンには生きて貰いたい。
ならば俺は呪われた魂を再び揺り起こすべきなのか?
全米を揺るがせた殺人鬼、ナルシソ・アナスイへと。
ふと、マイクOの事を思い出す。
ヤツは誰かを護る為に戦っているように見えたとティムは言っていた。
本当にアイツもこんな方法をとろうとしなかったのか?
愛する人の為に狂わないという保証がどこにあるというんだ?
死んだアイツは答えないだろうが無性にその答えを知りたくなった。
そして同時に思い出すのはティムからかけられたあの言葉。

『だがお前が、他の参加者を皆殺しにしてでも徐倫ってコを救うと言い出したら……』

『俺がお前を止める。生死は問わずだ』
194空条徐倫の仲間、そして友 ◆xrS1C1q/DM :2010/04/30(金) 23:56:04 ID:5znxYRYP
この生死を問わないという言葉の真意が今、なんとなく分かった気がする。
俺を殺してでもというだけでなく、ティムが命懸けで俺を止めるとも暗に言ってくれたのだろう。
本当にまっすぐな男だな。
少し羨ましく思い、そして出会ってすぐの俺にそんなことを言ってくれた“友”に心から感謝する。
アイツを殺したくはないのは心の底からでてくる本心だ。
だけどもジョリーンと天秤にかけるなら?
言うまでもない。
彼女は全てに優先するべき存在という考えは何があろうと覆らないだろう。
しかし、簡単に殺し合いに乗るとは言えなくなった気がする。
あの誇り高きカウボーイを、相棒を信じないのは俺としても心外な事だ。
だからこそ、俺はこう答える。
目の前の男に、いや――――

「F・F。俺の答えは保留だ。荒木に立ち向かう奴らを俺は何人も知っている。
今は奴らが勝てる事を信じたいし、俺も味方するつもりだ。
だが、もしも荒木に勝つのが困難ならば……俺はお前に協力するって選択肢を頭に入れておこう」

悪いなティム。
まだハッキリとは決まってはないが、この答えはお前を裏切ってるのは理解してるさ。
それに……俺にお前が殺せるかはまだ分からない。
だが、彼女が死ぬのなら……それ位なら俺は心を殺してでもお前を殺す。
そこまでして護る価値のある女なんだジョリーンは。

返事してすぐに俺はダイバー・ダウンを構えさせた。
半分とはいえども提案にノーを突き付けたのだから襲われてもおかしくない。
そう、間違いなくF・Fは殺し合いに乗った側の人物だ。
だが俺は止める気が起こらなかった。
ある意味で俺達は志をともにする仲間だからだ。

「F・F、俺からも提案がある。
逆に俺達が荒木に勝てそうなら……協力を頼む」

今は、別の道を行く。
そして最後にはより彼女が助かる確率の高い方へとつく。
返事はなかったが恐らく納得はしてくれただろう。
幸いな事にヤツが攻撃を仕掛けて来ることはなかった。

「徐倫はDIOの館へ向かっている、彼女はバイクに乗ってるが、まだ間に合うかもしれないから早く向かえ」

唐突な、あまりにも唐突な宣言。
F・Fが右腕を動かして、ある方角を指差した。
徐倫がいる。
その言葉だけで俺の左胸が明らかに鼓動を高めた。
急に今までの焦りが戻ってくる。
この場で何かを言う時間さえもが惜しい。
礼も言わずに俺は全力で駆け出していく。
195空条徐倫の仲間、そして友 ◆xrS1C1q/DM :2010/04/30(金) 23:57:06 ID:5znxYRYP
☆ ★ ☆



「ベスト……だな。」

去っていくアナスイの背が見えなくなった頃に一人呟く。
アイツの性格なら既に殺して回っててもおかしくないと思ったんだがな。
ただ、今はそうでないほうが遥かに都合がいい。
今は徐倫を護っていてくれるのが一番嬉しい。
あの情緒不安定な彼女をほって置くのは正直に言えば……怖い。
殺し合いに乗ってないなら余計な敵を作ってないし、徐倫の敵を排除するにも躊躇しない。
彼女に拒絶されたわたしが護れない以上はアイツだけが頼りだ。
他の事ならともかく、徐倫に関してならアイツは全面的に信頼できる。
それに……いざという時は自分の考えに賛同してくれる。
他の仲間ならそうは言わなかっただろう。
だが、アイツは皆とは違う。
正義や信念の為ではなくてただ徐倫の為に。
前回会った時、まぁ初対面の時だが、その時よりは丸くなった気がする。
けれども根っこの部分は同じみたいで安心した。

「今、アナスイに会えてよかった」

もう少し後ならば、あそこに行ってしまえば。
私は私ではなくなってしまうのだろう。
そうなればアナスイに話を持ち掛けることすらできなかったかもしれない。
徐倫の生存率を少しでもあげてくれる希望を見つけることを。
心を無くした殺人機械。
自分が行き着く先はそこなのだから。

『ジョリーンは死んでいた俺の心を生き返らせてくれた』

最初の質問の後にアナスイはこう呟いた。
そうだ、あたし……私もそうだ。
知性と使命しかない生きたまま死んでいる何か。
そんな私に思い出と心をくれたのがジョリーン、あんたなんだ。
だからこそ心を捨てに行かなければならないんだ。
元の、使命のためだけに動く怪物へとなるために。
不思議な共感をアナスイへと抱く。
馬鹿みたいなことだ、仲間として出会った時は全く噛み合わなかったのに殺し合いの場で今更なんて。
……少し感情が動きすぎてるな。
徐倫との接触のせいか? アナスイとの会話のせいか?
いや、どうせ最後なのだから少し位は気にせずに行かせて貰おう。


そして……最後の提案に賛成することは決してないだろう。
私は既に何人殺した?
今更戻れるとでも思うのか?
仮定の話でしかないが、もし荒木を倒す希望が濃厚になれば――――私は自分から命を捨てよう。
自分が捨石になる事で、彼らの勝機がより濃厚になるような方法で。
できるとすれば、私のできる贖罪はこれだけしかない。




こうして哀れな生物は湿地へと向かう為に再び足を動かしだした。
196空条徐倫の仲間、そして友 ◆xrS1C1q/DM :2010/04/30(金) 23:57:50 ID:5znxYRYP
【E-4/1日目 午後】

【F・F】
[スタンド]:『フー・ファイターズ』
[時間軸]:DアンG抹殺後
[状態]:身体ダメージ(中)精神状態不安定
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×2、壊れた懐中電灯、加湿器、メローネのマスク、カップラーメン、携帯電話
[思考・状況]:
基本行動方針: 空条徐倫を生存させるために彼女を優勝させる
1.湿地帯へ向かい、ケジメをつける
2.ブチャラティチームとプッチの一味は敵と判断
3.ブチャラティ一行を始末できなかった事を後悔
4.余裕が出来たら自分の能力(制限)を把握しておきたい
5. もしも荒木が倒せるならば対主催に益がある方法で死ぬ
[備考]
※リゾットの能力を物質の透明化だと思いこんでいます
※リゾットの知るブチャラティチームの情報を聞きましたが、暗殺チームの仲間の話は聞いてません
※ジョルノに対してはある程度の信頼を寄せるようになりました。出会ったら……?
※ダービーとアレッシーの生前の記憶を見たので三部勢(少なくとも承太郎一派、九栄神、DIO、ヴァニラ、ケニーG)の情報は把握しました。
※エシディシは血液の温度を上昇させることができ、若返らず、太陽光に弱いと認識しました。
※リゾットから聞いたブチャラティチームのスタンド能力についての情報は事実だと確信しました(ジョルノの情報はアレッシーの記憶よりこちらを優先)
※自分の能力について制限がある事に気がつきました。
※ディアボロの能力を『瞬間移動』と認識しています。
※参加者の時間のズレを何となく理解しました。
※アナスイが、脱出は不可能だと知ったときに殺し合いに乗りうるという事を把握しました。
197空条徐倫の仲間、そして友 ◆xrS1C1q/DM :2010/05/01(土) 00:01:17 ID:/WjfgxLo
走る、走る、走る。
流れる風景も、体に当たる風も全てを無視して彼は突き進む。
ダイバー・ダウンが義足となっている右足はともかく、生身の左足には徐々に疲労から生じた乳酸が溜まっていく。
息は荒れ、全身から滲み出る汗が服へと染み込み重みを増していく。
それでも彼は長髪を揺らしながら脚を止めようとはしない。

(F・Fはこの殺し合いに乗ったのか……)

命を繋ぐことを拒否してでも自分を救ってくれた相手の決断にはアナスイも少なからず驚いた。
しかし、徐倫のためだと思えば納得できてしまった。
殺し合いをやめろと説得することもしない。
ここまで何となくで生きてきた有象無象の連中を間引くために、そして万が一徐倫を優勝させることになったときに主催に抗うものが多すぎると言う事を防ぐために。
アナスイはこの二つを意識していたわけではない。
頭の奥深くで小さく芽生えた打算が無意識のウチに心に麻酔を打ち、F・F止めなかった理由にそれを加えなかったのだ。
あくまでも志が同じ仲間だから。
アナスイはその理屈が狂っていることに気が付きはしない。
ああ、愛は盲目。
理性も、友情も、正義感ですら彼女への愛の前では無残に消えうせる。
ナルシソ・アナスイは大事なものを麻痺させたままでひたすら走った。


一人の女の為に男は殺し合いの場で翻弄され続ける。


【E-4/1日目 午後】

【ナルシソ・アナスイ】
[時間軸]:「水族館」脱獄後
[状態]:健康(?)、全身ずぶぬれ、右足欠損(膝から下・ダイバーダウンの右足が義足になっている)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料、水2人分)、点滴、クマちゃん人形、双眼鏡、首輪(ラング)、トランシーバー(スイッチOFF)
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームに乗った参加者の無力化、荒木の打倒
1.徐倫に会うためにDIOの館へ向かう
2.殺し合いに乗った奴ら、襲ってくる奴らには容赦しない
3.ウェザー…お前…
4.徐倫に会った時のために、首輪を解析して外せるようにしたい
5.アラキを殺す
6.万が一アラキに勝てないと分かればその時は……?
7.徐倫に会えたら特別懲罰房へ行く…のか?
[備考]
※マウンテン・ティム、ティッツァーノと情報交換しました。
 ベンジャミン・ブンブーン、ブラックモア、オエコモバ、ブチャラティ、ミスタ、アバッキオ、フーゴ、
 ジョルノ、チョコラータの姿とスタンド能力を把握しました。
※ティッツァーノとの情報交換で得た情報は↓
 (自分はパッショーネという組織のギャングである。この場に仲間はいない。ブチャラティ一派と敵対している。
  暗殺チームと敵対している。チョコラータは「乗っている」可能性が高い。
  2001年に体に銃弾をくらった状態でここに来た。『トーキングヘッド』の軽い説明。)
  親衛隊の事とか、ボスの娘とかの細かい事は聞いていません。
※マイク・Oのスタンド能力『チューブラー・ベルズ』の特徴を知りました。
※アラキのスタンドは死者を生き返らせる能力があると推測しています。
※ラバーソールとヴェルサスのスタンド能力と容姿を知りました。
※ティッツァーノの『トーキングヘッド』の能力を知りました。
※首輪は『装着者が死亡すれば機能が停止する』ことを知りました。
 ダイバー・ダウンを首輪に潜行させた際確認したのは『機能の停止』のみで、盗聴機能、GPS機能が搭載されていることは知りません。
※ヴェルサスの首筋に星型の痣があることに気が付いていません
※自分達が、バラバラの時代から連れてこられた事を知りました。
※ダイバーダウンが義足になっています。(原作神父戦でウェザーにやったように)
 その為、スタンドの行動に制限があると思われます(広範囲に動き回れない等)。その他の細かい制限は後の書き手さんにお任せします。
※F・Fが殺し合いに乗っていることを把握しました
198 ◆xrS1C1q/DM :2010/05/01(土) 00:04:45 ID:5znxYRYP
投下完了です
誤字、矛盾などあれば指摘よろしくお願いします
199創る名無しに見る名無し:2010/05/02(日) 15:05:07 ID:w851Vuwn
ちょっと考えたんだが
クリームとかマンインザミラーで引き篭もったら優勝決定じゃね?
200創る名無しに見る名無し:2010/05/02(日) 15:24:16 ID:wT9BXAUN
そのための能力制限だろ
201創る名無しに見る名無し:2010/05/02(日) 18:12:21 ID:4260M7wA
>>199
そうならないように作り手のほうも頑張ってくれてるしな。
でなくてもヴァニラアイスの場合、DIO以外の人間に屈するような戦術は採らないだろうし。
202 ◆33DEIZ1cds :2010/05/03(月) 01:51:32 ID:TdmlWJFd
>>198

乙です!
アナスイ…頑張ってほしいが暗黒面に落ちそう…その葛藤が光っているッ
FFは悲壮だな…久しぶりの投下、堪能させていただきました。
矛盾などはなかったと存じます。改めてGJでした。

グェス、ホルマジオ、オインゴ、テレンス・T・ダービー、荒木飛呂彦、投下します
203Danse Macabre ◆33DEIZ1cds :2010/05/03(月) 01:53:20 ID:TdmlWJFd
ボインゴ、ボインゴよ。

兄ちゃんはここでいつまでもだらだらするわけにゃあ行かねえよな?
だって考えてみろよ、ここではゲームに乗ってる奴と乗って無い奴が必ずいるだろ?
乗ってるやつは基本単独で動くだろうからここでは置いとくぜ。
だが乗って無い奴等は当然、仲間を集めて荒木を倒して脱出だ!って考えるわな?

つまり俺が引きこもってる間に、どんどん組織的になっちまうってことだ。
結束が固まり、集団外の人間に対して警戒心が高くなる。
そんな中に俺が入れるか、ってえ話だよ。

スタンドは戦闘できない、人望も無い、そもそもほとんど知り合いがいねえ。
今のうちに誰かとのパイプを作んなきゃなんねえ。
自分の命以外どーでもいいけどよ。孤立化は避けたいところだぜ。
ひとまず他人になりすまして悪評振り撒きつつ情報収集…だな。
あーでも、潜り込めそうな集団に潜り込むってのもやってみるべきかもしんねえな。
何よりも、いつでもチケットを使って逃げられる、これはでかいぜ。

早くお前のとこに帰んなきゃあ、俺無しじゃお前は他人と口もきけねぇからなあ…。
今まで何もし無さ過ぎた兄ちゃんを許せよ。
まあ安心しな、最後に一人で笑うのは兄ちゃんなんだからよ。

つーわけで、遅れを挽回するために一先ず潜水艦を降りて、行動開始してみたんだぜ。
で、鏃の反応を頼りに歩いてたら大泣きしてる女を見つけちまったわけだが。

さーて、顔はどうしような?
承太郎は実は生きてましたってことにしても良いんだが、あいつのキャラを演じ切る自信が無いぜ…。
億泰に散々怪しまれたしよぉ。

ここはそうだな、名前と顔と喋り方がわかってる「露伴」にするぜ。
元々傲慢ちきな性格らしいから、悪評振り撒くにはもってこいじゃね?
この女が露伴の知り合いじゃなきゃあやりやすいんだが、そこは懸けるしかねえ。
服は元の服で行くしかねえな。

待ってろよォォー、兄ちゃんすぐ帰るからな!
204Danse Macabre ◆33DEIZ1cds :2010/05/03(月) 01:54:04 ID:TdmlWJFd
※  ※  ※

ヴェスヴィオの火山灰に埋もれた街、ポンペイ。
美しかったローマの属国を覆い尽くしたその灰は、既に風に散った後。
地面に横たわり朽ちた建築物も、今は植物の繁殖にその身を任せている。

だが、滅びと再生を一処で体現する美しい世界遺産も、己の虚無にむせび泣く者には只の陰気な石の塊でしかなかった。
乾いた石畳に涙が落ち、染み込む。
それを霞む目で見つめながら、女は泣く。泣き続ける。
ひんやりとした地面は彼女の体温を奪い、無為な時間の経過を実感させるかのようだ。

「あー、おい。君…」

「!!」

突如降ってきた声に、女は肩を弾ませて驚く。
岸辺露伴の顔をしたオインゴは相手の反応に自分も驚きそうになるのを抑えつつ、目の前の女を安心させるためさらに言葉を続けた。

「そんなに驚く必要は」

「う、うるせェエェー!あ、アタシに、チャラチャラ、は、話しかけてくんじゃねえェェエー!」

なだめるようなオインゴの調子を遮り、しゃくり気味ではあるが大声でどなり散らした女。
その声にポンペイの遺跡は反響し、空気を震わせてもなお静寂を押し返す。

差し出しかけた腕を盛大にはじき返され、オインゴはひきつった笑いを控えることができなかった。

(ゲェー、なんかしらんがプッツンしてやがるぜぇ…人選しくったか?)

とはいえ、膠着気味である己の状態を打破するためには、他人とコミュニケーションを取る事が必須である。
この女、今見ただけではどういう状況なのか判断が難しいが、何か精神的ダメージを存分に受けている事だけはよく伝わってきた。
しかし殺し合いの最中に一人で泣きわめく女…こんな奴と関わって何か得があるのか。

迷った時は己の直感を信じ、即断即決。
オインゴは諦める事を決意した。
無言で踵を返すと、立ち去るため足を一歩踏み出す。

いそいそと五歩、六歩…そこで足に感じる違和感。
大の男である自分の歩幅が、小さいのだ。
前に進んでいる気がしない。
後ろを振り返ると、思ったよりもずっと近くに女がいる。
オインゴは一瞬何が起こっているのか分からずキョトンとした表情で、うずくまる女を見つめた。

「待ちな…。」

呆けるオインゴにそう言うと、先程まで座り込んで身も世もなく泣いていた女がフラリと立ち上がった。
オインゴは女を見上げる。
そもそもこの時点でおかしいのだ。
なぜ、長身であったはずの自分が、女を見上げるような格好になっているのか?

女の表情は影になりよく読めないが、足元には小さなスタンドのヴィジョン。

オインゴの背中を冷や汗が伝う。

攻撃、されている?

オインゴはぎこちなく首を動かし、震えながら自分の体を見た。
手足のサイズが明らかにおかしい。
地面が近い。女の影が自分を覆い隠さんばかりだ。
205Danse Macabre ◆33DEIZ1cds :2010/05/03(月) 01:55:07 ID:TdmlWJFd
「アタシはもう…狂人でいい。」

女、グェスは大きく空を仰ぎ、眼は空を見ていた。だが瞳は宙を捉えて、ただただうつろ。

がくがくと震える足で逃亡を試みた小さな身体を軽くつま先で蹴飛ばす。
スライディングよろしく前へとつんのめり、数十センチすべるオインゴ。
小さくなったがゆえの激しい衝撃。
全く無意識のうちにスタンドを解除している己にも気が付くことができない。
元に戻った砂まみれの顔で手足をばたつかせ、匍匐前進の真似ごとを試みる様は壊れたねじまき人形の様だ。

「狂っていていい。元々まともなオツムなんて持ち合わせてなかったんだ。…あっちも狂人、こっちも狂人。何が起こるか分かりやしない。キャハハ…!」

空笑い、グェスはオインゴの衿首を造作もなく摘み上げると自らの眼の高さまで持ち上げて、下まぶたを膨らませる邪悪な笑いを晒す。
顔から血の気を引かせ、手足をばたつかせつつもオインゴは己のポケットへと手を伸ばしていた。

チケット。

後数センチ、それで助かる。

「さあ、楽しいィィダンスの時間だぜェェ?アタシの手のひらで最高にハイなタンゴを踊ってよ、ベイビー。」

「うおおぉぉ、だ、ダービィィー!」

叫んで身体を闇雲に捻り、己の身を鷲掴みにせんと迫っていたグェスの大きな手から抜け出すことに成功した。
地面に尻もちをつき、起き上がって走り出しつつ、ポケットから取り出した紙切れ。
それを開いて呼びかければ、フィールド外の小島へと自分だけを導いてくれるはずだった。

「待ちやがれミジンコ野郎ッ!ちくしょう、踏み殺してやる!みんなみんな踏み殺すッ!」

だがグェスも諦めず、転送が行われるよりも一瞬早く、今は小さなダービーのディバッグを引っ掴んだ。
206Danse Macabre ◆33DEIZ1cds :2010/05/03(月) 01:58:02 ID:TdmlWJFd
※  ※   ※


「もー。なんて言うかさぁ…」

吹き抜ける海風。
頬を撫でて過ぎゆくそれは、寄せては返す潮騒と溶け合いながら遥か水平線を目指す。
海面を射す日光は、その情景に煌めきの彩りを添えていた。

「支給品ってのは、頑張って貰うためにサービスしてるんであって…別にこう使えって強制はしやしないけど…。」

ここは命がけのパラダイス。
命をチップに嗜むのは、ギャンブルという甘く、危険な最高の美酒。

そこに躍り出た一組の男女は、まずその場の明るさに瞳孔を細める。

そんな彼らに気だるげな視線を投げるのは、奇妙なタトゥーを顔面に施した男。
掛けていた椅子からゆったりと腰を浮かせ、礼を一つ。
彼の口から紡ぎ出されるのは機械的な自己紹介。

男の丁寧な物腰に来訪者である男女はたじろぐも、沈黙を貫いた。

さらにその様子を地下にて眺める楽園の主。

白い穴のような部屋で一人、背徳に酔いしれる荒木飛呂彦は呟いている。
目の前に放り出されたおもちゃをどう楽しむか、心を躍らせつつも困ったような様子で。

「サボられると、困るんだよね。」

首をゆるゆると左右に振り、あきれたような微笑を浮かべた。
彼はサイドに置いた携帯電話を軽快に開くと、ボタン上に指を走らせる。

「あ、僕。うん。今来たでしょ?ギャンブル?違う違う、そいつそんな気全ッ然無いから。ちょっと聞いて。」

足を高く組み直して、携帯を耳に当てている腕の肘に反対の手を添える。
座った柔らかな革のソファーが、上質なその枠組みを軋ませた。

「あのさー、そこは賭けごとをして色々楽しむとこなわけ。逃げ場所じゃあないの、でしょ?」

スピーカーからは不明瞭な音が漏れ聞こえる。
荒木はぴょんぴょんと組んだ方の足でリズムを取りつつ、会話を続けるのだった。
そして通話先と2、3言交わし、話はおおむねまとまった様子を見せた。
が、そこで彼は眉間にしわを寄せると、拗ねた子供の様な雰囲気を作る。

「あー、でもまた君ぶつくさ言って来ない?前も言ったけど、駒に手を加えるくらいいいでしょ?」

スピーカーからは短い返事が聞こえる。

「そう言うと思ったけどさー。それに君はギャンブルするために呼ばれてるんだし。逃げてきた奴と談笑なんて壁と喋ってた方がましとか思うクチかなって思ったんだけど。」

また短い返答音。

「いやあ、まともに君が同意してくれたのって初めてかも、ありがとね。あー、ゲームするかどうかは彼らに聞いてみてね。じゃ、よろしく。」

携帯電話をはたと置き、荒木はにんまりと舌を出し、楽しそうに笑う。

「あ、彼の事言い忘れちゃった…なんてね、ワザとだよー。ごめんね、ダービー。」

クスクスという忍び笑いが、白い部屋に満ちた。
207Danse Macabre ◆33DEIZ1cds :2010/05/03(月) 02:05:36 ID:TdmlWJFd
※   ※   ※

携帯電話を静かに閉じ懐に仕舞うと、テレンス・T・ダービーは改めて来訪者に向き直った。
グェスはオインゴを宙にぶら下げたまま、怪訝そうな顔でダービーを凝視する。
オインゴは空中ブランコの様に大きく左右に揺れ、拘束から逃れようともがき続けていた。

ここで沈黙を破ったのはグェス。

「ヘッ…OKOK。今さらこんな事なんかで驚かねぇぜ。で?てめー今誰と喋ってた?」

彼女は腰に片手を当て、暴れるオインゴを地面に叩きつけた。
2度目の大きな衝撃に悲鳴を上げるもなんとか起き上がり、オインゴはダービーの方へと走り寄る。
逃げ込んだ靴の陰からグエスを伺いつつ、小さな声でわめく。

「ダービィィ!この女、イッちまってる!俺の姿を見ろ!助けろよ!な、オイ!」

その切実な願いを聞きダービーはにっこりと笑うと、手のひらで優しくオインゴを掬い上げた。
オインゴは心底ほっとした表情をし、口を緩ませてダービーと目を合わせる。
次の瞬間、ダービーは輝く様な笑顔をそのままに、斬首役人の様な躊躇の無さで言い放つ。

「お断りだ。」

ここでオインゴは焦っても、諦めることはしない。
まずい手を正し、うまい手へと変える努力をする。
彼は不器用ながらもチェスの駒を進め、自分の有利になるように整えようと画策する。
彼はいつだって心得ている。
強者に付き従い、その庇護を得るためにはまず、相手を喜ばせること。

「お、お前の言う事なら何でも聞くからよ。ここは見逃してくれ。あの女だけを元の場所に還らせれば済む話じゃねえかッ。」

「寝言は寝てから言うものです、オインゴ。いいか、私は誰の味方でも無い。ましてやここは賭博場。街角のカフェじゃあない。」

しかし近付く不幸は、その人間から一切の方法を奪い取るのだ。
ダービーはオインゴが手に握っていた小さなチケットをつまみ取ると、用も興味も無くなったと言わんばかりに、砂の上にオインゴを放り投げた。
オインゴは3たび訪れた落下の衝撃に耐え、なんとか着地を成功させる。

荒木の依頼はこれだった。

『チケット支給の目的にそぐわない使い方をする者、それを所持するべからず。』

「ち、ち、ちくしょう!覚えてろよ!?ぶっ殺す、てめえらぜってえぶっ殺すからな!」

オインゴが怒りに震えながら地団太を踏み、啖呵を切った時。
新たな駒がその沈黙を破った。

「ハッ…、しょーがねえなあ〜。」

その声はグェスの背後より投げかけられた。
同時にグェスの腕をひねり上げ、拘束する第三の男。
突如感じた背後からの気配にグェスは振り向くことも叶わず、苦痛に顔を歪ませる。

「痛ってえなオイ!触んじゃねえよ、誰だてめえ!グーグードール…」

「やめな、無駄だ。」

グェスは何か尖った冷たいものが首筋に当たっている事に気が付く。
自分の状況を飲み込み、拘束をほどこうともがくのをやめる。
額に背中に、冷や汗がどっとわき出るのを実感するグェス。
大人しくなったグェスに男は満足し鼻を鳴らすと、耳元で低く脅しをかけてきた。
208Danse Macabre ◆33DEIZ1cds :2010/05/03(月) 02:11:36 ID:TdmlWJFd
「言うまでもねーが、万年筆でも十分凶器になるんだぜ?おっと…お前のスタンドを使うか?ならこっちもスタンドを使うぜ、中々面白ぇ事になるだろーがよ。」

「…貴方は…ホルマジオ様。」

日光が作る濃い影達は微妙に揺らぎながら、お互いの動向を探り合う。
ホルマジオを除く3人の中に、グェスのデイバックが小さく開いている事に気付く者はいない。
先程まで身を潜めていた場所、狭いバックの中から外の空気に触れたホルマジオは大きく深呼吸をし、影のある笑みを作る。


プロシュートと別れてきた、あのこの世の掃き溜めの様な場所で。
あいつのスカしたスーツはぼろぼろで、血まみれ泥まみれ。

どうしてあんなボロカスみたいな死にざまになっちまったんだって、俺はそれが悔しくて。
あいつに何があったのか分からない、それが悔しくて。
何で死んだ、何で死んだって詰め寄っても、あいつ、答えやがらねぇ、それが悔しくて。

でも。

あいつの弟分は、まだ生きてる。
リーダーも、まだ生きてる。

そして俺も、まだ生きてる。

Low life___安っちい人生。
だが俺はまだこの舞台で踊る、踊り続けてやる。
例え荒木が俺たちを生ゴミの親戚くらいにしか思っていないとしても。

ホルマジオは唇に浮かんだ笑みを深める。
彼は背負った業を覚悟の炎で燃やし、この地獄の舞踏会に臨むのだ。

姿を現したのは、情報を収集するため。
テレンス・T・ダービーという名簿外の人間の存在。
当然荒木と通じているのだろう。
ならば拷問をしてでも情報を聞き出す価値がある。

しかし、その目論見は失敗に終わった。
曰く、テレンスも広義では参加者であり、荒木に付いて何を知っているわけでもない事。
曰く、この島と施設、ダービー自身ははいわゆる「支給品」であり、それだけの存在である事。
曰く、正規の情報を得るためには先ほど述べられたように魂を懸けたギャンブルというリスクを乗り越えなければならないという事。
209Danse Macabre ◆33DEIZ1cds :2010/05/03(月) 02:14:22 ID:TdmlWJFd

突然の乱入者に心情を乱されるも、ダービーは説明しながら己の役割を思い出す。
同じく笑みを浮かべ、腕を軽く胸の前へ振りながら礼をした。

「さぁ…どうなさいます。ここは賭博場。魂を懸けるか、懸けないか。」

「チッ…プロ相手にそうやすやすと勝負には乗らねぇ。帰らせろ。」

ホルマジオはグェスに万年筆を突き付けたまま吐き捨てる。
見込みが外れた。何の策もない今の状態では負ける、確実に。
負けるとわかっていて向かっていくのはバカだ。戦うと言うのはそういう事ではない。
ホルマジオは職業柄、本能でそれを知っていた。

グェスは憎々しい背後の男を何とか振りほどく方法を必死に考えるも、相手の能力が不明な事に尻ごみをして全く行動に移せない。
オインゴは未だ小さい己の身を持て余しながらも、ダービーに呪いの言葉を呟き続けた。

「畜生、ダービィィ…覚えてやがれ、人でなしがァ…」

「これは心外。私は中立です。そんな罵りは的外れだな、オインゴ。」

承太郎の姿でこの島に現れた時、オインゴはばれていないつもりだったが、ダービーはしっかりと見抜いていた。
その時テレンスが完全に中立を貫くことで、自らが助かっていたとも知らず、オインゴは唸り続ける。
ダービーは3人を見渡し、片足を一歩下げるともう一度頭を垂れ腕を振り、己の役割の終わりを告げた。

「では、さようなら。グッドラック。」
210Danse Macabre ◆33DEIZ1cds :2010/05/03(月) 02:16:16 ID:TdmlWJFd
※   ※   ※

「なんでだよ、ちくしょうッ。離せッ!アタシを放っといてよッ!」

場所はG-5、ポンペイ遺跡。
腕を拘束され、首筋に万年筆を突き付けられたまま、グェスは目を固く閉じて叫ぶ。
わめく彼女をよそに、ホルマジオは周囲を見渡し、他の人間がいない事を確認しつつ身を潜める場所を見繕っている。
そこでふとオインゴがいなくなっている事に気が付いた。

「あー、ちくしょう、さっきの小っこい奴は逃げたか…オイ、黙れ。じっとしねえと刺すぞ。」

ホルマジオは女をどうするのか決めかねていた。
如何に取り乱してるとは言え、殺し合いを止めるためにせめて情報収集くらいはせねばならない。

(しっかしこいつのスタンド能力…なんつーか、しょうがねーなァ…)

花京院のポケットから飛び出し、プロシュートの元を離れた先で再び見つけたのがこの女だった。
彼女のデイバックの中から全てを見ていたホルマジオだったが、自らとほぼ同じ能力者がいるとはまったく驚きで。
ふうと吐息をもらしつつも、今後の計画を瞬時に立てる。

ホルマジオは女が黙るまで待つつもりだ。
当然こちらに敵意があれば始末する。それは揺るがない。
しかし今は錯乱している感情を沈めなければ判断ができない。
このまましばらく黙らなければリトル・フィートを食らわせる事に決めていた。

スタンド能力、本人の性格、今の状況も顧みず泣き叫ぶ精神の幼さ。
どれを取っても同行させるには面倒くさそうな相手だ。
ならば持っている情報を全て頂き、小さくして持ち運んでやればそのうちおとなしくもなるだろう。
そして次に向かうべきはどこか、それはもう一度地図を見て考えなくてはならない。

プロシュート達の死に誓って、自分はゲームには乗らない。そう決めたのだから。
残ったチームの奴らが、一瞬でも優勝を考えた自分を受け入れてくれるかどうか、わからない。

(だが俺はまだ、まだこれからだ。まだやれる。まだ、生きてるんだからな。そうだろ、プロシュート、ギアッチョ。)
211Danse Macabre ◆33DEIZ1cds :2010/05/03(月) 02:17:41 ID:TdmlWJFd
改めて万年筆が皮膚ぎりぎりのところまで押し当てられる。
金属質な切っ先の冷たさを感じ、グェスの目にはまた涙が浮かんだ。

全て失ってもなお、時間は過ぎ去り、己の身には起こらなくてもいいようなことが起こり続ける。

マップ外の島の存在を知り、そこに男がいる事、ギャンブルが行われている事、様々な情報が身の上を通り過ぎても、彼女には無価値だった。
今まで信じたかった事、好きになろうとした事、うまくいきそうだった事、全て全て、彼女の手を滑り落ちていく。

彼女は何も知らなかった。
徐倫も何も知らなかった
花京院も何も知らなかった。
只一人、一部の状況を分かっているフーゴは、保身ゆえに、その知能の高さゆえに、心を荒れるに任せるしかなかった。
お互い気持ちは近い場所にあったのに、状況が彼らを無知の状態に縛り付け、それぞれの心は遠ざかってゆく。

そして”知らない”のは”無い”のと同じなのだ。


悲痛な嘆きが再びポンペイ遺跡を訪れ、暗欝な響きを幾重にも反響させた。



【チーム・ザ・リトル結成?】
【G-5 ポンペイ遺跡/1日目 夕方】

【グェス】
【時間軸】:脱獄に失敗し徐倫にボコられた後
【状態】:精神消耗(大)、疲労(中)、頬がはれてる、両腕にダメージ(中)、錯乱
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考・状況】基本行動方針:ゲームに乗った?
0.離せよ、ちくしょう!
1.アタシは狂人でいい、みんな踏み殺してやる…でも、悲しくて何だかよくわかんないや…。
2.男の腕を何とか振りほどいて逃げたい。
【備考】
※フーゴが花京院に話した話を一部始終を聞きました。
※ダービーズアイランドを見ましたが、そこに何かがあるとは思ってません。→ダービーズアイランドが遠巻きに見た島だとは分かっていません。
※馬がどうなったかは、次の書き手さんにお任せします →E-5繁華街を彷徨っていると思われます。

※ゲームには乗ったつもりでいますが、悲しみによる錯乱が大きい状態です。落ち着いた後にどう考えるかは不明です。

【首輪について】
※グェスが持っていた首輪は、ウィル・A・ツェペリ、ンドゥール、広瀬康一、ワムウの物です。
 (現在、ワムウの首環は金属部分の一部が壊れていますが、頭につながる第二の爆弾は配線ごとくっついたままです。
  中身が全て外に出されています、そして、信管と、爆弾の半分が無い状態です。)
※グェスは、首輪が付けていた本人が死亡すれば、何をしても爆発しないという事と、首輪の火力を知りました。
※首輪についている爆薬は、人一人を余裕で爆死させられる量みたいです。
 グェスは「もし、誰かの首輪が爆発したら周りの人間も危険な火力」と判断しました。
 (ただし、首輪から取り出して爆破したからこの火力なのか ワムウの首輪だからこの火力なのかは不明です。)
※謎の機械はおそらく盗聴器、GPSだと思われますが、グェスは気づいていません
212Danse Macabre ◆33DEIZ1cds :2010/05/03(月) 02:19:16 ID:TdmlWJFd


【ホルマジオ】
[時間軸]:ナランチャ追跡の為車に潜んでいた時。
[状態]:カビに食われた傷、精神的疲労(中)、肉体的疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、万年筆、ローストビーフサンドイッチ、不明支給品×3(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:荒木を『ぶっ殺す』!
0:踊ってやるぜ、荒木。てめえの用意した舞台でな。だが最後は必ず俺らが勝つ。
1:グェスが大人しくなり次第、情報を吐かせる。その後どこに向かうか決める。
(聞き分けが悪ければ攻撃し、大人しくさせる。さらにゲームに乗っているなら始末する。)
2:ボスの正体を突き止め、殺す。自由になってみせる。
3:ディアボロはボスの親衛隊の可能性アリ。チャンスがあれば『拷問』してみせる。
4:ティッツァーノ、チョコラータの二名からもボスの情報を引き出したい。
5:もしも仲間を攻撃するやつがいれば容赦はしない。
6:仲間達と合流。
[備考]
※首輪も小さくなっています。首輪だけ大きくすることは…可能かもしれないけど、ねぇ?
※サーレーは名前だけは知っていますが顔は知りません。
※死者とか時代とかほざくジョセフは頭が少しおかしいと思っています。
※チョコラータの能力をかなり細かい部分まで把握しました 。

213Danse Macabre ◆33DEIZ1cds :2010/05/03(月) 02:22:20 ID:TdmlWJFd
※  ※  ※

「クソックソッ!」

一人、歩を進めながら帽子を取り、頭を掻き毟る。

オインゴは潜水艦には戻らなかった。
他者との接触は完全に出鼻をくじかれ、何よりも自分の切り札を失った。
それでも安全な潜水艦に戻らなかったのは、あれも支給品、つまりは荒木の息がかかっているものだから。

そこに引きこもっていれば潜水艦ごと爆発…などと言う事が起こりかねない。
首輪の爆発の方が現実的だが、オインゴはひたすら怯えて誇大な想像を繰り広げることを止められなかった。
何も知らずぬくぬくと寝ているうちに、海の藻屑。いかにもあり得そうではないか。

「ど、どうすりゃいい!?どーすんの俺!?」

オインゴは走る。
いつの間にか元のサイズに戻っているのは射程距離の問題であろう。何も不思議ではない。
それよりも、酸素不足で真っ白になりそうな頭でひたすら弟の所へと帰るために考える。

「優勝、それしか無ぇ…。」

ゴクリと喉を鳴らす。
バックに入っている青酸カリ。
これは飲み物などに混ぜると変質しやすい、致死量も200g前後と多く、はっきり言って毒殺には向かない薬品。
しかし、そう、問題なのは”使い方”だ。
誰も死なずとも、『誰かが毒殺を試みた』という疑いを起こせば、一気に疑心暗鬼が蔓延するだろう。
瓶を誰かの荷物に紛れ込ませるだけでも、状況次第では十分効果を発揮するかもしれない。

「でも、じ、自信無ぇぜ〜…。とにかく目立たねーように、目立たねえように…こっそり動くしかねえな…。」

地図を開き、人の多そうな施設・場所に見当を付ける。
そして荷物をしまうと、壁に張り付き辺りをうかがいながら、建物の影から影へ。

格好悪くたって構わない。
大切な弟が待っているのだ。
彼は決して盲目ではない。
自分の能力を分かって、できる最大限の力量を発揮し、立ち回るのだ。
214Danse Macabre ◆33DEIZ1cds :2010/05/03(月) 02:29:05 ID:TdmlWJFd
【G-5とG-4の間 ポンペイ遺跡のはずれ/1日目 夕方】
【オインゴ】
[スタンド]:『クヌム神』
[時間軸]:JC21巻 ポルナレフからティッシュを受け取り、走り出した直後
[状態]:健康。胃が痛いのは完治。
[装備]:首輪探知機(※スタンド能力を発動させる矢に似ていますが別物です)、承太郎が徐倫に送ったロケット
[道具]:支給品一式(食料を消費。残りはペットボトルの水2本、パン3個。その他の基本支給品は二人分)、
    青酸カリ、学ラン、ミキタカの胃腸薬、潜水艦
[思考・状況]
基本行動方針:積極的に優勝を目指すつもりはないが、変身能力を活かして生き残りたい。
0.これからは『消極的攻め』で行くッ…自信無ぇ〜…
1.ひとまず情報収集の為、他人と接触したい。
2.他人の顔を使って悪評を振り撒こうかなぁ〜。できれば青酸カリで集団に不和を起こしたい。
3.潜水艦はある程度使うが、引きこもる事は危険なのでもうしない。
5.億泰のスタンド能力はもういいや…


※顔さえ知っていれば誰にでも変身できます。スタンドの制限は特にありません。
※承太郎、億泰、露伴、ウェストウッド、テレンス、シーザー、ジョージ、グェス、ホルマジオの顔は再現できます。
※エルメェス、マライア、ンドゥール、ツェペリ、康一、ワムウ、リサリサの死体を発見しました。
 しかし死体の状態が結構ひどいので顔や姿形をを完全に再現できるかどうかは不明です。
※億泰の味方、敵対人物の名前を知っています。
※   ※   ※

___いつだってさ。
いつだって、運命は僕らを先回りする。いつも何もかもが足りないんだ。
でも足りないからこそ、彼らの様に抗うわけでしょ?それがいいんだよ。
僕は見たい。命をたぎらせて『常にどこかへ向かう』彼らの姿を。
だからこのゲームの中で、僕が彼らにとっての運命になるんだ。

彼は…オインゴは怠惰による代償を僕、つまりは運命に支払わされたのさ。

チケットはどうしよっかなあ〜わかんない。
気が向いたらフィールド上にこっそり置いたりとかするかも。

ホルマジオの事は、んー、答える必要はない。
って言うか、教える義務もないし。
あんまり当てにされても困るなあ。
僕は気まぐれだからね、いちいち理由とか無いよ。

あ〜、ジョルノくんに僕の居る場所ばれちゃったし、これからどうなるのかなあ。楽しみだよね!

___そう言った彼の顔は、本当に純粋な笑顔でした。
参加者が退場した後訪れた彼に、私は質問したのです、何故オインゴからここの入場許可証を取り上げたのかと。
そしてホルマジオの事を黙っていたのは何故なのかと。

私の問いにこう答えた彼に、参加者たちの前に姿を現しているときの邪悪さはありませんでした。
一体どちらがこの男の性分なのでしょうか。

わからない、だからこそ危険です。
この男は子供の様に純粋に楽しんでいる。
全ての子供の行動が主体的であるのと同様、この男は真の意味で客観が無いと言えます。

私は彼の笑顔を前に恐怖を感じなかったことはありません。
その顔で見つめられると足に根が生えたように動くことも叶わず、じりじりと緊迫を感じます。
この奇妙な笑顔は、底知れぬ不安と嫌悪に私を導きます。
そして自由ではない私は、がんじがらめな己の身を嘆きつつ、こう考えることを止めることができません。
      
誰でもいい、ただ、それが可能ならば。
稀なる才にてこの”奇”を凌駕し、すべてを終わらせて下さい、と。
215Danse Macabre ◆33DEIZ1cds :2010/05/03(月) 02:29:47 ID:TdmlWJFd
※   ※   ※


「皆が僕の為に踊ってる…楽しいな!」

ここはまるでダンスホール。
皆が死の舞踏を踊る。
彼の目が微笑み、そこに注がれ続けている限り、狂気の宴は終わらない。


【荒木飛呂彦】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:日記、ダービーズチケット、???
[思考・状況]
基本行動方針:運命そのものになって、それに抗う人々を見る。
0.僕は皆の運命になりたい。
1.さすがだ、ジョルノ君。
2.ダービーのことは出来る限り守る。楽しみが減るから。
3.次にダービーに勝った参加者には、自分と勝負する権利を与えてやっても良い。

※チケットは荒木が持っています。忘れるかもしれませんが、気が向いたら他の参加者に渡してもいいと考えています。


【G-10 北西部 小島(ダービーズアイランド)/1日目 夕方】
【テレンス・T・ダービー】
[時間軸]:承太郎に敗北した後
[状態]:健康、精神疲労(大)
[装備]:人形のコレクション
[道具]:世界中のゲーム
[思考・状況]
思考0.誰でもいい、救ってくれ…
思考1.荒木、この男、やはり読めない…ッ
思考2.私だって死にたくはないですよ。
思考3.この先の方針を考える。
状況1.参加者ではなく、基本はG-10にある島でしか行動できない。
状況2.荒木に逆らえば殺される筈だが……?
状況3.参加者たちとゲームをし、勝敗によっては何らかの報酬を与える(ように荒木に命令されている)。
[備考]
※ダービーは全参加者の情報について、顔と名前しか知りません(原作3部キャラの情報は大まかに知ってます)。
 ただし、変装している参加者の顔は荒木が教えています。
※ダービーズ・アイランドにも放送は流れるようです。
※アトゥム神の右足首から先は回収しました。
※第二放送を聞き逃しましたが、死亡者の名前は随時荒木が教えています。
※ジョージ・シーザーと会話をしました(情報の交換ではありません)

216 ◆33DEIZ1cds :2010/05/03(月) 03:01:55 ID:TdmlWJFd

以上です。

誤字・脱字・矛盾ETC.ご指摘があればよろしくお願いします。

217創る名無しに見る名無し:2010/05/04(火) 14:03:54 ID:mXPXv7Km
投下乙!
荒木の目的の一端が明らかになり、ロワもそろそろ佳境へ向かうって感じになりましたね
グェスはしょうがないよな……あんだけのことがありゃそりゃそうなるよ
願わくば覚悟を決めたホルマジオに何とかしてもらいたい
同じタイプのスタンド使いだしねw

そしてついにオインゴ始動!
いままで参加者との交流がほぼゼロなあいつはどうなるんだww
218◇0ZaALZil.A氏代理:2010/05/04(火) 19:50:20 ID:mXPXv7Km
あたたかい。

幾度となく死に追われ続けた頃は、肌に触れる空気について考える余裕などなかった。
それが今では、ひどく落ち着いている。
ジョセフらがいたことが、精神の安定につながったのは否定できないな。
不思議なものだ。出会い方は最悪だったのに。
あの時から過去との決別を望んではいたが……こうなるとは。

それはいいとして、ここはどこだろう?
確か俺は、ポルナレフの説得を試みて、結局のところ逃げて、道端で休んで。
なのに、今俺は海を臨んでいる。
スタンド攻撃に巻き込まれでもしたのか? いまさらレクイエムの再来か?

……それにしても暖かい。
ジョセフが託した鉄球から感じた『温かい』ではなく、『暖かい』のだ。
敵意なんか微塵も感じない心地よさ。
スタンド攻撃にしてはこちらに仕掛けて来る気配がない。あの時の俺は隙だらけだったはずなのに。
というより、こんな悠長な事をしなくてもあの場でとどめを刺せばいい。

しかし、何故だろう。
俺はこの暖かさを知っている。
何と言うべきか……経験として、記憶に刷りつけられていると言ったところか。

視界に入る緑は少ない。痩せた土地で、植物がろくに育たないのだろう。
代わりに、尖り削れた岩肌が土地の大部分を占める。
建築物は岩と同化しているように見え、自然と一体化しその静けさを体得している。
何より特徴的なのは、海。
エメラルドのように蒼い輝きや波の立たない静けさは、荒んだ心が癒される、つい見とれてしまう美しさだ。

どこだったか……以前、来たことがあるような気がしたんだが。
他者とのかかわりを拒み、積極的に動きはしなかったのに。
度重なる死と、地獄のような殺し合いしか記憶に残っていないと思ったのに。
それでもこの場所は、深い意味が合った気がしてならない。
かすかな記憶を辿っている最中、若い男女が浜辺――岩辺と言うべきか――を歩いているのが目に入る。
位置が悪く後ろ姿しか見えないが、背丈からして2人とも20代かそこらといったところか。
腕を組んで、寄り添っている。きっと恋人同士か何かなのだろう。


219◇0ZaALZil.A氏代理:2010/05/04(火) 19:51:13 ID:mXPXv7Km
と思ったのもつかの間、二人は突然互いの腕を解いた。
男の方が振り払う形で。

『どうしても?』
『すまない。いいところだからな、ここは』
『謝ることないわ。無理を言ったのは、あたしなんだから』

別れ話――いや、駆け落ちの誘いを断ったと見るべきか。
これで、話しかけるタイミングを失ってしまった。そもそも彼らの視界に収まっていたかも疑わしい。
表情を見ることは未だできないが、女が肩を落としたことで落胆しているのが察せた。

『君も故郷を大切にするといい』
『でも素敵なところよ、ここだって。あなたのような人にも会えたんだから』
『持ち上げたところで何も出せないぞ』
『自信持ちなさい。せっかくのいい男が台無しよ。……あ、でもスットロいのは直した方がいいわね』

ありふれたセリフの応酬。
若いというのはそういうものなのか、どうもそのあたりは疎い。
気恥ずかしさ、歯痒さを感じる一方で、盗み聞いているようで申し訳なくも感じる。
しかし妙だ。
俺は、この二人に初めて会った気がしない。
特に男の方に関しては、普段から慣れ親しみ、気兼ねなく接していたようにさえ思う。

――俺は何か、大切な事を忘れているのか?

『写真、撮ってくれないかしら? 離れ離れになっても、思い出は留めておきたいもの』
『……ああ。いい場所を知っている』

そして、男は石碑の側に女を引き寄せた。
いい場所と豪語するのも納得がいく。海岸と建造物、両方を背にして写真を撮れるからだ。
それこそ、この光景を観光客向けのガイドブックにそのまま載せても良いくらいに。
石碑に女が寄りかかる。


220◇0ZaALZil.A氏代理:2010/05/04(火) 19:52:09 ID:mXPXv7Km
顔が見えた。左右にウェーブを描く後ろ髪。丸く、ぱちりと開かれた瞳。

そして、石碑に刻まれた“COSTA SMERALDA”の文字。

思い出した。
ここは、彼女は――!

『さよなら、ドナテラ』
『……さよなら、ソリッド。あなたのことは忘れない』

呆然としている間に、撮影は終わっていた。

駆け寄るものの、かける言葉など思いつかない。
ただ、あの時と同じように慰めが欲しかったのかもしれない。
これがただの夢だったとしても構わないから、思い出させてほしかった。安らぎが欲しかった。
肩を掴み、引き留めようとする。

「待ってくれ! お前は、いや、君は――」



世界が紅蓮に染まった。



「なッ――」

眩いくらいの炎。あらゆる建造物を包み、焦がし、焼き払う赤。
いつの間にか、俺は炎上する村の中にいた。
強風が俺の長髪をたなびかせる。
そのせいか、火は地獄のように燃え盛り、怪物の胃袋のように生あるものを飲み込んでいく。
逃げ惑うことすら叶わないのだろう、泣き叫び、呻く声がする程度で周囲に人は見当たらない。

悠然と立ち尽くす、たった一人を除いて。

見覚えがある青年――と言うのは間違いだ。
知り合い――事実だがそれも語弊がある。

俺はあいつを知っている。この火事を俺は知っている。
知っていなきゃあおかしい。

振り向き、薄く笑いを浮かべたそいつは――


「あいつは、俺だ」


――悪魔(ディアボロ)だった。


  ★


221◇0ZaALZil.A氏代理:2010/05/04(火) 19:53:11 ID:mXPXv7Km
「……夢か」

ベタリとした嫌な汗をぬぐいつつひとりごちる。
しばらくして、ただの夢ではなく逃れようのない過去だがな、と自嘲気味につぶやいた。

愛を捨て、故郷を捨てたあの日。
そんな自分の過去に目を背けてばかりもいられないらしい。
『過去はバラバラにしてやっても石の下からミミズのようにはい出てくる』、全くもってその通りだ。
あえて訂正を入れるなら、人は過去を断ち切ることなどできないのだ。
俺自身、そのためにやられたし、今だって引きずっている。

ジョセフは後悔を、未練を力に変えた。
それはきっと、大切な存在がいたから、帰る場所があったから出来たこと。
俺は、それらをすべて断ち切ってしまったんだ。ジョセフとは違うことを改めて認識する。
やはり『キング・クリムゾン』は、孤独を約束された王宮だったのか?
それこそが、俺の本質なのか?

「ドナテラ……」

かつて自分が愛した女の名を呟く。
聞くに、彼女は最期までトリッシュの身を案じていたらしい。
なのに俺は、いつだって独りよがり。

当時を、今を知ったら軽蔑するだろうか?
トリッシュのように強い正義で応えるだろうか?
或いは、罪を許してくれただろうか?

答えは出ない。だが俺は、変わりたい。
だから、どうにか覚悟するだけの勇気が欲しい。
どうしても俺は、この期に及んで誰かに縋りたかった。


  ★


「エメラルド……スプラッシュ!」

両掌を構えて言い放つ。
飛礫、と言うには大粒の、磨かれたような深緑の輝きを放つ光弾が散来。
『キング・クリムゾン』の両腕を駆使して弾き、あるいはいなしてガードする。
近くで見ると宝石のようなエネルギー波は、やつれた少年の顔色とはひどく対照的だ。


222◇0ZaALZil.A氏代理:2010/05/04(火) 19:54:01 ID:mXPXv7Km
何度、この作業を繰り返しただろうか。
懲罰房に着いたは良いものの、先ほどからずっとこの調子だ。
早人の無事も気になる。まさか既に攻撃されたか?
……考えても仕方がない。これをどう対処するかが重要だ。

ポルナレフと彼が仲間なら、俺はポルナレフが言う――確かDIOと同じように敵視されているのだろう。
説得しようにも、第一印象が最悪だ。
攻撃しようにも、光弾の威力は大したことないが、絶え間なく連射され接近を許さない。
退却しようにも、時を飛ばすのには疲労が伴う。


――時を飛ばし、回り込んで始末……


……くっ! 俺は何を考えている!
彼がポルナレフの仲間だとしたら! とるべき行動など決まっているだろう!

「やめろ、俺は君に攻撃するつもりはない!」

下手にこちらから仕掛けられない以上、このままではジリ貧だ。
その一言でわずかに攻勢が緩み、その隙に俺はデイパックを手放す。矛を収めず話し合う気になどなれないだろうしな。
『キング・クリムゾン』のヴィジョンも収める。
こうまでして、流石に分かってくれたのだろう、少年は構えを解き両手をだらりと下ろした。

「ようやくやめてくれたか」
「やめた? 違いますよ。まあ確かに撃つのはやめましたが」

予想に反した返事。
言葉を零した少年の面相、そこから読み取れたのはわずか。
俺の対人関係の狭さに起因するものではない。
むしろ、ギャングとしての経験がかすかにだが俺に味方した。

少年の表情――「事」を終えるだけ、そう言っているかのような。

「攻撃は既に終わっているんです」

――冷や汗が出た。

マンホールの隙間から触手が湧き出す。
気を配る間もなく、手足喉元に至るまで、絡め取られて縛られた。


223◇0ZaALZil.A氏代理:2010/05/04(火) 19:54:44 ID:mXPXv7Km
「『法皇の緑』を既に張り巡らせておきました。
 エメラルド・スプラッシュで視界を狭めましたが、集中がこちらに向いていて助かりましたよ」

少年の足下から、根っこのように伸びたヴィジョン。
地下道越しに這わせてこちらに届かせたようだ。
いまさらスタンドも出せないし、出したところで微塵も動かせまい。

「DIOについて聞きたいのはやまやまですが……今までのように手遅れになってはまずい」

ここで、終わってしまうのか。

後悔がないわけではないが、それも良いのかもしれない。
元来俺は、夢のように裁かれるべき存在だったのだ。
生まれ故郷を焼き尽くしてからは、裏社会を暗躍し、強大な組織を支配するド悪党として君臨し続け。
鎮魂歌でさえ鎮まることのなかった魂は、こんな悪夢で散らすのがふさわしい。
ジョセフに何と詫びようかと考えたが、そもそも同じ場所に行けるはずもないな、と意味を為さない思考を遮断した。

そして、俺の目前に石が――


  ★


「そちらが襲われているように見えた」

呆気にとられる男に近寄る。
謝罪は頼まれてもしないつもりだ。こいつは手を抜いていた、傍目に見て決闘の類ではない。

止めを刺そうとしていた少年の耳元に音を張り付けた石をぶつけ、気絶してもらった。
男の背後からの投擲ゆえ死角となり、実に簡単に済んだが、集中がこちらに向いていなかったのが大きい。
よほど夢中、というより執着していたんだろう。
あるいは、狂気なのかもしれない。

「情報は一人でも多く広めなければ意味がない。俺の目的のためにも」

とにかく、伝達相手は誰でもいいというわけではない。
一人でも多く、が理想だが聞く耳持たないようならば時間の無駄。

例の言葉を伝えようとしたところで、羽散らすように翼を上下動させる鳩が向かってきた。
慌ただしく右肩に停まり、俺は備え付けられた手紙を取り出す。
……思ったより早かったな。次の目的地も決めかねていたから、ちょうどよかったが。


224◇0ZaALZil.A氏代理:2010/05/04(火) 19:55:29 ID:mXPXv7Km
「時間がない、簡潔に済ませる。
 『ナチス研究所にて、脱出の為の情報を待っている』、『民族衣装をまとった身長2メートルほどの怪物に気をつけろ』」

二つ目はもっと事細かに伝えるべきか。
だが、それも時間に余裕があればの話。伝えるだけなら他所でも出来る。

「頼まれた言伝はそれだけだ」
「待ってくれ」

こちらに待つ事情などないのだが。
しかし、引き留めたからには『利』を期待する。
ひどくまっすぐにこちらを見つめてくる。

「……目的とは何だ?」
「一秒でも早く、再び故郷の地をこの足で踏みしめること」

こいつは、どうにも掴めない。腹に一物抱える曲者と言うわけではなく。

億泰と同種の『意志』も感じるが、警戒心を飛躍させたかのような怯えも見受けられる。
灰色、ではない。形容するなら透明。これから先、何物にも染まりうるだろう。
進むべき道を見出すか、あるいは恐怖に駆られて暴徒となるか。
それを決めるのは俺ではなくこいつ自身。だが、脱出の可能性は少しでも高い方がいい。
質問したげに口をまごつかせている様を見ると、億泰の時のように助言を呈したくなる。

「そうやっているうちに、何者にも変えられぬ時間は過ぎ、戻らなくなる」

ふさわしい言葉もあるわけだからな。
そして、これは俺自身に対しての言葉でもある。

「その少年。始末するならそれもいいだろう。お前が選べ」

奴との約束は、所詮口約束。だが、ここで向かわないという選択肢はない。
館にいるのが殺戮に身をやつす危険人物だろうと、荒木を倒すため確固たる覚悟が出来ている人物だろうと。
そこに風が吹かない道理はない。
ツンツンと、急かすように鳩が頬を突っついてくる。
正確に手紙を送り届けたことから、この鳥は相当な訓練をされているのだろう。
このまま肩に乗せて走っても問題あるまい。

彼方目指して走り去る。風は流れて止まらない。


  ★


225◇0ZaALZil.A氏代理:2010/05/04(火) 19:56:15 ID:mXPXv7Km
房の一つのベッドを拝借し、長身の少年を寝かせる。年季が入っていて綺麗とはいえないが、床よりマシだろう。
少年と言っても体格は大の男と比べて遜色ない、運ぶのはそれなりに苦労した。
教えられた二つのメッセージを書きとめて枕元に置く。
俺の口からは伝えない。しばらく、ここには帰らないつもりだ。

「俺にも目的が出来た」

過ぎた時間は、変えられないし戻らない。
過去にこだわり続けた頃の俺が、不毛な戦いをしてきたことでそれを証明している。
俺は過去と決別し、今度こそ内なる恐怖を乗り越えたい。

「ポルナレフの説得は、必ずやり遂げる」

もう、過去に目を向けてウダウダやっている場合ではない。一秒だって惜しい。こうなったら殴ってでもついて行かせる。
俺の知るポルナレフは、戦士としての精神力、とりわけ冷静さがあった。
いくら強くても本調子でない男一人、放っておけるはずがない。
ジョセフの遺志ではなく、俺の意志がそうさせる。

少年の心情を考えると、むしろこれが得策なのかもしれない。
唯一、早人が気がかりだが……距離が距離だ、問題なく着くことが出来るだろう。
建物の広さも大したものだから、既に着いているが、見過ごしているだけなのかもしれない。
どちらにせよ、彼はいくらなんでも子供相手に襲いかかることはないだろう。

「故郷――俺も絶対に帰らなければな。花の一つも供えてやらないままでは、死んでも死にきれない」

初めて、痛み以外の理由で死を恐れた。
彼女にはせる思いは、愛とは違う気がした。いまさらそんな感情を持ちだす気にもなれない。
あの夢は度重なる死によって、風化したはずの過去。
だが、彼女のことは忘れない。
王の宮殿が、孤独を約束されたものではないと証明するためにも。

今度こそ、俺は帝王になる。なってみせる。
王宮下の人々とともに未来を選ぶことができる、真の帝王に。



【F-5とE-5の境目/1日目 夕方】
【ディアボロ】
[時間軸]:レクイエムジョルノに殺された後
[状態]:右手に負傷(小)。肋骨二本骨折。身体疲労(中)。精神疲労(中)。鼻にダメージ(中)。強い決意。強い恐怖
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(水は全消費)、ジャイロの鉄球
[思考・状況]
基本行動方針:ジョセフの遺志を継ぎ、恐怖を乗り越え荒木を倒す。
1.ポルナレフを見つけ出し、協力するよう説得する。とりあえず北へ
2.ジョルノには絶対殺されたくない。来るなら立ち向かう。
3.恐怖を自分のものとしたい。
4.自分の顔と過去の二つを知っている人物は立ち向かってくるだろうから始末する。
5.電車内の謎の攻撃、謎の男(カーズ)、早人怖いよ。だが乗り越えたい
6.駅にあるデイパックを回収したい
[備考]
※音石明の本名とスタンドを知りました。
※参加者が時を越えて集められたという説を聞きました
※『恐怖を自分のものとして乗り越える』ために生きるのが自分の生きる意味だと確信しました。
※アレッシーとの戦闘により、『エピタフ』への信頼感が下がっています。
※キング・クリムゾンになんらかの制限がかかってます。内容は次の書き手さんにお任せします。
※サンドマンのメッセージを聞きました。


226◇0ZaALZil.A氏代理:2010/05/04(火) 19:56:58 ID:mXPXv7Km
【E-5 北側/1日目 夕方】
【サンドマン】
【スタンド】:『イン・ア・サイレント・ウェイ』
【時間軸】:ジョニィの鉄球が直撃した瞬間
【状態】:健康、満腹、暗殺チーム仮入隊(メッセンジャー)
【装備】:サヴェジ・ガーデン
【道具】:基本支給品×2、不明支給品1〜3(本人確認済み)、紫外線照射装置、音を張り付けた小石や葉っぱ、スーパーエイジャ、荒木に関するメモの複写
【思考・状況】 基本行動方針:元の世界に帰る
0.DIOの館へ。
1.「ナチス研究所にて、脱出の為の情報を待っている」「モンスターが暴れている」というメッセージを、脱出を目指す人物へ伝えて回る。
2.荒木の言葉の信憑性に疑問。
3.名簿にあるツェペリ、ジョースター、ブランドーの名前に僅かながら興味
4.もう一度会ったなら億泰と行動を共にする。
【備考】
※7部のレース参加者の顔は把握しています。
※億泰と情報交換をしました。
※プッチの時代を越えて参加者が集められていると考えを聞きました。
※早人がニセモノだと気づきましたがラバーソールの顔・本名は知っていません。
※リゾットと情報交換しました。が、ラバーソールとの約束については、2人だけの密約と決めたので話していません。
※F・F、ブチャラティチーム、ホル・ホース、ミューミューの容姿と能力を知りました(F・Fの能力は、リゾットが勘違いしている能力)。ホルマジオの容姿を知りました。
※盗聴の可能性に気付きました。
※ティムからはエシディシについては体格しか教わっていません


  ★


「……ハッ!」

起き上がって、脇を抑える。
そう言えば、あれから傷の手当てをしていなかった――のに、いつの間にやら処置が施されている。
一体何があったんだ?
あのDIOに関係があるらしい男に止めを刺そうとして、そこから記憶がない。
不意を打たれたんだとしても、こうして僕が無事なのはなぜ?

「気がついたか」

僕はまだ、相当落ち着けていないらしい。
ベットの傍らに座る、顔に大きな傷跡残したカウボーイ風の男性、その存在をたった今認識したのだから。
取り繕っても結局こうだ、猛省ものだなこれは……。

「あなたが、手当てしてくれたんですか」
「いや、君をここまで運んだのはディアボロと言う男らしい。ここに書置きがあった」

ディアボロ……あまり響きのいい名前じゃあないな。
恩人、なのかどうか知らないけど、運んでくれた相手にそんなこと思ってはまずいか。
ちらと、メモ用紙に目をやる。

『ナチス研究所にて、脱出の為の情報を待っている』
『民族衣装をまとった身長2メートルほどの怪物に気をつけろ』


227◇0ZaALZil.A氏代理:2010/05/04(火) 19:59:42 ID:mXPXv7Km
走り書きで記された、断片的な情報。後回しにしてもいいだろう。
そこでようやく、まだ名乗っていないことに気がつく。
ちょっと前までいろいろな事がありすぎたからな……。

「僕は、花京院典明です」
「マウンテン・ティムだ。ろくな挨拶もなしに失礼かもしれないが花京院君、協力を願いたい」

確かに失礼かもしれない。
僕個人の事情だが、レストラン内で情報交換が出来なかった悔いもある。
もっと言えば、ティムさんが信頼に値するか深慮すべきだし、ティムさんとしてもそうしたいはずだ。

そんなこと、指摘できるわけがない。

「書置きにもある、規格外のモンスター。そいつを倒すために……!」

ティムさんの真に迫る瞳が訴えかけていたから。
文字通り、最悪の存在を。


【F-5 特別懲罰房内/1日目 夕方】
【花京院典明】
[時間軸]:ゲブ神に目を切られる直前
[状態]:精神消耗(大)、右肩、脇腹に銃創(応急処置済み)、全身に切り傷、身体ダメージ(小)
[装備]:なし
[道具]:ジョナサンのハンカチ、ジョジョロワトランプ、支給品一式。
[思考・状況] 基本行動方針:打倒荒木!
1.ティムと情報交換
2.自分の得た情報を信頼できる人物に話すため仲間と合流したい
3.甘さを捨てるべきなのか……?
4.巻き込まれた参加者の保護
5.荒木の能力を推測する
[備考]
※ハンカチに書いてあるジョナサンの名前に気づきました。
※荒木から直接情報を得ました
「脅されて多数の人間が協力を強いられているが根幹までに関わっているのは一人(宮本輝之助)だけ」
※フーゴとフェルディナンドと情報交換しました。フーゴと彼のかつての仲間の風貌、スタンド能力をすべて把握しました。
※アヴドゥルとフェルディナンドの考察から時代を超えて参加者が集められていることも知りました(納得済み)。

【マウンテン・ティム】
[時間軸]:SBR9巻、ブラックモアに銃を突き付けられた瞬間
[状態]:左肩と腹部に巨大な裂傷痕(完治)。左足に切り傷(小、処置済み)、服に血の染み。全身ずぶ濡れ。右足が裸足。
    肋骨骨折、右肩切断(スタンドにより縫合)、極度の貧血、体力消耗(大)
[装備]:物干しロープ、トランシーバー(スイッチOFF)、アナスイの右足(膝から下)
[道具]:支給品一式×2、オレっちのコート、ラング・ラングラーの不明支給品(0〜3)
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームに乗った参加者の無力化、荒木の打倒
1.花京院と情報交換
2.特別懲罰房を拠点にしたい(そこでアナスイを待つ)
3.もしアナスイが再び殺人鬼になるようなら止める。生死を問わず
[備考]
※第二回放送の内容はティッツァーノから聞きました。
※アナスイ、ティッツァーノと情報交換しました。アナスイの仲間の能力、容姿を把握しました。
 (空条徐倫、エルメェス・コステロ、F.F、ウェザー・リポート、エンポリオ・アルニーニョ
  ブチャラティ、ミスタ、アバッキオ、フーゴ、ジョルノ、チョコラータ)
※ティッツァーノとの情報交換で得た情報は↓
 (自分はパッショーネという組織のギャングである。この場に仲間はいない。ブチャラティ一派と敵対している。
  暗殺チームと敵対している。チョコラータは「乗っている」可能性が高い。
  2001年に体に銃弾をくらった状態でここに来た。『トーキングヘッド』の軽い説明。)
  親衛隊の事とか、ボスの娘とかの細かい事は聞いていません。
※自分達が、バラバラの時代から連れてこられた事を知りました。
228◇0ZaALZil.A氏代理:2010/05/04(火) 20:00:42 ID:mXPXv7Km
僕は誰に対しても強く信頼を寄せるつもりはない。
あくまでも、花京院かグェスの信頼を得ようとしたっていうのは生き残るための一手段として。
汚いとか卑怯とか、それは分かってるんだけど仕方ないだろう?
でも、そんなことはどうでもいいんだ、重要な事じゃない。

さっきまで僕はノリアキを探していた。
僕は正しいことをしてる、何も間違っちゃいないって自分に言い聞かせながら。
君を撃ったってのは誤解だ、君を狙うグェスを撃とうとしたって弁解を、脳内で何度もデモンストレーションしながらね。
そうじゃなければどうにかなってしまいそうだった。
一人でじっとしているよりは死から遠ざかれるのは当然だから。

結論から言うと、すぐ見つかった。
突風のような音がして、でもやっぱりすぐ行くのは怖くて。
しばらくしてから、遠目に現場の様子を窺ったんだ。


絞られるように、全身から汗が噴き出した。


ノリアキはそこにいたさ。けど会うわけにはいかなかった。

顔型の男に背負われていたから。

あの時の光景、思い出しただけでもゾッとする。
血液が逆流するような、凄まじい吐き気を催したよ。
体は反射的に、それこそ無意識にその場を駆けて離れた。
今思えば、最悪のコンディションでよく体が反応してくれたと思う。

ノリアキは奴に背負われていた。
つまり彼らは仲間で。
ノリアキを撃ったと分かれば僕は――

「死にたく……ない……」

考える脳が、ご親切に推測してくれる頭なんかなければいいと、どれほど思ったろう。
嫌でも働く。言い訳を考えるのも、生き残る策を練ると思えば一時的にだけど苦にならない。
そうやって考えて、自分で自分を誤魔化し続けたけど。

顔型の男が僕を睨んだ気がする。背筋の怖気が取れない。
顔型の男が僕を追いかけてくる気がする。とてもじゃないけど振り向けない。
顔型の男が僕をつけ狙う気がする。来るな、もうやめてくれ。
顔型の男が僕に拳を向けた気がする。やめろ、やめろやめろやめろ。
顔型の男が――

「もういいだろう、やめてくれよ……!」

誰もが僕の逃げ道を塞いでいく。

もう嫌だ。

これ以上僕をどうするつもりだ。

どうしろっていうんだ。

もう、疲れたんだよ。

「うっ……うう」

このまま時間が過ぎ去ることを願って、僕は路傍に倒れ伏した。
229◇0ZaALZil.A氏代理:2010/05/04(火) 20:01:47 ID:mXPXv7Km
【F-4/1日目 夕方】
【パンナコッタ・フーゴ】
[時間軸]:ブチャラティチームとの離別後(56巻)
[状態]:苦悩と不安、傷心、重度の鬱状態、極度の人間不信、精神消耗(極大)、額に瘤、右腕に中程度のダメージ、服が血まみれ
[装備]:吉良吉廣の写真、ミスタの拳銃【リボルバー式】(4/6)、ミスタがパくった銃【オートマチック式】(14/15)
[道具]:支給品一式、ディアボロのデスマスク、予備弾薬42発(リボルバー弾12発、オートマチック30発)閃光弾×?、不明支給品×?
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない
0.死にたくない
1.吉廣に説明された内容についてきちんとした真実を知る(時間があれば、程度に考えている)。
[備考]
※荒木の能力は「空間を操る(作る)」、もしくは「物体コピー」ではないかと考えました(決定打がないので、あくまで憶測)
※空条承太郎、東方仗助、虹村億泰、山岸由花子、岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、ジョセフ・ジョースターの能力と容姿に関する大まかな説明を聞きました
※吉良吉影の能力(爆弾化のみ)を把握しました。しかし、一つしか爆弾化できないことや接触弾、点火弾に関しては聞いていません。
 また、容姿についても髑髏のネクタイ以外には聞いていません
※吉良吉廣のことを鋼田一吉廣だと思い込んでいます。
※荒木がほかになにか支給品をフーゴに与えたかは次の書き手さんにお任せします。また閃光弾が残りいくつか残ってるかもお任せします。
※花京院とその仲間(ジョセフ・ジョースター、J・P・ポルナレフ、イギー、空条承太郎)の風貌、スタンド能力をすべて把握しました。
※アヴドゥルとフェルディナンドの考察から時代を超えて参加者が集められていることも知りました(納得済み)。


-----------------------------------------------------------

投下完了。
タイトルは「誰かの傷ついた心が孤独な空で燃え上がる」です。
ディアボロの過去回想と、前回のSSより過去の描写があるのが気になって仮投下させていただきました。
早人については、特別懲罰房に向かっているのなら「アイ・コール・ユア・ネーム」にて書かれているだろうし、
早人の目的からして懲罰房に行くのはどうなんだろうということもあり予約はしませんでした。
問題あるようなら、SSに早人を追加します。

それ以外にも、誤字脱字矛盾点等指摘あればどうぞ。


230創る名無しに見る名無し:2010/05/05(水) 12:11:00 ID:imiojami
投下乙です
231創る名無しに見る名無し:2010/05/11(火) 22:44:07 ID:r2n/d8if
遅くなりましたが投下乙です。

氏の書くディアボロはほんとに味があって大好きw
冒頭の一語からぐっと話に引き込まれました。

そしてサンドマンはまた横槍をry
メッセージが着々と伝えられていきますね、これがどういう結末になるのか…楽しみだ
しかし何もかもが悪い方向に作用しちゃうフーゴかわいそすww
いい加減ノリアキを信じてあげなよと言いたくなるw

改めて、乙でした。次作に期待してます。
232創る名無しに見る名無し:2010/05/12(水) 18:34:32 ID:hDWDMty6
投下乙。フーゴかわいそすww
ディアボロは光り輝く道を行けるか?!
233 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/15(土) 19:58:07 ID:ML0ebmbm
一時投下スレに予約の分を投下したことを報告しておきます。
なにかありましたら指摘ください。
234創る名無しに見る名無し:2010/05/15(土) 20:08:09 ID:ML0ebmbm
いつもお世話になっております。月報データをまとめておきました。間違いはないつもりですが、あったら申し訳ないです。

月報集計 話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
ジョジョ2 173話(+ 9) 31/88 (- 3) 35.2(- 3.4)   
※一時投下一作含む
235 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 21:39:08 ID:MCw+oC2l
一時投下したものですが 22:00前後より投下を開始します。
容量もそれなりにあるので支援を下さる方がおられましたらよろしくお願いします。
236創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 21:50:39 ID:5J9zBZZN
支援、せずにはいられないッ
237 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 22:13:51 ID:MCw+oC2l
投下します。
238 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 22:14:37 ID:MCw+oC2l
どうすりゃいいんだろうか……俺は頭を抱えて悩んでいる。
南へ向かう、そしてそこで参加者を殺してまわるなんてことを宣言されちゃ放っておけるわけがねぇ…俺は誓ったはずだ。
承太郎に、イギーに、アヴドゥルに、トニオさんに。
自分のやらなきゃなんねぇことは誰かを守ることだ。戦えねェ人たちに代わって俺が剣になってどす黒い悪を叩っきる、それが俺の役目のはずだ。

「けど……駄目だ。今の俺じゃ…………駄目なんだ」

承太郎にはDIOと戦うだけの力があった。守りたいものを守れる、それだけの力があった。
それでもDIOとの戦いのなかで、アヴドゥルが、イギーが、花京院が死んだ。
そして承太郎もこの舞台の中で死んだ。
守りたいものがあるなら力が必要だ。それ相応の力がなけりゃただの負け犬の遠吠え、ないものねだりで守れるはずのものさえ取りこぼしちまう。

「…………速さが足りない。今の俺には速さが圧倒的に足りない……そこんとこだぜ、問題はよォ」

俺が今から南に向かったとしても『アイツ』には追い付けやしない。なんせバイクもびっくりのスピードで屋根から屋根へ飛び回るような野郎だ、とてもじゃないが俺にはどうしようもない。
現実的に考えて今更俺が追っかけても追いつけるわけがねェし、それどころか『南で参加者を殺してまわる』なんてアイツの言葉が嘘だとしたらどうする?
気まぐれに北に東に動き回って入れ違いにでもなったら目も当てられねェ。
わかってるんだ…今の俺にはどうしようもないってことがなァ。そんな大層なこと考えずに、素直に自分の仲間を探せばいい。自分のできる範囲で、精一杯やればいい。
そう、思ってる…。だけど…だけどよォ、それでもッ!

「アイツを放っておけるわけがねぇんだ…俺は、もうこれ以上誰かを殺したくねェんだよ!」

だから今の俺には速さが必要だ。
アイツが誰かを襲う前に、アイツを止めることができる速さが。

「シルバー・チャリオッツ…! コイツの剣先で振動を探知する一つはさっきの野郎のもの……そしてもうひとつ、近くにある振動。コイツは間違いなくバイクの走行音ッ! 」

立ち止まっている時間が惜しい、やるべきことがわかったなら動き出せ。今の俺には悩んでる時間なんてないぜ。
バイクは北上中、行く先はDIOの館だろう。
もしもDIOの手下なら敵も倒せバイクも手に入り一石二鳥、仲間なら戦力も増えバイクも手に入り一石二鳥。こんな好都合なことはないぜ。

「……行くか」

俺のやっていることが間違っているかどうかなんぞわかりやしない。
今すぐ走って行ったらアイツに追い付けたのかもしれねぇ。バイクを手にいれたから助けることができるようになるのかもしれねぇ。
だけどもし、この俺の選択で死んじまったやつがいたとしたら……

「…………許してくれ」

奥歯を噛みしめ俺はDIOの館にひた走る。噛みしめた口から弱音が漏れそうになるのを必死でこらえ足の回転を速めた。



239 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 22:22:22 ID:MCw+oC2l
「それにしても誰もいないな……誰か僕と戦ってくれる人はいないのかな?」

普段は静かなる男、並外れた勇気をもち、どんな困難にも立ち向かう男、ジョナサン・ジョースター。今の彼にその面影はない。
英国紳士として常に身だしなみに気をはらっていた彼の顔は血まみれ、頭からはジュースを被り、戦闘の際についた砂が所々固まり泥となって服にくっついている。
夢を語り愛する人を見つめた瞳には輝くような生命の煌めきはなく、サバイバーにより作り出されたかりそめの狂気が今のジョナサンを駆り立てる。瞳に力を宿すことなく、何かに追いたてられるような責任感と高揚感にジョナサンは動いていた。
波紋の呼吸を続け、強者を求めジョナサンはあてもなく歩いていく。住宅街を抜け開けた土手まで出るとジョナサンは目に映った湖の方向へ足を進める。太陽はもはや沈みかけ、紅に染まった光が湖に反射しきらきらとした幻想的な光景を映し出す。
ジョナサンはそんな光景を眺めつつも立ち止まることなくどんどん歩いていく。彼にとって今大切なのは自分の中の闘争心をぶつけることができる強者だったのだから。

「おや?」

ちょうど視界の先に大きな館の影が見え始めた時、ジョナサンの歩みが初めて緩んだ。
湖沿いの道を向こうからやってくる男が一人。左手に小振りなナイフを持ち、ジョナサンに気づいていないのか、散歩でもするかのように無警戒に歩いている。どこか歩みがぎこちないのは右腕の怪我が原因だろうか。内蔵や体全体にも傷を負っているようで、その動きはにぶい。
ジョナサンは右の拳と左の拳を体の前でぶつけ合わせると気合いを入れる。次いでパチンと両の掌で頬を叩くと、よし、と一人呟く。ようやく相手が見つかったのだ、これを逃す理由はない。

「僕の強さを証明してやる! 刻むぞ、波紋の呼吸!」

相手までの距離を一気に詰める。マシンガンは使わない。狙撃するのは確かに簡単だろう、だがそんな一方的な戦いでは自分の強さを証明することにはならない。
乗り越えるべきは相手、倒す手段は己の拳。強さとは公平さだ。ジョナサンは正々堂々、真っ正面からのぶつかり合いを選んだ。
みるみる内に距離は縮まる。湖の脇のちょっとした小道で、整備はされているものの周りには雑草が広がる河川敷。当然二人を遮るようなものもなければ逃げ道もない、ジョナサンからしたら願ってもない場所だった。

「ウオオオオオ―――――ッ!」

獣のように叫び声をあげ、地響きをたてながら突進していくジョナサン。男、リンゴォ・ロードアゲインはジョナサンの存在を認識するもまったく動じず、自然体のままこれを迎え撃つ。
ナイフを体の横にぶらさげ、脱力したままじっとジョナサンを見つめるのみ。その目に何を写すか、リンゴォ・ロードアゲイン。

「波紋疾走!」

ジョナサンの波紋を込めた一撃がリンゴォに襲い掛かる。右の拳にのせたオーバードライブ。ギリギリまで引き付けるとリンゴオは半身になり首を傾けこれをかわす。ジョナサンはカウンターを警戒してか、そのまま追撃をすることなく脇を駆け抜ける。
一度距離を取るとすぐさま反転、再びリンゴォに向き直り、今度は右足を振りかぶる。頭を狙った一撃にしゃがみかわすリンゴォ。続けて繰り出されたジョナサンの足払いも軽くその場で跳ね、避ける。続けざまの拳の攻撃にも動じず華麗な足さばきで避ける、避ける、避ける。
右へ左へのフットワークでジョナサンの長いリーチを巧みにいなしている。
暴風のように襲いかかってくる拳を前にしてもリンゴォはまるで動じない。そよ風を浴びるような涼しい顔でいまだその顔には焦りすら生まれない。ジョナサンは少しばかり残念に思いながらも心中驚きを抱く。

―――この人は強い!なんとかして勝ち、自分の強さを証明したい!

やる気と喜びがムクムクとジョナサンの中で沸き起こる。左の拳をリンゴォが同じ左腕で弾き飛ばしたのを合図にまた一度距離をとる。
見つめ会う形になる二人。ジョナサンの口からコォオオオオ、という長い息が吐き出される。もっと波紋を、強い波紋をッ!
再び襲い掛かる。さっきより強い波紋をのせた拳は確実にリンゴォの動きを封じるだろう。そこを…叩くッ!
 ボディに向けた一発目。上半身を後ろに仰け反らせリンゴォはかわす。振り切った右腕をすぐに腰まで引き戻し同じ一撃を左でかます。腰を狙った一撃にリンゴォはジョナサンに側面を向ける形で避ける。そしてここにきて初めて握ったナイフを振りかぶる。
敵を貫かんばかりの鋭い突き。ジョナサンの反応速度をもってしても前髪が舞い、皮膚を浅く傷つけられた。額からタラリと一滴、血が流れる。背中を伝ういやな汗。ジョナサンはその鋭さにはっきりと死をイメージした。
240創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 22:22:56 ID:LjjJMlxy
支援
241創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 22:23:11 ID:ekmxHtpn
支援支援
242創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 22:24:25 ID:j4ofFBEv
243 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 22:26:08 ID:MCw+oC2l
だがそれでもナイフを持った左腕に自らの腕を絡ませ一本背負いのようにリンゴォを投げ飛ばすジョナサン。丸太のような両腕でガッチリ掴み腰にのせた重心を一気に前へ捻り、そのままリンゴォをモノのように放り投げる。
が、骨折したはずの右腕でリンゴォはジョナサンの首にぶら下がる。投げ飛ばされるはずの体を折れた右腕で支え、密着したまま足だけは地面につける。半分ブリッジのような窮屈な体制でジョナサンに放り投げられることを阻止した。
左腕に構えたナイフがキラリと輝く。リンゴォの体重を支える右腕がミシリと音をたて、限界を知らせる。それをリンゴォは気力で押さえ込んだ。
両腕を離す暇もなく、ジョナサンは頭突きをかまそうとリンゴォの額に頭を降り下ろす。ナイフが煌めき首の皮を裂き、赤い液体が噴水のようにジョナサンの首より噴き出す。同時に額がぶつかり合う鈍い音。
二人はそのまま地面を転がり取っ組み合う。芝生の匂いが立ちこめ、爽やかな風が通り過ぎていく。視界の端では相変わらずキラキラ輝く湖が見えた。
ジョナサンは波紋の一撃でリンゴォにとどめをさすつもりだった。
しかしこのもみくちゃな状態でナイフを振り回されたら堪らない。なにより首の負傷は無視できるものではなく、取っ組み合う中でバッと飛び上がるとリンゴォから離れ片手で傷口を押さえる。赤いヌメヌメした液体が指の間より垂れ流れてくるのを見て顔をしかめた。

ジョナサンの目にははっきりとリンゴォの身体、そして傷が見える。そしてそれ以上にスタンド、サバイバーの能力によってリンゴォの身体のあちこちがどす黒くなり輝きを失っていることにジョナサンは気づいた。
特に右腕の損傷はひどいもので、どうみても使い物にはなりそうになかった。
向かい合うリンゴォに向けジョナサンはファイティングポーズを取り、波紋の呼吸を整える。意識はリンゴォに向けつつも波紋の呼吸で必要最低限の止血を試みる。
次の一撃で決まる、そうジョナサンは感じ取っていた。集中力を高め、目を軽く瞑る。

体に流れる血液、血液が運ぶ酸素、酸素を送る肺、肺を構成する体細胞。つまりは肉体ッ!
全身を駆け巡るエネルギーを一点集中ッ!
力強い呼吸音が河川敷に響く。太陽のように輝く波紋の光がほの暗くなった湖に反射した。
サアアと風が通り足元の草を揺らし、湖に波風を立て二人の前髪を揺らす。葉と葉がふれ合い囁き声のような音が辺りに広がった。


「……君は俺に勝てない」


どちらが動き出すのか、緊張が極限まで高まった瞬間リンゴォははっきりと言った。小さい呟き声だったが、ジョナサンへと確かに向けられたものだった。
緊張の糸を切られたのか、ジョナサンは一瞬呆けた顔をし、そして訝しげな表情でリンゴォを見つめる。脱力したままリンゴォは声を少しだけ張り上げ、つけ加える。

「理由を言ってやろうか……? 君が戦う理由、それは偽りの理由だ。望んで戦うわけでなく、『覚悟』して戦うわけでもない。君は一時の感傷に突き動かされているにすぎない……だから俺には勝てない。すぐに立ち去ったほうがいい」

瞬間、ジョナサンは背中に電撃を流し込まれた感覚に襲われる。言葉一つ一つがジョナサンの鼓膜を震わせ、一つ一つが釘となり打ち込まれたかのように頭にガンガン響く。
僕の戦う理由が…『一時の感情』だって?
ぎゅっと拳を握りしめると爪が自分の手のひらに食い込む。痛みを感じてもやめることなく、じんわりと汗が広がるのをジョナサンは感じた。
彼に僕の何がわかるって言うんだ? 僕が何のために戦うかもわからないくせに……僕がなぜこんなにも苦しんでいるかも知らないくせに。
八つ当たりのような怒りがジョナサンの中で沸き上がる。全身を駆け巡っていた血液の温度が数度上がったように思えるほど、相手の無神経さと無理解さにジョナサンは怒りの感情を抱いた。

「ウアアアアア!」

244創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 22:27:18 ID:j4ofFBEv
245 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 22:29:00 ID:MCw+oC2l
さっきとは違う雄叫びをあげジョナサンは猪のようにリンゴォへと突っ込んで行く。堰をきったように様々な感情がジョナサンを突き動かし爆発的な速さを生む。
決して許さない! 僕に対する決めつけ、断定などどうでもいい! だが死んでいった父さん、エリナ、ツェペリさんやスピードワゴン! 全ての人たちの命を踏みにじるその言葉が許せないッ!
荒れた呼吸は気持ちの表れ、激情を込めた一撃はあっさりとリンゴォの折れたはずの右腕にいなされる。リンゴォは顔を激痛に歪めながらも決して体勢を崩しはせずに、そのままジョナサンの懐に入り込む。
苦悶の表情を浮かべながらも足をしっかりとふんばったまま、手にしていたナイフを投げ捨てる。そのまま左手を持ち上げ最短距離で振りかぶり、ジョナサンの顔へと叩きつける。
乾いた破裂音、リンゴォの左拳は正確無比にジョナサンの頬をとらえた。
ラグビー選手並みのスピード、巨体とも言える身体の全体重、プロボクサー顔負けのリンゴォの鋭いパンチ。
三つを重ねた一撃に身長195センチのジョナサンは高々と空を舞う。まるで映画のロープアクションのようにゆっくりとジョナサンの体は弧を描き、そして―――

湖の畔に大きな水飛沫があがった。夕日を浴びキラキラと輝く水滴はリンゴォの目から見ても美しいものだった。
今まで無表情だった男は無理をした右腕を左手で撫で付け顔をしかめる。だが表情に痛み以上の怒りを浮かべるとジョナサンに向けて口を開いた。

「そんな意志でこの俺を殺せるとでも思ったのか! 恥を知れ……生半可な心で戦いの場に足を踏み入れるな!」

侮蔑の意味を込めた視線を向けリンゴォは叫ぶ。湖につかりずぶ濡れのジョナサンは前髪から伝う水滴を払うこともせず野良犬のようにうつむき殴られた頬を擦るのみ。その表情はうかがい知れない。

「この戦いは決闘でもなんでもない。お前一人が始め、お前一人が終わらせたお遊戯だ」

殴り飛ばされた際に吹き飛んだジョナサンのデイバッグにリンゴォは近づき拾い上げる。
それを見たジョナサンは何かを言おうと口を開きかけたが、水を飲み込んでしまったのか、その場で激しく咳き込む。苦しそうな表情のままそれでもジョナサンは右手を弱々しく伸ばしてその行為を止めようとした。

「お前なんかを殺しはしない。二度と俺の前に立つな」

リンゴォはなにも盗らずにジョナサンに向かって乱暴にデイバッグを投げる。湖の脇にボトリと音を立てデイバッグが落ちたのをリンゴォは確認すると、ナイフを拾い上げ背中を向けて歩き去って行った。
暫くの間ジョナサンは呆けたように座っていた。だがだんだんと遠ざかっていく背中と聞こえなくなった足音に、這うような格好でデイバッグに近づいていく。のろのろとデイバッグの中のマシンガンを取り出すと座り込んだまま震える手でリンゴォの背中に狙いを定めた。
そして引き金をひく。
タタタ……と乾いた音と手に細かい振動を感じる。ジョナサンは照準がぶれることないよう、しっかりと手の中のモノを握りしめた。
リンゴォは足を撃たれその場でもんどりうつ。狙いを頭や心臓に変えようとジョナサンは立ち上がる。その間も発射され続けた弾丸はリンゴォに当たり、まるでダンスを踊るようにリンゴォの体は跳ね回る。
そして至近距離で放った一発がリンゴォの額を打ち抜かんとしたとき、ジョナサンは確かに見た。折れた右腕を無理やり動かし、左手首に手を伸ばすリンゴォの姿を―――――。


……ドゴォォオオ―――――――ン………………


気がつくとジョナサンはデイバッグに向かい這っている途中だった。歩き去っていたリンゴォがゆっくりと向き直ると、視線をジョナサンへと向けた。
何か言おうと半分口を開いたが、そのまま口を閉じるとリンゴォは黙って首を降った。最後にとびっきりの憐れみを込めた視線をジョナサンに向けるとそれっきり振り向くことなく、歩き去って行った。
ジョナサンは一度だけマシンガンをその背中に向けるも、やがて銃口を下げるとその場でうなだれたまま動かなくなった。
リンゴォが消え、姿が見えなくなっても、暫くの間ジョナサンは動くことができなかった。



246創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 22:30:05 ID:LjjJMlxy
支援
247 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 22:31:34 ID:MCw+oC2l
惨めで……苦しくって……寒くて……。全身ずぶ濡れのままトボトボ歩いている今の僕はまるでドブネズミみたいだ。
路地を駆け抜けていく風に身を縮ませながら僕は歩く。体が濡れているせいか、沈み始めた太陽が恨めしく思える。もう夜になるっていうのにこのままでは風邪でもひいてしまう。それだけは避けなければいけない。この体はもはや僕一人のものではないのだから。

「本当にそうなのだろうか……?」

独り言のような僕の呟きに誰も答えてはくれない。いや、誰が何と答えたところで今の僕には何だって疑わしく思えてしまう。
さっきの男の言葉が頭の中でガンガン響き、繰り返し思い出される。酷い頭痛のように執拗に……もしかしたら既に風邪を拗らせてしまったのかもしれない。
ふらりふらりと僕の体が揺れる。ほとんど無意識のままここまで歩いてきた。行く先なんてわかりやしない。ただあそこにずっと立ち止まってはいたくなかった。
今一度、あの男の言葉が思い出された。そして最後に僕を見つめた彼の憐みの眼も。

「違う……彼は何もわかってない。僕はただ……」

ただ何だ? 何だって言うんだ?
全て取り戻す。全てって何だろうか? 取り戻すって一体何を? 何を取り戻すって言うんだろうか。
肩にぶら下げたデイバックが鉛のように重く感じる。いつもなら平気な波紋の呼吸も危うくなってきた。
おかしい、ツェペリさんとの修行は熾烈極まるものだった。極限まで自分を追い詰めどんな状況だろうが、いつだって波紋の呼吸を刻めるようにしたはずなのに……やはり風邪をひいたのかもしれないな……。

「少し……休もう」

そうだ、疲れているだけだ。一眠り、とまではいかないけれど少し体を休めよう。温かいシャワーを浴びるのもいいかもしれない。よく考えれば食事もろくにとってない。お腹いっぱいまで食べて、体もさっぱりすれば、頭もスッキリするだろう。
そうすればこんな気持ちにもならないはずだ。

「……そうしよう」

足の向くままに、機械的に歩いていた僕はいつの間にか館のすぐ側まで来ていた。高い塀に囲まれ、正面玄関の前にはそびえ立つという言葉がぴったしの門もある。体を休めるには充分すぎる大きな建物だ……ゆっくりしていこう。
開いたままの両開きの鉄の門を通り抜け、大きな中庭に出る。両側には大小様々な植物が目にまぶしいほどに青々と咲き乱れている。見たことのない植物もいくつかあった。不思議な形だ、南国産のものだろうか。
中庭の真ん中辺りで僕は立ち止まる。耳を澄ませ、同時に窓を見つめる。中に誰かいないか、危険はないか。警戒してこしたことはない。
一秒、二秒、三秒……何も聴こえない。観た限り窓に人影もないし、どうも人がいるとは思えない。こんな大きな建物、嫌でも目立つだろうに……周りに他の建物でもあるのだろうか。
依然警戒は緩めずに辺りを探りつつデイバックから地図を取り出す。歩いてきた道を指でたどり、湖を北に抜けた大きな建物。その名は…………

「…………DIOの館!」

僕の背中に電流が走る。惨めさから曲がっていた背はピンと伸び、もやがかかったようにはっきりとしなかった思考が急激に冴え渡る。

「ディオ・ブランドー…………」

聞きなれた名前、そして僕が何度呼んだかわからないほど呼び慣れた名前でもある。
ディオは……僕の父さんを殺した張本人だ。吸血鬼となって、たくさんの亡者と屍生人を操り世界を掴もうとした人物。
ツェペリさんが死んだのもダイアーさんが死んだのもディオの仕業。色んな人を傷つけ取り返しのつかないような残虐非道を繰り返したのもディオだった。
そんなディオを僕は許せなかった。そして僕はディオを……

「殺した」
248 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 22:37:22 ID:MCw+oC2l
殺したはずだ。確かにそう、この両手で波紋を流し込み、僕はディオを

「殺した」

ディオはどす黒い悪だったから、倒すべき相手だったから。
そんなディオがまだ生きているとしたら? 聞くまでもない、必ずや殺さなければならない。彼が何度立ち上がろうともこの僕が、この僕自身が殺さなければならないのだ。
一時の狂気でもない、生半可な覚悟でもない。僕、ジョナサン・ジョースターの意志で、悪を滅ぼすという信念の元でディオを殺す。この僕自身の手で。

「……ディオッ!」

そうだ、彼を殺して……自分の中の弱い心と決別しよう。なんの躊躇いなく他の参加者たちを…………殺せるように。さっきの男の背中にも引きがねをひけるように。
もう後戻りなんかできやしない。一体何人の人をこの手で殺したんだ? ディオ、父さん、エリナ、ブラフォード、ミスタ、名もわからない男、スピードワゴン
今さら後悔したって何もならない。それどころかそれは死者への冒涜、彼らが懸命に生きてきた形を踏みにじることなんか出来やしない。
必ず取り戻すんだ、そうなるべきだったところに戻すために……ただ元に…………


ブロロロロォオ………………

「!」

突然耳に飛び込んできた音に僕は我を取り戻す。辺りを見渡すがこれといって変わったものはない。どうも屋敷の中ではなく、外から聞こえてくるようだ。
いや、決めつけはよくないな。窓を一つ一つ睨み付け、屋敷の角に目を凝らし、木と木の間から襲いかかってくるものはないかと身構える。その間もどんどん音は大きくなっていく。
どうやら何が近づいているようだ……だとしたら乗り物か何かの音だろうか。

振り返り門の方角へと向き直る。遠く町並みが広がるなか豆粒のような影が確かにこちらに向かってきていた。そして僕が見つめるなか、瞬く間に大きくなりこちらに近づいてくる。目的地はここDIOの館なのだろう。
僕は今からやってくる人物を殺さなければならない。そうだ、わかっている。それが僕のやるべきことなのだ。
わかっている、僕がやらなくてはいけないなんてことはわかっている。けど……わからない。本当にそれでいいのか……僕にはわからない。

僕は……迷っているんだ。自分を信じきれないでいるんだ。これが正しいのか……それがわからない。

一時の狂気、不確かな覚悟。先の男の言葉が僕を悩ませ苦しめる。僕は……わからない。ただここに来てわかっていることは一つ。

「ディオを倒すのは……殺すのは僕だ」

向かってくる参加者に備え躊躇いながらも僕は構えをとる。既に互いの姿はしっかりと確認できる距離だ。
自転車のような乗り物に乗った女の子はそのまま僕を引き殺そうとでもいうのだろうか、スピードをゆるめることなく真っ直ぐ僕には向かってくる。
好都合だ、他の参加者を蹴落とすような人なら躊躇うことなく罪の意識を感じずに…………済ませることができる。
ギリギリまで引き付ける。丘を越え、道路を抜け、門に近づきそして門を抜け中庭に入ってきたところで茂みに飛び込む勢いで横っ飛びに避ける。
ごろりと地面を回転しすぐに向き直る。甲高いブレーキ音と砂利を撒き散らしながらその乗り物は急旋回、再び唸り声をあげ僕にむけ迫ってくる。
だが流石に一度は立ち止まったものだ。トップスピードに達することはなく、この程度の速さなら僕にも対応できるレベルだ。狙いはカウンター、すれ違い様に波紋を流し込む。
そう僕が思った時だった。彼女がバイクから空へと跳んだのは。

「ッ?!」
249創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 22:39:52 ID:j4ofFBEv
250創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 22:44:32 ID:LjjJMlxy
 
251 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 22:44:45 ID:MCw+oC2l
乗り手を失ったものの、加速しきった乗り物はそのまま僕めがけ迫ってくる。カウンターを放とうと振りかぶった拳を慌てて元に戻し、間一髪で避ける。
門の遥か外まで進んだところでようやく力を失い、けたたましい音をたてようやく乗り物は止まった。直撃していたらダメージは避けられなかっただろう。
だがそうして体勢を崩した僕を相手が見逃すはずもなく……

「オラッ!」

咄嗟に更に横に転がる。地面に叩きつけられた一撃を見て僕の背中に嫌な汗が流れる。屍生人並の一撃……いや、それ以上だ。
すぐにその場で立ち上がると襲いかかってきた相手を観察する。館の玄関をバックに彼女も同じくこちらをにらみつけてくる。
彼女の脇に並び立つ影には見覚えがあった。数時間前、ブチャラティが僕にもたらした魔術のような奇妙な能力。詳しくはわからないが彼女の影もあれと同じようなものなのだろう。
なにせよ、簡単な話だ。吸血鬼以上のパワーとスピードを持っているだけの話、ただ波紋が効果的でないことだけ頭に入れておけば……戦えない相手では決してない。

踏み込みからの左のストレートは相手の蹴りによって阻まれる。蹴りあげられ、空いたボディに相手が振りかぶるもそれを見越した僕の右。舌打ちとともに相手は上半身を後ろに反らし避ける。僕の拳は相手の前髪を撫でるだけに終わった。
まずは直接波紋を流し込み動きを止める。そのあと動けなくなったところで……とどめをさす。いくら悪党であろうとできることならなるべく痛みを与えずに、安らかに逝って欲しい。
左腕に波紋を集中、蹴りで相手の注意をひきつけ隙をみて一気に懐に潜り込む。が、伸ばした左腕は交差された相手の両腕に阻まれた。たが波紋は流れている。ここで一気に畳み掛ける。

「クッ……オラオラオラオラァ!」

僕の波紋が不完全だったのか、それでも彼女は気力で体を動かし、よろけながらも両足で鋭い蹴りを放ってくる。
一撃一撃が僕の頭を、胸を、腹に穴をあける勢いで弾丸のように容赦なく降り注いでくる。しかしやはり遅い。戦い続けの僕でも対応できる速度だ。
必要最低限の動きで丁寧にかわしていく。頭への一撃は首を左右に。体を傾け胸への一撃を。そして腹への一撃は両の手のひらを使い捌いていく。重い一撃をわざわざ手のひらで捌くのは負担が大きいが、相手に波紋を流すチャンスでもある。辛抱強く相手の隙をうかがい続ける。

「チッ…………!」

ラッシュの終わり、彼女は大きく後ろへ飛び跳ねると僕のダメージの無さに舌打ちをする。間合いが少し広がったものの、どうやら背中のデイバックをおろし武器をとりだす時間はなさそうだ。
やはりここは自分の力を、僕の波紋を信じるしかない。小細工なしの真っ向勝負、今度はこっちの番だ。
たっぷり波紋を流し、今度こそ動きを止めてみせる。タイミングと距離を計り僕はじりじりと忍び寄る。彼女はそんな僕を険しい顔でにらみ返し、そして口を開いた。

「そうやってまた殺すのか」
「ッ!」

彼女がやったと同じように僕も一気に後ろへ跳びはね更に間合いを広いものとする。今まで彼女が放ったどんな一撃よりも、鋭く僕の中にえぐり込んできたものを前に僕は距離をとらざるを得なかった。

「顔に所々ついた血、服についたどす黒い染み、怪我をしているうえに酷い格好。自覚がないのかしら……だとしたら間抜けね」
「…………!」
「傷のわりに出血が少ないし、痛みもあまりなさそうに見える。触れた時に感じる電流のようなものも考えて……なんとなくアンタのスタンドは理解した。そして理解した以上、あたしはアンタに近づかない」

そう言い終わるとゆっくりと右へと歩き始める。つられて僕も左へ足を進め、共ににらみ合いながら円を描くように動いていく。間合いは変わらず、僕は討って出るタイミングを見計らっていた。
ここからどう攻めるべきか、相手のあの影はどうやらあまり遠くまでは攻撃できないようだ。彼女自身を中心として周り2メートル程度が限度といったところか。互いに手の内が読めない分、不用意に攻め込むのは危険だ…慎重にいかなければ。




252創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 22:48:49 ID:j4ofFBEv
253 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 22:48:54 ID:MCw+oC2l
「それで…何人殺してきたんだ、アンタ」
「……」
「黙りか……やれやれだわ。その陰気くさい顔、殺したくて殺したわけじゃないとでも言いたいのか?」
「……」
「十人だろうと一人だろうとあたしはアンタを決して許しはしない。アンタのようなやつがいるからいけないんだ……アンタのようなやつがいるから…………ッ!」
「……」
「殺したくないけど殺しました。アンタがそうやって言い訳するのは勝手だ。だけど私はしない。私には覚悟がある。目的のためならそんなお前たちのようなやつらをぶち殺してでも成し遂げるっていう覚悟が。
自分のために他人を踏みにじるようなやつらを許しはしないという信念もある。あんたたちのように現実から逃げ出し、立ち向かいもせず尻尾を巻いて逃げ出すなんてことは、まっぴらだ」
「…………ッ」

彼女の言葉に、姿に、さっきの男が重なる。二人とも、僕を罵倒し、僕を否定する。
なんだっていうんだ……なんでこうも僕が責められないといけないんだ。僕が……何をしたんだ。
何が間違っているっていうんだよ……僕は、僕なら全部元に戻せるっていうのに…………!
壁には何度もぶち当たった……それでも苦しくたって、僕にしかできない……だから、やったのに。最善を選んで、苦しみながらも前進してきたのに……それなのに僕が悪いのか?

「黙れッ…………!」

どうしてこうも皆苦しめるんだ。
なんで誰もわかってくれないんだ。

「僕だって……殺したくないんだッ! でも殺すしかないんだッ! 何でわからないッ! どうしてッ! なんでッ!
現実逃避? 逃げているのは君たちのほうじゃないかッ! 何もわかってないッ! 誰も僕をわかってくれないッ!」

悔しさで視界が霞む。酷い頭痛と耳鳴りが思考を焼ききり、僕の体の中心で何かが弾けとんだ気がした。
遠い何処かで誰かの幼い叫び声が聞こえ、しばらくしてからそれが僕自身のものだと気づいた。
一直線に彼女へと向かっていく。がむしゃらに拳を振りかぶり、ところ構わずメチャクチャに振り回す。彼女を黙らせたかった。彼女に見られるのが辛かった。


これ以上誰かに否定されるのは、もう、たくさんだ。


真正面からの僕の突撃は一つとして当たることはなかった。僕の波紋を警戒して彼女は一撃一撃を丁寧に避け、拳に触れることなく対応していく。
怒りと悔しさと悲しさ、爆発した感情に任せそれでも僕は拳を振り回した。そうやって冷静であり続ける彼女がこれ以上ないほど憎く思えた。

「オラッ!」

大きく腕をひいた時にがら空きとなった僕の腹めがけて弾丸を摘まむような正確さで鋭い一撃が放たれた。目の前が真っ白になり胃液が上昇、吐き気と痛みに僕は声にならないうめき声を洩らす。
彼女の目前で膝が崩れ落ち懺悔するような無防備な格好をさらす。その隙を見逃すはずがなく、風切り音をたてながら鞭のようにしなった左足が僕を襲った。

「オラァ―――――ッ!」
254創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 22:50:03 ID:j4ofFBEv
255創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 22:58:24 ID:kahfjNm0
 
256 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 23:00:35 ID:MCw+oC2l
さっかの髭面の男との戦いを繰り返すかのように、僕の体は高々と宙を舞った。
無造作に放り投げられた荷物のように、受け身をとる暇もなく、地面に叩きつけられる。
息が詰まるような背中への衝撃、咄嗟に両腕で庇ったものの捩じ込まれた腹への蹴り。痛い、苦しい、涙が出そうだ。体は言うことを聞かず僕はやっとのことで起き上がる。
脚が震え、視界は暗く、両腕は痺れ感覚があまりない。それでも戦わないわけにはいかないんだ、負けるわけにはいかないんだ。
僕が殺してきた皆のため、この戦いに巻き込まれたすべての人の名誉のために、僕はここで倒れるわけにはいかない。



……本当にそうなのか?それは……本当に僕の、ジョナサン・ジョースターの意志なのか?



「ウオオオオオ!」
「ウアアアアア!」

よろける僕に止めをささんと彼女は距離をつめる。迎え撃とうと僕は深く呼吸をとる。
練り上げるんだ、波紋を……そして僕の覚悟を……彼女に全力でぶつけ、勝ってみせるッ!

「ストーン・フリ―――ッ!!」
「波紋疾走ッ!」

そうして拳と拳が交わる瞬間、僕の視界の端で何が煌めいた気がした。同時にドスッと鈍い音が響き、彼女の体がぐらりと傾く。僕は動き出した腕を止めることができない。
崩れ落ちた体を支えるわけもなく容赦なく僕の渾身の波紋の一撃が彼女の顎をとらえる。何が起きたかわからない、といった表情を浮かべる彼女。僕にもわからない、一体なにがおきたのか。
それでも最高の波紋を込めた一撃は、今度は逆に彼女を宙へと舞わせ、高々と飛んだ彼女は門の近くの塀に体をぶつけ、そこでようやく止まった。
僕は、勝ったんだ。だが素直にそうは思えない。一体何が起きたのか、まるでわからず唖然とする僕は唐突に背後から声をかけられた。

「ククク……どうした、もっと喜べよ。カウンターに加え……アンタのスタンド能力か? 芸術的、とでも言える一発だったなぁ」

混乱した頭を必死で鎮めながら僕は振り返り声の持ち主を探る。その人物はすぐそばにいた。
館の窓に写ったのは包帯を身体中に巻き付けた男と顔面蒼白の僕、そして門のすぐそばに叩きつけた彼女。その体がずるずると重力に従い壁沿いにずれ落ちていく。
塀には赤いラインがべっとりとつき、彼女は力なくそのままの眠るように倒れ込んだ。まるで、死んでいるかのように。

「え…………あれ…………?」
「ククク……まったくなんて面してやがる。あんないい女を殺せたんだ、羨ましいぜ。それともあれか、殺す前にもっとお楽しみたかったってわけか……ヘヘヘ」
「そんなんじゃない……違う…………僕は、そんなつもりは、僕はただ……彼女を…………」

訳がわからない。こいつは誰だ、どうしてこうなったんだ。
ただ苦しませたくなかっただけなのに、一体何だ、どうして?
殺したのか、この僕が?
喜ぶべきなのだろうか? また一人参加者を減らして荒木に近づけたんだから。僕の目標にまた一歩前進出来たんだ……。
でも、それでも、いや、僕は…………
257創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 23:01:58 ID:kahfjNm0
 
258 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 23:04:03 ID:MCw+oC2l
「ただ苦しませたくなかった……のに……なんで…………」

まるで僕がとびっきりのジョークを披露したかのように包帯巻きの男は笑いだした。笑い混じりに僕を否定し、小馬鹿にし、殺しについて延々と話し出す。
その姿に僕は震え出す。目の前の男はまるで鏡写しの僕自身だ。

殺したくない僕、殺しを楽しむ僕。
苦しんでいる僕、開き直っている僕。
僕はこうならなければいけないのか? 僕が目指しているのは、僕がやろうとしていることはこんなことなのか?

僕は考える前に窓ガラスを叩き割った。もう何も見たくなかった。窓に写る男も、死んだように動かない彼女も、僕自身の顔も。
怯える体は本能的にその場を逃げたそうとじりじりと後退りし始める。一秒でも速く僕はこの場を離れたかった。これ以上ここにいる理由もないし、いたくもない。
ここにいちゃ駄目だ。とにかく……この場を離れよう。ほかのことは……後から考えよう。そうやって僕が足に力を込め走りかけたその時だった。

「ジョジョ……」

唐突にかけられた懐かしく、聞き覚えのある声にまたもや思考を止められる。この声を忘れるわけがない……七年も一緒に暮らしたんだ、忘れるはずがない。
ゆっくりと顔を上げた先、館の二階から僕を見下ろす男は何一つ変わっていなかった。彼は相変わらずの姿で僕を、いつものように見つめていた。

「ディオ……」

日が沈む。







湿った風が駆け抜けていく。夕暮れ前の風はあるものには心地よく体を癒してくれ、あるものには季節を感じさせ哀愁を帯びるように思わせる。
それでも全てのものに平等に風は通り抜けていく。壁が壊された図書館に横たわる一人の青年にも、風はやさしく全身をつつみこんでいく。金色の髪がフワリとなびいた。その脇で風に煽られた鎧の破片がカラン、と子守唄かのように優しく鳴いた。

「……クッ…………!」

青年、ディオ・ブランドーは左手の痛みに目を覚ます。その場で起き上がろうとすると痛みは何も左手だけでなく体全身からため間なく響いていることにディオは気付き顔をしかめた。
このままもう一度寝てしまいたいと思えるほど、どうしようもなく体は重かった。

「このディオが……無様だ」

だがそれでもディオは起きあがる。気を抜けばあっという間に眠りに落ちそうな自分に鞭をうち、まずは上半身をその場でおこしあぐらをかくような姿勢をとる。まずは怪我の具合を調べること、そう思いディオは身体中をチェックしていく。
真っ先に目につくのはなくなってしまった左手。他の傷と違い一応処置はしてあるものの、ただ単に布を巻き付けたきつく縛っただけ。本来のきちんとした処置にはほど遠い。このまま放っておいたら間違いなく手遅れになることはディオでもわかった。
とは言っても医術の心得もなく医者でもないディオでは適切な処置などわかりやしない。
259 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 23:10:45 ID:MCw+oC2l
だがこのままなにもしないでいたらそれこそ死ぬ、そう結論付けたディオは崩壊した壁に近づき垂れ下がっているカーテンの中でも比較的きれいなものを千切る。
スタンドを傍らに呼び出し、二本の右腕を使い左手の切断面と脇辺りにある左腕の動脈らしき部分をきつく縛る。痛くなるほどのカーテンの圧迫に眉を潜めながらもそのまま心臓より高く左腕をあげておく。
続いてデイバッグの中身を漁り、水分と言えるもの全てを取り出す。基本支給品であるペットボトルの水、ランダム支給品であるチャーイ。貧乏くさいと言いきったのは自分だったが命にはかえられない。
水を飲みほし、チャーイの入った水筒も空にする。失われた血液を補うためにもディオは水分を可能な限り摂取したかったのだ。
尤もそれが正しいかどうかはディオにはわからない。うろ覚えの知識を元に最善を尽くしたのみ、素人のディオにとってはこれが限界だった。

「やれることはやった、後は俺の生命力の問題…。死にたくないという意志が肉体を凌駕すれば…俺は死なないはずだッ………!」

そう言うとディオは立ち上がり痛む左手を抑え、体を休ませようと寝室へ向かって歩いていく。だがその途中で貧血から体がクラリと揺れ、足元を何かにとられたディオは床に倒れる。
普段の自分では考えられない無様な姿に悪態を吐きながら、再び起きあがる。同時に自分が何につまずいたのかに気付いたディオは怒りを露にする。

「タルカスッ…!」

八つ当たりのようにつまずいた鎧の欠片を力いっぱい蹴り飛ばす。吹き抜けの図書室にカラン、と乾いた音が響く。
自分をこんな目にした吉良は当然許せない。しかしタルカスにしても自分の命令に従わず、それどころ下手したら自分の身を危険に晒したのだ。
ディオは改めてタルカスに対して怒りが沸き起こるのを感じた。

「くずめッ」

鎧に唾を吐きかけると振り向きもせずにその場を立ち去る。
タルカスがどうなったか、何故ここにいないのか、ディオにはわからない。だがもはやどうでもいいことだった。
部下を慕う気もなく、気にかける様子も見せず、ディオはその場を後にした。

重い体をひきずり階段を昇る。向かう先は一つ上の階のベットルーム、そこで休息をとること。タルカスはいない、リンゴォも姿が見えない。DIOの館はまるで持ち主の様子を表すように、ボロボロで空っぽだった。
それでも、誇りだけは失わずディオは立ち上がり自らの足で立ち続ける。悠然と立ち尽くす館も同様に多くの参加者を惹き付ける。
魔力のように参加者を呼び集める、DIOの館。それもディオ・ブランドーという男の力なのだろう。

「…? なんだ?」

随分と時間をかけながらも二階にたどり着いた時、ディオの耳が叫び声をとらえた。男のものと女のもの、それに紛れ鈍い打撃音も聞こえてくる。
戦っているやつらがいるのか……だとしたら厄介だな、とディオは舌打ちをする。
今ここで休んだらどうなるかわかったものではないがかといって自身の体調は戦闘を行うには相応しくない、どうしたものかと考えを巡らせる。
とにかく情報が欲しい、戦っているものがどんな人物なのか、どんなスタンドを使い、どちらがどれだけダメージを負っているのか。
ベットルームには向かわず中庭が見渡せる窓へと向かっていく。頭の中では考えるのをやめない。
やり方によっては今の自分でも勝つことができるかもしれない。なんせ今やホワイトスネイクは完全に自分のものとなったのだから。
だがそんな余裕に近い思考もはるか彼方へと吹き飛ぶ衝撃。まるで雷にうたれたかのようにディオに走る電流。
覗きこんだ中庭にいた人物はあまりにディオにとって意外でまた、見慣れていて、そして見たことのない表情をしていたから。

「ジョジョ……」

自分の声が馬鹿みたい間が抜けたものであることをディオ自覚した。だが仕方のないことだろう。
そこにいた男はディオの記憶と何一つ変わらなかったのに、同一人物とは思えなかったのだから。

「ディオ……」

日が沈む。



260創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 23:11:37 ID:j4ofFBEv
261 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 23:13:14 ID:MCw+oC2l
中庭に走る緊張感。ピリピリと皮膚を焼き尽くすような圧倒的圧迫感。人が殺し、殺される時に流れる特有の雰囲気にJ・ガイルの皮膚が無意識に泡立つ。
だがそれを自分自身の体で味わうことができないのが心底惜しく思える。彼にとってその感覚は大の好物で、なににも代えられないものだった。
J・ガイルはスタンドである『ハングドマン』で徐倫の様子をうかがう。正直な話、死んだかどうかは確信がなかった。相当のダメージを負っていることは脇で見ていた分客観的に判断できたし、出血量からみてもそれは間違いない。
ハイエナがライオンの食い残しを狙うようにJ・ガイルはジョナサンのおこぼれにありつくために声をかけた。生きているなら生きているで、お楽しみを満喫、死体なら死体でまた違った楽しみかたがある。そのためにわざわざジョナサンを助け、『女』を標的とした。
J・ガイルは自分の本能のままに動き、まるで殺しを日常生活のひとこまかのようにしか考えていなかった。

「ククク…」

そして事態はどうやらJ・ガイルにとって都合のいいほうへと動きだしているようだった。
ジョジョと呼ばれた男はもはや女に興味を見せず、館に向き直ったまま凍ったようにその場を動かない。まるで無防備のその背中にザクッと切りつけるもよし、真正面からブスリと心臓を一刺しするのも一興だろう。
もう一人、ディオと呼ばれた男は二階からこちらを見下ろしている。一応射程距離には入っているし、無警戒なようすからこちらも攻撃することは可能だろうがJ・ガイルは手を出さない。
自分の記憶の中のDIOとは違うもののどこか面影の残るその存在に攻撃を仕掛けるのは得策ではないだろうし、もし本人だったら大変なことになる。

「それにどうやらお取り込み中のようだしな…」

そうなると自然とJ・ガイルの視線は残りの一人に向けられる。塀にもたれノックダウンした彼女をみてJ・ガイルはニヤッと笑った。
何も問題はない、二人がお取り込み中なら自分は待ち時間をのんびり過ごせばいいだけだ。
それにすぐに終わりそうな雰囲気じゃないしな、と自分の中で結論付けると、ハンクドマンを操り徐倫の生死を確認するため近づこうとする。
が、その直前、何かを思い出したように動きを止めると笑いを漏らしながら口を開いた。

「なぁ、どうせお前もいるんだろ、アンジェロ……だったら一緒に楽しもうぜ…………!」

次の瞬間、徐倫の周りの空気が歪む。蜃気楼のように一瞬霞がかかり、水滴が集まり出すとアンジェロのスタンド、アクア・ネックレスが姿を表す。

「J・ガイル…………ッ! てめぇ絶対ぶっ殺してやるッ!!」
「ククク……やめとけ、やめとけ。意気がったところでどうにもなんねぇよ、アンジェロさんよォ。俺のスタンドとお前のスタンドじゃ勝負はつかねえよ」

見つめ合うスタンド同士、新たな館の来訪者に緊張感は益々高まっていく。更なる混沌が訪れるも不気味なほど辺りは静寂に包まれる。
誰一人動くきっかけのないまま四人は黙り、互いの相手を睨み付けるのみ。四者四様の想いを抱いたまま、時計の秒針は止まらない。
そのままどのぐらい時間がたったか、静寂を破ったのはブゥン……という低い唸り声に似た物音。徐倫が乗り捨て門の向こうへ消えたはずのバイクのエンジン音が、たちまち大きく騒音とまで言える音を奏で迫ってくる。四人はそれでも動かない。
互いを牽制しあい、警戒し、何を口にすればいいのかもわからない内にバイクは門をくぐり中庭へと侵入してきた。

「シルバー・チャリオッツ!」

沈みかけた夕日がキラリとバイクのボディを反射し光輝く。真っ赤な光を浴び傍らに並び立つ騎士の鎧も普段と違った輝きを見せる。中庭に飛び込んできた男ポルナレフが急ブレーキをかけると砂ぼこりを巻き上げながらバイクは横向きに止まった。
八つの目線が突然の客に突き刺さる。それでも彼は動じず一つ一つの視線をにらみ返し、そして一人の男を見つけると拳をつよく握る。

「J・ガイル……ッ!」
262 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 23:15:25 ID:MCw+oC2l
真っ先に動いたのはそのJ・ガイル。窓から窓へと文字通り光の速さで飛び移り、三次元的な攻撃を仕掛けんとポルナレフへ迫っていく。
同時に動いたのはアンジェロ、水蒸気である自分のスタンドを生かし相手の攻撃を恐れることなくシルバー・チャリオッツへと一直線に向かっていく。
J・ガイルとの道中、互いの『獲物』を言い合った時、J・ガイルが挙げた特徴が目の前の男と一致した。だからこそアンジェロはより速く、躊躇うことなく動き出す。
これ以上J・ガイルをいい気にさせるのは我慢ならない、目の前で『獲物』を横取りしJ・ガイルの鼻をあかしてやろう、そうアンジェロは思ったのだ。
ポルナレフへと襲いかかるアクア・ネックレス。水蒸気のまま内部に侵入、風船を割るように体内からバラバラにしてやろうとフェイントをいくつかいれつつ、狙いを口元に定める。
それを一閃、シルバー・チャリオッツの一撃は正確にアクア・ネックレスを真っ二つに叩き切る。そしてそれだけには終わらない。
数々のスタンド使いとの戦いの中で、ポルナレフはアクア・ネックレスのようなスタンドに斬撃が効果的でないことはわかっていた。それでもレイピアを振り、突き、切り上げる。ポルナレフの狙いは相手を倒すことでなかったのだから。
アクア・ネックレスが形をなさないようにめった切りにし、時間を稼ぐのがポルナレフの狙いだった。アクア・ネックレスが足止めされていることを確認すると、塀の脇にうずくまる少女の元へ向かい様子を見る。
意識がなく呼吸は浅い。戦場と化しているこの場を離れるため、少女を抱き抱えると手のひらにヌメリとした液体がこびりつく。髪の毛の間から流れ出た真っ赤な液体を見て内心焦りを感じるも、ポルナレフは自分自身に強く言い聞かせた。
まだ死んじゃいない、まだ助けられる、と。


「隙だらけだな、ポルナレフ」

そんなポルナレフに襲いかからんと迫るハンクドマン。シルバー・チャリオッツは未だアクア・ネックレスにつきっきり、がら空きの本体はお荷物まで抱えている状態。とてもじゃないが避けることはできないだろう。
だがポルナレフの死角から襲いかかろうとバイクのミラーへ移りかけたその刹那、J・ガイルは自らのスタンドを急停止させた。
まるで自分の思考を読み取ったかのようにいつの間にかチャリオッツのレイピアがミラーの前にかざされていたのだから。
冷や汗とともにどうなってやがる、と言葉が勝手に口をつく。危機を察知したJ・ガイルは距離をとるため館の窓へと再びとび移る。
ポルナレフが自分の反射を目で追っているような気配にまさか見えているのか、と焦りを抱く。がどうしようもない、確認するすべもない。
ポルナレフはしつこく追いすがるアクア・ネックレスを最後にもう一度両断するとバイクに股がる。しっかりと徐倫を腕に抱くと器用にバイクを操り走り去っていった。バイクの走行音が余韻をわずかに残し、再び館は沈黙に包まれる。
重苦しい沈黙だった。ポルナレフが来たときも最低限の警戒をしめしただけだったジョナサンとディオ。互いに互いの変化を前に戸惑い、同時に何から語ればいいのかわからず二人はいつまでもにらみ合う。
J・ガイルはポルナレフに自分のスタンド能力がバレてしまったのでは、と自問自答を続け心中穏やかではない。
アンジェロは何の収穫も得られず自分がいいようにあしらわれたことに苛立ったものの、饒舌だったJ・ガイルが急に黙り込んだのを見ていい様だと少し機嫌をよくしていた。
263創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 23:16:55 ID:kahfjNm0
 
264 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 23:18:19 ID:MCw+oC2l
「お取り込みの最中、申し訳ないのだが……」

そんな四人に割り込むような声がどこからともなく聞こえてきた。
館の影から姿を表したその男は地味なものの高級な服装に身を包み、優雅に佇み四人を見渡す。男は気が向かない様子で、少し不機嫌なようだった。
見知らぬ来訪者の突然の言葉に彼を知らないものはただ沈黙を守るのみ。ただ一人、彼を知るディオが眼の色を変えその人物に向け叫ぶ。
ジョナサンとの突然の遭遇に無表情を装っていた顔を怒りに歪める。手当てを施した重症の左手が本人の感情に呼応するかのようにズキズキと痛み始めた。

「吉良吉影ッ…………!」

そんなディオの怒りもどこ吹く風、吉良は視線すら向けずにほかの三人の眼をのぞきこむ。
どの眼にも闇がある、それを確認して満足したような息を吐くと吉良は唇を湿らせ言った。

「ちょっとした提案だ……どうだ、ここにいる『五人』で…………協力しないか?」







「死ぬんじゃねえぞ、クソッタレ!死なせるもんか……絶対に助けてやるからなッ!」

そうは言ったもののポルナレフはどうすればいいかわからない。
とりあえず館から無事に脱出出来たのは幸いだった。妹の仇のJ・ガイルやどことなくディオの面影を残す青年など四人が四人、ものすごい殺気を放っていたあの場を潜り抜けられたのは素直に喜ばしい。
自分は怪我を追うこともなく、バイクを手に入れることが出来たのだ。結果で言えばこの上なく上出来と言えるだろう。
だがそんなことを喜んでいられるわけがない。ポルナレフは今、死に繋がりかけない傷を負った重症人を抱えているのだから。
ゆっくりとバイクのスピードを緩める。目的地もわからずやみくもに走っても意味はない。それどころか、事故でもしようものなら今度こそこの娘が死んでしまう。

「死なせるもんか……もう誰も守れないなんてことがあってたまるかよォ!」

だが現実は非情だ。ポルナレフは何の手段も持ち合わせていない。医者でもない、医療道具もない。
カバンの中の支給品は携帯電話と少し大きめのDISCで何の役にも立ちやしない。このままでは確実に間に合わない。

「くそ、俺は間に合わないのかッ!? また俺は守れないのか!? バイクを手に入れた、女の子を館から助けた。でもなんの意味もねぇじゃねえか! 結局俺は遅すぎるんじゃねぇのか!?」

バイクから降りると両腕に彼女を抱きかかえる。どうしようもない、それでもどうにかしたい。ポルナレフに手段を選ぶ余裕はなかった。肺いっぱいに息を吸い込むとそのまま力の限り叫ぶ。

「誰でもいい、助けてくれッ! 怪我人がいるんだ、誰かどうにかしてくれッ! このままじゃ、この娘は死んじまうんだッ! 誰かどうにかして……助けてくれ――――――ッ!」
265 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 23:21:28 ID:MCw+oC2l
自分の無力さは嫌というほどわかった。惨めだ、思った通りに自分は遅すぎた。間に合ったと思った今回も、この娘は手からすり抜けるように死んでいく。それも、自分が遅いから。

「けど、けどッ!」

一つぐらい救ってくれたっていいじゃねぇかッ!
そうポルナレフは思う。
DIOを倒すという意志のもとで集った仲間を取り上げられ、この場で出会った仲間も死に、助けられたはずの人も死んでいく。

「もういいじゃねぇかッ!これ以上、どうすればいいんだよ! 力の無さもわかった。マヌケっぷりも理解した。だからせめて! せめて、一人ぐらい、救ってくれよッ!」

街にポルナレフの叫びがこだまする。無人の街に寂しく声が跳ね返り帰ってくる。それでも諦めきれないポルナレフは叫んだ。なにもできない自分にできることはそれだけだったのだから。

「徐倫―――――――ッ!!」

遠い声が救いの手のように響きポルナレフの思考を遮る。家と家の間を駆け抜け男は風のように颯爽とこちらへ向かってくる。
どんな男かポルナレフにはわからない、女と男が知り合いかどうかすらもわからない。
けれどそんなことを考える必要はなかった。息をきらせた男が大慌てで、それでいて割れ物を扱うように大切に女の子を抱き締めたのをみてポルナレフはへたりこむ。
まだ何も始まっていない。依然彼女は重症だ。
それでもポルナレフは救われた。

「ありがとう…徐倫を救ってくれて」

男の言葉は素っ気ないものだった。だが関係ない、ポルナレフは間に合ったのだ。この舞台にきて初めてポルナレフは誰かを救うことができた。
抱き締め合う二人の横で、ポルナレフは声をあげることなく、泣いた。







荒木飛呂彦は公平さを第一としてこの殺し合いをスタートさせた。身体に傷を負ったものは治療を施し、戦力か偏ることがないよう支給品を配り、強者には枷さえもつけた。
一方的な殺戮を彼は望まず、運命に翻弄されながらも参加者たちが必死で抗うことを荒木は望んだのだから。
だが精神は違う。荒木は精神には手を出さなかった。それは荒木の気まぐれだろうか、ただ単に『なんとなく』だろうか。
違う、荒木はそれぞれを呼んだ時期に干渉するのを嫌がった。それぞれの参加者が『彼ら』『彼女ら』らしくいることを望んだ。もしも精神に干渉を施し、考え方をねじ曲げたり精神の負担を取り除いたりしてしまったらその時点でその参加者は参加する意味を失ってしまうだろう。
荒木という運命に、その参加者はもはや従ってしまっているのだから。
266 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 23:22:28 ID:MCw+oC2l

そういう意味で、吉良吉影ほど不幸な参加者はいないだろう。吉良は平穏を望む人間であり自分が殺人鬼であることをひた隠しにし、生きてきた。
そんな男の平穏な生活は殺し合いに巻き込まれたことで台無し、同時に本来なら吉良を知るはずのなかった人たちまで吉良のことを知ることになった。『吉良吉影は殺人鬼である』、と。
吉良はこの場に参加した時点で『既に』手遅れであった。狡猾な殺人鬼がそんなことに気づくことができなかったのも無理はない。吉良には長いこと心穏やかに、自分のことをじっくりと考える時間は訪れなかった。

東方仗助にギリギリまで追い詰められ、なんとかして切り抜けたと思ったら殺し合いに巻き込まれる。始まった直後に参加者のスタンド攻撃をくらい、宿敵空条承太郎との奇妙な同盟関係を結ぶ。
休息は取るに取れず、一時だって気は抜けず、利用するはずの由花子に利用され自分の『死』を突きつけられる。動揺の中、承太郎は死に、直後に輝くような手と出会う。だが予期せぬ同類との出会いもあり、そして―――

吉良の人生で最も浮き沈みの激しい一日、ジェットコースターのように登っては下り落ちては上がりを繰り返す半日。吉良にとってそんな十数時間はあまりに刺激的でそれ故に一つの結論にたどり着くことができなかった。
吉良吉影の平穏な日々はどうしたってかえってこない、ということに気づくことができなかった。


ガリガリガリガリ……

「山岸由花子が私のことを知っていた。やつは私を追っていたわけではない……あくまで協力的であったたけだ。空条承太郎、東方仗助、虹村億泰、岸辺露伴、広瀬康一……
 私の平穏を脅かす邪魔くさいクズどものように自発的に動いていたわけでない。そんな山岸由花子が私のことを知っているのだ……私の死んだ未来ではッ!!」

―――リガリガリガリガリガリガリガリ…………

「エンリコ・プッチは時代を越えて参加者が集められているらしいと言った。ならば東方仗助は、虹村億泰は……私の正体を知っているやつらはどの時代から呼び出されたのだ?
この吉良吉影と出会う前か? まだ私の存在を知らない時か? それとも私が死んだ未来からやってきたのか? それを知るすべは私にはない。
クソッ……! こうしている間にも私の情報が参加者の間に広がっている可能性が高いッ! この私がひた隠しにしてきた秘密がッ!」

―――ガリガリリガリガリガリガリガリガリガリ……………

「そもそも呼ばれた時点で『既に』ッ! 『既に』だッ! 荒木が時代を越えるスタンド能力を持っていると言うならば、この吉良吉影をこのドブネズミより下劣なイベントに巻き込んだ時点でッ! この私が『してきた』ことを知っているに違いないッ!」

―――ガリガリガリガリリガリガリガリガリガリガリガリ……………………

「どうしようもない……もう終わりだというのか?! 植物のような平穏な生活を送る、そんな私の幸せな人生は……もはや叶わないのか?!
 クソッ、なぜ私がこんな目にあわなければならない……この私が一生顔も知らない参加者どもに、あの荒木に怯え暮らさなければならないだと?」

―――ガリガリガリガリリガリガリガリガリガリガリガリガリガガリガリ…………………………
267 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 23:24:26 ID:MCw+oC2l
「そんなことがあってたまるかッ!皆殺しだ……全員、私を知ってようが知ってまいが全員だッ! 僅かな手懸かりすら残さない、どんな些細な可能性だってあってはならない。疑われることなんてまっぴらだ。
何一つ怯える必要もなく、今まで暮らしてきた。そんな私の人生を台無しにする要素は、塵ひとつ残さないッ!」

血が滲み出るほど噛み締められた爪。その爪はひび割れ、吉良の気持ちを写し出すように二つの文字が刻まれている。
平仮名二文字『かつ』の言葉を振りかざし吉良は自分自身に誓う。

「必ずこの手で、全員殺すッ! 最後の一人まで私は生き延び自由を手にいれるッ!そして……」

植物のような生活を送るため吉良は誓う。

「荒木飛呂彦………ッ!! 貴様も必ず、始末してみせるッ!!」







吉良は考えた。当面の目標は優勝、そして優勝者をあの荒木は放っておくようなことはしないだろう。
もしかしたら大喜びで歓迎するかもしれない。無防備のまま、ひょっとしたら握手なんかを求めてくるのかもしれない。その時を決して逃しはしない。キラ―クイーン、跡形もなく消し飛ばし……そして平穏を手に入れる。
だが逆にいえばそれまでは今まで通り、できればなんの戦いもせずに楽に参加者を減らしたい。だが何もしないままでいたらいつか山岸由花子に言った『最悪の状況』にもなりかねない、そう吉良は考えた。

(ならばどうするか……平穏を手にしつつ、ほかのやつらにやらせればいい。いざとなったら脅されてたとでも言えばいくらでも誤魔化しはきく。
 そのためには参加者どもが集まる場所……やはりこのDIOの館がベスト。かつて私が訪れたように『DIO』の名にひかれ集まるものは多いはずだ。それこそ正義感馬鹿どもや頭の足りないマヌケな殺人鬼どもも含め、な)

無言のまま反応を返さない四人を吉良はじっくり見渡す。本来ならこんな『目立つ』真似は避けたかったがそれも自分の平穏のため、多少は我慢もしよう。
だが二つのスタンドは動かない、二人の男も動かない。突然の提案だ、戦うことに夢中の馬鹿どもはこうなるのも当然だろうと吉良は溜息を吐きたくなるのをこらえる。
すこしせっかちだが返答をもらうために駄目押しでさらなる言葉を紡ぎだす。

「ああ、気に入らないならそう言ってくれて構わない。私はこの場を去り、また君たち四人で殺しあってももらえばいいだけだ。せいぜい楽しんでくれたまえ」

さらなる挑発を繰り返し吉良は笑う。表面上も、そして心の中でも笑みを浮かべる。
戦いを避けるのは『嫌い』なだけであって決して負けるからではない。吉良にはこの場も細やかな気配りと大胆な行動力で切り抜けられるという絶対的な自信があったのだ。

(さぁ、どうする……? )

日が沈んだ。放送が始まる。
268創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 23:25:25 ID:5J9zBZZN
sien
269創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 23:26:34 ID:Ts6NKVRB
 
270 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 23:28:27 ID:MCw+oC2l

【D-3 北東/1日目 夕方】
【リンゴォ・ロードアゲイン】
[スタンド]:マンダム
[時間軸]:果樹園の家から出てガウチョに挨拶する直前
[状態]:全身にラッシュによるダメージ(中)、身体疲労(大)、右上腕骨骨折、エシディシに対し畏怖の念
[装備]:ジョニィのボウィーナイフ
[道具]: 基本支給品 不明支給品0〜2
[思考・状況]
基本行動方針:参加者達と『公正』なる戦いをし、『男の世界』を乗り越える
1.吉良を探すため、移動する。見つけ次第吉良に復讐する。
2.遭遇する参加者と『男の世界』を乗り越える。
3.怪我の手当てがしたい。
[備考]
※骨折は気力でカバーすれば動かせます。
※この後どこへ向かうかは後の書き手さんにお任せします。





【C-4 DIOの館/1日目 夕方】
【吉良吉影】
[時間軸]:限界だから押そうとした所
[状態]:左頬が殴られて腫れている、掌に軽度の負傷、爪の伸びが若干早い
[装備]:ティッシュケースに入れた角砂糖(爆弾に変える用・残り4個)、携帯電話、折り畳み傘、クリップ×2 、ディオの左手
[道具]:ハンカチに包んだ角砂糖(食用)×6、ティッシュに包んだ角砂糖(爆弾に変える用)×7、ポケットサイズの手鏡×2
    未確認支給品×0〜2個、支給品一式×2、緑色のスリッパ、マグカップ、紅茶パック(半ダース)、ボールペン二本
[思考・状況]
基本行動方針:植物のような平穏な生活を送るため荒木を含む全員を皆殺し。
0.四人の反応を伺い、対処する。
1.植物のような平穏な生活を送るため荒木を含む全員を皆殺し。ただし無茶はしない。
2.手を組んだ由花子と協力して億泰、早人を暗殺する。ただし無茶はしない。
3.危険からは極力遠ざかる
4.利用価値がなくなったと思ったら由花子を殺して手を愛でる。
[備考]
※バイツァ・ダストは制限されていますが、制限が解除されたら使えるようになるかもしれません。
※プッチの時代を越えて参加者が集められていると考えを聞きました。
※シアーハートアタックに何らかの制限がかかっているかは不明です。
271 ◆Y0KPA0n3C. :2010/05/17(月) 23:30:30 ID:MCw+oC2l
【ディオ・ブランドー】
[時間軸]:大学卒業を目前にしたラグビーの試合の終了後(1巻)
[状態]:内臓の痛み、右腕負傷、左腕欠損(簡易処置済み)、ジョルノ、シーザー、由花子、吉良(と荒木)への憎しみ
[装備]:『ホワイトスネイク』のスタンドDISC
[道具]:ヘリコの鍵、ウェザーの記憶DISC、基本支給品×2(水全て消費)、不明支給品0〜3
[思考・状況]
基本行動方針:なんとしても生き残る。スタンド使いに馬鹿にされたくない。
0.吉良の言葉を吟味、判断し、この場でどう動くか考える。
1.スタンド使いを『上に立って従わせる』、従わせてみせる。だが信頼などできるか!
2.ジョルノ、由花子に借りを返す
3.勿論、行動の途中でジョージを見つけたら合流、利用する
4.なるべくジョージを死なせない、ジョナサンには最終的には死んでほしい
5.ジョルノが……俺の息子だと!?
[備考]
※見せしめの際、周囲の人間の顔を見渡し、危険そうな人物と安全(利用でき)そうな人物の顔を覚えています
※ジョルノからスタンドの基本的なこと(「一人能力」「精神エネルギー(のビジョン)であること」など)を教わりました。
  ジョルノの仲間や敵のスタンド能力について聞いたかは不明です。(ジョルノの仲間の名前は聞きました)
※ラバーソールと由花子の企みを知りました。
※『イエローテンパランス』の能力を把握しました。
※『ホワイトスネイク』の全能力使用可能。頭部を強打されればDISCが外れるかもしれません。


【ジョナサン・ジョースター】
[時間軸]:エリナとのハネムーンでアメリカに向かう途中の船上でワンチェンと遭遇する直前
[状態]:波紋の呼吸、唇と右手から少量の出血、鼻の骨折、右肩と左ももに隕石による負傷、額に切り傷
    頬がはれてる、内臓にダメージ(中)、身体ダメージ(大)(いずれも波紋の呼吸で治療中)、ブチャラティの眼光に恐怖
[装備]:“DARBY'S TICKET”、サブマシンガン(残り弾数80%)
[道具]:デイパック*3、不明支給品1〜5(全て未確認)、メリケンサック、エリナの首輪、エリナの指輪、ブラフォードの首輪、
    ダニーについて書かれていた説明書(未開封)、民家で見つけた包帯、『プラネット・ウェイブス』のスタンドDISC
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、荒木に全部なかったことにして貰った後、荒木を殺す
0.――――ただ、全て打ち砕くだけだ
1.吉良の言葉を吟味、判断し、この場でどう動くか考える。
2.適当なところで怪我の治療をしたい
【備考】
※ジョージ・ジョースター一世を殺したと思い込もうとしてます。
272創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 23:37:23 ID:kahfjNm0
 
273創る名無しに見る名無し:2010/05/17(月) 23:41:20 ID:Ts6NKVRB
  
274創る名無しに見る名無し:2010/05/18(火) 00:01:25 ID:07fJxu8x
【J・ガイル】
[時間軸]:ジョースター一行をホル・ホースと一緒に襲撃する直前
[能力]:『吊られた男』
[状態]:左耳欠損、左側の右手の小指欠損、全身ずぶぬれ、右二の腕・右肩・左手首骨折(治療済み)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:とりあえず殺しを楽しみつつ、自分が死なないよう立ち回る
0.吉良の言葉を吟味、判断し、この場でどう動くか考える。
1.ほかの参加者を可能な限り利用し、参加者を減らす。
2.自分だけが助かるための場所と、『戦力』の確保もしておきたい。
3.20時にDIOの館に向かう?
[備考]
※『吊られた男』の射程距離などの制限の度合いは不明です。
※ヴァニラアイスの能力、ヴェルサス、ティッツァーノ、アレッシーの容姿を知りました。
※第二放送をアンジェロに話しました。


【片桐安十郎(アンジェロ)】
[スタンド]:アクア・ネックレス
[時間軸]:アンジェロ岩になりかけ、ゴム手袋ごと子供の体内に入ろうとした瞬間
[状態]:全身を火傷(中度)、身体ダメージ(中)、プッツン
[装備]:ディオのナイフ ライフルの実弾四発、ベアリング三十発  
[道具]:支給品一式×2
[思考・状況]
基本行動方針:安全に趣味を実行したい
0.吉良の言葉を吟味、判断し、この場でどう動くか考える。
1.荒木は良い気になってるから嫌い
2.20時にDIOの館に向かう?
[備考]
※アクア・ネックレスの射程距離は約200mですが制限があるかもしれません(アンジェロは制限に気付いていません) 。
※ヴェルサス、ティッツァーノの容姿を知りました。
※第二放送をJ・ガイルから聞きました。
※ミューミューの基本支給品を回収しました。
275創る名無しに見る名無し:2010/05/18(火) 00:01:51 ID:OnFEbu5v
投下乙
276創る名無しに見る名無し:2010/05/18(火) 00:02:05 ID:07fJxu8x
【D-4 中央/1日目 午後】
【J・P・ポルナレフ】
[スタンド]:『シルバー・チャリオッツ』
[時間軸]:3部終了後
[状態]:右手負傷(軽症)、鼻にダメージ(中)
[装備]:メローネのバイク
[道具]:空条承太郎の記憶DISC、携帯電話
[思考・状況] 基本行動方針:殺し合いに乗ってない奴を守り、自分の正義を貫く
0.俺は…間に合ったんだ…
1.仲間を集める
2.死んだはずの仲間達に疑問
3.J・ガイルを殺す
[備考]
※不明支給品は空条承太郎の記憶DISCでした

【空条徐倫】
【時間軸】:「水族館」脱獄後
【状態】:全身に切り傷、疲労(大)、脇腹に裂傷(大)、出血多量、後頭部に傷、ゆがんだ覚悟、気絶中
【装備】:メローネのバイク
【道具】:支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:荒木と決着ゥ!をつける
0:気絶中
1:DIOの館に向かい、DIOとプッチと決着ゥ!つける
[備考]
※ホルマジオは顔しかわかっていません。名前も知りません。
※最終的な目標はあくまでも荒木の打倒なので、積極的に殺すという考えではありません。
 加害者は(どんな事情があろうとも)問答無用で殺害、足手まといは見殺し、といった感じです。
277創る名無しに見る名無し:2010/05/18(火) 00:03:02 ID:07fJxu8x
【D-4 中央/1日目 午後】
【J・P・ポルナレフ】
[スタンド]:『シルバー・チャリオッツ』
[時間軸]:3部終了後
[状態]:右手負傷(軽症)、鼻にダメージ(中)
[装備]:メローネのバイク
[道具]:空条承太郎の記憶DISC、携帯電話
[思考・状況] 基本行動方針:殺し合いに乗ってない奴を守り、自分の正義を貫く
0.俺は…間に合ったんだ…
1.仲間を集める
2.死んだはずの仲間達に疑問
3.J・ガイルを殺す
[備考]
※不明支給品は空条承太郎の記憶DISCでした

【空条徐倫】
【時間軸】:「水族館」脱獄後
【状態】:全身に切り傷、疲労(大)、脇腹に裂傷(大)、出血多量、後頭部に傷、ゆがんだ覚悟、気絶中
【装備】:メローネのバイク
【道具】:支給品一式
【思考・状況】
基本行動方針:荒木と決着ゥ!をつける
0:気絶中
1:DIOの館に向かい、DIOとプッチと決着ゥ!つける
[備考]
※ホルマジオは顔しかわかっていません。名前も知りません。
※最終的な目標はあくまでも荒木の打倒なので、積極的に殺すという考えではありません。
 加害者は(どんな事情があろうとも)問答無用で殺害、足手まといは見殺し、といった感じです。
278創る名無しに見る名無し:2010/05/18(火) 00:04:17 ID:07fJxu8x
【ナルシソ・アナスイ】
[時間軸]:「水族館」脱獄後
[状態]:健康、全身ずぶぬれ、右足欠損(膝から下・ダイバーダウンの右足が義足になっている)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料、水2人分)、点滴、クマちゃん人形、双眼鏡、ラング・ラングラーの首輪、トランシーバー(スイッチOFF)
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームに乗った参加者の無力化、荒木の打倒
1.徐倫………!
2.殺し合いに乗った奴ら、襲ってくる奴らには容赦しない
4.徐倫に会った時のために、首輪を解析して外せるようにしたい
5.アラキを殺す
6.万が一アラキに勝てないと分かればその時は……?
7.徐倫に会えたら特別懲罰房へ行く…のか?
[備考]
※マウンテン・ティム、ティッツァーノと情報交換しました。
 ベンジャミン・ブンブーン、ブラックモア、オエコモバ、ブチャラティ、ミスタ、アバッキオ、フーゴ、ジョルノ、チョコラータの姿とスタンド能力を把握しました。
※ティッツァーノとの情報交換で得た情報は↓
 (自分はパッショーネという組織のギャングである。この場に仲間はいない。ブチャラティ一派と敵対している。
  暗殺チームと敵対している。チョコラータは「乗っている」可能性が高い。
  2001年に体に銃弾をくらった状態でここに来た。『トーキングヘッド』の軽い説明。)
  親衛隊の事とか、ボスの娘とかの細かい事は聞いていません。
※ラバーソールとヴェルサスのスタンド能力と容姿を知りました。
※首輪は『装着者が死亡すれば機能が停止する』ことを知りました。
 ダイバー・ダウンを首輪に潜行させた際確認したのは『機能の停止』のみで、盗聴機能、GPS機能が搭載されていることは知りません。
※ヴェルサスの首筋に星型の痣があることに気が付いていません
※ダイバーダウンが義足になっています。他の細かい制限は後の書き手さんにお任せします。
※F・Fが殺し合いに乗っていることを把握しました





[備考]
※【C-4 DIOの館 門前】にヨーロッパ・エクスプレスが、【C-4 DIOの館】にラバーソールのデイパック
 (支給品一式 ×5(内一食分食料と方位磁石消費)、ギャンブルチップ20枚、ランダム支給品×1、サブマシンガン(消費 小)、
  巨大なアイアンボールボーガン(弦は張ってある。鉄球は2個)、二分間睡眠薬×1、剃刀&釘セット(約20個))が放置されています。
※ホル・ホースのデイバッグ一式がD-4 中央に放置されてます。
※ダイアーの生首はE-5の繁華街の少し東の民家に放置されてます。
279創る名無しに見る名無し:2010/05/18(火) 00:05:04 ID:07fJxu8x
735 :For no one - 誰がために? ◆Y0KPA0n3C.:2010/05/17(月) 23:38:24 ID:VvcxOZjs
状態表だけさるさんくらってしまった…どなたか代理投下をおねがいします。

投下完了です。誤字・脱字、矛盾点・修正点、おかしな点等ありましたら一声かけてください。
長時間の投下にもかかわらず支援を下さった方、ありがとうございました。
また代理投下をしてくださった方、したらばで素早い対応をしてくださった管理人様、感謝いたします。
280創る名無しに見る名無し:2010/05/18(火) 00:07:02 ID:07fJxu8x
代理投下完了
281創る名無しに見る名無し:2010/05/18(火) 10:33:51 ID:iLwnKkMf
投下乙です
ディオがどんどんボロボロになっていく・・・
ろくに手当てもしてないこのままだと敗血症になりそう
282創る名無しに見る名無し:2010/05/19(水) 00:34:57 ID:BLJpW9+v
投下乙
迫力あるバトルとか
吉良の提案とか
ジョナDIOとか

色々と続きが気になる展開になってきたなぁ
283創る名無しに見る名無し:2010/05/20(木) 22:50:38 ID:ZP2UEwnT
投下乙です

これはボリュームがある長編だわw
書き手はよく頑張った!
先が気になる引きで続きが気になるな…
284創る名無しに見る名無し:2010/05/20(木) 23:15:00 ID:fo/oZxVK
投下乙
何気にポルナレフが凄い
アンジェロとJガイルの同時攻撃をいなしながら、徐倫を助けバイクも入手するとか
そして、アナスイはついに徐倫と再開できたか
これからどうなるか、面白くなりそうだ

リンゴォがジョナサンを圧倒してるのが少し気になった
リンゴォってこんなに強かったっけ?
肉体的には普通の人間だったと記憶してるんだけど
285創る名無しに見る名無し:2010/05/21(金) 00:47:41 ID:ub5fkr45
>>284ジョナサンはいろいろあって精神的に弱かった
リンゴォはマンモーニ属性には破壊力A(超スゴイ)を発揮できる
286創る名無しに見る名無し:2010/05/21(金) 18:05:50 ID:a9jBnHmB
ジョナサンは精神よりむしろ肉体のほうがやばいな
波紋の呼吸してるとはいえ、隕石の傷の処置してないし
287創る名無しに見る名無し:2010/05/21(金) 20:25:53 ID:aig029ir
サバイバー状態も重なってるから案外大丈夫なのかもな>ジョナ肉体
でもその分素に戻ったときが怖いぜ
288創る名無しに見る名無し:2010/05/21(金) 20:37:04 ID:a9jBnHmB
SSと状態表見るにサバイバー状態解けてね?
289創る名無しに見る名無し:2010/05/25(火) 00:25:52 ID:q98sysqX
>>288
したらばに書き手さんの回答が来てましたよ〜

そして二周年オメメタァッッッ!ラジオも楽しみだ
290創る名無しに見る名無し:2010/05/25(火) 19:51:14 ID:4OM8aCO3
そろそろ二周年ラジオだ

 |    __
 |_,.へ、-、ヽこ Vヽ_
 |三ヽ/ ヽ }//└ーァ
 |フ `{_ (⌒Vi|//⌒ Tュi、
 |-=‐'_'い{〉´`くア ノlV ハ
 |/,.へ! ソ  /^ー<__ノノ-1  う   う
 |二、      =、‐、ヽ(ニ二}       :
 |⌒ヽ       ヽ} トー-={  れ    :
 |、(・)l    ,.-=、   トニ= /
 | `´ ,.、  '(・) }  」こ‐ノ   し
 |‐、 '  }  ´``''′ /ーソ′
 |ヽ `ー- ...__   /-く      い
 |、 ``' ー-}ノ  /7^i/
 | `_ー--一'´  /_ノノ      !
 |   ̄   /ー'´
 | 、__,.. イ´
 |/=== rーv─r- 、
 |//:::::::ノ {つノ-─--、ヽ
291創る名無しに見る名無し:2010/05/25(火) 20:39:01 ID:4OM8aCO3
フッフッフッ
規制というモノは……………
最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も最も恐ろしィィ
マギィーーーーーーーーーーッ!!

はい、どなたか本スレにコピペしてくださるとありがたいです。↓

聴き方解説ページ→ ttp://cgi33.plala.or.jp/~kroko_ff/mailf/radio.htm
アドレス→ttp://ladio.net/src/byHk
またはlivedoorねとらじにて「ジョジョの奇妙なラジオ 〜第二回的外れラジオ〜 」と検索しても見つかります。
実況スレはこちら→ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12752/1274360899/1

乱入大歓迎、横やり大歓迎です。俺のトリップで検索すればスカイプで捕まえれます。
ラジオのやり方は『前回ので覚えた』…………
一度覚えたやり方は……絶〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ対、忘れんのだァーーーー!

292 ◆0ZaALZil.A :2010/05/25(火) 20:42:07 ID:Nb7tDt4k
ラジオ中、二作一度に投下すると面倒なので、今から投下します
293流される人、流されない人 ◆0ZaALZil.A :2010/05/25(火) 20:42:56 ID:Nb7tDt4k
「そうだな……まずは、俺たちが知る限りの参加者の情報をまとめよう。見落としがあるかもしれない」

リゾットは、筆談をやめた。
その理由をペッシ、音石の両名が筆記で問いただすも、その必要はないと言うのみ。
自分が始めたことを自分から止めていく、常識なら身勝手極まりない。
しかし、それこそ彼がリーダーである所以。

「ブチャラティチームの中で生存しているのは、放送で知る限りではこの4人」

 ブローノ・ブチャラティ
 ジョルノ・ジョバァーナ
 グイード・ミスタ
 パンナコッタ・フーゴ

4つの名がメモ用紙に綴られる。

(もっともフーゴは裏切り行為の報復を恐れてか、チームを抜けている。奴が『その時点』なのかは知らないが)

しかし、余計な事だ。
警戒するに越したことはないし、ペッシからすればそれは未来の話。
リゾットは、無駄な混乱は避ける。

「俺たちの元々の仲間はというと、ホルマジオ一人だけ。そして、この世界で知り合ったのは……」

 ホル・ホース
 ミュッチャー・ミューラー
 サウンドマン

更に3つの名が綴られる。

「サウンドマンから聞いた参加者の中にも、ダービーらしい人物はいなかった。
 ……そう言えば音石、お前の知り合いについてまだ聞いていなかったな」
「ダービー……そんな奴は知らねえな。こちとら生粋の日本人だしよ。知り合いの知り合いだろーと聞いたことがねえ」

けんもほろろの応対をする音石。
しかし、名前からして欧米出身だろうダービーを知っているとは言い難い。
多少脅されたあとで嘘をつけるほど、音石は強い心臓の持ち主でもなかろう。

「サウンドマンの情報含め、ダービーに繋がる線はない、か」
「で、やっぱり幻覚か何かだったんだろ? な?」
「だ〜か〜らぁ、何度も言うように」
「ダービーの能力が知りたかったがためにした確認だ。分からなくとも結論は出せる」

互いの主張をぶつけ合うだけの二人に対し、口喧嘩を繰り広げる子供を説き伏せるようにリゾットが言う。

「ペッシは実際にワープしたと断言していい」
「……そりゃまた、どうしてだよ?」
294流される人、流されない人 ◆0ZaALZil.A :2010/05/25(火) 20:43:39 ID:Nb7tDt4k
首をかしげる音石を尻目に、リゾットはペッシに命令を下す。

「ペッシ、手を開いて見せろ。音石にも見えるようにな」

ペッシは命じられたがまま、恐る恐る両手を開き、ゆっくりと手前に突き出す。
指先に付着する、ざらりとした砂。
筆談の間、リゾットは見逃さなかった。

「手には土が付いている。服の足下には海水も。幻覚ならこんなことはあり得ない」

海水は、しゃがんで砂の触感を確認したとき服にしみ込んだのだろう。
濡れた部位からして、涙を拭いたとは考え難い。
それ以前に、地下鉄内に土など存在するはずもなく。

「自らの身で証明してのけるとはな。でかしたぞペッシ」

偶然があった、とはいえ、ペッシ自身が作り出した証拠に変わりあるまい。
普段目立ってメンバーを褒めないリゾットからの賛辞に、ペッシは照れくさそうに頭をかいた。

「そして、お前がワープした孤島は『サン・ジョルジョ・マジョーレ島』だったか?」
「違え。もっとこう、無人島じみた場所だった。ヤシの木生えてたし」
「地図を見る限りでは、そんな場所見当たらねえぜ」
「『願いをかなえる』だの『地図には特に書かれていない孤島へワープ』だので、仮説はハッキリしてきた」

その一言でリゾットに視線が集まる。

「そのダービーは荒木の駒だ」

用いた言葉の割に、リゾットは平静を保っていた。
打ち砕くべき強敵の名が出たというのに。

「ワープが可能な参加者がいる、というのは考えにくい。そいつが自分をワープさせて逃げに徹すれば、この殺し合いが破綻しかねないからな。
 転移能力を持っているのは、ゲームマスターである荒木ぐらいしか考えられない。俺の仮説も現実味を増してきたかもしれないな」

地図の表記内で考えても、マップの端から端までの移動が出来るのなら、人力でいくら頑張っても追いつけそうにない。
リゾットは、荒木の能力が『人間ワープ』だという仮説を立てていたこともあり、荒木が関係している可能性をすんなりと受け入れた。

「話が逸れたな。そして、死んだはずのダービーがいる。
 これは単体では見えにくいが、荒木、そしてダービーの『願いを叶える』という言葉に注意すれば気づける事実がある。
 音石、ペッシが『兄貴を見たかった』と書いた後、お前は何と書いた?」
「さっきの紙見りゃ書いてあるんだが」

刺すような目つきで発言を促すリゾット。
首を掴まれたトラウマを回顧したからか、音石は素直に返答する。
295流される人、流されない人 ◆0ZaALZil.A :2010/05/25(火) 20:47:34 ID:Nb7tDt4k
「……一応もう一回言うぞ。『馬鹿馬鹿しいぜ、死人が生き返」

音石の唇が固まる。

「そうだ。荒木は、死人が生き返っているという既成事実が欲しかったんだ。
 願いを叶えると言われてホイホイ信じるわけにはいかない、だから蘇らせてみせた。
 もっとも、ダービーが本物か偽物か、この際それは別の問題だな」

首輪をつけられていたのも当然。
荒木の力を示す証拠になっても、それ以上になっては困るから。
死人が生き返らない、と言うのはリゾットも同意している。このダービーはただのそっくりさんでも成り立つのだから。

「リゾット。やっぱり願いを叶えるって言葉、疑ってるのか?」
「荒木は優勝者に褒美を与えると明言した。その言葉の真偽はともかく、『やる気』を促すためにこう言ったのは違いない。
 それに、ギャンブル勝負は殺し合いというカテゴリーから逸脱し過ぎていやしないか? もっと疑わしいのはそこだ」

ペッシは、ギャンブルにおけるリスクの説明を聞いてなかった。
命懸け、それさえ知っていればリゾットが余計な考えを持たずに済んだものを。

「荒木としては、こちらが勝ったら強力な武器の支給をしたがると俺は思う。殺し合いを加速させるためにも。
 筆談の必要なんかなかった。ダービーのいた島は結局、荒木の思惑の一部、掌の中でしかないんだからな。
 ここまで来たら断言するが、ダービーは荒木の操り人形だ。真面目に願いをかなえさせるつもりはないだろう」

荒木の想像の範疇で起こっていることなら、知られても何ら問題ない。
首輪の解除に繋がる情報でもないのだから、こそこそやるのは徒労だ。
リゾットはそんな風に、荒木を楽しませるために踊ってやるつもりはない。

「つまり、ギャンブルしてやるつもりはないと?」
「尋問も悪くないと思ったが、それにしたって賭けに勝つ必要がありそうだ。今は勝算がない」

拷問であっても口を割ることはないだろう。
そもそも前提として、持っている情報など、たかが知れているのかもしれない。
故にリゾットは、ダービーの土俵で勝負する必要はないと判断した。

「これでもまだ頼むか、ペッシ」
「充分に分かったぜ、望み薄いってのはよお。けどよ、俺はやっぱり見たいんだ。兄貴の勇姿を、この目に刻みてーんだ。それは変わらねえ」

ああ、しかし、彼の熱冷めることない。
返答を聞くや否や、ふう、と溜息一つ付き、リゾットの口から――

「ふざけるな」

――言い放たれた5文字は、とてつもなく、重いものだった。

「俺たちの目的は何だ? まさか忘れたというわけじゃあないだろうな」

ペッシはリゾットの語調に気押され、何も言えずにいた。
296流される人、流されない人 ◆0ZaALZil.A :2010/05/25(火) 20:49:15 ID:Nb7tDt4k
「荒木を倒し、自由を手にすることだ。何も俺とお前だけに言えたことじゃあない。
 ホル・ホースは仲間を集めようとしている。サウンドマンは戦場を駆けている。音石は索敵をしている。
 なのにお前は、やれ兄貴だ、やれ勇姿だと、過去にばかり目を向けている。進むべき未来から目を逸らす」

個人で出来ることなど限られる。
だからこそ複数の参加者に協力を募り、果ては上に立つ者に反逆の牙を突き刺す。
ここに来る以前も、以後も。目標としたこと、その本質は変わらない。

「研究所に来る以前、お前が俺に見せた覚悟は嘘だったのか?
 そうだと言うのなら、俺からはもう何も言わない。ずっとそうやってないものねだりをしていろ」

それ以降、リゾットはペッシに目も向けなくなる。
ペッシは反論できない悔しさからか地団太踏むが、リゾットはおろか音石さえも反応示さず。
やがて、下を向いてしょげかえり、とぼとぼと地下へ渡る道を行く。

彼は熱さに流される。過ぎた夢を見る。
偉大な男の背を眺め、追ってきただけのツケがのしかかる。


  ★


「活路はいつだって前にあるもの、だそうだ」

音石の、少し言い過ぎではないかとの苦情に、リゾットはそう受け答えた。

「熱意は認めよう。だが、その熱さを向ける先を間違えれば足手まといだ。
 それに、ペッシがぶれたのは俺の責任でもあるからな」

ペッシへの気遣いは十二分にしたつもりだ。
それでもなお、ペッシは過去にこだわり続ける。このままでは足手まといも良いところ。
地下道からの奇襲に備えると言う任務を雑に行われれば、全滅もありうる。
今一度、自分の発現の無責任さを自覚してほしかったがゆえの苦言をリゾットは呈した。

(立場を隠し続ける……難儀だな。むしろ限界が近いのかもしれない)

リゾットは以前、音石の眼前で、自分の立場を完全ではないが説明した。
身勝手な行動を慎んでもらうための警告だったが、この件でこちらを警戒され、悪評を流布されると痛手だ。
今回も、言い方が酷過ぎたかもしれないと自省する。
それでも、彼はリーダー。激情に身を任せるだけの男ではない。

『さて音石、首輪についてちゃんと話しておきたいことがある』

会話形式が急に筆談にスイッチしたため、音石は慌てて筆記用具を取り出した。

『電気がどこから流れているのか、確かめていないのか?』
『それどころじゃあなかったからな』

音石からすれば、その発想はなかった、といったところか。
元々優勝狙いなこともあり、自力で首輪を外すという言葉には、いまだ懐疑的だ。

『俺は、お前が殺し合いに参加していること自体がおかしいとずっと思っていた。
 例えば、首輪がバッテリーのようなもので動いているとしよう。バッテリーの電気をお前の能力で全部吸い取ってしまえば、どうなる?』
297流される人、流されない人 ◆0ZaALZil.A :2010/05/25(火) 20:51:12 ID:Nb7tDt4k
リゾットは知らないが、レッド・ホット・チリ・ペッパーは、杜王町内全域の電気エネルギーを吸収することさえ可能なスタンドだ。
そこまでいかずとも、小型の首輪のエネルギーを吸収しきるくらい、わけないはず。

『停止するかも知んねえけどよ。試せって頼まれても出来ねえよ、わかるだろ?』
『そうだな、荒木の監視がある。逆に言えば、それさえどうにかなってしまえば首輪は簡単に外せてしまう。お前が生きている限り』

話が簡単に済み過ぎている。あまりにもあっけなさすぎる幕引きとなる。
音石がここまで生き残ったのは偶然が作用した結果かもしれない。
しかし、開幕直後エネルギーを吸収し晴れて自由の身となる可能性、荒木が想定していないのは不自然。

ペッシにつらく当ったのは、反省を促すためだけではない。
ただでさえ不安定な彼の前で、『脱出できない可能性』を論じるのは酷だと感じたからでもある。

『エネルギー源をつきとめたかったのは、そのためだ。そう単純な事でもないだろうが』

とはいえ、完全に否定はしない。
もしかすると、もう一つか二つの要素が重なった時、首輪を外せるようになるのではないか。
そうすると、音石明は欠けてはならない『鍵』の一部。
想定はしても実現し難いイレギュラー、その一端。

「おっと、誰か来るみてーだぜ。女子高生だ」

ただし、特別に贔屓はしない。
集団の形成にはまだまだ時間がいる。その間、客観的に見た信用も育てていかなければならない。
脱出に必要な人員以外は切り捨てると見なされれば、途端、協力者は途絶えるだろう。
だから、例え状況に翻弄されるか弱い女性でも、リゾットは平等に扱うつもりだ。

彼は熱さに流さない。見据えるものが過ぎた夢かどうかは、まだわからない。


  ★


(山岸由花子、だったかな……。ただでさえ疑われてんだ、一方的に知ってるってのはまずいよなあ)

音石は、杜王町内のスタンド使いをある程度調べていた。
自分の脅威となるスタンドはそうそういないが、仗助らに存在を知られたがために、承太郎以外も警戒はしていたのだ。
山岸由花子もその一人。
広瀬康一を拉致監禁した時点で、その原因を調べずにはいられなかったというのもある。

(てきとーにゴマかそっと)

知ってはいるものの、教えるつもりはない。襲いもしない。
勝手な行動は自重すべきと、サウンドマンの件で学んだ。
リゾットからの信用ががた落ちするという高い授業料を支払うはめとなったが。

(しっかし、兄貴兄貴うるさい奴だったぜ。まるで億泰じゃあねえか。いや、億泰以上だな、うん)

そして部屋を去ったペッシを、心の奥底で嘲る。
成長を、反省をしない奴はいつもああなのだと自分に言い聞かせながら。

彼は熱さに流されない。過ぎた夢も見ない。
その熱さ、仇敵に姿が重なるために。


  ★
298流される人、流されない人 ◆0ZaALZil.A :2010/05/25(火) 20:53:06 ID:Nb7tDt4k
(趣味で飛ばしてる……わけないか)

夕日を背にして旋回するラジコンヘリ。
不具合があるのか、そのフライトはぎこちなく、円と言うには歪な軌道を描く。
それを見つめる山岸由花子も、歪みを抱えていながら歩みを止めない。

「首輪……そういえば持ってたわね」

妨害電波発信装置を見つめつつ、ふと言葉を零す。

空条承太郎の首輪。
今はデイパックにしまってあるものの、下手に見せようものなら大騒ぎは必至だろう。
どうやって外した? 首を切り落としたとでも言うのか? 見るからに非力な女子高生が?
髪を操るだけのスタンドで? そもそも首を切るという行為に抵抗はなかったのか? そして帰り血は? 

ざっと懸念事項を上げていったが、由花子はそこで考えるのをやめる。

(まあいいわ。相当なやり手でない限り誤魔化しはきく。まじめに首輪を外させるつもりもないもの)

要はデイパックを探られなければいいだけの話。
こちらは女性、向こうには立場をわきまえて振る舞っていただこうという魂胆だ。
『あの』ホル・ホースの仲間なら、既に首輪の二つ三つ持っていたっておかしくない。
この程度の悩み、取るに足らないわねと由花子は呟いた。

彼女は熱さに流される。過ぎた夢を見る。
死人が蘇えるはずがない――そんな冷めた現実は、夢に、愛に燃える彼女に届かない。



【F-2 ナチス研究所 研究室/1日目 夕方】
【暗殺チーム(現在メンバー募集中)】

【リゾット・ネエロ】
[スタンド]:メタリカ
[時間軸]:サルディニア上陸前
[状態]:頭巾の玉の一つに傷、左肩に裂傷、銃創(『メタリカ』による応急処置済み)
[装備]:フーゴのフォーク、首輪の設計図(ジョセフが念写したもの)、ダービーズ・チケット
[道具]:支給品一式
[思考・状況] 基本行動方針:荒木を殺害し自由を手にする  
1.音石の言う女子高生と接触、情報交換。
2.首輪を外すor首輪解除に役立ちそうな人物を味方に引き込む。
  カタギ(首輪解除に有益な人材)には素性を伏せてでも接触してみる(バレた後はケースバイケース)。
3.暗殺チームの合流と拡大。人数が多くなったら拠点待機、資材確保、参加者討伐と別れて行動する。
4.荒木に関する情報を集める。他の施設で使えるもの(者・物)がないか、興味。
[備考]
※盗聴の可能性に気が付いています。
※フーゴの辞書(重量4kg)、ウェッジウッドのティーセット一式が【F-2 ナチス研究所】に放置。
※リゾットの信頼度(味方にしたい度)
ホル・ホース>サンドマン>(メッセンジャー頼むぞの壁)>音石>(監視は頼りにしてる壁)>ミューミュー>(皆殺しにするぞの壁)>ブチャラティチーム、プ

ッチ一味
※リゾットの情報把握
承太郎、ジョセフ、花京院、ポルナレフ、イギー、F・Fの知るホワイトスネイク、ケンゾー(ここまでは能力も把握)
F・F(能力は磁力操作と勘違いしている)、徐倫(名前のみ)、サウンドマン


※サウンドマンに伝えた情報↓
[主催者:荒木飛呂彦について] のメモ、盗聴の可能性、電気伝達の謎、
スピードワゴン、ツェペリ、タルカス、ディオ、ワムウ、ポルナレフ、ラバーソール、エンヤ婆、ンドゥール、康一、億泰、トニオ、由花子、吉良、
ジョルノ、マックイィーン、プッチ、リンゴォのおおまかな人相、名前、能力、危険度。
299流される人、流されない人 ◆0ZaALZil.A :2010/05/25(火) 20:55:32 ID:Nb7tDt4k
【音石明】
[時間軸]:チリ・ペッパーが海に落ちた直後
[スタンド]:レッド・ホット・チリペッパー(黄色)
[状態]:体中に打撲の跡(中)、『レッド・ホット・チリ・ペッパー』をスピットファイヤーに乗せて飛行中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×3、不明支給品×1、ノートパソコンの幽霊、首輪の設計図(ジョセフが念写したもの)、
    スピットファイヤーのコントローラ、バッテリー充電器
[思考・状況]基本行動方針:優勝狙い
0.相手が誰だろうがリゾットに怪しまれないようにしなくっちゃあな。
1.ナチス研究所周辺を監視中(しばらくは研究所に待機)。チャンスがあれば攻撃を仕掛ける
2.首輪解除なんて出来んのか?
3.サンタナ怖いよサンタナ
4.電線が所々繋がっていないのに電気が流れているこの町は何なんだッ!? あやしすぎて怖えー!
[備考]
※バトルロワイアルの会場には電気は通っているようです。
 しかし様々な時代の土地が無理やり合体しているために、電線がつながっていなかったりと不思議な状態になっているようです。
 スタンドが電線に潜ったら、どうなるかわかりません。(音石は電線から放電された電気を吸収しただけです)
※音石の情報把握
 ブチャラティチーム、ホル・ホース、ミューミュー(ここまでは能力も把握)
 ミセス・ロビンスン(スタンド使いと勘違い)、ホルマジオ(容姿のみ)
※早人とジョセフとディアボロが駅を出た理由を知りません。
※盗聴の可能性に気がつきました
※サウンドマンとリゾットの情報交換はすべて聞きました。
※スピットファイヤーを【F-2 ナチス研究所】付近に旋回させています。プロペラの欠損により動作に安定感がありません。
 少なくともブチャラティチームやプッチ一味(と判断できた場合)、虹村億泰が近づいてきたら攻撃を仕掛けるつもりです。
300流される人、流されない人 ◆0ZaALZil.A :2010/05/25(火) 21:00:09 ID:Nb7tDt4k
【F-2 ナチス研究所地下鉄駅ホーム/1日目 夕方】
【ペッシ】
[時間軸]:ブチャラティたちと遭遇前
[状態]:頭、腹にダメージ(小)、喉・右肘に裂傷、強い悲しみ、硬い決意
[装備]:リゾットにタメ口の許可認証
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1、重ちーが爆殺された100円玉
[思考・状況] 基本行動方針:『荒木』をぶっ殺したなら『マンモーニ』を卒業してもいいッ!
1.兄貴ィ……最後の姿を見たかった…
2.誰も殺させない。殺しの罪を被るなら暗殺チームの自分が被る。
3.チームの仲間と合流する
[備考]
※ペッシの信頼度
ホル・ホース>ミューミュー>(よくわからないの壁)>音石、サンドマン、ブチャラティチーム
※100円玉が爆弾化しているかは不明。とりあえずは爆発しないようです。
※音石の経歴や、サウンドマンとリゾットが交換した情報の内容を知りました。
※盗聴の可能性に気が付いています。


※リゾット、及びペッシのメモには以下のことが書かれています。
[主催者:荒木飛呂彦について]
荒木のスタンド → 人間ワープ…見せしめの女の空中浮遊、参加者の時間軸の違い(並行世界まで干渉可能)
         → 精密機動性・射程距離 ともに計り知れない
開催目的 → 不明:『参加者の死』が目的ならば首輪は外れない
           『その他』(娯楽?)が目的ならば首輪は外れるかもしれない 
※荒木に協力者がいる可能性有り


※暗殺チーム全体の行動方針は以下のとおりです。
基本行動方針:首輪を解除する
1.首輪解除のためナチス研究所を拠点として確保する。
2.首輪を分析・解除できる参加者を暗殺チームに引き込む。
3.1・2のために協力者を集める。
4.荒木飛呂彦について情報収集
5.人数が多くなれば拠点待機組、資材確保組、参加者討伐組と別れて行動する


【F-2 ナチス研究所前/1日目 夕方】
【山岸由花子】
[時間軸]:4部終了後
[状態]:健康、強い覚悟
[装備]:妨害電波発信装置、サイレンサー付き『スタームルガーMkI』(残り7/10)
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜1、承太郎の首輪
[思考・状況]基本行動方針:優勝して広瀬康一を復活させる。
0.ナチス研究所に向かい、ペッシ・リゾットと接触。信頼を勝ち取り利用する。
1.吉良吉影を利用できるだけ利用する。
2. DIOの部下をどうにか使って殺し合いを増進したい。
3.正直知り合いにはなるべくあいたくない。けど会ったら容赦しない。
4.一応ディオの手下を集める
[備考]
※荒木の能力を『死者の復活、ただし死亡直前の記憶はない状態で』と推測しました。
 そのため、自分を含めた全ての参加者は一度荒木に殺された後の参加だと思い込んでます
※吉良の6時間の行動を把握しました。
※空条承太郎が動揺していたことに、少し違和感。
※プッチの時代を越えて参加者が集められていると考えを聞きました。
※ラバーソールのスタンド能力を『顔と姿、声も変える変身スタンド』と思ってます。依然顔・本名は知っていません。
※スピードワゴンの名前と顔を知りました。
301流される人、流されない人 ◆0ZaALZil.A :2010/05/25(火) 21:02:07 ID:Nb7tDt4k
あい、投下終了です。
302創る名無しに見る名無し:2010/05/25(火) 21:04:10 ID:HwGDhJOt
投下乙です!
あいかわらず由花子こえー

音石に死亡フラグ・生存フラグが混在してていいですね
303創る名無しに見る名無し:2010/05/25(火) 21:06:02 ID:4OM8aCO3
投下乙
ナチス組が考察役としていい感じに機能してますね〜
音石も言ってたけどペッシには早く成長してもらいたいもんだ

そして由花子が場をかき回しに来たか……無事には済みそうにないな
304創る名無しに見る名無し:2010/05/25(火) 21:33:32 ID:eSlZ3V6m
投下支援
305助けて! 上野クリニック! ◆xrS1C1q/DM :2010/05/25(火) 21:34:14 ID:4OM8aCO3



茜色

白銀

黄金色

赤銅色

褐色



若草色

沈みかけた太陽は紅く燃え、世界を茜色へと染め上げる。
空を、雲を、コンクリートの塊を、線路を、青年の髪を。
白銀のそれは浴びた光を反射し、元とは異なった新しい色で輝く。
黄金とよく似た色をしながら風でたなびくそれは小さなライ麦畑のよう。
彼の肌の色である褐色とのコントラストがより一層、自然と人間の調和で生まれた小さな世界を強調する。

「これが夕日というものか……美しいな」

生まれて初めてじっくりと眺めた日没の時。
小さな感嘆の声が髪の毛とよく似た白い唇から漏れ出す。
青々と茂った草を踏む音が心地よい。
暗闇の世界で生きていた彼にはこの色彩溢れる世界がひどく魅力的に映った。
白金も、金剛石も、黄金の煌めきでも眼前に広がる光景には敵わない。
目の前にあるのは地平線に半分隠れた紅の塊。
人生における最大の障壁が、今は新しい自分の象徴となった。

「カーズが自然を愛したという気持ちも分かる」

視界にある中で最も背の高い木に目をつけて歩み寄る。
大きく跳躍して手頃な太さの枝にぶら下がった。
そのまま腕力で体を持ち上げて、その枝に腰を下ろす。
触れた樹皮のザラりとした感触もまた心地がよい。

「ほぅ……」

形の整った唇より再び声が漏れ出す。
世界というものは広い。
南米に、ローマに、中国に、世界中を巡っても見えなかった真実がここにある。
手頃なあたりにあった葉を一枚だけちぎり、太陽に透かす。
青かった。
葉脈以外の場所、いや光を通しにくいはずの葉脈ですら生命力に満ち足りた色を発している。
ただそれだけのことが、この生命体にとっては嬉しかった。
自分たちが向かおうとしていた進化の果てを見れた気がした。
太陽を克服した先に見えるのは究極の生命体としての景色ではなく、この美しいパノラマ。
残念なのは、この光景が見れるのが自分しかいないという事実。
だからこそ、彼は優勝を目指して走る。
仲間の無念を晴らすため、自分達が最強の存在であることを証明せねばならない。
しかし、彼は動こうとしない。
せめて日が沈むまでは、太陽がなくなるまではずっと眺めていようと、
新しい能力のおかげで手に入れた新しい世界を。
ただ肉体に潜り込むだけでは遮断できなかった網膜へと入り込む光すらも無害に変える無敵の盾。
男、エシディシはその存在に改めて感謝した。
306助けて! 上野クリニック! ◆xrS1C1q/DM :2010/05/25(火) 21:35:00 ID:4OM8aCO3
★  ☆  ★



「また……貴様か」

不快感と殺気に溢れた声が目の前から聞こえる。
男、青年と呼ぶべきだろうか? とにかくヤツは背を向けたまま声を発した。
ありえねぇ、こんなことはありえねぇ。
狙いは確実だった、着弾地点もきっちり視認した。
だったらなんで脳幹をぶち抜かれて生きてるんだよおおおおおおおお!

「しかし、半端者から化け物になることはできたみたいだな。そこだけは褒めてやろう」

男は緩慢な動作で立ち上がりこっちを振り向いた。
逆光で見えにくくなっている顔の中で、唇が軽く吊り上っていることは分かった。
あぁ、分かったよ。
肌の色、身長、髪、服装、下手したら性別まで違うんじゃないかと思ったがコイツは間違いなくアイツだ。
圧倒的な力と、覚悟を決めるきっかけをくれたアイツだ。

「コロッセオでは世話になったな。あんたのおかげでハッキリと目が覚めたよ。
 それにしても……他人の体を乗っ取り内側から食い破るか。
 本当に化け物を表すにはふさわしい表現だな、あんたもそう思うだろ?」

嫌味を交えつつも考察を繰り返す。
コロッセオで会っただけで判断できた、コイツはとんでもなく頭が切れるってことが。
あの屈辱的な挑発と発言を先取りされたことで一発で理解させられた。
そんな相手が間違いなく理由もなしに人間に擬態するわけがないな。

「化け物か……生物界の頂点に立つことがそうであるならばこのエシディシ、その汚名を喜んで受け入れよう」

考える余裕すら相手は与えてくれない。
線が細くなっても化け物じみた身体能力は変わらないようだ。
筋肉達磨、エシディシは一跳躍で優に二十メートルはある距離を詰めてきた。
着地と同時に身を大きくかがめて反撃を避ける。
そしてそのまま、足を薙ぐような低い軌道の蹴り。
当たったら不味いということは嫌というほど思い知らされてるから軽く跳躍することでしのぐ。

「くらいな!」

ダメージを与えることを狙ったわけではなく、時間稼ぎのために体の一部を打ち出す。
着地の際にできる隙をこれで何とか殺す!
307助けて! 上野クリニック! ◆xrS1C1q/DM :2010/05/25(火) 21:40:14 ID:4OM8aCO3
「MM!」

ヤツは咄嗟に回避した。
よし、これで逃げるだけの時間がで……おい、ちょっと待て。
なんで避けた? あれだけの回復力を持ち、体内に入ったフーファイターズを焼き殺すことで対処できるあいつが何故?
今の射撃はどこも奴にとっての致命傷にはならないはずだ。
ならば?
チッ、考える時間もくれないってか!
触れることもできないから大きな動きで奴の攻撃をしのいでいく。
飛燕のような早さと手数の拳。
速さと連打性にに特化した攻勢を上体を激しく動かして全てに対応していく。
内臓をえぐり取るようなブローを少し動くことで避ける。
雷電のような鋭さで放たれる蹴撃。
あと一歩前にいたら頭が宙を舞っていた。
真空によって生まれた剃刀が前髪の先端を持って行った。
相手は太陽を背負ってやがるから見えにくくてうっとおしい、せめてこれが月光だったら。
ちょっと待て、何かがおかしいぞ。
太陽を背負って?
なるほどな、全てが繋がったよ。
やっぱりあいつも伊達や酔狂であんな格好してるわけじゃないんだな。
しかし本当に驚いた。
こればっかりは流石の私も予想外だったよ。




まさかアイツと自分が似たり寄ったりな理由で人の皮を被ってるとはな。




エシディシは日光を、私は乾燥を防ぐために。
ってことはアレッシーが言ってたことは本当なんだな。
だったら……今なら勝ち目がある。
タイムリミットは地平線に太陽が沈むまでの間。
何分だ?
二十分か? 十分か? 五分か? それとも一分もしないで沈む?
いや、関係ない。
一分で沈むなら一分以内に、五分で沈むなら五分以内にあのでかい図体を太陽のもとに引きずり出せば勝ちだ。
ディバッグより透明な容器を取り出した。
キャップをあける間ももどかしいから指突で壁を突き破って顔に水を浴びせる。
表面から吸収できないのが雫となって地面へと滴り落ちる。
よし、やってやろうじゃないか。
308創る名無しに見る名無し:2010/05/25(火) 21:43:27 ID:eSlZ3V6m
上野把握支援
309助けて! 上野クリニック! ◆xrS1C1q/DM :2010/05/25(火) 21:45:06 ID:4OM8aCO3
★  ☆  ★



さっきまでとは一転、フー・ファイターズが攻勢に出た。
銃のように構えた指から己の一部を連続で放つ。
エシディシ自体にダメージを与えることはできないが、ティッツアーノの肉体を食い破ることはできる。
その事実を知っているエシディシは回避に専念する。

「そんなにその体が破られることが怖いか?
 日光に弱いらしいからなぁ、たっぷりと日焼けさしてやるよ」

見下した様子の挑発に口角を釣り上げることでエシディシは答えた。
余裕溢れる態度に苛立つが、それを抑えつつ攻撃を続行しようとしたところで――――男は急に前へと飛び出してきた。
今まで横の動きで回避する相手に対応していたフー・ファイターズにとってこの動きは意外ではあるが対処できないものでもない。
曲げていた指を伸ばして迎撃の準備をする。
そして眼前に迫ってきたエシディシは握った拳を開いて、振り下ろされた手刀をその内へと収める。

「そう来ると思ったぜ。俺の被っている肉体を切り裂こうとしている貴様はなあああああああ!」

そう言いながら掴んだ腕を捻ることでフー・ファイターズを地面へと叩きつけた。
到達する衝撃は人間の肉体に耐えられるものではない。
全身の至る所で皮が破れ、中身であったものが漏れ出す。
千切れかけた右腕を放り投げるとエシディシはつまらなさそうに言った。

「所詮はこんなものか、やはり貴様に人間の面白さを期待するのは間違っているようだな」

蠢くプランクトンを焼きつくそうと己の肉体を貫いて血液を噴出させそうとするエシディシ。
しかし、それより先にダービーの肉体が立ち上がった。

「ずいぶんと舐めたこと言ってくれるじゃないか。ええ、その余裕が気に食わないんだよ」

外見の凄惨さとは裏腹に、今のフー・ファイターズにダメージは少ない。
だが外気に直に晒されることで乾燥は急激に進行していく。
それでも現状に変化はないと彼女は判断した。
元から日が沈むまでがタイムリミットの戦い、それまでに致命的なまでに乾燥するはずはないと。
ボロボロになった全身を自分の肉体を繋ぎとして人としての形を保つ。

「人間の面白さねぇ……。何に対して面白さを探したいかは分からないけどな。
 少なくともお前には分からねぇさ、ああ分かるはずがねぇ」

うわ言のように呟きながら攻撃を再開した。
FF弾を使用しない肉弾戦。
パワー、スピードともに相手が上回ることは分かった。
それと同時に、人の皮を被っているときは触れただけで取りこまれるということはないということも。

「ほぅ、その口ぶりなら貴様は知っているということか?
 ジョリーンとやらから教わったということか?
 ならば俺はジョリーンとやらと戦うしかないなぁ」
310助けて! 上野クリニック! ◆xrS1C1q/DM :2010/05/25(火) 21:50:04 ID:4OM8aCO3
勝利を確信しつつエシディシはいやらしい笑みを浮かべる。
それを無視してフー・ファイターズは腕を横に薙いだ。
彼はしゃがみこむことでそれを回避し、逆に右腕で足を薙ぎ払う。
体勢の悪さから足が千切れたりはしなかったものの大きくバランスを崩した。
追い打ちで胴体を狙って拳が飛来する。
柱の男の筋力で放たれるそれは単純であるが必殺の威力を持つ。
当たれば今度こそバラバラに飛散するであろう一撃。
咄嗟に腕を伸ばしてエシディシの首を掴むことで空中で体勢を立て直し回避。
そして首を掴んだ掌の形を変えて首輪の隙間へと潜り込ませる。

「皮という型が無くなった分だけ自由に動けるというわけか
 いよいよ本格的に化け物じみてきたじゃないか」
「ずいぶん余裕だな、大事な被りものの頭吹き飛ばされてもそんなことが言えるのかぁ!」

言うと同時に首輪にかけた両腕を引っ張る。
辺りに響き渡る爆音。
一瞬吹きあがる炎。
部分的に吹き荒れる爆風。
飛ばされた頭。
煌めく髪の毛が重力を無視したように舞って―――ティッツアーノの頭はアスファルトの上に落ちた。

「クソッ、これで完全に使い物になんなくなったな」

爆心地より少し離れた位置にいたものの、腕を襲った爆発の衝撃で尻もちをついてしまう。
焼け焦げた両腕を見ながらフー・ファイターズは毒づいた。
完全に水分など蒸発し尽くし、ポロポロと死滅したプランクトン達がはがれおちていく。
けどこの重症に見合うだけの戦果は得られたのではないかと思う。
視線を上げてエシディシの立っていた方向を見た。

頭が無い、この状態が一番想定しうるものだった。

エシディシの頭が生えている、あまり想像したくないがそれもありうるだろう。

ならばこれはどういうことだ?

吹き飛ばされたはずの中性的な顔がいまだに存在するっていうのは?

阿呆みたいに口を開けてフー・ファイターズは目線を移した。
確かに吹き飛ばされた首はある。
疑問の嵐が駆け巡るも、目の前にある問題の解決へは至らない。
混乱する間も待たずにエシディシは大きく顎を蹴りあげる。
歯が口より飛び散った、顎の骨が粉となった、そして下顎が大きく天へと飛ばされていく。

「切り札が通用しなくって残念だったなぁ〜」

口調とは裏腹にエシディシの表情に笑みはない。
一歩一歩迫り来る男にフー・ファイターズは自身の死を見た。
心を埋め尽くすのは諦観と絶望。


私じゃコイツに絶対勝てない。


虚ろな瞳でエシディシを見た。
いや、本当に見てるかすらわからない。
ただただ呆然としながら時が過ぎるのに身を任せるだけだ。
311創る名無しに見る名無し:2010/05/25(火) 21:50:22 ID:hI4bTKnU
sien
312助けて! 上野クリニック! ◆xrS1C1q/DM :2010/05/25(火) 21:50:54 ID:4OM8aCO3
「この会場に柱の男の他に人間じゃない奴は何人いるんだろうな?
 貴様、ディオの部下だった屍生人。他にも吸血鬼や屍生人がいるかもしれんなぁ
 この中に我々柱の男を倒しうる怪物がこの会場には存在しているのか?
 NOだ、断じてNOだ。ならば誰が殺した?
 あのひよっこを、戦闘の天才のワムウを、稀代の頭脳を持ったカーズを!
 ……人間だ、波紋使いも含めた人間どもが我々の仲間を殺したに違いない!
 だからこそ俺は人間の面白さを認めた。
 いや、これ以上これから死にゆく貴様に言ってもしょうがないか」

魂の抜け殻の目の前で長々と語るエシディシ。
話が一段落すると止めを刺すべくフー・ファイターズへと両腕を向けた。
煮えたぎる血液を出すために爪を開ける。
戦意を喪失したと思っている相手の瞳に光が戻っていることに気がつかずに。
しかしながら彼の突然立ち上がったフー・ファイターズへの対応は見事なものであった。
こちらへと飛びかかる力を逆手に取ったカウンター。
正拳を叩きこまれたフー・ファイターズはまたしても体のパーツを飛び散らしながら宙を舞う。
数メートル吹き飛ばされ、地面にしこたま体をぶつけるもフー・ファイターズは再び両足で大地を踏みしめる。
繰り返される無謀な突撃。
案の定エシディシからの手痛い反撃を受けて地面へと倒れ伏す。
今度の一撃は足を吹き飛ばし、立つことすらままならない。

「どうした? その見苦しい反撃は。
 勝てぬと分かったからヤケクソになったってわけか。
 どうせ立ち上がるならもう少し考えるんだなああああああああ」

サッカーボールのように蹴り飛ばされてフー・ファイターズが吹き飛ぶ。
もはやダービーの肉体は僅かに残るのみ。
今度こそ完全なる止めを刺そうとエシディシは歩み寄る。
アスファルトを踏みつけながら、伸びる影法師を追いかけるように確実に近付く怪物。
さっきと同じシチュエーションであるが、一つだけ違うのはフー・ファイターズが声を発したこと。

「なぁ、鉄塔でジョルノと戦っただろお前。アイツに殴られた時硬直したよな?
 お前の仲間も死んだって言っただろ、要するにお前も不死身の化け物ってわけじゃないんだな。
 勝てるんだろ? やりようによってはお前らにも勝てるんだよなああああああああああ!!」

叫び声と同時にエシディシの、正確に言えばティッツアーノの肉体が弾けた。
飛散する肉片。
一帯にばら撒かれた赤い塗料。
どす黒く染め上げられた服だった布の破片がゆっくりと舞い落ちる。
そして再び宙を舞うことになったティッツアーノの頭部。

「WOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」

中から現れた化け物の巨体は煙を上げ、少しづつ蒸発していく。
今までの圧倒的な暴力が嘘であるかのように道路の上を転がり苦しみ悶える。
日光の予想以上の効果に驚くフー・ファイターズではあるがすぐに気を取り直した。
消滅していくエシディシが逃げて行かぬように気を付けながらも半ば勝利を確信した。
数分もたたないうちにこの化け物は塵となって消える。
太陽がなくなるまでには何とかなるだろう。
安堵感と達成感がボロボロとなった体にしみわたる。

「ここまで効果的だったとはな。そりゃあ人の皮を被ってでも日光を避けるわけだ。
 本当は動きを止めたところでF・F弾を耳に叩きこむ戦法をもう一度使うつもりだったんだが……その必要もなさそうだな」

しかし、気が付いてしまった。
エシディシの体より湧き出る黄色いジェル状の何かに。
それに包まれていくエシディシに。
そして全身を覆われると同時に立ち上がる彼に。
スライムの塊がエシディシの姿を模したことに。
313助けて! 上野クリニック! ◆xrS1C1q/DM :2010/05/25(火) 21:52:09 ID:4OM8aCO3
★  ☆  ★


「まさか攻撃されたときに弾け飛んだ肉体を使って反撃するとは思わなかったぞ。
 危うく死にかけた。スタンドの操作が上手くできなければ間違いなく死んでいた。
 ほんの少しだが、貴様に敬意を払っていもいいかもしれんな」

エシディシが平然とした様子で喋っている。
これは何の悪夢だ? やっとの思いで人の皮を破壊したと思いきや今度はスタンドだと?
咄嗟に周りから肉を寄せて再生させた右腕からF・F弾を奴の脳天へとぶち込んだ。
あぁ、ぶち込んだはずさ。
やっぱりか、やっぱり通用しないってか。
表面にあった黄色いジェルだった何かを食い破らせようとした。
けれどもそれよりも早くフー・ファイターズは消滅した。

「スタンドを持ってたなんて知らなかったぜ」
「貴様と会ったときは生憎持ってなかったもんでな。
 まぁ、あの時の貴様が俺にスタンドを使わせるほど俺を追い込むことなど不可能だっただろうがな」

ちっ、プッチの野郎が余計な事をやりやがったってことか。
どんな能力か詳細は分からねぇけど少なくとも今判断できるのは、
全身を覆うことで太陽の光を防げて形まで変えられる、その上表面に付着したフー・ファイターズをあっという間に死滅させる何かか!
お手上げだ、今度こそダメだ。

ジョリーン! ジョリーン! ジョリーン!

守れないのか? 彼女を生かすことはもうできなくなるのか?
アナスイはいる、けどこの怪物に勝てるのか!?
もし勝てたとしてアイツは変な希望に縋りつくことなく現実的な対応をとってくれるのか!?
分からない、分からないこそ私が生き延びなくてはならないのに!
生きたい! まだ死ぬわけにはいかない!
何とかなってくれ、お願いだから何とかなってくれ!
コイツを倒すヒントでも何でもいい!
……そうだ、首輪さえ爆発させれば。
既に傍へと近寄ってきたエシディシの首輪に手をかけようとした。
アイツは動かない。
さっきと同じ手にかかるとはマヌケか。




どうして首輪に触っただけであたしの手がなくなってるんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!



迫る影

喪失した手首

目の前に向けられた掌

あまりにも無感情で冷たい瞳

ポタリ ポタリ

焼ける  焼ける  焼ける  あたしという存在が焼けていく


   
                                                  ジョリーン
314助けて! 上野クリニック! ◆xrS1C1q/DM :2010/05/25(火) 21:53:58 ID:4OM8aCO3
★  ☆  ★



地平線へとほとんど沈み、頭頂しか見えなくなった太陽を見つめながらエシディシは溜息をついた。
あまりにも見苦しすぎる化け物の最期。
途中までは健闘したと彼も認めている。
潜り込んでいた人間の頭を吹き飛ばし、肉体を完膚なきまでに破壊した。
経過だけを見れば素晴らしいものであった。
それだからこそあの終わり方には納得がいっていない。

「あの人間、ティッツアーノは力なくとも最後まで抵抗したのだがな」

心底つまらなさそうに呟く。
やけくその一撃はイエロー・パランスによって阻まれ、その後は焦るだけ。
期待外れすぎる結果に彼の満足感は全くもって満たされない。
ストレスにアスファルトを踏みぬいた。
破片が飛び散り、彼の右足が地面へと埋まる。
それを勢いよく引き抜きながら溜息をもう一つ。

「やはり人間でなくてはいけないのか。俺を成長させてくれるのは人間だけしか……」

もうすぐ日が沈む。
もうすぐ柱の男の世界がやってくる。
エシディシは被っているイエロー・パランスを蠢かせた。
願わくば己を楽しませる人間が現れることを、
願わくば己を打ち倒すほどの力を持ち自分をさらなる高みへと引き上げてくれる人間に出会うことを。

彼は歩きだす、方向など適当に。
ポルナレフの約束などどうでもいい、彼は自分の進みたい場所へと向かっていくだけだ。
315助けて! 上野クリニック! ◆xrS1C1q/DM :2010/05/25(火) 21:54:48 ID:4OM8aCO3
【F-3/1日目 夕方】
【エシディシ】
[時間軸]:JC9巻、ジョセフの“糸の結界”を切断した瞬間
[状態]:人間の強さを認めた
[装備]:『イエローテンパランス』のスタンドDISC
[道具]:支給品一式×2、『ジョースター家とそのルーツ』リスト(JOJO3部〜6部コミックスの最初に載ってるあれ)
    不明支給品0〜2(確認済み)、岸辺露伴のサイン、少年ジャンプ(ピンクダークの少年、巻頭カラー)、ブラックモアの傘
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに優勝し、全生物の頂点にッ!
1.南で参加者を殺して回る
2.億泰には感謝せねばなるまい。
3.常識は捨てる必要があると認識
4.ドナテロ・ヴェルサスを殺す際にメッセージを伝える。ヴェルサスの『進化』(真価)に期待
[備考]
※時代を越えて参加者が集められていると考えています。
※スタンドが誰にでも見えると言う制限に気付きました 。彼らはその制限の秘密が首輪か会場そのものにあると推測しています
※『ジョースター家とそのルーツ』リストには顔写真は載ってません。
※『イエローテンパランス』の変装能力で他者の顔を模することができます
※頭部を強打されればDISCが外れるかもしれません。
※この後どこに向かうかは次の書き手にお任せします。
※イエローテンパランスはまだ完全にコントロールできてません。また具体的な疲労度などは後続の書き手さまにお任せします。
316創る名無しに見る名無し:2010/05/25(火) 21:57:28 ID:q98sysqX
支援ーッ
317助けて! 上野クリニック! ◆xrS1C1q/DM :2010/05/25(火) 22:01:10 ID:4OM8aCO3
怪物の去ったあとに残されたのは飛び散った二人の男たちの肉片。
あまりにも凄惨な現場は訪れた者たちに激戦を想像させる。

風が吹き抜け、プランクトンの焼けカスを拡散させていく。

風は吹き抜け、衣服の欠片を何処かへと飛ばしていく。

風は吹き抜け、胴体と離された頭の髪を揺らす。

風は吹き抜け、生首だけの存在となった青年の口から漏れた声を運ぶ。

「何なんだろうなあたしは。
 ジョリーンと会ったときから決意で変えたはずの口調は元通りになっちまうわ、
 エシディシにぼろ負けするわで本当にどうしようもない」

たまたまティッツアーノの体にフー・ファイターズが付着していたから、エシディシがそのことを確認しなかったから生き残れた。
本人すらも意識していなかったことだが、そのことが逆によかったのかもしれない。
演技でない絶望を読み取ったからこそ念入りな止めを刺さずに去っていったのだろうから。
しかし、それは本当に良いことだったのだろうか?
心も体もバラバラに引き裂かれ、生首としてみじめに生き続ける。
この境遇がたまらなく悔しく、無力感と虚無感が絶えず襲いかかってきた。

「とりあえず……水を探さないとな」

風は吹き抜け、彼女の独り言をかき消していった。

吹き抜ける風が遺した遺産が付近にあることに彼女はまだ気が付いていない。
318助けて! 上野クリニック! ◆xrS1C1q/DM :2010/05/25(火) 22:02:21 ID:4OM8aCO3
【F-3/1日目 夕方】


【F・F】
[スタンド]:『フー・ファイターズ』
[時間軸]:DアンG抹殺後
[状態]:身体ダメージ(大)精神状態不安定(極大) 生首状態
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×2(ペットボトル一本消費)、壊れた懐中電灯、加湿器、メローネのマスク、カップラーメン、携帯電話
[思考・状況]:
基本行動方針: 空条徐倫を生存させるために彼女を優勝させる
1.湿地帯へ向かい、ケジメをつける
2.ブチャラティチームとプッチの一味は敵と判断
3.ブチャラティ一行を始末できなかった事を後悔
4.余裕が出来たら自分の能力(制限)を把握しておきたい
5. もしも荒木が倒せるならば対主催に益がある方法で死ぬ
6.無力感と虚無感で打ちひしがれている
[備考]
※リゾットの能力を物質の透明化だと思いこんでいます
※リゾットの知るブチャラティチームの情報を聞きましたが、暗殺チームの仲間の話は聞いてません
※ジョルノに対してはある程度の信頼を寄せるようになりました。出会ったら……?
※ダービーとアレッシーの生前の記憶を見たので三部勢(少なくとも承太郎一派、九栄神、DIO、ヴァニラ、ケニーG)の情報は把握しました。
※エシディシは血液の温度を上昇させることができ、若返らず、太陽光に弱く、スタンドを使えると認識しました。 (太陽光が致命傷になることも把握)
※リゾットから聞いたブチャラティチームのスタンド能力についての情報は事実だと確信しました(ジョルノの情報はアレッシーの記憶よりこちらを優先)
※自分の能力について制限がある事に気がつきました。
※ディアボロの能力を『瞬間移動』と認識しています。
※参加者の時間のズレを何となく理解しました。
※アナスイが、脱出は不可能だと知ったときに殺し合いに乗りうるという事を把握しました。
※ティッツアーノとダービーのものであった肉片がF-3に散らばっています
※ダービーの肉体は大半が焼失しました
※ティッツアーノの生首の中で生存しています
319助けて! 上野クリニック! ◆xrS1C1q/DM :2010/05/25(火) 22:03:29 ID:4OM8aCO3
メンドクサイことになったなぁ。
ダービーの時は一応首輪が付いてるからいいやって思ったんだけどね。
流石に首輪が存在してない参加者に取り付いたって状況はどうにかならないかな?
胴体もゲットしたら再び取り付けようか、それともこのまま放っておくか。
彼女の場合は普通の首輪じゃいたちごっこになるから、またつけるならちょっと細工しないといけないかな。
僕としてはどっちでも構わないんだけどね。
彼女は優秀なコマとしてゲームを盛り上げてくれてるし、チョットくらいのご褒美をあげてもいいかなぁって気もするしなぁ。
う〜ん。


ま、放送がもうすぐあるしそれが終わってから考えるか。


今回も何らかの演出でも入れてみようかな?
とりあえず水でも飲んで落ち着くとしよう。
あ〜相変わらずこの瞬間は緊張するんだよね。




【荒木飛呂彦】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:日記、ダービーズチケット、???
[思考・状況]
基本行動方針:運命そのものになって、それに抗う人々を見る。
0.僕は皆の運命になりたい。
1.さすがだ、ジョルノ君。
2.ダービーのことは出来る限り守る。楽しみが減るから。
3.次にダービーに勝った参加者には、自分と勝負する権利を与えてやっても良い。


※チケットは荒木が持っています。忘れるかもしれませんが、気が向いたら他の参加者に渡してもいいと考えています。
320助けて! 上野クリニック! ◆xrS1C1q/DM :2010/05/25(火) 22:06:42 ID:4OM8aCO3
投下完了です
矛盾、誤字脱字などの指摘があればよろしくおねがいします
321創る名無しに見る名無し:2010/05/26(水) 01:16:40 ID:Di3iVP4I
投下乙!
人外達の住処と化したティッツアーノが哀れだ・・・
ヤドカリの殻みたいな存在になってるw
322創る名無しに見る名無し:2010/05/26(水) 01:28:22 ID:bx88j9wU
投下乙
323創る名無しに見る名無し:2010/05/26(水) 20:32:04 ID:iTpWY5Sm
投下乙です。
ディオやダイアーさんとおなじく頭だけになって生きるのは割と普通なのか…?

誤字として>>314でイエロー・テンパランスがイエロー・パランスになってます。
324創る名無しに見る名無し:2010/05/27(木) 17:37:31 ID:V6Bgs7Qe
投下乙です
325創る名無しに見る名無し:2010/05/31(月) 23:36:25 ID:hXpoWHWa
さて、そろそろ時間ですね
326創る名無しに見る名無し:2010/06/01(火) 00:04:07 ID:5I0yJPFa
放送は◆Y0KPA0n3C. で決定ですね
しかし相変わらず放送は人気ですね
327 ◆Y0KPA0n3C. :2010/06/01(火) 19:31:29 ID:VQPsHZT3
したらばにて仮投下を行ったことを報告します。
色々チャレンジした内容なので書き手様は目を通して一言言ってくださるとありがたいです。
328 ◆yxYaCUyrzc :2010/06/02(水) 10:57:34 ID:rFpxXy0r
川尻早人、本投下開始します
329七匹の子ヤギ ◆yxYaCUyrzc :2010/06/02(水) 10:58:41 ID:rFpxXy0r
少年の行動はこの場においては正しい行動だと言えただろう。
中心街から離れすぎず、かつ近すぎない距離の民家、その一室。
あえて鍵やカーテンを閉めなかった事も……いや、これは偶然か。今の彼にそこまでの余裕と体力はない。
とにかく、少年はこの半日間、他の参加者と一切接触する事無く放送を迎えようとしていた。

「でも……一体どうすれば」
虚空に呟く。声が出る事に少しだけ安心した。
だが、その安心も口に出した疑問の前には意味をなさなかった。

吉良吉影を脅迫、利用するだなんて。その決意を変える気はない。
だが、アテがないのだ。あの平穏好きが隠れられるような場所は杜王町にはいくらでもある。
それはつまり、地図に載らないような民家の全て。
その一軒一軒を虱潰しにあたる体力と時間を己が持っていない事は明白。
他の参加者に協力を願おうにも、自分が逃げ込んだ民家には来訪者はゼロ。この数時間が証明してくれている。

しかし――それでも彼は諦めない。なぜなら……
こと人間観察においては相当の自信があるから。
自分の両親に気付かれない位置にカメラを設置することなど朝飯前。
その気になれば盗聴や尾行も出来るし交渉術だって磨かれていると自負できるだろう。

では、その一種の『能力』をどう活かそうか、と言う点に問題は発展する。
幸いにもこの民家は二階建て。双眼鏡や望遠鏡と言ったものはなくとも少し目を凝らせばコロッセオの頭が見える。
道路を堂々歩く人間がいれば気付くだろう。彼ならば。
知人なら、あるいは『ヤツ』なら大当たりだ。その他なら無視するくらいの心構えでいる。
悩む事は次の一手にミスを生むからだ。あの朝に学んだことだ。忘れる訳もない。
二階にいると逃げ遅れる可能性もある。だが今の足で下手に動いて発見されるよりは息を殺す方がリスクは少ないと感じたのだ。

「よし」

誰に言う訳でもなく再び虚空に一言。
そう呟いた彼は思い身体とデイパックを引きずり階段に足をかけた。
330七匹の子ヤギ ◆yxYaCUyrzc :2010/06/02(水) 10:59:51 ID:rFpxXy0r
【F-5 北西部 民家/1日目 夕方】
【川尻早人】
[時間軸]:吉良吉影撃破後
[状態]:精神疲労(大。少々収まった)、身体疲労(小。少々収まった)、腹部と背中にダメージ大(応急手当済)、上半身ダメージ(ほぼ回復)、右手人差し指欠損、
    漆黒の意思、殺意の炎。服は乾いた
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×2、鳩のレターセット、メサイアのDISC、ヴァニラの不明支給品×1(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:荒木を倒したい。吉良吉影を殺す。殺し合いにはのらないけど、乗ってる参加者は仕方ない。
0.吉良吉影を脅し、ウェザーの仇をとるのを手伝わせる。とりあえず吉良を探す。
  現在は民家に潜みつつ参加者を探し&観察し、必要ならば接触する。
1.絶対にウェザーの仇を見つける。
2.吉良吉影を殺す。邪魔をするような奴がいたらそいつも・・・
3.荒木の能力を解明したい
[備考]
※吉良吉影を最大限警戒、またエンポリオの情報によりディオ、プッチ神父も警戒しています。
※ゾンビ馬によって右足はくっついていますが、他人の足なので一日たてば取れてしまう可能性があります。
 歩いたり、走ったりすることはできるようです。
※ある程度ジョセフたちと情報交換しましたが、三人を完全に信用していないので吉良吉影について話していません。
 ジョセフも本人かどうか半信半疑なので仗助について話していません。
※第二回放送をほとんど聞いていません。「承太郎の名前が呼ばれた気がする」程度です。
331おまけ ◆yxYaCUyrzc :2010/06/02(水) 11:01:12 ID:rFpxXy0r
『あー、あー、うん。よし。放送を始めよう。』

二階に上がってすぐのことだった。移動中でなくて本当によかったと思う。
悪態をつきながらも名簿と地図、ペンを引っ張り出す。が……

『今回は少し趣向を変えようと思ってね』

と言った後に放送の主、荒木飛呂彦がマイク越しにも分かるほど大きく息を吸い込んだのを聞いてその手を止める。
そして……

『バトルロワイアルの生き残りを聞きたいかアァーーーーッ』

「はあァ!?」

思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。一体なんだと言うのだろうか。
しかし相手がここで嘘をつく事に利はないと思う。とりあえず放送を聞こうとペンを固く握る。

『全生存者紹介!!

 ミスタ殺しは生きていた!! さらなる混沌を重ね波紋戦士が甦った!!!
 ジョジョ!! ジョナサン・ジョースターだァ――――!!!』

何とも無理のある放送である。下手な聞き方をしたら鼓膜をつぶされるかもしれない。
しかし気になったのはその姓。自分も知っている、会ったこともあるその姓。
ジョースターさんと同じ姓だけど、そう言おうとしてその口が止まる。放送はなお続いていたからだ。
332おまけ ◆yxYaCUyrzc :2010/06/02(水) 11:02:29 ID:rFpxXy0r
『スタンドの扱いは既にこの俺が完成している!!
 イギリスの帝王ディオ・ブランドーだァ――――!!!

 現状把握しだい救いまくってやる!!
 英国紳士代表 ジョージ・ジョースター1世だァッ!!!』

 波紋の殴り合いならこの俺の腕がものを言う!!
 漫画家の洗脳 ヘブンズ・ドアーズ シーザー・アントニオ・ツェペリ!!!』

必死にペンを動かすものの……空いた口が塞がらない。
馬鹿げているのか本気なのか……。死者の紹介でない事も混乱を加速させていた。
当然と言えば当然だが、そんな彼を気遣う様子もなく無謀な放送は続く。

『真の支配を知らしめたい!! 柱の男 エシディシだァ!!!

 スタンドでは遠距離制覇だが説得なら全参加者がオレのものだ!!
 教皇の緑 花京院典明だ!!!

 誤解対策は完璧か!? 銀の戦車 ジャン・ピエール・ポルナレフ!!!!

 快楽殺人のベスト・パフォーマンスは鏡の中にある!!
 スタンド使いの鬼畜が来たッ J・ガイル!!!

 疑心暗鬼なら絶対に敗けん!!
 心理戦のスタンド見せたる ヘタレ兄貴 オインゴだ!!!』

この放送、中身は本当なのだろうか……?
だとしたらものすごい情報を流す可能性がある。
殺し合いを促進させるためだろうか?ならば自分の事はどう紹介される?まさかこの考えが読まれている可能性は……ッ?
嫌な汗をペンごと握りこみ、聞きとれる情報は可能な限りメモしていく。
333おまけ ◆yxYaCUyrzc :2010/06/02(水) 11:03:46 ID:rFpxXy0r
『ザ・ハンド(なんでもあり)ならこいつが怖い!!
 杜王町のピュア・ファイター 虹村億泰だ!!!

 少年ジャンプから人気漫画家が参戦だ!! ヘブンズドアー 岸辺露伴!!!

 ルールの無い恋愛がしたいからヤンデレ(病照娘)になったのだ!!
 女子高生の愛を見せてやる!!山岸由花子!!!

 めい土の土産に仇討ちとはよく言ったもの!!
 漆黒の意思が今 バトルロワイアルでバクハツする!! 杜王町の小学生 川尻早人だ―――!!!』

……どうだろうか。決して自分が不利になるような言葉はなかった、と思う。
吉良吉影は気付くだろうがまさか脅迫を考えている事までは思いつかないだろう……
少しだけ握りしめていた手が緩む。それでもそのペン先を止める事はまだ出来ない。

『水分のスタンドこそが地上最強の代名詞だ!!
 まさかこの外道が生きているとはッッ 片桐安十郎!!!

 生き残りたいからここまできたッ 本心は一切不明!!!!
 ニホンのギタリスト(スタンド)ファイター 音石明だ!!!!

 私はスタンド最強ではない生存への欲求で最強なのだ!!
 御存知殺人鬼 キラ・ヨシカゲ!!!』

ハッとして手が止まる。
これはもしかして……ものすごく良い放送かも知れないッ!
自分の手で仇を討つ事は限りなく不可能に近くなったが、ヤツの正体を参加者全員が知ったのだ。
口の端が少しだけ持ち上がる。メモを取る手も少し軽く感じてきた。
334おまけ ◆yxYaCUyrzc :2010/06/02(水) 11:04:49 ID:rFpxXy0r
『スタンドの本場は今やイタリアにある!! 俺とゲームを止めるやつはいないのか!!
 ジョルノ・ジョバァーナ!!!

 ツヨォォォォォいッ説明不要!! ギャングの幹部!!! スティッキィ・フィンガーズ!!!
 ブローノ・ブチャラティだ!!!

 スタンドは実戦で使えてナンボのモン!!! 超戦闘用幽波紋!!
 イタリア・パッショーネからパンナコッタ・フーゴの登場だ!!!

 優勝はオレ達のもの 邪魔するやつは思いきり縮め思いきり握るだけ!!
 リトル・フィート暗殺チーム ホルマジオ

 自分を成長させに殺し合いへきたッ!!
 マンモーニ全スタンドチャンプ ペッシ!!!

 暗殺に更なる磨きをかけ“リーダー”リゾット・ネェロが帰ってきたァ!!!』

暗殺……そんなことを生業にしている人間も参加しているのか。
この場に放り込まれてから多くの人間に出会ったが、やはりどことなく信じられない。
335おまけ ◆yxYaCUyrzc :2010/06/02(水) 11:05:42 ID:rFpxXy0r
『今の自分に帝王の資格はないッッ!! パッショーネ・ボス ディアボロ!!!

 空条の血の拳技が今ベールを脱ぐ!! アメリカから 空条徐倫だ!!!

 己の信念はどーしたッ 戦士の炎 未だ揺らぐッ!!
 治すも壊すも思いのまま!! フー・ファイターズだ!!!

 特に理由はないッ 分解が殺人なのは当たりまえ!!
 徐倫にはないしょだ!!! シャバの下開山!
 ナルシソ・アナスイがきてくれた―――!!!

 水族館で磨いた実践ヘタレ!!
 臆病者のグーグー・ドールズ グェスだ!!!

 生への執念だったらこの人を外せない!! 超A級逃走師 ドナテロ・ヴェルサスだ!!!』

 超一流先住民の超一流の疾走だ!! 生で拝んでオドロキやがれッ
 祖先の土地の砂男!! サンドマン!!!

 ロープアクションはこの男が完成させた!!
 連邦保安官の切り札!! マウンテン・ティムだ!!!

 公正なる果たし合いがやってきたッ
 どこへ行くンだッ 男の世界ッッ
 僕達は君を待っていたッッッ リンゴォ・ロードアゲインの登場だ――――――――ッ


 以上31名で漆黒の闇夜を戦っていただきますッッ』

どうやらこれで放送が終わったようだ。
ふぅ、と息をつく……つもりだったが、もうひとつだけやり残しがあった。

『ふゥ〜〜〜。どうだった?なかなかイカしてたろう?
 じゃあこれから禁止エリアを言うから―――』
336七匹の子ヤギ ◆yxYaCUyrzc :2010/06/02(水) 11:11:03 ID:rFpxXy0r
以上で(おまけ含めて)投下終了です。
早人の繋ぎはかなり短いものですが私の一作品として掲載しようと思います。
本投下前にヴェルサスも同時に書いてしまおうと思っていたんですがね……orz

おまけの方はwikiに別ページでも作って貼りますかねw

最後になりましたが、タイトルはしたらば一時投下スレ746氏の意見を頂いて「七匹の子ヤギ」で行こうと思います。
したらば751氏には申し訳ありませんが、次回作でまた名タイトルの提案を期待します。

誤字脱字、話の矛盾、感想等々ありましたらお願い致します。では。。。
337創る名無しに見る名無し:2010/06/02(水) 18:12:12 ID:pnGR/d8J
まーた荒木か
338創る名無しに見る名無し:2010/06/02(水) 20:17:29 ID:jy2/oB7b
投下乙です

>その気になれば盗聴や尾行も出来るし

存在感が無いって意味ですねわかります。
あと、タイトル採用してくださってありがとうございます! Wiki編集してくれた人も乙ッ!
339創る名無しに見る名無し:2010/06/03(木) 12:22:41 ID:JAVXgN7G
投下乙です

>おまけ
待ちなよ
340 ◆Y0KPA0n3C. :2010/06/04(金) 22:48:17 ID:yIAq3Kee
少し早いかもしれませんが
第三回放送、投下します
341 ◆Y0KPA0n3C. :2010/06/04(金) 22:49:34 ID:yIAq3Kee
よせてはかえす波の音、風にあおられ揺れるヤシの木。夕陽に染まった真っ赤な海が視界いっぱいに広がるG‐10の孤島、そこで私は一つの決断を下した。
視線の先の太陽が沈んだら第三回放送が始まる。そしてそれが始まってしまったら……おそらく私の行く先はひとつ、『死』のみだ。
まるで背中を虫が這いまわるような感覚におもわず身震いする。漠然としていたイメージを改めて突き付けられ、迫りくるタイムリミットを前に私の体は正直だった。

死にたくない、それが私の今の正直な気持ちだ。確かにある種の『公平さ』を胸に、私はここでゲームマスターの役割を果たしている。だがそれも脅されているからであり、何も自分から名乗り上げたわけではない。
私は参加者同様被害者、いや、荒木にたてつくことを許されず、すぐそばで絶えず見張られていることを考えると……。
今の自分がいかに窮地に陥っているのか、そしてこれから自分がどうすればいいのか。両手で顔を覆う。しばらくの間そうしていたが、ゆっくりと息を鼻から出すと顔をあげ、椅子に深く座りなおす。ギシィときしみ声が誰もいない島に響いた。
わかっている、このままなにもせずにいたら私はそのうち用済み、荒木に……『始末』される。荒木にたどり着こうとする参加者たちの踏み台に私はされるだけ、仮にこのまま誰も来なかったとしても……優勝者が決まった後私がどうなるか……考えたくもない。
結局私がやることなんぞ決まっている。そう、私はそれを決断した。第三回放送、これを超えたら……二度とチャンスは来ない。『今』しかチャンスはないのだ。あとは一歩踏み出す、その勇気を振り絞るだけだ。

椅子を蹴飛ばすように立ち上がる。唇をかみしめ私はゆっくりとポケットに手を伸ばした。
今から私は……『命』を賭けた勝負にでなければならない。いや、これは勝負などではない。懇願だ。私は今一度……魂を賭け、あの荒木に懇願しなければならない。
チラリと横目で太陽を見つめる。夕暮れ前の美しい風景に心奪われる余裕は今の私にない。ただまもなくタイムリミットが来る、それが私の決断を後押しさせてくれる。
もはや四の五の言っている暇はない。私は表示された画面をしばらくの間見つめ、ギュッと目をつぶりボタンを押した。
もう後には引けない。私にはこれしか生きる方法がない。

耳に響く呼び出し音、早鐘する私の心臓。携帯電話を握る掌に汗がにじむ。口の中は乾ききり、つばを飲み込んだときゴクリと喉で大きな音がした気がした。
そして突然割り込むブツッという音。相手が電話をとった音だ。

「やぁ、ダービー君。どうかしたのかい、島には参加者もいないはずだって言うのに……君から電話をかけるだなんて何かあったのかな?」
「急な電話で申し訳ありません。放送前でお忙しいとは存じ上げていますが……ひとつ内密におねがいしたいことがありまして…………」

電話の向こうから聞こえてきた声は上機嫌な様子だった。好都合だ、私にとっては荒木の機嫌が悪い時よりは……いくらかましな展開だと言える。
必死で震える声を抑え会話を続ける。唇を湿らせ私は会話を続けた。

「おや、ということはあれから君も考えたわけだね、『自分の生き残る方法』を! いいじゃないか、ダービー君、気に入ったよ! 本当だったら君から連絡を取るのはルール違反だけど……いいよ、言ってごらんよ!」
「お気づかい感謝します。時間もないので端的にいいましょう」

一息には言えなかった。呼吸を落ち着けるためほんの少しの間、受話器を口元から遠ざけた。荒木は何も言わなかった。きっと私がこうしていることさえ、あいつにとっては楽しみの一つにしかならないのだろう。
平静を取り戻す間、ふと兄の顔が私の脳裏をよぎった。走馬灯というやつだろうか、そうだとしたらなんて弱気な考えをしているんだ。だがそれでも私は気になってしまった。兄だったら、生粋のギャンブラーの兄だったらどんな選択肢を選んでいたのだろうか。
わからない。だがそれでも私はこれが最善だと思う。これしか…私には考え付かなかった。私が生き残るには……この道しかないように思えた。
私は口を開いた。



「荒木様、どうか私を…『参加者』にしていただけないでしょうか?」





              ◇  ◆  ◇
342 ◆Y0KPA0n3C. :2010/06/04(金) 22:51:25 ID:yIAq3Kee
歴史だとか過去のノスタルジィを感じさせてくれるものは場所に限らず心を落ち着かせてくれるね。 だからこそそーゆーものを後世のために残しておくことは非常に大切だと僕は思ってる。
今回僕が選んだのはドボルザーク作「新世界」、第二楽章「Largo」を彼の弟子フィッシャーが編曲した「Goin'Home」
ピンと来ないかもしれないけど「遠き山に日は落ちて」と聞いたらわかるかな?

夏の風物詩、少年時代の淡い思い出、哀愁漂う古きよき時代。
ああ、いいねェ。キャンプファイアやボーイスカウト、サマーキャンプにトーチワーク。感動ものだ、時刻も夕方、まさにぴったしじゃないか。

おっと、前置きが長くなってしまったね。いよいよ第三回放送だ。
色々言いたいことがたくさんあるんだけど……君たちも忙しそうだしね、とりあえずは脱落者から発表しようか。

この六時間で脱落した参加者は…………

チョコラータ
ジョセフ・ジョースター
アレッシー
フェルディナンド
トニオ・トラサルディー
グイード・ミスタ
ロバート・E・O・スピードワゴン
ヴィヴィアーノ・ウエストウッド
ラバーソール
エンリコ・プッチ
ミュッチャー・ミューラー
ホル・ホース
タルカス
ティッツァーノ


以上、14名だ。

なんともう半分以下だ! 充分過ぎるぐらい順調だよ……そんなに焦らずゆっくりしても僕は一向に構わないのに!
本当のことを言うとだね、このゲームが終わってしまうのが非常に惜しいんだ。それほど君たちは一生懸命頑張ってる。必死になってよくやってる。
それがイイ! スッゴくイイんだ!
だからね、終わりが見えて来たのはある意味楽しみでもあり、残念でもあるんだ。そんなに頑張ってる君たちを見ていられるのもあともう少しなんだな、ってね。
ああ、でもそんなんだからって途中でやめたりはしないから安心してよ。僕は君たちが頑張るのを、自分で言うのもなんだけどまるで子供のように楽しみにしてるんだ。そういうわけで引き続き頑張ってくれ!

さて、じゃあ次は禁止エリアの発表と行こうか。今回の禁止エリアは4つだ、前回より一か所多いからねェ、注意して聞いてくれ。いくよ?

 18時から G-10
 19時から F-6
 21時から G-3
 23時から D-5
343 ◆Y0KPA0n3C. :2010/06/04(金) 22:53:16 ID:yIAq3Kee
いいかい?G-10、F-6、G-3、D-5。この四か所が新しい禁止エリア。気をつけてね。
さて、もう放送自体は終わったわけなんだけど……実を言うととんでもないサプライズが一つあるんだ。

なんとこのゲームに乱入者が現れたんだ! どうだいびっくりするだろ?
紹介しよう……テレンス・T・ダービー君ッ! 彼の勇気に敬意を表して皆惜しみない拍手をッ!

ああ、それと彼の参戦についてだけどひとつだけメッセージを。
『約束も支給品もまだ有効だよ。ただ放送の意味をよく考えてくれ』
ゲームもいよいよ終盤、残り人数次第じゃ今日中にも終わるかもしれないね。
とりあえず次の放送は深夜24時! その時まで生き残れるよう、みんな頑張れ! 応援してるよ!






              ◇  ◆  ◇




そこは一軒の館、どこにあるのかはわからない。
どこかにあるのかもしれない、どこにもないのかもしれない。それともただ単にわからないだけかもしれない、知ろうとしてないだけかもしれない。
煙突が三つあり大きさの割には門が小さいのが特徴の美しい洋式建築の館だ。持ち主は暮らしに苦労はしてなかったであろう。
その館の中、カーテンが閉め切られた薄明かりの部屋で、とある男が盛大なため息を吐いた。口元には電話、ソファーに腰掛け誰かと会話中のようである。受話器越しに声が聞こえてきた。

『仕方ないじゃないか、ダービー君が参戦したい、そう言ったんだから!』
「やれやれ、君はいいよ、そうやって自由にやって。でもね、首輪の管理だの参加者の動向チェックだの全部負担してるのは僕なんだよ? ちょっとは僕の身になってもみてよ」

男は不満そうに電話先の相手に返事をした。にもかかわらず相手は変わらぬ様子で平然としている。笑い声とともに言葉が返ってくる。
344 ◆Y0KPA0n3C. :2010/06/04(金) 22:55:46 ID:yIAq3Kee

『たかが一人だろう? 今までうまくやってた君なら何とかしてくれるって僕は信じてるよ! それにダービー君だよ、ダービー君!  彼の事を考えるとわくわくしてくるのは君も一緒だろ?』
「まぁ、そうなんだけどねぇ……」
『どう思う? ダービー君は僕に立ち向かうのかな? いや、僕の能力の凄さを彼は一番近くで見てたんだ。彼はああ見えてかなり賢いし、自分のスタンド能力だって冷静に把握してる。となると優勝狙いかな? いや、それも難しいだろうね。
 でも待てよ、あえて僕に立ち向かうっていうのをもし彼が選択したとしたら……』
「とにかく今回の件はともかく、今度からなにかあったら僕に一応でいいから連絡をくれないかな? 僕のほうにも準備ってものが必要だからね」

相手の興奮した呟きを遮り少しだけ口調を強くした。だが相手は何も感じていないのか、気が向いたらね、それだけ言って足早に通話を終わらせた。
何を言っても無駄だと悟ったような顔で男はまた溜息を吐き、受話器を下ろす。ソファーに深く身を沈め目元を手で優しくもみながらも、口からは誰に向けたわけでもない愚痴が小さい声で紡がれていた。
その男に声がかけられる。部屋の薄明かりの中、向かい合うように置かれたソファーから少女の声が聞こえた。

「それで……?」
「それでって……ああ、『なんで僕が君を呼んだか』、だったね」

男は相手に目を向けることすらせずに上の空のような声で返事をする。口調は投げやりでどこか疲れきっているようであったが、その一方で楽しんでいるようでもあった。
男はゆっくりと手を下ろす。表情を疲れていたものから満面の笑みに変え、机の上の日記を持ち直す。そして男は少女へと向き直った。

「それはね、君が杜王町の守護霊だからだよ。死なない、朽ちない、消えない。僕、いや『僕ら』に捕えられた以上、君は一生成仏できないだろうねェ……? だからこそさ。だからこそ『僕ら』は君を選んだ」

話に乗ってきた男は一転、身を乗り出し少女に語りかける。反射的に身を引く少女。隠しきれない嫌悪と、それ以上の恐怖に染まった顔が壁中に取り付けられたテレビの青白い光に照らしだされる。
男は口を開く。瞳をらんらんと輝かせ名誉のスピーチでもするかのように嬉々として語りだす。

「『僕ら』は君を語り部として選んだのさ、『僕ら』の存在を、そしてこの物語を永遠に語り続けるものとして、君をね」
「…………アンタは……あんた達はいったい何者なのよ?!」

恐怖に駆られた少女の叫びが部屋にこだまする。だが男は動じない。それどころかそれすら心地よいのかソファーの中で体を強張らせる少女をみてこれ以上ないほどの笑みを浮かべる。

「さぁね? 実際僕も、いや、『僕ら』自身わかってないのかもしれないなんだよ」

男はとうとう堪え切れず笑いだす。部屋中に広がる狂気の笑い声に少女は震えだす。茶目っ気を見せるようにウインクとともに男は最後にこう付け加えた。

「“杉本鈴美”さん」
345 ◆Y0KPA0n3C. :2010/06/04(金) 22:58:25 ID:yIAq3Kee
以上で投下完了です。
誤字脱字、矛盾点修正点、変なところがあれば指摘してください。
346創る名無しに見る名無し:2010/06/04(金) 23:06:24 ID:CY8ffWA9
投下乙!
とうとう第三回放送、終盤に向けての盛り上がりを見せ始めてますね

>「…………アンタは……あんた達はいったい何者なのよ?!」

どう考えてもバレバレです本当に(ry

人気投票は明日から一週間?
347創る名無しに見る名無し:2010/06/04(金) 23:16:20 ID:LGVTElv+
投下乙!荒木は一体何もんなんだw

鈴美お姉ちゃんか…露伴も生きてるし、これから関わることがあるのか…?w楽しみすぎる。
しかし、終盤かー。荒木と同じく楽しみだけど名残惜しいよw

改めておつでした、次回も期待させてもらいます。
348創る名無しに見る名無し:2010/06/05(土) 20:56:33 ID:T4WEdyje
乙です
349創る名無しに見る名無し:2010/06/07(月) 21:39:29 ID:68IASU5A
乙です

ところで予約解禁は何時だっけ?
350創る名無しに見る名無し:2010/06/07(月) 23:34:38 ID:1/OF0MZd
多分火曜日か水曜日には解禁されると思うよー
351創る名無しに見る名無し:2010/06/15(火) 23:28:35 ID:kVawllxQ
したらばの一時投下スレに予約分の投下がされたことを、書き手氏に代わって報告します。
放送後一発目のSSにwktkァッ!
352創る名無しに見る名無し:2010/06/15(火) 23:49:44 ID:yPQxjbvT
したらばの仮投下スレで ◆Y0KPA0n3C.氏が仮投下なされました
指摘があればお願いしますとのことなのでみなさんよろしくお願いします
353創る名無しに見る名無し:2010/06/18(金) 02:33:52 ID:D1C3r70Z
754 名前: ◆Y0KPA0n3C.[sage] 投稿日:2010/06/15(火) 22:36:42 ID:???
体ががくんと揺れる衝撃に僕の体は覚醒する。キキィと甲高い音がどこからか聞こえてきた気がして、鉛のように重い瞼を僕は強引にこじ開けた。
このまま寝たままでいれたらどんなに楽だろう。でもそうはいかない。僕は嫌々ながらもゆっくりと目を開いた。
どうやら僕はバスの中にいるようだ。突然の事態に頭がついてこない。一度ギュッと眼を強くつぶり、再び目を開けてみるも何も変わらない。室内は静寂に包まれたままで、赤信号の僅かな間止まっていたバスは再び走り出す。
何でこんな所にいるんだろう。僕は特別懲罰房から逃げ出し路上で倒れ込んでしまったはずだっていうのに。
ぼんやりとした頭で考えるも答えはまとまらない。きょろきょろと辺りを見渡し、僕はバスの中を観察してみた。
バスの最後尾、左端の座席から見渡すと僕のほかに、ぽつりぽつりと乗客が座っている。全部で三人、互いに話すことなくバスのエンジン音だけが僕の耳に聞こえてくる。
ゆりかごに入れられたような軽い振動、鼓動を感じさせるような僅かな音。起きたばかりだと言うのに僕はまた眠くなってきた。
本当なら考えることは山ほどある。ここはどこなのか、このバスはどこに向かっているのか、ほかの三人は一体何者なのか、そもそもどうして僕はバスの中にいるのだろうか。
でもどうしてだか、今は考える気がしなかった。もうどうにでもなれ、そう思うった僕はそっと目を閉じ、湧き上がる眠気に身を任せることにした。

時間はどのくらいたったのだろうか、僕がうとうとし始めたころにバスは段々とスピードを落とし、そしてゆっくりと止まった。
半分寝ぼけたまま目をあける。乗り込んでくる人は誰もいない。だが僕以外の三人はゆっくりと立ち上がると、思い思いに体を伸ばし、荷物を下ろし、降りる準備をし始めた。
僕も降りないといけないのだろうか。わからない。だけど周りの様子を見る限り、どうやらここが終点のようだ。僕も降りるほかないだろう。

頭を強く降り眠気を追い出す。そうして傍らに置いてあったデイバッグを掴みあげると僕は立ち上がった。なぜだかどうも降りたくない気分だった。だけど仕方ない、皆が降りるんだ、僕も降りなければならない。
三人は切符を渡し順番に降りていく。バスの通路を通りぬけ、僕もそれにならい切符をわたすとステップに足をかける。その時だった、先に降りていた三人がこちらを振り向いたのは。その顔を見て僕は驚いた。

「トリッシュ……アバッキオ……ミスタ……!」

そんな馬鹿な……こんなことはあり得ない。だが何度見直しても三人はそこにいた。バスから降りかけたまま僕はまた三人を見直し、頭から爪先まで視線を走らせる。
足がついてる、わっかもない。正真正銘本人たち……少なくとも幽霊なんてことはなさそうだ。

混乱する頭で僕は考える。そうか……夢だったのか。僕がさっきまで見ていたのは夢だったんだ。バスに揺られて僕はとんでもない悪夢を見ていたようだ。
それもそうだろう、常識的に考えればあんなことが起こるはずはないんだ。現に証拠は目の前にいるじゃないか。
トリッシュは生きてる、アバッキオも生きてる。ミスタなんて殺しても生きてるようなしぶといやつだ。どうも僕は疲れてたみたいだな。
僕は安堵の笑顔を浮かべバスから降りようとステップを一段下に降りる。でもそこで気づいた。笑顔を浮かべていた顔は強ばり、更に踏み出そうとした足は凍ったように動かなくなる。
そうだ、一体僕は何を考えてる? ブチャラティ達は組織を裏切った。僕は彼らともう何の関係もない、ただの裏切り者なんだ。

僕はどうしたらいいかわからずただ黙って目を伏せる。今さらどんな顔をすればいい? 何て言葉を三人かければいいんだろうか?
三人は何も言わない。僕は何も言えない。一体どんな顔をしてるのだろうか。顔をあげる勇気は持てない。いっそのこと立ち去ってくれていたらいいのに。いや、そうであってくれ。
突然バスのクラクションが鳴った。降りるか、降りないのか、曖昧な僕にドライバーがしびれをきらしたのだろう。僕はゆっくりと足を持ち上げると降りてきたステップに再び足をかける。
僕は降りるわけにはいかない。彼らが組織を裏切った以上、僕らは一緒にはいられない。
バスに乗り込むと後ろで扉が音をたてて閉まったのがわかった。僕は席に戻ろうと視線を足元から離す。その時、視界の端の窓を通し、三人の姿が目に飛び込んで来た。
354創る名無しに見る名無し:2010/06/18(金) 02:35:00 ID:D1C3r70Z
755 名前: ◆Y0KPA0n3C.[sage] 投稿日:2010/06/15(火) 22:37:14 ID:???
満ち足りた優しい顔で僕を見つめ、三人とも穏やかな笑顔を浮かべていた。
仕方ないさ、お前はここにいちゃいけないんだから。そう言いたげな表情な三人。
僕は戸惑う。どうしてなんだ。どうしてそんな顔ができるんだ。
バスが低いエンジンを音を響かせゆっくりと動き出す。僕は走って後部座席に向かう。身を乗り出して後ろの窓から外を見つめると、三人は僕を見送りに道路に飛び出してくれていた。

トリッシュは少し大人っぽくなったような気がした。若い女の子らしく慎ましげに手を振り僕に別れを告げる。
隣に立つアバッキオは何もしない。両手にポケットを突っ込み鋭い視線を僕に向けるだけだ。しっかりやってこい、そう言ってくれた気がした。
ミスタが走ってくる。スピードをあげるバスに追いつけないとわかっていてもミスタは走り、僕に向かって手を振る。
カーブに差し掛かったところでバスがスピードをあげると立ち止まり、ちぎれんばかりに両手をブンブン振る。
何かを叫んでるようだけど何も聞こえない。そうこうしているうちに、ミスタの姿が小さくなり、やがて見えなくなった。

誰もいないバスの中、僕は乗り出していた体を引っ込め、さっきと同じ席に座る。
デイバッグを膝の上にのせ誰もいないバスの中、僕は唇を噛みしめ我慢する。
でも……無駄だった。視界がぼやける。唇が震える。それでも我慢する。それでも僕は堪える。
両手を力いっぱい握りしめ、下っ腹に力を入れる。顔が真っ赤になるまで息を止め、何の変哲もないバスの天井を見上げる。
だけど、駄目だ。僕は駄目なんだ。
揺れるバスの中、僕は泣く。
三人いなくなった空っぽのバスは、今まで以上に寂しく見えた。







「……夢か」
355創る名無しに見る名無し:2010/06/18(金) 02:36:28 ID:D1C3r70Z
756 名前: ◆Y0KPA0n3C.[sage] 投稿日:2010/06/15(火) 22:37:50 ID:???
アスファルトの固さが僕を現実へと引き戻す。何処からともなく聞こえ始めた放送に耳を傾け、僕は体を起こす。ぼやけた視界に目をこする。僕は泣いていた。
立ち上がり歩き始めるも力が入らない。少し冷たい夜の風がちょっと吹くだけで僕はよろめき、倒れかけた。今にも崩れ落ちんばかりに僕の体はゆらゆらと揺れ、頼りない。
それでも僕は歩く。行く宛もなく、行く先もわからず、それでも僕は歩く。歩きながら僕は泣く。

幽霊だの超常現象だの非科学的なものはあまり信用できないというのが僕の持論だ。スタンドなんていう、それこそ非科学的なものの塊みたいなものを知っていながら信用できない、何て言うのも変だけど、僕はそうなんだ。
当然幽霊なんて信じてなかった。信仰深いほうでもなかったし、死後の世界なんて興味がなかった。
けどわかってしまった。僕は認めてしまったんだ。
ミスタが死んだ。グイード・ミスタはもういない。それが言葉でなく理屈でなく、魂でわかってしまった。
目覚まし代わりの放送は流れ続ける。本当はこんな放送なんて聞きたくない。けれど死にたくないという僕の体は正直だ。禁止エリアと死亡者の名前だけはしっかり把握し、僕は歩き続ける。

「死にたくない……」

確かにそうだ、死にたくない。僕は死にたくないんだ。でもそれだけじゃない、僕が望んでいることは他にもあるんじゃないか。ただ生きたい、そんな気持ちが僕の本心なのだろうか。
一歩、また一歩前に進む。見知らぬ街、広がる暗闇。僕は一人その中を進んでいく。僕は独りだ。僕の周りには誰もいない。

「……でも」

僕がチームにいた時は独りじゃなかった。彼らはこんな僕でも信頼してくれた。きっと今だって信頼してくれるだろう
例え僕が彼らから見た裏切り者であろうとそれだけで彼らは僕を毛嫌いするような人間じゃあない。彼らは信じようとする。この裏切り者の僕でさえ信頼しようとする。
だから彼らはトリッシュのため、自分自身の納得のため戦うことができたんだ。
理想を掲げ、光輝く道を見つめ、誇りや納得のために命を懸ける。それが彼らの生き方なんだ。

「僕は…………彼らみたいに生きたかった」

生きることは苦しい。死ぬことは怖い。
僕は死にたくない。でも生きれば生きるほど、光輝き、閃光のように燃える彼らの輝きは僕を惨めにさせる。
彼らが僕を信じてくれる。裏切った僕を仕方ないって許してくれる。その優しさが、気高さが、僕を苦しませる。
本当はそうやって僕も生きたいんだ。そんな風に僕もなってみたいんだ。

でも駄目だ。僕はもう『捨ててしまった』。差し出された選択肢を僕は『選べなかった』んだ。
一つ振り替えれば後悔一つ、そこから遡れば更にもう一つ。数珠繋ぎのように僕の後悔は増えていく。
だから僕は決断する。この涙は別れの涙だ。そして彼らのように『生きれない』悔し涙でもある。

「そんな後悔も悩みも憧れも全部……捨てる」
356創る名無しに見る名無し:2010/06/18(金) 02:37:31 ID:D1C3r70Z
757 名前: ◆Y0KPA0n3C.[sage] 投稿日:2010/06/15(火) 22:38:22 ID:???
デイバッグを探ると目的のものが見つかった。見慣れた黒光りする武器。指一つで命を奪うことができる武器。
人を殺すことには抵抗が少ない方だと思ってる。僕はギャングだ、仕事上割りきったり、諦めたり、折り合いをつけることは今まででもあった。
殺らなきゃ殺られる、もしそんな状況に追い込まれたなら僕は躊躇いなく殺れる。実際僕の手はもう汚れているんだ。
優しそうな笑顔を浮かべたコック、トニオ・トラルディー。彼を殺したのは他ならぬ僕なのだから。

だが意味もなく、自分のエゴのためだけに人を殺したことは一度だってない。
組織のため、自衛のため。そんな言い訳を振りかざし、僕は自分の中で無理やり『納得』してきた。
仕方ないことなんだ、これは仕事なんだから、殺さないと僕が殺されるんだから、と。

「でも…もうやめだ」

僕の涙声は誰に聞かれることなく消えていく。鼻をすする音も誰にも聞こえない。
僕は歩く。みっともない格好で、浮浪者のようにフラフラ歩く。

身の丈にあったことをするのが大人になることだと思ってた。出来ないことを仕方ないって妥協するのが賢いことだと思ってた。
でも違う。僕は何もわかっていなかった。僕は何も見てなかった。
自分の限界を決めつけ線引きしていただけだった。それは成長なんかじゃない。ただの諦めだ。自分の無力さを棚にあげて僕はただ現実から逃げていただけなんだ。

「僕は…………生きたい」

生まれ変わりたい。僕は本当の意味で『生きたい』。
言い訳をもうしない。逃げ道ももう用意しない。
僕の体は僕が動かす。言われた通り動く盲目兵士、絶対服従の指示待ち人間だなんてまっぴらだ。

「僕は……僕自身の意志で生きたい…………」

だから、殺そう。
自分の手で、自分の意志で、もう後戻りができないように。自分自身に言い訳できないように。
なんの意味もなく、なんの根拠もなく、ただ殺す。
自分の意志で、自分の選択で、僕は僕の生きる価値を見つけだす。

「生きる……僕は……絶対生き残ってみせる…………」

銃を構える。これはもう『僕』の銃だ。過去の因縁は全部断ち切らなければならない。
もう僕は振り返らない。ただ前に進む。もう後悔なんて僕は、嫌だ。
心に強く僕は誓う。だというのに僕は泣き続ける。助けを求める子供のように、僕の涙は止まらない。いつまでたっても僕の涙は涸れることはない。

僕は泣く。泣きながら僕は歩き続けた。
357創る名無しに見る名無し:2010/06/18(金) 02:38:18 ID:D1C3r70Z
758 名前: ◆Y0KPA0n3C.[sage] 投稿日:2010/06/15(火) 22:38:55 ID:???

【F-4 南部/1日目 夜】
【パンナコッタ・フーゴ】
[時間軸]:ブチャラティチームとの離別後(56巻)
[状態]:苦悩と不安、傷心、重度の鬱状態、極度の人間不信、精神消耗(極大)、額に瘤、右腕に中程度のダメージ、服が血まみれ
[装備]:吉良吉廣の写真、拳銃【リボルバー式】(4/6)、ミスタがパくった銃【オートマチック式】(14/15)
[道具]:支給品一式、ディアボロのデスマスク、予備弾薬42発(リボルバー弾12発、オートマチック30発)閃光弾×?、不明支給品×?
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない
0.僕は僕自身の意志で生きたい
1.誰かを『殺す』ことでけじめをつけ、誰にもとらわれない生き方をする。
2.吉廣に説明された内容についてきちんとした真実を知る(時間があれば、程度に考えている)。
[備考]
※荒木の能力は「空間を操る(作る)」、もしくは「物体コピー」ではないかと考えました(決定打がないので、あくまで憶測)
※空条承太郎、東方仗助、虹村億泰、山岸由花子、岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、ジョセフ・ジョースターの能力と容姿に関する大まかな説明を聞きました
※吉良吉影の能力(爆弾化のみ)を把握しました。しかし、一つしか爆弾化できないことや接触弾、点火弾に関しては聞いていません。
 また、容姿についても髑髏のネクタイ以外には聞いていません
※吉良吉廣のことを鋼田一吉廣だと思い込んでいます。
※荒木がほかになにか支給品をフーゴに与えたかは次の書き手さんにお任せします。また閃光弾が残りいくつか残ってるかもお任せします。
※花京院とその仲間(ジョセフ・ジョースター、J・P・ポルナレフ、イギー、空条承太郎)の風貌、スタンド能力をすべて把握しました。
※アヴドゥルとフェルディナンドの考察から時代を超えて参加者が集められていることも知りました(納得済み)。
※この後どこに向かうかは次の書き手さんにお任せします。
358創る名無しに見る名無し:2010/06/18(金) 02:39:05 ID:D1C3r70Z
759 名前:ひとりぼっちのあいつ - Nowhere Man   ◆Y0KPA0n3C.[sage] 投稿日:2010/06/15(火) 22:40:45 ID:???
以上です。短いのに長い予約を取ってしまって申し訳ないです。
誤字・脱字、矛盾点・修正すべき点、他気になる所がありましたら指摘ください。
よろしくお願いします。
359創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 18:34:28 ID:M58WElQw
投下乙!
依然フーゴはフラフラしてるがこれから・・・ってところか。
男の世界へ入門するのか・・・?
360創る名無しに見る名無し:2010/06/19(土) 19:23:49 ID:N4KCpZj6
投下乙!

フーゴがダメな方向に覚醒してもうた
361創る名無しに見る名無し:2010/06/20(日) 16:18:52 ID:IiwJ8/Nj
投下乙ですー

お前、すでに何度も発砲しておいて今頃…
というツッコミをいれたくて仕方がありませんが
ようやく決心ついたかな?

ブチャ達に会える距離じゃないけど会ったらどうなるのか気になる
362創る名無しに見る名無し:2010/06/25(金) 20:42:40 ID:qS0tNazB
ラジオ放送すると思ったその時にはッ!そのときすでに行動は終わってるんだッ!
ラジオをした、なら使っていいッ!

聴き方解説ページ→ ttp://cgi33.plala.or.jp/~kroko_ff/mailf/radio.htm
アドレス→ttp://std2.ladio.net:8170/jojo2yok.m3u
またはlivedoorねとらじにて「ジョジョロワラジオ ☆日本代表おめでとう!的外れサッカーラジオ☆」と検索しても見つかります。
実況スレはこちら→ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12752/1277412461/1

乱入大歓迎、横やり大歓迎です。俺のトリップで検索すればスカイプで捕まえれます。
岡田ジャパン決勝トーナメント進出おめでとう!今日のラジオはめでてぇぜ!
363創る名無しに見る名無し:2010/06/25(金) 20:46:08 ID:oflSAgWq
おまえのトリップがわからん
364創る名無しに見る名無し:2010/06/25(金) 22:20:48 ID:amUd+DkG
http://r-0109.ddo.jp:8000/
アドレス変更ですよ。
365創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:42:35 ID:W1L9EV15
しじみーーーー!
366 ◆33DEIZ1cds :2010/06/28(月) 22:43:34 ID:0bGQvL7z
お待たせいたしております。
岸辺露伴、ブローノ・ブチャラティ、ジョルノ・ジョバァーナ、虹村億泰、シーザー・アントニオ・ツェペリ、ジョージ・ジョースター1世、リンゴォ・ロードアゲイン
投下します。
367創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:44:07 ID:m0x/mR72
368創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:44:20 ID:0gLyeJlN
369創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:44:37 ID:W1L9EV15
支援「
370 ◆33DEIZ1cds :2010/06/28(月) 22:45:02 ID:0bGQvL7z
※   ※   ※

これは宿命の円環(リング)を浮かび上がらせる多様にして確固たる表示であって、望むと望まざるとに関わらず、彼らはその重要な一端を担っているのである。

※   ※   ※ 

時は第三放送の直前。ジョルノと露伴が賭博施設より帰還して間も無く。
空は燃える様な夕暮れ。彼らは昼と夜の間の、静謐な空気のかぐわしさに目を細めた。
この会場の生者に死者に、等しく注がれる陽光は燈のようでいてしかし、どこか慈悲を含んだ柔らかさで。
それはコロッセオの石壁を朱に染め、影をより濃く、くっきりと浮かび上がらせた。

その茜色の空気の中、ジョルノの口からよどみなく流れ出る言葉には感情が無い。
事実に感情は不要とでもいうかの如く、第一・第二放送の内容、ダービーズアイランドで見たもの、聞いた事をありのまま伝える。
さらにブチャラティのメモの内容、自分達は時間を飛び越えてここに存在する事、接触した他の参加者たちの動向、自分達がこれからやるべき事まで手落ちなく。
無機的な説明の最中、場に佇む者たちの反応は静かなものであった。

「以上です。…次は皆さんの情報を頂きたいのですが。」

ジョルノは話し続けた事で疲れたのか、ほう、と最後に息をつく。
説明が終わっても、誰も何も言わなかった。

困惑、猜疑、怒り、悲しみ、寂しさ……理解不能。それらが渦巻いて訳のわからない物になり。
誰も何も言えない。それを表す言葉は、この世には無い。
彼らはうなだれ、頭を抱え、ため息を漏らすしかない。
その中で唯一、傍観を決め込んでいた露伴が声を上げた。

「…質問がある。最後に荒木が言っていたことだが。」

言いつつ露伴は左手を頬に当て、曲げた肘に右手を当てながら考え込むような様子で車椅子の背に寄り掛かる。
黒い瞳は強い光を含んで、ジョルノを射るように見つめていた。

「君は『DIOの息子』なのかい?」

場は制止する。
ジョルノは惑う。
沈黙の中、コロッセオを吹き抜けてゆく細い細い風の音。
今までまっすぐに前を見ていた視線を、ジョルノは地面に向けた。砂利を見つめて唇を噛む。
肯定の意である事は誰の目にも明らかだった。
同時にその事実が彼に苦悩をもたらしていることも。

露伴の言葉を聞いたシーザーは目を見開いて、無意識に一歩前に踏み出す。視線の先は露伴とジョルノを行き来する。
手近な場所に腰掛け、うなだれていたジョージは弾かれた様に顔を上げ、目の前に佇む金髪の少年を見る。
ブチャラティは腕を組んだまま、ややうつむき加減で斜め下から探る様に露伴を見た。
しゃがみ込んだ姿勢で大きく股を開いていた億泰は天井を見上げ、肩をすくめ、ため息をつく。そしてがくりと床に視線を落とした。
露伴は腕を組み、じっとジョルノの答えを待っていた。

宵の口、夕闇が浸食するコロッセオはほんの少し藍色に染まりつつある。
自身の陰に溶け込むように迫るその色を苦々しい思いで見やりつつ、ジョルノは口を開きかけたまま動けなかった。
元より答えなど持ち合わせていない。
ディオとも、DIOとも、今まで面識など無かったし、母親は自分の事ばかりでほとんど何も教えてはくれなかったのだから。

(そうだ、僕は『何も知らない』。ここで出会ったディオは、いつもイラついていて、ぶっきらぼうで、僕を見ても困ったような、怒ったような顔をして……。)

だがジョルノが何か言わない限り、場は収まりそうになかった。周りからの無言の圧力。
言葉を探すジョルノの思考はまとまらず、噛んだ唇がしびれ出す。
だが、ここで彼らは全く別の要因によって意識を他に向けざるを得なくなってしまった。

『歴史だとか過去のノスタルジィを感じさせてくれるものは場所に限らず心を落ち着かせてくれるね…』

何処からか聞こえてきたそれは、軽やかな小鳥の様に忍び寄る不吉なささやき。
371創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:45:36 ID:W1L9EV15
支援
372創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:45:39 ID:0gLyeJlN
373 ◆33DEIZ1cds :2010/06/28(月) 22:45:44 ID:0bGQvL7z
※   ※   ※

再び沈黙が降りてくる。
刹那の間の後、先程よりもさらに重い溜息と嗚咽がコロッセオの一角を満たした。

「ジョセフ・ジョースターが、死んだ…ッ!スージー、すまない…」

「プッチ神父とスピードワゴンさんが亡くなってしまった…さっきまで一緒にいたのに。タルカスまで…あっけなさ過ぎる…。」

「ウエストウッドもお陀仏だと…?くそ、あの時の暴漢にあのまま負けたのか…!僕の責任だ…それに。」

「トニオさんが…ジョースターさんまでいたなんて…畜生ォ、畜生ォォオ!!」

「ジョジョが死んだ…?あのお調子者が?嘘だろ、なあ?どういう事だよ…ッ!?」

「14名もの命が…!何という…。」

まるで空気がゼラチンを流し込んだ液体のごとく、どろりと重くなる。
各々の思考はバラバラに散りかけ、零した言葉はうつろに響いた。

「皆…、言いたい事があるのは分かる。だが」

「俺は出ていく!!」

場を制すように言いかけたブチャラティの声は遮られる。億泰によって。
彼はしゃがんだ状態で地面すれすれまで俯き、両腕で抱えていた頭を振り上げながら叫んでいた。
そしてそのまま垂直に立ち上がるとデイバックをつかみ上げ、大きな足音と共に脇目も振らず歩き出す。
ブチャラティは突然の事に声を荒げながら、横を通り過ぎようとした億泰の腕をつかんだ。

「待て!まだ情報の整理も何もできていない、落ち着くんだ、億泰!」

掴まれた腕を乱暴に振り切り、億泰は自身を阻むものに掴みかかった。
他の者達は沈黙したままだ。
持ち上げられたばかりの億泰のデイバックが、再び地面に落ちる。

「黙ってくれよ、頼むからよォ!」

億泰は骨の芯から震えながら、ブチャラティの胸ぐらを鷲掴みにする。
ブチャラティは本来回避できたであろう億康の行動を、読めなかったのか、読まなかったのか。
されるがままの彼の表情は、捻り上げられた襟首の圧迫感に歪んだ。

「皆、俺の知らねえところで死んじまう…。俺ァ、訳ェわかんなくなっちまったよ。だからもう、だめだ。ここにはいらんねえ。…それに。」

それは噛み殺すようなささやき声。
億泰の眼には涙が滲んで、瞳の表面に薄い膜を作る。
彼はその涙を飲み込むように固く眼を閉じてから、再度後ろのジョルノを睨めつけて言った。

「わかってるぜ…てめえはてめえであって。DIOじゃあねえ。でも、そんなんで割り切れるもんじゃねえ。」

ジョルノの唇に更に歯が食いこむ。しかし彼の視線は挑むように、怯えるように、億泰と合わさったままで。
張り詰めた空気の中、億泰は自身の心情を吐露し続ける。

「DIOのせいで親父が人の姿で無くなってから、死なせてやる事も出来ないまま生活してた10年間。俺と兄貴の10年…。」

ブチャラティはジョルノを見た。ジョルノは億泰と目を合わせたまま、動かずにいる。
億泰はゆっくりと腕に込めた力を抜き、ブチャラティの襟首から手を離す。
2人の距離がわずかに開き、ブチャラティはうなだれた億泰を見る。からだが痛々しく震えていた。
374 ◆33DEIZ1cds :2010/06/28(月) 22:46:34 ID:0bGQvL7z
「親父は確かにろくでもねえ奴だったよ。だが、どんなに屑でも俺らの親だった。」

億泰は再びしゃがみこんで足元のデイバックを持つ。瞳の涙はどこへ行ってしまったのか、すでに乾いていた。

「そして、DIOの名に関係のある奴がいる。俺にはどうも…耐えられねえ。…腕を治してくれた事には、礼を言っておくぜ。」

億泰の視線はすでにジョルノに向けられてはいない。
だがジョルノは億泰を見つめ続ける。彼の過去を理解したい、と考えているかのように。
だが状況も、運命も、それを許してはくれないのだ。

「だから、さいならだ。俺は早人を探す。あんなガキがここまで生き残ってる…ぜってえ見つけて、助ける。」

エネルギーの中にある意志は、億泰を駆り立て、一処にとどまる事を許さない。
そしてここで、彼に続く様にデイバックを持ち上げ一歩前へと進み出た者があった。

「悪りーが、俺も別動体で行かせてもらうぜ。ジョルノ、お前は俺の爺さんの仇の息子…さ。理屈じゃ割りきれねえ。腹が熱くなってきやがる。」

シーザーはバックを肩に担ぐと、片手を腰に当て、斜め下を見ながら低い声で呟いた。
ジョルノの瞳は新たにもたらされた真実に、揺れる。
その様をよそにシーザーは片手を上げると人差し指を立て、言う。ひとえに、自分に言い聞かせるように。

「それにだ!ジョジョが、リサリサ先生達が死んだなどと…俺は納得できない。仇がいるんなら、ぶちのめして納得するしかない。納得は、すべてに優先するぜ。」

シーザーは後ろを振り返り、車椅子の露伴を見た。

「で、ロハン。次はどこ行く予定だったんだよ?」

問われた露伴は『納得』という言葉を口の中で呟くと、車椅子の車輪に手をかける。
親友の康一の死を、大嫌いな仗助の死を、頼れると思っていた承太郎の死を、彼は認めたくない。理由は自分の眼で見ていないから。
だから傷の治療も頼まない。納得してからでないと意味が無いから。
そして彼にとって、リアルは絶対である。荒木というリアルを納得する事も、また必須。

「荒木を取材する。つまりはどんな理由があったか知らないが、参加者になったらしいダービーを探して、ギャンブルに勝つ。」

それを聞いたシーザーは露伴の車椅子の後ろに回り込み、ハンドルを握り、進行方向へと車体を向けた。

「なら、さっさと行こうぜ。…てめえも一人で死にたくないんなら、俺らと一緒に行く事を勧める。言っておくが、俺はかなり強いぜ?」

彼は一度握った車椅子のハンドルに肘をつき、片手で頬を支えながら億泰の方へと視線を投げる。
そしてその体制のまま、億泰と視線を合わせて、出方を待つ。

その呼びかけに、億泰は応じた。元より自分の非力を痛感している、自分一人では何もできないと。
頷いてデイバックを肩に担ぎ直し、車椅子の隣に立つ。
露伴は少し考えた様子をしたが、ひじ掛けに置いた腕を左右に軽く開くと、ジョルノ達に別れのあいさつを告げた。

「まあ、川尻早人をついでに探すこともできるだろうし、億泰と一緒に失礼するかな。」

3人は横に連なって、外へと歩を進めた。
ブチャラティ、ジョルノ、ジョージはその背を見つめるしかできない。
止める言葉が見つからない。同じような気持ちを、味わってきたから。

「……情報交換をする気はない、と?」

低く、戸惑いながら、ジョルノは彼らの背に声を投げかけた。
両の手はずっと握りしめられたまま。手のひらにはきっと爪のあとが付いてしまっているだろう。

「ああ…食い逃げみたいで悪いが、こっちはそんなに渡せる情報が無いんだ…島に行く前にも言ったかもしれないけど」

「ダービーが新たに参戦し、G-10が禁止エリアになった…この意味は一つしかありません。G-10にダービーの島があったんだ。」
375創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:46:46 ID:W1L9EV15
支援
376創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:46:49 ID:m0x/mR72
377創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:47:31 ID:0gLyeJlN
378 ◆33DEIZ1cds :2010/06/28(月) 22:47:36 ID:0bGQvL7z
飄々とした様を装い言った露伴の言葉を遮るように、ジョルノは言葉を放った。
あからさまな禁止エリアの設定は、その不自然さゆえに他の推測を寄せ付けない。
陸地から離れた只の海を、禁止エリアにする理由は、そこに何かがあるからという以外には無い。

「島に荒木がいたのに、これではもう近付けない。首輪を解除して海を渡るか、ダービーに勝って荒木の元へ行く権利を手に入れるか、どちらかの道しかなくなったんだ。」

「だから、皆で協力して脱出を目指すべきです…だろ?」

露伴は体を右にひねらせて振り返り、ジョルノを見た。
車椅子を押していたシーザーは黙ったまま振り向きもしないが、足を止め、露伴が話しやすいように少しだけ車椅子を右に回す。
振り向いた露伴の眼は、好奇心に浮かされた、探究者の眼だった。
物事の深淵へ、深淵へと潜り込む事に躊躇をしない、戻れなくなると知っても構いもしない、愚かさとも狂気とも取れるその追求心を、ジョルノはついぞ理解できない。

「でもね、それだと僕がしたい事が出来ないんだ…言ったろ。取材だよ、取材。」

この土壇場で、何故そんな事が言える。
露伴が、ゲームに乗っていない事は分かっている。ならば、やる事は荒木を叩きのめし、脱出することではないのか。
ジョルノは握りしめ過ぎて白くなった手のひらを構いもせず、さらに力を込めた。

「荒木のあの最後のメッセージは、僕らにあてられたものだったんですよ…露伴。」

「ああ、そうだな…それについても是非取材したいものだ。」

前に向き直ると、露伴は手をひらりと振る。
何物を差し置いてもリアルを追求する、その姿勢は、はたから見れば只ののいかれた行動と移り得るだろう。
しかし本人にとっては、それが至って普通の行動らしかった。

「…せめて、意志の確認をさせろ。ゲームには乗らない、そうだろう?」

ブチャラティはすでに固まってしまった彼らの思惑に干渉できない。
だが、『ゲームに乗らない』この考えを確認したかったのだろう、脱出の為に。
そして荒木打倒に対する己の打算を抜いても、彼らの正しい心を信じたかったのだろう。

「ああ、乗らないさ。当然…ね。」

「当たり前だ。乗る理由は無いね。」

「乗るかよ、くそったれの殺し合いなんかに…。」

ゆっくりと遠ざかって行く三つの背中は、壁と壁の間から差し込む橙色の夕暮れに浸食され始めている。
そして彼らの答えは、ブチャラティの期待を裏切らなかった。
この時は、まだ。

「もし、可能になったなら…ナチス研究所に来い。我々は、そこで待っている。」

ゆっくりと広がってゆく距離は、そのまま、心の距離となるのか。
3人はブチャラティの呼びかけにはもう答えず、差し込んだ夕陽と、コロッセオの壁が作り出す影の間に消えてしまった。

乾いた足音だけを残して。
379創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:47:47 ID:W1L9EV15
支援
380 ◆33DEIZ1cds :2010/06/28(月) 22:48:21 ID:0bGQvL7z
【E-3 /1日目 夕方】

【新生・チーム露伴】
【岸辺露伴】
[スタンド]:ヘブンズ・ドアー
[時間軸]:四部終了後
[状態]:右肩と左腿に重症(治療済みだが車椅子必須)、貧血気味(少々)、若干ハイ
[装備]:ポルナレフの車椅子
[道具]:基本支給品、ダービーズチケット
[思考・状況] :
基本行動方針:色々な人に『取材』しつつ、打倒荒木を目指す。
1.荒木に取材を申し込むため、テレンスを探す。
2.早人も探してやってもいい。(荒木優先)
3.“時の流れ”や“荒木が時代を超えてヒトを集めた”ことには一切関与しない
4.ウエストウッドの死亡に責任を感じている。
5.隕石を回収……ああ、そんなのあったね

[備考]
※参加者に過去や未来の極端な情報を話さないと固い決意をしました。時の情報に従って接するつもりもないです。
 ヘブンズ・ドアーによる参加者の情報を否定しているわけではありません。 具体例は「知りすぎていた男」参照。
※名簿と地図は、ほとんど確認していません(面倒なのでこれからも見る気なし。ただし地図は禁止エリアの確認には使うつもり)
※傷はシーザーのおかげでかなり回復しました。現在は安静のため車椅子生活を余儀なくされています。
※第一放送、第二放送の内容を把握しました。仗助、康一、承太郎の死に関しては半信半疑です。
※ダービーズアイランドに荒木がいることを知りました。

※今のところ、億康にヘブンズドアーで命令を書き込むつもりはありません。理由は『あほの億康の世話になんかなりたくない』からです。
※この後どこへ向かうつもりかは、後の書き手さんにお任せします。

【シーザー・アントニオ・ツェペリ】
[時間軸]:ワムウから解毒剤入りピアスを奪った直後。
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、ヘブンズ・ドアーの洗脳
[装備]:スピードワゴンの帽子。
[道具]:支給品一式、エリナの人形、中性洗剤。
[思考・状況] 基本行動方針:ゲームには乗らない。エシディシと、ジョセフたちを殺した者を殺害する。
0.爺さんの仇の息子…か。
1.荒木は当然だが、リサリサ、スージー、スピードワゴン、ジョセフの仇を探してぶちのめす。
2.精神的敗北から立ち直った。テレンスをブチのめしたい。
3.荒木の能力について知っている人物を探す。
4.女の子はできれば助けたい。
[備考]
※第一、第二放送内容を把握しました。
※ヘブンズ・ドアーの命令は『岸辺露伴の身を守る』の一つだけです。
※テレンスと会話をしました(情報の交換ではありません)
※参加者が時を越えて集められたという説を聞きました
381創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:48:49 ID:0gLyeJlN
382 ◆33DEIZ1cds :2010/06/28(月) 22:49:03 ID:0bGQvL7z
【虹村億泰】
[スタンド]:『ザ・ハンド』
[時間軸]:4部終了後
[状態]:自分の道は自分で決めるという『決意』。肉体的疲労(中)、精神的には少々弱気。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式。(不明支給品残り0〜1)
[思考・状況]
基本行動方針:味方と合流し、荒木、ゲームに乗った人間をブチのめす(特に音石は自分の"手"で仕留めたい)
0.DIOの息子…だとよ…。クソッ、八つ当たりだが、俺はここにはいたくないッ
1.早人を探す。
2.露伴たちと行動を共にする。
3.エシディシも仲間を失ったのか……。こっちに危害は加えないらしいが。
4.仗助や康一、承太郎の意思を継ぐ。絶対に犠牲者は増やさん!
5.もう一度会ったならサンドマンと行動を共にする。
6.吉良と協力なんて出来るか
【備考】
※名簿は4部キャラの分の名前のみ確認しました。
※サンドマンと情報交換をしました。 内容は「康一と億泰の関係」「康一たちとサンドマンの関係」
 「ツェペリの(≒康一の、と億泰は解釈した)遺言」「お互いのスタンド能力」「第一回放送の内容」です。
※デイパックを間違えて持っていったことに気が付きました。誰のと間違ったかはわかっていません。
 (急いで離れたので、多分承太郎さんか?位には思っています。)
※参加者が時を越えて集められたという説を聞きました

!※!3人とも、荒木について書かれたブチャラティのメモの内容を把握しました。
383創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:49:21 ID:W1L9EV15
支援
384創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:49:42 ID:0gLyeJlN
385創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:50:07 ID:m0x/mR72
386創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:50:08 ID:GmMW2VM2
387 ◆33DEIZ1cds :2010/06/28(月) 22:50:10 ID:0bGQvL7z
※   ※   ※

「…ファンクーロ(くそくらえ)。」

沈黙していたブチャラティの唇からため息の様に漏れたのは、ひどく下卑た単語。
その言葉に驚いた様子のジョルノはブチャラティを見、気遣わし気に顔を覗き込む。

「ジョルノが誰の息子だろうと、関係ない。こいつはパッショーネの下っ端の、15歳のチンピラだ。俺の部下だ。彼らの身内には同情するが…」

ブチャラティは腕を組み、静かにではあるが憤慨した様子で一人ごちる。
ジョルノは彼の言葉を聞き、少し安心したような表情でふっと呼気をもらした。

「彼らは…多分、信頼できますよ。」

「わかっている。気まぐれ屋や直情型のようだがな。」

ブチャラティは緩やかに眉を吊り上げて、組んでいた腕を解き肩をすくめた。

「露伴はあくまでも取材、と言ったが、脱出をしたくないわけが無い。億泰とシーザーは言わずもがな、荒木に憎悪を抱いている。いずれ協力し合う事になる筈だ。」

ブチャラティの言葉にジョルノは頷き返し、ずっと黙ったままでいるジョージに言葉をかけようと、口を開きかけた。
だが、ジョージはそれを片手で制すと、ジョルノの両肩を掴んで己の近くに引き寄せる。

「…君は、ディオの子なのか。ああ、確かにどこか面影がある。立派な私の、孫だ。この目で見る事が出来るとは…」

ジョルノを見つめ、感慨深そうにそう言ったジョージの眼は輝きに満ちていた。

「え?いえ…その、僕は…ディオの、父親のことはよくわかりませんし、あの…」

ジョルノはそのあまりにもまっすぐな視線と、慈しむ様な言葉にまた驚いた顔をした後、ふいと目をそらしてしまう。
珍しく口ごもる彼にブチャラティも驚いた顔をしたが、その表情と少し赤くなった耳を見、ふっと笑みをこぼした。
ジョージは一瞬目を見開いたが、豊かな口ひげを蓄えた唇でにっと笑う。

「ハハ、そういう時は逆に考えるんだ、これから知ればいいさと考えるんだ、ジョルノくん。」

背中をとん、と優しく叩かれ、反動で前に一歩踏み出したジョルノを見てジョージはまた嬉しそうに笑った。
ジョルノは無表情で黙っていたが、自分を見つめるブチャラティの視線に気づく。

「気にしないでください。彼らは何も悪くない。今ここにいるディオだって…まだ見ぬ自分の未来にまで、責任は無いと…思います。」

「お前だって何も悪くない。それは分かってるんだろうな。」

「ええ…。」
388創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:50:53 ID:m0x/mR72
389 ◆33DEIZ1cds :2010/06/28(月) 22:51:15 ID:0bGQvL7z
(そう、君たちは何も背負わなくていい。私がやるべき事だ。親として、ディオとジョナサンの責任を取るのは私なのだから。)

ジョージは彼らの姿を見ながら思う。
全ての状況を把握した今、明るく振る舞うのも年長者の役割。
いたずらに深刻そうな顔で押し黙っては、彼らを暗くさせてしまうばかり。
本当は愛用の肘掛椅子におさまって、1日中憂鬱を持て余しても足りない程の衝撃を受けていた。
彼らに聞かされた2人の息子の行いは、人としてあってはならない事柄。

黙って2人を見ていたジョージは、ふと自分の方を見る視線に気付く。
視線の主、ブチャラティは申し訳なさそうにしながらも、その身には確固たる意志を匂わせていた。

「ジョースター卿。あなたのジョナサンを、俺達は……。」

「わかっているさ。そうなったら…早い者勝ちだ。ブチャラティくん。」

ディオが未来に、人間を辞める?ジョナサンが殺人を犯した?
そしてジョナサンが殺した青年の仲間が、今、目の前に。彼らはジョナサンに復讐を誓っている。

ならば問おう、その時、親としてできる事は何なのか。

答えはまだ無い。
2人に会えば分かる気がする。

(だから、私は行く。お前たちの元へ。)

そう考えて視線を落としかけた時、ジョージは遠くから近づいてくる微かな足音を聞いた。
彼は人差し指を唇の前に素早く立てると、全員の注意を促す。

2つの視線が己の指先に集まった事を確認すると、ゆっくりと指を動かし、足音のする方向を指差した。
ジョルノとブチャラティはすぐさまジョージを後ろへと庇うように立ち、スタンドを発動。
だんだんと大きくなるその足音は安定していない。
怪我を負っているかのように、不規則で緩慢な様子だ。

固唾をのんで音の方向を凝視していた3人は、石壁の作る陰から溶け出す様に現れた男を見た。
おかしな具合に曲がった腕を庇うように逆の腕で支えながら、下を向いて歩いている。
彼は腕の他にもひどく負傷しており、歩くのも難儀そうだ。

怪我だらけの来訪者は足元へ向けていた視線をゆらりと上ると、壁にもたれて立ち止まる。
そして痛みと疲労で汗ばんだ喉を震わせ、掠れた声で言った。

「スーツを着た爆弾のスタンド使いを…見なかったか。」
390創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:51:38 ID:m0x/mR72
391創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:51:39 ID:0gLyeJlN
392 ◆33DEIZ1cds :2010/06/28(月) 22:52:02 ID:0bGQvL7z
※   ※   ※

空はすでに藍から黒に染まりつつある。

意中の人物の情報が無いと判明してすぐに、リンゴォ・ロードアゲインは去ろうとした。
しかし、去ってしまう前に怪我の治療をしようとジョルノは進み出たのである。
リンゴォは拒否の意を示したのだが、情報交換を条件に治療されることに応じたのだった。

彼は初め、危険人物の名前だけを列挙し、伝えた。
だが治療の最中に、ジョルノ達は荒木についての予想や、現状で危険と思われる人物をリンゴォに教える。
少しでも荒木の事を多くの人間に伝えるためだ。
リンゴォはその情報の多さに、怪我の治療だけでは釣りが来ると、さらに自身が知り得た事柄を語り出し。

新たに知らされたのは、エシディシが殺し合いに乗った事、タルカスの最後、吉良の危険性、その能力の断片。
その説明の中でリンゴォは、吉良を殺すとはっきりと告げた。
すぐさま殺しをやめる様に説得しかけたジョージの言葉を、リンゴォは首を振って遮り。

誰が彼を止められるのだろう。彼の世界には、誰一人干渉する隙などないのだと、ジョージは悟ったようだった。
為ん方無いと、口惜しく思っている様子ではあったが追求を諦めていた。

そして。

(ディオは…スタンド使いになった。なってしまった。)

能力の詳細は不明。発現に至った経緯も、プッチが関わっていた事以外は不明。
己のコンプレックスを克服した彼が、次にどのような行動に出るのか、想像に難く無い。

(すぐに動くだろうか、彼は?)

十分あり得る話だ。
だが、むやみやたらに動き回る様な事はしない筈。
リンゴォによればプッチを目の前で殺された時、エシディシの異常な力を目の当たりにしている彼。
いくら頭に血が上っているとしても、そう軽率に動くとも思えない。
何よりも、今、自分達がディオの元に行ったところで何ができる?
首輪解除という手土産を持ち、冷静な話し合いに運んだほうがまだ先が明るい。

(僕の、父さんなんですね。あなたは。…死なないでほしい。それだけは、思う。)

ジョルノは手に持った地図をぐっと握りしめる。

話し終えたリンゴォは、あの異様に丁寧な挨拶をし、何処へともなくコロッセオから立ち去った。
ジョルノ達も既に、ナチス研究所への道を進んでいる。
首輪解除が最優先事項の今、特別懲罰房は後回しになったのだった。

彼等は口数少なく、時々空を見上げたり、地図を確認したりしながら歩いていた。
詳細な話し合いも、意見交換もまだできていないが、誰も口に昇らせなかった。
死者を悼み、思い出を反芻する時間が、まだ見ぬ未来に挑み、自分の心と葛藤する時間が、どうしても必要なのだ。
話さずとも、皆、そう思っていることをお互い理解できた。

見上げれば、今にも沈み切らんとする夕陽のわずかな光と、夜の闇の境が美しい赤瑠璃色で。
空における色彩の交わりは互いを拒まず、妙なる調和の果てにその美を得る。
ジョルノはその様を直視しきれず、自分の足元を見下ろした。

(僕達の運命は、混じり合った果てに何になるのだろう。)

目的の場所へと向かう3人の影の間を、寂寞たる夕風が吹き抜けて行く。
393創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:52:27 ID:0gLyeJlN
394創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:52:42 ID:m0x/mR72
395創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:53:18 ID:0gLyeJlN
396創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:53:18 ID:W1L9EV15
支援
397創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:53:25 ID:m0x/mR72
398 ◆33DEIZ1cds :2010/06/28(月) 22:53:45 ID:0bGQvL7z
【E-3 コロッセオ出口/1日目 夕方】
【ブローノ・ブチャラティ】
[時間軸]:護衛指令と共にトリッシュを受け取った直後
[状態]:トリッシュの死に後悔と自責、アバッキオとミスタの死を悼む気持ち
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、シャーロットちゃん、スージーの指輪、スージーの首輪、
   ワンチェンの首輪、包帯、冬のナマズみたいにおとなしくさせる注射器
[思考・状況]
基本行動方針:打倒主催、ゲーム脱出
0.スージー、すまない…
1.ナチス研究所へ行く。
2.いずれジョナサンを倒す。(殺害か、無力化かは後の書き手さんにお任せします)
4.フーゴと合流する。極力多くの人物と接触して、情報を集めたい。
5.ダービー(F・F)はいずれ倒す。
6.ダービー(F・F)はなぜ自分の名前を知っているのか?
7.スージーの敵であるディオ・ブランドーを倒す
[備考]
※パッショーネのボスに対して、複雑な心境を抱いています。
※波紋と吸血鬼、屍生人についての知識を得ました
※ダービー(F・F)の能力の一部(『F・F弾』と『分身』の生成)を把握しました。
※参加者が時を越えて集められたという説を聞きました
※ブチャラティが持っている紙には以下のことが書いてあります。
@荒木飛呂彦について
 ・ナランチャのエアロスミスの射程距離内いる可能性あり
  →西端【B-1】外から見てそれらしき施設無し。東端の海の先にある?(単純に地下施設という可能性も) →G-10の地下と判明
 ・荒木に協力者はいない?(いるなら、最初に見せつけた方が殺し合いは円滑に進む) →協力者あり。ダービー以外にもいる可能性があるかもしれない。
A首輪について
 ・繋ぎ目がない→分解を恐れている?=分解できる技術をもった人物がこの参加者の中にいる?
 ・首輪に生死を区別するなんらかのものがある→荒木のスタンド能力?
  →可能性は薄い(監視など、別の手段を用いているかもしれないが首輪そのものに常に作用させるのは難しい)
 ・スティッキィ・フィンガーズの発動は保留 だか時期を見計らって必ず行う。
B参加者について
 ・知り合いが固められている→ある程度関係のある人間を集めている。なぜなら敵対・裏切りなどが発生しやすいから
 ・荒木は“ジョースター”“空条”“ツェペリ”家に恨みを持った人物?→要確認
 ・なんらかの法則で並べられた名前→国別?“なんらか”の法則があるのは間違いない
 ・未知の能力がある→スタンド能力を過信してはならない
 ・参加者はスタンド使いまたは、未知の能力者たち?
 ・空間自体にスタンド能力?→一般人もスタンドが見えることから
399創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:53:59 ID:W1L9EV15
支援
400創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:54:57 ID:W1L9EV15
支援
401創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:54:56 ID:0gLyeJlN
402 ◆33DEIZ1cds :2010/06/28(月) 22:54:57 ID:0bGQvL7z
【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:メローネ戦直後
[状態]:健康、精神疲労(中)、トリッシュの死に対し自責の念
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜3
[思考・状況]
0.僕は去っていく彼らに、何もできなかった…
1.ナチス研究所へ行く
2.『DIO』は吐き気を催す邪悪なのでは?今のディオをその事で責めるのは間違いだとは思うが…
3.トリッシュ……アバッキオ…ミスタ…!
4.ディオが自分の父親、か…→未来のDIOには不信感。
5.エシディシと吉良と山岸由花子をかなり警戒

[備考]
※ギアッチョ以降の暗殺チーム、トリッシュがスタンド使いであること、ボスの正体、レクイエム等は知りません。
※ディオにスタンドの基本的なこと(「一人能力」「精神エネルギー(のビジョン)であること」など)を教えました。
 仲間や敵のスタンド能力について話したかは不明です。(仲間の名前は教えました)
※彼が感じた地響きとは、スペースシャトルが転がった衝撃と、鉄塔が倒れた衝撃によるものです。
 方角は分かりますが、正確な場所は分かりません。
※ジョナサンを警戒する必要がある人間と認識しました。
※参加者が時を越えて集められたという説を聞きました
 (他の可能性が考えられない以上、断定してよいと思っています。ただし、ディオが未来の父親であるという実感はありません)
※ラバーソウルの記憶DISCを見、全ての情報を把握しました。
※ダービーズアイランドに荒木がいることを知りました。
※ディオがスタンド使いになった事を知りました(能力は分かっていません)

【ジョージ・ジョースター1世】
[時間軸]:ジョナサン少年編終了後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況] 憂鬱
基本行動方針:ジョナサンとディオの説得
0.尊い命が散っていく…
1.ディオが、ジョナサンが…私の息子たちに一体何があったというのだッ…!
2.首輪解除のため、ナチス研究所へ。
3.機を見てディオとジョナサンを探す。例え単独でも。
4.孫に会えてうれしい
[備考]
※第一、第二放送内容を把握しました。
※テレンスと会話をしました(情報の交換ではありません)
※参加者が時を越えて集められているという話を聞きました。

【リンゴォ・ロードアゲイン】
[スタンド]:マンダム
[時間軸]:果樹園の家から出てガウチョに挨拶する直前
[状態]:身体疲労(中)、エシディシに対し畏怖の念
[装備]:ジョニィのボウィーナイフ
[道具]: 基本支給品 不明支給品0〜2
[思考・状況]
基本行動方針:参加者達と『公正』なる戦いをし、『男の世界』を乗り越える
1.吉良を探すため、移動する。見つけ次第吉良に復讐する。
2.遭遇する参加者と『男の世界』を乗り越える。
[備考]
※怪我はゴールド・エクスペリエンスで治療されました。
※ブチャラティのメモの内容を把握しました。
※参加者が時を越えて集められているという話を聞きました。(その事についてどう考えているかは、後の書き手さんにお任せします)
※この後どこへ向かうかは後の書き手さんにお任せします。
403創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:55:30 ID:m0x/mR72
404創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:56:24 ID:GmMW2VM2
405創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:56:26 ID:m0x/mR72
406創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:57:08 ID:m0x/mR72
407創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:57:12 ID:W1L9EV15
支援
408創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:57:42 ID:0gLyeJlN
409 ◆33DEIZ1cds :2010/06/28(月) 22:57:49 ID:0bGQvL7z
以上です。
題名は『紅が碧に染まる空にカラスみたく飛んで行きたい』です。
今回は本当に長く時間を取ってしまって、申し訳ありませんでした。
支援ありがとうございました!

引き続きご指摘etc.よろしくお願い致します。
410創る名無しに見る名無し:2010/06/28(月) 22:57:53 ID:GmMW2VM2
411創る名無しに見る名無し:2010/06/29(火) 19:55:44 ID:plLgIm5w
長文投稿&修正乙です!

>>378
只ののいかれた行動 ⇒ 只のいかれた行動
かなと思います

感想
「ディオ」の名が2、4部のキャラに影響を与えるなんて
読むまでまったく気付きませんでした
この別れが永遠の別れになる可能性もあると思うと
ジョルノってずいぶん重いものを背負ってますね
412創る名無しに見る名無し:2010/06/30(水) 18:05:39 ID:qaxhGQGE
乙!!
413創る名無しに見る名無し:2010/07/01(木) 23:29:26 ID:6EJlukYc
◆Y0KPA0n3C.氏の代理投下をただ今から開始します。
414◇Y0KPA0n3C.氏代理投下:2010/07/01(木) 23:31:29 ID:6EJlukYc
「むむむむむ……!」

手に持った地図を俺は見つめる。穴が開くんじゃないかとばかりにじっと見つめる。透けて向こうが見えてくるんじゃないかとばかりに睨み付ける。
だがどれだけ睨み付けようと書かれている内容は変わらない。
当然のことだ。地図に書かれた七個のバッテンは黙ってしかめ面の俺を見返してくる。
俺は仕方なく地図を机の上におろす。代わりに今度は名簿を手にとった。

「……はぁ」

いくつもの消された名前と一番下に新しく書きたされた名前。今度はうなり声じゃなくてため息が出た。
まったくやってられないぜ、このままいったらお先真っ暗じゃねーか。

「放送に備えて家ん中に隠れたのはまだわかる。内容をメモしないとやべぇからな、禁止エリアと死者発表は俺にとっちゃ死活問題だぜ。けどよォ……」

はぁ、と続きはため息で打ち消された。だってよぉ、肝心の放送の中身がこれだぜ? がっくり来るってのもわかるだろう。
一日の疲れがどっとわき、俺はそのままドサリと椅子に腰掛ける。背もたれに体重をかけそのまま天井を見上げる。
ほんとやってられないぜ……荒木のやつは俺に個人的な恨みでもあるのかね?
帽子を深く被りなおすと俺は目をつぶる。実際結構疲れてる。

夜は億恭の野郎にバレないように神経をすり減らしっぱなし、朝になって移動したはいいが会うやつ皆死体、死体、死体。
いや、いくら俺がそういうのに慣れてると言っても死体を見て喜ぶなんて趣味なんてねーしな。
ああ、そういえばダービーの所に行った時も危なかったな。とっさに承太郎のふりができた俺は天才だと思ったね。
それから潜水艦に引きこもって、あんまりのんびりしすぎるのもなんだしと露伴の格好をして飛びたしてきて……

「のんびりしすぎたかねェ……」

反省とも後悔とも言えない言葉を吐くと俺は机の上の二枚の紙を取る。
俺にとって今回の放送はひでぇもんだった。正直言って本気でヤバいかもしれない。

「今回の放送でやべぇのは残りの人数の少なさ、ダービー島の閉鎖、禁止エリアの数と位置。まったくやってくれるぜ、荒木の野郎」

残り人数が減ったのは一見良さそうに見える。なんせ優勝を目指してんだからな、俺は。
でも冷静に考えればそれだけ人が少なくなるってことは他人に関する情報が一極集中してくるってわけだ。
この人数の少なさにやばいと感じたやつらが徒党を組めば、まずするのは情報交換だ。誰がいいやつで、誰が危ねーやつなのか、とかな。

これがマズイ。俺にとっちゃこれが非常にマズイんだ。
ただでさえボロが出かねない俺の変身能力。相手方が持ってる情報が多ければ多いほど当然ばれる可能性は上がる。
415◇Y0KPA0n3C.氏代理投下:2010/07/01(木) 23:32:37 ID:6EJlukYc
「なんもない時でさえ胃が痛いっていうのに……これじゃ化けられねーじゃねーか」

続いてダービー島の閉鎖。チケットを取り上げられた今の俺には一見関係ないように思える。
だけどこれだってよく考えれば一大事。荒木の野郎が本腰入れて参加者を突っつき始めたって考えられねーか、これ。
このタイミングでのダービー島の閉鎖、加えて禁止エリアの集まりかたは露骨すぎるぜ。
もしかしたら俺のほかにもダービーん所を避難所みたいに使ってたやつがいたのかもしんねェな。

とにかくこの状況で潜水艦にまた潜り直すのは考えものだ。荒木が本腰入れてきたって考えると『待ち』に入るのはどうも危ねー。
引きこもっていたら急に潜水艦が爆破! それがないとは言いきれねェんだもんなァ。

「化けてもダメ、化けなくてもダメ。一体どうしろって言うんだよ……」

考えれば考えるほど手詰まりのように思えてくる。こうなったらもうぼやくしかない。
ボインゴよ、今度こそ兄ちゃんはダメかもしんねえ。

「でもそんなこと言ってもよォ……やるしかねぇんだな、これが」

急に立ち上がったせいか、音を立ててイスが倒れた。俺は構わず荷物をまとめる。
地図と名簿をしまい込み、机の上に置いてあった食べかけの夕飯をたいらげる。最後にペットボトルで喉を潤すと俺は力強く拳を握った。
同時に俺の顔がグニャリグニャリと形を変えていく。

「色々辛いこともあるけど兄ちゃんは頑張ってるぞ、ボインゴ」

高慢な漫画家への変身が終わると俺は民家を飛び出し、路上に出る。
結局俺にできることと言ったら顔を変化させるだけだ。ならそれでなんとかするしかねぇだろ。
いざとなったらスタンド攻撃だ! なんて叫んで誤魔化すしかない。
いや、最悪泣いて謝って集団の中に入れてもらうしかねぇ。

とにかくだ、とにかく俺は死ぬわけにはいかねぇ。弟のためにも俺は生きて帰えんなきゃならねェ。
そうだ……死んでたまるか! ここまできたらやるしかない! やってやる……ブッちぎってやるッ!
よし……なんだか急にいけそうな気がしてきたぞ! 今の俺だったら何千と飛んでくる矢の中でも平然と歩―――

「露伴さん!」
「うおおおおお!!」

真後ろから突然かけられた声に俺はびっくり仰天。文字通り飛び上がった俺は思わず変な叫び声を漏らしてしまった。
反射的に振り返る。日が暮れて真っ暗になった市街地、そんな中にいたのは……

「……?」
「良かった……露伴さんも無事だったんですね」

とんでもなく目付きが鋭い一人のガキがいた。




416◇Y0KPA0n3C.氏代理投下:2010/07/01(木) 23:33:32 ID:6EJlukYc
日はもう沈んでしまった。真っ暗な住宅街に蛍光灯がぽつりぽつりと等間隔に置かれている。そんな暗闇の中、互いの表情はよくわからない。
二人が目指す先は西、中央にそびえ立つコロッセオ。あれだけ目立つ目印だ、他の参加者が集まっているだろうというのが二人の考えだった。
二人は小さい声ではあるが話しながら歩いている。いま話しているのは早人だ。

「でもその時僕はわかったんです。ウェザーさんは死んでしまった。ウェザーさんは僕の知らないどこかで死んだ」

オインゴはあえて立ち止まって情報交換をするようなことはしなかった。
オインゴは露伴と早人の関係を知らない。どれぐらい親しいのか、どれぐらい長い付き合いなのか。
逃げることができない状態で変身を続ける恐ろしさをオインゴは身をもって知っている。
だからこそ、いつでも逃げれるような状況を作った。
いざとなったら走って逃げよう。相手は子供、その上怪我もしてるんだ、おいつけられるわけがない。
そう思い、オインゴは移動しながら情報交換を続ける。早人の言葉に適度に相槌をうちながら、全神経を耳に集中させる。

「そこから先は正直言ってあんまり覚えてないんです。ただ探し回りました。町中を走って転んで倒れて……とにかく必死だったんです」
「それはまたなんで?」
「ウェザーさんの仇を討つため……ウェザーさんを殺したやつを殺すため」

闇夜に紛れて何者かが襲ってこないかと周りに向けていた視線を早人に向ける。
露伴に化けていたことも忘れオインゴは思わず表情を変えてしまった。
ブッとんでるぜ、率直にそう思った。

(仇討ちだァ? 馬鹿か、こいつは。億恭の話だとこいつはスタンド使いでもないはずだ。
 こんなちっちぇガキがスタンドもなく武器もなく誰かを殺ろうなんてクレイジーすぎる。
 しかも殺した相手もわからねぇ、生きてるか、そんなことすらもわかんねぇんだ。
 これはもはや頭がおかしいだなんてレベルじゃねーぜ……)

だがいい情報源であることは確かであった。辛抱強く前後の話、周りの状況を聞き出していくオインゴ。
早人の話が終わる頃には死んだ参加者を含むと実に10人以上の参加者の情報が手に入った。
もっとも中には役にたたない断片的なものもある。だがそれだってうまく使えば他の参加者からの信頼を得る武器になるのだ。
まさに今、オインゴがやっているように。

「……僕の話はこれぐらいです」
「そうか、ずいぶんと苦労したんだね。まったく……君には同情するよ」
417◇Y0KPA0n3C.氏代理投下:2010/07/01(木) 23:35:36 ID:6EJlukYc
夜の町に二人の足音だけがこだまする。オインゴはかける言葉がみつからない、と言った振る舞いをしつつも、頭の中では別のことを考えていた。
情報を得た今、早人をこれからどうするか。オインゴは考える。

このまま走って逃げるという選択肢もある。露伴の悪評を振り撒くことにもなるし、それはそれでメリットがある。
その一方でこのまま早人と一緒にいる、という選択肢もありだ。
二人いれば誰か他の参加者と会ったときに信頼を得やすい。仮にゲームにのった者に見つかっても早人を囮に使うこともできる。これはこれで魅力的に思えた。

(けどよォ……)

オインゴはその一方でどこかに不安を覚えていた。
早人はもしかして自分の変装を見抜いているのではないか。何か自分に隠している『とっておき』があるのではないか。
自分の体がどうなろうとも仇をとってやるという執念。そんな気持ちをオインゴは理解できない。
理解できないから底が知れない。底が知れないから何をしでかすかわからない。
オインゴは早人が持つ『可能性』に恐怖した。早人が持つどす黒くも確固たる『意志』を驚異に思った。

(……まぁ悩んでも仕方ねぇ。とりあえずの信頼は得たんだ、このまま同行してみるか。
問題は本人に会っちまった時だが……それを考えてたら何もできねぇ。さすがにそれぐらいのリスクは負うべきだろ。
とにかくこのガキに出会えた幸運を生かないと俺に明日はない。これがラストチャンス、次があるだなんて甘っちょろい考えじゃダメだ)

そこまで考えるとチラリと早人へ目線を向ける。足に怪我を負った早人が遅れている。
いつの間にかできてしまった間を縮めようと仕方なくオインゴはその場に立ち止まった。



その瞬間、ゾワリと全身の毛が逆立ったかのような感覚に襲われた。
身体中の毛穴が開き、汗が一気に吹き出してくる。
オインゴはこの感覚を知っている。
自分が仕えているDIO、彼が持つ絶対的な力と殺気、暴力の匂いと死の香り。
体が思うように動かない。ブリキ仕掛けの人形を無理矢理動かすように自分の体を動かし、なんとか振り向いた。

だが誰もいない。
蛍光灯の周りを虫たちが飛び回っているだけ。
人一人いない静かな住宅街は何も変わらずただオインゴたちを無表情に見返してくる。

「露伴さん……」
418創る名無しに見る名無し:2010/07/01(木) 23:36:17 ID:OIZsgnmy
 
419◇Y0KPA0n3C.氏代理投下:2010/07/01(木) 23:39:33 ID:6EJlukYc
だが違う、気のせいであることなんてあり得ない。隣に並び立った早人がオインゴの腕にしがみつく。
早人も感じ取っているのだ。この圧迫感を、隠しきれない威圧感を。
闇夜に目を凝らしオインゴは周りを警戒する。だが敵を見つけたとしてもどうすればいい?
自分は化けるだけのスタンド使い。隣にいるのはわけがわからないブッとんでるガキ。
正直言ってどうしようもない、お手上げだ。

(死ぬのか? 弟に、ボインゴに会えず、俺はここで、死んでしまうのか?)

膝が震える、喉がカラカラだ。絶望と恐怖にオインゴは押し潰されそうになる。
自分は何もできない。ただここで死を待つだけなのではないか。それでも死にたくない。生きて弟の元に帰りたい。
無意識のうちにオインゴはしがみついてきた早人を庇う。
今まで弟に対してしてきたように、兄として守ってやる存在を庇うように。
二人は震えながらお互いを支え合っていた。

実際にそうしていたのはわずかな時間だろう。けれども二人にとっては果てしなく長い時間がたったように思えた。
唐突に二人の見ている前で遠くの街灯がプツリと音を立てて消えた。
そして次にまた一つ、そしてまた一つ。電気がきれる音に紛れて足音が近づいてくることも二人はわかった。
だが動けない。蛇に睨まれた蛙のように二人は竦み上がった。どうしようもない圧倒的な存在を前に二人は無力だった。
一つ、更に一つ。近づいてくる人物の顔が見えない内に、まるで図られたかのように光が消えていく。
そしてとうとう二人の目の前で最後の光が消えた。辺りは真っ暗になった。

「人間と人間でないものの違いとは一体何か? 考えてみればこれは興味深い問題だ……。
 言い換えてみると……そうだな、人間が人間であることを証明するのは一体何なのだろうか?」

雲間から月の光が男を照らし出す。二人は息を飲んだ。腕を伸ばせば触れる距離に立つ男、その姿は美しかった。
神々しいとも言えるしなやかな肉体、人の上に立つものが出すカリスマ的な迫力。恐怖を忘れて二人は見つめる。男はそのまま話を続けた。

「人間……なぜ人間はこうも栄えたのか? なぜ人間は進化したのか? 人間とほかの動物の違いはなんだ? なぜ人間より優れた我々は滅んでしまったのか?」

二人の前に立つ男、エシディシの目線は二人に向いていない。
遠く月をにらみつけ、今しがた自分が出した問題に答えを出そうと考え込んでいる。
はたして彼は二人に気付いているのか、気づいていながら無視しているのか。二人にはわからない。
ただ二人にできることは目の前の男がなにもせずに通りすぎてくれるよう願うことだけだった。
420◇Y0KPA0n3C.氏代理投下:2010/07/01(木) 23:40:34 ID:6EJlukYc
「カーズが一族を皆殺しにした。ふむ、確かにそれもあるだろう。直接的な原因はそうだ、カーズにあるのだろうな。
 だが果たして本当にそれだけか? カーズが全て悪いのか? あの太陽を克服しようとした、黄金のような『夢』を持った天才が?」
 
体全体を使い男は熱弁をふるう。たった二人の観客に身振り手振りを交えエシディシは叫ぶ。
呪われた一族の終わりを二人は黙って聞くしかできない。エシディシの話は続く。

「いいや、違う! 我々は恐れていたのだ! カーズの持つ夢が全てを食らいつくしてしまうのではないか、さらなる力は争いを生むだけではないか、と。
 そう、我々は立ち向かう(stand up)ことをしなかっただけだ! カーズが可能性に賭けて立ち向かうならば、我々一族も同様に立ち向かうべきであった。
 全ての生命を貪り尽くすのでは? その恐怖に立ち向かうべきだった。さらなる争いを生むのでは? その現実に立ち向かうべきだった。
 人間がしてきたように、だ。 」

力強く話していたエシディシの声がやがて落ち付いてくる。最後の人間、という言葉を強調するとともに彼は頭を垂れた。
その姿は死んだ一族を悼むように見える。また人間に敬意を表しているように見える。
月明かりの中、住宅街の一角で静かに目をつむる大男。何とも言えない不思議な光景であった。

「だからこそ、俺は敬意を表するッ! 如何なる巨大な力を前にも屈しない人間たちに! 自分が死ぬ、そうわかっていても立ち向かってくる人間に!」

雰囲気が変わった。黙っていた二人は本能的に身を縮める。今初めてエシディシの目線が二人に向いた。
その眼は冷たい目だった。演説を行ったときに見せた輝くような眼ではなかった。
自分たちは実験動物だ。二人は本能的に悟った。今から自分たちにとって碌なことは起きない、と。

エシディシが軽く腕をふるう。
なんでもない動作だった。まるで優しく壁面をなでるように傍らに立った電柱に拳をぶつける。
それだけでひびが走った。拳を中心に電柱が軋みをあげて崩れ落ち、二人のそばに轟音を立てて倒れこんだ。

ゴォォオン……という音とともに砂埃が舞う。オインゴの額を汗がツゥ……と伝い水滴となって顎より地面に落ちた。
勝てない。いや、そもそも戦う、なんて考えが馬鹿げてる。こいつは、この男は化け物だ。
逃げようという気持ちさえ湧いてこなかった。
ただ俺は死ぬんだな、という諦めの感情が湧きあがった。決定的だった、どうしようもない。
後悔はなかった。弟の顔を思い出しながらオインゴは死にゆく自分の運命を受け入れた。

エシディシがそっと手を伸ばしてくる。オインゴの顔を握りつぶそうとその手が迫ってくる。
だが何もできない、何もしない。オインゴは眼をつぶった。
どうしようもなく、どうしようもなかった。
421創る名無しに見る名無し:2010/07/01(木) 23:41:06 ID:OIZsgnmy
 
422◇Y0KPA0n3C.氏代理投下:2010/07/01(木) 23:44:38 ID:6EJlukYc
「さっきの問題……答えは何なの?」

目を堅くつぶったオインゴの耳に声が飛び込んでくる。とてつもなく場違いに思えた。
うっすらと目を開くと視界いっぱいにエシディシの掌が映っていた。だがエシディシの目線はこちらに向いていない。
オインゴの隣に立つ早人はいつのまにかオインゴから離れ、エシディシをにらみつけていた。

エシディシがうっすらと笑う。
依然オインゴの顔を握りつぶそうとしたまま早人に言葉を返す。

「さっきの問題というと?」
「人間と動物の違いは? っていう問題のことだよ。人間が人間であることの証明は? とも言ってた、あれ。
 結局答えないから……少し気になったんだ…………」
「そうだな……逆に俺はそれが知りたくてこうしている。この答えでは駄目か?」
「駄目だね。少なくとも僕からしたらお前は考えるのをやめてるように思える。
 脅迫に近い形で答えを出そうなんて形がそもそも間違ってるんだ。本当に答えが知りたいなら……僕だったらそんなことはしない」

なんだか雲行きが怪しくなってきた。オインゴは今度こそしっかりと目を開き早人のほうを向く。
怪物を前に一歩も引かない早人。実験結果を楽しそうに分析するエシディシ。
オインゴを蚊帳の外にし二人の話は続く。早人が挑むような口調で言葉を口にする。

「あんたは人間を知りたいと思いながら人間を殺してる。すっごい矛盾だ。僕はそれが気になる。
 もしかしたらあんたは人間を恐れてるんじゃないか……? 敬意を表するだとか人間の底力が知りたいだとか言ってるけどあんたは心の底でどっか不安を抱えてるんじゃないか?」
「ククク……このエシディシ、かれこれ10000年ほど生きてるがこれほど俺をなめきった小僧は貴様が初めてだ……
 そもそも俺は『人間か動物かどうか』などどうでもいいのだ。ただ人間の底力、それだけは認めているがなァ」
「……」
「だがこの俺が人間を恐れる? 人間が俺を超える? 下らんなァ…下らんなァアアーーーーッ!
 いいか、小僧ッ! 頂点に立つのは俺だッ! このエシディシだッ! もはや太陽も克服した! スタンドも手に入れたッ!
 力、スピード、戦闘技術! 不死身、不老不死、スタンドパワー! そんな俺が食糧以下の人間を恐れることなど……なかろうがァーーーーーッ!!」
「いいや、違うね。少なくとも僕は知ってる。あんたを跡形もなく粉みじんにできるスタンド使いを僕は一人知ってる」
「何?」
「俺も一人ほど心当たりがあるね……」

オインゴは恐怖も変身していることも忘れそう付け加えた。
今の今まで死ぬ覚悟をしていたのがうそのようだ。隣に立つ早人が頼もしい。
エシディシに向かって満面の笑みを浮かべてやる。正直ひきつらずにやれたかどうか、自信はないが。
それでもオインゴは口を開いた。隣に立つ早人もエシディシに向かって啖呵を切る。

「その方はまぎれもなく地上最強だ……。あんたと違って恐怖だの尊敬だのそんな感情すら抱かない。
 ぶっちぎり自分がトップだと信じてるお方だ。少なくともあんたとは引けを取らない……
 いや、それ以上だと俺は思ってるぜ」
「そいつはものすごく『人間らしい』やつだよ……平穏な生活を第一にして植物のような生き方を望んでる。
 能力はあるくせにそれを他人に見せようなんてことはしない。それを見せるときはあいつが誰かを『殺した』後だからね」
423◇Y0KPA0n3C.氏代理投下:2010/07/01(木) 23:46:40 ID:6EJlukYc
エシディシは黙って二人を見ている。さっきとまでは打って変わってその顔には余裕が見てとれない。
青筋がピクピクしているのがわかった。だがなぜかそれが愉快に思える。
今度こそ心の底からオインゴは笑った。おかしかった。史上最強と言いながら必死で人間を駆逐するエシディシに親近感が持てた。
早人が叫ぶ。

「これからあんたは僕たちを殺す。でもあんたは自分が自分が思った通り強いものなんかじゃない。
 荒木の掌に転がされ、その中で必死で叫んでる井の中の蛙だ! 自分より強い存在なんかいない、そう言い張ってるくせに自分より強い存在はここにはいるんだ!」

エシディシが一歩だけ近づいてきた。オインゴの顔から手を離すとそのままその腕を振り上げた。

「お前は馬鹿丸出しだッ! あの世でお前が来るのを楽しみに待っててやるぞッ!」

早人の叫びが住宅街に響いた。そしてエシディシが腕を振る。
何かが砕けるような音がその後に続いて聞こえた気がした。

















たった今、ほんの少し前まで男と二人がいたところに視線を向ける。
電柱が丸丸一本折れ、地面には直径1メートルほどのクレーター。
改めて考えるとゾッとする話だ。今になってもオインゴは自分が助かったことが信じられない。
424創る名無しに見る名無し:2010/07/01(木) 23:47:06 ID:OIZsgnmy
 
425◇Y0KPA0n3C.氏代理投下:2010/07/01(木) 23:48:00 ID:6EJlukYc
荒れる息を整える。呼吸と鼓動が生きてることを実感させてくれる。
冷えた体、乾いた汗が急激に体温を奪っていく。このままいたら風邪をひいてしまう、そう思ってオインゴは立ち上がった。

さっき自分はこう思った。のんびりしすぎたかねェ、と。
だが一休みしないととてもじゃないが動けそうにない。休んだばかりだというのにひどく疲れたように思えた。

重い体を引きづり、近くの民家に倒れこむように入る。
また引き籠りか、自分よりちっさいガキが元気に走り回ってるっていうのに……。そう思うとひどく情けない。
オインゴはリビングに入ると窓越しに川尻早人が去って行った方向を見る。

短い付き合いだった。いずれ優勝するならば早人は殺すべき存在だ。
だというのにオインゴはなぜだが少しだけ死んでほしくないと思った。少なくとも自分では殺したくないと思った。
そこまで考えて、オインゴはソファーに倒れこむ。目をつぶるとたちまち眠気に襲われた。

「ああ、そうか……」

ゴロンと仰向けになる。ちょうど窓から月が見えた。きれいな満月だった。

「俺はお前に、ボインゴに、あいつみたいに立派になってほしいんだなァ……」

ちっぴりセンチメンタルな気分になるオインゴだった。





【F-4 中央の民家/1日目 夜】
【オインゴ】
[スタンド]:『クヌム神』
[時間軸]:JC21巻 ポルナレフからティッシュを受け取り、走り出した直後
[状態]:身体的疲労(小)、精神的疲労(小)
[装備]:首輪探知機、承太郎が徐倫に送ったロケット
[道具]:基本支給品×2(食糧をいくらか消費:残りはペットボトルの水1本、パン1個)
    青酸カリ、学ラン、ミキタカの胃腸薬、潜水艦
[思考・状況] 基本行動方針:積極的に優勝を目指すつもりはないが、変身能力を活かして生き残りたい。
0.疲れた……
1.ひとまず情報収集の為、他人と接触したい。
2.他人の顔を使って悪評を振り撒こうかなぁ〜。できれば青酸カリで集団に不和を起こしたい。
3.潜水艦はある程度使うが、引きこもる事は危険なのでもうしない。

[備考]
※顔さえ知っていれば誰にでも変身できます。スタンドの制限は特にありません。
※承太郎、億泰、露伴、ウェストウッド、テレンス、シーザー、ジョージ、グェス、ホルマジオの顔は再現できます。
※エルメェス、マライア、ンドゥール、ツェペリ、康一、ワムウ、リサリサの死体を発見しました。
 しかし死体の状態が結構ひどいので顔や姿形をを完全に再現できるかどうかは不明です。
※億泰の味方、敵対人物の名前を知っています。






426創る名無しに見る名無し:2010/07/01(木) 23:55:32 ID:OIZsgnmy
 
427◇Y0KPA0n3C.氏代理投下:2010/07/02(金) 00:02:43 ID:6EJlukYc
「ハァハァハァハァ…………!」

もつれる足で必死に走るも目的の人物は見えてこない。一度立ち止まると早人は流れ落ちる汗をぬぐった。
右足がひどく痛む。当然だろう、無理矢理くっつけたものだ。
縫いつけた辺りを軽く叩いてみるがあまり効果はない気がする。
気休め程度にはなるだろうが根本的な解決にはならない。それでも痛みは僅かにひいた気がする。

足の持ち主のことを少し思い出した早人だったが、呼吸が整ったのをきっかけにまた走り出す。
とにかく走らないければならない。でなければあの化け物には到底追いつけない。

吉良吉影という利用相手を見つけるのはなかなか難しい。
植物のように平穏な生活を望む。彼はきっとここ、殺し合いの舞台でもそんな心情を大切にしているだろう
だからこそ、このチャンスを逃すわけにはいかない。
エシディシという巨大な力、これを逃すわけにはいかないのだ。これを逃したら次はない。

具体的な策があるわけではない。ただあの時エシディシが自分を見逃した幸運を逃したくない。
彼は言っていた、人間に興味があると。必死になって抗う人間が見たいと。

ならばそれは自分なのではないか?
今の自分ほど必死な人間はいないだろう。いるかどうかもわからない敵討ち。
冷静に考えれば途方もなく馬鹿馬鹿しい。だがそれでも、それだからこそ早人は必死でいられた。

少し走ると十字路に出た。辺りを見渡すも大男の影は見当たらない。
見失ってしまったのかだろうか、ゆっくりと早人の中で失望が広がっていく。
思わずその場に崩れ落ちる。込み上げる何かに任せ、地面に拳を叩きつける。

今の自分は無力だ。
スタンドもない、武器もない。それどころか満足に走ることもできない。

「くそ……くそォ……!」

死ぬことは免れた。でもそれだけだ、死んだまま生きていたって何の意味があるのだろう?
込み上げる悔しさ、湧き上がる失望。
早人は拳を振り上げては叩きつける。何度も何度も、そうやって振り上げては叩き下ろす。
そんなことしても何も変わらない。そんなことをせずに自分にはすべきことがあるはず。
ただわかっていってもそうするほかなかった。拳が真っ赤に染まり始めてもその動きをやめなかった。
428◇Y0KPA0n3C.氏代理投下:2010/07/02(金) 00:03:45 ID:7ALfBxrD
早人は呪った。
スタンド使いになれなかった自分を。力を手に入れることができなかった自分の運命を。
静まり返った町に叫び声が響く。その声は悲痛で、虚しいものだった。



だが早人は気づいていなかった。そんな早人を見つめる男が一人いることに気付かなかった。
二階建ての民家の屋根によじ登り、エシディシは一人息を吐く。
顎に手をやるとふむ、とぽつりと唸る。視線の先には早人がいる。

「荒木の掌……か」

あの時何で二人を殺さなかったのか。理由は単純だ、気が変わったのだ。
激情に身を任せて二人を殺すのは簡単だ。エシディシにとって虫をひねりつぶすより容易い作業だ。
だが腕を振りかぶった時、思い出した。激昂してトチ狂ったところでなんもおもしろくない。
それよりこの二人だ……こいつらは見込みがある。

このエシディシ相手に見えを切った人間たち……死ぬ間際だったというのに彼らの目は死んでいなかった。
特にこの小僧はそうだった。あの男、ティッツァーノのように、どこまでもどす黒い目をしていた。

「俺に足りないのは……あれかもしれぬ」

緊張感、自分が死ぬかもしれぬという生き物の原点。
殺意、生き残るため相手を踏みにじるという行為。
波紋と一緒だ、とエシディシは唇をかみしめる。宿敵波紋使いは一点集中によって最大の威力を誇っていた。

「結局貴様ら人間か……」

ゆっくりと腰をおろし屋根の上で胡坐をかく。
この後自分がどうするか、時間はたっぷりある。焦る必要もない、ゆっくり考え成長すればいいだろう。
だというのにエシディシの目つきはどこまでも鋭い。
なにを考え、なにを見つめているのか。そしてこれから何を見ていくのか。
それはエシディシにもわからなかった。
429創る名無しに見る名無し:2010/07/02(金) 00:04:09 ID:PxA+dYrm
 
430◇Y0KPA0n3C.氏代理投下:2010/07/02(金) 00:04:49 ID:7ALfBxrD
【F-4 南部/1日目 夜】
【川尻早人】
[時間軸]:吉良吉影撃破後
[状態]:精神疲労(大)、身体疲労(中)、腹部と背中にダメージ大(応急手当済)、上半身ダメージ、右手人差し指欠損、
    漆黒の意思、殺意の炎
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×2、鳩のレターセット、メサイアのDISC、ヴァニラの不明支給品×1(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:荒木を倒したい。吉良吉影を殺す。殺し合いにはのらないけど、乗ってる参加者は仕方ない。
0.くそォ……
1.吉良吉影を脅し、ウェザーの仇をとるのを手伝わせる。とりあえず吉良を探す。
2.吉良吉影を殺す。邪魔をするような奴がいたらそいつも・・・
3.荒木の能力を解明したい
[備考]
※吉良吉影を最大限警戒、またエンポリオの情報によりディオ、プッチ神父も警戒しています。
※ゾンビ馬によって右足はくっついていますが、他人の足なので一日たてば取れてしまう可能性があります。
 歩いたり、走ったりすることはできるようです。
※ある程度ジョセフたちと情報交換しましたが、三人を完全に信用していないので吉良吉影について話していません。
 ジョセフも本人かどうか半信半疑なので仗助について話していません。
※第二回放送をほとんど聞いていません。「承太郎の名前が呼ばれた気がする」程度です。


【エシディシ】
[時間軸]:JC9巻、ジョセフの“糸の結界”を切断した瞬間
[状態]:人間の強さを認めた
[装備]:『イエローテンパランス』のスタンドDISC
[道具]:支給品一式×2、『ジョースター家とそのルーツ』リスト(JOJO3部〜6部コミックスの最初に載ってるあれ)
    不明支給品0〜2(確認済み)、岸辺露伴のサイン、少年ジャンプ(ピンクダークの少年、巻頭カラー)、ブラックモアの傘
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに優勝し、全生物の頂点にッ!
0.???
1.南で参加者を殺して回る
2.億泰には感謝せねばなるまい。
3.常識は捨てる必要があると認識
4.ドナテロ・ヴェルサスを殺す際にメッセージを伝える。ヴェルサスの『進化』(真価)に期待
[備考]
※時代を越えて参加者が集められていると考えています。
※スタンドが誰にでも見えると言う制限に気付きました 。彼らはその制限の秘密が首輪か会場そのものにあると推測しています
※『ジョースター家とそのルーツ』リストには顔写真は載ってません。
※『イエローテンパランス』の変装能力で他者の顔を模することができます
※頭部を強打されればDISCが外れるかもしれません。
※この後どこに向かうかは次の書き手にお任せします。
※イエローテンパランスはまだ完全にコントロールできてません。また具体的な疲労度などは後続の書き手さまにお任せします。

798 名前:Close to you ― 遥かなる『夢』を掲げて     ◆Y0KPA0n3C.[sage] 投稿日:2010/06/29(火) 00:35:04 ID:???
投下終了です。
矛盾点、おかしな点、誤字脱字その他なにかありましたら指摘ください。
予約オーバーに関して温かく見守ってくださったすべての方に感謝です。
431◇Y0KPA0n3C.氏代理投下:2010/07/02(金) 00:05:45 ID:7ALfBxrD
代理投下完了です。
支援ありがとうございました!

感想は後ほど申し上げたいと思います。
432創る名無しに見る名無し:2010/07/03(土) 00:25:45 ID:1ACuYR2F
投下乙です!
相変わらず早人はすごいな!
433創る名無しに見る名無し:2010/07/04(日) 02:41:56 ID:gINYDmlx
ファニー・バレンタイン大統領「ジョースターの決闘を調べねば……」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1274706446/

このスレどう思う?黒歴史だよなw
434創る名無しに見る名無し:2010/07/07(水) 00:20:18 ID:XGipGaaa
そっとしといてあげようよ
435 ◆gY6Wt/okCo :2010/07/10(土) 21:04:38 ID:ySGchkCx
グェス、ホルマジオ
本投下開始します
436親指姫 ◆gY6Wt/okCo :2010/07/10(土) 21:07:40 ID:ySGchkCx
……と思ったら鳥がちがうorz
携帯からだと変わってしまうようです。

と言うわけでどなたか代理をお願いします。
437親指姫 ◇yxYaCUyrzc(代理):2010/07/10(土) 23:04:26 ID:QqFpKMsk
ミスタの死にはさすがに驚いた。だが、それも一瞬。いずれ自分たちが追うべき相手だったのだから悲しみもない。
その他、ティッツァーノやチョコラータの死も、情報源がなくなったという意味でのみ残念に思ったが、だがそれだけであった。
更に四箇所増えた禁止エリアを地図に書き加えるとホルマジオはゆっくりと立ち上がり、再びグェスを見降ろす。
そして数分、今に至るが――目の前、と言うよりは足元にいるグェスも随分と落ち着きを取り戻したかのようだった。
万年筆はもう彼女の泥と涙で汚れた頬から遠ざけた。叫ばれても困る。

「知りあいは死んでませんでした、ってな表情だなァ」

暫く待っても返事はないがこの事は問題ではない。ホルマジオ自身も立場が逆なら黙殺していただろう。
だがしかし、今は状況が状況であり、ここでやるべきは情報を吐かせる事。認める訳にはいかない。

「そして……そうならさっさとお前さんの知ってる情報を教えな。
 嘘がねぇと納得できたなら俺の方からも情報を出してやっても構わねぇからよ」
――と、まずは穏やかに。情報はあくまで『吐かせ』るけれども『拷問する』必要がなければそれに越したことはない。

「……さっきあれだけ万年筆グイグイやられた奴に馴れ馴れしく話せるかよォ……」
「もっともだ、が……それでも話してもらうぜ。それともやっぱり万年筆グリグリされてねぇとキモチヨクお話しできませんってか?」
少々の脅しを加える。細々と答えたグェスの目に一瞬恐怖の色が浮かぶ。
「そんな訳あるかよッ!」
「しょうがねぇなー。だったら話せること話しな。聞いてやろうじゃあねぇか……ッ」

少々の沈黙。言葉を選びながらグェスはポツリポツリと話し始めた。

「情報ったってよォ〜……アタシの名前がグェスで、アメリカの水族館の囚人でェ……」
だが、このセリフ――と言うより態度、あからさまに時間を稼いでいる。
「大事なのはそんなこっちゃあねェだろ…(後でどっち道聞くけどな)…重要なのはここに来てからだろうが」
「アタシはよ……友達もいなくて、一人ぼっちで寂しくて……死にたくなかったんだよ」
「だからよォ〜、ここに来てから誰に会ってどうし……てッ!?」

ほんの十数秒でホルマジオの身体は衣類や荷物ごと『超像可動のフィギュアのように』縮んでいた。
ハッと驚くホルマジオを地面からかっさらい顔の前まで持ち上げて言葉を続けるグェス。
その顔は泣き笑いとも怒りとも違う、何とも形容しがたい表情になっていた。
「だから言ってんだろ。アタシゃ死にたくねぇんだよ。って事はだ……アタシをぶっ殺そうとしている奴らを返り討ちにする他ねぇだろッ!」
「誰がお前をぶっ殺そうとしてるって?」
涙が零れる目の前の大きい顔をぼんやりと眺めながら尋ねるホルマジオの方はいたって冷静だった。
まるでチームの、そして未だこの地に健在の、あのマンモーニが“兄貴”にすがりついている日常の光景がグェスに重なった。
そして……先ほどまでの迷っていた自分自身を見ているような気分でもあった。
「全員だよ、ぜ・ん・い・ん・ッ!みんなみんな狂っていやがるッ……だからアタシも狂って殺す。ドイツもコイツも狂人だッ!」


「―――違うな」


438親指姫 ◇yxYaCUyrzc(代理):2010/07/10(土) 23:09:30 ID:QqFpKMsk
一言だけ、しかしハッキリとそう言ったホルマジオにグェスの怒りは爆発した。
「はぁア!?何が違うってんだッ?言ってみろよ!アタシのどこが間違ってんだ!!どうせお前だってアタシをころ」

「落ち着け。『違う』のは『能力』だ」

言葉を切ったホルマジオのセリフはグェスに次の一言を躊躇わせた。
時間にすればほんの一瞬。だがその間にホルマジオはグェスの手を抜けだしていた。もがいた訳でもスタンドを発現した訳でもない。むしろ『解除』して抜け出したのだ。
その身長は本来のそれから十数センチ小さいが、それでも小柄なグェスの身長よりははるかに大きく見える。
そして……一瞬で大きくなったホルマジオを握り締め続ける事が出来ず、グェスの指は本来曲がるべき方向とは逆方向に開いていた。
そんな自分の右手を見たグェスは大声を出す事はなかったものの、その激痛に顔を歪める。一方のホルマジオはそれを全く気にしていない様子である。
「俺の場合……自分自身をも小さくできる。気付かなかったようだな」
多くは口に出さなかったが、グェスはそれを感じ取ったようだった。己の能力を過信し、ホルマジオが縮んでいく時間を気に留めなかったのだ。
そして、その言葉を待っていたかのように今度はグェスの方が――グェスの『衣服が』縮んでいった。
「そして……まさか『拳で触れ』ずに発現できる能力だってのには少し驚いたが。
 さて、そのパッツンパッツンな服で身動き取れねえだろうが聞いて貰うぜ」
右手の激痛と、グイグイと締め付けられる服に耐えきれず膝をつくグェスの襟首を掴み、先ほど自分がされたかのように無理やりその面を持ち上げる。
「そして――いいか、違うなと言ったのはもうひとつだ……テメェは甘ったれてんだよ!おい目を逸らすなッ!」
ヒッと小さく息をもらすグェスの目を見据えて言葉を続ける。
「死にたくないだと?そりゃあもっともな意見だろうよ。俺だってそうだ、誰だって好き好んで死にたかぁねぇんだよッ!

 違うだろ!『死にたくない』んじゃあなくて『生きたい』んだろうがッ!違うか!クソッタレッ!」


その言葉に目を見開き、その淵から涙がボロボロと零れ出す。そんなグェスにお構いなしに握っている手をグイグイと揺さぶる。
「普段はこんな事ァ言わねぇ。だが、しょうがねぇな……この際だから言ってやろう。
 俺だって一瞬はゲームに優勝する事を考えた。だがそれは違うッ!そんなのはクズのやる事だ!
 いいか、俺にはチームの仲間がいる。そいつらと協力して…(本当は殺った後に言うべきセリフだが)…荒木の野郎をぶっ殺してやるのさ!」
「……アタシには仲間ってのが」
「そう言う事を言ってるんじゃあねえッ!自分がこの場で『何をするのか』って話だろうが!
 『死にたくなくて』最後まで生きてどうすんだ?『生きたくて』生きる方が万倍マシだろうと気付けッ」
グェスは答えなかった。その目は怯えているようにも怒っているようにも、そして悲しんでいるようにも見えた。

「だが……それでも、それでも狂って殺して回るって言うんなら」

襟首から手を離す。同時に能力も解除。グェスの呼吸が落ち着くまで待ち、そして改めて目の前に立ちふさがる。


「俺がテメェの根性叩き直してやる。――かかってきな」


* * * * *


439親指姫 ◇yxYaCUyrzc(代理):2010/07/10(土) 23:13:24 ID:QqFpKMsk
「――以上で全てか?」

「ああ……大した情報がなくて」

「謝る事じゃあねえ。フーゴの野郎の話が聞けただけでも俺としちゃあ十分だ。
 で、オメーは花京院とやらに詫び入れに行くのか?」

「いや……確かにいずれ会いたいけど、今行っても何話したらいいか分かんねぇよ」

「じゃあ俺の目的に付き合いな。これから――ナチス研究所に向かう」

「なんで?」

「『勘』だな。俺のチームのリーダーは頭イイからな。そういうところにいそうだ。
 コレの解除の事もある。オマエさんがサンプルを持ったままいてくれればよかったんだが……まあしょうがねえ」

「ごめ……いや、スイマセン。アタシも随分錯乱してて……
 で、行くのは良いにしても随分距離があるぜ……アタシは不安だよ」

「不安だ?ったく、まだンな事言ってんのか!?こんな地図にも載ってないような民家で怯えてゲーム終了まで待つのがイイって言うのか?」

「ごめん、ごめんよ。ただほら、ゲームに乗ったヤツらだってウヨウヨいるだろうし……」

「ふぅ……しょおぉがねえぇなァ〜。こう言うセリフ吐くのは俺のキャラじゃあねえと思うんだがなぁ、この際だからもういっぺん言ってやる。
 良いかッ 大切なのは決意だ。あの荒木のヤローの手の上で踊らされようが何されようが最後は俺たちが勝つッ!っていう固い決意だ。

 何がどうあろうとそれだけは忘れるなよ……『栄光』を掴むためにな」


ホルマジオには彼女を守りたいとか、女だからとか、そういう気持ちは決してない。
ただ、話を聞いている内になおさら過去の自分を見ているような気持になり放っておけなくなってしまったのだ。
だからこそ、普段自分が、いや……おそらく正義感の塊のような人間でさえ口にしないようなセリフを吐いてまで彼女を説得したのだ。

グェスには生き伸びる方法だとか、花京院に会った時の事とか、そういう答えは見つけられなかった。
ただ、目の前のギャングが自分の事を『怒ってくれた』という事実に対して不思議な感謝の気持ちを持っていた。
守ってもらったのでも諭されたのでもない。『怒られた』事が自分に答えを導いてくれそうな気がしてならないのだ。



――彼らの能力は、多くのスタンド使いから見たら『くだらねー能力』かも知れない。
  だが、『くだる』『くだらねー』という比較はまったくの無意味である。
  スタンド能力には得手、不得手があるし、頭の使いようでは無敵の能力になる事もありうる。そして何よりも……
  それは『心の力』によって成り立っているものなのだから。
  彼らの出会いはその心にどのような化学変化をもたらすのか。それは誰にもわからない。


440親指姫 ◇yxYaCUyrzc(代理):2010/07/10(土) 23:16:43 ID:QqFpKMsk
【チーム・ザ・リトル 結成】

【G-5 ポンペイ遺跡付近の民家/1日目 夜】


【グェス】
【時間軸】:脱獄に失敗し徐倫にボコられた後
【状態】:精神消耗(中程度まで回復)、疲労(ほぼ無し)、頬の腫れ(引いてきた)、両腕・右手指にダメージ(応急手当済。右手指の具体的症状(骨折?脱臼?)は不明)
【装備】:なし
【道具】:なし
【思考・状況】基本行動方針:ゲームに乗った? → 生きたい、生きていたい
0.とりあえずホルマジオに従い、ナチス研究所に向かう。
1.なんでこの男はアタシの事を怒ってくれたんだろう……?
2.研究所に行くのは良いけど随分遠くない?ちょっと不安だよォ……
【備考】
※フーゴが花京院に話した話を一部始終を聞きました。
※ダービーズアイランドを見ましたが、そこに何かがあるとは思ってません。→ダービーズアイランドが遠巻きに見た島だとは分かっていません。
※馬はE-5繁華街を彷徨っていると思われます。
※悲しみによる錯乱が随分と落ち着き、今のところ『ゲームに乗る』と言う発想は消えています。が……今後どうなるかは不明です。
※ホルマジオの持っている情報(チームの存在、行動の目的など)を聞きました。


【首輪について】
※グェスが持っていた首輪は、ウィル・A・ツェペリ、ンドゥール、広瀬康一、ワムウの物です。
 (現在、ワムウの首環は金属部分の一部が壊れていますが、頭につながる第二の爆弾は配線ごとくっついたままです。
  中身が全て外に出されています、そして、信管と、爆弾の半分が無い状態です。)
※グェスは、首輪が付けていた本人が死亡すれば、何をしても爆発しないという事と、首輪の火力を知りました。
※首輪についている爆薬は、人一人を余裕で爆死させられる量みたいです。
 グェスは「もし、誰かの首輪が爆発したら周りの人間も危険な火力」と判断しました。
 (ただし、首輪から取り出して爆破したからこの火力なのか ワムウの首輪だからこの火力なのかは不明です。)
※謎の機械はおそらく盗聴器、GPSだと思われますが、グェスは気づいていません。



【ホルマジオ】
[時間軸]:ナランチャ追跡の為車に潜んでいた時。
[状態]:カビに食われた傷(応急処置済)、精神的疲労(小)、肉体的疲労(ほぼ回復)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、万年筆、ローストビーフサンドイッチ、不明支給品×3(未確認)
[思考・状況]
基本行動方針:荒木を『ぶっ殺す』!
0:踊ってやるぜ、荒木。てめえの用意した舞台でな。だが最後は必ず俺らが勝つ。
1:仲間達と合流。ナチス研究所に誰もいなかった場合は未定。
2:とりあえずグェスから情報を引き出したのでナチス研究所に向かう。グェスの同行も許すつもりである。
3:ボスの正体を突き止め、殺す。自由になってみせる。
4:ディアボロはボスの親衛隊の可能性アリ。チャンスがあれば『拷問』してみせる。
5:ティッツァーノ、チョコラータの二名が死んだのでボスの情報は引き出せないか……
6:もしも仲間を攻撃するやつがいれば容赦はしない。
[備考]
※首輪も小さくなっています。首輪だけ大きくすることは…可能かもしれないけど、ねぇ?
※サーレーは名前だけは知っていますが顔は知りません。
※死者とか時代とかほざくジョセフは頭が少しおかしいと思っています。
※チョコラータの能力をかなり細かい部分まで把握しました。
※グェスの持っている情報(ロワイアルに巻き込まれてから現在までの行動、首輪に関する情報など)を聞き出しました。
441名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 23:18:40 ID:QqFpKMsk
以上で投下終了です。
「親指姫」のタイトルを考えてくださった方ありがとうございました。採用させていただきました。
でもタイトルは“姫”ですが結局グェスは小さくなりませんでした。小さくなったのはホルマジオの方でしたァぁぁぁw

書いてる内にホルマジオがキャラ崩壊して『きれいなホルマジオ』になってしまった。。
その点を補うために『 』や謎の比喩(主に超像可動だがw)を多用してジョジョっぽくまとめてみました。

仮投下時の指摘は直させていただきました。加えてグェスの状態表での「右手指のダメージ」を少々改変しました。

久々の投下ですので文章の問題や矛盾点、誤字脱字等まだまだあるようでしたら報告をお願いいたします。
442名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/10(土) 23:21:04 ID:QqFpKMsk
代理投下&新スレ建て完了

感想は新スレでのちほどにhttp://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1278771448/l50
443名無しさん@そうだ選挙に行こう
投下乙!