クロスオーバー小説創作スレ3

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1創る名無しに見る名無し
ともかく何かと何かをクロスさせてみるスレ。

せっかくの創作版ですから、冒険的クロスでも堅実なクロスでもお好みで自由にどうぞ。

前スレ
クロスオーバー小説創作スレ2
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1261578197/
2創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 02:22:22 ID:Z0Tu0UsC
スレ立乙です。ひきつづきしえーん
3ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/02/11(木) 02:22:51 ID:COvQKH07
何とか体勢だけでも立てなおそうと必死にもがきながら先程のミスを悔やむ。
完全にカウンターとして決まってしまいドラゴンフォームの機動力が仇となった、いっそのこと妨害など考えず防御力に富んだ紫のクウガ・タイタンフォームによる防御を選択すべきだったろう。

(けど、さっきの血は……?)

こちらの攻撃が当たる寸前、土御門の口から血が流れ出ていたことを思い出す。
自分の攻撃は一発肘を砕いたのみだ、吐血するような怪我ではないはず。
傍にあったトライチェイサーに掴まって何とか立ち上がり、土御門へと視線を向けると先程と変わらぬ様子で悠然と立っていた。

「今のは聞いたんじゃないか? 大人しくしてくれるとこっちとしても助かるんだがな」

口元に血の跡はない、拭い去ったのだろうか。
しかしこの状況はまずい、相手はまだ戦えるようだが、こちらはダメージが大きすぎる。
白のクウガでも常人よりは強い力を持つが、この相手と戦うには心もとないと言わざるを得ない。

一方で土御門も動きが取れないでいた。
学園都市の能力者は魔術を扱うことができない、それは能力開発のために無理矢理変化させられた脳の回路で魔術を使おうとすると強い過負荷がかかり、肉体へのダメージとなって現れるからだ。
土御門元春は元々魔術師としての実力者であったが、ある事情から学園都市へと潜り込み能力開発のカリキュラムを受けることとなった。
その際今まで使ってきた魔術を使おうとすると体の内側を破壊してしまうことになる、つい先ほどのユウスケへの攻撃のように。
能力開発によって得たレベル0の力、肉体再生【オートリバース】によってある程度はそのダメージに耐えられはするが所詮レベル0、すぐにダメージが回復するなんてことはなく、精々が薄い膜を作って破れた血管を覆う程度のものである。
つまりは両者共、相手を追い詰めておきながら手詰まりの状態なのだ。
どうするかただ相手の出方を待ち……先に変化が起きたのは土御門の方だった。

「……仲間か」

苦々しい口調で吐き捨てる。
その言葉にユウスケが隣を見ると、いつの間に現れたのかディエンドの姿をした海東が立っていた。

「助けに来てくれたのか!?」
「うん? まあ、そういうことになるのかな、僕らは仲間、だからね」

上条達から逃げてる途中で偶然この場面に遭遇しただけなのだが、そこは黙っておく。

「だけどこれ以上騒ぎを大きくすると流石に危険だね、ここは一回退却しよう」
「……わかった」

さり気なく自分の戦闘による影響もユウスケに押し付け、トライチェイサーを動かす準備を取らせる。
そうはさせじと土御門が無理に動こうとするが、足元に銃弾を撃ち込まれ接近ができない。

「それじゃ、さよならだ」

『ATTACK RIDE INVISIBLE!』

海東は再度撤退用のカードを発動させ、ユウスケもトライチェイサーを発進してその場から去る。
土御門はしばらく辺りを警戒し――その場に倒れ伏した。

(あーくそ、流石にシンドイぜよ……
 人払いの魔術の気配があったけど、カミやんの方は大丈夫かにゃー?
 左手は……動きそうにないな、とにかく内蔵に集中するか……)

朦朧とする意識の中、冷静に状況を確認していく。
そして考えるのは先程戦った青年のこと。

(破壊者じゃない、か。
 流石にそのまんま本人の言葉を信じるほど土御門さんはお人好しじゃないけどにゃー。
 でも、少しばかり……調べて、みる価値………は、あり……そう、だ、ぜよ……)

第二話 END

NEXT STORY「混ざりゆく世界」
4ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/02/11(木) 02:23:36 ID:COvQKH07
以上で投下終了です。
スレ容量見てなくて申し訳ない。

支援してくださった方々ありがとうござした。
5創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 02:32:17 ID:Z0Tu0UsC
おつかれさまです。
入り乱れる関係者達w交互に展開されるバトル楽しませてもらいました。
イノケンティウスとガチでやりあうFLAかっこよす。

上条さんの右手はアタックライドにも有効かーw
6創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 02:33:57 ID:8zcXUKJu
投下乙です。
上条さんがいつも通りで安心した。
海東、インデックツさんを盗んだらそれははんざいです
そして、土御門つええな。それともユウスケが弱かったのか?

あとついでにwikiのリンクも置いてみる。
http://www31.atwiki.jp/crossnovel/pages/1.html
7創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 22:23:49 ID:W8GyJvTq
投下乙です。
海東さん、まさに外道! 
まぁ基本、お宝意外にひどいもんねあの人!w
そしてユウスケはここでも不遇な……w
あと姫神さんシーン挿入は卑怯ですw

8ハルヒ×ブギーポップ  ◆C8Pty1P2YVzw :2010/02/11(木) 22:50:57 ID:W8GyJvTq
お知らせ
本作は一応"消失"後ですが、時間軸がこちらのミスにより12月初旬となっています。
ということであとでちょっとwiki収録された第一話の冒頭を
12月中旬から1月中旬ごろになるよう、修正しておきます。

遅ればせながら注意。
・本作はライトノベル『涼宮ハルヒの憂鬱』と『ブギーポップは笑わない』のクロスオーバーです。
・ハルヒは一応消失後、ブギーポップは歪曲王後となっています。
・細かい矛盾が多々出てきます。突っ込むか、ガン無視するかはあなた次第。
・TVアニメ版のOPとEDはどちらも名曲。

では第二話をどうぞ。
9ハルヒ×ブギーポップ  ◆C8Pty1P2YVzw :2010/02/11(木) 22:51:55 ID:W8GyJvTq


 人は目の前しか見えていないと言うのは間違いだ。人は目の前すら見えてはいない。

―――霧間誠一「人が人を殺すとき」



   涼宮ハルヒの死神〜ブギーポップ・レイトケース


       #2 不気味な泡の影




週末は憎たらしいぐらいの快晴だった。
だが朝一のニュースキャスターは残酷にもこの冬一番の冷え込みであると喧伝。
その言葉にウソ偽りはなく、誰も頼んでいないのにやってきた寒気は、上着がまるで意味をなさないかのように通過してしまう。
この寒空の中、町中を練り歩かんといかんのか……
そう考えていたのだが、今、俺はエアコンの効いた部屋でくつろいでいる。

何故、俺がこうしているか……ということに大した理由はない。
回想、スタート。


◆◇◆◇◆


「遅い!」

いつもより少し早めに出たはずの俺を待っていたのは怒り顔のハルヒと、すでに勢ぞろいしているSOS団の面々だった。
ハルヒは阿修羅像が裸足で逃げ出しそうな怒り顔で、形のいい眉を吊り上げている。

って言ってもな、俺は待ち合わせ自体には遅刻してないぞ。

「みんなより遅く来た時点で遅刻よ!
 だってアンタはSOS団の中でも一番の下っぱなんだもの!」

はいはい、そう言うと思ってたよ。
んで、今日はどうするんだ?

「そうね……今日は二手に別れて探しましょ」

おっと、珍しいな。
ここ最近は5人一組で行動することが多かったから、今日もそうするもんだとてっきり思っていたのだが。

「だってブギーポップに対して私たちは何も情報を得てないもの。
 だったら手分けしたほうが効率がいいでしょ?
 と、いうわけで――」

その手に握られたのはこれまた懐かしい5本の爪楊枝。
即席の籤をこちらに突きだしながら、ハルヒは不適な笑みを浮かべた。

「さぁ、引きなさい、キョン!」
10ハルヒ×ブギーポップ  ◆C8Pty1P2YVzw :2010/02/11(木) 22:53:24 ID:W8GyJvTq

◆◇◆◇◆

……以上で回想は終わりだ。
な、大したことはないだろ?
そしてくじ引きの結果、俺は長門と市内を散策することになったと言う訳さ。

そして俺が選んだのは、情報収集という方法だ。
何しろ敵(ブギーポップ)は正体不明の都市伝説。だったらまずするべきことは敵の正体を探ること。
この情報化社会では情報を制するものが、世界を制するんだよ。
そのために選んだのがここ、市立図書館というわけで――

「……なんてな」

もちろんそんなのは建前に決まっている。
普通に考えて図書館でそんなマイナーな都市伝説関連の情報が探せるか? もちろん探せないね。
もう病み上がりって訳じゃないが、とかく色々ありすぎて精神的疲労がピークなんだ。
これ以上物騒な出来事は正直御免こうむる。

だったら俺が取れる方法はただ一つ。
ハルヒの興味が尽きるまで、時間切れを狙うだけだ。
……せこいと言うなかれ。このくらいは処世術のうちとして扱って欲しい。
この案を長門に説明したところ、こくりと頷きを返した。
その意思表示は俺にとって願ったりかなったりだったわけで。
そしてその謝礼代わりもかねてここ――春先にも二人で訪れた市立図書館――にやってきたというわけだ。

そして今俺は暖房の良く効いた館内で心地よい眠気に誘われながら文庫本を手に時間をつぶしている。
ちらりと隣を伺えば同行者である長門がハードカバーの本をもくもくと読んでいる光景が伺える。
机の上に積まれた本は3冊。
タイトルはそれぞれ「"知らない"の増殖」、「天空へ至る病」、「ヴァーミリオン・キル」。
タイトルも装丁も共通点が見あたらない本だが、著者名はどれもが"霧間誠一"となっている。
その名前が昨日部室で読んでいた本の作者だと気づくのにさして時間はかからなかった。

「面白いか?」
「……発想がユニーク」
「好きなのか、その作家」
「わりと」

……どうやらかなり気に入っているらしい。
ふと、この件に関して長門が一言もコメントしていないことに気づく。

「長門。お前は何か知らないか。その……ブギーポップとやらに対して」
「――――――――――詳細不明。情報が少なすぎる」

しばらくの沈黙の後、帰ってきた返事は短い否定。
長門とはいえ万能ではない。
特にあの出来事以降、情報操作に自ら枷をはめている。
――普通の女子高生に近づこうとしているのだ。
そのことを俺は嬉しく思う。

だから『そうか』とだけ返し、視線を手元の文庫本に戻す。

「ただし――」

だが、視線をこちらに向け、口を開く。

「噂の拡大パターンが特異。誰かが意図的に流した噂の可能性がある」
11ハルヒ×ブギーポップ  ◆C8Pty1P2YVzw :2010/02/11(木) 22:54:34 ID:W8GyJvTq

そりゃ、ハルヒを狙ってるやつがいるってことか?
あの雪山での出来事と同じように。

「その可能性はゼロではない。
 統合情報思念体とのリンクが制限されている今、
 確定事項と断定できないが、――」

そこで一度言葉を切る。

「本事項を意図的なものと仮定した場合、干渉を行っているのは統合情報思念体と同レベルの存在である可能性が高い」

淡々と、事務的に告げられたその言葉が逆にことのスケールの大きさを感じさせた。
無機質、だがそれだけじゃない色を込めた瞳で俺をじっと見つめている。
この間の一件で長門はある程度の制限を設けた。
つまりこれが今の長門なりの精一杯なんだろう。
その精一杯で、大事な場所を、大事な仲間を守ろうとしている。
しかも行動に試行錯誤している感触を覚える。
その戸惑いが手探りで自分の未来を探しているようにみえて、知らず嬉しくなる。

「そうか、ありがとな。他に何か判ったら教えてくれ」

そう、俺も長門にばっかり押し付けはしないさ。
他の連中に比べれば少ないが、俺にだって出来ることの一つや二つぐらいあるのさ。きっとな。
それを判ってくれているのか、長門はこくり、と頷くだけで読みかけのハードカバーに視線を移す。
俺も長門に習い、再度手元の本に視線を戻そうとして、

「あれ……もしかして――君?」

突然、声をかけられた。
耳に飛び込んできたのは聞き慣れているはずなのに最近めっきり聞かない固有名詞。
悲しいことにそれは俺の本名というヤツだった。
ここ最近は妹まで愛称で呼ぶため、"キョン"という単語が文章中に出てくるだけで反応してしまうほどだ。(ありがたいことにそんなことは滅多にないが)
そんな最近レアになった呼び名をするとはいったい誰だろうか。
そう不可思議に思いつつ顔を上げると、そこには小柄な少女がいた。
さて、妹の知り合いにこんな子がいただろうか――ではなく、

「――先輩?」

一瞬マジで見間違えそうになったが、よくよく見れば懐かしい顔がそこにあった。
朝日奈さんや長門より小さい体に小学生と言っても通じるであろうあどけない童顔。
ついでに後頭部で二つに纏められた髪が彼女をより幼く見せているが、彼女はれっきとした年上である。なぜわかるかって?
そりゃ俺にとっては中学の頃の先輩だったからである。

彼女の名は新刻敬(にいとき けい)、という。
中学一年生の時、クラスメイト数名のブルータスばりの共謀により、委員という面倒くさいモノに関わった当時の俺に色々教えてくれたしっかり物の先輩で、小学校から切り替わったばかりの俺はこの人に散々お世話になり、廊下で会話する程度には仲が良くなったのさ。
二つ上で別の高校に進学したはずだからそれ以来――実に二年ぶりという計算になる。
そして現在高校三年生ということは受験真っ最中であり、それを証明するかのようにその手にはノートと参考書らしきものの姿が見える。

「そういえば先輩は受験生でしたか。
 ……ええと、どこに進学したんでしたっけ」
「あれ、言ってなかったっけ。深陽学園よ」

その名前を聞いて、昨日路上でぶつかった少女を思い出す。
振り返ったあの瞬間、普通から違和感の塊へと変化したあの少女のことを。
12ハルヒ×ブギーポップ  ◆C8Pty1P2YVzw :2010/02/11(木) 22:56:39 ID:W8GyJvTq

「どうしたの?」
「あ、いや、ホント久しぶりだなー、と思いまして」

どうやらしかめっ面をしていたらしい。深くつっこまれても仕方がないので、適当な話題でごまかす。
知り合い連中の中でも割合空気が読める方だと思われる先輩は俺の苦笑にあわせて笑みを浮かべる。

「そうだね、中学校の卒業式以来かな」

と、先輩はふと視線を横にずらした後、罰の悪そうな顔になる。
その視線の先には俺の隣で黙々と本を読む長門がいる。
そして小声で一言。

「あ……もしかしてデートの邪魔だった、かな?」
「いや、そんなんじゃないですから。
 ちなみにこいつはちょっと人見知りが激しいだけなんで気にしないでください」

俺の真実の吐露を下手な弁解と受け取ったのだろう。
その証拠に『わかってる』と返した声には、笑いをかみ殺したような色が滲んでいる。
これはマズい。
何がマズいかというと俺にも深陽学園に進学した知り合いが数名いる。
万が一、そいつ等に誤情報が伝わった場合、どんなからかわれ方をするかわかったもんじゃない。

「せ、先輩こそどうなんです?
 浮いた話の一つや二つはないんですか?」

矛先を逸らすために返す刃で先輩を牽制する。
だが照れ笑いを返すかと思った先輩はどこか遠い目を窓の外に向ける。

「――うん、私はしばらくそういうのはないかな」

……ヤバい。このリアクションはヤバい。
俺はやっとそこでこの話題が地雷源だと悟った。
この様子ではどこにブービートラップが仕掛けられているか仕掛けているかわかったもんじゃない。
不自然なのは承知で話を切り替える。

「そ、そういえば新刻先輩はブギーポップって知ってますか?」
「えっ?」

これまた予想外のリアクションが返ってきた。
何ですかそのバッターボックスに入ったらキャッチャー側から投球されましたみたいなリアクションは。

「うん、その噂って普通、女の子の間にしか広まってないから……」

そう言って視線を逸らす新刻先輩。
……っておい。そんなに気まずい話題だったのかブギーポップ!
俺はともかく女子と少なからず交流があるであろう古泉が知らない時点で秘匿性の高さを考えるべきだった。
なんか少し罪悪感と羞恥心が沸き上がる。
俺は言い訳するように事情をぼかしぼかし説明した。
……主に北高一の変わり者のせいでこんなことを手伝わされているということを。

「……ああ、なるほど。
 もしかして、その娘って涼宮さんって名前じゃない?」

納得する新刻先輩……って先輩、あいつのこと知ってるんですか?

「同じ市内だからね。深陽にも東中出身の同級生はいるから……そこまで目立つ人はどうしたって話題になるよ」
13ハルヒ×ブギーポップ  ◆C8Pty1P2YVzw :2010/02/11(木) 22:57:46 ID:W8GyJvTq
……何ともびっくりだ。

どうやら我らが団長の悪名は近隣の高校にも知れ渡っているらしい。
正直、勘弁してくれ。
俺はこの騒動を楽しむことは受け入れたが、羞恥心まで捨てきった覚えはないぞ。
今のところは大丈夫みたいだが、そのうち俺も奇人軍団の一角として名を連ねるのだろうか。
そう考えると意味もなくメランコリックな気分になってくる。
そんな俺を見て、先輩は何が面白いのかクスクスと笑っている。

「そっか、そっちなんだ。
 君は中学のころから変な女の子が好きだったもんね」

誰のことを言っているのか。
自慢じゃないが中学のころに女っ気はまったくなかったぞ。
――と、そこで中学のころ良く話していた女子を思い出す。
だから国木田といいなぜ誤解するのか。
アイツはそんな関係ではない。
だがしかしそう言おうとした言葉を思わず引っ込める。
先輩が俺をみていた。
今までみたことのない、大人びた、どこかここではないどこかを見るような遠い目で。

「でも、その女の子の前には"死神"は現れないんじゃないかな」
「え?」
「死神は、突然会うから死神なの。
 それはきっとどうしようもないほどに自動的で――
 望む望まざるに関係なく、考えてなかった人の元に現れる……そうね、きっと事故みたいなものよ」

その言葉は妙にしっくりきた。
なるほどね。確かに死神ってのはそんなものかもしれない。
まるで実際に件の死神に会ったかのような深みのある言葉に思わず一理あると思ってしまった。
『受け売りだけどね』と苦笑する先輩。

「ん、じゃあそろそろ私、行くね」

話し込んでしまったがそろそろ周囲からの視線が痛い。
静かな場所での話し声というものは存外響くものだ。
さらに言うなら今は12月。先輩も追い込みの時期だろう。
これ以上邪魔をするのは憚られる。
同じ市内だ。縁があればまた会うこともあるだろう。
手を挙げて軽く挨拶をし、先輩と別れる。

こうして、図書館での出来事は終わった。
ちょっとした再会と、少しだけの進展をもって。


◆◇◆◇◆
その後、時間になった俺たちは再び駅へと向かい、不機嫌顔のハルヒたちと合流した。
予想通り、ハルヒたちのほうも結果は芳しくなかったらしい。
憤懣やるかたないハルヒは日曜日も集合をたくらんだが
古泉や朝日奈さんのフォロー、及び俺が先輩から聞き出したわずかな情報を提供することで何とか取りやめることができた。
その結果、昨日と打って変わって雨の日曜日、俺はベッドの上で安らぎを満喫しているというわけだ。

「キョンくん何読んでるのー?」

俺が寝転がりつつ読んでいるのは黒い装丁のハードカバー。
表紙中央にゴシックフォントで『人が人を殺すとき』と物騒なタイトルが銘打たれている。
昨日の図書館でついでに借りてきたシロモノで、長門の読んでいた作者の本だ。
内容は物騒なタイトルとジャンルの割りに読みやすく、哲学書のような小説のような不思議な本だった。
妹は肩越しに数秒間その本を睨みつけると、
14ハルヒ×ブギーポップ  ◆C8Pty1P2YVzw :2010/02/11(木) 23:00:11 ID:W8GyJvTq

「字ばっかり。つまんなーい」

そう言い残し、『シャミー、あそぼー!』と俺の足元でまどろんでいたシャミのやつを抱えた。
やれやれ、少しは活字を読まないといい大人になれないぞ。

さて、件のブギーポップだが妹に聞いてみたところ
『ぶぎーぽっぷ? 何それ、知らなーい』とのお返事をいただいた。
どうやら小学生の間には広まっていないらしい。
殺伐とした噂が広がらなくて、まったくもって喜ばしいことだ。

ちなみにシャミのヤツは『やれやれ、仕方がないな』と貫禄たっぷりの表情で妹のなすがままになっている。
相変わらずの紳士っぷりに頭が下がる。
すまないがそのまま妹の相手をしていてくれ。
俺はちょっとやることがある。

そういう俺の右手には携帯電話。画面に表示されているのは某大手検索サイトだ。
あまりネットというものを使わない(部屋にPCもない)俺だが、人にもあまり聞けないたぐいの噂であることがわかった今、調べる手段はコレぐらいしか思いつかない。
まぁ調べておくに越したことはない。

さて、と。
検索ワードが"ブギーポップ"だけでは噂話が関の山だろう。
何でもいいからキーワードがもう一つ欲しいところだ。

ふいに霧間誠一の書いた本に目が行く。
その中に出てきた一つの単語が目に付いた。

「……パブリック・エネミー、ね」

何でも晩年、著者が自称していた言葉だという。
意訳するなら、"社会の敵"、"公共の敵"。
いや、この作者の意味するところを考えるなら――

「――"世界の敵"、か」

#3 不気味な影との遭遇 に続く
15創る名無しに見る名無し:2010/02/11(木) 23:52:47 ID:aWGLijhC
投下乙、両作品のらしさを損なわずにバランスよく融合してるなー
16創る名無しに見る名無し:2010/02/12(金) 22:23:36 ID:35QoOWoZ
投下乙

おおー、きれいにクロスしてるなぁ。どっちの世界も違和感なくキャラが出てる。
こっからどう転がすかが楽しみですw
17ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/02/15(月) 21:30:58 ID:9OIhi+EE
wikiのコメント欄を見ると、どうやら色々と疑問点を持っている方々がいらっしゃるようなので……


・テレポートでライダーの装甲も貫けるのはチョット不満、理解の外の次元の存在の筈なのに

確かにライダーの装甲は黒子達にとって未知の物質です。ですから作中で黒子が狙ったようにディケイド自身をテレポートさせる、という事は難しいor不可能という可能性はあります。
ですがテレポートの能力はあくまで指定された座標に物質を置く、というだけなので転移先の物質が理解不能な物であっても座標計算には影響はしない、という解釈をしています。
ダークマターのように空間全てが理解不能だったならばまたわかりませんが。

・科学でも魔術でも無いって、言ってるのにイマジンブレイカーで消せるのおかしくない?
・ディケイドライバーもデイエンドライバーも、大ショッカーの科学力で造られた機械なのに

誤解を招きやすい書き方をしてしまい申し訳ないです。
まず「科学でも魔術でもない力」というのは上条の視点であり、科学の力で人を召喚するということは上条の常識ではできず、インデックスの知識でも該当する魔術は存在しないという彼らにとっては大ショッカーの科学力が理解できない未知の力、という事を表したかったのです。
更にイマジンブレイカーで消せるかどうか、という点ですが、確かにディケイドライバーやディエンドライバーは大首領の力が加わっているとはいえ、機械であるため消せるかどうかは作者としても微妙なラインだと考えています。
ただ今作で実際に打ち消した異世界のライダーを召喚する・それらライダー達をエネルギーとするディメンションシュートに関しては確実に異能としてイマジンブレイカーの対象に入るだろう、と解釈しています。

・クロックアップはタキオン粒子の力で、自身をある種の異空間に置くモノだから、クロックアップしてなければ光速の雷だって届かない。

クロックアップの世界、という言葉が度々本編中で登場していますが、それはクロックアップした場合タキオン粒子の目でなければ存在を確認できない、という事に関しての比喩です。
実際ディエンド・イクサ・サイガ等がクロックアップの世界に取り残されたカブトに銃撃を加えていますし、タキオン粒子を使った加速方法ではない555アクセルフォームでザビーと戦っています。
仮面ライダーカブト本編でもマスクドフォームのカブトがクロックアップしたワームを倒していますし、クウガ・ペガサスフォームで撃ち抜いてる場面もありますね。
とはいえクロックアップの速度ならば雷を回避することは充分可能ではあると思います、なのにストロンガーになった理由としては「コウモリにはコウモリってな」など士が相手と関連づけたライダーになって戦うのを好んでいるという解釈のもとです。


様々な意見を頂けるということは、たくさんの方が拙作を読んでいただいているということで、大変ありがたいと思います。
読みにくい部分はあると思いますが、これからもよろしくお願いします。
18創る名無しに見る名無し:2010/02/15(月) 22:17:41 ID:2poXIUIG
わざわざあんなのに構わなくてもいいと思うけど……
自分みたいに楽しく読ませてもらってる人もいますので、あまり気にしすぎないようにしてください
19創る名無しに見る名無し:2010/02/16(火) 02:53:37 ID:5Wqc8vYM
たまには雑談もしようぜ!

密かにプリキュアディケイド氏の投下を待ち望んでいる。
ニチアサクロスってみそうでみなかったしw
20創る名無しに見る名無し:2010/02/16(火) 22:51:51 ID:HCCCj/p1
やっぱりカブトロックマンZXの人だなー
話がしっかりしててシリアス展開メインなのに、夏のギャグ回みたいなのも入れてくれるしw
21創る名無しに見る名無し:2010/02/17(水) 15:03:51 ID:bvHpLi6L
カオスっぷりは実にカブトだw
22創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 01:03:31 ID:x/a8IMJi
あげ
23創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 17:17:38 ID:x/a8IMJi
個人的にクロスSS物を書きたいと思っていた者ですが、自分の好きなアメリカンコミックの
ヒーローであるスポーンと、とある科学の超電磁砲をクロスさせてみました。
なんか自分でも凄まじいコラボと思ってしまったのですがw

後、スポーンが関わるので、かなり欝展開になるのかもしれません。いかんせん原作がかなり暗めな
ストーリーなんでご了承を。
24スポーン × 超電磁砲:2010/02/21(日) 17:18:59 ID:x/a8IMJi
プロローグ


世界有数の大都市であるニューヨークの路地裏の一角。通称”ラットシティ”と呼ばれるこの場所はホームレス達の溜まり場だ。
社会から阻害され、蹴落とされ、追われた者達の最後の終着点。大企業に勤め、身奇麗なスーツを着込んだホワイトカワーのエリート
サラリーマン達が大通りで通勤している裏側では何日も、何ヶ月も、何年も風呂にも入らず、歯も磨かず、収入もなく、身寄りも
なく、あるものといえば激臭に塗れた服と、他のホームレス仲間達だけ。そういった者達の吹き溜まりとなっていた……。


そういったここのホームレス達から”王”として崇められる者がいた。一言に”王”と言ってもその者は人間ではなかった……。



その者の名は”スポーン”。またの名を”アル・シモンズ”という。かつて上司に裏切られ魔地獄に突き落とされた男である。
殺される以前は政府の特殊工作部隊に所属していた。しかし上司であるジェイソン・ウィンに裏切られ、罠に落ちて死んでしまう。
しかし地獄の支配者マレボルギアから来るべき天界との戦争で、天界の門を焼き払うべく魔界の尖兵としての力が与えられた。
”スポーン”としての力を……。

その後、様々な人物と出会う。天界に所属する天使隊長のアンジェラ、ニューヨーク市警に勤めるサム・バーグと、トゥイッチ・ウィリアムス。
自分を教育する為に魔界から送り込まれたフレビアック一族のクラウン、マフィアに雇われた凶悪な殺人サイボーグオーバード・キル……。

そういった者達と出会い、そして敵として戦っていくのを重ね、力をつけていき、ついに魔界の王マレボルギアを倒した。
マレボルギアを倒した時に天界の天使としての地位を約束されたがスポーンは断った。自分はその後もラットシティに留まり、
この世界の”闇”として生きていくことを誓うのだった。
25スポーン × 超電磁砲:2010/02/21(日) 17:21:28 ID:x/a8IMJi
第1話 学園都市

「よぉ……。久しぶりだな。俺がいない間さみしかったかぁ?」

”ラットシティ”にある自分の玉座で眠りについていたスポーンの睡眠を妨害してみせたのはクラウンだった。

「貴様……、性懲りもなくまた首だけのアクセサリーになりに来たのか?」

150cmに満たない低身長、コレステロールの塊といった感じの腹、顔には青いピエロのメイク……
スポーンにとってこの男はどんなに自分が上機嫌な時でも一目こいつを見ただけで不愉快な気分にさせてくれる。
そういった男であった。かつて自分の妻であるワンダの娘サイアンを人質にとり、自分を操ろうとしていた。
その行為によってスポーンの怒りを買い、魔力によって全身を焼き尽くされ、首だけのアクセサリーにされたのだ。

「おいおい、またあんなことになるのは勘弁だぜ」
「何をしにきた?貴様がこうして俺の所に出向いてくるということは何か企んでいるんだろう?」

スポーンにとってこいつほど信用できない相手はいなかった。以前、困っている時に魔力を貸してやったことはあるが
それを差し引いても恩知らずと思っていた。

「こいつをお前に渡しておきたいと思ってな……」

クラウンはポケットから何かを取り出す。それは円形状の奇妙な塊だった。

「なんだこれは……」

塊を手に取ったその瞬間、その塊は凄まじい光を放った。

(……!?しまった!魔力から作り上げられた爆弾か!?)

自分の身体が光に包まれていくのを感じながら、油断したことを悔いた。まさかまたこいつの罠に落ちようとは……。
26スポーン × 超電磁砲:2010/02/21(日) 20:11:08 ID:x/a8IMJi
東京都の実に三分の一を占める巨大な街である学園都市。その人口はゆうに二百三十万人になり、大部分の人口は学生である。
高さ五メートル、厚さ三メートルの完全な円形のコンクリートに囲まれた学園都市はさながら一つの国のようであった。
学園都市にいる学生は他の街にいる学生にはない特別な「力」を持っていた。その力とは腕力でも権力でも財力でもない。

その力とは超能力であった

全部で二十三学区に区切られた学園都市にいる学生で超能力を持っている学生は七人しかいない。その七人しかいないかと言うとそうではない。
能力はレベルというランクで分けられているのだ。レベルは0〜5までで、レベル0の者は無能力者、レベル1の者は低能力者、レベル2の者は異能力者、
レベル3の者は強能力者、レベル4の者は大能力者、レベル5の者は超能力者に分けられる。
レベル5ともなれば軍隊とも渡り合えるほど強力な力を行使できる。

学園都市でも第7学区は中学・高校といった中等教育機関を主としており、学校に通う学生や勤務教師たちの生活圏となっており、
それに付随する形で生活商店などが立ち並んでいる。

その学区内にある常盤大中学の制服を着た女学生が勢いよく自動販売機を蹴り上げて、出てきたジュースを飲み干す。

その女学生こそ学園都市でも七人しかいないレベル5の能力者である御坂美琴であった。美琴の能力は電撃使いである。
美琴が操る電撃が強力無比であることから美琴は「常盤台の超電磁砲(レールガン)」という異名を持っていた。

「あ〜、このジュースにはゲコ太グッズが入ってなかった」

美琴の通う常盤台中学はいわゆるお嬢様学校であるのだが、当の美琴本人はお世辞にも言動はお嬢様とは言い難く、竹を割ったような
性格であった。しかしその性格故か生徒間での人気は高いようである。しかし美琴も年頃の女の子、ファンシーグッズに目がないな
どの少女らしさも垣間見せる。

「あ、御坂さ〜ん!」
「ん?」

美琴が甘ったるい声で自分を呼んだので声の方に目をやると頭に花をいくつもつけた女学生が走ってきた。
彼女は初春飾利。柵川中学一年生で、風紀委員(ジャッジメント)である。風紀委員(ジャッジメント)とは
学園都市の治安維持に努める学生選抜の集団である。腕には盾のマークがある腕章を付けており、これが
風紀委員(ジャッジメント)の証である。
27創る名無しに見る名無し:2010/02/21(日) 20:13:20 ID:hJZx52LE
支援
28スポーン × 超電磁砲:2010/02/21(日) 20:17:56 ID:x/a8IMJi
「どうしたの初春?そんなに慌てて」
「み……御坂さん、この辺で錬子ちゃん見ませんでしたか?」

錬子とは置き去り(チャイルドエラー)の一人であり、今月児童養護施設あすなろ園に入ったばかりの子である。
置き去り(チャイルドエラー)とは学園都市預けられたが、その後、親が蒸発してしまった子供たちのことである。
初めから子供を捨てる目的で、最初の学費のみ払って消えてしまう親も少なくない。

「あの子……、アイスクリームが大好きで、アイスクリーム屋さんを見つけたからアイスクリームを買いに行ってくるって
行っちゃったっきりなんです……。もうかれこれ一時間探しているんですけど……。寮監さんや園長さんになんて言えばいいか……」

初春は今にも泣き出しそうな顔で状況を説明した。

「とりあえず状況はわかったけど……、ねえ初春、錬子ちゃんはアイスクリームを買いにいったっきりって言ったけど
そのアイスクリーム屋さんってどんなアイスクリーム屋さんなの?」
「う〜ん錬子ちゃんはアイスクリーム屋さんはトラック型のアイスクリーム屋さんって言ってましたけど、それ以上は……」
「わかった初春、私も錬子ちゃん捜しに協力するから。」

美琴は初春を慰めるように言う。

「み。御坂さん……、あ!ありがとうございます!」

初春は美琴の言葉に勇気付けられたようだ。

初春は美琴と共に錬子を捜索し始めた。しかし何時間も第7学区内を捜し回ったが、結局錬子は見つからなかった。

その夜、学園都市の某所にある廃ビルで少女の悲鳴と嗚咽が男の笑い声と共に聞こえてきた。

ユー・スクリーム
アイ・スクリーム
みんなアイスを
 あ・い・す

このような歌声も響いていたという
29スポーン × 超電磁砲:2010/02/21(日) 20:48:22 ID:x/a8IMJi
第2話 路地裏の王様

「よぉ……、お前らスキルアウトの連中には毎回毎回反吐が出てんだよ。能力無しの負け犬共の癖にいっちょまえに俺達
能力者に楯突くからこうなるんだぜ!」

学生とおぼしき数人の男子が一人の男を囲んでいる。囲んでいる生徒はいかにもいまどきな不良という感じであった。
スキルアウトとは学区内で能力を持たない無能力者の者達であった。彼等の中には能力を持たないことで、劣等感と
無力感に苛まれ、学区内に形成されているスラムへと逃げていく者達が少なくない。そういった境遇から銃などで武装
し、アメリカのギャングさながらのチームを形成する者達までいる。つい先日も”ビッグスパイダー”と呼ばれるスキル
アウトのグループが能力者狩りをして、美琴や他のジャッジメントに成敗されたばかりである。しかし、そういった与太者の
類は無能力者だけがなるものではない。能力者である生徒の中にも不良はおり、その能力を悪用している輩も存在する。

「はぁはぁ……、ち、ちきしょう……!」

囲まれている男も一般の生徒とはいえない風体ではあるものの、能力者の不良共にだいぶ痛めつけられているようである。

その様子を見ていた一人の女学生が割って入る。

「も、もう充分でしょう!能力を持っているからって能力の無い人を苛めて何になるの!?」

やや震えた声だが、それでも勇気を振り絞って喋っているようだ。
この女学生は佐天涙子。柵川中学一年生であり、初春飾利の友人である。佐天自身はレベル0の無能力者であるが、以前、能力者
への憧れから幻想御手(レベルアッパー)を使用し、意識不明に陥ったことがある。しかしその事を初春との友情によって
乗り越え、大きな精神的成長を遂げていた。

「おやおや……、俺達はここらじゃちょっとばかし有名なんだぜ?なんなら君も少し痛い目見とくかい?」

不良能力者の一人が佐天に歩み寄る
30スポーン × 超電磁砲:2010/02/21(日) 21:32:52 ID:x/a8IMJi
「俺達が可愛がって……、むぐ!?」

不良の一人が佐天を掴もうとしたその時、不良の顔を大きな手が掴んだ。

「ここは俺の縄張りだ……、一時だけの間だがな。俺がいる間はこの場所で争いは起こさせんぞ」

「あ、あんたは……、スポーン」

痛めつけられていた男がそう呟く。

「な……!なんだテメエ!!俺達が誰だか分かっているんだろうな!!」

不良達は二メートルはあろうかという巨体と真紅の巨大なマントを纏ったスポーンの姿に戸惑いを見せながらも自分達は能力者だと
いうことを肝に銘じ、恐れを知らぬかのような口ぶりでスポーンを挑発する。

「怪我をしない内に帰るんだな」

まるで相手にもしていないようなスポーンの態度は不良達を怒らせるには充分だった。

「へえ、そんなに命がいらないのか?言っておくが俺はレベル2の能力者だぜ!」

そう言って、地面に転がっている大きな石を手を触れずに宙に浮かせる。念動力系の能力のようだ。

「食らえ!」

宙に浮かせた石をスポーンに向けて飛ばす。しかしその石はスポーンの纏うマントに防がれてしまう。
そしてそのマントはまるで生きているかの如く不良達を絡めとる。

「ぐぁあ!?なんだ?このマント!?」
「く!苦しい!!」

不良達はスポーンのマントに締め上げられ悲鳴を上げる。

「これで帰るか?」

スポーンは不良達に質問する。

「か!帰らせていただきます!!」
「お!俺も!」

その言葉を聞くと、スポーンは不良達を締め上げえいたマントの拘束を解いた。
不良達はそそくさとその場を逃げるように立ち去った。

「す……、すまねえスポーン」
31スポーン × 超電磁砲:2010/02/22(月) 21:23:56 ID:BP9OGlb7
「大丈夫か?」

地面に蹲っている痛めつけられていた男に、スポーンは手を差し出す。

「あ、あの……」

佐天は不良達を撃退した赤マントの大男に礼を言おうとする。自分でもよくわからないが、この男は悪い人間ではなさそうだ。

「なんだ?」
「た、助けてくれてありがとう……」
「お前さんも無事なら早くここから立ち去るといい。ここら辺りは子供の長居する場所じゃない」
「あの……、私女の子を捜しているんですけど……、霧原錬子ちゃんっていう名前の子なんです。この辺りで見かけませんでしたか?」

佐天は昨日から行方がわからなくなっているあすなろ園の置き去り(チャイルドエラー)の子について聞いた。

「知らんな」
「そうですか……、危ない所を助けていただいてありがとうございました」

佐天はペコリとスポーンにお辞儀をして足速にその場を去って行った。

スポーンはクラウンに渡された四角形の物体に仕組まれていた未知の力によってこの学園都市に飛ばされていたのだ。
当初は足早にこの地を離れようとしたスポーンだったが、どういうわけか魔力が使えない状態になっていた。
ここはどうやら日本のようだ。魔力があればテレポートして一気にラットシティまで飛べるのだが、使えない今の状態では動きようがない。
徒歩で帰るにしても距離がありすぎる。以前にも遠くに飛ばされたことはあるが、比べ物にならない距離だ。
恐らくクラウンの持っていた物体のせいだろう。相手を飛ばすだけでなく魔力を封じることもできるとは。いつの間にあんな道具を手に入れたのか。

スポーンは動きようがないのでとりあえず一時的にだが学園都市に滞在することにした。ここに来て二日間学園都市を散策してみたのだが
優れた科学技術が適用されている都市のようだ。ひょっとするとニューヨーク以上に発展しているのかもしれない。
それだけではない。ここに入る住人の大半は学生だ。自分が学園都市で目にした中で一番の驚きは学生が超能力を使えることであった。
自分の国にも超能力じみた力を使える者など山ほどいるが、住人の大半が能力者だという街は生まれて初めて見た。最も、自分は地獄という場所
にも入ったことのある身だ。ここにいる学生がマレボルギアやアンジェラ以上の力を持っているとは想像できない。

「全く、魔王を打ち滅ぼした者がこうして動けないとはな」

スポーンは自分の今の状況を自嘲気味に言う。
32スポーン × 超電磁砲:2010/02/23(火) 01:06:33 ID:uHURUvMf
「あ、スポーン、ここにいたんですかい」

十数人のスキルアウト達がスポーンの所に集まってくる。

スポーンは隠れる場所は学園都市でも治安の悪い路地裏にすることにした。ラットシティに長くいた分、そういった世界に近い者達
といた方が心が落ち着く気がしたのだ。ここに集まっているスキルアウトの連中は数日前に先程の不良能力者達に絡まれている所を
助けた。喧嘩、と呼ぶには余りにも一方的すぎる展開だったからだ。能力者達が能力を使い、スキルアウト達をリンチにかけていた
のだ。この学園都市では能力のある者とそうでない者に分けられている。能力を持たない者は持たない者同士で身を寄せ合って
いる場所がある。今自分のいる所がここだ。リンチをしていた能力者達はかつて自分が戦った白人至上主義のレイシスト共に通じる部分が
ある。自分の圧倒的な力を見せ付けるべく、その力の暴力を力の弱い者に向ける……。スポーンが助けたスキルアウト達は、スポーンをボスとしてくれた
らしい。この者達には頼るべき者が必要ということか……。彼等が自分を慕ってくれているのは”こちら”側の人間達から好かれる
自分の性(サガ)なのかと考えた。

スポーンは仮初の仲間達に囲まれながら、ラットシティのホームレス仲間達のことを思い浮かべた。

その夜も学園都市某所の廃ビルから無垢な子供の悲鳴がこだましていた。それに比例するかのように男の歌声も高らかに
響いていた。

ユー・スクリーム
アイ・スクリーム
みんなアイスを
 あ・い・す
33創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 01:26:40 ID:lGV8xWbG
時間かけすぎじゃね?
一レス一分感覚くらいじゃないと正直何がなんだか……
34創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 01:43:24 ID:uHURUvMf
>>33
スマン。チョコチョコ投下してて読みにくかったのなら謝る。
今日当たり一気に放出しようと思っている。

わかりづらければwikiに投下したのでそちらを・・・
35創る名無しに見る名無し:2010/02/23(火) 10:19:42 ID:SGrBq/iy
個人スレならともかく、複数の人が投下してるスレでこういう投下の仕方は遠慮してもらいたい
他の人が投下しづらくなると思うんだ
36創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 01:26:37 ID:/BBd8nbd
スレの皆様の厳しくも暖かいアドバイスに従い、今回は最後まで投下します。
37スポーン × 超電磁砲 :2010/02/24(水) 01:27:41 ID:/BBd8nbd
第三話 殺人鬼ビリー・キンケイド

「錬子ちゃん……、どこにいるんだろ……」

初春は友人である御坂、佐天、御坂の後輩である風紀委員(ジャッジメント)の白井黒子と共にいきつけのカフェで
出されたパフェを食欲がなさそうに食べていた。もう三日も錬子が行方不明なのだ。初春は行方不明になってしまったの
は自分の責任であると感じ、自責の念からか夜も眠れていないのだ。

「初春さん、そうやって目の下に隈をつけていてもあの子は見つかりませんのよ?」

白井黒子が落ち着いた様子でコーヒーを啜っている。

「あー確かに初春、目の下の隈が凄いよ……?」

佐天が初春を心配そうに気遣う。

「でもさー、これだけ捜してもいないっていうことは何らかの事件に巻き込まれてるよねどう見ても」
「そ、それじゃやっぱり誘拐……!?わ、私があの時一緒にアイスを買いに行ってあげれば……!」

初春は御坂の言葉にかなり動揺したようだ。

「ちょ、ちょっと御坂さん……!」
佐天は無神経な御坂の言葉に

「ですがお姉さま、身代金目当ての誘拐にしても、置き去り(チャイルドエラー)の子供を誘拐した所で一銭の得にも
なりませんわよ?それに学園都市にとって置き去り(チャイルドエラー)一人の命なんてどうでもいいのではなくて?」

確かに以前に御坂は幻想御手(レベルアッパー)事件の際に事件の首謀者である木山春生の過去を垣間見た。
あの子供の命さえ軽く捨てれるであろう学園都市が今更置き去り(チャイルドエラー)一人の命など気にかけて
くれようはずもない。

その時、黒子の携帯の着信音が鳴った。

「あら、固法先輩からですわね」

電話は同じ第177支部に所属している風紀委員(ジャッジメント)である固法美偉からの連絡であった。

「あ、白井さん!三日前に行方不明になっていたあすなろ園の霧原錬子ちゃんが見つかったそうよ!!」
「え!?本当でございますの!?」
「お、落ち着いて聞いてね……!錬子ちゃんは……、遺体で発見されたそうよ……」
38スポーン × 超電磁砲 :2010/02/24(水) 01:28:59 ID:/BBd8nbd
固法からの連絡で四人は無我夢中で錬子の遺体のあった現場に駆けつけた。
霧原錬子は第七地区の鉄橋の下の川原で発見されていた。
現場の周りには大勢のアンチスキルが遺体の処理と、野次馬をどかせるのに一苦労していた。

「あ!黄泉川先生!霧原錬子ちゃんの遺体はどこですか!!」

初春はアンチスキルの一人である黄泉川に鬼気迫る勢いで聞いた。

「あ、お前達は……。み、見ないほうがいいと思うじゃん。さっき鉄装が見たんだが……、川の所で吐きまくってるぞ」

黄泉川はきまずい顔で初春を含む四人に言う。
霧原錬子の遺体は無惨という一言であった。

身に着けている服を全て剥ぎ取られ、手足の指を全て切断され、口の中の歯は残らずペンチで引き抜かれ、全身には鞭で
叩かれたような傷があり、しかもあろうことか傷口にはタバコが押し当てられていた。
しかも強姦された痕跡も残っていた。死因は窒息死である。首に凄まじい怪力で締め上げられた後が残っていた。

「う……、そ……?れ、錬子ちゃん……?」

初春は苦痛に歪んだ表情の霧原錬子の遺体を見て呆然と立ち竦んでいた。

「……るせない」
「お、お姉さま?」
「絶対許せない!!!」
「きゃ!?」

御坂は怒りのあまり全身から電気をスパークさせた。

「黒子、あんたも手伝うよね……?」
「な、なにをですの?」
「決まってんでしょ……、犯人を見つけんのよ。あたし達だけでね……」

黒子は初めて見る御坂の本気の怒りに恐怖を感じていた。
御坂の目は怒りの雷が炎となって燃え上がっていた。
39スポーン × 超電磁砲 :2010/02/24(水) 01:31:09 ID:/BBd8nbd
次の日、四人のいきつけのカフェに来たのは御坂、黒子、佐天だけだった。
初春は学校を休んだようだ。立ち直るまでには時間が必要なようだ。
三人は出された紅茶やパフェを黙々と食している。

「あの……」

静寂を打ち破るかのように佐天が口を開いた。

「あの……、もしかしたら昨日のことについて何か関係があるのかもしれないんだけど……」
「お!教えて!!」

佐天の言葉に御坂が勢いよく飛びつく。

「もぅ……、お姉さまったら……」

佐天は二日前にスポーンに助けられたことを御坂と黒子に話した。

「その赤マントの大男が今回の事件と関係あるわけ?」

御坂は勘ぐるように言う。

「ですが、錬子ちゃんが失踪して殺された時期と、赤マントのコスプレ大男さんが現れた時期は一致していますね」
「ってーことは赤マントが錬子ちゃんを殺した!?」
「あの……、御坂さん、白井さん、あの人は悪い人じゃないと思いますよ……。たしかに見た目は少し怖そうだったけど……
そんな殺人なんかする人じゃ……」

佐天が興奮する御坂をなだめるように言う。

「そんなのわかんないよ!とにかくその赤マントの大男に会ってみればわかることじゃん!!」
40スポーン × 超電磁砲 :2010/02/24(水) 01:32:52 ID:/BBd8nbd
で、俺に聞きたいことはそれか?」

スポーンは佐天が連れてきた御坂と黒子を眺めながら言う。

(うわー……、実際見てみるとどこのヒーローコスプレマニアの親父って感じね。ヒーローごっこでもしてんの?)
(お姉さま、聞こえますわよ)

御坂はスポーンの姿を見るとさすがにその派手な衣装と、大きな体躯には驚かされていた。

「知らん。俺もここに飛ばされてきた身だ。大体そんな仕事は警察の仕事じゃないのか?まさかその年で捜査権でも持っているのか?」
「この学園都市に警察機関に該当する組織は風紀委員(ジャッジメント)とアンチスキルよ。黒子は風紀委員(ジャッジメント)
だけどあたしは部外者ってとこね。でも友達を悲しませた奴を許せないのよ。まさかああいう仕打ちが出来る人間がこの世にいるなんてね」

御坂の射抜くような視線にスポーンは少し感心した。自分に臆することなく意見を言ってくる子供は久しぶりだからだ

「そうか……、それだけの覚悟があるなら必ず犯人は挙げられるだろう」
「ねえ、あんたはどっから来たの?自分は知らないって言うからにはちゃんとした証拠はあるの?」

その時黒子の携帯が鳴った。風紀委員(ジャッジメント)の固法からだ。

「はい、どうしましたの固法先輩」
「聞いて!監視カメラの映像に錬子ちゃんを乗せるアイスクリーム屋のトラックが映ってたの!」
固法の言葉に黒子は驚いた。
「ほ!本当ですの!?」
「驚くのはこれだけじゃないわよ。錬子ちゃんを乗せたアイスクリーム屋の男、彼は以前アメリカで二十七人の子供を殺した
児童連続殺人鬼のビリー・キンケイドよ! 彼は警察に捕まって裁判を受け、六年間精神病院に入っていたの。それから出所
して、また一人の児童を殺した後、何者かに殺されているの。彼は死んでいるはずなのにこの男の顔は間違いなくキンケイド
だわ!」
「なんですって!?」

黒子は固法の言葉に耳を疑った。しかしそれ以上に携帯電話から聞こえた固法の言葉に驚愕したのはスポーンだった。

(バカな……、奴はラットシティで完全に死んだはずだ……。まさかまた蘇ったのか……?どちらにしろ今度こそ完全に決着を付けてやる……!)
41スポーン × 超電磁砲 :2010/02/24(水) 01:33:47 ID:/BBd8nbd
以上で第三話は終了
42スポーン × 超電磁砲 :2010/02/24(水) 01:35:48 ID:/BBd8nbd
第四話 魔人VS超人

御坂、黒子、佐天は固法からの連絡を受け、急いで風紀委員(ジャッジメント)第177支部に戻った。
パソコンで監視カメラに録画されている、キンケイドが錬子を連れ去る瞬間を捉えた映像を見ながら御坂が猛る。

「まさか錬子ちゃんを殺したのがこんなクソデブ下種親父だったとはね……、見つけたらバーベキューにしてやるわよ!」
「落ち着いてくださいお姉さま。いかに凶悪な犯罪者といえど法の下で裁きを受けさせねばなりませんの。この程度の相手を捕らえるだけなら
私とお姉さまの二人だけで充分ですわ」

キンケイドの映像を見て興奮する御坂を黒子がなだめる。

「そ……、そりゃそうよね……。法律っていうのはこういう犯罪者の為にあるんだから……」

御坂は怒りを堪えた状態で歯軋りをしながら黒子の意見を飲む。

「それで……、この人のアジトはわかったんですか?固法先輩」
「いいえ、佐天さん。それが記録映像の中にあったのはこれだけで彼の居場所までは……」
「そ、そんな……」

固法の言葉に三人は落胆する

その時支部の電話が鳴り響く。

「はい、こちら風紀委員(ジャッジメント)第177支部です。……はい、………………なんですって!?キンケイドのアジトがわかった!?……はい、
すぐにそちらに風紀委員(ジャッジメント)を送り込みます。ご協力ありがとうございます」

固法の言葉に三人は驚愕した。

「キ、キンケイドの居場所がわかりましたの!?」
「ええ、彼の居場所は第十学区にある通称”ストレンジ”と呼ばれる地域よ!」
43スポーン × 超電磁砲 :2010/02/24(水) 01:37:36 ID:/BBd8nbd
「キシシシシ!うまくいった、うくまくいった!さあ超電磁砲(レールガン)とやらの実力を拝見させてもらおうかい」

第七学区にある電話ボックスからキンケイドの居場所を通報したクラウンは凶悪極まりない笑みを浮かべていた。

第十学区、通称ストレンジと呼ばれる場所にある廃ビル

殺人鬼ビリー・キンケイドは霧原錬子を殺した余韻に浸っていた。

「よかったなぁ、あのレンコちゃんって子は。僕の大好きなフィンガーペインティングで今までに一番出来のいい作品ができたし。当分の生活費も
あのクラウンっていう人が出してくれるしなー。ユー・スクリーム、アイ・スクリーム、みんなアイスをあ・い・す」

キンケイドは錬子を痛めつけている時や、指を切断している時に苦しむ錬子の表情を思い出しながら快楽に酔っていた。


「そこまでよ!ロリコンデブ親父!」

御坂の声が廃ビル内に響く。

「だ!誰だ!?」

キンケイドはテーブルにあった包丁を手に取り、身構える。

「ジャッジメントですの」

黒子が腕に付けている風紀委員(ジャッジメント)の証をキンケイドに見せる

「なぁんだ。君達も僕と遊びにきたのかぁ」

キンケイドはまだ中学生の御坂と黒子を見て油断したのかゆっくりと近づいてきた。

「学生だからって甘くみないでくれる?」
「少しお仕置きが必要なようですわね」

黒子はテレポートを使った。

「え!?き、消えた!?」

驚くキンケイドの背後からワープした黒子が鉄の針をキンケイドの包丁を持っている手首に刺す。

「ぎゃあ!」

針を刺された痛みで、包丁を落としてしまう。

「ビリー・キンケイド、貴方を児童誘拐、及び殺害の罪で拘束いたしますわ」
「ひぃ!?」
44スポーン × 超電磁砲 :2010/02/24(水) 01:39:01 ID:/BBd8nbd
その時キンケイドの全身に鎖が何重にも巻きついた。

「え!?鎖!?」

御坂と黒子が驚愕する中、鎖はキンケイドを締め上げていく。

「ぎゃああぁぁ!?ぐ、苦じい……!!た、助げでぇぇぇ!」

鎖は無情にも凄まじい力でキンケイドを締め上げ、キンケイドの身体は破裂した。
肥満体のキンケイドの体に詰まっていた内臓や血が四方八方に飛び散る。

「きゃあ!」

黒子はキンケイドの血を浴びてしまい、気が動転しそうになるのを必死でこらえた。

「だ、誰がこんな……!」

御坂は目の前の惨状に呆然と立ちつくしていた。

「今度こそ地獄に叩き落してやった。金輪際もう二度とこの世に現れるな……!」

キンケイドの四散した内臓を蹴りつけながらスポーンが現れた。

「あ、あんたは!?」
「また会ったな」
「”また会ったな”じゃないわよ!!そいつはアンチスキルに突き出そうとしたのに……!何で殺すのよ!」

御坂はいきなり現れ、キンケイドを殺したスポーンに怒りを露にする。

「突き出す……、か。アンチスキルとやらはこの都市の警察のようなものだったな。それでキンケイドにどういう処置をせる
んだ?こいつは子供を二十七人も殺した癖に精神病院に六年しか入らず出てきた下種だ。しかも出所早々一人の少女の
命を何の躊躇いもなく奪い去った。学園都市にいる判事とやらはこいつに相応の罰を下せるとでも言うのか……!」

スポーンはキンケイドを殺したあの夜のことを思い出した。出所したばかりなのに性懲りもなく子供を殺し、反省の色すらも
みせていなかったこのサイコキラーを自分が罰を下したのだ。子供に残虐この上ない仕打ちをして陶酔に浸るこの途方も無いクズの
人権を叫んでいる輩がこの学園都市にいようものならそいつら全部を地獄の底に叩き落してやりたい気分だった。

「相応の罰なんてあたしにはわかんないけどね……。あんたはあたし達の目の前で人を殺した。そのことは知ってほしいわね。」
「ほぅ……得意の超能力とやらで俺を捕らえるつもりか?いいだろう受けて立ってやる!!」

御坂はスポーン目掛けて電撃を放つ。その恐るべき速さの御坂の電撃を間髪の所で避けたスポーンが御坂に鎖を飛ばした。

「危ない!お姉さま!」

黒子が御坂の傍にテレポートし、御坂をテレポートさせてかわさせた。

「この鎖の餌食になりたいのはお前か」

鎖が標的を黒子に変え、黒子の右腕に絡みつく。

「くぅ……!!」
「どうした?今更泣き言なぞ聞かんぞ?」
「……なんてね」

黒子はテレポートし、鎖の拘束から脱した。
45スポーン × 超電磁砲 :2010/02/24(水) 01:40:24 ID:/BBd8nbd
「ちぃ!」

まだ自分は魔力を使えない。鎖とマントと、己の肉体だけで戦うしかない。自分は生きていた頃は特殊工作員だった。
スポーンとなってからは魔力を使うようになったが、人間の頃の戦いは忘れてはいなかった。

「どこ余所見してんのよ!」

スポーンの背後から御坂の電撃が襲う。

「ぐぉ!?」

御坂の電撃は容赦なくスポーンの体に直撃する。その衝撃でスポーンは勢いよく吹っ飛んだ。
普段、御坂は人間を殺す程の電撃は相手に与えてはいないが、スポーンに対してはこれ位しなければ
勝てない気がしたからだ。それ位スポーン本人の危険性を御坂は察知していた。この電撃は普通の
人間ならばショック死してもおかしくはない威力だ。

「……図に乗るな!」

スポーンは起き上がり、勢い良く御坂に突っ込んでくる。

「黒子!こいつには針を思い切り体に刺していいからね!」
「承知しましたわ」

黒子はテレポート能力でスポーンの体に針を埋め込ませる。

「がぁ……!!」

スポーンは激痛に耐える。これ位の傷はアメリカで戦っていた頃に比べれば大したことはない。自分の着ている寄生服リーサが
針を吐き出している。


「そんな……!あいつ針を自動的に吐き出した!?」
「再生能力……、というやつですのね」

まだ魔力が回復していなのは痛かった。魔力さえ回復すればこの二人程度難なく倒せるはずなのだが。「魔力が戻る方法」ならば
もう見つけたのだが……。

「へっへっへ……、大分押され気味のようだなスポーン」

下卑た笑い声と共に、対峙する三人の前にクラウンが現れる。

「クラウン……、貴様!」

自分をまたもだまくらかしたクラウンに怒りの炎を燃やすスポーン。

「な、なんなのこのピエロ?三流サーカスに出てきそうな感じなんだけど」
「新手の変質者かもしれませんわよ。自分の体型とか、顔とか、自身のない部分に対して開き直っている辺りはある意味潔いというか……」

御坂と黒子はクラウンの容貌、体型などをボロクソに貶している。

「おい、お嬢ちゃん達よぅ!あんまり人の気にしていること喋んじゃねえや。いくら温厚な俺様だからって手加減できなくなるぜ?」

クラウンは自分のコンプレックスを突かれたことに怒りのマグマが溢れ出しそうになる。


「ふっ……、小細工や人を騙す手段を上等としている奴が温厚だとは笑わせるな」
46スポーン × 超電磁砲 :2010/02/24(水) 01:42:08 ID:/BBd8nbd
「けっ!なんで俺様がお前をこの学園都市に飛ばしてやったか教えてやろうか?この学園都市は化け物の宝庫だ。こん中にお前を
放り込んで、超能力を使うガキ共と戦ってお前がくたばるように仕向けたんだがな……。お前が殺したビリー・キンケイド、あいつは
地獄でお前と戦ったことやお前に殺されたことの記憶を消して、新たに人間として蘇らせたのさ。あいつの記憶の中はお前に殺される
前の出所してガキを一匹殺したまでの記憶しかねえ。俺はあいつをこの学園都市の中に放り込ませ、学園都市にいるガキ共を殺す
ように仕向けたのさ。あいつを放っておくお前じゃねえだろうしな。あいつを捕まえようとするこの学園都市のおまわり共と、ビリーを
殺そうとするお前が戦うのは必然だったんだよ。だがもうその様子じゃ魔力は使えないようだな。エスパー小僧共に始末してもらうより
この俺様が直々にお前を殺してやるよ!」

「何だかわかんないけど……。こいつからは下種野郎の臭いがぷんぷんするわね」

御坂は尚もクラウンの神経を逆撫でするようなことを言う。

「人のことをピエロだの下種だの好き放題言いやがって……、本当に俺様を怒らせたいらしいな。俺の名前はVから始まる。
俺の名はVIRGIN(バージン)でもVIBLATER(バイブレーター)でもねぇ!俺の名は……VIOLATER(バイオレーター)だぁああ!!!!」

クラウンの肉体が変容していく。折り曲げた指先の皮膚を食い破り、巨大な鉤爪が姿を現した。脊椎が膨れ上がり、肉片ごと飛び出す。
煮えたぎるように溶け出す肌から粘液に覆われたクラウンの本体が姿を現し始めた。昆虫のように感情を表さない、
卑しい光を放つ充血した複眼がスポーンを含む三人ををギョロギョロと覗く。

「こ……、これは……、本物の化け物ですわ!!」

変容を遂げたクラウンの余りの醜悪さに目を疑った。

「こ、こうなったら戦うしかない!」

御坂は勇気を振り絞って、戦おうとする。

「ギャハハハハハハ!!テメエ等全員ブチ殺してやるぜぇ!!」

猛烈な臭気を放ちながらバイオレーターは咆哮する。その直後だった

「待たせたな……」

スポーンが低く言う

「な……!?テメエまさか!?」
47スポーン × 超電磁砲 :2010/02/24(水) 01:43:28 ID:/BBd8nbd
「気づいたか?俺の魔力が回復したことを。お前が変身する時は多量の魔力を消費するだろう?お前は気づいていない
かもしれないが変身する際には目に見えない魔力が体外に出される。それに呼応して俺の中で封印されていた魔力が
復活したのさ。お前らフレビアック一族は大した魔力を持っていないというが、お前は俺を殺す為に地獄で大量に魔力を蓄えてきた
ろう?それが仇になったようだな。間抜けな所は昔と変わらんな」

スポーンがクラウンから手渡された四角形の塊……、あれは対象者をテレポートさせるだけでなく、対象者の魔力を一時的に
封印する力もあったのだ。だがこの塊は未完成な部分が多く、多量の魔力に当てられると、魔力が復活してしまうのだ。

「テメエその話を誰から聞いた!?」
「とある銀髪の少女シスターからだ。俺が何の目的もなく数日間この街を散策していたわけじゃない」
「あ、あの野郎!未完成品を渡しやがって!!」

バイオレーターはスポーンを飛ばす為の道具を自分に渡した人物に怒りをぶつける。

「さてと、強大な魔力も復活したことだし、終幕といくか」

スポーンは右腕に膨大な量の魔力を集中させ、光線にして放つ。

「ギャアアアアアアアアアアア!!!」

バイオレーターはその威力に跡形もなく吹き飛ばされた。
スポーンの放った光線は廃ビルの壁を突き破り、天に向かって放出されていく。

「……す、すごい……。あたし達が戦っても勝てるかどうかわかんなさそうな気が……」

間近でスポーンの強大な魔力を目にした御坂は「勝てない」と実感したのか呆然とスポーンに見とれている。

「そうですわね……。今の私達にはあの方を捕らえる術はありませんわね」

バイオレーターを倒したスポーンは魔力が戻ったのでラットシティに戻ることにした。

「それじゃあな。溜飲も下がった。俺は自分のねぐらに帰らせてもらう」
「ちょ!ちょっと待って!」
「ん?」
「あ、あたし達はあんたのしたことをこの目で見たんだからね!いつか力をつけてあんたを捕まえるからそのつもりでいなさいよ!」

御坂の言葉にスポーンは少し微笑する。

「ふっ……、好きにするがいいさ」

スポーンが緑色の光に包まれながらテレポートしていく。御坂と黒子はテレポートするスポーンを黙って見送った。
48創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 01:44:40 ID:/BBd8nbd
以上で投下終了です。アドバイスを下さった方に感謝しております。
49創る名無しに見る名無し:2010/02/24(水) 02:12:54 ID:X3nRW0ZK
投下乙だぜ。
アメコミのスポーンと電磁砲世界がうまくミックスされていい感じだった
スポーンと御琴たちの対比も面白いと思ったよ
50ロックマンZX × カブト ◆SaBUroZvKo :2010/02/25(木) 20:59:15 ID:hDFQ+o+m
予定外に時間がかかってしまいました。
第十三話投下します。

注意
※オリジナルあり(モブ、敵のみ)
※クロス設定あり
※仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVEの没設定を利用しています(樹花の存在など)
※二次創作ようの設定あり(劇場版におけるサソードの末路など)
※ディケイドの設定、キャラを出していますが、ディケイド本人が出ることはありません。
※原作で曖昧にされている設定、プレリー=アルエット、初代司令官=シエル について明言していますが、あくまで二次創作です。
公式設定ではありません。

これまでのロックマンZX×仮面ライダーカブトは!!
ttp://www31.atwiki.jp/crossnovel/pages/15.html(まとめwiki)
51ロックマンZX × カブト ◆SaBUroZvKo :2010/02/25(木) 21:03:28 ID:hDFQ+o+m
第十三話 PROTECT [守護]
 

 岩肌が剥き出しになった地面に、風が吹いて砂埃が舞った。
 遠くで機械が稼働する音が響いて僅かに地面が振動する。
 晴れ上がった青い空の下、幼い兄妹のカルロとアロエは競争していた。
「待ってよ―、お兄ちゃん」
「ダメー」
 ハハ、と兄である少年は活発な瞳を輝かせて答えた。
 上下に青いジャケットズボンを着こなし、黒髪から汗が飛びる。
 対して妹の方は眉を八の字にしかめ、息を切らせながら兄を追っている。
 桃色のワンピースの裾と茶色の長髪が風でなびいている。どちらも八〜十歳といったところか。
「ここに入っちゃ駄目だって、オジちゃんがいっていたじゃない」
「弱虫アロエ―。俺はオジちゃんなんて怖くないもんねー」
 舌を突き出し、べぇーとアロエに告げてカルロは走る。
 兄妹が訪れた鉱山は『幽霊鉱山』と呼ばれ、イレギュラーが跋扈する山だったのだ。
 そう、一年前までは。カルロが首をあげて鉱山を見上げると、足が道を踏み外す。
「うわっ!」
「お兄ちゃん!!」
 カルロは両腕をバタバタさせながら身体のバランスを取ろうとするが、無駄だった。
 段差の激しい崖下へカルロの小さな身体が乗り出した。アロエが両手で顔を覆う。
 落下する感覚にカルロは身を任せ、両目をつぶった瞬間背中に硬い感触が訪れた。
 浮遊感とともに目を開くと、カルロを抱えて跳躍するアルマジロ型のレプリロイドがいた。
 地面に着地するアルマジロ型のレプリロイドがジロリとカルロを睨む。
 ウッ、と言葉を失っているカルロをよそに、アロエが嬉しそうに彼の名を呼んだ。
「スティールオジちゃん!」
「カルロ殿、アロエ殿、ここは危ないから入ってこないように言ったでござろう」
 怒ったように告げるスティールエッジに、カルロは気まずそうに笑みを浮かべた。
 笑ってごまかそうとしているのだが、目の前の尊敬する男には通じない。
 スティールエッジの厳しくありながらも、優しさを秘めた黒眼を動かずに見つめていた。
 

「まったく、二人ともなんど申したと考えているでござるか?」
 カルロたち兄妹に延々と説教をしながらスティールエッジは大通りを進む。
 白銀のボディにイエローの線が入っている、非人型のフォルスロイドであるスティールエッジは目立ってしょうがない。
 幼い兄弟たちの手をつないで歩く光景は一種異様であるが、騒ぎ立てるものはいない。
 それどころか…………。
「よう、スティールエッジ。カルロまた幽霊鉱山にいっていたのか。お前のカアちゃん探していたぜ」
「やあ、スティールさん。今度ご馳走してくれたお茶のお礼をしたいのだが今暇かね? 仕事中? それは残念」
「おう、スティール! 今度の休みに力を貸してくれよ。力が強いヤツが必要なんだ。前みたいな喧嘩じゃないって」
 むしろスティールエッジは慕われていた。思わずため息をつくが、スティールエッジの表情は柔らかい。
 一人一人街の住民たちに丁寧に返しながら、兄妹の家へ歩みを再開した。
 ここに来て一年。ここまで馴染むことになるとはスティールエッジ自身も思っていなかった。
 スティールエッジは一年前の光景を思い出していた。



 最初に浮かんだ感想は、なんとも活気のない街だろうというものであった。
 表通りにヒトの姿はなく、からっ風が埃を舞い散らしていた。
 カラカラ、となる風見鶏がよけい街の侘しさを強調している。
52ロックマンZX × カブト ◆SaBUroZvKo :2010/02/25(木) 21:04:26 ID:hDFQ+o+m
 スティールエッジはその原因である鉱山に一度視線を向けて、市長との待ち合わせをした建物へ入っていった。
 アポを取っていたスティールエッジは応接間に案内され、十分ほど待たされた。
 入ってきたそこそこに恰幅のいい中年が入ってくる。目には疲れが見えていた。
 その男性にスティールエッジは直接用件を切り出す。
「この街には危険なものが埋まっている。是非とも、拙者にあの鉱山を任せていただきたい」
 ちなみにこの用件、“あの男”の身分の一つを使って話を設けている。
 ダブルホーンたちのように、現場近くのヒトビトに黙って作業を続けても文句はいわれはしない。
 ただ、スティールエッジというフォルスロイドはどこまでも生真面目であった。
「その件についてはお任せいたします」
「かたじけない」
 ゆえにあっさりと話が終わり応接間をでる。すると、ドアを開けた瞬間なにかが飛来してくるのをスティールエッジは目撃した。
 手の平で受け止めると、視線の先には敵意を向けている少年がいる。
 黒髪の活発そうな少年が空き缶を投げてきたらしい。
「こら、カルロ! お客さんになんてことを……」
「父さん、騙されるな! きっとこいつ、悪いヤツだ!!」
 少年が叫ぶのを聞き、スティールエッジはキョトンとする。
 “あの男”の目的から考えれば、少年のいっていることはあながち間違いではない。
「カル……」
「いや、構わないでござるよ」
 スティールエッジは怒鳴りつけようとする市長を止めて、カルロと呼ばれた少年の前に膝を折る。
 敵意に満ちた視線に微笑んだ表情のまま顔を合わせた。
「カルロ殿、この街は好きでござるか?」
「当たり前だろ! 最近イレギュラーが増えてこの街にみんなが寄り付かなくなった、っていっているけど絶対前みたいな街に戻る!
お前なんかの好きにはさせないぞ!」
「そうでござるか」
 カルロの言葉を受け止め、スティールエッジは頷いて立ち上がった。
 少年の視線を背中で受け止めながらも、スティールエッジは止まらない。
 道中、市長が声をかけてくる。
「申し訳ありません! カルロにはきつくいっておきますので……」
「それよりも市長、最近イレギュラーが増えたというのは本当でござるか?」
「……はい。ガーディアンやセルパンカンパニーに救援を求めようにも、通路をすべて無差別に襲いかかるイレギュラーにふせがれまして……」
 ふむ、とスティールエッジは顎に手をやり、市長の瞳を覗き込む。
 市長が不安げな表情をしているよそで、スティールエッジは破顔した。
「ならば、一週間以内に拙者がそのイレギュラーを整理してみせよう」
 
 
 イレギュラーを一掃する。
 スティールエッジがそう申し出たのはその場の思いつき、といってよかった。
 スティールエッジはこの時点では生まれて間もなかった。
 モデルHたちを積んだハイボルトらとは違い、モデル∨の欠片を動力源にした試作型である。
 フォルスロイドは新しい技術であるため、改造されたハイボルトたちとは違い、スティールエッジは一から生まれた存在だ。
 ゆえに知識と力はともかく、経験はなかった。スティールエッジは自分の行動が情というものからくるものだと、この時点では知らなかったのである。
「スティールエッジさん、イレギュラーの一掃をありがとうございました!」
「いや、市長。まだイレギュラーが固まる場所があるでござる。それに自分たちの任務を遂行するためでもあるから、お互い様でござる」
 スティールエッジは機嫌のいい市長に答えながらも、内心冷ややかであった。
 イレギュラーの大量発生は幽霊鉱山と俗称される山に、三つのモデル∨が埋まっているのが原因である。
 スティールエッジが“あの男”の技術を使ってモデル∨の稼働を抑え、その間にイレギュラーを一掃しただけだ。
53ロックマンZX × カブト ◆SaBUroZvKo :2010/02/25(木) 21:05:07 ID:hDFQ+o+m
 マッチポンプ、ともしも事情を知る者が存在すればそう後ろ指を指されてもしかたない。
 ゆえにスティールエッジの心の中が晴れることはなかった。
「カルロ殿は元気でござるか?」
「ええ、あいつも活気が戻ってきた街にたいへん喜んでいます」
「それはよかった」
 そう、スティールエッジの心は曇ったままだが、カルロが喜んでいるという言葉に少しだけ救われたような気がした。
 そして市長とともに周囲を確かめようとしたとき、入ってきた女性からカルロたちがいなくなったと告げられた。
 

「絶対突き止めてやる!」
「危ないよ、お兄ちゃん」
 小柄な身体を駆使して、誰にも悟られず幽霊鉱山に入ったカルロは指を立てて妹を注意する。
 アロエは思わず口つぐんだが、相変わらず兄を咎めるような視線だ。
「アロエもあいつはおかしいと思うだろ。あんな姿をしているうえ、こんなところに用事があるなんて絶対裏がある。兄ちゃんを信じろ!」
 一面では真実を捉えている言葉をカルロは告げて岩肌を登っていく。
 途中警戒に当たっているメカニロイドをごまかしながら、発達した運動神経を駆使して進んだ。
 ふと、カルロが後ろを振り返るとアロエが息を切らせながら追ってくる。
 邪魔だからついてくるな、といっても聞きはしない。カルロはため息をついて岩に座り、妹を待つことにした。
 すると、パラパラと細かい石がカルロに降りかかってきた。
 鬱陶しげに腕で払いながら、妹を見るとカルロの後ろに視線を向けて口をパクパクさせていた。
 驚いた表情に、相変わらず怖がりだと感想を抱きながらカルロは後ろを向く。
 瞬間、カルロの表情が固まった。
 全身が紫色の、体長十数メートルはある巨大なクモ型メカニロイドがカルロの頭上に存在している。
 モデル∨の力を取り込んだスパイダリルの進化型のメカニロイドであった。

「うわああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 カルロがたまらず叫んで目をつぶった。アロエが「お兄ちゃん!」と叫ぶ声が耳に入るが、スパイダリル・ネオは止まらない。
 八本あるうちの右前方に存在する脚を動かし、カルロを狙って貫こうとする。
 カルロが身体を動かすまもなく、巨大な脚は振り下ろされた。
 

「お兄ちゃん!!」
 アロエの悲痛な叫びが山に響く。スパイダリル・ネオの力によって地面が振動した。
 兄は助からないのか。ペタリ、と両足をついた幼い少女は巻き起こる煙を虚しく見つめていた。
 そのアロエの予想とは違い、カルロは生きて尻餅をついている。
 スパイダリル・ネオの前脚を、刀で受け止める存在がいたのだ。
 粉塵の舞い上がるなかで白銀の装甲が映えていた。
 背や腕、脚を縁取る黄のラインが太陽光を反射する。
 刀を持ってスパイダリル・ネオの脚を受け止めたのは、アルマジロの姿をしたフォルスロイド・スティールエッジであった。
 スゥー、と息を大きく吸い込み、目を見開いてスティールエッジの怒声がスパイダリル・ネオを貫く。
「ハァッ!!」
 スティールエッジがもつ日本刀が、蜘蛛の足を一本斬り飛ばす。
 スパイダリル・ネオがバランスを崩して倒れ、スティールエッジはカルロを抱えてアロエの傍に着地した。
 カルロをおろし、アロエを見るスティールエッジの瞳をアロエは覗き込む。
 きっと怒っている。アロエはそう思ったが、スティールエッジの瞳は違った。
「無事でよかった……」
 心底安堵した声色と、優しい表情をみてアロエは確信する。
 このヒトはいいヒトだ。
 アロエがそう思っていると知らず、スティールエッジは後ろをみて二人をいきなり抱え込んだ。
54ロックマンZX × カブト ◆SaBUroZvKo :2010/02/25(木) 21:07:29 ID:hDFQ+o+m
 数瞬後、スティールエッジの背中の丸い装甲が爆ぜる。
 火薬の臭いがアロエの鼻腔に届き、スティールエッジは顔を顰めて痛みに耐えていた。
「なにしてんだよ、あんた!」
 カルロが取り乱したように問うが、スティールエッジはより二人を引き寄せるだけ。
 さらに数回スティールエッジの背中で爆発音が響くが、彼は一歩も退かない。
「やめろよ、お前が傷つくだけじゃないか!」
「カルロ殿……君の言う通りでござる。あれは拙者の上司の仕業でああなった。
これだけでは償いにもならない……だけど、二人の命だけは守り通す!」
 スティールエッジの宣言とともに、彼のもつ刀が電撃を帯びる。
 スティールエッジが身体を回し、アロエとカルロに光線が当たらないように胸で受けながら刀を構えた。
 全身を撃たれながらもスティールエッジは微動だせず、刀を頭部へと運んだ。

「ハァッ!!」

 呼気を吐き出すと同時に刀を袈裟斬りに振り下す。
 電撃が鋭さを増して斬撃となり、光線ごとスパイダリル・ネオを縦に斬り裂いた。
 沈黙したスパイダリル・ネオを前に、爆発が巻き起こった。
 その凄さを前にしたアロエは言葉を失っている。カルロも同様だ。
 スティールエッジは振り向いて、よく見ると傷だらけの顔を向けて尋ねてきた。
「二人とも、怪我はござらんか?」
 どこまでも穏やかで優しい言葉。
 アロエは溜まらず、安心して泣き出してしまった。
 

 この後、二人を市長夫妻のもとへ送り届けて温かく迎えられる。
 言い出しっぺのカルロはもちろん両親に説教されたらしい。
 この事件を通して、二人だけでなく街の住民たちと交流をもつようになる。
 カルロとアロエの兄妹は特に懐いてくれた。
 僅かな罪悪感を持っていたが、スティールエッジにとっては幸せな一年だった。



 天道総司は買い物袋をぶら下げながら、待機させていた赤いバイクへと視線を向けた。
 人通りの少ない道路で異質な雰囲気を漂わせる自車を見つめ、思わずため息をつく。
 買い物袋を後部座席に収めながら、天道は訊ねた。
「なんの用だ? 紅渡」
「今日は個人的に訪ねたいことがあったのできました」
 世界とやらに付き合うつもりはない、と天道は思考する。
 天道の守るべき世界は普通に暮らして普通に笑うヒトビトがいる日常だ。
 ディケイドとやらを始末することで、自己を守ろうとする手前勝手な『世界』とやらではない。
「『世界』とやらの計画を俺に実行させたいというなら無駄だ」
「そうではありません。アナタはこのままでは消えてしまいますよ」
「それがお前に関係あるのか? ディケイドとやら以外に」
「僕にはなくても、アナタのことを大切に想っているヒトたちにはあるに決まっているじゃないですか!」
 語気を荒くし、視線に怒りを込めた渡を見つめて天道は少し驚いた。
 始めて渡という人間の感情を見た気がする。
 もっとも、基本的に天道と接するときの渡は、ボロを出さないように必死なだけだったのだが。
 その仮面を脱ぎ捨てて、人間とファンガイアを共存させて兄を守った心優しき青年は心の中を明かす。
「このまま消えてしまっては、アナタのことを慕っているエールさんや、ガーディアンのヒトたちがかわいそうだ。
ディケイドなんて僕もどうだって……よくはないけど。アナタの場合はその前にすべきことがある。それを放り出すのは許せない」
55ロックマンZX × カブト ◆SaBUroZvKo :2010/02/25(木) 21:08:34 ID:hDFQ+o+m
 だから決着をつけろ。渡の瞳はそういっていた。
 なんのことはない。紅渡という青年はお人好しなのである。
 天道はここまで言われて始めて気づいた。加賀美のような馬鹿だ、と天道の表情が力を抜く。
「……大丈夫だ。ちゃんとあいつらとの別れは告げる」
「別れ? ここにいることだって……」
「それは無理だ。俺は世界を破壊した。これを見ろ」
 天道がグローブを脱ぐと、粒子が手から昇っていた。
 渡が天道の手を見ると悲痛な表情をしている。天道の様子に心を痛めているのだろう。
「気にするな。こうなるのは覚悟の上だ」
「諦めないでください。きっと手が……」
「大丈夫だ。俺は自分の不始末を片付けるまではもつ。それよりも渡、すまない」
 天道の謝罪に渡が「え?」と疑問を口にする。この謝罪は渡に対して冷酷な相手だと考えたことによるものだ。
 渡が心配しているのは世界よりも、天道がここで作った仲間のこと。それがとても嬉しかった。
「それに、頼みがある。いいか?」
「僕に出来ることでしたら」
 そう言われ、思わず天道は「お人好しめ」とつぶやく。
 渡が鼻白んでいたが、天道の言葉に嫌な響きはなかった。
 天道が渡へと向き、自分の望みを告げ始めた。
 

 ドクターCLとの出会いから一週間は経っていた。
 あれからプレリーに変化があったかと問われれば、より精力的に仕事に取り組むようになった、と周囲は口を揃えるだろう。
 周りはいつものプレリーよりも気合が入っていると考えているが、事情を知るものはそうはいかない。
 ガーディアンベースの廊下にて、ストローから飲み物を飲んでいるエールも事情を知る者の一人だった。
「プレリー、身体を壊さないといいんだけどな……」
「プレリー様がどうしたって?」
 エールは横から声をかけられ、ギョッとして振り向いた。
 そこには金髪のクールな青年、アランが立っている。彼はエールと同じく、訓練を終えたばかりのようだ。
「また厄介ごとか?」
「えーと……そのー……」
 エールらしくない不明瞭な態度に、アランは納得がいったように数度頷いた。
 エールの傍を離れながら会話を続ける。
「また話せないような事情があるのか。いいぜ、話せるようになってからで」
「うん、ありがとう。アラン」
「いいっこなしだ」
 そういって出て行くアランの背中に拝み倒し、感謝を示す。
 初代司令官が擬態されただけならともかく、精神もそのままに敵として存在する。
 それはガーディアンのメンバーたちにとって衝撃的な真実にほかならない。
 そう判断したプレリーとフルーブによって、ドクターCLの存在は伏せられることになった。
「なんだかなー」
 納得いかないのはエールである。理屈ではわかるのだが、どこか引っかかりがあったのだ。
 自分が入院した理由を伏せられたときも、周りは同じことを思っていたのだろうか。
『まあまあ。こればかりはみんなを混乱させるだけだからね』
「それはわかっているけどさ。ところで、モデルZは」
『しばらくの間そっとしておこう。彼は特に彼女へ思い入れが大きかったから』
 そうか、とエールは沈黙している赤いライブメタルへ想いを馳せる。
 彼には彼の事情もある。エールは天井をみて、もやもやした気持ちを抱えていた。
 

 プレリーはモニターを見つめて眉をしかめていた。
56ロックマンZX × カブト ◆SaBUroZvKo :2010/02/25(木) 21:09:35 ID:hDFQ+o+m
 金色の髪が後ろに流れる赤い船長服のガーディアンの二代目司令官は、自身の姉を擬態したワームとの出来事を胸の底に押し込んで、仕事に没頭していた。
 少なくとも忙しい間は嫌なことは忘れられる。プレリーは新しいモデル∨の反応のグラフとイレギュラーの事件がまとめられたファイルを開く。
 めぼしいところは今まで探索してきた。天道とエールの活躍もあり、候補地も減っている。
「後はここよね……」
 プレリーはある一エリアへ視線を向けて嘆息した。グラフが示すモデル∨の反応は異常なのだ。
 複数機のモデル∨が埋まっている可能性が高い。なのに今まで放置していたのは、イレギュラーの発生報告が一度もなかったからだ。
 モデル∨の反応を見つけたときは驚いたのだが、街へ調査員を向かわせるとなにもつかめず帰ってくる。
(これ以上は実際向かってみるしかないか……)
 プレリーはそう考えて現場に赴くことを決めた。
 オペレーターに天道とエールを呼んでくれるよう頼み、プレリーは頭に勝手にわいてくるドクターCLの姿と言葉を頭を振って追い払った。



「それで、本当にここにモデル∨の反応があったのか?」
「ええ、間違いはない……はずです」
 天道が周囲の穏やかな光景に尋ねると、プレリーが自信なさそうに頷いた。
 今までは市長に調査の申し入れを提案してきたのだが、平和な街だといわれやんわりと断られていた。
 ならば、あまり正体の知られていないガーディアンの司令官であるプレリーと天道、そしてエールが調査も兼ねてやってきたのだ。
 服装もガーディアンの証であるものはすべて外しているため、観光客にしか見えない。
 もっとも、プレリーの同行は半ば彼女のわがままでもあったのだが。
「天道、プレリー。ジュース買ってきたよ」
「ありがとう、エール」
 頼んではいないのだが、こういう気遣いができるのはエールのいいところだ。
 天道はそう思い、ジュースを受け取りながらプレリーを横目で見た。
 食生活は天道のおかげでよくなっているのだが、明らかに寝不足とわかるほど自分を追い詰めている。
 ちなみに食生活に天道が口酸っぱく干渉してきたため、若いメンバーには煙たがれているが、フルーブなどは感謝をしてくれていた。
 まあ、それはさておき。天道は確かに妙だと思う。
 この街の中央に存在する鉱山はただならぬ雰囲気をまとっている。
 なのにここに居るヒトたちはとても平和に過ごしていた。
 それはいいことなのだ。特に天道が口を出す必要もないだろう。
「ここは外れではないのか?」
「……まだわかりません。もう少し調べてみましょう」
 プレリーの表情が曇る。彼女がドクターCLのことを考えているのは一目同然。
 もともとオーバーワーク気味だったのだが、彼女の姉に擬態したワームと出会ってからは特に酷い。
 睡眠時間を削っているようだが、他人がいっても聞かないだろう。どこかで緊張の糸が切れて痛い目をみなければいいのだが。
「そっか、じゃあプレリー、アタシと一緒に行こう」
「エール、これは……」
「わかっているって、調査でしょ? 天道、そっちは任せていいかな?」
 エールが尋ねてくるが、天道の答えは決まっている。プレリーを気遣っての行動だ。
 天道は「任せろ」と告げて、エールがプレリーを引っ張っていく。
 天道は一人静かに踵を返した。
 

 う〜ん、と声が漏れながらエールは背を伸ばす。
 日差しが温かく、活気が溢れる街のヒトビトの声が聞こえてくる。
57ロックマンZX × カブト ◆SaBUroZvKo :2010/02/25(木) 21:11:15 ID:hDFQ+o+m
 平和で穏やかな街だ。エールはプレリーには悪いが、ここで見つかったモデル∨の反応が外れであって欲しいと願っていた。
 戦闘になれば巻き込まれるのは力のない彼らだ。
 十一年前のイレギュラーの起こした災害に巻き込まれた過去を持つエールとしては、それだけは避けたい。
 守るための力を求めたといっても、エールはもともと平和を愛する少女だ。
 争わないですむならその方がいい、とつねづね考えていた。
 ベンチに座るプレリーに近づき、なにもないね、と話しかける。
「そうね……本当に平和で……。街の調査は今日で切り上げて、明日は鉱山に向かってみましょう」
「うん。けどまあ、こっそりいかないとね。ついてこれる?」
「エール。私はこう見えても、ガーディアンの司令官ですからね」
 プレリーがクスリ、と笑ってエールに返事する。ようやくプレリーが笑った、とエールは喜んだ。
 プレリーは可愛いのだから、もっと笑えばいいのにとエールはつねづね考えている。
 とはいえ、姉に擬態したワームと出会えばそんな余裕もなくなるのが普通だとは思うのだが。
 二人が和んでいると、道路の一角が騒がしくなる。なんだろうか、とエールたちが視線を向けた。
 エールは映った光景に唖然として、ライブメタルを掴んで地面を蹴った。
「みんな、そこをどいて! ダブルロックオン!」
 エールが叫び、赤い装甲をまとうロックマンゼクスへと変身を終えて跳躍する。
 人だかりの中央、白い装甲のアルマジロ姿のフォルスロイドへと剣先を向けた。
「アナタ……プロメテたちの仲間のフォルスロイドね!」
「いかにも。そなたは……」
 フォルスロイドが口を開く前に、エールに対してブーイングが発せられる。
 唖然としているエールへと、次々ヒトビトが文句をいってきた。
「アンタ、いきなり現れてなんだ! 危ないじゃないか!」
「スティールさんにそんなものを向けて、何様のつもりだい!」
 などと非難がエールへ向けられる。始ての出来事にエールが戸惑っていると、スゥーッとフォルスロイドが息を吸った。

「喝(カッ)!!」

 極大なフォルスロイドの声量にエールだけではなく、周囲のヒトビトも耳の機能が麻痺をする。
 コホン、とフォルスロイドが咳払いを一つして、周囲を見渡した。
 キーンと鳴る耳を抑えながら、エールはフォルスロイドを睨みつける。
 対して、フォルスロイドの方は平然としていた。
「皆さん、彼女は拙者の客でござる。暴言は謹んでいただけぬか?」
 そうフォルスロイドが宣言すると、周囲のヒトビトは戸惑いながらフォルスロイドとエールを交互に見ている。
 なにがなんだかわからないエールに、聞き覚えのある声が届いた。
「エール、変身を解け。そいつはここのヒトたちを巻き込むような真似はしない」
「天道……?」
 エールが疑問符を浮かべながら振り向くと、堂々と近寄ってくる天道総司がいた。
 彼がエールの傍に立ったとき、エールは忠告に従って変身を解除する。
「わざわざ足を運んでいただき感謝いたす。拙者はモデル∨搭載型試作フォルスロイドが一体、スティールエッジ・ザ・アルマジロイド。
エール殿、天道殿、そなたらの武勇伝は聞き及んでいる。ひとまず、拙者の基地へきていただけないでござるか?」
 スティールエッジの提案に天道が迷わず同意している。
 相変わらず罠に飛び込むのを迷わない性格だ。呆れつつも、エールは後をついていく決意をする。
 エールはこのとき避難してもらおうと思っていたプレリーが、ついてくる気であったことに気づいていなかった。
 

 フォルスロイドの部屋と聞かされていたゆえ、どこか偏った部屋なのかと思っていたがそうでもなかった。
 エールたちが通された部屋は畳が敷かれ木板でできた壁の、飾り気のない質素な和室であった。
 通された部屋にて三つの座布団が敷かれ、その上にエールたちは座っていた。
 エールとプレリーは始めての和室で足を崩していたが、天道は慣れているのかピシッ、と背を伸ばして正座していた。
 そのエールらに、お茶を配ってスティールエッジが対峙する。
58ロックマンZX × カブト ◆SaBUroZvKo :2010/02/25(木) 21:12:39 ID:hDFQ+o+m
 なにを企んでいるのだろうかとエールは警戒していると、天道とプレリーがお茶に口を出した。
「って、あんたらはもうちょっと警戒しなさいよ! 毒が入っていたらどうするの!!」
「ご、ごめんなさい、エール。つい、喉がかわいちゃって……」
「落ち着け、エール。なにか仕掛けるつもりならとっくにやっている。ふむ、いい茶葉を使っているな」
「拙者の趣味で取り寄せてもらっているのでござる」
「茶の温度も高すぎず低すぎず。茶葉のうま味を引き出している。けっこうなお点前だ」
「褒めていただけるとは……感謝いたす」
 スティールエッジが礼を告げるのを横目に、エールは変な雰囲気に置いてきぼりを食らわされた。
 たまらず、エールは核心に迫った。もともと細かいことは苦手であったのもあるが、現状はとても不可解なのだ。
「それで、アタシたちをここに呼んでいったいなんの用?」
「……それは私も聞きたい……」
 突如聞こえた、知っている声にエールが思わず立ち上がって振り向いた。
 そこには白いアーマーに横に広いヘルメットを装着した、砂時計型の女性らしいラインを持つ敵がそこにいた。
 エールは思わずその名を呼ぶ。
「パンドラ!? アナタ……どうしてここに? ううん、それはどうでもいい。モデルHたちの居場所を吐いてもらう!」
「そういわれても……もう私たちの手元にはない……。彼らは新しい適格者の……もと……」
 エールが思わずライブメタルを掴んで構えようとするが、天道が手を掴んで制止する。
 スティールエッジもパンドラ相手に首を振り、パンドラはそれに従って杖を収めた。
「スティールエッジにここで戦うつもりはない。その意志に従ってやるべきだ」
「つくづくかたじけない。それで天道殿。お主に申し出たいことがある」
 スッとスティールエッジが紙を取り出してきた。紙に注目すると、手紙であるらしいことに気づく。
 いまどき紙の手紙も珍しいが、直接相手に渡すことにもエールには不可解である。
 しかし、天道には意味は通じているようで、その手紙の意をつぶやいていた。
「果し状か」
「さよう。時間、場所の転送座標は手紙に記入しておいた。拙者と一対一、正々堂々と勝負していただきたい。
お主が勝てば我らの本拠地を明かし、モデル∨を引き渡そう。拙者が勝ったのなら、この地には手を出さないで欲しい。返答はいかに?」
「俺は逃げはしない。丁重に承ろう」
「かたじけない」
 天道があっさりと引き受け、エールが目を見開いて視線を向ける。
 プレリーもお茶を抱えたまま、ポカンとしていた。
「……勝手に決めたら……駄目……」
「このときのためにあらかじめ拙者のやり方はプロメテ殿と乃木殿の同意を得ている。
もとより拙者はなにか仕掛けを持ってはめるのは向いていないゆえ。理解して欲しい、パンドラ殿」
「確かに……プロメテは好きそう……」
 パンドラの無表情な顔に、呆れが含まれたのはエールの気のせいだろうか。
 エールも天道を咎めるように視線を向ける。もっとも、天道は相変わらず平然としているが。
「エール、プレリー。おばあちゃんがいっていた。たとえ敵でも礼を尽くしている相手は無下にしてはならない、とな。
特に相手が戦いを挑むというのなら、迎え討つのが男というものだ」
「聡明な祖母であったようだ。アナタのような方を育てたことを尊敬いたす」
「気にするな」
59ロックマンZX × カブト ◆SaBUroZvKo :2010/02/25(木) 21:13:35 ID:hDFQ+o+m
 もはやエールに言葉はない。二人で話を進め、決闘は決定事項となったようだ。
「立会人にこちらは我が友、黒崎殿を指定したい」
「そうか、ならばこちらはエール。頼む」
「立会人ってなに?」
「居合わせてそれぞれ不正がないように見張るだけだ。今回は見物だけでよさそうだがな」
「買いかぶりでござる。……どうした? パンドラ殿」
 くい、とスティールエッジの腕を引っ張っていたパンドラが、周囲の視線が集まるのを待っていた。
 パンドラは無表情にルビーのような赤い瞳を周囲へ向けながらボソボソと提案を始める。
「その立会人……複数いてもいいなら……私もやる……」
「構わない」
 スティールエッジが返事を戸惑っている間に、天道が了承をする。
 エールはどうにもややこしくなってきた、と思い始めていた。
 パンドラを相手にさらわれたモデルHたちの居場所を聞き出したいが、どうにも手出し無用の雰囲気だ。
 エールはしかたなく、天道に任せることにした。
 

「この街はスティールエッジに守られている?」
「ああ、俺がお前たちと離れて調査をしたところ、あの街は一年前まではイレギュラーが発生していたらしい。
ガーディアンやセルパンカンパニーに助けを求めれないとき、街を救ったのはあのフォルスロイド、スティールエッジということだ」
「通りでモデル∨の反応はあったのに、事件は起きていなかったということですね。なるほど……」
 ガーディアンベースへと戻る道筋ながら、天道はエールとプレリーにこの行動の意味を説いていた。
 エールはフォルスロイドであるスティールエッジを信用しきれていないが当然だ。
 たいがいが人格破綻者であるフォルスロイドを相手にした彼女が、スティールエッジを警戒するのも無理からぬこと。
 天道も実際に顔をあわせるまでは街を守る“ふり”ではないかと疑っていた。
 それは実際会って話をした今では杞憂だとわかったが。
「エール、あいつは信用できる。心から街を守る気でないと……今から俺を襲う子供のように住民に慕われない」
「食らえ! スティールオジさんに手を出させ……うわうわっ!」
「こういうふうにな。坊主、怪我はないか?」
 天道を襲おうとして、つまずいて転んだカルロを丁寧に助けて天道が声をかけた。
 後ろからは申し訳なさそうに妹が謝ってくる。
 天道が様子を見ると、エールは疑うのが馬鹿らしくなっている顔になっていた。
 

 スティールエッジは去っていった天道たちを見送った後、パンドラにお茶を出して一息つく。
 パンドラはそういった仕草もスティールエッジは様になるものだ、とある種感心していた。
「……本当に真正面から……戦うの?」
「拙者はそれしかできぬ」
「“あの男”が作ったのに……アナタは本当、まっすぐ……」
「生まれはさほど重要ではござらん。大切なのは生きざま、と拙者は思う」
 そういうところがフォルスロイドらしくない、とパンドラは感想を持った。
 フォルスロイドはライブメタルを動力源とするため、性格が尖っていることが多い。
 その中でこの穏やかで心優しいフォルスロイドは例外といってもいいものだろう。
「褒められるものでもござらん。結局のところ、拙者は不器用なのをごまかしているだけだ」
「あの子たちは……そう思っていない……」
 パンドラはここにくる際、交流があった兄妹のことをツッコンだ。
 魔女のお姉ちゃん、と呼び慕うカルロとアロエの兄妹は嫌いではない。
 だからこそスティールエッジに問うべきことがある。
「でも……“あの男”の目的を知っている……?」
 スティールエッジは「無論」と返答してさらに続ける。
 その顔にはなにかを決意している様子が浮かんでいた。
「世界を破壊するのが“あの方”の目的なのは充分知っている。されど、パンドラ殿。拙者はこの世界が好きだ」
「……今やっていることは……アナタが後悔すること……」
「うむ、だからこそ拙者はこの身を懸けてやることがある。そのためには、天道殿という大きな壁を乗り越えるくらいでないと、拙者にやる資格はない」
 それは反逆宣言に近い。でもパンドラはなにも言わない。
60ロックマンZX × カブト ◆SaBUroZvKo :2010/02/25(木) 21:15:29 ID:hDFQ+o+m
 彼は世界を愛しているがゆえに、たとえ生みの親でも“あの男”を否定するだろう。
 パンドラは違う。彼女は憎しみを持って、“あの男”を認めていなかった。
 だからだろうか。目の前のフォルスロイドが少しだけ羨ましかった。
 

 しばらくして天道がカルロ兄妹を連れて来た。
 決闘の話を聞いて天道を不意討ちしたということだ。
 笑い話。スティールエッジは天道に礼をいって、兄妹を家に送った。
 パンドラが少しだけ兄妹の相手をしたが、スティールエッジはそのときの穏やかなパンドラの顔を知っていた。



 夜も深まり人気のない鉱山にて、足を踏み入れる影が一つあった。
 雲が切れて月光が姿を照らすと、淡い光の中紫の装甲をまとったロックマンVAが街を見下ろしている。
 幽霊鉱山、という俗称に相応しい不気味さを漂わせる場所で、黙したままロックマンVAは崖を降りていった。
「チッ、静かだな」
『俺がそうした。今見つかっては面倒だ』
 ロックマンVAことペンテの不機嫌そうな声を受けながらも、モデルVAは相変わらず。
 モデルVAによって監視機械の死角をついて潜入に成功したのだ。
 戦いを避けるモデルVAにペンテは多少の不満を持っていたが、近いうちに天道たちと戦える機会があるのを知っている。
 ここで騒ぎを起こせば天道たちと戦う機会を逃す可能性があるため、ペンテはモデルVAに従っていた。
「なんでこんな面倒な真似をしているんだ?」
『なに。最近俺を呼んでうるさい奴を黙らせに向かっているだけだ』
 フン、とペンテは鼻を鳴らして曲がりくねった通路を歩く。
 ロックマンの驚異的な身体能力がなければ、バランスを崩して転がり落ちていっただろう。
 もっとも、ペンテの場合は素の場合も運動能力は高いため、あっさりと通り抜けそうだが。
 通路の先を金網が塞いでいるが、ペンテは蹴って跳ね飛ばした。
「あれか、目的の奴は?」
『フン、始めてか? あれがモデル∨……すべてのライブメタルの元祖だ』
「図体がでかすぎる。生意気だ」
 円環状の通路に、中央に三機の勾玉型の形の巨大な機械、ライブメタルモデル∨がそこに存在していた。
 モデルVAは始めて目にしたモデル∨の感想が「生意気」のペンテに思わず吹く。
「それで、あれになんの用だ? モデルVA」
『なに……少しうるさくてな。黙らせる』
 そういってモデルVAが宙に浮く。モデルVAの額が輝いて、光がモデル∨に吸い込まれていった。
 モデルVAが細かく震える。同時にモデル∨から触手がペンテに巻き付いてきた。
 ペンテは払おうと腕を上げるが、モデルVAが静止する。
『身を任せろ。直接乗り込む』
 面倒な奴だ、とペンテがつぶやくのが耳に入るが、モデルVAは構わない。
 一週間前から脳裏にうるさい声が響いてしょうがなかった。だから話をつけにいく。
 強制的に付き合わされることになったペンテは呆れているが、モデルVAは見ていない。
 割れたモデル∨の中央部に、ペンテはモデルVAとともに無音で入り込んだ。
 モデル∨がしばらく瞬き、やがて収まる。いつもと変わらない静寂が訪れた。
61創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 21:15:36 ID:QIM1RCYy
 
62ロックマンZX × カブト ◆SaBUroZvKo :2010/02/25(木) 21:17:10 ID:hDFQ+o+m



 決闘の日は訪れた。
 エールは指定の場所に天道と向かうと、すでに立会人として登場していたパンドラと黒崎を背後に、スティールエッジが佇んでいた。
 天道が「ここでいい」とエールに告げて先に進む。エールは天道の背を見届けながら、ため息をついた。
 相手であるスティールエッジは優しい性格だ。その相手に向かって天道がどこまで本気なのか、エールはつかみそこねている。
 どうも今回は緊張感に欠ける。プレリーも来たがっていたのだが、天道が止めていた。
 そんな必要もない、とエールは思ったのだが。
「わざわざ足を運んでもらって申し訳ない」
「気にするな。黒崎、俺たちの決着は……」
「わかっています。今は我が友、スティールエッジの番です」
 そういって黒崎があっさりと引き、スティールエッジが立ち上がって前にでた。
 スティールエッジは砂時計を取り出し、中央に置く。
 数メートルほど後退したスティールエッジが、黒塗りの鞘に収まった日本刀を腰だめに構えた。
 天道も両足を開き、ベルトへとカブトゼクターをセットする。
「さて、準備はいいな?」
「応」
 カブトの問い掛けにスティールエッジが応え、カブトも鎧を脱いでライダーフォームへと変わる。
 キャストオフで飛びかよう装甲は綺麗にスティールエッジやパンドラたちを避けていく。
 カブトがクナイガンを頭上に持ち上げ、自然体の構えを保っていた。
 同時にエールの肌が粟立った。二人のぶつける剣気が冷たい風となってエールの肌を撫でたのだ。
(さっきまで二人とも……仲がよさそうだったのに?)
 エールが疑問を抱いていると、砂時計の中の砂がすべて落ちる。
 刹那の間、カブトとスティールエッジの地面が爆発しクレーターを作る。
 ギィン、と盛大に刃と刃のぶつかり合う音が雷鳴のように轟いた。
 殺気が爆発し、嵐となって決闘の場に吹き荒れる。必殺の一撃。互いに急所を狙う容赦無さ。
 談笑していた姿を二人は根こそぎ削り取って、殺し合っていた。
 エールはごくり、とツバを飲み込む。
(勘違いしていた)
 緊張感に欠けることなどない。そして天道の忠告通り、プレリーを連れてこないで正解だ。
 あまりにも天道が軽く引き受け、スティールエッジの人柄もあっていつもと違い凄惨な戦いにならないと思い込んでいたのだ。
 それは間違いだと、二人が剣気をぶつけた今理解する。
 天道もスティールエッジも、自分の命以上のものを懸けて戦っている。その戦いが凄惨にならないはずがない。
 鍔迫り合いを繰り広げる二人の背中は、何倍も大きく見えた。
 この戦いは今までのフォルスロイドたちとの戦いを上回ることになりかねない。
 だから、エールや黒崎のような戦えるものを立会人に選んだのか、と気づく。
 巻き込まれても自衛できる者のみ、この戦いを見届ける資格があったのだ。
 ごくり、と緊張のままツバをもう一度飲み込む。命以上のやりとりを繰り広げる二人を前に、エールはただ目を逸らせずにいた。
 

To be continued……

 
63ロックマンZX × カブト ◆SaBUroZvKo :2010/02/25(木) 21:17:51 ID:hDFQ+o+m
投下終了します。
感想雑談質問お待ちしています。
それでは失礼。
64創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 21:44:26 ID:+NpE6IeM
投下乙です
いやー、スティールエッジさんいいキャラだわ
65創る名無しに見る名無し:2010/02/25(木) 23:50:55 ID:0zNPCyju
投下乙
スティールエッジさんがいいヤツで泣けるでぇ!
だが、そこはかとなく不穏な空気の予感!
66創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 18:06:16 ID:McsfsDKf
スポーン × 超電磁砲を作った者です。新作である仮面ライダーW × とある魔術の禁書目録を
投下します。

オリジナルのドーパント、設定、キャラクターがありますがご了承下さい。
67W×禁書目録:2010/03/03(水) 18:07:26 ID:McsfsDKf
第1話  風都から来た男

東京都の実に三分の一を占める巨大な街である学園都市。その人口はゆうに二百三十万人になり、大部分の人口は学生である。
高さ五メートル、厚さ三メートルの完全な円形のコンクリートに囲まれた学園都市はさながら一つの国のようであった。
学園都市にいる学生は他の街にいる学生にはない特別な「力」を持っていた。その力とは腕力でも権力でも財力でもない。

その力とは超能力であった

全部で二十三学区に区切られた学園都市にいる学生で超能力を持っている学生は七人しかいない。その七人しかいないかと言うとそうではない。
能力はレベルというランクで分けられているのだ。レベルは0〜5までで、レベル0の者は無能力者、レベル1の者は低能力者、レベル2の者は異能力者、
レベル3の者は強能力者、レベル4の者は大能力者、レベル5の者は超能力者に分けられる。

レベル5ともなれば軍隊とも渡り合えるほど強力な力を行使できる。

ここ最近の学園都市は魔術師と呼ばれる者達と、この学園都市の超能力者達との戦いが続いていた。学園都市で行われた覇星祭の際にも
学園都市を支配下に置こうとした魔術師と、学園の生徒との間で戦闘があったばかりである。

その魔術師と超能力者との戦いの場となったこの学園都市に一人の男が足を踏み入れる。

男の名は左翔太郎。職業は探偵である。

風都から2時間かけてこの学園都市にやってきた。

「ここが学園都市か……、噂に聞いた通り凄ぇ街だな」

翔太郎は学園都市のその広大さに感心していた。科学技術では自分の住んでいる街である風都以上かもしれないと考えた。
風都以外の街で探偵の仕事をするのは始めてだ。土地勘もないし、少し苦労するだろうと思った。

「ぼやぼやしていられねえな……、早くナワリを見つけねぇと……」

翔太郎の持つ写真にはアラブ系の男性が写っていた。



二日前、翔太郎はここ最近風都で起きている十字教教会連続襲撃事件の犯人を捜してほしいと、十字教教会のシスターから依頼をうけた。
一週間で六つもの十字教教会が何者かに襲撃、焼き討ちにされたのだ。捜索をしていく内に、翔太郎は自身のいきつけのアラビア料理屋
の店長であるナワル・ラディが犯人だと知る。既に十五人の神父、シスターをその手にかけていたナワリは、翔太郎の見慣れた気さくな
料理屋の店長とはまるで別人だった。その顔は狂気に満ちた殺人鬼そのものの顔だった。ナワリは翔太郎の追跡を振り切り、逃走してしまう。

その翌日、今度はナワリの店の店員であり、ナワリの弟であるカリールからナワリ捜索を依頼される。カリールの話によれば、ナワリは学園都市に潜伏しており、学園都市
にいる十字教の神父やシスターを襲おうとしていると言うのだ。

「これ以上ナワルが殺人に手を染めるのは耐えられない。今までナワリを止められなかった自分が恥ずかしい。頼む翔太郎、ナワリを止めてくれ」

涙ながらに懇願するカリールに心を打たれた翔太郎は学園都市へと足を踏み入れるのであった……。

出入りすることの厳しい学園都市に入る為のIDをカリールが用意してくれたのだ。

「この学園都市の通行許可証まで手配してくれるなんてな……。あいつの為にナワリを一刻も早く見つけねえと」

翔太郎は足の歩みを速め、学園都市への奥へと進む。
68W×禁書目録:2010/03/03(水) 18:08:08 ID:McsfsDKf
翔太郎は第7学区内を歩いていた。学園都市でも第7学区は中学・高校といった中等教育機関を主としており、学校に通う学生
や勤務教師たちの生活圏となっており、それに付随する形で生活商店などが立ち並んでいる。

翔太郎は学園都市に来てから、学園都市のその広大さに驚いていた。なにより科学技術が風都かそれ以上に進んでいるかも
しれないと思っていた。

前方から学生らしき二人の女の子が歩いてくる。翔太郎はこの二人にナワリが知らないか聞いてみることにした。

「そこの君達、この男を見なかったかい?」
「いいえ、見ませんでした」
「私も」

頭に大量に花をつけている子と、もう一方の髪の長い子は首を横に振った。

頭の上がお花畑の女の子は初春飾利。柵川中学一年生で、風紀委員(ジャッジメント)である。風紀委員(ジャッジメント)とは
学園都市の治安維持に努める学生選抜の集団である。腕には盾のマークがある腕章を付けており、これが
風紀委員(ジャッジメント)の証だ。

髪の長い女の子は佐天涙子。初春と同じ柵川中学一年生で初春の友人である。

「そうかい。じゃあ見かけたらこの名刺に書いてある、俺の携帯電話の番号に連絡してくれ」

翔太郎は自分の名刺を初春と佐天に渡す。
名刺には”ハードボイルド探偵 左翔太郎”と書かれている。

「「ハ……、ハードボイルド探偵……?」」

二人は翔太郎の名刺の気障ったらしさに目が点になっていた。

「それじゃ」
「え……、はい」
「ど……、どうも」

翔太郎は足早にその場を去っていった。

「ったく……、また手がかりなしか……」

翔太郎はもう二十人以上の人間にナワリの事を聞いたのだが、一向にそれらしい情報を入手することができない。

その時翔太郎の携帯から電話が鳴る。

「翔太郎、ナワルは見つかったかい?」
「いや、もう二十人以上に聞いたんだが一向に見つからねえ」

フィリップからの電話だった。

「翔太郎、カリールも学園都市に行くそうだ。僕は止めたんだけどね……、彼がどうしてもと言うから」

フィリップの話によれば、カリールは自分はただ待っているだけなのが許せず、自分も一緒にナワルを捜したいと言ってきたのだ。

「……仕方ねぇな、じゃあ待ち合わせ場所を決めるか」

翔太郎は渋々カリールの参加を許可した。

「念の為にメモリガジェットを飛ばしとくか」

翔太郎は所持していたメモリガジェットである、バットショットを飛ばす。

「やっぱこれを使うっきゃねぇよな」
69W×禁書目録:2010/03/03(水) 18:10:08 ID:McsfsDKf
”連続十字教教会襲撃事件発生! 犯人はアラブ系の男  学園都市に潜伏中の可能性あり! 見かけたら警備員(アンチスキル)に
通報を!”

上条当麻のクラス全員に渡されたプリントにそう書かれていた。

「おいおい、宗教抗争がここ日本で行われてるなんて……、おまけに学園都市内にそれを持ち込んでくれるなよ……」
物だ。

当麻は帰宅ルートから外れた空き地で、クラスメイトの土御門と共に今朝、担任である月詠子萌から渡されたナワル風都で起した十字
教教会襲撃事件を伝えるプリントを見て呆れるように言う。それに覇星祭の時の魔術師との戦いからまだそう経ってない。
いい加減争いの種を撒かないでほしいと頭を抱えていた。十字教と対立する宗教といえばムスリム教しかない。
この二つの宗教は昔から争いがあったのだ。こういった事件は今に始まらないが、この都市にまでそういった争い事を持ち込まれ
るのは迷惑千万も甚だしいと当麻は思った。

「やっぱこの男……、魔術師か?」
「いや、その男は魔術師じゃないぜよ」
「え?」
「俺の読みが正しければ……、その男は恐らくガイアメモリの使用者……、”ドーパント”の可能性がある」

ガイアメモリとは風都で流通しているメモリのことである。メモリといってもパソコンに使用するメモリではない。
”人体に直接差し込み、人間を超人化させるメモリ”だ。強力なメモリではあるものの、人格を凶暴化させる
などの副作用もある危険性を孕んだメモリでもある。そのガイアメモリを使用する者を総称して”ドーパント”
と呼ぶのだ。

当麻自身も噂程度だがメモリのことを聞いたことがある。

「噂には聞いていたけど、まさかこの学園都市に来るなんて……」
「こいつにとっては十字教の信者なら誰でもお構いなしみたいだからな。ようするに誰でもいいわけだ。
もしかしたら魔術師以上に厄介な相手かもしれないし。カミやんは禁書目録の所に行ってやんな。あの子も十字教のシスターだし」

土御門の言葉に当麻ははっとしたように立ち上がる。

「そうだな……!俺は一足先に帰ってインデックスにこのことを伝えてくる!」

当麻は駆け足で自分の自宅へと急いだ。
70W×禁書目録:2010/03/03(水) 18:11:53 ID:McsfsDKf
ちょっと〜!あたしの饅頭返せぇ〜!」

銀髪の髪の毛に、白い修道服を着た小柄なシスター、インデックスは第7学区内の清掃ロボットに、買った饅頭を吸い込まれ
てしまい、清掃ロボット相手に格闘していた。以前にもドーナツを清掃ロボットに吸い込まれてしまったことがある。

「いい加減返しなさい〜!ぐむぐむ……!」

インデックスは清掃ロボットに噛み付いて、吸い込まれた饅頭を取り返そうとする。

「こらこら、そんなことをしても食べ物は戻ってこないぞ?」
「ん?」

インデックスは声の方向に目を向ける。目の前に、袋を携え、長身の黒スーツを着たアラブ系の男性が立っていた。年齢は27歳位だろうか。
なかなか端正な顔立ちの男だ。

「饅頭の代わりにこれを食べてごらん?」

男は持っていた袋からからオムレツを差し出す。

「こ、これ食べていいの?」
「ああ、モチロンだよ」

インデックスは差し出されたオムレツを口の中に頬張る。

「お!おいし〜〜!も、もっとない?」

インデックスは出されたオムレツの余りの旨さに感激し、二枚目を要求する。

「ああ、あるよ。私に付いてきたら百枚でも二百枚でも食べさせてあげるよ」
「ひゃ……くまいも!?」

インデックスは食べられる量に驚き、男に付いていくことにした。男の口元がほんの僅かに薄気味悪く笑ったことにインデックスは気づかなかった。
71W×禁書目録:2010/03/03(水) 18:16:22 ID:McsfsDKf

「私はナワル。ナワル・ラディだ。以後お見知りおきを」

ナワルは慇懃無礼という具合にインデックスに自己紹介をする。

「オムレツを沢山食べさせてがくれるっていうから来てみれば……何でなにもないんだよ?」

インデックスはオムレツをたらふく食わせてやるというナワルの言葉に釣られてこの廃工場に来た。しかし
見渡す限り食べ物などありそうもない。

「食べ物……ね。”食べれる物”は何も食料だけじゃないことを知っていたかな?それに胃の中に食料を
送り込むだけが”食事なんて言わないんだがねぇ……」

「じゃあ胃の中に食べ物を送り込む以外の食事って何なんだよ?」

インデックスは興味深そうにナワルに質問する。

「それは……」
「ぎ!?」

ナワルはインデックスの細い首を驚異的な握力で掴みあげる

「相手の”苦痛”を喰らうことさ」

ナワルの顔は先程のおどけた時とは別人のように冷酷無比な殺人鬼のそれへと変貌していた。

「が……ぐ?、苦じい……」

ナワルは凶悪な笑みを浮かべてインデックスを自分の頭の高さまで持ち上げる。

インデックスはナワルの残忍な眼光を見て身震いした。この男の目は完全に正気ではない。人を苦しめること、傷つけること、殺す
ことに喜びを感じているような目だ。その目を合わせているだけでも全身から汗が流れ出してくる。


「貴様の五体をバラして十字教会本部に送りつけてやろう。十万三千冊の魔道書の記憶などあのお方は不要だとさ。抵抗するならしてみろ。
私のメモリの力で貴様の自衛手段などいかに脆いか証明してやる。おっと・・・手足の指の骨を一本づつへし折るという手もあるな・・。どの
道貴様は楽に殺しはしない」

「な……んで……ごんな……こと」
「なんで?貴様等十字教の連中が我らムスリムにしてきたことを少しは思い出したらどうだ?償いという名の地獄を見せてやる」
72W×禁書目録:2010/03/03(水) 18:17:26 ID:McsfsDKf
ナワリに首を絞められつつも、辛うじて質問をしているインデックスに、ナワリはあざけ笑うように言う。

「もうやめろ!ナワル!」

怒声が廃工場内に響く。

「誰だ!?」

ナワルはインデックスから手を離す。

「げ……、げほっ!げほっ!」

インデックスはナワルによほど強く首を絞められたのか、激しく咳払いをする。

「お前は……、翔太郎じゃないか。また俺を止めに来たのか?」

翔太郎はバットショットでナワルとインデックスの姿を捉え、カリールとの待ち合わせを後回しにし、廃工場に急行したのだ。

ナワルはまたかという顔で翔太郎を見る。この前逃げたのは常連客であり、顔馴染みの翔太郎を傷つけたくなかったからだ。
ナワル自身、十字教徒、及びそれに連なる者には容赦はしないが、それ以外の人間に対しては基本的に傷つけるつもりはない。

「よせ……、お前とは戦いたくはない。これは俺自身の聖戦(ジハード)だ」
「戦いたくないだと?十五人もの人間を殺した奴の台詞とは思えねえな!」

翔太郎は二日前、ナワリがまだ少女と言っていい年齢の十字教のシスターを殺す所を目撃している。あの時のナワリの目は完全に狂人の
それだった。今更お前とは戦いたくないなどという言葉に翔太郎は怒りを露にする。

「君は早くこの場から逃げろ!」

翔太郎は蹲っているインデックスにこの場から逃げるように警告する。

「……う、うん」

インデックスは翔太郎の言葉に従い、おぼつかない足取りで、ナワルの傍から離れ、廃工場を出る。
ナワルはインデックスを捕まえるでもなく、黙ってインデックスが立ち去るのを眺めていた。

「どうした?あの子を殺すんじゃないのか?」
「十字教の信者など山ほどいる。別にあの小娘でなければいけないなどということはない。どうしても戦うというのであらば
望み通り相手になってやる!」

ナワルは啖呵を切り、ガイアメモリを取り出す。

『ジャッカル!』

そのメモリを自分の右腕に嵌めていた黒い皮の手袋を外し、手に刻まれた生体コネクタにメモリを差し込む。
ナワルの身体は変貌を遂げ、漆黒の身体となり、顔はエジプト神話のアヌビス神に酷似していた。

「いくぜ、フィリップ!」
「わかったよ翔太郎」

翔太郎、フィリップもメモリを取り出す。

『サイクロン!』
『ジョーカー!』

翔太郎、フィリップは自分の腰に巻いてあるWドライバーにメモリを差し込む。
右半身は緑色、左半身は黒色の装甲を纏った仮面ライダーWに変身する。

「いくよ、翔太郎」
「おう!」
73W×禁書目録:2010/03/03(水) 18:27:11 ID:McsfsDKf
第7学区内の常盤大中学の制服を着た女学生が勢いよく自動販売機を蹴り上げて、出てきたジュースを飲み干す。

その女学生こそ学園都市でも七人しかいないレベル5の能力者である御坂美琴であった。美琴の能力は電撃使いである。
美琴が操る電撃が強力無比であることから美琴は「常盤台の超電磁砲(レールガン)」という異名を持っていた


「あ〜、このジュースにはゲコ太グッズが入ってなかった」

美琴の通う常盤台中学はいわゆるお嬢様学校であるのだが、当の美琴本人はお世辞にも言動はお嬢様とは言い難く、竹を割ったような
性格であった。しかしその性格故か生徒間での人気は高いようである。しかし美琴も年頃の女の子、ファンシーグッズに目がないな
どの少女らしさも垣間見せる。

「全く……、お姉さまったらまたそのようなはしたない真似を……」

美琴の行動を呆れながら見ているのは美琴の後輩で、風紀委員(ジャッジメント)である白井黒子であった。


「誰か〜!そのひったくりを捕まえて〜!!」
「あら?」
「え?何?」

黒子と美琴は声の方向に目をやると、スキルアウトらしい不良が女子学生のカバンをひったくり、逃げている様子が飛び込んできた。

「よし!私に任せ……、ん?」

美琴が電撃で、不良の足を止めようとすると、不良の前にスカーフを被った少女が立ち塞がる。

「あぁん!?何だテメェ!」

年齢は美琴、黒子と大差はなさそうな少女はアラブ系の顔立ちで、髪の毛を隠す形でスカーフを被っていた。褐色の肌がにあう美しい少女だ。

「あの人に返してあげなさい。でないと痛い目見るわよ」

少女は不良に臆することなく静かに言う。その言葉は静かながらもどこか凄みがあった。

「うぅ……、どけぇ!!」

不良はポケットからバタフライナイフを取り出し、少女に切りかかる。

「は!」

少女は不良のナイフを持っていた手を捻り上げ、小手捻りの要領で、不良を地面に叩きつける。

「言ったでしょ……、痛い目見るって」

「す……、凄い」

少女の活躍を見ていた美琴はその余りの華麗さと早業に呆然と見とれていた。

「これこれ、ジャスミン、手荒なことはやめなさい」
74W×禁書目録:2010/03/03(水) 18:28:06 ID:McsfsDKf
ジャスミンを注意する年老いた声が聞こえた。

声の主は、アラブ系で、ムスリム教でも高位に位置する導師の服を着た、杖を持ち、髭を蓄えた壮年の男性でった。

「お養父さま……」

ジャスミンは導師服の男に駆け寄る。

「全く……、あんな危ない行為をして……。私に任せておけばあの男も痛い目にあわずに済んだものを」
「お養父さま、お困りの人がいたら救い出すのが私達ムスリム教の信じる教えでは?」

何やら二人で些細な言い争いを始めている。

「あ……、あの……!ありがとうございました!」

不良にカバンをひったくられた女学生はジャスミンに礼を言う。

「いえ、いいのよ。貴方も怪我はなかった?」

ジャスミンは物腰柔らかな口調で女学生を気遣う。
女学生は礼を言うと、二人に見送られながら帰って行く。

「おお、そこの娘さん達」

導師服の男が美琴と黒子の方に近づいてくる。

「君達は常盤台中学の学生さんかね?」

温和な表情を浮かべて導師服の男が話しかけてくる。

「え、ええ……」

「実はわしの養女であるこのジャスミンが常盤台中学に留学生として入ることになったのでな。君達に挨拶しておこうかと思っての」

「え?この人が常盤台に?」

美琴は目の前で華麗な活躍をしたこの娘が常盤台に入学することを聞き、少々戸惑った様子だった。

「ジャスミンよ。よろしくね」

ジャスミンはそう言うと、美琴と、黒子に握手する。

「この方は私の養父で、タハール導師様です」

「タ、タハール導師!?」

ジャスミンの言葉を聞き、黒子は仰天した。タハール導師といえば、サウジアラビアの大富豪にして、世界でも五本の指に入る程の
資産家なのだ。

「タハール導師様、せっかくですからわたくし達ががこのジャスミンさんに第7学区内の案内をして差し上げますわ」

黒子は目の前の世界有数の大富豪に気に入られたいようだ。

「おぉ、それは助かる。ジャスミンや、この娘さん達と上手くやるのだよ?」
「ええ、お養父さま」

美琴と黒子はその時ジャスミンとタハール導師が口元で薄く笑ったことに気づいていなかった。
75創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 18:38:32 ID:YhCNrLu6
ん?続くのかい?
支援必要かな?
76W×禁書目録:2010/03/03(水) 18:54:02 ID:pw+bbONZ
廃工場では激闘が続いていた。

ジャッカル・ドーパントに変身したナワルの戦闘力は高く、Wに変身した翔太郎とフィリップを苦しめていた。

「翔太郎、奴の動きは素早い。サイクロン・トリガーで行こう」
「よし!」

『サイクロン!』
『トリガー!』

射撃戦士、サイクロン・トリガーに変身し、ナワルに連続射撃を浴びせる。
サイクロン・トリガーとはトリガーマグナムに風属性の力を込めての速射戦を得意とする。トリガーメモリの出力が高いため、
サイクロンメモリが押され気味でバランスは良くなく、弾の威力が低めで精密射撃にも適してないが、
連射と風による拡散効果で、より広い範囲の狙撃が可能な形態だ。

「ちぃ!調子に乗るな!」

銃撃を浴び続けたらやばいと感じたナワルは、優れた動体視力で、サイクロン・トリガーの射撃を華麗に避ける。

「は、早い!」
「こういう早い奴ってのは捕まえるのが一番だ!」

『ルナ!』
『メタル!』

ルナ・メタルに変身し、ルナの力で軟化したメタルシャフトを鞭のようにして、ナワルを縛り付ける。
ルナ・メタルとはルナの幻想の力をメタルシャフトに込め、シャフト本体をムチのようにしなやかかつ自在に操り、敵を
拘束したり、投げ飛ばしたりなどのトリッキーかつ豪快な技を使うことが可能な形態だ。

「ぐぅ!」

メタルシャフトに巻きつかれたナワルはありったけの力で足掻く。

「大人しくしろナワル!」

翔太郎はメタルシャフトに縛られたナワルを自分の手前まで引き寄せる。

「生憎だが、まだ俺は捕まるわけにはいかん!」

ナワルは口から光弾を発射し、Wに当てる。

「うわぁ!」

Wはナワルの光弾を受けて後ろに吹っ飛ぶ。

メタルシャフトの拘束が緩んだのを見計らい、ナワルは脱出し、廃工場の外に飛び出す。

「翔太郎!ナワルが逃げる!」
「待て!」

しかしナワルは素早く、廃工場の外に出たが、もうナワルの姿はなかった。

「ちきしょう……、また逃げられたぜ」

翔太郎は二度もナワルを取り逃がしたことを悔しがる。

「仕方ねぇ、フィリップ、俺はカリールとの待ち合わせの場所に行く」
「わかった」

翔太郎は変身を解除し、カリールとの待ち合わせの場所に向かった。
77W×禁書目録:2010/03/03(水) 18:55:20 ID:pw+bbONZ
「しかし宗教対立かぁ……、まさか十字教系以外の宗教もこの街に入り込むとはね」

当麻は自分のマンションのエレベーターで教会襲撃のプリントを眺めていた。

「そんな争い事をこれ以上増やしてたまるかよ……!」

当麻は不毛な争いを一刻も早く終わらせようと考える。

「ただいまー、今帰ったぞインデックス」

当麻は部屋は電気を付けておらず、インデックスはまだ帰っていないのかと思った。

「と……、とうまぁ……」

自分の部屋から消え入りそうな声で当麻に話しかけてくる声……、間違いないインデックスだ。

「どこにいる?インデックス!?」

これはただ事ではなと思った、当麻は急いで自分の部屋に入る。

インデックスが布団の毛布を被って、床に蹲っていた。

「どうした?インデックス?」

「とうま……」

インデックスの目は涙が滲んでいた。ナワリに首を絞められた恐怖が忘れられないのだ。

「ど、どうしたんだ?インデックス!?」

「今日……、襲われたんだよ……、ムスリムに……」
78W×禁書目録:2010/03/03(水) 18:57:37 ID:pw+bbONZ
「ここが学園都市か……、風都に似てどこかきな臭い街だ」

学園都市に入ってきた赤い革ジャンの男は風都警察署超常犯罪捜査課課長の照井竜だ。
照井もまた、ナワリを追ってこの学園都市に入ってきた。

「今回は真倉を署に置いておいて正解だったな……」

この学園都市は風都以上に危険な街だということを予感していた。それを踏まえ、今回は一人で乗り込んだのだ。

「左の奴も来ているという情報があったが……、俺は俺のやり方でやるか。ここは風都じゃないしな」

以前、翔太郎と誤解から戦った際にも風都のルールに従うということで和解した。しかしこの学園都市になれば話は
別だ。ここで思い切り自分流の捜査ができるのだ。

「まずはこの学区から調べるか」

照井は学園都市の第7地区へと足を運んだ。

「貴方、風都署の刑事さん?」
「そうだ。お前達は?」
「風紀委員(ジャッジメント)ですの」

照井が第7地区で調査を進めていると、照井の前に立ち塞がった二人の女学生がいた。
常盤台の超電磁砲(レールガン)御坂美琴と、風紀委員(ジャッジメント)の白井黒子だ。

「照井竜、貴方を連続十字教会殺人の犯人として拘束します!」
「何……?」

照井はわけがわからなかった。自分が教会襲撃の犯人を追う為に学園都市に入ることを許可されたのだ。
捜査をしているのに風紀委員(ジャッジメント)に捜査妨害をされ、あまつさえ犯人扱いとは。

「一体どういうつもりだ?」
「私達は目の前にいる犯人を捕まえるだけ……、その事がなにか?貴方、自分が何をしたか胸に手を当てて考えて
下さらないかしら?貴方がわざわざわたくし達に捕まりきた理由をお聞かせ願いませんか?」
79W×禁書目録:2010/03/03(水) 18:59:18 ID:pw+bbONZ
照井はここまで学生にコケにされるとは思わなかった。ここは力づくでわからせるしかない。その時、美琴の電撃が照井の足元を走った。

「電撃だと!?」
「そ、あたしは常盤台の超電磁砲(レールガン)って呼ばれててね。素直に捕まったほうが身のためだよ?それからあんた、なんで教会を
襲ったわけ?」

「俺に……」
「はい?」
「俺に……質問を……するな!」

照井の怒りは頂点に達し、アクセルメモリを取り出す

『アクセル!』

照井はアクセルドライバーにアクセルメモリを差し込む。

「変……身!」

スロットルを捻り上げ、真紅の装甲を纏った仮面ライダーアクセルに変身する。

「さぁ、振り切るぜ」
「こいつ……、変身した!?」
「お姉さま、この方相手に手加減はいらないようですわね」

照井はコケにされ、完全に頭に血が昇っていた。

「来てみろ学生。風都の警察を怒らせたらどうなるか思い知らせてやる」

次回 ムスリムの矜持
80創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 19:01:13 ID:pw+bbONZ
>>75
すみません・・・・。家のパソコンで連投してたらアク禁食らってしまいましたorz
仕方なく近所にあるネカフェで投下しています。ご迷惑かけてすみません。

とりあえずこれで1話は投下終了です。
81創る名無しに見る名無し:2010/03/03(水) 19:16:07 ID:YhCNrLu6
投下乙!
さるさん規制は厳しいからね
確か分数が(XX:00)になった瞬間に解除されたような気がしたけどね

Wネタは面白そうだね、次回に期待。
82創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 09:38:37 ID:dS8weKtj
W × 禁書目録の作者です。これより2話目を投下致します。
83創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 09:39:37 ID:dS8weKtj
第2話 ムスリムの矜持

翔太郎は、先の戦いでナワルを取り逃がしたことを悔いつつ、カリールとの待ち合わせの場所でカリールを待っていた。
ナワルはもう自分の知っているナワルではない。シスターの少女の首を締め上げている時の顔を見て分かった。
なぜあそこまでナワルは十字教に敵意を持っているのだろうか?過去になにがあったのだろうか?二日前の捜査では
フィリップにナワルの過去を調べろとまでは言わなかった。カリールに聞いてみるのがいいだろうか?

「翔太郎、遅れて済まない」

カリールが来た。カリールはナワルの弟で、今年二十歳になったばかりだと以前ナワルから聞いた。顔立ちはナワルを少し幼くした
ような感じの青年だ。

「翔太郎、念の為に僕も来たよ」
「フィリップ、お前もか?」

フィリップもカリールに同行して学園都市に来た。フィリップは学園都市を直にこの目で見たいので来たのだ。
このフィリップの検索好きぶりには翔太郎も時々参ることがある。大方「地球の本棚」で学園都市のことを調べて
興味が沸いたのだろう。「地球の本棚」とはフィリップの精神世界にあるアカシックレコードのような物だ。
真っ白な空間に無数の本棚が並んでおり、それらが「地球の記憶」のデータベースとなっている。
フィリップが検索をかける(キーワードを唱える)と自動的に本が選抜されていき、任意の情報が入った本に絞り込むことができる。
このフィリップの能力があればこの学園都市に存在する数多の能力者達の仲間に入れるだろう。

「翔太郎、この学園都市を調べたら色々興味深い物が出てきたよ。特に興味があるのはこの学園内にいる能力者達と、その能力なんだが……」
「おいフィリップ!今はナワルの捜索が先決だ!お前の検索趣味の時間じゃねえ!そんな事は後からでもいいだろ!」

大事な仕事の時にも関わらず、検索趣味全開のフィリップに翔太郎は呆れたように叱り付ける。

「……わかったよ翔太郎。彼を見つけないとまた犠牲者が出るかもしれないからね」

フィリップは学園都市の検索を渋々後回しにすることにした。

翔太郎、カリール、フィリップの三人は手分けして学区内を捜索し続けた。しかし、ナワルを見つけることはおろか、
それらしい人間を目撃したと言う者は誰一人としていなかった。

「翔太郎、こっちにもそれらしい人を見た人はいなかった」
「こっちもだぜ!それよりなんだあの白髪のガキ!人が道尋ねてんのに悪態ついてきやがって!」

どうやら翔太郎は白髪頭の少年にナワルは見なかったかと自分の名刺を差し出して尋ねたら、口汚い言葉で悪態をつかれたらしい。
しかし翔太郎を怒るのを我慢し、その場を後にした。その怒りがフィリップとの連絡で爆発しているようだ。

「翔太郎、怒っても仕方ないよ。それより白髪の少年って言ったよね?この学園のレベル5の能力者で似たような容姿の学生がいたような
……、もしかすると彼の名前は一方……」
「ちょっと待て、フィリップ!」

翔太郎は目の前にいる自分に近づいてくる子供に見覚えがあった……。自分が助けたシスターの少女だ!

「とーま!この人なんだよ!この人があたしを助けてくれた人なんだよ!」

翔太郎が助けた少女はツンツン頭の男子学生と一緒だった。上条当麻だ。

「あんた……、インデックスを助けてくれた人なのか?」
「インデックス……、それがこの子の名前か?」
84創る名無しに見る名無し:2010/03/05(金) 09:40:53 ID:dS8weKtj
「これでも食らいなさい!」

美琴は電撃をアクセル目掛けて放出する。しかし、掠っただけでアクセルは電撃の直撃をかわした。

(これが学園都市に存在しているという能力者か……、噂以上に強力だ)

照井は初めて見る学園都市にいる超能力に驚嘆していた。ドーパントでもない普通の人間が当たり前に能力を有し、
その力はもしかするとドーパントに匹敵するかもしれないとまで思わせた。しかし、いくら能力を使うとはいえ
生身の人間、自分の持つエンジンブレードの直撃を受ければ即死は間違いないだろう。アクセルの力で殺してしま
うのはさすがに照井も気がひける。本気でいけば倒せるかもしれないが、手加減ばかりしていてはいずれこちらが
電撃娘の技の前に敗れてしまう。それにさっきから気になっていたことだが、この学生二人の目がどうもおかしい。
生気がまるで感じられない。一言でいえば目が死んでいるような状態だ。それにこの容赦のない攻撃の嵐、もう一人の
娘はテレポート能力で、ちょこまかと動き回り、こちらをかく乱してくる。

「あらあら、刑事さん。風都でドーパントを相手に渡り合ってきたという実力はその程度ですの?」

黒子は防戦一方のアクセルを挑発する。

(この娘の能力……、この娘の力はテレポートのようだが、物体を移動させることも可能のようだ。さっき針を
電柱にテレポートさせていたが……、物質の固さは関係ないようだな。この力はこの装甲をも貫くかもしれん。
電撃娘よりもある意味厄介だ。早めにこいつを黙らせなければ……!)

照井は黒子の想像以上の能力に脅威を感じ、美琴より先に黒子を倒すことにした。

「調子に乗るな!」

アクセルはエンジンブレードにエンジンメモリの一つであるスチームを素早く装填する。

『エンジン!スチーム!』

エンジンブレードの刀身から高温のスチームを放出し、自分の周りをスチームで覆う。敵をかく乱させる時に使う技だ。

「熱ッ!」

スチームの蒸気の熱さに当てられた黒子が一瞬怯む。その隙をアクセルは見逃さなかった。素早く黒子の後ろにジャンプする。

「悪く思うな」
「う!?」

アクセルは手刀を黒子の首筋に軽く当て、黒子はその場に倒れこむ。腕力が人間時とは比べ物にならないほど増大している変身状態で、
本気で殴ると、黒子を殺しかねない。後で聞きたいこともあるので、気絶程度に留めておく必要がある。

「黒子!?あんたよくも!!」

美琴は黒子が倒されたことに激怒し、放出する電撃をさらに増やす。それが功を奏したのか、電撃がアクセルに直撃する。

「ぐぁ!」
85W×禁書目録 :2010/03/05(金) 09:44:25 ID:dS8weKtj
アクセルは美琴の放った電撃の直撃を食らった衝撃で、倒れこむ。技の威力ではドーパントが放つ攻撃に劣らないものがある。避けているばかり
ではいずれ本当にこちらが倒される。

「これならどう!?」

美琴は両手を地面に置き、電流を地面に放つ。すると地面から巨大な砂鉄が大蛇の如く飛び出してきた。美琴は自身の能力である電気を使い、鉄骨を操ったり、コンピューターに
アクセスするなど幅広い使用法ができる。単純に電撃だけが攻撃方法ではない。

美琴はアクセル目掛けて砂鉄を鞭のように振り下ろす。

「くっ!?」

アクセルは砂鉄の鞭をかわす。まさかこんな攻撃手段もあろうとは。ならばこちらも所持する技というものを見せ付けなければならない。アクセルはエンジンブレードにエンジンメモリの
ジェットを差し込む。

『エンジン!ジェット!』

エンジンブレードの先からエネルギー弾を放出することができる。アクセルはエンジンブレードを振り、砂鉄の鞭目掛けてエネルギー弾を発射する。

エネルギー弾は砂鉄の鞭を破壊し、砂鉄は形状を失い、地面に落ちる。

「ったく!なかなかやるじゃないの!こうなったらあたしも本気になるしかないね!」

美琴は自分のポケットからコインを取り出す。こうなれば自身の最強技、超電磁砲(レールガン)で一気に決着を付ける。

「こちらも同じだ」

アクセルはエンジンブレードにマキシマムドライブのメモリを装填する。

『エンジン!マキシマムドライブ!』

美琴はコインに電気を集中させ、超電磁砲(レールガン)を放出する。その巨大な電撃は今まで放った電撃とは桁違いの威力であった。
負けじとアクセルも、エンジンブレードから巨大なAの形をしたエネルギー弾を美琴の放った超電磁砲(レールガン)目掛け放つ。

二つの大技がぶつかり合い、凄まじい衝撃が周囲を襲う。

「きゃあ!」
「くぅ!」

二人は自分達の大技がぶつかり合うことでできた衝撃波によって、後ろに吹っ飛ぶ。しかし装甲に守られているアクセルの方が衝撃に強く、すぐに起き上がり、美琴の後ろに回りこむ。

「う、う……く、あいつは?」

美琴は衝撃波で吹っ飛ばされ、衝撃を止める為に、咄嗟に地面に電気を送り込み、即席の壁を作った。美琴は恐る恐る壁の向こう側を見るが、アクセルの姿はなかった。

「た……、倒したの?」
「残念だが違うな」
「え!?」
86W×禁書目録 :2010/03/05(金) 09:46:11 ID:dS8weKtj
美琴ははっと後ろを振り向く。そこにはアクセルが仁王立ちしていた。

「ちぃ!」
「絶望がお前のゴールだ……!」

アクセルは電撃を放とうとした美琴に間髪入れず、手刀を美琴の首筋に入れる。

「う……」

美琴はアクセルの手刀により力なく地面に崩れ落ちる。

「手間をかけさせてくれる……」

アクセルは疲れきったように変身を解除する。

「み、御坂さん……、白井さん……!」
「ん?」

照井が声の方向に目を向けると、風紀委員(ジャッジメント)の認証を腕につけた、メガネをかけた女学生が立っていた。
黒子と同じ風紀委員(ジャッジメント)第177支部所属で、黒子の先輩である固法美偉だ。

「この二人を知っているのか?」
「え、ええ……、貴方は風都署から来た照井竜警視ですか?」
「そうだが」

固法は自分の後輩達がはるばる風都から捜査協力に来た刑事に攻撃を仕掛け、あまつさえ戦闘したことに驚愕していた。
立派な公務執行妨害、警官暴行罪だ。自分の後輩達が刑事と戦いを繰り広げている現場を支部の
パソコンで目撃し、慌てて現場に急行したらご覧の有様だった。美琴、黒子が生きていることが奇跡のようだ

「詳しい話はそちらから聞かせてもらおうか……」

照井は鋭い眼光を固法に向ける。勝手に犯人に仕立てられ、尚且つ戦闘する羽目になったのだ。照井の怒りは収まってはいなかった。

「え、ええ……、とりあえず風紀委員(ジャッジメント)の第177支部に二人を運んでいいでしょうか?話はそちらで……」
「いいだろう」

照井は固法の要求を呑んだ。固法は全身から滝のように汗を流し、生きた心地がしなかった。
87W×禁書目録 :2010/03/05(金) 09:48:10 ID:dS8weKtj
「インデックスを助けてくれてありがとうございます。俺は上条当麻っていいます」
「俺は左翔太郎だ。こっちは相棒のフィリップ、こっちが今回の事件の依頼人のカリールだ」

当麻はインデックスを助けてくれたお礼として自分のアパートに翔太郎達三人を招待した。今回のインデックスを襲った相手を翔太郎が捜していると聞き、
何か自分にも手伝えることはないかを聞いた。翔太郎も、自分は探偵で、連続十字教教会襲撃事件の犯人であるナワルを追っていることを当麻に話す。
それに自分とフィリップが仮面ライダーに変身し、風都でドーパントと戦っていることも話した。

「例の連続教会襲撃事件……、その犯人がインデックスを襲った奴だなんて……。見つけたら只じゃおかねぇ……!」

当麻はインデックスを傷つけられたことで頭に血が昇っていた。必ず犯人を見つけて顔面にパンチの一つでも入れなければ気が済まなかった。

「落ち着け当麻。俺達が必ずナワルをとっ捕まえてやる。それにあいつはドーパントだ。お前の手に負える相手じゃない」

熱くなる当麻を翔太郎が宥める。

「俺にも一応力が……、いやそのドーパントに通用するかはわからないですけど……」

当麻は自分が幻想殺し(イマジンブレイカー)という能力を持っていることを翔太郎達に話す。今まで相手にしてきた魔術師、超能力者に対しては異能を打ち消す力を生かし、勝利を収めてきた。
しかしドーパントという新たな敵にこの力が通用するのかどうかは疑問だった。

「幻想殺し(イマジンブレイカー)か……、興味深いね……。あらゆる異能を打ち消す能力というのを是非見たいんだが……」

フィリップが幻想殺し(イマジンブレイカー)に興味を示す。フィリップは学園都市を検索した際に学園内に存在する様々な能力者の異能をも打ち消せる力があるとなればフィリップが興味を
持たないはずがない。

「お、おいおい、フィリップ!また余計な検索だけはしないでくれ!」

翔太郎は慌てて幻想殺し(イマジンブレイカー)に興味を示すフィリップを制止する。捜査の時に余計な方向に脱線しがちなフィリップを止めるのは苦労する。

「あの人の目……、普通じゃなかったよ。過去に何人も人を殺してきた目。あたしにはわかるんだよ」

インデックスは暗い表情でナワルの恐ろしさを語る。確かにあれは殺人狂そのものの目だった。翔太郎自身も目撃している。

「だがナワルがああいう風になったのはお前達十字教のせいだろう?」

カリールがインデックスに冷たい視線を送りながら言う。今まで余り口を開かなかったカリールが口を開いた。

「お前達十字教は自分達がするあらゆることを正当化するんだからな。昔からそうだ。何人もの異教徒を血祭りに上げようがそれが
正しいと思っている。お前達の教義には反吐が出そうだ」

カリールがインデックスの信じる十字教を罵倒し始めた。普段大人しそうな印象のあるカリールだけにこの言動は翔太郎も少し驚いた。

「カリール、お前、十字教が嫌いなのか?」
「ああ、大嫌いだ。この世から消えてほしいと思っている位にな」
88W×禁書目録 :2010/03/05(金) 09:49:43 ID:dS8weKtj
カリールは十字教も、それを信じる信者も神父もシスターも全てが気に入らないのだ。

「当麻といったね。君はそのシスターの保護者なのか?だとしたら悪いことは言わない。そいつとは縁を切った方がいい。でなければ
十字教のあらゆることを吹き込まれ、完全に手遅れになる。俺はナワルが殺人に手を染めるのは望んではいなと言った。しかし十字教徒が
死ぬのことは歓迎しているんだ。あいつらが万単位で死のうが、億単位で死のうが俺にとって、いやムスリムにとってはこの上ない喜びだ」

カリールの心の内を知り、翔太郎は動揺を隠しきれなかった。ナワルを止めてほしいと涙ながらに訴えてきた昨日とはまるで別人だ。

「そんな……、人が死ぬのを望んでいるなんて……、まちがってるんだよ、そんなの」
「利いた風な口を」

カリールがインデックスの言葉が気に障ったのかインデックスを突き飛ばす。

「お前!インデックスに何すんだ!」

当麻がカリールに掴みかかる。

「おい!二人共よせ!」

翔太郎が揉み合う二人を強引に引き離した。

「カリール、俺は心底お前を見損なったぜ。人が死ぬのを望むなんてナワルのしていることとどう違うんだ!」

翔太郎はカリールの酷薄な思考に激怒する。ナワルも確かに以前とは違う人間になっていた。しかしカリールも一緒だ。兄弟二人共
もう翔太郎の知っている人間ではなかった。

「翔太郎……、お前は自分の周りの人間が殺されて、何もするなと言われたら大人しく従うか?俺達ムスリムは奴らを許さない。君も
よく奴等のことを調べるといい。そうすればおのずと答えがわかる」

カリールはそう言うと、当麻のアパートを出た。

「翔太郎……、これは僕達の想像していた以上に根が深いようだね……」
「ああ……」

翔太郎とフィリップは宗教という存在の底知れない闇を垣間見た。
89W×禁書目録 :2010/03/05(金) 09:51:12 ID:dS8weKtj
「うわぁあああ!あたし達は無実なのよーーーー!、…………は?ここは?」

照井に気絶させられ、風紀委員(ジャッジメント)の第177支部のソファに寝かされていた美琴は悪夢を見て飛び起きる。

「あ、お姉さま。お目覚めになられましたの?」
「く、黒子……!」

美琴は見た悪夢が夢であったことと、目の前に黒子がいることに胸を撫で下ろした。

「ようやく目覚めたようだな」

照井は飛び起きた。美琴をやっとかという風に見ながら言う。

「御坂さん、白井さん、自分達のしたことを覚えてる……?」
「あ、固法先輩。あたし達のしたこと?確かタハール導師に頼まれてジャスミンちゃんに第7学区の案内を……」

妙に神妙な表情の固法に聞かれ、美琴が自分と黒子がタハール導師からジャスミンの案内を頼まれたことを思い出す。

「俺と戦ったことは覚えていないのか……?」
「あ、先輩、この人誰?」

美琴は照井の姿を見ても初めて見るかのように答える。

「お姉さま……、わたくしたちのしたことをパソコンの録画カメラで見てください……」

表情が青い黒子が美琴にパソコンに録画されている動画を見るように促す。

「ん?動画が何……?」

美琴がパソコンの動画を見る。

「……え?、えええええぇええええええええええ!?」

その動画には自分と黒子が風都から来た刑事に攻撃を仕掛け、連続教会襲撃事件の犯人として拘束しようとし、戦闘を繰り広げる
様子が撮られているではないか。

「そ、そんな……!あたし全然記憶にない!!」

美琴は必死で覚えがないと言い張る。完全に公務執行妨害、警官暴行罪ではないか。

「覚えがないと言えばそれで済むと……?」

照井から放出される殺気を感じ取り、汗だくになる美琴と白井。そんなはずはない。自分達はこのような行為をするはずがない。
この映像に映っているのは自分達の偽者に決まっている。

「御坂さん、白井さん。流石の私もこれは弁解しきれないわよ」

照井だけではなく固法からも殺気を感じる。絶体絶命という言葉が似合う美琴と黒子はただ表情を青くさせるしかない。

「お姉さま……」
「あ、あたし達どうなるの……?」


次回 学園都市を守る者達
90創る名無しに見る名無し :2010/03/05(金) 09:53:20 ID:dS8weKtj
以上で2話目投下終了です。ついでにおまけも投下しておきます
91W×禁書目録  おまけ:2010/03/05(金) 09:54:55 ID:dS8weKtj
おまけ

美琴の悪夢

「ん……、ここは……?」

照井に気絶させられ、風紀委員(ジャッジメント)の第177支部のソファに寝かされていた美琴は目覚める。

「あ!お姉さま!目覚めましたのね!早くこの録画映像を見てください!」

黒子は慌てた様子で、パソコンの画面を美琴の目の前に持ってくる

「何……?この映像?………………へ?、…………そ、そんなぁあぁぁあああああああ!!」

その動画には自分と黒子が風都から来た刑事に攻撃を仕掛け、連続教会襲撃事件の犯人として拘束しようとし、あまつさえ戦闘を
繰り広げる様子が撮られているではないか。

「そ、そんな!あたし達がこんなことしたなんて!」
「お姉さま、悲しいですが事実ですの。この行為によってわたくしたちは風都刑務所に護送されることになりましたわ」

美琴の頭の中は真っ白になった。映像に映っているのは紛れもなく自分と、黒子である。しかも刑事に攻撃を加えるという
行為をやってのけている。弁解のしようがない。

「御坂さん、白井さん。とうとう犯罪に手を染めちゃいましたね」
「私も初春も御坂さん達がいなくなるのはさみしいです。今までありがとうございました」
「あらあら、御坂さんと白井さんがまさかこのようなことをしでかすとは……わたくしも友人として胸が痛みますわ」
「よう、ビリビリ。お前の顔を見るのも今日が最後になるな。刑務所は大変そうだけどしっかりやれよ」
92W×禁書目録  おまけ:2010/03/05(金) 10:00:04 ID:dS8weKtj
美琴は聞き慣れた声の方向に目を向ける。そこには初春、佐天、婚后、上条の四人が立っていた。

「あ!初春、佐天さんまで!こ……!婚后さん!?、それになんでアンタまで!!」

美琴は動揺を隠しきれなかった。なぜこの四人がこの第177支部にいるのか。

「お前が護送されるのを見送りに来たんだ。いい友達は持っているようだな」

美琴に捜査を妨害された照井が殺気を放出しながら言う。

「そろそろだな」

その時扉が開き、刑事らしき二人の男が入ってきた。

「へえ、このお嬢ちゃん達が照井警視に暴行を加えた子か。可愛い顔に似合わず物騒なことするねぇ」
「そうですよ刃野さん!こういう学生が超能力なんて持っちゃうからこういう事態になるんですよ!」

美琴と、黒子を護送しにやってきた風都署の超常犯罪捜査課に所属する刃野幹夫と、真倉俊は照井を襲った美琴と黒子を
見るなり、からかうようなことを言う。

「これからお前達を刑務所に送る。何、何十年先には出られる。それまでム所で臭い飯にありついているがいい」

照井はそう言うと、美琴と、黒子の両手に冷たく、重い物をガチャリをかけた。

「そ!そんなぁ!固法先輩!助けてください!」

美琴は涙ながらに固法に救いを求める。

「残念だけど御坂さん。今回ばかりはあたしじゃどうにもならないわ。自分のしたことを素直に悔いるのね」

助けを求める美琴を固法は冷たい視線を送りながら切捨てる。

「お姉さま。わたくしはお姉さまと一緒の牢獄でお姉さまと罪を悔います。だからお姉さまも黒子のお傍に……」

黒子は泣きながらは美琴に抱きつく。

「うわぁあああ!あたし達は無実なのよーーーー!」
93創る名無しに見る名無し :2010/03/05(金) 10:00:54 ID:dS8weKtj
おまけ投下終了。楽しんで頂ければ幸いです
94ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 19:46:46 ID:93LHWmAU
投下乙でした!
Wと禁書って組み合わせではイマイチピンと来ないのに、話を読むとしっくり来るから凄いですw
これからも楽しみに読ませてもらいます


一ヶ月以上空いてしまいましたがディケイド×プリキュアの第三話を投下します
遅筆な上に前話に続いて長めになってしまいました、申し訳ありません

注意
※オリジナル要素に、原作の独自解釈が入っています。
※上の要素が駄目な方は、トリップでNGをお願いします
95ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 19:48:05 ID:93LHWmAU

「私たちにも、アイツが何者なのかは詳しくは知らない……」

変身を解いたキュアピーチこと桃園ラブは、同じく変身を解いた士を真剣な目で見据えながら言葉を放っていく。
それは士にだけでなく、その当時仲間ではなかったキュアパッション、東せつなにも伝える意味を持っている。

「あの銀色の怪人は、『全てを一つに』って言ってた。
 そして、その言葉の通りプリキュアを吸収しようとしていたの。一度は街を壊して、その街に住む人達も吸収しちゃった……」

その時のことを思い出したのか、ラブは僅かに肩を震わせる。
ラブにとってはあれはある種敗北の記憶、だが同時に成長したと実感出来る戦いだった。
だが、士はそんなラブを気遣うことなどせずに目を鋭くして顎をしゃくり続きを促す。

「前は、他のプリキュアたちと力を合わせて撃退したの。そのプリキュアとは今日会うことになっているんだけど……」
「ちなみに、その時に使ったのがこのレインボーミラクルライトだナツ!」

そう言いながらナッツは肩から下げたポシェットから一つのミラクルライトを取り出す。
一見するとただのペンライトにしか見えない。
だが、これはただのペンライトではないと士にも分かる。

「これはプリキュアの力を引き出す道具だナツ」
「なるほどな、海東の奴が欲しがりそうな分かりやすい『お宝』だな」
「海東……仮面ライダーディエンドのことナツか!?」

ナッツの言葉に士は驚きに顔を染め、直ぐに呆れに染まる。
手の早い奴だと思っていたが、まさかもう『お宝』に手を出しているとは思わなかった。

「もう手を出してたのか、相変わらず手の早い奴だ。で、あの馬鹿は何処だ?」
「……それが、仮面ライダーディエンドはあの怪人に負けて、吸収されてしまったナツ」
「……またか、アイツは」

士は驚いたような、けれども呆れたように呟く。
確かに海東大樹、仮面ライダーディエンドは強いが、どうにも慢心する嫌いがある。
まさかシンケンジャーの世界と同じようなことが起こるとは。

「全く、面倒ばかり運んでくる奴だ」
「多分、ディエンドの力へと手に入れてアイツは強くなってるナツ! 一刻も早くプリキュアたちが合流しないと……!」

ナッツが汗を流しながら力説する。
ディエンドの力とフュージョンの力の両方を知っているのは今のところナッツだけだ。
その唯一の人物だからこそ、現状の恐ろしさがよく分かるのだ。
自分が持つ情報をプリキュアに伝えるために犠牲になったシロップのためにも、一刻も早くプリキュアとの合流しなければならない。

「でも、ナッツ。思ったよりも早く集まりそうだよ」
「ナツ?」

だが、そんなナッツへとラブは落ち着かせるように笑顔で答える。
次に放たれたナッツの疑問の言葉、その言葉に答えるように呑気な声が響きわたった。


「おーい! みーんーなー! やっほーい!」


その呑気な声は士とせつなを除く四人は良く知った声。
声の主はラブたちと同じプリキュアの仲間、プリキュア5のリーダーポジションの夢原のぞみだ。
ナッツは目を輝かしてのぞみの姿を見つめる。

「ナツ! みんなー!」
96ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 19:49:03 ID:93LHWmAU

「ナッツさん!? いつの間に来てたんですか!?」
「シロップは一緒じゃないんですか?」

ナッツの姿にキュアミント、秋元こまちが驚いたように声をあげる。
彼女たちの頭の中ではナッツはまだナッツハウスに居るはずなのだ。
それにナッツが居るのにシロップが居ないのもおかしいとうららも声をあげる。

「夏みかん、何でお前まで居るんだ?」

その横で、何故かのぞみたちと居る夏海に対して士が呆れたように尋ねる。
夏海はそんな士の様子に若干むっと顔をしかめるが、直ぐに慌てたように口を開く

「士くん、大変なんです!」
「仮面ライダーの偽物が出たんだろう、それぐらい分かる」
「……ひょっとして、士くんの所にも出たんですか?」
「ああ、ナイトとゾルダらしいのがな。動きは悪い上に頭まで悪そうだった」
「こっちはキバでした……なんか、銀細工の人形みたいでしたけど、あれはキバでした」

そう答えて、夏海は考えこむように顎に手をやる。
一方で士は軽く息をつき、先程聞いたプリキュアの敵について説明してやる。
その敵には形を変える特質があり、しかも力を収集するのが目的である。
収集の方法は、とてもわかりやすく人間を取り込むようにして吸収すると言うことだ。
それでこの世界にきて早々海東が取り込まれ、仮面ライダーの力を知られてしまった、というのが今の状態。

「つまり、その敵はプリキュアだけじゃなく士くんとユウスケも狙ってる……ということですか?」
「恐らくだが、まあそんなに外れてはいないだろな。多分さっきのは様子見か、それとも別の目的があるのか……
 まあ、とにかく敵は十中八九、プリキュアたちが戦ったとか言うそいつだろうさ」

士が断定するような口調で言い放つ隣では、ナッツが慌てたように口を開く。

「ナ、ナツ……大変なんだナツ!
 ナッツハウスにあの時の銀色の変なのが出て……シロップが助けに来てくれたナツけど追ってきた奴に襲われて……!」
「ナッツ、一先ず落ち着くココ! とにかくシロップが危ないってことココ!?」

ナッツは動揺しているのか、焦るように早口で言葉を口にする。
そのナッツを諌めるようにのぞみの胸に抱かれたココが口を開く。
幼い頃から共にいたココの言葉にようやくはっとしたのかナッツは軽く深呼吸をした後に頷く。

「仮面ライダー……そういう力を新しく手に入れたアイツに襲われたナツ。
 ナッツはシロップのおかげでラブたちと合流出来たけど、シロップは……」

そこで言葉を切るナッツに、ココは顔を真っ青にする。
シロップは仮面ライダーなる怪人の襲撃を受けて……死んだしまったかもしれない。
もちろん助かった可能性もあるが、それはあくまで希望的観測というものでしかない。
どうしても頭に過ぎってしまう嫌な予測に、ココは顔を青ざめたのだ。

「なるほどな、だいたい分かった。
 つまり、とりあえずは他のプリキュアとそのシロップとか言うのを探すわけだな」

その話に聞き耳を立てていたのか、士は割り込むように口を開く。
ナッツの姿に気を取られすぎていたのか、驚いたようにプリキュア5の面々は士に視線を合わせる。
そこでラブが慌てて前に出て説明をする。
97ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 19:49:57 ID:93LHWmAU

「えっと、こっちはさっきのナッツの話でちょこっと出てた味方の『仮面ライダー』さん。
 それで、この子が新しいプリキュアの東せつな!」
「よろしく」
「門矢士だ」
「……どうもよろしくお願いします」

軽くかれんが頭を下げ、それに釣られるように他のメンバーも頭を下げる。
本来ならもっと盛り上がるはずなのだが、とラブは表情を暗くする。

「ちょっと、嫌なタイミングになっちゃったね」

たははー、と笑いながらラブは溜息をつく。
突然現れた敵と仮面ライダーと言う未知の存在によって新しい仲間と言う明るい話題も台無しだ。
出来る事なら、もっと和気あいあいとした場にしたかった。

「そうだね、だから早く、解決して一緒に遊んで仲良くなろっか!」

ラブのそんな気持ちを読み取ったのかのぞみが声を張り上げる。
何も考えていないような、それでも不思議と頼りになる表情を張り付けている。
一瞬ぽかんとしてしまうが、ラブは釣られるように笑顔になる。
やっぱり仲間と言うのは素敵だ、そしてその輪にせつなも入って欲しい。
それがラブの気持ちだった。

「……お前らプリキュアはあのライダーもどきを倒すんろう?」

その空気を断ち切るように、士は口を開く。
のぞみの言葉である程度場の雰囲気が良くなったと見て、次は現実的な話に持ち込もうとしたのだ。
空気を悪くする、と言ってしまえばそれまでだが、そういう役割が必要なのも事実だ。

「うん、またあんなことするだろうから、放っておくわけにはいかないよ」

のぞみはやはり深く考えていないように軽く返事をする。
この迷わない即決する態度は彼女の長所なのだろう。
そして、それを周りのメンバーがかばい合う。
りんはのぞみを自重させ、うららはのぞみに同調しつつも自分の考えを持ち、こまちはそれを見守り、かれんは冷静に問題を対処し、くるみはのぞみと競争しながら成長していく。
無駄のない良いチームとなっているのだ。

「出来るなら、力を持っている貴方にも手伝って……」
「……まあ、いい」

士はひどく鬱陶しそうな顔をしてかれんの言葉を遮る。
仲間になって欲しい、その言葉はあまり聞きたくないと言わんばかりに。

「俺には俺なりの考えがある、お前らと敵対することはないだろうがな。
 今言えるのは、あのライダーもどきが俺の力を奪おうとか言うなら叩き潰す。それだけだ」

否定しているようなキツイ口ぶりで、結局は協力すると肯定の言葉を放つ士。
のぞみとはまた違うベクトルで変人だとプリキュアの面々は判断した。
そして、夏海は『はぁ……』と疲れたように息を吐いて親指を立てる。
光家秘伝の笑いのツボを突く際の構えだ。


「相変わらずめんどくさいな、士は。素直に協力するって言えばいいじゃないか」


だが、夏海が士の首筋に親指を立てるよりも早く、呆れたような言葉とバイクの排気音が響き渡った。
士と夏海にとっては聞き慣れた排気音だ。
二人の予想通りにそこにはスマートな流線を描くバイク、トライチェイサー2000に跨った青年・小野寺ユウスケの姿があった。
なにか続々と集まってきたな、と士は思いながら軽くため息をつく。
98ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 19:50:53 ID:93LHWmAU

「元々、そういうつもりなんだろ? わざわざツンケンとした態度を取る必要なんかないじゃないか」
「別に俺はそんなつもりはない」

まるで出来た兄が駄々をこねる弟を諌めるようなユウスケの口調にカチンと来る。
士は士なりに考えがあり、それをわざわざ言う必要もないからそれなりの態度を取っているだけだ。
ゴマをする必要もない、だから自然と嫌な奴と取れる態度になってしまうというだけ。

「んー、ひょっとしてその感じだとその子たちもプリキュアなのか?」
「……その子たち、『も』?」

ユウスケの発言にその場に居る全員が不思議そうに声を揃える。
当のユウスケは相変わらず好青年という言葉が似合う表情で声を出す。

「俺もプリキュアに会ったんだ、もうそろそろ来ると思う。
 しかしすごいな、まさか変身しなくても空を飛べるとは思わなかったよ」
「変身しないで空を……? でも、そんな人居たっけ?」
「ちょっと、知らないですね……」
「あれ、でも確かに変身して……キュアブルームとキュアイーグレットだったかな……」
「咲と舞は変身したら空を飛ぶけど、変身しないと飛べないわね」

『あれぇー? おかしいな』とユウスケは言いながら首を捻る。
その様子からユウスケが嘘をついているようには思えないが、変身もせずに空を飛べる仲間は居ない。
そんな中で、新入りのせつなが躊躇いがちに口を開く。

「新しい仲間、っていう人じゃないのかしら?」
「ああ! ええっと……満さんと薫さんだっけ?」
「そうそう、そんな名前だった!」
「だったらそいつらは今何をしてるんだ……!」

さすがだ!と言わんばかりにラブがせつなの言葉を受け入れ、ユウスケもうんうんと頷きながら肯定する。
士がいらついた様に非難の、だが確かに親愛のある言葉、いわゆるツッコミというものを入れる。
そして、お約束と言うべきか、それに答えたのはユウスケではなく空から響く甲高い声だった。


「ちょ、満、薫! 速いよ幾らなんでも! 落ちちゃう! 落ちちゃうぅ!」


その声には士と夏海とせつなを除く全員に聞き覚えのある声だった。
ソフトボール部のエースとして活躍している日向咲、腹から出る良く通る大きな声だ。
全員が空を見上げる。
鳥か?飛行機か?いいやプリキュアだ!と言わんばかりにゆったりと飛んでいる二つの影。
同じような速度でゆったりと着地する。
そこには暗い青色のセーターとロングスカートを着た二人の少女が日向咲と美翔舞を背負っていた。

「舞、ここで良いの?」
「え、ええ……ここがタコカフェ、よ……」
「大丈夫、咲」
「ダメかもしんない……」

ぐったりとした様子で、だが自分の足で咲と舞は立つが、直ぐに備え付けの椅子に座り込む。
空の旅は決して快適ではなかったようだ。

「って、皆居るの!?」

ぐったりすること、数分。
そこでようやく気づいたように咲は半ば叫びのような声をあげる。
まるでコントのようなやりとりに苦笑しながら、ココが頷く。
99ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 19:51:41 ID:93LHWmAU

「久しぶりココ! そっちの子たちが咲と舞の仲間の女の子なのかココ?」
「そうムプ!」
「満と薫だフプ!」

ココの声に反応したのはその当事者でなく、肩に乗っかかっていた妖精のムープとフープ。
二匹の妖精が懐いていることから、決して悪い人間ではないようだ。

「えっと、こっちが霧生満で、こっちが霧生薫。その、空を飛んでたのは……」
「良いの、咲」
「プリキュアなんでしょ? だったら、私たちが自分で言うわ」

説明をする咲が何かを含むような言い方しているのに、勘の良い面子が僅かに顔をひねる。
そして、満と薫は顔を俯かせながら声を振り絞る。
まるで神様に懺悔する人間のようだ、と士は他人事のように思った。

「私は……かつて咲と舞、プリキュアに敵対してた、普通の人間じゃない人間」
「滅びの力を持った、生身でプリキュアとも戦えるような人間。
 咲と舞が居なければ、間違いなくこの世界を壊してたような奴よ」
「で、でも、満と薫は私たちの友達だよ!」
「そうよ、満さんと薫さんは、私たちの大事な友達!」

咲と舞が慌てるようにフォローをする。
ここに居る皆がそんなことで満と薫を迫害するような人間ではないと知っている。
だが、それでも心配だった。
場が固まる、どう言えば良いのか分からないのだろう。
その口火を切ったのは、新たな仲間である東せつなだった。

「私と一緒……」
「そうだね、せつなと一緒だね」

せつなが思いつめたように口を開き、対照的に柔らかくラブが笑う。
次に美希と祈里が笑い、ラブが説明するように口を開く。
曰く、せつなは最初はラブたちの敵だったと。
曰く、ラブを騙すために近づいたがやがて友情を覚えたと。
曰く、その暖かいものに耐えきれなくなり攻撃を仕掛けるがそれでもプリキュアは受け入れたと。
その言葉に咲と舞、薫と満は唖然としたように口を開ける。
何故ならせつなのプリキュアになる成り立ちは満と薫と全く一緒だったから。
また、この場に居ないキュアブラックとキュアホワイト、美墨なぎさと雪城ほのかが居れば同じく唖然としていただろう。
そして、ほのかは思わず沈んでしまうかもしれない。
かつて親愛の情を覚えたキリヤという少年も、ひょっとしたらふたりと肩を並べて戦っていたのかもしれない、と。

「のぞみ……?」
「うん、大丈夫だよココ。ちょっと思い出してただけ」

一方で、のぞみはかつて鏡の奥に存在する世界で出会った、生まれたばかりで何も知らなかった友達のことを思い出す。
その友達は今はもう居ないが、満と薫とせつなと同じで敵だが友達になった女の子。
プリキュアのメンバーの空気がしんみりとするが、のぞみは笑顔を見せてそれを振り払う。

「いい話だなぁ……なあ、士」
「俺に振るな」
「そうですね……」

僅かに涙ぐんでいるユウスケに、士は冷たく突き放し、夏海は聞かれても居ないのに頷き返す。
こんなのばかりか、と思いながらも海東のようなのばかりというのよりはマシかと考え直す。
根はいい奴だがひねくれている士が居る分、割合は取れているのかもしれない。
100ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 19:52:53 ID:93LHWmAU


「あかねさん、あかねさん! もう皆来ちゃったりしてますかー?!」


まるで空気読んだような、場の雰囲気が切り替わった瞬間に声が響く。
何度目ともなる、一部の人間以外には聞き覚えのある声。
弾むようなこの声は美墨なぎさだろう、そう思いながら全員がそちらを向く。
やはりそこには美墨なぎさと雪城ほのか、九条ひかりの姿があった。
だが、唯一予想外だったのはひかりが抱えている一匹の妖精の姿。

「シロップナツ!」
「無事だったんココね!」
「……」

ココとナッツが目に涙を浮かべながら喜びを示す。
ブラックとホワイトとルミナスの三人と一緒なら無事だろう、そう素直に思うことが出来るのだ。
この三人はバランスの取れたチームだ。
圧倒的な破壊力を持つブラックとホワイトに、プリキュア一の後方支援役のルミナス。
偏ったバランスではあるが、優れたチームであるのは間違いない。

「大丈夫ですよ、今は眠っているだけです」

返事をしないシロップを心配そうに眺めるココとナッツにひかりは優しく微笑みながら答える。

「あー、皆もう来てたのかー……」
「大変なんです、それが……」

なぎさは肩を落とし、ほのかは顔を引き締めて全員に話を始める。
だが、士はそれを聞かずに屋台へと向かう。

「聞かなくて良いのか、士?」
「いい、多分同じだろう。このことに関しては、だいたい分かったしな」

ユウスケの言葉に簡単に答えて士は腰に手を当てて、空を眺める。

「この空が唐突に曇ったのも、アイツの仕業ってことだ」

およそ数キロ先の、曇り切った空を眺めて、士はポツリと呟く。
余人ではその瞳の奥に眠る真意を探りきれない。
その瞳はこの世界で何を映し、何を思うのか。




 仮面ライダーディケイド×プリキュアオールスターズDX みんなともだち☆奇跡の全員大集合!


         【闇の戦士のライダーパワー! プリキュア最後の日!?】



.
101ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 19:53:44 ID:93LHWmAU

「あれって……!」

なぎさが唇を噛み締めながら呟く。
見覚えのある風景だ、友達が増えた素晴らしい日であったが、同時に許せない敵を目の当たりにした日。
その敵は生きており、また悪事を企んでいる。
友人との変哲もない日々が大好きななぎさとしては見過ごせるものではない。

そして、それはなぎさだけではなく他のプリキュアも同じだったようだ。
全員が顔を見合わせ、頷き合い変身アイテムを手にとる。

「落ち着け」
「そ、そうやでー! 今はとにかく落ち着くんや!」

だが、それを諌めるように士とタルトが口をはさむ。
士はたこ焼きを作りながら、プリキュアたちへと言葉を投げかける。
タルトは止めたは良いものの、言葉が上手く見つからないのかオドオドとしているが。

「あれが敵の攻撃なんだろう? だけど、ここまでは届いてない。
 そして、前も似たようなことがあったけど元に戻ったんだろう?
 なら、今は落ち着いて対策を練るべきだと思うがな」
「せやでぇー。勇み足で飛び出してそのまま落とし穴に落ちたら洒落にもならへん!」
「そうナツ……」

士の言葉にタルト、それにナッツも同調するように頷く。
そして、ミラクルライトを取り出しプリキュアたちに話しかける。

「推論に過ぎないナツけど……多分、アイツはプリキュアの力が天敵なんだと思うナツ。
 ディエンドは簡単に吸収されちゃったけど、ピーチたちの吸収にはちょっと時間がかかったナツ。
 プリキュアたちはそれぞれが持つ特性は違ってもベクトルは同じ光の力……それがアイツの弱点なんだと思うナツ。
 そして、ここまであの曇り空が完全に届いていないのはプリキュアたちが集まってるからナツ」

ナッツの言葉にプリキュアたちは完全に足を止める。
士とタルトとナッツ、一人と二匹の言葉を合わせるなら確かに今は急ぐ必要などないのかもしれない。
だが、フュージョンを野放しにしてはおけない、という気持ちが嫌と言うほど表情に現れている。
士は僅かにため息をつき、たこ焼きをひっくり返す。

「たこ焼きが余っていたんだ。そのついでに新しいのも出来たから、せめてこれを食っていけ」
「……あかねさんがバイトが入るって言ってたけど、ひょっとして士さんなんですか?」

ほのかが目を丸くしながら、人数分のたこ焼きを持って外に出てきた士に尋ねる。
そうだ、と士は短く答えテーブルにたこ焼きを置いていく。

「あの……あかねさんは?」

その言葉に、状況が状況なだけに聞きたかったが聞けなかったひかりがオドオドとした様子で士に尋ねる。

「……さあな、買出しに行ってそのまま敵に飲み込まれたのかもな」
「そんな!」

たこ焼きを並べながら士はタンパクに答える。

「落ち着け、話を聞く限り前は敵を倒したら元に戻ったんだろう?
 吸い込んだものは敵が倒されれば元に戻る、それが分かっている以上今は落ち着いて対策を取る時だ」
「そうは言っても……」
102ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 19:54:59 ID:93LHWmAU

なぎさが僅かに顔をしかめる。
直接の後輩として可愛がっているひかりを煽るようなことをいう士の言葉を簡単に肯定はできない。
言っていることは正しいとは思う、だが言い方というものがあるのではないか、ということだ。

「ほれ、とりあえず食べろ。腹が空いてはなんとやら、だ」

そう言って焼きたての大量なたこ焼きをテーブルの上へ置き終わった。
ほかほかの湯気がたち、上に載せられたかつお節がゆらゆらと風にゆられまるで生きているようだ。
ついでと言わんばかりにジュースをジューサーごとテーブルに置く。

「ああ、金は払えよ」
「え、ええ!?」
「ひどいマッチポンプね……」

祈里が士の言葉に叫びを上げ、美希がたこ焼きを引くついた顔で眺めながら呟く。
確かに勝手に作って金を払えとはひどい話だ。訴えられても何の文句もできない、というか訴えられるべきだ。
元々集まってたこ焼きを食べるつもりだったが、こんなやり方はどうも納得できない。
とは言え、こちらを落ち着かせるための行動だと思うとこういう強引なのも悪くはない。

「おお、えらい美味いなぁ!」
「プリプー!」

沈んだ雰囲気の中、先に声を上げたのはフェレットのような妖精、タルトと赤ん坊型の人形を思わせる妖精、シフォンだった。
元々食い意地の張ってあるタルトと赤ん坊そのものなシフォンには美味しそうに漂ってくる香りは我慢できなかったのだろう。
その二人の言葉に、釣られるように妖精たちが食べていく。

「美味しいメポー!」
「いつものと違って、なんか新しい感じがするポポ!」
「本当……美味しい……」

まずは我侭な妖精の代表格であるメップルとポルンが食べ、次にパン作りが好きな満が興味津々に口へと運ぶ。
それにつられて他の面々もたこ焼きを食べていき、それぞれが感嘆の声をあげる。
自分のたこ焼きをほめる声に鼻高々な士は、一方で一角に座っている一団へと近寄る。
ほのか、かれん、美希、ナッツのこの状況で食い意地を張らずに何かを考えている一団だ。
最も、美希はたこ焼きが苦手なだけなのだが。

「で、そいつはどういう奴なんだ」
「士さん……」

ほのかが驚いたように声を上げるが、直ぐに顔を引き締め直して口を開く。

「一度、私たちの前に現れた敵は攻撃を仕掛けてきました、何の警告も発さずに。
 そして、一度技をくらって飛散せずに空に逃げて行った」
「その後に空が突然暗くなったところがあって……そこに向かっていると敵の襲撃にあった。
 最初みたいに一体だけの化け物じゃなく、徒党を組んだ化け物の集団に」
「私たちは、最初に敵とあって戦ったんですけどその時に敵が力が足りない、みたいに言ってたわね。
 しばらくは何もなかったけど、そんなに間を空けずに街が破壊されて……明らかに力を増したアイツと戦って、一度は押された」

順にほのか、かれん、美希の順番の言葉だ、そしてそれを整理して士は考える。
恐らく敵の最初に襲いかかってきた、というのはナイトとゾルダのポジションだろう。
不完全なコピーで弱かったのではなく、技を受けて力を手にいれるために弱くしていた、と考えるのだ自然か。
聞いた話では、他のプリキュアの対応も士と変わりはなく真正面から撃破したらしい。
つまり見事に士たちは敵の作戦に引っかかったというわけだ。

「……士、聞きたいことがあるナツ」
「ナッツ?」
「仮面ライダーの力は恐ろしいナツ。それはディエンドとディケイドを見たからこそ、ナッツはそう思うナツ」
103ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 19:57:01 ID:93LHWmAU

突然口を開いたナッツにかれんは不思議そうに問いかけるが、真剣な瞳をしたナッツは士を見据えたままに言葉をつなげる。
やがて、その隅の一団に気づいたのかこの場に居る全員の視線が士とナッツに映る。

「ナッツが読んだ文献にはディケイドは世界の破壊者、言うなら憎むべき敵として書かれてたナツ。
 もちろんナッツはこうして味方をしてくるディケイドの印象が悪いわけじゃないナツ。
 でも、あの文献はちゃんとした信用出来るものナツ。その文献に書かれてた、ということは何か理由が……」
「ナッツさん、その、士くんは」
「俺は過去の記憶がない」

夏海が耐えきれずと口を挟むが、それを封殺するように士が言葉を重ねる。
そして、ナッツの真剣な瞳を見返しながら、言葉を続ける。

「俺が何者なのか、俺がどこから来たのか、俺が何をするべきなのか、俺が休める場所はどこなのか。
 ……それは分からない。だが、俺はここに俺として居るし、俺だけの考えで考えることが出来る。
 そう出来る以上、俺は俺のやりたいようにやるだけだ」

ぶっきらぼうに言い切り、ジュースに口を含む。
その言葉は決してナッツの聞きたいことに対する答えではなかったが、不思議な説得力を持った言葉だった。
ナッツはもう何も聞かずに、たこ焼きに口をする。
それだけで良い、という意思表示なのだろう。

「それに、俺の勘が正しければお茶はそろそろ終わりだ」
「えっ? なんでラピ?」

口元をぬぐいながらディケイドライバーを取り出す士に長い耳が特徴的な妖精フラッピが尋ねる。
だが、士は答えずに曇った空を眺める。
士の視線に釣られるように全員が空を眺める。

その瞬間、雷のような閃光が降り立った。

「これって……!?」

ラブは見覚えがある光景に、震えるような声を出す。
そして、降り立った場所には、一つの銀色が、確かに居た。


『プリキュアァ……』


空から降りてくる銀色の怪人。
その怪人は姿を変える、士たちには見覚えのある姿だ。
仮面をつけ奇妙な形をした銃を持った戦士、仮面ライダーディエンドだ。
ようやく来たか、と士はため息混じりに呟きながら椅子から腰をあげる。
後ろではユウスケとプリキュアたちが何時襲いかかれても反応出来るように身構えている。

「貴方……!」
「おっと、お前らは話したいことは山積みだろうがな。悪いが直ぐに終わらせて貰うぞ」
『全てを一つに……!』
「あんまり、こいつはいい気がしないんでな」

士とフュージョンが同時に腰元からカードを取り出す。
士は一枚のカード、フュージョンは四枚のカード。
それぞれがドライバーにカードを挿入し。

「変身!」

士はキレのある声を上げ、フュージョンは無言でトリガーを引いた。
104ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 20:00:17 ID:93LHWmAU


――――― KAMEN RIDE ――――――

―――――― DECADE ―――――――


――――― KAMEN RIDE ――――――

―― BLADE GALLEN CHALICE RENGEL ――


仮面ライダーディケイドへと、士は変身する。
パンパンと手を払いながら、フュージョンを見据える。
ブレイド、ギャレン、レンゲル、カリスの四人のライダーをフュージョンは召喚する。
吸収したディエンドライバーを使った『カメンライド』だ。
知識を元に自らの分身として作り出したレプリカとは強さが違う。
その四人のライダーがそれぞれのプリキュアたちへと向かっていく。
露払いと言うのだろうか、四人のライダーによって距離を取られディケイドとクウガと夏海の三人とフュージョンが向かい合う。

『仮面ライダーディケイド……強き力の持ち主……私と、一つに……!』
「やれやれ、そのためにこんなことをするとはな……ユウスケ、下がってろ」
「士!」
「一対一が好きなんだろ? お前は夏みかんと一緒に別の敵を警戒してればいい」

戦闘力のない夏海のことを言われるとユウスケは何も言えない。
士の言うとおり万が一他にも敵がいた場合、最も危険なのは夏海だ。
渋々といった様子で下がっていく。

「さて……」

そのユウスケの様子を見てから、フュージョンへと向き直る。
だが、フュージョンはディエンドライバーのトリガーを引き既に攻撃を行っていた。
未だに変身すらしていない士に向かって、だ。

これで仕留めた、とはさすがにフュージョンは思わない。
海東大樹の記憶の中にあった『仮面ライダーディケイド』はそれほど簡単な相手ではない。
それに答えるように、前方から機械音が響いた。

―――――― KAMEN RIDE FAIZ ―――――――

―――――ATACK RIDE ACCEL FORM ――――――

「ったく、気の早い奴だ」

ファイズのアクセルフォームへと変身してフュージョンの攻撃を避けていた士。
それどころかフュージョンの後に回っている上に、追撃と拳を振るう。
アクセルフォームの超高速運動はたった十秒間だが、フュージョンを仕留めるには十分な時間だ。

『ふん……』
「なっ!?」

だが、フュージョンは液体状になることでその超高速の攻撃を防ぐ。
この一撃で動きを止め、ファイナルアタックライドにより決めようとしていたディケイドにとっては予想外の出来事。
その動揺に突き込まれフュージョンの振るう拳によって吹き飛ばされる。

「ちっ!」
105ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 20:01:16 ID:93LHWmAU

衝撃を逃がすように柔らかく着地しながら、ディケイドは仮面ライダー響鬼のカードを取り出し素早くディケイドライバーに差し込む。

―――― KAMEN RIDE HIBIKI ―――――

「はぁっ!」
『考えることは同じと言うことか……』

仮面ライダー響鬼となったディケイドは音撃棒・烈火を振り烈火弾を飛ばす。
グニャグニャと姿を変えるフュージョンには単純な打撃技よりも炎などの方が有効だと思ったのだろう。
フュージョンはディエンドライバーのトリガーを引きその炎を撃ち落とす。

「これでどうだ!」

烈火弾が撃ち落とされたことから、ディケイドは口から紫色の炎である鬼火を吹き出す。
だが、それも液体状となり位置を変えるだけで防ぐことが出来る。
所詮ディエンドと同じ戦法か、とフュージョンが内心で溜息をつくと機械音声が響いた。

―――― KAMEN RIDE RYUKI ―――――

『むっ……』

フュージョンが液体状からディエンドへと姿を戻したときには既にディケイドの姿は消えていた。
なるほど、先程の鬼火は視界を封じるためのものかとフュージョンは得心する。

「はぁ!」

その得心すると同時にタコカフェの屋台の窓から仮面ライダー龍騎の姿をしたディケイドが飛び出してくる。
加賀美の中の世界、ミラーワールドへと侵入することが出来る龍騎の力を使って奇襲をかけたのだ。
龍の頭部の形をした篭手・ドラグクローを嵌めた腕で殴りかかる。

『ぐぅ!?』

身構えていなかったフュージョンの後部に直撃する。
ここでようやく見せた隙を逃さないとディケイドは次々に拳と蹴りでフュージョンへダメージを与えていく。
そして動きが鈍ったと見破った瞬間に気合を込めた蹴りで、フュージョンを後方へと吹き飛ばした。

「はぁぁぁぁぁぁ……はあ!」

息を長く吸いながら引き下げた右腕を思い切り突き出す。
ドラグクローから一つの炎球が猛スピードで飛び出し、フュージョンへと突き進んでいった。
直撃を食らったフュージョンはのたうつように顔を俯かせる。

「これでトドメだ」

そのフュージョンを眺めながら、ディケイドは何処からかケータッチとコンプリートカードを取り出す。
コンプリートカードをケータッチへと差し込み、タッチパネルを順に押していく。
106ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 20:02:32 ID:93LHWmAU

―――― KUGA ―――――

―――― AGITO ―――――

―――― RYUKI ―――――

―――― FAIZ ―――――

―――― BLADE ―――――

―――― HIBIKI ――――

―――― KABUTO ――――

―――― DEN-O ――――

―――― KIVA ――――

低い機械音声で仮面ライダーの名が発声させられる。
ケータッチにあるそれぞれのライダーをモチーフにした紋章を押した後に、左にあるボタンを押す。

―――― FINAL KAMEN RIDE ――――

全てのボタンをタッチしたディケイドは相変わらず堂々とした姿で仁王立ちする。
フュージョンは先程の攻撃を受けてまだふらついている。

―――――― DECADE ―――――――

クウガ、アギト、龍騎、555、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバ。
それぞれのライダーのカードが胸から両肩にかけて伸びるように現れたホルダーに収まっていく。
そして、その9つのカードに反応するようにディケイドのカードを額のホルダーへと差し込まれていく。
それを確認したディケイドは、素早くディケイドライバーを右腰へと差し替え、ケータッチを腰へと装着する。
マゼンダ色をあしらった黒と銀のスーツを着た戦士。
これこそが仮面ライダーディケイドの最強フォーム、コンプリートフォームだ。

「……」

遠目からフュージョンの戦いを見ていたプリキュアたちにも、コンプリートフォームからとてつもない力を感じ取れた。
自分たちが限界に追い込まれて出す全力と同等は間違いなくあるだろう。
そのコンプリートフォームとと相対しているというのにフュージョンは身じろぎもしない。
ディケイドはそんなフュージョンの様子が気にくわないのか、眉をひそめながらケータッチを取り出す。
フュージョンは、とにかく固い。
動きや単体での破壊力ならばディケイドの方が上だが、液体状の身体に対して打撃では確かなダメージが入っていないのだ。
だから最強フォームでさっさと終わらせる、そう目で語りながらケータッチのアギトの紋章をタッチする。

―――― AGITO・FINAL ATACK RIDE・SHINING ――――

「はあああああああああ……!」

ソードモードとしたライドブッカーを腰だめに構え、ディケイドは息を吐きながら構えた。
ディケイドによって呼び出されたシャイニングアギトもディケイドと同じように構える。
フュージョンは何が起こるのかを理解している。
だが、身動ぎ一つしない。
107ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 20:03:41 ID:93LHWmAU

「はああ!」

ディケイドとシャイニングアギトが剣を振るう。
その斬撃は一閃の光となってフュージョンへと突き進んで行く。
フュージョンは、動かない。動かなければ斬撃を防ぐわけるがなく。
その攻撃はフュージョンへと見事に直撃した。

「……呆気ないな」

斬撃が確実に当たったことによりシャイニングアギトが姿を消す。
一人取り残されたディケイドは実感のこもらない言葉でポツリと漏らす。
それこそ言葉通り呆気ないのだ。
一度はプリキュアたちを圧倒し、ディエンドを吸収したにしては簡単すぎる。
だが、終わるときはそんなものなのかもしれない。

「士、危ない!」

そう思いながらディケイドはベルトに装着したケータッチを外していく時、後方からユウスケの声が響く。。
切羽詰った声色から、ディケイドは何が起こったと尋ねるよりも防御の姿勢に構える。

「地面に影が出来てる……上からか!」

そう呟きながら素早く上空へと視線を移す。
そこには巨大な水たまりのように姿を変えたフュージョンが居た。
斬撃を受けて出来た爆発の瞬間に、無事だった部分を液体状として素早く上空へと移動したと言うことか。
身体を液体化させれる敵とはこれほど面倒だったのか、とディケイドは軽く舌打ちをする。

(どう攻撃が来る……? まあいい、こちらから仕掛ける!)

ディケイドはライドブッカーをガンモードへと変化させ、トリガーを引きフュージョンへと射撃する。
だが、ディケイドが攻撃を仕掛けたと同時にフュージョンは銀色の触手へと姿を変える。
数十本はあるだろう触手だ、その触手が猛スピードで迫っている。
幾つかはディケイドの攻撃で撃ち落とされたが、いかんせん数が違いすぎる。
触手のうちの一本がディケイドの腹部へと直撃し、動きが鈍った瞬間を狙い撃ちされるように次々と触手が襲いかかってくる。

「士! くそっ、変身!」

やがて痺れを切らしたようにユウスケが走りながらの変身で向かってくる。
そして、中心に居る触手たちの大本の、触手が枝ならば枝を支えている幹となる円球へと向かってライダーキックを撃つ。
リントで唯一の戦士としてグロンギなる敵と戦ってきたクウガのパワーは強大だ。
押されるようにフュージョンの動きが止まる。

ディケイドは『よくやったユウスケ!』と珍しく人を褒める言葉を発してもう一度ケータッチを取り出す。
ユウスケがクウガへと変身して選挙区に参加した以上、夏海に危険が及ばないよう直ぐ様ケリを着けるべきだ。
故に、ファイズのブラスターモードかハイパーカブトで一気に焼き払うのが有効だと判断したのだ。
斬撃のような線の攻撃ではなく、超火力による面での攻撃。
手馴れた動作でケータッチのボタンを押していく。

「……なんだ?」

だが、一向にケータッチは反応しない。
何が起こったと目を丸くさせながら、何度もボタンを押すが一向に反応を示さない。
ネガの世界で手に入れたからこちらケータッチが使えなくなったと言う経験は一切ない。

「まさか……あの触手に力を吸い取られたのか!?」
108ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 20:04:52 ID:93LHWmAU

ふとその可能性が思いつく。
フュージョンは全てを一つにと口うるさく言っており、その触手による攻撃を何度も受けた。
その隙にケータッチに触れられ、その力を吸い取られたのだとしたら。
力を吸い取ることが出来る、とはわかっていたがここまで簡単に吸い取られるとは思っていなかった。

『仮面ライダークウガ……なるほど、素晴らしい力だ……クウガ、貴様も一つに!』
「はぁ!」

そんなことを考えている隙にも、フュージョンはその姿をディエンドの姿へと変えてクウガと戦っている。
癪ではあるが、ここはクウガと手を組んで戦うのがベターだろう。

『仮面ライダーの力、頂くぞ』
「士! ここは協力して……」
「分かっている、いちいち言うんじゃない!」

そう言いながらディケイドはフュージョンの左へと向かって走り出す。
クウガはその姿を見て頷くとディケイドとは反対方向、フュージョンの右へと向かう。
挟み撃ちの形にするつもりなのだ。

「一気にいくぞ、ユウスケ!」

ディケイドはライドブッカーから一枚のカードを取り出す。
ディケイドの仮面をモチーフにした紋章が描かれたカードだ。
それはディケイドが持つ最高の威力、ディメンションキックを放つために必要なライダーカードだ。
カードをディケイドライバーを差し込む。

―――― FINAL ATACK RIDE ――――

「おう!」

クウガもそれに頷き、腰を落として光を右足に集めていく。
そして、その光が十分に集まるとフュージョンへと走り出す。
マイティフォームのクウガが持つ力を右足に集中させたライダーキックだ。

その二人のライダーが必殺技を放つ姿を眺めながらフュージョンは、僅かに身体を身構えるだけで動きはしない。

――――― DE DE DE DECADE ――――

「はああああああああああ!!」

二人のライダーの最高火力による挟撃。
並の怪人なら二回殺しても余りあるほどの威力だ。
フュージョンもその威力の恐ろしさは十分に分かる。
だからこそ、ライダー達の足との接触面を斜面のように変えて力を逃がしていく。
全ての力を防げるわけではない、ダブルライダーキックはそれほど甘いものではない。

だが、フュージョンは並の怪人ではない力を持っている上にエネルギーを吸収するというタイプだ。

『くっ……がぁ……あああああああああああ!!!』

苦しみに悶えるような叫びを上げながら、フュージョンの身体が膨らんでいく。
パワーを吸収しきれていないのか、とディケイドとクウガは判断してより強く足に力を込める。
エネルギーを吸収出来るとは言え、何時かはパンクは存在する。
その証拠にプリキュアたちの必殺技も吸収しきれなかったためにフュージョンは負けたのだ。
109ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 20:06:21 ID:93LHWmAU

『はああああああああああああ!!!』
「なっ!?」
「うわぁ!」

だが、今はディエンドライバーとケータッチの力を吸い込んだ完全な状態。
そしてライダーキックも僅かに威力が流れている。
膨らんだ身体からエネルギーを弾け飛ばし、ディケイドとクウガにカウンターを食らわす。

『ふ、ふはははは! 素晴らしいぞ仮面ライダ―!』

僅かに息を切らしながら、フュージョンは吹き飛ばした二人の戦士の力を称える。
ディエンドライバーだけを吸収した、あるいはケータッチだけを吸収したフュージョンならば受けとめきれなかったかもしれない。
ゴキリゴキリと首を鳴らしながら、ディエンドライバーを天空へと飾す。
そして、一枚のカードをスロットに挿入し、機械音を響かせる。

―――― ATACK RIDE BLAST ――――

「ぐぅああ!!」
「おおっかぁ!!」

ディエンドライバーから飛び出た幾つもの弾丸がディケイドとクウガに追い打ちをかけるように降り注ぐ。
ライダーキックを弾かれたことによる反動で、身動きの取れない二人はまともに直撃してしまう。
それをフュージョンは冷ややかな目で見下ろし、僅かに一歩踏み出しディエンドライバーをある方向へと纏める。
その方向にはバラバラにしていたプリキュアたちが一箇所に集まりブレイドたちを押している。
フュージョンとしても十七人ものプリキュアをブレイドたち四人のライダーで倒せるとは思っていない。
とは言え、プリキュアたちも四人の仮面ライダーを相手では直ぐに倒せないだろう。
恐らく一箇所に集めて全員の必殺技で一網打尽にするはずだ。
フュージョンの予定通り、ブレイドたちはプリキュアたちを足止めした上に一箇所に集めている。
一枚のカードを取り出す。仮面ライダーディエンドをモチーフにした金色の紋章が描かれたカードだ。
そして、そのカードをディエンドライバーへと差し込み、ゆっくりとプリキュアたちへと銃口を向ける。


―――― FINAL ATACK RIDE ――――


その機械音と共にブレイドたちの姿がカードとなっていく。
突如として消えた姿にプリキュアたちが戸惑いを見せるが、フュージョンは構わずにトリガーを引いた。

「くっ……危ない!」

――――― DI DI DI DIEND ―――――

ケータッチの力とプリキュアの必殺技とこの街に住む全ての人達の存在。
それらを吸い込んだフュージョンの力によって補強されたディメンションシュートは17人のプリキュアたちをなぎ払っていく。
不意打ちになったためブルームとイーグレットも満と薫もルミナスもバリアを張ることが出来なかった。

『きゃああああ!!』

巨大なビーム状となったディメンションシュートにより、プリキュアたちをなぎ払っていく。
無防備に構えていた所への最大火力だ、無事で済むわけがない。
フュージョンは吹き飛ばされたプリキュアたちを眺めて満足するように頷く。
そして、銀色の身体を一つの塊へと巨大な球体へと変えていく。
その身体をゆっくりと上空へと登っていき、十メートルを超えた瞬間にドーム状へと球体から柱が降り注ぐ。

「これ……って……!」

この風景に既視感を覚えたキュアピーチが呟く。
あれはフュージョンがプリキュアを取り込もうとした時と同じだ。
だが、ピーチは立ち上がるのが精一杯だ。
110ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 20:07:27 ID:93LHWmAU

「超変身……! とりゃああああ!」

ドラゴンフォームに変身したユウスケが、高い跳躍力を生かして空中に浮いた球体の上に乗る。
手に持ったドラゴンロッドで球体へと向かって差し込む。

『ぐぅ……!?』
「こいつでも……食らいな!」

ライドブッカーをガンモードに変化させ、銃弾でクウガのフォローを行う。
ディメンションシュートの直撃を免れていた、クウガとディケイドはフュージョンへの攻撃を開始する。
たとえボロボロの身体であろうと決して引かない。
その姿は確かに歴戦の勇士と呼ぶに相応しい姿だった。

だが、フュージョンもせっかくのチャンスを逃すようなマネは避ける。
ここで有効な戦略は何かをフュージョンは考える。
ディエンドの記憶を探り、何がこの二人に有効か、それを考え、直ぐに対策は見つかった。

『全てを、一つに……!』

水銀の球体となったフュージョンの身体から飛び出た十数本の触手。
ディケイドの銃撃、クウガのドラゴンロッドによる切り落としで幾つかの触手が切り落とされる。
だが、二人の身体にダメージを積もっていたこともあり、攻撃を免れた触手が存在した。

「きゃあ!?」

その触手は一直線に、安全だと思っていた位置に居た光夏海を絡めとっていた。

「夏みかん!?」

ディケイドは銃撃を中断させる、と言うより中断せざるを得なかった。
夏海を吸収せずに盾にするようにディケイドへと向けたのだ。
人質の形を取られてしまい、ディケイドだけでなくクウガの動きも止まり、その隙を狙われ振り落とされてしまう。

「くっ……夏海ちゃん!」

着地しながらフュージョンに取り込まれようとしている夏海へとクウガが悲鳴のような声を投げかける。
もう一度攻撃を仕掛けようとするが、ディケイドと共にフュージョンの触手に追撃を受ける。
ダメージの深い身体に追い打ちをかけられ、ついに膝をついてしまう。

「士くん! ユウスケ!」

それを確認した後に、フュージョンは助けを求めるように、けれども攻撃を受けた二人を心配するような叫びを上げる夏海を取り込んだ。

『もう一度、弱らせる……さすれば、仮面ライダーとプリキュアは一つに……』

低い声を出しながら、フュージョンは再び仮面ライダーディエンドの形を取る。
そうして、腰元から一枚のカードを取り出す。
カードの絵を見なくても分かる。
フュージョンはディメンションシュート、もしくはブラストを撃ってくる。
111創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 20:12:17 ID:ZsvaddNl
C
112ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 20:12:26 ID:93LHWmAU

「皆! 一箇所に集まって!」

ボロボロの身体に鞭を打ってパッションが叫ぶ。
パッションの変身アイテム、アカルンが持つ固有能力の瞬間移動。
それを使って逃げることは出来る。
倒すことができない以上、逃げざるを得ないと判断したのだ。
それに反論する人間はいない、何よりも全員が心身ともにボロボロだった。


―――― ATACK RIDE BLAST ――――


だが、一瞬だけフュージョンの方が速かった。
機械音が響き、フュージョンの持ったディエンドライバーから幾つもの光弾が発射される。

「超変身!」

その瞬間、パッションへと向かっていたクウガが素早く背後へと切り返す。
ドラゴンフォームから耐久に優れたタイタンフォームへと姿を変え、タイタンソードを手に持ちアタックライドを切り払っていく。
とは言えタイタンフォームはパワーとスタミナは頭が一つ抜けているが、瞬発力は他のフォームに劣る。
全てを切り払えるわけがなく、幾つか被弾する。
だが、クウガは倒れなかった。

「ここは俺に任せて先にいくんだ! 早く!」
「ユウスケ!」
「安心しろ、士! 俺だって仮面ライダーだ!
 絶対に夏海ちゃんやここの店主さんを連れ戻してくるさ!」
「おい、ユウスケ!」

士はその言葉が強がりだと分かる。
確かにクウガの力の源であるアマダムは強力なものだ、ディケイドの変身の核となるディケイドライバーと比肩するほどに。
だが、今のユウスケはそれを限界まで引き出すことは不可能だ。
ユウスケが未熟なのではなく、アマダムとはそれほど危険な代物なのだから。

士の声を無視するようにクウガは走り出す。
アカルンによる瞬間移動は既に準備が出来てしまっている、今から中止するのは不可能だ。

「ユウスケ!」
「さあ、来い!」

クウガが腰を落とし、真っ赤な複眼でフュージョンを睨みつけ、後方から士の声を聞いたその瞬間。
プリキュアたちはアカルンの力により、その場から消えていった。


   ◆   ◆   ◆

.
113ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 20:13:57 ID:93LHWmAU

丈の長い地味な色をしたコートと同色の帽子を被った初老の男が時計台の頂上にいた。
男の名は鳴滝、それが本名であるのか偽名であるのか、そもそも名前と言うものがあるのかすら知られていない謎の男だ。
これまでディケイドが旅したあらゆる世界に現れ、含みのある言葉をディケイド投げかけてきた男。
その鳴滝が眼鏡越しから暗闇に染まった世界を見下ろしていた。

「こうしてまた一つの世界が崩壊し……他の世界も危険に晒されてしまう……!」

誰に言うでもなく思わず口からこぼれてしまったと言った様子で、鳴滝は憎々しげにつぶやいた。
このプリキュアの世界は本来仮面ライダーが現れるわけがない世界だった。
あの騒ぎの中心にいるフュージョンも、ミラクルライトの力を吸い込もうともプリキュアに敗れるはずだったのだ。
だが、フュージョンは仮面ライダーの力を手にいれたことからプリキュアをも超える力となってしまった。
ディエンドの用いるカメンライドのようなライダーの召喚は行えないが、その知識から幾つものライダーもどきを作り出せるほどの力だ。

とは言え、そのライダーもどきたちはプリキュアやディケイド、クウガに敵うほどの力は持ち得ていなかった。
レプリカである上に、フュージョンが自身の力を分割させたのだから当然であろう。
カメンライドという手もあるが、あれにも限界がある。

だが、それもクウガのアマダムとケータッチの力を吸収してしまった今は少し事情が変わってくる。
アマダムほどの強大な力の源と一つとなったフュージョン、それが作り出すライダーのレプリカならばかなりの力を持っているはずだ。
しかも、それは何度も再生する。
幾らそのレプリカライダーをプリキュアたちが倒し続けようと、その隙にフュージョンは様々な力と一つとなっていくだろう。
そして疲労し弱体化してしまったプリキュアたちを、万全の力を持って叩き潰すはずだ。

「おのれ、ディケイド……!」

ギシリ、と鳴滝は歯を強く噛む。
ディケイドがいなければこんなことにはならなかった。
シンケンジャーの世界に続き、プリキュアの世界にもライダーが生まれてしまう。
全てはディケイドが、破壊者であるディケイドが現れたからこそ。

鳴滝は顔を怒りなどと言う言葉では生ぬるいほどの激情に染め上げる。
そして、全ての元凶であるディケイドへと、胸の内から溢れでそうなほど渦巻く感情をぶつける様に叫んだ。

「おのれ……おのれディケイドォ!」

To be next――――――――――――――――
114ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/03/06(土) 20:15:03 ID:93LHWmAU
投下終了です
115創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 20:56:16 ID:tym+ndda
投下乙!
霧生姉妹はプリキュアの力をもらってる感じでいいのかね。
ライダーの力を取り込んだフュージョン、すっごく強ええぜ。
なんか魔人ブゥ思い出した。

そして、鳴滝ktkr!
お気に入りのプリキュアの世界を破壊されてすっごく怒ってそう。
士くん、鳴滝さんの怒りが有頂天になる前に元通りにするんだ
116創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 22:36:01 ID:UArikEj9
投下乙!
フュージョンやっかいだな
ディエンドに続いてケータッチとクウガまで取り込まれたとなると、かなり厳しい状況か
プリキュアサイドにあまり被害が出てないのが、不幸中の幸いなのかなあ
あと、不謹慎だとは思うが
>加賀美の中の世界、ミラーワールドへと侵入することが出来る龍騎の力を使って奇襲をかけたのだ。
>ユウスケがクウガへと変身して選挙区に参加した以上、夏海に危険が及ばないよう直ぐ様ケリを着けるべきだ。
この辺の誤字で吹いてしまったw ガタックの中に侵入しちゃ駄目だw
117創る名無しに見る名無し:2010/03/06(土) 22:58:05 ID:tym+ndda
作者が誤字をしたのも乾巧って奴の仕業なんだ
118創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 20:01:29 ID:gXAlGEsF
何だって!?それは本当かい!?
119 ◆jPpg5.obl6 :2010/03/09(火) 14:45:03 ID:K4NVxoD1
以前、<仮面ライダーディケイド × ローゼンメイデン>を書いた者です。
調子に乗って、<仮面ライダー × ローゼンメイデン>の第2弾を書いたので、15時から投下したいのですが、大丈夫でしょうか?
120 ◆jPpg5.obl6 :2010/03/09(火) 15:57:45 ID:K4NVxoD1
・・・えっと、勝手ではありますが投下させていただきます。

今回は電王と<ローゼンメイデンの策士>と言われた彼女とのストーリーです。
よろしかったら、どうぞ。
その日、桜田家にはいつも通りの平和な時間が流れていた。
PCに興じるジュン、読書にふける真紅、広告の裏でお絵かきをする雛苺、台所では翠星石がクッキーを焼いていた。
オーブンを開け、中のクッキーの様子を見る翠星石。
クッキーの状態に満足すると、翠星石は雛苺のもとへ行き、ジュンの部屋にいる2人を呼ぶように伝えた。
「ジュン〜、真紅ぅ〜、おやつなの〜。」
「おう、分かった。」
そう言うと、ジュンは真紅とともに部屋を出ようとした。
「・・・あら?ジュン、PCが点けっぱなしなのだわ。」
PCのモニタが明るいままなのに気付いた真紅が言う。
「ああ、どうせすぐ戻ってくるだろうし・・・それに点けとく必要があるからな。」
「あら・・・そう。」
そして、2人は台所に向かっていった。

「ふっふっふ・・・。」
誰もいなくなったジュンの部屋の窓から不敵な笑い声が聞こえてくる。
その声の主は第2ドールである金糸雀であった。
「今日も今日とて桜田家に潜入でゴザルの巻!かしら!!」
そう言って、窓に手をかける。
どうやらジュンが鍵をかけ忘れていたらしく、窓は簡単に開いてしまうのだった。
「ジュンには防犯能力という言葉が無いのかしら?でも、カナにとっては好都合かしら。」
そう言いつつ、部屋の中をキョロキョロする金糸雀。
すると、彼女もジュンのPCが点けっぱなしになっていることに気付いた。
「あら・・・?PCが点けっぱなしかしら。ジュンってば全然エコロジーじゃないかしら!」
そう言うと、金糸雀はPCのモニタ前に行き、電源を落とそうとした。
その時、彼女の目にモニタ内のサイトが映る。
「これは・・・『クロスオーバー小説創作スレ』・・・?」
なんとなく気になってしまった金糸雀は近くにあったマウスで画面を上にスクロールさせる。
すると、そこにはジュンが書き込んだと思わしきレスがあった。
「『仮面ライダー電王 × ローゼンメイデン』・・・?」
金糸雀は何かに取りつかれたかのように読み始める。
「何なに?『その日、デンライナーにはいつもどおりの平和な時間が流れていた』・・・。」
その日、デンライナーにはいつもどおりの平和な時間が流れていた。
ノートPCで過去の戦いを参考にした小説を書く野上 良太郎、将棋に興じるモモタロスとキンタロス、
<金瓶梅>と書かれた小説を涼しげに読むウラタロス、スケッチブックに落書きをするリュウタロス、
そしてカウンターではナオミとコハナが自分たちを含めた人数分のコーヒーを入れていた。
「はい、どうぞ。」
コハナが良太郎にブラックのコーヒーを渡す。
一方、ナオミの方はいつもの色とりどりのクリームがごってり乗ったコーヒーをイマジンたちに配っていた。
「あ・・・ありがとう、ハナさん。」
良太郎はキーボードを叩くのをやめると、コーヒーを口に含んだ。

「・・・平和だ。」

「ん?良太郎、何か言った?」
「あ・・・いや、平和だなぁって思って。」
「・・・そうね、考えてみれば良太郎が電王になってもう3年。
 その間に数えきれないくらい大ピンチがあったもんね。牙王、カイ、ネガタロス、
 幽汽、それにアリゲーターイマジンとゴルドラ&シルバラ・・・。」
「半年に1回は大ピンチにあってる計算だね・・・。」
苦笑いしながら、良太郎はコーヒーをすする。
「でも・・・まあ、もう大丈夫・・・だよね?」
「私もそう思いたいけどね。」
そう言って、コハナもコーヒーを飲もうとした。

その時、突然デンライナーを謎の衝撃が襲う。
揺れる車体。
その衝撃で将棋の配置はめちゃくちゃになり、ウラタロスは椅子から落ち、完成間近のリュウタロスの絵にコーヒーがこぼれ、
そしてコーヒーを飲んでいたコハナと良太郎は顔に熱々のコーヒーを被るのであった。
「な・・・何なんだいったい?!」
「モモの字!とりあえず後部車両を確認しに行くで!!」
そう言って、モモタロスとキンタロスは部屋を出た。
後部車両の展望台に到着したモモタロスとキンタロス。
そこにはオーナーの姿もあった。
「おっさん!いったい何が・・・って、おい!アレ、幸太郎のデンライナーじゃねえか!!」
モモタロスが指差した先には、良太郎の孫である野上 幸太郎が所有するNEWデンライナーがあり、
車体は後部車両に半ば強制的な形でドッキングしていた。
「あんにゃろう・・・いきなり何してくれたんだ!俺が一発ぶっ飛ばしてくる!!」
「・・・ってモモの字、どうやって幸太郎のところに行くんや?」
「シュワッチ!」
モモタロスは車両が動いているにも関わらず、後部車両からNEWデンライナーの運転席部分へと飛び移った。
「あいつ・・・無茶しおった。」
「それにしても・・・どうして幸太郎くんがこんなことをしたのでしょうか?
 それとも・・・何か緊急事態があったのでしょうかねぇ?」
オーナーがつぶやく。
一方、NEWデンライナーに飛び移ったモモタロスはデンバードの発射口に手をかけ、無理やりこじ開けた。
「ぜぇぜぇ・・・おい、幸太郎!いきなり何を・・・ってあれ?」
NEWデンライナーの運転席を見るモモタロス。
だが、そこには幸太郎や相棒のテディの姿も無かった。
「こいつ、無人運転だったのか?・・・ん?」
辺りを見回すモモタロス。
すると、デンバードの上に1人の『小さな少女』が倒れかかっているのに気付いた。
「お・・・おい、お嬢ちゃん!」
とっさにモモタロスが少女を抱えあげる。
そして、その少女は意識がモウロウとした状態でこうつぶやいた。

「幸太郎が・・・やられた・・・かしら・・・。」

「・・・ってこの喋り方って・・・もしかして私かしら?」
モニタに顔を近づける金糸雀。
その拍子に何かに触ったのか、画面に最小化されたブラウザが起動した。
「あら・・・?」
そして、そのブラウザの起動とともにひとつの動画が流れるのであった。

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BGM:http://www.youtube.com/watch?v=0VCWGS83sHE

時の列車、デンライナー。
次の駅は過去か?未来か?

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オーナーやキンタロスとともに、NEWデンライナーに乗っていた謎の少女を抱えたモモタロスが食堂車に戻ってくる。
食堂車では、先ほどの衝撃で床にひっくり返ったコーヒーの掃除や良太郎の火傷の治療などでドタバタとしていた。
「モモ!いったい何が・・・って、どうしたのよ、その子は?」
「俺にも分かんねぇよ。ただ、このお嬢ちゃんが幸太郎のデンライナーを操縦していたことは確かだ。」
コハナの質問に答えるモモタロス。
その答えに、顔に大きな氷のうを乗せていた良太郎が即座に反応した。
「幸太郎だって?!モモタロス、幸太郎は無事なの?!」
「・・・残念やが、デンライナーに幸太郎は乗っとらんかった。テディも同様や。」
キンタロスが代わりに答える。
「それにこの子が言ってたんだ。『幸太郎がやられた』ってな・・・。」
「そんな・・・。」
「おそらく、テディくんもいなくなったことを考えると、
 やられたのは私たちの知っている幸太郎くんではなく、テディくんと契約する前の『過去の幸太郎くん』でしょう。」
オーナーが言う。
「『過去の幸太郎』・・・?どういうことなんだい、おっさん。」
「テディくんは、モモタロスくんなどの『良太郎くんが契約しているイマジン』に対する幸太郎くんのイメージから作られたイマジン。
 しかし、そのイメージを持つ者の存在が時の流れから消されたために、イメージ自体も同様に消されてしまった・・・と考えるのが賢明でしょう。」
「いったい誰がそんなことを・・・。」
悔しそうな声をあげる良太郎。
「・・・もしかしたら、その子が知ってるんじゃないかな?」
ウラタロスが言う。
「確かにそうかもしれんが・・・今はこの子が目を覚ますのを待つしか・・・。」
「ねえ、ちょっと待って!」
キンタロスの言葉をさえぎるかのようにリュウタロスが言う。
そして、何を思ったのかモモタロスが抱える少女のドロワーズを掴むと、それをむんずと引っ張ってしまった。
「ちょ・・・な・・・何やってるのよ、アンタ!!」
「コラ!リュウタ、何しとるんや?!」
「こ・・・小僧!大事な時にガキみたいなイタズラをしてるんじゃねぇ!!」
「ちょっと!そういうことは僕の仕事でしょ!!」
「ねえ、見てよ。この子、人間じゃないよ。」
「「「「「・・・え?」」」」」
一同が少女の足を凝視する。
そこには、まるで『人形』のような間接パーツが組み込まれていた。
「これって・・・人形・・・なの?」
良太郎が言う。
「人形・・・。」
黙り込むモモタロス。
そして、彼の頭をフラッシュバックする光景。

手に握られた螺子、大きなカバン、そして・・・。

「ローゼン・・・メイデン・・・。」
「・・・え?モモタロス、何か言った?」
「・・・ん?」
「先輩、今『ローゼンなんとか』とか言わなかった?」
「・・・言ったの?」
「「多分。」」
良太郎とウラタロスが口を揃えて言う。
「しかし、モモの字が言うにはしゃべったんやろ?でも、この子は人形・・・どういうこっちゃ?」
「ロボット・・・とか?」
コハナが言う。
「とりあえず、この子については私が調べておきましょう。」
オーナーが言う。
そして、ひと間隔空けて彼らへ指令を出した。
「良太郎くん、キンタロスくん、リュウタロスくん。君たちは幸太郎くんのデンライナーで私をターミナルまで送ってください。
 その後、幸太郎くんの行方を追っていただけますか?」
「あ・・・ハイ!」
「ハナくんとウラタロスくんは念のために侑斗くんと合流し、別方面から幸太郎くんの捜索に向かってください。」
「分かりました!」
「ナオミくんはデンライナーの運行を頼みます。」
「分かりました、オーナー!」
「では、これで・・・。」
「おっさん!俺を忘れるな!!」
「・・・おお、すみませんねぇ。じゃあ、モモタロスくんは留守番をお願いします。」
「・・・へ?なんで俺が?!」
「『君だから』ですよ。その子を看病出来るのは・・・。」
「・・・あ。」
そう言って、モモタロスは自分の腕で眠る少女を見るのであった。

「ついに電王チームの出動かしら・・・。」
モニタを見ながら金糸雀が言う。
「それにしても・・・なんでモモタロスが『ローゼンメイデン』ってつぶやいたのかしら?
 この後の展開に理由が載ってるかし・・・あら?」
金糸雀の目線の先にはこう記されていた。

『これでAパートは終了です。
 ちょっと休憩をはさんでBパートを投下したいと思います(一応、3時間後を予定)。』
金糸雀はモニタにある時計を見る。
だが、この書き込みの時間から察するに、続きの投下までまだ2時間以上もあることが分かった。
「どうするかしら・・・。
 今更『私もティータイムに混ぜてかしら!』なんて言いに行っても、翠星石あたりにフルボッコにされるのが関の山かしら。」
とりあえず考える金糸雀。
だが、考えているうちに金糸雀を眠気が襲う。
「・・・ふ・・・ふあぁ〜。あら、ちょっとはしたないかしら・・・。でも・・・眠気には勝てない・・・かしら・・・。」
そう言うと、金糸雀は当たり前のようにジュンのベッドに行き、そして布団の中に入り込んだ。
「おやすみなさい・・・かしら・・・。」
そう言って、金糸雀は眠りにつくのであった。

「・・・待っていたぞ、この時を!」
金糸雀しかいないはずのジュンの部屋に謎の声が響き渡る。
そして、その声に反応したかのように、ジュンのPCから噴き出す砂のようなもの。
それらはひとつの形を作り出し、眠る金糸雀の前に立ち塞がった。
「利用させてもらうぞ、貴様の『世界』を!!」
そう言うと、砂の塊は再び砂となり、それらは全て金糸雀に取り込まれるのであった。

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さて、これで前編のAパート終了です。
駄文ではありますが、いかがでしたでしょうか?

Bパートについては、劇中で『3時間後に投下』と書いちゃったので、こちらも3時間後の20時以降に投下したいと思います。

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それでは、Bパート投下です。

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「・・・ん・・・あ・・・ふあぁ〜。あら、またはしたないかしら・・・。」
昼寝をしていた金糸雀が目を覚ます。
しかし、まだ寝足りない感じなのか、目をつぶったまま起き上がる。
「えぇっと・・・ジュンの小説はどうなったのかしら?」
目を開ける金糸雀。

だが、彼女の目に飛び込んできたのはジュンの部屋ではなく、白壁に囲まれた喫茶店のような場所であり、
自身が寝ている場所もジュンのベッドからこの部屋に設置されたソファーの上となっていた。
「・・・あれ?ここは・・・?」
「・・・!おい、お嬢ちゃん!気がついたか!!」
金糸雀の後ろから聞こえてくる大きな声。
振り向くと、そこには赤鬼を思わせるような怪人がいた。
「きゃあああああっ?!お・・・鬼かしら!!」
「おい、助けた恩人に対しての第一声がそれかよっ!それになぁ、俺には『モモタロス』って名前があるんだよ!!」
「・・・え?モモタロス?」
「おうよ!・・・ったく、俺のどこが鬼に見えるんだか、まったく・・・。」
ぶつくさとモモタロスが言う。

一方、金糸雀は考えていた。
モモタロス・・・それは、先ほどまで読んでいた小説に登場していたキャラクターのひとりである。
しかも、その容姿もかつてマスターである草笛 みつとともに見た
<仮面ライダー電王>に登場するモモタロスとまったく同じであった。
そして、自分の置かれているこの状況・・・それは間違いなくあの小説のままであった。
「夢・・・かしら?」
思わず、自分の頬をつねる金糸雀。
「・・・っ痛たたたたた!!」
すぐに手を離す金糸雀。
そして、自分の頬には引っ張ったことによる痛みと熱が残っていた。

間違いなく、これは夢では無かった。
「おいおい、どうしたんだよ?」
モモタロスの声に金糸雀が振り向く。
目線の先には、ナオミの定位置であるスタンドでコーヒーメーカーをいじるモモタロスの姿があった。
「えぇっと、こうやって・・・こんな感じか?・・・アッチッチ!」
モモタロスが悪戦苦闘しながらコーヒーを入れる。
「クリーム・・・クリーム・・・あら?・・・しょうがねぇな・・・。」
そう言うと、カップに入ったブラックのコーヒーを金糸雀の近くに置いた。
「ほら、飲みな。目ぇ覚めるぜ。」
「ありがとうかしら・・・。」
「・・・う〜、苦っ。やっぱクリームねぇと苦いな。」
モモタロスがコーヒーを飲みながらつぶやく。
「そういえば、お嬢ちゃんの名前を聞いてなかったな。名前、何ていうんだ?」
「金糸雀・・・かしら。」
「・・・神奈川?」
「だぁ〜っ!違うかしら!!」
「・・・金沢?」
「それも違うかしら!!」
「・・・島根?」
「全然違う・・・ってか、なんで都道府県ばっかりかしら!!」
「へへっ!冗談だよ、金糸雀。」
そう言って、モモタロスは金糸雀のおでこを突っついた。
「むぅ・・・『ローゼンメイデンの策士』と呼ばれたカナを騙すとは・・・モモタロスさん、侮れないかしら!」
「・・・あぁ〜、お人形さんが起きてるぅ〜!」
突然響く無邪気な声。
その声の主は、調査から帰って来たリュウタロスであった。
「ちょ・・・?!いきなりなにするかしら?!」
「わーいわーい!高い高〜い!!」
リュウタロスは金糸雀を抱えると、子供をあやすように高い高いをする・・・というより、完全に金糸雀をオモチャ扱いしていた。
「小僧!金糸雀に何しやがるんだ!!」
「へぇ〜、この人形さん、金糸雀ちゃんって言うんだ。」
そう言いながら、今度は金糸雀をまるで飛行機のように両腕で振り回す。
「あ〜れ〜ぇ〜!!」
目を回す金糸雀。
リュウタロスはさらに面白がって、両腕に金糸雀を抱えたまま車内を走りだす。
「小僧、てめぇ!金糸雀を返せ!!」
「や〜い、馬鹿モモ!返して欲しかったらここまでおいで!!」
そう言って、リュウタロスが食堂車の扉を出ようとしたその時だった。
「・・・?!リュウタロス、危ない!!」
「え・・・?」
突然入ってきた良太郎に正面衝突するリュウタロス。
その勢いで、リュウタロスは手に抱えていた金糸雀を放り投げてしまった。
弧を描いて落下する金糸雀。
それに対し、モモタロスはお姫様抱っこで金糸雀をキャッチするのであった。
「・・・モモタロスさん、ありがとうかしら・・・。」
「あ〜、モモタロスばっかりずるい〜!僕にも貸・・・。」
即座に起き上がり、金糸雀の元に駆け寄ろうとするリュウタロスに対し、モモタロスのヤクザキックが腹部に炸裂する。
そして、壁に勢い良く叩きつけられるリュウタロス。
「・・・な・・・何するんだよ、馬鹿モ・・・?!」
いきなりの行為に反論しようとするリュウタロスだったが、モモタロスはそれよりも先に彼の前に立ち、
そして自身のモモタロスォードをリュウタロスの喉元に軽く押し付けた。
「・・・!!モモの字、何しとるんや?!」
帰ってきたばかりのキンタロスが声をあげる。
だが、モモタロスはキンタロスを無視し、リュウタロスに言った。
「リュウタロス・・・俺はな、おっさんから『この子を守れ』って頼まれてるんだ。
 この子に危害を加えるつもりなら、いくらお前でもぶった切ってやるから覚悟しな・・・。」
その声は、いつものモモタロスからは聞けないような、殺気を感じさせるしゃべり方であった。
これには、さすがのリュウタロスも黙ってしまった。
「・・・も・・・モモタロスさん・・・ちょっと怖いかしら・・・。」
「・・・え?・・・あ・・・えぇっと・・・なんかごめんな。つい、コイツにカチンと来ちまってな。
 ・・・そういやぁ、大丈夫か?振り回されたりしてたけど?」
「・・・あ、全然問題ないかしら!金糸雀は常に健康かしら!!」
「へへっ、そいつは良かったぜ。」
そう言って、モモタロスはいつもの嬉しそうな声をあげるのであった。
「・・・そういえば、良太郎のほうはどうだったんだ?」
モモタロスが飲みかけのコーヒーを飲みながら聞く。
「ああ、探してはみたんだけど・・・。」
良太郎が悲しそうな声で言う。
「・・・結論から言えば、痕跡っちゅうもんが一切残ってへんのや。
 普通、イマジンが時の流れの中で何らかことをやらかすと、変更させられる前の記憶のかけらなり、
 イマジンの砂なりが残ってるはずなんや。な?そうやろ、リュウタ?」
「・・・うん。」
部屋の隅で膝を抱えながら震えるリュウタロスがボソボソと答える。
「・・・ところが、この事件に関してはそういうのが一切見つかってないんだ。
 まるで、『幸太郎そのものがもともといなかった』みたいに・・・。」
「・・・そういやぁ、金糸雀ちゃん・・・言うたっけな?」
キンタロスがコーヒーを飲みながら金糸雀に問いかける。
「何かしら?」
「金糸雀ちゃんは、なしてあのデンライナーに乗っとったんや?」
「え・・・?」
「・・・おお、そうだったな!金糸雀、幸太郎に何があったんだ?!」
モモタロスも問いかける。

しかし、金糸雀には分からなかった。
『この世界』・・・つまり『ジュンの書いた小説の世界』では自分と幸太郎が何らかの関係を持っていたのは知っている。
だが、その背景がどんなものなのか?
そして、幸太郎とテディが何故消えたのか?
『この世界』の住人では無い金糸雀には見当がつかなかった。
・・・はずだった。
『・・・幸太郎は、獏の怪人に襲われたかしら。』
ハッとする金糸雀。
それは自分の声であった。
「バク・・・って、夢を喰らうっちゅうアレか?」
キンタロスが聞く。
『ええ、その獏かしら。その怪人は時の流れを守る3人の人物・・・私のマスターである幸太郎とその祖父である良太郎、
 そしてハナという女性の3人の過去を消し、カイが成し得なかった『イマジンの世界』の復活を企んでいるかしら!』
再び、金糸雀の『声』が答える。
だが、それは金糸雀の『声』であり、自身の『意思』ではなかった。
「・・・じゃあ、その『バク』とかいう怪人は良太郎のことも狙っているってことか?!」
モモタロスが聞く。
『ずばりそうかしら・・・。』
「幸太郎・・・。」
「・・・そや!金糸雀ちゃん、幸太郎が襲われた年代と日にちって分かるか?」
『ええ、もちろんかしら!確か・・・2058年の4月3日かしら!!』
「・・・てことは、その日に行けば!」
「モモの字、その日に行ってもしゃあないやろ。幸太郎を助けに行くんやから、その前の時間にせな。」
「あ。」
「よし・・・みんな、行こう!」
「・・・でもよう、良太郎。あいつはどうするんだ?」
モモタロスが指をさす。
その先には、今だに膝を抱えて落ち込むリュウタロスの姿があった。
「しゃあない、俺が見とく。モモの字と良太郎に任せるで!」
そう言うと、送り出しの意味なのかキンタロスは首を『コキッ』と鳴らした。
「金糸雀、道案内頼むぜ!」
『任せるかしら!』
そう言って、良太郎、モモタロス、金糸雀の3人はNEWデンライナーで事件前日の2058年4月2日へと飛んだ。

そう、金糸雀の『言葉』に誘導されるように・・・。
「おやおやぁ〜、これはこれはぁ〜!」
ターミナルを訪れていたオーナーの前に1人の男が現れる。
それは、オーナーと瓜二つの顔を持つ、ターミナルの駅長であった。
「しばらくです、駅長。本当なら久々に勝負!・・・と行きたいところですが、別の用事がありましてね・・・。」
「ほぉ〜、別の用事とは?」
「『星の本棚』を貸していただきたい。」
「・・・『星の本棚』ですかぁ。お役に立てるかは分かりませんが、どうぞどうぞぉ〜。」
そう言うと、駅長はオーナーをどこかへと連れて行った。

「Zzz・・・Zzz・・・。」
ターミナル内にある、薄暗い廊下。
その中にある扉のひとつの前で居眠りをしている青年がいた。
「・・・おやおやぁ〜?」
彼の前に駅長とオーナーが現れた。
駅長が声をかける。
「こらこら、フィリップくん。こんなところで寝てたら風邪を引いてしまいますよぉ〜。」
「・・・ん・・・あ・・・ふぁあ〜・・・あ・・・すんません、駅長。」
フィリップと呼ばれた関西弁の青年が目の前の駅長とオーナーを見る。
「・・・あれ?駅長が2人おる・・・。まだ寝ぼけとんのかな?」
「そうですねぇ〜、まだ寝ぼけているのかもしれませんねぇ〜。あなたの前にいる駅長はひとりですからぁ〜。」
「そして、デンライナーのオーナーである私が目に入らないのは、完全に寝ぼけているんですよ。」
「・・・。」
なんとなく、フィリップは黙ってしまった。
「さて・・・君に頼みたいことがあります。」
オーナーがフィリップに言う。
「・・・『星の本棚』での検索やな?検索ワードは?」
「・・・ワード?」
「そやで、おっさん。」
「おっさん・・・。」
オーナーは少しムッとした。
「『星の本棚』で検索するには、ワードが必要やねん。インターネットと同じや。」
「・・・じゃあ、『人形』で頼みます。」
「ちょっと大雑把過ぎひんか?・・・まあ、ええわ。よっしゃ!ほな、行くで!!」
立ち上がり、気合を入れるフィリップ。
その声に反応するかのように後ろのドアが開く。
点火する照明。
そこに照らし出されていたのは何千・・・何万・・・いや、何億冊もの本が置かれた巨大な書庫であった。
「検索開始・・・『人形』。」
その言葉に反応するかのように本棚から飛び出す幾冊もの本。
「おっさん、やっぱ該当項目が多すぎる。何か別のワードを付けたさんと!」
「次は『黄』。」
減らされる本。
「次は『ゴシックロリータ』・・・次は『ドロワーズ』・・・。」
どんどん減らされていく本の数。
その様子を駅長も見ていた。
「『星の本棚』、この星の・・・いや、全ての時間、全ての時空に存在する『存在』の記憶を記した場所。
 いやはや、ディケイドの『空間を繋げる橋』によって出来た『異世界からの置き土産』にこんな能力があったとはぁ・・・。」
驚く駅長。
どうやら、今まで駅長は『星の本棚』をとくに重要視していなかったようであった。
しかし、駅長から『星の本棚』の存在を聞いていたオーナーは、
今回の事件の重要人物である金糸雀が異世界から来た存在であると直感的に気付き、
『星の本棚』による金糸雀についての調査が必要だと考えたのだった。

検索ワードによって、数えるほどまでに減少するも本の数は20冊近く残っていた。
「まだ残っとるなぁ〜。次は?」
「次は・・・。」
悩むオーナー。
しかし、あの少女に関する言葉は既に出尽くしてしまっていた。
「どないする、おっさん?このぐらいだったら手作業でしらみつぶしに読んでみるって手もあるが?」
「いえ、そんな時間はありません。この時間も良太郎くんやモモタロ・・・!!」
突然、オーナーがハッとする。
「・・・最後のワード、『ローゼンメイデン』。」
オーナーの言葉に反応して減らされていく本。
最終的には1冊の本がフィリップの前に姿を現した。
「おっさん、終わったで。」
「・・・うむ、ありがとう。」
フィリップから『KANARIA』と書かれた本を手渡されたオーナーは、本をめくる。
「・・・。」
本をめくりながら険しい顔をするオーナー。
そこには金糸雀の生い立ちや身長・体重などのスペック、
そしてこれまでの金糸雀が経験してきた出来事についてが事細かに記載されていた。
ページをどんどんめくっていくオーナー。
その時、とあるページがまるで封印されているかのように他のページと接着されていることに気づく。
「・・・ん?これはいったい?」
「多分、アレやな。この金糸雀っていう存在に対して、何者かの圧力が働いとるんや。」
「圧力・・・?」
「そや。しかし・・・お人形さんになして圧力をかける必要があるんかな?」
「・・・君もこれに目を通したのですか?」
「まあな。それにしても、この『ローゼンメイデン』っちゅうもんは興味深いなぁ。
 ・・・なあ、おっさん!ワシにもちぃとばかし拝ませてくれへんか?
 あの伝説の錬金術師ローゼンが作り上げたという生きた人形のひとりが、まさかのこんな身近におるんやからな!」
「残念ながらそういうワケにはいきません。」
「あら〜、残念無念・・・と、言いたいところやけど!」
「?」
「おっさん、デンライナーに帰る手立てないやろ?それにデンライナーがここに来るまであと5時間近くあるし。
 そんなん待つより、ワシが送ったる!その代わり、おっさんのとこにおるローゼンメイデン見せたってや!!」
そう言うと、フィリップはスキップしながら車庫へと向かってしまった。
「・・・まあ、いつもはいい子なんですけど、何かに興味を持っちゃうとああいうふうに暴走しちゃうんでねぇ〜、
 まあ、大目に見てあげてください。」
駅長がフォローした。
−2058年4月2日−

良太郎、モモタロス、金糸雀は、寂しげな夜の市街地に降り立った。
「おいおい・・・良太郎の時代と比べて、随分と暗くねぇか?」
『しょうがないかしら!未来は徹底的なエコ政策で夜は真っ暗かしら!』
「ふーん、そうなんだ・・・。」
歩き続ける3人。
そして、とある公園で金糸雀は立ち止まった。
『ここかしら!幸太郎が襲われた場所は!!』
「ここか・・・で、どうするんだ?」
「・・・あ、作戦を考えてなかった。」
「おいっ!」
「・・・仕方ないから、明日までここで待ってようか?」
「おお、グッドアイディア・・・なワケねぇだろ!!」

『・・・良い方法があるかしら。』

突然、金糸雀が口を開く。
「カナちゃん、何か方法があるのかい?」
良太郎が聞く。

『あなたたちを・・・幸太郎のもとへ送ってあげるかしら!!』

突然、良太郎へ金糸雀が襲い掛かる。
いきなりの出来事に対応出来なかった良太郎に対し、
金糸雀はその細腕からは想像も出来ない腕力で良太郎の首を絞めるのであった。
「りょ・・・良太郎!」
モモタロスが金糸雀を外しにかかる。
だが、それに気づいた金糸雀は何かを召喚し、その何かでモモタロスの体を切りつけた。
火花をあげるモモタロスの体。
そして、金糸雀の手にある物は・・・。
「・・・!それは・・・テンドンの!!」
それは、幸太郎の武器であり、幸太郎の使役するイマジンであるテディが変形した剣、マーチェテディであった。
「どうして・・・君が・・・幸太郎の・・・。」
『ふふっ、死人に口無し!あなたは黙ってるかしら!!』
左手の力のみで良太郎の首を絞める金糸雀。
そして、今度は右手のマーチェテディで良太郎の体を切りつけようとしていた。
「くそっ!こうなったら・・・。」
良太郎に向かって走り出すモモタロス。
その体は光の塊となり、良太郎に喰らいつく金糸雀を吹き飛ばした。
「金糸雀!いったいどうしちまったんだ!!」
金糸雀に向かって叫ぶM良太郎。
『・・・簡単なことかしら。この『世界』を手に入れるためにあなたたちを利用しただけかしら!!』
「そんな・・・そんなの嘘だろ?!なあ!!」
『残念ながら本当かしら!そして・・・。』
金糸雀が何かを取り出す。
「!!それは・・・。」

『幸太郎を倒したのも私かしら。』

金糸雀の手にあるもの、それは幸太郎が持っているはずのライダーパスであった。
『次はあなたの番かしら!!』
そう言って、金糸雀は自身の腰に出現したベルトにパスをセタッチした。

STRIKE FORM!!

金糸雀を包む青い装甲。
そして、それらは目の黒い仮面ライダーNEW電王を形づくった。
「こうなったら・・・変身!!」
M良太郎も、自身の腰に出現したベルトをセタッチする。

SWORD FORM!!

M良太郎を包む黒い装甲。
そして、紅い鎧と電仮面が合体し、仮面ライダー電王 ソードフォームが登場した。

ぶつかり合うお互いの剣、そして散らされる火花。
この戦いを止めるため、必死になる電王。

だが、NEW電王もこの戦いを止めようとしていた。
それは、『本当の』金糸雀であった。
「止めるかしら!どうして、モモタロスさんと戦わなくちゃならないかしら!!」
NEW電王の中でひたすら叫ぶ金糸雀。
だが、その声はまるで存在しないかのようにかき消され、
そして自分の意思とは関係なしに金糸雀の体はNEW電王として電王に襲い掛かるのであった。

果たして、金糸雀を操る『声』の正体とは!?
そして、幸太郎の行方は!?

物語は次回へと続く!!

つづく

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<次回予告>

仮面ライダー電王!!

「・・・言ったはずだ・・・俺は・・・金糸雀を・・・守ると・・・。」

「君の曲を聞かせてくれないでしょうか?・・・君の持ち歌の1つ、『カタストロフ』を。」

「ひぃっ?!ば・・・獏人間ですぅ!!」

「ここから真のクライマックスだ!ジェットコースター並みにフルスロットルで行くから目を離すんじゃねぇぞ!!」
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一応、これで前編終了です。
後編につきましては来週に投下しようかと考えていますので、
よろしかったらそちらのほうもお付き合いお願いします。
138長門特攻大作戦 1:2010/03/12(金) 20:05:51 ID:OW+rQ5w2
 ある日、日本列島を台風が襲っていた。しかし、その台風は普通のそれとはやや違う所があった。
それは、前触れ無く突然襲い、また突然止む事である。普通の台風なら天気予報等で雲の動き等から
事前に予測・対処する事が出来るが、今連続して起こっている台風は先程まで晴天だったのに
突然台風が吹き荒れて…と言う実に不可解な物だった。

 そしてその日も台風が吹き荒れ、ハルヒ達SOS団の皆は台風が止むまで部室に篭っていた。

「さっきまで晴れてたのに突然台風なんてどうなってるのよ。これじゃあ家に帰れないじゃない!」

 窓の向こうで繰り広げられる暴風雨を見つめながら愚痴るハルヒだが、まさに彼女の言う通りだった。
つい先程まで雲一つ無い晴天だったと言うのに、授業が終わって下校の時間になった途端に
突然台風が発生。この状態で帰宅するのは危険と言う事で、台風が弱まるまで全校生徒は
校舎内で待機と言う事になっていたのだった。

「いい加減台風止めぇぇぇぇ!!」
「あのなハルヒ…自然現象に文句言ってもどうにもならんだろ。」

 落ち着きの無いハルヒにキョンも困り果てていたのだが、そんな時に彼の前に長門が歩み寄った。

「これはただの自然現象では無い。」
「何…?」

 そして、長門とキョンはハルヒに聞こえない様に話し始める。

「もしかして…お前ん所の朝倉みたいな事を考えてる連中の仕業か? と言うかこういう
凄い事はお前等関係しか出来そうに無いぞ。」
「可能性としてはあり得る。涼宮ハルヒに何かしらのアクションを起こさせる事を目的として
人工的に暴風雨を発生させている可能性も捨て切れない。しかし、それもあくまで可能性の話。
本当に急進派の攻撃なのかは未知数…。だが…この台風が作為的な物である事は確か。」
「そ…そうなの…か?」

 長門が言うにはこの一連の台風は何者かの作為的な物との事だが、それが一体何者の手による物なのかは
長門にも分からないと言う。それにはキョンも不思議そうな顔をしていたが、そこで彼女は出入り口の方へ歩き始めた。
139長門特攻大作戦 2:2010/03/12(金) 20:06:42 ID:OW+rQ5w2
「それをこれから調べて来る。」
「え? この台風の中をか? おい長門!」

 キョンが止めようとしているのも聞かず、長門はSOS団の部室から外へ歩み出て行った。
いずれにせよこの台風が続けばハルヒのストレスが溜まり、それによってどんな異常事態が起こるか分からない。
だからこそ長門はその台風の原因を調べるつもりであった。

 階段を上がり屋上へ出る長門。無論台風は依然として続いており、屋上へ出た長門の全身にに暴風雨が
打ち付けられるが彼女は怯まない。そして情報操作によって天高くへ飛び上がった。

 台風の起こす強烈な暴風に逆らい、音速を超えて急上昇して行く長門であったが、そこで彼女は見た。
台風の中心部分に数十メートルはあろうかと思われる巨大な生物が浮遊し、高速回転を起こす事で
台風を発生させていたのである。

「あれが台風の元凶…。排除する…。」

 巨大生物の起こす強風を物ともせずに急接近をかける長門であったが、そこでさらにある事に気付く。
何とその巨大生物の頭に朝倉涼子が立っていたでは無いか。

「長門さんお久し振りです。」
「これは一体どういう事か…これが急進派の新しい作戦?」
「その通り。この台風怪獣バリケーンで台風を立て続けに起こせば涼宮ハルヒはストレスを溜め
何らかのアクションを起こすのでは無いかと…。」

 何と言う事であろうか。これは情報統合思念体の中の急進派が起こした作戦であり、
その急進派に属する朝倉が台風怪獣バリケーンを利用して人工的に台風を発生させ
それによってハルヒに何らかのアクションを起こさせようと言う魂胆であった。

「ついでに台風の強風で彼が吹飛ばされて死ねばますます面白い事になりそうですよね。」
「そんな事は…させない。」

 朝倉の言う彼とはキョン以外に他ならない。つまり台風怪獣バリケーンの起こす台風を利用して
キョンの抹殺さえ企んでいたのだ。それには長門も表面的には表情一つ変えない物の、
どこか凄みを感じさせる雰囲気を放ち、朝倉の陰謀を阻止するつもりであった。
140長門特攻大作戦 3:2010/03/12(金) 20:08:00 ID:OW+rQ5w2
 台風怪獣バリケーンが高速で回転して強烈な暴風雨を発生させる中、長門はそれに怯まず突っ切ると共に
情報操作によって作り出したエネルギーをバリケーンへ向けて投げかけた。
このエネルギーによってバリケーンを一気に爆殺してしまおうと言うつもりだったのだが、
何とバリケーンは口からそのエネルギーを吸収してしまった。

「え…?」
「そんな事をしたって無駄ですよ長門さん。その位のエネルギーはむしろ吸収して自分の物にしてしまうんですよ。」
「ならば口以外の場所を狙うまで…。」

 長門はバリケーンの周囲を飛び回り、情報操作によって発生させたエネルギーを掌から次々に発射して
バリケーンへ撃ち付けて行くが、直撃であるのにも関わらず致命傷になってはいなかった。

「無駄無駄無駄ですよ長門さん。台風怪獣バリケーンはただの巨大生物ではありません。M78星雲の
スペシウム使いの一族も苦しめた事のある程の怪獣ですよ。そんな攻撃が効くはずないじゃないですか。
さあバリケーン、そろそろお遊びは終わりにしましょう。」

 朝倉が長門へ向けて手を振ると、それに合わせてバリケーンの触手状の腕が長門へ向けて伸び
そのまま巻き付いてしまった。しかもそこから長門へ高圧電流が流れて行くでは無いか。

「あ…! か…!」
「貴女の発したエネルギーも加えた高圧電流のお味はいかがでしょうか長門さん?
M78星雲のスペシウム使いの一族も感電した程の電流ですよ。さしもの長門さんも
一溜まりも無いでしょう? このまま長門さんなんて焼け焦げてしまえば良いんですよ。」

 朝倉の言う通りだった。さしもの長門もこれ程の高圧電流には一溜まりも無く…忽ちの内に
真っ黒焦げになると共に動かなくなってしまった。そしてバリケーンは長門を放り投げ、
バリケーンの発生した強風に巻き込まれて飛ばされて行った。

「あ〜あ〜、あんなに可愛かった長門さんもバリケーンにかかれば見るも無残…これで長門さんもお終いですね。
さあバリケーン、そのまま街もキョン君も何もかも吹飛ばしてしまいましょう。そうすれば涼宮ハルヒも
アクションを起こすはずですよ〜。」

 朝倉は冷徹な微笑みを浮かべ、彼女の意思に応じてバリケーンもさらに高速回転を始めた。
141長門特攻大作戦 4:2010/03/12(金) 20:09:15 ID:OW+rQ5w2
 バリケーンの起こした強烈な暴風雨が吹き上げる中、強風に吹飛ばされながら落下して行く長門は
朦朧とする意識の中、ある光景を垣間見た。それはバリケーンが起こした暴風雨によって北高も何もかもが
吹飛ばされ、キョンも亡くなってしまい、涼宮ハルヒもショックの余り絶望し、それに伴って
世界そのものが消滅の危機に立たされてしまう事。長門にとって想像するだけで恐ろしい光景だった。

「そ…そんな事は…させない!」

 長門の閉じられていた瞳が見開き、そこから再び飛び上がり始めた。無論向かう相手は台風怪獣バリケーン。

「おやおや? 長門さんまだ立ち上がって来るんですか? でもそんなボロボロの身体で何が出来ますか?」

 朝倉は長門の奮闘をあざ笑ってすらいたが、確かに彼女の言う通り。長門はダメージの為に情報結合さえ
上手くいかず、依然その全身は黒焦げのままだった。しかし、長門は表面的には普段と同じ無表情に見えても
その目は真剣そのものだった。

「私には…まだ…手が…ある!」

 次の瞬間長門は自分からバリケーンの口の中へ飛び込んだ。一体何をするつもりであろうか?

「おやおや長門さん。気でも狂ったんですか? 自分からバリケーンの口の中に飛び込むなんて…。
それとも観念してバリケーンのエネルギーとして吸収される事を選んだんですか?
さあバリケーン、このまま長門さんを美味しく召し上がって下さいな。」

 朝倉はやはり長門をあざ笑いっていたが、何が起こったのか、バリケーンが突然苦しみ始めた。

「え!? どうしたのバリケーン!?」

 バリケーンが突然苦しみ始めた原因。それはバリケーンの体内に飛び込んだ長門にあった。

「これが私の最後の武器…。全身のエネルギーを解放させ、私自身を爆弾とする…長門ダイナマイト…。」

 バリケーンの体内にしがみ付いた長門は全身から燃え上がる様な高エネルギーを発し始めた。
そこから発する高熱がバリケーンの内臓を焼き焦がして行くのみならず、そこから一気に大爆発が発生。
バリケーン体内と言う名の閉鎖された空間内で爆発した長門はそのままバリケーンを内側から木っ端微塵にしていた。
142長門特攻大作戦 5:2010/03/12(金) 20:10:15 ID:OW+rQ5w2
「あ! ああああ〜! バリケーンが〜!」

 粉微塵になって消え去ったバリケーンの姿に朝倉が途方に暮れる中、彼女の背後に未知の粒子が収束して行くと共に
長門有希を形成していた。長門ダイナマイトはただの自爆技では無い。その爆発で相手を吹飛ばすと共に
ちゃっかり自分だけ元通りになると言う鬼畜技であった。

「情報結合を…解除…。」
「え!? 長門さん!? それじゃ…一時したらまた来ますね〜…。」

 長門の情報結合解除によって朝倉涼子は消え去った。しかし…


 長門がSOS団の部室に戻ると、そこにはキョンの姿があった。

「長門! さっき急に台風が止んでハルヒも帰っちまったけど…お前がやったのか!?」
「そう…。」
「やっぱりか…でもお前大丈夫か? 凄い汗じゃないか!」
「何でも…な…。」

 次の瞬間長門は倒れ、それをキョンが慌てて支えていた。長門ダイナマイトは確かに強力な必殺技であるが、
一度自分自身を爆弾として自爆させた後で再び再構成するという一連の動作は膨大なエネルギーを消耗し、
長門と言えども多用は出来ない諸刃の剣であったのである。

「少し…疲れた…。」
「そうか…。仕方が無い。今日は俺がお前をおぶって帰ってやるよ。」

 こうしてこの危機は一まずの収束を得た。だが情報統合思念体の急進派が滅びたわけでは無い。
一時すれば再び朝倉が復活してまた変な事をしてくるに違いない。しかし…今は…今はしばし眠れ…。

 おわり
143創る名無しに見る名無し:2010/03/12(金) 20:13:11 ID:OW+rQ5w2
涼宮ハルヒシリーズの長門有希と帰ってきたウルトラマン28話「ウルトラ特攻大作戦」登場の台風怪獣バリケーンのクロス。
台風怪獣バリケーンは知名度的にはマイナーだけど、地球産野生怪獣なのにベムスターばりにスペシウム光線を吸収するし、
台風を起こして街の彼方此方を吹飛ばしてしまう地味に強力な怪獣でした。
144創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 22:48:41 ID:HIuYPBM4
wiki管理人です。
したらばを借りて避難所を作ってみました。
さるさんやアクセス規制に巻き込まれた時にどうぞ。

http://jbbs.livedoor.jp/otaku/13627/
145創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 22:57:32 ID:HIuYPBM4
・・・っと思ったら創作発表板専用のしたらばがあった   orz

わざわざしたらばたてずにそっちの方にスレッド立てた方がよかったかもな
どうしようか・・・
146創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 23:04:01 ID:fwXhXylS
創発用の避難所じゃ投下の代理まではできないんじゃないっけ?
だからこっちはこっちで使えると思うよー
wikiといいマジ乙!
147 ◆SaBUroZvKo :2010/03/15(月) 23:13:00 ID:YZ0vjVbW
>>144
おお、乙です。これから投下がやりやすそうになりそうですw
励みになりました。リアルを片付けしだい、急いで仕上げます
148創る名無しに見る名無し:2010/03/15(月) 23:53:19 ID:HIuYPBM4
>>146-147
ありがとうございます。
スレ立て早々需要ないんじゃないかと内心びくびくしてましたw
では、このまま専用のしたらばとして運営していきたいと思います。
>>137で予告しましたが、これより電王×ローゼンの後編を投下させていただきます。
よろしければ、お付き合い願います。

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光も音も何も存在しない暗闇の世界、そんな世界に金糸雀はいた。

彼女は求めていた。
この世界からの脱出方法を、そして自分の体を利用してモモタロスと戦っている存在を止める方法を・・・。
「残念ながら、無駄かしら!」
振り向く金糸雀。
そこにはもうひとりの金糸雀がいた。
金糸雀は声をあげようとする。
だが、自分が何と言おうともその声は声にならず、ただ口をパクパクさせるだけであった。
「何を言ってるか分からないけれど・・・あなたはもうあなたじゃないかしら。」
そう言うと、もうひとりの金糸雀の体は砂のようになり、そして別の形を作り出そうとしていた。
「ふふふ・・・もうここは『あなたの世界』じゃないかしら!この世界は・・・俺の物だ!!」

仮面ライダー電王 ソードフォームは金糸雀が変身した仮面ライダーNEW電王と戦っていた。
幾度となく襲いかかるマーチェテディに対し、デンガッシャーで応戦する電王。
だが、電王自身はNEW電王への攻撃を仕掛けることは無かった・・・というより出来なかった。

モモタロスは考えていた。
本当に金糸雀が犯人なのか?
あの優しさも、本当は自分たちを利用するための演技でしかなったのか?

・・・いや、そんなはずはない。
何故なら・・・。

葛藤するモモタロス。
そのため、戦いは防戦一方となっていた。
『しぶとい奴かしら!これならどうかしら?』
そう言って、腰のデンガッシャーをガンモードにして発砲するNEW電王。
突然の攻撃に、電王は全ての弾丸を胴に受ける。
「ぐあっ?!・・・くそっ・・・金糸雀・・・。」
フラフラになりながらも起き上がる電王。
だが、これまでの攻撃を全て防御しようとしたことによる疲れで、構える力はすでに残っていなかった。
『これで・・・最後かしら!!』
マーチェテディの大きな一振りが、無防備となった電王を襲いかかる。
その時・・・。
『・・・何者かしら?!』
電王へと振り下ろされたマーチェテディをふたつの刃が阻止する。
「おっと、お嬢ちゃん。こんな危ない武器を振り回すより、僕に釣られてみない?もっと面白いことが体験出来るかもよ?」
「ウラタロス!何、戦闘中にナンパしてるんだよっ!!」
NEW電王の攻撃を阻止する者、その正体はウラタロス、そして仮面ライダーゼロノス ゼロフォームであった。
ゼロガッシャーでNEW電王を押し返すゼロノス。
そして、今度はゼロノスとNEW電王との戦いが開始された。
「侑斗・・・カメ・・・。」
「先輩、ここは僕たちに任せてよ。良太郎!」
『うん・・・分かった。』
電王の中にある野上 良太郎の意思がデンオウベルトの青いボタンを押そうとする。
だが、ボタンを押すはずの右手は、己の左手によって阻止させられてしまった。
『モモタロス?!』
「ちょっと、先輩!何やってるの?!」
「良太郎・・・カメ・・・ここは俺にやらせてくれ・・・。」
「『自分に・・・』って、もうボロボロじゃない!」
「うるせぇ・・・カメ公・・・これは・・・俺の問題なんだ・・・。」
そう言って、再び立ち上がる電王。
だが、再び倒れてしまう。
倒れる電王に対し、両腕でキャッチするウラタロス。
「先輩!」
「カメ・・・頼む・・・行かせてくれ・・・。」
「先輩・・・休むことも必要だよっ!!」
そう言って、ウラタロスは電王の腹部を殴る。
「な・・・。」
気絶する電王。
「ごめんね、先輩。」
そう言うと、ウラタロスは電王と合体、ロッドフォームへとフォームチェンジした。

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BGM:http://www.youtube.com/watch?v=0VCWGS83sHE

時の列車、デンライナー。
次の駅は過去か?未来か?

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火花を散らす、ゼロガッシャーとマーチェテディ。
遅れて、電王のデンガッシャー ロッドモードも戦いに加わる。
これまで優位に戦いを進めていたNEW電王だったが、2対1の猛攻、
そして離れた間合いから攻撃を行なう電王に押され始めていた。
『ならば・・・これで・・・!』
再び、ガンモードのデンガッシャーでの攻撃を行なおうとするNEW電王だったが、
瞬時に気づいたゼロノスによってデンガッシャーを叩き落されてしまった。
「そろそろ3枚に・・・いや、今日は焼き魚で行きますか!」
そう言うと、電王は自身のデンガッシャーをガンモードに変え、NEW電王との間合いを取る。
そして、ゼロノスも同様にボウガンモードへと変えて、相手との間合いを取った。

FULL CHARGE!!
FULL CHARGE!!

武器にエネルギーを溜めるダブルライダー。
そして、デンガッシャーからはオーシャンストライクが、ゼロガッシャーからはグランドストライクが同時発射され、
一直線にNEW電王へと向かっていく。

だが、2つの光弾がNEW電王に向かう途中、何者かがこの直線上に乱入してきた。
「あれは・・・先輩?!」
それは満身創痍のモモタロスであった。
「おい、モモタロス!何やってるんだ!!」
ゼロノスが叫ぶ。
だが、モモタロスはNEW電王を守るかのように2つの光弾の前に立ち塞がった。
『モモタロス、危ない!』
良太郎も叫ぶ。
だが、モモタロスは動くこと無く、そのまま体に光弾の直撃を喰らうのであった。

倒れこむモモタロス。
そして、それをあざ笑うかのように変身を解除した金糸雀が現われる。
『ふふっ、本当にあなたは馬鹿かしら。自分が利用されてたことをまだ受け入れられないなんて究極の馬鹿かしら!』
「・・・言ったはずだ・・・俺は・・・金糸雀を・・・守ると・・・。」
『守ろうとした結果が『死』なんて、ちゃんちゃらおかしいかしら!』
「・・・言いたきゃ・・・勝手に言ってろ・・・偽者め・・・。」
『何を言ってるかしら!カナはカナ・・・。』
「・・・よく言うぜ・・・そんな悪役な台詞・・・涙流しながら言う奴なんて・・・いねぇんだよ・・・。」
『・・・涙?』
金糸雀は自分の頬を触る。
そこには一滴の涙が流れていた。
『どうして・・・涙が・・・。』
「・・・聞こえるか・・・金糸雀・・・俺の役目は・・・ここまでだ・・・後は・・・お前の力で・・・頑張れ・・・。」
『この死にぞ「・・・ロス」こないめ!』
金糸雀がマーチェテディを振りかざす。
『この一撃で「・・・モ・・・タロス」お前を「・・・モモ・・・タロス」黙らせ「・・・モモタロス!!」・・・な・・・何だ?!』
突然、体が発光しだす金糸雀の体。
・・・と同時に金糸雀は苦しみだした。
『な・・・何故だ・・・どうして・・・。』
「・・・カナは・・・カナは・・・カナかしらぁあああああ!!」
復活する金糸雀の意識。
そして、金糸雀の体からは1つの砂の塊が飛び出してきた。
「あれは・・・イマジン?!」
電王が言う。
「くそぅ・・・我が名はタピルス・・・夢を喰らいしイマジン・・・。」
「夢?」
「そう、あのイマジンは夢・・・今回の場合は金糸雀くんの夢を使って我々を倒す作戦を実行していたのです。」
突然の声に後ろを振り向くダブルライダー。
そこには、見たことの無い<黒と緑のツートンカラーの時の列車>から降りてくるオーナーの姿があった。
「オーナー!」
「ようやく分かりましたよ、金糸雀くんのページの一部を『封印していた存在』があのイマジンだったとはね・・・。」
『ページ・・・?』
「そや、あのページには金糸雀が行なった一連の行動が事細かに書かれておる。桜田っちゅう家に侵入し、その家のPCで遊び、
 ティータイムに参加しようかと悩み、最終的には昼寝したっちゅうまでの行動がな。」
時の列車から今度はフィリップが降りて来て言う。
「しかし、このすぐ後のページには金糸雀くんと幸太郎くんの出会い、
 そしてあのイマジンと幸太郎くんとの交戦に関することなどが記載されていました。
 おかしいと思いませんか?」
「・・・確かに。昼寝の直後に幸太郎との出会いなんて唐突過ぎるし、
 その間に何かあったとしても、そこだけ抜け落ちているのは不自然だ。」
ゼロノスが言う。
「簡単なことですよ。どんな生物でも夢の中では何にでもなれる・・・つまり『無限の存在』なのです。」
「だが、それは逆に言えば『何にでも変更出来る』とも言い換えられるわな。
 あのチビちゃんみたく今までの過去をリセットされて、嘘の過去を上書きさせられる・・・てな。」
『嘘の過去って・・・まさか幸太郎は!!』
「おそらく、『幸太郎くんが倒された』という過去が上書きさせられた影響で存在を消されたのでしょう。
 嘘の時の流れに整合性を持たせるためにね・・・。」
「もう遅い・・・。」
タピルスイマジンが言う。
「いくら俺の作戦が分かったところでNEW電王も・・・そしてモモタロスも帰っては来ないのだ!
 貴様らを全滅させるには程遠いが、貴様らに十分なダメージを与えられただけでも俺は満足なんでな!!」
「・・・残念ながら、ダメージは0ですよ。」
オーナーが言う。
「何だと?!」
「そうですねぇ・・・説明するより聞いて見てもらったほうが分かるかもしれませんねぇ。金糸雀くん!」
「・・・ハイかしら!」
「君の曲を聞かせてくれないでしょうか?」
「ちょ・・・オーナー!こんな非常事態に・・・。」
「・・・君の持ち歌の1つ、『カタストロフ』を。」
「!!」
「・・・?」
「駄目ですか、金糸雀くん?」
「・・・オーナーさんを信じるかしら。」
そう言って、金糸雀はバイオリンを取り出した。

演奏を始める金糸雀。
そのバイオリンからは『恐怖』や『悲しみ』といったものを連想させる重低音が放たれるのであった。
「な・・・なんだ・・・こ・・・この曲は?!」
その音に呼応するように苦しみだすタピルスイマジン。
そして、金糸雀も引きながら苦悶の表情を浮かべていた。

だが、オーナーや電王たちには何も異常が起きていなかった。
「オーナー、これはいったい・・・?」
ゼロノスが聞く。
「カタストロフ・・・つまり『世界の崩壊』ですよ。『金糸雀くんの夢の世界』のね・・・。」
『そうか!あの子やあのイマジンは本来この世界の住人じゃない。あの子の夢の力で出現した存在なんだ!!』
「そう。そして、金糸雀くんの引いているあの曲は『自分の世界を破壊する』という究極の自爆技のようなもの。
 だから、金糸雀くんの夢の世界の住人であるあの2人のみが曲の効果を受けているのです。」
「や・・・やめろ・・・。」
耳を押さえながら苦しむタピルスイマジン。
だが、金糸雀の曲はさらに強さを増していく。
しかし、一方の金糸雀も『カタストロフ』の効果に蝕まれ、演奏する力を失いつつあった。
「・・・くっ・・・もう・・・ダメかしら・・・。」

『後は・・・お前の力で・・・頑張れ・・・。』
突然、フラッシュバックするモモタロスの声。

そうだ、今このイマジンに立ち向かえるのは自分しかいない。
今は・・・ただただ頑張るしかない!!

そんな気持ちが金糸雀を奮い立たせる。
金糸雀は曲を弾き続けた。

テンポの上がるバイオリンの音。
強さを増す重低音。
そして、さらに苦しむタピルスイマジン。
「う・・・わ・・・俺の・・・体が・・・。」

ついに金糸雀の曲が最高潮に達した時、金糸雀は指でバイオリンの弦を弾いた。
弾かれたことで千切れる弦。
そして、金糸雀とタピルスイマジンの体も千切れた弦のように崩壊した。

これが『カタストロフ』完成の合図であった。

「消えた・・・。」
変身を解いた良太郎が言う。
「これで・・・終わりなのか?」
「い〜え、これからが本番ですよ。」
変身を解除した桜井 侑斗の言葉をオーナーが否定する。
「これから・・・?」
「さて・・・フィリップくん、ついでで悪いですが、我々を送っていただけないでしょうか?」
「乗りかかった船やし、拒否るワケにはいかんやろ!」
そう言って、フィリップは時の列車の中に戻ってしまった。
「良太郎くん、桜井くん、君たちも来てください。あと・・・『彼ら』を置いていかないように気をつけてくださいね。」
そう言って、オーナーは後ろを指差した。
「「彼ら・・・?」」
振り向く良太郎と侑斗。

そこには3つの影があった。

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以上で後編のAパート終了です。
Bパートは30分後くらいに投下しますので、もうしばらくのお付き合いをお願いします。
155創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 00:28:02 ID:fWc919ee
投下乙!命を張って金糸雀を守るモモタロスの男っぷりに泣けたでぇ!
では、Bパートです。
どうぞ。

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「・・・あ、もうこんな時間か。」
なんとなくテレビに映っていた再放送の時代劇を見ていた桜田 ジュンは、部屋の時計を見てつぶやく。
「そういえば、そろそろ投下の時間だな。部屋に戻らないと。」
「投下・・・?」
「ああ、今2chの・・・。」

ジュンが真紅に説明をしようとしたその時、突然背後のドアから何かが落下するような大きな衝撃音が響いた。
「な・・・何があったんですぅ?!」
叫ぶ翠星石。
ジュンがとっさにドアを開けると、そこには階段から落下したと思われる何者かがいた。
「ひぃっ?!ば・・・獏人間ですぅ!!」
それはタピルスイマジンであった。
「おのれ・・・金糸雀め・・・。」
体を多少ふらつかせながらも立ち上がるタピルスイマジン。
一方、ジュンたちはイマジンの言った『金糸雀』という言葉に反応し、階段の上に注目する。
そこには、体をボロボロにしながらもファイティング・スタイルをとる金糸雀の姿があった。
「金糸雀、これはいったい?!」
問いかける真紅。
「皆・・・奴の狙いはカナひとりかしら・・・。ここはカナに任せて・・・逃げるかしら・・・。」
息を切らしながら金糸雀が言う。
だが、金糸雀の体力は先ほどの『カタストロフ』の演奏で急激に消耗し、構えるので精一杯の状況であった。
「こうなったらヤケクソだ!貴様だけでも地獄に叩き落してやるっ!!」
怒りを爆発させたタピルスイマジンは、ひと跳びで階段の上段にまで到達するほどの跳躍力で金糸雀に飛び掛る。
これに対して防御体勢を取ろうとする金糸雀。
しかし、体の疲れから反応が遅れてしまった金糸雀は、タピルスイマジンの右腕に首を捕まれ、そのまま体を壁に叩きつけられた。
「ぐっ・・・くっ・・・。」
「感謝しろ、金糸雀。お前は俺の偉大なる計画を潰した罪をこの程度の刑罰で許されるんだからな・・・。」
さらに右手に力を加えるタピルスイマジン。
そして、金糸雀の首はどんどんを絞められていき、金糸雀は苦悶の表情となった。

その時・・・。

ピンポーン。
157創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 00:35:19 ID:fWc919ee
支援してもいいよね?答えは聞いてない
突然鳴り響く、場違いなチャイムの音。
それに気づいたタピルスイマジンは、金糸雀を締め上げたまま後ろを向く。
「誰だ、俺の邪魔をまたしようとする奴は?!」

「は〜い、俺で〜す!・・・てな。」
「・・・!・・・その・・・声は・・・。」
開く扉。
そこにいたのは、先ほどの戦いで重症を負ったはずのモモタロスであった。
「何故だ?!貴様は死んだはず?!・・・いや、死んでなかったとしても、
 さっきの戦いで動けないほどのダメージを追ったはずでは?!」
驚くタピルスイマジン。
無理も無い。
何故なら、モモタロスの体は先ほどまでの戦いが無かったかのように無傷のキレイな状態になっていた。

「簡単な話だ。金糸雀がお前の操っていた世界の存在を消したことで、
 操られた世界の影響が与えた現象を全て消してくれたんだよ・・・俺みたくな。」
今度はジュンの部屋から聞こえてくる別の声。
そこには野上 幸太郎と彼のイマジンであるテディの姿があった。
「そんな・・・馬鹿なことが・・・。」
「あってたまるんだよ・・・この鼻垂れ野郎!!」
思わぬ事態に動揺していたタピルスイマジンは、モモタロスが背後にまで来ていたことに気づかず、
そのまま右ストレートで殴られ、再び階段下へ叩き落される。
そして、その拍子に開放された金糸雀は、幸太郎によってキャッチされるのであった。
「よう、金糸雀!偽りの記憶だったとは言え、マスターのだっこってのはやっぱ最高だろ?」
幸太郎が言う。
「ふふっ・・・みっちゃんに比べたらまだまだかしら。」
「・・・言ってくれるよな、ちびカナ。」

「俺の・・・俺の計画が・・・。」
「言ったでしょう、我々のダメージは0だと。」
悔しがるタピルスイマジンのもとに今度はオーナーが現れる。
「オーナー!・・・でも、オーナーはこの世界の人じゃないはずかしら。どうやってこの世界に来たのかしら?」
「俺のダブルライナーのおかげや、チビちゃん!」
玄関に現れるフィリップ、良太郎、侑斗、そしてイマジンズ。
「彼のダブルライナーは我々のデンライナーのように時を越えるだけでなく、
 『時空』を越えるというオーバーテクノロジーを持っているのですよ。」
「だ・か・ら、僕たちも君のもとへ来れたワケ。」
「まさに『ふりっぷ』の列車の力には泣けたでぇ!」
「あ・・・お人形さん、さっきはごめんね。僕もモモタロスみたく君を守るよ!」
「最初に言っておく!女の子に手をあげるような奴は俺が許さんっ!!」

-----------------------------------------------------------------------------

>>155
熊乙・・・じゃなくて、ありがとうございます。
よろしかったら、続きのほうもお楽しみください。
159創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 00:42:29 ID:fWc919ee
バクイマジンフルボッコされそうでオワタw 支援
「・・・あのさ、ちょっといい?」
突然、良太郎が言う。
「どうした、良太郎?」
「ちょっと・・・狭くない?」
「ん・・・?」
ウラタロスたちが自分たちの周囲を見回す。
良太郎の言うとおり、桜田家の玄関は人間が4人、
そして人間よりも体格の大きいイマジンが4人もいたため少々ギュウギュウ詰めになっていた。
「それにさ、ここで戦ったらあの人たちに大迷惑になっちゃうからさ・・・外でやろうよ。」
「ん〜、確かにそうやな。良太郎の言うとおりや!」
「・・・でも、どうやってコイツを外に運ぶ?」
ウラタロスがタピルスイマジンを指差す。
「よし、俺に任せろ!そこのイマジンくん、外に行こう!!」
「ちょっとおデブちゃん!そんな直球に言ってどうするんだよぉ!!」
「そこのイマジン・・・僕に釣られてみない?」
「男に色仕掛けって・・・おい、テンドン!なんかアイディアはあるか?」
「何度も言うが、私はテンドンじゃなくてテディだ。」
「そこのイマジン、外に出てくれるよね?答えは聞かないけど!」
「リュウタロス、駄目じゃないか!人の意見を聞いてあげるのが礼儀ってものだ!侑斗だってそう思っている!!」
「おい、デネブ!勝手に何言ってるんだよ!!」
「Zzz・・・Zzz・・・。」
勝手に騒ぐイマジンズ。

「てめぇら・・・ふざけるのもいい加減にしろぉおおおおお!!」
この状況に、再び怒りを爆発させるタピルスイマジン。
そして、怒りに任せて玄関のイマジンたちに向かってタックルを仕掛ける。
「危ない!!」
とっさに叫ぶ良太郎。
それに反応した全員が玄関の左右に体を寄せる。

そして、タピルスイマジンは一直線に玄関の外へと出てしまった。
161創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 00:54:41 ID:fWc919ee
支援
「・・・これでええんか?」
「・・・良いんじゃないの?」
そう言って、出て行くウラタロスたち。
「俺たちも行くか、幸太郎、金糸雀。・・・あ、どーもお世話になりました〜っと!」
「・・・失礼します。」
階段にいたモモタロスたちも外へと移動する。

すると、突然デネブが戻ってくる。
「あ、これお近づきの印にどうぞ!」
そう言って、ジュンたちに何粒かのキャンディを握らせるデネブ。
「最後に言っておく!侑斗をよろし・・・イテッ!」
「デネブ、何やってるんだ!早く行くぞ!!」
「せっかく異世界の人と侑斗が仲良くなるチャンスなんだから、ここは有効利用を・・・って、あ〜れ〜!」
侑斗にマントを引っ張られながらデネブが退場する。
「・・・。」
「・・・何だったんですぅか、あの鬼人間たちは?」
「強面だったけど、悪そうには見えなかったの。」
「・・・とりあえず、部屋に戻るのだわ。」
「賛成ですぅ。」
「なの。」
そう言って、真紅たちは何事も無かったかのように居間へと戻っていった。

一方、イマジンズたちは外でタピルスイマジンと対立していた。
「さて・・・鼻垂れ野郎!ここからがクライマックスだ、準備は出来てるだろうな!?」
そう言って、モモタロスォードを構えるモモタロス。
「お前ら・・・俺ひとりに対して8人で寄って集って戦おうとしているのか?」
「あぁん?いけねえか?」
「てめぇら、いくらなんでも卑怯過ぎるだろっ!」
「金糸雀を操って闇討ちしようとしたお前に言われたかねぇっ!!」
モモタロスォードの一閃がタピルスイマジンを吹き飛ばす。
「・・・しかし、考えようによってはそいつの言うとおりだ。」
デネブが指からのデネブバルカンでタピルスイマジンを銃撃しながら言う。
「おい、おデブ!何言ってるんだよ!!」
「確かに俺たちであいつをフルボッコ・・・って酷いっちゃあ酷いかもしれんな。」
キンタロスが迫るタピルスイマジンを突っ張りで吹き飛ばしながら言う。
「・・・じゃあ、テンコ盛りで戦えば良いんじゃない?」
リュウタロスがリュウボルバーでタピルスイマジンを狙撃しながら言う。
「いや、それは困る。私も幸太郎もあいつに酷い目にあったのだ。だから、ここは私たちが戦うべきだ!」
テディがテディスォードでタピルスイマジンを追撃しながら言う。
「カナに良いアイディアがあるかしら!」
「何か策があるのかい、お嬢ちゃん?」
ウラタロスがふたたび迫るタピルスイマジンをウラタロッドで吹き飛ばしながら金糸雀に聞く。
「クライマックスフォームにデネブさんとテンドンさんを合体させればいいかしら!」
「そんなこと・・・出来るの?」
良太郎が聞く。
「『ローゼンメイデンの策士』に抜かりは無いかしら!」
そう言うと、金糸雀はバイオリンを取り出した。
「曲名は・・・そう、名づけて『Climax Jump』かしら!!」

BGM:http://www.youtube.com/watch?v=wkufUXKeLdU&NR=1

演奏する金糸雀。
バイオリンから奏でられるその音はイマジンズを高揚させていく。
「これは・・・うぉおおおおおっ!なんだか燃えてきたぁあああああ!!」
興奮するモモタロス。
・・・と同時にモモタロスの体が光の塊となる。
そして、モモタロスだけでなく他のイマジンたちも光の塊となり、それらは良太郎の手にするケータロスへと集まっていった。
「よし、皆・・・行くよ!」
ケータロスを自身の電王ベルトに装着する良太郎。

CLIMAX FORM!!

音声とともにケータロスから出現する4つの電仮面。
それらは良太郎の体に合体し、仮面ライダー電王 クライマックスフォームを形成する。
さらに、デネブの光が飛び出すと、
それはデネブの腕を模したツインキャノンとベガフォームを思わせるマントとなって電王の背中に合体する。
そして、最後にテディがマーチェテディとなって電王の右手に握られた。

ここに、新たなクライマックスフォームが誕生した!!

『おおっ、なんかすげぇ感じだ!』
思わず叫ぶモモタロスの意識。
「これで文句は言えないかしら!」
『よっしゃ!鼻垂れ野郎、ここから真のクライマックスだ!
 ジェットコースター並みにフルスロットルで行くから目を離すんじゃねぇぞ!!行くぜ行くぜ行くぜぇえええええ!!!』
マーチェテディを振り回しながら、電王がタピルスイマジンに突撃する。

「おのれ・・・野郎ども、出て来い!!」
クライマックスフォームの登場に危機を感じ、叫ぶタピルスイマジン。
すると、その声に反応して数体のモールイマジンが地中から出現するのであった。
『げっ・・・なんでモグラ野郎が?!』
『・・・6・・・7・・・8か。なら私に任せろ。10カウントで終わらせる。』
テディの意識がそう言うと、電王はNEW電王を思わせる剣の構えを取り、
そのまま一直線にモールイマジンへと突っ込んでいくのであった。
素早い太刀筋で切りつけられていくモールイマジン。
『・・・7・・・6・・・5・・・。』
そして、8体全てのモールイマジンはカウントを4残して全滅した。
164創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 01:13:41 ID:fWc919ee
支援
しかし、今度は背後から3体のモールイマジンが飛び掛る。
『むっ!?後ろからとは卑怯な!!』
背後からの攻撃に気づいたデネブの意識が、ツインキャノンを後方に傾けて発砲する。
放たれる3発のエネルギー弾。
うち2発は空中のモールイマジンを粉砕したものの、残りの1発は敵を叩き落すに留まった。
「くそっ・・・。」
起き上がろうとするモールイマジン。
だが、そこへ金糸雀が現れる。
「おねんねの時間かしら!」
そう言って、子守唄を演奏する金糸雀。
すると、あっという間にモールイマジンは深い眠りにつくのであった。
『金糸雀、ナイスアシスト!』
「どういたしましてかしら!あとはアイツだけかしら!!」
金糸雀と電王がタピルスイマジンを見る。
「こうなったら・・・ヤケクソだぁっ!!」
ついに自棄になったタピルスイマジンが電王へタックルによる特攻を仕掛ける。
『どすこいっ!!』
だが、タピルスイマジンのタックルも電王の張り手によって簡単に吹き飛ばされてしまった。
『さて・・・とどめと行きますか。』
そう言って、電王はライダーパスをケータッチにセタッチする。

CHARGE AND UP!!

ケータッチから発せられる莫大なエネルギー。
それらは電王のツインキャノンとマーチェテディに集約されると、
電王から分離してファンネルのように電王の周囲を、弧を描きながら漂い始める。
また、電王本体のほうにも再度エネルギーが集約され、中央のリュウ仮面が光を放ちながら解放される。
『必殺、俺たちの必殺技・・・シューティングヴァージョン!!!』
ファンネルとリュウ仮面から同時発射される光線。
それらは一気にタピルスイマジンを包み込み、そして敵の体を完全に蒸発させるのであった。

『俺たち・・・大勝利!!』
そして、締めと一言といった感じで『俺、フィーバー!』のポーズをとる電王。
こうして、彼らの戦いは終わりを告げるのであった。
「ひとつ聞いて良いかしら?」
モモタロスに抱っこされながら夕日を見る金糸雀がモモタロスに質問する。
「おう、何だ?」
「・・・どうして、金糸雀をあんな一生懸命に守ってくれたかしら?」

金糸雀は疑問に思っていた。
自分をおもちゃのごとく振り回したリュウタロスに対して尋常じゃない怒りを見せ、
そしてタピルスイマジンに操られて襲い掛かっても金糸雀を信じ続けたモモタロス。
だが、この異常なまでの『信頼』はどこから来ていたのだろうか?
何十年も付き合っていた戦友ならいざ知らず、会って数十分もない金糸雀を信頼し続けたことを・・・。

「・・・守ることに理由は要るか?」
「・・・そんなこと無いかしら。ちょっと疑問に思っただけかしら。」
「まあ、あるとすれば・・・。」
「あるとすれば・・・?」

「何たって、俺はテレビの前のちびっ子たちのヒーローだからな!ちびっ子を守ってやらないと人気が出ねぇだろ?」

「ちょ・・・そんな理由だったのかしら?!」
「冗談だよ、金糸雀。」
そう言って、モモタロスは金糸雀のおでこを突っついた。
「・・・あ、みっちゃんかしら!」
金糸雀が帰宅途中である、本来のマスターの草笛 みつの姿を見つける。
「ちょっといいかしら?」
そう言って金糸雀はモモタロスから降りると、みつの方へと走り出していった。
「・・・あら、カナ!」
駆けてくる金糸雀に気づいたみつは、金糸雀を抱え上げ、いつもの『ほっぺの摩擦でまさちゅーせっちゅ!』を行なう。
「あじゃじゃじゃじゃ!!」
「・・・ところでカナ、どうしたの?何か用事があって走ってきたんじゃないの?」
「・・・そうだったかしら!あのね、みっちゃん!みっちゃんに会わせたい人がいるかしら!!」
「会わせたい人?」
「ほら、あそこにいるモモタロ・・・あら?」
金糸雀が後ろを向いて指差すが、先程までモモタロスがいたはずの場所には誰もいなくなっていた。
「カナ、会わせたい人ってどこ?」
「あれ・・・?」
とりあえず、先程の場所に戻ってみる金糸雀。
だが、やはりモモタロスの姿は無かった。
「どうしたの?」
「・・・ごめんなさい、なんでもないかしら。」
「ふふっ、変なカナ。まるで『不思議の国のアリス』の最後の場面みたいね。」
「アリス・・・?」
「そう。アリスが夢のような世界を旅するんだけど、実際は本当に夢だった・・・ってアレよ。
 カナの不思議そうな顔とドレス姿でなんか連想しちゃった。」
そう言って、笑うみつ。
「夢・・・だったのかしら・・・?」
「そうだ、せっかくだからラーメンでも食べに・・・あら?カナ、その足元にあるの何?」
「・・・ん?」
167創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 01:36:22 ID:fWc919ee
支援!
一方、デンライナーに戻ったモモタロスはコーヒーを飲みながら外の風景を見ていた。
「・・・ねぇ、モモタロスったらいったいどうしたの?えらく静かにしてるけど・・・。」
コハナが小声でウラタロスに聞く。
「さぁ・・・?でも、なんとなく上機嫌っぽいよね。」
「そうそう、なんと言うか・・・好きな人に会えたみたいな・・・。」
良太郎が言う。
「そういえば、先輩は金糸雀ちゃんに異常なほどの愛情を見せてたよね。もしかして先輩って・・・ロリコン・・・なのかな?」
「へぇー、モモタロスってロリコンだったんだ!やーい、ロリタロスゥ〜!!」
「わっ?!リュウタ!!」
大声をあげるリュウタロスをウラタロスが押さえる。

だが、モモタロスはリュウタロスの言葉に気づかず、そのまま嬉しそうな顔で黙っていた。

「「「「・・・。」」」」
そして、良太郎たちも思わず黙ってしまうのであった。

モモタロスは思い返していた。

それはモモタロスにとっては過去の出来事・・・。
そして、金糸雀にとって遠い未来の出来事・・・。

ひとりの男性のもとに大きなカバンが届けられた。
カバンを開ける男性。
その中には、まるで生きているかのような精巧な人形が横たわっていた。
男性はカバンの中から螺子を取り出し、人形の螺子を巻く。
その回転数がある程度までいった時、人形の内部から『カチリ』という音が発せられ、そして人形は動き出すのであった。
「・・・ふ・・・ふあぁ〜。あら、ちょっとはしたないかしら・・・。」
「お前が・・・ローゼンメイデン・・・なのか?」
「ふっふっふ、あなたがカナの新しいマスターね。私は『ローゼンメイデンの策士』と呼ばれたドール、その名も金糸雀かしら!!」
「・・・神奈川?」
「だぁ〜っ!違うかしら!!」
「・・・金沢?」
「それも違うかしら!!」
「・・・島根?」
「全然違う・・・ってか、なんで都道府県ばっかりかしら!!」
「へへっ!冗談だよ、金糸雀。」
そう言って、男性は金糸雀のおでこを突っついた。
「・・・あれ?この光景、どこかで見たことあるかしら・・・。」
「ん?どうしたんだ?」
「いや・・・なんでもないかしら。」
そう言って、カバンの中から出る金糸雀。
その時、彼女のドレスから一枚のカードが落ちてきた。
「金糸雀、何か落としたぞ。」
「あら・・・あ、これは・・・。」
金糸雀が拾い上げたカードを見て、何かを思い出す。
「・・・?」
「・・・分かったかしら、モモタロスがカナを守ってくれた理由が。」
「桃太郎が・・・何だって?」
「あ・・・なんでもないかしら!」
そう言って、金糸雀はカードをカバンにしまうのであった。

金糸雀が手にしたカード、それは汚い字で『また会おうな!』と書かれた、今日の日付のデンライナーチケットであった。

おわり
169創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 01:47:08 ID:fWc919ee
投下乙!
やはりノリと勢いをものにした電王勢の敵ではなかったか
しかし、今回のてんこ盛りフォーム白鳥はいないものの
デネブやNEW電王も混ざってカオスフォームになってそうだな
そして、金糸雀とモモタロスの出会い。
まだイマジンになる前に会ってたんだね。

電王の雰囲気が存分に入っててとても面白かったです
---------------------------------------------------------------------
以上で電王編は終了です。
駄文ではありましたが、支援&お付き合いしてくださった方に感謝です。

あと、私事で申し訳ないのですが、現在 W編も執筆中だったりします。
現在<W×禁書目録>を連載している方がいらっしゃいますが、その方の作品の横に置いても恥ずかしくないような物を目指すべく、
「あーでもないこーでもない」と書いている次第ですので、ご迷惑でなければ次回もお付き合い願います。

それでは、どうもありがとうございました。
171 ◆jPpg5.obl6 :2010/03/19(金) 02:11:27 ID:gvgV5uSk
>>169
感想ありがとうございます。

ちなみに、今回のオチはイマジンの設定(未来人の精神体がうんぬんかんうん)を元に思いついたのですが、
露骨に表現せずにちょっと濁して、読んだ方に想像させるみたいなふうにさせていただきました。
172涼宮ハルヒの原人 1:2010/03/19(金) 11:15:34 ID:FPVYJQNH
 ハルヒが放課後何時もの様にSOS団部室にいると、そこへ突然入口の戸が半分開き、キョンが顔を出した。

「ハルヒ大変だ! 凄いのが出たぞ!」
「凄いのが出たぁ? 宇宙人でも出たの?」
「違う! でもとにかく凄いのが出たんだ!」

 通常、キョンはこの世の不思議を求めるハルヒに振り回される一般人の立場なのであるが、
この日だけは少し様子が違っていた。

「宇宙人じゃないの? じゃあ未来人? 異世界人?」
「そのどれでも無い! とにかく出たんだよ!」
「はぁ!?」

 ハルヒは半分呆れながら首を傾げてしまった。宇宙人でも未来人でも異世界人でも無いが、とにかく凄い物とは
一体何であろうかと? かと言ってキョンの必死の形相ぶりから見て嘘を付いているとは思えない。

「じゃあキョン、一体何が出たって言うのよ? 言っとくけど大した事無い物だったら承知しないからね。」

 ハルヒが面倒臭そうな顔をしながら立ち上がり、キョンの方へ歩み寄っていたのだが、その時突然
入口の戸が大きく開かれた。

「うわぁ!! 何よこれぇぇぇ!!」

 次の瞬間、ハルヒの叫び声が校舎中に響き渡っていた。SOS団部室の入口の戸を開けてキョンと共に
現れたそれは…全身が鋼の様な筋肉で覆われた全裸の大男だった。

「ななななななな……何なのよこれぇぇぇぇ!!」
「な! な! 凄いだろ! 凄いだろハルヒ!」
「凄いのは分かったから! これは一体何なのよぉぉぉ!!」

 これは流石のハルヒも動揺を隠す事が出来ず、思わずキョンに組み付いて事情を問い詰めてしまう始末。
確かにハルヒはただの人間に興味は無いが、これはもう見るからにハルヒの求める普通では無い人間だ。
173涼宮ハルヒの原人 2:2010/03/19(金) 11:16:40 ID:FPVYJQNH
「良いかハルヒ…コイツはな…原人だ。」
「原人!?」
「何でも中生代の岩塩層の中からティラノサウルスと格闘中に塩漬けになったとしか思えない
状態で発見されたらしくてな、それでピクルと名付けられた原人だ。」
「中生代って………まだ人類誕生してないじゃない!」
「そうだよ。いや…そうだと今まで考えられていたんだ。しかしコイツの存在がその常識を打ち砕いたんだ!」

 ハルヒは宇宙人・未来人・異世界人等を求めていたが、まさか中生代の原始人が現れるとは
彼女にとっても斜め上の展開であったに違いない。そしてハルヒは興味深そうに原人=ピクルの全身を
嘗め回すように見つめ始めた。

「た…確かにこれは…普通の現代人じゃないわ…。全身の猛獣みたいな筋肉…こんなの近代ウェイトトレーニングでは
絶対作れないし…眼光も普通じゃない鋭さだし…両手両脚の爪なんてまるで猛禽類じゃない! よし気に行ったわ!
あんた今日から早速SOS団の団員になりなさい!」
「いかんハルヒ! それ以上近付いたらダメだ!」

 ハルヒは笑いながらピクルに近寄り、キョンが止めるのも聞かずその肩を掴もうとしたが…その時だった。
ハルヒの手がピクルの肩に触れるよりも先にピクルが突然猛獣の様にハルヒに襲いかかってきたのだ。

「えぇ!? ○×△□〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 ピクルに押し倒され、ハルヒは声にもならない叫び声を挙げてしまった。

「ほら言わんこっちゃない! ピクルは自分を襲う相手を逆に捕食して来たから、ピクルに手を出すと
その時点で逆に捕食されちまうんだぞ!! だからピクルが来日したばかりの時にもインタビューしに来た
女性キャスターを逆に襲ったなんて話もあるんだ!」
「○×△□〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 ピクルに襲われ、もはや全年齢対象では表現出来ない事態に陥ってしまったハルヒであったが、
(範馬刃牙本編ではやっちまってたけど)この状況はもはやキョンでもどうする事も出来ない。
ピクルは中生代においてティラノサウルス等の大型肉食恐竜を逆に捕食していたと推測される程の原人なのだ。
こんな相手をどうにか出来る人間等いるはずがない。
174涼宮ハルヒの原人 3:2010/03/19(金) 11:17:34 ID:FPVYJQNH
「ええいこうなったら長門! この状況を何とか出来るのはお前しかいない! 丁度良い具合に
ハルヒも気を失ったし! 頼んだぞ!」
「了解…。」

 実はさり気無く部室にいた長門有希出陣。ここに塩漬け原人ピクルVS対有機生命体コンタクト用インターフェース長門有希の
夢の対決が現実の物となった。

 ただいま激闘中 ただいま激闘中 ただいま激闘中 ただいま激闘中 ただいま激闘中 ただいま激闘中
 ただいま激闘中 ただいま激闘中 ただいま激闘中 ただいま激闘中 ただいま激闘中 ただいま激闘中

 こうして長い激闘の末にピクルには逃げられてしまったが、長門は何とかハルヒを救い出す事に成功。
しかし、長門も決して無傷では無かった。

「原人に片腕持っていかれてしまった…。」
「だっ大丈夫なのか長門! うわっ痛そう!」

 ピクルは長門の片腕を食い千切りそのまま骨ごと噛み砕いて喰ってしまうと言う凄まじい事をしてしまっており、
当然長門の片腕は無くなっていた。もっとも、そんな状況においても長門は表情一つ変えていなかったし、
無くした腕も再び再構成して事無きを得ていたのだが…

「腕は情報再結合すれば大丈夫。しかし…原人は強かった。私でも涼宮ハルヒを助け出すのが精一杯だった。」
「ああ…相手は恐竜を捕食していたらしい原人だ。それも仕方の無い所だろう。」

 ピクルの行方は不明だが、何とかハルヒが捕食されずに済んだ事は良かった良かったとすべきだろう。
まあもっとも………

「原人怖い…原人怖い…原人怖い…原人怖い…原人怖い…原人怖い…原人怖い…原人怖い…原人怖い…原人怖い…。」

 ハルヒにとって原人に襲われたのは相当なトラウマだった様で、しばらくの間この様に
彼女らしからぬ程にまで怯え震えていた事は言うまでも無い。

 おわり
175創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 11:18:18 ID:FPVYJQNH
ハルヒシリーズと範馬刃牙のピクルのクロス
176創る名無しに見る名無し:2010/03/19(金) 17:58:45 ID:WgH9/VPP
なんだかカオスな話でワロタw
ピクルとハルヒのクロスってことで、某所の朝比奈ぴくるっていうネタ絵を
思い出した。
177創る名無しに見る名無し:2010/03/21(日) 22:43:19 ID:Rd8PcUaa
最近仮面ライダーとのクロスが結構多い気がする
クロスやるならディケイドやWって結構使い勝手いいけど
178創る名無しに見る名無し:2010/03/24(水) 13:37:17 ID:JWStO8tB
最近はディケイドのおかげかライダークロス一気に増えましたね
179創る名無しに見る名無し:2010/03/30(火) 11:27:03 ID:ex7ppGc4
仮面ライダーW VS とある魔術の禁書目録の作者です。
これより第3話を投下します。

ちなみにWと禁書目録以外からの作品のキャラを出す予定です。物語中に伏線を張っておきました。
ヒントは某有名格闘ゲームからです。
180仮面ライダーW VS とある魔術の禁書目録:2010/03/30(火) 11:29:01 ID:ex7ppGc4
第3話 学園都市を護る者達

「……しかしよく食べるね」
「むぐむぐ……!」

フィリップは当麻からインデックスを預かっているように頼まれ、引き受けて近くのレストランでインデックスと二人で食事を取っていた。
その間に翔太郎と当麻は消えたナワルを捜索しているのだが、フィリップはインデックスの驚異的な食欲に驚いていた。出された食事の
皿が大量に積まれていくのを見てフィリップはインデックスの脅威の胃袋に興味を持っていた

「その小さな体でこれだけの食事量が入る……。興味深い」

しかし食事量の多さよりもフィリップは先程から食事をするインデックスの顔色が悪いことが気になっていた。よく見たら目も血走っている。

「どこか具合が悪いのかい?」

フィリップはインデックスの体調が悪いのではないかと思い、気遣う。

「ぜ、全然平気なんだよ……」

インデックスは青白い顔をしながらも平常を装う。

「その顔はどう見ても大丈夫じゃないよ。カリールの言葉を気にしているのかい?」

フィリップは先程のカリールのインデックスに対する暴言が原因なのではないかと思った。

「……ち、違うんだよ。さっきあたしを襲ったナワルっていうムスリムなんだけど……」
「ナワルに首を絞められた傷が痛むのかい?」
「ううん……、あの人がくれたオムレツで……」
「……オムレツ?」

インデックスはナワルから差し出されたオムレツにはある”術”が施されていたことを話す。
ナワルの首絞めから解放された後、翔太郎とナワルが戦っている隙に当麻アパートに戻ったのだが、急に眩暈がして玄関で
寝てしまったのだ。それから"夢"を見たのだ。だがただの夢ではない。"悪夢"だったのだ。

その"悪夢"とはかつて十字教徒が異教の地で行った布教という名の"虐殺"であった。自分達の教え……すなわち十字教以外の宗教を
信仰する者を片っ端から浄化と証した"虐殺"をまるでその場にいるかのように自分が目の前で見ているのであった。

ひたすら拷問され、陵辱され、虐殺される異教を信仰する者達を見る悪夢だった。常人であれば見ているだけで発狂するレベルの惨状をインデックスは夢の中で最前列で見続けていたのだ。
現実かと錯覚するレベルのリアルさだったとインデックスは言う。自分の目の前で虐殺された者達の中には女、子供、老人も含まれていた。
拷問するのを止めるようにインデックスは目の前にいる十字教徒の拷問官に懇願するが、何も聞き入れてもらえず、拷問官は拷問に苦しむ異教徒達を見て笑いころげているのだ。

「……ひどい」

フィリップはインデックスの話した悪夢の内容を聞いてそう呟いた。悪夢の中の虐殺は過去100年間の間に十字教が世界で行ってきた殺戮が記録されていたのだ。
普段冷静なフィリップでさえも十字教という教えに対し静かにであるが怒りに燃えていた。

「あたしの信じる十字教が過去にしてきたことは本で読んだけど……。でも実際に観て見るとひどいことだなんて……」

インデックスは涙を浮かべている。

「君に上げたオムレツに施されていたのはどういう魔術なんだい?」
「これは西洋で使われている魔術じゃないんだよ。この国じゃなくて隣の中国で使われている術なんだよ。この術を使う人間がいると聞いたことがあるけど……」
「誰なんだい?」
「名前までは知らないんだよ。でも"少林寺の破戒僧"ということだけは知ってる。それと頭が骸骨の黄色い忍者と、両手が刃でできている怪人を僕にしているとも
聞いた……。ステイルが話してたよ」
「"少林寺の破戒僧"か……」
181仮面ライダーW VS とある魔術の禁書目録:2010/03/30(火) 11:33:10 ID:ex7ppGc4
「い!痛い痛い!!歯が折れた!!!」

まだ十代前半とおぼしき小柄な白人の少女シスターが地面をのたうち回りながら大量の血が出る口を抑えながら痛みに悲鳴を上げていた。

「だ、大丈夫ですか?」

オルソラ=アクィナスはイギリスからやってきた教え子のリリーナを抱き起こす。

「貴方、なぜ布教をする娘を蹴るなどという行為をするのでございますか?」

オルソラは教え子のリリーナの顔面を蹴り上げた男……、カリール・ラディを睨む。

「なぜ?お前達の教えには"右の頬を打たれたら左の頬を向けろ"という教えがあるんだろう?それを俺が試してやったまでだ」

カリールは布教活動をしているオルソラとリリーナに呼び止められ、十字教の集会にこないかと誘われていた。
しかしカリールはそれに腹を立て、リリーナの顔面に蹴りを入れたのだ。

「確かにその教えはありますが……、だからといってこのようなことをして何になるというのでございましょうか?」

カリールから見れば下らない話だ。昔散々自分達とは違う教えを信仰している者を殺しておいて、いざ自分達が危害を加えられれば
こうして被害者面する。十字教の行う布教活動など吐き気がする偽善に満ちた行為だ。

「お前達が過去にしてきた行いに比べれば優しいことだと思え」

カリールは馬鹿にしたような笑みを浮かべながら、オルソラに侮蔑の眼差しを向ける。

「しかしこのような行いをしていればいつまでも分かり合うようなことはできません。あなた様はこのような暴力をして気持ちが
いいのでしょうか?世界中の人々の幸せを願う私共としては悲しいことでございます」
「寝言は寝てから言え。お前らは十字教信徒"だけ"の幸せを願っているのだろう?それ以外の異端者ならいくら死んでもかまわないという考えがミエミエだ」
「確かに過去にはそのような行き過ぎた考えもありましたが、現在ではそのような考えは許されておりません。昔とは違うのでございます」
「そういう聞こえのいい言葉で何百万人もの人間の命を奪ってきたと思う?十字教徒でもない人間に慈愛だの平和だのという奇麗事を並べ立てて"自分達の色に染め上げる"というのは貴様等の得意技だったな」
182仮面ライダーW VS とある魔術の禁書目録:2010/03/30(火) 11:36:37 ID:ex7ppGc4
言い争いを続けるカリールとオルソラの間にリリーナが割って入る。

「シスターオルソラはそんなことはしません!!十字教徒全員がそのような考えを持っているわけでは……!」

リリーナは血が流れ出る口を抑えながら言う。

「綺麗事を」

カリールが目障りだという風にリリーナの顔面に右ストレートパンチを打ち込む。

「きゃあ!?」

カリールのパンチでリリーナは後ろに吹っ飛ばされる。しかし吹っ飛ぶリリーナを受け止めた者がいた。

翔太郎だ。

「もうやめろカリール!」
「……翔太郎」

翔太郎の鋭い視線を受けて、カリールははたと我にかえった。

「お前……、インデックスっていう娘だけじゃなくこんな女の子にまで手を上げるのか?」

翔太郎の問いにカリールは押し黙る。

「カリール、なんでお前はこうも十字教を憎む?」

翔太郎の真撃な問いかけにカリールはゆっくりと口を開く。

「もうあの事件から四年か……」
183仮面ライダーW VS とある魔術の禁書目録:2010/03/30(火) 11:42:37 ID:ex7ppGc4
「井坂深紅郎だね?ネセサリウス(必要悪の教会)の命により捕縛する」

身長2メートルに達しようかという長身に赤髪右目の下のバーコード状のタトゥーが掘り込まれた魔術師、
ステイル・マグヌスは病院から出てきた医者、井坂深紅郎にそう宣言する。

「ほぅ?噂に聞くネセサリウス(必要悪の教会)の方ですか。この私が何をしたと?」

黒の紳士服に身を包んだ温和そうな紳士、井坂深紅郎はステイルに尋ねる。井坂深紅郎は旧知の仲である木原数多を尋ね、この学園都市に
来ていた。そしてついでにここ学園都市でもガイアメモリを流通させようと、病院内でガイアメモリのセールスを行っていたのだ。

「あなたの実験犠牲になった人の中にイギリス清教の人がいてね。ネセサリウス(必要悪の教会)の教主から捕縛の命令が出されたのさ。
一緒にご同行願おうかな?」

「クク……、魔術師がこの私を捕まえられると思ったのかね?いいだろう力づくできたまえ」

井坂とステイルは人気のない空き地に移動する。

「あまり僕達ネセサリウス(必要悪の教会)を舐めない方がいいよ?」

ステイルは咥えていたタバコを捨てると、魔術の詠唱を始めた。

「あなたもガイアメモリの力というものを軽く見ない方が懸命ですよ?」

井坂はメモリを素早く取り出し、自分の右こめかみに刻まれたコネクトに差し込む。

『ウェザー!』

井坂は白色が主体色のウェザー・ドーパントに変身する。

「炎よ(Kenaz)
巨人に苦痛の贈り物を(purlsazNaupizGebo)!」

ステイルの右手に摂氏3000度もの紅蓮の炎が、地獄の業火の如くごうごうと勢い良く燃えている。その業火を井坂目掛けて放出する。

「ぬぉおお!!」

凄まじい炎が嵐のように井坂に襲い掛かる。

「どうだい?魔術師の力は?」

ステイルは余裕の表情で炎に燃える井坂を見て言う。
184仮面ライダーW VS とある魔術の禁書目録:2010/03/30(火) 11:52:22 ID:ex7ppGc4
「ク、クククク……!」

井坂は笑いながらステイルから放たれた炎を身体から放出された冷気で掻き消した。少しもダメージを与えられていないようだ。

「何!?僕の炎が!?」

ステイルは驚愕した。摂氏3000度もある自分の豪炎が冷気で掻き消されるとは。

「今度は私の番のようだね」

井坂は凄まじい突風をステイル目掛けて放出する。井坂のガイアメモリの能力、ウェザーは気象を自在に操る能力だ。
冷気や風、竜巻、雷をも起こすことができる。

「ぐぁあ!」

ステイルは井坂から放出された突風の威力で数十メートルも後ろに飛ばされる。

(迂闊だった。ドーパントの能力がこれ程のものだとは……!こうなれば……!!)

吹き飛ばされたステイルは起き上がり、態勢を立て直し、魔術を詠唱する。生半可な攻撃では井坂に傷を負わせる
ことすらできない。もっと強力な魔術で対応しなくては。
185仮面ライダーW VS とある魔術の禁書目録:2010/03/30(火) 11:58:04 ID:ex7ppGc4
「灰は灰に(AshToAsh)
 塵は塵に(DustToDust)
 吸血殺しの紅十字(SqueamishBloody Rood)!」

ステイルが魔術の詠唱を終えると、ステイルの両手には巨大な炎の剣が現れた。

「くらえ!」

両手に持った炎剣を井坂目掛けて、振り下ろす。

「小癪な!」

井坂は身体から凄まじい冷気を放出し始めた。
ステイルの持つ炎剣は井坂の放出する冷気にどうにか耐え、井坂の身体を切り裂く。

「がぁ!」

巨大な二本の炎剣の攻撃にはさすがの井坂もたじろぐ。

「一気に終わらせるか」

ステイルはここで一気に井坂を倒すべくとっておきの魔術の詠唱をはじめた。


「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ(MTWOTFFTOIIGOIIOF)
 それは生命を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり(IIBOLAIIAOE)
 それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を滅する凍える不幸なり(IIMHAIIBOD)
 その名は炎、その役は剣(IINFIIMS)
 顕現せよ、我が身を喰らいて力と為せ(ICRMMBGP)!」

ステイルの詠唱により現れたのは巨大な煉獄の炎で構成された巨人だ。ドロドロとしたマグマを身体に纏い、
周囲に凄まじい熱を放出している。

「面白い……!これが魔術というものか」

イノケンティウスの姿を見た井坂は舌なめずりをする。

「やれ、"魔女狩りの王"【イノケンティウス】」

イノケンティウスが井坂目掛けて豪腕を振り下ろす。

「ちぃ!!」
186仮面ライダーW VS とある魔術の禁書目録:2010/03/30(火) 11:59:29 ID:ex7ppGc4
井坂はイノケンティウスの振り下ろす豪腕をどうにか受け止める。
イノケンティウスは凄まじいパワーで井坂を押しつぶそうとするが、井坂も劣らず強力な力を持つドーパントだ。身体中から
強力な冷気を放出し、イノケンティウスの攻撃を鈍らせ、その攻撃によりイノケンティウスに隙ができる。その隙を井坂は
見逃さず、イノケンティウスの豪腕を払いのけ、後方に飛び、距離を置いた。

「どうやら私も本気にならなければならないようですね」

井坂は自分の周囲に雷を発生させ、雷をイノケンティウス目掛けて放出する。
無数の雷撃がイノケンティウスを襲う。再生能力を持つイノケンティウスであるが、連続攻撃の
凄まじさに再生が追いつかなくって来た。

「イ、イノケンティウスが……!」

雷撃がイノケンティウスの身体を貫き、ステイルに襲い掛かる。
イノケンティウスを制御しているステイルは身動きが取れない。

(駄目だ……!避けきれない!)

その時、ステイル目掛けて放たれた雷撃が切り裂かれた。

「お前は……!神裂!?」

自分と同じネセサリウス(必要悪の教会)に所属する神裂火織だ。

「おやおや……、新しいお客様ですか。もう少し遊びたい所でしたがもう時間ですね。決着はまたの機会に」

井坂はそう言うと自分の周りに雷撃を落とし、消え去った。

「くそ! 逃がしたか……!」

ステイルは悔しそうに言う。

「ステイル、井坂よりも厄介な人物を捕らえるよう、指令がきました」
「何?あの井坂よりも……?」

ステイルは指令の変更ををしぶしぶ引き受ける。


ステイルは神裂の妙に"生気のない目"を気にしていたが、任務の方を優先させた。
187仮面ライダーW VS とある魔術の禁書目録:2010/03/30(火) 12:02:22 ID:ex7ppGc4
イタリア、ミラノにある移民街の一つである燃え盛るアラブ人街の通りをナワルは必死に走っていた。

「レイラ!サダム!!どこにいる!!」

妻と息子の名前を必死に叫ぶ。過激なローマ正教の信者達がムスリムを信仰するアラブ人街に火を放ち、住民を
残らず血祭りに上げているのだ。

ナワルが通りを走っていると通りに死体が無数に転がっていた。

「だ、誰がこんな……!?」

死体の山はアラブ人街の住民達だ。まだ幼い子供や老婆まで"無惨"という一言でしか言い表せない程の状態であった。
多くの死体は何かに切り裂かれたような死に方だ。そう、"まるでギロチンのような鋭い刃"で切り裂かれたような……。

「ハハハハハ!!!! いやぁ、異教徒の分際でこの国に居据わるとは不届きな奴らですねー」

緑色の十字教徒の服を着た小柄な白人の男が死体を蹴りつけながら笑っている。

「貴様か……?貴様がこんなことを……!?」

ナワルは通りの大勢の死体はこの男がやったのだと直感した。

「そうですよ。この神聖な国にこんな異教のゴミ共が住み着くなんて許せませんからねー」

まるで爬虫類のような顔を歪ませながら死体に唾を吐きつける。

「こういう女子供もしっかりと殺しておかないと駄目なんですよねー」

緑色の男が左手に二つの生首を持っている。

その生首は妻のレイラと息子のサダムだ。

「そ、そんな……!き、貴様らぁぁああああぁああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


その時ナワルは眠りから醒める。

公園のベンチで休んでいたら眠りこんでしまったのだ。

「は……!?なんだ夢か……」

今でも鮮明に覚えている四年前の事件……。あの緑色の男は必ず自らの手で葬り去る。それまで十字教徒共を一人でも多く地獄に
落とす。そうナワルは心に誓った。


「誰にも俺の聖戦(ジハード)邪魔はさせん。この都市を護る者達に妨害されようがな……!!!」

次回 第4話 仮面ライダーVSネセサリウス(必要悪の教会)
188創る名無しに見る名無し:2010/03/30(火) 12:05:09 ID:ex7ppGc4
以上で第3話を投下終了です。
189創る名無しに見る名無し:2010/03/31(水) 10:12:03 ID:+0ykGZbZ
仮面ライダーW VS とある魔術の禁書目録の作者です。引き続き第4話を投下します
190創る名無しに見る名無し:2010/03/31(水) 10:14:49 ID:+0ykGZbZ
第4話 仮面ライダーVSネセサリウス(必要悪の教会)

カリールは翔太郎と共に当麻のアパートに戻り、フィリップとインデックスを含む三人に全てを語った。

今から四年前、イタリアのミラノのアラブ人街で過激な十字教信徒による移民に対する暴動があったのだ。
移民側の犠牲者は数百名とも言われる程のものであったと言われている。そしてその暴動を扇動した男の手により
ナワルは妻と息子を殺されたのだ。排斥事件にしては余りにも凄惨であったため、大々的にニュースで報じられていた。
カリールもそのアラブ人街に住んでいたのだが、たまたまその時は故郷のサウジアラビアに里帰りしていたので
難を逃れた。しかしカリールも義理の姉と甥を失ったのだ。

「奴らは俺達を異教徒だからといてゴミのように殺した……! 俺は奴らを決して許さない!!」

過去を語り終えたカリールの体中からは突き刺さるほどの殺意と憎しみを放っていた。それは翔太郎とフィリップが冷や汗を
流す程のものでった。

「あのナワルにそんな過去が……」
「俺も覚えてるぜ。四年前のその事件なら日本の新聞でも大きく取り上げていたからな。まさかナワルがあの事件の犠牲者だったなんて……
あの記事を読んでいただけで胸糞が悪くなったのを覚えてる。女子供でさえ殺し、尚且つ警察はろくに捜査もしなかったそうだからな」

翔太郎はナワルの過去を知り、十字教信徒のその残虐さに怒りを覚えた。


「確かにナワルだけに一方的に非があるようには見えないが……」

フィリップは十字教を憎むナワルの心情がどれほどのものか分かった気がした。

「翔太郎、これでわかったろう? あいつらは綺麗な顔をしながら内心俺達を下等な宗教の信徒と見下し、俺達が十字教が中心の国に
住めば大勢で俺達を殺しにかかる。何もしないでいてはこっちがやられるだけだ。俺はナワルに殺しはしてほしくないと願ったが、
もうそんなことはどうでもよくなってきた気がする。さっきのシスター共の綺麗な面で腐った教えを広める姿を見たらそう思ったよ。
思えば復讐を止めたいという俺の考え方が間違っていたのかもしれん。できれば俺も復讐に参加させてもらえればありがたい……」
「けどなカリール、いくらそんな過去だからって無関係な十字教の信徒を殺したりしていいはずがねぇ。それじゃ四年前の事件の十字教の
暴徒と同じじゃねえか!」
191創る名無しに見る名無し:2010/03/31(水) 10:18:34 ID:+0ykGZbZ
翔太郎はナワルとカリールの過去に心を痛めながらもナワルの復讐というやりかたは間違っているとカリールに説く。

「じゃあ復讐以外に何をすればいい? 家族の写真を見ながら感傷に浸る惨めな生活を送れとでも言うつもりか?」

カリールの言動は二日前にナワルを止めて欲しいと懇願した時とはまるで別人になっていた。やはりカリールも十字教への復讐をしたい
のだろうか?翔太郎は思った。

「そんなこと間違ってるんだよ!!」

翔太郎とカリールの会話にインデックスが割り込む。

「翔太郎の言うとおりそんなやり方で何が変わるの? もっと何か別の方法が……!」
「まさか十字教徒共の復讐を望む者がナワルだけだと思ったのか? ナワルだけじゃない。四年前の暴動事件の生き残りの殆どは十字教徒への
復讐を望んでいるそうだ。まさか泣き寝入りしろなんて言うんじゃないよな?"彼等にも親しい友人や家族がいるから復讐などやめろ"なんて
家族を殺された者達に躊躇わず言えるか?これはナワル個人の問題じゃない。俺達ムスリム全体の問題だ」

カリールは割って入ったインデックスを睨みながら十字教への復讐を望む者はナワル個人だけではないと言う。

「復讐する者を止める者というのは気楽な者だ。復讐に走る者だけを見て、復讐の原因となった者達には目を向けないとはな。
"過去に囚われるな"という言葉も奴らの得意な言葉だよな。過去を切り離して物事を考える奴は最悪の愚か者だ。過去があるからこそ
現在の自分があるということに気がつかないのか?人間が簡単に過去を切り離して物事を考えられればこんな苦労はしない」

そう言うとカリールは当麻のアパートを出て行った。

「復讐か……」
「翔太郎、これは照井竜の時よりも事情が複雑のようだね」

照井竜……。仮面ライダーアクセルに変身する彼もまた復讐に燃える男だった。自分の家族を殺した男、Wのメモリの持ち主を追って……。
以前にも翔太郎、フィリップと復讐絡みで敵対した照井だったが、翔太郎やフィリップとの対立をえて、風都にいる間は風都のルールに
従うということで決着したが、今回ばかりはそう簡単な話ではない。翔太郎とフィリップは答えを出しあぐねていた。
192創る名無しに見る名無し:2010/03/31(水) 10:21:54 ID:+0ykGZbZ
「おいおい……、道を歩いていたら急に夜になった……!これも魔術師の仕業ですかー?」

ナワルの捜索をしていた当麻は、第7学区内を歩いていると急に辺りが暗くなったことに驚いた。さっきまでは午後2時
だったのだ。いきなりこんな夜中になるなど魔術師の仕業に決まっている。当麻はまたかという感じで辺りを見回す。
相変わらず魔術師の類に好かれる体質のようだ。

「……ん?ひ!人が空中を歩いてる!?」

当麻は空を見上げると、白服の青年が空からこちらに近づいてくるではないか。

「お!お前も魔術師か!?」

当麻は身構える。

「いいえ、上条当麻、あなたに忠告をしに来た者です」
「うぉ!?いきなり目の前に!?」

宙を歩いていた白服の青年はいきなり当麻の目の前にワープして語りだす。白服の青年は空を指差しながら当麻の住む世界に危機が訪れている
ことを話す。

「貴方達の住んでいるこの世界は既に他の世界に侵食され始めています。それを止められるのは貴方しかいません」
「俺達の世界……?俺達が住んでいるこの世界以外にも世界が存在するのか?」
「ええ、既に貴方達の世界に侵入している者達がいます。それを止められなければ貴方の住む世界は崩壊するでしょう」
「いきなり世界崩壊って言われてもなぁ……」

当麻はいきなり現れた男に自分の世界が崩壊すると告げられてもイマイチ信じきれていないようだ。

「信じられないのも無理はありません。それを証明してくれる人を連れてきました」

白服の男が空を指差すと、道路に巨大な雷が落ちる。

「うお!?」

突然降ってきた雷に驚く当麻。雷が落ちた場所を見ると、人影が見える。煙が晴れると、頭に傘のような帽子をつけ、白い服に
白い両目の男が立っていた。

「お前達の世界の崩壊に関しては私から説明しておこう」
「あ、あんたは……?」
「我が名はライデン。お前達の住む世界とは違う世界で神をしている者だ」
「か、神……?」

当麻はいきなり空から雷と共に現れた男の言葉に呆然としていた。
193創る名無しに見る名無し:2010/03/31(水) 10:25:28 ID:+0ykGZbZ
「とりあえず俺はナワルを捜し行く。お前はその娘の傍にいてやれ」
「わかったよ翔太郎」

翔太郎は意を決してナワルの捜索に行くことにした。このまま悩んでいても仕方がない。ナワルを止めなければ犠牲者が
出るばかりだ。

その時翔太郎の携帯が鳴り、翔太郎は携帯に出る。

「はい、左です…………。あ、照井、お前もこの学園都市に?ん?無実を証明したい学生二人だって?わかった直ぐに行く」
「どうしたんだい翔太郎?」
「照井の奴がここの街に来てる。照井を襲った女学生が二人がいるらしくてな、その二人は自分達は照井を襲ったことは記憶にないと
言ってるんだ。俺は直ぐにジャッジメント(風紀委員)第177支部に行ってくる」
194創る名無しに見る名無し:2010/03/31(水) 10:28:25 ID:+0ykGZbZ
美琴と黒子はジャッジメント(風紀委員)第177支部にあるパソコンで自分達がタハール導師からジャスミンを預かり、自分達がジャスミンを
つれて歩いている所を映した監視カメラの映像を食い入るように見つめていた。自分達の潔白を何としても証明する為に固法にすがりついて、
パソコンを見させてもらっている。照井も必死に無実を主張する二人についに根負けしてパソコンで調べることを許可したのだ。

「あたしと黒子はジャスミンちゃんをここに連れて行ったのは覚えてるのよ。でもその後確か路地裏に行きたいってジャスミンちゃんが言って……」
「あ!お姉さま!見てください!ジャスミン嬢が懐から何か物を出しましたわ!それを自分の腕に…………へ?変身しましたわよ!?」

美琴と黒子は黒いマントで身を包んだ怪人に変身したジャスミンから何か言われ、頷くと、そのまま路地裏を立ち去っていく姿が映されているではないか。

「あ、あたし達はこの怪人に操られて……」
「……どうやら本当のことだったようだな」

照井はジャスミンが変身したのを見てドーパントだと確信した。

「っていうことはタハール導師もグルって可能性があるんじゃない?ホラ、ジャスミンちゃんの案内を頼んだのも導師だし……」
「これで決まりだな。固法といったな。直ぐにこの映像に映っている少女とタハール導師の捜索をアンチスキル(警備員)に頼んでくれ」
「ええ、わかりました照井刑事」

固法は照井の頼みを聞いてすぐさまアンチスキル(警備員)に捜索の依頼を出す。後輩二人が操られていたのだと知り胸を撫で下ろしたようだ。
その時ドアを開けて翔太郎が入ってくる。

「照井、お前、超能力を持った女学生二人に襲われたってな。その二人はどこだ?」
「左か。その学生二人ならこちらだ」
「俺は左。左翔太郎だ。風都で探偵業をしてる」
「あたしは常盤台中学の御坂美琴。こっちは後輩の白井黒子よ」
「お見知りおきを」

翔太郎は美琴と黒子に自己紹介を済ませた後、二人を操ったドーパントは何の力を持つドーパントなのかフィリップに連絡を取り、
フィリップは"地球の本棚"にアクセスする。

「人を操る力だからやっぱ"コントロール"か?」
「よし、"ドーパント"と"コントロール"で検索してみよう」

フィリップは"ドーパント"と"コントロール"で検索をかけるが、本が殆ど減らない。

「情報が不足しているね……。以前戦ったライアー・ドーパントのような能力だとは思うんだが……」
195仮面ライダーW VS とある魔術の禁書目録:2010/03/31(水) 10:29:41 ID:+0ykGZbZ
フィリップが困惑する。

「なあ、君達を操ったドーパントの映像を見せてくれるか?」
「え?いいけど……」

翔太郎はパソコンに映された監視カメラの映像のドーパントに変身したジャスミンが美琴と黒子に何か話しかけている所を注意深く見た。
よく見ると、指先から紫色の光線を出して、それを美琴と黒子に当てているではないか。

「まてよ?何かを"暗示"させているかもしれないな フィリップ、"暗示"で検索してくれ」
「わかったよ翔太郎。"暗示"を英語に直すと……suggest(サジェスト)か。」

フィリップは暗示の英語のsuggest(サジェスト)で検索をする。するとみるみる本が減り、一つ残った本をフィリップが読み始める。

「翔太郎、タハール導師と養女のジャスミンはナワルとグルだ!!」
「何!?こうしちゃいられねぇ!直ぐにナワルを捜索するぞ!」

翔太郎は世界有数の大富豪がナワルと共犯だとは予想がつかず、何としてもナワルを見つけるべく支部を出ようとする。

「待って!あたし達も一緒にその人と導師を探させて!」
「わたくし達ジャッジメント(風紀委員)の力が必要になりますわ」
「仕方ねえな……」
「わかった……」

翔太郎、照井は美琴と黒子がナワルの捜査に加わることに同意した。
196仮面ライダーW VS とある魔術の禁書目録:2010/03/31(水) 10:32:47 ID:+0ykGZbZ
翔太郎、照井、美琴、黒子はそれぞれ二人一組でナワルの捜索を開始した。しかし一向にそれらしい人間を見たという情報はない。

「写真の男の人は知らない。と、ミサカはミサカは言ってみる!!」
「……だめだなこりゃ」
「次に行くぞ左」

翔太郎と照井は血眼で捜すがやはりナワルを見たという情報はない。二人が苛立ちを隠せずにいた時、男女の二人組が翔太郎と
照井の前に立ちはだかった。

「左翔太郎と照井竜ですね?我々ネセサリウス(必要悪の教会)から捕縛命令が出ています。場合によっては殺しても構わないという指令
ですので、言うとおりにした方が懸命です」

翔太郎と照井の前に立ちはだかった二人はネセサリウス(必要悪の教会)所属の魔術師、神裂火織とステイル・マグヌスだ。

「ネセサリウス(必要悪の教会)……、噂だけなら聞いたことがある。イギリス清教を実質上取り仕切るといわれる部署……。そんな
者達が俺達に何の用だ?」

照井は神裂とステイルを睨みながら質問する。一日に二度も喧嘩を売られて流石に頭に来ているようだ。

「僕達としても上からの命令は絶対なんでね……。抵抗するなら力づくで連れて行くよ?」

ステイルは目の前にいる二人が井坂以上に危険な存在には見えなかったが、任務を優先させることにした。

「君達がドーパントよりも危険な存在であるかどうか証明できるのかい?」
「俺に……、質問を……、するな!!」

ついに堪忍袋の尾が切れた照井はアクセルドライバーを装着し、アクセルメモリを取り出す。

「変ッ……身!」

『アクセル!』

アクセルメモリを差込み、アクセルドライバーのスロットを捻り、アクセルに変身する

「ちっ、面倒なことになってきやがったぜ。フィリップ、変身だ!」
「OK、翔太郎」

翔太郎とフィリップも照井に続きWドライバーにメモリを差込み、変身する。

『サイクロン!』
『ジョーカー!』
『サイクロン・ジョーカー!』

「貴方の相手は私がします」
「上等だ!魔術師だかなんだか知らねーが、売られた喧嘩は買ってやる!」

「僕の相手は君かい」
「さぁ、振り切るぜ!」

神裂が自身の得物、刀身が2メートルもある長刀、「七天七刀」を抜き、Wに斬りかかる。
「七天七刀」の斬撃がWのボディに傷をつける。

「がぁ!」

翔太郎はこの長大な刀をいとも容易く操る神裂に驚愕した。魔術師というのは生身でもこのような強さなのだろうか、と。

「翔太郎!ここはサイクロン・メタルでいこう!」

武器がないことを不利と見たフィリップはメタルシャフトを持つサイクロン・メタルに変身するよう進言する
197仮面ライダーW VS とある魔術の禁書目録:2010/03/31(水) 10:38:11 ID:+0ykGZbZ
「よし!」

『メタル!』
『サイクロン・メタル!』

メタルシャフトが「七天七刀」の斬撃を止める。恐ろしい程の強度を誇るメタルシャフトであれば「七天七刀」の斬撃といえど
破壊できるはずがない。Wはメタルシャフトを棒術の要領で操り、神裂が繰り出す斬撃を次々と捌いていく。
達人級の剣術の使い手である神裂は無駄のない動きで斬撃を繰り出す。しかしWも負けじと棒術で応戦する。神裂よりも
恐ろしい剣術を使うドーパント。霧彦を相手にしてきた翔太郎にとって神裂の剣術はさして脅威ではない。

「やりますね……。ならばこれならどうです?」

「七閃」

その瞬間七本のワイヤーが地面を切り裂きながらWに襲いかかった。
瞬速の速さで「七天七刀」を抜刀し、七筋に切り裂き、鞘に納める神裂の得意技の一つ、「七閃」である。

「ちぃ!」

Wは七本のワイヤー攻撃をかろうじて避ける。細いワイヤーといえど地面を切りながら来るので避けること自体は難しい
ことではないが、七本全てを避けるには困難を窮める。

「何度避けてもこの七閃からは逃げられません」

神裂はそう言うと七閃を連続で繰り出してくる。Wはワイヤーの攻撃を避けるだけで精一杯だ。
そしてついにワイヤーがWを捉えるが、メタルで強化されたWのボディはワイヤーの攻撃にかろうじて耐えた。

「くっ!」
「翔太郎。ここはマキシマムドライブで一気にケリをつけるしかない」
「仕方ねぇ……、じゃあこっちも本気で行くぜ!」

Wはメタルシャフトにマキシマムメモリを差し込む

『メタル!』
『メタル・マキシマムドライブ!』

「メタル・ツイスター!!」

サイクロン・メタルのマキシマムドライブ『メタル・ツイスター』を繰り出し、自分の周りのワイヤーを吹き飛ばす。

「ちぃ!!」

神裂はワイヤーが全て弾かれると、Wに向かって斬りかかってくる。

「翔太郎!魔術師とはいえ相手は生身だ!」
「わかってる!」

翔太郎は神裂の身体にメタル・ツイスターを当てずに、「七天七刀」に当てて神裂の得物を弾き飛ばす。

「あ!?」
「今だ!」

Wは手刀を神裂の首筋に軽く入れると、神裂は力なく地面に倒れた。

「ふー、魔術師ってのはこうも厄介なもんかよ」

翔太郎は魔術師の想像以上の力に脅威を感じていた
198仮面ライダーW VS とある魔術の禁書目録:2010/03/31(水) 10:39:49 ID:+0ykGZbZ
「顔の傷なら心配要りません。直によくなりますよ」

学園都市一の名医である冥土帰し(ヘブン・キャンセラー)の治療を受け、リリーナは即日に退院した。
カリールの蹴りと右ストレートを食らって、顔を数針縫う怪我を負ったリリーナは、オルソラ=アクィナスの元へと帰宅していた。

「あー痛い……」

まだ痛む顔の傷を摩りながらリリーナはそう呟く。十字教の教えを広めるというのも大変だ。しかし信仰を広めるということは
困難なもの。シスターオルソラのしてきた苦労はこんな比ではないはず。自分も一人前のシスターになるべく頑張ろうと自分に
言い聞かせるリリーナであった。

「お嬢さん、君の信仰する教えについて是非聞きたいことがあるんだけど?」

リリーナの前に立った長身のアラブ人男性、ナワル・ラディは嫌な笑みを浮かべながら言った。

「あ!十字教の教えについてお知りになりたいのですね!」

リリーナの表情が一気に明るくなる。自分に布教の仕事を神が与えてくれたのだと感激していた。

「ここじゃ何だから別の場所に移動しようか?」

そうナワル言い終わる瞬間、リリーナの意識は遠のいた。ナワルの目にも留まらぬボディーブローにより意識を失ったのだ。



「お……ね………………が……い……、た、助け………………て…………」

ナワルに第十学区の廃ビルに連れ込まれたリリーナは両手首両足首を折られ、腕に鎖を巻かれて吊るされた状態でナワルのサンドバックと化していた。
もちろん、ナワルは長時間痛ぶれるようにわざと手加減してリリーナの鳩尾、太股、肩、腰、膝、喉、胸、などに打撃をかれこれ1時間以上打ち込んでいる。

リリーナは既に虫の息だった。顔面にも容赦なくナワルの拳や蹴りを打ち込まれ、顔はお多福のようにはれ上がり、歯という歯は全て折られていた。

「断る。もう少し楽しませろ」

消え入るような声で懇願するリリーナの要求を無視し、ナワルは再びリリーナの全身に打撃を打ち込み始める。

顔面に右ストレート、右肩に手刀、左肘に蹴り、右膝に左フック、顔面にハイキック、鳩尾にボディブロー、喉に手刀、顔面に左ストレート、左肩に踵落とし………………。


「……ちっ、もうくたばったか」

休む間もないナワルの打撃の嵐によりついにリリーナは息絶えた。お多福のように晴れ上がったその顔は恐怖と苦痛に歪んだ表情をしていた。

「まぁ、それなりに楽しめたからよしとするか」

ナワルは恐怖に歪んだリリーナの右頬を舌で舐める。

「いいねぇ……絶望と恐怖の味だ……」

ナワルは薄気味の悪い笑みを浮かべながらまた一人十字教徒を絶望という名の死を迎えさせたことに満足していた。

「次からはもう少し活きのいい信徒を殺すか……。クククク……ハハハハハハハハ!!!!!!!」

ナワルは大音声の高笑いを数分間し続けた。ナワルの不気味な笑い声だけが廃ビルに響いていた。

次回 第5話 兄弟の絆
199創る名無しに見る名無し:2010/03/31(水) 11:01:14 ID:+0ykGZbZ
以上で第4話を投下終了です。楽しんでいただければ幸いです。
200創る名無しに見る名無し:2010/03/31(水) 22:38:14 ID:C3QrtyUt
楽しんでいただければっていうけどさ、第一話から通して禁書勢が
ライダーとオリキャラの嬲り者になってるだけの話にしか見えないんだけど。
これのどこに娯楽性を見出せばいいのか真剣に訊きたい。
201創る名無しに見る名無し:2010/04/01(木) 00:38:17 ID:Qn5577/a
禁書厨に触れちゃ駄目
202創る名無しに見る名無し:2010/04/01(木) 01:01:15 ID:vShJySDK
禁書キャラの扱いが相変わらず酷いな。
スポーンクロスの時からこの人は禁書アンチなんだなとは思ってたけど
展開がスポーンの時と全く同じなんだな。穏健派の禁書キャラをダーティーハリーまがいの
暴力的な理論を振りかざして蹂躙する。戦闘力のある禁書キャラは必ず負けるか終始劣勢。これの繰り返し。
露骨な踏み台扱いにうんざりする。
203創る名無しに見る名無し:2010/04/01(木) 01:58:07 ID:Qn5577/a
もうコイツ投下しなくて良いよ
wikiからも消しとけ
204創る名無しに見る名無し:2010/04/01(木) 07:07:59 ID:uccBUcoC
熱くなった勢いで書いた文、内容が酷くなってしまいました・・・・。頭を冷やして冷静に考えると禁書キャラの踏み台
ぶりが凄まじいことに・・・・。もちろん、禁書キャラが大幅に巻き返す展開は用意してありますが、
ここまでの展開で不快な気分になった方に謹んでお詫び申し上げます・・・・・(>_<)



          / /: :`丶 _                             |
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         | i八:ハ :│ |/ィ≦i示坏、ヽ |/  \ ^'|\ ヽハ: :∧ : /: : : : : : : : : : : :
         |   ヽl: ∧ {{. {{//..:::ー'}      \| ,x≧==∨ニ| /|: : :/: : : : .:ト、 : :
         /   /|ヽ:ハ  '⌒)しイリ        ´ /爪...:::(心、│ /| : : ∧ 〈 \   
          |/  / :|: ;' : iとこゞ辷ン          {{///..::jノ}ハ∨ |: : / ハ:∨|
        /  / _|/: : '   ー─''           '⌒)_イトリ }}  /:/ :j : |`ヽ!
          /  /´ /: : :i ////    ,            `''ー‐てつ   |: : :.:i : | ノ|
          /  /   /: : : :{        ′        ` ー‐      |: : :.:i : |く /
        /  /   / : : : 八                     //////   |: : :.:i : | \
       /  /   |: : : : i: :|\      ^ヽ__,. --、           イ|: : :.:i : |   ヽ
     │ {    | : : : :i: :|  |>,、     、            イ /│: : :i : |
205創る名無しに見る名無し:2010/04/01(木) 12:06:03 ID:6PQksEFJ
W禁書の人、次からはトリップつけた方がいいかも
しかし平和なスレだったのになぁ
ディケイド禁書の人もwiki荒れてるし、その人来なくなっちゃったし……
なんてこったい……
206創る名無しに見る名無し:2010/04/01(木) 21:31:38 ID:9tMszyWS
つーか連載するのもいいけどある程度は書きためて投下しろよ
現段階じゃ禁書勢の扱い酷すぎて読む気も怒らない
207創る名無しに見る名無し:2010/04/05(月) 19:25:21 ID:7b/akmRe
書きたいけど携帯じゃなぁ・・・
208創る名無しに見る名無し:2010/04/08(木) 00:29:35 ID:5VzcPTgG
クロスオーバーでパワーバランスとかが偏りがちになるのはクロスSSではありがちじゃね?
その辺りは後々、修正とかできるんだから、目くじら立てなくてもいいだろうが
209創る名無しに見る名無し:2010/04/08(木) 15:37:36 ID:lgeQ54Se
>>208に同意
クロスオーバーする以上、キャラ増えるんだからどうしても踏み台扱いされる奴がいてもおかしくない
ただ、あからさまな改変はキツいけどな

俺もクロスオーバー書こうかな
210創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 21:20:04 ID:ECBo5Si5
んだって禁書勢がかませのワンパターンなんだもん
作者には早く死んで欲しい
211創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 22:08:09 ID:5YypT3/h
いつまでも叩いている奴はいい加減にしろ。批判するのは認めるが限度ってもんがあるだろうが。
そんなに禁書キャラを愛してるんならこの作品を見るな。

というか>>210お前が死ね
212創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 22:09:42 ID:ECBo5Si5
そんなに禁書キャラを愛してるんならこの作品を見るな。
そんなに禁書キャラを愛してるんならこの作品を見るな。
そんなに禁書キャラを愛してるんならこの作品を見るな。
そんなに禁書キャラを愛してるんならこの作品を見るな。



それクロスものとしては致命的なんじゃないの
213創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 22:14:35 ID:5YypT3/h
>>212
いつまでも作者や作品を叩いたりしてるのを見ればそう思いたくもなるだろ?

ディケイドVS禁書だって禁書キャラが負けてるにも関わらずWVS禁書にだけ批判が集中しているのも不自然だよな
これじゃ単に作者を叩きたいだけと思われても仕方ないと思うが
214創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 22:23:07 ID:ECBo5Si5
批判されるのは禁書キャラを噛ませ犬として扱ってるからだろ
215創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 22:41:42 ID:5YypT3/h
>>214
後からでも巻き返しは可能だと思うがね。さすがに作者も批判の多さに反省したと思うし、自分は今後の展開に期待してる
216ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/04/09(金) 22:54:26 ID:3yUb7ix9
遅くなりました、ディケイド×プリキュアの作者です
再び一ヶ月以上空いてしまいましたが、第四話を投下します
今回はオリジナル要素が多量に入っていますので、苦手な方をNGをお願いします

注意
※『多大な』オリジナル要素に、原作の独自解釈が入っています。
※上の要素が駄目な方は、トリップでNGをお願いします
217ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/04/09(金) 22:55:11 ID:3yUb7ix9

キュアパッションの持つピックルン、アカルンの瞬間移動の力で場所を移したディケイドとプリキュアたち。
全く見覚えのない現在位置を確かめるように、プリキュアたちは痛む身体に鞭を打ち周囲を見渡す。
空は相変わらず曇ったままだが、この場所には先程のタコカフェと同じでフュージョンの持つ嫌な雰囲気を感じない。
恐らく、ここも何らかの原因でフュージョンの吸収から逃れた場所なのだろう。
このまま考えてもしょうがない、と比較的に冷静だったホワイトが瞬間移動の力を持った本人であるパッションに尋ねる。

「パッション、ここは……?」
「分からないわ。大人数での移動だったから、とにかく移動しやすい悪い力の少ない場所を
選んだの」
「ここは……」

パッションを始めとするプリキュアが戸惑う中、変身を解いた士がプリキュアたちの疑問に答える。
そう、士はここが何処であるか良く知っている。
当然だ、何故ならばここは、記憶のない士にとって、つまりは生まれ育った家に帰ることが出来ない士にとって最も安心出来る場所なのだから。

「夏みかんの……夏海の家だ」

強く唇を噛み締め、顔を伏せながら士は苦々しく呟く。
ここは周囲のようにフュージョンの力で荒らされていなかった。
いつものように古びた、どっしりとした造りをした写真館だ。

(ここが無事なのは世界と世界が繋がる場所だからか……? それともたまたまか……?)

士たちが世界を移動するとき、常にこの写真館を伴って世界観を移動している。
もちろんマシンディケイダーを使えば『世界の壁』を超えることが出来るが、全ての世界を回る際には必ず写真館と共に移動してきた。
そのため、この写真館自体にも何かしらの力があるのかもしれない。
その力を持っているからこそフュージョンの吸収から逃れることが出来たのだろう、と士はとりあえず納得しておく。
または、世界と世界を繋ぐ時に、このプリキュアの世界に溢れる多大なプリキュアの力の影響を受けたのか。
キュアブルームやキュアイーグレットは世界に溢れる精霊の力を扱い戦っていることから、世界にあふれるプリキュアの力の影響を受けたという話はそれほどおかしなものではないだろう。

とにかく、この写真館は無事で、無事だからこそパッションは無意識にここを選び、結果士は写真館に戻ってきたということだ。

「……くそっ!」

士は地面を思い切り蹴りつけながら悪態を突く。
この中では最も年長である自分がそんな態度を取れば、貴重な戦力であるプリキュアの心を削ってしまう。
そんなことは分かっているが、悪態を突かずに入られなかった。

『おかえりなさい』

日は暮れているわけではないが、曇り空で太陽の光は見えない。
だが、写真館の扉を見る度に、士の頭にはシンケンジャーの世界での夏海の言葉が思い出される。

『私も、待っていることにしました。士くんが帰ってくるのを』

『何処の世界に行っても、士くんが帰ってくるのはここですもんね』

『だから、”おかえりなさい”』

「お前が居なくなってどうする……!」
「士……さん……?」

世界の破壊者、ディケイド。
フュージョンに対する怒りと自分の不甲斐なさに対する怒りで燃えるその瞳。
その瞳はこの世界で何を映し、何を思うのか。
218ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/04/09(金) 22:56:06 ID:3yUb7ix9


 仮面ライダーディケイド×プリキュアオールスターズDX みんなともだち☆奇跡の全員大集合!


                【仲間が消えた日、明日を探す日】




「――――それこそが世界の破壊者であるディケイドの持つ業そのものなのだ」
「えっ!?」
「だ、誰!?」

いつの間にか士の後方に背中合わせに立つように現れた謎の男。
地味な色の帽子と、同色の丈の長いコートを初老の身体で覆っており、眼鏡の奥に見える瞳には怒りと嫌悪の色に染まりきっている。
突然すぎる登場を果たしたその謎の男に、プリキュアたちは身構える。
いつだって彼女たちの敵は瞬間移動を思わせる唐突さで現れるのが原因だろう。
が、士は軽くため息を吐きながら、それでいて怒りに溢れた声を男へと向かって放った。

「お前か……鳴滝」
「ディケイドよ。お前という存在が訪れたがために、それだけのためにプリキュアの世界も破壊されていく……」
「またそれか、それしか言うことがないならさっさと出て行け。今の俺は気が立ってるんだ」

邪険に扱う士に対して士が鳴滝と呼んだ謎の男はそれでも怒りに満ちた声を投げつける。
まるで親の敵か、あるいはそれ以上の存在に対するかのような態度。
それだけでこの二人が敵同士なのだということが分かるが、それにしては好戦的という印象をあたえる士が仕掛けないのはおかしい。

「本来、プリキュアの世界には存在するはずがなかった仮面ライダーが生まれる……その不確定要素こそが世界を滅ぼす原因になるのだ。
 その不確定要素を世界に導いたのはディケイド、全ては貴様が原因なのだ!」
「黙れ……それなら俺がアイツを倒しに行くだけだ」

その一も二もなく仮面ライダーディケイド、門矢士を責め立てる口調にプリキュアたちは顔をしかめる。
僅かな間しか共に居ないが、それだけだが士は悪い人間ではないように思える。
フュージョンと戦っている姿や、夏海を庇おうとする姿にユウスケと共闘する姿。
それらは決して我が侭に人を滅ぼそうとする破壊者の姿には見えなかったのだ。
鳴滝は言葉を止めることなく、怒りのままに口を開き続ける。

「夏海くんとクウガも貴様と出会わなければこんなことになりはしなかった……ディケイド、貴様が二人を不幸にしたのだ」
「そんなことない!」

その様子に口を挟まずにはいられなくなったのか、キュアドリームが口を開く。
ボロボロの身体だとは思えない強い視線で鳴滝を見据えたまま、口を開く。

「士さんは世界の破壊者なんかじゃない! 士さんは……そんな悪い人なんかじゃない!」
「君は何も知らないだけだ、だからそんなことが――」
「確かにそうかもしれない。けど、夏海さんは士さんを頼ってタコカフェに行った。
 そして、士さんと会った時、本当に嬉しそうに、安心したように笑ったんだよ!
 だから……だから、夏海さんとユウスケさんは不幸なんかじゃない! 士さんたちは友達なんだもん!」
「確かに、私たちは士さんたちのことを何も知らない……」

それを受け継ぐようにキュアブルームがドリームの言葉を続ける、やはりドリームと同じく強い眼差しで。

「だけど、私たちを助けてくれたユウスケさんが本当に士さんのことを信頼していたから。
 それに士さんは二人のことを心配しているから、だから私は士さんを悪い人だとは思わない!」
「…………ディケイドは世界の破壊者。関わったものは全て破滅する。
 それを君たちプリキュアが覚悟しているというのなら、私はここから立ち去ろう。
 だが、ディケイドよ! 今の光景は貴様の業の一つだ! 彼女たちがなんと言おうと、それだけは変わりはしない!」
219ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/04/09(金) 22:57:28 ID:3yUb7ix9

鳴滝はそれだけを言うと、コートを軽く翻す。
それだけで鳴滝の身体は霧散していき、まるで瞬間移動のようにその姿を消してしまった。
プリキュアたちは驚きを示すが、士はいつものことだと何も反応しはしない。
ただ、曇り空の下で誰も居ない写真館の玄関だけを眺め続けている。
背中越しからでも様々な感情が渦巻いていることがわかり、プリキュアたちに話しかけることを躊躇わせる。

「その……士」

そんな中で一人、ナッツだけが士へと声を投げかける。
士は振り向かず、声も返さずにただ一つの場所を眺めている。
ナッツはそんな反応を予想していたのか、何も言わずにポシェットの中から一つのペンライトを取り出す。
レインボーミラクルライト、ある一面ではこの騒動が大きくなってしまった最初の要因とも言える。

「このミラクルライトはプリキュアをパワーアップさせるための道具ナツ……
 そして、士。ディケイドが使っていたあの大きなタッチパネルの変身アイテム、あれも仮面ライダーに力を与えるものナツ」
「……何が言いたいんだ」

そこでようやく士がナッツへと言葉を返す。
ナッツは神妙な顔つきのまま、ゆっくりと頷いて言葉を続ける。
全員が全員その言葉に現状を打開できる何かがあると思い、息を沈めてナッツの言葉に集中する。
ナッツの技術力は優れていることを、特にプリキュア5の面々は良く知っているのだ。
時間こそ掛かっているが、本来ならば異世界であるパルミエ王国とのぞみたちの住む世界を通信できる機械を独力で作りあげたほどだから。

「……思うにナツ、その変身アイテムとミラクルライト。
 この二つが組み合わされば、仮面ライダーの力を手に入れたフュージョンにも対抗できるんじゃないかと思うナツ」
「そんなことが出来るんですか、ナッツさん?」

ミントが不思議そうに首をかしげながらナッツに尋ねる。
その言葉にナッツは僅かに間を空けてからゆっくりと頷く。
ナッツの肯定の様子に士は苛立ったように言葉を続ける。

「それでどうなる……その間にもアイツは力をつけてくるぞ。
 たとえミラクルライトとかいうのとケータッチを組み合わせても、それ以上にアイツが強くなっていたら――――」
「大丈夫だよ!」

確実な解決にはならないナッツの言葉に士は苛立を深くする。
だが、士の苛立ちを感じさせる言葉を正面から否定し、それでいて勇気づけるような声をドリームがあげる。
士もその言葉でようやく反応を見せて、プリキュアたちの方へと振り返る。

「ナッツ、他のミラクルライトはナッツハウスの中にあるんだよね?」
「そ、そうナツ。あの後で改良を重ねるために皆から回収して、ナッツの部屋のあるナツ」
「じゃあ、私たちがそれを取ってきて、ミラクルライトをいーっぱい士さんの変身アイテムにつければいいんだよね!」

簡単に言うドリームに、士や妖精たちは目を丸くして見つめる。
確かにそれならなんとかなるかもしれないが、言うほど簡単ではない。
移動方法としてはパッションの瞬間移動があるが、恐らくフュージョンも警戒しているはずだ。

「ド、ドリームの言うことは間違ってはないナツ。
 ミラクルライトはプリキュアの力になるものだから、それを使えば仮面ライダーだけでなくプリキュアもパワーアップするはず……
 だ、だけど、取りに行くのは危ないナツ……」

前の戦いではミラクルライトで遅れをとった以上、ミラクルライトの保管場所であるナッツハウスは最も警戒されている場所だ。
クウガと言う巨大な力を手に入れた今、恐らくナッツハウスの前で待ち構えているだろう。
何故ならフュージョンの不安要素はあのミラクルライト以外に存在しないのだから。

「……そうだね、そうだよね」
「それじゃあ、行っちゃおうか」
220ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/04/09(金) 22:58:19 ID:3yUb7ix9

やがて、その言葉に虚を突かれていたブラックとピーチも笑いながらドリームの言葉に答える。
肯定の意、二人に続くように他のプリキュアも弱々しく、だがしっかりと笑みを浮かべながら立ち上がる。
フュージョンからディメンションシュートを受けた身体が無事なわけではない。
そんなプリキュアを気遣ってか、タルトが俯きながら話しかける。

「そんな! その身体で行こうなんて無理があるで、プリキュアはん!
 せめてもう少しだけでも身体を回復させてからでもええんとちゃいますか!?」
「プリップー……」

タルトだけでなく、心配そうな顔をして宙に浮かぶシフォンの姿。
その二人や他の妖精たちにも対してピーチは優しく笑みを浮かべて答える。

「ちょっと行ってくるだけだから、せっかく皆で集まったんだから早く終わらせないとね」
「せやかてなあ、ピーチはん……」
「大丈夫大丈夫! まだ動けるし、ほらほら!」
「ラブゥ……」

自分はまだ動けるとピーチはアピールするかのように、軽く力こぶを作るような動作で笑顔を浮かべる。
それでもまだ心配そうな顔をする二人に、困った顔をしつつも笑いかける。
管理国家ラビリンスとの戦いと言う密度の濃い付き合いをやってきた二人にはその笑顔で止めることは難しいと悟る。
タルトは『はぁ』と軽くため息をつき、それ以上は何も言わない。
他のプリキュアのやりとりも同じだったのか、メップルたち他の妖精も同じように笑いを浮かべている。

そして、僅かに顔をしかめている士に対して向き直る。
十七人全員に見つめられていることに圧迫感は覚えていないようで、士はただ一瞥するだけだ。
それを何か用かと言う無言の問いだと判断し、ブラックが口を開く。

「士さん」
「……なんだ?」
「たこ焼き、美味しかったです、もう一回食べたい。出来ればアカネさんのと食べ比べしたいぐらい」
「……」
「世界の破壊者とか、あたしにはよくわかんないけど……士さんのたこ焼きは美味しかったです。
 だから今度は、士さんの仲間の人と一緒に食べましょうよ」

士は何も言わずにただブラックの言葉に耳を傾ける。
そして、ブラックの言葉を受け継ぐようにピーチは相変わらず柔らかく微笑んで言葉を続ける。

「罪を憎んで人を憎まず。大事なものを守りたい、って気持ちはみんな一緒だから」
「そうか……」
「だから、私は私の見た、友達のことを思っている士さんの力になりたいと思います」

ピーチはそれだけを言って、背中を向ける。
そしてリンクルンを手に持ったパッションへと言葉を放つ。

「パッション、お願い」
「分かったわ」

パッションはゆっくりと頷き、リンクルンを両手に持ち目を瞑る。
そのパッションを中心にプリキュアたちは集まっていき、強い眼差しのままに空を見つめる。

「ナッツハウスへ!」

強い言葉とともに、パッションを中心にプリキュアたちは消えていった。
取り残された、変身アイテムでない妖精たちと士は何も言わずに黙り込んでいる。
いつだってプリキュアに任せるしかない妖精は歯がゆさを感じているのだろう。
士はそこでようやく顔を上げ、ポツリと呟く。
221ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/04/09(金) 22:59:14 ID:3yUb7ix9

「そうだな」

えっ、と不思議そうな顔で妖精たちは士を眺める。
すがすがしい顔、とは言えないが先程よりは吹っ切れた顔をしている。
その瞬間にケータッチを取り出してナッツへと手渡した。
目を丸くしているナッツに向かって、士は言った。

「……なるべく早く頼むぞ」
「ナツ!?」
「アイツらを見ていると考えるのが面倒くさくなっただけだ」


   ◆   ◆   ◆


キュアパッションの持つピックルン・アカルンの瞬間移動能力によってナッツハウスの門前まで訪れたプリキュアたち。
空は当然のように暗黒に曇っており、心なし周辺の林に生える木々も萎びれた印象を覚える。
見慣れた風景に渦巻く邪悪な気配にプリキュアたちは僅かに顔をしかめるが、直ぐにその表情を引き締める。

「ミラクルライトはナッツの部屋にあるんだよね」
「ええ」

全員が顔を見合わせて頷き合う。
ミラクルライトを取るだけという目的だが、実際はそれほど簡単なものではない。
ナッツが言ったようにミラクルライトはプリキュアの力を倍増させる物、それをフュージョンはよく知っている以上は邪魔が入るはずだ。


『プリキュアァ……!』


その予想は不幸にも外れておらず、当然のように曇った空から水銀色の怪人・フュージョンが降り立ってくる。
必ずこのナッツハウスに来ると読んで待ち構えていたのだろう。
今のままのプリキュアになら勝てる、恐れるのはミラクルライトだけということをフュージョンは認めているのだ。
逆に言えば、ミラクルライトさえ手に入れてしまえばプリキュアの勝利の目も見えてくる。
フュージョンに向かい合ったプリキュアたちは静かに構える。
十七組の鋭い眼光を受け流しながらフュージョンは姿を変えて行く。

『ここで、私と一つに……!』

フュージョンが取った姿は仮面ライダーディエンドではなく、金色の禍々しい装飾を施した黒い複眼の仮面ライダー。
プリキュアたちにも分かる。
この姿・この力は小野寺ユウスケ、仮面ライダークウガのものだ
それをフュージョンが操ると言うことは、すなわちユウスケはフュージョンに取り込まれたと言うこと。

『この姿こそ最も邪悪な仮面ライダー……ライジングアルティメットクウガ、究極の闇そのものだ』

力を確かめるように手を握りながらフュージョンは呟く。
そして、プリキュアたちへと向かってゆっくりと指先を掲げる。
その瞬間だった、プリキュアたちの足元に激しい爆発が起こったのは。

「きゃあああああ!!!」

クウガ、いや究極の闇が持つ力の一つである発火現象を用いた攻撃。
触れることすら許さない最強の力だ。


『プリキュアよ……私と、一つに……!』
222ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/04/09(金) 23:00:10 ID:3yUb7ix9


   ◆   ◆   ◆


「ああ、帰っていたのかい士くん。いや、ちょっと空が曇ってきたからねえ。
 泣き出す前に洗濯物を畳んでおこうと思って……あれ?」
「士だけェ? ユウスケたちはぁ?」

写真館の前で立ち尽くしていた士の前に現れたのは、一人の老人と真っ白な奇妙な形をしたコウモリ。
老人はそこに居るだろうと考えていたはずの二人の姿が見えないことに不思議そうに首を捻る。

「夏海とユウスケは……今は居ない」
「そっか、出かけてるのか……まあ、ちょうどいいや。もう少しかかるからね」

その疑問に答えるように士は口を開く。
妖精たちはケータッチを改造しているナッツの所にいる。
今は待つだけの身がひどくもどかしい。

「いやね、今日は美味しいパンが焼けたんだよ。
 ほら、このチラシに書いてあった『パンパカパン』ってお店のパンが美味しそうでね。
 思わず作りたくなっちゃって……後で二人が帰ってきたら一緒に食べよう」
「栄次郎ちゃん、わたしの分はぁ?」
「ちゃんと作ってあるよ。皆で食べた方が美味しいからね、こういうのは」
「やったぁ♪」

甘ったるい声を出しながら白いコウモリ・キバーラが周囲を羽ばたく。
それを見て老人・光栄次郎も好々爺そのものの落ち着いた顔に笑みを貼り付ける。
普段と変わらないそのやり取りを眺めながら、士ふと思いついた。

「そうだ、こっちで知り合いが出来た。十七人ぐらいいるが……なんとかなるか?」
「十七人!? そりゃ多いねえ……まあ、一人の分が凄く少なくなるけどなんとかなるよ」
「大丈夫だ、他の食べ物も持ち込むからな」

驚愕に顔を染めながらも栄次郎は何かを確かめるように指を折り始める。
士の顔には苛立ちは薄くなっていた。
先程士自身も言ったように、考えるよりもフュージョンを殴りたいという気持ちが強くなっている。
フュージョンを倒してしまえば今の状態が元に戻るということは、プリキュアたちから話を聞いたので知っている。

「士……士……」

大変だなあ、と呟きながら栄次郎が写真館へ入っていくのと入れ替わりに声変わりを済ましていない甲高い声が響く。
声のする方向へと視線を移すと、そこにはココの姿が見えた。
メップルたちのようにプリキュアの変身に必須でない妖精たちは今この場に残っているのだ。

「終わったらしいココ」
「そうか」

士は短く答えてケータッチをいじっているだろうナッツのいる場所へと向かっていく。
思ったよりも早かったな、と思いつつそっとカードホルダーに触れる。
コンプリートフォームの空白のカードに対して、ある考えが浮かんでいるのだ。
ミラクルライトはプリキュアの力を増大させる、そしてコンプリートフォームは仮面ライダーの力を集めたコンプリートフォームへと姿を変えさせる。
この二つはどこか似ている、そう士は感じたのだ。

「士、終わったナツ……」

そんな士へとナッツが僅かに俯きながら声を掛ける。
小さなナッツの手には見慣れたケータッチがあり、特別変わったようには見えない。
223ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/04/09(金) 23:01:18 ID:3yUb7ix9

「ケータッチ……それはナッツじゃ良く分からないほど複雑なものだったナツ。
 かろうじてミラクルライトの核となる機能をつけることが出来たナツけど……正式な力が出せるかどうかは分からないナツ」
「いや、構わない。あの時間で頭が落ち着いた」

士はそっけなく答えて、ナッツから奪い取るようにケータッチを手に取る。
ケータッチを軽く眺めた後に、何も言わずただマシンディケイダーに跨りヘルメットを被る。
戦いに行くのだ、妖精たちにだってそれぐらいは分かる。
完全にケータッチが戻ったわけではないのに、戦いに行く士へと向かって思わずココの口が開く。

「士……君は、君は一体何者ココ?」

ココはそう尋ねる。
異世界の存在を知っているココとナッツでも知らない、仮面ライダーという存在。
そして、世界の破壊者と呼ばれるディケイド、そのディケイドが目の前の青年だという。
だが、その青年からはそんな分かりやすい悪意は感じない。
だからこそ、聞かざるを得なかった。
たとえ青年の記憶がないと分かっている、残酷な問いだとしても。

しかし士は、大したことではない、というような表情のまま答えた。

「俺か? 俺は――――」

士はココの言葉に答えながらホルダーから一枚のカードを取り出す。
手に取った一枚のカードを前へと突き出し、勢いよくディケイドライバーに差し込んだ。


―――――― KAMEN RIDE ――――――


――――――― DECADE ―――――――


   ◆   ◆   ◆



「くっ……あぁ……!」

場所は変わってナッツハウス周辺の森林。
ナッツハウスの被害を嫌ったプリキュアたちが場所を移したのだ。
フュージョンとしても圧倒的な力を得た今では地の利を考える必要はない。
おとなしく位置を変え、全力で向かってくるプリキュアを全力で叩き潰していた。

『傷は癒えていない……何故そのような姿で強大な力を得た私の前に立つ……?』
「アンタには……分かんないでしょうね!」
「もうこれ以上、私たちの世界を貴方の好きにはさせたくないの!」
「虹の園の美しい風景……そこに住む優しい人々……そのどれもが、私の大切なものなんです!」

フュージョンの問い掛けにブラック、ホワイト、ルミナスの三人が立ち上がる。
かなりのダメージが蓄積しているが立ち上がる、その不気味な様子にフュージョンは眉を顰める。

「そうよ……! 私たちには大事なものを抱えて生きてるの!」
「……貴方の物じゃない! 私たちは、私たちで居たいの!」
「最初から一つなら……私と薫はあんな辛い思いを抱かなかった」
「だけど、それを乗り越えたときに一つならあんなに嬉しくなかった……咲と舞という別の人間が居たから、私たちは嬉しかった」

ブラックたちに答えるようにブルーム、イーグレット、満、薫の四人も立ち上がる。
あれほど叩き潰したというのに、瞳には強い敵対の色は一向に消える様子はない。
224ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/04/09(金) 23:02:03 ID:3yUb7ix9

「一つになるって私には良く分からない……だけど、私は皆と喧嘩しても、皆と一緒に居たい!」
「そういうことよ……! 喧嘩もしなければ、相手の心が分からない……」
「そんな未熟な人間でも、私たちは別々の人間としても一緒に居たいんです!」
「別々の道を目指しながら、お互いに励まし合う……」
「それで私たちは良いわ……! そうやって、頑張ってこれたんだから……!」
「皆が一緒だなんて……あのナイトメアとの時を思い出して気持ち悪くなるだけだわ……!」

全員がボロボロの身体だというのにプリキュア5とローズがゆっくりとだが確かに立ち上がる。
やはり折れないその瞳に、思わずフュージョンは一歩だけ後ずさる。

「皆が皆……違うから……それを仲良くなれたときに幸せを感じることが出来る……!」
「私たちは……張りあうように競いあって……お互いが完璧になるの!」
「他人を信じること……私は、好きだから……!」
「皆が笑っている姿を見れるなら……私、せいいっぱい頑張るわ……!」

ピーチとベリー、パインとパッションも立ち上がる。
その瞳には、フュージョンへの敵意しか存在せず、折れるという様子を見せはしない。

『貴様らぁ……!』

攻め上げていたフュージョンが苦しそうな声をあげる。
プリキュアたちは強い眼差しのままにフュージョンを睨みつける。
そして、揃い合わせたかのように同じタイミングで口を開き同じ言葉を投げつけた。


――――だから! 私たちは貴方なんかに負けない!――――


『だがぁぁぁ! 私の力の前に倒れるのだぁ!』

それ以上、プリキュアの姿を見たくはないと言わんばかりに発火現象での攻撃を行う。
そして、ひるんだ隙に体勢を低くする。一撃必殺であるライダーキックの構え。
直撃すればしぶとすぎるプリキュアでも死んでしまう、そんな一撃だ。
ジリッと音を立てながら足の踵から土踏まずまでを地面から離していく。
後は助走をつけて、空中で回転するように回りながら蹴りを叩き込む。
それだけで、プリキュアは打倒出来る。
だが、本当に死ぬのか? そんな不安もある。
そんな不安も抱えたまま、フュージョンが走り出した瞬間。


『なっ――――!?』


フュージョンの身体に強い衝撃が叩き込まれた。
何が起こったのか分からないと言わんばかりに、着地も忘れて衝撃が襲ってきた方向に眼をやる。

「待たせたな、プリキュア」

聞き覚えのある声と、いまさらながら気づいたバイクの排気音。
バイクで吹き飛ばされた、と瞬時にフュージョンは理解する。
フュージョンをバイク、マシンディケイダーで吹き飛ばした衝撃を物ともせずに軽く降りてくる。
その姿を、プリキュアたちとフュージョンはよく知っている。

『仮面ライダー――――』
「――――ディケイド!」

目に痛いほどに光を反射するマゼンダ色のスーツと、奇抜な仮面をつけたバイクに跨った戦士の姿。
世界の破壊者、だが今はフュージョンを倒そうとする仮面ライダーディケイドだ。
225ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/04/09(金) 23:02:47 ID:3yUb7ix9

「プリキュア! 大丈夫ロプか!?」
「シロップ!」
「ココや……他の皆も居る!」

ディケイドが現れた瞬間、天空に巨大すぎる怪鳥の影が舞う。
その背中にはメップルたちのようにプリキュアの変身アイテムとなれなかった妖精の姿が見える。
相も変わらずに一つとなることを阻むその集団の姿に、フュージョンは憤りながら大きく怒鳴りつける。

『貴様ぁ……まだ私の前に立つか……! 最大の力を失った今でも、私に勝てると思っているのかぁ!?』

フュージョンの言葉にディケイドはバイクから降りながら、ふん、と鼻で笑う。

「こいつらの単純なほどに真っ直ぐな姿を見てたらな、考えるのが馬鹿らしくなる。
 だから今はとにかく……イライラさせるお前をぶん殴る、それだけだ!」
『それだけ……それだけだとぉ? それだけのために死にに来たのか?』

その声に今度はフュージョンが鼻で笑う。
だが、ディケイドはそれに対して何も返さずに、効果を示さなくなったはずのコンプリートカードを取り出す。
そして、そのカードをケータッチに差し込むと、フュージョンに吸収されて以来全く起動しなかったケータッチが光を放ち始める。
その光は士以外の、フュージョンすらも知っている光、ミラクルライトの光そのものだった。

「やった! 起動したでぇ!」
「プリキュアのカードとミラクルライト……この組み合わせだから起動したんだナツ!」

タルトとナッツがその様子に驚きの声をあげるのを聞きながら、ディケイドは素早くボタンを押していく。
光の影響か、タッチパネルに表示されるイメージは普段の九個よりも格段に多い、十七個ものイメージだ。
226ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/04/09(金) 23:03:48 ID:3yUb7ix9

――――― BLACK ―――――

――――― WHITE ―――――

―――― LUMINUS ―――――

――――― BLOOM ―――――

――――― EAGLET ―――――

――――― BRIGHT ―――――

――――― WINDY ―――――

――――― DREAM ―――――

――――― ROUGE ―――――

―――― LEMONADE ―――

――――― MINT ―――――

――――― AQUA ―――――

――――― ROSE ―――――

――――― PEACH ―――――

――――― BERRY ―――――

――――― PINE ―――――

―――― PASSION ――――


――― FINAL KAMEN RIDE ―――


十七枚のカードがディケイドの周辺を回り、肩から胸へと通り肩を結ぶホルダーに収まっていく。
低い機械音とともに光を放ちながら、ディケイドのカードが額へと装着される。


―――― DECADE ―――――


プリキュア・コンプリートフォーム。
光を放つその姿は、ディケイドのコンプリートフォームに姿こそ同じだが、力の性質が僅かに異なる。
その力の性質は仮面ライダーのものではなく、プリキュアのもの。
そして、そのベクトルはミラクルライトの影響かプリキュアへと向かって力を『与える』ことが主だ。

「力が……!」
「凄い……」
「力が湧いてくるよ……!」

ディケイドの腰に嵌められた、ミラクルライトが内部に仕込まれたケータッチから輝く光が放たれる。
そして、その光がプリキュアたちが包んでいき、プリキュアたちもその光を抗うことなく受け止める。
悪い光ではなく、自分たちに利する暖かいものだと感じたからだ。
227ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/04/09(金) 23:04:47 ID:3yUb7ix9

「ミラクルライトの光だココ!」
「なんや……!? プリキュアはんらの姿が!」

その光はプリキュアたちへと力を与える光。
光を受け取ったプリキュアは力を新たに、姿を変えていく。

鳳凰の火を受けてさらなる力を得た『スーパープリキュア』、ディケイドの放った光によりその姿となったキュアブラックとキュアホワイト。

人と人の繋がりに寄り、絶えることなく輝き続ける光に包まれた『黄金』のシャイニールミナス。

満と薫を精霊の力も得ることで『花鳥風月』の四人が揃ったキュアブルーム、キュアイーグレット、キュアブライト、キュアウィンディ。

繭を破るように光の中から現れた背中にそれぞれの色の『蝶』の羽をつけたスーパープリキュア5。

全ての人の心の力によって、姿を得た白い羽を持ち微弱だが優しい光を放つ『天使』の姿をしたキュアエンジェル。


『これ、は……!』


その姿に気圧されるように、フュージョンは一歩後ずさる。
先程とは違う圧倒的な力、それどころかこちらの力を奪われていくそれにフュージョンの脳は疑問で埋め尽くされる。

『その光が……その光が原因なのか……! 私の力が……私から離れていく……!』

ディケイドの放った光によって集めたその力がどんどんと分裂していく感覚を覚える。
今のこの姿を、フュージョンは保つことができなくなる。
ライジングアルティメットクウガの姿が霧散していき、かつてプリキュアたちと戦った特徴のない姿へと変わっていく。

『何故だ……私は、力と一つになったはずだというのに……!』
「お前はユウスケや夏海、海東と一つになったんじゃない、取り込んだだけだ。
 ちょっと刺激を与えてやれば……力が逃げ出していく程にな!」

霧散して行く力を追いかけるように、フュージョンは前方へと手を差し伸ばす。
だが、無くなっていく力は取り戻せない。
クウガの力を完全に逃がすことはかろうじて避けたが、その力を引き出すことは叶わない。
フュージョンの馬力自体は落ちてはいない、未だ強大な存在であることに変わりはないのだ。
だが、力を引き出せないと言うことにフュージョンへと強い動揺を与える。

『何だというのだ……! 何なのだ、貴様は!!』

その存在を知っているというのに、フュージョンは叫ばずにはいられなかった。
先程までプリキュアをライジングアルティメットクウガで圧倒していたはずなのに、あっという間に形勢が逆転している。
それもこの仮面の男が現れたからこそだ。

「知らないのか? だったら教えてやる」

ディケイドはふんと鼻で笑い一歩踏み出す。
それに呼応するようにプリキュアたちも一歩、踏み出す。

「通りすがりの仮面ライダーだ! 覚えておけ!」

ディケイドが放った言葉は、妖精たちに放った言葉とそっくり同じだった。

To Be Next――――――――――――――――
228ディケイド×プリキュア ◆CuresnXjlA :2010/04/09(金) 23:05:43 ID:3yUb7ix9
投下終了です
229創る名無しに見る名無し:2010/04/09(金) 23:40:47 ID:k62w+6dz
投下乙。
久々の作品見どころ満載でした。
大好きなキャラたちが世界の破壊者の味方をしているところを
鳴滝さん、きっとしょぼくれてるだろうなw
そして、プリキュアとディケイドの力を一つに。
ああ、こいつは燃えるぜ。ラストまであと少しって感じです。
230創る名無しに見る名無し:2010/04/10(土) 01:13:31 ID:VaXrqdBW
乙です。
とくに、ケータッチのシーンでは夜中にも関わらず興奮してしまいました(汗)
231創る名無しに見る名無し:2010/04/10(土) 01:22:39 ID:l1pwRzRu
ここで終わるとは! なんという生殺し!
ディケイドのBGMが聞こえる錯覚にかられたw
232創る名無しに見る名無し:2010/04/10(土) 19:08:22 ID:PO9Mhdn5
プリキュアでここまで燃えたのはいつ以来かな……

とにかく投下お疲れ様です。
また続きも頑張ってください。
233ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/04/11(日) 22:16:23 ID:i06Sn6x9
大変お久しぶりです、諸事情で執筆が停止していました。
第三話投下します。



・仮面ライダーディケイド×とある魔術の禁書目録
・ディケイドの冬の映画のネタバレあり
・ところどころオリジナル設定あり
・ノリは戦隊VS系列な感じで
234ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/04/11(日) 22:17:09 ID:i06Sn6x9
仮面ライダーディケイド

     VS

とある魔術の禁書目録


第二話「お宝、禁書目録」





「アンチスキルが動けないって、どういうことなんですか?」

風紀委員活動第一七七支部。
そこで御坂美琴はメガネを掛けた高校生のジャッジメント、固法美偉に詰め寄っていた。
士達……ディケイドがこの世界にやって来てからすでに一週間が経っている。
だというのに美琴達との戦闘以降、まともなディケイドの情報は掴めていない(ある学生寮付近で謎の戦闘跡があったが、ジャッジメントに知らされぬまま処理されている)。
その原因の一つとして、アンチスキルの動きがほとんどないというのがあげられる。
同じ治安維持組織と言えどもジャッジメントは学生のみで構成されている、学園都市の踏み込んだ箇所への捜査権限は無く、アンチスキルに任せざる負えない部分もあるというのにこれではどうしようもない。

「落ち着いて御坂さん、こっちでも確認を取ってるんだけど、どうにもアンチスキルの命令系統が何者かにいじられてるらしいのよ」
「そんな、アンチスキルの命令系統に手を出せるなんて……まさかそれもディケイドの仕業なんですか!?」
「そこまでは何とも言えないわ、ただ、そんな状態で下手に動いたら逆にディケイドやスキルアウトの犠牲になるだけ……わかるでしょう?」

犠牲になるとまで言われては美琴は何も返せない。
それでもディケイドを放っておく形になっている現状に納得できない顔をしているのを見て、黒子が横から話に入ってくる。

「スキルアウトと言えば、連中、最近また動きが活発になってるらしいですの」
「ああ……その話なら聞いたことあるわ、何でも能力者が何人か行方不明になってるとか」

黒子の話に固法の表情が若干曇る。
一時期彼女自身も能力者であることを隠してスキルアウトに入っていたことがあり、その時所属していたスキルアウト関連の事件がつい一月前にあったばかりだ。
やっていることも能力者狩りと、前と同じ事もあり彼女にとってはあまり好ましい話題ではないのだろう。

「あ、白井さん白井さん」
「なんですの初春?」

部屋の奥から黒子を呼びつける声が聞こえ、棚で仕切られた奥を覗き込む。
そこで一台のパソコンを操作している少女、初春飾利は画面をじっと見つめながら口を開く。

「丁度今スキルアウトの事件について調べてたんですけど」
「連中のアジトでも見つけたんですの?」

側まで歩み寄り画面を見つめる。
初春が纏めた情報の文書へ目を通し、その内容に表情を厳しく変化させた。

「この情報、信用できますの?」
「ネット上の目撃証言でしかないですけど、スキルアウトによる被害の位置とは合ってます」
「……まだ詳しい位置までは公表してないはず、ということは信頼性は高いですの」
「ちょっと、何の話よ?」

二人の話に焦れて美琴が問いかけ、黒子はしばらく悩みそれに答える。

「能力者狩りの目撃情報ですの……スキルアウトを、ディケイドが率いていたと」
「何ですって!?」


235ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/04/11(日) 22:17:50 ID:i06Sn6x9

光写真館。
その一室で士は右手の包帯をゆっくりと外していく。

「士君、どうですか?」
「……問題ない、もう治った」

軽く拳を握り感触を確かめてからの言葉に、夏海はほっと息と吐く。

「だけどこれからどうする? もう迂闊に外にも出れないぞ」
「士は言うまでもなく、僕らもその仲間とすでに認識されてしまっているからね、お宝も探せやしない」

この一週間、士たちは何の行動も取れていない。
学園都市の監視は厳しく(何故か光写真館の内部までは監視の目が届いていないのだが)、少し外に出るだけで無人兵器らしき物が睨みを効かせてくる。
恐らくは鳴滝の仕業であろうディケイドの悪評を何とか払拭したいところなのだが、動くことができなければどうしようもない。
……あるいは、彼らを追跡するものが無人兵器のみだという不自然さに気づいていれば、また話は別だったのかもしれないが。

「でも、ライダーの世界を巡っている時もディケイドは敵視されていたけど何とかなりましたし、今回だっていつものようにやれば大丈夫ですよ!」
「いつものように、ね……いつもはその世界のライダーの側で行動してたよな」
「そうですよ、だから今回も」
「で? この世界のライダーに当たる人物とやらは一体誰で、ここから動くことさえままならない状態でどう見つける?」
「……どうしましょう?」

乾いた笑いで返す夏海に大きくため息を吐く。
その時、奥のキッチンから一人の老人、光栄次郎が人数分のホットケーキを持ってやってきた。

「まあまあみんな、難しく悩んでるだけじゃまいっちゃうよ、ほら、これでも食べなさい」
「おっ、遠慮なくいっただきま〜す♪」
「ねぇねぇ、困ってるなら私と夏海で調べてきましょうか?」

考えるの事をあっさり放棄してホットケーキへと向かうユウスケの頭上を小さな銀色のコウモリが通りぬけ、士達の前で羽ばたきながら意見を出す。

「キバーラ、協力してもらえるんですか?」
「別にもう鳴滝様に味方する理由もないしね〜、今の私は夏海のみ・か・た♪」

夏海の周りを飛び回るキバーラを見ながら士は考える。
ライダーの世界を旅していたころと違い、今の夏海は戦う力がある。
そして恐らくはまだ士の仲間として認識されていない、現状で唯一動ける人物だ。

「けど夏みかんじゃな……」
「何言ってるんですか士君! ここは私に任せてください!」
「そんな心配しなくても大丈夫よぉ、私だってついてるんだしぃ」
「はぁ……仕方ないな、無茶はするんじゃないぞ」

仕方ないといった様子で頷く士に、夏海ははりきってキバーラと共に学園都市へと繰り出して行く。
その様子を見ながら、士は真剣な表情で思考を巡らしていた。


236ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/04/11(日) 22:18:38 ID:i06Sn6x9

狭い路地。
昼間だというのに周囲の建物に遮られて日も入らず、路地の外からでは何が起こっているのか見ることさえできない。
そんな、助けがやってこないのが当たり前の世界で一人の男が複数の人間に取り囲まれていた。

「スキルアウトか……! だが相手が悪かったな!」

男が不適な笑みを浮かべたままその場で拳を振るうと、明らかに間合いの外にいたはずのスキルアウトの一人が見えない力を受けて吹き飛ばされる。

「能力者を甘くみるなよ!」

彼の能力はレベル3の念動力【テレキネシス】。
拳を動きと同じ軌道を取る『力』を自身の視界内に生み出すことができる能力だ。
この能力なら最小限のモーションで相手を倒すことができ、多数の相手だろうと遅れはとらない。
自分の優勢を確信する男だったが、スキルアウトはまったく怯んだ様子がなく、不気味な笑みを浮かべながら包囲の輪を狭めてくる。

「な、何だこいつら……」

言い得ぬ悪寒を感じながらも能力を発動しようとするが、それより先にスキルアウトが動きを見せた。

「――っ!?」

男が息を飲む。
自分を取り囲んでいた人間が一瞬にして緑色の異形へと姿を変えたのだから無理もない。
能力者の中には自分の姿を変えたり、相手に自分の実体を見せないようにする者もいるがスキルアウトは無能力者の集団、まさか全員がそんな能力を持っているはずもない。

「馬鹿な、スキルアウトが能力を……!?」

思わぬ出来事に後ろへ下がりかけ、いつの間にか真後ろにいたスキルアウトに驚きながら振り向く。

「くそっ、能力者だろうが関係――」

思考を落ち着かせる間もなく拳を構え、能力を発動する寸前、気づく。
周囲のスキルアウトの姿が異形の怪物から再び変わり、人間の姿に……自分と寸分違わぬ姿へと変化したことに。

「な、んだ……何なんだ、お前らの能力は!?」
「俺か? 俺の能力は……」

目の前のスキルアウトが拳を振り上げる。

「レベル3の、テレキネシスだよ!」
「う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


237ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/04/11(日) 22:19:31 ID:i06Sn6x9

「自信満々で出てきたのはいいけど、何も見つからないわねぇ」
「そうですね……スーパーショッカーの怪人もいないみたいですし」

士には大見得を切ったものの、夏海たちとて行くべき宛てなどありはしない。
とはいえ何の収穫もなく戻って士に嫌味を言われるのも面白くない、というわけで無目的に歩き回るだけの時間が続いている。

「あれ? あの人達って……」

ふと視線を上げると、士と戦った二人の少女が話しているのを見つけた。
丁度同じタイミングで向こうもこちらに視線を向け目があってしまう。
咄嗟に身構えるがそのまま視線を外され、自分のことを覚えていないのだと気づく。
あの時二人の目は士に集中していた、隣にいた夏海には気付かなかったのだろう。
ほっとしながら早く立ち去ろうとした時、近くの路地から悲鳴が聞こえてきた。

「お姉さま!」
「わかってる!」

黒子と美琴は即座に反応し路地悲鳴の下へと駆け出していく。

「キバーラ、私たちも!」
「いいの? 下手に関わって士の仲間だってバレたら大変よ?」
「でも、放っておけません!」
「まぁ夏海がそういうならいいけどね〜」

二人の後をついていく形で夏海が走り出し、その直後路地から一人の男が飛び出してきた。
全身をボロボロにしたその男は黒子の付けているジャッジメントの腕章を見ると這いずるようにして近づき、怯えた表情で口を開く。

「た、助けてくれ! あいつら、ただのスキルアウトなんかじゃない……!」
「落ち着いて、今救急車を呼びますの」
「黒子、その人お願い!」
「ちょっ、お姉さま!?」

男を黒子に任せ、美琴は単身路地へと飛び込んでいってしまう。
後を追いたいが痛めつけられている男を放っておくわけにはいかない、黒子が悩んでいる間に、夏海はその横を駆け抜ける。

「!? 待って、この先は危険ですの!」
「大丈夫です、あの人は私が守ります!」
「ちょっと……ああもう、何でこう一般人がジャッジメントより危険な場所に行くんですのー!」





路地に入った美琴は目の前の光景に言葉を失っていた。
ついさっき助けを求めてきた男、その男と寸分違わぬ姿をした男が二十人近くいるのだ。

「何こいつら……能力者……?」
「常盤大の制服か、いいねぇ……お前、レベルはいくつだ」

男の一人が美琴へと問いかける。
まるで品定めをするかのような視線に顔を歪め、パリパリと火花を散らしながら答えを返す。

「レベル5、能力はエレクトロマスター」
「なっ!? まさか、常盤大のレールガ――」

言い終わるよりも先に放たれた電撃が男たちをなぎ倒す。
改めて気を失った男を見るが、やはりその姿はどれも同一だ、その奇妙な光景に眉を顰めつつ黒子と連絡を取ろうと踵を返すが、背後で何かが動く気配を感じ再び振り返る。

「……あんたがこいつらの親玉、ってとこかしら?」
238ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/04/11(日) 22:20:14 ID:i06Sn6x9
路地の奥からムカデを模した怪物、ジオフィリドワームが美琴へと敵意を剥き出しにしながら現れる。
前髪から電撃をパリパリと放って威嚇しながらいつでも動けるように重心を低く――

「キバーラ! 変身!」
「はいは〜い、へ〜んしんっ♪」
「えっ!?」

美琴の横を駆け抜けながら、夏海はキバーラを前に翳して意識を集中させる。
キバーラから無数のハートが舞い夏海を包み、その中から白い甲冑を纏い赤い瞳をした姿へと夏海は変身する。
仮面ライダーキバーラ、世界の破壊者となった士を止めるため、夏海が手に入れた戦うための力だ。
突然の乱入者に困惑する美琴には構わず、ジオフィリドワームへと組み付きその腕を抱え込む。

「夏海、離れちゃダメよぉ?」
「わかってます!」

密着状態での攻防を繰り広げるワームと夏海に美琴は焦れる。
美琴からは白い甲冑の女性が何者かはわからないが、自分の味方をしてくれているのは確かだ。
ならば共闘するべきなのだろうが、こう密着されては電撃の攻撃で巻き込んでしまい動きがとれない。

「ちょっと、離れてくれないと巻き込むわよ!?」
「離れたらダメなんです! 私じゃクロックアップに対抗する手段が――!?」
「夏海! こいつ、このまま――」

キバーラの言葉が途中で消え去る。
ワームが夏海に掴まれたままクロックアップに入り、美琴の前から去ったためだ。
その場に残された彼女はまったく掴めない状況に頭を抑え、直後起きた現象にうんざりとした表情を作る。

「今度は何よ……」

オーロラのような壁が現れ、そこから一つの人影が出てきた。
その人物は美琴が反応するより早く、自らのベルトに一枚のカードを挿入する。

「ディケイ……!」

『ATTACK RIDE BLAST!』

電子音と同時にライドブッカーから放たれた銃弾に、付近のガラクタを磁力で集め即席の盾を作る。
だが予想していた衝撃はなく、盾の影で様子を伺っていると周囲のスキルアウト達の体が爆発、四散した。

「な……!?」

ようやく先程の攻撃の狙いがスキルアウト達だったことに気づき、盾を解除して目の前に立っている『ディケイド』を睨みつける。

「あんた、なんて事を……! スキルアウトはあんたの仲間じゃなかったの!?」

美琴の怒号には答えず、ただ静かにライドブッカーを向けて引き金を引く。
再び放たれた銃弾を磁力によってビルの壁に張り付くことで回避、反撃として放った電撃はソードモードへと変形させたライドブッカーを前に突き出すことでかわされてしまう。
と、その行動に首を傾げる。以前戦った時は今のとは比べ物にならないレベルの雷撃をまともに受けたというのにダメージはなかった、ならば何故今回はわざわざ回避したのか。

(そういえば前の時は姿が変わってた……あいつの能力は、何か条件があるの?)

思考を巡らせ、その一瞬の隙に『ディケイド』は再びカードをベルトにセットし起動させる。

『KAMEN RIDE KIVA!』
「しまっ……また別のに!?」
239ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/04/11(日) 22:20:56 ID:i06Sn6x9
黒い体に赤い装甲、黄色い瞳はコウモリの羽を思わせ、右足と体を覆う銀の装甲は何かを拘束するかのように鎖で縛られている。
キバ、運命の鎖に立ち向かう、気弱ながら心優しき青年が変身する仮面ライダーだ。
姿を変えた『キバ』へと電撃を放つがその攻撃が届くよりも早く『キバ』はその場から離れる。
自身の雷撃で『キバ』の姿を見失ってしまうが、美琴は常に発している電磁波の反射波により周囲の物体を感知することができる、すぐさまその位置を確認し、

(……!?)

振り返る暇さえ惜しみ、磁力を解除し二、三クッションを挾みながら地面へと降り立つ。
同時に強い力で砕かれた壁が美琴の周りに降り注ぎ、自分の判断が遅れていたらと背筋を震わせる。
先程まで自分のいた位置を見上げると、わずかに壁面からせり出た換気口に「逆さま」に立つ『キバ』が美琴の方を見上げながら新たなカードをセットしていた。

『FAINAL ATTACK RIDE KIKIKIKIVA!』

激しく鳴る電子音に反応し、右足を拘束していた装甲がはじけ飛ぶ。
内に収められていた血のように赤い翼が広げられ、重力に逆らった体勢のまま右足を高く振り上げ、地上の美琴へと「飛び上がる」。
その右足から感じる圧迫感に、美琴は理性で考えるより早く、自らの最強の技を放とうとコインを構え迎え撃つ体勢を取った。

『ATTACK RIDE BLAST!』

「ぐぁっ!?」
「な!?」

『キバ』と美琴の激突を妨害したのは横からの銃撃。
銃撃が放たれた方向を向いた美琴は、そこにいた人物に思わず一瞬動きを止めてしまう。

「まったく、夏みかんを追ってきたら面倒なことになってやがる」
「ディケイド……!? どうして、だってこいつも……」
「ああ? ……なるほどな、だいたいわかった、こいつが俺になりすましてこの街で悪さを働いてたってとこだろ」
「偽物……?」

美琴と士、二人の視線に晒されながら『キバ』は何も言わず更なるカードを取り出し戦う意思を見せる。

『FORM RIDE KIVA BASSHAA!』

『キバ』の右腕と体に鎖が幾重にも巻きつき、緑の装甲へと変質する。
瞳も同じ色へと変化し、右手には魚のヒレのを模した装飾が施された緑の銃が現れ構えを取った。

「ディケイドの力を使いこなしてるとはな……おい、下がってろ、後は俺がケリをつける」
「冗談! 私たちの街で好き勝手やられてんのよ、放っておけるわけないでしょう!」
「あのな……っておい、電撃はやめろ!」

急に強い口調で静止され、慌てて放とうとしていた電撃を解除する。
一瞬遅れて足元に違和感を感じ見下ろしてみると、一面が膝の辺りまでの深さの水で浸されていた。
士の警告が少しでも遅れていたら『キバ』だけでなく自分達も電撃を浴びることになっていただろう。

「な、何よこれ!?」
「キバの力だ、自分の有利なフィールドを作り出す」
「有利って、これじゃあいつだって動きにくい……」
「来るぞ!」

言葉を途中で遮り士は美琴の前に立つ。
同時に『キバ』が放った水弾をライドブッカーで切り払い、ガンモードで反撃しようとするが水面を滑るように動く『キバ』を捉えることができない。

「あんた、私を守って……?」
「魚人相手に水中戦は不利か、おい、ビリビリ中学生」
「んなっ!? あんたまでビリビリ言うな!」
「掴まってろ」
「え?」

『KAMEN RIDE SKY!』
240ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/04/11(日) 22:21:49 ID:i06Sn6x9
美琴を抱き寄せながら士もその姿を変化させる。
深い緑のボディを茶色の装甲が包み、赤い瞳と同じ色をしたスカーフが風になびく。
スカイライダー、空を愛し、決して優しさを忘れない青年の変身する仮面ライダーだ。

『ATTACK RIDE SAILINGJUMP!』

「はっ!」
「きゃあああ!?」

セイリングジャンプ、スカイライダーの持つ重力低減装置による飛行能力だ。
水中から飛び出し、叫ぶ美琴には構わず水面の『キバ』を睨みつける。

「おい、その辺の屋上に置いておくから逃げておけ!」
「な……さっきも言ったでしょ! このまま放っておけない……っての!」

士の言葉を跳ね除け、空中から強烈な雷を『キバ』へと放つ。
バッシャーフォームの得意とする水中フィールドを作りだしたのが裏目に出た、持ち前の超感覚で雷撃の直撃こそ回避するが水を伝う電撃からは逃げられない。
たまらずフィールドを解除し膝をつく『キバ』を見て、ようやく美琴は満足な笑みを浮かべた。

「どうよ! 私だって戦えるっつーの!」
「なるほど、確かに少しは頼れそうだ、なら、今度は俺の力を見てもらおうか!」

再びビルの壁面へと張り付いた美琴へと声をかけ、一枚のカードをディケイドライバーで起動する。

『FAINAL ATTACK RIDE SSSSKY!』

「はあああああ!」

よろめいたままの『キバ』へと士は回転を繰り返しながら突き進む。

「ぐ……」

『FORM RIDE KIVA DOGGA!!』

『キバ』が呻きながらカードを起動させると、緑の装甲が剥がれ、両手と胴体を新たに紫の頑強な鎧が包み込む。
更に巨大な拳を模したハンマーが現れるが、それを手にする前に士の大回転スカイキックが炸裂し吹き飛ばされる。
地面を転がりながら、激しいダメージによって元の『ディケイド』に姿が戻るのを見て士と美琴の二人も地面へと降り立った。

「やったの?」
「まだだ、直前で装甲の厚い形態になって直撃を避けやがった」

二人は倒れている『ディケイド』へ慎重に近づいていく。
だがそれよりも早く『ディケイド』は立ち上がり、ライドブッカーを構えカードを起動する。

『FAINAL ATTACK RIDE DEDEDEDECADE!』

士達と『ディケイド』の間に10枚のエネルギーの壁が浮かび上がる。
起死回生の一手としては甘い、それほど広くなり路地といえど、大きなダメージで動きが鈍っている状態での直線にしか飛ばない攻撃を回避できないほどではない。
美琴の腕を引っ張りながら射程外へと飛び、『ディケイド』が続けて起動したカードに仮面の下の目を見開く。

『ATTACK RIDE ILLUSION!』

ファイナルアタックライドの予備段階のまま『ディケイド』が三人へとその数を増やす。
カード名こそ「幻」だが三人の『ディケイド』全てが実体を持っていることを士は知っている、この路地では三発のディメンションブラストを回避しきることは不可能だ。

「くそっ、間に合え!」

『FAINAL ATTACK RIDE DEDEDEDECADE!』

相殺しようと士も動くが、イリュージョンのカードを使うだけの時間はない。
241ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/04/11(日) 22:22:30 ID:i06Sn6x9
士の放った光弾は一発のディメイションブラストを相殺するが、残る二発は変わらぬ威力のまま二人を飲み込もうと突き進む。

「士!」

せめて美琴だけでも守ろうと、その体を抱き寄せ自分の影に隠そうとする士の耳に聞き覚えのある声が届く。

「ユウスケ!? ダメだ、来るな!」

通りからトライチェイサーを駆って来たユウスケに警告するが、何を思ったか逆にスピードを上げて士達の横を抜けエネルギーの本流の前へと飛び出していく。
ディメイションブラストがユウスケを飲み込もうとした瞬間急停止、トライチェイサーの後部に乗っていた男が前に出てその「右手」を叩きつける。

「っだあああああ!!」
「な、なんであんたがここにいるのよ!?」
「イマジンブレイカーだと……何故貴様がディケイドの味方をしている!?」

ディメイションブラストを打ち消した男、上条当麻の姿を見て初めて『ディケイド』が言葉を発する。
その問いに答えたのは上条ではなく、『ディケイド』の背後、路地の奥からやってきた男。

「あえて理由を挙げるなら、お前は動きすぎたのさ」
「何……!?」

不敵な笑みを浮かべ話す男、土御門の背後には先程ワームと共に消えた夏海とディエンドに変身した海東の二人が立っている。
その様子はどう見ても敵対しているようには見えず、『ディケイド』を共通の敵と認識していることを意味していた。

「ディケイドとして学園都市のあちこちで悪事を働いて、そっちの本物のディケイドに罪を擦り付ける。
 悪くはなかったが、本物が身動き取れない時にまで能力者狩りをしてたら流石に気づかないわけがない。
 まあそれ以前の問題として、ここのトップはあまりお前のことを信用してなかったみたいだがな」
「あ……スキルアウトが動かなかった理由って」
「もうすぐディケイドの手配も解除される、後はお前を捕まえれば万事解決ってわけだぜい」

笑みを深くしながらの土御門の言葉に『ディケイド』は悔しげに拳を強く握り締める。
その様子を見て、今まで黙っていた士が一歩前に出て声をかける。

「種明かしもオシマイのようだ、次は俺の質問に答えてもらうぞ。
 どうしてお前がディケイドの力を使っているんだ……鳴滝」
「僕も疑問だね、士の評判を落とすためとはいえ、あんたがここまで自分で動くなんてらしくない」

士と海東の問いかけに『ディケイド』……鳴滝は小さく、低い声で言葉を吐き出した。

「私には、もう、何も残っていないのだ……」
「なに?」
「ディケイド! 貴様は必ず倒す……貴様も、貴様に味方する者も、全て!」
「なっ……待て、鳴滝!」

憎悪に満ちた言葉をぶつけると同時に、オーロラの壁が鳴滝の体を包み込みその姿を消してしまう。
鳴滝の持つ世界を越える力を知らない土御門達は慌てて周囲を見渡すが、当然見つかるはずもない。

「どういうことだ……鳴滝の狙いはあくまで俺だけだったはず……」
「それ以前に、あの人は士が世界を破壊するからそれを止めようとしてたんだろ? 何でまだ俺たちを狙ってくるんだよ」
「やれやれ、どうにも情報整理が必要なようだにゃー? それならこんなところで立ち話も難だぜよ」

変身を解除し悩む士達へと呼びかける。
鳴滝による誤解が解けたとはいえ一時は敵対していた者同士、互いに話しあう必要はあるだろう。

「……そうだな、一度戻るとするか」


242ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/04/11(日) 22:23:34 ID:i06Sn6x9


名も無き荒野。

誰にも知られず、誰の記憶にも残っていないその場所に彼は立っていた。

くすんだ色の帽子をかぶり、丈の長いコートを羽織った初老の男、鳴滝はそのどこまでも続く荒野を遠い眼で見つめ続ける。

その右手に持っていた物に視線を落とし、強く握り締める。

それは一本のメモリースティックだった。

「D」の文字が記されたそのメモリーから、鳴滝の意思に呼応するかのように電子音が流れる。

「貴様だけは、絶対に許さん……!」

『DECADE!』


第三話 END

NEXT STORY「その幻想を破壊せよ」
243創る名無しに見る名無し:2010/04/11(日) 22:27:58 ID:9QUkZitz
投下乙!
禁書の世界とディケイドがうまくクロスしてすっごくいい感じです。
まさかナルタケィドとは…。そして、ガイアメモリ!?
すっごく気持ちよく読めました。
244創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 01:13:10 ID:Ew3lEukn
GJ!
まさかのディケイドメモリ!鳴滝はどうしてそこまでディケイドを憎むのか、続きが気になります
245創る名無しに見る名無し:2010/04/12(月) 11:07:51 ID:jbatmkPD
うおおおお!
上条△!
これは気持ちのいいクロスだ
246創る名無しに見る名無し:2010/04/13(火) 18:36:46 ID:c0Y2YOzf
どこぞの禁書レイプものと違ってディケイドの方は良作だな
247創る名無しに見る名無し:2010/04/13(火) 23:47:17 ID:dvHoewPC
>>246
蒸し返すな、阿呆
248創る名無しに見る名無し:2010/04/13(火) 23:49:51 ID:cZ2W4SkN
>>247
>>246は自分で書いたクロスSSの事を言ってるんだよ
249創る名無しに見る名無し:2010/04/14(水) 13:16:07 ID:pjpe9GnX
それにしても、自前の飛行能力を使ってるのは見かけないよなw
デフォで飛行可能な設定を覚えてるやつはいるのだろうか?
250創る名無しに見る名無し:2010/04/15(木) 17:49:20 ID:dCYiYZJz
ディケイドって飛べるのか?アタックライドにはありそうだが
251創る名無しに見る名無し:2010/04/15(木) 18:59:06 ID:jO9UCM7n
ディエンドもそうだけど、テスラバンドの説明に以下のような浮遊能力の記述があった
手足に付いたそれぞれのバンドからマイクロ波を飛ばし、共振を利用することによって浮遊する能力を得ることが出来る。
夢の中のライダー大戦でライダー達を全滅させた後にホバリングしてたし
やらないとできないは別物だろう
252創る名無しに見る名無し:2010/04/15(木) 19:18:22 ID:D/rfVBhs
そういや飛んでたなw
けど速度とか全然わからないから創作に組み込むのは難しいのかもな
253創る名無しに見る名無し:2010/04/15(木) 19:25:50 ID:jO9UCM7n
つまり、美琴も飛行可能なんだよ(キバヤシAAry
惑星Ziでやれと言われそうだけど
まあ、特有の磁気を有する地域でもなきゃ無理だよなw
254創る名無しに見る名無し:2010/04/15(木) 19:28:40 ID:D/rfVBhs
実は美琴は場所限定だけど本当に飛行可能だったりするw
原理を説明されてもイマイチわからないから詳しくはwiki参照だ
255創る名無しに見る名無し:2010/04/15(木) 20:29:16 ID:ojhxGnPG
でもそこまで器用に電気を操れるかが問題だよな
壁に張り付いたりするのは簡単でも飛行や浮遊は複雑な操作が必要なんでない?
256創る名無しに見る名無し:2010/04/16(金) 00:00:25 ID:9wAn1YH0
なんだっけ・・・・・人間がとても耐えられるような電気じゃないけど凄い強い電気を使えば飛べるって聞いた事がある・・・・・ような
257創る名無しに見る名無し:2010/04/18(日) 14:05:42 ID:a6grKeaD
Wと禁書のクロス書いてる人はいつになったら軌道修正()した続きを投下してくれるのかな?

wikiで自演する暇があったらさっさと書いてくれないかな?
258創る名無しに見る名無し:2010/04/18(日) 23:50:12 ID:25ZO0Zrt
お前みたいな粘着がいるから例え修正しても投下できないんじゃね?クロスSS書けない奴が偉そうに言うなよ。
259創る名無しに見る名無し:2010/04/20(火) 16:07:33 ID:SH5/R9ta
>>256
作用反作用さえ問題なければ飛べるだろ
後は制御と出力の問題だし
260創る名無しに見る名無し:2010/04/21(水) 16:21:02 ID:5sSKDaW0
さすがにあの作者は逃げてると思われても仕方ない気がする
自演ばっかりして肝心のSSを書かないんじゃ叩かれても当然だよ
261創る名無しに見る名無し:2010/04/21(水) 23:00:51 ID:WlR0Y8hK
だからどうして自演なんて言えるの? 根拠は?
262創る名無しに見る名無し:2010/04/21(水) 23:06:12 ID:WlR0Y8hK
>>260
言い忘れてたけど、そうやって作者を自演だのと決め付ける時点でお前も粘着だ。
どうせお前もクロスSSもろくに書けずに文句だけ言う荒らしだろ?
263龍が如く×踊る大捜査線 ◆NGc3aHFuVs :2010/04/25(日) 12:36:11 ID:cP2IV4U5
『龍が如く』と『踊る大捜査線』とのクロス。

※オリキャラが多数登場予定
※二次設定有り(和久さんが昔神室署にいた事がある、等)
※青島の格闘能力が原作より高め
※時系列のすり合わせ有り
 『龍が如く』は『龍が如く3』終了後。
 『踊る大捜査線』は劇場版2から『交渉人真下正義』の間。
※オリキャラ視点のシーンあり
※この物語はフィクションです。実在の人物、地名、団体、施設等とは一切関係ありません。
※この物語には暴力団が登場しますが、筆者に現実の組織暴力を肯定する意図はありません。
※萌え要素がほとんど無いクロスです。

以上の点を不快に思われる方は私のトリップをNGに指定してください。
264龍が如く×踊る大捜査線 ◆NGc3aHFuVs :2010/04/25(日) 12:37:54 ID:cP2IV4U5

東京都港区台場。
通称「お台場」と呼ばれるこの地域は、東京都の臨海副都心開発によって13号埋立地に成立した。
主要な交通路のひとつであるレインボーブリッジやフジテレビ本社移転などで一躍有名になったこの街は、
多くの企業が流入し文化の発信地として急速な発展を遂げ、数年前まではほとんど更地同然だったにもかかわらず、
現在では東京の一大観光スポットとして広く認知されている。
 大型休暇に入れば、周辺都市のみならず日本各地から噂のアクアシティやヴィーナスフォートといった
ショッピングテーマパークや、大江戸温泉物語や大観覧車などのレジャー施設を堪能しようと大勢の観光客が訪れる。
 だが、それらの人間がすべて善良な市民とは限らない。人が集まればそこには必ず負の側面が生じるものだ。



 日が西の空に沈みかけ、名残惜しげに赤光を投げかけるお台場レインボー公園。常ならば遊んでいた
子供たちも帰宅し、静寂に包まれているはずの空間は、ただならぬ喧騒と無数のパトライトに埋め尽くされていた。
 公園前の歩道にガードレールを突き破ったバスが乗り上げ、停止している。その周囲を
何台ものパトカーが取り囲み、バスの動きを封じていた。さらにその周りを盾を構えた機動隊員が固め、
私服制服を問わず多くの警官が駆け回り怒号を飛ばす。
 バス車内の乗客からバスジャックの通報があったのは今から30分ほど前。通報の内容によれば
犯人は二人組で拳銃で武装。パトカーで包囲したものの人質を取られ、手が出せないまま膠着状態が現在まで続いている。

「SATは! 交渉人はまだ到着しないのか!?」

包囲の後方で指揮を取っていた捜査員が叫ぶ。
打開策が見出せないまま無為に時間が過ぎていき、マスコミと野次馬ばかりが増えていく。
このままでは人質の身に危険が及ぶかもしれない。さらに悪いことにこの公園は小学校とマンションに挟まれているのだ。
下校時刻を過ぎているため、子供たちが残っていないのが唯一の救いだが、市民が危険なことに変わりはない。
上からの指示ではSATと交渉人の到着まで現状を維持せよとのことだったが――

「それが、付近で行われたイベントの帰宅混雑に巻き込まれ身動きが取れないそうです!」

「なんだそりゃ!? どうなってんだこの街は!?」

 捜査員の怒りは無理もない。以前、湾岸署の篭城事件の際にもアニメイベントのせいでSATの到着が
遅れたことがあるのだ。ただの偶然なのだが、同じ街で同じことがこう続くと毒づきたくもなる。

「さっさと金とヘリを用意しろぉ! 人質ブッ殺すぞぉ!」

 こちらが手を出せないのをいいことに好き勝手な要求をわめく犯人。上に問い合わせても、
依然SATと交渉人を待ての一点張りだ。何一つ好転しない事態に捜査員の苛立ちがさらに募る。

「所轄の連中は何をやってる!? とっとと住人を避難させろ!」
265龍が如く×踊る大捜査線 ◆NGc3aHFuVs :2010/04/25(日) 12:38:47 ID:cP2IV4U5

「もうやってるっつーの」
 
マンション三階の通路から現場を見下ろしながら、無線越しの怒声に恩田すみれはぼやいた。
眼下では、犯人を包囲する無数の赤い光の乱舞と、大勢の人質を乗せたままのバスが互いに動けぬまま膠着している。
犯人の声はすみれのところにも届いていた。節度が感じられない粗暴で上ずった叫び声。
おそらく犯人は場慣れしていないただのチンピラレベルの相手だろう。そんないつ暴発するかもわからないような
手合いが銃を持って暴れているのだ、バスの中の人質の不安と疲労はもう限界に近いだろう。
自分の胸の辺りがじくり、と痛んだような気がした。銃の恐ろしさは身をもってよく知っている。
『台場会社役員連続殺人事件』の際に犯人から子供をかばって撃たれた傷。完治したはずの銃創が疼く。
今すぐ現場に下りたい、バスに乗り込んで犯人を引き摺り出して人質を解放してあげたい。
そんな逸る気持ちをすみれは押さえ込む。
どれだけ息巻いたところで彼女は一介の所轄の刑事でしかない。現場に行ったところで『本店』の人間に追い払われるのがオチだろう。
それよりもまずは目の前の仕事を片付けることが最優先だ、そう気持ちを切り替える。
幸い公園に隣接したマンションの住民の避難はあらかた済んでいる。後は同僚である柏木雪乃の担当区域が
終われば完了するはずだが――
 
「すみれさん! こっちの避難も終わりました!」

「ん、ご苦労さん。それじゃ次、交通整理の応援行こ」

タイミング良く雪乃が避難完了を知らせに来る。
初めてすみれと会ったときは父を殺され失意の底にいた彼女だが、今では刑事課の一員としてアクティブに活躍している。
 アクティブすぎてたまに青島ばりの無茶をするのが難点といえば難点だが。
 と、そこでふとすみれは青島のことを思い出した。

「青島君まだ帰ってきてないの? この大変な時にどこほっつき歩いてんのよまったく!」

 別の発砲事件で聴き込みに出ていた青島の姿がどこにも見当たらないことに気づいたのだ。

「青島さんなら一時間くらい前に連絡がありましたよ。乗っていった車がSUVにぶつけられて動けなくなっちゃって、
別の方法で帰るって言ってました」

「よりによってこんな時に……、真下君もまだ来れないっていうし、こんな時のためのネゴシエーターでしょうに」

 ため息が漏れた。どうにも巡り合わせが悪すぎる。

「まー文句を言ってもしゃーないわね、やれることをやってかないとね」

「はい。……あの、大丈夫ですか? まだ退院したばっかりなのに……課長に頼んで内勤にしてもらったほうが
良かったんじゃないですか?」

「へーきへーき、イスの上でじっとしてるより現場で体を動かしてた方がいいリハビリになるわよ。
ほら、次の仕事行かないと本店にどやされるわよ」

笑い飛ばして雪乃の肩を叩き移動を促そうとしたところでふと、再度現場を見下ろす。
青島が言っていたという『別の方法』というフレーズがなぜかひっかかる。まさかとは思うが――

「あのバスに青島君が乗ってる、なんてことないわよね?」

266龍が如く×踊る大捜査線 ◆NGc3aHFuVs :2010/04/25(日) 12:40:02 ID:cP2IV4U5

 バスの内部は悲痛な空気に包まれていた。乗客は怯え時折すすり泣く声が聞こえる。
だが不安なのは乗客だけではないようだった。

「やべぇよノボル、すげぇ囲まれてるよ……俺ら撃ち殺されるんじゃねぇの……どうするよ……?」

「うるせえんだよタカシ! てめぇは黙って人質見張ってろ!」

ヒステリックに叫んで銃を振り回す高橋ノボルには、なぜこんな状態になっているのかまったく理解できなかった。
くだらない日常に飽き飽きしていたある日、おかしな外人から銃を手に入れたノボルは確信した。
これはチャンスだと、銃があれば自分にはでかい事ができる、その才能が自分にはあると。
連れの小形タカシを誘い、手始めにコンビニを襲うことにした。
犯罪で失敗するやつは大抵計画を複雑にしすぎるせいだ、三億円事件のように出鱈目な証拠を残して
逃げまくれば馬鹿な警察には捕まらない、そう考えて襲撃計画自体は店員を脅して金を奪い、外を通った
車を奪って逃げるというシンプルなものにした。
 襲うコンビニは足が着かないよう地元から離れたお台場にする。この時点で計画は完璧だった。
ノボルは完璧な計画を練った自分の才能に惚れ惚れさえしていた。
 だが実行の段階ですべてが狂った。目出し帽をかぶり銃を構えコンビニに押し入り店員を脅したが、

「へ? え?」

 店員は理解できずに呆けていた。店員が強盗だと理解する前に奥の棚の影にいて見えなかった小さなババアが悲鳴を上げて
大騒ぎを始めた。店員が遅まきながらレジの金を出そうともたついている頃には、悲鳴に気づいた通行人が携帯で
警察に通報を始めていた。ほとんど金を盗れないまま外に飛び出し車を奪おうとしたが表には一台も車が通っていなかった。
そうこうしているうちに遠くからパトカーのサイレンが聞こえ、あわてて土地勘のないお台場を逃げ回りながら、
たまたま目に付いたバス停に止まっていたバスをジャックし現在に至る。
 相方のタカシは腰が引けているが、ここまでやっておいていまさら引き下がれない。なんとしても警察から
金を巻き上げてやる。こちらには人質がいるし、なにより銃があるのだ。これさえあればなんとでもなる。

「オラァ! 金どうしたぁ!? チンタラやってんじゃねーぞぉ! 人質殺すぞぉ!」

「もう少し待ってくれ! 準備に時間がかかるんだ!」

 案の定、警察の連中は何もできない。今の主導権は間違いなく自分たちにあるのだ。
 にもかかわらず警察の連中はさっきから時間稼ぎばかりしている。明らかにこちらをナメている。
人質を殺す度胸など無いとたかをくくっているに違いない。

(ふざけやがって……!)

 あんな数だけの能無しどもになめられてたまるか、あのパトカーの群れのど真ん中に一発撃ち込んでやれば
連中もきっと思い知るだろう。自分が本気になったらどれだけ恐ろしいかを。いや、それよりも人質の死体を
やつらの目の前にぶら下げてやったほうが面白いかもしれない。奴らは自身の無力さと間抜けさ加減を見せ付けられ、
屈辱に悶えるに違いない。その無様さはきっと笑えるだろう。でもそれはすべて警察の自業自得だ、
連中が自分を甘く見ているのが悪いんだ――
 完全に頭に血が上った状態で、妄想だけが加速していく。感情が昂ぶるままに任せノボルはタカシに声をかけた。
267龍が如く×踊る大捜査線 ◆NGc3aHFuVs :2010/04/25(日) 12:41:10 ID:cP2IV4U5

「なぁタカシ」

「な、なんだよ?」

タカシ自身パニックになりかけていて声をかけられるまで気がつかなかったが、さっきまでわめき散らしていた
はずのノボルがいつの間にか不気味なまでに静かになっていた。唐突な相方の変貌に嫌な予感を感じ、
思わず後ずさるタカシ。その退路をふさぐように致命的な言葉がかけられた。

「見せしめだ。そこのババアを殺れ」

銃口で指し示された老婆が短く悲鳴を上げた。

「は、はあ!? なんでだよ!? それになんで俺が――」

「見せしめだっつってんだろうが! このままサツにナメられっぱなしでいいと思ってんのか!?」

「や、やだよ俺! それに最初の話じゃ殺しをやるなんて聞いてねえよ!? これじゃ話がちげぇえ!?」

 反発の言葉は銃口でさえぎられた。

「お前、おれの味方か? 敵か? いまさら自分だけ逃げようなんて考えてないよな? あ?」

タカシは顔面に突きつけられた銃口の向こうに血走ったノボルの眼を見て、全てが手遅れであることを悟った。
こいつは本当に殺る気だ、逆らったら自分も殺されかねない。何か落ち着かせる方法は無いのか、慌しく考えをめぐらせる。
殺しなどやれば本当に人生お終いだ、それだけは避けなければ。そう考える反面、自分の銃を持つ手はのろのろと
老婆のほうへと向いていった。もとより自分の命と赤の他人の命では比較にならない、そう精神は完全に屈服していたのだ。

「や、やめてください……殺さないで……」

震えながら命乞いをする老婆。引きつったノボルの嘲笑が車内に響く。
今や誰の眼にも老婆の命は風前の灯であるように思われた。だが――

268龍が如く×踊る大捜査線 ◆NGc3aHFuVs :2010/04/25(日) 12:43:21 ID:cP2IV4U5
「おい、待て」

 低い声が今まさに行われんとしていた凶行を妨げた。クライマックスを邪魔され激昂したノボルが振り向きざまにわめく。

「ンだテメェ! お前から殺し――」

 怒声は最後まで発する前に窄んで消えた。ノボルの目の前に立っていたのは彼よりも頭半分は背の高い巨漢だった。
厳つい顔立ち、熊のように分厚い胸板とがっしりとした肩幅、派手なワインレッドのシャツに真っ白なジャケットとズボン、
足には派手な革靴、明らかに『その筋』の人間にしか見えない。ノボルはその男の顔に見覚えがあった。最後尾の座席に
子供に囲まれて座っていた中年の男。子連れの中年=ただのおっさん=弱いと勝手な先入観で脅威ではないと思い込んでいた。
男は自分に向けられた銃口にもまったく動じる様子を見せぬまま、傲然とノボルを見下ろすと口を開いた。

「お前らが頭を冷やしておとなしく自首すりゃそれにこしたこたぁ無いと思って黙ってたんだがな、
さすがに限界だ、やりすぎだぜガキども」

 突然の上からの物言いに、最初唖然としていたノボルは、一拍おいて先ほど以上の怒りに顔を真っ赤に染めた。
今このバスで一番力があるのは自分のはずだ、その証拠に自分の手には銃がある。その自分をまるで格下のように扱う
白ジャケットの男がどうにも許せなかった。

「カッコつけんじゃねぇよおっさん! 出しゃばってるとテメェから殺すぞ!?」

 怒りに任せて男のわき腹に銃口をねじ込む。余裕面が恐怖にゆがみみっともなく命乞いを始める光景を想像し、
暗い笑いを漏らす。もちろん命乞いしたところで助けてやるつもりなど無い。徹底的にビビらせたうえで殺してやる。
その邪な期待は、男の小揺るぎもしない巌の表情によって打ち砕かれた。それどころか、

「そこじゃねぇよ馬鹿」

「!?」

「そんなとこ撃ったって人間は死なねえって言ってるんだ。狙うんならココを狙え」

 あまつさえトントンと己の眉間を指で叩く白ジャケットの男。繰り返される侮辱にノボルの我慢は限界を超えた。
男の望みどおりに眉間に銃を突きつける。身長差の関係から銃がやや上のほうに向けられる形だ。

「じょ、上等だよ、その脳天に大穴ブチ開けて――」

「ああそれとな」

 突然男の体躯が膨れ上がったようにノボルには見えた。拳銃越しに貫くような鋭い視線がノボルを射抜く。

269龍が如く×踊る大捜査線 ◆NGc3aHFuVs :2010/04/25(日) 12:44:30 ID:cP2IV4U5
「殺すんなら一発で殺れよ。もしその引き金を引いて俺がまだ生きていたら――俺がお前を殺すぞ」

予想だにしていなかった剥き出しの殺気を叩きつけられ思わず後ずさりそうになる。この場で優位に立っているのは
自分であって、その自分が殺される側に回るなどということはまったく想定していなかった。
 怒りと恐れがない交ぜになった感情に襲われ頭が混乱する。ただ一つ分かっていたのは、
この男をこのまま
生かしておくわけにはいかないということだけだった。こいつは自分を脅かす存在だ。だがこっちには銃がある。
今のうちに殺してしまえば問題ない。
 男の放つ威圧感に圧倒されそうになりながら、弱気を押し隠して銃を握る手に力をこめる、が――

「あの〜、ちょっといいですか?」

 再度水を差す声が上がった。白ジャケットの男とは正反対の弛緩しきった声。その声の主は前方の座席に
座っていた男だった。
 長身痩躯を黒のスーツに赤いネクタイで包み、その上からモスグリーンの軍用コートを羽織っている。コートは
長年使っているのか大分ヨレヨレになっていた。顔立ちは端整といってもよいが、今はその顔に卑屈な愛想笑いを浮かべている。
 ジャケットの男と対峙したままのノボルは、その及び腰の態度に多少安堵した。こっちの男は脅威にはなりそうに無い。
首だけ後ろにひねり怒鳴りつける。

「なんなんだよお前は!?」

「あ、すいません。今ちょっと名刺切らしちゃってて……」

「誰が自己紹介しろっつったよ! 何の用だっつってんだ!」

「いや〜、あのですねぇ」

コートの男はオドオドと周囲の様子を伺いながら立ち上がる。

「こういう狭い場所で銃を使うのって実はすごく危険なんですよね。映画とかで聞いたことありません?
跳弾ってやつ。銃弾って至近距離で撃つと簡単に人間の体を貫通しちゃうんですよね。その弾が壁や何かに
ぶつかって跳ね返ったら、撃ったあなた達まで当たっちゃうかもしれないんですよ。それはまずいんじゃないかな〜なんて」

 卑屈な笑顔のままノボルたちに忠告めいた発言をする新たな男。その様子は犯人に媚を売り、あわよくば
自分だけは助かろうとする小物のような態度にノボルの眼には映った。
 しかし、一見遠慮がちに振舞うコートの男が、その実じりじりと自分たちとの距離を詰めていること、
一瞬だけ白ジャケットの男と視線を合わせたことには気づいていない。

「それに今、外にいる警察がすごくピリピリしてるじゃないですか。ここで銃声が響いたら、それをきっかけに
警官が一斉に突入してくるかもしれませんし」
270龍が如く×踊る大捜査線 ◆NGc3aHFuVs :2010/04/25(日) 12:45:49 ID:cP2IV4U5
 コートの男は従順そうな態度を見せているが、ノボルの苛立ちはまったく収まらなかった。もともと誰かに
説教や指図をされるのが嫌いなのだ。その発言に聞くべき部分が有る無しは関係ない、自分に行動に
横槍を入れてきたこの男はそれだけで不愉快だった。

「いちいちウゼーんだよお前! タカシ、やっぱこいつから殺せ」

「ええっ、そんなぁ」

 突然の指名に大仰にのけぞって動揺して見せるコートの男。悲鳴もどこか棒読みだったが、精神的に余裕の無い
ノボルたちは不審に思うことができない。

「結局俺が殺るのかよ……」

 タカシは憂鬱な表情でコートの男へ向きなおる。自分は不本意であるということをせめて周囲にアピール
しようとしているのか、ノロノロと銃を持つ右手を持ち上げた。

 瞬間、コートの男が動いた。さりげなく接近していた場所からさらに踏み込むと、タカシの右手に手刀を振り下ろす。
予想外の衝撃に拳銃を取り落とすタカシ。何が起きたのか理解できず床を滑っていく銃を呆然と見やる。
卑屈だった男の表情が鋭い闘志を湛えたものへと一変していた。タカシの動揺した隙を見逃さず、顔面を裏拳で打ち据える。

「ぶげっ!?」

 怯んで後ろへ逃げようとするが、男の追撃はそれを許さない。泳いだタカシの右腕を掴み、脛へ蹴りを見舞う。
弁慶の泣き所を強打され、痛みにバランスを崩して前傾姿勢になる。掴みかかろうとした腕を男は難なく捌き
右腕の関節を捻りながら床へと引きずり倒した。そのまま腕を左脇に挟みながら上方へ捻り上げ体重をかける。
柔道の脇固めの体勢。関節の痛みにタカシの動きは完全に封じられた。
 手刀から続く一連の流れるような捕縛術、それは男が一般人とは違う何らかの訓練を受けたプロであることを示していた。

 ノボルはただ黙ってその光景を見ているほか無かった。無害だと思っていたコートの男が突然牙を剥いたことに
呆気にとられ反応できなかったというのもある。だがノボルが我に帰った時には、銃を持つ右手を
白ジャケットの男に凄まじい握力で掴まれていたのだ。

「いっだあああああ!?」

 激痛に耐えかね手を振り払おうともがくが、万力で挟まれたように右手はまったく動かせない。
空いた手で男を殴りつけても、大木を殴ったような硬く重い手ごたえが帰ってくるばかりで力が弱まる気配すらなかった。
 男は痛みに緩んだ手から銃をひったくると、慣れた手つきで弾倉を捨て、薬室から銃弾を排出、さらには
スライド部分まで解体してしまうと、それらをすべて背後へ投げ捨てた。
271龍が如く×踊る大捜査線 ◆NGc3aHFuVs :2010/04/25(日) 12:46:44 ID:cP2IV4U5
「ガキの遊びに付き合うのはここまでだ」

 男の威圧感に満ちた視線にノボルは完全にパニックに陥った。自分の自信のよりどころだった銃は奪われ、
丸腰の状態で大勢の警察と得体の知れない男と向き合う状況にいまさらながら恐怖した。

「うあああああああああっ!」

恐慌状態に陥ったノボルはただ闇雲に突進した。勝算も何も無いまま、元凶である目の前の男の首を絞めようと手を伸ばす。
だが男の動きのほうが早かった。ノボルの胸倉を掴みあげると、その顔面に頭突きを叩き込む。
衝撃と痛みに目の前に火花が散り、たたらを踏むノボル。男はさらにその後頭部を掴むと大きく反動をつけて
後部昇降ドアへと叩きつけた。たまらず倒れこんだノボルの目に、止めを刺そうと足を振り上げる男の姿が映った。

『俺がお前を殺すぞ』

 男の言葉がよみがえる。

(死にたくない、死にたくないイヤだ――!)

必死に命乞いをしようとするが、痛みで舌が回らない。ノボルは何もできぬまま無情にも振り下ろされる靴底を眺め続けるしかなかった。





「やりすぎたか……?」

 気絶した犯人を見下ろし、白ジャケットの男――桐生一馬は呟いた。足をどけると鼻が完全に潰れている。
最近まで腹の傷の療養に専念して荒事からは遠ざかっていたため、久しぶりの喧嘩に加減が分からなかったのだ。
それに相手が銃を持っていたために、こちらも多少気が立っていたというのもある。他の乗客に当たらないよう
銃を上のほうに向けさせ、『古牧流短筒崩し』で一人目をしとめるつもりだったが、二人目を動き出す前に倒せるかどうかは
危険な賭けだった。コートの男が現れ、もう一人を取り押さえてくれたことは僥倖というほか無い。

「おじさん! 大丈夫!?」

 後ろの座席から、遥を先頭に子供たちが駆け寄ってくる。全員、桐生が沖縄で経営している養護施設「アサガオ」で
一つ屋根の下で暮らす家族同然の子達だ

「俺なら大丈夫だ。皆も怪我は無いか?」

「うん、私たちも平気だよ。気分が悪くなった子とかもいないみたいだし」

「やっぱおじさんつえーな!」

「こわかったー」

「やっと降りられる〜」
272龍が如く×踊る大捜査線 ◆NGc3aHFuVs :2010/04/25(日) 12:47:31 ID:cP2IV4U5
 口々に騒ぎ出す子供達。それにつられるかのように車内の張り詰めた空気が解けていった。見事犯人たちを
取り押さえた桐生とコートの男に向けて拍手が起きる。桐生がコートの男のほうを見ると、抵抗を止めた犯人を床にうつ伏せにさせ
手錠をかけているところだった。
 立ち上がろうとした男に手を貸して引き上げてやる。

「いやーご協力ありがとうございます。相手が2人いたもんでなかなか手が出せなかったんですが、あなたの
おかげで助かりました。お強いですね」

 そう笑う男は刑事というよりもどこか営業サラリーマンのような愛想の良さがあった。少なくともこれまで
桐生が出会った刑事にはいなかったタイプだ。

「あんたもな。あのタイミングで立ち上がった以上只者じゃないとは思ってたんだが、やはり刑事だったか」

「ええ、このバスに乗ってたのは偶然なんですけどね。ああそうだ、後で犯人を取り押さえた経緯について
調書をとることになると思います。あ、私、湾岸署の青島といいます。そちらのお名前伺ってもよろしいですか?」

「俺は――」

『確保―――――!!』

 桐生が名乗ろうとした矢先、拡声器からの叫びとともに前後のドアがこじ開けられ、車内に警官たちがどっと雪崩れ込んでくる。
あっという間にバス内部はごった返し、自己紹介は中断せざるを得なくなってしまった。

 初春にもかかわらず寒気が肌を刺すお台場にて、これが元東城会四代目会長、桐生一馬と、
警視庁湾岸署捜査課強行犯係巡査部長、青島俊作の出会いだった。
273創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 12:51:34 ID:uAbkOT5t
面白そうな作品きた!支援。
274龍が如く×踊る大捜査線 ◆NGc3aHFuVs :2010/04/25(日) 13:00:48 ID:cP2IV4U5
お台場のバスジャック事件が解決してから数時間後

東京赤坂の某高級料亭の裏手に、ある政財界の大物との会談を終え帰路に着こうとする男の姿が会った。
堂々とした体躯ながら黒の高級スーツを着こなし、その胸元には『東』の文字を崩したバッジをつけている。
男の名は堂島大吾、若くして東日本最大の暴力団「東城会」を束ねる第六代目会長である。
大吾が外へ出ると、リムジンの脇で待機していた側近の一人が近づいてきた。

「お疲れ様でした、会長。首尾の方はいかがでしたか?」

「話はまとまった、これで神室町ヒルズの建設を本格的に進められる。首の皮一枚、どうにか繋がった」

東城会の現状はお世辞にも順調とはいえない。近年連続して起きた内部抗争や、関西の近江連合の襲撃により、
組織は疲弊しきっている。特に東城会の経済的基盤を支えていた白峯会が崩壊したことで、
いつ組織が空中分解しても
おかしくない状況に追い込まれてしまった。この苦境を打開すべく大吾は日々奔走している。今回の会談を成功させたことで
東城会が生き残る目がやっと見えてきたのだ。
 
「それではこのまま本部に戻りますか?」

「いや、その前に何か腹に入れたい。病み上がりにここの飯はいまいち合わなくてな――」

「おい! 止まれ!」

大吾がリムジンに乗り込もうとした矢先周囲を見張っていた護衛の一人が怒声を上げた。見ると、暗灰色のコートに
帽子を目深にかぶった一人の老人が近づいてくる。

「会長、危険かもしれません。お早く車に――」

促す側近を手で制する。大吾はその老人にどこか見覚えがあったのだ。一方老人は殺気立つ護衛を気にした風も無く
飄々と声を上げる。

「おいおい、こんな年寄りにそういきり立つこたあないだろう。俺はよ、ただ昔の知り合いを偶然見かけて
挨拶しようと思っただけなんだからよ。なあ、大吾?」

 そういって老人は帽子を取る。その素顔に大悟の予感は確信へと変わった。

「和久さん……」

「いよぉ、久しぶりだなぁ」

護衛たちの向こうで、まるで旧知の友人に会ったように軽く手を振る老人、その皺深い顔がニッと笑った。
275龍が如く×踊る大捜査線 ◆NGc3aHFuVs :2010/04/25(日) 13:04:09 ID:cP2IV4U5
 数刻後、大悟と和久は小さな屋台へと移動していた。大吾はもっと高級な店へ案内しようとしたが、
和久が「その手の堅苦しい所は苦手だ」と断ったため、ここに落ち着いたのだ。

「しかし、俺が神室署にいたころは手のつけられねえ悪ガキだったお前が、今や押しも押されぬ東城会の六代目か。
俺の知り合いん中じゃお前が一、二を争う出世頭だなぁこりゃ」

「あの頃は和久さんには本当にご迷惑をおかけしました」

「ははっ、お前さんからそんな殊勝な言葉が聞けるとはねぇ、俺が年を取るわけだ。ほれ」

「頂きます」

 和久から熱燗を注いでもらいながら、改めてその顔を見る。記憶の中にある姿より皺が増えているのは当然だが、
背も少し縮んでいるように思えた。和久が神室署にいた頃はすでにそれなりの歳だったから、今では六十をとっくに超えているはずだ。
昔、大吾がまだ東城会に所属せずただのチンピラだった頃、喧嘩で神室署へしょっ引かれるたびに和久の世話になった。
当時の和久は、大吾の顔を見ると「またお前か」と苦笑して茶を勧めてきた。説教をするでもなく雑談をして、
適当に時間が過ぎれば釈放するというのがいつもの流れだった。
 ただ帰り際にいつも

「あまりつまんねぇ喧嘩はよせ、そんなんで怪我したり命落としたりしても何も面白いことなんてねぇぞ。
それと無関係なカタギは絶対に巻き込むな。もし巻き込んだ時は容赦はしねぇからな」

と、戒められてきたものだ。結局喧嘩のほうは止めることがなく、和久に迷惑をかけ続けることになってしまったが。
大吾にとっては数少ない頭の上がらない存在の一人である。

「和久さんは今は何を?」

「俺か? 俺はもう引退したよ。娘も結婚したし身の回りの問題は全部片付けた。今は一日中好きなだけ
盆栽をいじってられる。悠々自適の生活ってやつだ。あ、オヤジ、つくねとねぎま頼む」

 そう語る和久の横顔に、確かに往時の鋭さはなくなったように見えた。警察官になって以来ヒラの巡査として
現場をずっと駆け回り続けてきた男だ、引退して肩の荷を降ろしたことで張り詰めていたものが切れたのかもしれない。
大吾にとってはそれが少し寂しくもあった。
 
「お前さんのほうはどうなんだい? 風の噂じゃ随分とゴタついてるって話だが」

「ええ、ですがどうにか再起の目処は立ちました。これ以上揉めて世間に迷惑をかけることはないはずです」

「ふーん、そうかい。ま、そいつはなによりだな。……ん?」

 和久の手が止まる。どこか遠くの方でパトカーのサイレンが鳴っていた。
276龍が如く×踊る大捜査線 ◆NGc3aHFuVs :2010/04/25(日) 13:05:32 ID:cP2IV4U5
「最近増えたなぁ。知ってるか? 近頃銃を振り回すガキが急に増えたって話。ほんの何時間か前にもお台場で
銃持った奴のバスジャックがあったんだとよ」

そう語る和久の表情は苦渋に満ちたものになっていた。この1ヶ月で都内の銃犯罪の件数は3倍以上に激増している。
何者かが意図的に銃を闇ル−トで流していることは明白で、実は大吾も自分の意に反したその実態を把握しようと
調べさせているのだが、海外の組織が関わっているということが分かったのみで、未だ全容は見えていない。
かつて八王子署にいた頃、相棒が銃で殺されたことのある和久にとって銃犯罪の多発は許しがたい状況だろう。

「さっきは悠々自適なんて言ったが、今でも夜中にパトカーのサイレンを聞くと目が覚めちまう。捜査で何かあったときに
真っ先に死ぬのは現場の刑事だ。若い連中が無事でいるのか、そればっかり気になってしょうがねえ」

 言うと和久は熱燗を一息にあおる。

「そうだ、いい機会だからひとつ聞いておくか。なあ大吾」

「はい」

和久の問いかけに向き直る大吾。その体が固まった。
視線の先、和久の表情、和久の眼が一切の身じろぎを許さなかった。今までの好々爺めいた顔から、
いつ変化したのか大吾が気づかないほど、自然に表情が一変していた。
 相手の欺瞞や韜晦を許すまいとする、現役の刑事の表情へと。

「ここ最近、銃をばら撒いて回ってるのは、まさか東城会じゃねぇだろうな?」

 大吾は悟った。今日和久が自分と出会ったのは偶然などではない、この件を問い質すために自分を探していたのだ。
すでに退職してもなお犯罪を許すまいとするその意地、この老人は根っからの刑事なのだろう。
その精神に敬意を払い、大吾は誠意を持って答えた。

「それはありません」

 和久の突き刺さるような視線に怯むことなく大吾の視線が交差する。

「少なくとも、俺の眼の黒い内はカタギに銃を売るような真似はさせません。絶対に」

お互いに視線を決して外すことなく、ただ静かににらみ合う。
数秒か、数十秒か、2人にとっては長い長い時間の果てに、和久の視線の圧力が、ふっ、と緩んだ。

「……そうかい、それならいいんだ。お前さんの口から直にその台詞が聞きたかった」

 和久は酒を飲もうとして自分のコップが空であることに気づいた。大吾が黙ってそのコップに酒を注ぐ。
277龍が如く×踊る大捜査線 ◆NGc3aHFuVs :2010/04/25(日) 13:06:58 ID:cP2IV4U5
「ありがとよ。銃って奴は本当におっかねぇ。あれがあれば子供でも簡単に人が殺せちまう。俺が湾岸署にいた頃も
2人刑事が撃たれて重体になった。今じゃ2人とも元気になって職場復帰してるが、一歩間違えばあいつらは2度と
陽の目が見られなくなってたかも知れねえんだ。それだってのに巷じゃ考えなしの連中が玩具みてぇに銃を振り回してやがる。
俺にはそれが堪らねぇ」

「分かりますよ。俺もこの間まで撃たれて入院していたクチですから。その一件で部下も失ってしまった」

「そういやそうだったな……」

大吾自身、先日まで国際的な武器密売組織『ブラックマンデー』の首領、リチャードソンに撃たれた傷により
入院生活を余儀なくされていた。さらに信頼していた部下、峯義孝が自身のけじめをつけるために
リチャードソンもろとも自決していた。
 和久は重くなりすぎた空気を振り払うように大吾のコップにも新しい酒を注ぐ。

「年寄りの愚痴につき合わせて悪かったな。ほれ、お前も飲め」

「はい」

 またどこかから別のパトカーのサイレンが聞こえてくる。新しい事件が発生し、危険な現場へ刑事たちが
駆り出されているのだろう。
突如吹いた寒風に和久は身をすくめる。もうすぐ春だというのに気温は一向に上がる兆しを見せない。
それも何かの凶兆の前触れなのだろうか。
 初春らしからぬ空気の中、和久と大吾はただ黙して酒をあおった。





                                                                             続く
278龍が如く×踊る大捜査線 ◆NGc3aHFuVs :2010/04/25(日) 13:07:55 ID:cP2IV4U5
以上です。
支援ありがとうございました。
279創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 13:19:38 ID:uAbkOT5t
投下乙!
2つの濃い作品のクロスオーバーとは
その発想は素晴らしい。
そして、良く作品と作品がなじんでいいSSになったと思う。
280創る名無しに見る名無し:2010/04/25(日) 17:40:45 ID:Kr6nQ7b6
す、すごいクロスがきてる!w
面白かったです!
281創る名無しに見る名無し:2010/04/26(月) 01:40:34 ID:SH8I504Q
うわぁお!これは面白そうなクロス!続きがたのしみですね!
282創る名無しに見る名無し:2010/04/26(月) 01:51:08 ID:TvUPhxoR
どこぞのレイプものと違って再び良作だな
283創る名無しに見る名無し:2010/04/26(月) 23:43:56 ID:SvheXrkG
>>282
蒸し返すのもいい加減にしろカス
最遊記×ハートキャッチプリキュア!のクロスオーバー小説を投下させていただきます。
・最遊記の三蔵一行がハートキャッチプリキュアの舞台、希望ヶ花市へと飛ばされる異世界トリップです。
・細かい矛盾が多々出てくるかもしれません。突っ込むか、ガン無視するかは皆さんにおまかせします。
・プリキュアのキャラ達と絡むのは次回辺りです。

それでは投下してみます
「ふあぁ〜あ」

「あからさますぎますぞ、観世音菩薩」

「いいじゃねーか、本当に退屈なんだしよ」

大あくびを中池にかまして、涙目のまま体をのばす。片手に持った水晶を指の先に乗せて回したり、上に投げたりしながら観世音菩薩は菩薩らしからぬ姿勢で再び出ようとする欠伸を噛み締めた。
風さえもめんどくさがってるのか、全く大気を動かそうとしない。目の前の池に浮かんでいる蓮の花だけが、今日も味気ない天上界の生活を彩ってくれている。
肘掛けに頬杖をついて、また出そうになった欠伸を無理やり噛み殺した。

「ふぁ〜んっと、ヒマで退屈でかったるくて・・・最高にいい状態に発酵しそうだぜ、俺の脳ミソ」
「きちんと御公務をこなされていれば、そう感じることもないのでは?」
「おっいま虫が飛んでた」
「・・・まぁ、今に始まったことではありませんがね」
「たまにはもの分かりいいじゃねぇか」

いつもとは違った反応を見て観世音菩薩は二郎神の心の成長を喜んだ。

「言っても無駄だと諦めてるんです!」
「そうそう、手っ取り早く最初っからあきらめてりゃ無駄なストレスも堪らなかったはずだぜ?」

「その無駄なストレスを溜めさせているのは誰ですか!?」
と言いたかったが二郎神は心の中でため息を吐いてそのまま何を言わなくなった。
そう、この人に何を言っても無駄だと悟ったのだ。

「ところで、それは何ですか?」
「あぁ?これか?」

先程からずっと片手で弄んでいた手の平サイズの水晶球を二郎神の目線までに持ち上げる。
透明な水晶球である。だが、中心部では七色の光を絶えずに渦巻かせており、その美しさに二郎神も思わず息を呑む。
「綺麗だろう?」
「はぁ、そうですな」
「やらねぇぞ」
「誰も欲しいとは言ってませんよ」
「物欲しそうな目してたくせに」
「・・・で、それは何ですか?」

観世音菩薩の言葉に反論するよりも二郎神は水晶球の正体が気になって仕方なかった。

「・・・んだよ、つまんねーな。まぁいいか、これはな、かーなーりのレア物でな。俺でも、お目に掛かるのは久しぶりだ」
「と、申されますと?」
「天界でも一、二を争う貴重な宝物ってことだ」

水晶球に自分の顔が映しだされる様を見ながら、観世音菩薩は自慢げに言った。

「こいつの名は“霊樹珠”と言ってな。まぁ、あれだ」

頭を少しだけ掻いて、簡単に説明しようと暫しの間だけ考えた。そして

「普段は相まみえる事のない俺達とは違う世界、要は異世界と呼ばれる世界に『扉』を創って両方の世界を繋ぐ事を可能とする代物だ」

「な!!そんな物が何故ここに?!」

二郎神ですら、今まで見たことがなかった名ばかりの超幻品に目をむいた。おそらく、いや確実にそれは門外不出の品であるはず、ここにあることはあってならない。
天帝のおわす宮でのみ存在することが許される、まさにレア中のレアと言ってもいい。

「あぁ、いつも見る度に綺麗だなと思ってよ」
「・・・・・・で?」

貴重すぎるそんな物が観世音菩薩の手の中に転がって来たわけではあるまい。
まさか、という考えてはならない事を考えている中、慈愛と慈悲の象徴は二郎神の思考を読んだように一つの言葉を唇の端を上げながら紡いだ。

「クスねてきた」
「〜っ!!!!観世音菩薩――――!!!!」

いつもよりは数倍はあろうかという声を張り上げた。直接耳に入れた日には、耳が機能不全になりかねない二郎神の声は池に浮かぶ蓮を揺らした。

「だいじょぶだって。後でまたこっそり戻しとくから」
「・・・・・・」
「・・・んだよ、その目」
二郎神の物言いたげな目線に、観世音菩薩と二郎神は互いを見やっていたが、沈黙に耐え切れなくなったのか観世音菩薩は観念して息を吐いた。

「ジョーダンに決まってんだろ、その目は止めろ」
「ならばよろしいです。それで、本当の目的というのは?」

天界を司る五大菩薩の一柱である人物が
他の子供が持つ玩具を欲しがる子供のような理由で天帝の宮から宝物を盗み出すわけがない。
何かしらの理由があって、観世音菩薩の手の中に修まっていると考えるほうが自然なのだ。

「天帝から頼まれたんだよ。歪みが生じてるらしくてな、原因を調べろってさ・・・ったく、あの狒狒爺、面倒なことは全て俺に押し付けやがる」
「菩薩、言い過ぎですぞ!」
「あぁいいんだよ。今さら遅いって」

ヒラヒラ手を振って二郎神の小言をサラリと払う。耳に痛いことは最初から聞かないに限るからだろう。

「ま、使いようによっては危険だが、使用法さえ正しけりゃそれほど問題もおこ
らねぇし?」

と、軽快な口振りで言ったところで観世音菩薩でもさえも予想だにしない事が起きてしまった。
二郎神が言ってしまえば、それは起きてはならない事だろう。
観世音菩薩の手の中で玩ばれた水晶は獣に捕まった獲物が必死に逃れるかのように手の中から重力に従って落ちたのだ。だが、さすがは天上界の祭器というか、少しばかりの高さでは割れるはおろかヒビの一つも入らない。
しかし、それはまだ二郎神が瞬間的に予想していた想定の範囲以内である。

「あっ」

「ぁ・・・・・・!!」

二郎神がひぃっと息を飲み込んだ瞬間。
漫画的に表せばころころころという擬音効果をつけたように水晶球は中池に逃れるかのように文字通り落ちた。

「おむすびコロリンすっとんとんだな。オイ、二郎神。これ見なかったことにしないか?」

陸に打ち上げられた魚のようにパクパク口を開く二郎神に、真顔でそんなことを提案してみたが、時すでに遅し。

「かかかかかっ観世音菩薩―――――――!!!」

「あぁ、耳痛ぇ・・・・・・」

耳の穴をホジりながら、絶叫とともに洪水のごとく二郎神の小言が炸裂する。長
年鍛えられてきただけあって、さすがの菩薩もこっそりと溜息を吐いた。
「やべぇか・・・」
「聞いてらっしゃるんですか?!」
「それよりも、だ」

未だに声を張り上げる二郎神を一声で制した時、観世音菩薩の人差し指がある物を指差した。

「よく見てみろ」
「何を・・・・・」
「池だよ」
「この池には何が映る?」
「何って・・・いつも三蔵一行と妖怪達の動向を見るために使用しておられる蓮池ですが・・・」

今は何も映ってはいないが、この池は先程述べたように三蔵一行と彼らを狙う妖怪達の動きを探るための下界の現状を水面に逐次映し出す物であり、
これによりいつの日か瀕死の重傷を負った三蔵法師を助けることができたのだ。

「そこで問題だ。あの池に落ちた水晶球、どうなると思う?」
「・・・・・・・・・」

考えたくない。考えたくもない。というより、事実を永久に知らなくていい。だが、現実は残酷であった。

「・・・ま、まさか」
「あぁ、めんどくせぇ・・・」

溜め息を吐きながら観世音菩薩は頭を掻いてそう呟いた。

「めっ・・・めめめめ!面倒臭いで済むと思ってんですか?!」
「さぁ?あいつら殺しても死なねぇ奴らだし、なんとかなるんじゃねぇの?」
「・・・・・・」

今度こそ開いた口が塞がらない二郎神だった。そして、先程の提案を本気で呑もうかと真剣に考えてしまった。

「今日もいい天気ですね〜」
とある町の宿屋の一室でのんびりとお茶を啜りながら、隣りで新聞を読んでいた三蔵に言う。
ばさりと新聞をたたみ置いて眼鏡を外しながら、八戒が注いだ湯呑に手を伸ばした。
「フン、天気がいいくらいでなんだ」
「気分まで晴れてくるじゃないですか♪」
「万年晴れ日和なくせして何言ってる」
「あれ、そうでしたっけ?」
「白々しい」
「まぁ、そういうことにしておきましょう」

都合が悪くなったらその笑顔で会話を打ち切るのは八戒の得意技の一つである。
三蔵が煙草に手を伸ばした時、部屋の扉が大きく開かれる。それと共に流れ込んできた賑やかしい声に思いっきり眉根を寄せた。

「ごらぁクソ猿、てめぇは食いモンのことしか頭にないのか!あぁ!?」
「そういう悟浄だって、女のことしか頭にないくせに!!」
「おめぇより正常なんだよ!!」
「エロエロ河童!!」
「穀潰し猿!!」
「やかましい―――――!!!!!」

スパパパパパパーーーーーーン!

軽快さと豪快さを兼ね備えた音の発信源はいつの間にやら三蔵の手に持たれていたハリセンである。
悟浄と悟空の喧嘩を止める為には必需品である。
「黙れ!役立たずな上に吠えんな!!」
「ははは、相変わらずのテンポで」
苦笑気味に言った八戒をギロリと睨みつける。すると八戒はお茶を足して外の景
色を眺めながら啜り始めた。
「ったく・・・この状況もいい加減あきあきだ・・・」
心静かな時間はいつになったら戻ってくるのか?思い切りため息を吐き出した。
日常のありふれた、ワンシーン。
だが、それは何の前触れもなかった。

いきなりだった。

光が押し寄せたのだ。

「「「「!!!!!」」」」

眩むほどの光量。何を構える間もなく、あまりの眩しさに目を焼かれないように
、手をかざすのがやっとであった。

「なっ・・・・!」
「まぶしっ・・・!」
「くっ・・・」
「んっだよこれ?!」

次に訪れたのは、浮遊感。上下感覚が一気に消滅する。
体が無重力空間に放り出される。

『・・・・!!!??』

それは、ほんの数秒の出来事。

あとには、消したばかりのタバコから細く紫煙が昇るのみ。

他には何も変わりなかった。
 
何も。
「あ、やべ。あいつ等が消えたぜ。桃源郷から」
「やべ、じゃないでしょう!!!どうするんですか!!?」
「まぁ、暫く様子見てみるか。おもしろそうだし」
「〜っ!!!!!!」
「いいじゃねぇか、刺激あって人生なんぼのもんだ。」

この時ばかりは本気で観世音菩薩に仕えるのをやめようかと思った時である。


何もかもが真っ白な世界で、一瞬ふわりと体が宙に浮いたような気がした。それ
も僅かな間で、靴の裏に硬い地面の感触を感じた途端、急激に重力が掛かる。
数歩よろめいてから顔を上げると、暗闇が目に飛び込んできた。そして、ここが
森の中だということに理解するのに何秒掛かったのだろうか。

「ここは?」

ふいに声を出すが、その問いに答えるものはいなかった。上を見上げると、穴が開いたような木々の中に満月の光が差し込んでいた。暗闇の中でそれが唯一自分を照らす存在だった。
それと同時に他の仲間が自分の周りにいない事に気付いた。

「悟空ッ!悟浄ッ!八戒ッ!!・・・クソッ」

夜空に響かせる声を三蔵は喉の奥から吐き出した。しかし、それに答える声は無
かった。舌打ちと同時に思った。
いくら三蔵一向を襲う妖怪が途絶えて平和呆けしていても、このままここがどこなのか分からない場所に居るのが危険な事くらいは理解した。三蔵は安全な場所を探して歩き出した。
三蔵は考えていた。あの光は妖怪の仕業か否かを。
現にあの光のせいで三蔵は一人となってしまっている。三蔵の両肩にかかっている経文――この世で五つ存在する経典「天地開元」の1つである。魔天経文を狙って妖怪達は牛魔王蘇生を阻止する三蔵一行に襲い掛かってくるのだ。
ならば、これは妖怪の仕業なのか?
いや、それはおかしい。
数える事さえも億劫になるほど繰り広げてきた妖怪、あるいはそれに準ずるものたちとの戦いの中で、彼なりに理解している事が幾つかある。
奴らは必ず群れで襲い掛かってくる。
獲物が一人という奴らにとって好都合な状況なのに周囲から襲い掛かってくる気配も感じない。

(妙だな、手を出してこないつもりか?)

ささやかな疑問が芽生える。気味が悪すぎる。感想と言ってもいい。
直感にも似た感覚が導き出したのはそれだった。
事実そうかもしれない、歩こうが目に映るのは闇に紛れる木ばかりで、聞こえてくるのは枯葉のようなものを踏む音ばかりである。人の気配は希薄で、これなら無い方がマシな気がするほどに中途半端で妙に寒々しい。
暗闇が支配する森の中で独りで立っていた。

「・・・・・・クソッ!」

勝手に言葉が出た。しかし、それのお陰で多少は気分がすっきりした。その時で
あった

「あれは・・・」

周りを見渡した時に視線が前方に釘付けとなった。

光だ。

一瞬だけ見えたが間違いなく光であった。
歩む速度を上げてその光を目指した。一歩足を踏み入れるたびに光との距離は近付いてゆく。
5m、4m、3m、2m、1mそして光の中に飛び込んだ。
その刹那。風景は一瞬にして変わる。
今まで木しかなかった場所から建物などが聳え立つ街の中にいた。
その時、瞬間的に頭に何かが囁いた。

ここは俺の知る世界ではない
以上で投下終了です。次回辺りにプリキュアのキャラ達と絡ませます。
292創る名無しに見る名無し:2010/04/27(火) 23:28:26 ID:Spl1b8Bp
投下乙。
まさかの最遊記リロードとハトプリのコラボ!
発想に脱帽だ。これからの話にわくわくしてくるSSでした
293創る名無しに見る名無し:2010/05/05(水) 00:06:34 ID:ueEoRUXz
test
294創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 00:05:29 ID:2zVWQzpv
過疎気祖
295ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 01:41:06 ID:qir/h06m
お久しぶりです。
最終回投下します
296創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 01:41:27 ID:QldyMlQr
297創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 01:41:27 ID:y1KO3IIQ
298ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 01:41:48 ID:qir/h06m
仮面ライダーディケイド

     VS

とある魔術の禁書目録


   最終話「その幻想を破壊せよ」





「だいたいわかった、夏みかんが出て行った時にはすでにアンチスキルの監視は解けてたってわけか」
「ジャッジメントの方ももう手配が解けてるみたい、黒子は納得しそうにないけど……」

光写真館。
鳴滝との戦闘後、士達は状況の確認のため互いの情報を交換していた。
その際ジャッジメントでさえ掴めていない情報を話す土御門に美琴が不信な目を向けるなど、多少のトラブルはあったが概ね順調に事態の把握は進んだ。

「そうなると、わからないのは鳴滝の目的か……」
「目的って、門矢……ディケイドを倒すために学園都市を騙そうとしてたんだろ?」

実際にはネセサリウス等学園都市外も巻き込まれているのだが、その辺りの事情を知らない美琴に話すことができないので省いておく。
ちなみにインデックスはステイルに任せて上条宅で待機中だ。
海東がインデックスを狙った事に関してステイルが暴走する可能性もあったため、二人とも隔離したわけである。
その件に関してはすでに士と上条の二人から制裁が加えられている、魔道書のありかがインデックスの記憶の中と聞かされた海東は不満気だが同情する人物はいない。

「いや、今まであの人は士を倒させるためにその世界の住人を騙すことはあっても、手を出すことはなかったんだ」
「世界を破壊するディケイドを止めるために動いているんだ、その自分が世界を壊すような真似をしてどうするのかっていう話さ」
「それなのに、今回は住人に手を出し、士君の味方をするなら壊すとはっきり言っていました……」
「スーパーショッカーと組んで、タガが外れたか……?」

思い思いに話す士達の言葉に上条は少し考え、迷いながらも口を開く。

「その、門矢の力ってのはそんなに大きな物なのか? 仮面ライダーがとんでもなく強いっていうのは俺も実感したけど、世界を滅ぼすなんて……」

世界を破壊する、などという常識外のスケールを前提とされると正直話しについていけない。
確かに上条は手を抜いていたディエンドにすら歯が立たなかったが、それでもステイルは渡り合うことができたし、『聖人』である神埼ならばそう引けを取らないだろうとも思えたレベルだ。
相当な力であることはわかるが、世界を破壊する程の物とはとても思えない、それこそ一度だけ対峙したことのある『天使』のような力を持っているのならば別だが。

「……ディケイドの力ならそれが可能だ、俺は、実際に世界を破壊してきた」

士の言葉に上条達の表情が強張る。
世界の破壊、それが本当ならば鳴滝が学園都市にもたらした情報は嘘ばかりというわけではなくなる。

「ご、誤解しないでください、士君は壊された世界を元に戻してます!」
「まあ、夏海と私がいなかったら危なかったけどねぇ〜」
「キバーラ!」

上条達の反応に慌てたように夏海がフォローを入れる、余計な事を言うキバーラを睨みつけ、ひたすらに士の無実を説明し続けようと口を開く。

「よせ夏みかん、俺が害かどうかはこの世界が決めることだ」
「でも、士君……」
「俺は自分の信じるままに進んできた、今更表面を取り繕ったところで意味はない」

士自身にそう言われては夏海もそれ以上何も言えない。
重い空気が辺りを支配し、沈黙が続いていい加減つらくなってきた頃。
299創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 01:42:23 ID:QldyMlQr
300ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 01:42:34 ID:qir/h06m
「正直、世界がどうとか想像がつかないけどさ」
「ビリビリ?」
「ビリビリ言うなっての! ……こほん、まあ、そんなんだからこの話じゃあんたが正しいのか間違ってるのかなんて判断つかないわけよ」

沈黙を破ったのは御坂美琴、士は何も言わずその言葉に耳を傾ける。

「だから私はあんたと直接戦った経験から言わせてもらうけど、あんたは嫌な奴だけど悪い奴じゃない、って思うわ」
「御坂さん……」
「私達と戦った時、できるだけ怪我をさせないようにしてたのが見え見えだったわよ、はっきり言ってその辺はナメられてる感じで気に入らない。
 だけど、いきなり襲いかかってきた相手を気遣うような奴を悪人だと思え、って言われてもピンとこないわ」

真っ直ぐな瞳を向けてくる美琴に、士はやはり言葉を返さない。

「だから、私はあんたに協力する。あの鳴滝とかいうオッサンを取っ捕まえて、この街に手を出したことを後悔させてやるわ」

パリパリと火花を散らし、好戦的な笑みを浮かべて美琴は宣言する。
その横に上条が並び、拳を握りしめながら強く頷いた。

「会ってから少ししか話してないけど、門矢が悪人じゃないってのはわかる、俺も手伝うぜ」
「やれやれ、そう言われちゃ俺だけ抜けるわけにもいかないにゃー」

苦笑しながら土御門も答え、三人は士を見る。

「……いいのか? 俺に味方すれば鳴滝は完全にお前たちを敵と認識するぞ」
「それが何よ、もう散々巻き込まれてるのに今更だわ」
「まーそもそも、アンチスキルを動かさなかった一件ですでに攻撃されそうな気配だったしにゃー」
「あいつには門矢も学園都市もやらせない、それだけだ」

意思を変えようとしない三人に士は小さく笑みを浮かべ、

『ならば、遠慮はしない』
「鳴滝!?」

突如響く鳴滝の声に全員が周囲を警戒するがその姿は見つからない。
士がディケイドライバーを構え――――



「あれぇ? みんなどこ行っちゃったんだろうね……せっかくお菓子作ったっていうのに」

誰もいなくなった部屋で、栄次郎は一人立ち尽くす。


301ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 01:43:16 ID:qir/h06m
「くっ、みんな無事か!?」

草一本生えていない、見渡す限りの荒野で士は声をかける。
各々から無事を告げる声が返ってきてひとまず胸を撫で下ろすが、ここは鳴滝が用意したフィールドだ、どこから攻撃が来るかわからない。

「場所が変わった……どうして俺の右手が効かないんだ!?」
「エンジェルフォールの時、突然夜にされたのと同じだ! 『カミやんを動かす』んじゃなく『世界を動かす』んだったらイマジンブレイカーは働かない!」
「世界をって、本気で天使並の相手かよ!」
「天使ではない」

毒づく上条に答えるかのように、士達の目の前にオーロラの壁が現れその中から鳴滝が現れる。
即座に全員が構えるが、士は鳴滝の手にしたメモリを見て目を見開いた。

「ガイアメモリだと!?」
「そうだ、私は手にした……全てを破壊する、悪魔の力を! ディケイド……私は貴様を破壊する!」

『DECADE!』

鳴滝がメモリを自らの首元に突き立てると同時に、ディケイドへと姿を変える。

「ディケイドのガイアメモリ……そのお宝は危険すぎる、僕が頂くよ、へんし――」
「貴様らの相手は別に用意してある、散れ!」
「何!?」

海東が変身するより早く、鳴滝が手をかざすと共にいくつものオーロラの壁が士達の周りに現れ、一同を飲み込もうと迫り来る。

「カミやん!」
「無理だ! 数が多すぎる!」

それでも幾つかの壁はイマジンブレイカーで破壊するが、上条一人では全方位からの攻撃に対処することはできない。
次々と壁に飲み込まれていき、最終的には士と上条、そして鳴滝の三人のみとなってしまう。

「みんな……!」
「鳴滝、夏みかん達をどこへやった!」
「答えてやる義理はない……覚悟しろディケイド、ここが貴様の最後の世界だ!」
「くそっ! 上条、下がってろ!」

『KAMEN RIDE DECADE!』

士もディケイドへと変身し向かってきた鳴滝と斬り合いにもつれ込む。
上条も加勢しようとするが、すぐにその足を止めてしまう。

(ち、近寄れねぇ……)

ディエンドと戦ってライダーの力は知っていたつもりだった。
だが今目の前で行われている『互いを殺すため』の戦いはあの時とは次元が違う、生身の人間が迂闊に近寄れば余波だけで吹き飛ばされかねない。
それでも上条は持ち前の精神力で引かずにいるが、下手に飛び込んでは返って士の足を引っ張りかねないだろう。

(くそ……チャンスを待つしかないか……!?)
302創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 01:43:54 ID:QldyMlQr
303ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 01:43:58 ID:qir/h06m
「……!」

『KAMEN RIDE AGITO!』

電子音と共に鳴滝の姿が変化する。
黒い体に金色の装甲、どことなくクウガにも似たその姿の名はアギト。
記憶を失いながらも強大な敵、アンノウンと戦い続けた青年の変身する仮面ライダーだ。

『FORM RIDE AGITO FLAME!』

金色の装甲が赤く染まり、右腕にも同色の装甲が展開される。
その手に長剣、フレイムセイバーが現れその一薙ぎで士を吹き飛ばす。
アギト・フレイムフォーム。
機動性を捨て、力と知覚能力を重視した形態だ。

「ちっ、そっちがドラゴンなら、こっちはドラゴンフライだ!」

『KAMEN RIDE V3!』

深紅のトンボを模したマスク、緑色のライダースーツ、白いプロテクターに白いマフラーを靡かせるその姿。
V3、復讐のために自ら仮面ライダーになろうとし、本当に戦うために必要な物、正義の心を受け継いだ男の変身する仮面ライダーだ。

『ATTACK RIDE CROSSHAND!』

振り下ろされるフレイムセイバーを交差させた腕で受け止める。
V3の26の秘密の内の一つ、細胞強化装置の力だ。
そのままセイバーを弾き、強化された腕力で鳴滝を殴り飛ばす。

「V3……ならば」

『KAMEN RIDE BLADE!』

青いボディに銀色の装甲と仮面、胸にはスペードマークが赤いラインで刻まれている。
ブレイド、誰かを救うためには自分の身さえも犠牲にする、強すぎる意思を持った男の変身する仮面ライダーだ。
再び姿を変えた鳴滝へ士は駆け出すが、その拳が届く直前にカードがセットされる。

『ATTACK RIDE METAL!』

「うわっ!」

メタルのカードの力により鳴滝の体が硬質化し、殴りかかった士の方が弾き飛ばされてしまう。
すぐに体勢を立て直すが、すでに更なるカードがセットされた瞬間だった。

『ATTACK RIDE TIME!』

時が止まる。
クロックアップとは違う、完全に鳴滝以外の時間が止まっているのだ。
タイムのカード、自分以外の時を止める強力な力、最も時を止めた状態では相手を攻撃することができないという弱点もあるが。
とはいえその程度リスクとさえ言えない、静止した士の死角へと周り込み、ライドブッカーを――

「っだあああああああ!!」
「くっ!?」

間に飛び込んできた上条の右手を回避するために飛び退る。
ライダー同士の戦いには入り込めないだろうと考えていたが、改めてイマジンブレイカーに対する警戒を強める。
ラウズカードによる干渉さえも打ち破るその力は充分驚異となりえる、地球の記憶を形としたガイアメモリへの力はどう作用するか判ったものではない。
だが、イマジンブレイカーは右手にしかないという致命的な弱点がある。

「邪魔をするな」
304ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 01:44:41 ID:qir/h06m
『ATTACK RIDE MACH!』

「なっ……!?」

高速移動のカードを使い、一瞬にして上条の背後へ回り込み蹴り飛ばす。

「上条!?」
「が……くそ……」

タイムが解けた士の呼びかけにもまともに返すことができない。
倒れ伏す上条には構わず、再び鳴滝は士へと斬りかかる。

「鳴滝……! こいつならどうだ!」

『KAMEN RIDE BLACK RX!』

黒いボディに真っ赤な瞳、バッタを模した姿に変化し鳴滝の剣を受け止める。
BLACK RX、自我をなくした親友と戦わなくてはならない運命に苦悩する男が変身する仮面ライダーが、太陽の力を得て進化した姿だ。
二、三剣を交え、同時に下がり続くカードをセットする。

『ATTACK RIDE THUNDER!』
『FORM RIDE BLACK RX BIORIDER!』

サンダーのカードによる電撃を士は自身の体を液状化させて回避する。
バイオライダー、RXの怒りの感情が呼び起こした、液体分子構造を持った形態だ。
液状化した状態で鳴滝の周囲を飛び回りながらダメージを与えていく、苦し紛れにライドブッカーを振り回すが、この状態のバイオライダーには物理攻撃は通用しない。

「はぁ!」
「ぐ!」

鳴滝を吹き飛ばしながら青と銀、赤を基点としたカラーリングへと変化した姿へと実体化する。
よろめきながらカードを取り出す鳴滝へと、そうはさせまいと駆け出しながらこちらも更なるカードをセット。

『FINAL ATTACK RIDE BBBBLACK RX! BIORIDER!』

バイオライダーの剣、バイオブレードが青く発光していく。
数々の強敵を倒してきたバイオライダーの必殺技、スパークカッターだ。

『FORM RIDE FAIZ!』

黒いスーツに大きな黄色い瞳、スーツと銀色の装甲には赤いラインが施されている。
555(ファイズ)、自らもオルフェノクながら人類とオルフェノクの戦いに身を置く、優しき青年の変身する仮面ライダーだ。
姿を変えた鳴滝に構わず、士はバイオブレードを袈裟懸けに振り下ろす。

「それを待っていた!」
「なに!?」

スパークカッターを肩口に受けながらも右足で蹴りを放ち、必殺技に集中していたがため液化できない士へと打撃を決める。
予期せぬ攻撃に後ろへ下がり、スパークカッターも完璧に決まらなかったがこの程度の攻撃では応えはしない、すぐ応戦しようと体勢を……

「っ……しまった!」

士の体を円錐状の赤いエネルギー体が拘束している。
555の右足に装着されているポインターから放たれた相手を拘束・ロックオンするエネルギー体だ、元々液化していたならまだしも、これではいかにバイオライダーとて逃れることはできない。
動くことのできない士へと見せつけるように、再び鳴滝はカードを取り出してセットする。

『FORM RIDE FAIZ ACCEL!』
305創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 01:44:55 ID:QldyMlQr
306創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 01:45:11 ID:y1KO3IIQ
307ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 01:45:22 ID:qir/h06m
銀の装甲が開き、肩のアーマーへと変化する。
555の動力源、フォトンブラッドの出力が変わり瞳の色が黄色から赤へと。
赤のラインは銀色へと輝き、機械的な印象が強くなる。
ファイズ・アクセルフォーム。
555の切り札とも言える、超高速形態だ。
鳴滝はそのままリストウォッチ型のデバイスを操作する。
低い起動音が響き、電子音が士の耳に届いた。

『Start Up』

――瞬間、士を拘束していたエネルギー体が数十にも膨れ上がる。
鳴滝の姿は見えない、文字通り目にも留まらぬ速さで動いているのだ、上条はおろか、士でさえも捉えられない。

『FINAL ATTACK RIDE FAFAFAFAIZ!』

「ぐあああああああああ!!」

一瞬の間に数十のロックオンポイントから555の必殺技、クリムゾンスマッシュが炸裂する。
悲鳴を上げながら士は変身が解除され地面を転がる。

「門矢!」

上条が呼びかけるが、わずかに身じろぎするだけで起き上がらない。
ディケイドの姿へと戻った鳴滝が近づいてくるのを見て、ふらつく体を奮い立たせて間へと立ちふさがる。

「邪魔をするな、と言ったはずだぞ」
「うるせぇ! 門矢も俺たちの世界も、お前なんかにやらせない!」
「……貴様に何がわかる!」

『ATTACK RIDE BLAST!』

声を荒げながら放たれた弾丸が上条の左肩を撃ち抜く。
呻き数歩後ずさるが、倒れそうになるのを堪え鳴滝を睨み返す。
その反応に更に怒りを強めライドブッカーを乱射しようとした瞬間、士が目を覚まし静止の声を上げた。

「止めろ鳴滝! お前の狙いは俺だけのはずだ!」
「ディケイド……!」
「鳴滝、もう世界の崩壊現象は収まった、何故まだ俺を狙う?」
「……終わってなど、いない」

鳴滝の言葉に士の表情が固まる。
世界の崩壊がまだ続いているというのならば、それは確かに見過ごせない事態だろう。

「どういうことだ、まだ世界は滅びようとしているのか!?」
「違う、世界の崩壊は確かに収まった、だが! 滅んだ世界は戻ったわけではない!」
「何を言っている……9つの世界は、全て戻ったはずだ……」

動揺を隠しきれ無いまま、鳴滝へと問いかける。

「ああそうだ、9つの世界は、『貴様が記憶を失ってから巡った世界は』全て元通りになった!」

その言葉に士は息を飲む。
士が9つのライダーの世界を旅し始めたのは、一度その記憶を失ってからの話だ。
未だ記憶を失う以前の事は思い出せず、そして世界が9つの世界だけでないことを彼は知っている。

「まさか、鳴滝……お前は」
「そうだ……! 私は、貴様が記憶を失うよりも前に破壊した世界の生き残りだ!」
308ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 01:46:09 ID:qir/h06m
崩壊した世界を元に戻したのは、士や夏海達を始めとした記憶の繋がりによる再生。
ならば夏海やユウスケが知らず、士が忘れてしまった世界はどうなるのか。
その答えは、まさに今、目の前にあった。

「私は絶対に許さない、私の世界を滅ぼし、全てが解決した気になっている貴様を、貴様に味方する者も全て!」
「っ……俺、は……」
「門矢……」
「見せてやろうディケイド、貴様に味方した者がどうなっているのか」

言いながら右手を掲げると、少し離れた空間にオーロラの壁が現れその向こう側の世界を映し出す。

「「きゃああああああ!」」

「夏海!?」
「御坂!?」



キバーラに変身した夏海と美琴が同時に倒れ伏す。
そこに人影が近づき、そのままの体勢で美琴がその人影へと電撃を放つが手にした大剣で防がれてしまう。

「な、なんなのよあいつ……」
「私たちじゃ、歯が立たない……」
「そりゃそうよ、あーあ、鳴滝様ってば本気みたいね」

恐怖の色を滲ませて呟く二人へと、キバーラはつまらなそうに吐き捨てる。
その間にも人影は近づき、壁越しに見ている上条と士にもその姿が見えてきた。

「ふん、手応えのない……この程度の者が余の相手とはな」

全身が金色の鎧に覆われ、同じく金色の顔の左半分は装甲が剥がれたかのように銀色の輝きが見えている。
頭部に生えた二本の角がその強大さを見るものに伝えてくる。
この怪人の名、それは……

「クライシス最高幹部にして最強怪人、ジャークミドラ……!」
309創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 01:46:18 ID:QldyMlQr
310ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 01:46:50 ID:qir/h06m

「「うあああああ!!」」

「ユウスケ!?」
「土御門!」

いつの間にか逆方向に現れていたオーロラの壁から聞こえた悲鳴に同時に振り返る。



「くそぉ……! 土御門さん、大丈夫か!?」
「大丈夫と言いたいところだけど……こいつは、流石に厳しいぜい……!」

背中合わせに構えているのはクウガに変身したユウスケと土御門。
それぞれの視線の先には幾つもの影が蠢いている。

「どうした仮面ライダー! 貴様の力はこんなものか!」
「我らスーパー大ショッカーのスーパー幹部、ガラガランダとイカデビルの二人には太刀打ちできまい!」

ユウスケが対峙しているのはそれぞれイカとヘビを模した怪人、ガラガランダとイカデビル。

「能力者達を襲ってたのはこのためか……ワームとか言ってたかにゃー?」

土御門の前にいるのは何人もの学園都市の生徒たち……そのどれもがスキルアウト事件によって行方不明となっている能力者達だ。

「ワームを捕らえた能力者に化けさせ我らの戦力とするこの作戦、どうやら効果は高いようだな」
「覚悟しろ、仮面ライダー!」



「スーパー大ショッカーだと……?」
「そうだ、スーパーショッカーが滅んだあの日から、私は様々な世界を巡り、ライダー達と大ショッカーが戦い続けている世界を見つけ出した。
 その世界で私と共にディケイドを倒すことを望む者たちを集め、そしてスーパー大ショッカーとして生まれ変わった!」
「鳴滝、そこまで……」

(どこだ、海東……!?)

鳴滝と言葉を交わしながら、士は海東の居場所を探る。
ディエンドならば並の相手には負けはしない、カメンライドやインビジブルで相手を撒くことも可能だ。
そして世界を越える力を使えば他の場所の助けにも行ける、言わばこの状況での唯一の頼みの綱であろう。
そんな士の思考を読んだからのように鳴滝は再び手をかざし、三つ目のオーロラの壁が現れる。

『KAMEN RIDE IKUSA! GYAREN!』
「行け、仮面ライダーイクサ、ギャレン!」

「海東!」



白い甲冑のライダー、イクサと、赤いクワガタをモチーフとしたライダー、ギャレンが人影へと向けて手にした銃を乱射する。

「その命、神に返しなさい!」

そのままイクサは駆け出しながら銃を変形させ、長剣イクサカリバーを振りかざす。
鋭い斬撃が繰り出されるが、人影は左手に持った短剣で軽く受け止め、右手の長剣の一振りであっさりとイクサを切り捨てた。

「くっ……ギャレン!」
311ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 01:47:47 ID:qir/h06m
海東の声に応え、ギャレンは自身の武器、ギャレンラウザーの後部に収納されていたカードを三枚引き抜き読み込ませる。

『DROP』
『FIRE』
『GEMINI』

『BURNING DIVIDE』

蹴り技を強化する「DROP」
火炎属性を付加する「FIRE」
自身の分身を発生させる「GEMINI」
この三枚のカードのコンボによる技、バーニングディバイドが発現する。
GEMINIの効果によって二人となったギャレンが同時に飛び上がり、FIREとDROPによって強化された蹴りを影へとはな――

「ぐっ!?」

影の手から放たれた光線がギャレンを捕らえ拘束する。
もがくギャレンをそのまま振り回し、ようやく立ち上がったイクサへと叩きつけより強力な光線を発射する。

「「うわあああああああああ!!」」

ものの数分で二人のライダーが倒され、海東が自ら攻撃をしかけるが銃弾を弾かれ接近されてしまう。

「っ……!」

『ATTACK RID――』

「遅い」
「うわっ!?」

咄嗟にインビジブルのカードを発動させようとするが、その動きを見越していたかのように斬り倒されてしまう。
オーロラの壁の前まで転がり、ふらつきながらもディケイドライバーを構え近づく影へと狙いをつける。

「流石だね、ここまで差があるとは思わなかったけど……世紀王、シャドームーン」
「……」





「みんな……!」
「どうだディケイド、これは全て貴様に味方したせいだ! 貴様は何も守れない、破壊するだけの悪魔なのだ!」
「俺の、せい……全部、俺が……?」
「そうだ! 貴様のせいで私の世界は、貴様の仲間は破壊される!」
「………………いい加減にしろよ、おっさん」

愕然とする士を罵倒する鳴滝へ、上条は怒気の込もった言葉をぶつける。
312創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 01:48:56 ID:QldyMlQr
313ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 02:00:04 ID:qir/h06m
「上条……?」
「黙れイマジンブレイカー! 貴様に私の苦しみなどわかるまい!」
「ああ、わかんねーよ! 世界を壊された痛みも、自分一人生き残った苦しみも、憎んだ相手と同じ力を手に入れてまで殺そうとするその執念も、何一つわからねぇ!
 だけどな、あんたのやり方が間違ってるってことだけは確かだろう! 門矢達から聞いた話じゃ、あんたは今まで門矢以外は傷つけようとしてなかったんだろ!?
 自分でわかってるんじゃねぇか、自分の復讐に他人を巻き込むことがどれだけバカな真似かっていうことが!」

上条の言葉は止まらない、自らの思いの全てを吐き出しぶつけようと声をあげ続ける。

「それが、それがどうしたと言うのだ! もはや私は手段を選ばない、ディケイドを殺すためならば!」
「ふざけんな! お前はそれで本当に満足できるのかよ!? 自分の世界を滅ぼした門矢が憎いってのはわかる! けど、その憎しみは全てを忘れてしまった、今の門矢を殺すことで消えるのか!?
 俺は少ししか門矢のことを知らない……だけど! 今の門矢 士って奴が無駄な破壊を振りまくような奴じゃないってことは判った! あんたのその憎しみの相手は、この門矢じゃねぇ!
 もっと別の、誰も死なずに済むいい方法があったはずじゃねぇのかよ! どうしてそいつを見つけるのを諦めちまうんだ!
 それでも、あんたが門矢を殺すことでしか道を見出せないってんなら――――俺が、その幻想をぶち殺す!!」
「黙れと…………言ったぁぁぁぁ!!」

『ATTACK RIDE BLAST!』

「がっ……!」
「上条!」

再び放たれた銃弾に今度こそ上条は倒れ伏す。
だが、傷を負った上条以上に鳴滝の心は乱されている、上条当麻の『言葉』に対して『力』でしか返すことができなかったのだ。
その乱れた心は、皮肉な事に憎む相手へ向けることでかろうじて平静を保たれる。

「何故だディケイド! 何故貴様はいつも守られる! 貴様は破壊者だと、悪魔だというのに!」
「鳴滝……俺は……」

大きく首を振りながら叫ぶ鳴滝へ、士は伏せていた顔を上げ真っ直ぐに見つめ返す。
未だダメージの大きい体を奮い立たせ、ディケイドライバーを構え力に満ちた瞳を向けて、口を開く。

「俺は、確かに破壊者だった。世界を破壊し、それを元に戻すことさえできない……」

士の言葉へ、鳴滝も上条も黙って耳を向けている。

「だが! 今の俺は違う! 俺は二度と世界を破壊せず……世界を壊させもしない! 俺の行くべき道を、こいつが教えてくれた!」
「門矢……!」
「……っ! ならば、ならばディケイド! いったい貴様は何だと言うのだ!」
「俺は――」

ディケイドライバーを腰へあて、手にした一枚のカードを挿入する。

「――通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ!」

『KAMEN RIDE DECADE!』
314創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 02:00:40 ID:QldyMlQr
315ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 02:01:02 ID:qir/h06m
再びディケイドへ変身した士はすぐに一枚のカードを取り出すと、自らで使わずにオーロラの壁へと向けて投げ放った。

「使え、海東!」


「……!? 感謝しておくよ、士!」

突然の呼びかけに面食らっていた海東だが、すぐに我に返り自身の持つ世界を渡る力によって士のカードを受け取り、ディエンドライバーへとセットする。
阻止しようとシャドームーンが動くが、ほんの数瞬、遅い。

『KAMEN RIDE BLACK RX!』

先程士が変身したライダー、RXが召喚されシャドームーンの剣を受け止め弾く。
海東を守るように前に立ち、思わぬ相手に慎重に構えを取るシャドームーンへと声を上げた。

「俺は太陽の子! 仮面ライダーBLACK! RX!」
「……!」
「ここは君に任せるよ」

『ATTACK RIDE INVISIBLE!』

RXとシャドームーン、どちらもオリジナルの世界の人間……南光太郎と秋月信彦ではないが、それでも宿敵同士、一対一の方が戦いやすいだろう。
海東はすぐに姿を消してしまい、シャドームーンはRXと向き合うことを余儀なくされる。





「鳴滝、これが最後の戦いだ」
「ディケイド……貴様は、どこまで……う、があああああああ!?」
「なんだ!?」
「これは、ガイアメモリがレベルを上げた……?」

突如苦しみだした鳴滝を見てぽつりと呟く。
闇。
そうとしか形容できない物が鳴滝の体を包み、その姿を変えていった。

「ぐぅ……! ディケ、イド……!!」
「門矢、どうなってるんだ!?」
「……あれが、世界の破壊者としてのディケイドの姿だ」

ディケイド・激情態。
ディケイドの真の姿と言ってもいいだろう、その力は全ライダーを一人で倒してしまうほどのものだ。
かつて士がこの姿となった時は夏海によって止められた、だが鳴滝が相手では躊躇なく倒されてしまうだろう。

「結局は力づくしかないってわけか……」

吐き捨てながら、ケータッチというデバイスとそれに対応するカードを取り出す。
そのままカードをセットし、

「門矢!」

『ATTACK RIDE TIME!』

一瞬にして士の目の前まで移動した鳴滝が振りかざしたライドブッカーを上条が自らの体で受け止める。
時を止めるタイムのカードにはイマジンブレイカーを持つ上条しか対抗することができない。
316ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 02:01:42 ID:qir/h06m
鳴滝も先に上条を倒さなければ埓があかないと判断したのだろう、上条へと斬りかかる。
ああは言ったが生身で激情態のディケイドを食い止めるなど無理に決まっている、力不足だとかそれ以前の問題。
それでも、士は上条を信じ、上条も士を信じ奮闘する。
その想いに答えるために、士はケータッチへと手を伸ばした。





「キック殺し!」
「うわあああああ!」

ユウスケの放った必殺技、マイティキックがイカデビルによって防がれる。
仮面ライダー1号さえも一度は倒した技、堪らずふらつくユウスケはガラガランダとイカデビルの同時攻撃を受け変身が解除されてしまう。

「これで終わりだ仮面ライダー、貴様の仲間ももう限界のようだぞ」
「くそ……!」

ガラガランダの言葉通り、無数の能力者と戦い続ける土御門の方も限界が近い。
次々と繰り出される能力に魔術を使う暇がなく、その人数に優れた格闘センスも生かしきれない。
少しずつ追い詰められて行く中、突然能力者の一部が吹き飛ばされた。

「な、何事だ!?」
「あまりここだけに時間をかけられないんだ、一気に行くよ」
「海東さん!?」

『KAMEN RIDE DRAKE! PSYGA!』

イカデビル達に牽制の弾丸を撃ち込みながら二人のライダーを召喚し、それぞれワームとイカデビル達に向かわせてユウスケへと言葉をかける。

「いつまで寝ているつもりだい、君も本気を出したまえ」
「……っ、だけど、あの力を使うのは……」
「究極の闇、その力に囚われてしまうのが不安、とでも言いたいようだね」

言いながらそれぞれの戦況へ目を向ける。
トンボを模したライダー、ドレイクは土御門と上手く連携してワームの大群を押し返している、機動性に優れるが防御の薄いドレイクの特性を初見で見抜いた土御門のフォローが上手くいっているようだ。
一方で白い装甲に青いラインを走らせたライダー、サイガはガラガランダの伸縮自在な腕に捕まってしまい自慢の高速飛行能力を活かせていない。

「君は馬鹿かい? 士を止めるためにあの力を使っていた時、何が君を動かしていたのか思い出してみるといい」
「俺を、動かしていたもの……?」
「まさか士への憎しみだけだった、なんて言う訳じゃないだろう?」
「……」
「僕はまだそのお宝の価値を理解しきれてはいない、だけど……ここは任せるよ」

『ATTACK RIDE INVISIBLE!』

海東が消え去り、しばらくの間ユウスケは動かずいたがサイガが倒されたのと同時に立ち上がり、イカデビル達を強く睨みつける。

「土御門さん!」
「なんだ! まだそっちの援護には行けそうにないぞ!」
「頼みがある、もしも俺が力に溺れたら……その時は士達と一緒に、俺を倒してくれ!」

予想だにしない内容にワーム達の攻撃を掻い潜りながら視線を移す。
イカデビル達に向いたその表情はうかがえないが、その身から溢れる決意が並大抵のものではないことが伝わってくる。
317創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 02:01:48 ID:QldyMlQr
318ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 02:02:33 ID:qir/h06m
「ああ、任されてやる! 思う存分暴れてこい!」
「……ありがとう。見ていてくれ、俺の―――変身!」

ユウスケの叫びにベルトが作動し、クウガの力が身体を包み込む。
その色は黒、全身を黒一色で染め上げられたその姿は力強く、それでいて恐怖をも感じさせる。
究極の闇、クウガアルティメットフォーム。
クウガが優しき心を失った時、戦うだけの生物兵器となり世界に闇をもたらす。
その力はディケイドとも真っ向からぶつかり合うことのできる程、クウガの他の形態を遥かに上回っている。
だからこそユウスケはこの力を恐れていた、自分の心が闇に支配されれば仲間達さえも傷つけてしまいかねない。
其れ故の土御門への言葉、いざという時は自らの命を絶つ覚悟での変身。

その瞳は――


――赤い、正義の輝きを持って自らの敵を捉えていた。


「……はっ」

能力の一斉放火をかわすと同時に大きく間合いをとり、土御門は小さく笑う。

(この嘘つき土御門さんにお願いとは、まったく、カミやんといい超電磁砲といいお人好しばっかだぜい)

海東の残していったドレイクがワーム達を足止めしているのを見ながら小瓶を取り出す。
魔術の触媒となるその小瓶を四方へと放ち、自らの信念を込めた名を告げる。

(俺も、人のことは言えないかにゃー?)
「"背中刺す刃(Fallere825)"!」

魔法名、それは魔術師にとって己の覚悟を見せる尊き儀式。
土御門の身体では魔術を扱えば自らも重症を負うこととなる、それがわかっていながらも、彼は魔術師として戦うことを決めた。
それこそが、出会って間もない自分を信じ、背中を預けてくれたあの青年への応えになると信じているから。





士の指がケータッチの画面を滑るように動く。

『KUUGA AGITO RYUKI』

士が巡った9つのライダーの世界、その力がケータッチへと集まっていく。

『FAIZ BLADE HIBIKI』

それは世界を破壊する者が、世界を繋げたことで手にした力。

『KABUTO DEN-O KIVA』

そう、ディケイドとしてではなく、門矢士だったからこそ得た絆。

『FINAL KAMEN RIDE DECADE!』

マゼンダ色の装甲が黒と銀色へと変化していく。
胸にマゼンダのラインに沿ったカードホルダーが現れ、そこにクウガを始めとしたライダー達のカードが収められていった。
同じように額に現れたホルダーにはディケイドのカードが。
ディケイドライバーを右腰へと移し、ケータッチをバックルのあった位置へと装着する。
ディケイド・コンプリートフォーム。
破壊者としてではない、通りすがりの仮面ライダーとしての最強の姿。
319創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 02:02:43 ID:QldyMlQr
320ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 02:03:14 ID:qir/h06m
「……っ!」
「なぜだ、何故倒れん……!?」

士がコンプリートフォームへの変身を完了すると同時に鳴滝と上条の二人が間合いを開ける。
この数秒の間に上条の身体は立っているのも不思議なほどボロボロになっており、ライドブッカーで直接切られたのか、その右手さえも浅くはない傷がいくつもつけられている。
生身の人間、それも美琴のように特別戦闘向けの力を持っているわけでもない身でディケイドと戦ったのだ、無事で済むはずがない。
だというのに、上条は立ち続け、鳴滝は士へと手出しすることができなかった。
それがどれほどのことか、自らがディケイドである士にはよくわかる。
だから、支えない。
限界を迎え倒れていく男へ向けて、よくやった、などと言わない、助かった、などと言葉にしない。

「門矢……」

今、士が上条に対してするべきことは一つ。

「後は、任せるぞ……」
「――任せろ!」

ただ――その想いを引き継ぐのみ。





「これなら……どう!?」

美琴の発生させた磁力に操られた砂鉄の剣がジャークミドラへと迫る。
が、それさえも大剣の一振りで呆気無く散らされ掠り傷一つつけることができない。
ロボライダーのボルテックシューターを弾き返し、その強固な装甲を斬り裂く大剣とジャークミドラの技、生半可な攻撃では通らない。

「温い、その程度で余の相手が務まるとでも思っているのか」
「危ない!」
「夏海さん!?」

頭部から放たれた怪光線から美琴を庇い、夏海が吹き飛ばされる。
かつて破壊者となった士を止めたこともある夏海だが、その戦闘経験はまだ二桁にも届いていない、未熟な戦士。
強者揃いのクライシス帝国をまとめ上げてきたジャーク将軍には到底叶わない。
一方で学園都市の第三位に位置している美琴はその戦闘経験、能力の応用力では夏海を大きく上回るが怪人相手では威力に欠けてしまう。
悠然と近寄ってくるジャークミドラに対し、散発的な反撃を加えながら間合いを取ることしか手段がないのだ。

「このままじゃ……」

『KAMEN RIDE KIVA!』

「むぅ!?」
「キバ! 大樹さん!?」

『ATTACK RIDE BLAST!』

突如現れたキバと海東の攻撃によって流石のジャークミドラもわずかに後退を余儀なくされる。
そのままキバは戦いだすが、一方的に押されてしまっている、V3とライダーマンという往年のコンビさえも圧倒した実力はいかにキバとて覆せない。

「夏メロン、少し時間を稼いでくれ」
「だから、メロンじゃないですって……わかりました!」

愚痴りながらもキバの加勢に行く。
キバとキバーラ、二つのキバの鎧の攻撃にジャークミドラの注意もそちらへと集中せざるを得ない。
その間に海東は美琴へと視線を向ける。
321創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 02:03:47 ID:QldyMlQr
322ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 02:04:06 ID:qir/h06m
「な、なによ?」
「君は電気を操れるんだったね、あいつを倒す手が一つある。協力してもらうよ」

高圧的な海東の態度が癪に障るが、今はそんなことを気にしている場合ではない。

「……わかった、何をすればいいの?」
「簡単なことだよ、こいつに君の電撃を全力でブチかましてほしい」

『KAMEN RIDE KUUGA!』
『FINAL FORM RIDE KUUGA!』

「痛みは一瞬だ」

召喚したクウガをディエンドライバーで撃ち抜く。
するとクウガの身体が変形していき、クワガタを模した機体、クウガゴウラムへと変化する。
目を丸くする美琴の前へとクウガゴウラムを移動させ、言葉を続ける。

「レールガン……原理は知ってるかい? 弾丸に対して電気を」
「大丈夫よ」

言葉を遮り、一瞬躊躇しながらもクウガゴウラムへと手をかざす。

「よく知ってる」

一言呟くと共にバチリ! と音を立てながら放電して見せる。
満足げに頷く海東へと、一つだけ問いかける。

「って、この、人……? は大丈夫なの?」
「問題ない、このクウガに意思はあってないようなものさ」
「……ふぅん」

その答えに複雑な表情を浮かべ、それでも視線を標的へと向けた。
戦況は想像以上に悪い、夏海は振り下ろされた大剣を辛うじて受け止めているが膝をつき、キバは片手で首を絞められ持ち上げられてしまっている。

「僕の合図で撃ってくれるかな」
「OKよ」

『FINAL ATTACK RIDE』

「離れろ夏メロン!」

海東の声に転がるように夏海は離れる。

「今だ!」
「いっっっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

全力の電撃を放ち、クウガゴウラムが美琴の手から放たれた。
クウガゴウラムを弾丸とした超電磁砲、これを喰らえばいかにジャークミドラとて無事ではすまない、キバを放り投げ大剣を盾にして構えを取る。

「むぅ!!」

激しい衝突音を響かせクウガゴウラムを受け止める。
323ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 02:05:13 ID:qir/h06m
……が、その勢いを殺しきることができない、地面を抉りながらそれでも大剣を手放すことはせず――その剣が、折れた。

「バカな……!?」

『DIDIDIDIEND!』

同時にディエンドの前に半透明のカードによる照準が現れ、クウガゴウラム、キバもその中の一枚へと変化する。
ジャークミドラが体勢を立て直す暇もなく、放たれたディメンションシュートがその身体を飲み込んだ。

「ぐわあああああああああああああ! す、スーパー大ショッカーに……栄光あれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」





『ATTACK RIDE ADVENT!』

鳴滝の頭上に赤き龍、ドラグレッダーが召喚される。
その口から放たれる火炎を回避し、ケータッチの画面へと手を伸ばす。

『RYUKI! KAMEN RIDE SURVIVE!』

士の隣に赤い龍の顔を模した鎧を付けたライダーが現れる。
龍騎・サバイブ、何度裏切られ、詰られようとも戦いを止めるために戦った、正義感に溢れる男の変身する仮面ライダー、その強化形態である。
そのままカードを取り出し、腰の横へと移動したディケイドライバーへと差し込む。
見れば予備された龍騎も士の動きをトレースしている。

『FINAL ATTACK RIDE RYURYURYURYUKI!』

龍騎の手に剣が現れ、士と共にその剣を十字に振るう。
その剣閃が炎を纏い、ドラグレッダーの放つ炎を切り裂きながら突き進み龍の頭部を粉砕する。

「ぐっ……ディケイドォ!」





「RX! バイオライダー!」

ロボライダーとなっていたRXが液状化してシャドームーンとの間合いを離す。
仕切り直そうと実体化したその瞬間、シャドームーンの手から光線を放たれた。

「シャドービーム!」
「ぐわあ!?」

倒れ伏すバイオライダーへと、シャドームーンは駆け出し両手の刃を同時に振るう。
だがその直前にバイオライダーはその場を離れながら元のRXの姿へと元に戻る。
そのまま自らのバックルへと手を当て、叫ぶ。

「リボルケイン!」

バックルから光り輝く剣が現れ、RXの手に収まる。
体勢を立て直し切れていないシャドームーンの腹部へと、その剣を深く突き出した。

「ぐ……ぁ……!」
「……ふっ!」

気合と共にリボルケインを抜き、払いながら背を向ける。
324創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 02:05:32 ID:QldyMlQr
325ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 02:06:04 ID:qir/h06m
――RXの必殺技、リボルクラッシュ。
数々の怪人を葬り去ってきたこの技を受けては、シャドームーンとて立ち上がれない。

「……いつか、影が光を覆い尽くす時が……!」

口惜しげに言葉を搾り出し、その身体が爆発する。





『DEN-O! FINAL KAMEN RIDE LINER!』

士の呼び出した龍騎が消え、変わりに赤・白・黒と彩り豊かなライダーが現れる。
電王・ライナーフォーム、とてもひ弱で、それでいてその心は誰よりも強かった青年の変身する仮面ライダー、その青年が仲間たちとの絆の末手に入れた形態だ。
続けてファイナルアタックライドのカードを手にするが、それを起動するよりも早く鳴滝が一枚のカードを起動させる。

『ATTACK RIDE SHUFFLE!』
『ATTACK RIDE ORE-SANJO!』

「なっ!?」

鳴滝の使用したカード、それはラウズカードの一枚「シャッフル」。
仮面ライダーカリスの使用するそのカードの効果は、他のライダーのカードをシャッフルしてしまうというもの。
その効果によって士の手にしたカードはまったく意味のない別のカードへと変化させられてしまう。

「俺、参上!」

呼び出された電王が律儀にカードの効果によって決められたポーズと決め台詞を言っているが、構っている暇はない。
狙いと外れたカードを使ってしまったことにより現れた隙を見逃すほど、鳴滝は甘くないのだ。

『FINAL ATTACK RIDE DEDEDEDECADE!』





「スーパー大ショッカー……スーパー大ばんざぁぁぁぁぁぁい!!」

ガラガランダの断末魔をバックに、イカデビルは悠然と歩み寄るユウスケから少しでも距離を取ろうと逃げ出していた。
次元が違う、それ以外言葉がなかった。
二人がかりでの攻撃を物ともせず、その一撃でガラガランダを倒したあの力はもはや悪魔の領域。
ひたすらに駆けるイカデビルに、横手から飛んできた水流が突き刺さる。

「イカァ!?」
「こっちは通行止めだぜい」
「き、貴様ぁ……!」

口元から血を流しつつ告げる土御門を睨みつけるが、攻撃をするより先に湧き上がる疑問が口を出る。

「わ、ワーム達はいったいどうした!?」
「奴らなら一匹残らず吹き飛ばしたぞ、あの閃光に気づかないとは、よほど焦ってるみたいだな」
「ぐ、お、おのれぇ……!」

せめてこいつだけでも道連れにしてやる。
そう考えたイカデビルがその鞭のような腕を振るうが、土御門に命中する直前で止められた。

「よう、倒す必要はあるか?」
「……大丈夫さ」
326創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 02:06:28 ID:QldyMlQr
327ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 02:06:45 ID:qir/h06m
土御門の問いかけに、ユウスケはゆっくりと返す。

「ぐ、貴様ぁぁぁぁぁぁ!!」

激昂しながらイカデビルが腕を振るうが、それより早くユウスケは掴んでいる腕を引き、カウンターの要領でその頭部を殴りつける。
声さえ上げられず悶え狂うイカデビルへと、ユウスケは体勢を低くして構えを取った。

「土御門さん、魔術で防御とかはできるのか?」
「……まあ、できるが」
「なら出来る限り離れてそれをしておいてくれ、巻き込まれたら危険だ」
「了解だぜい」

傷ついた身体を推して走り去る土御門を見送り、ユウスケはイカデビルへと飛び上がり、蹴りの体勢へと入った。

「はあああああ!!」
「い、いかあああああああああああ!!」





士は何もできなかった。
迫るディメンションキックに対し、何か対抗策を打つ時間はなかった。
しかし、信じていた。
この世界でできた仲間を、どれだけ痛めつけられても立ち上がる男を。
そして、その男は士の信頼に答えきった。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「イマジンブレイカー!?」

動くことさえ、意識を保つことさえままならなかったはずの男は士の前に立ち、ディメンションキックのためのカードを殴り飛ばした。
まるで逆流するかのようにカードが粉々に砕け散っていく、鳴滝の身体は途中で失速し、地面へと落ちてしまう。

「ぐ……!」
「……終わりだ、鳴滝」

『FINAL ATTACK RIDE』

「ディケイド……!」

『ALL RIDER!!』

士と鳴滝の間に何枚ものカードが現れる。
そのカードには仮面ライダー1号を始めとした歴代のライダーが描かれている。
士は飛び上がり、描かれたライダー達の力をその身に蓄えながら加速していった。
鳴滝はその光景を、まるで他人事のように呆然と眺めていた。

「ディケイド……私は……」

ライダー達の力を吸収した士の蹴りが、炸裂した。


328創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 02:07:34 ID:QldyMlQr
329ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 02:07:37 ID:qir/h06m
「本当にもう行っちまうのかよ?」

光写真館の前で、士と上条達が会話をしていた。
鳴滝との戦いの翌日、もう次の世界へと旅立とうとする士達へと上条達は不満顔だ。

「どうやら、俺にはまだやるべき使命とやらが残ってるらしいからな、世界が俺を必要としている」

おどけて言う士に上条も笑う。
どこかの世界で士の力を必要としている者がいるなら、それを止めるべきではないのだろう。

「それより、そっちは大丈夫なのか?」
「上の方は色々混乱してるみたいだけどにゃー、ま、この街は守って見せるぜい、せめて、俺の手が届く範囲だけでもな」
「私は黒子に納得してもらわなきゃね……」

思い思いの反応を返す上条達と握手をかわし、士は写真館の中へと向かう。

「門矢!」
「何だ?」
「また来いよ! インデックスにも紹介してやりたいからさ!」
「……ああ、首を長くして待っていろ」


――そして士達は次の世界へと旅立つ。

仮面ライダーディケイド、その瞳で何を見る。





誰にも知られず、誰の記憶にも残らない荒野。

そこで鳴滝は倒れ伏していた。

その身体は、胸に一枚の写真を抱いたまま動かない。

それは、たった一つだけの思い出。

憎しみに支配された彼の、最後の想い。



――――笑顔で映る、家族の姿



仮面ライダーディケイド VS とある魔術の禁書目録

END
330創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 02:08:46 ID:QldyMlQr
331ディケイド×禁書目録  ◆c92qFeyVpE :2010/05/09(日) 02:08:54 ID:qir/h06m
以上で投下終了です。
長い間ありがとうございました。


・オールライダー対大ショッカーはパラレルワールドという解釈をしています
332創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 02:23:00 ID:7egzAtN/
投下乙。
バトルてんこ盛りの白熱展開!
十分楽しめました。鳴滝さんの過去
テレビ本編だと明かされなさそうだけど
こういう解釈もありだな。
すっごく面白かった。
333創る名無しに見る名無し:2010/05/09(日) 13:00:29 ID:y1KO3IIQ
投下乙です。
とうとうこのスレにも完結作品がw
読み応えありました。GJ!
334 ◆jPpg5.obl6 :2010/05/09(日) 22:41:48 ID:apvVoXnv
ローゼンメイデンのキャラと仮面ライダーのクロスを以前書いた者です。
第3弾となる<仮面ライダーW編>を投下したいので、よろしかったらお付き合い願います。

ちなみに、このお話は第27話以前という設定で書いたのですが、矛盾点などがありましたらスミマセン。
しまった、久々の投下でsage忘れてました。
申し訳ありません・・・。

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そこは音も無く、暑さや寒さといった感覚も無い世界だった。
だが、何も無いというわけではなく、この世界には無数の鏡が浮遊していた。
そして、それらは多くの光景を映し出していた。

公園で遊ぶ親子、タバコを吸うサラリーマン、ゲートボールに興じるおばあさん・・・。

そんな鏡に囲まれながら眠る少女がいた。
彼女は目をつぶりながら考える。

『私は何者なのか?』
『私はどうして存在するのか?』

だが、彼女はすぐに考えるのをやめてしまった。
仕方がないのだ。
なぜなら、この問題はもう何千回・何万回と考えており、すでに結論が出ていたのだから。

自分は『無の世界』の住人。
『無』に生きる者なのだから、存在理由も『無』いのだ・・・。

そう自分に言い聞かせると、彼女は眠りについた。

一方、風都にある遊園地<ウィンダーランド>内を2つの影が疾走していた。
前方を走るのはロブスター・ドーパント、
そしてそのドーパントを後方から仮面ライダーW ファングジョーカーが追いかけていた。
『待ちやがれ、海老野郎!』
Wに存在する左 翔太郎の意識が叫ぶ。
「『待ちやがれ』って言われて止まるアホがどこにいるか!」
ロブスター・ドーパントは逃げながら正論で返した。
『ふざけるな!』

SHOULDER FANG!!

Wはファングメモリを2回押し、ショルダーファングを出すと、
勢いよくロブスター・ドーパント目がけて投げた。
だが、ロブスター・ドーパントの装甲は硬く、ショルダーファングを跳ね返されてしまった。
「しつこい奴だ・・・ん?」
逃げるロブスター・ドーパントの目に飛び込む<鏡の館>の看板。
「いちかばちかだ!」
そう言って、ロブスター・ドーパントは鏡の館に飛び込んでいった。
『あいつ、あの中に逃げやがった!』
「問題無い。むしろ『袋のネズミ』・・・いや、『まな板の上のロブスター』ってところかな?」
フィリップはそう言うと、鏡の館の中へと入っていった。
室内に広がる無数の鏡、そして全ての鏡にアームファングを構えるWの姿が映し出されていた。

この部屋のどこかにロブスター・ドーパントがいる・・・。

そう思いながら臨戦態勢を取っていると、Wは何かを感じた。
「危ない!」
Wがとっさに体をかがめる。
その直後、鏡の中から・・・いや、鏡の壁を破ってロブスター・ドーパントが持つ大きなハサミがロケットのように飛来した。
「ふん、運の良い奴め・・・。」
壁に出来た穴の向こうでは、ハサミを再生していたロブスター・ドーパントの姿があった。
すかさず、アームファングで切りかかるW。
だが、ロブスター・ドーパントは横ばいを思わせる素早い動きでさっさと鏡の影に隠れてしまった。
『隠れて戦うなんて卑怯だぞ!出てこい!!』
「残念ながら卑怯とラッキョウは俺の大好物なんでね!」
部屋に響くロブスター・ドーパントの声。
そして、鏡の壁を突き抜けて発射される無数のハサミがWを襲う。
Wはファングジョーカーの持つ身軽さと闘争本能でハサミを交わしていくが、
ロブスター・ドーパントへの攻撃手段が見つからず、防戦一方であった。
『くそっ!何か手段はねぇのか?!』
ヒートアップする翔太郎の意識。

その時、彼の目に何かが入った。
この部屋には自分たちと海老野郎しかいないはず。
しかし、あの鏡には『白薔薇のような少女』が映っている・・・?

『あれは・・・?』
突然の事態に気を取られる翔太郎。
「翔太郎、何しているんだ!」
フィリップの声にすぐさまハッとするが、先ほど『少女』が見えた鏡を貫いて発射されたハサミをよける時間は無く、
ハサミによってベルトに装着されたファングメモリを損傷させられるのであった。
強制的に変身が解け、フィリップとなるW。
フィリップは逃げようとするが、再び飛んでくるハサミに足を取られ、逃げることが出来なかった。
「ふぇっふぇっふぇ・・・これで仮面ライダーもおしまいだなぁ!」
そう言いながらフィリップのもとへやってくると、ロブスター・ドーパントは腕の大きなハサミを振り上げ、
フィリップの体を叩き潰そうとした。
その時、ロブスター・ドーパントの顔に目がけて、蜘蛛の巣のような物が張り付く。
「うわっ?!なんだこれは!」
いきなりの事態に慌てだすロブスター・ドーパント。
「・・・さっきのミスに対するお詫びのつもりかい、翔太郎?」
フィリップの後ろには、スパイダーショックを構える翔太郎の姿があった。
「すまねぇ、フィリップ。とりあえず、さっきのことについての言い訳云々やお詫びは後にさせてくれ。
 ・・・まずはコイツの始末だ!」
そう言って、ダブルドライバーを装着した。
「「変身!」」

CYCLONE!TRIGGER!!

翔太郎の体を包む緑と青の装甲。
そして、仮面ライダーW:サイクロントリガーが姿を現した。
「海老野郎!さっきのお返しにてめぇの体を蜂の巣に・・・。」
「ちょっと待って、翔太郎。」
突然、フィリップが声をかける。
「どうしたってんだよ、相棒!せっかく口上を決めてるって時に!!」
「・・・なんで、『君だけがWになってる』の?」
「・・・え?」
そう言って、横を見るW。
そこには、いつもなら気絶しているはずのフィリップが平然と立っていた。

『どうして・・・私がこの世界にいるの・・・?』
突然、フィリップがいるはずのWの右半身がしゃべりだす。
「女の・・・声・・・?」

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OP:http://www.youtube.com/watch#!v=updaAwZ_WDE&feature=related
「おい!どういうことなんだよ、フィリップ!」
翔太郎のみが変身したWがフィリップに問いかける。
「僕にも分からない・・・。それに、僕の代わりに誰かの意識が翔太郎と合体してるみたいだけど?」
「おお、そうだ!おい、俺の右半身!お前は誰なんだ?!」
『私は・・・私は・・・。』
「おいおい、しっかりしてくれよ!」
「お前ら・・・勝手にひとり芝居をやってるんじゃねぇ!!」
状況的に無視されていたロブスター・ドーパントが己のハサミをWに向けて投げつける。
「危ねぇ!!」
『きゃあ!』
瞬時にハサミをよけたWはトリガーマグナムを構えようとする。
だが、謎の意識が右半身に取り込まれているため、Wの右手が反応することは無かった。
仕方なく、左手でトリガーマグナムを構えて発砲するW。
しかし、利き手ではないため、弾の軌道は完全にあさっての方向を向いていた。
「くそっ、こうなったらルナ・トリガーになるしかねぇ!おい、ルナのメモリを挿すんだ!!」
『え・・・ルナ?・・・メモリ?えぇっと・・・。』
慌てふためく右半身。
そんな状況に翔太郎はさらにイライラするのであった。
「なんだか知らんが・・・相手が混乱しているうちに逃げるとするか。」
この状況を見たロブスター・ドーパントは口から泡を吹き出して煙幕を張り、その隙に鏡の館から脱出するのであった。

翔太郎の怒りが爆発する。
「おい、右半身のお前!どうして俺に合体したんだ!お前がどたばたしてなければ、今頃あの海老野郎を・・・!」
『・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい。』
その声は完全に泣いていた。
膝から落ち、大粒の涙を流す右半身。
そんな状況に翔太郎はハッとした。
「え・・・あ・・・えぇっと・・・ごめん、泣かせて悪かった。・・・な?だから、泣くのをやめてくれよ。・・・ね?」
そして、先ほどの怒りが嘘だったかのように、翔太郎は彼女をなだめた。

ハードボイルドにとって、<女を泣かす>ことは重罪である。
・・・にもかかわらず、
自分はロブスター・ドーパントを倒せなかった怒りを思わず彼女にぶつけてしまった。
どうしてこんなおろかな行為をしてしまったのか・・・。

そんな自責の念が翔太郎の体を渦巻いていた。
「・・・というか、君がまだまだハーフボイルドなだけなんだと思うけどね。」
まるで翔太郎の心を読んだかのようにフィリップが言う。
「間違ってねえけど、そういうことをフツーに言うな。」
翔太郎は落ち込みながら、ダブルドライバーのメモリを外し、変身を解いた。
「お〜い、翔太郎く〜ん!フィリップく〜ん!」
鏡の館を出た2人の耳に鳴海 亜希子の声が聞こえてきた。
声の方向を見ると、亜希子だけでなく照井 竜の姿もあった。
「海老のお化けは?!」
「すまねぇ、ちょっとしたアクシデントで見失っちまった。」
「そう・・・って、あれ?フィリップくん、それってもしかして・・・。」
亜希子がフィリップの持つファングメモリを指差して言う。
しかし、ファングメモリは先ほどの攻撃により一部機械が損傷し、活動を完全に停止させていたのであった。
「やれやれ・・・随分とお前ららしくない結果だな。」
「ああ、そのことなんだが・・・。」
翔太郎が、先ほどの戦いで起きた不思議な出来事について話そうとした時、再び亜希子が何かに気づいた。
「ん・・・?!翔太郎くん!どうしたの、その右手?!」
「右手?」
翔太郎が自分の手を見る。
そこには袖口から植物のツタのようなものが伸び、右手に絡み付いていた。
「うぉい、何だコリャ?!」
突然の事態にジャケットを脱ぐ翔太郎。
そこには、右腕全体にツタが絡み付いていることがYシャツの上からでも分かるような状況となっていた。
「翔太郎!」
「今度はなんだ?!」
「襟元からツタが出ている・・・。」
フィリップの指摘どおり、今度は襟元から伸びるツタ。
そのツタはまるで意識があるかのように翔太郎の耳を一周すると、耳の谷間につぼみを形成するのであった。
「これは・・・薔薇の花か?」
フィリップが触ろうとするが、まるで触られることを嫌がるかのようにそのつぼみは勢いよく開花し、
白い薔薇が姿を現すのであった。
「ちょ・・・何なんだよ、コレ?!だぁ〜っ、誰か取ってくれ!!」
「情けないハーフボイルドだ。たかが薔薇の花に脅え・・・。」
『やめて!!』
「「「・・・え?」」」
照井が翔太郎に咲いた薔薇を掴もうとした途端、突然薔薇の花から女性の叫び声が発せられる。
それに驚いた3人が薔薇の花を凝視すると、その薔薇からはまるで花粉のように光の粒子が発せられ、
それらは翔太郎の背面に少女の形を作り出すのであった。
『お願いです、薔薇の花を取らないでください!』
「これは・・・女の子?」
興味深そうに繁々と少女を見つめるフィリップ。
一方、隣の照井は青ざめた顔をしていた。
「・・・あれ?竜くん、どうしたの?」
「・・・お・・・お・・・お・・・お化けぇ?!?!?!?!?!?!」
突然走り出す照井。
その様子は、今までのハードボイルドさからは想像出来ないほどの慌てようだった。
「照井 竜、完全無欠のハードボイルドもまさかお化けが弱点だったとは・・・興味深い。」
今度は照井の方を繁々と見るフィリップ。
一方の照井は奇声をあげて、遊園地の出口へと一目散に逃げるのであった。
『私・・・何か悪いことしましたか?』
「問題ねぇ。あいつはああいう奴なんだ、心配しなくていい。」
翔太郎が自分の背面に出現した少女に言う。
「・・・ところでだ、君は何者なんだ?フィリップの代わりに俺と合体したり、俺に薔薇の花を生やしたり・・・。」
『私は・・・私は・・・。』
「・・・雪華綺晶?」
突然、亜希子が言う。
『!・・・どうして、あなたが私の名を・・・?』
「なんで、亜希子がこの子の名前を知ってるんだよ?」
少女と翔太郎がほぼ同時に亜希子に問いかける。
「いやね・・・昔、お父さんが読んでた『ローゼンメイデン』って漫画に出てくる雪華綺晶っていう白薔薇みたいな
 女の子に雰囲気がソックリだなぁ〜・・・なんて思ってね。」
「ローゼンメイデン・・・?」
「『ローゼンメイデン』・・・かつてとある雑誌に連載されていた、
 ジュンと呼ばれる少年とローゼンメイデンと呼ばれる中世ヨーロッパの生きた人形たちの共同生活の様子を描いた漫画のことだ。
 そして、亜希ちゃんの言っていた『雪華綺晶』はその生きた人形のNo.7。
 漫画内では『実体を持たない精神体のドール』として描かれていたようだけどね。」
「・・・随分と検索が早いな。」
「それが僕の取柄だからね。」
「・・・で、君の名前は・・・えぇっと・・・きら・・・きら・・・。」
「雪華綺晶。」
「そう、その雪華綺晶なのか?」
『ハイ・・・私の名は雪華綺晶・・・そのお方の言うように、
 かつてローゼンメイデンのひとりとして、アリスになるためにお姉さまと戦っていた、体を持たないドール・・・。』
雪華綺晶が悲しそうな声で言う。
「・・・ちょっと待って!それって漫画だけの世界の話じゃないの?!」
「・・・nのフィールドか?」
亜希子の問いにフィリップが答える。
「n・・・?」
「翔太郎、君は仮面ライダーディケイドとの共闘を覚えているか?」
「え?・・・ああ、俺たちの世界とディケイドの世界が何らかのきっかけで共鳴を起こして繋がっちまったってアレだろ?」
「それと同じさ。漫画の中では、彼女は実体が無いためにnのフィールドと呼ばれる異次元空間でしか活動出来ない設定なんだ。
 そして、そのnのフィールドは鏡を介して進入する。つまり・・・?」
「・・・雪華綺晶のnのフィールドの出入り口がこちらの世界の鏡に繋がっちゃったってこと?」
「亜希ちゃん、冴えてるねぇ。」

その言葉に先程の戦いがフラッシュバックされる翔太郎。
あの鏡に映った少女・・・それはまさしく雪華綺晶だったのだ。

「でも、フィリップ。なんできらく・・・きらきす・・・だぁ〜っ、言いにくいっ!!」
「どんだけ舌足らずなんだか・・・。」
亜希子が冷静にツッコむ。
「うるさい!えぇっとだな、君のことを・・・『きらきー』って呼んで良いか?」
『『きらきー』・・・ですか?』
「『雪華綺晶』だから『きらきー』・・・君らしいネーミングセンスだね。」
「それって褒めてるのか?」
「いいや。」
「・・・とにかくだ、問題はきらきーがどうして俺と合体しっちまったかってことだ!」
「おそらく、あの時のハサミだ。」
「ハサミ?」
「あのドーパントが雪華綺晶のいた鏡を破壊した際、あのハサミとともに彼女の意識もこの世界に飛ばされてきたんだろう。
 そして、ファングを破壊したことで翔太郎の意識が飛び、その余波で雪華綺晶の意識も君の体に収まった・・・ってとこかな?」
「だぁ〜っ、どうにかなんねぇのかよ!!」
「別に問題は無いだろう?僕無しでもWに変身できるみたいだし。・・・それとも、何か問題でも?」
「大有りだよ!!」
翔太郎が大声で言う。
『・・・ごめんなさい。』
その時、翔太郎の耳に雪華綺晶の悲しげな声が聞こえてくる。
「・・・え?」
『ごめんなさい・・・私が・・・あなたと合体してしまったせいで・・・あなたに大迷惑を・・・。』
「おい・・・また泣かないでくれよ!」
「あ〜あ、泣〜かしたな〜かした。」
亜希子が子供のように翔太郎に言う。
「ちょっと待ってくれ!俺はきらきーが邪魔とか言ってないからな!ただ・・・君をこの戦いに巻き込みたくないだけだ。」
『・・・え?』
「きらきーも見ただろう?俺たちはさっきの海老野郎みたいな怪人と命を賭けた戦いをしているんだ。
 そんな危険な戦いに君を巻き込むワケにはいかないんだ・・・。」
クールに言う翔太郎。
その言葉に、先ほどまで涙を浮かべていた雪華綺晶は、頬を赤らめながら翔太郎を見つめるのであった。
「はいはい、熱いねあついねぇ〜っと。」
亜希子が冷めた感じで言う。
「・・・にしても、フィリップくん。雪華綺晶ちゃんと翔太郎くんを分離する手立ては無いの?」
「今回の出来事はファングのメモリによって引き起こされた。
 ならば、逆にファングのメモリで翔太郎の意識を移せば、2人の意識を分けることが可能なはずだ。」
「そのためには・・・まず、そのメモリを直さないとね。
 あと・・・雪華綺晶ちゃんは当分翔太郎くんの体を借りて、うちの事務所にいたら?汚いけど、家の広さと快適性は保障するから。」
『・・・ええ、お言葉に甘えさせていただきますわ。
 翔太郎さま・・・私も翔太郎さまのご迷惑にならないよう頑張りますので、当分の間お世話になります。』
「きらきー、『様』なんて付けなくていいよ。普通に『翔太郎』って呼び捨てで良いよ。俺だって、君をあだ名で呼んでるんだから。」
『え・・・あ・・・ハイ・・・しょ・・・翔太郎・・・。』
頬を赤らめながら翔太郎を呼ぶ雪華綺晶。
「あ・・・なんか・・・恋人みたいで恥ずかしいな・・・ちょっと。」
今度は翔太郎が頬を赤らめながら、頭をポリポリとかく。
『そんな・・・恋人だなんて・・・。』
さらに頬を赤らめる雪華綺晶。

「「はいはい、熱いねあついねぇ〜っと。」」
フィリップと亜希子は冷めた声でそう言うのであった。

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とりあえず、Aパートはここまでです。
Bパートは明日の朝にUPしますので、よろしければお付き合い願います。
342創る名無しに見る名無し:2010/05/10(月) 02:04:07 ID:PbnM9qLY
おお!◆jpgさんの新作キタ!
何気にシザーズのネタもはさんできて、最高だぜ。
これはもう、ゾクゾクしてきたよ
>>342
感想ありがとうございます。
ちなみに、シザース・ネタを入れたのは、執筆当初は登場するドーパントをロブスターではなく
クラブ(蟹)にする予定だった・・・というのの名残だったりします。

それでは、Bパートをどうぞ。
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それから、翔太郎と雪華綺晶の不思議な共同生活が始まった。

「調査・・・結果・・・UFOの・・・ガイア・・・メモリは・・・。」
『・・・翔太郎?』
タイプライターで報告書を打つ翔太郎を見て、雪華綺晶が声をかける。
『これって・・・ローマ字・・・ですか?』
「ああ、おやっさんみたく英語で報告書を書きたかったんだけどな、いかんせん英語が苦手でな。
 ・・・で、気分だけでもと思ってローマ字でずっと書いてるんだよ。」
『ならば、私がお手伝いしますわ。』
そう言って、雪華綺晶は翔太郎の体を乗り越え、タイプライターに手をかける。
『Report・・・A・・・User・・・Of・・・UFO・・・is・・・翔太郎、この続きは?』
「・・・あ・・・ああ!UFOのガイアメモリの持ち主は湯追 純二というオカルト研究家で・・・。」
『is・・・Junji・・・Yuoi・・・Who・・・is・・・。』

「待ちやがれ、下着泥棒!」
路地を走る翔太郎。
その前には女性下着を右手に握りながら逃げる泥棒がいた。
「くそっ・・・足の速い奴だ!」
翔太郎が言う。
『翔太郎・・・ここは私に任せてください!』
そう言うと、翔太郎の薔薇の花から大量の花粉が飛び出し、それらは泥棒の周囲を包み込んだ。
「な・・・なんだ?!・・・は・・・は・・・ハックション!ハクション!!」
クシャミが止まらなくなる泥棒。
その隙をついて、翔太郎のジョーカーエクストリームを思わせる両足キックが泥棒の背中に炸裂、
そして泥棒は御用となった。
「さすがだぜ、きらきー!」
そう言って、雪華綺晶と翔太郎はハイタッチするのであった。

「いやはや・・・翔太郎くんと雪華綺晶ちゃんのタッグはすごいわね。」
リボルキャリーのドックで亜希子が言う。
目の前では、フィリップがファングメモリ修復のためにハンダこてを振り回していた。
「ああ、そうだね。」
「・・・あら?意外とそっけないわね。
 フィリップくんだって翔太郎くんの相棒なんだから『僕の翔太郎をよくも!』みたいなこと言うかと思ったけど。」
「そんなこと言うわけ無いだろ。」
「ふーん・・・。」
そう言って、亜希子はフィリップを覗きこむ。
「そう言えば、亜希ちゃん。翔太郎は?」
「・・・え?・・・あぁ、雪華綺晶ちゃんとパトロールに出かけたわよ。」
「そうかい。」
「やっぱり、ヤキモチ焼いてるんでしょ?」
「だから、そんなワケないって言ってるじゃないか?」
「・・・じゃあ、さっきからフィリップくんの左手の甲に乗ってるものは何?」
「・・・え?・・・!!」

やはり多少翔太郎のことが気になっていたがために集中力が散漫になっていたのか、
ファングを直しているつもりでフィリップは自分の左手にハンダこてを押しつけていたことに気付かないでいたのであった。

「あ〜あ・・・。ちょっと待ってて、救急箱持ってくるから。」
左手を押さえながら、今までのクールな振る舞いからは想像も出来ないような悶絶を起こすフィリップを後目に、
亜希子はドックを出るのであった。
「・・・これで・・・良し!」
ドックの床に座って亜希子がフィリップの火傷の手当てをする。
「ありがとう。」
「ま・・・ヤキモチ焼くのは分かるけどね。翔太郎くんと雪華綺晶ちゃん、えらく仲が良いものね。」
「いや・・・ヤキモチもそうだけど、僕には気になることがあるんだ。」
「・・・気になること?」
「ああ・・・実は、修理の合間に雪華綺晶に関する検索をかけたんだ。」

フィリップは思い返していた。
地球(ほし)の本棚で『雪華綺晶』というワードを検索し、
雪華綺晶に関するあらゆるデータについて調査していたことを。
そして、その調査からは意外な事実が導き出されていた。

「彼女は・・・簡単に言えば、2つの性格を有しているんだ。」
「2つ・・・って、二重人格ってこと?」
亜希子が聞く。
「ああ。ひとつは僕たちとの生活で見せたような清純で優しい乙女の性格。
 もうひとつは・・・。」
「もうひとつは・・・?」
「・・・彼女は漫画内では『実体を持たない精神体のドール』として描かれていたという話は以前しただろう?」
「ええ、だから翔太郎くんと合体しちゃったワケだし。」
「それがある意味、彼女の『もうひとつの性格』を作ったと言えるんだ。
他のドールのように人と接したり、現実世界で生活したりという自由を持てず、
 nのフィールドという鏡の世界でたった一人で生活しなくてはならない。
そんな彼女が抱くもの・・・さびしさ、実体や自由を欲する欲望、そして他のドールへの妬み・・・。」
「そんな・・・!もしかして、雪華綺晶ちゃんは実体を得るために翔太郎くんに近づいたって言うの?!」
「最初は僕もそう考えたさ。・・・だが、地球(ほし)の本棚がその考えを否定してくれたよ。」
「地球(ほし)の本棚が・・・?」
嵐波埠頭へと向かう一直線の道路。
その道を仮面ライダーWの乗ったハードボイルダーが疾風の如く駆け抜けていった。
「きらきー、準備は良いか?」
『はい!』
翔太郎が雪華綺晶の意識に声をかける。
「よし・・・まずはヒートだ!」
『はい!』
Wの右半身となっている雪華綺晶は、翔太郎の指示を受けてヒートメモリを手に取り、
自身のWドライバーに装着されたサイクロンメモリと交換する。

HEAT!JOKER!!

「よし、次はルナだ!」
『はい!』
今度はヒートメモリを抜き、新たに取りだしたルナメモリと差し替える。

LUNA!JOKER!!

「よし、最後にもう一度サイクロンだ!」
『はい!』
三度メモリを抜く雪華綺晶の意識。
そして、先ほどまで刺していたサイクロンメモリを再び取り出し、Wドライバーに装填する。

CYCLONE!JOKER!!

再び、サイクロン・ジョーカーとなるW。
「きらきー!どうやらWの体にも慣れてきたようだな!」
『はい!翔太郎のおかげですわ!!』
「ああ・・・。でも、本来なら君を戦いに・・・。」
『翔太郎、私のことなら心配しないで。それに・・・今は私があなたの『相棒』なんだから・・・ね?』
「・・・ふっ、言ってくれるぜ!『相棒』!!」
そう言って、翔太郎はハードボイルダーの速度を上げる。
「一気に港まで行くぞ!!」
『はい!!』

その数分後、埠頭の一画にあるベンチの上に翔太郎と、翔太郎の上に浮かび上がる雪華綺晶の姿があった。
「・・・なんか、訓練でテンション上がり過ぎて、風都の端っこまで来ちまったな。」
『ふふっ・・・でも、男の方と2人っきりでドライブ、まるで・・・デ・・・デートみたい・・・ですね。』
雪華綺晶が顔を赤らめながら恥ずかしそうに言う。
「デートって・・・あ・・・えっと・・・きらきーも恥ずかしそうに言うなよ!なんか・・・俺まで照れちまうだろ・・・。」
翔太郎も顔を赤らめる。

ベンチの上では、完全なるカップルが出来上がっていた。
「はいはい、熱いねあついねぇ〜っと。」
突然聞こえてくる冷めた声。
声の方向に2人が振り向くと、そこには1人の男が立っていた。
「あぁん?何だ、お前は?」
翔太郎が不機嫌そうに言う。
「俺はな・・・お前みたいな彼女持ちが大っ嫌いなんだよ!それにな・・・そいつが仮面ライダーなら尚更なんだよっ!!」
そう言って、男は一本のガイアメモリを取りだした。

LOBSTER!!

ロブスターのメモリを喉に刺す男。
その体は変貌し、ロブスター・ドーパントへと変わる。
「くたばれ、仮面ライダー!!」
巨大なハサミで襲いかかるロブスター・ドーパントに対し、とっさに回避する翔太郎。
一方、ロブスター・ドーパントのハサミは、2人のいたベンチを粉々に破壊するのであった。
「きらきー!実戦だ、準備はいいか?!」
『はい、いつでもOKですわ!!』
そう言って、2人はそれぞれの手にガイアメモリを掲げる。
「『変身!!』」

CYCLONE!METAL!!

Wドライバーに装填される2本のガイアメモリ。
そしてWドライバーは発光し、翔太郎と雪華綺晶を緑と銀の戦士へと変えるのであった。

ロブスター・ドーパントのハサミに対し、メタルシャフトで対抗するW。
だが、ロブスター・ドーパントの装甲はメタルシャフトと同等の硬度を持っているようで、その戦いは一進一退であった。
「くそっ!らちが明かねぇ!!」
『・・・ならば、翔太郎!一点集中ですわ!!』
雪華綺晶の提案に、翔太郎はメタルのメモリをトリガーのメモリに差し替える。
同時に、雪華綺晶の意識もサイクロンのメモリをヒートのメモリに差し替えるのであった。

HEAT!TRIGGER!!

出現する、赤と青の仮面ライダーW。
「色を変えても、この俺には・・・ぐあっ?!」
Wに襲いかかろうとするロブスター・ドーパントであったが、
突然飛来したバットショットとスタッグフォンの不意打ち攻撃を受けて倒れてしまう。
一方、Wはまずバットショットを手に取ると、トリガーマグナムに取り付けるのであった。

BAT!

「これでどうだ!!」
発砲するW。
ヒートの力で攻撃力の増した弾丸が、バットショットによる精密射撃でロブスター・ドーパントの体の一点に集中する。
脅威の装甲を誇るロブスター・ドーパントも、この攻撃には抵抗できなかったのか、思わず苦悶の声をあげるのであった。
だが、そんな声に耳を貸すこと無く攻撃を続けるW。
そして、ついにロブスター・ドーパントの装甲に大きなヒビを入れ、身の一部をさらけ出させることに成功した。
「くそっ・・・こうなったら、逃げるが勝ちだ!」
そう言って、背を向けて逃亡するロブスター・ドーパント。
「おっと、そうは問屋が卸さないんでね!」
そう言って、トリガーマグナムに装着されていたバットショットを外すと、
Wはバットショットの疑似メモリをルナのメモリに差し替える。

LUNA!MAXIMUM DRIVE!!

Wの手から勢いよく飛び出していくバットショット。
そして、ロブスター・ドーパントの正面に回ると、フラッシュから不思議な光を放つのであった。
突然の出来事に、まともに光を浴びるロブスター・ドーパント。
すると、その光はロブスター・ドーパントの体を包み込むと、まるで氷のように相手の体を止めてしまうのであった。

「とどめは・・・コイツだ!!」
そう言って、今度はトリガーマグナムにスタッグフォンを装着するW。
そして、自身のドライバーに刺さるトリガーのメモリを抜き、トリガーマグナムに充填した。

STAGG!
TRIGGER!!MAXIMUM DRIVE!!

ガイアメモリの音声を確認すると、勢いよくジャンプするW。
続いて空中で体を捻り、先ほどロブスター・ドーパントに空けた傷口を狙って引き金を引くのであった。

「『トリガー・スタッグボマー!!』」

翔太郎、そして雪華綺晶の声とともにトリガーマグナムから発射される、大きな炎の塊。
その炎はスタッグフォン状の形となって一直線にロブスター・ドーパントの傷口へと向かっていく。
あっという間にロブスター・ドーパントの傷に取り込まれる炎。
・・・と同時に、着地するW。
そして、まるで武士が刀を鞘に納めるかの如く、トリガーマグナムを自身の胸に再装着すると、
それが合図であったかのようにロブスター・ドーパントは内部から大爆発を起こすのであった。
「やったな、きらきー!!」
『これにて一件コンプリート!・・・ですね。』
「随分と懐かしい言葉だな・・・。まあ、いいや。とりあえず、後は警察に・・・。」
そう言いながら、Wがロブスターのメモリの所有者を見ようとしたその時だった。

「だぁれが殺した駒鳥さん・・・。」

突然、翔太郎の耳に入るマザーグースの歌。
しかも、その声は雪華綺晶に似ていた・・・いや、完全なる雪華綺晶の声であった。
「きらきー、どうした?急に歌なんか歌いだして?」
『・・・え?私は何も・・・。』
雪華綺晶の意識が話していると、再び聞こえてくるマザーグースの歌。
しかも、その声は少しずつ彼らのもとへと近づきつつあった。
状況を理解出来ないW。
そして、その声は突然聞こえてきた。

「私の体・・・見ぃつけた!!」
声の方向を振り向くW。
目線の先には、ロブスターのメモリの所有者が、白い花びらのような何かに包まれようとしている光景だった。
目を覚ます男。
「・・・ん・・・ん?な・・・何だ?!う・・・うわぁあああああ!!」
突然、男が苦しみだす。
すると、男の体中を薔薇のツタが覆い始めた。

そう、翔太郎のもとに雪華綺晶が現れた時のように・・・。

「おい・・・これって・・・。」
目の前の出来事に対応出来ないW。
一方、薔薇のツタは完全に男を覆うと、ツタの塊は何かへと形を変えていった。

「そんな・・・馬鹿な・・・。」

「ねえ、フィリップくん。地球(ほし)の本棚が・・・ってどういうこと?」
リボルキャリーのドックで亜希子がフィリップに聞く。
すると、フィリップは無言のまま、亜希子に一冊の本を手渡した。
そこには『KIRAKISHOU』の文字。
「これが・・・雪華綺晶ちゃんに関する本・・・。」
「そして、これさ。」
そう言って、フィリップはもう一冊の本を手に取ると、亜希子に見せた。
「・・・え?それって・・・。」
フィリップの手元の本、そこにも『KIRAKISHOU』の記載。

それは、本来1つの存在に対して1つの記憶しか存在しない地球(ほし)の本棚においてあり得ないことであった。

「おそらく・・・彼女は2人いる。」

続く

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<次回予告>
仮面ライダーW!

『お願い・・・もう・・・私の前に現れないで!!』
「?!きらきー、落ち着け!!」

「た・・・大変です!アルバトロス・パークに・・・ドーパント出現!!」
「これは・・・ロブスター・ドーパント?!」

「この戦いが終わったら、またドライブに行こうぜ。」
『ハイ!』

これで決まりだ!!
前編はこれで以上です。
後編は来週あたりに頃合いを見て投下しますので、よろしかったらお付き合い願います。
351創る名無しに見る名無し:2010/05/10(月) 17:53:41 ID:PbnM9qLY
投下乙なんだぜ。
翔太郎が「人形の声を聞いて〜♪」みたいな感じだな
あのハーフボイルドにはどうしてこんなに女がつくんだ。
ロブスターさんは遠慮なく爆破していいと思う。
そして、きらきーが2人!?
まさか、過去のきらきーと未来のきらきーが一つに!みたいなアレ?
>>351
返信遅くなりましたが、感想ありがとうございます。
文中で触れてる<2人のきらきー>についてですが、これが今回のストーリーにおける重要ポイントなので、
ここでは「詳しくは後編で!」とさせていただきます。
…って、「こんな駄文で重要もへったくりもないだろう」という意見はなるべく無しの方向でお願いします(泣)

後編の投下ですが、本日の21〜22時くらいにさせていただきますので、よろしければお付き合い願います。
353創る名無しに見る名無し:2010/05/15(土) 21:14:52 ID:nxcmIY8s
死ね
すみません。
本日投下するという旨の書き込みをしましたが、>>352みたいな輩がいるので、
誠に勝手ではありますが、投下を別日させていただきます。

申し訳ありません。
間違えました。
352ではなく>>353です。

352は自分だ…。
356創る名無しに見る名無し:2010/05/16(日) 20:46:46 ID:ajSS5Xs+
そんなこと言って本当は書いてないくせに
>>356
・・・と思われたので投下します。
とりあえず、私は前編後編両方を脱稿してから投下してるんですけどね。
BGM:http://www.youtube.com/watch?v=daYKIeUFvH8&feature=related

仮面ライダーW、今回の依頼は?

「ちょっと待って、翔太郎。・・・なんで、『君だけがWになってる』の?」
「・・・え?」

『私は・・・私は・・・。』
「・・・雪華綺晶?」
『!・・・どうして、あなたが私の名を・・・?』

「俺はな・・・お前みたいな彼女持ちが大っ嫌いなんだよ!それにな・・・そいつが仮面ライダーなら尚更なんだよっ!!」

STAGG!
TRIGGER!!MAXIMUM DRIVE!!

「『トリガー・スタッグボマー!!』」

「だぁれが殺した駒鳥さん・・・。」
仮面ライダーWは唖然としていた。

ロブスター・ドーパントのメモリブレイクを完了し、あとはいつものようにメモリの所有者を警察に引き渡すだけだと彼は考えていた。
だが、その流れは突然聞こえてきたマザーグースの歌をきっかけに遮られてしまった。

突如として発生した、白い薔薇の花吹雪。
それはロブスターのメモリの所有者の体を包み込み、そして彼の体を今度は薔薇のツタで包み込むのであった。

「おい・・・これって・・・。」
この光景を見て、思わずつぶやく左 翔太郎。
彼の頭の中ではある光景が浮かんでいた。

翔太郎自身の右腕が薔薇のツタに包まれ、そしてそのツタに咲いた白い薔薇の花から雪華綺晶が現れた時の光景を・・・。

そして、Wの目の前でツタから芽を出す1つの白い薔薇。
その芽は人間の右目に当たる部分で大輪の花を咲かせると、
それが合図であったかのようにツタだらけだった体を『1人の少女』へと作り変えるのであった。

「私の体・・・私の体・・・ふふふふふ・・・。」
「そんな・・・馬鹿な・・・。」

Wの前に姿を現した存在、それは紛れも無く、仮面ライダーWの右半身として翔太郎と意識を共有しているはずの雪華綺晶であった。

「・・・きらきー!どうして、君が・・・君がもう1人いるんだ?!」
翔太郎が思わず叫ぶ。
『どうして・・・あなたが・・・。』
「?!きらきー、何か知ってるのか?」
もう1人の自分を見て動揺する雪華綺晶に対して、反応する翔太郎。
一方、もう1人の雪華綺晶は2人のやりとりをジィーっと見ていた。
「いいな・・・。」
「・・・あぁ?」
「いいな・・・そっちの私には友達がいる・・・こっちの私には友達がいない・・・。」
「なんだと・・・?」
「友達・・・欲しい・・・私が・・・奪う!!」
そう言って、Wに襲い掛かろうとするもう1人の雪華綺晶。
だが、それよりも先に攻撃を仕掛けた者がいた。
もう1人の雪華綺晶を襲う炎の拳、その炎は彼女の胸部を炎で包み込む。

その攻撃主はW・・・いや、雪華綺晶の意識であった。
「・・・きらきー?」
翔太郎が雪華綺晶の意識に声をかける。
『お願い・・・。』
「?」
『お願い・・・もう・・・私の前に現れないで!!』
絶叫する雪華綺晶。
それと同時に、雪華綺晶の意識が形成するヒート・ボディはまるで雪華綺晶の感情に呼応するかのように燃え上がるのであった。
「?!きらきー、落ち着け!!」
突然の事態に叫ぶ翔太郎。
だが、その声が耳に入らなかったのか、雪華綺晶の意識は拳に炎をまとって、
もう1人の雪華綺晶に襲いかかるのであった。

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OP:http://www.youtube.com/watch#!v=updaAwZ_WDE&feature=related
361創る名無しに見る名無し:2010/05/16(日) 21:40:19 ID:ajSS5Xs+
なんでつべのURL貼らなきゃならないん?
「やめるんだ、きらきー!」
再び、翔太郎が雪華綺晶に言う。
しかし、雪華綺晶の意識はまるで暴走するかのように、炎の拳でもう1人の雪華綺晶に襲いかかる。
それに対し、腕から薔薇のツタを伸ばしてWの攻撃に対抗するもう1人の雪華綺晶。
ぶつかり合う拳と薔薇のツタ、そしてそこから発せられる火花。
戦いは一進一退であった。

「ふふふ・・・。」
すると突然、もう1人の雪華綺晶が笑いだした。
『何がおかしいのよ!!』
雪華綺晶の意識が、今までに発したことの無いような怒りの声をあげる。
「あなたには・・・力がある・・・。」
『・・・力?』
「あなたには力がある・・・でも・・・私にはない・・・欲しい・・・力が・・・力が・・・力が!!」
叫ぶもう1人の雪華綺晶。
そして、Wの前に狂気に満ちた顔をさらけ出すのであった。
「な・・・何なんだ?!」
突然現れた恐怖の表情に、思わず驚く翔太郎。
すると、もう1人の雪華綺晶は翔太郎の驚きによって出来た隙をついて腕からツタを放つ。
一直線にダブルドライバーへと向かうツタ。
そして、右サイドにあったヒートのメモリに絡めると、そのままメモリを半ば強引に抜くのであった。

ヒートメモリを手に取り、嬉しそうにするもう1人の雪華綺晶。
・・・と同時に、先ほどまで怒りの炎で燃え上がっていたWのヒート・ボディはメモリの力を失い、もとの姿へと戻るのであった。
「あっ?!おい、危険だからそのメモリを返せ!!」
Wのメモリの恐ろしさを知る翔太郎がもう1人の雪華綺晶に向かって叫ぶ。
だが、もう1人の雪華綺晶はその声を無視する。
「・・・くそっ!こうなったらヤケクソだ!!きらきー、トリガー・フルバーストだ!!」

LUNA!TRIGGER!!

メモリ・チェンジし、ルナ・トリガーとなるW。
そして間髪いれずにメモリブレイクの体勢に入ろうとする・・・が、
トリガーメモリをトリガーマグナムに装填する寸前、Wの右腕が動きを止めてしまう・・・いや、止められてしまった。
「何っ?!」
その原因は地面から伸びた薔薇のツタが右腕に絡みつき、固定されてしまったためであった。
それに気づき、トリガーマグナムで右腕のツタの破壊を試みようとする翔太郎。
だが、それよりも先に、新たに生えたツタによって左腕も固定され、Wは身動きが取れない状況となるのであった。
ツタの発生源である、もう1人の雪華綺晶を見るW。
目線の先には、右手に握られたヒートメモリを舐めるように見て嬉しそうにしている彼女の姿があった。
「ふふふ・・・私の力・・・私の力・・・みぃつけた!」
嬉しそうだった顔から、再び狂気の顔を見せるもう1人の雪華綺晶。
すると、右手のヒートメモリを自分の肉体を形成した時のように薔薇のツタで包み込み、
そしてガイアメモリ自身をそのまま自分の体内に取り込むのであった。
「私の力・・・炎の力・・・燃やしてやる・・・燃やしてやる!!」
叫ぶ、もう1人の雪華綺晶。
・・・と同時に、彼女の体は先ほどのWのように炎をまとうのであった。
「よせ!そのメモリを解放するんだ!!」
翔太郎が叫ぶ。
だが、もう1人の雪華綺晶はその声に耳を貸さず、
それどころかメモリの力を使って両手に発生させた炎の弾を拘束されたWに向けて放つのであった。
「ぐあっ?!」
『きゃあっ!!』
その体を炎に包まれ、苦しむW。
しかし、もう1人の雪華綺晶は2人の苦しむ姿を楽しむかのように炎の弾を連続発射するのであった。
「もうすぐ・・・あなたは消えてなくなる・・・そして・・・その男は・・・私の仲間になる・・・私の物となる・・・体も・・・力も・・・。」
もう1人の雪華綺晶が言う。
一方のWは、炎の弾による連続攻撃で戦意を喪失し、Wの姿のまま地面に倒れこむ。
「私の体・・・私の力・・・。」

もう1人の雪華綺晶がWの力を乗っ取ろうと、倒れこむ彼のもとへ近づこうとしたその時だった。

ENGINE!!MAXIMUM DRIVE!!

突然聞こえてくるガイアウィスパー。
そして、その声を合図に上空から“A”の形をした光の塊がもう1人の雪華綺晶に襲いかかる。
それに対し、もう1人の雪華綺晶はとっさに円盤状の炎の壁を作り出し、上空から飛んできたエースラッシャーを相殺させるのであった。
「ふん・・・どうやら随分と骨のあるお嬢様のようだな。」
倒れこんだWの前に降り立った男が言う。
その声に、今まで気絶していたWが反応した。
「て・・・照井・・・。」
そこには、エンジンブレードを肩にかけて構える仮面ライダーアクセルの姿があった。

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>>361
単なる雰囲気づくり。
364創る名無しに見る名無し:2010/05/16(日) 21:54:22 ID:ajSS5Xs+
>>363
エロゲじゃねーんだから雰囲気は文章で作れや
「あなたも・・・仲間・・・。」
「仲間だと・・・?俺はこいつの保護者みたいなもんだ。」
「仲間・・・力・・・あなたも・・・奪う!」
「・・・随分と耳の遠いお嬢様だな。」
再び狂気の表情を現わして、アクセルに襲い掛かるもう1人の雪華綺晶。
だが、その表情に屈することなくアクセルはエンジンブレードの引き金を引いた。

STEAM!

エンジンブレードから多量の水蒸気が発せられ、白い空間と化す周囲。
もう1人の雪華綺晶はその中に飛び込むが、彼女が目星を付けたはずの場所にアクセルたちの姿は無く、
その気配もすでに波止場から消え去っていたのであった。
「力・・・体・・・仲間・・・。」
何かに取りつかれたかのように、再び同じセリフを繰り返すもう1人の雪華綺晶。
そして、Wとアクセルの力を狙い、彼らを追おうと歩き出したその時、彼女の足に何かが触れた。
「・・・力・・・みぃつけた!」

雪華綺晶は目を覚ました。
そこは、鳴海探偵事務所内のドックのベッドの上であった。
『ここは・・・。』
起き上がる雪華綺晶。
しかし、その途端に痛みが右肩に走るのであった。
『くっ・・・!翔太郎!!』
雪華綺晶は突然ハッとし、自分の宿主である翔太郎を見る。
彼の体は重傷にまでは至らなかったものの、もう1人の雪華綺晶の攻撃によって所々に火傷を負っていた。
「・・・あ、雪華綺晶ちゃん!」
雪華綺晶の耳に鳴海 亜希子の声が飛び込んでくる。
声の方向を見る雪華綺晶。
そこには亜希子、その後ろには照井 竜と救急箱を持ったフィリップの姿があった。
『あ・・・亜希子さん、翔太郎の容体は?!』
「ああ、翔太郎なら・・・。」
亜希子に代わって、フィリップが言おうとしたその時だった。
「俺なら心配ねぇよ、きらきー・・・。」
『翔太郎!!』
翔太郎が包帯の巻かれた体を起こして答える。
「大したもんだよ、翔太郎。君のタフさには、僕も毎回驚かされるよ。」
「昔から体力には自信があったしな・・・それに、仮面ライダー稼業をやってると、自然に鍛えられちまうもんさ・・・。」
「まったく・・・鉄人だな、お前は。」
照井があきれたような声で言う。
「それにしても・・・竜くん、ありがとうね。
 翔太郎君と雪華綺晶ちゃんを助けてくれて・・・って、竜くんは雪華綺晶ちゃんが怖いんじゃなかったっけ?」
亜希子が聞く。
「出来た弱点をすぐに克服するのが俺だ。そんなくだらないことで俺に質問するな。」
「何よぉ〜、その言い方ぁ!」
「・・・そんなことよりだ。」
照井は亜希子を押しのけると、雪華綺晶の前に立った。
「君に聞きたい。あの少女は君と全くそっくりな容姿・声をしていた・・・いや、もう1人の君と言っても欠損は無いだろう。
 あれはいったい何者なんだ?」
『あれは・・・私です。』
雪華綺晶が答える。
「どういうことだ?」
「・・・もしかして!」
突然、亜希子が大声を出すと、フィリップの作業机に置いてあった2冊の本を持ってきた。
「フィリップくん、さっき言ってたでしょ?!
 『地球(ほし)の本棚には、本来ひとつの存在につきひとつの本しか無いはずなのに、雪華綺晶ちゃんにはふたつ存在してた』って!!」
「ああ。そして、ひとつ目の本には僕たちの知っている清純な乙女としての雪華綺晶の詳細が、
 そしてもうひとつには憎しみや怒りといったマイナス感情に支配された雪華綺晶の詳細が記載されていた。」
「マイナス感情・・・。」
翔太郎の頭をよぎる戦いの記憶。

自身の体を求め、我々に対抗するための力を求める欲望・・・。
自分を震え上がらせた、狂気に満ちた顔・・・。

『あれが本当の私・・・そして、私はあの私の亡霊のようなものです。』
突然、雪華綺晶が口を開く。
「雪華綺晶ちゃんが・・・亡霊?」
亜希子が聞き返す。
そして、雪華綺晶はこの事件の真相を語りだした。

内容はこうであった。
かつて、雪華綺晶は自分の運命を呪っていた。
他のローゼンメイデンと違い実体を持たない彼女は、nのフィールドという無の空間でたった1人で、
しかもローザミスティカという不死の存在によって永遠に過ごさねばならなかった。
そんな地獄のような生活に追い打ちをかけるように、彼女に見えてくる外界で暮らすローゼンメイデンたちの光景、
そして本当なら仲良くしたいはずなのにローゼンメイデンと戦わなくてはいけないというアリスゲームという名の運命・・・。
このふたつによって彼女の精神は崩壊し、彼女は欲望のみを求める狂気の化身へと化してしまった。
だが、一部の良心のみは欲望に支配される前に彼女から分離し、
こうして2人の雪華綺晶・・・つまり、<欲望に支配された雪華綺晶>と<雪華綺晶の良心の化身>と化した訳であった。

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>>364
じゃあ、その手本をあなたが見せてください。
話はそれからです。
「なるほど・・・そういうことだったのか。」
フィリップがつぶやいたその時、照井のビートルフォンの呼び出し音が突然鳴る。
「照井だ。」
『課長!こ・・・こちら、真倉!』
その声の主は、照井の部下である真倉 俊であった。

風都の中心部から離れた場所にあるショッピングモール、アルバトロス・パーク。
いつもは観光客や地元の人でにぎわう風都の観光地なのだが、この日は違っていた。
叫び、逃げ惑う客たち。
彼らの視線の先には、暴れる何者かの姿があった。
「た・・・大変です!アルバトロス・パークに・・・ドーパント出現!!」
『何だと?真倉、映像を送れるか?』
「は・・・はいっ!!」
真倉は自身の携帯電話を持ちかえ、ビデオモードを起動させる。

「これは・・・ロブスター・ドーパント?!」
フィリップが叫ぶ。
確かに、ビートルフォンに映し出された映像にはロブスター・ドーパントが映し出されていた。
だが、その体はWが戦った茶色ではなく、真っ白なものとなっていた。
『私の・・・力・・・。』
「ん?」
映像から聞こえてくる声に耳を傾ける照井。
その声は、先ほど戦ったもう1人の雪華綺晶の声であった。
「真倉!お前の近くに白薔薇のような少女はいるか?!」
『しょ・・・少女ですか?!そんなの探せる状況じゃないですよ!
 こっちはドーパントが『私の力』がどーしたこーした言いながら暴れてるんですから!!』
「・・・何だと?」

モールのガラスや建物を破壊しながら進むロブスター・ドーパント。
そのロブスター・ドーパントは破壊行動を行ないながら、こうつぶやいていた。
「私の力・・・新しい力・・・アクセルにも・・・Wにも・・・負けない力!!」
アルビノ・ロブスター・ドーパント、正体は破壊されたロブスターのメモリを吸収した<欲望に支配された雪華綺晶>であった。

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Aパートはここまでです。
Bパートは少ししたら投下しますので、もうしばらくのお付き合いをお願いします。
368創る名無しに見る名無し:2010/05/16(日) 22:08:48 ID:ajSS5Xs+
小説を読みに来たらエロゲの出来損ないSSだったでござるの巻
それではBパートを投下します。

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真倉の連絡を受けて、鳴海探偵事務所を飛び出す照井。
愛車のディアブロッサにまたがって発進しようとしたその時だった。
「待て、照井!」
その声の主は翔太郎であった。
「・・・やめとけ。ケガ人の出る幕じゃない。」
「それが俺のことを『鉄人』認定した男のセリフか?それにな・・・これは俺の『相棒』の問題なんだ。」
「相棒・・・?」
「ああ、今の俺の相棒・・・きらきーのな。お前さんの言葉じゃないが、彼女の呪われた『今』を振りきらせてやりたいんだ。」
「・・・勝手にしろ。俺は先行して行ってる。」
そう言って、照井はアルバトロス・パークへと向かってしまった。
「きらきー、準備は良いか?」
『翔太郎・・・ごめんなさい。』
「ん?」
『本当なら、この戦いは私自身で決着しなければいけない問題・・・なのに、翔太郎だけでなく照井さんたちまで・・・。』
「きらきー!」
突然、翔太郎が大声をあげる。
『え?あ・・・ハイ!』
「この戦いが終わったら、またドライブに行こうぜ。」
『え・・・?』
「・・・なんだよぉ、不満か?俺たち、恋人なんだろ?デートしたって良いだろ?」
『翔太郎・・・。』
「じゃあ・・・食事にも行くか・・・あ、映画を見に行くっていうのも良いかなぁ・・・。」

雪華綺晶は感じていた。
自分の存在が生み出した怪物との戦いに翔太郎たちを巻き込んだことへの後ろめたさに対し、
翔太郎が元気づけようと明るい振る舞いをしてくれていることを・・・。

『・・・じゃあ、ドライブでお願いします!』
雪華綺晶が元気よく言う。
「よし、決まりだな。でも、その前に・・・お仕事といきますか。」
『ハイ!』
そう言って、2人はガイアメモリを構えた。

CYCLONE!JOKER!!

風に包まれる翔太郎の体。
その体は仮面ライダーW サイクロンジョーカーと化した。
一方、先に到着していた照井は苦戦していた。
到着後、すぐさま仮面ライダーアクセルに変身し、ロブスター・ドーパントへエンジンブレードによる攻撃を開始するも、
その強固な装甲に苦戦していた。

JET!

エンジンブレードの引き金を引き、負荷を加えて攻撃するアクセル。
だが、エンジンブレードの刃はロブスター・ドーパントのハサミに捕らえられてしまった。
「何っ?!」
「ふふふ・・・私の力・・・アクセルに負けない力・・・あなたは負ける・・・私のものとなる!!」
そう言って、口から火炎を吐くロブスター・ドーパント。
ヒートメモリの力を持つ炎に包まれたアクセルは、おもわずエンジンブレードを放してしまった。
「ぐっ・・・!しまった!!」
叫ぶアクセル。
だが、時すでに遅く、ロブスター・ドーパントはエンジンメモリを吸収、自身の力をさらに増大させるのであった。
「アクセルの力・・・みぃつけた!あとは・・・あなたの体!!」
そう言って、自分のハサミにエンジンメモリの力のひとつである電撃をまとい、アクセルに襲いかかる。

「おっと、そうはいかねぇぜ!」
突然聞こえてくる声。
そして、その声が合図であったかのように、ロブスター・ドーパントに向けて数発の光弾が発射された。
爆発を起こすロブスター・ドーパントの体。
一方、アクセルは声の方向を見る。
「左!」
そこには、ガンナーAと合体したハードボイルダーに乗る仮面ライダーWの姿があった。
「W・・・力・・・。」
起き上がるロブスター・ドーパント。
対して、Wはハードボイルダーから降り、言い放った。

「『さあ・・・お前の罪を数えろ!!』」

「W・・・もらう・・・その力!!」
Wに襲い掛かるロブスター・ドーパント。
一方のWは相手の攻撃を受け流していく。
「力・・・力・・・力!!」
さらに攻撃を続けるロブスター・ドーパント。
ところが、対するWは攻撃を加えずに受け流しのみ。
しかも合間には相手を挑発するなどしていた。
「おいおい、俺たちの力が欲しいんじゃないのかい?」
『鬼さんコチラですわ!』
「力・・・力・・・力!!」
今度はエンジンメモリの力を使い、ハサミからエースラッシャーを発射するロブスター・ドーパント。
「甘い甘い!」
そう言って、Wはメモリチェンジする。
LUNA!METAL!!

メタルシャフトを手にするW。
そして、飛んでくるエースラッシャーをメタルシャフトで巻き取ると、そのままロブスター・ドーパントに投げ返してしまった。
「欲しい・・・奪う・・・欲しい・・・奪う!!」
まさかのエースラッシャー受け、ついに怒りを爆発させるロブスター・ドーパント。
そして、ヒートメモリの力を使い、その体を燃え上がらせるのであった。
「・・・待っていたぜ、この瞬間を!!」

LUNA!JOKER!!

再びメモリチェンジするW。
そして、ジョーカーメモリを抜き、マキシマムスロットへと装填した。

JOKER!!MAXIMUM DRIVE!!

響き渡るガイアウィスパー。
その音を聞いてWは高く跳びあがり、空中で静止する。
次の瞬間、Wの体が強く発光し、宙に浮かぶその姿は8つに分身するのであった。
「『ジョーカー・タイフーン!!』」
上空に響く、翔太郎と雪華綺晶の声。
そして、その声を合図に全てのWはライダーキックの体勢を取り、次々とロブスター・ドーパントへ落下していった。
「負けない・・・負けな・・・?!」
Wの攻撃に対し、体を燃え上がらせて立ち向かおうとするロブスター・ドーパント。
だが突然、体の炎は消え、それどころか自身のエネルギーを弱らせ始めていた。
「どうやら、ツイン・マキシマムの影響が出たようだな!!」

ツイン・マキシマム・・・。
それは、ガイアメモリの力を極限まで高めるマキシマムドライブを単独で2つ以上行なうことによりメモリの力が暴走し、
最終的には互いの力が相殺されて自我を滅ぼしてしまうという危険行為である。
翔太郎は偶然にもエンジンメモリが吸収されたことを知り、ロブスター・ドーパントをわざと怒らせ、
エンジンメモリとヒートメモリのツイン・マキシマムを起こすことを狙っていたのだった。

「ぅおるぁっ!!」
『たぁっ!!』
襲い掛かる8人のW。
アクセルクリムゾンスマッシュを思わせるそのキックは全員ともロブスター・ドーパントの体を捕らえ、
そして貫くのであった。
ロブスター・ドーパントを囲むように降り立つ8人のW。
うち2人の手には、ロブスター・ドーパントから奪取したヒートメモリとエンジンメモリが握られていた。
「力・・・欲しい・・・。」
大爆発を起こすロブスター・ドーパント。
そして、Wの体も1つに戻るのであった。
「これで・・・終わったな、きらきー。」
『翔太郎・・・。』
「・・・あ、そうだ。照井、受け取れ!」
そう言って、Wがアクセルへエンジンメモリを投げた直後だった。
「だぁれが・・・殺した・・・駒鳥さん・・・。」

聞こえてくるマザーグースの歌。
その声に反応したWは後ろを振り向くと、薔薇のツタがWの首に巻きつき、首を締め上げだした。
「そんな・・・馬鹿な・・・。」
Wが首に巻かれたツタを外そうとしながら正面を見る。
そこには、ドレスをボロボロにしながらも立ち上がる、もう1人の雪華綺晶の姿があった。
「力・・・もういらない・・・だから・・・あなたもいらない・・・。」
「何・・・?」
「左!」
アクセルが助けに入ろうとする。
「あなたも・・・いらない!」
そう言って、薔薇のツタを放つもう1人の雪華綺晶。
そのツタはアクセルのドライバーを弾き飛ばし、照井は変身を解除させられてしまった。
「照井!!」
「あなたにも味わってもらう・・・私の苦しみ・・・。」
そう言って、再び薔薇のツタを伸ばすもう1人の雪華綺晶。
その先にはWが持つヒートメモリの姿があった。
「私の力・・・最後の力・・・。」
ツタに力を込める、もう1人の雪華綺晶。
その力に反応するかのようにヒートメモリは炎をまとい、もう1人の雪華綺晶を、そしてWをも燃え上がらせた。
それはヒートメモリのマキシマムドライブであった。
「まさか・・・自爆するつもりなのか?!」
照井が言う。
「最後の力・・・これで・・・あなたは・・・おしまい・・・。」
「くそっ!最後の最後でこれかよ!!」
叫ぶ翔太郎。
『・・・翔太郎!良い手がありますわ!!』
雪華綺晶の意識が言う。
「なんだって?!きらきー、どうするんだ?」
『・・・翔太郎。』
「ん?どうした?」
『・・・今まで、ありがとう。』
「・・・え?」
突然の言葉に戸惑う翔太郎。
一方、雪華綺晶の意識はWドライバーに刺さっているルナメモリを抜くと、マキシマムスロットに装填した。
「?!きらきー、何をするんだ?!」
LUNA!MAXIMUM DRIVE!!MAXIMUM DRIVE!!MAXIMUM DRIVE!!・・・

ルナメモリのマキシマムドライブを行なう雪華綺晶。
これにより、Wともう1人の雪華綺晶との間にツイン・マキシマムが発生し,その力は暴走を始めようとしていた。
「きらきー!どうしてこんなことを?!」
翔太郎が雪華綺晶に言う。
だが、雪華綺晶は黙ったまま、もう1人の雪華綺晶を押さえつけるように抱え込んだ。
「きらきー!やめるんだ!!」
叫び続ける翔太郎。
だが、次の瞬間、彼の体はWから解放され、雪華綺晶の意識のみがWに残った状態となった。

呆然とする翔太郎。
そして、追い打ちをかけるような事態が発生した。
ツイン・マキシマムによって暴走するガイアメモリの力。
その力はついに極限まで達し、Wとロブスター・ドーパントを巻き込んで大爆発を起こすのであった。
爆風に吹き飛ばされる翔太郎と照井。
そして、彼らは気を失ってしまった。

こうして、ロブスター・ドーパントの事件は終決した。
「その後・・・ロブスターのメモリは・・・完全・・・消滅・・・しかし・・・Wの・・・えっと・・・ねえ、フィリップくん!
 破損したのってヒートとなんだっけ?」
鳴海探偵事務所に響き渡るタイプライターの音。
だが、それを打っているのはいつもの翔太郎ではなく、亜希子であった。
「ヒートとルナ。あと、一応修理が終わったから、それについても書いておいて。」
「うん、分かった。それにしても・・・。」
亜希子が隣りのベッドを見る。
そこには、まるで廃人になったかのように空を見つめる翔太郎の姿があった。
「・・・翔太郎くん?」
亜希子が翔太郎の顔の前で手を動かす。
だが、反応は一切無かった。

翔太郎は自責の念に囚われていた。
かつて、自分は師匠である鳴海 壮吉を守れなかった。
そして、今回も雪華綺晶を守れなかった。

自分には、仮面ライダーの資格は無い・・・。

『そんなことないわ、翔太郎。』
突然、耳に飛び込んできた声にハッとする翔太郎。
そして、彼は声のする方向にあった手鏡を手に取り、ジッと見つめる。
そこに現われたのは・・・。

「・・・!きらきー!!」
「翔太郎、元気を出して。」
無数の鏡が並ぶnのフィールド。
その中に翔太郎と雪華綺晶はいた。
「きらきー・・・生きてたのか!!」
「私は『無の世界』の住人。死ぬことも『無』い・・・だから・・・心配しないで。」
「きらきー・・・?!」
突然、翔太郎が驚く。
その目線の先には、ドレスをボロボロにしたもう1人の雪華綺晶がガラス状の球体で寝ている姿があった。
「これはいったい・・・?」
「翔太郎、この子も元は私・・・いえ、この子が本当の私。でも、分かってくれたはず・・・欲望や憎しみは自分を滅ぼすってことを。
 だから・・・助けてあげたいの。たとえ、良心を理解してくれるのに何十年・何百年とかかろうとも・・・。」
「きらきーなら出来るさ・・・きっと。」
「ありがとう、翔太郎・・・。」
「また・・・会えるかな?」
「ええ。私はこの世界でいつでも待っています。その時は『無の世界の住人』としてではなく、『あなたの恋人』として・・・ね?」
そう言って、雪華綺晶は翔太郎の頬にキスをするのであった。
「・・・翔太郎くん!!」
亜希子が大声をあげる。
「ぬわぉっ?!何するんだよ、亜希子!」
「それはこっちのセリフだ!」
そう言って、亜希子は翔太郎をスリッパでひっぱたいた。
「いきなり手鏡持って黙っちゃうんだもん。ついに狂ったかと思ったわよ。」
「バーロー、俺は肉体も心も健康優良児だっつうの。・・・そうだ、おい!フィリップ!!」
「何だい、翔太郎?」
「ちょっと、ドライブに付き合えや。」
「乗り気じゃないね。僕はアイスクリームに関する検索を・・・って、ちょっと何するの?!」
グダグダ言うフィリップに対し、翔太郎はサイクロンメモリを胸元から強奪すると、フィリップのWドライバーに刺してしまった。
気絶するフィリップ。
そして、翔太郎はジョーカーメモリを自身のドライバーに刺す。

CYCLONE!JOKER!!

鳴海探偵事務所内で巻き起こるつむじ風、そして吹き飛ばされる報告書。
「だぁあああああ?!ちょ・・・ちょっと、何するのよ?!」
「亜希子、留守番頼むぜ。」
そう言うと。Wは亜希子を無視して外に出てしまった。

風都の直線道路を走るハードボイルダー。
それに乗りながら、翔太郎は思い返していた。

雪華綺晶との出会い、相棒としての生活、仮面ライダーとしての戦い、そして別れ・・・。

そんな気持ちを察してか、フィリップの意識が言う。
『翔太郎。』
「・・・ん?どうした、フィリップ?」
『君は・・・悪魔と相乗りする勇気はあるかい?』
「どうした?急に懐かしいことを聞いてくるなんて。」
『理由など無い。だが・・・聞いておかないと僕の気が済まなくてね。』
「・・・心配するな、フィリップ。俺はこの戦いを受け入れ続けるつもりだ。この風都を守るため、そして誰も悲しませないためにな。」
『なら・・・良かった。』
「・・・なんだよ、相棒。もしかして、俺ときらきーがタッグ組んでたもんだから、ヤキモチ焼いてたな?」
『そんなことは無い。』
「分かってます、分かってますって!・・・じゃあ、そのヤキモチをぶっ飛ばすために、こっちもぶっ飛ばしますか!!」
『だから、違うって・・・。』
反論するフィリップの意識。
だが、翔太郎はそれを無視し、ハードボイルダーのアクセルを強くひねるのであった。

おわり

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以上で終了です。
ありがとうございました。