シェアードワールドやりたいなあなんて

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275創る名無しに見る名無し
 夜の街が、快楽と一時の栄誉、そして危険に塗れているのは、いつの時代、どこの場所も変わらない。
『活性化』したソラに連れられ住処の廃ビルを後にした俺は、ネオンが煌びやかな歓楽街へとやってきていた。
 行き交うのは何かを出したかすっきりした顔のサラリーマンや、いかがわしい店の呼び子、柄の悪いあんちゃん達。
 間違っても健全な高校生である俺とソラが来るような場所ではない。
 まして世間一般では美少女に分類されるであろうソラと、お姫様と化した俺が二人だけで来るのにはいくら何でも無茶がある。
 と、いうのも今では昔の話だ。
「姐さん! ちわーっす!」
「ソラの姉御! 姫さんも!」
「今日もまた一段とお目見え麗しい……」
 俺とソラが道を歩くだけで、その後ろにはヤンキーとチンピラを足して2で割ったような輩達がずらずらと連なっていく。
 ここら一帯の荒くれ達は、全員漏れることなくソラへの忠誠を誓ったのだ。
 彼らは皆、例に漏れず俺に襲いかかってきた。ソラはそれに対して拳を振るう。
 そう、つまりソラは毎夜ストリートファイトに明け暮れていたことになる。
『活性化』の能力を最大まで活かしたソラの猛攻に、いかな能力者も膝を立ててはいられなかった。
 夜の間、ソラは無限の身体能力と回復能力を得るのだ。プラスして元来持ち合わせていた喧嘩のスキルを組み合わせれば、ソラが王者として君臨することは想像に難くない。
 いつしかチンピラ達はソラを『姉御』や『姐さん』と慕うようになり、俺は『姫』と呼ばれるようになった。
 付近一帯を取り仕切るカラーギャング、『ブラッディ・ベル』が発足したのはそれからまもなくのことである。
「さぁーて、今日もまた暴れたいから……、早くかかってきてよね!」
 歓楽街を少し抜けたところにある空き地にやってきたソラが、開口一番相手を求めた。
 ずらりと並んだ、総勢三十人ほどの構成員を挑発するかのようにアホ毛が揺れる。
 活性化したソラは正直やばい。思考回路が結構凶暴になるからだ。
「おっしゃ、俺が行きます姉御!」
「いや俺が!」
「テメエは黙ってろ!」
「姐さんと組んずほぐれつするのは俺だぁぁぁぁ!」
「るせえよボケ!」
 我も我もと、皆が一斉にソラに詰め寄る。正直五月蠅いが、まあ仕方ない。
 それだけソラが慕われていると言うことだろう。
「うるさいよー」とか言いながら、何の躊躇もなしに手当たり次第殴っている彼女の姿を見ると、それで良いのかと思ってしまうけれども。
「何なら全員でも良いよ! 今日の私は元気爆発、誰にも負けるつもりはないからね!」
「昼間寝てたもんな……、ずっと」
「さぁ、どうするあんた達!」
「「「「「「勿論行かせて貰いますうううううぁぁぁぁぁぁっ!」」」」」」
 モヒカンやスキンヘッドが叫び、ソラに向かって拳を振り上げた。まあ、いつものことだ……。
 ソラは悠然とした態度で、彼らの攻撃を待ち構える。
 突き進んでくるのは四人。他の面子は外からヤジを飛ばしたり声援を送ったり「姫さんついてるんすか!」とか言っている。
 ちなみにこんなんでもついてるからな。
「能力無しじゃつまんないんだよぉっ!」
 さて、叫んだソラはもの凄い勢いで地を蹴り、モヒカンの一人に肉薄した。
 驚いた顔のモヒカンの意識を刈り取るよう、鳩尾に強烈なパンチが入る。さらに崩れ落ちたモヒカンに追い打ちを掛けるように、ソラは肘鉄をその頭に食らわせた。
 そのまま動きを止めることなく跳躍、直後ソラの立っていた場所を電撃が襲った。彼らの能力の一つだ。
「そうじゃなくちゃ面白くないからね!」
「姐さん、しゃぁーすっ!」
「はあああああああああっ!」
 気合いを入れるかのようにソラが叫び、残ったスキン達に向かって特攻する。
 元気だねえ、ほんと。
「……今夜は珍しく平和みたいだな、ふぅ」
 俺は小さく肩を竦め、ソラの応援に戻ることにした。結果は見えているけれど。
 ……ところで俺、無理矢理カラーギャングに組み込まれてないか?