コードギアス反逆のルルーシュLOST COLORS SSスレ44
■全般
・支援はあくまで規制を回避するシステムなので必要以上の支援は控えましょう。
(連投などに伴う規制について参考
>>3)
・次スレ建設について。
950レスもしくは460kBオーバーしたら、「スレを立てる?」か訊くこと。立てる人は宣言してから。
重複などを防ぐために、次スレ建設宣言から建設完了まで投稿(SS・レス共に)は控えてください。
※SS投稿中に差し掛かった場合は別です。例)940から投稿を始めて950になっても終わらない場合など。
■SSを投下される方へ
1.推敲は充分しましたか? 1レスに投稿可能な容量(
>>3参考)があります。オーバーすると投稿自体ができません。
スムーズに投下する為に、誤字・脱字だけでなく容量にも気を付けてください。(後述
>>3のSSチェッカーが便利です)
2.投下前後に開始・終了の旨を書いたレスを入れて下さい。(または「何レス目/総レス」を名前欄に)
3.前書き・後書き含めて10レス以上の連投になると同一IDからの投稿が規制されます。(←「さる」状態)
間に他IDからの「支援」が入ることで規制は回避できますので、規制にかかりそうな長文投稿の際は
投下前に支援を要請して下さい。逆に、必要ない場合は支援の要らない旨を書いてください。
前レス投稿から40秒ほどで次レスを投稿することができます。(投稿に関する規制については
>>3参考)
4.投下前は、他作品への割り込みを防ぐ為に必ずリロード。尚、直前の投下完了宣言から15分程度の時間を置いてください。
5.投下許可を求めないこと。みんな読みたいに決まってます!
6.なるべくタイトル・カップリング・ジャンルの表記をして下さい。(特にタイトルはある意味、後述の作者名よりも重要です)
・読む人を選ぶような内容(オリキャラ・残酷描写など)の場合、始めに注意を入れて下さい。
・前書きの中に、以下のテンプレを含むことが推奨されます。(強制ではありません)
【メインタイトル】
【サブタイトル】
【CP・または主な人物】
【ジャンル】
【警告】
【背景色】(後述
>>5に関係)
【基本フォント色】(後述
>>5に関係)
7.作者名(固定ハンドルとトリップ)について。
・投下時(予告・完了宣言含む)にだけ付けること。その際、第三者の成りすましを防ぐためトリップも付けて下さい。
(トリップのつけ方:名前欄に「#(好きな文字列)」#は半角で)
・トリップがあってもコテハンがないと領地が作れず、??????自治区に格納されます。
8.規制により投下できない場合は
>>1の 代理投下依頼専用スレッドに投下し、代理で投下してもらう方法もあります。
9.夜更かしは、程ほどに。
■創作発表板での投稿規制について。 参考(暫定)
1レスで投稿可能な容量
・X:1行の最大 / 255byte
・Y:最大行数 / 60(改行×59)
・Byte :最大容量 / 4095Byte
但し、改行に6Byte使うので注意。例えば60行の文なら59回改行するので
6Byte×59=354Byte これだけの容量を改行のみで消費する。
※1レス分の容量の投稿の可否を判断できるツールがトーマス卿の保管庫からDLできます。
TOP→通常→保管嚮団→保管嚮団本部入室→SSチェッカー
<使用法>
1.ダウンロードしたものを解凍する。
2.SS.xls を開く。
3.SSをテキストエディタで開く → Ctrl A で全文コピー
4.貼り付けシートのH11セルを選択。
5.右クリック → 形式を選択して貼り付け → 値
6.レスを区切るところに
<<<<<レス区切り>>>>>
をコピペ(H6セルのものをコピペする)
限界値は自由に変えられます。いろいろお試しください。
さるさん( 過剰数の投稿に対する規制 )
・1時間に投稿できる数は10レスまで。それを超えると規制対象に。
・毎時00分ごとにリセット。00分をはさめば最長20レスの連投が可能。
・規制されるのは2人まで。身代わりさるさん2人で、00分を待たずにリセット。
連投規制( 連続の投稿に対する規制。短い間隔で連続の投稿ができない )
・40秒以上の間隔をあければ投稿可。
おしりくさい虫など( 携帯のみ?同一内容の投稿に対するマルチポスト規制 )
・「支援」などの同じ言葉を繰り返し投稿することでも受ける規制。
違う内容を投稿すれば解除される。スペースを挟むだけでも効果あり。
■画像投稿報告ガイドライン
ロスカラSSスレ派生画像掲示板
PC用
http://bbs1.aimix-z.com/gbbs.cgi?room=lcsspic 携帯用(閲覧・コメントのみ)
http://bbs1.aimix-z.com/mobile.cgi?room=lcsspic 1.タイトルとコテハン&トリップをつけて絵を投稿する。
尚、コテハン&トリップについては、推奨であり強制ではありません。
・挿絵の場合は、誰の何のSSの挿絵と書く。
・アニメ他公式媒体などにインスパイアされた場合は、それを書く。(例:R2の何話をみてテンさんvsライを描きました)
2.こちらのスレに以下のことを記入し1レスだけ投稿報告。
(SSの投下宣言がでている状態・投下中・投下後15分の感想タイムでの投稿報告は避けてください)
例)「挿絵(イメージ画像)を描いてみました。 画像板の(タイトル)です。
〜(内容・注意点などを明記)〜 よかったら見てください」
・内容:挿絵の場合は、SSの作者、作品名等。それ以外のときは、何によってイメージして描いたのかなど。
・注意点:女装/ソフトSM(首輪、ボンテージファッションなど)/微エロ(キス、半裸など)
/ゲテモノ(爬虫類・昆虫など) など(絵はSSに比べて直接的に地雷になるので充分な配慮をお願いします)
画像掲示板には記事No.がありますので、似たタイトルがある場合は記事No.の併記をおすすめします。
*ただし、SSの投下宣言がでている状態・投下中・投下後15分の感想タイムでの投稿報告は避けてください。
3.気になった方は画像掲示板を見に行く。
画像の感想は、原則として画像掲示板に書き、SSスレの投稿報告レスには感想レスをつけないこと。
画像に興味ない人は、そのレスをスルーしてください。
4.SSスレに投稿報告をした絵師は以下の項目に同意したものとします。
・SSスレに投稿報告した時点で、美術館への保管に同意したものと見なされます。
・何らかの理由で保管を希望しない場合は、投稿報告時のレスにその旨を明言してください。
・美術館への保管が適当でないと判断された場合、保管されない場合もあります。
(ロスカラ関連の絵とは言えない、公序良俗に反するなど)
■保管庫(
http://www1.ocn.ne.jp/~herma/CodeGeass_LostColors/2ch/0.html)への要望、修正依頼
1.保管庫の安全保障
保管庫は本人という証拠(投下時のトリップ&メールの本人認証)がなければなにもしません。
2.メールの本人認証の実施
手順
1 認証希望の旨のメールを保管庫(
[email protected])に送る ※1
2 保管庫より複数のパスワードを返信する ※2
3 任意のパスワードを1つ選択
4 避難所の専用スレ(
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12122/1249745955/)に
トリップを付けて(←最重要!)3で選択したパスワードを投下
※1 そのことが分かれば文面は適当で構わない
※2 キー割れをした時の予備のため
3.誤字修正依頼など。
保管庫への要望、誤字脱字等の修正依頼は次のアドレス(
[email protected])に。
※修正依頼の際には、作品のマスターコード
(マスターコード:その作品の投稿が始まる、スレ番号-レス番号。保管庫の最優先識別コード)
を必ず記述して下さい。
例)0003-0342 のタイトルを○○に カップリングを○○に
(↑この部分が必須!)
マスターコードを記述されず○スレ目の○番目の……などという指定だと処理ができなくなる場合があります。
4.文字サイズや色変更、ルビ振りなど。【諸刃の剣システム】
htmlタグを打つ権限を、職人様に譲渡いたします。(使用可能タグは、保管嚮団資料室を参照)
【使用方法】
まずテキストエディタを開きます。次に、保管庫の本文のところにマウスカーソルを合わせ右クリック、“ソースの表示”をクリックします。
ソースの全文をコピペして、テキストエディタに貼り付けます。改良したものをテキスト形式で保存し、でメールに添付して送ってください。
従来の誤字脱字修正システムを拡張したようなものです。
〜重要!〜
・編集は<body>〜</body>間のみです。書式宣言やCSSは改変しないでください
・保管の際、文字コードは絶対にUTF-8を選択してください
・文字の装飾などは、ある意味文章の創作と同じぐらい感性を問われます。やりようによっては作品自体を台無しにする、まさに“諸刃の剣”です
・背景色などは、投下宣言の際に指定(必ず16進数で!)していただければ、こちらで行います (16進数と色の相関は、保管嚮団資料室を参照)
■lcss保管庫 @wiki(
http://www36.atwiki.jp/lcss/)への作品削除・修正などの連絡
wiki保管庫からのSS作品削除などを希望する場合は
連絡スレッド
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12747/1243581572/ へ。
コピペ重複など明確なミスの修正もご指摘いただければ順次直していきます。
<連絡スレッドガイドライン>
●作品の削除依頼
:作家さん本人からのご依頼のみ対応いたします。
・本人確認のため、名前欄にトリップを入れてください。
(名無しで投稿された作品は削除ができません。
投下時にトリップなしの作品などは、管理人が妥当と判断できた範囲で対応していきます。)
・本文に、削除されたい作品名(掲載ページ名、urlなど、難なく特定できる表記なら何でも可)を記入してください。
作家SSリストごとの削除を希望される場合は、その旨ご記入ください。
●ページ作成上のミスの発見のご連絡
:SSページ作成時のコピペ重複、コピペ抜けなど、明らかな間違いをご連絡いただけましたら順次修正していきます。
こまかな表現の修正、誤字修正などは基本行いません。
・ミスのあったページ名、urlなどを特定できるようにご記入ください。
・ミスの内容をご記入ください。
スピード対応とは行かないかと思いますが、ご協力をお願いいたします。
----以上、テンプレ終了----
>>1乙
さっそく投下させてもらいます
SSというよりも妄想そのものといった感じですが、こんなの出ないかなぁ、というものです
コードギアス 反逆のルルーシュ BATTLE OF KNIGHTMARE
魅力その1 多彩なナイトメアフレーム
アニメ本編で活躍したランスロットや紅蓮をはじめ、ライナーノーツ記載のブリタニアメカニックからサザーランドタンクなどの機体。
ナイトメア・オブ・ナナリーのマークネモなどの漫画作品出演機。他にもDS版コードギアス反逆のルルーシュから無頼やサザーランドの発展機など数多くの機体も登場。
また、本編で描かれなかったナイトオブラウンズたちの専用機などゲームオリジナルの機体も多く収録されている。
噂ではランスロット仮面やくノ一などの歩兵ユニットも登場するとか。
魅力その2 個性豊かなキャラクター
ルルーシュやスザクといったお馴染みのキャラクターはもちろん、ニーナやセシルなどの本編中ナイトメアを操縦していたキャラクターを全て収録。
そして、注目して欲しいのは機体HPとは別に体力ゲージがあるところだ。
この体力はキャラクターたちのスキルを使うためものなのだが、スキルとはルルーシュたちのギアスや藤堂の三段突きなどのキャラクター固有の能力だ。
たいていのスキルは必殺技のような強力な物が多いが、中には戦闘中いきなり機体能力がダウンするシンクーの病弱や、全ての敵の注目を問答無用で集めてしまう玉城のお祭り男などマイナスの能力もあるので気おつけて欲しい。
魅力その3 楽しめる四つのモード
1、ストーリーモード
コードギアス反逆のルルーシュLost colorsの主人公ライ(デフォルトネーム変更可)を操作し、アニメ一期および二期の世界を追体験。
黒の騎士団偏とブリタニア偏の二つが存在しそれぞれの視点からコードギアスの世界を楽しめる。
また、二周目以降は特定の条件を満たすことでIFルートに突入し、本編にはなかった展開が待っている。
2、EXミッションモード
敵を倒せば倒すほど敵が強く、多くなっていく時間制限なしのひたすらハイスコアを目指す『無限シュミレータ』
ナイトメアなしでブリタニア軍に挑む『厳島の戦い』など様々な特殊ミッションに挑戦。
3、通信モード
最大四人での対戦や、ミッション挑戦が可能。
さらに、通信モード限定ミッションや、限定ナイトメアも隠されているのでぜひ探して欲しい。
4、玉城’S BAR
ここではマスター玉城とランダムに登場する来店客の会話が楽しめます。
例 玉城「おう!C.C.じゃねーか!日本にいるなんて珍しいな」
C.C.「たまにはそんな時もあるさ。ピザを頼む」
玉城「了解、……お待ちどうさん!自信作だぜ!」
C.C.「ほう、言うじゃないか。どれ…玉城!貴様はピザを愚弄しているのか!まずチーズの組み合わせからして――」
他にも玉城のスクラップブックが閲覧可能。このスクラップブックではCGギャラリー、人物名鑑、KMF大図鑑の三つをごらんに慣れます。
魅力その4 豪華予約特典
・リフレインディスクV(真・ギアスヒロイン決定戦ほか三本のショートストーリーを収録)
・ランスロット・クラブ可動フィギア
など豪華特典を用意しています。
対応機種 プレイステーションポータブル
発売日 未定
価格 価格未定
以上です
こんなのでれば買うんですけどね
>>1乙
>>前スレ664
個人的にはライが生まれた時代的にチェンバロすらあったのかどうか?って感じ
だから何百年もその形を崩してないバイオリンはライにぴったりな気も。
あと記憶が曖昧になってきたけど
ライは編によって不死というか、死ねないみたいな表現はあったような…
じゃなきゃとっくに自殺できたと思うし。でも表現が曖昧だったよね
バイオリンの起源は16世紀頃だったはずだから近世代入ってたと思う
オルガンは中世やバロック期だから時代的には合ってるね
まあ版権絵なんて何でも有りだし公式ってわけでもないだろうけど
あとライは不死ではないはずだよ、コード保持者ではないし
ライが不死なら主人公やマオや前皇帝さえ不死だったことになってしまうから矛盾が生まれる
死ねないって表現はそれこそ心情的なものだったんじゃないのかね、未練とか心残りとか責任とか
まあそこの心情こそそれぞれの解釈次第だと思うが
不死ではないどころかギアス編とかだと
もういつ死ぬかも分からない、
みたいな感じだったような
お久しぶりです。KOUSEIです。なんの宣言もなしに長期休載して申し訳ありません。
理由は色々あるのですが、主な理由は転勤+部署が変わった事で少々いそがしくなり、以前のように創作に手が付けられる時間が大幅に減少した事です。
プロの小説家のほとんどはサラリーマンをやりながらでも作品を作り続けると聞きます。本当にすごいです。
それでは、前回の続きを投下させていただきます。
あまりにも休載が長かったので、簡単に今までのあらすじを載せさせていただきます。
(注意)以下のあらすじ、及び本作は盛大なネタばれを含むものです。不快に思われる方はスルーの方向でお願いします。
16 :
KOUSEI:2010/01/24(日) 02:10:47 ID:hBVxJbpO
○ロスト・カラーズ〜ゲーム〜
日本侵攻から7年後、エリア11のアッシュフォード学園で、一人の少年が倒れていたところを学園の生徒会メンバーによって保護された。少年の名前はライ。ライは自分の名前以外の全ての記憶を失っていた。
記憶が回復するまで学園に在留してはどうか、と生徒会長であり学園長の孫であるミレイ・アッシュフォードからの勧めを受け、ライはその厚意を受ける事にする。そして、学園生活を送る中でライはとある女子学生と親しくなる。
カレン・シュタットフェルト。生徒会長からライの世話係に任命された彼女は、最初はライの世話を面倒くさいと感じていたが、様々な出来事を通して、ライに好意を抱くようになる。
そして、カレンがライに好意を抱く過程は、ライがカレンに好意を抱く過程と全くの同時進行だった。
やがて、カレンはライに自分の秘密、黒の騎士団の零番隊隊長紅月カレンである事を明かし、さらに、ブリタニア打倒に協力してほしいと懇願する。それは、つまりライに対する黒の騎士団への勧誘だった。
ライはカレンと共に生きる事を決断し、黒の騎士団に入団する。そして、入団からそう日も経たない内に黒の騎士団のリーダーであるゼロに能力を評価され、作戦補佐の地位を得る。
黒の騎士団での活動を通すうち、ライは記憶を取り戻し、自分がかつてのブリタニアの皇族で国の王である事を思い出す。
ライはその事実に悩みながらも、その事をリーダーのゼロに打ち明けた。それを聞き入れたゼロは、ライに最大限の信頼を感じ、その信頼に応える手段として仮面を外した。
ゼロの正体はライの学園での友、ルルーシュ・ランペルージだった。それをきっかけとして、ライはルルーシュと今まで以上の友情を築きあげる事ができた。
愛する女性、親愛なる友。双方を手に入れたライは、過去のしがらみを捨て、彼らと共に今を生きる決意する。しかし、運命のブラックリベリオンが起きる。
○ラスト・カラーズ〜蒼月編〜
行政特区日本、その式典会場。ライは、ユーフェミアと交渉するゼロに同行した。
ライは、行政特区に消極的ながらも賛成という意見だったので、この特区成立が上手くいく事を願っていた。しかし、その願いはユーフェミアの暴走という形で潰えた。更に、この式典でライは重症を負ってしまう。
数時間後、医務室で目を覚ましたライは、ユーフェミアの暴走がルルーシュのギアスが原因だという予想に行き着く。しかし、それを信じたくないライは、本人に確認するために、また、最愛の女性であるカレンを探すために、重症の身を引きずって戦場に向かう。
しばらくして、ライは神根島の遺跡、その祭壇にたたずむ三人の男女を発見する。ルルーシュを組み伏せるスザク。そして、その傍で力なく項垂れているカレン。
その時、突如スザクはカレンに向けて発砲した。思わずカレンを庇うために飛び込んだライは、さらに傷を負う。
怒りに震え、完全に敵となったスザクから逃げられない事を悟ると、ライはカレンだけでも逃げるように言った。
しかし、カレンは首を縦には振らなかった。仕方なく、ライはギアスの力を使って、カレンを逃がし、そして、その後を追おうとするスザクに満身創痍の体で立ち向かっていった。
○ラスト・カラーズ〜蒼失編〜
ブラックリベリオンから一年。ラウンズのナンバーゼロに任命されたばかりのロイ・キャンベルは、友人であり同僚のラウンズであるスザク、ジノ、アーニャと共にエリア11に渡り、新しく総督となったナナリーの補佐という任に付く。
ゼロの復活に伴う黒の騎士団絡みの問題を、同僚のラウンズや、ナナリー・ローマイヤ・ロイの副官になった元グラストンナイツのアルフレッド達と協力しながら対応してきたロイだったが、
エリア11でできた友達のシャーリーの死、そしてスザクによる、かつての恋人を探す黒の騎士団幹部カレンへのリフレイン投与未遂事件をきっかけにスザクとの関係に溝ができてしまう。
更に皇帝不在、カレンから唇を奪われるなどの問題を経て、ロイはそれらの対応や心の整理をする必要に迫られた。そんな中、実の妹のように思っているアーニャから個人的に呼び出されて……。
○シーン12「 初 恋 」Aパート
涼しい風が吹いていた。
政庁の中庭である。中央の噴水を囲うようにコンクリートの歩道が置かれ、それに沿って植えられた木々がある。
「それで、話っていうのは?」
政庁から噴水に続く階段。その最上段に立つロイは、数段下で腰掛けているアーニャに尋ねた。もうこの広場に足を運んでから十分は経っている。その間、アーニャはロイに背を向けたままだ。
返事は無い。ロイは、それからも辛抱強くアーニャからの反応を待った。
「ロイ、覚えてる? 私たちが出会ったときの事」
「もちろん覚えているよ。あれは、確か闘技場だったね」
すでに遠い昔の出来事のように感じられるが、ほんの一年前の記憶である。
ラウンズ就任が決まって、程なくして御前試合が執り行われる事になった。形式は2on2。ロイはスザクと組み、対戦相手はジノとアーニャのコンビだった。
結果は、ロイ達の惨敗。
最たる敗因はロイとスザクの連携にあった。今でもよく覚えている。まるで貴様に背中など預けられるか、とでも言わんばかりのスザクの個人プレイ。
結果、ロイも個人プレイに走らざるをえず、それなりのコンビネーションを駆使して戦うジノとアーニャに各個撃破の戦法をとられて、試合開始三分で勝敗が決まってしまった。
「あのときは、ほんとボロボロだったなぁ」
しかし、後にロイとスザクはブリタニアの二本槍と呼ばれるような連携を築くに至る。
今あの時と同じ組み合わせで戦えば、ロイとスザクはきっと圧勝するだろう。というのはジノの台詞である。
「でも、それがどうしたの」
「正直に言えば」
アーニャは、ロイに向き直った。
「私は、あの頃のロイを良く覚えていない」
アーニャが常日頃から不安を抱いている一種の病気。それを知るロイは、表情を険しくした。
「まさか記憶が……」
アーニャは首を横に振る。
「違う、そうじゃない。覚えていないっていうのは、ただ単に当時の私がロイを覚えようとしなかっただけの話」
「?」
「記憶に残そうと努力しなかったって事」
アーニャの言葉の意味を咀嚼して、ロイは肩をすくめる。
「……なるほど、すなわちどうでもいい人間だったって事か」
「昔は、ね」
アーニャの口調には、意味深なニュアンスが含まれていた。
それを理解し切れていないロイは、黙ってアーニャの言葉を待つ以外の選択肢は無かった。
「ロイ、私たちはどんな関係」
「どんな関係って?」
「言葉で表すと、何? 答えて」
予期せぬ質問だった。ロイは戸惑いながらも考える。
「仲間、友達、戦友、いろいろ例えられるね。ああ、あとたまに一緒に歩いてると兄妹とかにも見えるらしい」
つらつらと思い当たるものを挙げてみる。しかし、そのどれもがアーニャを納得させなかった。
「私は、もうひとつ欲しい」
「もう一つ?」
「ロイ……私は――」
何かを言おうと――打ち明けようと足を踏み出し、近寄ってくるアーニャ。それをロイは、
「アーニャ!」
と、横に突き飛ばした。
目を丸くするアーニャ。しかし、彼女はすぐに、崩れたバランスを取り戻して、自ら半歩後方に飛んだ。
同時に、鋭いものが風を切ってロイに迫ってきた。
ロイの動きは速かった。背のマントを取り外すと、それを鞭のように思いっきり振った。
何かがマントと接触した。
飛来した何かは、力を失って地面に落ち、いくつもの乾いた音を立てる。
それは数本の投げナイフだった。
「このナイフは……」
見覚えのあるナイフに、アーニャは不快感をあらわにした。
ロイは地面に落ちたナイフには一瞥もくれずに、それが飛来してきた方向に顔を向ける。
「相変わらず、女をたぶらかすのは大得意らしいなぁ」
返ってきたのは、人を見下すような断続的で短い笑声だった。
「相変わらずですね。ブラッドリー卿」
逆立った髪形。切り捨てるような鋭い目元。細く尖った顔立ち。細身の体躯。オレンジ色のマントと白い軍服。
ルキアーノ・ブラッドリー。ナイトオブテンにして、最恐の騎士。吸血鬼にもたとえられる残忍な戦闘方法は、仲間にもあまり好かれておらず、ロイも認めていない。
「育ちの悪い男は、出世の仕方がそれしか無いものなぁ」
ルキアーノからの軽口は、顔を合わすたびに言われていたので、その事については別段怒りもわかない。しかし、
「どういうつもりですか」
この時のロイの口調には、明らかな怒気があった。
「んっ、どう、とは?」
「今のナイフ。いくつかはアーニャを狙っていた」
ルキアーノは呆然とした後、ハッと吹き出した。
「だから何だ。まさか怒ったのか? あの程度、避けられない方がどうかしている。腕が落ちたんじゃないのかナイトオブシックス」
ルキアーノは尖った視線をアーニャに向けた。
アーニャは悔しそうに目を伏せた。今の攻撃にアーニャはまったく反応していなかった。だからこそ、ロイはアーニャを突き飛ばした。いつものアーニャならこれはあり得ない事だった。何か思いつめていたようなので、それが原因かもしれない。
ロイはアーニャを庇うように立つ。マントを握る力はいまだ緩めない。
「だからって、悪ふざけにも程があるでしょう」
「程があるから、何なのかなぁ?」
おちょくるような口調。ニヤけた笑み。懐からチラつく得物。
「演技くさいんだよ。お前の紳士的行動、言動、全てな」
それが癇に障る。と彼は言いたいのだろう。
「……」
「何を我慢してるんだ。来いよ年下趣味のペド騎士野郎」
視線が交わる。ルキアーノは得物に手を近づけ、ロイは警戒してマントを握る感触を確認する。
そのままルキアーノはあくまで楽しげに、ロイはあくまで無表情に、時は流れた。
『それぐらいにしておけ、ナイトオブテン』
空気を切り裂くのは、何も物質的なものだけとは限らない。この声もまたそうだった。
三人は声のした方向――空を見上げた。
KFグロースター。背中にはフロートが付いている。それが、小さな風を巻き起こしつつ、優雅な動きでロイとルキアーノの間に着地した。
「このグロースター、まさか」
ロイは驚きの表情で、舞い降りた鋼鉄の騎士を見た。
『キャンベル卿の好みが年下など、そんな事はありえません』
続けて、上空からもう一騎KFが降りてきた。こちらはフロート付きのヴィンセントだった。しかし、通常のヴィンセントとは少々形状が違う。よく見ればグロースターもだ。大まかな外見は変わらないが間接部に駆動系保護用のパーツが取り付けられている。
あのパーツが付けられているということは、中に乗っている騎士はKFの性能以上に無茶ででたらめな動きをする新人騎士か、無茶ででたらめな動きをする達人のどちらかだ。
どちらなのかは言うまでもない。それは、先ほどのKFでの見事な着地を見れば明白である。そして、達人同士というのは着地動作一つ見れば中に乗っている騎士が誰なのかが分かるものだ。
「ナイトオブナイン、それにナイトオブトゥエルブまで。どうして」
『愚問だな、アーニャ』
グロースターからは、聞きなれた女性――ナイトオブナイン、ノネット・エニアグラムの声が響く。
『ええ、そんなのは愛しのロイ君に会いにきたに決まってるじゃないの』
ヴィンセントからはナイトオブトゥエルブ。モニカ・クルシェフスキーの声。
『と、言いたいところですけど』
『まぁ、実を言えば仕事だな』
「興が削がれたな」
ルキアーノが脱力して得物を懐にしまう。そのまま彼はマントを翻し、ロイたちから背を向けた。
グロースターの頭部メインカメラがルキアーノを捉える。
『どこに行くんだルキアーノ。これからシュナイゼル殿下と会議だぞ』
ルキアーノは軽く手を振って、
「時間にはちゃんと間に合わせますよ。ちょっと気になる事がありましてねぇ」
次に、ルキアーノはロイを見て、
「月並みな言葉だが。気を付けるんだな。攻撃は前からだけとは限らない」
挑発的に言い捨てて、ルキアーノはその場から離れていった。
「……」
ロイは、去り行く騎士の背中を見ていたが、
「久しぶりだなぁ、ロイ!」
と、ノネットに抱きつかれて、最恐の名を持つ騎士の姿を見失った。
「お久しぶりです、エニアグラム卿。相変わらずですね」
顔に突きつけられた懐かしい感触が、ロイを戸惑わせる。
「お元気そうでなによりです」
「まったく、すぐ帰ってくると思っていたのに、なんだかんだで一年近い出張になるとはな。こんな事なら、お前にエリア11行きを許可するんじゃなかった」
「ははは……」
ロイは乾いた笑みを浮かべた。もちろん、ロイのエリア11行きを不許可にできる権限などノネットには無い。
「仕方が無いから私から来たというわけだ。シュナイゼル殿下の護衛としてな」
「シュナイゼル殿下もいらっしゃっているのですか?」
「そうよ」
答えたのは、すでにコックピットブロックから出て、地面に降りてきたモニカだった。
「まぁここも戦場になるでしょうからね。っていうかいい加減にしなさいなエニアグラム卿。ロイ君が嫌がってますよ」
「戦場?」
「そうよアーニャ。黒の騎士団が攻めてくるとすればこのエリア11以外無いのだから」
「そのための私達さ。しかし、ラウンズがここまで勢ぞろいするのは本土だって中々無いぞ」
「……」
アーニャは、黙ってロイを見上げた。
ロイはアーニャの視線に気づいて「大丈夫さ」と言って笑った。
○
ロイが一瞬見せた真剣な顔。アーニャは戦いの到来を実感し、浮かれた気分を押さえ込む。
――よりによって今ですか?
ロイの副官アルフレッドの言葉がよみがえる。
タイムアップだ。まだまだ猶予があると思っていたが、状況はアーニャが思っていたより切迫していたらしい。さすがにこうなってしまえば、自分の気持ちだけでロイを引っ掻き回す事はできない。
実際、アーニャは分かっていたのかもしれない。いや、当然分かっていた。
ただ、まだ大丈夫だと思い込みたかった。
予想される今回の戦いは大きい。それだけに気持ちの整理を付けたかった。
自分達は今まで数々の戦場を生き抜いてきた。しかし、次もそうなるかどうかなど誰にも分からない。
はっきりと言えば、死ぬかもしれない。
そんなのは毎度の事だが、それでもアーニャの心には絡みつくような不安感が巻き起こる。
不安――この感情を明かさないままの別れ。それがアーニャには怖い。
「アーニャ、どうかしたのか?」
モニカとノネットにもみくちゃにされながら、ロイはアーニャに声をかけた。
「……何でもない」
「そういえば、僕に話があるんじゃなかったっけ?」
「ううん。また今度で大丈夫」
そう答えた声は、とても小さかった。
○
「まさか、ラウンズが三人同時に来るとは……。シュナイゼル殿下も中々思い切った人事をなさる」
友人がもてあそばれる現場を、政庁二階の窓から眺めながら、ナイトオブスリー、ジノ・ヴァインベルグは同情する。
『それだけ、エリア11の状況が切迫しているという事だ』
ジノの後ろにあるモニターに、ナイトオブワンの姿があった。
「なるほど、そういったお考えがあるのなら文句なんてありませんがね。俺は、てっきり卿が二人の押しに負けたのかと思いましたよ」
『全壊二十三機』
「はい?」
『私が悪かったのだ。エリア11に派遣するラウンズは二人。一人はルキアーノと決めていたから、あと一人は二人で平和的に話し合って決めよ、と言ってしまった。私としては“平和的に”の所を特に強調したつもりだったのだがな』
「……それで?」
『ノネットとモニカは、平和的に話し合って、平和的に話し合う手段を放棄したのだ』
ナイトオブワンの口から、濃いため息が漏れる。
『ラウンズとラウンズ親衛隊との模擬戦。物理的損害はKF全壊二十三騎。中破九騎。小破三騎。人的損害は重症二十名。軽症十二名。敵前逃亡二名』
「ははは、実弾でやりあっても中々それだけの数字は出ないでしょうね」
そもそも模擬戦なら銃弾はペイント弾。ナイフは切っても相手に色が付くだけのペンナイフで、普通ならKFは壊れたりはしない。全壊なんて前例が無い。
『聞きつけて現場に駆けつけてみれば、最後に立っていたのはあの二人だけだった。それを見たときの私の気持ちが分かるか?』
中堅管理職は大変だ、とジノは無責任に思った。
「おもちゃを欲しい喚く子供をおとなしくさせるには、おもちゃを与えるのが一番手っ取り早いんでしょうが。長い目で見たらそれはどうなんですかね」
ジノは、庭の真ん中でもてあそばれている友人を見る。
『押しに弱い上司だと笑ってみたらどうだ』
振り返ると上司の顔がムッとしていた。
「冗談ですよ。せいぜいフォローに回るとしましょう。まぁ、もっとも」
ジノは苦笑する。
「あのお二方相手では、ロイの精神的安定が損なわれるのも時間の問題だと思いますよ。アーニャの件もありますし」
『男と女というのはやっかいだ。本当にな……』
「特殊なケースではあると思いますけど」
『まぁ、な。とにかく。戦力だけは充実させたのだよろしく頼む』
「分かりました。そのあたりは全員ラウンズなんですから。しっかりやりますよ」
モニターの光が消える。それに伴って、庭からの声がよく聞こえるようになった。
『いい加減にしてノネット。そんなでかいもの押し付けたら、ロイの顔がつぶれる』
『ハハハ。文句があるなら、お前もつぶしてみせればよかろう。んっ?』
『あらあらエニアグラム卿。翼の無い動物に空を飛んでみろというのも無理な話でしょう。ふふふふ』
『……』
自分の左手袋にそっと右手を持っていくアーニャを見ながら、このメンバーでの活動に改めて大きな不安を覚えるジノだった。
○
ノネット達とはいったん別れ、シュナイゼルに挨拶へ向かう準備のために、ロイは一度、執務室に戻ろうとしていた。
部屋に入ろうとドアノブに手をかける。
『お前達は私達を馬鹿にしているのか』
中からアルフレッドの静かな怒声が聞こえた。
ロイは怪訝に思いながらも自分の執務室の扉を開けた。
「どうしたアルフレッド」
「あっ、おかえりなさいキャンベル卿」
「あれ、君は?」
出迎えたのはアルフレッドだが、ロイはその傍にいる人物に目を留めた。
それは少女だった。歳は十代中盤からよくいって後半。髪は後ろの一部が肩まで届いている。軍服を着ているから軍人なのだろうが、顔が幼いために、いたずら好きの子供が興味で父親のスーツを着たような、そんな違和感を感じさせる。
その少女は、部屋の主の突然な帰還に驚いたのだろう。慌てた様子で頭を下げた。
「お初にお目にかかりますキャンベル卿。私は――」
「ヴァルキリエ隊のマリーカ・ソレイシィです」
少女――マリーカが言い終わる前にアルフレッドがぶっきらぼうに紹介した。
「ヴァルキリエ隊? ということは、ブラッドリー卿の」
先ほどのルキアーノとのやり取りを思い出して、ロイは少々身構えるようにマリーカを見る。
「どういった御用でしょうか?」
「ぶ、部隊着任の挨拶に参りました」
「挨拶って、あなたがですか?」
ロイにそのつもりは無かったが、マリーカはにはロイが責めているように感じたのだろう。彼女はばつが悪そうに顔を俯かせた。
隊着任挨拶。ラウンズとそれに付き添う親衛隊が先任のラウンズの元に挨拶に来る、という別段なんて事のないものだ。
だが席次が一番上のナイトオブワンならともかく、通常は先任のラウンズに、後任のラウンズが挨拶に出向くのが一般的だ。それ故に、モニカもノネットも後でロイの執務室に顔を出す事になっているし、アーニャとジノの元にも同様に顔を出すはずだった。
「ブラッドリー卿は後任で戦地に赴かれてもあまり挨拶はなさいません。だから」
「そんな事は知っている」
マリーカの弱々しい弁明を、アルフレッドはどこか高圧的な言葉で遮った。
「しかし、なぜ一番下っ端のお前がくるんだ。それならば、ヴァルキリエの隊長格が来るのが普通だろう」
「あ、あの。ですから私が代理として」
「それが舐めていると言ってるんだ。キャンベル卿への挨拶には下っ端のお前で十分というのがお前達の総意なのか」
「……」
マリーカは押し黙ってしまった。アルフレッドは更に問い詰める。
「どうなのだ。事と次第によってはタダではすまさんぞ」
ここにきて、ロイはなぜアルフレッドが怒っているのかを理解した。アルフレッドの気持ちをロイは嬉しく思う。しかしながら、ロイ自身はそういったことで腹を立てるタイプではない
「アルフレッド。それぐらいにしておくんだ」
「しかし、キャンベル卿」
「アルフレッド。わざわざ挨拶に来てくれたソレイシィ卿に対し、立たせっぱなしとはいかがなものかな」
アルフレッドは、納得しきっていない表情を浮かべながらも、やがて小さくうなずいた。
「……イエス・マイロード。失礼いたしましたソレイシィ卿、どうぞこちらに」
○
「君達二人は知り合いなのか」
テーブルの対面に腰掛けるマリーカと、それぞれにコーヒーを配るアルフレッドを交互に見ながら、ロイは問いかける。
ちなみに、マリーカの分のコーヒーにだけ、配られた時すでにミルクと砂糖が入っていた。ロイが問いかける気になったのもこのあたりに要因があった。
「はい。私が以前エリア11に赴任していた頃、コーネリア様の侍女を勤めていたのがこのマリーカでした」
「アル先ぱ――じゃなくて、アルフレッド卿にはとても良くしていただきました」
「……せいぜい暇なときに一緒に訓練したぐらいだ」
「それでも、女性騎士はただでさえ少ない上に、一番年下で孤立気味の私に一番最初に声を掛けてくれたのが先輩でしたから」
彼女は真正面にならないよう、しかしながら視界の隅になり過ぎないように横目でチラチラとアルフレッドを見る。ロイは、二人の間に行きかう感情の矢印をなんとなく理解した。
「なるほどね。アルフレッドは優しいから」
ロイはマリーカにコーヒーを飲むように促した。マリーカはいただきます、と言ってカップに口を付ける。
「ちょっと待ってください。何か勘違いしていませんかキャンベル卿」
アルフレッドがロイに抗議する。
「別に深い意味は無いですよ。二人用のシュミレーターを一人でやってるやつがいたから、うっとうしくて声をかけただけです」
「でも、それからも一緒に訓練したんだろ」
「マリーカは姫様の従卒ですから、いざというときに一人前に戦える必要がありました。それなのに最初のシュミレーターでの腕前があまりにひどいものでしたので」
「でも、コーネリア様の従卒になるぐらいだから腕は良いんじゃないのかい」
ロイは改めてマリーカを見る。
小柄で細身な少女であり、一見すれば戦士とは程遠い印象を受けるが、そんな事を言い出したら同僚のアーニャはどうなるのだろう。それに、あのブラッドリー卿の親衛隊といえば、世界各国の前線を飛び回っているはずで、そんな部隊に一年も在籍していたのであれば、
「一応、陸戦繰機科では首席卒業だったみたいですけど」
横からアルフレッドが付け加える。
「それは凄いな」
ロイは過去に一度、まだアーニャに教育係として指導を受けていた頃、彼女の付き添いで陸戦繰機科の講師を受け持った(押し付けられた)事があるが、どの学生もレベルが高かった事を覚えている。
「い、いえ。当時の私なんて、実戦も経験していないただの女性騎士で」
「そう言うからには、少しはマシになったんだろうな」
「えっと……」
二人のやりとりを見て、ロイは思わず笑ってしまった。
「アルフレッド。ラウンズ親衛隊の隊員に対して、腕前を問うのは失礼じゃないのかな」
「それはそうなんですが、こいつはどこか危なっかしくて……」
「わ、私、頑張ります。先輩のために」
この言葉を受けて、アルフレッドが表情を険しくした。
「馬鹿。俺のために頑張ってどうする。皇帝陛下のため、国のため、国民のために戦うのが我らの務めだろう」
「すみません……」
肩を狭めるマリーカ。アルフレッドが学園での教師役の時に見せる、困った生徒を諭す時のようなため息をつく。
「まったく、そういうところが心配だというのだ」
「……」
マリーカが更に肩を小さくした。
「まぁまぁアルフレッド」
とここで、ロイは壁にかけられた時計を見る。時刻はシュナイゼル殿下との待ち合わせの二十分前だった。
「おっと、すまないソレイシィ卿。私はそろそろ出掛けなければいけないんだ」
「あっ、すみません。長々とお邪魔してしまって」
立ち上がろうとするマリーカを、ロイは手で制した。
「アルフレッドと積もる話もあるようだから、ゆっくりしていくといい。とにかくソレイシィ卿。今後ともよろしく頼む」
「はい。ありがとうございますキャンベル卿」
「積もる話なんて、私は別に何もありませんが……」
ロイは席を立ち、副官に言い聞かせる。
「アルフレッド。客人を丁重におもてなししておくように。これは命令だよ」
「……イエス・マイロード。キャンベル卿がそうおっしゃるのであれば」
アルフレッドはやはり納得しきっていない表情を浮かべた。
○
簡単な準備を済ませ、アルフレッドにはシュナイゼル殿下との合同会議までに合流すれば良い旨を伝えてから、ロイは執務室を出る。
廊下をしばらく歩いていると、
「キャンベル卿」
と声をかけられた。振り返ると、そこには金髪の少女が立っていた。軍服を着ている事から事務員ではなく軍人、それも騎士だというのが分かる。
「君は?」
少女は整った敬礼を披露した。
「お初にお目にかかります。マリーカの先輩のリーライナ・ヴェルガモンといいます」
「ソレイシィ卿の先輩? ということは」
「はい、私もヴァルキリエ隊員です」
「……」
ロイはあごに手を添えてジッとリーライナを見る。今日だけでヴァルキリエ隊の隊員二人と顔を合わせたわけだが、その二人ともがロイと同世代の少女である。
「あの、キャンベル卿。私の顔に何か付いてますか?」
リーライナが照れと不審さが混ざり合ったような表情を浮かべる
「いや、すまない。ブラッドリー卿の人間性に更なる興味が沸いただけだ。気にしないで欲しい」
「はぁ」
リーライナはよく意味が分からないといった顔だが、別段問い詰める内容でもないと判断したのだろう。とりあえず納得して見せた。
「えっと、お呼び止めしたのはマリーカの件でして。あの〜、キャンベル卿。お怒りでしょうか?」
「怒る? なぜ?」
「実は、キャンベル卿の元にマリーカが挨拶に行くようにけしかけたのは私達なんです」
意外な言葉に、ロイは思わずほぅ、と声を漏らした。リーライナは言葉を続ける。
「本当に申し訳ありませんでした。ヴァルキリエの隊長は、後ほどご挨拶に伺います。ですので、決して我々がキャンベル卿を、その……軽視しているとかそういうことは一切ありませんので……」
「なぜですか?」
「えっ?」
「いや、なぜそんなソレイシィ卿をけしかけるようなマネをしたのか疑問に思ったから」
「ああ、それは」
彼女は一拍置いて、
「応援です」
きっぱりと、そしてサラッと言った。
「応援?」
「はい。応援です」
「どういった応援?」
「あの方がエリア11で負傷されて本国で長期入院した時、私達は違うエリアにいました。それを聞いてあの子、もちろん心配してたんですけど長期なら出張先から帰った時に会えると嬉しそうに言ってまして。
まぁ、心配半分、嬉しさ半分という微妙な気持ちを抱えながらも急いで仕事を終わらせて本国に戻ったんです。でも、実際にお見舞いに訪ねてみれば、当の本人は体の回復を待たずにエリア11へ行ってしまった後でした」
「……」
「それからも中々会えるチャンスも無く。それにあの子、奥手だから電話もかけないし、理由も無ければ会いにもいけないみたいで。いつもあの人は忙しい人だからって言って、自信なさげに笑うんですよ。流石にかわいそうで」
ロイは眼鏡をかけなおして、「なるほど」と納得し、
「やっぱりそういう事なのか」
「ご理解いただけたようで助かります、キャンベル卿」
リーライナは、ここで深く頭を下げた。
「しかしながら、後で考えて、やはり失礼な事をしたと反省しております。申し訳ありません。先ほども申しましたが当部隊の隊長が改めて謝罪に伺いますので、どうか許していただけないでしょうか」
「別に構わない。彼女にも、いつでも気軽に訪ねてくるように言っておいてくれ。大体三時ぐらいならアーニャやジノを交えてお茶をしている事も多いから。もちろんアルフレッドもね」
リーライナは少し意外そうな表情をした後、「ああ、なるほどですね」と呟いて微笑んだ。
「何かな」
「いえ、初めてお会いするということで緊張していましたが、噂どおりの方みたいで安心しました。私はあなたの事が好きになれそうです」
突然の告白に、ロイも微笑みで応じる。
「ありがとう。僕の執務室のお茶会は、誰でも大歓迎だから」
「ありがとうございます」
「用件はそれだけかな? それなら、僕は用事があるので失礼するよ」
「ええ、お引止めして申し訳ありませんでした」
ロイはうなずいて踵を返す。しばらく歩いてからリーライナの声がきこえた。
「お茶会の件。私もお言葉に甘えさせていただいてよろしいですか?」
「僕は、誰でも大歓迎と言ったさ」
ロイは背中越しに手を振って応じた。
シーン12「初恋」Aパート 終わり。Bパートに続く。
投下終了です。次に更新できるのはいつか分かりませんが、なるべく早く仕上げたいと思います。
ではでは。
面白かった!
ロイ、紳士ですね。
空気を読んだジノや、素直になれないアルフレッドにマリーカ、
物怖じしないリーライナ、苦労性のナイトオブワン。
細やかに気配りがあって、それぞれの人達がいとしくなります。
またいつか、続きを拝読できるのを楽しみにしています。
おひさしぶりです!
カレンとアーニャの前哨戦で連載が終わってしまったかと思いました
本当に良かった…
でも、更に三人参戦したとなると記憶が戻った時にどうなるか?
取りあえずワンさんにソル○ック胃腸薬を送りたいです
>>23乙でした
ノネットとモニカも加わってさらに波乱の予感のするアーニャの恋も、奥手なマリーカの恋もこの後の展開が楽しみです
投下したいと思いますが、前に投下した「生きる理由」の続きっぽい話です
ただ、違うキャラの視点になっていて続きっぽくないのでつながっている程度におもってください
闘う理由
彼女が。
優しかった彼女が。
美しかった彼女が。
ともに歩むはずだった彼女が。
優しい世界を創るはずだった彼女が。
彼女が死んだ。
だから、俺は!
トウキョウ租界は戦場とかしていた。騎士団の策によって外延部がパージされ、内側にも多くの騎士団員がなだれ込みブリタニア軍と銃火を交えている。
租界到着直後眼下に三機のKMFを見つけ急降下する。本当は早くヤツを探したかったが、この租界にはまだ友達がいる、無視は出来ない。
突然目の前に現れた俺に驚いたらしく敵機の反応が遅れる。先頭に立っていた隊長機と思わしき機体に照準を合わせ引き金を引こうとしたとき、横から銃撃が来る。
何とかヴレイズルミナスを展開して防いだがヴァリスをやられた。舌打ちして銃撃のあったほうを向くと蒼い機体がいる。
なにか通信のやり取りがあったようで、最初に狙った三機の無頼がこの区域を離脱する。俺はそれを追おうとしたが、蒼い機体に阻まれる。
邪魔をする敵機にMVSで切りかかるが、敵はそれを右手に持った刀で受ける。
『少し話がしたい』
オープンチャンネルでいきなり語りかけられる。この声を俺は知っている。学園でともに勉学に励んだ銀髪の彼。
「ラ、イ?」
そんなはずはない、彼が騎士団にいる分けない。彼までヤツの手先になっているなんて、そんなことある分けない。
必死に否定しようとするが、追い討ちをかけるように再び語りかけられる。
『安心してくれ、アッシュフォードに危害は加えない。だから僕の話を聞いてくれ』
間違いない。ライだ、ヤツはライまで利用して!
蒼い機体の正体が友だと分かった瞬間、今まで体の内で燃えていたものがよりいっそう大きくなる。
いや、落ち着け。彼は話をしたがっている、まだ説得の余地がある。
「ライ、すぐにその機体を捨ててアッシュフォードに戻るんだ。今なら騎士団との関係を隠せる」
頼む、君まで俺を裏切らないでくれ。そんな切なる願いも彼には届かなかった。
『それは出来ない。君こそこれ以上闘うな、特区の惨状を見ただろう?もう、夢は終わったんだ』
夢はおわった?違う、違うよ、壊されたんだ、ヤツに!
「だからって!こんな戦いなんの意味がある!」
溢れる激情のままに、彼に詰め寄る。
「君たちは騙されてるんだ!全ての元凶はゼロなんだ!」
届くと思っていなかったその言葉にライの動きが鈍る。
『…それは、どういう意味だ?』
距離をとりながら、問われる。まさか、彼はまだヤツの力に冒されていない?
それは俺にとって救いにもなる希望だった。そうだ、彼に全てを打ち明け共にゼロを討てば夢は、彼女の望んだ優しい世界は取り戻せる。
「信じられないかもしれないが聞いてくれ。ゼロは―――…」
俺は“あの人”から聞かされた全てを彼に話した。正直自分でも半信半疑な話だったが、彼はその話を真剣に聞いてくれた。
「…―――これが、全ての真実だ。だからライ、君も俺と一緒にゼロを討とう」
機体の右手を差し出しながら願う、手をとってくれ。君は俺とともに歩いてくれ。
しかし、彼の答えは“左手”だった。
彼に拒絶されたことに呆然として何も行動できない。そのまま左手から流れる輻射波動が右腕を伝わって本体に達しようとしたとき、俺の中のあの力がささやく『生きろ』と―――
―――次に気づいたときには右腕を失って空中から彼を見下ろしていた。遅れて彼に拒絶されたことを思い出し通信を入れる。
「なぜだ!君もあの力に冒されているというのか!」
言いながら残った左手で切りかかる。
『君の話は信じよう。今までの辻褄も合う』
「ならなんで!」
あいつの為の戦いなんか続けるんだ!そう続けようとしたがそれは彼の言葉に遮られる。
『騎士団には仲間がいる!』
言葉と共に鋭い剣戟が迫る。片腕を失った今、それを捌くこともままならず後退を余儀なくされる。
『生きろと言ってくれた大切な人がいる!』
後ろにさがる俺に更に彼の言葉と刃が襲い掛かる。
『だから僕は!皆の願いのために闘う!』
居合い抜きのような切り上げにMVSが弾かれる。がら空きになった胴体に左腕が迫る。
先ほど右腕を破壊されたことが頭をよぎり、飛翔しようとして自分が架橋下に誘導されていたことに気づく。
勢いそのままに背中から道路裏に突っ込み機体が激しく揺れる。警告表示の浮かぶモニターに映る彼の機体が突きの体勢を取っている。
身をよじりその突きをかわすが、左胸から頭部にかけて刃が走る。
地面に落ちると先ほどの突きでファクトスフィアを失い何も見えない左側から衝撃が走る。おそらく蹴りを食らったんだろう。
「くそ!」
悪態をつきながら立ち上がろうとするが、彼に左腕を踏みつけられ、刃をコックピットの前に突きつけられる。
『これはもうゼロだけの戦いじゃない、全日本人の望みなんだ』
彼があと少しでけ刃を進めれば俺は死ぬだろう。だけどヤツに会ってすらいないのに立ち止まるわけにはいかない!
フロートの浮力を利用して彼を押しのけ立ち上がる。
「ライ、すまない」
短く謝る。彼を倒すいや、殺さなくてはヤツのところまでたどり着けない。
ランドスピナーとフロートを両方使った突撃。今までも他のKMFとは段違いだったGが一層強くなる。
彼もまた駆ける。
「おぉぉぉーーー!」
『はぁぁぁーーー!』
叫びと共に二機が激突しようとした瞬間、あの合成音声が響く。
『そこまでだ!両者とも引け!』
その声に俺もライもとっさに後方に飛び下がる。
声の元を探せば、ヤツ“ゼロ”の乗るガウェインが上空からこちらを見下ろしている。
『貴様との決着は私がつけよう。ついて来い』
傲慢に命令し背を向けてしまう。その後姿を追おうとしたが、そこでライが声を上げる。
『待ってくれ!彼との決着なら僕が!』
『お前にそいつが殺せるのか、“友達”なんだろ?』
ライには出来ない。まるでそう言うようにゼロは振り向かずに飛んでいってしまう。
なおも言葉を続けるライに申し訳ないと思いつつも俺も飛び立つ。
ライが俺にも叫ぶが、振り返らない。ゼロと決着がつけられるのなら彼には用はない。
ゼロの言葉を信じた俺は馬鹿だ!
導かれ到着したのはアッシュフォード学園、しかもヤツはいまクラブハウスに右手のハーケンを向けている。
「卑怯だぞ!俺と決着をつけるんじゃなかったのか!」
『人質も立派な兵法だよ。さあ、決着をつけようか!』
言葉が終わる前に両肩からハドロン砲が発射される。
それを地面に降下してかわし、MVSで切りかかる。
「これでぇーー!」
刃がガウェインに届く前に突如機体が停止する。コックピットのライトも消え、全てのシステムがダウンする。
以前式根島で仕掛けられたものと同じ罠。
『あとはお前たちに任せたぞ』
動かない分かりつつ操縦幹をガチャガチャと動かしているとそういってゼロが再び飛び立とうとしている。
「待て!どこに行く!」
『私はお前と遊んでいる場合じゃないんだよ』
それきり飛び立ってしまいすぐに見えなくなる。
周りでは騎士団員が様々な機材を持ち出し俺をここから出そうとしている。
ゼロを目の前にして何も出来なかった。いや、それ以前にヤツがまともに戦闘に応じると思ったのが間違いだった。
くそ!俺は何をやっていいるんだ!友達でありながら覚悟を決めて挑んできたライに背を向けてまで来たというのにこの様か!
自己嫌悪に陥っていた俺の耳に聞きなれた生徒会の仲間の声が届いた。
まさかと思い顔を上げると、会長、リヴァル、シャーリーの三人が団員に銃を向けられている。
「ゼロと話をさせて!ゼロが私たちを傷つけるわけないんだから!」
シャーリーが二人を庇いながら叫ぶ。なぜそんなことが彼女にわかる?まさか彼女もゼロの正体に気づいているのか!
「ゼロのことなら親友の俺が一番よくわかってるよ!こういうとき容赦しないってな!」
「やめろ!」
彼女たちを傷つける分けにはいかないと思いとっさにコックピットから身を乗り出す。
「けっ、ブリキのためなら出てくるってかよ。だけど機体さえ手に入ればお前はいらねんだよ!」
そう言いながら一人の団員が銃の引き金に指をかける。
「うおぉ!」
引き金が引かれる瞬間アーサーが銃に飛び掛り明後日の方向に弾丸が放たれる。
そのことに驚いていると、畳み掛けるように今度は空から銃撃が降ってくる。
何事かと上を向くと、フロートユニットを取り付けた白いサザーランドと空中戦艦アヴァロンがいる。
そのサザーランドが機体を束縛している罠を壊しながら降りてくる。
『大丈夫?』
「セシルさん!?」
サザーランドのパイロットはなんと普段お世話になっているセシルさんだった。なぜ彼女がKMFに乗っているのか。
混乱している俺に説明もなしに話しを進めていく。
『今エナジーを交換するから、それに右腕もね』
「いったいどうしてここに?」
『取り返しにね、いろいろと』
やっとのことで紡ぎだした言葉に答えたのはロイドさんだった。
『それに、ゼロを追うんでしょ?だったらこんなところでぐずぐずしてちゃダメだよ』
命令違反の上機体を奪った俺にまるで茶化すように言う彼なりの優しさにこみ上げてきた涙を堪える。
今はまだ泣いている場合じゃない。
「はい。学園と皆のことはお願いします」
そういって再び飛び立つ。
右腕はサザーランドのモノに交換したが、接続に問題はない。ゼロはどこに行った?
空から租界を見渡していると通信が入る。
「ロイヤルプライベート?」
皇族専用回線からなんで俺に?
疑問に思いながらも通信を開くと、そこに映し出されたのは血まみれのコーネリア殿下だった。
『ゼロの行方について話しい』
怪我のことなど気にした風もなくそう言うコーネリア殿下に俺はこの言葉しか返せなかった。
「イエス・ユアハイネス」
到着したそこはかつて彼女が愛した庭園とは思えないほど荒れていた。
土はえぐれ、草花は燃えKMFの残骸が今なを炎を上げている。コーネリア殿下はその残骸の一つに背を預けながらぐったりとしていた。
「ゼロは神根島に向かった」
殿下の第一声がそれだった。
「神根島に?それよりお怪我は?」
ゼロのことも気になるが、彼女の大切な人を放ってはおけない。
「私のことはよい、それよりもユフィの仇をとってくれ」
傷だらけの体に反した力強い眼差しで頼まれる。そうだ俺は彼女の、ユフィの仇をとらなければならない。
「略式ではあるが、貴候に騎士候の爵位を与える。ブリタニアの騎士としてゼロを討て」
殿下が片手で剣の形を取り、短く儀礼の型を取る。
「イエス・ユアハイネス。必ずやゼロをこの手で」
飛び立つ前にギルフォード卿に連絡を入れようとしたが、殿下に止められる。
「私の怪我のことは口外するな。軍に動揺が走る」
自分の命よりも勝利を。そういう殿下の姿に自分よりも俺や日本人の身を案じていたユフィが重なる。
そうだ、彼女は死んだかもしれない。でも、彼女の意思は、彼女の夢は無くなっていない。
夜通し飛び続け神根島についたときには夜が明けていた。
上陸し、あの遺跡に向かう。この島にゼロの目的になるものなどは他にないだろう。
銃を片手に慎重に遺跡の奥に足を進める。しばらく進むと最奥にたどり着き、あの後ろ姿が見える。
いた!ゼロ!
遺跡の壁に向かっていたゼロのすぐ横に発砲する。
「こちらを向け。ゆっくりとだ」
俺の言葉にゼロがこちらを振り向く。
「ユフィの仇とらせてもらう」
銃を構えたままゆっくりとゼロに歩み寄る。
すると気を取り直したゼロが語りだす。
「ユーフェミアの凶行は見ただろう?あれがブリタニアの本質だよ。だから君も「便利な力だな、“ギアス”とは」
“ギアス”の言葉にゼロが動揺を見せる。未だに信じたくはなかったがやはりあの話は本当だったか。
「人を操り自分は陰に隠れ決して手を汚さない。傲慢、卑劣、姑息それがお前の本性だ!カレン、君もゼロの正体を知りたいだろう?」
意識はゼロに集中しつつも、後ろから忍び寄るカレンに言葉をかける。追跡には気づいていたが、泳がせていたのはこのためだ。
二人の動揺をよそにゼロの仮面の上部を打ち抜く。
着弾点からゆっくりとひびが広がり、ついには二つにわかれて床に転がり落ちる。
その仮面の下から現れた親友の顔。
「うそ、でしょ、あなたが」
信じられないと言う様にカレンがかすれた声をあげる。
「信じたくはなかったよ、ルルーシュ」
「そうだ、俺がゼロだ!ブリタニアを破壊し!世界を手にいれ、創り直す男だ!」
額から血を流しながらルルーシュが高らかに宣言する。
「それじゃ、あなたは私たちを、日本人を利用していたの?」
目を見開きカレンが問う。
「結果的に日本は救われる。それで充分だろう」
彼はそう言い切った。やはりルルーシュにとって日本人はその程度の存在なのか、こんなヤツにユフィの夢は汚されたのか!
「なぜだルルーシュ!なぜ嘘をついた!俺やユフィに、ナナリーにまで!」
「そのナナリーが攫われた!だから俺と手を組もう。俺とお前が協力すれば出来ないことなんて何もない」
ナナリーが!いや、これはルルーシュの作戦だ。たとえ本当のことだとしても、彼とは協力なんて出来ない。
「お前にはできない!君が手を取るべきはユフィだった!それを踏みにじったお前は、世界を拒絶したお前はもう世界からはじき出されたんだ!」
彼の行動、信念、存在そのものすら否定する俺の言葉にルルーシュの表情が崩れる。
「黙れ!お前に俺の何が分かる!」
激昂したルルーシュが懐から銃を取り出し俺に突きつける。
「分かるものか!彼女の夢を、理想を壊す理由など!」
そして二つの銃の引き金が絞られ、神根島に銃声が響いた―――
―――豪奢な装飾が施された巨大な扉が左右に開き広い謁見の間に入る。
そのまま真紅の絨毯の上を歩く。居並ぶ貴族や皇族の面々は皆僕に訝しげな視線を向けてくる。
それはそうだろう、本来この場には僕は入ることすら許されない神聖な場なのだから。
やがて、謁見の間の最奥玉座に座った男の前まで歩み跪く。
かつて僕の国を奪った男。親友とその妹を見殺しにした男。そして今僕が忠誠を誓う男。神聖ブリタニア帝国第98代皇帝シャルル・ジ・ブリタニア。
「枢木スザク、汝ここに騎士たる誓約を誓うか」
低くそれでいて相手を威圧するような力強い声で儀式を始める。
「イエス・ユア・マジェスティ」
この男の前で唯一許された言葉。
「汝、我欲を捨て正義のための剣となり盾となることを誓うか」
「イエス・ユア・マジェスティ」
「汝、勇気、知識、力その全てをブリタニアの発展と栄光に捧げることを誓うか」
「イエス・ユア・マジェスティ」
儀式は着々と進みいよいよ最後の誓いとなる。
腰に挿した剣を抜き自分に衝きたてた格好で差し出す。
皇帝がその剣を手に取り僕の頭の左右にそれぞれ一度づつ突きつけてから返す。
「ここに、枢木スザクを神聖ブリタニア帝国第98代皇帝シャルル・ジ・ブリタニアが騎士、ナイト・オブ・ラウンズの一柱と認める」
皇帝から剣を受け取り、集まった貴族たちに振り返る。
皇帝の怒りを買うのを恐れた拍手が木霊する謁見の間を見渡して、かつて僕を騎士に選んだユフィの笑顔を思い出す。
ライ、君は夢は終わったといったが、終わらせない。
彼女の夢は必ず僕が叶えて見せる。たとえそれが彼女の望まない方法だろうと。
僕はこの身を血で汚し続ける。
以上です
これからもこんな感じで語り手を変えてR2の方に入って行きたいと思っています
それじゃあ、失礼します
乙です!!!
ライは掴まってしまったのでしょうか?
次回作を楽しみにしています。
乙でした。
読み切って、一期ラストを思い出して切なくなった…信じていたルルーシュに裏切られたカレン、
もはや後戻りが出来なくなったルルーシュ、そして心を殺し悲しい決意にその身を染めたスザク。
ライなら皆を救ってくれるって信じてるぜ!
またの投下を楽しみにお待ちしています。
クラブが発表されたと聞いて
マジで出るのかクラブ
ランスロットとヴィンセントも合わせて買って並べてやんよ
ロスカラの開発元のサイトのブログに「2月に今進めているゲームタイトルのうちのひとつが公開される」「今進めているプロジェクトの
音声収録作業でしばらくの間、東京に缶詰」とかあるけどロスカラ続編一応期待出来そうか?
訂正
誤「2月に今進めているゲームタイトルのうちのひとつが公開される」
正「2月に今進めているゲームタイトルのうちのひとつの情報が公開される」
ここでも紹介しますねってロスカラ関係なさそうな事書いてたから可能性は極めて低いと思うけど
開発中のどれかがロスカラ2であることを願わずにいられない
ここにきてクラブ出してきたんだし期待しちゃうよ
2200くらいから投下します
俺、参上!
規制とかあって感想書けなかったから感想人の名を返上して、ただの全力になるのぜ!
タイトルは「読みたいんだからしょうがない」
1レスくらいで終わると思いますが、2レスになるかもしれません
注意事項
・パロって言うか、ぶっちゃけ銀魂見つつ考えた。
・一応「週刊少年○○論争」の続き的なサムシング
ルルーシュ・ランペルージは急いでいた。 アッシュフォード学園の購買部へと彼の出せる全力の力を持って駆ける。 昨夜は騎士団としての活動をしていたため、買う暇がなく、授業を受けるために朝にも買うことができなかった。
租界の書店に行けばいくらでもあるだろう。 だが、彼は今、すぐに、読みたいのだ。 ジャンプを。
(くそっ、無駄に授業を長引かせる教師め! あと五分遅れたらギアスを使うところだ)
などと悪態をつきながら彼はひたすらに購買部を目指していた。
「ハァ……はぁ……よし、残り一冊、ギリギリか……」
購買部に並べられた雑誌のうちのひとつ、残されたジャンプに二つの手が伸びた。
「……」
「……」
二つの手がジャンプを掴む光景をルルーシュの目が映す。 そして、彼は無言でその手の主を見た。 ルルーシュの目に映ったのは先日熱い議論を交わした友人がこちらを見ている姿だった。
「ライ」
「ルルーシュ」
二人は互いの名を笑みを浮かべながら呼ぶ。 互いの目を見て、ジャンプを話すことなく二人は話し始めた。
「お前はマガジン派だろう? ここは俺に譲るべきだと思わないか?」
「いや、たまには敵情視察も必要なのさ。 それに、僕が読んでジャンプ派になるなら君にとって喜ばしいことなんじゃないのかい?」
「いやいや、俺はそんな中途半端な覚悟でジャンプ読んで欲しくない。 ジャンプにだって失礼だろう? ジャンプは本である。 本は楽しんで読むもの。 もっとも楽しんで読めるジャンプ派こそ読むべき。 こういうことだ」
「いやいやいや、なんだその三段論法は。 いっておくが僕は結構な漫画好きになりつつあるから僕が読んでもジャンプは喜ぶよ」
「いやいやいやいや、俺が読むほうがお前が読む30倍くらいジャンプが喜ぶ、だから譲れ、ライ」
「いやいやいやいやいや、たまには違う人に読んでもらうほうが新鮮さがあっていいってガンガンが言ってたよ、だから僕に譲ってくれ、ルルーシュ」
「ガンガンはそういっててもジャンプは違う、お前にジャンプの気持ちのなにがわかるって言うんだよ」
「きっとジャンプもそう思ってるって、サンデーも新しい読者が増えるとうれしいって言っていた」
「わかった、率直に言おう。 俺が読みたいんだよ」
「うん、僕も読みたいんだよ」
二人は語り合い、そして理解した。 相手は強敵だ、と。 もし手を離せばジャンプは相手のものになってしまう、と二人は直感的に悟った。
「ならば、戦おうか……」
「あぁ、どちらがジャンプを買うか……」
「買うんならさっさと買いな! 後がつかえてるんだよ!」
「「ごめんなさい」」
張り詰めた空気は購買部のおばちゃんにより破られた。
「さて、これでジャンプは俺のものだな」
自信に満ちた笑みを浮かべながらルルーシュは宣言する。 彼の自身の源はたった今ポケットにしまったカードにあった。
「くそっ! まさかすぐに代金を払うとは……」
おばちゃんに怒鳴られた後、ライは財布に手を伸ばし、お金を出そうとした。 だが、胸ポケットからクレジットカードをだすというルルーシュの動作に対しては速さが足りなかった。
ジャンプの代金を払ったのはルルーシュ、つまりジャンプの所有権はルルーシュにある。
「フハハハハハハハハ! 俺の勝ちだな、ライ! たとえジャンプ2週分の代金を渡されても俺はこれを手放さない!」
「……今日のところは引き下がろう、だが、来週は、来週こそは……!」
捨て台詞を残して立ち去るライの後ろ姿をルルーシュは優越感に浸りながら眺めていた。
「よし、では歩きながら読む……か……」
買ったばかりのジャンプに目を向けたルルーシュは目を見開く。 その表紙に書かれていた文字を、何度も、まばたきしながら見る。
だが、何度見てもその文字、「赤マルジャンプ」という文字は存在していた。
「……まぁ、読むけどな」
そういえば先週「合併号で○○連載再開か、もっと仕事しろよ」とか考えていたなぁ……ということを今になってようやく思い出すルルーシュだった。
あとがき
1時間くらいで書いた。
反省はしない
乙
面白いです、面白いですけど
少し寂しい単行本派の俺
代理投下です。以下本文
/////
すみません。また規制です。
以前は、まったくといっていいほど規制なんて関係なかったのに。
最近は、ほぼいつも規制状態。
困ったものですよ、本当に……。
今回も短編です。
気軽に楽しんでください。
証拠隠滅
放課後で生徒会室には、僕と二ーナの二人っきり。
窓から差し込む夕日が、二人のシルエットを紅く照らし出している。
「でも……いいんですか?」
遠慮がちのニーナの声。
だけど、その遠慮がちの表情の中にちろちろと見えるのは欲望。
そう、人は欲望を持っている。
それは、どんな人でも変わりはしない。
もちろん、ニーナもだ。
絶対に例外はいない。
「かまわないさ」
僕がそう言うと彼女が手を伸ばす。
そして、口元に近づけるとちょろちょろと舌を動かして垂れてくる液体を慌てて舐め上げる。
遠慮がちな表情が少しずつよろこびの表情へと変わっていく。
「おいしい……」
無意識のうちにそう呟いて、頬を紅く染めて微笑む姿はとてもかわいいんじゃないかと思う。
しかし、女の子の舌の動きってとても卑猥に見えるよなぁ。
ふと、そんなことを考えてしまう。
どうのこうの言いつつも、僕だって健全な男の子だ。
それに、最近は、リヴァルがいろいろと無理やり貸してくれるおかげですっかりそっち方面の知識も豊富になりつつある。
もっとも……多分、だけど……。
ともかく、そんなことを思っていたら、ニーナに声をかけられた。
「ライさん、すごくおいしいです」
眼鏡の奥のよく動く大きな瞳が、遠慮がちに僕を見上げている。
「それはよかった。喜んでもらえて、僕も嬉しいよ。よかったら、どうぞ」
僕がそう言って微笑むと、ニーナの顔が少し曇る。
「でも……、いいんですか?」
すまなさそうな表情が揺れ動き、言葉が途切れ途切れになる。
本当に、相変わらずだな……。
ふとそう思ってしまう。
ニーナはいつもそうだ。
周りを気にしすぎる。
二人だけのときぐらい、もっとわがまま言ってもいいんだけどな――――そう思ったものの、口には出さない。
だから、僕は彼女に理由を付けてあげることにした。
「仕方ないさ、ミレイさんも、カレンもいないんだもの。だから、気にしないで召し上がれ」
その言葉にほっとしたのだろう。
ニーナの手が再び伸びる。
そして、ニコニコして2個目のアイスバーを食べ始めたのだった。
しかし、なんでアイス買ってきたときに限って誰もいないんだろう。
でも、まぁいいか。
普段では見れないかわいいニーナの仕草とか表情とか見れたことだし……。
そんな事を思いつつ、僕も2本目のアイスバーに手を伸ばしたのだった。
なお、翌日、ゴミ箱に残っていたアイスバーの袋と棒から、ニーナと二人で食べたことがばれてしまい、またアイスバーを買いに行くハメになってしまいましたとさ。
教訓………証拠隠滅は徹底的に。
ちゃんちゃん。
以上です。
まぁ、オチバレバレですけどねwww
それでも楽しんでいただければ……。
では、また〜♪
/////
以上です。
いつの間にか規制解除されてた。
代理投下&執筆者乙です
色々とギリギリを付いてくるな…なんたる貪欲さだ
しかし、ニーナなぁ…このキャラもDVD特典ドラマとかイベントピクドラとか
本編終了後の人間的成長はいいなと思うし
本当に早くロスカラ2出ないものかと
投下できるかテスト。代理です
・・・・・・・・・・
こんばんわ。最近ロスカラにはまって、ここで職人さんの作品を読んで触発されて、投下しようと思ったのですが、規制にかかりました。
どなたか代理投下をお願いできますでしょうか?
CPはライ×コーネリア
ジャンルはほのぼのなるかなと思います。
さみしんぼう
トウキョウ租界にその権威と威容を誇るブリタニア政庁のとある一室の窓際に、一人の女性が立ち外の風景を見るともなく見つめている。
憂いの霧を纏っているかの様なその雰囲気、目の前の光景ではなく別の何かを見つめているアメジストの眼差し。
その心を己れの掌の内に収めたいと男共が欲する美女の心が、ここに無い事を誰が見ても分かるだろう。
その女性――コーネリア・リ・ブリタニアは、はあ、と彼女を知る者からすれば到底信じられない物憂げな吐息を、薔薇の花弁の様な唇から零す。
コーネリアがこの世で最も愛する者のひとりである実の妹ユーフェミアでさえ、この姉の姿を見たら、まあ、と彼女の騎士である枢木スザクが、桜の花びらの様だと例えた唇を開くだろう、
吐息の中には寂しさと不安と心細さと混ざり合い、普段のコーネリアの勇ましく凛々しい姿の内に秘めている女性の部分を露わにしていた。
そしてその吐息は、コーネリアの気持ちを、こう代弁していた――最近、二人の時間が無い、と。
神聖ブリタニア帝国の歴史上例を見ない新しい試みである行政特区日本の成立による余波は、このエリア11と呼ばれる旧日本国のありとあらゆる場所に波及している。
それは、もちろん、このトウキョウ租界に頑として聳えるブリタニア政庁にも言えることである。
行政特区日本成立によって、エリア11に赴任していたブリタニア帝国関係者の仕事量は大幅に増加していたが、殊にエリア11総督コーネリアに押し寄せてきたしわ寄せの量は生半なものではない。
ましてやコーネリアは『命を賭けるからこそ統治する資格がある』という考えの持ち主である。
行政特区構想に反対するブリタニア内部の人間や旧日本国の残党やテロリストが各地で行動を起こせば、自らナイトメアフレームを駆って親衛隊の先陣を切り戦う武断の烈女だ。
それでも武にのみ傾倒している人物であったなら、最大のブリタニア反対勢力である黒の騎士団が行政特区に組み込まれたことで、現在エリア11全体の治安は改善されているからむしろ暇という退屈な休息を得られもしただろう。
だがしかし、コーネリアは内政に関しても優秀といえるだけの能力を持ち、また志し高く他者に対する以上に自身に厳しい高潔の人である。
そのため、ナイトメアフレームに騎乗する機会は減っても、いっかな仕事量は減る事はなく、一昨日も昨日も今日も東に西に北に南に、と政庁の外でも中でも駆け回らなければならなかった。
それを考えればコーネリアが恋人と二人だけの甘い時間を作る余裕がなかったことも、仕方のないことに分類されるべきだろう。
たとえ当人同士がどれだけ二人だけの時間を作り、傍に在りたいと願っていたとしても、二人には立場がありそれに伴う義務と責任があり、そして二人ともその義務と責任に対して全力で全うしようという意識の持ち主であった。
コーネリアとその恋人であり同時にコーネリア親衛隊の隊員であるライの二人が、ようやく二人で会う機会に恵まれたのは、最後に二人きりになってから実に2週間ぶりのこと。
それまではコーネリアの専任騎士であるギルバート・G・P・ギルフォード卿や腹心中の腹心であるアンドレアス・ダールトン将軍ほか、親衛隊の同僚や侍従たちが同席していて三人以上でしか会うことができなかったのである。
すでに政庁での各部署の業務時間は終わりを迎えており、コーネリアの執務室に余計な雑音が届くことはなかった。
とっぷりと夜闇の帳が舞い降りたトウキョウ租界は、夜になってもなお眠らぬ人々の営みによって、宝石箱をひっくり返したような輝きに包まれており、見慣れた今もふとしたときに感嘆の念をおぼえる。
珍しくコーネリア手ずから淹れた紅茶のカップからは芳しい湯気が立ち上り、久しぶりに邪魔の入らない時間を過ごすことができると、ひそかに豊かな胸のうちを高ぶらせていた。
用意した紅茶や薄紅色の絹を纏っているようにほんのりと赤らんだ頬と、コーネリアなりにこの一時を楽しみにしていたことの表れなのだが、ライは気に入らなかったようだ。
でなければ、この状況の説明がつかない。
いや、それでもこの状況の説明がつくとは思えないが、しかしそれ以外の理由が思い当たらない。
どん、とコーネリアの背が音を立てる。壁だ。もう下がれない所まで下がった結果である。ではなぜコーネリアが後ろに下がったのか? 答えはいたってシンプルであった。
押されたからだ。誰に? ライに。コーネリアの恋人である筈のライに、だ。押されたと言っても直接肩や胸を押されて突き飛ばされたわけではない。
ただにこにこと笑みを浮かべながら近づいてくるライに気圧されて、自然と後ろに下がってしまっただけだ。
普段なら脆弱者の一言と共に頬を張る位はするコーネリアであるが、いつもとあまりに様子の違うライを前に言葉が出なかった。
様子が違うとは言っても、寝ても覚めてもライを想う様になったコーネリアでなかったなら気付かないだろう、ささやかな違いである。
ライは入室するや否やコーネリアに向かってまっすぐに歩いて来て、コーネリアが何か口にするよりも早く詰め寄り、有無を言わさず笑みを押し付けてこうして壁まで追い詰められてしまった。
ライは傍目にはこれまで幾人もの女性を虜にしてきた微笑を浮かべている。
ライ自身に異性に対して何か訴えかけようという意思はないにも関わらず、微笑を向けられた者の胸に高鳴りを与える笑みだ。
コーネリア自身、向けられたこの微笑みに何度胸を高鳴らせてきたことか。この胸の高鳴りが恋であると認めるのには随分と時間がかかったものだが。
しかし、恋を実らせた女の勘が告げている。この微笑はいつものライの微笑ではない、と。
表面上に浮かび上がっている微笑は見慣れた形を模っているが、その薄皮一枚を剥いだ下には、何かの感情を隠している。
その感情は、少なからず自分にとって歓迎せざるものであることもわかる。
ただし、危険を告げるのは女としての勘ではなく、ブリタニアに反抗するいくつものエリアを制圧したブリタニアの魔女としての勘であった。
やや遅い初恋を迎えた乙女ではなく、荒々しく凛々しく気高い戦士としての直感が訴えている――それほどに危険な感情だというのだろうか?
自分に対してライが抱いている感情は?
「ライ?」
「はい、殿下」
思わず――おそるおそるとは思いたくはなかった――愛しい目の前の男の名前を呟けば、何の躊躇もなく返事が返ってきた。
にっこり、という言葉がふさわしいなんと愛らしい笑顔である事か。
しかし、だからこそ悩まずにはいられない。はたして自分はライにこのような仮面の笑顔の下に感情を隠させるような、初めて目にする行為をさせる事をしただろうか。
こと戦争に関してはブリタニアでも屈指の回転の速さを発揮するコーネリアの頭脳だが、このような男女の二人っきりの場面ではまるで働いてくれない。
戦争は百点、恋愛は零点、それがコーネリアという女性の人間成績表であった。
コーネリアは息が掛かるほど近い所にあるライの微笑に対して何を言うべきか、どのような行動をとるべきかの判断がつかない。
「殿下」
「なんだ」
「すでに業務の時刻は過ぎおります。ゆえにこれから僕が口にする事は、殿下を愛するライという男の言葉とお考えください」
「あ、う、うむ。よかろう」
氷の海の青を写し取った瞳にまっすぐ見つめられると、体の奥の方まで掴み取られたような、それこそ本当に心まで射抜かれたような気持ちになり、コーネリアはわずかに体が火照るのを感じる。
ましてや、面と向かって、“愛する”と囁かれるとは。
コーネリア自身恋愛経験値0のレベル1の乙女であるが、ライ自身もアッシュフォード学園に保護されて以降は、コーネリアに対する慕情が初の恋心とあって、恋愛の経験ではコーネリアとさほど変わらない。
当事者たちの性格もあるだろうが、愛を囁き、恋を語る事に慣れていない二人の間で、互いに愛しているだとか、大好きだとか、異性に向ける好意を示す言葉が出てくるのはきわめて珍しい。
将来はともかく、まだ互いの気持ちを伝えあったばかりの二人は、自分達の意思を言葉にするのにも躊躇いを覚えるような段階だった。
火が着いたように熱い頬を意識しながら、コーネリアはついと目を伏せてライの視線から逃れた。
そうでもしなければまっすぐに見つめてくるライの視線に囚われて、何も言い返せなくなりそうだったからだ。
愛する者に身も心も委ねてしまいたい衝動と、他者――恋仲であろうと――に寄り縋る事を是としない苛烈で厳格なコーネリアの武人としての部分との妥協の結果である。
コーネリアという人間を構成する大きな要素である武人としての部分が、更なる動揺に襲われたのは、熱く耳朶を打つライの吐息と共に囁かれた新たな言葉が、鼓膜を妖しく震わせたとき。
「寂しかった」
「!」
「脆弱、惰弱とお怒りになられるかもしれませんが、これが僕の偽らざる本心です。殿下とお会いできず寂しかったです。許しは請いません。ですが、口にすることをお許しください」
ライもまた、自分と二人きりで会えない事を思い悩んでいた――その事が分かって、コーネリアの心の内に喜びという名の感情の花が一輪、新たに咲き誇る。
思う相手と同じ感情を共有するというのは嬉しいものだ。
飛び抜けたその能力のわりに子供っぽい事を言うライの事が微笑ましく、また愛おしく、コーネリアは逸らした視線を戻して、あやすように、からかう様に答えた。
ライの心情を吐露されたことで、コーネリアに少しばかり余裕が戻ってきたらしい。
「大げさだな。余人を交えた状況でなら、なんども会ったではないか」
「殿下とふたりだけで。これが大切なんです」
嬉しい事を言ってくれる。自分は今どうしようもなく頬を緩めている事だろう、とコーネリアは思う。ユフィには、今の自分の顔は見せられないな、とも。
自分とは異なり、エリア11の副総督として赴任するまでの間、愛妹ユーフェミアは皇族としては比較的年頃の少女らしい生活を送ってきた。
その為に、生まれた時から今に至るまで皇族としてみても、年頃の少女らしい感性を養う生活を送ってこなかったコーネリアに対して、なにくれとなく意見を口にして来る。
コーネリアの威圧的な雰囲気や軍服、皇族としての服装以外にはまるで必要性を感じていない事に対し、
華美に着飾ったドレスや二十代後半にさしかかった女性が着るにはどうも、と躊躇する可愛らしい衣服や装飾品を勧めてきて、あわよくば着せ替え人形にしようとしたりする。
とくにユーフェミアは最近では――スザクを専任騎士にしたころから――恋愛の事に着いて、時に遠まわしに、時に直接的にコーネリアに尋ねるようになってきている。
そのユーフェミアに、熱せられたチョコレートか飴のように甘い感情にとろけた自分の顔を見られたら、それこそ夜の間中、ライとの馴れ染めからなにから問い詰められるに違いない。
多忙な昨今、あまり睡眠が取れずかすかに疲労の澱が溜まっている今、ユーフェミアの止まらぬ口撃に晒されては溜まったものではない。
(とはいえ、いつかはきちんと話をせねばな)
ユーフェミアに、ライを夫にするつもりだ、と。その事を想像するだけで、コーネリアの頬はさらに赤みを増し、心臓が全身に送り出す血液は新たに熱を帯びて行く。
そんなコーネリアの様子が気になったのか、ライが小首を傾げる少女の仕草で問いかける。
「殿下?」
美貌という言葉を遣うのに全く躊躇を覚えぬライの顔立ちは、紛れもなく男のものであるが、ふとした時に見せる柔らかな仕草には、思わず同性でもドキリとさせられる。
いわんや、それを見た異性に対する効果たるや絶大である。
「……まったく、お前という奴は、大した男だよ。私に、このような態度を取らせるのだから」
「いつも殿下の事を想っていますから」
狙っているのではないだろうが、ライの言葉はコーネリアの心の琴線に触れて喜びの音色を奏でる事が多い。
無自覚な言葉と分かるからこそ、まっすぐで他意の無いライの言葉は耳に心地よい。
ふふ、と我知らず零れる鈴を鳴らしたような笑い声が、自分の耳に届いた時、不意に柔らかで湿った感触が左の頬に触れた。
ちゅ、と音ともいえぬ小さな音も聞こえた。
「……え?」
「ん」
今度は軽く啄ばまれるようなこそばゆい感触が左の耳にひとつ、ふたつ、と続く。
「な――ら、ライ!?」
「ご不快でしたら、拒んで下さい。それまで、止まりそうにありません」
思わず一オクターブ上がったコーネリアの声にもライは動揺を示さずに、休むことなく唇を動かして行く。
かすかに濡れたライの唇は飽きることなくコーネリアの肌を、硝子細工を扱う繊細さで触れては離れて行く。
繰り返される優しい感触に、数瞬の間コーネリアの思考は完全に熱に浮かされて働くことを止める。
年齢に比して初心もいいところの二人にとって、言葉で愛情を示すのに恥じらいを覚えるのと同様に、体と体を触れ合せて親愛の情を伝えあう事は非常に難しい。
互いを恋人であると認識している以上は、二人とも肉体的接触――手を繋ぐなり、ハグするなり、キスするなり、
さらにはそれ以上の行為も――を意識しないではなかったが、実行に移せていたかというと、これはノーだ。
唇と唇を触れ合せる程度の、ともすれば挨拶程度に過ぎないのでは、というキスでさえ二人の間では未実行である。
それが、いきなり、頬とはいえライは躊躇いなく唇を寄せ、行為を認識したコーネリアが対応に戸惑う間に、キスの雨を降らして行く。
頬に、軍服の襟から除く白い首筋に、そのまま唇を離さずに咽喉や、美しい顎のライン、右の頬、額、とライの唇はコーネリアの体の場所を問わない。
「・・・・・・・・・・・・っ!!!」
声にならない声を上げるコーネリアは、身を捩ろうとして自分の体がライの腕の中に抱きとめられていることにようやく気づく。
いつのまに動いていたものか、ライの右腕がコーネリアの左腕を巻き込んで悩ましいくびれを描くコーネリアの蜂腰に回されて、ぐいと力強くライの体へと押し付けている。
残る右腕は、というとこちらはライの左腕に手首をつかまれ、痛みに変わる寸前の力で抑え込まれている。
コーネリアの腕力なら十分に振り払える程度の力である。コーネリアの事を慮ったライの力加減であろう。
例え朝には消えるとしても、コーネリアの美しいに違いない(ライはまだコーネリアの裸身を目にしていない)肢体に、痣の一つもつけてはならないとライは心底思っていた。
そしてライの腕を振り払わないのは、コーネリアの体と心が動揺するその奥でライの唇をもっと、もっと、と欲しているからに違いない。
コーネリアの抵抗が無い事を確認し、ライは一定のリズムで唇の雨を降り注がせ続けた。
この世で最も愛する女の目元に。
流れ星の軌跡の様な弧を描く典雅な鼻梁に。
ゆるやかなウェーブを描く絹糸の手触りを伝える髪のひと房に。
熱い脈動を赤く染まった肌の下で打つ首筋に。
ライは肺の中をコーネリアの香りで満たした。女性としては大輪の花を咲かせてその魅力を熟成させる年頃に差しかかったコーネリアの、飾らずとも自然と身に纏っている色香。
コーネリアもまたライの匂いを意識し始めていた。自分を腕の中に抱いている華奢な少年が、たしかに男なのだと意識させられる匂い。
自分が女で、ライが男なのだと、互いの体と心が欲しあっていると、はっきりと突きつけられた様な気がする。
だが、それでも、コーネリアの心のどこかはこのままこの心地良さに全てを委ねる事を拒んでいた。
「は、離せ、ライ。これ、以上は」
一語一語を区切る様にして、かろうじてコーネリアは言葉を紡ぎ出す事に成功する。コーネリアの体を疼かせる熱に比例して、唇から溢れた言葉も熱い。
「殿下は、嘘をついていらっしゃいます」
「な、に?」
「僕はもう殿下を離していますよ」
「――え?」
唇の動きを止め、穏やかな笑みを浮かべながらのライの言葉に、コーネリアは一瞬我を忘れ、ライの言葉が正しい事を理解する。
コーネリアの腰を抱いたライの腕は離れ、姫将軍の手首を拘束していた手も既に離れている。
それだけではなかった。コーネリアの心を動揺させたのは、自由を取り戻した自分の両腕がライを拒むどころか、求める様に、縋る様に薄い肉付きの胸板に添えられている事実だった。
恋い慕う男との久方ぶりの再会に喜び、離れることを恐れる一途な女にこそ似合う仕草であり、それは今のコーネリアにとって到底認めがたく、しかし間違いなくコーネリアに相応しい行動であった。
自分は堕落した――コーネリアはそれを強く意識する。かつてブリタニアと敵する国々に、その異名を誇ったコーネリア・リ・ブリタニアの面影は、いまの自分にはほんの一欠片もないだろう。
そう、自分は変わってしまったのだ。恋する女に。たった一人の男の為に。
それが堕落でなくてなんだろうか。かつての自分しか知らぬ者達には信じられないだろう。自分自身信じる事が出来ないのだから。
ああ、でも、この堕落は、なんと心地よく、甘い魅惑である事か。
コーネリアは自分自身の心を改めて認める。そうすれば、目の前の男にされるがままというのはいささか口惜しくなってきた。
それなりに反撃を試みねばなるまい。
「ライ、一度しか言わぬ、心して聞け」
「はい」
打てば響くように返ってくるライの言葉。この男も自分に恋をしているのだろうか。しているとは思う。しかし自分ほどに思いを募らせているのだろうか?
それを確かめる事への恐怖、望む答えが返ってくる事への期待、様々な感情が溶け合うなか、コーネリアの唇はかすかに震えながら動く。
「私は、お前に……恋を、している。お前が恋しく、愛おしい」
「……」
「だから、お前が私に会えず寂しいと言った時、私は嬉しかった。私も同じ事を考えていたからだ」
「殿下」
恥じらいに目を背けることもなく、自分の心をまっすぐに伝える為に、コーネリアはライの瞳を見つめていた。
コーネリアの言葉に感極まったライは、コーネリアの体を優しく包み込み、抱きしめる。
震える雛鳥を守ろうとする親鳥の様な、命に変えても守ると決めた姫君を守る御伽噺の騎士の様な。そんな抱擁であった。
「コーネリア」
殿下、とも総督、とも呼ばなかったライの言葉をコーネリアは噛み締める様に瞼を閉じて続きを待つ。名前で呼ばれたのは、これが初めての事だった。
「愛している」
深い深い愛情の伝わる言葉に、コーネリアは子猫のように甘えた吐息を零し、答えた。
「ふふ、私の方がお前を愛しているに決まっている。私を誰だと思っている? コーネリア・リ・ブリタニアだぞ?
この私が愛を告げるなど、世界で最も愛する相手にだけだ。私にそうさせた自分を誇りに思え」
ライは心の中に開いていた寂しさという名の空隙が、愛しさによって埋め尽くされるのを感じ、ごく自然にコーネリアの唇と自分の唇とを重ねた。拒絶は無く二つの影は長い事一つに溶け合っていた。
以上で終了です。よろしくお願い致します。
・・・・・・・・・・
以上代理投下でした。
行やレス長すぎの分を改行・再分割しています。
オリジナルは代理投下スレをご覧下さい。
昨日は全面規制だったんだけどいつ解除されてるかわからないな
やだ、なにこのネリ様超かわいい。
初心なネリ様と初心なライの恋の話、超GJです、初めての投下とは思えないお見事な作品でした。
ロスカラが発売され早二年、それだけ経つのに新しくここに投下していただける方が来てくださるのは嬉しいですね。
次回の投下を全力でお待ちしております。
言われて初めて実感した
もう二年近くが経ってたんだな……通りで
既出かな?一応・・・
102 無念 Name としあき 10/02/05(金)21:27:59 No.100677445 del
マジレスすると
マイルドはG3Xに付属してなかった武器付く。WEB限定
ダグバは7月
ハードボイルダーはとりあえず置いてるだけ
シャドームーン8月
フルコンプは555
SHは量産キャノンもある。
ギアスは名前不明だけどロスカラR2(仮名)に出てくるモニカとか、
本編で出てこなかったラウンズ用と思わしき機体の参考出品アリ(名前不明)
あと、空神丸も展示されてた
555は馬フェノクと竜と薔薇も参考出品
キバーラとディケイド激情体、まともな顔のディケイドもあったよ。多分後者はセットでWEB限定
フィギュアーツのことは合ってたからロスカラの続編も確定みたいだな
クラブが一般販売になったのもそのためか
おめでとう〜!ガセだと判明したようです!ふぅ……
いったそばから転載の転載で申し訳ないけど
なんかもう全力で躍り続けようとおもう
237 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 投稿日: 2010/02/06(土) 15:34:47 ID:U3Ls4Kq3
454 名前:ぼくらはトイ名無しキッズ[sage] 投稿日:2010/02/06(土) 15:04:54 ID:wxbs/LOS0
その2
・クラブは知る人ぞ知る機体であり、ヒロイックなカラーリングと立体映え
しそうなデザインからGO。関節はランスの流用に非ず。現段階では、MVSは
ヴィンセントと色違いになる予定。
・このタイミングでクラブが商品化したのは、今後に何かあるのかと聞くと、
スタッフさんニヤニヤ。今は色々想像していて下さいと言われた。
・クラブ、ランスのフロートはまだウェブ限定で売るかは決まっていない。
・ギルセントはほぼ確定。ウェブ限定か一般かはまだ秘密。
・ウェブ限定の中でも人気の商品は再受注するのかどうか聞いてみると、
以前から考えられていたらしいが、現状ではシステム的に難しいらしい。
・聖天はKMFで一番の売り上げ。アルビオンは通常のKMFの約二倍の売り上げ。
このタイミングでクラブが商品化したのは、今後に何かあるのかと聞くと、
スタッフさんニヤニヤ。今は色々想像していて下さいと言われた。
ロスカラ2来るーーー?
だから、ギアス無双じゃね?
ようやく規制解除された……
期待するのは分かるけど、公式情報じゃないのをいくら並べられてもな。
>>62が真相だったりする可能性だってあるわけだし。
ちょっと落ち着こうぜw
しかし作品も代理投下ばっかりだなあ……
ここしばらくの分まとめて、作者さんも代理の人も乙でした。
ロボ魂のクラブの情報から色々憶測が出て
すごくはしゃぐ気持ちは分かるけど、ここはSSスレだからそこは他スレでやろう
>>56 代理投下乙。そしてロスカラは初執筆のようですが、執筆乙です。
いやネリ様ってあんまり題材にはならない方なので本当に新鮮で面白かったです。
ネリ様のこれまでの恋愛経験とか、その上でのユフィとの関連性とかも
新たに想像させてくれるようないいSSでした。
基本でしゃばらないライだけどいく時はいく、みたいな
キャラを分かってる感じが出ていてとても良かったです。GJ!
こんばんわ。10分後くらいに投下します。他の方が投下されるまでの場つなぎにでもなれば幸い。
CPはライ×コーネリアで、ほのぼのです。
もうしわけありません。あげてしまいました。気まずいですが、一応、時間がたったので投下します。
『あまいあじ』
完璧な人間というものはこの世にいないものだ。これまでの人生でとっくに分かってはいた事だが、今日は改めてそれを思い知らされた。別に自分が完璧な人間であるなどと自負していたつもりはない。
武力ならばそれなりに誇れるものを持っているとは思うが、EUの領地を狡猾に奪い続けている兄シュナイゼルの様な知力は無いし、数多いる弟妹たちが唯一敵意を向けない長兄オデュッセウスほどの人徳(?)も持ち合わせていない。
過去には誰よりも敬愛していた義母マリアンヌ皇后をみすみす死なせ、異母弟妹であるルルーシュやナナリーをむざむざ死地に送るのを見過ごした事もある。
過去の失態と現在の自分の能力を把握しているからこそ、自分が完璧な人間だなどと驕ったつもりはなかった。完璧な人間などいないと分かっているからこそ少しでも完璧に近づこうと努力してきたのだ。
だから少なくとも――
「体調管理のできる人間程度にはなったつもりだったのだが……」
くしゅん、となんとも可愛らしいくしゃみをして、エリア11総督にして神聖ブリタニア帝国第二皇女コーネリア・リ・ブリタニアは、何枚も寝間着を着こんだ姿でベッドにうずもれたままぼんやりと天井を見上げて独白した。
弟クロヴィス殺害とナリタ連山での戦果を機に台頭した黒の騎士団、フクオカエリアに進出した日本の名を騙る中華連邦との戦い、さらには愛妹ユーフェミアが知らぬところで画策し実現させた行政特区日本。
言ってしまえば武力のみを持って鎮圧すればよかったこれまでのエリアに比べ、潜在する反抗勢力がこれまでのエリアで最大規模を持ち、なおかつ身内からも予想だにしなかった波乱を起こされて、流石のコーネリアも参ってしまったようで。
茹だる様に熱く湿り気を帯びたこの国特有の夏のある日、こちらを渇殺しているのではと思うほど日差しが強い朝、コーネリアは体がけだるく節々が妙に痛く、思考の回転が恐ろしく鈍化して喋るのも億劫な自分に気づいた。
ようするに人類永遠の病敵“風邪”に罹ってしまったのである。
たかが風邪と侮るなかれ、人類誕生より果たしてこの病によってどれだけの人命が奪われてきた事か。
人類の医学の歴史においていくつもの病に対する特効薬や効果的な治療法が発見されてきたが、万病のもとたる風邪ばかりはいまだブリタニアの先端医療技術を持ってしても特効薬は存在しないのだから。
「こほ、こほ。しかし、何もしなくてもいいというのも、けほ、存外辛いものだな」
正確には風邪を引いた程度なにほどのものか、といつも通り総督としての業務を行おうとしたコーネリアを、ギルフォードやダールトンが諌めて何もさせないようにしているのだが。
困った顔で休む様に告げる専任騎士といつも通り豪快に笑いながらお休みくだされと、起き上がった自分をベッドに押し込んだ元教育係の顔を思い出し、コーネリアはずきずきと疼く痛みを忘れて、かすかに微笑む。
二人には常日頃厳しくあり続ける自分を支えてもらっている自覚はあり、心許す関係である彼らが自分を案じてくれる事が嬉しくて、自然と気持ちが優しいものになる。
ほとんど最低限の化粧しか施さないコーネリアの石花石膏の様に滑らかで美しい肌は、自身の熱によってうっすらと赤く染まり、薄く苦しげに開かれた唇から洩れる吐息とあいまって、背徳的な艶美さを醸し出している。
しかしながら童女のようにあどけなく微笑むコーネリアの姿を見れば、どんな人間であっても劣情よりも心温まるものを覚えるだろう。
敵する者に圧倒的な恐怖を与え、ブリタニアの旗の下に集う者達にも、統治者たる姿を体現するその姿から絶対的な畏怖と畏敬を集めるコーネリアの、世に知られざる柔らかな一面である。
ただそれは今のコーネリアの姿を観察する第三者がいればの話であって、風邪の熱と気だるさに悩まされる当人にとっては、一刻も早く治れと弱った自分の体に叱咤を打つのみである。
ベッドの中でぐったりと脱力した四肢にはまるで力が入らず、コーネリアの思考と肉体の距離は途方もなく離れているようで、こんな状態ではせいぜい玉城の乗った無頼を一蹴するのが限度だろう。
まあ風邪の熱に浮かされた状態でそのような芸当ができる辺り、流石はブリタニアの魔女の異名をとる烈女といったところか。
コーネリアの世話をする侍女たちはすでに自室から下がっていて、すぐ近くにある控え室でコーネリアからお呼びがかかるのを静かに待っている。
世界の三分の一を支配するブリタニアに相応しい豪奢さは、コーネリアの気質にはそぐわず、コーネリアの自室は質実剛健という言葉をよくもここまで、という位体現した調度品で揃えられている。
例えば、月夜にのみ蕾を開く繊細で可憐な花よりも、大嵐に晒されても折れず崩れず聳える大木を由とし、長い時の中でも変わらずその存在を誇示する頑健で強固な存在をより良きとする傾向がある。
だからといってコーネリアが一般的な美的感覚を理解しないというわけではない。あくまで好みの傾向レベルの問題だ。
このブリタニア政庁の屋上に再現されたアリエスの離宮を模した庭園などは、可憐で艶やかな花々と白い石畳や石柱で形作られた美しさだが、コーネリアは特にこの庭園を気に入っていて、良く足を運んでいる。
余人の気配や息遣いが無く彩りも抑えられた部屋の中で一人する事もなく、ぼんやりと思考をあやふやにして天井を見ているきりだと、恐ろしく時間が長く感じられる。
戦場での一秒と風邪をひいて体を休めている時の一秒はまるで違うもののようだ。退屈だな、とコーネリアは心底困り果てる。
早くユフィが見舞いに来てくれないかな、そうすればこの陰鬱な気持ちはあっという間に晴れ上がるのに。
皇位継承権を返上して、騎士であるスザクと共に、行政特区日本の成功に多くの時間を割くようになった妹と会う機会と時間は最近めっきりと減っている。
小鳥が囀る様に可愛らしく喋るユーフェミアと過ごす一時は、コーネリアにとって何ものにも代えがたい癒しと安らぎの時間であり、このままでは退屈に殺されそうなコーネリアとしては早く妹の顔が見たかった。
コーネリアが、はふぅ、とうららかな日差しに気を緩めて眠りに落ちる寸前の女豹めいた吐息を零すと、室外の侍女の声が聞こえてきた。
「コーネリア総督、ライ卿がお見えになられましたが、お通ししてもよろしいでしょうか?」
風邪のお見舞いとはいえ人と話す事は病人には堪える。ギルフォードやダールトンといったエリア11管理に重要な人物や、ユーフェミアの様な親族以外は面会を侍女の方で断っている。
そのような事情を考えると親衛隊の一人とはいえ、一介の騎士でしかないライが直接コーネリアと対面して病身を見舞う許可は、コーネリアに問う前に拒否されてしかるべき所だ。
しかしコーネリアとこの特派所属であった少年との関係は、政庁内部のブリタニア関係者の間では専らの噂であり(桃色髪のお姫様が出所らしい)、この侍女もそれをほぼ事実と知るからこそコーネリアに許可を取っている。
侍女がコーネリアの答えを待つ一方で、問われたコーネリアはといえば、ライの名前が出た途端に、ぱあ、とそこに小さな太陽でも生まれたように明るい笑みを浮かべてから、自分の表情に気づいて慌ててそれを引っ込める。
いけないいけない、最近どうにも自分はライの名前を聞くだけで女の部分が前に出過ぎる。これでは到底エリア11を統治してブリタニアへの反抗の芽を摘むことなどできはしない。
コーネリアは己の気持ちを整理してからベッドから上半身を起して、十秒ほどかけてブリタニアの魔女の顔を造り上げる事に成功する。
二、三度ほど高くなった体温によって薄く紅色の羽衣を羽織っているように色を変えた肌の色は戻らぬが、潤んでいた瞳は研ぎ澄まされた氷の刃の鋭さと冷たさを取り戻し、室内の空気が凝と凍てつく。
室内に一歩踏み込めば、背筋に鉄の串を刺し込まれたように体が強制的に居住まいを正す硬い空気によって満たされる。
目の前にすれば思わず膝を屈する事を意識する――それほどの威圧感と統治者としての気迫、矜持を誇る凛々しきコーネリアがそこに蘇っていた。
普段なら特に意識せずともコーネリアがただその空間に居るだけでこうなるのだが、流石に風邪をひいて不調とあってはそうも行かぬようだ。
数回咳払いをして喉の調子を確かめてから、コーネリアはライに入室の許可を与える。ほとんど間をおかず、失礼いたします、の一言と共に扉が開かれて、見慣れた愛しい男の姿が視界の中に飛び込む。
親衛隊として行動している時と同じ、戦場に身を置く厳しさに引き締められた美しくもどこか幼さを残す少年の顔を見て、コーネリアは自分の唇と目元から不意に力が抜けるのに気づき、慌ててこれに喝を入れ直す。
恋仲に――言葉にするのが恥ずかしいのは相変わらずだ――なったとはいえ、部下と上司、騎士と主人として守るべき一線と一分は確実に存在する。それを自分から崩す様な言動をとるわけにはいかないのだ。
ま、まあ言葉遣い位はある程度許してやらない事もない事もない事もなくはないぞ、と考えている辺り、コーネリアの覚悟はすでに半分ほど崩壊しているが、本人はまるで気付いていない。
心の仲はともかく表面上はいつものコーネリアを取り戻した顔で、
「御苦労、私が休んだことで何か差し障りはないか?」
と、コーネリアがあくまで生真面目に言うとライは少しばかり目元から力を抜いて表情を柔らかなモノにする。どんなに人見知りをする子供でも、安心して近づくに違いないだろう人好きのする表情だ。
この表情と面倒見のよさ、大概の厄介事を解決して見せる能力の高さが交友関係を広くし、深い親密性を構築する原動力となっている。
「殿下の騎士達はみな優秀でありますから、ご安心ください」
「ふ、自分も含めて、と言いたいのか?」
「そのようなつもりは。ですが殿下の親衛隊の人間として恥ずかしくないよう努力しているつもりです」
「ならばよい。いまの自分に満足し安寧の泥に囚われず向上し続ける事を心がけよ」
「イエス・ユアハイネス」
「良い返事だ。……こほっ」
「殿下、あまり無理は成されず、さ、横になってください」
「う、うむ」
心の底から心配そうに形の良い眉根を寄せて、ライはコーネリアの肩を支える様にして、烈皇女の熱い美躯をベッドに横たえる手伝いをする。
ライに下心の類の他意が無い事は分かっているけれども、コーネリアの心臓がドキリと初恋に戸惑う少女のように跳ねた事は否めない。
先日、腕を抑えられ腰に手を回された事はあったが、いま体を案じてとはいえ大胆に体に触られる事には、どうしてもまだ恥ずかしさとそれ以上の喜びが残っていて、コーネリアはそっと視線を逸らす。
このように時折現れるコーネリアの幼い少女の感性がさせる仕草に、ライが気付かないのはコーネリアにとって果たして幸運であったか不幸であったか。
ライの左腕はコーネリアの右腕側から左腕側まで回されてその体を支え、右手は捲れたシーツを掴んで、横たわるコーネリアの首元に優しく掛ける。
もし、誰かがこの場に居たとしても休息を必要とする主を気遣う騎士というよりは、誰が見ても、病に伏した恋人を案ずる一人の男性としか見えない事だろう。
風邪で気が弱っているという事もあるが、それ以上に相手がライであるという点によって、コーネリアは大人しくライにされるがままベッドに横になる。
枕に降りかけられた気分を落ち着かせるハーブの香りと、あるいはユーフェミア以上に傍に居て欲しいと願っていた男が傍らにいるという事実に、コーネリアの心は自分でも驚くほど穏やかなモノに包まれていた。
極自然に心のままに穏やかな表情を浮かべるコーネリアの様子に、ライは思っていた以上に体調が悪いわけではないようだ、と安堵する。
自分が傍にいるから、という考えに辿り着かないあたりが、この少年が朴念仁呼ばわりされる由縁だろう。
コーネリアに断ってから椅子に腰かけて、ライは微笑みかけた相手を安心させる優しい笑みを浮かべる。
ライが誰にでも向ける暖かいが少しだけ罪深い笑みに、コーネリアにだけ向けられる親愛の情がほんの少しブレンドされている。その事に気づけるのはほんの極一部の人間だけだろう。
誰が持ってきたものかベッド脇の机の上に盛られたフルーツの山と果物ナイフ、皿を見つけてライがひとつ林檎を取る。
「おひとついかがですか? 最近ウサギカットというのを覚えたんです。可愛いし美味しいですよ」
「いや、風邪の所為か味がいまひとつ分からんのだ。何か……けほ、食べたいものがあったら、持っていっていいぞ」
「苦いとか、甘いとか、辛いとか分からないのですか?」
「そうだ。……お前は、風邪に罹った事はないのか?」
「幸い丈夫に生まれついていまして」
少なくともミレイ会長とルルーシュに拾われてからは、風邪を引いた事はない。
「良いことだ。丈夫に産んでくれた親に感謝する事だ」
「……はい。ところで殿下、本当に何も食べなくて大丈夫ですか? なにかお腹の中に入れないと栄養が取れませんよ。栄養を取らないと治るものも治りません」
「言われるまでもない。くしゅ! ……すまん、分かってはいるが味が感じられないというのはいま一つ、な。食べる気になれない」
やや意識が朦朧としているのか、コーネリアがいくらライが相手とはいえ愚痴めいた事まで零すではないか。ユーフェミアやノネットがこの場にいたら、目を大きく開いて口をOの形にしたかもしれない。
う〜ん、と果物ナイフ片手に腕を組んで悩む素振りを見せたライは、いい事思いついた、とばかりに顔を輝かせる。古い表現なら頭の上に豆電球のひとつでも灯った事だろう。
試すのは初めてだが、たぶん、コーネリアも喜んでくれるだろう、と判断する。狙いを定めるまでは紆余曲折を経るも経て迷走するが、一度狙いを定めたらそのまま突っ走るタイプらしい。
「殿下、風邪をひいていてもひとつだけはっきりと分かる味がありますよ!」
「なんだ、なにかの謎々か? ……くしっ」
「いえ、ただ学園の友人に教えてもらいました。きっと気に入ってくださるかと」
「まあ、お前が言うのなら試しても構わんが。料理か?」
「いえ、すぐに用意できますから、すこし目を瞑っていただけますか?」
「うん? 分かった」
普段のコーネリアであったならこうまでライの言うがままに従いはしないのだが、風邪のせいもあってコーネリアは、素直に眼を閉じる。ライは、よし、と覚悟を決めて優しくコーネリアの体に覆い被さる。
ライの体が落とす影がコーネリアの体に重なって、少しの間だけ時間が流れる事を忘れた様な静謐が、二人を包み込んだ。
少し力を入れて閉ざされたコーネリアの唇は、いつもの紫色の口紅が刷かれておらず、生まれついての赤色をしていた。艶やかに花を咲かせた薔薇の花弁を、ライは連想した。
その薔薇の唇にライは迷わず自分の唇を重ねた。ただ重ね合わせるだけの幼く拙く、けれどどこまでも優しく暖かく、愛おしさを込めたキスであった。
五秒にも満たない唇と唇を重ねる初めての口づけに、ライは我を忘れそうになるが、かろうじて理性が鳴らす警鐘の音に本能が負けて、名残惜しさを万と胸に秘めて唇を離す。
不意に唇に訪れた感触に、閉ざされていたコーネリアの瞼がぱっと開かれて、目の前で悪戯を成功させた顔で笑っているライの瞳と視線を交差させる。
「いかがです、殿下。キスは甘いものと友人に聞いたのですが」
「…………」
「あの、殿下?」
「……の…………こ、この、ぜぜ、ぜ脆弱者が!!」
それまで風邪で弱っていた姿はどこへやら、コーネリアはライに頭突きを噛ます勢いで上半身を跳ね上げて、腫れた喉の痛みを忘れて思い切り叫んだ。
「お姉様が風邪を召されるなんて一体いつ以来の事かしら」
水晶の鈴を鳴らしたように美しく澄んだ声の少女が、ブリタニア政庁の廊下をコーネリアの私室を目指して歩いていた。手にはお見舞いの品か、心を落ち着かせる効用のあるハーブティーや、手製の焼き菓子の入った籠がある。
腰まで届く桃色に染めた絹のように美しい光沢の髪、すべての人間に惜しみなく与えられる慈愛の輝きを秘めた大粒の瞳、間違って地上に生まれた天使のように愛らしい顔立ち。
エリア11副総督にしてコーネリアの愛妹ユーフェミア・リ・ブリタニア皇女その人だ。その隣にはユーフェミアの専任騎士である名誉ブリタニア人の枢木スザク少佐の姿もある。
異例の大出世を遂げこのエリア11でも有名な人物の一人となったこの少年は、麗美な騎士服に身を包み、ユーフェミアと言葉を交わしながら周囲に気を配っている。
この政庁の中で万に一つもユ−フェミアの身に危機が及ぶ事はないだろうけれども、慎重すぎるほどに慎重を期する事が必要とされるのを、スザクは理解していた。
病に弱った姉を見舞うという、普段の守られる立場とは真逆の状況を、楽しみにしている様子のユーフェミアと、にこやかに会話を交わしながら全方位への警戒を怠らずにいたスザクが、見知った顔に気付いて視線を向ける。
ユーフェミアもつられてコーネリアの私室のある方向から姿を見せたライに気付く。ライもスザクたちに気付いた様で、なぜか鼻を押さえながら片手を挙げて挨拶してくる。
身分と立場を越えて親しい関係にある三人は、余人の影が無い状況だと自然と友達の態度に変わる。
「ごきげんよう、ライ」
「やあ、君もコーネリア殿下のお見舞いかい?」
「こんにちは、ユフィ、すざく。ついさっき行ってきた所だ。だけど殿下を怒らせてしまったみたいで、出て行けと言われてしまったよ」
「へえ、君が殿下を怒らせるなんて珍し――くはないか。殿下は君に特に厳しいからね」
「うん。この間も殿下の容姿や凛々しい所をぼくなりに素晴らしいと言ったつもりだったんだけど、なぜだが顔を真っ赤にしてお怒りになられてね。本当、ぼくはまだまだ未熟だよ」
「はは、それだけ君に期待しているって事だよ。ぼくもユフィの専任騎士として恥ずかしくないように気をつけないといけない立場だからね、君のその気持ちは良く分かるよ」
「ああ、こんなぼくを親衛隊に選んで下さった殿下のご期待にこたえないと男じゃないからな」
とどこまでも生真面目に話す二人の朴念仁達を見て、ユーフェミアはまあ、と呆れの溜息を零す。本当にこの人達は、とその溜息が何よりも雄弁に語っている。
ナイトメアフレームに乗り戦場に降り立てば、ブリタニア最強の十二騎士ナイトオブラウンズにも匹敵すると言われるほどの活躍を見せるこの二人も、ジャンルが恋となるとまるで役に立たない。
錆びた刀、底の抜けた鍋、サイズの合っていない蓋、破れた服――いろいろと例える言葉が出てきたが、とりあえずユーフェミアはそれらを自分の心の中の棚にしまい込んだ。そうするだけの聡明さは持ち合わせていたようだ。
「その様子だとこれから先が思いやられますね、ライお義兄さま?」
悪戯っぽく笑いかけながら、お義兄さま、の部分を強調するユーフェミアに、ライは頬をうっすら赤く染めて、恥ずかしそうに顔を背ける。
「まだ気が早いよ、ユフィ」
「うふふ、まだ、ということはライの中ではきちんと予定があるのですね? よかった、私、ライがお兄さんになるのがとても楽しみにしているのですよ」
「ユフィには叶わないな。ああ、そうだ、スザク、ちょっと」
「なんだい」
鼻を押さえたまま、ライはスザクを呼び寄せてそっとその耳元で囁く。
「君を義弟と呼べる日はいつごろになりそうだい?」
「! ライ、それこそ気が早いよ」
「照れなくたっていいじゃないか、ぼくと君と、どちらが先か結構気にしているんだけどね」
「ははは」
わざとらしい笑い声を零して誤魔化すスザクを開放して、ライは二人に手を振りつつ自分の部屋へと戻って行く。
その後、コーネリアの部屋を訪れたユーフェミアとスザクは、妙なものを目にする事になった。いや、特に妙というわけではないのだが、ここがコーネリアの部屋であるという事を考えると妙なのである。
「お姉さま? 何をしていらっしゃるのですか? かくれんぼですか」
「……ユフィか?」
「はい。お見舞いにきました。スザクも一緒ですよ。お姉さまの好きなハーブティーと、寂しくないようにクマさんのぬいぐるみを持って来たんですよ」
と会話しつつも、ユーフェミアはこんなお姉さまは初めて、と隣に立つスザクとアイコンタクトを交わす。ここら辺の信頼具合と通じ具合はライとコーネリアを上回る二人である。
さて、愛する妹とその騎士が視線で会話をしているとは知らぬコーネリアは、どうしていたかというと、二人が入室する前からずっと頭からシーツにくるまっていた。
誰にも顔を見られたくないのか、シーツを掴む指は現在出しうる最大の力が込められている。
これが妙なものの正体であった。
「お姉さま、本当にどうしたのです? ほっぺや喉が腫れてしまったのですか? 笑いませんからお顔を見せてください」
「いいいいいや、だだ、ダメだ。ユフィでも今は顔を合わせられない。こほこほ、み、見舞いに来てくれた事には礼を言うが、きょ、今日は、もう引き取ってくれ――くしゅ!」
ふとユーフェミアは、敬愛する姉のシーツを掴む指やかろうじて見えた耳が真っ赤になっている事に気付いた。お姉さまがタコさんになってしまった――ではなくて、この反応は。
「ライとなにかありました?」
「!」
びくびく、と大きくシーツ越しにベッドを震わせるほどコーネリアが反応を見せた。こんなに分かりやすい反応は珍しい。質問をしたユーフェミアの方が逆に驚くコーネリアの様子だ。
いつも勇壮で凛々しく頼もしい姉の、自分よりも幼い少女と見える反応に、ユーフェミアは申し訳ないと思いつつも浮かび上がる笑みを堪える事が出来なかった。
「ふふ、本当に、ライはすごい人ですね。最近は、私の知らなかったお姉さまをたくさん見かけます」
「あいつの事はもう言うな」
お姉さまはきっと、むす、と栗鼠みたいにほっぺを膨らましていらっしゃるのかしら、と考えて、ユーフェミアはころころと可愛らしく笑う。
その笑みを聞きながらコーネリアはますます面白くなくて、機嫌のグラフを不機嫌方向に下方修正させる。それでも唇に触れた感触を思い出して――
「確かに、甘かった、かな」
と思わず本音が零れた。
まだ痛いな、とコーネリアの右のイイのが決まった鼻を押さえながら、ライはすこし調子に乗り過ぎたみたいだ、と反省していた。思い返せばコーネリア殿下を相手になんて大胆な事をしたのかと、自分でも呆れてしまうほどだ。
本当に、自分でもどうしてあんなことをしてしまったのか。答えは分かっている。自分が、コーネリア殿下に恐れ多くも立場を弁えずに愚かにも恋をし、そして実らせた所為だ。
恋の花を咲かせてからライはこれまでの自分からは、とうてい信じられない事を、コーネリアを相手にしている。過去の自分が見たらどうかしてしまったのではないかと疑うかもしれない。
ああ、けれど、仕方ないじゃないか。胸が熱いんだ。胸の奥の奥の奥にある感情が、とてもじゃないけれど抑えきれないんだ。
いわれるがままに素直に目を瞑り、何をされるかも分からずに待っていたコーネリア殿下の顔。風邪の熱にうなされて火照った肌から香るなんとも魅惑的であまりに無防備なその姿。
この女性に自分は恋をしている。この女性が自分に恋してくれている。
その事実を改めて認識し、ライのカラダと心はこれ以上無い幸福感に包まれて、思わず抱きしめたい衝動を堪えるのに必死になった。もっとも唇を重ねることは躊躇しなかったけれど。
これが恋か。これが恋なんだ。
ミレイさんがあれだけこだわるのもいまなら分かる。
「恋ってすごいな」
おしまい。
すみません。また上げてしまいました。本当に申し訳ないです。
乙でした。
あーデレるネリ様もいいなあw
次の機会があれば楽しみにしています。
>>71 甘甘な話に(・∀・)ニヤニヤが止まらない。乙でした
みんなキャラが立ってて面白い。ユフィが噂広めてるとかw
でもこのネリ様はまだライの出生についてとかは知らされてない感じなんですね
ライとの関係が深まるに連れて、この後どうなるんだろうとか想像をかき立てられますね
>>71 素晴らしかったです!こういった甘い感じ大好きです。
各キャラに個性があってとても良かったです。
ですが、序盤のネリ様についてのなどの補足が少し多すぎるかなと思いました。
このあたりは好みによって違うところですので参考までに。
次回作楽しみにしております。
>>71 乙でした。ネリ様かわいいなwデレの破壊力ぱねっす…!久々にガチで萌えた!
既にラブラブ主従なスザユフィや義兄弟間近?wなライとスザクも微笑ましかったです。ほのぼのトリオの破壊力ぱねっす
すごく面白かったです、次の投下を楽しみにお待ちしてます。
甘いあとには苦味が必要、でもこれ苦いか?
こんにちは、短編をまた一つ投下します。
今回初めての戦闘物です、色々読みずらいでしょうがご了承を。
「荒ぶる神、蒼きスサノオ降臨」
カップ無し
騎士団と解放戦線混合ルートのイシカワ決戦でのパラレル物
オリジナルキャラ、オリジナルKMF有り
最後辺りで紹介します
とある一場面を元にして製作しました、嫌な方全力スルーを。
13レス程です、どなたか支援のほうをお願いいたします。
ナリタ連山での戦い以降、ライは客将として日本解放戦線に加わり、その戦力の回復と四聖剣の復活に尽力。
その結果、解放戦線の戦力は十分すぎるほどに回復、いや増強された。
しかしそれに費やした多大な時間はブリタニアにも等しく与えられるのは当然の事。
そしてそのスピードは明らかに早く、増大した戦力の多さは圧倒的にコーネリア側が多かった。
そのため今イシカワゲットーは、コーネリア率いる大軍団に包囲されてしまった。
序盤戦は藤堂立案の防衛作戦で敵部隊に大打撃を与える事に成功し、コーネリアに部隊の立て直しを余儀なくされるまでに追い込んだ。
ライは特別編制された直属の2個小隊(月下2、無頼改6)と共に奇襲部隊に参加し、遭遇した敵部隊の大半を撃破。
崩れ始めた陣形を突き崩し突撃、突撃すると見せかけ引き、追撃して来た所を待ち伏せて叩くなど考えうる全ての策を講じ、あっという間に奇襲部隊は敵全軍の半数近くを撃破していった。
この勢いに乗じてライは好機と、騎士団に救援要請を出し一気に決着をつけようと連絡を入れ了承を得た・・・・その直後の出来事だった。
中盤戦に差し掛かった時、日本に投入されていたナイトオブラウンズ、ジノ、アーニャ、モニカの率いる救援が接近。
その情報に本陣が前線を捨てて退却を開始し始めたのだ。
たちまち解放戦線は総崩れとなり一気に形勢は逆転、戦局はブリタニア側に完全に傾いてしまった。
しかし、今迄まともに戦わなかったのが天罰となったのだろうか・・・・。
本陣の退路上にラウンズが出現した為、まともに正面から撃ち合う形となってしまったのだ。
結果、本陣はまさに“袋の中の鼠”、前からはラウンズ、後ろからは部隊を立て直したコーネリア以下の主力部隊の挟み撃ちにあって全滅した。
この状況に、藤堂は残っている部隊に騎士団と合流するよう指示を出し、撤退を開始したのだった。
追撃をはじめたブリタニア軍の前に被害は大きくなっていくばかり・・・・・その攻撃は緩むどころか、激しさを増していった。
それを目の当たりにしたライは一つの決断を下す、藤堂以下その場にいた全員がその決断に反対した、が彼の決意は固く揺るぎなかった。
それまで乗っていた月下を部下に託したライは、味方の撤退の時間を稼ぐため新型KMF「スサノオ」を駆り、たった一人でコーネリアの主力部隊に特攻をかける事を。
「ふふふふふふ、こうも簡単にふりだしに戻るなんてな」
コックピットのライはニヤッと笑って見せる、まるでこうなる事を予期していたかの如く。
「スサノオは、主力部隊に特攻する」
「しかし隊長!!」
「戦力をズタズタにされすぎた、これ以上の戦闘続行は不可能だよ。僕は出来る限りの時間を稼ぐ、お前達も速やかに撤退し騎士団と合流しろ」
「で、ですが隊長一人じゃあ!!」
「無駄死にはするな!僕はただじゃ落ちはしない。今迄だってこんな修羅場、幾度も潜り抜けてきただろ?」
「「・・・・は、はい」」
「よし、発光信号上げぃ!!この場は僕が預かる!!」
「荒ぶる神、蒼きスサノオ降臨」
突如として出現した巨大なKMFを目の当たりにしたブリタニア軍人達はアサルトライフルやキャノンをスサノオめがけて乱射する。
しかし、あろう事かその弾丸はことごとく命中しているにも関わらず、まったく効いていない。
ジノはその信じられない光景に度肝を抜かれる。
「蒼い巨大KMF、弾丸を跳ね返してるだと!?」
「なめるなよ!?このスサノオは、ブリタニアの通常兵器などどうという事は無い!!道ずれに一人でも多く、地獄に引きずり込んでやるわ!!」
ライは右腕に装備している口径300mmの大型拡散荷電粒子キャノンを敵部隊に向けて放った。
鼓膜を破る程の大きな轟音と共に、蒼白い閃光は射線上に居たサザーランドやグロースターを瞬く間に蒸発させた。
この諸手の攻撃で少なくとも2個中隊の損害を出すにいたった、たった一撃で。
後の戦いを楽にする為にも、少しでも多くの仲間を救えるよう、ここで出来る限りの敵戦力を道ずれにしてやると。
「あ、圧倒的じゃない!!」
現存するどのKMFの攻撃をも受け付けず、さらにたった一撃で大多数のKMFを葬り去ったその力にモニカは恐怖を覚え冷や汗をかいた。
「ふっはっはっはっはっはっはっ!!見たか、スサノオが量産のあかつきには、ブリタニアなどあっという間に叩いてみせるわ!!」
この威力を目の当たりにし、ニヤッと狂気じみた笑いを浮かべるライは、直ぐにキャノンを指揮車であるG1にむけ引き金を引く。
その閃光は指揮所にいた者達に逃げる暇すら与えず、瞬く間にG1は大爆発を起こし沈黙した。
「な、なんて火力だ!?」
「接近して格闘で仕留めよ!!」
「さがるな!!ブリタニアは常に勝者であらねばならんのだ!!」
ブリタニア軍は攻撃の隙を突き、遠距離攻撃が効かないなら接近戦に持ち込もうと勇猛果敢にスサノオに接近した、だが接近した軍人達を待ち受けていたのは容赦ない弾丸の雨。
頭部に備え付けられているバルカンは一瞬にしてKMFを蜂の巣と化す、爆発こそしなかったがコックピットもただでは済まない、中の人間は“マグロ”状態であるだろう。
モニカはこの状況を理解できずにいた。
「冗談じゃないわよ!?こんな卑怯な兵器なんて、チートもいいところだわ!!」
「モニカ、私とアーニャが奴の注意をひきつける!!その隙に接近してコックピットを叩いてくれ、ランタナの機動力なら突破できるはずだ!!」
このままでは味方の損害が大きくなる一方。
高速戦闘が可能なトリスタンと、火力と防御力が高いモルドレッドで注意をひきつけ、加速力と俊敏性が高く格闘力の高いランタナで直接コックピットを叩き止める手段だ。
(理解するのは後ね、目の前の敵を叩く、それが今やらねばならない事!!)
「OK!アーニャ、援護頼むわよ!!」
「任せて」
ランタナが駆け出すと同時にアーニャは正面からミサイルをほぼ全弾、スサノオめがけて撃ち尽くす。
「モルドレッド、アーニャか!!」
ライは頭部バルカンをミサイルに乱射しそのことごとくを撃墜し、息つく暇すら与えぬ様に今度はモルドレッドめがけて放つ。
「そんな攻撃、効かない」
「どうかな!?」
「っ!!」
これはアーニャにしては計算済みだった、動きが遅いこのKMFの攻撃は当たらない、
たとえ格闘が来ようと回避するのは容易、そう思っていた。
しかし甘かった。
バルカンは囮、左手を固く握り、モルドレッドめがけ拳骨の要領でおもいっきり叩きつけた、アーニャからは巨大な隕石とも思える物が迫ってきた感じに見えたと言う。
しかも、こっちの回避経路を読んだ正確な攻撃!
「きゃああっ!!」
とっさに反応しかわそうとしたが完全にはよけられなかった、まじかで受けたその衝撃は凄まじく、重いモルドレッドは廃墟ビルに叩きつけられ沈黙した。
「ううっ!!く・・・・駆動系が・・・・」
「まずは1つ!!」
あっという間に1つ、敵が多い現状では止めを刺す暇は無い。
姿勢を戻そうとしたその時、急接近を知らせるアラームが鳴り響いた。
「っ!!このスピードは!?」
「この機動力にはついてこれまい、蒼い巨人!!」
アーニャに気を取られすぎた、ジノのトリスタが右側から急接近し、あっという間に足もとまでたどり着かされてしまった。
「この距離なら!!」
「いけると思ったか、ジノ!!」
右足を破壊しようとトリスタが構えたその瞬間をライは見逃さない、右腕にもこういった状況に備えてバルカンが装備されている。
その威力は抜群で射撃してから瞬く間にトリスタの片足を吹き飛ばす。
連射音の後に聞こえる爆音、トリスタも行動不能に追いやられた。
「くそっ!!上手くいけば儲け物だったんだが―――」
「こんな単純な攻撃、かわせ―――」
トリスタを行動不能にさせた時にライは気付く、攻撃が単純な事に。
(そうだ、攻撃が単純すぎる。まさか!?)
「かかった、モニカ!!」
「遅いわよ、うすのろ!!」
「しまった、横合いから!?」
ランタナにはランスロットと同じ機構のヒートサーベルが装備されている、これで今迄切れなかった物は無い。
モニカはランタナをフルスピードで左斜め後方から接近しコックピットめがけて飛びこんだ。
「せえええええい!!」
「間に合えっ!!」
振り下ろしたサーベルはガードの為に上げてきたスサノオの左腕に振り下ろされ、装甲に刃が触れた瞬間激しい火花が散る。
ところが、切断するどころかスサノオの腕はそのサーベルの刃を受け止めてしまったのだ。
「そんな!?」
「うおおおおおお!!」
腕を振りかざし、ランタナをサーベル諸共吹き飛ばしたスサノオ。
吹き飛ばされたランタナは廃墟ビルに背中から激突し、その場に横たわったまま動かなくなってしまった。
「くそっ・・・・バランサーがいかれた」
「これで3つ全部落とした、残りは何処だぁ!!」
休んでいる暇はない、体勢を立て直し次の敵を探すライに今度は緑の閃光がスサノオの左腕を突き破り、爆音が響き渡った。
「何だ!?」
「ライ、君なんだろ?返事をしてくれ!!」
そこに現れたのは、ユーフェミアの専属騎士にしてライの友が駆る白いKMF、スサノオの真正面に位置する格好だ。
その声はライが渡した、彼等にしか聞こえない無線からの声。
「スザク!!」
「もう降伏してくれライ、これ以上の戦闘は無意味だ!!」
スザクの叫び、事実スサノオは損傷こそ確かに少ないがそのダメージは確実に蓄積していっている。
この時点で残っている解放戦線の部隊は全機撤退を完了していた、ライの目的は達せられている。
コーネリア本隊も追撃できる戦力はもはや無くモニカ達も動ける状況ではない、ミッションは達せられているのだ。
しかしこの場を包囲する戦力はまだ持っている、ライがジノ達に気を取られているその間にコーネリアはスサノオを完全に包囲し、逃げ場を無くしていた。
「いくら装甲が固くても限界がある、これだけの数を相手に1人で戦うなんて無茶だ!!死ぬ気なのかライ!?」
「そうだな、仲間の為に死ねるなら本望だ!!」
自分の居場所を、そこに住まう仲間達を守る。
最初からそう心に誓っていた、それにここでライが残れば日本に来ているあいつは必ず来る。
このスサノオならそいつに―――。
「そんな!?」
「私情は禁物だぞスザク!!」
スザクのその叫びが何を言いたいのか判る、だが退くわけにはいかない。
ライはすでに覚悟を決めている、例え友の言葉でも退きはしない、だって――――
「悲しいけど、僕達にとってこれは戦争なんだ!!」
ライは涙を流しながらもキャノンをスザクめがけはなつ、閃光を間一髪のところでかわされたが、後ろに控えていた部隊に命中させ消滅させる。
「さぁどうするユフィを守りし騎士よ!!僕を倒さねば多くの命が星となるぞ!!」
そう叫んだその時、今まで聞いたどの爆音にも及ばない程の大きな音と共に左腕が消滅したのだ!!
「があっ!!な、何だ!?まさか、っ!!」
爆発の衝撃、コクピット内の破損で頭を切り血を流したライは、レーダーとディスプレイを確認した。
そこには、遠くから目視してもハッキリとその姿がわかる新手の存在をハッキリと映し出している。
「蒼き死神!!ここで貴様の首、打ち取ってくれる!!」
「やはり来たか、黒の破壊神!!(くっ、なんて威圧だ!!)」
圧倒され、気を失うのではないかとも思わせるような威圧感を受けながらも、ライはキャノンを構えようとする、が!!
「目の前の敵だけが全てじゃないのよ!!」
「何!?」
消滅した左腕の方向から1機、さらに―――
「周囲を常に警戒しなきゃ、命を落とすぜ?」
「しまった、挟まれた!!」
そのまた反対の方向から1機と、合計3機のKMFが現れた。
ナイトオブラウンズ.NO2、エドワード率いる巨人小隊。わずか3機のKMF「オシリス」を前にした敵の中で生き残った者はいない。
「「「沈め、死神!!」」」
3機は装備しているバズーカを撃つ。
轟音と爆風が巻き起こったその光景を、ライはほんの少ししか確認できなかった。
「動きが鈍い!!」
スサノオが巨大過ぎたが故の鈍足、今迄の蓄積されたダメージ、そしてライの反応スピードに機体がついに悲鳴をあげ反応が僅か、ほんの僅か遅れてしまった。
放たれた3つの凶弾はスサノオの左足を完膚なきまでに破壊し、片足を失ったスサノオはその場に黒煙と共に崩れ落ちていく。
「うおっ、ご、ごはっ!!く、くそぉ!!」
崩れゆくスサノオと共に闘うライもまた、その想像を絶する威力の前に簡単にうちのめされてしまった。
ライはいよいよ、己の最後を悟る。
「ハァ・・ハァ・・たかが3機のKMFごときに・・・・このスサノオがやらせるか!!」
「「「「!?」」」」」
でも諦めない、最後の最後まで戦い抜くと誓った自分の決意に従う、その強い心、それは湧き上がってくるオーラとなり周囲を圧倒していく。
「やらせはせん!!貴様ら如きやからに、騎士団の栄光を、僕の居場所を、仲間を、日本の未来をやらせはせん!!この僕がいる限りは、やらせはせんぞぉ!!!」
最後の一撃とばかりにキャノンを撃とうとするも、そこまでだった。
雄たけびをあげた人がふっと静かに息を引き取っていくように、スサノオはその巨体を静かに横たわらせた、それと時を同じくしてライもまた意識を闇の中へと手放したのだった。
「・・・・終わった・・・・のか?」
「最後の気魄・・・・見事なものだ」
エドワードは、自然と呟いていた。滅多に敵を褒める事の無いブリタニアの破壊神が、部下の2人も同じだった。
全てが終わった時、イシカワには風が吹く音しか聞こえなかったと言う。
イシカワ決戦は、片瀬少将以下の解放戦線を壊滅させる事に成功した。
しかしながら、コーネリア本隊も投入した戦力の60%を失う大打撃を被ってしまう。
さらにジノ、アーニャ、モニカの3人のラウンズが一時的ではあるもののたった1機のKMFに再起不能となった事実は日本のみならず、全世界に衝撃を与えた。
また、藤堂以下の四聖剣やコーネリア本隊に大打撃を与えた奇襲部隊(解放戦線全体ではわずか5%の戦力)は、その80%が騎士団との合流をはたし、そのまま戦力として加わることとなった。
大局的には結果としては痛み分けの戦いでしかなかったが、騎士団と合流した戦力がここまで多かったのと、コーネリアの損害の増加、ラウンズ3人の敗退はひとえに、ライが撤退時間を稼いだのが大きかった。
その英雄的働きをした戦士は・・・・・・。
「まさか・・・・」
「こんなこと!?」
「・・・・・・・ッ!!」
ジノは自分の目を疑い、ただ立ち尽くすしかなくなったモニカ、信じたくないと唇を噛みしめ目を背けるアーニャ。
其々がうけた衝撃は、決して計り知れないものだったと、後に彼等は語っている。
あのエドワードでさえ―――――。
「貴様だったとはな、死神・・・・いや、ライよ」
やっと絞り出した言葉、その言葉もどこか震えている様に聞こえたという。
(ライ・・・・どうして!?)
スザクも友のこんな結末に理解できず、ただ目を背ける事しか出来なかった。
意識を失っていたライはその後、アーニャとモニカ、ジノ、スザクの介抱により一命をとりとめるも、そのばにて逮捕されることとなった。
この後、とある一つの無線が流された。
発、エリア11総督 コーネリア・リ・ブリタニア
蒼き死神、黒の騎士団戦闘隊長兼作戦補佐、騎士団の双璧の一翼を担う者、ここに捕らえる。
後顧の憂いを断つため、コーネリア・リ・ブリタニアの名の下に、この者の処刑を命ずる。
処刑の日は後日追って通達する故、それまでこの者をチョウフ基地にて収監せよ。
と。
以上です。
戦闘物は初めてでなかなか戦い方を表現するのは難しい。
2年たつのに衰え知らずなここはホントすごいです。
オリジナルキャラとKMFについては後ほど投下します。
では失礼します。
遅くなりました、オリジナルキャラとKMFについて投下します。
だいたい4レス位です
オリジナル人物紹介その1
エドワード・ゼウス 33歳(CV大塚明夫)
・ナイトオブラウンズNO.2、マントは黒。騎士団の双璧がライとカレンならブリタニアの双璧はこのエドワードとビスマルクである。
ビスマルクに匹敵する操縦技術と戦術眼を持つ武人、一時は彼がNO.1にとの声も大きかった程で、シャルルの信頼も絶大。
彼の配下の者はブリタニア人から各エリアの人物と、その出生に拘らずブリタニアに忠誠を誓う者、大義を掲げる者を好み、優れた戦術論は例え敵の物であろうとも採り入れる。
それに反しブリタニアに敵対する者で、志の無い者と判断した者には容赦は無く、これまでの戦闘で彼の前にでた者は全て破壊され、生きて帰った者はいない。
その事もあり、諸外国からは“黒の破壊神”と恐れられている。
だがそれでも家族の前では良き父、妻は同じラウンズNO.5のエミリー、2人の子供(1男1女)も将来は軍人になりたいと熱望中とか。
ジャック・キース 26歳(CV森田成一)
・エドワード直属の小隊隊員、時期ラウンズ候補とされる赤毛の青年。
射撃戦に強く、その正確さ、命中率、敵の急所を見極める目はブリタニア軍内ではトップクラス。
同い年で同期入隊のセレナとは恋人で、共にブリタニアの為に戦い生き抜こうと誓い合い、この日本での任務終了後挙式をあげる予定。
普段は熱血漢、体を動かす事が趣味でスポーツ大好き、特に野球。軍人でなければ野球選手になりたいと思っていた程でキャッチボールは戦場でも欠かせない、相手はセレナが主。
しかしひとたび戦闘となれば冷徹な鬼人となり、エドワードと同じく志無き者には情け容赦はしない。
セレナ・ナキース 26歳(CV松岡由貴)
・エドワード直属の小隊隊員、ジャックと同じく時期ラウンズ候補である雪の様に白い髪を持つ落ち着いた感じの子。
格闘戦闘においては天才的な才能を発揮し、23の時に前線でエドワード、ジャックと共に戦い培った物は計り知れない。
反射神経、察知能力は他の者の追随を許さない程高いレベル。
戦場ではジャックと同じく鬼人の如き働きを見せつける。
しかしひとたび日常に戻れば、恋人ジャックに付き従うそれこそ聖母の様な女性へと変わり、彼を全身全霊をもって支え続ける。
KMF「スサノオ」
全高・・・19.50m
本体重量・・・48t
武装・・・300mm大型拡散荷電粒子キャノン
頭部、腕部30mmバルカン砲
・日本解放戦線が開発した巨大KMF、機体色は青。
1機でミリタリーバランスを崩す事を主目的とした決戦用KMF。
主武装である300mm大型拡散荷電粒子キャノンの一撃は、グロースターでさえも蒸発させる事が出来る程の威力を発揮する。
このキャノンを装備させる事を大前提とした基本理念から、機体を大型化し防御力も向上させた、その代償として速力と俊敏性の著しい低下を招く結果となる。
また格闘兵器を装備させるとコストが異常にかかるため断念、代用として腕と頭部に30mmのバルカンを装備し接近戦に備えるも、効果のほどはあまり期待されていない。
KMF「オシリス」
全高・・・12.25m
本体重量・・・36t
武装・・・280mmバズーカ
90mmマシンガン
ヒートサーベル
・ナイトオブツー、エドワード小隊専用機。
それまでのサクラダイトを主導力源としていた機構から小型の熱核融合炉を動力とし、長時間戦闘を可能とさせる。
出力はランスロットの5倍以上と言う驚異的なパワーを生み出す事に成功した。
しかし熱核の放熱量はランスロットの何十倍にも跳ね上がり、大型の冷却システムが必要となってしまい機体の大型化は避けられなかった。
ランスロットの脚部を普通の大きさとするならその倍以上の大きさが必要となってしまっている。
技術者達はこの機体の大型化を逆手にとり、武装の強化、防御能力向上を集中して強化した。
しかしスサノオとの決定的な差はその機動力である、スサノオのスピードは最大速度でもグラスゴーまでが限界だった。
しかしオシリスは大型化による速力低下をさけるためブースターを装備、さらに得られるエネルギーを稼働のみに集中させた。
この事で武器の使用による稼働時間の低下を完全に遮断させ、グロースターレベルにまで引き上げる事に成功した。
KMF「ランタナ」
全高・・・4.35m
本体重量・・・5.82t
武装・・・ヒートサーベル×2
9mm小型ハンドガン
・モニカ専用機。ランスロットの機動力を元にさらにブースターを備え付け、驚異的な加速力を持たせた格闘戦特化型。
ブースターによるGはグロースターの3倍もかかる為常人には決して操縦出来ず、モニカもいまだにそのGに意識をもって行かれそうになる。
ヒートサーベルはランスロットの物と同じ機構をさらに高性能化し、今迄切れなかった物は無い。
格闘戦重視であるが故に索敵能力とレーダーは優れた物を装備、半径9kmもの広大な範囲を見る事が可能。
しかしその代償として射撃武装はまったく装備されずハンドガンも気休めにしかならない。
以上です。
>>88 乙です。
まさか、すでにラウンズが来ていたとは
個人的には誰かとカップリングがあってほしいですが、楽しく読ませていただきました。
つぎの投下を待っています。
CVまで載せていたのはビックリです。
>>88 乙です
個人的にはカップリング無しの話の方が好みなのでとても楽しめました
面白かったです、こういう熱いライもいいですね
次の投下も楽しみにしています
>>88 GJ!
だが、ライのセリフが『ドズル・ザビ』で再生されたではないか!
どうしてくれるw
個人的にはよくここまで細かい設定を考え付くなと感嘆し
新たな面白さで楽しませていただいたなーと思うと共に
ここまでオリジナルの要素が強いと、ちょっと設定や時間軸がピンと来なくて
置いていかれる人も多いのでは…というのが素直な感想です
微妙に筆が進まない、だが、だからこそあえて投下しよう!
バレンタインSSの予告編を!
「私がしっと団エリア11本部団長 ゼロである!」
「私はすべての彼女・彼氏のいない人間の味方だ!」
(ナナリーに近づく男は殺す! この立場はそれを行うのにふさわしい……)
仮面を使い、彼は目的を果たそうとする――――――
(ラクシャータ謹製のリア充スカウターに反応が……! バカな! 何故しっと団のアジトにリア充力5000ガバスのやつがいる……!)
フジサンでのエリア11しっと団メンバーの会議にライがいることに驚愕するゼロ
いっぽう、クリスマスにはびこるアベックを殲滅した功績をたたえられて本部に呼び出されるリヴァルとライもそこで目にしたしっと団エリア11本部団長ゼロに驚きを隠せなかった
「何故チョコを渡すのか―――――愛を確認することが本来の目的ではないか――――――性欲におぼれるアベックは死ね!」
「さすがゼロ! 見事な三段論法」
果たしてバレンタインの悪しき習慣を断ち切ることができるのか!?
「なにやってるのよ、リヴァル」「私はしっとリーダー、決してリヴァルという好青年ではない!!!」
「ライ君、なにやってるの?」「僕はしっとエース、決して特派のエースパイロットではない!!!」
「ゼ・・・ゼロ・・・?」「私はしっとジャスティス・ハイパー! 決して黒の騎士団団長のナイスガイではない!」
「ばかな……あの女、しっと力100億×200立方メートルだと……!」
「ユーフェミア様をたぶらかす悪い男……!」
ちなみに一般しっと団団員たちは1000万ヘクトパスカルだ!
我々は、彼女を持つものが、彼女を持たざるものを襲うとき、再び現れるであろう。
たとえそのアベックがどれだけ大きな力を持っているとしても。
彼女を持つものよ、我を恐れよ!
彼女を持たざるものよ、我を求めよ!
世界は我々しっと団が裁く!!
『アッシュフォード学園しっと団 ヴァレンタイン変』
2010年2月14日 投下予定
※なお、この予告は実際の本編と多少異なる点があります
よし、これで2月14日に投下しなければならなくなった。
頑張って執筆してくる
おや久々にリアルタイムで投下に遭遇した
>>95 むしろ「ライがリア充すぎて後々内輪もめしそう」に10000ガバスw
97 :
穴熊 ◆cEc5KVfyMc :2010/02/14(日) 01:43:55 ID:MLFrIO2C
ヴァレンタインとかぜんぜん関係ないですけど投下します
前回の続きです
98 :
穴熊 ◆cEc5KVfyMc :2010/02/14(日) 01:47:37 ID:MLFrIO2C
死の理由
「本陣!予定時間を過ぎても合流部隊が来ないぞどうなってる!応答しろ本陣!」
通信機に向かって怒鳴るが聞こえてくるのはノイズと怒号と散発的な銃声のみ。
どうなっている?01:00に合流の予定がすでに二十分は立つのに集まっているのは予定数の三分の一ほどだけだ。
本陣との連絡もつかず引くか進むか判断がつかない。
「本陣聞こえているか!応答しろ!」
再度通信を入れるがやはりまともな応答はない。仕方ないこの人数で政庁に攻め込むか。そう決意したとき前方からKMFの駆動音が聞こえる。
合流部隊かと思いカメラを向けるが、映ったのはサザーランド。
「馬鹿な!ブリタニア軍は政庁に篭城しているはずではないのか!?」
現れたサザーランドは九機編成の中隊クラス、本体からはぐれたにしては多すぎるし統率が取れている。
前線部隊が突破された?一瞬そんな考えが浮かぶがそれはありえない。なぜなら前線部隊で指揮を執っているのは自分が知る限り最高の武人である藤堂中佐だ。
ではどうして敵部隊がここにいる?混乱しながら応戦の指示をだす。
どんな理由にせよこちらの方が数は多い。油断しなければ大丈夫だ。
しかし、部隊の大部分は戦の心得もない民兵。案の定一人がその油断に取り付かれ飛び出す。
「素人が不用意に飛びだすな!」
飛び出した兵のフォローに入るために俺も隠れていた瓦礫から飛び出る。
それを待っていたかのように左側のビルの三階部分からグロースターが一機ランスを構えて飛び降りてくる。
ランスはまっすぐに俺の月下を向き、重力を味方につけ加速する。その一撃をかわせばサザーランドからの銃撃に会う。どん詰まり、だが!
「ただでは死なん!」
回避を完全に諦め回転刃刀を右肩の前に垂直に八相の構えを取る。ランスの攻撃は直線のみ、ならばその槍先が届いた瞬間こちらも刃を振り下ろし相討ちにする。
直前に迫った死に感覚が研ぎ澄まされていき周りの景色がやけに遅く感じる。
遅れていた時間が徐々に戻ってくる。いよいよと思ったとき敵機の軌道が前のめりに変わり、俺の頭上を飛び越えてゆく。
あっけに取られる俺の目に映ったのは体勢を崩したグロースターとビルの二階から頭を出している無頼数機、そして蒼い月下。
『大丈夫ですか?』
通信機から聞きなれた声が聞こえる。蒼い月下のパイロット、ライ少尉だ。
「少尉!すまない助かった」
言葉を交わしながらも敵から目を離さない。少尉がサザーランドたちに威嚇射撃を撃ち、俺がグロースターに切りかかる。
突然の乱入に動揺した敵が立ち直る前に動く。大上段に回転刃刀を構える。
通常ならこれは隙の多い必殺の構えだが今回は誘い。
動揺した敵がこちらの隙を突こうとランスを構え突撃を仕掛けてくる。俺はそれにハーケンで答えてやる。
ハーケンを食らった敵からコックピットが射出され、それを確認した少尉は前方のサザーランドに向かって走り出す。
今度はこちらが援護に回ってやり、銃弾をばら撒く。
グロースターという戦力の中枢を失った敵の動きは鈍り陣形に僅かな隙間が見える。少尉はその隙間に潜り込みまず一機、輻射波動で沈める。
輻射波動の威力を見せ付けられた他の敵はその左腕を向けられただけで距離をとる。
少尉から離れた敵に俺たちの銃撃が襲い掛かる。それで二機、少尉自身の射撃でもう一機落とす。
味方の爆発で体勢を崩す残りのサザーランドに少尉が切りかかり、俺もそれに続く。
まず、爆発のダメージが一番大きかったヤツが起き上がる前に地面を抉りながら真っ二つに切り裂く。その勢いのまま回転するようにすぐ後ろに迫っていた敵に垂直に刃を振り下ろす。
次の敵をと思いカメラを回すが、すでに一機は少尉に切り捨てられもう一機も左腕につかまれ弾ける。
残った一機が少尉に銃を向ける。まずいと思い俺も銃を向けるが敵の方が早い。
が、少尉はその近距離射撃を腰を落として紙一重でかわし、機体のバネを生かした突撃で最後のサザーランドをしとめた。
進軍前、朝比奈が少尉はもうだめかもしれないと言ったときは心配したが騙されたか?むしろ前よりも動きがよくなっている。
機械じみた精密さと獣じみた激しさ。相反する二つの動きの融合。剣術の到達点の一つ。そんなことを考えてしまう。
周囲を警戒しもう敵が隠れていないことを確認すると少尉に通信を入れる。
「救援感謝する。しかしなんでここに?」
確か少尉は租界外周部で取りこぼした敵の掃討に当たっていたはずだ。
『藤堂中佐からの指示です』
そう言う少尉の声には普段の柔らかさはなく、苦渋がほのかににじみ出ていた。
『僕らはこのまま可能な限り兵を集め退避せよと』
はじめその言葉の意味が分からなかった。しかしすぐにその意味を理解し問い詰める。
「退避だと!前線はどうなってる!それに中佐の指示だと?ゼロはどうした!」
『ゼロはこの戦域にはいません。前線は、突破されるのは時間の問題だと』
ゼロがいない!?まさか本当に俺たちを裏切ったのか!いや、この際それは置いておこう。それよりも前線が心配だ。
「わかった。少尉はこのままこいつらと退避を、俺は前線の援護に向かう」
そのまま転進しようとした俺の月下の肩を少尉が掴む。
『僕だけでは彼らを守りきれません。僕が道を切り開きますからしんがりをお願いします』
「今も中佐たちは戦っているんだぞ!お前だって千葉が心配じゃないのか!」
千葉の名前が出た瞬間少尉の月下が僅かに揺れる。そうだ少尉が中佐たちを心配しないはずがない。とくに千葉とは男女のそれに行かないまでも互いに大切に思っているのは周知の事実なのだから。
「すまない。軽率だった」
『いえ、ですが彼らだけでは退避は無理です。だからお願いします』
自分も駆けつけたいのを押し殺して少尉はそう言う。
「わかった。先導は任せたぞ」
はい、と短く答え少尉の月下が走り出しそれに団員たちが続くの眺めながら政庁の方角に目を向ける。
いつか必ず助けます。だからどうかそのときまで耐えてください。胸のうちにそう呟き、最後尾について租界から脱出する。
あれから一年もたつのか。
特殊な薬品を使った紫色の炎に囲まれた廃墟の中で少年に頭を垂れながらそんなことを考えていた。
少年はルルーシュ・ランペルージ、またの名をゼロ。日本の救世主でありながら一年前俺たちを裏切った仮面のテロリスト。
『ブリタニア軍がすでに動いている、作戦の引継ぎが済み次第諸君にも前線に向かってもらう』
ゼロがその年齢にそぐわない口調で話す。
『それなら僕ひとりで十分だ。二人は皆の下に戻ってくれ』
そう言うのは少尉だ。ブラックリベリオン以後指令代行として黒の騎士団を率いていたのは彼だし、この作戦も彼の立案であるのだからこの言葉は最もなのだが、頷ききれない。
『でも、二人だけで大丈夫?』
紅月も同じことを思ったのか心配そうに声をかける。誰よりも仲間を大切にする少尉、その仲間を一度は捨てたゼロに対する怒りはもしかしたら俺たち以上かもしれない。
『大丈夫だよ。C.C.もいるしね』
普段道理の温和な口調で冗談めかして言う。この調子なら大丈夫だろう、C.C.も普段はああだが意外と人間味のようなモノがないこともない。
「わかった、紅月いくぞ。それから少尉」
紅月を促しながら、通信を全軍と繋ぐものから個人同士のプライベート通信に切り替える。
「俺はお前について行く覚悟は出来ている」
そう、俺たちに必要なのは奇跡を起こすゼロであり、本物のゼロである必要はない。
『ありがとうございます。でも、その必要はありませんよ』
微笑み一つ通信が切れる。
後のことは少尉に任せ俺も紅月に続いてみなの元に向かう。
『次!十メートル先の天井に銃撃!』
通信から聞こえる指示に従い銃弾をばら撒くと上階から傷だらけのサザーランド三機が落ちてくる。落下の衝撃がとどめになったらしくコックピットが勢いよく窓から飛び出していく。
指揮官交代からわずか十数分で敵勢力の半数近くが無力化されている。
「くやしいがものが違う」
知らずそんな呟きがこぼれる。自分など比べ物にもならない、藤堂中佐とてここまで圧倒的ではない。
そもそも指揮とは戦場全てを見て部隊単位で動かすか、一つの部隊を率いて個別に動かすかのどちらかだ。これで言えば中佐はどちらもこなせるが、一度に両方行えといわれても無理だろう。
全体を見れば単体が見えず、単体を見れば全体が見えない。天賦の才がなせる業か、想像も出来ないほどの修練の賜物か。
『飛行船の煙幕がもうじき切れる、ライは井上たちの迎えに向かってくれ。残りは所定の持ち場につけ』
もうじき作戦も終了か、当初の予定時間よりも随分と早い。
『新型機を発見!形状からランスロットの量産型かと!』
このタイミングで新戦力の投入?ランスロットの活躍は知っているが、量産型にそれほどの性能を待たせられたのか?
疑問は尽きないが警戒は必要だろう。
「ゼロ、ここは俺が」
通信を入れるが、返事は否定的なものだった。
『いや、量産型とはいえランスロットほどの能力はないはずだ。それに狙いは私のようだ、そのままこちらに合流してくれ』
「了解した」
答えてゼロの元へ向かうが、その間に聞こえてくる仲間たちの撃墜報告に拳を握り締めるしかできない。
『例の量産型がくるぞ、3、2、1、発射っ!』
ゼロの号令のもと俺と紅月が通路の曲がり角から僅かに見えた金色の機体へ向かって銃弾の雨を浴びせる。着弾の影響で粉塵が酷く敵機を確認出来ないが、あのタイミングでは回避は不可能だろう。
その油断のせいで反応が遅れた。真後ろに気配を感じ、咄嗟にアクセルを踏み込み何とかその剣戟を回避したが浅くコックピットの装甲を削られる。
振り返れば先ほど倒したはずのランスロットを模した姿の金色の機体がMVSを構えている。
「馬鹿な!あれを避けたのか!」
驚愕しながらも相手を観察するが傷はおろか煤すらついていない。もう一機いたのか!
「紅月挟み込むぞ!」
『了解!』
言葉と同時に回転刃刀を横に薙ぐ。紅月もそれに合わせるように右腕の輻射波動を唸らせ敵機の背後から襲い掛かる。
しかし、刃が届いたと思った瞬間目の前から金色の機体が消えうせ紅蓮と向かい合う。
機体に急制動をかけて同士討ちを防ぎ、回りを見渡すと敵機がゼロに刃を向けている。
『させるかぁ!』
叫びながら紅月がハーケンを打ち込むが、またしても敵機が消える。
「瞬間移動だと!?」
予備動作もなく離れた場所に移動している。先ほどの通路に目を向けるがやはり残骸の類はない。
紅月が尚も飛び掛るがことごとく避けられる。しかし、こうして外から見ていれば分かるがあれは素人の動きだ。
『カレン闇雲に突っ込むな!ヤツの動きは単純で直線的だ、動きを読め』
ゼロもそのことに気づいたのか指示が飛んでくるが、あの瞬間移動の種が分からないのか後手に回っている。
何度か同じ攻防を繰り返したが、ヤツがゼロに狙いを絞ってくる。やはり素人、不利になれば大将を狙ってくる。
ゼロを狙ってくるだろうとヤツの姿が消えるのに合わせて機体をゼロに向ける。
「くらえ!」
現れた金色の背中に向けて刃を振り下ろすが、又しても姿が消え背後に殺気を感じる。嵌められた!?
素人と侮った。ヤツにつられてこちらも単純な戦い方をしていた。
気配で敵がMVSを振り下ろすのを感じる。だが、不思議と俺の気持ちは落ち着いていた。
ゼロと少尉がいれば中佐たちを助け出し日本解放の悲願を果たせるだろう。
ならば俺の役目は彼らを守ること、そしてここが俺の死に場所だ。
思えば一年前少尉に助けられたのはこのためだったのかもしれない。あのときとは違う穏やかな心で死を受け入れる。
回転刃刀を逆手に持ち替え月下の腹部に突き刺す。これで俺とヤツは刃で繋がった。
「四聖剣は虚名にあらず!」
遺言と共に自爆装置のスイッチに指をかけ、静かに押し込んでいく。
『卜部さん!死ぬな!』
スイッチを押し切る寸前、叫びと共に衝撃に襲われる。
体勢を直す頃にはまた瞬間移動で距離をとられる。舌打ちと共にカメラを衝撃の正体、少尉に向ける。
「なぜ邪魔をした!今なら確実にヤツを討てたのに!」
『死んだら!』
怒鳴りこんだこちらの声より大きい怒声が返ってくる。普段の彼からは想像も出来ない怒りのこもった声で。
『死んだら悲しいだけです!そこに意味や理由なんてない!』
『その通りだ!』
少尉の叫び同意の声を上げたのは意外なことにゼロだった。
『死に意味はない!生きて事を成して初めてそこに意味が生まれるのだ!』
死に意味はない、か。軍人として死に場所を求めていた俺のこの八年間を否定する言葉だが不快じゃない。
動けなくなった俺の機体を囲むように少尉たちの機体が集まってくる。そしてゼロから通信が入る
『だから君も生きろ。その命に確固とした意味があると証明するために!』
『盛り上がっているところ悪いが時間だ』
C.C.が通信に割り込んでくる。全ての準備が整ったようだ。
程なくして建物全体が激しい揺れに襲われ俺たちのいたフロアがゆっくりと沈んでゆく。
金色の敵機もさすがに追撃を諦めたのか撤退していく。それを見ながら先ほどの少尉とゼロの言葉を思い出す。
「少尉、ゼロさっきはすまなかった」
俺の謝罪に二人は笑いながら答える。
『かまいませんよ。でも、ああいうのはもうやめてください』
『そうだな、すまないと思うならこれからの働きで報いてもらおうか』
と、二人の言葉に耳を向けながら決意を新たにする。
この卜部巧雪、老いぼれて朽ち果てるまで命の意味を証明して行こう。
side-B 共犯の理由
『大丈夫だよ。C.C.もいるしね』
そう言うライの言葉にカレンと卜部の二人が機体を走らせる。
それを見届けてからライが機体から降りてルルーシュの元まで歩み寄ってくる。
ルルーシュは身構えるがそれを無視してライは口を開く。
「すでに作戦の半分近くは完了している。後は飛行船の皆の回収と退路の確保だけだがそれはこっちの資料に」
差し出されたメモリースティックを受け取りつつ、ルルーシュが困惑した声を上げる。
「それだけか?」
疑問の声にライは首をかしげる。本当にこいつらは世話が焼ける。
「お前に殴り飛ばされるとでも思ったんだよ、この坊やは」
私に言われてようやく納得がいったと頷くライがもう一度ルルーシュに向き直る。今度こそ覚悟したようにルルーシュが歯を食いしばる。
「君を許す」
ライの言葉にルルーシュは目を見開く。
「確かに君は僕らを裏切った、嘘もついていた。だけど僕は君を許す」
固まってしまったルルーシュにもう一度、明確に断言する。
「な、なぜだ?」
悲劇の主人公気取りで許されるなど思っても見なかったのか。だから童貞坊やなんだ。
「君の生まれ、戦う理由全て聞いた。それは僕も共感できるところが会った、だから今は君を許す」
共感できるというところに引っかかったようだが、許されたという事実を受けてルルーシュが脱力する。
「だけど、二度目はない。忘れないでくれ」
静かな、しかし確かな殺気をこめた言葉にルルーシュの背が震える。
「ああ、わかった。誓おう俺はもう二度とお前たちを裏切らない」
まっすぐに目を見つめて宣言するその言葉に納得したのかライは微笑む。
こんなことで人を許し、信じられるのだから随分と甘い物だ。もっとも私はそれを羨んでるのかもしれないがな。
気づくと二人とも私のほうを見ている。
「なんだ?」
私の疑問にルルーシュが訝しげに答える。
「どうした?珍しく普通に笑っていたようだが?」
笑っていたか、自分でも珍しいと思うがこの言いようが気に入らず不機嫌な声を上げて機体に戻る。
「気のせいだろ?そんなことよりさっさと作戦を始めるぞ」
私の言葉に二人は肩をすくめながらそれぞれの機体に戻っていく。
そう、坊やたちは黙って働けばいいんだ。
せめてお前たちは私のように悲しみも喜びも何もかも忘れてしまわないように。
以上です
前書きに書き忘れていましたが、一人の視点ではどうしても書けない部分があったので
side-BというB面を少しつけました
あと、はじめの方sageミスってすいません
代理投下、いくぜいくぜいくぜ!
「ダ、ダメだよ! ルルーシュ、それ以上はいけない・・・・・・アーッ!?」
という夢を見ていたようだった。
ハッと覚醒した僕が目を開けるとそこは薄暗い部屋。
クラブハウスの中の一室であることは間違いないようだ、内装に見覚えがある。
さて、と椅子から立ち上がろうとして──立てない。
「なんだ?」
椅子に座った姿勢でグルグルに縛り上げられていたのだ。
「ライ様がお目覚めになったようですわ」
それは咲世子さんの声だった。声の方に目をむけるとそこにはナナリーと咲世子さん。いつもどおりの二人がそこにいた。
「ライさんお目覚めですか」
ナナリーの声はやっぱり可愛いな──はともかくとして、
「あの・・・・・・、一体全体これは何の冗談なんだい?」
首を傾げるようにしてナナリーはその豊かな髪をめぐらせた。うん、どうにもやっぱり可愛い。可愛い子は何をしても可愛いな。
それはさておき、
「とりあえず解いてもらえないかな?」
ナナリーと咲世子さんは涼やかな微笑を浮かべた。
「私、ライさんとお話がしたくって」
「話は縛りあげなくてもできるんじゃないかな」
もう一度ナナリーは笑った。とても可愛い、彼女らしい微笑みだった。
「皆さんお好きですよね、民主主義ってものが」
は?
僕はナナリーが何を言わんとするのかを計りかねている。ソレと同時に何か空恐ろしいものが背筋を奔る。
この感情は、一体なんなんだ?!
「ライさんの自由をうばって好きにしたいと思う方!」
ハイ! ハイ! ハイ! ハ〜イ! ハァ〜イ!
ナナリーが手をあげた。咲世子さんも手をあげる。その後ろに隠れていたらしいカレンもあげた。
その後ろに立っていたミレイ会長まで。 それにニーナにユーフェミアさまにアーニャ、ヴィレッタ先生に神楽耶もいるのか。
って、コーネリア総督ってばなにやってんですか。それにしても千葉さんやラクシャータ、セシルさんに特派の女医さんまでなんでいるの?
それだけでおしまいじゃない、まだまだいる。まるでこの“コードギアス世界”と“ロスカラ世界”に存在する総ての女性が集まったかのようだ。
もちろん、それだけの人数がなんでクラブハウス内の一室に入っていられるんだなんて心無いツッコミはナシの方向で。
それら彼女たちの同意を受けて、またしてもナナリーはニッコリと笑った。やっぱりナナリーは可愛いな。
「はい、多数決で決定です。民主主義です☆」
ちょっとマテ、と僕は思った。
「この僕は一体どのルートを通ってきた僕なんだい? ギアス篇? 騎士団ルート? 特派ルート?
ひょっとして解放戦線ルート? もしかしてとは思うけど青月ルートとか?」
「そんなこと、どうだっていいじゃないですか」
ナナリーが言う。
「今日はライさんのためにたくさんの方が集まってくれたんですよ」
咲世子さんがお集まりの淑女たちにお茶を配ってまわっている。
「その心は?」
僕が問うた。
「“ライさんにみんなで民主主義的にチョコレートを受け取ってもらおう大会議”の開催の為です☆」
なるほど、何のことだかさっぱり分からないけど、そこに僕が参加するかしないかの意思は関係ないらしい。
『リア充はもげろ』
どこかからともなくリヴァルの絶叫が聞こえたような気がした。
「それはおそらく幻覚でしょう」
ですよねー。
僕は忘れることにした。
「それにしても」
僕は必死に説得を試みる。
「やっぱりこういうことはお互いの気持ちが必要なんだって思うんだ。こんな拉致監禁みたいなことはいけないって思わないかい?」
「だって多数決です。民主主義ですから☆」
「それは民主主義の意味を間違っていると思うな」
「それは見解の相違ってものですね、ライさん」
ナナリーは可愛く笑った。
「十人十色と言いますとおり、人は所詮その人だけが認識する世界に生きているんです。
十人十色──見るものも、感じ方も、それぞれの考え方だってその人それぞれの認識の違いはきっとあるんです!
人は世界はこんなにも思い通りになりません、だから!」
「だから力で思い通りにしようって言うのかい? それは──」
「卑劣だって非難しますか? ライさんの心を捻じ曲げ、尊厳を踏みにじろうとするわたしたちを」
そう言われると何も言えない。ナナリーは可愛いもんね、可愛いは正義とはよく言ったものだ。
「さぁそろそろ始めましょう。──誰が、ではなく、誰からライさんにチョコレートを受け取ってもらえるのかの会議を」
ちなみに、とナナリーは言った。
「ここにはギアスキャンセラーマシン・オレンジくん1号を持ってきてありますから、ギアスを駆使して逃げようとしてもダメですよ☆」
なんてことだ! 読まれている!?
ナナリーが指し示す部屋の隅っこにはジェレミア卿が体育座りで壁に向かって座っていた。
暗い。きっと彼も僕同様に拉致されてきたんだな。何て惨い・・・・・・。しかもギアスキャンセラーのための道具扱いだなんて!
そもそも今彼女はなんと言った?
誰が、ではなく誰から、と言った。
食べさせるつもりなのだ。ここに集まった数十人──数百人のチョコを順番を決めて、総て食べさせるつもりなのだ!
──殺される!
僕は激怒した。
「・・・・・・イヤだな」
え? と女性陣がいっせいにこちらを向く。
「イヤだ、イヤだ、リア充だなんて凄くイヤだ」
「ライさん、何を仰っているんですか?」
「自分たちのエゴのために誰かを力ずくでどうにかしようだなんて──ましてそれを自分がされるなんてイヤだってことさ。
申し訳ないけど、僕はこれで失礼させてもらうよ」
ホっとしたように胸をなでおろすナナリー。やっぱりナナr(ry
「ダメですよ、ライさん。大人しく会議が終るまで待ってていただけないと」
「だけど、僕はそれがイヤなんだ」
「でも、一人では帰れませんよ?」
ナナリーは淡々と言い放った。
「ライさんを縛っているのはスラッシュハーケンにも使われている特殊鋼ワイヤーなんですよ」
「自分で縄を解いて逃げ出すことはムリ、か」
どうりで随分ガッチガチのはずだ。ていうか、これ血が止まりそうなんだけど。
「それと、ライさんが忍ばせていた自決用の融体サクラダイト爆弾も解除させていただきました。
もちろんライさんが他人まで巻き込んで自決するだなんて思っていませんけど」
あれも見つかっていたのか。ていうか融体サクラダイト爆弾?! あれって爆弾だったの?
ルルーシュが「これ俺が作ったんだぜーっ」て自慢してたのが気に食わなかったから持ち出したんだけど、
あれって爆弾だったの? なんかキラキラした綺麗なのが入ってるなぁて思ってたんけど爆弾だって?!
何やってんだよルルーシュ! 下手したら死んじゃうじゃないか、常識的に考えて!!
でもこれで完全に脱出不可能になったってわけじゃないぞ。僕が何も言わずに姿を消せば、
いくらルルーシュやスザクでもおかしいなって探し始めてくれるだろうし、いざとなったら襟首に仕込んだ超小型通信機で・・・・・・。
「そうそう、襟元の超小型通信機とGPS発信機も無効化させてもらったんですよ。
関係各所には連絡していて、ライさんはちょっと遠くまでお買い物に行ってもらってることになっているんです☆
不審に思われるような要素は総て排除しているんですよ♪」
・・・・・・・・・・・・つまり。
「つまり、脱出するための手段は皆無。助けがくることもないってことなんだね」
「ハッタリだと思いますか?」
イヤと僕は頭を振った。
「多分君の言うとおりなんだろうねナナリー。さすがはルルーシュの妹だ、寸分たりとも隙がない。
やはり君も優秀だ。卓越している。冠絶する人材だ」
でも、と僕は心の中で絶体絶命というシチュエーションに反逆を叫んだ。
「ダメですよ」
ナナリーがまたも笑う。まるで僕の思考を読んでいるかのようだ。やっぱりナn(ry
「クラブハウスの中にめぐらせた脱出用秘密通路はすべて動かないようにしているんです☆」
「・・・・・・え?」
僕は呆然とした。
「部屋の中ほどにある落とし穴式の脱出路も、壁につくったカモフラージュ回転扉もぜ〜んぶ電源を切っておいたんです☆ チェックメイトです☆」
「・・・・・・・・・・・・」
「他に何か質問はありますか?」
「・・・・・・・・・・・・」
「じゃあ会議を始めましょう。まずは第一にライさんに何のチョコレートを食べていただくかということから」
「・・・・・・フフフフフ」
「?」
僕の笑い声にみんながいっせいに注目する。
「ピザだ」
「ピザ・・・・・・ですか?」
「ピザだ。いまのおすすめ商品はグラタンとカマンベールのハーモニーLサイズ3500円!
それと定番のシーフードミックスLサイズ3600円もプラス。そうだ、一枚で4つの味が楽しめてお得なフレンズ4のLサイズ3300円もつける!
今なら劇場版・魔法少女リリカルなのはのプレゼントキャンペーンもやってるからそこそこお得だ!!」
──もう一越えが必要だな──
その声は深淵の奥底から響いてきた。
そう、僕は助かりたい。まだまだ死ぬわけにはいかないんだ! 助かるためなら悪魔とだって手を組むだろう。
「それなら・・・・・・、それならピザ各二枚づつだ! サイドメニューのビターショコラと山盛りポテト、北海道プレミアアイスもつける!」
否、僕が手を組もうとしたのは──悪魔ではない。似たようなものだが確定的に違う。
「いいだろう、乗ったぞ。プレミアアイスはバニラ・チョコ両方でな」
女性たちをかきわけ、僕の前にまで出てきた尊大かつ傲慢なそのクールな瞳。
そう、それは魔女だ!
「C.C.さん! 裏切るのですか?!」
初めてナナリーが動揺で声を震わせた。やっぱりナ(ry
「違うな、間違っているぞナナリー、これは裏返ったのではない。表返ったのさ!」
そう言うやいなや、C.C.はスッっと床にしゃがみ、その手をついた。
「これで、どうだ」
C.C.の金の瞳が怪しく輝く。その瞬間、パリっと何かが弾ける。何か不可視の波動が床を伝って奔っていく!
「これが仙道、波紋疾・・・・・・」
「違うぞ、断じて違う!」
慌ててC.C.が僕の言葉を遮った。まぁそんなことはどうでもいい。
フワとナナリーの首が力なく傾いた。バタバタと女性たちが倒れていく。ブラボー、おぉブラボー! どうやら上手くいったようだ。
フム、とC.C.はその様子を一瞥した。
「さすがに直接触れてではなく、床を伝ってとはいえ、私のショックイメージを喰らって意識を保っていられる者はいなかったか」
なにせあのスザクでさえ錯乱して暴走するようなエグイ必殺技だもんね・・・・・・とは胸の内にしまって言わないでおこう。
僕は気を失ったナナリーたちをなんともいえない気分で見つめた。
そう、ナナリーの敗因はたったひとつ。ナナリー、たったひとつのシンプルな答えだったんだ。
この魔女は面白ければなんにでも首を突っ込む。けれどピザを与えれば敵にも味方にもなるまさにエゴの塊だということを知らないでいた!
そんな彼女を“仲間”だと勘違いしたことが敗因だったんだ──!!
もちろん口にしては言えない。助けてもらうまでは悟られないようにしておこう。
「とにかくおかげで助かったよC.C.、この縄──もといワイヤーをほどいてくれないか」
「いいだろう」
C.C.が近付いてきて、ギッチギチに縛り上げられた僕の前に立つ。ワイヤーにかけられた電子ロックをいじっているようだ。
やれやれ、どうやら助かったようだな。報酬のピザ代の捻出は大変そうだけど、なぁに命には代えられない。
「約束のピザ、忘れるなよ?」
「あぁ、わかっている。契約は果たすよ」
「それともう一つ」
うん? と僕は首を回して側面に立つC.C.を振り返った。
最初に感じたのは金色の視線。
ガボッ
次に認識したのは口の中に突っ込まれた何か。
「電子ロックの解除には少々時間がかかりそうだ。それでも食べておけ」
それだけ言って、C.C.は僕から視線を外した。
フム。
僕は突っ込まれた何かを噛みしめる。
それはクリームチーズの風味を含んだ何か、とても甘いチョコレートだった。
「みんなが目を覚ます前になんとか頼むよ」
「わかっている。急かすな」
淡々と答えるその隅っこに感じる何か別の熱を持った感情。
「ど、どうだ? 美味い、か?」
C.C.のちょっと照れたような声は、僕が初めて耳にする言葉だった。
そこでハタと気がついた。
「そうか、今日はバレンタインデイだったのか!」
一瞬の沈黙。
「ライ、貴様一度もげてみるか?」
それは臓腑をも抉る、絶対零度の金色の視線。
あれ?
あれあれあれ?
さっきまでのちょっと熱を含んだほんわかした空気が霧散している。なぜだ?
どうやら僕はどこかで選択肢を間違ってしまっていたらしい。
C.C.の両手が椅子から離れる。あれ? C.C.どこへ行ってしまうんだい? ちょっと、おーい。
そうして彼女は部屋を出て行ってしまった。
過ぎ行く時間。
ガサゴソと動く音。
女性たちが目を覚まし始めたのだ。
なんてことだ。僕は自分の何が悪かったのかもわからないまま、やがてくる最期の時を想像したのだった。
──ざんねん、ぼくのぼうけんはここでおわってしまった!
〜GAMEOVER〜
以上です。
一応バレンタインモノですけど、なんだかなーです
すいません
大規模規制解けたみたいって聞いたンですけどねー
いつになったら解けるんでしょ?
メインもサブも携帯も全部規制中です。もう諦めて●買おうかしらん
それでは、さよーならー
以上です。
五分後くらいから投下します
前書き
タイトルは「しっと団・アッシュフォード学園 バレンタイン変」
・ギャグだよ
・パロディあるよ
・時間がなかったから展開を変更したために若干の消化不良があるかもしれません、ご注意ください
クリスマスのアベックを殲滅した英雄、しっと団。 彼らはクリスマス以後目立った活動はしていなかった。
クリスマスに彼女ができたと笑うかつて友だったものを妬み、恋人と別れたものをざまぁみろと笑い、新年になってカップルになった人間を妬む。
だが、その感情を決して表には出さずに耐えてきた。 クリスマスと同じか、それ以上にアベックがはびこるイベント、バレンタインのために……
「なぁ、リヴァル」
「どうした、ライ」
「なんで僕らは経済特区日本に向かってるんだっけ?」
「おいおい、もう忘れたのか? しっと団エリア11総本部での会合に俺たちしっと団・アッシュフォード学園支部が招かれたからじゃないか」
「……いや、僕は――――」
「ライ、お前はすごいよ。 入団したてでアレだけのアベックを殲滅できるなんてさ。 なんでも新しく就任したエリア11総本部団長から激励の言葉もあるらしいぜ」
「……どうしてこんなことに」
特区日本へと止まることなく進んでいくアッシュフォード学園の極々一部の生徒を乗せた電車から窓の外を眺めながら、ライは悔いていた。
セシルの料理のあまりのまずさに暴走してしまった過去の自分を。 クリスマス以後活動などなかったものだから、そんなことをしたのを忘れていた自分の愚かさを。 ゴキブリホイホイのように粘着質なしっと団の絆を甘く見ていたことを。
ライは彼女のいる友人の話を憎憎しげに語る周りの皆の話を自分には関係ないと聞き流し―――――
「それでさ、トムのやつ彼女に弁当作って貰ってるんだ。 しかもすっげぇ美味そうなんだ……」
トムは死ねばいい。 そんなことが瞬時に頭に浮かんだライ。 なんだかんだ言いつつ、彼もしっと団になじんでいるのだろう。
周りの白い目を気にしつつも受け流し、彼らはしっと団総本部へと向かうのだった。
「ワシの若いころはアベックどもをちぎっては投げ、ちぎっては投げ、やつらを恐怖のどん底へ叩き落したものだ……
最近のやつらは生ぬるい! 昔は告白しそうな軟弱な男どもには48のしっと技を食らわせて再起不能にしていったものだ。
しかしながら、最近の若いやつは――――――」
ライ達アッシュフォード学園のしっと団団員たちが総本部に入ってからしばらくして始まった先代しっと団総本部団長の演説は既に一時間以上続いていた。 かつての栄光、最近の活動は生ぬるさ、基本的にこの二点を繰り返し話し続けていた。
幾人かのしっと団団員達はその長い演説により眠りの世界へといざなわれていた。
「つまりだ、アベックどもを――――――むっ、もうこんな時間か。 まぁ、長々と話してきたが、ワシは今のしっと団は今のしっと団でよいものだと思っておる。
ワシもさすがに年をとり、しっと心が薄れてきてしまった……かつての過激な行動はできん。 そして、今平和が保たれている時期にそのようなことをすべきではないこともわかる。
ゆえに、そろそろ次の世代へとバトンを渡そうと思う。 あと、最後にひとつ忠告をしよう……取調べ中のカツどんは自腹だ」
先代しっと団総本部団長の演説が終わる。 そして先代総本部団長はゆっくりとそのマスクに手をかけ、高らかに宣言する。
「もう、普通のおっさんに戻ります!」
「……あれ? なんか僕あの人見たことが……あ……」
そこにいるのはもうしっとの心の代弁者ではない。 上半身裸の若干太り気味のおっさんだった。 そのおっさんの顔を見たライはあることに気づいた。 日本解放戦線、そして黒の騎士団の一員として手配されていた男の顔を思い出す。
「仙波……崚河……」
奇跡の藤堂の部下、四剣聖の一人、仙波崚河。 エリア11がまだ日本という名前の時からアベックを殲滅し続けた男は後人に道を譲った。
「そして、新たなしっと団総本部団長は、この漢だ!」
仙波が腕を伸ばした先にしっと団団員たちの視線が集まる。 と、いきなりその場の明かりが消え、二つのスポットライトが動き始める。
しばらくスポットライトは無秩序に動き、仙波の示した場所にとどまる。 そこには黒い仮面の男がいた。 チューリップのような仮面には燃える炎のようなペイントがなされている。
「しっと団総本部団長を承った、ゼロだ……!」
sien
仮面のペイントのスキマが光を浴びて輝く。 右腕を高く掲げ、左腕はそれに垂直になるようにピンと伸ばされている。 ピシっと揃えられた脚はO脚やX脚とは無縁の代物だ。
しばらくその格好を維持した後、右腕をゆっくりとおろし、肩の高さより少し低めの位置に両腕を持ってきて、そして胸を張る。
「聞け! しっと団の諸君よ! 私は悲しい……。 哀れみと優越の視線。 振りかざされる自慢話!
悪意なき言葉の刃! 勘違いされる我々の善意、報われぬ好意! そう、世界はいつだって不平等、弱者への虐げが存在する!
だから私は、この壇上に立った……アベックどもが、持たざる者を虐げ続ける限り、私は諸君らの味方となろう!」
手のひらを上方に向けた両腕を掲げ、ゼロは説く、彼の思う理論を。 彼は示す、しっと心の行き場を。
「さしあたって一週間後、2/14に私は粘膜の作り出す幻想に溺れるアベックどもへと天誅を下そう……。 バレンタインデーは聖人をたたえる日、同時に愛が生み出される日、それを認めよう。 だが、アベックどものそれは決して愛ではない!
性欲に溺れる愛などはあってはならない。 人は、心を繋ぐことができる。 互いに好意を抱き、互いにすべてを捧ぐ。 それが愛だ! 我々の求める、愛だ! だというのに、やつらの向ける哀れむ視線。 真に哀れなのは彼らだ!
私は示そう! 君たちに、彼らに、真実の愛とはいかなるものかを! 製菓会社に踊らされる愛などは不要! チョコレートが欲しいのならばコンビニエンスストアに行くがいい!
愛のある贈り物がしたいのならば、いつでもいいだろう。 誤った愛を撒き散らす、バレンタインデー! それを我らの手で正そうではないか!」
ゼロの叫びが終わり、その場にいたものは静まり返る。 だが、その静けさは一瞬のものだった。
「……ゼロ、ゼロ、ゼロ!」
「ゼロ、ゼロ、ゼロ! ゼロ、ゼロ、ゼロ!」
「ゼロ! ゼロ! ゼロ! ゼロ! ゼロ!」
誰かが叫びだすと、まるで堰が外れたかのごとく、ゼロ、と叫ぶ声が響きあう。 それを仮面越しに眺めるゼロだったが、ある一箇所に視線を向けた瞬間、仮面の中の顔は驚きに歪んだ。
(ラクシャータ謹製のリア充スカウターに反応……? ……バカな! 何故しっと団のアジトにリア充力5000ガバスのやつがいる……!
いや、だがしっとカウンターでは500万ギガバイトか……くっ、遠くて見えんが確かあのあたりはアッシュフォード学園から招いた……まさかリヴァルか!?
フッ、ありえないな……ともかく不確定要素には早めに対処しなければ……!)
考えをまとめたゼロは歓声の中両手をあげ高らかに言う。
「諸君らの健闘を祈る!」
そして、やまぬ歓声を後にゼロは総団長室へと向かう。 しっと団幹部へとある指示を出した後に。
「やるじゃあないか、ルルーシュ」
部屋に入ってかけられた言葉、それを聞きゼロは即効で扉を閉めて鍵をかける。 幻ではないかと仮面の中の瞳を2,3度瞬かせ、それでもなおそこに存在する人物に対する言葉を捜す。
しかしながら、とっさに出てきたのは思っていたこと、すなわち
「何故お前がここにいる」
「私がC.C.だからさ」
しれっと答えるC.C.に頭に血を上らせながらもゼロは言葉を吐き出す。
「俺が聞きたいのは、どうやってこの場所を知り、どうやってここにきたか、だ」
「忘れたか、私は魔女だぞ? 契約者の場所を知ることなど造作もないことだ」
答えになってはいない答え、だがC.C.の中ではそれはしっかりとした答えなのだろう。 やはり持っていたピザを食らいながら悠然とソファに寝そべった姿勢を崩そうとはしない。
「しっと団総団長ねぇ……そんなことだからお前は童貞ぼうやなんだ……」
「なっ……!」
ゼロに聞こえるようにC.C.は呟く。 その言葉は彼の冷静さを容易に奪い去る。 彼の怒りが有頂天を迎えようとしたとき、その怒りをとどめさせ、頭を冷やさせる事態が起こる。
コンコン、と部屋に響く音、続いて彼の良く知る声が聞こえた。
「総本部団長、アッシュフォード学園支部の団長 リヴァル・カルデモンド、ただいま到着しました」
その声を聞いたゼロはソファで寝そべっていたC.C.の腕を引っ張り、前任者の予備のマスクが大量に保管されている隣の保管庫へと押し込め、外から鍵をかける。
普段の彼には決して出せない力を出せたのはしっとマスクのおかげかもしれないし、そうでないのかもしれない。
「あぁ、入ってくれたまえ」
数分前、ゼロの演説が終わってからリヴァルとその隣にいたライはゼロの呼び出しを受けた。 そのしっと団員も、ただ呼び出して欲しいと言われただけでその理由は聞かされていなかった。
「んー、ゼロが俺たちを呼ぶ理由か……いったいなんだろうな」
「確かに……」
リヴァルの何気ない言葉に、適当に相槌を打つライ。 彼は頭の中でさまざまな可能性を推測、吟味、整理していた。
単純にこのまえのクリスマスのことでの呼び出しを考えたが、アオモリゲットーのしっと団員、しっとサイクロンが出会うアベックにパイルドライバーを食らわしていった功績で壇上でたたえられていたからそれはないだろうと考える。
自分がブリタニア軍人だからというのも考えたが、黒の騎士団とブリタニア軍は和解しているといっていい。 それに彼は黒の騎士団のゼロではなく、しっと団員のゼロとしてこの場にいるのだろう、と考える。
他人のしっと心はある程度以上のしっと心を持った人間には、あいまいだが読み取ることができる。 無意識のうちに自分がしっと心をはかることが出来ているのをライは全力で見逃す。
結局、何故呼ばれているのかわからぬままにゼロの待つ部屋の前に彼らはたどり着く。 そしてリヴァルがドアをノックして中へと声をかけた。
少し間をおいて今現在のその部屋の主の入出許可がおりたので二人は部屋へと入る。
「……っ! ……君たちがアッシュフォード学園のしっと団員か」
「は、はい!」
「……アッシュフォード学園しっと団団員、ライです」
ゼロはリヴァルとともに入ってきたライに一瞬驚きを見せるが、すぐに取り繕った。 間近でゼロを見たリヴァルは少し緊張気味に言葉を返し、ライは少し間を空けて自己紹介する。
「……君がしっと団に入団しているとは思わなかったな」
「僕もですよ」
ゼロがライのほうを向き言葉をかけ、それにライが言葉を返す。 二人の言葉を聞いたリヴァルは首をかしげる。 そして、遠慮がちに二人に声をかけた。
「えーっと、知り合い……なん……ですか?」
「あぁ、特区日本の仕事でね……まぁ、それ以前からの付き合いではあるな」
ゼロの言葉にライもうなづく。 それを見たリヴァルはライがブリタニア軍に所属していたことを思い出す。 なるほど、ゼロと面識があってもおかしくはないだろう。
だが、知り合いだから呼ばれた、というわけでもないだろうとリヴァルは考える。 先ほどのゼロのセリフからライがいることは予想外だったということが推測できるのだから。
「……とりあえず用件を言おう、今度のバレンタインの作戦、私はアッシュフォード学園へと向かう」
「……えっ」
「……」
二人の困惑を感じ取り、ゼロは更に言葉を続ける。
「大人になれば、バレンタインという行事は義理の絡む、製菓会社の陰謀に巻き込まれたイベントとなるのが大半だ。 なにが逆チョコだ、なにが友チョコだ。 チョコレートを食べたいなら毎日でも食うがいい!
……すまない、取り乱した。 つまり、学生の欲というのは恐ろしいものだ、若さゆえの過ちという言葉もあることだしな。
乱れた風紀を正すために、おそらく今のエリア11、日本の中でもっとも学生の多い地区であるアッシュフォード学園の近辺を警戒しようと思ってな。
ゆえに君たちに許可を取ろうと思ったのだ」
「当然OKですよ! ゼロがきてくれるならこちらの士気も上がります! 今日の演説だって、俺ら聞きほれてしまいました!」
「僕らの団長がそういうんだから、僕に異論はない」
二人の言葉を聞き、ゼロは仮面の中で笑みを浮かべる。 彼がしっと団団員になった目的はこれでクリアされたといってもいいだろう。
「ありがとう、リヴァル君……いや、同志リヴァル! そして同志ライ! 君たちの奮戦を期待する!」
「はい!」
「了解です!」
支援
話が終わり、リヴァルとライは部屋から出て行こうとする。 だが、それをゼロはさえぎった。
「ライ、君に話がある……少し残ってくれないか? 少し長くなるかもしれないが……」
「……はい……リヴァル」
「ん、了解。 俺らは特区日本の見物でもしておくよ」
そういい残し、リヴァルは部屋の外に出る。 残されたゼロとライはしばらく互いに黙っていたが、ゼロが話を切り出した。
「ラクシャータの作ったリア充スカウターという装置がある。 ……まだ実験段階と言ってもいいものだが、なかなか信用の置ける装置だ」
「……つまり、僕から……」
「理解が早くて助かるよ。 君からはリア充値5000ガバスが検出された。 だが、しっとカウンターでは500万ギガバイトほどのしっと心が計測された」
ちなみに実験として扇要のリア充値を測ったところ、1500かける10の三乗モジャ(単位はいろいろ変わるので実質数値のみを考えればよい)だった。
その後、彼は黒の騎士団内のしっと団から闇討ち(特に玉城は「親友だと思ってたのに!」と叫びつつ積極的に扇にビンタをかました)を受ける羽目になった。
「……僕は、一応セシルさんという彼女がいる」
「……お前ッ!」
「僕がしっとするのはね……料理が上手な彼女を持つ人間なんだ」
「……」
「君にはわかるかい? 彼女の手料理が紫色の煙を出しているのが見えた時の気持ちが。 それを食べなければならないものの気持ちが。
しかも、それが味見をした結果の産物だということが!」
料理が下手な原因は多々ある。 ライの言うセシルという女が味音痴な部類に入る、とゼロは理解する。 興奮して「おにぎりにジャム」「ケーキにポン酢」と叫ぶライの声を聞き、アレンジャーであることも理解した。
「――――――卵かけご飯にあんことバニラアイスを入れられたとき……」
「もういい! すまない……! すまない……! 本当にすまない……!」
卵かけご飯のアレンジという失敗するほうが難しいものを聞かされて、ゼロはライの言葉をさえぎる。 料理の名前を出すたびにだんだん青ざめていくライの顔を彼は見ていられなかった。
「……ちなみに、アッシュフォード学園にいる君の仲間はなんと?」
「毎回ねぎらいの言葉を」
「そうか……だが、君に彼女がいることはあまりまわりに知らせないほうがいい。 言ってはなんだが、君の仲間は甘い。 それは悪いことではない。
だが、しっと団のなかには彼女がいる! という一点のみにしか注目しないやつが大多数だ……あんな演説をした後で言えるセリフではないと私も思うがな……」
「ゼロ……」
「話はそれだけだ……気をつけてくれ」
そしてライは部屋を去る。 と、同時に隣の部屋へと続く扉が開く。
「まったく……よく回る舌じゃないか」
「……C.C.……以外だな、お前が話に乱入してくるものとひやひやしたが……」
「お前の私に対する認識がどんなものかよくわかったよ」
「あ、いや……」
「私の心を深く傷つけた罰だ、お前にはこのバレンタイン限定チョコレートピザを10枚とバレンタイン限定チョコレートチーズ君を奢ってもらわねばなるまい。
いや、その程度では到底この傷は癒せんな……冬季限定のホタテピザも5枚ほど必要だな。 あと―――」
「わかった、俺が悪かった、謝ろう。 ピザだろうがなんだろうが奢ってやる。 だから、今は、速やかにここから誰にもばれないように出て行け!」
「……いいだろう。 奢るという約束、忘れるなよ」
そう言い残し、一応辺りをうかがったあとに出て行くC.C.を見送った後、ゼロはバレンタインの作戦案をまとめる。
「……とりあえず、最近流行りの逆チョコというのを警戒して男からチョコを奪うべきだな……もてなくなる可能性を示唆すれば女性から奪う、ということはないだろう。
奪ったチョコは恵まれないエリアの子供たちに配る―――――このあたりの手配はディートハルトに任せるか。
……黒の騎士団のメンバーの大多数が所属しているとは思わなかったが、これはこれで俺の目的を達成するのには好都合だ―――」
ナナリーに近づく害虫どもの駆除にはな! と心の中で叫ぶゼロ。 ちなみにロリコン疑惑のあった南はしっと団より追放処分を受けている。 ゼロが「幼女、少女には手を出すべからず」の項目を更に強化した結果である。
「ふぅ……まったく……」
監視の目をすり抜け、C.C.はしっと団のアジトの外へと抜け出していた。 そして、特区日本に最近出来た公園のベンチに座り、中空を見ながら一人で喋る。
「―――――マリアンヌ……ルルーシュは否定するだろうが、あいつはシャルルに似ている……」
かつて、皇帝になる前の若き日のシャルル・ジ・ブリタニアの姿を思い描く。 長髪をまとめ、マスクを被り、ビスマルクとともに大暴れしていた彼が108人の妻を持つことになるとは、誰が想像できただろうか。
皇帝がマリアンヌにアックスボンバーをくらって沈められていたなど誰が信じられようか。
「まぁ、あいつらがどんなことをするのか、少し楽しみではあるがな……」
まだ見ぬチョコレートピザの味に思いをはせて、C.C.は微笑みながら呟いた。
支援しまっせ
バレンタインデー当日。 しっと団は各々が持つアジトにて作戦開始を待っていた。
「我々は、すべてのモテない男たちの代弁者である! 彼らは、モテるやつらには天誅が下るべきである、とそう思っていることは間違いない!
しかし、彼らには行動を起こす力がない。 ならば、我々がかなえてやろうではないか! 理想があっても、力のないもののために!
我らが力を振るう! 出来るということを見せる! だからこそ、後に続くものが現れるのだ!
何も恐れることはない、私が肯定しよう! 君たちは正しいのだ! 行くぞ! 甘いチョコに脳内を汚染された愚か者に、罰を与えるのだ!」
『承知!』
『了解!』
『いくぜぇぇぇ!』
『うおりゃあああああああ!』
ゼロの号令の元、各地のしっと団たちはいっせいに行動を開始する。 自らの肉体を頼りにモテる男からチョコレートを強奪するしっと団員もいれば、手に持ったカカオ100%の人体に有害ではないチョコレートをもてていそうなの男の口に押し込む。
いそうな、とは言ったが勘でそのような男をすぐに見分けられるしっと団員が大多数である。 うらみやしっとは時として理屈を超えた力を生み出すのだ!
また、今にも口に運ばれそうなチョコレートにすぐさまにタバスコをかけて無理やり押し込める、という世の中の辛さを教えるしっと団員もいる。
そう、彼らは世間の恐ろしさを教えているのだ。 甘いと思ったものが甘いとは限らないということを、親切にも教えているのだ。 しっとする相手にそのようなほどこしを与える、そう、彼らの心は冬の海のように、広大で荒れ狂った心なのだ!
「よし、ではこちらも作戦を開始するぞ、全員、マスクの準備は万全か?」
「はい、皆しっかりとマスクを被っています、ゼロ!」
「今の私はゼロではない、しっとジャスティス・ハイパーだ! わかったな、しっとリーダー!」
「了解です、しっとジャスティス・ハイパー殿! ではいくぞ、皆!」
『チョコはどこじゃぁぁぁぁああああああ!』
「……なん……だと……!?」
呆然とするしっとジャスティス・ハイパー(ゼロ)としっとリーダー(リヴァル)、そしてしっとエース(ライ)を残し、アッシュフォード学園のしっと団員たちは学園内へと散らばっていく。
突然の出来事に固まっていた3人だったが、絹を裂くような悲鳴を耳にして、ようやく我に返る。
「くっ、どういうことだ!? 女生徒には手を出すなと、あれほど言っておいたはずだが……」
「すまない、しっとジャスティス・ハイパー。 おそらくあいつらチョコレートのにおいで我を忘れるほど暴走しちまったんだ。 俺がしっかりと教育をしていなかったから……」
「しっとリーダー、君だけの責任じゃないさ。 僕だってアッシュフォード学園のしっと団の一員。 僕にも責任はある。 でも、今は……」
「あぁ、わかっているさ……しっとエース、しっとジャスティス・ハイパー、あいつらを止めるのに力を貸してくれ」
「了解」
「承知した」
三人が悲鳴の聞こえた場所へと向かうと、そこには数人の女生徒を囲むしっと団員の姿があった。
「ギブミーチョコ!」
「チョコをよこせ!」
「おいてけー、おいてけー」
「な、なんなの、こいつらは……」
じわりじわりとにじり寄るしっと団員たちはその格好と合わさり、明らかに変質者に見える。 ヒィ、と怯える生徒たちの中には泣き出しそうなものもいた。
「クラブ・キィィィィック!」
「あべしっ」
そんな彼女たちの姿を見るや否や、しっとエースはとび蹴りを放つ。 ジャンプした後空中で回転を加えたキックはその威力を逃がすことなくもっとも女生徒に近づいていたしっと団員へと命中する。
「無事ですか」
「は、はぃ……」
劇的なシチュエーションに若干ほほを赤らめる女生徒だが、救いの主が明らかに目の前の変質者と同じような格好をしているためか、声が引きつる。
それに少し遅れてしっとジャスティス・ハイパーとしっとリーダーが駆けつけた。
「貴様ら、今回の作戦内容を忘れたかッ! 女生徒を襲うなかれ、とあれほど言っただろうに!」
「あぁ、わかっているさ……だが……」
しっとジャスティス・ハイパーの言葉に彼らは俯く、が、顔をあげると同じ言葉を、同じタイミングで放つ。
『チョコレートが欲しいんだ!』
あまりの必死さにしっとエース、しっとジャスティス・ハイパー、女生徒は気おされる。 だが、しっとリーダーだけは違った。
「そうか……そんなにチョコが欲しいのか……じゃあやるよ」
そういって彼は腰に付いているホースにて手を伸ばす。 そしてそれを両の手で構え、しっと団員たちに向ける。
「受け取れ! カカオ100%チョコレートを!」
「あぷッ! に、にげぇ……」
茶色い霧のようなものがホースの先から放出されてしっと団員たちにかかる。 しっとリーダーいわく、カカオ100%チョコレートの霧を浴びたしっと団員たちはとたん、苦しみだした。
しっと団員たちを縛り上げて見せしめのために放置し、そして女生徒に謝った三人は他のしっと団員たちのむかった先を探す。
「まったく、アベックたちに使うはずの装備を味方に使うことになるとは……」
「暴走する味方は敵よりも厄介だ、覚えておくといい……ん?」
「どうしたんだい……しっとジャスティス・ハイパー?」
「いや……なんでもない……」
しっとジャスティス・ハイパーは少しの間どこか遠くのほうを見たが、首を振って再び2人とともに走り出した。
(いましっとカウンターに強力な反応があったが……故障か? いくらなんでもしっと力100億×200立方メートルという数値はありえない……)
一方、アッシュフォード学園の某所では、緑の髪の少女が毒々しい色の義理チョコを怨念交じりで作成していた。
……か、どうかは定かではない。 ちなみに、この後数日間枢木スザクという人物が病院で生死の境をさまよった、という噂が流れた。
そんなこんなで本来アベック用だった装備の大体を暴走したしっと団員たちに費やしたが、通りすがりに見つけたモテる男からチョコを奪い去り、告白しようとしている男子生徒を妨害したり。
そして男子生徒に告白しようとする男子生徒を生暖かい視線で見守ったり、一応しっと団としての活動はこなしたといってもいいだろう。
支援支援
そして作戦が終わった後、アジトに戻ってしばらく経ち、しっとリーダーが口を開いた
「……しっと団を解散しようと思う」
「……リーダー!? 何故ですか!」
しっとリーダーの言葉に一人のしっと団員は大きく反応する。
「今日のお前らを見てさ、正直な話俺じゃあまとめきれないって思ったんだ……だから、正確に言えば解散っていうよりかは俺がやめるってかんじかな」
「そんな……」
「……ならば、僕もやめるべきだろうね」
「……私もだな」
しっとリーダーに続き、しっとエース、しっとジャスティス・ハイパーまでもが同じことを言う。 そのことにその場にいたしっと団員たちは更に動揺を見せる。
「しっと心を一定の方向に持っていくことである程度の制御が出来るのではないか、と私は思った。
しかし、ここアッシュフォード学園においてそれは不可能だった……アッシュフォード学園のしっと団員たちが悪かった、というわけではない。
だが、作戦の立案者としては責任を取らねばならない……私は、しっと団エリア11総本部団長の名において、ゼロ、リヴァル・ライの三名を永久退団扱いとする!」
「よかったのかい、リヴァル?」
「あぁ……未練がないって言えば嘘になるけど、あいつらを率いるのに疲れてきたってのは確かにあるな……」
「そうか……」
なんとなくクラブハウスへと向かうリヴァルとライ。 二人はどこかやり遂げた表情をしている。
「しっと団はどうなるんだろうね……」
「さぁ? 一応俺が団長になる前からあった組織だし、たぶんこれからもあるんじゃないか……あそこまで表立った行動はしないだろうけど」
ライが来る前のアッシュフォード学園しっと団の活動はせいぜい呪いのわら人形に釘を打ち付けたり、告白を受ける男子生徒に怨念をこめておくる、といった極々普通の平和的なものだったらしい。
クリスマスでの成功に少し調子に乗ったのだろう、というリヴァルの推測はまぁ、つじつまの合うものだ。
「とりあえず、ここ最近しっと団の活動にかまけっぱなしで生徒会の活動してなかったから、会長に謝りに行きますか……」
「あぁ……怒られるくらいならいいんだが……」
二人を待っていたのは、満面の笑みを浮かべたミレイ会長と、自分たちの机に山ほど置かれた書類の束。
そして何故か同じくらいの書類を相手に格闘するルルーシュの姿であった。
なお、しっと団が獲得したチョコレートは新団長・玉城が責任を持って恵まれないエリアの子供たちに送り届けた。
はずだったが、一部のチョコを横領していたことが発覚したため彼は三日で団長の座から引き摺り下ろされた。
おまけ
「おい、C.C.」
「なんだ?」
「もう、チョコレートピザ15枚目なんだが?」
「細かいことは気にするな、5枚くらい誤差の範囲だろう?」
「どこがだ! ピザのLサイズ5枚、確かに十人ほどいれば誤差の範囲だろうが一人で食うのにそこまで違いが出ると思うか!? その体のどこに15枚ものピザが入るんだ!」
「ほう、セクハラとはいい度胸じゃないか、童貞ぼうや」
「ああいえばこういう、お前は子供か!」
「ぐだぐだうるさいやつめ、お前は私のおかんか」
「誰がおかんだこのピザ女!」
この後、三十分以上の口論が続き、結果として二人とも店からたたき出された。
おまけその2
「ライ君、バレンタインチョコ、手作りよ」
セシルの言葉を聞き、ライは身構える。 とうとうこのときがきたのか、と覚悟をきめた。
生徒会の仕事が思ったよりも早く片付いてしまったために特派のトレーラーへと来ざるをえなかったのだ。
「いただきます……」
差し出されたチョコを口に含む。 ゆっくりと噛み砕き、味わう。 一思いに飲み込んでしまいたいのだが、目の前でセシルが見ている以上そのようなことは出来なかった。
「……マグロですか」
「えぇ、日本の人はマグロが好物だって聞いて……」
生臭いチョコレートではあるが、食べられないわけではなかった。
「うん、食べられますよ、これは」
ライはその言葉を後悔することとなる。 その日から、一週間ほどおやつにマグロチョコが出続けたのだった。
あとがき
,. ― .,.
, . ´ lヽヘュ : . ` ...
/ . /ゞ:;'ゝ. : : . . ヽ
, '. . : . . ` . . : : . . . '、
/ 丿^ゞ | へ/^ゝ . ', 我々は滅びぬ!
i > |\丶 | ソ /ノ < :::i 何度でも蘇るさ!
! ) ヽ \ヽしっとノ / ,ノ (. ..::::::!
', ゝ ヽ_ゝヾ|//_ノ く......:::::/ しっとの炎ですべてのリア充を焼き尽くすその日まで!
' 、 ^ゞ-丶-‐⌒ ^ゝ-、/ゝソ^...::::::::;' 不死鳥のごとく蘇るであろう!
ヽ : . .. . ; : ;:::::::;::::/
ヽ. : . . : : ...:.:.:::::/
` .、 . ....:::;:''''´
` ー
>>127 投下お疲れさんです。久方ぶりに、PCの前でゲラゲラと笑わせていただきました!
吹き出した俺のペプシをどうしてくれるんだ!(知るか
セシルさんのお料理の常識は世間では非常識だかんな。これ、テストに出すぞ(何
読み終わった後に何だか、胸がすっとしました。本当に現れないかな、しっと団・・・(え
>>127 乙でした
しっと団面白いなあw現実にも現れて欲しかった…
ところでスザクが死にかけたのはユフィのアレのせいなのかセシルさんの手料理のせいなのか
文字通りCCの手作りチョコの凄まじさのせいなのかは地味に気になります
……いや、奴がリア充だからだな……魔女っ娘CCさんGJ!w
非常に楽しませてもらいました、またの投下をお待ちしています
>>127 GJ! ギャグ系のSSは、リラックスして読めるから好きだ。
>>129 それ、多分ニーナや。緑の髪と言うと、C.C.を連想しがちだがニーナも濃い緑なんだよね。
そもそも、C.C.は少女じゃな―― うわー何を(ry
すげー昨日一日で3作投下されるとは。嬉しい限り
>>104 乙です。毎回思いますが、人物の行動描写なども丁寧に描かれていますし
思わず息を呑んでしまうような戦闘描写が本当に、素晴らしいですね。
あえて続き物でここまで違うキャラ視点にしてみようという試みもした人は
おそらくいないのでは。そこも面白いなと思って読ませていただいてます。
ただライが本編に絡むことで誰がどこでどう行動したか、作者さんによって分岐が変化することもあるので
正直最初、「俺」が月下の件から四聖剣の一人であることは分かっても
卜部さんであるとすぐには分からず、ちょっとモヤモヤしてしまいました。
自分だけかもしれませんが、朝比奈かも?と思ってしまったw
場面も前回の終わりからガラっと変わって始まっているので
ほんの少しでいいので最初に注意書きが欲しかったです。
なんか偉そうなことを言ってすいません。
日本解放戦線ルートが元のようなので今後も藤堂や四聖剣にスポットが当たりつつ
話が進んでいきそうですね。続きを本当に楽しみにしてます。
>>111 乙。ナナリーこわいよナナリー。でもそれより怖いのはライの鈍感さか…
>>127 キャラが崩壊しているであろう人物もいるのに、なんだろうこの読みやすさ。
キャラがよく動いていてアンソロジーコミック的なノリで大変楽しく読めました。
>「もういい! すまない……! すまない……! 本当にすまない……!」
この辺のセリフ回しとか絶妙なので、もう仮面に汗をかいたゼロの絵が見えるよw
0:45頃に代理投下を行いたいと思います
133 :
(カナリア):2010/02/17(水) 00:46:08 ID:ARt3fic2
時間となりましたので、代理投下を行います
題:バレンタイン
作者:カナリアさん
CP:無し
あらすじ…………
親衛隊編の後の話。本国から戻って来たライは、特区日本政府と在日ブリタニア政府の仕事を両立する日々。
この日は特区で働いていたのだが…………
134 :
(カナリア):2010/02/17(水) 00:50:56 ID:ARt3fic2
バレンタインデー
政庁にある仕事場で書類をまとめていたライ。
書類を持ってきた兵士から、政務室にゼロがいないために部下が困っているという話を聞いたライは、散歩も兼ねて彼を探す事にした。
しかし、歩けど歩けどゼロがいない。
作戦会議室、格納庫、寄宿舎、談話室、技術研究室。
ゼロがいそうな所は探したものの、見つからない。
見つけるのを一旦断念したライは、突如空腹感を覚えた。
昼食の時間では無いが、お腹が空いては働けない。
彼は食堂で何かを食べようと決めた。
「無責任だとは言わないで欲しいな。僕は育ち盛りなんだから……」
此処には居ない誰かに言い訳をしてみるが、少し虚しい。
――スパゲティ、ハンバーグ、和洋折衷定食。お任せBセットでも良いかも知れない。特区の食堂は美味しい物が多いから楽しみだなぁ………――
真面目な顔をしながらそんな事を考え、食堂に向かっていたライが、そこらに漂う甘すぎる匂いに気づく事は無かった。
入口に近づいたライは、食堂が混んでいる事に気が付いた。
普段の食堂は弁当を持たない独身男性が多いが、今は何故か女性が多い。
その女性達は、食堂の真中に円を作っている。
不思議に思って円を覗き込んだライは、不気味な光景を見てしまった。
彼が探していた仮面の男がエプロンを装着しており、千葉とヴィレッタを伴って「お料理教室」を開催していたのだ…………
「最後に今までの作業をお復習しよう!」
ゼロが手をくねらせて言った。
千葉が後ろで文字ボードを掲げる。恥じらいは無い。
ゼロが話している言葉は、ライには全然意味の分からない物だったが、一生懸命メモをとる女達を見れば随分と為になる物なのだろうとは理解出来た。
ゼロがエプロンを翻した。
「運悪くメモを忘れたという其処の貴方達!そう、そんな貴方達の為に今までの作業を分かりやすく纏めたプリントを配布する。各自で上手く活用してくれたまえ。では……第一回、ル・ル・ル。楽しくチョコレートを作ろう作戦♪、を終了する!!」
135 :
(カナリア):2010/02/17(水) 00:55:28 ID:ARt3fic2
話を変えよう、と仮面の男が提案したので、ライは何かを考えた末に言った。
「仮面とエプロンの組み合わせは合わないな」
瞬間、ゼロは固まった。
「なにを言って……」
「仮面は外す事が出来ないから仕方がないというのは理解している。しかし、ミスマッチであるというのは事実だぞ?せめてエプロンも黒に………」
「エプロンが白いのは清潔感を出すためだ、これも仕方がないことなんだ」
「そうなのか?」
「あぁ。エプロンが茶色い人間と、エプロンが白い人間では清潔感が違うだろ?黒も駄目なんだ」
「仮面とマントが黒いじゃないか………」
「これは清潔な漆黒だ。何時も私自ら洗っているから大丈夫なんだ」
ふーん、と気のない返事を返したライは、それより………と気にしていた事を質問した。
「なぜ料理教室の題材がチョコレートなんだ?」
ライの質問に、ゼロは唖然とした。
「もしやと思うが………バレンタインデーを知らないのか?」
「バレンタインデイ?」
仮面が首を振る。
「私が最初から教えねばならないのか。……まぁ良いだろう、教えてやる。バレンタインデーとは……………」
そこから十分、ゼロはライにバレンタインデーの事を余すことなく教えた。
ライは熱心に聞いた後、感嘆を洩らした。
「それは女性陣が張り切るわけだな。意中の人間に想いを告げるキッカケになるのだから…………まぁ大変そうだがな」
「人事だな」
「事実、人事だからな」
「…………本当に言っているのか?」
ゼロはライに仮面を向けた。
「は?」
「いや、分からないなら良い」
ゼロの言葉に首をかしげたものの、この時はたいして気にもせずにいた。
136 :
(カナリア):2010/02/17(水) 01:02:36 ID:ARt3fic2
2月14日AM7:50
前日が完徹だったが故に仮眠室で寝ていたライは、息苦しさを覚えたので跳ね起きた。
窓が閉まっているとはいえ、あまりにも酸素が足りな過ぎる。
慌てて窓を開けて深呼吸をしながら外をみると、既に沢山の人間が出頭しているようだった。
「今日も頑張るか」
先程の息苦しさを不思議に思ったが、気にしてばかりも居られず、そう呟いて窓を閉めたライはドアノブを軽く捻った。しかし、ガチャという音はしたのだがドアが開かない。
――あれ?――
不思議に思いつつ再びドアノブを捻って押す。
ガチャガチャ………
開かない。何故かイラッとしたライはノブを捻りまくった。
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ……………
無益な事を数回繰り返し、やがてライは気付いた。
これはノブのせいではなくて、ドアの向こうに何かがあるのだと…………
ならば自分だけの力で何かが出来るわけでもない。
ライは部下に内線を入れて、ドアを調べに来るよう命じた。
待つこと10分。
ようやく仮眠室のドアが開いたのだが…………
「一体これはどういうことなんだ?」
天井に届くのではないかと思える程に積み上がった小包を指差して問うと、自称【ラインハルト・ディザー太尉の】右腕のクーランジュが当然の様に答えた。
「小包ですね」
「これが小包ということは分かっている。私が言いたいのはなクラン……」
部下のずれた回答に、思わず愛称で文句を言ってしまう。
「はい、分かっております。なぜ大量の小包が廊下に有るのか、ということでしょう?」
「そうだ、分かっているならどうして最初から言わない…………まぁ良いが、どうしてこんな所にコレが有るんだ?」
不機嫌な上官の態度にクーランジュは笑った。
「仮眠室のドアの前に溜まっていたんですよ。しかも、どう詰め込んだのか誰にも分からない程ギッシリとね。………いや、本当に窒息しないで良かったですね」
支援
138 :
(カナリア):2010/02/17(水) 01:05:27 ID:ARt3fic2
クーランジュの言葉に溜め息を吐いてライは言った。
「それで?中身はなんなんだ?」
「チョコに決まっているでしょう?人気者は辛い」
「ほぅ、それは良かったな。………で、なぜ小包が此処にある」
「は?」
「だから何故此処にチョコレートが有るんだ?」
そりゃアンタ………ねぇ?、とでも言いたそうな空気がその場を支配する。
「………」
「…………」
「……」
部下達の沈黙に耐えられなくなったのか、ライは唸った。
「なんなんだ、その痛い子を見るような眼は!!」
クーランジュが呆れた様に言う。
「いや、実際痛い子ですからね?貴方って人は」
「私の何処が痛い子だ!?」
「自分に対するバレンタインチョコの山を見て、なぜ此処に有るだなんて言ってる所ですよ」
ライは鼻で笑った。
「バレンタインチョコとは下駄箱か手渡しする物なのだ。コレはそのドチラでも無いじゃないか!」
更に固まる空気。クーランジュでは無い部下が恐る恐るきいてきた。
「それは学校での事なのでは?」
「ん?しかしゼロは下駄箱が手渡しが一般的だと………」
「それは学校での常識だと思います………ですよねクーランジュ卿?」
「そうだな」
「……そうかなのか?」
「「えぇ」」
ライはまたもや唸った。
――ゼロめ。間違った事を堂々と教えたな――
「ライ卿。とりあえずこのチョコレートはどうしましょうか?」
クーランジュに問われたライは悩んだ末にこう言った。
「捨てるのは忍びないが、私は彼女以外の物を食べる訳にはいかない。誰か欲しい者が居たら好きなだけ持って行けば良いさ」
空気が固まった。
クーランジュが手を挙げる。
「それは捨てられるよりもキツイですよ」
「捨てる方が資源の無駄になる」
「想いが詰まったチョコを、好きでも無い人間に食べられたら悲しいでしょう?」
「何を言ってるんだクラン。これは義理チョコだぞ?私が上官だから義理として渡してくれたのだろう…………そんなに強い想いは詰まっておるまい?」
クーランジュは思った。
――駄目だ。この方は根本を理解していない――
呆れて何も言えない部下達を尻目にライは、名案だとでも言うように手を叩いた。
「いまでもゲットーは食料不足の筈だ。このチョコを配れば少しは足しになるに違いない!そして、それと同時に配給も開始しよう…………名付けてバレンタイン配給。どうだ、良い考えだとは思わないか!?」
部下達はどうにでも成れと頷いた。
139 :
(カナリア):2010/02/17(水) 01:09:06 ID:ARt3fic2
これがAM8:10の事である…………
主だった人間を会議室に呼んだライは、先程考えた事を発表した。
「という訳なんだが………どうだろう?」
ライが提案した事を、二人が真剣に悩み、他多数が呆れた。
「副隊長、貴方は突然何を言っているんですか?」
朝比奈が手をあげた。
「確かにゲットーに食料を供給しようと言うのは立派ですよ。けど現実には問題があります」
朝比奈の言葉に皆が頷く。しかし……
「………砂糖だけでは駄目です。塩分……醤油も付けなくてはね!」
朝比奈の言葉に千葉が突っ込んだ。
「そっちか!しかも醤油!?どんだけお前は醤油が好きなんだよ!!」
「うっさいなぁー千葉は。そんなんじゃ嫁さんには成れないよ?」
「う、うるさい!」
仙波が二人を止める。
「ほら二人とも。皆が迷惑そうにしておるぞ、少し黙らんか」
「「はーい」」
藤堂が真面目な顔でライを諭す。
「日本人の私達としてもゲットーに食料を供給したいと言う君の心は嬉しく思っている。しかし、今の特区には日本全域のゲットーに食料を渡せるだけの力は無いんだ」
「私にもそれくらい分かってますよ」
「ならなぜ………」
「私達の国はただの特区ではありません。行政特区なんですよ。独自の行政を行って良い半独立国家!ならブリタニア………エリア11の政府と連絡を取って食料を買い、ゲットーに分配する事だって許される筈ですが?」
ライの言葉に卜部が言う。
「食料だってタダでは無いし、そもそもゲットー全ての人間に行き渡る程の食料を買える財力もないぞ?」
ライは軽く笑った。馬鹿にしたつもりは無かったが、卜部は少し無然とした。
「何が可笑しいんだい?」
朝比奈が眼を細めた。
「あなた方は行政特区最大の武器を忘れてませんか?」
この場にいる全ての者がライを見た。
支援
141 :
(カナリア):2010/02/17(水) 01:16:00 ID:ARt3fic2
「富士にはサクラダイト資源が豊富に有るんですよ?しかも、ほぼ無尽蔵に!!」
あ!!と言う声が上がった。
「確かに、アレとの交換であれば、幾らでも食料を貰えますね。」
ディートハルトが頷いた。
「俺はこの件、試す価値が有ると思う」
扇が小さく呟いた。その呟きに、これまで黙っていたゼロが口を開く。
「その理由は?」
扇は立ち上がって言う。
「ゲットーにはいまでも沢山の人間がいる。しかも食料は依然足りないままだ。特区成立以前なら耐えられた空腹も、成立した今では耐えられないと思うんだ………」
朝比奈が手を挙げた。
142 :
(カナリア):2010/02/17(水) 01:17:19 ID:ARt3fic2
「良く意味が分からないんだけど?」
そんな朝比奈を手で制して扇がまた話す。
「以前なら――自分達は虐げられる立場にあるから仕方がない………耐えるしかないんだ――と思えただろう。
けど、成立した今では――特区が有るんだ、俺たちはもう、一方的に虐げられる側の人間では無くなった――と考えて略奪に近い行為を起こす連中も出てくると思うんだよ。
…………そうしたら今より更に日本人に対する反感が増えるだろ?そうなったら困るから、今食料を配るべきだと思う」
千葉が反論する。
「このままでも略奪など起きないかも知れないだろ?」
ディートハルトが答えた。
「残念ながらウツノミヤゲットーで起こってますよ。駐在していたブリタニア軍の指揮官が、貯蓄してあった食料を放出したので大事にはなりませんでしたがね」
藤堂はゼロを見た。
「どうするゼロ?」
藤堂の問いに答えず、ゼロは室内に居る全ての人間に顔を向けた。
「民主主義で決めよう……お前達はこのライの案件をどうしたい?」
「やるべきだと思います」
と、ディートハルト。
「反対する理由はない」
と、藤堂。
「右に同じ」
と、四聖剣。
「やらない理由が思いつかないな」
と、扇。
その他の人間も頷いたのを見て、ゼロは何も語らなかったユーフェミアに眼を向けた。
「賛成多数です。ユーフェミア代表」
ユーフェミアは頷いた。
そして一言「認めます」と言った。
ライは満足げに笑ったが、ユーフェミアはシニカルな笑みを浮かべて続けた。
「しかし、一つだけ削除すべきところがありますけどね」
「それは………」
「貴方が貰ったチョコレートを配るという所ですよ。貰い物の処理くらい自分でやりなさい」
厳しい言葉にライは激しく項垂れた。
143 :
(カナリア):2010/02/17(水) 01:24:07 ID:ARt3fic2
以上で代理投下を終了致します。支援してくださった方、本当にでありがとうございます。
文中で
>>141の四行目、
>>142の11行目でディードハルトになっていましたので、自分の判断でディートハルトと訂正を行いました。
あと、代理投下スレの原文にあった改行も減らさせていただきました。
代理投下乙&乙でした。ダメだこの朴念仁ライ、何とかしないとw
そしてチョコを全部片付けるのは大変かもだが、そりゃそんなことしたらユフィも怒るよ。
だがエプロン姿のゼロって、想像すると本当にシュールw
次回の投下をお待ちしています。
乙でした。軍人出身のライはなんだか朴念仁に拍車がかかる気がするねw
たぶん、親衛隊編後特区成立という設定上
普通はまだまだ特区でのライの立場は政治的には微妙な立場でしょうが
それを凌駕するライの人気が如実に描かれていますね。特区でもこの人気。
この後、在日ブリタニア政府側でも日本のヴァレンタインノリが流行ってて
ライがそっちに帰ったら大量チョコの二重苦なんてことになってるかも…とか想像しましたw
ひとつだけ、ちょっとん?と思ったところがあるのですが朝比奈の言う副隊長ってライのことでしょうか
ライはブリタニアの大尉ということなので、この辺の設定がちょっと分かりにくかったです。
あとオリジナルキャラを出す時は最初に注意書きを加えた方がいいかもしれません
次回の投稿を楽しみにしてます。
ロスカラ2はまだか!
そろそろ原作をオマージュ?してもいい頃だろ。
どうも、ここに書き込むのは久々になります。
いやぁ、規制喰らってましたからねぇ。
というわけで、久々に直に投下します。
皆さん、よろしくお願いいたします。
タイトル:伝えるという事
カップリング:ライ+ミレイ
短編なので、支援は要らないと思います。
では、よろしくお願いいたします。
伝えるという事
「ねぇ、ライ。貴方、私の事、好きよね……」
実にいきなりである。
まぁ、確かにその通りだし、ブルームーンの日に互いの思いを交換し合った仲だ。
否定するはずもない。
だから、僕は頷きかけたものの、頭の中を嫌なものがよぎった。
ミレイさんがこんなことを言い出すときというのは……。
だから、頷く代わりに聞き返す。
「何でしょう、頼みたいというのは……」
その聞き返しに、一瞬だがドキリとした表情を見せたものの、相手は百戦錬磨のミレイさんである。
すぐに立て直していつもの笑顔を向ける。
「うふっ、そんな訳ないでしょ。私は……」
だが、そんな事ではもう誤魔化されない。
「この前も同じパターンでしたよ」
言い終わる前に切り返す。
さすがにこの切り返しはきつかったのだろう。
うっ……といった感じの表情で言葉に詰まるミレイさん。
いくら惚れているとはいえ、いつもいいように使われるのは嫌だから反撃する。
そりゃ、好きな相手に頼られるのは悪い気はしないし、嬉しい。
だが、何事にも限度があるし、なんか相手への思いが軽いというか薄っぺらく感じてしまうのだ。
「好きなのを餌にして、頼み込むのやめてください」
だから、僕はきっぱりと言い切る。
惚れているとはいえ、いや、惚れているからこそケジメはつけたい。
だからこその言葉。
そう思っての言葉。
だが、思いを伝えるのは難しい。
実際に思いをいくら言葉にしても、果たしてどれだけが相手に伝わるだろうか。
そして、その言葉をどれだけ相手は受け止めてくれるだろうか。
それもわからないのが、ますます人を不安にさせる。
本当に、人とは厄介な生き物だ。
僕のその言葉に、ミレイさんは完全に言葉を失う。
普段のミレイさんからは、いや、今まで見てきたミレイさんからは想像出来ないほど画面が蒼白なっている。
瞳が焦点を失い、虚ろになってしまっているように見えた。
しまった。言い過ぎたか……。
一瞬で、思考がマイナスに走る。
何やってるんだ、僕はっ。
好きな相手をこんなにしてしまうなんて。
だから、慌ててミレイさんを抱きしめる。
「ごめん、言い過ぎた……」
ミレイさんの強張っていた身体がゆっくりとほぐれていくのがわかる。
不安を振り払うように僕を抱きしめ返してくる。
「ううん。私の方こそごめんね。そうよね、そう聞こえても仕方ないわよね」
その言葉にホッとする。
わかってくれたんだ。僕の思いを……。
「いいんだ。僕の方こそ言いすぎた」
お互いに抱き合いながら、言葉を掛け合っていく。
それは、互いをもっとも身近に感じられ、そして思いを正確に伝えていく事の出来る方法なのかもしれない。
そう思ったときだった。
「んんっ」
咳払いが僕らの意識を現実に戻す。
はっと周りを見回すと、そこには生徒会室の入り口のドアに生徒会メンバーが揃っていた。
「もういいかな……」
そう言って苦虫を潰したような顔をしていたのはルルーシュ。
どうやら、さっきの咳払いも彼の仕業のようだ。
そんな、ルルーシュを止めようとしたのだろう。
顔を真っ赤にしたシャーリーが彼の手を引っ張るような格好になっている。
そして、その横でおろおろしているのはニーナ。
で、カレンはまるで石造のように固まっている。
もちろん二人とも顔が真っ赤だ。
いや、この場合、二人の反応がとても微笑ましい気がする。
で、スザクはその後ろで苦笑している。
多分、ルルーシュの行動に対してだろう。
そういや、リヴァルの姿が見えない。
と、思ったら、彼らの後ろでうずくまって廊下の絨毯を突いていた。
そこまで確認した時だった。
慌ててミレイさんが僕から離れる。
その顔は真っ赤だ。
「あ……」
思わず僕の口から残念そうな声が出た。
その言葉に、ミレイさんの表情が一瞬だがにこりと微笑む。
「いけないっ、みんなを呼んでたの忘れてたわ。ごめんごめんっ」
そう言って、みんなの方に顔を向ける。
視線が僕から離れるのが、ちと寂しい。
「実はね……」
まるで今までのことがなかったかのようにミレイさんは説明を始める。
そんな彼女を僕はじーっと見続ける。
まるで、魅入られたかのように……。
いや、多分そうなのだろう。
どうのこうの言っても、僕はミレイさんにベタ惚れなのだから。
そして、ある程度説明が終わったのだろう。
みんなが、今ミレイさんが言った事をいろいろと話し合いを始めた時だった。
すーっとミレイさんの顔が僕に近づく。
「ライ、続きはみんなが帰ってからね……」
その囁きに僕は頷き返す。
そう、思いは言葉では伝わりにくいし、果たしてどれだけ相手に伝わっているのかわからない。
だけど、いや、だからこそ、言葉だけではなく、いろんな事で伝えていけばいいんだ。
何も言葉だけが思いを伝える方法ではない。
それに一度に100%の思いを伝えられなくても、何度も何度も伝えていって100%にすればいいじゃないか。
そうだ。
それが出来るのが人間なんだ。
僕は、ふとそんな事を思っていたのだった。
以上です。
で、投下して気が付いた…。
「画面」ってなんだよ。
チェックの時、気が付かなかった。
「顔面」、あるいは「顔」ということで、脳内変換しておいてください。
いやはや、申し訳ないです。
では、また出来たら投下します。
ではー♪
どうも、短編を一つ投下したいと思います。
「決闘 前篇 」
ベースは騎士団編ルートで、ギアス編でのナナリー拘束地下施設イベント
そこの部分でのパロで、とある一場面を融合させました
スザクとライの性格を変えてあります
嫌いな方全力スルーを
カップはまだでできませんがライ×ナナリーの予定
4レス位です
「決闘 前篇 」
薄暗い地下にある浄水システムの一番奥,そこにナナリーは捕らえられていた。
「ナナリー!!」
一番最初に到着したスザクは周りを見渡す、何かトラップが無いか、誰もいないかを。
確認し、異常が無い事を確かめナナリーの所まで駆け寄る。
「良かった、無事だっ―――」
「触ってはいけません!!私から離れてください!!」
ナナリーを拘束しているロープを解こうと近寄ったスザクをナナリーは止める、何故そんな事を言うのか理解出来ないスザクだった。
だが、近くに着いた時すぐに状況を飲み込んだ。
「C4爆弾!?」
それは見えないピアノ線にくくりつけられているC4爆弾、その数6。
どれか一つでも爆発すれば連鎖し全て爆発し、簡単にナナリーを消し飛べる様に囲んでいる。
とその時!!
カチャリ!!
「っ!!」
とっさに聞こえた音に反応し後ろに飛んだスザクの足元に弾丸が飛んできた、さっきの音が聞こえなかったらおそらく足をやられていただろう。
「くっ!!」
「そうだ、そのワイヤーに触れるとナナリー諸共C4が爆発する」
すぐに体勢を立て直したスザクは、ナナリーの後ろの柱の影から現れた人物に息をのむ。
「やはり来たのはスザク、君だったか」
「ライ!!何故!?まさか君が―――」
「僕がナナリーにこんな事をすると思うかい?」
右手に拳銃をぶら下げ現れたライは、いつにもまして冷たくそれでいて楽しそうな眼をしていた。
ライはナナリーの真横に立った。
「ならここで一体何を!?」
「なぁに、ベイエリアの戦いで君と生身で戦いたくなってね」
「・・・・ライ、君は」
スザクは自分の耳を疑った、戦場では敵どうしであり蒼き死神としてブリタニア軍から恐れられているKMFパイロット。
でも学園では頼れる友であり、ナナリーにも優しい彼がこんな事をするなんて・・・・。
しかしそれと同時にドクンと、今迄とは違う衝動がスザクを覆い始めていた。
「ライさん・・・・」
「ナナリー、少しの間我慢してくれ、直ぐにすむ」
ナナリーの不安な声に、優しく静かにライは言う。
言い終えたライは銃をスザクにも見える位置まで上げた。
「こいつは僕の相棒、コルトパイソン357マグナムだ。今迄こいつのおかげで命を救ってくれた恩人でもある」
そう言うとスザクめがけてライは逆の手に持っていた銃を投げた、スザクは難なくその銃を掴む。
「僕だけが銃を持って君が持っていないのはフェアじゃない、それを使え」
スザクが手にした銃、それは―――。
「H&K MARK23 SOCOMか・・・・どうあっても、君と戦わなければナナリーを助け出せないみたいだね」
スザクも覚悟を決めた、どうあがこうともライと戦わなければならない。
それにライの事だ、何か考えが有っての事だろう・・・・ナリタ連山の時の様に。
それに、スザクも心のどこかでライとこうして戦いたいと思ってしまっている。
そう思った時、スザクの瞳も戦士のそれと同じ様になっていた。
「6発だ、6発以上生き延びたやつはいない。君のその力が勝つか、僕が勝つかためそうじゃないか」
ナナリーを守るように前に立ち弾丸を装填したライは銃をホルスターにしまい、右手をグリップのすぐ上に置く。
スザクもどの方向にでも飛べるように身構える。
そして、決闘の火ぶたはライのゴングで切って落とされた!!
「来い!!」
以上です。
こんなライって有りかなと思いましたけど、そこは言わない方向で。
相変わらず読みずらいかな?
では、失礼します。
昔のライっぽい感じだしありかもしれないですね?
記憶の設定はどうなってるのか
さてなんの意図があるのか気になります
次の投下を全力でお待ちしてます
>>150 乙でした。何だよこの甘ったるい二人はw生徒会メンバーも大変だw
>>154 乙でした。この決闘が後編にどう動き、ナナリーはどうなるのか。
続きをお待ちしています。
>>154 乙です
悪党でワイルドなライも好きな俺としてはすげーツボでした
肉体派コンビの格好いい決闘シーンも気になります、でもスザクは銃捨てた方が強い気がするwそれもライの作戦か?w
またの投下をお待ちしています。
158 :
祝:2010/02/26(金) 11:57:57 ID:2cB30ZHC
トーマス卿が亡くなられたようです
このスレも終わりだな
こんばんは、夜分遅く投下します
「決闘 後篇 」
カップ ライ×ナナリー
ベースは騎士団編ルートで、ギアス編でのナナリー拘束地下施設イベント
そこの部分でのパロで、とある一場面を融合させました
嫌いな方全力スルーを
4レス位です
「決闘 後編 」
決闘の火蓋が切って落とされた瞬間、ライはコルトパイソンを素早く抜きスザクに発砲する。
スザクの反射神経は超人並みだ、しかしスザクは完全にかわす事が出来ず、弾丸は左腕をかする。
(避けきれなかった!!)
(心臓を狙ったんだけどな・・・・さすがスザク、一筋縄じゃ行かないか)
ライは簡単に討ち取れないと悟ると瞬時に作戦を描く、こっちの武器は1発の威力は絶大だがリロードに時間がかかる。
対してスザクのソーコムはリロードのスピードは速く弾数が多い、こっちは予備も含めて合計12発、スザクは24発(ソーコムは一つのマガジンに12発入る)、スザクの方が有利。
だが向こうにはできてこっちに出来る事がある、それを最大限に生かせば!
(よし、行くぞ!!)
ナナリーの前に立っていたライは描いた作戦を実行に移し、走り出す。
(何か仕掛けてくる気か!?させない!!)
スザクはライに向け発砲、3発放つもライの足の速さに腕がついていけずライの後ろを通り過ぎる。
ある程度走ったライはスザクの居る方向とは違う方に向け2発連続で撃つ。
「何だ?どこを狙、っ!!」
ライが何故自分に向けて撃たなかったのかと疑問に思ったその刹那、スザクはとっさにここに居るのは危険と頭が警告しすぐに横に飛ぶ!
するとまさにさっきまでスザクが居たその位置に2発の弾丸が飛んできたのだ!!
「っ!!兆弾か!!」
「ちっ、外した!!」
ライは改めてスザクの身体能力の高さを思い知る、だが退かない!
また走りだし、スザクに狙いを定めさせないようにする、弾倉にはあと3発。
スザクもやられてばかりじゃない、銃撃戦では満足に応戦出来ないと判断すると、接近戦に持ち越す為にライへ接近する。
(ライの足を止める!!)
スザクはライの走っているはるか前に銃を乱射する、その数4.
「くっ!!」
浄水システム内部の道は狭い、ライは急停止し逆方向に向け駆け出そうとしたその時だった!!
「せいやぁ!!」
スザクはライが足を止めたその一瞬の隙をつき急接近、いっきに間合いを詰め回し蹴りをくらわす。
「うおっ!!」
腕でガードし致命的なダメージは避けられた、だがガードしたとしても蹴り飛ばされてしまう。
(さすが・・・・接近戦は此方が不利か、しかし!!)
上手く着地し直ぐに体勢を立て直したライは、スザクめがけて突進した。
「来るか!!」
スザクも駆け出し、両者はその距離を縮めていく!
腕が振れる距離まで接近した両者、スザクは強烈な鉄拳を喰らわそうと腕を振ろうとした!
それに対しライはすんでの所でジャンプ、スザクの肩を踏み台代わりに背後へと飛んだ。
「後ろか!?」
「遅い!!」
背後をとったライは残っている3発全弾を放つ、スザクを討ち取ったかに見えたこの行動だ。
しかし、スザクはマガジンに残っている5発を使い弾丸の方向を全弾変えた。
「外した!?」
外したと知るとライは即座に物陰に身を隠す。
「ハァ・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・」
スザクはマガジンを交換する、それほど動いているわけではないが相手が相手なだけに、極度の緊張と死すれすれの戦いで息があがりそうになっていた。
「ふふふふ、良いセンスだ!!さすがランスロットを操り僕達を苦しめる男、久しぶりだよ、これほど充実した戦いは!!」
弾を込めながらライはニヤッと笑う。
「ライさん・・・・スザクさん・・・・」
目が見えないナナリーはもの凄い不安に駆られている、弾丸が当たるかではなく2人が死なないかが。
とそこへ――――――。
「・・・・この足音は」
「そろそろ―――」
ナナリーが別の足音を聞いたその時!!
「本気を出していこうか!!」
「っ!?」
ライは別の足音が聞こえた方向に全弾をはなつ、すると―――。
「ぐあああああ!!ライ、貴様ぁぁああああ!!」
「迂闊だな、マオ!!」
ライは現れたマオに何の躊躇も無く弾丸をぶちこみ、今度は物陰に隠してあった仕込み刀を抜き切りかかる。
「このぉぉおおおおおお!!」
自分を撃ったライに隠し持っていた銃を向けたマオ、だが!!
規則正しい連続音と共に腕に衝撃が走り、マオの腕から銃が飛んでいく!
「なっ!?」
「ライは殺らせない!!」
スザクの援護を受け、ライは距離を詰め刀を振りかざす!
「せいやああああ!!」
しかし、マオは刀が振り下ろされるよりも早くその場を去っていく、弾丸で受けた傷から流れる血を残しながら。
「お待たせ、ナナリー」
「ライさん!!良かったです」
震えている声でライの生存を喜ぶナナリーの頭を優しく撫で、持っている刀でワイヤーを切っていく。
C4が音を立てて床に落ちていく、が爆発はしなかった。
「ダミー?」
「すまなかったスザク、大丈夫かい?傷は」
「ただのかすり傷さ、それよりもどういう事か説明してくれないかい?」
スザクに今回の事について説明する。
最初ナナリーを発見し、彼女の頭上を動いていた本物の爆弾を解除した時だった。
「大丈夫かい?ナナリー」
「はい・・・・ライさん、ありがとうございます。来てくれると信じてました」
ニッコリと笑うナナリーを見てライも微笑む、そしてここを出ようとしたその時だった
「っ!!」
「何ですか?今のピンという音は」
「センサーだ、迂闊だった・・・・マオめ」
車椅子を動かすと作動するように仕掛けられていたセンサーに気付かなかった、しかしライはこれを逆手に取る策を思いついた。
「ナナリー、僕に考えがある!だけどナナリーにも協力してもらわないとだめだ」
「どんな考えですか?私に出来る事なら」
ライは作戦補佐として戦っている時の顔になり、ナナリーの目線の高さまで跪き策を伝える。
さっきのセンサーはナナリーの車椅子が動いた事を知らせる物、だとするならマオはこっちに向っている可能性が・・・・。
いや、向かっているだろう。
ならばここで彼を待ち伏せし、叩く事が出来ればニ度とこんな事にはならない!
しかし心を読むギアスを持っているマオにこの事を悟られたら一環の終わりだ。
そこで―――――
「スザクに決闘を申し込もう」
「殺し合いをするんですか!?」
「それくらいの気持ちでやらないと気付かれる、スザクなら生き抜けるよ。僕とスザクを信じてもらえないかい?」
「・・・・わかりました、でも死なないでください、約束です――――」
ナナリーはライに聞こえない位の小さい声で言う。
―――ライさんがいなくなったら、私・・・・生きていけませんから・・・・。
そしてナナリーにも協力を頼み捕まっているふりをしてもらい、今にいたる。
「と言う訳だ」
「なるほどね、確かにそうでもしないとダメだったかな」
「ですが、犯人には逃げられてしまいました」
ナナリーの言う通り、マオにはすんでのところで逃げられてしまった。
「あとは僕が何とかする。スザク、ナナリーを頼むよ」
「ああ、任せて!」
「ライさん、気お付けてください」
スザクにナナリーを任せ、ライは全速力でマオを追いかける。
この後、C.Cと再会したマオは彼女によってその命を散らし、C.C本人はライの励ましで短期間のうちにまた元気になったそうだ。
以上!!
場面と行動を伝えれたかどうか。
では失礼します。
22:45頃に代理投下を行いたいと思います
ああ、こういう仕掛けだったのか!
普通に騙されてましたw
乙です!
では始めます。余暇卿の作品です。
支援は必要ありません。
---------------------------------------------
こんばんは、これより投下します。
作者:余暇
タイトル:突撃!今日のお昼ごはん
設定:特派編スザクEND後
ジャンル:一応ギャグです
170 :
(余暇):2010/02/28(日) 22:38:25 ID:W3SSqfhX
『突撃!今日のお昼ごはん』
それは、ある日の昼休みのことだった。行政特区日本の庁舎内を歩いていた僕の所に、ある女性の元気な声が飛んできた。
「おお、ライ!ちょうどいい所に!」
「ん?ああ、ノネットさん」
声がした方へ僕が振り向くと、そこには特区の視察に訪れているノネットさんが、嬉々とした表情で立っていた。
「どうかしましたか?僕に何か用事でも?」
「うむ、今から一緒に飯を食いに行こうと思ってな。時間はあるか?」
「まあ大丈夫ですけど、どこへ行くんです?僕は今から庁舎内の食堂へ行くつもりだったんですけど、他にどこか行きたい場所でもあるんですか?」
僕がこう尋ねると、ノネットさんは腰に手を当てながら答える。
「ああ。『特にどの店がいい』というのはないが、せっかく特区に来たことだし、街中で食ってみたいな。もしお前がいい店を知っているなら、そこへ案内してくれてもいいぞ」
「うーん。全部の店を知っているわけじゃないですけど、具体的に食べたいジャンルはありますか?例えば和食とか、スパゲティとか」
「いや、本当に何でもいいぞ。そうだな……。敢えて言うならば、量が多い方がいいかな。今日は午前中からあちこち動き回ったからな、腹がペコペコなんだよ」
「食べる量ですか。となると……」
僕が頭の中で記憶をたどっていくと、すぐさま一軒の店が浮かんできた。
「そうだ。以前、休日にスザクと一緒に行った店があるんですけど、そこでいいですか?そこなら、量の多いメニューが頼めますし」
「ほほう、そんな店があるのか。よし、では早速出かけるぞ!案内を頼めるか?」
「はい、わかりました」
僕は微笑むと、ノネットさんと一緒に庁舎を後にした。まさかあんな、大変な昼食になるとは予想もしないままに。
171 :
(余暇):2010/02/28(日) 22:39:47 ID:W3SSqfhX
僕がノネットさんを案内しながら通りを歩いていると、さほど大きくない一軒の食堂の前に着いた。
「着きました、ここですよ」
「ほう。ここがお前の言う、量が多い店だな」
ノネットさんの問いかけに対し、僕は笑いながら答えた。
「ええ、メニューはそんなに多くはないですけど、量は多いですよ。前にスザクと一緒に来た時も、お腹が空いていたので大盛を頼んだら、普通の店の大盛より多くて、二人でやっとの思いで完食しましたよ」
「うーむ、食べ盛りのお前と枢木ですら手こずるとはな。ますます興味深い。よし、行ってみるか」
ノネットさんはそう言うと、入り口の自動ドアから店内へと入り、僕もすぐ後に続いた。そしてカウンター席に並んで座ると、彼女は近くにあったメニュー表をじっくり眺め始める。
「さーて、何にするかな。あっ、お前も遠慮せず好きなものを選べよ。今日は私のおごりだからな」
「え、でも…いいんですか?何だか悪いですよ」
「おいおい、この期に及んで遠慮はなしだぞ。お前に時間を割かせて、わざわざ付き合ってもらっているんだ。食事代くらい、私に払わせろ。だから遠慮せず、好きなだけ食え」
「あ…はい。それでは、ごちそうになります」
「うむ、それでいい」
大体予想できたことではあるが、案の定ノネットさんに押し切られる形で、僕は彼女の申し出を受け入れた。そして僕は彼女からメニュー表を受け取ると、彼女に負担がかからないよう、なるべく安いメニューを探し始める。
(ノネットさんは経済的負担はまったく気にしていないようだけど、僕はどうしても気になってしまうんだよな。それに、あまり多く食べても午後の仕事に影響が出そうだしな。ここはやはり、無難な量と値段のメニューを選ぶか)
そんなことを考えながら、僕はしばらくの間メニュー表を眺め、やがて一つの答えを導き出した。
「それじゃあ、カレーライスにします」
そう。僕が導き出した答えとは、「お手頃価格かつ適度な量のカレーライスで、お腹にもノネットさんの懐にも優しくしよう」作戦だった。
この店のカレーは大盛だと苦戦してしまうが、並盛ならちょうどいい具合に空腹を満たせる。それにおいしいし、何と言っても比較的安い。つまり一番無難なメニューなのである。
「おいおい、あまり値段なんか気にしなくてもいいんだぞ。確かにこいつは手頃な価格だが、もっとボリュームのある定食とか、少々値が張ってもガッツリ食えるものを頼んだらどうだ?」
苦笑いを浮かべたノネットさんに、僕は軽く笑みを浮かべながら説明した。
「でもやはり無遠慮に頼むのは、ノネットさんに悪いですよ。それに、ここのカレーは並盛でも意外に量があって、ちゃんと空腹は満たせますよ。それに、味もなかなかのものですしね。だから僕は、これくらいで十分です」
「なるほどな。お前がそこまで言うのなら、それでも構わんさ。それなら私も、同じカレーを頼むとするか」
そう言って明るく笑ったノネットさんに対し、僕も笑って応じる。良かった、これで後は「並盛」を頼めば万事うまく行くはず。
「ええ、そうしましょう。それじゃあ僕は、カレーライスの並……」
「よしっ。マスター、カレーの『大盛』を二つ頼もうか!」
「ちょっ!?え…おおも、えぇっ!?」
並盛を頼むよりも先に、ノネットさんに大盛を注文されてしまい、僕はかなりあわてた。仕事前の大盛は、正直言ってきつい。何より、今の僕は大盛を食べきれるほど、空腹でもない。
これは何としても彼女を止めなければ。
172 :
(余暇):2010/02/28(日) 22:41:19 ID:W3SSqfhX
「ち、ちょっと待って下さい!少し話し合いますから!」
僕は店員に頭を下げて待ってもらうと、キョトンとした表情のノネットさんの方を見た。
「何だ、どうかしたか?」
「いや、その……。大変言いにくいんですが、僕は大盛じゃなくて並盛の方が……。今はあまり、完食できる自信がないんですよ」
するとノネットさんは、明るく笑いながら言った。
「ハッハッハッ。もしかして、枢木と来た時のことを思い出したのか?安心しろ、お前なら今度は余裕で食える。何せ、この私が見込んだ男だからな」
「いや、そうじゃなくて…っていうか、そんな過度な期待をしないで下さい。軍人としての素質と一食のキャパシティは、必ずしもイコールとは限りませんから」
「何を言う。しっかり食わなければ体は育たんし、毎日働くだけの気力も生まれんぞ。お前ほどの男なら、ガッツリ食ってちょうどいいくらいだと思うぞ」
「別に僕は、ガッツリ食べるような大食漢でもありませんよ。それにあまり食べ過ぎると、この後の午後の仕事に差し支えが……」
僕がそう言いかけた瞬間、ノネットさんが面白くなさそうな表情を見せた。
「おいおい、そんなことを心配していたのか?意外にスケールが小さいんだなぁ。もっとスケールを大きく、『この店で一番大きなカレーくらい、すぐに平らげてやる』くらいの気持ちで、ドーンと構えたらどうだ?」
「その例えは、本当に『スケールが大きい』と言えるかどうか、少し微妙だと思うんですが。それに、その…言ってしまえば昼食なんですから、一番にこだわる必要なんかないと思うんですが。二番じゃダメなんですか?」
するとノネットさんは、「わかっちゃいない」とでも言いたげに首を横に振ると、人差し指で上を指しながら言った。
「甘いな、お前は。何事においても常に一番を狙う姿勢で行かないと、いざという時、本当に一番を獲れないぞ。
それに、昔おばあ様が言っていた。『昼食をバカにする者は、昼食に泣く』ってな。たかが昼食、されど昼食。食べられる時にしっかり食べないと、後で困るぞ」
「えーと、何て言うかその…ノネットさんのおばあさんがどういう方か、容易に想像できてしまいました。きっと、すごくノネットさんに似ていらっしゃるんでしょうね」
「おう、いかにも!小さい頃から周囲にはよく、『ノネット様はお母様やおばあ様に似ていらっしゃる』と言われたものさ。まあ、逆に『父上やおじい様とは正反対ですな』と言われた時もあったがな。ハッハッハ」
「す、すごい家系だなぁ……」
僕は心の中で、ノネットさんの父親と祖父に同情した。もし僕が彼らの立場になったとして、果たして耐えられるだろうか。そして、彼女が見せたさっきのポーズは一体何だったんだ。
「というわけで、マスター!カレーライス大盛二つ!」
「えっ、ちょっ…まだ話し合いは終わってな……」
「ん、どうした?」
「……あ、いえ。何でもありません、その…大盛で……」
「うむ、よろしい」
僕はなおも抵抗を試みたが、結局ノネットさんの持つ雰囲気に圧倒されてしまい、あえなく屈した。これはもう、覚悟を決めるしかないようである。
173 :
(余暇):2010/02/28(日) 22:42:43 ID:W3SSqfhX
「つ、ついに来たか……」
目の前に置かれた、器の上に山のように盛られているカレーライスを見て、僕は少し圧倒されていた。ていうか、この量は絶対に昼食の範疇を超えている。
「ほほう、こいつはかなりの量だな。だが食べ応えがありそうで、いいんじゃないか?」
一方のノネットさんはというと、そのカレーライスを前にして、余裕たっぷりかつ嬉々とした表情をしている。その余裕はラウンズ故か地なのか、どっちなんだ。
「どうした、ライ。顔が強張っているぞ」
「いや…これはどう見ても、昼食じゃないですよ。よほど空腹な時の夕食か、大食い大会で出てきそうなレベルですよ」
「ふむ、確かに多いかもしれんな。だが決して残すなよ、これは農家が汗水流して作った米や野菜を使い、店員たちが真心込めて調理してくれたんだ。彼らに感謝して、しっかりと全部食べなければな」
「何で急に、そんな大きな話になるんですか……」
ノネットさんの言葉を聞きながら、僕は軽くため息をついた。これはいよいよ、完食するしか道はないのか。
「まあ…せっかくノネットさんにごちそうになるんだし、こうして出された料理はちゃんと食べないと、色々な人に悪い気もしますね。では、そろそろ食べましょうか」
「うむ、冷めないうちにいただくとするか!」
ノネットさんはそう言ってスプーンを片手に持つと、嬉しそうにカレーを食べ始める。そしてその隣で僕は、密かにズボンのベルトの穴を二つ分緩め、戦闘態勢を整えたのであった。
「では、いただきます……」
結論から言おう。僕はあの後、大盛カレーライスを数十分でどうにか完食した。ズボンのベルトの穴を二つ分緩めたのに、かなり苦しい状態になったが。
そして一方のノネットさんはというと、僕より十分くらい早い時間で、あっさり平らげてしまった。最早、何もかもが豪快と言うしかない。
174 :
(余暇):2010/02/28(日) 22:43:52 ID:W3SSqfhX
「うぅ、苦しい。動きにくい……」
昼食を終えて庁舎に戻った僕は、ノネットさんと別れて廊下を歩いていた。食べ過ぎたせいで、歩くだけでも苦しい。
「あ、ライ……。昼休みは見かけなかったけど、どうしたんだい?」
すると廊下の向こう側からスザクが現れ、僕に声をかけてきた。だがどういうわけか、彼にいつもの明るさはなく、少し元気がないようにも見える。
「やあ、スザク。実はさっきまで、外でノネットさんと一緒に食事をしていたんだ。ほら、以前に二人で行った、やたらと量が多い店があるだろう?そこで大盛カレーをやっとの思いで完食してきたんだ」
「ああ、あの店か。確かにあそこは量が多くて、よほどの空腹でないとしんどいかもね。でもあの店なら、味に間違いはないだろう?良かったじゃないか、カレー」
「なあ、スザク。僕の勘違いなら悪いが、妙に元気がないように見えるんだが。一体昼休みの間に、何があったんだ?」
するとスザクの表情が青ざめ、何か怖いものを思い出すかのように、体を小さく震わせ始める。
「オスシ……」
「ん……?はっ、まさか!」
僕は「オスシ」というキーワードで、すべてを理解した。
「そう、そのまさかだよ。昼休みにセシルさんが軍の用事でやってきて、『今日はスザク君たちのために差し入れを持ってきたの』って、入れ物いっぱいに詰められたオスシを渡されたんだ」
「そっ、それで君はどうしたんだ!?」
「いくら探してもライはいないし、ユフィや他の人たちにあんな苦しい思いはさせたくないから、『今日はお腹がペコペコなんです』と言って僕が…全部……」
「あぁ…何と言ったらいいのか、その、申し訳ない」
半分涙目になるスザクに向かって、僕は自然と頭を下げていた。彼はもっと大変な目に遭っていたのに、あの程度で「苦しい」などと甘えていた自分が少し情けない。
だが彼は気丈にも、笑みを見せながら言った。
「いや、気にしないで。君の方こそ、たくさん食べさせられて大変だったんだろう?『今日はお互いに大変な昼食だった』と、割り切ろうよ」
「君は前向きなんだな。まあ君がそう言うのなら、そうしよう。そして願わくば、明日以降の昼食は普通に食べたいものだな。毎日玉砕覚悟では、身が持たない」
「うん、それには同感だね。『基本的に食事は、穏やかに食べてこそ幸せなんだ』って、改めて思い知らされたよ」
僕とスザクは力ない笑みを交わした後、大きなため息をついた。重く沈んだ胃をなだめ、平穏な食事に想いを馳せながら。
以上で終了です。代理投下の方、ありがとうございました。
------------------------------------------------------------------
ここまで本文です。ありがとうございました。
余暇さん並びに代理投下の方、どちらもお疲れ様でした。
食欲が湧くようなお腹いっぱいな気分になるような…w
次の投下もお待ちしております。
窮極兵器であろうオスシを完食したスザクの漢っぷりに涙せざるをえないw
似た経験があるからライに同情したw
どうして上司はあんなに食べさせるのか
トーマスは根拠もなしに韓国の人たちを中傷しているがあれって
どうなの?
人格を疑うわ
いつになったら保管庫のあの不愉快な文章が消えるんだよ!!
ノネットさんはいかにも「いいから食え食え!」のノリで食べさせそうだよなw
>現在、韓国
なにを持って韓国と決め付けてるの?失礼だと思わないの?
>(の一部のアレな方々)
カスはてめーだクソが
>からと思われる
はいはいソースソース
>サイバー攻撃
小学校で習ったのか?(笑*100000
>(但し、とても原始的且つ幼稚な)により、
幼稚なのはお前のオツムだよばーかwww
>2ch全てのサーバーがダウン若しくは非常に繋がり難い状態になっています
別に特に珍しいことではない。落ちるのなんてしょっちゅう。2ちゃん嫌いだわ
このようになかば自然現象であるサーバーダウンをさも韓国の人たちがやったように言いふらす卑劣な行為を
断じて許されないだろ
トーマスは今すぐ謝罪するべきだ!!!!
>>181 こんなのを想像した
セシルさんが作ったオスシを
何も知らないノネットさんが
善意100パーセントのいい笑顔で
ちょっぴり頬を赤らめつつあーんしながら食べさせてくれます
最低嫌韓厨のトーマスは社会の害悪だと思います
ふとシュナイゼルにオスシ食べさせたらどういう反応をするのか見てみたくなったw
>>187 意外とマジギレしてくれるかもなw
ああいう人って人とは違うことでいきなり怒りだしそうだし
怒りの沸点と方面が違うのかもね
人と違うとこで怒るって、何かやりづらいなw
そして、静かに怒るのかちゃぶ台返しなのか、どっちなんだろう。
意外とにこやかに食べたりして。
ああいうのって意外と味オンチの場合があったりするからw
まあ仮面の笑顔はお手のものだろうな。カノンさんにお裾分けした時の反応も見てみたい。
>>192 紳士的スマイルで毒物を差し出すシュナイゼル
…
カノン
口に含んだ瞬間「うっ!」てなるも取り繕った笑顔で「個性的な味ですね」
>>188 真の貴族はあんまり美味しいとか不味いとか言わないらしい
下手に不味いとかいうと、それで料理人が首になったりするから
美味い方は、昭和天皇が全国回った時にどっかで出された鰻を美味しいと言ったら、
以後どの地方に行っても鰻を出されたというエピソードを聞いたことがある
シュナイゼルなら、見るからに怪しいオスシは最初から上手く避けそうだが、
ちゃっかりライやスザクに押し付けたり、逆に第二皇子の不興をかわせるわけにはいかない!と
ライが身を呈してオスシの犠牲になる気がする
そして、「そんなに気に入ってくれたのね」と勘違いしたセシルさんの好意から
ポイズンクッキングのでデススパイラルに堕ちていくライだった……とか、
そんなこんなでライセシになりつつも、幸せとはいいきれないライの話も好きだw
ニュースすら見ないのか・・・
己の不明を恥じたらどうだい。
そう考えると、シュナイゼルはそつない反応をしそうだな。
笑顔で「これは独創的な味だね」とか誉めた後で、さりげなくアドバイスをしそうw
そして周囲は「流石はシュナイゼル殿下!!!!!」みたいなw
ふむ
(笑*100000 とか、知能の低さが露骨に見えて痛々しい
そうやって構うお前もたいがいウザいけどな
>>200 自分もそうだ、だのと保険かけとけばウザい行為が正当化されると思うなよ
鬱陶しい流れだな。どっちも回線切って引き篭もってろ
>>200 俺も人のことは言えないけどもうあれだ、こいつの事はう○こだと思え
近づいたら臭い
触れば汚い
踏めば周りが汚れてしまう
最近はこう思ってる
>>203 早速ウンコに触ってる時点で出来てないな
俺も人のことは言えんが
キャラスレからリンク、外されるわけだ……
>>205 あれは単にキャラファンに同人ノリや二次創作が受け付けない人も大勢いたからだろ、
そりゃ他人のオナニーを喜んで見たがるような人間ばかりじゃない
別に荒れてるからとかじゃなくて普通のことだ
>>206 表面しか見てないな。
よりによってSSスレで、その作品の事を「他人のオナニー」とか書いたら
職人がどんな気持ちになるか想像できない様な人には無理か……
>>207 どうでもいいが、そもそも無関係の外部スレのことを持ち出したのはお前だろ
荒らしの癖に被害者ぶるな、
>>206の方も言い方考えろ
つーかお前ら全員いい加減にしろよ
すいません
210 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 00:46:07 ID:bkXy7e1M
投稿してみます
211 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/07(日) 00:52:29 ID:bkXy7e1M
まちがえました
>>199 そうやって指摘するお前も相当ウザい。
回線切って引き篭ってろゴミ虫
>>208 どうでもいいとか、無関係とか
お前も言い方考えろw
そいつじゃないが、荒らしなんざどうでもいいし他スレは基本無関係だろ
「どうでもいいが」、いつまでやるん?それとも自演か?
自演か同胞援護だろ
保管庫の更新はまだですかね
217 :
代理投下:2010/03/10(水) 21:21:34 ID:giVRYoyg
名無し ◆BPxI0ldYJさんのSSを代理で投下します。以下は前書きです。
今回は、ちょっと今までとは系統が違うと思います。
その辺を覚悟の上で、読んでください。
では始めます。
218 :
代理投下:2010/03/10(水) 21:22:25 ID:giVRYoyg
決意
始まって1時間近くが経っていた。
進行は順調に進み、かって共に戦った仲間達が祝いの言葉を述べていく。
だが、みんなどことなく緊張というか、硬い感じがする。
あの私を散々からかっていた朝比奈でさえ、緊張した面持ちだったのには思わず苦笑してしまった。
まぁ、尊敬する藤堂さんの結婚式ということもあるのだろう。
そんな中、意外だったのは仙波大尉だ。
きっと教訓やら、なんやらいろいろ言ってくださるのだろうと思っていたら、話し始めた途端、泣き出してしまったのだ。
そういえば、仙波大尉のご子息は前の戦争で亡くなられていたんだっけ……。
多分、彼にとって、私は娘みたいなものだったのだろう。
そんな事を思い、私も少しじーんとなってしまった。
いけない、いけない。
ぐっと涙をこらえる。
よし、少し落ち着いた。
そんな私をじっと見る視線がある。
私の隣にいる人物。
そう、藤堂鏡志朗。
式が終わったら私の夫となる人物だ。
「本当にいいのか?」
彼が囁くような声で聞いてくる。
その声は、普段の彼からは想像が出来ないほど弱々しい声だった。
彼は、私が未だにある男性に未練を持っていることを知っている。
だからこそ、聞いてくるのだろう。
今なら、まだ戻れぞと。
それは彼の不器用なまでの優しさであり、私の事を愛してくれている事の証なのだ。
だから、本当なら私はすぐに答えるべきなのだ。
――ええ。大丈夫です。私は貴方を選んだのだから……。
そう答えることで、彼はきっとほっとするだろう。
だけど、私は答えられなかった。
無言のまま彼の視線を避けると、まだ続いている祝いの言葉を述べている友人達の方に向けた。
いつの間にか、友人の言葉は最後の人物になっていた。
いや、正確に言うと最後から2番目だ。
ただ、最後の人物がまだ来ていない。
だから彼が最後だ。
後悔が心の中を締め付けていく。
いいの?本当にいいの?
まるで拘束具でギリギリと締め付けるかのように、迷いが私に襲い掛かってくる。
段々と表情が固まってくるのがわかる。
そして、そんな私の肌を、藤堂さんの―――いや違う。鏡志朗さんの痛いまでの視線が突き刺さってくる。
だけど……。
ごめんなさい。
今の私は答えられない。
そう、私はまた吹っ切れていないのだ。
確かに私は鏡志朗さんが好き。
だが、それと同じように。
いや、もしかしたらそれ以上に彼の事が好きなのかもしれない。
そんな迷った気持ちのまま、答えを出したくなかった。
そして、そんな事を思っていたら、ついに最後から2番目の人物の祝いの言葉が終わった。
司会者が最後の人物の名前を呼ぶ。
そう、彼の名前を……。
だけど、彼はいない。
だから返事は返ってこない。
そして、式は進行していく。
219 :
代理投下:2010/03/10(水) 21:23:07 ID:giVRYoyg
そのはずだった。
だが、そうはならなかった。
会場のドアが大きく開かれ、声が響き渡ったからだ。
「すみませんっ、遅れましたっ……」
そこには、荒い息を吐きながらも彼が立っていた。
そして、司会者が慌てて彼を招く。
そう、最後の祝いの言葉を言うのは彼だった。
会場が静まり返る。
ここにいるほとんどの人間が、彼と私の関係を知っているのだから当然だ。
かって二人は恋人同士であったということを……。
そして、まだ互いに未練があるのではないかということも……。
彼の姿を無意識のうちに目で追ってしまう。
その目の端に、まるで耐えるかのような鏡志朗さんの顔が入る。
その姿に、私の心がますます混乱していく。
どうすればいいの。
今の私は、まさに風によってどっちにでも流れてしまいそうに不安定だった。
鏡志朗さんと結婚する。
そう決めたはずなのに……。
なぜ、迷う。
それはいけないことだ。
わかってはいる。だけど……。
もしかしたら、私は心の片隅で期待を持っていたのかもしれない。
まるでドラマのように、彼が私をさらっていってくれるのではないかと……。
あるいは……。
そう考えた時だった。
彼の言葉が会場に響く。
「おめでとう………。そして、ありがとう」
そこまで言って、彼は微笑む。
その笑いはとても吹っ切れたものだった。
その笑顔を私は、見つめ続けている。
しかし、彼は私のその視線にもぶれる事はなく、そのまま鏡志朗さんの方に視線を向けた。
その表情が一気に真剣な……、まるで命をかけた試合でもするかのように引き締まる。
その彼の視線を鏡志朗さんは堂々と正面で受け止める。
その表情も彼と同じように真剣だった。
ゆっくりと彼の口が動く。
「藤堂さん……。彼女のことを……お願いします」
彼はきっぱりとそう言い切ると深々と頭を下げた。
その言葉を受け、鏡志朗さんが聞き返す。
「いいんだな……、ライ」
「はい。藤堂さんなら、安心して彼女を託せられます」
しばらくの沈黙。
誰もが息を呑むのさえ恐れるかのような静寂が周りを包み込む。
220 :
代理投下:2010/03/10(水) 21:24:43 ID:giVRYoyg
だが、その静寂は破られた。
「わかった。彼女は、必ず幸せにしてみせる」
そう言い切った鏡志朗さんの決意と思いが込められた声によって……。
その言葉に頷き、彼の視線が今度は私に向けられる。
その表情は、とても優しい微笑み。
その瞬間、私の目から涙があふれ出す。
悲しいのか、うれしいのかわからない。
いや、その両方なのだろうか。
心の中がごちゃごちゃで、まるで混沌としていてどうしていいのかわからない。
ただ、涙で揺れる視界の中で、彼が言う。
「幸せになってください、凪沙さん」
その声は、深い愛情に満たされていた。
それは、愛するが故の決意。
好きだからこそ、相手の幸せを願う。
それが彼の私への愛。
それがわかったから、私はうなづき答えた。
「ええ。わかったわ……、ライ」
それは別れの言葉であり、彼に送る言葉でもある。
彼への愛を込めた言葉。
そして、私の決心を示す言葉なのだ。
「よかった。これで安心だ」
彼はそう言うと、式場を出て行ったのだった。
そして、私は彼を見送った後、隣に居る鏡志朗さんの方を向く。
彼ははっきりと決断したのだ。
私も決断しなければならない。
彼のように……。
「鏡志朗さん……」
そう声をかけると、鏡志朗さんが私の方を真剣な表情で見つめる。
それは、彼に対して向けたものと同じものだ。
だからこそ、私は心が引き締まる。
「私を貴方の伴侶として、側にいつも居させてください」
その言葉に鏡志朗さんは頷き、そして微笑んだ。
「俺の方こそ、よろしく頼む」
その言葉は、実に鏡志朗さんらしい不器用なものだったが、思いにあふれていた。
涙があふれて止まらなかった。
こうして、私は「藤堂 凪沙」となったのだった。
221 :
代理投下:2010/03/10(水) 21:25:52 ID:giVRYoyg
以上です。
こういうはっぴーED(?)もありかなと思って書いてみました。
ベタベタするだけが愛情じゃない。
そんな考えが浮かんだもので……。
そんなわけで、こんな感じになってしまいました。
楽しんでいただけたら幸いです。
では、また別のSSでお会いしましょう。
上があとがきになります。以上で代理投下を終わります。
乙です。こういうのもいいもんだなあ
「結ばれるだけが愛じゃないさ…」
某かぶき者さんもそう言っているしな
224 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/11(木) 23:42:29 ID:/t8PoxkK
乙です。代理投下もご苦労様です。
乙でした。藤堂×千葉スキーでもある俺歓喜な内容でした、素晴らしい!
こういう本編カプ+ライ、な話ももっと読んでみたいと心底思わせてくれる名作でした
次回の投下をお待ちしています!
こんにちは、短編を一つ投下したいと思います。
「戦士の誇り 序章 」
四聖剣と藤堂帰還後、イシカワ決戦前のパラレル
騎士団編ベースで解放戦線編を組み合わせたもの
とある場面を元にしました、嫌いな方全力スルーをお願いします
8レス位です
「戦士の誇り」
14:30 観音崎 廃墟街内部
「近藤機、配置につきました」
「松本、配置完了です」
「全機、砲撃準備!敵輸送船団及び航空船団が来るまで待機」
「「了解!」」
観音崎に進出したライ、近藤、上松の月下3機は、背後に其々配置されているナイトメアタンク「島根」3機を護衛していた。
(ここで補給路を叩ければ、エリア11におけるブリタニアの戦力回復は遅れる・・・・解放戦線が動かないのであれば、僕達が積極的に動くしかない!)
ナリタ連山の戦い、四聖剣と藤堂中佐の帰還、ベイエリアの戦い、ナイトオブラウンズ(ジノ、アーニャ、モニカ)の苦戦・・・・。
様々な要因が、ブリタニア皇帝シャルル・ジ・ブリタニアを大きく動かした。
「エリア11にナイトオブラウンズNO.2、エドワード小隊の投入を決断する!!」
エドワード小隊、過去数十回以上の出撃での総撃破数は数える事は出来ず、彼等の前に出てきた敵の中で生き残った者はほぼ皆無。
その小隊がついにエリア11、この日本に上陸する・・・・もしそれを許してしまった時、日本の抵抗組織は全て恐怖するだろう。
何としても阻止しなければならない、騎士団の戦力増強もすんでいないこの状況では尚更だ、せめて遅らせる事が出来れば・・・・。
ライの脳裏にゼロとのやり取りが浮かんだ。
さる6時間前、ライはゼロにのみ渡した無線で作戦会議を開いた。
「ゼロ、エドワード小隊の事は知っているか?」
「ああ、知っている」
無線越しでもゼロの声が若干震えているのがわかる、それほどゼロにとっても深刻な事だと言う事だ。
たかが3機と思うかもしれない、しかしそのたかが3機に対して諸外国は打つ手がないのが現状だ。
「その事について、作戦補佐として提案がある」
「聞こう」
ライの提案とは――――
エリア11に到着する輸送船団と航空船団の中に、その小隊専用機を乗せた船団が混じっているとの情報を得た。
その船団が15:50に観音崎を通過すると言う、ライはこの輸送船団を強襲し、戦力の回復を遅らせようと言うものだった。
上手くいけばエドワード小隊のKMFだけでなく、エリア11の補充戦力を海の藻屑と化す事が出来るかもしれない。
彼等のKMFは通常のKMFよりも重すぎる、その為専用の大型輸送機か輸送船を用いなければならない。
「その船団を攻撃し戦力の回復を遅らせる事が出来れば、幾分かの余裕は生まれる」
「だが片瀬は動くのか?あの重い腰で」
ゼロは片瀬の重い腰では許可は下りないと見ている、当然だろう。
積極的に攻勢に出ず、あまつさえ外国勢力との共闘を望んでいると言う始末だ。
その結果が悪い方向に向かうとも予想せずに。
「動きはしないだろう、だからこそ僕達が動こうと言うんだ」
「・・・・投入できる戦力は僅かだぞ?それに、コーネリアがそれを黙っているとは思えん」
「問題は無い、ゼロには一つだけミッションを完遂してもらえればそれでいい。それだけで勝率は上がる」
ライの強い声を聞いたゼロはしばらく考え―――
「良いだろう、何をすればいい?」
そして冒頭に戻る。
「(ライ君、聞こえる?)」
「井上さん!待ってましたよ、結果は?」
「(オールクリア、軍用の飛行場は全部滑走路を使用不能にさせたわ!)」
井上の弾むようなこの報告にライ、近藤、松本の3人は作戦の成功をより一層信じた。
「これで成功の確率が上がるな!へっ、面白くなってきた!」
「ここからが、私達の仕事ね!腕がなるわ」
近藤と松本はさらに気合いを入れ、己を奮い立たせる。
今回の作戦でライ達が最も警戒していたのは航空戦力だ、砲撃戦に特化させた島根は航空機のこの上ない獲物となる。
確実に無力化しなければこちらが袋叩きを受けて全滅するのは火を見るより明らかだ。
その為、船団が通過する時間帯に航空隊が出撃できないようにする必要がある。
そこでゼロに東京に存在する軍用飛行場を無力化させてもらい、その脅威を取り除いてもらうよう頼んだのだ。
そして今、嬉しそうな井上からの報告でそれが現実の物となった事を意味している、それからライは静かに時が来るのを待つ。
一つの不安を残して。
(けど、敵がここに制圧部隊を送ってきた。おそらくはまたここに戦力をまわしてくるはず)
同時刻14:30、浦賀湾内部にある指令室
大型のディスプレイを見ながら席に付いている鷹の様な眼を持つ男が、静かに事の成り行きを待っていた。
(まさかコーネリアがここまで苦戦するとは・・・・しかし―――)
そこへ、1人の軍人が早歩きで近ずいてくる。
「ブラウン中将、東京内の全飛行場が正体不明の攻撃を受け無力化したとの報告が」
「やはり動く者がいたか、制圧部隊からの定時連絡は?」
「・・・・観音崎に向った部隊からの連絡は、20分程前から」
コーヒーの入っているカップを口にもっていこうとした手を止め、ピクッとブラウンは反応する。
戦力の増強に先立ち、エリア11の視察に訪れているブリタニア全軍の参謀長ブラウンは、今回の輸送船団護衛の陣頭指揮にあたっていた。
定時連絡が途絶えた事が意味するのは一つ!
「輸送船団の行路安全確保に失敗したか・・・・私が出よう、KMFの出撃準備を」
「はっ!!」
カップをデスクに置き、席を勢いよく立ちあがると格納庫に向おうとした。
「中将、我々も」
「ダメだ、制圧ごときに余計な戦力を割く事は出来ない。ここは私1人で行く」
「しかし単騎では―――」
部下の主張は良く理解できる、僅か1機でどれほどの事が出来るだろうか?それが出来るのは一騎当千の猛者かよほどのバカしかいないだろう。
「敵は飛行場を事前に使用不可能にした。大尉、飛行場を破壊した敵部隊の詳細は?」
「KMFは僅か3機、形は無頼と呼ばれる量産機だそうです。観音崎の部隊の最後の報告では、そこのKMFは高性能機3機だそうです」
「このことから、今回の作戦に敵は大きな戦力を割けないのであろう。だとすれば観音崎に展開している敵戦力はそう多くは無いと予想される。
それに、今は飛行場の復仇作業に全力を注がなければならない。余計な戦力は避けんのだ!」
冷静に状況を分析し結論を出すブラウン、その声からは恐怖や焦りは微塵も感じられなかった。
現在、ここにある戦力は一つの基地を防衛するので精一杯な状態だ。
ナリタやベイエリアの戦いでの損害が大き過ぎたのが一番の要因だが、ジノ、アーニャ、モニカらラウンズの敗退がさらに拍車をかけた。
「それに、私の機体は単独ミッションを主眼に置いたバランス型。心配はいらん、私は必ず戻る」
「「はっ、ご武運を!!」」
ブラウンは部下達の敬礼を背に受け、マントを翻し格納庫へ向かう。
(我が友エドワード、貴様の相棒はやらせはせん!)
14:50 観音崎
辺りは静寂に包みこまれる。
「あと1時間と言ったところか・・・・」
「隊長、緊張してます?」
「ああ、戦場で緊張しない奴なんていないだろ?」
「そうですね、井上さんはど――――」
「(松本、静かに!!)」
ライ小隊の会話を遮り、井上の深刻そうな声が無線から響く。
「どうしたんです!?」
「(聞いた事がある音が近ずいてるのよ、何か来るわ)」
接近の知らせにライ、近藤、松本は戦闘態勢に入る。
「井上さん、何処から?」
「・・・・・・・」
ライの問いかけに井上はいまだ沈黙している、何かが接近しているのは解る。しかしそれが何処からなのかが解らない。
その音はだんだん大きさを増していく、そして―――。
「っ!!エレベータ、地下からよ!!近藤君、左前方!!」
「何!?」
叫ぶ井上が知らせ、近藤が機体を向けるよりも早く、爆音と共に1機のKMFが飛んで行った!
そのスピードは、騎士団内でもエース格と言われる3人が機体を見失ってしまう程だ。
「「「は、早い!!」」」
その轟音が、戦闘開始の合図となった。
以上です。
オリジナル要素が強すぎるから、そこがどう取られるか心配です。
次からオリジナルについて投下します。
オリジナルキャラクターその2
・ブラウン・ニミッツ 33歳(CV堀川りょう)
・ブリタニア帝国軍参謀総長、第1軍団副司令。
ブリタニア軍の頭脳、編み出される策略は幾多の大戦を勝利へ導き、何十万という兵士の命を救ってきた鬼才、通称“鷹の目”。
彼自身もKMFパイロットとして時には前線で戦う、その腕前はスザクに負けじ劣らずだが参謀としての役割が大きい為か波があり、あまり安定しない。
エドワードとは同期入団の親友、元から幹部としての道を進んでいたエリートだが、人望が厚く何より部下を常に気にかけるので部下の信頼は厚く温厚。
だが戦場では冷徹に徹すると共に己に対して厳しく律している。
また日本侵攻作戦にも参加し、ダールトンと共に厳島の戦いを経験している。
妻子持ちで愛妻家でもある。
・松本 理恵 18歳(CV折笠 富美子)
・ライ直属の小隊隊員、アッシュフォード学園高等部2年生。
搭乗機は「月下」射撃戦特化型(主武装、10cmバズーカ、50mmマシンガン等)。
名誉ブリタニア人の登録ではあるが、故郷である東京を破壊され元の姿にするべく騎士団に入団した。
現在は近藤の屋敷に住まわせてもらっており、幼少から家族ぐるみの付き合いをしている。
男勝りな性格で人気が高く、学園内からは姉貴の愛称で呼ばれている。
射撃戦において騎士団トップの実力を持ち学園ではクレー射撃部のエース、命中率と正確さは他を圧倒するが格闘は全く駄目で成長の見込みなし。
近藤に一途な想いを抱いているものの、鈍感な近藤はまったく気付いていない。
・近藤・エル・直輝 18歳(CV伊東 健太郎)
・ライ直属の小隊隊員、アッシュフォード学園高等部2年、髪は茶色で瞳は黒。
搭乗機は「月下」格闘戦特化型(主武装、ランスロットと同型の日本刀とハンドガン)。
ライと同じハーフでブリタニアの貴族と日本人の間に生まれる。
剣道、フェンシング、柔道と格闘技を教え込まれ現在は剣道部に所属している。
親はブリタニアの重工業の一翼を担う企業の重役でエリアだの人を区別するのを極度に嫌い、屋敷には様々な人種がすんでいる。
日本内部では一応ブリタニア人扱いとなっているが、松本の誘いで騎士団に入団。
騎士団のムードメーカーの1人で格闘戦闘ではカレン、ライを上回る強さを見せつけ、ライが本気を出したとしても勝てるか疑問とされる、しかし射撃はド素人に等しい。
・騎士団、伍番隊
・ライが隊長を務める特殊部隊、構成員はライ、近藤、松本の3人のみ。
単独でのスニーキングミッションや偵察、危険度の高い特殊任務、ライが作戦補佐を兼任している為作戦指揮を担当する等状況に応じたミッションをこなすいわば“万屋”的位置にいるが、本業は殿。
難易度の高いミッションが多いのと3人の高い能力から、彼等専用の月下等の最新鋭装備が優先して与えられる。
KMF「島根」
全高・・・3.6m
全長・・・10.8m
全幅・・・4.9m
兵装・・・12.7cm連装砲
3.4mmライフル
・解放戦線が開発した砲撃戦に特化したナイトメアタンク。
KMFの絶対数不足を補う為に開発された戦車とKMFの中間、KMF「無頼」の上半身と戦車の車体を組み合わせ、無頼の両肩に12.7cm砲を装備させたもの。
半KMFであるためアサルトライフルも撃つ事が出来る。
しかしKMF本来の俊敏性や汎用性は失われてしまい、撃破される確率は無頼の何倍にも跳ね上がるが火力は他を圧倒する(モルドレッドには負けるが)、最高時速は100km。
KMF「ハデス」
全高・・・5.03m
本体重量・・・7.58t
武装・・・・60mmガトリング
40mmキャノン
ヒートサーベル
・ブラウン専用機。単独行動を主眼に置いたバランス型。
普段は参謀としての任務が多く、パイロットとして安定しないブラウン中将の要望で開発された機体。
主に防御と索敵に重点を置いた本機だが、60mmガトリングがKMFに対して予想以上の威力を発揮した為バランス型となった。
全軍参謀と言う事もあり撃墜されては大変な事になる、その為にハデスは他のKMFには類を見ないパワーと出力を兼ねそろえている。
そのパワーは、巨大な瓦礫が落下してきたとしても受け止められる程の物を出せる。
しかし他のKMFよりも重量が重くエナジーの消耗が激しい、そのせいで小型の核融合炉を装備している。
以上ですべて終了です、では失礼します。
>>234 投下お疲れ様です。
なんというか、感想書きにくいですね。
その最大の原因が、短編なのにオリジナル設定が多すぎると感じるのは私だけでしょうか。
まぁ、長編とかならまだいいって気がするんですけどね。
それに、オリジナルKMFやキャラクター出すのはいいんだけど、そこまで細かく設定書かなくてもいいような気がしました。
(読んだ人が想像する部分がある方がSSとしては楽しめると思いますから。まぁ、自分で決めておくのはいいですけど、わざわざ書かなくてもいいんじゃないかな)
それに、私は本文以外の説明は少ない方がいいと思っているので、余計にそう感じてしまいました。
(本文中の行動や言葉とか、オリジナル要素の表現の仕方はいろいろあると思うし)
あと、余計な事かもしれませんけど、今までの傾向から、パラレルさんの作品はオリジナル要素が強すぎる部分があると感じるので、既存の設定だけのオリジナル設定が極力少ないものを書いてみたらどうでしょうか。
オリジナルという香辛料は、使いすぎると作品本来のよさを消すばかりか、違和感を増加させSS自身を単調なものにしてしまう恐れがあります。
だから、その加減をうまく使いこなすともっと面白くなるんじゃないかと思います。
すみません。素人がいろいろ言って……。
気を悪くしたらごめんなさい。
でも、これからもがんばってください。
クソワロタwww
こんばんわ。
えーと新作書けたので投下します。
今回も実験的な要素が強いと思います。
ベタベタな恋愛ものではありませんし……。
でもまぁ、気楽に楽しんでくださいませ。
では、投下します。
後、多分、支援は大丈夫だと思います。
思い違い
うー、気のせいかな。
気のせいだよね。
だが、気が付くといつも彼が私を見ているような気がする。
それも何やら訴えるかのような視線で……。
いや、違う、違うっ。
私は頭の中に沸き起こった考えを慌てて否定する。
そんな訳あるわけないもん。
それに、私はルル一筋っ。
「うんっ!!」
ガッツポーズをして気合を入れる。
が、気が付くと、横で部活の申請予算の計算をしていたカレンがびっくりした顔でこっちを見ていた。
「あ、あのぉ、シャーリー……」
おどおどと実に言い難そうに聞いてくる。
「何か悩みでもあるの?」
その言葉には、友人を心配する彼女の思いが強く込められていた。
ここ最近は二人でいろいろ話すことも多くなってきているだけに、その言葉や思いはすごくうれしい。
だから、私は慌てて否定する。
「ううんっ、違うのっ。気合入れてただけなの。うん、本当にそれだけ、それだけなの」
なんか、言い訳がましい感じに聞こえたかもしれないが、まぁ、概ね事実だ。
だが、それでもカレンは心配そうに見ている。
「本当だってっ。さぁ、さっさと終わらせましょ」
私がそう言って生徒会の書類整理に戻る振りをすると、カレンも納得できない表情ながらも作業に戻る。
ふう、よかったっ。
私はほっとしたものの、まだ頭の隅にはさっき浮かんだ考えが引っかかって離れない。
ライ、もしかして……私の事……。
いけないいけないっ。
ぶんぶんと頭を左右に振り、完全にその考えを否定する。
なにやってんのよ、私はっ……。
ほんと、今は生徒会の仕事に集中しなきゃ。
ぱんぱんっと軽く自分の両頬を叩く。
よしっ。
さぁ、さっさとやっちやおう。
そう思ったときだった。
すごく痛い視線を感じた。
えーっと、やっぱり……。
恐る恐る視線の先を盗み見る。
そこには、複雑な、そう……まさにそうとしか言えないカレンの表情があった。
やっぱ、はっきりさせないと駄目だよね。
生徒会の仕事が終わり、部活に行ってもどうも落ち着かない。
それどころか、もしかしたらどこかで彼に見られているとか考えてしまって、身体がカチカチになってしまっている。
おかげで測った記録は最低の状態。
まぁ、原因がわかっている分、まだいいのだが……。
だが、どっちにしてこのままでは問題だ。
どうにかして解決しなければならない。
何より、このままじゃ精神衛生上よくない。
ふう……。
ため息がまた口から漏れる。
今日だけでも軽く二桁は越えるほど出たのではなかろうか。
涙は枯れると言うけれど、ため息の方はどう言うべきなんだろうか。
それとも、ため息はなくならないのかしら。
そんな詰まんない事も考えてしまう。
あーんっ、何考えてんのよ、私はっ。
自分の頭をぽかりと叩いてみせる。
なんで悩むのよ、私っ。
そう。そこが問題なのだ。
もし彼が嫌いな人なら、ここまで悩まないだろう。
でも彼、いい人なんだよね。
そうよ、そうなのよ。
ルルもいいけど、彼も素敵なの。
顔もルルに負けないくらい美形でかっこいいし……。
特に笑った時のあの笑顔なんて、もううっとりしちゃいそうになってしまう。
最初の頃のぎここちない表情を知っているだけに、余計にそう思ってしまうのだろう。
なんか、これって私が恋しているみたい……。
プールの手すりにつかまりながらぼんやりと天井のライトに目をやると、その光の中に彼の微笑む姿が見えたような気がした。
その瞬間、一気に顔に熱が集まる感覚。
私は慌てて手すりを離すと、プールの中に頭から突っ込んだ。
火照った顔が水で一気に冷やされるのが実は気持ちよかったりする。
だけど、頭の中はごちゃごちゃだった。
なに考えてるのよ、私はっ……。
私にはルルがいるのにっ。
そう、私はルル一筋!!
普段なら、それで考えは切り替わっただろう。
しかし、なぜか今回ばかりは切り替わってくれなかった。
ルルって……私の事、どう思ってんだろう。
もしかして、ルル……実はカレンの事が……。
そういえば、この前も中庭で二人でこそこそ会話してたし、それにルル、カレンの事抱き寄せそうになってたし……。
段々と考えがマイナスの方に流れつつある。
えーいっ、違うっ、違うーーーーーーーっ。
勢いよく水の中から飛び出すと、私は用意していたタオルを持って更衣室へと向かった。
「ど、どうしたのよ、シャーリー……」
そんな私をさすがに見かねて恐る恐る聞いてくる部活の友人に、私はすばやく答える。
「用事思い出したから、今日はもう上がる」
そして、ずんずんと更衣室に向かう私の耳に僅かに聞こえる友人達の声。
「シャーリー、今日、なんか変だったわよね」
「そうね。記録ガタガタだし、なんかテンションの上がり下がりがすごかった気がするわ」
「そうそう。なんか、心ここにあらずって感じ」
「もしかしたら………」
「もしかしたら?」
「ルルーシュ君と何かあったのかも……」
そしてひときわ大きな声で湧き上がる黄色い歓声。
あーもー、好きにしてっ。
ああなってしまったら、いくら言っても彼女らの好奇心という炎の燃料にしかならないことを知っている。
つまり、言っても無駄ってこと。
それに、年頃の女性にとって、他人の恋の話題は最高の娯楽なのだ。
多分私も自分の事じゃなかったら彼女達のような反応を示しただろう。
ふーーっ。
がっくりと疲れる。
だが、諦めているので否定する気がおきるはずもなく、私は更衣室のドアを開けた。
ともかく、彼を捕まえてきちんとはっきりしょう。
そうしないとこのモヤモヤはきっと晴れる事はない。
そう思いながら……。
で、それから30分後。
私は校舎の屋上にいた。
もちろん、目の前には彼がいる。
彼は、私に話があると言われてすごく驚いていた。
その態度はとても落ち着かないという感じで、ますます私の想像通りではないかと疑いたくなってしまう。
しかし、私にはルルがいるから……。
そう思うものの、私は迷っている。
もし、告白されたらどうしょう。
そうなのだ。
今頃になって気が付いた。
実際、今の今までそういう事をまったくと言っていいほど考えていなかった。
ただ、彼がどういう理由で私を見ていたのか、それだけをはっきりさせようとだけ考えていた。
だが、もし想像通りに彼が私に好意を持っていて、告白したらどうすればいいのだろうか。
頬に熱が集まってくる。
頭がくらくらしてくるような感覚。
いけないっ。このままじゃ……。
私は、慌てて口を開く。
「あのね、ライっ」
そう言って言葉に詰まる。
どう言い出せばいいんだろう。
ストレートに聞くべきだろうか。
それとも遠まわし?
えーーーーんっ。
どうしよう……。どうすればいいのよぉ〜っ。
「じ、じ、実はねぇ、あ、あのぉ……ね、そ、そのぉ………」
怪訝そうな表情の彼。
そりゃそうだろう。
呼び出されて、二人きりで、そして、訳わかんない事をごにょごにょ言われて……。
ここで笑顔なんかされた日には、私の方が凹みそうだ。
それに、実際に反対の立場なら私も同じ態度を示しているに違いない。
しかし、よく考えてみたら……。
こ、これじゃあ、私が彼に告白してるみたいじゃないのっ。
そう思った瞬間、上り詰めていた熱が一気に沸点まで跳ね上がる。
漫画とかだと、よくヤカンみたいにピーッとかなるんだろう。
まぁ、そんな事は起こるはずはないのだが、それに近い感覚になっているのは間違いなかった。
だが、このままずるずると時間が過ぎていくのに任せていい訳がない。
えーいっ、ともかく言っちゃえっ。
私は、覚悟を決めたっ。
そして、叫んでいた。
「もしかして告白したいのっ?」
言って、どーっと汗が出る。
それも冷たい汗。
なんというストレート。
というか、もっと別の言い方はなかったの〜っ、私っ。
えーいっ、自分ながら不甲斐ないというか、情けないというか。
もっと、こう遠まわしにっ……。
じわじわと真綿で首を絞めるかのように……。
ええーいっ、違う違うっ。
そうじゃない。
えーと、つまり……。
こう柔らかい感じに……。
爆弾発言してしまった後に、頭の中をわけのわからない思考がぐるぐると回っている。
で、出た結論。
よく考えて喋りましょう。
自爆は、自業自得です。
ちーーーんっ。
頭の中でなにやらはずれくじを引いた音がしたような気がした。
しかし、問題はそれで終わらなかった。
なぜなら、
「な、何でわかったんだ、シャリー」
彼の口から、そんな言葉が飛び出したからだ。
えっ?
えーと……。
……………。
…………。
………。
……。
…。
何が「わかった」って?
その「わかった」っていう言葉は、どの言葉にかかっているのでしょう。
っていうか、この場合、「告白」だよねぇ。
しばし、思考が止まる。
そして……。
一気に思考が爆発した。
えェェェェェェーーーーーーーーーーーーーーーっ。
声にならない叫びが口から漏れた。
ぱくぱくとまるで陸に打ち上げられた魚のように口が動く。
だが、言葉にもならないし、音でさえない。
ほ、本当に……。
本当なのっ……。
思考が一気に焼き切れ、ぐわんぐわんと頭の中で銅鑼が鳴り響く。
しばしの沈黙。
だが、信じられずに私は無意識のうちに聞き返していた。
「本当に……告白したいの?」
聞き方としてはおかしいのかもしれないが、混乱の真っ只中に居る今の私はそれが変だとは思えなかった。
その私の言葉に、迷いなく力いっぱい頷く彼。
頬により熱が集まっていくのがわかる。
私は、ルル一筋……なの。
私の心に深く刻み込まれたその言葉が、霞んで見えなくなっていこうとしていた。
ドキドキと心臓が高鳴り、息が苦しくなっていく。
でも、それは決して不愉快ではない。
いや、かえって嬉しいというか、わくわくするというか、そんな気持ちが強いのかもしれない。
どうしよう。どうしょう。
「本当に……本気なの?」
「ああ、本気だ。……好きなんだ……」
真っ赤になりながらも、彼は「好き」という言葉をはっきりと口にした。
それがますます私を追い詰めていく。
ごめん……ルル。
私、貴方が大好き。
きっと世界で一番好きだと思うの。
でも、私……。
このまま……流されそう……になってる。
だって、彼、すごくいい人だもの。
ああっ、やっぱり駄目っ。
ルルを裏切れない。
私、ルルが好きっ。
でも……。
こんな感じで、思考がループを繰り返す。
まさに盛大な空回りというべきだろう。
しかし、そんな私を尻目に、彼は言葉を続ける。
「だから……」
真っ赤になった顔と言いにくそうな表情。
普段の彼からは想像できないほどの変化。
それがますます私を興奮させていく。
だが、より上昇していくテンションもそこまでだった。
「だから、カ、カレンへ橋渡しを手伝ってもらえないかな、シャーリー」
その言葉が沸騰していた私の頭に、冷水のごとくぶっかけられた。
しゅ〜っ、しゅ〜っ。
焼けた石に水をぶっかけられ、水が蒸発していく。
まさにそんな擬音が似合いそうな感覚。
ああ、これが冷や水をぶっ掛けられるという感覚なのか。
そんな事がなぜか頭に浮かぶ。
熱病にかかったかのような高揚感が一気に下がる。
そりゃ、もう急降下。
奈落の底に堕ちるかのように。
そう、まさにリバウンド。
ぼーんっと高く跳ねて、勢いよく堕ちる。
つ、つまり……。
今まで、私を見ていたのは……。
その為?!
カレンに告白する為。
そういう事なのね。
と、いう事は……。
つまりだ。
私が告白されるという事ではないという事。
あはっ……。
あはははははははははは……。
苦笑するしかない。
もちろん、脳内では「とほほほ……」である。
そして、一生懸命に頭の中でルルに謝る。
ごめんなさい、ルルっ。
私、私……、浮気しょうとしてた。
本当にごめんなさい。
これからはしっかりルルだけを見ていくから。
だから、今回は許してっ。
何度も何度も謝り続ける。
そして、矛先は、自然と彼に向かってしまう。
大体、そういう事ならはっきりそう言えば言えばいいのに。
変な訴えるような視線で見なくたって……。
だが、そう思った瞬間、彼の姿が自分と重なる。
そっか、あれは私の姿なんだ。
ルルの事が大好きで、大好きで……。でも言い出せない勇気のない私。
それはカレンの事が好きだけど、言い出せない彼と同じなんだ。
そう思った瞬間、わだかまりはかき消すように消えていく。
確かに誤解を招きそうな視線で私を見ていた事は問題だけど、それ以上に勝手に暴走した私自身が一番悪い。
はぁ……。
ため息が漏れそうになるのを何とか押さえ込む。
なぜなら、じーっと彼が私を見ている事に気が付いたから。
そうなのだ。
彼は私の返事を真剣な表情で待っている。
だから、私も真剣に答えなければならない。
「うん。私でよければ手伝う」
その私の言葉が口から出た途端、彼の表情が大きく変わった。
もちろん、喜びの表情に……。
「ありがとう、シャーリーっ」
肩を捕まれ、がくがくと揺さぶられる。
かなり興奮しているのだろう。
が、すぐに自分がやっている事に気が付いて真っ赤になって慌てて手を離すと謝ってくる。
「ご、ごめんっ」
「ううん、いい。気にしないで……」
自然と口から言葉が出た。
彼の姿がすごく楽しそうで、それでいてすごくうらやましい。
だから、私の口が勝手に動いたのかもしれない。
まさに、考えが口から出たというべきだろう。
そして、そこで言葉は止まらない。
まるで、もう一つの自分。
いや違う、自分の本心が言葉となって出ているような感じだ。
「それでね。カレンとうまくいったら……」
ああ、私、何てことを言おうとしているのだろう。
そう思ったものの、止めようとする気は起こらなかった。
だって、それは私の望みだもの。
それに私と立場が近い彼になら相談できる。
だから、言おう。
「私とルルの事、手伝ってよね」
その言葉に、彼は嬉しそうに微笑むと大きく頷いて答えた。
「もちろんさ」
その言葉が私には、とても心地よいものに感じられた。
こうして、思い違いから始まった彼との関係は、ただの友人から、お互いの恋を応援するかけがえのない友人へと代わったのだった。
おわり
以上で終わりです。
このSSでは、フラグ建てまくっているライということで……www
一級フラグ建築士の名は伊達じゃないっ!!
そんな感じでしょうか。
さらに、僕の中では、シャーリーは妄想っ娘ってイメージがあって、今回はその部分を強調してみました。
いかがだったでしようか。
まぁ、深く考えないで、気軽に楽しんでいただければ幸いです。
では、次回作でお会いしましょう。
10分後くらいから投下します
いくぜいくぜいくぜー!
タイトルは「ホワイトデーの夢」
注意点
・ギャグ
・パロネタ
・実際の商品名があります。
・扇ェ・・・
じゃあいくます
「よし、これでいいかな」
僕は棚に並ぶ商品を手に取り呟く。
バレンタインデーに物をもらうと、十倍にして返さなければいけない、というミレイさんの話を聞いた僕は途方にくれた。
なぜならば、僕には貰ったものの価値がいまひとつわからなかったのだから。
だがしかし、悩みぬいた結果、僕は閃いた。 1個貰えば10個、五個入りならば50個入った小さなお菓子を探し、それを渡せばいい、と。
それを思いついた後、ルルーシュに比較的安いお店を聞き、そしてここに来たことは正解だったといってもいいだろう。
ミレイさんに渡されているおこづかい、今月分のそれと先月まで少しずつあまったお金を貯めていた甲斐もあり、なんとか全員分を買うことが出来た。
「いいんじゃないか。 それにしてもホワイトデーのお返しか、貰った相手全員分を用意するとは、お前も律儀なやつだな」
「る、ルルーシュ!?」
返答など求めていなかった呟きに返事がきたのだ、誰だって驚くだろう、僕だって驚く。 というか現に驚いた。
そんな僕の様子を気に止めることなくルルーシュは僕の買い物かごの中のお菓子を見る。
「スナック菓子にチョコレート、ガムや飴にゼリーか、なるほど幅広くかつ量の多めなお菓子の数々、流石は俺が認めた男だ、ライ」
「え、あ、うん。 ありがとう」
正直に言えば認められた覚えなど一切ないのだが、一応は褒められている――と思う――から感謝の言葉は述べておく。
すると、僕の言葉を聞いたルルーシュは、何故か口元を吊り上げて笑みを深め、顔の前に手を置き、勝ち誇った表情を見せる。
「だが、つめが甘いぞ、ライ! そんなことでは真のお返し王とは言えないな」
とりあえず僕はその称号をくれるといわれても断固辞退しようと思う。
「相手に不快な思いをさせてしまうかもしれないものをお返しに選ぶとは言語道断! ライ、お前にお返しというものの真髄を教えてやろう」
「不快な思い……?」
聞き流そうと思ったが、無視できない言葉がルルーシュの口から飛び出したことで、僕はルルーシュの話を聞こうと思い、聞き返す。
そんな僕の反応を見て、ルルーシュは一層笑みを深める。
その表情に少し不穏なものを感じ取ったが、それでも僕には聞くという選択肢しか残されていない。
「まず、この「きのこの山」と「たけのこの里」だ。 これは上級のお返しストでも渡すときに気を使うお菓子だ」
お返しストってなんだ。 しかも上級? 下級や中級もいるのか? 初めて聞く言葉は僕の頭を混乱させる。
そんな僕の混乱に追い討ちをかけるかのように、ルルーシュは『気を使う理由』を一息で喋る。
「きのこの山が好きな通称『きのこ派』とたけのこの里が好きな通称『たけのこ派』は相容れない存在でな、この二つが発売した当初から永遠と戦い続けているのだ。
有名なものではお笑い芸人のコンビの二人が3年間きのことたけのこのどちらが真のチョコレートスナック菓子か、と戦い続けた『1000日戦争(サウザンズ・ウォー)』があるな。
そのときはたけのこの勝利だったのだが、今なおきのこ派は徹底抗戦している。 というかきのこ派が粘着してきているだけでたけのこの圧倒的優位は揺らぐことはないんだがな!
しかし、だ。 きのこ派の人間にたけのこの里を渡してみろ、あいつらはお前をきのこ派だと思い徹底的に噛み付いてくるだろう。
もちろん、俺たちたけのこ派はそんなことはないがな。 まぁ、きのこの山を渡されたところで普通に食べるさ、たけのこの里を薦めはするがな。 まぁ、強者の余裕というやつだ。
俺のような一級お返しストならば相手がきのこ派かたけのこ派か見抜くのは容易だが、そうでない貧弱一般お返しストであるお前はきのこの山のみを用意しておくといい。
だが、たけのこ派の中にも過激派もいる。 逆にきのこ派にも穏健派が存在する。
早い話がきのこたけのこをホワイトデーのお返しに選ぶのなら、その人が何派なのかはしっかりと把握しておかなければならない。
結局のところはきのこたけのこを贈りたいのならば、親しい人にしか贈らないようにするといい」
まくしたてるようなその言葉を聞いて、僕に理解できたのは最後の部分だけだった。
「とりあえず、生徒会のみんながどっち派か教えてくれないか?」
「あぁ、いいとも。 もし生徒会以外の女子生徒がどっち派か知りたいならリヴァルに聞けばいい。
注意しておくが、リヴァルはきのこ派の過激派だ。
お前がたけのこ派であったとしてもきのこ派を装うべきだ―――――」
「という夢を見たんだ」
「……そうか」
黒の騎士団アジトのラウンジで目を覚ました僕は、すぐ近くにいたゼロに夢の内容を話した。
「……お返しストってなんだろう?」
「そのルルーシュとやらに……いや、なんでもない。 所詮夢の中の会話だ、意味などあってないようなものだろう」
「まぁ、そうかな……とりあえず僕は帰るよ。 帰るついでにホワイトデーのお返しのお菓子を買わないと……きのこの山とたけのこの里買っても大丈夫かな?」
「大丈夫だろう、おそらく。 だがな、パイの実派とコアラのマーチ派が―――――」
僕は何か語り出したゼロを近くにいた扇さんへとスルーパスしてラウンジの出口へと向かう。
扇さんが「ライィ…」と呟き恨みがましそうな視線を向けてくるが、気付かない振りをする。 扇さんは犠牲になったのだ、ゼロの長い話の犠牲にな。
扇さんは更に「千草ァ……」とも呟いている。 聞こえない、僕には聞こえない。
僕たちがKMFを整備している最中に愛妻弁当を広げて食べていた扇さんが憎いわけではない。
いきなり親指を立てて「俺、今日家に帰ったら千草にこの指輪を……」とか言っていた扇さんが悪いって玉城も言ってた。
ルルーシュに教えてもらった業務スーパーに着いたら、とりあえずお返しとしてうまい棒でも買おう、と思いながら僕は黒の騎士団のアジトを後にした。
あとがき
むしゃむしゃしてやった今は反芻している。
あと、書き忘れてたけど、前のバレンタインSSとは何のつながりもないよ!
何作かまとめてで恐縮ですが乙!
そういえばホワイトデーだったね……
コアラのマーチに決まってんだろjk
代理投下行きます以下前書き
久しぶりに投下します
タイトル
オレンジケーキ
内容
ラウンズのライで一応はギャグです。
注意点
・ジェレミアは登場しません
・ジノが自分のことなんて言ってるか忘れたので俺にしました
・ライってビスマルクのことワンさんなんて言わないんじゃない?
細かいことは(ry
・小説1レス分って短かすぎない?
ちっちゃいことは(ry
255 :
代理投下:2010/03/27(土) 18:33:08 ID:I6+gmgUb
「…さて、どうしようか」
ライは考えていた。
目の前に置かれた3個のケーキを誰に渡すか。
ラウンズの女性陣4人に渡す筈だったケーキがなぜ1個減ってしまったのか。
30分前
ケーキを渡しに行く途中にジノに会ったライ。
「ライじゃないか、何か買ってきたのか?」
「ああ、ケーキを買ってきたんだが…」
「ケーキ!俺好きなんだよ、貰っていいか?」
こう言われて断れるライではなかった。
(困ったな。これでは数
が足りなくなる)
「ジノ、ラウンズで甘い物が苦手な人っているのか?」
「そうだな、ルキアーノぐらいじゃないか?女性陣はみんな好きって言ってたし」
「そうか…」
そして今
(4人全員甘い物が好きで個数が足りないなら他の人にあげたほうが良さそうだな)
ライはケーキを誰に渡すか策をめぐらす。
(スザクはEUに行ってるから駄目だな。ワンさんは…最近血糖値が気になってるらしいから駄目だ)
ライの策は早くも行き詰まる。
(…仕方ない、あの手を使うか)
ライはある人物のところに行った。
「…おい」
「何だ?」
「これは一体どういうつもりだ?」
「差し入れだ」
ライはケーキをルキアーノに渡しにきたのだ。
「俺は甘い物は嫌いなんだよ」
「うん、それはジノから聞いた」
「知ってて持ってきやがったのか!何の嫌がらせだ!」
(面倒くさいな…)
「ヴァルキリエ隊のみんなにあげればいいじゃないか」
「3個じゃ足りねえよ!」
(いい加減ウザいな…)
ライは絶対遵守の力を使った。
『ライが命じる、全力でケーキを喰え!』
256 :
代理投下:2010/03/27(土) 18:34:41 ID:I6+gmgUb
以上で終了です。
代理投下終了です
乙
ジノのお陰でとんだ災難だな、ルキアーノ
でもいいのかライ?
これ以降ギアスはルキっさんに使えなくなるぞw
乙ー。
まあライも結構勢いでギアス使うしな、酒盛りのときとかw
もう少ししたら投下します。
260 :
如月:2010/03/28(日) 22:02:43 ID:yJEGVPXZ
【メインタイトル】逢瀬
【CP】ライ×千葉
解放戦線END後です
261 :
如月:2010/03/28(日) 22:04:04 ID:yJEGVPXZ
「……」
もしかしたら、会えるかもしれない。生きているかもしれない、とそんな淡い期待を持ってやってきてみたが、当然のことながらそこに彼の姿はない。
有り得ないことだとわかっていても、僅かな可能性を切り捨てることはできなくて、目の前に彼がいる光景を願っていた。けれど、そんな願いが叶うことはなくて、実際に眼前にあるのは、夕日が海原に照り映える様子。
沈む直前の強く美しい輝きに目を向ける。辺り一面を紅く彩るそれは、幻想的とも言えるような目を惹かれる情景。
「ライ……」
彼のようだ。大きく輝いて、パッと沈んでしまうその存在が彼のようだ。
夕日を見つめながら意図せずに漏らしていたつぶやきにはっとなる。
なにげなく彼のことを考えていて、その想いを形にするように彼の名前を自分でも気づかぬ間に口にしていた。
別に他人に聞かれたわけではないが、それでも少し気恥ずかしく感じる。
自分はこんな女だっただろうか。誰かのことを考えるだけで頭がいっぱいになってしまうなんて、今までにあっただろうか。
いや、あるはずがない。冷静になって、思いを馳せてみたが、答えはわかりきっていた。彼が愛しくて、こんなにも想っている。この気持ちはきっとこれからも変わらない。
「お前は、私のことをどう思っていたのだろう……」
どんな風に私を見ていたのだろうか。もし同じ気持ちであったなら、これほどうれしいことはないのに。
ふと、波打ち際に目線をうつす。先ほどよりも激しく揺れる波が言葉をかき消すように寄せては返していく。
あきらめろ、とまるでそう言われているようで癪に障る。もはや、お互いの気持ちを確かめ合うことなんて出来ない。それは事実だ。しかし、
「皆がすぐに忘れても……私は、絶対に忘れないから……」
彼が生きた証を私の記憶に刻んで、ずっと、想い続けるから。
そんな決意を胸に秘め、夕日に向かい直して、深々と一礼する。
「少しだけ、お別れだ」
自分は軍人だから、いつまでもこうしているわけにはいかない。すぐにまた次の戦いが待っている。頭を切り替えて、任務を果たさなければならない。
「おまえの分も、私が戦い抜こう。約束する……!」
踵を返して歩き去ろうとする。けれど、途中で足を地面に留めて、そのまま立ち止まってしまう。
振り返った目の前に一人の男が立っている。印象的な銀髪をなびかせて、こちらをうかがっている。
262 :
如月:2010/03/28(日) 22:05:57 ID:yJEGVPXZ
「ライ……?」
白昼夢でも見ているのだろうか。目の前にいる人の存在がとても信じられなくて、自然と疑うように彼の名前を呼んだ。ライは、ばつが悪そうに敬礼した。
「……死に損ないました。中尉殿」
「この……馬鹿者……!」
その軽口に私の中の疑いは全てなくなり、気が付けば彼の胸に飛び込んでいた。
私らしくない、はしたない行動だったかもしれない。それでも、ライは受け止めてくれたので気にはならなかった。
背中に彼の腕が回され、抱き寄せられる。温もりを感じる。生きているんだ。幻なんかではなくて、ライが生きているんだ。
「……よかったです、中尉。また、貴女に会えて」
「ああ」
「本当に、死んでしまうような思いで、もう二度と会えないんじゃないかって思ったんですけど」
彼の腕に力がこめられて、強く、けれども痛くはないほどに抱きしめられる。
「こうして、貴女に触れることができる。生きているんだって実感できる」
「……私も同じだよ。こうしていると、とても安心する」
ライの胸に身を委ねるようにしていると、彼の鼓動が聴こえる。いつまでもずっと、こうしていたいくらいだ。
そんな私の気持ちとは裏腹に、ライは身体をほどいて、そっと互いを引き離してしまった。
名残惜しそうに顔を上げると、真剣な彼の眼差しと目が合ってドキッとする。
「中尉」
両肩に手を置かれて、彼の顔が近づいてくる。口づけをされる、と頭の片隅で意識していたが、ほんの少しだけあった照れもかまわずに、自然と受け入れていた。
「んっ……」
彼らしい、優しい触れるだけの口づけ。
わずか数瞬だけの行為が終わると再び向かい合って、お互いに不恰好に笑った。
「そ、そろそろ、戻ろうか」
「はい」
居心地が悪いわけではないけれど、やはり、照れくさいところがあり、なんだか居づらくて、私は同意したライとともに立ち去ろうとする。
「あっ……ちょっと待ってください」
彼はすぐに足を止めて私に呼びかけた。私は彼より先に行こうとしていたので、振り返る。
「どうした」
「一つ、大事なことを言い忘れていました」
「何をだ?」
ライの思惑が読み取れなくて、続きを促す。すると、彼の告げた言葉は私の想像を遥かに上回るものだった。
「千葉凪沙さん、貴女が好きです」
突然の告白に心音が高まる。心の準備ができていなかったので、完全に不意打ちをくらった。驚きを隠せずにライを見ると、彼はにっこりと微笑む。
その笑顔を見ていると、次第に驚きは薄れて、それ以外の感情が生まれる。
ずっと、その言葉が聞きたかった。
彼の気持ちが知りたくて、でも、確かめる勇気がなくて。私は、自分の想いを募らせるだけだった。
けど、彼は好きだと言ってくれた。私に好意を抱いていることを伝えてくれた。
だから、私も彼の言葉に応えなければ。彼にも、私の気持ちを知ってもらわなければならない。ずっと、伝えたかった言葉があるんだ。
「私も、お前が大好きだよ。ライ」
263 :
如月:2010/03/28(日) 22:11:29 ID:yJEGVPXZ
短いでした。以上です。
二作目ですが、SSを創るのは難しいです。
もっと上手に文章が書けるようになりたいです。
気づいた点などがあったら、指摘してください。感想もくれると嬉しいです。
264 :
創る名無しに見る名無し:2010/03/29(月) 23:53:26 ID:vQXVZgyK
乙!
これはいいもんですな
千葉ものとか久しぶりに見た
GJ&O2です
投下します
前回の続きで、いつも通り前回ラストから場面ががらりと変わってます
信頼の理由
カツッ、カツッ、と薄暗い独房に足音が響きそれと同時に聞きなれた声が徐々に近づいてくる。
「離しやがれっ!お前たちなんか今にゼロたちが蹴散らして、うわぁ!やめっ!ごめんなさい!」
いつも通り形だけの取調べを終えた玉城がやはりいつも通り無駄口を叩いて私刑に会っている。
「懲りないね君も」
看守たちが帰ったのを確認して隣の房に戻された玉城に話しかける。
「あったりめぇーよっ!あいつらが助けに来たときにこの玉城様がしょげてたら様にならないだろ!」
ゲラゲラと虜囚とは思えない陽気な笑い声をあげるがそれを向かいの房の千葉が遮る。
「裏切り者が助けになど来るわけがないだろう」
決して大きくない吐き出すような呟きだったが、その一言に独房の中が静まり返る。
ゼロの裏切り、それはこの一年俺たちが飽きることなく繰り返し未だ結論の出ない議論だった。
「裏切ってなんかねーよ!」
いち早く静寂を破ったのはゼロ擁護派の急先鋒玉城。感情的で裏切ってないの一点張りだが、その勢いが劣勢のゼロ擁護派を一年間ひっぱて来た。
「でも最終決戦で姿を消すなんて裏切り以外の何物でもないでしょ?」
正直あまり興味はないが彼に話を振った責任として相手する。しかしこれで議論に火がついてしまった。
「何か理由があったんだよ、きっと」
「しかしあの状況で姿を消す理由などあるまい」
「それにゼロはお前を切り捨てようとしたんだぞ!」
「それは、勝つために必要だったからだろ?彼が俺たちを裏切るなんて…」
「でも俺たちを駒扱いする様なやつだぞ」
大多数を占める反ゼロ派の追求に扇が狼狽しながらも答えていくが、彼自身もゼロを信じ切れていないのか言葉は尻すぼみになっている。
しばらくたつと議論ですらなくなり反ゼロ派、ゼロ擁護派の両者の好き勝手な言い合いになる。
「だからきっと理由があったんだって」
非生産的な議論に嫌気が差したのか、たんに虫の居所が悪かったのか、何度目になるか分からない扇のその言葉に千葉が噛み付く。
「どんな理由があれば少尉を前線から外すんだ!」
ゼロへの怒り、ブリタニアへの怒り、虜囚の身に落ちた自分への怒り、この一年で積もりに積もった怒りを一気に燃やすように千葉が言葉を続ける。
「あのとき少尉がいれば防衛線を突破できたはずだ!それをゼロが!」
それは不毛な議論を繰り返しながらも俺たちが意識して避けていた話題だった。
「しかしたった一人増えただけで戦況が変わるとは思えませんが?」
捕らえられた幹部の中で少尉との付き合いがほとんどない零番隊の木下が疑問の声を上げる。
たしかに普通ならそうだ、実際に藤堂さんだって一人だけでは戦況は覆せないだろう。だけど少尉ならと思ってしまう。そしてそれは俺だけではなかった。
「いや、少尉ならあるいは」
一番年配で戦いに対してシビアな思考を持つ仙波が。
「ライがいれば負ける訳ねぇだろ!」
頑なにゼロを擁護し続けていた玉城が。
「確かに彼がいれば」
今まで狼狽するだけだった扇が。
「そうだ!アイツがいれば何だってできた!」
杉山が。
「ライが前線に出てれば俺たちは勝てたはずだ!」
南が。
今までゼロの裏切りをめぐって言い争っていた皆が口をそろえて言う「彼がいたなら」。
「そこまでだ」
興奮のピークを迎え夢想の勝利に酔う皆の心をその一言が現実に呼び戻す。
「事実少尉は前線に出ず、ゼロは姿を消し我々は負けたのだ」
独房の一番奥に幽閉された藤堂さんが淡々と事実を並べ、そのたびに皆の興奮が冷めていく。
「そしてゼロは死に、少尉は雌伏」
そう現実は俺たちに絶望的な状況だ。
「囚われの我々はただ処刑の日を黙って待つのみだ」
それでもと思ってしまう。
「しかし」
そしてきっとそれは藤堂さんも。
「助けられる事があるのなら、もう一度戦おう」
最後の言葉にこめられた静かな闘志が伝わったのか、沈黙の中には絶望的なものはない。
あの藤堂さんにすら希望を与えてしまう少尉。そんな君だから。
「期待しているよ」
俺の呟きは誰にも聞かれること無く独房の薄暗闇にとけていった。
並みの弾丸は弾き返す強固な装甲に覆われた車に乗り、何機ものKMFに護衛され、周りの視線を集める。
「まるでVIP待遇だね」
冗談めかして笑いながら言うと、隣の千葉が呆れたように呟く。
「気楽だな。これから処刑されるというのに」
そう、この装甲車もKMFも俺たちを護るためではなく逃がさないためのもの。第一俺たちは装甲車の中ではなく上に貼り付けにされている。
「それはゼロが現れなかったらだろ?」
ギルフォードの策略。ゼロを名乗る男が中華連邦領事館に立て込み手が出せなくなったブリタニアは俺たちの処刑を交換条件にゼロの出頭を求めた。
今のところゼロは現れず、このままならあと数分で処刑だ。
「現れるわけが無いだろう」
以前と同じように言葉を吐き出す千葉。
「まあ、ゼロはこないかもね」
それは同意だ。今度のゼロが一年前の彼だろうと違かろうとゼロにはさして期待していない。
「それにしては随分と余裕だな」
話が聞こえていたのか千葉のさらに向こう側の仙波も加わる。
「この状況で少尉が動かないわけが無い」
俺の言葉に二人は頷く。
「しかし、動かないほうが良いかも知れんな」
周りを見渡しながら仙波が唸る。見えるだけでサザーランド十機、グロースター五機、戦闘ヘリも三機ほど飛んでいる。
戦力差だけでなく人質の俺たちに周りの民衆。流れ弾の危険性を考えると武器も制限される。
「少尉にどうにも出来ないなら諦めるしかないよ」
さすがにこの言葉には二人も苦笑いも出来ないようだった。
「時間だ。ゼロは現れなかった、よってこれより囚人たちの処刑を執り行う!」
ギルフォードの掛け声と共にサザーランドが銃口を向ける。さすがにもうだめかな?
「違うな、間違っているぞギルフォード!」
辺りに響く合成音声。忘れもしないゼロだ。
ギルフォードの機体が振り返ると民衆が左右に別れて行き、角飾りをつけたゼロ専用無頼がゆっくりとこちらに進んでくる。
「彼らは合衆国日本の軍隊、黒の騎士団の団員だ」
無頼のコックピットから身を乗り出したゼロがギルフォードに語りかける。
「捕虜として扱えと?残念だが我々は君たちを独立国として認めていない」
バリケードが開きゼロが俺たちのすぐそばまでくる。
「だからといってこのような処刑はあまり騎士として相応しくないのでは」
ギルフォードと対面し、ブリタニア軍の銃口にさらされながらも挑発するようにゼロがいう。
「では貴様が騎士らしく正々堂々と決闘でもしようと言うのか?」
感情に流されること無く、逆に挑発を返されるがゼロが予想外の答えを返す。
「その通り。私の同胞たちを賭けて決闘を申し込もう」
その言葉にどよめきが走る。機体性能も操縦技術もギルフォードが圧倒的に上。
動揺が収まらない内にゼロとギルフォードの二人の間でルールが取り決められていく。
1、一対一で他の者は手出しをしない。
2、武器は互いに一つだけ。
・
・
・
敵の戦力をだいぶ制限できたが、とてもゼロが勝てるとは思えない。
「自殺するきか?」
そんな呟きが聞こえてきたがそうとしか思えない。
少尉はどこだ?ゼロのあまりの無謀に無意識に少尉を探してしまう。
これが策なら彼がどこかに控えてチャンスを窺っているはずだ。
「覚悟ぉぉぉ!」
ついに少尉の姿を見つけられないうちにギルフォードがランスをゼロに向け突き進む。
その時、地鳴りが響いたと思ったら視界が青一色に染まる。
「うぉわああぁぁぁーーー!」
一瞬の浮遊感の直後、急速な落下。例えるなら絶叫マシーンだが、生憎と座席もシートベルトもなく下手すれば死。
不吉な予感が浮かんだものの、着地は予想外に柔らかい物だった。だからといって無事とも言えないが。
衝撃に体を痛めながらも辺りを見ると落下の原因が一目で分かった。
「ブラックリベリオンのときの」
プレート落とし。一年前ブリタニア軍を追い詰めたゼロの策。今回は領事館前のプレートが倒され、俺たちは車両ごと領事館の中にいや、“ブリタニアの外”に落ちてきたのだ。
俺たちの拘束を解くためだろう騎士団員たちが駆け寄ってくる。だが空を見上げる俺の目にはハーケンを使いほぼ垂直のプレートにしがみつくサザーランドの銃口が見えた。
「来るな!」
叫びをかき消すように銃声が響き渡る。今日何度目か分からない命の危機、しかし今度は恐怖など感じない、なぜなら叫びながらも見たからだ彼の蒼い月下を。
少尉は左腕を突き出し輻射波動で銃弾を防ぎながら右腕のハンドガンや胸部のハーケンでこちらを狙う敵機の武装を破壊していく。
拘束を解かれ装甲車の陰に隠れながら戦況の確認する。
ギルフォードはプレートにしがみ付き手出しできない。グラストンナイツは紅月と卜部が抑えている。少尉は俺たちを護るので手一杯。そしてゼロが金色の機体に追われている。
数機の無頼がゼロを助けようとするがそのたびに瞬間移動で避けられる。そんな信じがたい光景に呆気に取られていると変化が起きる。
今まで逃げる一方だったゼロが急に転進して金色の機体に覆いかぶさる。
そしてゼロの機体から片腕が吹き飛ぶ。敵を護った?
「そこまでだ!これ以上の戦闘は中華連邦への軍事介入と見なす!」
いつ終わるとも知れない乱闘はその一言で強制終了を迎える。
助かったと思い気を抜いた瞬間、金色のランスが空を飛んだ。
ランスは真っ直ぐにゼロの元へ進む。少尉が、卜部が、紅月が皆が駆け寄るが間に合わない。そして耳障りな金属音が鳴り響く。
思わず閉じたまぶたを分けるとゼロを貫いたと思ったランスはゼロを襲っていた金色の機体によって受け止められていた。
あの機体は敵か味方か、わずかな謎を残しつつも今度こそ戦闘は終了した。
「悪くないねこれ」
卜部が準備したという新しい制服に袖を通して中庭に戻るとすでに多くの団員が制服に着替えて軽い宴会騒ぎになっている。
しばらく皆の様子を眺めていると笑顔の中に一人だけ表情の浮かない人間を見つけた。
その視線を追うとすぐに理由がわかった。
「告白すれば良いのに」
かなり集中していたらしく、後ろに忍び寄った俺の言葉に千葉がすごい勢いで振り返る。
「なにを告白するのだ」
しれっと返してくるが、その頬は赤い。視線を玉城と卜部にそれぞれ別の制服を突きつけられたいる(何やってんだ?)少尉に戻す。
「いつまでも待ってる年じゃないでしょ?」
「私は十分に若い!」
素早く拳と共に答えてくるが、その反応が自己申告みたいなものだとは気づいていないようだ。
その後も千葉をからかったり、団員たちと再会を祝したりしばし時間をすごすとゼロが姿を現す。
「諸君、この一年間苦労をかけた。だが!私と君たちがそろった今こそ日本解放の戦いが再開するのだ!」
言葉と共にマントをはためかすゼロの勢いに合わせて団員たちから歓声が沸く。
「ちょっと待てお前たち」
その歓声をよく通る千葉の声が遮る。静かになったの確認すると千葉は言葉を続ける。
「今回の救出は感謝する。しかし一年前のことを弁解して欲しい」
その問いに団員たちがざわめき立つ。誰もが聞きたくて、しかし聞くのが怖くて聞けずにいた問い。
「そのことか、謝ろう……あれは私用だ」
そういうとゼロは深々と頭を下げた。
皆はゼロが頭を下げたことや私用と言い切ってしまうことなど、愕然として声も出ないというところか。
「随分とはっきりと言うね」
悪いと思ってないのか。そう言う意味をこめて嫌味っぽく言うがゼロは律儀に答える。
「確かにそう聞こえるだろう、しかし私はもう君たちを裏切らないと誓った。これが私なりの誠意だと思って欲しい」
そう言うとゼロは団員たちの中の特定の一人、なぜか一般団員の制服の上に俺たちと同じ制服を羽織った少尉に視線を向けた。
少尉はそれで納得いったのか笑いながら頷く。しかしそれでは俺たちが納得できない。
「君もアレで良いのかい?」
疑問、不信、困惑様々な視線を浴びる少尉に問いかけると彼はそれがこの場にいる全員の疑問だと察し、皆に向かって答える。
「一年前の失踪、ゼロの正体と戦う理由、その全てを聞きました。その上で僕はゼロを、彼を許しました。それを今皆さんに伝えることは出来ません。
だから今すぐ彼を許せとは言いません。でもいつか仮面が必要なくなったら、その時彼を許すかどうか決めてください。お願いします」
そう言うと少尉も頭を下げる。
先ほどとは違う理由で皆が言葉を無くす中、藤堂さんが口を開く。
「わかった。君が納得しゼロを許すというのならそれを信じよう。それで良いな?」
今度は皆に対する問い。多くは困惑が大きい物のそれで納得したようだ。
俺も自分なりの答えを出す。
憧れて背中を追いかけた人がいた。同等と認めて肩を並べた奴らがいた。ただ一人、負けたくないと思った相手だから。
「それじゃあ、俺も少尉を信じるよ。でも、ゼロを許すかどうかはわからないよ?」
気恥ずかしさから冗談めかして言うが、少尉には見透かされているのか満面の笑みを返される。
「朝比奈さん、ありがとうございます!」
以上です
前回までからペースが落ちてますが、最後までがんばりたいと思います
おお、知らんうちに二本投下されてたのか。
乙でした。
続々と乙です
千葉さんかわいいなぁ
だめだ無償にロロナナエロが読みたい
あんまりないな、ナナ関連だと
ルルナナアリナナとかはあっても
やっぱり本編で絡みさえなかったからなのか・・・
キセキ誕のピクドラはあったみたいだが
誤爆でしたスマソ
276 :
代理投下:2010/04/06(火) 00:54:25 ID:bCZY8Ka+
代理投下です。以下本文
・・・・・
ロスカラ2周年記念にと思って1年半ぶり書き始めたんですが年度末のいう言葉の前に敗れ去りました。
その点は笑って許していただければ幸いです。
ライのR2参入SSは皆さんが書いているので違うバージョンをと思って書き始めた単発物です。
いまさら感がひどいでしょうが、よろしければ読んでやってください。
タイトル:「Re;Birth/Re;Start」
注意点
・設定的にはギアス編エンド→R2終了後(R2ピクドラ9)
・登場人物はライとC.C.のみ
・中盤カレンとナナリーを批判してますが作者はアンチではありません
(ライC、ライノネ派ですがライカレ、ライナナも大好きです)
・終盤出てくる道具はご都合主義ってことでご容赦ください
277 :
代理投下:2010/04/06(火) 00:55:59 ID:bCZY8Ka+
麗らかな日差しに照らされたカフェのオープンテラスにその2人はいた。
その、ともに整った顔立ちの少年と少女はテーブルを挟み向かい合せに席につきながらもデートと呼ぶには趣の異
なった空気の中にいた。
少年はテラスとは道をはさんだビルの壁面に設置されたパブリックヴューに視線を固定しており少女はテーブルの
上へと、その視線を定めていた。
「・・・なんで、扇さんが首相なんだ?」
眼差しはそのままに、少年はポツリといった感じで呟いた。
その誰に向かっての問いとも言えぬ呟きに少女は問い返す。
「・・・なんだ、扇が首相では不満なのか?」
少年はその問い返しには答えず、モニターに映し出されているニュース映像を見続けている。
「この日本を解放した黒の騎士団の古参幹部で、事務方のトップだ。その功績をもって新政府の代表として選ばれた
としても不思議はあるまい?」
「そういう問題じゃない」
そこで初めて少年はくせのある銀髪を揺らし少女へとその顔を向けた。
少女もそれに応えるように手にしたピザのピースを皿へと戻し、金色の瞳を彼へと向けた。
「ではなにが不満だと言うのだ、ライ」
「・・・資質と矜持の問題だ」
答えた少年・・・ライの声音にはどこかいらだったような響きがあった。
「わずかとは言え、彼とは共に仕事をした。堅実な仕事振りで有能だとは思うがあくまで黒の騎士団での話だ。国家
元首は仲良し倶楽部のリーダーや寄合所帯の調整役とは違う」
「ほお?」
「それに自分達の組織を優秀な人物とは云え他者に譲り渡して、その決断に従っていたんだ。自らが国を率いるとい
う気概も気骨もあるとは思えない」
その答えに、少女はその緑の髪を失笑にゆらした。
「ふふ。ライ、お前も騎士団の一員だったんだぞ? 昔の仲間とは云えずいぶんな言い草じゃないか?」
「確かに騎士団も僕にとっては大切な場所だった。だがそれと人物に対する評価は別だ。それに僕は別に日本解放を
願って騎士団にいたわけじゃない。確かに母の故国として日本に親しみは感じるが愛着はない。強いて言えばブリタ
ニアの支配の仕方が間違ってると思ったからだ。・・・そして、なにより『力』のこと知りたければと君が誘ったん
だぞ、C.C.」
「そうだったな。・・・だが扇とて望んで今の立場にいるわけではない。奴としては新妻や我が子と一緒にのんびり
と生活したかっただろうな」
「なら何故、扇さんは首相などになった?」
少女の艶やかな唇が皮肉気に弧を描く。
「わからんか? それこそ“そういう問題”なのだ」
ライは眉をひそめ、その青い瞳で魔女を自称する少女を見返した。
278 :
代理投下:2010/04/06(火) 00:57:51 ID:bCZY8Ka+
「つまり誰でもよかったのだ。『ゼロに付き従い日本を、そして世界を解放した黒の騎士団の幹部である日本人』
ならば、な」
「・・・・・・」
「英雄は神のごとく手の届かぬ立場へと去った。ならば平和の次を求める人々にやがて生まれてくる不満をどんな
立場の人物なら抑制できる? そういう意味では扇はいまになって責任をとっているとも言えるな」
「・・・・・・では誰が主導者なんだ?」
「神楽耶、ということになるだろう。いまの政府閣僚や主要な官僚は皇コンツェルンの推薦した人物や元スタッフ
が務めている。もっとも次世代の人材が芽を出すまでということらしいがな」
肩をすくめ、首を振りながら溜息をつくライに、C.C.はからかうかのような言葉をかける。
「どうした? まるで年寄りが新たな時代に嘆いているみたいだぞ」
「・・・いや。眠っていたのはわずかだと思っていたが、それでもあの女の子が『大人』に成り始めるくらいには
時は過ぎているんだなと思っただけだ」
「・・・そうだな。世界は常に時を刻み、人々は日々前を目指し進んでいる・・・。そして『王』達が理想や野望
を追い、国や世界率いる時代は終わりを告げた・・・」
C.C.は視線をライからもはずし青く澄んだ空を見上げた。
「それで改めて聞くが、僕をわずか2年余で目覚めさせた理由はなんだ?」
ライは先程よりは落ち着きを取り戻したと感じられる響きで魔女に問いかけながら彼女の皿からピザを一ピース、
手に取り口へと運んだ。
「・・・お前、ピザは嫌いだったんじゃなかったか?」
「あまり好きじゃないと言った覚えはあるが、嫌いだといった記憶はない。それに目覚めてからすぐに連れ出され
て僕はお腹が減っている」
しかしピザに執着する魔女はその行為を目にしながらも咎め立てはしなかった。
「?? 食べてもいいのか?」
「それは“お前に取っておいてやった分”と認めよう。私のことは気にせずピザの素晴らしさを堪能しろ」
「???」
ライは魔女の言に腑に落ちぬものを感じながらも空腹をわずかながらも癒す。
「それで起こした理由はなんだ? まさか世間話や思い出話をするためじゃないだろう?」
「まったく、せっかちな男だな。はやいオトコはキラ・・・おい、それは私のピザだぞ!」
ライはさらに一ピースのピザを取り上げ、口へと運んだ。
「下世話なごまかしに付き合うくらいなら空腹を満たす方がましだ」
「・・・ほう、仮にも王の力を持つ者があさましい真似をしてくれたものだな」
「なら、早く理由を話せ。・・・・・・待て、僕の紅茶に何をする!?」
C.C.は仕返しとばかりにライの紅茶へと手元にあったシロップを2つ3つと次々に注ぎこむ。
「これは罰だ。それを飲み干さぬ限り答えてやらんからな!」
「・・・・・・この魔女め!」
「ふふん、そうとも。私はC.C.なのだからな」
挑発的に嘲笑う緑の魔女。
その笑みを苦々しく見つめながらも、ライはその喉にからむ様な甘さになった紅茶を飲み干した。
そんなライの表情のわずかな変化を満足そうに見届けた魔女は立ち上がり、王へとその右手を差し出した。
「歩きながら話そう。・・・お前の知らない物語を・・・」
C.C.がやさしく微笑んでいた。
279 :
代理投下:2010/04/06(火) 00:59:40 ID:bCZY8Ka+
「そうか・・・そんなことがあったのか・・・」
ライは魔女に合わせていた歩調を止め、人気のない歩道で瞑目した。
魔女もそのわずか先でその足を止めると銀髪の少年へと振り返る。
「真実を知るものはわずかだ。決して他人には話すなよ」
「それぐらいはわきまえてる。・・・なあ、C.C.」
「なんだ?」
「誰も『彼のこと』を理解していなかったのか?・・・カレンやナナリーも?」
再び歩みはじめた少女を追い、少年もその歩を進める。
「そうだな・・・カレンもナナリーも、あいつの想いを知るにはあまりに幼く、そして一途すぎた」
追う形のライからはC.C.の表情はその豊かな髪によって完璧に隠されていた。
「誰かの庇護や犠牲のもとに育った者が、血族とはいえ他者の夢や理想を、自らの夢として追う。それは別にいい
・・・だが、そこに如何ほどの覚悟があったのだろうか?」
「・・・覚悟?」
「彼女らにとって『現実』は薄皮一枚向う側の事実だったのではないかと私は疑っているんだ・・・。確かに彼女
達が傷つくことも、差別も、ハンデもあっただろうし、死を間近に感じることもあっただろう。だがそれさえも誰か
に護られる庇護のもとで感じたことでしかない」
「・・・・・・」
「そんな彼女らは果たしてどこまでの覚悟があって、何かに抗い続けてきた『他者の夢』に殉じようとしたのか?
自分の中の正義や正しいと思っていることが他人にとって、心を折られ、命を奪われることともなる『悪を為す』
事となり得るかも知れないことを本当にわかっていたのか?
弾けろと罵り、生命を奪った相手が同じ血が通った『人間』だとわかっているのか?
自分の言葉が、願いが、決断が、他人の人生を狂わせる可能性に思いを巡らすことがあったのか?
・・・ふと立ち止まって自分の想いを見つめ直し、『それでも』と覚悟を決めたことがあったか?
その自覚がないままに罪を犯すのであれば、それは幼いがゆえの『証』だ」
揺れる豊かな緑の髪を追うライの脳裏を過ぎ去っていく、いくつもの顔と表情があった。
「『撃っていいのは撃たれる覚悟のある者だけだ』か・・・」
「・・・ああ。その覚悟が足りないものが、どうしてその覚悟を決めた者を理解できる?
どうやって、その罪を犯すことを止めたり、代わりに罪を贖おうなどと言える? それは所詮、無知ゆえの傲慢だ 」
C.C.の声がなにかを堪えるように震えてるような気がするのは多分ライの気のせいだろう。
「確かにあいつは二人になにも語らなかっただろう・・・。だがそれさえも自分の幼さを盾にした言い訳だ。きっと
全てを理解できた時は、全てが終わった時だっただろうな・・・」
「・・・彼のやることだ・・・。途中で悟られるようなヘマしないだろう」
「もちろんだ。ああ、そうだ。別にあの二人を責めているわけじゃないぞ?。そもそも私にはそうする資格も権利も
ないからな」
「大丈夫だ。それぐらいはわかっているよ」
街路樹がつくる緑の天蓋から木漏れてくる光が言葉をとめ、歩み続ける2人を音もなく照らす。
ふと、揺れる髪にわずかな動きが一拍加わり、それを追うかのように少女は呟くかのように少年に問うた。
「なあライ。・・・わたしはひどい事を言ってるか?」
「・・・・・・いや。・・・それに魔女がそんなことを気に病むのは魔女らしくないよ・・・」
相変わらず人気のない歩道を2人は歩んでいく。
280 :
代理投下:2010/04/06(火) 01:01:57 ID:bCZY8Ka+
「なあ、C.C.」
「今度はなんだ?」
「・・・なぜ僕をその時に目覚めさせなかった?・・・自分で言うのはなんだが僕は使い勝手のいい駒のはずだ」
「ふん・・・。私がお前を起こしたことが不満だったんじゃなかったのか?」
緑の魔女の黄金の瞳が、銀の王の蒼穹の瞳と交差する。
「・・・まあ、いい。そうだな、理由は2つあった」
「どんな理由か聞いてもいいか?」
一度あわせられた瞳はしかし背を向けゆっくりとふたたび歩み始めた魔女の髪に遮られた。
王も魔女にあわせるかのようにその揺れる髪を追う。
「ひとつは余計なリスクを背負いたくはなかったからだ」
「リスク?」
「ああ。あいつが捕らえられた後、皇帝は生徒会のメンバーにもギアスをかけ彼らの記憶を書き換えた」
「!!?」
「どこぞの誰かも似たようなことをしたわけだが、私だけは憶えていた・・・お前がいかに彼らを大切に想って
いたか、を。そんなお前がその事実を知ったとき、どんな行動に出るのか。それを想像することは難しくはない」
「・・・なるほど確かに十全な戦力とはなり得ないな」
「そうだろう?」
わずかに振り向いて見えた魔女の瞳が、それ見ろと言わんばかりに細められる。
「もう一つはそうだな・・・。私が願ったからだ・・・」
「・・・願った?」
「お前が再びの眠りについた時、私は願った。『次に目覚める時もこの世界がお前にとってやさしい世界である
ように』とな・・・」
魔女は今度はその表情を伺わせようとはせず、ライには揺れる豊かな髪が映るのみだ。
「とてもじゃないがあの時は、やさしいとは言えない世界だった。確かにお前がいれば避けれた悲劇もあったか
も知れない。だがまた別の悲劇が生まれお前やあいつを襲ったかもしれない。・・・やはり魔女は己が欲望に忠実
でなくてはな」
「・・・C.C. 君はやさしいな」
「前にも言わなかったか? 自分がやさしかったかなど忘れてしまったよ・・・」
二人はしばし無言のまま、魔女の歩むままにその歩を進め続けた。
281 :
代理投下:2010/04/06(火) 01:04:26 ID:bCZY8Ka+
「さて、起こした理由だったな」
「・・・ああ」
「それも2つある。一つはこの世界が『ギアス』のいう力の存在を識ったからだ」
今度は少女から足を止め、振り向いた金の瞳が鋭く青の瞳を射抜く。
「先程の真実と同様に知る者はわずかだ。しかし知られてしまった事実は密やかにわずかづつ、だが確実にこの
世界に知れ渡っていく。・・・その存在が消え、いずれ忘れ去られない限りはな」
ライの硬質な表情にも、厳しげな気配を漂わせる。
「皇帝が事を起こした際に各地の遺跡でも異変は観測されていた。世界が平和となった今、いずれ調査を行う者
も現れるだろう。そして、バトレーのようにお前を見つけ出す者もいるかも知れない。それは双方にとって決して
幸福な出会いになるとは限らんからな」
「世界の影の中に潜み続けてきたギアスも、高度にに発展してきた情報社会にその隠匿性が保てなくなったか」
「そういうことになるな・・・」
「・・・もう一つの理由は?」
そこで魔女はその足を止め振り返ると、どこか切なげで、でも優しく微笑んだ。
「ライ。いまが『やさしい世界』だから、だ」
「・・・やさしい世界?」
「そうだ。争いよりも話し合いを、虐げるよりも助け合いを。人々がそんな選択を大切にする世界だ」
やさしい魔女は微笑むままに、再び王へとその右手を差し伸べる。
「他者からの支配や抑圧に抵抗し解放を望む心が生み出す『ギアス』の力。・・・そんなモノを必要としない、
綺麗だがいつ壊れるとも知れぬ硝子細工のような世界だ。あいつらがその生命と存在をかけて創り出した世界。
・・・ライ、お前はそんな世界で生きてみたくはないか?」
ライは、その右手に困惑しながらも重く小さく問い返した。
「・・・もし、いまがギアスを必要としない世界ならば、そこに僕はいるべきではないんじゃないか?」
C.C.はそんな、王として騎士として幾多の戦場をくぐり抜けてきた少年に似つかわしくもない怯えに、その笑みに
慈愛の色をくわえて再び問い返す。
「ライ。いまのお前にとって、この世界は何色だ? かつてのように灰色の世界か? それとも色づいた世界か?」
「・・・・・」
「ふふ、相変わらず世話の焼ける困ったやつだな」
少女は左手で、少年の右手を握ると差し出していた右手で蒼い空を指差した。
「私がいいことを教えてやろう。・・・ライ、あれを見ろ」
その細い指先が指し示す空を見上げるのを待っていたかのように、空に光の花が咲いた。
その光の花は、黄色や緑、赤、青、紫と次々とその色が変えながらもライの視界いっぱいに咲き誇っていく。
「・・・花火? こんな昼日中にいったい誰が?」
「この道の先には再建されたアッシュフォード学園があり、あの花火の下にはお前にとって大切な人達がいる」
「!!」
「おっと、逃げようとするな」
踵を返そうとするライをC.C.は優しく、しかし抗いがたい何かをもってつなぎ留めた。
「わかっているのか、C.C.!! 僕のギアスはいまだ暴走したままなんだぞ!?」
「ああ、もちろんすべてわかっている」
穏やかな声がライをなだめ、今度は右手がライの頬をやさしく撫でる。
「わかった上でお前に問おう。 お前はあそこで皆と一緒にくらしたくはないのか?」
「・・・やっぱり君は魔女だよ。すべてわかってるくせに僕にそれを問うのか?」
そうだと頷く彼女を前に、ライは絞り出すかのように答える。
「・・・・・・みんなと一緒にいたい・・・」
それは空に咲く花火の音に消えそうなくらい小さな、でも大きな願いの声だった。
282 :
代理投下:2010/04/06(火) 01:06:16 ID:bCZY8Ka+
C.C.はライと手をつないだまま空を見上げ語りかけた。
「ライ、あの花火はあいつが遺した『約束』だ」
「・・・」
「いつか、また学園でみんなで花火をあげようと約束してたらしい。結局、果たせなかったがな」
「・・・」
「その『みんな』の中にお前は入ってはいない。私はあいつの中に眠るお前の記憶までは戻さなかったからな。
だがなライ、私だけはわかっているんだ。
お前が皆を信じていたように、あいつがどれだけお前のことを信じていたのかを。
だからお前と目覚めさせ、ここに連れてきた。
お前にあの花火を、いまの世界を見せてやりたかった」
「・・・C.C.」
「あそこにはもうあの二人もシャーリーという娘もすでにいない。
それでもカレンやナナリー、生徒会の皆がいる。 お前が『未練』と呼んだものがまだ、ある。
まだ取り戻すことができる。まだ間に合うんだぞ」
「C.C.・・・それでも僕は・・・!!」
C.C.は自分とは対照的に足元を見詰めるライへとその視線をおとした。
「ずいぶんと人間らしくなったじゃないか。 お前の記憶探しに付き合ってやった甲斐があったというものだ」
ライは力のない苦笑をわずかに浮かべた。
「そんな“人”として生まれ変わったばかりのお前に魔女から誕生祝いだ。受け取れ」
そう言って魔女は、かつて王だった少年に小さな包みを手渡す。
「・・・これは?」
「お前のIDカードとチョーカーが入っている。 もちろんIDは偽造したホンモノだ。 だがチョーカーの方
は“スペシャル”だ」
「スペシャル??」
「お前の暴走したギアスを抑えてくれる」
あまりのことに言葉を失ったかのようなライにC.C.は語る。
「ライ、もう一度言うがいまは『やさしい世界』だ。
世界がやさしくないことが当然だった私たちには失笑ってしまうような馬鹿げた世界だ。
だが、そんな世界をあいつらは“創った”。 お前がギアス使おうと思うような出来事はまず、ない。
お前が進んでギアスを使わない限りは、お前が学園を卒業するくらいの時間はそんなモノで稼ぐことはできる」
「・・・・・・」
「行け、ライ。 一度は自分の足であきらめたものを、もう一度自分の足で取り戻してこい」
「・・・・・・C.C.」
「恒久的な平和など幻想にすぎん。 なににだってリミットはある。 女神の前髪を掴み損ねるなよ?」
包みを握りしめ立ち尽くすライに、しょうがないやつだと嘆息し、包み込むようにやさしく抱きしめ囁く。
「『赤児』にとって自分の見える所、手に届く所が世界の全てだ。
そして徐々に自分の世界を広げ、世界を知り学んでいくんだ。
私もそんな生まれたばかりの赤児に詫びを強要するほどは非情ではない。
だからそれまではかつての非礼に対する侘びは待ってやるからこの世界を広く知ってこい」
「・・・ありがとう、C.C.」
ライは初めて、C.C.を抱きしめ返した。
そんなライの言葉に魔女はうそぶいてみせる。
「魔女の贈り物がタダだとは思うなよ? いずれ泣いて詫びさせた上でこき使ってやるからな」
「・・・借りておくよ」
まだ街路の先の空に、光の花が次々と咲き乱れていた。
283 :
代理投下:2010/04/06(火) 01:09:27 ID:bCZY8Ka+
「・・・もうじき花火も終わるだろう。もう行け、ライ」
人の理からはずれたままの少女が、人の理に戻ろうとする少年の胸を軽く押した。
「C.C.、君はどうするんだ?」
魔女から身を離したかつての王は問う。
「私はいまだ旅の途中だ。・・・心配するな、そのうち迎えに来てやる」
「そうか。・・・じゃあ、その時まで」
「ああ。また、な」
ライはかすかな微笑みを残すと背をむけて学園へと歩み始めた。
その背中にいま一度、C.C.は彼の名を呼んだ。
「ライ!!」
振り返ったライの眼に、会心の笑みを浮かべたC.C.が映る。
「ライ、いつか『笑って逝ける』ように、な!」
腕が上げ、それに応えると今度こそ振り返りもせず、一度はあきらめた未来がまだある場所へとライは進む。
その姿を見送りながら魔女と自らを称する少女は願うのだった。
―――彼の新しい人生が『やさしく』あることを。
・
・
・
・
・
・
『僕はライといいます。僕をこの学園にいれてくれますか?』
END & Re;Start
284 :
代理投下:2010/04/06(火) 01:16:26 ID:bCZY8Ka+
おまけ
ライがクラブハウスに間借りすることになった部屋に、チーズの匂いが満ちていた。
ラ「・・・・・・」
C「おかえり」
ラ「・・・まさかと思うが、もう迎えに来たのか?」
C「いや?」
ラ「じゃあ、なんでここにいる!?」
C「なんだ、知らんのか? 宅配ピザは宅配先がないと不便なんだぞ?」
ラ「・・・僕を学園に戻らせたのは、このためか?」
C「違うぞ。お前、あの時の私の話を聞いてなかったのか?」
ラ「・・・・・・」
C「やらんぞ」
ラ「いらない。それに僕はピザはあまり好きじゃない!」
C「あいかわらずつまらん奴だな」
ラ「・・・咲世子さんが言ってた、様子に見に来た『姉』とは君のことか?」
C「うるさいやつだな、ピザが冷める」
ラ「頼むから答えてくれ」
C「お前の学費や生活費は、私の『ピザ口座』から出してやってるんだ。そのくらい名乗ってもよかろう」
ラ「ピ、ピザ口座??」
C「ブリタニアの国家予算のごく一部から244のマネーロンダリングを経て振り込まれる仕組になっている」
ラ「・・・・・・(なにをやってたんだ彼は!)」
C[さて、ピザも食べ終わったので私は旅に戻る。ああ、箱は片付けおいてくれ」
ラ「・・・・・・」
C「また来てやる。じゃあな、坊や」
ラ(卒業するまでほっといてくれ〜〜〜!!)
ちゃんちゃん(ごめんなさい)
・・・・・
代理以上です。
乙です。
本編もいいですが、おまけでそれまでの雰囲気をぶっ壊す感じが面白かったです
やっぱり主眼はキャラ批判という印象だなあ
書き手の代弁者としての側面が強く出すぎてライ偉そうだ
それ以外の部分は辻褄あわせというか身が入ってる感じがしない
シロップ大量に突っ込むとかピザ口座とかはしばしのネタは面白いし
もう少し淡々と批判し続ける部分抑えてほかのとこにも力を入れてたら
普通に読みやすくていい話になりそうだと思った
やっと解除された……
ルルーシュの物語が終わってから帰ってくるライというのも何だか象徴的で、
C.C.の無力感や、世界に置いていかれることになったライの感情と
私は面白く読めました。
代理投下の方ともどもお疲れ様でした。
16:名無しさん
10/04/08(木) 00:28:11
なんつーか・・・SSの中にキャラの批評はいらん
貶したいがためにライを使ってるように見えてしまう
17:名無しさん
10/04/08(木) 03:17:44
同意
ああいうのはライに自分の意見を言わせたいだけなんだろうなというのが透けて見えて気持ち悪い
扇カレンの騎士団勢やナナリー貶してルルーシュを持ち上げるよくあるパターンだから余計にな
別に意見はそれぞれだしあの辺のキャラを不愉快に思う気持ちはまあわからんでもないが、
そんな薄汚い活動にライやロスカラを巻き込まんで欲しい
289 :
代理投下:2010/04/10(土) 22:18:27 ID:P04Ciz8j
「Re;Birth/Re;Start」の差し替えが代理投下の方にあったので投下します
>>279の部分の差し替えです
290 :
代理投下:2010/04/10(土) 22:19:16 ID:P04Ciz8j
「そうか・・・そんなことがあったのか・・・」
ライは魔女に合わせていた歩調を止め、人気のない歩道で瞑目した。
魔女もそのわずか先でその足を止めると銀髪の少年へと振り返る。
「真実を知るものはわずかだ。決して他人には話すなよ」
「それぐらいはわきまえてる。・・・なあ、C.C.」
「なんだ?」
「誰も『彼のこと』を理解していなかったのか?・・・カレンやナナリーも?」
再び歩みはじめた少女を追い、少年もその歩を進める。
「そうだな・・・カレンもナナリーも、あいつの想いを知るにはあまりに幼く、そして一途すぎた」
追う形のライからはC.C.の表情はその豊かな髪によって完璧に隠されていた。
「それにな、やつらの犯してきた罪、犯そうとしている罪の大きさの前に怖れを抱いたしまったのかも知れない。
理解するよりも、2人を止めることを彼女たちは選択した・・・。やつらの『覚悟』も知らぬままに」
「・・・覚悟?」
「ああ。例え人の心を砕き、その生命を奪うことになろうとも。未来永劫に人々からその名が罵られることになって
でも、と。やつらは『それでも』と覚悟を決めて事を起こした」
「・・・立ち止まって、振り返り、考えることはしなかったのか?」
揺れる豊かな緑の髪を追うライの脳裏を在りし日の自分と過ぎ去っていく、いくつもの顔と表情があった。
「やつらは走り出す前に時間をかけた。走り出してからも幾度かは振り返っていたよ」
「・・・・・『それでも』か・・・」
「ああ。私は途中で投げ出してもいいと思ったんだがやつらは走り続けた。そんなやつらを前に彼女らの覚悟は残念
ながら届かなかった。・・・惜しいところまでいったらしいんだがな。
そこまでだったんだよ、ライ。
そこでカレンもナナリーも絶望してしまった。理解することも、止めることもあきらめてしまったんだ。
・・・きっと全てを理解できた時は、全てが終わった時だっただろうな・・・」
「・・・彼のやることだ・・・。途中で悟られるようなヘマしないだろう」
「もちろんだ。ああ、そうだ。別にあの二人を責めているわけじゃないぞ?。そもそも私も止められなかった一人だ。
そんな私にはそうする謂れも資格も権利もないからな」
「大丈夫だ。それぐらいはわかっているよ」
街路樹がつくる緑の天蓋から木漏れてくる光が言葉をとめ、歩み続ける2人を音もなく照らす。
ふと、揺れる髪にわずかな動きが一拍加わり、それを追うかのように少女は呟くかのように少年に問うた。
「なあライ。・・・わたしはひどい事を言ってるか?」
「・・・・・・いや。・・・それに魔女がそんなことを気に病むのは魔女らしくないよ・・・」
相変わらず人気のない歩道を2人は歩んでいく。
291 :
代理投下:2010/04/10(土) 22:24:07 ID:P04Ciz8j
すいません前書き部分入れるの忘れてました↓前書きです
どうも
>>276からのSS書いた本人です。
ご批判も含めて感想をいただき、ありがとうございます。
まあ、久しぶりにSS書いたんで、自分でもやりすぎかなとは思ってたので甘受させていただきます。
人気あるキャラだけに扱い方が難しいんですかね?
書いたほうとしては力入れたつもりなのはソコじゃないんですが。
まあ、不評を買って気持ち悪いとか言われ、読む人を不快にしたくて書いてるわけでもないし
ましてやキャラ厨と一緒になれるのは心底イヤだし、こだわりのある部分でもないんで差し替えてお読みください。
そして↓後書きです
またSS書きあがりましたら投下させていただきますので
その時はまた感想などよろしくお願いします。
以上、前書きが抜けたのは完全にこちらのミスです本当にすいません
批評家気取りは往々にして空気読めないもんだし楽しめたって人もいるんだからそうムキにならんで
投下済みの話こねくり回すより反省点を活かして新しい話書いてくれた方が嬉しい
とりあえず乙代理も乙
そうやってわざわざ感想付けてくれた人に対して空気読めないだとか無関係な人間がいちいち罵倒するから
段々と感想も付かなくなっていくんだろうな。相手の顔色窺った感想しか付けてはいけないなんて何処ぞの国じゃあるまいしw
少しぐらい辛い感想があったって普通だろうし、マンセー意見だけ欲しいなら自分のブログにでも書いていれば良い。
何より今回は作中のライ自身がその「空気読めない批評家気取り」になってしまってるようなSSだから尚更な。
投下してしまった作品を弄り回してマンセーしてもらおうと努力するより、失敗を次に生かす方が懸命だとは俺も思うよ。
まあ乙、代理の人も乙でした。
人気のあるキャラは扱いが難しいんですかね?とか
人をキャラ厨扱いしているのはどっちなのかと
それで自分がキャラ厨認定されるのは勘弁とかどんだけ。
少なくともロスカラ公式で「主人公はあなた自身」と定義してあるんで
SS著者がライに自分の主張を語らせるのはありだと思うんだけどね。。。
作中ライの性格が自分の理想像と違うという理由で
SSを批判する人間がいるから段々とSS投下も減っていくんだろうな。
作者の罠かも。
あ、誤爆。すまん。
>>295 だからって何やらせてもいいってことか?
その理屈だと極端なことを言えば作者が最近多い騎士団アンチだったら
自分の分身であるライに扇やカレンを虐殺させてもそれは作者の主張だからアリってことになるよな?
「あなた自身」の主人公であるライがやりたいことなんだから
表現の自由ってものがあるから別に悪いとは言わないが、批判されても仕方のないSSというものも
確かに存在すると思うぞ、そこに読者というものが存在する限りな
主張を代弁させること自体には問題ないでしょ。
話の出来の良し悪しや評価は別ってだけの話で。
なにこの流れすごく面倒くさい
釣られ過ぎだな、作品に。
さすがに作品を釣り扱いはないわ。
>>294 カレン厨ナナリー厨騎士団厨ウゼーちょっと批判したくらいでファビョるんじゃねーよ糞キャラ厨
でも私はキャラ厨じゃないよ^^アンチでもないよ^^
っつーのが透けてみえるよな。気持ち悪いSS書く人間は人格もアレなんだな……
と思うのでむしろ釣りだった方がなんぼかマシです
おまえらそれ以上喧嘩続けるなら、
俺が昨日酔っ払いながら書いたSSの冒頭部分、
二行だけを投下してモヤモヤさせんぞ
三行目以下は未完成だ
何を書こうとしてたのかも覚えていない!
たった二行で続きが気になるような面白い文が書けるならな
「あ、あのね……、ラ、ライって、す、好きじゃなかった、そ、そうそう、き、気になる人って……いるの?」
真っ赤になりながら、カレンがそう聞いてきた。
こんな感じでどう?
続き気になる?
即席だけど……
うーん
あんまりもやっとしないよ!
カレンがどう主人公を攻略しようとしているのか気になる
2行ではやはり無理っぽいので、ここまでだったらどうでしょう?
「あ、あのね……、ラ、ライって、す、好きじゃなかった、そ、そうそう、き、気になる人って……いるの?」
真っ赤になりながら、カレンがそう聞いてきた。
「気になる人……?」
真っ赤なカレンとは正反対で、いつもどおりの表情、いや、すこしぽかんとした感じのライが聞き返す。
「そ、そうそう。今、ライがすごく気になる人だ」
かなり力が入っている口ぶり。
いや、実際に力が入っているのだろう。
カレンの握り締めた手がぷるぷると震えている。
「そうだなぁ……」
「うんうん」
「一番気になると言えば……」
「言えば?」
引き寄せられるかのように段々とカレンの顔がライに近づいていく。
「やっぱり……ゼロだよな……」
その言葉の瞬間、まるで風船が弾けたかのようにカレンの身体から力が抜け、肩透かしを喰らったかのようにコケかけてしまう。
だが、そんなカレンをますますきょとんとした顔でライは見ている。
なんでそうなったのかよくわからないって感じだ。
表情は影で見えないものの、「ゼロは仕方ないか」とカレンの呟きが漏れる。
そしてなんとか体制を建て直し、健気にもカレンは言葉を続けた。
「ほらっ、他にもいないの?他にもとても気になる人っ。いるでしょ?ほらほら……」
「ああ、もちろんだよ」
そのライの返事に、影がかかったように暗くなっていたカレンの表情が一気に明るくなる。
「そ、そうよ、そうよねぇ……。あはははは……」
構って欲しいだけなら雑談板にでも行けよ
変な雰囲気になっていたから、あえてやったんだけどね。
OKわかった。
そうするよ。
すてきな心掛けだとは思うが若干恩着せがましいのう。
別段続きは気にならないけど、楽しかった!
カレンかわいい。乙です。
書き込めたら投下行きます
書き込めたので投下行きます。
代理投下お願いしていたヤツですけど、前回の続きでラウンズの顔見世のゆるい話です
モラトリアムの理由
中華連邦総領事館前で起こった騎士団員奪還から早くも一週間がたとうとしていた。
そして領事館内の一室では昼夜を問わず騎士団幹部たちによる会議が続いていた。その議題の一つが、
「だから俺たちと同じでいいじゃねぇか!」
「そもそもこの“制服”は少尉をモデルにデザインしたって言ってるだろ!」
ライ少尉の制服をどれにするかである。
始めは玉城と卜部の個人的な言い合いであったのが、ライがどっちでもいいと言ってずるずると引き伸ばした結果、
・一般制服(玉城たちと同じ)
・軍服型制服(朝比奈たちと同じ)
・旧日本解放戦線軍服
・ゼロ衣装
・学生服
・紋付袴
・猫耳メイド
etc…etc…
かなり早い段階で方向性がずれていき、参加者と制服?は増える一方でまとまる気配も無く当事者であるライはお茶片手に見物している始末である。
「少尉いいでしょうか?」
目の前の喧騒を他人事のようにお茶片手に眺めていたライの元に一人の団員が声を忍ばせてよってくる。
「どうしました?」
菩薩の様な笑顔を向けられその団員はとても言いにくそう進言する。
「C.C.が消えてこのような置手紙が」
手渡された手紙に目を落とす。
『アッシュフォード学園にアレを取りに行って来る。帰りは夜になるからピザを用意しておけ』
ライは笑顔のままその紙切れを破り捨てると抑揚のない声でしゃべりだす。
「彼女は一人でどうにかするだろうから放っておいて構わない。一応このことは皆には内緒で」
言い切ると再び喧騒に目を向けようとするが、その途中で団員が更なる厄介事を口にする。
「すみません。すでに紅月体長が学園に向かっています」
それを聞いたライは飲みかけのお茶を一息に飲み干すと手近にあった制服?候補の中から一つを手に取ると会議室からこっそりと抜けていった。
一方そのアッシュフォード学園では枢木スザク復学記念のお祭り騒ぎの真っ最中だった。
その学園の中を一組の男女が露店を見ては騒いでいる。
「おい!このゲームはどうやるんだ!というかこのハンマーを使うのか?素手でいいだろ?」
男の方が店員に一般常識の範囲の事柄まで質問すれば、
「記録」
っと、女もとい少女が手作りと思わしき店内をやたらと携帯のカメラで撮影する。
二人が去った後の露店では店員たちが囁き会う。『あの二人ラウンズじゃないか?』
彼らの疑問は正解していた。男の正体はナイトオブスリー“ジノ・ヴァインベルグ”、少女はナイトオブシックス“アーニャ・アールストレイム”。
しかし、二人のあまりに堂々とした立ち振る舞いと奇天烈な行動のせいで誰も本気にしていないが。
そんな二人が次はどの店に行こうかと思案していると前方に人垣が見える。
「面白そうだな。行ってみようぜ!」
言いながらもすでにその方向に足を進めている。アーニャもそれに興味を引かれたのか素直についていく。
そして二人はヒーローに出会う。
人垣を掻き分けて前に出るとそこには露店などはなくかわりに大きな木が生えていた。
なぜこんな物に人が集まっているのかと衆人たちに振り返るとみんな木の上を見ている。
視線を追うとなんと少年が枝の先にしがみ付いている。
少年の手には風船が握られており、おそらくこれを取るために登って降りられなくなったのだろう。
「しょうがねぇな」
ジノはするすると木に登っていきあっという間に少年と同じ高さまで登ってしまう。
「ほら、ゆっくりこっちに来い」
手を差し伸べながら優しく言うジノに安心したのか少年がその手を取ろうと身をよじった瞬間、足を滑らせた。
ジノも身を乗り出して手を伸ばすが届かない。皆が最悪の事態を予想し目を閉じる。
だが、落下音はいつまでも聞こえない。
覚悟を決めた者から一人、また一人と目を開くと少年は男に抱きとめられ見事に無事だった。
安堵の息をつき少年を抱きとめた男に目を向けると皆が凍りついた。
ナイトオブセブン・枢木スザクの活躍を受けて生み出された特撮ヒーロー“ランスロット仮面”。そのランスロット仮面の後を追うようにして中華連邦で生まれた特撮ヒーロー“槍杖蟹”。
青い角がトレードマークのそのヒーローの覆面をその男はつけていた。
誰もが、助けられた少年さえもどうしていいのか分からず固まっているとピロリッと機械音が響く。
「記録」
その声で少年は自分が木の上から落ちたのを思い出し覆面の男にお礼を言う。
「あ、ありがとうございますぅ」
それで周りの者たちも我にかえり一斉に騒ぎ出す。その中から一人の女性が飛び出してくる。
「うちの子を本当にありがとうございました!ありがとうございました!」
少年の母と思わしき女性はお礼をまくし立てると少年の手を引いて逃げるように去っていった。まあ、覆面の男が相手ではしょうがないが。
その母親の後を追うように集まっていた者たちは皆散っていった。
覆面の男もそれにまぎれてどこかえと去ろうとしたが、それをジノが引き止める。
「待てよ!あんたさっきはすごかったな!」
男はジェスチャーで謙遜しているようだがそんなことお構いなしにジノがまくし立てる。
「その覆面は?こんなところうろついてるって事はヒーローショーがあるわけじゃないみたいだけど。まぁ、祭りだからいいか!」
朗らかに笑いながら話しかけてくるがその腕はがっしりと肩を組んで放さない。
もがきながらようやくジノから逃れた覆面の男はジェスチャーを試みる。
「私たちと回りたいのか?もちろん大歓迎だ!」
また肩を組もうとするのを拒みもう一度ジェスチャー。
今度はジノもアーニャもじっくりと凝視する。右手を額に当てて周りをキョロキョロ、左手を耳元に当ててグルグル、何かに気づいたようにハッとする。
それを3セットほど見てからアーニャがポツリと呟く。
「誰か探してる?」
正解だと言いたいようでアーニャをビシッ!と指差す。
「人探しか、よし!手伝ってやるよ!」
覆面男が断る前にアーニャが追撃をかけてくる。
「どんな人?」
観念したように覆面男は地面に探し人の絵を描き始めたそれは。
「なんだこりゃ?」
「ラッコ?」
覆面コクリ。
覆面男がラッコを探している。常人ならそのまま逃げるところだが流石ラウンズまったく動じず、むしろやる気を出していた。
「そりゃ面白そうだ!あっちにはいなかったから次はこっちに行ってみよう!」
「記録する」
そんな二人に呆れながらも覆面男は歩き始めた。
そのラッコは校舎裏で一人の男子生徒を頭から飲み込んでいた。
「カレン!お前までここで何をしているんだ!」
飲み込まれたいた男子生徒ルルーシュがラッコの中身カレンに声を潜めてたずねる。
「ピザ女を捜しに来たのよ。まったくこの大変なときにフラフラと」
声を潜めて愚痴をこぼすカレンだが、自分も同じ厄介事に分類されているとは知らなかった。
「C.C.ならコンテナの中だトラックごともってぇぇぇ!」
ラッコの中で密談していた二人はすっかりその場に居合わせたもう一人の存在を忘れていた。
「ちょっと貴方いきなり失礼じゃない!」
もう一人の存在シャーリー・フェネットはラッコの口からルルーシュを引きずりだすとその頭を掴みながら抗議の声を上げる。
「とりあえずそのかぶり物はずしなさいよ!」
しかしシャーリーとは知り合いのカレン。お尋ね者としては顔をさらせないし声も出せない。ルルーシュにシャーリーを止めることなど出来るはずも無く、おたおたしているとさらにややこしい人間たちがやってくる。
「ルルーシュ、シャーリーもなにやってるの?」
やってきたのはミレイ・アッシュフォード。このアッシュフォード学園の生徒会長であり大のバカ騒ぎ好き、事情を聞けば面白半分で正体を暴かれる。
血の気が引くルルーシュとカレンだったが、意外なところから助け舟が出される。それはミレイと共にやってきたスザクだ。
「アーサーを探してるんだけど見なかったかい?」
ルルーシュが内心よくやった!よくここで空気を読まなかった!と侮辱とも取れる賞賛を送ったのもつかの間コンテナの中からガンガンと音が響く。
「もしかしてこの中にアーサーが!?」
言いながらコンテナに近づくスザクをルルーシュが静止する。
「待て!猫とトマトはセットじゃない!」
訳の分からないことを口走るルルーシュだがその叫びは背後から登場したKMFにかき消される。
『こいつをピザ釜のところまで運べばいいんだな』
本来スザクが乗る予定の基本フレームのみのKMFからジノの声が響く。
「ラッコはいいの?」
KMFの足元からアーニャが声を上げる。
『こいつで走ってれば目立って向こうから出てくるだろ!』
そう言い残すと傍らにそのラッコがいることに気づかないまま走り出す。そしてKMFの進路上にいた一匹の黒猫“アーサー”が逃げていく。
「あっ!アーサー!」
「ま、待て!」
「!!」
「待ちなさいよ!」
「何?何?何なのよ!?」
スザクがアーサーを、ルルーシュとカレンがコンテナのC.C.を、シャーリーがラッコの着ぐるみのカレンを、ミレイがとりあえずそんな皆をそれぞれ追いかけ始める。
そこでアーニャも探し人であるラッコに気づき覆面を見上げる。
「いたよ」
覆面は大きく頷くと感謝の気持ちをこめてアーニャの頭をなでると先に走り始めた彼らを追いかけた。
その後ルルーシュとカレンはC.C.を回収し覆面も合流し屋上にでた。
「それでカレンの顔を見たのは一人何だな」
難しい顔で質問するルルーシュ、カレンが見つかれば学園での自分の監視もきつくなるため真剣だ。
「たぶん水泳部の人、だけど生徒じゃない」
一瞬の記憶を思い出しながら答える。
「ヴィレッタか?」
まずい人間に見つかったとより眉間のしわを深くする。
「名前まではわからないけど。でも変なの、前に学園祭のときに扇さんと一緒にいた人だから南さんの言ってた扇さんの直属の諜報員の人だと思ったけど」
そこまで聞いてルルーシュの顔に今までとは別種の困惑が浮かぶ。
「扇の?」
あの男が自分に秘密でそんなことをするとは思えず声に出してしまったが、それをC.C.が鼻で笑う。
「タコさんウィンナーの女だろ。井上たちが話していた」
「タコさん?」
訳の分からないことを言うなと睨みつけるがまた鼻で笑われる。
「だからお前は坊やなんだよ。扇の女と言うことだ」
そこまではっきり言われてようやく気づいたルルーシュが悪人顔で笑う。
「はじめからそう言え!だが、それならこれから色々とやりやすくなるな。学園のことはもう心配ない、そちらの迎えも準備できているんだろうライ?」
声をかけられて覆面の男ライが答える。
「ああ、中華連邦の公用車だからブリタニアの干渉も無い。あと30分くらいかな?」
時計を見ながらそう言うライを三人がモノ言いたげに見つめる。C.C.がその疑問を一番に口にした。
「ところでその覆面はどうした?そんな趣味があるとは知らなかったな」
それで自分の姿を思い出したライは慌てながら否定する。
「ち、違う!たまたま手元にあっただけだ!」
「なんでそんなモノが手元にあるのよ?」
「恥ずかしがることはない。そんなお前でもいいという女は山ほどいる」
「だから違うって言ってるだろ!」
結局迎えが来るまでC.C.とカレンにからかわれるライであった。
なお、ライの制服はその後開かれた大じゃんけん大会の末、無駄な才能の一つを発揮した玉城の優勝によって通常の制服となった。
以上です。
予定になかった話ですが楽しんでいただければ幸いです。
では、次回作も出来るだけはやくにしたいと思います。
乙ですー。
規制かかるときは一斉にかかるんですよねえ。
wikiの中の方も乙でした。
乙です
たのみこむか。
残念ながら、影響力はほとんどないと思うよ。
無駄だとまでは言わないけど、骨折り損のくたびれ儲けになる公算が高いから、
あんま人を巻き込んで大事にはしない方が良いかと。
まだしもメーカーにアンケート葉書とか出した方が良いんじゃないかな。
そういえば、新プロジェクトの情報が出てきたね。
完全な外伝かあ……こういう広がり方だとゲームでの展開もありそうだけど、
さてロスカラと絡んでくるものかどうかって話だな。
スレ的には、SSのネタにはなりそうな印象だから、それなりの好材料かな。
久しぶりにスレ覗いてみたらKOUSEI氏きてたんだ…
仕事がんばってくれ、そして次回を待ってるよ
復活確認
by 王大人
投下いきます。前回の続きです。
ジノの性格が子供っぽく、戦争について軽い考えのようになっていますが、
これからの展開を考えての演出ですので嫌な方はスルーしてください。
あとはいつも通り前回からの場面急転ですので。
渇望の理由
面白い、面白いぞ。やはりこのエリアに来て正解だった。
なかばバカンス気分だったが、予想以上に面白い男だなゼロ。
まさかフロートも無いくせにKMFで空中戦をやろうなんて最高じゃないか。それでこそ倒し甲斐があるってものだ。
笑いを堪えながらしかし顔をにやけさせて機体を前進させていると、所々から煙を上げている飛行艦隊が見えてくる。
戦闘が近いことを感じ取り胸を高鳴らせていると不意に違和感を覚える。
「なんだありゃ?誰だ戦艦のフロートなんて攻撃したのは?」
艦隊の中でも一際大きいログレス級浮遊航空艦のフロートから煙が上がり、船体も僅かに傾いているようだ。
『落ちる?』
私の少し後ろを飛んでいたアーニャもそのことに気づいたようで尋ねてくる。
「ああ、あと一時間くらいか?確実に落ちるな」
機体の特性上それなりに勉強した航空力学やら何やらの知識を総動員して答えてやるとアーニャは小さく頷くと速度を上げる。
あの艦に乗るお姫様のお陰かめったに見られない同僚のやる気に今度は堪えずに笑い声を上げ追い抜いていく。
このままじゃアーニャに全部持っていかれる。こんな“面白そうなこと”独り占めさせるものか。
艦隊が近づくにつれて艦にへばりつく騎士団とその周りを飛び回るブリタニア軍、両方のKMFが確認できる。
「一番強そうなのはどいつだ?うおっと!?」
速度を落とし獲物を物色していると右後方から銃撃。それを避けつつ襲撃者を確認する。
黒色の雑魚が大半のなか一際目立つ灰銀色の機体“月下”。大物がかかった。
口元を緩ませながら機体をフォートレス形態からKMF形態に可変させながら甲板に降り“相手と同じステージ”にあがる。さて、どのくらい楽しませてくれるかな?
こちらの可変機構に面食らった様子だったが流石はサムライ、すぐにこちらとの間合いを計りカタナを構える。
まずは小手調べに上段からの振り下ろし。
それを斜めに構えたカタナで流しすかさず攻撃に移る。しかし相手が構えるよりも早くMVSを手の中で回転させ今度は下段から振り上げる。
並みの敵ならこれに反応も出来ずに切り捨てられる。しかし見事に“避けてくれた”。
かすりもしなかった切っ先を横目に見ながら緩んでいた口元に明確な笑みを浮かべる。
「いいぞ!もっとだ、もっとついてこい!」
右上段っ!左中段っ!突きっ!払いっ!右下段っ!回し蹴りっ!
間髪入れない連撃に相手も食いついてくる。避けて、防いで、流して、さすがに反撃までは来ないがここまで“楽しい”のは久しぶりだ。
その“お礼”に隙を作る。回し蹴りの勢いのまま背中を向ける。
来た!背後から感じる必殺の殺気。それをギリギリまで引きつけ紙一重でかわす。
刃が行き過ぎたことを感じとるとカタナを振り切った体勢で硬直する敵に再び回し蹴り。
距離が開き互いに武器を構え直す。そろそろ仕留めるか。
ここまで楽しませてくれたことに感謝と敬意を表してMVSを上段に構える。初手と同じ軌道の単純な振り下ろし。
ただし今度は本気、機体の全重量を懸けた振り下ろし。
それはカタナをへし折りそのまま敵を切り裂き、刃は甲板に深々と刺さる。
爆煙を上げる機体の後方に向かって射出されたコックピットを眺めながら呟く。
「次はもっと楽しませてくれよ?」
「ほらほらどうした?そんなんで私たちに勝つつもりだったのか?」
甲板の上を走りながらMVSを振るう。気合も何も込めていない慣性だけで振るわれる刃に次々と敵機が吸い込まれていく。
時たま死角に潜り込んだヤツがライフルで狙ってくるが、単機からの銃撃などかすりもせずハーケンで撃墜する。
つまらない。さっきのヤツを仕留めずにもっと楽しむべきだった。
戦闘前の興奮も過ぎ去り胸の内に残るのは義務感だけ。溜め息まじりにまた雑魚を切り伏せたとき視界の隅に薄紫色の機体を捉えた。
「あれはギルフォード?なんで、ってそういうことか!」
艦の側面を飛び中を覗き込む、すなわち敵は艦内に潜り込んだ。
一人で納得しているとギルフォードがMVSを艦内に突き刺す。
「私にも分けてもらうよ!」
ランスを構えていたグロースターを押しのけ突きの構えを取る。見ればギルフォードの方は仕留めそこなったようだ。
「こっちも避けてくれよっと!」
しかし、残念ながらこちらの機体は避けきれずMVSが装甲に食い込む。が、残念と思ったのもつかの間、刃がすべり辛うじて敵機は右上半身を失うだけに留まった。
もっともそれは避けられたのではなくこちらが吹っ飛ばされたからだが。
揺れるコックピットの中でその犯人を睨みつける。ハーケンを使いぶら下がった蒼い月下。
こちらが反撃に出る前に艦側面に着地すると垂直に壁を走り始めた。
無意識にそれに合わせて上昇していく。この敵は強い、それも今までの中でトップクラスだ。
今日一番いや、ここ数年で一番の笑顔を浮かべ蒼い背中を追う。
甲板に上がると敵はこちらを待ち構えていた。蒼いカラーリングに左腕の特殊兵器、あれはおそらく輻射波動とか言うやつだろう。
資料にあった“ショーイ”とかいうヤツの専用機。噂ではかなりの腕前らしいがどれほど楽しませてくれるかな?
「さあ!楽しもうぜ!」
右下からの切り上げ。さあ、どうする?避けるか?防ぐか?
「何っ!!」
驚きと共に機体に急制動をかける。まさか切り返してくるとは思わなかった。
しかもこちらより早い、明らかに後から動き始めたのに向こうの刃が先に届いた。
「どんな手品だよ!?」
胸の奥底から歓喜の嵐が吹き荒れる。さっきのヤツのように楽しめる相手とはたびたび戦った。だが、それは全て格下。同格だと思える相手などいなかった。
同格ということならラウンズの連中がいるが彼らは味方だ、模擬戦で戦うことは出来ても所詮は模擬戦。お遊びでしかない。
だからこそ、この同格の敵の登場は長年渇望し続けた悲願。喜び以外の何物でもない。
「今度はどうだ?」
高ぶる感情のままにMVSを振るう。それを軽々と避けられカタナで襲われる。
横っ飛びにそれを回避、刃の軌道は先ほど戦った敵の最後の一振りに近いがスピードが段違いだ。
何だ?何が違う?根本的には同じ機体、それでどうしてここまで違いが出る?
強さの秘密を思案していると今度は向こうから仕掛けてくる。左上段から振り下ろされる刃をMVSで受ける。
しかし、私の予想よりもだいぶ下で刃がぶつかる。もう少しで切られた、やはり早い。
そして近距離で高速戦が始まる。相手が振れば避け、こちらが振れば避けられ反撃、そいつを捌いてこちらも反撃。
見れば見るほどおかしい。機体自体は特別早いわけではないのだが、攻撃だけがいちいちこちらの予想よりも早い。
「これでどうだ!」
僅かに開いた距離を利用し、スピンの要領で勢いをつけた攻撃。
それは防がれたが、ふっ飛ばしてやったのでとりあえずさっきの艦側面で食らった最初の一撃を返したとしよう。
互いに武器を構えを直したところで周囲が暗くなる。
「なっ!!」
何事かと上空に目を向けると戦艦が落ちてくる。この機体ではあれには対処できない。
飛んで逃げようかとも思ったが、足場に使っているこの艦には護るべきお姫様が乗っている。
どうしようかと混乱していると今度は落ちてくる艦に対して極太の赤黒い光“ハドロン砲”が突き刺さり、艦が爆発する。
降りかかる細かい破片を回避しながら光の発生源に通信を入れる。
「ありがとよアーニャ。だけどこっちの艦に当たるとまずいからもう勘弁してくれ」
『護ったのに』
不満げに呟き通信を切られてしまう。文句も言ったが感謝の気持ちは本物だ、おかげでこのすばらしき敵と決着をつけられる。
改めて向き合って相手の構えに違和感を覚える。先ほどは興奮のため気にしていなかったが、普通と比べて腕が縮こまっている。
その意味に思い至る前に再び切り結ぶ。しかし、一度落ち着いたお陰か今度は相手の動きと構えの違和感がつながって見える。
数度目の激突、偶然にも私と相手は同じ右上段を選んだが、やはり向こうが先に届く。
そこで速さの秘密に気づいた、刃の描く円が小さい。
分かってしまえば何てこと無い、円が小さければそれを描く刃の移動距離が短くて済む。それだけのこと。
理解すれば盗むことも可能。柄の中央を掴んでいた両手を左右に開いていく。
「これはいいな!」
リーチを短くするのはどうかとも思ったが、接近戦ではなかなか使える。攻撃速度だけでなく武器の取り回しもしやすい。
中近距離の違いで微妙な調整がいるがこれから使ってもいいな。まあ、これを使うほどの敵にめぐり合えるか分からないが。
相手の戦法を取り込んだ私が押し始めると距離をとられる。
すぐに追いかけるが、逃げに徹するつもりかけん制の銃撃しか飛んでこない。
「おいおい、そりゃ無いだろ?もっと楽しもうぜ」
つまらない追いかけっこを始めて三つめの曲がり角、敵の姿が消えた。いや、しゃがんで待ち伏せされただけだが一瞬視界から消えた。
まずいと思ったときには足元からカタナが迫る。それを避けるために飛ぶがそこを狙われた、ハーケンが眼前まで迫り無意識にフロートを吹かす。
そのまま相手の頭上を跳び越し距離をとる。手にはまだ振るえが残っている。頭には久しぶりに感じた恐怖が焼き付いている。
「くっ、くっ、くっ、はぁー!はぁー!はぁ!いいぞ、最高だ!よくぞ私を“ステージ”から追い出した!それでこそ本気でぶつかれる!」
フロートを最大出力で降下。重力も味方につけた突撃は避けられたが、相手の装甲をかすめる。
回避体勢のまま反撃をされるが、それが届く前に甲板を強く蹴って再び飛翔。
突撃、飛翔、また突撃して飛翔。教科書通りの一撃離脱だがそれを実現できるのも圧倒的スペック差があってのこと。
本当はこんな力任せの戦い方は趣味ではないがこの相手は特別だ。
単純なスピードと力で勝る私と渡り合うほどの創意工夫。プレゼントのリボンを紐解くかのような何が飛び出してくるか分からないドキドキ感、だから。
「如何にかして見せろ!」
四度目の突撃で新たなアクションを起こされる。左腕を突きつけた体勢で突っ込んでくる。
“輻射波動”。機体内部に高周波を打ち込む防御不能の必殺兵器。玉砕覚悟で来たか。
戦闘の終了を感じ見逃そうかとも思うが最後まで全力で挑むのがここまで楽しませてもらった礼。
互いに全速力で交差する。そして空を舞う“左腕”。
輻射波動が届く直前にそれを横からMVSで切り捨てた。先ほど盗んだ技を使わなければ向こうの左手が先に届いていただろう。
しかしこれで安心はしてはいられない。左手のハーケンを打ち出しながら振り返る。やはりハンドガンを構えている。
機体を飛翔させ銃撃を回避しながらハーケンのバーニアに火を入れる。空中で方向転換したハーケンが弾丸を撒き散らす敵の右腕に食らいつく。
ハーケンは更に火を噴き勢いを増すと蒼い敵機を甲板からはじき出す。落下しながらも最後の抵抗かハーケンを打ち出されるが難なくMVSではじく。
最後に落下していく敵を視認するとそのまま背を向ける。ナイトオブテンのような虐殺趣味はない。
「もっと強くなってきてくれよ。っ!!」
久しぶりに満足いく戦闘の直後、緩みきった頭に警鐘が鳴り響きとっさに振り返ると重い衝撃。
モニターには左腕の破損表示と落下していくひしゃげたコックピット。まさかと思い蒼い機体に目を向けるとコックピットが無くなっている。
ぞっとする。もしもあの時直感が働かなければフロートをやられて一緒に海の藻屑だ。いや、海上には騎士団の回収部隊がいるだろうからこちらが捕虜になるだけ。
両腕を失い翼もなく空に放り出されて尚も食らいつく闘争心。今仕留めなければ危険だ、しかしもう一度戦いたい。
心の定まらないうちに右腕のハーケンを構える。撃つのか?
その時ひしゃげていたコックピットの一部が剥がれ落ちショーイの顔が見える。男から見ても綺麗だと思う整った顔立ち、イレブンではありえない銀髪、機体と同じ深い青色の瞳。
知ってしまった。ただの強敵ではない、私を敗北一歩手前まで追い込んだショーイだ。
撃ちたくない、もう一度戦いたい。その願いが天に届いたのか落ちていく蒼と入れ替わるように赤が迫る。
「フロート付だと!」
戦闘態勢をとるが、相手は右腕を突きつけて停止。
形状からそれも輻射波動だと分かったが近接兵器を距離をとって構えるわけが分からない。
こちらから仕掛けようとすると、その右腕から赤い光が撃ち出された。何とか避けられたが、ハドロン砲とは違う光おそらく。
「撃ち出せるのかよ、輻射波動」
呟く暇もなく再び右腕を向けられるが来るとわかっていれば回避は簡単大きく迂回しながら敵に迫る。
しかし、今度の光は先ほどよりも広がり安全圏と思っていた場所にまで届く。
やられたかと思ったが機体に外傷はなく身体もピンピンしている。が、機体が動かない。
そんな私をみると赤い機体は行ってしまい、ショーイもすでに騎士団に回収されたようだ。
「とりえずありがとよ。そしてショーイ決着は必ずつけよう」
ショーイとの再戦を楽しみにしながらとりあえず今は疲れた体を休める。
チャンスは思いのほか早くに訪れた。
ナナリー新総督が着任挨拶の席で突如発表した“行政特区構想”。一年前の惨劇以来ブリタニアでタブーとされていた構想を再び実現すると言い出した。
当初はイレブンの参加者はいないと思われていたが、そこにゼロから百万人の参加約束が申し込まれた。
ただの時間稼ぎとしか思えなかったが、ゼロの考えはその斜め上をいった。
「私を見逃してくれ」
それがゼロの交換条件だった。内輪で少々問題もあったがゼロは国外追放ということで落ち着いた。
これが本当にゼロ一人が逃げるのであれ、策略であれ一騒ぎあるだろう。そこがチャンスだ。
最悪生身であろうと再戦の機会も訪れるだろう。待っていろショーイ。
そして特区落成式当日。私の眼下には本当に百万人のイレブンが集まっていた。
黒髪の人の群れの中から銀髪を探すが見当たらない。
「おかしいな?嫌でも目立つと思っていたが、帽子でもかぶってるのか?」
諦めずにショーイを探していると式典が始まる。
『日本人の皆さん本日は私たちを信じて集まっていただきありがとうございます―――…』
ナナリー総督の挨拶が続くなか会場を見渡して確信する、ショーイはいない。
全てのイレブンの顔を確認したわけではないが、総督の挨拶の中で警備のKMFの配置や挙動に注意を払っている者だけをチェックした。
手配書で見た顔が並ぶ中ショーイの顔は無かった。とするとゼロの国外追放はヤツらの策略でそのためにショーイが暗躍している可能性が高い。
「ギルフォード注意しろ。奴ら何か仕掛けるつもりだ」
『イエス・マイロード』
一応忠告はしたが向こうもそう考えていたらしく、モニターに映ったギルフォードはこちらではなく会場に視線を向けていた。
『…―――次に特区参加における日本人の待遇について』
ナナリー総督から進行を引き継いだローマイヤがいよいよ問題の部分に触れる。
限定付きイレブンの権利復帰、テロリストたちの減刑、そして。
『ただし、クロヴィス殿下殺害等の重罪の主犯及び実行犯であるゼロの罪は許されざる物である。よってゼロだけは国外追放処分とする』
きた!仕掛けてくるならここしかない。さあ出て来いショーイ!
『ありがとう!ブリタニアの諸君!』
ゼロの声とともに会場が煙に包まれる。
『発砲準備!』
『ダメだ!まだ彼らは攻撃していない!』
『総督こちらへ!』
『枢木卿攻撃許可を!』
私たちの混乱をよそにイレブンたちからのアクションはなく徐々に煙が晴れていきそこに姿を現したのは。
「ゼロ!?」
ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ―――…。
会場を埋め尽くしていた百万人のイレブン全てがゼロに変身した。そうか、これがゼロの策略!
『さあ!全てのゼロよ、判決は下りた!共に新天地へ行こう!』
言葉とともにモニターの映像がゼロから一隻の船に変わる。あれは中華連邦の氷塊船、まさか!
思いつきのまま視線を会場に隣接した海へと向けるとそこにはやはりモニターに映った物と同じ船が、そしてその船首にはゼロともう一人。
「そこか、ショーイ!」
待ち焦がれたその銀髪に向かってフロートを吹かすがそれを遮られる。
『待てジノ!これは反乱ではない!』
勢いを殺されてスザクに文句を言おうとしたが横から割り込まれる。
『これが反乱で無いというの枢木卿!』
グラストンナイツを率いたギルフォードが叫びローマイヤも続く。
『枢木卿あなたが責任者なんですよ!決断してください!』
迫られたスザクが遥か彼方にいるゼロに向かって叫ぶ。
『ゼロ!約束しろ、この百万人を必ず幸福にすると!』
それに答えるように再びモニターにゼロが映る。
『約束しよう、彼らは私が必ず幸福にしよう!』
ゼロの答えを聞いたスザクは拳を握り締めたまま全軍に命令を下す。
『ゼロは国外追放だ!全てのゼロを追放しろ!』
その命令に皆が異論を唱えるがついにスザクの意思は覆らなかった。
百万人を乗せ小さくなっていく船を睨みながら胸中に決意する。
中華連邦だろうとどこだろうと必ず追いかける。そして必ず打ち倒してやるぞショーイ。
以上です。
予想よりも戦闘描写がうまくいかなかった気もしますが何とか形にしました。
次回も戦闘ばかになると思いますがよろしくお願いします。
乙です
機体スペックと天性のセンスの前には一歩劣るけど
技術と工夫と根性でなんとか渡り合うってライの理想の戦闘スタイルだ
続き楽しみにしてます
持ち前の培った勘と間合いの取り方を見るとやっぱりライですね
次も頑張ってください。楽しみにしております
340 :
創る名無しに見る名無し:2010/05/08(土) 08:05:14 ID:gB4Dif8l
age
341 :
創る名無しに見る名無し:2010/05/16(日) 23:35:25 ID:xXsUcys5
ほす
遂にここも保守が必要になったか、、、、、
職人がこないのが問題ね…
クラブが発売されるから続編クルー?っと思ったら音沙汰なしだし
かなり久々に来たらKOUSEIさんの新作があって吹いた
週末はクラブのフィギュアを飾りつつ、未読の作品群じっくり読ませて頂こうかな
ロボ魂クラブ買ったけどKAKKEEEEE
オプションパーツとか最近のロボ魂KMFを考えると充実しすぎだw
青と白のヒロイックなカラーに一本角
かっこよくないわけがない
347 :
創る名無しに見る名無し:2010/05/29(土) 00:13:34 ID:TRNwL4TJ
ho
348 :
創る名無しに見る名無し:2010/05/29(土) 07:10:39 ID:4sIySle0
クラブ確かに良いね。
何かネタにならないかなあと思いながら毎日ポーズ変えてるw
350 :
創る名無しに見る名無し:2010/06/03(木) 15:28:21 ID:TZ+pZxCV
hosyu
そーいえば新ギアスは江戸時代とかいう話を聞いた
ライの母親ってそん位の時代じゃなかったか
ライが生きていた時代については、本編中に確かな情報はないはず。
血筋が途絶えたのが100年ぐらい前なんで、それよりは以前であるというのが
分かるだけだな。
どちらかというと、SSのネタになりそうなのはアニメの方じゃないかな。
EU戦線が舞台らしいし。
>>336 >>『これが反乱で無いというの枢木卿!』
>>グラストンナイツを率いたギルフォードが叫び
ちょ、ギルフォードがおかまになっとる!
妙な時間からで申し訳ありませんが、本日1:00少し前から投下します。
1:00を挟むので、スタート遅れや計算間違いがなければ一人で投下終了の予定です。
が、万が一、引っかかっているのを見かけましたら、ご支援頂けると助かります。
お久しぶりです、はじめまして。
このトリップで合っていると思うのですが。
さて、作品内容は以下の通りです。
【メインタイトル】】LIGHT COLORS
【サブタイトル】各シーン冒頭をご参照下さい
【CP・または主な人物】ナナリー
【ジャンル】ギアス編if、中編
連作短編形式風の中編です。
本来、執筆を終了・推敲の上、ある程度短い期間でまとめて投下すべき作品かとも思いますが、それを待っていると何ヶ月かかるか分からないので、可能な部分から投下することに致しました。
区切りが悪いところで切っていくことも出てくるかと思いますが、ご容赦下さい。
今のところ、今回を含めて4〜5回に分けての投下予定となっています……この種のことが予定通りに進んだ経験がありませんが。
条件は全てクリアされた!
それでは、始めます。
─LIGHT COLORS─
□prologue:向日葵
ナナリーの朝に光はない。
それでも、ナナリーには朝の色が感じられる。
頬に触れる陽の暖かさ。動き出した空気の匂い。鳥の囀り。
夜の薄い静寂を吹き払うように、営みの躍動がひとつひとつと浮き上がる。
朝の足音を楽しみつつ、贅沢なまどろみに漂うナナリーを覚醒させるのは、いつも決まった一言だった。
「おはようございます、ナナリー様。──今日は良いお天気ですよ」
洗濯物が良く乾きそうで助かります、と柔らかく声を弾ませる咲世子に、ナナリーも変わらぬ微笑みを返すのだ。
「おはようございます。最近、曇りがちでしたものね」
返事をするうちにも、手際良く起床の準備が整えられていく。さわさわと肌を撫でる空気の揺らぎが心地良い。
咲世子は、まるで大気のような、そよぐ風のような人。身を包み、安らぎまでも与えてくれる大事な存在だ。
朝の風に抱かれて身支度を整える。
自宅の中だからといって手抜きはできない。絶対駄目だ。だらしのない格好などもってのほか。
もちろん、優秀なメイドに任せておけば不安などない。そのはずなのに、最近のナナリーは最後にこう確認したくなるのだった。
「おかしなところはありませんか?」
「はい、今日もお綺麗ですよ」
穏やかな返事をもらい、一安心する。
自分が本当に見栄えの良い娘なのか、ナナリーには確かめようもない。
ただ、これから会うふたりに綺麗な姿を見せられるかどうか、それはとても重要なことだった。それだけが、大事だった。
──よし。
今日も笑って頑張ろう。
一呼吸おいてから、ナナリーはにっこりと微笑んだ。
「それでは、行きましょうか」
■
ダイニングに移動したナナリーを、耳に馴染んだ暖かい声が出迎えてくれた。
「おはよう、ナナリー。よく眠れたか?」
咲夜子を大気とするならば、優しく手を握ってくれる兄は、ナナリーを支える大地だった。
背を預ければすべてを受け止めてくれる、無くてはならない拠り所。
ルルーシュの側でならば、ナナリーだって地に脚をつけられるのだ。
「おはようございます、お兄様。おかげさまでぐっすりと」
「そうか」
満足げに答えるルルーシュの方こそ眠たげな様子だと気がついて、ナナリーはちょっと心配になる。ここ数ヶ月、ルルーシュはいつも疲れているようだった。
(ご無理をされていなければ良いけれど)
気になるのは、ルルーシュのことだけではなかった。
席につきながら、耳を澄ます。
普段はルルーシュよりも早く起き出しているあの人が、今日はまだ顔を出していない。兄に劣らず頑張りすぎる人だから、体調を崩していないか気がかりだった。
そう待たされることもなく、求めていた足音が耳に届く。
リズミカルで、あまり音も振動も発しない、身のこなしが上手な人の歩き方。
いつもと変わりない様子に、ほっとしたのもつかの間、そわそわと落ち着かない気分になる。
ルルーシュと会話を交わしながら、意識は扉の外に飛んでいた(ごめんなさい、お兄様)。
足音が止まる。
わくわくしながら待つ。
はしたなく思われないように、澄ました顔で。
扉が開いた。
「──すまない、遅くなった。おはよ……」
「おはようございますっ」
子供のように弾んだ声を出してしまったと気づいたのは、周囲がきょとんとしたような沈黙に包まれてからだった。
「……あ、私ったら」
頬が熱くなるのを感じてうろたえるうちに、落ち着いた響きの声が、笑みを含んで耳を撫でた。
「……今朝は随分と元気だな、ナナリー。何か良いことでもあったのか?」
「い、いえ、特にそういうわけでは」
「ライが三日ぶりに朝から一緒だからだろう」
「お、お兄様っ!?」
横から割り込んで言い放つ兄は、最近ちょっと、イジワルだ。
「事実だろう? 俺もライも、最近はあまり食事を一緒に取れないからな──おはよう、ライ」
「ライ様、おはようございます」
ナナリーの狼狽もなんのその、ルルーシュと咲世子は澄ました声で挨拶を交わしている。
気恥ずかしさで顔を伏せていると、ライが側に屈み込む気配がして、それどころか顔をのぞき込まれるのまでが分かって、ナナリーはますます困ってしまった。
これでは顔も上げられない。
「ナナリー」
感情が抑制された声音は、出会った頃と変わらない。でも、少しだけ丸みを増したように聞こえることが、ナナリーの心を浮き立たせる。
微笑んだ声が、ナナリーに向けて言葉を形にした。
「おはよう」
ナナリーのためだけに、送られた一言。
だからナナリーも、多分ほのかに染まっている顔を上げて、受け止めた。
「──おはようございます、ライさん」
「ああ。今日も、良い朝だね」
頭を軽く撫でられる。
子ども扱いされているのが悔しくて、触れてもらえることに心が躍る。
全身が宙に浮いてしまいそうで、胸は熱く、頭の中を確かな陽光が満たしていた。
ナナリーの朝に光はない。
それでも、陽は上る。
ライはまるで太陽で、ナナリーは向日葵のようだった。
念のため支援
□Scene1:優しい食卓
暖かいミルク、カリカリのベーコンと新鮮な卵を使ったスクランブルエッグ、香ばしく焼きあがったトースト、咲世子特製のドレッシングがかかったサラダ。
朝食としてはボリュームたっぷりの、フルブレックファスト。
ナナリーには多めの量が無理なくお腹に収まってしまうのは、食卓の空気がいつもより暖かいからだと思う。
数日ぶりに囲む、三人での食卓。
食事は美味しく、会話は弾み、身体も心も満たされる。
昨日のこと、今日のこと、明日のこと。とりとめのないおしゃべりに、穏やかな相槌。給仕をする咲世子の楽しげな足音。
ライが現れるまで、ルルーシュか咲世子と二人きりでの食事が多かったナナリーにとって、この上なく贅沢な時間だ。
宝石みたいに貴重なひとときだから、ついつい口数が増える。はしたないとは思いつつ、自分の話に笑ってくれる声が聞きたくて、お行儀悪く言葉を重ねてしまう。
「──それで、ライさんにお願いして本を……あっ」
だから、こんな子供みたいな失敗をしてしまうのだ。
口元から、飲み込み損ねた紅茶が流れ落ちようとしていた。
慌ててナプキンを手探りするうちに、左右で空気が動く。
一瞬早く、左手から腕が伸びる気配がして、口元にそっと柔らかい布が押し当てられた。優しく動く感触が、紅茶の残滓を拭い取り、離れていく。
羞恥に縮こまりながら、ナナリーはお礼を言った。
「ありがとうございます……ライさん」
「そんなに慌てなくても大丈夫だよ。まだ時間はある」
宥める台詞に、頬が熱くなった。
どうして、この人には子供っぽいところばかり見られてしまうのだろう。
「今日は、夕食も一緒にとれる予定だしね。ルルーシュも食事は……ルルーシュ? 何を固まっているんだ」
訝しげなライの問いに、「うあ?」とルルーシュが間の抜けた声をあげた。兄は怜悧な人なのだが、予想外のことが起きると、こんな風に面白い声を漏らすことがある。
小首を傾げるナナリーの耳に、背後に立つ咲世子が笑みを漏らす音が届いた。
「なにやら馬に蹴られそうな予感が致しますね。少し早いですが、私はご登校の準備をして参りましょうか」
なぜか、ルルーシュが「ぐぅっ」と悔しげな声で呻いた。
(どうしてここでお馬さんの話が……?)
そしてルルーシュの反応も謎だ。
不思議に思っていると、咲世子が微笑ましいものを愛でる声で続けた。
「冗談です──が、老婆心ながら申し上げますと、ルルーシュ様はもう少し、こちらでお食事を取る機会を増やした方がよろしいかと。人間は適応する生き物だと申しますよ」
「……そうかもしれないな」
ルルーシュは、いくらか憮然としているようだった。一方の咲世子は妙に満足げな様子で、
「それでは、お時間までごゆっくりお過ごし下さい」
一礼して、足取りも軽やかに退室していった。
閉じたドアに向かって、ルルーシュが嘆息する。
「まったく、咲世子さんは……」
「あの、お兄様。何のお話だったのですか?」
「大したことじゃないよ。ただ……そうだな。色々なことに対して、感謝しなければと思っていただけさ」
兄の声に滲んでいる感情は、寂しさ、だろうか。もっと複雑な色合いにも聞こえた。だが、気分を害しているわけでもなさそうだ。
紅茶を一口飲み終わる頃には、ルルーシュはいつもの調子を取り戻していた。
「さて、夕食の話だったかな。夜は泊りがけの用事があるけど、夕食は取ってから行くつもりだ。なんなら、久しぶりに料理をするのも良いな。咲世子さんへのお礼も兼ねて……ライも今日はオフだろう?」
「ああ。授業にも最後まで顔を出すつもりだ。──生徒会の方も最近は余裕がある。ナナリー、今日は夕方から二人でお相手できるはずだよ」
「本当ですかっ?」
顔がぱっと輝くのが自分でも分かった。
ルルーシュの手料理というだけでも素晴らしいのに、もうひとつ楽しみが増えると聞けば、笑顔も弾けるというものだ。
もう一つ支援
「……あ、でも、私に構ってばかりで、お時間は大丈夫なのですか? お忙しいのでは……」
嬉しさに先走りそうな心を抑えて尋ねる。兄とライは多忙な身の上。休息できる時間はことのほか貴重だ。ナナリーに構っている余裕など、本当はないのかもしれない。
ルルーシュは小さく笑って、
「ナナリーより優先度が高い用事なんて、ひとつもないよ。折り紙でも読書でも、なんでも付き合うさ。まあ、折り紙はライに頼ることになるが?」
「もちろん、僕で良ければ喜んで」
恭しく答えるライに、ルルーシュが満足そうに続けた。
「だ、そうだ」
やせ我慢がいつまでも続くわけがない。
ナナリーは、弱い自分に苦笑しつつ、好意に甘えることにしてしまった。
「……よろしいのですか? ありがとうございます、とても嬉しいです! ああ、どうしましょう。何をお願いしようか悩んでしまいます」
胸の奥からやりたいことが溢れ出してきて、ナナリーは嬉しい悲鳴を上げたくなる。
ルルーシュは「大げさだな」と笑うけど、これほど幸せなことなんて他に考えられない。
うきうきと跳ねる心に、ナナリーは頬を緩ませた。
「本当に楽しみ。皆で夕食までご一緒できるのは、ずいぶんと久しぶりですものね」
言い終えてすぐに、失言だったと気づいた。
同席する少年ふたりの雰囲気が、ふっと沈むのを肌で感じる。
ルルーシュが申し訳なさそうに口を開いた。
「……もっと一緒に食事を取れれば、とは思っているんだけどな。寂しい思いばかりさせてすまない」
「い、いえ。ごめんなさい、お兄様。そんなつもりで言ったわけではないんです」
ナナリーは慌てて首を振った。
後悔が胸に満ちる。なんて浅はかな妹なのだろう。
確かに、最近のルルーシュは外出することが多い。何をしているのか教えてくれないし、丸一日、家に戻らないこともざらだ。寂しくないと言えば、嘘になる。
だが、ルルーシュはいつもナナリーのことを一番に考えてくれているのだ。至らない妹の漏らした、ちょっとした言葉の切れ端に傷ついてしまうほどに。
こんなにも優しい兄へ、我がままを言うなどとんでもないことだ。
「お忙しいのに、色々と気遣って頂いて、感謝しています。それに、ライさんも居てくださいますから。寂しくなんて、ありません」
微笑みながら、少しだけ嘘をついていた。
ライが同居するようになってから、ナナリーの生活は変わった。それは本当だ。
部屋に一人きりの時、通りがかっただけと言いながら会いに来てくれる彼の存在が、どれだけナナリーを救ってくれたことか。
ただ、そのライも家を留守にしがちになっているのが、ナナリーの新しい心配の種なのだった。ルルーシュほど極端ではないが、帰宅が深夜になることも少なくない。
ナナリーの知らない、ライがいる。
当たり前のことなのに、ナナリーの心はざわめいてしまう。ルルーシュに対する不安と、そっくりなようでいて色合いが異なる感情。
何をしているのか、それとなく尋ねてみようと思ったこともあるが、行動には移せなかった。
兄の生活を尋ねるのとは訳が違うのだ。プライベートにまで口を出すような、嫌な子だとは思われたくない。
でも、心配だった。
ひとりでライの帰りを待っていると、不安に押し潰されそうになることがある。
時々、思い出してしまうのだ。
ある夜、長めの外出から帰ってきたライの身体が、漂わせていた臭い。
あれは──血と消毒液の臭いでは、なかっただろうか。
心に走る慄きを抑えて、ナナリーは笑う。綺麗に笑えていますようにと祈りながら。
「私は大丈夫ですから、おふたりは無理をなさらないで下さいね。お疲れの時は、ちゃんとお休みになってください。特にお兄様は、授業中に居眠りばかりしているとシャーリーさんが怒ってらっしゃいましたよ」
「いや、あれはね、ナナリー。誰にも迷惑をかけないように注意しているし、授業内容は把握しているから、問題ないんだ」
「まあ。そんなことをおっしゃってはいけません。めっですよ」
寂しさも不安も、我慢すればいい。問題なのは、ふたりに負担をかけてしまうこと。ナナリーの表情が曇っていたら、きっとこの人たちは頑張り過ぎてしまう。
だから、ナナリーは平気な顔をして微笑むのだ。
「お兄様はライさんやスザクさんを見習って下さい。お二人もお忙しいのに、授業はちゃんと受けていると聞きました」
「要領が悪いだけさ」
「もう、お兄様ったら」
慣れ親しんだ兄との会話に、重い気分が溶け込んでいく。
こうしているうちに、世界を取り囲む辛いことを忘れていくのが、何年も続いてきたナナリーの生活だった。
そこにふと、
「──ナナリー」
ライの声が割り込んだ。
平坦な声のようでいて、名前の呼び方ひとつにも、万色の響きがあることをナナリーは知っている。何か改まった話があると、告げていた。
思わず背筋が伸びる。
「はい。なんですか、ライさ……あ」
心臓の高鳴りが、言葉を途切れさせた。
ライの手が、ナナリーの手をやんわりと包み込んでいた。硬く鍛えられた手の平が、暖かい。
一瞬、心を無防備にしてしまったナナリーへと、囁くように問いが投げかけられた。
「……寂しいか?」
──。
いつものように否定しようとして、失敗した。
嘘をついたら見抜かれてしまいそうで、ナナリーは唇を閉じる。それは、自分の特技のはずなのに。
ライは答えを急がせようとせず、ルルーシュも無言のまま見守ってくれていた。
何度も言葉を飲み込んでから、ナナリーはおずおずと口を開いた。
「一人のときは、少しだけ寂しいです」
──嘘。
とてもとても寂しい。胸の中に穴が開いてしまったような気持ちになる。いつから、こんな弱い子に戻ってしまったのだろう。
「でも、お兄様もライさんも、いつも私のことを気にして下さっています。時間が出来ると、会いに来て下さいます。それだけで、十分すぎるほど幸せです」
──少しだけ嘘。
我慢はできるけれど、辛さは消えない。少しでも長く、一緒に居たい。
「だから、私は平気です。それよりも──私のために無理をしていらっしゃるんじゃないか、それが心配で」
──本当。
お願いだから、何よりもご自愛を。壊れた身体は、もう元には戻らないから。おふたりがいなくなってしまったら、世界が壊れてしまうから。
「……そうか」
ライの手が、最後に軽く握り締められ、離れていった。
途端に寒々しい心地になり、ナナリーは両手を重ね合わせる。全然暖かくなかった。
ライの言葉にほだされて、つい出過ぎたことを言ってしまったかもしれない。返って物欲しげに聞こえてしまったのでは──
上手く笑えなくなってしまい、ナナリーは顔を俯ける。
ライとルルーシュが視線を交わしている気配がした。
さぞかし始末に困っていることだろう、心の弱い子供に振り回されて。
(……謝らないと)
笑わないと。
開きかけた口を、ライの言葉が塞いだ。
「ナナリー。もうしばらく、先の話になるが……今みたいに家を空けるのは、終わりにしようと思っているんだ」
はっとして顔を上げた。
目蓋の向こうに、ライの瞳を感じた。
「その後は、学園に正式編入させて貰おうと思っている。ミレイさんには以前から勧められていたし、良い機会だ」
「あの、それって……?」
呆然としたまま、口だけが質問を吐き出していた。
「まあ、先々のことまでは分からないけど。最初にするのは、ナナリーと一緒に居る時間を、増やすことだな」
「あ……!」
思いもよらない福音だった。
何度、そうなったらどんなに素晴らしいかと夢想しただろう。
爆発する歓喜に喝采を上げかけて──胸に差し込まれる違和感に、笑顔が萎れていった。
「ナナリー?」
ライが困惑した呼び声をあげた。
散々に逡巡した末、ナナリーは思い切って応えた。
私怨
「でも……ライさんは、ご自分にとって大事なことをなさっているのでしょう? 記憶だってまだ戻っていないのに……もし、私のために止めてしまうなら。そんなご迷惑、かけられません」
言い切るのには、少なからず勇気が必要だった。
本当に良いのかと、弱い心が囁いている。お前は馬鹿なことをしているぞ。黙っていれば、願いがかなうのに──
それでも、聞かずにはいられなかった。重荷になんてなりたくなかった。重すぎる荷物は、いつか捨てられてしまうかもしれない。
率直な彼にしては珍しく、ライは返す言葉を選んでいるようだった。
ルルーシュも、何か言いたげに身じろぎしている。
兄が痺れを切らすより早く、ライがゆっくりと話し出した。
「確かに、今していることは僕にとって大事なことだよ。僕は必要とされているとも思う。でも……僕にはもっと大事なことがある。過去より、今と未来に目を向けたいと思えるようにもなった」
普段はあまり内面を明らかにしないライの、率直な告白。ナナリーは、一字一句聞き漏らすことのないよう、懸命に耳を澄ます。
「だから、僕は僕のために、居場所を変える。学園に通ったり、普通の生活を楽しんだり……ナナリーと一緒に、折り紙を折ったりするためにね」
「……っ」
嬉しすぎる言葉に、勇気が萎えかける。一生懸命、奮い立たせる。
ナナリーはライへと左手を伸ばし、お願いをした。
「もう一度、お手を……」
「……ああ」
すぐに、温もりが手を包み込む。すがりつき、懇願するような気持ちで、聞いた。
「本当に……無理はして、いないのですね? ライさんがしたいことを、するためなのですよね?」
「そうだよ、ナナリー」
ライの声色は、いつもにも増して真っ直ぐで、
──嘘じゃない。
ナナリーの全身からどっと力が抜け、安堵に満たされる。そして、歓喜が湧き上がってきた。
こんな大それた願いがかなってしまうなんて!
脚が動いたなら、飛び上がって喜んだに違いない。
代わりに両手を動かして、ナナリーは何度もライの手を握り締めた。
「良かった……嬉しい、嬉しいです、ライさん。ありがとうございますっ」
「お礼を言われるようなことじゃないよ。したいことをするだけなんだから」
「それでも、ありがとうございます。だって私と」
私と?
感激のまま言葉を吐き出していたナナリーは、ふと大変なことに気が付いた。
自分のやりたいことをするために、ナナリーと一緒に居てくれる?
それはつまり、ひょっとすると。ライにとって一番大事な──
「ナナリー?」
「は、はいっ。考えすぎですよね、学園もあるんですし」
びくんと震えて、ナナリーは首を振った。
ライは「ん?」と訝しげなだけで、ナナリーの動揺の理由になど気づきもしないようだった。こういうところは、出会った頃とあまり変わっていない。
ちょっとだけ恨めしい気持ちになり、そんなものを吹き飛ばす程に心は浮き足立っていて、ナナリーはライの手をもう一度ぎゅっと握り締め「ゴホンゴホン! ん、んー、ゴホン!」とルルーシュが咳払いを連発した。
紫煙
ライとふたり、ぎょっとしてルルーシュに顔を向ける。
ルルーシュは強張りを押し隠した声色でやたらと早口に、
「ナナリー、紅茶が冷めているんじゃないか。お代わりはどうだい、ほら淹れなおした。同じ場所に置いておく、気をつけて飲むんだよ。せっかくだからライも飲むといい」
「は、はい。ありがとうございます?」
「まあ、ありがたく頂くが」
言われるがまま、ナナリーは指先でカップの位置を確認しようとする──ライの指に絡み付いている指先で。硬直。「コホンコホン!」と再び兄の咳払い。
「ごめんなさいっ」
耳たぶまで熱を吹き上げながら、ナナリーは慌てて手を離した。
「手ぐらい、いくら繋いで貰っていてもいいけど」
「そ、そうはいきません」
確かに、ライと手を取り合うのはそう珍しいことではなく、折り紙をするときなどは手の平を重ね合わせることもざらで──でも、力強く指を絡め合ったのは、初めての経験だと思うのだ。
横で、兄が苦々しい表情を浮かべている気配を感じて、恐縮する。
今後は手を繋がないようにと言いつけられてしまったら一大事だ。
ナナリーは、何もかもまとめて勢いで誤魔化すことにした。
「で、でも、良かったです! 正式編入が決まれば、生徒会の皆さんも、きっと喜んでくれます! さっそく、ミレイさんにご報告しないと」
「相談はしないといけないが……いくらなんでも気が早いよ、ナナリー。私事の引継ぎもあるし、今すぐ編入とはいかない。実現するのはもうしばらく先になるな」
「あ、そうですよね、私ったら。先方のご都合もありますものね」
「うん。責任者みたいな立場の人は、快く……この上なく積極的に許可してくれたが。だからといって、好き勝手にはできない」
「はい。どうか、悔いのないようになさってください」
「そうだな。ここに腰を落ち着けるなら、皆とは今後、あまり会うことができなくなる。僕に残せるものを、より良い形で残しておきたい」
感慨深げな台詞の一部に、ナナリーは引っかかるものを感じた。
(……ここに居ると、会えなくなる?)
単に付き合いが薄くなる、という以上の含みがないだろうか。
せっかくの機会だ。出来るだけ遠回しに、質問を投げてみる。
「お知り合いの方々は、お引越しをなさるのですか?」
返答よりも早く、ルルーシュの声が飛んできた。
「ナナリー。人のプライバシーに踏み込むのは、あまり感心しないな」
たしなめる口調は柔らかかったが、ナナリーは身をすくめてしまった。
ルルーシュがナナリーに注意をすること自体、非常に珍しい。ナナリーにとっては叱責されているに等しかった。
「ライの事情は知っているだろう? 人には言いたくない話だって……」
「僕は構わない」
「なっ……だがな、ライ」
ライの言葉はルルーシュの意表をつくものだったようだ。
ずいぶんと動揺しているルルーシュには頓着せず、ライが告げた。
「僕がお世話になっているのはね。『向こう側』の人たちなんだよ」
「向こう側……ということは」
租界に生きる人間は、その言葉が何を指すのか、感覚として理解している。ナナリーのように、その光景を目にすることができなくても。
壁の、向こう側だ。
「日本人の方々、だったのですね」
驚きと納得を、同時に噛み締める。
ライが今まで口にしなかったはずだ。
ミレイの庇護下にあるとはいえ、IDを持たない記憶喪失の少年がゲットーに出入りしていると知られれば、いらぬ誤解を招く可能性がある。
自由な校風を誇るアッシュフォード学園でさえ、日本人への偏見を持つ者は決して少なくない。ましてや、今はエリア11全体でレジスタンス活動が活発化している時期だ。
話が歪んだ形で外部に漏れでもしたら、政庁は並々ならぬ関心を示すだろう。
それに、ゲットーが様々な意味で危険な地域であるのは事実なのだ。日本人に親しみを感じているナナリーでさえ、今後はライの脚が遠のくと聞いて、少しほっとしていた。
もちろん、個々の日本人についての話は別だ。ライが信頼しているのだから、お付き合いしている人たちは、善良な方々に違いない。
と、ナナリーは日本人という言葉が指し示すことに気が付いて、はたと手を打った。
「あっ。日本人の方々ということは、もしかして?」
「例の特区絡みだよ」
「まあ!」
思わぬ縁に、感嘆の息が漏れた。
行政特区日本。
ブリタニアという国の中に、限定的ながら日本という国を復活させ、日本人とブリタニア人が平等に生きる場所を作り出そうという政策。
賛否両論を抱えつつも、参加希望者は十数万を超えてなお増加を続けており、設立式典も間近に迫っている。
慢性的なレジスタンス活動に悩まされるエリア11、引いてはブリタニアの植民地運営にとって、革新的な解決策になるかもしれない新たな道だ。
そして、その設立宣言を行ったのが、エリア11副総督である皇族、ユーフェミア・リ・ブリタニア。
ナナリーの──ナナリー・ヴィ・ブリタニアとルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの姉妹である、心優しい少女だった。
「お知り合いの方々も、ユフィ姉様の特区に参加されるのですね」
自慢の姉の話題に、ナナリーは身を乗り出してしまう。
ナナリーたちがブリタニア皇族であることを知る者は、ほとんどいない。ライは、ユーフェミアについて気軽に話すことのできる、数少ない『身内』なのだ。
ライは考え込むような沈黙を挟んでから、力強く言った。
「──正式に決まってはいないけど、僕はそうなるだろうと思っている。実現すれば、僕の仕事も一段落というわけだ」
「そうですか……ユフィ姉様のおかげで」
ナナリーの胸に、じんわりとした暖かさが広がっていった。
ユーフェミアの行動が、世界を変えようとしている。それはナナリーにとっても大きな喜びだったが、それ以上に胸を震わせるものがあった。
ユーフェミアの善意が、苦しんでいる日本人を助け──それが回りまわって、ナナリーに大きな幸せを運んでくれた。その連鎖にナナリーは感じ入る。
ひとりの少年が、一日の過ごし方を少し変える、それだけのこと。でも、ナナリーにとっては何にも代えがたい天恵なのだ。
(世界は、繋がっているのですね。ユフィ姉様)
狭い箱庭の中で生きてきたナナリーには、初めての体験とも言える幸せな実感。
それを与えてくれたのは、ユーフェミアひとりの力によるものではないだろう。彼女の隣に立つ少年も、大きな支えとなっているはず。
四円
「上手く、いくと良いですね。ユフィ姉様と、スザクさんの夢」
「そうだね。スザクの努力も、報われて良い頃だ」
枢木スザク。ユーフェミアの騎士で、ナナリーとルルーシュの幼馴染で、ライの友達。
あの人も、ずっと昔からナナリーを守ってくれていた。
スザクがいなければ、ナナリーはずっと、ルルーシュの愛に溺れて閉じ篭ったままでいただろう。スザクはナナリーに、他人と触れ合うことを思い出させてくれた。
多分、誰かを好きになることを教えてくれたのも、スザクだ。
今のナナリーに寄り添ってくれる人のことも、スザクがいなければ特別だと思えないままだったかもしれない。
逆に、もし記憶喪失の少年が現れなければ、ユーフェミアの傍へと遠ざかっていくスザクを、ナナリーは寂しさに包まれて見送ることになっていただろう。私にはお兄様がいるからと呟き続けながら。
ナナリーの『今』は、こんなにも多くの奇跡と善意が作り上げてくれているのだ。だから今度は、それを与えてくれた人たちのもとに、幸福が訪れて欲しいと思う。
そのために必要だとされていることを、ナナリーは口にした。
「黒の騎士団の方々にも、ぜひ参加して欲しいです。色々と問題もあるでしょうけど……たくさんの人が亡くなるよりは、ずっと良い道を選べるはずですから」
黒の騎士団。
仮面の男ゼロに率いられた、弱者の救済と日本解放を謳う抵抗組織だ。大きな戦果とそれに見合った血を流す彼らを、支持する日本人は多いと聞く。
主張は理解できるが、やり方は間違っていると感じるのは、ナナリーが恵まれた立場にいるブリタニア人だからなのだろうか。
ユーフェミアの行動が、日本人の目にはどう映っているのか、生の意見を聞きたくなった。
「ライさん。日本人の方々は、特区のことをどう感じていらっしゃるのですか?」
「色々だね。手放しに喜んでいる人から、疑っている人まで。でも、多くの人は可能性を感じている。この国の、未来を変えるかもしれないと」
「可能性と、未来」
琴線に触れる言葉だった。
まさに、ナナリーを取り巻く善意が運んでくれたものではないか。
「ゼロは……どう思っているんでしょう。そこに未来を見ては、くれないのでしょうか」
「彼は日本人に責任を持つ立場の人間だからな。理想的な未来像だけを追うわけにもいかない。特区参加の条件には、武装解除が含まれる。彼らにとって、ブリタニアは憎むべき敵だ。敵を信じて両手を上げるのは、難しいことだろうね」
「でもそれは……はい」
反論しかけて、そんな資格はないと思い至る。
ナナリーの人生も、決して平坦なものではなかった。それでも、一番大事なものはいつも手元に残されてきた。
兄の庇護のもと、暖かく守られ続けてきた自分に、全てを奪われた人々の思いを否定することなどできない。
テーブルに沈黙が降りた。
静けさの中、ライが深く気息を整える音がナナリーの耳朶を打った。その場違いなまでの力強さに、ナナリーは気を引かれる。
呼吸によって溜め込まれた力は、言葉となって放たれた。
「──ルルーシュ。君はどう思う? ゼロは、特区に参加するかな」
「……!」
ルルーシュが一瞬、息を止めた。
動揺を受け止めた椅子が、床を擦る耳障りな音が響く。姿勢を整える気配。細く息を吐く音。
「……さあ、俺に聞かれてもな。レジスタンスの親玉の判断なんて、分かるわけがないだろう? 会長の考えすら理解不能なんだから」
冗談めかした台詞の中に、苛立たしげな声色を感じて、ナナリーは眉をひそめた。
そういえば、ルルーシュは日本人の話が出たときから極端に口数が減っていた。つまらない偏見を持つような方ではないのに、どうしたのだろう。
「私見で構わないよ。分析は得意だろう?」
「やめよう。お茶を飲みながらする話でもない」
「──いえ、お兄様。とても興味深いお話だと思います」
自分の口から飛び出た台詞と語調の強さに、ナナリーは驚いた。
兄らしくないピリピリとした空気に怯えてすらいたのに、考えるよりも早く舌が動いたのだ。
まるでルルーシュが、ユーフェミアを無視したがっているように感じたからかもしれない。
もちろん、ルルーシュはテロリストの話題を避けようとしただけだろう。でも、この三人が揃っている今以外に、ユーフェミアと特区の話に踏み込む機会があるだろうか。
妹の横合いからの一声は、ルルーシュにとっても意外だったらしい。毒気を抜かれたような声が返ってくる。
「ナナリーが政治に興味を持っているとは知らなかったな」
「ユフィ姉様とスザクさんのお仕事ですもの」
「まあ……そうだね。そういう意味では、俺も興味はあるよ」
言いながら、ルルーシュの意識はナナリーではなくライに向いているような気がした。ライも無言のまま、ルルーシュを見つめているのが分かる。
やがて、ルルーシュが嘆息して笑みをこぼした。多分、渋みの強い苦笑いだ。
「分かったよ、ナナリー。もう少し、ライの話に付き合ってみようか」
「ありがとうございます、お兄様」
ナナリーも肩の力を弱めて、ほっと息をついた。差し出がましい口を利いてしまったのに、優しい兄は受け入れてくれたようだ。
「僕も感謝するよ。ここまで突っ込んだ話は滅多にできないからな」
「──気にするな。たまにはこういう議論も良いだろう」
ナナリーへの対応とは裏腹に、ルルーシュとライの会話には鋭い響きが埋め込まれていた。
軽い口調は見せかけで、互いを探り合うような強い意思が込められているのが、はっきりと聞き取れる。
ふたりが本気でチェスを打つときに似た、張り詰めた知性の圧力が広がり、ナナリーの身体はまた強張った。
最初の一手が打たれる。
「質問を返すようで悪いが、ライの意見はどうなんだ? お前のことだ、自論は用意しているんだろう」
「参考にしてくれるのか。それは、迂闊なことは言えないな」
「俺はいつでも、お前の意見を重要視してきたつもりだが?」
「今回もそうなるように努めよう。……僕には、ゼロがどう思っているかは計りきれない。だから、あくまでも僕個人の意見として言わせてもらうよ」
「十分だ。聞こう」
「ゼロは、万難を排してでも特区に参加すべきだ。この機会を逃してはならない」
「──ほう?」
ルルーシュのものとは思えない、低い声が値踏みするように響いた。
初めて耳にする、ナナリーの知らない兄の声。得体の知れない誰かが取って変わったような錯覚に、肌が粟立った。
支援
「ずいぶんと強く主張するな。根拠を聞かせてもらおうか」
「とどのつまり、ブリタニアという大国と戦い続けるのは、日本にとって荷が重すぎる。ブリタニア軍を追い出せば全てが収まると勘違いしている日本人も多いが、話はそう簡単じゃない。
戦線が広がりすぎているとはいえ、ブリタニアには日本をたやすく押し潰せる戦力が揃っているんだ。恒久的な独立を勝ち取るのは、容易じゃない」
「正論だが、ゼロも馬鹿じゃない。その点は十分に考慮しているだろう。ゼロの発言からは、日本の解放と並んで、ブリタニアによる支配体制への反抗という行動理念が強く窺える。
何らかの方策を立てていると考えるべきだ」
「たとえば、日本国内を制圧した上での、中華連邦やEUを巻き込んでの大連合、か?」
返答までには、少しの間があった。
「──まあ、そんなところだろう。ブリタニアは世界を敵に回しているんだ。独立の機会を窺っているエリアも、この国だけじゃない。
世界規模での反ブリタニア連合。意外と現実味のある話だと思うけどな」
「否定はしない。だが──その手段は、日本と黒の騎士団にとって、流され続ける血に見合った結果をもたらすのか?」
「完全なる独立と、ブリタニアの支配下における限定的な特区。そこだけを見れば比べることすら馬鹿馬鹿しい。
……ライ、そろそろ小手調べは終わりにしないか。お前だって一般論を語りたいわけではないだろう。俺は別に、特区構想を頭から否定するつもりはない。
ブリタニアにとっては上手い手だし、黒の騎士団にとっても利用する隙が残されている。
やり方次第では、痛みわけの形に持っていくことも……いや、少し話が逸れたな。その先はゼロ本人が考えることだ」
思い出したように言葉を切り、ルルーシュは紅茶で喉を潤した。
釣られるようにして、ナナリーもお茶を飲む。ほんの少しの間に、緊張で喉が渇ききっていた。
他人に聞かれたら大事になりかねない話を、ふたりはしている。危うさを感じても、無知なナナリーでは傍観する以外にないのが、歯痒かった。
「……本題に戻ろう。今の話は、少し頭の回る人間なら、誰でも把握できる程度のものに過ぎない。お前なら分かっているはずだ。
本質的な問題は、ただひとつ。それは──」
「相手がブリタニアであるという事実、そのものだ」
きっぱりと言い切るライに、ルルーシュも低い声で同意する。
「そうだ。特区の構想そのものは美しい。だが、所詮はブリタニアが打ち出した制度だ。取り込まれた挙句、全てを奪われる可能性も否定できない。
いや、事実、ブリタニアはそうしてきたんだ。俺とナナリーは、それを誰よりも良く知っている」
ナナリーがはっと顔を向ける先、ルルーシュが怒りを押さえ込んだ声で続けた。
「この点についても、お前とは認識を共有していると思っていたんだがな。ライ、お前がそこまで特区にこだわる理由は、なんだ」
挑みかかる口調に、威圧しようとする声色。眼光もさぞかし鋭いのだろう。
だが、ライは全く気圧されることなく答えた。最初から打つ手が分かっているときの素早さで、
「決まっている。相手が──ユーフェミア・リ・ブリタニアだからだ。ブリタニアではない。ユーフェミアと手を結ぶんだ」
「な……」
ルルーシュは絶句した。
ナナリーも驚いている。人伝にしかユーフェミアを知らないライが、ここまでの信頼を露にしていることに。
ユーフェミアの名前が、鍔迫り合いのようだった議論の流れを大きく動かした。
ルルーシュの空気が乱れ、弾ける。
支援
さるかな。支援はできるけど、今からじゃ手遅れか。
・1時間に投稿できる数は10レスまで。それを超えると規制対象に。
↑これですな
今からするなら↓
・規制されるのは2人まで。身代わりさるさん2人で、00分を待たずにリセット。
あと、15分程度だし身代わりになるのにも
ちと出遅れましたな
T.Y..卿
20分後くらいに、また来ます。
まだまだ、続くなら代理投下スレの活用もお考えください。
「何を馬鹿なことを! ユフィのことは、お前より何倍も良く知っている。だが、いったいどれだけの人間が特区に関わると思っているんだ。全てがユフィの理想通りに進む可能性などありえない!」
「それを何とかしてみせるのが、ゼロの役割だろう」
「なに?」
「ゼロは奇跡を起こす男だと聞いている。そもそも、ブリタニア相手に一抵抗組織が戦争をしかけようという発想からして馬鹿げているんだ。
さきほどの反ブリタニア連合だって、普通に聞けば机上の空論だ。
だが──必要ならば、ゼロはやるだろう。奇跡を起こして」
「……」
「なら、特区を利用してブリタニアを崩すぐらいの芸は、見せてくれないと困る。この一手は重要な一手ではあるが、そのまま勝敗が決してしまうわけでもない。
肝心な点は、短期的な損得勘定以外にある。この先の戦いにおいて、ゼロと組むに値する人物が、どこに存在しているか。それこそが重要だ。
──僕は、君とナナリー、スザクから、色々な話を聞いたよ。ユーフェミアは……君の妹は、ゼロと共に歩む資格がある人間だと、僕は思う」
最後にまたユーフェミアの名前を出して、ライは言葉を締めた。全てを言い終えたと示すように、彼の雰囲気が静かなものへと変わる。
ナナリーは、当惑していた。
つまり、ライは──戦略とか、政治の話は全て後回しにして。相手がユーフェミアだから手を組めと、そう言っているのだった。
だが。
(ゼロはユフィ姉様のことをそこまで信頼してくれるでしょうか、ライさん)
どうしても腑に落ちなかった。姉を高く評価してくれるのは嬉しいが、論理的なライらしくない強引な主張だと思う。
ルルーシュも同じように感じているのではないか。おそるおそる顔を向けると、兄がぼそりと呟いた。
「……お前まで、ユフィと言うのか」
あまりにも冷たい響きに、一瞬、自分が怒られたのかと思った。
もちろん、ルルーシュの矛先は妹ではなく、親友であるはずの少年に向けられていた。
「お前の言うことは、いつも正しいよライ。その通りだ。特区は利用するに値する構想で、ユフィは善良な……ひたすらに善良な娘だ。ただそれだけで、人々を引き込んでしまうほどに」
ライは応えない。
ルルーシュの声が熱を帯びる。
「だが……今まで踏みにじられてきた人間の思いはどうなる。流された血はどうなる。善悪は関係ない。そこには、流された血があるんだ。犠牲がある」
鬼気迫る声で、ルルーシュは言葉を吐き出し続けた。
怖い声。でも、泣いているような声。流れているのは、きっと鉄の匂いがする液体だ。
「忘れろと言うのか。今から得られるものだけを見て、奪ってきたもの、奪われたものは忘れろと。それは、弱者は強者の恵みを這いつくばって待てということだ。そんなことが許されていいのか。
ユフィはただ、その生まれと善良さだけで、何もかも手に入れようとしているのに!」
兄の、血を吐くような訴え。
ナナリーは──もう、怯えていなかった。
ルルーシュが何に怒っているのかが分かれば、恐れることなど何もなかった。
なぜなら、
(お兄様は……私のことをおっしゃっているのですよね?)
だからルルーシュは、激怒しているのだ。
ひとりは人々の賞賛を浴びて世界を動かし、ひとりは光と脚を奪われて隠れ住んでいる。
同じ生まれ、同じ自分の妹なのに、なぜこんなにも違うのだと。
なら、伝えなければならないことがある。解きほぐしておきたい誤解がある。
「お兄様」
ナナリーは兄と手を重ねた。
そういえば、こうしてルルーシュの手を強く握り締めるのは、久しぶりのことだった。知らないうちに、少しだけ距離が開いてしまったと気がついて、切なくなる。
「ナナリー……ああ、すまない、乱暴な声を出して。ただ俺は」
我に返って狼狽するルルーシュに、ナナリーは微笑んだ。
「今のユフィ姉様は、このエリアの副総督で……色々な人たちの、夢や責任を背負ってらして。そういう立場の方だからこそ、特区が実現できたのは確かなのでしょうね。でも、それだけじゃないと思うんです」
ひょっとしたら、世間知らずなナナリーの思い込みかもしれないのだけれど。
「ユフィ姉様は、例えエリア11の副総督でなくても、皇族でなくても、同じことをしようと決心されたと思います」
「それは……そうかもしれない。そうなんだろう。だが」
もどかしげに声を震わせる兄は、ナナリーのためにどれだけの重荷を背負ってきたのだろう。
あんなに仲が良かったユーフェミアを、まるで敵のように恐れてしまうほど、ルルーシュは何かと戦い続けてきたのだ。
それはとても尊くて、眩しくて、ありがたくて。
でも、少しだけ間違っているような気がして。
「それに、私、信じてるんです。ユフィ姉様は、私たちの幸せを守るために、特区を作ろうとしているんじゃないかって。だってユフィ姉様は、この学園で……私たちの居場所で、あの宣言をなさったのですから」
「……!」
ルルーシュの手が震えた。心の震えも、ナナリーには感じ取れる。その震えに負けないで、同じように信じてもらえればと願う。
あの、特区宣言がされた学園祭の日。
ナナリーは、ユーフェミアと数年ぶりに顔を合わせた。ナナリーのために何か出来ることを、そう申し出るユーフェミアに、ナナリーはこんなことを言ったのだ。
『大事な人ができたんです。半人前の私に、とても良くしてくれる、優しい人です。私は、お兄様とその人と一緒に暮らしていければ、それだけで幸せ。今がずっと続いていけば、それだけで』
ユーフェミアは、驚いたように口をつぐんでから、とても優しい声で笑ってくれた。
『恋をしているのね、ナナリー』
ナナリーの顔は、きっと真っ赤になっていただろう。
もちろん、世界の中心に自分がいるだなんて思わない。ユーフェミアだって、ナナリーのことだけを考えて決心したわけではないはずだ。姉の強さの原動力は、きっとスザクだから。
でも、ナナリーたちの存在が、ほんの少しでも何かの後押しになれたのなら、それはとても、誇らしいことだと思うのだ。
「お兄様。お兄様が育ててくださった、ナナリー・ヴィ・ブリタニアは……今、とても幸せなんです。嘘じゃないですよ。本当です。お兄様と一緒に居られて、いつでも幸せでしたけど……ユフィ姉様が、大きな贈り物までして下さいました」
ちょっとだけライの方を意識して、見ていてくれると感じたから、恥ずかしさを我慢して微笑み返して。
指先で宙を登り、兄の顔に触れながら、ナナリーは伝えた。
「だから、お兄様。そんな顔をなさらないで。お兄様の妹は、ふたりとも笑って過ごしているんですよ? 一緒に喜んでくださると、私も嬉しいです」
「…………」
ルルーシュは何も答えず、それどころか逃げるように顔を離してしまった。
でも、ナナリーは落胆しない。兄は代わりに手を握ってくれたし、何かを堪えるような深呼吸と、鼻を啜る音が聞こえたから。
ナナリーは何も知らない子供の顔で、微笑み続ける。
ルルーシュは、次に口を開いたときには、もう頼れる兄の声に戻っていた。
「──ああ、そうだね。ナナリーの言うとおりだ。俺はちょっと、考えすぎていたのかもしれない。ナナリーとユフィには……いつまで経っても、敵わないな」
「まあ。そんな言い方だと、私とユフィ姉様が我がままばかり言っていたように聞こえてしまいます」
悪戯っぽく笑うと、兄も楽しげに身体を震わせた。
「結構、振り回されたんだから、これぐらいは言っても良いだろう? ──ライ。やはり、お前の言うことはいつでも正しいよ」
「……そうでもない。こちらも、自分の無力さを思い知っていたところだ」
和解の響きに、ナナリーはほっと胸を撫で下ろした。このふたりは、穏やかに会話をしているのが一番似合っている。
「謙遜するな。お前は、ゼロよりもよほどゼロらしい。代わりにあの仮面を被ったらどうだ?」
「遠慮しておく。悪いが、あのコスチュームは僕の趣味じゃない」
「な、なに? いや、多少劇場めいた衣装なのは認めるが、演出効果というものがあるだろう。実際、日本人の支持は圧倒的だ。校内にだって隠れファンがいるんだぞ」
「装いへの支持でないのは明らかだと思うが……」
「ゼロの衣装は、そんなにおかしいのですか?」
「そんなことはないよ、ナナリー。ライは記憶がないからね、センスが偏るのも仕方ないんだ。ナナリーもいつか、目にする日が来れば理解できる」
「……今、とてつもなく失礼なことを口にしたよな」
もう、ゼロの去就については誰も気にしていなかった。
今は、他愛のない会話が、たまらなく楽しい。
この三人で居られる時間が増えるのは、まだしばらく先になるのだろうけども。
ナナリーが居て、ライが居て。そのうちに兄も帰ってきて、いつかはスザクやユーフェミアや、もちろん咲世子や生徒会の皆も加わって。
ずっと一緒とはいかなくても、食卓を囲める日がやってくれば、とても素敵だと思う。
「おっと、もうこんな時間か。そろそろ準備をしよう。ライ、ナナリーを咲世子さんのところまで頼む」
「良いのか、僕が送らせてもらって」
「ためになる講義を聴いたからな、授業料代わりだ。釣りはたくさん貰いたいところだが、それもサービスしてやる。──ナナリー、今日は三人で登校しよう。また後で」
「はい、お兄様」
背後に回ったライが、ゆっくりと車椅子を押してくれる。
廊下に出て、自室へと送ってもらう途中、不意に頭を撫でられた。
「──ありがとう、ナナリー」
「えっ?」
耳元、とても近い距離で囁かれて、びっくりした。
ああ、また心臓が悲鳴を上げている。そのうち、爆発してしまうかもしれない。
「君は……何でも変えてしまうんだな」
「あの、お兄様のことなら、私は何も。言いたいことを言っただけです」
「うん。それでも……君は、世界を変えたのかもしれないよ」
「そんな、いくらなんでも大げさです」
大仰な物言いに、ナナリーはくすくすと笑った。
「世界なんて手に余ります。私には、お兄様のお気持ちを、少しだけ変えるので精一杯」
「──変わったよ。少なくとも、僕の世界は」
「あ……」
ふわりと、ライの香りが身体を包んだ。
ライの両手が、ナナリーの両肩に触れていた。抱き締めるには程遠い、腕を交差させるわけでもない、指先で突くような、軽い軽い触れ方。
それも一瞬のことで、すぐに車椅子は動き出す。
深く考えることではないはずなのに、何も言葉が出てこなくて、沈黙が全く怖くなくて。
咲世子の含み笑いに迎えられるまで、ナナリーはずっと、車椅子の上で小さくなっていた。
はっはっはっ、色々あって1時前に予定分を消化できなかった上、さるのシステムをばっちり勘違いしてました、これは恥かしいorz
まさか本当にチェックメイトしてしまうとは……
ご支援頂いた皆様、遅い時間にご迷惑をおかけ致しました、申し訳ございません。
貴重なお時間をお割きいただき、ありがとうございました。
時間をかけてしまいましたが、今回分の投下は以上です。
もうこんな眠気と戦っていられるか!
私は部屋に帰って鍵をかけて寝るぞ!
それでは、お付き合い頂きまして、ありがとうございました。
>>382 どんまい。
後日、読まさせていただきます。おやすみ〜
GJ!!ナナリーかわいいよナナリーwww
久しぶりに覗いたらこんな大作が投下されていたとは…
次の投下も楽しみにしております。
ライナナ派のオレ歓喜!!
しかし…ナナリーはもちろんのこと、負けず劣らずシスコン兄に萌えてしまったのはオレだけでいいwww
文才の無い身としては本当に羨ましい出来です。
次の投下、待ってますよ。
GJっす!
ライナナいいよライナナ
ロボ魂クラブを今頃買ったんですが・・・
なんでオプションパーツがヴァリスなんだ?
可変ライフルとか分離ブレードとかがクラブの魅力なのに・・・と不満を抱く今日この頃
ちゃんとゲームやったか?
ロイドの説明画面では可変ライフルだったが
実際使用している場面のイラストではヴァリスだっただろ
何・・・だと・・・?
じゃあ説明時のあのライフル絵はなんだったんだ・・・
そういえば攻略本の設定画みたいので説明が可変ヴァリスになってて、
イラストで気づけてなかったから困惑した覚えがある
>382
息を詰めて読みました。特区の是非を論じ合うふたりの緊張感が最高。
事の本質を理解して真っ向から切り崩しにかかるライ、
でも頑ななルルーシュの牙城に突破口を開くのはナナリーで、それがとても彼女らしいやり方で。
ナナリー視点、良かったです。
読んでて、目隠しをされて周りの気配を真剣に探っちゃう感じ。
ナナリーの一喜一憂はすごい可愛いな
面白かった!
また続き?を拝読できるの楽しみにしています
>>389 前向きに解釈するなら、設計中にヴァリスのフレームを流用するように仕様変更されたとか?
ライ機にランスロットの予備パーツを組み込む関係とかで
コスト削減のために既存のパーツを流用するなんて非常によくある事
突然だけど、ライってサルファのクォヴレーに似てるよね。あれも記憶喪失の主人公だし
おかげでライの声は脳内では秦勇気氏の声で再生されてしまう
7 名前: 名無したんはエロカワイイ [sage] 投稿日: 2008/10/30(木) 21:49:44 ID:NQaoe+yD0
○前スレなどに出たライに似た境遇のゲームキャラ
@クォヴレー・ゴードン(PS2、第三次スーパーロボット大戦αのリアル主人公)
記憶喪失、最後に仲間達から去っていく、人格が変わる
髪の毛の色と髪型、あとパートナー的存在にヴィレッタ渡辺が演じるキャラがいて、ライバル(笑)にオレンジ成田がいる。
Aカイト(SS、機動戦艦ナデシコThe blank of 3yearsの主人公)
記憶喪失、機動兵器での操縦技能がエース級、戦闘指揮も可能。洞察力・推理力も高い、しかし女性に弱い
基本的に礼儀正しく真面目、やや熱血傾向あり
とあるルートを進むと仲間達から去り、眠りに着く
何だかのキャラに似てる(笑)とか要らんわ…ライはライだろ、そのキャラじゃない
つーかぶっちゃけそのキャラ好きじゃないから不愉快なんだが
正直そのキャラ厨の擦り寄りにしか見えんから止めてくれ、ライ好きが全員そのキャラ厨だと思わないでくれ
二行目いらん
>>396 スレの治安的には、お前さんのように過剰に反応する輩もいらんぞ
ライはライだが、実際キャラデザや設定で似通ってる部分はあると思うし、事実久保自体俺は嫌いじゃない
気持ちは分かるが、気に入らないならスルーすればよし。ライ好きが皆脊髄反射するような連中だと思われても困る品
いやお前ら両方ともスレに要らんわ。荒らすだけなら消えてくれ。
その無関係などうでもいいキャラをお前らが好きだろうと嫌いだろうとどうでもいいんだよ。全く興味ないんだよ。
俺はライスレの頃からずっと別に似てるとは思わんかったしライファンとしては不快だったがスルーしてたんだよ。
スルー出来ずにいちいちスレチ話題に触ったり気に入らない奴に自分棚上げで注意したり、
ライ好きがこんな奴らばかりだと思われたくないわ。
そもそも二年以上経過してサイクルの早い御時勢で、ライ好きがどれだけ残ってるやら。
新作で息を吹き返すのを待つしかないな。
似てる似てないなんていらん考察だと思うが、どうしてもというなら
まずSSスレじゃなくて2ちゃんから移動したしたらばのライスレでやるべき
そうだね。
雑談するなとは言わないけど、これはもうキャラスレでする類の話だろう。
まあ、あちらで歓迎される話題かというと疑問な気もするけど……
>>399 とかいって結局自分もスルーできてなんかいないじゃん
そんな長文の大言壮語吐く前にまず自分が実践してみせなよ
ぶっちゃけお前も上の連中と同類
>>403 そういうお前もスルー出来てないな、ツッコミ待ちか?ウザいんだが
荒らしたいだけなのか知らんが、一日前に終わっている話をわざわざ蒸し返して
しかも煽ることしかしていないお前が傍から見たら一番のゴミクズに見えるわけだが
まあその辺を理解できる知能があるなら消えてくれ、「スルー」しろ
投下できないよぅ…。
>>1に代理投下スレが紹介してありますが?
空気の話かな?
空気とネタと規制…。
また規制?
空気と規制はともかくネタは自分でなんとかするしかないなw
ネタは投下以前の問題だな
こんばんわ。前作の続きを投下します。
【メインタイトル】コードギアス 反逆のルルーシュ L2
【サブタイトル】〜 TURN04 太平洋奇襲作戦(中編)〜
【 CP 】無し
【 警告 】●根幹は黒騎士カレンルートを準拠してのR2本編介入ものですが、展開の所々にオリジナルな設定と話が混ぜ込んであります。
●王様ライの性格は自分の考えに依存してます。苦手な方はご注意下さい。
●今話はオリジナルの機体が出ます。結構なチートスペックですので、苦手な方はご注意下さい。
――――――――――――――――――――――
コードギアス 反逆のルルーシュ L2
? TURN04 太平洋奇襲作戦(中編)?
――――――――――――――――――――――
太平洋の大海原。その上空を一隻の航空艦が飛行していた。
その艦、アヴァロンのメインブリッジでは、手元のコンソールパネルに視線を落としながら眉間に皺を寄せたセシルが常人には近寄り難い雰囲気を醸し出している。
そんな只ならぬセシルの雰囲気に気付いたロイドは彼女の顔を覗き込んだ。
「どうしたの? えらく不機嫌みたいだけど?」
しかし、彼女が顔を上げる事は無かった。
「あれ、どうにかならないんですか?」
「あれって?」
ロイドは皆目見当がつかないようで首を傾げてみせると溜息一つ、小さく肩を落としたセシルはやっと顔を上げるとそっと後方へ視線を移す。
彼女の視線の先に居たのは、足を組みブリッジに据え付けられた椅子に悠然と腰掛けると、手に持った書類に目を通す仮面の男、カリグラの姿だった。
普段、腰に据えている剣は彼が嚮団に居る時と同じ位置、椅子の左側に立て掛けてある。
それを見て、ロイドはやっとセシルの不機嫌な理由を理解したのだが――。
「どうにもならないでしょ」
考える素振りなど微塵も見せずに言い放つロイドに、セシルは心底呆れた表情を向けた。
「どうにもならないって……ロイドさん。この艦はどなたの持ち物でしたっけ?」
「あれ? 忘れちゃったの? シュナイゼル殿下だけど?」
「分かってます!」
飄々としたロイドの態度に業を煮やしたセシルは思わず声を荒げたが、慌てて口を塞ぐと恐る恐るといった様子で振り向いた。
しかし、カリグラは相も変わらずに我関せずといった様子で書類を捲っている。
ホッと胸を撫で下ろしたセシルは囁く。
「あそこには、本来そのシュナイゼル殿下や他の皇族方しか座れない筈ですよ?」
「じゃあ、それを彼に言える? 僕はとてもじゃないけど言えないねぇ」
「ハァ……それは――」
締まらない笑みを浮かべるロイドを見て、深い溜息と共にセシルが苦言を呈しようとした時、二人の元に血相を変えた兵士が走り寄って来た。
「ロ、ロイド伯爵ッ!」
「何々? どうしたの?」
尋常では無い様子を見てもなお、嬉しそうに瞳を輝かせるロイド。対照的にセシルは不安そうに兵士を見やると――。
「新総督を乗せた旗艦より救援要請を傍受しました!」
兵士の報告に悪い予感が的中したのか、セシルは顔を蒼褪めさせた。すると、これにはロイドも僅かばかりに瞳を細めると硬質の声色で問うた。。
「内容は?」
「ハッ! 太平洋上で黒の騎士団の奇襲を受け――」
逼迫した様子で語る兵士。しかし、その言葉は最後まで語られる事は無かった。
「格納庫ニ繋ゲ!」
書類を放り出したカリグラは勢い良く立ち上がると、命を受けた通信兵は慌てて回線を開く。
「…ど、どうぞ!」
一瞬の間の後、ブリッジにある大型モニターにギルフォードの上半身が投影された。
「"ギルフォード卿"。黒ノ騎士団ガ現レタソウダ」
開口一番告げられた事実に、ギルフォードは複雑な表情を浮かべた。
『あなたの願望通りになりましたか』
「貴公ノ懸念通リデモアルガ?」
『……確かに』
思わぬ指摘だったのか、苦笑するギルフォード。
「今頃"アプソン"ハ貴公ヲ連レテクレバ良カッタトデモ思ッテイルダロウナ」
そう言ってカリグラは僅かに双肩を揺らすと言葉を続ける。
「出撃セヨ。指揮ハ私ガ執ル」
『貴卿が、ですか?』
ギルフォードの表情が露骨に曇る。
すると、それを認めたカリグラは不満げに腕を組むと胸を反らした。
「問題デモ?」
『……Yes, My Lord』
ギルフォードは躊躇しつつも、直に肯定の言葉を告げると通信を切った。
カリグラは通信が切れると同時に立て掛けてあった剣を手に取り腰に据えると、足早にブリッジを後にしようとする。
しかし、そんな彼の歩みをロイドの言葉が引き留めた。。
「あのさぁ――」
「止メテモ無駄ダゾ?」
「まさか。こっちとしてもエナジーウィングの実戦データは喉から手が出る程欲しいからね。止める気なんて更々無いよ」
「ちょ、ちょっとロイドさんっ!!」
ロイドの嬉々とした口振りに慌てるセシルを無視して、その真意を今一つ読み切れないでいたカリグラは問う。
「デハ何ダ? 手短ニ済マセロ」
「紅い機体には気を付けてね」
「……"紅蓮二式"ノ事カ」
黒の騎士団。紅い機体。それらの単語に該当するのは彼の知識の中でもたった一つ。
故にゼロの所業を報告書で知っていたカリグラ、もといライは自然とその名を口にした。
しかし、ロイドは意外だとでも言いたげに口を開く。
「あれ? 知ってたんだ。そうそう、その紅蓮だけど黒の騎士団が出張って来たなら、多分居る筈だからね」
「我ガ軍馬ナラバ恐ルルニ足ランダロウ?」
それがどうした、とでも言いたげに言い放ったカリグラはロイドに向き直った。それもその筈。
紅蓮の戦闘能力は、ブラックリベリオンにおいて鹵獲した藤堂達の月下に残っていた模擬戦データや、これまで蓄積したランスロットとの戦闘データと照合する事で詳細に解析済みである。
そもそも、その実力は過去、ランスロットと対等に渡り合った時点で折り紙付き。
そのランスロットが「白き死神」として他国より畏怖の対象となった今、その名はブリタニアのみならずブリタニアと戦火を交える国々にも波及する。
が、それでもそのスペックは第7世代クラス。
更には飛翔能力を持たないという点を鑑みても、第8と第9世代の中間点に位置するトライデントの敵では無い。
ライも当然それは承知していたからだ。
しかし、よもや自機の生みの親である筈のロイドが、何故に「気を付けろ」と懸念を顕わにするのか理解出来なかったライは、押し黙ると返答を待つ。
すると、それを察したロイドはカリグラの言葉を肯定した後、自身の思惑を告げ足した。
「僕もそう思う。それに、唯一紅蓮のポテンシャルを完全に引き出す事が出来た蒼い機体はもう居ないから尚更。けど、それでもあの機体のパイロット、腕はスザク君クラスだからさ。念の為だよ」
「資質ハ"ナイトオブセブン"ニ匹敵スル、カ……何レ"アノ男"トハ殺シ合ウ機会ガ訪レルヤモ知レン。前座ニハ丁度良イ」
「こ、殺し合うって……」
驚愕の表情を浮かべたセシルが呻くかのように呟くと、銀色の仮面が妖しく光る。
「"アノ男"ガ光デアッタノナラ、ソウハナラナイ。光ト闇ハ表裏一体。共存ハ可能ダロウ。シカシ、奴ハ私ト同ジ……イヤ、アレガ立ツノハ"夕闇"ダナ。マサカ気付イテナイノカ?」
「そ、それは……」
セシルは思わず言い淀んだ。
ユーフェミアを失ってからのスザクの瞳は光を無くしたかのように暗く、ラウンズに叙された当初に行われた御前試合ではジノ相手に我が身を顧みない闘いを繰り広げた程だ。
ジノ達他のラウンズとそれなりの親交を持つようになってからは、幾分か光を取り戻しつつあった瞳も嘗てのスザクを知るセシルからすれば十分に薄暗い。
そう、スザクの今の姿は正にカリグラが言ったようにセシルにとって夕闇の中、アテも無く彷徨い歩く幼子のように痛々しいものだったからだ。
しかし、返答に苦慮しているセシルに向けて闇そのモノとも言える存在、カリグラは愉快げに肩を揺らす。
「察シテハイルヨウダナ。マァ、己ノ行イヲ棚ニ上ゲテ、コノ私ヲ非難スル輩ダ。本格的ナ衝突ヲ迎エタトシテモ、何ラ不思議ナ事デハ無イ」
「そんな事は――」
させません!と言いかけたセシルを、しかしロイドが遮った。
「そうなったら、僕としては大切なデバイサーを失う事になるから止めて欲しいねぇ?」
「ロイドさん!! そんな呑気な――」
「ハッ!! ソレハ一体ドチラノ身ヲ案ジテノ台詞ダ?」
「へっ?」
「さぁ? どっちだろうねぇ」
呆気に取られるセシルを横に、惚けてみせたロイドの答えは実際のところ「どちらも」である。
1対1の戦闘では辛くもスザクに。しかし、部隊を用いての戦闘では圧倒的にカリグラに軍配が上がる、とロイドは予想していた。
しかし、誤解の無いように言っておけば、避けれるのであれば避けたいというのはロイドの中でも偽らざる本音だ。
そう、ロイドにとってスザクは優秀なデバイサーであり、それはカリグラに至っても同じだったのだから。
逆を言えば、ラウンズと機情のトップのどちらもロイドにとってはデバイサー扱いだと言う事でもあるが。
当然、カリグラたるライはロイドの心底に有るモノを察した。しかし――。
「……喰エン奴ダ」
仮面の下でライは苦笑混じりに咎めるに留めた。
飄々とした態度を崩さぬロイドに毒気を抜かれた為でもあるが、問い詰めた所でその発言はどうとでも言い逃れる事が出来るからだ。
踵を返したカリグラは再び歩み始める。が、今度は自ずと歩みを止めると思い出したかのように口を開いた。
「蒼イ機体。紅蓮トソレヲ以テ"ゼロ"ノ双璧ト呼ブ、カ。誰ガ言イ出シタノカハ知ラナイガ、嘗テ幾度トナク"ゼロ"ヲ討タントシタ"コーネリア殿下"ノ御前ニ悉ク立チ塞ガッタ者達トシテ、ソノ渾名ハ言イ得テ妙……クハハハハッ! 是非ニ揃ッテ手合ワセ願イタカッタモノダ」
それがよもや自分で自分を褒める言葉であるなど、今のライには思いも寄らない事であろう。
決して叶わぬ言葉を口にしたライは、悠々とブリッジを後にする。
やがて、扉が閉まるとその後ろ姿を見送ったロイドは独り言のように呟いた。
「面白くなって来たねぇ」
非常事態であるにも関わらず、その瞳は笑っていた。
そんなロイドを見て、セシルは深い深い溜息を零すのだった。
◇
旗艦に取り憑く黒の騎士団のナイトメア部隊。
作戦は順調に推移していた。しかし――。
『カレン、紅蓮の調子はどうだ?』
実働部隊の一人でもある杉山。その声は何処か不安げだった。
ここの所の激戦に次ぐ激戦をフルに戦い抜いて来た紅蓮は、元々右腕に問題を抱えていたのだ。
現在の紅蓮に装備されている甲壱型腕装備は、ブラックリベリオンにおいてランスロット・エアキャヴァルリーに破壊された右腕の代わり。
謂わば予備パーツで作られた応急代替でしか無い。
輻射機構は備わっているが、伸縮機構の簡略化や出力・連射力の低下。更には、自動でカートリッジの射出が行えないといった不具合を。
杉山はそれを思慮していたのだ。
しかし、一方でカレンはそんな杉山の思案を吹き飛ばすかのように気丈に振る舞う。
「大丈夫。手動だったらちゃんと動くし問題無いわ」
そう告げた彼女は手近な砲台を一基、輻射波動で破壊してみせる。そして――。
「ね? 安心――」
カレンが通信モニターに映る杉山に向けて笑みを浮かべてみせた時、突然その画面がホワイトアウトした。
「な、何これ? 杉山さん? 杉山さんっ!?」
カレンは慌てて通話を試みるが、画面は何も映し出さない。
それどころか通信機能させも麻痺したのか、スピーカーは雑音を響かせるのみ。
しかし、メインカメラに写る杉山とその部下達が乗った無頼に異常は伺えない。それは紅蓮も同じ事。
それらを確認したカレンは、ホッと一息吐くと周囲を見回す。
藤堂率いる四聖剣メンバーにも同じく動揺が広がっていた。
ちなみに、卜部はラクシャータ達との合流を優先しておりこの作戦には間に合っていない。
カレンは再び視線を落とすと通信モニターを見やる。が、そこは相変わらず白の世界。
だが、3分程経過してカレンがいよいよ故障を疑い始めた時、モニターは突然何事もなかったかのように杉山の姿を映し出した。
「え? あ、あれ?……今のは?」
『そっちもか? 分からない。電波障害の類いだと思うが……』
二人は一様に首を傾げるが、同時に通信機器の故障では無い事に胸を撫で下ろす。それは他のメンバーも同じだった。
そう、彼等は知らないのだ。
大規模な電波障害。それこそ、銀色の暴君が起動した合図だという事を……。
◇
「シールドを展開しても、その中に入っちゃえばこっちのものさ。航空戦力もお終いみたいだし。でも、復帰戦にしてはちょっと物足りないね」
先程起きた謎の障害を気にしつつも、朝比奈は墜ち行く護衛艦を見送りながら余裕ありげに呟いた。が――。
『浮かれていると因幡の白兎になるぞ?』
仙波の諭すかのような口調に朝比奈は苦笑する。
「はいはい、基本に忠実にってね」
そんな二人の通信を聞きながら千葉が口を開く。
「中佐。ゼロは?」
『艦内への侵入は果たしたようだが、その後はECCMの影響か、連絡が取れん』
藤堂が口惜しげな口調で呟くと、カレンがすかさずフォローに入る。
「ゼロなら大丈夫です! 私達もこれから艦内の制圧に――」
『ゼロを信じ過ぎるのもどうかと思うけどね』
『朝比奈。今はそのような事を――』
皮肉を漂わせる朝比奈の発言を咎めようと仙波が言葉を紡いだ時、突如として彼等の間をまるで縫うように緑色の光が三つ、通り抜けた。
刹那、爆音の三連発が大気を伝い彼等のコックピットを震わせた。
『うわぁっ!!』
『くそっ!』
『っ!? やられた?』
同時にスピーカーから響いて来る杉山達の悲鳴に、思わず振り返った藤堂達は愕然とした。
そこには、黒煙を上げる三機の無頼の姿があったからだ。
二機は頭部を、一機は左脚を失っていた。
やがて無頼達は事切れた人形のように、ゆっくりとその場に崩れ落ちる。
『す、済まない! 後は――』
『『も、申し訳ありませんっ!!』』
杉山とその部下二人は、短く詫びるとコックピットブロックをパージ。
射出されたブロックは青海の中に落ちて行った。
藤堂達は杉山達が無事だという事に胸を撫で下ろしつつも、即座に緑色の光が飛来した方向に機首を向ける。
すると、その視線の先にあったのは飛翔する4機のナイトメアの姿。
同時に鳴り響くアラート音。
「ブリタニアからの――」
「援軍!?」
「バカなっ!? 早過ぎるわい!!」
朝比奈を皮切りに、千葉や仙波が驚きの声を上げる。
しかし、そんなただ中にあっても藤堂だけは一人冷静に状況を分析していた。
「いや、方角としては後ろ備え。それにあれは…フロートユニット?」
藤堂が眼前に迫る一団を睨み付けている頃、先頭を飛翔するナイトメアを見たカレンは――。
「そんな! あの機体はっ!!」
バベルタワーで遭遇した、神速を誇ったあの機体に良く似ている事実に驚愕の声を上げた。
◇
藤堂達が迫る機体に敵意を剥き出しにしている頃。
その機体の搭乗者たるギルフォードは感嘆の吐息を零していた。
「よもやあの距離から当てるとは……」
呟いたギルフォードは背後を見やる。彼の視界一面に広がるのは雲の海。
だが、僅かに出来た雲と雲の切れ目にそのナイトメアは居た。
支援
長距離用に銃口を絞り込んだ新型ヴァリスを構えると、2対6面で構成された白銀色の翼に三叉の角を雄々しく広げ、深紅の双眸で艦の翼上に取り付いた藤堂達をまるで獲物でも見るかのようにジッと見据える銀色の機体、トライデント。
しかし、その姿は直ぐに流れて来た雲によって隠れてしまう。
この時点で、藤堂達がその存在に気付く事は無かった。
感嘆しているギルフォードに対して、スピーカーよりデヴィッドの声が響く。
『ギルフォード卿!』
「あぁ、そうだな。さぁ、幕を降ろそう」
我に返ったギルフォードは己に言い聞かせるかのように気を吐いた。
だが、既にその時彼の見据える先には急拵えとはいえ藤堂を中心として右より朝比奈・仙波・千葉が前衛を固め後衛に紅蓮が、といった防御陣形が出来上がっていた。
「あれを切り崩すのは骨が折れるが、さて……彼はどうするつもりか……」
藤堂相手では空を飛べる事は絶対的優位では無い事と、自機の機体特性を完全に把握出来ていない事。
そして、何よりもカリグラの指揮能力が未知数という事も相まったギルフォードは一人愚痴る。
しかしその頃、デヴィッドの駆るグロースター・エアには一本の秘匿通信が入っていた。
『"A2"、仇ヲ討チタイカ?』
「なに?」
『兄弟ノ仇ヲ討チタイカト聞イテイル』
「当然だ!!」
カリグラの問いに対して、先の総領事館での一戦でバートとアルフレッドを討たれていたデヴィッドは怒号を響かせる。
それは普段のカリグラ……いや、ライであったならば決して許しはしない口振り。
しかし、今の彼はそれを聞いても仮面の下で口元を歪ませ『ソウカ』とだけ呟くと――。
『貴様ハ勇マシク戦エルカ?』
続けざまに挑発めいた言葉を紡いだ。
「……何だと!?」
まるでアルフレッド達がそうでは無かったとでも言いたげな問い掛けに、激昂したデヴィッドは操縦桿を握り締めた。しかし――。
『怒ルナ。勇マシク戦エルノデアレバソレデ良イ』
デヴィッドの怒りの一切を無視すると、カリグラはオープンチャンネルに切り替える。
『"A1"ハ直進シ前衛中央ノ機体ヲ狙エ。"A3"、"A4"ハ両脇ニ陣取ル"二機"ヲ牽制。"A2"ハ翼下ニ潜リ込ミ指示ガアルマデ待機シロ』
ECCMの影響をものともしないトライデントのレーダー網には、この空域全ての敵味方情報が手に取るように分かる。
それを証明するかのように、機体のメインモニターには四つの仮想窓が浮かんでいた。
強固なデータリンクシステムを使い、ギルフォード達の機体のメインカメラが捉えている映像も収集していたのだ。
一息で命じ終えたカリグラは、彼等からの返答を待たずして通信を切ると仮面を外す。
「着弾点がズレた……あぁ、気流の影響か」
ライは杉山達を仕留めた狙撃が狙い通りの箇所に当たらなかった原因に思い至ると、直ぐさま手元のパネルを操作する。
「これで5対5だ。さぁ、始めようか」
そうして、望みのデータを手に入れたライが愉悦を帯びた口調で呟くと、レーダーに映るギルフォード達の機体が速度を増した。
すると、その時。
トライデントは雲海の中より一発の弾丸を、ギルフォードの背中目掛けて発射した。
◇
旗艦の後方より、大気を切り裂いて4機のナイトメアが迫る。
「来るよ!」
「分かっている!」
朝比奈と千葉はその内の一機。突出して来るギルフォード機を仕留めるべく己の機体、月下の左腕に備えられた速射砲の照準を合わせる。
が、同時にギルフォードの後方上面よりも2機が迫る。
それらにも対応しようとした結果、照準がブレる事となったがそこは藤堂。
「二人は両翼の敵に対応しろ!! 仙波! 抜かるな!!」
『『『承知っ!!』』』
藤堂は的確に指示を飛ばすと、三人は瞬時に反応してみせた。
しかし、その時出来た僅かな隙を突いてギルフォードの背面に居たデヴィッドが機首を下げる。
気付いた藤堂は再び声を張り上げた。
支援
「船底に潜り込む気か。紅月君! 背後は任せる!」
『はい!!』
「仙波っ!! 来るぞ!」
『お任せを! さぁ来い! 相手にとって不足無し!』
藤堂は迫るギルフォード機を注視しつつも、同時に千葉や朝比奈にも指示を送りながら足下に潜り込んだ機体にも対処すべく周囲を見張る。
仙波機が腰より引き抜いた廻転刃刀を正面に構える。対するギルフォード機もまるで呼応するかのようにMVSを手に取った。
急接近する二機。
そして互いに刃を交えようとした次の瞬間、ギルフォードの機体は一転して急上昇。交戦を避けた。
「逃げるか! 張り合いの無い――」
虚を突かれた仙波は逃がすまいと目で追う。だが……。
『っ!? あれはっ!!!』
『避けろぉっ!!』
千葉と朝比奈。二人の絶叫が仙波の耳朶に触れる。
驚いた仙波が正面に向き直ると――。
「なっ!?」
彼の眼前には緑色の光弾が迫っていた。
それは、先程トライデントが放った一撃。
光弾はギルフォードの機体を死角としていたのだ。
「お、おのれっ!!」
仙波は回避するべく操縦桿を握り締めるが、避け切れるまでの確証は持てなかった。
よしんば避けれたとしても、その場合後方に構える藤堂達にまで危害が及ぶ可能性がある。
咄嗟の判断を下した仙波は、アームブロックの構えを取った。
着弾。
轟音が響き渡った。藤堂が叫ぶ。
「っ!? 仙波ァァァッ!!」
突然の出来事にカレンも思わず振り返ると、飛び込んで来た光景に彼女は思わず息を呑んだ。
視界に映るのは、尋常ならざる程の黒煙を上げる仙波の月下。その後ろ姿だったからだ。
「そんな……仙波さん!!」
「無事か、仙波!?」
『な、何……とか……』
藤堂とカレン。二人の問いに対して、着弾時の衝撃により意識が朦朧としているのか。仙波の声に先程までの覇気は無い。
そんな最中、左隣に陣取っていた千葉は仙波機の惨状を目の当たりにした瞬間、悲鳴に近い声を上げていた。
「酷い…脱出して下さい。その機体ではもう戦えません!!」
千葉の言は当然の事と言える。
仙波の月下は両腕のみならず頭部も吹き飛び、機体前面の装甲も完全に喪失。
更には動力部までもが剥き出しになっており、そこから漏電の為か火花が散っていた。
素人目に見ても戦える状態で無いのは一目瞭然だったのだから。
『し、しかし、装置が作動せん…のだ……』
「っ!? それなら!」
弱々しく口を開く仙波に、一刻の猶予も無いと判断した千葉が刃を振るう。
彼女は機体とコックピットブロックを強制的に切り離すと、駆け寄った朝比奈機がそれをキャッチ。
続け様に千葉は噴煙を纏う仙波機を蹴り落とすと、海面に落ちる只中で機体は激しく爆散した。
『す、済まん…』
「パラシュートは、無事みたいですね。それじゃ、行きますよ」
『ちょ、ちょっと待っ――』
朝比奈はコックピットブロックに損傷の無い事を確認すると、仙波の静止も聞かずに放り落とす。
『ぬわぁぁぁっ!!』
コックピットブロックが仙波の絶叫を纏いながら大海原に吸い込まれていくと、一部始終を見ていたカレンが問う。
「だ、大丈夫なんですか?」
すると、眼下を覗き込んでいた朝比奈が口を開いた。
「……パラシュートの作動を確認。うん。大丈夫」
『朝比奈、お前……』
これには千葉も呆れ顔。
そうこうしていると、敵機が後退する素振りを見せた事に一人警戒の念を怠らなかった藤堂が問う。
「朝比奈、今の攻撃は?」
『俺が相手にしてた機体からじゃありません』
朝比奈が否定の言葉を紡ぐと、我に返った千葉も後に続いた。
『私の方もそうです。むしろ、その後方……あの雲海の中から飛来したように見えました』
「……間違い、無いか?」
『『はい』』
二人からの報告を聞いた藤堂は、口を真一文字に結ぶとレーダー画面を見つめる。
そこには彼等以外では船底に潜り込んでいるデヴィッド機を除けば三機の敵影しか映し出していない。
何故なら、今の月下の索敵範囲はECCMの影響下という事もあり5km四方程度である。しかし、対する雲海までの距離は10km近い。
その事実に藤堂は眉を顰めると一瞬、そんな射手が居る筈が無い、と心中で否定しかけた。
千葉の発言をまともに聞いた場合、それ程の距離があるにも関わらずその射手は撃った事になるのだから。
しかし、一方で千葉の優秀さも藤堂は良く理解しており、簡単に「見間違いだろう」と切り捨てる事も出来なかった。
故に思う。確かに、それは最も旗艦に被害が及ばぬように考慮した射撃だ、と。
上空からの射撃ならば気付かれる可能性は低いが、万が一気付かれた場合、そして避けられた場合は確実に旗艦の翼を傷付けてしまう。
対して、翼上に対しての水平撃ちならば避けられても旗艦に損害を与える可能性は低いからだ。
しかし、それは一歩間違えれば翼どころか旗艦本体にも直撃する可能性がある。
だからこそ、藤堂は思う。並みの精神ならば躊躇する、と。
にも関わらず、その射手はやってみせた事になる。それどころか、戦力を減らす事まで成功させている。
だが、それらは藤堂にしてみれば推察の域を出ない。故に、悩む。しかし、それも一瞬だった。
戦場において絶対という言葉ほどあてにはならないという事を、彼は長い経験から学んでいたのだから。
「分かった。気を付けろ、紅月君」
『えっ?』
「敵は今、目に見えてる数だけでは無いという事だ」
驚くカレンを余所に結論を出した藤堂が注意を喚起すると、補うかのように二人が後に続く。
『最低でも、あと1機は隠れてる可能性が有るって事だよ』
『ああ。そしてそれが事実だった場合、恐らく其奴こそが――』
『『指揮官!!』』
二人の言葉に藤堂は小さく頷きながらも釘を刺す。
「それはあくまでも可能性の問題だが、範囲外に何かが居る可能性が有る事だけは忘れるな!!」
『は、はいっ!』
『『承知!!』』
この時、藤堂達は朧気ながらも気が付いた。
目の前を飛び回る機体に指示を送りながら、この戦場を支配下に治めようとしている存在が自分達の視線の先にある雲海、その中に居る可能性が有るという事を。
しかしこの時、指揮官たる藤堂が思慮した事により彼等の統率は一瞬とはいえ鈍っていた。
当然、それを見逃すライでは無い。
『"A2"、ヤレ』
スピーカーより響く傲慢とも言える口振りに、デヴィットは激憤しそうな胸の内を必死に抑える。
そうして翼下を潜り抜け飛び出した彼は、背面を晒している藤堂達に向けてライフルを構えた。
今、薙ぎ払うかのように一斉射すれば何れかの機体に被弾させる事は十分に可能であった。が――。
「こいつはっ!」
彼は見てしまったのだ。総領事館にて、兄弟であるアルフレッドを討った機体。紅蓮の無防備な背中を。
瞬間、デヴィッドの脳裏に先程のカリグラの問いが過ぎる。
支援
―― 貴様ハ勇マシク戦エルカ? ――
その後の彼の行動は、ライフルの一斉射では無かった。
ライフルを放り出したデヴィッドはMVSを引き抜くと、一撃必中とばかりに背後を晒している紅蓮に猛然と襲い掛かったのだ。
そんなデヴィットの挙動は、雲海に身を隠すトライデントのモニターにも送られていた。しかし――。
「そうだ、それで良い。さぁ、無事に仇を討てるか? 序でに、試させて貰うぞ? 紅蓮二式」
ライは口元を妖しく歪めた。
◇
デヴィットが翼下から飛び出した時。
一人レーダー画面を注視していた事が功を奏したと言える。
藤堂は反射的に振り向くと、カミソリのように鋭い瞳を見開き叫ぶ。
「紅月君! 後ろだ!」
『っ!?』
藤堂の声に導かれるかのように振り向いたカレンの眼前には、MVSを振り上げるグロースターエアの姿が。
一瞬遅れて紅蓮のコックピットに警告音が鳴り響く。しかし――。
「今更気付いたところで、もう遅い!」
獲った!!とばかりにデヴィットはMVSを振り下ろす。
が、そこで紅蓮は信じがたい程の反射速度を見せた。
左腕に忍ばせていた呂号乙型特斬刀を引き起こし最小の動作で弾いてみせると、返す刀でMVSを握ったデヴィット機の手首を切り飛ばしたのだ。
「なっ!?」
驚愕と共にデヴィットは機体のバランスを崩してしまう。
「舐めんじゃないわよっ!!」
短く吐き捨てると射殺さんばかりの瞳で睨み付けるカレン。
肉薄する二機。
しかし、それはとどのつまり……紅蓮の距離。
背筋に悪寒が走ったデヴィットは、咄嗟に距離を取ろうとする。対するカレンはそうはさせじとハーケンを射出。
「くっ! このっ――」
「逃がさないって言ってんでしょ!!」
グロースターの足首にハーケンを絡ませた紅連は力任せにたぐり寄せ始めた。
「デヴィッド!」
そんな部下の危機を目の当たりにしたギルフォードは直上より急降下する。
が、そうは問屋が卸さなかった。
「させん!」
藤堂は瞬時に上空に向けて速射砲を構えると、千葉と朝比奈もその後に続く。
大空に響く無数の銃撃音。
しかし、ライはそんな灼熱の戦場を見て只一人、嬉々とした笑みを浮かべていた。
――成る程、枢木に匹敵するとのロイドの言葉。間違いでは無いな。さて……。
胸中で紅蓮に及第点を付けたライは思考を切り替える。
「餌と成り果てた者に用は無いのだが。ギルフォードめ……仕方無い」
ギルフォードの行動を目の当たりにしたライは、短く舌打ちすると指示を飛ばす。
『オ前達モ続ケ! 射撃ヲ分散サセロ!』
変声機越しに命を下した後、一転してライはまるで下らない喜劇でも見ているかのように冷めた表情のまま、送られて来る映像を眺めていた。
◇
旗艦後方より再び迫る二機のグロースター・エア。それを視界の端に捉えた千葉が吠える。
「朝比奈、そっちは任せた!」
『全く、無茶言ってくれるよね!』
千葉は朝比奈の言葉を聞き流すと再び上空を見上げ狙い撃つ。
対する朝比奈はというと、千葉の頼みを何とも軽い口振りで引き受けたがその表情は真剣そのもの。
朝比奈はいつ何時飛来するとも分からない光弾。
その発射時を発見するべく、周囲を睨み付けながらも迫り来る二機に対して隙の無い銃撃を加えていた。
この朝比奈の働きは、ライにとって少々予想外だった。
――あのパイロット……中々やる。あの二人では荷が重いか。
モニターから送られて来る朝比奈の働きを見たライは率直な感想を胸に抱く。
しかし、それも一瞬の事。
――さぁ、餌は目の前だぞ? 紅蓮二式。
ライは邪な笑みを浮かべると操縦桿を握り締めた。
一方、ライの指摘した通りに二機のパイロットは苦戦していた。
腕ではギルフォードやデヴィッドより劣る彼等は、朝比奈の的確な射撃に反撃する事が出来ず回避運動を取る事で精一杯。
全く以て近付けないでいる。
その頃、彼等と同じくギルフォードもまた、苦戦していた。
「くそっ! これではっ!!……」
直上より降下した為、翼上に陣取る藤堂達にその翼を盾にされる格好となってしまっていたからだ。
ギルフォードは翼への損傷を気にする余り撃ち返す事が出来ず、二機から放たれる苛烈な対空砲火を必死に回避しながら、徐々に距離を詰める事しか出来ないでいた。
結果、デヴィッドの命運は決まった。
「ぐっ!!」
デヴィッドの乗るコックピットに衝撃が走った。遂に捕まったのだ。
グロースター・エアの喉元を鷲掴みにする異形の右腕。そして――。
「食らいなぁっっ!!」
勝利宣言にも等しいカレンの一声。
必殺の一撃。
三本爪の間から紅い光が迸り、唸り声にも似た重低音が響き渡るとグロースター・エアの装甲が泡立つ。
「くっそおぉぉぉっ!」
輻射波動の直撃を受けたデヴィッドは堪らず脱出レバーを引くと、彼を乗せたコクピットブロックは海原に落ちて行った。
それを見たギルフォード達は再び射程圏外へと離脱する。
直後、轟音と共にグロースター・エアは爆散した。巻き上がる黒煙。
しかし、その時。
轟音を聞いた藤堂が、一矢報いた事にフッと一息吐き呼吸を整えた正にその時。
雲海の中から光弾が現れた。
それも、一定の距離を開けて左から右へとほぼ同時に。
「光った! 10、12、14時の方角!! やっぱり居ましたよ! 藤堂さん!!」
目を光らせていた朝比奈は、捉えた瞬間早口で捲し立てた。
しかし、そんな彼を嘲笑うかのように三発の光弾は瞬く間に距離を詰める。
振り向いた藤堂は気流に乗って不規則な軌道を描きながら、しかし、狙い澄ましたかのように迫るそれを視認した結果、誤解した。
「少なくとも三機かっ!」
千葉もまた、朝比奈の警告に射撃を止めると三人は一様に回避運動を取る。
その頃、ギルフォード達には再び命が下っていた。
『"A1"!! 紅イ機体ヲ狙エ! 残リハ彼我ノ戦力ヲ分断セヨ!』
「はっ!」
ギルフォードは、命じられた通りに再び紅蓮に狙いを定めると急降下。
残りの二機も千葉と朝比奈を射程圏内に捉えるべく迫るが、光弾はそんな味方をあっさりと追い抜いた。
光弾との相対距離が700mを切る。その時――。
「妙だ……」
藤堂は不意にこれまでとは違う三方向からの一斉射を訝しむと、咄嗟にその射線軸を脳裏に描く。
瞬間、戦慄と共に振り向いた藤堂は瞳を見開いた。
支援
支援
426 :
代理投下:2010/06/27(日) 03:00:42 ID:kH2y4B7D
――まさか、これが本当の狙いかっ!?
彼の視線の先は、黒煙に覆われていたのだ。
「いかんっ!!」
相手の意図を察するや否や藤堂は叫んだ。
彼の脳裏に浮かんだビジョン。
先程と寸分違わず自分達に向けて飛来する三発の光弾。しかし、それらは藤堂達だけを捉えていた訳ではなかった。
その射線軸の交点は、まさにその黒煙の中に収束されていたのだ。そして、その中に居るのは……。
「紅月君を守れぇっ!」
藤堂の鶴の一声にハッとなる千葉と朝比奈。
一方で名を呼ばれたカレンは慌てて紅蓮を振り向かせるが、巻き上がる黒煙により視界は頗る悪い。
だが、今の藤堂に詳しく説明している余裕は無かった。
機体を正対させ廻転刃刀を真横に構えた藤堂は二人に激を飛ばす。
「何としても止めろ!」
『『承知!!』』
藤堂の動きを視界に捉えていた千葉と朝比奈の両名は、瞬時にその意図を理解する。
藤堂と同じく射線軸に陣取りながら、再び迫り来る2機のグロースター・エアを射撃でもって牽制。
光弾との相対距離が300mを切った。
その時、中央に陣取っていた千葉の視界に一瞬だけ影が過ぎった。
彼女はほとんど反射的に振り仰ぐと、その瞳に映ったのは再び急降下を開始した影の主。
続いて彼女が見たのは気流に流され薄れつつある黒煙と、その中にうっすらと映える紅の機体。
相対距離100m。
「紅月ィィッ!」
「っ!?」
千葉が叫んだ時、カレンの視界がようやっと晴れる。
しかし、時既に遅し。
射線上に陣取った三人に光弾が襲い掛かった。
「「「くうっ!」」」
至近距離での爆発。砕け散る藤堂の廻転刃刀。
朝比奈も同じく刀を、千葉は速射砲ごと左腕を持って行かれた。
同時に、ようやっとカレンの視界も晴れる。
「あ、ありが――」
『上だ!!』
千葉の一喝。
同時に藤堂が速射砲を紅蓮の頭上に構える。ハッとなったカレンが直上を見上げると――。
「ハァァァァッ!」
そこには今にも切り掛からんとするギルフォード機の姿があった。
だが、千葉の切羽詰まった叫びが功を奏していた。
二機の間は先程のデヴィッド機の奇襲よりも幾分か距離があったのだ。
カレンは咄嗟に操縦官を握り締める。
煙を上げるランドスピナー。翼上に黒い轍を残す。
カレンは紙一重の所で機体をターンさせると、振り下ろされた刃を躱してみせた。
「っ!? まだだっ!」
ギルフォードは打ち落とした刃を左斜めに切り上げる。が、紅蓮は右腕でMVSを握った敵機の手を掴みそれを阻止。
整った必殺の態勢に、ギルフォードの顔が焦燥に染まると猛禽の瞳をしたカレンが叫ぶ。
「あんたも食らえ!…しまった!」
しかし、カレンはここにきてカートリッジの射出を済ませていない事に気付いた。
「っ!? 撃てないのか? ならばっ!」
好機と捉えたギルフォード。機体の右手が腰に据えたライフルに触れる。が――。
「させるかぁぁぁっ!!」
カレンは咄嗟に左腕の刀で胸部を狙う。
「っ!!」
ギルフォードは咄嗟にライフルに触れかけた右手を素早く戻すとそれを阻止。
結果、互いに両手を塞ぎあう形となった二機。
掴んだままでは紅蓮のカートリッジは射出出来ない。しかし、手を離せばMVSの打ち落としが待っている。
ギルフォードの場合も似たようなもの。
右手を離せば、ライフルに触れる前に貫かれてしまうのだから。
膠着状態。
朝比奈は、依然として懐に飛び込まんとする二機の対応で手一杯。
藤堂は速射砲を構えつつも、紅蓮を盾にするかのように陣取るギルフォードに対して引金を引けずにいた。
「これでは撃てん!」
藤堂が思わず歯噛みすると――。
「紅月! そのまま捕まえていろ!!」
現況を打開するべく、残った腕に廻転刃刀を握り締めた千葉の月下が駆け出した。
◇
その頃、再び雲海の切れ目より顔を出していたトライデント。
二機の攻防を俯瞰していたライは感嘆の声を上げる。
「良い反応速度だ……やるな」
愉しくて堪らないとても言いたげにライは口角を釣り上げたが、飛び出した千葉機の動きを見るや否や形勢不利と判断した。
『"A1"、ソイツゴト上昇シロ』
「Yes, My Lord!!」
即応したギルフォードはフロートの出力を全開にして機体を上昇させる。
紅蓮の爪は獲物を捉えて離さない。
「逃がさないって言ってんでしょ!!」
だがゆっくりと、しかしながら確実に引き上げられていく紅蓮。
『紅月! 手を離せ!』
『無茶だよ!』
後少しという所で間に合わなかった千葉と、迫る二機を追い返した朝比奈が。そして、構えながらも撃てずにいる藤堂が叫ぶ。
『紅月君!』
「でもっ! やっと掴まえたのにっ!」
そうこうしているうちにも紅蓮はその高度を上げて行く。
ライはそんな紅蓮を見て一言。
「ザリガニのような奴だな………ザリガニ? V.V.め、余計な知識を……」
少々間の抜けた感想を溢しながら、ライはギルフォードよりやや低い高度まで自機を降下させると再び命を下す。
『"A1"、ソコデ止マレ』
「い、一体何を?」
慌てて停止するギルフォード。
時を同じくして、カレンも困惑の色を隠せずにいた。
支援
「止まった? な、何で!?」
そんな戸惑う二人を余所に、陰惨な笑みを浮かべたライは――。
「確かに良い乗り手だったが、これでさよならだ」
そう告げるとトリガーを引いた。
『また光った!!』
紅蓮のコックピットに朝比奈の声が響くと、自身目掛けて飛来する光弾を認めたカレンは焦る。
「ち、ちょっと待ちなさいってばっ!!」
咄嗟に右手を離し備えようとする紅蓮。
しかし、左手はギルフォードに捕まれたまま。
一方で、自由を取り戻したギルフォードの左腕は当然のようにMVSを振り下ろす。
が、カレンは直ぐさまカートリッジを射出すると、今度はその振り下ろされるMVS自体を掴んでみせた。
同時に放たれる紅い光。ギルフォードは堪らず柄を手放す。
「くっ!!」
直後に起きた至近距離での爆発と、輻射波動が使用可能という事を見せつけられたギルフォードが顔を顰めると――。
『"A1"、右手ヲ離セ』
再びの命に、その意図を図りかねたギルフォード。
しかし、彼は困惑しつつも直ぐさまそれに倣う。
法則に従って落下する紅蓮。
カレンは直ぐさまカートリッジを射出すると、再び親指を輻射波動のスイッチに添える。
「お願いっ!!」
瞬間、紅い光が発せられたかと思うと、それは頭部に着弾寸前の光弾を弾いてみせた。
その光景を目の当たりにしたライは思わず身を乗り出した。
「バカなっ!! 防いだのか!?」
ライの驚きを余所に、紅蓮はその右腕を正面にかざしながら墜ちて行く。
「た、助かった……」
間一髪。
難を逃れたカレンは心底安堵したかのような声を溢したが、それはまだ早かった。
『残り二発!』
再び響いた朝比奈の声。
「何なのよ、これ!!」
紅蓮の落下に合わせるかのように、寸分の狂いも無く襲い掛かる光弾にカレンは一瞬舌を巻く。が――。
「でも、残念!」
勝ち誇った笑みを浮かべたカレンは、二発の光弾も同じ要領で弾くと後方へ振り向きハーケンを射出。
ハーケンが旗艦の翼に食い込むと、走り寄った千葉機がすかさずワイヤーを引く。
結果、遂に紅蓮は翼上へと舞い戻った。
「あれを防ぎ切った、だと? こちらの出力不足か……いや、何れにしても楽しませてくれる。シミュレートではこうはいかないからな……」
翼上に立つ五体満足な紅蓮の姿を見つめつつ、ライは子供のように口元を綻ばせると胸の内で認めた。
あの機体は、己が全力で対峙する価値がある、と。
故に、続いて発せられた言葉は必然と言える。
「全機距離を取れ。次は私が出る」
それは、真の意味での出撃宣言。
ライはペダルをゆっくりと踏み込む。
銀色の装甲の上を雲が流麗に流れてゆく。
雲海の中より浮かび上がるかのように姿を現す、赤色巨星にも似た色の双眸を光らせる銀色の機体。
遂に、トライデントがその全貌を現した。
◇
「陣形を建て直せ!」
翼上では藤堂がギルフォード機に射撃を加えながらも激を飛ばしていた。
カレンは紅蓮を駆ると真っ先にそんな藤堂の正面に陣取ると、僅かに遅れてその両翼を千葉と朝比奈が固める。
そんな彼等の見事な守勢とは裏腹に、ギルフォード達は後退を始めていた。それを見た千葉は安堵の吐息を零す。
支援
「引いて行く……」
『気を緩めるな』
「は、はい!」
一瞬、緊張の糸が緩んだ事を藤堂に指摘された千葉は慌てて襟を正す。
その様子に小さく頷いた藤堂は続いて口を開いた。
「朝比奈、何処からの射撃か分かったか?」
『………』
「朝比奈?」
『やっぱり雲海の中からでした。でも、あまり認めたくないですね』
剣呑な表情のまま呟いた朝比奈は、続いて雲海の一点を指し示した。
その先、ギルフォード達が集結しつつある方角に泰然と浮かぶ雲よりも後方にあった巨大な雲海。その一点が煌めいていた。
藤堂達の瞳が剣呑の色を濃くするのと同じく、煌めきはジワリジワリとその光度を増してゆき――。
「ち、中佐!」
千葉は驚愕に瞳を見開いた。
雲海の中より現れた白銀色の翼を持つ銀色のナイトメア。
その機体はまるで藤堂達に己の風貌を見せ付けるかのように、不貞不貞しくも腕を組むと仁王立ちしていた。
『あぁ、やっと見えたぞ、彼奴だ!』
「バカな! あんな距離から狙い撃っていたというのですか!?」
心中穏やかでは無いにも関わらず、それを決して表に出さない藤堂に対して千葉の驚きは尋常では無かった。
それはそうだろう。彼等が視認している機体、トライデントが居る位置は、彼女が想定していたポイントよりも後方だったのだから。
『だから言ったでしょ。あまり認めたく無いってさ』
スピーカーから響く朝比奈の口調も何処か厳しい。
一方、カレンは最大望遠にした紅蓮のモニターに映るトライデントの姿を無言で睨み付けている。
そんな最中、不意に朝比奈がそれまで心中に渦巻いていた疑問を吐露した。
「でも、妙だね。一機だけってどういう事さ……」
『まさか、今までの射撃は全て彼奴がやっていたなんて事は――』
「面白いね、それ。でもさ、それが本当なら悪夢だよ?」
千葉が思わず口にした言葉を朝比奈はやんわりと否定した。
彼がそう思うのも当然の事。
三発全てがほぼ同時に別々の方角から射たれた。それを目撃したのは朝比奈ただ一人。
そんな芸当が出来る機体ともなれば、既存のナイトメアの飛行速度を遙かに凌駕する事になるからだ。
最も、朝比奈はトライデントがまさにそれに該当する機体なのだという事を知らないのだから無理も無い。
「そ、そうだな」
暗に笑われている事を感じ取った千葉は、少々気恥ずかしそうに頬を染めた。
「兎に角、気をつけろ。まだ周囲の雲に潜んでいるかもしれん。これ以上狙い撃たれても億劫だ。今のうちに身を隠せ!」
『『了解!!』』
藤堂の命を受け、二機の月下がホイールを唸らせながら後退する。
しかし、紅蓮だけはまるで脚に根が生えたかの如く微動だにしなかった。
その事に藤堂が疑問の声を上げる。
『紅月君!?』
「行って下さい! 皆が隠れるまで私が――」
『しかし――』
「大丈夫です。全部防いでやりますから!!」
危惧の念を抱く藤堂を余所に、カレンは愛機に対する絶対の自信から来るのだろう。壮絶な笑みを浮かべてみせた。
◇
「なんという方だ……」
ギルフォードは率直な感想を口にした。しかし、それも当然と言える。
戦闘開始より10分も経っていない。
にも関わらずカリグラは月下一体を含む四機を仕留め、更には他の三機にも損害を与えている。
デヴィッド機を失ったとは言え、この戦果は十分に釣りが来るものだったのだから。
しかし、アヴァロン艦内で戦況を見守っていた者達の驚きはそれ以上だった。
支援
静まり返るブリッジ。本来、戦闘中であるのだからこの場はもっと喧噪としていて然るべき。
にも関わらず、誰も言葉を紡げずにいた。
皆が皆、目の前の光景に理解が及ばなかったからだ。
しかし、ここでもやはりと言うべきか、ロイドだけは異彩を放っていた。
「アハッ。流石というかやっぱり凄いね、彼。これは杞憂だったかな??」
そう言うとロイドは右隣に居るセシルに合いの手を求めたが、それが差し伸べられる事は無かった。
「どしたの?」
不思議に思ったロイドが問うと、セシルはようやっと口を開く。しかし、それはこの場に居た皆を代表するかのような言葉だった。
「い、異常です……」
「そんなの先日のシミュレートで分かってた事じゃない」
微苦笑を浮かべるロイド。しかし、セシルは引き下がらない。
「で、でも! 最初の射撃の後に一帯の気象データを取り寄せて、その後は気流に乗せて射撃してるんですよっ!?」
「へぇ?。彼、そんな事までしてたんだ」
「その後の射撃は防がれこそしましたが、それでも照準は全て敵ナイトメアの急所を狙い撃ち。誤差は5cmも無いんですよ!?」
セシルは「これでもですか!?」とでも言いたげな視線をぶつけるが、当然と言うべきか。ロイドに効果など有る筈も無い。
「ふ?ん」
「ふ?ん、って。そ、それだけですか?」
「今更驚いても仕方無いでしょ。でも、まるで機械のような正確さだね、彼。皇帝ちゃんの直属にしとくには惜しいよねぇ」
驚くどころか不敬な言葉と共に一層笑みを深くするロイド。
セシルは堪らず肩を落とした。
◇
セシルとロイドが騒いでいた頃、ライはモニターに映る紅蓮を睨み付けていた。
その紅蓮はというと、両脚を肩幅まで広げ腰を落とすと異形の爪を翼上に叩き付けた後、「撃ってみろ」とでも言わんばかりにその右腕を翳している。
その勇姿を受けてライの瞳に光が宿る。全てを切り裂き兼ねないような鋭い光が。
「私を挑発するか……そうだな、許そう。貴様にはそれだけの力がある」
しかし、激昂するどころか愉快げな声色を響かせたライはモニターに視線を落とす。
「リミットは、6分27秒……良いだろう」
エナジーの残量を一瞥すると瞬時に活動時間を導き出したライは、続いて右の操縦桿を動かしながら左手でモニターパネルに指を走らせた。
トライデントが動く。
右腰からエネルギー供給用のケーブルを引き抜くと、右脚側面に装着していたヴァリス。その銃床部位に繋げた。
すると、それまで絞り込まれていたヴァリスの銃口が花開く。
遠距離用の狙撃モードから、中、近接戦闘用のフルバーストモードへと姿を変えたのだ。
フルバーストモード。
それは撃つ際に機体エナジーを使用するのと、射撃の際に発生する熱量を逃がす為に砲身冷却を行う必要性が生じる為、連射は出来ない。
が、出力は桁外れに跳ね上がる。ランスロットのハドロンブラスターを鼻で笑う程に。
ヴァリスがその形状を変えると、続いて機体全体から小刻みな電子音が生じ、それが周囲に響くと今度は機体背面の空間が波打つ。
刹那――。
「なっ!?」
トライデントを睨み付けていたカレンは思わずたじろいだ。機体後方にあった雲海。それが跡形もなく消し飛んだからだ。
それはエナジーウィングから溢れ出た暴走にも似たエネルギーの奔流。その所業。
雲を消し飛ばしたエネルギーの流れは、やがて収束に向かうと続いて空間を歪ませる。
断続的に発生する歪な銀色の波紋。それはさながら光輪を背負っているかのよう。
その異様な姿を視認したカレンは、背筋に悪寒を感じながらも一人気を吐き撥ね除ける。
「あんたが天使を気取るなら、あたしは羅刹斯(らせつし)になってやるっ!!」
カレンの瞳に焔が宿る。
「こんな所で終われないのよ! 私はっ! ライを見つけるまで、戦って戦って生き抜いてやる! さぁ……かかって来なっ!!!」
操縦桿を握る手にこれでもかと力を込めたカレンは相手の一挙手一投足も見逃すまいと、正に鬼神の如く睨み付けた。
丁度その頃、トライデントの変貌を呆然と眺めていたギルフォード達。彼等の機体にも異変が起こっていた。
「な、何だこれは!? 機体が動かない……」
突然中空で停止した事にギルフォードが驚きの声を上げると、二人の部下もそれに追従する。
支援
支援
『こ、こちらも同じです!』
『一体何が……』
彼等の機体は操縦桿やペダルを踏み込んでも一切の反応を示さなかった。
最も、射程圏からは外れている為、撃ち落とされる危険性は無い。
が、整備不良ともなれば黒の騎士団を相手にするどころでは無くなってしまう。
「フロートが生きているのが不幸中の幸いか……しかし、これでは……」
無念そうに呟いたギルフォードは、状況を打開するべくアヴァロンとの通信回線を開く。
「こちらギルフォード! ロイド伯爵は居るか?」
『…………』
しかし、通信機はノイズを響かせるのみ。
己の懸念が深まっていくのを感じたギルフォードは思わず頭を抱えた。
だが、彼等の機体に起きた異変は故障等によるものでは無かった。
それに真っ先に気付いたのは、アヴァロンでデータ収集を行っていたセシルだった。
手元のモニターに映るトライデントの機体データ。
下から上に流れて行く無数の数字。
常人であれば目が追いつくどころか、全くの意味を為さないその数字の羅列を真剣な眼差しで追っていた彼女は、異変に気付いた瞬間大声で叫んでいた。
「ロイドさんっ!!」
「ど、どうしたの?」
突然の大声に隣で佇んでいたロイドは思わず後退るが、セシルは言葉を続けた。
「ト、トライデントが、味方機に対してハッキングを……」
この世の終わりのような表情を浮かべるセシル。この一報には流石のロイドも瞳を見開いた。
「ちょ、ちょっと待って! それは――」
「事実です! 既にギルフォード卿や他の機体の全システムに侵食を!!」
セシルの声は、最早悲鳴に近かった。
ライが現在進行形で行っている方法は、指揮形態のまま個別戦闘を行った場合の活動時間の限界を計っていた時、つまりは出立前に行ったシュミレート時に偶然発見された。
強固なデータリンクシステムと、情報処理能力。
更には、皇族やラウンズ以外では拒否出来ない程の命令権限を有するトライデント。
それが味方機に対して、データリンクを介して無理矢理操縦権限を奪い取る。
奪われた機体は、意のままに操られるだけでは無い。その性能全てを敵撃滅に傾注させられるのだ。生命維持機能さえも停止させて。
結果、機体は高い機動性能を発揮出来る事となるのだが、同時にそれは搭乗者にとっては空飛ぶ棺桶と同義。唯一の救いがあるとすれば、活動時間の短さだけ。
常日頃よりパイロットをデバイサー扱いする事を憚らないロイドでさえ「いくら何でも使っちゃ駄目だよねぇ」との一言と共に、容易に踏み止まらせてみせた最悪の戦術。
しかし、全ては遅かった。
「ああっ! もうっ――」
何とか停止させようと、忙しなくパネルに指を走らせるセシルに向けて、ロイドは達観したかのような表情を送った。
「……無理だよ」
「で、ですけどこのままじゃ!!」
セシルは沈痛な思いを吐き出したが、それ以上何も言えなかった。
そう、彼女も分かっていたのだ。
ロイドが言った通り、今、この中にトライデントを静止させる事が出来る立場の人間は居ないという事を。
彼等が出来る最後の手段として、トライデントが演算処理に使用しているアヴァロンのメインシステムをシャットダウンさせるという方法も有るには有る。
が、それをすればアヴァロンが墜落する。
「……ギルフォード卿達の身体が、丈夫な事を祈るしか無いね」
ロイド達が出来る事といえば、アヴァロンの望遠レンズが捉えるトライデントの姿を眺める事ぐらいだった。
◇
モニターに浮かぶ文字は制圧完了。
「ギルバート・GP・ギルフォード。帝国の先槍。では、これより私の先槍となってもらおうか」
ライは今一度、決意の眼差しでもって紅蓮を睨み付けるとEnterキーを押す。
絶対遵守の命令が、下された。
支援
ギルフォード達の機体が急反転する。
「ぐっ!!」
予期せぬ自機の動きに、ギルフォードは意識を持って行かれそうになる。
彼等の機体は先程までの流麗な動きとは一線を画し、およそ人が乗っていられるのか不安になる程の不規則な軌跡を描きながら、翼上に立ち構える紅蓮目掛けて突進を開始。
1機に対して4機で襲い掛かる。
それは、戦場であれば何ら問題無い戦術だが今のギルフォード達の現状を知る者、セシル辺りに言わせれば「非人道的」と切って捨てるだろう。
だが、これこそが「至上の指揮官機を」との合い言葉と共に開発されたトライデント。
それが偶然とはいえ手に入れた戦術。言うなれば、紛れも無くその能力の一部でもあるのだ。
最も、単機決戦にシフトしたとしてもトライデントと紅蓮。その二機のスペックには如何ともし難い差が有る。勝負は一瞬で決まっただろう。
しかし、ライはそれを否定した。
一切の手を抜かずに自機のポテンシャルを総動員させて、眼前の紅蓮一機を撃滅する道を選んだのだ。
即ち、それはライが紅蓮の能力を、そして気高く立ち構えるパイロット。紅月カレンの心意気を高く評価したに他ならない。
左手にMVSを握ったトライデントが前傾姿勢を取る。
その機体内部では、正八面体に加工された特殊コアルミナスが円形かと見紛う程に激しく回転し、時折、雷光にも似た光を放つ。
ここに、全ての準備は整った。
先槍と化したギルフォード達は紅蓮との距離を2km弱まで詰めている。対するライと紅蓮の距離は8km近い。
並みの機体ならば、今動いたとしてもギルフォード達がカレンと刃を交える時には間に合わない。
しかし、トライデントであれば間に合うのだ。
「さぁ、私と踊ってくれ」
膝を付き淑女を舞踏に誘うかのような口振りで、ライは届く筈も無い言葉を手向けるとそっとペダルに足を乗せる。
そうして、踏み込むべく脚に力を込めた時。
不意に小刻みな電子音がライの耳朶を打った。音の正体はアラート音。
トライデントのレーダーが遥か前方、エリア11の方角より迫り来る飛行体を捉えたからだ。
僅かに顔を顰めたライがモニターに視線を落とすと、そこにあったのは三つの光点。
そしてその光点の隣に表示された数字を見た瞬間、ライは眉間に皺を寄せると嫌悪感を顕わにした。
【 Tristan 】3:13
【 V-TOR 】6:39
【 Mordred 】6:47
記されるのは見知った文字。表示される数字はそれらの到着予定時刻。
「…………存外、早かったな」
そう呟くや否や、ライはモニターパネルを殴りつけた。
同時に、不規則な軌道を描いていたギルフォード達の機体も止まる。
「っ!?」
突然の停止につんのめりながらも、操縦が回復した事に驚きを顕わにするギルフォード達。
だが、直ぐさま眼前に迫っていた紅蓮より距離を取るべく機体を操作する。そして――。
「な、何だったのだ? 今のは……?」
朦朧とする意識の中、安全圏まで離脱して初めて安堵の吐息を零すギルフォード。
彼の部下二人も離脱に成功していたが意識の混濁がギルフォードよりも酷いのか、こちらは一言も言葉を発する事が出来ない。
しかし、そんな満身創痍の彼等に向けてスピーカーからは無情ともいえる機械音声が響く。
『誠ノ騎士トヤラノオ出マシダ。貴公等モ、後ハ好キナヨウニ振ル舞ウガイイ。私ハ帰艦スル』
一方的に告げ終えたライは、口元を固く結ぶと憮然とした表情のまま指揮形態までも解いてしまう。
収納される左右の角。
双眸も紅より蒼へと変わると、一本角となったトライデントはその機首をアヴァロンに向けて飛び去ってしまった。
残される形となった部下達が覚醒しつつある意識の中、問う。
『ギ、ギルフォード卿……』
『如何、致します、か?』
カリグラの行動が全く理解出来なかったギルフォードは、やれやれといった様子で頭を振ると代わりに命を下す。
「直ぐに機体状況を走査しろ。その後、我々は再び攻勢を仕掛ける!」
◇
支援
「どう、なってんの?」
背を向けて飛び去るトライデントと、突然動きを止めた三機を目の当たりにしたカレンは拍子抜けしていた。
すると、遮蔽物に身を隠しながらも援護するべく速射砲を構えていた朝日奈の月下が紅蓮の傍に歩み寄る。
『君の迫力に尻尾を巻いたのかな?』
「こんな時に冗談ですか?」
『まぁ、何にしても助かったね』
ジロリと睨むカレンの視線を朝比奈は戯けた様子で受け流した。しかし、その語尾をカレンは聞き逃さなかった。
「どういう意味です?」
ムッとした表情で問うカレン。
すると、朝比奈は咎めるでもなく真摯な眼差しを向けた。
『あのまま戦ってたらマズい事になったと思うけど?』
「そ、それは……」
カレンは言葉に詰まった。
大言を吐いたものの、彼女はトライデントが前傾姿勢を取った瞬間、恐怖にも似た感情を抱いていたからだ。
もっとも、それは朝比奈も同じだった。
その様子に、カレンも自覚しているという事を察した朝比奈は話題を変えた。
『さて、敵さんが一時後退してる今がチャンスだ。さっさと艦内に侵入しようか』
独り言のように告げると、朝比奈はカレンの返答を待たずして艦内制圧に向かおうと機体を反転させる。
その姿を見たカレンが後を追おうとしたその時、二機のコックピットに警告音が鳴り響いた。
慌てて視線を落とす二人。
すると、二機のレーダーモニターには旗艦の進行方向、エリア11の方角より迫る謎の機影を映し出していた。
「またっ!?」
「やれやれ、今度は何だい?」
口振りとは裏腹に、機影に向けて素早く機首を向ける二人。
そこに、視線の先より正体不明の機影が二機に向けて銃撃を浴びせ掛けた。
しかし、二人は難なく躱してみせる。
一方、躱されたというのに撃った機体のパイロットに「外した」という動揺は微塵も無い。
「さぁ、お仕置きタイムだ」
可変ナイトメア、トリスタンのコックピットでジノは挨拶代わりとでも言いたげに不敵な笑みを浮かべると、速度を落とす事無く翼上で身構える二機に迫る。
するとその時、突然遮蔽物の影から右腕を喪失した藤堂機が。
そして翼上からは朝比奈機とカレンの駆る紅蓮が苛烈な銃撃を加える。
が、トリスタンはお返しとばかりに難なく躱してみせた後、まるで嘲笑うかのように彼等の頭上を凄まじい速度で飛び過ぎる。
しかし、すれ違った際に視認した敵の機体状態にジノは「あれ?」と首を傾げた。
「おいおい、無事なのは一機だけかぁ?」
自身の思惑とは想定外の惨状を晒している敵機に驚きながら、ジノは旗艦後方で方向転換。
その時、トリスタンに向けて一本の映像通信が入る。
『その機体、ヴァインベルグ卿ですか?』
モニターに映る男の姿を知っていたジノは、戦闘中であるにも関わらずまるで挨拶するかのような軽い口振りで応じた。
「やぁ! ギルフォード卿か。良くここまで持たせた。それにちゃんと損害を与えてるし。流石だよなぁ』
『い、いえ。それは――』
「いいって、いいって。そんなに謙遜しなくてもさ。ところで、今から私も混ぜてくれないかな?」
『それは……願ってもいない事ですが……』
「有り難う!!』
ジノは嬉しそうに告げると機体を加速させた。
迫るトリスタン。
「この! 次から次へと!!」
「妙な戦闘機だね」
カレンと朝比奈は再び向かって来るトリスタンを左腕の速射砲で狙い撃つ。
が、ギルフォードの時とは違いトリスタンは華麗に躱しながら二機との距離を瞬く間に詰める。
そして、難なく旗艦上空に侵入を果たしたトリスタンは飛行モードを解いた。
「っ!? ナイトメアッ!」
戦闘機と見誤っていた朝比奈は瞳を見開いたが、時既に遅し。
「うわっ!!」
トリスタンが持つ鶴嘴形のMVSが横一線に振るわれ、朝比奈の月下は腰元から一刀両断されてしまう。
「まずは一つ!!」
弾むような声色で戦果を口にするジノ。
「す、すいません! 後は……」
対照的に、朝比奈は口惜し気な言葉を残すと脱出レバーを引いた。
◇
格納庫へと舞い戻ったトライデントは所定の位置、入り口より一番奥の場所にその体躯を収めた。
コックピット内で再び仮面を被ったライは昇降機を使い降り立つ。
そんな彼が見たのは、格納庫内を慌ただしく走り回る整備員達の姿だった。
一人の整備員が一際大きな声を上げる。
「次は枢木卿が着艦されるぞ! 場所を開けろ! ランスロットが出るぞっ!!」
その声に、カリグラが格納庫中央に鎮座すると主の到着を今か今かと待ち続ける白騎士に視線を向ける。
と、その後方に大口を開けている入り口より見える蒼い空。
その彼方より迫るVーTOR機を視界に捉えたのだが――。
「煩ワシイ男ダ」
一瞥すると出迎える事なく格納庫を後にした。
やがて、5分程掛けて悠々と通路を進んだ後、ブリッジの扉を潜ったカリグラ。
彼に向けて喧々囂々としたブリッジ内では只一人、ロイドが彼なりの労いの言葉を送る。
「おかえり。早速だけど、機体の感想は?」
「"エナジーウィング"カラ言ウゾ? 雲ヲ消シ飛バシタノハ見タナ?」
カリグラの問いに、無言で頷くロイド。
「原因ハ左右ノ"ウィング"ノ"エネルギー供給量"ガ均一デハ無イ事ダ。ソノ場デ調整シテハミタガ、ソレデモ全速飛行スレバ機体ハ空中分解スル。ツマリハ翼数過多ダナ。シカシ、ソノ他ノ"システム"ニオイテ文句ハ無イ」
「それはどうも。となると次は8枚で試してみようかな。所で、どうして途中で帰って来たの?」
「私ノ戦場ニ自由意志ハ必要無イカラダ」
「あれは使わない方がいいと思うけどねえ。ギルフォード卿達の心拍グラフは大分治まったけど、酷い乱れ様だったよ?」
珍しく苦言を呈するロイド。しかし、それを完全に聞き流したカリグラは椅子に腰掛けると問う。
「ソレデ、状況ハ?」
問われたロイドは諦めたのか肩を竦めるとモニターを指差す。
「流石、僕のランスロットだよね、ほら」
その先を追ったカリグラが見たのは右腕を喪失した紅い機体。
――ラウンズ3機を相手にするのは荷が重かったか……。
自ら討つ事が叶わなかった事に、心中で一抹の侘しさを感じたライがバランスを崩し翼上から墜ちる紅蓮を眺めていると――。
「そんな事言ってる場合ですか!!」
セシルの叱咤が二人に浴びせられた。
五月蝿い女だな、と口にしようとした所でライは口を噤んだ。モニターに映る旗艦が煙を吐いていたからだ。
「ドウイウ事ダ? 何故、旗艦カラ煙ガ上ガッテイル?」
「エンジンに損傷を受けたみたい」
カリグラの問いに他人事のように返すロイド。
それを聞いたセシルは肩を震わせるが、咄嗟にそれどころでは無いと判断したのか。
正面に向き直るとモニターパネルに指を走らせる。
そんなセシルを置いて、二人は呑気に語る。
「黒ノ騎士団ノ仕業カ?」
「さぁ? そこまでは分からないけど、結果的に2番フロートが停止状態。3番4番の出力も低下してる。最も、直ぐに爆発って事にはならないと思うけど、このままじゃ皆で海水浴だね」
「……………」
「それと、アプソン将軍が戦死したって報告もあるけど?」
「ソレハドウデモ良イ。デ? 総督ノ現在地ハ?」
ロイドの現状説明を聞いたカリグラが最も気に掛けている事を問うと、間髪入れずに手を動かしたままのセシルが答える。
支援
支援
「現在、旗艦内部にスキャニングをかけてます!」
「発見次第、"ラウンズ"ニ位置情報ヲ送レ」
「はい!」
命じ終えたカリグラは長椅子に腰掛けると頬杖を付き思慮に耽る。
――どういう事だ?
未だ機情より何の連絡も無い事と、フロートへの攻撃をゼロが命令したとするならば、彼の中で今のゼロはルルーシュでは無いという図式が成り立つ。
旗艦には、彼の妹であるナナリーが乗っているのだから。
しかし、それだと何故今まで旗艦を制圧するかのような行動を取っていたのかの説明が付かなかった。
――それとも、既に身柄を確保した故の行動か?
答えを導くには、ライを以てしても情報が決定的に足らなかった。
その為、ライは思考を一時中断すると戦況を注視する事とした。
◆
同時刻、黄昏の間。
「今頃は海の上かな?」
「でしょうな」
眩しげに瞳を細めながら金色の夕日を眺めていたV.V.が、ふと思い出したかのように言葉を紡ぐと、隣に居たシャルルが相槌を打った。
するとその時、彼等の背後に黒衣の男が一人、現れた。
男は臣下の礼を取ると徐に口を開く。
「申し上げます。太平洋上に黒の騎士団が出現。新総督を乗せた護衛艦隊と交戦状態に入ったとの事です」
その一報を聞いた二人は互いに顔を見合わせた後、振り返ったV.V.は意味ありげな笑みを男に送る。
「彼はどうしてるの?」
「新型機で出撃されたとの知らせを受けております」
男の返答は最新のものでは無い。
既にこの時ライはアヴァロンに帰艦していたのだから。
だが、それを知らないV.V.は嬉しそうに語る。
「それじゃあ始めるけど……構わないよね?」
「えぇ」
V.V.の提案にシャルルは短く返す。
「C.C.の驚く顔が目に浮かぶよ」
そう独り言のように呟くと、V.V.は陰惨な笑みそのままにゆっくりと瞳を閉じた。
◆
中華連邦を出港して佐渡に向かい、卜部達を拾うとそこから津軽海峡を抜け太平洋へ至る航路。
そんな長い船旅の末、戦場に到着した黒の騎士団の潜水艦。
その艦内にある大型モニターには今、一機のナイトメアの姿が映し出されていた。
黒の騎士団初となる飛翔滑走翼を備えた紅いナイトメア。紅蓮可翔式だ。
モニターに映し出されるその勇姿に団員達は熱い声援を送る。
しかし、そんな中にあっても緑髪の女、C.C.は彼等とは一線を画していた。
「カレン、頼む……」
冷静さを失わない麗貌のまま、C.C.は小さく願った。
しかし、その時。
彼女は思い掛けない事態に遭遇する事となった。
「っ!?」
突然、感じ慣れた気配を察知したのだ。
その気配に彼女は思わず瞳を見開くと、咄嗟にモニターから視線を逸らし一人虚空を見やる。
当然、そこには無機質な灰色をした隔壁しかない。
しかし、その視線は確実に捉えていた。潜水艦内から見える筈の無い蒼い空。そこに浮かぶアヴァロンを。
隔壁を浸透するかのように漂って来る気配に対して、C.C.は傍目には分からぬ程度に柳眉を顰める。
それは、ギアス能力者が持つ特有の波長だったからだ。
C.C.は直ぐさま記憶を探り始める。これを持つ者が誰であったか、と。
答えは呆気なく出た。
「ライ、お前なのか?」
知らず、C.C.は尋ねるかのように呟いた。
近くに居た神楽耶やラクシャータ達は、獅子奮迅の活躍を見せる紅蓮可翔式の勇姿に釘付けになっており、気付く事はなかった。
明後日の方向を見つめたまま、返って来る事の無い返答を待つC.C.。
だが、いつまでも黙っているというのは彼女の性格上有り得ない。
C.C.は微笑を浮かべながらライに向けて念を飛ばした。随分と女泣かせな事をしてくれるな、と。
実際の所、彼女はこんな台詞を飛ばす気は毛頭無かったのだが、久方ぶりに弄れる事に我慢出来なかったのか、つい使ってしまった。
しかし、今となっては後の祭り。
同時に、珍しく興奮気味であった彼女は忘れていた。以前、自身がルルーシュに警告した筈の言葉を。
C.C.は内心驚きに満ちた言葉が返って来るのを期待する。反応は直ぐにあった。
だが、その聞き覚えのある声を受け取った瞬間、C.C.は露骨に柳眉を逆立てた。
――貴様か、C.C.……。
その言葉は、殺意の固まりだったからだ。
並の人間ならば、聞いた瞬間全身に鋭利な何かを突き立てられたと錯覚しても可笑しく無い程の。
だが、彼女はC.C.だ。
直ぐに皮肉めいた笑みを浮かべると、売り言葉に買い言葉といった様子で軽口を飛ばす。
――フッ。坊や風情が随分と勇ましく……。
が、飛ばしている最中にライの波長は突如として消えた。
C.C.は本能的に理解した。邪魔をされた、と。
そして、己の念話を遮る事が出来うる力を持つ者を彼女は一人しか知らなかった。
同時に、以前何気なく言ったルルーシュの言葉が彼女の脳裏を過ぎる。
―― 何処からECCMでも出てるんじゃないか? ――
言い得て妙とでも言うべきか。ルルーシュの言葉は的を得ていた。
――そうか。やはりお前だったか……V.V.。
この時、彼女は全てを理解した。
何故今までライの波長を感じる事が出来なかったのかという事を。
C.C.がライの波長を喪失する原因となった事案は後にも先にもたった一度。
そう、それは1年前の事。
ジェレミアの駆るジークフリードを心中相手に見定めた彼女が海に突っ込んだ時だった。
圧壊されてゆくコックピット。同時に空気も失われていった。
如何に彼女が不死であろうとも、酸素の乏しい空間で意識を保つ事は不可能で、遂に彼女は意識を失った。
同時に、それまで朧気に感じていたルルーシュとライ。二人の気配も手放さざる負えなかった。
次に彼女が目を覚ましたのは機体の残骸の中、大海原を彷徨っていた所を卜部達に救出された時。
直ぐに探りを入れたC.C.が真っ先に感じ取ったのは、遠ざかって行くルルーシュの気配。
当然だ。ルルーシュの契約者はC.C.なのだから。彼に対する優先順位は彼女にある。
一方で、ライの気配は微塵も感じられなかった。
そこに卜部より知らされた「生死不明」との一報。
C.C.は、当初それを全く信じてはいなかった。
いや、内心信じたくは無いという思いもあったのだろう。
その後、C.C.は密かに探りを入れてはみたものの、ライの存在は霞の中に消えたようで全く分からなかった。
それが1ヶ月も続けば、いい加減彼女としても諦めに近い感情を抱くというもの。
しかし、V.V.はあの時に全てを済ましていた。
ライの契約者はC.C.でもV.V.でも無い。故に、先に奪った者勝ち。
V.V.はC.C.が意識を失っているのを良い事に、狙い澄ましたかの様に彼女から優先権ごとライを掻っ攫った。
脳裏に「言えるものなら言ってごらん」とほくそ笑むV.V.の姿を思い起こした彼女は、珍しく怒りに肩を震わせた。
しかし、流石にそんな雰囲気を醸し出しては周りに居る隊員達も気付く。
だが、彼等も怒りの理由までを理解出来る筈が無く、触らぬ神に祟り無しとばかりに距離を置いた。
が、すぐ傍に居た二人だけは真逆の反応を見せた。神楽耶とラクシャータだ。
「どうされたのですか? カレンさんは頑張って下さってると思いますけど?」
「そうよ。あたしの新型をあそこまで乗りこなしてるのよ?」
しかし、流石の二人もC.C.の怒りの理由を理解出来てはおらず見当外れな意見を口にした。
すると、返事が無いどころかC.C.の視線に気付いた二人は揃って首を傾げた。
C.C.は自分達とは違ってモニターを見ておらず、まるで猫のように明後日の方向を凝視していたからだ。
「どうされたのでしょうか?」
「さぁ? あたしに言われてもねぇ」
小声で互いに疑問を口にする二人。それもC.C.には全く聞こえていない。
彼女にとってライの生存を確認出来た事は喜ばしい事なのだが、如何せんタイミングが最悪な上にV.V.は他者に対して絶対に気付かれない方法で告げて来た。
今の騎士団の現状を知っているC.C.からしてみれば、告げようにも告げられない。
喜びよりも先に、腸が煮えくりかえる思いだったのだ。
言えばルルーシュはどうなるか。
只でさえ最愛の妹が敵側に居るのだ
今の状態でライの事まで告げるのは憚られた。
尤も、ルルーシュに関してはナナリーを無事に救い出してからでも遅くは無いだろうと結論付ける事が出来たが、他の隊員にはとてもでは無いが言えたものでは無かった。
彼らもまたライを大切に思っており、今では日本解放と同じ程にライの仇を、と思う者達も少なくない。
更に言えば、幹部である四聖剣メンバーの中にはゼロよりも寧ろライ寄りだと言っても良い者達も居る。
どうしたものかと考えるC.C.の脳裏に、不意に悲しみを湛えた紅髪の少女の姿が浮かんだ。
彼女が最も考えたく無かった事でもあるのだが、それは無理からぬ事。
C.C.は軽い頭痛を感じながらも考える。
伝えたとしたら恐らく、いや間違いなくカレンは喜ぶだろう。それこそ良く教えてくれたと言ってピザを自腹で奢る可能性すらある、と。
C.C.は、それは実に良い事だと思いながらも、一方では絶対に言えないという事も理解していた。
今のライはルルーシュの時とは訳が違うのだから。
先程感じた殺気は一年前、ディートハルトにギアスを掛けた時に見せた雰囲気を遙かに凌ぐものだったからだ。
下手に出会ってしまえば、その変貌ぶりにカレンはどうなるか。C.C.は考えるまでも無かった。
いや、カレンだけでは無い。
ライの仇を誓う者や生存を願う者。それらを力の糧としている者達に与える衝撃は計り知れない。
だが、対するライは違う。
躊躇する事無く殺しに来るだろうという事は容易に想像出来ていた。
そうなれば、待っているのは惨劇のみ。
C.C.は、伝える事が許されるのはかろうじてルルーシュのみだと結論付けると、戦況に見をやる。
すると、モニターにはラウンズ2機を退けたカレンがスザクに突貫する映像が映っていた。
◇
「どっけえぇぇっ!!」
猛禽の爪が白騎士に襲い掛かる。
激突する両者。互いに一歩も引かない。
しかし、押し返す事が出来ない事にスザクは驚きを隠し切れなかった。
「そんな!? ユグドラシルドライブのパワーも上がってる筈なのに……」
「このっ!! 流石にキツイかな……」
対するカレンも流石に力任せ過ぎたと反省していると、ランスロットのコックピットにセシルの声が響く。
『スザク君っ!! 総督の現在地が分かったわ! ブリッジ後方のガーデンスペース。でも、墜落まで後47秒!!』
「必ず助けます!!」
強い決意と共にコックピットモニターに映ったセシルを見やるスザク。
しかし、一瞬とはいえ紅蓮より視線を逸らした事が仇となった。
「っ!? しまった!!」
虚を突いて放たれた紅蓮のハーケンがランスロットの左側頭部を抉る。
「ぐっ!?」
衝撃に揺れるコックピット。
スザクは堪らず顔を顰めるが、直ぐ様ランスロットを反転させると紅蓮に背を向けた。
それを見たカレンが「逃げる気?」と憤慨した直後、今度は潜水艦内からC.C.と神楽耶。二人の声が飛ぶ。
『カレン、今はスザクより――』
『ゼロ様を!』
「分かってるけど、何処に――」
カレンが悲痛な面持ちで嘆いた時――。
―― カレン! スザクを追え!! ――
彼女の脳裏に一年前に聞いたライの声が過ぎった。
「そっか……分かりました、神楽耶様!!」
力強く応じたカレンは、旗艦の装甲にコアルミナスコーンを使って大穴を開け突入するランスロットを追うべく、ペダルを踏み込んだ。
◇
アヴァロンのブリッジに据えられた椅子。そこに居座る銀色の仮面の下で、ライは一人物思いに耽る。
――何が嬉しいというのだ? 私は……。
突然の標的からの念話。
それが明らかに上から目線で発せられた言葉だと理解すると、沸々と怒りが沸いたライは殺意で以て応じた。
だが、僅かな間と共に再び返って来た声には臆した様子など微塵も無かった。
いや、それは寧ろ先程以上に尊大な響きを持っていたが、言葉の途中でその声は突然聞こえなくなった。
当然の如くライはその理由を考える。
すると、その時になって初めて自分の口元が緩んでいる事に気付いた。
そして、当初に記述した思いに至るという訳だ。
その笑みはライ自身喜んでいると分かるものだった。目標が見つかった事に対してでは無い。
何故か。
あの声を心の内で反芻する度に、ライは酷く懐かしいような感覚を覚えていたのだから。
心に波風を立てられた今のライにとって、最早戦況など眼中に無かった。
ただひたすらに、その答えを探るべく思考の海に沈み行く。
しかし、それはセシルの悲痛にも似た声にサルベージされる事となった。
「ああっ! 重アヴァロンがっ!」
その声に我に返ったライは仮面越しにモニターを見やる。
飛び込んで来たのは海面上で爆散する旗艦。
これにはライも思わずといった様子で椅子から立ち上がる。が――。
「だからさぁ、セシル君。総督ならさっき救出したってスザク君が言ってたじゃない」
果たして目の前の現状を理解しているのか。全く心配しているといった素振りを見せないロイドの言葉。
それは、ライを固まらせる程にこの場には似つかわしく無い声色でもあった。故に――。
「ロイドさん! 何であなたはそんなに暢気なんですかっ! あの爆発見て無いんですかっ!?」
セシルの表情には普段の温和な面影は見る影も無い。しかし、これもロイドには効果が無かった。
「だからさぁ。大丈夫だって――」
ヒラヒラと手を振りながらロイドが言葉を発した時、遮るように通信が飛び込んで来た。
発信者はスザク。
そして、それは総督の無事を知らせるものだった。
通信内容が告げられた瞬間、ブリッジは大歓声に包まれた。
ある者は同僚と固い握手を交わし、またある者は両手を高々と突き上げる。
セシルも両手を口元に添えると瞳を潤ませる。
が、そのような只中にあってもロイドは一人自慢気に語る。
「まぁ当然だね。何といっても僕のランスロットは――」
「ランスロットじゃなくて救助したのはスザク君です! ス・ザ・ク・君! 分かりましたか?」
安心した結果、それまで渦巻いていた感情を全て怒りに向ける事が出来たセシルは、普段の温和な表情のままに寒々とした怒気を向ける。
すると、これには流石のロイドも肝を冷やした。微笑みながら怒られる事程恐ろしい事は無いのだから。
「そ、そうでした。そうでした。いやぁ〜、流石だよね、彼」
ロイドは額に冷や汗をかきながらも全面的に同意する。
だが、若干不満だったのか直ぐさま背筋を丸めて顔を逸らすと子供のように口を尖らせた。
それを見咎めたセシルが口元を引き攣らせる。
と、危険を察知したロイドは背筋を伸ばすと回れ右。話し相手を変えた。
「慌て無くても大丈夫だよ」
「慌テル? ハッ! マサカ……」
ロイドと視線が合ったカリグラは、そう言いかけたところで自身が未だ中腰のままである事に気付いた。
「…………………………」
無言で身を正したカリグラは椅子に座り直すと、ロイドは愉快げに口を開く。
「ふーん。君にも一応喜怒哀楽の感情は揃ってるみたいだね」
「ソウイウ貴様ハ"喜々楽々"シカ無イノデハナイカ?」
「あはぁ。一本取られたね」
二人はブリッジに詰める者達の冷ややかな視線を無視して、暫しの間、埒も空かない言葉の応酬を続けた。
以上で投下終了です。
すごく面白かったです!
ライカレ厨さんの作品はすばらしいです!
次回を楽しみにまっています。
ライカレ厨卿キターーーーーーーーーーー!!
とてもよかったです。次回の作品も楽しみにしています。
乙です。
ライカレ厨氏、久々の投下。待ってました。
次も楽しみにしてます。
乙でした!
これからの展開も非常に気になります
次回の投下も全力でお待ちしています
454 :
LLLLL:2010/06/28(月) 19:33:41 ID:OAovMhTi
乙でした!
次回もお待ちしております!!
すっげーーーーーー
よかったーーーーーー